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1974-10-18 第73回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十月十八日(金曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 田中伊三次君 理事 羽田野忠文君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 青柳 盛雄君       早川  崇君    松澤 雄藏君       松本 十郎君    山下 元利君     早稻田柳右エ門君    安宅 常彦君       日野 吉夫君    八百板 正君       正森 成二君    沖本 泰幸君  委員外出席者         警察庁刑事局参         事官      佐々木英文君         警察庁刑事局保         安部保安課長  四方  修君         警察庁刑事局保         安部少年調査官 山下  力君         警察庁警備局参         事官      半田  博君         法務政務次官  高橋 邦雄君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 長島  敦君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君         法務省入国管理         局参事官    岡田 照彦君         外務省アジア局         次長      中江 要介君         文部省初等中等         教育局小学校教         育課長     島田  治君         文部省体育局学         校給食課長   加戸 守行君         労働省労働基準         局補償課長   山口  全君         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局民事局長  井口 牧郎君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十八日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     山下 元利君   保岡 興治君     松本 十郎君   安井 吉典君     安宅 常彦君 同日  辞任         補欠選任   松本 十郎君     保岡 興治君   山下 元利君     塩谷 一夫君   安宅 常彦君     安井 吉典君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件  派遣委員からの報告聴取      ――――◇―――――
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  去る九月、本委員会は、裁判所司法行政及び法務行政等に関する実情調査のため沖繩県委員を派遣いたしたのでありますが、この際、派遣委員から報告を求めます。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 去る九月二日より行なわれました派遣委員による沖繩県下裁判所司法行政及び法務行政等に関する実情調査につきまして、私から簡単に御報告いたします。  まず、刑事事件の概要について申し上げますと、第一に、刑法犯の中で凶悪犯の占める割合全国平均より非常に高いこと、第二に、外人の刑事事件が復帰後増加しており、特に麻薬事犯凶悪事犯が増加していること、第三に、刑法犯中、少年の占める割合全国平均より非常に高く、特に凶悪犯粗暴犯風俗犯の比率が高いこと、などがそのおもなものであります。  次に、民事事件の特に目立った点を申し上げますと、沖繩は、今次大戦によって不動産登記公簿戸籍簿が滅失してしまったため、土地関係訴訟事件人事訴訟事件について立証の困難な事件が非常に多いことであります。  施設の整備状況について申し上げますと、沖繩刑務所は、大正十五年建築のれんがづくりの建物で、老朽、不備な点が非常に多く、早急に改築の必要を痛感したのであります。ただ、現在地一帯緑地指定となっているため、現在地改築が困難とのことで、移転地取得が当面の緊急課題となっておるのでありますが、現在までのところ種々の事情によりその見通しが立っていないのがその実情であります。  以上のとおりでありまして、その詳細について報告書委員長に提出いたしましたので、会議録に掲載されるようお願いいたします。  以上、簡単でありますが、報告を終わります。
  4. 小平久雄

    小平委員長 この際、おはかりいたします。  派遣委員から委員長の手元に提出されております調査報告書は、これを本日の会議録に参照のため掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  派遣委員各位にはまことに御苦労さまでございました。     ―――――――――――――   〔報告書本号末尾に掲載〕      ――――◇―――――
  6. 小平久雄

    小平委員長 次に、裁判所司法行政に関する件並びに法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  おはかりいたします。  本日、最高裁判所田宮総務局長矢口人事局長井口民事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  8. 小平久雄

    小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうは質問する方がたくさんいらっしゃいますので、通告してありました第一の裁判所の職員の関係、書記官の問題等については別の機会に譲らしていただきます。  第二の、刑事被害者補償の問題について質問をするわけですが、これに関連をして、例の三菱重工爆破事件被害者の方の状況がどういうふうに現在なっておるかということです。それは、労災等による補償が得られておるか、あるいはその他のことで補償が得られておるかどうか、こういう点が中心でございます。
  10. 山口全

    山口説明員 労災保険では、労働者事業主支配下にありまして、その場合に業務との相当因果関係がある傷病を発生したという場合に保険給付をする仕組みになっております。  ただいまお尋ねの三菱重工爆発事件につきましては、現在までのところ、所轄の監督署長調査したところでは、被災者は、死亡八名、負傷者三百八名、合計三百十六名が把握されております。このうち、業務上の災害として監督署長に対して被災者あるいは遺族から保険給付請求があったものは九十七件となっております。ほかの未請求のものにつきましては、会社等を通じましてできるだけ早く請求書の提出をするように所要の指導をしておるところでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、ちょっと順序が逆になりますが、いまの事件について捜査の進展の状況はどういうふうになっておるのか、差しつかえない範囲でお聞かせ願いたいと思います。
  12. 半田博

    半田説明員 お答えを申し上げます。  去る八月の三十日に丸の内ビル街爆破事件があり、また先般、十月の十四日に三井物産館内爆破事件が発生をいたしたわけでございます。この両者状態を比較してみますと、共通点が一面においては相当見られるわけでありまして、いずれも国内における代表的企業がねらわれておるという点が一つ共通点でございます。また、昼休み又は昼休み終了直後に爆発が起こっておるということ、爆発物は茶色の紙で包んでひもが十文字にかけられておるという点、トラベルウオッチと乾電池を利用した時限式爆弾であるということ、予告電話が架電されておるということ、それから東アジア反日武装戦線グループ犯行であるという旨の声明が出されたという点、こういう点が両者共通をいたしております。  ただ、異なっております点は、爆薬について、丸の内ビル街爆破事件の場合におきましてはダイナマイトを主体とする爆薬でありまして、その量は約十キログラム以上というふうに推定をされておりますし、三井物産のほうにつきましては塩素酸ナトリウムと推定されておりますが、これの混合爆薬でありまして、その量は約一キロ以上、ダイナマイト換算三百三十グラム程度、三十分の一程度爆破量、こういうことが一つございます。それから起爆装置の問題について、丸の内の場合は雷管の可能性が強いのでありますが、三井物産の場合は点火はガスヒーターと認められる、こういう違いが出てまいっておるわけでございます。  いずれにいたしましても、両者につきましては、爆弾マニアであるかあるいは極左暴力集団犯行であるか、こういう点はまだ特定するに至っておりませんが、現在現場を中心とする広範な聞き込み捜査を継続して行なっておるところでございまして、丸の内については捜査員三百九人、三井物産については百四人を投入して専従せしめて捜査に当たっておるところでございます。  なお、本件極左暴力集団疑いがあると申しますのは、犯人が複数であると認められること、あるいは一部の極左暴力集団が、このような企業日本帝国主義の支柱であるというふうな評価をしておるという点、こういうような点から極左暴力集団疑いもあるということで、そういった線からも鋭意捜査を進めておるところでございます。  去る九月の二十三日に、丸の内ビル街爆破事件につきましては、東アジア反日武装戦線「狼」と名のるグループが、われわれのやった犯行であるという旨の声明文を一部の新聞社等に送付してまいった、また九月の十五日には、同「大地の牙」と称するグループの名前をもってそういう声明文がやはり一部の新聞社等に配られてきた、こういうふうなことがございまして、このグループ本件犯行関係があるかどうかはわかりませんけれども、この点についても私ども重要な捜査の対象として現在捜査を進めておる、こういう状況でございます。  いまのところ、まだこれらしいという線は残念ながら出ておりません。過去の爆弾事件を見ますと、大体一年から五年くらいかかりまして検挙しておるという例もございます。私どものほうとしましては、これはもう絶対に検挙するというふうに思って捜査に当たってまいりたい、かように考えております。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうお聞きしたいのは、被害者の方の中で、労災補償その他で補償を受けられる人は別として、補償を受けられない人が相当多数出てくるのではないかということが考えられる。そういうことについて国としての補償をどういうふうに考えるか、こういうことを聞きたいわけでいま聞いたわけです。  そこでこの刑事被害者補償の問題ですね。これはイギリスあるいはニュージーランド、それからアメリカの州の中の一部、これは法律的にやるのか行政的にやるのか、いろいろやり方も違っておるし、その制度が実際にどういうふうに運用をされておるかということはよくわからない点があるのですが、あなたのほうの、法務省のほうの刑事局の、刑法改正のほうのことをやっておられた、いま審議官鈴木さんが四十五年に、植松博士還暦祝賀論文集の中に「被害者補償の諸問題」という論文を書いているわけです。これは個人論文だといえば個人論文かもしれませんが、それを読んでみますと、「わが国では、この制度採否がまだ本格的に論議されるには至っていないが、いずれその時期がやってくると思われる」というようなことを冒頭で書いておられて、最後の「むすび」のところになりまするというと、「ところで、この制度採否が一国の経済状態とくに財政事情に左右されることはもちろんであるが、戦後におけるわが国経済のめざましい発展ぶりからみて、その制度化を支えるに足る財政的余力が生ずるのも遠い将来のことではないと期待してよいであろう。他方、すでにふれたように、刑事補償警察官等に協力した者に対する補償との均衡あるいは類推という観点から被害者補償の問題を考えることができるとすれば、これらの関連制度に関するわが国の法制がかなり完備したものになっていることは、被害者補償制度化にとって一つの有利な背景をなすだけでなく、制度の構想ないし内容を考える場合における出発点ともなるであろう。」こういうふうに書いておるわけですよね。  刑事補償と並べるのはちょっとよくわかりませんが、いずれにいたしましても、こういうふうなことから考えると、法務省としてはこういうふうな補償を受けられない被害者の方に対する国家補償の点について、現在どういうふうに考えて、そして将来どういうふうにしたいというふうに論議をされておるか、こういうことをお尋ねしたいわけです。
  14. 安原美穂

    安原説明員 ただいま御指摘鈴木君の論文にも書いてございましたが、あれは彼の個人の意見でございますけれども、確かに、犯罪の被害者に対する補償の問題として、法律制度といたしましては、御案内のとおり不法行為による損害賠償という民事手続によって、犯人そのもの損害賠償の責めに任ずべきものであることは間違いのないところでございますけれども、御指摘のように、犯人がわからない、あるいは犯人に弁済の能力がないという場合には、被害者にとってはまことに同情すべきお気の毒な事態が生ずるわけでございまして、かような場合におきまして、国が犯人にかわりまして賠償しなければならないという法律上の義務はないとは思いますけれども、やはりそれを放置しておくということは今日の福祉国家のあり方としては問題があるのではないかとも思われるわけでございまして、したがいまして、補償制度ということにつきまして、法務省といたしましては十分に前向きの姿勢で検討すべき問題であるというふうに考えております。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これ、いろいろむずかしい法律論を言うと議論が出てくるかと思うのですが、ただ交通事故の場合に、無保険の場合ですね、それからひき逃げとかそういうふうな場合にも、被害者に対しては保険で、運輸省ですけれども、給付されているわけですから、それとの対比から考えるというと――まあいろいろこまかい法律論を言い出してくると、それが義務であるのかあるいは恩恵であるかとか、社会保障であるとかああだとか、いろいろな議論が出てくると思うし、法律でやるのが正しいかとか行政措置がいいのだとか、いろいろあると思いますけれども、いま言った、前向きに検討するという考え方が出てまいったものですから私もこれ以上ここではしませんが、やはり無保険の場合の交通事故との対比から考えても、被害者の方は自分の意思によってそういう事故が起きたわけではありませんから、当然考えられていいというふうに思うわけです。前向きに検討されるということですから、具体的に早急に検討されることを要望しておきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、問題を別のことにするわけですが、これは今度民事局長になりますが、国籍のことに関連して、どうも日本の場合に無国籍の人が非常にふえておるわけですね。それが現在どういうジャンル、ということばがあれかもわかりませんが、類型別か何かに分けてどういうふうな現象が起きておるかということをまず説明を願って、それからまたそれに対してどうするかということについて質問をしたいというふうに思います。
  16. 川島一郎

    川島説明員 無国籍の者がふえているという傾向にあることは仰せのとおりであろうと思います。それがどういう関係からきておるかということは、私も事実をはっきり承知しておるわけでございませんので大体の感じから申し上げるわけでございますが、一番多いのは何と申しましても中国系日本に居住している方々、これが最近、日中関係の情勢が変化したのに伴いまして、国籍を離脱して、そうして日本帰化をする前提として無国籍になるという事例が相当多いというふうに聞いております。  それからもう一つの問題となっておりますのは、日米のいわゆる混血児関係で、戦後アメリカ軍日本に進駐してきて以来、アメリカ人を父とし、そうして日本人を母とするいわゆる混血児が生まれておる。これはアメリカ法律によりまして一応アメリカ国籍を持つことになるわけでありますが、これが一定の期間経過いたしますと一定条件のもとに無国籍になる、アメリカ国籍を失うという事態が生じておりまして、その結果無国籍になる者も出てきておるというふうに聞いております。  無国籍者として最近出てきておる例はその二つがおもなものであろう、このように考えております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのアメリカとの関係ですね、これはアメリカ法律との関係で、二年間アメリカに在留しなければアメリカ国籍を完全に取得することにならない。二年間在留しないとアメリカ国籍を失っちゃうということになるわけでしょう。そこのところを詳しく説明してもらいたいと思うのです。  それから、そのもう一つ前の段階で、父がアメリカ人で母が日本人のときには、日本国籍法ではアメリカ人になっちゃうわけですね。けれども、世界のあれからいくと必ずしもそれは父親国籍によってすべて判断するというんじゃなくて、父親母親の、両方の国籍になる場合だとか、何かいろいろあるのだろうと思うのですが、どうして日本国籍法の場合は父親国籍中心に生まれてくる子供国籍をきめておるのですか。母親から生まれるのだから、父親がどこへ行っているかわからなくなったりする場合なんか非常に困っちゃうんじゃないかと思うんですがね。母親国籍というわけにはいかないのですか。これはもう国籍法はそうなっているけれども、それはどういうふうな考え方に基づいているわけですか。
  18. 川島一郎

    川島説明員 国籍取得につきましては、各国の立法例はおおむね二つに分かれるわけでございます。一つ血統主義と申しまして、父親、あるいは父親がない場合には、ないと申しますか、父親がわからないという場合には母親、そういう血統に従って国籍取得するという主義でございます。それからもう一つは、これは出生地主義と申しますか、出生した場所が自分の国であればその国の国籍取得する、こういう二つの流れがあるわけでございまして、日本の場合は伝統的に血統主義をとっております。そこで父親日本人であれば子供日本人となる。ところが、血統主義をとっておる国はほかにもいろいろあるわけでございますが、多くの国が、自分父親自分の国の国籍を持っておれば子供もその国の国籍を持つということにしておりますので、日本の場合も父親基準にしてきめておる。それからもう一つ国籍を定めるにつきましては二重国籍をなるべく生じさせないという要求があるわけでございます。そういう意味で、父または母のいずれか一方が日本人であれば日本国籍取得するということにいたしますと、ほかの血統主義をとっておる国との二重国籍を生ずる危険が出てくるわけでございます。そういう場合をなるべく少なくいたしますために父親国籍取得基準となる、こういうことになっておるわけでございます。  アメリカの場合はそれと違いまして、出生地を基本として、アメリカで生まれた者はアメリカ国籍取得するということになっておりますが、それと同時に、アメリカ人アメリカ以外の地域で子供を生んだという場合にも、一定条件のもとにアメリカ国籍取得するということを認めておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたような、日本に来てアメリカ人日本の女性との間に子供を生んだというような場合は、やはりアメリカ国籍法によりますとアメリカ国籍取得される。日本の場合、国籍法は、もしそういう場合に父親国籍取得しない場合には日本国籍取得することになるわけでありますけれども、アメリカ人の場合にはその子供アメリカ国籍取得するので、日本国籍法によっては日本国籍取得しない。これは二重国籍を避けるという趣旨から出ておるわけでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 もう一つ日本人韓国人結婚をして、それで向こうの籍に入るでしょう。それが離婚をして、一定期間日本国籍取得する方法をとらないと無国籍になってしまうんじゃないですか。それはどういうふうになっておるかわかりませんか。たしかあの制度は変わったでしょう。韓国人結婚した日本人の女の人、それが離婚した場合に当然日本人になるの。一定手続をとらなくちゃだめじゃないの。それを知らないために無国籍になっている人もいるんですか。
  20. 川島一郎

    川島説明員 当然日本国籍には戻りません。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、その手続がよくわからなくてとらなくて、無国籍になってしまう場合も何かあるんだというふうに聞いているのですよ。  それはまた別のときにしますが、そうするといまの、アメリカ人日本人のおかあさんから生まれるとアメリカ人になっておるわけですね。アメリカに帰らないと、アメリカで二年間生活しないとアメリカ国籍を失っちゃうんでしょう。そういうことをあなたは言わないけれども、そうでしょう。そういう人が日本にどのくらいいるの。約三千人ぐらいいるというのですがね。そうすると、アメリカに行こうたって、二年間とても暮らすだけの資力がないとなると無国籍になっちゃうという危険性が非常に強いというわけでしょう。これが一つですね。だから一般的に、無国籍の人と日本人との結婚届は出せないのですか。どういうふうになっているのですか。
  22. 川島一郎

    川島説明員 結婚は自由でございまして、相手が無国籍であろうと外国籍であろうと……(稲葉(誠)委員結婚は自由だけれども、届け出はできるの」と呼ぶ)届け出もできます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま三千人近い人がいるというわけでしょう、無国籍になる危険性のある――危険性というか可能性というか、いるというのでしょう。その人たち日本人国籍取得したいということでいろいろ申請している、そういうことについて法務省としてはどういうふうに考えるかということが一つです。  それから、その帰化条件にも関係してくるのですが、帰化か非常にきびしいというか――各地方法務局を通して上がってくるわけでしょう。いろいろなことを調べますね。もちろん必要な条件を調べなければならないのですが、それがきびし過ぎるということのために帰化ができない、それで無国籍になってしまうというふうなことになる。そういう気の毒な人たちアメリカ関係で三千人くらいいるといわれているのですが、それに対して法務省としてはどういうふうな措置をするのかということが一つです。  それからもう一つは、例の中国系といいますか、どう言ったらいいですか、その人たち帰化の問題についても法務省としては現実どういうふうに考えて、どういうふうな措置をとっているのかということ、これをお聞きしたいわけです。
  24. 川島一郎

    川島説明員 法務省といたしましては、帰化の申請がありました場合に、これを審査して、法定の要件が備わっているかどうか、これを検討した上で許否の決定をするわけでございますが、御指摘のようにいろいろ同情すべき場合がございますので、その帰化の審査はなるべく急いでやる。そして可能な限り本人の希望をかなえるように、そういう姿勢事務を処理しておるわけでございます。  先ほどから御質問のございましたいわゆる混血児の問題でございますが、これが何人くらい日本におるかということは、私のほうで調査いたしたわけではございませんが、たとえば日本国際社会事業団あたり調査をされたというところによると、相当数の方がおられる。三千人余りの方がおられて、そのうち半数以上はアメリカ国籍を持ち続けていたいということを希望しておられるように聞いておりますけれども、四分の一程度の方は日本国籍を持ちたい、こういう希望を持っておられるように伺っております。  こういう方々の場合に帰化がむずかしいのではないかという御疑問かと思いますが、法律要件といたしましては、母親日本人であるという場合には簡易帰化の、特別に緩和した要件のもとに帰化が認められることになっておりまして、それによりますと、原則として、素行がよろしいということであれば、資産の状態がどうであるとかあるいは居住期間がどうであるとかいうようなことは問題にいたしませんで帰化をすることができるようになっておりまして、実際にここ三年くらいの間にアメリカ関係帰化者が相当あるわけでございます。たとえば四十七年には百二十五人、四十八年には百二十九人、本年になってからは三十四人というふうにございますが、ほとんど一年以内に処理しております。場合によっては一年をこえるものもございますけれども、二年以上かかったというものは一件もございません。したがって比較的スムーズに行なわれておるというふうに思うわけでございます。  それから中国関係はどうかということでございますが、特に日本人との身分関係がある者、たとえば日本人結婚をしたとかあるいはもと日本人であった者の子供であるとか、日本人に非常に縁故の多い方が多く帰化の申請をされるわけでございまして、そういう方につきましてはなるべく本人の希望をいれるように、最初に申し上げましたような迅速処理ということにつとめております。そういう状況でございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで問題は、アメリカ国籍を持っていて、未成年者でしょう、だから帰化のときに国籍を変更しなければならぬが、父親の同意がなかなか得られないんじゃないですかね。父親がどこへ行ったかわからない、そういうようなときは同意書はどういうふうにしてやるのですか。あるいはそれにかわるものをどういうふうにしているのですか。それが一つ。  これもよくわかりませんが、伝えられるところでは帰化の審査が非常にきびしい。まあきびしいのはいい悪いは別として、三年くらいかかるのもあるというふうにいっているのです。特別な事案かもわかりませんけれども。そこら辺のところで、いわゆる簡易帰化の方法でできるだけ、日本人になりたいという人は政府としては認めたい方向だというふうに承っていいと思うのですが、いまの父親の同意の場合はどうやっているのですか。
  26. 川島一郎

    川島説明員 父親の同意の問題でございますが、帰化の申請には、十五歳以上であれば父親の同意は必要ない、本人だけの申請で足りることになっております。十五歳未満の場合には法定代理人が同意をするというのですか、かわって申請をするということが必要になりますけれども、父親がたとえばアメリカ人で、アメリカにおって、その手続をしてもらえないという場合には、日本におります母親だけでよろしい、こういう取り扱いをいたしております。したがって、その点についてもあまり問題が起きたことは聞いておりません。  それから、三年くらいかかるものがありはしないか、そういう事件は、調べてみましたがございません。先ほど申し上げましたように、一年をこすという事件は比較的例外的なものでございまして、それも二年以内には必ず処理されておるという実情でございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ではその点については、できるだけ、そういう子供さんの人権というものを尊重して、日本人になりたいという場合には、母親日本人なんですから、簡易帰化で早急に認めてあげるようにしてもらいたい、こういうふうに思うわけです。  そこで、その子供さんの問題に関連をして、ずっと前からいろいろ問題になっていますいわゆる実子特例法、あるいは、法務省では実子特例法ということばを非常にいやがって養子特例法ということばを使うわけですが、どちらでもなんですが、これについては、党としての立場はきまっていませんし、私の立場というか見解もきまっておりません。よく事実関係を、お互いの言い分なり何なりを聞いてみないとなかなか判断しにくい状況に私自身があるわけです。そこで、この法務省側が考えておる特例法というのがどういうふうなものであるか。あなたのほうでどういうものだというふうに理解をしておるのかということをまずお聞かせ願いたいと思うわけです。どこからそういうふうな議論というか、そういうふうなものが出てきたというふうにあなたのほうでは理解をされておるわけですか。
  28. 川島一郎

    川島説明員 どういうふうにお答えしていいか、ちょっとお答えしにくいような問題でございますが、法務省といたしましては現在の身分法についてかねてから再検討を行なっておったわけでございまして、その際にいわゆる特別養子の制度というものを問題にしたことがございます。これは一定の年齢に達しない幼児を対象とする特別な養子制度である、そうしてその養子を行なった場合には、いわゆる養子として扱わないで実子として取り扱う、戸籍上も実子として記載する。そうして、普通の養子縁組みでありますと養親のほうからも離縁の請求ができるわけでありますが、それを認めないことにする。養子といっても比較的実子に近い取り扱いをして、しかも名称も養子ということばを使わない、こういう制度一つの案として前に検討したことがあるわけでございます。それが一つです。  それから最近におきましては、これは法務省側ではございませんけれども、宮城県の塩釜のお医者さんが問題を提起されましたことに端を発しまして、いわゆる実子特例法の名のもとにその採用が一部の方から希望されておるということを聞いております。その内容は、私、はっきり承知しておりませんけれども、その実子特例法をつくってほしいといわれる一部の方の御意見は、最初に申し上げました法務省の法制審議会で検討した特別養子の制度と大体同じようなものではなかろうかというふうに思うわけでございます。しかし、はたしてそういう制度だけを考えておられるのか、その辺は私、承知しておりませんが、私がいままで文献などで見た限りにおきましてはそのように理解をいたしております。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あなたのほうで現在、その特例法の制定を叫んでいろいろ運動されている方の考え方を正しく把握をしていないというと論議はかみ合わないわけですね。率直に言って私のほうも正しく把握していないわけです。あなたのほうとしてもそういう方々とよく会ってみて意見を聞く、あなたのほうも意見を出すということが民主主義ですから、そういう必要も私はあるんじゃないか、お互いに誤解もあるかもしれませんし、と思うのですが、こういう点についてはいかがですか。
  30. 川島一郎

    川島説明員 確かに、おっしゃるようにそういう方々の御意見を伺うことも必要であろうと思っております。ただ、この養子制度というのはいろいろ問題がございまして、前に法制審議会で検討いたしました場合にも、先ほど申し上げましたようないわゆる特別養子の制度を設けることがどうかという問題のほかに、現在の一般養子を成年養子と未成年養子という二つ制度に分けて規定してはどうかという意見もあったわけでございまして、そういった点につきましてなお法制審議会としては検討を加える必要があるわけでございます。法制審議会の中でこの問題を検討しておりますのは民法部会の身分法小委員会でございますが、身分法小委員会におきましては現在相続制度の問題を数年前から検討しておりまして、これが近く一段落するのではないかと思われます。いまその検討を行なっておられますので、その検討が一段落した機会にでもさらにこういった問題について御意見を伺う、あるいは審議をしていただくということができれば、その際には御指摘のようにいろいろな方の御意見を伺うことも必要であろう、このように考えております。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで民事局長、いまの実子特例法として主張されている中の、法律的に見てというかあるいは政治的に見てというか、どういうふうに見てというか、問題点ですね。法律的にはこういう点がどうも問題だというふうな点は一体どこにあるというふうにお考えになるわけですか。一つの案ですから、そのメリットのところもあるしデメリットのところももちろんあるでしょうから、あなたのほうとしてはデメリットのところを言いたいのかもわからぬですが、どういう点にその問題点があり、どういう点にメリットのところがあるわけですか。
  32. 川島一郎

    川島説明員 これは私、個人的な考えを申し上げてもなんだと思いますので、一応前の審議の際に出たいろいろな意見の中から総合して申し上げますと、第一には、養子を実子として取り扱う、戸籍にもそのように記載するということは事実を偽ることになるのではないかという抵抗感が一つあるわけでございます。御承知のように、日本の戸籍は一般に公開されることになっておりますし、世間の人に対しても、それから養子自身に対しても実子だということを知らせることになるわけでありますが、それが事実でないということを知っているのはその養親と実親だけである、こういう関係になるわけで、これは極端に申しますと養子の人権無視ではないかというような意見もあるわけでございます。  それから、戸籍という公の信用のある帳簿に書かれている事実が間違いだったということになりますと、戸籍制度の信用にも響くのではないかという心配もございます。  それから、養子が将来大きくなって、自分は養子であったのだということがわかった場合に受けるショックというようなものを考えますと、そういった事実と違うことを制度としてきめておくことがどうであろうかという問題があるわけでございます。  これに対して、それもそうだが、法律としてそういうものだということにしてしまえばそれも一つ考え方ではないかという意見もあるわけでございまして、私、どちらの意見にくみするかということはここでは申し上げません。  それからもう一つ法律的によくいわれますのは、近親婚の関係であります。これはたとえば、御承知のように民法ではきょうだいの間で結婚することはできないということになっておるわけですが、養子であった者が知らずに自分のほんとうのきょうだいと結婚してしまうというような心配がないであろうかということも指摘されております。  それから先ほど申しましたように、これを実子と同じように扱うわけでございますから、養親からの離縁請求というものは認めないということにするわけでございますが、もともと人為的につくった縁組みの関係が破綻したのにかかわらず、なおそれを解消できないということにしておくのはどういうものかという批判もございます。  それから、日本実情のもとでそういう制度を採用いたしました場合に、おそらくこれは家庭裁判所の許可か何かが必要になってくると思うわけでありますが、そういう手続を設けました場合に、はたしてそういう形での利用というものが励行されるであろうか、やはりそれをくぐった現在と同じような、他人の子供自分子供だといって届けてしまう、そういう慣行を払拭することにはならないのではなかろうか、こういう批判もあるわけでございます。  そういったいろいろな批判がございますけれども、長所といたしましては、他人の子供であっても自分の実の子供と同じように愛情をもって育てたいんだという人々の願いと申しましょうか、希望というものを満たすことになる、こういう大きな長所もあるわけでございますので、その辺を比較検討して、そうしてしかも技術的にいろいろな考えられる弊害を除き得るようなことができるならば、これも一つ考え方ではなかろうかというふうに思うわけでございます。いずれにしても十分な検討が必要であるというふうに考えております。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの問題は外国ではどういうふうな立法例があって、事実上どういうふうに行なわれておるわけですか。外国でも、ことばはちょっと悪いかもわかりませんが、一種の放任行為というとあれですが、そういうふうな形として行なわれておるという程度なんですか。そこはどういうふうになっているのですか。私も明治学院大学の中川高男さんにお聞きしたいと思ったんですが、ヨーロッパか何かに行っておられるという話もありましてお聞きしていないんですが、どういうふうになっているんですか。それが一つ。  それからもう一つ子供が、特例法によってなった親との間に親子関係がないんだ、実際の親は別なんだ、実際の親との間の親子関係の確認の訴えというのは求められないということになるのですか、その考え方によると。
  34. 川島一郎

    川島説明員 外国の制度がどうなっておるかということは、実は私よく承知しておりません。フランスとかソ連とかあるいはアメリカのカリフォルニアあたりにそういう制度があるということは書物にも書いてございます。しかし、その運用の実情がどうなっておるかということは、私必ずしも承知しておりません。フランスの制度に対してフランス内部にも批判があるということをどなたか言っておられるのを見たことがございます。カリフォルニアの制度はかなり利用されているというふうに聞いたこともございますが、他方ではそれほどでもないということを聞いたこともございまして、その辺、しかとした調査をしておりませんのでこの席でお答えすることができません。  それから、親子関係確認の問題でございますが、そういう問題はおそらく起きないのであろうというふうに思います。たとえば、外国の制度でございますと、裏帳簿といってはおかしいのですが、別に実際の親子関係はこうなっておるんだということははっきり記録がございまして、それは本人とか親のほうが閲覧したり証明をもらったりすることはできるという制度になっているようでございまして、一般の第三者には見せないというたてまえのようでございます。外国の場合と日本の場合とでは戸籍制度がそもそも違いまして、戸籍の一般公開というのが外国の場合日本ほどゆるやかでありませんので、そういった点からしていろいろ考えてみないとわかりませんが、少なくとも実子として扱い、戸籍にもそう書かれるけれども、しかし実際はこうなんだということがさらに別の記録によってわかるようになっておるということでございますし、日本でかりに特別養子あるいは実子特例法というようなものをつくるといたしましても、そういった配慮だけは必要ではなかろうかというふうに思うわけです。したがいまして、その意味での親子関係確認を別に裁判で求めるという問題は起きてこないのではなかろうか。これは私一応いま考えておることで、深く検討したわけでございませんけれども、そういうふうに思います。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの問題についてはだんだん運動も盛んになってくるといいますか、大きくなってくるでしょうし、法務省においても各国の実例、運用、そういうふうなものを、立法その他含めてよく研究していてもらいたい、こういうふうに思うわけですが、その点についてはもちろん法制審議会の中でやるのでしょうけれども、法制審議会といったって、そのおぜん立てや何かをするのは法務省でほとんどやるのでしょうから、その点についてはどうでしょうか。
  36. 川島一郎

    川島説明員 先ほど申し上げましたように、法制審議会の現在の審議が一段落したような機会を見まして、この問題についても御意見をよく伺えるように、われわれとしても資料の収集その他検討をしておきたいというふうに考えております。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 最後の質問は矯正関係になるわけですが、一般に、無罪を訴えて再審の請求をしておる、こういうふうな人の一般的な処遇ということは、これは人権その他の問題から大きな問題なんですが、きょうは、いま問題になっています宮城刑務所にいる平沢貞通氏のことについてお聞きをしたいのですが、矯正局長、きのう教講師の全国大会が仙台にあって、そしておそらく宮城刑務所へも行かれて、いろいろそのことというか、病状等について聞いてこられた、こういうふうに思うわけですが、まずその病状は現在はどうか、こういうことからお聞かせ願いたいと思います。
  38. 長島敦

    ○長島説明員 昨日、教誨師の全国大会がございまして、午前中講演を頼まれまして、午後式典がございましたので時間がたいへん短うございましたけれども、その合い間を縫いまして、矯正管区、宮城刑務所、仙台鑑別所、三つ、私の所管の施設でございますので視察してまいりました。  宮城刑務所に参りまして中をずっと視察いたしましたが、その際、平沢の入っております房の前を通りましたときに、ちょうど主治医の医務部長が診断をしておりました。そういう意味で、診断の妨害になるので、ただ立ちどまって本人の様子を外から見て通ったわけでございます。しろうとでございますけれども、一見しましたところ、思っていたよりも健康というと語弊がございますけれども、さしあたっての様子を見ましたところでは、それほど重体というような状態ではないというふうに、しろうと判断でございますが、印象を受けました。  それから、時間があまりございませんでしたが、医務部長に病状等について伺いました。その結果は、七月の初めごろに不整脈がございまして、そのころ病状がやや悪化しておったわけでございますけれども、現在の病状はそれに比べますと小康状態と申しますか、やや回復しておるというようなことでございます。ただ、何しろ老齢でございますし、衰弱と申しますか老衰と申しますか、そういうような状況が進んでいると見られますので、その主治医のほかに課長が二人おりますけれども、それもときどき診察をするということで、主治医は毎日見ておりますけれども、いま病状を非常に慎重に見ておる状態でございます。現在のところは特に問題とする症状はございませんけれども、肝臓の機能に障害がややあるんじゃないかというような点が問題点ということでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は、問題はそうした個人の問題というよりも、被告人というか、被告人ではないわけだが、いずれにしても、既決囚であっても再審を訴えている人、そういう人の人権全体の問題としてまずとらえなければならぬ、こう思うのですが、どうもいまの問題でも、あなたのほうの説明しているのと、それから国民というか、一部の人たちが受けておる病状の把握とずいぶん違うのだというふうにとれるのですよ。ずいぶんひどいようにとれるのです。私のよく知っているのが宇都宮におるのですが、よく宮城刑務所に行く人ですが、それのところへ来た手紙を見ますと、ことしの十月七日の手紙ですが、「からだの回復を待っているのですがとうとう実現できず、本日また嘔吐してだめになりました」というふうにいっているのですよ。嘔吐が非常に激しいということをいった手紙を出しているわけですね。それから見ると、あなた方の説明するのとだいぶ病状が違うのじゃないか、こういうふうに思うのです。  それと、宮城刑務所の医療設備がどの程度のものかよくわかりませんが、一部伝えられるところによると、そこの治療ではなかなか無理だから東北大学の病院へ移したいという話が内々進められているんだと、一部新聞に出ましたよね。そういうような話も聞くのですが、この点の事実関係はどういうふうになっておるのでしょうか。監獄法でも条文はありますよね。だから、条文の解釈はいいですが、そこのところがどういうふうになっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  40. 長島敦

    ○長島説明員 最初お話しの嘔吐の点でございますが、御指摘のように毎日ということでございません。ときどき食べたものを吐くという現象がございます。その点もどういう原因なのかということを慎重に見ておるわけでございますけれども、一つには心因性と申しますか、気分的にときたま、食べると吐くということもあるようでございまして、原因がよくわかりませんが、常時吐いておるという状態ではなくて、通常の食事をふだんは普通に――通常の食事と申しますか、流動食でございますけれども、とっておるという状態でございます。  それから病院移送の問題でございますけれども、これにつきましては先生御指摘のように監獄法に規定がございます。私どもは基本的な考え方といたしまして、あらゆる受刑者について公平に処遇をするということで、特定の人について、特定の人だから差別をするとかというようなことは全く考えておりませんので、監獄法の規定上、病院移送を相当とするという事情が起こりますれば当然に病院移送をするという、監獄法の解釈はそういうふうにしたいと考えております。  ところで、具体的な問題について申しますと、何しろ平沢は老齢でもございますし、いつ監獄法上の措置によって病院移送を相当とするという事態が起こるかもわかりませんので、急にそういう病院に持ち込むというようなことでは先方もお困りでございましょうから、万一そういうような事態になったときに受け入れが可能かどうか、受け入れる場合にはどういうふうな条件になるんだろうかということを事前に打診をしておるというのが事実でございます。現在そのような段階でございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私も特別扱いをすることについては、ほかの人との関係でいろいろ問題があると思います。ただ無実を訴えて再審を願い出て、まだ再審が最終決定をしていない場合は普通の被告人と同じような扱いを一応しておるわけでしょう。多少は違いますけれども、扱いをしておるわけですから、そういう点については一般的に人権の問題として十分考えなければいけない問題だと私は思うのですが、そうすると、内々東北大学の病院とそういうふうな下相談をしておるというようなことは、これはあなたたち言いにくいけれども、宮城刑務所の病監というのか、あの中にあるものでは、設備なんかはこれは大学病院よりも足りなくてあたりまえなのですが、そういう点の足りないところもあるから移すことも考えているわけでしょう。これはもしものことがあったときに責任追及をされると困るからということであるいはやっているのかもわからないわけですが、そういうふうな下交渉をしておるということ自身が相当病状が悪いということを意味しているのではないですか。それならばできるだけ早く設備の整った病院へ移して、そこで治療するというふうなことのほうが人権上もいいやり方ではないでしょうか。ただ、いろいろ及ぼす影響ということもありましょうからあなたたちいろいろなことを考えているのかもわかりませんが、そういうことのほうが法務省としてもいいのじゃないかと思うが、何なら早急にやったほうがいいのじゃないでしょうか。
  42. 長島敦

    ○長島説明員 先ほどお答え申し上げましたように、現在非常に慎重に病状を見ておるわけでございまして、現在の時点におきましてはまだ監獄法にいいます所内で治療ができないというような、監獄法に書いてありますような所内における治療が十分にできないという状態では現時点ではまだないというふうに見ておるわけでございますが、将来、何しろ老齢でございますのでそういう事態も生ずることが十分考えられますので、事前の内交渉と申しますか、打診をやっておるという状態でございます。現時点におきましてはまだその病院に移送をするという監獄法の規定に当たる状態にはなってきていないというふうに、現在は判断をしております。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは私が直接確かめたことではございませんからあれですが、宮城刑務所のある程度の責任者ですね、所長じゃないのですが、責任者に言わせると、宮城刑務所の病監には器械がないけれども、東北大学の病院には一つの器械がある、その器械によらないというと診断というか治療がむずかしいのだ、そういうものがあるので早く移したいというふうなことを言っておったと、こういうのです。こちらのほうに対してそう説明したというのですがね。だから、あなた方としては、いつでもというのはどういう状態になったときにそれでは移すというのですか。あなたのほうでまだ詳しい話、これ以上のことをここで明言するというのはいろいろな関係があるから避けたいということですか。いっでも送り得る準備だけはできているということで、いつ幾日どうするというようなことはもちろんここでは言えないということと承ってよろしいのですか。
  44. 長島敦

    ○長島説明員 ただいまお答えできますことは、監獄法の規定に照らしまして、あの条項に当たるということになって、移すことが適当だという判断に到達いたしますれば移すということで考えているということでございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 実はきょう質問者の方がたくさんあるものですから、私も時間をはしょって、ほんとうは十二時まで私のあれだったのですが、協力して質問をはしょっているわけなんですが、私は、一般の既決囚も含めて、全体にやはり人権というものを守らなくちゃいけない、特に再審を主張している人ですね、これについては十分人権を守らなければいけない、こういうふうに思うわけですね。ところが法務省の中では、再審なんてあんなものは通りっこないのだ。だからそんなのは既決囚として扱うので、これは人権とか何とかと言ったって、口では人権のことを言うけれども、そういうものはあとだというふうな意識が非常に強いのではないか、こういうふうに思うのですね。しかし、一般的に含めて、病人が刑務所の中の医療設備では不十分だということになれば、もっといい病院へ移すということもこれはあまりこだわらないで考えていいのではないかというふうに私は思うので、この人だけの問題ではなくて、全体としてのこうしたたくさんの受刑者というか、再審を申請している人というか、そういう人全体の人権というものを十分守っていただきたいということを申し上げるわけですね。監獄法の規定で、移す規制がある、それはわかっていますけれども、そのときは手おくれになっちゃったら困るんじゃないの。そのときあなた方のほうで責任を追及されますよ。責任を追及されると役人というのはなかなか弱いですからね。だから十分な配慮というものを前もってしておいたほうがいいのではないかということを私は申し上げるわけですね。もちろん平沢氏個人の人権の問題を中心としますけれどもね。答えが同じことになってしまいますから、そこら辺についてまとめた矯正局長の答弁を願って、私としては質問を終わります。
  46. 長島敦

    ○長島説明員 私ども、この矯正の仕事といたしましては、やはり収容者の生命、健康というものを非常に大事に考えておりまして、そういう意味で一般的に申しまして、病院移送につきましては、施設内で十分な治療ができないというような段階になりますと、極力努力をいたしまして病院移送をやっておるわけでございます。ほかにもたくさんそういう例が実はございますので、そういう基本的な方針には変わりがございません。そういうつもりで十分にいま病状と申しますか、健康状態を見ておるということで御理解をいただきたいと思います。
  47. 小平久雄

    小平委員長 次に、横山利秋君。
  48. 横山利秋

    ○横山委員 椎名・朴会談につきまして、若干時間はたっておりますけれども、大事な点だけ短い時間で御質問をしますから、端的にお答えを願いたいと思います。  外務省は……。警察庁がお見えですから、それじゃ警察庁から伺いましょうか。  この椎名・朴会談の田中親書及び椎名特使のメモによって、警察庁としてはどんな仕事の変化があるかということですね。どんな影響があるか、どういうこれから仕事のしかたを変えなければならぬか。それはどういうふうにまた上司から注文がついておるかということをまず伺いましょう。   〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
  49. 半田博

    半田説明員 椎名特使の訪韓の結果によりまして警察のいままでの姿勢が変わるということはございません。私どもといたしましては、いかなる団体でありましょうとも合法のワク内において活動する限り、それはわが国では自由であります。ただ犯罪行為等を行なえば、これを捜査し、取り締まることは当然のことでございます。また、椎名訪韓によって特別に上司から御指示があったというような事実はございません。
  50. 横山利秋

    ○横山委員 いまのお話、ごもっともだと思うのですが、それでは親書及び特使の口頭説明の中にあります「韓国の転覆を意図する犯罪行為、あるいは要人の生命をねらうテロ行為などについては、朝鮮総連などの団体構成員によると否とを問わず、犯罪行為を取り締まる方針である。」ということは、一体どういうふうに仕事上これは受け取られるつもりであるか、伺いたい。
  51. 半田博

    半田説明員 それは先ほども申し上げましたように、いかなる団体でありましょうとも国内法に触れるならば取り締まる、こういう意味でございます。
  52. 横山利秋

    ○横山委員 法務省は入国管理その他の関係で、この親書及び口頭説明についてどういうふうに影響を受けますか。
  53. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 法務省関係の諸法律の運用、実施ということにつきましては、何ら従来と変更はございません。
  54. 横山利秋

    ○横山委員 きょうは法務大臣が御病気でお見えになりませんから、少し政務次官に副大臣としてお伺いしなければならぬわけであります。  法務省所管の仕事について何ら影響がないというお話でございまして、ごもっともだと思いますが、それならばなぜかかる椎名・朴会談を行なわなければならないか。当然過ぎるほど当然のことについてなぜ行なわれたかという、その政治的な見解をあなたにまず伺いたいと思う。
  55. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 椎名特使が韓国に参りまして会談されたときにメモが取りかわされたというような話を私も新聞で承知をいたしておりますけれども、それがどういうものであるかにつきましては私は承知していないのでございます。
  56. 横山利秋

    ○横山委員 あなたはお役人じゃないのですから、政治家ですから政治家らしくお答え願わなければならぬ。お役所としては何の意味もない、何の変化もない、何の影響も受けないということを、なぜ政治的に行なったであろうかということを政務次官にお伺いしている。
  57. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 わが国と韓国との関係というのはたいへんこれは重大な、重要な間柄にあると思います。こうした両国の関係が非常に悪い事態にならないように政治的な配慮がさまざまとられたということは、これは当然だろうと思うわけでございます。しかし、そのことが直ちにいままで律しております仕事のやり方に変更がある、あるいは特別なことが行なわれる、こういうことはない、こういうことを申し上げておきます。
  58. 横山利秋

    ○横山委員 仕事のやり方は何ら変わらない、そして何もこの結果によって影響も受けないということにかかわらず、一国の特使が行って、そして総理大臣の親書を渡して、そしてその親書やメモについても何回も何回も打ち合わせて遺憾のないようにした、それほどのことをやる意味というものは一体何であったか。これほどのことをやって、しかも仕事のしかたについては今後一切何の影響も受けませんということについて、国民はちっともわからないと言っているんですね。だからそこのところを、あなた方が、一切影響は受けません、仕事も今後変わりありませんと言っておるのにかかわらず、心配している向きが非常に多いんです。それがわからないはずではないと思うんですね。そういう人たちなり国民に対して、どういう説明をお役所の最高責任者としてなさるつもりであるか。ああいう親書やああいうメモは何ら影響は受けません、いままでどおりです。それならなぜあんなことをしたのかという質問がはね返ってくるから、そのことについて責任ある説明をしてくれと、こう言っているんですよ。
  59. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 私は、事柄の重要性、重大性にかんがみまして、ああいうような特使を派遣され会談をされた、こういうことに非常に政治的に大きな意味があるんであろうというふうに理解をいたしておるわけでございます。そのことの結果、何か特別なことが行なわれるのではないかというようなことでありますが、そういうようなことはないわけでございまして、あくまでも法律の定めるところに従いましてこれは正確に忠実に行なうというのが私どもの仕事であるというふうに考えるのでございます。
  60. 横山利秋

    ○横山委員 何を言うておられるかよくわからないのです。事柄が重要であるから椎名さんが行った。なぜ重要であったか。  もう一回言いますよ。この親書やメモは何らいままでと今後と、影響が、関係がない。仕事のしかた、何の関係もない、そのことはいいんですね。  それならば、なぜそういうことをしなければならなかったのであるか、あたりまえのことをなぜ書くかということなんです。それが十分国民に説明がつかないとすれば、何も関係がないとは言いながら、実際は朝鮮総連に対する調査が、あるいはいろんな取り締まりがきびしくなるんではないかということをみんな考える。そうじゃないんだ、そんなことは絶対せぬのやと言うのならば、なぜそれならそういうことを、わざわざわかったことをやってこなければならなかったかという点について、簡単なわかりやすい国民に対する説明をしてくれ、こう言っているんですからね。おわかりでしょう、私の質問は。
  61. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 お答えを繰り返すようになるかもしれませんけれども、まあ、韓国とわが国との間の関係が破局に至るようなことがあってはこれはたいへんでありますから、そうした問題を、そうした事態を招かないように、高度な政治的な配慮からああいう特使の派遣ということが行なわれ、また会談が行なわれた、こういうふうに私は理解しておるつもりです。  私どものほうで担当いたしておりますこの破防法の適用なりにつきましては、これはもう前のこの席でも申しましたけれども、法律の定めるところに従いましてこれは誠実に必要な調査は進める、こういうことについては前も今日も変わりはない、こういうように思います。
  62. 横山利秋

    ○横山委員 どうも私の質問に対して最も的を射た御答弁をなさらないんです。あなたが政務次官として、大臣のような答弁をすることはできぬとおっしゃるならそれはしかたがないけれども、いま大臣が御病気で欠席して、あなたが大臣としての役割りをなさっていらっしゃるんですから、もう少し政治家なら政治家らしく、はっきりしたわかりやすい答弁をなさってもらわぬと困るんですがね。  私が言いたいのは、椎名さんが向こうに行っておわびをしてきたのだ、向こうがおこっているからおわびしてきたのであって、私ども国民の日常の関係には一切関係ない、これからも何ら仕事のしかたについて変わりはないのだからまあ了承してくれ、向こうがおこっているからおわびしてきたのだ、おわびしたことはこういうことについておわびしてきたのだ、こういうことならこういうことらしく国民にわかりやすく言ってもらわなければ困る。重大なことだから椎名が行ったのだ、ではわからぬ、こう言っておるのですからね。もう少しざっくばらんに話し合いましょうや。どうなんですかね。
  63. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 これはたいへんむずかしい国際問題であるわけでありますから、こうした問題を冷静に処理をしなければならぬわけでありますし、この両国、韓国と日本との間の関係が非常にまずいことになるということは日本にとりましても不幸なことでありますので、そうした政治的な配慮、判断から特使が派遣され、いろいろな会談が行なわれた、こういうことだろうというふうに私は思っております。
  64. 横山利秋

    ○横山委員 その評論家的態度はやめましょうや。おわびに行ったのか行かなかったのか。おわびしたとするならば、どういうことを日本政府としてはおわびをしたのかということをはっきりしてくれと、こう言っているのですよ。いやしくも一国の総理大臣の親書を持って出かけていって、そうしておわびをしたということは重大なことなんです。おわびをする必要があったのかなかったのかということを私もこの前言うたわけでありますが、大体韓国政府の今回の一連の事実というものは無理難題なんですね。その無理難題を承知の上で行って、頭を下げてたいへん悪かったと言う必要が一体どこにあったのだ、こう言うておるわけなんですがね。  外務省がお見えになりましたから少し外務省にほこ先を向けますけれども、中江さん、いま伺っておったのは、これはあなたも異存はないと思うのですが、田中親書及び椎名メモによって国内における警察庁なりあるいは公安調査庁なりあるいは入国管理局なり等々の事務について何らの変わりはない、あり方については変わりはない、そういう趣旨のことを関係のところはみなおっしゃった。外務省もそういうふうに理解をしておみえになりますか。
  65. 中江要介

    ○中江説明員 外務省もそのように理解しております。
  66. 横山利秋

    ○横山委員 そこでお役人でない高橋さんにお伺いしたのだけれども、要領を得ないところにあなたがいらっしゃったわけですが、そういたしますと、この親書並びにメモの意味というものは、法律的な拘束はない、政治的な意味である。法律的効果の問題でなくて政治的効果の問題である、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  67. 中江要介

    ○中江説明員 この親書及び椎名特使の御説明というのは、韓国側の誤解を解くために日本側の実情説明するというところに趣旨があったわけでございますので、おっしゃいますように、法律的効果というものではなくて、そういう日韓間の険悪な事態を鎮静化させるという政治的効果をねらったもの、こういうふうに御理解いただければいいかと思います。
  68. 横山利秋

    ○横山委員 その政治的効果という点で意見が一致をいたしますと、その政治的効果という点について、あなたは誤解を解くための効果があったと言うのですけれども、私どもはこれをすらっと読んで、国民がまた納得をしているのは、おわびをした効果があった。あなたは誤解を解く効果があったとおっしゃるのですけれども、おわびをした効果があったというふうに国民はとっている。しかも、この文章を一読すれば、向こう側が誤解をしているということばは一つもなくて、日本側としてはたいへん哀悼の意を表する、遺憾の意を表する、犯罪行為は取り締まる、韓国政府もその真意をくみ取ってほしい等々、おわびをしているという効果というふうに理解をするのですが、なぜ誤解だとあなたは言い張るのですか。
  69. 中江要介

    ○中江説明員 これは、この総理の親書を椎名特使が持って韓国を訪問されるというに至った経緯を少し振り返ってみる必要があると思うのですけれども、こういう措置が必要になったそもそもの発端は、朴大統領夫人がなくなられた。その葬儀に日本からは総理大臣が哀悼の意を表するために韓国に行かれて、国民葬に列席された。そこで哀悼の意は政府としては十分表明したということであったわけですが、そのころに日本の新聞の一部が報道した、日本政府には何の責任もないというような報道、あるいは木村外務大臣の、北の脅威はない、これは客観的な事実として朝鮮動乱のときのような全面的軍事衝突が起こるというような脅威はないという御発言、あるいはまた日韓基本関係条約第三条の一貫して日本側がとっております解釈、それを国会で御説明になった、そういったものを日本の新聞でいろいろコメントが出たものを、韓国側がそれをキャリーいたしまして、それが即日本政府の考え方であるというふうに思い込んだところから韓国側の対日態度というものが非常に険悪化して、御承知のような大使館乱入事件のようなものが起きて、そして日韓関係が日に日に悪化する。したがいまして、日本政府としては、哀悼の意を表しました田中総理の国民葬参列のほかにも、この事件関連しまして、いろいろ日本と全く無関係事件でないということは認識している、これは客観的事実でございます。そしてまた日本としては、本件日本がそういう意味で全くかかわり合いがないことではないという点で、捜査の上で協力すべきことはするという態度をとっておりますのに、韓国側では捜査の協力が不十分だというふうに思い込んでいる面があるらしい。あるいはまた在日朝鮮総連の日本における地位についても、韓国側は、日本が何か特別にほかの団体と違った扱いをして、そしてそれが今度のような事件を招いたのではないか、こういうふうな見方をしますけれども、日本側は日本の憲法及び国内法に従ってこれを厳正に取り扱っているということはやはり説明して誤解を解かなければならない。こういうことで椎名特使の派遣ということに立ち至ったわけでございまして、これは韓国側がいろいろの情報から日本の真意を十分正しく理解していただいていないという点が問題だというふうに政府としては受けとめて、その分を正しい理解に直していただく、そして事態を鎮静化しよう、こういうことであったわけでございます。
  70. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの言うことも一面の真理がないとは言いません。だけれども、今回のこの一連の行為というものは、韓国側は国民に都合のいいように宣伝し、そして弁解し、おさめ、日本政府はまた日本国民に、自分に都合のいいように、いまおっしゃるような宣伝をする、あるいは韓国の誤解を解いたにすぎないんだ、日本側にとってみればあたりまえのことをやっただけで、あたりまえのことを言ったたけだ。両国政府とも自国の国民をだますことにきゅうきゅうとしておるという感じを私は持つわけであります。  たとえば、いま中江さん、あなたに、中江アジア局次長が汚職をするといなとにかかわらず、やったら警察が処分すると言ったら、何をこく、おれは何もやっておりはせぬとおっしゃるでしょう。私はあなたの名前を出してたいへん恐縮なんですが、これはうそのことなんですが、それと同じように、「朝鮮総連などの団体構成員によると否とを問わず」ということは同じことなんですよ。それともいま、これは警察庁にお伺いしますが、犯罪行為親書及びメモにいうところの行為が現に朝鮮総連に疑いがある、朝鮮総連が実行をしたということがあるのですか、ないのですか。その点をひとつ伺いたい。
  71. 半田博

    半田説明員 現在の捜査の段階におきまして、朝鮮総連が組織として本件に関与したというような証拠は出ておりません。
  72. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと中江さん、あなたに言ったように、中江が汚職するといなとにかかわらず、もしやったらつかまえるというようなことと同じじゃないんですか。それとどう違いますか。
  73. 中江要介

    ○中江説明員 田中総理の親書の中には朝鮮総連という名前はメンションされていない、これははっきりしておるわけでございます。他方韓国側では、文世光の自供その他からこれは在日朝鮮総連と結びつきがあるという前提で話をしておるわけなんです。わがほうは、ただいま警察当局から御説明がありましたように、そういう結びつきは現在までの捜査の結果では出ていないということなんです。ところが向こうは、朝鮮総連が関係があるという立場を引き続きとっておるものですから、朝鮮総連に関して言うならば、それがたとえ朝鮮総連のメンバーであろうとなかろうと、およそ日本では犯罪行為はきびしく罰するという、この一線ですべての問題を貫いてやっているのですということを椎名特使が口頭で御説明になったということでございまして、椎名特使の口頭説明の中で朝鮮総連という名前が特に出ましたのは、向こうはどうしても朝鮮総連との結びつきがある、わがほうはない。じゃどうなのだ。それは結びつきがあろうがなかろうが、およそ、どういう団体に属している人であろうが属していなかろうが、日本で法に反した行為をした者は厳正に処罰するという、このたてまえで日本は貫いているのですということをはっきり申し上げよう、こういう趣旨であったわけでございます。
  74. 横山利秋

    ○横山委員 納得できませんね。しかもその特使の口頭の、いま問題になりましたように、後宮大使がイニシアをした、準外交文書といわれるそういうものに、あなたを例にとってたいへん悪いのですけれども、あなたによくわかるように言うのですが、あなたは、自分は汚職しないと言う。人は、あいつは汚職したと言う。そうすると客観的な人が公式の文書の中へ、中江が汚職したといなとにかかわらず、汚職したならば警察が取り締まるというふうに書いたときに、あなたがおこるのはあたりまえでしょう。何でおれの名前を出さなければならぬ、と。あたりまえです。これは人権じゅうりんですよ。  それならばなぜ総連と書かなければならなかったのか。おそらくあなた方もこれを書くことにずいぶん抵抗したと思うのですよ。けれども結局それを書いた理由は一体何であったか。書いた以上は向こうに期待権を持たせるのは当然なんです。向こうは期待権がある。総連がちょっとでもやったら何かきびしくやってくれるというふうに期待を持つのは当然なことではありませんか。その期待権を裏切ってはならないとあなた方はお考えになっているのではありませんか。だからよけいに総連のことならば調べようとお考えになっているのではありませんか。少なくとも口頭説明のメモに出たことによって、変化はないとおっしゃるのですけれども、その点について非常な危惧の念が総連側に出ておるということは、これはもうどんなに否定しても否定し得ない政治的効果というものを出しておるわけなんですから、そういうことについて総連側に対してあなたは申しわけないと思いませんか。自分の立場で考えてみて、自分が、おれは汚職してないのに人が中江は汚職した、汚職したと言う。そうするとまん中へ立っている人が、あいつが汚職したとしないとにかかわらず、もししたら警察で取り締まるというふうに言明されたことについて、何か自分が半ばそういうような暗い影を投げかけられたというふうに考えるのがあたりまえじゃありませんか。客観的にそういうふうに皆さんが見るのはあたりまえじゃありませんか。したがってよけいにここではっきりしておかなければならぬのは、こういうところに朝鮮総連という名前をわざわざ書いた意味というものについて、あなた方は総連側に正式に明白にすべき責任がある、そう思います。もう一回ひとつ外務省として、ここに朝鮮総連という字が書かれた理由、そして総連側に与える影響等についてここで明白に正式に回答を願いたい。
  75. 中江要介

    ○中江説明員 椎名特使の口頭説明の中で在日朝鮮総連という名前が出ました理由といいますか、経緯は、先ほど申し上げましたように、日本側ではその結びつきは捜査の結果まだ何ら出てきていない。しかし他方韓国では、韓国側の捜査の結果、結びつきがある、こう言われるものですから、それではその朝鮮総連について日本はどう考えているのですかということについては、日本としては、その人が在日朝鮮総連に属していようが属していまいが、あるいは個人であろうが団体であろうが、およそ法を犯したものは罰するという、この方針でやっておりますということを申し上げたわけです。で、それに関して在日朝鮮総連がどう思うであろうかという御指摘、私の名前も引用しながらのお話でございましたが、それは決して愉快ではないと私も思います。ただ、私どもといたしましては、この在日朝鮮総連の名前にここで言及いたしましても、そのことが即在日朝鮮総連と本件との結びつきを何ら肯定しているものではないということをはっきりすると同時に、他方その団体がどういう団体であれ、個人がどういう個人であれ、日本では法に反したものはきびしく罰する、これだけは一貫してはっきりしているのだということを申し上げる。そこから先を日本政府はそれじゃどう思っているのかという点は、これは日本捜査当局の捜査の結果が明白に客観的に明らかにしていく。その点は現段階では、先ほど捜査当局から御答弁がありましたように、結びつきがあるという証拠は何らいままでのところ出ていないということによって、日本政府の現段階における朝鮮総連とこの事件との結びつきというものははっきりしている、こういうふうに認識しておるわけでございます。
  76. 横山利秋

    ○横山委員 最後にもう一つその点だめを押しますが、巷間伝うるところによりますと、椎名さんは韓国へ行きまして、向こうから、おまえはそう言うけれども、朝鮮総連が日本国内でやっておることはこういうことがあるよと言われ、その点について、それはおれは知らなかった、そういうことがもしあるならば一ぺんさらによく調べよう、認識不足であったというくだりがあると伝えられておるわけであります。そういうことが、いま中江さんのおっしゃるように、向こうは関係があると言う。こちらは調べたけれども関係がない、今日の段階において関係がないというままになっておるが、この親書及びメモから発するところによりますと、椎名さんは韓国側のそういうことについての要求、この問題についてさらに調べろという要求について応諾をしているのではないか、そしてそういう向こう側の言い分について調査を、協力を約したのではないか、こういうふうに見られておるのでありますが、その点はどうなんでございますか。
  77. 中江要介

    ○中江説明員 椎名特使がソウルで朴大統領、それから金鍾泌国務総理と会談されました、その内容について私どもが知らされておりますところは、もっぱら韓国側から見た本件関連する在日朝鮮総連というものの見方というものが時間一ぱい説明されたということでございまして、特にこの点をどうするとか、これはどうだというふうに質問があったわけでもなし、要求があったわけでもなし、韓国から見ているとこういう実情だということを説明された。椎名特使はそれに対して、椎名特使がかつて日韓正常化されましたその経験の中で御存じのこともございましたし、新しいことでわからない、御存じでなかったこともあった、そういう点は、もしそれが事実ならたいへんなことだけれども、ということを帰ってきてから記者会見ではおっしゃったわけですけれども、ソウルにおいて韓国首脳との会談では、そういう討論といいますか、質疑応答とかあるいは要求とか、そういった形ではなくて、韓国側の見る実情説明に終始した、こういうふうに聞いております。
  78. 横山利秋

    ○横山委員 しかし、あなたの言うとおりであっても、一国の特使が行ったときに韓国の首脳部が、朝鮮総連がこういうことだ、こういうことだと言われて、ああそうですかと言って公式の会談であったことについて、椎名さんが日本へ帰って言いそうなこと、やりそうなことはそぞろに想像がつく。  そこであなたに聞きますけれども、そういう椎名さんが聞いた総連に関する向こうの現実的、具体的な主張というものは国内でどういう処理がなされたのですか。警察庁や公安調査庁やそのほかの役所に、椎名さんの言っていること、聞いてきたことは報道され通知され、調査が依頼されたのですか、どうなんですか。
  79. 中江要介

    ○中江説明員 外務省といたしましては、椎名特使が聞いてこられた韓国側の説明関係当局にお知らせはしてございますが、椎名特使が調査を依頼されてこれを引き受けてこられたというような経緯は先ほど申し上げましたようにないわけでございますので、それを今後日本捜査にあたってどういうふうに御利用になるか、参考にされるか、どういうふうになるかは、これはそれぞれの御当局の御判断だ、こういうふうに思っております。
  80. 横山利秋

    ○横山委員 右の件について警察庁としては、椎名訪韓による具体的事実が報道、通知をされたか、その通知に対して調査をしたか、調査の結果はどうであったかという点について伺います。
  81. 半田博

    半田説明員 外務省からその結果について連絡を受けておりますが、一部それらしいという情報もある点もございますけれども、私ども関知しない点もございます。
  82. 横山利秋

    ○横山委員 質問を終わります。
  83. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長代理 安宅常彦君。
  84. 安宅常彦

    安宅委員 私は朝鮮問題で質問したいと思うのですが、きょうは時間があまりありませんから、基本的な問題はあとで各種委員会、特に予算委員会などでこってりやらしていただきますが、きょうはその下準備というのでしょうか、いろいろ調べておきたいこと、それからぜひ政府から聞いておきたいこと等がありますから、横山さんのように基本的な問題とは別に、具体的な事実関係等について質問をさせていただきます。  まず第一番目にですが、九月二十七日に起こった大韓民国居留民団神奈川地方本部襲撃事件というのがありますが、この問題について質問いたします。  警察庁に対して事前に事件の概要を知らしていただきたいということを申し入れたところが、私の手元に来ております。襲われたのは韓青同といわれる、韓国の青年同盟ですが、この幹部が襲撃されているわけですけれども、「おまえを殺してやる」というので、いろいろな暴力をふるって傷をつけた。で、全国に指名手配中である、こういうふうになっています。私は、「おまえを殺してやる」というのは個人であり、韓青同をつぶしてやる、組織をつぶしてやるというのとはたいへん捜査の論点が違うと思うんです。それから、きょうのこれはサンケイ新聞だと思いますが、すでにこの犯人は、どいうわけかわかりません、私が質問するということがわかったかどうかわかりませんけれども、ゆうべ急に自首しているんですね。警察のほうでは、大韓民国居留民団が分裂をした、その朴大統領のほうを批判をする側にこの人は入っていない、批判する側を恨んでいるというために、前にそういう大会なんかでもんだときにけがをしたので、その恨みからやったんだというふうに警察は見ているというふうにも記事は載っています。ですから警察のほうから、どういう立場で捜査をされているのか、そこをお聞きいたします。
  85. 半田博

    半田説明員 ただいま御指摘のような点も一つの見方としてあろうかと思いますけれども、私どもは予断を持たずに背後関係の究明その他につとめたい、かように考えております。
  86. 安宅常彦

    安宅委員 予断を持たずに背後関係の究明をしたい、そういうことについてはわかりました。  それではこの男は、あなたの調べではどうなっているかわかりませんが、その日に家族に、「組織のためにやったが失敗した」という電話を奥さんにこの男はかけておるのですが、そういう事実はつかんでおりますか。   〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
  87. 半田博

    半田説明員 そういう事実はあったように承知をしております。
  88. 安宅常彦

    安宅委員 それではそういう事実に基づいて、組織的な背後関係はないかということも調べておる、こういうふうに理解していいわけですか。
  89. 半田博

    半田説明員 当然そういう観点からも捜査をいたしたい、かように考えております。
  90. 安宅常彦

    安宅委員 それから、十月九日の午前に、朴成準という人、これは朴大統領の支持派ですかな。神奈川県地方本部というのはもう全部主体的には朴大統領批判派になっているわけですが、そこから分裂していったほうですね、第二民団というのでしょうかね、そういう団長の地位にある人なんですが、この人が、朴皇淳、この人に、「二つに分かれているのはぐあいが悪い、だからわれわれに反対するのをやめてくれないか、そして解散を見届けたら私らのほうも大会を開いて合流しよう」とか、「そのためには、そういうことができれば、私らのほうでは犯人である余東永を自首させてもいい」というふうに言っているのですけれども、こういうことの動きがあったなんということはあなたのほうではつかんでいますか。
  91. 半田博

    半田説明員 さような事実については存じておりません。
  92. 安宅常彦

    安宅委員 わかりました。  それでは、この犯人の、新聞社あたりの話ですけれども、顔写真ないかと聞いたら、県警は顔写真を発表しなかったそうですね。これはどういうわけでしょうか。
  93. 半田博

    半田説明員 顔写真を発表する場合は、これは原則的に公開捜査の場合でございます。あとの場合は新聞社が個々に取材をされて顔写真を新聞に出す、こういうことになっております。公開捜査は、非常に凶悪犯罪であって、それが反復して行なわれるおそれがある、また確実な証拠がある――人権の問題もございますからそういうことと、それから相当長期間にわたって捜査を遂げたけれどもそれ以上方法がないというような場合に公開捜査に踏み切ることにいたしておりますので、本件については逮捕は近いだろうというようなことで捜査をしておったものですから、まだ写真は発表しなかった、こういうことでございます。
  94. 安宅常彦

    安宅委員 それでは、いろいろ申し上げたいことはたくさんありますが、その準備として一つお聞きいたしますが、昨夜午後九時ごろですか、自首したそうですけれども、だれにつき添われて来たのか、これをお知らせ願いたいと思います。
  95. 半田博

    半田説明員 昨日午後八時二十分ごろ、警視庁の外事二課に、いとこと聞いておりますが、いとこにつき添われて、自首というのではなくて、これは正確に申しますと出頭でございますけれども、出頭いたしてまいった、こういうふうに承知をしております。
  96. 安宅常彦

    安宅委員 いとこの名前は。
  97. 半田博

    半田説明員 それはまだ聞いておりません。
  98. 安宅常彦

    安宅委員 聞いてない。すぐ知らせてください。
  99. 半田博

    半田説明員 はい。
  100. 安宅常彦

    安宅委員 私はその犯人が非常におかしいなと思うのは、金大中さんが拉致されたときなど、たとえば買い求めたリュックだとかああいうものを現場にわざわざ置いていった。それから文世光という朴大統領を狙撃したという人が、車を民団の大阪本部のだれかに預けていって、わざと見つかるようにしておくとか、自分が偽造した旅券をわざわざ犯行のときに所持しているとか、それから余東永という男も紙包みやボストンバッグをわざわざ遺留していって――わざわざだかどうかわかりませんけれども、そういう、どうもKCIA一流の同じような手口、関連性があるような、そういうことをやっていることに非常に注目をしています。  ですからこれを基礎にして私聞きますが、いわゆるパイプ爆弾というのでしょうか、どういうふうにあなたのほうで呼んでいるか知りませんけれども、殺傷能力ありといわれている爆弾十七個をあなたのほうでは押収しているわけですね。それから手錠十五個、これも犯人が民団の神奈川県地方本部を襲撃したときに置いていったものですな。それをあなたのほうで押収しているわけですが、爆弾というのはこの男がつくったものと思っているのか。それから手錠はどういう入手経路があるのか。これはにせものなのか本物なのか。それからパトカーが来たときにそのパトカーの警官が手錠をあけてくれたそうです。ですからこの手錠というのは警察で使っているものと同じものなのか、それをちょっとお聞きします。
  101. 半田博

    半田説明員 爆弾の数につきましては、紙爆弾が十一本、それからニップル爆弾ですね、これが六本、手錠は十一個でございます。この爆弾のほうはある程度の殺傷能力があるというふうに、目下鑑定書を作成中でございます。手錠は、これはおもちゃ屋へ行きますといま売っておりますので、警察で使っておるというものではございません。市販されているものでございます。そういうことでございます。
  102. 安宅常彦

    安宅委員 入手経路ですが、爆弾を一人でつくったものと思いますか。
  103. 半田博

    半田説明員 これはまだこれから本人を調べてみないとよくわかりません。まあその点は何とも断定はできませんが、一人でつくった可能性が強いと思いますけれども、この点はまだ調べてみないとわかりません。
  104. 安宅常彦

    安宅委員 一人でつくった可能性が強いという根拠をちょっと。
  105. 半田博

    半田説明員 これはいままで関係者の供述からそういったようなことが出ておりませんので、そういうことで、思うということを私は申し上げたのです。関係者の供述、その他からそういうような事実が出ておりませんので、そういうふうにいま申したのです。だから私がそういうふうに思うというだけのことでございますが、調べてみなければわかりません。
  106. 安宅常彦

    安宅委員 逆に言うと、こういう基礎知識を余東永という人が持っておるかどうか。普通一般の詐欺をやったりなんかすることはなかなかじょうずな男らしいんですが、爆弾をつくることは基礎知識がさっぱりないと私どもは判断しておるのですが、あなたのほうの判断はどうなんですか。
  107. 半田博

    半田説明員 その点はまた調べてみないとわからないことでございます。ただ、爆弾はそう高度なものではございません。
  108. 安宅常彦

    安宅委員 数も相当ありますから、手錠も相当の数ですからね。こういうものを一人で買い求めたり、一人で爆弾をつくるということはあるんでしょうか。何ぼ簡単な爆弾でも、材料を買ってきたり いろいろなことをやるために何人かの仲間がいるというのが普通じゃないですか、どうなんですか。ましてやこの人は基礎知識を持ってないんです。
  109. 半田博

    半田説明員 そういう御説も参考としながら十分に捜査を遂げたい、こういうふうに思います。
  110. 安宅常彦

    安宅委員 本人がつくったものだという想定をしているというのは、あらゆる予断をしないで捜査をやりたいというのとたいへん違ってくると思いますが、どうですか。
  111. 半田博

    半田説明員 私は予断を持って申し上げたわけではなくて、いままでの証拠上そういうものがないという趣旨で申し上げているのでございます。
  112. 安宅常彦

    安宅委員 だったら、わからないと言えばいいじゃないですか。
  113. 半田博

    半田説明員 はい、わからないということでございます。
  114. 安宅常彦

    安宅委員 それでは次に進ましていただきますが、法務省、この男はいろいろな罪を犯していますが、逮捕歴が何回あって、いわゆる刑が確定したのがどういうものがあって、そしてこの事件を起こした当時はどうなっていたか、ちょっと説明してください。
  115. 影井梅夫

    ○影井説明員 ただいまの最初の逮捕歴でございますが、私のほうで調べました、これは横浜地検の川崎支部において調べたものでございますが、五件あがっております。それから、今回の裁判の確定がいつかということでございますが、これは本年の七月十九日でございます。
  116. 安宅常彦

    安宅委員 罪名から全部、その部分については言ってください。
  117. 影井梅夫

    ○影井説明員 犯歴は、強盗、住居侵入、それから道路交通法違反、外国人登録法違反、それから道路交通取締法施行令違反、それから詐欺、この五件でございます。
  118. 安宅常彦

    安宅委員 この人は、私どもの調査したのでは、裁判所の確定は、七月十九日ですか、刑の確定は。十四日じゃないですか。
  119. 影井梅夫

    ○影井説明員 私のほうの調査では七月の十九日に確定となっております。
  120. 安宅常彦

    安宅委員 それでは前の段階で、保釈中のいきさつと、それから確定して、刑の執行停止になっている理由、事情等についてあなたから説明を願います。――わかりませんか。
  121. 影井梅夫

    ○影井説明員 私のほうではその細目をちょっと承知しておりません。
  122. 安宅常彦

    安宅委員 だれかわかりませんかな。警察庁の分で報告が来ていると思いますが、わかりませんか。
  123. 半田博

    半田説明員 私も詳しく存じませんが、直腸の手術をしまして、病気のためというふうに承知をいたしております。
  124. 安宅常彦

    安宅委員 きのう説明を求めたら法務省から私のところに来てくれたのですけれども、あなたは報告を受けてないのかどうかわかりませんが、これは刑事局でないから知らないと言われればそれまでですけれども、保釈金を積んで保釈中の場合には、保証人がおって、そしてこの人は保釈の条件に関する義務を負わなければならないと思いますが、通常、保釈の場合には裁判所はただそういう決定をするだけですね。安宅常彦なら安宅常彦が前に強盗をやったこともあるし、住居侵入をやったこともある男で、また詐欺もやった男だから、逃亡のおそれや何かないか、また住居変更をいろいろやってしまうのではないかとか、それらは、裁判所というものはただそういう保釈をするだけで、あとは警察なり法務省にこういう男が保釈になっているから気をつけてくれなんということは一つも来ないものですかね。私なんかだったらすぐ来るような気がするのですが、どうなんですか。
  125. 影井梅夫

    ○影井説明員 入国管理局の立場から御説明申し上げますと、私どもといたしましては、当該外国人の退去強制を行なうというその端緒と申しますか、そういう意味の通報を受ける、それ以外の通報は通常受けていないというのが現状でございます。
  126. 安宅常彦

    安宅委員 それは刑が確定して、刑の執行停止を病気のためにやっておるという場合だけ、裁判所から来るのですね。保釈中は来ますか。どっちなんです。
  127. 影井梅夫

    ○影井説明員 その犯罪の性質によると思います。一がいに言えないと思いますけれども、保釈ということは、まあ非常に重大な犯罪の場合を除きましては、そのつどの通知は受けていないというのが現状でございます。
  128. 安宅常彦

    安宅委員 警察庁、どうですか、そういう場合の処理のしかたは通常どうなっておるのですか。
  129. 半田博

    半田説明員 保釈になりました場合には、検察庁を通じまして管轄の警察署のほうに、住居制限がこうなっておるとか、死亡があったときには死亡の状態その他教えてもらいたい、行くえ不明になったら教えてくれとかいうようなことは通報が参っております。
  130. 安宅常彦

    安宅委員 これは出入国管理令の問題だと思いますが、そういう場合には警察庁に来ているくらいの――この人は在日韓国人ですね。たとえば自分の国に行かれるにしても、旅券は向こうの旅券ですけれども、再入国をしなければならないときには再入国の申請書を出さなければならないのでしょう。この場合にはどうなんですか。再入国の許可を申請するときには保証人が要るのですか。どうなんですか、犯人であってもなくても、一般論として。
  131. 影井梅夫

    ○影井説明員 御承知のとおりに再入国許可というのはかなり自由、と申しますか、に出しておりまして、特別に保証人というものは通常要求しておりません。
  132. 安宅常彦

    安宅委員 あなたのほうではいろいろコンピュータでこの人はどういう人かということがわかっておるわけですが、過去において犯罪歴があったということは知っているはずです。ことしに入ってから二、三回韓国に行っておるようですね。そしてまた入国していますね。こういう場合でも、たとえばこの場合はあなたのほうで通告がなかったから知らない、おとといですかの説明ではそうだった。私のところに来てくれたのはあなたですね。あなたが言ってくれたのだからあなたは知っていると思うのですが、来てなかったから知らなかったと言うけれども、過去の犯罪歴というのがある。強盗、住居侵入、外国人登録法違反、こういう人も再入国許可というのはあっさりやるほどいま自由になっているのですか。このたびの犯罪ではまだ通告は来なかったということをあなたのほうでは言っていることを前提にして、いまそういう質問をしています。
  133. 影井梅夫

    ○影井説明員 先ほど申し上げました犯歴、第一のものが昭和二十五年、第二の道交法違反、これが昭和二十八年、それから外登法の違反、これも昭和二十八年、それから第四の犯歴、これは三十二年ということで、非常に古い犯歴でございますのでこれは問題にしてないというのが現状でございます。
  134. 安宅常彦

    安宅委員 それでは重ねてお伺いいたしますが、朝鮮民主主義人民共和国に行きたいという朝鮮籍の人がおりますね。この人たち、たとえば朝鮮総連の芸術団を組織して祖国に二百人なら二百人の芸術団を送りたい、こういう話のときに、この人は逮捕歴があるとか、この人は短期の在留期間しか持ってない人だからかんべんしてくれとかいろいろなこと、私そういう仕事をたくさんやっておる間にいろいろな局面にいままで遭遇しています。そうしますと、韓国籍の人は幾らでもそういうことはたいへん穏やかですけれども、朝鮮籍の人はそうではないのはどういうわけでしょうか。これをお伺いします。
  135. 影井梅夫

    ○影井説明員 朝鮮籍の人に対する再入国の許可、これはここ二、三年、事柄の性質に応じましてかなり自由に出しているつもりでございます。これは安宅先生御承知のとおりだろうと思います。その場合のいろいろな審査のしかたにつきまして特別の差異は設けていないつもりでございます。ただ、北朝鮮への渡航ということにつきましては、現在の日本とそれから北朝鮮との関係ということからいたしまして、そこにある程度の制約と申しますかはございますけれども、人道ケースから始まりまして、いろいろな文化的な交流その他につきましてはかなり自由に認めているというふうに考えております。
  136. 安宅常彦

    安宅委員 若干のハンデがあるという話ですが、法的根拠はどういう法律によって差をつけるのですか。このごろ非常に自由になったとあなたは言いましたね。ほとんど自由になったなんてうまいことを言うけれども、この前だって相当きびしかったですよ。あの芸術団のとき、あれはまだことしですよ。ここ二、三年非常に自由化したみたいな話をなさっていますが、私はことしの話をしている。だけれども、ことしであろうが去年であろうが一昨年であろうが、こういう余東永という人は、たいへん古い犯歴だか知らぬけれども、そういうことがある。そうしてあなたのほうで知らなかったと言うけれども、私は知らないはずはないと思っているのです。それは私の予断だか知らないけれども、保釈中にことし何回も住復している。病気を理由にして保釈されている者が、病気である者が、直腸かいようの男が、保釈中に行ったり来たり、まるで猿飛佐助みたいなことをやっている。こういうことは平気で許可する。だけれども、北朝鮮とあなたはおっしゃったけれども、共和国の分はある程度ハンデがあるのはやむを得ないみたいな話ですけれども、法的根拠を示してください。
  137. 影井梅夫

    ○影井説明員 法的根拠と申しますよりは、現在の北朝鮮と日本との関係ということに基づいた判断でございます。
  138. 安宅常彦

    安宅委員 ちょっと待ってください。そんなことが役人として許されますか。法的根拠がないのに自分のさじかげんで、この国はいやだから、この国は国交がないから、この国はどうだから、なんということは、あなたはできると思って答弁しているのですか。
  139. 影井梅夫

    ○影井説明員 これは事務当局限りの判断ではございません。
  140. 安宅常彦

    安宅委員 それではどういうものが来ているか証拠を出してください。事務当局の判断でないとすれば、何らかの指示があるはずです。その指示書なり通達なり、そういうものを出してください。
  141. 影井梅夫

    ○影井説明員 これは政府部内の種々の協議を経た結果に基づくものでございます。
  142. 安宅常彦

    安宅委員 その協議をしたのはいつ、どういう協議をして、どういう決定をしたかを知らせてください。いまでなくてもいい、時間を食うから……。
  143. 影井梅夫

    ○影井説明員 現在手元に持っておりませんので、後刻調査の上提出いたします。
  144. 安宅常彦

    安宅委員 それはいいですな委員長、提出することについて……。
  145. 小平久雄

    小平委員長 はい。
  146. 安宅常彦

    安宅委員 それから法務省は、七月十九日に刑の確定があって、それから保釈中と同じように、今度は保釈ではなくて刑の執行停止をしているというお話、したがってこの人が最後に韓国に行って羽田に帰ってきたのは七月十四日かですね。だから知らなかったというふうに説明を聞いていますから、これ以上私は追及いたしませんが、率直に言って、ゆうべいとこの人が連れてきたということと、私がきょう明らかにいたしました、九日に民団の幹部が話をしている、「どうだ、大会を開いてお互いに解散してけんかしっこなしにしよう。そうしたらおれらのほうで自首させてもいい。こんな犯罪を犯した者を祖国にやるわけにはいかぬからこっちに置いてやるよ」こういうふうにまで言ったというのですから、あなたのほうでうそだかほんとうだかわからなくているのでしょうけれども、私は聞いたのだからほんとうだと思う。それがほんとうだとすればこれは明らかに背後関係がある、組織として関与している者がある。もっと悪く言うならば、もう少しで逮捕できそうだという判断であなたのほうでは捜査を進めておる。これは逮捕されたらかなわぬから出頭してきた。何か脈絡一貫、一つの黒い渦のようなものがあるような気がしてならないのですけれども、とにかくそういうことがあったとするならば、これは組織としてかくまったりあるいは自首させたりしたというふうに、私の言うのがほんとうならばそういうふうに判断されますか。警察当局はどうですか。
  147. 半田博

    半田説明員 その点は私としても判断がいたしかねます。ただ、私が先ほど、とにかくそう長期間要しないだろうと申しましたのは、現場に相当証拠が残っているという点でそういうふうに申し上げたのでございます。  それから、先ほどすぐ調べてくれというふうなことでございましたが、いとこと申し上げましたのは間違いでございまして、知人で、元韓国人の方で余東植という方だそうでございます。
  148. 安宅常彦

    安宅委員 元韓国人というのは、帰化した人でございますか。
  149. 半田博

    半田説明員 帰化しまして、いま中谷透さんと申す方だそうでございます。新宿にお住まいでございます。
  150. 安宅常彦

    安宅委員 わかりました。  この問題で言うならば、もう一つどうしても私はふに落ちないのは、このボストンの中に殺人者名簿が入っていたはずです。それからもう一つはこの男の声明書が入っていたはずです。これを明らかにしていただきたい。これはなぜかというと、安宅常彦なんというのがリストに載っていたら私は困っちゃうから。私だけじゃなくて、十五人ぐらい載っているという話ですけれども、よくわかりませんが、警察から漏れ聞いたわけです。これは発表してもらわないと、この人たちは将来について、この男がとっつかまっても、自首しても、組織的にやられたというふうに私らは判断していますから、こわくてしようがないという人が一ぱいいると思う。だからこれは発表してもらいたい。
  151. 半田博

    半田説明員 御指摘のように、捜索の結果、声明文と一それから殺人者名簿というのじゃなくて逮捕者名簿、そういうことになっております。そこで、ただいま捜査中でございまするから、具体的に一々申し上げるということはちょっと差し控えさせていただきたいと思いまするけれども、声明文につきましては、これは率直に申してかなり支離滅裂な文章でございます。よく意味がわかりませんが……(安宅委員「それも発表してください。私のほうにください」と呼ぶ)要するに、ただいま捜査中でございまするので、この点はしばらく御猶予をいただきたいと思うのでございますが、要旨は、そういうふうに民団を名のりながら民団を誹謗するとか祖国を誹謗するとかいうようなことはけしからぬというような趣旨のことが書いてございます。それから逮捕者名簿のほうは、民団のさっきおっしゃいました反主流派と申しますか、そういうものを中心とします三十二人ばかりの者が書いてございます。そういうことでございます。そういうことでひとつ御了承いただきたいと思います。
  152. 安宅常彦

    安宅委員 あとこういう類似した事件、たとえば朝鮮総連の生野西支部を襲撃した事件、これは告訴ですか、しておるようですが、それから、これは韓青同の大阪の支部ですね、これもやられていますし、こういう類似した事件が全国的にどういう日時にどういうことが行なわれているか、これをひとつ警察から資料として出していただきたいと思います。  それからもう一つは、法務省にお伺いしますが、仮放免というのでしょうか、私、通称そう言っておりますが、密入国した者を法務大臣が在留期間を決定したりなんかするまでの間、仮放免というのですか、そういうふうに私ども受け取っておりますが、こういう人は日本の国内に何人ぐらいいるのか、こういうことも法務省から資料として出してもらいたい。  なぜかならば、ある新聞を経営している李栄根という有名な人がいます。皆さんも御存じだと思います。このところに住んでいる人はほとんど仮放免の人です。それから崔書勉という有名な人がおりますね。この人も仮放免のはずですね。そして金大中さんについて歩いたり、アメリカに行ったり、そうかと思うと前の大使の金山さんといろいろ交際をしたり、そういういろいろなことでこちょこちょ動いています。この人の動きは何か非常に政治的です。こういう政治活動をしているようなそういう男を仮放免のまま泳がしておくということはゆゆしい問題だと私は思いますから、これらの人、たとえば李栄根や崔書勉などについては、どういう見解を持って、何十年も仮放免にしておくのか、こういうこと。これは資料と、それから政務次官おられますから、後段の分について、仮放免というのでそんな、法務大臣が裁決できなくて何十年もぶん投げておくということはどういうわけでしょうか。それをあなたにお伺いします。
  153. 影井梅夫

    ○影井説明員 ただいま先生の御指摘の点は、おそらく退去強制令書の交付を受けて、本来ならば退去強制をしなければならない者についての仮放免の件かと思いますけれども、これは大体、御承知のとおり密入国、不法入国が多いわけでございます。したがいまして、これは退去強制でもとの場所に帰ってもらうというのが本来でございますけれども、一件一件について見ますとそれぞれ事情がございまして、たとえば病気中であるとか、また場合によりましては日本にある程度の財産を持っている、その財産の処理をしなければならない等、いろいろなケースがございますので、一件一件につきまして事情を勘案いたしまして仮放免しておる、こういう次第でございます。
  154. 安宅常彦

    安宅委員 この崔書勉という人は殺人事件を犯しているんですね。そして有名な人ですね。そしてぶち込まれておったんでしょう。朝鮮戦争が始まって、そのどさくさにまぎれて韓国の牢獄から脱獄して逃げてきた人ですね。その後それがわかって、韓国の新聞にも大きく出た人ですね。この人が、事もあろうに日本の韓国大使をした金山さんあたりに近づいたり、いろいろうろうろしているなんというのは、それも仮放免の理由になりますか。そういう人は強制退去になるのがあたりまえじゃないか。全部やっちゃえなんて私は言いませんよ。こういう明らかに殺人を犯してぶち込まれておった人か――また、こっちによこせとも言わない韓国政府も韓国政府ですね、これは。何かあなたのほうとなれ合いで、まあいいじゃないかとか、あっちへ置いてくれなんということになっているんですか。これはどうなんですか。
  155. 影井梅夫

    ○影井説明員 ただいま御指摘の人物につきまして、私、手元に資料を持っておりませんので、もし必要でございましたならば調査の上答弁申し上げます。
  156. 安宅常彦

    安宅委員 政務次官、崔書勉という男を知りませんか。
  157. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 いまお話しの人物を私はさっぱり承知いたしていないわけでございます。
  158. 安宅常彦

    安宅委員 法務省の政務次官が崔書勉を知らないんじゃ、最初からだめじゃないか。  わかりました。そういうことで、だから私は、答弁を求めた分は別として、韓国政府もおかしいと思うんですよ。なぜそういうふうになっているのか、これも資料として出してください。それと人数と。私がさっき資料として頼んだ分をお願いしますよ。委員長、それをお願いします。ようございますか。
  159. 小平久雄

    小平委員長 いいですか、役所のほうは。
  160. 影井梅夫

    ○影井説明員 調査の上提出申し上げます。
  161. 安宅常彦

    安宅委員 人数は簡単でしょう。それから、崔書勉と李栄根という特定の二人の名前を私はあげていますから、その李栄根のグループのところにいる仮放免の人。なぜかというと、このグループから脱退した人に今度急に退去命令が出て、その人はいま裁判を起こしているんです。そこに入っていれば退去命令が出なくて、出れば退去命令が出るなんというばかなことはないといって、裁判にかかっているんです。このことについては非常に私は関心を持っていますから、この崔書勉という人と李栄根並びにそのグループの人の中で仮放免になっている人のいきさつ等をお調べくださって、あとで資料として――日本に何人いるかなんということについては、人数だけですから問題ないと思います。いいですね。――はい、わかりました、政務次官がうなずいていますから……。じゃこの問題はこれで終わります。  次に私が質問したいことは、時間がありませんから簡単に言いますが、朴大統領を狙撃した文世光という若い男がいま犯人として、陸夫人に命中させたということで、いま韓国の裁判にかかっているわけであります。これが先ほど横山さんが質問された日本の外交問題に累を及ぼすような大きな事件になっておるわけです。この人はもともと在日韓国人です。在日であっても韓国人韓国人、その韓国人というのは、大統領はだれかというと朴正煕さんですね。その国民なわけですね。その人が日本の警察から、駐在所からピストルをかっぱらって、不法行為を犯して窃盗をやって、そのピストルを所持しておって、それから今度は羽田の空港をすり抜けて韓国へ行って大統領を撃った、こういうことですね。日本の政府があやまるどころか、おまえの国民がそういうことをやったんだから、日本の国としては迷惑だというのはあたりまえじゃないですかね、これは捜査の常道からいって警察官のほうがそう思うのが。ほんとうは何も予断と偏見なしに考えれば、どうですか、警察当局はそういうふうになりませんかな。どうですか。日本人は何も関係ないでしょう。どうです。そうなるのはあたりまえでしょう。政治的影響が大きくて答えられませんか、頭をひねくっているけれども。
  162. 半田博

    半田説明員 これは私がお答えするのは不適当だと思います。拳銃を……(安宅委員「どうして。おかしいじゃない。何らの予断なしに言えばそうなるんじゃありませんかと言っているんです」と呼ぶ)拳銃を盗まれるということ自体はわがほうの失態でもあるわけですね。でありますから、そういうこともございまするし、まあ、向こうは大統領夫人がなくなられたというようなことでもございまするから、これはどうでございましょうか。
  163. 安宅常彦

    安宅委員 外務省、答弁……。
  164. 中江要介

    ○中江説明員 この件はその後の椎名特使の派遣というような問題にまで発展いたしましたので、したがって非常に機微な問題でございますので……(安宅委員「なぜそんなことを言うの。事実は事実として、事実から基づかなければならないじゃないか。はっきり言いなさいよ」と呼ぶ)事実は、私はそのとおりでございます。
  165. 安宅常彦

    安宅委員 つまり、そのとおりということは、韓国の国民である文世光が日本の警察からピストルをかっぱらって、それを道具にして、不正な旅券を行使して、そして自分の国に行って大統領、自分の親分をぽかんとやった、こういうことだから、日本は本来関係がない、そういう意味でそのとおりだという意味ですな。そうでしょう。
  166. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま先生のおっしゃいました事実の中に、日本政府がからんでおる限りでは全く無関係ではない。しかし事実はいまおっしゃったように進行したということでございます。
  167. 安宅常彦

    安宅委員 全然無関係ではないということは、関係があるのはどういうところ、それじゃ。
  168. 中江要介

    ○中江説明員 これは、最終的な犯行に参与した人間が、日本から渡航して韓国で殺人を犯したということが一つ。それから、その人物が使った凶器たるピストルが、日本日本の警察から窃取したものであるということが一つ。それから、その人物が渡航するにあたって日本の旅券を不法入手した、そういう意味で日本政府と全く関係がないわけではない、こういうことを申し上げたわけです。
  169. 安宅常彦

    安宅委員 外交でも何でもそうですけれども、人の立場を考えるのは非常にけっこうですよ、あなたのように。たいへん情け深い人だ、あなたは。日本国民というもの、日本国家の主権というものを考えた場合にどうなんですか。自分の大統領を韓国人がやって、日本政府に責任があるなんて言われて、後宮の顔が黄色かったなんと言われて、そうですがなんというのは、それはばかな、外交のイロハをわきまえない人の答弁じゃないですか。どうですか。  そして、そのほかに、朝鮮総連の名前を書いたのは、そう言ったから書いた。朝鮮総連の名前を書いたということは、金日成の指示によってなんぞと言っているのと同じように、いうならば独立国家である朝鮮民主主義人民共和国に対するたいへんな外交上の問題になる。たとえばアメリカのある団体がこれに関与しておった、アメリカの反韓国団体があるとすれば、アメリカ総連みたいなものがかりにあるとして、そんなことを書きますか、椎名さん、それではアメリカのものも弾圧します、と。朝鮮だから書いたと私は思っているのです。そういう感覚であなた方はやっているから情け深いおことばが出てくるわけだ。そんなことないでしょう。事実としては私が言ったとおりでしょう。そうですな。
  170. 中江要介

    ○中江説明員 事実は先ほど申し上げましたように、先生のおっしゃるとおりに進展したわけであります。
  171. 安宅常彦

    安宅委員 だから、朝鮮総連という名前が出たということは、朝鮮総連たると何たるとを問わず、特定の名前をあげたということは、朝鮮民主主義人民共和国としては非常に侮辱されたという考えを起こすだろうなということをあなたは気がついていましたか気がつきませんでしたか、どっちですか。主権に関することでしょう、向こうの国にとりましては。
  172. 中江要介

    ○中江説明員 在日朝鮮総連は、日本において、日本法律上そのステータスを持っている団体でございますので、この団体はあくまでも日本の憲法と国内法のもとでその権利と義務を持っておる、こういうふうに私どもは認識しておるわけでございます。
  173. 安宅常彦

    安宅委員 これらの人は、れっきとした朝鮮の国民であるということはあなたのほうでは認めないわけですか。
  174. 中江要介

    ○中江説明員 私は、その在日朝鮮総連の構成員の一人一人がどこに属しておられるか、あるいはどういう考えを持っておられるかということまではつぶさにしておりません。
  175. 安宅常彦

    安宅委員 あなた、知らないのですか。たとえばこのたびIPUの総会がありました。その場合に、本国に選挙区を持って選挙された四名の代表が、世界の国々から認められて、そうして代表として出ています。いいですか。外務省はそれは認めないのですか。あなたはどこの国籍だかわからないのですか。
  176. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま御指摘の四人でしたか、その代表の方がどういう肩書きでどういう人であるかということは存じておりますが、先ほどの御質問の在日朝鮮総連の構成員全部についてはつまびらかにしない、こういうことを申し上げたわけであります。
  177. 安宅常彦

    安宅委員 その幹部が副議長であり、いろいろな役職を持っている人、そういうことはわかっている。全部がどうだからわからない。だけれども、少なくとも朝鮮籍としてあなたのほうにやっているものは、それは符号か何かだからおれは知らないという意味ですか。朝鮮の国民として、しかも国会議員として世界会議に出ているという事実をあなたは認めるのか認めないのか。そういう立場の人が朝鮮総連の構成員であるということを認めるのか認めないのか。この二つについて答弁願います。
  178. 中江要介

    ○中江説明員 まず第一点の、朝鮮半島における北半分に朝鮮民主主義人民共和国という国が存在している、これとの間には日本はまだ国家間の関係を持っていないということはありますけれども、その事実は認めておるわけでございまして、今回の代表の方がその国の国会議員のステータスを持ってIPUの会議に参加されたという事実、これは私どもも認めておるわけでございます。
  179. 安宅常彦

    安宅委員 そんなこと聞いてないでしょう。それは国民でなければ国会議員になれないでしょう。だから、そういうことを認めるか。幹部がそういう国会議員をしているということは、それは国民だからできる。その朝鮮籍になっている人たちは朝鮮民主主義人民共和国の国民だというふうに私は判定をしているのですが、あなたはそれをどういうふうに理解しているかということを聞いているのじゃないですか。認めているとか承認していないとかなんということは関係ない。それなら外交手続をみんなやってくれたらいいじゃないか、承認していない代表にも。
  180. 中江要介

    ○中江説明員 外交関係という観点からいたしますと承認しているかいないかということは非常に問題がございますが、事実としては国民であるということが前提になっていることは間違いがないことであります。
  181. 安宅常彦

    安宅委員 そうしたら、朝鮮総連という特定の名前を出されて、朝鮮民主主義人民共和国は非常に心外な日本の態度、それから向こうからいえばわが国に対する侮辱だ、主権の問題に関するというふうに開き直るというところまでいくのじゃないかということを考えがつかなかったかと聞いているのです。承認しているとかしていないとかは別です。
  182. 中江要介

    ○中江説明員 今回の一連の措置日本政府は、大統領夫人狙撃事件と在日朝鮮総連との間に結びつきがあるという立場は一度もとっておらないわけでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、韓国側は結びつきがあるという立場をとって、そこからそれが一つの原因になってこじれておったわけでございますので、日本側の説明ぶりといたしましては、日本の一貫した立場というのは、その犯人なり容疑者がどの構成員に属そうが属しまいが、同じ立場で日本の法に照らして処遇している、これが日本の立場であるという基本的な立場を説明した、こういうことでございます。
  183. 安宅常彦

    安宅委員 向こうが、関係があるから名前を書け、名前を出さなければだめだと言ったから、関係はないけれども名前を出したのでしょう。国際儀礼上、関係がなかったら名前を出さないのがあたりまえ。それをわざわざ書いたということについて、向こうが非常に大きな憤りを持つのは当然じゃないでしょうか。このことについてはあなたはきょうは逃げていますから、時間を食いますのでここで論戦しません。あとでひとつ法的根拠とか何かで徹底的にあなたと勝負しましょう。こういうことで言うならば、向こうから言えば何でもオーケー、こういう態度が事件の解決に非常に大きな誤りをおかしているのではないか。  もう一つの例として私は申し上げますけれども、文世光がそういう指示によって、何か北の指示によってと向こうで言っているようですが、ピストルを撃った、そして陸夫人を殺害せしめた、こういうことで裁判がいま行なわれているのですが、この捜査の依頼などが外務省並びに警察当局に、韓国の警察当局なりあるいは政府から来ていると思いますが、やはり来ていますか。
  184. 半田博

    半田説明員 本件につきましては、外交ルートあるいはICPOルートを通じまして、捜査に協力を願いたいという旨の連絡が参っております。
  185. 安宅常彦

    安宅委員 協力を願いたいというくらいならば、まず第一番にピストルのたまですね、これはこういうものであった。あるいは、私らの判断では、あそこでは三十八口径のものと二十二口径のもの、両方のたまが飛んでいるというふうに私判断しています。ですからこういうたま――あなたのほうから盗まれたものですから、そういう写真だとかそれから現物だとか、それが来ているかどうか。それから当たった陸夫人、この人はどこにすわっていてどういう角度でたまが行ったのかということやら、あるいは手術をした医者はどういう所見を持ったのかということやら、あるいは招待された在日韓国人もほんとうは向こうで箱口令をしかれてきたのではないかとか、あるいは図面の見取り図であるとか、それから入場の際のいきさつとか、そういうことを向こうから詳しく捜査の依頼が来ているのでしょう。そういうものは来てないのですか。
  186. 半田博

    半田説明員 これは捜査の依頼というのでなくて、向こうの捜査の結果の通報をこちらのほうが得ておるということです。
  187. 安宅常彦

    安宅委員 いま私の言ったことのうち、たまの問題だとか陸夫人の見取り図、そういうものは来てないですか。
  188. 半田博

    半田説明員 たまは、拳銃のタイプとかそれから拳銃の番号、試射したたま、そういうものも参っております。それから文世光の指紋その他はもちろんでございます。そういうような状況でございます。
  189. 安宅常彦

    安宅委員 時間がなくなるからもう本論に入りますが、私はある場所でこの事件の当時の写真、テレビですかのフィルムを見ているのですよ。このフィルムによりますと、変な音がボンと入ったためにすぐ回したという印象です。それから大体二・五秒くらいの間に、少なくとも四発と思われるたまがバンバンバンと出ているわけです。光は、私どもしろうとが見る限りは三発の閃光しか見当たりませんでしたけれども、それが二秒半くらいの間に発射されています。そして、そこから陸夫人がかつぎ出されるまでの間約四十秒くらい。その人の計算によって違うでしょうが、四十秒くらいの間ですが、この連射されたピストルのたまは、音の出方から見て一カ所から出ているとは思えない。そしてその三発ないし四発のたま――私、しろうとだからよくわかりませんが、そこから約十七秒半くらいたってから一発ないし二発のたまの音がします。その前に文世光と思われる男が、警備の者からピストルをたたき落とされて放していますね。そしてピストルが警備の人のポケットに入るのが、やや不鮮明ですが見える。ところが、もう一つのピストルがオーケストラボックスの中に一丁落ちているところがはっきり映っています。こういう局面があって、子供が二回も犯人のところに寄ろうとするのを警備の連中が追い出しています。子供は近親者か何かでなければ寄らないのじゃないかと思うのですけれども、そういう光景が出てくるのです。そして、つまり十七秒半くらいたってから一ないし二発のたま、これは光が見えませんけれども、それから陸夫人がかつぎ出されるあれが映るわけです。その一ないし二発のたま、私は二発だと思いますけれども、その間までは陸夫人にだれも注目していません。だから、そのときにはもうすでに犯人のピストルはたたき落とされているのです。それはおかしいじゃないかと私は非常にそのとき思いました。  こういうことについて、あなたのほうではそういうテレビだとか何かについて協力依頼して、ずっと各社のとった写真を調査したり何かは警察当局はしたのでしょうか。
  190. 半田博

    半田説明員 文章によるところの状況は聞いておりますけれども、そのフィルムは見ておりません。
  191. 安宅常彦

    安宅委員 これはあなたにお願いがありますが、こういうことの専門家の稲葉さんおりますが、そのフィルムを持っているテレビ会社に対して、この問題は国会議員として重要だから見せてもらう機会をつくってくれということで、法務委員会としてぜひひとつ申し入れをして、それが実現できるように配慮を願えませんか。委員長、どうですか。
  192. 小平久雄

    小平委員長 安宅君に伺いますが、それは安宅君の御希望ですか、それともほかの人にそういう御希望があるのをあなたから紹介するというか、そういうお立場なんですか。事実を聞いておかないとよくわからないから……。
  193. 安宅常彦

    安宅委員 あなたがそういうことを法務委員会として必要だとは認めないとするならば……。
  194. 小平久雄

    小平委員長 いやそうじゃなくて、いまのあなたの御発言は、あなたが御希望なさるのですか、ほかに御希望なさる方があって、あなたがそれを……。
  195. 安宅常彦

    安宅委員 希望している人がおりますね、率直に言いますと。
  196. 小平久雄

    小平委員長 わかりました。いずれにしてもただいまの安宅君の御希望は、後刻理事会で相談することにしますから、きょうは私からどうこうと言うわけにまいりません。
  197. 安宅常彦

    安宅委員 だから、警察はそういうことを全然見ていない、こういうことですか。
  198. 半田博

    半田説明員 先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
  199. 安宅常彦

    安宅委員 これは朝日新聞の十月七日付にも、私の秒数のはかり方とは少し違いますけれども、出ています。「ほぼ正確な経過判明」「なぞの要素残す」という見出しで大きく出ていますけれども、こういうことはしろうとの私どもが見てもおかしいなと思うのです、率直にいいますと。それから、韓国のそういう政府筋の者がつくったと思われる、これが本物だというフィルムがあるのですが、これはこれとは非常に違った角度でとられています。両方私見たのですけれども。こういうことからいって、比較検討して、実際に文世光なる者が撃ったのか。それからピストルをたたき落とされてから銃声が一ないし二発ババンと出るのです。そのあとですよ、奥さんがかつぎ出されるのは。そういういきさつということぐらいはぜひひとつ法務委員長も見ておいたほうがいいと私は思いますから、重ねて理事さんで協議なされるようにひとつお願いしたいと思います。
  200. 小平久雄

    小平委員長 先ほど申し上げたとおり扱います。
  201. 安宅常彦

    安宅委員 それでは時間がなくなったので、非常に重要なことが一ぱいあるのですが、あとで言いましょう。  私、法務省にお願いをしたいのですが、この事件が起きたころを中心として韓国人の新聞記者が日本に大量に入っています。こういう人たちがどういう動きをしているかということについて私ある程度調べておるのですが、大体八月一日から三十日まで一月の間に三十七名入っています。名簿も出していただきましてどうもありがとうございました。どういうころに一番入ってきたかといいますと、八月の十日に非常によけい入ってきていますね。それから八月十七日から十八日、二十日、二十五日ごろまで三名、五名、三名、二名、ずっと入ってきています。こういうことから見て、どうも私どもは、この事件関係して、日本の国内に新聞記者として入ってきておりますが、これはほんとうの新聞記者かどうか疑わしいのが相当いるんじゃないか、こう思っておるのですけれども、この問題について法務省では、この氏名に基づいてほんとうの新聞記者かどうか、そういうことをあなたのほうでは調査する経路はないのですか、手段はないのですか。
  202. 影井梅夫

    ○影井説明員 私ども、いわゆる出入国カードに記載されましたそれぞれの職業に基づきましてこのリストをつくったわけでございますが、さらにそれがどういう活動をしているかということは、特別の事情があればでございますけれども、通常行なっておりません。
  203. 安宅常彦

    安宅委員 それでは、法務省に私もう一つお願いしたのですが、外交官資格で入ってきた人はどれぐらいかというものは出なかったのですけれども、これはどういう意味でしょう。資料をお願いしておったのですが……。
  204. 影井梅夫

    ○影井説明員 八月中にいわゆる外交官、領事官及びその随伴者ということで、再入国許可によりまして日本に入りました者は合計五名でございます。これは入国ではございませんで、再入国を許可した件数でございます。
  205. 安宅常彦

    安宅委員 わかりました。  私はきょうは、一番最初に申し上げたとおり、あんまりよけいなことをしゃべると、あなたのほうに対策を立てられるとかなわないからそういう問題の核心に触れませんけれども、いまの日本政府がやっている、こういう韓青同の皆さんなり、それからいろいろな在日朝鮮人に対するやり方なり、こういうものがどうも大統領夫人の殺傷事件あたりに極度に利用されている。そしてまた、外務省のいろいろな対処のしかたというものは、日本の独立の尊厳をゆるがすような、そういうことになりかねない危険がある。こういうことを非常に心配をして、きょうはその一つの予備知識というのですか、私も調べる上において必要だというふうに考えてやったことが一つと、もう一つは、在日の居留民団なりあるいは朝鮮総連なり、そういう立場の人々がいまどういう状態にあるのか。外務省の答弁では、何か朝鮮総連がもしやった場合にはなどということを名前まで書いてきた。だけれども、そうではなくて、居留民団の幹部の諸君なりの指示や何かで、同じ居留民団の青年の仲間がやられてみたり、あるいは朝鮮総連に属する人々の団体が襲撃されてみたり、そういうことが日本の国内で随所に起こっていることから見て、これは主客転倒したあなた方の外交のやり方じゃないのか。暴力をふるったり何かしているのはそういう人々なんだということを明らかにするために、きょうはたいへんよけいな質問をしたかもしれませんが、どうかひとつ、先ほど委員長にお願いいたしました写真を、一部限られた人だけでもいいですから、それを見る機会なども含めて、ぜひ私の真意を理解していただきたい、こう思ったわけであります。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  206. 小平久雄

    小平委員長 八百板正君。   〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
  207. 八百板正

    ○八百板委員 裁判所司法行政について若干お尋ねいたしたいと存じます。  私の地元の福島地方裁判所の現職の刑事係ですか、部長判事が非行を起こしたことについてお伺いしなければならないわけでありますが、これについて責任当局の報告をひとついただきたいと思います。
  208. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。  ただいまお尋ねの八百板委員の地元の裁判所におきまして、お尋ねのような不祥事が起こりましたことをまず最初に心から申しわけなく存ずるわけでございます。  事実は、月曜日以来新聞紙等に報じられましたように、裁判官が市内のスーパーで婦人服外二点の品物を万引きしたということでございます。新聞紙等に報ぜられておりますとおりの事実でございます。  この裁判官につきましては警察、検察庁の取り調べがございましたが、裁判所におきましてもただすべきものをただすという意味で、仙台の高等裁判所で分限裁判が行なわれまして、戒告の決定がございました。それより先、裁判官は深くその非を、上司と申しますか、所長に申し出まして、退官願いを提出いたしましたので、今月の三日に分限の裁判があり、その翌日の四日付で依願退官の処置がとられた。事実は以上のとおりでございます。
  209. 八百板正

    ○八百板委員 この問題については、責任ある当局といたしまして、この影響をなるだけ広げないように、また今後こういうふうなことが起こらないように、こういう立場で、おそらくそれぞれの機関において検討、対策、協議されたと思うのでありまするが、そういうふうなことについての御協議なり、何らかの方向をお出しになっておるとすれば、ひとつそういうふうなところをあわせて御報告を願いたいと思います。
  210. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官の好ましからざる行為といったものをいろいろ考え得るわけでございますが、それが職務に関連しておるものでございますとか、そういったことでございますと、職務上の改善措置とか、一般的な事務の取り扱い上の注意等をいたすのは当然のことでございます。しかし本件は、先ほど御報告申し上げましたように、およそそういったようなことをすべきものではないということ、あり得べからざることであるということ、このことはもういまさら申すまでもないことでございまして、その点、いわゆる人間としてきわめて遺憾なことであるわけでございます。なお、職を裁判所に奉ずる裁判官といたしましては、それに加えてあらゆる角度からの国民の御信頼にそむいたという点で深くおわびせざるを得ない事柄でございます。このことは、私どもからあらためて申しますまでもなく、全裁判官が常に自粛自戒をいたしておるところでございまして、たくさんの裁判官の中でただ一人でもこのような行為があったということは、ほんとうに何と申し上げていいかことばを知らないものであるわけでございます。この機会に全国の裁判官、あるまじきことであるとは思いますけれども、二度とこのようなことのないように、各自が自粛自戒する覚悟を新たにしておる、ただこれだけしか申し上げようがないわけでございます。
  211. 八百板正

    ○八百板委員 身分が身分でありますだけに、通常の社会人が受ける以上の過分の社会的制裁を受けております今日の事実を見ますときに、私はこれをそういうなまの犯罪事件というような形で取り上げる考えはないのでございますが、ここでひとつ考えていかなければならぬと思いまする点は、過労とか業務の過重とか、いろいろなことがこういう場合には当然に関連してくることだろうと思うのであります。しかし、忙しいとか仕事が過重だといいましても、もともと専門の領域における仕事の過重でありまして、私ども自身も、まあ専門と言ってはどうか知れませんけれども、自分たちの専門の仕事については、よそから見るとずいぶん過重な仕事についておりまするが、しかし、過重な仕事によって専門家が疲れるということはまあないのじゃないかというふうに私は一般的に考えております。むしろなれた、訓練された仕事はそれを過密にこなすことによって、ある意味では心の快感を持ちながらその過労に耐えていく、そういうものがおのずから専門家の間にはでき上がっておるのではないか、私はそういうふうに考えております。  そういう面から考えまして、この問題案件は、専門家が、一方において専門化を要求され専門的に成長していく、反面において非常におくれた面が伴っていくという、いわゆる人間性の偏向とでも申しましょうか、そういう片寄り、あるいはまた社会生活との隔離、疎外というふうな問題が司法官一般に通じてあるのではないか。そういうふうなことをやはり考えなければならないと私は思うのでありまして、そういうふうな意味で、この閉鎖された社会のような、司法官の生活から業務からすべてがそういうふうな方向になっておるように、一般人から見ますると感じられるわけでありまして、司法官の試験はなるほど法務省が責任でやるようでございまするが、それ以外の、訓練、運営管理あるいは問題の処理というふうなものは、全部裁判所の閉ざされた中に内々だけで進められていく、こういうところに一つの問題があるのではないかというようなことも考えられるわけでありまするが、そういうふうな点について、そんなふうにはなっておらないとか、そうであるべきではないとかいうようなことについて、今日まで問題としてお考えになった点がございましたら、この際お聞かせいただきたいと存じます。
  212. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘いただきましたように、裁判官の仕事は自分の全責任において判断をしていくということでございまして、同僚に相談するとかあるいは上司の方に相談するとか、広く友人に相談するとかいうようなことができないものでございます。事件は、難解な事件、あるいは比較的平易な事件、いろいろございますけれども、どれをとりましても、最終的には権利義務というものについての判断をし、また基本的人権ということに直接関係する判断をせざるを得ない、しかもそれを自分ひとりで判断していかなければいけない、非常に心の重い仕事であるわけでございます。そういう仕事でございますので、勢い、ずっと長く裁判官をいたしておりますと、比較的自分にこもってしまうというようなことがございまして、つい広い全体の視野を失うということがなくはないのでございます。  そういう点につきましては、実は私どももこれまでもずいぶんと心を痛めておりまして、適当な時期に適当な期間実務を離れまして、同じような悩みを持った裁判官が東京の研修所等に参りまして、実務を離れた形でお互いの苦労を話し合い、また日ごろ話を伺えないといったような方々の体験談とか、他の職業の方々の御苦労談とか、そういったものを伺う研修というようなことをつとめてやってまいっておるわけでございます。  また、裁判官が全国に配置されておりますが、そういう配置を考えますにつきましても、忙しいところでしばらく仕事をいたしますと比較的ひまなところに移っていただきまして、気分を変えて仕事に取り組んでいただく。同じ場所でもある程度の期間一つの部で仕事をいたしますと隣の部に移っていただくというようなことをして、そういうことによっても気分を一新し、自分の仕事を振り返ってみるというようなことをできるだけやっていっていただくようにということで考えております。  また、一般的な問題といたしましては、若いうち、あるいは十年から二十年ぐらいの間、あるいは三十年ぐらいたったところというふうなときに、日本国内のみならず、外国等にも余暇をさいて出張をしていただいて、新しい角度から新しい場所のいろいろな見聞を広めるというようなこともいたしておるわけでございます。今後もそういった、まさしく御指摘いただきましたように、仕事をずっと同じようにやっておりますとどうしても内にこもりがちの面がございますので、そういうことがないように、いま申し上げたいろいろの施策等につきましてもさらに充実して推し進めていきたい、このように考えておるわけでございます。
  213. 八百板正

    ○八百板委員 いろいろな研修というようなお話もございましたが、研修といってもどういう内容の研修が行なわれておるか私存じませんので、その点に触れて論及するわけにはまいりなせんが、おそらくは業務を能率的に正しくやる、そういうふうな形の立場に立った研修が比較的多いんじゃないかなと、これは私推察をいたしております。  やはり問題は、アマチュアとプロというものは違うのでありますけれども、しかし、たとえば絵かきのプロとアマの絵かきは違わないのでありまして、詩人や歌人、そういう点なんかも同じだと思うのであります。医者なんかにしたって、医者と患者とどっちが病気に詳しいかということになると、事その病気に関する限りでは、お医者さんよりも患者のほうが詳しいという場合はかなり多いのであります。弁護士の場合でも、事にぶつかった当事者は弁護士以上に詳しい場合がかなり多いのでありまして、そういうふうな意味で、そういう専門家というような問題にもいろいろあると思うのであります。  これはよその国の話ですけれども、中国なんかは、お医者さんは、免許というようなものは制度がございませんで、人の病気を世話し、なおして、信頼を受けている人ならば医療行為をやってもいい、こういうことのようでありまして、広く司法界に法曹界に民間が参与できる、こういうふうな角度が私は望ましいのではないかと思うのであります。そういう意味で、判事なんかを、弁護士やその他法曹関係の練達な人を採用するというようなことも当然に考えなくちゃいかぬだろうと思うのでありますが、私あまりよく存じませんが、ちょっと手元の資料なんかを見ますると、そういう傾向も最近は逆のようでありまして、そういうふうな傾向もなるだけ判事自身が一般社会人と同じ人間的な感覚、生活の中に溶け込ませるようにすると同時に、また一般民間のすぐれた常識人をその中に取り込んで、そして司法の正しい運営管理を進めていくという態度も必要だろうと思うのであります。  この際ということではございませんが、そういうことについて考えがありましたら述べていただきたいと存じます。
  214. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 現在の裁判所制度でございますと、広く法曹の中のりっぱな方に裁判官になっていただくという、いわゆる法曹一元というものを理想といたしております。ただ、実際問題といたしまして、比較的、新憲法当初の場合を別としまして、あまり在野の方々などからおいでいただけないというので、非常に残念でございますが、私どもといたしましてはいまでもいい方にたくさん来ていただくということを希望いたしておるわけでございます。また、数は少のうございますが、在野の方から任官していただくという方もあるわけでございます。それからまた、簡易裁判所判事という制度がございまして、民間の有識者といったような方が進んで裁判官におなりいただくというようなことかございます。最近、いろいろなこともございまして、比較的、民間会社の経験あるいは行政官庁等の御経験をお持ちの方が裁判所に来ていただくというようなことも、一昔前から見ますとやや活発になってきたというふうにも考えております。いずれにいたしましても、法曹一元という考え方は厳然として存在するわけでございまして、今後もそういった点についても十分配慮をいたしていきたい、このように考えております。
  215. 八百板正

    ○八百板委員 抽象的な話で、いろいろ道は開かれている、そうやっておる、法曹一元化、考えとしてはそうだというだけでは一向に具体的にはならないわけでありまして、やはり何らかの機会に具体的に前に進めていくという、そういう努力がなければ、事はただ同じことを繰り返すだけになるだろうと思うのであります。  そういう意味合いにおいて、さらに繰り返して申し上げたいのでありますが、最近の事情は私よくわかりませんが、私どもの子供の時分は、裁判官の官舎も非常に閉鎖的で、大きなコンクリートの壁の中に一画をなして住んでおったなんというのが私どもの記憶にあります。いまはそんなことないと思うのでありますが。そして、社会人との間の隔離というようなものがやはりいまもあると思うのですが、ありまして、また一般の人も何か、あの人は裁判官だからとか、裁判官の奥さんだからというふうなことで、それを前置きにしていろいろな話もする、こういうふうな傾向が一般社会の中に現にあることは事実であります。  でありますから、そういうふうな現状を考えるにつけても、ただ単にそういうふうな方向で努力したいと思っておるということでなくて、やはり現実にそういう市民生活の中に溶け込んで、地域人として地域社会の中でもやはり一人前の任務を果たす、こういうふうな方向に司法官が、司法担当者がいかなくちゃいけないものじゃないかと思うのであります。私どもの知る限りでは、たとえば学校の同級生なんかにいたしましても、クラス会などにいたしましてもえてして司法関係の人などは出てこない、こういうふうな傾向が感じられます。同時にまた、地域社会において、町内のお世話をするとかあるいは町内の諸関係の中で溶け込んでいくというような、そういう関係の中にも、私、詳しく具体的には調べておりませんけれども、おそらく閉鎖的な壁をつくっておるのではないかと思うのであります。町の、村の、地域のいろいろな行事がある、そういうふうなつき合いももちろんしない。もちろん町内会の会合なんか出ないでしょうけれども、そういうふうな、やはり地域社会の中に、一般の市井人と同じような、人間としての立場で接して、そして円満な調和のある人間性を涵養して、その中からやはり裁判官としての立場をきちんと守っていく、こういうふうな人間でなかったならば、ほんとうの意味の法の番人としての審判は現代の社会においてはできないのではないかと私は思います。  そういうふうな点について、いままでもそういうつもりでやっておるというふうなことでなくて、この際ということはございませんけれども、ひとつ根本的にそういうような問題について考えていただきたいと思うのであります。たとえば、私、わかりませんが、判事の間に家族的な融和とか、あるいは何かレクリェーションみたいな、グループ活動といっては何ですけれども、こういうふうな親和の会合をやるとか、あるいは何かの行事をやるとかいうようなことが幾らかは行なわれておるんでしょうか。その辺もちょっと聞かしていただきたいと思います。
  216. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官である前に一市民としてりっぱな市民でなければいけない、八百板委員指摘のとおりでございます。仕事を離れますれば全く平等の市民でございまして、御指摘のような町内会の仕事でございますとか、隣近所のつき合いの問題でございますとか、そういうものをないがしろにしておいて職務だけが完全に全うされるというものではないわけでございます。昔は在朝、在野というふうに分かれて、当初から別々な養成をいたしておりましたが、戦後は法曹三者の共同の養成ということもございまして、そういう制度の上におきましてもつき合いの範囲というものは相当広まったというふうに考えております。そういうことがございますと、勢い同好の士の集まりというふうなことになりまして、スポーツにいたしましても娯楽等にいたしましても、かなり広い範囲で同好の士が集まって、ともに楽しむということは行なわれておるようでございます。もちろん、その中には裁判官以外の一般の職員の同好の方々も入ってともに楽しむ。たとえそれがハイキングのようなものでございましょうと、写真とかそういったような趣味的なものでございましょうとも、そういうことができるだけ広く行なわれるということは私どももけっこうなことであるということで、積極的に奨励するということまでもいたしてまいりませんでしたけれども、しかし、広く行なわれるということについて歓迎をいたしてまいったわけでございます。まあ、人間と人間の触れ合いということにお話が及んでまいりましたが、御指摘のとおりでございまして、できるだけ仕事は仕事、しかし仕事を離れればできるだけお互いの意思の疎通と申しますか、話し合いと申しますか、そういった場を今後も広げていきたいというふうに考えておるわけでございます。いずれ近いうちに全国の裁判所の責任者等にもお集まりをいただく機会がございますので、今回の件にかんがみまして、そういった点についても特に力を入れて、できるだけ裁判官の人間性と申しますか、仕事以外のことにおける解放と申しますか、そういったことについては努力をいたしたいと考えております。
  217. 八百板正

    ○八百板委員 刑事裁判のプロということになりますると、これは一そう隔絶する条件を持っておると思うのであります。歌のプロならばだれでも歌う歌のプロでありますし、碁や将棋のプロもだれでもやる碁や将棋のプロであります。絵かきも同様であります。しかし、刑事裁判というようなことになりますと、これは通常の社会生活の中でだれでもやっているというものの専門家ではないわけでありまして、非常に隔絶された専門的な立場に立って、そうしてその立場で繰り返し繰り返し、一そうきびしく訓練されていく、こういうような傾向が出てきがちだと思うのであります。  そういうような意味で、とりわけそういう社会生活、社会人としての開かれた人間性というようなものが要求されると申しましょうか、そういう面が大事じゃないか、こういうふうに思うわけであります。一方の面は非常に専門的に、職業的に訓練されて高まっていくが、一方の面は非常に幼稚な、ほとんど未教育状態の中でそのまま進んでいくというふうになりますと、そこに人間の二面性が一そう強く出てくるだろうと思うのであります。これは心理学の問題でしょうけれども、だれでも二面性を持っておるわけでありまして、政治家なんかもかなりひどい二面性を持った人が多いのであります。そういうふうな意味で、人間の持っている二面性は、やはり問題は一つの調和の問題でもあろうかと思います。また同時に、法によって人をさばくというふうな国家権力を行使するという立場に立ちますると、ある意味合いにおいてはそれ自体に、人間がさばくというところに一つの偽善性を持っておるということも言えるだろうと思うのでありまして、そういうふうな意味で、非常に特殊な職務でありまするから、そしてまた社会の秩序維持のために期待されている面が非常に大きいわけでありますから、そういうふうな点で一そう判事の人間性、社会人としての人間性を円満に調和のあるものに育てていくといってはなんでありますけれども、そういう配慮をみんなでやっていくということが非常に大事じゃないかなというふうに私は思うのであります。  そういう意味合いにおいて、近く責任者の会合を開く、こういうふうなただいまのお話でございまするが、しかし、責任者の会合を開きますると、えてしてお役人の訓辞というものは、二言目には綱紀の粛正などというふうな形であらわれてきがちでありまして、そういうふうな形の紋切り型の、みんな気をつけろよというふうな形の訓辞になりますと、そのことが決していい結果にはなっていかないだろうと思います。結局中央に迎合するといいましょうか、そういうふうな傾向を一そう強めていく結果になるだろうと思うのでありまして、また綱紀の粛正などという形で締めつけをいたしますると、それはひいては裁判所の末端だけではなくて、事務職員なり一般職員の、そうでなくても仕事の過重なところにそういう形でしわ寄せがいくというふうなことも起こり得るだろうと思うわけであります。そういう意味で、何か起こったから引き締めていくのだというような感覚であっては断じていけないのでありまして、そういうふうな点は重々御承知だろうと存じまするが、そんなことも考えられまするので、締めるというのではなくて、逆にゆるめるというふうな立場で人間性を取り戻すような配慮と努力が必要だろうと思うのであります。  なお、具体的には、最近私、見ておりますと、判事がかなりむずかしい問題、専門外の問題を審理しなくてはいかぬという場合が多いようであります。それも、一時間前には全然別の案件を審理して、一時間後にはまた全然別の専門的な問題に取り組む、そういうスケジュールなんかを裁判所で私は見まするが、こんなふうなことを考えますると、もっと定員をふやすと申しましょうか、人間を多くして、ゆとりのある、人間性のある司法の運びというようなものができないものだろうか、こういうふうなことも考えるわけであります。それは単に裁判官だけではなくて、裁判関係、司法関係に従事する書記やそれぞれの職員のことも同様になるわけであります。  こういうことについて、具体的には現に問題が起こったところで一人定員が減るわけでありますから、そういう問題が具体的には出るわけでありますが、一般論とあわせてその辺のところもこの際に明らかにしておいていただきたいと思います。
  218. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 私どもの同僚が日ごろ行なっております仕事につきまして、きわめて御理解の深い御発言をいただきましてまことにありがたく感謝いたしております。  御指摘のとおりでございまして、まず人間性というもの、常に豊かな人間性を持っているということがまず第一の出発点であろうかと思います。ただ、仕事が仕事でございますので、ときによりましてはこの仕事で大いに悩むこともあるし、煩悶することもある。しかし、それは職業人として耐えていかなければいけない、またそういうことでめげてはいけない問題であろうかと思います。また、そういう仕事の特殊性が市民生活というものに何らかの悪い影響を及ぼすとすれば、これは私どもが全力をあげてそういうことのないようにいたしていかなければいけない問題であろうかと思います。  そういうことと関連いたしまして、もっと専門分野は専門分野のものをつくっていけばいいではないか、あるいはさらに大量の人を裁判官に迎え入れればいいではないかという八百板委員の御指摘は、まことに御理解あるものとしてありがたく思います。ただ、裁判官の人数等の関係になってまいりますと、仕事が仕事でございますので、やはり全体的に見まして、仲間の方あるいは国民全体の方に、あれにさばかれるならしようがないというふうに思ってもらう、こういうような方である必要があるわけでございます。私どももいい方をできるだけ多く迎えたいということで日夜腐心をいたしておるところでございますが、今日のところそういった希望をなかなか十分に満たし得ないでおるというのが現状でございます。増員等の問題につきましては、専門的な裁判官の養成、配置というような問題とも関連いたしまして、十分前向きで検討させていただきたいと考えております。
  219. 八百板正

    ○八百板委員 具体的な問題については、いずれまたわれわれの同僚なり私どもの党なりが、それぞれの機関と段階において詰めた問題としてさらに明らかにしていく機会があるだろうと存じます。  この際、もう一つ明らかにしていただきたい点は、この案件について処理した裁判所の態度についてでありますが、なるたけ内輪に内輪にしていこうという考え方、それはもちろんけっこうなことでありますけれども、しかしまた一面において、人を裁判する裁判官が間違いを起こした、それをさばく、こういうふうな問題はやはりその限りにおいてはきびしいものでありまするから、なるたけ内輪に内輪にということではなくて、広げて広げて、国民的な審判を受ける、こういうふうな立場に持っていくほうが本来ではないのか。これはこのことに限らず、今後いろいろなことが起こった場合の裁判所の態度として、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。やはり裁判官の非行は裁判官の中でなるたけおさめていく、これはある意味ではけっこうなことかもしれませんが、しかし、それと同時に、裁判官の起こした非行は第三者によって審判させるというふうな考え方がやはり大事な点ではないかと思うのでありまして、そういうふうな意味合いでは、そういう配慮がちょっとどうだったのかなというふうに考えられる点があるわけであります。  現に、この問題では、戒告をいたしまして、そして願いにより職を免ずる、こういう形をとっておるわけであります。このこと自体を言うわけではありませんが、一般論といたしまして、われわれの通常社会の中では、われわれの家庭でもそうでありますが、訓告とか戒告とか、そんな名前のものはありませんけれども、おまえいけないじゃないかというふうなおしかり、あるいはそんなことをするとこっちも考えがあるよというふうなことを言う。そんなふうないろいろなしかり方があるだろうと思うのでありますが、いわゆる訓告にいたしましても戒告にいたしましても、一般の市井人から見ますると、ただ、おまえいかぬじゃないかと言われた程度のものと一般的には理解されるわけでありまして、それを願いによって、やめたいというからやめるのを認めてやった、依願退職だ、こういうふうな形でされておるわけであります。この場合には当然一方において、いわゆる裁判官弾劾法の規則によりまして、言うまでもなく、この第二条の条項を見ますと「職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき。」弾劾、罷免、こういうふうな明文があるわけでありまして、こういうふうな関連も十分にお考えになった上での御決定だと思うのでありますが、そういう考え方について、なるたけ第三者の国民的な審判に向ける、自分たちの仲間のことは仲間だけで、いわゆるお手盛りで片づけないで、なるたけ社会的というよりも国民的な、第三者的な機関のほうに持っていくという形がやはり望ましいのではないか、こういうふうに考えますので、この点についての見解なりいままでの処理された態度をひとつ御説明いただきたいと思います。
  220. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 御指摘の条文がございまして、本件の場合もこれに該当するかどうかということであらゆる角度から検討をさせていただいたわけでございます。先ほど犯行の動機等につきましては詳しく御説明を申し上げませんでしたが、本人は日ごろ非常に勤勉な性格でございます。そういった勤勉な性格の本人が、その時期における身体の不調、家庭内の不和、さらにたまたま起こりました大量の刑事事件、これは公職選挙法違反の事件でございますが、その処理ということに忙殺されまして、きわめて一時的、発作的に行なった犯行であると認められる状況でございまして、そういった点を勘案いたしますと、これが職務に関連した犯行等でございますとまた別の見解があろうかと思いますが、今回の場合はきわめて一過性の希有の事例である。しかも本人の身体の状況、職務の状況等、掬すべき点がないではないというふうに考えられたわけでございます。そういたしますと、これは弾劾というようなことで処理する、そこまでには当たらない、やはり部内の正しく定められております分限法の規定によりまして分限の裁判をすべき事案である、そして前非を悔いて退官願いを提出いたしておりますその本人の退官願いを受理すべきである、このように御決定をいただいたわけでございます。  分限法の分限と申しますのは、いわゆる公務員法等によります懲戒、戒告といったものと少し趣を異にいたしまして、これは五人の裁判官が裁判で行なうものでございまして、そういった裁判が確定いたしますと、これを官報に公示してその全文を発表するわけでございます。決して部内だけでこっそり片づけるというようなことを考えておったものではないわけでございます。ただ、本件事案全体をあらゆる角度から検討いたしました結果、まだ弾劾ということには当たらないというふうに考えて処理さしていただいたことによるものでございます。
  221. 八百板正

    ○八百板委員 「職務の内外を問わず」という条文でありますから、直接職務上何か非行によって判決をゆがめたとかいうことがなくとも、「裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき」という条項からいいますと、その辺のところは若干問題があるだろうと思うのであります。しかし、いままで私も、身近にあった事件でありましたために、いろいろと諸般の問題についてある程度の事実の調べをいたしましたが、いまの御答弁の中にはございませんでしたけれども、今後の社会復帰の問題などもいろいろ考慮されましてそういうふうな処置をされたものだろうと思うのであります。私もそういうような意味合いにおいては、そのことによって通常人以上の社会的なきびしい批判と制裁を受けておるというふうな点から考えまして、そういう事件としてこの問題を私は追及する考えにはならないのでありまするけれども、同時にまたここで考えていただかなければならないことは、私は、おそらく相当の要素となってやはりそのことのためにもうすべてを棒に振ってしまう、家族もまたひどい制裁を受ける結果になるというふうな点を考えますと、それだけでもとてもたまらない気持ちになるわけでありまして、そういうふうな点では私も同感であります。  しかしそこで同時に、私はこの際に裁判関係者のみんなに考えていただきたいことは、裁判官であるから、妻子があり、子供の将来、家族の将来に暗い大きな影響を与えるというふうに考えるならば、それは同時に、常に裁判をするにあたって、被告はみな親の子であり、妻を持ち、子供を持つ被告であります。やはりその際にも同じように、この裁判の結果、どういう社会的制裁を受けて、子供の将来に、生活、生き方の上にどういう大きな変換が起こっていくかというようなことも――裁判官の場合に深刻にそういう問題を考えて、大きい問題として比重を置いていろいろ処理される、それはけっこうでありまするが、同時に、さばく立場の際には、被告は常に親あり、子あり、家族あり、やはりそのことによって一生を棒に振り、あるいは家族もまた生き方の上に大きな社会的制裁を受けるものだというふうなことを頭に置きながら、その上で人間をさばくというような、そういう心やりがあってほしいのではないかというようなことを私はこの件について考えるわけであります。  そんな点をこの際に申し上げながら、先ほど来繰り返して申し上げましたように、人間的に調和のある、統合された一つの人格が司法官として裁判の業務をやる、こういうふうな方向に全努力を傾ける、そういう立場で皆さんの司法行政の運営管理があってほしいものだというふうに考えるわけであります。そういう意味で、地域社会人の中に溶け込んでいくような裁判官のあり方が今後具体的に真剣に考えられていくべきものじゃないか、そういう意味でひとつお考えをいただきたい。これについて一言御見解を伺って私の質問を終わりにいたします。
  222. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官としての心がまえ、司法行政を担当いたす者としての心がまえについてじゅんじゅんとおさとしいただきました点、まことにいずれの点もごもっともでございます。ただいまの八百板委員のお考えといったものをそのままいただきまして、十分前向きで検討いたしていきたいと考えております。
  223. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長代理 正森成二君。
  224. 正森成二

    ○正森委員 私は、最近社会的に耳目を聳動した二人の裁判官のことについてこれから質問いたしたいと思います。  その第一番目は、言うまでもなく、九月二十二日に福島地方裁判所の部長判事、これは名前は新聞で広く報道されておりますが、こういう不祥事件で国会の速記録に載るのも気の毒でありますからA裁判官と申し上げておきますが、A裁判官が同市のスーパーで万引きをやったという事件であります。しかもそれは一カ所でちょっと手が伸びたというのではなしに、二階と八階の売り場で婦人服と乾電池二個を万引きし、さらに六階売り場で整髪用のチック一個を万引きしたところを店員につかまったということになっております。  私は、この裁判官にはそれなりの事情もあったのだろうと思いますが、いやしくも司法部内において、人をさばくべき裁判官が万引きをやる。万引きといえばどろぼうでありますから、昔から、どろぼうを捕えてみればわが子なりということばがあるが、どろぼうを捕えてみれば裁判官なりというようなことは、これはめったにないことだと思うんですね。そこで、いままでわが国の明治以来の、司法部始まって以来、こういう事件を行なった裁判官があるのかどうかについて伺いたい。
  225. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 少なくとも戦後、このような事件はございません。
  226. 正森成二

    ○正森委員 戦後といいますのは、おそらくわが国の憲法施行以来という意味にも理解していいと思いますが、そうだとすると、司法部始まって以来の未曽有の不祥事だと思うんですね。未曽有の不祥事にしては、最高裁判所のこの対応のしかたというのは、いま同僚議員が言われましたように、内輪で済まそうという意向が非常に強いのではないかというように思わざるを得ないわけであります。戒告にして、翌日さっそく辞職願いを受理しておられる。戒告に対して裁判上不服申し立ての道もあるわけですね。もしそういうことになれば、辞職願いは許したわ、いや戒告には服しません、事実は争いますということになれば、最高裁判所としてはたいへん失態になるといわなければなりません。それにもかかわらずなお、戒告処分をした翌日、早々に辞表を受理するというような軽率なことをなさったのか、それを伺いたい。
  227. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 戒告のための分限裁判は、仙台高等裁判所長官が裁判長になりまして、五人の裁判官で慎重に進められまして、その際、本人も出頭をいたしまして、その当時の心境、心身の状態等につきまして詳しく申し述べております。本人は、御指摘のように三カ所で犯行をいたしましたが、当初婦人服をとりまして以来、最後の犯行で見とがめられるまでよく詳しく覚えていないというふうに言っておるほど、一時的な精神の不安定な状態があったというふうに考えられるわけでございます。   〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕また、分限の裁判の調べを終わりまして、最終的に陳述をいたします際にも まことに申しわけないことであって、どのようにおわびしていいかわからないが、少なくともすでに辞表を提出しておりますので、もしお許しをいただけるならば辞任をお認めいただきたい、どのような御処置を受けても、全く自分の身から出た問題であって、不服はないということを繰り返し述べております。さらに、戒告の裁判が行なわれまして、その裁判は決定という形で行なわれますが、その決定書を交付いたしました後に直ちに上申書を提出いたしまして、全くこの裁判には異論がないということを申し述べております。そういうふうに申し述べておりますことが、御専門であられる正森議員の目からごらんいただいて即時抗告権の放棄ということに当たるかどうか、これは別問題でございますが、私ども審理の過程におきます本人のそういった態度、心境ということからいたしまして、戒告に異論はない、それほどに改心をいたしており、後悔をいたしておるものという前提に立ちまして、翌日辞表を受理した、こういうことでございます。
  228. 正森成二

    ○正森委員 最高裁としてそういう配慮をされたという気持ちはわからぬではありませんが、私は一つ聞いておきたいのですが、去年のちょうどいま時分も検察官が万引きをした事件がありました。私どもが漏れ承ったところでは、この検察官は当時神経的に御病気でありまして、専門家の診察も受け薬も飲んでおられたというようなことを漏れ承りましたので、これを委員会で聞くのはどうかということで、武士の情けという気持ちで聞きませんでした。今度は伺いますと、選挙違反の裁判が一気に十三件入る。まあ都会の裁判所ならそれほどでもないですけれども、福島では相当な負担であるというような心労も重なったということですが、神経的に非常にまいって、だれでも人間は弱るときがあるわけですが、神経科の医者にかかっていたとか薬を飲んでいたとかいうところまでは至らなかったのですか。
  229. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 本人は、実はその以前に胃にポリープができておりまして、それが少しずつ大きくなるといったようなことがございまして、定期に胃ガンの疑いということで健康診断を受けておりまして、ちょうど九月の末が定期の診断を受けるべき時期に当たっておりました。そのことが念頭を去らなかったようであります。と同時に低血圧にも悩んでおり、低血圧で数種の薬物を用いておったというような状況でございます。そういった不安定な状況のところに家庭のトラブルもございまして、これはきわめて個人的な問題ではございますが、しかし本人にとっては非常に重要なことでございます。かてて加えて御指摘の、現地といたしましては前後にあまり例を見ない大量に重要な選挙違反事件の起訴があり、一手にこの事件を引き受けなければならないという状況に相なったわけでございます。現時の世論等からいたしまして、できるだけ早くこの選挙違反事件を迅速に処理していくということに一方において頭を悩ましておった、そういうことかございまして、少し涼しくなりましたときに夏の疲れといったようなものも出まして、不眠に悩まされるということがあったようでございます。  しかし、いずれにいたしましても犯行そのものはきわめて許しがたいものであることは御指摘のとおりでございます。しかし、犯行のその時点における状況というものは、いま申し上げました、どのようなことでこういうふうになって店員から見とがめられるに至ったか、よく覚えていないんだと本人が自白いたしますほど発作的な犯行である、ノイローゼによる犯行である、こう認められるわけでございます。そういった点を十分にしんしゃくさせていただき、さらに日ごろの勤務成績、それまでの勤務成績はきわめて非の打ちどころのないものであったという点も加味させていただき、このような全体の状況の判断のもとに戒告という措置を決定されたというものでございます。
  230. 正森成二

    ○正森委員 いまのお答えは私の問いに対する直接のお答えにはなっておりませんが、少なくとも、専門の神経科の医者にかかって、そういう関係の薬物によって治療するという状態ではなかった。しかしほかにいろいろ心配ごとはあったというように私は聞いていいと思うのですね。そうしますと、昨年の検察官の万引き事件よりは、やはり通常の社会人としての批判にたえなければならないというようにいわざるを得ないと思います。私も弁護士ですけれども、まあ矢口さんは民事が御専門のようですけれども、かりに普通の日本国民がああいう事件を起こして、いまのような情状を申し述べて、心神喪失もしくは心神耗弱、どうやってとったかわからないと言いましても、裁判官が有罪にすることは確実であります。そのことによって無罪を宣告するようなことは絶対ない。そうだとすれば、やはりさばく立場におる裁判官というものは厳重に身を持さなきゃならないし、その監督官庁というものはやはり厳格に処理をしなきやならないと思うのですね。しかし最高裁としてはいろいろ一定の考慮の上に処理をなさったようですからそれについては深くは申しませんが、私はこういう事件が起こるのについて二つのことを指摘したいと思うのです。  一つは、福島のような、いなかとしては非常に荷の重い事件が集中した、それを早く処理しなきやならないということがありましたが、その背後には、やはり国家権力の行使である刑事事件というものはこれは迅速に処理しなきゃならないという要請があると思うのですね。それに対してわが国裁判所の裁判官の数というものは、刑事には民事よりも相当多分に配属されているというもっぱらの弁護士の話でありますけれども、それにしても裁判官が不足して任務過重になるという点もあります。現在裁判官の欠員は何人ありますか。
  231. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 きょう現在ということでございますとちょっと正確な調べがございませんが、七月の初め現在で百二十数名の欠員がございます。
  232. 正森成二

    ○正森委員 司法修習生で裁判官になりたいという人は年々非常に多いわけですね。ことしの裁判官の定員に関する法律などでも、われわれはできるだけ採用するようにと、こう言いました。そうすると、それから六カ月ですね、十分補充されたと思うのに百二十数名の欠員がある。しかも定員そのものが、われわれが指摘しているようにもともと多くない。そうすると裁判官に非常に仕事の負担がかかってくる。一般の社会人のような、娯楽、教養というほうに時間を向けるのが少なくて、裁判所から大きなふろしき包みを持って帰ってうちで宅調をやり、そしてまたふろしき包みをかかえて持ってくる。一ぱい飲むときにもふろしきを後生大事に持って、あまり飲み過ぎて留置場に保護されたときでも、その裁判の記録の入っている袋だけは御丁寧に持って、枕にして寝ておったというような涙ぐましい裁判官があるわけですね。これはほめていいのか、それとも嘆いていいのかわからぬということで、私は裁判官の定員をやはりふやし、イギリスのように裁判官が芝居を見るとか、そういう一般的な教養といいますか、そういうことでの気分の転換ですね、そういうものがぜひとも必要だと思うのですね。ですから、年々二月、三月ごろの予算委員会のときに私たち裁判官の定員を言いますけれども、その点について、修習生の採用の大幅な拡大を含めて、抜本的に今回の事件を契機としてお採りになる気持ちはありませんか。
  233. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 予算委員会あるいは当委員会等でしばしば御指摘でございますが、裁判官希望者の方が、定員不足というようなことで採れないというようなことの起こらないようにということは十分に配慮をいたしております。正森委員すでに御承知と思いますが、裁判官の希望者の数等は予算の復活折衝等の前の段階においてある程度の予測ができますので、そのような、いやしくも定員がないためにせっかくの希望しておられる適任の裁判官を採り得ない、そういうことのないように、これは今後とも十全の配慮をいたしていくつもりでございます。
  234. 正森成二

    ○正森委員 それからもう一つ私が指摘したいのは、裁判官が非常に隔絶された生活をしておる。昭和四十六年に有名な石田最高裁長官が、また事務総局が、裁判は公正であるだけではだめなんで、公平らしさがなきゃだめだということを言われました。それに符節を合わせたように、たとえば司法研修所の所長などは司法修習生を集めて講義をいたしまして、君たちは地方へ行くと名士なんだ、だから酒を飲む場合でも労働者の行く一ぱい飲み屋で飲んだらだめなんだ、そうかといって一流のところに行くほどいい給料はもらっておるまいが、というようなことを堂々と司法研修所で、若い裁判官の卵の前で言うというようなことをやっているのですね。どうして勤労者の圧倒的多数である労働者の行く酒場へ行ったら悪いのだ。こういう教育をふだんやっており、また判例の研究会などでも、部外の人が入る場合はその公平らしさを疑われてはいかぬから注意をしろというようなことで、最高裁ががんじがらめに裁判官のまわりに囲いをつくる。だから本件の福島の裁判官でも、裁判長といえば、いなかでは自分の近くの同僚がいないわけですね。上は裁判長だ、下はもう部下だということになると、心を打ち明けて話をする人もいない。そうかといって裁判所外で教養なり趣味なり、そういうことで結びついて打ち明けられてもおらぬというようなことから、やはりいろいろ高じてくるわけですね。ですから私、司法研修所の所長のそういう発言についてはさきにも一度指摘したことがありますけれども、最高裁としては、国民の中に開かれた裁判官としての立場をとるように最高裁の事務総局は考えるべきだ、こう思いますが、いかがですか。
  235. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官の仕事を離れますれば全く一市民でございまして、市民としての正しい生活をしていかなければならない、とけ込んでいかなければいけないという御指摘はそのとおりでございます。ただやはり、そうは申しましても裁判官であることに変わりがないわけでございますので、おのずとその仕事の内容からくる制約というものがつきまとわざるを得ないわけでございます。私ども、そういう制約の範囲内において、いかにして市民としての自由な立場を享受できるようにするかということが、これは司法行政に課せられた大きな課題であろうかと思います。先ほど研修所で、なわのれんに行くなというようなことを言った者があるという御指摘がございましたが、そこで言います意味は、こういうところで飲むなということではおそらくなくて、やはり裁判官は、どこでどうしてもいいけれども、自分が人をさばく身であるということを瞬時も忘れるなという趣旨でおっしゃったものと私は現在においては理解をしておるわけでございます。そういった点につきましては今後も十分な配慮をいたしていきたいと考えております。
  236. 正森成二

    ○正森委員 いま矢口人事局長が言われたことは重大な自己矛盾があるのですね。片時も人をさばく者であることを忘れるなとかねがね言っておる、その裁判官が万引きしているのですから。なわのれんで一ぱい飲むのは何にも法に触れないですよ。万引きをするなんということはたいへんなことですよ。そういうことになるのはなぜかといえば、社会から隔絶しており、自分の気持ちを打ち明ける人もいないというようなことではないか。だから、そういう法に触れない範囲内の裁判官の通常の市民としての行動にはあまり文句を言わないで、そして大所高所を注意するということが大事じゃないかと言っているのです。それに対する答えに、いやしくも裁判官であるということを片時も忘れないようにしてなんて言われると、それじゃ万引きはどうなんだというように言わざるを得ないのですね。私はこの点は田宮総務局長にも、司法研修所にかつておられましたから、注意を喚起しておきたいと思います。  時間がありませんから次に移ります。  法律時報の一九七四年四月号を見ますと、東京地裁の中川幹郎裁判官というのが同僚の裁判官に事実上暴力をふるうということをやっております。これは「現代司法の問題状況」という特集号の中に書いてあるわけですね。この裁判官はこれだけでなしにいろいろ問題をやっておりますが、当日のことを少し申し上げますと、この法律時報では、二十五期の満田という弁護士ですね、その人が同期の人の会合でこういうことを聞いたということで言っておられます。  問題の裁判官は中川幹郎裁判官、東京地方裁判所民事十九部の裁判長であります。この裁判長が、十月二日に裁判官の自由懇談会というのがあったそうでありますが、そこへ出席された。そのときにいろいろ懇談はあったようでありますけれども、そこへ出席しておられた小林克美という二十五期の判事補がいる。この方がいろいろ話をしておられたときに、たまたま参与判事補制度のことが話題になりました。坂主という判事補も、二十五期でありますが、当時新任の研修のために東京地裁に来ておられたそうです。ところがこの裁判官は、九月一日に着任したら、その日に直ちに参与をやるようにというようなことを裁判長に言われた。ところがその裁判長もたまたま自由懇談会に出席しておられまして、いろいろ自由に論議をされるのを聞いておると、わしは判事補の時代には検察庁の勾留申請なんかに対しては断固として拒否して、自分の判断で却下したんだとか、あるいは判事補の時代には気軽に勉強すればよいとか、いかにもわかったようなことを言うんですね。ところがその人が、着任してまだ右も左もわからないときにいきなり参与判事補をやれといって決定をしようとするというようなことがあったから、小林裁判官が、そういうようなお気持ちならば参与などはやらせないでほしいということを言ったら、中川裁判官というのは、「なまいきなことを言うな。そんなことを言うならおれの左陪席をやってから言え。最高裁の定めた規則に反対であれば裁判官をやめろ。判事補は独立の権限があるなどと考えるのは思い上がりである」こういう乱暴なことを言って、その言ったことだけでも相当問題だのに、散会後、入口のところで小林裁判官の胸ぐらをこうやってつかんで二度、三度こづくということをやっておる。こんなことは普通の会社でもやらないです。部下じゃない、同僚なんですからね。その裁判官がたまたま意見を言ったということで相当な暴言を吐いた。しかも胸ぐらをつかまえて二度、三度こづくというような有形力の行使をやるなんというのはもってのほかです。ある意味では福島の問題の裁判官よりもたちが悪い。この件はあなた方はお調べになっておりますか。お調べになって、どういう措置をとられましたか。
  237. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 ただいま正森先生御指摘の件でございますが、確かにそういう日時におきまして、若い判事補と中川判事との間におきまして、参与の問題について相当激しい議論がなされ、その上ある程度中川判事がその判事補に手をかけたという事実はあるようでございます。自由懇談会の終わりまぎわにそういうふうな議論になりまして、間もなく終会になったわけでございますが、二人ともたまたま席が近かったというような関係で、並ぶようにして出口のほうに出ていく。その途中でも、議論がやり足りないということでしょうか、お互いに議論をやりながら出口のほうに行ったところ、最終的に中川判事が、君もう少し勉強しろよというようなことで、胸のあたりをちょっと押した、二回ぐらい押したという事実があったようでございます。
  238. 正森成二

    ○正森委員 そのいまの田宮さんの答弁ですがね、どうもそういう方が裁判で事実認定もされるのかと思うと、われわれははなはだ寒心にたえないのですけれども、そういう、君勉強しろよというようなことを言うて胸のところをちょっちょっとたたいたというような、そんななまやさしいものじゃなしに、頭から敵意をもって、「なまいきなことを言うな」というわけで、ここをつかまえて二度、三度こうやって、けんかをするときのまず最初の状態というか、一方は裁判官になったばかりの判事補ですからあっけにとられて抵抗しないということであって、普通の民間の腕っぷしの強い者なら、「何を」と言うてぽんとなぐるという、なぐられてもしかたがないような挑発をかけておるんですね。そういうことをやった者をいま程度のことだというように思って、それで私の質問の後段には答えておりませんが、何らの措置もとらなかったのですか。
  239. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 中川判事が胸ぐらをとったという事実はなかったというふうに報告を受けております。これは中川判事だけの言い分を聞いたわけではございませんで、その相手の判事補の話も十分聞きましたし、そのほかその場に居合わせたほかの判事補の人の話を総合した上でそういうふうに判断しているわけでございまして、その旨の報告を東京地裁のほうから受けておるわけでございます。その点につきましては、中川判事が興奮したという面も若干ないこともないとは思いますけれども、東京地裁のほうといたしましてはその点について特に処置をとるということはしていないと報告を受けております。
  240. 正森成二

    ○正森委員 それじゃ、胸ぐらをつかまえたのではないなら、もう一度そこのことを言うてください。あなた方、私が最初に言ったときには、外形的にはそういう事実があったと言いましたね。最初のときも私は、胸ぐらをこうつかまえたという意味のことを言いましたよ。それじゃ、あなた方はどういうぐあいに認定しているのですか。
  241. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 ちょっとことばが足りませんで申しわけありませんが、正森先生の御指摘の事実を全部認めたという趣旨で冒頭申し上げたわけでございませんで、中川判事がその判事補に手をかけたという事実はあったという趣旨で申し上げたのであります。それは胸ぐらをつかんでごしごし押しつけたということではなくて、要するに軽く、もう少し勉強したらどうだというようなことで手を胸のあたりにかけた。それが胸のあたりなのか肩のあたりなのか、この辺はまたいろいろ見方があるようでございますけれども、いずれにしてもからだに手をかけたことは間違いない。それが、胸ぐらをつかまえるようにしてぐいぐい押しつけたというような事実はないというふうに報告を受けております。
  242. 正森成二

    ○正森委員 これは裁判の場合だったら加害者なんですから、被害者のほうは新任の判事補なんですから。私が調べておるところでは、翌日に、「酒の上のことで失礼しました」と言ってあやまりの電話をかけてきておるのですね。そして部内ではこういうことは話をしないようにしようというようなことに大体なっているのですね。ですけれども、現に同期の会などでいろいろな人が、そんな、勉強しろよというようなことを言うてぽんぽんと肩をたたいたというようなものではなしに、血相を変えて有形力の行使をしたと言っておる。ぐりぐり押しつけたか、あるいは胸ぐらをつかんで二、三回押したかは、それは表現の違いですけれども、そんな激励するようなかっこうでぽんぽんとたたいたとか、そんなものじゃないですよ。だからこそ、酒の上で失礼したと言うて本人があやまってきておるのです。これが普通の裁判官なら、本人があやまってまできている場合に、有形力の行使はたいてい認めますね。だから、こういうようなことを日常やっておる裁判官がおる、ということは、これは先ほどの福島の件を見ますと、これは裁判所の外でそういうとんでもない発散をやる、あるいはついふらふらとやる、一方は裁判所の中で、自分より年の若い裁判官に対してそういうことをやるということで、いずれも正常な線からどっちかへ片寄っておるわけですね。これは最高裁判所として非常に考えてもらわなければならぬことだと思うのです。  同時に、この裁判官は本年の六月二十六日に部外の者に対して有形力の行使をするということもやっております。それは東京新聞の労働組合で委員長以下四名の方が首を切られるというような事件関連してでありますが、この事件は地労委で勝訴、中労委で勝訴、また裁判所側の仮処分でも、一審、二審とも勝訴という事件であります。ところが、東京新聞及びそれを引き継ぎました中日新聞側がいずれも承服しないで、中労委の命令に対して不服だといって取り消しの行政訴訟を起こしたという事件であります。その行政事件には首を切られた労働者も参加人ということで当事者になっておるわけであります。それについて緊急命令を早く出してくれ、労組法の二十七条にありますが、そういうふうなことで何回か面会を求めに行ったようでありますが、なかなか会ってくれなかったのですけれども、六月二十六日には書記官を通じて、代表一人だけなら会うというので、岩切という委員長が裁判官室へ入って「先日からお願いしてきましたように、きょうは総評はじめ共闘会議の代表が参っておりますので」こう言って、一人だというので自分が入って、こう言って続けて言おうと思ったら、とたんに中川裁判官は、「岩切君、君は何を言っているんだ」こう言ってどなり始めて、「面会強要だ、出ていけ、出ていけ」こう言ってどなりながら岩切委員長の肩と胸に両手をかけて、両手でぽんぽんぽんと部屋の外に押し出すということをやっておるんですね。こんなことは裁判官どころか通常の人でもあり得ないです。断わりなしに入ってきた者にだって手をかけるということはなかなかしないのに、代表一人ならけっこうだと言って自分が招き入れた者がものを言いかけたら、とたんに「出ていけ」と言って押し出す。常軌を逸しておるとしか言いようがない。この裁判官の裁判内容についてはとかくのことが言われておるけれども、私は法務委員会でそのことを言おうとは思わない。外形的な有形力の行使について言っておりますけれども、この件についてあなた方はどういうぐあいに認識をされておりますか。一度ならまだしも、繰り返しこういうことがあるというのはどこか人間的欠陥があると見なければならない。
  243. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の点でございますが、代表一人なら会うということで岩切氏を部屋に入れたということは事実でございます。ただ、その趣旨なのでございますが、その前後を通じまして五、六回ぜひ面会してほしいということで大ぜいで来られたのでございますけれども、これも御承知のように裁判官のやり方の問題でもございますが、訴訟の当事者の他方がいない場合に、その当事者の一方と法廷外で会うということは、これはあまり好ましくないこととしてそういうことをやられていないという裁判官はかなりいるわけでございます。中川裁判官もそういうふうなことでやっておりまして、数回面会の要求がございましたけれども、そのつど断わっておったのでございます。たまたまその日、大ぜいで押しかけてこられまして、面会を求められましたので、中川裁判官といたしましては代表一人を入れて、それで、もう自分は面会に応ずる気はない、面会に来ないでくれということを断わる趣旨でもって代表一名をというふうに言ったようであります。ところがそれを受けましたところの岩切氏のほうは、数回面会を求めて、きょうようやく面会を認められた、この際にそうした訴訟の促進についてお願いしようということで部屋に入ってこられた。その辺の若干のそごがあったようでございます。そのようなことで、部屋では岩切氏は訴訟のことについていろいろ話そうということで話し始めましたが、中川裁判官のほうといたしましては、もう面会には来てくれるな、来ても自分は会わないという趣旨だということで、今後は面会に来てくれるなということで、そこでちょっと言い合いになりまして、なかなか部屋を出られないものですから、中川裁判官がドアの外に出るように言って、ドアのところで片手を上げて、ドアのノブのところを持ちましてあけて、そして片方の手でもって腰のあたりを押すようにして外に出てもらった、こういうふうな事実であるというふうに報告を受けております。
  244. 正森成二

    ○正森委員 私はその関係の記録をここへ持ってきましたけれども、中川裁判官はいまあなたがおっしゃったような趣旨の意見書をここに書いております。これは昭和四十九年八月七日付であります。しかし、被害を受けた岩切委員長や、あるいは、そのときに部屋の外に三、四人おりますから、そういう人の言ったことを総合しますと、ノブのほうに片方の手をかけて、片方で腰のあたりを、どうぞなんと言ってそれでちょいと押し出したというような、とてもそんななまやさしいものではないのです。いすから立ち上がったとたんに胸と肩をぽんぽんぽんと突いて、そして出すということをやっているのですね。だからこそ問題になったのです。この裁判官は実力を行使して、問題になると、肩やらどこやらにちょいと手をかけて出てもらったように、なかなかことば巧みに言うけれども、しかし裁判官として真実を重んじないという点では、しかも自分が暴力をふるった事件について、あるいは少なくとも有形力を行使した事件について、こういうことを、事実に違うようなことを意見書に書くというのは非常に問題だと思う。  しかも、この意見書を見てみると、それ自体で非常に問題なことを言っておりますね。労働者側に対して会わないのを方針にしている裁判官もおられるようだと言いましたけれども、昭和四十年に首を切られて、不当労働行為を扱う中労委でも地労委でも勝って、中労委が逆に、早いこと守らせてくれというて裁判所に言っているのでしょう。同じ司法部内の東京地裁でも東京高裁でも仮処分事件では勝っているのでしょう。労働者側としては、首を切られてから八年、九年になれば、それについて裁判所が早く決定を出してほしいとかあるいは自分たちの言い分を聞いてほしいとかいうようなことは、各地の労働事件ではそんなことはあたりまえですよ。それを会わないだけでなしに、暴行を加えるというのはもってのほかの上に、この意見書を見るとこう書いてある。「右にみた通りであるから参加人らの五波にわたる面会要求は」――五波なんということを言うておるのですね。まるで敵機でも来襲するようなことを言っている。わずか四人か五人の代表が行っていることをこう言うのですよ。「従前にもまして、その勝訴獲得性、波状攻撃性および大衆団交性をあらわにしたものであり、裁判所の峻厳な対応によるほか、その非を悟らせる道はない。」だから峻厳な対応をするのは当然だとしているのですね。だからぽんぽんと押すわけです。「本件忌避申立書記載事項第二、一において申立人らは、中川裁判官の面会拒否の措置を非難するけれども、むしろ申立人らは右面会拒否事件を通じて申立人らの意図する面会要求はいつでも裁判所の適切な措置によって、その意図を挫かれ、」いいですか、ここからが大事だ。「得るものは屈辱の報いしかないような結果に果てるという、生きた教訓を学びとるべきである。」こう言うておるのです。初めからそういう、七年も八年も、首を切られて、地労委でも中労委でも勝って、東京地裁、東京高裁でも勝っておる、それがまだなかなか救われないということについてお願いする日本国民に対して、得るものは屈辱の報いしかないような結果に果てるという、生きた教訓を学びとらせるためにやったのだ、こう言っておるのです。何という不遜だ。国民の権利を守るのが裁判所でしょう。しかも書記官には一名入れと言っているのでしょう。そのときに、来てもだめだ、これ以上来るなら面会強要だから入れぬのだというようなことは一ぺんも言っていないのでしょう。書記官は、一名なら会うからお入りくださいと、こう言っているのです。その日本国民に対してこういうことをやり、屈辱を与えるのだというような裁判官がどこにありますか。あなた方、これに対してどう思います。
  245. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の意見書は、中川裁判官に対しまして現在東京新聞、訴訟の当事者から忌避の申し立てがございますので、それについて忌避された裁判官が書かれた意見書であろうと思います。その意見書をどういうふうに判断するかということになりますと、これは忌避の裁判をする裁判所が判断をされることでございますので、ここで特に意見を申し上げることは差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。
  246. 正森成二

    ○正森委員 忌避の裁判は係属中かあるいは最初の決定は済んだのかわかりませんけれども、しかしあなた方は司法行政上こういうのを読んでおられるはずだ。忌避の裁判は裁判所で言うでしょうけれども、しかし司法行政上の問題として、裁判内容じゃないのですから、有形力で突き出した、それをどう評価するかというようなことについて、本人が言っているのですから、あなた方はこれを、通常の裁判官はこういうことをしてもいいと思いますか。日本国民に対して、地労委、中労委でも勝ち、地裁、高裁でも勝っている、そういう人が陳情に来たことに対してそういう態度をとり、こういう評価をするというのが通常だと思いますか。あなた方は何かといえば裁判係属中だと言う。しかし忌避だとかなんとかいうのはよくよくのことでないとされないことなんです。その忌避の裁判が係属中だといって、当該悪いことをしたとされている裁判官について論評することができない。一番是正すべき大事なときに何もできないというようなことでは、これは国民は納得しないでしょう。私は、あなたが最高裁の代表として、忌避事件が係属中だからということで答弁はなるべくしたくないと、その顔に書いてあることはよくわかるけれども、答えないなら答えないでもいいけれども、これを聞いている日本国民は、速記録を読む日本国民は、こういう裁判官に対して、これでは日本国民は救われないと思うのは事実です。そのことをあなた方に指摘しておきたい、こう思います。  次の問題は警察庁に対して伺いたいと思います。  昭和四十九年の八月三十日に三菱重工ビル爆破事件、これが東アジア反日武装戦線「狼」、こういうような名乗りをしておるグループによって起こった。そして十月十四日にまた三井物産本社本館で、今度は東アジア反日武装戦線「大地の牙」、こういうような名のりを持っておるグループによって爆破事件が行なわれるということになりました。この犯人たちはいろいろ新聞社などに声明文を送り出してきておるようですけれども、たとえ大企業の活動に対してどういう批判を持っておろうとも、一こういう爆発物による爆破を行なうということは許されません。ましてそこに勤務している労働者あるいは通行人を目して、日帝の中枢につとめておる者は自業自得だといわんばかりのことをやるということは断じて許されません。ところがいままでわれわれが承知しておるところでは、あなた方は一生懸命やっておられるかもしれないけれども、いまだ十分に犯人について検挙はされておりません。たとえば十月十五日の朝日新聞でも「草の根わけても爆弾犯を捜せ」というような見出しの社説が書かれておりますけれども、それは多くの国民の声でもあろうと思うのです。それについてあなた方はどういう捜査体制で、現在どういうところまで犯人を割り出しておりますか。
  247. 半田博

    半田説明員 三菱重工事件につきましては、警視庁の刑事、公安両部合同の捜査本部を設けまして、三百九人の体制で臨んでおります。また三井物産爆破事件につきましては百四人の体制で、これも刑事、公安両部の合同体制で臨んでおるところでございます。  捜査は御承知のように、何と申しましても地取り捜査と申しますか聞き込み捜査、こういうことが基本でございますので、この周辺を中心とする聞き込み捜査というものを現在粘り強く行なっておるところでございます。と同時に、ただいま御指摘のような「狼」でありますとか「大地の牙」であるとかいうふうな不遜な集団がそういった声明文のような、まさに挑戦をしてきておるというふうな感じのものもございます。また犯人像がどうも数人であろうというふうなことでございます。そういうことで極左暴力集団疑いもあるということで、その線もあわせて現在捜査をいたしておるところでございます。アパートローラー作戦でございますとかその他、その筋を追いながら現在捜査につとめておりまするが、現在のところではこれといった、この筋だというふうなところは残念ながらあらわれておりません。
  248. 正森成二

    ○正森委員 アパート作戦とかいろいろやっておるが、現在のところこれだというのはなかなか出てこないということでありますが、私たちは、警察官がこれほど重大な事件についてまだ捜査の端緒がつかめないということは、いわば職務を十分果たしておらないことになるのじゃないか。たとえば今度は住友商事というようなところで爆破するというような予告があって、これは幸い事件に、なりませんでしたが、言うておりますね。やはり日本の勤労者が働いておるところで、あるいは無事の通行者がおるところでこういうことが白昼堂々と行なわれるということは、治安の上から見てもたいへんなことであります。そこで私たちはあなた方に、二十万以上の警察力を持っておるわけですから、そういう点についてはきちっとした捜査をするようにということを申し上げたいのですが、それに関連して別のことを伺っておいて、またこの問題に返っていきたいと思います。  それはあなた方も御承知のように、トロツキスト、中核、革マルといわれておる者がお互いに殺し合いをやり、そして声明を出すというようなことをやっておるということはあなた方は御承知のとおりですね。本年になってから東京都内で何件くらい事件が起こり、何名死者が出ておりますか。
  249. 半田博

    半田説明員 手元にちょっと都内と全国の区別のある資料を持ってまいっておりませんので、全国の数字で申し上げたいと思います。  十月十五日現在で、全部の内ゲバでございます。これが二百十件発生をいたしております。四百八十三人が負傷をして十人が死亡しておる。うち三百六十五人を検挙しておる。こういうことでございます。ただいま御指摘のように、その中で、もと同じ派閥であります中核と革マルとの対立抗争事案というのが最も多うございまして、この二百十件の中で百十九件はこの両派の対立によるものであります。このうち中核派が革マルを攻撃したというのが六十一件、また革マルが中核を攻撃したというのが五十八件、ほぼ半々というふうなかっこうであります。また、これらの内ゲバで中核派が百六十四人、うち死者四人、革マル派に百十二人、死者五人を出しておりますが、このほか沖繩の琉球大学の中で中核派が革マルの人と誤認をいたしまして殺してしまった、こういう事件が一件ございまして十人、こういうことに相なっております。
  250. 正森成二

    ○正森委員 そこで私は、そういうようにたいへんな数だということですが、その中でも特に見のがすことができないのは、最近ではお互いに予告をして、そして殺したり重傷を負わしたりしたあと、お互いに戦果を得々として記者会見をしているというような風潮になっております。あるいは機関紙の中でおれたちがやったということを誇示し、あるいはまたやってやるのだということを言っておる、こういう状況になっておりますね。これはあなた方が御存じのとおりであります。  そのうちの幾つかの典型例をあげますと、たとえば九月十六日の「革共同通信」というのを見ますと、これでは九月十日に中核派の労働者が革マル派に殺されたことに対して報復を宣言して、「どんな手段に訴えてでも、革命的「等価原則」にのっとった報復を、血の復讐を断固として貫徹する」というようなことを言うておるのですね。あるいは、「高橋同志虐殺は、狭山闘争にたいする反革命的介入などに破産したカクマルの断末魔のあがきである。松崎明をはじめ労働戦線に巣くうすべての反革命分子、全逓カクマルに血の報復を」こういうことを言うておるのですね。特にこの場合は、九月十四日に中核の政治局員などといわれておる北小路敏が記者会見をして、そして「高橋同志の報復のためにやった」とか、今後も続けるんだということを言うておる。これに対して革マルのほうの「解放」という機関紙がありますね。それを読みますと、「わが戦士たちは難なくアジトに突入、高橋の身体に階級的怒りに燃えた鉄槌をたたきこんだ。恐怖に震えて声も出せないこの突撃隊員は右肩、右手首、右足にしたたかな鉄槌をくらって「撃沈」されたのである」こういうことを堂々と書いておるのですね。そして十月三日にも御承知のように、一日に二つもお互いに殺し合い、傷つけ合うということがありましたが、それについては両方とも記者会見をして、たとえば中核派は、「これは高橋範行の報復第一弾である」今後もやるんだということを言うておるわけですね。まことに傍若無人だといわなければならないと思うのです。  あなた方は、こういうように記者会見をして、みずから認め、さらに予告をするというようなことに対して、法律上の何らかの条文を適用して、これらの記者会見をしている中心人物あるいはその他について規制をなさるおつもりはありませんか。
  251. 半田博

    半田説明員 ただいま御指摘のように、いろいろ彼らの機関紙等の中にそういった予告でありますとかいうふうなものが出ておるわけでございますが、ただ、現実に捜査をしていく場合には行為者を特定しなければならないわけでございます。そういう点で行為者の特定ということになりますと、たとえば最近はそういうところに捜索をしましても、捜索場所を転々と変えておる、原稿が入手をできない。これはやっておるのでございますけれども、なかなか行為者の特定ができないというふうなことでございます。そういうふうなことでいろいろいま知恵をしぼって考えておるわけでございますけれども、そういった一般的な形では出るのですが、個々の事件を立件するという段階になると非常に困難が伴っておるというのが現状でございます。
  252. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ刑法上の措置をとるには困難な点もあると思いますけれども、ここまで傍若無人なことをやっておる場合に、たとえば殺人の予備という条文もありますね。これは殺人の教唆ということですと、共犯従属性説の立場に立てばこれは非常に厳密な要件が要りますが、殺人の予備ということになれば、予備ですから、まだ実行されていないわけですから、これは刑も軽いかわりに構成要件も比較的ゆるやかである、こういうようになっておりますね。ですから、あなた方がおやりになるつもりであれば、あなた方が情報を得られておるのは日本共産党の情報だけではなしに、このような集団についての情報も得られておると思うから、できないことはないと思うのです。それをなさらないというのは、あなた方がこれらの人々を泳がせるという方針をかつてとられたことがあると私どもは考えております。そういう続きがまだ残っておるんじゃないかという重大な疑いを持たざるを得ないのですが、そういうことはありませんか。
  253. 半田博

    半田説明員 殺人の教唆という問題につきましては、ただいま御指摘のように、従属性説に立ちますとなかなかむずかしい問題がございますということでございますが、泳がせているのではないかというおことばでございますけれども、私どもといたしましても、極左暴力集団のために多数の警察官の血を流しております。したがいまして、私どもはそのような考え方は全くございません。一生懸命やっておるつもりでございます。
  254. 正森成二

    ○正森委員 いま一生懸命やるというようなお話でしたから、そういう立場でしかるべくやっていただきたい、こう思います。  ただ、私はあえてそういうことを言いましたのは、あるいは残念でお気にさわったかもしれませんが、歴史的沿革を申しますと、非常に言いにくいことですが、かつてわれわれの同僚議員の保利茂氏が、「三派全学連は泳がせておいたほうがよい」こういうように公言されたことは公知の事実であります。また、中曽根通産相が「佐藤内閣をささえているのは、反代々木系学生の暴走だという見方もある。彼らの暴走が、反射的に市民層を反対にまわし、自民党の支持につながる作用を果している。」これは一九六九年五月三日付の朝日新聞であります。こういうように報道されております。あなた方はやはりそういう政府の統制下にあるということをわれわれとしては考慮せざるを得ない。しかも、あなた方自身、六〇年安保闘争の当時に、唐牛健太郎などのトロツキスト幹部があなた方の小倉警視総監らと会っておったというのは厳然たる事実であります、本人がテレビで言うているのだから。また、アナーキストの背叛社があなた方のある警部を通じて資金供与を受けていたということも同事件の裁判で明らかになっております。ですから、あなた方がこれほどの爆弾事件やあるいはお互いの殺し合い事件、そしてまたあなた方警察官も多数負傷されるということについて、泳がせるというようなことはないと万々信じたいけれども、しかし過去にそういういきさつがあったから、痛くもない腹を探られないようにということを言っているわけで、あなた方としても厳に、警察法にいう公正、公平な厳然たる態度をやはりとられるようにあえて注文しておきたいと思います。そして成果をあげていただきたい、こういうことを私どもは期待しておきたいと思います。  それでは、時間がありませんので次の問題に移らしていただきます。  私は、四月十日に当委員会少年院の問題について質問をいたしました。そのときには、少年院で教官が少年に対して非常な暴行をふるっておるということについて証拠をあげて申しまして、そのうちの相当部分については長島矯正局長もお認めになり、是正をお約束されたところだ、こう承知しております。私はそういう質問もいたしましたので、去る十月の十五日に、私がまさに質問しました当の少年院である浪速少年院と奈良少年院に参りまして、いろいろ矯正局の御配慮もありまして逐一内部を視察させていただきました。その内部の視察では、所長がいずれも、ここ二、三年そういう不祥事は絶対にないということでございましたし、私どももそうであろうと信じたいと思います。  ただ、その視察のときに、二、三私が感じたことがありますので、少年院についての行政の改善について若干皆さん方にお願いを申したい、こういうように考えております。  まず第一に、少年院の少年というのは十七、八歳から二十歳くらいですから、非常に食べ盛りであります。そして外に出られませんから食事というのが非常な楽しみだということは、これは局長もおわかりだと思うのですね。一体この少年が一日に幾らの食費で毎日を暮らしておるか、まずお答えを願いたいと思います。
  255. 長島敦

    ○長島説明員 現在の少年院の食費でございますが、一人一日当たり、主食が九十七円六十五銭でございまして、副食費が百四円七十九銭でございます。合計いたしますと二百二円四十四銭になろうかと存じます。
  256. 正森成二

    ○正森委員 この九十七円六十五銭というのは、十月一日に主食が三割上がるということの以後の値段であって、九月三十日まで、あるいは十月初めでも前に買った米を使用しておる場合にはこれはもっと低いのではありませんか。
  257. 長島敦

    ○長島説明員 御指摘のとおりでございまして、十月一日分から米代が三二%上がっております。その結果でございまして、それまではおおむね七十七円見当でございます。
  258. 正森成二

    ○正森委員 そうですね。私は参りまして伺いましたら、主食が七十七円で副食が百四円何がしということでありました。これで三食食べるのですね。私はどういうものを食べているかと思って、お願いして、昼御飯は少年院に入っている子供たちと同じものを食べさしてもらったのですけれども、御飯のほうは四割麦ですね。だからだいぶ麦が上のほうにずっとあります。しかし食べてみると案外、私食べられないかなと思ったけれども、お茶わんに二杯分ぐらいはおいしく食べられる。これじゃ刑務所に入っても当分いけるかというように思ったわけですけれども、副食が百四円というのは何と言っても少ないですね、これで三食なんですから。どうやっているのだと言って聞きましたら、院の中の畑でいろいろ野菜をつくって、それを国家が安く買い上げるというかっこうで事実上の補食をしておりますけれども、それ以外では、考えられるありとあらゆる一番値段の安いものを買うてくるのだそうですね。もう牛肉なんかとてもだめだから、鯨と豚、そのうちの一番安いものを買ってくる。そして魚でも、一番安いものですから鮮度の非常に落ちたもの、それを買ってくるということで四苦八苦して、何とか、子供たちが成長期なので、三千カロリーとらしている。しかし副食費があまりに安いので、主食で二千四百カロリー、副食で六百カロリーとるのだ。主食で二千四百カロリーとらそうと思うと、勢い米と麦、麦の割合を多くして、それで主食で食べさせなければならない。主食では大体、私らのよそうお茶わんの入れ方では六杯分くらいありますね。五杯より以上あるのです。私が行ったのでは四割も食べられなかったですね。それはまずいからではなしに、おなかが一ぱいになるからですね。そういう主食でカロリーをとらしているから、出た子供は胃拡張になる。つまり、主食をぎゅうぎゅうおなかに入れるわけですから。そういうような状況というのは、少年院というのは刑務所じゃないのですから、だから非常に気の毒だと思うのですけれども、来年度の予算でどういうぐあいに是正されるおつもりですか。
  259. 長島敦

    ○長島説明員 ただいま御指摘のような実情は私どもも十分に認識しておりまして、毎年この食費の改善について努力を重ねてきておるわけでございます。  お尋ねの来年度の予算につきましては、まず主食につきまして、パン食をもう少しふやしていきたいということで、二日に一ぺんくらいパン食を給与できるようにしたいということでございます。同時に、米麦の混合率をもう少し米の量を割合をふやすというような要求を兼ねまして、全体として主食につきましては百十二円九十八銭という線を要求に出しております。副食につきましては、御指摘がございましたように動物性たん白等が不足しておりますので、そういう部分に重点を置きまして内容の改善と、それから物価値上がりに伴います増加という両方合わせまして、現在の菜代に比べまして三二・五%増ということで百三十八円八十四銭ということでございますが、合計いたしますと二百五十一円八十二銭になると思いますが、ぜひこの程度の金額を最低限として認めてもらいたいという最大の努力をいたしたいと思っております。
  260. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ御苦心をなさっておるようですが、矯正局長に伺いたいのですけれども、同年配の青年が、これは悪いことをしたわけではなしに、憲法上いろいろ議論があるにしても、公務員として働いているわけですが、自衛隊の隊員が一食どれくらいの副食費であるか御存じですか。――もし御存じなければ私のほうから申します。
  261. 長島敦

    ○長島説明員 私どもも調べたものを持っておりますが、あるいはこれが古い材料かとも存じますけれども、私の手元にございますのでは、主食、副食合わせまして一日三百九十三円という数を持っております。
  262. 正森成二

    ○正森委員 私が調べましたところでは、陸上自衛隊が主食、副食合わせて三百九十三円、うち副食が三百四円であります。副食が三百四円ですから少年院の約三倍です。海上自衛隊の場合は四百七十六円で、うち副食が三百八十六円であります。これ自体それほど高いとは言えないかもしれないけれども、同じように二十前後の若者が、一方は非行を犯したとはいえ百四円ぐらいの副食費だ。上がっても百三十八円前後だ。もちろん自衛隊員というのは悪いことをして行ったわけじゃない。憲法上いろいろ問題があっても、政府の立場としては国を防衛するということになっておるから、だから栄養をとるのはあたりまえかもしれないけれども、三倍ないし四倍、つまり三分の一ないし四分の一というのはいかにも気の毒ですね。改善されてもせいぜい百三十八円、それで三食やらなければならないということですね。私は実際に中にいる子供たちを見てきましたけれども、やはりあれじゃ食べるほかあまり楽しみがなかろうというように思いますと、これはいろいろ改善をすることが大事だと思うのです。法務大臣がきょうおられませんので、政務次官に、予算請求上こういう最小限の要求がいやしくも削られないように、場合によったらそれよりも増額できるように御配慮願いたいと思いますが、いかがですか。
  263. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 ただいま矯正局長からも御答弁申し上げましたように、この食費の改善につきましても一生懸命努力いたしておるわけでございます。野菜や食品の購入などにつきましてもいろいろくふうをいたしまして、また栄養士による給食指導等もできるだけ行なうようにいたしまして改善につとめておるわけでございますが、正森委員のおっしゃることは私もまことに同感でございますので、新年度の予算につきましてはできるだけ要求を実現いたしますように私どもも努力いたしたいと思います。
  264. 正森成二

    ○正森委員 もう一つ、私が少年院を見てまいりまして感じましたのは、非常にじみな仕事であります。その中で職員は、私が見たところでは一生懸命やっておるようですけれども、職員の士気を高めるためには、各地に分散しておって、しかも刺激、変化がありませんから、どうしても中央へ集めて一定期間宿泊した上での研修、それから特に優秀な者、また成績がいい者とかあるいは子供たちに対する接する態度が非常にいいというような人は海外研修の機会を与える。それも幹部だけでなしに、第一線で働いている一番苦労している教官にそういう制度をつくってあげるということが士気を高める上で非常に大事だと思うのですけれども、それが比較的少ないように思われるのです。そこで、現状と、それをどういうぐあいに改善しようと考えておられるかを一言でいいですからお答えいただいて、この問題についての質問を終わりたいと思います。
  265. 長島敦

    ○長島説明員 研修でございますが、現状は主として中央にございます矯正研修所でやっております。これは高等部の研修とそれから専門研修をいたしております。高等部の研修につきましては、現在少年関係が年三カ月間の研修でございますけれども、来年度は六カ月に延ばすようにということで要求をいたしております。それから専門研修がございますが、これにつきましても相当大幅なコースの増加を要求しておるわけでございまして、各専門家につきましてなるべく中央の研修所に来れるように考えております。同時に、地方の管区にございます研修所のほうもこれに沿いまして、研修をなお増加するように要求いたしております。  外国の出張の関係でございますが、この点につきましては、現在いろいろなルートがございまして、人事院から参りますもの、科学技術研究で参りますもの、そのほかに矯正特有のものといたしまして、アメリカの南イリノイ大学との間に交換研修と申しますか、向こうの援助による研修がございます。そのほかにも矯正特有の海外研修がございまして、これらに毎年少年関係の職員が一名ないし二名は外国に出張しておるわけでございます。  これにつきましては別に幹部とか何とかいう限定はございませんで、私のところで一応の語学の試験をいたしまして、海外研修にたえるという者を選定いたします。近くまた選定がございますが、少年院から約九名ほど教官等から希望者が出ておりまして、そこの中から選ぶつもりでおります。こういう点は、能力があれば行ける機会がかなりいま開かれておるわけでございますが、今後の問題といたしましてはなおさらに機会をふやすように努力いたしたいというふうに考えております。
  266. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんからこの問題はこの程度にしておきますが、研修の機会を与えてほしい。それは自分たちの子供に接する態度をさらによくしたい、こういう願いからきていると思うのです。それはぜひかなえてあげてほしい。  それから、少年院に入所する子供たちの数は最近減っております。したがって入院する子供の数は数年前に比べて少ないわけですが、しかし保安上のこともあって非常に夜の勤務も多いということで、やっと普通の公務員に近づいてきたかというところですから、入所する子供たちが少ないということで直ちに人員を削減されたりしちゃ非常に困るという気持ちがあるわけです。したがって、少年院に入ってくる子供たちは年によっては増減があるわけですから、たまたま一、二年あるいは二、三年減少傾向にあるからといって、予算を可決するわれわれの立場としては、それほど金をむだ使いせよとは言いませんけれども、あまり短期的な視野に立たないように希望しておきたいと思いますが、その点はいかがですか。
  267. 長島敦

    ○長島説明員 少年院におります者といたしましては、過去の過剰収容時代はほんとうに少年の教育が十分できなくて切歯扼腕したと思うのでありますけれども一現在ほんとうにこれから教育ができるという体制になっておると思います。そういう意味で私どもも、来年度におきましても一応少年院の職員の増員も要求しておるということでございまして、一そう教育を強化、充実したいというふうに考えておるわけでございます。
  268. 正森成二

    ○正森委員 いま少年院や自衛隊の食費の関係が出ましたので、文部省が来ておられると思いますが、学校給食の問題について少しだけ伺っておきたいと思うのです。  学校給食というのは、これは教育の一環として非常に大事だと思うのです。しかし実際上、子供たちの一食の値段というのは非常に安いのです。あなた方よく御存じですが、学校給食法の六条の規定がありますから、国の補助というものはきわめて少ないと思うのですけれども、現在は小麦粉に対しては流通の経費の補助という形で、また牛乳に対しては酪農振興法か何かで補助があると思いますが、締めて幾らですか。
  269. 加戸守行

    ○加戸説明員 御質問のございました牛乳につきましては、農林省のほうで予算を計上いたしまして、酪農振興の観点から一人当たり二〇〇cc一本につき五円八十銭の国費補助を行なっておりまして、総額で百七十四億に達しております。それから小麦粉流通経費のほうにつきましては、総予算で一応十億七千万円の予算でございまして、これは小麦粉の流通経費補助でございましたから、パン一個当たりに換算いたしますと、それぞれ生徒の量によって、小麦粉の量によって違いますけれども、おおよそ六十銭見当ということになっております。
  270. 正森成二

    ○正森委員 牛乳代については四十五年から変わってないのですね。それはお認めになるでしょう。それから小麦粉については逆に、百グラム当たりを考えるとむしろ年々減っているというかっこうになるのです。この物価高の中でそういうような状態だ。  そこであなた方について、こういうことでは困るというように思うのですけれども、文部省で「学校給食法並びに同法施行令等の施行について」という文書を出しておりますね。その文書は、学校給食法六条等で負担がきまっておりますね、どういうぐあいにお金を負担するか。その分担は絶対的なものではなく、地方公共団体や学校法人その他が給食費の一部を補助することはかまわない。要するに学校の設置者と保護者の密接な協力によって円滑に実施されることが望ましいという趣旨だと承知しておりますが、そう理解してよろしいか。
  271. 加戸守行

    ○加戸説明員 学校給食法の第六条第二項では、学校給食に要します経費のうち、施設設備費及び人件費につきましては学校の設置者の負担といたしておりまして、それ以外の経費が父兄の負担という形になってございます。それ以外の経費と申し上げますのには、食材料費と光熱水費がございまして、現実の実態といたしましては光熱水費のほとんどを市町村で負担している実態にございます。それから、食材料費につきましては、たてまえとして父兄負担でございますが、本年五月現在の調査によりますと、十七都道府県、三百七十一市町村におきまして総額三十五億円の公費の補助が支出されている状態にございます。したがいまして、学校給食のたてまえとしては、食材料費につきましては父兄負担が原則でございますけれども、当該市町村、自治体等の実情に応じましてそのような公費の補助が行なわれている実態でございまして、先生御指摘のとおり、学校給食の実施は父兄と学校の設置者との共同の責任において実施するというたてまえのもとに、このような問題につきまして今後とも文部省としてどのような形で取り組んでいくか、いま慎重な検討を要する事柄でもございますし、保健体育審議会におきます学校給食分科審議会等での御審議をいただきつつ、今後の学校給食に対するあり方についての検討を続けておる段階でございます。
  272. 正森成二

    ○正森委員 そこで申したいのですけれども、そうすると、たとえば大阪の場合は低学年の学校給食費は千百三十円、高学年千百七十円、市の説明によりますと、この中からミルクからパン代から全部出すわけですから、最近の物価高の中で一食が二十円切れそうになっているということまで言っているんですね。そうすると、これは少年院よりもまだ悪いぐらいだというようなことになってくるので、それを質を落とさないようにするにはどうすればいいか、これは父母の負担という場合もあり得るでしょうけれども、この物価高の中で地方公共団体、市とかそういうところが分担してほしいという声も当然起こってくると思うのですが、その場合に、それを絶対に市が負担してはならないということにもならないわけですね、あなたのお考えによりますと。いまそう伺いました。そうなると、父母の団体やあるいは婦人の団体が教育委員会に対してこの給食費の値上げを行なおうとする動きがある、あるいは給食の内容が低下しておる場合に、その問題について話し合いたいから交渉してくれというのは正当な要求で、教育委員会関係部局はそれに誠実に応じなければいけないと思うのですが、それはそうですね。
  273. 加戸守行

    ○加戸説明員 公費負担の問題につきましては、市町村のほうではいわゆる財源措置が交付税上なされておりません関係上、そういう形で全国的に波及いたしますと、財政需要の苦しい市町村におきましてはいわゆる超過負担の問題を生じてくるわけでございます。その意味におきまして、この給食費負担の問題につきましては、国の問題として検討すべきであるということでのいろいろな考え方があり得るわけでございます。現時点におきましては、そういった考え方のもとで、私どもの考え方の基本は、食材料費の父兄負担が原則である。それに対して国なり市町村なりがどういう形での援助措置をとり、あるいは購入するおかずの材料をどのような形で安くしていくか、そういった方面の努力を今後とも重ねたいと考えておる次第でございます。  御指摘の、教育委員会がその話し合いに応ずるべきかどうかという問題でございますが、これは学校給食が自治体と父兄との共同実施のような形でございますので、それは十分父兄の意見を参考に取り入れて学校給食の運営のしかた等を考えるのは当然のことと考えております。
  274. 正森成二

    ○正森委員 ところが、大阪の教育委員会の学校保健課長の葭谷という男がおります。そして、大阪の新日本婦人の会という二万名ぐらいの団体がありますが、そこから学校給食についての要請書を出されて、九月二十六日に交渉をしたのですけれども、ほかの交渉もあったところが、この課長は来るのがおそくなったために交渉ができないで、一週間ないし十日のうちに交渉する、こういう約束をして退席したのですね。ところが一週間たっても何ら連絡をしてこない。そこで関係事務局の人が以後毎日連絡をしておるのに、行くえをくらまして、そしていつ会うという電話さえかけてこないということが約二十日間近く続いたのですね。こういう態度というのはもってのほかだと思うのですけれども、そういうことがあるとすれば、あなた方はこういう人に対して、いまあなたが答弁された趣旨に従って、結論がどうなるか、言い分を全部聞くかは別として、ともかくお話し合いになって、父母と協力して円滑に学校給食が行なわれるようにすべきだという指導をなさるべきだと思いますが、いかがですか。
  275. 加戸守行

    ○加戸説明員 学校給食の問題につきましては、それぞれの学校を設置する設置者が最終的にはそのあり方等について決定するわけでございますが、御指摘のように、父兄の意見を十分参考として聞くというのが正しい姿勢かと考えております。
  276. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんが、大阪の浪速区に難波中学というのがございます。その難波中学では、十月二日から一年生の生徒が学校教師をいわば糾弾というようなことをやりまして、非常に長い間にわたって授業が実施されておらないというような状況があります。この学校では、子供たちが二階や三階から下を歩いておる生徒に水をかけたり、机やいすを授業中に四階からほうり投げたり、あるいは授業中に絶えず席を離れて落ちつかないというような状況がありましたので、教師と生徒が話し合って、授業中教室を出たり入ったり、おらぬようになったりするのはその本人が悪い。第二番目に、しかし、それを見て見ぬふりをして注意しない先生も悪い。第三番目に、お互いに注意し合わないクラスメートも悪い。こういうことでみんなでよくしょうということになりかけたら、一部の生徒がそれに対して非常に不満だというようなことで事態が発展したようであります。私は、教育というものは非常に慎重でなければならないから一がいに結論は出せない、時間をかけなければならないというのはわかりますけれども、そのために二週間、三週間にわたって勉強ができない。しかも、これは警察関係の方はあるいはつかんでおられるかもしれませんが、十月八日には小川という先生がぶんなぐられて、最初は芦原病院へかつぎ込まれたのですが、手当てができないというので富永脳外科へ行って、大野病院に入院するというような事態が起こっておるのですね。これは生徒にぶんなぐられたんです。それから十月十二日には、さらに校長や教頭の目の前で只腰という先生がぶんなぐられているというような事態が起こっておるのですね。  ところが、これについても現地の教育委員会措置をとらない。父兄のほうから要求が出まして、父兄の方はこういう要求をされているんです。「一日も早く授業を正常に戻してほしい。その上で話し合いが必要なら、ホームルームの時間または放課後にやってほしい。暴力が野放しになっていたり、授業中に子供が教室から出たり入ったりすることについては、先生は厳格な態度で臨んでほしい。」これは親なら当然の要求ですね。そういう要求についても教育委員会は一向に措置をとらないということが起こっておるのですね。あなた方はこういう点を知っておられますか。あるいは知っておられないとすれば、報告を受けてしかるべき措置をとりたいと思いますか。
  277. 島田治

    ○島田説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘ございました件でありますけれども、私どもも教育委員会から報告をまだ十分受けておりません。ただし、ある団体から若干の御指摘もございました。私どもいま大阪府の教育委員会を通じて調査中でございますが、十分な資料は私どもの手元にはまだ届いておりません。いずれにいたしましても、遺憾な点があれば十分大阪府の教育委員会を通じて指導したい、こう思うわけでございます。
  278. 小平久雄

    小平委員長 正森君にちょっと申し上げますが、だいぶお約束というか話し合いの時間が経過しておりますから、簡単にひとつお願いいたします。
  279. 正森成二

    ○正森委員 もう終わらしていただきます。  それじゃ課長、遺憾な点があればと言われましたが、十月二日から二週間以上にわたって授業が行なわれていないというのは事実なんです。それはもう聞いたらすぐわかります。そういうことは、いずれにせよ教育内容をどういうぐあいに改善していくかということはもちろんですけれども、是正されなければならないと思いますが、いかがですか。
  280. 島田治

    ○島田説明員 御指摘をまつまでもなく、学校で授業が行なわれない、これはまあどういう理由があれ好ましいことではないわけでございます。したがいまして、そういう正常な形で学校で授業が行なわれない、こういうことにつきましては十分大阪府の教育委員会を通じて調査をして指導いたしたいと存じます。
  281. 正森成二

    ○正森委員 それでは、二、三ほかに、最近の中学校などで窃盗事件その他が起こっておるということで、少年院にからんでいろいろ質問したいというようにも思っておりましたが、時間が参りましたので終わらせていただきます。
  282. 小平久雄

    小平委員長 次に、青柳盛雄君。
  283. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は、昭和二十三年に起こりましたいわゆる帝銀事件、その被告であり、また有罪を言い渡され、死刑判決の確定した平沢貞通氏に対する行刑に関連してお尋ねをいたしたいと思います。  この事件が発生しましたのは二十三年の一月二十六日で、二十三年の八月二十一日に平沢貞通氏は小樽で逮捕され、自来今日まで二十六年間拘禁されているわけであります。そして昭和二十五年の七月に東京地方裁判所で死刑の判決を受け、その後控訴、上告いたしまして、最高裁判所で昭和三十年の四月に上告棄却で死刑が確定をいたしました。死刑確定から現在まですでに十九年という月日がたっておりますが、いまだに刑の執行は行なわれておりません。最初は東京拘置所におられ、その後、いわゆる死刑執行場所と俗にいわれている宮城の刑務所に移されてからもすでに相当の年月がたっております。現在、平沢氏は年齢八十二歳といわれている老齢でございます。しかも持病があるばかりでなく、ほとんど自分の歯は抜け去ってしまったというような状態で、かたいものはもちろん、流動食も十分に摂取できない。そのため、ことしの夏からでしょうか、点滴を受けているということであります。こういう状態の平沢氏をそのまま刑務所に拘禁しておくということは、これはもう人道上の見地から考えてもとうてい納得のいかないことであるばかりでなく、人道を基礎に置いて行なわれる刑の執行という立場から考えましてもとうてい黙視できないというのが世論でございます。  ことしの七月に心臓が急に弱くなったというようなことが直接の原因になりまして、平沢氏の生命についていろいろの関心を持っておられる外部の方々はもちろん、刑務当局でも、このまま宮城刑務所の病監というか――病監へ入れてあるかどうか、私、ちょっと知りませんが、宮城刑務所の医療施設をもってしては十分な治療は考えられないということで、どこか適当な外部の病院に移して、そしてそこで治療を行なうということが望ましいんではないか、また法的にもそれが希望されるんではないかということで、幾つも新聞が報道いたしておりますが、東北大学の医学部と相談をした結果、医学部のほうでもいろいろ慎重に検討した結果、受け入れるという方向で意思決定ができたそうでありまして、そういう状況のもとで十月三日ごろのいろいろの新聞では、もう今週中にも移送されるんではなかろうか、おそくとも来週中にはというふうに報じ、気の早い人はもうすでに東北大学の附属病院に落ちついて治療を受けているんではないかというふうに即断をしている向きもあるわけであります。しかるに、すでに一週間以上を経過しているわけでありますが、いまだにその気配がないという状況でございます。これはもうほとんど周知のことでございますから、少しくどくなりましたけれども……。  いずれにしても、先ほど同僚議員からも質問がありまして、病状については万全の措置をとっているという趣旨の御答弁もいただいているわけでありますけれども、獄中において万全の措置をとるということでいいのかどうか。万全の措置と言うからには、いろいろ考えられる措置をとって初めて万全と言えるんであって、まあ持ち合い状態だから、まだ死にはしないから、いよいよ危篤状態にでもなったらそのときには考えよう、そのときのための準備をしていたにすぎないんだというようなことでは、これはとうてい納得がいかない。  そこで考えられることは、こういうふうに新聞に報道されたことが事実であったにもかかわらず、その後何か違った状況が出てきたんではないか。つまり病状が非常によくなったというようなことはなくて、せいぜい持ち合いかあるいは徐々に悪化しているにすぎない、だからそのほうの変化はむしろマイナスには働かないでプラスに働くわけなんで、何か逆の方向へ、死刑囚を出してはいかぬというようなそういう外圧が出てきて、そうしてこの行刑を正しく運営させないんではないか、そういう疑いを持つわけでありますが、この点について明快な御答弁をいただきたいと思います。
  284. 長島敦

    ○長島説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、行刑当局といたしまして平沢を病院に移すという決定はいまだいたしておりません。新聞に出ましたのは推測記事と申しますか、そういう記事でございまして、私どもの関知しないところでございます。したがいまして、外部的な阻害要因があってこれが延びているというわけでは全くございません。午前中にも申し上げたのでございますけれども、私ども行刑当局としてできますことは、法律に従いまして、公正に、公平に、収容者の区別なく法律を適用するということでございます。私どもとしましては、監獄法に定めておりますような条件を満たして、病院に移すのが適当だという判断に達しますればその時点において決断をするということでございまして、いずれかの方面からの、何と申しますか、外部の圧力によって左右されているものではございません。
  285. 青柳盛雄

    ○青柳委員 新聞の報道は関知するところではないという答弁でありましたが、それは関知しなくたってかまいませんけれども、宮城刑務所で平沢氏の処遇について何らかの措置を研究をした、検討したという事実、つまり専門病院へ移送することで彼の病状を多少でも回復の方向に持っていくことができるかどうかというようなことで検討したかどうか、この事実はどうですか。
  286. 長島敦

    ○長島説明員 ことしの七月の初めごろだったと思いますが、一時心臓に結滞がございまして、たいへん施設としましては心配をいたしました。あらゆる方策で治療いたしまして、外部のお医者さんにもいろいろ来ていただいて治療もいたしたわけでございますが、そういうような状態でございましたのと、それから何しろ老齢でございますので、一種の老衰状態にも入ってきておりますので、万が一施設内で十分に診断なり治療なりができないような事態が起こるかもしれないということが予想されましたので、それに対しまして準備的な対策と申しますか、そういうものを検討したのは事実でございます。
  287. 青柳盛雄

    ○青柳委員 心臓が弱っておって、その心臓がよくなったというような状況が出てきたのかどうか、それをお尋ねいたしたい。
  288. 長島敦

    ○長島説明員 そういう状態がございましたので、外部の専門の医者にも見てもらいまして、それに適応する治療をいまも続けておるわけでございます。そういう状態のもとにおきまして、現在ではその点について格別の、目につくような異常はないと申しますか、小康状態を得ておるというふうに聞いておるわけでございます。
  289. 青柳盛雄

    ○青柳委員 心臓の問題だけで移送するかどうかというようなこと、これは非常に専門的な知識と判断が必要になってくると思いますけれども、いずれにしても八十二歳という高齢の方が、ちょっとしたショックでもすぐ生命に大きな影響を及ぼすということはそれほど専門的知識を必要としない、われわれの経験から割り出せることだと思うんです。もし平沢氏が死刑囚ではなくて、たとえば懲役十五年とかあるいは無期懲役とかいうような刑に処せられているとするならば、刑事訴訟法の四百八十二条「自由刑の執行停止」という規定がございますが、「懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者について左の事由があるときは、刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によって執行を停止することができる。」といって、第一号に「刑の執行によって、著しく健康を害するとき、又は生命を保つことのできない虞があるとき。」第二号には「年齢七十年以上であるとき。」こういうのにまさに該当して、刑の執行が停止される可能性は多分にあると思うんですね。ところが、たまたま平沢氏は死刑であって、「死刑執行の停止」というのは刑事訴訟法四百七十九条第一項、「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によって執行を停止する。」つまり心神喪失の状態。生命はあぶなくてもこれは執行停止はしない。しかし、たとえば精神異常になって、自分が殺されるということ自体も認識できないような状態になったときだけはとめておくという規定がある。そこでどうも四百八十二条「自由刑の執行停止」のようなわけにはいかぬという解釈から、これをいつまででも入れているのではないか。つまり自然死を待つといいますか、いずれにしても異例なことがこの帝銀事件については起こっている。  というのは、これは世界でもおそらく歴史がないと思うのですね。刑の確定後十九年も、歴代の法務大臣、何人おかわりになったか知りませんけれども、おそらく刑の執行の命令を出すためには記録をお読みになるということがあると思いますし、読まれたかもしれないし、あるいは再審の請求があったりあるいは恩赦の請求があったりしているから、記録は読まずに、したがって判こも押さずにということで命令は出なかったのかもしれませんが、いずれにしても刑が確定して十九年、逮捕後二十六年というような四半世紀をこえるこういう状態で、しかもよわい八十二歳で、これはまことに異例な事件であります。  私は時間がありませんから、この事件について、再審制度が非常に不備であるということが無実を明らかにしていないのではないかということも論じたいと思いますし、また真犯人は別におられるのだ。なくなったSという軍医中佐が毒薬を手に入れる可能性のある職業の方であった、あるいは当時アリバイが平沢氏にはあったというような、こういうような点でまことに奇々怪々な事件というか、要するに自然死を待つ以外にないというような状況であるわけでありますから、私はひとつ検討していただきたいと思うのでありますが、死刑の言い渡しを受けた者は一体なぜ刑務所にとまっているのかというと、これは刑法十一条の第二項に「死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ其執行ニ至ルマテ之ヲ監獄ニ拘置ス」という規定がある。だから、死刑の言い渡しを受けて外に出ているということはまず例外ということにならざるを得ないわけでありますけれども、しかし監獄法によりますと、第九条に「本法中別段ノ規定アルモノヲ除ク外刑事被告人ニ適用ス可キ規定ハ」「死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用」する。つまり、未決拘禁の状態と同じであるというようなことを考え、いろいろ総合いたしますと、やはり刑事訴訟法四百八十二条の禁錮刑の執行中と同じような状況にあるわけですね。だからこの四百八十二条を拡張解釈というか、していくならば、死刑の執行停止ではなくて、要するに死刑を行なうまでの間の拘禁の執行停止ということが行なわれてよろしいのではないか。これは決して拡張解釈ではないし、法の体系を乱るものでもないと思いますが、いかがでしょうか。
  290. 長島敦

    ○長島説明員 ただいまの点は刑事訴訟法の解釈に関するものでございまして、私の所管に属さないところでございますが、従来の解釈といたしましては、先生の御指摘にございましたように、死刑につきましては執行停止というものは限られた場合しかございませんというふうに解釈されておると存じます。  なお、ついででございますが、死刑以外の自由刑につきまして刑の執行停止の規定がございますか、これと監獄法の病院移送の規定とは一応無関係と申しますか、一般の自由刑の場合でございますと刑の執行停止の規定がございますので、病気になりましたような場合で外部の病院の治療が適当だというような場合には、第一次的には検察官のほうに連絡をいたしまして、刑の執行停止をもらいまして外部の病院に出るのが普通でございますけれども、緊急を要するような場合にはさような手続によらずに、在監者の身分のままで外部の病院に移すことがございます。それが監獄法の規定であろうかというふうに考えておるのでございまして、監獄法の解釈としましては、その規定は、死刑であると自由刑であるとを問わず、監獄法の規定は適用があるというふうに解釈しております。
  291. 青柳盛雄

    ○青柳委員 確かに、矯正局長とすれば、刑の執行の停止とかいう問題は専門というか担当ではないですから、むしろ監獄法の運用ということになるでしょうが、私はそういう解釈も許されるんじゃないかというふうに考えておりますが、安原刑事局長はどうお考えになりますか。
  292. 安原美穂

    安原説明員 いま矯正局長からお答え申し上げましたように、自由刑におきましては、いわゆる刑の執行停止ということの意味は、結局外部の病院において治療する場合には刑期の進行がとまるという実際的な問題がございますが、死刑囚につきましては、刑の執行はすなわち命をなくすことでございまして、その間は、先ほど御指摘のように刑事被告人と同様の扱いをするということでございますので、執行停止ということよりも監獄法に基づくところの病院移送で十分に事態をまかなえるということで、刑事訴訟法には特段の規定がないものと理解をいたします。
  293. 青柳盛雄

    ○青柳委員 死刑囚であろうとどういう既決囚であろうと、再審の権利というものはあるし、その結果青天白日の身になることも多々あるわけでありますから。多々あると言うと少し狭き門を広げたみたいなことを言うようになりますが、外国には非常に多いし、日本でも制度が変わればもっともっと多くなると思いますが、それだけに、死刑であるからどっちみち死ぬんだから、生かしてみたところであまり意味がないというような考え方がもしあるとすると、これはもう再審制度とか真実とかいうものを全く無視した結果になるわけでありますから、かりそめにもそんな考え方はだれもとらないと私は信じます。  そこで、結局はこの法律の運用の問題で、法律の規定が、どうも死刑の執行停止というのは死刑そのものを停止するのである、だから中間的に死刑の執行までの拘置状態、これは自由刑の執行とは違うけれども、いわゆる未決拘禁と同じような状態だが、それについて何も規定がないからそのほうでは救えないんだというのは、ちょっと私は極端な解釈だと思います。  しかし、それは議論のあるところといたしまして、いま安原局長も言われるとおり、監獄法の規定でまかなえるということであるならば、これは状況を見て、状況を見てなどと言わずに、すみやかにその状況を積極に理解して――何らかの障害がいろいろ起こるかもしれません。たとえば病院のほうではいろいろな協議の過程でどうしてくれ、こうしてくれというようなことがあると思います。監獄法の規定というか、要するに監獄法施行規則の百十四条では、協議書というものを病院との間でつくらなければならぬというふうになっておりまして、その協議の中では、百十五条の「在監者ヲ病院ニ移送シタルトキハ所長ハ監獄官吏ヲシテ毎日其状況ヲ視察セシム可シ」というわけでございますから、病院へ毎日毎日だれかが出向いていって状況を見なければならぬ。また病院のほうでもぜひいてもらわなければ困るということになる。そしてまた、外部から彼をどこかへ拉致するなどということはまず考えられませんけれども、何かまた反対を唱えるような者が来て妨害をするとなればこれに対処しなければならぬという、まああまり考えられないことではありますけれども、それにしても、そういう障害が多少考えられたとしても、そういうことは顧慮すべきではなくて、やはり人命のとうとさということに重点を置いて、すみやかにいまの慎重なる措置の発展といいますか、実施といいますか、これをわれわれは期待するわけです。それに対して、もしいろいろの障害が考えられるというのであればいま御答弁いただいてよろしいと思いますが、ありますか。
  294. 長島敦

    ○長島説明員 ただいま御指摘の監獄法の条文に合う事態であるかどうかというところが判断の基準でございまして、そこにございますように、施設内で診断、治療をするのに十分でないということ、言いかえてみますと、外部で診療、治療すべきであるという状況が一方にございまして、一方その場合に、外部の病院に移しました上で、なお在監者の身分を持っておりますから、それについての戒護と申しますか、それが可能であるということも当然の要件でございますけれども、そういった各種の要件を満たしまして外部の病院に移すのが相当であるという判断に達しますれば外部の病院に移すのが監獄法の規定の趣旨であろうかというふうに理解しておりまして、現在、病状その他諸般の情勢を慎重に毎日見ておるという状況でございます。
  295. 青柳盛雄

    ○青柳委員 くどいようですけれども、私は、命を守る意味において最善のことを尽くすべきだ。しかしこれも価値判断の問題でありますから、そんなことまでしてとても命は守れない、いまのままでもある程度は延びるんじゃないか、こういうような価値判断の問題のときにどういう障害があるのだ。たとえばマスコミが、いつ出るんだ、いつ出るんだというので、もう熱心に取材に来る、これじゃとてもたまらないというようなことで、むしろもうそんなことはやらないのだという逆の方向へいってしまっているのじゃないかなという勘ぐりも出てくるわけですね。それは私は、報道機関が取材をされるという自由は全く保障されているわけでありますから、それに何か理由をつけて、そういうことがあるからだめなんだと言ったとすればこれはもう時代錯誤もはなはだしいと思いますし、そうだとするとほかに障害はないのじゃないか。いま、刑務所の役人がそこの様子を毎日調べていなければいかぬ、だから事実上そこに一人派遣しておかなければならぬというようなことが起こると、それは職員が一人減ることになるということを考えているのかどうか。私は、そのくらいなことはやってもいいのじゃないか。しかし、これが一週間、十日ならいいけれども、案外と長生きをして半年、一年になるとこれはたまったものじゃない。さりとて、持ち合い状態だからといってもとへ戻すのも少しおかしい。だからいよいよ死にそうになったときまで待とう、そういう冷酷なことを考えているとするならばこれはもう論外だと思いますが、いかがですか。
  296. 長島敦

    ○長島説明員 ただいま御指摘になりましたいろいろな事情は考慮の中に全く入っておりません。もっぱら監獄法にございますその条文の要件を備える事態になっているのかどうかというところが私どもの考えております一番の中心点でございまして、ほかのあらゆる雑音には影響されないつもりでおります。
  297. 青柳盛雄

    ○青柳委員 もうこれで私は、この問題は終わりにいたしますが、いずれにしても持ち合い状態というよりは悪化の方向へいっている。しかも老齢である。だから、いろいろ条件条件とおっしゃいましたこの監獄法の四十三条ですか、これを厳格に考えておられるのだろうと思いますけれども、しかしこれはもっと柔軟に考えてやっていただきたいということを申し上げておきます。  次に、あと二点、安原刑事局長にお尋ねいたします。  先ほど裁判官の暴行問題あるいは非行と言われるか、非常に例外的なことについての質問がありました。今度は私は、検察官の言論による暴力といいますか、それと腕力による暴力、この二つ事件が最近頻発しておりますので、それをお尋ねし、どういう措置をおとりになるつもりか、お聞きしたいと思います。  これは会議録に残す必要もありますから、簡単に申しますが、金沢地検に緒方政昭という検察官がおりますが、この検察官が、竹内という小松市長にかかわる公職選挙法違反事件が金沢地裁にかかっておりまして、その主任検事を担当しておったのでありますが、第六回公判期日、ことしの八月二十八日に開かれて、そこで証人調べがあって、その証人調べのやり方に対して異議を申し立てた弁護人の野村という人に対して、大声で「野村弁護士は弁護士の資格がない、法廷から出ていけ、裁判官、退廷を命じてください」というようなことを言って、これはあまりにも不当な言辞でありましたから裁判長からたしなめられて、一応は取り消すということになったのですが、それを根に持ったのかどうか知りませんが、そのあとまた、「証言の内容は推測によるものですか」というようなことを証人に野村弁護士が言ったことに対して、再び緒方検事が立って「野村出ていけ、まじめにやれ」というようなことを言うとか、それから野村弁護士が何かの説明をしておりましたところ「早く言え、早く言え、何を言いたいのか、早く言え」――言ってくださいとか言いなさいとかいうのではなくて、まさに法廷の言辞としてはふさわしくない、相手を侮辱するようなことばがぽんぽんと飛び出してきて、しかも裁判長も再三にわたって注意あるいは制止をしたにもかかわらずこれを無視した。こういう事件に対して、金沢弁護士会では九月十一日に全員協議会を開いて、こういう行為に抗議する決議がなされ、その結果、この小松市長にかかわる公選法違反の主任というか、担当は解除された、こういう事件がある。  ところがこの検事は、こういう事態のあった後になおかつ、今度は、ことしの九月十二日午前七時半ごろ、松任市の金産自動車工業株式会社正門付近において、東茂という人たち三名が持っていた組合のビラ六百枚が盗まれたということで、この東氏らから告訴手続の依頼を受けた金沢弁護士会所属の梨木作次郎、菅野昭夫、加藤喜一という三名の弁護士が代理人となって告訴状を金沢地方検察庁に提出をいたしまして、その取り調べを担当いたしましたのがこの緒方検察官でございますが、この検察官は、九月の二十三日の午前九時から告訴人東茂氏の取り調べをやりました。その祭どういうことを言ったかといいますと、この東茂氏に対して「この告訴は梨木弁護士を通じて出したものだな。君は知っているかどうかわからないが、梨木はつまらん事件でもすぐ告訴する、告訴狂だ。こんな事件は告訴せんでも警察にまかせておけばいいんだ。この中の菅野や加藤も一緒だ。本当に困ったもんだ。現に取調べをしている事件を検察庁へ告訴してくるやり方は梨木のやり方で、こういうのを告訴狂というのだ。帰ったら梨木へよくいっておけ」とか、「君はこの告訴状によると窃盗となっているが、窃盗というのはどういうのか知っているのか。これは窃盗じゃなく器物毀棄だ、これならまだ事件になる。判例もあるのに梨木は知らんのだ」こういうことを言ったそうです。  これを文章にして、九月の二十六日に、この検察官に三名の弁護士が会ってこれを読み上げて、この事実はどうなんだと言ったら、そのとおり間違いないと言って確認をした、こういうことであります。  それで、このことについても、先ほどの暴言のことにつきましても、ローカル紙はもちろん、毎日あるいは読売、東京というふうな全国紙にも大々的に報道され、また、この梨木弁護士に対する侮辱的な言論につきましても新聞に報道されております。  そして梨木弁護士は金沢弁護士会に善処方を要請いたしました結果、金沢弁護士会では十月四日に常任委員会を開きましてこの問題を取り上げ、すべての検察事務からはずすことを決議して十月の七日に地検に申し入れたところ、検事正の回答は、検事の人数も少ないので一般事件担当からもはずすことはできないという返事であった。弁護士会としては、この要求をいれないならば検察官適格審査会にかけても黒白を明らかにしなければならぬと言っているそうであります。弁護士会が申し立てるかあるいは関係人たちが申し立てるかは別といたしましても、検察官適格審査会の問題にも発展する可能性はあると思いますが、この点についての刑事局長の御答弁はいかがですか。
  298. 安原美穂

    安原説明員 緒方政昭検事のいわゆる暴言問題についてのただいまの青柳委員の御指摘は、外形的事実に関しましては大体われわれの調査したところとも一致しておりますが、なお調査したところに基づきまして申し上げますと、先ほどの証人調べの尋問を検察官がいたしておりますときに、野村弁護人から異議の申し立てがあったのに対しまして、緒方検事はその異議の内容がなっていないという見解のもとに、「この法廷から出て行ってもらいたい、大体野村弁護士は資格がない」というような発言をしたことは事実のようでございまして、裁判長から不穏当であるから取り消すようにとの注意を受けて、「発言を撤回します」と述べたようでございます。  さらに尋問を続けておりましたときに、さらにまた野村弁護士から異議の申し立てがございました。その異議の申し立てに対しまして、緒方検事は彼の見解といたしまして、野村弁護士の異議の申し立ての理由の陳述がたどたどしいという見方のもとに、先ほどの御指摘のように、「よけいなことを言わぬと早く言えよ野村、はっきりしたことを言えよ野村」というようなことを言ったようでございます。  さらにもう一つは、野村弁護人の反対尋問の際に、先ほど検事はかくかく言ったというような引用があったようでありますが、それに対しまして、その引用がうそであるとい、趣旨の見解のもとに、「野村、うそをつくなよ法廷で」ということを言ったということになっておるのでございます。  それからもう一つの、金産自動車工業株式会社の関係の、いわゆる労働争議事件をめぐっての窃盗被疑事件の告訴人東茂という人の取り調べを行ないました際に、告訴の問題につきまして問答が行なわれたのでありまするが、緒方検事の申す、われわれの調査によりますると、この事件につきましてはすでに松任警察署に告訴がなされているにもかかわらず、重ねて検察庁に告訴がなされたということに関する彼の見解といたしまして、どういうわけだということを問いましたところ、告訴人の東さんから、「梨木弁護士の事務所の加藤弁護士が検察庁に告訴したほうが事件解決が早いからと言うので、検察庁にも重ねて告訴の手続をしてもらったのだ」という説明をしたのを受けまして、緒方検事は、「梨木弁護士は事件の内容も十分検討しないですぐ検察庁へ告訴手続をとる、いわば告訴狂のようなものだから、帰ったらそのような趣旨を伝えるように」と述べたということでございます。緒方検事の説明によりますと、告訴するにあたっては事件について十分検討した上でなすよう梨木弁護士に伝えてほしいという真意であったということでございます。  以上が調査の結果でございます。
  299. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は、事実関係の確認を求めるために質問しているのではないのです。それも大事ではありますけれども、これの評価の問題を聞いている。われわれ民間人から見ると、まことに昔のお役人の横暴なのを思い出すような、要するに官尊民卑といいますか、弁護士なんというのはげすのようなもので、何も勉強しないで発言をするというようなふうにしか聞こえないですね。「たどたどしいから早く言えよ」「うそを言うな」とか、それから「勉強もしないでこんなものを出す」というような――確かに警察に告訴している事実があって、それを検察庁へ出したほうがもっと公正にやってもらえるだろうということをわれわれは常識で考えますよ。だから、片方に出ていたから片方に出さないというわけではない。出してはいけないという理屈もない。そんなものは警察でやればいいのだという、そういう評価を検事が持ったからといって、それは自由ですけれども、それを人を侮辱する理由にする。そして告訴本人である者に、よく代理人のところへ行って言え、勉強もしないでこんなものを出すばかがあるかと言わんばかりに。これは依頼者と弁護人の間を明らかに離反させるような中傷ですよ。それをしゃあしゃあと言ってのけて、しかもこれは弁解になると思っておる。それは弁解になりませんよ。強く反省しなければならぬ問題です。まことにどうも失礼なことを言ったものだ。それを反省しないで、むしろこっちが勉強不足である、調査不足で告訴するとは告訴狂だ、こんな失礼な話がありますか。  このような態度を貫く限りは、検察官にはふさわしくない、不適格な人物だと私は思います。これを自主規制するといいますか、検察当局のほうで懲戒に処するなり何か適当な処分を行なう、そして二度と再びこのような尊大な態度、人を見下すような態度をやめる、要するに言論の暴力にひとしいやり方はやめなければいけない。公務員であればあるほど言動を慎み、また心が謙虚でなければならないと思うのに、思い上がるにもはなはだしいと思うんですね。これはどうですか。
  300. 安原美穂

    安原説明員 その点につきましては、緒方検事の発言は、金沢地検の検事正といたされましては、その真意はともかくとして、その関係弁護人の評価に誤解を与えかねない、いわば措辞きわめて適切でない表現であったという点につきまして、同人に強く注意をいたしますとともに、関係をいたされました野村弁護人あるいは梨木弁護人がおおむね対立当事者となられます事件の多い公安、労働事件につきまして、緒方検事はその係検事からその担当を解きまして、そして先ほどの検事正の弁護士会に対する回答にもございましたように、ただいま外事係、公害係の担当とすることに配置がえをいたしまして、さらに今後、検察庁の上司において十分に指導監督に意を用いて、かかる措辞適切を欠くような言辞のないように厳重に注意するということでございます。
  301. 青柳盛雄

    ○青柳委員 その措置が適当なものであるかどうかは、これからの実績を見なければわかりませんけれども、公害担当の検事ということになると、これも相当勉強し、何よりも公害被害者の立場を優先的に考えるというか、そういう困っている人をよく考えるような態度にならない限り、いつでもまたトラブルを起こすと思うのです。こういう人は検察官をやめて弁護士になるといいましても、弁護士会では、村八分するわけではないけれども、ほんとうに歓迎はしないと思うんですね。だから、人間として立ち直るためには、これからよほど先輩のほうで監督をし指導をしなければいけないと思います。  次にもう一つ、時間がありませんから簡単にしますが、これも、松江の次席に次ぐ相当の地位にある検察官でありますが、松江地検の野田一雄という検事でございます。この野田一雄検事が去る十月十五日に、公職選挙法違反の疑いのある被疑者原屋文次、二十七歳になる青年でありますが、これを取り調べました。時間は午後一時三十分ごろから三時五十分ごろまでの間であります。容疑事実は、六月二十九日から三十日の間の二日間、居住する県営住宅二十数戸を訪れ、全国区神谷信之助、地方区飯塚行男の写真入り文書を配布し、投票を依頼した疑いというものだそうでございます。  まず、取り調べが始まるときに、黙秘権は全然告げずに質問を始めたわけでありまして、氏名、生年月日、住所、本籍、出生地、勤務先、役職、家族関係、それから前科、免許証の有無などについて質問があって、それはすらすらと答えたそうであります。ここで私は、前科というものを聞いたところをみれば、明かに被疑者としての取り調べだったと思うのでありますが、黙秘権を伝えなかった。そこで原屋氏は「黙秘権のあることを告げなくてもよいのですか」という趣旨の質問をしたところ、検事は「おまえは気のきいたことを言う。黙秘について云々と言ったが、きょうは参考人か被疑者かきまっていないのに、おまえのほうから被疑者として取り調べてほしいのか」などと言ったそうであります。それから、それ以来もう、おまえ、おまえとおまえ呼ばわりをし、そして「おまえは黙ってそうしていることがかっこええと思っているのか。それでは腹が茶をわかす」「おまえがそうして黙っておれば日当は何ぼになるんや。こっちも商売や。おまえがその気なら五年でも十年でも調べてやる。そうやってじっとしとれ」などと叫び、あるいは「そうか、おまえは人の気を引きたいのか。子供がようそうする。おまえはだれにも相手にされないからそうしているんや。おまえは赤子と同じや。おまえはそれで社会に通用するとでも思っているのか。社会ではだれも相手にせぬのやろ」。この人はどうも大阪弁のようなものを使うようであります。それから「さっきからじっと一つところばかり見ているが、どんな顔をしているか鏡を持ってきて見せてやる」と言って、顔のまん前に検事の手で鏡のかっこうをしたものを突き出した。そのほか「おまえの目つきが異常や。その目つきは何や。一回見たる」と言って、横に立って顔をのぞき見たという。  こういう状態で、要するに黙秘権も知らせないでいろいろ聞くから、この原屋氏は黙っていたんですね。それに対してこのような暴言を連発いたしまして、そして結局 一時間二十分もたってしまったわけです、にらめっこという形で。しばらく沈黙の後「よし、本論に入るか。おまえはしゃべろうとしゃべるまいとかってだが、違反したことは確かだろう」などと、非常に早口で事件の内容の質問をし始めた。そこで原屋氏は再び黙秘権問題について聞こうと思って質問を発したとたんに、今度は検事はこぶしを振り上げて、自分の机の上に乗っけてある板ガラス、これは横に一・五メートル、それから縦に一メートル、厚さは五ミリメートル、こういうガラス目がけて右こぶしを力一ぱいたたきつけた。このとたんに何かしゃべったけれども、よくはわからなかった。「うるさい」と言ったように記憶するというのであります。ガラスは直径八十センチメートルくらい放射状に割れて、中心はこなごなに割れ、一センチメートル角の鋭い破片が原屋氏の手をかすめて飛び散り、足元に落ち、こなごなになったガラスは両腕の服につき、書類にもかかった。検事は、こういうことをやったわけでありますから、当然右手をけがしたようでありますけれども、取り調べ中、机の下に右手を隠して、左手でたばこを吸い、ライターも左手でつける。そしてハンケチを出して何かもごもごやっておった。だから明らかにこれは負傷したに違いない。原屋氏はこのとき身の危険をさえ感じたと言っております。そして検事は「おまえは自分のかってのいいときにしゃべりやがって」などと叫んで、結局はおまえの父を呼ぶというようなことで取り調べが終わったというのであります。  このことは、翌日原屋氏の関係者が抗議に参りまして、その模様は朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、中国新聞の地方版に載り、テレビは山陰中央テレビ、NHK、あるいはラジオはNHK、すべて検事の暴言並びに暴行が報道されております。  これは私のほうでも昨日、法務省のほうにきょう質問するからということで調査を依頼いたしましたところ、まだ十分調査ができないから正式な答えができないかもしれないというようなことを言っておりましたけれども、私は、きょうする、あとはまた一月ぐらい後でないと法務委員会を開けないから、できるだけよく調べて答えてもらいたいということを言っておきました。いかがですか。
  302. 安原美穂

    安原説明員 御指摘のように十月十五日の一時半ごろから三時四十分ごろまでの間、松江地検で野田検事が公職選挙法違反、戸別訪問等の被疑者原屋文次を取り調べたことは事実でございまして、至急に調査をした結果でございますが、青柳先生がおっしゃるほどに関西弁でいろいろやりとりのあったことの報告はございませんが、これを要しますに、人定尋問、先ほどの氏名、住居等を聞いた。聞く前には御指摘のように黙秘権の告知はしていないようでございまして、これにつきましては、氏名は黙秘権の対象にならぬというような見解のもとに、事実調べに入る前に黙秘権を告知するというような見解のことかとは思いますけれども、通常はやはり取り調べの最初に告げるというのが通例のようでございますから、やや異例に属するものと思いますが、決して黙秘権の告知を最初からしないつもりではなかったものとは思います。  それにいたしましても、そういうことで本人に対しまして、「参議院選挙が七月七日に行なわれたことを知っておるか」という発問をしたところ、被疑者の原屋氏が「黙秘権の宣誓はいいのですか」と反問したので、そこで同検事は「黙秘権を行使するのか」と尋ねたが、同人は黙っているので、数回にわたって黙秘権を行使するのかと尋ねたというような報告になっております。しかし同人は黙っていた。  そこで問題のガラスの割れたことでございますが、取り調べを始めて五十分ぐらいたった、それまでは完全な黙秘でございましたのが、突然に原屋さんが検事に対しまして「質問があります」こう言ったので、野田検事は、「こちらから尋ねたときは黙っていて、突然質問するとはかって過ぎるじゃないか」と言って、すわったまま右の平手で机を一回たたいたところ、すでにひびが入っていた厚さ五ミリの机の上のガラスが割れた、こういうことでございまして、御指摘のとおり、同検事はその際右手の小指にかすかなけがをいたしましたが、その原屋さんの方向にガラスの破片が飛び散って脅威を与えたということはないという報告でございます。その後同検事は立ち会い事務官に割れたガラスの片づけをさせた後、さらに取り調べを進めたが、被疑者の原屋さんは黙秘のままであったので、午後三時四十分ごろ帰宅させたということでございまして、翌日、十六日十時に出頭するように言ったところ、本人も了承したという報告になっております。  これにつきましては、先回ってお答えして恐縮でございますが、同検事の取り調べにつきましてはさっそく検事正におかれまして、その取り調べの態度には行き過ぎがある、そして誤解を与えるような言動もあったということで、今後慎重な態度をとるよう厳重に注意をしたということでございまして、問題の事件につきましての主任検事は野田検事からこれを引き取りまして、次席検事が担当して捜査処理することにしたという報告でございます。
  303. 青柳盛雄

    ○青柳委員 もう時間がありませんからあれですが、どうもこう連続に異例なことが起こってまいりますと、どういうことだろうかと思うのですが、世情が非常に険悪になってきて、暴力というようなものがまかり通るような状況があって、それが検察官にまでうつっていってしまったのかというような気もするわけで、非常に警戒を要する状態だと思います。特に野田検事は、先ほども申しましたように次席検事に次ぐ方でありますから、普通の検事の筆頭なわけですね。おそらくもう十年以上の経験を持っておられる方だと思うのです。最近なりたての血気盛んな検察官などなら、まあ戦後の者はというようなことで、いささか驚くにしても驚き方が少なくて済むのですけれども、こう長年の経歴を持った人が、被疑者を相手にして興奮をして、ガラスまで割ってしまうというようなことは、これは異例だと思うのです。これが精神に異常があるのだったら、先ほどの金沢の緒方検事の場合でも野田検事の場合でも、よほど警戒を要することだと思いますが、異常がなくて、なおかっこのようなことがこれからも頻発するようなことがないように、厳重に監督をしてもらうことを求めまして、終わりにいたします。
  304. 小平久雄

    小平委員長 それでは、沖本泰幸君。
  305. 沖本泰幸

    ○沖本委員 たいへんおそくなりまして、関係者の方々には非常にお気の毒だと思いますが、私のせいではないので御了解いただきたいと思います。  きょうは椎名訪韓につきまして関係の御質問をしたいと思いますが、中身が非常に重要なものでもありますし、与えられた時間内にすべてのことがお伺いできるというものでもありませんし、これからいろいろな角度から取り上げて、いろいろな点で問題点を明らかにしていかなければならないと考えております。そういうことで、先に御質問なさった方と重複する点があるかもわかりませんが、できるだけの御質問をして問題を明らかにしてみたい、こう考えますので、よろしくお願いいたします。  端的にお伺いいたしますが、田中親書と椎名特使の口上メモは、日韓双方で両様の解釈ができる表現をとっておる、こういうふうに考えられるのですが、朴政権は、これを反朴運動の規制を約束した、こういうたてまえをとるに違いない。この異例の親書とメモを渡した政府が、朴政権から朝鮮総連規制の無理難題を持ちかけられた場合に、はたしてはねつけることができるかどうかという点にかかるわけです。たとえていいますと、朴政権が、金大中氏の日本の言動も韓国政府の転覆を意図する犯罪行為に該当するとして処理しようとしてきた場合、断固こういう問題がはねつけられるかどうかという点にかかってくるわけですけれども、金首相の発言の内容を新聞記事なんかで読みますと、言い方、表現が悪いかもわかりませんが、にしきの御旗をとった、こういうふうに考えられるということになるわけです。  そういう点から、この田中親書についての法的拘束力はあるのかないのか、その点はどうか。また、履行をしなければならない、こういう点について法的義務があるかないか、あるいは不履行について政府の責任。これは私たちは、この交渉の内容というものは、親書の内容にしてもメモの内容にしても、ただ新聞記事の内容でしか知る由はないわけですけれども、いろいろな内容をとらえて読んでみる場合に、非常に問題点が出てくる、またこれから先の外交上に重要な問題が残されておる、こう考えられるわけですけれども、いま御質問した点について外務省の見解をお伺いしたいのです。
  306. 中江要介

    ○中江説明員 お答えいたします。  過般、椎名特派大使が韓国の朴大統領にあてた田中総理の親書を手交されたわけですが、田中親書、これは言うまでもなく、はっきりと書面によって田中総理の考えておられることがしるされてあるわけでございまして、これに補足いたしまして椎名特派大使が口頭で説明されたのは、それは椎名特使がその親書の内容をふえん説明されたということで、両方とも日本政府の首脳の考え方を韓国側に、一つは文書により一つは口頭により伝えたということで、いわゆる法的拘束力を持つ合意が形成されるという性質のものではそもそもなかったわけでございます。したがいまして、文書にしたため口頭で述べたことは、その一方的な日本側の考え方であるにせよ、それだけの重みはございますけれども、それが将来、韓国との間で拘束力を持つという性質は、外交案件処理上は持たないもの、こういうことで一貫しております。
  307. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、今後も政府の立場として、この椎名特使が派遣されていって交渉をおやりになった、田中親書なりあるいは口頭で話し合いをなさってきたものに対して、拘束力はない、責任を持たなくてもいいのだということなんですか。拘束力というのは、どの辺の内容でどれだけの拘束力があるのか、この点はどうなんですか。
  308. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま申し上げましたように、責任を持たないというわけにはまいりませんで、これは文書によりあるいは口頭により日本政府の首脳が言ったことでございますので、それはそれだけの重みがあるということで先ほど申し上げたわけですが、それを向こうも、それではそのとおりであるということで、両方で署名するとかあるいは別の合意文書をつくるとか、そういった意味での拘束力を持つ、そういう合意を形成はしていない。しかし、日本政府の首脳が、いやしくも文書でしたため、また口頭で説明したものについては、それだけの責任は感じているし、また、その言ったことを守っていくという政治的な意味合いというものは、これは厳然として存する、こういうふうに思っておるわけでございます。
  309. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その守っていくという内容は、どういう点を守っていくということになるのですか。
  310. 中江要介

    ○中江説明員 数点ございまして、一つは、まずこういう日韓両方にとって不幸な事件が再び起こらないように、できることなら双方で防止していこう、再発を防止していくという点が一つでございます。もう一つは、この事件には日本側の法律違反という事実が含まれているものですから、その関連において、一つ事件関連する幾つかの事件としてお互いに捜査上の協力をするということが第二点でございます。第三点は、先ほど先生もお触れになりましたが、韓国政府の転覆を企図するようなテロ活動、そういったものが日本で犯罪を構成する場合には、その犯罪行為は厳正に取り締まるということでございます。それから最後は、これは別な、より高次元の話でございますけれども、日韓関係を再び強固な基礎の上に確立するように努力しよう、これは双方で努力しようということを呼びかけておる。こういう点が、将来日本政府が韓国との関係で、この事件及びこの事件のあとの処理としてやっていこうという基本的な方針として述べられているわけでございます。
  311. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ところが一方的にこっちが責任を持たなければならない、おかしいんじゃないかというような点ですね。あるいは朝鮮総連の規制について、その内容というのは、結局韓国政府を転覆するような意図なり犯罪行為なりというものを防止するということになるのですけれども、新聞に出てきておる椎名さんの内容からいきますと、これは「朴大統領から、そ撃事件について日本が道義的責任すら感じないということは情勢を直視すればするほど不可解で、犯罪の捜査についてもまだ納得し切れない、といわれた。さらに朝鮮総連をどう見ているのか、本当の実態を見誤ると日本自身の問題にも重要なかかわりあいを持ってくることを、るる説明された。」こう談話が出ているんですね。そこで椎名特使は、「私は「ごもっともです」といった。そして「出直そう」と話し了解を得た。」それからそのあと、「金国務総理とは一時間会談した。朝鮮総連の性格、機構、資金がどういうふうに運営されているかの説明を詳しく聞いたが、非常に教わるところが多かった。」それから、「放置できないと考えて帰った。聞き放しにすることはできない。しかし、成果はこんごの問題と思う。」それから記者団からの質問で、「朝鮮総連についての政府への報告で、政府の反応はどうだったか。」「まだ対策なんて砂上の楼閣で、これからの問題だ。」こういう点で、「ごもっともですといった。」それから「出直そう」という点、それから、金国務総理といろいろ「朝鮮総連の性格、機構、資金がどういうふうに運営されているかの説明を詳しく聞いたが非常に教わるところが多かった。放置できないと考えて帰った。聞き放しにすることはできない。」この辺、外務省、どう受け取っていらっしゃるんですか。
  312. 中江要介

    ○中江説明員 まず前段の、朴大統領とのお話の内容についての椎名特使の御感想を述べられた部分でございますけれども、もっともだと思ったという表現でしたか、その部分は、朴大統領がこの事件について、御自分の奥さまをなくされて、その気持ちを訴えられて、そのときに日本側から、どういう根拠で出たかは別といたしまして、日本側に何のかかわり合いもない、あるいは道義的な責任すらもないというような趣旨の発言が伝えられた、そのときの気持ちを訴えられた。それからまた、この事件の背後にある在日朝総連の問題あるいはそれとの関連での北朝鮮の問題、そういったものをいろいろお話しになったのを、全部を受けられて、椎名特使としては、奥さまをなくされた大統領の気持ちとしてそういうふうに苦衷を述べられるのはごもっともなことであろうという意味で言われたように私どもは聞いておりまして、一つ一つの問題ごとに、これはどうだ、あれはどうだという話し合いではなかったというふうに聞いております。  金鍾泌国務総理との会談では、そこで言っておられますように、在日朝鮮総連というものを韓国政府はどういうふうに見ているかということについてまさしくるる説明があったというのが実態であるように聞いておりますが、これについてはたしか、もしそれが事実ならばほうっておけないという表現を日本に帰られたときの記者会見では現実におっしゃっておったように私どもは聞いておりますが、それが事実であるかどうかは調べなければわからない面が非常に多いことでございますし、椎名特使御自身がそういうこまかいことを全部を御承知でなかったわけなので、そういう意味では教わるところが多かったという御表現を使われたと思うのですけれども、いずれにしても、もしそんなことならやはりよく調べてみなければいかぬ。しかしそれが日本側ではっきりするまでは、対策というものは急いでどうしようという問題ではない。日本政府としては、日本にある諸団体は日本の法制のもとでこれを守っていくのだという立場には変わりがないという点は貫いておられる、こういうふうに私どもは了解しております。
  313. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ところが新聞によりますと、金総理の韓国内の国内放送で説明していらっしゃるところは、一番目は、「そ撃事件犯人の文世光が日本の旅券を持ち、日本の警察のピストルを使った点などから、日本政府は応分の責任を感ずる」二番目が「韓国転覆を企図する反韓国団体とは朝鮮総連を指すもので、要人に対するテロなどの防止に最善を尽くすことを椎名特使が説明した」こういうふうに国民に説明していらっしゃるわけですね。それを外務省のほうでは、それは向こうのとり方であって、外務省、日本政府は違うのだ、こういうことになるのですか。
  314. 中江要介

    ○中江説明員 この田中親書及び椎名特使の口頭の説明ぶりというのは、非常に慎重に、時間をかけて日本側で検討に検討を重ねて出したものでございますので、それの言っていることは、その文章と口頭説明にすべてが尽きておる。それをあれこれ関連づけてどう説明するかというようなことについては、特に韓国側でどういうふうに説明されましても、それは先生がおっしゃいましたように、われわれの考え方はあのとおりということで一貫しておるわけでございます。
  315. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ですから最初に申し上げましたとおり、すでにこの段階で食い違いが出ているわけですね。われわれのほうは一貫してこういうふうに考えているのだ、だけれども向こうのほうは、朝鮮総連を含めてのことをちゃんとそういうふうに受けとってもらうように了解が成立しているのだ、こういう説明になるわけです。そうすると、そうではないのだ、日本の国内ではいずれの団体にしろ何にしろ、いわゆるテロ行為とか犯罪を構成する内容のものについては国内法に従って取り締まる、こういうことになるわけでしょう。ですから、たとえば朝鮮総連なら朝鮮総連だけをさすものではないのだ。より以上に、日本の国内で、韓国政府を転覆するとか、あるいは日韓関係に悪影響を及ぼすような犯罪行為ですか、そういうものがあるとすればそれはいろんな形で取り締まる、こういうことになるんじゃないですか。その辺、どうなんですか。
  316. 中江要介

    ○中江説明員 韓国側は、何度もいわれておりますように、今度の文世光事件と在日朝鮮総連との間に結びつきがあるという前提で本件をすべて解釈し考えておる。日本側は、いままでの捜査結果によればその結びつきは証拠がない、この結びつきがあるかないかというところについてまでは今回の親書及び口頭説明では何ら解決されていない、その点はまさしくこれからの捜査の結果をまたなければいけないということでございまして、したがって、その前提が違いますために、この文書及び口頭説明をどういうふうにとるかという点で、韓国は韓国の考えがあるかもしれませんけれども、日本政府として日本政府の立場を明らかにしたものはこの親書と口頭説明に尽きておる。その尽きておるところは、いま先生がおっしゃいましたように、その犯罪行為がいかなる団体の構成員によるものであっても、あるいはよらないものであっても、およそ日本で法に反する行為があればこれは厳正に取り締まるという、この一貫した方針以上のものは約束もいたしませんし、またそういうことを積極的に言っているわけでもない。この立場は今回の事件発生以後今日まで政府が一貫してとって、そこは貫いている、こういうことでございます。
  317. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この新聞によりますと、「特使の口頭説明」という中で五項目あげておるわけですね。それで、「韓国政府の転覆を意図する犯罪行為、あるいは要人の生命をねらうテロ活動などについては、朝鮮総連などの団体構成員によると、否とを問わず、犯罪行為を取り締まる方針である」と。これは何かの形を受けてこういう「朝鮮総連などの団体構成員によると否とを問わず」と、こういうことなんですか。韓国でこの問題が非常に騒がれたからこういう表現の使い方をなさったのですか。その間に、向こうでどっちでもとり方はいろいろなとり方ができるような内容を含めて、こういうものを入れなければとうてい日韓の関係が打開できない、こういう考えのもとに何度も何度もお打ち合わせになってお考えになった、その上でこういう表現をお使いになっている。それから特使の口頭説明についても、補足説明としてメモの形式で言っているわけですから、これはその中にはっきり入っているわけですし、それに後宮大使のイニシアルか入っているという点か――これはあとでお答えいただきたいわけですけれども、それ自体が公文書の性格を有し、また公文書としての役割りを果たすものであるかどうかというような点になるわけですが、いまの点についていかがなんですか。
  318. 中江要介

    ○中江説明員 ただいまの、朝鮮総連の団体の構成員であるかどうかということは問わずというのは、これは椎名特使の口頭説明の中でお触れになった部分でございまして、田中総理の親書の中では、そういった特定の団体の名前というものは、これは日本としては結びつきがないという立場でございますので、いかようにしても文書にまで書くことはできない。したがいまして、総理の親書の中では、概要、韓国政府の転覆を意図するようなテロ活動というような種類の犯罪行為がもしあれば、これは取り締まります、これでとまっておるわけでございます。ところが韓国は、先ほど申し上げましたように、そうは言うけれども、自分のほうでは、この事件と在日朝総連とは関係があるのだ、結びつきがあるのだ、こう言うのだがどうだと、しつこくというか、向こうの立場は向こうの立場でそう言われるものですから、もし朝鮮総連がどうだこうだとおっしゃるならば、日本政府の立場というのは、その犯罪行為が在日朝総連の構成員で行なわれようが、またその以外の団体の構成員で行なわれようが、個人であろうが団体であろうが、およそテロ行為のような犯罪行為が行なわれた場合にはこれは厳重に取り締まるというのが一貫した方針であります、こういう言い方をすることによって日本側の補足説明をしたということでございます。
  319. 沖本泰幸

    ○沖本委員 後宮大使のイニシアルはどういう力を持つものになるのですか。
  320. 中江要介

    ○中江説明員 これはただいま申し上げましたように、田中親書で文書によって書かれたものをさらに口頭説明される、その口頭説明の内容というのが、これだけすったもんだして非常に高ぶった日韓関係を鎮静化するという非常に重要な意味を持つ説明でありますので、これを口頭説明だからといってそのまま聞き流されて、そして実は言ったことでないことが言われたように誤解されたり、そういうふうなことを避けるために、自分が言ったのはこれですといって、椎名特使が口頭説明をされるにあたって使われたメモを念のために韓国側に置いてくる。後宮大使はその場で一緒にそれを聞いておられたわけですから、これはまさしく椎名特使が口頭説明のときに使用されたメモで、椎名特使はこのとおり言われたのですということをさらにはっきりするために、署名ではなくてイニシアルをして、その口頭説明の内容について、将来いろいろ、言ったか言わなかったか、こうであったかああであったかということのないように、誤解を避けるためにとった手段、こういうふうに私どもは了解しております。
  321. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ところがアメリカの外交官などはイニシアルを入れることは好きな手法で、珍しくない。こういう点で、今度のケースは広い意味での外交文書ということがいえる、こういう見解を持っている方もいらっしゃいますし、学者の中にも、これは明らかに外交文書に匹敵するのだという見解をお述べになっている方がたくさんいらっしゃるわけなんですね。  そうすると、いま御説明になった、明らかに田中親書の中にはそういうものは載せられないから、結局口頭説明、メモによってそういう面を補足したのだ。向こうがそう言うからこっちはそれについてのあれを補足したのだということになるけれども、外交文書として受け取られていけば、それは親書と同じような、親書をさらにもう一つ加えていって重要な文書として扱われるということになるのじゃないですか。
  322. 中江要介

    ○中江説明員 あの口頭説明による補足メモが韓国側に渡されたということが明らかになった段階で、これは外交文書ではないかという疑問は確かに提起されたわけなんです。何を外交文書というかということで違ってくるわけですが、外交折衝のときに使用した文書という意味では外交文書ではございますけれども、一般に、イニシアルした文書というものの持つ外交文書としての性格、そういったときのイニシアルというのは、自分と相手と双方でイニシアルをする、署名をするかわりにイニシアルをする、あるいは署名をするかわりに官印を押す、そういう意味でのイニシアルという――たとえば条約文の案文のテキストに、これは両方が合意したテキストです、最終的には署名をすることによってファイナライズしましょう、しかし暫定的にこれがいまの合意点ですというようなときにイニシアルというのは普通行なわれるわけですが、そういう意味でのイニシアルではない。先ほど申し上げたように、椎名特使の口頭説明はこのメモを読むことによって行なわれた、これがその紙であるということを、後宮大使のみがそこでイニシアルをしてはっきりさせられる、こういうことでございます。
  323. 沖本泰幸

    ○沖本委員 しかし、具体的な問題になっていきますと、外務大臣にお目にかかって、金大中事件を今後どうなさるのだという点についていろいろお伺いしてみましても、今後も韓国側のほうに要求を続けていくのだ、ただ日韓の関係をくずさないように配慮をしながら気長にやっていく、それであくまでも解決する、こういうふうな外務大臣のお答えなんかいろいろあるわけなんですけれどもね。その場合、金大中事件についてああしていただきたい、こうしていただきたい、あるいはこういう点が不十分だから何とかしてもらいたい、こういうふうな要求日本側から韓国側のほうへ突きつけた場合、そうしたらこっちのほうをちゃんとしてください、朝鮮総連を規制しなさい、約束したじゃありませんか、規制もしないで何言うんだということになると、もう完全に金大中事件は宙に浮いてしまうということで、永久に解決できないということになるわけですが、金大中事件を解決しようとお考えになっているのかいないのか。あのままでもうあきらめたということになるんですか。どうですか。
  324. 中江要介

    ○中江説明員 この田中総理の親書と椎名特使の派遣といいますのは、御承知のように、文世光事件によって引き起こされた日韓間の非常にアブノーマルな状態、特に韓国側で非常に衝動的な反日運動が日々盛り上がって、日韓関係が正常化されて以来九年の歳月を経たいま、一種の最大の危局を迎えんとした、したがってそこを何とか回避する、つまり事態の鎮静化をはかるという観点からなされた外交的な手段でございまして、このことがそれ以外の問題、特に先生の御指摘のような金大中氏事件だとか、あるいはその後のお二人の日本人の裁判の問題、あるいは大使館に対する乱入の問題、そういったいままでの幾つかの問題を今度の外交的な措置によってどうとかしようという意図は全くなくて、これで事態が鎮静化いたしました暁には、そこで冷静に話し合える日韓関係で諸般の懸案を解決していこう。そういう見地からいたしますと、金大中氏事件はいままでと同じように、要求すべきことは要求して公正妥当な筋の通った解決に努力する、こういう考えでおるわけでございます。
  325. 沖本泰幸

    ○沖本委員 しかし、正常化していって、鎮静していってといっても、いままでだって解決のめどなんか全然つかないような状態に置かれておったわけでしょう。それが文世光事件で極度に悪化したということになるわけですけれども、それが再び正常になっていっても、いままでとは条件が違うわけですね。何らかの形で向こうにものを渡しているわけですよ。そうすると、どんな要求をしたって、最後に強い要求なんか全然できないということになる。いままでだってできていないわけですから。それは外国通信なり何なりで、そういう点は全然日本から強い交渉なり何にもなかったというようなことを、金東作外相はイギリスの記者に対してはっきり述べているということが述べられているわけですね。そういうふうな内容を考えていくと、非常にまずい条件をいかに鎮静するかといったって、対等に国と国とが交渉する場合には明らかに対等の条件を残さなければならないということになるわけですから、いろんな国の関係がまずくなってもやはり同じ条件のもとに持っていくべきだ、こういうことに私はなると思うのです。そういう点があいまいな問題としてここに残されておる。  この議論をどんどんやっていってもずっと続いていくことになるわけですから、もっと時間をいただいてやりたいわけですけれども、そういうふうに形が変わっていったとき、日韓の関係がもっとまずいような条件のもとにますます置かれていくということになるんではないか、こういうふうに考えるわけです。そういう点でどういうところに問題が残されているかというと、先ほども述べましたとおり、金国務総理から説明をいろいろ聞いてみて、これは放置できないと考えた、椎名特使はこういうふうに記者会見で述べられているのです。放置できないということは何が放置できないかというと、朝鮮総連規制の問題ということであり、いろんなそれに関連する問題だということになってくると、ただ話の中でそういうことを伺って、ごもっともだ、こういうふうになったんではなくて、ごもっともということは、ごもっともだということに従って何らかのことを日本でやらなければならない、放置はできない、放置してはおけない、こういうことで帰ってきたということになるわけですけれども、放置できないことについて何らかの形の行動なり何かをお考えになっているのか、おやりになっているのか、その点はいかがなんですか。
  326. 中江要介

    ○中江説明員 政府といたしましては、椎名特使が韓国に行かれまして、金鍾泌国務総理から長時間にわたって韓国の見ている在日朝鮮総連の活動の実態というものを聴取されたわけでございますので、それをただ聞きっぱなしにしておくというのではなくて、それがはたして真実であるのかどうかという点については慎重に検討し、調査を必要とするものは調査をしなきゃならぬ、こういう意味では放置してはならぬということだと思います。この中にはいろんな問題があったようでございますけれども、日本でつかまっている密入国者の中には、北朝鮮のスパイ活動をしたのではないかと思われるような人も現実にあがっている例もあるわけでございますので、何もかも全部が根拠がないというわけにはいかないかもしれません。しかし他方、そもそも、私、何度も申し上げておりますように、この団体は日本の法制下で認められた団体でございますから、これは日本の法制下で日本が判断して、法律に違反があればこれは厳重に取り締まるし、法に合った活動をしている限りは、これは規制とかその他といわれてもそういうことはできない相談である、この一線は守っていきたい、こういうふうに思っております。
  327. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私は別に日韓関係を悪化させよう、正常化をぶちこわそうという考えではないわけなんです。うちの党の考え方も等距離完全中立外交ですから、その点は別に考えているわけではありませんけれども、いま、北朝鮮からの密入国者の中にスパイ活動をしておる者がおるんじゃないか、そういう者も一、二あがっている、こういうふうなお話もあるわけですけれども、そういたしますと、韓国のKCIAの活動員というのが大量に入ってきている、そしてたいへんな活動をやっている、全然日本の国内法なんか無視されて活動しておる。以前の田中法務大臣のお答えだと、具体的に犯罪事実が出てくればこれは別だということなんだけれども、そういうものが出てこないと、外交官資格でどんどん入ってくる人はどうしようもないんだ、こういうふうなお答えもいろいろあったわけです。そういうことになっていきますと、いまおっしゃっておられる内容というものは、御発言の中でこれはやはり椎名特使と同じような趣旨のものをあなた自体がお持ちじゃないか、こういうふうに受け取れる面もあるわけです。これはあと活字になって読むとそういうことになると思うのです。  そこで、椎名特使は、万景峰号が新潟に入ってきた、二十人から三十人の乗り組み員は特別に訓練された工作員だ、それが放たれておるということを聞いた、こういうことになるわけなんですがね。それも調査してみなければわからないということになるんですけれども、そういう方々日本に入った場合は外人登録証を持たなければなりませんし、そうたやすく外人登録証がぐるぐる変更できるものか、写真だけ張って変えられるものかどうかということになるわけです。またそういう人たちは入国管理にかかってくるわけですが、いまのお話が一番大きな話題として新聞にも出たわけですけれども、それもまた文世光事件の大きな問題点になってきているわけです。しかし、そういう二十人、三十人の人がすっきり入れかわる、あるいは何人かが入れかわって入ってくる、そういうふうなことが日本の入国管理の面からできるのか、あるいは外務省のほうの外人の取り扱いの関係でそういうふうなことがいともやすくでき上がるのかどうか、その辺どうなんですか。あと、入管のほうもお答え願いたいと思います。
  328. 中江要介

    ○中江説明員 外務省は直接の担当官庁ではございませんけれども、日本の官憲の行なっております外人の出入国に関する法令の適用というものは厳正なものだと思っておりますので、韓国側が言うような事実はないものだ、こういうふうに思っておりますが、これは担当の当局のほうの御意見がむしろ一番正確かと、こういうふうに思います。
  329. 影井梅夫

    ○影井説明員 まず、万景峰号の乗り組み員の上陸でございますが、これはごく短期の日本滞在でございますので、万景峰号の乗り組み員ににつきましては外国人登録という問題は生じておりません。それから、これらの人たちが上陸いたしますにあたりましては、特例上陸のために、われわれSP、ショアパスと呼んでおりますが、これを与えまして、そしてそのショアパスを与えるにあたりましては、何日の何時から何日の何時までと時間を区切りまして、またその行動範囲、これも限定いたしまして上陸を認めるというふうにしております。  それから今度は、万景峰号に訪問と申しますか、訪船する人につきましては、一部代理店その他の業務をやっております者につきましては例外的に腕章を与えまして、その腕章によって何回でも乗船を認めております。それからそれ以外につきましては、訪船券という制度によりまして、たとえば甲という人が何時ごろ乗船して、そしてその人が何時ごろ下船してきたかという記録を私どもの舷門立哨という制度によって行なっておりますので、まず問題はなかろうというふうに考えております。
  330. 沖本泰幸

    ○沖本委員 あれだけ問題になったのですから、その辺はもう明らかになっていなければならぬと思うのですがね。入管局長も、まず問題ないだろうと思うじゃ事は済まないと思うのですね。乗船名簿の中で、文世光並びに関係者の乗船した、しなかったという点、名簿に載っておった日にちが食い違っておるとかということが非常な問題になってきているわけですし、少なくとも椎名特使は、二十人、三十人の人たちが入れかわっておるというような話を聞いてきたということをおっしゃっているのですから、そういう事実があったかなかったかという点は、法務省のほうとしても外務省のほうとしても的確につかんで、もうはっきり問題を明らかにしておかなければならないと思うのですけれども、これは担当者に聞いてみなければわからないというお答えですが、それは外務省なり法務省のお答えにはならないと思うのです、これだけ重大な問題なのですから。日本のほうだっていろいろ調べてみたけれども、韓国政府のおっしゃるような事実は絶対ありません、だけれども今後将来に向かってそういう事実が生ずるようなことがあればこれは厳重にやりますというようなことは、これは、国民の目にも、あるいは韓国側のほうにも、ちゃんとした答えが出せる体制をとっていなければおかしいと私は思うのです。そうでなければ、韓国政府のいろいろ説明なさったことをそのまま受け取っていらっしゃる、また、そうではないかと、こうお考えになってその方針でお進めになっているというふうに受け取られてもしかたがないということになると、その辺にまた大きな問題点が構成されてくるということになるわけです。その辺、外務省のほうはいかがなんですか。
  331. 中江要介

    ○中江説明員 先ほど申し上げましたように、椎名特使に先方が説明したものを聴取してそのまま聞きっぱなしにしておくと、いま先生のおっしゃいましたように、全部日本側が認めたじゃないかというふうなことにだんだんなっていくことは私どもも絶対に避けなければならぬことだ、こういうふうに思って、それぞれの問題については関係の政府機関にお願いいたしまして、事実を明快にしてその上でとるべき措置をとっていかなければならぬ、こういうふうに私どもは考えております。
  332. 影井梅夫

    ○影井説明員 万景峰号の訪船者につきまして、今回問題になりました例の吉井行雄夫妻、これにつきましては、五月の三日であったかと思いますけれども、私どもに記録が残っております。それから文世光につきましては、記録は私どもには残っておりません。  そこで、この規制の問題でございますけれども、必要がありますならば、現在の規制をさらにいろいろな方法で強めるということも理論的には可能かと思います。他方で、訪船者の数が相当ございますので、その人たちの便宜ということも考慮しなければならない、こういう観点から私どものほうで現在検討しているわけでございます。
  333. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまのお答えはだんだん問題点が出てきだすのですね。規制というおことばをお使いになって、今後規制もしなければならないことになると、この記録をお読みになった御関係の方は目を三角になさって必ず問題になってくるということになるわけですけれども、私がお伺いしておるのは、通常、通関業務をやる場合に、飛行機の場合にしろ船の場合にしろ、承認国であろうと未承認国であろうと、きちっときまった法律のもとにお調べになり、権利をお与えになり、いろんなことをおやりになっていると思うのです。そういう中で外国船が日本の港に入ってくるわけですから、それに関してきちっとしたきまりのもとにいろんなことが行なわれていなければならないわけなんですから、そういう面について、韓国政府が指摘するような事実があり得るのかないのか。その辺は、あったのだとか、あるいはあり得る状態にあったのだとかどうとかいう、そこらが明らかになっていなければ問題だと思うのです。その辺は入管のほうとしてはどうなんですか。入る人は一人一人チェックなさっているのか、その行動についていろいろできるのかどうかということなんです。
  334. 影井梅夫

    ○影井説明員 先ほど申し上げましたように、業務でもって出入するいわゆる代理店の人たちでございますが、この人たちには腕章という制度で出入を認めている。それからそれ以外の訪船者につきましては、これも先ほど申し上げましたとおりに、訪船券という切符のようなものを渡しまして、乗船をしたとき、それからその人が下船をしてくるときにそれを返してもらう。こちらで訪船券を出しますときに控えを持っておりますので、これと照合をして、船舶への乗船、それから下船を調べておりますので、そこで問題は起こるまいと思っておりますけれども、なおこれで十分であるかどうかということは検討をしている次第でございます。
  335. 沖本泰幸

    ○沖本委員 十分であるかどうかということでなくて、普通、外交関係が保たれている国でも、その国の船の乗り組み員がたとえば北海道の港でおりて、その船が下関なら下関に回る場合に、日本の国内を通過していくというような場合でも、ちゃんとその人の身分は確認できるような方法が法律でとられているはずなのですね。そういうことなんですから、外国船が入った場合は同じような方式で、乗っている人が上陸する場合にはきちっとしたきまりができておって、その人が上陸し下船した場合には、間違いなくその人が下船したんだ、あるいはもとへ戻って乗船したということで、その間に問題はなかった、こういうふうなことはきちっとやるわけでしょう。そういう点から見ていくと、間違いがあったとかなかったとかということは、いわゆる入管のほうの通常業務の中でちゃんとしたことができると思うのですけれども、局長の御説明ですと、いや、これからもう一ぺんよく検討してみるんだということになると、いままでは十分でなかったというふうなことになるわけで、その辺どうなんですか。
  336. 影井梅夫

    ○影井説明員 問題を、まず船の乗り組み員について申し上げますと、乗り組み員が上陸いたします場合には、先ほど申し上げました特例上陸の一つといたしまして、その上陸の時間、それから上陸の範囲、これを限りまして上陸を認める。そしてその上陸した者が確実に船に戻ったかどうかということを確かめるということでやっております。  それから第二の、その船にいわゆる訪船する、船をたずねる人たちについてでございますが、これは私どもは従来の訪船券の制度ということで十分に処理されておると考えておりますけれども、またそれで間違いないと思っておりますけれども念のために検討している、こういう意味でございます。
  337. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それでまた押し問答になってしまうようなことになるので、この点ははっきり公表できるように、筋道が国民の目にきちっとわかるようにしていただかないと困ると思うのです。一番重要な問題なんですね。外務省のほうも同じことがいえるのじゃないかと思うのです。ですから、いろんな点でその辺がこれだけ重大な問題と関連しているのに、私、手落ちだと思うのです。そうすると、まるまるうのみにしておやりになっていらっしゃる。やっぱり事実を明らかにして、それで事実の点に不備があればこういうことをやっていくとかやらないということが明らかになっていかなければならないと思います。ですから、韓国側のおっしゃっておることの一つと同時に、在日外国人の生命財産なり人権をきちっと守っていかなければならないのも日本政府の責任でもあるわけですから、そういう点が変な目で心配されたり、おかしい目で見られたり、憶測されたりするような問題を残しておくということは問題だ、私はこう考えるわけですが、その点を今後のために明らかにしておいていただきたい。きょうはいろいろ御質問してみたって同じことの繰り返しみたいになります。御質問のしかたがまずいのかもわかりません、その点があったらおわびしたいと思いますけれども。  そういうところで、いまのお話の中では、椎名特使が、二十人、三十人の工作員と在日外国人の方との入れかえがあったというふうに聞いてきたんだということが新聞記事に載っているわけです。これは重大な問題なんですね、それが文世光の犯罪につながるような要素を持っているわけなんですから。それで、在日韓国人が犯罪を犯したことであって日本には何ら関係のないことなんだと言うけれども、そうじゃないんだということを指摘されているわけです。それで、その問題が起きたのは万景峰号が入ってきたときにもいろいろな関係があるのだということを言われているわけですから、その点と、それからやはりメモの関係、話し合いの関係、あるいは朝鮮総連の資金なりあるいは中の構成内容なり活動なり、いろいろな点について説明を聞いた、放置できないというようなことをおっしゃっているわけですから、その辺が明らかにならないとおかしいと思いますし、明らかにされるべきだと私は考えるわけです。  そこで警察庁のほうにお伺いしたいのですが、朴大統領狙撃犯人の文世光に関する警察の捜査の概要と、今後の御方針を簡単に御説明いただきたいと思うのです。
  338. 半田博

    半田説明員 本件につきましては、私どもといたしましては韓国側の資料を参考としながら、国内法にのっとって捜査を遂げてまいっておるところでございます。  いま問題は、一つは吉井美喜子にかかるところの旅券不正入手、それから不法出国幇助の捜査でございますけれども、この問題につきましては、昨年の十月の下旬とことしの六月の下旬と二回にわたって、夫である吉井行雄の戸籍謄本並びに住民票を取り寄せて、これを文世光に渡し、不正に旅券を入手せしめ、不正出国を幇助した、こういうことが明らかになりまして、これはすでに起訴されておるところでございます。八月の十八日に起訴になっております。  それから第二に拳銃の窃盗事件の問題でございますけれども、一つは韓国側からの通報によりまして、現場で取り押えられた文世光が持っておった拳銃が、大阪の派出所で二丁盗まれたうちの一丁のスミス・アンド・ウエッソンタイプの拳銃であり、その拳銃番号もわがほうのものと一致をしたということが一つ。それから、八月の十七日に文世光の自宅を捜索してみますと、二階の部屋からいま一丁のニュー南部というタイプの拳銃が出てまいりました、こういう事実。それから、文世光の七月の十七日夜から七月十八日の未明にかけてのアリバイが立ちません。それから、文世光がこちらにいたときに乗っておった車、これは友だちに預けていったわけですけれども、これを捜索いたしますと、タイヤレンチとプライヤーというものが出てまいりました。この道具と、その盗まれた派出所のこじあけたとびらと、それからこわしたかぎのあと、こういうものを対照しますと、その道具のあとが一致するわけです。道具痕が一致するということ。それから文世光は奈良県の大和川の御幸橋付近に拳銃の帯革とか手錠とかを捨てた、こういう供述をしているわけです。これは捜査をしました結果、供述どおり手錠等が出てまいりました。そのほか、念のために私どもとしては、韓国側に文世光が持っておった拳銃の試射弾を送ってもらいたいという要求をして、向こうから試射弾が参りました。試射弾には旋条痕というものがつきますけれども、これはこちらの警察にも登録されております。これを合わせましたところが完全に一致をした、こういうことでございまして、本件窃盗事件は文世光が行なったものと断定していいと思います。また、これが大統領の狙撃に使われたということもほぼ断定して差しつかえないものと考えております。  なお、現在私どもとしましては、文世光の行動、足取りを徹底的に洗っておりますし、またさらに共犯関係の有無等についても引き続き捜査を遂げておる、こういう状況でございます。
  339. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それから、これは先ほど御質問があったと思うのですが、現在の段階で朝鮮総連に対する規制、取り締まりをおやりになるとお考えになっているのか、その点いかがなんですか。
  340. 半田博

    半田説明員 この問題につきましては、椎名訪韓後においても方針は変わりはないということでございまして、合法的なワク内である限り活動は自由なことでございまして、違法行為があれば当然取り締まる、こういう従来と同じ態度でまいりたい、かように考えております。
  341. 沖本泰幸

    ○沖本委員 先ほどもちょっと触れたわけですけれども、金大中事件で非常に長くかかっておるわけですね。一向に解決のめども出てこないし、捜査のほうも暗礁に乗り上がったような状態で、韓国の捜査当局なり韓国政府の出方待ちのような状態で現在に至っておるわけですし、その点についてはわれわれの目から見てもほんとうに協力してもらったということは言えませんし、何ら事実関係についての内容も出てこないわけですね。むしろ日本捜査のほうがまだはっきりしておるというような点ですね。  それと、今度は、文世光については全く日本政府なり日本捜査当局が協力しないということが大きな日韓関係をあぶなくするようなことになってきておるわけです。もっとも、朴大統領夫人という非常な地位の高い方を狙撃、殺害したということになっているわけなんで、重大な事件であるということはわからないことはないわけですし、その点についてはみんなよくわかっておるわけですけれども、そういう点についてどうも納得できない、あまりにも食い違うのではないかという点があるわけですけれども、こういうことについて文世光の捜査も今後さらに深めてお続けになるのか。あるいは金大中事件はまだ捜査を続行していかれるのか。そういうふうな協力関係について警察庁のほうの考え方なり受け取り方なり、今後にわたってどういうふうにお考えになり、どうしていかれるか、こういう点についてお答えを願いたいと思います。
  342. 半田博

    半田説明員 私どもは、両事件とも国内法に基づいて最善の捜査を尽くしてきたと考えております。で、私ども、この文世光の事件につきましては、御指摘のように事柄の重大性にもかんがみまして、また近隣の友好国でもあるということでございまして、できるべき点は協力をする。しかしながら国内法のワク内において捜査を遂げるという方針でやっておることでございます。金大中事件について必ずしも十分な協力が得られなかったということは、私もさように考えておりますけれども、しかしこれとこの事件とはやはり別個なものでございまして、私どもはあくまでも両方とも国内法にのっとって正しく捜査を進めていきたい。それは相手の出方ということもございますけれども、私どもは一貫してそういう姿勢でやってまいりたい、かように考えております。
  343. 沖本泰幸

    ○沖本委員 時間かぎりぎりになってきたのですが、中江さんにお伺いしたいわけですけれども、もとへ戻すようなことになりますが、いまさっきからやりとりしたことでこれからも単発的に法務委員会でこの問題を議論していくということになりますけれども、今後また大きな問題点として臨時国会なり通常国会でこの問題が問題として取り上げられるとは考えます。ですが、これだけ重要なもので、非常に苦心して考えたという御説明があったわけですけれども、こういうふうな、二つの国がどうこうという状態になるような内容のものを、それから親書についてお互いに事前に協議するというのは異例も異例、諸外国で例を見ないのだということも言えるわけなんです。これだけのものをどうして国会の承認を得ないのか。承認を得るべきほどの問題ではないか。また、こういうことは承認を得てやるべきではないかというふうに考えるのですけれども。  それと、時間がありませんので一括してお伺いいたしますけれども、木村外務大臣は、北からの軍事脅威は広い意味からないんだ。それから、韓国の安定ではなくて朝鮮の安定が必要、重大なんだ、このことが大事なんだ。さらに、米中ソ三国の外務大臣と朝鮮問題について話し合いをしていきたい。こういうふうなもろもろの発言があるわけですが、これはみな正しいことだ、こういうふうに受けとめておるわけです。マスコミのほうもそういうふうにいろいろな点で受けとめていらっしゃるわけですけれども、そのとらえ方が違うのだ、だから真意が伝わっていないというような外務大臣の説明もありました。しかし、椎名特使が行って、実際にいろいろと話し合ってみると、北からの脅威は、いろいろな紛争があってあるのだと、こう認識して帰ったようなことをおっしゃっているわけなんです。そこに大きな食い違いがあるわけですけれども、それについてはその辺がちゃんと調整されなければならないし、まあ私は外務大臣のおっしゃったことが正しい、そうであるべきだと、こう考えるわけですし、またその緊張緩和をかもし出すことに日本は一生懸命であって、そういうところからいくと、いわゆる三十八度線を中心にするところの南北の緊張はもっとひどいのだ、そういうものを認識がないからこんなことになるのだというような韓国側の政府の説明もあった、こういうところが大きな議論になる問題でもあるわけなんですね。  また、もう少し突っ込んで考えていくと、韓国は日本の生命線と、こういう考え方は政界にもありますし、財界にもあるということが言えるわけです。これは佐藤総理の御発言でも、いろいろそういう点が言えるわけですね。いわゆる公害に対しての規制もありませんし、あるいは低賃金であるというようなところから、わが国の資本が向こうへどんどん出ていっている、こういう点が、韓国の国民の皆さんの中には反日運動なり反日感情をうんとかもし出していく下地になってきている。だから、日本の経済進出あるいは経済による侵略が行なわれておるというところに、こういう問題が輪になってかかってきたということが言えるわけですから、この世界の緊張を緩和していき、やはりアジアの平和をはかっていくためには、外務大臣が言うとおり、広い朝鮮半島全体を考えていく立場に立って今後ものを考えていかなければなりませんし、あるいはIPUで日本へ両方の国からお越しになってきている。まあ、私たちの党も、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国という一つの政府があり、大韓民国という一つの政府が現実にあるのだ、これは無視できないのだという点で考えているわけなのです。そういう点から、もうすでに韓国も朝鮮民主主義人民共和国も両方認めている国が三十五カ国近くある。そういう点あるいはそういう内容について、両方認めるということに対して朝鮮民主主義人民共和国は強い抗議もしていらっしゃらないし、それに対していろいろ問題として指摘するということもないわけです。こういうふうな事態を考えていくと対韓政策を変えなければならぬということになるわけですけれども、そういう点から考えていきますと、いままではむしろ韓国のほうばかりに目を向けておったが、いまは北朝鮮との貿易の量もどんどん急激にふえてきている、こういうふうな情勢を考えていきますと、経済の交流が深くなっていけば必ず政治問題が出てくるということは考えられるわけです。そういうふうに考えていきますと、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国との国交も開いていかなければならない、そういう道をつけていかなければならぬということになります。  ですから、いますぐそれを認めるという点に難点があるなら、中国とアメリカがやっているように、両方に外交事務所を置いて、そして政府の外交官が行って、日本と朝鮮民主主義人民共和国との間の諸問題をはかっていくというふうな、政策を転換していかなければならない時代に来ている、こう私たちは考えるわけであるし、そうもしなければならないということになるわけです。それは韓国側の御主張もいろいろあるでしょうけれども、しかし広い面から見るとそうあるべきでなければならない、これからそうしなければならないと私は考えるわけですけれども、政府はやはり従来然とした方針をとっていかれるのか、あるいはそれぐらいの点に変わっていこう、将来に向かってそういう方向で進んでいこうということを検討されているのかどうか、考えようとしていらっしゃるのかどうか、その辺はどうなんですか。
  344. 中江要介

    ○中江説明員 朝鮮半島政策について申し上げます前に、冒頭に問題を提起されました、国会の承認をこのような文書なり、口頭説明について取りつけるべきではなかったかという御意見は、きょう冒頭に先生に私がお答え申し上げましたように、日本政府の考え方では、これは国際約束を構成するものではないということでございますので、国会の承認を要する国際約束というような認識ではない。これは日本政府の考えていることを韓国側の誤解を解くために言ったのだ、こういう考えであります。  それから朝鮮半島政策につきましては、これは一九六五年に日韓基本関係条約を締結しました当時から、いわゆる休戦ラインの北側には朝鮮民主主義人民共和国政府というもう一つの政権があるということは承知の上で締結しておりまして、北の政権については何ら触れない条約、つまり白紙に残した条約ということで日本政府は一貫しておったわけでございます。したがって、北朝鮮側との接触というのは、これは詳しくはまた別の機会に申し上げられると思いますけれども、人道から始まりまして、スポーツ、文化、経済と、それから今度の御指摘のようなIPU会議というようなものをずっと統計で見ますと、どんどんどんどん伸びてきておるわけでございまして、特に一昨年の七月四日の南北共同声明というもので南北間に、最初は赤十字会談から始まって、それが政治的な会談にまで行く、こういう緊張緩和のきざしというものを非常に日本は歓迎しておりますわけで、木村大臣の御発言も、朝鮮半島に緊張が激化する、あるいはまたもとのようになることは絶対に希望しない、日本が望むのは朝鮮半島に緊張が緩和して国交が安定していくことだ、こういう発想でございまして、私どもはまさしく、先生がおっしゃいますように朝鮮半島の不幸にして南北に分断している、この二つの政権の存在を踏まえながら、ここに緊張がない、平和な状態裏に安定していくように、こういうことで考えておるわけでございます。
  345. 沖本泰幸

    ○沖本委員 お考えはわかったんですがね。あとで御質問したとおり、外交の事務所をおつくりになることを検討していらっしゃるかどうか、その辺はいかがですか。
  346. 中江要介

    ○中江説明員 政府がいままでとっておりました政策は一歩一歩積み上げていくという考え方で、たとえば見本市を開くとかあるいは貿易関係の往来を激しくするとか、そういうことでだんだん積み上げていく。と申しますのは、何と申しましても南北間の安定というのは現在では非常に機微なバランスの上に立っておるわけでございまして、日本政府は南の大韓民国政府を承認して、これとの親交を進めてきておるわけでございますので、これと両立する形で北との接触を深めていく。したがいまして、非常に注意深く一歩一歩積み重ねていく、こういう方向で、そのときそのときの国際緊張緩和の状態に照らしてそれにマッチした施策をとっていくという、そういう考え方で、現段階ではまだ残念ながら、先生のおっしゃいますような国際法上の地位がある程度認められる、ああいった連絡事務所式なものを置くという時期にはまだ熟していない、こういうふうなのが私どもの判断でございます。
  347. 沖本泰幸

    ○沖本委員 重要な問題ですから短いやりとりで結論が出るということではありませんけれども、そういう点はむしろ、世界のいろいろな情勢がみな変わってしまってからぼちぼち考えておつき合いしていくというふうになったのでは、これは何もアジアの緊張緩和に協力したとか、あるいはアジアの平和のために日本が大きな役割りを果たす、こういうことにはならないと思うのですね。その辺は蛇足的な議論かもわかりませんけれども十分考えていただきたいということと、一つ考え方としては、むしろそういう方向に進んだほうが南北の関係がもっと改善されるだろう、日本がそういう立場をとったほうが、むしろ韓国と朝鮮民主主義人民共和国との間をはかっていくということについてもっと韓国はこの問題を考えていくのじゃないかというふうな意見もあるわけです。まあ、これはそういうこととして聞いていただきたいと思いますし、そういう方向に向かって前向きにこの問題と取り組んでいただきたい、こう考えるわけです。  それから、これは法務次官にお伺いしたいのですけれども、何らかの形で、韓国との約束があるので朝鮮総連規制ということを形の上で何か見せなければいかぬと――岡田参事官も、出入国法の泰斗がいらっしゃるわけなんですけれども、そういう中で出入国法をお考えになっていらっしゃるかどうか。次の通常国会に出すということ、出すことによって日本はこういう形をとったのだということになるとまた、またぞろほんとうの意味合いというものが違ってしまったような形になってしまう。政治的な判断が十分必要ではないか、こういうふうに考えられるわけです。ですから、中身がどうあれこうあれ、こういう時期に出入国法をお考えになっていくと、むしろ紛争をまだまだ起こしていく材料になるということを考えるわけですけれども、もう通常国会が近づく時期に入っているわけですけれども、法務省としてはその辺を御検討になっているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  348. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 出入国管理令の改正につきましては、もう四回も国会へ提出したわけでありますが、ついに成立を見ないわけでありまして、慎重に現在検討しておるところでございます。ただ、私どもといたしましては、現在の出入国管理令をもう少し合理的なものに改正するほうがいいであろうというふうな考えを持っておりますが、従来の経緯もございますので、さらに慎重に検討いたしておるところであります。
  349. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これで質問を終わりたいと思いますけれども、椎名特使が約束したので出入国法を出したなと、こう受け取られるようなやり方というものは厳に慎んでいただきたい、こういうふうに考えるわけです。そうでないことをもっといろいろお考えになって、それこそ緊張緩和さしていくような御検討をなさってしかるべきじゃないか、こういうふうに考えます。  きょうは以上で質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  350. 小平久雄

    小平委員長 次回は、来たる十一月十二日火曜日、午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十八分散会      ――――◇―――――