運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-10-18 第73回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十月十八日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君   理事 稻村佐近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 田中 六助君 理事 武藤 嘉文君    理事 板川 正吾君 理事 中村 重光君    理事 神崎 敏雄君       浦野 幸男君    越智 通雄君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       小山 省二君    塩崎  潤君       島村 一郎君    田中 榮一君       橋口  隆君    八田 貞義君       松永  光君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       上坂  昇君    佐野  進君       竹村 幸雄君    渡辺 三郎君       野間 友一君    米原  昶君       近江巳記夫君    玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君  委員外出席者         内閣法制局第四         部長      別府 正夫君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         経済企画政務次         官       竹内 黎一君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         沖繩開発庁振興         局振興第一課長 大内 健价君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         大蔵省銀行局特         別金融課長   窪田  弘君         文部省初等中等         教育局審議官  奥田 真丈君         農林省食品流通         局長      森  整治君         通商産業省通商         政策局長    和田 敏信君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁次長     熊谷 善二君         資源エネルギー         庁石油部精製流         通課長     松村 克之君         中小企業庁次長 小山  実君         運輸省船舶局長 内田  守君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 杉浦 喬也君         労働省職業安定         局雇用政策課長 小粥 義朗君         日本国有鉄道新         幹線総合計画部         長       鈴木 秀昭君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 九月二十七日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     安里積千代君 十月四日  辞任         補欠選任   安里積千代君     玉置 一徳君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 熊谷次長にお尋ねをしますが、液化石油ガス産気率の問題でたいへん混乱をしているようですが、この産気率は確定しておったのではないかと思うのですが、そこのあたり事情はいかがですか。
  4. 熊谷善二

    熊谷説明員 産気率問題につきましては、標準価格を決定しました際に、各地域におきます温度その他の差がございますので、各県知事実行段階におきまして、それぞれ地域産気率を定めていたわけでございますが、この産気率地域ごとかなり差がございます。そのことによります若干の混乱もございましたので、私どもとしましては、かねてから検討いたしておりましたのですが、今年の八月に産気率問題につきましての学識経験者等を集めまして、適正な産気率算定方式につきましての審議をいたしまして、その答申に基づきまして、全国四つブロックに分けまして、それぞれの産気率を新たに定めました。それに従いまして現在通達出して実行しておるわけでございます。したがいまして、地域によりましては従来の産気率と若干差が出ておるというところがあると存じます。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 私の記憶するところだと、昭和四十八年二月一日からLPガスメーター販売をするようになったとき、当然のことでありますけれども産気率を想定をしてメーター料金を定めた、そして取引をしておったと思うのです。その産気率LPガス十キログラムに対して四・二ないし四・五立方メートルとして全国的に実施されていたのではないかと思うのですが、いま次長からお答えになった最近の産気率の問題で混乱——全国四つに分けて産気率を定めたということなんですけれども、前にきめておった産気率を変更しなければならない事情というものはどこにあったのか、前にきめておった産気率というのはどうなるのか、そこらあたり事情を御説明いただきたいと思うのです。
  6. 熊谷善二

    熊谷説明員 本年の標準価格を当初一月にきめました際に、十キログラム当たり千一二百円のLPG標準価格をどういう産気率でやるかということにつきまして、先ほども申し上げましたとおり、地域実態に違いがございますので、通産省といたしましては、理論産気率東京工業試験所におきまして算定をしていただきましたものを行政指導のベースといたしまして、各府県知事に対しまして、その理論産気率を参考にして各地域において妥当な価格を定めるよう指導してまいったわけでございます。  もとより産気率は、温度等によりまして各地域によってかなり違うわけでございますので、それぞれ各県知事が現実の指導といたしまして、四・五あるいは四・八前後のそれぞれの産気率をべースといたしまして指導を行なっていたわけでございます。そのこと自体は各知事にまかせてあったわけでございますが、この地域間のアンバランス等につきましても消費者等からもいろいろな意見を出されておりましたので、私どもとしましてはもう少し本件につきましての統一的な考え方あるいはまた体系的な考え方を出す必要があるということで、先般八月に産気率問題委員会におきましてあらためて審議をいたしました結果先ほど申し上げました四ブロックのそれぞれの産気率算定をいたしまして、それを参酌して各知事が今後指導するように、こういう通達をいたしたわけでございます。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 いまのあなたの御説明では、混乱が起こるのは私は当然だと思うのですよ。理論産気率とおっしゃるのだけれども経済産気率、いわゆる商慣習ということで十キログラムが四・五立方メートル、そういう形で売っておったわけだから、今度四・八二という産気率を出されると、これは問題が起こってくるのは当然なんだ。そうすると、前に消費者なんかも加わって、十数回にわたって検討を加えた結果として産気率というものが出されて、全国的に四・五ということで販売をしておったわけなんだから、それを今度全国ブロックに分けて、四・八二のところもあるだろうし、あるいはそれ以下のところもあるということなんでしょうけれども全国的に四・五という形で販売しておったのを、今度四・八二ということになってくると、これは中小企業にとってはそれだけのマイナスに収入面ではなるわけなんだから、当然問題が起こる。四・八二でなければならない根拠というものはどういうところによっているのかという点が第一点あるのではないかというように私は思うのです。  それから、前の四・五というのは、通産省も認めて販売をしておったわけなんだが、前に確定した四・五というのは間違いであったのかどうか、そこらあたりも十分徹底した形でお示しにならなければ、抵抗が起こってくることは私は当然だろうと思うのです。そこらあたりが、いまのあなたのお答えでは理解ができないわけですね。そこをあなたがよくおわかりにならなければ、課長その他でけっこうですから御説明ください。
  8. 松村克之

    松村説明員 お答えいたします。  いま先生から御指摘がありました点は非常にごもっともな点がございまして、過去において四十七年のころにメーター化といいますか、メーター法制化という問題が起こりましたときに、業界団体それから消費者団体が集まりましてその議論をいろいろとした。そのときに産気率のお話が出まして、当時商習慣としてはどういった数字を使われているかといったようなことも話に出たことは私も存じております。ただ、これはそういった話に出たということでございまして、通産省がそれを指導したとかいったような性格のものでないことは御了承いただけると思うのでございますが、その後それでは一体どういうことがあって四・八二といったようなものになったかという点でございますが、当時からもいろいろと消費者団体の中で四・五といったような数字は過度に低いのではないかというような議論がありまして、これは当時からよく報道関係等でも報道されていた問題でございますけれども消費者団体で実験を行なって、それよりも高い数字を出すとかいろいろな問題があったようでございますが、いずれにいたしましても、その産気率というものは先生も御承知のように温度あるいは高度あるいはまたその扱っておりますプロパン組成等によっても違うものでございます。つまりプロパン分ブタン分の割合によっても違ってくる。そういたしますと、過去におけるプロパンブタン比率と最近の比率の変化といったようなことも織り込みまして、次長からも御説明いたしましたように、今度の標準価格をつくりました機会に、これを正確といいますか、消費者業界納得のいく一つ数字をつくろうということで、消費者団体業界団体それから学識経験者科学者の方もお入りいただきまして検討したわけでございます。  したがいまして、その検討の間におきまして、確かに産気率というのはある面では非常にとらえどころのない面がございまして、たとえば山の上であるとかあるいは局地的に寒いところといったような問題もあるわけでございますけれども、やはり一つ行政としてこれを実施いたしますからには、全国をあまり細分化することは好ましくないということは、これは業界団体も含めたその委員会全会一致ということで、全国四つぐらいのブロックに分けたわけでございます。したがって、長崎県はその一つということになっているわけでございますが、四・八二という数字が適用されているということでございます。  したがいまして、各県なりあるいはその地域によっては、自分のところはこれよりも若干高いあるいは低いという問題はあるわけでございますけれども、あまりそれぞれの特殊事情を言っても行政的には非常に混乱を生じますので、ある程度のブロック化ということで平均化をしたわけでございます。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 通産省が承認をしていたものではないのだと言われるのはおかしい。そんな不見識なことであってはなりませんよ。液化石油ガス法施行規則の附則でもって、自今——自今というのは昭和四十八年二月一日からということなんだけれども、これは重量で売ってはいけない、体積で売りなさい、いわゆるメーター制販売をしなさい、そういうことをあなたのほうは法律において決定したわけなんだ。したがって、そのメーターで売る場合は、重量十キログラムというのは体積で売る場合はどうなるのかということを通産省は当然検討されなければならない。それで検討されたわけなんだ。そして、通産省指導のもとで業界あるいは消費者団体が九カ月間にわたって十数回の検討を加えた結果、四・五という産気率をきめられて、それがいままで実施されてきたわけなんだね。今回また、あらゆる角度から検討された結果、全国四つブロックに分けられて、そうしてほとんどの県が四・八二ということに産気率を改めたということになった。それならば、いままでの四・五というのは間違いであったのだということについて十分納得のいくような説明がなされなければならないわけなんだ。これはエネ庁通達でお出しになったわけでしょうからね。だから、単なる通達出しっぱなしということであってはいけない。いままでの経過はこういうことであったけれども、これをそのままで押し通していくことは適当ではないのだ、これは四ブロックに分けるけれども、大半は四・八二ということになるのだというように、納得のいくような説明をしてこれを実施していくということでなければいけないと私は思う。いままでのは通産省は承認していなかったのだ、今度はエネ庁長官通達なんだからこれを守りなさい、そういう官僚独善的な一方的なやり方というものでは当然混乱をしてくるということになる。それではいけないと私は思う。いまあなたの答弁では、これはきわめて不見識な答弁ということに私はなると思う。そんなあいまいな行政指導であってはならないと私は思いますよ。いかがですか。時間の関係がありますから、端的にお答えください。
  10. 熊谷善二

    熊谷説明員 先生指摘のとおり、従来産気率問題につきましてはいろいろな経緯がございまして、私ども、そういった経緯を踏まえまして、産気率問題委員会におきまして結論出しまして、通達出したわけでございますが、もとより一片通達でことが足りるとは毛頭考えておりません。長崎県知事を通じまして、さらにまた私ども直接でも、従来の取り扱いの面でのいろいろな御不審の点等々がある場合には、十分その従来の経緯説明し、事情をよく理解していただくことが必要であろうというふうに考えておりますし、また私どもそういうふうにつとめてきたつもりでございますが、なお不備な点がございますれば、今後さらにその点を徹底するように努力いたしたいというふうに考えております。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 私は別に長崎県とは言っていないのに、あなたのほうでは長崎県、長崎県と、ローカル的なことを私が質問しているかのような答弁は迷惑する。そうではない。長崎県も問題があるかもしれないが、その他の県が、かりに通産省エネ庁通達によって四・八二という産気率を実施しておったとしても、納得して実施しておるのかどうか。そうではなくて、あなたのほうの一片通達といういわゆる圧力によって、不満ながらでもそれを実施しているということになってくると問題があるわけです。そういうことがあなたのほうの官僚独善だと私は言うのです。そういう態度はいけない、改めていかなければならないと私は思います。ですから、最後の答弁で、長崎県というのではなくて、全国的に十分納得のいく説明をする。そして消費者もそれから小売り業者メーカーもそういう合意の中で、今後円満に、円滑に、このいわゆる産気率というものが運営されていくようにしてもらいたいということを申し上げておきます。  それから、この液化石油ガス法重量売りを廃止しているわけですね、いま議論しましたように。それを今度は国民生活安定緊急措置法では、重量売りとして標準価格をお出しになったのは、どういうことになるのですか。
  12. 熊谷善二

    熊谷説明員 御指摘のとおり、明年三月までに体積販売という法的な義務づけの中で、私どもが十キログラム当たりという標準価格を設定したわけでございますが、これにつきましては、一つ先ほど議論が出ておりますように、ブロック別産気率といったような問題が、十分な議はまだ経られていないという問題もございまして、またそれに関連しました料金体系の問題につきましても、さらに検討を要する点が多いという問題もございましたので、重量制を採用いたしまして標準価格を決定したわけでございます。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 これはおかしいのだね。あなたのほうが国民生活安定緊急措置法によって標準価格をおきめになる際に、いかに安易なやり方をしたか、いかに不見識なやり方をしておるかということが、こういうことでも立証される。液化石油ガス法で、四十八年の二月一日から重量売りをしてはいけませんよ、メーター売りをしなさい、こういうことを法律でおきめになった。それならば、その後制定されたところの国民生活安定緊急措置法にあっては、これは重量売り標準価格をお出しになるのではなくて、当然立方メートル標準価格をお出しにならなければいけない。みずから法律を提案をして、そして制定をされて、これが実施されているのに対して、その法律を全く無視するような扱いをされたということは、私は問題があると思う。なぜにそういう安易なことをおやりになるのです。重量でお出しになるのではなくて立方メートルでお出しになれば、何も混乱は起こらない。それがあなたのほうではできないはずはない。そういうことをきちっとおやりにならないから混乱が起こる。それはどういうことなんです。
  14. 熊谷善二

    熊谷説明員 お答えいたします。  先生の御指摘の点は、ごもっともの点でございます。ただ、産気率問題というのは、先ほど来申しておりますように、なかなか技術的にむずかしい問題でもございまして、また他方、現実問題としまして、重量売りがなお過半数程度ことしの一月時点におきましては取引もあったかと思っております。そういった実態を踏まえて、重量売りということで標準価格をきめたわけでございますが、私どもとしては、明年の四月以降の問題に対処する必要がございますので、一つ産気率問題委員会におきましての審議結論を得、さらに今後、料金体系の問題も含めまして、明年四月以降の移行の問題について、円滑にこれが移行できますよう、いろいろな問題を今後さらに委員会を設けまして検討をして対処してまいりたい、かように考えているわけでございます。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 明年四月からというのは、それは逃げことばなんだ。よく施行規則をお読みになったらよろしい。現に契約販売をしておるものに対しては、経過措置というものが認めてあるわけだ。そうではないのは、それならばどうするのです。その後開店をして、当時この法律を施行する際には営業をやっていなかった、その後営業を開始した、そういう人に対しては、現に販売をしているということにはならないのだから、経過措置は適用されないことになるではありませんか。そういうあいまいな逃げことばでごまかそうたって、それは無理なんです。そんな不見識なやり方ではだめなんですよ。これはメーカー小売り業者関係だけの問題ではない、消費者にとっても消費者行政ということで重要な行政なんですから。どうするのです。
  16. 熊谷善二

    熊谷説明員 先生指摘のとおりでございます。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 お認めになったので、私は人がいいから、あまり追及はしたくないのだけれども、そういうことではだめなんだよ。混乱が起こるようなことばかりやっているのだね。しかも、あなた方のやっていることは法律違反なんだよ。  次にお尋ねするのだけれども産気率の定め方も私はおかしいのではないかと思うのですね。簡易ガスでは、い号ガスは四・八八ということになっております。都市ガスはこれによって実施しているのでしょう。プロパン業者に対して今度四・八二ということで通達をお出しになったのはどういうことなんですか。ガス質は違わないのですよ。その事情はどうなんです。
  18. 熊谷善二

    熊谷説明員 簡易ガスの場合とそれからLPGにつきましての産気率は、ブロックにおきまして若干差がございますので、いまの御指摘点等で格差が出てまいるかと存じます。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 簡易ガス都市ガス業者だけがやるんじゃないのです。これは七十戸以上はプロパン業者導管供給をやることができる。それはガス事業法によって当然制約を受けるのだ。ところが、都市ガス業者に対してはい号ガスは四・八八ということで実施させているわけなんだ。ろ号は四・六五なんだ。ところが、今度はLP業者に対してはい号ガスは四・八二ということで通達をお出しになったでしょう。一方には四・八八、一方の業者に対しては四・八二、同質のガスを。その違いをどうするのです。
  20. 熊谷善二

    熊谷説明員 LPG産気率につきましては一全国を四ブロックに分けてやっておりまして、第三ブロックが四・八二、まあここに大部分が入るわけでございます。簡易ガスのほうにつきましては、やはりブロックをつくっておりますが、これは三ブロック全国やっておりまして、この点ブロックの数の違い等があるわけでございます。私どもとしましては、全国別にできるだけ実態に沿うものにしたい、こういうことで産気率問題委員会におきまして検討をし、結論を得ましたので、これに従って四ブロックごと産気率算定しまして、その結果簡易ガスのほうのブロックとの差がまだ調整されていない現状になっておるわけでございます。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 答弁にならないのだ。同じブロックに対して、都市ガス業者に対しては四・八八でやらす。そして今度は、LP業者に対しては四・八二ということで通達出しているのだから——ブロックか違えば別ですよ、同じブロックで私が指摘したような扱いをやっているじゃありませんか。そんなごまかしな説明ではだめなんです。  もっと言いましょうか。あなたのほうではこの矛盾をつかれて、四・八八ということにされたならば、プロパン業者は、あなた方は損をするでしょうということ、そういう不見識なことばすら言っているじゃないか。そんな消費者をばかにした、またそういう不見識な行政があってよろしいはずがない。だめなんだ、そういうことは。間違いなら間違いだ、だから、これは改めるなら改めるということできちっと答弁をされればよろしい。そういう筋の通らないような答弁でここを言いのがれさえすればいいという答弁態度はよろしくない。
  22. 熊谷善二

    熊谷説明員 簡易ガスの場合のい号ろ号の区別といった問題、こちらはその差別をいたしておりませんが、この問題を含めまして、簡易ガスLPGの場合の実質的な関連性ということにかんがみまして、必要な調整について検討いたしたいと考えます。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 いまの点はきちっとしてください。そうしなければ消費者が迷惑します。相手から文句が起こるかもしれない。四・五という産気率でいままで販売をしておったのを一挙に四・八二に今度は変更した。都市ガス業者には四・八八で売らしているから、その差か若干——LP業者に対しては四・八二ということにしたほうが、これを説得するのに説得しやすいというような、そういう安直な不見識なことでやったのではないかとも考えられるのだけれども、そういう行政は許されてはなりません。消費者のことをよく考えて行政というものは運営をしていくものでなければならない。  次にお尋ねしますが、品質産気率が違っている。プロパン分は、いま私が申し上げたことと関連をしてくるのですけれども、この品質が悪ければ産気率というのは低く出るわけですね。いわゆるブタン分が多ければ産気率は低く出る。プロパン分が多ければ産気率は高くなる。そうなってくると、当然プロパン分が何%、ブタン分が何%入っているというその品質表示というものが私はなされなければいけないと思う。ところが、メーカーに対しては品質表示というものは求められていないわけです。なぜメーカーに対して品質表示をさせないのです。
  24. 熊谷善二

    熊谷説明員 先生指摘のとおり、先ほど議論の出ておりますLPGの四・八二という大多数の府県基準産気率は、プロパン組成が八六%ということで計算が出ておりますので、このガス組成につきましての表示についてはたいへん重要な問題であるというふうに承知をいたしております。い号ろ号の区別につきましてはこの表示をするように指導をいたしておるわけでございます。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 そういうあいまいなことではだめなんですよ。法律によって、重量売りではだめなんだよ、今度は体積で売りなさいよ、産気率はこうだよということで、あなたのほうは法律に基づいて通達をお出しになったわけなんだから、それならば当然その品質が悪ければ、ブタン分が多ければ産気率は低くなる。プロパン分が多ければ産気率は高くなるわけだから、メーカーに対してブタン分は何%であり、プロパン分は何%だという表示をまず義務づける。そうしなければ、今度はブタン分が非常に多かった、産気率は低く出た、これでは損をすると小売り業者が考えれば、小売り業者はあなたのほうで通達でお出しになった産気率販売をしないで、十キロボンベの重量売りをすることになるのだ。だから、採算がとれないから法律を無視せざるを得ないようになる。指導するというものではない。一方を法律でやらせるのだったならば、メーカー法律できちっとそれを規制をしていくというやり方でなければいけない。筋が通らない。現実にはその法律は守られないということになる。その関係はどうするのです。
  26. 熊谷善二

    熊谷説明員 現在、省令によりまして先ほど申しましたように、い号ろ号、は号ということで表示をするということになっておるわけでございますが、先ほど申し上げておりますように、さらにこまかい、たとえば八〇%以上ということではなしに、八六%とかそういった形でのこまかい表示をするかどうかという問題につきましては、これは消費者に対する影響等もございますので、先般来の産気率問題委員会におきましても実は議論が出たわけでございますが、まだ成案を得るに至っておりませんので、今後その点につきましては、消費者の立場も考え、さらに引き続き検討いたしまして結論出したいと考えております。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 実際はメーカー品質表示をしなさいと言って、突っぱねられたのでしょう。それが真相でしょう。それほどあなたのほうはメーカーには弱いんだ、大企業には。  考えてごらんなさい。メーカー重量で売るのですよ。小売りには重量で売ってはいけない、体積で売りなさいといって法律に基づいて通達出したのですよ。しかし、それではメーカー重量で売らないで体積で売ることができるのかということになってくると、そうはいかないんだな。メーカーにはそうさせるわけにはいかない。やはり重量でやる以外にはないわけなんだ。それは私も認める。それならば、品質表示をさせるということは当然でなければならぬ。本来ならばメーカーにも体積で売らせる、小売りにも体積で売らせる、こうならなければ、これは一貫した行政ということにはならない。しかし、現実にはメーカーはどうしても重量で売らざるを得ないということになるのでしょう。それならば、最低これだけは守らせなければならないということは品質の表示だということなんだ。それをやらせないで、小売りに対してだけそれを責める。実施しなさいということをやかましく言う。ところが、小売りは、メーカー品質表示をしてくれないからどうも中身が、品質が非常に悪いものを売られる。産気率が出ない。メーター売りをしたんでは採算がとれないからといって、実際は十キロボンベを持っていって、あるいは五十キロボンベを持っていって、そしてそれの代価をとっておるということが現実なんだ。いかにあなたのほうのやり方があいまいかということはもうはっきりしている。それは消費者行政も何もあったものではない。——いま大臣が見えられたんだけれども、これは大臣に初めから聞かせなければいけなかったと思う。たいへん残念だけれども……。そんなあいまいな行政ではだめなんです。どうするのですか。
  28. 濱野清吾

    濱野委員長 いつまで応答をしてもしょうがないんだが、熊谷次長、だれが聞いてもこんな矛盾した行政はありませんからね。あるいは法令を無視するがごとき、あるいは軽視するがごとき、君たちが自分の便宜で独善の行政をするからこういうことになってくると思うのですよ。これは改めるようにして、どうですか、大体それでお話ししたら。だれが聞いたってこんなばかなことはできませんよ。だから、法律軽視のような政令を出してみたりなにか、いままで間違ったことは改めていく、どうですか。あなたは全く答弁になっていないもの。あらためて答弁してください。
  29. 熊谷善二

    熊谷説明員 お答えいたします。  先ほど来の先生の御指摘の諸点につきまして、私どもとしてはさっそく十分検討をいたしまして善処いたしたい、かように考えています。
  30. 中村重光

    中村(重)委員 お役所の答弁としてはそれ以上の答弁はできないんだろうけれども、悪うございました、さっそく改めますと、こういう答弁でないといけないんだ。ともかくあなたのほうのやり方メーカー保護、小売りと消費者いじめの行政だということだけははっきり申し上げておく。  それから、千五百円の標準価格というのは適当だと思われますか。
  31. 熊谷善二

    熊谷説明員 千五百円の標準価格につきましては、私ども、輸入のLPG価格、原価が従来のトン当たり七十ドル程度から百十ドル程度まで上がりましたその事実に基づきまして、その部分のコストアップを認め、千五百円といたしたわけでございまして、私どもとしましては、その千五百円の価格は適正な価格である、そういうふうに考えております。
  32. 中村重光

    中村(重)委員 実勢価格は平均どのくらいですか。
  33. 熊谷善二

    熊谷説明員 実勢価格は大体千五百円程度になっているものと承知しております。
  34. 中村重光

    中村(重)委員 ほんとうにあいまいなんだね。ぼくのほうはずいぶん調査をしたんだよ。実勢価格は平均千三百円ぐらいだ。ところがあなたのほうは、標準価格を千五百円とおきめになったものだから、あなたのほうの決定に従って各県は千五百円で売りなさいと、こう指導している。しかし、業者は千五百円で売らないで、千二百円で売ってみたり千三百円で売ってみたり、あるいは千四百円というところもある。千五百円というのはほとんどない。これが現実なんだ。まさに通産省がお出しになる——これは経済企画庁との話し合いによってお出しになったんだけれども通産省がお出しになる千五百円というのは、これはもう高値安定ということになっている。こういうことだから、中曽根通産大臣から参議院の商工委員会で、灯油の標準価格をきめることは高値安定になるから、当分市場の自由な販売をやらせたいというような答弁が出ておるようだけれども、あとでお尋ねしたいと考えているんだけれどもそこらあたりをあなた方よりも通産大臣のほうが先に知ったのかもしれない。それが現実なんでしょう。あなた方のほうは、自分の定めた法律だとか行政指導だとかというようなものに都合のいいように、委員会等で追及された場合、答弁をするのに都合のいいような資料ばかり集めて答弁しようとしている。私どもは直接業者あるいは消費者をいろいろと調査をして申し上げているわけなんだから、それが現実なんです。どうするんです、これは。
  35. 熊谷善二

    熊谷説明員 先生御承知のように、標準価格は標準的な取引態様におきます最高価格でございまして、私どもとしましては、できるだけこの標準価格以下の価格で売るようにという指導をやっておるわけでございます。市場の状況につきましては、そのときどきの需給の影響も出てくる点もあろうと思いますが、私どもとしましては、全国的なベースとしてこの千五百円を最高といたしまして、できるだけ低い価格消費者に提供されるよう今日まで指導しているわけでございます。
  36. 中村重光

    中村(重)委員 なるほど標準価格は千五百円以内ということになっている。ところが、あなた方の先入主の中では、千五百円というような標準価格を出すとそれ以上になるというように思われたのかもしれないんだけれども、ともかく千五百円で売りなさいといって、あなたのほうがそういう指導をしろということで各県に対して通達をお出しになったのか、あるいはそういう指導をしているのか知らないんだけれども、各県は、千五百円で売りなさいと、こう指導をしているわけだよ。だけれども業者は千五百円では売ることができなくて、それを割って、先ほど申し上げたように千三百円程度で売っているわけだ。千五百円で売っているところが全然ないとは私は申し上げませんけれども、私の調査をしている限りにおいては平均千三百円程度だということを申し上げておきます。  次にお尋ねをしますが、家庭用と工業用との価格が同じでなければならないのにもかかわらず、メーカーの仕切り価格というのが、家庭用が七円高くなっているのはどういうことなのか。その点どうなんです。
  37. 熊谷善二

    熊谷説明員 家庭用と工業用につきましては、ガス組成に差がございまして、工業用の場合にはブタンが多いということが価格の差の原因になっているかと思います。
  38. 中村重光

    中村(重)委員 FOBの価格は、工業用と家庭用と輸入価格は違いますか。
  39. 熊谷善二

    熊谷説明員 輸入の場合には、プロパン・プロパーで入ってくるようなものもございますし、またブタンで入ってくるものもございます。またミックスして入ってくるもの、いろんなケースが実はあるわけでございまして、今回の千五百円の標準価格におきます元売り仕切り価格は、従来十キログラム当たり三百五十円を指導価格として考えていたわけでございますが、これを四百七十円というふうに百二十円のアップを認めまして、そういう価格で現在指導をいたしております。
  40. 中村重光

    中村(重)委員 工業用はお答えのようにブタン、家庭用はプロパン主体のブタン、ところが私が申し上げたいのは、消費者行政というのが非常に重要になってきたわけなんだよ。特に家庭用の場合にそのことが私はウエートとしては高いと思っている。通産省行政の中でもそうならなければいけない。かつては——かつてはというよりはいままでは、工業用と家庭用との差は二円であったのだ。ところが、今度は五円引き上げて工業用と家庭用の差を七円ということにして、家庭用を高くするようにした。FOB価格は大体同じなんだよ、これは。それならば、工業用と家庭用というのはそう差をつけさせないというような方向であるべきなのにもかかわらず、いままで二円であったのを七円にして家庭用を引き上げたということは、これは何としても納得できない。どうしてそういうことをするんです。
  41. 熊谷善二

    熊谷説明員 現在、工業用のLPG価格につきましては自由にいたしておりまして、市場価格ということで市場の実勢にゆだねておるわけでございます。したがいまして、今日のように工業用の、需要が比較的沈滞をしておるときの状況におきましては価格がなかなか上がらない、こういった面もございます。  私どもとしましては、この工業用と家庭用の差は、基本的には先ほど来御指摘のありますように組成の違いということでございますが、この間に不当な値開きが出るというようなことは、もとより消費者にとってマイナスになるような不当な値幅が出てまいるというようなことについては問題があろうと考えておりますので、その辺の差があまりに大きくなるという問題につきましては、今後検討いたしまして、要すれば調整も行ないたいと考えておりますが、基本的には工業用のLPG価格は現在自由にいたしておるということによりまして、市場の実勢等を反映して価格差が縮まったり開いたりするということが現在の体制ではあるというわけでございますので、今後情勢をその点よく注視してまいりたいというように考えております。
  42. 中村重光

    中村(重)委員 現実に目をつむってはだめなんだよ。そうでしょう。工業用は自由にしている。ところが、メーカー、卸、小売り、それから消費者販売される、そういう経路において私がいま申し上げたようになっているわけなんだ。家庭用にしわ寄せされていることは事実なんだから、それを目をつむって、工業用は自由にしているんだから、そういうことを指導していることばないんだからというような言い方は適当ではない。やはり消費者を守っていかなければならない、消費者行政というものに重点を置いていかなければならないという考え方の上に立つならば、現実に私が指摘をしたようなことになっているわけだから、かつては二円の値開きであったものがいま七円の値開きになって家庭用にしわ寄せをされているというこの事実の上に立って、そういうことがないように指導していくことが正しい消費者行政ではありませんか。そういうことをしようとしないで、いや工業用は自由にしているんだからというような言い方では、これはあなた方がほんとうに消費者行政というものに真剣に取り組んでいこうとする考え方がないということを立証していることになりますよ。だめです、そういうことでは。私が指摘をしたようなことば事実なんだから、これを是正をする、させる考え方がありますか。
  43. 熊谷善二

    熊谷説明員 私どもは、もとより消費者の立場に立って十分行政を行なっていくことが必要だと考えておりますので、いま御指摘の点につきましては、今後十分精査をいたしまして、いやしくも消費者等へのしわ寄せといったようなことがないように十分指導してまいりたいと考えます。
  44. 中村重光

    中村(重)委員 もう時間がわずかしかありませんから、きょう通産大臣に「むつ」問題を中心にいたしまして原子力問題今後の原子力発電所の設置の問題にどう対処していくかということについてお尋ねをしたかったわけですが、残念ですけれども、また同僚議員からも質問がございましょうし、私も問題が残ればあらためて質問いたしたいと考えます。  灯油の問題について、参議院商工委員会で、大臣は、標準価格をきめないで自由価格という形でやらせたい、それは高値安定になるからということをおっしゃっておられる。先ほど申し上げたように、プロパンの場合を見てみると、確かに標準価格が高値安定ということになっているという点からいたしますと、通産大臣の参議院商工委員会における答弁には私は抵抗を感じないのです。ところが、北海道、東北方面については、これは生活必需品であるから特別の指導をしなければならぬとおっしゃっておられるのだけれども、その真意がどういうことなのか、それらの地域に対しては特に標準価格をそこだけきめるというわけではないのでしょうから、どういったことで対処しようとお考えになっていらっしゃるのか。  それから価格の問題それから今度需要期に入ってまいりまして量的な見通しの問題等々についてお答えをいただきたいのと、それからプロパンの問題を中心に大臣が御出席になられてからも二、三質疑をいたしましたし、委員長からもあるいはお聞きになったかもしれませんが、その点についても通産省行政のあり方という点から今後どう対処していくのかということをあわせてお答えをいただきたいと思います。
  45. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず、プロパン産気率の問題につきましては、先生との応答を私もよく調査いたしまして、もし通産省側のやり方に適正でないものがあればすみやかに改めるようにいたします。  それから、灯油の問題でございますが、灯油の備蓄はことしの春からいろいろ努力いたしまして六百万キロリットルぐらいになりまして、昨年の九月末が五百五十万キロリットルぐらいでありましたから、かなり備蓄は進んだわけであります。  それで、値段をどうするかということでございますが、私ら初め標準価格をきめる必要があろうと考えておりました。現在、きめないときめたわけではないのです。きめるかきめないか、あるいは行政指導という形でやるか、その辺はいま情勢を見守っておるということでありまして、従来標準価格をきめようと思っておったことをいま検討しておる、そういう段階であります。と申しますのは、標準価格という形でやりますと、原価計算とかいろいろ問題になります。物の値がきまるときには、先生御承知のように、ある場合にはコスト計算できまる、また他のある場合には需給関係できまる。最近の情勢を見ますと、コスト計算で標準価格というような形でやる場合には、産油国側のいろいろないままでの値上げの情勢あるいは賃金のアップあるいは為替の変動率、そういうものを考えてみますと、かなり強いものが出てくるということも一面において考えられます。それを相当きびしく査定いたしました場合にどういう結果になるであろうか。ところが、一方におきまして灯油はいまのように六百万キロリットルも出てきておりますから、各地によって非常なばらつきがございます。いわゆる北高南低と私は言っておりますが、九州や沖繩のほうはまだ安い、しかし北海道、東北は高くなっておる。標準価格という場合には全国価格でありますから大体ある線で全国的にきめざるを得ない。そうした場合に北海道と九州方面との落差がまだ非常に強いという状況では、非常にむずかしい情勢でもあります。そういうことも考えてみますと、いまは灯油はかなり在庫があるものですから、在庫の圧力によってよう上げ切れぬという要素もあるわけです。こういう情勢であるならば、競争を思い切って激烈にやらして、そして値上げの力を防いでいくというほうがいまの情勢では賢明ではないか、そういう気持ちがいたしまして情勢を見守っておるという態度をとっておるわけであります。  北海道、東北の多消費地につきましては、これはわれわれも考えなければならぬところであると思っておりまして、一番簡単にやれると思いますことは、大量消費でございますからドラムかんで使っておる。ドラムかんで一冬十本ぐらい使う。二キロぐらいはみんな使う。そういうことでありますが、ドラムかんで運ぶ場合には大量に運べるわけですから値が下がっていいわけである。十八リットル一かん持ってくるのとは様子が違ってくるわけです。そういう面でいま生協等とネゴシエーションをやっております。そういう大量取引というものを基準に頭に置きながら値段というものを考えてみたらどうか、あるいはそのほかの行政指導やり方が別にまた考えられはしないか等々ということをいま北海道、東北につきましては検討しておる状態でございます。ただ、あんまりこれを安くきめ過ぎるというと、資本主義自由経済のもとですから、工業用灯油にかわっちまったり、あるいは高いほうにどんどん回って大事な北海道、東北のほうに出回りが悪くなって、それがまたやみ値その他を生んで高くなるという危険性もございます。そういうことも考えつつ、順調に出回りながらしかも北海道、東北については行政の配慮を示したという措置をとりたいと思っていま検討しておるというところでございます。
  46. 中村重光

    中村(重)委員 あと三、四分ありますから、一点だけお尋ねしますが、この「むつ」問題による一原子力政策をこれから進める上についての教訓と申しますか、かつての原子力委員でありました田島教授が提言をいたしておりますのは、閣僚が、国務大臣が原子力委員長を兼務するということは適当ではない、いまの政府が進めている原子力政策というものの矛盾が一挙にふき出したのが「むつ」問題である、組織の問題、いま進めておる研究体制の問題それから原子力委員の構成の問題、そしてただいま申し上げました委員長の兼務の問題等々を含めての提言があるわけですが、今後原子力発電所が依然としてエネルギーの中核であるという考え方はお変えにならないのであろうと思うのですが、その教訓、これから進めていく上についてのあなたの考え方、私が申し上げましたようないろんな点を含めてひとつお答えをいただきたい。
  47. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 「むつ」問題につきましては、三つの点でわれわれは大きな教訓をいただいたと思います。一つは、原子力の安全性に関して国民の皆さま方に非常に根強い不信感があって、これを払拭しない限り原子力政策は円満に推進されない、そういう点で現体制がここでかなり強く再検討さるべきであろうということ。それから第二は、現地の、現場の取り扱いやり方について必ずしも適切でなかったものがあるのではないか。そういう行政上の取り扱いについてまた反省しなければならぬ点があるのではないかと私は新聞等を見て感じておりました。両方ともこれは将来改める必要があると思っております。  その中で、第一の安全性の問題につきましては、これは原子力委員会の内部におきましてもそういう自己批判がありまして、いろいろ提言等も行なわれておったのでありますが、この機会に改むべきことは改めたらいいと思っております。それは安全性の点検という面についてやはり客観的な、国民が信頼するに足るような措置あるいは審議の過程というものをつくれる場所を考えたらどうか。それは公取的な行政委員会がいいのか、あるいはその中で委員長は国務大臣をもってしておるのがいいのか、これは今後検討にまつべきところが多いと思いますけれども、いまのようなあり方自体はやはりある程度この際検討してしかるべきではないか、そういうように思います。そういうこと等も考えてみて、これは原子力行政のあり方について学識経験者、主として第三者の高い見識、経験を持っている人たちの意見をかりて、第三者のそういう意見を政府・与党がこれを採択して、そして客観的に処理していくということが賢明ではないか。そういうような、いまのあり方を検討するしかるべき機関というものがあるいは必要であるかもしれない。もしそれが必要である場合には、そういう客観的な機関をつくって、いままでの政府のあり方を政府側は自己批判の意味をもって点検してもらい、その成果を得てそれを実行に移していくということが国民の信頼を得るゆえんではないか。これは船につきましてもあるいは原子力発電につきましてもあるいはそのほかの原子力研究につきましても点検してもらうことがこの機会に適切ではないか、そういうように私は思っております。  なお、通産省の問題といたしましては、いま公益事業部の中で原子力発電のことを取り扱っておりますけれども、具体的な作業としては通産省の作業が最も臨床的にあるわけであります。技術的に安全性を確保するという面から、通産省もその分野を責任を持って引き受けなければなりませんので、これは炉の具体的な運転に至るまでのあるいは運転中の過程について厳重にチェックして、いやが上にも技術的にも安全であるという面をさらにわれわれは確認する増強措置が必要である、そう思います。そういう意味から公益事業部の中から原子力部というものを独立させて、そうしてそういう質的充実も行なうという考え方を持っておりまして、できるだけ早期に実行していきたい、そう思っております。
  48. 濱野清吾

    濱野委員長 稻村君。
  49. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員 きょうは主として繊維問題についてお伺いしたいと思いますが、御承知のように繊維産業は戦後最大の不況を迎えております。特に地域産業でございまして、地方財政にきわめて大きな影響をもたらすということばかりか、経済的にも政治的にも大きな不安がつのりつつあるわけであります。そういう意味で緊急を要する、こういう意味から三つの問題について大臣並びに通産当局にひとつ明確に、もう時期が迫ってきておりますのでお答えをいただきたいと思います。金融問題それから輸入問題それから共同廃棄問題、大体この三つに分けてお伺いをしたいと思います。  まず、大臣にお伺いをしたいのでございますが、今度の不況はもうすでに事務当局から大臣のお耳に入っておると思いますが、予想以上の不況である。こういう意味から、過去、年度末あるいはまた四−六あるいは七−九、これから十先、こういうことの金融に入るわけでございますが、今度の不況というのはいろいろな理由がございましょうが、やはり業界自体にも自粛していただかなければならぬところがあると思います。たとえば四十六年、四十七年、四十八年と、この好況の中で増産に次ぐ増産、特にメーカーそれから商社は、この際ひとつもうかるからうんと買い込んでおけ、こういうような関係からいままでの輸出国が輸入国にかわるような二千億以上の輸入超過をしておる、こういうような関係から国内には相当の物資がいまあるわけであります。過剰な繊維製品が山積みになっておる、こういう現状であります。その上に、政策的に総需要抑制と金融引き締め、こういった形から買い控えをしておる、こういう関係から幾つかの問題が重なりまして、戦後最大と申しましょうか、三回目、その中でも過去の不況と違った意味の不況がいま来ておるわけであります。  そこで、まずこれの一応の切り抜け策としては、あとで輸入問題について触れてみたいと思いますが、やはり金融問題がどうしても大事なように思うわけであります。そこで、この危機脱出には、何としてもやはり減産体制、まあ自主減産と申しましょうか、あるいはまた秩序ある輸入の調整こういったものにはいろいろ手段を尽くしていかなきゃならぬと思いますが、減産資金、それから在庫の凍結資金、それから年末融資という問題は通常に上のせをしてということになりますが、減産、在庫の凍結資金というものをどうしてもやはりこの際は別ワクで考えていただかないと、この危機はなかなか脱出をし切れない、こういうように思うわけでございますが、減産資金並びにその在庫の凍結資金、この繊維ということに限ってであります、別ワクでこういったことをお考えになられるか。お考えということよりか、むしろこれをぜひやっていただきたいと思いますが、大臣のお考えをまず最初にお伺いしたいと思います。
  50. 橋本利一

    ○橋本説明員 ただいま御指摘の減産資金、在庫資金等につきましては、従来からも中小三金融機関を主といたしまして、さらにあるいは民間金融機関の中小企業向け特別融資の資金を活用いたしまして、繊維には重点的に資金配分をいたしておるつもりでございます。ただ、そういった資金の運用にあたりまして、繊維に対して特別ワクを設定してはいかがかという御趣旨でございますが、いままでもある程度のメルクマールとしてはワクを設定しておる、ワクと申しますか、可能な限りの数字を申し上げておったわけでございますが、本来的にはやはり三機関の運用にあたりましては業種別にワクを設定するということではなく、むしろ重点業種に指導のポイントを置いていく、かようなやり方になっておるわけでございますので、当面、年末融資についてもどの程度の追加財投を行なうかということを中小企業庁を通じて大蔵省と折衝中でございますが、これにつきましてもやはりワクということの設定はなかなかむずかしいかと思いますが、繊維が現在置かれている不況の状況等からいたしまして、最重点業種として従来以上に指導を強化してまいりたい、かように考えております。
  51. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ことしの三月以降、政府系三機関及び民間金融のワク内で繊維に対するある程度のワクのようなものをつくりまして、そのころだけでもすでに二千五百億円程度のワクをつくりました。その中にはたしか三百億円ばかりは民間市中金融のものも入っておりました。しかるところ、最近は繊維のみならず不動産もそうでありますし、あるいは自動車の下請もそうでありますし、木材や合板に至るまで非常に浸透してきたわけでございます。  そういうわけで、この十二月の年末決済というものが相当大事であると思いますので、去年は約三千四百億円のワクの増高を行なったわけですが、ことしはそれをさらに相当大幅に上回るものを大蔵省からいただきたいと思って、いまいろいろ準備を進めておるところであります。このワクの中におきまして、いまの不況の浸透度合いや滞貨の状況等も考えまして、業種別の大体の見当をつけまして指導はしていきたいと思っておりますが、それを外に公表してやるというようなことはこの際むしろ控えたほうが適当ではないか、そう思っております。
  52. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員 了解をいたしましたが、ただ問題は、今度常識で考えて、昨年の比率から見まするならば、いままでの繰り上げ等々を穴埋めをするということになりますと、大体七千九百億円くらいに中小企業全般でなるわけです。そこで、私が別ワクと申しますのは、やはりこの減産あるいは在庫凍結というのは繊維業界全般にたいへん大きな影響をもたらすわけです。たとえば国際信用をここまで回復してきたものが、国外にダンピングをして国際信用を失う、こういったいろいろな面がございますので、別ワクということは、活字にはならなくてもそういう考え方で作業を進めていただけるという、こういうことで確認をしておきたいと思いますが、この点について橋本局長にお願いしたいと思います。
  53. 橋本利一

    ○橋本説明員 まさに御指摘のような方向に即応して対処していきたいと思います。
  54. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員 今度の金融問題ですが、わりあいに日本の繊維産業というのは零細過多性ということでございまして、年末の金融については特に生活金融という意味で、また工賃ということよりか、四割、ひどいところになると五割減産ということですから、もう事業の運営ということよりかむしろ生活という問題にかかってきているわけでございますから、生活金融ということは政府機関にはいうわけにはまいりませんが、零細企業に対して特に配慮をする、こういったことは過去においても零細企業にはたいへんに配慮をしてまいったわけでございますから、今回の年度末資金では特にひとつこれはその中ということよりか、ある程度分けていただいて、零細の末端にまでもこの金融がきめこまかく行き届く配慮をぜひしていただきたい。特にまたこの中堅企業——中堅企業ということばがいいのかどうか知りませんが、繊維は特殊な状態でございまして、やはり中堅企業というものをここで育成をしなければ仮需要が起きてこないと思います。そういう意味から政府三行でも、こういった金融については中小企業の問題から、定義からいきまして、こういった中堅企業にはなかなか配慮をする余地がないのでございますが、この中堅企業への融資の道ということは、繊維業界は川上から川下までと他の産業とは相当異なった業種であります。そういう意味から、この中堅企業に対する一つの金融の道を開く、こういった形について橋本局長にぜひひとつ考え方を明確に答えていただきたい、こういうふうに思うわけです。
  55. 橋本利一

    ○橋本説明員 まず、零細金融でございますが、これにつきましては、年末金融の作業にあたりまして国民金融公庫に重点を置くべき問題かと思います。また、ことしの五月に信用保険ワクが拡大されておりますので、そういった意味合いからも零細金融は従来以上に手厚く対処し得るものと考えております。  それから、中堅企業と申しますか、いわゆる資本金、従業員の規模等から中小企業の範囲に入らないがために政府関係の三金融機関の対象になり得ない企業に対しましては、かねがね私のほうといたしましても腐心いたしておりまして、たとえば日銀あるいは大蔵省等にも協力を要請いたしております。これはそういった中小企業金融機関の対象にならないというだけではなく、そういったグループの資金対策を十分講じていきませんと、せっかく三金融機関を通じて中小零細対策を進めておりましても、言うところの繊維産業の産地性等から連鎖反応が起こってくるといった問題もございます。したがいまして、非中小企業に対しましては、中小三機関による中小金融を補完し、かつさらにこれを効率あらしめるためにも必要がある、そういう考え方をとっておりますので、そういう立場からそれぞれの関係のところに、民間金融機関等において中堅企業の資金のめんどうをよく見るように、あわせて日銀当局もさような方向で指導してもらいたいということでかねがね要請を続けておるところでございますので、その方向で対処してまいりたいと考えております。
  56. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員 そこで、確認をしておきますが、その方向で交渉を続けております、こう言われておりますが、わりあいに緊急を要する、こういうような意味から、いまここで具体的な問題を追及しようと思いませんが、これはまあ今年の三月ごろからそういう形で実は進めておることも私も承知しております。そういう意味で、具体的な数字であるとか具体的な詰めということについてはここで申し上げませんが、もう少し進んで、これは先ほど申し上げましたようにたいへん地域産業である、地方財政にも大きく影響を来たす、特に社会不安、こういったことが増大している時期でございますから、この辺、中堅企業育成ということは先ほども申し上げましたようにたいへん大きな役割りを果たしております。そういった意味から、ここで中堅企業が大きな被害を受けるということになりますとこれはたいへん大きな混乱が起きてまいります。そういう意味からなかなか答弁はむずかしいと思いますが、もう一歩だけ進んで、実は額は申し上げられないけれども、こういう形でその方向で進むことができると思います等々の話をひとつお伺いしたいと思いますが、御意見をちょうだいしたいと思います。
  57. 橋本利一

    ○橋本説明員 事柄の性格上、なかなか具体的に申し上げづらいのでございますが、さような中堅企業の対象業種として典型的なものは、染色業界における二十数社あるいは毛紡、綿紡等における二十数社、さらには一部コンバーターと申しますか、製造問屋、産元商社といったもの、これがやはり数百、中には千以上の関係下請企業をかかえておるといったような事情もございますので、そういった業種に属するものであって資本金一億から五億、中には十億くらいのものもあるかもしれませんが、大体これは確定的に申し上げるわけにしまいりませんが、そういった範囲の企業に対しまして、特にこれは地方銀行の取引対象になっているものが多いと思います。特に地方銀行であるだけに、産地性の強い繊維産業といたしましては特定の銀行に集中して資金需要が出てくる、しかも一般的な金融引き締め下にあって資金需要に応じたくとも応じ得ないというのが地方銀行、特に繊維の産地にある地方銀行の特性かと思います。そういったものにつきまして、私たちといたしましては、日銀でも十分めんどうを見てもらいたい、これに対しまして日銀として特定のワクを設定するわけにはまいらないが、個別銀行の実情に応じてそれをカバーしていきたい、かような見解を示しておるわけでございます。
  58. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員 時間の関係もございますので、金融問題についてはこれで終わりたいと思います。  次に、この輸入についてお伺いをしてみたいと思います。繊維産業の将来を考えてみますと、やはり金融問題ということだけで解決ができるものではありません。特にこの危機脱出は一時的なつなぎのものであって、やはり何としても政策的なものが必要でないか、こう考えるわけであります。そこで、四十八年輸入三十九億ドル、それから輸出三十二億ドル、七億ドル超過ということでございます。それから一−六にいたしましても二十二億ドルというものがこの滞貨物資のある中で輸入をされておるわけでございます。その後いろいろ秩序ある調整、こういった形で通産当局はたいへんな呼びかけをされまして、六−八においては相当輸入の減少が見られておるわけでございますが、ややもするとこれがやはり買い控えからくるものであって、ここでまた景気が回復をしますとどっと流れ込むという可能性があるような気がしてならぬわけであります。そこで、長期的な面についてこれをどういうふうに考えておられるかということがまず第一点。  原料その他工賃が相当ここでダウンをしておるにもかかわらず、末端価格というものが依然として高い。やはりこの取引問題についても通産当局で大きなメスを入れていただかなければ、特に中間搾取と申しましょうか、繊維業界は特にふくそうしておるわけです。複雑怪奇である。これは昔からいわれておるわけでございますが、いまだにこの問題が解決をされない。まことに消費者に対しても、また末端の生産者に対しても、中間問題のふくそうがたいへん大きなガンになっておる。こういう問題は、この時期においてやはり原点に立ち返って解決をしなければ、将来の日本の繊維産業というものは国際競争の中で勝ち抜くということはできないのではないか、私はこう思いますので、時間がたいへん短いわけでございますが、この点についてひとつ局長に簡単にお答えをいただきたい。
  59. 橋本利一

    ○橋本説明員 まず第一番に、長期的に輸入のチェックをどうするかという御質問でございますが、本年一−八月で約十三億ドルくらいの繊維製品の輸入がございました。これは昨年に比べて八割程度の上昇でございますが、ただ月別に見ますと、ことしの当初月間一億ドル程度のものが最近では一億五、六千万ドル、特にこれは九月につきましてはまだ速報数値ではございますが、一億二千万ドル、非常に鎮静化の方向をたどっております。ただ、景気の回復にしたがってやはり一般的に輸入がふえるということも予測をされるわけでございますので、従来から続けております輸入動向のチェックと申しますか、あるいは関係商社の指導と申しますか、こういったものに十分従来以上に気を使ってまいりまして、大量にまた粗悪な品物が輸入されないように指導を強化してまいりたいと考えております。  二つ目の末端価格との関係におきまして、現在取引改善協議会なるものを準備いたしております。現在人選中でございますが、この協議会の中で流通一般の問題とあるいは歩引き、キャンセルといったような取引上非近代的な事項についてこれを是正するためのルールづくりをやりたいということで準備を急いでおるわけでございまして、これによりまして、関係業界のみならず消費者に対しても合理化効果あるいは品質効果を還元していくように促進してまいりたいと考えております。
  60. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員 輸入問題についてはこれで終わりたいと思いますが、最後に共同廃棄事業の問題についてお伺いをしたいと思います。  問題は、やはりいろいろな理由がありましょうが、過剰設備という問題が大きな不況の原因として取り上げることができるのではないかと思います。過去二十七年から三十年、三十八年から四十一年、四十八年の末から現在、こういう大不況が三回あったわけであります。しかしながら、過去の不況というのは、たとえば絹、人絹が悪ければあるいは綿、スフがいいとか、こういうでこぼこがあったわけでありますが、今度の不況というのは繊維全体が沈没をしてしまっておる。過去に見ることのできない大不況の中でも形の違った不況である。これには、いろいろな理由があると思いますが、その中で何と申し上げましても過剰設備という問題を大きく取り上げていかなければならぬのではないかと私は思います。資本主義の中における企業でございますから、そのきびしさは業界にもやはりよほど反省をしていただかなければならぬ。しかしながら、それにも限度があると私は思います。そういう意味から、過去の政府間協定、自主規制時代に政府が買い上げをした、こういったことはおそらく二度とできるものではありません。しかしながら、業界自体でこれを考えて自主的に解決をしようとするならば、業界自体にも一部を負担をさせて、この際思い切って体質改善のためにも共同廃棄というものを業界が望むならばこの計画を進めるということについて、明確なことはこれは業界自体できめることでございますけれども、しかしながら資金とかこういったものはやはり政府として考えなければならぬのでございますが、この共同廃棄事業というもの、業界が自主的に将来の監視体制を強化し、現在の体質を改善をする、こういった強い意思があるならば受けて立つという、こういったことが事務的にどうかという問題を局長にお伺いしてみたいと思います。
  61. 橋本利一

    ○橋本説明員 設備の共同廃棄につきましては、御指摘のとおり政府が直接これを買い上げするということは適当ではございませんが、業界が自主的に具体的な計画をまとめてくるならば、政府といたしましても極力資金的にお手伝い申し上げたいという考え方でございます。
  62. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員 以上、終わりたいと思いますが、先ほど来申し上げましたように、大臣にお願いしたいと思いますが、想像以上である、予想以上である。特に繊維というのは、米一粒もとれない、すなわち七〇%あるいはまた七五%までも町全体が繊維の町というのが日本でも幾つかあるわけであります。特にそういった特殊な町を除きましても、やはり地域産業である、地域に相当集合しておる、こういうような関係から、この不況は全体から見まするならばさほどのことでもないのでございますけれども、そうではない、たいへんな大きな混乱を起こし得る可能性がある。特に繊維業界というのは、過去日本の資本主義発達のためにも大きな役割りを果たしてまいっております。昭和の初年におきましても、全工業の生産が六十九億五千万円、その中で繊維は三十一億五千万円を占めておったわけであります。また輸出にいたしましても、二十一億円、その中で繊維が十三億円のシェアを占めておったわけであります。そういう意味から、これはエゴ的な発言というのではありません。日本の今日の発達の中で大きなにない手であり、大きな協力者であった、特に私がここで再度申し上げたいと思いますのは、地域産業である、こういったような関係から、先ほど局長お答えになったことについては、できるだけ早急に、交渉であるとか、これからこうしましょうとかいうのではなくして、みんながたいへん関心を持ち、一日も早くそういった決定の早からんことを望んでおるわけであります。  そういう意味合いから、ひとつ大臣には、いろいろな事情がございましょうが、特に繊維という問題についてバックアップをしていただいて、強力に進めていただく。中堅企業の問題におきましても、融資の零細性の問題におきましても、あるいは融資全般の問題におきましても、または輸入の問題におきましても、共同廃棄の問題等々につきましても、大臣の御協力を切にひとつお願いを申し上げて終わりたいと思います。
  63. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いろいろ御指摘のございました諸般の問題につきましては、誠意をもって通産省といたしましても最重点事項の一つとして取り上げていきたいと思っております。  なお、議員の皆様方から御要望がありました海外援助に繊維を使えという御指摘でございますが、この問題につきましては、その意を受けて鋭意政府関係の内部でいま調整を進めておりまして、バングラデシュ等につきまして近い将来それを有償または無償の形においてある程度実行しよう、そう思っておりまして、できるだけ早期に実現したいと思っております。
  64. 濱野清吾

    濱野委員長 佐野君。
  65. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣に質問をしたいと思っておったのですが、大臣が十二時半にここを出るということでございますので、最初大臣に関係あることだけについて質問をいたしまして、順序は違ってまいりますけれども残された問題については関係者から答弁を求めていきたいと思います。私は、きょうは繊維の不況対策とシベリア開発に関係する問題等について質問をしてみたいと思います。  まず最初に、時間の関係もございますので繊維関係について質問をしてみます。公取の委員長は来ていますか。——至急呼んでください。  まず第一に、繊維産業の不況対策についてはいま稻村議員からそれぞれ質問がありまして大臣、局長から答弁があったわけでありますが、できるだけ重複を避けて質問してみたいと思うわけでございますけれども、同じような課題になりますから重複するかもわかりません。いずれにせよ、今日経済問題として繊維問題が非常に大きな影響を与えているということは、毎日の新聞を見ても明らかになっているわけであります。   〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕 そこで、そういう面についてこの繊維の不況問題が日本経済ないし対外貿易その他いろいろな面に与えている影響、そしてこの影響をどうやってよい方面に解決していくかということについては、これはもう政府あるいは与党、野党、こういうような立場を越えて全国民的な立場に立って対処しなければならない事態に立ち至っているのではないかと思うのであります。かつて数年前アメリカが日本の繊維製品の輸入を防ぐために積極的に取り組んできた、あの状況をいま私は思い出すわけであります。したがって、まず冒頭、大臣がこの問題についてどのような認識を持っておられるか質問してみたいと思うのであります。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本は、ガットの精神を受けましてやはり無差別自由の貿易を推進している国でありますので、貿易等につきましては制限的措置をできるだけ回避する、保護貿易的色彩をできるだけ少なくしていくという基本方針で臨んでおります。しかし、繊維の問題につきましては、最近の情勢から見まして、生糸につきましては事業団の一元化輸入ということに踏み切りました。それから、繊維一般の輸入につきましては行政指導をやっておりまして、どの部門にどの程度の在庫がある、そういうような資料を示し、また輸入業者等から報告を徴しておりまして、そして日本の国内需給の関係等も考慮して適切な処置をやるようにいろいろ指導もして、それもかなり実績があがってきておるところであります。しかし、これを法的な措置や何かでやるということは適当ではございませんので、われわれはいまのような情勢でやっていきたいと思っております。国内措置とあわせまして、内外の措置をそのように行ないながら繊維の市況を回復していくように今後とも努力してまいりたいと思います。
  67. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いま大臣が言われましたことは、いままで限りなく続けられた答弁の延長にしか過ぎないわけであります。私の質問申し上げておることは、かかる事態、そのような事態をいま越えているのではないか。この前、九月十日にもここで質問いたしまして、大臣から、必要があれば総需要の抑制策についても、その個別的配慮の中で転換をせざるを得ないであろうという答弁もしているわけであります。したがって、きょうこの時点の中で、また同じような答弁を私は求めようと思って質問しているわけではないのです。進みつつある情勢に対応して、置かれておる環境をどのようにして打開していくのか、打開していくための決意はどこにあるのか、こういうことをいまお聞きをしているわけです。あなたが時間の都合で中途退席しなければならぬというので、私は端的な質問を前提を省いて質問しているので、そういう意味において御答弁を願いたいと思うのであります。いわゆる総需要抑制策の一環として、この繊維問題をいままでと同じような形の中で取り扱っていくのかどうかということが一点であります。  それから、第二点といたしましては、いまお話のありましたような、自由経済の原則であるからわれわれは法的な措置は何もしないんだ、無原則、無方針で、ただでき得る限りの行政措置をもって対応するんだというようなことでこの繊維問題が乗り切れるという認識を今後持ち続けていくのかどうか。いまのあなたの答弁では、そういうような認識を私は受けるのですが、通産当局としては、繊維問題に対してはいままでと同じように相変わらずぬるま湯的というか、措置でき得ない状況が明らかになったとしてもやむを得ないという認識のもとに、対外的な影響を考慮した形の中で取り組みを続けていくんだと考えていいのかどうか。私はそれであっちゃいけない、新しい情勢の進展に対応する対策に積極的に勇断をもって通産大臣は取り組むべきだ、こう考える見地から、全国民的な立場に立ってどうなのかということを質問しているわけです。もう一度、簡単でけっこうですから決意をひとつ聞かせてください。
  68. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 繊維の問題につきましては、地域別にまた業種別に非常に重要な関心を持っていま調査もし、行くえを見守っており、必要な手当ては局部的におのおの行ないつつあるところであります。しかし、総需要抑制というワクをはずしてやるというところまではまいっておりません。しかし、先般来私、御答弁申し上げてから、内閣の内部におきましてもかなり推進いたしまして、住宅融資七万戸をふやすということを最近大蔵当局との間で合意を見ましたけれども、これらは新しい家ができればふとんが要る、カーテンも要る、そういう方向に響いてくる要素もあります。あるいは海外に対する経済援助につきましても、先ほど稻村委員お答え申し上げましたが、できるだけ早期に有償または無償援助の中に、繊維の織り物あるいは糸、主として私ら織り物を希望しておりますが、先方の希望もあるわけです、そういう形で実現すべくいま全力を注いでおりまして、いま関係各省といろいろ議を進め、私たちはどうしてもこれを実現するつもりでおります。
  69. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、事務当局は橋本局長以下各課長に至るまで、積極的にこの状況を打開しようとして努力していることを私ども接触する形の中でよくわかっているわけですよ。ただ問題は、事務的な段階におけるところの努力をもってこの問題が解決できる事態はもう過ぎているわけです。どうしても政治的な判断に基づくところの積極的な取り組み以外に事態の解消はあり得ないというところまできていると思うのです。したがって、私はこれから大臣がいなくなったあと局長等に対して具体的な質問をいたしますけれども、大臣に答弁を求めているその主要なる内容は、この事態の認識をどう受けとめているのか、受けとめる形の中において、そのような政治的な判断に基づく措置について、大臣は具体的な問題を事務当局から提起された場合、これらの問題の解決のために身を賭して——われわれのことばでは戦うと言うんだけれども大臣は戦うなんということは言わないだろうから、大臣の場合は身を賭してがんばる、こういうような決意が明らかにされるかどうかということなんです。もうあなたは耳にたこができるほどいろいろ聞かれていると思うのですね。したがって、その上に立って質問しているので、この委員会の席上で陳情しているような形で質問するしかないのですから、私の言わんとすることは、あなたの政治的な決意、決断し、実行するということについての決意があるのかないのか、このことを明らかにしてもらいたい。そのときが来ているのじゃないか。九月十日に質問したことと十月十八日に質問したことと答弁が同じでは何も進歩がない。しかし、事態は進んでいる。こういう点についてあなたの考え方をこの際ひとつお聞かせを願いたい。
  70. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 非常に決心をしております。一身を賭して奮闘する考えでおります。  具体的には、さっき申し上げましたように、住宅七万戸の新建設、これはそういう融資を認めるように、建設省、大蔵省の仕事でありますけれども、むしろ私らが大蔵省や建設省に働きかけてやってもらったわけでもあります。それから、いま申し上げたバングラデシュ等に対する無償、有償の援助の中に繊維製品を相当入れるということ、これもいま一生懸命努力しておるところで、私らは異常な決意を持ってこれは断行する、そういうことで臨んでおるわけであります。
  71. 佐野進

    ○佐野(進)委員 住宅の問題をやっていただくのは国務大臣だからけっこうで、たいへんありがとうございました。しかし、いまは商工委員会で通産問題をやって繊維の問題をやっております。繊維の問題で具体的にこうなりましたと——バングラデシュ、バングラデシュといってたいへん話が出ておりますけれども、これはこの前いわゆる経済協力基金の改正をいたしましたときも、物品供与をもって賠償その他の措置に充てることができる、基金の金を使うことができるということにもなっておりますから、これはもう大臣が決意をしてその方面にやらせようという考え方に基づく行動がとられるならば、いわゆる対外援助物資としてこれを行なうことは決して不可能ではない道が法的にもでき上がっておると思うのです。私がいま申し上げていることは、そういうようなもろもろの事件に対して、事務的な段階を越えた幾つかの要望について、いま建設省方面のお話がございました、それからこちらはバングラデシュでございましたが、いわゆる各方面から出されている要望について、積極的に一つ一つこれから事務当局に対して私質問いたしまするが、それらの面の解決について、大臣から政府部内において積極的に努力していただくという決意がお聞かせ願えれば、総需要抑制の緩和の一環としてどうだこうだというようなことでなくして、政治的な意味におけるところの決断をしたのだという意味において私は評価をしたいと思うので、もう一度ひとつくどいようですが、あなたに先頭に立ってがんばってもらわなければならぬという意味において答弁を求めておきたいと思います。
  72. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 佐野委員のおっしゃる御趣旨に沿って大いに努力いたします。
  73. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで私は、この問題は一番最後にやろうと思ったのですが、大臣の見解を聞いておかなければなりませんし、公取委員長もおいでになっておりますので、お二方の見解をお二方がいる前でひとつ明らかにしておきたいと思います。  一番最後の問題を一番最初に質問してみたいと思います。それは不況カルテルの結成の問題についてであります。  いま新聞紙上を見ましても一定の世論の中におきましても、繊維問題が出てまいります場合、必ずと言っていいほどこの問題が俎上にのぼります。同時にまた、この問題の処理について賛否両論が明らかに示されておるわけであります。そうして、この賛否両論の立場をそれぞれ代表するがごとき印象を、通産と公取が示しているように受け取られる場合があるわけであります。そして、この不況カルテルの結成については、いわゆる大手と称する方々と、中小企業の立場に立つ方々との二つの部面において、同じような声が出されているわけであります。しかし、そのよって立つ条件は基本的には同じでありながら、実質的には若干の差異が見られるわけであります。そこで、不況カルテルの申請を紡績、織布等はすでにやらんとしている、あるいはその他の業界においてもこれをやろうとしている、あるいは構造改善、いわゆる中小企業関係につきましてもこれの申請を行なおう、こういうような動きが顕著であるということが連日報道されておるわけですが、この件についてこれの申請が出された際、通産当局としてはどう対処するのか、二つの面に分けて、公取としてはどう対処されるのか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 繊維の不況カルテルに関しまして申請が出されているという報告を私まだ受けておりません。まだ通産省には出ていないのではないかと思います。もし出てきた場合につきましては、よくその申請の内容等を審査してみなければならぬと思います。不況カルテルにつきましては法律で認められておるところでありますから、その構成要件が充実されればこれは認めらるべきものであると思いますが、その認定の問題に非常にむずかしい要素があります。どの程度不況が浸透しているのか、あるいは営業、操業の維持がそういうふうに困難な状態にあるのかどうか、あるいは失業とか倒産の問題、そういうような諸般の問題を厳格に審査いたしまして、そしてわれわれの考えをきめなければならぬと思います。
  75. 高橋俊英

    ○高橋説明員 私ども公正取引委員会委員、職員は、特別に法律の条文で規制を受けておるのです。御承知のように三十八条に、事件の事実の有無についてあるいは法令の適用について意見を外部に公表してはならぬ。むろんこれは事件として扱った場合に、それをきめるに至るまでの過程において、あらかじめ予断を持って意見を述べてはいかぬ、こう解釈しておるのですが、いずれにしてもいまのところでは事務当局に、目下カルテル申請の準備中であるという連絡があるものがございます。しかし、それ以上何ら正式にこちらはそういう申請を受理しておりませんので、したがいまして、もちろんこれはただいまどうこう申し上げるということは、私、ことに委員長といたしましても、合議体である五人の委員会で最終に決定されるものでありますので、はたしてどう扱うかということを述べることは控えなければならぬと思います。ただ、一般的に新聞等で非常に否定的であるとかなんとかいう記事が出ておりますのは、先般、私、参議院の商工委員会におきまして、一般的な方針としては不況カルテルというのをとかく安易に認めたのではないかという批判が前にございましたから、今回もし申請が出る場合に、一般的な態度としては厳正な態度で臨まざるを得ませんということを申し上げたのでございますけれども、この事件をどう扱うかということについては、いささかも私はあらかじめ見解を述べるつもりはありませんでしたし、現在においてもそういう考え方でおります。十分その内容を審査いたしまして、要件に適合しているかどうかということを見きわめた上で結論出したいと考えておるわけでございますから、初めから認めないとか認めるとかという予断は持っておりません。十分御理解願いたいと思います。
  76. 佐野進

    ○佐野(進)委員 質問のしかたが悪かったのか、答弁がうまかったのかわかりませんけれども、聞かんとする意味が全然明らかになりませんので、もう一回質問してみたいと思います。  時間がなくなってたいへんどうも残念なんですが、大臣、いまいわゆる繊維問題を解決する課題として、緊急融資の問題、輸入規制の問題不況カルテルの問題、これらが中心になっているわけですね。先ほどあなたに決意をもって対処してくれと言ったことは、こういう問題について、ではそれができないなら何をするか。輸入規制ができないからだめじゃないか、ではしようがないじゃないかということではない。できないならば、これにかわるべき、それに対応できるような条件は一体どこにあるのか。それをあなたが政治力を発揮してさがしてやってください、こういうことを言っているわけです。だから、いま時間がないところを長く話すことはできませんけれども、この不況カルテルの問題はいままだ出ていませんからわかりませんなんという問題じゃないと思うのですね。これは予断を持っていたしませんという公取委員長答弁も同じだと思うのですね。繊維問題の置かれているこの深刻な状態に対処するために不況カルテルの結成が必要であるという、そういう業界の声を、業界が出さんとするその申請に対して、出てきたものを審査して認めます、認めませんというようなことは、これは局長から答弁してもらえばいいのであって、大臣はいまの状況の中において、公取委員長はいまの状況の中において、この問題は適である不適である、不適の場合はどうなのか、適の場合はどうなのかという点についての高度の判断を私はここで聞いているわけです。そういう意味でもう一回ひとつ御答弁ください。
  77. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 やはりこれは予断を持って申し上げることは適当でないと思うのであります。しかし、カルテルにつきましては、いろいろ世論もきびしいところでございますから、われわれとしてもきびしい態度で臨むのがしかるべきだと思いますが、佐野先生のほうにおかれましては、もうカルテルの時期になったという御認識でそういう御質問をしていただいておるのか、社会党や各党の御意見も聞かしていただけば非常に参考になるんではないかと思います。
  78. 高橋俊英

    ○高橋説明員 私としてはまことに不本意でございますけれども、私のほうはいわゆる普通の行政機関とも違うわけです。その点は御理解を願いたいと思うのです。結局審決をもってこれを認めるかどうかということになりますから、私がここでどうこう述べるということはたいへんに法律違反を犯すことになるわけであります。ですから、これは新聞などでわかっているじゃないかというお気持ちはよくわかるのですが、しかし私どもが調べるときは、実はもっともっと詳細なデータをいただきまして、事務当局で十分縦横に検討した上でなければ委員会に持ってこないし、私どももその報告を受けてから十分考える、こうならざるを得ないのでございまして、言ってみると、たとえば悪いのですけれども、裁判長が初めから一人で、これは有罪であるとか無罪であるとかということをかってに放言するというのは、これははなはだしい越権行為じゃないかという感じがしますので、この点はぜひ私どもの機関の性格にかんがみまして御了解いただきたい。しかし、そのかわり決して曲がった審決を下そうという気はありませんから、その点は厳重に事実を見きわめた上で決断をするんだ、こういう点は御了解いただきたいと思います。
  79. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いまの大臣の答弁で、私も時間があればそのことについてやってみたいと思うのですが、しかしもう十二時三十分に退席するというんだから困っちゃうね。そこで、残った人たちに質問を続けますけれども、この問題については後ほどまた具体的な質問をするとして、私は、きょうもう一つシベリア開発の問題で大臣にぜひ聞きたいということで通告してありますので、一分だけ聞きますから一分で答弁してください。  ということは、私、この前約三週間にわたってソ連をはじめ東欧諸国を回りまして、各方面の経済的な実情等々を具体的に調査いたしまして大いに感ずるところがあったわけです。ぜひその点について時間を持って質問したいと思っておったわけでありますが、大臣に答弁を求める時間がなくなりました。  そこで、私、一点だけ聞いておきたいと思うのですが、シベリア開発に取り組む——シベリア開発というか日ソ経済協力といいますかわかりませんが、わが国の態度が諸外国、なかんずくアメリカに比較してすら何か無責任なような取り組みの状況でないのかという点を痛感してまいりました。ということは、日ソ経済合同委員会その他にいたしましても、それぞれの国においては政府の責任ある立場にある人たちがそれぞれ責任をもって対処している。アメリカにおきましてもいわゆる国会におけるところの議決を要するとか、あるいはまた新通商法案が成立することによってその効力ができるとか、いろいろ直接的に政府ないし国会かこれらの問題に対して責任を持っておるのであります。ところが、わが国においては実際的には経済界の代表者がそれぞれの委員会をつくり、これに対応している。いわゆるワンクッションを置いているというか、政府の取り組む姿勢が、この問題の発足の契機としては、いわゆる田中・ブレジネフ会談をもってその具体的な取り組みに入っているにもかかわらず、事実上の問題としては政府がこれに対して非常に消極的な、消極的というか責任のがれというか、そういうような印象を受けるわけでありまするが、基本的な態度でありますので、大臣のほうからこれらの問題についての政府の取り組みの基本姿勢、通産省としての基本姿勢について一言ひとつ明らかにしておいていただきたい。あとは各局長に質問をしてみたいと思います。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 シベリア開発については、政府は一貫して熱意を持っております。これは長期的に見まして日本の経済的な将来を見通しますと、シベリアというものは日本にとっても非常に大切な場所でもあります。また、善隣友好という関係からいたしましても、それは同じようにも考えられる場所であります。  シベリア開発につきましては、木材、石炭、ガス、石油、それからサハリンにおける大陸だな等々の問題がございますが、これらについては、御存じのように日本は自由経済の国でありますから、企業が実際の実務は担当すべきことであります。だから、企業の見解を無視して政府が強制するということはできません。したがって、企業が先方のしかるべき機関と話し合いを進めるというためにはわれわれはお産婆役、あるいは非常な善意をもってこれを推進する、バックアップしていくという、そういう態度をとっておるわけであります。それらにつきましては、企業がおのおのの株主の意向も考えて、採算がとれるかどうか、あるいは将来のためにこれは多少採算が割れてもやっておくべきかどうか、企業の判断にまかすべきことです。しかし、その過程においても、輸銀の融資の場合においては金利をどの程度にするか、政府関係のものと民間市中銀行のものとの割合をどうするか、あるいは期間をどうするか、そういう点についてはわれわれは善意をもってできるだけ成立するようにぎりぎりの線まで努力して、政府側も協力しておるというのが実情です。先般来、石炭については合意ができました。それから木材についても、第二次KSについてたしかできつつあると思います。それから、サハリンにつきましても、またガスにつきましても、日本は積極的な熱意を持っておるわけであります。一面において、こういうものは多国的に協力してやることがより安定性を持って望ましいので、アメリカが参加するということをわれわれは希望しておりますが、それはともあれ、日本側は日本側独自の熱意をもってこれを将来も推進していくということを申し上げておきたいと思います。
  81. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣は、時間が参りましたからどうぞ。  それでは、繊維問題に返りまして、シベリア問題はまたあとで質問をしたいと思います。  局長に質問をいたします。先ほど来大臣に対して、いわゆる政治的立場に立った決意表明を求めてきたわけでありまするが、局長もこれらの問題について積極的に努力をしていることは私もよく理解するところであります。しかし、その努力のわりに事態はもっと深刻に発展をしているわけであります。したがって、あなた方が努力されていることは、結果的に言うならば先ほど来も議論がございましたが、繊維業界の状態についていわゆる一般的にそれを判断するものと個別的に判断するものと、二つの部面における判断にやはり若干の差がある。したがって、行政的な面からするならば、全般的な判断と個別的な判断に対して、それぞれ一律に処置することについて厚薄、いわゆる厚い薄いの問題についての不公平が発生するのではないかというような点等についての配慮もあるかと私どもも判断するわけでありまするが、それはさておきまして、今日の状況の中において、繊維業界全体の置かれている立場はそのようなことを乗り越えて、もはや全体的にこれをとらえなければならない、そういうようなところまで来ている。いわゆるあるときにおいてはある業種ばよかったけれども、ある業種は悪いということでなくして、もはや全体的に悪いという認識に基づいて処置しなければならないところへ来ているのではないか、こう考えるわけでありまするけれども、その点について局長の見解をお伺いしたいと思います。  なお、公取委員長はけっこうでございますから。
  82. 橋本利一

    ○橋本説明員 繊維不況がその後非常に深刻化してまいりまして、最近ではいま御指摘のように天然繊維、化合繊維、あるいはいうところの川上、川下を問わず、全業種、全地域について非常に深刻になってきております。特にこの一カ月ほどの間に倒産件数もふえてきておりますが、反面また倒産に至らないまでも、一時帰休者あるいは希望退職者を求めるといったような形で、従業員の生活に直接影響を及ぼすような事態になってまいっておりますので、非常に憂慮いたしておるということでございます。  繊維産業がほかの業種に比べましてさらに一段ときびしい環境下に置かれておる原因といたしましては、一般的に総需要抑制下にあるということもございますが、それ以上にやはり繊維産業が、これから解決していくべき構造的な問題がその緒についた段階においてこういう不況に見舞われておるということが、他の業種よりも問題をよりシビアなものにしておるのではなかろうかと考えております。私たちといたしましては、現在総需要抑制下にあり、あるいは輸入規制の導入ということは、諸般の事情から極力これを回避しなくちゃいけない、そういった制限の中におきましても、当面の不況対策を極力前向きにやっていくということとあわせまして、知識集約化と申しますか、前の国会で御審議いただきました新しい構造改善の方向に即応した対策も、やはりこれはあわせてやっていくべきである、かように考えておるわけでございます。
  83. 佐野進

    ○佐野(進)委員 時間が短くなりましたので、以下それぞれの項目について一括質問いたしますから、答弁については答弁者を要求いたしますので、その方が答えていただきたいと思います。  まず第一に、金融の問題であります。この問題については、先ほど来いろいろ議論がありますが、私どもも、前回もこの点について質問をいたしております。一つには、都市銀行等の資金による中小企業救済特別融資制度の活用をはかってまいりました。しかしながらこの問題は、十月以後特に年末金融をどう措置するのであるか。第三・四半期の貸し出しワクは、中小公庫二千百五十三億円、国民公庫二千六百九十億円、商工中金は自主計画ワクというぐあいに伝えられておりますが、この貸し付けワクはとりあえずという意味か、特に商工中金のワクは具体的にどうなのか。いずれにせよ、この程度の貸し出しワクで間に合わないことば明らかでありまするが、年末金融対策として追加措置を講ずる予定であるといわれておりまするけれども中小企業庁と大蔵省のほうにこの点についての見解、大蔵省のほうはあるかないかわかりませんが、あればひとつ明らかにしていただきたいと思うわけであります。  次に、繊維については、中小企業救済特別資金として三百億円のワクが政府系三機関から貸し出しが行なわれておるのでありますが、十月以降年末についてどういう措置をする方針か、これは局長あるいは中小企業庁から答弁を承りたいと思います。特に滞貨、減産資金については、特別の長期、低利の融資を実施することが必要ではないか。過去においてはドルショック対策、繊維輸出自主規制、政府間協定の際、特別の緊急融資を実施したが、これに準じた措置を考慮すべきではないかと考えますが、これについては局長から答弁を願います。  さらに、これら緊急融資の返済時期が現在到来しておりまするが、中小零細業者はその償還猶予を切実に要望しており、政府はケース・バイ・ケースで償還猶予を認めるということにしておるわけでありまするが、これでは現実に償還猶予を受けることが実際上の問題として困難であります。二年間一律に猶予してもらいたいというような業界からの要望等も出ているようでありまするけれども、いわゆるケース・バイ・ケースが実際上の問題としてはその取り扱いの面において不可能であるということを想定する場合、この措置はきわめて妥当であると考えるわけでありまするが、この点については局長答弁を求めたいと思うわけであります。
  84. 田中六助

    田中(六)委員長代理 前段の四項目について、小山次長
  85. 小山実

    小山説明員 政府系三機関の貸し出しワクの問題でございますが、ただいま御指摘のございました第三・四半期の中小公庫二千百五十三億、国民公庫二千六百九十億ということにつきましては、これはそれぞれの法律に基づきまして、四半期別に資金計画を認可することになっておりますので、これについてお説のとおりのわくを認可しておりますが、ただこれは、御指摘のように暫定的な当面の貸し出しワクということで御理解をいただきたいと思います。  なお、商工中金の自主貸し出しワクの問題でございますが、商工中金は当初、年度の計画といたしまして二千八百六十六億という予定を立てておりましたが、自己調達を中心といたしまして、年末追加を前提に約千億弱を上乗せしてこれを年間の計画といたしまして、それに基づきまして四半期別の計画を立てておるわけでございまして、この辺はすべてただいま大蔵省と話をしております年末の追加の結果によりまして、全体として下期幾ら、その中でまた第三・四半期、第四・四半期幾らということをきめることにいたしておるわけでございます。
  86. 橋本利一

    ○橋本説明員 繊維に対する十月以降のいわゆる年末金融でございますが、これはただいま中小企業庁から御答弁いたしましたような方向に即して、繊維についてもできるだけ早く、できるだけ多くの額ということで、現在のところまだ額はきまっておりませんが、さような立場で交渉を続けております。少なくとも四−六あるいは七−九における金融以上のものをわれわれとしては期待しておるわけでございます。その際、先ほども若干お話ございましたように、特に国民金融公庫と申しますか、零細企業に対しても十分配慮してまいりたい、かように考えておりますし、かたがた四、五カ月の短い金融よりもできるだけ一年以上の長い期間の貸し付けに重点が置けるように、これも現在交渉中でございます。  それから、中小三機関の対象にならない企業につきましては、やはり日銀等を通じまして地銀筋の協力を得られるように、さらに強力にお願いしてまいりたいと思います。  それから、滞貨あるいは減産資金について特別の長期、低利融資を考えないかという御趣旨でございますが、臨繊特の際には国が利子補給をいたすことによりまして金利の引き下げを事実上はかったわけでございます。今回も先ほど来お話がございますように、繊維不況が非常にきびしくなっておりますが、ただ今回の不況は繊維に限らず、まあ程度の差はございますが、全産業的な広がりを持っておるというようなことから、繊維だけに特段の措置を講ずるということはなかなかむずかしい問題かと思います。しかし、一般の不況対策あるいは金融対策の中で繊維に重点を置いて資金を充当する等の措置を講じていきたい、かように考えているわけでございます。  それから、三つ目に償還猶予の問題でございますが、これは一律二年間ということは現実問題としてむずかしゅうございまして、やはりケース・バイ・ケース、企業の実情に応じて返済の猶予を認めていくというのがどうしてもたてまえになってくるかと思います。ただ、たとえば綿工連等が窓口になって交渉する、まとめて交渉する、結果としてはケース・バイ・ケースになるかもしれませんが、個別企業が金融の窓口に行って交渉するという形よりも、そういった事業者団体がまとめて交渉に当たるということも一つの方法かと思いますので、そういった線で三機関にも話をつけてみたい、かように考えております。
  87. 窪田弘

    ○窪田説明員 年末に向かいまして中小企業の資金需要が相当強まってくるだろうということは私どもも十分考えておりまして、ただいまお話がありましたように、中小企業庁と政府三機関の年末追加について御相談を始めたところでございます。具体的な数字をまだ申し上げる段階ではございませんが、中小企業の現状を十分認識して配慮してまいりたいと思います。  また、毎年やっていることでございますが、市中金融機関に対しましても中小企業金融に一そう配慮するようにという指導を強めてまいることとしております。
  88. 佐野進

    ○佐野(進)委員 繊維問題について、もう一点質問をいたします。先ほど大臣に質問いたしました輸入規制の問題と海外投資のチェックの問題についてであります。  先ほど質問申し上げましたとおり、輸入規制の問題については、ここに資料が具体的にそれぞれの面でございまするけれども時間がありませんので省略いたしまするが、まさにわが国内の産業を圧迫するというどころのことではなくして、これを逼塞せしめる、もう活動の機能を停止させると言っても言い過ぎではないほど、無制限といわれてもいいほど輸入が増加をしておるわけであります。先ほど大臣並びに局長答弁の中で若干減っているというようなことを言っておりまするが、これは一時的な現象あるいは商社活動に対する一定の抑制、こういうような形から減っているかもわかりませんが、大勢としてはふえていく趨勢にあることは、これはもう否定することのでき得ない状況であります。したがって、これに対する抜本的な対策を考えざる限り、この問題の本質的な解決はあり得ないということは明らかであるわけでございますので、この際大臣が先ほど言っておったようないわゆる一般的な見解でなくして、もっと具体的な見解としてそれが統一されるように、ひとつ通産当局としては積極的な意思統一をはかり、政府部内においてその見解を取りまとめていただきたい、いわゆる輸入を一定限度において防ぐための法的な措置を含めた強力な対策をひとつ考えてもらいたいという要望を申し上げ、その見解を聞きたいと思います。  第二点目は、いわゆるわが国企業が海外へ進出し、その進出した企業からの逆輸入の問題に関係する海外投資の問題でありまするが、これは投資活動を調整するための法律案が目下検討されつつあるということを聞いておるわけでありまするが、検討されておるとするならば、その内容をこの際明らかにしていただきたいと思うわけであります。  次に、それらに関連いたしましてついでに質問いたしまするが、労働問題であります。いわゆる大企業、中小の企業を問わず、今日の状況はいわゆる首切り、いわゆる人員整理、あるいはまた一時休暇等々の措置によって労働者にしわ寄せがされていることは否定することのでき得ない現実でございます。特に中高年齢層の方々はこれを機会にその職場、長年働いた職場を離れなければならぬという状況が出ておるわけでありまするが、いつもこれらの問題が出ると弱いところにしわ寄せがいくという、そういう現実の中において、あたたかい思いやりのある対策をとられなければならないわけでありまするが、労働省のこれに対する見解をこの際お聞きいたしまして、繊維に対する問題を終わり、シベリア関係に入りたいと思います。
  89. 橋本利一

    ○橋本説明員 輸入規制の導入につきましては、不況の深刻化に伴いまして非常にその要請が強くなってきておるということも十分承知しているわけでございますが、この問題につきましては少なくとも国際的な関係あるいは日本の国民経済の立場、さらには繊維の現状なり将来を踏まえての判断、こういった点から検討すべき問題かと思います。  時間の関係もございますので一、二申し上げますと、一つはやはり昨年の石油危機以来、世界の経済が非常に不安定になってきておる。そういった中で、ともすれば各国ともに制限的な措置を打ち出したいというかまえを見せておるわけでございまするが、そういう段階で、どちらかといえばいままで貿易立国と申しますか、自由貿易体制を打ち出してきておった日本が、みずから初めにさような行動に出るということは、結局各国に対して日本がトリガーを引くような結果になって、世界の経済が封鎖的になるのじゃないか、その場合最も痛手を受けるのはやはり加工貿易国であるわが国ではなかろうかというのが一つの問題点でございます。  それからいま一つは、昨年から繊維全体の貿易収支を見ますと、輸入超過にはなっておるわけでございますが、これを繊維製品だけで比較いたしますと、四十八年におきましても十億ドルの出超、現在八月までの数字が出ておりますが、一−八月につきましても繊維製品の輸入は約十三億ドル、輸出は二十一億ドル強、やはり八億ドルの出超になっておるわけでございまして、そういった面からいたしましても、輸入はとめて輸出は自由にということにもならないということもございます。さようなところから、業種によって輸入の影響を深刻に受けておる業界もあることも承知いたしておりますが、やはり輸入規制の導入ということは、ただいま申し上げたようなところからも非常に慎重に配慮し、検討すべき問題ではなかろうか、さような観点に立ちまして、いわゆる問題のある輸入商品につきましては随時チェックすると同時に、輸入統計を整備しつつ関係商社の指導をしていく、あるいは一方的に国内だけで行政指導をしておっても始まりませんので、状況によっては関係の国と政府間ベースあるいは民間ベースで情報交換をして、お互いに実情を知り合った上で、適正量と先生おっしゃったけれども、なかなかこれはむずかしいわけでございますので、秩序ある輸入に指向させていくといったような行政指導をさらに強化していくということがむしろ一つの方向かと思います。  特に、前国会で御審議いただきました新しい構造改善も、ある程度の輸入を前提としての状況変化に対応して、日本の繊維産業をどう持っていくかという立場での御審議をいただいたわけでございますので、そういった行政指導とあわせながら、新しい繊維産業の方向に政策のポイントを指向していくということも必要かと考えておるわけでございます。
  90. 小粥義朗

    ○小粥説明員 お答えいたします。  最近、繊維産業からの離職者がだんだんふえつつございますが、その中でも先生指摘のように、特に中高年齢者の離職者がふえてくる傾向がございますので、その点が今後の一番大きな問題になろうかと思います。  そこで、これらの離職者の方に対しましては、失業保険制度とかあるいは雇用対策法に基づきます職業転換給付金制度という一般的な制度がございますけれども、特に中高年齢者の失業者に対しまして、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法というのがございまして、この法律に基づいて求職手帳を発給しながら、同時に手当を支給しながら職業指導あるいは職業訓練等を進めまして、できるだけ早く再就職をしていただくように、言うならばマン・ツー・マンで安定所の就職促進指導官がお世話をするという仕組みがございます。  また、職業転換給付金制度の中では、繊維産業からの関係離職者の方に対する雇用奨励金制度というものがございますので、そうした制度をフルに活用いたしまして、できるだけ早く再就職の道を見つけていただくように安定所を使って全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  91. 小松勇五郎

    ○小松説明員 いわゆる逆輸入の問題につきましては、実態の把握がなかなか困難であるというふうな悩みもございますが、わが国企業の海外への投資にあたりまして、これが逆輸入を起こしてわが国の経済に重大な影響を与えるおそれがあると思われますような場合には事前に個別にチェックいたしまして、必要な行政指導を行なうようにいたしております。  なお、御指摘の法案につきましては、たとえば外国に籍を置く日系企業について日本側が何らかの規制をするということが、相手国に対して内政干渉にならないかとか、そのほかいろいろなむずかしい問題がございまして、目下検討はいたしておりますが、成案を得るに至っていない段階でございます。
  92. 佐野進

    ○佐野(進)委員 では、繊維関係の質問をいたしました皆さんには御苦労さまでした。  シベリア問題に入りたいと思います。時間がだいぶたちましたので、きわめて簡単に質問をいたしたいと思います。  先ほど大臣に質問をいたしたわけでありまするけれども、日ソ経済合同委員会が心月の末に開かれ、シベリア問題の討議が行なわれるわけでありまするけれども、それらの問題について長く質問をしている時間的な余裕はございませんので、何点かに分けてお聞きをしてみたいと思うわけであります。  一つには、いわゆるヤクートの天然ガスのプロジェクトの問題でありまするが、これはアメリカが参加していない。アメリカが参加しない場合には、なかなか日ソ間においての調印はできない、こういうようなことがいわれておるわけでありまするが、この議定書の期限切れも近くなって、輸銀の副総裁が訪ソし、善後策を協議する、こういうようなことが報道されておりまするし、昨夜のテレビ放送の中においても、しかしこれはもう解決したんだ、こういうような意向等が見られておるわけであります。私はこの問題についていろいろ話をしてきたわけでありまするけれども、結果的に言うならば、わが国はアメリカが参加しない場合にはこれは成立しないんだ、こういうようなことが強く印象づけられておるわけでありまするけれども、昨日の話では、アメリカが参加しなくともこの協定はできるんだ、こういうような話もされておるようでございまするが、この点についての見解はどのようなことなのか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  93. 和田敏信

    ○和田説明員 ヤクートの天然ガスプロジェクトについての御質問でございますが、これは非常に多額の資金と高度の技術を要します非常に大きなプロジェクトでございますので、従来から米国の参加を前提として話を進めてまいったわけでございます。米国におきましては、通商法案の審議がおくれておりますために、いまだ参加が決定をされていないという状況下にございます。しかし、米国の通商法案の審議状況から見まして、これは先般エバリー特使が、フォード・スピーチに関連をして日曜日、月曜日とわれわれと討議をする機会を持ちましたが、エバリー特使によりましても、この通商法案は十一月末、おそくても十二月早々には通過させる、このような意向の表明がございまして、われわれとしてもそのようなことを期待しておりますし、米国の参加のめどがつくと思っております。米ソ日の三国で採鉱に関する基本契約がその結果締結されるもの、このように期待をいたしております。  御指摘のとおり、輸銀とソ連外国貿易省との間で結ばれましたバンクローンに関しますプロトコルにつきましては十月二十一日で失効することとなっておりますので、以上のような実情にかんがみまして、目下その期限延長につき検討しておるというのが実情でございます。
  94. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いまの局長のアメリカ側の態度についての答弁は予測であります。ソ連側の態度は、アメリカが参加しなくても二国間協定でできる、こういうようなことも言っておられるわけでありまするが、予測の問題をここで議論するわけにはまいりませんが、そういうような状況が発生したとき、どのような対策をとられるのか。これはいわゆる御破算であるということになるのか、あるいは二国間においても協議を続けていくという考え方であるのか、この点についてひとつ見解を明らかにしていただきたいと思います。
  95. 和田敏信

    ○和田説明員 米国の参加が最終的に不可能になりましたときにいかがするかという点に関しましては、現段階におきましては、われわれといたしましては米国の参加が条件と考えております。
  96. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣がいないとき、こういう政治的な発言をあなたに求めることは無理であろうとは思うのでありまするけれども、しかしいずれにせよこの問題は非常に大きな問題でありまして、特にチュメニにおけるところの問題に一応相当困難な状況があらわれつつあるとき、このヤクートにおけるところの天然ガスのプロジェクトについては、これは残された大きな協定、協約ということになってくるわけでありますので、そういうような意味合いにおいて、この問題についてはもう少し明確な答弁を求めたいと思うわけであります。しかし、いずれにせよ無理であるということは私も知っておりますので、この点については検討をしておいていただきたいと思います。  ただ、もう時間が来ましたので、私、これらの問題について大臣を交えないでここで突っ込んだ議論をすることはかえってどうかと思いますので省略をいたしたいと思うのでありまするけれども、一貫して感ずることは、さっき大臣答弁の中にありましたように、いわゆる企業が参加するのであるから企業の利益を優先して考える、したがって企業がその利益を得られる見込みのない場合においてはわが国としてはその参加について、積極的に取り組むという姿勢は変わらないとしてもむずかしいのではないかというニュアンスの答弁があったわけでありますけれども、政府側として、ソ連、アメリカがこれらの問題についてそれぞれ政府あるいはまた国会か積極的に取り組んでいる面に対して、企業にその責任を与えてすべての問題を処理しようとすることは、他の諸国に対する立場から見てもきわめて消極的ではないか、こういうような考えが見受けられるわけであります。特にチュメニにおけるところの石油問題については、いろいろ話をしたり聞いたりしてきたわけでありますけれども、現にあそこからブルガリアまでパイプラインが敷かれて天然ガスが供給されている現実を見るとき、国としての積極的な取り組みがない場合においては、これらの問題の解決は至難の状況に逢着するのではないか。いわゆる口では前向きに取り組むといっても実質的にはむずかしい現実に逢着するのではないかという印象を強くしてまいりましたので、この点についての見解をいま一度聞いておきたいと思います。  それからもう一つは、ついででありますからお聞きいたしたいのでありますけれども、日ソ経済合同委員会、いわゆる民間側の人々によって構成されている委員会、政府側の立場に立つ人たちはオブザーバーとして参加したとしても実際上は発言権を持たない、しかもこの日ソ経済合同委員会に参加する人たちは特定の基盤をその参加する条件として持っておられる、全国民的な立場に立ってこれに取り組むという条件に至っていない、こういう印象を私は強く受けてきたわけでありますけれども、情勢は先ほど来申し上げているとおりきわめて流動的であり、しかも非常に困難な条件が予想されるとき、この日ソ経済合同委員会に参加する日本側の体制の強化ということは当然この際考えておかなければならないのではないか、こういうぐあいに考えるわけでありますけれども、この点についての局長の見解をお聞きしておきたいと思います。
  97. 和田敏信

    ○和田説明員 先生の御質問に関しまして、このようにお答えをさせていただきたいと思います。  一つは、シベリア開発についての意義をどう考えておるか、それからわがほうの窓口と申しますか、交渉の担当のあり方が現状で妥当であるかどうか、それからチュメニに関する所見いかん、このような御質問を受けたという前提でお話を申し上げます。  まず、シベリア開発についての意義でございますが、当省といたしましては、わが国の資源エネルギーの長期かつ安定的な供給の確保ということはわが国経済の将来のためにきわめて必須のことであると考えております。そのためにはなるべく多角的に各地から供給を受けたいという意味合いもございますし、またシベリアというのは地理的にも非常に隣接したところにもございますので、シベリア開発に関しましては多大の関心を持っておるという状況にございます。今後とも日ソ経済委員会を窓口として、できるものから一つずつ実行に移していきたい、政府もこの間におきましてできる限りの支援を与えてまいりたいと思っております。詳細は省略いたしますが、すでに幾つかの案件に関しましては実行の了したものもございますし、現在また実行中のものもございますし、また契約がだんだんと進行しておるものもございまして、総じて日ソ経済関係というものは、いろいろな問題点はないわけではございませんが、建設的に進んでおるのではないか、かように考えるわけでございます。  また、窓口の問題でございますが、日ソ経済合同委員会は一九六六年、第一回に始まりまして、第六回目を本年十月二十九日から十一月一日までの四日間モスクワで開催をいたしますが、ソ連側もこれに対応する機構としてソ日経済合同委員会というものを持っておりまして、ソ連側といたしましても、わがほうの日ソ経済委員会の従来の働きぶりあるいはその効率等に関しまして高く評価をしておるのではなかろうかとわれわれとしては判断をいたしております。また、民間ベースの話し合いでございますが、関係各省から十分責任のある担当者をオブザーバーとして出席をさせておりまして、政府としてはこの会議に対しまして十分な支援とまた高い意義づけを行なっておるものでございます。  次に、シベリアの開発の中の一プロジェクトといたしましてチュメニの案件に関しまして、従来の日本側の状況でよろしいのかということでございます。われわれはソ連側から提案のありましたすべてのプロジェクトに関しまして、これに対して真剣に対処するという立場で対処いたしておりますが、チュメニに関しましては、われわれのサイドといたしましては、ソ連側の当初提案と比較いたしまして供給量あるいは供給時期、所要資金等が大幅に異なってきておりまして、当初提案を受けてわがほうが検討を進めてまいったわけでございますが、先方の提案が申し上げましたような事項に関しまして大きく変更してまいっておりますので、その変更した状態に即しまして引き続き検討を行なっておるというのが現状でございます。  以上、先生の御質問に関しましてお答えを申し上げます。
  98. 佐野進

    ○佐野(進)委員 終わります。
  99. 田中六助

    田中(六)委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時七分休憩      ————◇—————    午後二時十一分開議
  100. 田中六助

    田中(六)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。板川正吾君。
  101. 板川正吾

    ○板川委員 私はきょうは三点ほどの問題について質疑をいたしたいと思います。  一つは独禁法改正案に関する問題、一つはわが国の石油政策の今後の動向、一つは原子力の安全性、この三つの問題についてお伺いをいたしたいと思います。  まず第一に、独禁法改正試案、私案じゃない、試案についての所感を伺いたいと思うのであります。  これは過日、御承知のように公正取引委員会として、昨年の石油ショック前後の産業界の独禁法違反行為、やみカルテルや物価の異常な高騰等から独占禁止法改正の方針を定め、その試案を発表いたしました。すでに各関係省庁では試案に対する見解も固まってきたと思いますので、とりあえずその所見を伺っておきたいと思います。  まず、企画庁長官にお伺いをいたしますが、物価を担当する企画庁として、独占禁止法改正試案の方向に対して、骨子に対してどういう見解を持っておられるかお伺いをいたしたいと思うのであります。  この企画庁から出されました卸売り物価の前年同月比を欧米諸国と比較をいたしますと、四十九年六月分ですが、一番上がっておるのがイタリアで、前年同月に比較しまして四一・八%上がっておる。二番目が日本で三五・三%、三番目がフランスで二八%、四番目がイギリスで二四・六%、五番目がアメリカで一四・五%、西ドイツが一三・六%、同じように石油ショックを経たこの時点において各国の卸売り物価の比較を見ますと、こういう順序になっております。消費者物価にいたしますと、日本が一位で二三・六、イタリアが二位で二八・八、三位がイギリスで一六・五、四位がフランスで一三・九、五位がアメリカで一一・一、西ドイツが六・九。こういうように、卸売り物価、消費者物価の動向を見ましても、同じような石油ショックの影響を受けた国でありながら物価の上昇というのが違います。どこにその原因があるかというと、これは私の推察ですが、独占禁止法というもの、いわばそういう規制体制が弱いところ、イタリアには御承知のように独占禁止法というのがなさそうでありますが、どうも弱いところ、あるいはあってもなきがごとき運営がされておるところ、こういうところに問題があるように私どもは感じます。  こういう観点から見まして、物価を担当する経済企画庁長官としてどういう見解をお持ちか伺っておきたいと思います。長官は二十八年の改正案のときに、速記録を読んでみましたら、たいへんいろいろのうんちくを傾けた議論をされております。成田知巳委員と一緒にたいへん論争されたのを読んでおりますが、どうお考えですか、伺っておきます。
  102. 内田常雄

    内田国務大臣 わが国の物価が最近鎮静はいたしておりますものの、板川委員指摘のように、昨年の同時期に比べますとまだかなり高いレベルにあります。しかし、卸売り物価は、板川さんは何月分をおとりになったか——九月は、前年の九月に対しますと三五%ではなしに三〇・六%、こういう数字でございますので、これはあとから正しいものを差し上げたい。(板川委員「六月です」と呼ぶ)六月は三五・三。しかし、それから七、八、九とたいへんいい落ちつきを示しておりまして、最近、現時点では、たとえば九月は卸売り物価は御承知のとおり、詳しいことは言いませんけれども、上がり方がほとんどなかったというようなことで、今日では三〇・六。これはだんだんさらに狭まっていくはずであります。  ところで、イタリアその他西ドイツなどとの物価上昇の比較は、板川さんの言われましたように競争原理による市場機能の問題もあろうかと私は思いますが、一番大きい原因は、これはよく御承知のとおり、エネルギー問題で、日本は石油につきましては九九・七%海外依存。これはほかの国も同じでありますが、ただ石炭その他のエネルギーを入れますと、第一次エネルギーの輸入依存度というものが日本はいま板川さんが言われた国に比べまして一番高いわけでございます。ドイツなどは、石油についてはやはり日本と同じように海外依存度が高いわけでありますが、御承知のように国内石炭に依存する分が相当高い、また石油ガス等もございまして、おそらくエネルギーの海外依存度というものは日本の半分ぐらいのような状況に西ドイツはございますので、したがって石油ショックの受け方が日本とはかなり大きな開きがあるというところもあるようでございます。もちろん経済政策そのものも向こうのほうがじょうずにやっているといいますか、あまりじょうずにやり過ぎてこのごろ西ドイツは失業率が三倍ぐらい上がりまして、これは御承知のとおり三・一%ぐらいの失業状況でございます。  それはさておきまして、公取から提起されました独禁法の改正問題につきましては、私は全体の方向といたしましては、競争関係が非常に不完全になって、そして価格が硬直しているというような状況を打開するためには、非常に大きな警鐘を鳴らされているものと考えるものでございまして、評価はいたしておるものでございます。しかし、簡単に申しますと、独禁法の改正は、いろいろその他の問題もあり、国の基本経済施策の問題でもありますので、そういう問題ともあわせて総合的に検討する必要があるということで、私のほうも検討いたしておりまするし、また御指摘のように各省庁ともそれぞれの検討を進めているはずでございますので、そういうものを持ち寄るような仕組みを、つまりこれは内閣全体として、公取といえども内閣の外にあるわけではなしに、国家行政組織法第二条によりまして、(板川委員「三条」と呼ぶ)三条でございますか、一条ずれましたが、三条によりまして内閣の一部でございますので、公取をも含めて打ち合わせをするような機会を持つことにいたしておりますので、そういう過程におきまして、どのようにこれを実現してまいるかということはさらに検討してまいる、こういうことにいたしております。
  103. 板川正吾

    ○板川委員 新聞報道によりますと、経済企画庁は公正取引委員会の独禁法改正試案に対して、基本的な考え方について賛成の態度を見せている、こういうような記事がありましたものですから、確認する意味で伺ったわけですが、内容については評価をするというおことばもありますから、いずれ政府提案という場合には閣議にかかるでしょうが、この基本的な態度をひとつ貫いていただきたいと思います。  次に、農林省に伺いますが、農林省はこの独禁法改正試案というものについてどういう考え方をお持ちか伺いたいと思うのです。  御承知のようにアメリカの独占禁止法というのは、アメリカの農産物は自由価格で需給によって価格はきまる、農民が買う農業資材というのは大企業のカルテルで高いものを買わせられる、こういうことに対する農民の不満からこの独禁法体系というのが生まれてきたのであります。そういう点から見ますと、農林省もこの独禁法というものに対して一つの見解を持っておると思うのでありますが、この改正案の大綱についてどういう見解ですか、お伺いしたい。
  104. 森整治

    ○森説明員 今回公表されました公正取引委員会の独禁法の改正試案につきましては、その趣旨等につきましては十分われわれも理解をしておるわけでございますけれども、具体的な運用の問題になりますと、非常にまだ明らかでない面があるやに存じております。   〔田中(六)委員長代理退席、左藤委員長代理着席〕 そこで、具体的に公取の方々の御見解を伺っておる段階でございまして、したがいまして、農林省としてここで最終的な、また公式に考えを明らかにするという立場にまだございません。その点ひとつ御了承をあらかじめいただきたいと思います。  しかしながら、先生指摘のように、農林省は、やはり農林漁業者といいますか、そういう農民の資材を確保していくということの指導上の責任を持っておるわけでございます。これにつきましては、従来から資材の安定供給ということを農業団体の組織といいますか、農民の組織、そういうものを通じまして確保をはかってまいるという指導をしてまいったわけでございます。この点につきましては、今後とも従来の行政姿勢を変えるつもりはわれわれとしてはございません。  そのほかに農林省として、実は食品産業という、国民の食糧につきまして安定した供給を保障していくという責任を持っておるわけでございまして、この分野の問題になりますと、非常に零細な企業が多いとか、あるいは非常に海外の原料に依存をするとか、あるいは国内の農産物の価格政策、七割ぐらい政府が管理をしておる面がございますので、そういうようないろいろな問題につきまして、今回の改正案が具体的にどのように運用されていくのだろうかということについて非常に関心を持っております。したがいまして、これらの問題につきまして、政府部内で十分相談をした上で検討していきたい、こういう考え方でございます。
  105. 板川正吾

    ○板川委員 いずれにしましても、農林関係者とすれば独占禁止法を強化するほうには反対することはあるまいと私は思うのであります。大臣が来ないから、またあとで伺う機会を持ちたいと思います。  次に、内閣法制局に伺います。  これは新聞の報道でありますが、十月十六日毎日新聞によりますと、「国会で激しい攻防」として、中曽根通産相が高橋公取委員長とやり合ったと書いてありますが、この記事の中で「内閣法制局も法体系からみて無謀な改正案と反論。」こういう記事がございます。この記事がほんとうかどうかということが一つと、もし無謀な改正案というならばどういう点が無謀であるか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  106. 別府正夫

    ○別府説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘ございました毎日新聞十月十六日付の記事の中で、板川委員指摘ございました「内閣法制局も法体系からみて無謀な改正案と反論。」と書いてございますが、これはきのう上部まで確かめましたところ、このような意見を申し述べた事実は全くございません。したがって、第二点についてお答えをする必要はないかと存じます。
  107. 板川正吾

    ○板川委員 それでは、こういう事実は全くない、こういうことですね。内閣法制局にはいずれ法案をまとめる立場で相談があるだろうと思いますから、それでは事実がないということだけ、この報道は間違った報道であるということだけ確認をいたしたいと思います。  次に、通産大臣に伺いますが、通産大臣、新聞等を見ますと、過去いろいろ意見を個々に発表いたしておりますが、ときによると猛烈に反対のごとく、ときによるとひっくり返ったようなことが書いてありますので、通産省としてこの改正試案に対してどのような見解を持っておるか正式に伺いたいと思うのであります。新聞等によると、何か十六の問題点について公取に質問状を出したけれども、公取は疑問点についてまだ答えてない、こういう意味の報道もありますが、新聞はいま言ったように予測して書く場合もありますから、あるいは事実でない場合もあるかもしれませんから、ここで正確にひとつ反対ならばどういう点が反対であり、あるいはどういう点が疑問点であるのか、通産省として発表していただきたいと思うのです。きょうは私は多く議論するというよりも、議論の素材として正確にひとつ問題を出してもらいたい。その正確な発言を聞いた上でわれわれは議論を組み立ててまいりたい、こう思っておりますから、通産省として改正試案に対してどのような見解を持っておるか、正確にひとつ発表していただきたいと思います。
  108. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず第一に、日本の企業が非常に大型化してきて、かつ消費者の要望も新たなる観点に立って非常に強まってきておるおりから、独占禁止法を検討するということは意義あることである、そう思います。  第二に、この独占禁止法の改正試案に対する通産省の基本的態度は是々非々主義であります。  第三に、いままで事務当局で公取関係当局者といろいろ話し合った内容の報告を聞いてみますと、非常に疑問点が多く、このような疑問点の多いままわれわれが承認することば非常にむずかしい事態にあるという報告を聞いております。われわれの頭を首肯させるに足るだけの資料や説明がもしなされるならば、われわれもこれに賛成するにやぶさかではありませんし、公取当局の御意図もよくわかるところも部分的にはありますから、協力できるものなら協力したいと思っておりますけれども、われわれが賛成するになびくような、首肯し得るような説明やらあるいは疑問点の解明というものがいままだほとんどなされていない、こういう状態にあるということを申し上げます。
  109. 板川正吾

    ○板川委員 お話は三点で、一つの意義があろう、是々非々だ、疑問点はまだ解明されていない、こういう三つの問題についてのお答えです。われわれも是々非々というのは、これはいかなる場合でもいいものはいいし悪いものは悪いのですから、これは是々非々は当然だと思います。  事務当局で折衝されたら疑問点が多いというのですが、それでは事務当局でどういう点を折衝して、どういう問題点があるのか、事務当局から発表してもらいたい。
  110. 小松勇五郎

    ○小松説明員 新聞に書いてございました十六項目の公開質問状というのは間違いでございまして、私ども文書によりまして公開質問状を公取に出したことはございません。この点あらかじめお断わり申し上げておきたいと思います。  ただいま大臣の御答弁がありましたように、私どもも産業政策の重要な一環といたしまして競争政策につきましてはかねてから研究いたしておるわけでございますが、このたびの独禁法改正試案骨子につきましては、最近二回ばかり事務ベースで趣旨の説明を受けました。その際、当方といたしましては、現実に産業行政経済行政を担当しておりますものとしての具体的な立場からいろいろな質問をいたしたわけでございます。  まず第一に、改正の趣旨でございますが、現行独禁法では対処できないような独占、寡占の弊害がいかなる産業においてどういう形で具体化しておるのか、実証的な資料をもって説明をしていただきたい。それにつきましては、資料はないというお話でございました。第二、今回の改正は物価対策にどの程度貢献するのか。つまり今次のインフレは海外の要因や国内の需給要因による物不足を中心とするものか、それとも独占、寡占の弊害が出て、それが中心として上がったものであるか、どちらかということにつきましては、今回の改正案は物価対策とは直接結びつかないものであるという御説明がございました。第三点、自由、公正競争を促進する立場にある公正取引委員会がマーケットに直接介入するような統制方式をなぜ採用するのか。つまり独禁政策の範囲をこえておるのではないかという質問をいたしました。それにつきましては、不完全競争のもとでは介入することもやむを得ないという答弁がございました。  第二に、企業分割でございますが、企業分割を必要とするような寡占、独占の具体的な弊害は何か。現実に企業分割をすぐ考えてないというお話もございましたが、現存しない弊害に対してなぜ急いで規制を行なう立法をする必要があるのか。この点につきましてもお答えをいただいておりません。それから次に、まじめに成長した企業に対してなぜ企業分割をもって臨むのか、自由経済の根幹に触れる問題であるのでその辺をゆっくり承りたいということにつきましても明確なお答えはいただいておりません。その次に、特許独占などの結果、成長拡大した企業も分割できるということにすることは、無体財産権の行使と認められる行為を適用除外しておる現行法二十三条との関係で論理的に合わないのではないかということにつきましても明確なお答えをいただけませんでした。次に、企業分割の基準が不明確であって裁量の範囲が大き過ぎるのではないか、裁量の範囲が大き過ぎると企業は自由な競争をしにくくなるのではないか、特にシェアが五〇%以上も過ぎておるとかあるいはそれに近づいておるような企業は自由競争を逆にやめるのではないか、こういうことにつきましてもお答えをいただいておりません。第五番目でございますが、分割規定を置くことば、いま申し上げましたことと関連いたしますが、かえって全般的に企業の競争意欲を阻害して、自由競争の促進と矛盾してくるのではないかという問題もございます。第六番目に、分割にあたっての手続はどうするのか。たとえば商法などとの関係はどうなるのか。また、労働組合をどういうふうに分けるのか。また、企業は地域別にいろいろな工場を持っておるでしょうが、それをどういうふうに分けるのか。また、分割の結果、分割された企業の一つが倒産するというふうな場合には責任はだれが負うのか。こういう問題につきましても煮詰まったお答えはいただいておりません。  次に、原価公表でございますが、原価公表があればなぜ自由かつ公正な競争が促進されるのか。そもそも自由競争と原価公表がいかなる関係にあるのか。これにつきましてもお答えをいただいておりません。次に、企業の秘密であります原価を公開させ、世間の批判で価格を決定するということが価格の公正さを担保することになるのかどうか、これにつきましてもお答えをいただいていないわけであります。また、技術的な問題になりますが、原価と一口に申しましてもいわゆる総合原価と個別原価との関係をどうするのか。個別原価の場合には一般管理費の振りかけをどういうふうにするのか。企業によりましてはもうかるものもあればもうからないものもある、売れ行きのいいものもあれば悪いものもある、それをどういうふうに原価公表の段階で振り分けさせるのか、これにつきましてもお答えをいただいておりません。  それから、原状回復命令でございますが、過去のやみカルテルで排除措置を講じましても価格が下がらなかった原因は何か。つまり過去のやみカルテルで、排除措置を講じましてこれを厳重に取り締まるべきことはもちろんでございますが、それでも価格が下がらないという場合に、その原因が物不足にあるのかあるいはコストアップにあるのかあるいは引き続いて地下のやみカルテルがあるのか。コストアップあるいは物不足ということであれば別の対策が要るわけでございますが、地下のやみカルテルがあったに違いないと推定されるような案件がどのくらいあったのか。これにつきまして、もお答えはいただいておりません。次に、公正取引委員会価格に介入することの是非。需給対策などで価格対策を講ずるのが一番大事なことでありまして、物を余らせるのが物価対策の要諦だと思いますが、そうじゃなくて価格に介入するということの是非いかん。この点はほとんどの経済関係の近経学者も反対のように承っております。また、価格引き下げ命令と原状回復命令との差は何か。経済的に見ますと全く同じものであるというふうに考えるがどうかということにつきましても明確なお答えはございません。  次に、課徴金でございますが、やみカルテル対策として公取が告発をどんどんすべきではないか。検察庁にその能力がないというお話もあるわけでございますが、検察庁にその能力がないから告発をやめて課徴金にするという考え方が正しいのかどうか、その辺につきましても私どもよくわからないわけであります。また、刑罰と課徴金との関係いかん。つまり刑罰と課徴金との併科がいいことなのかどうなのか、この辺は主として法務省の問題になりましょう。  次に、株式保有制限でございますが、総合商社などの現在の株式保有が競争阻害要因となる具体的な事例と、また規制をこのように行なう理由、つまり現行法の十条でも競争の実質的制限となる場合の株式保有は禁止されておるわけでございますが、それをもって対処できない理由もあわせて伺いたいと思っているわけでございますが、お答えをいただいておりません。次に、具体的な基準といたしまして資本金百億円、総資産二千億円以上の事業会社が、資本金あるいは純資産額の二分の一をこえて株式を保有するということがなぜ競争制限的になるのか、これより多くてはなぜいけないのか、少なくてはなぜいけないのか、何ゆえにこのような基準をとったのか、その基準を明確にして、そのねらいとするところ、また期待しておる効果を明らかにしていただきたいということにつきましてお答えをいただいておりません。次に、規制によります総合商社などの株式放出につきまして、商社などに中小企業の非上場株がかなり持たれておるわけでございますが、それをどう考えるのか。中小企業に対して非上場株を引き取らせる以外にないわけでございます、売れませんから。それについて中小企業への影響をどう考えるのか、経常不安定をもたらすのではないかということにつきましてもお答えをいただいておりません。なお、この規定でいきましたら相当数の株が放出されることになるわけでございますが、株式市場の混乱は起こさせないというお話を承りましたけれども、いかにして起こさせないのか、公取がその株式市場の混乱を起こさせないと保証するということが、国の行政のあり方としていいことか悪いことか、この辺につきましてもお答えをいただいておりません。  そのほか、こまかい技術的な問題はたくさんございますが、おもな点につきましては以上のような問題がまだ私どもにはわかりませんので、残念ながらきちんとした意見が申し上げられない、こういう段階でございます。そのうちに事務局のほうからもさらに詳細な資料をいただき、正確な御説明をいただけるものと期待をしておる次第でございます。
  111. 板川正吾

    ○板川委員 まあ正式にそういう通産省の疑問点があるわけですが、公取委員長、こういう疑問点については、きょうは時間の関係もありますから十分これに答えてくれとは言いませんが、事務当局を通じて文書なりでちゃんとできるだけ解明をしてほしい、こう思います。  いまの疑問点を聞きますと、たとえばこの川の川下と川上のその境目はどこだ、こういうようないわば無理難題を吹っかけているような質問もありますよ。この川下と川上の境はどこだというような一種の詭弁的な質問もありますが、しかしいずれにしましても、まあそう言っておることですから、産業官庁である通産省がこうして反対だと言っていると時間もかかりますから、ぜひこの点は事務当局を通じてよく説明をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。個々の点についてはいいです。
  112. 高橋俊英

    ○高橋説明員 こういう独禁法改正という問題、私どもとしては各官庁にもまたがる問題でありますけれども通産省関係が深いということは、それはわかります。ただし、直接それぞれの権限と権限がぶつかり合うという問題でございません。これからの日本経済の中でどういうポイントが大事なのか、それはつまり、いまの独占禁止法の精神に反するような構造的な問題やあるいは企業の行動理念、そういうものに対して私どもは一定の制約を加える時期が来ているんじゃないか、こう考えておるわけです。ですから、その考え方が現状を是認するという立場に立った場合と、現状に対してかなり批判的であり、将来の日本経済を考える場合にはこういう基礎的な理念が必要であるというふうな、そういう立場に立っている——私どもは少なくともそういう考えなんですが、そこに個々の問題についての見解の相違点が幾らでも出てまいります。ですから、肯定的に見ておれば、なぜそれがいけないんだということでございます。一つの例でございましても、たとえば総合商社がどんどんその形態を大きくする、借り入れ金によってふくれ上がっていって、株式も借り入れ金でたくさん持っておる、そういうこと、それが私は一つの大きな意味での社会的な経済的な不公正という問題につながってくるのではないか、こういうように考える。ですから、これだけ私は申し上げまして、あとのこまかいことは一切申しませんが、まず現状に対してできるだけ私ども、まあ役所は批判的な面からも考えてみる必要があるんじゃないか。だから、通産省当局にも望まれるのは、そういう観点で説明をお聞きくださると、いま述べられたことについてすべて合点がいかないとおっしゃいますけれども、それなりの説明はある程度しているはずです。しかし、今後もせっかくの御要望でございますから事務当局をしてできるだけの資料をそろえ——それは完ぺきなものということはあり得ません。いま分割したときにどういう手続でどうなって、どの会社がどうなると、そう聞かれたらこれはおかしなことでございますから、具体的な例をあげて説明するわけにはまいらないと思いますけれども、そういうことを除きまして、できる限りの御納得を得られる、あるいはまた十分に得られないかもしれませんけれども、そういうような努力をいたすつもりでございますので、よろしくお願いします。
  113. 板川正吾

    ○板川委員 通産省に伺いますが、物価は公取が介入してはいけないというなら一言だけ言ってみたいのですがね。物価は需給の関係で全く自然にきまっていくものだ、こういうたてまえだろうと思うのですが、たとえば去年の十二月の石油のようにやみカルテルで値上げをした、従来の独禁法からいうと、それはけしからんぞといって勧告をするとカルテルはやめました。しかし、不当に上げた値段はちっとも下がらない。こういう場合に、従来、通産省はどういう立場をとっておりますか。その場合に、たとえば上がりっぱなしでもしかたがないんだ、こういうお考えなんですか。それともどこか物価に介入する官庁がある、その場合に、それはいかぬぞという官庁が日本のどこの省にありますか。それ一つだけ伺っておきますが、そういう場合にどうしたらいいんですか。
  114. 小松勇五郎

    ○小松説明員 やみカルテルにつきましては厳重に取り締まるべきことは申すまでもないわけでございます。(板川委員「どこが」と呼ぶ)それはもちろん公取でございます。  で、先ほど申し上げましたように、悪質なものにつきましては公取さんがどんどん告発をされることは私どもも大賛成でございます。ただ、やみカルテルを取り締まっても値段がなおかつ下がらないという場合は、先ほど申し上げましたことと若干ダブリますが、それがコストアップ、特に昨今のような海外価格の上昇によるコストアップに基づくものであるのか、あるいは物不足、昨今やはりございましたが、物不足による需給関係に基づくものか、あるいは引き続いて地下やみカルテルがあるのか、このいずれかであろうと思います。多くの学者の方々もそういう分析をしていらっしゃいます。もし最後の場合であれば、ざらに引き続いて厳重に取り締まるべきでございますし、各産業官庁も公取さんに協力を申し上げまして、産業にそういうやみカルテルがあるかどうかということの実態の究明につとめるべきであろうと私ども考えております。  ただ第一の場合、第二の場合には、それに応じた独禁法以外の部門での対策が必要であろうかと思います。先般の狂乱物価のときにも、たとえばアルミが値上げをし過ぎまして、通産省行政指導をいたしまして、かなりそれを下げさせたわけであります。そのときに各社別にコストの計算をしたわけでございます。資料も取りまして厳重な査定を加えましてコストの計算をしました結果、これはもうけ過ぎであるというので下げさせましたが、あれば物不足という状態のときでございまして、つまり自由競争原理を否定したわけでございます、ああいう物不足でございますから。つまり独禁法の理念とする自由競争を活発にすれば、ああいう物不足のときには逆に値上げ競争の自由になりますので、あえて行政指導という自由競争と反対の立場をとりまして、ごく短期間、臨時、異常の措置ではございますが、無理やりに下げさせた、企業のほうももうけ過ぎを認めて下げたわけであります。今後とももし政府が価格に介入するといたしますれば、その程度がおそらく限界ではあるまいか、それ以上に価格統制あるいは原価の査定ということに入りますと、八幡のやぶ知らずのようになりまして、統制が統制を呼んで自由競争のいいところはなくなるのではないか。ああいう異常事態につきましては、今後ともそういうことを辞するものではございませんが、現在のように全般的に物が余ってまいりますと、むしろ自由競争を促進するということによって物価を下げるべきである、こういうふうに考えておる次第でございます。
  115. 板川正吾

    ○板川委員 公正な自由競争を確保することによって物価を下げるというのが独占禁止法の目的ですね。いまのお話ですと、何かアルミを通産省は下げさせた、価格に介入したんですね。公取で、違法行為をして上げた分に対して価格を下げさせるというのは、なぜ価格介入として悪いのですか。通産省はよくて公取じゃ悪いというのはどういう論理なんですか。消費者の立場から言えば、高いものを買わされて不利をこうむった人は救済のしようがないのですね。産業官庁でそれをやるから問題がある。たとえば、あとで議論になります原子力の問題にしても、開発する側から安全基準を審議していこうということになるから問題がある。だから産業庁でない、独占禁止法、公取を置いて公取の機能を十分に発揮させることによって物価の安定をはかろう、こういうのが独禁法の趣旨だし、いま資本主義社会がこれを認めておることじゃないのですか。どうも私は、通産省価格に介入するならこれはいいのであって、公取が入ると統制になるからけしからぬ、こういう論理はわからない。しかし、これはいずれもっと双方の意見を正確にまた検討して、あとで議論したいと思います。  価格の公表の問題がいま出ましたが、たとえば電力、ガスなどの値上げの場合に、一応原価を届け出て、いわば公表的な扱いを受けておる。原価の公表をすることが絶対タブーだとか、企業の秘密だからやっちゃいけないなどというのも私はどうかと思いますが、しかしこれはいずれまた正式に機会を見て議論いたしたいと思います。  公取委員長に伺いますが、この改正試案はいつごろを成案の目途とされておりますか。それと、われわれは公取の改正案に対して部分的におおむね賛成です。価格の引き下げ命令の場合は、私どもの案と公取の案は若干違います。私どもの案はもとの値段に戻せ、違法な行為で上げたのは戻せ、しかし半年以内にそれでやっていけないというならば値上げの理由を公開せよ、こういうたてまえをとっておるのです。その点では価格介入という批判をなるべく避けようとして苦心した案ですが、いつごろ成案したいのかということと、この前私がひとつ考えてほしいと言った二十六条の削除、これは消費者の立場からいって、審決した後でなければ請求ができない、審決するまでにはこれはもうたいへんな時間がかかり、高裁、最高裁で争って決着がついてから請求権が発生する、それから裁判になるという状態では、実際二十五条の無過失賠償という条項が生きてこない、二十六条を削除すべきだ、こういう提案を前にしておるわけでありますが、これらについてどう考えられたのか。  それから、公取の専属告発権、これはどうも私は国民の裁判を受ける権利を不当に妨害するような感じがするわけです。公取の専属告発権というのも私は取りはずすべきじゃないかという感じがいたします。そうするとやたらに裁判が多くなって困るというような議論もあるかもしれませんが、私は司法は正義を守り、国民に奉仕する機関でありますからそうあるべきではないだろうかと思います。  時間がないからもう一つ、第三番目ですが、公正取引委員の身分保障というものについて、何かひとつ考慮される点はないだろうか。たとえば名前を公知の事実だから言いますが、長らく公取の事務局長としてやっておった坂根哲夫氏が、公取の事務局長をやめてどこに就職されるかと思ったら、ミスターカルテルの八幡製鐵に入って顧問として召しかかえられている。どうもああいう姿を見ると、生きて虜囚のはずかしめを受けているという感じがしますがね。いままでは公取の育ての親とか何か非常に権威者だといわれたのが、いつの間にか反対側に飼われてその番犬となっている。用心棒になっている。実に痛ましい姿である感じがしますが、こういうことのないように、やはり公正取引委員の身分の保障——法律上ありますよ、ありますが、そういう面の何らかの考慮というのが払われていかないと、公取の運営というのがうまくいかないのじゃないかと思いますが、この点について見解を伺っておきたいと思います。
  116. 高橋俊英

    ○高橋説明員 ただいま御指摘になりました三点のうちで、第一点の二十六条を削除するということですが、私どももそういう点について全く頭の中にないわけじゃないんです。しかし、これはかなり司法当局との考え方調整を要する問題でございます。つまり、審決が出ないうちにすでにその損害賠償の請求ができる、こうなりますと、審決確定後であれば、現在でもそうですが、東京高裁だけがその案件を係属して取り扱えるんですね。その事実の認定については公取の調べを尊重するという規定がちゃんとございます。挙証の問題がございますので、そこでこの二十六条を削ってしまいますと、公取で審理中に常に民間のベースで民事訴訟が提起される。そうすると、だれがその事実審査を行なうかということになりますと、いまの高裁でそれを扱うのはいささか事務的にむずかしいんじゃないかという感じがします。そうすると、地方裁判所にそれを持っていくのかということになると、これはいままでの法体系をアメリカ式に変えることになりますね。第一審が地方裁判所からスタートするということになりますとちょっと問題がある。私どもの審決というものは、審決という名前でありますけれども、この前後の事情を全部読んでいただけばわかりますように、東京高裁と最高裁に行くだけでございますから、三回判決を受け得る、裁判を受ける権利の中の最初の段階であるということになっております。ですから、第一審にかわるものとしての審決でございますので、それを受けないで東京高裁に持っていくということについては、これは法体系上なかなかたいへんな問題があろうかと思います。いまは私この程度に申し上げまして、そのお気持ちはよくわかるんですが、こちらの証拠の取り調べと、それから裁判所の取り調べとが並行して行なわれるというところにダブりがあるわけですね、この点でございます。  それから、九十六条にあります専属告発権の点を直して一般人でも告発できるということになりました場合は、これはさっそく問題を生ずるのは、公正取引委員会が証拠調べをして証拠を持っておるわけです。いわゆるお手入れをしたときには、証拠の相当の量をこちらに持ってまいりまして留置しておるわけです。それによって証拠が解明されますと、場合によっては告発をする、こういうたてまえになっておりますが、それを一般人が告発しようとしますと、そのような証拠というものはあるはずがありません。というのは、伝聞証拠みたいなものになっちゃうんです。そうすると、それをどこの裁判所、検察庁が受け取るかということにやはり問題がありまして、私はこの点あえて無視するわけじゃない。消費者団体の方がたいへん御熱心にこれを主張されておりますが、いまのところではそういう証拠の物件がないということについてどう考えるか、問題があろうかと思います。   〔左藤委員長代理退席、田中(六)委員長代理着   席〕  最後に、せっかくおっしゃっていただいた、公取委員か身分保障があるといっても、それは在任中だけです。早くいえば、五年なら五年の期間だけはよほど悪いことをしなければ首にならないというだけでございます。そういうことがありましても、年齢等もございますが、やめてからあとの保障がない。公正取引委員会のわれわれの場合やっておりますことは、一般の企業家の方から見れば何とにくたらしいやつかということになりますから、就職するといったってそう簡単じゃないと思いますね。民間に頼みに行ったんじゃ、これはもういままでの現役時代にやっていたことが全くパアになってしまうわけでして、人格を疑われることはなはだしいし、私どもいさぎよしとしないわけです。そういうことでありますので、確かに公正取引委員会委員をやった者については、他に適当な就職がない間相当な保障が得られるというふうな、身がってなことを申しますが、そういうふうなことになれば、あとのことを考えずに勇敢にいろいろなものに立ち向かっていける、こう思うのでございます。私は浪人覚悟でございますからいいのですけれども、浪人するというのはつらいことなんです、ほんとうは。浪人したら生活レベルを相当ダウンしなければならないわけですから。それはしかし、そういうことをだれにでも望めというのは無理なんでございますので、たいへん御理解のあるおことばでございますから、何かいつの機会にかそういうことを実現さしていただくと、公正取引委員会はいま一そうぴりっとしたものに……。ただし、私はそうやったからといってやたらに反企業ムードを振りかざす、こういうものではございませんので、その辺は間違いのないように御理解の上で、よろしくお願いいたす次第でございます。
  117. 板川正吾

    ○板川委員 では、もう一つ公取委員長に意見を伺っておしまいにします。公取委員長を解放いたしますが、御承知のように、石油業界がいま値上げを企図しておるようであります。たとえば、日石がガソリンについて十月十六日より値上げをしたい、キロリットル当たり五千円、仕切り値段ですね。昭石が六千五百円、これが十月一日。丸善石油が七千円、九月十六日から値上げをしたいといったのですが、ほかが値上げしないというので十月一日に変更。出光も同じく七千円値上げ、これまた九月十六日に値上げをするといったのを変更して十月一日。エッソが五千円の値上げ、これは十月十八日。モービルが十月十六日より同じく五千円、こういうように、価格が若干違い、日にちが若干違いますが、一斉に値上げをする。この間告発されてまだ決着がつきませんから、この間やみカルテルがあったとは思わないのですが、こういう時期を同じくして少数の企業が値上げをする。大体これは結局は値上げする金額は同じになるかもしれません。高いのが引っ込んで同じになるかもしれませんが、こういう形は公取として調査の対象になり得ますか。
  118. 高橋俊英

    ○高橋説明員 私は、理論上は当然なり得ると思います。実施の時点が違っておりましても、もしもその裏に暗黙の——暗黙といいますか、協定か存在するということであれば、それはなり得ます。ただし、そういうふうにわざわざ時点をずらし、その他、そういってはなにですけれども調整をしながらやっていくということについて、おそらく私は、十分この前の件にこりて、証拠などはないように注意しているんじゃないかと思いますので、ちょっといまのところ手がける気持ちにはなりませんけれども、そういう巧妙な手段が今後ますますはびこっていけばいくほど、私どもは独禁法をどういうふうに使うかということをさらに研究しなければならぬのじゃないかと思います。
  119. 板川正吾

    ○板川委員 じゃ、公取委員長もうけっこうです。  通産大臣、次に石油政策について伺います。  時間が迫ってまいりましたから簡単に申し上げますからしかるべく答弁願いたいと思いますが、大臣は派閥の大会で、政治がこういうような不信のときにはせめて経済がしっかりしなくちゃいけないと大演説をされたのをテレビで承りました。いまの日本の経済で一番問題を包蔵しておるのはやはり石油政策です。石油ショック以来世界経済混乱をしておるわけですが、わが国の当面する石油政策の根幹というものについて伺いたいのであります。  大臣は軍人用語が好きで、喫水線上とか盛んにやりますが、治にいて乱を忘れずというのも大好きなことばだろうと思うのですが、確かに日本人は熱しやすくさめやすい感じがします。ついこの間まで石油問題もあれほど背中に火がついておったように大騒ぎをしながら、もう今日では火が消えたようにだれもこれにあまり関心を持たないような感じがいたします。大臣はこの五月、国会の休みの間を利用いたしましてあわただしく産油国を訪問された。これはけっこうだと思いまして、激励をしたのでありますが、参議院選挙が終わって八月、九月、十月、十一月、この四カ月十分時間があるのに、なぜ産油国外交というのを展開しなかったんだろうか、忙しいときに一週間ほどこちょこちょと行ってきたんじゃなくて、こういう時間のあるときに十分時間をかけて相手側ととっくりと議論をしてくるということが石油政策の今後の上について私は重要だと思うのです。  御承知のように、最近の報道によりますと、サウジのファイサル国王がキッシンジャーに対してこう言っているんですね。われわれは、友人、というのはアメリカでしょう。友人に対する石油禁輸を再び行ないたくはないが、友人が石油戦略の意味を認識しなければ、禁輸を行なうかどうか友人の手にゆだねられておる。われわれの石油禁輸の意義を認識しなければまたやるぞ、こういう見解を発表しておりますし、またヤマニ石油相は、アメリカの手でイスラエルが占領地を撤退するよう説得できなければ今後六カ月以内に中東戦争は再開されよう、イスラエル問題が解決すれば石油価格が下がることを確約できる、大幅な値下げをするよう他の石油輸出国機構の諸国とも話し合い、説得できる、こう言っております報道があります。それから、これはきょうの新聞でありますが、サウジアラビアがアメリカに預託しておった金塊を大半いつの間にか引き揚げた。その引き揚げた理由は何かというと、再び石油禁輸が行なわれるような場合に、アメリカが敵国の在米資産を凍結する、こういう手に出るんじゃないか、それならいまのうちにそっと引き揚げておこうというので、アメリカに預託しておった金を引き揚げたという報道もあります。いわば、いつ第二の石油禁輸、石油ショックがあるかどうか、どうもたいへん物騒な記事が相次いでおるものですから、大臣はこうした中東の情勢、特にOPECの情勢等について、石油政策上どういう判断をされておりますか伺っておきたい。
  120. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この八月以降の私の行動でございますが、私はブラジル、メキシコ、ペルー、あっちのほうへ実は行こうと思っていろいろ準備もしておったのであります。ところが、総理大臣が行かれるということになりまして、私が行くより総理大臣が行かれたほろが効果が大きいですから、総理大臣に行っていただいて私は留任をする、こういうことになりまして、はたせるかな総理大臣が行きましたら大歓迎を受けまして、非常に大きな親善の実をあげてこられました。その間におきましても、エジプトのハテム元副首相に約束しまして、奥さんと子供四人を招待いたしまして、高校生、大学生でございましたが、いろいろ歓待をしましたり、イラクからはアザウィ経済大臣が米まして、経済技術協力協定に調印をしたり親善友好をやりましたり、いろんなことを実はやっておったわけであります。  その間にあって、産油国のほうはどうかというお尋ねでございましたが、やはり行くには行くだけの条件がととのっておりませんと、行ってもまたむなしいということが非常にあるわけでございます。このときに行くことが非常に適当であるというときには、これはもう電光石火やりますけれども、行ってもまだそう意味がないというときには、国費のむだにもなりますから、これは畠重しておる。そういうふうにして、まあ自由な立場でおる、それから、総理大臣が外国へ行かれ、大蔵大臣が外国へ行かれたりしておるものですから、留守居役という形に自然になりまして、国内に経済大臣一人おらなきゃならない、そういうこともありまして、私は残留組という形にもなったのでございます。しかし、その間において、石油関係の情報は緊密にとっておりまして、また必要な人間は派遣をしたり、民間人に行ってもらったりいろいろやっております。  最近の石油国際関係でございますが、私の感じでは、キッシンジャー米国務長官が参りまして、和平につきましていろいろ努力をしております。新聞の報道によりますと、シナイ半島方面においてはやや明るさが出てきておるようであります。だがしかし、ゴラン高原の方面においてはまだむずかしい。しかしまた、一面において、これは日本の外交も積極的に今度はやってもらったわけでありますが、国連においてPLOを招致して演説をさせる、そういうことで、これは一歩前進いたしております。国連における今後のPLOの活動あるいはキッシンジャー国務長官の中東訪問の結果、和平への前進等々につきましては、日本は積極的に外交活動もやってもらうように外務大臣にも進言し総理大臣にも進言をして、いろいろやっておるところでございまして、いま差し迫って石油について緊急事態が発生するという条件は私はないのではないか。むしろ来年に至って、この和平問題が膠着するとかあるいはPLOやあるいはゴラン高原、シナイ半島方面における兵力引き離しあるいはパレスチナ国家の問題等で国際的な停滞が出てきた場合に、アラブ側がどういう態度に出るか。そういう点を非常に用心しながら行くべき段階である、そう感じております。
  121. 板川正吾

    ○板川委員 まあ、私は中東和平が究極的に解決するのには、国連決議の二四二号、これを実行するほかはないと思いますし、また日本はこの機会にアラブの難民救済に対してもっと積極的な救済の手を差し伸べることも一つのアラブ外交の手だと思います。どうも大騒ぎしているときだけ金を出そうというんじゃあんまり現金過ぎるんであって、こういう平時においてわれわれがそういう積極的な態度を示すことも必要じゃないかと思います。  時間がありませんから先へ進みますが、わが国のエネルギー政策を考えますと、原子力にたよっていこうという考え方があったわけですが、あとで議論します「むつ」の事故以来なかなかそうはいかなくなってきている。石炭も二百万トン程度ではもう戦後の状態で、これまた多くを期待するわけにいかない。また、サンシャイン計画といってもこれまた二十年、三十年近くかかるだろう。だから、当面はどうしても石油にたよるほかないということになります。で、わが国の石油政策を考えるときには、先ほど佐野君からお話がありましたが、私のニュアンスは若干変わります。それは中国外交というのが非常に大事になるのじゃないだろうか、こう思います。  アメリカの雑誌によりますと——どうも中国に資源が幾らあるなんていって人の地域の計算をしちゃ失礼にあたるかもしれませんが、「米中ビジネスレビュー」の一、二月合併号では、「中国の石油」というレポートの中で、埋蔵量推定を行なっている。それによれば、陸上油田が六十億トンないし百億トン、オイルシェールから、二百億トン程度として、陸上での総埋蔵量が二百五十億トンから三百億トン、さらに海域油田の推定埋蔵量は二百億トンと見てそれほど的はずれではないとしている。合計四百五十億トンないし五百億トンということになると、これば全ペルシャ湾の埋蔵量と匹敵するぐらいあると言われておる。開発計画はごく微々たるものでありますが。こういうアメリカの雑誌の報道等もあります。さらに、尖閣列島を中心とした大陸だな、あの地域には、これまた中東に匹敵するほどの膨大な石油資源がある、こういう説さえあるわけであります。こういう地域の石油開発をもし日本がやるとしても、それはやはり中国との関係を抜きにしてやるわけにはいかないと思います。ですから、私はこの中国との、まあ開発外交といいますか、こういう点にもっと政府は焦点を当てるべきじゃないだろうかと思いますし、もしそういうものが、たとえば日韓の問題は政府協定ができたのですが、あれはまあ問題があるから前国会で流れておりますけれども、日中のこの協定を結び、さらに日韓を結びという形になってくれば、大陸だなの開発というのは円満にいくだろうと思うのであります。しかも私は、膨大な原油関税というものの少なくとも半分くらいはエネルギー開発のために使う、こういうような構想を打ち出していく必要がある、そしてそれには中国との資源外交というものが大切であろうと思いますが、こういう考え方に対して大臣の見解はいかがですか。
  122. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 中国との石油供給の問題御指摘については、全く同感でございます。われわれもそういう方面に積極的に努力しなければならぬと思っております。  最近の情報によりますと、中国は石油の増産が急ピッチで行なわれておりまして、中国の中でも一体どの程度増産が進むのかわからないというぐらい増産のピッチが早いということも言われております。将来の日本の石油関係等を考えてみますと、供給源を多元化する、できるだけ近接地帯から供給を受ける等々を考え、また日中友好、経済協力という面からも考えてみまして、中国との間に長期安定の石油の供給購入体系ができるということは非常に望ましいことであり、もし中岡側にその用意があれば、政府間の合意をもってそういう長期安定の石油購入等を中心にする合意を、もし先方のそういう御希望や御要望があれば、われわれもきん然としてやりたい、実はそう思っておりまして、そういう考えは公ではございませんけれども、私的に先方に意思表示はしておる次第であります。
  123. 板川正吾

    ○板川委員 ぜひそういうことをこちらからも積極的に呼びかけてもらいたいと思います。  それから、次の問題ですが、先ほど言いましたように、石油会社が最近仕切り値を上げております。私、詳しくまだ調べてないのですが、私の推算によりますと、外資系と民族糸の差が約手円平均あるようであります。値上げ幅を見ますと、外資系のほうが安いということになります。これは平均です。先ほど言った値段はガソリンの値段ですから、平均値じゃありませんから、平均値で計算しますと、約千円からの差がつくということになります。外資系は、御承知のようにメジャーが経営参加料を引かれてもなおかつ安いものがある。バイバックの九三%で買い込んだとしてもまだ安い。九ドル五十セント、九ドル二十セント台で入る。ところが、民族糸でバイバック・オイルを貰う、あるいはGG原油という二とになりますと、どうしても十ドル、十一ドルということになり、とても高くて競争はできないということになります。二のままでいけば、いわば民族系というのは競争から完全に敗退していくほかはない、こういうことになる可能性があると思います。民族系が敗退をするということは、通産省なりわれわれがいままで石油政策として進めてまいりました、三分の一程度は少なくともひもつきでない石油供給源を持とう、こういう方向から見れば問題となるだろうと思います。こういう点について通産省としてどういう見解をお持ちですか、伺いたい。
  124. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御指摘のように、民族系とメジャー系との間にはかなり落差がございます。したがいまして、民族系石油会社の赤字はかなり蓄積されてきておりまして、一部一の会社の中にはかなり憂慮すべき決算状態になってきているものもございます。しかし、そういうことを離れまして、将来の長い目で見て日本の石油政策というものを考えてみますと、石油公団のあり方も含めまして、やはり日本の民族系の石油会社のあり方あるいは編成問題等について、いずれ早晩何らかの対策を講じなければならぬのではないかと私は感じております。ただこれは、官庁側が上から強制的にやるということはできるだけ避けたほうがいい、そういう考えを持っておりまして、内部的にどういう意見があるか、また学識経験者側においてどういうお考えをお持ちであるか等々も考えまして、この問題につきましては慎重に対処していきたいと思っております。
  125. 板川正吾

    ○板川委員 実は与えられた時間があと十分しかありませんから、先へ進みます。  原子力船「むつ」の事故と原子力発電の安全性の問題でひとつ見解を伺いたいと思います。  御承知のように、「むつ」の放射能漏れ事故から一体どういう教訓を得たかと伺いたいのでありますが、事故の原因は報道によりますと、原子炉が一〇〇%稼動したときに毎時間〇・一ミリレントゲン以上の放射能が漏れたときは警報が鳴るという装置になっておったそうでありますが、今回はわずか一%前後の運転ですでにその警報の〇・一ミリレントゲンの二倍の放射能があった。いろいろ検討してみますと、結局これは扱い上の差でなくて、根本的には設計上の差である。格納容器頂部は設計数値の数千倍、容器内は百倍程度の大きな数値の放射能が出るということになっておったというのであります。  「むつ」の事故の責任というのは、どこが一体とるのでしょうか。これは科学技術庁なんですか、それとも原子力船開発事業団なのか、運輸省なのか、原子力委員会なのか、あるいは原子力委員会の中の安全専門審査会が負うのか、三菱原子力工業が負うのか、石川島播磨が遮蔽物関係をやったそうですが、ここで負うのか、一体どこが「むつ」の事故の責任を負うのですか、これを承っておきたいと思います。
  126. 生田豊朗

    ○生田説明員 原子力船「むつ」の放射線漏れの事実につきましては、ただいま先生の御指摘のとおりでございます。この原因につきましては、ただいま主として遮蔽の問題につきまして専門家の手をわずらわしまして検討中でございますが、現在までに判明いたしましたところでは、圧力容器と……(板川委員「それはいい、時間がないから、どこが責任を負うか言ってください」と呼ぶ)そこで、まず原因の探求をすることが第一でございますので、原因の探求をいたしまして、その結果によりまして責任の所在を明らかにしてまいりたいということで、原因の探求を進めている段階でございます。
  127. 板川正吾

    ○板川委員 これは原因といっても大体設計上の誤りだということは、いままでの段階で結論は出ているんじゃないのですか。じゃ、こういう事故が起こった場合に責任を一番先に負うのは、この場合は、科学技術庁ですか、運輸省ですか、どっちですか。行政庁の責任というのはどっちが負うのですか。
  128. 生田豊朗

    ○生田説明員 御質問の点でございますが、いわゆる安全審査の問題かと考えます。  この安全審査の問題につきまして、実は今回の放射線漏れの原因、なぜその間違いが起こったかということでございますが、設計の審査のどの段階でどういうことが起きたか、そこをまず突きとめることが第一でございますので、まずその事実を明らかにし、原因を究明することから始めませんとその辺の責任問題まで確定することができませんので、まず原因の究明第一と、かように考えております。
  129. 板川正吾

    ○板川委員 どこが究明しておりますか。運輸省ですか。
  130. 生田豊朗

    ○生田説明員 これは両省合同でやっております。
  131. 板川正吾

    ○板川委員 運輸省は、船舶局来ておりますか。——いまの答弁についてどう思います。簡単に言ってください。時間がちょっとなくなってきたから。
  132. 内田守

    内田説明員 お答えいたします。  ただいま原子力局長から御説明になりましたように、現在両省合同で検討委員会を設けております。その結論が出ればおのずから責任の所在というのは明確になると思います。
  133. 板川正吾

    ○板川委員 その議論は時間がないからよしますが、これは通産大臣ひとつ閣僚として聞いてもらいたいのです。  こういう事故が起こって、その収拾に鈴木善幸という政党の役員が行って解決に努力された。解決されたことはそれは多といたします。そのことで文句を言うわけじゃないのですが、国民の立場からいえば、この「むつ」の事故を起こした最大の責任者が現地に行って関係者と話し合って解決するというのが、私は本来責任ある行政官庁としての態度だろうと思うのですね。政党の役員に頼んで、その政党の役員がどういう資格で行ったかわかりませんが、官報や公報に、たとえば運輸省や科学技術庁の顧問になったという報道もないのですが、どういう資格か知りませんがその資格で行って、そうして国民の税金を幾ら使うんだということまで取りきめるなんということは、これは三権分立の精神からいっても私はおかしいと思うのです。責任ある行政官庁の長が行って関係者と話し合って解決する——科学技術庁長官、この委員会では大言壮語して、二重、三重にちゃんと防護してあるんだから絶対間違いないと大きなこと言っていながら、実際事故が起こったら説得にも行かない。これは私は、責任ある行政官庁として全く当事者適格性をみずから放棄したいわば恥ずかしい行為じゃないかと思うのですね。それは関係者の責任者が行って話し合って、向こうのいろいろな意見を聞いて説得をして、その中からほんとうの安全、将来の安全に対する反省なりというのが生まれてくるんだろうと思うのです。国会では多数をバックにして大きなことを言っておって、事故が起こったら説得もできないで人を頼んで解決をした、これじゃこれからのほんとうの反省も生まれないし、原子力の安全性というのが私は確保されない、こう思うのですが、大臣いかがですか。
  134. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 鈴木総務会長が行かれましたことはまことに御苦労さまでございますが、私はそれがある意味においては政党政治の妙ではないかとも思います。  つまり、政党というものは、与党でも野党でも、政権あるいは国会と国民との間にある媒体でありまして、ある意味においてはお仲人みたいなこともやっておるわけであります。そういう意味で、政府と国民の間に立って、政府側で科学技術庁長官が行ってやるのが一番好ましいことであったかもしれませんが、諸般の情勢でそれがやりにくいという事情ができた場合には、ピンチヒッターみたいに政党が出ていって、そうして適切におさめる。それを内閣や閣僚協がバックアップして、その得た結論を内閣や閣僚協が承認し、それを実行する。そういう意味で媒体としての役目を果たしておるのでありまして、そこが私は政党政治のまたいいところであり、そういう人材がうんといるということは継投作戦の妙を発揮できる、政党としていいことじゃないかという気持ちもいたします。
  135. 板川正吾

    ○板川委員 そんなことやたらにやっていったら、これは責任の所在が不明確になってしまいますよ。だから、あるいは鈴木善幸さんがあそこでまとめ役として適任かもしれないけれども、それは裏でやるなら政党政治の妙かもしれませんが、行政府の最高の責任者が引っ込んでいて、そういう者が前面に出てやるというのは、私は一つの綱紀紊乱のもとをなすものと思うのですね。だから、裏であっせんするなり話し合うというならある程度わかります、政治家というのは国民との話し合いがうまいんだから。そういう意味ではわかるけれども、責任がないですよ。そういうあり方は私は問題だと思います。これはいずれ臨時国会で出てきたならば議論したいと思います。  時間がありません、もう一言ですが、この「むつ」の問題を私はなぜ取り上げたかといいますと、「むつ」のこの事故の経験を生かして、原子力発電に「むつ」の二の舞いを踏んでもらいたくない、こういう気持ちがあるからであります。「むつ」は一隻ですよ。しかし、原子力発電というのは、御承知のようにいま手をつけたのを合わせると二十三基もあるわけです。もし、どこかで「むつ」のように設計上の大きなミスがあり、出るべきところでないところに放射能が漏れてというようなことになれば、これはもう全般的な地域住民の反対にあって、それこそ軽水炉のいまの発電装置というのは全般的にとめられるというおそれがあるんじゃないでしょうか。「むつ」の場合には、最悪の場合には海のもくずじゃないけれども、漂流させてもいいという気持ちまで持ったようでありますが、原子力発電所はそういうわけにいきません。ですから、私はこの「むつ」の経験を生かして、原子力発電で「むつ」の二の舞いは踏んでもらいたくない、踏むべきではない、踏んだらたいへんなことになる、こういうふうに考えるわけでありますが、通産大臣、一体どういう自信がおありですか、その点を簡単に説明してください。
  136. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 原子力発電に際しましても、御指摘のように「むつ」の教訓は生かさなければならぬと思います。特に設計の安全審査の段階、それから工事実施の施工の検査、あるいは運転中の諸般のチェック、そういう問題についてはいままで以上に関心を持ち、またその制度がそれでいいかどうか、強化しながらやっていかなければならぬと思っております。そういう点も含めまして、通産省に原子力部をつくりまして、技術陣や審査機関の強化を実は来年度からやりたいと思っております。
  137. 板川正吾

    ○板川委員 この「むつ」の問題で、通産省なり科学技術庁というのは開発を促進するサイド、そういう使命を持った役所であります。しかし、この安全を審査するところは、ほんとうからいうと、先ほどちょっと言いましたように、組織を変えて国家行政組織法第三条による三条機関としたほうが私は妥当だと思うのですね。公取とかあるいは人事院とかあるいは公安委員会とか、こういう三条機関で、独立して中立的な立場で厳密に審査をするという形のほうが私は国民の信頼を得ると思うのです。  今度の「むつ」の事件でも、それは鈴木さんもそうですが、あれを解決したのは田島教授ですね。原子力委員を首になった田島教授ですよ。田島教授が行って漁民と一緒に船に乗り込んで、これはだいじょうぶだ、こう言ったら漁民の人たちも田島教授を信頼して、じゃ入港を認めようということになったのでしょう。結局は信頼ですよ。信頼というのは、科学技術庁は信頼しない。それはあぶなくてもそんなものはたいしたことはないといってどんどん進めようとする側の意見というものはどうしても信頼できない、だから別個な独立した機関でやるという必要がある。原子力委員会法律を見ますと、原子力委員会というのはいかにも組織法上の三条機関のような書き方をしている。公正取引委員会、原子力委員会、同じような形をしておりますが、結局はこれは第八条の八条機関です。補助機関ですね。だから、決定権もないし、自分の意見を十分に反映するわけにいかない。原子力基本法の原則というのは民主、公開、平和利用の原則ということになっておる。しかし、民主的ではないし、公開も十分なところはしない、こういう運営をなされている。もしこれが、三条機関で独立した原子力委員会ということであれば、私はこの原子力三原則というのがもっと忠実に履行されるだろう、同時に国民も原子力委員会というのを信頼するだろう、こう思うのです。安全専門審査会長の内田東大教授は、何ですか、設計のことはわれわれは書面で審査をするのであって実際はちっとも見ていない、こういうようなことを言って逃げておるのですね。だから、そういう開発サイド、こういうものが持っておるというのじゃ国民は信頼しない。これから原子力開発というのは確かにエネルギー政策として重要だと思うのです。その場合には、どうしてもやはり私は第三条機関のように独立した権限を与える、そうして原子力基本法にきめてある民主、公開、平和利用という原則を守って国民に信頼されながら進めなくちゃいけない、こう思います。ひとつぜひ御検討願いたいと思います。  最後に一言ですが、御承知のように通産省は、この八月総合エネルギー調査会の答申をもととして、昭和六十年度に原子力発電六千万キロという計画を立てております。大体これを推進いたしました稲葉原子力委員が、「むつ」の経験からいってこれはどうも六千万キロは無理だ、この際これは計画を変更してやはりもっと安全性を確認しながら慎重にやるべきだということで、自分で提案をしておきながら自分で最近は変更しようということを言っておるようでありますが、「むつ」の経験から通産省としては六十年、六千万キロワットの原子力発電というのを見直す考えはございませんか、いかがです。
  138. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その計画は原子力委員会で大体お立てになった計画で、通産省もその側面から合意をしておるものであります。したがって、これは原子力委員会のほうのお考えが中心で、もう一回再検討していただくならしていただく、まだ原子力委員会が意思表示する前に通産省が意思表示することはちょっと適当でないと思いますので、差し控えさしていただきたいと思います。
  139. 板川正吾

    ○板川委員 では、科学技術庁はこの問題についてどう考えておりますか。
  140. 生田豊朗

    ○生田説明員 先生指摘の原子力委員の稲葉先生の案でございますが、六千万キロワットを達成いたしますにつきましてのいろいろ問題点が出てまいりますので、その問題点を十分検討し、詰めていかなければいけないという御趣旨でいま先生御自身が作業中のものでございます。  開発の目標につきましては、まだ現在の段階でどうすべきかということまできめておりません。今後原子力委員会におきまして慎重に検討いたしまして、計画を変える必要があれば変えてまいるということになろうかと考えております。
  141. 板川正吾

    ○板川委員 これで終わりますが、いずれにしましても「むつ」と原子力発電では規模が違いますし、また経済に及ぼす影響も非常に重要ですから、絶対に間違いのないようにするためには、いたずらに開発の点ばかりに重点を置かずに、この「むつ」の経験を生かしてひとつ安全性というものを見直して慎重に開発すべきだということを要望して終わります。
  142. 田中六助

    田中(六)委員長代理 神崎敏雄君。
  143. 神崎敏雄

    ○神崎委員 私は初めに確認をしておきたいのですが、通産省は今後の石油政策の中で石油備蓄能力を高める方針を発表しておられますが、その際石油備蓄基地をどの地点に敷設するか、こういうことは非常に重要な課題の一つになってくる、これは必至であると思います。わが党は石油の適切な備蓄それ自体には異論はないのでありますが、問題は備蓄基地を設ける際に、周辺地域住民の意思が十分反映されるかどうか、合意が得られるかどうか、こういうことであります。この点については今日まで中曽根通産大臣は、住民の意向を無視して強行設置などはしない、こういうことをしばしば言明され、私も聞いているのですが、この考え方は今日もまだ変わっておらないか、こういうことを確認をしたいと思います。
  144. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 変わっておりません。
  145. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そこで、御存じのようにすでにいま全国各地で石油基地の新増設をめぐって問題が起こっております。その一例をあげますと、愛媛県の新居浜港で出光興産の石油配分基地を黒島という地区に新設をする計画ですが、これが発表されてからいま問題になっております。この件について当局はどういう判断をしておられるのか、また県や市に対してどういう態度を出されたのか、事務当局から伺いたい。
  146. 熊谷善二

    熊谷説明員 お答えいたします。  出光興産が御指摘の黒島地区におきまして、現在新居浜市の中須賀町にあります油槽所を移設する考え方で、数年前そういう話があったわけでございますが、その後地元のほうにおきまして、とりわけ漁業補償の問題もございましていろいろ話し合いが進んでいたわけでございますけれども、最近市議会その他の地元での反対の意思がはっきりしてまいりましたので、出光といたしましてはここに建設することは困難である、そういう判断ですべてを白紙に戻しているというのが現状でございます。
  147. 神崎敏雄

    ○神崎委員 白紙に戻しておるという結論が出ているならけっこうなんですが、先般私もそこの実地調査をやってきたのでありますが、これはもう一回問題点を明らかにしておきたいと思うのです。  この計画というのは、約四千五百平米を埋め立てまして、そして二万四千平米の石油配分基地をつくって、そこの現在六基のタンクを九基にふやす、貯蔵能力を現在の八百八十六トンから一万五百トンにして、年間取り扱い量を三万トンから十万一千トンに増強する計画であります。  さて、そこで問題になったのは、昨年十一月十三日に工事業者が公有水面の埋め立て許可申請と漁協、地域、すなわち黒島ですが、この自治会の同意書を市当局に提出をいたしました。そして、それを提出した後ことしの三月にこれは国も認めた、こういうことを現地ではいわれております。ところが、地域の自治会では、これは何ら自治会にはかっておらない、討議をされておらない、一方的に一部幹部がこれに同意をしておったということが明らかになった。そこで大きな問題になって、三月二十日に初めて住民の意思、総意を聞くという形で自治会総会が開かれました。その結果としては、基地設置に賛成する人が六十二、反対が百二、白紙一、そこで昨年の十一月十三日の自治会長名で出した同意書はもちろん否決され、にせであったことが暴露され、自治会長は責任をとって辞職した。なお、さっきも言いましたように現地調査をやってまいりましたが、この地域は六百五十戸の家屋が密集いたしまして、しかも前はすぐ海なんです。すぐうしろは山、海岸から山まではわずか二百メートルという非常に狭隘な地域なんです。そこで、昨年来よく頻発しましたようなコンビナートの火災やらそういうような事故を想起いたしまして非常に不安を持っている。なお、石油火災あるいは石油公害の不安またはタンクローリーの交通事故、騒音それから漁場汚染などで現地の人は非常に強い反対をいまやっておりまして、そういうようなことで、いま事務当局は白紙に戻したと言われておるのでございますが、念のために、大臣が先ほどいまも変わっていないとおっしゃったので、さらにもう一ぺん聞きたいのですが、そういうようなことですから、どうかひとつ地域住民の納得のいくまでこの工事をやらせない、強行させない、こういうような指導をすぐやっていただきたいということと、それともう一点は、その地域はそういう石油基地になるような現場ではない、こういうふうに私も見てきて思うのですが、大臣、そういう指導をしていただけますか。
  148. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あくまで地元住民の意向を尊重してやるように指導いたします。
  149. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それでは、地域にそのように伝えて安心をさすようにいたします。  そこで、質問に入りますが、まず第一に、私は今日コーエン教授の発言もあり、ますます国民の間に重大な関心事となっておる日韓経済協力の問題について質問をいたします。  まず、戦後前例のない危機に見舞われている繊維産業と関連いたしましてお聞きしたいのですが、御承知のように、全国の中小繊維業者の共通した切実な要求の一つは、韓国等からの逆輸入の規制であります。そこで、糸及び縫製品の韓国からの輸入量は今日昨年に比べてどれほどの量となっておりますか、これをひとつ知らせてほしいと思います。
  150. 橋本利一

    ○橋本説明員 韓国からの輸入でございますが、現在八月まで数字が入っておりますが、ことしの一ー八月について韓国からどの程度繊維製品を輸入したかということでございますが、約四億ドルでございます。これは昨年に比べまして八三%増、その間における全世界からの輸入量が約十三億ドルございますので、韓国からの比率は全体の約三割程度になるわけでございます。  ただ、昨年と比べますと、まだ八割程度の増加ということになっておりますが、御承知のように昨年は七月以降輸入がふえてきておりますので、この期に当たる前年同期におきましてはさほど高い輸入レベルになっていなかったというところから八割程度のアップになっているわけでございますが、数字的に見ますと、本年初頭におきまして毎月大体六千万ドル程度輸入しておったものが最近では四千万ドル程度、若干ながら三割程度月ベースの輸入量は減少しつつあるわけでございます。   〔田中(六)委員長代理退席、左藤委員長代理着   席〕
  151. 神崎敏雄

    ○神崎委員 時間の割りに聞くことが多うございますので、ひとつ簡潔にお答えを願って、私も早口になるきらいがありますが、どんどんと聞いていきたいと思います。  そこで、第二に伺うのは、いまもお話がありまして、八月までの資料がお手元にある、こういうことですが、私の調査によりますと、ことしの一月から七月の累計で人繊、長糸ですね、これの韓国からの輸入量は昨年比、一六七〇%になっております。綿糸は三二五%に激増しております。糸類の総輸入量の三二・七%は韓国からの輸入であります。糸類、織物、衣類、二次製品、すべてを含めたことし一月から七月の韓国からの輸入は、いまもちょっと触れられたのですが、もう一回聞かしてほしいのは、まず第一に金額にして幾らになるのか。いま六億ドルとおっしゃったですね。それから二番は、それは前年対比何%に相当するか。三番は、それはまたわが国の繊維総輸入額の何%を占めるのか。この三点について明らかにしてほしい、こういうことです。
  152. 橋本利一

    ○橋本説明員 韓国からの輸入量は、一−八月で合計いたしますと四億六百万ドルでございます。前年同期比一八三%、総輸入に占める割合は三〇%でございます。
  153. 神崎敏雄

    ○神崎委員 私のほうの資料が七月の資料ですのでいまの答弁とは少し違いますが、そういうことであるということだけははっきりしたということで、この問題はこれでけっこうです。  そこで、第三に伺いたいのは、全体として政府の総需要抑制策は中小企業と国民生活を犠牲にして進行している、そして不況下での物価高、これが進んでおるというのが今日の現状なんですね。中でも中小繊維業者の在庫、滞貨、この量が増加いたしまして、この輸入激増は一段とその滞貨いわゆる在庫の上に重くのしかかっておることは非常に明らかであるということになるわけですが、その点はお認めになりますか。
  154. 橋本利一

    ○橋本説明員 現在の繊維不況の原因はいろいろございますので、必ずしもどこまでが輸入による在庫の増加であるかということの判断は非常にむずかしいと思います。もちろん需要の問題もございますし、あるいは金融引き締めの問題もございます。しかし、いずれにいたしましてもかなり輸入がふえておるわけでございますから、それが在庫積み増しの大きな原因になっておるということは否定できないと思います。
  155. 神崎敏雄

    ○神崎委員 在庫の増加原因になっていることは否定しないと言いますが、繊維産業の不況との関係は認められますか。
  156. 橋本利一

    ○橋本説明員 不況の原因の一部をなしておることは否定できないと思います。
  157. 神崎敏雄

    ○神崎委員 全面的にお認めになられたのでけっこうであります。  そこで、四番に聞きたいのは、わが国の繊維全体の輸入量は昨年対比一二二%です。ところが、韓国からは一七一%であります。金額で見ますと、全体が昨年比一七二%、韓国からは二一八%です。なぜ韓国からの輸入が激増しておるのですか。その原因は一体何か、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  158. 橋本利一

    ○橋本説明員 一般的に申し上げまして、開発途上国では工業開発をはかるその先兵的な意味合いで繊維産業をそれぞれの立場で育成していると思いますが、その中でも特に韓国では繊維産業に重点を移して工業開発をはかっておる、その結果かと思います。
  159. 神崎敏雄

    ○神崎委員 次に、日本銀行発表の資料によりますと、四十九年三月末現在わが国企業の直接投資を許可した実績では、繊維が全体の三四・三%を占めておるのです。韓国の報道によれば、日本の独占資本が韓国の化学繊維生産の五〇%、合成繊維原料の九一%を支配し、韓国の日本向け総輸出の三〇%は日本商社を通じて行なわれているのであります。こうした状況のもとで韓国から日本へ繊維輸入が激増しておる。  そこで、九月十日当委員会においてわが党の野間議員が韓国の輸出五カ年計画に触れ、それに対する政府の態度をただしましたが、中曽根大臣は、韓国がおやりになることでわれわれがとやかく言えないと答弁をされました。これは重大な発言でございまして、韓国がどのような輸出計画を立てるのかは、これは韓国の主権に属することであります。同時に、わが国がどのような輸入政策をとるかはわが国の主権に属することであります。そこで、波打ちぎわで適切な措置を講ずるべきではないのか、それとも対韓国にはそれもできないのか、あるいは放棄しておられるのか、これをひとつ大臣からお聞きしておきたいと思います。
  160. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 波打ちぎわで適切な措置はやっているつもりです。たとえば生糸の輸入等につきまして、蚕糸事業団における一元的輸入に踏み切りました。これらにつきましては、韓国の大使館を通じあるいは中国の大使館を通じてそれぞれの話し合いをいたしまして、了解を求めて実はやってきておるわけであります。あるいはそのほか絹織物製品の輸入等につきましても、国内業者指導等は行政指導でやっておりまして、それはおのおのやっておるわけでございます。
  161. 神崎敏雄

    ○神崎委員 次に、昭和四十七年十月二十日、対外経済政策推進関係閣僚懇談会が開かれております。その際いろいろの拡大策をきめているのですが、その中で「輸入が急増し、国内産業に被害を生ずる場合には、適切な措置をとる。」ということになっておりますが、この事実はお認めになりますか。
  162. 橋本利一

    ○橋本説明員 そういうことになっておると承知いたしております。
  163. 神崎敏雄

    ○神崎委員 認められたら、今日の段階でどういう措置を具体的におとりになっているか、その中身を説明してください。
  164. 橋本利一

    ○橋本説明員 直接的には輸入規制措置の導入ということでの御質問かと思いますが、輸入規制措置の導入につきましては、やはり国民経済的な立場あるいは国際関係、さらには繊維産業自体のあり方の問題とも関連して、慎重に審議すべき、検討すべき問題かと考えておるわけでございます。特に昨年の秋のオイルショック以来、非常に世界各国の経済が不安定になっておりまして、そういったところから、ともすれば各国ともに封鎖的な経済に走ろうとしておる、そういう段階で日本が輸入規制に踏み切る場合には、各国ともこれに右へならえをするというようなことになりまして、結果的には、日本が加工貿易国であるという立場から、一番輸出の面等においても影響を受けてくるという点もございますし、かたがた先ほど来韓国からの製品輸入についてのお話があったわけでございますが、製品輸入全体として比較いたしますと、昨年でも製品の輸出は十億ドル程度輸入を超過いたしております。ことしの一−八月につきましても、すでにやはり八億ドルの出超になっておる、そういう状況でございますので、輸入をとめて輸出を自由にしておくということも、筋論としてなかなか通らない面もあるということもございます。さようなところから、輸入規制に踏み切るということは非常に問題があるかと思います。かといって、国内の需給動向を無視するような大量の製品が輸入されるとか、あるいは粗悪品が通関してくるということになりますと、それは繊維業界のみならず消費者に対しても非常な迷惑をかける、かような観点からいわゆる行政指導を強化しております。  現在問題のある物資につきましては、その実情を調べると同時に、関係商社等を指導すると同時に、一方で輸入統計が輸出統計に比べますとまだ十分整備されておらないという点もございますので、統計の整備をはかる、また一方で先行指標をとりたいということで、輸入の成約統計の準備をいたしておりますが、これにつきましても、それができ上がるまでの間、輸入組合等の協力を得ながら、事実上さような指標をとることによって行政指導を展開しておる、今後もそういった方向でさらに行政指導を強化してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  165. 神崎敏雄

    ○神崎委員 わが国の輸出入のいわゆるバランスについていま質問しているのじゃないのです。韓国の繊維がなぜ全体から見てこれだけの高いパーセンテージになっておるのかという根拠について伺って、しかもいわゆる繊維産業の不況はそういう発展途上国からの輸入品、なかんずく韓国を集中して聞いているのですが、それが昨年から見てはるかに大きな額になっておることがいわゆる今日の繊維業界の不況に拍車をかけ、重くのしかかっておる。それは局長、一ぺん全国の繊維業界等を——朝からもずいぶん質問されたのですが、出てくる話は主として金融とこの逆輸入の問題ですよ。これは加藤さんもずいぶんおやりになったのですが、どこへ行ってもそれですよ。そういうことで、一般論にならないで、私の質問しておる重点は、韓国との関係にしぼって聞いているのですから、一般論のほうへひとつぼやかしていくということは避けていただいて、私も知っておりますのは、次に聞きますが、ガットは自由貿易を円滑に推進する目的のためにこそ設けられたのである、その条項を適用することは、国際的にも認められておるのですね。さらに、貿易管理令など国内法の幾つかでも法的に輸入規制をすることは可能である、私はこう思うのですが、行政指導という範囲の中にいま私が指摘するようなことが含まれておって、それに基づいておやりになっているのですか、せなければならぬという形で放置されておるのか、そこをひとつ明確にしようじゃないですか。
  166. 橋本利一

    ○橋本説明員 御指摘のように、輸入貿易の管理の問題につきましては、国内法のほかに、ガットの協定あるいはことしの一月一日から施行されておりますガット繊維多角協定、いろいろな協定もあるわけでございますが、そういったものについてももちろん要件を充足するということが必要であるわけですし、こちらとしてもその要件に合致するかどうかということをもちろん検討する必要もあるわけでございますが、問題は要件を充足しておるがゆえに直ちにさような規定を発動していいかどうかという決断問題あるいは総合判断の問題に当たってくるかと思います。先ほどからお答えいたしておりますが、さような規定は存在しておるわけではございますが、やはり現在時点におきましては、先ほど申し上げた国民経済的な立場あるいは国際経済関係あるいは繊維産業自体の立場からいたしまして、そういった法的手段に訴えるよりもむしろ行政的な指導、状況によりましては国内における一方的な行政指導のみならず、やはり関係のある国とも情報交換をするといったような措置も必要かと思いますが、いずれにいたしましても現在の時点で繊維産業が非常に不況におちいっておるということは私も十分承知いたしておりますので、総合的に判断いたしまして、なおそういった法的手段に訴えることなく、行政指導で当面秩序ある輸入を実現してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  167. 神崎敏雄

    ○神崎委員 昨日の読売新聞で、日銀の首脳の話ですが、繊維産業の不況は、発展途上国からの輸入品の急増が大きく影響しておる、ここに問題点があるということを発表されておることもお読みになっておられると思うのですが、どうも実際の現実というものをあまり把握しないでものを言われたり、あるいは見ておられる。これは意図的におやりになっているならまた別ですけれども、ほんとうにそういうふうな形に一般的にしか見ておられないのだとしたら、ぼくはやはり主務省として、責任の省として、あるいは責任の立場にあるあなたとしては、もうちょっと具体的な実情を握った上で手を打っていこうということにしないと、現状はあまりにも深刻ですよ。法律を使うことはどうかと思うとか、いまはどういうふうに考えているとか、いよいよこれから何とか考えなければならぬというような、そういう現状ではない。だから、われわれは行ってみて、これはほんとうにただごとでないというような状態なんですね。しかも、そういうような法律的な保障もあるのだから、なぜそれをお使いになってやらないか、こういうふうに思うのです。韓国からの逆輸入がわが国の繊維業界を非常に苦しめているという影響は、これはもうたいへんな状態ですが、具体的に産地とかあるいは業者等のところへ行って、局長はわれわれと同じようにそういうように感じませんか。
  168. 橋本利一

    ○橋本説明員 繊維の各産地とも非常に深刻な状況にあるということは私たちも憂慮いたしておるわけでございます。特に最近、倒産に至らないまでも、一部大手筋におきまして一時帰休者あるいは希望退職者等を募るといったような事態にまで進展いたしておりますので憂慮いたしておるわけでございますが、ただ先ほど申し上げたような一般的な問題のほかに、たとえばガット十九条を適用しようとする場合にはやはりそれに対する代償を支払う必要がございますし、あるいはことしの一月から施行に移されております繊維多角協定の第三条のセーフガード条項を発動しようとする場合には、過去一年間の実績を保障しなくちゃいけないといったような、ここでセーフガード条項を発動すると、過去一年の最も高かった輸入水準を保障するといったようなことになってまいりまして、むしろ実態に沿わないということもございまして、屡次繰り返しておりますように、行政指導を強化しておるというのが現状でございます。
  169. 神崎敏雄

    ○神崎委員 時間の都合でこれについての追及はまた次の機会にしますが、とりあえず具体的な処置をとってもらうということを強く要求しておきます。  次に、韓国に対する政府の姿勢は国民にとってとうてい理解できない。ただいまの問題でもそうですが、引き続き私は問題を変えて伺いますが、金大中事件以後、日韓閣僚会議は開かれていないわけですが、この間の日韓経済協力の折衝はどうなっておるのか。これは事務レベルの交渉もないのかどうか。あるいはプロジェクトの要請はなかったのかどうか。もしあれば、その中身を知らしていただきたい。
  170. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 金大中事件以降におきます日韓間の経済協力関係につきまして簡単に御説明申し上げます。  まず、その以前七二年に第六回日韓定期閣僚会議が行なわれまして、そのときに日本側から意図表明をしている経済協力がございまして、これが二件ございます。商品援助と輸出産業育成の援助でございますが、それぞれ百五十四億円、六十二億円につきまして、七三年に入りまして、十二月でございますが、交換公文を行なっております。  それから、これは昨年十二月、定期閣僚会議では経済協力を討議しないということになりまして、日韓間で実務者会談が行なわれたわけでございますけれども、その機会に従来から一これも初めは七二年の第六回の閣僚会議で日本側が意図表明をいたしましたいわゆるセマウル運動、韓国の農業開発に関しますプロジェクト援助に関しまして、七二年に意図表明しました二百四十六億円に加えまして八億二千万円、これだけを追加するという意図表明をいたしました。それからまた、同じような農業開発を主とするプロジェクトでございますけれども、大清多目的ダムというものの百十八億円余につきまして、これも意図表明をしたわけでございまして、この二件につきましては意図表明をしたにとどまりまして、その後まだ交換公文に至っておらないわけでございます。  その後、ことしに入りましてからは新規の援助要請が韓国側から参っておりません。したがいまして、今後事務的にどうするかということでございますけれども、これは先方から要請が参りました段階において、どういうふうに進めるかということを韓国側と話し合いたいと考えておる次第でございます。
  171. 神崎敏雄

    ○神崎委員 ことしになってからは何も入っておらない、こういうことが明らかになりました。  それで、こちらからの調査団というものが派遣されたことはありますか。続いて、派遣された場合、調査団を派遣されてその結果不成立になったような案件があれば、どのような案件が不成立になったかということを聞かしてください。
  172. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 ことしに入りまして、技術協力の関係調査団を一組派遣しております。これは従来から要請があったものでございますけれども、さらに本年の四月になりまして要請が参りまして、本年の七月から調査団を派遣した件でございますが、これは韓国の東海岸に北坪地区というところがございますけれども、ここの港湾計画につきましてどういう計画をつくればいいかということの技術協力の調査でございます。それで調査を完了いたしまして帰ってまいりまして、現在報告書を作成中というところでございます。
  173. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そうすると、いまおっしゃった四月に要請があって、七月に北坪ですか、港湾の技術協力をやって、それをいま報告を作成中、こういうことですね。そうすると、一九七四年の対韓経済援助として予定されておる計画というものはないということですか。もしあれば、その内容と金額を明らかにしていただきたい。
  174. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 七四年、ことしにはいりましてから資金協力については新しい要請はないわけでございますけれども先ほど説明しましたセマウル運動につきまして、これは先ほど申し上げましたように意図表明を終わっただけでございますので、これを実施に移しますためには交換公文を今後行なうということでございます。これは先ほど説明しましたように、七二年からの懸案の問題でございますけれども、これがまだ交換公文という形に実っておりませんので、これが今後交換公文のできる段階になれば、交換公文をするということになるかと思われます。  それから、新規の援助につきましては、先ほど申し上げましたようにまだ要請が参っておりませんけれども、これの要請が参りますれば、そのときに、はたしてそれが民生安定のためのいい内容なのかどうか、これを検討するということになると考えております。
  175. 神崎敏雄

    ○神崎委員 問題がだいぶ明らかになると同時に、私はいよいよ日韓問題についてのいわゆる経済援助にまつわる問題について疑問を深めてくるわけですが、たとえばここに東亜日報という韓国の新聞がございます。これは聞くところによりますと、政府寄りの新聞だそうですけれども、この新聞の九月十三日付で、一九七四年度日韓経済協力懸案事業として、財政借款一億四百万ドル、商業借款二億八千万ドル、推進中の事業分九億四千五百万ドル、合計十三億二千九百万ドルが予定されておる、こういうふうに報道しているのです。もし、これが事実だといたしますと、日本の対韓援助額の総累計、すなわち一九五九年から一九七四年六月までの十五年間の総計、十四億九千七百万ドルに匹敵する。したがいまして、十三億二千九百万ドルですから、十五年間に相当するものが来年度一年で計画されておる。そういうことをいま外務省当局が全然しておらないと言われるのだったら、これはどういうことになるのか。この東亜日報の報道というか、韓国朴大統領政府というか、これは根拠のないことを自国でやっているということになるし、もしそのことがほんとうであれば、この国会の場であなたが明確に先ほどから答弁されているように、何もないのに一方的にこういうことになるのか、あるいはこの報道なるものが架空なものであるのか。これは記録に残さなければならぬし、後ほど重要な問題になるので、この点ひとつ明らかにしていただきたい。
  176. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 いま先生の御引用になりました東亜日報紙の記事、私まだ見ておりませんけれども、しかしいまあげられた額ということは全く考えられない数字でございます。
  177. 神崎敏雄

    ○神崎委員 日本の外務当局の責任ある方が、国会の場で、この韓国側の発表は認められない、いまこういうふうにおっしゃったのですね。知らないと言われたのですか、認められないと言ったのですか、見てないと言ったのですか。
  178. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 いま申し上げたのは、私どもまだ見ておらないと申し上げたわけでございます。
  179. 神崎敏雄

    ○神崎委員 新聞を見てないということと知らないということとは違うと思うのですね。当局が話し合いをされておったら、新聞に載ろうと載るまいと、話し合われていることは現実として存在するわけですね。話し合われていることが現実に存在するから報道機関は報道するのですね。ところが、一つも現実的に交渉されてないことが報道されたということになれば、これは架空の報道ということになるのですが、そこの問題が大事なのです。何もやってないというのをこれがかってに書いたということになれば、これは誤報どころか、一つのまあ言うたらまぼろしの記事になるのですか。その点どう位置づけるのですか。
  180. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 私どもまだその新聞の記事を読んでおりませんので、それを見て調べたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、それが韓国側の正式な発表ではないわけでございますし、内容的に私どもとしてこの場でお答えできるのは、ちょっと考えられない数字ということでございます。
  181. 神崎敏雄

    ○神崎委員 新聞を見てないとか見ているとかいうことを論旨の中心にしているのじゃないです。この中身にある、いま読み上げたようなことは何もない、財政借款一億四百万ドル、商業借款二億八千万ドル、推進中の事業分九億四千五百万ドル、これにかかわるものについては一切話し合いは進めておらないのか、おるのか、その点を聞いておる。
  182. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 そういう話し合いは進めておりません。
  183. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そうすると、進めてないことがここに報道されたということになれば、この新聞は虚偽の報道というか、とにかくないことを書いたということになるのですが、あなたは責任をもって発言をされているのですから、それでけっこうです。  次に、私は国鉄に聞きますが、国鉄が現在わが国の新幹線の設置、営業に際して車両その他、必要物資、工事を発注している企業はどういう企業ですか。
  184. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 お答えいたします。  本年度の予算の金額でございますが、総額六千八百億でございます。
  185. 神崎敏雄

    ○神崎委員 発注している企業はどこかと聞いておる。
  186. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 企業の点につきましては、国鉄から答弁させます。
  187. 鈴木秀昭

    ○鈴木説明員 私の所管事項でございませんので、本日資料を持ってまいりませんでした。
  188. 神崎敏雄

    ○神崎委員 では、あとからそれを資料としてここへ出されますか。
  189. 鈴木秀昭

    ○鈴木説明員 担当部局に申しまして、資料を出すようにいたします。
  190. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いたしますと言われたので、それでけっこうです。  そこで次に、新幹線をわが国で初めて運行するまでに、安全性の確認とかいろいろ技術問題の解決に何年ぐらいかかられたですか。  それともう一点、時間がないから、国鉄新幹線の技術陣といっても、民間の技術者を相当含んでおると私は思うのです。独立した技術者だけではやれないと思うのですが、この二点について答えてください。
  191. 鈴木秀昭

    ○鈴木説明員 御質問の趣旨につきまして、まことに申しわけございませんが、私は新幹線総合計画部長でございまして、これからの五新幹線を担当しているものでございまして、いまの先生の御質問内容について答える担当でないものでございますから、それも追って御説明させていただきたいと思います。
  192. 神崎敏雄

    ○神崎委員 担当でないのでさっぱりわからぬから、あなたの確実にわかっていることをあなたに聞きましょう。  それはどういうことかといえば、先ほどから外務省は、韓国について、ことしになって折衝もなければプロジェクトの要請もないということになっておったのですが、韓国の新幹線建設に協力するために調査団を国鉄当局から派遣をされたのか、してないのか、これを簡潔に答えていただくと同時に、外務省も続けて、そのことを承知しておったかどうか。まず、国鉄から聞かしてください。
  193. 鈴木秀昭

    ○鈴木説明員 韓国の新幹線の問題ではございませんで、韓国のソウル−釜山間の現在線の診断をしてくれという話がJARTSといいます海外鉄道技術協力協会にございまして、海外鉄道技術協力協会から国鉄に委嘱をされまして、そしてそういう新幹線をつくるという問題ではなしに、現在線の輸送能力等について、韓国の経済学者グループ等々とフリートーキングをいたしました。  以上でございます。
  194. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 外務省としては、そういう話を聞いておりましたけれども、これは政府ベースでございませんので、正式なルートで向こうから要請があって外務省のほうで話をまとめたという案件ではございません。
  195. 神崎敏雄

    ○神崎委員 重要な段階にきていよいよ時間かなくて困るのですが、私の調査によりますと、この計画はかなり具体的に進行していると判断しておるのです。調査団が派遣された事実がそれを物語っておる。というのは、外務省の話によれば、かつて調査団を送った上で取りやめになったプロジェクトはほとんどない。鉄道界の期待も非常に強いのです。つまり、日本の関係者の間ではこれは広く知られておる、非常にまた関心も強い、これが現状なんです。国鉄当局も技術問題、それもいまカーブの問題、そこだけがちょっと課題になっているのだ、こういうふうに言われております。そこでまた、これは国鉄の総裁ですが、あなたは何か新幹線と違うというような話をされているが、「藤井松太郎国鉄総裁談、韓国側の新幹線計画が本決まりになり、両国間の協力体制ができれば、国鉄はこれに全面的に協力するつもりだ。」と総裁は言っておるのです、新幹線と。ここには「ソウル−釜山新幹線建設、国鉄が技術協力」、こういうふうにいっているのです。そこで、あなたは六月に新幹線総合計画部長鈴木さんとして大塚さんと一緒に行かれているのですね。もう時間がないからすぐ答えてください。これはどうですか。
  196. 鈴木秀昭

    ○鈴木説明員 JARTSの職員として行ってまいりました。
  197. 神崎敏雄

    ○神崎委員 総裁の話はどうです。
  198. 鈴木秀昭

    ○鈴木説明員 総裁談の出された新聞につきまして、総裁が実際にどのように発言されたか私は存じておりません。
  199. 神崎敏雄

    ○神崎委員 あなたは国鉄の新幹線総合計画部長でしょう。(鈴木説明員「はい」と呼ぶ)あなたはそれで、国鉄の総裁の言われている二とで、韓国へ一カ月も行ってこられたのでしょう。それであなたが、あそこではカーブがどうだこうだと言って援助してきたのでしょう。そういうこともみなないのですか。
  200. 鈴木秀昭

    ○鈴木説明員 韓国の新幹線の問題という問題では全然ないのでございます。ソウル−釜山間の現在あります鉄道……
  201. 神崎敏雄

    ○神崎委員 言いわけだったらよろしい、こっちが読みますから。  これは四月二十七日の日刊工業新聞に、さっき言ったように「藤井松太郎国鉄総裁談」、もう一ぺん読みますよ。「韓国側の新幹線計画が本決まりになり、両国間の協力体制ができれば、国鉄はこれに全面的に協力するつもりだ。」とはっきりと載っているのですね。新幹線の総合計画部長がこういうことを知らなかったら、国鉄というのは伏魔殿みたいなことになりますよ。新幹線、中身は。あなたはここでは知らぬと言ったらそれでいいと思うかもしらないけれども、それでは事が済まぬということになるのと違いますか。
  202. 鈴木秀昭

    ○鈴木説明員 韓国の現在の鉄道は、国鉄の新幹線のゲージと同じゲージでございまして、韓国が新幹線を敷くというような考え方は向こう側では持っておりません。したがいまして、韓国がいま問題にしておりますのは、輸送力がないものですからどうしたらいいのかということについて診断をしてくれというので、フリートーキングをしてまいっただけでございまして、韓国側も新幹線を敷くということは一言も申しておりませんでした。
  203. 神崎敏雄

    ○神崎委員 とにかく韓国の釜山からソウルといったら距離もそう遠い距離ではありませんね。二時間ぐらい短縮するのでしょう。しかし、いまわが国の新幹線の車両を最近の発表では取りかえる、こういうことをいって安全点検の技術者の人手不足を解決する一方、古い車両を修繕する、そしてその古い車両を修理して韓国に持っていくのではないか、こういううわさも流れている。国鉄に群がる大企業は膨大な数にのぼるので、あなたはあとで資料をお出しになるらしいのですが、工事だけでも大成建設など大手を先頭に十七社に達するのですが、こうした大企業から圧力も加わって政府借款を引き出して韓国の計画を実現させる、こういう可能性も動いておると考えられるのですね。たとえば日本車輌製造株式会社はすでに四十八年三月、韓国機械工業と技術援助の契約を結んでおるのです。高級客車等の現地国産化に協力するという動きも出ている。なぜ、いま日本国鉄が韓国の新幹線建設に全面的な協力を必要とするのか。ソウルと釜山の間はいま言ったように新幹線を建設して二時間余り時間を短縮する、こういうことなんですが、韓国の国民経済、国民生活の発展にこういうことがいま求められているのかどうか、こういうふうにわれわれは思うのですが、事実状態としてこういうことが現実上動いているということ。だから、先ほどもおっしゃったように、金大中事件以後断絶する危険がある、こういう憶測も一部にありましたけれども実態はこの間も両国の経済関係は一段と日本の大企業の進出の方向に進んでいる、こういうふうに見るべきであると思います。また、韓国からのプロジェクト要請はまだほかにもあるのと違うのか、こういうふうに思うし、またベース間での折衝も当然やられているのではないか。いま外務省はやってないというのですが、こういう問題は今後そういうことになる場合は一々こういう国会の場で明らかにするのかどうか、これもひとつ簡潔に答えていただきたい。事実こういうことになっているのを、あなたはやはりここでも知らないとおっしゃるのですか。
  204. 鈴木秀昭

    ○鈴木説明員 韓国のこのソウル−釜山間の問題につきましては、私の行ってまいりました韓国側の感じでございますが、韓国の鉄道は新幹線をひとつも考えておりません。むしろ電化をすべきであるのか、線路をもうふやしたほうがいいのであるのか、非常に迷っている段階でございまして、現段階でも私は韓国国有鉄道がそれをどう考えたらいいのかという段階で、新幹線をつくるというような計画がすぐ具体的に行なわれているとは、帰ってまいりましてからはひとつも接触がありませんのでわかりませんけれども、私、おりました間、向こうの責任者は韓国が新幹線を敷くという意思をひとつも申しておりませんでした。むしろ現在の複線をもう複々線にしたらどうなのかとか、いや、それでなしに電化をしたらどうなのかとか、アメリカから機関車を買ったらどうなのかとかいうような、そういういろいろなことをきめるのに迷っているというような感じを私は受け取りまして、新幹線の日本の車両が韓国に行くということは、いま現実に架線も張られておらないわけでございますので、すぐそのようになるような感じは事実的には私、感じられませんでした。
  205. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 最近の日本と韓国の経済協力関係の政府レベルにつきましては先ほど説明したとおりでございますが、民間レベルの話し合いというものは私ども全部一々承知していないわけでございますけれども、民間の協力はあるべき姿でしかるべく進んでいるということに承知しております。  今後どうするかということでございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、新しい要請があればその段階で検討したい、そのときに相手と事務的な折衝をしたいということでございます。
  206. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それでは、こちらから紹介します。  「国鉄関係筋が二十六日明らかにしたところによると国鉄は韓国鉄道庁が総工費約二千億円(二千二百五十七億ウオン)で計画しているソウル—釜山間(約四百四十瓦キロ)の新幹線建設に技術協力することになり、この六月に新幹線総合計画部の鈴木秀昭部長ほか数名を約三週間にわたって韓国に派遣する。これは同鉄道庁がさる二月、国鉄にこの計画の建設推進についてフィジビリティ調査を要請してきたことに応じたもので、国鉄が外国に対し新幹線建設に技術協力するのは、これがはじめて。一方、これと合わせ、世界銀行も同鉄道庁の要請により、やはり六月にこの鉄道プロジェクトに対する借款供与についての調査を開始することが伝えられている。」これほど具体的に、金の手当てからいた人の名前からすべて書いているのに、そこにいた御本人であるあなたが、そういうものではないと言いました。いまのことを聞いたら、私は係が違うと言って、みな答えられない。あなた自身がおやりになったことでもそういうふうに言われる。  委員長、これは国会審議に対して非常にふまじめな態度を国鉄がとっていると私は思いますよ、特に総裁の談話についても——それは本人じゃございませんからね。この総裁の談話をさいぜんも読み上げたのですが、ひとつこれは総裁を呼んで、この談話を——また新聞がかってに書いたと言うかどうなのか。あるいはあなたがお帰りになって、この問題を総裁にじかに聞いて、すぐ文書で答えてほしい。というのは、いま国会は休んでいますから。そういうことをひとつ委員長から言ってもらいたいのと同時に、いまのこの読み上げたことをあなたは否定されるのか肯定されるのか、もうこの一言です。
  207. 鈴木秀昭

    ○鈴木説明員 総裁には、帰りまして先生の本日のことはお伝えいたします。  韓国での内容は、韓国は新幹線をつくるというような問題ではございませんで、輸送診断でございました。(神崎委員「これはうそか」と呼ぶ)私はそう思います。
  208. 神崎敏雄

    ○神崎委員 すでにいまここでやりとりしている姿を見ても、わが国政府と韓国との間にますます私たちは疑惑を持たなきゃならぬことが多々あるわけです。韓国に進出したわが国の大企業はこういうことになっているのですよ。韓国のセメント生産の五一%を支配している。原料シェアでは鉄鋼材の九〇%、石油化学製品の八五%を支配するなど、基幹産業のほとんどを握っている、貿易面でも、韓国の総輸出入額の三〇%を日本商社がになうという重大な役割りを果たしておる。日本政府は韓国の要請にこたえて、この経済的自立のために援助するんだ、そういう責務がわが国にある、こういう答弁を繰り返しているけれども、しかし日韓経済協力の実態は両国の国民、とりわけ労働者あるいは中小零細業者にとって何ら利益をもたらすものではないと韓国の新聞に書いてある。最近韓国の世論の中にも、経済援助を主軸にした経済のいわゆる自立化を成就するということは実現不可能な妄想である、こういうものが多く見られるわけです。したがって、今日の日韓経済協力の本質は、わが党がかねてから指摘してきたように日本の独占資本の侵略的な進出であって、これはアメリカの対韓援助削減との関係から見れば、日本がアメリカの極東戦略の肩がわりを果たしておるということが歴然なんですね。加えて、五月にソウルで行なわれた第三回日韓議員懇親会の席上で金首相が、一衣帯水の韓日関係は、他国とは異なって友好関係プラスアルファがなければならない、こう発言しているのですね。このことば、利権がらみの政治的な癒着関係の存在を半ば公然と認めた、こういうふうに理解する向きもあるということを聞いております。  以上の点から見て、私は、アメリカの対外侵略の下請をしながら、国民を犠牲にして、日本の大企業に荒かせぎをさせる、こういう経済援助は直ちに打ち切るべきだということを強く表明して質問を終わりますが、特に新幹線問題については、委員長一言、記録に残してもらうために、総裁談話の問題とこの信憑性について文書で明らかにしてもらうことを宣言してください。
  209. 左藤恵

    左藤委員長代理 ただいまの神崎敏雄君からの申し出につきましては、委員長において善処し、それを明らかにするように要請することにいたします。  米原昶君。
  210. 米原昶

    ○米原委員 時間がありませんから、比較的簡単な問題一問だけ質問いたします。  というのは、先日一週間ほど鳥取県に行きまして、各階層の人たちと懇談会を持ったわけですが、鳥取市で中小商工業者、零細業者、そういう人たちと懇談会を持った中で実は具体的な問題として出ている。もちろん不況とインフレが重なり合って出ている現在の情勢の中での中小商工業者の困難な問題が訴えられたわけですが、簡単にいいますと、例の昨年の十月から発足した小企業経営改善資金融資制度、いわゆる無担保無保証の融資制度の問題です。不況で仕事がなくなっているという問題は、建設関係あるいは軽電機関係の人たちから訴えられましたが、鳥取のような場合、あまり大企業がないので、むしろある意味ではあまり先鋭な問題は出ていないのです。しかし、その中で、大体金融の問題が出てきておる。どのくらいの金が要るんだという話が出たところが、低い人で五十万円、高い人でも三百万円、そのくらいの金がいま融通がついたら何とかなるんだというような意見がかなりたくさんあったのです。商工会議所の事務長も出ておりましたし、去年きまった無担保無保証の融資というのはどんな状態だろうかと、私のほうから質問した。ところが、実績があまりよくないですね。いろいろ聞いたところが、零細業者のほうから逆に商工会議所に対して質問が出た。とにかくえらいむずかしいことを言っておるわけですね。現に、私たちの席の前で、商工会議所に入ってもらわなければなんということを・事務長が言い出した。中小企業庁が出しておられる指導要綱にもそんなことは書いてないのです。ところが、指導要綱の中に、例の商工会議所のほうがいろいろ経営改善の指導をやるということが書いてあって、六カ月間にわたってやるというようなことが書いてあって非常にそれがうるさいのですね。そのために実際上は、あの金はもう借りたくないという空気になってしまって、県や市が小経営の融資制度ですね、これをやっておりますが、信用保証協会が保証してくれさえすればすぐ貸してくれるのです。そのほうがはるかにいいというので、ほとんどそれに集中してしまっている。政府のほうじゃ今度ワクを広げられたようですし、確かに出されているのですが、これは土地によって非常に違うのじゃないかと思います。商工会議所があの中小企業庁の出された指導要綱を文字どおり忠実にやった場合には、実際にはほとんど金が借りられなくなっている、こういう実態を見てきたわけなんです。その点でこれは、あんなもの要らないのじゃないか、実際は。いま不況の問題が中心になってきていて、もっと簡単に金が借りられないものかといっているときに、あれが非常にじゃまになっている。せっかくああいう融資制度をきめられても実効があがってない。鳥取市の場合、政府がきめられたワクのまだ九割ぐらいしか申し込みがないのですね。そういう実態だということがわかったので、この点を変えられる意思があるかどうか、その点を私は聞きたいのです。
  211. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 鳥取の例を見ますと、昭和四十八年十月から四十九年九月までに貸し付け実績として百四十二件、一億八百万円。その内訳は、会員企業が七十八件、五五%、商工会議所の非会員企業が六十四件、四五%、わりあいに実績はあがっているように思います。もし要らないというなら、ほかでもっとよこせ、よこせという会議所がありますから、そっちへ回してもけっこうです。しかし、できるだけ経営指導を受けられてこれを消化していただくほうが地元のためになるのではないか、そういうふうに思います。
  212. 米原昶

    ○米原委員 まあ、いまのお話だけれども、大体九割消化されているわけですね。それはほかと比べてどうか知りませんが、さらに今度はワクが広がったわけです。その中で商工会議所自身が言っているんですが、あまりやってこられない。ところが、零細業者のほうは、あんなめんどうな指導をやられたのじゃかなわぬ、それよりも市や県庁に行ったほうが簡単だ、こういう実情になっている。大体この問題が最初にこの商工委員会議論されたときにも、中曽根大臣自身が、これはもちろん指導は入っておりますけれども、とにかく零細業者に簡単に金を渡せるようにする、金融のほうに重点が置かれているのだということも発言されているわけです。ところが、何か実際上は六カ月間もいろんな状況を調査しているようないまのやり方ですね。これは実情にそぐわないじゃないですか。大体が国民金融公庫の金を何か商工会議所の承認がなければ金融できないというようなことは、一体法的にどうなんだ。実際は選別融資ですよ、これは。そういうことを商工会議所にやらせることが一体金融として正しいのかどうか、こういう点、疑いを持たざるを得ないのです。あの指導要綱というものは、実際には守ってないところもあるかもしれませんけれども、あんなものはやめるべきじゃないか、こういうことなんです。
  213. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 商工会議所や商工会は経営改善等のために行なわれておる公益法人、公益団体でありまして、そういう意味において、たとえば民主商工会のような任意団体とは性格が違うわけであります。そういう点から、公共性のある公益団体でありますから、その経営改善事業に協力する一環として金融措置も認めておる、そういうことでありまして、私の聞いている範囲ではこれは非常に活用されておって、この間も足利の商工会議あたりでは、五千万円ぐらいよけいふやしてくれという御希望も参議院選挙中にございました。やはり各地で自分のほうをふやしてくれという要望が非常に強いようであります。したがって、鳥取県におかれましてもそういうように積極的に指導をされて、それを消化され、小規模事業者にほかの県と同じように恩典があまねく行き渡るように協力してもらいたいと思います。
  214. 米原昶

    ○米原委員 これで質問をやめようと思ったのですが、いま言われたので一言。  商工会議所は公益法人ですが、しかしこれは商工会議所に入ることを義務づけられておるわけじゃないですよ。任意団体ですよ。公益法人とはいいながらこれは任意団体です。そういうものにこういう権限を与えることが法的に正しいかどうか。国民金融公庫の法律によったってそういうことは矛盾してくるんじゃないか。実際上一種の選別融資です。そういう形になっているじゃないか。この点、どうでしょうか。
  215. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この小規模零細経営改善資金の恩典を受けている方々は、会員もありますし、非会員もあるわけです。非会員も、いま大体四五%と御報告申し上げました。それを担当する場合に、まあいままでならば県庁とかあるいは通産省とか、そういう官庁がわりあいにそういうところに介入して審査したりしたわけです。あるいはそのための中小企業金融機関がやっているわけですが、そういう銀行とか公庫とかあるいは官庁とかという官僚的なそういうものでない、自分たちと同じように商売もし、税金の苦しみも知っている人たちはよく中身がわかるし、そして手の届いた指導がやれる。そういう意味で経営指導をやっておるそういう団体に頼んでおるわけでありますから、私は、官僚的なやり方を排した民主的なやり方として一歩前進したやり方である、そういうふうに考えます。
  216. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、商工会議所でなくて、現にこれは国がこの制度をとる前に方々の府県で、いわゆる革新自治体といわれるところでは無担保無保証のをやっているわけです。この場合はほとんど信用保証協会に委託してやっているわけです。そういうことでもいいじゃないですか。そのほうがむしろ筋が通っている。何か商工会議所にこれを握らせるというのは、実際上は矛盾を起こしているんです。そういう点でぜひ考えていただきたい。こういうことを申し上げまして、時間がありませんから、この問題は別の機会に詳しく質問します。
  217. 左藤恵

  218. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は前国会、予算委員会におきまして、特にやみカルテルの横行しておる実態等を取り上げまして独禁法の強化、改正を訴えたわけでございますが、公取としては四十八年度におきまして六十六件勧告をなさっておられるわけです。昨年の九月からいわゆる狂乱物価ということになりまして、あの四月から九月までの時点におきまして二十三件勧告がなされておったと思うのですが、同じ時点をとらえまして、この九月の時点ではどのくらいの件数が勧告としてあがっておるわけでございますか、事務局でもけっこうですが。
  219. 高橋俊英

    ○高橋説明員 四月から九月までの段階では二十七件でございます。
  220. 近江巳記夫

    ○近江委員 昨年の九月の時点で二十三件という点からいたしますと、むしろ昨年よりも上回っておる、こういう企業の姿があるわけでございます。こうなってまいりますと、どうしてもこういうやみカルテルを取り締まっていくためには、通産省は告発すればいいということもおっしゃっているわけですが、やはり骨である独禁法自体を強化、改正をしていく必要がある、このように思うわけでございます。独禁法研究会の金沢会長が、たしか九月十八日だったと思いますが、公取委員会の改正試案骨子を発表されまして、それ以来各方面に非常に大きな反響を呼んでおるわけでございます。その中で特に政府・自民党、通産省、財界等に非常に批判的な意見が強いということが伝えられておるわけでございますが、公正取引委員長としては、この骨子を発表されて以来、各方面の御意見はお聞きになっておられると思うのですが、どういうような感想をお持ちでございますか。
  221. 高橋俊英

    ○高橋説明員 私ども、まず関係のある官庁の御理解を得るために、こちらから積極的に出向きまして説明を行なっております。事務当局が鋭意つとめておりますが、それらについての反響というものは、大体まあ趣旨はわかるが、方法論に問題があるというのと、趣旨もそうであるが、その中身の個々の問題についてどうも賛成できぬ点が多い、こうおっしゃる官庁、いまの段階ではまだ資料が十分に行き渡っていない、求められた資料を私どもできるだけつくって説明させるようにしておりますが、さりとてそうお求めになるものがそのまま的確に入るわけではございませんから、そういうことで手間どっておりますが、もう少し時間をかければ説明そのものは十分にできるようになると私は思います。  そして、空気全体として、私、まとめて申し上げることは非常にむずかしい段階でございますが、いわゆる財界等におきましては、私どもの感じるところでは、個別にここが何ゆえにいけないという指摘はないのです。はっきり申し上げますとそういうことになってしまう。まあ言ってみれば、これもいやだ、あれもいやだということなんでございまして、結局何ということはない、どれもこれもみな反対だというふうなことでございまして、たとえば一つの例を申し上げますれば、分割の対象になるのではないかというようなうわさが立てられた以上は、これはもう全くそういう点では反対であるというようなことで、これは理論の問題よりは実利、自分たちの立場から反対せざるを得ないというふうな空気でございます。  でありまして、私どもとしてはもっと、たとえば経済界の方々に接触いたしまして事情を申し上げると同時に御意見も承って、われわれの考え直すべき点があればそれに応じたいと思っているのですけれども、どうもそういう明らかな御指摘が少ないというふうに感じておりますが、自民党の独占禁止法懇談会におきましてはいろいろな方々を呼んで説明を求めておられます。  そういう段階でありまして、まだ全体の形勢についてどうこうまとめて申し上げるには少し時期尚早であるというふうな感じがいたします。
  222. 近江巳記夫

    ○近江委員 参議院の商工委員会におきまして、わが党の桑名議員が質問したわけでございます。そのときに中曽根大臣は、この案は公取委員長の私の案であるということをおっしゃったと思うのでございますが、これは御承知のように公取の独禁法研究会におきまして十分な論議を尽くされまして、そこで出てきた案です。当然いわゆる決議もそこでやっているわけです。そういう案がはたして公取委員長の私の案であるのか、この点についてもう一度確認しておきたいと思うのです。
  223. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は「しあん」と言ったので、それが試みの案であるか私の案であるか、その中身までは言ってないはずであります。それを私の案とおとりになった方もありますが、試みの案とおとりになった方もある。ただ、高橋委員長のお話で、これは公取として委員会できめたものです、そういうことを委員長はおっしゃっておりますから、それはそうですがと、私ら局外者でありますから、そういうふうにお聞きしておるわけであります。
  224. 近江巳記夫

    ○近江委員 ですから、大臣がおっしゃった「しあん」というものは決して私の案ではない、試みる案であるということは再確認されたわけですね、もう一度お伺いしたいと思います。
  225. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 委員長がそうおっしゃいますから、一応そういうことでございますかと承っておるわけです。
  226. 近江巳記夫

    ○近江委員 何となしに非常に思わせぶりないまの御答弁だと思うのですが……。  それからさらに、内閣にいわゆる審議会を設ける。これは実際審議会を設けて専門家を呼ぶ。この独禁法研究会では日本の有数の専門家が集中して討議をやっているわけですよ。これは何のための審議会かということになってくるわけですが、結局そこで審議を何年も何年もやっていくということになってくると、法案の提出もできない。こうなってきますと、明らかにこれは法案引き延ばしの審議会であるということがいえると思うのです。その点について、どのように大臣はお考えですか。
  227. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 われわれのほうの事務当局が、公取の独禁懇談会でしたか研究会でしたか、それにお出になった学者等についてまた御意見を拝聴してみますと、それらの方々も部分的に反対のお考えを持っている方がかなりあるようです。たとえば価格引き下げ命令というものについては非常に多くの学者が、独禁法研究会の中の学者でも反対していらっしゃる。また、分割に反対していらっしゃる方もあるし、賛成していらっしゃる方もあるし、黙っていらっしゃる方もある。そういうニュアンスはあまり表へ出てきておらないようです。それから、委員にいたしましても、橋本委員とか呉委員とかあるいは法務省から来られておる委員とか、おのおの独自の見解をお持ちになっている。それも表へは出てきていない。しかし、われわれとしては力を尽くして、われわれのほうで考えをまとめるために、学識経験者として個々別々に御意見もまた聞いておるわけです。これは通産省独自の立場で学識経験者の意見を聞くという意味でやっておるわけです。  そういう点から考えますと、これはやはり内閣の審議会のようなところで皆さんが意見を公開で述べて国民の前に明らかにして、そして一つ一つ固めていかなければ片手落ちのものになるだろう。この前昭和三十年の初めに改正をやろうとしたときもやはり審議会を設けてやったという例もございます。独禁法のようなものは、いわば経済の憲法に当たるものであります。あるいは経済の基本法に当たるものであります。原子力基本法を改正するといったら、これは大騒ぎになるでしょう。それと同じ程度に、経済界や産業政策をやる者にとっては公正取引に関するこういう基本法というものは大事な問題なのであって、そう軽々にやるべきものではない。したがって、内閣のようなところで審議会を設けて衆議を尽くしてやるということが適当な手続であろう。その前に、自民党内部においていろいろ倉成委員会でやっておりますが、内部においてまず消化するということが大事ではないか。われわれは党員でありますし、政党政治でありますから、まず党の意見もよく拝聴し、われわれの意見も党の中で言わしていただいて、しかるべくいろいろな手続が終わったあとでやはり内閣の審議会に持っていく、それが正しい態度ではないか。しかし、その審議会に持っていく前にも提案権がどこにあるかという問題があります。これは総理府ではないかと思いますが、総理府は総理府でまた独自の考えがあるのではないかと思います。ですから、そういう意味においで、これは手続上も、内容的に見ましても慎重にやるべき性格のものである、そう心得ております。
  228. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどいわゆるやみカルテルの数をお聞きしたわけですが、九月の時点で、昨年度は二十三件、ことしは九月の時点で二十七件。あれだけ世論のきびしい批判を受けながら二十七件。これは独禁法の中身になってくれば、きょう与えられた時間も非常に少ないわけですからそこまで触れることはできませんけれども、これだけのいわゆるやみカルテルをやって価格を引き上げる、もしくはそのままである。これでは公取として原状回復命令を盛られておるのは私当然なことだと思うのです。わが党の案でも第一番にこれをあげておるわけであります。いまこれだけの公共料金の大幅な相次ぐ引き上げ等で第二の狂乱物価が起きよう、そういう心配がされているわけです。そういう時代にまたそういう審議会を設けて、長時間かけて検討していく、これでは私はやはり時代に対処することができぬと思うのです。この点いま大臣はそういう御見解をお述べになったわけですが、公取委員長としては、中曽根大臣のそうした御意見に対してどのようにお思いでございますか。
  229. 高橋俊英

    ○高橋説明員 その前に、先ほど事務当局から私が耳で聞きまして二十七件と申したのは二十三件の誤りなんでございまして、昨年と全く同数でございますから、この点は訂正しておわびさせていただきたいと思います。  いまの主として審議会の議論でございますが、独占禁止法の改正のための研究会、これはそうそうたるメンバーを、粒をそろえて、しかもこれだけ、たとえば箱根で正味五日間、合宿ですね、討論を午前、午後にわたってやりましたときに、そのほかのときでもそうでございますが、会長の金沢先生が発言をさばき切れないほど非常に熱心な討議が行なわれまして、どなたもどんどん発言する。一つはやはりそういうところにおいて、もちろん私どもは参加しておりますけれども、自由に自分の意見を述べられるということでございます。これは公開でも同じでございますけれども、遠慮なく言えるというので、賛成論もあれば反対論もある。ですから、先ほどちょっと何かそれらの先生の中に、暗に案に対して反対の者が多かったように受け取られるあれがありましたけれども、それはその場に居合わせました私ども、それから金沢会長自身がまとめられたあの案に対して、全員その討議が済んだあとにおいては、これはこの発表でいいという承認をいただいて箱根で発表したものでございます。私は、そういう審議会みたいなものでもあれ研究会でもあれすべてそうであるべきであって、その結論が出るまでの過程においてはさまざまの意見があります。しかし、やはり突き詰めたところ総括としてこうなければならぬというときには、小異を捨てて大同につくというのが当然である。そうでなければどこまでいってもまとまらないわけでございますから、そういう意味におきましては、私どもは正味の時間におきましても相当長い時間を費やし、そしていろいろな反対論をもちゃんとこなした上でつくり上げたものである。それに基づいてつくった試案でございますので、なるほどその場に居合わせなかったという理由でその過程が不満であるとかということはございましょうが、また私どもの公取委員会の内部の意見がどうして外に漏れているか——漏れていると申すのはなんてすか、私は事実が曲げられておると思います。その言われるとおりではございません。具体的な人の名前をあげて言われるものですから……。それは部分的にこの点は自分は反対であるという例はあります。しかし、何か高橋委員までが反対だったと言われるのは私としてははなはだ心外でございます。それはごく手続的な意味において、たとえば分割の場合の商法の規定との関連をどうするか、しかしこれはすでに答えは出ておるわけです。商法は、まずこちらが、規定としては分割の規定というのは入れなければならぬ。これに非常に重点を置いているというわけではございませんが、規定というものは置かなければいかぬ、そのあとで法務省に法律改正を求めるというふうにしようじゃないか、こういうふうになっているわけでございますから、そういう点について何か——そうすると残るところはもう二人しかなくて、二対三できめたみたいになってしまうのは、私はこれははなはだ遺憾でございます。そういう点については、私はその事柄について外へ出ること自体もふしぎと思いますが、そこまで私は発言を制約しません。しかし、何か無理押しで通したと言われても、これははっきり申せば合議体で多数決だということがうたってあるわけでございます。しかし、その多数決の程度でございますが、ひどくぎりぎりの多数決であったというのでは実態と少し離れているのじゃないかと思いますので、この点はあわせて申しますが、審議会をつくってやるのも一つ考え方でございましょうけれども、いま自民党でそれにかわるだけの措置をすでにとられておるということも考えて、私どもはその推移を見守っておりたいし、見守るだけでなくて御理解を得るように努力したい、こう考えております。
  230. 近江巳記夫

    ○近江委員 委員長としては、わが国の最高クラスの人を集め、そこでほんとうに一致した意見である、審議会等は好ましくない、こうしたお答えであったと思います。  そこで、国会におきましても、公取委員長は来国会何とか提出をしたいということをおっしゃっておりましたが、しかし確かに壁はそういうように非常に厚いわけでございますが、これは国民のためにも、公取委員長、ひとつがんばっていただいて、ぜひともこれは提出をしていただきたいと思うのです。  それで、この中身の問題になってきますと、わが党の案からいきますと、いわゆる状況証拠主義の問題であるとか、再販の全廃であるとか、不況カルテルのそうした問題であるとか、合併規制の問題であるとか、そういうところが欠落しておるように思うわけでございますが、しかしいまの独禁法からいきますとこれは非常に前進した案であるし、よくおまとめになったと思っております。評価いたしておるわけでございます。そういう点におきまして壁は厚いけれども、ぜひともひとつその努力をやっていただきたいと思うわけでございますが、ひとつ公取委員長の決意をお伺いしたいと思います。
  231. 高橋俊英

    ○高橋説明員 むろんああいうものを出しました以上、私どもとしては全力を傾注して御期待に沿いたいと思います。ただし、私どもやはりいろんなものの環境の中にあるわけでございまして、そういうものにあまり悪意に受け取られるということのないように注意して、十分なとは申しませんけれども御理解を得て成案にこぎつけたいということをひたすら念願しておりますので、さように御了解をいただきたいと思います。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、なおかつそういう壁が厚いということであれば、われわれそれぞれ独自の案は持っておるわけでございます。提出もしておるわけでございます。各党力を合わして議員立法でも出す。私たちとしてはそこまでも腹を固めておりますし、非常にきびしいと思いますけれども、これはひとつ全力をあげてその提出に努力していただきたいと思うのです。  そこで、法改正に伴ういわゆる予算の裏打ちの問題であるとか、こういう点はぜひとも来年度の予算案に盛り込むべきである。そういう手続等もやっていただきたいと思いますし、あるいは公取自体、国民が最近はその必要性というものは非常に認識を持ってきておるわけですが、もっとPRをする必要があろうかと思いますし、そのための予算等は十分にひとつ要求もしてもらって、われわれも御協力申し上げたい、このように思っておるわけでございますが、そういう点、委員長として今後さらに努力をしていただきたい、このように思います。  では、公取委員長はけっこうです。  次に、経企庁長官にお伺いしたいと思いますが、経企庁の四十九年度の経済実績の見込みと五十年度経済見通しの試算結果によりますと、当初見込みの、二・五%というものを下回って、マイナス一、二%前後になるんじゃないか、戦後初めてのマイナス成長を記録するんじゃないか、そういうように予想されておるということを聞いておるわけですが、本年度の実質経済成長率の見通しと五十年度の見通しについての見解をひとつお伺いしたいと思います。
  233. 内田常雄

    内田国務大臣 お尋ねの件につきましては、いろいろの積み上げ作業と申しますか、専門用語によりますと段階的接近法という方式と、それからもう一つは、経済企画庁が持っておりまするマクロモデルという、コンピューターにいろいろなファクターをインプットいたしまして、それによって結論を出す方式、この両方の方式から目下検討中でございます。最終的な結論にはまだ達しておりませんけれども、しかしこれまでのそうした作業を通じて私どもが推測をいたしますところによりますと、私が従来申しておりますように、四十九年度はゼロ成長を含む低成長というようなことはまず間違いあるまい。当初の見通しはいま近江さんからお話がございましたように、四十九年度実質成長率二・五%というような見込みを出しておりましたが、それが四十八年度の第四・四半期、つまり本年の一−三月はあのような状況のもとに実質成長率がかなり大きく落ち込みました。それから四−六に向かって若干の回復はいたしておりますけれども、それは一−三月の落ち込みをカバーするまでに現在至っておりませんし、これから十−十二月、あるいは来年の一−三月などの推移につきまして、さきに述べましたような方式で推算をいたしましても、一−三月の落ち込みをカバーしてそれから上に出るということはたいへんむずかしい、こういうようなことが見取れます。それがマイナスの一%であるか二%であるか、あるいは〇%フラットであるかということは、もう少し詰めて検討いたしませんと、申し上げても動くと思いますが、右のような状況でございます。
  234. 近江巳記夫

    ○近江委員 五十年度についてはどういうように思われるかという点ですね。それから、いままで平均一〇%前後の実質成長率で来たと思うのですが、本年度はいまおっしゃったようにマイナス、こういうような方向になってきますと、日本経済のこういう基調というものが非常に大きく変化してきておる。そこで、今後こういう事態に対処しましてどういうように政策転換をやっていくかという問題があるわけでございますが七時間の関係もありますから簡潔にあなたのポイントをひとつお答えいただきたい。
  235. 内田常雄

    内田国務大臣 四十九年度は少しずつ経済の成長率が上昇をたどっておりますが、先ほど申し述べましたように、四十九年度全体として見まするとフラット、すなわちゼロ成長を上に出ることはまずない。ということは、一−三月はかなりのマイナスであったが、四−六、七−九とたつに従って少しずつ上がっておりますので、それをさらに来年度に同じような条件のもとに延長をいたしますと、五十年度は、大きくはございませんけれども当然プラスになってまいります。ことに四十九年度が非常に低いところからだんだん上がっていきますから、四十九年度のげたの関係を考えましても、五十年度は、これはもちろん一けた台の数字でございましょうけれども、特に総需要の抑制をゆるめるとかあるいは金融引き締めを手直しするというような特別のことをしなくても、五十年度はプラスになることはまず間違いないと思います。  しかして、現在の状況が、まだ物価の状況が完全に鎮静をしたとも思えませんし、いろいろ警戒を要する面もございますので、これから先の経済指導政策につきましては、従来とってまいりました総需要抑制、金融引き締めというものの進め方を緩和するとかあるいは手直しをするとかいうたてまえはとりませんが、御承知のように、一方におきましては、ある分野におきましては非常な不況とかあるいは雇用の問題なども生じてきつつありますので、そういう面はこまかい配慮を払いながら、つまりそういう面は前向きの考慮も払いながら、全体の政策としては、先ほど申しますように従来の政策基調をそのまま保っていく。他のことばでいいますと、私がよく申しておりますように、総需要抑制、金融引き締めというそういう政策は進めるが、個別の問題については立体構造でいく。ある種のものについては地下道を通すとか、またある種のものについてはモノレールをその横へつけるというようなことで対応していく、こういう考え方でございまして、具体的な政策を担当される他の経済閣僚におかれましても同じような考え方を持っておられると考えております。
  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう物価高の問題そしていわゆる景気とのかね合いの問題ということで、いまの政策は続けていく、その中でいろいろ配慮していくということをおっしゃっておるわけですが、この総需要抑制、こうした基調というのはいつごろまで続けられるわけですか。
  237. 内田常雄

    内田国務大臣 先を見越して言いますと、昭和五十一年度からは正常な経済にどうしても入らないと、日本は毎年人口がふえまするし、いつまでもこうした抑圧した狭められた経済というもので社会福祉の充実が保たれるわけもないし、また増加する人口や、また老人層がふえる中においてエンプロイメントを保つことができないと考えますので、五十一年度からそういう出発をいたします。ということになりますと、昭和五十年度というのはその中間の、基盤の準備の時期になると考えられますので、そういう意味で五十年度の政策は動かしてまいる。さらに、だんだん詰めてまいりますと、私などはまあ五十年の中ごろぐらいまでには、他のことばで申しますと、物価の対前年同期の上昇率というようなものも今日よりぎゅっと押し込めまして、おおむね平常に近いノーマルな状態にまで持っていける、またそういう努力もいたしまして、それまでの間は、先ほど来申しますような総需要抑制、金融引き締めというたてまえは続けていく、しかしそれ以後は、いま申し述べたことからお察しをいただきますように、五十一年度への前向きの準備の時期に入らなければいけないのではないかと私は考えます。
  238. 近江巳記夫

    ○近江委員 今日のこういう物価高騰というものは、戦後の混乱期を除きまして最高の状態だと思うのです。原因は海外要因の問題であるとか、政府がとってきました高度成長の大きなひずみであるとか、いろいろあろうかと思うのですが、さらにこの公共料金の引き上げ、これが非常に大きな引き金となっておるということは私言えると思うのです。  そこで経企庁は、こうした公共料金の言うならば一番の主務官庁ということになっておるわけでございますが、大臣はたしか昨年の十一月二十三日か二十四日に就任されたと思うのです。それから私ずっと追跡調査をやってみたのですが、四十九年の一月二十九日に六大都市のタクシー運賃平均二九%、四十九年二月一日、医療費一七・五%、それから東邦瓦斯が五月二十八日、四〇・三%、九電力が四十九年六月一日、これが電灯二八・六、電力七三・九、平均五六・八二%、それから七月二十日に大手私鉄十四社、これは普通が二六・九%、通勤四五・三%、通学二六・二%、東京瓦斯が九月三日、四六・八五%、国内航空三社が九月十日に二九・三%、通運が十月一日で三〇・九%、小包料金が十月一日で平均四七・三%、それから米が十月 日、平均三二%、国鉄運賃が十月一日で旅客二三・二%、貨物二四・一%、東京民営バス九社が十月一日で一区四十円が六十円、営団地下鉄が十月 日、これが同じように四十円から六十円、普通か三六・九%、通勤三五・一%、通学二七・二%、それから同じく十月一日に東京都営交通、これはもうパーセントを申し上げなくてもおわかりのとおりです。十月一日に同じく社会保険診療報酬が一六%、十月十二日に大阪瓦斯四六・八一%、それから十一月一日には六大都市のタクシー基本運賃、東京三三・九%、大阪三三・九%、初乗り二百二十円が二百八十円、こういうことで、いわゆる経企庁が所管しなければならぬこうした面だけでも、十七も公共料金の引き上げをやっておられるわけですね。  また、地方通産局はじめ——中小のそうしたガス会社等は地方で認可なさっておるわけですが、非常に大きなものは経企庁でつかんでおられるわけです。こういうことを見ていきますと、歴代の経企庁長官の中で、あなたが一番値上げをなさっておるわけですね。史上最高の大臣になられたわけですよ。こういうことにおきまして、あなたが認められたこれだけで、消費者物価が二・七八%上がっているのですね。こういうことからいきますと、いまやもう国民生活というのはほんとうに破綻に瀕しておりますよ。少々春に賃金が上がったといえども、家計はみな赤字ですよ。少々のたくわえも全部引き出しにかかって生活をやっておるというのが実情でございます。あとまださらにいろいろな公共料金の値上げというものが続々と考えられておるわけでございますが、こういうやむを得ない、やむを得ないということでずるずるいくようなことであれば、もう第二の狂乱物価は必至でございます。そういう点で、あなた自身どういう反省をなさっておるのか、今後どういうように臨んでいかれるのか、反省を込めてひとつ御答弁いただきたいと思うのですよ。   〔左藤委員長代理退席、田中(六)委員長代理着   席〕
  239. 内田常雄

    内田国務大臣 どうも一年間の追跡をされましておそれ入りました。しかし、昌頭の肝心のところが落ちているのでございます。それは今年生産者米価はかなり大幅に上げました。昨年の消費者米価は、ああいう物価状況の中において上げないほうがよろしいということで昨年は上げませんでした。しかもそれは今年の四月一日というところまで持ちこたえておったものをさらにことしの十月一日まで、消費者米価の引き上げは、つまり二年分、昨年の暮れに上げるものまでずっと押えてまいりました。と同時に、国鉄につきましても、国会で法律まてつくっていただいてこの四月には上げるべきものを、さらに法律まで直していただいて十月まで押えてまいるということも実はさせていただいたわけでございます。  ところが、その他のものにつきましてはおっしゃるとおりでございますが、しかしそれは私の悪政と申しますか、そういうことよりも、経済企画庁というものが、公共料金につきましてはずっと極力抑制的な措置をとるということで押えてまいりましたのがことしにたまってまいりましたが、それもなお私どもは押えまして、物価が鎮静する状況の中に公共料金の改定ははさみ込むということで、いまも御指摘ございましたようにこの十月からの公共料金の改定というものがそこに片寄ったわけであります。しかし、これは一々申し上げませんが、最近の物価の状況というものは卸も小売りも鎮静をいたしてまいりましたことはお認めをいただけると思います。ことに卸についてはそうでございますが、消費者物価につきましては、おそらく十月はいまも御指摘ございました公共料金の影響が出てまいりますことを私は非常に憂慮をいたしております。しかし、その後はまた鎮静を続けますので、今年度一年間の物価の上昇率というものは、たとえば来年の二月とか三月には、かなりこの一年間私はいい物価政策をやりましたということが申し上げ得るようにしたいということで、今日反省いたしながらまた前向きになりながらいろいろ努力を重ねております。  最後に、公共料金というものは、実は押えに押えてまいりまして、電気でもあるいは私鉄でもあるいは東京都のバスでも地下鉄でもそうでございますが、物価の美濃部と言われた美濃部さんでさえも一緒にやってくれというようなことで申請を出してまいったことからも御想像できますように、いつまでも押え込んでおきますとその事業自身が破壊されまして、かえって国民に良質なサービスを提供することができなくなる面もあります。いま押え込んでもまた次にはかえってその何倍かの引き上げをしなければならないという事態も避けられませんので、私はほんとうに国民的立場に立ちまして、ここに中曽根通産大臣がいらっしゃいますが、通産大臣とも大いに議論をいたしながらこのようなことを国民の立場においてやってまいりましたことだけは申し上げ得ると思います。  以上でございます。
  240. 近江巳記夫

    ○近江委員 聞いておりまして弁解ばかりお伺いしたように私は思うわけですが、いずれにしてもこういう公共料金の引き上げということは、ただ単にこれだけではないわけですから、そういう点ずるずるとこういう結果にならないように、これはひとつ政府としてあらゆるそうした努力をしていただいて押え込む、これをひとつやっていただきたいと思うのです。経企庁長官はけっこうです。  それから、中小企業の問題でございますが、中小企業信用保険法の倒産関連保証の特例を受けられるいわゆる不況業種というのは、現在十四業種が指定されているわけです。業種の指定にあたっては、原材料等供給の著しい減少、需要の著しい減少といった要件があるわけですが、いままでのそういう指定の状態を見ておりますと、業界から指定の要望が出されて、その実情をそれから調査して指定するということが行なわれておるように私は思うのです。これは私おかしいのじゃないかと思うのです。中小企業庁、通産省自体がいわゆる中小企業実態ということを調査して指定していく、そういう前向きな状態でなければ、苦しいからと言ってきたらそれじゃ考えてやろう、それでは決して前向きに一歩踏み出しておる姿勢とはいえないわけですよ。大臣は、常々前向きに中小企業はやる、後手ですよ、これであれば。そうでしょう。その点についてはどう思われますか。
  241. 小山実

    小山説明員 先生指摘のとおり、現在までに倒産関連保証の指定業種として指定いたしましたのは十四業種でございます。ただ、これを指定するにあたりましては一応主計局とも相談をいたしまして一定の基準に基づいて指定をいたすわけでございまして、そのためにはある程度その生産の前年に対する減少傾向なりいろいろな資料が要るわけでございまして、その資料が整ったところから逐次指定をしてまいるということが、一面において要請があったところから指定してきたということになっているのは事実でございます。私どももただじんぜんと待っているだけではございませんので、今後とも各省、通産省を含めまして原局とも十分相談をいたしまして前広に実態をよく調査いたしまして、必要なものは指定するようにつとめてまいりたいと考えております。
  242. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後指定予定の業種についてはどのようにお考えになっているか。たとえば印刷業、これも非常に悪いわけです。皮革製品製造業、金属洋食器、木製家具等について指定の考えがあるのかどうかということ、それが一問です。  それから、建設業、繊維産業、ガス供給業もいわゆる指定期間が本年末になっておるわけですが、これは延長するお考えがあるかどうか、この二点についてお伺いします。
  243. 小山実

    小山説明員 第一の、ただいま御指摘のございました業種につきましては、私いま手元にその実態の資料を持っておりませんので、直ちに指定をするというお約束はできませんが、年内にいまいろいろと問題になっている業種につきましてもう一度まとめて指定をするように大蔵省と相談をしたいというふうに考えております。  それから第二の、第一回に指定をいたしました三業種についての期間の延長の問題でございますが、これも実態をよく調べまして、なお年末になっても指定の要件である不況状態が消えてないということであれば、当然延長についても考慮したいというふうに考えております。
  244. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、業種全体ではこの指定要件になっておりませんが、その中の個々の企業が困っておるという面が非常にあるわけです。そのために、指定要件を緩和する考えはあるのかどうか、これについて一つお伺いしたいと思います。  それから、現在中小企業全般が資金繰りが非常に悪化しておりますし、在庫がふえている、あるいは生産、受注が非常に減少しておりますし、操業を短縮するという、非常にそういうきびしい実情があるわけでありますが、先ほど経企庁長官もお答えになりましたが、物価の見地から今後も総需要抑制、金融引き締め等は続けていくというお話でございましたが、そうなってきますと、この中小企業に対する金融措置はもちろんとして、いわゆる仕事をいかに確保してあげるか、こういうことになってくると思うのです。そういう点におきまして、中小企業者向けの官公需の発注、このワクを広げること、あるいは繰り上げ発注等も考えられるんじゃないかと思うのです。そういうような具体的な方法についてお考えかどうか、この二点について簡潔にお願いします。
  245. 小山実

    小山説明員 第一の、個々の企業で非常に困っている方を指定できるように倒産関連保証の運用を弾力化できるかどうかという問題でございますが、これは先般改正をいただきました保険法の指定の要件そのものが業種ごとにとらえるということでございまして、業種としてある程度一定の要件に合ってない場合に、特定の一つの企業をとらえて指定をするというのは法律的に非常にむずかしいというふうに考えております。ただ、全国的な業種としての要件が必ずしも明確でなくても、特定の産地等におきまして、産地のある業種が非常に不況であるという場合に、これは指定のしかた等いろいろくふういたしまして、極力弾力的に指定できるように将来考えてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、第二のお尋ねの点でございますが、金融が非常に皆さん困っておられるということはわかるわけでございますけれども、ドルショックのときのように特別の措置をしてまであれするかどうかというのは、もう少し今後事態の推移を見守って考えたいというふうに考えております。
  246. 近江巳記夫

    ○近江委員 官公需に対する例なんかを私申し上げたのですが、具体的にどういうことを考えているのですか、それも含めて。
  247. 小山実

    小山説明員 なお、官公需の問題につきましては、毎年官公需の受注の確保に関する法律に基づきまして、政府として公共事業等の政府の発注の契約の予定額と、それからさらにその中で中小企業に向けられるべき目標というものをきめて閣議で決定しておるわけでございますが、その一環といたしまして、本年も特に公共事業については、たとえば工事の発注単位を極力小さくして中小の建設業になるべく注文がいくようにというようなことも決定していただきましたし、あるいは建設省なり自治省に依頼をいたしまして、それぞれの公共事業の発注にあたって中小企業に十分に配慮するようにというお願いもしてきておるわけでございますが、今後さらに事態に応じてそういう必要が生じましたならば、それについてもまた必要な措置を考えてまいりたい、こういうふうに思います。
  248. 近江巳記夫

    ○近江委員 年末金融について、昨年はたしか三千四百億だったと思いますが、ことしは幾らにするかということ、それから十月から十三月期における三公庫につきまして、中小公庫が二千百五十三億、国民公庫が二千六百九十億、商工中金についてはこれはいままでも相当使ってきておりますが、この点についてはどう考えるか、これが二点目です。  それから、民間金融機関の中小企業特別融資制度三千二百億円、これは特別用意されたわけですが、この融資状況がどうなっておるかということです。  時間の関係がありますから、簡潔に以上三点お願いします。
  249. 小山実

    小山説明員 年末の三機関に対する追加につきましては、大臣も先般来お答えをしておられますが、昨年は三機関を通じまして三千四百億の増ワクをいたしたわけでございますが、本年度におきましてはこれを大幅に上回るようにいま大蔵省といろいろ話をしている段階でございます。  それから、各機関別の数字につきましても、総ワクとの関係でいまいろいろ折衝しておりますが、御指摘のように三機関合わせて第一・四半期で千五百億、第二・四半期で千億、年間のを繰り上げて使用をしておりますので、その分を補てんすると同時に、新たに必要な分についての追加をいたしたい、こういうふうに考えているわけでございます。  なお、民間金融機関の中小企業救済特別融資ワクにつきましては、従来ネオンサイン業界それから中小ガス、繊維、建設等につきまして約五百六十億程度だったと思いますが使用されておりますが、今般さらに機械関係の下請につきまして約三百億、それから製材合板について二百億をこれに充当するということでいまいろいろ手続を進めている段階でございますが、なお今後ともある程度業種としてまとまって市中金融機関の融資に向くようなものがあれば、それぞれ適当なテーマを取り上げて大蔵省を通じ、民間金融機関に協力を要請してまいりたい、こういうふうに考えております。
  250. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣にお伺いしますが、この十月十五日からいわゆる政府系金融機関の貸し出し金利が〇・五%引き上げられたわけでありますが、これはもうほんとうに先ほど申し上げたような中小企業の状況だし、大臣もよくつかんでおられるわけでございますから、これはひとつもう一度もとに戻す必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  251. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 〇・五%、原則的に基準金利を上げましたけれども、しかし政策的金利の部面については〇・五%そのまま認めないで、たとえば中小企業、零細事業、小規模零細事業に対する金融等は七・二%、つまり〇・二%にとどめる、あるいは近代化資金についてはたしか七・三%、つまり〇・三%等々のわりあいきめこまかい努力をいたしておりまして、まだ大蔵との関係で完全に妥結したものではないんではないかと私は思っています。ともかくがんばるだけがんばれと、そう言ってやらしております。  それで、もしこれが低下する、そういうような客観条件が出てきた場合には、できるだけ早く金利引き下げという面に努力してみたいと思います。
  252. 近江巳記夫

    ○近江委員 繊維の問題は他の委員がやりましたので重複しますから私は避けたいと思いますが、これはほんとうにいまたいへんな状況に入っておりますし、政府としても全力をあげてその救済にあたっていただきたい、このことを申し上げておきます。  それから、特に定時制高校に学んでいる子供が非常に多いわけですね。ところが、こういう繊維の不況ということで退学しなければならぬような事態も、そういうおそれも出てきておるわけですが、特別にこれは便宜をはかる必要があろうかと思うのです。こういう点、きょうは文部省も来ておられると思いますし、どういうお考えでございますか。
  253. 奥田真丈

    ○奥田説明員 文部省におきましては、定時制高校に入学しました生徒につきまして、中途で退学するようなことのないようにできるだけ勉学を続けさせる、こういう方針でかねてから教育委員会、学校に対して指導をしておったところでございますが、今回のような事情で、定時制高等学校に通学しておるその企業の従業員が一時帰休するというような場合を考えますと、二つの場合が考えられるわけでございまして、その一時帰休の期間が短期的なものでありましたならば、それは学校の休学等の措置をとりまして、あとで復学の機会を持つようにさせるということと、もう一つは、長期的なものでございましたならば、帰休地におきましてまた定時制の高等学校へ転学するように転学の措置を講ずる、こういうことも可能でございます。  そういうわけでございますので、いずれにいたしましても学校当局とそれから企業とが十分な連携をとっていただきまして、生徒の勉学ができるだけ確保されるように願っておるわけでございます。したがいまして、文部省といたしましても、もし必要があるならば、そのような指導を教育委員会あるいは学校に対して徹底していきたい、こう考えております。
  254. 近江巳記夫

    ○近江委員 やはり高校時代というものは、これはもう申し上げなくてもおわかりのように非常に大切なときです。こういうときに、経済界のそういう不況ということで、そういう場面に遭遇するということは非常に気の毒なことです。ですから、文部省としても、これは関係各省力を合わして、その子たちが帰休するとしても、そこの就職を考え、また学校の世話もする、あらゆる力を入れるべきだと思うのです。その点いま若干のお答えがあったわけですが、もっとひとつ煮詰めて、ほんとうにその子たちが希望を失わないようにできる限りの配慮をしていただきたいと思うのです。  これはひとつ中曽根大臣にもお願いしておきたいと思いますが、これは非常に大きな問題でございますので、関係の文部大臣にも大きな問題としてお伝えいただいて、その万全の対策をとっていただきたいと思うのです。ひとつお答えいただきたいと思います。
  255. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 さように措置いたします。
  256. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから石油問題時間があったら詳しくお聞きしようと思っておったのですが、時間がございませんから簡単にお聞きしますが、一つは、いわゆる灯油の問題ですね。高いところでは七百円に達するというような状態にも来ておるわけでございまして、標準価格をどうしても設定する必要がある、しかもそれは低価格でする必要がある、その点の考え。  それから、国民運動本部が設置されておるわけですが、今後具体的にどういう行き方をしていくか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  257. 熊谷善二

    熊谷説明員 お答えいたします。  灯油につきましては、この委員会でも大臣から御答弁がございましたように、現在は約六百万キロの灯油の備蓄ができましたので、こういった状況を背景にいたしまして標準価格の設定が高値下ざさえというようなことにならないように、私どもとしましては現在鋭意各地の状況につきまして実態把握につとめておるわけでございます。われわれの調査によりますと、全国的には大体まだ店頭売り六百円程度で推移をいたしております。地域によりましてはそれを下回る価格、とりわけ生協その他の現在の契約の交渉状況を見ますと、六百円を下回るものもあるわけでございます。そういった状況でございますが、ただ北海道、東北地方につきましては需要期と申しますか、寒さがこれからきびしくなってくる時期に入ってまいっておりますので、この間に標準価格の設定という問題の前に、私どもとして必要な行政指導をすべき点はないかということで、とりわけ、たとえば生協その他大口取引との間に値ぎめ交渉のおくれがもしありとすれば、それは交渉の妥結を促進する、あるいは製品はできるだけ需給の面で困ることのないように十分な配慮をして供給を続ける、こういったようなことを現在指導いたしておるわけでございます。とりわけ北海道、東北地方というのは、いわゆる大量消費が行なわれる地域でもございますので、そういった大量消費の実態も念頭に置きまして必要な指導を行なってまいりたい、できるだけ価格の高騰を招かないよう、消費者に安い価格で供給できるよう、そういった観点から指導してまいりたい、かように考えております。  それから、第二点の資源とエネルギーを大切にする運動本部につきましては、去る九月、この本部が内閣に設置されたわけでございます。この運動本部は、内閣官房長官を本部長といたしまして政府関係者で構成いたしておりますが、民間の参与の方も参加をしていただきまして、民間の方々の御意見も十分取り入れまして、せっかく石油危機以来定着してきつつあります資源エネルギーの節約という問題につきまして、政府はもとより国民の中に定着できますよう国民運動の強力な展開をはかってまいりたいということで、鋭意各省並びに関係団体、たとえば新生活協会であるとか、あるいはクリーン・ジャパン本部であるとか、こういったことは現在商工会議所等でいろいろ準備が進められておりますが、こういった団体等とも打ち合わせをしつつ運動の展開をはかってまいりたい、かように考えております。
  258. 近江巳記夫

    ○近江委員 それに関連して、エネルギー使用合理化法ですか、そういうような法案をつくるというような話も若干耳にしておるわけですが、それについてはどうなんですか。
  259. 熊谷善二

    熊谷説明員 これは私ども最終的な成案という段階にはまだ至っておりません、現在検討中のものでございますが、エネルギーの使用合理化の観点から必要な立法措置を現在研究いたしております。  現在考えておりますものは、基本的には節約の目標を設定をいたしまして、これを各産業界におきまして、それぞれの企業段階で、その線に沿いましたエネルギーの使用合理化をはかっていただく、そのためにその結果につきましても報告をいただくということを考えておるわけでございます。また、省エネルギーに役立つ機器、これの使用の促進あるいは税制上その他財政面を含めました支援措置もこの法案の運用の中で取り入れてまいりたい、かように考えております。
  260. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がありませんから、最後に沖繩海洋博の問題についてまとめて申し上げますから、それぞれ関係の方は簡潔に御答弁いただきたいと思います。  一つは、本部半島に至る途中、名護市の手前付近ですが、非常に山を切りくずしておりまして岩はだがむき出しになっておる。自然の景観をそこなうのは当然のことでありますし、河川や付近の海岸が非常に汚染しておるわけです。私どもこの間商工委員会で視察に行きましてびっくりしたわけでございますが、そういう問題、環境保全に万全を尽くさなければいかぬと思うのですが、これにはどういうように対処するか、これが一つです。  それから二番として、海洋博を開いたときには、本土に比べて暑いわけでございますから、病人も非常に多数出るんじゃないかと思うわけですが、それについて何の手当てもないわけです。沖繩県では二億八千八百万円要望しておるということを聞いておるわけですが、これに対してはどう処置しておられるか。  第三点、会場建設及び海洋博開催に伴う漁業補償に必要な経費、これについての用意はどうなっておるか。  それから第四点、海洋博の用地は沖繩県が二十一億一千五百万円をかけて取得したわけですが、これに対する国庫補助をどの程度考えておられるのか。  第五点、海洋博会場の建設費は総額三百十八億円ですが、そのうち二百八億円を国庫補助する予定ということを聞いておるわけですが、残りの百十億円の調達についてどういうめどを立てておるか。さらに沖繩県の負担はどの程度であるか。  第六点、いわゆる関連公共事業、特に上下水道、ごみ、屎尿処理施設の整備事業について、会場周辺の地元市町村の経費負担が非常に大きいわけです。そういう市町村の財政をこれ以上圧迫しない何らかの対策が必要であろうかと思うのですが、どういう特別措置を講じられるか。  第七点、海洋博入場者の輸送対策の一つとして伊江島空港の整備が要請されておるわけですが、会期中は伊江島における米軍の演習を中止するよう要望されておるわけですが、政府としてはどういう対処をされるか。  第八点、本上における海洋博のPRが非常に不足しておるように思うのですが、今後どういうように進めていかれるか。  最後に、このあと地の運営体制について政府はどういう検討をなすっておるか。  以上お聞きしまして私の質問を終わりたいと思うのです。
  261. 小松勇五郎

    ○小松説明員 お答え申し上げます。  現地の汚染対策につきましては、私どもかねがねできるだけ注意を払っておるつもりでございます。たとえば人工ビーチの基礎づくりのための捨石などはすべて水洗いをしたあとでないと海中に捨ててはいけないとか、港の工事は築堤工事を先行してその後埋め立てを行なっておるとか、また雨の降ったときには造成地の土砂が海に流入しないよういろいろなところに沈でん池を設けるなどの措置を講じておるわけでございますが、なお詳細に調べまして汚染を防止するように努力いたしたいと思います。  それから、第二点の医療対策でございますが、会場内二カ所に診療所をつくり、四カ所に救護所を設けまして、その運営は県、本部町、それから県の医師会、海洋博協会が設立いたしました財団法人海洋博医療センターに委託して行なう計画でございます。これに必要な医師、看護婦などは厚生省、日本医師会、看護婦協会などの協力を得まして、本土各地より派遣することにいたしまして、約二十人が常駐する予定になっております。なおこの数は、大阪万博のときに比べまして、規模が十分の一、会場が二分の一程度でございますので、人数割りにいたしますとかなり多い数になっておるはずでございます。(近江委員「予算措置」と呼ぶ)予算につきましては、後ほど調べまして申し上げます。  それから、その次の問題でございますが、漁業補償につきましては、沖繩県が現在補償額を算出中でございますが、その取り扱いにつきまして国の負担が必要かどうか詳しく事情を聞いてみました上で、関係省庁と協議をいたしてみたいと考えております。  それから、その次の問題でございますが、会場用地の買収につきましては、大阪万博の例にならいまして、期間中は地元が海洋博協会に無償提供するということで現在計画が進められております。その費用分担につきましては、大阪万博の例や沖繩県の財政事情どもよく調査研究いたしまして、今後の会場あと地利用問題の検討の中で政府全体の課題として取り上げていく必要があると考えております。  それから、建設費の地元負担分をもっと軽減すべきではないかという問題でございますが、先ほど申し上げましたように、規模が違うわけでございますけれども、大阪万博のときには三分の一の地元負担でございましたが、今回は十分の一の負担に軽減をしております。ただ、当初計画に比べましてその後の単価アップなどがございまして、総事業費が大幅に増大しております。したがいまして、海洋博協会に対する国庫補助を現在増加させておるところでございまして、これに対応して地元負担分の増加もお願いをしておるような事情でございます。沖繩県の財政事情もございますので、現在沖繩県及び自治省ともこれをいかにすべきか、対策を協議しておるところでございます。  その次、宿泊施設でございますが、建設中のものも含めまして、那覇市を中心としまして南部に約一万八千五百人分、沖繩市を中心とする中部に約六千五百人分、会場周辺の北部に七千五百人分、合計三万二千五百人分がございます。全体としては需要を充足し得る数となっておりますが、しかし観客の便宜及び輸送の円滑化をはかりますためには、会場周辺の宿泊施設をさらに充実させる必要がございます。このため、沖繩振興開発金融公庫の融資によりましてこれを促進することといたしたいと思っております。  それから、輸送能力の点でございますが、海と空を合わせまして一日当たり一万一千三百人の能力がございます。実際の輸送人員は約一万人でございまして、これがかりに平均三泊するとなりますと、宿泊需要は約三万人ということになるわけでございます。会場の周辺にこの一万人がすべて一泊するということになりますと約一万人分の施設が必要となるわけでございますが、現在は七千五百人分程度しかなくて、二千五百人分くらいが不足になっております。これを何とかして埋めたいというふうにも考えておるわけでございます。  それから、PRにつきましては、私どももまだ十分でないという点も反省いたしておりまして、これから大いに力を入れたいと思っております。  それから、先ほどお尋ねの医療の予算でございますが、会場内の医療対策の予算は、海洋博協会が全額負担をいたします。会場外の医療対策につきましては、沖繩開発庁から来ておられますので答弁をしていただきたいと思います。
  262. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま御答弁いただいたのですが、六番の関連公共事業、特に上下水道、ごみ、屎尿処理施設の整備事業について、会場周辺の地元市町村の経費負担が非常に大きいわけですが、これに対してはどういう手当てをしておるか、それから海洋博入場者の輸送対策の一つとして伊江島空港の整備が要請されているんですが、会期中ここの米軍の演習を中止させなければならないわけですが、これに対してはどうするか、これがいま抜けておりますね。それからあと地の問題、加えて答弁してください。
  263. 小松勇五郎

    ○小松説明員 ただいまの先生のあとのほうのお尋ねは主として沖繩開発庁の問題でございますので、開発庁のほうにお願いいたしたいと思います。
  264. 大内健价

    ○大内説明員 御質問の一番と二番と六番について御答弁申し上げます。  一番の、道路等の公共事業に伴う海岸の汚染の問題でございますが、道路をはじめとします公共事業を実施する場合には、特に沖繩におきましては、すぐれた沖繩の自然をこわさないように注意を払っているところでございまして、たとえば土工工事をする場合には、しがら工とか土のう工をあらかじめ設置して土を動かすとか、あるいは埋め立てをする場合には、あらかじめ護岸をつくってから盛り土をするというような配慮をやっておりまして、今後とも汚染が生じないような努力をしてまいりたいと考えます。  それから、二番目の医療対策でございますが、沖繩県のほうから、医師二十二名、看護婦百八名の内地からの派遣を要請されておりまして、それにつきましては、来年度実情に合った医療員確保をする必要があるということで、予算要求を行なっておるところでございます。そのほか、県立名護病院の整備をはかる等、沖繩全般につきましての医療対策をあわせて実施していきたいというふうに考えております。  それから、六番目の関連公共事業の負担の問題でございますが、沖繩の海洋博関連事業は、沖繩の振興開発計画に基づく事業ということで実施しておりまして、道路、河川、空港、港湾等は、国の直轄あるいは十分の十の補助で実施しておりますし、そのほかの事業につきましても、高率の補助を実施する等の財源措置を講じております。  なお、会場周辺の市町村の事業につきましては、そのような補助率アップのほかに特別の財源措置を講ずるということで、地元負担が過大にならないように配慮しておりますし、今後ともきめこまかな配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
  265. 小松勇五郎

    ○小松説明員 もう二点ばかり、先ほど先生の御質問に対する答弁が落ちておりましたので、お答え申し上げます。  海洋博のあと地利用の問題でございますが、県の振興、県民の福祉の向上につながる問題でございますので、政府としても大きな関心を持っておりますけれども、とりあえずのところ、沖繩県で現在あと地利用計画につきまして検討を進めておりますので、その検討の結果をまって政府としても対処いたしたいというふうに考えております。  その次に、伊江島空港の使用の問題でございますが、目下防衛施設庁が中心になりまして米軍と調整中でございます。おそらく近いうちに調整がつくだろうという見通しでございます。
  266. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、もう時間がありませんから、最後に大臣にお伺いして終わりますが、とにかくこういうような海洋博も行なわれますし、特に中小企業者が非常に困っておるわけです。もう沖繩振興開発金融公庫のワクがないそうであります。特に商工委員会としても視察団が強い陳情を受けておりますので、これについては大幅な増額をしていただきたい、この御答弁をお聞きして終わります。
  267. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御趣旨に沿いまして極力努力いたします。
  268. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、ありがとうございました。      ————◇—————
  269. 田中六助

    田中(六)委員長代理 この際、おはかりいたします。  先般、産業経済の実情を調査するため、第一班岐阜県、愛知県及び静岡県に、第二班岡山県及び広島県に、第三班沖繩県に委員を派遣いたしました。  派遣委員から、それぞれの報告書が委員長の手元に提出されておりますので、これを本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  270. 田中六助

    田中(六)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時十四分散会      ————◇—————