運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-09-05 第73回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年九月五日(木曜日)     午後零時二十六分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 石井  一君 理事 石原慎太郎君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 田中 榮一君    理事 福永 一臣君 理事 河上 民雄君    理事 松本 善明君       足立 篤郎君    小林 正巳君       田中 龍夫君    宮澤 喜一君       石野 久男君    高田 富之君       土井たか子君    三宅 正一君       金子 満広君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 木村 俊夫君  委員外出席者         警察庁警備局参         事官      半田  博君         法務省刑事局総         務課長     筧  榮一君         公安調査庁次長 渡邊 次郎君         外務政務次官  山田 久就君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済協力         局外務参事官  菊地 清明君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ――――――――――――― 委員の異動 九月四日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     田中 榮一君 同月五日  理事福永一臣君同日理事辞任につき、その補欠  として田中榮一君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任についておはかりいたします。  理事福永一臣君から、理事辞任したい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 有田喜一

    有田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  引き続き、理事補欠選任を行なうのでありますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 有田喜一

    有田委員長 御異議なしと認めます。よって、理事田中榮一君を指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 有田喜一

    有田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  6. 石野久男

    石野委員 外務大臣に、施政演説も聞いておりませんし、実際には全般的な外交方針についてお聞きしたいのですが、時間の関係もありますから、私はアジア外交についての所見を承りたい。  まず、南の朝鮮日本との外交関係ですが、金大中事件日本主権は侵害されていることはもう明白であるけれども、その後何ら明るい見通しが出ておりません。その後、早川、太刀川問題、これも全く公正を欠いた問答無用裁判で、民主主義国家としての司法行政の片りんもうかがうことができないような状態で推移しております。  このたび射殺事件大統領夫人陸英修女史が犠牲になられたことについては心から哀悼の意を表しますが、しかし、本件に関連して朴大統領金首相が、あたかも日本の責任であるかのような態度をとっているようであります。これは全く国際的な情勢や慣行をわきまえぬ身がってな外交行為のように思われる。特に先日、金首相から田中総理に対して、これの捜査協力要請親書が来ているということを聞いておりますし、またその後朴大統領からは、日韓友好維持の基礎として、韓国に対し破壊活動を行なおうとする犯罪集団基地日本から撤去することが必要だ、こういうことで、犯罪集団という名において在日朝鮮総連解体要求要請が来ているというふうにも聞いておりますが、これらの問題について、事実はどうであるか、まず外務大臣からひとつお聞きしたい。
  7. 木村俊夫

    木村国務大臣 今回の事件に関しまして韓国側からいろいろなパイプを通じまして各種の要請ないし意見の表明があることは事実でございます。それに対しまして、わがほうは、ある場合には回答いたしておりますが、まだこれについてのわが国政府の最終的な考え方韓国側に出すまでには至っておりません。
  8. 石野久男

    石野委員 その韓国からの要請とかあるいは要求というようなものがどういうものであるかということがまだはっきりわからない。だから、金首相から田中首相に対しての親書内容はどういうものであったのか、あるいは朴大統領から政府に対して強い要求が来ているというものはどういうものであったのか、概略ひとつここで教えてもらいたい。
  9. 高島益郎

    高島説明員 石野先生がただいま言及なさいました金国務総理から田中総理への親書内容でございますけれども、要点は二つございまして、第一点は、田中総理御自身が八月十九日の国民葬に参席されたことに対する感謝の意の表明でございます。第二点につきましては、今回の事件捜査についてでございますけれども、これまで日本側からいろいろな適切な協力を得ているようではあるけれども事件の全貌の徹底的な解明のために今後一そうの捜査についての協力をお願いしたい、こういう趣旨でございます。  それから、その後朴大統領が直接後宮大使を呼ばれましていろいろ申し入れがございました。その申し入れ趣旨も、全体としてただいま金国務総理からの田中総理あて親書と本質的に違うものではございませんが、この事件捜査のほかに、事件背景になっている、いま先生の御指摘のようないわゆる犯罪集団と申しますかそういったものについての取り締まりを要望する趣旨申し入れがございました。  そういうわけでございまして、いままで韓国政府から大使を通じまして、あるいはこの大使から外務大臣に対しましてのいろいろの申し入れ内容は、総括いたしまして、事件捜査についての協力とそれからその事件の背後にあると韓国考えておりますところのいわゆる犯罪集団取り締まり、こういう二点でございます。
  10. 石野久男

    石野委員 大臣先ほど、その一部については回答しているが最終的な回答はまだしてないのだ、こう言われましたが、その一部について回答したのはどういうことなのであるか、その点をひとつ。
  11. 木村俊夫

    木村国務大臣 主として捜査協力に関する問題でございます。
  12. 石野久男

    石野委員 捜査協力の問題についてはどのような回答をなさっておるのか。
  13. 高島益郎

    高島説明員 これは事件が始まりましてからいわゆる国際刑事警察機構を通じまして相互に警察同士の連絡がございまして、そういうルートを通じての先方からの要請に対する回答でございます。その内容につきましては私のほうでは詳しく存じません。警察のほうでもし御必要があれは答弁いたすつもりであります。
  14. 渡邊次郎

    渡邊説明員 ただいま捜査協力という御質問でございましたが、私のほうでは直接今回の事件捜査しているわけではございませんのでちょっと答弁申しかねます。
  15. 石野久男

    石野委員 いま公安調査庁のほうではまだ協力をしている体制はない。そうすると、警察庁関係の方来ていますか。――いま韓国のほうから調査協力要請があって、それに対して警察のほうで今度の射殺事件等についての調査協力をしているということですが、どの程度の調査協力をしているのか。
  16. 半田博

    半田説明員 お答え申し上げます。  本件につきましては、韓国側から外交ルートあるいはICPOのルートを通じていろいろ協力要請が参っておりますし、警察庁といたしましても事件重大性にかんがみてできるだけの協力をし、ただあくまでも国内法にのっとって必要な捜査を遂げ、その間において得られた情報について必要なものについて韓国側に通報する、こういう態度をとってまいっておるわけでございます。ただいままでにこちらから通報した事項といたしましては、拳銃盗難関係でありまするとか吉井美喜子にかかる旅券の不正入手不法出国の幇助の状況、そのようなものが主要なものでございます。
  17. 石野久男

    石野委員 調査協力は、あくまでも事実に基づいたもの以外には、主権の問題もあることですから、これはむやみに協力という名においての警察行為は厳に慎む必要があるだろう、こういうふうに私は考えておりますが、その点は十分警察当局考えておるでしょうね。
  18. 半田博

    半田説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、警察といたしましては、あくまでも国内法にのっとって捜査を遂げ、その過程において得られたものについて必要と認められる事項について韓国側に通報する、こういう協力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  19. 石野久男

    石野委員 大臣にお尋ねしますが、先ほどからお話が出ております朴大統領申し入れであるこの事件背景犯罪集団がある、その集団在日朝鮮総連だというふうに大体意図されているようですが、これの解体要請が来ているということについて大臣はどういうふうにお考えになっておられるか、大臣所見をひとつ聞かしていただきたい。
  20. 木村俊夫

    木村国務大臣 これは団体規制の問題でございますから本来法務省からお答えするのが筋かと思います。しかしながら、いやしくも内政干渉にわたるようなことを韓国政府考えておるとは私ども考えておりません。
  21. 石野久男

    石野委員 公安調査庁のほうはこの問題についてどういうふうに考えていますか。
  22. 渡邊次郎

    渡邊説明員 お答えいたします。  今回の朴大統領狙撃事件を理由としていま直ちに特定団体を規制するというのは法律上困難であると考えております。
  23. 石野久男

    石野委員 朴大統領のほうでは在日朝鮮総連がその犯罪集団であるということを名ざしでこちらの政府に対する申し入れが出てきているのかどうか、これをひとつ大臣からはっきりさせていただきたい。
  24. 高島益郎

    高島説明員 朝鮮総連という具体的かつ明示的な名ざしはございません。一般的にテロ活動あるいは政治転覆活動、そういう表現で申しておりまして、具体的に団体の名前があがっているわけではございません。
  25. 石野久男

    石野委員 朴大統領のほうで名ざしで朝鮮総連は出ていないということになりますと、政府のほうではその犯罪集団というものがどのようなものであるというふうに考えておられるか。これは外務省それから公安調査庁がどのように考えておられるか、この際明らかにしてもらいたい。
  26. 木村俊夫

    木村国務大臣 その問題については、法務省からお答えするのが筋だろうと思います。
  27. 渡邊次郎

    渡邊説明員 韓国側のいう犯罪集団というのがどういう意味か、私のほうでは正確にはわかりませんけれども公安調査庁は従来、朝鮮総連調査対象団体といたしておりましたので、その関係から考えております。
  28. 石野久男

    石野委員 その関係から在日朝鮮総連考えているということになりますと、朴大統領外交覚書外務省に手渡して、その中で犯罪集団ということの明示があるとすると、公安調査庁としては在日朝鮮総連をその対象というふうに考えてこれに対処する、こういう意味ですか。
  29. 渡邊次郎

    渡邊説明員 お答えいたします。  元来破防法は、暴力をもって日本憲法秩序破壊し、または破壊しようとする団体を規制するための法律でございます。したがって、破防法の定める暴力主義的破壊活動というのは、もっぱら日本憲法秩序破壊に向けてなされたものであると考えております。  ところで、今回の狙撃事件は、現在まで伝えられるところによりますれば、日本憲法秩序破壊を企てたものとは認めがたいので、いまのところ破防法による団体規制の問題は考えられない状態でございます。
  30. 石野久男

    石野委員 そうしますると、朴大統領から犯罪集団ということについてそれを日本基地から追い出せ、あるいはまたそういう団体を解体しろという要請があったとしても、日本にはそれに対応するような集団なりあるいは団体というものがあるというふうには政府並びに外務省は見ていない、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  31. 渡邊次郎

    渡邊説明員 当庁で現在まで調べている対象朝鮮総連だけでございますので、朝鮮総連に関連してただいま申し上げたような説明をいたしたわけでございます。
  32. 石野久男

    石野委員 いや、私の聞いているのは、朴大統領からそういう犯罪集団日本から排除しろ、いわゆる解体しろという要請が来ているというふうに先ほど来聞いておりますから、その朴大統領要請に対応すべき集団日本においてはない、あるいはそういう団体はないというふうにいま政府考えていられるのかどうかということを聞いている。
  33. 渡邊次郎

    渡邊説明員 現在のところ、破防法による団体規制の問題の生ずる団体はございません。
  34. 石野久男

    石野委員 破防法日本国内の問題でしょう。朴大統領のほうからは、日本犯罪集団があるから、それを解体しろという申し入れがあるという先ほどのお答えですから、朴大統領申し出になってきているそういう犯罪集団というものは日本にはないという見解政府はとっておる、あるいは法務省はそういうようにとっておる、こういうように理解していいかどうかということを私は聞いておる。
  35. 渡邊次郎

    渡邊説明員 当庁は破防法を所管する官庁でございまして、それ以外の点は御答弁いたしかねます。
  36. 石野久男

    石野委員 外務大臣にお尋ねしますが、この問題は法務省の答弁すべきものだということですけれども、いま法務省は、破防法の問題は自分たちの管掌の中にあるが、しかし朴大統領申し出にかかわるそういうものは、ここでは私の受け取り方では、そういうものは法務省にはないのだ、それに対応すべき集団あるいは団体というものはない、こういうふうに私は受けとめたのですが、外務省もそういうふうに理解していると理解してよろしゅうございますか。
  37. 木村俊夫

    木村国務大臣 いま法務省公安調査庁当局からそういう法律的見解がございましたが、これは同時に政府見解でございます。
  38. 石野久男

    石野委員 私は、いま朴大統領申し出になる、この射殺事件背景になっている犯罪集団取り締まりという要請は、現にそれに対応すべき集団というものはないという政府見解であるというふうに理解します。そのように処置すべきであるし、またわれわれは、朴大統領がそういうことを日本要請していることは非常に越権な内政干渉に類するものだ、こういうふうに思っております。政府は、やはりそういうふうに対応すべきであると存じます。  そこで私は、金大中問題なりあるいは早川、太刀川問題また今度の射殺事件にかかわる問題として、日本朝鮮KCIAがいまだにまだいろいろな活動をしていると思いますけれども、そういうようなことはこれは日本で許すべきでない、むしろ排除すべきは、こういうような行動をする朝鮮情報活動というものを日本のほうで排除しなくちゃいけないのじゃないか、こういうふうに私は思いますけれども、そういうことについては大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  39. 高島益郎

    高島説明員 いわゆるKCIAでございますが、私どもKCIAという形でもって日本への入国を認めるというようなことはしておらないように思います。たとえば、在日韓国大使館の中にKCIAの人がいるというようなお話もいろいろございますが、KCIAの人間として大使館の中にいるということではなくて、やはりあくまでも大使館にいる場合は大使館の正式な外交官として存在しておるわけでございますし、その他の事情は私存じませんけれども、いずれにしてもKCIAという、そういう職権をもって日本存在するということは、通常――通常といいますか、原則として考えられないことだと思います。
  40. 石野久男

    石野委員 KCIA活動が許さるべきものでないということを一応外務省見解として聞きましたが、それらのものを含めて、先ほど大臣朴大統領からの要請あるいは金首相からの捜査協力、そういうものに対して回答しているものとまだ最終的には回答してないという問題について、いま犯罪集団の問題は、大体在日朝鮮総連がそれに該当するものでないという見解政府はとっているので、はっきりわかりました。  あと、朴大統領申し入れなどについて、最終回答をしてないという残った部分の問題というのはどういうものなのか、その点を大臣からひとつ聞かしていただきたい。
  41. 木村俊夫

    木村国務大臣 金国務総理から親書も届いておりますし、それに対していずれ近いうちに田中総理からある内容の返書を出すことになろうと思います。その中におきましては当然、金国務総理親書にございましたように、今後の日韓間における今度の事件についての捜査協力についての日本側態度立場、それから今後日韓関係において友好関係がそこなわれないようにするべきであるというような意図表明、そういうものが含まれることになると思います。
  42. 石野久男

    石野委員 韓国政治情勢と、それから朴政権政策路線というのはどのようにひいき目に見ても、非常に軍事優先ファッショ化を強化しているというふうに私は見ております。われわれ、このような非民主的な好戦的軍政朴体制というものはアジアの平和と日本の安全のためにきわめて危険な存在だ、こういうふうに思うのです。私は、こういうような韓国日本経済援助を行なうということはこの際考えなければならないのじゃないか。特に早川太刀川問題等における裁判実態などを見ても、全くファッショ的な、民主性というものは全然ない。こういうような事情がますます明らかになってきておりますし、特に金大中問題等における日本韓国との関係を見ますというと、日本主権侵害という問題は一つも解決されていない。  こういう情勢の中で経済援助という問題を依然として続けるということは、かえって両国間の善良な友好関係というものを阻害することがやはり一そう深まっていくだろうというふうに思うので、私は、日本経済事情も非常に不安定な状態になってきておる、あるいは外貨事情も非常に悪い事情になってきている段階では、むしろ韓国への経済援助というものはこの際もう一ぺん考え直して、これはもうやめるべきじゃないかというふうに思いますけれども外務大臣はどういうふうに考えますか。
  43. 木村俊夫

    木村国務大臣 韓国に対する経済援助は特に特定政府にてこ入れするものではございません。したがいまして、韓国国民の民生安定と経済繁栄のためにこれは行なっておるという観点から申しまして、日韓関係に不幸なトラブルは生じておりますけれども、これをもって経済援助を打ち切るようなことは私は好ましくないという考えでございます。
  44. 石野久男

    石野委員 情報によると、今度の狙撃事件以来、日韓貿易委員会をむしろ韓国のほうから延期しようということまで出てきているそうです。大臣友好関係を深めるために経済援助をするんだと言うけれども向こうではその経済援助の一環である貿易委員会というようなものの開催までも延期しろ、こういうふうに言ってきているときに、ちょっと考え方があべこべになっているのじゃないだろうか。その点はどういうふうに考えられますか。
  45. 高島益郎

    高島説明員 貿易委員会につきましてちょっと誤解があるようなので訂正させていただきますけれども、実はこの貿易委員会というのは、毎年六、七月ごろ日韓のそれぞれ政府事務レベル両国間の貿易実態についていろいろ検討し、将来の貿易関係をいろいろ調整していくというための会合でございまして、これは経済協力問題とは全く無関係会合でございますので、ただいま先生の御指摘のような、この問題の延期日韓経済協力関係とは無関係だというふうにお考えいただいてけっこうだと思います。
  46. 石野久男

    石野委員 経済協力の問題と貿易委員会とは直接的には関係しておるというふうには私は思いませんが、しかしこれはもう十分関係があるわけですよ。経済協力の中から貿易関係は出てきておる。それはもちろん国家間の問題と民間との問題もいろいろありますけれども、しかし、すべてはそういう経済協力を中心にして動いてきておることはまず間違いない。  そういう情勢のときに、相手方が、むしろこちらのほうが協力してやっている、それに対して向こうのほうで延期しようというような要請がきている段階であれば、協力の手を差し伸べているこちらのほうで無理にそれでもそれでもということになると、ちょっとこれはむしろ日本のほうがこの経済協力をどうしても必要としているというふうにしか見られない。  私は、むしろ経済協力韓国経済の円満な発展とかあるいは開発のためというよりも、日本の独占がこの経済協力によって自分たちの利益を得ようとするような含みがあるのじゃないか。そういうようなことがいまの日韓貿易委員会等延期問題等にも関連してくるのじゃないかと思われるので、そういう関係については政府はどういうふうに見ておるか、この際ひとつ政府見解をお聞かせ願いたい。
  47. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほど指摘貿易委員会は、御答弁申し上げたようなそういう性格のもので、定期的に開かれるものでございましたが、当時予定された時期は、いかにせよ混乱した時期でございます。それについて先方から延期申し入れがあったということは、これは私はよくわかると思います。そういう意味において、この日韓における今後の友好関係考えますと、いま御指摘のように、これについて日本韓国に対する経済援助を打ち切るということについては私は好ましくないという考えでございます。
  48. 石野久男

    石野委員 朝鮮の自主的、平和的統一の問題について、大臣はどういうふうにお考えになっておられるか。先般参議院委員会で、北の脅威の問題について大臣は一定の見解を示されているようです。私どもはやはり朝鮮の自主的、平和的統一の問題というのは、これは率直に言って、共同声明が出て以来むしろ南のほうでその体制をぶちこわしの方向へどんどん持っていっているようにしか見受けられない。日本政府としては、この朝鮮の自主的、平和的統一の問題についてどういうような立場で今後処していくのか、特に国連問題等とも関連して、いま外務大臣が新たに職についたにあたってどういうふうにお考えになっておられるか、一応見解を示してください。
  49. 木村俊夫

    木村国務大臣 一昨年の七月四日の南北共同声明、それによりまして三原則がうたわれております。その中の南北の平和的、自主的統一、これはもう当然朝鮮民族の一致した願望であるということは、私どもよく認識するところでございます。したがいまして、その後における対話のおくれと申しますか停滞と申しますか、そういうものがあることははなはだ不幸な問題だと思います。  しかしながら、朝鮮半島における大きな流れといたしましては、この南北双方対話に基づく今後における自主的、平和的統一はいずれかの日に必ず実現する、こういう考え方のもとに私ども朝鮮半島に対するわがほうの外交方針、また国連の場における朝鮮問題の取り扱いについてはこういう考え方立場を一貫してまいりたい、こう考えております。
  50. 石野久男

    石野委員 大臣が北の脅威というものは客観的には存在していないということについて、韓国のほうではたいへんな怒りを持ってこれに対する反駁をしているようでございますが、あの参議院におけるところの大臣所見というものは、私は非常に正しいと思っているのですけれども、その後、南朝鮮でのこのことについてのいろんな朴大統領などの考え方などが情報で伝えられております。いま一度あの問題に関しての大臣の所信のほどをここで聞かしておいてもらいたい。
  51. 木村俊夫

    木村国務大臣 先般の参議院外務委員会における私の答弁に説明不足があったことは遺憾でございます。当時、田議員の御質問は、武力による軍事的衝突可能性考えるか、こういう御質問でございました。私の率直な考えを申し述べた際に、やや説明不足の点がございました。  いま南北朝鮮、確かにある程度の緊張が存在することは、これは事実韓国側の判断しておるところでございます。しかしながら、すでに二十年を経まして、いま朝鮮半島におきましてはかつての朝鮮動乱のような大規模な軍事衝突は起こっておりません。その背景には、休戦協定の当事者である国連軍存在、これを擁護する国連の決議というものが現在現存しております。また、南北間における軍事力のバランスもございましょうし、また朝鮮動乱以後における米韓軍事防衛条約の存在もございます。  そういうような背景に加えまして、朝鮮動乱が勃発した当時に比べますと、朝鮮半島を取り巻く国際情勢は非常に変化してきております。まず米中間の緊張緩和、こういうような背景を客観的に見ますと、これは私ども考え方だけでなしに、アメリカ、国連等を含む国際的な一つの認識でございますが、いまさしあたり北からする朝鮮戦争のときのような大規模な軍事衝突可能性が、危険が差し迫ってはいない、こういうことを私は申し述べたかったのでございます。そういうような認識を、きわめて説明が不十分でございましたけれども、そのことばの中に意味したものでございます。
  52. 石野久男

    石野委員 これで終わります。
  53. 有田喜一

  54. 土井たか子

    ○土井委員 私はきょう、日韓問題に限って質問をさせていただきたいと存じます。  まず第一に、ただいま石野委員のほうからの最後のほうの御質問にもございましたが、先日、八月二十九日、参議院外務委員会の席上、外務大臣は武力による北からの脅威韓国においてないという御趣旨の御発言がございました。ただいまその中身について補足的な御説明がさらにあったわけでありますが、一つそれについてお伺いをしたいことがございます。  外務大臣は、国連軍韓国にいることを理由に北からの軍事的な脅威はないということをお述べになっていらっしゃる。お尋ねしたいのは、国連憲章の中に侵略があるかもしれないということを予想した予防措置として国連軍を置くことができる旨の規定がございます。いかがでございます。
  55. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 いま御質問のようなことを予想しての規定はないと存じます。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 そのとおりだと思います。私の知り得る限りでも、国連憲章五十一条に、現に侵略があったという既成の事実に基づく国連軍の派遣以外の規定はないわけであります。国連憲章からすると、現在ある韓国における国連軍存在は一体法的根拠はどういうことになるかという問題が一つあろうかと思うわけであります。  先ほど外務大臣の御答弁の中に少しこの点は出たようでありますが、順を追って見てまいりますと、一九五〇年の六月二十五日、二十七日、七月七日、これはいずれも国連の安保理事会における決議でありますが、その決議に基づいて国連旗を掲げたアメリカ軍の指揮下にある軍隊が現に韓国に派遣をされているわけであります。そのままなんです。その後、休戦協定が成立をいたしまして朝鮮動乱はそれで終結をしているわけでありますが、しかし、現にいる国連軍そのものは、一九五〇年の六月二十五日、二十七日、七月七日のあの安保理事会の決議に基づいての国連軍であります。したがいまして、休戦協定が成立したその段階であの国連軍というのは引き揚げなければならないはずの国連軍であるはずであります。考えてみますと、これも百歩譲って、それでもなおかつ三十八度線の境界線の維持が必要であるということなら、国連であらためて国連軍の派遣をその意味において討議すべきであるはずであります。  したがいまして、先ほど御確認をいただいたとおり、国連憲章においても予防戦争のために国連軍を派遣することはできない、予防措置として国連軍を派遣することはできない。現にある韓国における国連軍のその位置についてどういうふうに外務大臣はお考えになっていらっしゃるかをひとつお尋ね申し上げたいのであります。
  57. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 国連軍はそもそも一九五〇年の安保理決議で成立がきまりましたことは、いま御指摘のとおりでございますが、休戦協定ができました段階国連軍の任務が若干性格が変わったわけでございます。一言で申し上げますと、当初は北からの侵略に対してこれを撃退する、戦闘行為をする任務を与えられたわけでございますが、休戦協定成立後は、その休戦協定によって定められております休戦の諸体制を監視し、それを維持するという任務に変わったわけでございます。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 それは先ほど御確認をいただいたあの国連憲章のどこに根拠がございますか。
  59. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 先ほども申し上げました性格、任務の変化につきましては、一九六六年以降七〇年までの総会の決議の主文にこのことが確認されております。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 総会の決議の主文にそれが確認されている、その根拠になる国連憲章の条文は一体どういうことになっておりますか。本来国連軍に対していまお述べになったような任務は国連憲章においては認められていないはずであります。したがいまして、そういう任務を負った国連軍存在を是認する国連憲章の根拠をひとつお示しいただきたいということを私は申し上げているわけです。
  61. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 国連軍が創設されました一九五〇年の安保理決議、これが根拠になっておりますが、この決議において国連軍の任務を定めたわけでございます。さかのぼりますと、国連憲章の中で安全保障理事会の任務を規定した条文がございますが、国際の平和と安全の維持に関する第一義的な責任を持っているのが安全保障理事会でございます。したがいまして、あの朝鮮動乱が始まりましたときに、まさにこれが国連の持つ一番大きな責任の問題であるということで、まず安全保障理事会においてこの問題が取り扱われまして、先ほど申しましたような決議が成立し、それに基づいて国連軍が任務を与えられ、行動を開始したわけでございます。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 それは事実についてお述べになったわけでありますが、さて、そこで外務大臣に一つお尋ねしたいのです。  先ほど御答弁の中にもございました決議がなされたその当時の事情とただいまは違ってまいっております。米中間の接近をはじめとして冷戦状態というのはただいまございません。また外務大臣がおっしゃるとおり、韓国においては軍事的な北からの脅威はない、これは御認識のとおりであろうと思うのであります。  そういう事情のもとで、いま国連軍のあの問題にもう一度、これは本来の姿に立ち戻って、当事国の了解のもとに一これは朝鮮においては北と南でありますが、当事国の了解のもとに、国連軍においては三十八度線の境界線の維持が必要であるという御認識がもしありとするなら、その意味において国連軍の派遣を国連で検討すべき事項と思われますけれども、この事柄について外務大臣はどのようなお考えをお持ちであるかをお聞かせいただきたいわけであります。
  63. 木村俊夫

    木村国務大臣 御承知のとおり、この国連軍存在、また国連決議は、その当時における国連、それから安全保障理事会の決定に基づくものでございます。そういう意味におきまして、この後における国連軍の将来というものについては、今後国連の内部、特に安保理事会の判断によっていろいろ動くことだろうと思いますが、これは国連安保理事会が判断すべきことで、わが国政府が単独でそれに対してコメントすることは控えたい、こう考えます。
  64. 土井たか子

    ○土井委員 国連軍存在にたいへん期待をお持ちになっていらっしゃる外務大臣にしてただいまの御答弁は、まことに消極的御答弁であるといわざるを得ない私は気持ちであります。けれども、このことについてとやかく時間をたくさん用いますわけにはまいりません。さらに基本的なことについて質問の歩を進めたいと思うわけであります。  ただいま日韓基本条約の第三条に従って考えてまいりますと、あの三条の条文では、韓国政府朝鮮における唯一合法の政府と認める旨があの第三条にしたためられているわけであります。これは申すまでもなく、外務大臣御存じのとおりでありまして、ただいま九月一日現在で国連において両朝鮮を承認する国は、韓国については九十五カ国、北朝鮮については六十八カ国、このうち双方と国交のあるのは三十五カ国、しかしながら国連事務当局の筋からしますと、大体そのことに対しての分析は、実際の支持勢力は逆に北朝鮮が上回っているというのが実情だと伝えられておるわけであります。北朝鮮の地位もだんだん上がってきているわけであります。  いまこの日韓基本条約第三条を、当時この条約審議の外務委員会の席上においても、朝鮮半島における唯一合法の政府韓国政府というふうな御理解を政府答弁として明確にされているわけでありますけれども、いま私が九月一日現在、国連における状態あるいは世界の趨勢、そういう点から考えてまいりまして、どうもこの日韓基本条約第三条というものは、日本立場として世界から考えた場合に、事実をゆがめることはあっても、事実認識を正確に持って国際協調主義の上に立って国連の場でお互いの主権というものを尊重し合っていく、そういう本来の立場からすると、もの笑いの種になるような中身を持っておると私は思うわけであります。でき得るならば、この日韓基本条約第三条というものは、世界の趨勢からすればもはや破産をしているわけでありますから、死文化しているわけでありますから、明確に手続上は撤回をすべき条文でありましょう。  しかしながら、本外務委員会のきょうのこの席上においては、そこまでは無理でありましょうから、せめてこの第三条の条文の中身についての理解あるいは解釈、これをひとつ三十八度線以南についてのみ問題にしているということを御確認いただきたいというふうに私は思うわけであります。いかがでございますか、外務大臣
  65. 松永信雄

    ○松永説明員 ただいま条約の条文規定についてのお尋ねがございましたので、私からお答え申し上げたいと存じます。  私ども、現在の韓国ないし韓国政府につきまして、朝鮮半島の全体における唯一の政府であるという認識は持っておらないわけでございまして、南の部分を有効に実効的に支配し管轄している国であり政府であるという認識に立っているわけでございます。日韓基本条約を締結いたしましたときの政府の認識も全く同じでございまして、そのために、そのことを明らかにする目的、趣旨で、まさしく実はこの第三条の規定を設けたわけでございます。  第三条の規定にございますように「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」ということが書いてございます。  この第一九五号決議を見ますると、その第二項に「臨時委員会が観察し及び協議することができたところの、全朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に対して有効な支配及び管轄権を及ぼしている合法的な政府」云々ということが書いてあるわけでございます。  したがいまして、私が先ほど申し上げました政府の認識は、この基本条約を締結いたしましたときと全く変わっていないわけでございます。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、この韓国との基本関係条約第三条における朝鮮という表現は、三十八度線以南をさしてのみ朝鮮と呼んでいるというふうに理解をしていいわけでありますか。
  67. 松永信雄

    ○松永説明員 ことばとしての朝鮮朝鮮半島をさしていると思います。しかしながら、第三条でいっておりますこれこれの朝鮮にある唯一の合法的な政府というところでは、南を実効的に支配し管轄している政府であるという認識を明らかにしているわけでございます。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 ひとつその点を外務大臣から、第三条の朝鮮について一体明確に、どういうふうなお考えがおありになるかをお聞かせいただいて、次に進みます。
  69. 木村俊夫

    木村国務大臣 いま条約局長から法律的にいろいろご説明いたしました。私もそのような認識をしております。
  70. 土井たか子

    ○土井委員 もう一つはっきりおっしゃらないところが答弁の妙味であるようでありますけれども、これははっきり、やはり三十八度線以南なら三十八度線以南のあの領域をさしていうというふうに御答弁をひとつ願えませんか、この節、はっきり。   〔委員長退席、田中(榮)委員長代理着席〕
  71. 木村俊夫

    木村国務大臣 いま御答弁申し上げたとおりで御了解願いたいと思います。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 押し問答というのをしていても時間がむだになるばかりでありますが、これは行く行くははっきりさせなければならない問題であると思います。しかし具体的な問題に少し私は入っていって、そしてやがてこれははっきりしていただかなければならないところに行きつくであろうと思うのです。  韓国からすでに、今回の射殺事件についての捜査報告書が公表され、日本側にも通報されてきておりますけれども、その捜査報告書の中には、現にただいま日本にいる日本人の名前また韓国籍を持たない朝鮮人の名前を明示して共犯者としての取り扱いをなしている部分があるかどうかをひとつお答えいただきたいと思います。
  73. 半田博

    半田説明員 韓国からの通報では、共犯者として三人の名前をあげております。一人は金浩竜氏、吉井行雄氏並びに吉井美喜子、この三人であります。
  74. 土井たか子

    ○土井委員 さて、韓国側は共犯者という認識をもってそういう捜査報告書を公表しているようでありますが、日本側としては、韓国側考えている共犯者に対する現にいろいろな捜査あるいは調査、そういうものはどういうことになっておりますか。
  75. 半田博

    半田説明員 警察といたしましては、先ほども御答弁を申し上げましたように、あくまでも国内法にのっとって捜査を遂げるという基本方針を定めてまいっておるところでございます。
  76. 土井たか子

    ○土井委員 国内法の許す範囲で捜査をただいま展開なすっている。そこで、問題がさらに詰まってまいりまして、もし韓国側から、韓国が現に共犯者であると認識している、日本にいる、名ざしでもうすでに明示をした日本人、さらに朝鮮人に対して引き渡し要求がある節、どのような取り扱いをなさるか、これは法務省のほうからも御答弁をお願いしたいと思います。
  77. 筧榮一

    ○筧説明員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問でございますが、まだ現在韓国から引き渡し請求については何らの連絡といいますか、請求もございませんので、その基礎となる犯罪事実についてもまだ捜査中で、明確になっておりません。したがいまして、この段階でどうするかということもお答えいたしかねると思います。
  78. 土井たか子

    ○土井委員 それはそういう事実があってから考えようという御態度のようでありますけれども法務省とされては――引き渡し要求というのは、たいへん重大問題ですよ。引き渡しを要求されている当事者が日本人である場合、朝鮮人である場合、しかしいずれも日本に居住している人である場合、これは法的に取り扱いをどのように考えてよいかという法上の、法務省としての基本的態度というものをお持ちになっているはずだと思うわけであります。それをひとつお聞かせいただきたいということを私は質問申し上げておるわけです。
  79. 筧榮一

    ○筧説明員 お答え申し上げます。  ただいまの具体的に名前をあげられております三人についてどうこうということはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に申し上げますならば、現行の逃亡犯罪人引渡法によりますと、自国民については引き渡してはならないという規定がございます。この場合に、請求国との間に引渡条約がありまして、その条約で別の定めがある場合はこの限りではないという規定になっております。  したがいまして、自国民についてはそうなっておる。それから外国人の場合には、請求がありますと、二国間で引渡条約が結ばれております場合には、その条約に従いまして事を処理いたしますし、条約がない場合には、法律上は、まず当該請求国の引き渡し要求がありますと、外務大臣がこれを受けまして、相互保証があるかないかを審査いたします。相互保証があると外務大臣がお認めになります場合には、これを法務大臣のほうへ回してくるわけでございます。  そこで法務大臣が、引き渡すことができるかどうか、あるいは引き渡すことが妥当かどうかという点についての判断をいたしまして、引き渡しをすべきであると判断いたします場合には、さらにこれを東京高等検察庁の検事長に審査請求の命令を下します。  これを受けまして、東京高等検察庁におきまして東京高等裁判所に審査の請求をするわけでございます。  そうしますと、高等裁判所におきまして、これがわが国内法上引き渡しをすることができる場合であるかどうかを判断いたしまして、引き渡しをすることができるという判断を受けますと、これが引き渡しになる。引き渡しをすることができない場合であるという判断がありますれば、これに従いまして、引き渡しはできないということになっております。
  80. 土井たか子

    ○土井委員 国内法上のいろいろな手続について非常にきめこまかにただいま御答弁になったわけでありますが、問題は、日韓間においてそういう引き渡しについての取りきめがあるかどうか、そういう協定があるかどうか、条約があるかどうかの問題が今回の事件についてはかかずり合ってくる問題になろうかと思うわけであります。この点はいかがですか。
  81. 筧榮一

    ○筧説明員 現在、日本韓国の間には引渡条約はございません。
  82. 土井たか子

    ○土井委員 なき場合は、それではどういう措置が講じられることになるわけですか。
  83. 筧榮一

    ○筧説明員 先ほど申し上げたところを要約いたしますと、一度条約がない場合にも、その国から引き渡しの請求がわが国政府になされるわけでございます。そうしますと、外務大臣が相互保証を取りつけまして、相互保証があるという判断をした場合に法務大臣に送られてくる、そこで法務大臣の判断がなされるということになっております。
  84. 土井たか子

    ○土井委員 今回のような場合、それでは外務大臣、もし韓国側から引き渡し要求があった節、外務大臣としては現段階においてどのような御用意をお持ちでいらっしゃいますか。
  85. 木村俊夫

    木村国務大臣 一般的な法律関係先ほど説明があったとおりですが、今回の事件についてはまだ事実関係捜査段階においてもはっきり結論が出ておりませんので、この段階でそういう予見をすることは適当でない、こう考えます。
  86. 土井たか子

    ○土井委員 事実関係がまだはっきりしない段階では答弁を差し控えたいという御趣旨のようでありますが、ただ、事実関係をはっきりさせていくのについては、この点やはり認識の上で、基本的にはっきりしておかなければならない点があるようであります。  というのは、すでに日本側韓国が通報してまいっております捜査報告書に基づいて、ここにある、共犯者と韓国が認識をいたしている人たちに対するいろいろな問題があるわけでありますけれども、しかし、その事柄について、第一、政治犯罪というふうな認識でごらんになるのか、刑事犯罪という認識でごらんになるのか、これによってたいへんに相違が出てこようと思うわけであります。また、金大中事件のときにおいてもうすでに経験済みのことでありますけれども、金東雲氏の指紋について韓国側に対して照合を求めているにもかかわらず、それに対しては何らの反証がないまま今日に及んでいるという事実関係もある。  そういうことからいたしますと、今回の捜査報告書について、日本側としては、事実関係について認識をなさる場合でも、問題になっている主犯である人物に会って事の真偽をまず確かめるというふうなことから実は出発をしなければならないのじゃないかと思われるわけであります。  したがいまして、いま最後に申し上げた、韓国側に対してそういうふうな申し入れなり要求なり、あるいはそういう努力というものをいままで警察側として払われているかどうか。それからまた、この事件についていままでの段階では、政治犯罪と見るか刑事犯罪と見る、どういう認識をお持ちになっていらっしゃるか、この事柄をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  87. 半田博

    半田説明員 政治犯罪と見るか刑事犯罪と見るかということについて、警察から御答弁申し上げるというのはあまり適切ではないとは思いますが、この点についてはいろいろ学説もございます。わが国の刑事法あるいは刑事手続法上は政治犯あるいは刑事犯というふうな区別もございませんし、私どもそういうことを区別することの実益もございませんので、したがってさような区別は私どもとしてはいたしておらないところでございます。ただ逃亡犯罪人引渡法には御承知のとおり政治犯罪というふうな表現もございまするし、これはいろいろ外務省の問題でございましょうけれども、具体的な引き渡し要求があったような場合に具体的なケースに応じて関係省庁が協議をしてきめていくことになるだろうというふうに考えております。
  88. 土井たか子

    ○土井委員 政治犯罪と見るか刑事犯罪と見るかということは、これはさほどの問題でないような御答弁の趣旨でありました。ただ日本国内法に照らし合わせて国内法の許す範囲で捜査活動をやるにすぎないというふうな御趣旨のようでもありました。けれども、これの取り扱いいかんというものは、政治犯罪というふうに向こうが認識していた場合、こちらの警察当局が捜査をなすっていらっしゃる中身とは異にして事柄が進展していくという場合だってあり得るのです。したがいまして、政治犯罪と見るか刑事犯罪と見るかということに対してはさほどの問題じゃないという御認識は、私は驚くべき認識だと思うのです。  いま少し触れられましたけれども、政治犯は引き渡せないという国際法上の慣行もございます。やはり取り扱いがそれぞれに異なってくる。したがいまして、その点についていまのような認識のままでいいかどうか、これはたいへん大きな問題だと私は思いますが、法務省とされてはこれについてどういうお考えをお持ちですか。
  89. 筧榮一

    ○筧説明員 いま御指摘のように、わが逃亡犯罪人引渡法におきましても政治犯罪は引き渡してはならないというふうに規定されております。したがいまして、いかなるものが政治犯罪であるかという点、かりに韓国側の引き渡しの請求がありました時点で向こうの言ってきた事実を確定いたしまして、それについて政治犯罪に当たるかどうかという点を慎重に検討いたしたいと思います。
  90. 土井たか子

    ○土井委員 慎重に検討中というのは、これはいつまでも続くという表現でありまして、まことに調子のよい、御都合のよい答弁ということになるわけであります。問題は、もうそんなことは許しておりませんですよ。事実関係というのは先行します。それに追い打ちをかけてあとでつじつま合わせをやるようなことではこれは日本の外交はもたないです。よほどいましっかりしてもらわなければ困る時期だと私は思うわけであります。  したがいまして、先日二日に衆議院の地方行政委員会で、岩垂寿喜男委員警察庁の山本警備局長に対して文世光さんの母親が経営している大阪市内のキャバレーニュー秘苑についてその背後関係調査質問の中で述べられましたところ、警備局長調査を約束をされているわけであります。中身からしますと、純粋に刑事事件というふうにお考えになって刑事犯罪というふうにお考えになっている場合においては、はたしてこの背後関係調査について約束をされるというところまでいくのかどうか、たいへん疑義なしとしない。  先ほどの御答弁でありますけれども、いろんな学説がございまして、そういう意味を込めて、ひとつ二日のあの衆議院の席で警備局長が背後関係についての調査を約束されたことに基づき、きょうに至るまでどういう調査をなすったか、ここで経過報告についてお尋ねしたいと思うのです。
  91. 半田博

    半田説明員 今日までニュー秘苑について調査をいたしましたところ、昭和四十六年の十二月一日にニュー秘苑というものが営業許可になっております。それから経営者が四十八年の十一月の二十八日にかわりまして、陸末蘭、文世光の母親ですね、この人にかわっておりますが、その後何か共同経営者とのトラブルがあって陸末蘭女史はこの経営から手を引いておる、そういうふうな調査経過を聞いております。
  92. 土井たか子

    ○土井委員 問題は、背後関係調査を約束された。それはあの席で岩垂委員のほうから、なぜ文世光の母親が経営しておりますニュー秘苑についての背後関係調査が必要であるかということが述べられているわけでありますから、その述べられている理由に即応しての調査を約束されているはずであります。したがいまして、いまそれについて私はお尋ねをしているわけですから、ひとつあの条件に即応をしてお答えをいただきたいと思うのです。
  93. 半田博

    半田説明員 例の金大中事件のときに金大中氏が関西方面で連行された場所がアンの家というふうな表現がございまして、当時アンと名のつく場所について約千軒ぐらい当たったわけでありまするけれども、しかしこの場所がそうであるというふうなことを特定するという資料はなかったわけでございます。その後におきましても、韓国人の経営しているところでありますから韓国人の出入りはあるとは聞いておりますけれども、それ以上のことについては現在判明いたしておりません。
  94. 土井たか子

    ○土井委員 ところで、それについてはさらに調査をされる予定であるかどうかということをまずお伺いをしたいと思うのですが、引き続き文世光氏の肉親を参考人として事情聴取をされておりますね。その肉親については、長兄の文根洙さんも入っているわけであります。  ところで、すでに兄の根株さんは、文世光氏に暗殺計画のあることを昨年の十月ごろ弟から聞かされているという事実があるようであります。驚きまして、これを思いとどまらせるような努力をするとともに、兄の根株さんは警察へもその時点で連絡をしたというふうな旨の発言をされているようでありますが、警察としては、参考人として事情聴取をされている中にこういう事実関係が出ているかどうか。それから常識から考えましても、日本警察に対して事前にこのことを連絡したくらいでありますから、韓国領事館に対してこのことの通告をしたということは一応考えられる線であります。  したがいまして、そういうことからすれば、大阪の韓国領事館の中においてもし事前にこの事実を知り得ていたとするなら、昨年の十月段階でにいさんは文世光氏にそういう計画があることを知っているわけであります。にいさんだけではなく、身辺の、ほかに母親であるとかまた親しい友人二、三人がそのことについて知っているという形跡もあるようであります。したがいまして、そういうところからしますと、今回韓国に行くのに吉井行雄名を使って行ったとはいえビザを認める、そうしてしかもあの会場に入場することを認める、これ自身がたいへんな問題になってくるであろうと思うわけであります。もしそうであるとするなら事はたいへんゆゆしい。  こういう点について一体警察はいまどの程度までいろいろなことを事情聴取したりあるいは調査を進められたりしていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思うわけであります。
  95. 半田博

    半田説明員 ニュー秘苑の問題については引き続き調査を進めたいと存じます。  なお、ただいま御指摘の文世光の兄が昨年の十月ごろ暗殺計画を打ち明けられて、その旨を警察韓国領事館に通告したということでございますけれども、いま捜査段階でありますから、だれとだれを調べているということは申し上げられませんけれども関係者の供述からさようなことは出ておりません。   〔田中(榮)委員長代理退席、委員長着席〕 また、私ども当時そのようなことがあったという報告には接しておりませんし、全くさような事実についてはいまのところ存じておりませんが、ただいま御指摘でございますので調査はしてみたい、かように考えます。
  96. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、そういう調査の中にぜひ大阪韓国領事館のビザ担当の鄭煕哲領事、あるいは治安情報担当の金権万領事等々についても、これは事情をひとつお尋ねになるという御努力を払っていただくように要求をしたいと思います。いかがですか。
  97. 半田博

    半田説明員 努力はいたしてみたいと存じます。
  98. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、申し上げておきますけれども、このビザ担当の鄭煕哲氏については三十日に韓国に帰国されてそのままであるようでありますから、ひとつその間の事情もお確かめをいただきたいと思うわけであります。
  99. 半田博

    半田説明員 たいへん恐縮でございますが、先ほどの名前がよくわかりませんものですから打ち合わせをしておりまして、ちょっと質問を聞き漏らしまして失礼いたしました。
  100. 土井たか子

    ○土井委員 ビザ担当の領事ですね、鄭煕哲氏。これは外務省から出ております領事館の領事名簿にちゃんと記載をされております。この方については三十日に韓国に帰国されてそのままになっておりますから、その間の事情もひとつお確かめをいただきたいということであります。
  101. 半田博

    半田説明員 さような方向で努力をいたしたいと思います。
  102. 土井たか子

    ○土井委員 時間ですから、私はこれできょうはとどめたいと思いますが、いずれこの問題は続行して質問をさらに次回に続けたいと思います。
  103. 有田喜一

    有田委員長 河上民雄君。
  104. 河上民雄

    ○河上委員 私は、非常に短い時間でございますが、一問だけ日中友好平和条約の交渉につきまして、今後の大臣のお考えを承りたいと思います。  実は、去る八月、日中友好議員連盟の日中国交回復後初の訪中団が派遣されまして、藤山会長並びに勝間田団長のもとに私も参加いたしまして、約二週間余り中国を訪問いたしました。その際、北京におきまして中国側の鄧小平副総理をはじめ多くの関係者にお会いをいたしたようなわけでございます。それに基づいて非常に簡単でございますけれども大臣から明確なお答えをいただきたいと思って質問させていただきます。  初めに、これは先方の御伝言でございますからこの機会をかりて申し上げたいと思いますけれども、人民大会堂における鄧小平副総理との会見の中で、鄧小平副総理は、周総理がいま病気のためここに出席できないのをたいへん残念に思うと言われましたあと、周総理から田中総理大臣、また大平前外務大臣に対してよろしくというような伝言を伝えてほしいというようなおことばがありました。さらにそれに続けまして、木村外務大臣大臣に就任されたあと、日中関係について非常に友好的な態度表明されておることを高く評価されまして、木村外務大臣に特によろしくお伝え願いたい、こういうような御伝言がございました。私は、そのおことばの中にも日中友好平和条約の締結に対して中国側が非常に積極的な態度を持っているということがうかがわれましたので、そのことをまず大臣に申し上げたいと思います。  特にそのあと、日中関係につきまして鄧小平副総理は、この共同声明が発表されましたあと二年間、日中関係は後退もせず停滞もせず進んできた、しかし、希望を述べればテンポを早めたいと思う、こういうように言われたのでありまして、それは明らかに、いま二つの実務協定はすでに結ばれたが、あと二つの実務協定の交渉の問題、さらには日中友好平和条約の締結に対することをさしておられると思うのでありますが、この点につきまして大臣の総括的なお考えをまず初めに承りたいと思います。
  105. 木村俊夫

    木村国務大臣 日中議員連盟の方々から私は非常に有益な御報告を承って感謝しております。  いまお話のありました日中関係、確かに鄧小平副首相が言われましたとおり、決して後退も停滞もしておりません。ただ、二国間の交渉のことでございますから、それがたとえば漁業、海運のごとき実務協定になりますと、やはりお互いの現実の利害関係がかかわってまいりますので、ある程度の期間が交渉に必要なことは、これはいずれの国との交渉でもよく見るところでございます。しかしながら、この実務協定といえども、日中正常化が実現いたしました当時の小異を捨てて大同につくという精神のもとに、私は遠からずこれが妥結を見るということを確信いたしております。  また、すべての総仕上げにもなります日中平和友好条約の締結、これは中国側でも認識しておられますとおり、最終的に日本と中国との永遠の友好関係を規定するきわめて重要なものでございますので、もちろん早急にこれを締結する意思はお互いに変わっておりませんが、いままだ第一段階と申しますか、きわめて一般的な、かつ初歩的な話し合いが始まったというところでございます。したがいまして、日中両国政府におきましてこの日中平和友好条約の締結についての考え方が一致しておりますので、この問題についても遠からず交渉が始まり、できるだけ早い機会に妥結することについては私も全然疑いを持っておりません。
  106. 河上民雄

    ○河上委員 私ども、鄧小平副総理のほかに廖承志中日友好協会会長あるいは同副会長の張香山氏などともかなり長時間にわたりまして討議を重ねたわけでございますけれども、その際、友好平和条約の交渉の手順につきましてかなり具体的な意見の交換を行ないました。その際、先方から実務協定の交渉と並行して交渉を行なってもけっこうです、こういう非常に積極的な平和友好条約に対する態度表明されておるのでございます。このことは、私が特に木村外務大臣にお伝えしたいと思いますのは、私どもが旅立つ少し前の八月二日の当委員会におきまして、大臣は、水野委員質問に答えて次のように言われております。  「この実務協定が、かりに最悪の場合を考えまして、非常におそくなるということになれば、これは中国側の考え方もあろうかと思いますが、自然な形で、それではひとつその前に日中平和友好条約の予備的な交渉も始めようではないかという機運が起こるのも自然かと思います。」こういうように大臣は言われました。  この「中国側の考え方もあろうかと思いますが」という、その部分につきまして、中国側はそういうように言っておられるわけでございまして、これは大臣の御答弁と照応する内容ではないかと思いますが、いま近いうちにというふうに言われましたけれども、この予備的な交渉をいつどのようにお始めになりたいといま希望しておられるか、そのことをお答えいただきたいと思います。
  107. 木村俊夫

    木村国務大臣 実務協定はもうすでに交渉の段階に入っておることは御承知のとおりでございます。漁業協定の実務交渉、また海運についての実務協定の交渉につきましては、先般実務者間で話し合いが一段落いたしまして、今後は北京において外交ルートを通じて交渉に入るという段階でございます。  私が当委員会で申し述べましたのは、非常に最悪の場合に、どうしてもこの実務協定二つにつきまして交渉がまとまらない、非常におくれるような場合には、決して日中平和友好条約の締結をそのあとでなければならぬというようなことには別に固執する必要はない、こういうことを申し上げましたが、総じて日中間におきまして、平和友好条約を締結しようという機運が盛り上がっておりますその際に、いかに現実的な利害がかかわろうとも、この二つの実務協定について円満なる妥結がはかれないようなことにおきましては、私は非常に残念だと思います。  そういう意味におきまして、自然の運び方としましては、やはりこの実務協定についてすみやかなる妥結を実現いたしまして、そのすべての総仕上げとして永遠にわたる日中平和友好条約の締結交渉に入るというのがきわめて自然の運びかと思います。そういう意味におきまして、私は並行的にこれを審議するとか、そういうことの最悪の場合について申し上げました。また、おそらく中国政府側におきましても、できれば実務協定を仕上げて、そのしかる後に日中平和友好条約の交渉に入りたいという気持ちは、私は同じであろうと思います。しかしながら、あまりそれにこだわりまして、日中平和友好条約の締結をおくらせるのは本意でない。こういうようなことは私は日中両国政府もともに認識しておるところであろう、こう考えるわけであります。
  108. 河上民雄

    ○河上委員 こういうことは一種のあうんの呼吸ということもございますので、中国側がせっかくそういう道もひとつ考えようじゃないか、それだけ熱意を持っておられるわけでございまして、おそらく木村大臣におかれましても、一つ一つ片づけていかなければ先へ進まぬのだ、こういうお考えでは必ずしもないと私は思うのでありまして、そういう意味で、まあ冒頭申し上げましたように、鄧小平副総理も、すでに二年たっておる、そういうことを考えるとここらで少しテンポを早めてもいいのではないか、こういうふうに言っておられるわけですから、私は先般新聞などで拝見いたしますと、年内にも予備交渉をというような声も少し出ているようですけれども、いかがですか、大臣としてはいつと明示できないまでも、年内にも予備交渉をというくらいの強い御意思をいま持っておられる、頭の中にすでにあるのではないかと思いますけれども、ひとつその辺の積極的な中国側の態度に対する、またこちら側の積極的な意欲というものをお示しをいただきたいと思います。
  109. 木村俊夫

    木村国務大臣 日中平和友好条約の締結についての熱意は、私どもも決して中国に劣るものではございません。そういう意味におきまして、具体的に私が年内に訪中する予定はございませんし、また先方の姫鵬飛外相が訪日する予定もまだ私は正式には聞いておりませんが、何らかの機会に、そういう予備交渉の段階にしろ交渉が始まるということを私も強く期待しております。
  110. 河上民雄

    ○河上委員 それでは時間がもう来ておりますので、私どもが訪中をいたしました際、中国側から木村国務大臣に直接あるいは間接に伝えられました意向をお伝えすると同時に、私どもさらに日中友好を、国交正常化ようやく二年たちまして、次第にいろいろな意味においてノーマルな形で友好関係が進んでおりますこの際、日中友好平和条約を締結すべき時期がいよいよ熟してきたという判断に立ちまして、そのことを強く希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  111. 有田喜一

  112. 田中榮一

    田中(榮)委員 私は、木村外務大臣に対しまして、去る八月二十九日の参議院外務委員会の席上、社会党田英夫議員の質問に対しましてお答えになりました発言の内容について、二、三御質問をいたしたいと存じます。  田議員の御質問は、韓国に対する北からの武力的、軍事的の脅威があると外務大臣はお考えになりますかという御質問に対しまして、外務大臣は、日本政府は客観的にそういう事実はないと判断をしておる、こういう簡単なお答えだったのであります。  私は、このお答えはむしろ木村外務大臣としてはもっとふえん的に御説明をなさろうと思ったのですが、田議員の御質問が非常に多くて、時間がなくて、そのままやむを得ずぽっつり切れてしまったのではないか、ある意味においてはどうもことば足らずであったので、外務大臣御自身も非常に御不満の点があったのではないかと思うのです。そういう意味か、外務省筋としましては、その後さらにこの外務大臣の発言をふえんせられまして、客観的には韓国内には国連軍があるし、また南北の軍時的バランスが相当とれておるような状態であるので、近き将来において大規模な軍事的脅威はないという意味であるという、外務省筋のふえん的な御説明があったのであります。  ところがこの発言が、国内におきましても、国外においても、特に韓国内におきましては、政府、国民が非常なショックを受けまして、三十一日のいわゆる韓国日報であるとか朝鮮日報のような新聞が、盛んに社説、論説でこの発言内容につきまして非常な批判を加えておりまして、きわめて痛烈な批判でありますが、私は、この批判は必ずしも全部が当たってない、一部は当たっておるけれども多少一方的な批判があると実は考えたのであります。そこで木村外務大臣は、この発言が相当波紋が大きかったというので直ちに新聞記者会見をせられまして、発言の内容説明せられ、また即刻在日韓国大使の金永善氏と面接されまして、よく事情説明してほぼ了解を得たものと私は考えておりますが、しかしながらまだ、そういう事実があるにかかわらず、やはり政府または国民の間、特に韓国内における政府、国民の間にまだ日本の真意というものを非常に不信を抱き、疑っておるという向きがございますので、この点につきまして少しお伺いしてみたいと思うのであります。  そこで、この北方からの脅威ということにつきまして、実は韓国政府並びに国民は朝鮮動乱の際におけるいわゆる脅威というものにつきまして、もうほんとうに骨の髄まで全部が身にこたえておるわけでございますが、大臣、あの当時の動乱によって韓国の受けた軍並びに国民の被害の程度につきましては御存じでございましょうか。もしお調べでございましたらちょっとお答え願いたいと思うのであります。
  113. 木村俊夫

    木村国務大臣 朝鮮動乱当時の南北朝鮮の受けました被害、損害というものはばく大なものであると聞いております。特に韓国におきましては軍の損失が百十四万、また民間のいろいろ家屋あるいは産業施設の破壊その他の損害は当時の金額にして三十億ドルを下らない、こういうようなことを聞いております。  いま田中議員のおっしゃいました私の発言、そういうような悲惨なあの状態が再び朝鮮半島に起きてはならないというような気持ちを込めて私は申し上げたわけでございます。
  114. 田中榮一

    田中(榮)委員 ただいま外務大臣からお知らせがございましたとおり、あの朝鮮動乱における韓国内の軍並びに住民の被害というものは全く想像以上に達しておるのであります。しかも、この損害というものは単に韓国だけでございません。北鮮側におきましてもやはり軍、兵力等におきまして四十万、五十万の戦死者を出し、また米軍も三万五千の戦死者を出しておるというような状況でございまして、いかにこの北方からの脅威は両方にとってきわめて大きな被害であったかということをわれわれは知っておるのでございます。  そこで、先般大臣の発言せられました北からの脅威というものにつきましては、外務省筋が説明されましたいわゆる軍事的あるいは武力的な大規模な全面的戦争、いわゆる日米安保条約第四条に規定するような極東の平和と安全を脅かすようなあの脅威というふうに解釈し、戦争という意味に解釈するのか、あるいはそのほかの有形無形の脅威をさしての脅威というものでありますか、その辺ひとつ承りたいと思うのであります。
  115. 木村俊夫

    木村国務大臣 いま御指摘の点は、まさに軍事的脅威をさすものと考えております。
  116. 田中榮一

    田中(榮)委員 私は、軍事的脅威ということで、それでよかろうと思うのでありますが、ただ、現実の状態を見ますと、韓国内における北からの脅威というものは全面的戦争、いわゆる兵力的あるいは軍事的な戦争を行なう脅威というよりも、むしろあるいはゲリラの横行あるいは越境あるいは今日までいろいろな問題が起こっております。私どもよく調べてございませんが、北鮮の共産軍のいわゆる休戦協定違反事件は一九七三年三月三十日現在で一万七千四百三十七件ということになっておるわけであります。その中には韓国海軍の第五十六号艦の公海上における撃沈、大統領官邸の襲撃未遂事件あるいは最近の国境付近におけるいろいろなトラブル、そのほかついこの間ソウルのラジオを聞いておりましたところが、国境付近において旅客機が銃撃を受けてかろうじて金浦飛行場に旅客ともども着陸したというようなラジオ情報等もあるのでありますが、こうしたいわゆる越境事件とか不法侵入事件であるとかあるいはハイジャックであるとかそうしたものが常に行なわれておるわけでありますが、こうした意味のいわゆる北からの脅威というものはこれは含まれてないと考えるのでしょうか。いかがでございましょうか。その辺、大臣の御見解を承りたいと思うのであります。
  117. 木村俊夫

    木村国務大臣 いま例をあげて御説明のありましたような一連の北朝鮮からする工作、これにはいろいろゲリラ的なものあるいはスパイ、思想工作もございましょうが、韓国側がそういう事件脅威と受け取っておることについて私は否定するものではございません。
  118. 田中榮一

    田中(榮)委員 常識的に申しまして、私ども韓国に参りましていろいろ北からの脅威というものを聞きますと、もちろん全面的な戦争に対する脅威もございますが、そうした一万七千有余件のいろいろな不法事件に対する脅威というものはやはり相当大きく広がっておるのじゃないかと考えておるわけであります。そういう意味におきまして、現在の韓国政府国内に対しまして相当厳重なる警戒体制をしき、また同時に兵備その他の装備、そういうものにも非常な大きな経費をかけてこれを充実し、訓練をやり、そしていついかなることがあっても有事即応の体制を整えておる。それから国内におきましても相当の人心の引き締め等をやっておるのでございますが、やはりこういう際に大臣が北からの脅威はありません、こう言うことは、いま大臣のおっしゃるような専門的なことばでなくして、韓国民の全体は、いかにも日本韓国のやっているいまの警戒体制、それから韓国内の国民に対する指導方針というものが全く朴大統領が自己の政権保持のためにやっているのだというような感じを与えるのじゃないか、こういうようなことで非常に大きな問題を起こしておるのであります。  そこでもう一つ私が心配しておりますのは、朝鮮動乱の前に米軍が駐留軍をある程度撤退いたしました。そして同時に当時アチソン国務長官が、米国としては南は台湾、琉球、日本というアーチ型の防衛線を引いて極東の平和と安全を確保するということを声明されたのであります。ところがその中に韓国が入ってなかった。韓国としては非常こ憤慨しておった。そういう点で、この二つの点で北鮮の金日成はいまこそ絶好のチャンスだというのである理由をもって韓国に攻め込んだ、こういうこともいわれておるのでありますが、ちょうどいま大臣が、韓国には北の脅威がありませんと言われたことによりまして、北鮮側に何かの計画を与えるようなチャンスを与えるのじゃないかというようなことも心配しているのじゃないかということ、それから同時に、この前やはり国会で御答弁になりました、韓国の安全は日本の安全であり、日本の安全は韓国の安全であるといったような、米国、日本韓国のいわゆる安保体制というものに対して、北朝鮮韓国というものを一体にしたというような御発言のように聞いたのですが、そういうことでもって韓国条項、いわゆる一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明の中の韓国条項を、この発言によって将来変更するのではないかというような心配が起こってきておるのでありまして、その辺について大臣としての御見解をお伺いいたしたいと思うのでありまするが、いかがでございますか。
  119. 木村俊夫

    木村国務大臣 一九六九年の日米共同声明におけるいわゆる韓国条項、これはその当時における日米首脳間の現状認識でございます。したがいまして、その当時の現状がその後におけるアジア、特に朝鮮半島における情勢の変化に応じまして、これがある新しい展開を見せたということは否定することができません。しかしながら、韓国の安全というものはわが国にとっても緊要なこと、重大関心事でもございますし、またその後の朝鮮半島における情勢の新展開というものは、むしろ同時に朝鮮半島全体における今後の南北朝鮮対話を通じまして、これが自主的、平和的に統一するという朝鮮民族の願望を受けて、国連においていろいろ朝鮮問題の取り扱いがなされております。そういう世界的な朝鮮半島における現状の新しい展開に対する認識というものを踏まえますと、私は同時に、朝鮮半島における今後の平和と安全というものが、日本のためにも、また極東、アジアの安全のためにもきわめて緊要であるということを申し上げたわけでございます。
  120. 田中榮一

    田中(榮)委員 時間が参りましたので、私はこれでやめさせていただきまするが、今回の発言によりまして相当波紋を描いたのでありまするが、ただいまの大臣の御答弁で内容はよく了解できたのであります。今後ともやはり日韓関係というものは現状で行かざるを得ないのではないか。ことに大平外務大臣は、対韓政策の基本的な問題については変更しない、対韓政策の基本的な基調については変更いたしませんということを何回も国会等においても答弁されておりまするので、まず現状としましては、やはり対韓方針は変更せずに行くことが、日韓関係が円満に行くのではないか。また同時に、極東の平和と安全を保持するためにも、そうしたことがきわめて必要であるということを付言いたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。
  121. 有田喜一

  122. 石原慎太郎

    ○石原委員 大統領夫人の殺害事件について、日本に道義的な責任がないとか、それから外務大臣の北の脅威云々について、多分に誤解の多い言辞が外務省に多いような気がいたします。特に道義的な責任がないということばは、後に公式には取り消されましたが、非常に余韻が消えにくいことはであったと思います。ちょうど言ってみれば、万引きが常習の子供を持った母親が、近くのスーパーマーケットでまた事件が起こったので、自分の子供じゃないかと思ってかけつけてみたら、自分の子供でなかったということで、ほっとし過ぎてああいう発言になったのではないかと思いますけれども、実はつかまった子供が、実子ではなくても、実は自分の親戚であった。先ほど土井さんがくしくも、外国の元首夫人の殺害犯人を文世光さんと言われましたけれども、さんと呼ぶほどの近しさのある、実質的に日本人に近い犯人でありました。  この犯人に対する日本の道義的な責任ということになりますと、これはやはり韓国人自身の感情の要因というものを非常に私たち考えなくてはならない、と思うのです。たとえば、この文世光という犯人の父親は、かつて韓国を植民地支配しておったときに、徴用として日本に拉致されてきた韓国人であり、また文世光自身は、日本に生まれて日本の学校で日本の教育を受け、ほとんど韓国語を話せないというような要件を備えております。まして日本は世界でほんとうに数少ない、日本で生まれた外国人に市民権を与えない国家でありまして、これが国際的な通念でいきますと、当然文世光も韓国籍と同じように、同時に日本の市民権を持ち得る、そういう通念的な判断を韓国人がしがちであると思います。  この条件から、どう考えましても、名前こそ、国籍こそ韓国人ではあっても、こういう一つの青年を政治的な所産として生んだ日本の社会に、政治を含めてある種の責任がないとはいえないと思うのです。  たとえば、岡本公三であるとか浅間山荘の赤軍派であるとか、国の内外でいろいろな事件を起こしている非常に過激な、科学的には非政治的な政治青年というものが、すべてとは申しませんけれども、戦後の少なくとも私たち与党あるいは心ある大衆が評価できない教育の所産であるということを含めましても、教育が道義というものに非常に密接なかかわりがある限り、たいへん遺憾であったとか道義的な責任に関しては云々というあいまいな表現ではなしに、私は過去の植民地支配という歴史的な責任というものを引いても、日本のこの事件に対する道義的な責任は――法的な責任は明確に私は存在しないと思いますが、しかし・道義的な責任は歴然としてあると判断いたしますけれども、あらためて外務大臣のお考えをお聞きしたいと思いますし、それからもう一つついでに、そもそも道義的な責任がないと言明した外務省筋なるものは、一体どういう権威であり、一体何であるかということも、これからこの種の非常に拙劣な混乱を招かないためにも、お確かめしたいと思うのです。
  123. 木村俊夫

    木村国務大臣 それがいかなるところから出た発言にせよ、すべて私の責任ではございます。しかしながら、いまお話しのありました法律的、道義的責任云々の問題は、私の聞くところによりますれば、ある部局の中におきまして、きわめて非公式に行なわれましたブリーフの中に一般的問題として出されておりますのが、いろいろ記事になったことと聞いております。まあいずれにしましても、これはすべて私の責任であることには変わりございません。  一般的に申しまして、こういうテロ行為は、まさにいかなる場合でも許すべからざる行為である、そういうことから申しますと、その直接間接的な、いろいろいま御指摘のありましたような遠因のいかんにかかわらず、今回の狙撃事件の少なくとも準備行為は、わが国内で行なわれたということはきわめて遺憾であるということは、その後正式に私どもの口から申したわけでございます。その中で私ども考え方をおくみ取り願えれば幸いだと思います。
  124. 石原慎太郎

    ○石原委員 続いて北の脅威云々の問題についてお伺いいたしますが、客観的に軍事的に限って、軍事的な脅威がないという判断の根拠に、韓国軍に加えて在韓国連軍なり米軍が駐留しているということで、軍事的な均衡というものはとれているという御認識だと思いますけれども、いましきりに韓国からの国連軍の撤退、米軍の撤退ということがいわれておりますが、もしそれが実現した場合には、それでは政府の客観的な現在の認識の根拠というものはくずれる。つまり現在の軍事的な均衡というものはくずれる、あらためて新しい脅威存在する可能性があるとお考えでしょうか。
  125. 木村俊夫

    木村国務大臣 私が大規模な軍事的脅威の現実性がない、こういうことを申し上げたその一つの条件として、韓国における休戦協定の当事者である国連軍存在を申し上げました。したがいまして、その当然の帰結といたしまして、今後朝鮮半島における平和と安定というものを維持するためには、現在の国連軍存在あるいは将来国連の安保理事会等において考えられ得べきそれに対する措置、国連軍にかわるべき措置というものが、これは安保理事会の問題ではございますけれども、そういうような国連軍の将来をも含む国連における朝鮮問題の取り扱いの中でそういうものは当然考えられなければならぬ、こういう考え方でございます。
  126. 石原慎太郎

    ○石原委員 いずれにしましても、そうすると、その安保理事会での新しい何らかの措置というものはどういう形で講ぜられるかわかりませんが、それが現在韓国に駐留している国連軍の一種の抑止力というものを下回る措置であった場合には、新しい過去の脅威の度合いとはいささかの相違はあれ、北からの脅威というものが存在し得るとお考えでしょうか。
  127. 木村俊夫

    木村国務大臣 私どもは一般的に朝鮮半島における平和と安定ということをたいへん緊要だと思っておりますが、そういう静的な軍事力によるバランスの問題になりますと、当事者でもございませんので、そこまで私どもは言及することは差し控えたい、こういう考えでございます。
  128. 石原慎太郎

    ○石原委員 国家の存立にとっての脅威なり危機というものは、必ずしも軍事的なものを直接に意味しませんし、軍事的な脅威というものを誘発するための何らかの処置が実は軍事的な脅威に通ずるということは常識としてあり得ると思います。私たちが知る限りいろいろな形での諜報活動あるいは地下工作というものが北から南に対しても、あるいは南から北に対してもあるかどうかわかりませんが、私はそれに関する資料はいま別に持ち合わせませんけれども、たとえば日本を経路にして、北から南に対して行なわれる工作あるいは北朝鮮自身が韓国ではなしに、この日本に対して何らかの政治的な意図を持って行なっている活動が、私は現実にこの日本を中継基地にしても、あるいはまた韓国に関しても、韓国の中にもあると思いますけれども、少なくとも日本に限って明らかに北鮮人あるいは北鮮系の朝鮮人を通じてのスパイ活動を含めての対韓工作というものが私は存在しておるのではないかと思いますけれども、その存在の存否について政府委員にお尋ねしたいと思います。
  129. 半田博

    半田説明員 韓国側は、政府あるいは言論界を問わず、日本が対韓工作の中継基地となっておるというふうなことを申しておるわけでありますが、わが国において過去数多く検挙いたしましたいわゆる北鮮の秘密工作員、これは昭和二十五年の九月九日から現在までに三十四件五十七人を検挙いたしております。この大部分が対韓工作をその主要任務としておったということが明らかとなっておる状況でございます。
  130. 石原慎太郎

    ○石原委員 それだけのデータをもとにしますと、韓国という外国の事情ではあれ、韓国政府日本韓国に対する北鮮からの中継基地になっているという言及は、事実的な根拠がある、ある意味で正当性を持つと判断してよろしゅうございますか。主観的な判断ではなしに、事実というものを踏まえて、要するに客観的なお答えをいただきたいと思います。
  131. 半田博

    半田説明員 捜査面から見まして、ただいまのような状況でございまするから、したがいまして私どもは、そういうような意味で、わが国が対韓工作の場として利用されておるということは事実であると申して差しつかえがないだろう、かように考えております。
  132. 石原慎太郎

    ○石原委員 私が調べました幾つかの事件に関してもいろいろ暗示がございまして、たとえば日本警察が検挙しました北鮮系のスパイを、刑期満了して送り返すときに、韓国から北鮮への亡命をはかって日本政府申し入れ韓国人をあわせて北に送還しようとしたときに、北の政府は、自分たちがそういう秘密工作を命じたつまり身元なり責任、義務というものがはっきりしている北鮮系の工作員は引き取りましたが、北に向かって亡命をはかった韓国人は引き取りを拒否したそうでありまして、これはある意味で北が、自分たちの発意でそういう政治的な工作員を派遣したことを認めたことにもつながると思いますし、同時にまた、あるいは推測ですけれども、南から北に対する何らかのそういう工作が存在するのかもしれないという気がいたします。  たとえばこれは明らかに軍事的な脅威につながる事件だと思いますけれども、昭和四十三年につかまりました高栄浩という、これは北鮮の軍人でありまして、これが日本経由で韓国に潜入し、韓国の軍隊に入ってそこでクーデターを起こせという指令を受け、これは検挙され、後に自白しまして、結局韓国籍を取り直していま韓国におるようでありますけれども、こういう事例を見ましても、明らかに軍事的な脅威につながり得る軍事以前の種々の脅威というものが、日本経由で存在しているということは私はいなめないと思うのです。  これについて、それを脅威と見なすか見なさないかということは韓国政府の判断であるというようなことを外務大臣おっしゃいましたけれども、しかし私たちは、現に朝鮮半島存在する南と北の二つの国と、それなりの関心、関係を持っておりますけれども、正式の国交を持っておるのは韓国であり、しかも私たちがその完成というものを念願する自由主義社会、民主的な政治体制というものをともに希求する大きな共通項を持っておる。一方は、これはスカラピノのことばではございませんが、国民皆兵、そうして異常な特訓を受けた一枚岩の、非常に異常な、ヒステリックな国家である、その国に対しても私たちは当然何らかの友好関係を持つべきでありますけれども、一つの朝鮮半島存在する非常に特質の異なった国家に対する配慮というものはおのずと違ってくるのではないかという気がいたします。  韓国政府は当然反共ということをたてまえにしておりますが、日本にもいろいろな政党がございますけれども、とにかく現在政府というものを構成している与党なり、与党を代表する政府というものの基本的な政治の眼目というものは、この日本の社会に、北鮮がとっている、あるいは中国がとっている、ソビエトがとっているような体制というものを実現しない、それにかわる現在のワク組みの中で、一つの政治的な完成というものを心がけるたてまえでございまして、その度合いが多少異なれ、韓国もまたそれに同意をし、本質的なたてまえをもともととっていたはずの国であると思いますが、私はしかも、話があちこちになりますけれども、戦略的に見ても政治的に見ても、あるいは日米関係の中でも確認事項として米国にとってもアジアにおけるバイタルインタレストである日本、そしてそのまた日本にとって極東なり東南アジアの諸国の中で最も致命的な価値、意味を持つ韓国というものの存在からして、その韓国政府のとっている基本的には日本の現在の政府日本の国と共通した政治的なたてまえに抵触してくる、それをそこない得る、こういう北側の日本経由の種々政治的な事実というものを韓国政府の判断だけにまかして決して済むものではないという気が私はいたします。  もちろん私たちは北鮮と何らかの友好的な関係を持つべきでありましょうが、しかしそれはそれとして、私たちの欠くことのできない友好国に対するこうした歴然たる事実というものに日本政府もはっきりと抗議をし、はっきりとそれに対する日本の政治の利益というものを踏まえた判断というものを、日本政府見解として表明されるべきだと思いますが、いかがお考えでしょう。外務大臣にお伺いいたします。
  133. 木村俊夫

    木村国務大臣 それらの一連の行為が日本の国法に触れた場合、これはもう当然私ども政府といたしましてはこれに抗議をいたさなければなりませんが、まだ国交のない国についてのまた抗議のやり方も考えなければなりませんが、そういうものを含めて、私は、国法に触れる限りにおいては当然政府としてはそういう考えを持たなければなりません。しかしながら、事きわめて政治的な範囲にわたりますと、それがたいへんいろいろな複雑な関係もあることでございますので、これについては、政府としてあまりそれに介入することは差し控えたい、こう考えております。
  134. 石原慎太郎

    ○石原委員 しかし、とにかく私たちが北鮮との将来の関係をどういうふうに期待するかは別にしましても、韓国との関係からして、北の朝鮮韓国に対するそういう政治的な意図を持った行動というものを少なくとも日本経由で行なうことは、日本政府にとって迷惑であるというぐらいの表明というものは、個々の事件をとらえて直接されるべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。少なくとも私たち日本人にとってはたいへん迷惑なことだと思いますし、韓国との関係にとっての迷惑だけではなしに、北鮮との何らの関係というものを期待する人間にとっても、北側のそういう事実というものははなはだ迷惑なものだと私は思いますが、いかがお考えでしょう。
  135. 木村俊夫

    木村国務大臣 それが明らかに日本の国益に反する場合は、これはきわめて迷惑であるということを表明しても差しつかえないと思います。
  136. 石原慎太郎

    ○石原委員 先ほど共同声明韓国条項について田中委員質問にお答えになりましたが、もう少し詳しくお聞きしたいと思います。  二年前の共同声明の時期に比べて、確かに韓国には何らかの変化があるといえばありますけれども、それが本質的な変化を意味するほど大きな変化とは少なくとも私には思えません。  それからまた、北側から言い出した南北統一の問題にしましても、東西ドイツの例を見るまでもなく、これほど特質的に本質的に性格の異なる国家の統一というものがこれから半世紀なり四半世紀なりの間に可能ということは、何か途中に非常に大きなラジカルなできごとが世界的な範囲であり得ない限り不可能だというのが、私は少なくとも政治科学的な常識的な判断だというような気がいたします。  いずれにいたしましても、その共同声明というものの意味合いが変わったというようなニュアンスのことを外務大臣おっしゃいましたが、これはアメリカの外務省とのアイデンティティにおいてそういう発言をされたのでしょうか、それとも日本外務省当局の判断でございましょうか。あるいはまた、アジアの問題について、アメリカの外交というものの一つのフルーツは、必ずしも国務省のイニシアチブではなしに、たとえばキッシンジャーは北京を訪れるときに明らかに台湾を切り捨てるつもりでおりましたが、国防省というもののイニシアチブで台湾は歴然としてああいう形で残りました。  ですから、この極東安保体制というものに非常に重要な意味を持つ韓国条項の意味合いの変化というものが、日本外務省とアメリカの国務省との間のアイデンティティにおいて外務大臣の発言となったのか、それに加えて国務省とのアイデンティティもあり得るのかどうかをお尋ねしたいと思います。
  137. 木村俊夫

    木村国務大臣 いわゆる韓国条項を含む共同声明はすでに五年をたっております。一九六九年でございますが、その当時における朝鮮半島状態とその後五年を経ました現在における朝鮮半島の現状、これは一昨年の七月四日の南北対話開始をもって一つの大きな区切りを迎えた。これは私どものみならずアメリカあるいは国連を含む認識であろうと思います。  そういう意味におきまして、私が先ほどお答えいたしましたとおり、共同声明というものの性質上より申しまして、その後における現状が変われば認識もそこにまた新しい展開をもたらすということから申しますと、昨年の田中・ニクソン会談における共同声明の中身にあらわれておりますように、朝鮮半島における平和と安定について両国がいかに寄与できるかを考えようというような共同声明の字句がございます。まさに日米首脳がそういうような新しい情勢の展開を認識しております以上、私は、それがアメリカの国防省であるとあるいは国務省であるとを問わず、これが米国の統一した考え方である、そういう理解を持っております。
  138. 石原慎太郎

    ○石原委員 おことばを返すといいますか、釈迦に説法になるかもしれませんが、この数年来朝鮮半島に見られる南北統一への一つの手がかりというものは、世界全体の政治的な風潮であるデタントの一つの地域的な表示といえばいえると思いますが、実は日本の外交なり外交関係者あるいは日本のジャーナリズム、大衆というものがおかしがちの誤りの一つは、デタントを一つの政治的な状況と考えることだと思うのです。これは時間がありませんからここで講義をするわけではございませんけれども朝鮮半島に限ってみましても、あそこに見られるデタントは決して状況ではなしに一つの新しい政治的な条件にすぎないということの認識を私たち持つべきだと思いますし、さきの田中・ニクソン共同声明でも、しかしあそこではっきりアメリカは、共産圏ということばを使わないにしても、閉ざされた社会と開かれた社会という表現で、われわれ開かれた社会が閉ざされた社会を開いていくことが国際的な責務である、使命であるというようなことをうたっておると思います。そういう観点で私は一つの要望として、この朝鮮半島存在する二つの非常に特質的な、異なる国家に対する外交をできるだけ慎重にお運びいただきたいとお願いいたします。  最後に一つ。いままでの質問とかかわりない問題についてお尋ねいたしますが、最近、正常化の後に中国から、私たちが確認していなかった、戦争中を通じて戦後も現在のいわゆる中国政府、かつての中共軍、その支配下の地域に残った日本人が帰ってまいりました。この人たちは戦前、戦争中、今日の中国やあるいは北鮮やソビエトにはなはだ類似した全体主義的な軍事国家であった日本の社会生活を体験し、そのまま終戦を迎えたわけでありますが、当然向こうに残ったため、戦後の日本の社会にどういう変化が訪れたかということを認識しないままに、実は自分たちが国籍を持った過去の日本と非常に類似した社会にそのまま住んできたわけであります。  この人たちが機会に恵まれて日本に帰ってきまして、初めて戦後の、現在の日本の社会と現在の中国の社会というものをあくまでも個人的な主観で、個人的な価値判断で、人間的な目で見比べる機会を与えられたわけでありますが、それらの方々の中にはそのまま帰国した人もいますし、肉親を残してきたために一時帰国者ということで、やがては中国に帰るということで日本に来た人が何人かおります。しかし、帰ってみれば人情として、私は幸か不幸か現在の中国に行ったことはございませんけれども、かつての日本に本質的にはなはだ類似した現在の中国に住む日本人が、現在の日本にこのまま居つきたい、つまり中国に帰りたくないという意思をほとんどの人々が持つのは私は妥当な帰結だと思います。  しかしこれに対して、そういった人たちに、中国の現況についてあまり周囲にしゃべらぬように、そしてまた、できるだけすみやかに自分の意思に反して中国に帰るように、帰らない場合には残した家族に何らかの影響があるだろうというサゼスチョンのもとに、中国の大使館ではなしに、日本の、日本人が構成している組織を通じてそういう一時帰国者に対する説得なり監視というものを依頼しまして、これは書類としてもございますし、事実としてもございます。  これを受けたのは日中友好協会(正統)本部という、こういうことを日本人のくせに受け合うのがこういう組織の正統性のゆえんかもしれませんけれども、彼らがこれを依頼されまして、その協会の理事長なり事務局長の名前でこの友好協会(正統)中央本部の機関誌にそういう政治的な業務の受け合いというものを各支部に通達しておりますが、私は、これは政治的干渉とにわかに申しませんけれども、いずれにしても、その一時帰国者たちが完全に自由な条件で現在の中国を選ぶか日本を選ぶかという機会を与えられていないだけに、決して好ましくない措置であり、傾向であると思いますけれども、いかがお考えでございましょうか。  それからもう一つ、時間がございませんので重ねてお伺いいたしますが、日中国交正常化のあと、日本外務省としてはすべきことはたくさんあったと思いますけれども、はたして正常化の後に、終戦のときすでに中共の支配下にあった地域の日本人が一体何人おり、その人たちのその後の消息がどのようなものであったかということの調査を依頼されましたでしょうか。それがわかっておりましたならば詳しくお伺いしたいと思いますし、いまお手元に資料がなければ後日その資料をいただきたいと思います。  以上です。
  139. 木村俊夫

    木村国務大臣 第一点のお尋ねでございますが、そういう事実があったかどうか確認しておりませんので、これは調査いたしたいと思います。いずれにいたしましても、各人の持つ世界観なり価値観に対してわれわれ政府が介入することは控えたい、こういう考えでございます。  同時に第二の点については、いま資料がございませんので、追って資料を提出したいと思います。
  140. 高島益郎

    高島説明員 ただいま石原先生がおっしゃった中国大陸に残った日本人につきましては、もちろん国交正常化直後から再三先方申し入れておりまして、わかり次第、また希望者につきましては帰国させたりあるいは一時帰国させたり、そういったことにつきまして中国政府との間に密接な協力をしていままで実現をしてきているわけでございまして、総数につきまして先方はいろいろ努力しておるようでございますけれども、まだ総数の通報は得ておりません。
  141. 石原慎太郎

    ○石原委員 ちょっと補足しますけれども外務大臣にお伺いしたのは、日本政府がそういう帰国者たちに対して云々ではなしに、明らかに外国の政府日本のつまり民間組織を通じて、その人たちの国籍の自由な選択というものを規制している、そういう傾向について外務省当局としていかがにお考えかということでございます。その点いかがですか。
  142. 木村俊夫

    木村国務大臣 いずれにしてもまだ事実を確認しておりませんので、その後においてお答えをしたいと思います。
  143. 石原慎太郎

    ○石原委員 外務省が事実を確認していらっしゃらないならば、ここで私のほうから資料を提出いたしますけれども法務省の入国管理事務所でその事実をちゃんと調査して、しかも公的な出版物の中にそういう記録も載っております。ですから、必要ならば私のほうから差し上げますので、それを御参考になって、外務省のこの問題に対するはっきりした見解を、どうか中国という私たちとこれからも友好を深めなくてはならない国の代表機関に向かって、日本政府の権威としてはっきりと通達、意思表示を願いたいと思います。  質問を終わります。
  144. 有田喜一

    有田委員長 松本善明君。
  145. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣に、先ほどからの質疑で朝鮮外交の根本問題がいろいろな立場から論議をされておりますが、そういう時期にいま当面をしていると思いますので、私もこの点について若干の質疑をこの際行ないたいと思います。  まず第一に、一九六九年の日米共同声明につきまして田中議員や石原議員が再々にわたって質問をされましたけれども、それについて外務大臣は、国際情勢が一九六九年から変わっているということを述べられて、この解釈が変わってくるということを答弁されたというふうに思います。  ところで、一九五〇年の国連決議、いわゆる朝鮮非難決議からは二十年たっているわけです。あの当時と比べますと、国際情勢はたいへんな変化をしておると思います。  私はまず最初にお聞きしたいのは、外務大臣は一九五〇年当時と現在において国際情勢が根本的に朝鮮半島に関して変わってきているという点について認識をされているかどうかという点について伺いたいと思います。
  146. 木村俊夫

    木村国務大臣 御指摘のとおり、その当時と現在は相当な変化があるという認識においては変わりございません。
  147. 松本善明

    ○松本(善)委員 ところで、この朝鮮民主主義人民共和国はすでにWHOにも加盟しておりますし、国連のオブザーバーでもありますし、あるいは今度はIPUの会議日本で行なわれるについては、朝鮮民主主義人民共和国からも代表が来るわけでありますし、あるいは郵政大臣をされました久野忠治氏をはじめとして、朝鮮民主主義人民共和国を訪問した与党議員もたくさんありますし、この久野忠治氏が代表的な役割りを果たしている日朝議員連盟は、朝鮮民主主義人民共和国との国交の樹立を目的にしております。  そういうような状態がいま生まれておりますけれども外務大臣はこの朝鮮民主主義人民共和国についてどういう認識をいまはお持ちになって、どういう方向でこの国との関係を進めていこうとしておられるか、その基本方針をお聞かせ願いたいと思います。
  148. 木村俊夫

    木村国務大臣 私どもは、朝鮮半島における平和と安全というものはきわめて緊要である。また今後朝鮮半島におきましてそれを実現するために、朝鮮民族本来の悲願である南北の平和的、自主的統一がきわめて望ましいことである。これはもうすでに国連の昨年におけるコンセンサスにおいてもあらわれておるとおりでございます。そういう意味におきまして、私どもは今後朝鮮半島におきまして南北対話が継続されまして、朝鮮の平和的、自主的統一ができるだけ早く実現するということが最も望ましいこととは考えております。しかしながら、現時点におきまして――すでにもう九年たちまして、九年前における日韓基本条約に基づきまして日韓関係が打ち立てられております。この日韓基本条約に基づきます日韓間の友好の維持、発展ということは、わが国のただいま基本的な外交政策の一つになっております。また北朝鮮におきましてはいまだ国交は開かれておりませんけれども、今後も経済、文化、スポーツその他の交流を深めていきたい、こういう考え方でございます。
  149. 松本善明

    ○松本(善)委員 朝鮮民主主義人民共和国との交流を進めていきたいということを言われましたが、具体的にお聞きしたいのは、一つは、朝鮮民主主義人民共和国を侵略的な国というふうに考えておられるかどうか。それからもう一つは、この国との国交樹立を目ざされるかどうか、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  150. 木村俊夫

    木村国務大臣 どうも侵略的な国という意義、内容が問題でございまして、私どもはそういう問題について政府としての見解は控えさせていただきたいと思います。また、北朝鮮との国交問題につきましては、現在のところ考えておりません。
  151. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど田中議員との質疑の中で大臣は、朝鮮民主主義人民共和国からの脅威がないということについての大臣の発言に関して、軍事的な脅威というものはない、そのほかのいろいろな問題はあり得るというような趣旨の答弁をされたと思いますが、その点は趣旨を確認してよろしゅうございますか。
  152. 木村俊夫

    木村国務大臣 私が申しましたのは、そういう一連の北朝鮮から工作がある事実を警察庁でも申し述べましたが、そういうことを北からの脅威と受け取る韓国側考え方を否定するものではない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  153. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、軍事的にはそういうものはないということでございますね。
  154. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほどから、先般の参議院外務委員会における田議員の質疑に対するお答えをいろいろまたあとで私が説明申し上げましたが、その説明で御了承願いたいと思います。
  155. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣はその際の説明で、国連軍存在ということが朝鮮半島で大規模な軍事的衝突の危険がないということの理由の一つとしてあげられました。そうすると、この国連軍はそういう軍事的な衝突を予防するためにいるということになりますか、大臣見解では。
  156. 木村俊夫

    木村国務大臣 これは国連における安保理事会の決議に示されておりますとおり、朝鮮半島における平和と安定を維持するというのがその使命でございます。
  157. 松本善明

    ○松本(善)委員 私がお聞きしたいのは、先ほど土井委員も聞かれましたけれども、結局において外務省見解が明確にならなかった国連憲章との関係を聞きたいわけでありますが、一九五〇年当時の国連決議では、これは現実に侵略があったということで国連軍を派遣したということになっております。私どもはこのこと自身について賛成できない、反対でありますけれども、その当時と非常に国際情勢も変わったということをいま木村外務大臣は言われました。それから国連局長先ほどの答弁で、休戦協定によって国連軍の性格が変わったのだ、こういう趣旨の答弁もいたしました。  いま朝鮮半島で現実に侵略行動があって、それに対処するために国連軍が派遣をされているのだ。この認識はとても全世界のだれをも納得させないものであります。だからこそ国連軍の性格が変わったとかあるいは朝鮮半島の平和と安全の維持のためにいるのだということを外務大臣国連局長は答弁をするわけでありますけれども、それが一体国連憲章上許されることであるかどうかという問題であります。先ほどの質疑の中でも明らかでありますが、国連憲章によって、侵略を予防するために国連軍を派遣するということは許されてはおりません。現実に侵略があったときにのみ国連軍の派遣というのはあり得る、これが国連憲章の規定であります。  そうだとするならば、朝鮮半島における国連軍存在というものは、いま申されたような趣旨で、朝鮮半島における平和と安全の維持、こういう目的のためであるというならば、これは侵略を予防する、現実の侵略のためではなくて、そういう予防のために国連軍の派遣を認めるという見解政府が立っているといわざるを得ません。  そういう点について、一体外務大臣はこのままでいいとお考えなのかどうか。私どもは当然いまの国際情勢、あの五〇年当時から二十年たって国際情勢も大きく変わった現在、国連軍の撤退をこそ日本政府国連において主張し、そしてそれを実現するということが重要だというふうに考えておるのであります。この国連憲章の解釈との関係及びいま国連軍の撤退のために外交的な活動をするということが必要だという点についての御答弁をいただきたいと思います。
  158. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 国連軍ということばを使います場合に、国連憲章が起草されましたときに考えられております国連軍と、それから現実に朝鮮動乱において派遣されております国連軍とは性格が違うものであるということをまず申し上げたいと思います。つまり国連憲章制定時代に国連の理想として考えられましたことの中に、国際の平和と安全を害する行為が起こりましたときに、最終的に強制行動によってこれを解決する、つまりそのための国連軍を設けるという考え方が憲章の規定の中にございます。ところがいろいろな理由で、実際に国連憲章に予定されております国連軍が創設されないまま今日に至ったわけでございます。その過程において朝鮮動乱が起こったわけでございます。  安全保障理事会は、国連憲章上、国際の平和と安全を維持する第一義的な責任を持たされた機構でございます。したがいまして、この事態を受けまして安全保障理事会において討議しました結果、北からの侵略に対してこれを撃退する国連軍というものを創設する決定がなされたわけでございます。それ以後いま御指摘になりましたように性格は変わっておりますけれども、この国連軍は安全保障理事会の一九五〇年の決議に基づいて設立され、以後若干性格の変化はございますけれども、依然として朝鮮半島における平和と安全の維持のためにその任務を継続して行なっているという意味で、つまり安全保障理事会に基づいて、この特定の目的のために設けられた国連軍ということでございます。つまり国連憲章で予定されておりました国連軍と性格が違うものであるということを申し上げたいと思います。
  159. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣国連軍の撤退問題について答弁をいただく前にもう一度質問をしておこうと思いますが、いま国連局長が答弁をしたのは、安保理事会の決議があるとかそれから休戦決議があるとか、そういうことを言っているにすぎないのです。そんなことは答弁してもらわなくてもわかり切った話です。  私が聞いておりますのは、予防のために国連軍の派遣というのはできないのだ。だから国連局長も、当初予定していたものではないということを言わざるを得なかった。国連憲章の予定しているものではないということをいま言わざるを得なくなっている。それは国連憲章に規定のない予防のための、国連軍がそういう侵略行為を予防する、平和と安全の維持という意味はそういうためでしょう。そういう国連軍朝鮮半島にいるということが国連憲章上正しいと日本政府考えるかどうか。もし正しいと考えなければ、これは撤退を要求すべきではないか。いますでに国連の安保理事会できまっているというようなことをここで答弁してもらっても、これは全然発展にはならない。その事実は知っておる上で、いまこの事態は正しくないのではないか。先ほど来の外務大臣の発言から見ても、国連軍の撤退ということが自主的、平和的統一のために必要ではないかということを私は言っておるわけであります。この点についての外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  160. 木村俊夫

    木村国務大臣 国連軍の性格については、先ほど国連局長が御説明したとおりでございますが、私、一般的に申しまして、もし国連軍朝鮮における存在国連憲章に違反するとなれば、国連自体がそれを判断すべきことであって、まさか国連国連憲章に違反するようなことを許すわけはございません。そういう意味におきまして、私は朝鮮半島における国連軍存在というものは、国連が有権的にこれを認めておるものであるという意味から申しまして、これは国連憲章に違反してないという考え方をとっております。
  161. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、それは少し考えを変えなければいけないのじゃないでしょうか。この国連朝鮮討議がこれから始まるわけです。国連軍撤退を要求する国は決議案を出しているわけでしょう。それが正しいかどうかということを当然日本としては判断をしなければならないでしょう。国連が決定する、国連はまさか間違ったことをきめるはずはないといっても、日本が自主的な立場でこれを判断すべきである。朝鮮半島の安全が日本にとって重要であるというならば、これは積極的に日本が判断をしなければならない事項ではありませんか。  いま外務大臣にしても国連局長にしても、これは国連憲章上合法的であるという根拠を一つも示すことができませんでした。それで一体国際的に通りますか。いまその検討がないというならば、この国連憲章上の合法性の問題について検討を深められる用意があるかどうか、この点について外務大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  162. 木村俊夫

    木村国務大臣 国連軍の合法、非合法につきましては、これは第一義的には国連自体が判断すべき問題であろうと思います。したがいまして、今後における朝鮮半島における国連軍の将来についてこれをどう取り扱うかということは、今後の国際情勢、特に朝鮮半島における情勢の推移に応じて国連の安保理事会がみずから判断すべき問題であろう、こう考えております。
  163. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣のお考えでは、私は自主的な外交とはいえないということを申し上げて、さらに質問をしたいと思いますが、外務大臣先ほどから言われております自主的、平和的な統一ということが、国連軍という名目でのアメリカ軍がいてできますか。外国軍がいなくなって、そして初めて朝鮮半島の自主的、平和的統一というのはできるのじゃないか。この国連軍存在というのは外務大臣の言われた自主的、平和的統一の障害になっているというふうには考えないかどうか、この点を伺いたいと思います。
  164. 木村俊夫

    木村国務大臣 もとより南北の自主的、平和的統一ということは最終的には両当事者がこれを考え、またこれを実行すべき問題ではあると思いますが、しかしそういうことが可能である時期まで、まずその前提要件になりますのは朝鮮半島における平和と安定ということでなければならぬと思います。そういうことについて、昨年の国連総会でも全体の、これは北といわず南といわず、国連総会全体のコンセンサスを得たあのステートメントの趣旨が、私は最も世界的な共通の認識に立つものだと考えております。
  165. 松本善明

    ○松本(善)委員 朝鮮半島の平和と安全のために国連軍がいるということになりますと、これはいつまでもいるという口実になるのではないか、また国際的に見ればどこへでも国連軍が派遣できるという理屈になるのではないかと私は思います。大臣は、一体どういう状態になったら国連軍が撤退をすべきだというふうに思いますか。
  166. 木村俊夫

    木村国務大臣 どうもそこまで私もコメントすることは控えたいと思いますが、きわめて仮説といたしまして、南北朝鮮対話がきわめてスムーズに進行いたしまして、すでに対立も解消し、また国連の場における南北対話も進行いたしまして、もうすでに南北の話し合いの中で国連軍存在が必要ないというような段階になれば、おそらくそういうことが可能になろうと存じます。  またその一つの考え方としましては、これはもちろん政府見解じゃありませんが、先般の八月十五日の光復節における韓国大統領のステートメントにございましたような南北間の不可侵条約の締結とかいろんな考え方もあろうかと思います。ただし、これは政府見解ではございません。そういう意味でお聞き取り願いたいと思います。
  167. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、この討議を通じまして、いまの政府態度外務大臣態度では、ほんとうの意味での朝鮮での朝鮮民族の自主的、平和的統一というのはできないのだということを申し上げて、次の質問をしたいと思います。  警察庁に聞きたいのですが、韓国からいわゆる捜査協力をしてほしいということを言われておりますが、それについてはどのような捜査をしているのか、特に名前をあげられている三人についてどういう捜査をしておるのかということを伺いたいと思います。
  168. 半田博

    半田説明員 警察といたしましては、先ほど来申し上げている方針のもとに、現在までのところ、主として大阪の南署の高津派出所に起こりました拳銃盗難事件の裏づけ捜査並びに吉井美喜子にかかる免状等不実記載、出入国管理令違反の捜査、この点を中心として捜査を行なっておるところでございます。
  169. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、金浩竜、吉井行雄両氏については事件を立件して捜査をするというようなことはしていない、こういうふうに伺っていいですか。
  170. 半田博

    半田説明員 特定の個人についてどういう捜査をしておるかということについては、これは答弁を差し控えさしていただきたいと思います。ただし、この拳銃盗難事件にいたしましても旅券の不正入手問題等にいたしましても、さらに共犯者があるかどうかということについては捜査をいたしているところでございます。
  171. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務省に伺いますが、韓国政府から犯人引き渡し要求が出てくるという見通しはありませんか。可能性はありませんか。
  172. 高島益郎

    高島説明員 現在までのところそういう徴候は全然ございませんので、いまの段階でそういう見通しを述べることは差し控えたいと思います。
  173. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務省に伺いますが、先ほど逃亡犯罪人引渡法についての法務省見解が示されて、韓国との関係では引渡条約がない、引渡条約がないときには相互保証があるかどうかを外務大臣が判断をして、それから法務省がやるのだ、こういう趣旨の答弁がありました。  これは逃亡犯罪人引渡法の第三条の二号についての相互保証の問題だと思いますが、韓国は例の金大中事件での金東雲などについては何ら引き渡しをしない、日本で犯罪を行なったことが明白であるにもかかわらずこれの引き渡しに応じない、こういうことが客観的に明らかになっております。外務大臣は、韓国は逃亡犯罪人引渡法の第三条二号にいいます相互保証のある国と考えているかどうか、一般的に伺いたいと思います。
  174. 松永信雄

    ○松永説明員 すでに先生御承知のごとく、日韓間には犯罪人の引き渡しに関する国際約束、取りきめは何もないわけでございます。したがって、現時点において相互保証があるということは私どもは知っておらないわけでございます。この問題は、そういう問題が提起されましたときにやはり検討されるべき問題であろうと思います。
  175. 松本善明

    ○松本(善)委員 条約局長、そういう不勉強な答弁をしてはだめですよ。犯罪人引渡条約がないことはいまも言っているし、それはもう韓国との関係では明らかなんです。条約がない場合に相互保証の問題になるのが第三条二号の問題なんです。先ほど法務省が答弁しているのです。だから韓国を相互保証のある国と考えているかどうかということを聞いておるのです。いまここの委員会でこれだけ大問題になっているのに、それについては検討もしていないというのは、外務省はたいへんな不勉強だ。そんなことで通りますか。外務大臣、そんな役人でいいのですか。
  176. 松永信雄

    ○松永説明員 相互保証があるかどうかということは、その請求が提起されました時点において外務大臣としての認定と申しますか、決定を下すべき問題であろうと存じております。現在、御質問のございますこの事件について、起こるかもしれないし、起こらないかもしれないという場合を想定して、政府見解表明することは適当ではないと存じますので、差し控えさしていただきたいと思います。
  177. 松本善明

    ○松本(善)委員 そんなことはないですよ。金東雲問題については引き渡しをしていないじゃないですか。そのことによって、韓国に対して日本側から犯人の引き渡しを要求しても、これはよこさないということは明白ですよ。そして、これは一般的に判断のできることです。韓国はどういう国であるかということは、何もこの事件との関係で判断する必要はないのです。いま外務省は、そういう考えはないということですか。私がそれだけ言っても、そういう判断はしないということですか。
  178. 松永信雄

    ○松永説明員 金東雲の問題につきましては、これは御承知のごとく、日本側から任意出頭を要請したわけでございます。当時金東雲は、在日韓国大使館の館員として外交特権を持っていたわけでございます。韓国政府は、その日本政府要請に対しまして、外交特権を理由として、金東雲の任意出頭の要請には応じられないという回答をよこしたわけでございます。したがって、その相互保証の問題とは直接の関連はない問題であると認識しております。
  179. 松本善明

    ○松本(善)委員 なるほど。そうすると、日本は金東雲の引き渡し要求もしていないから直接の関係はない。外務省の腰抜け外交はまことによくわかりました。  もう一つ、別のことを聞きたいのですが、犯罪集団という形での取り締まりをしろということで、朝鮮総連を直接にあげていないという話でありましたが、この犯罪集団というのはどういうふうに外務大臣は受け取っておられますか。
  180. 木村俊夫

    木村国務大臣 国法に違反しまして犯罪行為を行なう集団、こういうふうに考えます。
  181. 松本善明

    ○松本(善)委員 集団を取り締まれというのは、日本の国の憲法では、集会、結社の自由が確固としています。一つの団体を取り締まれということは、これは場合によっては日本の国の憲法を変えろということです。あるいは法律を変えろということです。これは、先ほど外務大臣は、内政干渉のようなことはまさか韓国はしない、こう言われましたけれども、客観的に見れば、明白に内政干渉要求をしてきたと見るべきではないかと思う。当然に、こういうことをするべきではないということを抗議をすべきであると私は思いますが、外務大臣はこの点についてはどう考えておられるのか。その犯罪集団を取り締まれという要求は、これは全く無意味な、全く子供だましのことを言ったのだから、こんなことは気にする必要はないというふうに考えているのか、それとも抗議をするべきだと考えているのか、その点をはっきりお答えいただきたいと思います。
  182. 木村俊夫

    木村国務大臣 私は、そもそもわが国の内政に干渉するがごときことは韓国政府考えておらないという前提に立ちまして、これに抗議を行なう考えはございません。しかしながら、今後におきましてもわが国法の範囲内において受け入れるべきものは受け入れ、受け入れられないものはこれをお断わりするという態度に変わりはございません。
  183. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、時間がありませんのでこれで終わりにしようと思いますが、朝鮮外交の問題は、この委員会でのわずかな時間の論議でも根本問題に直面をしております。金大中事件から、あるいは二人の日本人の裁判の問題、それから今度の韓国からの内政干渉的な要求の問題、こういうような問題を考えましても、いままでの自民党の田中内閣の外交方針ではとても処理し切れない状態になってきている。その根源は、やはり韓国を唯一合法政府というふうに考えている日韓条約、そこに原因があると思います。私は、その時点で、日韓条約ができたから朝鮮民主主義人民共和国との関係についても別の考えをしなければならぬといった趣旨先ほど外務大臣考え、これも違っていると思います。  といいますのは、日韓条約の三条の唯一合法政府、この規定は言うまでもなく二十年前の国連総会の決議を引用してのものであります。国連での情勢が変わってきた場合、たとえば中国が国連に加盟をしたというような時点では、中国に関する非難決議は失効しているということを福田外務大臣もかつて言いました。そういう国連での事態の進行によって、これも変わっていくわけです。国際情勢はそういう方向に動こうとしている。この韓国を唯一合法政府という考えをいつまでも持っているということがこの朝鮮外交を混乱をさせて、そして日本主権も擁護できないという根源になっております。  私は、この日韓条約は当然破棄する、そして国連軍を撤退をさせて、そしてほんとうの意味での自主的、平和的な統一というものを朝鮮民族のために期待するということがこの朝鮮外交の根本でなければならないと思いますが、その点について外務大臣見解を伺って終わりにしたいと思います。
  184. 木村俊夫

    木村国務大臣 朝鮮半島に対する私ども考え方はすでにたびたび申し上げたとおりでございまして、ただいまの松本先生の御意見は御意見として拝聴しておきます。
  185. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  186. 有田喜一

    有田委員長 渡部一郎君。
  187. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、まず最初に、本日は中国問題と韓国問題で新大臣にいろいろお伺いしたいと存じます。  まず、公明党の竹入委員長は先日訪中をし、中国側の首脳部と日中間の諸懸案問題につき討議をいたしましたし、また日中議連といたしましても先日訪中団を出しまして、同様の交渉あるいは中国側の内容について瀬踏みをいたしたわけであります。その中で幾つかの問題点があるわけでありますが、現在問題になっております漁業、海運の二条約の交渉の進展に関し、かなりの前進が見られたと思われます。また平和友好条約の締結の見通しに関し、これまたきわめて友好的な、前向きの前進の確認を得ているわけであります。その意味で、この問題に対する政府側の見解というのをまず承りたいと思っているわけであります。  すなわち、漁業、海運の二交渉は、寄港地における旗の問題をはじめ、かなり原則的な問題で暗礁に乗り上げてきた問題が、この際交渉を妥結するに必要な方向へ向かって一歩前進が行なわれたと思うのでありますが、早急にこの二交渉を再開し、締結に持ち込む用意があるかどうかをまず伺いたいと思います。
  188. 木村俊夫

    木村国務大臣 先般の竹入委員長が訪中されました御帰国談を報道等において拝見いたしました。われわれ政府に対しても非常に有益な御報告であったと存じます。そういう意味におきまして、私どもはもうすでに交渉中でございます漁業、海運両協定の前途に非常に明るい見通しを持った次第でございます。したがいまして、交渉の経過等についてはいろいろございますけれども、日中正常化の際に日中両国政府がとりました小異を捨てて大同につくという精神のもとに、これら二つの実務協定の交渉も今後順調に進め得るものと確信をしております。
  189. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 平和友好条約に関しては、これをぜひとも早急に着手すべきであると私は考えているわけでありますが、最も問題になりそうなポイントにつきこれら二つは相当話を詰めた模様であります。少なくとも日中共同声明のその路線の延長であるようなものであるならばというきわめて意味深い発言が中国側から行なわれているようでありまして、それでありますならば、問題点となります数項目を離れてこれは早急に妥結することが可能ではないかと思われるわけであります。したがって、このような日中共同声明の路線上の発展、あるいは発展としての友好平和条約の締結については前向きに取り組まれる、そういう意思を表明されることができるかどうかお伺いしたいと存じます。
  190. 木村俊夫

    木村国務大臣 日中平和友好条約の締結についての熱意は、私どもも中国政府に劣るものではございません。ただ、いろいろ実務協定の交渉等によりましていまだ平和友好条約の交渉についてはまだまだ初歩的、一般的考え方段階にとどまっております。むしろいろいろな各種のルートを通じます国民外交の中から私どもが非常に示唆を受ける点がたくさんございまするので、そういう面も十分に参考にさしていただきまして、これから熱意を持って、かつなるべく早い機会に日中平和友好条約の交渉に取りかかりたい、こういう考えでございます。
  191. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 姫鵬飛外相が訪日されるということになりましたら、これを歓迎して迎えられる用意がありますか。
  192. 木村俊夫

    木村国務大臣 もし姫鵬飛外相が訪日されるようなことになれば、私どもは大いに歓迎をしたいと思います。
  193. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日中友好平和条約は、漁業、海運の二協定が妥結した時点で取りかかるおつもりですか、両協定並行という中国側の意向と同じようなお考えでありますか。
  194. 木村俊夫

    木村国務大臣 これは私、具体的な交渉の進展ということを考えますと、まだどちらを先とかあととかいうようなことには固執してはおりませんが、日中平知友好条約の締結という基本的な問題がもし非常に順調に進むようであれば、その以前にすでに交渉を始めております海運、漁業のこの実務協定も、お互いに互譲の精神に立ってこれをすみやかに妥結できないわけはないと思いますので、できればいま交渉中であります海運、漁業両協定を妥結いたしまして、その総仕上げとして日中平和友好条約の締結交渉に進むというのが自然の運びかとは存じますけれども、この両実務協定がもし最悪の状態になれば――最悪と申しますと少し語弊がございますが、非常におくれるような状態になれば、中国政府が言っておられるように、日中平和友好条約の交渉を並行的に始めるということも決してわれわれは考えないではない、こういう考え方でございます。
  195. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 平和友好条約の着手に対して決断される時期はいつでありますか。また、どういうチャンスにそういうことをお考えになりますか。
  196. 木村俊夫

    木村国務大臣 これはお互いの交渉でございますから、日中両国政府がそれについて合意をした時点、こういうことでございます。
  197. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 合意するための予備交渉を始めていると理解すべきですか、それともこれから始めるという意味でしょうか。
  198. 木村俊夫

    木村国務大臣 もうすでに大平前外務大臣がことしの一月に北京に参りまして、予備交渉の第一歩としてのお互いの構想の持ち合いと申しますか、初歩的、一般的な考え方の突き合わせはすでに始まっておる、こう解釈しております。
  199. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは中国問題はその辺にしたいと思います。  今度は韓国問題を伺うわけでありますが、外務大臣は御着任早々に日韓問題の非常な渦の中に突入をされまして、ある意味では放言問題に近いニュアンスで韓国側からいたぶられていることにつき、深く同情を持っている一人であります。ただ、先ほどからの野党議員、与党議員からの質問に対する答弁を拝聴しておりますと、きょうはガードがかたいだけで、前向きの部分がだんだん薄くなってこられたようなニュアンスを持っているわけであります。特に自民党の二議員からの強力なアタックに対しては非常にうしろへ下がられた。これはある意味で、私たちとしてはちょっとがっかりしているわけであります。  そこで、きょうは時間もありませんので、やかましい議論は短時間でできかねるものですから、率直に一つずつお伺いして大臣のお考えを明らかにしてまいりたいと思うわけであります。  まず、まわりの輪郭のほうから伺っていくわけでありますが、韓国に対する経済援助は、賠償支払いの部分を除きまして今日まで総金額どれぐらいであり、どういうふうな経緯で投下され、そしてそれは現在どういう効果を持っているか、その辺についてお伺いしたい。
  200. 菊地清明

    ○菊地説明員 お答え申し上げます。  まず概略を申し上げますと、本年八月末現在におきまして韓国に対しまして現実に支出した金額は、請求権関係が五百五十六億五千五百万円、その他のものが六百九十一億五千二百万円、合計で千二百四十八億七百万円ということになっております。  それでその効果でございますけれども、援助がどのくらいかということは実は確たる指標はございませんけれども、一般的に申し上げまして、たとえば韓国の生活水準の向上それから経済成長それから外貨準備とか、そういったものに寄与したのを数字的に見るほかはないわけでございますけれども、ただ一つだけ例として申し上げますと、韓国のただいまの一人当たりの国民所得は三百七十三ドルないし三百七十五ドルという数字でございまして、これは数年前に比べまして二倍ないし三倍の生活水準の向上となっております。
  201. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まず、韓国援助に関し疑惑が目下絶えないわけであります。そしていままでこうした多額にわたる経済援助というものが行政措置の範囲内で行なわれており、当委員会の審査の対象になっていなかったということを私は憤慨に存するわけでちります。少なくとも一千意にのぼる巨費というものが行政当局の判断だけで投下されていいものではない。総括して予算の中、項目の中で投下されたという理屈は成り立つにしても、それが総括であり過ぎて的確な審査が行なわれていなかったということは遺憾であり、少なくともアメリカ政府が現在行なっておるように項目については事前に個別審査をする、そしてその後に実際の費用に対しては審査を行ない、その審査、決算報告というものを随時行なうというような制度を確立することが望ましいと私は思うわけであります。  いまあげられただけでも一千二百四十八億七百万でありますから、このようなでかい費用が、しかも膨大な汚職のうわさがあり、中には自動車一台が三百万円に評価されて投下されたとか土木工事費用が日本国内の三倍に評価されておるとか、悪評は絶えないのであります。また日本政府のある部分がそれにチップを要求したとかあるいは全体の六割がチップであるとかというような報道すら行なわれておる。としますと、私はこの千二百四十八億七百万円の内訳に対しても報告を求める義務を感ずるのであります。  私は、大臣、そこで申し上げるのでありますが、当委員会に対して韓国援助の内容に対し、今日まで行なわれた内容に対し報告を資料として御提出を求めたいと思うのですが、いかがでありますか。
  202. 菊地清明

    ○菊地説明員 先ほど私が説明いたしました総計で千二百四十八億円何がしというもののうち五百五十六億円はいわゆる請求権協定に基づく支出でございますので、これはもちろん国会の御審議をお願いして、それで二国間の協定ができまして、それからその協定の中に書いてあります日韓の合同委員会というものにかかりましてそれで適正に支出をしているというものでございますので、補足的に申し上げます。  それから、その次の御質問に対しましては、案件ごとに報告すべきではないかというお話でございますけれども……(渡部(一)委員「そんなことは聞いていない、資料を出すかどうかを聞いているんじゃないか」と呼ぶ)はい、そのお答えをいたします。  資料に関しましては、現実に行なわれた協定に関しましてはもちろん御報告、資料として提出したこともございますし、今後とも提出する予定でございます。  それから、今後の案件についてそれもという御質問趣旨でもしあるとすれば、その点に関しましては、援助の例といたしまして先ほどアメリカの例を出されましたけれども、アメリカでもその一々の援助の案件について国会の審議を経てやっているというふうには私たちは承知しておりません。
  203. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 委員長、こういうナンセンスな答弁をやめさせてもらいたい。なぜかといえば、アメリカでは少なくとも委員会において資料を要求されたら出しているじゃないか。私は資料を要求しているんです。委員長、資料を提出させてください。こんなことで審議ができるか、ほんとうに。日韓関係の問題の中で、一番経済援助が問題だといわれている。ぼくはほかのルートで何回も要求したが、外務省要求に対してこたえたことは一回もないではないか。先日の工業高校の問題が起こったとき、社会党の議員が同様の要求をして断わられていた。常に隠しており、常にごまかしており、よほどの汚職があるとしか思われない、そんなやり方では。  私は資料を出すか出さぬか要求したんじゃないですか。出すか出さぬか答えたらいいじゃないか。今後はもっと微細に報告するかしないかを答えたらいいじゃないですか。少なくともいままで出した分については全部報告を求めると言っているんだから、それに答えたらどうですか。
  204. 菊地清明

    ○菊地説明員 ただいままでに援助をした経済協力援助、技術協力援助その他につきまして、その内容、条件その他については提出の用意はございます。
  205. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの答弁をお聞きのように、出さないためにはなはだ遁辞を弄する悪癖がある。委員長、厳重に御監督いただいて当委員会に資料として提出するように委員長からお計らいいただきたいと思いますが、いかがですか。
  206. 菊地清明

    ○菊地説明員 従来の実績につきましてどの程度までが資料として作成できるか、また提出できるかということは検討させて提出することといたしたいと思います。
  207. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 従来までの実績につきというのは一部の話ではないですか。まずどういう項目でどういうふうに金を出すかという、この一千何百億という膨大な金額をどういうふうに出したかというのをまず出すべきです。第二番目には、それが実際的にどういうふうに使われたかを出すべきです。問題をあいまいにして、ごまかしてごまかしてごまかすやり方はやめるべきじゃないですか。率直でないな。一々言うことが変じゃないですか。大臣、申しわけないんですけれども、これに対して御答弁いただけませんか。
  208. 木村俊夫

    木村国務大臣 いやしくも経済協力内容について疑いがあってはなりません。そういう意味においてできるだけの資料を提出したいと思います。
  209. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣の言うように今後ちゃんと答えたまえ。  次に私は、もう時間がなくなってきてしまったので、これではほんとうに質問にならない。全くしょうがないな。もう全部この次に主要な問題はさせていただきますが、大臣にお伺いしたい。  田中総理大臣は先日、私は韓国が自由と民主主義を基本理念とする国家であると思っていると発言されました。また、わが国の対韓援助は韓国の民生向上と国民経済の発展に貢献していると発言をされました。これに対して韓国の学生運動の指導者たちは、日本経済援助韓国における経済搾取であり、軍事支配の延長であり、非常に遺憾であると強くこれを述べ、反日運動はいまや韓国をおおっております。したがいまして、総理の見解とははなはだ違う。また金芝河という詩人は、現在の韓国の維新憲法下では権力が大統領に集中し、専制君主になってしまっている。したがって現政権が倒れるのが早ければ早いほどよいと思うと述べ、逮捕され、死刑を求刑され、判決が行なわれました。  このように、日本政府の従来までの発言は、韓国の上層部の意見と韓国の民衆側の意見とを分けて対比するならば、民衆側の意見を無視した発言であったかと思うわけでありまして、その意味で、総理の見解はある意味韓国情勢に対し非常に刺激的であったことは事実であります。韓国に対して私たちは内政干渉をするつもりはありませんけれども、少なくとも民主主義の大道からはずれており、はずれたことは緊急措置の一号、四号を解除したときの声明の中で朴大統領みずからがきわめていままで遺憾なことであったと述べているとおりであります。  このような田中総理のおくれた姿勢を継続して対韓外交をなさるおつもりか、それとも新たな立場でおやりになるか、少なくとも民主主義を逸脱する韓国情勢というものに対し忠告を加える日本外交としての節度ある折り目正しき外交路線に戻られるか、その辺の基礎的なことをまずお伺いしたいわけであります。
  210. 木村俊夫

    木村国務大臣 私も田中内閣の外務大臣でございますから、田中総理先ほどの御指摘の認識が誤っておるということは考えておりません。しかしながら、今後わが国の経済協力のあり方、すでに東南アジアその他の発展途上国における対日批判等を十分反省いたしまして、これから行なう経済協力が真にその国の利益につながるということを十分検討した上で行ないたい、こういう考え方でございます。
  211. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 時間がもうほとんどありませんから、最後に大臣にお伺いしますのは、先ほどから北朝鮮問題に対し、韓国に対する北朝鮮脅威存在しない旨の外務大臣発言が問題とされているわけでありますが、これについて伺いたいわけであります。  それは、これと同趣旨の発言がアメリカの下院外交委員会委員二名によって韓国視察の末、韓国の現状は民主主義からほど遠く――これは田中総理の発言とは違っておりますが、民主主義とははなはだ遠いという発言が一つ。そして韓国の述べているような北朝鮮からの脅威がないという旨の発言がやはり報告書に堂々と述べられております。おそらくは木村大臣はそのアメリカの下院外交委員会の諸君の調査報告も踏まえておっしゃったのではないかと私は思いますが、アメリカの下院議員が述べたことは問題にならないで、日本外務大臣が述べられると問題になるという、こういう問題そこに私は非常な大きな問題点を感ずるわけであります。つまりそれだけ外務大臣の御発言というのは重いともいえるし、そうではなくて、この発言をとらえて韓国は自分の国を民主国家として売り出すための道具にしようとしたというふうにも受け取れるわけであります。  私は率直なところ、韓国に対する北朝鮮脅威大臣発言のごとくそれほどのものではない、大戦の起こるほどのものではないというふうな御発言もなさっておりますが、そこまでは正しかろうと思うわけであります。大臣の御発言の真意は何であったのか、そしてそれに対してどうお考えになるのかを私はお伺いをしたいと思うのであります。  また、もう一つ質問を重ねさせていただきますが、アメリカの下院の歳出委員会が八月二十九日、韓国などに配置された極東米軍の抜本的再編と統合を政府に勧告する報告書を作成したわけでありますが、その中で、日本の本格的再軍備は比較的近い将来に不可避であると認識を述べ、その過程を米国の極東における目的と一致するように導くことを「賢明な方向である」と報告をし、その中で明らかに韓国における防衛力を、日本の防衛能力をもって米国の負担を軽減する旨示唆をいたしております。  私は、このような日本の防衛肩がわり論というものがアメリカで一方では強くあらわれてきておる現段階において、木村発言はたいへんじゃまになる発言として米韓軍事当局から攻撃される意見であったことは間違いがなかろうと思うわけであります。ですから私はここで問題になるのは、大臣はしたがってそういうような米韓軍事外交当局の極東政策に対する流れと反対の発言をされたということになると存じます。しかしそれは日本の平和憲法の上からは、まことに正しい発言であったかと思います、その時期と方法は別として。私はしたがってこの際、この極東米軍報告書にある、日本韓国の防衛を肩がわりするというような意見にくみすると思われていることがまず問題だと思うわけであります。  したがって大臣は、この極東米軍報告書にあるような韓国の防衛肩がわりというものを承認なさるかどうか、そういう考え方を認められるかどうかを、これは明快に述べていただいておかなければならぬと思うわけであります。私はいま二つの項目で述べたわけでありますが、北からの脅威に対する御発言の真意と、並びにこの極東米軍報告書の日本韓国防衛肩がわり論に対する御見解とをあわせて承りたい。これはまさにこの御発言が木村外交の平和外交に対する取り組みの深度というか、角度をあらわすからだと思うからでありまして、あえて二つくっつけて最後に御質問をいたすわけであります。十分にお答えをいただきますように、私の質問時間がなくなりましたので恐縮でありますがお願いいたします。
  212. 木村俊夫

    木村国務大臣 第一点のいわゆる北よりの脅威についての私の真意の存するところは、すでにもうお答えした私の説明の中で、答弁の中でおくみ取り願いたいと思いますが、この私の考え方は、決してアメリカの議会の二議員の報告を踏まえて行なったものではございません。私が自主的に判断した見解でございます。しかしながら、その私の説明不足のためにもたらした各種の論議あるいは誤解等については、先ほどの私の見解表明によりましてすでに御承知願ったことと思います。  第二の点の韓国における米軍の肩がわりの問題については、私どもはそれが米議会の歳出委員会における報告であるということに着目いたしますと、米国における軍事費の節約ということをプロパーな役目とする歳出委員会の報告でございますから当然の内容とは思いますけれども、これが米議会また米政府の正式の見解になろうとはゆめ思っておりません。したがいまして、いずれにいたしましても韓国における米軍の肩がわりをわがほうが行なうというがごときは、毛頭考えておらないということをはっきり申し上げておきます。
  213. 有田喜一

    有田委員長 永末英一君。
  214. 永末英一

    ○永末委員 私は、新しい外務大臣に、日中問題と日韓問題についてお伺いいたします。  最初は、日中平和友好条約の問題でございますが、先ほど、いま進行しております二つの実務協定の交渉と関連をさせつつお答えがございましたが、もともと日中平和友好条約というのは実務協定とは性格の異なるものでございまして、もちろん二年前の共同声明が発せられたときは、何らのその他の関係はございませんから、あるいは実務協定先行論があったかもしれませんが、いまそれから二年間たってまいりますと、質的に異なるものはやっぱり質的に異なるものとしてお進めになるのが当然ではなかろうか、こう思いますが、大臣はどうお考えですか。
  215. 木村俊夫

    木村国務大臣 その点の御趣旨には私は賛成でございます。したがいまして。その順序等についてはあまり固執はいたしておりませんけれども、実際上実務協定の二つがいま交渉段階にございますので、そういう交渉の時間的な分配上そのようになっておるわけでございます。したがいまして、両国政府の合意ができれば、実務協定とはまた並行して日中平和友好条約の締結交渉を始めるということには、私は決してやぶさかではございません。しかしながら、日中平和友好条約、これは将来長きにわたって日中の友好関係を規律する非常に重要な内容のものでございますから、なるべく両国政府が忌憚のない意見をお互いに出し合って、慎重にこれを進めるほうがより将来にわたって適正なものができるのではないか、こういうことで、すみやかにこれの交渉を進め、またすみやかにこの交渉の実現を願うことは人後には落ちませんけれども、この内容については十分両国政府が腹蔵なく腹を割って交渉を進めることにいたしたい、こういう考えでございます。
  216. 永末英一

    ○永末委員 先ほど、さきの大平外務大臣が訪中いたしましたときにこの問題に触れ、すでに予備交渉は始まっている旨の御答弁がございました。予備交渉が始まっているとしますと、この友好平和条約に盛られるべき項目等については双方の見解が一応提示されたと見てよろしいですか。
  217. 木村俊夫

    木村国務大臣 まだ一般的、初歩的な段階でございますから、お互いの構想を突き合わせて、その項目等について触れ合うような段階にはまだ至っておりません。
  218. 永末英一

    ○永末委員 平和友好条約の一番重要な点は、二年前の共同声明の六項目にいわれておる点、すなわち両国関係の基本原則、さらにまた紛争処理に関する基本的な立場でございますが、これをもう少しくやはり具体的にするということが私は眼目であろうと思います。  さて、三十年前の戦争が終わりまして、サンフランシスコ平和条約では当の相手方の一番キャップでございますアメリカとの間には安全保障条約なるものが設けられた。各国の交戦状態を終結し、新しい国交関係を開く場合の友好条約あるいは平和条約というものは、やはり新しく戦争状態が始まるおそれのあるときに当該国がどういう態度をとるかということが相談をされ取りきめられているのが通例でございまして、当然わが国におきましても、太平洋戦争以前から事実上の交戦関係にございました中国とわが国との間の長いいびつな関係に終止符を打つのでございまして、いま外務大臣お話でございますと、未来悠久、長きにわたる関係を結ばなければならぬ、こういうことでございますから、いまのような点について当然これは平和友好条約の中で取りきめねばならない、いや、合意を得なければならない問題だと私は思いますが、大亜はどう思われますか。
  219. 木村俊夫

    木村国務大臣 これはいわゆる平和処理条約と異なりまして、基本的な友好条約の点にウエートが置かれる条約になろうと思います。そういう意味におきまして、いろいろな項目は考えられますが、もうすでに基本的な線は一昨年の日中共同声明の中に貫かれておりますので、その日中共同声明を踏まえまして、諸般の項目についてお互いに合意のできる問題について話し合う、交渉を進めるということになろうかと思います。
  220. 永末英一

    ○永末委員 まだ初歩的な段階のようでございますので、この交渉を進められるにあたっては、中国側の国際情勢に対する認識のしかたは必ずしもいままで自民党内閣がとってきたものと同質ではございません。したがって、いまおっしゃった点に対する合意に達するには相当な御努力が必要ではなかろうかと思いまして、その御努力をひとつお願いいたしまして、日韓問題に入ります。  八月十四日、金東雲元在日韓国大使館一等書記官については、すでに韓国側捜査をもう打ち切ったという通告があっちの政府からこっちの政府にあったということでありますが、このことは、この金東雲という人については日本側の一切の要求に応じないということを最終的に通告したものでありますか。
  221. 木村俊夫

    木村国務大臣 金東雲元書記官の捜査報告の通告を受けました。その際に、先方説明といたしましては、従来大きな捜査陣容をもってやってきた金東雲元書記官の捜査が一応証拠を得ないで、英語でいえばサスペンドすることになった、クリアできないことは残念だということで、将来もこれに追加すべき捜査データが出た場合には当然これを追加通告することにはやぶさかでないという意味で、私どもは、警察当局のことではございますが、客観的な証拠その他も警察当局では把握しております関係上、これをもって金東雲元書記官の捜査について昨年十一月に相互の了解事項にうたわれました問題が終局的に解決、処理されたとは受け取っておりません。
  222. 永末英一

    ○永末委員 いまサスペンドということばを使われましたが、その金東雲という人に関してわがほうが新しい――ことばが正しいかどうかわかりませんが、容疑事項をあげて相手方に言わねばならぬ、こういうことでありますか。
  223. 木村俊夫

    木村国務大臣 わがほうの捜査当局もまだ捜査を続けております。そういう意味におきまして、今後日韓両国捜査当局の捜査が継続されて、その上において新しい事実ができてくれば、またそのときにおけるお互いの捜査当局の突き合わせは当然起こると思いますし、またフォローアップすべきこの事件についての韓国側の最後的な通告とは私どもは受け取っておりませんので、今後もその意味では捜査が双方において継続する、こういう受け取り方でございます。
  224. 永末英一

    ○永末委員 私が心配いたしますのは、新しい事実がない限りこれで終わりだという意味での、政治的な観点に立てば最後通告みたいなものにきておるのではなかろうか。神さまだけしかわかりませんけれども、十四日に通告して十五日に事件が起こるというのはなかなかのことでございまして、そういう意味合いで事務的にいえばなお続いておると外務大臣は解釈しておられますけれども、あちら側からすれば、たとえわれわれのほうが新しい何かを持っていきましても、すでにそれは解明されておるというか、しばらく時間がたって取り上げるに値しないというか、そういうことで、言うならばわがほうからの捜査協力に対していわばもう打ち切りだという強い態度を政治的には示した、そのように受け取られる節がございますが、いかが考えられますか。
  225. 木村俊夫

    木村国務大臣 この問題は、私は政治的に扱うべき問題ではないと思います。きわめて業務的な捜査でございますので、その面について今後も詳しい説明韓国側要求するつもりでございます。
  226. 永末英一

    ○永末委員 政治的にというのは理の通らぬことをこね上げようというのではなくて、大きなワク組みから見れば、あちら側としてはもうこの金東雲という人に関しては捜査を進める意思がないという意図を表明したのではなかろうかと思われます。  それはそれといたしまして、八月三十一日にあちら側の金大使があなたを訪問されまして、大統領夫人狙撃事件に関しての捜査協力申し入れてきたものに対しての最終的な――最終的かどうかわかりませんが、その時点における話し合いがなされた。これは日本において対韓破壊分子が活動していることや、あるいはまたそういう犯罪集団があることに対する捜査の点については、あなたは断わった、このように相手がとっているようでございますが、そう見るべきでしょうね。
  227. 木村俊夫

    木村国務大臣 私がお答えしましたのは、わが国の国法の範囲内でなすべきことはいたしましょう、そういう意味でお答えをしたわけでございまして、全般の捜査協力については、これを誠意をもって協力いたしたい、こういうことを答えたわけでございます。
  228. 永末英一

    ○永末委員 国内法というのは、外国の転覆事項を犯罪として主として扱うものでもございません。したがって、先ほどからの答弁を聞いておりましても、警察当局のやっておりますことは、旅券の問題であるとかあるいはまた拳銃窃盗問題というところで扱っておるのでございまして、相手方は、そういうある一つの犯罪事項あるいは嫌疑事項ではなくて、自分のところの政府の転覆を企てる、そういう一つの動きに対する取り締まりを要望してきておる。これはかみ合いませんね。かみ合わないからこそ、あなたの答弁に対して韓国でいろいろな動きが起こっておるのではなかろうか。だから、あなたは慎重にお答えになったと思いますけれども韓国におきましては、これはもう木村さんに断わられた、こういうように映っておるのではなかろうかと思いますが、いかがですか。
  229. 木村俊夫

    木村国務大臣 双方で、国内法のたてまえも違うことでもございます。そういう面についての理解は十分していただいたと思っております。
  230. 永末英一

    ○永末委員 日韓間の国際的な関係の緊張が云々されるのでございますが、それは一つ一つの事件にからまって鎮静すればいいのでございますが、なおお互いに、けしからぬと言いあっている状況。外交というのは、そういう一つ一つの事件でわがほうの正当性を主張しておったのではこれはどうにもならないし、また相手方の理解がわがほうと同じように高まるということをわがほうだけが理解しておってもしようがないし、あちらがまた同じことを要求しておるでございましょうから、その辺でやはり外交的に処置すべき何らかのことがあるのではなかろうかと私に思われてなりませんが、これは当の外務大臣であるあなたが、ひとつ死力を振りしぼってお考え願いたいことでございます。名案がございますか。
  231. 木村俊夫

    木村国務大臣 どうも名案はいまのところございません。しかしながら、日韓双方のこういう不幸な事態に直面いたしまして、お互いに感情に走ることなく、理性をもって今後の日韓関係を扱っていかなければならぬ、そういう考え方のもとに今後極力努力を続けてまいりたいと思います。
  232. 永末英一

    ○永末委員 一九六九年の日米共同声明におけるいわゆる韓国条項の取り扱いでございますが、あのときにわれわれは、一体なぜああいうものが唐突に出たのかということをきわめていぶかしく思われました。あの条項は、読みようによっては、韓国の安全が乱された場合には、わが日本国は、総理大臣でございますが、あらかじめ日本におけるアメリカの軍事基地をアメリカが自由に使うことに白紙委任状を与えた、こういう形にあれは読み取れたのでございまして、これはわが国の安保条約の運用上ゆゆしき重大事だとわれわれは思い、その点についてその真意を問いただしてまいりました。過般来、ことにまたきょうの外務大臣の御答弁では、韓国における安全の破壊が問題ではなくて、朝鮮半島全体の安全ということが非常に御関心のようでございまして、したがって、一九六九年のときのあの共同声明が出された国際的なシチュエーションとはいまは変わったという前提にお立ちのようでございます。  だといたしますと、もしわれわれが一九六九年のときに心配したようなことが的に当っているとするならば、今後この地域に安全を攪乱されるような状態が起こったときには、日本国はアメリカの自由な基地はいたさせませんぞということを外務大臣表明された、こう受け取れるのでございますが、いかがですか。
  233. 木村俊夫

    木村国務大臣 おことばを返すようですが、私は、その前段階のことはそうは申しておりません。したがって、韓国の安全が破壊されるような事態が起きれば、これは当然わが国にとっても大きな関心事でございます。そういう意味におきまして、私は、それもさることながら、その後における大きな情勢の発展と申しますか、朝鮮半島における情勢の発展からして、いまや朝鮮半島における平和と安定というものも日本にとってはきわめて緊要な問題である、そういう認識を申し上げたわけでございます。
  234. 永末英一

    ○永末委員 安全保障条約あるいはそれに類したものというのは、最終的なぎりぎりのところの保障を両国で取りつけあるいは取りつけさせられるわけですね。だから、いまあなたがおっしゃったように、うまいように動いていくならば、こんなものは発動する余地もなければ考える必要もない。  ただ、われわれが一番心配をいたしてまいったのは、あなたのほうの政府でその責任者がこういうことを突然言ったということは、ぎりぎり、どこまで詰められたのかということをわれわれは心配いたしました。心配いたしたというのは、先ほど申し上げましたような白紙委任状を渡したのではなかろうか。それを否定されたのだから、白紙委任状ではないぞ、断わるのだぞ、こういう新しい政策の転換、日本政府の意思として、そういう安保条約の運用上、アメリカに対して、この地域で安全が破壊されるようなことが起こってもわれわれとしては白紙委任状ではないのだという政策の転換がなければ、違いましたと言えないじゃないですか。いかがですか。
  235. 木村俊夫

    木村国務大臣 私はいまのおことばがちょっと理解いたしかねますけれども、いずれにいたしましても、日米安保条約は極東における安全というものも兼ねてその目的にしておりますが、すべてそういう観点から、日米安保条約における一つの抑止力というものを、非常に重きを置いておるわけでございます。  そういう意味において、私どもは日米安保条約の最も適正な運用というものがきわめて重要なことと考えておりますが、それについて、日米安保条約が韓国条項においてアメリカに対して白紙委任状を与えたというような解釈は、私どもはとっておりません。
  236. 永末英一

    ○永末委員 先ほどこの韓国地域における国連軍存在について問題がございましたが、外務大臣は、その国連軍を含めて南北の間には軍事的バランスが保たれておるので、北からの軍事的脅威なるものは現実的ではない、こういう旨の御見解が示されたと思います。そうなってまいりますと、この国連軍存在することが、どうもこの地域の安定のために、安全の持続のために必要だとの御見解を持っておられるようにうかがえる。  だといたしますと、外務大臣の頭の中には、この朝鮮半島地域には二つの国家存在していくのが望ましい平和な状態だ、こうお考えになっておるように思われますが、いかがですか。
  237. 木村俊夫

    木村国務大臣 私は必ずしもそういうことを申し上げておるのではございませんので、朝鮮民族の願望である南北の平和的、自主的統一が最も望ましいという観点に立ちまして、そう申し上げたわけでございますが、しかしながら、そのためにはまず、朝鮮半島における平和と安全が維持されなければならぬ、その上に立って平和的、自主的統一が実現されるのだという考えでございます。
  238. 永末英一

    ○永末委員 朝鮮民主主義人民共和国に対する文化交流の発展なるものも、南からいたしますと、日本が政策を変えて、どうも日韓条約で約束したことに対してうらはらのことをやるのではないか、こういうような非難攻撃を加える材料になるかもしれませんね。したがって、あなたは、なるほど北だけを見るならばこれは当然のことでありますが、遠い将来の要望として、朝鮮民族の意思によってこの地域が一つの国になることが望ましいという御意向をお持ちのようでございますが、よほど大決心をしてこの文化交流を進めていただきませんことには、また言いがかりの一つを与えるということになっては、外交的成果といたしましては、やはりマイナスだといわざるを得ません。その御決心はございましょうね。
  239. 木村俊夫

    木村国務大臣 これはわが国の基本的な考え方に基づきまして、国交のない国に対しましても、人道的、文化的、経済的交流はこれを進める、こういう私ども政府の、またわが国の自主的判断に基づいた政策でございますので、それについて韓国が誤解するような、あるいはこれについて反対するようなことは、私どもは予想しておりません。
  240. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  241. 有田喜一

    有田委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後四時十一分散会