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中橋説明員 政府に設置せられております
税制調査会は、先ごろ
委員の
任期が三年で切れまして、十月の十四日に新しい
任期を持ちました
委員でもって新発足をしたわけでございます。
この
政府の
税制調査会その他におきまして、今後いろいろ
税制の問題が
論議せられることになるわけでございますけれ
ども、私
どもといたしましてはやや長期的に考えなければならない問題と、当面御
論議を願わなければならない問題と、二通りあると思っております。
長期的な問題といたしましては、まず
租税負担率の問題がございます。これは従来から御
論議のあったところでございまして、
経済社会基本計画におきましても、その
計画期間内において、いわば五十二年度までございますけれ
ども、それまでの間に、税と
税外負担とを合計いたしまして三ポイント
程度高まるということを予測いたしております。これが今後のこういった
経済の長期的な見通しの中で一体どういうことになるのかというのが第一の問題でございます。
最近とみに高
福祉という要望が強まっております。
政府の行ないます仕事の
分野が拡張しなければならないという趣旨でございますが、そのためには、まずこれをまかなう
財源といたしまして、
租税あるいは
社会保険料というものをどのようにそれに合わせて考えていったらいいかという問題があります。幸い
わが国の
租税負担率は、戦争直後のかなり高い
水準から、昨今はおおむね
国民所得に対しまして二〇%
程度になっております。また、
社会保険の
負担も約五%
程度でございます。ただ、この両者を合わせましたところの約二五%
程度の税及び
社会保険の
負担というものは、
欧米の
先進国のそれに比べますとかなり低いことになっております。それを、今後
欧米先進国のような
社会福祉面において
公経済の
分野が拡張するという場合におきましては、一体
社会保険料をどの
程度ふやすのがいいのか、あるいは
租税をどの
程度ふやすのがいいのかという問題が残っておるわけでございます。しかも、それにつきましてはどのようなテンポで進んでいったらいいのか、これが一番重要な問題であると思っております。
さらに第二の問題といたしましては、そういうある
程度高まった
社会保険料、それから
租税負担というものにつきまして、特に
税制におきましては、その
税負担というものを一体いかなる
税目でまかなっていったらいいのかという問題が出てまいります。これはいわゆる直接税、
間接税という問題で提起をせられておりますが、もちろんその中におきましても、各
税目の問題というのが当然出てまいるわけでございます。
わが国の直接税、
間接税の
比率は、大体現在では七対三ということになっておりますが、これがまた
欧米の国に比べますといろいろな差がございます。アメリカのように非常に直接税の
依存度が高い国もありますれば、フランス、イタリアのように、
間接税がちょうど
わが国と全く逆の
比率を示して三対七
程度の国もございますし、ドイツのようにちょうど
まん中あたり、ほぼ半々というような状態を示しておるところもございます。こういう問題を、高
福祉をまかなう
財源としましての税という問題としては今後考えていかなければならないと考えております。
それから、やや細目に入りましては、まずは
所得税の問題でございます。
所得税は、
国民所得に対するほぼ二〇%の
租税負担率の中におきましても、累年高い
高度成長にささえられまして
所得が伸びてきたのに対応いたしまして、
減税をかなり進めてまいることができました。こういう結果、いわゆる
所得税の
課税最低限につきましては、
欧米先進国のそれに比べてかなり高
水準に達することができました。また、
税率の
累進度につきましても、ことしの大
改正によりまして
相当程度緩和できたと思っております。しかし、やはり
所得税というのは何といいましても
税制の中の中枢でございますから、こういうものの
負担というものを一体今後の
経済成長と見合わせてどういうふうに考えていかなければならないかという問題がございます。
それから
法人税でありますが、
法人税につきましては、本年の
改正で、ほぼ
税率面からの
負担といたしましては
欧米のそれに比肩する
程度になったと思っております。しかしながら、かねて当
委員会においても御
議論がございましたように、いわゆる
課税所得につきまして
欧米のそれと比べていかがかという御
議論がございます。
たとえば、いわゆる
損金になるものが過大になっているのではないかというような御指摘もございました。また一方、
納税者の側からは、
損金になる
引き当て金等についての
引き当て不足というような問題も提起せられております。そういうことを含めまして、
課税所得が一体適当な
水準にあるのかどうかという問題がございます。
それからさらに、基本的には、
法人税の
課税と、その
課税を受けました
法人利得が
配当せられた場合におきまして、
受け取り側においての
課税をいかに調整すべきかという、これも古くからございます基本的な問題がございます。
わが国は
昭和三十六年に現在のような形をとってきましたけれ
ども、特に最近の
ヨーロッパ諸国におきましては、また再びこの問題がいろいろゆれ動いておるようでございます。そういうような
動きと、また
わが国の
法人企業におきますところの利益とその
配当に対する
課税について、
国民が一体どういうふうに考えておるかという
考え方を
基礎にいたしまして、この
法人税の基本的な仕組みというものも一度問題にしなければならない
事態になっていると思います。
それから
間接税につきましては、これは
先ほど申し上げましたように、直接税と
間接税の
比率ということを問題にいたしますれば、またその
比率を、いまのだんだんずっと直接税の
ウエートが高まってきたという
傾向をかりにとどめるとか、あるいは逆の
方向に持っていくということを考えます場合には、何といたしましても、一般的な
消費税というのを爼上にのぼせなければならないと思います。現在
わが国の
間接税が占めております
個別消費税をどのように
検討いたしましても、それは
先ほど来申しました直接税の
ウエートが年々高まってきたという大勢を動かすものではありません。したがいまして、
直間比率ということを問題にいたしましたときの
一般的消費税というものをどのように考えるかという問題がございます。
以上が大体、少しく時間をかけて
検討をすべき問題ではないかというふうに私
どもは考えております。
それから、当面
検討を要する問題といたしましては、実は喫緊に、少なくとも本年の年末におきます、来年度を頭に置きました
税制改正として
検討しなければならない問題がございます。
その
一つはやはり
所得税の問題でございまして、本年の大幅な
所得税の
改正というのが本年の
経済の
動きにどのように適応しておるか、
減税の効果がどのようにあがっておるかという問題、それからまた、一方でいわれております、
物価が非常に上がっておるのにそれをカバーできない
減税であったからさらに追加的に大幅な
減税をやるべきではないか、あるいは年内に
減税をやるべきではないかというような声もございます。この問題につきましては、追って御
質問等についてお答えをいたしたいと思いますが、そういう当面の
所得税の問題でございます。
それから、次は
相続税の問題でございまして、
相続税は最近の特に地価の
上昇を反映いたしました結果、その
負担が従来に比してかなり重くなり過ぎておるという批判がございます。たとえば
課税人員にいたしましても、
相続人の中で
相続税を
課税される人が四十一年の百人の中の一・四人に比較いたしまして、四十七年にはこれが四・四人になっておる。一体どの
程度の人から
相続税を取るべきであるか、そういうことから関連いたしまして、現在の
課税最低限の
水準が適当であるかどうか。あるいはまた
配偶者についての
相続税の
負担が、前にかなり思い切って
制度改正をいたしましたけれ
ども、これが十分でない。あるいはもっと別の
観点からこれを行なうべきではないかという御
議論がございます。
さらにはまた、
土地の
価格が非常に
上昇しておるということが一番痛切に感ぜられますのが
農地の問題でございまして、
農地の
相続税、あるいはそれに関連いたしまして、
都市におきますところの
中小企業の土台となっておる
土地の
課税、また
都市に住んでおる
人たちの住居となっております
土地の
課税、こういうものにつきまして見直しをする必要があるかどうかという問題がございます。
それから
間接税につきましては、やはり最近におきますところの
物価上昇から見まして、いわゆる
間接税の
負担率の問題がございます。
たとえば酒をとっていいますと、従量税をとっておりますがゆえに、
小売り価格が伸びてきましたのに対比して、この
負担率が十分伸びてこなかった。むしろ低下の
傾向にある。それが他の
従価制度をとっております
間接税と比べて適当であるかどうかという問題がございます。
かたがたたばこの
コストアップから
たばこの
価格を改定するというお話も出ておりますから、お酒につきましては
価格の改定というのは順次行なわれてきておりますけれ
ども、むしろ
負担率という
観点から一度
検討をしなければならない問題だと考えております。
最後に、非常に年限を切られまして設けられた特別の
制度がございまして、これが来年末にその
期限が来るものが多うございます。
たとえば、
土地の
譲渡所得についての
分離課税の
制度、
利子配当所得につきましての
課税の
特例制度、こういうものがございます。これは来年末に
期限が参りますから、本年の末までに五十一年以降どうするかという問題の決着をつけなければなりません。
それから、日限は切ってございませんでしたけれ
ども、長い間の懸案としていわれておりました
社会保険診療報酬の
課税の
特例の問題がございます。これは先ごろ、前の
政府の
税制調査会におきまして御答申が出ました。この
考え方の線に沿って具体的に一体どういうような数値を当てはめていったらいいのかというのが、今後の私
どもに課せられました
課題になっております。これも今後の研究にまって
措置をしなければならない問題だと考えております。
以上が私
どもが考えております当面
論議を要する問題でございます。
簡単でございますが、最近におきます問題を申し上げました。