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1974-11-22 第73回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十一月二十二日(金曜日)     午前十一時四十五分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       金子 一平君    小泉純一郎君       塩谷 一夫君    坊  秀男君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       松浦 利尚君    村山 喜一君       山中 吾郎君    荒木  宏君       小林 政子君    広沢 直樹君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  委員外出席者         法務省民事局第         三課長     吉野  衛君         大蔵政務次官  大野  明君         大蔵大臣官房審         議官      後藤 達太君         大蔵省主税局長 中橋敬次郎君         大蔵省理財局長 吉瀬 維哉君         大蔵省理財局国         有財産審査課長 佐藤徳太郎君         大蔵省銀行局長 高橋 英明君         国税庁長官   安川 七郎君         国税庁次長   磯辺 律男君         国税庁税部長 横井 正美君         自治省行政局選         挙部管理課長  山本  武君         自治省税務局府         県税課長    福島  深君         会計検査院事務         総長      石川 達郎君     ————————————— 委員の異動 十一月十一日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     齋藤 邦吉君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制金融及び国有財産に関する件      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。山田耻目君
  3. 山田耻目

    山田(耻)委員 本日のこの大蔵委員会では、いままでこの問題について触れておりませんでしたけれども、ずばり言って田中首相金権金脈の問題、この点にしぼって大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思います。  この事件が表面化いたしまして以来、国際的にもそうでございますが、国内的にも国民に与えた衝撃はきわめて大きいものがございます。ある意味では、今日のこの状態で推移するということは、国家国民にとって百害あって一利なし、きわめて深刻な状態に立ち至っております。  本日まで本委員会はこの問題を取り上げてまいりませんでしたが、参議院大蔵委員会並び決算委員会、あるいは衆議院の法務委員会などでこの問題の追及をされてきたのでございますが、大蔵大臣答弁をその過程で見てみますと、国家公務員守秘義務国政調査権のからみ合い、こういう中で少しも具体的に疑惑解明を進めるような動きを示しておられません。また、結果としてもそれがなかったわけです。ますます国民疑惑というものは深まる一方でございます。  ところが、最近、新聞紙上では田中総理辞任説が強まってまいっております。  大洋州やビルマのいろいろな折衝を終えられて帰られた十一月八日、その八日の動きというのは、総理みずからが居すわりを続けて中央突破の作戦に立ったという動き報道されるに至りまして、国民の怒りというものはきわめてきびしいものでございました。十一月の十一日に内閣記者会との会見がございまして、問題の本質解明は行なう、政治混迷を与えたことについては責任をとる、なお深めるようであるならば、こう補足されながら、きわめて抽象的な総理見解が述べられておりました。これにも国民は激高いたしておるのであります。  しかし、今明日に至りまして、田中総理辞任をせざるを得ない、こういう方向を報道関係は伝えております。私たち政治の行事としてはきわめて重大な事態に立ち至っておることをその報道承知をするわけですけれども、直接責任者から聞くことはできません。田中総理ときわめて親密であるし、盟友と述べられておる大平大蔵大臣に、こうした今日の実情、変化の中で出てきておるこうした動きに対して、事実なのかどうなのか、経緯はどうなのか、ここらあたりについてまずお伺いをしておきたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 公人としての進退総理大臣みずからが御決断されることでございまして、私からとやかく申し上げられる問題ではないと思いますが、これまでの経過から判断いたしまして、政策の論議でなくて政治姿勢の問題で国政混迷を招いておることに対しまして、そういう事態総理としてはたいへんきびしく受けとめられておるように私は感じます。
  5. 山田耻目

    山田(耻)委員 きびしく受けとめておるということだけのお答えのようですけれども、私はこれほど問題をかもし出した金権金脈事件が、総理がみずから進退をきめただけで——そのことはあなたの口から聞くことはできないけれども、事実であろうと思うのです。問題は、この金権金脈問題を総理がやめただけで抜け切れるものではないと私は思うのです。   〔委員長退席浜田委員長代理着席〕  特にいわれておる多くの問題があります。その一つの中には、幽霊会社をつくってそこで土地のたらい回しをしたり、不当、不正な利益をおさめてそれを申告していないという脱漏脱税行為の疑い、あるいは今日の株式会社の制度から見てそれそのもの違法行為とは言えないけれども、一国の総理大臣として、政治道義から見ても政治モラルから見てもそのことは許せるものではない、こうした問題の始末などなどがございましたけれども、私は、こうした政治家モラルということはやめてしまえば済むかもしれないけれども、問題は金権金脈の問題で政治姿勢を毒していったこの責任というものは、疑惑の事実究明を行ない得ない段階でそれを律してしまうということは許せない行為だとも思うのです。  大蔵大臣参議院でも、脱漏脱税、不正、不当な行為については徹底的に究明をしていかなくちゃならないし、それは総理であれ国民であれ、そこに公平さを失うことはあり得ないと言明されておりますが、そうした事実の究明については、これからずっと残されていかなければなりません。こういう事実究明については今日どういう作業実態が進められておるのか、それらについて述べていただきたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国の税務当局は、国会で定められた税法を適正に執行する責任を持っておるわけでございます。そしてその責任にこたえて、私はりっぱに任務を果たしていただいておると確信をいたしておるわけでございます。その場合、税務官吏に与えられた指針は、税法の前にすべての国民が平等であるというたてまえでございまして、総理大臣でございますから甘くするあるいは辛くするということであってはならないということでございます。田中角榮氏も一納税者といたしまして、しかも多額の納税者といたしまして、私はそれなりの御注意を払って御申告され、納税を進められてきたものと承知いたしておりまして、これまでの御申告に間違いはないものと思いますけれども、しかし今日、山田さんも御案内のような事態で、田中さんの財産の増減につきまして世間から問われておることでございます。税務署といたしましては、こういう新たな情報がございますならば、過去の田中氏に対する税の調査、決定というようなものが、これは田中さんばかりじゃございませんで、全納税者に対しまして、特にそういう情報が行なわれておるというような事態が起こりますならば、再調査をするということもまた税務官庁といたしましてはなすべき任務であろうと思うのでありまして、したがって、田中さんにつきましても再調査をいたしておるわけでございます。  これがどのような進展状況にございますか、相当時間がかかると思いますけれども、これは事務当局から説明をいたさせます。
  7. 磯辺律男

    磯辺説明員 ただいま大臣のほうから御答弁申し上げましたけれども、いわゆる田中さんの問題に関する各種の情報あるいは国会での御審議、そういったことで、私たちが一度処理いたしました税務調査内容を再度見直し、そうしてそこに脱漏があるかないか、そういった申告が正当に行なわれているかどうかということを見直しをする、これは何も田中さんだけに限らず、すべての納税者に共通したわれわれの事務処理上の当然の義務であり、また日ごろやっていることであります。  具体的に申し上げますと、ただいま東京国税局、それから関東信越国税局それぞれで分担いたしまして、いわゆる田中さんに関連するといわれておりますところの会社五社、並びに必要に応じてそれに関連します取引先、それから田中角榮個人、そういったことにつきましてただいま従来の調査の事跡を再検討いたしまして、必要な見直し並びに補足調査をやっておるということであります。  ただ、これの結論をいつまでに出すかということになりますけれども、これはいろいろと相互の関連がございますので、いまこの場所におきまして私から、たとえば一週間以内であるとかあるいは今月中でございますというふうな御答弁を申し上げます自信は、はっきり申してございません。しかしながら、私たちはこれを機会に腰を据えて再調査をいたすという考えでございます。
  8. 山田耻目

    山田(耻)委員 再調査をなさっておるということを伺いましたが、その再調査の結果、国民が抱いておる疑惑当否、こういうものについてはどのように判断をなさっておるか。私はいままでの調査個々内容を伺おうと思いませんけれども国民疑惑当否についてあなたはどうお答えになられますか。  それから、資料要求をいたしましてもなかなか出していただけませんでしたが、それは守秘義務との関係なんでしょう。しかし、大平大蔵大臣が十五日の参議院決算委員会におきまして、従来の守秘義務から行なわれておる公示された申告所得の額を明らかにするというだけでは何となく棒をのんだような、常識的な理解ではないような気がするので、過去にも秘密会を開いて守秘義務に関する項を明らかにしたこともあるのでそれをやりたい、そういう示唆が出ておりました。   〔浜田委員長代理退席委員長着席〕 しかも、一週間ぐらい余裕をくれたらそういう措置ができることの可能性も明らかにされております。いま関東信越国税局などなどで具体的な調査をお進めになっておるようでございますから、それらについての大蔵大臣見解参議院決算委員会で述べられた自分の所信に対するこの委員会での態度、ここらあたりも再度明らかにしておいていただきたいと思います。
  9. 大平正芳

    大平国務大臣 守秘義務というのは、税法上徴税に当たる者が守らなければならない義務でございまして、これは税務官僚はもとよりでございますけれども、私の立場からも尊重していかなければならぬものと思います。  山田さんのお尋ねの問題は、国会が御審議になる、あるいは国会調査権を発動されるというような場合に、この税法上の守秘義務、これも同じ法律上の形式をとりました国会の立法でございまして、それとの関係がどうなるのかというお尋ねだと思うのであります。これは田中さんの問題があろうとなかろうと、国会行政府の間でちゃんと踏まえて処理していかなければならぬ課題であると私は心得ておるわけでございます。  ただ、この秘密を開示することによって得る国益と失う国益とを結局判断して、国会行政権立場も理解していただき、私ども国会の御審議ないしは御調査というものに御協力をしなければならぬ立場であるわけでございますので、私は、これはやはり国会行政府の間で具体的なケースに応じて御相談しなければならぬ性質のものである、そして、これは必ずや国会行政府の間の御相談で解決できる問題に違いないということを申し上げたわけでございます。  しかし、それだけではなくてもう一歩進めて、守秘義務というものは行政府としてはケース・バイ・ケースというけれども、何かそこにどこまでという一つのものさしみたいなものが考えられないかということでございました。それで、それはいままで過去において行政府税務官庁といたしまして外部に出したものがどういうものがあったか、たとえば裁判等におきまして国税当局がどういうものを開示したことがあるか、そういった点を一々調べて、それで守秘義務が実際いままでどういう状態において運営されておったかということを克明に調査いたしまして、その中にある一つのものさしみたようなものがあれば、それはひとつ御相談の場合の材料として考えてみましょうと私は申し上げたわけでございます。  秘密会云々の問題でございますが、秘密会というのは国会がおきめになることでございまして、私どもからとやかく申し上げる問題ではないわけでございまして、もしそういうことが国会において行なわれるということであれば、そういう場面ではどういうことが言えるか、どこまでが限界かというようなところ、これも一ぺんやはり考えさせていただきましょうというようなことを申し上げたわけでございまして、私はまあ一週間、来週一ぱいくらいの間で鋭意やってみましょうということをお答えしたことは事実でございますし、また国税当局にそういうことを命じまして検討をいたさせておりますが、まだ私の手元に命じました仕事の結果の報告というものをちょうだいいたしていないのがいまの段階でございます。
  10. 山田耻目

    山田(耻)委員 国税庁のほうどうですか。
  11. 磯辺律男

    磯辺説明員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたけれども国税庁といたしましては、従来から納税者個々所得内容等につきましては、公示されました金額以外を一般に公表いたしますということについては、われわれの守秘義務関係もございますし、それからまた国会で御答弁申し上げますこともお許しを願っておるようなわけでございます。  ただいま東京国税局管内並びに関東信越国税局管内でもう一度見直し調査をやっておる、それについてどういうふうに最終的に処理されるかというふうな問題になっているかと思いますけれども、私どもといたしましては、現在まで調査いたしております中途の経過報告をここで申し上げるということはお許し願いたいと思いますけれども、やはりそれには事実認定の問題それから法律上これをどういうふうに解釈したらいいかという問題そういったいろいろな問題が介入しておりまして、そういった事実上の問題、法律上の問題といったことをいま分析しながら検討しておるわけでございます。したがいまして、いまどういったところの点が問題になっておるか、あるいはそれをどういうふうに処理しようかということについての具体的な回答につきましてはお許しを願いたい、かように考えます。
  12. 山田耻目

    山田(耻)委員 結局、東京関東信越国税局調査いたしておりますと、やはり疑惑はあるんでしょう。文春があれだけこまかく問題を明らかにした。これに対して、これほどの重大事件にまで及んでくる問題に対して、全然告発もしようとしない、具体的な釈明もしようとしない、そうして総理の座を去っていこうとする。国民はこの一連を見まして——私もそうですよ。確かにいわれておるような法律違反脱漏脱税動きがある。税務署というのは、あるいは国税庁職員というのは、最も厳正に、適正に、こうした不正、不当というものを許さない立場執務をいたしておるはずです。税務官吏の服務の規律の中にも明らかにしてあります。その立場から問題の本質を追っていけば、私は必ず出るような気がする。だから、個々内容についていまあなたから求めようとばしないけれども、いまの調査活動の中で、疑惑に包まれておるこの問題について解明を与えられるような問題点がつかみ得られたかどうかを私は聞いているんです。  その個々内容はおそらく守秘義務ということであなた方は述べられないでしょうから、その疑惑にこたえられるようなつかみ方ができたのかどうなのか。これは一般税務を執行する人々の当然の仕事の中の執務の一端でございますから、あるいは基本的な立場から見た事実の認定ですから、そこらあたりについては、私はお答えいただけるのではないだろうか、あるいは答えていただかなければ困る、そういう気持ちでお伺いしておるのですから、そこらあたりについて少し事実を明らかにしていただきたいと思います。
  13. 磯辺律男

    磯辺説明員 ただいま申しましたように、現在調査中でございます。したがいまして、何かそういった事実の端緒があったかとか、あるいは何か疑惑的な問題があるかどうか、そういったことも含めまして、ここで答弁いたしますことはお許し願いたいと思います。  ただ、特に申し上げておきたいと思いますことは、先ほど大臣から申し上げましたように、田中総理といえどもやはり一納税者であるという観点に立って私ども税務官吏は現在調査をやっております。したがいまして、私たちの今後の見直し調査が粗漏になるというふうなことは決してございません。私はそれは確信を持ってお答えいたしたいと思いますので、私たち仕事につきましてどうか御信頼をくださるようお願いいたします。
  14. 山田耻目

    山田(耻)委員 一体その調査はいつごろ終了する目途で作業を進めておられますか。
  15. 磯辺律男

    磯辺説明員 私たち調査いたしますときは一応のめどは立てまして、第一段階にはこれぐらいのめど、第二段階にはこれぐらいのめどというふうに、段階的に追っております。現在のところ、私どもといたしましては今月中には一応の概観ができるというふうなことを考えておりますが、その概観ができましたことに基づきまして、さらにまた突き進む必要がある場合にはまた突き進むわけでございまして、最終的にいつこれが完成するかということは、ただいまのところ、はっきりその見通しを申し上げることはできないような状態でございます。
  16. 山田耻目

    山田(耻)委員 やはり調査を大体この月末ごろを一応の山場にしておられるようです。それから認定をし、一つ結論をお出しになるわけでございますが、これにはかなり時間をおかれようとしておるわけです。私たちは、国民のこの疑惑にこたえるために国会でこの問題を取り上げておるわけです。あなたの言われたいまの調査が終了していく大体この月末、その段階で、非常に政治的に配慮しなくちゃならぬ処理の方針は別といたしまして、いまのこの税務の規則に照らし合わせてみれば、違法であり、合法であり、脱漏であり、脱税であり、何もなかった、この結論を出すことは私は容易だと思う。大蔵大臣にこのことについてお尋ねするわけですが、では、この月末ごろになりましたら、こうした調査の結果というものは、大蔵委員会は所管の委員会でございますから報告をしていただける、こういうことは期待をしてよろしゅうございますか。
  17. 磯辺律男

    磯辺説明員 大臣お答えの前に恐縮でございますけれども、私から最初に申し上げたいと思います。  かりに一応のめどというものを今月中に置いておるとお等えいたしましたけれども、これはあくまでも私たち事務的の区切りをつける意味で申しておるわけでございます。したがいまして、一応月末あるいはその次の月の半ばあるいは年内というふうに一つ一つ区切りをつけて事務の締めくくりをやっていくようなわけでございまして、今月中に一つ見通しを立てるつもりで事務的にやっておりますけれども、はたしてその段階大臣まで報告できるような状態になっているかどうか、その点についてはまだ何とも申し上げられないわけでございます。したがいまして、月末になったらその段階大臣が統一的にここで御答弁願うというふうなことになっておるかどうか、ちょっとそれはお約束いたしかねると思います。  それからなお、やはり調査の結果でございますので、これにつきましては何度もお願いいたしますように、税務当局を御信頼いただきまして、この調査の結果についてこの国会で御報告するということはお許し願いたい、かように考えております。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 冒頭お答え申し上げましたように、税法上の守秘義務には特別の例外がございませんで、どなたであろうと納税者秘密につきましてはこれを守って差し上げる義務があるわけでございますので、総理大臣といえども一般国民と同様にこれを適用してまいるつもりでございまして、ただいま国税庁のほうからお答えしたとおりに、国税当局を御信頼賜わりたいと思います。
  19. 山田耻目

    山田(耻)委員 この問題が、冒頭に申しましたように、やはり非常に膠着した状態でちっとも進まないというのは、やはり守秘義務国政調査権の問題だと思うのです。あなた方、全然口を閉ざして述べようとなさらない。守秘義務とは一体何かという疑問にまでかかっていくわけですよ。もちろん公務員である職員が職責上得た秘密というものは漏らしてはならないし、個人プライバシーを守っていかなければならぬ。私は、この考え方というものは否定をいたしません。民主主義というものが原則的にこの守秘義務を通して成長していくことも、私は承知をいたしております。  善意に基づいた人たちプライバシーを守っていく、これは私は当然のことだと思うのですが、守秘義務そのもの犯罪の温床になったり、あるいは犯罪人をかばう隠れみのになったりするということは、国政調査権を持つわれわれとしては許せない行為なんです。だから、さっきも申しましたように、あの文春で明らかにされた内容について告発もしなければ、新聞記者団に問いただされて、いずれ事実は明らかにいたしますと言いながらも何の解明もない、国民はあの文春の中身を総理ば肯定したものと思っている。天下の公人として最高の政治権力を持つ総理がそういうことをし、たということは許せないと思っている。しかし、それはあなた方の論理でいきますと、個人プライバシーを守るための守秘義務でこれは隠していかなくちゃならぬ。この繰り返しがこの混迷を招いているわけですよ。そうしてその中で総理はやめていく。  税務当局を信じてほしい——それは世界で一番過酷なといわれておるほどの日本の税務行政については、不正を許さないという前提がその過酷さを持っているんであろうと思うだけに、私は信じたいと思う。信じたいと思うけれども、今日いわれておるようなこの実態調査が、疑惑を包んだまま片りんすらも明らかにされようとしていない、この立場犯罪人をかばう隠れみのにしかなっていないということを理解するならば、もう一歩踏み込んで、このことが起こしてきておる今日の政治不信あるいは納税道義の著しい低下、こういうものをあなた方は知っているはずなんですよ、それを知っていながら、守秘義務守秘義務だと言って事実を隠蔽をしていくこの態度というのは、私はどういうものなんだろうかと思う。  こうした問題については大臣から、どういう方法でどういう一つの結末をつけるためにこの時期まで待ってほしいというふうな確たる答弁があってしかるべきだと私は思う。参議院における決算委員会のあの答弁がきょうここで繰り返されましたけれども、よくわからない。大平大臣もおかしいんじゃないだろうかという疑惑国民は持ちますよ。  大臣、あなたのことについては、田中総理後継者になる人であるとか筆頭の序列にある人だとか、いろいろ言われております。しかし、そのあなたがこの態度を持続される限り、国民の認識の中には決していい結果はもたらしませんよ。田中さんと一緒の地盤沈下をあなたを含めてなさるということからあなた自身が防がれるためにも、国民疑惑にこたえて浮上措置をおとりにならなければいけません。その意味からも、この問題の決着についてはどういう具体的な方法、時期を設定されておるのか、ひとつ勇気をふるって確たる答弁をお願いしたいと思います。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 山田さん、誤解をしないようにお願いをしたいのでございます。私どもは、田中さんのお立場をかばうために守秘義務を採用するなんというふらちなことはいたしていないつもりなんです。そんなことをしたら、あなたのほうから逆におこられる立場なんです。  われわれ五万二千の税務官吏が十数兆の国税を秩序正しく調定させていただいておるゆえんのものは、われわれ徴税当局に対しまして国民が御信頼を寄せていただいておるからだと思うのでありまして、いまの税法は、御案内のように、納税者の御協力を得なければ執行ができないわけでございまして、公権力を行使いたしましてその個人財産の増減というものを十分聞いて、承知して、それで課税をしていくわけでございます。まず御申告をちょうだいして、よくよくのことでない限りそれを信頼して徴税してまいるのが普通でございますけれども、これに対しまして、人間のことでございますから記憶の間違いもございましょうし、つけ落ちもありましょうし、あるいは意識的に脱税、節税を考える向きがないとは言えないわけでございますので、そういうことに対しまして五万二千の税務職員は終始緊張したモラルをもちまして徴税に当たっておるわけでございます。  そういう立場でおる徴税官吏が承知した秘密というものは外に開示をしてはならぬというのは、この国会できめられた法律なのでございます。その法律を踏み越えないと何かますます疑惑に包まれるじゃないか、そういう意味のことをあなたはおっしゃいましたけれども法律税制の公正な執行を確保するために守秘義務というものを税務官吏に課しておるわけでございます。したがって、それは守らなければならぬと私は考えておるわけでございます。  それで、先ほど申しましたように、田中さんであろうとどなたであろうと納税者にかわりはないわけでございまするので、それに対しまして私どもは、間接、直接の資料が入りますならば調査をいたしまして、いままで調べたことで足りないものがあるかどうかを検討いたしまして、脱漏があればこれを是正してまいるのは当然の任務と心得ておるわけでございます。したがって、そのように鋭意税法の公正な執行に当たっておりまする税務官吏をまず御信頼していただきたい。田中さんの場合におきましても、この方針で終始着実にやっておるわけでございますから御信頼をいただきたいということをお願いいたしておるわけでございまして、もしそうでなくて、税務官吏のほうで田中さんなるがゆえに秘密をばらばら開示するということになりますと、Bの人の場合にもCの人の場合にも聞かれた場合には言わなければならぬ。そんなことをしたら税法の執行なんかできません。ですから、私ども税法の適正な執行を保障する意味におきまして、厳正に守秘義務は守らせていただきたいと願っておるわけでございます。  それから第二に、しかしながらあなたが言われますように国会国政を御審議になる、広く深く御審議になるお立場にあるわけでございまするし、国会はまたみずからの権能をお持ちでございまして、調査権を御発動になることも国会に与えられた御権能であると承知いたしております。したがって、政府のいう守秘義務国会調査権というものをどう考えるかということが第二の問題になってくるわけでございます。これは参議院におきましてもお答え申し上げているとおり、どちらが優先するという性質のものではないと私は思います。したがって、守秘義務を守らなければならない行政府立場に対して、国会も十分御理解をいただきたい。それから私ども行政府も、国会が広く深く御審議をいただく場合に、十分それに御協力申し上げなければならぬ立場にあります。したがって、これは国会行政府が御協議いたしまして解決できない問題ではないと私は確信している旨参議院でもお答え申し上げたのでございます。  こういう問題は、田中さんの問題があろうとなかろうとある問題でございます。田中さんの問題もいま再調査をいたしておりまして、いま国税庁からも申し上げておりますように、われわれを御信頼いただきますと私どもがきちんと処理いたしますからということで、よし、それじゃおまえたちを信頼するからきちんとやれとおっしゃっていただければいいわけなんでございますが、それが私どもが何か隠しておるんじゃなかろうか、隠すべからざるものを隠しておるんじゃないかというようにあなたがおとりでございますならば、その誤解を私は解いていただかなければならぬと思うのです。私どもはわざわざそんなことをやってはいないわけなのでございます。適正な税法の執行をやらなければならぬ厳粛な責任を立法府からわれわれはいただいておるわけなんでございますから、それによってわれわれはやっておるということは御理解をいただきたいと思うのでございます。  それではこの問題についてどういう手順でおまえは処理をしていくかということでございます。これは田中さんであろうとどなたであろうと、先ほど申しましたように、新たな情報が入る、直接、間接の資料が入る場合に、もう一度いままでやったことに間違いがなかったかどうかということを再調査するのが当然の任務だと思うわけでございます。したがって、それをいまやっているわけでございまして、その結果が判明いたしまして、私は万々間違いないと思いますけれども、間違いが万一でもございましたならば、これは適当な手続できちんと処置してまいるつもりでございまして、そのことは私どもを御信頼いただきたいと思うのでございます。  ただ、田中さんはこの前記者会見を通じまして、国民にいずれ自分からその財産問題について言及することあるべしということを言われております。それは田中総理といたしましてそう言われた以上は、いずれの時期か、どういう形か私は存じませんけれども、みずからのお立場国民に釈明される機会があることと思うのでございます。これは田中さんの御判断のことでございまして、税務官庁が、あるいは税務当局、あるいは大蔵省、私の立場で、そうしてくれとかそうしちゃならぬとかいうようなことを申し上げる立場ではないと私は心得ております。
  21. 山田耻目

    山田(耻)委員 政治家モラルとしては、それは田中総理から適当な時期に私は何らかの釈明があろうと思うが、いまの、法律違反ではないか、脱漏脱税ではないか、このことについては、税務当局としてはあなたの指揮も受けて公正、適確に税務署職員の全能力をあげてやっておる、だからそれはいずれ黒白をつける、こういうあなたの答弁です。私はそれを信じたいですよ。信じたいけれども、本来の日本の税務執行機能というのは、かなり厳格に過酷といえるような状態で日常やられております。だから、この一つ情報源でございました文春の資料提供というものが発表される以前から、言われておるような幽霊会社は実存していたんでございますし、田中さんの資産取得というものと申告所得というものとの間にかなりの開きがあるということも過去に指摘をされていた。今日までそういう状態についての調査がどこまでやられていたんだろうか、どこまで厳格に一般国民と同じように差別なくやられていたんだろうか、なぜ今日まで放置されていたんだろうか、この疑いは全部ありますよ。   〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕 私にもある、国民にもある。その疑いを晴らし得なかったということは、私はあなた方の怠慢ではなかったかと思うし、そうじゃない、いろいろ言われておったが全然そういうことばなかったよと、おそらくこういう立場から何もしなかったということなんだろうと思うが、私はここはごまかしだと思う。ここはごまかしなんですよ。  だから、今日これだけ問題が表面化してきて、ようやく東京国税局関東信越国税局がおおむね五社を対象に調査に入った、こんなことはナンセンスですよ。いままで長きにわたってずっとあったじゃないですか、指摘をされてきたことも多かったじゃないですか。そのときはほうっておいて、これほど騒がれてようやく最近調査に入った。まだ調査段階ですから結論は出ません。これが最も適正、厳格な日本の税務執行の態度だと言えるんですか。私は信じたいけれども、こうした過去の現状を踏まえてみれば、あなたのおっしゃることをすぐうのみにして、そうでございますか、よろしゅうございます、こういう言い方ができないのをとっても残念に思うのですよ。いまの調査の中で資産の取得と申告所得との違い、たとえば目白台の田中さんの私邸においても、半分の土地が幽霊会社といわれるその会社の管理であり、半分は田中さんの持ちものである。軽井沢の別荘にしてもいろいろ言われておる。こういうことが一般国民行為であったとしたならば、このような状態でほうっておかれましたか。  だから、ここまで事態が進んできて、田中さんはぼろが出ぬうちというかどうかわかりませんけれども、ここらあたりでもう総理をやめたほうがいい、逃げたほうがいい、そうしてわしはどうもからだの調子が悪いということで入院をして、できるだけ会議には出ぬようにしたい、こういう意向があるのかどうかわからないけれども、そういうことまでうわさされている。これが最も厳正、中立、適正な税務の執行というあなたのいまの答弁とどうかみ合うのですか。  ここらあたりについて、いまやっておる調査内容、どの時期までに終了をして、そうして具体的に起こっておる問題についてはどうする、そうしてそれは国政調査権守秘義務との関係をどの立場でどうする。この間参議院で法務大臣の濱野さんが、政府はこの問題について統一見解を出すべきである、法務大臣個人の私見としては、守秘義務よりか国政調査権のほうが優先すると思うと述べています。あなたのいまの答弁は、守秘義務国政調査権も全く優先の順位はつけがたいものだ、あなた方がきめた法律じゃないか、こういうふうに述べられておるのだけれども、こうしたからみを含めてあなたの見解を述べていただかないと、私は、何かあなたと田中さんがぐるになってこの問題を隠しおおそうとしておるというふうな気がしてならない。あなたを信じたいし、日本の税務行政を信じたいけれどもそこらあたりについてもう一歩突っ込んであなたの回答をお聞かせいただきたい。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、いまの所得税、法人税、これは申告制度を基礎にいたしておるわけでございまして、納税者の御申告というものの協力を得なければ、税務官吏はなるほど五万二千人全国におりますけれども申告納税を扱っているのは一万一千そこそこと記憶いたしております。したがって、たとえば個人申告納税者八百万の方の所得を綿密に調べて脱漏がないようにしなければならぬということは、容易ならぬ大事業でございます。そこで、その人について調査が何%、何年間にできるかということが、まずわれわれの税務行政の実際の事の運び方でございまして、一人一人について綿密な調査ができるだけの要員を実は持っていないわけなんでございまして、八百万の人の所得をくまなく捕捉して適正な課税をするなんということになりますと、これは神わざでございまして、なかなかそれはできない相談でございます。したがって、御申告をいただいて、それに従って聞き込んだこと、あるいは御申告の際にいろいろ聴取いたしましたことを基礎にいたしまして、実際の税金を調定いたしておることと私は承知いたしておるわけでございます。  田中さんの場合も、私はその例外ではないと思うのであります。七千万円、八千万円の所得者でございますし、先ほど申しましたように、公的なお立場におられる田中さんでございますから、それ相当の注意を払われておるものと承知いたしておりますから、万々この御申告には狂いはないと私は信じたいわけでございます。しかし、先ほども申しましたように、今日ただいま世上で田中さんの財産の増減問題が問題にされておるわけでございまするから、そしてそういった材料が提供されておるわけでございますから、それに関連いたしまして、当然、いままでやったことに間違いはなかったかということをいま再調査いたしておるわけでございます。  私ども税務官吏は、高いモラルと技術をもって世界に冠たる税務行政をやらせていただいていることを誇りに思っておるわけでございます。私どもは、外に理解を求めようとすれば、まず内に理解を求めなければいかぬわけでございまして、五万二千人の方々ですから、大臣や長官にふらちなことがあってはとてもこの組織はもちません。したがって、私は、いまあなたが仰せのように、私が田中さんと盟友関係にあるからといって、これを立ちはだかって隠そうなんて全然思っていないわけなんでございます。一納税者といたしまして、適正にこれを処理していく所存でございます。  どのような手順でこの調査を終えて処理してまいるかということにつきましては、先ほど国税庁次長のほうからお話があったわけでございまして、私は国税庁の諸君を信頼して、この問題がなるべく早く決着がつくように期待をいたしておるところでございます。
  23. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなたの盟友である総理がなさったことだから、資産所得の増減も申告所得も万々間違いはないとあなたは信じておられたようでございますが、しかしこういうふうな万々間違いはないという一つの認識が、私は今日のこの混迷を深めておるのだと思うのです。その信じられていたというあなたと田中さんの関係の中に、こういう情報提供が出てきたんでしょう。しかし、それは今回始まったことじゃない。過去にも幾つかあった。それもあなたの信じられた中で消えていっておったと私は思う。  今回この情報提供を受けて、国税庁はいま真剣に差別なく、厳格に調査に取り組んでおると述べられているわけです。そういうあなたとか国税庁長官とかの態度、五万一千人の税務署職員に少しも動揺を与えてはならないということばは、もろ刃の剣となって返ってきておるのです。一つは、あなた方がぐるになって総理をかばっておるのじゃないか、こういう指摘、いま一つの指摘は、あなたの答弁の中にありました守秘義務をしっかり守ってやらなければ五万一千の職員が安心をして働くという前提がこわれていく、こういう一つのもろ刃の剣を持っておる。しかし、いま税務職員は、片一方の指摘である一体どうなのだ、こういう一つ疑惑を持っておることは私は間違いないと思う。こういうふうな状態をこのまま持続するということは許せないし、総理がやめたからといって立ち消えになるものではないし、あなたたちのことばを額面どおり受け取れば、最も適正に、最も峻厳に税務行政の中にある機関を動員して事態を明らかにしていく、この立場を間違いなくおとりになるものと私は信じたい。  その状態というものを、せめて目安をいつごろかつけてほしい、それがあなた方最高責任者の考え方によって、私はワク組みが設定できると申しているのです。それをなぜお述べになれないのですか。観念論だけ、抽象的な議論だけで、中に入れば守秘義務国政調査権のからみで逃げてしまう、こういうやりとりというものがどれだけ国民に不信感を与えておりますか。だから私は、目安、あなた方最高責任者がこの時期までには問題を解明していくという立場を明確にされた上で税務官吏を信頼してほしい、税務行政を信頼して欲しい、こういう結論を結ばれるならばそれなりの理解をいたします。それらについての態度をもう一度明らかにしてください。
  24. 磯辺律男

    磯辺説明員 山田先生御指摘のように、私たち国税の実際の事務を所掌しておるものといたしましては、この問題で税務行政について国民の間に疑惑を持たれることがあってはならないというのが最大の心配でございます。同時にまた、部内職員にあってもやはり自分たち仕事に誇りと自信を失うというふうなことがあってはならないということで、私はわれわれの内部の職員の心境に対してたいへんな心配を持っております。そういった意味におきまして、一日も早く現在の問題を解明いたしまして、そういったことに対する疑惑なり不信感といいますか、心配を除きたい、そういう気持ちはおそらく先生と同じ、あるいは先生以上に私は持っているかもしれません。  ただし、この問題についていつまでに調査を完了するのだというふうにいまおっしゃられましても、やはり手がけてみまして、その問題がどこまでの広がりを持っているか、意外に早く完結するものなのか、あるいは取引先、関連先、そういった調査で時間がかかるものなのか、あるいは法律解釈上直ちに解釈できるものなのか、あるいはまた正式のところにはかってその法律解釈を求めなければならぬのか、いろいろな問題がこれから出てくるだろうと私は思います。そういった意味におきまして、いませっかく調査をやっている最中でございますから、いつまでにこれを完了するというお約束をすることは、かえってこの問題を深く掘り下げそして解明をするにはマイナスの面もあるのではないか、私はかように考えます。  ですから、たびたび私がお願いいたしますとおり、私たちは本腰を入れてやっておるわけでございますから、ひとつこの際、税務官吏税務当局を御信頼いただきましておまかせ願いたい、かようにお願いをいたしたいと存じます。
  25. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうも決意だとかあるいは心がまえとかのみを述べられておりまして、少しも私たちが信頼するに足りる具体的な材料提供はないわけです。  そこで、磯辺さん、大がかりな調査に入っておられるのだと思うし、いままで明らかになったものだけを見ましても、かなり根っこは大きいし、奥も深いし、複雑をきわめているわけで、私はそれはなかなか一苦労要るところだと思うのです。しかし、日本の税務行政の今日までの力のたくわえ方から見たら、あるいは国民に及ぼしている手の入れ方から見たら、私はそんなに長い手間ひまのかかるものとは思えないのですが、どういう構成で調査、査察のほうはどういう取り組みをさせておる、総員どれくらいの規模で入っておる、こういうようなことは守秘義務とは関係ないのですから述べていただかなくては困る。そうすると、これだけの構成で手がければ、これだけ根っこが大きければ大体どの時期ぐらいにほぼアウトラインはつかめる、こういうふうに私たちも判断ができますよ。特に私たち大蔵委員会ですから、そういう立場においてもやはり委員会として監視をし、監督をしなければならぬ場合もあるわけですから、その一つの構成、実態、手順、こういうものを明らかにしていただきたいと思います。
  26. 磯辺律男

    磯辺説明員 実際に担当いたしますのは東京国税局及び関東信越国税局でございます。東京国税局におきましては、もちろん東京国税局長の指揮下に入るわけでございますが、直税部それから調査部、それぞれの主管課がそれぞれの立場においてこの問題の調査をやっております。関東信越国税局におきましても同様な構成でございます。  したがいまして、実際にこれに当たっております調査官なり実査官の数が何人かということは私的確に把握しておりませんけれども、そういった東京国税局関東信越国税局調査しているその問題を持ち寄りまして、国税庁において全般的な調査並びにその関連づけをしておるという状態でございます。ですから、実際に従事しておる職員の数というのはそのときに応じて増減がございますのではっきりは申し上げられませんけれども、一応の動員体制といいますか、調査に従事している機構はそういったことであるということでございます。
  27. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は、一生懸命国民疑惑を晴らすために税務能力の全力を傾けていま調査に当たっておられるというふうに理解をしたいのですよ。しかし、どれだけの数が調査に当たっておるのかということもわからぬようでは、私は前提となる決意というものをほんとうにそうだと信頼して伺うわけにはいきませんので、こういうものはすぐわかることですから、ひとつどれくらいの実数で、今日までどれだけかけて調査をしておる——これから先いつまてかかるかということは、これは一つ政治判断もあることだと思いますからそれは問わないにしても、いつから始めて、実数どれだけで今日まで調査しておる、この実態くらいは、磯辺さん、本気でおやりになっておるのなら、私は述べていただいてしかるべきじゃないかと思うのですがね。
  28. 磯辺律男

    磯辺説明員 いつから始めたということでございますが、これは御承知のように十月二十二日、参議院委員会でこの問題が初めて取り上げられまして、それから直ちに関係局を招集いたしまして、その事前調査に入ったわけでございます。もちろんこれだけにかかり切りになることは、御承知のように、ただいま税務としてはこれからいよいよ最盛期に入るわけでございまして、この問題だけに全職員を動員するのも限りがございますので、その中で特に能力のすぐれた責任者を中心といたしましてこの問題に取り組んでおるわけでございまして、それはやはりそのときの税務全般の仕事の繁閑に応じましてできるだけこちらのほうに人数をさくようにはいたしておりますけれども、ただ、常時これに何人従事しているというふうな数をここでちょっと私把握しておりません。ただ、責任者をきめて、そこで全部必要に応じて動員しておりますから、かなりの調査官なり実査官の数になると考えております。
  29. 山田耻目

    山田(耻)委員 知っていないということならこれは聞きようがありませんが、かなりの数を入れて、すでに今日まで一カ月になりますが、調査をなさっておるようです。この月末に一つ調査の全貌は明らかになるということですが、今日までの経緯を踏まえてみましても、私は必ずこの中には脱漏脱税的な、法律違反的な要素もかなり含まれているのではないかという私なりの確信を持っています。しかし、これはあなた方のいまの守秘義務という域から出ておりませんのでお伺いする由もございませんが、こうした問題につきましては、私は、何回もお答えいただきましたように、国民と差別なく、峻厳に、適正な結果を得られるような、効果を求められるような、そういう一つ措置をするというあなた方の態度だという以外は聞くことができません。特にこの事件をめぐって国民に与えておるいろいろな不安と不満と疑惑、こうしたものへの解決に最大の力を発揮することが、私は納税道義の低下を防ぐためにもきわめて有効な手段であろうという気はいたしております。こうした問題をこれ以上聞きただすことはできません。税務当局としては、きょうのこの委員会でこれから多くの皆さんが具体的な問題についての質疑を展開されると思いますけれども、遠慮しないで徹底した調査というものが行なわれていくように強く求めておきたいと思います。  特に大平大臣には、田中さんが総理をやめてしまえば事が落着をするかというふうな感覚でこの問題を見てもらっては困ります。あの人が政治家として持っておるモラル、それによって責任を負ってみずからの道を切り開いていったということは、それはそれなりにあの人の立場はあるでしょうけれども、こういう国民が非常に強い感情を加えて注視しておる問題を政治的な判断でうやむやにされるということがありますならば、あなたもやはり田中総理と同病、同質、同根である、こういう疑いをますます広げていくということには間違いない結果を生みます。どうかひとつこの問題の解明にあたって決意をもって処置なさるように、最後にあなたの決意を伺っておきたいと思います。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 徴税当局といたしまして、この問題の処理は厳正にやってまいらなければならぬと心得ております。これは税制の適正な執行の上から申しましてたいへん大事なことでございまして、総理大臣の御進退とは関係ございません。  それから、政治モラルの問題につきましては、冒頭に申しましたように、総理御自身もみずからの政治姿勢に関連いたしまして政治混迷を招来いたしておる事実に心を痛められておるようでございます。公人といたしまして十分この事態をきびしく受けとめられて、りっぱに処理される御覚悟であることを私は確信いたしております。
  31. 山田耻目

    山田(耻)委員 時間がないからこれで終わりますが、いま総理の気持ちを聞いたのじゃなくて、あなたの決意を求めたのですよ。私は聞いたことには的確に答えてほしいと思う。こういう問題が起こってきたときには、所管の大蔵大臣としてはしっかり決意をもって——国税庁当局はやろうとしておる、信じてくれと言っている。その直接の長であるあなたは、片側では田中総理の盟友であり、そうして片側では次期総理をねらうという気持ちは皆無ではないと私は思う。そのあなたが、この問題の処理にあたって重大な決意で国税庁当局を督励しながら措置をしないと、あなた自身も同病、同質、同根とみなされますよ。国民はそれを見ておる。私は質問を終わるにあたって、この問題の解決にあたってのあなたのこのことについての決意を伺いたいということを申し上げたのです。それに対して明確な答えをいただいて、私の質問を終わります。もう一度言ってください。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほども申し上げましたように、税制の厳正な執行ということは非常に重大なわれわれの任務でございまして、これに関連いたしまして取り上げられた田中さんの課税問題につきましては、私どもこれを厳正に処理してまいる覚悟でございます。
  33. 山田耻目

    山田(耻)委員 終わります。
  34. 森美秀

    ○森(美)委員長代理 塚田庄平君。
  35. 塚田庄平

    ○塚田委員 大蔵大臣に端的に質問をいたします。大臣のさっきからのいろんなそぶりを見ておりますと、片方で答弁し、片方では裏からいろいろと手紙が来ておるようで、心ここにないという感じを受けております。私どもは、自後そういうことじゃなく、とにかくこの問題について真剣に答弁をしておるという大臣の意思を態度でひとつ示してもらいたいと、あらかじめこのことは注意しておきたい。  大平大蔵大臣は、いま一番憂慮しておることは何でしょうか。まずこのことをお聞きしたい。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 内外たいへん深刻な事態でございまして、政府にとりましても、また与党にとりましても、非常に深刻な局面を迎えておるわけでございまして、政権をあずかっておる立場におきまして、いかにしたらいいかということについて日夜苦慮いたしておるところでございます。
  37. 塚田庄平

    ○塚田委員 何をいかにしたらいいかということ。この金権問題はずいぶんいろいろと今日まで審議を進めてきたのですが、この問題についていろいろと憂慮されておるという答弁がいま山田委員にあったわけですが、いろいろと憂慮されておる中で、一体、何が一番大蔵大臣として心配か、このことを端的にひとつ言ってください。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 この問題は、大蔵省の課税問題あるいは国有財産の処分問題等に関連して提起されておる面がございます。したがいまして、これは先ほども申しましたように、厳正に処理してまいりまして、国民疑惑を招かないようにしなければならぬと考えております。
  39. 塚田庄平

    ○塚田委員 私は大蔵大臣の認識はまだまだ浅いと思うのです。あなたは毎日、新聞では一体おれはどうなるのかということだけを考えておるかもしれませんが、いままで読まなかった読者の声、つまり新聞を通じてささやかに自分の意見を述べたいとおそらく何万通来ておるでしょう、その何万通来ておる中から、紙面の制限の中でわずかな人たちだけしか選ばれない。その選ばれたわずかな人たち、この人たちはどういう声をあげておるか、あなたは読んだことがありますか。いま日本で出ておる代表的な新聞に、毎日今度のこの問題について読者の声として載っておらない日はないのです。それは選択された何千人の中の一人でしょう。あなたは、どういうことを言われておるか、そのことを一体十分踏まえていまこの委員会に臨んでおるかどうか、まずそのことを聞きたいと思う。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 一政治家といたしまして、新聞その他にあらわれました国民の声というものに対しましては、つとめて虚心に読んでまいる心がまえでおるわけでございます。しかし、全部目を通しておるという自信はございませんけれども、つとめて努力をいたしております。
  41. 塚田庄平

    ○塚田委員 まあそれは、全部読めというふうなことを私は言っておるわけではないのです。せめてきょうの新聞の読者の声の傾向はどうかというくらいは、特にこの問題については大蔵大臣は考えなければならぬ事態だと思うのですね。私が先ほど何を一番憂慮しているかということを聞いた趣旨は、この読者の声なんです。  それから読者の声だけじゃなく、いま週刊誌は売れて売れてしょうがないのです。この間、ある雑誌社へ行ったら、同じことを言っていました。ただし、それは田中さんの問題総理金脈問題、人脈問題これが載っていなければ売れないというのです。通常この週刊誌は、およそ政治のことに縁のないと思われていた。こういう週刊誌も、いまや一斉にどこかのページに何かを載せて広告を出せば売れる。端的にいって、某氏は洛陽の紙価を高からしめた、皮肉な言い方でいうと、こう言っても過言ではないほど、週刊誌を通じ、新聞を通じ、いま国民の目は一斉にこれに注がれておる、こう考えざるを得ないのです。  その中で、私は大蔵委員として特に大蔵大臣にこのことを強調したいと思うのです。あなたはどう考えておるか。それは、国税庁あるいは大蔵省が今日までとってきた態度について、おれたちはもう税金を納めることがばかくさくなった、おれたちはもう正直に税金を申告するなどということはばかばかしくてできない、表現こそ違え、こういう声が必ず出ておるのです。いいですか、大蔵大臣が一番憂慮しなければならぬのはこれなんですよ。総理は最もそうです。読んでいる、読まないじゃなくて、いま憂慮しなければならぬのは、国政全般に対しての信頼はもちろんのこと、税務のあり方、大蔵省のあり方——税金を納めるというのは国民義務です。この義務についていま大きな疑念を持ちつつある。解明されないからですよ。守秘義務といった壁をより以上厚くしながら、結果的に問題の究明をおくらしておる。そこに国民の目が向けられておるのです。  そこで、大蔵大臣としてこういう事態に対してどういう所懐を持っておるか、ひとつ率直に開陳を願いたいと思うのです。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せの問題、確かにゆゆしい問題でございます。国民納税に対して意欲を失うというようなことになると、国がつぶれてしまうわけでございます。私ども、したがいまして、納税に対しまして国民の信頼をつないでいかなければならぬわけでございまして、そういうことについて、守秘義務もその一つでございますので、国会の理解をいただき、同時にまた国民の理解をいただくようにいまお願いをいたしておるところでございまして、これが、先ほど山田さんの御質問にもお答え申しましたように、くさいものにふたをするというようなことに国民の一部がとられておるとすれば、それはそうでないんだということをよく御理解をいただかなければならぬと思っておるわけでございます。くさいものにふたをするなんというふらちなことは毛頭考えていないということ、それはしてはならないことでございまして、私どもはそういうことでないということを先ほども答弁申し上げたとおりてございまして、国民に十分それを御理解いただかなければならぬと私は考えております。
  43. 塚田庄平

    ○塚田委員 先ほどまでの答弁の中で、総理であろうとあるいは塚田であろうと、だれであっても徴税態度は同じだ、あるいは税法の適用については同じだと、このことをあなたはずいぶん繰り返し答弁しておりました。私は去年一千万円の土地つきの家を買いました。そうしたら、買うということになった瞬間、その金はどこから出てきたか、労働金庫から借りました、労働金庫へ問い合わせて、ほんとうに塚田に貸したのかどうか、何年年賦で、どうして払うのか、こういう調査が直ちにいきます。私はこれは当然だと思うのです、税務吏員としては。当然だと思う、これは正当なことをされたんですから。  しかし、いままで守秘義務を守っておる守っておると言われるが、過去において、守秘義務を破って、そしてこれは滞納者だといって国税庁が堂々と、朝日新聞をはじめ各新聞に発表した例がなかったかどうかということなんです。まずこのことを答弁してください。
  44. 磯辺律男

    磯辺説明員 国税庁のほうで正式に滞納者のお名前を具体的に発表したという例は、ちょっといま私の記憶にはございません。
  45. 塚田庄平

    ○塚田委員 これはもう否定できないことなんですよ。時間がないから、いま一例をとります。  昭和四十五年の七月二十二日に「滞納、九百億円越す」ということで国税庁発表があります。ただしこれは四十四年度国税の分について。その中で、まず滞納の業種別、たとえば不動産業者が多いだとかあるいはパチンコ屋が多いだとか、ここまではいいと私は思うのですね。その次、ワーストファイブということで、堂々と名前があがっておるのですよ。私はそういう名前は言いたくないのですが、調べてみればすぐわかります。これはまあ、発表になっているから言います。第一位森脇文庫、四十三億四千万。第二位興亜建設、九億何がし。第三位問題の田中彰治。くしくもきょうはその裁判第一回の日です。四番森脇、個人ですね。五番ニート音響。国税庁発表として出ているのです。これは一体守秘義務とどうなんです。いま大臣は何びとに対しても決して差別はしない、こう言ったでしょう。これは刑事事件になっていない。まだいろいろ争われている。こういう発表を堂々としておいて、何びとにも公平だと言えますか、大臣あるいは国税庁
  46. 磯辺律男

    磯辺説明員 ただいま塚田先生から、滞納者のワーストファイブということで個人的なあるいは個別会社の名前が出ておるという御指摘でございます。   〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕 この問題につきましては、私どもいつも定例的に滞納状況を発表いたします。そのときの当記者クラブの取材に応じまして、では上のほうで滞納額の多いのはどれくらいだという記者クラブからの御質問が必ずあるわけでございまして、そのときには上位から個別的に、名前を申さずに滞納金額というのは申します。  ところが、たまたま記者クラブのほうでも取材活動をやっておられまして、そして、こういったただいま御指摘のありました森脇文庫あるいは興亜建設、田中彰治、それから森脇個人云々というのは、その前に査察によって告発、起訴になっておりまして、その段階におきましてその金額がほぼわかっておりますので、それに当てはめてみますとほとんどそれに合致するというふうなことで、こういった取材活動面を通じまして具体的な名前が出たのじゃないか、私どもはかように考えております。
  47. 塚田庄平

    ○塚田委員 そういう詭弁を弄するものじゃないですよ。一つの新聞なら別ですよ。取材活動となればいろいろそれぞれ新聞社にニュアンスがあると思う。いずれも国税庁発表と称して、同じ金額、同じ名前が出ているのです。これは何と言ったって発表したに相違ないのですよ。そのときには守秘義務などということは全然考えなかったのでしょう。むしろこれは、こういう悪徳滞納者を明らかにすることが国民に対する義務だと思っておったのじゃないですか。あるいは告発する、これが国税庁としての義務だと思ったのでしょう、どうですか。
  48. 磯辺律男

    磯辺説明員 滞納額を発表いたしますときに、やはりその滞納しておられる納税者の方も、必ずtも刑事事件とかあるいは査察によって摘発されてその結果滞納になっておるという方たちばかりでございませんで、納税意欲はあるけれども資金繰りがつかずにやむを得ず滞納しておるというような方もあるわけでございます。そういった意味におきまして、国税庁といたしましては、滞納者の個々のお名前、金額というものを発表するということはいたしておりません。ただそのときに、おそらく滞納額の上位五人といいますか、上のほうからどのくらい滞納の大きい人が並んでおるかということは発表したと思いますけれども、その滞納をした納税者がだれかというところまでは発表していないはずでございます。
  49. 塚田庄平

    ○塚田委員 これは時間がないので、繰り返しになりますと、しない、しないということですが、状況判断として、どの新聞も一斉に同じ名前の同じ金額の、しかもここには国税庁が発表したとなっているのです。これは新聞がうそを言ったことになりますな、自分の取材を国税庁発表としたのですから、あなたの答弁が正しいとするならば。私はそうじゃないと思う。あなたの答弁は間違っておると思う。  これだけじゃないのです。国税庁長官あるいは大蔵大臣、ララミー牧場事件というのは知っていますか。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 寡聞にして私は存じません。
  51. 塚田庄平

    ○塚田委員 まあ大臣は知らぬでしょうね。ララミー牧場事件、税金に関してのね。ここに知っている人はいない、ですか。
  52. 磯辺律男

    磯辺説明員 かつて東京国税局税法違反の疑いで査察立件いたしました問題にからんだことだと思います。
  53. 塚田庄平

    ○塚田委員 これも詳しく言う時間がありません。太平洋テレビ、これは御承知ですね。これの赤字報告に対して、更生してくれ、赤字じゃないじゃないかということで、三十万円の利益があったことにして、とにかく赤字じゃ困るから、九万円の税金を払ってくれということで折衝して、この太平洋テレビはこれを拒否しました。直ちに査察が入りました。驚くなかれ、三十七年の四月十八日、五十人の査察が入ったのです。そして立ち入り検査をやりました。しかし、これは結果的に、ずいぶん経過たちますけれども、これが刑事事件になり、そし三審、二審とも政府が、国税庁が負けた、あなた方のやっていることは理由がないと。しかし、この過程において、新聞には発表される、あるいは週刊誌には出る。彼はいまささやかな飲み屋のコックをやりながら暮らしていますよ。しかし、最後まで不服審判所に対して、この処置は不当だということで訴えております。  いいですか、国が第一審でも第二審でも負けたのです。しかも国はもうそれ以上最高裁へ持っていく意思なしで、無罪が確定しました。こんな事件さえ、当初、出た瞬間からもう発表され、国税庁は清水何がしはこうしたということを出しておるじゃないですか。大蔵大臣は、田中であろうとだれであろうと何びとにも同じようにやっていると言ったでしょう。実態はそうじゃないんです。しかもこの裁判の過程において、全国テレビ放送ですから、裁判をやること五十回、きょうは東京、あしたは札幌、おそらく三百人の証人を出したでしょう。その間国は三億以上の金を使っておる。国税庁のメンツにかけても勝たなければならぬという態度ですよ。そのためには守秘義務どころじゃないのです。こんなばかげた税金行政が行なわれていたし、そのことをみんな庶民は知っておるのですよ。  私の場合は当然ですけれども、力ない庶民が持ち家をやっと持ったという場合については徹底的に追及される。しかし、あれだけの財産を持っても、いまだにその実態を明らかにしない。一庶民であれば一ぺんに翌日五十人の査察を出す。こういう事態について国民疑惑を持っておるのですよ。大蔵大臣、どう思いますか。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 税法の前に全国民は平等でなければならぬと思います。税務の執行にあたりまして、人によって軽重寛厳の差がないように最善の努力をしていかなければならぬと思います。
  55. 塚田庄平

    ○塚田委員 これは木で鼻をくくったような返答だと思うのですよ。いいですか。そういう実例があると言うのです。私がいま言いましたたとえば太平洋テレビの問題については、不服審判所で早急にけりがつくでしょう。まさか不服審判所の審判長が最高裁判所を乗り越すようなそういう決定は下さぬでしょう。だけれども、その間八千万請求をし続け、そしてその日暮らしに困っておるその人の過去は一体どうなるのですか。どう考えますか。守秘義務守秘義務と言っていますけれども、かよわい庶民に対してはこういうことをやっておるのですよ。  いまその人はこう言っています。総理大臣に対しては、ああいうことをやっても守秘義務だと、こう言っておる、だけれども、おれたちには一体何をしたんだ。これはその人だけじゃなくて、まじめにやっておる多くの国民の声だと思うのです。だから、それを解明するには、一日も早く田中をめぐるこの問題についての調査を終えなければならぬ。あなたは参議院では、今週中、その当時のことばでは来週中、今週はきょうは金曜日です、あしたは休みです、きょうじゅうには一応のめどをつけるという意味答弁をしているはずなんです。またやれないことはないのです。一体それはどうなんですか。答弁してください。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 参議院の私の答弁は、守秘義務の具体的な適用の基準というようなものにつきまして、過去の事例に照らしてひとつ見当をつけさしていただきたい、それには来週一ぱいぐらいの時間的余裕を賜わりたいということを申し上げたわけでございます。田中さんの課税の再調査につきまして来週中にということを申し上げた覚えはないわけでございます。本件につきましては、先ほど山田さんの御質問に対しまして国税庁のほうから答えがございましたような手順でいま進めておるわけでございます。
  57. 塚田庄平

    ○塚田委員 これは繰り返しても同じことになりますから、大臣、御飯を食べてきてください。  そこで、いま大臣答弁の中で、少し時間がかかるという話がありましたが、国税庁次長、こうなれば私はもう具体的に出します。いいですか。  ここに「財産および債務の明細書」があります。これは控えですけれども田中さんの場合は何枚になるか、いずれにせよ、これには全部明細を書かなければならないことになっております。田中さんに過去これを渡して、明細書を受け取っておる、こういう事実が今日まで積み重なっておるかどうか。
  58. 磯辺律男

    磯辺説明員 資産負債明細表の提出というのは全般的に、非常に私ども残念に思っていますが、悪いのでありまして、田中総理の場合も、資産負債明細表が出た年、出ない年、まちまちでございます。
  59. 塚田庄平

    ○塚田委員 田中さんは若くして国会へ出てからいろいろとあれやこれやともてはやされながら、比較的、政治歴の上においても、あるいは蓄財の上においても、日本で指折りというような状態をばく進してきたと思うのです。そういう人に対して明細書も出したこともあれば出さなかったこともある、そんなことでいままで過ごしてきたところに今日の問題があったんでしょう。いいですか。  私は、いま調べると言われるのは心外なんですよ。当然とるべきこれがあれば、一時間あれば田中の資産はこれだけですと国民の前に出せるのです。田中の釈明も要らないのです。それをなぜとらないのですか。とる義務があるんでしょう。われわれはこれを出しておりますよ、出さなければ催促が来るんですから。なぜ田中に限ってそういうことをしているか、そのことをひとつ答弁願いたい。
  60. 磯辺律男

    磯辺説明員 私たち税務の実情を申し上げますと、資産負債明細表というのは、提出の状況が非常に悪うございます。したがいまして、提出をされない方に対しましては、一応督促をいたしますけれども、その後の調査段階でそれを補完してこちらのほうで整理するというふうなことをやっております。
  61. 塚田庄平

    ○塚田委員 国税庁では「税務調査法律的知識」というこの本を出していることは知っていますか。これは国税庁発行なんです。いいですか。これは徴税に当たる署員一人一人が金科玉条として守っている本なんです。この中で非常にりっぱなことを言っているんですよ。それは結局、質問検査権の行使の問題について、大口脱税、大納税義務者あるいは大法人に対する調査は、この質問調査権を行使できない場合は実施不可能なんだから大胆にやりなさい。つまり、こういうものが出されなかった場合には、相手が大納税者であろうとどんな権力を持っていようと、あるいはどんな法人であろうと大胆にやりなさい。しかも、具体的な嫌疑がなくたって、各税法の規定による課税標準その他種々の情勢からいってどうも怪しいと思ったら立ち入りまで規定しておる。  私は立ち入りされたことはない。しかし、立ち入りされているというのはたくさんいる。しかもそれは残念ながら、ここに規定されておる大口でもなければ大法人でもないんですよ。私はむしろこういう中で守秘義務を強制され、まあ守秘義務は、これは必要でしょう。だけれども、事大蔵大臣——大蔵大臣についてはあとで言います。あるいは事総理大臣ということになると、これは調査が進まぬ、こんなばかげたことありますか。ここなんですよ、さっき言った国民の声、憂慮しておる問題は何かと言ったのは。これはこれからどういう措置をしますか。これはすぐできるんですよ。
  62. 磯辺律男

    磯辺説明員 私どもはそれらの調査を完了しております。
  63. 塚田庄平

    ○塚田委員 調査が完了しておるなら、これだけはひとつ答弁してください。いままでの田中角榮申告は、調査の結果正しかったかどうか。
  64. 磯辺律男

    磯辺説明員 先ほどの答弁で私が調査は完了しておりますと申し上げましたのは、資産負債の調査が完了しておるということを申し上げたわけでございます。
  65. 塚田庄平

    ○塚田委員 資産負債の調査が完了しておる。もちろん所得についての調査は、資産負債あるいは資産負債の贈与か売買か、あるいは所得そのもの一切ですね、この調査は完了しておるのかどうか。
  66. 磯辺律男

    磯辺説明員 所得調査をいたしますときには、いわゆるPL面で見る場合、それからBS面で見る場合、その両方の組み合わせということになるわけでございます。ただいま申し上げましたのは、田中総理についての資産の増加状況、それについての完了といってはちょっとことばが悪うございました。われわれの手元の資料があるということでございまして、それをさらにPLの面からまた調査をしておる、その両面にわたっていまやっておる最中であるということでございます。
  67. 塚田庄平

    ○塚田委員 それじゃ私は具体的に、皆さんから出た資料について一、二問いただしてみたいと思います。皆さんから出た資料ですから、これはもう間違いのないところだと思います。  まず第一に、公示された田中所得、これは大蔵委員会理事会で資料を要求して出ました。古いのは別にして、昭和四十六年七千三十七万円、昭和四十七年八千五百七十九万円。千円以下は切り捨てます、切り捨てると言っては何ですが。四十八年七千七百九十七万円、これが田中角榮氏の総合所得です。  そこで、これから税金が引かれます。私は専門家によってそれぞれの税金、所得税を計算しました。私の調べでは、老人控除が一名、妻の収入はなし、こういうことで調べられておりますので、それぞれ専門家によって計算をいたしました。その結果、昭和四十六年度分、これは資料の出どころはここでは言うことは避けたいと思います。所得税、地方税、つまり東京都ですから、区民税、都民税、固定資産税、都市計画税、これはみんな税率がきまっております。これは当然全部払わなければなりません。時間がないので合計額だけ言います。端数の点はいま言ったとおりはしょりました。昭和四十七年の場合、つまり申告所得八千五百七十九万円の場合、千七百八十三万円が本人の手元に残ります。いいですか。これは専門家が間違いなく計算しましたから、間違いないことだけは私はこれは自信をもって言います。本人の手元に残るのは千七百八十三万円、十二カ月で割りますと約百五十万円が本人の総合所得です。  一体、これで総理大臣田中角榮の暮らしが保っていけたかどうか。女中さんもいるでしょう、書生もいるでしょう、ばく大な交際費もかかるでしょう。私が計算しても、直ちに出てくる疑問でしょう。専門家の皆さん方は——私は、いま皆さん方から出した昭和四十四年からの資料に基づきましたが、もうすでに十年前、二十年前、二十年前はちょっと酷かもしれませんが、十年前ごろからこれはおかしいと、当然さっき言った調査に入らなければならなかったところでしょう。ましてや、いろいろな土地を取得する、そういう時期は逐一皆さん方にわかっておるのです。私はこれはいわゆる幽霊会社というものは除きますよ、全部除いています。本人だけの所得です。どうですか国税庁次長、そう思いませんか。率直に言ってください。
  68. 磯辺律男

    磯辺説明員 一般論としてお答えさせていただきたいのでございますけれども、公示所得金額は、御承知のように、一千万円以上というものの申告がございましたら、それがいわゆる公示になります。これはあくまで一般論でございます。ただ、そこで申告を要しない所得というのがある人もまたあるわけでございまして、たとえて言いましたならば、源泉選択をいたしました配当所得であるとか、あるいは一定の条件に満たない株式の売買益であるとか、そういったものは御承知のように申告を要しないことになっております。したがいまして、公示されました所得金額がすべての所得ではないということも、これは御理解いただけるかと思います。  ただ、私たち調査あたりましては、公示所得金額はそれはまさにそうでございましょうが、その公示する所得金額のほかに、そういった資産負債の増減にからみ合わせまして、そういった点もやはり調査の対象にしておるわけでございまして、一般論としてお答えいたしたいと思います。
  69. 塚田庄平

    ○塚田委員 つまりここでわかったのは、公示された所得のほかに、公示されない、あるいは申告しなくてもいい所得があるということがはっきりしたわけですね。いま答えられたのはそういうことだと推定される。何かありますか。
  70. 磯辺律男

    磯辺説明員 私は一般論として、公示所得金額と実際の所得との違いといいますかはそういうところにあるということを申し上げたわけでございます。
  71. 塚田庄平

    ○塚田委員 一般論じゃないのですよ、いま聞いておるのは。いま私の出した資料は田中角榮氏のですよ。一般論を聞いているのじゃないのです。いやしかし、そうは言うものの、あなたの言うことはわかりますよ。一カ月百五十万円でやっているはずないのですから、どこかから収入が入っているのです。  時間がなくてたいへんなんですが、たとえば、この人は越後交通株式会社の筆頭株主だということは皆さんすでに御存じでしょう。昭和四十九年三月三十一日では実に越後交通株式会社の三六%の株をがっちりつかんでいる人です。一個人として三六%の株をつかむなどということは、これは全国的にも珍しいケースだと思います。  そこで、この人といわゆるトンネル幽霊企業といわれる新星企業との間にこういう事実のあったことを知っていますか。昭和四十八年三月の三十一日、田中の株と新星企業との株がくしくも合算された数字になって田中角榮に移っております。ばく大なものになったわけです。これは買ったのか売ったのか贈与なのかということは言えないですか。調べましたか。調べたか調べないかを言ってください。
  72. 磯辺律男

    磯辺説明員 調査中でございます。もちろん、私たちはそういったことは調査一つのポイントだと思っております。
  73. 塚田庄平

    ○塚田委員 調査中なんと言わないで、これはあなた、そんなことを言ったって、有価証券の報告書をちょっと行って見ればすぐわかることなんです。三十分ですよ。二十分でわかることなんですよ。調べたか調べないか、こう聞いているのだから、調べましたなら調べましたでいいじゃないですか。ただしのほうは要らぬです、そんなものは。これだけたっていて、五分か十分あれば調べられることを調査中ですと、次長……。
  74. 磯辺律男

    磯辺説明員 調べました。
  75. 塚田庄平

    ○塚田委員 これを調べたということであれば、おそらくこの時点において贈与であるか売買であるか、ばく大な資産を彼は手に握ったわけです。そしてかりに株価に換算すると、これは上がったり下がったりありますから平均をとりますと、三億をこえる資産を彼はここで持ったのです。いいですか、具体的に言うと三億二千七百二十一万円。しかも、これを配当に換算していくとまたばく大です。こんなことは常識なんで、みんなもう調べ上げていなければならぬはずなんですよ。ほかにもあります。理研あるいは高分子、これはもう上場ですから御承知だろうと思うのです。こんなところの収入はばく大です。  けちなことですが、私は雑収入についても調べました。こんな分厚い「優駿」という馬の本を一生懸命調べました。田中さんという人はすばらしい馬を持っているのですよ。種馬です。種つけ料がずいぶん入ってくる。しかもその馬は常に賞金をもらって、こまいことを発表するならしますけれども、たいへんな賞金かせぎです。私でさえそういう調査はできるのですよ。先ほど言った太平洋テレビの捜査じゃないが、五十人も一ぺんにつぎ込んで調査を始める、あるいは三百人の人を動員して移動裁判所に出る、そういうことさえ片方でやっていながら、こういう重大な問題についてはいまだにいまのような答弁しかできない、そんなばかげたことがありますか。国民はそこに疑惑を持っているのですよ。資産については調べ終わって、全部できているのでしょう。どうですか。
  76. 磯辺律男

    磯辺説明員 資産については一応の調査はこちらは済んでおります。
  77. 塚田庄平

    ○塚田委員 終わっているということですが、これは総理自体の口から聞きましょう。私どもがいまここで言えといっても、おそらく守秘義務でそれは言えない、そんなことを繰り返していたのでは時間がたちますから。  さてこの企業、田中氏の動きに関連していろんな疑惑が出てまいりました。自治省おりますか。まず政治資金の関係、三協物産という株式会社から政治資金は全体としてどのくらい出ておりますか。
  78. 山本武

    山本説明員 お答えいたします。  三協物産からどれくらいの政治資金が出ているかという御質疑でございますが、現在の政治資金規正法のたてまえは、そういう寄付をした団体あるいは会費を納めた団体を単位に報告がなされておりません。したがいまして、官報で公示したところをたんねんに拾うならばお答えできるかとも思いますが現在の政治資金規正法が政党その他の政治団体を単位に報告をいただいておりますので、御質疑の点については現在お答えいたしかねます。
  79. 塚田庄平

    ○塚田委員 たんねんにそれは調べてくださいよ。私は調べました。ここは昭和四十六年から田中角榮氏の政治団体に対して、これははっきり言います、もう公知の事実だと思いますので。新政経振興会です。この新政経振興会からどう流れていっているか、私はわかりませんよ。これはおそらく自治省もわからぬと思うのです。若干の収支報告、寄付その他のあれは出てきているだろうと思いますけれども、この三協物産株式会社、資本金四千八百万、わずかな会社ですね。ここから、官報の公示によりますと昭和四十六年度下期三百万、四十七年度上期三百万、四十七年度下期百万ということで、こういう個人会社としてはとてつもないばく大な政治資金が出されております。これは確認しますね。
  80. 山本武

    山本説明員 ただいま四十六年の下期の点を例にあげられましたが、ちょっといま私の手元に四十六年下期分の官報を持っておりませんが、先生が官報でお調べになったということであれば、そのとおりのことかと存じます。
  81. 塚田庄平

    ○塚田委員 これは間違いないだろうと思います。  そこで、これはもう大臣承知だろうと思いますが、この会社はこの六月に倒産いたしましてね、社長は雲隠れ。この倒産が負債百億という。四千八百万の資本金の会社が負債百億、これは珍しい倒産として帝国興信所でもたいへん注目しました。ここにその興信所のあれがあります。時間がないから読みません。しかもここには、相模原ですけれども、新潟県長岡市に本店のある大光相互銀行からばく大な資金が注入されております。私はこの資金量を言ってもいいんですが、これをばらすとたいへんなことにもなるんで、もし誠意のない銀行局長の答弁であるならば、この際すべてばらしていきたいと思います。  そこで時間がないので、この大光相互銀行、これは土地へ行って調べますと、一名駒形一家といわれております、何かやくざめいているんですけれども。つまり、駒形という一族によって占められておるわけです。確かに相互銀行としては中堅です。しかし、まず第一に相互銀行で新潟の長岡から東京に二支店、埼玉に二支店、こういう支店の出る、あるいはそれを許可するという行政が非常に不明朗だ。この辺から、局長どうですか。
  82. 高橋英明

    ○高橋説明員 相互銀行の支店が東京を目ざして来ておるというようなことが不明朗であるというような御指摘でございましたが、昭和二十六年に相互銀行法ができました当時は、営業区域という制約が法律上ございまして、本店並びに隣県といったようなところに原則として店を出すというようなことでずっとやってきたわけでございます。それが途中で法律が改正になりまして、地域制限がなくなりまして、中小金融専門機関としてより徹底して生きていけ、そのために地域の制限ははずしましょうということになりましてから、相互銀行が全体として九州のほうから大阪のほうへ出ていき、あるいは関東、東北というものは東京を目ざして出てくるということは、相互銀行全体の店舗行政として行なわれた方針でございまして、特別大光相互についてだけそういう店舗行政を認めたわけではございません。大体において、まあごく小さい地元だけでまとまっていこうという相互銀行も中にはございますけれども、七十二行の中で大半はそれぞれ東京支店を持ち、大阪支店を持っているというのが現状でございます。
  83. 塚田庄平

    ○塚田委員 あまりいい答弁じゃないですね。  そこで局長、この大光相互銀行というのは、他の銀行と違う特色があります。それは不動産業、建設業に対してばく大な資金量が行っているということと、中でもいわゆる——私はここではいわゆると使いたい。いわゆる田中ファミリー、こう俗に言われておりますね。あるいは田中氏に対しての献金母体、こういうものの関連企業に野方図に金が出され、たとえば、ここが金を出すときに建築であるならばそれを請け負うのは福田組という組で、どういうわけかこれが大体浮かび上がってくることになっております。お聞きの皆さん方は、福田組といえば大体おわかりだろうと思うのですね。たとえばいまの三協物産、これが最後の仕事として千葉県で百八レーンという大きなボーリング場をつくりました。こんなにボーリングムードが下がっておるときに、二十億もかけて大きなものをつくった建設会社は福田組であり、融資したのは大光相互です。  そこで言いたいのは、そういう特色を持っていることが一つと、それから、それはこういう数字にあらわれております。建設業と不動産業とを合わせた資金の貸し付けのパーセンテージ、昭和四十九年三月という新しい数字を使いますが、この大光は驚くなかれ資金量の三五%近くをここにやっておる。  私は、この三五%というのは全体と比べてどうかということを、一応資料をとりました。ここに青森銀行というのがあります。これは市中銀行です。なぜ青森をとったかというと、ここは例の小川原湖開発でたいへん開発ブームの高まったところだから、おそらく大光と同じような傾向をとっているのじゃないかと思って調べてみたら、それは一一・四%、きわめて健全な貸し付けです。それから、私は千葉相互に行きました。千葉も宅地開発その他で建設業あるいは不動産業が非常にうごめいた土地です。そこでこれを調べたら、やっぱり若干多い。合わせて二一%。名古屋相互銀行も調べました。ここも相当うるさいところですから。しかし健全です。九・三%。いずれにせよ大光相互だけがずば抜けて大きい。こういう資金運用のしかた、またあとで違法性も突きたいと思うが、これは一体、局長として好ましい資金運用と思うかどうか。
  84. 高橋英明

    ○高橋説明員 大光相互が不動産業、建設業両方合わせましてただいま先生御指摘のようなシェアの融資になっておるということは、そのとおりでございます。また、一般的に相互銀行は、大体どちらかというと、建設、不動産、娯楽、サービスといったようなものにウエートの置かれている金融機関でございますが、この相互銀行全体の平均よりもはるかに高いということもおっしゃるとおりでございます。  まあ大光相互個々の融資のあり方といったようなことをここで申し上げることば差し控えさしていただきたいと思いますけれども一般的にある金融機関の融資が特定の業種に片寄り過ぎるというようなことは、決して好ましいことではございません。その銀行の営業圏といったようなものがございまして、その営業圏の中で特別の産業が多い、たとえば北陸に行けば繊維が多いとか、あるいは温泉地、観光地を持っているというような場合にホテル、旅館が多いといったようなやむを得ない面もあることはあると思いますけれども、私どもとしましては、特定の業種に片寄らず、なるべくバランスのとれた融資構造といいますか、そういうふうになったほうが望ましいということで指導はいたしております。
  85. 塚田庄平

    ○塚田委員 そういう答弁もあろうかと思いまして、青森という特殊な地域、千葉という特殊な地域、あるいは名古屋、そういうところの相互銀行を出したのですよ。あなたはいまその土地柄によって温泉もあればいろいろな開発といった特徴があると言いましたけれども、私はあえてこういう特殊なところを出したのは、にもかかわらず、大光というのは全く片寄った資金運用のしかたをしているということを指摘したかったのだし、それは私は十分局長も認めるところだと思うのです。いま認めたと思うのです。あとのやつは言いわけだと思うのですよ。  そこで、本格的な問題に入っていきたいと思います。この大光というのは一はっきり言います。もうすでに三協物産はつぶれていますから、おそらくはかに対する迷惑はないだろうと思います。大光は三協物産に対して二十三億の焦げつきをしました。百億倒産といわれていますね、つまり二三%を背負ったわけですよ。  まだ問題があるのは、日本開発という会社のあることは皆さん御承知だろうと思います。これはいろいろ国際興業、小佐野賢治との関係等で国会でも問題になりました。これもどういうかげんかつぶれました。しかも二百五十億というばく大な借金を残してつぶれて、更生申請しています。これに対しても、これは金額は言いません、少なくとも十億をこえる焦げつきを大光はしております。  それから、パール産業という産業があります。あるいは福田組、あるいは昭栄畳材、これは三協の子会社で、これもつぶれました。大谷昭二郎というのは、田中角榮氏の刎頸の友どころじゃない、それは大平さんよりももっともっと親しい仲なんです。それはおぎゃあと生まれたときから、小学校を一緒に通った仲です。ここでも驚くなかれ、五億の焦げつきをしました。  このように、大光の裏には必ずいま言ったいろいろな疑惑に包まれた会社があり、あるいは献金団体があり、次から次へとつぶれていく。一体、大光というものについて厳重な監査を局長はやっておるのかどうか。
  86. 高橋英明

    ○高橋説明員 大光相互につきましても、通常の検査はやっております。まあ先生御指摘のような融資先もございましたが、大体におきまして積極的な経営をやるところでございまして、その業容拡大主義といったようなものには常に注意をいたしておるわけでございます。ちょうど昭和四十六年ごろからレジャー時代といったようなものの到来というようなことで、積極的にそういった方面の貸し出しに向かったと聞いておりますけれども、それが今日のような状態になりまして、今日から見れば見通しが甘かったといったようなことは言えるかと存じます。
  87. 塚田庄平

    ○塚田委員 ことばは非常にいいのですよ。積極拡大方針をとっておる。これは裏を返せば、野方図に貸しているということですよ。きれいなことばで言うとそういうことばになりますけれども。  そこで、私はこの会社についてはまだまだたくさん資料を持っています。だけれども、これは預金者保護のたてまえからいって、それをここで公表することを避けたいと思います。だから、私は特別監査ということばがあるかないかは別にして、この問題あるいはこの会社に立ち向かう銀行局長の監督者としての態度をこの際表明してもらいたいと思う。  その前に、大光が三協と取引を停止したその時点はいつか。
  88. 高橋英明

    ○高橋説明員 三協と大光が取引を始めたのは四十六年の六月と聞いております。
  89. 塚田庄平

    ○塚田委員 停止というか、やめたのはつぶれたときですか。
  90. 高橋英明

    ○高橋説明員 三協はつぶれてしまいましたから、取引が停止といいますか……
  91. 塚田庄平

    ○塚田委員 いや、融資停止ですね。つまり、これはあぶないということでどこかで融資をとめたのか、あるいは最後のつぶれる瞬間まで融資をしていたのか、その辺わからぬですか。
  92. 高橋英明

    ○高橋説明員 その辺は承知いたしておりません。  それから、特別監査というようなことがございました。特別監査ということばもございませんが、一応先生の御指摘がございましたので、そういうことを十分体しまして、検査なら検査といったようなことに周期がございますが、そういったものを調整したり、あるいは日常厳重に監督したい、そう思っております。
  93. 塚田庄平

    ○塚田委員 私はこの大光相互は法律違反をしていると思う。それは、最高に貸し出した時期は相互銀行法にいう限度額二〇%をこえておる。四十九年の資産から見てぎりぎりでしょう。おそらく百六、七十億になりますか、ぎりぎりなんです。だけれども、一時二〇%をこえた時期があるという資料を私はつかんでおります。二〇%をこえるということになると、これは明らかに相互銀行法違反です。おそらく局長は、四十九年の一番ピークも自己資本との関係で安心しておられるのだろうと思いますけれども、そうじゃあない。答弁してください。
  94. 高橋英明

    ○高橋説明員 私どものほうの資料では、法十条をこえた貸し出しになったときはございません。
  95. 塚田庄平

    ○塚田委員 その点も、これはおそらく出せと言っても出さないだろうと思いますので、私どもは適当な時期に明らかにしてもらう。委員長、これはひとつ秘密会でもいいですから、私の資料との突き合わせ等、その辺を明らかにするように理事会等ではかってもらいたいと思います。
  96. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 理事会で相談します。
  97. 塚田庄平

    ○塚田委員 三協というのはそういう会社でつぶれてしまったわけですが、しかし、これと似通ったことで、私は大平大蔵大臣についても若干質問しなければならぬ問題が起きております。これはもう本人がそこにいるんですから、証人喚問しているのと同じような効果なんで非常に楽なんですが、その点についてひとつ御答弁を願いたいと思います。  まず、大平さんはたしかこの前の参議院大蔵委員会で、あなたの持ちものであった練馬の土地と真鍋賢二君——これはまぎれもなくある政治団体の会計責任者です。俗に大平派といわれておりますね、その会計責任者であったが、いま現在もそうであるか。おそらく現在そうでないかもしれませんが、なかったとするならばおそらくここ二、三カ月ですね。この人との関係で地元の金融機関から融資を受けたということ等の問題について、あなたは質問者野々山さんに、調査の上報告しますと、こういう答弁をしておるはずなんです。その件についてここでひとつ詳細に御報告を願いたいと思います。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 野々山さんにすでに報告済みでございます。
  99. 塚田庄平

    ○塚田委員 それじゃ最初から私は質問しなければならぬことになりますね。大平さん、速記録を見ましたのですけれども、あなたは大蔵委員会答弁の中で、本年の七月に私の土地、つまりあなたの土地です、それは真鍋賢二に譲渡しました、こういう答弁をなさっていますね。そのとおりですか。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 あの土地は、真鍋君を長い間住まわしておりまして、数年前譲渡するという約束をいたしまして、ことしの七月に内金が全部入りましたので、名義をかえてよろしいということにいたしたわけです。
  101. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこで、この際はっきり言います。  真鍋君と言うよりも、むしろ八栄海運と言ったほうがいいでしょう。八栄というのは八つ栄えるです。その八栄会というのはあなたのふるさとの後援会としても筆頭、金の面においても、おそらく選挙の面においても一番獅子奮迅、奮闘する後援会であろうと私は思いますね。その海運会社をつくるときに、つくって、さて事業をしよう、海運会社ですから、これは船がどうしても必要です。そこで、清秀丸という船を買うときに、あなたは物件を抵当に入れて百十四銀行から金を借りた覚えがありますか、どうでしょうか。  何かこれは検事のような質問になってうまくないですけれども、まあ正直に答えてください。そういう霧をもし積極的に晴らすつもりがあったら、正直に答えてください。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 私の友人数名で八栄海運というのをつくったことは事実でございます。私も参加を求められて、株主でありましたことも事実でございます。  その会社が船を買う場合に、金融の一助といたしまして私が所有しておる練馬の土地を担保提供していただければたいへんしあわせだということでございましたので、それを私は認めて、担保提供いたしたことは事実でございます。
  103. 塚田庄平

    ○塚田委員 この会社は、私もさがしたのですけれどもね、確かに八重洲にありました。それはビルの中にあったけれども、これもどこかの幽霊会社と同じで、人は一人もおりません。ただ同じような白い紙に、八栄、あるいは名前を言えば六つ七つぐらいになりますが、紙に書いてずっと並んでおります。それで、そのうちの一会社が実は管理しておるんだと、こういう返事です。その八栄海運は、清秀丸のチャーター料で運営しているかっこうになります。そしてこれが八栄会に結びついて、八栄会は大平派と称する二つの後援会に年間、私の調べでは八百四十万献金をしております。  しかも、もっと私が不可解に思うのは、こんな人のいない会社が静岡県に支店をつくりました。支店をつくると同時に、静岡県の信連から一億円の借り入れをやりました。信連というとこれは農業のほうで、およそ海と関係ないですね。つまり、この静岡県の信連の金を引き出すためにある一人の家に、それはおそらく大臣も御承知だろうと思いますが、高村豊という静岡の人です、やはりかつて、名前は言いませんが、自民党の大臣の秘書をしていた人です。この人の自宅に支店をつくって、そして信連と折衝して、信連のある人に、名前を秘匿しておりますが、おれのうしろには大平がついておるから、しかもチャーター料は人件費もかからぬしそのまま入るんだからだいじょうぶだということで、すでに担保のある清秀丸に結局一億円出ささしたというか、出してもらった。そして一億九千万の担保が実はあなたの家、旧邸といってもいいですね、それから旧土地、それから清秀丸につけられた。これはもう相当ぼろぼろですよ、建造が相当古いですから。こういう関係になっているわけです。そこで地元では、大平さんという人もなかなかやるわいなということでうわさをしておる面もありますが、釈明できれば釈明したほうがいいだろうと私は思います。太平のためにそう思います。どうですか。
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 八栄海運の借り入れ金の担保に、私は自分の所有の土地を提供した経緯はいま申し上げたとおりでございます。この会社は御指摘のように百十四銀行から三千万、静岡県信連から百十四銀行保証のもとに一億円の融資を受けております。(塚田委員「その他もあるでしょう」と呼ぶ)その他は私よく承知しておりません。  それから、この返済期限は、百十四銀行は五十三年六月、静岡県信連は五十一年六月でございます。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕  百十四銀行の融資と保証につきましては、いま御指摘のように清秀丸が担保となり、八栄海運の株主五名が連帯保証したほか、いまの私の土地が担保として提供されたものでございます。金融機関として過剰融資じゃないかという御指摘が一部にあるようでございますけれども金融機関としては十分な担保をとっておるものと私は承知いたしております。  それから、県信連から融資を受けるというようなこと、これは三年ほど前のことでございますけれども、私は圧力を行使したというような覚えはございません。
  105. 塚田庄平

    ○塚田委員 ひどい圧力をかけたことは大平さんのことですからおそらくないだろうと思いますが、しかし、静岡の信連が海に浮かぶ清秀丸を担保にして、およそ関係のないあれなんですけれども一億という金を貸す。百十四銀行がおそらくそれは保証したのでしょう。しかし、そこには真鍋あるいは高村、こういう人たちがあなたとの関係で、あるいは信連もあなたとの関係を十分承知の上で、これはほんとうは無理だったんだけれども大平さんの土地も担保に入っていることであるから、あるいは大平も一緒だということで一億の金を引き出した。私の調べた範囲では、ことばのあやは若干あったとしても、これが真相なんです。  こういう事態、しかもそれは私の調べによると、彼はあなたの最も有力な後援会である新産業政策研究会の会計責任者であることは事実なんです。そして八栄会というのは献金筆頭。もう一つ新財政研究会というのがあります。これも俗に大平派といわれております。これは非常にふしぎなんで、新財政研究会から新産業政策研究会へ、新産業政策研究会から新財政研究会へ交互に献金をし合っているのです。  しかし、いずれにせよ、どちらにも筆頭として出てきておるのが八栄会。いま言ったようないろいろないわれも、特にこの八栄海運というのはわずか数年の間に住所は転々とする、行ってもだれもいない、しかも商号の変わり方が非常に激しい、一年のうちに二回も三回も変わる。通常の銀行ならばこんな会社に金は貸さぬのですよ。大蔵大臣としても、また一政治家としても、こういう事態についてどう考えますか。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 真鍋賢二君と私との関係は、私の秘書でございますから、仰せのとおり濃密な関係がございます。それからまた、真鍋君を私の後援団体である新財政研究会の会計責任者にいたしていることもあなたの御指摘のとおりでございます。そのことと八栄海運とは何ら関係がないわけでございまして、八栄という名前、ヘッディングがそうなっているだけの話でございまして、その間に何らかの関係があるという御推測のようでございますけれども、何もございません。  それから、普通、日常の金融取引でございまして、私は格別不当なことをしたということではないと考えております。
  107. 塚田庄平

    ○塚田委員 銀行局長、これは要望しておきます。百十四銀行が信連の保証をしたという経緯等についてひとつ十分調べてもらいたい。これは同じケースがあるのです。当時の状況としては、たとえば北海道共済連が拓銀の保証で四十億も地崎工業に渡して土地買いを始める、こんな不都合な事態がどんどん発生した時期で、真鍋君はたまたまそういう情勢の中で百十四銀行を保証人として信連から金をつまみ出した。その場合、吹原事件ではないが、大平さんの名前が出てきておる。こういうことなんです。だから、政治家たる者の秘書というのは、いままでの例からいうと、とかく隠れみのになるのです。だけれども私とは関係がない、これがいままでの政治家のやり方であったことは、これはもう国民は周知の事実なんです。  私は、いま大蔵大臣がそういうふうに抗弁すれば、いや、こうじゃないかという具体的な資料にはまだ乏しいけれども、とにかく秘書を表面に立てる、しかも後援会の会計責任者を表面に立て、社長にして、しかもそこにみずからの家を担保に入れた。第百十四銀行というのはあなたの住んでおる市にある、高松市かな。そういうところからこの疑惑はまだ晴れないまま、おそらく国民によって追及されていくでしょう。だから、その点についてもう一ぺん大平さんの所信のほどをお伺いしたいと思います。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 私と真鍋とは一体でございますので、真鍋君をつい立てにいたしまして、私が隠れみのに使うなどという気持ちは毛頭ありません。信頼して使っておる秘書でございます。  それから、この問題は私が何かたくらんで、計画をもくろんで、そういう秘書を使ってやったような塚田さんのお申し出でございましたけれども、私、実は特別そういう知恵はないわけでございまして、友人たちが真鍋を含めましてそういうことを考えて、私の協力を求められたわけでございます。したがって、私としてもせっかくのもくろみであれば、私の力の及ぶことばして差し上げるべきだと思いまして、自分の土地の担保提供ということは認めたわけでございます。しかし、このことと私と関係のある政治団体とは何ら関係がないことでございますので、さよう御承知いただきたいと思います。
  109. 塚田庄平

    ○塚田委員 常識的に、真鍋君はあなたと関係のある政治団体の会計責任者ですよ。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 しかもあなたの土地を担保に入れ、信連からそういう状態で金を引き出し、そしてあなたの秘書をしておる。全然後援会と関係がないじゃなくて、真鍋君は社長でしょう。しかも、それは全然人を使っていない。だから、これからまた税務調査しなければならぬです。一体、海運会社の収入はどうなっておるのか。大平さんは真鍋に土地を売ったのか贈与したのか。小型ではあるけれども田中と同じことがやはり調べられなければならぬのですよ。私はいやしくもそういう問題についてみずからきちっとえりを正すということでなければ、太平には次の橋は渡れないのじゃないかというふうに考えるので、これはあとで私どももっともっと具体的な資料で御所見を聞きたいと思います。  最後になりますが、田中氏の問題では国有地のことがずいぶん出てまいります。いまここで具体的に触れる時間はありません。ただ、大蔵省では国有地中央審議会の資料というものを従来出しておりました。私どもはこの資料に基づいて、審議会が何月何日どこでどういう審議をやって、そして適当なものと認め、価格は何ぼで、そして相手方を知るということをやっていたわけです。自分で相当たんねんに調べなければ出てこないわけですよ。皆さん方の出す資料の中では地番もはっきりしない、特に相手方については絶対に秘匿しております。そこで、私どもが求める資料についてわれわれがこれを調べるわけですけれども、どうしたかげんか、これは第十集以後出ておりません。だから、われわれは調べようがなくなってきたのです。これはこれからもひとつ積極的に出して、われわれ国民国有財産というものは一体どういう形で払い下げられておるのかということを明らかにできるようにしなければならぬと思うのです。この点はどうですかな。
  110. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 国有財産の払い下げでございますが、これはあくまでも国と相手方の私法上の契約になっております。そういうような面から、この間から参議院の各種委員会でも国有財産の払い下げに関する相手方の名前をぜひ明示しろという御要求がございましたが、私どもといたしましては、やはり私契約の性格上、相手方の業種名を述べるだけにいたしておりまして、この点は将来ともそういうようなことで御了承いただきたい。  また、審議会の議事録につきましても、議事がどう行なわれたかという具体的な議事録を出せという御要求が強いわけでございますが、やはり自由な意見を保障するという意味から、委員の発言者の名前を秘しまして、議事要録ということでお願いいたしたい、こう思っております。
  111. 塚田庄平

    ○塚田委員 この本を見ると、相手は出ているのですよ。これは第一回目の昭和三十二年六月のです。私は古本屋でやっとさがし当てました。つまり、公開されていると同じなんです。それをどうして一体、相手方について出さないか。いまそこで言っているのは、おそらく、いや大蔵省で出しておる「財政金融統計月報」、あの中に載っていますからもう出さないようになったのだと助言があったのだろうと思うのです。しかし、それは結果であって、だれにどういう経過でやったかというこの経過がなければ、国民は納得しないと思うのですよ。いままで出ていたのです。なぜ一体、あるいは田中さんが大蔵大臣になってから、あるいは幹事長になってから、あるいは総理になってから、どうしてこういう経過を秘匿するようになったのか。答弁してください。
  112. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 塚田委員御指摘のとおり、かつては相手方の名前が相当大口なものにつきましては明示されたこともあったわけでございますが、私ども考えまして、こういう種類のことはあくまでも相手方の了承を得て、それでこれを明らかにするということはやぶさかでないわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては個別的ないろいろな御質問につきましては、相手方の御了承を得まして、それで発表しているわけでございます。
  113. 塚田庄平

    ○塚田委員 私はいまの発言は非常に心外だと思うのですよ。国民のものを公正な審議に基づいて払い下げるのでしょう。わざわざ審議会をつくりながら、なぜ一体相手方を隠すのですか。いままで田中さんのいろいろな金脈の中で、国有地払い下げというのはずいぶん国会においても議論されてきている。だけれども、おそらくその具体的なものになると、第十集以後はないのです。われわれは突きようがないのですよ。そんな国有財産処理のしかたで国民の負託にこたえられると思うかどうか、どうですか、大蔵大臣
  114. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 これは私契約でございまして、要するに払い下げたあとは相手方の財産になっておるわけでございます。そういう意味で、相手方の了承を得て中身を明らかにするということが契約当事者の立場として当然じゃなかろうか。  それからもう一つ、具体的に御指摘の各種案件がございますが、こういうものにつきましては、一々相手方の了承を得ましていろいろ中身を発表しているわけでございます。
  115. 塚田庄平

    ○塚田委員 大臣答弁してください。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 私は事務当局を信頼しております。
  117. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 塚田君、約束の時間が経過しておりますので、お願いします。
  118. 塚田庄平

    ○塚田委員 大臣はおそらくはかのほうに気が行っちゃって、私の質問を十分聞いていなかったと思うのですよ。こういうことなのですよ。  いままで国有財産の払い下げについては、公正な各地方別の、これは十地区あると思うのですね、審議会で十分な審議を尽くして、価格は幾ら、こういう理由であるからここへ払い下げることは適当と認めるということで、国会議員にはもちろんのこと、私は古本屋で一冊さがしましたが、公表されておるわけです。それをなぜぷっつり第十集をもって終えてしまったか。おそらくその分は統計月報にあるから、これからこれでやりますと言うだろうと思ったのです。だからぼくは答弁を求めたのです。これには相手方がないのです。しかも、経過はごく簡単に報告されておるだけなのです。これだから国有財産については、実は国民の疑いが晴れないのですよ。大蔵大臣、これからはこういうものは出します、こういう約束をしてこそやはり国民の期待に沿うものだと思うのですが、どうでしょうか。ただ信頼していますじゃ、大臣たる者、国民の要望にこたえるものじゃないと私は思うのです。これは簡単ですからつくらせなさい。
  119. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま提起された問題につきましては、従来の経緯、それから事ここに至った経緯とそれに対する考え方を事務当局からよく伺いまして、あなたが御提起された問題につきまして検討してみたいと思いますので、いま直ちにすぐ出すようにお約束するというわけにはまいりませんけれども、せっかく検討の余裕を与えていただきたいと思います。
  120. 塚田庄平

    ○塚田委員 もう時間が来ましたから、いまの国有地の払い下げの問題については、私は具体的にやる時間がなくなってまいりました。  ただ、国会でもずいぶん問題になっておりますとおり、国有地払い下げについてはいろいろな疑惑あるいは疑念が持たれ、あるいは国民に与えております。たとえば、私は一冊の本を実は二、三日前に読みました。有名な人の「闘魂の人」という本です。これはすぐ買えます。闘魂とは何かということなんだが、これはくしくも昭和三十八年から昭和四十三年に至る国有地払い下げをめぐって、おれはこれだけの戦いをやったということを書いてある本です。この中には大平さんの名前こそ出てきませんが、福田さんの名前が出てきます。田中角榮さんの名前も出てきます。佐藤総理の名前も出てまいります。池田勇人さんの名前も出てまいります。そして、最終的に決定するまで実に五年八カ月かかっております、私の計算では。その五年八カ月の暗闘というか苦闘というか、われわれから見れば、いま言ったような人たちをめぐっての密室におけるかけ引きあるいは取引あるいは談判、これが詳細に載っております。  私は、これは国有地払い下げの一例だと思います。全部じゃありません。だけれども、虎の門の問題にしましても、その他大体これに類することが行なわれておると考えていいのではないか。だから私は、これからの国有地の払い下げについては、いまここで言うような、相手の公表も含めてきっちりとした報告書で十分な了解を得なければならぬ、国民の貴重な財産をやみからやみへと葬り去るようなことがあってはならぬ。ましてや田中さんの問題については、いま新幹線の問題、河川敷地の問題、いろいろな国有地払い下げについて大きな疑惑が出ておるのですから、この際そういう道に立ち戻ってもらいたい、こう私は思います。その点について、ひとつ最後に大蔵大臣の所見を承りたいと思います。
  121. 大平正芳

    大平国務大臣 国有財産という国民の貴重な財産の処分でございます。したがって、中央地方を通じまして、審議会を設けて十分なる審議をしていただき、公明な処理をいたす手はずになっておるわけでございまして、私は万々それを心得てやっておると思いますけれども、人間のやることでございます、誤りなきを保しがたいのでございますので、常に気をつけて、公明かつ明朗に、疑惑がないように処理するよう努力してまいりたいと思います。
  122. 塚田庄平

    ○塚田委員 終わります。
  123. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 増本一彦君。
  124. 増本一彦

    ○増本委員 私は、もはや田中改造内閣が風前のともしびの状態に来ている、そういう状態になった原因は、田中総理をめぐる数々の疑惑の問題、それから核を隠してそのまま居直ろうとしている態度、あるいはまた、このインフレーションと物価高に見られるような経済政策の完全な失敗、行き詰まり、こういうところから来ているわけでありますけれども、この期に及んでの大蔵大臣政治姿勢、いかように対処し、どのように責任ある態度をとられるのかという点を中心にしまして、お尋ねをしてまいりたいと思います。  まず前提としまして、国は国民の零細な郵便貯金や簡保資金などを資金運用部に入れて、それを財政投融資計画で運用しているわけです。これは国民の生活基盤を整備したりあるいは国民経済ないしは国民の福祉を守っていくという点を重点に使っていくものだというように私たちは認識をしているのですが、まずひとつ大臣のその点での認識を伺っておきたいと思います。
  125. 大平正芳

    大平国務大臣 国民の零細な資金は広く郵便貯金の形で、あるいは簡易保険の積み立て金の形で国庫にお預けいただくことになっております。この運用につきましてはそれぞれの法律で有利かつ確実に運用する義務を持っておりまするし、公共の福祉の増進、国民全体の福祉の増進の見地に立って確実に運用すべきことは、仰せのとおりとわれわれは心得ております。
  126. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、田中総理はかつて大蔵大臣になる前の昭和三十六年の五月二十六日から大蔵大臣在任中の昭和三十九年の十月二十一日ごろまで、みずからあるいは自分の関係者を使って、国民の零細な資金を土地の投機や株の投機などに運用をするということをやってきた。その態度は今日まで変わっていない。  たとえば、日本電建株式会社という会社です。勤労者などが住宅取得の目的で零細な資金を毎月この会社に積み立てて、一定年限後に建物の給付を受けることを目的とする会社であります。ところが、田中首相が昭和三十六年にこの会社の代表取締役になって、それまでの健全な資産状態が極度に悪化をするという事態になりました。大臣も私がつくったいまお手元に行った資料の表一をちょっと見てください。  昭和三十六年三月の決算では、資本金は当時一千五百万円で、現金預金が四十六億円、土地が一億円であった。借り入れ金がゼロ。ところが、総理が代表取締役になって、しかも総理とは無二の親友といわれている入内島金一氏が昭和三十六年の六月三十日に代表取締役になってからは、毎決算期の資産状況を見ると非常に悪くなっている。  三十七年は、借り入れ金が一挙に四十七億円になり、現金が四十九億円、土地が三十億円、証券五億円。三十八年は、借り入れ金四十七億円、現金三十六億円、土地二十四億円、証券一億円。三十九年が、借り入れ金四十七億円、現金四十一億円、土地十六億円、証券が二十九億円。  この期間中に、三十六年七月二十四日には資本金が六千万円に増資になり、三十八年四月十日に一億五千万円、三十八年七月一日に三億円、三十八年十一月一日に七億五千万円というぐあいに、順次増資はされておりますけれども、三十七年三月期では、資産状況で見て結局欠損として十億円がどこかへ消えてしまっているという勘定になるわけですね。  三十八年の三月期は、前年同期比で見ても、どこかえ消えたいわば消失資産は、現金が十三億円、土地が六億円、証券四億円、合計二十三億円もマイナスになっている。四十七億円の借り入れ金の支払い利息を三億円と見ても、二十億円はどこかに消えてしまっている、こういう勘定になる。三十九年の三月期では、三回の増資で六億九千万円入っている。しかし、借り入れ金は未済で、現金、証券で三十三億円ふえたけれども、土地が八億円減って、二十五億円しか回復できていない。だから、この三年間で、結局借り入れ金四十七億円はそっくりそのまま、社外流出の五億円がそっくり穴になっているという状況です。  そこで、まず大臣お尋ねしたいのは、このように住宅を切実に望んでいる勤労者の積み立て金を土地の買い占め、たとえば三十六年から三十八年までの間にあの有名な鳥屋野潟の買い占めだとか、あるいは光明池の買い占めだとか、新潟大学用地の買い占めだとかということがやられている。こういうことや、証券がものすごくふえるといったことに見られるような株券の投機に運用することが、一体、社会的にも公正妥当だと考えられるのか、この点についての大臣の判断、御意見をまずひとつはっきりと伺わせていただきたいと思います。
  127. 大平正芳

    大平国務大臣 御質問の事項はどうも大蔵省の所管でないようでございまして、そういった事実を私よく存じませんので、御意見を申し上げるわけにはまいりません。
  128. 増本一彦

    ○増本委員 それはおかしいですよ。私が聞いているのは、一方で住宅を給付する会社の代表取締役になった人が、今度は大蔵大臣になった。それで財政投融資など資金の運用をおやりになったわけですね。しかし一方、その人が関係している会社のほうは資産を食いつぶすようなことをやってきた。こういう事跡があるときに、ではこういうようなことが国民の福祉とかあるいは日本の国民経済そのものの増進のためにやらなければならないという、いま大臣自身も一般的におっしゃったその政治姿勢ですね、こういう点から見て一体どうなのかという点については、これは大臣としても、一人の政治家として、しかも現在の内閣を構成している有力な閣僚のお一人として、御自分の政治姿勢と照らし合わせてはっきり御答弁できるはずであると思う。その点をお伺いしているのです。いかがですか。
  129. 大平正芳

    大平国務大臣 どなたが大蔵大臣をやりましても、そういった政府資金の融資につきましては一定の基準がございまして、法律で定められ、運用審議会の議を経て有利かつ確実に行なう義務があるわけでございまして、田中さんの場合もりっぱにその任務を果たされたものと私は思うわけでございます。  田中さんが私人として御関係されておった会社につきましてどういうことをされておったのか、その事実を私よく存じませんので、しかも私どもの所管でもございませんので、それについての見解を差しはさむことは御遠慮さしていただきたいと思います。
  130. 増本一彦

    ○増本委員 いま田中内閣の政治姿勢が問われているわけですね。それは数多くの疑惑に包まれた人を首班としていただいているという内閣だからですよ。この人がその重要な閣僚として大蔵大臣をやるときに、一方の経済活動の面では、同じ国民の零細な積み立て金を運用しながらそれはその目的そのものを果たすようなぐあいに運用されていなかったという事実がもしあったとしたら、その点について今日この時点に立って国民の多くの疑惑解明するとか、あるいはそれについて政治姿勢を正していくという上で、同じ閣僚の一員として国民に対してどういう政治的な姿勢立場をとるのかということを明解にされてしかるべきだと思うし、そのことを国民自身も注視しているのだと思う。だから、あなたの政治姿勢自身をこの過去の総理の具体的な経済活動とかあるいはそこでとってきた態度に照らしてみて一体どうなのかと言うことは今日的な問題だと思うので、そのことをお尋ねしているのですが、それについてもお答えにはならないのですか。いかがでしょう。
  131. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたの御質問の趣旨が私にはよくわからないのでございますが、私が申し上げておるのは、いま御質問に相なっておりまする事項は私どもの省の所管でないということを申し上げておるわけです。それで、私、そういう事実をよく存じないわけでございます。存じないことについて意見を言う立場ではないし、特に存じ上げないことについてとやかく申し上げることもおかしいと思うのでございます。私の答弁は何か間違っておるのでしょうか。
  132. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、大臣、これから申し上げることも含めて十分にひとつお調べになって、的確な所見をいただきたいと思うのです。  この会社ですが、完成の工事高を見ましても、三十六年の三月の決算では八十一億八千二百万円であったのが、三十七年三月には逆に七十四億四千四百万円と減ってしまっている。三十八年三月には八十一億九千三百万円、三十九年三月では八十二億五千二百万円というように、国民に当然給付しなければならない建物が給付されていないという状態が生まれていたのですね。この会社を実は三十九年の十月二十一日に十八億円で小佐野賢治という国際興業の社主が引き受けたのですが、そのときの言明によると、当然建物を建ててお客さんに渡さなくてはならないのにそれをやっていない分が七十二億円もあった、こういうように言われておる。だから、積み立てをしている人々は不安にかられてたいへん迷惑をした。建物を建てようと思っても建ててもらえない。たとえば、私も当時弁護士をしていましたけれども、たくさんの人からどうしたら掛け金を返してもらえるか、建物を建ててもらえるか、こういう法律相談というものがひっきりなしにあった。   〔委員長退席浜田委員長代理着席〕  そこで、いま政府も、これはもうずっと前からですが、国民の住宅に対する要求を解決していかなくちゃならない。そのために、財政当局としての大蔵省も住宅金融公庫の融資ワクをふやすとか、あるいは住宅公団を通じての出資額をふやしていくとか、いろいろな手だてをとると同時に、民間住宅についての助成も行なってきたはずであります。そういう自由民主党のこれまでの住宅政策全体から見ても、その政府内の中心の衝にあった人が、一方で住宅を欲する国民の信頼を踏みにじって実際に大きな損害を与えたということになると、これはやはり国民の要求から見れば信頼を裏切る、刑法でいえば背任にもひとしい行為だし、会社の役員をやっていた人であれば商法の四百八十六条の特別背任にも該当するような性質の行為にも当たるわけですね。  だから、そういう事態が現に過去にあって、そしてその人が大蔵大臣になり、今日内閣総理大臣になっている。そして、そういうことを含めて国民疑惑に取り巻かれているこの時点において、それは日本の政治を動かしていく政治的な指導者の立場にある人としてふさわしいことなのかどうか。これは閣僚の一員としての大蔵大臣にとっても決して無縁なことではないし、単に大蔵省の所管の範囲か範囲でないかということでなく、この点についてはあとでまた少し議論をしたいと思いますけれども、まず一般的な政治姿勢としてこの点は明確にされてしかるべきだというように私は思うのですね。その点でもう一度大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  133. 大平正芳

    大平国務大臣 日本電建という会社と大蔵省がどういう関係にあるかということ、私は所管でないと申し上げたのでございますが、いま増本さんが指摘されている財務内容というものを、私はあなたの申されることを信じないとかなんとかいうのじゃないので、ただ私どもといたしましては、有価証券届出書というのが証券取引法によってあるようでございますが、そういうものが提出されていないようでございまして、会社の財務内容については大蔵省としては知らないのです。  それから、あなたの言う割賦販売契約でございますが、受け入れておりまする積み立て金は、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律にいう預かり金には該当しないという見解を大蔵省は従来からとっておるわけでございます。本件のような積み立て式の宅地建物の販売につきましては、四十六年以降、積立式宅地建物販売業法で規制を受けることになりましたが、それ以前は宅地建物取引業法の免許を受けた業者であれば営むことができたと聞いております。いずれにいたしましても、そういうこと以外私ども存じないわけでございますことをまず御理解いただきたいと思います。  それから、田中さんの政治姿勢についてどう思うかということでございます。これは田中さん御自身がお考えになられておることと思うのでございまして、私がとやかく申し上げるのは非礼であろうと思っております。
  134. 増本一彦

    ○増本委員 今日の政局の非常に不安定な状態、それが首班である総理をめぐる数々の疑惑に基づいているということば、これは大臣自身も否定はなさらないだろうと思うのです。そのときに、閣僚の一人として、総理をめぐるその政治姿勢をほんとうに改めていくとか、あるいは国民から直接突きつけられている政治姿勢の問題に対して的確に対処をしていく、そういう立場でものごとを考えるならば、またそうでなければならないと思うのですが、田中総理政治姿勢田中総理個人の問題で、大蔵大臣であるあなたにはそれはかかわりのないことだとか、あるいはそれに対して口を差しはさむことは非礼であるなどと言うこと自身がたいへんおかしいことであるし、国民から直接皆さんの政治姿勢そのものについての問題が突きつけられていることに対する誠実な回答でもなければ態度でもないというように私は思うのです。だから、その点でのいまの大臣答弁は、きわめて政治家としても適切を欠いた御答弁であるというようにいわざるを得ないと思うのです。  この問題が大蔵省の所管でないという点については、実は私はたいへん異議があるのです。住宅を欲する国民の積み立て金をほかに運用して利益を得ているという点では、これはその会社自身が金融的な資金運用をやっているわけです。住宅建築そのもので利益を得ているのではないということは、実はこの会社自身の営業報告書の中にもはっきり書かれているのです。積み立て金の運用の面で、積み立てをしている国民の利益を守るという立場に立った規制そのものは、これは建設省の所管ではなくて、大蔵省がきちんとやらなければならない第一の問題だと思います。  それから、もう一つの問題は、こういう種類の会社の実態を見てみますと、その建物の建築に必要な全体の金額の三分の一ぐらいまで積み立てると建物を建築して給付するわけですね。あとは土地、建物について抵当権を設定して、それ以後はお客さんは貸し金としてそれを返済していくという関係になるわけです。その面でも、これは金融機関としての色彩の非常に強い性格を持ったものである。ですから、こういう点は、これは建設省の、住宅の建設がどれだけ進むか、そのための一般的な建築会社なんだということとは違った、重要な資金運用やあるいは貸し付け金などの側面がある。この点を監督するのが実は大蔵省の本来の立場であったはずだし、そのことを今日までやらなかったということが実はこの種の問題を大きくした原因だし、しかも本来そういうことを監督する立場にある大蔵大臣に、実はこの種の経営をたいへん破綻させるようなことをやった代表取締役の田中角榮氏がなったり、あるいはその関係者が代表取締役になって経営に当たるということから生まれた悲劇でもあると思うのです。ですから、一がいにそういうことを大蔵省の所管でないという従来の考え方そのものが、たいへん私は根本的に誤まった考えに基づくものだというように思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  135. 後藤達太

    ○後藤説明員 私からお答え申し上げるのは適当かどうかよくわからないのでございますが、ただいまお尋ねの中に、金融機関としての色彩が非常に強いものであるから当然大蔵省が監督をすべきではないかというお尋ねがございましたので、その点につきましてお答えをさしていただきたいと存じます。  私ども金融機関に対する監督権限は、それぞれの法律に基づきまして権限を執行しておる次第でございまして、先ほどから大臣答弁のように、この会社につきましては宅建業法その他の法律によります免許を受けて仕事をしております。したがいまして、それぞれの法律の所管官庁が監督をしておるものでございまして、私どもの所掌とは全く関係がない制度に相なっておる次第でございます。
  136. 増本一彦

    ○増本委員 もう一点この点での事実を指摘しまして大臣にお伺いしたい。  たとえば、この会社の実態を見てみますと、資金運用の面での一つの重要な問題は、田中総理自身が昭和三十六年から三十七年にかけまして、日本電建の名前で新潟交通という新潟の企業の株を大量に買ったことにあるのです。私は政治姿勢の問題として伺うのです。これは利殖を目的とするものではなかったのです。新潟交通が日本通運に乗っ取られそうになって、田中総理みずからが乗り出して、そして日本電建の名前で株を買った。三十九年の三月の決算の際の証券二十九億円のうちの二分の一は、この新潟交通の株になっておる。三十九年の七月現在の新潟交通の大株主は、日本電建が一千四十七万八千株で筆頭になっておる。これは日本経済新聞社の「会社総鑑」に載っていますし、お手元に先ほどお渡ししました表二にもはっきりとその推移が出ておる。  ところが、四十年の三月になると、筆頭株主は総理関係する新星企業が四百四十五万株、田中総理自身が百七十二万八千株で、日本電建は大株主から全く姿を消してしまう。ここにも疑惑が生まれるのです。一年前には一千四十七万八千株もあったものがどこへ行ってしまったのか。総理とその関連企業で半分以上の株を名義書きかえしてしまったということになるわけですから、その買い取り資金にしましても、株の値段の一番の安値を基準にしましても、新星企業が大体五億一千六百万円、田中総理が二億円、大蔵大臣在任中に二億円もの金を一体どうして動かすことができるのか、一切の企業の役員から身を引いた、こういう人が、その裏で国民の住宅建設にあずかる会社の資産を自分の手に入れるようなことをやっている。  もしこういうような事態があったとしたら、これは一般論としても、大蔵大臣としてふさわしい行為であるというようには私には思えない。こういうようなことも含めた疑惑がいま田中総理を取り巻いているわけです。そしてその出処進退を明確にしろ、このことがいま国民から皆さん方自身問われている問題だと思うのですね。そういうような疑惑に対して、それは単に総理個人的な政治姿勢の問題だというのじゃなくて、田中内閣そのものにまつわるその出処進退を明確にしなければならない。そういう意味で、国民から突きつけられたものであるだけに、その閣僚の一員としてのあなたが、こういう総理をめぐる疑惑に対してどういう態度をとり、そしてまた田中内閣そのものとしてこれに対してどう対処するのか、ここで明確な政治的な姿勢をはっきりさせるということが最も大事だというように思うのです。そういう意味での政治姿勢というものを私は大蔵大臣に伺っているわけですが、その点ではいかがでしょうか。
  137. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたばかりでなく、けさほど来から御質問をちょうだいしている委員各位に対しましてもお答えいたしましたように、政治姿勢につきましては田中総理御自身深刻にお考えのことと思う、とりわけ、ただいま最高の立場における公人といたしまして、このことを最もきびしく受けとめておられるものと拝察する、そのことについて私どもがとやかく申し上げるのは非礼である、私はそう思っております。  それから、今度の事件を通じて私どもとの関係におきましては、田中さんの財産の増減に関連いたしまして課税が適正であるかどうか、国有財産の処分が適正に行なわれたかどうかというようなことが問われているわけでございます。私は、わが税務当局国有財産当局も、万々間違いなく適正に執行していただいておるものと確信いたしますけれども、しかし、今度の事件を通じまして世間でそういったことについて問題が提起されておるわけでございまするので、再調査をいたしておるということも先ほどお答えいたしたとおりでございます。したがって、この再調査を厳正にいたしまして、措置すべきものは措置しなければいけないと考えておりますが、ただいまその再調査は進行中であるということもあわせて午前中御答弁申し上げたとおりでございます。
  138. 増本一彦

    ○増本委員 それでは大臣田中総理のこれまでの経済的な活動、いろいろな会社を使い、あるいはまた自分の関係している会社の資産で自分の個人財産や資産をふやしていくというような点での手口も含めて大きな疑惑がある、こういうことが問題になっているのですが、あなたとしては、田中総理そのものの経済活動の面でおやりになってきたことについては、これはずっと問題のない活動をしてこられたというようにお考えになっているのですか。その点はどうですか。
  139. 大平正芳

    大平国務大臣 非常に賢明かつ有能な方でございますから、今日セルフメードマンとして最高の地位にまでのぼられた方でございまして、公私の生活におきましてベストを尽くしてこられたお方だと私は思います。それがマナーとして適当であったかどうかということにつきましていろいろ御批判がございまするけれども、それをどう受けとめてどう対処されるかということは田中さんの問題であると私は考えておるわけでございまして、賢明なお方でございますから、公人としてのお立場において一番きびしくいま受けとめておられると拝察いたします。
  140. 増本一彦

    ○増本委員 あなたはそうおっしゃいますけれども、ほかにもまだあるのですね。たとえば、田中総理一族が他人の財産など何とも思っていないということは、御自分の選挙区でもたくさんあるのですよ。昭和三十七年の三月三十一日に田中総理は、自分の選挙区の長岡市の市有地である阪之上小学校のあと地二千坪を長岡ビルディング株式会社発起人総代として一億二千六百万円で買う約束をしたのです。その契約では、四十二年三月三十一日までにビルディングを着工する約束になっていた。ところが、約束は守らず期限切れの二カ月前の四十二年一月三十一日に何と北越銀行に一億九千百十八万円の抵当に入れて、結局長岡市が買い戻すときには一億九千三百五十二万円、これだけのものを払わなければならなくなってしまった。本来ならば、契約違反ですから買ったときの一億二千六百万を受け取って土地を返せばいいはずなんです。それを六千七百万円も長岡の市民の財政から余分に負担させてはばからない。だから決して賢明な態度で、マナーもよく経済活動をやってこられたという方じゃないのです。  このようなやり方が一国の代表的な政治家としてふさわしいのか。これでは一国の総理として地方財政の安定だとかなんとかいうことを口にする資格すらないのだろうというように思うのですね。大蔵省は、この点では地方交付税を交付するその立場にもおありになるわけでしょう。公人として政治家としてそういう立場も持っていて、いわば公人と私人とは全く切り離しがたく本来結びついているはずなのに、その一方の側面のときには許されて、公人としてのときには、その責任についてはあなた自身は明確にそれを答弁したり云々するということは非礼だと言ってお逃げになるけれども、こういうようなことをおやりになってこられた方について、そのことについて国民疑惑を向けているわけです、閣僚の一員として総理に対してどういうように対処すべきだというようなことは、当然十分なお考えをもって閣僚としての活動はされなければならないはずだと思う。そのところの大蔵大臣政治姿勢、重要な閣僚の一員としての政治姿勢そのものを伺っているわけですが、これでも御答弁いただけませんか。いかがでしょう。
  141. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどお答えいたしましたとおりでございます。
  142. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、田中総理大蔵大臣在任中の国有財産の処分をめぐってもいろいろな疑惑がいま問題になっております。   〔浜田委員長代理退席委員長着席〕  その一つが虎の門公園地の払い下げ事件であります。この事件についてはすでに昭和四十年、四十一年にもわたって他党のいろいろな議員の皆さんからも非常に精力的な追及がなされていますけれども、その論点を振り返ってみますと、その一つの問題は価格の問題です。その当時、三・三平方メートル、一坪当たり三百万円といわれている土地が百万円、正確には百八万円で売られているという点がおかしいということが追及されておりました。  もう一つは、和解調書や払い下げ契約書では、払い下げ後五カ年間はこの物件を所有し、かつ利用するものとするというように定められていたのに、払い下げを受けた昭和三十八年十月一日からわずか三カ月足らずの三十八年十二月二十六日に、この払い下げを受けたニューエンパイヤモーター株式会社が、実は小佐野賢治氏がもうすでにこの会社の実権を乗っ取っておって、エンパイヤ興業株式会社と商号を変更して、そうして朝日土地興業に実質的な転売をしている。このことがもう一つ問題になっていたはずです。実権を握った小佐野賢治氏がエンパイヤ興業を朝日土地に吸収合併させた。この吸収合併は当時の国有財産第二課長の村田博という人も承認していたのだということも、その後の事実で明らかになってきている。こういう疑惑は依然として解明されていないわけですね。この点についてまずはっきりと、これまでの国会の議論でなされている疑惑を明確に解明できるような答弁をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  143. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 ただいま御指摘のとおり、虎の門公園のあと地で国有地の払い下げが行なわれたわけでございますが、これはすでに増本委員承知のとおり、沿革が古いわけでございまして、遠く明治四十五年に東京都に公園として許可した。その後終戦後、都が昭和二十三年の五月にニューエンパイヤモーターに使用許可をしたわけでございます。ところが、使用許可条件に違反いたしましてニューエンパイヤモーターが鉄骨の建物、使用許可の条件では仮設物ということになっていたわけですが、鉄骨の建物を建設してしまった。そういうことに対しまして、国といたしましては関東財務局から都に返還要求をしたわけでございます。  その間におきまして、二十八年に公園の用途が廃止されたわけでございます。その段階で、二十八年でございますが、衆議院の決算委員会の決議がございまして、また参議院の本会議の決議がございまして、原状回復して公園の用に供せよということが行なわれたわけでございます。そういう決議が行なわれまして、国も従来の主張からいきまして、二十九年の四月に訴訟を提起したわけでございます。  ところが、ニューエンパイヤモーターの一時使用の許可でございましたが、長年使用しておりましたのでいわば借地権のようなものが生じてきたというような見解からか、裁判長のほうから職権和解の勧告が行なわれた。それと時を同じゅうして参議院決算委員会の決議で、情勢の変化があったので、国損を最小限にするために和解に応じろという決議があったわけであります。また、その同時期でございますが、衆議院の決算委員長からの要望もあったわけでございまして、これらの情勢を踏まえまして、国は訴訟をやっていたわけでございますが、三十八年七月に和解が成立した。同時に、十月に国有財産の売買契約が行なわれて、十一億で払い下げたわけでございます。  ところが、翌三十九年五月に朝日土地興業とニューエンパイヤモーターが合併した。ささいなことでございますが、その前に商号変更がエンパイヤ興業として行なわれております。  そこで、いま増本委員の御指摘の、これは少し安い価格じゃなかろうかという問題があるわけでございますが、私どもといたしましては、国有財産を売買する場合には、精通者の意見、売買実例あるいは鑑定評価人の評価、こういうものを全部勘案いたしまして、これに対しまして土地の形状等の修正率をかけまして、さらに借地権を、和解においては売れということが出まして、売れということは、当時十数年にわたる使用に対する一種の準使用権的なもの、借地権的なものが生じていたのじゃなかろうかということから、準借地権といいますか、借地権に準ずるようなものの評価額を引いているわけでございます。  それからいま、当時近所に三百万円という値段が出ていたのじゃないかという御指摘でございますが、私どもこれは正確にどこということは知りませんが、当時の事情を知っているところからいろいろ聞いてみますと、三百万円という呼び値が出ていたのは虎の門の電停のわきの特殊なかど地ではなかろうかということを聞いております。これは正確かどうかちょっと確かめなければわからないわけでございますが、当該土地はやや電停から引っ込んでいる、しかも三角形の用地であるということで、しかも一般国有財産の評価額の基準に沿って評価しているということで、安いとは私ども思っていないわけでございます。  なお、五年間使用し所有する、こういう条項に合併は反しているのじゃなかろうか、こういうことがあるわけでございますが、合併がかりにありましても、法人格は継続するわけでございまして、一切の債権なり債務は新法人に継承される、こういう解釈を私どもとっておりまして、所有し使用しという状況がそれによって変更するとは思っておりません。なお、これは法務省のほうにも確かめましたが、そういう見解でございます。  以上でございます。
  144. 増本一彦

    ○増本委員 私は、形式的にはこれは商法上の合併だけれども、実質的には、合併という法律形式をとって転売をしたのだという、実質的にものを見なければならないというところから問題にしているわけですよ。そして、そのことが実は参議院決算委員会等でも問題になって、四十年には国有財産の小委員会でも、かなりいろいろな角度から議論がされたわけですね。それは政府も御存じでしょう。  あなたの御答弁にはなかったのですが、国有財産の当時の第二課長の村田博という人がこの合併を了承したということになっていますけれども、この点は事実でしょうね。いかがですか。
  145. 佐藤観樹

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  会社の合併というようなたいへん重要な事項でございますので、事前に会社のほうから私どものほうに通知があった、こういうことでございます。
  146. 増本一彦

    ○増本委員 通知があってどうしたのですか。大蔵省は了解したのですね。
  147. 佐藤観樹

    佐藤説明員 先ほど局長が申し上げましたようなことでございまして、新しい会社が古い会社の債権債務の一切を引き継ぐ、国のほうの債務についても一切を引き継いで国のほうに迷惑をかけない、こういうことでございますので、われわれのほうとしてもやむを得ないというぐあいに考えた次第でございます。
  148. 増本一彦

    ○増本委員 何がやむを得ないのかということなんですよ。私はいまここにあの有名な田中彰治にかかる恐喝等被告事件の検察官の冒頭陳述書の写しを持っているのです。この冒頭陳述書というのは、御承知のように、刑事訴訟法でも、証拠によって証明すべき事実を述べるということになっている。だから、捜査の結果、証拠によって固められている事実なんですね。その冒頭陳述書の二七ページから二八ページにかけて、こういうようなことが書いてある。  「以上のようにして小佐野は」——小佐野というのは小佐野賢治です。「虎ノ門国有地を入手したが、同年十二月ごろ朝日土地興業株式会社(以下朝日土地ともいう)の代表取締役丹沢善利から右の土地を譲り受けたいとの申し入れがあったため、国との契約上転売を禁止されていたので協議の結果エンパイヤ興業を朝日土地に吸収合併し、朝日土地の株式九百万株を小佐野に譲渡することになり、大蔵省国有財産第二課長の了解も得て同年」——同年というのは昭和三十八年です。「同年十二月二十六日に両者間と合併契約が締結された。」先ほど局長が言った三十九年の五月十一日というのは、合併手続完了の日ですよ。「翌三十九年二月十四日にエンパイヤ興業は虎ノ門国有地について国から所有権移転登記を受けたが、同年五月十一日に同社と朝日土地との合併手続が完了したので土地の所有名義も朝日土地に移転登記され、小佐野は丹沢社長から朝日土地の株式九百万株を引取りその中五百万株は丹沢社長に一株三百円の割合で合計十五億円で売却し、その代金中三億円は現金で受取り残金は朝日土地振出しの翌四十年三月から十二月までを支払期日とする約束手形合計五通を受領した。」  法律形式的には合併だといって株式を一たん九百万株受け取るということにしながら、その日のうちにもうそのうち五百万株は現金ないし手形にかえるということをやっている。だから、吸収合併によって法人格がそのまま引き継ぐというようなことだけで転売には当たらないというぐあいにはいかないんじゃないですか。  もう一つあるのです。やはりこの冒頭陳述書の二六ページから三七ページを見ますと、いわゆるニューエンパイヤの株を小佐野賢治個人がどのようにして取得をしていったかということの経過が書いてありますけれども、これはお手元に配った表三のところに要約してありますが、三十二年から三十六年の四月までの間に、小佐野賢治は自分がやっている国際興業もニューエンパイヤと同じ自動車やその部品の販売をしているので、このニューエンパイヤの自動車部品販売網に着目して六万四千株を順次取得した。そして三十六年五月には、小佐野は近鉄モーターの所有していたニューエンパイヤの株三十八万九千八百株を取得した。そして三十六年十一月二十八日には国際興業から坪井準二、小島忠がニューエンパイヤの取締役に就任をして、そして三十八年七月四日、ニューエンパイヤの吉岡照義社長から六十六万一千百株を取得して、ニューエンパイヤ百二十万株のうち百十一万四千九百株を確保して八月までに全株を取得した。  形式的にはエンパイヤ興業は一つの株式会社かもしれないけれども、小佐野賢治という個人が全株を所有しているという会社です。だから、エンパイヤ興業株式会社というマントを着ているけれども、あくまでも実態は個人です。その個人が、この払い下げた土地をわずか二カ月足らずで合併契約を結んで、そしてもう売る約束までして、五月には株を引き取ると同時にその半分以上は現金にかえるということまでやるのです。一株三百円に値するものとして九百万株を受けたわけですから、いま政府が言われた十一億円で払い下げをしたものが三、九、二十七億円で実質的に転売をされているということになるのです。そして、これをやったこの当時の大蔵大臣田中総理であり、そして田中総理と小佐野賢治氏とはこれはもう刎頸の仲だといわれ、そして先ほど指摘した日本電建が経営不振になり五十四億円以上もの赤字をつくったときに、額面五十円の株を一株当たり百六十円で、何と十八億円でしりぬぐいまでしてやったという仲なんです。そこから実は疑惑が生まれてきているわけですね。あたかもニクソン大統領がウオーターゲート事件を起こしたように、田中総理と小佐野氏との関係は言ってみればタイガーゲート事件なんだ。  これを法律形式的に吸収合併だからそのままでいいのだといって、特定の個人に転売による不当な利得をそのまま十数年間も放置をしてきたというここのところの国有財産の管理や、その後のあと始末をめぐってのいろいろな問題、この点ではやはり大蔵省も私は職務怠慢のそしりは免れないし、むしろ逆に、この大蔵大臣をやった人が、その後も、ついに今日総理大臣になるというように政治の主流を歩いてきている。それはつまり、国有財産国民立場に立って運営をするんだとたてまえとしては言いながらも、実際にはくさいものにふたをするような態度をとってきたことになるのじゃないか。ここが私は問題だというように思うのです。こういう事実まではっきりしてきており、法務省直轄の検察庁でもそこまで捜査が進んでいる事態を前にして、それでもなおかつやむを得ないものとしてこのまま放置するつもりですか、どうですか。その点をはっきりさしていただきたいと思うのです。
  149. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 とにかく和解が行なわれたということは、ニューエンパイヤモーターが長年使用してきたという実績に基づいて職権和解勧告が行なわれたのだろうということでございます。それにはその段階までに株主構成がどうなっているかということを問わずに、法人としてのニューエンパイヤモーターがいかなる使用実績を持っているかということを基準に判断が行なわれたと思います。  それから、いま御指摘の売り渡し後にいろいろ株式の移動が行なわれたということは、私どもおそらく事実ではなかろうかと思っております。ただ、私ども国有財産処理をする立場といたしましては、他の国有財産を払い下げた相手の企業もいろいろその資本構成の変化が将来起こり得るわけでございますから、そこまで追及するのは私どものほうの国有財産行政のらち外ではなかろうか。  もし問題があるとすれば、御指摘の払い下げ価格が安かったといったことではなかろうか。当然二十七億というのが土地の代金以外には考えられないので、そういう場合に十一億というのはいかにも安かったのではなかろうか、こういう問題は残ると思います。ただ、私どもは先ほど御説明いたしましたとおり、払い下げ時期における当該土地の形状等を評価いたしまして客観的にいわば算出している価格でございまして、その後その株主が株式の譲渡をいかなる価格でやっているかということは私どもの行政のらち外ではなかろうか、こう考えております。
  150. 増本一彦

    ○増本委員 それはちょっとすりかえですよ。私、先ほど言いましたように、払い下げの前に全株を小佐野賢治個人が取得しているわけでしょう、ニューエンパイヤの株を。三十八年の七月四日から八月までの間に全株を取得した。七月四日には百十一万四千九百株を確保した。百二十万株のうちの百十一万四千九百株。これは検察官の冒頭陳述書によれば、払い下げが確実になったので全株式を取得するということになったのだということまで書いてある。そして和解が成立したのは三十八年の七月二十日ですね。これはあなたのほうからいただいた資料でもはっきりしているのです。しかも十月一日にこの代金十一億二千四百九十八万四千八百円を全額払ったのではなかったのですね。内金五億六千万円だけ払って、そして残金は五年の年賦払いでしょう。十一億と二十七億の差額ではないのですよ、実質的に小佐野との関係では。五億六千万円と二十七億円との差額なんです。この半年ぐらいの間の転売までの間に、何と彼は二十二億円近い不当な利得を得ているということになるわけでしょう。しかもそれが、一社の全株を個人で所有しているその男がやったのだ。だから、合併という形式をとっていても実質的にはもう転売であるし、あの四十年、四十一年の参議院などでの国会審議を見ても、ニューエンパイヤというのはほかに資産がなかったということまで政府は答弁していましたね。  そこで、もう時間がありませんからこれはひとつ大蔵大臣に伺いたいのですが、大蔵大臣はいまの質疑をお聞きになっていて問題の所在が一つわかると思うのですが、大臣は小佐野賢治氏からこの二十七億円とそれから彼が払った五億六千万円との差額、ほぼ二十一億円ないし三十二億円を国に返還させるように、そういう手だてを具体的にとるべきだと私は思うのですね。そうでなければ疑惑は晴れない。そういうことをおやりになるお考えがあるかどうか、この点をまずお伺いしておきたいと思います。
  151. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 御質問の二十七億というものが土地の対価としての二十七億なのか、あるいは当該合併後の会社一つの株式の取得、その授受に要する株式評価というか、経営を将来見込んだ評価としての二十七億なのか、そこら辺がはっきりいたしておりません。私どもとしては当該二十七億の性格をもうちょっと検討してみたいと思っております。
  152. 増本一彦

    ○増本委員 その検討した上で、私の指摘するとおりであったら、大臣としてはどういう処置をおとりになりますか。
  153. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 これは国有地の売り渡し価格の評価に関する問題でございますので、あくまでもその観点から取り扱いたいと思っております。
  154. 増本一彦

    ○増本委員 この問題は、またあとの委員会でもさらに私はお尋ねしていきたいと思うのです。  これまで指摘したようなこういう実態、これを解明するにはあなたのほうでその株式の構成がどうだったかとか、将来利益をどのように見込んだかとか、そういうことを間接的に調べるよりも、私は直接その当事者であった国際興業社主の小佐野賢治氏をこの委員会に来てもらうのが一番いいと思うのですね。そして小佐野氏と田中総理大臣大蔵大臣をやっていたその関係での疑惑とも結びついてこの問題が発展しているわけですから、田中総理にもこの委員会に来ていただく必要がある。それから具体的にこの合併を承認したかどうかという問題では、当時の国有財産課長の村田博という人が一番よく知っているはずです。しかもこの問題は日本電建の経営紊乱というような事態から生まれてこういうように疑惑が発展してきているわけですから、この当時の日本電建の社長をしていた入内島金一、この人にもやはり当委員会に来てもらう必要があると思う。そこで、いま申し上げた小佐野賢治、村田博、入内島金一、この三名についてはぜひとも当委員会に証人として喚問するように委員長に強く要求をしておきます。それから、田中総理の当委員会への出頭も強く要求をしたいと思います。  そこで私は、最後に大臣に伺いますが、このように現実に疑惑があって政治家としてのモラルの上からも数々の問題があるばかりか、地位利用であるとか、先ほど大臣も言っていた税法上の批判も浴びているような人を首班とする内閣、この内閣の重要な閣僚として、大蔵大臣田中総理にどのような態度をとらせ、責任を明確にされるおつもりなのか、この点が一点。  それから、田中総理がいま退陣するということも言われているわけですが、田中総理が退陣してもこの問題は国会で明らかにしなければならない問題と思うけれども、この点についてはどうか。  この二つの点について明確な御答弁をいただきたいと思います。
  155. 大平正芳

    大平国務大臣 この事態をどう受けとめてみずからの政治姿勢についての御見解を述べられますか、またどういう措置をとられますか、そういったことは田中さん御自身が、先ほども申しましたように、深くきびしくお考えのことと拝察いたします。私からとやかく申し上げる性質のものではございません。  ただ、いま問題になっておりまする課税問題国有財産の処分問題等につきましては、ただいま私どものほうでも再調査をいたしておるわけでございまして、田中さんのいわゆる御進退とは関係がありません。
  156. 増本一彦

    ○増本委員 いま私が要求しました三名の証人喚問、田中総理の当委員会への出頭、この点について要求しますが、お願いします。
  157. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 理事会で相談いたしますが、いまのところ全く考えておりません。
  158. 増本一彦

    ○増本委員 考えていないというのは理事会の結論できめることで、委員長がとやかく言う問題じゃないでしょう。
  159. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 広沢直樹君。
  160. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がありませんので、ひとつ答弁は簡潔にお願いしたいと思います。  いま公人中の最高の立場にあります総理金脈にまつわる疑惑で政局は混迷の度を深めております。この問題は雑誌文芸春秋の記事のみならず、国会の各委員会において取り上げられ、その真相の究明がなされております。また、総理自身もこの件については明らかにすると申しております。しかしながら、いまもって国民の納得のいく釈明というものは何一つ行なわれておりません。ところが、最近の報道によりますと、退陣するという方向で政局が非常に動いている、こういうふうになっております。これはもう当然、当人はもとより関係機関においても明らかにし、国民疑惑を一掃していかなければ、政治不信はますます深まっていく、重大な問題といわざるを得ません。  そこで、私は一つの問題を取り上げて具体的に伺ってみたいと思うわけでありますが、まず、民間の土地会社から政界をリードしているといわれる有力な政治家に対して土地の無償譲渡が行なわれた、こういった問題を中心に起こっている疑惑についてただしてまいりたいと思います。  東京中央区日本橋室町にあります北炭観光開発株式会社、現在は、四十六年十二月三日に商号変更しておりまして三井観光開発株式会社ということになっておりますが、そこが北海道の札幌市琴似町宮の森八百六十六番地の土地を整備して、当時の閣僚や有力政治家に贈与されたといわれております。これは土地登記簿上どのような経緯になっているか、登記された日はいっか、あるいは所有権移転が行なわれておるのはいつか、そしてだれに贈られどういうふうに移動しているか、これを法務省の民事局からお答えいただきたいと思います。
  161. 吉野衛

    ○吉野説明員 御質問の土地は八百六十六番地の六十一の土地ということでございますので、その土地についてお答えいたしますと、この土地は、いま御質問のありましたように、もと北炭観光開発株式会社の土地でありましたが、昭和三十九年九月五日付贈与を原因といたしまして、その年の九月三十日受付で田中角榮あての所有権移転登記がなされております。その後、昭和四十一年十二月二十五日付贈与を原因といたしまして、昭和四十八年二月二十二日受付で北炭観光開発株式会社が商号変更いたしました三井観光開発株式会社に所有権移転登記がされております。その後昭和四十九年三月十九日付売買を原因といたしまして、その年の三月三十日受付でさらに安田建設株式会社あてに所有権移転登記がなされております。
  162. 広沢直樹

    ○広沢委員 重ね気民事局にお尋ねいたしますけれども、登記の申請にはそれぞれ所要の書面をつけなければならないことになっております。実際に所有権が移転したいわゆる移転原因届け、それを登記がなされたときに一応確認するわけでありますが、申請人の所有権を証する書面に記載されたときか、あるいは実際に登記を受け付けたときか、いずれを所有権移転と法務省は判断するのかお答えいただきたい。
  163. 吉野衛

    ○吉野説明員 お答えいたします。  御承知のように、わが国の不動産登記のたてまえでは、一応実態上のたとえば贈与なり売買なりが行なわれたときに権利変動が生ずる、登記は、第三者に単に対抗する要件にすぎないというふうになっていますから、実際贈与が行なわれた日に所有権移転が行なわれたというように私どもは解しております。
  164. 広沢直樹

    ○広沢委員 もう一度お伺いしますけれども、このように最初三十九年九月十五日に田中氏にその当時の北炭観光開発株式会社から無償譲渡され、登記が三十九年九月三十日に行なわれている。ところが、その後四十一年十二月二十五日には田中氏から今度は実際に所有権が三井観光開発に変わっている。登記がなされたのは四十八年二月二十二日でありますから、約六年有半の間は、所有権は移転したが登記しないでそのままにあったわけであります。こういった事例はほかにあるのか、あるいはまたこれは合法であるかどうか、こういった点について法務省はどういう見解でありますか。
  165. 吉野衛

    ○吉野説明員 お答えいたします。  実際、登記の実例でこういう例が多いのか少ないのかという点は私ども調査しておりませんのでよくわかりませんが、一般に売買とか贈与が行なわれましても登記をするのは若干おくれるのが通常でございます。本件のように四十一年に贈与して四十八年に登記したのは非常におくれておかしいじゃないかという御質問でございますけれども、登記はあくまで当事者が申請しない限りなされませんので、当事者がそういうことでよいということであれば、こういう登記をすることは一向違法ではないというふうに私どもは考えております。
  166. 広沢直樹

    ○広沢委員 届け出を受けた場合は、必要書類についてはちゃんとそれを確認するわけでございましょう。必要書類が整っておれば登記が完了するというだけではなくて、行政当局に出される書類でありますから当然一つ一つ確認なさると思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  167. 吉野衛

    ○吉野説明員 登記を申請いたします場合には、不動産登記法の定めるところに従いまして一定の書面を出すことになっております。その一定の書面があるかないか、そろっているかどうかという点につきましては、私ども審査をいたします。一定の書面がそろっておって内容上も違法な点はないということであれば、実際の原因行為が行なわれたときから比べますと非常に登記の申請時がおくれておりましても何ら却下事由はございませんので、適法なものとして受理、登記をするということをたてまえにしております。
  168. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは自治省にお伺いいたしますけれども、地方公共団体が固定資産税などを賦課する場合に、実際に所有権がいつ移転したかということにつきましては、これは賦課徴収でございますから、実際に登記がなされた時点でなければ当局はわからない、いわゆる台帳は是正されない、こういうことになるのではないかと思うのですが、実際はいかがですか。
  169. 福島深

    ○福島説明員 お尋ねの固定資産税につきましては、御案内のように、課税は台帳主義でやっておりまして、土地登記簿に所有者として登録をされた場合にそれを捕捉いたしまして、課税台帳の整備を行ない課税をするということに相なっております。
  170. 広沢直樹

    ○広沢委員 確かに不動産登記法によりますと、登記所に登記されて、それを十日以内に市町村長に通知することになっている。それに基づいて、固定資産税は非常に複雑な問題がありますので——おっしゃったとおり台帳課税主義ですね。したがって、その実態がどうなっておろうと、それに基づいて固定資産税は課税されているということになりますね。  そうしますと、この三井観光開発から、これはその当時の名前で言えば北炭観光開発株式会社から、所有権移転に伴う税務申請はなされていないはずですね、いま言うようなことですから。四十八年の二月二十二日の登記の時点において四十一年十二月二十五日に所有権が移転したことが初めてわかったはずでありますが、その点いかがですか。
  171. 福島深

    ○福島説明員 先ほど申し上げましたように、固定資産税そのものが台帳主義でやっておりますので、台帳の中で登記原因としていつの時点で贈与があったというようなことがかりにあるといたしましても、台帳に所有者として登記をされている者に課税をするというたてまえでやっておるわけでございます。
  172. 広沢直樹

    ○広沢委員 以上で明らかになったとおり、地方税においての固定資産税は台帳課税主義によるため、登記がなされないと登記所もわかりませんし、それから市町村長もわからない、したがって台帳も変わることはない。したがって、それによって課税が行なわれるとするならば、この三井観光が所有権を移転したと称する四十一年十二月二十五日にこれは実際に移転したと登記所に届けを出しているわけですね。必要書類を出している。先ほど法務省のお答えでは、確認をした上で受理する、こういうことですね。その会社は四十一年十二月に確かに受けたのだ、ところが登記が四十八年二月二十二日でありますから、この六年有半の間はいわゆる固定資産税はこの会社が払っていないことにいまの論理から言うと相なる。したがって、もとの所有者が支払っておったということになるのでありますが、その点いかがですか。
  173. 福島深

    ○福島説明員 おっしゃるとおりでございまして、四十年から四十八年にかけましてはもとの所有者に課税される、つまりもとの所有者と申しますか台帳上の所有者に課税される、こういうことに相なるわけでございます。
  174. 広沢直樹

    ○広沢委員 いわゆる台帳上の課税者は、先ほどの説明でもおわかりのように、田中角榮氏になるわけでありますね。それでは四十一年から四十八年の実際の登記が行なわれるまでは、田中氏が固定資産税を払っておったことになる、そういうことでございましょう。
  175. 福島深

    ○福島説明員 先般からその課税の状況につきましての資料の御要求もあるわけでございます。私どもといたしましても、国会審議の必要上その資料の調査につきまして依頼をしてございまして、その調査が実は終わっているわけでございます。確かに四十年から四十八年にかけましては原則どおり課税されていると考えてしかるべきだと思っておるわけでございますが、実際の課税がどうであったかということは、国税におきます取り扱い等の関係もございますので、ここで申し上げることについては御容赦をいただきたいと思います。
  176. 広沢直樹

    ○広沢委員 こういう論理の上から明らかになっていることを、急に貝のふたを閉じたみたいにえらい消極的な答弁になりましたけれども、当然いまのシステムからいったら、もとの所有者というのは先ほど明らかになったように田中角榮氏なんです。そして実際には四十一年十二月に移ったと称しながら、三井観光が登記の届けを出したのは四十八年なんです。台帳課税主義からいったら台帳は直っていないはずです。そうですね。そうしたら、いまあなたがそういうあいまいな答弁をしておりますけれども、これは当然もとの所有者、いわゆる台帳に記載された所有者田中角榮氏がこれを納めてきたということになるじゃありませんか。そういうことになるでしょう。それともいろんな特例があって、これだけ別に考え直してやることがあるのですか、いかがです。
  177. 福島深

    ○福島説明員 先生のおっしゃるとおりだと思いますし、特にその問題について問題があったということも聞いておりませんので、ひとつ御賢察をお願いいたしたいと思います。
  178. 広沢直樹

    ○広沢委員 非常に答えにくいようですが、私の言っていることをお認めになりましたので、そうであるというふうに判断いたします。  そうしますと、当然今日の固定資産税の課税システムからいうとそういうことになって、実際に所有権が移ったと主張される四十一年十二月二十五日の直後に登記がなされるのが普通でありますから、四十八年二月二十二日まで登記をしていなかったということは、過般新聞等にもはっきりと公表されておりますとおり、当時の三井観光の取締役でありまた秘書室長ですかが忘れていた、こういうことを言っているわけであります。そうしますと、三井観光が登記を六年有半も忘れておった、そして固定資産税は払っていない。そうである以上は、当然県税であります不動産取得税についても申告していないと見るのが妥当ではないかと思うのですが、その点はいかがです。
  179. 福島深

    ○福島説明員 四十八年度に三井観光が取得をいたしました際の取得税につきましては、実はまだ調査を十分いたしておりませんので、この席ではお答えいたしかねますが、先生御指摘のように、四十八年に登記がなされるまでは、真実の取得者がだれであるかということは事実上わからないわけでございますので、四十二年の段階で不動産取得税を取ったということはまず考えられないというふうにお考えいただいて差しつかえないものと思います。
  180. 広沢直樹

    ○広沢委員 そうしますと、不動産取得税は固定資産税と違いましてこれは申告です。取得税については所有権が変わったとき、そのときが当然いわゆる申告義務が生じたときである、こういうことになります。したがって、四十一年十二月二十五日、六年前に取得したというのであれば、いまあなたがお答えになったとおり、今日までこれは払っていない、納税義務を怠ったということになるのじゃないですか、いかがです。
  181. 福島深

    ○福島説明員 真実その取得が行なわれたということであれば、御指摘のように納税をしていただかなければならないわけでございまして、四十二年時点に不動産取得税を納税したかどうかは、実は確認をいたしておりませんので何とも申し上げかねますけれども、理論的には、いま申し上げましたように、その所有というものが真実であれば、その段階でやはり納税をしていただくのがたてまえでございます。
  182. 広沢直樹

    ○広沢委員 それで、この点については過般あなたは調査するというふうに申しておりまして、固定資産税については調査したけれども、しかしその具体的なことは言うをはばかるみたいな御答弁でありましたね。同じ地方税の中で調査が済んでいるのであれば、なぜこの県税の分だけ調査しなかったのですか。固定資産税だけ調査するなんて、そんなばかな話はないでしょう。どうです、調査した結果がどうなっておったか、納めてあったのか納めてなかったのか、あるいは調べようがなかったのか、はっきりしてください。
  183. 福島深

    ○福島説明員 調査内容につきまして私どもが若干勘違いをした点があることをおわびをしなければいかぬわけでございますが、三十九年でございますか、その段階田中角榮氏が三井観光からその資産を取得したときに不動産取得税を払っておるかどうか、そういうことについての調査というふうに実は私ども受けとめておったわけでございまして、その点につきましては、調査せよということでございましたから、その依頼を地方団体にいたしましたけれども、何ぶんにも十年前のことでございまして、当時の不動産取得税に対する資料はもう保存をしていないということでございますので、その調査は打ち切ったと申しますか、そのような状況でございます。
  184. 広沢直樹

    ○広沢委員 そうすると、不動産取得税、いわゆる納税申告義務がある不動産取得税については、一応古い話でわからない、こういうことになりますね。いまのお答えはそのとおりですね。これはあとからいろいろ問題が出てきますけれども、これはたいへんな問題です。  先ほど法務省のほうは、一応この申告は確認をして受け取ったし、そしてその登記については合法である、こういう何年もずれることもあり得る、そのとおりです、法律を見れば、どこにもそれは差しつかえありませんというお答えでしたね。確かに合法でありましょう。しかるがゆえに、なぜこんなにおくれたかという問い合わせに対して、この担当しておった常務は、これは忘れておったのだ、田中氏からは四十一年に土地を返していただいた、しかし登記変更の手続を忘れ、去年、四十八年にこのミスに気づいた、全面的に当社のミスだ、こういうことを言っているわけですね。そしていまあなたにお伺いしていったら、理論の上から当然これは納めていないのじゃなかろうか、しかし調査してみたらそれはもう五年以上たっているからわからない、書類も見つからない。これはあと国税にも影響してまいりますけれども、このとおりで合法であるとしていくならば、これはたいへんな問題になってくる。  この当時、田中さんは大蔵大臣でありました。こういうシステムの一つのパターンが通るということになりますと、これはほかの方々もそのように考えて、あるいは作為であったかどうかそれはわかりませんが、さかのぼって何年も前のことにしてしまえば納税しなくて済むのです。地方税である不動産取得税を。いいですか、これをこのまま認めてしまえば。私はここに税法上の一つの大きな疑義があると思う。  それは登記面と課税上、税務上とは違う、ですから独自に調査するとおっしゃるかもしれません。それならば独自に調査して、これは四十八年ではなかった、あるいは四十六年にしますか、四十一年十二月ですから、あるいは四十二年か四十三年に課税当局が認定してやったとしますね。そうしますと、すでに昭和四十一年十二月二十五日に移転したと言っている、これはうそになります。うその申告を出して、登記は書類がそろっていればそれでよろしいのですと。本人が言うことを調べる権限は登記所は持っておりません。きちっとそのとおり誤りないとしてそろってしまえばいいということになる。それが届けられたものはどこへいくかというと、十日以内にこのように所有権は変わりましたということで、市のほうに、あるいは市を通じて県のほうにいくわけです。そうすると、固定資産税あるいはまたいま言う不動産取得税、それぞれの立場からそれをもとにしてかけてくることになるじゃありませんか。そういったことを考えてみますと、これは一つ大きな問題が残ろうかと思います。  続いてもう一つだけ自治省にお伺いしておきますが、納税義務のない者から徴税しておったということが判明した場合、これは当局はどういう処置をおとりになるか。それは台帳課税主義ですからその当事者間で話してくれ、こういうことになるのか、実際の所有権移転が前であれば、その時点に立って納税義務が生じた者から徴税し、そしてまた誤って徴税したほうには返すとか、どういう処置をおとりになるのですか。
  185. 福島深

    ○福島説明員 先ほどから申し上げておりますように、固定資産税の場合には課税台帳主義でございますから、とにかくその台帳に出ております所有者を納税義務者として課税をするということになります。したがいまして、かりにさかのぼって所有権が移転されたというようなことでありましても、課税側といたしましては誤った税金をいただいたということにはなりませんし、正しく税をいただいたということになるわけでございます。実際にその所有権がその段階でかわっておるのだからその負担をどちらがすべきであったかということはあろうかと思いますけれども、それはやはり当事者同士でどちらの負担にされるかということはお考えをいただくべきことだろうと思います。徴税当局が特にその税金を返して新しい方からいただくというようなシステムにはなっていないことは御承知のとおりでございます。
  186. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、今度は国税庁お尋ねいたします。  不動産が移動した場合においては当然いま申し上げたように地方税の関係が出てまいりますと同時に、国税の関係も出てまいります。それで、地方税の関係におきましてはそういう実態面から考えて、実際の所有者でない田中さんが六年有半にわたって固定資産税を払われておった。これはシステム上そうでありますからしようがない。それは三井観光開発さんが忘れたというのですから。そうしてそれに伴っております不動産取得税、これは納税義務を当然忘れておったということになる。これも納まっていない。だけれども、調べれば時効になっている、これはだめだ。  それでは、国税につきましても、そういう一つの背景から考えていくならば、個人から法人に無償譲渡された場合は、これは当然法人はその翌年においては受贈益を計上しなければならないはずです。そうなりますと、三井観光開発は、この背景から考えまして、これはおそらく申請をしていないと判断せざるを得ないのです。いかがでしょうか。
  187. 横井正美

    ○横井説明員 お答え申し上げます。  ただいまの法律関係につきまして申し上げますと、三十九年当時におきまして法人から無償で個人に土地の贈与が行なわれたという場合におきましては、御承知のように、法人側に寄付、個人の側に一時所得と、こういう課税関係が発生いたします。これにつきましては、古いことで現在調査中でございますけれども、適正に処理されておるというふうに思われます。  それから、その後におきまして個人から法人に対しまして返還が行なわれたという場合におきまして、法人が受贈益を計上する、これは当然でございます。しかしながら、個人につきましてみなし譲渡課税を行なうかどうかという点につきましては非常にむずかしい問題がございます。  広沢先生御承知のように、贈与税の課税というのは非常に執行上むずかしいものでございます。私ども毎年の贈与税の税務相談におきましてよくございますのは、誤って贈与登記をした、あるいはまた軽率に贈与登記をしたというふうなことがございまして、贈与税の課税を何とか免除してもらう方法はないか、こういう御相談を非常にたくさん第一線で受けておるわけでございます。これにつきまして、私どもは、あやまちによりましてあるいはまた軽率なことで贈与を受けまして、これをその後におきまして税務署から更正等を受ける前におきまして返還した、こういう場合におきましては贈与税を納めなくてよろしい、こういう扱いにいたしてございます。その場合におきまして、一たん贈与登記を行ないまして贈与税も払った、しかしながらその後の事情の変更によりまして実質の所有者名義にいたしたい、こういう場合におきましては、前にいただきました贈与税はお返しはいたしませんけれども、今度の贈与につきましては贈与税はいただかない、このようにいたしてございます。  そのようなことで考えますと、田中総理から三井観光に宮の森の土地をお返しいたしましたのが四十一年でございましても四十八年でございましても、またその間におきまして固定資産税を田中総理がお払いになっておりましても、みなし譲渡税は行なわないとするのが相当ではないだろうか、かように考える次第でございます。  それから、法人の受贈益の受け入れでございますが、土地の値段が上昇するということでございますので、四十一年の時点で受け入れるか四十八年の時点で受け入れるか、これによりまして当然価額が変わってくるもの、このように考えるわけでございます。先ほど法務省のほうから御説明がございましたように、日本の民法は意思主義と申しますか、あるいは実質主義と申しますか、そういう点から登記は第三者に対する対抗要件であるということにいたしてございます。したがいまして、私どもこれは非常にむずかしい問題でございますが、実質がどこなのか、不動産の引き渡しはどの時点で行なわれておるかということを十分検討いたしたい、かように考えております。
  188. 広沢直樹

    ○広沢委員 いまのお答えで、三十九年九月十五日に当時の北炭観光開発株式会社から、当時大蔵大臣でありました田中角榮氏に贈与されたのはおそらく適正に行なわれているであろう、こういうお答えでありますね。ところが今度は、田中氏からそのもとの会社へ返した、この時点については明確なお答えがありません。そこで、いまさっきの問題を繰り返すことになりますけれども、その三井観光は当然それの無償譲渡を受けた場合においては受贈益というものが生ずる。ところが、三井観光のその当時の責任者は、すべて忘れておったと言うんです。よろしゅうございますか。忘れておったとはっきり公言をなさっていらっしゃるわけですね。そうすると、受贈益だけを計上するわけがないではないか。だから、申告があったのですかなかったのですかということをお伺いしたのですが、その点いかがですかね。
  189. 横井正美

    ○横井説明員 お答え申し上げます。  現在その辺の事情につきましては、田中総理側それから三井観光側につきまして真相がどうであったかということを調査いたしておる段階でございますが、三井観光の申し立てが広沢先生のお話のようでございますと、四十一年当時に財産に計上しておるかどうか、これは非常に疑わしいというふうな感じを持つわけでございます。
  190. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、いま調査なさっていらっしゃる、疑わしいということだから調査するのでありましょう。これは適正だと思いますが、そういう申告の有無について、あるかないかということをお答えはできますか、いかがですか。
  191. 横井正美

    ○横井説明員 お答え申し上げます。  調査中でございまして、まだはっきりお答えできる段階でございません。申しわけございません。
  192. 広沢直樹

    ○広沢委員 いいですか、あなたは調査中と言われたのですが、ただ、私はいままでの経緯から考えていったら、ここにいらっしゃるだれが聞いても、これは一切のことを忘れておって、この会社が受贈益だけ御丁寧に計上していくなんということは常識で考えられぬのですよ。個人から法人に移っているのですよ。これはその次にこの三井観光さんが安田建設に売っているときは、登記の期間というのはわずか十日余りしかありません。ほかの政治家の皆さんもここに出ておりますが、先ほどお話がなかったのであげておりませんけれども、みんな短期間で行なわれておる。いいですか。いま問題にしている分だけは非常に非常識なというか、常識にないようなやり方になっているから、それが忘れられたということで言われているとするならば、当然そういうことになるんじゃないですか。ですから、一般論で申告の有無についてわれわれが国税庁にお伺いしたときに、それについてはイエスかノーかのお答えはできますかと聞いているのです。
  193. 横井正美

    ○横井説明員 先生御承知のように、登記の資料は当然私どもに回ってくるわけでございます。三井観光といたしましてはそれが自分の財産になった、で、当然受贈益を計上しなければいけないということは承知しておるはずでございますから、三井観光が資産に計上しておるということは当然でございまして、そこはあまり疑う余地はないのではないか、かように考えております。問題は、計上の時期の問題というところにあるのではないだろうかというふうに思います。
  194. 広沢直樹

    ○広沢委員 いまのお答えは、ちょっといまの具体的例からはずれているのです。端的にひとつお答えいただきたいのです。  申告の有無についてあったかなかったか、あるいはこちらが申し上げたことについてそれは適否、正しいか正しくないか、そういうお答え守秘義務の云々と言っていますが、できますか、できませんかと申し上げているのです。簡単に答えてください。
  195. 横井正美

    ○横井説明員 まことに申しわけございませんけれども、以上の先ほどの答弁で御賢察をお願い申し上げたいと思います。
  196. 広沢直樹

    ○広沢委員 どうも私の言っている意味がわからないのかどうか知りませんが、申告の有無を聞かれた場合に、いま自主申告制度の中でしょう、自主申告はいわゆる納税の第一歩ですよ。それが申告があったかなかったかということを、それも守秘義務で答えられませんということになりましたら、われわれ国政調査権税務当局に対して何にも聞けないということになるじゃないですか。いかがですか。
  197. 磯辺律男

    磯辺説明員 一般論としてお答えするのは非常にむずかしい問題があるのじゃないかと私は思っております。極端に言いますと、たとえば内容につきまして、はなはだこういったことばを使うのはどうかと思いますけれども、不具者控除の申請があったかなかったかという質問を受けたような場合、そういうときにはやはりあったともなかったとも言えないという場合もございますし、むしろそれは個人秘密を守る上においてお答えできないということがあろうかと思います。それから、たとえば申告書が出ているのか出ていないのかという御質問があった場合には、これは出ております、出ておりませんというふうにお答えできる場合もあろうと思うので、一般論としてお答えするのはむずかしいので、そこに一つの具体的な事例に即してケース・バイ・ケースで判断する余地もあるんじゃないかと思います。
  198. 広沢直樹

    ○広沢委員 わかりました。申告の有無について聞いた場合、そういうふうに個人一般社会上におけるコンプレックスというか問題があるといったことが出されたら困るから有無を言うのは困ると、具体的にお答えになるならいいのです。  ところがいま、これは先ほどから問題になっておりますように、冒頭にも私申し上げましたが、公人中の公人といいますか、そういう人の適格性が最も問われているときでありますね。したがって、それについて実際の申告があったのかなかったのかという常識的な程度の問題について答えられないというのはちょっとおかしいのじゃないか。ですから、この問題について申告があったかなかったか、この問題に移しましょう。答えられますか。イエスかノーか言えますか、いかがです。
  199. 磯辺律男

    磯辺説明員 それは三井観光開発株式会社の当年度の受贈益の計上の有無だということになろうかと思いますけれども、これはやはり具体的なその会社所得内容ということになりますので、これはこの場ではお答えするのはお許し願いたいと思います。
  200. 広沢直樹

    ○広沢委員 そうしますと、その点はあいまいにしておられますが、これは一連のことになるんですよ。ただ三井観光だけが忘れておったから、おそらくこの受贈益の計上、いわゆる法人の申告を過少申告しているのじゃないか、こういう面で言っておりますが、今度は個人から無償譲渡したわけですから、その個人のほうには、先ほどもお話がありましたように、それに対してみなし譲渡課税されていきますね。当然これは起こってくるはずですね。ですから、田中さんのほうだけは結局はやりましたということにもならぬ。田中さんの分の申請があれば、それに関連した会社のほうがどうなっているかと徴税当局がその時点で調べる、税務署が調べるのはあたりまえですね。そうしたら、これはどうなっているかという問題になれば、当然、忘れていて登記ができなかったのだという簡単なことじゃ済ませられないんですよ。そうじゃないですか。全部これは一連のことなんです。それともあなた方がおっしゃるように、四十一年十二月二十五日に私は返したのだということが、あるいは三井は間違いなく私は受け取った、ミスでございますと言っていることがうそなんですか。うそになるじゃありませんか、そうであれば。いかがですか。
  201. 横井正美

    ○横井説明員 お答え申し上げます。  四十一年に返したのか、あるいは四十八年に返したのか、あるいはまた途中の段階で返しましたのか、これにつきましては、先ほどお話がございましたように、登記が第三者に対する対抗要件であるというふうなことからいたしまして、実質を私ども調査いたしまして、それに基づいて処理をいたすという所存でございます。  なお、先ほど法務省の御説明によりますと、四十九年三月末に当該土地が安田建設に売却されておるということでございますので、法人といたしましては、時点が問題は残りますけれども申告書の中に当該財産が計上されておるということは十分信頼していいのじゃないか、かように考えております。
  202. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、いま確かにそういう観点から見ると、そういう理屈も成り立ちましょう。しかし一番問題なのは、四十一年に所有権が実際に移ったのか、そうでなかったのかということは、これは徴税当局は調べなければなりません。しかし、四十一年に移ったと本人が言っているんですから、本人の主張というものも当然これは参酌に入れなければなりません。しかし、それが真実かどうかということは徴税当局は調べなければなりません。したがって、それがそうでなかった場合においては、これは当然それぞれの対抗措置をとらなければならなくなってくると思うのですが、いま調査中ということですから、そうなった時点においてはこれは適正な処理のしかたをしなければならない。したがって、もう一つこれに関連した個人のいわゆるみなし譲渡所得、これに対する課税についても、これは適切にひとつ調査の上、申告があったのかなかったのかということ、これは明確にしていただきたいと思うのです。この点いかがでしょうか。
  203. 横井正美

    ○横井説明員 最初の御質問でございますが、御本人の意思の表明、これは一つのよりどころでございます。同時に、登記は第三者に対する対抗要件であると申しましても、これも一つの重要な判定の要素でございます。したがいまして、私どもそれらをよりどころにいたしまして実質を確定いたしたい、かように考えております。  あとの問題でございますが、最初の答弁を申し上げましたときに、触れたように記憶しておりますが、贈与税、具体的な例で申しますと、たとえばサラリーマンがマイホームの夢が実現しまして、これを機会に夫が妻に共有登記をしてやろう、こういうふうな場合がよくございます。その場合に贈与税が問題になりますと、そういうつもりではなかった、自分だけの名義にしてほしい。そういたしますと、錯誤登記をいたしまして夫名義にして、贈与税は往復とも取らない、このような扱いをいたしております。そのような場合におきまして、夫から妻に共有登記をいたしまして贈与税を一たん払った。ところが夫婦間のその後の事情によりまして……(広沢委員「ちょっと発言中ですが、その夫婦の関係はいいです、聞いておりませんから」と呼ぶ)はい。それで、返還をするようになったというときにおきましては贈与税はいただかない、こういうふうな取り扱いになっております。  それで、本件につきまして申しますと、田中総理が宮の森の土地を贈与により取得されまして、相当年数がたっておりますけれどもお返しになったということでございまして、それが過誤によるものか軽率によるものか、そういう点を判定いたしまして、そのようなものであれば課税をいたさないというのが相当ではないか、かように考えておる次第でございます。
  204. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がないのでひとつ簡潔に答えてください。  それじゃ大臣にお伺いしますが、先ほどの問題に返りますけれども、その申告の有無について、これは当然守秘義務の中に入らない、自主申告制度の中ですから、当然それぐらいのことは答えていいのではないか。内容がどうなっているかというような問題は、これはいろんな関係が出てくるからということになるのでしょうが、こういう単純な問題についても一切だめなんですか。大臣はどうお考えですか。
  205. 磯辺律男

    磯辺説明員 やはり個々の営業の内容にわたることでございますので、私どもとしては答弁を申し上げることをお許し願いたいと考えております。
  206. 広沢直樹

    ○広沢委員 それじゃ申告の有無につきまして一応具体的に伺いたいのですけれども、税理士会とか、納税の自主申告制度を定着させ拡大させていこうといういろいろの民間団体がありますが、そういったところへ申告の有無あるいは税務署から税務の資料を出す、こういうことはいまあなたがおっしゃっていることからいえば守秘義務の範囲に入って出すことはできませんね。イエスかノーか簡単に言ってください。
  207. 横井正美

    ○横井説明員 この関係協力団体等に対しまして資料を提供するという場合におきましても、秘密にわたる事項は一切漏らさないというふうにいたしてございます。
  208. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、税経新報という本を私読んでおりますと、これは熊本の例ですが、一ぺん調べてください。小規模対策の一環として無申告法人の名簿を税務署からもらって、税理士会で相談室を設けて呼びかけた。しかしながら、これに対しては一件の参加もなかった。あといろいろ書いてあります。ほかのところにもぼつぼつ出ておりますけれども税務当局というのは、無申告法人について、これはその所管の中にあったのでしょう、それについてひとつ指導措置をお願いするということで、この人は申告していないという名簿を渡しているのですよ。  それから、時間がありませんからもう一つ言いますと、さきの予算委員会におきまして安川国税庁長官は、商社の脱税問題についてお伺いしたときに、確かに御自分では名前をあげられませんでした。守秘義務関係をはっきりおっしゃっておられました。しかしながら、こちらが指摘した問題につきましては、そのことを一応認めていらっしゃるわけです。ですから、こちらがこれは真実かどうか、私の言うのが間違いか間違いでないかという問題については、イエス、ノーを答えるのが当然じゃありませんか。これは事例がちゃんとあるんです。ほかにもあげろといえばまだたくさんあります。先ほども塚田委員が具体的な例を一つあげておられました。  そういうふうに自分に都合のいいことはやっても、実際一つの問題について、全国民がこれを明らかにしたい、また総理自身も明らかにしたきやならぬとおっしゃっていることを、申告の有無についても何も言えないというようなことをすれば、これはますます疑惑が深まるばかりですよ。先ほど私、筋道を立ててお聞きしたわけですが、これは忘れておったことを納められるわけがないじゃありませんか。あなたは調査中と言うから、調査の結果が出たらその時点でイエスかノーをはっきり答えてください。一切言えないと幕を引いてしまうのだったら、これは問題です。  それから、時間がありませんので主税当局にお伺いしますけれども、いままでのやりとりで一応おわかりになったと思うのですが、これはこういう問題で今後非常に悪例を残すんじゃないかと私は思うのですよ。たとえば登記上の問題、それから本人の主張している結局実際に所有権が移転された場合、それから今度は税務当局があらためて調べた場合、こういうふうにみなまちまちなんです。ですから、作為的にといいますか、あるいは故意にでも、この五年とか十年とかいう間をとって、明らかにこういうやり方があってこれが合法で通ったとします、登記上は合法なんですから。いいですか、そうした場合は合法的に脱税ができるじゃありませんか。時効にかかってしまう。先ほども、不動産取得税なんかもう資料がないからわからないということです。おそらく皆さん方も調べてみても、これが事実だとしたら、国税のほうでもこれは時効ですよ。もうわからぬはずです。大蔵大臣の時代にこういうことができるのであれば、これはほかの国民が見たら、みなこんなことができるのかということになる。違法ではないかもしらないけれども、合法的にこういうような疑惑を持たれるようなことが行なわれる。  西ドイツにおいては登録主義なんです。したがって、その登録したときにそこを見て、それから課税もする、すべてをするというかっこうに合理的にできている。日本は制度が違いますね。先ほど言った発生主義ですからややこしいのです。納税者国税庁当局とけんかしてみたり、日がいつであったかということで大騒ぎしてみたり、それでそれを確かめようといったって、いま守秘義務だ何だかんだと言って答えることができない。では適正な課税はどこでどうやって審査すればいいんでしょう。やはりこういう制度をもう一ぺん見直してみなければならないのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  209. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 ただいまのいろいろなお話で一般論として考えますことは、まず一つは、先ほど来固定資産税、不動産取得税のお話がいろいろございましたけれども、これはまず賦課課税でございます。徴税当局が令書を発付しなければ課税できないという税でございます。それで、固定資産税は先ほど御説明がございましたように台帳課税でございますから、全く形式的な所有者というものに課税をするという体制でございますし、不動産取得税は実質的な不動産の取得者に課税をする。したがいまして、形式的な所有者とそこにそごが出てくることは確かでございます。  それから所得税あるいは法人税でございますと、これは全く実質課税でございますから、おっしゃいますように形式的な登記面の移動だけに徴税当局がたよっておりますれば、さかのぼって課税することのチャンスを逸することがございます。徴税当局とすれば、登記面だけでございませんであらゆる資料をとってやらなければならないということは、おっしゃるとおりでございます。  それを制度的に何か改正をしてそういうことがないようにする方法は、従来も主税当局で検討をいたしたことがございます。一つは、まずは課税時効というものを非常に長期間認めていただくということでございます。これはまたほかにいろいろ差しさわりがございますからなかなかむずかしい。それから場合によりますれば、こういう例がございます。登記面だけはある一人の所有者ということにしておきまして、別に、たとえば公正証書でAからBに所有権が移ったというふうにいたしておきまして、課税当局がそういう事態を知りましたときにはすでに時効になっておって、公正証書で真実の取得者はすでにもう十年前に移っていますということがございますから、特にそういう場合にだけは課税時効というものをもう少し長い間にするという方法も検討したことがございます。しかし、やはり課税時効というものを現在の五年よりもさらにさかのぼってやるということは、その当時にもなかなかむずかしいという事態がございました。御指摘の点も今後勘案しながら、こういう問題を検討いたしたいと思っております。
  210. 広沢直樹

    ○広沢委員 予定の時間をオーバーして申しわけないのですが、会計検査院に御出席をいただいているので、続けて質問しますので御答弁いただきたいと思います。  いま会計検査院も、徴税の事務について調査をしていると過般の参議院の各委員会でもお答えになっておられました。御存じのように、そのことについて国会報告義務があるのですね。したがって、その報告において具体的にいま疑問のあった問題についてお答えできるかどうか。  それからもう一つは、この決算報告書によれば、最近の決算報告書は、四十年代に入ってから内容一つも具体的に書いておりませんが、三十年代の決算検査報告書によりますと、具体的に会社名をあげて、不当事項何々の会社ということが全部書いてあります。全部書くといったらこれはたいへんですから、特に大口のものだけ書いてある。なぜそういうことを正確に国会報告することをおやめになったのか。ここにこうやって書けるということは、報告できるということじゃないでしょうか。いろいろほかの面で聞きたいのですが、時間がもうオーバーしていますから、それだけにしたいわけであります。  それと、大蔵大臣、まだ一言も聞いていないので、さっきからいろいろ議論されておることでひとつ大蔵大臣答弁もいただかなきゃならぬのですが、そういうようなことで、これは有力な政治家に対して一つの土地会社から同じ時期に大体同じ面積の土地が無償で贈られているのですよ。そして閣僚だとか要職にあった方は、返したとおっしゃるのですよ。いいですね。その前後に何があったかということは、過般のわが党の調査で新聞に発表してあります。国の融資がその前後で非常に多くなったという問題もあげておりましたし、この譲渡が行なわれた前後に隣接の国有地が払い下げられている。この疑惑もありました。しかし、いずれにしても、きょうはその問題に触れませんでしたので無償で遠隔の地が有力な政治家に譲渡される、そういったような姿勢が、やはり地位の利用につながるのではなかろうかと国民疑惑が起こってくると私は思うのですが、こういうような問題に対して大臣はどういうふうにお考えになるか、これを最終的にお答えください。
  211. 石川達郎

    ○石川会計検査院説明員 会計検査院といたしましては、検査の結果につきましてこれを検査報告にまとめて内閣に提出する、これが原則的な立場でございます。しかも、この検査報告を集めるまでにつきましては、検査官会議の議を経た上でこれを提出するということになっております。したがいまして、ここで公表するといたしましても、現在の検査報告の形になろうかと存じます。  そこで、だいぶ前には個人名をあげていたわけでございます。それがどういう形で現在のような形式になったかという問題でございますが、これは御承知のように、会計検査院は納税者そのものを調べるわけではございません。税務当局の徴税上の瑕疵を指摘いたしまして、これを不当として検査報告に掲記するわけでございます。当時、個人名から税務署名、あるいは現在におきましては国税庁ごとの記載になっておりますが、個人名から税務署名に変わったという時点におきまして、格別秘密というようなことにつきまして議論があったようには承知はいたしておりません。ただ、検査報告をお読みいただくと御理解いただけると思いますが、租税の徴収過不足につきましての批難というものはいわば傾向批難、法令の適用を誤ったかどうか、あるいは税務署におきます保有資料が十分活用されていないかどうかということに尽きるわけでございまして、そういった観点から税務署ごとにまとめる、あるいは国税局ごとにまとめるというようなことに相なった次第でございます。その辺の事情をひとつ御了承いただきたいと思います。
  212. 大平正芳

    大平国務大臣 特定の会社政治家との間におきまして、普通の取引関係でございましてもとかく問題になりがちなものでございますが、いわんや無償で授受が行なわれるということは慎むべきことと思います。
  213. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 竹本孫一君。
  214. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんので簡単に申し上げます。  大蔵大臣もお読みになったことはあろうと思うのですけれども、ジェームズ・ブライスの「近代政治論」というのにたしかあったと思うのですが、デモクラシーというものは最後は金で腐ってしまって命取りになってしまうのだというようなことがあったと思うのです。日本のいまの政治状況を見ておりますと、まさしくそういう状況で、田中さんの金脈問題もその一つであるというふうに私は思います。いずれにいたしましても、選挙に金がかかり過ぎる。また派閥の維持運営に金がかかり過ぎる。特に総裁選挙にも金がかかり過ぎる。考えてみれば田中金脈問題というのは、総裁選挙に立つためのものであったと極言することもできるだろうというふうに思います。  そこで、まず大平さんの政治家としての姿勢の問題として私はお伺いしたいのですけれども、たとえば、いなかの村会議員の選挙でも選挙にはルールがあって、公職選挙法その他の適用があるわけだ。現代においては最も大事な総理大臣たるべる自民党の総裁選挙、その選挙にルールがないというのはおかしい、あるいは七の選挙が金で幾らでもやれるということもおかしいというふうに思います。そして現実は、だれもが知っているように、総裁選挙というのは、また近く行なわれるのかもしれませんが、大体無法地帯である、法外地帯であるということになっておってはまことに残念だと思いますが、この総裁選挙に自民党の有力な政治家として、大平さんも一つのルールがあるべきであるとお考えにならないか。また公選法のそのまま適用ではないにしても、そういう精神は生かしてやるべきであると思うが、どういうふうにお考えになるか、その点をまずひとつお伺いしたい。
  215. 大平正芳

    大平国務大臣 自由民主党の総裁選挙につきましては、党できめられました規定、ルールがございます。それによって行なわれることと思います。いま竹本さん御指摘のルールというのは、公職選挙法のような有権的なルールがない状況においてどうあるべきかという問題だろうと思いますが、私はむしろルールがないだけに、よりきびしくやらなければならぬのがほんとうの意味政治道義であろうと思います。
  216. 竹本孫一

    ○竹本委員 法理論は一応別にしまして、国民全体の常識論からいって、とにかく総裁選挙に金がめちゃくちゃに飛ぶんだということは常識でございますから、そういうことがまた政治不信の大きな原因にもなっておりますので、有力な総裁候補としての大平さんにおいては、総裁選挙は清潔なフェアなもので争うんだという決意をぼくらは承りたいと思うのです。そしてまたそのことが政治に対する信頼をつなぎとめる一つの大きな方法ではないかというふうに思いますので、もう少し熱意のある積極的な御発言があってしかるべきではないかと思うのです。  時間がありませんので、ついでにそのこととあわせて申し上げますが、いまたとえば定数の改正の問題だとかあるいは参議院の全国区の制度とかいろいろ選挙についての改正の試みがありますけれども、それらの問題以上に自民党の総裁選挙というものが国民の大きな関心事になっておりますので、やはりこの際は公職選挙法の精神を生かしてフェアプレーでやってもらいたいと思うのです。もう一度お伺いしたいと思います。
  217. 大平正芳

    大平国務大臣 フェアでかつ清潔なことでなければならぬと思います。こういう憂うべき風潮の中で行なわれることになるといたしますならば、せめてそれだけのことは実行しなければ国民に相すまぬと考えております。
  218. 竹本孫一

    ○竹本委員 フェアにやるためには政党法でもつくる。それから政治資金の規制についても、先ほど来いろいろ問題が出ましたけれども、ちゃんとしたルールをつくるというところまでいかなければ——これは時間がありませんから、また暴露的なことを一々言うこともあまり適切でもないと思いますので言いませんけれども、とにかく政党法をつくって政治資金の規制もやっていくということ。  それからもう一つ、これは私ドイツに三、四年前に行きまして、社民党が選挙をやるときに一カ月いろいろ実情を調べたときに知ったのですけれども、ドイツでは政界浄化の一つ方法として、選挙が済んだあとでだと思いますが、一票につき大体二百五十円の補助金というか助成金というか、そういう金を予算の中から出していく。したがって、政党はへたに金をもらうとか、へたにそれ以上の金を使うということは客観的にできないようにワクをはめておる。こういう制度はひとつ日本も学んで、衆議院選挙その他の選挙においても、選挙のために政治が腐ってしまうというようなことはもうこの機会に少し改めなければいかねと思いますが、その政治資金規正法なり政党法なり、あるいはそうした意味の非常に積極的な選挙の公営のあり方なりというものについて、政治家としての大平さんのお考えを承っておきたいと思います。
  219. 大平正芳

    大平国務大臣 公職選挙法あるいは政治資金規正法という法律をつくって、その規制の中でフェアにかつ清潔にやるということは仰せのとおりでございますけれども、本来われわれ政治家といたしましては国民に信頼を得て公職を汚しておるわけでございますが、法律があればちゃんとやる、なければちゃんとやらぬというようなことではいけないのではないかと思うのでございまして、ない場合におきましても、また現にある立法に不備がかりにありましても、それぞれお互いに政治道義は心得ておられることと思いまするし、またそうお互いにやるべきであると私は思うのであります。いま現に政治資金規正法はあるわけでございますが、その改正の問題が出ておるわけでございますけれども、公職選挙法にいたしましても政治資金規正法にいたしましても与野党共通の大事なルールでございまして、政治に携わるわれわれが与野党を問わずよく御相談いたしまして、適正な立法ができることを私は期待いたします。
  220. 竹本孫一

    ○竹本委員 まああるといえばある。若干の法律もありますけれども、その法律自身がざる法であるし、またやるほうは免れて恥なしという人も政治家の中にだいぶおるようですから、やはり免れることのできないだけの厳格な規制というものが必要であろうと思いますが、きょうはこれ以上は申し上げません。  次に、時間がありませんので簡単に一般論としてお伺いしたいのですが、この間田中総理がテレビを通じて記者会見でいろいろ国民に話をされたときに、地位利用は自分は絶対やっていないということを言われました。ちょっとびっくりしたのですけれども、地位利用とは一体どんなものであろうかということについて一般論としてひとつお伺いをしたいのですが、たとえば大蔵大臣なら大蔵大臣というような方が株を買う、あるいは自分の息のかかった会社が株を買う、その株が暴落をしたといった場合に、相手方に対して、株を売った人あるいは発行した会社に対してこれを賠償しろと言ったということになると——株が下がれば賠償してもらいたいという気持ちはだれでも持っているでしょうけれども、いままで事実そういう例はない。特にそれが大臣なら大臣としてのにらみのきく立場においてそういうことをやれば、そして賠償までさせるということになれば地位利用になるとぼくは思うけれども、どうでしょう。大臣に聞きたい。
  221. 大平正芳

    大平国務大臣 私も法律の専門家じゃございませんので、地位利用というのをどのように理解したらいいのかよくわかりませんけれども政治的に御答弁させていただきたいと思います。  私は地位利用ということは実はあまり感心しないことばだと思うのです。何とならば、われわれ民主社会におきましてはお互いに責任ある主体なんでございまして、人のロボットではないはずなんでございます。したがって、それぞれの民主社会の成員である者の自己責任において、自分の分別において、自分の責任において、自分の危険において仕事をし、判断し、決意し、やっておることでございまして、その相手のお方が高い地位にあるから、権力の座にあるからその人の言うことをいやおうなしに聞かなければいかぬのであるなんということは大体非常に情けない話でございまして、私はあってしかるべきことではないと思うのであります。またしかし、権力というものを掌握しあるいはそれを行使する立場にある者、これは確かに相手はどう受け取るかわかりません、あるいは弱い人間でございますから、権力者のおっしゃることにつきまして多少無理と考えてもあるいは泣き寝入る、あるいは心ならずも承知してしまうというようなことが私はないといえないと思うのでございます。そういう場合があり得るわけでございますので、権力の座にある者は人一倍よほど謙虚でないといけないと私は思います。
  222. 竹本孫一

    ○竹本委員 まあいま大臣いろいろ慎重な御答弁でございますけれども、特に大臣が相手の人を自宅へ電話で呼びつける、そして無償でとにかくこれこれのものをよこせと言ったというような場合、あるいは時価二億円するものを五千万円にそれじゃ負けておけということを言ったような場合、これは脅迫になるのか地位利用になるのかなかなかややこしい問題で、大平さんに法律的な見解をここで聞こうとは思いませんけれども、しかし、少なくとも政治家の良心において考えた場合に、そういうことはすべきではないし、またそういうことをやれば、それは法律論を別にしても、政治としては、電話をかけて自分の自宅へ呼びつけてみたり、二億円するものを五千万円で買ってみたりすると、これは地位利用と非難されてもしかたがないと思うが、この常識を大蔵大臣はお認めになるかどうかということですね。
  223. 大平正芳

    大平国務大臣 確かに、それはあなたの言うことが事実とすれば、地位利用であると言われてもしかたがないと思います。  ただ、用心しなければならぬことは、そういう事実があったかどうかという真実が十分究明された上で考えなければいかぬことと思うのでございまして、人のうわさでございますとか、単なる一片の情報で判断すべきものではないと私は思います。
  224. 竹本孫一

    ○竹本委員 もちろんこれは大事な問題ですから、事実に即して、きわめて厳粛に事実を調べた上でなければわれわれも言うわけではありません。ただ、きょうは時期も時期ですし、時間の関係もありますから、一般論としてお伺いしただけであります。  もう一つ、これに関連してちょっとお伺いしておきたいのだけれども、いま申しましたように、五千万円なら五千万円で買った。しかしこれは二億円するものだから不当に安いので、いわゆる贈与税の問題等も起こるし、あれこれうるさいのでということで、あとから四千数百万円別に払った。追加して払った。実際は相手は一銭ももらわないのだけれども、払ったことにして領収書をとった、こういう問題があるようです。そうすると、それはまた虚偽の申告をしたとか法人税がどうしたとかいうことになって、これは税のほうに聞きたいのだけれども、そういう場合にはどういうことになるか。実際は五千万円しか払わなかった。けれども、あとからかっこうが悪いとか追跡調査をされるとかいう問題があるので、ほんとうは五千万円の領収書を一ぺん受け取って、さらに五千万円の小切手をまた切って払ったような形をとって、実際は自分で受け取った、こういうような場合に、その法人についていえば税法上どういう問題が起こるかという点を、税の専門的な意見だけちょっと聞いておきたい。
  225. 磯辺律男

    磯辺説明員 法人、個人、これは両方に問題があるわけでございまして、個人のほうから言いますと、時価より著しく低い価格で法人に売った場合、それは普通われわれでは五〇%以下の標準をつくっておりますけれども、その場合には、時価との差額というものはみなす譲渡ということで、それだけ個人のほうで税金をかぶらなければいかぬということになるわけでございます。  それから、ただいまのように法人のほうで、実際にはかりに五千万で仕入れたけれども、実際はそれじゃあまり安過ぎておかしいということを言われたら困るというので、そのあとまた五千万の小切手を支払ったといったような場合、その五千万支払ったというのが法人のほうに正式に記入されておりますと、もちろんそれは過大原価計上ということになって否認対象になるわけでございますけれども、そのあとに追加しまして支払った五千万円の行き先がどうかというのは、また次の問題になろうかと思います。  いずれにしましても、法人、個人ともに税法上適正な経理とはいえないということは事実でございます。
  226. 竹本孫一

    ○竹本委員 この問題はまたやがて具体的な事実も持ってもう少し本格的に議論をしたいと思いますが、最後にもう一つ国政調査権の問題について、一般論といいますか、あるいは政治家としての大蔵大臣の基本的な理解をひとつ承りたいと思うのです。  それは、国会というのは国権の最高機関ということになっておりますから、その国会が適法に国政調査権を発動するという場合には、そのファンクションは最高でなければならぬと思うのですね。国権の最高の機関というものが適法に国政調査権を発動した場合、それが途中で何とか言って食いとめられるということになれば最高でも何でもなくなってしまう、最高というのは無制約なものなんですね。私は、国権の最高機関の国政調査権が適法に発動されるという場合には、最高でなければならぬと思う。しかしながら、三権分立でございますから、これを制約するといいますか、例外とするものは二つしかないとぼくは思うのですね。  一つは、三権分立の立場から行政権にどこまで介入できるか、介入してはいけないか、あるいは司法権に対してどこまで介入ができるかといった、三権分立からくる当然の制約というものがチェック・アンド・バランスであると思うのですね。これが一つ。  それからもう一つば、人の生命その他、自然法的な意味での基本的人権というものはいかなる最高の権力といえどもこれは侵すことができない、それが自然法的な権利だ、こういうふうに法律を理解すると、この二つの例外以外の場合には、国権の最高機関としての国会国政調査権というものは何ものにも制約をされない、じゃまをされない、こういうふうに思いますが、大臣、いかがでございますか。
  227. 大平正芳

    大平国務大臣 いま実定法から申しますと、私の承知している限りでは、竹本さんのおっしゃるようなぐあいになっていないと思います。私はしかし、まあそういう法律論を別にいたしまして、きょうの午前中、山田さんの御質疑にもお答え申し上げましたように、国会としてはやはり行政府立場を御理解いただきたい。われわれは国会立場、権能、そういうものを十分尊重しなければならぬということで、現実には委員会あるいは理事会等を通じまして御相談願って、そこでどういう御質疑に対してどういう点まで答えられるかというような点は御相談していままできたと思うのでございます。今後もそういうことができないはずはないのでありまして、行政府国会の間で十分の話がつかないはずはないと思いますし、最善の努力をしなければならぬと思います。  ただ、それがそれでいけないで、やはりいわゆる調査権を発動するというハウスの決議ということになりますと、最後にお断わりをしなければならぬ場合は内閣が声明を出さなければならぬということになっておると思います。  こういう制度がいいか悪いか、私まだよく判断がつかないわけでございますけれども、私の考え方といたしましては、誠心誠意、行政府立場についても御理解をいただき、国会の権能も尊重申し上げるという、双方の理解とそれから双方の相互の尊敬、尊重等の精神をもちまして事に当たっていけば、ケース・バイ・ケース相談していけば打開できない問題はないのではないか。いままでやってきたのでございますし、また今後もやっていけないはずはないと考えております。
  228. 竹本孫一

    ○竹本委員 私、汽車に乗るもので時間がないから、この問題の本格的な議論はまたあらためてさせていただくことにいたしますが、大臣のいまのせっかくの御答弁で誠意のほどはよくわかるのですけれども国政調査権に対する理解は若干私は違うと思っているんです。  まず第一に、日本のたとえば総理大臣なら総理大臣というようなものでも、昔は「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」という第三条が旧憲法にはありましたが、そういう資格を持った者が日本にはいまは、いないんですね。それからアメリカ大統領は大統領特権があるというのだけれども、そういう権限を持った人もいない。いかなる場合にも、いかなる人についても、国政調査権なら国政調査権というようなもので調べるというようなことになれば、それを押えていくという制約のできるものはいないと私は思うのです。  それから、もう一つ大事なことは、大臣ケース・バイ・ケースとかあるいは国会相談してということを言われますが、これは政治家としての姿勢としては一応理解できる、あるいは非常に誠意のある御答弁かもしれません。しかし、法律論からいえば、ケース・バイ・ケースというのもおかしい。すなわち、国権の最高機関として国政調査権の発動をした場合、それが適法である場合には、どんな場合にだって法律の守るべき利益、法益というものがいろいろあるわけですね、どの法益を守るかということは比較衡量の問題で、その場合に政治に対する信頼をつなぎとめる、これは民主主義の最大の政治課題なんだから、そしてそのために国政調査権を発動したという場合には、それによって守られる法益というものにまさる法益はないと思うのです。守秘義務だ何義務だといいますけれども守秘義務で守られるところの法益と国政調査権を発動して守らなければならぬところの法益とを比較すれば、国政調査権によって守ろうとしておる法益のほうがはるかに大きい、はるかに高いんです。  そういうことを考えた場合に、ケース・バイ・ケースというのもちょっとわからないのです。一つの基準があって、その基準を適用するわけなんですから、ケース・バイ・ケースで、国政調査権のほうが守秘義務よりも上にあったり、場合によっては下になったりする、そういうばかげた法の解釈はないと思うのです。法律の解釈というものはきわめて厳格に行なわれなければならぬので、個人立場あるいはプライバシー、その他、先ほど申しました例外の場合は別ですけれども守秘義務によって守られるような法益と国政調査権によって守ろうとする法益とは比較にならないほどこちらが大事なものだから、常にこれが優先するのです。  この場合、当面の場合にも大臣答弁でちょっと私がひっかかる点は、たとえばどこまで言えるか、せっかく先ほども答弁がありましたけれども、過去の先例等も調べてみて最大限度に言いたい、こういう意味大臣の御答弁があったと思うのです。しかしそれは、私は法律論からいえば、ちょっと逆だと思うのです。国政調査権が優先するのであって、国政調査権を発動された場合には、秘密も言わなければならないのが原則なんですよ。そうなれば、どれとどれとはこういう特殊な例外として言わなくて済むかということが問題になるのであって、どこまで言えるかは、大いに努力してみようということで、大臣の努力によって広げるべき筋合のものではない。  問題は、客観点にこれとこれとは守らなければならぬが、これからこれまでは言わなければならぬのだ。言わなければならぬという原則があって、その例外として、自然法的な基本的な人権といったようなものだけがこれは言ってはならぬ、こういうワクがあるわけなんです。だから、こちらのほうが原則なんだから、どれとどれとが言えないかをよく検討すると言われるのならまだわかるけれども、どこまで言えるかというのは、言わないのが原則だけれども、どこまで言ってサービスするかひとつ考えてみよう、こういうふうなもしお考えであるならば、解釈がさか立ちをしておる。私は、言うのがほんとうで、言えない場合は例外であるから、例外の場合は何と何が例外になるかということをひとつ検討してもらって、それ以外は原則として守秘義務ではないのだ、言うのだ、こういうふうに言わなければならぬのではないかと思う。したがって、御答弁、せっかくでございますけれども、熱意はわかりますけれども、法の解釈はもっと厳格にやっていただいたほうがよろしい。  それから、ケース・バイ・ケースというのも、先ほど申しましたように一つの基準があるわけですから、その基準に沿って、ただ運用の問題についてケース・バイ・ケースと言われるのならわかるけれどもケース・バイ・ケースで言えるときと言えないときがあるという解釈も、国政調査権に対する理解において不十分ではないか。  それから、もう一つ申しますならば、政府とそれから国会相談をして、ひとつなるべくスムーズにやるように、これは政治家のおことばとして一応理解できますけれども、法の解釈というものは、われわれのお互いの相談や協議によってきめるべきものではないのです。法律はお互いの解釈によって幅広くなったり幅が狭くなったりするのではなくて、厳として客観的に解釈は一元化していなければならぬ。そういう意味からいえば——運用の末端についての御相談とか協議ということはわかります。しかしながら、法の解釈というものは、あるいは国権の最高機関としての国会国政調査権に対する解釈というものは客観的にきまるべきであって、国会相談してきめるべき筋合いのものではない。  そういう意味で、まだあれこれ申し上げたいのですが、時間がありませんから、要望でございますが、いずれあらためて厳格な法律論として予算委員会か何か知りませんけれども論議したいと思いますが、国政調査権というものは、われわれの解釈や相談によって、ケース・バイ・ケースで広げてみたり縮めてみたり、上にしたり下にしたりするようなものではない、もっと厳粛な解釈が必要であると思いますので、その点についてだけ大臣のお考えを承って終わりにいたします。
  229. 大平正芳

    大平国務大臣 御趣旨よく理解できますけれども、残念ながら竹本さんと私は基本的考え方に少し違いがございます。というのは、国政調査権のほうが常に優先するということが前提での立論を進められておりますけれども、私はそう考えません。守秘義務国政調査権はいずれが優先するときめられないと思います。両方とも国会による立法でございますので。私はそういう見解を持っておりますので、少し違うわけでございますから、お許しをいただきたいと思います。  それから、その場合、この秘密を開示することに——私自身は税務官吏じゃございませんから、守秘義務から法制上は自由なんでございます。しかし、私の立場といたしましては、やはり税務の適正な執行を保障して差し上げなければならぬ重い立場にございますので、私は守秘義務を尊重する立場をとっていきたいと考えております。  しかし、それはともかくといたしまして、現実にこの秘密を開示することによって失う国益と得る国益とを比較していく場合は、具体的ケースが出てまいりまして、それを具体的に検討しないとわからぬと思うのです。あなたの場合は、常に国政調査権が優先するという立場をとられておりますから、非常に問題の結論を生みやすいわけでございますけれども、私の場合はどちらが優先するとは限らないという立場でございますので、それは具体的ケースをよく比較検討して判断する以外に道はないのではないか。抽象的な目安を立てろと言われても、いやいや、もう具体的ケースによって判断するよりいたし方がありませんと答えるよりはほかないのでございまして、参議院でも法制局長官を一緒に出まして、そういう抽象的な論議を繰り返してきたわけでございますけれども、それを具体的に適用する場合は、どうしてもケース・バイ・ケースにならざるを得ないのです。これは逃げ口上じゃないので、現実の運用はそうならざるを得ないのではないかという見解を私どもとっております。しかし、それにつきまして竹本さんのほうでは御見解がやや違うようでございますけれども、せっかく私の考えを聞いてやろうということでございますので、率直に申し上げた次第です。
  230. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後に、いずれにいたしましても、いまのような法律の解釈の問題等も掘り下げて、これからわれわれは今回の事件に限らず、日本の今後の問題のあり方の一つとして議論をやっていきたい。  それからまた、先ほど来いろいろ問題が出されておりますが、会計検査院にしても国税庁にしても、これは純粋に法律を守る立場において、今後もやはり法の精神、法の解釈は、貫くべきものを貫いてもらうということも要望をいたして、質問を終わります。
  231. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十九分散会