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1974-04-06 第72回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月六日(土曜日)    午前十時四分開会     ―――――――――――――    分科担当委員の異動  四月六日     辞任         補欠選任      小山邦太郎君     木村 睦男君      戸叶  武君     上田  哲君      田  英夫君     神沢  浄君      神沢  浄君     横川 正市君      渋谷 邦彦君     多田 省吾君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     主 査         嶋崎  均君     分科担当委員                 木村 睦男君                 米田 正文君                 神沢  浄君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 多田 省吾君                 星野  力君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        環境庁自然保護        局長       江間 時彦君        大蔵大臣官房会        計課長      片山  充君        大蔵省主計局次        長        長岡  實君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局次        長        井上 幸夫君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       松川 道哉君        中小企業庁次長  小山  実君    説明員        警察庁刑事局保        安部保安課長   相川  孝君        防衛施設庁総務        部施設調査官   藤井 謙二君        法務省刑事局刑        事課長      根岸 重治君        国税庁直税部長  田邊  曻君        通商産業省産業        政策局商政課長  青木 利雄君        建設省道路局有        料道路課長    高橋  力君    参考人        日本銀行総裁  河野 通一君        日本道路公団理        事        伊藤 直行君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和四十九年度総予算中、大蔵省所管を議題といたします。  政府からの説明は、これを省略し、本日の会議録の末尾に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  4. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 参考人出席要求についておはかりいたします。  本日、昭和四十九年度総予算大蔵省所管の審査のため、参考人として日本道路公団理事伊藤直行君及び日本銀行総裁河野通一君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 最近、総需要抑制政策あるいは金融引き締め政策等に関連をして、ほぼ目的に近づいたという観点から、オーバーキル傾向が強くなれば弾力的な政策運営をとるという説がちらほら出ておるようです。蔵相は現在の局面をどのように判断をされておられますか。まず、この点からお伺いいたします。どうぞおすわりになって……。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、大体当面の経済運営、これ、三段階に見ておるのですがね。第一段階狂乱状態克服、第二段階は新価格体系形成期、第三段階は、これは新しい国づくり方向の策定、こういうふうに考えておるわけです。  第一の、この狂乱状態克服ということ。この狂乱につきましては、狂乱状態というものは一体どういう状態なのかというと、仮需要が発生し、投機的行為が横行する。そこで、物価体系というものはもう完全に混乱いたしまして、私はかねがね言っているんですが、物価と言うよりは相場と言うべき状態だと、こういう状態が特に昨年下半期からことしの初めにかけて出てきたわけであります。これを克服するということが、とにかく第一の任務でなければならぬ。そこで、総需要抑制政策中心とし、いわゆる生活法等をもってこれを補い、今日までその施策を強力に進めてきたわけでありますが、まず二月半ばごろからこの狂乱状態鎮静化に向かい始めた。二月の卸売り物価の動きを見ましても、実質的にはこれは横ばい状態であります。その傾向を今日なお持続しておる。しかも、その間には油の価格石油製品価格改定というものがあったにかかわらず鎮静化傾向を続けておる。この傾向というものは端的にいろんな指標に出てきておるわけですが、特に日本銀行銀行券発行高のごときも、三月の平残は二〇%をわずかにこえるという状態になり、今日になりますと、これは非常に異常な状態だと思います。そういう状態が長続きするというふうには考えませんが、とにかく前年比一六、七%増加というようなところまで落ちてきておる。かなりの政策浸透があり、また、それに並行しまして、機械の受注の状況でありますとか、あるいは生産状態でありますとか、あるいは滞貨の状態とか、そういう生産方面にもかなり非常に大きな変化が出てきておる。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと聞こえないんですがね。もうちょっと大きい声で……。
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そうですか。  かなり大きな変化が出てまいり、この状態を見ておるときに、総需要抑制政策、いままでとってきました政策を堅持し、これを強力に推し進めるということになりますると、これは今後さらに景気鎮静という方向は顕著になってくると、こういうふうに見、仮需要が起こるということはまずまず考えられない、さような段階まで来たと、こういうふうに見ておるわけなんです。  いよいよ第二段階の新価格体系という局面に入るわけでありますが、この第二段階はどういう時期かと言うと、仮需要はもう起こらない、つまり、やや全体的に見まして供給がオーバーしておると、こういう状態であります。そういう状態の中で、つまり需給要因におきましては非常に鎮静的な傾向である。その局面においてわれわれが解決しなければならぬ、今度は物価のもう一つ側面であるコスト要因という問題があるわけです。これは、差し迫って電力の問題があります。また私鉄、国鉄の問題があります。あるいは米価の問題があります。そういうコスト要因側面をいかに経済秩序を維持しながら物価の安定を期しながら解決していくかという、そういう時期が第二段階である、こういうふうに考えておりますが、私は、この第二段階におけるコスト要因にまつわる諸問題、これはまた、総需要抑制政策を堅持すると、こういういわゆる経済鎮静下においてはこれをなだらかに克服し得る、解決し得ると、こういうふうに見ておるわけです。まあ、その克服が終わった時点、これが新価格体系の形成される時点である、そういうふうに見ておるわけであります。  第三の時期となりますと、これはその新価格体系の上に立ちまして経済政策運営を行なう、もう再び物価狂乱というような状態は起こさない、また国際収支、これは非常に重大な局面になっておりますが、これの健全性を堅持する、また、そういう中におきまして、まあ福祉社会実現ということを主軸とした国づくり施策を策定していく、まあ長期短期の両面にわたっての方向づけを行なわなければならぬ、かように考えておるわけであります。  今日この時点は、まさに私がただいま申し上げました第一段階、それから第二段階への移行の時期に移りつつある、かように考えております。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 いまのお話しは、おおむね原則論的なニュアンスが強かったと思うんですが、端的に言って、総需要抑制政策金融引き締めの効果が浸透をして、政策手直しをして弾力的な運営をやる時期に近づいたと、あるいはそれがもう到来したと、そう判断されておるのかどうかと、こういうことなんです、一口に言えば。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その点になりますと、私はそうは考えておりません。総需要抑制政策は依然として堅持すると、ただ、その与えられた任務は変わってきておるわけです。いままでの段階におきましては、物価狂乱状態克服するところにこの総需要抑制政策任務がある。また第二段階、これからの数カ月の段階における総需要抑制政策、その任務は、新価格体系秩序正しく形成していく、そのワク組みをしっかりとっていく、こういう任務を持つと、こういうふうに考えておるわけであります。ただ、そういう第一、第二というような段階を通じてみまするときに、特に第二段階になりますると、景気鎮静化というものが非常に顕著になるであろう、そういう際におきましては、これは局所的な手当てということは考えなきゃならぬ。たとえば中小企業の問題、そういうような問題が深刻になってくる、これを予想しております。それに対しましてはそれ相当の手当てをする、しかし総需要抑制政策というこの基本的な姿勢は、これはいささかもこれを変更するということは考うべきではない、こういうことでございます。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 だから、一口に言えば、オーバーキル等によって倒産が起こっているような部面については局部的な対策をとるが、総需要抑制政策金融引き締め政策等の基本的な方針は当面なおこれを続けると、変更する意思はないと、こういうように理解してよろしいんですか。
  14. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりでございます。総需要抑制政策は微動だもするわけにはまいらない、これを堅持してまいる、こういう考えでございます。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、次に国債政策について少しお伺いしたいんですが、四十九年度の国債発行予定額は二兆一千六百億円で、前年度当初予算の二兆三千四百億円に比べて千八百億円の減の二兆一千六百億円で、依存率も四十八年度当初の一六・四%に比べると四十九年度は一二・六%と、まあ低めになっておるわけです。しかし、四十八年度補正が行なわれましたが、補正で五千三百億円減額になっておりますの交結局四十八年度は一兆八千百億円国債発行、で、依存率は一一・九%となっております。これに比べると、四十九年度は四十八年度を上回ることになる。さらに、この二、三月の租税収入が好調であるから、四十八年度の国債はなお減額されることもあり得るのではないかと思います。そこで、四十八年度の国債発行額は最終的にはどの程度になるのか、また、四十九年度の国債発行額は四十八年度に比べて多過ぎるとはお考えになりませんか、この辺をお伺いいたします。
  16. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国債発行額は、昭和四十九年度におきましては私はかなり減らしたかったんです。その減らす道は、まあ歳出削減という問題があるわけですが、そういう意図を持ちまして、歳出は私としてはできるだけの削減をしてみた。  もう一つ国債発行ということを考えますときに問題になりますのは、いわゆる二兆円減税であったわけであります。この減税規模を縮小する、そういうようなことによりまして、まあ国債発行額、これを減らしたい、こういうふうに考えたわけでありますが、この税のほうは、昨年の秋口その構想が発表され、一部には批判がありましたものの、国民大多数はこれを歓迎し、そして大いに期待を持ったわけなんです。その国民の期待するところの減税を取りやめる、あるいは手直しをするということになると、またこれは政治的に見ていかがであろうかと、こういうふうに考えられ、まあいろいろこれは利害得失を検討してみたんですが、結局、この税のほうだけは、これはいわゆる二兆円構想というその数字をひとつ実現しようということに決断をいたし、したがって大規模公債発行を予定せざるを得ないと、こういうことになりましたので御指摘のようなことになり、まあ前年度、つまり四十八年度の当初予定額に比べれば、これはまあ額におきましても、あるいは財政に対する依存率からいいましても、減らすということにはなったものの、四十八年度の国債発行実績というか、まだ全部固まってはおりませんけれども、補正予算編成段階における実際上の予定額と比べますと、まあ額におきましては、まさにお話しのようにふえるということになり、ただ、依存率におきましては大体同じようなことでありますが、そういう状態になったわけであります。いま御審議願っておるこの予算、これをこの段階におきまして手直しするということは考えてもおりませんし、また、申し上げることは適当でないと思いますが、まあ昭和四十九年度の予算、これの運営等を通じまして経済をなだらかにいたしたい。私は経済状態というものをだんだん正常化できると思います。それと見合いまして、五十年度以降におきましては漸減方針を堅持してまいる、貫いてまいりたい、かように考えております。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 この税の二兆円減税との関係もあるとは思いますが、総需要抑制を当面の最大の政治課題としておる政府が、公共事業費を対前年度横ばいの二兆八千億円台に抑制した四十九年度、この予算の性格からすると、国債発行額はせいぜい前年度並みにすべきではないかと――前年度の実績並みですね、当初でなしに、すべきではないかと、こういうことを私は申しておるわけです。  それから、国債発行に伴う経費というべき国債費ですね、この推移を見ると、四十九年度は八千六百二十一億円で、一般会計歳出総額の五%になっておるわけです。建設国債が始まった四十一年度は〇・九%であったことを考えると、国債発行について見直すべき段階に来ているのではないか。私は、これは国債費観点から見て、一般会計予算の五%も占めるようになった今日の段階では考え直すべき時期に来ておるのではないかと思うが、どうでしょうか。
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国債費がふえていくという状態は、これは財政とすると非常に不健全な状態だというふうに思うのです。それにいたしましては、どうしても国債発行額を減らさなきゃならない、こういうことになろうかと思います。いまとにかく先進諸国財政状態と比べましても、わが国国債依存度というものは非常に高い、これはどうしても五十年度以降におきましては漸減方針を貫徹していかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。それは私は、かじの取り方いかんによってはできると思います。現に、昭和四十一年度国債が本格的に発行になった、それを見ておりますと、かなりそういう方向になっておるわけであります。四十一年度はまあ不況の年である、そういうので七千三百億円の発行予定。四十二年度はその不況の残滓が残っておる、こういうので八千億円が予定された。しかし、次の続く三年間におきましては、六千四百億円になり、さらにそれが四千九百億円になり、さらに四千三百億円になり、私は国会におきましても、来年はどうするかという、もうなくすのかという質問まで受けたような状態であります。それ以降におきましては、ほとんど公債発行せぬでもいけそうな状態であったわけでありまするが、特に四十七年度になりますと公債発行額が一挙に激増いたしまして一兆九千五百億円、そういう規模までなってきたわけであります。四十八年度にはさらにそれがふえて二兆三千四億円、四十九年度になりまするときに、これをまあとにかく四十八年度よりは減らそうというので、四十八年度の予算よりはとにかく額においても減額をする、また依存度におきましてはこれを大幅に引き下げるというふうにいたしました。今後国債費というような硬直要因、これをふえることを防いでいかなければならない、そういうことから、公債漸減方針、これをぜひやっていきたい、かように考えております。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 かつて財政制度審議会が、この国債依存率を五%を目途とするように答申を行なって、四十五年度予算では五・四%、それから四十六年度予算では四・五%と依存率が下げられたことは大臣も御承知のとおりだと思います。私は必ずしも機械的に何%かといってきめてかかることがいいかどうか疑問がないわけでもありませんが、しかし、この辺で中期的に見た国際依存度を検討して、そういう検討された目標に向かって努力する必要があるのではないかと、こう思うわけですが、いまの御説明で、五十年度以降漸減方針ということはわかりましたが、かつての財政審議会答申の五%を目途というようなことを中心にお考えになっておられるのか。現在は一二%から一四%ぐらい、高いときは二八%くらいですが、その辺はどのようにお考えでしょう。
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、過去におきましても、公債発行政策をとりましてから五%水準まで下げるというのに五年を要しておるわけであります。今後はこの激動後の経済情勢が一体どうなるか、また、どういうふうに経済を誘導しなければならぬかという長期短期の見通しというか、方針をきめなきゃならぬ、こういうふうに思うわけでありますが、財政運営として公債発行目標というのはやっぱり最終的には三-五%というところじゃないかと思います。私はそういうところへ公債発行額というものを持っていきたい、なるべく早く持っていきたいが、それはまあ、いまとにかく非常な混乱状態だと、それを克服した後の経済情勢、そういうものとの見合いをとって考えてみなきゃならぬ問題だと、そういうふうに思います。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 大体蔵相のお考えがわかってきたわけですが、さらに念のために申し上げてみますと、国債財政政策の手段として使う必要性があることは私も全面的に否定するわけではありません、これは認めております。しかし、その運営に節度が必要なことは、いま大臣の御答弁にあったとおりです。政府として公共事業費も含めて――公共事業経費ですね、これも含めて経常収支経常収入でまかなうという、そういうように漸次改革していくべきではないかと思うんです。現在、ややもすると、公共事業費国債でまかなうことを当然とするような傾向が見られるし、これは考えてみる必要があることは当然だと思います。さらに、財政法例外規定として国債発行を認めて、その対象を公共事業費出資金及び貸し付け金としているために、そのためなら国債発行して財源を調達することが当然といった、目的財源、ひもつき財源的な考え方がきわめて濃厚だと思うんです。この点、私はやはり改めるように漸次改革していかなければいかないんではないかと、こう思うんですが、いかがでしょう。
  22. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その点は私全く同感であります。財政法国債発行限度につきましてワクをはめてございます。こういうので、まあ投資的経費と見合う額だと、それが限度だということで、まあ規定があるわけでありますが、これはあくまでも限度額を示すものだ。これからどういう経済上の推移があるかわかりません。わかりませんが、景気が非常に落ち込みまして、いま総需要抑制政策をとっておりますけれども、逆に総需要喚起政策、そういうものも必要だということがあるかもしれない。そういう際には、まず公債発行するという姿、これはまあ有力な手になってくるわけでありますから、その際には国債増額発行ということもあり得るわけなんです。そういう状態があることは好ましくはありませんけれども、そういうことを考慮いたしまして、とにかく発行し得る限度はここまではいけるぞという財政法規定は、私は規定としては存置したい。しかしながら、その運営の精神は、限度額まで発行するのが常識だと、こういうような考え方、これは払拭しなければならぬ考え方だと、かように考えております。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 この国債依存率とも関連することですが、現在の経済社会基本計画、この九七ページを見ますと、財政収支バランス表が出ておるわけです。これを見ると、四十七年度の実績見込みで三兆円の赤字が、五十二年度には二倍の六兆円に拡大することに見込まれておるわけですね、この計画でいくと。この投資拡大型の経済運営が再検討されなければならない時期に、このような大規模赤字拡大収支バランスが破れていくことは、これは問題だと思うんですが、この経済社会基本計画の基本的な財政バランス考え直さなきゃいかぬのじゃないかと思うんです。
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 確かにそれは問題です。ただ、経済社会発展計画は、成長率実質九・四%にすると、非常に高い成長を前提としての考え方です。ですから、財政にもその考え方というものが反映がされておると思いますが、これからの世界情勢の中での日本経済財政運営ということを考えますと、まあ実質九・四%成長なんというのは、これはもう考えられません。でありまするから、私は、経済社会発展計画、そういうような種類の長期計画、これは根本的に出直しを必要とすると、こういうふうに考えております。私が先ほど、第三段階においてはこれからの経済長期短期にわたってどうするかということが問題になる、こういうふうに申し上げた。まさにその際ですね、これは洗い直し、出直しをさるべきではないか、こういうふうに考えております。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 たまたまいま大蔵大臣経済社会基本計画全面的改定必要性を認められたわけですが、私は全くそれは同感ですが、従来の高度経済成長政策から福祉型経済へ転換していくという場合、五十二年を目標年次とする現在のこの経済社会基本計画改定というよりも、むしろ、いま第三ラウンドということに関連しての御発言でしたが、そういうことをお考えになるならば、新しい中期計画を策定したほうがいいんではないかと思うんです。特に石油や農産物など、この資源問題が起こり、さらに国際収支は新しい時期を迎えておる、国際収支も新しい段階に来ておる今日、この経済成長国民生活に大きいかかわり合いが、いままでより、この経済社会基本計画に示されておるよりも、もっと違った形でいろいろなかかわり合いが出てきておると思うんですね。そういう意味で、現在の基本計画改定というよりも、むしろ新中期――これは五十二年ですから、もうすぐですね、現在の計画では。それよりもむしろ新中期計画を新たに策定されたほうがより合理的ではないかと、私はそう考えるんですが、大臣はいかがでしょうか。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私もそう思います。名前を変えて、社会経済発展計画だとか、いろいろ名称は別といたしまして、実質出直しというところでなきゃならない、かように考えます。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 たまたま先ほど大蔵大臣が、現在の計画のような九・四%というような高い成長を続けることは困難だということを言われましたが、事実、あの蔵相財政演説でも、「これまでのような高い成長を期待することはできませんし、また、それは適当でもありません。」と、こう財政演説で述べられているわけですが、全く私も同感です。そこで、私は成長率ですべてを律するわけではないけれども、最近、経済企画庁長官が、成長率は今後六、七%ぐらいが適当ではないかということを述べられたようです。これは新聞記事ですからどこまで正確かわかりませんが、述べられたようですが、しいて何%ときめてかかることがいいかどうかも疑問ですが、実質九・四%が高過ぎるとするならば、おおよそどの程度がノーマルな状態とお考えになるのか。これはおおよそでよろしいんです。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この混乱の起こる前は、わが国は約十カ年間一〇%をこえる実質成長をとげてきたわけです。それをこれからどういうふうにするかということですが、これは私は、もうかなり低目にならざるを得ないと思うんです。物価の問題を考え、また国際収支のことを考え、またそれから国づくりを産業中心から社会建設中心と、こういうふうに持ってくる、そういうことを考えますときに、やはり企業中心、企業主導型から財政主導型というか、財政が軸になって社会建設を行なう、こういうような方向になってくる。そういうことになりますると、かなり成長の速度というものはにぶってくる。私は、目標というものは、これはもう世界の中の日本経済でありますから、世界情勢を無視することはできないと思うんです。いままでは世界経済の二倍半近い速度の成長をしたわけですが、これからの日本経済というものは大体国際水準を目安にしての発展だと、世界情勢を見ながらその辺を目途にしてかじとりをしなきゃならぬ、かように考えております。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 これは政府委員の方でもよろしいんですが、現在の世界の平均的成長率というのはどのくらいでしょう。
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、ことしは石油問題がありまして、非常に異常な状態であります。ゼロ成長というような考え方をとっている国もある。あるいはヨーロッパ諸国なんか二、三%程度、その辺のことを考えている国も多いわけです。アメリカが二%成長だ、あるいは三%、四%、その辺を浮動しておりますが、まだ固まった考えというものは育っておりませんけれども、非常にことし、この年度は低目になっております。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 この数年来の平均成長率は。
  32. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 成長率は、大体一九七一年、七二年を中心にして申しますと、特に七二年でございますと、アメリカが六・一%、イギリスが一・五%、西ドイツが三・〇%、フランスが五・六%、イタリアが三・二%、カナダが五・五%というのが実質でございます。それに相応する日本実質は八・九%でございます。  なお、OECDが七三年、七四年について実質の見通しをつくっておりますが、わが国については一一%の見通しをつくっております。アメリカが六%、イギリスが六・七五%、西ドイツが六・二五%、フランスが六・二五%、イタリアが五・二五%、カナダが七・二五%といったのが七三年でございます。七四年につきましては、日本を七・五%と見通しております。アメリカが二・二五%、イギリスが三・五%、西ドイツが三・二五%、フランスが五・五%、イタリアが七・二五%、カナダが五・五%といった見通しをつくっております。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま混乱前十年間の各国の国際比較が出ておりますが、それでいきますと、日本が一〇・四、一九六三年から一九七二年までの十年間ですね。日本が一〇・四、アメリカが四・一、イギリスが二・六、西ドイツが四・五、フランスが五・七、イタリアが四・六、こうなっております。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 大体西欧の平均水準というと、最近オイルショックのあったあとは別として、それ以前を見ると、かなり高目に見ても平均五、六%ということのようですが、経済企画庁長官は六、七%と言われたようですが、大体その辺ですか。
  35. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その辺というか、過去のじゃなくて、これからの世界経済が、石油問題がこういうふうになってきておると、その他資源もだんだんとむずかしい段階になってきますが、そういう状態下において世界各国はどういう水準政策をとっていくか、その辺に肩を並べる必要があるんじゃないか、そういうことであります。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 これは私、しいて何%と大臣に言わせることは無理のようですから、これは言いませんが、大体オイルショックのあとの経済状勢を見ると、そう高い成長はできないと、結論的にはこういうことですね。
  37. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりです。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 それではその次に、時間もあまりないようですから、貯蓄問題ですが、貯蓄が総需要抑制物価安定のために必要であることをしばしば大臣は力説されておるわけですが、これは長期短期通じてとられる政策と、こう理解してよろしいですか。
  39. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは長期短期、貯蓄の増強というものは、わが国といたしましては経済運営中心的課題中心施策でなけりゃならぬと、そういうふうに考えております。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 長期短期を通じてというお話しですが、これを長期的に見れば、貯蓄を奨励することが直ちに物価安定につながるとは言いにくいんではないかと、こう思うわけです。その理由は、世界一高い貯蓄率を誇ったわが日本物価が、これは消費者物価でありますけれども、長期にわたって西欧先進諸国より高い上昇率で推移しているということは、これは立証済みであります。これは消費者物価のことであります。卸ではありません。わが国の高度成長は、国民の勤勉さと同時に、貯蓄性向が世界でもまれに高いということが企業の資本調達を容易にしたことでもあると思います。したがって、貯蓄増強は、実は需要をつくり出す有力な武器という一面もあわせてこれは持っておったと思うし、需要が起これば物価が上がるのはこれは当然だと思うんですが、この点はどうでしょう。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、経済国民需要の増減で大局的には動いていくわけでございますが、国民需要の中で国民の消費、これが半分以上の構成比、そういうふうになるわけでありますから、その需要が一体どうなるかということは景気状況にも非常に影響がある問題であることは、いま羽生さんの御指摘のとおりです。しかし、私が長期短期にわたって貯蓄政策は重要な施策であると、そういうふうに申し上げておりますのは、これはやはりいかなる段階の時期におきましても、つまり不況期、好況期におきましても、他の諸外国に比べますと、わが国は資源がないんです。この資源のない国を、どういうふうにして諸外国と肩を並べ、あるいはそれ以上に発展さしていくかということを考えまするときに、日本国民一人一人が諸外国よりはよけいに働いて、よけいにこれを成長発展のために使い得る状態に力を提供するということでなければならぬ。その手段というものはいろいろありましょうけれども、私は、国家が介入して貯蓄を増強する、そういう手段は好ましくない。やはり国民の自発的な努力、自発的な動向と、そういう中においてそういうことを実現をしていくということが最も妥当である、こういうふうに考えまして、貯蓄の増強というものは、好況、不況にかかわらずこれは大事な問題であると、そういうふうに考えております。不況時におきまして一体それじゃどういうふうに貯蓄を景気政策に使うんだと、こう言えば、国民一人一人が家庭生活を通じて消費をするという消費増大政策をとるよりは、常のごとく国民は働き、かつその余剰を貯蓄をする、その貯蓄した資金は、先ほど話が出ましたが、公債政策財源等といたしまして、国家が国家的目的、しかも景気対策として有効なる方途にこれを活用するというほうが、いかばかりか景気政策に有効であろうかと、こういうふうに考えておるわけであります。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 それで、貯蓄問題を長期観点から見た場合に、それが物価安定に果たす役割りという問題もありますが、問題は、貯蓄された金がどういう方面に使われるか、これが私、より大切であるし、長期的にも意味があると思うんです。これは、貯蓄された金の使途ですね、使い道をあわせてやはり検討すべきではないか。貯蓄そのものを私否定するわけじゃないんです。その使い方が問題だということを申し上げておるんですが、いかがでしょう。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、好況時に貯蓄が行なわれる、その好況時におきまして集められた貯蓄による資金、これを国家的にどういうふうに活用するかということになると、社会福祉、そういう方向へこの資金というものは、よりよけいに活用せらるべきである。それから不況時において集められた金はどういうふうにするかということですが、福祉政策をないがしろにするわけにはまいりませんけれども、これは公共事業費財源等に充当する、あるいは設備投資の財源等にこれを充当するという経路を通じまして景気の刺激という方向に使われる。この貯蓄による資金、これは景気動向、また国策の方向をにらみながら慎重にきめていかなきゃならぬ問題である、こういうふうに考えております。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 日本の投資主導型経済といいますか、設備投資と、それから公共投資なんかを含めて、両方を合わせたものを私はいま投資主導型経済と呼んでおるんですが、そういう場合に、貯蓄された金が企業に主として回って、それが大きな役割りを果たしてきたことは、過去の事実がこれを証明しておると思うんです。そこで、いまも大臣からお話しがありましたように、社会福祉方面にもできるだけ使うということが重要だと言われましたが、そういう意味で、たとえば昨年暮れのボーナス預金、それから今度の宝くじ預金等については、その使途を厳格に制限をして、各金融機関が設備投資に回さないように義務づけることもまた必要ではないかと思うんです。だから、そういう特に長期型の貯蓄については一定比率は設備投資には回さないというような制約もあっていいんではないかと思うんです。そして、そういう余剰の部分を住宅建設等の資金に極力回していくという、これはさっき大臣は社会福祉にとおっしゃいましたが、それに共通するわけですが、そういう全体として、ただ貯蓄をすればいいという従来のパターンから、貯蓄された金がどういう方面に使われるかということを重く見る方向政策を徐々に変えていくべきじゃないか――徐々にじゃない、大いに変えていくべきじゃないか、特にその場合住宅政策等に優先的に資金づけをしていくということが必要ではないかと思いますが、この辺はいかがでしょう。
  45. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まさにそのとおりで、貯蓄された金は一方において財政財源となる、つまり公債ですね、財源になっておるわけです。この公債発行したわが国財政、これは一体どういうふうになっているかというと、まさに社会事業費におきましては三六%の増額をすると、しかし、公共事業に対しましてはこれを前年度横ばいとすると、こういうふうな資金配分をやっておるわけです。それから金融政策につきましては、選別融資、そういう方向で社会福祉あるいは教育あるいは住宅、そういうものには優先的にやりますが、設備投資、そういうものにつきましてはこれを極力抑制するという方向でやっています。あるいは羽生さんはそれを法定すべしというような御意見かもしれませんが、法定することは妥当でない、こういうふうに考えます。金融政策はそんな硬直した制度のもとでは、運営はこれはもうできません。これは機動的な運営を必要とするというところで、大蔵省も金融行政の範囲内において、ただいま御指摘の点は十分実現できると、こういうふうに考えております。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 念のため申し上げておきますが、私は法定ということを言ったわけじゃないんです。それは選別融資でもかまわないんですね。何らかの政策的誘導を、より強固にやるべきではないかと、こういうことを申し上げておるんですから、そのつもりで……。
  47. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういう御趣旨でありますれば、まさに私はそのとおりに考えております。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 終わります。
  49. 神沢浄

    神沢浄君 私が御質問を申し上げるのは、別に高度な財政政策というような見地からのものではありませんが、しかし、私は私なりに、過日の二十八日の一般質問の際にも取り上げたんですが、時間があまりなさ過ぎるために、まあきわめて何か総論的な応酬でもって終わってしまっておりますので、きょうは少し各論的にお尋ねをいたしたいと、こう思うんです。  というのは、北富士演習場にかかわる例の二百十ヘクタールの国有地の払い下げの問題なんです。私は、あの問題の経過を通じて、どうしても不安が感じられてならないのでありまして、その第一は、軍事政策が優先をして、住民の権利、それどころでなしに、法律や制度までないがしろにする、いわば行政の秩序や倫理というようなものまでが、もうないがしろにされておる、言うなれば非常に危険な戦前の軍国主義的な体質みたようなものが芽を出しかけてきているではないか、戦後、シビリアンコントロールなどということを言いながらも、実際は全く骨抜きになってしまって、たいへん危険な方向というものが台頭しかけてきているのではないか、こういうような点をそれなりに重大に考えますから、まあちょっと執拗くらいに取り上げてみたいと思うわけなんですが、そこで、一般質問の際にそのことについてお尋ねをいたしましたところが、大臣は、まあこれは特例中の特例だということをおっしゃっておられるわけなんですが、その特例中の特例と言われた意味と、それから背景というようなものを少し具体的に、まずお尋ねをしてみたいと思うんです。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 北富士演習場につきましては、私から申し上げるまでもなく、これはもう長い間のいきさつがあるんです。これはまあ皆さんにも御心配をかけたんですが、しかし、政府におきましてもたいへん長い間苦慮してきた問題です。それがまあ田辺山梨県知事の御協力もありまして、大体目安がついた、こういうことになっておる。その目安は、内容的にはまあ国有財産の処理の問題にも関連してくる、こういうことになるわけであります。普通、国有財産の処理をきめるときには閣議に報告をするというようなことはいたしませんけれども、そういうむずかしいいきさつを経てきた問題、それをまあこの経過も報告しなきゃならない、その経過と、その妥結に至った内容というものも報告しなきゃならぬ、そういうようなことで、閣議にも――これは異例なことです。過去においても二、三の例はありましょうけれども、そうめったにはないでしょう。それまでの手続をとって政府の姿勢をきめ、その姿勢の上に立ってこれを国有財産中央審議会に移すと、こういう措置をとったわけであります。まあ、これは国有財産の処理とすると非常に慎重な手続を踏んだ、異例な手続を踏んだ、こういうふうに考えております。
  51. 神沢浄

    神沢浄君 過日の応酬の中でも、大臣自体もおっしゃられておるのですけれども、国有財産の処理についてはこれはみだりに処分をすべからず、むしろ国有財産をふやしたいくらいの気持ちでもって行政に臨んでおると――これは私は会議録から書き上げてきてあるわけなんですが、ごもっともだと思うのです。それで、特例中の特例ということばがそれに続いて出ているわけなんですが、環境庁の長官にお伺いをいたしますと、それこそ富士箱根伊豆国立公園のどまん中で、日本の自然景勝を代表するような富士のふもと、これは国民のための保健休養の場所等にすることがもちろん望ましいというような意味を言われておるわけなんです。文部大臣は、国民の中には教育環境というふうな点から、いまの大都市などにごみごみと集中さしておくよりも、むしろ富士岳麓等は絶好の場所ではないかということについては、やっぱり同感の意を表せられてはいるわけです。私は、国家的な見地から考えてみましても、確かに、いま最もわが国にとって大切な環境の政策、あるいは文教の政策的見地、これらから見ても、あそこの目抜きの重要な国有財産をみすみす一団体に売り払ってしまうというようなことは、これはまあいかに特例中の特例か知りませんが、それこそ大臣のおっしゃるように、みだりになしてはならないことだというふうに考えているわけでありますが、大臣は、この問題が起こりました際、閣議の――昨年の三月三十日ですから、大臣はそこにおいでになってどういうふうな説明を受けられたか存じませんけれども、大体内部的な取りきめというようなものがされましたのは、一昨年の八月ごろの時点ですから、このときには大蔵大臣は閣内にいらっしやらなかった。ですから、その当時の事情というようなものは、私は大蔵大臣はよく御存じないのだろうというふうに私なりに考えているわけであります。  この八月時点の状況というのはどういうことだったかというと、例の民法六百四条を政府もお認めになって、したがって法律上では演習場にかかわるところの県有地は山梨県に戻ったわけなんです。その県有地を再使用しなければならないという立場は、これは国側におありになっただろうと思います、私どもの考えは別ですけれども。そこで、その目的のための交渉を急ぐのあまり、何か巷間言うところによると、九月上旬に田中総理がアメリカへ行かれてニクソン大統領と会われるような予定も目の前にありましたし、そういうふうな時点であるだけに、かなり慎重さを欠いた県との折衝というものが進行してしまったという、こういう事実があるようであります。  ちなみに申し上げますが、この国有地払い下げの問題もあとから各論的にお尋ねをしたいと思うのですけれども、これもさることながら、たとえば基地周辺整備事業などの約定につきましても、従来大体あの付近は、年間二億五千万くらいの予算規模の事業というものが行なわれていたところであります。しかし、それに対しても、五年間に百三十億を消化をしようというようなこういう取りきめは、これはもう三月三十日の閣議の了解の事項の中に付記をされておりますから御存じだろうと思いますけれども、あわせて、いまやはり先国会から継続になっております富士保全整備法の問題だとか、こういうようなものが、もうすべてこの県有地再使用とあわせて、自衛隊への使用転換という国側の目的のために、県の言い分といいますか、地元の思いつくままの主張というようなものが持ち出されてきたものを、ほとんど、うのみにのみ込んだような経過というのが私は実態だろうと、こう思うわけであります。ですから、そういう事態の中から問題がいろいろと派生をしてきていると思うのでありまして、当初から非常に無理があった、こういうことではないかと、こう思うわけであります。  そこで、演習場の除外部分になりました二百十ヘクタールの払い下げにいたしましてもそうでありますけれども、この起因するものは、これはもう二十八日の質問の中でもちょっと申し上げておいたところでありますが、この払い下げの元になっておりますのは、四十五年に防衛施設庁と恩賜林組合との間に覚え書きが取りかわされておりまして、その覚え書きの内容というのは、ごく端的に言いますと、一つの取引的な密約なんですね。当時、恩賜林組合は自衛隊の演習場使用の違法性をついて裁判をしていたわけなんですが、これがどうも政府側に不利だという情勢があったわけです。同時に、恩賜林組合は、自衛隊の使用転換には反対の姿勢をその当時は示していたわけです。ですから、これをまあ何とか押え込もうということでもって、施設庁との間にいろいろな折衝が行なわれて、その結果、覚え書きの中に――ここに持参もしてありますが、文書を読むまでもありません、これははっきり書いてあります。裁判を取り下げて自衛隊への使用転換に賛成をしてくれるならば、恩賜林組合の希望する百五十ヘクタール以上というような表現になっておりますが、現在の百三十八号線沿道のその地帯を――いわゆる梨ヶ原、檜丸尾、土丸尾というような地帯でありますが、この地帯を払い下げをするために防衛施設庁としては積極的な協力をするという、これは甲対乙の、これはどう読んだっても取引であります。この取引のその条件が、申し上げました八月段階でもって持ち出されて、そして一つの条件として政府側がのみ込んで、したがって、のみ込んだ以上は実行をしなければならぬもんですから、四十八年三月三十日の閣議了解の中の一事項に発展をしているわけであります。それを裏書きをするように、同じ三月三十日に恩賜林組合議会は何をきめておるかといいますと、裁判の取り下げをきめているわけであります。  こういう経過、事実の上に明らかなように、これはあくまでも政府側には政府側の言い方というものもあろうかと思いますが、要は、自衛隊への使用転換、それから県有地の演習場としての再使用という目的のために――大臣もこれまでの質問の中では、審議会にもはかるし、これは国有財産の処分というものは非常に重大なことだから、そういう所定の手続というものを踏まなければならぬということをお答えいただいているわけでありますが、それもこれもない、とにかく自衛隊への使用転換、県有地の再使用というところへだけ照準を置いて、その他のことはほとんどもう配慮もなしに政府側がのみ込んだ結果がいまあらわれ、だから、いろいろとつじつまの合わないようなことが生じてきておる。こういうような事情経過というものが、大臣の言われるところの特例中の特例として取り上げなきゃならぬというような点に、いま私には非常に理解がつかないところがあるのでありまして、私は特にこういう点を大臣に申し上げておりますのは、おそらく、一昨年の八月時点における政府対県との折衝段階でのつまびらかな事情というのは大臣は御存じでなくて、三月三十日の閣議でもっておきめになる当時、一応の取りまとめたような御報告をお聞きになって、そういうような御認識の上に立っておられるのじゃないかと、こう思うわけであります。したがって、私がこれからややこまかい点にも触れてお尋ねをしてまいりたいと、こう思うのでありますが、そういう質疑の応酬等をぜひ大臣もお聞きをいただいて、まだ大蔵省の段階に入っておるというのでもないようでありますから、今後の処理等については、これはほんとうにひとつ慎重に対応していただきたい。ことに、大臣が現内閣のだれが見ましても最大の実力者であるというようなことも私は考えまして、重大なことだけに、ぜひひとつ慎重に対応をお願いをいたしたい、こういうことを申し上げて、少し前置きが長くなりましたけれども、質問を進めさしていただきたいと思います。  これは恩賜林組合に払い下げるという方針でおられるようですが、これは正式にはいつごろそういうことがきまっておるわけでしょうか。というのは、昨年のやっぱり予算委員会の同じ分科会で、その点にちょっと触れましたらば、まだ正式にきめているわけではないと、こういうお答えがなされているわけなんです。会議録にもそう出ております。したがって、つい先ごろの一般質問の際には恩賜林組合という名前がはっきり出ておりますから、いつ御決定になっておるのか、その点から入りたいと思います。
  52. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) 昨年の当分科会等におきまして、当時の大蔵省政府委員から、現段階では恩賜林組合だという御答弁を申し上げたと思います。情勢はそのとおりでございます。
  53. 神沢浄

    神沢浄君 昨年の分科会の際に、恩賜林組合と決定をしておるとは言われてないですよ。そうすると、あのときお答えがあったままの状態で今日までその状態が続いておると、こういうことですか。
  54. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) そのとおりでございます。
  55. 神沢浄

    神沢浄君 そういうことでいいですね。そこで、払い下げの場合には、これは閣議了解事項の中に書いてあるのですが、林業再建整備事業というのがこの目的にうたわれているわけです。林業再建整備事業というのは、具体的にはどういうことだという説明をいただきたいんですが。
  56. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) 通常の理解では、造林事業を営むということであろうと考えております。
  57. 神沢浄

    神沢浄君 まあその辺に問題がまず一つありますし、造林事業というものを営むために、その的確な地勢、地理の条件であるかどうかという現状の御認識がおそらく十分おありだとは思いませんが、山中湖、河口湖を結ぶ国道百三十八号線の直接沿道でございまして、とてもそれは林業の適格地であるというところではございません。まずその点が一つ。  それから、造林ということだけならば、それは造林という簡単なことばでもって表現されればよかったじゃないかと、こう思うのですが、林業再建整備事業と、とにかくまことに持って回したような、わけのわからない言い方をされておるんですけど、何かその辺には含みがあるように私は考えるのですよ。造林なら造林、まことにわかりやすいことばなんです。したがって、この林業再建整備事業というのはどういう意味を持っておるのかという点が、まず疑問になります。造林だけじゃ私は御説明にならぬと思いますがね。
  58. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) 御質問のように、当該あの地域におきまして、通常生育できる樹種がかなり限定された樹種であるということは私承知しております。気候のせいもございましょうし、それから地盤のせいもあるようでございますけれども、限られた木になるということは承知しておりますけれども、先生よく御案内のように、山梨県における林業というのは、ある意味では非常に歴史のある林業でございまして、あの地域の林業が林業として成り立たないというふうには私は理解いたしがたいのでございます。
  59. 神沢浄

    神沢浄君 確かに木がはえてますからね、あの地域にも。したがって、あそこで林業をやるということが成り立たぬことはないでしょう。しかし、私がお聞きしておるのは、あれだけの目抜きの場所の国有地を、繰り返すようになりますけれども、これをわざわざその一団体へ払い下げてしまう。その払い下げてしまうところの目的というのが林業再建整備事業と、こういうことになると、これはかなり国家的に考えても重要な事業であるべきですよね。私の聞いたところでは、こういう説明をしているんです。県などにおいてはですね。まあ演習場が所在をするために、この恩賜林組合の所有の林地あるいは県有林に権利を持つ部分林地、これらのものに、やはり演習場が存在するがゆえに影響というものを受けている。したがって、恩賜林組合とすれば、その影響をカバーをするために、今回除外をされた国有地の払い下げを受けて、そして林業の再建をするんだと、これが説明になっているわけなんですが、しかし、いま言われた造林できる場所だからということよりか、少し、何というか、理論的な構成が緻密ですね。しかし、苦しまぎれのその説明も、実は実情の上からいくと通らないんですよ。三月三十日、先ほど申し上げましたように閣議でもって了解事項をきめられました。それと全く待っていましたとばかりに同じ日に裁判の取り下げもきめました。それと一緒に何をきめておるかという――これはお調べになったかどうか知りませんが、「がんの穴」という、あの同じ演習場から除外をされました林地六十町歩を、六十ヘクタールを富士急行株式会社に貸し付けることをこの組合はきめているんですよ。林業経営のために二百十ヘクタールがどうしても必要だ、だから特例中の特例をもって国から払い下げをしていただくというような切迫した事情を持っておるならば、一方において同じ時点でもって六十町歩、六十ヘクタールにも及ぶような林地を観光事業の会社に貸し付けをするなどというようなことが、これはあってはなりませんですね。まことに矛盾きわまることでありまして、そういうふうに考えてみますと、このうたっておる林業再建整備事業というものはどういう意味を持っているんだろうということが何としても私にはわかりかねる。この林業再建整備事業というものを目的にして払い下げるというんだから、そういう国の考え方も私にはわかりかねる。ですから、その点をお尋ねをしているわけなんです。御説明がいただけますか、具体的に。
  60. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) すでに先生よく御承知のとおり、この地域はもと恩賜林組合が所有し、林業経営をしておった地域でありまして、それが演習のために当時の陸軍が買収をいたしまして、それで演習場になって、あった木がなくなって、ただいまのところ、何といいますか、いわゆる荒れ地になった状態になっているわけでございます。ごく狭義に考えましても、もともと恩賜林というのは、恩賜された地域に林業経営を営むということで、明治二十五年以来仕事をしているわけでございますから、そこにまた自分の事業をやるということで林業再建整備というふうに理解してさしつかえないのではないかというふうに考えます。
  61. 神沢浄

    神沢浄君 まあ、局長を責めるのはやめましょうね。別に現状をそう御存じだとは思えません。幾ら演習場の一部であったといったって、国道の百三十八号線に直接これはもう接触している場所ですから、そんなところで演習が行なわれたわけじゃないですよ。ただ単に、それは演習場の一部にすぎなかった地点であります。その影響を受けておるわけでも何でもありません。  それから、組合有地だったという、これは組合有地もありますし、民有地もありますし、いろいろなものがあるわけです。そういう縁故関係からいくと、もっとあとから私はその点にも触れていくつもりでおりますが、そういう縁故関係というものからたどりますと、そこには入り会い慣行を持っておる集落、村などもあるわけであります。現に、アメリカ軍が演習場として使用しておるその時点においても、その縁故関係に基づいて一時使用許可というふうな手続をとりまして、そうして植林をやっておる団体もあります。あるいは土地を借り入れて耕作をしておる団体もあります。あの土地の中には、そういうようなものが幾つもあるんです。現に、植林のため、当時のアメリカ軍演習場の一時使用許可が競願になりまして、この恩賜林組合も、それから忍草入会組合、あるいは新屋の入会組合なども、みな競願をしたのですが、忍草の入会組合が植栽地の認可を得、新屋の入会組合が耕作の認可を得、したがって縁故関係からいけば、その競願の中においては恩賜林組合のほうがこの関係は遠いものと判断をされておるような事情もあるわけなんです。だから、縁故関係というふうなことは、これは理由にはなりません。ですから、あまり地域と事情というような点について、そう御存じにもなっていないようでありますから、これ以上お尋ねすることはとどめますが、まあいまのような状況にあることだけは、これはひとつ御認識をいただいておきたいわけなんです。  次いで、まあ払い下げをする場合には、当然これは随契だと思います。そうおっしゃっておられますね。昨年お尋ねしたときにも、そうおっしゃっておられる。それは、その随契は、こうおっしゃっておられるんですよ。予算決算及び会計令の九十九条の二十一で、公用として払い下げる、こう言われておるわけなんです。この公用というのが、またちょっとわからないのでありまして、その際に、何か公共団体が使うから公用だと。なるほど、恩賜林組合というのは一部事務組合の性格を持っておりますから、地方公共団体でもあります。ですから、公共団体が林業に使おうと何に使おうと使うから公用だと、こういうことになりますと、これは法律では規制できぬようになりますね。とめどもなく、どこへでも解釈というものは広がっていってしまう、こういうことにもなる。私は、この公用というようなものが、そんなことがこの事例にかかわらず援用されていくというようなことがあったとしたら、これは重大なことだと思いますので、この際念のためにお尋ねをするんですが、公用ということについてはどんなふうにお考えになっているのでしょうか。
  62. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) 先ほど先生のほうからお話しがございましたように、この恩賜林組合は地方自治法に基づく一部事務組合でございますので、その行ないます事業に対しまして必要な土地を払い下げるということは、いわゆる公用目的をもって処分するということに相当いたします。
  63. 神沢浄

    神沢浄君 まあ、法律の条文に牽強付会をして御説明をされれば、そういうふうな言い回しもあるわけです。しかし、私はそういうことでなくて申し上げたいと、こう思っておりますのは、なるほどあの恩賜林組合というのは一部事務組合ではあります。ではありますが、いわゆる一般の、たとえば最近であれば、消防、清掃、あるいは社会事業的なもの、そういうような一つ目的を持った一部事務組合とは違いまして、この山梨県の恩賜県有財産というものにかかわる特異な立場でも、この一部事務組合なんですね。あれは、本来ならば、何といいますか、保護組合連合会というものなんですよ。ただ、その保護組合というのが町全体、市全体にあって、それが市や町、村と一致しておるから、したがって保護組合連合会の形式でなくて、市、村、その恩賜林の経営という目的のための性格を持って差しつかえないという、そういう特異の事情からして、あれは一部事務組合になっておる。山梨県下にも保護組合の連合体というものはほかにもたくさんありますが、一部事務組合になっておるなどというところは、あそこだけです。そういう特異なものなんです。ですから、むしろ、実態的に考えるには、この保護組合の連合会という性格でもって考えられることのほうがより妥当なんです。だから、いまあの連合会が何をやっておるかというと、いわば林業の経営ですね、それから土地の取引なんですよ。さっきも触れましたが、三月三十日は、一方においては払い下げを受けようということを言って進めていながら、一方においては六十ヘクタールを富士急行という会社へ貸し付けをきめているわけなんですね。皆さん御存じでしょうけれども、あそこに富士急ハイランドというところがありますね。何かいま収容人員では全国で一だそうでありますが、その富士急ハイランドの土地だっても、かつてあれは恩賜林組合の土地だったわけです。今日まで富士急行株式会社にこの恩賜林組合が譲渡ないしは貸し付けをした林地というのは三百ヘクタールに及ぶんですよ。だから、今度の場合なども、もし二百十ヘクタール払い下げを受けた場合に、背後に何かいるんじゃないかというようなことも、しきりに言われるのも、そういうきょうまでの経過、実績の上から、これはもう言われているわけなんです。そういうような性格を持った団体――なるほど法律上は一部事務組合に相違はありません。相違はありませんけれども、内容はいま言ったようないわゆる林業組合の連合体、こういうようなものに、たまたま一部事務組合だから公共団体だから、公共団体が必要とするものだから公用だと、三題話じゃないですけれども、そういう御説明でしょう。そんな御説明だけでもって押し通していいのかどうかということを私は実は問題にしているわけなんです。
  64. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) 先ほどの御答弁不十分でございましたので補足をさしていただきますけれども、現在では、国有財産を払い下げます場合には必ず用途指定をつけておりまして、本地の場合、通常の私どもの取り扱いでいいますと、二十年間林業のために使うという用途指定をすることになろうかと思います。したがいまして、後にだれがいるという議論は、私どもとしてはかかわり合いのないことと考えております。
  65. 神沢浄

    神沢浄君 まあ、時間がなくなってまいりましたから、その辺でおいて、次にいきましょう。  聞くところによりますと、いま大蔵省のほうへ引き渡すために測量の進行中だと、こう言うんですが――防衛庁おいでになっていますね。測量の進行状況について、まずお尋ねをいたしたい。
  66. 藤井謙二

    説明員(藤井謙二君) さきに返還されました国有地につきましては、現在当庁におきまして測量を実施中でございますが、現在のめどでは五月末までに大体測量が完了する予定になっております。測量の完了を待ちまして、大蔵省所管の普通財産につきましては大蔵省に引き継ぎいたす予定になっております。
  67. 神沢浄

    神沢浄君 五月ごろまでには完了すると、こういうことのようでありますが、私どもが仄聞をするところなんですが、測量の内容として河川敷というのが相当な面積に及ぶ、こういうようなことを聞いておりますが、いかがでしょうか。
  68. 藤井謙二

    説明員(藤井謙二君) ただいまお答え申し上げましたとおり、境界確定につきましては現在鋭意測量中でございますが、この測量の完了を待ちませんと、河川敷等の数量につきましては確定しないわけでございます。したがいまして、現在のところはまだ申し上げられる段階に至っておりません。しかしながら、現地の状況等を見ますと、先生ただいまおっしゃったような大きな面積は占めないと、かように承知いたしております。
  69. 神沢浄

    神沢浄君 この河川敷というのは、当然、これは払い下げ面積からは除外されるわけでしょうね。
  70. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) 私どももまだ調査不十分でございますけれども、この地域は、たしか富士川水系に属する水系であります。いわゆる一級河川水系でございますけれども、河川管理者のないこの演習場内にあります河川というのは、通常、普通河川、俗称ひげ河川といっておりますけれども、そういう、現在のところ、たしか河川管理者のない地域であろうかと思います。したがいまして、これは河川一般の例でございますけれども、その土地の所有権はだれにあってもいいはずでございます。これから払い下げ作業を進めてまいります段階で県とも十分に御相談しなければいけない問題でございますけれども、当然除外される、あるいは当然含まれるという段階にないということを、ただいまの状況では申し上げさしていただきたいと思います。
  71. 神沢浄

    神沢浄君 これも、ちまたの一部の声でして、どこから漏れ出すのか、測量の内容なども漏れるようでして、非常に河川敷の面積が広範にわたるんじゃないかと。これは、いま局長の御説明のように、あの辺は特異の場所でして、富士の雪水が流れ歩くときはみんな河川敷になるんですよ。かわいてしまえば、これが何が何やら、普通の土地になるわけなんですね。ですから、あの辺の河川というものの定義と河川敷の定義というのは非常にむずかしい場所だろうと思うんです。  そういう点で、たとえば――まだいずれともきまっておられぬようですから申し上げる必要もないと思うんですが、もし、この河川敷というようなものが払い下げの面積から除外をされるんだということになりますと、河川敷のきめ方によっては、これはかなり国にとりましても重大な利害が起こってくる、こういう場所だと思います。したがいまして、これはまた測量の終わりましたときの段階の話になりますが、申し上げたような点は、ひとつ事前に留意をしてほしいと思うんですよ。河川敷と言おうと何と言おうと、たとえそれが除外されていたというような場合においても、当然林地の所有者が利用できることは常識の問題ですから、そういうふうな点で、ちまたの声をそのまま伝えますと、これは河川敷が広くなって、したがって、河川敷は面積から除外されるということになれば、払い下げを受ける側の過大な利益になる、こういうようなことさえ言われているような現状ですので、そういう点はあらかじめひとつお含みをいただいておきたい点です。まだいずれとも扱いについてはさまっていないということでありますから、これ以上のお尋ねは控えておきたいと思います。  環境庁お見えになっておりますね。
  72. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) おります。
  73. 神沢浄

    神沢浄君 一般質問の際にも長官からもちょっと触れていただいてあるわけなんですが、あの土地はいままでは演習場でしたから、あそこにも問題があるんですけれども、あれは富士箱根伊豆国立公園の特別景勝指定地域の場所です。しかし、演習場であるからといって、すぽっと演習場の地域だけは指定地域から抜けている場所なんです。で、今度演習場からあの二百十ヘクタール分は除外をされたんだから、これは当然指定地域に編入をされる場所だと思いますが、その点はいかがで、しょうか。
  74. 江間時彦

    政府委員(江間時彦君) 先生がいまおっしゃっております地域は、富士箱根伊豆国立公園の区域に接しておりまして、また、公園利用の幹線道路である国道百三十八号線の沿線にも当たります。国立公園として風致の維持をはかることが適当な地域だと考えております。この地域の取り扱いにつきましては、山梨県の側におきましても、今後適正な環境保全がはかられることを希望しておりまして、公園区域に編入されるように要望してきておりますので、現在検討しております。公園区域に編入されます場合には、特別地域といたしまして、現地の風致、景観にあわせまして区分しまして、それの維持をはかってまいることにいたしたいと思います。
  75. 神沢浄

    神沢浄君 だんだん時間がなくなってきましたから少し急ぎますが、そこで、万一払い下げという場合、その場合におきましては、当然、あの地域における住民の入り会い慣行、さっきも話のついでに出たんですが、入り会い慣行のみならず、アメリカの演習場ではなくなりましたから一時使用承認は消えたでしょうけれども、しかし、植えた木はりっぱに育っておりますし、それから、耕作しておる場所などにつきましては、おそらく、どういう扱いになりますか、承認が消えたからそれで済むという簡単なことにもならぬだろうと思うんですけれども、いろいろな住民の利害関係というものがからみ合っておるわけなんですね。入り会い慣行などについては、これは昨日の質問でもって私もちょっと触れておるんですけれども、現に林野雑産物補償の問題などというのがあるわけなんです。これは政府が、江崎防衛庁長官のとき、あるいは藤枝防衛庁長官のとき、あるいはかなり何代もの施設庁の長官などの名をもって入り会い慣行を認め、将来に向かって尊重するというような公文書をもっての確認が、まことに丁寧にされている場所であります。そうなりますと、これはただ単に、たとえば払い下げを行なって済むというような簡単な場所では私はないと思うわけなんですが、そういう住民の権利関係――権利と言うと国側はいやがりますから、慣行上の関係等につきましてはどのようにお考えになっておられますか。
  76. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) 先ほど防衛施設庁の側から御答弁がございましたように、本地の測量が終わっておりません。したがいまして、現実の管理権が大蔵省側にまいっておりませんので、大蔵省としてはただいま評価作業に入っておりません。ただ、御指摘のように、立木のあることは事実でございます。それにつきましてどういう処理をするかは今後の研究課題かと心得ております。
  77. 神沢浄

    神沢浄君 まだ大蔵省の手元まで来ていないからということになればそれまでですけれども、特例中の特例として払い下げ先などは内定をし、処分の方向はすでにきまったというような際に、やっぱりそうであるならば、地元の住民の問題などもやはり同じように取り上げられていかなければ私は行政としては片手落ちだ、こう思うわけですが、しかし、まだ大蔵省の手元に来ていないということである以上、これはやむを得ないと思います。また、それはその際のことにいたしたいと思うんですが、ひとつ慎重な御留意をお願いをしておきたいと思います。  次に、あの地域に関連をして伺うんですが、東富士有料道路、東名高速と中央道との間を結ぶ東富士有料道路の路線の策定がおおむね済んだと、こう聞いておる。おそらくこの二百十ヘクタールの地域が無関係ではいられない、こう思うわけですが、そこで、おおむね済んだ路線について演習場との関係はどうか。それから、いま問題になっております二百十ヘクタールの地域との関係はどうか、それから自然公園法との関係はどうか、これらの点について説明をいただきたいと思います。
  78. 高橋力

    説明員(高橋力君) まず第一点、防衛庁の演習場との関係でございますが、現在まで日本道路公団の基礎的な調査を終えまして、一つの案を立てております。その案によりますと、どうしても一部演習場の中を通らなければいけない部分もございますので、それにつきましては防衛庁といろいろ御相談を申し上げておる段階でございます。  それから返還予定地の関係でございますが、あの付近の調査に基づきまして、技術的に最良と思われるルートを選定したわけでございますが、その結果によりますと、払い下げを予定されております地域の西南の端を通過するのがいろんな事情から一番好ましいルートであると判断いたしまして、この案で、大蔵省、防衛庁御当局はじめ、山梨県及び地元市町村とも現在御相談を申し上げておる段階でございます。  それから自然公園の問題につきまして、当然、道路の建設をする場合には十分配慮する必要があろうかと思います。環境庁のほうの御指導を得ながら今後慎重にこれは検討してまいりたいと思います。
  79. 神沢浄

    神沢浄君 いま策定中の路線の構想からいきますと、これはやっぱり二百十ヘクタールの地内を通過しないわけにはいかないでしょうね。
  80. 高橋力

    説明員(高橋力君) 地形その他土地利用等の関係から見まして、できればその二百十ヘクタールの西南の端を通らしていただきたいという希望でございます。
  81. 神沢浄

    神沢浄君 これも昨年の分科会でちょっと私も触れたわけですけれども、まだ手をつけていないからということで、ただ考え方としては標高千メートルないし千百メートルくらいの地点が最も妥当だと思われる――私もそれは常識的に、あの地域を知る者の一人として、確かにそのとおりだと思うと賛成を申し上げておいたところですが、大体そういう、いわば建設省が考えた、ないしは公団が考えたところを通ることはむずかしかったんですか。
  82. 高橋力

    説明員(高橋力君) あのルートにつきましては、先生御承知のように、非常に地質的にも、また地形的にもむずかしいところでございます。特に問題になりますのは、篭坂の山を、トンネルをどこに抜くかということが一番重要な問題でございます。したがいまして、ただいままでの調査の段階では、おおむね篭坂峠千百メートル付近にトンネルが掘れそうな場所を見出しておりますので、ここを一つのコントロールポイントにして、あと縦断、線形その他から現在のルートがきめられておるわけでございます。
  83. 神沢浄

    神沢浄君 まだ大蔵省の手元には来ていないでしょうけれども、この路線がどうしてもあの地域を通過せざるを得ない、大体そのことでもわかるように、やっぱりそれは簡単に一団体などに手放すという性格の場所ではないんですが、そういうようなことになった場合には、これはどうなりますか、払い下げ問題というものは検討し直されなければなりませんか。
  84. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) ただいま建設省のほうから御答弁がございましたように、篭坂峠のトンネルの位置、それからインターチェンジの位置等によりまして、この有料道路がどこを通るのが一番いいかという問題は確かに起こってまいります。ただ、ただいまのところ、具体的にどこをどういう幅で通る、あるいは問題の二百十ヘクタールの中でどれぐらい食いかくのがいいのか、よくないのかという話につきましては、まだ具体案を私ども承知をしておりませんので、正直申し上げまして、現在検討しておりません。ただ、一般的に申し上げ得ることは、この路線計画がほんとうに確定する時期と、それから私どものほうがこの当該二百十ヘクタールの払い下げの手続を終わる時期と、いずれが早いかということによって扱いはかなり変わってくるかというふうに考えております。
  85. 神沢浄

    神沢浄君 環境庁は、この道路の問題については先刻御存じですか。
  86. 江間時彦

    政府委員(江間時彦君) 先生がおっしゃいます道路につきましては、非公式の相談は受けたようでございます。おそらく、この道路は国立公園の特別地域の中を通ることになると思うわけでございますが、そうしました場合には、これを行なおうとしております主体から申請を出してもらいまして、そしてわれわれのほうで審議いたします。で、おそらく審議会にも相談しなければならないと思います。で、まあ過去の例に徴してみますと、最近における国立公園内の道路につきましてはきわめて慎重な方針で臨んでおるというのが現状でございます。
  87. 神沢浄

    神沢浄君 もう時間もなくなりましたから、最後に、万一これを二百十ヘクタール払い下げの場合における価格の問題ですね、ちょっと触れておいてみたいと思うのですが、これも前回同様、分科会のときにお尋ねをした際には、会計令の八十条の2ですか、に基づくいわゆる売買実例による適正なる時価、こういうお答えだったのですが、そのことに変わりはございませんね。
  88. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) 本件に、本地に限りませず、国有財産の払い下げをなします場合にあたりましては適正な価格によってなされるということは当然のことでございます。私ども本地につきましてもそのとおり厳守してまいりたいと思います。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、防衛施設庁側における測量が終わっていないことがございますし、それからただいま環境庁のほうから御説明ございましたように、自然公園法の適用を受けることになるのかならないのか、なるとしたらどういうなり方をするかというのが評価上の一つの要素でございます。その辺が現在未確定でございますから、私どものほうは目下評価作業に入れないでおるということを、蛇足でございますが、申し上げさせておいていただきます。
  89. 神沢浄

    神沢浄君 あえて再び私がこの問題に触れましたのは、これはたしか新聞でありましたか、あるいは雑誌でありましたか、その点は記憶がさだかではありませんが、恩賜林組合の組合長が、組合会議の席上の報告で、防衛施設庁筋から得た感触によると大体坪四百円から千円くらいの間ではないか、支払いは十年年賦くらいになるようだから、かりに千円としても年に七千万円くらいのものになる云々という、こういう会議の席上での報告が漏れているわけなんですよ。あの付近というのは、これはもう売買実例に基づくということになれば、まあ少なくとも万を下ることはないのです。万台ですね。そういうような仄聞もありますだけに、あえて触れたんですが、重ねてお尋ねするのですけれども、組合長の言動のいかんにかかわらず、これは明らかに、いまおっしゃられたように、国有財産処分の問題でありますから、売買実例による適正なる時価、こういうふうに受け取っておいてよろしいですね。
  90. 井上幸夫

    政府委員(井上幸夫君) 財産が引き継がれましてからあとの管理及び処分は大蔵省の責任でございますので、防衛施設庁のほうと単価についてのお話し合いをいたしたことは私どものほうはございません。評価はあくまでも適正にやるということでございますが、評価方法につきましてはいろいろな評価方法がございます。評価要素もいろいろございますが、そういうものを十分に検討いたしました上で評価額を定めるということになろうかと思います。
  91. 神沢浄

    神沢浄君 公団の方……。先ほど建設省のほうのお答えもいただいておりますし、環境庁のほうのお答えもいただいておるのですけれども、環境庁などとの話し合いというものはまだないのですか。
  92. 伊藤直行

    参考人伊藤直行君) ただいま環境庁のほうから申し上げましたように、非公式にいろいろわれわれのほうの考えているルートを御相談申し上げております。ただし、これはまことに非公式の状態でございまして、われわれのほう自身も大体これで固めたいというところまで来ております。それについていろいろ御意見を伺っております。なお、これにつきましては、部外の公園協会ですか、そちらのほうに、全般の問題として環境問題について委託して影響調査をやっていただいております。
  93. 神沢浄

    神沢浄君 まあ、お尋ねしたいことはたくさん残りましたが、もう時間が終わってしまいましたから、これでやめますが、最後、私取りまとめて大臣に、お尋ねするというよりか、要請をして終わりたいと思うのです。  というのは、いままでお聞き及びのように、二百十ヘクタールの単なる林地といいましても、いろいろな経緯から現状問題がからんでおるような実態であります。冒頭申し上げたように、ことにこの問題がよって起こってまいりました経過等から考えますと、これはよほど慎重なる対応をお願いをしてやまないわけでございますし、ことに福田大蔵大臣なるがゆえに、私はその点を期待もしながら申し上げているわけなんです。ひとつ大臣の見解をお伺いをして終わりたいと思います。
  94. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いろいろとお話しを承りましたが、これはもう公明正大、厳正に国有財産としての処理を行ないたいと、かように考えております。
  95. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ―――――・―――――    午後一時三分開会
  96. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) ただいまから予算委員会第二分科会を再開いたします。  分科担当委員の異動について御報告いたします。  本日、神沢浄君が委員を辞任され、その補欠として横川正市君が選任されました。     ―――――――――――――
  97. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 休憩前に引き続き、大蔵省所管を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  98. 横川正市

    横川正市君 予算分科会になりますと、大体その年の予算の最終段階を迎えたということになるわけですが、私どもも何回かこの予算の審議を担当いたしてまいりまして、そして、そのときは非常に予算の審議の内容には意を尽くさない点は残しましても、一応、その一年間の予算の編成をされた、そのことに対しての一つの論議のやりとりが終わったということで、ひとつ肩の荷のおりた思いをしてまいりました。しかし、その肩の荷のおりたということとは別に、今度はその執行される予算の一年間の実績をずっと見ておりまして非常に感ずることは、ひるがえって先をずっと考えてみますと、あるときには非常に景気が上昇をし、その上昇した景気にセーブを加える論議がされる。まあ野党側の立場からですね。それからまた、停滞が起こってまいりますと、これを進めるような論議が行なわれた。そういうやりとりが何回かあったと思うのです。  しかし、いま思い出して、一番私どもとしては、あの時期は非常に大切な時期だったが論議不十分だったんじゃなかったかと思うのは、それは、成長段階でやや安定成長へ向きつつあるときに、相当大型な補正予算を組んで景気刺激を行なった。そういうことから、日本景気に対して異常な上昇を来たし、それにあわせて円の切り上げの問題があり、さらに今日迎えているような経済状態があったわけでありまして、いまのこの今日の状態を見ながら、実は私は執行される予算というものを考えてみますと、やはり何かしら一つの転機を迎えているような気がするわけなんです。その転機は、たとえば産業界でいえば、産業界はもうすでに爛熟状態になるほどに、設備投資もあるいは生産の量という面からも、それから国内的にいいますと需要の状況は過度に刺激をされておりまして、その需要状況が結局不必要なまでに消費刺激というかっこうに転換されておりますから、私はこの時期は、総需要の引き締めというような、いわば政策的なあと押しだけでなしに、相当精神的なものをもって転換をする要素というのを、ことしの予算一つの論議の締めくくりの段階に、与党であれ野党であれ、考える必要が出てきたんじゃないだろうか、こういうふうに思います。ただ、きょうは一般論議はこれは予算委員会のレギュラーの人にやってもらいましたから、私は部分的な問題できょう大臣にひとつ考え方をお聞かせいただきたいと思うんでありますけれども、一つは、前回のたしか補正予算のときに、私は、大臣もおられましたし、それから――あ、大臣は愛知さんだったですね。それから日銀の総裁出席をされておりまして、そして引き締めの一つの第一歩を踏み出そうと、こういう時期でありました。  そこで私は、いままでの予算の編成の経過から見ますと、引き締めをする時期と、それからその緩和をし、刺激をするというのが交互にこうあって、引き締めをやるのはいいけれども、その引き締めが公平を欠くような場合にはどうするかという質問をしたんです。  それに対して、愛知さんとそれから日銀総裁は、選別融資でその点はカバーをするんだと、こういうことでした。実は私関連質問だったもんですから、選別融資についての具体的なものをそのときは実は聞かなかったんです。しかし、一応選別融資ということになると、たとえば金融機関が優良会社と不良会社を選別するとかですね、それから、金融が逼迫してまいりますと、いわば金融機関としては、立ち行かないものに融資するわけにいきませんから選別融資をするとか、そうしてそういう結果が、大体大企業の方向に大幅に流れて、中小企業その他に対して縮小されるという結果が出てくる。普通の選別融資というならば、そういうとり方を実は私どもはするわけです。  前段に申し上げましたように、私は、いまの日本経済国民生活、いわゆる消費生活になれ切った状態から見ますと、実はこの選別融資というのはもっと別な意味を持たせる必要があるんじゃないだろうか、こういうふうに思います。選別というのは、私どもはいろいろいままで論議をしてきた中で、景気の動向に合わせての引き締めたりゆるめたりというようなことや、金融機関の既存のものだけでなしに、もっと国内の体制を変えていくような、そういう意味での選別融資というものがあってしかるべきじゃないだろうか、こういうふうに思いますので、実はその観点から質問をいたしていきたいと思うんです。  まず第一に、これは銀行局長にお伺いいたしますが、前段のこの選別融資に対する銀行局長の通達が二度出ているわけですね。この通達を出した銀行局の側の考え方、これをひとつお聞かせいただきたいと思うんです。で、その結果、どういう効果が期待されておったか、それをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  99. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 資金を運用してまいります場合に、選別的な観点を入れていくと申します場合に、いままでの選別という意味からいたしますと、確かに御指摘のように、金融機関の立場における選別ということであったわけでございますが、昨年以来、私どもが多少そういう方向で努力してまいりましたのは、むしろ、国民経済的な観点からの選別的要素を入れていくべきではなかろうかと、こういう考え方でございました。やはり需要を抑制していくと、総需要をできるだけ圧縮していく中で資金を重点的に運用していく場合に、国民経済的な観点から何にまず押えるほうを考えていくべきかというところから、まず去年の初めに、土地融資というものに最初にその考え方を出したわけでございます。土地融資に対する規制という形で、四十八年に入りまして選別的要素を加えました。なおその後、商社というものに対する規制という考え方が入ってまいりまして、これは主として日本銀行の金融政策の運用の中におきまして、商社に対する貸し出し指導という形がその次にあらわれております。さらに、供給と需要とのバランスから、できるだけ必要な供給を確保しつつ、それに見合った需要を圧縮していくというところから、もう少し広い範囲で、全経済的な、国民経済的な角度からの選別的要素が入り得ないだろうかということについて研究をしてまいったわけでございます。もちろん、金融というものの本質上、計画的な資金の割り当て、あるいは統制ということについては、むしろ非常にむずかしく、かつ、限界がございます。避けるべきであるということを踏まえつつやっていきます場合には、大まかに申しまして、やはり本質的には金融機関が良識を持って判断して、公共的な金融機関としての判断にまつということではございますが、優先すべきものと抑制すべきものということのガイドラインを示して、こういう角度で現在の選別融資というものについての一連の通達を出してきたわけでございます。
  100. 横川正市

    横川正市君 私は、そういう趣旨では、必ずしもそれが私どもの考え方と相違するとは思わないんですよ。問題は、私の、何といいますか、思想的なものの考え方とか、そういった点で見ますと、選別融資というのは、いわばいわゆる景気の上下に従ってそれを調整していくようなたてまえというものの意味から、いま銀行局長の言われるように、融資の一つの方法をもってコントロールできるような、そのコントロールが、言ってみれば国民生活優先的な、あるいは経済の乱調を防ぐような、そういうようなものに急角度に転換させるための一つの方法として選別融資というものがとられるべきじゃないかと、こう思うわけなんですが、その点は、いま言われた銀行局長方針で入っておるのかどうか、まずそれをお聞かせいただきたいと思います。
  101. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) こういういわば量的な、景気調整という角度から金融を量的にコントロールし、あるいはそれを伸ばしていくという角度からの調整に加えまして、いわば質的な側面を重視する意味での調整という問題は、いつの時期にもあろうかとは存じます。しかし、本質的にいまの市場経済というものの上に立った金融の調整のあり方としては、できるだけやはり避けるべきことではなかろうか。やはりできるだけ市場経済の法則にのっとって経済あるいは企業活動が行なわれるという大筋はあくまで踏まえておくべきである。そういうことからいたしますと、現在やっておりますこの選別融資というのは、やはり経済の異常な事態に対応する臨時、緊急の措置であるというのが私の考え方でございます。
  102. 横川正市

    横川正市君 そうすると、いま、たとえばけさの新聞記事で報道されておりますけれども、たとえば中小企業、相当の資本金を持ったところでも倒産の動向が異常な数で増してきているわけです、千数十件ですか。これは一つの引き締めの効果として出てきたと思うんです。それから一面、今度四十八年度の決算の状況を見ますと、大体百社ぐらいのものが出ていますが、新聞記事は五十社ぐらいなものしか報道されておりませんが、その報道の状況を見てみますと、実はこの倒産の理由が、もうけている側の立場と必ずしも一致しないんですね。たとえば商社のもうけ高はこれは急角度に上昇いたしております。ところが、それに関連する中小企業の倒産数が、これはまた異常に数を増していると、こういう状況が出てきているわけなんですね。私は前段で、選別融資というのは、異常に銀行筋が優良である場合と不良であるとか、それから金融が引き締まったから、非常にいままで関連のあってよく金を使ってくれたところで顧客のところとか、そういうようなところへ金は回すけれども、その他へはいわゆる逼迫したから金を出さないというような、そういう選別融資の形になっているんじゃないだろうか。きょうの新聞の分析を別に私しているわけじゃありませんけれども、これを見まして、倒産する中小企業の倒産理由を見ますと、商社その他の差し控えということになっていて、今度は商社のほうの決算のもうけ高というのは、去年の十月以降から鋭角に上がって、もうけ過ぎぐらいもうけていると、こういう状況が出てきているわけなんですが、そこでいわゆる選別融資というのは、体質的にまだ変わらないまま放置されているんじゃないか――放置というのはちょっとことばが合いませんが、なりきたりの方法だけをとっているのじゃないかというふうに見えるわけなんですけれども、その点はどうでしょうか。
  103. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 確かに、基本的には、量的調整という形で現在の金融面での総需要抑制策が進んでおります。そういうことからいたしますと、どうしても量的に限られた中でその倒産のしわを受ける企業というものは、その企業がいかなる仕事をしておるかということとは必ずしもかかわり合いはなく、金繰りあるいは売り上げ不振といったところから倒産を余儀なくされておるということは、一般的にはやはりそうであろうかと考えます。ただ、たとえばいま御指摘の中小企業の問題につきましては、たとえば商社というものの現在のあり方が、やはり投融資活動というものが非常に大きくなっており、それとの関係で商社との関係が非常に深まっておる。その商社の金繰りの余波を受けて中小企業というものが非常に困られるということは否定できないことであろうかと思います。ただ、私どもといたしましては、中小企業、これはいわば業種のいかんにかかわらず、中小企業というものに対しましてはできるだけの配慮をしていくということは、これは基本的に堅持しておる方針でございます。現在、御指摘の、昨日発表になりました一千件を超える倒産を見ますと、やはり不動産、建設というウエートが多少は三月に入りまして低下いたしましたものの、多くなっておる。あるいはその倒産理由と申しますか、原因、これは必ずしも正確に把握されたものではないと思いますが、やはり一番大きな原因は売り上げ不振、次が放漫経営のしわ寄せ、そして売り掛け金回収難といった順序でなっております。こういうことを見ますと、いまお話しのように、やはり引き締めの影響というものが、三月、昨日発表されました倒産にかなり濃く出つつあるということは否定できないところだろうと思います。そういう意味におきまして、中小企業についてはできるだけのことをしていくということで、政府金融機関、それから特に今回は一般の市中銀行というものが、中小企業の方々が健全な経営をやっておられながら、この波及を受けて倒産される、やむを得ない理由のある方々に対しましては、特別の融資ワクワクの中でも引き当てておる。総額三千億にのぼる、いわばスタンド・バイと申しますか、そういうワクを設定して今後の事態に備えようとしておるのも、いま先生が御指摘のような事態というものに対して非常に警戒をし、それに対して措置をすべきであるという姿勢のあらわれだろうと思います。私どももそういう方向で、できるだけのことを今後考えていかなければならない、かように考えております。
  104. 横川正市

    横川正市君 これは大臣のお考え方、ここで金融関係は実はオープンに論議できない面があることも、私は承知をいたしておるわけですけれども、最近になりましてから、たとえば日銀総裁の発言の中のニュアンスといいますか、それを見ますと、いわば一つ需要の状況から、やや引き締めを緩和する心理的な反作用が出てきているような発言がありましたし、また、きょうの日経を見ますと、景気政策を総点検しなきゃいけない、冷え過ぎに対して配慮というふうに出ているわけです。いわばオーバーキルの状況が何か緩和策を必要とするように考えられるような、そういう記事も出ております。一体、いま、ひとつの為替状況が安定をし、それからなおかつ、国内の中に存在している量的な過剰流動性といいますか、過剰資金の状況といいますか、あるいは生産の在庫量その他から見たひとつのオーバーぎみであるとか、そういうような点では、まだそういう意味の一般的な景気刺激への転換というのは考えられないんじゃないかなと私は思うんでありますけれども、これは大臣はどうお考えでしょうか。
  105. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国経済は、昨年下半期、たいへんな混乱状態で、また、年初に引き継がれたわけなんですが、あの混乱状態はなぜ起こったかというと、これは需給の関係と見ております。つまり、異常な仮需要が発生した、そして物の価格が正常な形、つまり生産費、それから需給によるフレの範囲内の移動と、こういうような形じゃなくて、全くこれは投機的な商行為によって形成された。つまりこれは物価じゃない、これはもう相場だと、こういうとらえ方をしておるのですが、この仮需要は何から起こってきたかというと、これは物価先高である、物は不足である、こういうような国民の見方から発足したわけでありますが、そういう物価混乱せしめた元凶である仮需要が発生するというおそれは大体私はなくなってきた。つまり、軽微ながら供給超過そういう状態になってきた、こういうふうに見ております。でありますから、総需要抑制政策の第一段階目的はまずまず達成されたと、こういうふうに見ておりますが、次の段階考えてみると、今度は需給要因じゃなくて、コスト要因から物価を引き上げる、そういういろんな問題をはらむ、そういう時期になってきております。一つは、電力料金の値上げの問題、さらに国鉄、私鉄の料金の引き上げの問題、そういうようないろんな問題がある。これらの問題をよけて通るわけにはいかない状態です。もうどうしても電力料金は上げざるを得ないという、国鉄、私鉄につきましてもしかり。そうしますと、コスト要因というものをこれをいかにして物価に波及せしめずに処理するかと、こういう問題でありますが、これまた、総需要抑制政策を堅持すると、そして経済は沈滞しておると、そういう状態においてのみ、初めて私はコストアップ、そういう要因が経済に不安、動揺を与えないで処理し得ると、こういうふうに考えておりますので、総需要抑制政策目的はまあ多少違ってきておりますけれども、この抑制政策をいささかもゆるめてはならない、こういうふうに考えております。ですから、手直しということは考えておりません。  ただ、手直しじゃないけれども、この過程におきましてはいろんな副次的な現象が出てくる、そういうことに対しましては、これは適時適切な対策をとる、こういうことであります。
  106. 横川正市

    横川正市君 たとえば、そういう点からいって、これは銀行局長の通達の、たとえば第二項ですね、規制基準は、銀行の自己資本の二〇%を一取引企業に対する融資限度とすると、これには大体三年程度の経過措置というのがあるわけなんですが、経過措置と、それから一取引企業に対する融資限度という、その一取引企業というもののいわば系列化ですね、こういったものに対しての考え方は、この中には明確に出ておらないと思うのです。私は実は今度の、きょうの質問の前に、すでに大蔵省が出しております二十五種百二十三社の銀行特別調査、それでこの特別調査というのはどういうのか、ちょっと私もわからなかったものですから、いろいろ調べてみましたら、特別監査方式、監査方式に特別という名前をつけたのですか、特別調査というのはこれは何に基づいて出されたものかちょっと私もわかりませんでしたけれども、この監査方式からいきますと、大蔵省の銀行局の一つの範疇の中に常時これが行なわれておるわけなんですね。その常時行なわれておるものと、いわゆる特別調査という百二十三社、四月中に結論を出したいということとの関係はどうなっているのか、しかもまたこれはいま特別に調査しなければならなかった大きな理由というのは、やはり総需要抑制ということを打ち出して、そして相当金融引き締めたにもかかわらず、なおかつだぶつきとか資金偏在とかというものが解消しないで、所期の目的は、いま大臣はまあまあと言っておるようですが、私どもはまだこれは相当大きな原因が潜在していると、こういうふうに思うわけなんですけれども、この具体的な調査をどのように生かされるつもりなのか、この点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  107. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) まず最初に、特別調査の性格について申し上げますと、私どもふだんこれは銀行の検査と言っております。これは、銀行法その他、それぞれの金融機関を律します法律に基づく検査権の行使でございます。今度行なおうといたしておりますのはそういう意味での検査ではございませんで、むしろ実態の調査であるという趣旨のものでございます。検査と申しますのは、本来、銀行法のたてまえから申しまして、金融機関の資産が預金者保護に値する健全性を保っておるかどうかということで、その貸し出し内容、業務の状況を検査するわけでございますが、今回の調査というのは、金融機関がいかに機能しておるかという国民経済的な角度からの調査、実地調査で実態を把握したいというのが重点でございます。ただ、そのねらいといたしますのは、先ほど御指摘のございましたように、昨年末からことしに入りまして、いわゆる選別融資ということで、金融機関の融資のあり方についての相当具体的な通達を出しておりまして、その通達の実施がどのように行なわれておるかということをよく把握し、現地に臨んで指導をしていきたいというのがその目的でございます。そういう意味からいたしますと、必ずしも企業数を百二十に限定するわけではございません。むしろ、サンプルとしてそういうものの企業の内容をよく通じてまず把握することが大事ではございますが、同時にまた、それ以外の一般の企業についても、都市銀行に次いで地方銀行、相互銀行等について逐次調査をしていく、その調査の過程で、選別融資というような通達の実地指導を兼ねて行ないたい、こういうことで現在実施しておるわけでございます。
  108. 横川正市

    横川正市君 実は、私はこれをいろいろお聞きいたしたいのは、従前の金融制度の、いわば景気に与える影響力というものを引いたり押したりするという、こういう意味でやられることについては、実はあまり私どもとしては賛成しがたいと思っているのですよ。そうではなしに、この際ですから、相当引き締めをした効果が出てきたが、その引き締めした効果を、今度は逆に、きわめて有効な体質の転換をさせると、そういう方向に持っていけば、私はいわば引き締め政策の結果として非常にいい効果が出てくるのじゃないだろうか、そういうふうに思うから、そういう点で、いままでの銀行局のとってこられた面をお聞きをいたしたわけなんですが、そこで、具体的な例でひとつ大臣にお聞きいただきたいと思うのですけれども、三月の五日の日の大蔵委員会で、わが党の竹田委員が大臣と一問一答をやっておるわけですね。その一問一答の中に、たとえば都市周辺の市町村の公共投資の面のいわゆる金融削減というのが非常にきびしくて、それでその点の緩和をしない限り、都市周辺の町村における一般行政というのは停滞してしまう。で、ことに市民の苦情というものは、そのことに集中して解決するめどが立たない。そういうような問題について、たとえば自治省がある程度の緩和策をとっても、大蔵省のいわゆる一般的な金融政策はそういう面での余裕を持たせてくれていないので、その点はどうかといって大臣に聞いていますね。大臣はそれに対して、できるだけひとつこまかく検討して対策を立てたいという返事になっておるわけですが、この四十九年度の予算の各地方自治団体の出されている、たとえば金融債、それから財投あるいは縁故債、国の施策、こういった面に具体的には大臣としてどういう手だてをとられたか、それをお聞かせいただきたい。
  109. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これだけの混乱を収拾するというのですから、それに対する対処策は相当きびしいと思います。そこで国はみずから財政を縮める、これも相当きびしい詰め方をしているのです。それから産業界に対しましては、設備投資、新規投資等、不要不急の投資を抑制する、これもかなりきびしいです。ひとり地方公共団体がこの対策の例外たるわけにはいかない。地方公共団体に対しましても、国と同様の姿勢をとることを求めておったわけであります。ただ、先ほどから選別融資ということについて触れられておりますが、何が何でも押え込むんだという考え方は、国においても、あるいは地方公共団体においても、あるいは企業等においてもとるわけじゃないんです。それこそ、国においても、地方公共団体においても、また企業におきましても、これは選別的な考え方をとらなければならぬ。とにかくきびしい政策をとりましたものですから、土地の価格は一体どういうふうになってきたか、全国頭打ちと見ております。かなり下がってきておるものも出てきております。国に対しあるいは地方公共団体に対し、まあ買ってくれ――民間ではなかなか売ろうといたしましても買い手がないのです。そこで、国や地方公共団体に買ってくれ、買ってくれというのが殺到するのです。この殺到する売り要求に対しまして買い応ずるということになれば、土地の値段はせっかく頭打ちになり、これから下がろうとしておるのに、高値安定ということになってしまう。そこで、土地につきましても、これはそうみだりに買い応ずるわけにはいかない。そこできびしく規制しておるわけでございますが、そういうきびしい情勢の中でも、都市周辺の公共団体では、人口急増というようなことで、学校も建設しなければならぬというような問題もあるわけです。あるいは、下水道、住宅、道路というような問題もある。これは窮状に対処いたしまして福祉諸施設をと、こういう問題もある。そういうのに対しましてはきびしい金融引き締め、また総需要抑制政策という体制の中ではありまするけれども、これはひとつ特別の配慮をせられたい、こういうことで私はみずからこれを実行し、また金融機関に対しましても、まあ融資にあたってそういう配慮を求めておる、こういうことであります。しかし、そういうことでありまするから、自然、地方公共団体が地方開発公社をつくった。そして、先行投資をしようという意欲に燃えておったわけでありますが、その全体の希望を満たすという、そういうことにつきましては、これはまあ差し控えてもらわなきゃならぬ。そして、国の政策に協力してもらわなければならぬが、ただいま申し上げましたような緊要なものに対しましては、これは金融機関でもかなりの奉仕をいたしておるわけであります。で、具体的にむずかしい問題が出てきたというような際には、自治省なり大蔵省に御相談がありますれば、その際妥当な解決をすると、こういうことで大体きびしいと、こういうことは前提としていただかなければなりませんけれども、そういうきびしい中におきましても、緊切なる地方公共団体の需要は充足されつつある、こういうふうに見ております。
  110. 横川正市

    横川正市君 私は、確かに大臣、ことばを大臣にそういうふうにつづられると、何となく私どもも納得させられるような気がするんですね。しかし、具体的に一つの市町村の予算を私ちょっと近郊の――名前を明らかにしませんけれども、とってみますと、ずいぶん無理していますよ。近郊の急増する地帯の町村の財政事情ですね。しかも、ある程度金利の面を考えながら予算を立てましても、都市銀行その他が協力をしない。全然、それは引き締めでとてもありませんと言って、具体的に町村の要請に対してこたえていないという現実があるわけですね。ですから、私はこういう具体的な内容は、確かに総需要抑制という、非常に物価狂乱の時期にこれを引き締めていくときには、これは全体のためには、まあ部分的にこれは理屈があっても押えられてもしかたがない。これは私もそのとおりだと思うんです。しかし、その押え方がやや引き締め過ぎたなというような問題が出て、ある意味では部分的な引き締め緩和の状況が出てきたときに、もとのもくあみで緩和をするんではなしに、いわゆる選別された項目の中に、住民福祉とか国民福祉とかというような、あるいは市町村の公共投資とかというようなものへ、緩和のまず第一段階がいくということが顕著に見えるような方策がとられるべきじゃないだろうか。で、従来の引き締めは、その済んだ段階でなおかつ安定した段階に緩和するということはあっても、とりあえずは緊急な面でのこういう公共投資については、緩和というよりか、選別融資ですよ、事実上の。選別融資をするということで、大臣一つのはっきりした姿勢がとられるならば、私はやはり、いまのただ答弁を納得するんじゃなくて、具体的な対応策を了承したいと思います。
  111. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 全体としては非常にきびしい政策をとっているわけですがね。しかし、その中でも、地方公共団体が人口急増というような理由でもう緊急にしなければならぬという、そういう需要につきましては、大かた私は充足されていると、こういうふうに思います。そういう地方公共団体のお世話係は何といっても自治省でございますから、自治省から、これはどうしてもこういうふうにしなければならぬというような持ち込みがありますれば、それはもう親身に相談にも応じ、金融機関に対しましても、大蔵省としてはあっせん、仲介の労をとるということをいたしておりまして、大かたそういう問題は解決されているというふうに私は報告を受けております。
  112. 横川正市

    横川正市君 それじゃその点は了承いたします。  もう一点ですが、最近の貯蓄の目減りとか鈍化という状況に対して、たとえば金利政策が打ち出されるような話も聞きますし、何らかの対応策をしなければ、このままでは、資金需要に応ぜられるだけのものを集めることができないという関係官庁の反省もあるようなんですが、大臣としては、この目減りを、いまの目減りをどういうふうに見て――時的なものと見られるんですか、それとも相当根源は深いと、何らかの具体的な対応策をとらなければいかぬというふうにお考えになっておられるのか、どちらでしょうか。
  113. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ目減り問題が論議されるような事態は、私はこれはもう臨時的なことであると、こういうふうにとらえております。もう一刻も早くこのインフレというような事態を断ち切る、そして目減り問題なんぞが論議の対象になるというようなことなからしめるように、いま総需要抑制、そういうきびしい政策をとりながら、そういう物価の安定というものと総力をあげて戦っておると、こういうことでございます。
  114. 横川正市

    横川正市君 実は私は、大臣がちょっと口にいたしましたが、私どもも口にするのには、高値安定というのが一般的に言われるわけですね。この高値安定という、この情勢の判断をこういうことばで表現をするのは、やっぱり理由があると思うんですよ。たとえば住宅なんかの場合ですね。少なくとも一年半、二年くらい前に、二DKぐらいで七百万円台のマンションですね、これはいま千五、六百万しているわけですよ。ですから、その住宅を必要とする人から見ると、住宅目的の預金というのは実は非常にはるかかなたにその目的がかすんでしまったということが一つ言えると思うんですね。それから私は最近、これは小っちゃなことですが、駅の売店で、甘党ですから甘納豆を買ったんですね。その甘納豆を買ったところが、値段がこう、何と言いますか、レッテルで張ってあるわけなんです。それで、何でこんな張ったのかと思ってひっくり返してみましたら、百円の甘納豆なんですね。上に張られているのは百五十円になっているわけなんですよ。これは私は、どうも価格の決定というのは根拠がないですね。一つのムード的に価格というのが上がってくる、そういう要素というのがあるのじゃないだろうか。たとえば石油がどうだとか、原材料がどうだとか、あるいは労働力がどうなったとかというような意味で、正確な価格の算定方式で出てくるよりか、何か一つの風潮みたいなものがあって上げるというようなものが出てくるんじゃないかと思うんですね、これは非常に遺憾なできごとだと思うんですけれども。しかし、そういうものを総体的に一つの高値に安定させていくのには、何か一つの尺度がなければいかぬと思うんですが、私は、昔は米が尺度だったんですけれども、いまはエネルギーが一つの尺度になってきているんじゃないか、こういうふうに思いますが、その面から見て、大臣としては、その尺度を一つ設定して、いまの物価の状況その他を、これをいわゆる高値安定と、こういうふうに言われているものに、大臣としてはどうお答えになるんでしょうか。
  115. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 確かに今日の物価は水ぶくれ物価です。私は、先ほど横川さんに申し上げたんですが、物価じゃない、相場だと。こういうことですが、思惑がたいへん入っているわけです。ですから、普通物価と言えば、生産費がまあ基準になりますわね。そして、その生産費を中心にして需給の関係で若干のフレがある、こういう、これが普通の物価です。ところが、いまの物価はそうじゃなくて、これはもう相場なんですよ。これは先に高くなるんだからうんと買っておけと、こういうような仮需要というものが起こる。その仮需要に基づいて、生産費だ、コストだ、そういうものにかかわらざる値がつけられる。まさしく私は水ぶくれ物価だ。総需要抑制政策というのは、その水ぶくれ物価の水を抜く作業なんです。で、かなりそういう政策の効果も出てきまして、まあ一時鉄材なんか十一万円もした――去年の暮れあたりですね。今日七万円ぐらいになっている。あるいは繊維は三割落っこった。まあ木材もかなり下落しておる。非常に頑強に下がらなかったセメントも下がりかけてきておる。そういうふうに、かなり主要資材の価格というものは下がってきております。水抜きができておる。つまり、生産費プラス適正利潤というものにだんだん近づいてきておる、こういうことでございます。この総需要抑制政策が進みますると、さらにそういう傾向が続いていくだろう、こういうふうに見ておりまするが、他面、生産費、つまりコストが上がる要因もあるんです。電力料金問題だとか、国鉄、私鉄等の料金問題とか、いろいろあります。そういう要素――これは物価を引き上げる要因ですがね。それと、総需要抑制政策で下がっていく要因がある、これから。それがどの辺で均衡点が得られるか、それが私は新しいこれからの物価体系、こういうふうになっていくだろうと思うんです。そういうのが大体でき上がるのは夏から秋にかけてじゃないかと、そういうふうに思いますが、いずれにいたしましても、もう需給要因からいまお話しのような飛び離れた価格が形成されるという要因は、私はもう大かた――完全にないとは言いません、大かたなくなりつつある、そういうふうに見ておるわけであります。この上とも総需要抑制政策を推し進めまして、そして早く新しい物価体系というものを形成したいと、かように考えております。
  116. 横川正市

    横川正市君 最後に、私は前に租税関係の特別処置とか、その免税問題に触れまして、大臣と意見の交換を予算委員会でやりまして、そのとき、私の考え方は、たとえば交際費といって飲んだり食ったりする金を必要経費として削るのじゃなくて、必要経費というのは、国民生活あるいは職員の生活に最も関連のあるものに企業がある意味で支出をしたものを必要経費として免税の対象にすると、こういうふうにして、予算の中で飲んだり食ったりという水ぶくれの銭はこれはとってしまって、それを健全な生活要因の中につぎ込んでいく、転換をする必要があるんじゃないかということを申し上げて、大臣は大かたこれにはそのとおりですという御意見をいただきました。私はいま、たとえば郵便貯金の積み立てされた預金とか、それから年金関係――厚生年金とか、国民年金とか、そういうもので吸収される金を、これを少なくとも公共投資へ大幅な振り向け方をして、それで純然たるそういう納めたものは自分の生活にこういう影響力が出てきますよという金の使い方の転換をすべきなんじゃないかと思う。それは、たとえば金利と物価との関係を論議して、そういう状態じゃとても貯金しておいてもしようがないから、すぐ何か物にかえておこうなどというような軽薄さではなしに、相当長期政府施策に同調して預金率というものを高めていくと、こういう方向に転換をする、こういうことを政府としてはやるべきじゃないか、こう思うんですけれども、大臣の意見いかがでしょうか。
  117. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 全くお話しのとおりでありまして、この郵便貯金にいたしましても、簡易生命保険の掛け金にいたしましても、これはみんな公共の用に使われているわけなんです。公共の用と申しましても、しばらく前までは、産業のための投資、そういう傾向が多かったんですが、今日では、国民の手元に間近に還元をされるというような、福祉関係諸施設に使われるものが非常に多くなっております。したがって、逆に基礎産業に対する割り当てとかいうようなものは毎年毎年細っているような状態であります。この傾向はさらに今後といえども進めてまいりたい、かように考えます。
  118. 横川正市

    横川正市君 いいです。
  119. 多田省吾

    多田省吾君 大蔵大臣にまずお尋ねいたしたいことは、大蔵大臣と田中総理との間に、経済政策あるいは税制について、相当な違いがあるように思われるのです。というのは、午前中も羽生委員の質問に答えられて、これからの実質経済成長率につきまして、大蔵大臣は、経済社会基本計画を今後見直して、九・四%というような高度成長じゃなしに安定成長をはかっていきたいし、欧米諸国の実質成長率の平均ぐらいをとっていきたいと、こう述べられているわけです。これは先月の二十七日の大蔵委員会でも、大蔵大臣はそのようにおっしゃっておられます。ところが田中総理は、テレビ対談とか、あるいは先月の二十八日の大蔵委員会でもはっきりおっしゃっているのは、欧米諸国は過去に植民地からたくさんのものを取ってきて蓄積したからストックがあると。日本にはない。ですから、欧米諸国の実質成長率を今後はずっと上回る成長でいかなければだめなんだということをおっしゃっているわけです。もちろん、私は田中総理も――大蔵大臣のお考えのほうにむしろ賛成なんですけれども、そういう違いがある。  それから、今後の税制についてもそうです。昭和五十年度税制で、先月の二十日に東畑税調会長も、利子配当とか、あるいは土地の譲渡利益とか、そういう分離課税はむしろ廃止して一本化していきたい、また大蔵大臣も、総合課税方式でやりたいと、このように前向きにおっしゃっているのですけれども、やはり先月の二十八日の参議院大蔵委員会では、田中総理は、土地にしましても、そういう分離課税をやめると土地を売る人がなくなるとか、あるいは利子配当にしましても、一ぺん取られているのだからとか、そういう非常に消極的な態度であったわけです。ですから、私は今後の日本経済政策において重要なこういう成長率とか、それから今後の税制とかという問題で、このようにはっきりと大蔵大臣とまた田中総理のお考えが違うようでは、今後田中内閣として統一した経済政策をとっていけないんじゃないかということをおそれるわけです。ですから、もし大蔵大臣のお考えが通らなければ閣外に出られるというようなこともあるのか、それとも、総理を説得して国民経済のためにそういった初志を貫かれるおつもりなのか、その辺をまずお伺いしたい。
  120. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 人間ですから、考え方が全然二人とも一緒だと、こういうようなことはなかなかむずかしいと思います。しかし、これを国策の上に生かすという際には統一しなければならない、これはもうもちろんであります。その主たる場面は閣議ということになりますが、閣議での施策方向が重要問題についてきまりますと、そういう際には、十分に論議を尽くしまして、私が間違っておれば私はその誤りを認めます。私が正しいと、こういうことであれば、どこまでも総理を説得する、そういうことで、終局的には一本化いたしますので、御心配なきようにお願いいたします。
  121. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、大蔵大臣としては、いつもおっしゃっているように、実質成長率はあくまでも欧米諸国の平均をとっていきたい、また、諸種の分離課税というものは、昭和五十年度税制で廃止する方向で前向きにいきたい、こういうお考えには絶対に変わりない、こういうことでございますか。
  122. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 前のほうの成長率問題につきましては、これはもう私は国際水準、そういうことでいかなければならぬだろう、こういうふうに思います。それから税制の問題は、これはもう税制調査会の御意見も十分承らなきゃならぬ。しかし、私は、たまたま昭和五十年で分離課税の時限が到来いたしますので、これを再検討するいい機会だと思いますので、なるべくいい税制にするという気がまえで税制調査会と十分相談してまいりたいと、かように考えております。
  123. 多田省吾

    多田省吾君 税制三法、先月の下旬に参議院の大蔵委員会で論議されました。そのときも、大蔵大臣のお考えを聞いておりますと、五十年度税制改正におきましては、資産所得に対する課税強化を中心に、税負担の公平化をはかりたい、先ほどお話しのありました利子配当所得の分離課税を洗い直す、あるいは個人の土地譲渡所得の分離課税も、五十年で切れるんだけれども、五十年度の税制改正で検討したい、そのほかに、所得税減税につきましても、東畑税調会長等は、数年間やる必要はないと思ったけれども、このように物価狂乱状態でありますと、五十年度も若干はやらなければいけないというようなニュアンスの答弁をなさっておりますけれども、私はやっぱり大蔵大臣も、基礎控除、配偶者控除、扶養控除の三控除ぐらいの引き上げは諮問なさるんじゃないかと、このように――すなわち、物価調整減税ぐらいは考えておられるんじゃないかと、このように思いますし、そのほか、ことし、四十九年度において手をつけなかった相続・贈与税の軽減の問題とか、それから租税特別措置の改廃の問題とか、あるいはそのほかにも間接税、物品税の問題もありますけれども、租税三法のほうも参議院を通過したわけでございますから、この機会に、五十年度税制改正において税調等にどういう態度で臨まれるか、お考えをお聞きしておきたいと思います。
  124. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 五十年度という年は財政的には非常に重要な年になるんです。特に税につきましては、所得税の例外事項である土地並びに利子配当所得に対する特別措置が期限切れになる、これをどうするかという問題があります。これはただいま申し上げたような方向で対処したいと考えておりますが、減税につきましては、物価調整減税、こういう考え方は、私はこれは必要なことだというふうに考えておりますが、しかし、最終的にどういうふうに処理するかというのは、これはいま物価が非常な激動期にある、これを何とかして克服したいと、こういうふうにいま考えて、五十年度において物価はもう微動だもせぬというようなことが展望できるようになりますれば、これは調整減税の必要もなくなってくるわけです。昭和五十年度、つまり混乱収拾後の日本財政が一体どうなるかということを、どうなるべきかということを十分検討いたしまして、減税、増税、そういう諸問題につきましては検討をせなければならないだろうと、こういうふうに考えておりますので、いまこの時点で、減税いたします、あるいは増税いたします、これはなかなか申し上げにくいのであります。
  125. 多田省吾

    多田省吾君 それから、報道によりますと、地方税でございますが、電気ガス税について、今度の電力料金をこの六、七月ごろ上げるような政府方針らしいのでございますけれども、それに関連しているかどうか知りませんが、いまの六%の電気ガス税を軽減するとかというような意向のように見受けられまして、自治省とも折衝しているということでございますけれども、大臣のお考えはどうでございますか。
  126. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 確かに、今回電気料金が上がるということになりますと、地方財政等をいたしますときには、ただいままで電気税から見込んでおりました税収入を得るためには、その税率を引き下げてもよろしいという勘定になるわけなんです。ただ、自治省がこの問題をどういうふうにとらえてまいりますか、これは私は、自治省、電気税というのは非常に重要視している税目でございますので、自治省の感触等も伺ってみなければならぬかな、こういうふうに考えている段階でございます。
  127. 多田省吾

    多田省吾君 次に、相続税及び贈与税の問題で二、三お尋ねしたいと思います。  昭和四十八年度の改正では、基礎控除、配偶者控除等、若干引き上げを行ないまして、課税最低限を引き上げたわけですが、最低六十万円以下一〇%、最高一億五千万円以上七〇%という税率は、手直しされないで四十一年以来据え置かれたままでございます。しかも、年々二〇%前後も地価が上昇するインフレ時代においては、納税義務者が好むと好まざるとにかかわらず、相続税の地価評価額というものもウナギ登りに上昇しているわけです。税金を払うために不幸の追い打ちのような姿になって、農地を売り払うとかあるいはなけなしの退職金で家を新築したものの、一家のあるじが死亡したあとで、残された家族に非常に多額の税金が追い打ちされる、こういう例が非常に相次いでおります。昨年の大蔵委員会等でもこの相続税、贈与税の問題がずいぶん論議されたわけでございますが、このような地価高騰と狂乱インフレに追いつかない基礎控除額や税率を妥当だとお考えになっているのかどうか。それから、昭和四十九年度の税制改正において、相続・贈与税の改正を行なわなかったのはこれは行政上の重大な怠慢であると思いますが、大臣はどのようにお考えになっていますか。
  128. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 相続税につきましては、昭和四十八年度までにかなりの軽減が行なわれてきておるわけです。そういうことで、四十九年度は一休み、こういうことにいたしておるわけなんです。怠慢じゃない、いろいろ検討いたしまして、特に税制調査会等の御意見等も伺いまして、そういうふうにいたしておるわけであります。  それから地価が上がった、そこで、相続税につきましてそういう点を考慮した再検討が必要である、こういうお話しでありますが、私も地価の高騰の状態、今日のような状態が私は続くとは思いません。いま私どもがとっておる措置、こういうものが地価に対してもきわめて重大な影響を持つであろう、こういうふうに思いますが、そういう状態等もにらみ合わせまして、なお地価問題を考慮に入れた検討が必要であるというような事態でありますれば、税制調査会にも十分御意見をお伺いしたい、かように考えます。
  129. 多田省吾

    多田省吾君 いま大臣がおっしゃったように、地価の異常な高騰のために、特に中小企業、零細企業あるいは農民の方々の相続税負担が特に重くなっているわけです。このような観点から、いま大臣おっしゃるように、どうしても税調に、相続税負担を適正化する税制上の措置をとっていただくように諮問していただきたい、このように強く思うわけです。  それから一点、具体的な問題でお尋ねしたいんですが、これは国税庁だと思いますが、鹿島臨海工業地帯の神栖町、鹿島町、波崎町の三町の相続税評価額が、地元のいわゆる鹿島開発方式にからんで、時価に比べて割高であるということで、地元でいろいろ問題になっていると聞いておりますけれども、この実態をどの程度把握しておられますか。
  130. 田邊曻

    説明員(田邊曻君) ただいまお話しの点、よく問題の所在を承知いたしております。そこで、現在関係いたしております局と署によく実情を調査するよう指示しているところでございますが、私ただいま承知しているところでは、鹿島地区の開発が行なわれた最初にいろいろと話の持ち上がったころには、たいへんその周辺の地価が上昇いたしまして、その中には、一部投機的なまたは思惑的な要素も入っていたことを存じております。ところが、その後開発計画が必ずしも予定どおり実施いたしませんということや、それから関係企業の誘致もちょっと停滞したということ、さらに四十八年の末ごろに、都市計画法の線引きが行なわれたというような事情がからみまして、その辺の地価にいろいろ複雑な影響を与えているということを聞いております。したがいまして、もしそういうような事情の変化に課税上考慮しなければならぬ点がございますれば配慮するよう、現在細部にわたって検討しておるところでございます。
  131. 多田省吾

    多田省吾君 次に、景気物価の問題で若干大臣にお伺いしたいのでございますけれども、民間の興信所の調査でも、このたび三月度におきまして――三月危機と言われたんですが、千以上の会社が倒産いたしまして、倒産の負債金額も千二、三百億にのぼると、このように言われておりまして、この分では特に五月、六月がもっとあぶないんじゃないか、ことしじゅうに一万件以上の倒産も予想されるということで、まあ五月、六月危機が叫ばれているわけでございますけれども、特に資本金一千万円から五千万円、あるいは資本金が一億、二億という中堅企業が、すでにいまは不動産や建設業のみならず、広範囲な企業にわたって非常に金繰りが詰まっている。この前も税制三法の審議で主税局長にも質問したのでございますが、そういった資本金一千万から二、三億程度までのいわゆる中堅企業といわれる企業は、税の負担においても、百億以上の資本金の大企業等と比べると、非常に税負担額も重いわけです。また大企業は、いわゆる系列融資等でこの危機を乗り切る力がありますけれども、そういう中堅企業はなかなか融資もできないというような状況にあります。この対策を、特に五月、六月危機に対してどのような対策を立てられているか。  また、その反面、大企業等では、今度経団連でも、今度のベースアップによってもし賃上げが実現すれば、その二〇%から三〇%は社内預金にするようにというような呼びかけをしておるようですね。社内預金はやはり利息も一%ぐらい高くとるらしいのですが、去年なんかも相当社内預金にボーナスが回っておるようですが、そういうものがもし設備投資等に使われると、これまた総需要抑制というものがしり抜けになるおそれがある。そういう、中小企業、中堅企業に対するいわゆる選別融資ということも大事でありますけれども、そういう大企業のいわゆる総需要抑制という問題社内預金にからむ総需要抑制というものもやはり対応してやっていかなければならない、このように思いますが、大臣はどのようにお考えになりますか。
  132. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 最近の状況を注意深く見ておるのですが、確かに三月になりますと、中小企業の倒産件数がふえてきているのです。まあ四十年不況の当時に比べますと、大体数において倍ぐらいなところにくるわけです。ただ、法人の数が当時に比べますとふえておりますので、その比率からいいますると、まだ四十年不況というところまで行っておりませんけれども、とにかく著増し始めたということは事実であります。それから、いままでは経営節度の関係から倒産したというふうに理由づけられるものが多ったのですが、この経済動向を受けて、あるいは注文が減るとか、そういうようなことからの倒産、そういうものがふえてきておると、こういう傾向が見られるわけであります。これはとにかく私どもは非常に重大な関心を持ってながめておるわけです。四月以降、今月以降、景気はさらに沈滞をする、そういう中において、弱い立場の、しかもまじめに働いておる人たちという人にしわ寄せが行かないようにというのは政府をあげて重大な関心を持っておりますが、わが大蔵省とすると、その対策の中で税と金融、こういう面です。税につきましては、これは決定したものを納付していただかぬというわけにはまいりませんから、ただ、所定の条件を備えたものに対しまして、延納ですね、そういうものにつきましては配慮してまいる。それから金融につきましては、これは予算でもかなりの対応策がとられております。これを機動的にしようということ、それから市中金融機関にも依頼いたしまして、中小企業対策用といたしまして三千二百億円の資金を用意しておるというようなことでありますので、官民を通ずるさような対策、これをもって対処し得ると、こういうふうに考えております。  それから大蔵省の機構といたしましても、各ブロックにおいて何か倒産問題が起こるという際には、随時、大蔵省、通産省、日銀、これが参集いたしまして、その対策を協議するという機構も整えてありまするし、また今後の状況の推移を見ましては、大蔵本省にもそういうのを統轄するという機構も考えておる。こういうことで、まあとにかくきびしい御時世でございます。したがって、弱い立場の方々、こういう方々には相当の影響もあろうかと思います。その中でまじめに働いておる、そういう方々にはしわ寄せが行かないようにということにつきましては、これはもう最大の努力をしてみたい、さように考えます。
  133. 多田省吾

    多田省吾君 経団連が言っておるような、こういう社内預金の奨励という問題に関しまして、これが総需要抑制のしり抜けにならないかという問題がありますが、これはいかがですか。
  134. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 社内預金をたくわえまして、そして自社の需要に充てるということ、これは政府としてこれに介入はいたしません。いたしませんが、金融政策を行なうという際には、社内預金がこのくらいあるじゃありませんかと、したがって、融資をこれだけ通常より減らしていいじゃないかと、こういうようなことは言えると思うのです。全部が全部減らすと、こういうのは少し行き過ぎかと思いまするけれども、社内預金が何がしかあるということを配慮をしながら、金融機関は当然融資額の裁量に当たる、こういうことかと思います。
  135. 多田省吾

    多田省吾君 それから、物価の問題でございますが、一昨日の衆議院の地方行政委員会で、大蔵大臣は、狂乱状態は落ちついてきていると、このまま総需要抑制を続ければ所期の目的が達せられる、こういうようなお話しでございました。がしかし、OECDの発表でも、二月の世界各国の消費者物価の高騰の状態を見ますと、日本は二四%で最高と、それから欧米諸国でも一番先進諸国で多いのでもやっぱり一二%あるいは一〇%、あとはそれ以下と、やっぱり欧米諸国の倍以上、わが国は消費者物価の値上がりが激しいわけです。また今度六月、七月あたりに電力料金と私鉄料金の値上げ等、メジロ押しにこういうまた値上げ問題、公共料金の値上げ問題等がからんでいるわけでございます。で、うっかりすると、電力料金等は大企業のいわゆる逓増方針ですか、そういうたくさん電力を使うほど電力料金を上げるというような方向になっていると思いますが、それはもちろん私も賛成でございますが、それによる、いわゆる電力料金が上がったからという便乗値上げも行なわれる可能性がある。私たちはそういう電力料金が上がったからといってコストに大幅に影響するようなことはないと、二%とかあるいは一%以下とか、非常に私たちは少ないと思っておりますけれども、そういう便乗値上げも考えられます。ですから、まだまだこういう物価狂乱状態というものは、今後また暴発するおそれがなきにしもあらずだと、このように思いますけれども、大蔵大臣のお考えはどうでしょう。
  136. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 物価には需給要因コスト要因とあるわけですが、狂乱物価といわれるその物価状態の主たる原因は、この需給要因にあったわけです。つまり、仮需要が発生いたしました。そして国民が投機的行動に移ると、したがって、物価というような表現を用うるにふさわしくない物価状態、つまり投機による相場というような状態になった、これが私は狂乱物価の実態だろうと思います。その需給要因につきましては、総需要抑制政策の効果が端的にあらわれてまいりまして、経済界全体がやや供給過剰というような状態になってきておる。したがって、今日すでに狂乱物価を引き起こしたその要因というものは大かた解消されている、こういうふうに見ておるわけであります。これからの数カ月というものは、そういう状態需給要因は非常にいい状態で動くわけでございますが、いま御指摘のように、コスト要因のほうがいろいろ解決を迫られている問題があるわけなんであります。電力の問題、米価の問題、あるいは国鉄、私鉄の料金の問題、そういう問題が引き続いてやってくる。理論的に考えますと、たとえば米価の問題、これが物価にどのくらいの影響を及ぼすか。まあ、いま政府予算編成の際に見通しておるその引き上げ幅で言いますと、試算です、これは。これはまだ決定をしておるわけじゃありませんけれども、大体〇・四%程度だと、こういうふうに言われる。あるいは国鉄運賃の――これは法律できまっております。これがどのくらいの影響を及ぼすか、これまた〇・四%ぐらいの影響であります。電力はどのくらいの影響を及ぼすか。まあ〇・三くらいの負担になろうと、こういうふうに言われておるわけです。いまこれから数カ月の間は、総需要抑制政策で諸物価が下がる、そういう傾向を、働きを持つわけでございます。それに対して、いまコスト要因としてそういう一連の引き上げ要因がある。それがどういうふうに調整されるかという問題になってくると思うのですが、そのような調整される点が新価格体系と、こういうことになってくる、こういうわけでございます。いままでのところ、狂乱を引き起した元凶である仮需要、この問題は大かた克服したと、こう見ておりますが、それは総需要抑制政策によったわけであります。これからはコスト要因、それをどういうふうに物価に影響させないように克服していくか、こういう問題になる。これもまた総需要抑制政策です。物価を下がり目に置く、また経済界全体をやや供給過剰ぎみに置く、こういう中においてコスト要因一つ一つの始末をつけるということになりますれば、私は物価体系にさして悪い影響なしにこれらの問題を収拾していける、こういうふうに考えておる。したがって、総需要抑制政策は、その使命、目的は変わってきましたけれども、引き続きこれを堅持してまいる、こういう考えであります。
  137. 多田省吾

    多田省吾君 このたび通過いたしました会社臨時特別税に関連しまして一、二お伺いしたいのですが、まあ現行法人税法では二段階の比例税率になっておりますけれども、今回成立の会社臨時特別税では、一年あるいは二年の時限立法ではありますけれども、払い込み資本の二〇%とかあるいは年間五億円というものを境に、もう一段階高い税率が課せられたわけでございます。ですから、考え方によっては、三段階の累進税率化が、短期間でありますけれども実現したとも言えるんじゃないかと、このように思います。ですから、われわれがいつも主張しておりました法人税制の多段階税率、累進税率というものをやはり認める方向でいかれたほうがいいんじゃないかと。そうしますと、会社を幾つも分けるとか、またいろいろ擬制説の問題とか、根本的な問題があるとおっしゃられるかもしれませんけれども、やはりこういった問題は、東京の今回の法人事業税の二%アップの問題等ともからんでおりますし、やっぱりこの際こういう法人税制の多段階税率あるいは累進税率等を認めるような方向で行かれたほうがむしろよろしいんじゃないか、このように思いますが、いかがですか。
  138. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 多田さんの御所見にはたいがい私は同調するわけなんですが、この問題だけは違います。まあ今回議員立法になりました会社臨時特別税、これはほんとうにその名の示すごとく臨時特別税でありまして、これが税制のとるべき方向を示しておるというふうには考えませんです。やっぱりこれは個人と違いまして、会社法人はこれはもうその規模や構成、千差万別です。それに対しまして、そのあげる利益の多寡によって税率を区別するということは妥当でない。現に、これはもしそういう税制がいいというなら、どっか外国で一つぐらいでもそういう税制をとっているところがありそうなものですが、いわゆる先進諸国におきまして、そういう税制をとっている国はありませんです。私は会社というものは、これはその性格からいたしまして、累進構造に適した個人と異なり、単一税率をもってこれに課税をするということが妥当であると、こういう考えであります。
  139. 多田省吾

    多田省吾君 それから、今度の会社臨時特別税によって、千七百億円ほどの昭和四十九年度の税収が見込まれているわけでございますけれども、きのうも衆議院の大蔵委員会で、大蔵大臣は、弱者擁護対策につきまして、春闘が終わった段階で厚生大臣とも相談してという御発言でございましたけれども、経団連も今度の税制には相当批判的ではありますけれども、この税収につきましては、国債の、減額や予備費の増加財源等には使用しないで、やはり預貯金の目減り対策、あるいは社会的弱者救済に振り向けたほうがよろしいというように、経団連でさえも主張しているわけです。もちろん全野党は、社会保障あるいは弱者擁護の財源にすべきであるということを主張しているわけでございますけれども、私は、この次の補正予算までそれを凍結しておくんだと、こういうことじゃなくて、これは大企業、大商社の便乗値上げ等による税収ということも考えられるわけでございますから、春闘以後なんてそういうことおっしゃらないで、早急にやはりその財源は弱者救済対策あるいは社会保障に前向きに使っていくと、こういう姿勢のほうがよろしいんじゃないかと、このように思いますが、再度お尋ねいたします。
  140. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回の会社臨時特別税による収入は、これは一般財源として国庫が収納するわけであります。これを目的税としておらないのであります。したがって、そういう目的税的な使用をするということは妥当ではない、こういうふうに考えております。  それはそれとして、しかし、弱者、これが私どものいま考えておる経済計画がうまくいかぬ、こういうようなことになり、放置し得ないというような状態になりますれば、これはもう財源のいかんにかかわらず、そういう対策はとらなきゃならぬわけです。そういう際に、会社臨時特別税による収入もある、こういうようなことになってくるわけなんでありますが、今日目的税としてこれを使用するということは、これは立法の趣旨から申しましても、いま行政府としては申し上げがたい、かように考えております。
  141. 多田省吾

    多田省吾君 じゃ、まあ譲りまして、大臣のおっしゃるように目的税にはしないという観点に立ちましても、大臣はいま弱者救済対策はなおざりにできない問題であるということをおっしゃっております。やはり時期的にも、これは春闘以後とか以前とか、そういう時期にこだわるべき問題ではないと思うんです。ですから、やはりこの際、昭和四十八年度の補正予算での税収も四千億円ほど出たとか、あるいは今度の会社臨時特別税による税収が一千七百億円考えられるとか、こういうことがあるわけでございますから、目的税云々は別にしましても、やはりこの際早急に、前回の一人二千円とかそういうことじゃなくて、やはりもっと多額な弱者救済の予算を出さなければ、やはり現在のこのような一年間で二六%以上も物価が上がっている、学校給食とか、あるいは学用品とか、あるいは日常生活用品とか、もうあらゆるものがこういうふうに上がって、そしてそういう経済的弱者の立場におられる方々が非常にいま困窮しているということから見て、これは早急にそういう追加の対策を考えるべきではないか。このように思いますが、いかがでございますか。
  142. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 社会的弱者の立場ということにつきましては、ほんとに私も心から心配しております。今後、情勢の推移というものを十分見守りまして、遺憾なきように善処してまいりたいと、かように考えます。
  143. 多田省吾

    多田省吾君 次に、いわゆるネズミ講とマルチ商法について若干お伺いしたいんですが、実はこのネズミ講の問題につきましては、私も昭和四十五年の十二月十七日の参議院大蔵委員会で、ちょうどその当時も大蔵大臣であられた福田大蔵大臣にお尋ねしたことがあるんですが、そのときの大臣の御答弁も、あれは熊本の第一相互経済研究所でございましたけれども、「この種の仕組みは、終局において大衆に迷惑を及ぼすということが想像されます。そういうことがあってはならないわけでありますので、政府としてもこの問題はどういうふうに処置するか、ひとつ至急相談をいたすことにいたします。」という答弁を、いまから三年以上前になさっているわけです。その後、昭和四十六年になりまして、国税庁のほうで所得税法違反ということでいま問題になりまして、その後、一時ちょっとこういうネズミ講類似のものがいわゆる繁殖するのがとまったのですけれども、また最近たくさん出ております。  で、この前の三月九日の衆議予算委員会分科会でも、わが党の渡部議員あるいは社会党の佐藤議員等がこの問題でさらに質問されているわけです。そのとき大臣は、「これは至急に取り調べまして、既存の法律の適用でこれが善処できないのかどうか。そういう点、どうも善処できないんだということになれば、新しい立法ということも考えなければならぬだろう、こういうふうに思います。その辺まで含めまして早急に検討してみる」、このようにおっしゃっているわけです。  そのことにつきまして、まず法務省に、いま裁判になっております熊本の第一相互経済研究所の裁判がどのような進行状態であるか、ひとつお尋ねしておきたいと思います。
  144. 根岸重治

    説明員(根岸重治君) お尋ねの事件は、四十七年の三月七日に所得税法違反で起訴されておりますが、同年の五月十一日の第一回公判から現在まで十五回の公判、準備手続は三回実施しております。何ぶんこの事件につきましては、被告人側が全面的に争っておりまして、大部の書証不同意でございますので、検察官側では約百五名の証人を申請しております。  そういう状況で、東京在住の弁護士がついている関係もありまして、集中審理が困難をきわめておりますが、大体第四回公判以後は、一月半から二月ごとに連続二開廷の割合で進んでおりまして、十五回の現在の公判までに大体十一名の尋問を終了しております。  なお、本年は十二月まで、いま申し上げましたような割合で十回の公判が予定されておるというのが現在の状況でございます。
  145. 多田省吾

    多田省吾君 警察庁にお伺いしたいのですが、この種のネズミ講につきましてはいろいろ種類があります。その会がお金の受け入れをする、あるいは会員相互で金の受け入れをする、あるいは土地などの物品の販売融資なんかを行なう、そういう種類があるわけですが、いま出資法違反に問われております三つのものですね、北海道、秋田、熊本と聞いておりますが、それはおおむね会が金の受け入れをして、しかも元金は返すと保証しているものが出資法違反なんだということで調べているんだと思いますが、そのほか、会員相互で金の受け入れを行なっているものは、熊本の第一相互経済研究所のように、これは出資法違反とは認められないので、どうしても所得税の問題で追及する以外にはないというようなふうに見受けられますが、その点いかがでございますか。
  146. 相川孝

    説明員(相川孝君) ただいま御指摘のありましたネズミ講方式の利殖組織でございますが、御指摘のように、いろんな形態がございます。金銭の受け入れを会自体が行なうもの、あるいは会員相互に、金銭の授受といいますか、送金なり受け取りを行なう仕組みのもの、あるいはさらに、土地とか不動産あるいは動産の物品販売またはその資金を融資するというようなシステムもございます。それから、販売人の拡張を目的とするいわゆるマルチ商法形態、大体私どもこの四つの形態に分けて実態把握につとめておるところでございますけれども、先生お尋ねの、現在私どもが取り締まっておりますのは、検挙中のものは、会が直接お金を受け入れまして、しかもその元金なりを保証するという形態のもの、これは出資法違反の「預り金」の禁止にふれる形態ということで検挙をしておるわけです。残念ながら、その会員相互に金銭の授受を行なう形式のものにつきましては、出資法の第二条にいう、「預り金」にずばり該当いたしませんので、その他の犯罪、たとえば横領とか詐欺とか背任等がからむものについては、私ども犯罪として取り締まることができるわけでございますが、残念ながら現在の状態では取り締まりという規制を加えることができないような状態でございます。
  147. 多田省吾

    多田省吾君 これはまあ、御承知のように、そういう会員が十万人いたとすれば、ほんとうに利益を得ているのはほんの数百人でございまして、あとの九万九千数百人は全部犠牲者でございます。これは二億人とか何十億人が加入すればみんなが利益を受けるのだというようなことをいっていますけれども、こんなことは常識としてできない相談でございまして、やはり被害者は非常に増加する傾向にあるわけです。警察庁の調べでは現在のところ二十一組織、十万人、八十八億円というようなことをおっしゃっておりますけれども、これは非常にわずかの期間で調べたことでございましょうから、ほんとうは何百組織、あるいは百万人以上、あるいは数百億円という金が関係していると思われますけれども、引き続いてこういったネズミ講あるいはネズミ講類似の組織をお調べになろうという、そういう予定がございますか。また、常識で考えて二十一組織、十万人、十八億円にとどまっているのかどうか、まだ調べられない部分が相当あるのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  148. 相川孝

    説明員(相川孝君) 御指摘のように、私ども短期間の間に一応全国的な実態というものを調査してみました。その結果が、二十二組織というようなものでございましたが、その後も新しい組織というようなものは随時私どものほうに報告が寄せられておりますし、実態というのはもっともっと広くかつ数が多いものと私自身も考えています。したがいまして、このような組織の実態を各都道府県警察でしっかりやりまして、これが先ほど申し上げましたような出資法違反の形態をとるものであれば、出資法違反で取り締まってまいりますし、なお他の犯罪がからむものであればそういう面から検挙なり、捜査を進めていきたい、このように考えています。  一つ申し上げたいことは、たとえばこのような利殖組織でパンフレット、宣伝書みたいなものを発行いたしております。そういうパンフレット、宣伝文そのものと実際の勧誘方法なりあるいはいろいろ会員との間に約束する事柄が違うものがございます。そういうパンフレットあるいは宣伝文のみの会名じゃなくて、そういうほんとうの勧誘実態といいますか、そういうものを的確に把握して、法律に照らして必要な取り締まりを行なっていきたい、このように考えて、いま努力いたしております。
  149. 多田省吾

    多田省吾君 その場合、昭和四十五年当時もどうも出資法違反として検挙できないというようなことで、警視庁等では軽犯罪法に抵触する疑いがあるというようなことで、二、三のそういうネズミ講類似の組織に対して強い警告を与えて、それ以来全然伸びなかったというような姿もあるわけです。ですから、出資法違反でないようなしかたで、巧妙に会員相互とかあるいは元金を保証するなんということを言わないでやっているのもだいぶあるわけですね。そういうものがますます伸びる傾向にあると思うのです。ですから、恒久的対策はこれからお伺いしますけれども、いま現在においては、やはり私は警視庁でやられたように、軽犯罪法に抵触するおそれがあるとか、そういう警告を強く全国的になさるお考えはありませんか。
  150. 相川孝

    説明員(相川孝君) 警視庁でやりましたような方式は、被害の拡大防止といいますか、終局的に多くのものが被害にかかるという結果を事前に防止するためにもたいへん私はいいことだと思っております。ただし、私どもやみくもにいかなる組織、あるいは形態のものに対しても警察署に呼んで、あるいは本部に呼んで、これを警告、中止方を申し入れをするということについては、若干慎重に検討いたしているわけです。と申しますのは、やはり軽犯罪法違反のおそれがあるとか、あるいはその警視庁でやっておりますように、未成年者を勧誘対象にして、無理やりに借金証文を書かせる。そして入会をさせまして、実績があがらない。しかし、その入会金は返してもらうというようなことから、保護者あてに督促状を、ないしは内容証明をぶつけるというような、きわめて好ましくない形態の勧誘も見受けられるわけです。あるいはその御婦人の方を、義理人情といいますか、ような関係から御婦人が御婦人をさらに勧誘していくというような形態も見られますけれども、それは、一度勧誘いたしました御婦人があと困ってしまって、警察署へ相談に来るというようなケースも見受けられます。そういう勧誘のやり方の好ましくないものにつきましては、やはり私どもぴしっと姿勢を正させるという意味で、随時警告なり自粛方を促してまいると考えます。
  151. 多田省吾

    多田省吾君 そうしますと、大臣のおっしゃるように、既存の法律の適用で善処できないという場合が非常に多いわけです。現在、こういう、たとえば現在の法律でも出資法を改正するとか、あるいは新しい立法をするとか、こういう作業が進んでいるのかどうか、大蔵省と、それから法務省にお尋ねしたい。
  152. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題は、放置することは私は妥当でないと、こういうふうに考えておりますのでありますが、どうもその大蔵省の金融法規違反という立場からいいますと、これは限界がある、こういうふうに思います。しかし、これは放置し得ない問題でありますので、ただいま法務省、また警察庁等とも相談をいたしておる、こういう段階です。まだ結論は得ておりません。
  153. 多田省吾

    多田省吾君 法務省はどのようにお考えになりますか。
  154. 根岸重治

    説明員(根岸重治君) ただいま大蔵大臣がお答えになりましたと同じでございまして、現在、大蔵省及び警察庁とも協議をして検討を進めているところでございます。
  155. 多田省吾

    多田省吾君 先ほどからお答えなさっているように、やはり現在の法律ではなかなかできないということになれば、一番この問題を担当していらっしゃる警察庁としても、これは早急に立法化していただきたいということを考えておられるに違いないと思うのですが、三月九日の衆議院の予算委員会分科会等からもすでに一カ月近くたっているわけでございますが、相談相談ということで全然進んでいないようでございます。警察庁としても、やはり大蔵省や法務省からも御相談を受けておられると思いますけれども、やはり積極的に、こういうものを放置をいたしますと、やはり人心も非常に荒廃しますし、また、こういうことは外国に起こっていない問題でございますから、非常にまずいと思うのですね。被害者もたくさん出ますしね。そういうことで、いつごろまでこういう立法化をはかっていかれたいお考えなのか、また、どの程度、立法化の作業といいますか、折衝が進んでいるのか、その辺をひとつお伺いしたいと思います。
  156. 相川孝

    説明員(相川孝君) 先ほど大蔵大臣、法務省の刑事課長から御答弁がありましたように、私ども警察庁の立場といたしましても、何としても、結果的に将来大きな社会問題等に発展するおそれもなきにしもあらずという問題でございますので、たしか三月の末でございますけれども、大蔵省にもお伺いいたしまして、立法による規制なり、あるいは当面の行政措置で何とかこういう傾向鎮静してもらうように、いろいろ御配慮かたをお願いにはあがってきました。私どもも、警察――取り締まりの立場といたしましていろいろ考えてはおりますけれども、やはり大蔵省、あるいは法務省御当局の方といろいろ御相談をしながら、気持ちとしては、できるだけ早く取り締まり法規を確立していただいて、適正な取り締まりができるようにしていただきたいし、まいりたいと考えております。
  157. 多田省吾

    多田省吾君 大蔵大臣、この問題はやはり、三月の末に御相談なさったそうでございますが、これから出資法違反にならないような姿で合法的にやろうというような傾向がすでに多く見受けられます。早急に立法化をはかっていただきたいと私は思いますが、いつころまでということははっきりおっしゃられないかもしれませんけれども、やっぱり、めどはいつころに置いて作業を進められるおつもりなのか、どういう姿勢でおられるのか、おっしゃっていただきたい。
  158. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 現行の法律体系でこの問題を処置できないかということを、まず相談しなければならない。それができないということになれば、そこで新立法手段ということになるのですが、いま前段のところを関係省で相談しておると、こういうのです。なるべく急いで、善意の大衆に迷惑をかけないというふうにいたしたいと、かように考えます。
  159. 多田省吾

    多田省吾君 警察庁にお尋ねしたいのですが、三つの検挙した団体のほかに、出資法違反の疑いのあるものはいま現在ございませんか。
  160. 相川孝

    説明員(相川孝君) 現在検挙いたしておりますのは、北海道、秋田、熊本、三県でございますが、そのほかのものについては、先ほどお話し申し上げましたように、単にパンフレットのみにとどまらず、そのほんとうの実態というものを的確に把握して、事実判断を行ない、出資法違反になるものがあれば、出資法違反に該当する事実を有するものがあれば、これを取り締まってまいりたい、目下その努力をしている最中でございます。
  161. 多田省吾

    多田省吾君 通産省にお尋ねしたいのですが、警察庁で四つの種類があるとおっしゃった、最後の販売員の拡張を目的にするもの、これはいわゆるアメリカではやっているマルチ商法という商法だろうと思いますが、これはすでにアメリカや、イギリスや、シンガポールなんかでは禁止しているわけですよ。日本だけがこれを放置しておりますので、アメリカからこういった類似のものが、化粧品とか、そういうものがわっと来まして、いま学生、あるいは主婦の方々に非常なブームを巻き起こして、被害者が続出しているわけでございます。その種類も十や二十でとどまらないと思いますが、通産省といたしまして、そういう実態についてどのような調査をなされているか、お尋ねしたいと思います。
  162. 青木利雄

    説明員(青木利雄君) 現在、いわゆるマルチ商法というものをやっているといわれている会社は十ほどあるようでございますが、このうちで、通産省でかなりはっきり実態を押えておりますのは三社ほどございます。その結果につきまして、かなり問題があるということで、産業構造審議会に特殊販売小委員会というものを設けまして、本年一月以来、いかなる対策を講ずべきかということを検討しておる段階でございます。
  163. 多田省吾

    多田省吾君 そのいま調査していらっしゃる二つの種類とは、具体的にどういうものか。それから、産業構造審議会の特殊販売小委員会で規制についての新法を考えていらっしゃるようですが、それはいつごろ答申が出るのか、この二点をお伺いいたします。
  164. 青木利雄

    説明員(青木利雄君) 一つはAPOジャパンという会社でございまして、自動車エンジンの補助燃焼装置、これの販売につきまして、何というのですか、ネズミ講的な販売員システムを持っておるものでございます。もう一社はホリディマジックといいまして、化粧品関係でございますが、同じくネズミ講的な販売員組織を持っております。これにつきまして、産業構造審議会の特殊販売小委員会で検討いたしておりますが、そこでの議論では、先生の御指摘の含みにあると思うのでございますが、いわゆるマルチ商法という段階で規制すべきなのか、それとももう一段幅の広い、およそネズミ講はすべてということで規制して、その結果が及ぶほうがいいのか、そういう点も含めて、委員の問で検討が行なわれております。できれば、六月ないし七月までには結論を得たいと考えております。
  165. 多田省吾

    多田省吾君 通産省では、このホリディマジック関係で、たしかきょうとあした、京都国際会館で会費六千円で豪華なデモンストレーションのようなものをやられる予定があるということは御存じですか。
  166. 青木利雄

    説明員(青木利雄君) うわさは聞いております。
  167. 多田省吾

    多田省吾君 何だかこのホリディマジックでは、昨年の二月にもこういったデモンストレーションを行ないまして、ある若手の衆議院議員もそこで演説をしているというようなことも言われているわけでございまして、こういうものが社会に与える影響、こういったものがやはりたいしたものだということで、非常に広がるおそれが私はずいぶんあると思うのです。これもやはり警察庁でネズミ講類似のものとして、四つの中の一つに含めておるのでございます。そういう対策がおくれればおくれるほど、やはり影響が大きいということから、ひとつ通産省においても、六月、七月ころ答申が出るそうでございますけれども、ひとつ強力にその規制のほうをお願いしたい、このように思います。  これをもって終わります。
  168. 星野力

    ○星野力君 私は、金融の問題と、それに関連しまして中小企業対策について質問したいと思います。  大蔵大臣福田さんには初めて質問するわけでございますが、まず最初には、中小企業庁にお伺いしたいと思います。  昨日幾つかの興信所が三月中の企業倒産について発表しましたが、役所として、中小企業庁として、三月中の倒産件数、負債金額、倒産原因についてお答え願いたいと思います。
  169. 小山実

    政府委員小山実君) 倒産の調査につきましては、二つの興信所でやっておるわけでございますが、現在私どものほうで把握しておる限りにおきましては、三月の倒産件数は千三十六件、負債総額は千二百十七億余ということを聞いておるわけでございます。それで、その原因でございますが、従来の放漫経営とか販売不振、インフレ倒産というものに加えまして、金詰り型の倒産がかなりふえてきておるということ、それから倒産が大口化いたしまして、中堅企業の部類まである程度出てきておるというようなことを把握しておるわけでございます。
  170. 星野力

    ○星野力君 この興信所、いまは東京商工興信所の調査だと思いますが、一千万円以上の倒産分でございますね。一千万円以下の中小企業の倒産について、傾向だけでも中小企業庁として御存じでございましょうか。
  171. 小山実

    政府委員小山実君) 一千万円以下の小口の倒産につきましては、中小企業庁が東京商工興信所に委託をいたしまして、東京二十三区内、それから大阪、広島と、この三つにつきまして小口倒産調査というのを行なっているわけでございますが、まあ小口の倒産は実態を把握するのに非常にむずかしい点がございますので、現在までに私どもの確認しておりますのは、ことしの一月までの数字でございますが、これによりますと、四十八年に入りまして、全体で一月は四百十二件、負債金額十六億四千八百万でございましたのが、その後、特に大きな変化はございませんが、まあ若干ふえぎみでございまして、たとえば最近で見ますと、比較的多うございましたのは、十月の六百五件、負債金額二十七億円余というような数字がございます。それから年末にかけまして若干上がり下がりございますが、ことしの一月では四百四十件、約二十七億の負債金額と、こういう状況になっております。
  172. 星野力

    ○星野力君 四十七億ですか。
  173. 小山実

    政府委員小山実君) 二十七億でございます。
  174. 星野力

    ○星野力君 一月は。
  175. 小山実

    政府委員小山実君) はい。四百四十件、二十七億円余でございます。
  176. 星野力

    ○星野力君 一千万円以上の負債額を持った倒産が六年ぶりで一千件の大台を越えたと、とんでもない大台でありますが、負債金額は空前、原因はつまるところ金詰りと、おそらく負債金額一千万水準以下、いまの御報告もございましたが、底辺企業の倒産というのは大きくふえておるんじゃないかと、最近は見られるわけであります。この状態大蔵大臣どういうふうにお考えになりますか。当然といいますか、これくらいはいたしかたない、これも金融引き締め政策のあらわれであり、政府政策を貫くためにはやむを得ないことだというふうに考えておられますか、どうですか。
  177. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私も政治家ですからね、日本経済の流れの中で一企業たりといえども落後者が出るということは、これはもう非常に重大な問題であるというふうに深刻にとらえております。ただ、いま皆さんにも御心配をかけました物価狂乱状態、これを克服しなきゃいかぬ、これには総需要抑制政策以外に手はない、こういうふうにまあ考えますので、この政策は、これは厳粛にまた続けていく、こういうかまえでございますが、その間、まじめでやっておって、そうしてどうも国の政策のゆえにそのしわ寄せを受けるということがないようにということを念願しつつ諸般の対策をとっておると、こういうところでございます。
  178. 星野力

    ○星野力君 いま、この問題については、そういうまじめな業者が倒れることのないようにと、それに対しては手を打っていくと、打っていきたいという念願を持って対処すると、こうおっしゃったその御答弁をお聞きして、先へ進みます。  中小企業の問題またあとで具体的にお尋ねしたいと思いますが、政府金融引き締め政策によって、各企業とも金詰まりが激しくなってきておると、こう言われておるのでありますが、他方では、大企業に対する金融機関の集中融資が大きな問題になっております。たとえば、三井物産をとりますと、昨年九月末現在で、都市銀行、信託銀行、長期信用銀行など十六社から合わせて七千八百六十億円もの超大口融資を受けております。この企業に対する銀行の大口融資の状況、またはどのような対策を講じておられるか、関係当局からひとつお答え願いたいと思います。
  179. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 一つの債務者に対する貸し出しの額が大口であるものというものの基準として、銀行の自己資本を基準にすることが普通でございますので、一応これを自己資本の二〇%をこえるものというのを大口と考えます場合には、昨年の九月末現在、都市銀行で全体といたしまして貸し出し先といたしましては十二の法人がございます。そのうち商社が九つ、鉄鋼が二つ、地方公共団体が一つといった状況になっております。そういうもの全体を、全体の貸し出しの中で見ますと、大体五%ぐらいになっております。  で、御承知のように金融機関、預金をお預かりしてやっておる以上は、できるだけ融資を分散し、危険を分散していくというのが金融機関のたてまえでございますので、そういうことから大口信用の集中を排除するということは、常に考えていかなくてはいけないわけでございますが、高度成長の過程におきましては、またそれなりの事情がございまして、なかなかむずかしい状況ではございますが、最近になりまして、ややこの傾向というものは減ってきておるということは言えるかと思いますが、しかし、まあ特定の企業に集中して金融機関が貸し出すということが、原則としてやはりできるだけ是正されていくべきであるということから、何らかの形で今後経済成長が安定化していくと、また、そういう経済社会というものを背景として、融資がどういうふうに行なわれるのがいいかというような観点から、現在その大口信用というものの集中排除という方向、及びそれのためにまずどういう方法で出発すべきかということについて検討をしておるというのが現状でございます。
  180. 星野力

    ○星野力君 日銀副総裁、お見えになっておりますか。  日銀副総裁にお聞きしますが、大企業に対する大口融資の集中は、市中銀行だけではございません。日本銀行にも責任があるのではないかと思います。確かに、政府、日銀は、昨年初め以来いろいろの金融の引き締めを行なってまいりました。昨年十二月二十一日には公定歩合を九%に引き上げることもやりました。しかし、その反面、いまや日銀信用の柱であるところの買い入れ手形、これをべらぼうにふやしておられる。日銀の買い入れ手形は四十七年の残高に比べて、この三月末までにどのくらいふえておるのか、その推移を簡単でよろしゅうございますから……。
  181. 河野通一

    参考人河野通一君) 日本銀行が、市中といいますか、市場から手形を買い入れる、金融調節の一環として買い入れることにいたしましたのは、四十七年のたしか六月ではなかったかと思います。その当時から、市場の発達に従ってだんだん買い入れをふやしてまいりましたが、四十八年の九月末が二兆三千五百億、それが本年の三月末には四兆三千億という数字に相なっております。
  182. 星野力

    ○星野力君 四十七年六月から始まったわけでありますが、四十七年末はたしか七千百五十億円、それが今日では六倍以上の四兆三千七百五十一億円という、猛烈なふえ方であります。一方で金融引き締めをやりながら、手形の買い入れが激増しておりますが、この手形はおもに大企業の手形だろうと思いますが、どうでございますか。
  183. 河野通一

    参考人河野通一君) 私どもが手形を市中から、市場から買います場合においては、中央銀行の資産になるわけでございますから、その資産といたしましては、事柄の性質上、当然確実なもので優良なものでなければならないと思います。そういう条件で買っております。したがいまして、量的にはいわゆる大企業に属するものが多いと思いますが、多いけれども、中小企業におきましても、その企業の内容が優良であります場合においては、規模のいかんにかかわらず、私どもはその手形を市中から買っております。
  184. 星野力

    ○星野力君 日銀の買い入れ手形を業種別、資本金規模別に調べた資料、これを発表していただけましょうか。
  185. 河野通一

    参考人河野通一君) 私どもは業種別、資本金別にはチェックをいたしておりません。ただ、御案内かと思いますが、非常にこの手形の買い入れの残高が、いま申し上げましたように、非常にふえてまいります過程において、中央銀行たる日本銀行の資産の保有のあり方として、やはり特定の企業の手形にあまり大きく片寄るということは、中央銀行の資産のあり方として適当でないという観点から、去年の初め以来、そういう特殊の、非常に多額の手形が市場に出回っておりますものについて、特定のものにつきましては、これを買い入れの限度を設けるという措置をとってまいりました。したがいまして、その限度を設けましたものにつきましては、いまは大体二十社、二十二社ぐらいかと思いますけれども、これにつきましては、若干時間をかけますれば、業種別には手形の内容を、残高をチェックすることは可能かと思います。ただ、弁解するようになりますけれども、この手形は、いま残高で約一万件ございます。それをしかも、この手形は、われわれはやはり短期調節の目的のために買っておるわけでありますから、日々買い入れをやり、あるいはこれを売り戻しをし、あるいは期限が来ることによって、これを回収されるといったようなことが日々起こっておりますので、これを一々ある時点現在でこれをチェックいたしますためには、相当技術的にも時間を要するかと思います。
  186. 星野力

    ○星野力君 いまお答えくださったことについても順次お聞きしていきたいと思いますが、買い入れ手形の業種別、資本金、規模別のチェックはやっておられないということでございます。非常に件数が多いということを言われますけれども、また短期のものであると言われますけれども、これが次々累積しまして、三月末で四兆何千億円、日銀貸し付け金の二倍以上にもこれはのぼっておるわけでございますが、その買い入れ手形について、そのような調査作業というのは、これは必要なことだろうと私たち考えます。やられておらぬのがおかしいように思いますが……。  ところで、日銀が昭和四十七年十二月二十三日現在で、手形残高の業種別構成比をお示しになった資料が発表されておりますね。それによりますと、割引手形が千七百三十億円、それから買い入れ手形が八千三百六十億円、合計一兆九七億円、こうなっております。そのうち製造業が四五・一%、商社などを含みます非製造業が五四・九%、こうなっております。しかも、非製造業のうちの十大商社は全体の三〇・一%を占めておる。これは四十七年でございますが、この構成比にその後どのような変化が起きておるか、現在どのようになっておるか、お答えできましょうか。
  187. 河野通一

    参考人河野通一君) まず、お答えを申し上げます前に、いま星野委員から御指摘になりました点についてのお答えを先に申し上げたいと思いますが、私どもがこの手形の買い入れの内訳について特にチェックをいたしておりません理由は、この手形は、私どもといたしましては、日本銀行の通貨供給のいろいろな手段がございます。御承知のように、おもな手段は三つあるわけで、その三つのうちの一つの手段として、対市場オペレーションというのがあるわけです。そのオペレーションの一つとしてこの手形の売買ということをやっておるわけでありますが、その手形の売買というのは、市中に出回っておる、市場に出回っておる手形を原則として買っております。したがいまして、それは市場にある手形を買うわけでありますから、その金が、それによって放出された、供給された資金というのは、直接に当該手形を振り出した企業、あるいはその企業に属する業種にいくわけではもちろんございません。私どもは、金融市場における資金の需給の過不足のしりと申しますが、そのしりを調節するための一つの方法としてこれをやっておるわけでありますから、その買った手形の業種が何であるかということは、先ほど申し上げましたように、中央銀行の資産の構成として、特殊の企業に片寄ることは適当でないけれども、それを詳しく一々チェックすることは、私どもたいした必要を感じておらぬという意味で申し上げたわけであります。  それからいま御指摘の資料は、たしか国会の御要望に従って、ごく非公式にその当時はじいたものを差し上げたと思いますが、最近の数字で申しますと、先ほどちょっと申し上げましたように、ちょっと十大商社に対するものがはっきりパーセンテージをとっておりませんが、二十二社――買い取り限度を設定しております二十二社の合計額でありますが、これがいまお示しになりました時期におけるパーセンテージは、たしか五〇%近くになっておったと思います。それが、現在の買い入れ総残高に対する当該二十二社の買い入れ残高のウエートは二〇%を割っております。一九%台になっております。したがいまして、むしろ、このお示しになりました時点における数字の中でそういった特殊の企業に対する手形の買い入れ残高が非常に多いということを私どもは反省いたしまして、そういう限度額を設けたわけでございますから、その限度額を設けたことによって、いま申し上げましたように、シェアといいますか、ウエートといいますか、そういうものは確実に大幅に低下をいたしております。たしか一九・五ぐらいになっておるのかと存じます。ただ、十大商社に対する分につきましては、ちょっといま資料をはっきりしたものを持っておりません。十大商社の分の残高はいまちょっとここに手元に持っておりません。
  188. 星野力

    ○星野力君 前回、四十七年にこれが問題になったときの状況に対して反省を日銀当局としてはお加えになって、そういう政策もとってこられたということなんでありますが、そういうことも私たち知りたいし、これからの金融問題を検討していきます上でこれは重要なデータになると思うのでありますが、もう一度そういう資料を、十大商社の占めておる割合も含めてお出し願えないでしょうか。
  189. 河野通一

    参考人河野通一君) いま申し上げましたような意味で、私どもはそういうものの正確なものを持つ必要をあまり強く感じておらぬわけでございますけれども、ただお断わり申したいことは、相当手数がかかるわけでございます。しかも、それが短期間にしょっちゅう入れかわっているというようなことも含んで考えますと、相当たいへんな作業になるということをひとつお含み願いたい。これはやろうと思えばできます、ある時点を輪切りにしてとればできますけれども、それの業種別と資本金別とをかみ合わせることは、個々の企業の資金状態に対する、まあ何といいますか、企業の金繰り自体に相当はっきり見当がつくことになりますので、許されますならば業種別に――まあどうしても出すべしということでありますれば、業種別には少しの作業をいとわないでやればお出しできるかと考えております。
  190. 星野力

    ○星野力君 私はそれでよろしいと思うんです、業種別でですね。ただその中に、この前ですと、製造業として卸小売り四一・四%というような数字が出ておりますけれども、もう少し詳しく、いま話の出ました大手の商社十社、こういうものの割合がわかるように、この前もこれは教えていただいたのですが、わかるようにしてひとつ、そう詳しいものは要りませんからお願いしたいと、こう思います。委員長のほうでもよろしくひとつ……。
  191. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 理事会にはかって処置します。
  192. 星野力

    ○星野力君 先ほどお話しのございました二十二社の問題でありますが、特別に二十二社を選んでその企業の手形については買い取り残高の制限をしておられるわけでありますが、二十二社の会社名、それから各社別の現在の買い取り制限額、これ、お持ちになっておりますか。
  193. 河野通一

    参考人河野通一君) 二十二社のうち、商社が十社、最近の残高は二千三百億、それから建設三社、これが八百億、その他としてまとめてございますが、たとえば造船業とかあるいはその他の重工業、電機会社あるいは製鉄会社、そういったものを含んでおりますが、それが残りの――二十二社のうちの残りであります、それが総計四千六百億、そういうことになっております。
  194. 星野力

    ○星野力君 私、もう一つお聞きしましたのは、各社別の現在の買い取り制限額、これはまた見直して――見直しをやるというふうになっておりましたですね。現在どういうふうな制限額になっておるかと。
  195. 河野通一

    参考人河野通一君) その個々のですか。
  196. 星野力

    ○星野力君 ええ。たとえば三菱商事とか芝浦電気とか物産とか、そういう代表的なものだけでもいいです。
  197. 河野通一

    参考人河野通一君) この点につきましては、業種別に限度を申し上げることはできますけれども、個々の企業別に具体的な限度はどうなっているかということは、私どもとしては差し控えさしていただきたいと思います。
  198. 星野力

    ○星野力君 どういうことでしょうか。二十二社というのは、いま社数を申されましたが、この四十八年一月-三月の買い取り限度額というのは、三菱商事の三百三十七億円、次が東京芝浦電気の三百八億円、以下ずうっと三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事、日商岩井、安宅産業、トーメン、兼松江商、日綿実業、川鉄商事、石川島播磨重工業、三菱電機川崎製鉄、小松製作所、本田技研工業、富士通日本軽金属、清水建設、大成建設、大林組と、こう二十二になっておりますが、この二十二はこのとおり変わらないのか、それからいま私三菱商事と東芝をあげましたけれど、この数字も現在変わっておらないのか、その点は差しつかえないでございましょう。
  199. 河野通一

    参考人河野通一君) その数字はどこから出たのかよくわかりませんが、私どもとしては、その業種別の限度額なり業種別の買い入れ残高――限度額と買い入れ残高とは違いますね、これはもう御承知のとおり一致しませんが、それはいろんな形であるいは外へ出ておるかもしれませんが、個々の会社別の限度額なり借り入れ残高は、私どもとしては公表はもちろんいたしておりませんし、どういう経路で御入手になりましたか存じませんが、個々の企業のそういう問題につきましてはお許しをいただきたいと存じます。ただ、先ほど来お話しございましたように、商社については限度額をどういう――自己資本に対して幾らというのが大体普通のやり方ですけれども、それはいまどのくらいか、どういう限度でやっておるかという程度のことなら申し上げられます。
  200. 星野力

    ○星野力君 それならあれですね、商社については一体どういう基準で限度額を定めておられるのか、その他の企業についてはどういう基準で定めておられるのか、それをお答え願いたいと思います。
  201. 河野通一

    参考人河野通一君) これもいま御案内かと思いますが、買い取りの限度を去年の初めに設定したわけでございますが、その後、この限度額の計算の基準は、そのときの事情によって変えてきておりますが、現在の基準は、商社につきましては自己資本の二分の一、それからその他の企業につきましては三分の一ということになっております。  なぜ商社の自己資本に対する割合を多くしておりますかというと、これはやはり自己資本と他人資本との割合が事柄の性質上商社においては高いわけでございますから、制限いたしますにいたしましても、一般の業種とは変えなきゃならぬという実情に即した判断に立っております。
  202. 星野力

    ○星野力君 その商社に対する二分の一を他の企業と同じように三分の一にするということは、御検討なさっておられるんですか、どうですか。
  203. 河野通一

    参考人河野通一君) いまのところ私どもは、この目的からいって、特に変えなきゃならぬという必要は感じておりません。
  204. 星野力

    ○星野力君 先ほど私、二十二社の名前を読み上げましたが、あれでわかりますように、日本の超大企業だけがずっと並んでおるわけであります。これらに対する買い入れ限度額というものは守られておりますか、どうですか。
  205. 河野通一

    参考人河野通一君) もちろん守られております。ただ、そのチェックがなかなか正確に、一銭一厘違わないかと言われると、それは違っておるかもしれませんけれども、それは守られておることは間違いございません。  それから、なおお断わりいたしておきますのは、先ほどお答え申し上げましたように、大企業に金額的にも非常に片寄っているではないかというお話し、この二十二社に非常に片寄っているではないかというお話しでありますけれども、これは先ほど申し上げましたように、私どもは、手形買い入れ総額の二〇%を切っておりますから、まだこのほかにたくさんいろいろな会社がありますし、その中には先ほど申し上げましたように中小企業といって差しつかえない企業も含まれておる、これだけはつけ加えて申し上げておきます。
  206. 星野力

    ○星野力君 先ほどから申しました買い入れ手形の問題につきましても、月々激増して累積して膨大な金額になっております。かつての日銀貸し出しとこれは同じ性格なものにもなってきておる。先ほど短期のものであって云々ということを言われましたけれども、都市銀行がそういう大企業に集中的に貸し出しをやり、その企業が振り出した手形が結局は日銀によって金をつくられておる。いまの金融引き締めの大きなやはり抜け穴、それがそこにある、こういうふうに私ども見ざるを得ないんでありますが、どうも時間がたってしまいましたから、この問題は一応ここにおきまして先へ進みたいと思います。  副総裁、どうも御苦労さんでした。  次に、外資取り入れが金融引き締めのやはり大きなしり抜けになる問題について質問いたしたいと思うんであります。  四月二日、わが党の渡辺武議員が参議院の予算委員会物価集中審議で三井物産の通達を取り上げて質問しました。橋本物産会長が認めたこの通達には――この通達全体が「社外秘」となっておりますが、特に「極秘」とした部分があるわけです。その部分にこう書かれております。「為替管理ノ外貨輸入規制緩和ニヨリ輸出前受金ハ一件一〇万ドルニアップサレタ。」、それから云々とありまして、「国内資金的ニ見テモ現在金融引締メ厳シク、米物金利約一一%ヲ利用シ前受ケシ一年運用スレバ資金面ニ於テモ全社的メリット大デアルコトモ勘案、各部ノ積極的協力ヲ御願イシタイ。」、これは物産のトップから内外各部店長殿と、こうなっておる通達であります。つまり、輸出前受け金をどしどし取り入れて、積極的に金融引き締めの裏をかくことを指令している。輸出前受け金などというものを取り入れることができるのは、これは大企業だけでありますね。円安の現在でも、一月には一億ドル、約三百億円の前受け金が入っているだろうといわれておるのでありますが、円高になればどっとこれが大量に入り、金融引き締めが大企業には全くしり抜けになる可能性が強いのであります。こういう事情に対して、どういうふうにお考えになりますか。
  207. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま御指摘のように、私どもが前受け金の取り入れにつきまして為替管理上いろいろ制限を設けてきておりましたものを、最近に至りましてややゆるめぎみに運用いたしております。これは、ただいまも先生の御説明の中にございましたように、将来円が非常に弱くなるというようなことが見込まれますときには、あるいは前受け金その他を通じまして外貨が入ってくる、これによりまして円が安くなるのを防ぐという効果がございます。金融面の対外的な面を見ますればそういったことが好ましいし、私どももまた、そのことを期待しながら為替管理の見直しをやってきた次第でございます。  しかしながら、一つのこういった取引ないしそういった政策を動かしますには、私ども政策当局といたしましては、二つの面からの判断をいたさなければならない。ただいま申し上げました対外的な面からの判断は、この前受け金の制限をゆるめましたところであらわれておるわけですが、しからば、それが対内的にどうなるかという面が一つございます。この面につきましては、私どもいろいろ銀行局あるいは日本銀行の外国局を通じて日本銀行の営業部、そういったところと緊密に連絡をとりながら、絶えず批判を加えつつ政策運営しておる次第でございます。  なお、ちなみに申し上げますと、前受け金の流入というのは大体三億ドル前後でここ一、二、三月推移いたしておりますが、ただいま御指摘のような指令があったのかもしれませんけれども、たとえば三月は二月よりもずっと前受け金の入り方が少なくなってきておる。しかも、その前受け金の概数で申し上げますれば半分以上、六割から七割というのは船舶関係の前受け金でございます。これは、船舶につきましては、御案内のとおり、契約時に幾ら、着工時に幾らという支払いの慣行がございますので、受け入れの形態は前受け金ではございますけれども、ただいま御指摘のような投機的な性格を持った前受け金ではないということを御承知いただきたいと存じます。
  208. 星野力

    ○星野力君 円安に先行きなるか、円高になるかということは、これは見通しの問題であり、そこにかけるのは投機ということになると思いますが、三井というのは御承知のようにドル買いの伝統を持っておる企業でありますし、この場合もはっきり円安傾向は再び修正される可能性もある、こういう認識に立ってこういう指令を出しておる。しかも、いま読みましたように、米物を一一%の金利でもって受け取って一年間回せば、全社的には大きなメリットがある、こういうことをはっきり言っておるんです。これを国内で資金として役立てるためにも大いにやれと、こう奨励しておるんですよ。こういうものを野放しにしておいたら、引き締め政策、大きな穴をかじり出されることになるんじゃないかと思う。  あの物産については、直接この問題とは関係ありませんけれども、別のこれは通達ですが、昨年の十二月二十日に出した――いまの通達は一月八日でありますが、十二月二十日にも、国内の原料、物不足に対処してのやはり同じような通達を、指令を出しております。この中なんかでは、こういう機会は「当社ニトッテハ将ニ系列化ノ促進、商権拡大ノチャンスノ時期ニアリマス。」ということで、いろんな指示をやっている。千載一遇ということばは、どこの会社でしたか、企業でしたか、使って問題になりました。物産も同じことを言っている。こういうところへどんどん金の流れる道を開いてやる必要はないんですよ。  次の問題に移ります。さらにことしの一月七日からインパクトローンのほうも導入規制緩和が行なわれたわけでございますね。そうしますと、大企業は外貨を取り入れ、導入された外貨に見合う円資金を手に入れることができるわけであります。そういう意味で、明らかに金融引き締めのしり抜けを鉄鋼、電力、ガスなどの大企業に許すことになると思うんでありますが、このインパクトローンの円転換規制はどういうことになりましょうか。
  209. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) インパクトローンの取り扱いにつきましては、かつて国際収支の黒字が非常に大きかった時代には、これが入ることを抑制しようということで、非常にきびしい規制をしたことがございます。これは、インパクトローンをとってはいけないというところまではやったことはございません。御案内のとおり、かつてとったインパクトローンの返済というのがございますから、大体その返済よりも少な目にしかとってはいけないという基準を立てておりましたものを、その後ほぼネットゼロ、すなわち返す範囲ではとってもいいという程度にゆるめ、そして最近では、特定の業種につきまして、ネットがプラスになるような運用をいたしております。  そこで、御質問の点でございますが、インパクトローンをとりたいという申請がまいりますときには、手続的にはこれは日本銀行の外国局を窓口として私どものところへまいります。そこで、まいりました際に、日本銀行の外国局が行内におきまして営業局とよく打ち合わせをし、そしてまた、私どものところへまいりますと同時に、事業所管省、これは大きいものは大体通産省の場合が多うございますが、事業所管省にも写しがまいりまして、こちらはまた、産業政策的な見地からいろいろな見解を述べる。したがいまして、私どもと事業所管省と日本銀行と、三者が非常に緊密な連絡をとりながら、どこまでこのインパクトローンの取り入れの申請に対して認可を与えるかということを検討いたしております。  そこで、現実の場合には、御案内のとおり、電力にネットで入ってくるような形でのインパクトローンの取り入れを認めましたが、これらにつきましても、この電力事業全体としての資金ポジションがどうなっておるか、また、さらに突っ込んでは、個々の電力会社の事情がどうなっておるか、その辺の事情も日本銀行のほうで十分検討の上、私どもと相談いたしながら、どの程度まで持っていくかということを検討いたしております。  なお、これも先ほどの前受け金と同じでございますが、その外的な面、すなわち、私どもといたしましては、現在の国際収支の状況から見て、全体としてどの程度まで外貨の取り入れをふやしたいということも頭に置きながら検討し、認可を与えておりますので、入ってまいりましたものを円に転換するときに特別な規制はいたしておりません。
  210. 星野力

    ○星野力君 そうしますと、結局、鉄鋼にしましても、電力にしましても、ガスにしましても、インパクトローンを認め、さらに円転換を認めるということになるわけでありますが、これもまた大きな金融引き締めのしり抜けになると思うのであります。  いろいろお聞きしたいことがありますけれども、時間がなくなりましたから、冒頭に申しました中小企業の金融の問題についてぜひお聞きしておきたいと思います。  政府、日銀は、一方では金融の引き締めを行ない、他方では大企業に対して、買い入れ手形であるとか、輸出の前受け金、インパクトローンの受け入れ条件の緩和などによって大企業に対しては金融引き締めのしり抜けをいろいろ構築してきておられるということを私申してまいったのでありますが、そういうこと、大企業に対してはそういうしり抜けをやっておるからこそ、一方では中小企業は全体として引き締めが非常にきびしくなってきておる。先ほどもお話しが他の委員からもございましたが、四月-六月の中小企業危機ということがいわれております。ことし三月中の倒産件数、その負債金額については先ほどお伺いしたのでありますが、危機が予想されておる、危機と言われても、もう四月に入っておりますけれども、四月-六月の見通し、そのまた見通しの根拠、そういう点について中小企業庁からお伺いしたいのです。
  211. 小山実

    政府委員小山実君) 四-六月がどういう中小企業状態になるかということは、これは非常に見通しがむずかしいわけでございます。一般的な感じといたしましては、従来建設業でございますとか、繊維業でございますとか、業種的に肢行現象と申しますか、一部の業種にかなり影響が出てきていたのが逐次広がってきておるという感じがあるわけでございます。ただ、四-六月についても、そういう意味で中小企業庁としては十分その状況を適宜適切にウォッチいたしまして、必要な対策が後手にならないように十分配慮してまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  212. 星野力

    ○星野力君 四-六月さらに業種を広げて、苦しくなる企業がふえる、こういうふうに見通しを立てておられるんですね。
  213. 小山実

    政府委員小山実君) 見通しという言い方が適当かどうかはわかりませんが、そういうおそれもないとは言えない。そういうことになった場合に、対策が後手にならないように、最も最新の中小企業の事情を十分把握していくことという、その体制をつくっていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  214. 星野力

    ○星野力君 これまで繊維関係とか建設関係中小企業が多くの倒産を出しておるのでありますが、私たちのところへも非常な苦況を訴えた手紙がやってきております。ここにも、通信でありますが、静岡県の福田町ですか、別珍、コールテンが全国の九五%の生産をやられておるとか書いてありますが、ここでももう四月以降全く見通しが立たない。中小企業が苦況に追い込まれるというのは、輸出の問題、国内市場の問題いろいろ原因はありましょうけれども、最後はこれは金の問題でありますが、そういうことで、ここでもとうとう自殺者が三月二十日に出たということを訴えてきております。今後はそれらの業種に、さらに自動車の下請部品工場であるとか、電気機器の下請企業とか、出版印刷業の中小企業などがいわば倒産対象に予想されておるんでありますが、事態があぶなくなった場合には後手にならぬようにと、こういうことをいま申されましたが、政府はこういう事態に対して一体どのような対策をとろうとしておられるのか、お聞きしたいと思います。――まず、中小企業庁から聞きましょう。
  215. 小山実

    政府委員小山実君) 先ほども申し上げましたのでございますが、中小企業の情勢を中小企業関係の金融機関の窓口、あるいは通産局、都道府県等、あるいは業界団体等を通じまして絶えず最新の情報が入るように努力してまいりました。その必要に応じまして大蔵省とも御相談をしながら、きめこまかく金融面についても配慮をするように努力してまいりたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  216. 星野力

    ○星野力君 資金的にはどういうふうにお考えになっておりますか。
  217. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど来、星野さんの話を聞いていますと、金融政策が大企業を通じてしり抜けになっていると。その反面、中小企業が非常に困惑しているというお話しでございまするが、しり抜けば一切しておりませんから、その点ははっきりお断わりを申し上げておきます。  逆に、中小企業に対しましては非常に配慮をしているんです。まあ四-六、いま企業庁からも話がありましたが、これはかなり深刻な事態になるかもしれない。そういう際に備えまして、先ほども申し上げましたが、大蔵省としては税と金融を担当するわけですが、税におきましては、条件の合うものにつきましては延べ払いと、こういうようなことを考え、また金融に対しましては、もうすでに政府予算、四十九年度においてかなり手厚い対策をとっておるわけですが、なお市中金融機関を慫慂いたしまして、それで中小企業対策資金三千二百億円も準備しておる。また、それでも足らないということになりますれば、財政投融資資金もあります。あるいは予備費もあります。いかなる事態にも対応するというかまえをいまとっておるわけでございます。財政金融両面を通じまして手厚い措置をとっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  218. 星野力

    ○星野力君 大臣が初めに答弁された、しり抜けば全然ないと。この問題私はしり抜けがあると、こういうことを言ってきたんですが、もう時間のないところへきてそういうことを言われても、もとへ戻っているひまがないんでございます。  中小企業の問題です。中小企業向けの三公庫のうち、一番小さいほうの業者が利用する国民金融公庫、その資料がここにございますが、それを見ますと、三月十六日から二十日までのわずか五日間に申し込み件数が八千五百十二件、申し込み金額二百十一億円、こうなっております。こういう金は、それができないと倒産に追い込まれるというような非常にせつない金の申し込みなんであります。しかも、四月-六月には事態は一そう切迫化すると思うんであります。いま大臣が言われたように、いろいろ手は打っておるんだと、こうおっしゃる。その手のうちも私事前に若干お聞きはいたしております。だが、この予想される事態の深刻さに対して、現在までに政府が用意しておられる程度の対策ではとても追いつかないだろうと、こう私たち考えるわけであります。  時間がございませんから、ひとつ並べまして具体的な問題をお聞きします。  政府関係の三中小金融機関の原資、いま大臣は財投資金もあるというようなことをおっしゃったように聞きましたが、それら三金融機関の年間資金を当面四月-六月に先使いする。それからまた、さっきも申しましたような反社会的な行為を行なってきた大商社などへ輸銀資金を使わせるなど、こういう財投資金の使い方でなしに、財投資金を流用して中小零細企業向けの資金を確保するなどの緊急対策をとるお考えがあるかどうかというのが一つであります。  それから、それらの三公庫について金利を下げるべきだと思います。国民金融公庫は現在八・九%、これを当面は七・七%までもう一度下げるお考えがないか。金利を下げるために、政府は一般会計の予備費からそれらの金融機関に出資してコストの安い資金を増額させる、そういう考えをお持ちでないか、これが二点です。  それから三番目は、一番困っておる中小零細企業が借りやすくするために、審査基準をゆるめる、かけ込み申し込みに備えて、申し込みから融資決定の期間をもっと短くしてもらわぬけりゃ困ると、こういう要求が強いんでありますが、そのお考えがあるかどうか。また、借りやすくするために無担保融資を現在の三百万円から五百万円に引き上げ、保証人の条件をゆるやかにする考えをお持ちかどうか。  まずその三点。――あともう一回質問さしていただきます。
  219. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、三機関につきまして第一四半期にあとの分を繰り上げて使用するかと、こういう話ですが、状況に応じましてはこれはもう弾力的にこの資金は使います。いまこれ、そうするということは申し上げませんが、状況の推移によりましてはそういうことも考えると。  それから、何か、反社会的な企業に対しまする資金を抑制しそれを中小企業のほうへ回せと、こういうお話しでございますが、反社会的行動をした企業に対する融資の制限、これはただいまそのルールづくりをやっております。しかし、それのあるなしにかかわらず、三機関のほうの資金問題につきましては十分に配慮すると、こういうふうにお答えを申し上げます。  それから第三は、金利を下げろと、こういうお話しですが、ただいまはそういう考えを持っておりませんです。  それから、事務を迅速にせいと、こういう話ですが、これはできる限り迅速にいたしたいと、かように考えます。  それから、無担保の融資、これについて保証人の条件を簡単にせいということですが、今日まあ相当これは緩和されておる。ただいまこれを改定すると、そういう考えは持っておりませんです。
  220. 星野力

    ○星野力君 融資の限度、三百万円から五百万円。
  221. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それもいま考えておりませんです。
  222. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  223. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 速記を起こして。
  224. 星野力

    ○星野力君 こういう状態に対する中小企業対策として、先ほどおつくりになった小規模企業経営改善資金です、これをひとつ緊急措置として活用することに、私たちもその必要があるんじゃないかと考えております。この資金は無担保・無保証人融資制度でありますが、だからかけ込み融資などに応ぜられる性質を持っております。ただ、これには商工会議所の推薦ということがあるわけですね。これが小規模企業、零細企業には借りることを非常に困難にしております。日ごろ会議所なんかとはあまり縁のない企業が一番困っておる。それなのに商工会議所の推薦、六カ月の会議所の経営指導が融資の条件になっておる。昨年十月から実施されましたこの制度は、初めから一種の政治的と言いますか、政党的と、こう言ったほうがいいのかもしれませんが、そういうねらいを持ったものといわれておるだけに、こうした政治的な条件がついておるんです。いまこんな条件は撤回すべきだと思うが、いかがでございますか。これが一点です。  それから政治的なねらいを持った制度にしましては、私は内容がまことにけちくさいと思うのであります。四十八年度は、これは半年間でありますが三百億円、四十九年度が千二百億円の資金ワク、融資限度一口百万円ですか、これでは狂乱時代ですか、動乱時代ですか、そういう時期の中小商業者対策の一つとしても問題にならないと思うんでありますが、この融資限度を、なにかこれは二百万円、設備資金には二百万円までがあるが、内示でもって実際はごく限られた部分にしか適用されないというふうに聞いておりますが、一般には百万円、このワクを大幅に引き上げてもらいたいと思うんであります。  それから三番目には、中小企業の経営危機打開のために、東京都、神奈川県、静岡県、岐阜県、大阪府、大分県、それから広島県がありますが、七つの都府県と九つの市と一つの特別区が自治体として自主的に緊急融資制度をつくって中小企業対策に取り組んでおります。まあ地方自治体、市や特別区でさえやらざるを得ないような、そういう状況なんでありますが、しかし、これは何と言っても財源的に限度があります。そこで、政府でも三公庫の特別ワクとして特別緊急措置というようなものをとってもらいたいということであります。政府は、ネオン業界に特別融資ワクを設けておるのでありますが、先ほど申しました繊維、建設関係、電気機器、それから自動車部品工業、出版印刷、まあこれらの業種を検討して、それに対して特別ワクをつくり、財投資金などを使って今後の中小企業の危機に対処していったらいいんだろうと、いかなければいけないと、こう考えるのでありますが、そういうお考えを持っておられるかどうか、それだけをお聞きしたい。
  225. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 商工会議所を使うのがどうも政治的だと、こういうお話しでございますが、商工会議所は、これは公器といたしまして中小商工業、特に中小企業のお世話をするという使命を持っているわけです。ですから、商工会議所が見回わしまして、これは政府にお願いしたいと、こういうことを言う、まことに私は時宜を得た制度であると、かように考えておりますので、その推薦制度を撤廃する、こういう意図はありません。それから限度額を引き上げろと、こういうお話しでございますが、これは予算編成当時からも考えておることでありますが、設備資金につきましてこれを二百万円まで引き上げる、これは予算編成当時からそういうことを考えておったわけであります。引き上げます。  それから自治体等でいろいろ御心配くださる、これは私は地域団体をあずかる自治体といたしまして、たいへん御親切な行き方であると思います。政府といたしましても、これはまあ中小企業で集団的にたいへん問題があるというような事態がありますれば、それに対しましては特別にいろいろのことを考えていかなきゃならぬ。融資ばかりではありません。これは労務の問題もある、資材の問題もある、いろいろな問題があります。そういうものを中小企業庁が中心になって、そしてこれは計画的に組織的に考えていかなければならぬ問題であると、かように考えております。
  226. 星野力

    ○星野力君 私、大臣が言うもんですから……。一言多いんだ、大臣のほうが。商工会議所が政治的だと、こう私は言っておるんじゃないんです。商工会議所の推薦がなければとか、商工会議所から六カ月経営指導を受けておらなければならぬという条件をつけることが政治的だと、こう言っておるんですね。商工会議所なんか実際縁のない人々、業者が多いんですよ、商工会議所に縁がないから民商が入ってきたりする。その民商がにくいからということで、また政治的、政党的な考えを持たれるところもある、こういう意味で言ったんです。  終わります。
  227. 嶋崎均

    主査嶋崎均君) 以上をもちまして、大蔵省所管に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時六分散会      ―――――・―――――