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1974-04-08 第72回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月八日(月曜日)    午前十時四分開会     —————————————    分科担当委員の異動  四月八日     辞任         補欠選任      上田  哲君     神沢  浄君      羽生 三七君     前川  旦君      前川  旦君     小柳  勇君      横川 正市君     竹田 四郎君      多田 省吾君     内田 善利君      星野  力君     須藤 五郎君     —————————————   出席者は左のとおり。    主 査          嶋崎  均君    副主査          今泉 正二君    分科担当委員                 木村 睦男君                 米田 正文君                 上田  哲君                 小柳  勇君                 竹田 四郎君                 羽生 三七君                 内田 善利君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   中曽根康弘君    政府委員        公正取引委員会        事務局経済部長  熊田淳一郎君        通商産業審議官  森口 八郎君        通商産業大臣官        房長       増田  実君        通商産業大臣官        房会計課長    大永 勇作君        通商産業省立地        公害局長     林 信太郎君        通商産業省基礎        産業局長     飯塚 史郎君        通商産業省生活        産業局長     橋本 利一君        資源エネルギー        庁長官      山形 栄治君        資源エネルギー        庁石油部長    熊谷 善二君        資源エネルギー        庁石炭部長    高木 俊介君        資源エネルギー        庁公益事業部長  岸田 文武君    説明員        環境庁企画調整        局防止計画課長  小野寺秀雄君        環境庁企画調整        局公害保健課長  竹中 浩治君        文部省初等中等        教育局財務課長  松浦泰次郎君        農林省構造改善        局農政部構造改        善事業課長    関口  尚君        水産庁漁政部長  増満 二郎君        通商産業省立地        公害局石炭課長  原木 雄介君        資源エネルギー        庁石炭部鉱害課        長        篠島 義明君        運輸省港湾局計        画課長      鮫島 泰佑君        建設省住宅局住        宅生産課長    金子勇次郎君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和四十九年度総予算中、通商産業省所管を議題といたします。  政府からの説明は、これを省略し、本日の会議録の末尾に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 上田哲

    上田哲君 きょうは電力を伺いたいと思いますが、石油製品値上げから間がないのに、今度は電力料金が全国一斉の値上げ申請ということになりまして、四月三日に東京中部、六日には北陸と四国、きょう北海道、関西、中国、九州の各社申請して、九電力全部がそろう。九電力体制になってから九社が一斉に値上げ申請というのは、昭和二十九年十月以来二十年ぶりのことだという点、しかも、その申請の幅が超大幅であるということ。最高は中部電力の七七・七%、最低でも北海道電力の四八・四%、平均して六三%、これは私は非常に重要な政治課題だと思います。この点は御異論のないところだと思いますが、そこで、政治姿勢という問題で、まずきちっと伺っておきたいのは、この石油値上げが問題になっていたことしの二月二十六日に、通産大臣閣議あと福田大蔵大臣内田経企庁長官と会談をされて、次の二点について記者会見見解を発表された。その第一点は、石油値上げをやっても公共料金値上げは極力押える、もう一つは、電力料金値上げするようなことはしないと、こういうことだと承っております。また、石油値上げ閣議決定をした十六日の翌日の十七日に、田中総理も鳥取の記者会見で、電力料金は当面値上げは認めないと、できるだけ先に延ばすと、こういう発言をしておられます。これらは一貫した政府方針だったはずでありますけれども、ところが、きょうまでに九電力全部の値上げ申請が出そろう、こうなると、通産大臣は、四月五日衆議院で、来月中旬にも値上げを認めるという趣旨答弁をされておられる。これは私は非常に矛盾をしていると思います。はなはだしく国民を愚弄するとさえ言わなければならない矛盾に満ちた発言であると思いますが、一体いつどういう時点から、どういう理由値上げ抑制方針を変えることになったのか、そこをまずきちっとお伺いしておきたいと思います。
  5. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 電力問題は、御指摘のとおり、非常に重要な政治案件でございまして、われわれとしても慎重に扱わなければならぬと心得ております。私はしかし、値上げをしないと言ったことはないと記憶しております。慎重にすると、できるだけ引き延ばしたい、そういう趣旨のことを言ったものと信じております。そういう趣旨からこの電力問題というものを取り扱ってまいりましたが、最近の三月決算情勢等が明らかに出てまいりまして、電力会社といたしましても、概算して約千三百億円程度の赤字が三月すでに出ておる。こういう情勢を踏まえて、さらに石油価格を引き上げたあと物価動向、それから今後の総需要カットの及ぼす国民経済の進行状況考えてみて、もはや、やむを得ずこの問題に対してある程度とりかかり、かつ決断すべきときが来たと、そういうふうに考えた次第でございます。
  6. 上田哲

    上田哲君 もはやとおっしゃるのですがね。私がお伺いしたいのは、石油製品値上げ決定される直前と直後の考え方の変化、これは明らかに矛盾だと思うのです。たとえば三月決算というのが明らかになってみると、とおっしゃるけれども、三月十六日閣議決定以前と以後にそれほどそうした数字が大きく変わったなどということは論拠に乏しいと思います。そういう意味で、三月十六日決定以前は極力上げないという方針、そうして石油製品値上げ決定されたとたんに上げるという、しかも近時点で上げるという方針は、やっぱり方針転換と言わざるを得ない。つまり、三月十六日以前にはそうでない方針を持っておられたのが、転換をしたという点はお認めになるわけですか、あるいは見通しが誤っていたということになるのですか。
  7. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油価格引き上げという問題は、日本国民経済上にとっての大手術であります。この大手術がどういうふうに結果として出てくるか見て、そうしてその後のからだの情勢を見て、次の処置に耐え得るかどうかということを観測しておったわけであります。したがって、大手術の前においてはことばを慎重にするということは当然のことでありまして、いろいろな副作用、反応を極力押えておかなければなりません。しかし、大手術をやった結果を見てみますと、そう狂乱物価が再現するという気配もございませんし、総需要カットがきいておる情勢を見て、これは大きな問題である電力問題を処理するに必ずしもマイナスばかりが作用するという段階にない、そういうふうに新しい段階を迎えて判断したわけであります。
  8. 上田哲

    上田哲君 そうすると、石油製品値上げ判断の中には、できるならば電力料金値上げもせねばなるまいという御判断は含まれていたということですね。
  9. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私としましては、いずれ、早晩やらざるを得ない、そういう判断は持っておりました。内閣としては、そのときはまた相談して……。
  10. 上田哲

    上田哲君 私は、それはやっぱり非常に国民に対する説明が不十分であった、ないしは、やはり愚弄したことになると言わざるを得ないと思います。われわれが国会で御質問申し上げているときにも、電力料金値上げは極力押えたい、その言い方は、電力料金値上げはまあ当面ないものだということの前提の中で石油製品値上げということが理解されていたと思うんで、これから先は、おそらくことばやりとりになるだけになりましょうから、時間を節約しますけれども、私は、この姿勢というのは基本的にやはり間違っていた、政府は元来電力料金値上げを見込みながら、そのことを明言せず、まず石油から手をつけたということになる点が、はなはだしく私は妥当な姿勢ではなかったということを強調せざるを得ません。  そこで、次に申請内容でありますけれども、先ほど申し上げたように、これまでにない大幅だということはだれもが目をむいております。それで、その理由は、火力発電用石油の上昇だけじゃなくて、設備費とか公害対策費の高騰、おまけに人件費も見込んでいる。こうなりますと、石油値上げに便乗した電力値上げ——便乗値上げという側面が指摘されなければならないと思いますが、いかがお考えですか。
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 便乗値上げという場合は、大体不当利潤をむさぼる、そういう目的でやる場合が大体便乗値上げということばに該当するんですが、この場合の値上げという問題は、経営を維持し、電力供給を円滑にしていく必要やむを得ざる措置であると、そう考えております。
  12. 上田哲

    上田哲君 こまかい点は後ほどまたお話をしますけれども、どうも通産大臣お話の中には、電力会社側に寄って、平均六〇%以上というたいへんな値上げ申請を何か弁護するようなニュアンスを感ずるのが私は非常に残念に思います。各論には後ほど入りますけれども。  また、一斉値上げというのも私は納得できない。これまでの調べでは、当初は東電と中部電力だけが早い段階値上げ申請を出す、他の社はしばらく間を置いてから申請するかまえだったというふうに私は聞いております。ほかは、有力会社東京中部値上げに踏み切ったのだからというので追随したという経緯、しかも、関西電力と四国電力は去年の九月に次いで、一年もたたない間の再値上げ申請、二十年ぶりにこういう大幅で一斉に出てきた。これはやっぱり、これを受けとめる政治姿勢として、これは非常に問題である、好ましくない、このとおりでいいとはお考えにならぬと思うんですけれども、それでもいいんですか。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アラブによる石油危機というような問題は、三十年に一ぺん起こるか五十年に一ぺん起こるかというくらいの大きな歴史的な事件でありまして、そういうような思わざる事件に遭遇して、状況はまるっきり従前と変わったわけであります。そういう状況の激変に対応して、日本電力供給を円滑にしていかなければならぬというのがわれわれ通産当局国民に対する責任でもあります。そういうような解決策として、いまのような措置をやらざるを得なくなったわけです。そういう条件は、各電力会社を通じて同じように与えられてきておるわけで、一電力会社のみがそれを受けているというわけではございません。しかも、その打撃と申しますか、条件変化というものが、深刻な、非常に幅の大きいものでありますから、従前基準だけをもってしてはとてもたえられないという条件各社に起こっておるから、やむを得ずその緊急度に応じて申請もあり、また、処理もあり得るであろうと考えるわけです。
  14. 上田哲

    上田哲君 どっぷり連帯見解のような感じがしてならぬのですけれども電力会社値上げ実施日を五月十五日にそろえて申請するという話であります。各社経営内容、あるいはこれまでの経緯も、それぞれ違っているわけでありますから、その申請を検討するにあたっては、一つ一つ考えるというのが私は当然な型でなければならぬと思うんです。もちろん私は、この値上げを認める立場にはありませんけれども、少なくとも通産省立場から考えても、各社一斉値上げ、こういう認め方はおかしい、先に延ばせるところは延ばすという方式をお考えになるべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま申請が出つつあるところでございますから、各社経理内容等も厳重に審査しまして、その審査の上でわれわれは結論を出していきたいと思います。方向としては、できるだけおくらせるものはおくらしていく、そういう考えに立ってやります。もちろんこれは個別審査主義でやるものであります。
  16. 上田哲

    上田哲君 確認しますが、個別審査主義でやる、そして一斉値上げではなくて、おくらせるものはおくらせて、ばらばらになり得る。一斉であるのかばらばらであるのかということについては、ばらばらであるということでいいわけですね。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、審査の上でなければ、ここでは確言できません。審査もしないでどうだということは無責任なことであります。しかし、私の方針としては、緊要度に応じてこれは処置していくものであって、おくらせ得るものはおくらせたい、そういう希望を持っておるわけであります。
  18. 上田哲

    上田哲君 非常に重要ですから、もうすでに来月という話がしっかり出ているわけですから、もう一ぺん確認しますけれどもばらばらになり得るわけですね。
  19. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、審査の上、われわれはどういう措置をするか、最終的には決断したいと思います。
  20. 上田哲

    上田哲君 一斉に値上げをするという方式でやるのではないのだということははっきり出ましたので、その点は確認をしておきます。  申請値上げ幅について伺うわけですけれども東京電力料金改定案を見ますと、家庭用電灯は、一キロワットアワー当たり、現在の十一円七十一銭の平均単価を三六・三二%上げて十五円九十七銭にする。それから、産業力電力が現在の五円五十三銭を九〇・七%上げて十円五十五銭にする。まあ全体の値上げ幅の問題もありますけれども、これはちょっと別としまして、お伺いしたいのは、家庭用産業用単価の違い、これをどういうふうに考えていらっしゃるのか。家庭用  産業用単価をきめるにあたってのコスト等々について、きちっと伺っておきたい。
  21. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 電力料金算定方式といたしましては、原価計算期間——これは、従来は通常三年をとっておりました。今回は、申請によりますと大体一年をとっております。この原価計算期間におきます電力会社能率的経営に必要な燃料費人件費資本費、その他の諸費、これを積み上げまして、総括原価というものをはじくわけでございます。この総括原価を各需要種別配賦をするという算出方法をとります。従来、電灯料金電力料金とはかなりの格差がございまして、平均をいたしますと電灯料金電力料金の大体二・三倍ぐらいになっておったわけでございます。その理由といたしましては、電力料金は、いわば非常に大口な需要である。それから、電灯料金は小口の末端需要である。発電所で発電された電力送電線を通り、変電所を通り、配電線を通り、家庭に届く。こういった一連の経路を比較いたしますと、いわば電力料金は第一次変電所からすぐ需要家へ到達するのに対して、家庭用電灯料金はその間のコストが非常に大きい、こういったコストの差を背景にして、いまのような差が生まれたわけでございます。ところが、今回の申請におきましては、値上げの一番大きな要因燃料費でございます。各社によって多少事情は違いがございますが、七割から八割、ものによってはそれ以上のものが燃料費増高によって料金値上げを引き起こしておるという事情でございまして、いわば一番もとになる部分値上げ値上げ申請要因になっておるということからいたしまして、電灯電力にほぼひとしい額で値上げになっている。そういたしますと、もと安かった電力にとっては、値上げの率が非常に高くなる。それから、従来高かった電灯につきましては、その値上げ率が低くなる、こういう関係になったわけでございます。
  22. 上田哲

    上田哲君 私も勉強してみましたけれども電気事業審議会料金部会でいっている最大電力とか、使用電力量要素とか、それから設備コスト負担とか、いまのお話、あるいは燃料費云々というお話でありましたけれども、そうしたものを全部考えて、いまお話を承ってみても、それではやっぱり家庭用コスト産業用よりも五〇%も高くなるというような納得には到達しないんであります。結局どうも全体を総括的に押えて、さじかげんというような感じにしか私には理解が届かぬのでありますけれども、そうなれば、やっぱり産業用電力設備投資部分コスト大衆負担に転嫁するということになってしまうのじゃないか。これは短い時間のやりとりですから、その御答弁だけで十分尽くせるはずはないということはわかりますけれども、もうちょっと明確な数字を、ひとつ、来月までにおやりになるんですから、説明をしていただきたい、出していただきたい。特にその各社別コスト計算をする基準内部規定を詳細に私は明らかにすべきである。これはやっぱりこれだけ大きい問題なんですから、石油製品のときも強調をいたしましたけれども、結果的にはどうも紙きれ一枚で終わってしまったんですが、決定の前に、国会ないしは国民に向かって十分なそういう詳細なデータを出していただくということをお約束いただきたい。
  23. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 先般提出されました東京電力及び中部電力申請内容で推定をいたしますと、従来、先ほど二・三倍ぐらいあったといわれております電灯料金電力料金格差は、申請によりますと一・五倍ぐらいに縮まってきております。従来、欧米諸国と非常に格差があるということが指摘されておりましたが、この一・五倍という数字をかりに採用いたしますと、アメリカなり、カナダなり、あるいはその他西欧諸国の水準と比べますと、まず同等あるいはそれ以上の改善ではないかと思っておるところでございます。電力料金算定は、各種の公共料金算定の中でも従来から非常に精緻な理論づけと、それから方法論の確立のもとに進められておりまして、原価要素を十分織り込み、そしてそれらについての審査方式についてもかなり徹底した方式をとってまいっておりましたし、今回におきましても、その点については十分留意をしまして、社会上もあるいは経済上も注目を浴びておりますこの料金査定が、みんなの審査、批判にたえるというような内容のものになり得るよう、十分な努力をいたしたいと思います。
  24. 上田哲

    上田哲君 これは少し議論を続けたいと思います、資料を出していただいて。  そこで、値上げ申請審査そのものについてちょっと伺っておきますけれども通産省としては、この申請を受けて、これから公聴会を開く。各社別特別監査申請査定を行なって、来月中旬に認可、こういう段取りでありますか。その段取りについて。それから、その申請査定にはどういう点に特に重点を置くのか、ちょっと概括的な原則を出していただきたい。
  25. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 電気事業法の定める手続に従って処理をするわけでございますが、通常事務手続といたしましては、申請を受け付けますと、内々の整理をいたしまして、その整理の結果を待って申請の概要を公示をいたします。この公示を行ないましてから約二十日の期間を置きまして公聴会実施するという段取りになっております。公聴会実施しました後、その内容をしんしゃくしながら査定を進めまして、最終的な結論に至るという段取りでございますが、その間にありまして、私ども各社ごとにチームを派遣をしまして、特別監査実施をいたします。また、査定段階がある程度詰まってまいりますと、関係各省との調整実施いたしますし、さらに加えまして、物価安定政策会議等の議を経るというような手続が必要な手続ではないかと思っております。  査定にあたって特に留意する点ということでございますが、電気事業法におきましても、能率的な経営もとにおける適正な原価に適正な報酬を加えたものということが規定をされております。私どもとしては、やはり能率的な経営もとにおける電気事業に必要な経費は何であるかということを詰めてまいることが一番重要なファクターでございます。その意味からいたしますと、燃料費におきまして、一体電気事業供給をまかなうためにどれだけの燃料が必要であるか、また公害規制にたえるために硫黄分はどの程度のものが必要であるか、こういった点がおもな問題でございますし、人件費については過剰な人員を採用することにならないかどうか、こういった点が審査の中の一つファクターであろうかと思います。また、資本費につきましては、この原価計算期間において設備投資が進行いたします。その設備投資の進行がほんとうに有効また必要なものであるかという点を留意をいたしたいと思っております。  その他、各項目につきましてそれぞれ内容審査をして、必要なものというものを選別をしていくということが、作業の過程においては一番大きな要素ではないかと思っております。
  26. 上田哲

    上田哲君 通産大臣の先ほどのお話のように、一斉値上げという方針でやるのではないと。延ばせるものなら延ばしたいと。それから、いまの原則に従った審査によって申請の額からできるだけ圧縮をする、その申請されたとおりに出ることはない、できるだけ圧縮をするのだということまではいいわけですね。
  27. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) そのとおりでございます。
  28. 上田哲

    上田哲君 まあ問題はその中身になりますけれどもね。まあ、その辺までは当然だといえば当然なんですけれども、どうももう一ぺん繰り返しておかなければならない気持ちがするのは、私どものほうは値上げに反対で、認める立場にはないわけです。しかし、どうも値上げがあたりまえであり、不可避であり、しかも相当な幅はやむを得ないものだというようなムード、通産当局の中にもそのことを大前提にしてい過ぎるような感覚というのを私は感じてならない。今度の値上げ通産省電力各社が、まあ、ちょっとことばは過ぎるかもしれないけれども審議会まですっかり一連のものとしながら、おぜん立てができておると。公聴会も開かれるけれども、どうもサクラが多いんじゃあるまいか。国民——いま、私はこれは第二インフレだと思っておりますけれども、そういう不安におののいているときに、そんなものに耳をかさずにばく進してしまうというような感じが目に見えるような気がいたします。経営内容とか申請内容に即して査定するんなら、コストの問題、燃料費原価為替レート等々まで入った具体的な説明をいただかなきゃならないと思いますが、特に配当はどうするのか。これは大方針として大臣のほうから伺っておきますけれども石油値上げのときは配当ゼロでもしかたがない、ゴルフ場なんというものはもう絶対許さぬぞみたいなところまで総理答弁もあったわけでありますけれども電力の場合は株主の事情が違って、自治体であるとか一般大衆の持ち分がある。まあ、そういうことはあるけれども、一〇%配当とか八%配当というレベルではなくて、大きく削るという方針を持つのかどうか。供給規程料金算定要綱では八%配当という数字を出しておるようですけれども、なお、その数字について踏み込んだ方針をお持ちであるのかどうか。
  29. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 先ほど大臣から、本年三月期において千三百億余の赤字を生ずるということをお話し申し上げましたが、これは通常の収支の赤八百億円と、それから従来継続いたしておりました一割配当をかりに持続するとすればさらに五百億円の赤字、合計しまして千三百億円余りの赤字ということがその内容でございます。ただ、この千三百億円の赤を処理いたしますためには、いわば電力会社の内部留保によってどれだけまかない得るかということが当面の課題になるわけでございますが、現在の各社の取りくずし得る社内留保の内容を見てみますと、従来継続しておりました一割の配当が持続し得るかどうか、これは非常に微妙な問題があるというふうに考えております。さらに、来期におきましてもやはり経営内容等はさらに悪化するということが見込まれておりまして、同様、配当問題については一そう微妙になってきておるというふうに私どもは見ておるわけでございます。ただ、お話しございましたように、電力会社の株式はいわば資産株の代表のようなものでございまして、株価の水準もあまり移動せず、いわば従来から続いております、昭和三十四年から一割配当が続いておりますけれども、この一割配当を当てにするということによってささえられておる株式であるという性格が強うございます。さらに、内容を見てみますと、お話しございましたように、大衆株主が非常に多い、百万人以上の株主がございます。また、地方公共団体等の保有する株も他の業種と比べますと圧倒的に高いわけでございます。その意味におきまして、やはり配当率の維持ということは社会的にも非常に大きいという要素をひとつお認めをいただきたいと思います。  それと同時に、電力会社自体といたしましても、これから増加いたします電力需要をまかないますためには、やはり相当の電源開発工事を行なわなければならない。この電源開発工事の資金をどうやって調達するかといいますと、過半が社債によって調達をするという形式になっております。さらに、その社債の発行限度というものは、資本金の額とリンクをしておるということでございまして、今後電源開発を推し進めてまいるためには増資を行なっていかなければならないという、いわば宿命にあるわけでございます。この増資を円滑にするために、やはり一定率以上の配当率というものは必要な前提になるという関係にございまして、私どもといたしましては、やはりたてまえといたしましては、従来の一割配当というものは今後とも持続をするということが必要なことではないかと、こう考えておるところでございます。必要なことでありながら、今日それがなかなかこの三月期においては困難になっておる。この辺の事情をおくみ取りをいただきたいと思います。
  30. 上田哲

    上田哲君 おくみ取りをいただきたいというのは、どういうふうにおくみ取りをしたらいいのかよくわからないのですがね。依然として一〇%でやるのか、やらないから結果的には下がるだろうと言っているのか、やっぱり下げなきゃいかぬじゃないか。これだけ大幅な値上げをするなら、そういうことは当然じゃないか。現にこの供給規程料金算定要綱でですね、八%という数字になっていますね。そういうことからすると、行政の方針としては何をおくみ取りしたらいいんですか。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいまの公益事業部長の御説明につけ加えて結論を申し上げますと、やはり電力債の発行が順調に行なわれて、そして電力の円滑な供給の保障できるようなある程度恒常的な経営が行なわれると、そういうことを考え審査ということを頭に置いておりまして、適正配当を維持できるように私たちは査定するのが適当であると思います。その適正という意味は、大体いままで一割配当をやってきており、それに対する影響も非常に大きいわけでございますから、その辺を頭の中に置いていくということを申し上げたいと思います。
  32. 上田哲

    上田哲君 そうすると、一割を守ると、一割は下げないということですか。
  33. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ審査しているわけじゃありませんし、その後のいろんな情勢等も勘案して考えなきゃならぬ要素も残っております。だから、ここで一割配当を約束するということは申し上げかねますが、しかし、電力の安定供給ということを頭に置きながら、できるだけそういう線を守るように私たちは考え査定いたしたいと思っております。しかし、それは査定及び審査の過程において、まだ変化し得る要素もあると思います。
  34. 上田哲

    上田哲君 もう一歩突っ込みますけれども、おくみ取りいただきたいというさっきの答弁は、たとえば八%という数字のほうに近づけようという気持ちなんだと、あるいはそれ以下にでもせざるを得まいという行政の方向性をあらわしているものと受け取ることにはならぬのですか。あくまでその一割を守るというほうが方針なんですか。
  35. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がただいま申し上げたのが私らの考え方であります。
  36. 上田哲

    上田哲君 いや、ちょっと私よくわからぬのです。一割を守るということですか。
  37. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 上田さんは明敏な方ですから、私が以上のようなことを申し上げたので、大体見当はおつきであるだろうと拝察いたしております。
  38. 上田哲

    上田哲君 それじゃ私の主張しているように理解をいたします。おくみ取りいただきたいということでありますから、大いにくみ取っていきまして……。いかに大衆持ち株と言ったところで、電気料金がかぶってくるカバレージの大きさのほうがはるかに大きいわけですから、そこに視点を合わせなければ議論はずれてくるだろうと思います。その方向で理解をしておきます。  もう一つ、内部留保はどうするのか。会社によっては、取りくずせるものをそのままにして安易な申請を出していると思うんですけれども、たとえば不要な土地の売却、特にこれだけ値上げをし、いまのようなお話を含めた上で、電力からの政治献金の禁止なんていうのは、これはやっぱり一本入らないと私は筋が通らない。退職金引き当ての積み立てなんていうのも、従来は本来の目的の範囲を著しく越えている部分もあると指摘しなきゃならぬと思います。そういうことも含めながら、どうですか、政治献金の問題、あるいはまあ不要な土地の売却等々、いわゆる内部留保、どのようにお考えをお持ちですか。
  39. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 査定は厳格にやらなきゃならぬと思っておりますが、電力会社も社会性を持っておりまして、これまた私企業であります。公益事業ではあるけれども私企業であります。したがいまして、政治資金規正法その他の規制する範囲内において民主主義の発展に貢献することも認めてしかるべきであると思っております。  内部留保その他の査定の問題については、非常に技術的な要素が多いようでありますから、政府委員から御答弁申し上げます。
  40. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 電力会社の内部留保は、中を見てみますと、かなり容易に取りくずし得るものとして、後期繰り越し利益金あるいは社内留保金等がございまして、これらはおそらくはこの下期の赤字の予想において、当然まっ先に取りくずされるだろうと思っております。それに続くものといたしまして、公害準備金、あるいは原子力準備金、あるいは海外投資準備金等の準備金がございます。さらに加えますと、渇水準備金等もこれに入るかと思いますが、これらは、それぞれの目的に応じて積み立てられておりますものでございまして、通常の場合にはなるべくこれはくずさずにいきたいという部類に入るかと思います。これらは経理の内容をさらに詰めました段階で、一体どうするかということを、それぞれ経営の首脳において判断をして、最後の決算がまとめられるという性格のものでございます。また、それに続くものといたしまして、いまお話の中にございました退職給与の引き当て金の問題がございます。退職給与の引き当て金は、いわば従業員が安心して働く職場を守るための必要な額は会社としては当然持っていなければならない金額でございまして、これを取りくずすことの問題点は、先生のほうがよく御理解をいただけるのではないかと思っております。  これらの社内留保を通じまして、このように経営が逼迫してまいった際でございますから、くずせるものはくずしていく、そして裸になって申請に臨むというような態度が電力会社としても必要な態度ではないかと思いながら、それをくずすことの影響等もあわせて考えて最後の判断をすべきではないかと思っておるところでございます。
  41. 上田哲

    上田哲君 私企業であって、公益事業ではあるけれども、民主主義の発展のためにという論理では、大臣、これは私はやっぱり、かつて見ざる大幅一斉値上げ——まあ一斉にはならぬというお話のようだけれども、を前にして、第二インフレの津波を前にして、そのあがりの中から政治資金を認めることが民主主義の培養になるというような論理には、私は国民感情は届かぬと思うのです。ですから、これはまあ政治姿勢の問題として、そんなところから政治資金は取らぬぞというぐらいのことはお話しになってしかるべきだと思いますけれども、これはたぶん平行線でありますから、きびしく私はそういう姿勢は問題であるということを申し上げておきたいと思います。  そこで、もう一つ国民生活への影響を少なくするためには、石油から電力値上げ、その関連産業の製品値上げをどれだけ押えるかということは当然ついてくる問題であります。産業連関表を使って調べると、アルミで一四%、鉄鋼で二・三%、化学の二・一%、紙パルプ一・八%の影響が出ることになるわけであります。このために、アルミ、鉄鋼、家庭用電気器具、石油化学製品、電力料金が上がれば製品価格値上げする動きは当然に出てくることになる。これをどういうふうに押えるか。石油値上げのときにも価格凍結、届出制にした製品を、その凍結期間をどこまでどうするのかという問題もからんでくるわけでありますけれども、こういう意味で、いま数字を申し上げた諸製品について具体的な関連製品値上げの防止策をどういうふうに考えておられるか、どういう措置を具体的にとられるのか、これはしり抜けになったらたいへんなことでありますから、そこを明快にひとつ示していただきたいのであります。
  42. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 前回の石油価格値上げと今回の電力料金値上げを比較してみますと、石油のほうは、エネルギーとして使われるのみならず、原料としても使われるという特殊性がございます。そういうようなわけで、一般的に見てみますと、石油価格の値上がりの一般物価に与える上昇のほうが、電力料金の与える一般物価に対する影響よりも大きいというように私のほうは考えております。のみならず、石油につきましては、すでに御高承のとおり、政府全体として五十三品目に対するいわゆる目張り措置を講じたところでありますが、今回の電力価格の上昇に対するものも、ある程度その目張り措置によって防げるのではないかというように考えられます反面、他方、電力料金値上げの一般物価に与える影響が小さいというようなことを考えますと、特に現在の目張りの措置を強化するというような必要はないのではないかというように考えております。
  43. 上田哲

    上田哲君 さっき私があげた数字は、あれでいいですか。アルミ一四%、鉄鋼二・三%化学二・一%等々ですね。
  44. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 私のほうでも、まだ完全な試算をいたしておらないわけでございますが、アルミニウムのほうは、もう少し下回るのではないかというように考えております。と申しますのは、アルミニウム地金につきましては、現在四分の三が自家発電でありまして、そういうようなわけで、現在石油価格、原油価格の上昇によりましてすでに織り込み済みでありますので、今回の電力料金値上げによりましては、それ自体だけでは電力料金値上げは四分の一しか響かないというような関係にありますので、アルミにつきましては、もう少し下回るのではないかというように考えております。鉄鋼価格等につきましては、大体二、三%程度というように考えております。
  45. 上田哲

    上田哲君 ちょっとよくわからないのですが、もうとっくに便乗値上げは済んじゃっているから、いまこれを上げてもたいしたことはあるまいという言い方ですか。それからさっきの、もう一つ前の御答弁では、この関連値上げについては施策を講じる必要はほとんどあるまいというふうに承ったんですが、そういうことですか。
  46. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 便乗値上げ云々ということではなしに、アルミニウムの場合には、今回の電力料金値上げ——アルミは一般に電気のかたまりであるというようにいわれておりますけれども電力会社から買っております電力が、全体の自己の使用いたします電力の四分の一にしかすぎない。したがいまして、電力料金がもろにアルミ地金の値上げに響くわけではないというような意味で申し上げたわけでございます。
  47. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 電力料金電灯料金等の値上げが、その時点以後国民経済にどういう影響を及ぼすかということは、これまた大きな問題でございまして、われわれとしても、通産省の産業政策局を中心にその動向調査、見通し調査もやらせ、これに対する対策も検討さしております。これは単に通産当局のみならず、経済企画庁や大蔵省とも連合してやるように、いま審査している最中を通じてやらせるつもりであります。ただ、物価に対する影響という問題を考えますと、ここに春闘という問題が出てきておりまして、賃金アップのほうが実際は物価に対する影響はかなり大きいものがある。毎年の例であります。われわれが調べた範囲では、ある数字によりますと、わりあいに電力に近い産業、約五十くらいだったと思いますが、それが電力の八〇%上がった場合、そして春闘で三〇%賃金が上がった場合、比較してみますと、それがそのまま正確な数字とは言えませんが、電力の卸売り物価に対する影響というのを見ますと、たしか二・七%くらいであったと思います。しかし、賃金三〇%アップというものは九・七%程度の影響力が出てくる。これは一応の試算でございますけれども、そういう一応の試算の数字が出てきている。そうすると、この両方の問題というものを物価対策からしては、われわれは考えなければならぬので、単にその電力問題だけではない。それで、春闘によるベースアップが行なわれた場合には、それによって卸売り物価がその影響でかりに上がるとしますと、春闘が終わって賃金アップが始まってから六十日以内に年間影響力を受ける分の八〇%が出てしまう。残りの二〇%が年度末までに出てくる、そういうことであります。そうなると、春闘がいつ終わるかわかりませんが、その影響というものは大体二カ月くらいの間にベースアップその他でずっと出てくるわけであります。それと電力値上げという問題との時期とのからみがあります。その辺をよく分析しながら、おのおの手を打たなければならぬものがあります。物価に対する影響という面については、単に電力だけではない。そういう点もわれわれは科学的に分析しながら対策を考えているところでございます。
  48. 上田哲

    上田哲君 そんな話にされちゃたいへん困るのですよ。そんな賃金コストがどういう影響力を持つのかということは、それなりに議論はすべきです。すべきですけれども、そのことがきょうの中心ではないし、私は、通産省がいま認可されようとしている、その歴史的な電力料金値上げの問題の影響について問題を提起しているのでありまして、はなはだ不可解なのは、春闘の賃上げの影響はということになると、たいへんすらすらとよどみなくお話しになるのに、電力料金値上げはどういうふうな関連製品への影響をもたらすかということになると、まるでさっぱりわからぬ。私のほうは、あなたのほうの数表を見ながら一生懸命計算をして確認を求めたりしているのに、まともな答えもできなくて、切り返して春闘がどうだというような話になるのは、非常に返り討ちをねらう私は論理のさか立ちだと思います。そんな議論にされてしまっては非常に迷惑でありますが、少なくともこの春闘は政府経済無策から発する超インフレのあと追い補策でありますから、このことがどういうふうに影響するかなんという話は、さか立ちのもう一つさか立ちです。  私は、議論をそっちへ持っていってもらうことは非常に困ると思うのですが、いずれにしても、電力にしぼってひとつきちっと行政責任としての御判断をいただきたいが、これまでのところをちょっと締めておきますと、電力料金の大幅かつ一斉値上げ申請に対しては、一斉という方向をとらないようにしながら、値上げ幅そのものを圧縮するようにしていくのだ、それから関連産業の製品価格値上げの抑制についても最大の努力はすると、こういう二点についての御確認はいただけるわけですね。
  49. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、電力の問題というものは、国民経済一つの大きな基礎条件でございますから、われわれとしては慎重に対処すると同時に、物価に対する波及を極力抑制すると、そういう方針に沿って各省協力して対策を講じていきたいと思います。
  50. 上田哲

    上田哲君 そこで、そういう前提に立ちますと、まあ繰り返し申し上げますけれども、私ども電力料金値上げの賛成の側に立って議論するわけでありませんが、まあ政府はその線を強行されるという前提に立っての議論になりますが、いまおっしゃったような二点の方針をお守りになるんだとすると、この電力料金値上げによって事実上の増税となる電気ガス税ですね、これはひとつ、その前提に立っての適切な措置が講ぜられるべきだと思うんです。通産省の言う福祉料金電力使用量が百キロワット時以下の世帯の電気代については、四十九年度から電気税の免税点が千二百円に引き上げられても、電気料金値上げ幅、まあこれは、いまの六〇%は下がるんだということになりましょうが、その値上げ幅によっては、現在非課税の福祉料金が課税の対象になる。これはさっきからお話が出ているように、極力幅を押えるということと、国民生活を守るんだということからすると、これは事実上の増税になるんですから、これは当然考えていかなければならない。この点をどう配慮するのか。いわゆる福祉料金は非課税になるように上げ幅を押えるのか、そうでなければ、この税そのものを根本的に考え直すのか、その方針を伺いたいと思います。
  51. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 電気ガス税の増高電力料金引き上げに伴う増高という問題は、これは問題でございまして、その点につきましては、別途われわれは対策を考えなければならぬと思います。これについては、大蔵省や自治省、関係各省とも相談をして善処していきたいと思います。
  52. 上田哲

    上田哲君 それは前向きです。善処されるということはけっこうなんです。その善処の内容をひとつ伺いたいんですけれどね。具体的に言うと、百キロワット時使用の世帯が、現行電気代千百九十七円で非課税、しかし、東京電力申請の六八・一%、これで計算すると千四百二十円、そこで千二百円の免税点を上回る二百二十円に六%、十三円程度の課税になる。この部分を課税しないような方向にするように努力するということですか。
  53. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) まだ査定の前の段階でこの問題をどうこういうことは、いささか早きに過ぎるのかもしれませんが、しかし、御指摘の問題は、確かに私どもとしても問題だと思っております。昨年、関西電力、四国電力値上げの際に、電気ガス税の引き下げについて特に消費者代表から強い要望があったということは私ども十分承知をいたしております。ただ、電気ガス税につきましては、市町村財源としての非常に大きな役割りを占めておるというような点が従来から一つの問題となっておりました。しかしながら、今回の大きな値上げがかりに実施されるといたしますと、やはりこの問題はほっておけない問題だと思っております。やり方等については、まだ検討もいたしておりませんが、しかし、いま大臣からお話のありました線に沿いまして、今後大蔵省、自治省と相談をいたしたいと思います。
  54. 上田哲

    上田哲君 それは非常にいいですよ。当然なことでありますけれども、それはぜひ検討してもらわなきゃならない重大なポイントだと思うんですね。  そこで伺うけれども、現行料金では免税世帯は九百三十万世帯、これはどれぐらい圧縮されるのかわからないけれども、かりに五〇%の値上げというふうに置いてみますと、そうなると、免税世帯がどれぐらい減って、税収入はどれだけふえるか、通産省はそれを試算していますか。
  55. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) まだ試算はございません。いまお話の中で五〇%と言われましたけれども家庭の場合には、どの申請を見ましても、おそらく五〇%というようなことは起こり得ないのではないかというふうに思います。
  56. 上田哲

    上田哲君 え、何ですか。
  57. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 家庭用電灯の場合に、五〇%以上というようなことは、おそらく今回の申請にあたっては起こり得ないのではないかと思います。
  58. 上田哲

    上田哲君 いろいろ機微に触れる問題が出てくるわけですが、私のほうで計算をしてみたわけですよ。計算をしてみますと、私の計算では、かりに五〇%としますと——ないというんですから、ないことはないんでしょうが、五〇%という区切りのところでやってみますと、税収入が五百億円ふえちゃうんです。で、この数字が、まあいろんな数字で、このぐらいの試算は簡単ですから、おやりになっていらっしゃると思うんですが、こういう計算で合っているかどうか。そうでないパーセンテージで出せるなら出してもらいたいけれども、まあ五〇%とすれば五百億円ふえると、これをひとつ確認していただきたい。  しかも、この税金というのは、主要産業にはかかわってないわけですから、すべて大衆負担ということになる。増税なわけですね。おっしゃるように、これは市町村税ですから、その財源問題というのは、自治省、大蔵省との話し合いのポイントになるはずで、それが全部カットされていいということにはならないから、これは別な財源の捻出というようなことは十分議論しなきゃならぬけれども、それは別な話であって、やっぱり当然この場合の議論としては、こういう自然増税みたいなもの、電力料金値上げによる増税、大衆負担の増税というようなところは、これは財源の問題とのイコールではなくて、そこで短絡させないでの十分な方針というものは出されなければならないと思うんです。まあこれは御異論ないと思うんですが、そこをもう一ぺん確認することと、私のほうの計算をどういうふうにお考えになるのか。
  59. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 試算につきましては、私どもも帰りましていろいろなケースを前提にした試算を用意をし、先生に御報告をいたしたいと思います。
  60. 上田哲

    上田哲君 五〇%、五百億というのはどうですか。もう間違いないですよ。
  61. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) いまの席では、ちょっと正確なお答えがいたしかねますので……。
  62. 上田哲

    上田哲君 間違ってないと思うでしょう。  それじゃ質問を変えましょう。五〇%、五百億——まあ五〇%と言わなくてもいい。五百億増税なんということになれば、これはゆゆしいことでありますね。
  63. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 従来の税収額に比べますと、かなり増額、増税になるという印象はあるだろうと思います。
  64. 上田哲

    上田哲君 方向はそれでいいですが、もうちょっと分け入りますと、その一カ月百キロワットアワー以下の福祉料金体系、このワクでは、対象となる約三〇%の多くはアパートの独身者、学生なんでありまして、一般家庭はほとんど限られてしまうんじゃないか。東京電力管内の標準家庭を調べてみますと、一カ月の消費量は百六十キロワット時であります。この点から見ても福祉料金というものの底は割れていると考えなきゃならないんだけれども通産省が示した試算によりますと、月百キロワット時というのは、普通の照明のほかに、扇風機、こたつ、冷蔵庫、洗たく機、カラーテレビ、掃除機、これをほぼ平均的に使って、これを年平均にならすと百キロなんですね。ところが、アイロン、電気がま、トースター、ヘアドライヤー、電気ストーブを使うと大体百四十から百五十キロになる。で、扇風機、こたつ、冷蔵庫、洗たく機、カラーテレビ、掃除機を使うまでが一般標準家庭であって、アイロン、電気がま、トースターを使うのは標準家庭では、大臣、ないんですか。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは非常に大事なポイントを御指摘になったところで、私も、申請はいまのように百キロワット時という形になっておりますが、日本国民経済全般の動向も考えながら、シビルミニマムをどの線で線を引くかという点については、慎重に申請をわれわれは検討してみたいと思っています。私個人の考えとしては、百キロワットアワーというのではちょっと低いのではないかと、もう少し標準家庭やら、そのほかのことも検討してみたいと、そういう気持ちを持っております。
  66. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) いまのお話にちょっと補足をいたしますと、百キロワットアワー以下の家庭は、まあ第一段階でそのまま適用になるわけでございますが、百キロワットをこえる使用家庭におきましては、たとえば百五十キロワットアワーの場合には、最低の百キロワットアワーまでは一段料金、それをこえる部分について二段料金というような形になるわけでございます。したがいまして、これは試算でございますが、東京電力申請どおりといたしまして、百キロワットアワーの適用電力料、電力料で見ますと、大体六〇%ぐらいが第一段の料金適用になるというような形でございます。ただ、この百キロワットアワーのシビルミニマムといいますか、ナショナルミニマムといいますか、この数字をきめますためには、ずいぶん私どもも議論をいたしまして、標準四人家庭における家庭電化の状況ども勉強したわけでございますが、先ほど百キロワットアワーの使用方法の例示として言われましたのは一つの例示でございまして、いろいろな組み合わせがあるわけでございます。これらの組み合わせをどうするかということが、いわばこれからの家庭における電気の使用方法につきまして少しでも合理化をしていこう、節約をしていこうというようなムードのきっかけになる、その参考資料という程度に御理解をいただければと思うわけでございます。これらにつきまして、さらに引き下げをはかるということになりますと、その下げた分をどこでカバーするかというようないろいろなむずかしい問題がございますので、私どももいろいろ勉強してみたいと思っております。
  67. 上田哲

    上田哲君 大臣のほうがちゃんと生活感覚があるじゃないの、いいじゃないの、あなたそれで。これはぼくは、すかっと答えられたからね、いいと思うんですよ。トースターなんて大臣のうちで使っている、まあ大臣のうちは標準家庭だとは思わないけれども。やっぱり電気がま、トースターを使うのは標準家庭より上へ出ているなんということを通産政策の基準に置かれたんじゃ、これはめちゃくちゃな話だし、そこに無理やりに合わせながら福祉料金体系なんていうのをつくられたら、日本は十年も十五年もあと戻りしてしまうということになるわけですから、ずいぶん議論しましたなんて大きなことを言わないで、十分議論をしたけど足りなかったということが明らかになるわけですから、やっぱり私は、そうなりますと、百キロではなくて、百四十から百五十キロというところがやっぱり問題になるんだというふうな視点として十分御検討になるのが政策姿勢ではないかということを申し上げておくわけですよ。このトースターがどれだけかという、そこをつっついて議論しようとは私も思わないけれども政治姿勢としてはそこまで手をつけたところで考えるとするなら、百キロというのはちょっと無理なんじゃないかという点を私は申し上げているわけで、そういう視点は政治姿勢としてはしっかり受け取っていただきたいというふうに思います。  それで、時間が参りましたがね。さっきから何べんも申し上げているように、この点については非常に前向きな方向が出されているんで、私は十分そこを話し合っていただきたいと思うんですけれども、もう一言踏み込んで伺うとすると、大蔵、自治と話をされるという通産省方針は、つまりこの電気税廃止という方向をお考えになるわけですか。
  68. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま直ちに廃止するということはむずかしいと思いますが、将来はそういう方向に持っていくように努力していきたいと思います。
  69. 上田哲

    上田哲君 将来というのがいつかということになるわけですが、少なくとも来月に大幅な、わが国の歴史上初めての大幅な電気料金値上げがあると、これが生活に響く大きな津波となるということが前提となっている以上、これが当然に引き起こしてくる、同時的に引き起こしてくる自然増税、さっきの数字でいえば五〇%なら五百億という試算、その当否は別にしても、そういう大きい数字であるということは問題であるという当局のお話もあるということになると、これは同時性の処置を必要とすることであって、将来はというところの将来がこの際非常に問題になってくると思うのです。同時に解決をしていただきたい、同時に廃止をしていただきたいということが第一の私は筋だと思うんですが、それはこの段階で言えないとなれば、まあ言ってほしいんだけれども、そうなるのかどうか。そうでないならば、さっきからお話しのように、国民の負担をできるだけ少なくするという前提がおありになるんだから、免税点を現行の千二百円より引き上げると、あるいは税率六%を引き下げると。で、そういう方法によって自然増税となるような部分はさせないという処置だけはとると。まあこまかい数字をいまここであげてくれとは申しませんが、同時にこの税を廃止するということに結論をとるのか、さもなければ、いま申し上げたように、免税点を千二百円より引き上げるか、税率を六%を引き下げるか、などの方法によって増税分は押えると。この処置は最低限とられなければならないと思うんですが、その辺をひとつ具体的に御見解を承りたいと思います。
  70. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) まだ内容を詰めておりませんので、この席で方向までお示しをすることはできませんが、お話趣旨は私どもにも理解できるように思いますので、これから関係省と相談をしながら妥当な答えを出していきたいと思います。
  71. 上田哲

    上田哲君 やっぱり大臣に伺っておきたいんで、まだ決定していない分を無理やりにとは言いませんが、これは私は非常に重要な政治判断政治姿勢の問題そのものだと思いますので、原則はもうはっきり、まあ御意見といいましょうか、わかり合ったわけですから、そこのところは私は方向性をはっきり出していただきたいと思うのです。だから、可及的すみやかに廃止の方向で検討したいとおっしゃったなら、それはそれでいいんですが、可及的すみやかということは、この行政措置としては認可と同時でなければならぬというのが筋だと思うのです。そのほうに努力をされると。そうでなければ、さっき申し上げた自然増税ということにはならないような処置を——免税点の引き上げであるとか、パーセンテージの引き下げであるとか、そういうことを最大にやる、そういう姿勢を、数字までとは言いませんけれども、きちっと出していただきたいと思います。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく電灯電力料金の引き上げに伴いまして国民生活の負担が増すわけでございますから、いまのような税の部分につきましても私たちはできるだけ改良していかなければならぬと思っております。具体的な方法については、いままで通産省としては、毎年電気税を一%ずつ下げると、こういうふうな努力をして、最終的にはなくなそうと、そういうことをやってきておるわけでございますが、それと同じような努力を思い切って強くやってみたいと、こう思っているわけです。今回の事態に際して具体的にどういう方針を出すかということは、これは関係各省との詰めの問題もございます、与党との相談の問題もございますので、いま具体的に申し上げることはできかねますが、方向としてはいま申し上げたような方向で強く推進していきたいと思っております。
  73. 上田哲

    上田哲君 わかりましたが、重ねてそれじゃ申し上げておきます。どの方途をとるかは、もう二つに一つしかないわけだし、大臣から思い切ってということばが出ましたから、私は思い切ってということばに最大のひとつ政治姿勢としての期待をかけます。で、少なくとも、自然増税という私はことばを使いましたけれども、電気料金の引き上げに伴う自然増税が大衆課税として行なわれない処置をとるのだと、こういう言い方としては御決断をいただいたものと理解をしたいと思うんですが、それだけひとつ最後に。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御要望はよく私も認識をいたしました。いままで申し上げたような線に沿って努力をいたします。
  75. 羽生三七

    羽生三七君 上田委員から具体的な御質問がありましたが、私の場合はやや一般論で、物価問題一般論という形で若干のお尋ねをいたしたいと思います。政府は、さきに石油製品価格の引き上げを決定する一方で、いわゆる目張り対策として、事前承認制の五十三品目と、それから流通段階価格凍結を求める百六十品目等のことをきめたわけでありますが、電力料金、私鉄運賃等公共料金値上げ問題は別として、一般物価についてはこれで一応おさまったと考えられるのかどうか。この場合、価格凍結や行政指導で一応おさまっているとしても、値上がり要因が完全に消えるまでこの処置を続けなければならぬことになると思います。そういう要因があれば、この処置をなお続けなければならぬことになる。しかし、このような価格凍結やこれに類する行政指導を際限なく続けられるものと私は思わないわけです。そこで、この処置を、つまり価格凍結やあるいは事前承認制、あるいは行政指導等、一連のこの処置を撤回しても物価が安定するという、撤回しても物価がなお値上がりはない、安定するという時期は、いつごろ到来するとお考えになりますか。この点をまずお伺いしたいと思います。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 経済予測はなかなかむずかしい状態にいまあると思います。それは与件が非常にまだ不安定的な要素がございまして、その与件の整理自体がまだできていない段階であります。申し上げられることは、やはりわれわれが石油価格引き上げを決意しましたということは、国際経済を横ににらみながら、物価、国際収支、公害、そういうようなものを考えつつ国民経済の新しい均衡水準形成の努力に入ったということであると思います。そういう過程において、電力の問題も出てまいりましょうし、運輸料金の問題も出てまいりましょうし、あるいは米価の問題も出てまいりましょうし、また、一つの側面からくる大きなファクターとして春闘、賃上げという問題も出てくるであるだろうと思っております。いずれにせよ、しかし、いまやっておる措置というものは緊急対策でありまして、これが正常な姿とは思っておりません。したがって、成熟してきた時期が到来したら、われわれとしてはいまのような行政指導とか標準価格とか、要するに介入措置というのはできるだけ一本一本はずしていって、そして価格のメカニズムとか、あるいは市場機能というものが回復されて、いわゆる自由経済的な姿で経済が運営される方向に機能回復をしていくべきであり、それを正常化と私たちは呼んでおります。そういう方向に段階的に持っていくという考えであります。  その場合に何が一つ目標、基準になるかといいますと、やはり国際比価というような考え方が一つ基準になり得るだろうと思います。もちろん、日本的な条件がいろいろございますから、それだけとは申し上げませんが、やはり一つのメルクマールとしては、各国における物価体系と日本格差平準化というようなこと、そういうようなことも一つの問題であり、そのほか、いま申し上げた資源問題を追加して、公害やあるいは国際収支や、その他の問題もにらんでいきたい、そういう形になるであろうと思います。その場合に、当分はまだ——この間石油の大手術をして、日本経済が入院、面会謝絶、安静を要している段階で、まだ抜糸に至らぬと。そのほか、さらにまた、電力とかそのほかの整形手術が若干残っておる状態ですから、いまの緊急措置は当分続けていかざるを得ないと思いますが、次第に体力を回復させる、次第に自主機能を回復させて、そうして抜糸を行ない、あるいは流動食から次第に固形食に変えていく、そういうような形で、保養しながら経済の自活力を強めていく、そういう形に持っていきたいと思うわけです。  その間に日本の物価がどう動いていくかということが出てまいります。その場合には、さっき申し上げた国際的な比価、あるいは国際的な物価体系、そういうようなことを一つの頭の中に置きながら考えていくのが適当ではないか、そういうふうに考えておるわけです。私としては、大体そういう正常化して退院ができ、普通に活動できるようになるのは来年の夏ぐらいまではかかるんじゃないか、そういう見当をつけております。
  77. 羽生三七

    羽生三七君 大体いまのお話でわかったんですが、この処置を続けていく場合に——まあいつまで続けるかということがあるわけですが、総理も企画庁長官も、価格凍結は物価が安定するまで続ける、こう言われておるわけですが、私は、実はあとからもお尋ねすることですが、短期決戦で、夏までに物価を安定させると言われた当時の総理その他の閣僚の御発言から見て、これは大きく政府考え方が変わってきた。夏までに安定するという可能性はないという。いまもお話しのように、こういう処置が場合によったら来年まで続く、また続けざるを得ないような情勢ではないかと思うんですが、その場合、こういうことがあると思うんですね。——まあ、一応来年までこういう処置を続けると理解してよろしゅうございますか、お伺いします。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おそらく自民党の政治家たちが言わんとしたことは、狂乱物価は鎮静させるという意味であるだろうと思うんです。そういう意味では、狂乱物価といわれるものは大体鎮静したと私は思います。少なくとも計数上から見ますと、そう言えると思います。だから、高熱は去った、しかし、体質はまだ病的なものをかかえておる、したがって、まだ警戒しなければならない、またいつ発熱するかわからぬ、そういう情勢である。そこで、やはり今度は新しい国際水準を横に見た均衡水準形成の過程にいよいよ入る、そういうスタートを開始した。それが石油手術であったと私は思うわけであります。そういう意味において、新しい均衡水準に向かって努力をするということは、いままで考えていた物価を鎮静する、安定させるという次元から、もう一歩前進した将来に向かっての次元の問題で、しかし、その中においても依然として物価をできるだけ低位安定させていく、そういう太い線は一本貫かれていくであろう、そういう考えに立っております。
  79. 羽生三七

    羽生三七君 政府のいわゆる目張り政策で、いまもお話がありましたが、昨年末から今年初頭にかけてのような爆発的な狂乱値上げは一応おさまったと、この点、私、当面の対策を一応評価するわけです。しかし、このいわゆる第二ラウンドといわれるものは一応回避できたとしても、いずれ近い将来値上げを認めなくてはならない時期が来るんではないかと思います。そういう意味で、問題は今後に、つまり解決したんではなしに、持ち越されているだけで、本質的には何一つ解決していないという私は見方をとっているわけです。  そこで、結局、いまのいわゆる目張りというものは、さみだれ式に値上げ一つ一つ認めていくのか、あるいは値上げ申請があった場合、あるいはある一定期間値上げ抑制が終われば目張りを全部一度に取り払うのか、徐々に、さみだれ式に一つずつ問題を処理していくのか、一括してある一定時期まで凍結して、一度に目張りを取り払うというのか、その辺はどういうふうにお考えですか。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の見通しでは、やはりさみだれ式に、条件の熟したものについて目張りを一つずつとる、そういう形にならざるを得ないだろうと思います。
  81. 羽生三七

    羽生三七君 先ほどもお話がありましたが、近く電力料金、私鉄運賃をはじめ各種の公共料金値上げされることは、その時期の問題は別として、これは決定的であると思うわけです。特に電力料金の場合は、その影響は非常に大きいと思うんですが、石油値上げの際は、関連の基礎資材や生活物資の価格凍結を行なったわけですが、電力料金の場合には——これは上田君から質問があったかどうかわかりませんが、電力料金の場合には、その関連製品等——関連といいますか、主として電力の影響を受けやすい品目については、どういう処置をおとりになりますか、お伺いいたします。
  82. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、石油は一段落、一段階として、新しいファクター電力として登場しているわけですから、いままでの規制の措置に加えてどういう措置が必要であるか、これは関係各省において新たなる対策の必要性、やる場合の具体性等について、いま協議を開始しておるところであります。
  83. 羽生三七

    羽生三七君 経済企画庁長官は、電力料金が上がっても基礎物資の凍結は維持すると、ただし、電気の影響の特別大きい物資は別であると、こう言われておりますが、通産省の所管としては、この電力料金値上げが起これば関連してこの値上げを認めなければならぬというようなものは、主としてどんなものがあるんでしょうか、お伺いいたします。
  84. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 関連して価格を上げるという意味ではございませんが、電力料金の影響度の強い物資として私のほうが考えておりますのは、苛性ソーダ、それからアルミニウム地金、フェロアロイ、それから化学肥料、アンモニア等々であります。
  85. 羽生三七

    羽生三七君 いずれにしても、電力料金値上げが認められた場合には、相当品目について値上がりが起こることは事実で、それを価格凍結をするということはないと、そういう意味の御発言でしょうか。いかがでしょうか、いまの御発言
  86. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま列挙した名前のものでも、大体いままでいわゆる先取り値上げと申しますか、そういうものも入っているものもございます。そういう点と、それからいまの総需要カットからくる景気の鎮静度、需給度からくる価格に対する影響、そういうようなものも考えてみて、私たちは当分の間、いまのような価格の抑制を堅持していきたいと思っております。ただし、どうしても必要やむを得ずというものがもし万一出てきた場合には、これを個別的にその変化審査しまして、そしてその情勢を見つつ対処していく。しかし、方針としては、いままでの体系をそう容易にくずしてはならない、そういう考えに立って進むつもりであります。
  87. 羽生三七

    羽生三七君 政府の当面の政策は、短期決戦による物価抑制であるはずでありますが、まあ先ほど大臣の御説明のように、新しい段階に漸次移行しつつあるということでありますが、いずれにしても物価が次々と上がっていくことは確実だと思います。これで卸売り物価は一部横ばい、あるいは物によっては多少の落ち込みが起こるかと思いますが、今後に持ち越される諸物価の値上がり、さらに公共料金の値上がりをこの落ち込みの中に押え込むことは非常にむずかしいんではないかと思うんです。落ち込みの中に、卸売り物価が落ち込んだり一部横ばいであるから、その中に値上がり部分を押え込めるという、そういうことを経企庁長官は言っておられるようですが、私は、そういうものもあるかもしれないが、大部分は不可能ではないか。そこで、この値上がりを追認することが実は新価格体系ということにならないかという気がするわけですね。結局、短期決戦による物価抑制ということは不可能ではないか。短期決戦で、先ほど申し上げましたように、夏までに物価安定と政府は再三述べてきたわけですが、この相次ぐ公共料金の引き上げが迫っているという関係から見て、これはほとんど不可能で、そこで高価格体系へ移行していくわけですが、それを実は新価格体系と呼ぶんではないかという気がするんですが、どうです。
  88. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 六月の時点を予想してみますと、物価引き上げの圧力のかなり大きい要素電力よりも私はベースアップだろうと思うのです。で、電力も、ある意味においては多少影響は持つと思いますけれども、さらに強いものはやはりベースアップの影響、これは科学的に経済を分析してみて、いままでの例から見て、そういうふうに言えるだろうと思うのです。で、電力だけということであるならば、私はかなり押え込めると、そう考えております。卸売り物価に対する影響というものは約一%といわれておるぐらいでございますから、その上いまのような総需要カットからくる需要の不足、デマンドの減少というような面から見れば、そうなかなか簡単に上げ切れぬ要素も出てくると思うのですけれども、ただベースアップがかなり出てくると、生産力の成長という中で吸収し切れない賃金コスト部面というものが出てくる可能性が出てくる。そういう場合に、それが価格に転嫁されてくると、物価問題としてこれが出てくるわけであります。それがどういうふうに影響を及ぼすかということがかなり大きな問題です。これが総需要カットによる不況でないという、好況の時代ですと、成長の中にそれが吸収され得るものである。しかし、不況であるという現象から見ると、成長の中に吸収し切れない部分が出てくるのではないかと予想される。それは価格に転嫁されるという部面に出てくるので、その分析がかなり重要ではないかと私たちは思っております。しかし、いずれにせよ、賃上げの中には、過去の物価高からきている必然の要求もあるわけでございますから、これをわれわれが全然無視するわけにはいかない。まあわれわれとしては節度ある賃上げを要請しておるところでありますけれども、そういうような面もやはり分析してみつつ、新価格体系のあり方というものを検討しなければならぬと思います。いままでややもすれば電力問題とか石油問題ばかりが表に出てきて、賃上げという問題は春闘の関係で遠慮している向きがあるんですけれども、それをエコノミストとして科学的に分析してみると、やはり経済当局としてはそういうことも考慮せざるを得ない、そう思うわけであります。
  89. 羽生三七

    羽生三七君 需要超過要因からコスト要因にウエートがかかってきたということは、最近各方面からいわれていることですが、そのことの具体的内容に入ることはここでは別としまして、次にお尋ねしたいことは、総理はしばしば——これは総理に関することですが、われわれの質問に答えて、昨年十月以前の物価水準に戻すと、これを物価安定の目標としているということを再三述べられたわけです。ところが、最近は、総理発言を聞いておりますと、昨年十月以前の水準ということでなしに、対前月比で卸売り物価の騰勢が鈍ったというように、言い方を変えてきておるように思われるわけですね。それで、いずれにしても、昨年末から本年初めにかけて起こったような物価の狂乱は避けられても、石油や農産物をはじめ世界的な資源不足、高価格時代に入った今日、この趨勢を阻止して昨年の十月以前の物価水準に戻すことは、私はほとんど不可能に近いと思うんです。したがって、物価安定とは物価狂乱を再現しないという意味のもので、この新価格体系の名のもと値上げを公認することになるのではないか、これが実は新価格体系ではないか、こう思うんですが、この総理の言う昨年十月以前の水準に戻すということが実際に可能とお考えになるのかどうか。また、いま申し上げた意味で、結局、資源不足時代に入り、高価格体系が避けられないような情勢になったときに、それを公認するのが実は新価格体系ということになるんではないかと思うんですが、いかがですか。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総理が十月以前の価格に戻すと言われたのは、いろいろ条件がついていると思いますが、将来においてはそういうことは一つの目標として出てくる可能性もあると思いますが、いますぐそういうことは可能であると言うことはむずかしいと思います。なぜならば、やはり世界的な大きな与件の変動があって、世界経済全般がその影響を受け、イギリスもフランスもドイツも日本もアメリカも同じような波の中で漂流しておるというのがいまの情勢であるからであると思います。しかし、その世界的与件が次第に鎮静化して、与件として安定性をいま持ちつつありますから、そういう意味において世界的な均衡の水準というものが順次出てきつつある。それをわれわれはよく見つつ日本の物価体系を考えていくので、その場合に、過去の水準と新しい水準が変わってくるということは、世界とともに変動しておるので、やむを得ないところであると思います。
  91. 羽生三七

    羽生三七君 新価格体系といっても、今日の経済の仕組み、それから資本主義体制のもとでは企業主導型のものとならざるを得ないことは、これは私は当然だと思うのですね。したがって、新価格体系に政府というものはどのようなかかわりあいを持つのか、何らかの形で政府が指導的役割りを持つということなのか、それとも、この資源不足による物価水準の上昇を織り込んだものを、これを新価格体系と呼ぶのか、その辺の理念をもうちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは政府がある程度行政指導せざるを得ないと思います。なぜなれば、われわれは日本の産業構造についても省資源、省エネルギーという方向を持っており、特に知識集約型に日本を発展させようという明らかな考えを持ち、さらに公害とか物価とか、あるいは国際収支という面も考えていかなけりゃならぬ情勢でありますから、新しい日本の構造を誘導していくという意味において、それからまた、資源の適正なバランスをとっていくという意味において、そういう諸般の面から見ても行政指導はやむを得ない。しかし、新しい赤ちゃんが生まれてきたらお産婆さんは要らない、生まれるまでは必要であると、そういう考えに立って、できるだけそういう必要がなくなるようなところへ持っていきたいと思っておるわけであります。
  93. 羽生三七

    羽生三七君 物価抑制のためにあらゆる政策努力を傾けることの必要性は当然でありますが、かりにどんなに努力しても物価安定——私の言うのは安値安定なんです、高値安定じゃないんですね。安値安定に持ち込むことが困難だとした場合、物価値下げについて国民に大きな期待を持たせて、結果的には逆の状況になって国民を失望させるよりも、むしろはっきり事実関係政府が認めることが必要ではないかと思うんです。それに必要な対策はもちろんとらなければならないけれども、何らかの対策をとっておれば——物価安定安定といっておりますけれども国民の中には物価が下がることだと理解しておる人が相当おるわけですね。したがって、現在の条件というものを、むしろ国民政府考え方を率直に述べることが私は必要ではないかと思う。これ、新価格体系というと非常に聞こえはいいですがね、実際問題としては高価格体系への移行ということの別名にすぎないと思うんです。そういう意味で、物価がいまにも——最近はあきらめムードが多くなってきましたが、しかし、国民の中には、政府の言う物価安定というのは、物価鎮静というよりもむしろ値下がりを期待して今日まで来たことは間違いないと思うんですね。しかし、事実は逆に、高価格体系へ移行しようというんです。ですから、その辺は新語を使うよりも、従来のことばで物価はそんなに下がらないということをはっきり国民説明したほうが私は親切だと思うが、どうでしょうか。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 真実を述べるということと、現実を国民の皆さんにお知らせするということは、非常に政治家として大事なことであると思います。私は、そういう立場に立って、いままで考えを述べてきたつもりであります。しかし、日本の物価に対する影響というのは国際的要因が非常に多いので、国際物価も仮需要やその他で上がった部面が非常に多い。それが逐次鎮静に来つつある。たとえば、食糧価格や繊維価格なんかがそういう要素でもあります。それから国内物価の要因についても恥生鮮食料品や何かの影響がかなり消費者物価に影響している要素もあると思います。そういう面から見ると、全部上がるということを考えることは速断であって、上がりつつあるのもあり、あるいは下がるのもあると、それをうまくバランスをとりながら、さっき申し上げた国民経済運営の方針に合致するように誘導していくというのが適正であると思います。
  95. 羽生三七

    羽生三七君 それは、公共料金以外の他の品目については、その市況の状況によって、ものによっては下がるものがあるかもしれません。しかし、公共料金はこれからどんどん上がるわけですね。まだ一部タクシー運賃が認められただけで、最近の条件では一部タクシー料金値上げだけで、あとは全部これから、電力料金から私鉄運賃から、その他全部始まるわけです。十月になれば消費者米価、それから国鉄運賃、そこへもってきて新しい生産者米価の決定が間もなく迫るわけですね。それはまた引き続いてこれは消費者米価にも関連してくるという。しかも昨年の問題はまだ持ち越して、十月から値上がりが始まるというのに、新しい問題が次に起こってきておるというわけで、値下がりするような条件はもう非常に少ないわけですね。ほとんど値上がりの条件だというんです。  そこで、そういう条件を見ながら考える場合に、去る四日、私その席にいなかったんですが、この第二分科会経済企画庁長官は、日本経済を取り巻く環境が大きく変化した以上、物価だけをもとに戻すのはかえって矛盾だと、こう述べておられるようです。これは報道で私知ったんですが、そう述べておられるんです。そうすると、物価をもとに戻すのが矛盾だとすれば、先ほども触れたことですが、田中総理の言われた昨年の十月以前の水準に戻すという再三の言明は、これは政府部内で否定されたということになると思うんですが、通産大臣としてはどうお考えになりますか。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはおそらく、企画庁長官はどういうことを言ったか知りませんが、推測するに、当面とか、いますぐという注釈がついているんではないかと思うんです。これをある程度の長期的に見ますれば、世界的な不況というものが出てくれば世界的に卸売り物価もだんだん下がっていく方向に動くでしょうし、ある年限をかければ、あるいはそういうようないままで世界経済全体が物価上昇のラインで動いてきたのが、ある定点に来たらそれを停止して、今度下降に転ずるという事態が起こらないとも言えないと思うんです。いままで世界経済自体が仮需要で動いておったということ、それから各国が非常な成長を目ざして活動しておったこと、あるいはさらに人間の欲望というものが新しく非常に飛躍してきたというような要素がございますけれども、これで与件が変化すればまたどういうふうに動いてくるかもわかりません。ですから、われわれとしてはできるだけ鎮静化せしめて、そして世界的に相手を組んで物価引き下げの方向に努力していきつつ、日本の物価も引き下げていくと、そういう努力の過程においては引き下げていくということも夢ではないと私は思います。
  97. 羽生三七

    羽生三七君 実際問題として、私はそれは非常にむずかしい問題だと思いますが、そこで、次に申し上げたいことは、経済の純粋な自律運動ではない、計画的、作為的、人為的な操作や共同謀議による価格形成に対しては、これは仮借なくきびしく対処しなければならぬことは当然でありますが、自然な純粋な自律運動による価格形成に対しては、これは財政や金融等の政策手段によって対処すべきで、過度の介入や統制は私は極力避けたほうがいいと思います。そこで、要するに、この介入を次々と重ねるだけではこの矛盾を深化させるだけで、根本的な物価問題の解決にはならないと思われるわけですが、必要なことは、当面の対策はもちろん、値上がり抑制のためにあらゆる政策手段を傾けなければならぬことは言うまでもありませんが、それとともに、今日の物価高、物価高騰、インフレの国際的要因、先ほど大臣もお触れになりました国際的要因を除いた純粋の国内要因、これを検討して、特に今日のこの事態を招いた政策上の失敗を顧みて、その原因を除去することが最も肝要だと思うわけですね。  そこで、総需要掛帯あるいは金融引き締め等が撤回されて、従来の成長政策が再登場した場合には再びこの物価が上昇に転ずるというようなことになっては、私はこれは非常に問題だと思うんです。でありますから、やはり先ほどお話のあった国際的要因もさることながら、今日の事態を招いた国内要因日本の高度成長に関連する特に最近の政策上の諸問題でありますが、そういう問題について十分過去を正確に検討して、再び物価値上がりを繰り返さないような、そういう政策をあわせて行なわなければ、総需要抑制政策をとっておれば、これはデフレが来る、それに今度は手を抜いて景気刺激政策をとればまた元通りということになっても困るので、その辺は非常に政策的にむずかしいと思うんですが、いずれにしても、当面の対策だけでなしに、長期的に見て物価が再び騰勢に転じないような基本的な対策をあわせて行なうべきであると、こう思うんですが、いかがでありましょうか。
  98. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は同感でありまして、日本の過去を反省してみますと、戦前軍部が政治に介入する以前は、大蔵大臣日本銀行総裁の仕事は、通貨価値の維持、通貨の安定ということであったように思います。特に日本銀行というものはそれに非常に徹しておった伝統があったと思いますが、それが、軍部が政治に介入してから考え方が変わって、インフレ政策に転じて拡大生産という方向に向かったと思います。戦後そういう気風が一時はありましたけれども、やはり高度成長時代に入ってからそういう気風が薄れてきておった。それがやはり今日物価問題が出てきている一つの基本的なポイントにあるんではないかと思います。そういう意味において、今日大事なことは、日本銀行とかあるいは大蔵省とかというところが通貨価値の安定、国民の財産の目減り、預金の財産の目減りを防いでいくということ、それに非常な機能を持っていなければならないというところにあるように私は思います。もちろん、それを墨守して固定した考えでいけという意味ではありません。景気の動向に応じて、ある場合には、ルーズベルトがやったような政策も必要でありましょうし、ある場合にはケインズ理論を適用する必要もありましょうし、完全雇用政策ということも政治の一つの大事な目標でありますから、そういう機宜に応じた政策ももちろん必要でありますけれども、通貨当局の立場からすると、そういうポイントは非常に重要なポイントではないかということを、もう一回政治の側も再認識しなければいかぬと思います。
  99. 羽生三七

    羽生三七君 最後に、七日の新聞を見ますと、通産省は、景気後退の深刻化に歯どめをするために選別緩和を考慮されておるという、こういう記事が出ておる一方、物価安定政策会議のほうでは、総需要抑制政策はまだ必要と、これ手を抜けば再び物価高騰のおそれがあると、こういうふうにも言っておるわけです。ですから、現時点における景気動向、物価問題と関連して総需要抑制政策、金融引き締めという現在の局面から見て、これはデフレになって、この総需要抑制や金融引き締め政策を手直しするようなことになりつつあるのか、あるいはその手をゆるめれば再びまた物価は騰勢に転じると御判断になるのか、あるいはまたさらに、デフレ下の物価高という局面になった場合、その場合には閣内にはやはり物価問題を重視して総需要抑制政策を引き続いて堅持していくという、こういう意見もあるわけです。通産大臣としては、現在の局面をどのように判断なさって、どういう通産行政をお考えになっておるのか、その辺をお伺いいたします。
  100. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新聞の記事は、通産省がことしの設備投資各社における計画や希望を調べたら、意外に根強い設備投資欲があったということであったと思います。それに対して通産省がどうするかということは、まだきめておりません。しかし私としては、やはり現在物価対策が一番大事なポイントでありますから、引き締めは堅持していくべきであると思っております。それで、ただその過程において、四−六の時代に中小企業にかなりのしわ寄せが来る危険性がありますから、中小企業に対してはかなり思い切った金融的措置を講じて、この危機を切り抜けることができるように措置しなければならぬと思っております。しかし、それを除いては、一般論としては、やはりこの引き締めは堅持していくべきである、そういうように思っております。
  101. 羽生三七

    羽生三七君 終わります。
  102. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 午前の質疑はこの程度とし、午後零時四十分まで休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      —————・—————    午後零時四十二分開会
  103. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) ただいまから予算委員会第二分科会を再開いたします。  この際、分科担当委員の異動について御報告いたします。  ただいま予算委員の異動に伴い、羽生三七君の.補欠として前川旦君が選任されました。また、上田哲君及び前川旦君が分科担当委員を辞任され、その補欠として神沢浄君及び小柳勇君が選任されました。     —————————————
  104. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 休憩前に引き続き、通商産業省所管を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  105. 小柳勇

    小柳勇君 私は、産炭地振興実施計画について主として質問したいのでありますが、その前に、先般の予算委員会で総括のときに質問いたしましたネオン業者の問題について一、二確かめておきたいので質問いたしますが、四月も三月と同じように制限し、かつ四月、五月、今後の電力制限なり、この種事業の制限についての大臣の御見解をお聞きしておきたいと思います。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油並びに電力に対する規制は、当分継続やむを得ないと思います。少なくとも四月は現在実施中でございますし、五月に至りましても石油の需給関係というものは、OAPECの動向その他等考えてみまして、解除するという条件が今月中に出てくることはむずかしいのではないか。そういうことであるとしまするならば、電力も同じように規制継続やむを得ない、こういうように思います。
  107. 小柳勇

    小柳勇君 電力料金値上げとも関連をして、電力需要制限の問題は原油の縮小ということで一あるのか、あるいはその他に何か事情があるのか、あるいは将来のエネルギーの需要を見通しながら、この際にいわゆる節約的な電力消費をやるというのか、大体根本的な原因は何であるのかお聞きいたします。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ストレートな動因は、やはり原油代の値上がり、それが電力経営に非常に大きく響いてきたということでございます。そういうことで価格改定を行なわざるを得ないという情勢が出ましたものですから、先般来国会からもいろいろ御発言、御要請がありました料金体系について、福祉重視という方向にこの際さらに前進したい、そういう考えもあり、また省資源、省エネルギー型の産業構造に転換させるということもこの際あわせて考えてやっていきたいと思うわけでございます。
  109. 小柳勇

    小柳勇君 電力料金値上げ需要制限というのは直接結びつかぬのではないかと思うんです、原油量の制限があれば電力需要に結びつきますけれども。電気料金は、原油代が上がれば高くしてやればいいということですから。ただ、将来の省エネルギーという問題で制限するとなればまた別問題ですが、いまのところ直接の原因はどちらなんですか。
  110. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 電気の使用制限は、電気事業法によって、電力供給が不足する事態に対応するためにとられる措置でございまして、これをとっています背景としては、基本的にはやはり油の不足ということが根本的な要因であろうと考えております。
  111. 小柳勇

    小柳勇君 油は不足しておらぬでしょう。値段さえ高く出せば、いまのところは昨年に比べて不足してないでしょう。
  112. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 石油供給の詳細については私答弁する立場にございませんが、一般的に申しまして、産業活動を自由に放置するときに必要とされる石油の量に比べますと、現実に輸入され、また使用可能な石油の量は制限をされておるという状況でございます。当面電力供給される石油の量につきましても、私どもとしては、電力事業の重要性にかんがみ、極力量の確保という点については意を用いておるわけでございますが、それにいたしましても、電力業界として自由に需要を放置した場合に必要とされる電力量、それをまかなうに必要な石油量という観点からいたしますと、まだ不足の状態でございます。
  113. 小柳勇

    小柳勇君 電力会社の重油の必要量をまかなえない原油の輸入量ではないでしょう。そんなら数字をあげてごらん。
  114. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 電力会社石油の必要量、これはまだ最終的な想定はできておりませんが、私ども大ざっぱに申しまして、月五百万キロリッターぐらいの石油消費というものが必要でございます。これはときどきの出水率等によりまして調整が必要でございます。私ども電力需給を組みます際には、電力業界として必要な石油の量というものを算定をし、それに必要な電力量というものを積み上げてまいりまして、これが一体供給可能かどうかということを試算をいたしました上で、この試算した数字が一体電力制限のどの制限に対応するものかというようなことを具体的に詰めまして電力に対する使用制限量を決定をすると、こういうやり方をとっておるわけでございます。
  115. 小柳勇

    小柳勇君 根本的な問題ですからもう少し論議しとうございますけれども、時間が足りませんので——いままでの電力制限をやられた経緯はわかります。その経緯は、うんと削減されるということでやられたわけで、これはもういま始まったことじゃないですね。二、三カ月前の考えを基礎にして、それを伸ばしてあるわけですから、だから、いましばらく省エネルギー政策で模様を見ますというお気持ちはわかりますが、業者の人は納得しないんですよ。金さえ出せば重油は以前のように入るではないかと。ただ、電力料が上がることは、これはいま検討されておると、それと需要量との問題については納得してないようですから、その上になおこれから先五里霧中ですという答弁があるものですから問題なんですね。だから、これこれの重油の輸入量ですと、電力にはこれこれ使いますと、したがって、電力はこれこれ削減されますから、この業種は、これ、削減しますよという、そういう説明がはっきり出ていない、いま。もうあなた方が一番御存じのとおり。二、三カ月前のあの削減されるであろうということの前提に立って電力制限なるものが発表されておる。それから大きな修正がないですよ。ただ、手直しされました。それは承知しております。そういうことなものですから、業者のほうが一体五里霧中でどうなるかと、金融関係考えながら、電力制限するということで業者にしわ寄せがいったと同時に今度はその業者に品物を注文するほうが、いわゆるネオンを必要とするほうがてまえ遠慮で、どうせつけられぬものならやめるわということになってしまって中小企業の倒産が相次いで起こるという実態です。だから、願わくは重油の見通しが一応ついたら、値段の問題、また別途論議いたしますが、必要量はこれこれですから、これこれいたしますということは、なるべくひとつ正確に国民がわかるようにしてもらいたい、これは要望です。でないと、いろんな計画が立ちませんです。特に中小企業工業者はそういうものを中心にして年間の計画を立てますから、早急にめどをつけてもらいたい。五里霧中では通産省の優秀な皆さんが胸を張って大道を通るわけにいきませんよ。  そこで、五月からの問題ですけれども、いまのネオンサイン業者のキロワットの制限を制限しないで、時間帯の制限をしてもらえぬであろうかという陳情が出ています。三十キロワットまでよろしかったのが十キロワット制限されまして、そのキロワットの制限がまだ十分の決着ついてないが、将来どうされるつもりですか。
  116. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 先ほど少しことばが足りませんでしたが、私どもは毎月毎月の石油供給計画をもと電力供給計画を組むという関係でございまして、五月につきましては、五月の石油供給計画が確定した段階で私ども最終的な方針をきめるという関係になっております。  それに関連をいたしまして、ネオンの規制をどうするかという点でございますが、従来規制をスタートさせました当時におきましては、ネオンがやはり不要不急の用途という意味では一つの代表的な事例であるということから全面的な制限でスタートいたしたわけでございますが、その後若干の事情変化を受けまして、先般十キロワット以下のネオンについて、特定の時間について適用除外するというような措置を講じた次第でございます。それをどうするかということは、また当初の石油事情に戻るわけでございますが、いまお話しございました三十キロワットという点、私もどのくらいの実情になるのかちょっと調べてみました。銀座を例にとってみますと、三十キロワット未満のネオンというのが数で大体五〇%という状況でございます。電力量からしますともう少し低い比率であろうかと思います。私どもとしては、当面はいまの制限の運営の状況というものを見守りながら、五月以降どうするかということはその際に考えていきたいと思っております。
  117. 小柳勇

    小柳勇君 ちょっと最後のほうがわかりかねたんですが、どうなんですか。
  118. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 五月以降の規制については、いまのところではまだ方針をきめておらない段階でございます。ただ、ネオン業界の実情も私どもいろいろ承知をいたしております。それらの事情も踏まえながら方針をきめてまいりたいと思います。
  119. 小柳勇

    小柳勇君 そのキロワットの制限は、ただいま実態に応じて検討されるようですが、時間的に九時までに制限してありますが、たとえば九州では東京と一時間違うわけです。だから、夏になりますとね、九時といってもまだ明るいものですから、だから、もしおきめになるときは日没以降何時間とか、そういう制限をしてもらえぬであろうかということです。何時までと、九時までなら九時まででありますと、東京と九州は一時間違うわけですね。そういう点いかがですか。
  120. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 御趣旨はわかるような気がいたしますが、他方、規制をいたします場合には、やはり規制がしっかり守られているかどうかということをチェックする体制も必要でございます。一般的に申しまして、規制緩和のスタートいたしました三月と比較しますと、かりにこの規制が延びていくという場合には、おそらく日没時間自体もだんだん繰り下がっていくというような事情もあろうかと思います。したがって、いまの規制時間自体をそういった日没時間の繰り下げに伴って見直しをする必要があるかどうかというような点は、確かに私どもとしても考えておく必要がある問題ではないかと思います。
  121. 小柳勇

    小柳勇君 次に、中小企業の倒産などに対する金融措置ですが、この点についての今日までのとられた措置と、これからのお考えをお聞きいたします。
  122. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 私ども、ネオン業界に対する法的制限は一月からスタートいたしましたわけですが、十二月ごろから自主規制という形でネオンの自粛が始まっておりまして、それらの事情がネオン業界にさまざまな影響を与えておるということは、かねてから私どもの耳にいたしておったところでございます。これに対応するために、当面やはり金融の面で特段の応援をはかる必要があるだろうというふうに考えまして、中小企業庁とも相談をいたしまして、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金、これら政府系三機関を通じまして特利で融資をするという措置実施いたしますと同時に、これらの政府系金融機関になじみのない業者の方々も考えまして、一般金融機関に対しても特段の金融上の応援をはかるように指導してまいった次第でございます。これらの措置は、私どもの聞いておりますところでは、ほぼ順調にスタートを切っておるところでございます。まあ今後ともこういった金融面の助成という点については引き続き意を用いてまいりたいと思っております。
  123. 小柳勇

    小柳勇君 以上でこのネオン業の問題は終わりまして、産炭地振興計画について質問いたします。  この産炭地振興実施計画が提案されて着々とその計画進行中でありますが、なお私どもこの筑豊炭田地帯をしょっちゅう歩きます者としては、もう少し各省庁の連絡を密にして速度が上がらぬものであろうかと考えます。たとえば具体的には依然としてボタ山はそのまま放置されておりますし、炭鉱住宅は荒れ果てて悪の温床ともなりかねない、あるいは災害発生の原因ともなりかねない情勢です。まことにりょうりょうたるものを感じまして、閉山した山には債務などありまして、個人的な財産を国が処理することについては問題があると思いますが、もう少し国の——りっぱな財産ですから、国土ですから、何とかもう少し総合的な改革の指導ができないものであろうかと、そういう考えを持つわけです。この点について総合的なこの振興基本計画なり実施計画を中心にしてこれから一体どういうふうにされるのか。もうこのまま、これ、ありますから、これでくるくる車回っておりますと、そういうことであるのか。なお一そう知恵をしぼって拍車をかけるように御検討されるのか、その点をお伺いしておきたいのです。
  124. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) 産炭地域振興計画につきましては、先生御承知のとおり、基本計画と実施計画によりまして振興をはかっておるわけでございまして、その主体といたしますのは工業出荷額というものを指標といたして計画を実施いたしているような次第でございます。第一次計画におきましては、これは三十八年度策定したものでございまして、四十二年度が目標年次になっておりまして、これは確かに達成率が八二%にとどまっておりましたけれども、第二次計画は四十二年度に策定いたしまして四十七年度が目標でございましたけれども、これは一二四%の達成率となっております。特に筑豊地区につきましては、関係者の御努力によりまして計画を大幅に上回りまして一三四%の達成率をあげております。このほか産業基盤、生活基盤の整備等についても各省庁の協力によりましてかなりの進歩を見せているところでございます。なお、現在は五十七年度を目標にいたしました第三次計画を実施中でございまして、この計画の完全実施に万全の努力を払う決意をいたしております。
  125. 小柳勇

    小柳勇君 そこまではこの間大臣から答弁あったわけです、総括質問のときに。  大臣に質問いたしますが、いま申し上げましたように工業出荷額を中心にして年度計画が立っています。これも実は通産省や産炭地公団が乗り込んでいって指導しているんじゃないわけです。もう各市町村が団地をつくったりして企業誘致をやって、統計上は工業出荷額で出ておりますけれども、総合的な国がこの産炭地域をこうしますぞという、そういうものは感じないわけですよ。総合的にどういうふうに実施計画の線を、このきまりました閣議報告というものを一歩も出れないものかどうかということをいま聞いておるわけです。それからいま貝島の露天掘りをやっております。で、地元ではもう二年ぐらいするとこれは終わりますぞと、あとどうなりましょうかというようなことで、われわれも会うとき、いつも聞くわけですけれども、だから石炭政策といまの産炭地振興と、それからそれが終わりましたあとの産炭地振興と、いろいろ問題ありますが、まず大臣に、その石炭政策については一体どうかと。そしてそのあと産炭地振興計画については、この実施計画ありますから、こういう点はひとつぼつぼつとやりましょうということか、抜本的にもう一歩ひとつ考えていきましょうとおっしゃるのか、大臣から御答弁をお願いしたいと思います。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石炭政策につきましては、ただいま総合エネルギー調査会に日本の総合エネルギーの一環として諮問をしておりまして、それが答申が出ましたら石炭審議会にもはかりまして政策を新しく大きく展開していきたいと希望しておるわけであります。最近の石油事情変化というものは石炭に非常に明るさを増してきていると思っております。産炭地振興もこれに応じまして、いままですでに既定計画を推進しておるところでございますけれども、この新しい石炭政策に見合いまして、産炭地振興にも馬力を入れて展開してまいりたいと、このように考えております。
  127. 小柳勇

    小柳勇君 それでは具体的に質問をしてまいりますが、石炭石油特別会計制度の延長と財源の確保、こういう問題でございますが、石炭及び石油対策特別会計を昭和五十七年度まで延長するとともに、現行配分率の存続による財源の確保をはかられたい、この問題いかがですか。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これらもその諮問の中に含まれておる一分野をなしていると思いますが、原油関税につきましては、発展途上国やあるいはOAPECの諸国からも多少の議論があるわけでございます。しかし、これに見合う財源を一般会計から求めるということもなかなか財政当局との間でむずかしい問題が出てくると思います。それらのことも今度の答申の結果を踏まえましてわれわれとしては政策を展開していきたいと思いますが、いずれにせよ、ある固定的な安定した財源をもって石炭政策を遂行していくということは今後当分必要であると考えます。
  129. 小柳勇

    小柳勇君 次は、産炭地域振興臨時措置法の改正などでありますが、産炭地域における産業基盤の整備と企業導入を促進するために、地方公共団体に対する財政援助の強化措置として次のように法改正を含めて充実をはかってもらいたい。一つは、法第十一条の公共事業に対する高率の補助制度を確立してもらいたい。それから二つ目には、産炭地域市町村の公共事業に対する起債の特別ワクを設定して、その元利償還補てん制度を創設してもらいたい。それから産炭地域振興臨時交付金の増額とその拡充をはかってもらいたい。それから中核企業の誘導のために工業再配置・産炭地域振興公団による大規模工業団地の造成を促進してもらいたい。こういう要請でありますが、前の三つは自治省、あと一つ通産省からの御答弁を求めます。
  130. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) 産炭地域振興臨時措置法の第十一条の改正でございますけれども、産炭地域振興臨時措置法第十一条に基づきます市町村の公共事業に対する補助率引き上げ措置につきましては、財政力の乏しい六条市町村に広く適用されるという問題点がございまして、昭和四十七年の六月、石炭鉱業審議会及び産炭地域振興審議会の建議にも指摘されたところでございます。そういうあれで政府といたしましては、ただいま申し上げました答申あるいは建議の線に沿いまして、四十八年度において産炭地域振興臨時交付金のうち、特定工業事業に関する調整額を新設いたしまして、予算措置をもって補助率の引き上げ措置改善を行なったところでございます。これによりまして、四十八年度におきましては約三億円の交付金が産炭地域六条市町村に対し交付される見込みでございましたし、これはまだ最終的には金額はぴしゃっと押えておりませんけれども、三億円の交付金が見込まれる予定でございます。なお、従来五十ないし六十市町村の適用しかなかった補助率引き上げ措置が、全六条市町村と申しますと百五市町村に及ぶことになっております。  法律改正につきましては、予算措置をもちまして一応対処いたしまして、国会での予算法案の改正は見送ることといたしておりますけれども、なお継続的に検討していきたいと考えております。ちなみに四十九年度の予算額は五億二千万円ということで処置いたしております。なお、産炭地域臨時交付金の単価引き上げの問題でございますけれども、本件につきましては、いわゆる閉山料にトン当たり八十五円というものをかけましたものを初年度に支払いいたし、二年度にはその七五%、三年度には五〇%、四年度に四〇%というものを支払っていたわけでございますけれども、これは単価もアップしております。五年目、六年目というのを新たに昨年から制度的に入れまして、五年目には一市町村当たり二百万円、六年目には百万円を交付するということで、実質的な単価上げに見合うというようなことで財政措置実施しているわけでございます。
  131. 小柳勇

    小柳勇君 この一番最後の問題ですね、工業再配置・産炭地域振興公団で大規模工業団地の造成を促進してもらいたいと、これは私さっき申し上げましたのに関連するんですが、ボタ山などがまだそのまま放置してあります。大雨が降りますと、流れてボタ山鉱害が発生しております。私有財産ですから、あるいは債務もありましょうから、国との関係いろいろ問題がありますけれども、公団で大規模工業団地などを造成されたらどうかということについて御検討されたことがありますか。
  132. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) 閉山により疲弊いたしました産炭地の振興をはかるためには、石炭鉱業にかわる産業を育成するということが必要じゃないかと思います。このため産業基盤整備を産炭地域振興対策の重要な柱としておりまして、従来より積極的に推進しているところでございます。工場用地といたしましての土地造成は、この産業基盤整備の中でも特に重要なものでございまして、産炭地公団は昭和三十七年より産炭地域振興臨時措置法第六条地域を中心に積極的に土地造成を行ないまして、四十八年度十二月末までに九十一団地の面積千五百六十三万平米を完成させております。なお、十九団地の千八百四十二万平米を現在造成中でございます。特に最近は地域経済の中心となるような中核的大規模団地の造成に力を入れておりまして、現在福岡県の白鳥、百十万平米でございます。それから宮田地区、これは二百二十万平米でございます。小竹地区三百五十万平米でございまして、これらの団地をはじめといたしまして百万平米以上の団地九件を造成もしくは造成計画中でございます。これらの団地の早期完成を含めまして、今後も大規模団地の造成を促進してまいりたいというふうに考えております。
  133. 小柳勇

    小柳勇君 自治省、見えてますか。——見えてないな。  それじゃ、次は工業再配置対策の促進ですが、産炭地域における雇用機会の拡大と住民所得の増大をはかるために、地域振興の中核となる企業導入について積極的な施策を講ずる必要があるが、工業再配置促進法の施行にあたって特に産炭地域に対し優先的に次の措置を配慮してもらいたい。誘導地域において市町村または市町村開発公社が行なう工業用地の造成に要した地方債または借入金の利子補給対象として、土地面積基準を二ヘクタール以上に緩和してもらいたい、この問題いかがですか。
  134. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 現在担当者が参っておりませんけれども、かねてから利子補給の対象になる団地の面積の改定を特に産炭地についてやってくれという要望は承っておりますので、担当局と相談いたしたいと思います。
  135. 小柳勇

    小柳勇君 これは具体的に基準を二ヘクタール以上と書いてありますから、いままでいろいろ陳情しておると思います。したがって、担当とよく御相談になって、できるものならこの要望を聞いていただくように御高配を願います。  次は、鉱害復旧の促進でございますが、臨時石炭鉱害復旧法の期限内に鉱害復旧の完全処理をはかってもらいたい。特に予算の確保をはかり、前期五カ年において安定鉱害の完全復旧ができるよう予算の傾斜配分を配慮するなど必要な措置を講ぜられたい。それから危険なボタ山の災害防止工事を臨時石炭鉱害復旧法の対象とし、ボタ山災害の防止をはかられたい。それから無資力鉱害の増大にかんがみ、鉱害復旧にかかる地方公共団体の財政負担の軽減をはかるため、国の補助率、地方債の充当率及び地方交付税による補てん率の引き上げをはかられたい。  以上、鉱害復旧の促進についてお尋ねをいたします。
  136. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) 鉱害復旧につきましては、現在の長期計画では一応四十七年から五十六年度、十年間で完全処理ということで進めているようなわけでございまして、予算的に許されるならば、この十年間で早期完全処理をはかるべく努力する考えでございまして、当時の計算によりますと、十年間で残存鉱害量千七百億ということになっております。これもいわゆる地域関連の諸施策と申しますか、関連事業との有機的な連携もとりつつ強化し、早期に復旧したいというふうに考えております。  なお、ボタ山の流出防止工事でございますけれども、現在鉱害の復旧工事ではないというふうに一応私ども認定いたしておりまして、流石の問題につきましてはいわゆる臨鉱法の体系上はこれを見るということがむずかしいのでございますので、ただいまは防止工事については保安対策の一環といたしまして、予算措置をもっていわゆる危険ボタ山の排除ということで、立地鉱害局のほうでこれに対する危険防止排除、流出防止という点から事業を実施しているというのが現状でございます。今後産炭地域に放出されましたボタ山の処理についてでございますけれども、いわゆるこのボ夕山が現在全国に約千三百ボ夕山がございまして、総集積量といたしましては約四億九千立米というふうに見られております。このうち鉱業権者が管理義務を持っておりますボ夕山が約四百三十でございまして、その管理につきましては鉱山保安法に基づき監督指導し、ボタ山の危険排除をはかっていることはただいま申し上げたとおりでございます。  なお、災害防止工事を必要とするボタ山であるにもかかわりませず、管理義務者が不存在または無資力であるいわゆる放置ボタ山につきましては地方公共団体が管理することといたしまして、地方公共団体が実施するボタ山防災工事に対しまして、先ほど申し上げましたように政府は補助金を、補助率が三分の二でございますけれども、交付いたしまして防災工事を実施しているというのが現状でございます。  立法問題につきましては、放置ボタ山は動産であると、ボタと不動産であるボタ山の敷地というものを、所有権あるいは権利関係が複雑でございまして、これらの施策を進める上で新しい立法措置を要するかいなかというような点については慎重に検討する必要があろうと思います。当面、権者等の協力を得まして、さしあたってはいわゆる補助金制度を拡充いたしまして、土地造成事業あるいは鉱害復旧事業、道路、鉄道等の公共事業と関連させ、可能な限りボタ山を排除するという姿勢で臨んでいるような次第でございます。
  137. 小柳勇

    小柳勇君 次は、産炭地域における農業経営の安定政策の確立でありますが、農業経営の安定化については、産炭地域における農業経営の近代化を急速に促進するため、農地及び農業施設の総合的整備促進をはかるとともに高額国庫負担の措置を講じてもらいたい。それから鉱害農地復旧の推進でありますが、鉱害農地の復旧については、被害農民の生活安定のため、短期的米作減反政策に関係なく、地域の実情に応じた被害農民の意思を十分尊重した農地復旧の推進をはかってもらいたい。それから炭鉱所有地の開放について、農地や草地造成のため炭鉱の遊休地の格安払い下げ措置を講じてもらいたい。また、産炭地域における補助事業採択基準ワクの緩和については、産炭地域農業の特殊性を考慮して、補助事業採択基準を一般基準より緩和してもらいたい。こういうような要請が出ておりますが、農林省、いかがでしょうか。
  138. 関口尚

    説明員(関口尚君) 産炭地域につきましては、基本計画それから実施計画に従いまして地域の実情に即しました産業振興という政策を講じております。農林漁業に関しましては、土地改良事業等を推進いたしましてその整備をはかっていく次第でございます。  補助率の問題でございますが、産炭地域につきましては、過疎地域であるとか、あるいは急傾斜地帯という事情がありまして、そういった場合につきましては土地改良事業等の採択基準に、これらによりまして一般地域に比しまして緩和措置を講じておる等でございます。なお、地域の実情に即しまして果樹、野菜、畜産等の振興をはかるための二次構造改善事業等の積極的な推進をはかっていくということでやっておる次第でございます。
  139. 小柳勇

    小柳勇君 いまの農村問題は産炭地域特有の問題だけと言いませんけれども、あのような事態でありますから特別にひとつ御配慮願いたいと思います。  それから文部省に文教対策について質問いたします。再々これは質問しておる問題でありますが、産炭地域の教育の困難な事情に対処し教育条件改善をはかるため、次のとおり特別の措置を講じてもらいたい。小中学校の学級編成基準改善並びに生活指導職員、事務職員、養護教員など教職員定数の増員配置について特別の措置を講じてもらいたい。御存じのように生活保護家庭など非常に多いし、青少年の教育については特別の配慮をしてもらいたいという大きな前提がございます。この点についての文部省のお考えをお聞きしたい。
  140. 松浦泰次郎

    説明員松浦泰次郎君) 産炭地の学校に対する特別措置といたしまして、従来教員の加配措置を行なっておりますが、第三次の現在の計画は四十八年度で終了いたしました。四十九年度から第四次の五カ年計画に入ることになっております。その中におきまして、ただいま申し上げました教員の加配につきましては従来対象児童生徒数が四十人以上、三〇%以上の学校につきまして一人の加配でございましたが、この基準改善する予定でございまして、政令で定めることになる予定でございますが、二十五人以上、それからパーセントは二〇%以上というふうにいたしまして、その学校に、さらに百人以上の学校につきましては二人を加算するというような措置を講ずる予定でございます。  それからそれ以外の措置といたしましては第四次の教職員定数、事務職員を含むわけでありますが、改善計画におきましては、特に小規模とか過疎地域の学校に対する措置を充実するという予定でございまして、たとえば養護教員につきましても現在全国的な配置率が五三%ぐらいでございます。それから産炭地の学校におきましては、現在四五%ぐらいの配置率でございますが、従来は児童生徒数による基準でございましたので、とかく大規模学校の多い府県に定数が多く回るというような傾向がございましたので、今度の新しい改善計画におきましては小中学校の本校数に対しましてすべて七五%までこれを保障していくというような措置を講じております。そのようなことで自然増を含めますと、五カ年計画によりまして全国的には七六%までの学校の養護教員を配置できるという見込みでございまして、小規模学校にはかなりな充足が行なわれる予定でございます。それから事務職員につきましても、従来の基準が児童生徒数でございましたので、やはり同じような傾向がございましたから、これも七五%までの学校に配置していこうというような考えで大幅な拡充を計画いたしております。  それから学級編成につきましては、現在全国的に一学級最大四十五人までというような基準が完成いたしたのでございますが、新しい計画におきましては、特に過疎地域とかに多いのでございますが、複式学級につきまして、たとえば三学年の子供を一緒にする学級は五カ年で解消していく。それから二学年の子供を一緒にする学級につきましても、小学校の場合、従来二十二人を二十人にいたしまして、特に一年生を含みます場合にはこれを十二人に大幅な改善をはかる予定でございます。それから中学校の二学年複式につきましては十五人を十二人に改善するというような措置を講じております。  また、その他の教員定数の改善といたしまして、小規模の学校に免許外の教科を担当している教員が現在いるのでございますが、そのようなものにつきまして、府県に一定数の基準によりましてワクを配当しまして、学校の実情に応じてこれを活用していただくというような措置を織り込んで計画いたしておるところでございます。
  141. 小柳勇

    小柳勇君 閉山によって長い歴史を持った学校が合併いたしまして、まことに風にさらされています、学校などが。そういうことで非常な変動があっていますから、特に一般的な地域、特に過密になる隆々と栄えていく地域と非常に対照的な問題がありますから格別な御配慮をお願いしておきたいと思います。  最後に、通産大臣に御意見を聞いておきたいんですが、各地域とも脱産炭地の施策を急速に施しながら新しく生まれかわろうとしておりますが、物価上昇などで資材の高騰なり人件費の高騰で、現在までの超過負担に加えさらに市財政の上に大きな負担をしいられている。したがって、抜本的に超過負担の解消について御高配を願いたい、こういうことであります。これは産炭地域だけではありません。全国的にそういう自治体の脳みがあろうかと思いますが、産炭地の市町村、自治体は毎年毎年人口が減って市財政も苦しくなるような状態でありますから、この超過負担の問題について抜本的にひとつ配慮してもらいたいという要請でございますが、閣僚の一人として、政府方針としてお考え願いたいと思うんですが、いかがでしょう。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 産炭地振興につきましては政府も力を入れてきたところでありますが、企業の誘致その他におきまして必ずしも期待どおり進んでいないところもあり、町村としてはかなりいろいろ負担に困っているところがあると思います。われわれといたしましては、今後とも地元市町村の超過負担の解消につとめまして、財政面やそのほかいろんな面におきましてもできるだけの努力をいたしたいと思います。
  143. 小柳勇

    小柳勇君 ありがとうございました。  質問を終わります。
  144. 内田善利

    内田善利君 一番最初に通産大臣にお聞きしますが、四月九日から国連の資源特別総会が始まるわけですが、これに対する政府の基本的な態度、これをお聞きしたいと思うのですけれども日本は資源小国ということで、先ほどは石油戦略によってたいへんなショックを受けたわけですけれども、今度の総会でもそういった資源ナショナリズムの色彩の濃い会議が持たれると思うんですけれども、これに対する基本的な姿勢、そしてなおそのあとを受けて六月には海洋関係、八月には人口関係、十一月には食糧問題と、このように国際会議が控えているわけですが、こういったことに対処する政府の長期的なお考えをお聞きしたいと思います。
  145. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基本的には資源保有国、発展途上国と共存共栄の道をお互いに模索し合い、分かち合っていくという考え方に立ってまいりたいと思います。資源保有国がこの持っておる資源に対して恒久主権を訴える、またその資源から出てくるさまざまの利潤等の分かち合いということを主張するという立場はよくわれわれも理解をすることができます。しかし、また一面において、それらの国々が先進国とお互いにまた協調し合いながら自国の経済開発や社会開発に大きく伸びたいという事情もあると思います。お互いがそういう点を補完し合いまして共存共栄の実をあげるように諸般の面において協調して進めていく、そういう考えに立って私たちは対処していきたいと思います。
  146. 内田善利

    内田善利君 次に、通産省がいま行なっておられます環境アセスメントについてきょうはお伺いしたいと思いますが、まず一番最初に、現在まで公害防止のための事前調査が行なわれておるわけですが、年度別の予算をまずお聞きしたいと思います。
  147. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 担当局の関係で、かわりまして申し上げますが、古い数字はちょっと持ち合わせてないのでございますが、四十八年度が二億一千四百万円でございまして、四十九年度におきましては三億九千七百万円ということに相なっております。
  148. 内田善利

    内田善利君 その程度のことは私もお聞きして知っているわけですが、いままで総合事前調査が相当昭和四十年から行なわれておって、どの程度の公害防止施設が、あるいは公害防止のための調査が行なわれてきたのか私は非常に疑問に思うわけです。したがいまして、どういう予算で、どこにどれだけ使われたのか、具体的にお聞きしたいと思うんですがね。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 環境アセスメントの調査は御指摘のように四十年から実施しておるところでございますが、通産省といたしましては、内容として大きく分けて現地調査、汚染予測、企業指導の三段階に分けてやっております。現地調査は拡散計算のために必要な気象データ、海象データ等のデータを現地で収集することを目的とし、汚染予測は風洞実験、水理模型実験、電子計算機によるシュミレーション計算等を用いて実施しております。将来、工場群からの汚染が重合して環境基準をこえるような状態が予想される場合は、立地企業及び立地予定企業に対して汚染負荷量の削減、処理施設の設置等、改善指導を実施し、将来においても環境基準が達成されるように指導してまいりたいと思っております。  先般、工場立地法に基づく工場立地に伴う公害の防止に関する調査として法制化され、届け出、勧告、命令等の規制が行なわれることになりました。このため同調査のを内容を従来以上に整備強化することとし、四十九年度予算において現地調査の拡充、汚染予測手法の開発を主とする内容の大幅な拡充をはかったところであります。  いままでの事前調査の実施地区を考えてみますと、四十年においては、大気として茨城県の鹿島、岡山県の水島、大分県の鶴崎、河川として阿武隈川。四十一年度は大気として千葉県の五井、姉ケ崎、愛知県名古屋南部、大阪府堺、泉北、兵庫県播磨、海域として水島と鹿島。それから四十二年度は川崎、横浜、根岸、東三河、大阪、尼崎、阿南、水島、それから五井、姉ケ崎、知多、播磨、大分、鶴崎。それから昭和四十三年度は苫小牧、秋田湾、君津、衣浦、笠岡、福山、宇部、小野田、鹿島、君津、鹿島、衣浦、東播磨。四十四年度は、いまのような情勢でさらに広げてまいりまして、大気で八カ所、海域で五カ所。四十五年度は大気で九カ所、海域で五カ所。四十六年度は大気で八カ所、海域で五カ所。四十七年度は大気で六カ所、海域で四カ所。四十八年度は大気で六カ所、海域で二カ所。四十八年度は北海道の苫小牧東部、青森県のむつ小川原、茨城県の鹿島、大分県の大分、宮崎県の細島、それから千葉県の千葉、海域として大分県の大分、富山県の富山、これらを実施しておるところでございます。
  150. 内田善利

    内田善利君 それで全部ですね。
  151. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) はい。
  152. 内田善利

    内田善利君 全部ですね。
  153. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) なお、産業公害総合事前調査予算としましては、四十九年度予算として大気関係で一億八千九百六十五万、水質関係で一億九百三十七万、それから工場立地に伴う生態系影響調査として九百九十九万、合計として三億九百二万、それが四十九年度予算で計上してあります。
  154. 内田善利

    内田善利君 この事前調査の位置づけですね。事前調査はどのような重要性を持ったものなのか、その位置づけ、これをまず聞きたいと思います。
  155. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) これは従来は法律に基づかない任意調査であったわけでございますけれども、現在におきましては工場立地法の制定に伴いまして、工場立地法に伴う公害防止に関する調査ということで法制化されたものとしてやっておるわけでございます。
  156. 内田善利

    内田善利君 法に基づいて事前調査が行なわれるようになったわけですが、これはだれが事前調査をやっておるわけでしょうか。
  157. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 通産省が調査の責任を持っておりまして、調査計画の策定にあたりましては、関係自治体及び公害防止協会と相談をいたしまして調査計画を策定いたします。計画に基づきます調査の実施にあたりましては、現地調査、汚染予測、それから企業指導案というふうな三つの部分に分かれまして、それぞれ分担をして実施をする。その結果を活用する段階になりますと、公害防止協定、公害防止計画等ございまして、県が指導に当たるというふうな形で進めてまいっております。
  158. 内田善利

    内田善利君 その事前調査の、公害防止協会という団体が自治体と一緒になって事前調査をやっているわけですが、この公害防止協会の実態はどのようになっておりますか。
  159. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 公害防止協会は昭和三十八年八月二十九日に通産大臣の許可を受けた社団法人でございます。会員は主として関係企業及び地方公共団体でございまして、現在七百四十九名の会員数を持っております。主たる業務は産業公害の防止に関しまして調査研究、あるいは技術の指導、あるいは研究会、講習会、さらにPRといったような仕事をやっております。役員は、会長一、副会長三、専務理事一、常務理事二、常任理事十七、理事三十一、監事二という形になっておりまして、職員は三十八名、五部七課一室という状況でございます。年間の事業予算でございますが、四十八年度約七億円でございます。このうち一部補助金が入っております。
  160. 内田善利

    内田善利君 この事前調査の重要性、私は非常に大事だと思うんです。今後工業立地をするという前に通産省、そしてこういう公害防止協会が、また現地の自治体と一緒になって公害調査アセスメントを完成されるわけですけれども、これに対して先ほど大臣からお話しありましたように全国何カ所も公害防止のための調査が行なわれているわけですけれども、しかもばく大な予算をつぎ込んでなされているわけですが、はたしてこの調査で現地が公害がないかどうかという問題、四十年からこれだけの金を投資してきて現在の、先ほど通産大臣がずっと読まれました各土地で公害がなくなったかどうかですね。公害調査をやられたその現地で公害が起こらなかったかどうか。私はこの報告書をずっと見ました。ところが、その報告書はみんないいことを書いてあるわけですね、事前調査の報告書ですね。その報告書と現況を比べて、はたして適切な公害調査が行なわれておったかというと非常に疑問を持つわけですが、特に公害防止協会が主体になってやっておられるようですけれども、この公害防止協会の報告、それに基づいて通産省で安全だという報告をなされたと思うんですけれども、報告を全部書き抜いてみました。  これ、全部読むのはたいへんですから書き抜いてみましたが、たとえば大分の場合、これは昭和四十年度から調査されているわけですが、三つのグループに分けて書いてあります。一、二、三のグループとも、汚染については全然問題にならない、また粉じんについても問題はないと予測された、こういう報告ですね。それから四十年から四十一年の水島、亜硫酸ガス濃度は最高濃度地点においても〇・二PPM以上が三時間以上継続するというような事態は発生しないものと想定、そして大気汚染対策上もほぼ満足すべき状態であると判断。それからこれは鹿島ですが、昭和四十年から四十一年、〇・二PPM以上が三時間以上継続するような事態は発生しないものと想定、大気汚染対策上満足すべき状態、最悪気象条件の場合でも環境基準に適合。それから昭和四十四年、北九州ですが、昭和五十年度においても異常気象を除く最悪気象条件の場合でも硫黄酸化物の環境基準に適合することが予測された。それから水島、もう一回、昭和四十二年、水島地区完成時において、異常気象の場合を除き〇・二PPMをこえる汚染が三時間以上継続しても発生することはないと予測される、こういう報告ですね。名古屋南部、昭和四十四年。昭和四十八年度においては異常気象を除く最悪気象条件の場合でも硫黄酸化物の環境基準に適合することが予測された。昭和四十四年、五井、姉ケ崎、〇・二PPMをこえる汚染が三時間以上継続して発生するような事態は発生しないと予測された。名古屋南部、当地区においても、最も問題となる北西の風向、六・三メーター毎秒の風速の条件では〇・二PPMをこえる汚染が三時間以上継続して発生することはないという予測。昭和四十六年と四十七年、大分、現行環境基準の一時間値、九九%値、〇・二PPMを下回る、最も重合汚染が著しくなるような最悪の気象条件でも硫黄酸化物の環境基準に適合することが予測された。大牟田、四十六年と四十七年、各工場当たりの着地濃度も〇・〇二PPM以下になると予測された、当初の企業——かなり改善された、硫黄酸化物の環境基準に適合することが予測された。こういうふうに全部安全な報告がなされている。  ところが、現在の公害状況は、これは環境庁見えていますか、環境庁。——大分、水島、鹿島、北九州、四日市、大牟田等について、現在の公害状況、被害状況、これを教えていただきたいのですが。CB患者の有症率だけでけっこうですが、何%の有症率になっておるのか、慢性気管支炎の症状を訴えておる人が何名おるかという有症率を教えていただきたい。
  161. 竹中浩治

    説明員(竹中浩治君) いまおあげになりましたうちで、たとえば北九州の場合でございますが、これは有症率が九・四、それから名古屋市が七.九、大牟田が一三・八。それから倉敷でございますが、これは私どもの直接の調査ではございませんで県で調査をしたものでございますが、四・五%、そのような数字でございます。
  162. 内田善利

    内田善利君 そのように公害事前調査がなされ、そして工業立地され、そしてその結果このような被害者が出ているわけですけれども、このことに対して通産省としてはどのようにお考えでしょうか。
  163. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 公害の防止につきましては、言うまでもなく万全の事前の防止措置を講じなければならないわけでございます。そういう趣旨で公害防止のための事前調査をやってまいっております。このやり方は、御案内のとおり、現地調査、あるいは現地での拡散実験、あるいは風向、風速等の実験等現地調査を行ないまして、かつそれを理論拡散式、コンピューターによる拡散計算、あるいは風洞によります実験等によりまして起こり得べき最大の汚染状態を判断いたしまして、それと与えられましたこの環境基準の適応関係を見まして、それ以内におさめるべく現実の企業指導をやってまいっておるわけでございます。したがいまして、ただいま先生が御指摘になられましたようなケースはいずれも相当な企業指導をいたしました結果、これで与えられました環境基準あるいは排出基準に対してだいじょうぶであるという想定のもと判断したわけでございます。  現実にはただいま先生が御指摘のような問題も出ておりますが、この辺は関係省庁ともいろいろ話をしたわけでございますが、一つはたとえば先生が御指摘の第一回の大分のケースは昭和四十年でございまして、当時はまだ環境基準ができておりませんので一つのそういった基準がなかったわけでございます。それから四十六、七年のときにはすでに環境基準があったわけでございますが、いまから反省いたしますと基準が甘かったのではないかということになりましていその反省の結果が昨年五月のSO2の環境基準の強化という形で出てまいったわけでございます。私どもといたしましては、与えられました国の環境基準及びそれに基づきます排出基準を前提といたしまして、かつ四日市のような重合汚染の危険を前提にしながら、環境保全あるいは公害疾病が起こらないような最善の努力をいたすべく手法あるいは調査方法等につきましてもなお最善を期しておる状況でございます。
  164. 内田善利

    内田善利君 私は、環境基準がきめられましたけれども、環境基準以下にしようと思えば日本の技術をもってすれば可能だと思うんですね。いかなる方法をとってやっても、政府がきめた環境基準、これはある程度は出してよろしいということですから、それ以下にすることは私は可能だと思うんです。その一つがK値の問題で大気汚染の場合は煙突が日本国じゅう高くなった、日本国じゅうの煙突があの赤白のマークが入った煙突を高くすれば環境基準はそれ以下にすることは可能である。東邦亜鉛の対州鉱業所が水質汚濁防止法の網をくぐって、濃度規制の網をくぐって薄めればどうにでもなるわけですね。私は、昭和四十五年でしたか・田中通産大臣に、濃度規制だけじゃだめじゃないかと、量規制——そのときは量規制と申しましたが、量規制もすべきじゃないかと、そう言って瀬戸内海の山陽パルプの岩国沖の水質汚濁の問題について質問したことがございますが、結局濃度規制やっていたために、水で薄めればどうなるかと、〇・〇〇以下のカドミウムにすることができるという一つの課題をもって三分の一薄めてみたり、三分の二薄めて、そしてカドミウムの含有量を〇・〇〇の大台にしたと。これは結局こういうことをやった東邦亜鉛も悪いですけれども、やはり濃度規制と量規制をやらなかった政府姿勢にも私は責任がある、こう思うんです。この大気汚染の環境基準にいたしましても、環境基準もとにした行政をやってまいりますと、こういう被害者が出てもなかなか救済ができない、そういうことになってしまったんではないか。救済法が適用された地域はいいですけれども、大分のようなまだ公害被害者救済法の指定地域にならない大分の人たちは慢性気管支炎で苦しんでいらっしゃる方々がたくさんいらっしゃる。しかも指定になった地域よりもこのCBの患者が、有症率が多い、そういう実態になってしまったんではないか。こう思うんですけれども、予測がまずかったのか、それとも被害者が出てしまって、その被害者が忘れられた行政によってこのように被害者が出てきたのか、この辺はどのようにお考えですか。
  165. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 通産省といたしましては、基本的な姿勢といたしまして、単に与えられました環境基準にぎりぎりで合格すればいいというふうな消極的な態度ではございませんで、可能な限りそれ以下に、可能な限り環境保全に努力させるという方針でやってまいっております。たとえば大分の四十六、七両年度の調査でございますけれども、東風が吹きますときに御案内のような臨海工場の汚染が大分市内に集中的に着地するわけでございまして、そういう全重合最大着地濃度を算定いたしております。この際の私どもが企業指導いたしました数値は〇・一二PPMでございまして、当時の環境基準は〇・二PPMでございます。こういう方法で可能な限りただいま申し上げましたような姿勢で指導しておるわけでございます。  それから基本的にただいま御指摘のような単に濃度規制だけではいけない、量規制も援用すべきだという御質問に対しましては私どもも同感でございまして、環境庁が中心になりまして私どもその方向でただいま進めておる状況でございます。
  166. 内田善利

    内田善利君 この大分の三佐地区と他の公害病指定地域の比較をもう一回、環境庁の御答弁でははっきりしなかったと思いますから申し上げますが、川崎地区ではCB患者の有症率は八・一%、横浜で七・七%、富士で六・六%、北九州で九・四%、名古屋で七・九%、東海で六・七%、堺が一四・〇、大牟田が一三・八、豊中が一〇・〇、大分の場合は三佐五区の平均で六・一、それから五区だけで申しますと八・九%、このように非常に有症率が他の指定地域に比較して多いわけですね。ですから、この被害者の状況をよく調査した上で、そして工場立地をすべきじゃないか、こう思うんです。この三佐地区なんかはどうされる予定なんですか。工場立地よろしいということになってそのまま進められていくのか、この三佐地区はこのまま放置するのか、解決方法を講じた上でされるのか、この点はどうなんですか。環境庁はどのようにお考えですか。
  167. 小野寺秀雄

    説明員小野寺秀雄君) 大分地区につきましては、四十七年に防止計画をつくっておりまして、その当時は旧環境基準でございましたが、現状の汚染程度のままで今後も押えていくという態度でございます。その後環境基準の改正等もございまして、新日鉄あるいは今度の七号地の埋め立て等に関しましては、硫黄酸化物等の発生量を現在よりもずっと押えていく、三千ノルマル立米以下に押えていくということで、現在汚染の低下ということの努力をいたしております。環境庁といたしましては、当地区におきましては、いずれにせよ今後の開発等に関連いたしましても、新産第一期というものとの関連で十分なアセスメントをやりながら押える、こういうように強く指導してまいりたいと思います。
  168. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) ただいま環境庁からお話のございましたように、四十六、七年の調査では、企業計画をトータルいたしますとSO2の発生量が一万五千をこえる量になっております。それを、そのアセスメントの結果現実的な指導をいたしまして、それが約一万にカットされたわけでございますが、それでもなお不十分だということであり、かつ先ほど御指摘のような事態はすでに当時で、レポートをまとめる段階で明らかになっておりましたので、現在、県におまきす公害防止協定、あるいは防止計画、あるいは上のせというふうな形で約三千立米に減らすべく指導が進められている段階でございます。  なお、昨年五月の新基準の策定を契機にいたしまして、通産省、県、市等が協議いたしまして、新たな基準に適合するような形で工場立地がはたしてどの程度に、あるいはどういう条件もとに可能であるかというふうな問題意識のもとに第三回目の産業公害事前調査に着手いたしまして、現在鋭意進めておる段階でございます。で、新しい基準は相当シビアでございますので、これに十分適合するような形の条件を満たしながら工場立地の指導を進めていきたいというふうに考えております。
  169. 内田善利

    内田善利君 三佐地区ですね、三佐地区ではもうすでに他の公害防止指定地域、被害者救済指定地域と、あるいはそれ以上の有症率の患者が出ているわけですが、この問題と、この事前調査の問題、これはどのようにお考えでしょうか。そのまま基準以下で、新基準以下であるということであればもう工場立地を進められるのか。この辺はどうですか。
  170. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 私どもも形式的にただ与えられました基準に合格すればそれでどんどん工場を進めるというふうな態度をとっておりません。ただし、調査をし実態を明らかにするという見地で、一つのめどとしてそういった数値を持っております。ただ、その数値をどういうふうに判断するかということは、公害の因果関係が全体系としてなお完ぺきに明らかになっていないような状況下におきましては、そういった予想せざる反応も十分考慮する必要があろうかと思います。そういった諸条件につきましては、残念ながら私どものほうの所掌ではございませんので、この出ました結果を環境庁とよく相談をいたしまして、最終的な企業指導のめどを作成してまいりたいというふうに考えております。
  171. 内田善利

    内田善利君 さらに申し上げますけれども、先ほど申しました公害防止協会ですけれども、この協会の役員がほとんど大会社の、大会社と申しますか、企業の最高幹部がずらっと並んでおられるわけですが、この点についてはどのようにお考えですか。
  172. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 公害に関します調査を厳正に実行するということは私どもの基本的な姿勢として常々注意いたしておりますところでございます。ただいま御指摘の産業公害防止協会に並んでおります大会社の数でございますが、これは会の財政的基礎を支持するという観点でこういったメンバーが並んでおりますが、現実の具体的な調査にあたりましては技術顧問及び技術参与という形で国内の各方面の多数の一級のエンジニアの参画を得るという形になっております。したがいまして、御指摘の大会社が多数メンバーにはなっておりますけれども、具体的に行ないます公害調査にそれがゆがめられるということはないだけの措置は十分講じておるところでございます。
  173. 内田善利

    内田善利君 当然そういうことがあってはならないと思いますけれども、やはりこういったメンバーを見ますと、いままでに公害問題で問題になったところの社長さんがたくさんおられるわけですけれども、やはりこれでは国民は疑惑を持つと、こう思うんです。公害防止のための費用が要るならば私はこういうところから使わないで、やはり国で調達をすべきじゃないかと、このように思うんですね。この大分港の港湾計画その他の新産都市の問題等でも、やはりこういった役員の方方が名前を連ねておったのでは、いま被害者が出ていなければいいですけれども、こういう防止計画か立てられ そしてだいじょうぶだということで立地が始まって、そしてしかも被害者が出たと。だれがやっているか、公害防止協会が主としてやっている、現地調査もやっている。こういうことになれば、やはりここはもう少し専門家の人たちが顔を連ねるべきじゃないかと、このように思うんですけれども、まして法律化されて、工業立地が工場立地規制法でなされるようになるということになれば、なおさらもう少し専門的な方々を連ねていくべきじゃないか。役員に大会社の社長さんたちが入ることは、社長、副社長クラスですね、これは問題ではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
  174. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。  昭和四十八年度、先ほど七億の事業規模と申し上げましたが、そのうち会費によります分が五千六百万ということでございまして、きわめて僅少でございます。で、あとは試験等の事業収入あるいは国、県、これは国は環境庁、運輸省、建設省、もちろん通産省も含めまして各省庁からの受託が入っております。それから県というふうな形の受託費あるいは補助金が圧倒的に大きなウエートを占めておりますので、少なくともこのメンバーに大会社が名前を連ねておるということが、こういった財政面を通じて具体的な調査をゆがめるというふうな影響は全く遮断されていると判断してよろしいかと考えております。  それから、もっとりっぱな専門家を並べてという御指摘でございますが、全く御指摘のとおりでございまして、先ほど申し上げましたように四名の常任顧問がおられますが、いずれも水、空気、エコロジー、公害等の最高の権威者でございます。さらに技術参与といたしまして八十名にわたります各方面のエンジニアの方、これは医学、病理等を含みますが、常時参与という形で協力参加をいただくという仕組みになっております。したがいまして、御懸念の向きにつきましては十分手当てがついておると思いますが、なおきわめて大事なポイントでございますので、今後とも十分注意をいたしまして、メンバーが会社であるということが現実のこの調査にゆがみが生じないようになお注意いたしてまいりたいというふうに考えております。
  175. 内田善利

    内田善利君 先ほどの報告の内容から見ましても、安全だ、安全だという報告があっておりながら、こういった被害が出ている。しかもこの役員の中にはいままで問題のあった人が二人も三人もおられるわけですね。言えとおっしゃれば言いますけれども、具体的にわかっております。そういった方々が中に入っておる。私は問題じゃないかと思うんです。結果的に見てみましても、安全だ、安全だという報告は出た。しかも被害は出ている。そこへ、この内容を見ますと、問題の人たちがいらっしゃる。こうなりますと、この公害防止協会についてももう一回検討される必要があるんじゃないかと、こう思うんですね。それと、やはりこれは国が金を出しているわけですから、公害防止計画のための完全なるアセスメントをするためのもう少し見直しをしたらどうかと、このように思うんですが、この点、通産大臣、どのようにお考えでしょう。
  176. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公害問題は今後ともいろいろ諸般の問題を包蔵して発展する分野も広がっていくように思います。したがいまして、環境アセスメント等を厳重にするとともに、関係各省がよく目張りをし合って、間隙を生じないように連携をし合いながら、公害対策に万全を期していくように協力していきたいと思っております。
  177. 内田善利

    内田善利君 いままでは公害被害者が出た、それをどうやって救済していくかということが中心だったと思うんですけれども、今後はやはり公害をどうして防止していくか、公害をどう防止するかということが大事だと思うんです。そのために通産省では昭和四十年からこういう公害アセスメントの計画を進められておるわけですから、これが充実したものになって公害防止ができたというふうにしてもらいたいと、このように思うんです。ところが、こういうことでは、やはり国民の皆さんの期待を裏切るということになると思うんですね。  それともう一つは、不審な点があるんですが、この公害防止協会が下請に使っている会社に、実例あげますと、公害気象研究所というのがありますね、御存じと思います。この会社は空から調査を行なうわけですけれども、気象状況その他を。ところが、空から調査をしながら、いつの間にか土地を買い占めておると、こういう事実があるんですけれども、これを御存じかどうか。もし御存じないならば調査をしていただきたい、こう思うんです。
  178. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 公害の現実の調査をいたします場合にいろんな実務がございます。その内容につきまして専門の機関を使うという形で進めておるわけでございます。その一環といたしまして、ただいま御指摘の公害気象研究所を拡散気象条件調査等に関しまして使っておるわけでございます。ここが御指摘のように、ゴルフ場に手を出したという御指摘でございますが、実はここの社長が個人で志布志の周辺で土地を買っておりまして、その隣にございますお医者さんと共同でゴルフ場をやるというふうな話が持ち上がっております。そういう問題がございまして、鹿児島県ではたいへんな問題になったということは聞いております。私どものほうも重大な関心がございますので、もしそういうことがほんとうであれば、本来の業務を逸脱したことでもあり、さらに本来の業務がずさんになる懸念もございますので、さっそく調査をいたしまして、現在県のほうが中心になりまして、じきじき知事が、こういう穏当を欠く行為に対しまして強力な指導をいたしまして、社長個人で買った土地は地元の鹿屋市に譲渡するということで話がまとまったように聞いております。
  179. 内田善利

    内田善利君 こういう環境アセスメントというのは国民にとっては大事な問題なんですね。いままでたくさんの公害が摘発されてまいりまして、被害者の救済と同時に、今後は公害を防止しなければならないということから調査が行なわれておるわけですが、そういった調査の機関がこういったことをやっていたんでは国民の信頼を裏切ると、こういうことになると思うのです。これに対しては十分見直しをしていただきたいと、そのように思います。通産大臣、いかがでしょう。
  180. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのようにいたしたいと思います。
  181. 内田善利

    内田善利君 それから大分の大分臨港工業地帯の具体的な問題に入りますが、具体的な今後の立地計画、これはどのようになっておりますか。
  182. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 大野川から東の部分が将来第二期計画になっておりまして、ここは主として造船造機の立地を進める、そういうことで第一期——これは大野川から西でございますが、一号から五号までの埋め立てを含めまして、臨海工業地帯の完成というプランになっておるように聞いております。
  183. 内田善利

    内田善利君 第二期計画の事前調査結果は出ましたか。
  184. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 四十六、七年の調査のときに第二期計画も立地予定企業ということで調査の対象にいたしております。ただ、四十六、七年の調査は旧環境基準でございまして、昨年五月に新環境基準に強化されておりますので、現在第二期計画を前提にいたしました、かつ新環境基準をめどにいたします第三回目の事前調査を実施中でございます。
  185. 内田善利

    内田善利君 運輸省は見えておりますか。——運輸省の港湾計画はどのようになっておりますか。
  186. 鮫島泰佑

    説明員(鮫島泰佑君) ただいまの大分港の臨海工業地帯計画のうち大野川右岸にかかわる部分でございますが、六号地、七号地及び八号地のいわゆる第二期計画につきまして、昭和四十五年八月の港湾審議会の議を経て一応決定されております。その後、六号地のうち大野川右岸の部分につきまして一部変更、昭和四十七年十一月及び四十八年十二月の港湾審議会の議を経て一部変更して現在に至っているわけでございます。
  187. 内田善利

    内田善利君 港湾計画の許可ですね、認可といいますか、許可はどのようにした仕組みでなされますか。
  188. 鮫島泰佑

    説明員(鮫島泰佑君) 港湾法によりまして、運輸大臣は、必要と認める場合にでございますけれども、重要港湾の港湾管理者に港湾の計画の提出を求めることができることになっております。そこで、運輸大臣審査をいたしまして、全国の港湾開発に関する問題であるとか、あるいはその港湾の利用の問題等に関しまして著しく不適当であるというような場合には、港湾管理者に計画の変更を求めるということができるように法律上なっているわけでございます。なお、この運輸大臣が港湾計画を審査するにあたりましては、港湾審議会におはかりをして、その意見を尊重してやるというのが、仕組みと申しますか、やり方になっているわけでございます。
  189. 内田善利

    内田善利君 その場合、許可が出る場合に海流の調査、そういったものをどうしてやらないのですかね。大分は瀬戸内海にも面しておるのですが、ただ漁業権だけで済まされない問題じゃないかと思うのですね。埋め立てをやれば海のかっこうは変わるわけだし、海流の流れ、そういったものも変わるわけだし、そういった事前調査をやった上で私は運輸省が許認可に踏みきるべきである、このように思うんですけれども、どうしてやらないわけですか。
  190. 鮫島泰佑

    説明員(鮫島泰佑君) 先生御指摘のように、著しく潮流等の変化を及ぼすというようなことが予想されますときには当然そのような研究というものをしていかなければいけないかと存じます。ただ、この大分の場合に、昭和四十五年にもともとの計画が決定されまして、その後は一部変更、一部の手直しをやってきたわけでございますけれども、その時点におきまして、この潮流の変化というものは非常に大きな影響を与えるというような考え方が十分でなかった面があるのではないかとは思います。
  191. 内田善利

    内田善利君 それともう一つは、瀬戸内海保全法が成立して十一月二日から施行になったわけですが、この十三条に、知事が認可するにあたっては特別配慮をするということで、いま瀬戸内海の審議会が環境庁で基準をきめているまっ最中なんですね。そういうまっ最中にあるにもかかわらず、ことしの二月二十五日、七号地の拡張部分の埋め立てが許可になった、こういうことですが、これはどういうわけですか。
  192. 鮫島泰佑

    説明員(鮫島泰佑君) ただいまの部分につきましては、昨年の十二月の港湾審議会で港湾計画上の変更が認められたわけでございます。そしてこの二月の埋め立ての免許でございますけれども、これは従来すでに免許を取得しておりました部分の設計の変更というものと、新しく追加の埋め立てというものがあるわけでございますけれども、その両方をあわせて考えますと、埋め立ての面積につきましてはほとんど同じということでございまして、埋め立ての形の変更というような実態であったわけでございます。
  193. 内田善利

    内田善利君 そういうことがどこに書いてあるか知りませんけれども、法律に基づいたらそういうことは言えないのじゃないかと思いますが。もしそういうことであれば、八号地もそういったかっこうで埋め立てができてしまうのじゃないか。そういう拡大解釈では私は非常に危険だと思うのですね。瀬戸内海保全法が成立して、十三条でうたってある以上は、やはり埋め立てのための許可は特別配慮をしてやる、瀬戸内海審議会基準をきめておる、これに従ってやるべきだと、こう思うのですけれどもね。
  194. 鮫島泰佑

    説明員(鮫島泰佑君) ちょっと御説明が足りなかった面があるかと思いますけれども、これはすでに免許されております埋め立て地につきまして企業の工場配置等の計画が具体的になった、それに伴いましていままでの形を変更するという形のものでございまして、先ほど申しましたように全体の面積の変更を伴っているわけではない、逆に環境上の配慮というのは、この際にむしろ強化されていくというような性質のものでございまして、先ほど申しました、その事前にございます港湾計画の変更の場合におきましても、そういうようなことで認められているというものに基づいて行なったものでございます。
  195. 内田善利

    内田善利君 県知事はこう言っているわけですよ。大分を含む五カ所をやったと、五カ所。それは特別措置をとって免許を与えたと、こう言っているわけですが、環境庁、どうなんですか、この点。
  196. 小野寺秀雄

    説明員小野寺秀雄君) 七号地につきましては、先ほどもお話がありましたように、すでに埋め立て免許は受けておるわけでございますので、この点、造船所の緑地面積等の増大に伴いまして埋め立て地の形状が変更されるといったことだろうと思います。埋め立て面積についてはこのたびも変更しない、したがいまして、昨年十二月に開かれた瀬戸内海環境保全審議会において、個々具体の問題として、このケースについては支障がないであろうということで了承されたと聞いております。
  197. 内田善利

    内田善利君 運輸省、どうですか。
  198. 鮫島泰佑

    説明員(鮫島泰佑君) いまの法律の瀬戸内海の特別措置法の関係につきましては、環境庁のお答えのとおりでございます。
  199. 内田善利

    内田善利君 八号地も中断しているわけですが、八号地もそのような措置で埋め立てがなされるようなことはないですね。
  200. 鮫島泰佑

    説明員(鮫島泰佑君) 八号地につきましては、まだ埋め立ての免許がなされておりませんので、当然ただいまの七号地の例とは無関係と申しますか、そういうことはあり得ないことでございます。
  201. 内田善利

    内田善利君 それから埋め立ての免許料ですが、これはどういうわけで企業から取らないわけですか。
  202. 鮫島泰佑

    説明員(鮫島泰佑君) これは起業者が大分県でございます。したがいまして、その権利を取得する者が免許料を支払うということになるかと思います。
  203. 内田善利

    内田善利君 確かに県ではございますけれども、企業の要請によってやるわけですから、当然私はこの免許料を取るべきだと思うのですが、この辺がやっぱり企業べったりの行政だといわれるゆえんじゃないかと思うのですがね。確かに県がやる事業でありますけれども、企業の要請によってこの埋め立て立地は行なわれていくわけですから、こういう点をやっぱりはっきりしないといけないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  204. 鮫島泰佑

    説明員(鮫島泰佑君) 免許料を直接に支払います者は先ほど申し上げましたとおりでございますけれども、県が企業に土地分譲いたしますときに当然分譲の単価等に入ってくるということで、売却の際に処理されるべき問題かと思います。
  205. 内田善利

    内田善利君 結局、この環境アセスメントは、風洞実験あるいは環境庁方針の電算方式等をもとにしてアセスメントができ上がっていくわけですが、私は、どの地域を見ても被害者が出ている、ですから、やはり安全だということを確かめた上で開発をすべきであると、こう思うんです。特に大分の場合はまだ被害者救済指定地域になっておりませんけれども、他の地域に比べて有症率が高い、この辺の解決をしてから開発をすべきであると、このように思いますが、環境庁はこの点どのようにお考えでしょうか。
  206. 小野寺秀雄

    説明員小野寺秀雄君) アセスメントの手法等につきまして非常に未解決といいますか、未知の分野が非常に現在多いのでございます。われわれとしてもその開発に一生懸命努力しておる次第でございます。したがいまして、今後アセスメントをやっていくにつきましても、その時点での学界なりあるいは一応討議を受けた資料等、最高の技術に基づいてアセスメントを包括的にやっていくといったことにならざるを得ないと思います。今後ともそういうことで常に新しいデータで最新の予測手法によりましてアセスメントをするように指導してまいりたい、このように考えております。
  207. 内田善利

    内田善利君 通産大臣、いかがでしょうか、この点について。
  208. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げますように、最近の情勢から見ましても、総合的に各要所要所を押えて、そして患者がふえないようにするということがわれわれの責任であるだろうと思います。そういう面から見ましても、事前のアセスメントというものが非常に重要性を加えてきておりますので、われわれのほうも関係各省と連絡をとってしっかりやっていきたいと思っております。
  209. 内田善利

    内田善利君 水産庁、見えていますか。——私は、漁協合併助成法が昭和四十二年七月二十四日に公布ということになったわけですが、この法律は時限立法なんですね。四十六年に法改正が行なわれて昭和五十二年まで延長されたわけですが、この法律のねらいですね。この法律のねらいと、大分における漁協がまた分裂した、この問題について水産庁はどのように指導され、あるいはどのようにお考えになっているのか、行政指導はどのようになされたのか、お聞きしたいと思います。
  210. 増満二郎

    説明員増満二郎君) 経済が大型化してまいっておりますので、漁協が行なっております経済事業も経済の実態にマッチするように大型化していかなければならぬ、そのために合併を促進するということで水産庁は従来から指導してまいったわけでございます。御指摘の佐賀関の漁協の中に神崎漁協の設立の動きがございまして、そういう動きは、水産庁が従来から指導しております漁協の合併の方向に矛盾すると申しますか、反する動きであるということで、水産庁といたしましては従来から県の当局に対しまして分裂をなるたけ来たさないようにということで鋭意指導してまいったわけでございます。県当局におきましてもそういうことで指導しておったところでございますが、先生御案内のように、水協法の規定、これは水協法だけでなくてほかの協同組合の規定でもそうでございますけれども申請が出ました場合に一定の条件を満たして、その申請が法律的に欠格条件がない限り不認可にできないということがございまして、処分をしないまま二カ月たつと当然成立するということで、県としましてはいろいろ審査をしたところ不認可にすることができないということで、自然的に成立したということで、水産庁としましては非常に遺憾なことではございますけれども、法律の手続としてはやむを得ないといいますか、手続に従って処理されているというふうに考えておる次第でございます。
  211. 内田善利

    内田善利君 この法律に基づいて県は合併を促進し、合併させておきながら、埋め立ての問題が起こったとたんに分割の方向へ進めてきた、このようにいわれておるわけですけれども、県はこのようなことをしてまで埋め立てを強行しようとしていると、こういうことを聞いておりますけれども、やっぱりこういうことに対する行政指導というものはなさなければならないと思いますが、この点はいかがですか。
  212. 増満二郎

    説明員増満二郎君) 私ども県から伺っております報告によりますと、佐賀関の漁協から分離して新たに神崎漁協を設立する、その設立の理由は、合併後五年たったけれども、神崎地区の漁業者というものが少数であり、かつ神崎地区と佐賀関漁協の中のほかの地区とは漁法がいろいろ違っておる、神崎地区はノリとかタコつぼ、刺し網というようなことをやっておりますし、ほかの地区はおもに漁船漁業をやっておる、漁法の違いもありまして佐賀関漁協の中で意見が取り上げられることが少ない、そういったことから分離を決意した、こういうふうに聞いておるわけでございます。先ほど来申し上げましたように、その問題はそうでありますけれども、漁協の合併を促進した経緯から分裂はなるたけ避けるべきじゃないかということで指導をしてきたところ、申請が出まして、その申請が法律的に見ますと不認可とすることができないということで自然成立した、こういうふうに私ども理解しております。
  213. 内田善利

    内田善利君 私は、公害防止のことについてきょうは質問したわけですけれども、結局、環境アセスメントを行なうという立場に立った場合に、やはり被害者がたくさん出ていると、この被害者をどうするかという問題、これと立地開発をどうするかという問題に帰着すると思います。  結局、通産大臣に最後にお聞きしたいと思いますけれども、環境権というものをどのようにお考えになるのか。環境権と環境アセスメントの問題、この辺に私は公害防止のかぎがあろうと、このように思うんですが、この点についてどのようにお考えかお聞きしておきたいと思います。
  214. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 環境権問題につきましては在野でいろんな意見が出ております。公害対策環境保全特別委員会でも何度か討議された問題でございます。直接私ども所掌の役所でございませんので、主として環境庁がそういった問題を取り扱うことになっております。私どもといたしましては、そういった立法論も別途重要ではございますけれども、本日冒頭から内田先生御指摘のように、実態として公害を起こさない、結果として病人を出さないというふうなことがきわめて重要な本質的な問題でございます。そういうところに焦点を合わせて、今後とも事前のアセスメントの完ぺきを期して努力を続けてまいりたいと考えております。
  215. 内田善利

    内田善利君 環境庁はどのようにお考えなのか。それに対して通産大臣の御所見を最後にお伺いしてやめたいと思います。
  216. 小野寺秀雄

    説明員小野寺秀雄君) 私、防止計画課長でございます。ちょっと環境権の問題につきましてお答えできるようなことをいまのところ勉強しておりませんので……。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 環境権という権利が法律的に成立するかどうかは学界でも論争のあるところであり、われわれもにわかに断定するわけにはまいりませんが、いずれにせよ、環境保全を重視して、住民の健康、生活を守るということは非常に重要なことであり、自然保護もまた大事なことでありますから、政府としては、権利の有無にかかわらず、最大限に努力を傾けるべき問題であろうと考えます。
  218. 鮫島泰佑

    説明員(鮫島泰佑君) たいへん恐縮ですが、先ほどお答えで間違っていた点がございましたので、訂正させていただきたいと思います。  公共団体のいたします埋め立ての場合には、大分の場合でございますが、免許料を徴収しないという規定になっておりまして、先ほど私ちょっと漁業補償と混同をしてお答えいたしましたけれども、免許料につきましては、公共団体のする埋め立てにつきましては徴収しないということになっております。訂正させていただきます。
  219. 須藤五郎

    須藤五郎君 通産大臣、きょう私は大体石炭問題にしぼって御質問申し上げたいと思います。  最近の新聞を見ますると、鉄鋼業界が、原料炭の輸入手当てがむずかしいため、減産大策を協議しておると、こういう話が出ておりますが、その実態は一体どうなのか、また通産省にはこの問題でどのような相談があったのか、伺いたいと思います。鉄鋼は、主として原料炭が不足したために減産するということなのか、見通しを聞かしていただきたいと、こう思います。
  220. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) 原料炭につきましては、わが国の主要買い付け先でございますアメリカそれから豪州におきまして非常に大きな変化が出ていることは事実でございます。基本的には、昨年来の産油国の石油供給削減というのが大きな影響を与えているんだと思いますが、こういう事態に対しまして各国がかなり原料炭の買い付けに奔走をしているということがございます。反面、供給面につきましては幾つかのアクシデントがございまして、豪州においては洪水によりまして鉱山設備が被害を受けたというような状態、それからアメリカにおきましてはストライキが幾つかの炭鉱で頻発しておるという事情もございまして、供給面におきまして若干の低下を来たしておるわけでございます。  そこで、わが国鉄鋼業におきましても、実は昨年の石油危機以来、石油消費規制に伴いまして、できるだけ高炉への重油の仕込み量を減少せしめる、そのために原料炭の需要も若干上回ったわけでございます。ところが、先ほど申し上げましたような、世界的な原料炭の需給状況に対しまして、入手の状況につきまして従来ほど円滑には進んでない実情でございまして、このために在庫量について見ましても昨年秋、大体一・三カ月分程度の在庫量を持っていたと思いますが、最近におきましては、これは〇・八カ月というぐあいにできている状態でございます。したがいまして、長期的に見ますと、原料炭の需給についてわが国としても非常に大きな関心を持って対処する必要があるかと思いますが、ただ、当面四十九年度の第一四半期について見ますと、原料炭につきましては既契約の分はほぼ入手確保の見通しが出ておりますので、第一四半期につきまして、特に原料炭不足のために鉄鋼の減産をとらなければならないということにはならないかと思います。いずれにいたしましても、原料炭事情につきましては、私どもとしては非常に大きな関心を持っておりますので、今後の買い付け契約等につきまして鉄鋼各社から少し詳細な事情を聴取する必要があると考えまして、現在それを実行中でございます。
  221. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、通産省考え方では、原料炭は大体確保できていると、今日。だから鉄鋼の減産も何も考えていないと、従来どおりやられるという見通しなんですか。そうなりますと、各新聞社が書いているのとはだいぶ感じが違うわけなんですが、そこをもう一ぺん伺っておきたいと思います。
  222. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) 第一四半期につきましては、契約量は大体確保できるんではないかと考えておりますが、ただ、その後につきまして、つまり四十九年度全体につきましてはいろいろ心配もございますので、これは注意深く見守っていく必要があるかと考えております。
  223. 須藤五郎

    須藤五郎君 第一四半期は大体確保できたと、だからやっていけるだろうと、しかし四十九年度全体として見た場合、その状態がずっと維持できるのかどうか、そこには非常にむずかしい問題が私はあると思うんですね、国際的に。そうすると、いま第一四半期だけが確保できたといって安心しているわけにはいけないんですが、四十九年度の見込みとしてどういう見通しを立てているのか、そこを伺っておきたいと思うんです。
  224. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) 鉄鋼の四十九年度全体の生産見通しとしましては、需要等の関係考えますと、ほぼ四十八年度並みの一億二千万トンの生産が必要とするんではないかと考えておりますが、これに必要な原料炭の確保の見通しにつきましては、実は原料炭事情が先ほども申しましたように、非常に需要が流動的でございますので、現在のところ四十九年度全体を見通しての確保の可能性についてはまだ明確な見通しを持っていないわけでございます。いずれにしても、各社からその需要につきまして現在事情を聴取いたしておりますので、その結果を待って必要な措置を講ずることになると考えます。
  225. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、通産省としては第一四半期だけは見通しは立ったが、四十九年度全体としては見通しが立ってないと、こういうことでございますね、いまの話ですと。
  226. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) 四十九年度全体につきましては、現在の世界的な原料炭の需給事情からしますと、いろいろ心配な点もあると、そこら辺につきまして詳細に把握する必要があると考えておるわけでございます。
  227. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、現在の状態では正確に把握してないと、したがって四十九年度の見通しはここではっきり言えないと、こういうことだと思いますが、どうですか。そこをはっきり言ってください。
  228. 飯塚史郎

    政府委員(飯塚史郎君) そのとおりでございます。
  229. 須藤五郎

    須藤五郎君 政府はこれまで、鉄は国家なりと、こういう考え方で基幹産業を国策として援助していたと私は思っております。しかし資源は外国に依存し、アメリカ、ソ連に次ぐ生産を保証し、いわゆる高度経済成長政策をとり、国内資源である石炭を放棄する政策をとってきたために、このような見通しの立たないというような破綻が私は起こってきておるのだと、こういうふうに考えざるを得ません。まさに石油と同じ危機的な状況政府はみずからつくってきたわけではないでしょうか。  先日、石油危機がまいりましたときにメジャーの問題が大きく取り上げられました。私たちは国会にメジャーを証人として喚問をして、そうして調べあげようと、この問題を解決しないと、日本のエネルギー問題が先の見通しが立たないと思いましたから、私たちはそのことを強く国会て要求しましたが、自民党はわれわれの要求をいれず、反対して、メジャーを証人として喚問することに反対してしまったわけなんですが、メジャーは石油のみならず、聞くところによりますと、大半の石炭すらも押えておるということがいわれておりますし、またメジャーは、エネルギー全般について同じように握っておるということもいわれております。原子力の開発問題も、メジャーがほとんど握っているといわれておるのでございますが、こういう状態で政府は今後鉄鋼を従来どおりの維持がやっていけるのかどうか、このエネルギー全般について、どういう見通しを立てておるのか、私は、政府は早急にわが国の石炭産業の振興対策をはっきりととるべきであると、こういうように思っておりますが、これは大臣考えを私は伺っておきたいと思うのです。
  230. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 電力、鉄鋼というようなものは日本の基礎産業の尤たるものでありまして、その資源の供給というようなものは日本の産業に対しても非常に重要な要素を占めております。それらが石油の危機以来、国際経済の変動が起きまして、いろいろな障害も出つつあるようでございますけれども、われわれとしては長期的、安定的供給を得るように今後も努力をいたしまして、日本の鉄鋼産業、ひいては日本の機械、そのほかの諸産業に重大な支障を来たさないように努力していきたいと思っております。
  231. 須藤五郎

    須藤五郎君 この前の商工委員会だったと思うのですが、メジャーの問題、石油の問題について、私が大臣に質問いたしました。そのときにメジャーがかって気ままなことをすることは大臣もけしからぬという意味の御意見があったように思うのですが、この石油問題でも私は実際はもっとき然たる態度を政府はとっていかなければ、日本のこのエネルギー問題というものは、私は石油一つ見ても解決しないと思うのですが、そこへ持ってきて石炭も握られ、エネルギーを全般的にメジャーに握られておるということになりますると、いまこそ私は、この石炭問題につきましても、もっともっとはっきりとした確固たる態度を政府がとっていかないとたいへんなことになるという心配があります。そこで大臣に、この重要なエネルギー問題についてどういう態度で今後臨んでいくのかというその腹の中を私は伺っておきたいと思うんですが、どうでしょうか。
  232. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は前から須藤先生から御質問がありまして、石油にからんでお答えしたとおりでございますが、やはり石油に偏重した、依存度を高めたエネルギーのバランスを逐次転換しながら、しかも多方面にかつ質的に変化を与えながら日本のエネルギー供給の基礎を、セキュリティーということも十分考えまして、政策を打っていかなければならぬと思っております。いままでは石油に過度に依存いたしましたが、原子力あるいは太陽熱あるいは石炭あるいはガス、そういう諸般のエネルギーも開発しつつ総合的に進めていきたいと思います。現在エネルギー調査会に諮問をしておりますから、その答申が出てまいりましたら、それを参考にして政策をきめ、進めていきたいと思っております。
  233. 須藤五郎

    須藤五郎君 通産省は石炭鉱業審議会には総合エネルギー調査会の検討を待ってあらためて諮問する、石炭鉱業審議会への諮問は早くても六月の下旬だと、こういうふうに伝えられておると思いますが、間違いございませんか。だから、早くも委員の一部からは、石炭に関する限り抜本対策は期待できそうにもないという感触さえ伝えられている現状だと思います。事務局である通産省とましての石炭資源開発についての検討はどこまで進んでいるのか、もっと具体的に私は示していただきたいと思います。
  234. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) 国内の石炭の問題でございますけれども、特に国内炭はわが国の貴重な国産資源でございますので、その位置づけにつきましては、ただいま大臣から御答弁ありましたように、総合エネルギー調査会で各種エネルギー全体の中での検討ということでいわゆるエネルギーの安全保障、エネルギー源の多様化等の見地から積極的にその位置づけを行なってもらうということでいま諮問をしている段階でございます。その中間報告が一応六月中には出していただけるということで、いま作業を進めておりますけれども、片一方、石炭鉱業審議会のほうではすでに昨年の十二月七日に中間答申をいただきましてから一応開いておりませんでしたので、実は今月の一日の日に総合部会を開きまして、エネルギー調査会と並行し審議していくということで、当然エネルギー調査会の中で石炭の位置づけをしていただく場合、審議会の総合部会でもいわゆるボールのやりとりと申しますか、こちらのほうの意見も調査会のほうに入れて位置づけをしていただくということで進めているような次第でございます。なお、中間報告が出ました場合、石炭鉱業審議会としましてはその報告をベースにいたしまして、今後のいわゆる石炭の新政策というものをどういうふうに持っていくかということで新たに石炭鉱業審議会のほうに諮問をいたし、いままでの第五次政策というようなものではなくして、ほんとうの抜本的な石炭政策を確立したいということで、事務局といたしましては、現在はエネルギー調査会と並行しながら石炭鉱業審議会の中の総合部会でいろいろ審議いただいているというのが実態でございます。
  235. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると現在のところ通産省自体にはまだ具体的な案ができ上がっていないと、こういうふうに理解してよろしいのか。もしも具体的な案があるならばここで私は示してほしいと思うんですが、審議会から要求されれば案は出すということなのか、まだ案がないということなのか、そこをどういうふうに理解しておったらいいんでしょうか。
  236. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) 案があるとかないとかじゃございませんで、いわゆる総合エネルギー調査会の中での石炭の位置づけということをいただきますと、それまでには、ただいまも申し上げましたように石炭鉱業審議会も並行して開くということでございまするので、当然中間報告が出ます、エネルギー調査会の中間報告が出ますまでには石炭鉱業の今後の方向性というものは出てくるものと思います。その方向性を受けまして、先ほども申し上げましたようにエネルギー調査会の中で、石炭が輸入あるいは国産を含め将来位置づけとして何千万トンというようなものが出た場合、それを受けた新たな石炭政策として審議会のほうに諮問し、それを完遂するためにどういうような政策をとっていくかということで引き続き諮問を受けた石炭鉱業審議会が審議していくということでございます。現在案があるとかないとかという問題じゃございませんで、方向としましてはただいま申し上げたような方向で進みたいということでございます。
  237. 須藤五郎

    須藤五郎君 新鉱開発の問題をちょっと質問いたしますが、新鉱開発は北炭夕張や天北などすでにめどのついているところもあり、今後も設定は可能だと考えます。しかし、いま国民が注目しているもう一つの焦点は何かと申しますならば、合理化事業団が現在持っておるところの六十億トンといわれるものの再開発の問題だと思います。一体この合理化事業団が持っておる六十億トンの再開発を、これをだれが再開発するのか、ここが私は問題だと思うのですね。私はこれは公的機関が進めるべきことであると思いますが、通産省の御意見を伺っておきたい、これが一つですね。また採掘期待量を経済ベースだけを基準にせずに技術可能量で見ればどのぐらいあると見られるのか、そこも聞いておきたいと思います。
  238. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) 国内炭の再開発の問題でございますけれども、ただいま先生御指摘のように、事業団が買い上げました、いわゆるいま抹消になっております炭鉱の再開発という問題につきましては、事業団が手持ち資料が多いという一つの当然——当時買い上げたのが事業団でございますのでいろいろな資料を持っておりますので、事業団に検討してもらっているところでございます。この審議の過程でいわゆる再開発についての結論を出してもらうということでございますけれども、当然その前には鉱害上の問題もございますし保安上の問題もございます。そういう点も考慮いたし、なお経済性というものも一応加味しなくちゃならぬ問題ではなかろうかと思います。たとえば石炭がいまかりにトン一万円である場合、十万円とか二十万円とかというような石炭を出してもこれはまた経済的に問題もあろうことと思いますので、ある程度経済性というものも加味しなくちゃならぬということでいま作業を進めているんでございまして、実は第五次策のときに石炭部といたしまして炭量計算いたしましたのが、当時——既存炭鉱の生きている山だけでございますけれども、当時の生産原価平均四千五百円でございますけれども、当時九千円までで掘れる炭は幾らあるのかということで計算したのが五億九千万トンというようなことになっております。現在は経済性もだいぶ違ってきておりますので、一応一万五千円までの生産原価で掘れる炭量は幾らか、あるいは一万二千円で掘れる炭量は幾らあるか、あるいは一万円で掘れる炭量は幾らかというようなことで現有炭鉱については各企業に、新鉱については、これは新地域でございますけれども、通産局を通じ、なお消滅炭鉱については先ほどから申し上げますように同じような考えで合理化事業団のほうに試算さしているというのが現在の作業の進捗状況でございます。
  239. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、いわゆる経済ベース九千円ですね。トン九千円でやれば五億九千万トン掘れると、こういうことですね。そうすると、それが石油の値段と比べての私はトン数だろうと思うんですが、石油の値段がずっといま高くなってきていますね。石油の値段が倍の値段になれば、そうすればこの経済ベースで掘れるトン数もうんと増加すると、倍になるということが言えると思うんですね、そうでしょう。それがもしも一万五千円とするならばどれだけ掘れるのか、一万二千円ならばどれだけ掘れるのか、そこをちょっと聞かしてください。
  240. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) ただいま申し上げましたように、一万五千円とか一万二千円、ある程度のベースを置いて掘れる炭量が幾らあるかというのは作業中でございまして、まだ当時の五億九千万トンをいじっておるのではございませんで、いろいろ先ほど先生から御指摘のございました六十億トン、これは事業団が買い上げた炭量でございまして、一応炭たけから申し上げますと三十センチとか、おそらく掘れないような炭も評価の対象に入っておるというのが六十二億トンでございまして、そういう炭は別としましても、一応ただいま申し上げましたように八千円なり一万円なり一万五千円で掘れるような炭というのが幾らあるかというのを現在作業中でございます。なお同じような作業を現有鉱については各企業にやらしておりますし、新鉱関係につきましては地方通産局を通じてやらしておるということで、まだその結果はいただいておりません。
  241. 須藤五郎

    須藤五郎君 非常に作業がおくれているということを私はここで申し上げておかなきゃならぬと思うんですがね。もっと私は急いでそういう方向をはっきりとした確信のある作業をしておく必要があると思うんです。いまあなたがかりそめにも一万五千円、一万二千円という価格を出されましたがね。そうすると、その一万五千円ぐらいは出さなきゃならぬと、それでないと石炭は掘れないと、一万二千円までは出そうかというような、そういう考え、金に対する考えは持っておると、しかし、そうなった暁にどれだけの炭が出るかということはいま作業中だと、こういうことなんですか。
  242. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) ただいま先生のおっしゃいますように、五次策のときは当時のコストが四千五百円でございましたので、九千円までで掘れる炭量という一応の線を引っぱっただけでございます。今度も、現在は大体七千何百円の生産コストになっておりますけれども、一応倍にいたしまして一万五千円で掘れる炭は幾らあるかと、あるいはその中間である一万二千円では幾らであるかとか、そういう作業をやらしているのでございまして、これには特に現有鉱はさほど問題はございませんけれども、一回閉山いたしました炭量につきましては保安上の問題がとても大きくのしかかってまいりますことと、鉱害問題というのもなおざりにできませんので、その点も十分考慮して炭量的に幾らあるものかというのを現在作業しておりますので、急がしてはやらしているつもりでございますけれども、まだ成案を得ていないというのが現在の実情でございます。
  243. 須藤五郎

    須藤五郎君 大体政府考え方のアウトラインはいまの答えでわかってきましたが、要するに将来一万二千円にすればどれだけ掘れるか、一万五千円にしたらどれだけ掘れるかということをいま計算中だと、そういうふうに理解しておきましょう。  そこで、それは経済ベースの問題でございますが、いわゆる技術可能量ですね、掘ることができるという可能量からいったら一体日本には炭はどれだけ掘れる可能性があるんですか。
  244. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) 一応昭和三十一年度の埋炭調査によりますと二百二億トンというのが国内の石炭資源の量であるというふうにいわれておりますし、なお可採炭量として出しましたのが三十二億トンというような数字になっておるのでございます。またそれを、先ほども申し上げますように、ある程度経済性というものを加味してやった場合幾らになるかというのがいまの作業でございまして、前の五次策のときは現有鉱だけで見れば五億九千万トンという数字を出したわけでございます。
  245. 須藤五郎

    須藤五郎君 鉄鋼向けの原料炭は外国から輸入するものはほとんどが現在四十ドル、トン当たり一万一千円から一万二千円ぐらいに今日なっておるわけですね。この間契約したのが三十九ドル半か、何かそういうのが最近の契約だったということも私は耳にはしておるんですけれども、大体アメリカからのいろいろの報告や国際市場のあれを見ましても四十ドル以下では原料炭はもう手に入らなくなってきておる、こういう情勢だと思うんですね。ところが、外国からの炭がそんなに高くなってきておるのに現在国内炭は七千円台で取引されておる、こういうふうに聞いております。電力用炭も重油や原油に比べてあまりにも低くきめられており、このことが増産に直結する賃金や労働力確保、保安の手抜きによる犠牲者の多発などで問題が起こっておると私は考えます。私は石炭鉱業は、これまでの経過から見ましても一定の公的企業化への道を必要とすると思いますが、もしかりにいまのような私企業の体制でいくとすれば、ことしの炭価決定はこれらの問題を基本的に解決するような水準に持っていくべきであると思いますが、その点はどういうふうにお考えになるか。たとえばトン当たり四千円台ぐらいの引き上げをしまして外国から買う値段に見合うような値段で買うということです。鉄鋼・電力業界をそういう値段で説得できるかどうか、石炭業界はどうなるのか、こういう点を私は伺っておきたいと思います。
  246. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) ただいま先生から御指摘のありました四十ドルというような石炭でございますけれども、おそらくこれは国内で算出しておりませぬ強粘結炭の輸入価格ではないかと思います。国内は弱粘炭でございますんで、弱粘結炭は現在約三十ドルぐらいの価格で鉄鋼業界と豪州あるいは米国あるいはカナダ等々の炭価交渉が始まっているんではなかろうかというふうに察しております。かりに三十ドル近い金といたしますと八千七百円というような金になるわけでございますけれども、現在、先生御指摘のように弱粘結炭の国内販売価格は七千四、五百円でございます。すでに外国炭が値上がりになって、もし三十ドル前後のこれで契約されるとしますと、国内よりも外炭のほうが高いということになりますので、当然値上げをしていただくということになろうかと思います。ただし四十八年度におきましては、いま申し上げます三十ドルに当たります弱粘炭は約五千四、五百円でございまして、国内のほうが相当高かったというのが事実でございます。そういう点で輸入炭の弱粘結炭、いわゆる原料炭に対しましてはある程度値上げをしていただけるものということで期待いたしております。  なお、石油との関係でございますけれども石油はC重油と一般炭が競合するわけでございますけれども、大体C重油の価格から見ますと、カロリー当たりでは二円というような価格になるんじゃなかろうかと思います。これもサルファ分の多い少ないによりまして相当の値開きがございますけれども、一応カロリー当たり二円ということでいきますと、現在の石炭価格が、これは四十八年度でございますけれども電力向けに対しましては約七十銭近いカロリー当たりの価格でございます。ただし石炭におきましては水分の問題もございますし、なお取り扱い上のいわゆる繁雑さと申しますか、石炭にはデメリットがございます。そういう点も計算いたしますと、ある程度石炭は七十銭近いやつが八十数銭というような金額になるんじゃなかろうかと思いますけれども、いずれにしましても現在の石油価格から見ますと相当な値開きがあるというのは事実でございますので、その点、石炭業界あるいは石炭を使用していただける電力関係等の間でただいま値上げの交渉をしておられるということを聞き及んでおるような次第でございます。
  247. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、二、三年ほど前の石炭特別委員会の席上でも——椎名通産大臣でした、そのときは。日本の石炭産業というものは唯一の地下資源だから大切にしなきゃならぬと、そのためには何が重要かといえば、やはり炭鉱労働者の保安の問題、生活の問題それが重要ですよと、もしもこれが維持できぬ、守れなかったならば、日本の石炭産業、幾らあなたたちが掘ろうと思っても必ず労働力の面から破綻を来たして石炭が掘れなくなってしまうのですよと、そう言って私は四つほどの要求を椎名大臣に出しました。椎名さんも大体私の要求を認めたわけなんですが、その後もなお閉山になる山ほど保安状態が悪くなって死者がたくさん出ると、災害が出ると、こういうことで私はとても日本の石炭産業がいまの状態では守っていけないと思うんですね。なぜ守っていけないのかといえば、いま申しますように日本の石炭が安いということも一つだと思うんですね。だから、外国から買う石炭よりも日本の石炭を安くたたいて、そして石炭山を苦しめるというようなこともおかしいことだと思う。それがすなわち労働者に反映して労働条件が低下する、保安が悪くなる、それで炭鉱の災害が多くなると、こういうことになるんですから、ですから、その点をよく考えていかないと、日本の唯一の地下資源である、われわれが大切にしていかなきゃならぬその石炭すらも掘れなくなっちまうということが起こりかねないわけですね。そこで通産大臣に、この点でほんとに労働者を守るという立場に立って考えて、どういう対策を具体的に立てていらっしゃるのか、その点を私は大臣に一言伺っておきたいと思うんです。
  248. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大きな変化にかんがみて、総合エネルギー対策を確立し、その中における石炭の分野というものを確立し、そして石炭政策をこの石油高騰という時局に合うように拡充発展していくということが大切だと思います。
  249. 須藤五郎

    須藤五郎君 先ほど申しましたように、メジャーに石油はもちろんのこと石炭も原子力もあらゆるエネルギーをしっかりともう握られておる、要するにメジャーというのはエネルギーメジャーですね、実際。そういう状態で、日本としてはやはり腹をきめてメジャーと戦う姿勢も必要なれば、国内的な問題も、労働者がちゃんと喜んで働けるような体制、そういうことを考えていかないと私はたいへんなことになってくるという考えなんです。だからここで民族主義者をもって自認する中曽根大臣は大いにはっきりとした態度を私は打ち出していただきたいということを私の意見として述べて、この問題は次に移りたいと思いますが、大臣どうですか。
  250. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) しかと承りました。大いにやります。
  251. 須藤五郎

    須藤五郎君 承るだけじゃなしに、しっかりとやらなきゃいかぬと思いますね。
  252. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大いにやりますといま申し上げたのです。
  253. 須藤五郎

    須藤五郎君 次に鉱害復旧対策及び産炭地振興対策について伺いたいと思います。  政府は四十七年に臨時石炭鉱害復旧法を十年延長しました。残存鉱害を一千七百億円と見積もり基本計画をつくりました。しかし当時、法律の期限延長はともかく、この残量見積もりは私は少し低過ぎたと思いますね。たとえば福岡県だけでも三千億円は必要だという強い意見がその当時あったものでございます。今日の異常な物価高は個々の作業計画に大きな狂いが生じておりまして、建設省では一たん契約したものでも二五−三〇%もの契約の更新を事実上認めざるを得なくなっておるのが現状ではありませんか。この基本計画を大幅に改定しなければならないと思います。単年度ごとのあるいは工事ごとの積み重ねだけではとうてい復旧計画は達成できません。政府にこの計画の改定の意思があるかどうか、これを伺っておきたいと思います。
  254. 篠島義明

    説明員(篠島義明君) 結論から申しますと、現在長期計画を改定する気持ちはわれわれとしては持っておりません。確かに先生おっしゃいますように、最近の工事費の値上がりで復旧計画の進捗状況に若干問題が出ておりますが、十年間のうちに完全に処理をすると、それもたとえば家屋のような問題については、できるだけ前半に処理をするという基本的な姿勢については今後もしかるべく予算措置を講じながらやっていけるというめどを事務局としては持っております。
  255. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは事実認識があんまり私無視していると思うんです、事実、現状を。あのときに一千七百億円見積もり出されたんですよ。そのときすでに福岡県だけでも三千億が必要だという声があったわけですよ。その後物価がどんどん上がってきたでしょう。だから建設省でも所期の目的は達せられないわけですよ。二五%−三〇%もの契約の更新が事実上認めざるを得ないということになっておるじゃないですか。それは事実認めるでしょう。どうです、認めるんですか、その事実は。
  256. 篠島義明

    説明員(篠島義明君) 千七百億という数字はこれは四十七年度価格でございまして、したがって、現在の時点価格で換算いたしますと、その後の鉱害処理料を差し引きましても名目ベースでは千八百億をこえる鉱害量になっておるというふうにわれわれは理解をしております。
  257. 須藤五郎

    須藤五郎君 そういう物価の値上がりやいろいろなことを認めながら基本的な数字を改定しようとはしない、このままだというんでは、やはり通産省はこの鉱害対策をサボっておると言われてもしかたがありませんよ、そういう態度では。そういうことでは今後の石炭対策への影響が来るんですよ。大臣、こういう態度で今後石炭問題がスムーズに解決していくというふうに大臣はお考えでしょうか、どうでしょうか。
  258. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 鉱害対策はもとより重要でありますが、これはある程度計画的に進める必要があります。したがって計画進行中にこれを変えるということでは、いままでの計画達成に支障を来たすということもあります。ですから変えること自体が必ずしもいいということにはつながらない場合もあります。しかし石炭政策を拡大発展させていくという現在の時点に立ってみると、鉱害政策についてもわれわれは重点を入れてさらに発展さしていく必要があると思っております。しかし、それは必ずしもいままでの計画をいますぐ改正するとかいうことに必ずしもつながらないので、いろいろ毎年度の予算の獲得その他においても努力していけばやれることも多々あると思っております。
  259. 須藤五郎

    須藤五郎君 はなはだ消極的な御答弁のように私は承りましたが、一つの例として聞きますが、大臣ね、福岡県の中間市——ちゅうかん市と書いてですね、なかま市と読むんだろうと思いますが、四十九年度の復旧計画は確定しましたか、どうでしょうか。
  260. 篠島義明

    説明員(篠島義明君) 四十九年度の具体的な予算の要求は現在まだやっておるわけでございまして、したがって予算案が成立したあとでそれをどうするかということになるわけですが、事務的にはいろいろ検討を進めておりますけれども、まだ具体的な確定した数字にはなっておりません。
  261. 須藤五郎

    須藤五郎君 まだ具体的にはきまっていないということですね。私の聞くところによりますと、この中間市の場合、復旧進捗率はなお五〇%にも達していないのですよ、半分にもいっていない。とりわけ家屋や公共施設、農地の復旧は非常に重大なのですよ。それでテンポを上げる必要があると思いますが、このままほおっておいていいというふうに政府はお考えになるんですか、どうですか。
  262. 篠島義明

    説明員(篠島義明君) 中間市のみならず、非常にまあわれわれとして被害者の方には気の毒だと思うわけですが、先ほどの四十七年度の千七百億という数字はすでに発生しておる鉱害でございまして、手をつければつけられる状態になっておるわけでございます。しかしながらいろいろな問題がございまして、政府としては四十七年度から十年間で処理をするということで二年−四十七年度、四十八年度の二年間すでに経過したわけでございますが、あと八年間で処理するという計画でやる以上、かなりの長い間待っていただかなければならない被害者の方が多くなるのでございます。で、われわれとしてもそういう意味でできるだけ早期に処理していきたいと考えております。中間市については数字的には具体的には私承知しておりませんが、いろいろ市にやってもらっておるというような観点も考えて、今後具体的にできるだけ実情に合った数字処理していくように努力したいと思っています。
  263. 須藤五郎

    須藤五郎君 この問題はもっと時間をかけて議論しなければなりませんが、いままでの答弁ですと、どうも鉱害対策、政府の熱意は非常に私は薄いようにしか受け取れない。おそらくあなたの答弁を中間市の人が聞いたら失望するだろうと思うんです。私はこの機会にもう少し積極的な意見を述べてもらって、そして鉱害地の方々に安心をしていただきたいと思って、わざわざこういう質問をしておるのにもかかわらず、そういう消極的な答弁じゃ私は困ると思うんですね。農地や農用施設などで計画としては工事が完了したとされているところでも、工事が総合的に進められていなかったために、でこぼこ、洪水となってあふれたり家屋が水びたしになるなどの例があとを断っておりません。これは皆さんお調べになったらよくわかると思うんです。これは臨鉱法にこうした所期の復旧目的を達成しなかった場合の再復旧工事が規定されていないためであります。農用地の工事などの検査を農林省が追跡して確認しているにしては無責任だと言われてもしかたがないと思います。これを何らかの方法で改善すべきではないかと思いますが、具体策を示していただきたいと思います。
  264. 篠島義明

    説明員(篠島義明君) いまおっしゃいました再復旧問題については、確かに現行法では、一応復旧が終わって検査が完了しますと、一定の期間を経過したあとでは鉱害債務を消滅するということになりまして臨鉱法の対象に取り上げられないような仕組みになっております。で、現実に復旧が終わったあと、いろいろな障害が生じておるケースがございまして、そのうち再鉱害ということで新しい掘採に伴う新しい鉱害として認められるものについては、これは現在の臨鉱法でやっておりますが、そうでなくて再鉱害と認められない、しかしながら効用が阻害されておるというものにつきましては今後どう処置していくか、現在の臨鉱法では対象としておりませんので、われわれもいろいろ実態を調査しながら検討してまいりたいと考えています。
  265. 須藤五郎

    須藤五郎君 通産省の方ね、もう少し答弁なさるときには胸を張ってりっぱな答弁ができるようにひとつ私は考えて言っていただきたいと思います。あなたの答弁聞いていると、何かぼそぼそものを言っておってどうも確信のないようなふうに聞こえますから、もう少しはっきりとものを言ってくださいね。  それでは、もう時間も迫ってきておりますから、あと二、三問、ボタ山の処理について私は聞いてまいりたいと思います。  九州の産炭地には八百十数個のボタ山が散在しておりまして、この面積は二千万平方メートルにものぼっております。事実上利用されないまま放置されておるわけです。しかも、少なくとも百に近いボタ山は危険なばかりでなく、河川への流出とか農用水域の妨害になるとか鉱害源となっております。緊急に対策が必要で、これは撤去しなければならないと思いますが、政府はいまどのような対策をとるのか、具体的に聞かしていただきたい。
  266. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 先生御指摘のとおり、ボタ山は全国に約千三百、そのうち大部分が筑豊にございます。これに対しましては従前からボタ山防災工事費補助金といった制度を適用しております。もちろん鉱業権者のおるものにつきましては鉱山保安法の体系に組み入れまして鉱業権者にそれを実施させております。いま申しました補助金対象と申しますのは鉱業権者が不明なるものといったものでございます。そういったものに対しましてはもうすでにやっておりますが、特に本年度−四十九年度からはボタ山の補助金制度を拡大いたしまして、従前の四十八年度の予算二億四千万をことしは四億の予算で片づけていくということにいたしたいと思います。もちろんボタ山は相当多数にございます。この制度ばかりでは片づかない面もございますので、これは長期的にはほかのたとえば鉱害の復旧あるいは産炭地の振興といったような面とかみ合わせて検討していきたい、こういうように考えております。
  267. 須藤五郎

    須藤五郎君 事例を申しますが、佐賀県にこういう事例があります。杵島郡大町町では、四十七年七月の集中豪雨で三坑硬山のボタが流出しまして、小通り地区の農地約十ヘクタールが被害を受けました。御存じだろうと思います。これについて国の交付金は四十七年度は幾らかありましたが、被害はその後の豪雨などで継続しておるわけですね。ところが、四十八年度は全く交付金がありませんでした、これに対して。現在に至っても復旧はなされないままに放置されておるわけでございます。このような場合政府はどう考えていらっしゃるのか、新たに交付金を出すのかどうか、考え方を伺っておきたいと思います。
  268. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 杵島炭鉱のボタ山については四十七年度御指摘のように流出がございました。四十八年度につきましてはこれが崩壊防止の工事のための補助金制度を使って工事を実施いたしておりまして、金額といたしましては四十八年度におきまして……
  269. 須藤五郎

    須藤五郎君 四十八年度交付金があったんですか。
  270. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 出しております。工事金額は約七千五百万でございますので五千万を、私どもの補助金を佐賀県に交付し工事をいたしております。さらに十二月に地元の要請で、ことしの豪雨に備えましてまだ非常工事が要るということもございましたので、特に財政当局にお願いいたしまして、二千万円を新たに追加いたしまして、工事をもう大体完了していると思いますが、そういう段階でございます。
  271. 須藤五郎

    須藤五郎君 そういうふうに処理がされていけばけっこうだと思いますが、私は四十八年度交付金がなかったと聞いておったものですからいま質問したわけで、あったわけですね。それじゃ、あったならばこの質問はそれでやめましょう。  最後の質問になるんですが、この問題は鉱害対策から見ましても、産炭地の住民本位の土地利用という立場からいいましても、早急な対策が必要だと考えます。このような膨大な量のボタ山の処理には臨鉱法の復旧対策に繰り込んで臨むか、全く新しい土地利用を目的とした立法によるしかないのではないかと私は思いますが、大臣政府はどのような対策を持っているのか、あるいはどのような検討をされているのか、大臣から最後の御意見を伺っておきたいと思います。
  272. 高木俊介

    政府委員(高木俊介君) 放置ボタ山は、動産であるボタというものと不動産であるボタ山の敷地のいわゆる所有権等権利関係が複雑でございまして、いま先生のおっしゃるような新しい策を進める上で立法措置を要するかいなかというようなことは慎重に検討しなくちゃならぬ問題がございます。まあ当面は権者等の協力を得まして、いわゆる現行の補助金制度の拡充あるいは土地造成事業、鉱害復旧事業あるいは道路、鉄道等の公共事業と関連させ可能な限りボタ山を排除するという施策を進めていったほうがいいんではないかというふうに現在は考えております。
  273. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ボタ山処理の問題は商工委員会におきましても何回か御質問を受けたわけでございますが、雨季を次第に迎えるにあたりまして、やはり至急に対策を充実さして心配のないように努力していきたいと思います。
  274. 竹田四郎

    竹田四郎君 通産大臣にお伺いしたいわけですが、三月の卸売り物価の騰勢が鈍化する、あるいはまた消費者物価、明確に出ておりませんけれども、これも大体幾らか騰勢が鈍化しようという情勢でありまして、まあ一般的には総需要抑制政策がだいぶ効果を発揮してきたと、こういうふうにいわれているわけです。こういう情勢の中で最近の経済関係閣僚が一斉にいろいろな発言を実はしているわけですね。あなたもたしかもう日本経済危機は脱したんだというようなこともおっしゃっていたし、最近においてはまた、懐妊期間の長い民間設備投資についてはこれはゆるめておこうというようなことも新聞に書いてあったわけですし、内田経済企画庁長官も、電力やあるいは私鉄運賃、こうしたものの値上げはやむを得ないというようなことも言っているわけでありますけれども電力値上げも大体四月から五月というふうに一般的にいわれている、まあこれもかなりの値上がりがある、こういうことでありますが、通産省石油危機対策として基礎物資あるいは日常生活物資について一応の価格凍結という措置はとっておりますけれども、しかし、これも値上げについての事前届け出承認制ですか、こうした形であくまでも凍結するという形になる、値上げの道理が一応わかるということになれば、これは値上げを認めていくというようなことになるだろう、こう思いますけれども、しかし石油電力、まあ二大エネルギーでありますけれども、この値上げということは当然いろんな基礎物資にはね返っていくということは当然考えられることでありますし、それは同時に一般消費者物価にまたはね返っていくというようなことでありますけれども、どうも最近そういう点で経済関係閣僚がもう物価問題は済んだんだというようなことで、再び公共料金を中心とする値上げというような発言が多いわけでありますけれども通産大臣は実際これを一体どう考えるのか、秋以降あるいは夏以降におけるところの再び物価の高騰というようなものが起きるんではない、だろうかという心配というのは、一般国民持っているわけであります。その辺のお考え方はどうなんですか。
  275. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆる狂乱物価というものはおさまったと思います。したがって物価問題は第一段階は終わった、これから石油価格引き上げ等をスタートにした新しい均衡水準をつくっていく、そういう第二段階の物価問題に入ってきた、その場合に、石油についていろいろ目張りをしました諸般の物価を抑制していくという政策はあくまで当分は堅持していかなきゃなりませんし、それから総需要の抑制ということも引き続いてやる必要があります。けさの新聞に民間設備投資の調査が出ておりまして、通産省はゆるめる云々という記事が出ておりましたが、そういうことをまだ私は言った覚えはございません。私らの考えはいままで申し述べてきたとおりであります。
  276. 竹田四郎

    竹田四郎君 しかし、いずれにしても石油はそれじゃ上がったし、電力もこれから上がるということになれば、基礎物資、これ通産省関係四十五品目ですか、こういうものもそういつまでも私は凍結をしておくということはできないだろうと思います。いつかは上げざるを得ないという事態に追い込まれる可能性が非常に強いと思います。これはいつまで凍結しておく、いつになったら凍結を解除するということは、いまの段階でおそらくそういう返事はできないだろうと思いますけれども、まあ上がってくるということはほぼ確定的だと思うんです。それに対して私は経済関係閣僚の発言というのはどうも少し軽率ではないだろうか、こういうふうに思いますけれども、これはあなたを除いて、ほかの経済関係閣僚の発言についてあなたはどう考えますか。
  277. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 物価問題は非常にまだ重要なところでありまして、けさも上田委員等にもお答えいたしましたけれども、まあ石油という問題の処理が大手術であったと思います。しかし、この手術はわりあいにうまくいって副作用をそう起こさないで、いわゆる狂乱物価というものを引き起こさなかった、そういう意味においてはわりあいうまくいったと思っておりますが、しかし、まだ日本経済は入院絶対安静、面会謝絶という情勢が続いておる、そのほかさらに整形手術が残っている。電力しかり、あるいは米価がしかり、あるいは運輸、賃金等がしかり、さらにベースアップの春闘という問題があります。それで、わりあいに春闘の問題忘れているようでありますけれども、いままでの経済の多角的な分析によりますと、わりあい春闘が響いてきているわけです。卸売り物価に対して電力料金というのは大体一%程度といわれておりますが、春闘はもっとさらに響いております。通産省が調べたところによりますと、五十ぐらいの品目について電力代が八〇%上がった場合、春闘のベースアップが三〇%上がった場合の試算をして見ますと、電力料が八〇%上がった場合では、それらに対する卸売り物価への圧力というのは二・七%程度ですが、春闘三〇%の場合は九・七%の押し上げ力が出てきておると。それも上げてから二カ月以内にその八〇%の圧力が出てきておる。そういう科学的な経済分析というものを考えますと、単に電力だけでなくして、春闘も含めた物価対策というものが出てくる。もちろん春闘があるについては、いままでの物価高という原因がありますから、やむにやまれぬ要素もあるとは思いますけれども経済政策としては、もっと冷酷に客観的に見つめなければならぬところはあるわけであります。それで、そういうような諸般の総合的観点から物価抑制策全般を見ていく必要があるということを申し上げておるのであります。
  278. 竹田四郎

    竹田四郎君 通産省なり経企庁で考えられておるその賃上げ三〇%の影響というのは、九・七%というのは、一般の経済学者も、これは少し過大だと、私も全然ないとは言いませんけども、過大だという話がありますし、まあ中労委の公益委員の人なども、そんなに大きな影響があるとは——せいぜい二、三%だという見解も出しておりますから、通産大臣の言ったそのとおりかどうか。企業も当然ある程度一定の賃上げがあれば、それに対する対処のしかたもあるわけでありますから、おそらくこの数字というのは、何ら対処しないという形でこれだけということであろうと思いますから、非常に静態的な見方であろうと思いますから、私はそのまま受け取るわけにはいかないわけでありますけれども、しかし、こういうような形で、一種の国内物価を凍結させていくということは、なるほど物価の高騰を避けていくという点では一つの方法であると思うんだけれども、たとえば海外物価との関係で、そのことによって国内の製品というものが大幅に輸出へ回っていく、この可能性は現実に出ているわけであります。鉄鋼にしても、あるいは石油化学製品にしても、海外にこれが出ていく、そのことが今度は逆に国内に物が足りないという、そうした情勢というものが出てくる可能性というものは私はあると思うんです。その関係は一体通産省ではどういうふうに処置をされておるのか、そういうことは絶対起こり得ないというふうな考え方なのか、あるいは何らかの形で、そういうものも一定の措置をしていかなければならないものなのかどうか。
  279. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 相当な総需要カットが行なわれて不況ぎみの様相が出てまいりまして、それが輸出ドライブの圧力となって企業の方向を動かしつつあるということは否定できないことであります。しかしわれわれとしては、こういうようなものは自然体がよろしい。輸出ドライブというようなことを積極的に政府がやることもいけないし、またそれをしいてとめるということも、政府としては必ずしも適切ではない。なるたけ自由経済の波動で動くようにものをもっていきたいという考え方を持っておりますから、政府の介入というようなものは、できるだけ必要がなくなったら排除していきたいと思いますし、少なくしていきたいという気持ちがありますので、いまの輸出の問題についても、自然な形を尊重して、しばらく推移を見ると、こういうことにしていきたいと思っております。
  280. 竹田四郎

    竹田四郎君 現実には、鉄鋼なんか外へかなり最近出ておりますね。そういうことが、国内における中小企業の物資不足という問題というのは、私はある一定の段階になれば出てくる可能性が非常にあると思うんです。そのときには、おそらく凍結価格をある程度解除していくという、そういうからくりをせざるを得ないだろうと思うわけですけれども、それはいま現実にそういう事態でないわけでありますから、これについては十分対処してもらわないと、また国内で物不足、中小企業で材料不足というものが起きてくる可能性が私は非常にあると思うんです。この辺はあらかじめひとつ対処の方法というものを考えておいてもらわなければ困るだろうと思うんですが、そういう価格の凍結をするというようなことが、現実的にはもうその弊害というのは出てきているわけですね。私もここ一日ばかり中小企業、まあ中小零細と言ったほうがいいと思うんですが、そういうところを歩いてみたわけですけれども、あるダイカスト工場でありますけれども、せいぜい十人か十五人程度のところでありまするが、このある工場が——いままではA重油リッター当たり二十七円で三月一ぱい、ところが四月一日になってから三十四円に値上げをした、七円値上げをした。しかし、現実にはこのA重油にB重油をまぜて売っているわけですね。これはダイカストの工場でありますから、そうした重油をまぜれば、もう必ず炉にすぐかすが出てくるということで、明らかにまぜたということがわかるわけです。また同時におそらくそういうことになれば、公害問題という問題も今後出てくるだろうと思います。しかし現実には、いま石油というのは売り手市場でありますから、そうした小零細は、今度はどこどこの工場、どこどこの卸へ行って買うというだけのなかなか売り手市場の中ですから余裕ないだろうと思います。現実にはそうした問題がいま出てきているわけです。こういう問題は一体どう通産省として一なるほど値段は押えた、押えたけれども、そういう形で油の質が悪くなった、こういう問題が一つある。  それからもう一つは、民生用の灯油については、これはある程度十八リッター二百八十円ですか、これで押えました。しかし、工業用の灯油については小需要者に対してはそういうことないわけですね。一応指導価格的な価格はあると思いますけれども、しかし、それはタンクローリーで運んでいった場合の値段である、小零細ということになれば、必ずしも貯蔵するタンクがなかなかあるわけじゃないし、また消費もそんなに多いわけではないですね。そうしますと、結局二百リッター入りのあのドラムかんですか、あれでもらうということになりますと、この手間賃と運送費ですね、これについては別に価格というものはないわけです。そうしますと、このことによって、まあ比較的たくさん使っているところでも、この手間賃と運送費というのは、キロリッター当たり五、六千円取られているわけですね。こういうふうになると、一体そうした小零細企業というのは——大きな企業は少なくとももとの灯油自体が非常に安い、それからある意味では生産性向上によって、そうした価格の値上がりというものを吸収することができる可能性というのはこれはある。ところが小零細になれば、そういうものの吸収ということは、実際問題としてはなかなかできないわけですね。投資をやるにしても、金融の金詰まりというような問題があるわけでありますから、なかなか投資ができないし、その手間賃と運送費というものについては、これは幾らでなくてはならないという一つ基準はない。そうしてみると、売り手市場の油の中で、こうした中小企業というのは、とても他の大きな企業との競争条件というものはなくなってしまってきているわけです。こういうものを一体どうするのか、この辺は、このような石油価格というものを、国のほうがある一定水準を出すということが、実際問題としてそういう効果をねらっていなかったとしても、やっぱり小零細企業をつぶしていく可能性というようなものは、非常に大きく私は出てきている、こう思うわけですが、こういう質が下がって悪いものを買わす、あるいは値段がこう高くなってしまう、こういうものは一体具体的にどういうふうに措置されるのか、非常に私は、その点では不公正なやり方に現実になってしまっている。大きな企業は安い、小中の経費のかかるところは高い、これじゃ小零細企業というものはとてもやっていけない。その上、手形サイトが長くなる、あるいは、それでは油の代金がこれだけ高くなったから下請の価格をもっと上げてくれと言っていっても、いまの事態の中でそう簡単に上げてくれるという事態では私はなかろうと思うのです。一体どういうふうに——こういういま当面している小零細の油問題、されるつもりなのか、明らかにしてほしいと思うのです。
  281. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) ただいまの御指摘の第一点でございますが、A重油に、比較的値段の安いB重油あるいはC重油を混入するというケースがあるというお話でございますが、私どもとしましては、確かにこのA重油を中小企業が扱っておりますのは、公害対策上使うというケースが多うございますので、BなりCなりと、こういった種類のものを混入する、その結果公害対策上問題が起きるというような事態は非常に好ましくない事態でございますので、そういったことのないよう十分注意はいたしてまいりたいと考えておるわけでございます。  ただ、もう一つ問題点は、このB、C重油が比較的値段が安いということから、本来のA重油と品質をいわば偽って、A重油と見せかけて売るという販売店があちこちで現実にあるといたしますと、公害対策の問題を離れまして、一つの販売政策の面から、消費者に対する一つの欺瞞行為でもございますので、こういったような事態がないよう私どももよく実態を精査をいたしまして、こういったことのないように心がけてまいりたいと考えております。  第二点の、工業用灯油の問題とA重油の問題でございますが、いずれも小口の、中小企業向けのドラム売りというようなものについてのコスト増をどうするかという御指摘でございますが、今度価格を上げまして、A重油につきましては、八キロから十キロ、タンクローリー詰めのものを最高指導価格をきめたわけでございますが、その他のものにつきまして、小口のものにつきましては、確かに指導価格としては決定をいたしておりませんが、最終販売店の価格は、私どもの指導といたしましては、元売りの段階で、今回上がりましたA重油の場合には、キロリッター当たり八千九百円より上回って販売店がマージンを取ることはまかりならぬということで指導をいたしておるわけでございまして、もしそういった点を、小売り店のほうで上のせをしてこれを売るというようなことがございますれば、私どもとしては当然それは是正いたしたいというふうに考えているわけでございます。  ただ、上のせでないということを偽って、たとえば運賃の名目で、あるいは搬送経費の増加という名目でそれを上げるということもあろうかと思いますけれども、それはもう苦情処理——どもとしては目に余るケースについては、そういう実態について精査をいたしまして、従来その中小企業者が買っておりました価格に対比いたしまして、どうも値段が、単に元売りが上がった、キロリッター八千九百円より上回って取られるというようなケースがございますれば、これは実態を精査した上で是正措置を講じたいと、かように考えておるわけでございます。  それから、工業用灯油につきまして、少量の扱いのものにつきましては、中小企業と申しましても、たとえばクリーニング屋さんあるいはそば屋さんであるとか、こういった方々のお使いになっている分につきましては、実際問題といたしまして販売店の同じタンクの中で処理されますので、私どもの指導といたしましては、当該家庭の暖房用に使われる分とあわせて小口のものにつきましては家庭用並みの扱いを実はやっておるわけでございますが、相当な量まとまって工業用として使われるものにつきましては、中小企業といえども一応工業用灯油の扱いで、今回の値上げの場合には、御承知のようにキロリッター当たり一万六百円上がるわけでございます。これも、しかしながらドラム売りその他で手数がかかるとは申しましても、三月末まで購入しておりました工業用灯油の値段が、キロリッター当たり一万六百円のアップ以上にアップすることは認めないということで上限価格を設定をいたしておりますので、今後ともそういったことが順守されますよう、厳重にフォローしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  282. 竹田四郎

    竹田四郎君 現実には、A重油の場合には確かに三月十八日値を上げていないんですね。四月一日から上げているんだけれども、上げたら、そういう形で炉にかすがたまるような——これは手間もかかります、率直に言って。ある一定の時間はおそらく機械をとめなくちゃならぬだろうし、また同時に、あるいは終業時間後であれば、これはやっぱりそれだけの人を残して清掃しなくちゃならぬわけです。そういう意味で、一体そういう苦情をどこへ持っていったらいいか。実際これは持っていき場所がないわけですよね。へたに明らかにすれば、売り手市場ですから、今度は何だかんだけちをつけて、必要な油を売ってくれない。こういうお返しが当然出てきます。だから、自分の名前はなかなか出せない。出せばもうすぐわかってしまって、おまえのところはもう売らない、あるいはおれのところはとても足りないから、おまえのところはこんなに回せないから何割カットだと、こういうことにもなる可能性があると思うんですね。  それから灯油の場合にしても、もう現実にはこれはかなり——規制がないわけでありますから、一万六百円のアップ分以上には認めないと言ったって、現実に商取引ではやられているわけですよね。これは手間賃だ、これは運送賃だということになれば、なるほど、油それ自体は——この前の灯油の問題、あるいはプロパンガスの問題と同じです、この問題もね。だから、どうにもならないわけです、それはあなたのほうがそう言っても。これは手間賃でございますと、これは大きなところからドラムかんへ分ける手間賃です、これは運送賃です、運送賃も油が上がったから上がりましたなんて言われれば、これは勢いそういう高い油を買わざるを得ない、こういうことになると思うのですがね。この辺はどうなんですかね。私は公正な取引のようだけれども、たいへん不公正な取引になっちゃっている、現実には。そうしてコストアップにこれはつながっていくわけですね。こういうある一定のドラムかんで買うというような、こういうものに対しての価格というものは、今度はタンクローリーで売るような、生産性で吸収できるような、そういうところへある程度かけるということによって、小零細の企業の灯油価格というものをある程度引き下げて、そして少なくとも競争できる程度に引き下げていく、こういうことは一体できないものか。それはあなたがそういうものはいけない、いけないと言ったって、それはいまの形でそういうものを取り締まるだけの人員もないでしょうし、なかなかそういうものがすなおに表へ出てきて、そしてそれについてこうでございます、ああでございますというふうに、簡単に一一〇番ですか何ですか、物価一一〇番に電話が入ってくるというようなことはなかなかできるものじゃないと思うんですよ。だから、そういう点で、そうした何か価格差的なものをやっぱりやっていかなければ、一定の価格でとめるということになれば、あるいは今度はその他の製品のほうの、基礎物資の価格凍結というようなこともあるとなれば、何らかその辺の措置を講じなければとても競争に耐えられるものじゃないと思うんですが、どうでしょうか。
  283. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 先生御指摘の点は、確かに実際問題としてむずかしい問題を含んでいると思いますが、今回指導上限価格を設けました八−十キロのタンクローリーで工場等へ持ち届けをする場合の二万九千円という価格につきましては、これは全体の約半分程度を占めているケースと考えておりますが、小口のたとえばミニローリーを使って搬送する場合の値段となりますと、やはりコストが若干高くなるということもあろうかと思います。それからまたドラム入りということにいたしますと、従来もこういったものにつきましてそれぞれの価格差が実はあったわけでございますが、私どもとしましては、この標準的な大部分のウエートを占めますものを今度指導上限価格を設定いたしまして、全体の価格体系の中での一応おもしとしたわけでございますが、ただいま先生の御指摘のような小口のものにつきまして、特別の安い価格で何らかの調整を行なうべきじゃないかという御意見ではございますが、実際問題としまして、遠隔地等特別の場合のケースは、今回きめました価格におきましても一応別途実費ということになっているわけでございますが、通常の従来取引が行なわれておりました実績がそれぞれあるわけでございますので、それぞれの従来の実績に上のせする分が幾らかということは、これは先ほど来申し上げておりますように、元売り価格が上がった分だけが限度であるということで指導もし発表もいたしております。消費者の方がそういう監視の目でそれをごらんいただきまして、苦情処理につきましては、確かに申し出た場合に云々ということはございますが、私どもの窓口としましては、通産局を中心にいたしまして、そういった苦情につきまして直ちに是正措置を講ずるようにいたしたいと思っておるわけでございまして、そのために、そのユーザーの方が将来にわたって油の入手が非常に困難になるというようなことがないように、当然私どもとしては配慮いたしたいと考えておるわけでございます。  今後、この価格を三月の十六日に決定をいたしまして、その後の実態につきまして、現在各通産局それから各県を通じまして調査をいたしておりますので、こういった調査の実態を踏まえまして、先生のおっしゃっている問題等ももちろん将来の問題としては考えなきゃならぬとは思いますが、私どもとしては、今回きめました価格がかなりの落ちつきで実行されていくものと思っておりますが、末端での問題、どういった問題が起きているかということにつきましては、さらに精査をして考えていきたいと、かように思っております。
  284. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは大臣、どうなんですかね。一応自由経済という形で公正なように見えるんですが、実際にはあんまり公正じゃないんですね。非常に高い価格の油を使わにゃいかぬ、あるいは質の悪いのを使わにゃいかぬ。いま石油部長が言ったように、そう、この人たちが簡単にあっちこっちに電話かけて、いや今度はこっちで買いますよ、あっちで買いますよという、そういう時間的な余裕も実際はほとんどないと言っていいと思うんですよね、労働者と一緒になってまっ黒になって働いているわけですから。そういう意味では、私は何らかの意味で、まあ今度電力料金も何か新しい価格体系という形で、たくさん使う人には高く、少ない人はあんまり値上げをしないというような形の新しい価格体系というようなものも論議をされているわけでありますが、油というものも、電力がそうであるということになれば、私はほぼ同じような考え方をしていいんじゃないかと、そういう価格体系をつくっていいんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  285. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまのようなやや悪徳に近いと思われる行為は、やはり資本主義の底に沈でんしている汚泥みたいなもので、払っても払っても、人間性が善と悪と両方ある限りなかなか払い切れないものであり、ちょうど歩積み両建てみたいな要素があって、いかぬいかぬと言ってもなかなか払拭できないものがあるわけです。まあこれをどうするかということは、価格体系とか、あるいは監視とか、まあそのほかのことでわれわれは矯正していかなけりゃならぬと思いますが、いまとりあえずその価格体系を動かせと言っても、そういうことはできないと私は思います。やはり監視とか、あるいは自粛を求めてやっていく以外にないと、そういうように思います。
  286. 竹田四郎

    竹田四郎君 じゃ、若干くさい話いたしますけれども、この点をひとつ明らかにしてほしいと思うんですけれども、昨年五月、衛生陶器が非常に不足をして、これで大騒ぎになったわけです。しかし、六月、東陶機器が値上げをして、そのあとはこれ出てきたわけですね。まあ十一月に部品の値上げがあったと、最近また三月一日に一九%ぐらいですか、この値上げがあったわけですが、この値上げがありまして大体みんな出てくるだろうと、こういうふうに実は思っておった、ところが全然出てこない。まあ仕事が中小のところではできないというのが現実であります。だから私どもにも、ひとつ衛生陶器をもう少し順調に出てくるように通産省にかけ合ってくれということで、何回もこの点はお宅の日用品課長に私は話をしているわけです。どうも話をしていても、出ないはずはないのだと、こういうわけですが、現実にはないんですね。先ほども課長見えられたあとで、私、電話をかなり大きな企業にかけてみました。やっぱり出ていない、こういうことなんですね。御承知のように、水洗陶器というのは、当然公共下水道の敷かれた区域ということになって告示をされれば、これはまあ下水道法に基づいて、三年以内にはそれは水洗化しなければ罰金を取られるという規定であります。各市町村でも、水洗化を早くしていくということで、その施設工事には奨励金を出したり、あるいは貸し付け金を出したり、そういう形でなるべく早くその地域地域で例のくみ取り式をなくしていく、このくみ取りにもたいへんたくさんの補助を出さなければやっていけないわけですから、そういうことでありますけれども、大体CMというのがいま一番足りないわけでありますね。C21のほうは何か一万円ぐらい高いということなんですけれども、C14というのはどこでも手になかなか入らない、こういうことでありますけれども、大体C14の東陶のシェアというのはどのくらいあるんですか。
  287. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 先生いま御指摘のC14というのは、東陶の銘柄だと思いますので、C14自体は東陶の製品ということになりますが、いわゆる衛生陶器全体に対する東陶のシェアは最近七〇%程度になっておると承知いたしております。
  288. 竹田四郎

    竹田四郎君 伊奈製陶はどのくらいですか。
  289. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 一二%ぐらいだと思います。
  290. 竹田四郎

    竹田四郎君 伊奈製陶と東陶機器との関係はどんなふうになっていますか。
  291. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) シェアでございますか。
  292. 竹田四郎

    竹田四郎君 いやいや、その二つの会社の関係
  293. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 両社については全く関係ございません。ただ、衛生陶器メーカーの中での二大大手企業ということでございます。
  294. 竹田四郎

    竹田四郎君 東陶の社長と伊奈製陶の社長との関係というものは、これは親戚関係なわけですね。伊奈製陶というのは、もともと東陶のシェアが大き過ぎるということで、伊奈製陶が東陶から分かれた会社だというふうに私は聞いております。そうしますと、現実的に水洗便器のシェアというのは、両方合わせればまあ八〇%から八二、三%というようなものは、もうほとんど東陶の息のかかった、東陶の支配力のある製品だと、こういうふうに言ってよかろうと、こういうふうに思うわけでありますけれども、私はそういう意味で、おそらく東陶がある意味では出荷調整あるいは生産調整というようなことをやっているんじゃないだろうか。特に一番需要の大きいC14ですね、これについてそうしたことを調べて出荷調整なり生産調整なり、そういうようなことをやっていたのかやっていなかったのか、これを伺いたいと思うんです。  それから建設省の方に、一体こういう形でのものというのは、うちを建てれば必ず必要だということが一つ。まあうちを建てなくても、公共下水道が敷かれてくるということになれば、当然水洗化ということにならざるを得ないと思うんですけれども、そういう水洗化面積あるいはこれは水洗化されないところでも、最近は浄化槽をつくった水洗化というものが当然行なわれるわけでありますけれども、そういう推移というのは、建設省のほうではどういうふうに見込んでおられるのか、その両方をお聞きしたいと思います。
  295. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 東陶がそのシェアの大きさにまかして出荷調整をいたしておったかいかがという問題でございますが、私はなかったものと信じております。と申しますのは、ここ数カ月の生産、出荷の推移を見てみますと、いずれも昨年同月に比べまして四割から五割の生産増あるいは出荷増ということになっております。もちろん、これは全体としての衛生陶器の需給関係でございまして、一部C14についてはどうかという問題はさらに調査する必要があるかと思いますが、ただ、考えられますことは、一部の地域で下水道工事が集中的に行なわれる、あるいはいま御例示になりましたC14、特定メーカーの特定銘柄に注文が集中するといったようなことのために、地域的と申しますか、部分的、一時的に供給不足あるいは発注があっても直ちに納品できないといったような事情はあったかと思いますが、そのために前提として出荷調整があったといったようなことは、なかったものと考えております。
  296. 金子勇次郎

    説明員金子勇次郎君) 下水道の処理区域が広がれば水洗便器の必要が生ずるであろう、最近その傾向が急激に伸びているのではないかという御指摘だと思いますけれども、御指摘のように、下水道法の改正に伴いまして、四十九年六月末までに処理区域内での水洗化を完了するようにということがございますので、水洗便器への取りかえが進行しております。四十七年の末で、下水道処理区域の総人口は総人口に対して約二〇%ございますが、そのうちで四十七年末で水洗化が進んでいるのが七〇%弱、六七・六%ということでございますので、約三〇%ほどは、処理区域でありながらまだ水洗化が進んでいないということになろうかと思います。したがいまして、総人口の約二〇%のさらに三〇%程度、五、六%程度の方々は、処理区域にお住まいですけれどもまだ水洗化を終わっていない。これを急いでやらなければいけないということになります。したがいまして、世帯数の約五、六%ということになりますと、百五、六十万世帯の水洗化が急がれるということで、これを一気にやるといたしますと、新設住宅の、一年間の新設住宅約二百万戸でございますので、七割ぐらいに相当するかと思われますが、現実にはそういうふうに一気に終わるもの、進むものではなくて、着々と進んでおりますので、私ども——はっきりしたデータには基づいておりませんけれども、想定では、新築住宅の約二割程度が水洗化のための取りかえ需要ではなかろうかという見通しでおります。  なお、御指摘のように、水洗便所の改修のための資金の融通等の傾向から見ましても、確かに四十六年度十五億円程度であったものが、四十八年では七十四億円というように、非常に急激なペースで水洗化が進んでおりますので、そのために必要な機種については、場合により場所によっては若干の逼迫が起こるかと考えられますけれども、私どもの手元で集めました最近までの情報では、それほどきわだった逼迫状況はなかったということで、便器の確保についてということで特別な手は打ってございません。
  297. 竹田四郎

    竹田四郎君 おそらく——三月の一日に値上げがされているわけですね。みんな三月の一日が終わったら——それまでは幾らか買いだめがあったりあるいは売り惜しみがあったりということで、二月末まではこれは私おそらくかなりの足りないということは考えられますね。ところが、三月一日過ぎても足りないという声が出てきているわけですね。おかしいじゃないか。上がったならば当然出てくるというのが普通の考え方なわけですね。上がっても出てこないということは、一体どこに原因があるか。それからもう一つは、この金具がこれにマッチしてないわけですね。金具がマッチしてない。だから、陶器はできても今度は金具がそれに合わなければ、これは使いものにならない。一体、なぜ金具がそれに相応してできないのか。これはその金具も東陶機器がつくっているということだから、同じ生産計画に乗ってやれば私はそうむずかしいことじゃない。それが金具のほうが間に合わないという、これは一体どこに原因があるのか。しかも、その足りないところというのを聞きますと、全くくだらないところが足りないのですね。何かこうてこがありますわな、ぎゅーっとやるてこが。そのてこが足りなかったりすると、こういうことなんですがね。こんなものというのはえらいむずかしいものじゃ私はないと思うのですね。材料さえあればできる。えらいむずかしい、特別な職人がなければできないというようなものじゃなくて、まあ簡単にこんなものは型へ入れてやればできるものなんですよ。そういうものが、一体なぜそれに相応してできないのか、これだけは全く、うちができたって、これが備わらなければうちとしては完成しませんからね。全く困るわけですよね。さっきのように、処理地域はどんどん広がっていくのに、へたをすれば、期間から逸脱すれば罰金まで取られるというようにおどかされる。こういうものをもっと——さっきもあなたは出荷調整あるいは生産調整はないものと認めると、こうおっしゃったのですがね。現実にこれは当たっているわけじゃないのでしょう。私のところにいただいた数字も、これは全体のものですよね、水洗便器の全体のものですよね。具体的にC14を東陶で一体どういうふうにつくっているのか。あなたのおっしゃっている四割増しだ、五割増しだというのは、これは全体の話だと思います。その辺をもう少ししっかり調べて返事をいただかなければ、出荷調整なり生産調整をしていないのだということは、私、言えないと思うのです。ただ、東陶機器を信じて、していないだろうということだけに私はなってしまうのじゃないだろうか。あるいはどっかで、その流通過程で、ある程度の買い占めなりあるいはそういうことが——先ほどの建設省のお話等を聞いてきますと相当の需要というのはあるわけですから、考えられるわけなんですから、そういう意味ではそうしたことがあり得ると思うのです。私、一番よくわからないのは、値上げしたあとで、ないというのですね。値上げ前なら、ないということはこれは非常にわかりやすいのですが、値上げしても出てこない、これは一体どういうわけなのか。
  298. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私もいまお話を聞いておって理由がわかりませんが、これは至急調べまして、流通過程を当たってみて報告させます。
  299. 竹田四郎

    竹田四郎君 じゃ、まあ大臣がそうおっしゃるわけですから、これは近くその数字をさらにいただいて、私ども検討してみたいと思いますけれど、どうもその辺の調査をしっかりひとつやっていただきたいというふうに思うのですが、公取の人に伺いたいのですがね、こういうふうに、実際上——形の上では東陶機器が七〇%のシェアを持っているというのですけれども、伊奈製陶の件、そういう関係、過去の経過、こういうことから見ますと、これは当然一つの企業が八〇%のシェアを持つということ、これは何といっても、なるほど意図的に出荷調整なり生産調整をしないと言っても、これはあり得るですわな、当然に。生産をそう伸ばすのはやめよう、うちの会社はどうもそんなに伸ばしたらあぶないからというようなことで、あまり企業が生産集中をやってしまうという、こういうことになりますと、どうも当然そういう形での独占価格といいますか、値段を自由に操作できるというようなことになると思うのですけれども、独禁法の第一条の趣旨からいいますと、そういうようなものは、これは当然私は企業分割をして、自由競争ができるような体制、こうしたものをつくらなくちゃいかぬと思うのですよ。ところが、現実にそういうものについて企業分割をしろというのは、独禁法の二十八年の改正ですか、あれか何かで消されてしまったわけでありますけれども、いままさにそういうものが必要になってきているのじゃないか。それでなければ、ますます最近の総合商社を見ましても、持ち株を通じあるいは資金を通じあるいは物資を通じてどんどんどんどんと系列化が進み、そうなってくれば、それは当然、協議によるところの価格操作なり、協議による取引分野における制限ということはこれはないかもしれない。しかし、現実には自由な競争というものが阻害される。一つ価格支配力によってどうにでも価格が支配される。あるいは物の生産、出荷、こうしたものが支配されていくわけです。こういう点で、私は当然ますますそういう傾向というのは今後も弱くなるということはちょっと考えられないと思うのですね。強くなる可能性のほうが非常にあると思うのです。そういう意味では、一社のシェアがあまりにも高いというものについては、企業の分割命令を出して分割をさせて、そして取引分野におけるところの自由な競争というものを確保していくことをやらなければならぬ、こういうふうに思うのですけれどもどうですか。公取としてはそれに対してどんな考え方をお持ちですか。
  300. 熊田淳一郎

    政府委員熊田淳一郎君) 一般論として申し上げますが、最近の日本経済の産業構造なり何なりを見ますと、先生おっしゃいますように、非常に寡占化の傾向が高まる状況にございます。そういう場合に、その業界におきまして、その弊害がいろいろな面に出てくるということはすでに見られるのでございまして、確かにカルテルに近いような行為もその間に介在することになりますし、また、非常にシェアの高い企業が管理価格的な作用をするおそれもあるということでございます。公正取引委員会といたしましては、現在独禁法の改正につきまして、独禁法研究会を設けまして検討をいたしておりますが、その中にも、企業分割の問題、これを一つの大きなテーマといたしまして検討をしてもらうようにしております。私どもといたしましても、現在の日本経済をもっとフレキシブルに自由競争原理が働くように持っていきたい、そういう観点からいたしまして、この企業分割の規定を新たに設けるということにつきまして前向きに検討いたしたいというふうに考えております。
  301. 竹田四郎

    竹田四郎君 公取は、いつもそういう返事が返ってくるのですがね。ところが、具体的な改正案という、要綱というものがなかなか出てこないのですが、大体いまの時期が私は独禁法の改善には最もいい時期だと思うのですね。ただ口でそういうふうに言われても、一応の目標というものが公取の中でもあると思うのですが、そういう——その間にいろいろありますね、合併の問題とかあるいは持ち株の制限の問題も、これはやっていかなくちゃならぬ問題だろうと思うのですが、大体いつごろを目途に成案を得たいというふうに公取委員会としては考えておりますか。
  302. 熊田淳一郎

    政府委員熊田淳一郎君) これはたびたび公取委員長も弁明をいたしておりますが、この秋をめどにいたしまして成案を得たいということで、現在作業を進めておるところでございます。
  303. 竹田四郎

    竹田四郎君 それじゃ公取の方と、それからあと、何ですか、おたくもよろしゅうございますから。  あと石油の問題で、もう少しお伺いしたいのですけれども、山形長官はお見えですか。——あなたはまあこの間お見えにならなかったわけですけれども、この間の物価集中審議のときに、私この問題を——伊藤忠燃料の問題ですね、伊藤忠燃料の問題を中心に、あそこの社長に聞いたわけですけれども、時間がなくて最後の結論は得られなかったわけです。長官は、衆議院の松浦君にあてて伊藤忠商事のエネルギー本部長の金井さんからいった、「民生用灯油のご質問に関する件」という文書は、この前の衆議院分科会のときには御存じなかったわけですか。——いまは知っておりますか、内容を。
  304. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) 存じ上げております。
  305. 竹田四郎

    竹田四郎君 この文書、「民生用灯油の調査結果」というのが出ておりまして、その一が「一リットル当り十五円五十銭を越えた価格で販売した民生用灯油の数量」というのが出ております。四十八年十一月の販売数量が千八百四十五キロリットル、十二月の販売数量が三千七百五十六キロリットル、四十九年一月が千七百六十二キロリットルを、十五円五十銭より上で、いわゆる現実には十六円で売った、まあこういう数量がここへ出ているのです。  そして二に経過で、「四十八年十一月下旬に通産省より民生用灯油の指導価格が示されました。これによりますと、1小売業者の店頭渡し価格十八リットル当り三百八十円と、2元売業者の仕切価格を九月の価格に据置くの二点のみで、中間卸売業者から小売業者への卸価格についての指示がありませんでしたので、当時の取引価格から見て上限一リットル当り十六円程度が妥当であろうと、伊藤忠燃料の現地店が判断して一部の卸売価格決定しておりました」、こういうふうに述べております。それから、一月関係の問題といたしましては、「その後四十九年一月十八日から民生用炉油の小売標準価格を設定するにあたり、一月十四日附の通産省の通達の説明文中に二二百八十円のモデル計算においては、小売仕入価格は、二百六十〜二百八十円程度を想定し、という表現がありましたので、一リットル当り十五円五十銭を上回るものは十五円五十銭に改訂値下げいたしました」、こういうわけで、御承知のとおりだと思うのですが、これはモデル価格をつくらなかったということで、中間の卸売り価格をつくらなかったということで、例の運賃の問題、まあこれが出てたいへんに混乱をしたわけです。したがいまして、その混乱を防ぐということで、今度は一月十四日に二百六十円から二百八十円程度のモデル計算による価格ということを通達で示したわけなんです。ところが、衆議院で松浦さんがやった面を見ますと、伊藤忠燃料のある小売り店に対する請求書、これを示されまして、最初の十一月下旬の話ですが、十六円で売ったのは十一月二十六日の日付から売っているわけですね。それでその前は十四円五十銭で売っているわけですね。それの請求書は、十一月二十日付の請求書があるわけですね。だから、少なくとも十一月の二十一日以降十六円で売ったという可能性はあるわけですけれども、それは通産省のほうでは、伊藤忠燃料が十六円で売った日付、いついつから十六円で売ったということはお調べになりましたか。松浦さんの請求書によれば、二十六日付の請求書からすでに十六円の価格になっているわけですね。
  306. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) ただいまの点でございますが、私どもが伊藤忠燃料から聴取をいたしましたものによりますと、いろいろ相手方によりまして決済の日にちが違っておりますので、たとえば、二十五日決済締めの場合には二十六日から適用する、あるいは月末締めのものにつきましては翌月の一日からと、こういうことになるわけでございますか、私ども十一月から十二月にかけまして、リッター当たり五十銭あるいは一円五十銭、それぞれ相手も違うわけでございますが、その値上げ状況を聴取しましたのによりますと、ただいま申しました、二十五日締めのものについて十一月の二十六日から、月末締めのものにつきましては十二月一日から、この値段で、五十銭から一円五十銭の間で上げておる。それからまた、金沢の支店と、それから広島並びに福岡の支店につきまして、やや早目に値上げ実施しておる。まちまち、各支店によってもかなり差があるようでございます。
  307. 竹田四郎

    竹田四郎君 通産省の通達というのは、十一月の二十七日に通産大臣が何か談話か声明を発表されて、通達の日付は十一月二十八日になっている。しかし、それがいまの、金沢、広島、福岡にしても、それの前から十六円にしているということは、これはちょっとおかしいわけですね。どこかで何かが漏れている。これは山形長官も、この前のお話ではこれについては実態をよく調査しますという確約をしております。  それから一月についてもこの数量が、十一月については、少なくとも許容計算を入れまして、十一月二十日から月末までが千八百四十五リッターという、最大限に見積もっても十日間、これが千八百四十五リッター。ところが、四十九年一月の販売量、これはこの間の話では十八日から値下げをしました、こういうことを社長ははっきり言ってたわけですね。そうすると、一月は若干休みもあるとは思いますけれども、しかし、十一月に比べて非常な需要期へ入ってきていると思うのですよね。まあいろんな混乱も若干あったと思うのですがね。そうすると、どうも十日間に扱った、十一月のまだ需要期でないときに扱った数量と、一月の販売数量と、むしろ一月の販売数量のほうが少ないという数字がここに出ているわけですね。そうすると、実際は十五円五十銭に引き下げた日というのは、おそらく一月の十八日からではなくて、それよりも前から引き下げたということが考えられますけれども、どうでしょうか、それは。
  308. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 松浦先生の御指摘がありました以降、私どもとしても調査をいたしまして、私ども長官あてに、伊藤忠燃料会社から三月六日付で報告書類がまいっておりますけれども、これによりますと、ただいま竹田先生が御指摘になりました問題につきましては、四十八年の十一月から四十九年の一月におきまして、民生用灯油の販売状況は、合計いたしまして六万七千五百九十五キロリッター、この内訳は、問題になっております十五円五十銭をこえて売った数量がそのうちの六千六百三十一キロリッターでございまして、大部分のものが十四円五十銭から十五円五十銭、この分が約二万七千キロリッター、十四円五十銭以下で売ったのが約三万三千キロリッターでございますが、これらの問題になっております十五円五十銭以上で売ったものにつきましての値下げは、すでに一月の十八日付で値下げを実施している、こういう報告を受けておる次第でございます。
  309. 竹田四郎

    竹田四郎君 それは伊藤忠に報告を受ければそういうことにきまっていますよ。それでなかったら、それ以前に値下げをしたら、これは通達をどっかで見たと、通達が出される前に見たということになりますから、伊藤忠燃料がどっかで事前に、通達が出る前に通達を見たから下げたのではないかという疑いがあるわけですから、それは当然通産省が直接行って控えの伝票か何かを見てやらなければ、これは伊藤忠燃料に聞けば、それは十八日と言うにきまっておるのですよ。そんなことは私は調査にならないと思う。一番疑問点は、伊藤忠燃料が何らかの形で通産省の通達の草稿か何かをどういう形でか見たのか、あるいは通産省の係官が知らせたのか、どっちかだという疑問があるわけですよ。これについては、長官は調べるとこの前言ったわけですよ。  私、時間がないから、その点さらに詳しくやるわけにいきませんけれども、実際報告を受けて、それで調査が終わっているのですか。それとも、あなたのほうで具体的に伊藤忠燃料の書類を見て、具体的にどうだったのか、したがってその疑いは一体どうなのか。それでないと、やっぱり企業と通産省の癒着という問題の私の疑問というのは一向に晴れないわけです。だから、これは値下げになったからいいようなものの、値上げになる場合も同じような形で情報が漏れているということになれば、そうした企業が不当な利得を得るということになるわけですから、私は最後に、長官が調べた結果——あなたは調査しますと言っていますから、その結果をひとつここで発表してください。
  310. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) いま御指摘の、灯油の標準価格に関する指導通達につきましては、御存じのとおり一月十四日付でこれを出したわけでございます。これを事前に個々の業界に流すというようなことは、絶対にわれわれのほうはいたしておりません。しかしながら、標準価格制度といいますのは、非常に販売店の指導に万全を期しませんと守れないわけでございますので、元売り各社に対しましては、一月十八日に説明会を実施いたしたわけでございます。この場合に文書を配りまして、協力、依頼及び指導を行なったわけでございますが、これは各都道府県への指導通達とは内容を異にいたしておりまして、実質的には元売りから各流通の末端まで趣旨が徹底することを期する文書でございます。その中に、先ほど御指摘ございました卸の仕入れ価格二百六十円ないし二百八十円程度を想定するという文章は入っておるわけでございます。伊藤忠燃料といたしましては、この一月二十一日の朝刊、これは朝日でございますが、朝日に、これは小売り仕入れ価格二百六十円——二百八十円が標準という記事が出ておりましたのに基づきまして、伊藤忠燃料関係元売りでございます共同石油に一月二十二日に電話でその事実を確認いたしましたところ、共同石油としては、先ほど申し上げました一月十八日の説明会に出ておりましたので、そのことは事実であるということを共同石油から確認いたしたというふうに私のほうで報告を受けておるわけでございます。で、伊藤忠燃料といたしましては、これをより明確にするために、石油連盟で発行いたしております石油資料月報というのがございますが、そこに、一月二十五日発行のその文章で、われわれのほうの文書のあれを確認いたしまして、それでいまお話の「二百六十〜二百八十円程度を想定し、」ということを、何というんでしょうか、文書を明確な形にして正確を期するため、これをきちっと引用いたしまして、これに基づいて一つの流します文章をつくったと、こういうふうに聞いております。非常にわかりにくい話でございますが、伊藤忠燃料といたしましてはそういう意味での確認をいたしまして文書を作成し、値下げ等につきましては十八日にさかのぼってこれを行なった、こういうふうに事情を聴取いたした次第でございます。
  311. 竹田四郎

    竹田四郎君 長官ね、私、そういうあなたの説明でも、十一月の販売数量が千八百四十五キロリッター、一月の十八日までの販売数量が千七百六十二キロリッター——これは伊藤忠燃料で出した資料ですよ、これは間違いないと思うんです。それがどうしてこう食い違うのか。むしろ、一月の販売数量というのはもう少し多くなっていいはずじゃないか、それが少ないというところに私は非常な疑問を感ずるんですよ。なぜ少ないのか、その点を、何かもう時間がないそうですから、あと数字で、なぜこう少ないのかというところを、さっきの締め切り日の問題も若干あるようであります、そういう点をはっきりひとつさしていただきたいんですよ。それでないと、どうもあなたの説明だけでは——多いというなら私理解できますよ、数量が少ないというのはどうも理解できないんですよ。需要期にうんと入っているんだ。
  312. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) いま先生の御指摘の数字は、リットル当たり十五円五十銭をこえた灯油の販売数量でございまして、全体の民生用灯油の販売数量につきましては、十一月が一万八千八百三十二キロリットル、十二月が二万四千三十九キロリットル、一月分は二万四千七百二十三キロリットルでございまして、この中が分かれておりまして、十五円五十銭以上のものが、先生御指摘のとおり、十一月が千八百十三キロリットル、一月が千四百七十七キロリットルでございます。全体では十一月分より一月のほうが販売数量は多いわけでございます。
  313. 竹田四郎

    竹田四郎君 もう一問だけ。  それにしても、販売数量が多いのに、十五円五十銭以上で売った販売数量が少ないという、この点が私理解できないんですよ。多くあるわけですから、当然多いのがあたりまえなんですよ。それが少ないということは、十八日以前からもう十五円五十銭にしていたという疑いがこの数字だけで十分にあるということです。もう主査のほうからやめろということですから、私、これでやめますが、この点はあとでちゃんと数字がわかるようにしてくださいよ、なぜこんなに少ないのか。十一月の割合からいえば、十一月は、私の推定では十日間でこれだけ、それから一月は十七日間、その間に休みがちょっとあったかもしれませんが、これでこの数字が少ないというのはとうてい納得できないですよ。これはひとつあとでこの点を明らかにしてください。  これで終わります。
  314. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 以上をもちまして、通商産業省所管に対する質疑は終了いたしました。
  315. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) これをもちまして、本分科会の担当事項であります昭和四十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、防衛庁、経済企画庁、外務省、大蔵省及び通商産業省所管に対する質疑は終了しました。  これにて本分科会審査を終了いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  316. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。    午後四時四十五分散会      —————・—————