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武藤(山)
委員 蔵相は、
世界恐慌は来ない、来ないように国際
協力が可能である、また
国際通貨のルールについても話し合いがまとまる、だから、各国内で雇用を促進し
経済を適切に
運営をするならばという
過程はありますが、そういう
過程を踏んでいくならば不況というものはやってこないという見方であります。
私は、その点見解が違うのであります。戦後三十年間の
経済成長をもたらしたものは何であるか。各国の
経済運営というものがかなりうまく運べたのは何に基因するのであるかということを調べてみまするに、やはり何といっても、一つは第二次
世界大戦後の発明、発見、技術革新、こういうものが生産力を高め、高度の
需要に応ずるだけの生産体制に持っていけた、第二は、
エネルギー資源というものが無制限的に金さえあれば手に入るという、
経済成長に必要なそういう
資源というものが容易に入手できた、第三は、技術革新に伴ってスケールメリットを追求する工業の大規模化、そういう幾つかの条件が戦後三十年間各国の
経済に付与されてきたからだと思うのであります。
しかし、平和が三十年続いた今日の
世界経済の動向というものを見るときに、この三つの条件というものが大体臨界点に達した。技術革新も大体使い切ってしまった。もしあり得るとするならば、人工衛星を打ち上げた技術、素材、こういうものがいかに耐久
消費財に、平和産業に活用できるか、技術導入に生かされるかにまだ幾らか残ってはいると思いますけれ
ども、技術革新は大体行き着いた。スケールメリットの点については、もはや公害
環境問題からそうやすやすと規模の拡大化はできないという制約に達した。
資源については、もう御
承知のように、
世界ナショナリズムが各国に台頭し、それぞれの民族の利益を守ろうという傾向が強くなり、おまけに金とドルとの
均衡が破れたために、ドルに対する不信からかなりの原料高をそれぞれが要求し、油のごときは四倍以上の
高騰を来たした等々の条件を見るときに、
世界の今日のような
情勢の中で
通貨不安が続いていくならば、ケインズ的な国内における
需要を拡大すれば雇用が維持でき
経済の安定が保たれるという安易な手法では、もはや
経済運営が壁にぶつかって成長できない段階に来たのではないか、私はかように見るのであります。
したがって、一たん今日の
経済情勢というものをほんとうに安定的
経済に持っていくためには、ケインズ的な有効
需要を喚起し不況の到来しないような
政策をとことん続けていくのは安易です。あなたもこの
所信表明の中で、いままでは安易な道をたどり過ぎた、こう言っておる。だとすれば、安易でない道はどういう道か。ケインズ的手法でない新しい手法というものは何か、それを明示しなければならない。しかし、いまのところケインズ理論にかわる新しいそういう体制をつくり得る
経済理論というものをまだ私は聞いていない。
大臣は不況は到来しないと言われた。国際
協力という約束を信頼し切ってそういう見通しを立てているのでありましょうが、もし不況を到来させないで乗り切ろうとするならば、ケインズ的
政策による
需要の喚起によって
物価はますます上がらざるを得ない、こういう結論に到達をするのであります。したがって、国際的に見ても、国内のいまの
経済政策の手法から見ても、
物価問題にしわ寄せがいくのではないか、こういう感じがいたすのであります。
大臣があえてここに、
世界経済は混迷の度を深め、
事態はますます深刻だという認識を
所信表明に書かれるからには、私は具体的なやはりこれに対処する心がまえがおありだと思うのですが、先ほどの
説明ではあまりにも貧弱過ぎるような気がいたすのであります。
時間が五十分しかありませんから、一つの問題をあまり論じておるわけにいきませんから次に進みますが、オイルダラーが現在の油の値段が四倍から四倍半に
引き上げられたことによってアラブの国に集まる、年度間のドルは六百五十億ドルぐらいになるだろうというOECDの発表であります。もし六百五十億ドル年間アラブにドルが入り、そのうちの三分の一程度がかりにユーロダラーになったとして、投機的に短期的に運用されると考えてみますると、これから五、六年後にはたいへんなユーロダラーが
世界じゅうをいたずらすることが予想されるのであります。しかも、金とドルとの兌換を一切停止して紙っぺらになったドルというものがそういう形で
世界じゅうをかけめぐったときの
世界経済の混乱というものは、想像以上に大きなものがあるのではないか。
したがって、この資本主義国間におけるルールの作成、OECDではモース案なる二つの案が提案されて、国際間におけるルールづくりをきちっとひとつやろう、さらにもう一つは、決済制度をきちっとつくろう、こういうモースの提案がOECDの中では議論されてはおりますけれ
ども、その後新しく起こったこういう
石油危機の問題、原価
上昇の問題というものをもっと深刻にわれわれ
経済を論ずる者は受けとめて、
世界的なそういう
通貨の問題をどうしようか、さらにオイルダラーというものに対処する各国間の話し合いをどうすべきか——日本
政府はまだ何も提案していないじゃありませんか。あなたは
大臣になってからも一度もまだ提案をしていないじゃありませんか。
資源のない日本のような国こそ、そういう
世界経済を混乱させる
要因についてはかくすべきであるということをいち早く
世界に向かって提案すべき責任が私はあると思うのであります。
大平さんの不況は来ないということはわかった、じゃ不況の来ない手だてはどうすればいいかといえば、私がいま言ったようなことじゃないかと思うのであります。それを続けていけば、必ず際限なく
物価上昇が続くという
経済にならざるを得ないのであります。失業かインフレかという問題に迫られるそういう段階が近い将来に到来するのではないか、そういう深い読みを見て今日のこの
所信表明は書かれたのではないのですか。
まず、時間がありませんから、オイルダラーの処理の問題についての見解をひとつ
大蔵大臣に伺いたいと思います。