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1974-04-08 第72回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月八日(月曜日)    午前十時三分開会     —————————————    分科担当委員の異動  四月八日     辞任         補欠選任      熊谷太三郎君     岩動 道行君      高橋 邦雄君     中村 禎二君      神沢  浄君     上田  哲君      矢山 有作君     須原 昭二君      須原 昭二君     佐々木静子君      宮之原貞光君     辻  一彦君      辻  一彦君     瀬谷 英行君      沓脱タケ子君     小笠原貞子君     —————————————   出席者は左のとおり。     主査          矢追 秀彦君     副主査         細川 護熙君     分科担当委員                 竹内 藤男君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 吉武 恵市君                 上田  哲君                 佐々木静子君                 辻  一彦君                 中沢伊登子君                 小笠原貞子君     分科担当委員外委員                 小平 芳平君    国務大臣        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君    政府委員        厚生大臣官房審        議官       三浦 英夫君        厚生省環境衛生        局長       石丸 隆治君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局長  高木  玄君        厚生省児童家庭        局長       翁 久次郎君        厚生省保険局長  北川 力夫君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        建設省住宅局参        事官       山岡 一男君        自治大臣官房審        議官       森岡  敞君    説明員        文部省初等中等        教育局教科書検        定課長      浦山 太郎君        厚生省児童家庭        局母子衛生課長  本田  正君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和四十九年度予算中、厚生省所管を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 辻一彦

    辻一彦君 第一に看護婦養成所運営費補助の問題ですね、この点についてお尋ねしたいと思います。  まず、この問題は四十六年の七月三日に予算委員会の本分科会和田議員が、また四十八年の六月二十三日には社労衆議院の多賀谷議員が、そしてことしの二月十九日に内閣委員会山崎議員がそれぞれ質問いたしております。その中で、齋藤厚生大臣のほうから、四十九年度予算の中で看護婦養成所運営費補助考えていきたいと、こういう答弁があって、それが予算的には計上されない、そういうことで、この二月十九日内閣委員会において補正でやるべきじゃないかという質問が行なわれて、この答弁が少しあいまいに私思いますので重ねてこの点についてお伺いをして考え方を伺いたい、こう思います。
  4. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 自治体でつくっておりまする看護婦養成所経常費助成という問題でございます。自治体病院、もうなかなか非常に経営も困難であるということも十分承知いたしておりますので、厚生省としては何とか自治体病院の附属の看護婦養成所に対しましても経常費補助するようにということを考えました。考えたんでありますが、本年度自治体病院に対しまして、僻村地における、不採算地域における病院に対する経常費補助ということをいたすことにいたしましたので、養成所の問題は自治体病院性質、それとの関連、そういうふうなことを考えまして、もうちょっと時期を待ったらどうだろうかといったふうな話もありまして本年度は見送ったわけでございます。しかし、厚生省としては看護婦養成国家的要請社会的要請ということから考えまして、助成をすることは必要ではないかと考えておりますので、補正というわけにはいかぬかもしれませんが、今後とも厚生省看護婦養成における一つの大きな努力目標として善処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  5. 辻一彦

    辻一彦君 いきさつは私もいま伺いましたが、この二億五千万という不採算地助成が行なわれるといいますが、これは厚生省予算には計上されておりますが、本来自治省のほうがこの問題を取り上げていろいろ協議された結果、厚生予算についたということで、本来からすれば厚生省努力そのものによるものではないのではないか。こういう点で、それはそれとしてこの大臣答弁にもありますように、この補正が困難であれば、あるいは予備費をもって充てるとかいろんな私は道があると思うんでありますが、そういうことをよりひとつ強力に考えることができないのか、この点、いかがでしょう。
  6. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 実はこの自治体病院の問題は、厚生省自治省とでいろいろ相談をし合いまして、項目を持ち寄りまして、これとこれは自治省のほうで予算要求をしよう、これとこれはまあ予算要求しよう。一体として実はやったわけでございます、一体として。でございますから、当初の形は自治省のほうからの要求ですが、一連のものとして両省で協議会をつくりまして、実は相談してやったわけでございます。そこで、まあ自治体病院関係養成所の分は、まあそちらがいいんじゃないかという話でございましたが、やはりこれは事柄の筋は厚生省のほうに計上しておいたほうがいいだろうというふうなことで、今度は自治省と大蔵省と厚生省の三者の結果、厚生省のほうに不採算地区の問題はこうしようと、こういうふうなことになったわけでございますから、その点はひとつどうか御理解——不熱心であったということではありませんから、ひとつ御理解をいただきたいと、かように考えておる次第でございます。  そこで、看護婦養成所の問題でございますが、これはいま申し上げましたように、私としてはこの看護婦養成国家的養成必要性十分痛感をいたしておりますから、いま補正でだめなら予備費とかいったふうなお話ございますが、そういう形式は別としまして、そういう形式についてのお約束はできませんが、今後の私の努力目標として善処をしていくようにいたしたいと、こういうふうに考えておりますので、きょうのところはその辺で御了承願いたいと考えておる次第でございます。
  7. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、厚生大臣の重要な努力目標として取り組んでいかれると、こういうことで、それではまあ私けっこうでありますが、今年度の中でこの補正あるいは予備費というそういう形はとらないが、何らかの努力と言われるならば、年度内に何らかの努力を具体的にされる用意がおありなのか、この点、いかがですか。
  8. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) ただいま大臣からもお答えいたしましたように、実はこの問題につきましては、まあ、和田先生などにはこういう答えをしますとしかられますけれども交付税関係で県の関係が入り、市町村の養成所の場合は特別交付税等で、たとえば県の場合、標準的な基準で千二百万円ぐらい三年課程に出ておりまして、これは先ほど大臣からお答えした不採算地区病院についても実は交付税特別交付税等で見ておるわけでございますが、それを今回は補助金の対象にしたという一つのステップが踏まれたわけでございますので、事の性格上、養成所運営ということは四月一日からすでに入っておることでございますし、事務的には予備費その他の性格上はきわめてむずかしい問題でございますので、私も先般山崎先生にも五十年には必ず実現したいということで努力をお約束したわけでございまして、この点については従来日赤、済生会あるいは法人等の親元のない養成所を中心に本年は定額方式定員方式——生徒数に応じて配分するとそれだけで二億数千万の増額になります。自治体につきましてもこの点については相当額を必要とするので、やや漸進的なたてまえで恐縮でございますが、五十年度以降には、この事の性格上、ぜひとも実現する方向努力いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  9. 辻一彦

    辻一彦君 交付税の問題はすでに和田委員との間にそれは固有財源じゃないかという論議もずっと行なわれたわけですから、それを踏まえての私の質問でありますから、その点はひとつ理解をいただきたいと思います。まあ、あらゆるひとつ努力を尽くしてこれが早急に実現するようにやるということについては、再度ひとつ大臣から決意をもう一度伺いたい。
  10. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私は最近における看護婦が非常に不足しておるという実態、それは当該病院だけの問題じゃないんで、国家的な問題だと私考えているんです。そういうふうなこともありまして、単に私は自治体交付税がどうのこうのとかいうふうな性質のもので処理すべきものじゃない、やっぱり国家的な立場でものを考えるということが私は非常に必要になっていると思うんです。そういう意味において今後私は強い決意をもって努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  11. 辻一彦

    辻一彦君 この問題は分科会の短い時間では論議も十分できませんから、またほかの委員会等で補足してなお伺いたいと思います。  いま大臣答弁がありますように、看護婦さんの養成というのは非常に大事で、特に看護婦さんが足りないと、こういう中で、非常な重要性が迫られておるわけでありますから、最大限の努力をさらにひとつ払っていただくように願いたいと思います。  第二に、私、保育所保母定数の問題について若干伺いたいと思います。  保母休暇の問題、休みの問題ですが、いま保母さん——これに限りませんが、いろんな施設の寮母、いろいろありますが、こういう職員から労働基準法が適用できるような勤務体制にしてほしいという、これは共通した強い要望があるわけです。そこで現在の私立保育所等考えた場合、どの程度休みがとれるとお考えになっておられるか、この点、いかがですか。
  12. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 保育所の問題でございますが、現在保育所保母さんの定数につきましては、御承知かとも思いますけれども、四歳以上の子供さんに対しては三十対一、三歳児に対しては二十対一、三歳未満児については六対一、なお、零歳児につきましては指定された保育所について三対一と、こういう割合で最低基準をきめているわけでございます。したがいまして、大体現在一万六千ぐらいの保育所がございますけれども、おおむね一カ所十人足らずの保母さんがおられるということになるわけでございます。  ただいま御指摘がございました労働基準法との関係でございますけれども、御承知のとおり、保育所は日曜がお休みでございます。あと週日大体朝の九時から夕方の五時、場合によっては六時ごろまでお預かりしているわけでございますけれども、そういった勤務状況における保母さんの休暇あるいは休憩ということについて労働基準監督署等から多くの指摘があることも事実でございます。で、その指摘の内容は主として休憩時間でございます。御承知のとおり、保育所はどちらかと申しますと幼い子供を預かっておりますために、労働基準法上一斉に一定時間の休憩保母さんがとることがむずかしいという状況があるわけでございます。そういった点が現在の基準法との関連指摘されておるのが実情でございまして、こういった点について厚生省といたしましてはできるだけ保母さんが交代でしかもある程度まとまって休めるような状況にいたしたいということで、一つには非常勤保母さんが雇い得るように、これは来年度でございますけれども、六十人以上の保育所については一日三時間、これは保母さんの数が多うございますから、したがって交代休憩がとりやすい。それから六十人以下の保育所については一日三時間非常勤保母さんが雇い上げられるような予算的な措置を講ずる。また別途、これも新たに四十九年度におきまして年間六日間保母さんが全く休み得るような代替保母さんが雇い得る給与予算として組む。で、御承知のとおり、これはすべて措置費という名前で予算化しておりまして、それぞれの保育所の特性に応じて園長さんなり理事者のほうで事業費事務費に分かれた予算を使うわけでございまして、そういった一応の基準並びにただいま申し上げました休憩なり休日がとり得るような改善をはかりながら少しでも保母さんの待遇改善に資する。同時に、労働基準法等違反の起きないような措置を講じてまいりたいということで予算的な努力をいたしておる次第でございます。
  13. 辻一彦

    辻一彦君 代替保母制やそういうことでもって、ある前進があったということはわかりますが、私いま保育所公立私立等保護者会長なんかをやっている関係からいろいろなものを調べてみましたが、たとえばこれは私立保育所三カ所の例ですが、一つ保育所では七名の保母さんで、産休を除いて一人大体六・四日ですね、休みが。この中には結婚だとか病欠が入っておりますから、結婚に必要な休みだとかあるいは病欠を除けば休暇がないというような——有給休暇もちろんです、ないという状況ですね。それから第二の例ですが、これも私立で八名の保母さん、百八日のうち有給が三十九日。八で割りますと五日という状況ですね。三つ目の例で、私立、これは三十一人の保母さんでかなり大きいですが、これも産休病休を除くと百十六日。三十一人で割ると四日弱と、こういう状況ですね。公立のほうはちょっとよくて、五人の保母の場合に四十八日、だから九日ちょっとと、こういうふうになっておりますが、こういう例を見ると、代替制とかいうものもそれぞれ努力はされておると思いますが、なかなか有給休暇等をとって労基法等で認められるかなりな休みをとるということは容易でないと、こう思うんですが、こういう点について実態をどう把握されておりますか。
  14. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 御指摘のように、公立でない私立保育所保母さんの勤務条件公立に比べてつらい、たいへんであるということについては私どもかねてから承知しておるわけでございます。これは、一つには保母さんの給与の問題があろうかと思います。それからもう一つ勤務条件、ただいま御指摘になった点だと思います。  給与につきましては、これまた歴年努力をいたしまして、現在民間保育所については、御承知と思いますけれども民間給与調整費というものを来年また一%上げまして六・五%、これを支給できるように予算的な措置を講じておるわけであります。  ただいま御指摘のございました勤務条件につきましては、確かにそういうようなことがございますけれども、一応、先ほど申し上げましたように保育所全般についての基準ということで措置をいたしておりますために、民間保育所だけに基準を云々というような予算的なあるいは定数基準の設定ということができにくいような状況になっております。  私どもといたしましては、この特に民間保育所については保母さんの不足ということも片方にあるわけでございます。で、毎年たくさんの保母さんが出てこられるわけでございますけれども、特に大都市における民間保育所保母さんがなかなかなり手がおられない。そのためにただいま御指摘がありましたような勤務条件が非常につらいことにもなるということで、多方面にわたって給与の問題、労働条件の問題それからまた保母さんの不足の解消というこの三つの面からそれぞれ民間保育所については特段の配慮をしなければならないというように考え、また、そういった点から毎年予算的にはできるだけそういうことを重点的に配慮した予算を組んでまいるということで努力をしているわけでございます。くどいようでございますけれども保育所につきましてはそういうことで、特に民間保育所については私どももできるだけそういったできる範囲内の努力予算的にもしてまいりたいということで今後も努力を続けてまいりたいと考えております。
  15. 辻一彦

    辻一彦君 この例をあげればたくさんありますが、時間の点から二、三にとどめますが、私立保育所等において、やはりかぜを引いてもちょっと休むにはほかの人に非常に負担がかかるから気がひけて休めないと、こういうふうな実態が実際として非常に多いんですが、こういう実態があるということをお認めになっていますか、いかがですか。
  16. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 全部ではございませんけれども、そういうことがありますことは承知しております。
  17. 辻一彦

    辻一彦君 これは私の知っている保育園で起こった——公立ですが、七十五名の園児を三名の保母さんが屋外保育に出て、たこ上げをやっておった。しかし、三人で七十五人の子供を見ているというのはこれは容易じゃない。一人がころんで川へ落ったわけです。まあ病院へすぐ収容したけれども、意識不明になって、以来そういう状況が続いておるわけです。これはいろいろ問題になりましたが、私は保母さんの責任とはこれは言えないんじゃないか。言うならば、これはやはり人手が足りなくて十分なめんどうが見られなかったと、こういうところにこういう問題の大きな原因があると。これはこれ一つに限らず、たくさんのところに私は言えると思うんですが、そういう点で、やはり定数是正をしてもう少し負担を軽くして、あるいは十分目が行き届くようにすると、こういうことがどうしても必要だと思いますが、定数是正の問題についてはこういう状況の上に立ってどう考えておられるか、お伺いしたい。
  18. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 詰まるところはそういう最低基準定数の問題に帰着するかとも存じます。これも御承知かと思いますが、児童福祉施設最低基準ができましてから、保育所定数につきましては過去七回にわたって改善をしているわけでございます。で、この二、三年の間は定数改定と申しますよりは、むしろ現在保育所におられる保母さんの休養あるいは休日ということに重点を置いた、先ほど申し上げました非常勤保母あるいは年間休日の充足ということで来ております。しかしながら、私どもも、保育所定数はどうあるべきかということを踏まえまして、現在中央児童審議会等にも検討していただいておりまして、こういった実際専門家方々、あるいは学識経験方々検討を待ちながら、やはり定数改定については将来前向きで進みたいと、かように考えている次第でございます。
  19. 辻一彦

    辻一彦君 いま審議会定数問題についてもあるべき姿を検討してもらっておると、こういうことでありますが、この「前向き」とおっしゃるのは、やはり現在の定数ではかなり無理な点もあると、だからこれを改定をしてよりよいほうに前進をさせなきゃならぬと、こういうようなお考えを確認をされて、そして前向きに進めたいと、こういうお考えなんですか、いかがですか。
  20. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 申し上げるまでもございませんが、一人でも多くの保母さんがおられるということは保育所にとって望ましいことだと存じます。したがいまして、最低基準は過去七回——くどいようでございますけれども改善をいたしてまいりました。  それから、最近の問題としてわれわれ考えておりますのは、従来五歳学級とかクラスとか、四歳クラスあるいは三歳クラスというように、クラス年齢別に分けた編制などが一応の基準になっておりましたけれども、最近におきましては、たとえば新しい試みとして、障害児も含めた総合的な保育ということも、ことばをかえて申しますと、保育多様化というようなことも新しい時代の要請として入ってきております。したがいまして、今後の課題といたしまして、たとえば三歳、四歳、五歳の子供さんたちをクラス編制をするというようなことも一つ試みではないだろうか。そういった観点から申しますと、従来の年齢別最低基準でいいだろうかということもあるわけでございます。もちろん、それだけでなくて、やはり少しでも保母さんが負担が軽くなり、あるいは魅力のある職場にするために、それからまた最近は御承知のとおり非常に幼い低年齢保育児童がふえております。こういった総合的な点を全部考えながら新しい最低基準というものをひとつ考えてみるべきではないだろうかということで、やはり主たるねらいは定数増ということが意識の中にございますけれども、問題としては、ただいま申し上げたようなことを踏まえて、最低基準改定ということに進んでまいりたいということを考えて御検討をお願いしているわけでございます。
  21. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、事務当局のお考えはある程度わかりましたが、大臣、最後にこの問題についてひとつお伺いしたいんですが、実際この保母さんの職場、私も、見てもなかなかたいへんだと思いますが、そういうような中で先ほど申し上げたような事故といいますか、問題がやはり大なり小なりしょっちゅう起こっております。そういう点を考えると、どうしても定数是正というほうは、これはどうしてもやってもらわなくちゃならない方向であろうと思いますが、具体的にいつごろこういう結論をお出しになって取り組まれる大臣考えか、この点、ひとつ伺っておきたいと思います。
  22. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この保育所に働いておられる方々勤務条件、これがやっぱり改善をすることがいま一番大事な問題だと私考えているんです。労働基準監督署が回って歩きまして基準法違反だなんていうことを言われることは、まことにもって私遺憾きわまることだと思うんです。まあ、今日まで社会福祉施設につきましては、一般的にいいますと、施設の数をつくるということに非常に力が入っておったと思うんです。まあ、それも大事です。特に保育所などは最近の人口増加に伴いましてその要請が非常に強いことは私も承知しておるわけですから、数もふやさなければなりませんが、やっぱり監督署からとやかくのことを言われぬで済むような、そうして働いておる方方が安心して保育に当たっていただけるよう環境をつくるということが一番大事だと思うんです。で、まあ処遇の改善待遇改善についてもできるだけ努力をいたしておりますが、そういうふうなことで、保母定数がいまのままで足りるのか足りないのか、私はやっぱり率直に言って十分でないと思います。十分でないからこそ勤務条件休暇、休日がなかなか思うようにとれないとかいうことが起こるんですから、これはやっぱり現在の保母さんが安心して働けるような環境をつくるために定数増ということが必要であるということは、いま局長が述べたとおりでございます。  そこで、できるならば昭和四十九年度中に児童福祉審議会において適正なる、この基準法違反ということの言われないで済むような定数を確保するにはどの程度の数が適当であるか、そういう問題について本年度内児童福祉審議会において十分に検討をしていただいて、できるだけ——それを一挙にやれないときは二年計画でもやむを得ない場合もあると思いますが、来年度の五十年度以降、一年度または二年度計画で何とかそういうことを言われぬで済むような定数を確保する、こういう是正策をとるべきである、こういうふうに考えておりますから、そういう方向努力をいたす考えでございます。
  23. 辻一彦

    辻一彦君 これはその結論が前向きに出されて、一、二年でそれを計画実現すると、こういう大臣決意を聞きまして、これは非常にこういう職場で働く皆さんの共通の願望であると思いますから、ぜひ早急にひとつ努力をいただくよう願いたいと思います。  局長、ちょっと伺いますが、労働省は去年一年間ぐらいかかっていろいろな施設の調査をやっておると言いますが、これはあとに関連しますが、老人施設等ずっと労働省関係ですね、調べたようですが、これは調査されておりますか。
  24. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 労働省が、四十七年あるいは四十八年におきまして、社会福祉施設全般について労働基準法とのかかわり合いにおいて違反がございました件数について調査した、またその結果は承知しております。
  25. 辻一彦

    辻一彦君 それをあとで資料でいただけますか。
  26. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) お出しいたします。
  27. 辻一彦

    辻一彦君 時間の点もありますから、かけ足で二、三点のお伺いをいたしたいと思います。  三つ目には、ろうあ者のアフターサービスといいますか、この問題について伺いたいと思います。  身体障害者といいますと、大体からだが不自由な人が中心になって、ろうあ者はなかなかこの対象にあまりならないというような状態があります。そこで、このろうあ者がせっかく学校等でいろいろ教育を受けてそして就職をしましても、やめる人が非常に多い、その場合に。それはまた放任をされていて、犯罪とかいろんな問題につながる場合も少なぐはないと、こういう状態がございますが、これは施設よりも人間の関係に問題があるんじゃないか。いわゆるコミュニケーションというものがなかなかできない。それで放任をされている、そういう場合が多いと思うんですが、全国でろうあ者はおよそどのぐらいおり、その中でどのぐらい就職されておるか、およその数がわかれば御報告いただきたい。
  28. 高木玄

    政府委員(高木玄君) この聴覚障害者は全国で二十万一千人おりますが、四十五年十月の厚生省調査によりますと、そのうち就業している者が十万二千人でございまして、就業率が五〇・七%でございます。また、四十八年十月に労働省におきまして心身障害者の就業実態調査を行なっておりますが、それによりますと、聴覚障害者の就業率が六一・六%ということになっておりまして、まあ、大体五〇%から六〇%の方々が就業しておられる、かように考えております。
  29. 辻一彦

    辻一彦君 数は見当はつきました。  そこで、就職をしても話し相手がなかなかないという、これはむずかしい問題ですね。そこで心を閉じて孤立をしていくと、こういうケースが実際として非常に多い。で、転職する人の割合がこれは一番多いと、こういうようにも私はいろいろ聞いておるんですが、転職率というようなことについての何か数字がおわかりになりますか。
  30. 高木玄

    政府委員(高木玄君) これも労働省の調査でございますが、労働省におきまして四十八年二月に実施した調査によりますと、ろうあ者の就職期間は常用就職の場合平均八年でありまして、これは健常者の場合とほぼ同様だという数字には一応なっております。
  31. 辻一彦

    辻一彦君 私がいろいろ聞たり調べた実態とその数字はちょっと違うように思います。それはそれなりの調査であると思いますが、全般的にいって、やはりそういう理解する人が少ないとか話し相手がないとか、こういうことで、せっかくつとめに出ても孤立をしてしゃべれないし、したがってまた心も閉じる。こういうことでやめる割合が、私の県内なんかではかなり高いという事実がございます。  そこで、こういう閉じられた心というもの、あるいはうっせきした心というもの、こういうものが間々いろんなよくない犯罪といいますか、こういうことに結びつく場合も多いということを、これは施設関係のいろいろ努力をしている方から私、伺ったわけですね。どうしても親身になって相談に乗ったり、話し相手になったり、あるいはそういういろんな相談に乗れる生活指導といいますか、あるいはいろんな指導をやる、こういうことがろうあ者のためにどうしても必要でないか。そこで、ろうあ者の生活指導員、あるいはろうあ者対策のための社会福祉指導員のような制度がどうしてもほしいということが、との施設の中で非常に努力をされているまじめな方の大きな声にいま私、なっておると思うんですね。で、現在二十万といわれた中で十万をこえる方が職場にあるわけですが、こういう人を対象にしてこのような制度をつくるということについて検討されるか、お考えになる余地はないかどうか、この点、いかがでしょう。
  32. 高木玄

    政府委員(高木玄君) 確かに御指摘のとおり、ろうあ者につきましては、聴力なり言語機能に障害がございますために、職場におきましても、仲間なり同僚との意思疎通を欠きまして、そのために疎外感におちいり職場で孤立する、あるいは非常な孤独におちいると、こういうことがあることは十分に考えられることでございまして、実態はそうだろうと思います。  そこで、厚生省サイドにおきましては、四十七年度からろうあ者の日曜教室というものを、都道府県なり市において開いて、その日曜日に職場におられるろうあ者の方々等にお集まりいただきまして、そこで日常生活なり社会生活につきましてのいろいろな訓練をする、あるいは相談に乗る、こういうようなことをいたしております。これにつきましては、国からも補助金を出しているところでございます。そのほかろうあ者対策といたしまして、厚生省サイドにおきましては、手話奉仕員の養成事業、あるいは福祉事務所に手話通訳を設置する、こういったような事業にも着手いたしております。しかしながら、これらの事業につきましては、たとえば手話通訳の福祉事務所の設置というような問題も四十八年度から始まったばかりでございまして、まだはかばかしい実績はあがっていないというような状況でございます。  なお、職場でのアフターケアーにつきましては、労働省サイドにおきましては、主として職業安定所に配置されておりまする手話協力員が事業所を巡回していろいろな指導なり相談なりに当たっている、あるいは事業所従業員から選ばれておりまする心身障害者の雇用促進員による指導等が職場で行なわれているというふうに聞いております。しかし、いずれにいたしましても、まだまだこの職場におきまするろうあ者のこういった人間関係をほぐすということにつきましての対策が不十分でございますので、今後とも労働省と十分協議いたしまして適切な対策を進めるように努力してまいりたい、かように考えます。
  33. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、そういう努力をされているということもわかりますが、実態としては、いま言われましたように、なかなかまだ着手したばかしで具体的な成果があがっていると言えないというようなお話ですね。私はやはり——まあ、名前はいろいろあるでしょう。社会福祉の生活指導員、あるいは社会福祉の主事といいますか、通訳ができて、そして身の上の相談に応じられるような人という中身でありますから、こういう制度をまあ一部着手程度では非常に不十分ですから、十万をこえる方がおられるわけですから、これを本格的に労働省と協議をいただいてより強力に進めていただきたいと、こういうことについてそういう方向に十分取り組んでいただく、こういうお考え厚生大臣、おありかどうか、お伺いいたします。
  34. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ろうあ者の方々がやっぱり聴覚障害のために人間的な社会的なコミュニケーションが十分でない、これはもう実態でございます。二十万人のうち十万人働いておるわけでございますが、こういう方々のためには、在宅の方々のためにも日曜教室だとかいうことを始めたり、それから社会福祉事務所に手話通訳の制度をつくるようにするとか、労働省のほうで、また工場に働いておられる方々のための協力員をつくるとか、いろんなことをやっておりますが、率直に言うて、まだ私十分ではないと率直に認めざるを得ないと思います。二十万人のうち十万きり働けないというその実態そのものがそれを示しており、さらに十万人のうちそう長い勤続年数ではないという実態からいって、やはり社会的コミュニケーションが十分でないとやっぱり率直に認めざるを得ないと思います。そういうような意味において、ある意味からいえば、いままでやっておりますのは試験的な実施といったふうな意味合いが私は強いと思うんです。そういう意味において、今後ともろうあ者の方々が孤独感に襲われることなく社会のよその方々と一緒になって生活をし働けるような環境をつくるために、制度的に日曜教室を拡大するとか、あるいは雇用の面の協力員制度を強化していくとか、あるいは手話の通訳制度をもっと拡充していくとか、いろいろあると思います。考えてみればいろいろあるわけですから、現在やっておる制度の効果等十分に考えまして、社会的コミュニケーションを充実できるように、内容的にもしっかりしたものにするように今後一そう努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  35. 辻一彦

    辻一彦君 この問題も、もう少し申し上げることがありますが、一々あげるのはたいへんになりますから、一そうひとつ具体的に努力をお願いしたいと思います。  そこで四つ目に老人問題ですが、いろんなデータを持って来たんですが、とてもそれを論議する時間がなさそうでありますから、大まかなことだけを伺って、あとはまたほかの委員会に譲りたいと、こう思います。  そこで、これもやはり私、幾つか歩いてみて、寝たきり老人の場合に、寮母の定数ですね、これがやはりなかなか問題になる。たとえば五十人の収容数の中で、寝たきり老人の割合がわりと少ない場合はわりとやりやすいんですが、三分の二とか、かなり寝たきり老人のパーセントが多い場合は、五日に十人の寮母さんが一日ずつ二人で当直をやっている、夜の仕事もかなり多いということでかなりオーバーワークがあるんですね。さっきお話が出ましたから省略しますが、労働省はこういう問題についてかなりいろいろ調べて厚生省のほうに申し入れをやったということを聞いておりますが、先ほども御発言がありましたですが、そこで、この寝たきり老人等の寮母の定数問題について、労基法がもう心配がないようにするという点について、さきの問題と同じようにお考えになっておられるのか、その点、いかがですか。
  36. 高木玄

    政府委員(高木玄君) 寝たきり老人を収容いたします老人ホームは特別養護老人ホームでございますが、特別養護老人ホームにおきましては、入所老人五人について一人の割合で寮母を設置いたしておりまして、これで十分とは申しませんが、相当の数は配置していると、かように考えておる次第でございます。  なお、御指摘労働基準法違反につきまして、社会福祉施設が労働省からいろいろ指摘なり御注意を受けている問題につきましては、私ども真剣に前向きに受けとめまして、それが国のサイドにおいて解決すべき問題については積極的に解決してまいりたい、そういう違反事件の絶無を期したい、かように考えております。
  37. 辻一彦

    辻一彦君 違反ということは、結局定数が足りなくて無理をせざるを得ないということでありますから、国の労基法を守れるような条件をぜひこの施設でも具体的に確立してもらいたいと思います。  そこで、地方の小都市で老人施設等にどのぐらいの物価値上がりが響いているかということを数字でいろいろ調べてみましたが、これを詳細読み上げることは私も省略しますが、とうてい二〇%ぐらいのワクの中におさまらない、各品目別に食品を見るとかなりなパーセントが上がっておりますですね。そこで、一定のカロリーとたん白を確保しなければいけないと。カロリーは千七百カロリーぐらい、たん白は六十グラムと、こうなりますと、それを落とすことはできないから、だから中身をいろんなやりくりをして御苦労されてやっておられる。カロリーは千六、七百というのは確保されているけれども、中身の質がかなり低下をしておる。この半年前、一年前の献立表と今日ある献立表の一覧表をずっと見てみると、中身におけるそういう差が具体的に出てきておるように感じます。それから、たとえば嗜好品でも、くだものを一個出しておったのを半分にするとか、お菓子を一個やったのを半分出すとか、こういうことで、なるほど一定の基準は確保されておるけれども、質的な低下ということはいなめない事実になっておるんじゃないか。そういう点で、二〇%昨年に比べてのアップでは、ちょっと私はこの質的な低下を回復するということはむずかしいんじゃないかと思いますが、これについてどう考え、どういうように対処されるか、いかがでしょうか。
  38. 高木玄

    政府委員(高木玄君) 昨年の四月以降非常に物価が上昇してまいりましたので、十月一日から施設におきまする生活費を五%引き上げたのでございますが、十一月の石油危機以後、非常にまた物価が高騰いたし、特に生鮮食料品等の値上がりが非常にひどかったわけであります。それぞれの施設におきましては、先生御指摘のとおり、やはり所要のカロリーなりたん白質等は落とすわけにいかぬ。これはそれぞれの施設に栄養士が配置してございまして、そういった必要な栄養量を確保すると、こういう前提のために、いろいろ施設におきましてやりくり算段され、また施設がそれなりに創意くふうをこらして献立をつくってまいったと思います。できるだけ、集団収容施設でございますので、いろいろな食事の材料費の集団購入の利便を最大限に生かしますとか、あるいは廉価購入のルートを開きますとか、いろいろと創意くふうをこらしてまいったと思いますが、しかし、やはり先生御指摘のように、いままでの食品をたとえば冷凍食に切りかえるとか、そういったようなことになりまして、質が低下したという事態もあったということは否定できないと思います。そこで、昨年も十二月、それから本年も三月に入りまして、これらの施設に対しまして特別一時金というものを支給いたしますとともに、この四月からは前年度対比二〇%の一般生活費の引き上げをはかったところでございまして、今後とも老人ホームにおきましては、特にこの食事というものはお年寄りの方々にとって非常な楽しみでもございますので、質の低下を来たさないように、消費者物価の動向を踏まえて必要な手を打ってまいりたい、かように考えます。
  39. 辻一彦

    辻一彦君 私、きのうちょっと最近のをもう一ぺん確認したいと思って歩いてみたんですね。そうしますと、昨年の春は一人二百六十一円ぐらいになっていますね、いま三百十四、五円となっておりますが、それは三百十五円は一定のカロリーとたん白を確保することは可能であるけれども、先ほど申し上げた質的な低下はこれじゃなかなか回復できないという状況に私はあるんじゃないかと思います。年末と三月に千円、二千円、それで三千円ですからね、四ヵ月で割れば一日二十五円ですからね、二十五円では、ちょっとなかなか回復できないです。また、二〇%昨年比のアップであっても、この状況はなかなか変わっていかないんじゃないか、こう思いますですね。そうしますと、まあ若いときから苦労して働いた老人の方が、余生少ないしかも薄幸な立場でこういう施設におられて、せめてあたたかい手をひとつ差し伸ばすということが非常に私は政治の段階でも大事じゃないか。そういう点で、二〇%アップされたということは事実でありますが、これではなかなかカバーし切れない。どうしても弱者救済といいますか、対策という点から、もう少し大きな手を打つ必要があるんじゃないか。その点で齋藤大臣に伺いますが、過般臨時会社利得税が成立しましたが、これはわれわれからすれば、非常に骨抜きの、財界や大手に気がねをした税制になったと思います。非常に不満でありますが、しかし、それでも千七百五十億というものが財源として確保されるとすれば、こういう国民みんなが困っておる中で大きな利益をあげたところから吸い上げた財源でありますから、最も私は、弱者救済といいますか、こういう施設等にその財源を振り当てて、少なくも十一月以前の状況に回復をさすということがどうしても大事だと思いますが、こういう点に積極的な努力をし、その財源を確保して対処されるお考えはないかどうか、いかがですか。
  40. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 今回臨時会社利得税といったふうな名前の法律が成立したわけでございますが、それによる税収をどういうふうに使うかということは、これは私、大蔵大臣でございませんから何とも言えませんが、この金は目的税では御承知のようにありません。ありませんけれども、わが田中内閣は社会福祉には非常に力を入れている内閣でございますから、私の省の社会保障ばかりというわけにはいきませんが、そのほかの環境整備とか住宅とか、さまざまありましょう。そういうふうな社会福祉の面に私は相当使われるんではないかと思うんです。それは、公債発行との見合いで、公債をどうするかという問題もありましょう。それは一般財政全般についての処理になるわけでございますが、やっぱり内閣の性質からいって、社会福祉といいますか、広い意味のそういう面に使われるということが相当あるんではないかと、こういうふうに私は考えておりますし、またそれを期待もいたしておるわけでございます。それはしかし国の財政全般について考えられるべき問題でございますから、私は厚生大臣でございますから、財政の責任を負うているわけじゃございませんので、何ともはっきりしたことは申し上げられませんが、内閣の性質上、社会福祉ということに相当使われることを期待もしておると、こういうことは申し上げることはできると思います。
  41. 辻一彦

    辻一彦君 期待だけではいかないんであって、これはひとつ弱者救済に使うべきであるという強力な発言と働きかけを私は内閣の中において厚生大臣としてしてもらうべきであると思いますが、いかがですか。
  42. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) しかし、まあ本年度の、四十九年度予算状況をごらんいただいてもわかりますように、公共事業等はほとんど押えている、その中で厚生省の分は三七%引き上げる、それからまあ社会福祉の関係のそのほかの下水道とか水道とか、そういうものも一般の公共事業とは違って非常に上げておるわけでございますから、内閣全体としてすでに福祉の面に相当の金をつぎ込んでおると、こういうわけでございますから、すでに十分厚生省関係予算は大蔵省も十分認めてくれているわけでございますから、今後必要なものについては私も遠慮なく大蔵省に要求をしてそして出していただく。その金がどこから出てくるかということはこれは大蔵大臣考えることですから、私はやはり今後とも経済状況の推移あるいは物価の動向に勘案し、年度の途中であっても必要なものは財政の支出の要請をする。これは私は強い覚悟で臨んでまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  43. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、時間来ましたのでこれで終わりますが、最後に、はり、きゅうの問題をちょっとお伺いしたいんですが、というのはいなかでは男女を問わず、若いときに働いて、年がいきますと肩とか腰がこるという、いわゆる農夫症というのがほとんどの方に出てまいりますですね。そうなりますと、老人がはりやきゅうの施術を受けるということが非常に多いんですが、こういう場合にこれが保険の対象にならないわけですね、はりやきゅうの場合は。そこでそれぞれの個人の負担になりますが、老人福祉、老人医療の無料化というような観点から、はりやきゅうが、施術が行なわれるときに保険の対象にして老人の負担を軽減すると、こういうことができないのかどうか、そういう知恵が出ないかどうか、一つ。  それから、まあ二、三伺いたいことがありますが、時間でありますので省略をして、最後にはり、きゅうというものは、言うならば、東洋医学、私も中国へ何回か行って、やってもらって非常にはりがよくきく、腕が上がらなかったのが、はりをずうっと刺してよく動くようになったというような例も見ております。そういう点で、はり、きゅうは東洋医学と非常に関係が深いんですが、そういう点から、東洋医学をどういうように西洋医学と並んで位置づけを考えておるのか。そして、そのために研究をするとすれば、予算的な裏づけをこれから考えていくのか。  もう一つは、東洋医学を研究するために医学教育のカリキュラム等の中にこの東洋医学を取り入れていくような、これからの考え方があるのか。東洋医学の研究体制を確立するということが大事だと思いますが、この点を一つ大まかに伺って私、質問を終わりたいと思います。
  44. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) 前段の療養費の問題でございますが、これは若干手続を必要とする定めになっておりますけれども、保険で療養費払いをすることになっておりますので、これが一般的にはまだ十分活用されてない面もございますので、この点につきましては、それぞれのはり、きゅう関係者等を通じましても、特に農村地帯の方々などに対する手続その他の点についてPRをする必要があろうと思っております。  それから後段の研究の問題でございますが、東洋医学につきましては、確かに現在の、特に最近これに新たな評価が加えられつつございます。で、結論等を簡単に申しますと、厚生省は東洋医学の研究に研究費を出しております。四十九年度もしかるべく出したい。それから、北里大学等に東洋医学研究所が設立されまして、近く開所いたします。これには日本船舶振興会公益補助金の配分について御援助を申し上げております。  総体的に今後の問題でございますが、医学教育には将来おそらく一部の、まあ、いま北里を例に引きましたが、特定なところでは医学教育の一つのカリキュラムの中にこういう問題が取り込まれる可能性というものは私はあるんではなかろうか。しかし、これは医学教育全般の問題でございますからかなり重要な問題でございますし、現在のはり、きゅう等の身分法あるいはこれに従事する方方の研修、技術の向上、こういうことも今後重要な問題であろうと思っております。
  45. 辻一彦

    辻一彦君 終わります。     —————————————
  46. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 分科担当委員の異動について御報告いたします。  熊谷太三郎君及び高橋邦雄君が委員を辞任され、その補欠として岩動道行君及び中村禎二君が選任されました。     —————————————
  47. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 時間が短いもんですから、母子福祉対策と寡婦対策につきまして二、三点御質問を申し上げたいと思います。  きょうからストライキの週間に入ったという、春闘の闘争が始まったわけでございますが、春闘共闘委員会のスローガンの中には、弱者救済ということで各種の要求が出ております。まず第一に厚生大臣にお伺いしたいのは、年金スライド制を三カ月繰り上げて実施するというようなことが新聞等に出ておりますけれども、厚生年金が八月とか国民年金が十月とか出ておりますが、これがもし実施されます場合には、無拠出制の老人福祉年金とかあるいは母子福祉年金につきましても、同様に三カ月程度のスライドが考えられるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  48. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 春闘で弱者救済ということをいわれておりますが、私どもはこれに対する取り組み方としましては、こういう問題をストライキをやるときの項目にあげること自体は、私はどうもなじまないと考えているんです。と申しますのは、これはもう先生御承知のように、こういうことはすべて予算関連する事項であり、しかも法律その他の制度にかかわる問題でございまして、一部の労働組合がそういうことを掲げ、それを理由にストライキをやる。どうも私は理解がしにくい。しかもまた、そういうわけでございますから、そういう方々と話し合ってその問題をきめる、こういう筋のものではない。やはり春闘とは全然切り離して、国会の場においてですね、論議して解決するものは解決していく、こういう筋でなければならぬであろう、こういうふうに考えておることをまず申し上げておきたいと思います。  そこで、実は先般来衆議院予算委員会、参議院の予算委員会、それから衆議院においては年金法の改正等がいま提案されておるわけでございます。そこで、その中で年金スライドということを一部から言われておることは事実でございます。その年金は、特にこの拠出制年金、これは年金の本体でございます。この拠出制の年金についてスライドを繰り上げるようにしたらどうだと、こういうことになっておるわけでございます。そこで今度の年金のスライドというのは、昨年の法律改正によって日本の制度として初めて取り上げられた制度でございまして、この法律によりますと、厚生年金のスライドは、昭和四十八年度の物価上昇の状況が四十七年に比べて五%以上上がった場合に、本年の十一月からこれを行なう、国民年金は来年の一月から行なう、こういうことになるわけでございます。そこでこのタイムラグを何とか短縮する方法ができないかという議論が国会の場においていろいろ言われておるわけでございます。そこで私どもは、そういう国民の声でもありますから、これを何とか考えることができないだろうかということでいろいろ実は考えておるんです。ところが、四十八年度の物価指数がはっきりとわかりますのはことしの五月なんです。五月に四十八年度の物価指数がはっきりわかりまして、それが四十七年度と比べて何ぼ上がるかということがわかるのが五月なんでございます。ところが、そこで今度はスライドさせるといたしましても、スライドさせる一まあ、そこで何%上がるかという率はわかります。一五%上がるとか十何%上がるとかという率はわかります。ところが、スライドさせる今度は方式が、またこれたいへんなんでございます。どの程度のやり方でスライドさしていくか。すなわち、現在もらっておる年金額総額について何%というものをぶっかけてスライドをさせるというやり方がいいのか、あるいは昭和四十八年度の賃金というのは、すでに物価上昇を織り込みずみのものでございます。したがって、四十七年度以前の賃金についてだけ考えればいいんじゃないかと、こういうことになるわけです。だからスライドといいましても、やる方式をきめるのがこれまたたいへんでございまして、それを目下社保審で検討を願っておるわけでございます。そこで、いよいよそれがきまると、今度は三百万になんなんとする人の、国民年金のほうは定額でいっています。十年年金は、御承知のように夫婦で二万五千円ですから、これはわりあいに簡単でしょう。それに何%ぶっかけたり何かする、簡単でしょう。ところが、一般の厚生年金のほうは、何万何千何百何十円までくるわけです。円以下は切り捨てになっています。それに一人一人ぶっかけていくために、電子計算機を使いますために、プログラマーが何かいろいろこうはじくんだそうです、私もよくわかりませんが。そういうようなことをやりますためには、どうしても数カ月かかる、これ非常に事務的なんです。事務的ですが、これなしではできないんですね、国民の権利に関することですから、いいかげんそろばんはじいて、間違ったらこれたいへんなことですから。正確に電子計算機で計算していくためにはやはり数カ月かかると、こういうわけでございますから、タイムラグを短縮するということは非常に困難である、これが現在の事情でございます。しかし、せっかくその法律を審議しております社労の場において、あるいは衆参両院の予算委員会の場において何とかならぬのかと、こういう非常に強い与野党を通じての御意見でございますので、いま盛んに勉強しているんです。勉強しておりまして、いまのところまだ結論は出てない、こういう状況でございます。したがいまして、厚生年金について、三カ月繰り上げるという成案は全然得ておりません。国会の場において、私三カ月繰り上げますなんていうことを言ったことは全然ありません。新聞というのはいろんなことを書きますから、これは、私一々それに責任を負うてそのとおりにしなけりゃならぬなんという責任は私はないもんだと、かように考えております。それと同時に、福祉年金というのは、御承知のように、年金制度ができたときの敬老的な年金、補完的な年金としてつくったもので、これは全額国費でございます。ことしの十月実施ということだけで本年度すでに四百数十億の金を出すわけなんです、増額部分だけで。というわけでございまして、福祉年金につきましては、その額を増額するといったふうなことも全然いまのところ考えていない。新聞はいろんなことを書いておりますが、新聞には大体推測が多いと、こう私は考えておるわけでございます。
  49. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 いまのお話よくわかったんでございますが、実は、これは母子福祉年金に限りませんで、たとえば恩給等につきましても、そうでございますが、十月実施ということで、いま行なわれておりますけれども、国家公務員のベースアップというのは、昔はだいぶさかのぼり方が少なかったわけでございますが、最近は四月実施というようなことで行なわれておるわけでございますので、一ぺんにはできないにいたしましても、国家公務員の給与の例にならいまして、できる限り十月実施というのを、これはことしの予算ではむずかしいかもしれませんが、将来の方向として、恩給等と一緒に可及的すみやかに四月に遡及して実施できるような措置をとっていただきたいと思いますが、その点については、どういうふうにお考えですか。
  50. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この福祉年金は、いまお述べになりましたように、全額国費でございますから、恩給さらに軍人関係の扶助料の問題とか、そういう問題と全部に関連するきわめて重要な問題でございます。昭和四十九年度は、これを行なうことはできませんが、せっかくの御意見でございますから、今後とも将来の問題として考えさしていただきたいと、こんなふうに考えるわけでございます。本年度、これをやるという意味ではございません。その点ははっきり申し上げさせていただきたいと思います。
  51. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 それから母子福祉年金の額の問題になるんですが、これも予算できまっておりますけれども、非常に夫を失って子供を養っておる母子福祉家庭でございますので、実際に福祉年金の使い方も、そういっては失礼でございますけれども、老人の福祉年金とは違って非常に需要の切迫性というものがあるのじゃないか、食料品とか、医療というものがいま値上がっておる現在におきまして、食糧費、医療費、学費というようなものに使っておるわけでございますので、こういうような福祉年金の使い方の切迫性、緊要性といったような観点から、福祉政策全体の体系の中で、母子福祉年金につきまして特に優先的に考えていただきたいと、こういうふうに思うわけでございます。そういう点につきまして、大臣の御見解をお願いしたいと思います。
  52. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) お述べになりましたように、母子世帯というものの生活は非常に窮迫しておるということは想像もでき、また、そのとおりだと思っておるわけでございます。そこで、私どもも来年度予算におきましては五〇%引き上げるということにいたしたわけでございますが、これであるいは額からいえばなるほど不十分であろうかといったふうな御意見の出るのは私はごもっともだと思います。そこで今後とも、これは来年度は、五十年度は御承知のように、老齢福祉年金が七千五百円から一万円と、こうなるわけですから、それに関連して母子福祉年金の増額もやる、こういうわけでございまして、今後とも熱意をもって対処してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  53. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 来年、五十年の改定のときには、特にいままでのように同じような比率で上げるというようなことでなくて、母子福祉年金に対しまして特に上げ幅を大きくしていただきたいということを希望しておきます。  それからその次に、子供さんがなくなった、あるいは子供さんがもう大きくなった未亡人の対策というようなことについて、特に住宅に関連いたしまして申し上げたいと思います。戦後二十八年間たちまして、戦争未亡人が子供さんをかかえて非常に苦労をされて今日まできたと、そして子供さんもおかあさんのがんばっている気持ちを体しまして育ちまして、子供が独立してしまった、いま、振り返ってみると、二十八年たってすでに五十歳を過ぎて、老い先がもう近くなってきておると、こういうような状況にあるわけでございます。また、このような年寄りに近くなった母親たちというのは、戦争未亡人に限りませんで、夫と死別された方もございましょうし、あるいは離婚した方もございましょうし、そういう方は、すべて子供を育て上げていま何か孤独感にさいなまれておる状況だと思うわけでございます。また、戦争でだんなさまがなくなりましても、子供さんがいなかった未亡人の方もございます。あるいは親、兄弟のために結婚ができなかったといういわゆるハイミスの方もございますが、こういう方々は独身でございましたから税金だけとられて何もされないというような気持ちでいままで三十年近く独立独歩で暮らしてきて、その方々も五十歳を過ぎたわけでございます。こういうような一人暮らしの年とった、あるいは老人に近くなった女性たちはいま何を考えているかといいますと、いまの老人対策では非常に不安だと、自分たちで独力で暮らしていきたいと、そして老後に備えていきたいと、そういうような気持ちを持っておるわけでございます。老人福祉は、七十歳近くならないと国は守ってくれない。五十歳から七十歳近くまでをどうやって暮らそうかということで悩んでいるわけでございますが、一方におきまして、分譲住宅等買おうと思いましても、これらの人たちは、同居の親族がいないということでシャット・アウトされていると、そういうような状況でございます。こういうような一人暮らしの老人、中高年齢女性というような方に対しまして、政治はもっとこのような段階になったんでございますから、目をあけていくべきである、こういうふうに思うわけでございます。若い未亡人の方も気の毒でございますけれども、これらの人たちには若さがあります。年寄りに近くなった、ほんとうに生活に疲れたような方々に対して特別の御配慮が必要じゃないかと、こういうふうに思うわけでございますが、そこで、厚生大臣にお伺いいたすわけですが、厚生大臣はこういう女性の人たちに対して、どういうふうにお考えになっておられるか、国の福祉政策のワク組みの中で、どういう位置づけをしてどういう対策を講じられようとしておられるか、それをまずお伺いしたいと思います。
  54. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいま御指摘のございました未亡人を中心とした母子福祉並びに中高年齢層になられた、お子さんが二十歳以上になられたいわば寡婦と申しますか、あるいは中高年齢方々に対する福祉の施策といたしましては、御承知のとおり母子福祉法がございまして、これは主としてただいま御指摘がございました独力で何かをするときの資金の貸し付けということを中心になっておるわけでございます。ただいま御指摘のございました寡婦、中高年齢層の方々に対しましては、四十四年から要綱をつくりまして、いわゆる寡婦貸し付け資金というものをつくりまして、母子福祉法に基づきます貸し付け金と同様、同額なものを貸し付けの中に入れておるわけでございます。四十九年度におきましては、寡婦貸し付け資金につきましては政府の出資額八億八千万、母子家庭につきましては六億五千万という増額した予算運営してまいると。なお、中身についても将来改善をはかってまいりたいと、かように考えている次第でございます。
  55. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 そこで、寡婦福祉資金なり母子福祉資金の中の住宅資金でございますが、この限度額は、現在三十万円ですか。——三十万円ということでございますが、たしか四十六年から三十万円になっていると思うんですが、それから今日までの建築費の指数を見ますと、大体私の計算ですが、八六%ぐらい値上がりをしていると思う。でございますので、この住宅資金限度額を、スライドからいきましても、六十万円ぐらいに引き上げてもいいんじゃないか、こういうふうに思っておりますので、これの引き上げの問題、それからさらにいま新築資金に貸しておりません。これはおそらく住宅金融公庫等のかね合いとかあるいはそういうようなことがあるんだろうと思いますが、こちらのほうが金利が安いというようなこともございまして、新築資金も貸してくれという要望が非常に強いわけでございます。そういう問題につきまして、この母子福祉貸し付け資金の中の住宅資金を大幅に引き上げて、そして新築のほうにも回すというような気持ちがあるかどうか、ちょっと局長にお伺いいたします。
  56. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいま御指摘のございました住宅資金につきましては、母子福祉、寡婦福祉の両貸し付け金につきまして、ただいま御指摘のとおり、四十六年以降据え置きになっておりますので、今年度におきましては、これをアップいたしたい。ただいまお話しがございました六十万円までいくかどうかにつきましては、まだここで申し上げるまでに至っておりませんけれども、大幅なアップをいたしたいと考えております。  なお、新築につきましては、この制度が発足いたしましたのが、そもそも改築、増築、補修ということでございますので、新築につきましては、別途の方法でお願いをする以外にないのではないかと、かように考えております。
  57. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 そこで、建設省のほうにお伺いしたいんですが、この間の新聞によりますと、一世帯一住宅はもう実現したと、住宅は質的な対策に転換しなければならないというようなことが言われております。いままでの住宅政策は世帯持ちに対してだけ住宅政策が行なわれておりまして、単身者は住宅政策からおいてけぼりを食っていると、こういうように先ほど申し上げましたような事情がございますので、単身者すべてというわけにはまいらないと思いますけれども、相当年齢がとられて一人で暮しておられる単身者に対しまして、特に私が申し上げておりますような中高年齢の婦人たちに対しまして、全く住宅政策が門を閉ざしている。いまのように、厚生省のほうでは新築のほうは考えてない、建設省のほうでは単身者は相手にしないということになりますと、住宅政策は、こういう人たちに門を固く閉ざしている。制度として、一人を認めないんだというような態度をとっているのは非常にかわいそうじゃないかというふうに思うわけでございます。公営住宅法では、法律によって同居の親族がなければ公営住宅は貸せないと、こういうふうに言っておりますし、公庫法、公団法は法律には書いてありませんが、それぞれ業務方法書で似たような規定をいたしております。こういうような、いままではあるいは世帯向きの住宅というものが非常に激しかったということで、そういうこともあるいは認められるんじゃないかと思いますけれども、これからいま申し上げましたように、戦争未亡人なども年とってまいりましたので、そういうような状況もございますので、これからはひとつ公営住宅あるいは公団住宅、特に住宅金融公庫の融資といったような面につきまして、いまのような方々に対して門を開く気持ちがあるかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  58. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) ただいま先生おっしゃいましたとおり、いままでにおきます住宅政策の中で単身の寡婦の方に対する施策といたしましては、おっしゃるとおりほとんどやってまいっておりません。母子世帯の方々に対しましては、公営住宅の中の特定目的公営住宅ということで対処してまいったわけでございますが、それもやはり世帯対策でございまして、単身寡婦の方についての施策ではございませんでした。一部住宅公団で単身の方のための住宅をつくってまいった時代もございますが、四十一年度以降一時中止をいたしております。これは先生先ほど申されましたように、世帯の数がふえるという重圧に耐えかねてのことでございましたけれども、ただいまお伺いいたしたとおり、今後におきましては、そういうようなものに対します対策が非常に重点として浮かんできているということは事実でございます。四十九年度には、当面の施策といたしましては、民間の住宅をお建てになる方々に金利を少しでも安くしていただく、五分五厘まで利子補給する。二万四千戸ばかり、そういうふうな特定賃貸住宅という制度を発足させることにいたしておりますが、そういう場合に、やはり単身の者も対象に含めようじゃないかということで現在関係方面と詰めております。  それからさらに、基本の問題といたしましては、第二期の五カ年計画の現在第四年度でございますけれども、先ほど先生からもお話ございましたけれども、世帯数を百三十七万戸、戸数が上回るという時代になってまいりました。これからは従来のようなやはりデスクプランじゃなくて、積み上げによる住宅政策が必要じゃないかと叫ばれております。現在、住宅審議会におきましてこの問題も含めて慎重御審議を願っております。秋ごろには結論が出ると思いますが、その方向に沿いまして芸のこまかい施策を講じてまいりたいと思っておる次第でございます。
  59. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 民間の住宅について、賃貸住宅について門戸を開いていただくのはたいへんありがたいのですが、実は一番望んでおりますのは第二種公営住宅、これは厚生省もたしか共管だと思いますが、第二種公営住宅の中に寡婦向け公営住宅を建設するとか、あるいは同居要件を緩和いたしまして、中高年齢の寡婦が入れるようにしてもらいたいというのが非常な要望でございます。ただいま、これは法律改正もあるいは要るんじゃないかと思いますが、いまのお話でこれから審議会を開いて、この次の五カ年計画といいますと、五十年度では間に合わなくて五十一年度ということになってしまうと思うのですが、五十年度ぐらいから五カ年計画の途中であっても公営住宅のワクの中で何とか五十年度ぐらいからこういう制度の道を開いていただきたい、こういうふうに、私は思うわけでございます。そういう点につきまして、きょうは厚生関係の委員会でございますので建設大臣おいでになりませんので、厚生大臣も第二種公営住宅、これは厚生省と共管でございますので、こういうような悪戦苦闘をしまして一人暮らししておられるこういう方々のために、住宅政策が全くシャットアウトされている現状にかんがみまして、こういう問題に対して制度の道を開くようにお願いしたいのでございますが、大臣の御見解を承りたいと思います。
  60. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 竹内委員のお述べになりましたように、こういう寡婦の方々に対する住宅対策、確かにまだ十分でない点があるように私も感じておりますから、建設大臣とも十分相談をいたしまして努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  61. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 それから母子福祉貸し付け資金の中に事業開始資金というのがございます。あと一、二点多少こまかい問題をお聞きしたいと思います。  事業開始資金というのがございますが、これもいまのいろんな物価の状況等で、事業を未亡人の方がやられようとするときに、どんなマージャン屋をやるにいたしましても、手芸店を開くにいたしましても、相当金が要るわけでございます。もちろん、この事業開始資金というのは、この資金のすべてをまかなうというもんじゃなくて、ある程度は自分でためられたお金も注ぎ込んでやるということでございましょうが、それにいたしましても、現在の事業開始資金では非常に少額でございますので、これにつきまして、これと事業継続資金あわせまして、これについて、これを大幅に引き上げていただきたいと思うのでございますが、それについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  62. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいま御指摘の事業開始資金並びに事業継続資金につきましては、これは昨年度、すなわち四十八年度に五十万あるいは二十五万とそれぞれ引き上げたのでございます。ただ、ただいまお話しのございましたように、こういった物価の状況の中で、新たに事業を開始する方の立場を考えて、さらに努力を続けてまいりたいと、かように考えております。
  63. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 私の県では、手続の問題もあるようでございますけれども、あまり金額が少ないために、この母子福祉貸し付け資金の中の事業開始資金が、ある水海道市というところでは、三年ぐらい全く利用されていないというような面もございますので、ひとつ、去年上げられたからことしはということでなくて、いまのような物価の状況等も御勘案いただきまして、事業開始資金、事業継続資金を大幅に引き上げていただきたいと、こういうふうに思うわけでございます。  それからちょっと先ほど申し落としたんですけれども、住宅資金の対象の中に、もう一つ新築のほかに、公営住宅の払い下げの資金を入れてくれという要望がございます。公営住宅は、御承知のように、大都市ではなかなか建てかえのための用地というようなことで払い下げをいたしませんが、地方都市等におきまして二十戸、三十戸ぐらいの木造の小団地は、いま払い下げが行なわれておりますが、払い下げられる場合には、どうしても団地としてまとまって払い下げを受けるということになりますので、何人かおられる中でその方だけが反対すると、払い下げにもならないというようなこともございますし、その方も長い間、公営住宅に住んできて皆さんが払い下げを受けようというときに払い下げが受けられないということでは非常にさびしい話でございますので、その住宅資金の中で、これも最近は土地代が高くなっておりますので、相当の金額にはなっておりますけれども、何とか住宅資金の中からもひとつ応援できるようなふうに御考慮を願いたいと思うんですが、それについては、どういうふうにお考えでございますか。
  64. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいま御指摘の点、まことにもっともな点でございますので、そのようにできるようにいたしたいと、かように考えております。
  65. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 その次は、母子福祉年金と児童扶養手当の対象となる子供さんの年齢の引き上げの問題でございますが、いま十五歳未満の子供ということが対象になっているようでございますが、すでに高校進学率が四十八年度の文部省の統計で見ましても八九・四%と、約九割に全国的に達しております。九割をこえる府県が二十一府県もあるというような状況でございますので、この高等学校というふうな半ばもうほとんど義務教育化、実質上は義務教育化してるんじゃないかと思います。これにつきまして、十八歳未満ぐらいに引き上げると、直ちにできなくてもそういうような方向で今後考えていかれるかどうか、これを質問いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  66. 横田陽吉

    政府委員(横田陽吉君) ただいま御指摘の点は事情全くそのとおりでございますので、前向きで実現できるように検討いたしたいと思います。
  67. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) この際おはかりいたします。  分科担当委員外委員小平芳平君から質疑を行ないたい旨の申し出があります。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 御異議ないと認めます。小平君。
  69. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) 四十九年度予算で医薬品の被害に対する救済制度、それから食品の被害に対する救済制度、これが齋藤厚生大臣のかねてのお約束によりますと、昭和四十九年度には発足できるというふうに期待を持っておりましたが、現在まで、そうした法改正も、新しい制度の提案もないし、また、予算案にもそれらしいものが入っておりません。  で、初めに医薬品のほうについてお尋ねをいたしてまいりますが、一体、この医薬品の被害者に対する救済制度がいまなお見送られていくということは、私もきわめて不満でありますが、また、多数の被害者の、あるいはその御家族の期待を裏切るものである、このように感じますが、どうなっておりますか。
  70. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 医薬品の副作用による被害者の救済問題、これは私は非常に熱意を持って解決していかなけりゃならぬ問題だと考えております。  そこで昨年、専門家にお集まりいただきました研究会をつくりまして、研究会で検討を進めておるわけでございます。しかし、問題がなかなか複雑でございまして、率直に申しますと、現在、いろいろ薬品公害といわれておる問題がたくさんあるわけでございます。たとえば、サリドマイドの問題というのが一番大きな問題でございます。そういうふうな問題がありますために、そういう問題をどうこの中で処理するかということが一番の問題なんです。この医薬品の公害救済制度を新しくつくろうとするその制度の中で解決するというのか、それを別問題として、もう今後の問題だけを処理するかといったふうな問題といったふうなことがやはり一番やっかい——やっかいと申しますか、むずかしい実は問題でございますので、その専門家方々の研究会においてもまだ結論が出てないという状況でございます。  で、私は昨年の委員会においても、こういう問題は、できるだけ早くという考えを持っていろいろ催促をしてみたわけでございますが、なかなか思うように、まだ結論が出ないことは私も申しわけない次第だと思っております。しかし、今後ともこの研究会は精力的に勉強していただきまして、できるだけ早い機会に一応の試案が出ましたら、その試案を一応天下に発表いたしまして、そしてさらにまた、各方面のそれに対する御意見、そういうものをお聞かせいただいて、そして法文化していくと、こういう手順にしたいと考えておる次第でございます。しかし、まだ法案提出までこぎつけることのできなかったことは、私もまことに遺憾とするところでございます。
  71. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) 大臣がいま述べられたように、現在の被害者をどうするかと、これが一番大事な問題だと、その点、私も同感です。ところが一方では、サリドマイド被害については厚生省が仲立ちをして、国が企業とともに責任を認め、そして相当の賠償を払うというふうな報道がなされておりますが、この点については具体的にどうなっておりますか。
  72. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) サリドマイドの問題につきましては、先生御案内のように、患者と申しますか、被害を受けられた方は六十三人のお子さんと、その保護者の方から、国及び製造販売いたしました会社を被告といたしまして、損害賠償の訴訟が提起されておるわけでございます。すでに二年ばかり前に、原告の方々に対して、国及び会社からも和解をもって事を解決いたしたいという申し出をいたしておったところでございますけれども、昨年末に至りまして、原告の方々からも、それでは一応国及び会社側の真意を聞きたいというお申し出をいただきまして、両方の責任者が出席いたしまして、率直に申し上げますと、因果関係及び責任を認めることを前提といたしまして和解のお話し合いに入るということを両者から申し上げまして、原告団の方々も、まあそれで直ちに訴訟を打ち切って云々という問題ではないけれども、一応、それでは、さらに具体的な話し合いを進めようというお申し出をいただきまして、その後、三回にわたりまして、私どもと原告団の方々とのお話し合いを進め、具体的な和解の交渉をいたしておると、そういう段階でございます。
  73. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) すでに、このサリドマイドにつきましては、一部新聞には補償の金額は四十億から六十億円になるであろう。あるいは賠償金の負担割合は国三分の一、企業三分の二というふうな案が検討されているかのように報道されておりますが、こういうことですか。
  74. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) まず、賠償の額につきましては、現在、一応原告の方からは訴訟上の要求額として提示されておるわけでございます。それに対しまして国及び会社、両者が共通の被告といたしまして、どのような賠償額を被告として提示いたしますのが最も妥当であるか。これはやはり基本的な考え方といたしましては、被害を受けられた方々に対してできるだけ今後のお役に立つようなものでなければならないということを基本にいたしますことはもちろんでございますが、国といたしましても、いろいろな面におけるこういった賠償の訴訟あるいは和解というケースもあるわけでございます。また、税金から支払うことでもございますので、その積算、あるいは額等につきまして国民にも納得を得られるような十分な根拠のあるものでなければならないというような要請も同時に考えなければならないところでございます。で、私ども厚生省と、それから訴訟、そういった賠償関係で国を代表いたします法務省、それから財政を担当いたします大蔵省との間でいろいろな考え方に基づいての試算をいたしまして、現在鋭意内容を詰めておる段階でございまして、現在なお、このような額に至ったというような決定的なものにまで至っておりません。できるだけ早く話を詰めまして、原告の方々にお示しいたしたい。そのように考えております。  それから国と会社との分担の割合でございますが、これは共同の被告として、あるいは和解におきましても共同の賠償責任者として支払いの義務を負うという以上は、国と会社側とは、これは原告側に対しましては、あるいは原告というか、被害者の方々に対しましては、これはいわば連帯的な責任を負うものでございまして、その内部の分担関係というのは、これはあくまで国と会社側との内部問題でございます。したがって、こういったことは全体の内容がきまりましたのちに、別途国と会社側とで話し合いをし、決定すべきものでございまして、この点につきましても、まだ決定を見ておるという段階ではございません。
  75. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) 基本的な考え方はそうだと思います。で、私がいまお尋ねしている点は、国と製薬会社がともに責任を認め、因果関係を認めたということで話し合いに入ろうということは先ほど御答弁があったとおりです。そこで、実際具体的な賠償は、そうすると国と企業がともに負うと。その負担割合は、国と企業の内部的な話し合いだというふうに言われます。が、要するに、国が賠償金を払うということは、もう既定の事実なんですか。
  76. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 御意見のとおりでございます。
  77. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) それはどういう形で、どういう項目の予算から払われるわけですか。
  78. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) これは財政問題でございますので、なお、大蔵省と最終的に詰めなければならない性格のものでございます。したがって、私いま正確に申し上げるだけの自信がないのでございますが、おそらく賠償償還金の項目に立てるべきものと。で、財源といたしましてはおそらく予備費の使用ということになるのではなかろうかと考えております。
  79. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) そうなりますと、スモンにつきましては、これは原因がキノホルムだということが確定しておりますか、いかがですか。
  80. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) スモンにつきましては、御案内のように、スモン調査研究協議会、いまの難病のスモン班でございますが、その御研究によりまして一応キノホルムとの因果関係が相当強く推定されておるということは承知をいたしております。
  81. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) そうすると、このスモンも、いま局長が述べられるような難病として国が対策を立てるというんではなくて、キノホルムによる薬品被害としてこのサリドマイドと同じように国が救済すべきではありませんか。国と企業が救済する、そういう立場に立つのが当然ではありませんか。
  82. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 先ほど、全体の問題といたしまして大臣から御答弁申し上げましたように、医薬品の副作用に基づく被害、いろいろいま問題になっておることは先生の御指摘のとおりでございますが、そのやはり発生の態様、それから因果関係の証明されております程度、あるいはそれに対する企業の、どの程度の現在の法律制度のもとにおいて法律上の責任を負うべきものかどうか、あるいは国がどの程度の法律上の責任があるものかどうか、これはそれぞれのケースによりまして一がいにはなかなか判断しにくいところであろうと存じます。そういった意味におきましては、やはりスモンの問題につきましては、相当医学的にも困難な問題をかかえており、また、医薬品の使用の態様につきましてもサリドマイド等とは違う面もあるわけでございまして、現在訴訟が続行されておる段階でございますので、なお、もう少し時日をかしていただいてさらに慎重に検討を要するものではないか、さように考えております。
  83. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) おそらく、そういうように態様が違うと、いろんなケースによって違うというふうに言われることと思いますが、思いますが、スモンの場合ですね、キノホルムが原因であるという研究会の報告があれば、あるいはそれはサリドマイドほど確定的な報告でないという意味ですか、先ほどのお話は。そういうことだと、まあ態様の違いということが言われるでしょう。でしょうが、大局的に、スモンの原因はキノホルムであるという推定がある以上、ただ態様が違うといって、日にちを送っているのではなくて、サリドマイドに示したような国の責任、それに対する国の企業に対する働きかけ、そして救済の道を踏み出すと、これは当然ではありませんか。
  84. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 医薬品の副作用被害全体の問題といたしましては、初めに御指摘がありましたように、態様がいろいろ違っておりましても医薬品の副作用による被害を受けた方に対する全体の何らかの制度的な救済ということは御指摘のようにできるだけ行なわなければならないものであろうと存じます。ただ、いま申し上げましたように、具体的にすでにあらわれております被害につきましてはいろいろな発現の態様があり、また、その間における因果関係、あるいは特にその因果関係の究明との関連におきましてのそれぞれの具体的な法律上の責任のあり方、そういったものはいろいろな違いがあるわけでございまして、厚生省といたしましても、先生御指摘のような点も今後十分検討しなければならないとは存じますが、同時にまた、スモンという特殊な疾病の態様に着目いたしまして、現在難病対策の一環といたしまして、これは御案内のように、難病対策の第一号といってよろしいものでございますが、診断・治療の研究及び医療費の公費負担、そういうような方法によって御苦痛をできるだけ軽減する方向に向かせる、そういうようなことを努力しておる次第でございます。
  85. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) 大臣からこの次に御意見を承りますが、局長、それではもう一つ、クロロキンについてはいかがですか。クロロキンについては、昭和四十七年度科学技術庁の特別研究費によって研究報告がなされております。治癒傾向がなくむしろ軽度のものが投与中止後徐々に悪化している、こういうふうにはっきりと研究報告が出ております。こういう場合はいかがですか。
  86. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) クロロキンにつきましても、これは医薬品の副作用の被害全般について共通の問題ではございますけれども、この医薬品の効能効果と、それからその使用に伴います副作用とのバランスによって、医薬品の全体的な有用性というものは考えなければならないというべきものであろうと存じます。クロロキンにつきましては御指摘のように網膜障害、視力障害が起こるということは、これは医学的にも明らかになっておるところでございますが、同時に、この医薬品の医療上の効果というものも相当これは確認されておるところでございまして、したがいまして、このクロロキンの使用にあたりましては、そういった副作用の発現をできるだけ押えながら、有効な使用をしなければならないという意味の厳重な注意をするように業者にも指導いたし、また、医師にも協力を依頼しておるところでございます。  ただ、先生の御指摘の現在まで不幸にしてそういう障害をお受けになった方に対しまして、これをどういうような救済制度の対象にするかというような点は、先生御指摘のように、これもその態様に即応いたしまして、いまも御指摘のような研究を進めておる段階でございますので、今後できるだけ早く全体の制度の検討とにらみ合わせながら、具体的な救済の措置ができるように努力をいたしたいと考えております。
  87. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) そういうことを言っていたのでは、救済の対象になる人はいなくなっちゃうじゃないですか。要するに、薬による、医薬品による健康被害者の救済制度をつくろうというわけです。とにかく、その制度自体についてもいろいろ内容については私は質問したいことはたくさんありますが、それはあとといたしまして、さしあたって現在の被害者をどう救済するか、これは大臣が一番大事なことだというふうに述べておられますので、したがって私は、現在の被害者についてお尋ねをしているのです。しかし、それについて薬の効能がどうの、副作用がどうのといって、いまの局長の御答弁のようだと、救済すべき人はいなくなっちゃうんです。  それでは昨年の三月二十六日、参議院予算委員会で公明党の内田議員から厚生省に対し、このクロロキンについての質問があった。齋藤厚生大臣は、そのときに初めて聞いた。これから調査させますというふうに答弁なさった。それからクロロキンの被害者の方々が四十七年三月、おととしの三月、なくなった斎藤厚生大臣に面会して、そして実態調査と救済を申し入れております。こうした四十七年三月、四十八年三月、それでいま四十九年四月ですが、厚生省はどれだけの実態調査をなされましたか。
  88. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) クロロキンの問題につきましては、大体全国的に眼科医会からのアンケート調査をいたしまして、四十七年度におきまして日本眼科医会所属の眼科医四千八百三十七名に対しまして、アンケート調査を行なったわけでございます。これは先ほどの御指摘の医薬品の視覚神経系に及ぼす影響に関する研究班が行なったものでございますが、これに対しまして、二百三名の方が三百二十一症例のクロロキン網膜症を経験したという回答をいただいております。回答率は二七%でございます。ただ、複数のお医者さんにかかっておられる患者さんもおられると推定されますので、重複しておる症例があるということで、結局研究班として確認した症例は百例あまりであるという御報告をいただいております。したがって、この調査の結果、クロロキン網膜症の症例数は百例以上、まあごく大きく取ると千例ぐらいはあるかもしれない。百例ないし千例。大体確認されておりますのは、百例あまりというふうな御報告をいただいております。
  89. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) それは、科学技術庁の報告にも百ないし千人の被害者がいるだろうとなっております。それじゃ、そこから一歩も出てないわけでしょう。要するに、実態把握ができてないわけでしょう。
  90. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) この点は、私どもといたしましても、医薬品の副作用の被害に関する調査というのは、非常にいろいろと専門家の御意見もいただいておるわけでございますが、なかなか技術的に困難な点がございまして、スモン等につきましてはスモン研究班の報告がございます。それから、クロロキンにつきましてはいま申し上げましたように、やはりこれは専門家の手によりまして、その分野の専門家が診断したものによるのが一番間違いがないという考え方でございまして、したがって、四十九年度予算には、一応各医師に対するアンケート調査によりまして、こういった調査も行ない得るような準備を整えておる次第でございます。
  91. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) 私が尋ねていることは、百例ないし千例ということならば、実態調査がいま現在できてないでしょうと言う。そのとおりだと言えば、いいじゃないですか。それで四十九年度は、アンケート調査をやると言う。あるいは専門家によらなくっちゃあいけないという、それは言わなくってもわかっているからいいです。  では、次にコラルジルによる被害について、新潟地裁へ厚生省はどういう答弁書を出しましたか。簡単に要点だけお答えいただきたい。じゃ、ちょっとあとで調べてください。  四十七年二月に、新潟地裁へ出された政府の答弁書によりますと、コラルジル服用による肝臓障害は認めますということ。しかし、安全確認や監視義務の責任については、政府は争うという答弁書になっておりますでしょう。いかがですか。
  92. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 御指摘のとおりでございます。
  93. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) それならば、また、それが態様の違いといって説明されるのかもしれませんが、サリドマイドの場合は服用による障害を認めたら、因果関係を認めたら、国にも安全確認や監視義務の責任があるというところから和解しようと言っているわけでしょう。コラルジルやクロロキンの場合も原因と結果を認めておきながら、国の責任を認めないというのはどういうわけですか。
  94. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) この点は、先生初めに御指摘になりました今後つくらなければならない救済制度の場合と、それから現行法に基づきます訴訟に対応する場合とは、いまおっしゃいましたように、その態様によりましてどうしても多少違ってくる面が生じるわけでございます。同じく医薬品の副作用であるということが明らかになりました場合におきましても、その医薬品の副作用によるということが事前に予知し得たかどうか、いわゆる予見可能性の問題、あるいはそれが明らかになりました段階におきましてのそれに対する製造の禁止、回収等に対する措置の態様、そういったものも総合いたしまして、少なくとも、現行法における法律上の責任というものは、訴訟上におきましては国の立場としてやはり是を是とし、非を非とするという考え方で審議を尽くさなければならない、そういう立場におきまして訴訟上におきましては、いま御指摘のような主張を現在いたしております。ただ、そういうことと実際に医薬品を信頼して使用されたために被害を受けられた患者の方々に対して、国が新しい制度としてそういった既存の法律体系とは別に救済制度をつくって早く救済できるような措置をとらなければならない、それが現在検討いたしております救済制度に対する私どもの念願でございます。
  95. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) 齋藤厚生大臣、いまの局長答弁をどう大臣は受けとめられますか。要するに、原因がこの医薬品によって結果としてこういう健康被害が発生している、それを救済しようというわけです。ですから、どんな制度をつくってもいま局長が言っているように態様の違いとか、そういうことを言っていたのでは、制度に入る人なくなってしまう。一方では、国の責任を認め、因果関係を認めながら、他方では国は監視義務があるいは安全確認の義務がない、そういうことでおかしく思われませんか。
  96. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 薬品公害の処理の問題は非常になかなかむずかしい問題がはらんでいると思います。薬とその公害との因果関係、それから国がその公害に対してどの程度の関与のしかたがあったのか、なかったのか、そこが非常にむずかしい問題であろうと思うんです。そこで法律的になるほどスモンはキノホルム、クロロキン、コラルジル、それぞれ薬とその症状との因果関係、それじゃ、国がどの程度それを認めておったか認めてなかったか、そういうふうな問題との関連で処理しなければならぬ問題が私はたくさんあるんではないかと思うんです。薬務局長の言うその態様というのは、それを中心に言うているのではないかと思うんです。  そこで、そういう問題を純法律的にはっきりさしていく必要がある、こういう考え方から今日までの研究がおくれているということを私は率直に申し上げたわけでございます。しかし、行政的な面からいえば、薬とそのものとの因果関係はあるということははっきりしているんです。国が監視をする義務とか、あるいは予見可能性の問題とか、そういうことは一応切り離して、薬とその症状との関係だけに着目して、そしてもうすでにすぐ患者の救済に当たるというやり方がいいのか、あるいは国がどういう程度にその事件に関与しているかしてないか、そういうことも含めて制度として考えたらどうかというふうな議論もあるわけでございます。そこで、私は率直に申しまして、病気と薬との因果関係があったときにすぐ救済に乗り出す、こういう方法も私は一つの方法ではないか、こう思います。一つの方法だと思います、裁判は別としましては、それはそれなりの私は意味があると思います。  そこで、どういう方向でこの問題を処理していったらいいのか。かりに薬の公害の救済制度をつくった場合でも、訴権を奪うというのは私はできないと思うのです。訴訟の権利を奪うというわけにはいくまい。そういうことになれば経済的な救済、これがある程度中心になるかなというふうな感じもしておるわけでございます。したがいまして、いまのところ私はまだ専門家方々に研究をお願いしておる段階でございますからいま私はどちらがいいのかということをあまりはっきり言いにくい立場にありますが、やっぱり私の立場としては、患者救済ということを頭に描いた何かやっぱり早急に解決できる救済制度、そういうものがやっぱり先につくられる必要があるんじゃないかなという、私は率直にいま質疑応答を通じまして考えておるわけでございます。訴訟となって、それで国がどういう程度の責任を負うべきか、負うべきでないかというようなこと、これはなかなか議論しておりますとやっぱり結局裁判できまっちゃうんですね、そうなってしまったら。それじゃ、やっぱり患者の救済がおくれる。そこでいま申し上げましたような考えを十分踏まえた救済制度を考える必要があるんじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  97. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) 厚生大臣、サリドマイドの場合は、十年裁判を続けてきてやっとここで国が責任を認め、また、賠償も払うというふうに先ほど発言があったわけです。したがって、このクロロキン、コラルジル、いまはっきりとそういう因果関係が認められるという被害に対しては、サリドマイドと同じように、大臣は行政の立場から国の制度で被害者の救済をするか、あるいは企業との話し合いをしろと言われても、実際の被害者はたいへんなんです。企業のところへ行ってはたしてあなたが被害者かどうか、それを認める、認めないから始めなくちゃならない。ですから、もっとそういう現実に発生している被害者に対しては、大臣としてとるべき道があるのではないか。まあ、サリドマイドの和解の話し合いもいろいろ問題があるでしょう。今後もいろいろ問題が起きてくるでしょう。しかし、サリドマイドに対して大臣のとられたそういう態度は、同じようにいま指摘するような薬品被害に対してもとられるのが当然ではありませんか。
  98. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これはもうサリドマイドの事案というのは、非常に歴史の古い問題であり、しかもドイツ、イギリス等においても、そういう事案が現実発生したにもかかわらず厚生省が約一年近く使用を放任しておったというところに、まあ、これはしろうとながらの責任というものが、法律的なことは私もよくわかりませんが、感じられるわけでございましょう。そういうふうなことで、今度はクロロキン、コラルジル、こういうふうな問題になってくると思うわけでございまして、私は、このサリドマイドの事案というものが円満に解決するかしないかまだわかりません、先ほど申し上げましたような経過をたどっておりますから。もし、これがうまく和解によって、裁判上の問題は別として、解決するということになりますれば、私は、やっぱりこれを契機にもう少し、もちろんクロロキン、コラルジルにつきましては薬品と症状、それから医療事故という問題がそこにまたもう一つあるわけですね、医療事故というものが。それは、薬だって一度にたくさん飲ませれば悪いにきまっているんですから、そういう医療事故かどうかというところに一つまだ問題は私はあると思いますが、この機会に、これを契機として、もう少し前向きにひとつ検討してみたいと思いますから、もうしばらくひとつ時間をかしていただいて、医療事故というものと、薬品と患者と、これはまああるわけです、これにはね、スモンなんかも間違いなくそうなんです。スモンなんかは諸外国においてはキノホルムは禁止しておりませんから——禁止していないんです。日本だけは禁止しておる。あの事件があってから禁止している。こういうわけでございますから、医療事故、薬品、症状、病気の症状、そういうものとにらみ合わせながら、このサリドマイド問題を契機として今後もう少し前向きに実態を調査し、努力をいたしてまいるような方向でやってまいりたいと思います。
  99. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) 大臣、前向きに検討ではなくて——それは当然ですが、私の言うとおりでいいんじゃないですか。はっきりと、この薬品による被害だということが、研究班なり、あるいは政府の裁判所へ出した答弁書に、はっきりしているわけですから、それは国の救済制度で救うか、もし国の救済制度が延びるならば、さしあたって国がもう少し責任を感じていただきたい。ただ、企業に対して、患者さんは企業に話し合いをしろというだけじゃ困るわけです。そう言っているんですから、当然じゃありませんか。
  100. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まあ、私は、小平先生と同じような気持ちで、慎重に言うただけでございまして、違ったことを申し上げているつもりはございません。新しい制度の中で解決していくか、それが非常におくれるようになれば、国が指導権を握って、もう少し問題の解決に当たると、こういう方向を目ざして努力しましょうと、こういう答弁でございます。
  101. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) ちょっとケースが違いますが、齋藤厚生大臣が、食品の中毒として、被害者として、森永のミルク事件については、国が仲立ちして話を進めようと、こういうことを委員会で答弁され、またその後、大臣あるいは厚生省当局がそういうふうに動いて、森永のほうは若干進んでいると、話し合いがあったと聞いておりますが、同じように、このカネミ油症についても、大臣は、直接その被害者の方ともお会いになっておられましたが、どういうふうにいま考えておられますか。
  102. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この食品公害、これもなかなかめんどうな問題でございます。森永砒素ミルク事件につきましては、もう原因者ははっきりわかっておるわけでございまして、まあ長いこと争われてきておるわけでございますが、裁判がいつ決着つくかわからぬという状況でもございましたので、両方を打診いたしてみますと、和解に、話し会いによって解決しようかなという空気が両方に出てまいりましたので、私が中に入って話し合いで解決すると——裁判上の問題、医学的な立場、法律的な立場は一応別として——そういう子供さん方の将来を考えて、何とか話し合いできぬだろうかということを両方に話しましたら、両方とも、じゃ話し合いに応じましようかということで、順調に進んでおるわけでございます。しかし、まだ最終結論は出てないわけでございます。  ところで、それと同じようなのがカネミ油症の問題でございます、お述べになりましたとおり。これも原因者がはっきりわかっている。PCBであるということもわかっているし、そのカネミ会社のPCBであるということもわかっているんです、みんな。これ、原因ははっきりわかっています。そこで、私もできるならば、何とかひとつ話し合いによって解決するような方向に進んでいただくことが望ましいと思います。しかし、御承知のように、カネミ油症の問題は、多少まだこれ複雑でございまして、内容の問題じゃなくて、そういうことの訴えを提起しておりまする側の内部にいろいろなやっぱり複雑な事情等もあるようでございまして、まだ一本になって、話し合いによって解決しようというところまでまだいってないんです、率直に言いまして。でございますから、将来、私は推移を見まして、被害者の方々が訴訟をやっていてもなかなかたいへんだと、十年も、あるいはこれすると二十年もかかるかもしれぬと、それよりは、やっぱり話し合いでという空気が出てくるならば、私は、森永砒素ミルク事件と同じように、ある程度そういう方面に話しかけてもいいという決意は持っております。まだ、ちょっと時期がかかるような感じがいたしておりますが、しかし、さればといって、社会的な大きな事柄でございますから、できるだけそういう方向に持っていくように、患者さん側の団体に対しても、おりあらば、できるだけそういうふうな空気を醸成するように呼びかけながら、話し合いによって問題を解決する、こういうふうな方向に持っていきたいと、こういうふうに私も考えております。しかし、私がそれを言い出すには、まだちょっと時期が早いような感じがする、こういうところじゃないかと思っております。私も、こういう社会的な問題でございますから、十分監視をいたしておるような次第でございます。
  103. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) 残念ですが、もう時間がなくなりますので、この医療被害者救済制度について、何項目かまとめてお尋ねをいたします。  第一に、救済制度をつくるという場合には、現在の被害者の意見を十分聞き、尊重し、その上で救済制度がつくられるべきだと、いろいろ厚生省、労働省関係で法案を立案する場合でも、その省の担当者と、それから学者とで原案をつくるような場合もありますが、たとえば、失業保険の制度を変える場合には、それなりの審議会等で十分審議した上で、答申を得た上で、政府は国会に法案を提案をしているわけですから、被害者の意見、あるいは先ほども指摘しますように、実情さえわからないで制度だけつくろうといったって無理だと思うんです。実態調査すらできないで制度をつくろうといったってそれは無理です。そうした被害者の意見、実情、そういうことが十分反映されるべきだと思います。それが第一点。  それから第二点は、これは局長、先ほど言われたのですが、まあ受忍すべき副作用ということをよく言われますが、しかし、被害者グループ、あるいは個々の被害者を、あなたは受忍すべき副作用だと、あなたは救済制度に入れる副作用だと、被害者だというふうにこう従て分けることはおかしいと思うんですね。受忍すべき副作用ということを理由にして、患者をこう分けちゃう、あなたは受忍すべきだ、あなたは救済に入れるんだということはおかしいんですよ。ですから、ほんとうに副作用がある場合は、たとえば患者に了解を得るとか、あるいは副作用が発生したらすぐ中止して副作用による障害を防ぐとか、そういうことが必要だと思うんです。  次に、第三点としまして、やはりこの被害者の側に立つ人によって実態調査あるいは潜在患者の発掘といいますか、そういう被害者の側に立つ人の意見を厚生省は一番よく用いてほしい。どうしてもいままでのやり方は、いろいろ理由をつけて、態様が違うとか、受忍すべきとか、いろんな理由をつけて、ほんとうにもうどうにもこうにもならない人だけを救済して、その他の人は泣き寝入りというような結果になりがち、したがって、そういうことがないようにしてほしいという点です。  それから次に、治療法の確立、いま申しました実態調査を具体的にどう進めますか、治療法の確立を具体的にどう進めますか、そういう点について伺いたい。  それから最後に、来年五月一日から自由化が一〇〇%になりますね。そうなった場合に、外国の保険つきの医薬品が出回ってくる、そうすると、わが国の製薬会社は、そういう制度なしで、太刀打ちができないというようなことが起きてくるんではないか、そういうような、業界に意見があるのではないかという点についてお尋ねしたい。  要するに、私がいま申しました趣旨は、現実に被害を受けて苦しんでおられる方がたくさんいらっしゃる、そして厚生省へ籠城してまで、何とか自分たちの意見を聞いてほしいといって、徹夜で籠城までしていらっしゃったわけでしょう。そういう点をもっと受けとめていただきたいという点で、いまの項目について御返事いただきたい。
  104. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) お答えいたします。  第一の被害者の意見を聞くという問題、これはやはり大臣から初めに申し上げましたように、今後起こるべき被害に対する救済制度を制度化することと別に、現在すでに被害を受けておられる方についての何らかの形での救済制度をまず発足させるということは、やはり緊急の要務だろうと思います。そのためには、被害者の方の御意見を十分聞き、また、その御意見を反映させて、できるだけ役に立つような制度をつくるということは、つくります以上は考えなきゃならぬ点でございまして、その点は、先生御指摘のように、率直に申し上げまして、いままで研究会の検討事項が非常に基本的なものであったというようなこともございまして、私どもといたしましても、被害者の方方の御意見を十分拝聴することにつきまして多少不十分な点があったかと存じます。この点は十分に反省いたしまして、いま先生の御指摘のような点について、さらに、十分な話し合いをいたし、私ども考え方なり、問題点ということも、こちらからもよく御説明して、御理解を願いまして、ほんとにためになるような制度ができるように努力をいたしたいというふうに考えております。もちろん、現在の研究会は、そういう学問的な研究会でございますので、その御意見をいただきましても、先ほど大臣から申し上げたように、そういう案につきまして、さらに、広い方面の御意見を拝聴した上で、制度化するという形のものでございますので、そういった段階におきましてもさらに十分な話し合いをいたしたい、そういう気持ちを持っております。  それから受忍すべき副作用の問題でございますが、これはいろいろと制度的な議論をいたしております段階で、いろんな段階、いろんな方面で出てくる議論でございまして、医薬品は、その性格といたしまして、食品と多少違うと申しますか、異質の点がありますのは、どうしても異物が人体に対して相当強い作用を期待するわけでございますから、その段階で、その効能を期待いたしますためには、多少の副作用は免れないという場合があるわけでございます。で、そういったものまで副作用被害として救済の対象にするかどうか、これも一つの大きな制度化に対する問題でございまして、日弁連の御意見などは、そういったことについても、社会保障のたてまえからやはり救済の対象にすべきだという御意見のあることも承知いたしております。ただ、やはり医薬品の効能、効果は、その安全性とのバランスで考えるべきものでございますので、その期待する効能、効果に比較いたしまして、その起こる副作用というものが非常に軽微であるとか、あるいはどうしても忍ばなければならない。いま先生おっしゃいましたように、そのためには、まずそれを使用いたします段階での医師の十分な説得と説明ということがなきゃならぬだろう。これは、一般的な医療事項との関連におきましても、現在の医事法制におきましては、だんだん確立されておる理論であろうと存じます。将来、制度化いたします場合にも、こういった受忍すべき副作用の範囲というようなものは、いま申し上げたようないろいろな制約を加えまして、いたずらに、患者の切り捨てになるというようなことはもちろん許されないことでございますので、学問的な面での詰めを十分いたした上で取り扱うべきものというふうに考えております。  それから治療法の確立の問題でございます。これも、いろいろと医薬品の副作用が多岐にわたっておりますので、その一つ一つにつきましての治療法をそのつど追っかけていかなきゃならぬ。その点は、これは専門家に待つよりしかたのないことでございますので、たとえば、先ほど申し上げましたようなスモンの治療方法、あるいはクロロキンに起因するガン障害、クロロキンに起因いたします障害、そういったものについて、それぞれ研究費を支出いたしまして御検討願っておるところでございますが、こういった問題につきましては、今後やはり金銭的な給付だけが救済の全部であってはなりませんので、要は、できるだけ健康を回復していただくということであろうかと存じます。そういった意味では、今後の制度化、あるいはそれと切り離しましても、こういった治療法の研究、確立ということは重要な課題であると考えております。  この点は、医療関係を担当いたしております医務局とも十分相談をいたしまして、できるだけ積極的に進めることができるように努力をいたしたいと思います。  それから最後の自由化の問題でございますが、これはおそらく、特にアメリカあたりでは大きか医薬品企業が、その医薬品事故に備えて損害保険をかけておるということに関する御指摘であろうかと存じますが、この点は先日FDAの長官が参りましたときに、いろいろ議論をいたしましたのですけれども、アメリカにおきましては、先生御指摘のように、医薬品の事故につきましては国は一切責任々持たない。責任があるとすればすべて会社であるというふうな割り切り方をしておるようでございます。ああいう国でございますから、訴訟も非常に簡単にたくさん起こされるということで、幾つかの医薬品会社が保険をかけておることは承知いたしております。ただ、そういった保険も相当やはり多額になってまいりまして、保険会社はむしろ受けかねるというような話もございまして、むしろ、日本でも検討されておりますような救済制度に近いような基金をつくったらどうかというような動きもあるようでございます。  で、実際問題といたしまして、向こうから入ってきた医薬品の場合は救済が十分になされる、それから日本の医薬品については、そういう制度がないからできないと、そういうことではございませんので、アメリカでもやはり訴訟を起こし、その訴訟に負けた場合に、その保険で支払うというシステムをとっておりますようで、ただ、訴訟の態様が違いますために多少の違いがある。したがって、自由化に伴って日本が不利になるというようなかっこうにはならないであろうと存じます。
  105. 小平芳平

    分科担当委員外委員(小平芳平君) ちょっと一つだけ。  大臣、いま局長からずっと答弁がありましたが、最後に、大臣から二つにつきまして簡単にお答えいただきたいのです。一つは、被害者の意見あるいは実態を十分尊重して考えるべきだということが一つ。それからもう一つは、局長答弁の中に漏れておりましたが、実態調査ですね、実態調査といっても、お医者さんがカルテを見せてくれなければ、被害者本人が名乗り出ても取り上げてもらえないというような、そういう点は現在の法改正をしてでも、新しい制度をつくってでも、少なくとも、被害者が泣き寝入りにならない、切り捨てにならないような制度を考えていただきたい。  以上二点です。
  106. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 実態調査についてはごもっともな点でございますので、さような方向努力をいたします。  さらにまた、この制度を創設するにあたりまして、被害者の方々の意見を聞くという問題、反映させるという問題、これは適切なる方法を考えましてそういうふうにいたすようにいたしたいと思います。
  107. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 けさの新聞に、この間、私のおります兵庫県の西宮の福祉施設子供がマンホールに投げ込まれておった、これの容疑者として保母を逮捕したと、こういう新聞記事が出ておりましたので、これについて大臣にお伺いをしたいと思います。  それは先週の土曜日、つまり土曜日の労働の分科会におきまして、各委員からそれぞれ社会福祉施設の職員のことについて、あるいはまた、保育園の保母さん、あるいは看護婦さん、こういう問題について、それぞれずいぶん突っ込んだ質問が繰り返されました。そしてまたきょうは、先ほど来辻委員からも保育園の保母さんの労働問題について御質問があったわけでございますけれども、これらの質問を通じまして、児童家庭局長からは、その労働が非常に過重になっているので、職員を増員するためには、これから一生懸命で保母さんや職員を求めるために、あるいは給料を上げたり、あるいはその人たちの働く環境をよくしたりというような、もう何年来繰り返されたような答弁しかされてこなかったわけでございますが、きょうこの保母が殺人容疑で逮捕されたというこの記事は、私どもに非常に大きなショックを与えたわけでございます。この保母がはたして殺人をしたのかどうか、それはまだ今後の調査に待たなければなりませんけれども、こういったような問題がもしもかりにほんとうだとしますと、その動機が何であったか、たとえば過労による精神の消耗であったのか、あるいは本人の性質に問題があったのか、あるいはまた、子供の側に問題があったのか、それはわかりませんけれども保母が、子供をマンホールに投げ込んだというようなことが、疑いをかけられたということは非常にこれは大きな重大な問題であると思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
  108. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私も実は新聞で見まして、もしそれが事実ならこれはたいへんなことだと思ったわけでございますが、今日までのところ、その事実関係はもとより、その事実、保母さんがそうしたのか、という事実もまだはっきり、捜査当局の段階でございましょうから私も存じておりません。したがって、そうだとして、どういう理由でそうなったのか、それも一切わかりません。まだ捜査中の段階だと私は理解をいたしておりまして、私のほうは全然報告もいただいておりません。
  109. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 また、これは私の地元の問題でもありましてね、これたいへん私は、問題だと思います。こんなことがたとえ容疑であるにせよ、福祉施設で起こったということになると、せっかく厚生省では、今年度、重症心身障害児施設に入っていれば、その子供一人に一カ月十八万円に近いお金を出そうとしているのに、——もうそれはお金だけでは解決のつかない問題で、家庭では、そういったような施設に入れている子供を家に連れて帰らなくちゃいけない、こういうようなことになろうかと思います。また、こういうところで働いている人たちが、そういう仲間からこういうような者を、もしも出した、こういうことになると、もうその働く人たちも非常に大きなショックだと思います。ひょっとしたら、あり得るケースかもしれないというような感じも実はするわけです。といいますのは、厚生大臣がちょうどいらっしゃいませんでしたけれども、その職員の腰痛だの、頸肩腕症候群だの、あるいはいろんな過労の問題が非常に追及されておりましたので。大臣がそこにおられなかったことはたいへん私ども残念ではございますけれども、もしもこういうことが起こるとするならば、これはほんとうにこれからの厚生行政にとってゆゆしき問題である、こういうふうに考えて今後の調査の成り行きを私どもは非常に大きな関心を持って見守らなければならないと存じます。まあ、まだ調査の段階でございますから、この問題はこの程度にいたします。  この間、文部省が昭和四十八年度の学校保健調査をして、その統計調査速報というのを発表いたしましたが、それによりますと、虫歯とか、仮性近視がたいへんに多くて、じん臓疾患、ぜんそくを現代病として、それは依然として増加の傾向を示しているという報告がございましたが、この原因は何とお考えになられますか。この問題については、また普通の社労委員会で詳細に私はお伺いしょうと思いますが、きょうはこれが中心ではございませんから、しかし虫歯とじん臓病疾患について簡単に御説明をいただきたいと思います。
  110. 本田正

    説明員(本田正君) 小児の慢性疾患が最近ふえているじゃないかということにつきましては、いろんなところで御指摘を受けているわけでございます。が、この原因につきましては、あるいは大気汚染とかその他いろいろな要因がございまして、特定の原因をきめつけるということは現段階では非常にむずかしゅうございます。そこで、従来から心身障害の研究というのを昭和四十六年から実施しておりますが、その中で研究の一環といたしまして原因の究明、早期発見、治療等について研究を続けてもらっているところでございます。したがいまして、現在ではその原因は何かということは解明できておりませんけれども、今後この研究を助成していくことによって研究の推進をはかっていきたい、かように存じております。
  111. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) 虫歯について簡単にお答えいたしますが、確かに罹患率は九〇%以上ということでたいへんな、国際的に見てもわが国の子供の虫歯は非常に高率でございます。これは学問的にはいろいろ原因があるようでございますが、砂糖の消費量との関係というものは確かに関係が深いという一つ結論もございます。神奈川県などでは、三歳児までに、特に間食等を通じまして、砂糖類の摂取の制限運動というようなものを三年ぐらい前から起こしておりますが、これのまだ成果はわかっておりません。いずれにいたしましても、弗化物を塗布すれば予防できる、あるいは外国などでは、水道に弗素を入れて予防しているというようなことがございますが、これらの点は、まだわが国では全く検討の段階でございまして、今後この虫歯の予防ということは、そういう政策面を通じて科学的な行政を通じても積極的に対応しなければならないのじゃないかというふうに考えております。
  112. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いまのお答えでございますが、確かに虫歯は砂糖のとり過ぎがあるのではなかろうかと思います。最近、子供たちが食べているものは、プリンとか、チョコレートとか、アイスクリームとか、あるいはケーキとか、こういうものをたいへんたくさん食べておりますから、糖分のとり過ぎということは私は考えられると思いますが、いま最後にお答えになった水道に弗素を入れる。これは、問題がございまして、これも、私のおります宝塚の大問題でございますが、水道に弗素がたくさん入っているというので——班状歯の問題で、これは訴訟しようか、補償を取ろうかというような、たいへんなところにいまきているわけですから、この弗素の問題は、きょうはこのことに多く触れませんが、いずれ一度お尋ねをしたいと思います。が、そういうことでひょっとしたら、私は、甘味のとり過ぎ以上に今度はカルシウムというものが不足しているのではないか、あるいはいろいろなものを私どもいま食べさせられておりますから、からだの中でカルシウムを破壊する何かをとっているのじゃないか……。こういうことも考えられませんか。
  113. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) この問題は私、学問的にはあまり深く認識いたしておりません。確かにカルシウムは歯の成長育成と関係深いことは医学的にも常識でございますが、先生の破壊するという問題との関連につきましては見解を申し上げる見識を持っておりません。
  114. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 とにもかくにも、主査矢追さんは歯医者さんでございまして、矢追先生もこれはたいへん心配をしていらっしゃる。私のほうにも、歯医者のいとこがおりまして、実は二歳ぐらいで、もうほとんど虫歯になっちゃった子供がたくさん来るけれども、そういう子供の治療をするのは実にたいへんだと、いろいろなお医者さんに聞いてみても、その二歳ぐらいの子供の歯の治療というのはもうお断わりをしたいと。こういうような話まで私どもの耳に実は入ってくるわけでございまして、今後厚生行政の中でこの問題もやっぱり大きな問題になってくるのではないか、このように思いますので、医務局長のほうで今後は、この問題にも頭を突っ込んでいただきたい、このように考えます。  そこで、最近よく聞く問題に牛やら豚やら鶏の病気とか、奇形というものがございますが、この原因は何でしょう。
  115. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 最近、牛、豚あるいは鶏、そういったわれわれの食用にいたします動物の中に奇形等が増加している。こういう報告があるわけでございますが、ただいままでのところ、われわれのほうではまだその実態を正確に把握している段階ではございません。しかし、この食用に供する牛、豚等の肉からのわれわれの健康を守るという立場に立ちまして、従来から屠畜場法に基づきまして屠畜場において、一頭ごとに、この屠畜検査員による厳重な検査を実施いたしておりまして、そういった病気の部分あるいは奇形の部分はこれを排除していく。こういう施策で、われわれの健康を守っておるわけでございますが、なお今後牛、豚あるいは鶏等の疾病あるいは奇形の発生状況あるいはその原因等の追及につきましては、農林省のほうともよく連絡をとりまして今後対策を進めてまいりたい、かように存じております。
  116. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 きょうこんな問題を持ち出しましたのは、やっぱり文部省の調査によって——もう私どもは何食べさせられてもいいですよ、子供も心配もありませんし、平均寿命までいっても、もうあと二十年も生きれば私の寿命ですから、かまわないのですけれども子供や孫ですね、そういうものに、いまの虫歯の問題だの、ぜんそくの問題だの、あるいはじん臓病の問題だの、さらにこういったような牛や豚や鶏の病気、こういうものを食べさせられて、そういう若い者や孫たちがまた人体が汚染されているのではないかと。こういうようなことが私たちいろいろ心配になるわけですね。ですから、この文部省の調査を見ても、何としてもこれは一つの原因はやっぱり食物にあるんではないか、あるいは大気汚染にあるんではないか、こういうふうに皆さんが非常に心配しておりますから、その問題で、きょうこれを初めに取り上げたわけです。  この問題については、委員会でずいぶん詳しくまた議論をしなければ済まない問題だと思いますけれども、いまの牛やら豚やら鶏の病気や奇形ですね、あるいはそういうものについての実態調査、あるいはそれらの原因が何から来ているのか、そういう問題は早急に実態をつかんでほしいと思います。テレビでしばしばやるもんですから、家庭のおかあさんたちはほんとうに食べるものがなくなっちゃったということで心配をいたしておりますから、農林省とよく相談をして、十分これを追及してほしいと思います。  そこで、きょう私がお伺いをしたい問題は、以前から問題になっておりますもので、一日に七十種類もの食品添加物を私どもは摂取させられているんですね。その上に、いま言ったような学童にぜんそくがふえている。ということは環境汚染が蔓延しているので。そうなると、私たちは内からも外からも健康をむしばまれているということになります。もっとも、それに私どもが耐えるような体力を持たねば健康で生きていけない、こういうことになるわけですけれども。私たち自身、健康なからだをつくる努力をしてはまいりますけれども、そうすることは当然なことなんですけれども、しかし、さっきから申しましたように、いま何を食べても、何を飲んでも添加物の加えられていない食物はないし、汚染されていないものはないというようなありさまでございますから、私たちはそれから逃げる方法もないし、あるいはこれを防ぐ方法もないんです。ですから、添加物は一切使用しないのが一番いいんだと、こういうふうに単純に考えられますけれども、なかなかそうもいかないと思います。無害な添加物もあるわけですけれども……。そこで、厚生省は、国民の健康と生命を守るために最善を尽くして十分な毒性検査と影響のいかんを、真剣に早急にやるべきだと思います。  そこで、きょうは限られた時間でございますから、最近、これまた消費者が一番心配して、問題にしている殺菌剤のAF2についてお伺いをしたいと思います。これは殺菌剤ですから毒性があるのは当然です。遺伝学者の報告や一部の学者の意見では、突然変異や睾丸の萎縮の問題が云々されていますが、厚生省はどう考えているのか、安全性はどうなのか、お答えをいただきたい。
  117. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 食品添加物の安全性の問題につきましては、これは先生の御指摘のとおり、われわれといたしましても、十分注意を払っておるところでございまして、まず添加物の使用を許すと申し上げましょうか、そういった場合の状況でございますが、食品衛生法に基づきまして厚生大臣が食品衛生調査会の意見を聞きまして、国民の健康に影響がないということが立証されて初めて、これを厚生大臣が指定をすると、こういう制度になっております。なお指定されました添加物につきましても、品質の規格等が厳重に定められており、また、これを食品に使用いたします場合にも食品衛生法第七条に基づきまして使用基準等も厳重にきめておる、こういった状況でございます。  それで、ただいま御指摘の殺菌剤でございますAF2の問題について御説明申し上げたいと思いますが、先生御指摘のように、これは殺菌剤でございますので、細菌を殺す作用を持っている。したがって、食品が細菌によっていろんな汚染をされまして、これが人体に影響を及ぼすことと、食品の中——こういった殺菌剤が食品の中に入って、われわれの健康に影響を及ぼす、これとのバランスの問題ではなかろうかと思うわけでございますが、このAF2につきまして、この突然変異性の問題は最近国立遺伝学研究所の学者の先生から御指摘になっておるわけでございます。が、ただいまのところ、国立遺伝学研究所から報告されておりますAF2のこの突然変異性というものは、細菌を使って——これは殺菌剤でございますから、細菌に対してはこれは当然影響があるわけでございます。細菌を使っての実験あるいは蚕を使っての実験でこういう突然変異性の指摘があったわけでございますが、これらの問題につきましては、従来からその食品添加物の評価の方法につきましてFAO、WHO等のエキスパート・コミッティーでもいろいろ議論をやっております。またアメリカの科学アカデミーにおきましても、その評価方法を発表したしておるわけでございまして、ただいままでのところ、そういった細菌あるいは蚕のような単細胞、あるいは代謝系を持たないような下等動物を使っての実験を、直ちに哺乳動物にこれを適用することは無理であるという、こういうような評価の結論が出ておるわけでございまして、ただいまわれわれの食品衛生調査会におきましては、これらのFAO、WHOの専門家グループの結論に従いまして、その評価方法を使って現在われわれは評価をやっておるわけでございます。  ただし、そういったふうに、国立遺伝学研究所から新たな突然変異性というような問題が指摘になりましたので、ただいま学者の専門家の先生を集めまして、これには国立遺伝学研究所の先生も参加されておられますが、これらの学者のグループによりましてあらわれました実験データの評価ということにつきまして現在検討をしていただいておる、こういう状況でございます。
  118. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 アメリカでは、これを使用していないんですね。ただ、いまこれが使用されているのは日本だけでございますね。そして、いまや調査会のやり方にも疑問が持たれているわけです。ところが、調査会の中でいろいろやりとりはするが、公開をされていない、だから、何とかして公開をしてほしい。こういう議論も出てくるわけですけれども、その調査会の議事録をとられた方もあるやに伺いまして、そういうところから、調査会のやり方に疑問がある、それは企業のデータだけによってやっているじゃないか、こういうような激しい議論もあるわけですけれども。アメリカでも使っていないと言えば、日本の食生活はアメリカとは違うんだ。こういうように言われるかもしれませんが、これをやめるわけにはいかないんですか。
  119. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま先生御指摘のように、世界各国で許可いたしております添加物の種類というのは、それぞれの国の食生活等の関係がございまして、必ずしも世界各国これが共通の地盤に立ってはいないわけでございます。ただ、安全性という面につきましては、これは同じ基盤に立ちまして、それぞれ各国判断をいたしておるわけでございます。  それで、お尋ねのAF2がわが国のみでこれが使用されていて、アメリカで使われていないという点でございますが、このAF2という薬は、わが国でこれは開発されたものでございまして、わが国の会社が特許を持っているという、こういう関係で、これは外国では、そのまま使用できないという、これは日本の特許権を買えば別でございますが、そういった状況で、現在のところ、わが国のみがこれを使用いたしておる、こういう現状ではなかろうかと思います。
  120. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 わかりました。いまの、日本に特許があるということは、おそらくあまり知らなかったんではないか。ところが、いろんな議論が繰り返されますと、やっぱり消費者というのは、悪いほうの議論が出てまいりますと、そっちに飛びつきやすい。それで、やっぱり心配だ心配だ、これをやめたらどうかと、こういうふうな話になってまいりまして、みんながたいへん迷うわけですね。  そこで、迷うといえば、先ほど小平先生がいろいろ薬害の問題について御質問があったわけですけれども、やっぱりサリドマイドの、あの悲惨な問題、あるいはスモン病で被害を受けられた方、こういう問題が私どもにはあまりにも大きなショックだったわけです。そこで、いまわれわれはいいですけれども、将来われわれの子孫の代になって、こういうことがまたAF2で起こるのではないか、こういう心配を皆さんがされるわけですね。それで、殺菌剤は生体に有害だからほんとうはこういうものを使用しないように、将来はやめるべき方向検討をされるほうが——疑わしきは使用せずという原則がございますね。ですから、いま学者の中であれだのこれだのというような、いろんな議論があったり、調査会のやり方にも問題があるとまで消費者が指摘をするならば、疑わしきは使用せずの原則に基づいてやめるべきではないか、このように考えますが、その点もう一度お答えをいただきたい。
  121. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 殺菌剤は、先ほど御説明申し上げましたように、細菌を殺す作用を持っておるものでございまして、したがいまして、われわれの細胞に対しましてもある程度の害を持っておる。こういった性格のものでございますので、われわれといたしましても、この殺菌剤のような食品添加物はできるだけこれを使わないように——まあこれ毒性の問題もあるわけでございますが、もし毒性のない添加物といたしましても、やはり食品は純粋な形で国民に与えるということが必要だと思うわけでございまして、したがいまして、毒性の非常に低い添加物でございましても、それを使用する必然性のないものについては、われわれはこれを排除していくという基本的な態度を持っておるわけでございます。  で、この殺菌剤の問題でございますが、やはり食品によるわれわれの健康被害というものが、そういった化学物質による被害と同時に、細菌による被害、たとえば赤痢、腸チフス等の伝染病、あるいは細菌性の食中毒、そういった細菌に起因いたします食品事故というもの、これは食品事故のうちの九〇%以上を、この細菌の事故が占めておるわけでございまして、そういったやはり細菌に起因いたします食品事故を防いでいくのにはどうすればいいか、という問題になるわけでございますが、先生御指摘のように、この食品事故のうちの細菌に起因するものを、こういった化学物質を加えることなく、これを防いでいくという基本的態度が必要かと思うわけでございます。すなわち物理的方法でこれを排除できないかという、こういうことをやっておるわけでございまして、その一つの方法といたしましては、これを包装食品にするとか、あるいはコールドチェーンによってこれを流通させる。こういった方法を考えておるわけでございますが、そういったコールドチェーンの発達と並行いたしまして、こういったものの使用の制限というものを今後検討してまいりたいと思っております。
  122. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 家庭では最近、大体冷蔵庫もございますからね。そのコールドチェーンでいろんな物理的な、いろんな化学的な添加物を使わなくても済むものであれば、それはそれでたいへん私どもはありがたいことではございますけれどもね。今度は、冷蔵庫を過信し過ぎる、こういうところでもまた、問題が起こってくるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。  そこで、実はいまお話のありましたパックですね。製造技術の開発という中で、パックから最近またフタル酸エステルが問題になっております。これもこの間からテレビで二、三べん私も見たわけですけれども、これは第二のPCBだといわれて、その毒性が最近また学界で問題になっているようですけれども、この問題についてはどうお考えでございますか。
  123. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) このフタル酸エステルの毒性、あるいはわれわれの生活に対する被害という点については、二つの問題があろうかと思うわけでございます。一つは、ただいま先生御指摘のような、経口的にわれわれのからだの中に入ってくる場合の毒性の問題、それとあとは、汚染された環境から食品を通じてわれわれのからだに入ってくる、この二つの場合があろうかと思うわけでございますが、先生御質問の、最近われわれの食品の流通という面におきまして容器包装が非常に大きな進歩を遂げて、これが大きく食品流通業界の中に取り入れられているのが現状でございますが、この容器包装の中にフタル酸エステルが含まれている、これも事実でございます。  それで、そういったフタル酸エステルが、そういった容器包装等から食品に移行して、これがわれわれのからだに入ってくるのが一体どういう状況であろうかという問題でございますが、フタル酸エステルそのものは、ラット、ウサギ、あるいは犬等におきます毒性試験の結果では、普通使われております化学物質の中では非常に毒性の低い部類に属するものではないかと思いますが、そういった物質でございます。なお、高濃度におきましては、肝臓やじん臓に障害を起こすという、こういうことが報告をされております。  で、この容器包装にフタル酸エステルが可塑剤等で使われまして、これが食品に入ってくる可能性でございますが、ただいままでのところでは、その容器包装からの溶出量は大体低いということが、われわれのほうで調査の結果わかっておるわけでございますが、なお今後この毒性問題についてはさらに検討を進める。特に環境汚染から食品を通じてわれわれのからだの中に入ってくる、ちょうどPCBと同じような形のそういった問題につきましては、まだこれは非常にごく最近指摘された問題でございまして、その点につきましては今後なお実態調査あるいは毒性試験等を続けてまいりたいと思っております。
  124. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 実は、私はこの間こういうかまぼこをいただいたのです。これは、たいへん良心的で、三月の二十八日につくったという、その日付まで入っているわけですね。ところが昔は、かまぼこなんて、こんなものをしなかったんです。かまぼこには、ただ薄いきれいな紙が張ってあるだけで、それで冷蔵庫に入れておいて相当長いこともったのです。ところが、これだけ、これを厳重にパックしますと、この裏にこう書いてある。これは紀州ですから、和歌山県ですね。和歌山県の東牟婁郡でつくったのですね。これは地図まで書いてありましてね。東京から横浜から名古屋から神戸、岡山、広島、鹿児島、北海道まで。そういう遠くまで行きますのには、相当日持ちがしないと、長持ちしませんからね。それでこういうパックをするのだろうと思うのですが、ところが、ここには「合成保存料・合成殺菌料含有色板のみ合成着色料使用」と、こう書いてあるわけです。これは色板ではありませんから、焼きかまぼこですから着色料は入っていないのですけれども、こういうふうに合成殺菌料、こういうものが使われているから、さらにこれが日持ちをするわけです。その上にパックしてある。このパック、これは私は何かよくわかりません。これがいわゆるフタル酸エステルの出てくる塩ビのものか、あるいはポリエチレンか何かよくわかりませんけれども、こうまでされると、私どもは、やっぱりいろいろ聞かされますと、こうやっている間に、この中にはAF2が入っていて、しかもこれからフタル酸エステルがこの中に入っていくのではないか、こういう心配をするわけです。この点をひとつお伺いをしたい。  まあ、男の先生は御自分で自炊しておられますから、よくスーパーマーケットに行っていらっしゃるのに私はよくお目にかかります。ですから、おとうふがどうやって売られているか、よく御存じなんですね。ところが、このおとうふは、私が大かた一週間前に買った。それで秘書が一緒におりますから、秘書が当然食べているかと思って、ゆうべ帰ってみたら、まだ置いてあるのです、半分ね。それで二人でみそ汁の実におとうふを入れた。「何であのおとうふ食べちゃわないの」と言ったら、「いや、まだ、みそ汁をあれからつくりませんから。」と言うのです。それで、これを半分残ったもんですから、私けさ、これを切って、なまで食べてみたんです。どうもないんですね。ところが実は、これがオールマイティになっている。厚生省指定、合成殺菌料使用——こうなると、このおとうふも、これに入れて冷蔵庫にこのまま入れておけば、一週間ぐらい平気でもてるわけですね。そうすると、私は、やっぱりこのおとうふにも相当AF2が使用されている。だから、むしろ反対に腐っていてくれたほうがよかった。ところが、長持ちしているもんですから、また心配になりながら実は食べてみたわけです。この入れものなんですよ。(容器を示す)こういうものにちゃんと入っているわけですよ。これは厚生省、あなたじゃおわかりにならないかもしれません。こういうふうなかっこうで、何でもかんでもが売られて、そして合成殺菌料と書いてあると、AF2が入っていても、もうこれでみな安心をし切っているわけですが、この点どうですか。
  125. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ちょっと具体的な御質問で、あまりこまかいことをお答えできないかと思うのでございますが、一つの問題といたしまして、そういうふうに包装技術の発達あるいはその添加物の使用、そういったことによりまして、一つの食品の流通機構が非常に大きくなりまして、やはりそこに流通革新と申し上げましょうか、大量生産でこういったものがつくられて、全国的に売りさばかれる、こういう一つの状態でございます。たとえば、とうふ等につきましては、従来は町のとうふ屋さんが自分のところで一日の販売量をつくって、それを売るというような状態でございましたので、これが一日もてばいいというような観点から製造されておったわけでございますが、これが最近では、非常に大企業が進出しておりまして、大量生産してこれをスーパーマーケット等に卸し、また非常に広い範囲、地域にこれを販売しているという、まあこういう状態でございまして、まあそういう新しい流通機構の中でわれわれが国民の健康を守るには、一体どういうふうにこの添加物の使用あるいは包装の問題等、こういった問題に対処していかなければならないか、という問題ではないかと思うわけでございます。まあそういう意味におきまして、先ほどお答え申し上げましたように、われわれといたしましては、その低温にこれを流通させるというような、そういった方法を今後も強力に進めてまいりまして、こういった添加物の使用をできるだけ押えてまいりたい、かように考えておるわけでございます。まあとうふは、これあんまり温度を下げますと、これが高野どうふになってしまって、冷やっこが食べられないという、こういう国民の嗜好上の問題にもつながってまいりまして、非常にむずかしい問題があるわけでございます。
  126. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 少し話が小さくなって申しわけないんですけれども、とうふというものは、大体、つくって十時間日ぐらいまでに食べるのが一番おいしいんですね。ですから町のとうふ屋さんというのは、大体朝の三時か四時ごろに起きて、それからもう七時か、そのくらいには売りに歩いている。私どももそれを買って、夕方までに食べちゃう。まあ、この形式が一番いいわけですけれどもね。大量生産ということで、いまは、どこかでは、一日に三百万丁もつくって、これをまた、全国に売りさばくと、こういうことになりますとね、これやっぱり殺菌料つかわなければどうしようもない。そして、それは相当の時間がかかっちゃうわけですね。ですから、私はおとうふ屋さんなんというのはやっぱり昔の、にがりを使ってもらって、町のおとうふ屋さんが鈴を鳴らして売りにくる。こういった形態が一番望ましいんじゃないかと思いますよ。だから、そういう点で、こういったような添加物が発達をしたり、化学製品が発達をしたり、あるいはその包装技術が開発をされたり、そうなってきますとね、むしろこれが人間の生活にとってしあわせなのか、しあわせでないのかというところまで考えざるを得なくなってまいりますね。確かに、この包装技術の開発をされて、私ども恩恵を受けているものはたくさんございますけれども、まあ一番日常生活のもう根本になる毎日の食品、こういったものはむしろこんなものをあんまり開発をしないで、そして添加物なんかを使わないで、もうほんとうに純正なものを、そして新鮮なものを食べさしていただく。こういうことが一番望ましいように思うわけでございます。  まあそこで、おそらくこういったものをつくるのにも、厚生省基準をきめていると思いますね。ところが、その基準がまた問題になってくるわけでございます。この間も、私あるところで聞いたんですけれども厚生省がきめた〇・〇一二五%ですか、そんな基準はなかなか守られなくて、おとうふをつくるときに、奥さんが入れているのに、御主人が入れたことを知らないで、御主人がまた入れる。それで、御主人も、奥さんも入れたこと知らないで、使用人がまた入れる、添加すると。こういうようなことになって、その基準というものが、非常にこれは考えてみると、おそろしいみたいなことになっているわけですね。基準をきめてあれば、そのとおりにやってもらえばいいんですけれども、そうはいかない。  それから、これは私自身の経験なんでございますけれども、私の近くに、たいへんおいしいおでんをつくっているところがある。で、もうめったに外では食事しませんけれども、たまたまそこに行って食事をしましたらね。そのおでんを煮ている、その大きなこんな四角なものがありますね。あそこへいきなり   〔主査退席、副主査着席〕 味の素みたいなもの——化学調味料ですね。化学調味料をばあっと入れたら、その液がまっ白けになっちゃうわけです。まっ白けになったのを玉じゃくしで、こうかきまぜているうちに、それがよく溶けて、それでまあ普通のおだしの色に変わるわけですね。まああんなの見たらちょっと食べられませんね。一ころ、味の素をたくさん子供にやると、頭がよくなるんだとかという話がありましたけれども、また最近は、結局はああいうものをあまり食べさせないほうがいいんだと、こういうふうにどんどんどんどん変わるわけでしょう。そうすると、消費者は一体どっちをとったらいいのかわからなくなってぐるので、この基準の問題についても、食品製造業者のずさんさを、どういうふうに厚生省は監督指導するのか、お答えいただきたい。
  127. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) この添加物の使用基準の問題でございますが、この使用基準をつくります場合には、一応効果のある最も少ない量をこの基準といたしまして告示をする、すなわち不必要なものはできるだけ使わないという立場に立ちまして、必要最小限の量をこの基準ときめて、これを告示いたしておるわけでございます。まあ、ただいま先生御指摘のように、これが現場において使用されます場合に、   〔副主査退席、主査着席〕 その使用者が必ずしもこの基準を守っていないじゃないかという、こういう問題でございますが、まあわれわれといたしましては、この全国各都道府県に約五千名の現在食品衛生監視員を設置いたしておるわけでございまして、この監視員を使いましてこの添加物の使用が適正に行なわれるよう、従来もこれは注意いたしておったわけでございますが、今後さらにそういった点につきましては注意を促してまいりたいと思います。
  128. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そこで、一体添加物というのは何品目ぐらいあるんですか。
  129. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 非常に数が多いのでございますが、たしか三百三十七種類現在わが国において厚生大臣により指定をされていると思います。
  130. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 厚生省は、添加物について安全性を再点検していると聞いておりますけれども、いままでどういうことをしてきたのか、そしてまたその実績はどのようになっているか、お答えください。
  131. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) この添加物の再点検の問題でございますが、やはり添加物の指定の当時の学問によりまして、この添加物が安全だということで従来この指定を行なっておるわけでございますが、学問の進歩は日進月歩でございますので、そういった新しい学問の進歩を取り入れながら、絶えずこの従来指定をしております添加物の再点検を行なっておるわけでございます。さらに、この慢性毒性等につきましては、従来一番最初は、これはたしか半年で判定をしておったと思いますが、これを一年にし、二年に延ばすという、非常に長期の投与を行なうとか、あるいはその次の世代に対します影響を調べるためには、従来二世代にわたる実験を行なっておりましたのを、これを三世代に引き延ばすとか、そういったいろんな点につきまして絶えずこの学問の進歩におくれないような再点検を行なっております。
  132. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 厚生大臣ね、食生活というのは人間が生きていく上に最重要な問題ですからね。ですから、この食品衛生行政については、そしてまた、添加物の問題については、もうほんとうにそれぞれの分野を督励していただいて、まあ十分いまの発表のように成果あらしめるようにしていく。国民が——一ころ、あれがいけなかったと言われているのが、いつの間にやらそれが今度許可になった、あるいは薬害の問題、いろいろくるくるこう変わるものですからね、消費者が非常に迷います。その点で、厚生省はわれわれ国民の健康を守る役所でございますから、十分これを督励して、できるだけ早くこれは必ず安全である、これはどうも危険だと、まあこういうようなことで取捨選択をやっていただいて、国民が迷うことのないように国民に安心感を与えてもらいたいと思いますが、その点をお答えいただきます。
  133. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 食物は私どもの生命の源泉でございますので、特にこの添加物などにつきましては、いろいろまあ問題がある疑わしいものはもう使用させない。こういう基本的な考え方に立って、まあいま総点検をいたしておるような次第でございます。そこで、こういうことの趣旨を国民に徹底させるということが、やっぱり非常に大事だと思うんです。近ごろのように、先ほど来の質疑応答でありますように、流通市場が非常に拡大してきますと、この包装ということも発達してきまして、いま見せられましたかまぼこにいたしましても——実は私そういうかまぼこを見たのはきょうが初めてでございます。そんなふうなことで、やっぱり国民に心配かけないようにするということが一番大事で、家庭の奥さん方に十分趣旨を徹底させるように、安全なということであるならば、安全は間違いありませんよ、ということにするように、その趣旨の徹底には今後とも努力をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  134. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 先ほどフタル酸エステルのことについて——環境汚染からわれわれのからだに入ってくる、こういう話がございましたね。包装からも入るのだけれども。これはたいへん毒性が弱いとはいわれながら、やっぱりPCBの大体百五十倍ぐらいわれわれのもう血液の中に入っていると、こういうような学者の報告もございましたね。きょうはこの問題をそれほど深く追及する時間がございませんけれども、まあこの点はどう考えておられるのですか。
  135. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 今回学会におきましてある学者からそういった発表があったわけでございますが、そういった一つのデータを、あるいは今後われわれがまたいろいろな実態調査を実施いたしたいと思いますが、そういったデータをもとにいたしましてさらに今後十分な検討を行なってまいりたいと思います。
  136. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは、食品衛生行政の予算についてお伺しをしたいと思いますが 予算はどうなっていますか。
  137. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) この四十九年度予算の中——食品衛生行政予算の中におきます、添加物及び食品の安全対策費の予算について申し上げますが、まあ、この食品添加物安全衛生再評価の点につきましては、従来からも予算化いたしておるわけでございますが、本年度も引き続き計上いたしておりまして、新たに、先ほど御答弁申し上げましたように、われわれといたしましては、この食品の保存と申し上げましょうか、流通の中で、コールドチェーンが進めば進むほどこういった添加物の、殺菌料等の添加物の使用は減量していいということになるわけでございまして、そういった意味におきまして、添加物の使用基準を再点検——従来はその毒性の再点検をやっておったわけでございますが、その毒性の再点検と並行いたしまして今度はその使用量をどこまで減らし得るかという、そういった点からの添加物の使用基準再点検費というものを新たに一千百万円計上いたしておるわけでございます。  それから、食品衛生全体といたしまして、食品安全対策費といたしましては二億五千三百万円が計上されておりまして、これは前年比三五%の増となっております。  こういうような状況でございます。
  138. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 前年比三五%の増だと、こういうふうに言われますけれどもね、その食品安全対策費が二億五千三百万円ですね。そうすると、一億の人で割ると、一人一年間に二円五十三銭ということになっちゃう。これではたして国民の健康が守られるとお考えでございますか。
  139. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) この食品衛生行政は、この実際の取り締まりの形といたしましては、これをすべて都道府県に委任しているという形になっておりまして、これが、地方交付税でこの費用が、各都道府県あるいは政令市のほうで出ておるわけでございまして、ただいま申し上げましたこの予算は国自体の行なう予算でございますので、これプラスの、各都道府県が実施いたします予算、これはまだ集計いたしておりませんけれども、これが加わるわけでございます。
  140. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それを集計したらできるだけ早く教えていただきたいと思います。それは私がゆうべからこの厚生省予算をいろいろめくってみて、先ほどもこっちへ来てこれめくってみたんですが、厚生省予算では、医薬品等の安全対策の費用も一、一人で割ってみれば一円二十五銭ですね。で、先ほど小平先生がいろいろ医薬品の問題について質問をされていたんですけれども、これすらも一円二十五銭。いまの安全食品の問題についても二円五十三銭。家庭用品の安全対策というのも一人年間一円四十八銭。まことにもう微々たるもので、もう何ともかんともあ然として口がふさがらない感じでございますね。まあ都道府県のほうの費用をこう一緒に加えてみなければわかりませんけれども、一番国民の健康に責任を持つべき厚生省、国の予算がたったこれだけでは、まことにお寒い話だと、このように私ども思いますよ。  それから、先ほども申し上げましたように、心身障害児の福祉を守るためには、重度心身障害児施設に入っている一人の一カ月の予算が大体十八万円近いですね。で、これはたいへん私どもとしてはうれしくてならない増額でございますけれども、こういう子供ができないようにする。そのためには国民の健康をまずおかされないように守っていく、それが私は重要なポイントになるのではなかろうか。こう思いますと、もういま重症心身障害児になってしまった子供施設に入れている、それと、これから発生をしないように予防するその予算のバランスがあんまり違い過ぎやしないか、こう思いますが、その点どうでしょうか。厚生大臣答えてください。
  141. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まあなるほどおっしゃるとおりでございまして、私どもは身体障害者が出ないように、生まれないように、われわれの健康が阻害されないようにすることが一番大事なことでございまして、なるほどその点からいえば、まあ予算は少ないということは言えるでございましょうが、これは国と地方全部でやることでございますし、それからまあ食品の問題というのは、国民全体のこれは問題でございますから、これは本省がいろいろ調査をしたり検査をしたりするような金だけでございますから、それだけからいえば少ないとも思いますが、まあ今後とも大いに充実をはかってまいるようにいたしたいと思います。
  142. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 時間がもうなくなってしまいましたけれども、ちょうど厚生大臣がいらっしゃいますから——この重症心身障害児ですね、いまの十八万円、一人一カ月ね。ところが、在宅児、これについては一万一千三百円に何か三千円を加算するわけですね。もう在宅児と施設に入っている人とは——これは、土曜日に質問したんですが、これだけの差があるわけです。それで、施設で働く人たちは、腰痛だの頸肩腕症候群だのいろいろかかって、もう実はその職員が一ぺん病気で休んでしまうと、その穴埋めになるような職員がなかなか得られない。こういう中で、私は大臣に特にお願いをしておきたいのは、在宅児にも、もう少し何とかその手当を多くして——職員が数が少ないんならば、十分めんどうを見てもらえないかもしれないという不安で、うちへ連れて帰ろうという人も中にはございます。あるいは職員が足りないから、おかあさんたちその施設へ手伝いに来てください、こういうのがやっぱり私のおります西宮の近くの砂子療育園でありまして、これはテレビにも新聞にも載ったわけですけれども——そんなおかあさんまでがそういう施設に働きに行くんならば、もう子供をうちへ連れて帰りたいと、こういう方もあるわけですね。そういうことで、職員の補充の問題やいろいろこう考えてみると、私は在宅児にも、もっともっとあたたかい手を伸べていただかなければならないのではないかと、こういうふうに考えますが、大臣どうですか。
  143. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) このダブル障害の重度心身障害児につきましては、全員国の施設に収容するというたてまえをとって、収容施設の整備を今日まではかってきたわけでございます。しかしながら、まあ最近の様子を見ますというと、そういう重度の者であっても、おかあさん方がそばに置きたいという御家庭もあるというふうなことも、だんだんいわれるようになってまいりましたので、まあ今回初めてその特別扶養手当のほかに三千円の金を、この介護の追加分として差し上げるというふうなことにしたわけでございます。  そこで、従来は在宅ということよりも施設収容ということを中心に考えておったんです。しかし、やはり今後の社会福祉施設の整備充実の上から考えてみますというと、施設にさえ収容すればいいんだという考え方がいいかどうか、これはやっぱり問題があると思うのです。今後はやっぱり在宅的な方向もあわせ考えていかなければならぬ。そうなると、それの経済負担をどうやって軽減さしてあげるかという問題があるわけでございまして、これは、今後の大きな問題としてこれは出てくるのではないかと、かように考えております。で、その突破口のような意味で多少、まあ今回三千円ということにしたわけでございますが、今後は在宅も含めた社会福祉の充実ということを考えていくべきではないかと、そんなふうな考えを持っておる次第でございます。
  144. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 時間をもう五分ほどいただきまして、最後にですね、以前から問題になっておりました洗剤について一言お伺いをしておきます。  洗剤はたいへん普及をして、これを使っていない家庭はありませんけれども、中性洗剤について、つい最近また高級アルコール系でも——この高級アルコール系というのは、ABSもLASも含まないソフトな中性洗剤なんですけれども、実は私のところでもこういうのを使っているわけですが、高級アルコール系のものでも、これをマウスに塗ったら胎児が死んでいたとか、あるいは奇形が出ていたとか、あるいは出血症状があったというような報告がありましたね。これについてどうお考えになられますか。
  145. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま先生御指摘の報告は、おそらく三重大学の三上教授の出された御報告ではなかろうかと思うわけでございます。中性洗剤の毒性あるいは催奇形性の問題につきましては、従来から多くの報告が出されておるわけでございまして、わが国でも国立衛生研究所をはじめといたしまして、多くの機関でこの実験は行なっておりまして、まあ一応問題はないということで報告が出されておるわけでございます。  従来、わが国におきましては、この中性洗剤の毒性につきましては、昭和三十七年に食品衛生調査会におきまして、それまでに報告されておりました実験データをもとにいたしまして検討いたしました結果、通常の使用方法で用いる限りは健康上の支障がないという、こういう結論が出されておるわけでございますが、その後ときどき中性洗剤の毒性につきまして報告があるものでございますので、そのつどこういった問題について検討を加えておるわけでございます。特に三上教授のこの御報告につきましては、催奇形性という一つの大きな問題を含んでおる関係上、三上先生にもこの委員に加わっていただいておるわけでございますが、中性洗剤の毒性の検討委員会を現在開いておりまして、三上先生御報告の実験の再現性というような点あるいはその評価の方法等につきまして現在検討をいたしている段階でございます。
  146. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 これを見ますと、やっぱり、子供の手の届かないところに置けとか、あるいは子供がこれでシャボン玉をしないようにしなさいとかという注意がいろいろ書いてあるわけですね。  そこで文部省の方にお尋ねをするんですが、洗剤がなくなったときは、もうその危険だの何だのということは、そっちのけになっちゃって——まあこれを使うんでも、手袋をはめてしましようとかという話だったんですけれども、洗剤が姿を消したときは、もうみんな目の色を変えて、中性洗剤にしろ、洗たく機に入れる洗剤にしろ、みんなもうこれを求め歩いたわけですね。そこで、やっぱりこれは危険だから学校給食の中で、もうこれは使わないでほしいと、こういうPTAのおかあさん方の意見が非常にあったわけですけれども、それを実験してみたら、やっぱりおさらなんかもあんまりよく落ちないと。最近、——どうしても、これがいいんだというような話で、最近またこれを使い出しているんです。ところが、これは小さな字で書いてあるんですよ。——老眼ということで、よけい読めないのかもしれませんけれども。水二リットルに対して三・四ミリリットルの濃度でこれを使いなさいとか、あるいはそのちょうど半分ですね、標準使用量としては水一リットルに対して一・七ミリリットルをお使いなさいと、こう書いてあるんですね。  ところが、この「小学校家庭科」、これは五年生のお子さんでございますが、これを見ると、野菜は必ず中性洗剤で洗いましょうというふうなことが書いてあるわけです。「食器・野菜・くだもの用に作られたせんざい」ですね、これが。「あらうもののすみずみまでいきわたって」よごれを落としますから「中性せんざいで、ていねいに」洗いましょうと、こう書いてある。それからもう一カ所には、これの二〇ページには、「野菜は、中性せんざいの液(水一リットルについて、液状のせんざい二ccくらい)」、その溶液に「三分間くらいつけてあらい、そのあと流水でじゅうぶんあらい」、水を切りますと、こう書いてあるんです。  ところが、これには、たいへん危険だから子供の手の届かないところに置けとか、いろんなことが書いてあるんですね。そしてこれは中性洗剤ですから野菜やくだものを洗うのにいいと、こう書いてあるわけですけれども、私どもが使うときは手袋をしなさいといわれているわけですね。それから、実際に私は毎朝野菜をいただいているわけですけれども、それはトマトだのキュウリでは私はよくわからないんですけれども、レタス、ああいう菜っぱ類は——このとおりにやるわけじゃないんです。その一・七ミリリットルといったってどれくらいかわかんないから、まあ適当に水を入れてちょっちょっと、私らはちょびっとするんですけれどもね、それででも、こう洗いますねレタスを。洗ってそれをいただいて、それでそれが少し残ったものを翌朝に回そうと思って、このごろのあのセロファンみたいなもので包んで冷蔵庫へ入れておきます。で翌日出してみますと、もうそれがしみちゃってね、たいへんなんです。ところが、洗ってないもの、これの水で洗ってないもの、それは、同じように入れておいてもぴんぴんして何にも変化はない。だから私は、そういったものを、こういうもので三分もつけておいたらこれはたいへんだと思うんです。じゃじゃっと洗っても、翌日はそうなっているんです。だから私は、この本の書き方はこれずいぶん間違っていると思うんですがね、どうお思いになりますか。
  147. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) いま先生の御指摘の教科書の記述につきましては、以前から批判がございまして、その点について私どもも、これを発行いたしました教科書会社に、こういう問題があるということを指摘をしたわけでございます。したがいまして、いま先生が御指摘の教科書の中で、中性洗剤は「あらうもののすみずみまでいきわたって、よごれをよくおとす。」、これをよく洗剤で洗いましょうとか、そういう記述は、この四月から使います新しい改訂検定を経た教科書、それではすでに削除をされております。  それから、「中性せんざいの液に三分間くらいつけてあらい、そのあと流水でじゅうぶんあらい、水をきる。」という記述につきましては、「野菜は、図のように、流し水にしてふりあらいしたり、スポンジでこすったりして、よくあらう。あらったら、ざるにとり、水をきっておく。」というように本文が直っておりまして、そうしてその「スポンジでこすったりして、よくあらう。」というところには注がついておりまして、その注では「食品・食器用中性せんざいを使う場合は、決められたこさや時間に注意してあらう。そのあと、流し水でじゅうぶんにあらう。」というように訂正をしてこの四月から使用するメンバーに配られているという状況でございます。
  148. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 ほんとうはね、私もこれよく使うんですけれども、たいへん便利なんですよね。もうこれがない生活は考えられないくらいになっているんですがね。そういうふうにして本をもう削除していただいたり訂正していただいたことたいへんいいと思いますが、これは実は十二月の十二日ですか、たいへん丁寧にきれいな筆で手紙を書いて、ぜひとも、こんなのをうちの子供が使っておりましたから、これを一ぺんなくすように国会でやってくださいといって、わざわざ私のところへ速達で送ってこられたんです。  こういうふうに、おかあさん方は、きょう御質問したように、AF2についても、添加物についても、またこういうものについても、包装の問題についても、それぞれもう危険がまわりに一ぱいだということで、もうほんとうに心配をしてしまって、一体もう食べるものがない、空気すらもうこわいと、こういうふうなことまで言っておられますから、そういう点では厚生省の国民の健康を守るための厚生行政、ほんとうに神経を使っていただいて、そうして先ほどもお答えがあったように、まだいろんなものの実態がつかめていないとか、それから小学生の現代病についても原因が何か、非常にむずかしいと、こういうような御答弁ばっかりでございましたんで、ひとつこの点では、ことしの重点政策ぐらいにしていただいて家庭のおかあさん方の心配をなくしていただくような方法でがんばっていただきたいと思います。
  149. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先生お述べになりましたこと、非常に私大事な問題だと思います。中性洗剤の問題、食品添加物の問題、包装の問題、国民がほんとうに安心して食べられるようなことにしなければ相すまぬ話でございまして、私の責任の非常に重いことを痛感いたしておるわけでございます。したがいまして、従来からもやっておりましたが、今後とも、これらに重点を置きまして、こうした問題を積極的に解決するように努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  150. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 午後一時五十分再開することとし、休憩いたします。    午後一時二十一分休憩      —————・—————    午後一時五十一分開会
  151. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) ただいまから予算委員会第四分科会を再開いたします。  分科担当委員の異動について御報告いたします。  神沢浄君及び須原昭二君が委員を辞任され、その補欠として上田哲君及び佐々木静子君が選任されました。     —————————————
  152. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 昭和四十九年度予算厚生省所管を議題とし、休憩前に引き続き質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  153. 上田哲

    上田哲君 フリルフラマイドの件についてお伺いをしたいと思います。AF2ということばで申し上げることにします。  このAF2が、昨年の九月に、国立遺伝研の田島博士らから、人間の染色体に異常を起こす危険があると、こういう指摘を受けて以来、非常に不安と関心を呼んでいるわけであります。  最初にお伺いしたいんですけれども、現在日本人一人当たり一日どれくらいのAF2が体の中に入っているか。そもそも日本全体ではどのくらいの生産量があり、どうなっているかという全体的な把握をひとつ御報告願いたい。
  154. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) この計算の方法はいろいろあろうかと思うわけでございますが、たとえば許可されておりますいろんな食品の使用量と、その中に含まれるAF2の含有量とから計算する方法とか、いろいろあるわけでございますが、一応われわれのほうでつかんでおります数字で申し上げますと、年間の生産量と申し上げましょうか、これは特許をとった薬でございまして、一社が製造いたしております関係上、その製造量から計算いたしますと、年間三万トンと、こういう量になっております。
  155. 上田哲

    上田哲君 そこで、一人一日どれぐらいになるという点はどうですか。
  156. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ちょっと失礼いたしました。三・一トンでございまして、三万トンと申し上げましたが、三・一トンでございます。  これは、一人当たり幾らということになりますと、なかなか計算がむずかしいんでございますが、ただ、これを全国民の量で割るか、あるいはそういった会社の品物を食べる人の数で割るかということでございまして、非常にむずかしいんでございますが、一応体重一キログラム当たりの使用量で申し上げますと、〇・〇〇一五ミリグラム。したがいまして、成人に直しますと、この五十倍になりますので〇・〇七五ミリグラム、一日と。こういうような計算になります。
  157. 上田哲

    上田哲君 つまり、これは非常に標準的な日本の食餌の中にみんな入っておるということですね。厚生省が定めた許容限界はおとな一人当たり一日二・二七ミリグラム。いまの数字から見ますと、これは全然遠くにあって問題にならないという数字ではなくて、かなり気をつけなければならないところにあるということになると思うんですね。それから、このAF2を使っているのは日本だけであって、外国では使ってないという点からいいまして、非常に注意を払っていかなければならない内容と量であるという点について確定的な御見解をひとつ伺っておきたいんですが、それでよろしいですか。
  158. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) この食品の種類は、非常にたくさんあるというふうに御指摘でございますが、確かに、考えようによっては、非常に国民の食生活に密着いたしました食品にこれが使用されているという実態があるわけでございまして、とうふ、それから魚肉ハム、魚肉ソーセージあるいは食肉ハム、食肉べーコン、そういった、いわゆる食肉の練り製品、それともう一つは、かまぼこ等のいわゆる魚肉練り製品といわれるこういったものに含まれておるわけでございまして、一日の摂取許容限界量と、先ほど申し上げました現実に摂取をしている量、これは非常にたくさんとる人と、非常に少ない人とおろうかと思うわけでございますが、一日の量は二・一ミリグラムということでございまして、先ほど申し上げましたように、これは、単純に国民一人当たりに平均いたしますと〇・〇七五ミリグラムと、こういう量でございますので、ある程度の安全率はあるわけでございますが、食品の摂取実態というものが、非常にある食品を片寄って食べる人とか、そういった人がおるわけでございまして、必ずしも、いま言ったように平均値のみでは論じられないと思うわけでございます。  それと、最後に御指摘の、これは日本だけで使用されているではないかと、こういう点でございますが、このAF2は日本のある製薬会社が発見いたしまして、この製造方法につきまして特許をとっている殺菌剤でございまして、そういった点で、ある意味においては日本独特の医薬品と言うこともできるわけでございまして、そういった点におきまして、日本が特許を持っているという関係上、外国に——外国からまだその特許の引き合いがこないというような実態がございまして、これは、われわれは、毒性の問題でそういった実態になっているんではなく、やはり、その特許料とか、いろいろなそういった問題で先生御指摘のような実態になっているんではないかと推測いたしております。
  159. 上田哲

    上田哲君 これが、田島グループの研究が明らかになった直後、厚生省は、都道府県の担当課あてに、だいじょうぶだという通達を出しておられる。三点にわたっているわけですね。肝臓で分解されるから、染色体異常をおこす性質を失なうので、次の世代への心配はない、発ガン性あるいは二百倍の安全率等々の指摘になっているわけであります。しかし、厚生省が、安全だと言っている根拠について、そのこと自身について、いろいろな専門家から意見がまた出されていることも事実であって、裁判あるいはその他の紛争になっていることも明らかなところであります。  たとえば、肝臓で分解されるということがほんとうにそうかどうか、これは、実際にはラットの実験の中で有力な反論も実験的に行なわれているところもあるわけですね。すりつぶした肝臓とAF2をくっつけるやり方、これは実際に、これでは肝臓の働きを調べることにはならないだろう、その実験の中でさえ、AF2の突然変異活性は三十分も持続しておるんだから、これはやっぱり生体の肝臓にAF2がとどまる時間が数分間ということを考えれば、この実験の妥当性というものは疑われることではないか。あるいはバクテリアの問題ですね、これはやっぱりかなり反論があるわけです。これについて、厚生省にもそれなりの反論があることはよく了知しておりますから、このことを私は、ここできようの短い議論の中心におこうとは思わない。  しかし、どうも両者の見解を見てみまして、やはり研究過程であると、ほんとうに肝臓内分解というようなことが十分に解明されたという根拠は私は認識できないんですよ。そもそもこの実験が十分なものであったかどうか、AF2自身、反応調査だけでなくて、AF2自身についての研究も私は十分に行なわれてないのではないかという気持ちがする。これは御議論があれば私もそっちのほうに議論移してやってみてもいいのですけれども、私のささやかな勉強の範囲で言えば、これは断定をしてしまうというわけにも厚生省側としてもいかぬのではなかろうか、そういう気持ちがするのですが、まとめていかがですか。
  160. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 非常にむずかしい問題でございますが、まず先生の御質問に順序を追ってお答え申し上げたいと思います。  田島先生のほうから、大腸菌あるいは蚕を使っての実験でその染色体の異常というようなことが指摘されたわけでございますが、その時点におきまして、たしか先生御指摘のように、食品化学課のほうから各都道府県に対しまして事務連絡の形で意見を通知いたしておることは、先生御指摘のように、三点か四点につきまして通知を出したわけでございます。が、その段階におきましては、従来AF2につきまして、食品衛生調査会でいろいろ議論をいたしまして、これは食品衛生法第六条に基づきまして厚生大臣が、人体に対する影響がないということで食品添加物として指定したわけでございまして、この研究が発表された段階において、各都道府県あるいはその保健所に対して、消費者のほうからいろいろな問い合わせとか、そういった問題があったわけでございまして、そういった点に対しまして、この食品化学課のほうから、事務的に従来の厚生省のとっておる見解を各都道府県に知らせまして、これでもって消費者のほうに一応説明しておきなさいと、こういうような形で先生御指摘のような通知が出たわけでございまして、その点これをもって学問的に決定されたものとしての通知ではないわけでございまして、あの時点におきます一つの混乱といいましょうか、消費者に対します一つの教育の方法として、従来厚生省の食品衛生調査会のとっております見解を出したと、こういう形になっているわけでございます。  肝臓での分解の可能性の問題につきましては、これは非常に学問的な問題が多々あろうかと思うものでございまして、先生御指摘のように両方の意見があることも事実でございまして、またその実験方法等につきましても、お互いにそれぞれの見解があることも事実でございますので、この点はむしろ学会の問題としてわれわれは今後その結果を注目してまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。  それで、そういうような段階において、このAF2の安全性に疑問があるのではないか、あるいはそれがまだ絶対に安全であると言えないんじゃないか、研究過程の問題ではないか。こういう御指摘でございますが、まあ一応昭和四十年に食品衛生調査会が、これを添加物といたしまして、厚生大臣に対しまして、まあこれなら使ってもよろしいという答申を出したわけでございまして、現段階においては、その答申に基づいてわれわれ行政措置をとっておるわけでございますが、先生御指摘のように、最近になりまして、国立遺伝研の田島博士をはじめとする一つのグループの見解、あるいはもっと近く食品衛生学会も開かれまして、そこで高橋晄正先生の発表もあるようでございますが、そういうふうに、いろいろな意見も最近出てまいっておるわけでございます。  また、その添加物の安全性の評価ということにつきましては、従来われわれWHOとFAOのエキスパート・コミッティーの出しております評価方法に準拠いたしまして評価いたしておるわけでございますが、それとの、田島博士の研究の結果との関係とか、そういった点があるわけでございまして、現段階におきましては、この国立遺伝研の先生を加えまして、従来からAF2に関係しておられる先生、そういった専門の先生の研究会を開いておりまして、ここでこの問題をどう取り扱うかということを現在御検討願っている、こういう段階でございます。
  161. 上田哲

    上田哲君 遺伝研の先生方を加えてということですけれどもね、いましきりに言われているのは、認可の基礎になった宮地教授の実験データが、宮地研究室であるとか、阪大などではなくて、唯一のメーカーである上野製薬の手で行なわれたんではないかという疑念が表明されていますね。あるいはいま高橋講師の話が出ましたけれども、それで言うなら、高橋氏から厚生省に、慢性毒性の問題について、実験方法そのものに疑義があって、再調査の依頼が出ていますね。——出ておりませんか。意見書を出したというふうにわれわれは聞いておるわけですけれども、これについてどういうふうに処理したか。この二点ちょっと簡単でいいですから……。
  162. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 宮地教授の実験については、われわれのほうでは詳細をちょっと存じておりませんが、まあ一応われわれのほうに対します報告といたしましては、大阪大学の教授の、宮地教授としての論文が提出されております。聞くところによりますと、その実験を、上野製薬の動物小屋を使ってやったんではなかろうかというようなことも聞いてはおりますが、その点につきましては、まあ一応学会に発表されました宮地教授の論文をもとにいたしまして、われわれやっておるわけでございます。  それで、ただいま高橋先生からのこの意見書という問題が出たわけでございますが、これはどういうふうにわれわれ取り扱うか、いろいろな問題があろうかと思いますが、まあ一つは高橋先生から私がいただいておりますその意見書と申し上げましょうか、たしか見解というようなことばで私のところへ来ていると思うのでございますが、その高橋先生の見解書というものが二つの点で問題ではなかろうかと思うわけでございます。一つは、AF2を使いましての動物実験で作用が起きない点の濃度が、一体どこであるかという一つの判断と、あとの統計処理の問題とのこの二つの点が問題ではなかろうかと思うわけでございますが、この統計処理の問題につきましては、厚生省大臣官房の統計調査部のほうの専門家検討させました結果、統計的な取り扱いについては、その高橋見解というものは確かに正しいであろうと、こういうことでございます。ただ、その無作用点の取り扱いにつきましては、この高橋先生の論文見解というものは、宮地先生の研究をそのまま引用されて、その宮地論文に対する見解という形をとっておられるわけでございまして、高橋先生自身が新たに実験をやって、その自分の実験結果と宮地先生の実験結果の違いに基づいての見解ではないわけでございまして、その点は先日もそういう高橋先生の意見が出ましたので、ほかの第三者の先生に私個人的にいろいろ見解を聞いてみましたら、それはもう一つの出たデータの取り扱いの、一つの判断の見解の相違に過ぎぬじゃないか、こういうような御意見もございましたが、先ほど申し上げましたように、いま検討会等も行なっておりますので、そういったところでもなお検討してまいりたいと思っております。
  163. 上田哲

    上田哲君 AF2が認可される前はやっぱり同じ上野製薬から出ているZフランというんですか、同じニトロフラン系化合物が食品添加物として認められていたわけですね。なぜZフランがいまは認められないんですか。
  164. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 添加物というものを厚生大臣が指定いたしますのにはいろんな考え方があろうかと思うわけでございますが、一つは、それが食品を取り扱う上にどうしても必要欠くべからざるものであるというか、われわれの基本的態度といたしましては、毒性のゼロのものでございましてもそれが食品に対しまして何らメリットがないようなものはこれを認めないという方針でやっておりますので、やはり一つの点といたしましては、これが食品加工上どういうメリットを持っているかという点があるわけでございます。第二の点につきましては、毒性ができるだけ少ないものがいいと、こういう二つの観点からこの添加物の評価というものをやっておるわけでございますが、ただいま先生御指摘の、あれは昭和三十九年までがZフランだったと思います。その前がニトロフランという、こういう一連のニトロセミカルバゾンという一つのものを中心といたしまして、それにいろんな側鎖、いわゆる誘導体をつくりましてそれを使っておるわけでございますが、ニトロフラン誘導体の中でいろんなものができてきまして、それらのものを随時、毒性等につきまして比較してできるだけ毒性の低いものに切りかえていっている。したがって、先ほど申し上げましたニトロフラン、Zフラン、それからAF2というのが一つの改良の過程を通って順次できたものであって、新しいものができた段階では古いものを削除していくという、こういう方法を従来とっております。
  165. 上田哲

    上田哲君 まさにそうだと思うんですよ。まさにそうなので私は問題じゃないかと思うんですね。つまりAF2ができたのでその前のZフランはやめると、一つの系列だとおっしゃるとおりなんです。つまりほかの、あなたのもう一つ使ったことばを借りるなら、有毒性がだんだんだんだん改良されていくんだと、だから基底にあるのは有毒性の強弱であって、その有毒性を少なくしていくという改良ということが改良という意味でしょう。特にZフランなどというのは睾丸を縮小させるという有毒性が指摘されていたわけであって、防腐性ということからいうなら多少のことはしょうがなかろうということでもって認めてきたが、もう一つ進んだものが出てきたから前のZフランは要らなくなったんだと、一つの流れの中だというのはそこですね。ということは、これはやっぱりその有毒性の流れの中に薄まっちゃいるけれどもまだ今日もAF2があるんだという懸念を持つのが普通じゃないですか。AF2にはやっぱりそういう意味じゃ薄まってきたけれども有毒性があるんだという懸念はやっぱり裏書きしたことになるというふうになりませんか。
  166. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 食品添加物のうち、特に殺菌剤につきましては、これが名前の示すように殺菌剤でございますので、細菌を殺すという、一つのやはり細胞を殺す作用を持っておるわけでございまして、したがって、毒性ゼロというものはないわけでございまして、そういった殺菌剤としての有用性と殺菌剤としての毒性とのバランスの上で使用の可否をきめておるわけでございます。したがいまして、できるだけ毒性の低いものに改良を続けていくと、こういう態度は従来からもとっております。
  167. 上田哲

    上田哲君 そこから先は、だから原理としては毒を使って薬にするんだという一般原理に戻るんだけれども、この毒性の強弱というのはことばで簡単に言われるほど簡単なものではないだろう。これは学問的しかも政治的に最も——政治的ということばは悪いな、行政的に最も注意されなけばならないテーマであるということは言うまでもない。これはまあ、この部屋で私どもがいいとか悪いとかいうことだって非常に問題になってくるわけですね。原理の問題として毒性をどう転化するかというところにあるんだというお話になってみると、その基準に対しては行政的には最大の配慮を、慎重な態度を持たなきゃならぬということが残る、そこだと思うのですよ。学問的にはたいへんまだ研究のプロセスのまっただ中にある、少なくとももっと改良されなければならないものであることは言うまでもない。ということになると、行政上の配慮はいやが上にも慎重でなくちゃならぬということに帰着しますね。そこで、そうなると私は非常に不安定なことが多いと思うのです。たとえば厚生省はなぜ昨年このAF2の使用対象からあんと、ようかんをはずされたのか、これは砂糖とサッカリンの関係なんでしょう。時間がないから私は先回りして申し上げるけれども、十一月からあん、ようかんからAF2をはずしたというのは、厚生省がおっしゃるのは、同じく四十八年の十一月からサッカリンを禁止したんだ、だからあんやようかんには砂糖が使われることになったんだから、砂糖の防腐効果でAF2は不要になったからだと言われるんですよ。間違いないです、それは。そうですね。ところが十二月に再びサッカリンを解除した。十二月に再びサッカリンを解除したんなら、理論的にいえばAF2は使っていいんですよ。ところがAF2はその後も禁止しているというのは、やはり厚生省、自信がないからでしょう、これは。禁止したほうがよろしいということになるんじゃないですか。その程度に不安定なものならばすっきりしたほうがいいと思うからこの例を出しているんですが、どうですか。
  168. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) この毒性の問題、この判断の問題につきましては先生御指摘のように、まだ学問的にもいろんな問題があろうかと思うわけでございますが、ただいまのところは急性毒性あるいは慢性毒性というものでわれわれ判断をいたしまして、まあ、せいぜい催奇形成というところまで現在われわれは実験を行なっているわけでございまして、まあ、先生の御指摘のように、この問題についてはまだ学問的にもいろいろ論争すべき点は多かろうかと思うわけでございます。  なお、昨年、あんとようかんに対してAF2の使用を禁止したという点でございますが、これは一つの理由としてはまさに先生の御指摘の点があるわけでございますが、それと同時にその後サッカリンを再指定いたしました場合になぜこのあんとようかんに対するAF2の使用を認めなかったのかということでございますが、これは一つは他の防腐剤といたしまして実態に合った方法といたしましてソルビン酸をこのあんに認めたという、こういうことでございましてあえてAF2を使う必要がないという点で再指定をいたしております。
  169. 上田哲

    上田哲君 自信ないんじゃないですか、そこは。だから非常に不安定だと、非常に不安定な薬が出てくるわけだ。これは私は疑わしきは使用せずというのならそれで厚生省の姿勢も尊重しますよ。そういう方法をとるべきじゃないか。毒性とか発ガン性について一応チェックされていても突然変異の問題についてはやはり十分ではないですね。これはお認めにならざるを得ないだろうと思う。そういう問題等々がある以上、言ってみればサリドマイドと幾らも違わぬのじゃないか、実際に危険が証明されるまで、疑わしくてもついつい使ってしまっている。結果が出てからというようなことではこれは私はまずいと思うのですよ。厚生省の姿勢の中だってやはり厚生省自身があまり自信がないのかなあ、もしこれを使うなといったらとうふは腐るわ、何は腐るわ、夏場に向かってさっぱりどうしようもないじゃないかという混乱も事実起きるでしょう。そういう混乱が起きるかもしれないけれども、日本じゅうの食べものの中に一番ポピュラーに、特許だ何だとおっしゃるけれども、世界にはない、日本だけ使っている、こういうものがみんなだめになっちゃうかもしれないぞと、睾丸萎縮するぞというような話が少なくとも学界の一部から指摘をされているときに、一部とは言わない、論争にここまで発展しているようなときに、食品を長持ちさせるということの大命題にのみかかずり合って、この危険がどこまで発生するかもわからぬというのを放置しておくということは、私はやはり行政の姿勢として欠陥を指摘されなければならないんですよ。これは私はさっきから議論がありますように、学問的に知ったかぶりをして議論をしようとは夢にも思いませんけれども、一生懸命勉強しても、どう考えてもこれはふに落ちないところが出てくるわけだし、あなたのほうの御説明だってこれは学問的な分野にもっとゆだねなきゃならぬという言い方を変えて学問以外の立場にいるいかにすぐれた行政官といえども、衛生技官といえども断固として学界の結論を乗り越えてこれは絶対安全であるとは言い切れない。万一に対する何の保障もないんだということからすると、疑わしきは使用せずという立場を私はここでおとりになるべきだと思う。ある一定の段階、ある一定の結論がもう少しく明確に出るまで、これまでの行きがかりは行きがかりとして、厚生省としては使用抑制という方向をおとりになることはできませんか。
  170. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) このAF2の使用を制限することができるかどうかという問題でございますが、先生御指摘のような、食品の保存という問題とのバランスの問題もあろうかと思うわけでございますが、われわれの立場といたしましては、食品の保存というよりは、食品に起因いたします細菌性の事故の防止ということも一つの大きなメリットとして考えておるわけでございますが、その点につきましては、たとえばこのAF2を使用いたしておりますハム、ソーセージ等につきましては、外国においては亜硝酸ソーダを使ってこれを保存しているという、こういう状況でございますが、われわれのいままでの実験では、亜硝酸ソーダとこのAF2との毒性を比較すれば、むしろAF2のほうが毒性は低いんじゃないかというよう結論を持っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、先生ただいま御指摘の、全面的に禁止するという立場とはまた別に、われわれといたしましても、従来からこういった食品添加物は必要最小限にとどめるという態度で進んでおりますので、ただいま先生御指摘のような点につきまして食品衛生調査会等でさらに検討してまいりたいと思います。
  171. 上田哲

    上田哲君 姿勢としては、たいへんなことになったら困るからという、そういう配慮はわかりますよ。わかりますけれども、行政的に手を打たなきゃこれだめですよ。私は、まあ、物が腐っていいということを進めるわけではないけれども、そのことによって、われわれの世代だけではなくて、子々孫々に至るまで、次の世代、また次の世代まで予測すべからざる悪影響を残すということを放置するわけにはこれはいかぬだろうということを申し上げておるのです。そういう意味ではやっぱり慎重の上にも慎重であるということのほうが正しいんじゃありませんか。特に私は、申し上げたいのは、これは魚肉ハム、ソーセージでしょう、おもな対象が。安い、大量供給が可能だ、長期保存が可能だと、こういうことで主としてこれが学校給食、病院給食に振り向けられるわけですね。こうなると非常に問題だということは言うまでもないわけです。だから、たとえば日本だけしか使っていないものだから、国際的に遺伝医学雑誌の「ミューテーション・リサーチ」のことし一月の巻頭言で、「AF2は殺菌剤か突然変異を招くものか」という論文が載っているでしょう。そういうふうに諸外国からも注目をされているようなときに、厚生省としてはがんばって一生懸命これを使わせるために努力することは、私はなかろうと思うのですよ。だから、何か抽象的に、おっしゃる気持ちはわかるからなるべくそのように努力をいたしますなんて、結果的には何にもしないみたいな話にならないで、これはやっぱり具体的にどうするかという結論をお出しになるべきだと思うが、それがいまここで、たとえば大臣がぱっと出ればそれでいいんだけれども、出せなけりゃ、私は、一つの提案だ。少なくとも消費者が選択できるように、AF2使用ということをはっきり明示したらどうだ。これを明示させようとしないということになれば、これはもう厚生省がぐるになってこの危険なものを使わせようということにならざるを得ない。原理的にはお認めになっているんだから、消費者がわかるようにAF2使用とはっきり書かしたらどうだ。現在は合成殺菌料添加としか書いてない。これじゃわからぬ。AF2ということをしっかり書かせるようにするということは当然なことじゃありませんか。
  172. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) この表示のしかた等につきまして、ただいま先生商品名を掲げての表示にしろと、先生御指摘のように、現状におきましては合成殺菌料使用ということになっておりますが、そういった点につきましては、なおやはりこういった一つの改正をやります場合に食品衛生調査会の御意見を聞くことになっておりますので、われわれといたしましてもそういった方向でさらに検討を進めてまいりたいと思います。
  173. 上田哲

    上田哲君 そんなことを言っちゃだめだ。私は具体的に提案しているんじゃありませんか。これはやっぱり厚生大臣の政治判断を伺わなきゃいかぬ。だから抑制しなさいというんです、これは。サリドマイドであれだけああいう状態になったことを考えれば、同じような意味で、疑わしきは使用せずなんですよ、行政の姿勢というのは。絶対にということは言えないという議論がこれだけわいているんですからね。ならば、これは抑制すべきだと、禁止すべきだと私は言いたいけれども、いろんな混乱が起きるとおっしゃり、しかも皆さん方の主張だってある程度あるということになるなら、少なくとも消費者の選択においては、これはいやだったら使わないようにするという明示をするのは最低限ではないか。だからAF2使用ということをはっきり書きなさいということを言っているのですが、これは大臣にお伺いをしましようか、どうですか。
  174. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 食品衛生調査会にこれは諮問することになっておりますので……。
  175. 上田哲

    上田哲君 そんなことを言っちゃだめだよ、あなたは。やる気がないならないでいいんですよ、諮問するのかね。
  176. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 諮問いたします。
  177. 上田哲

    上田哲君 AF2使用ということを書くように諮問するのかね。
  178. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) これはAF2だけの問題ではなく……
  179. 上田哲

    上田哲君 AF2の話をぼくは聞いているのだ。
  180. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 合成殺菌料をどういうふうに今後表示をするのかと……
  181. 上田哲

    上田哲君 AF2を聞いているのです、この質問は。ほかのことは聞いておらぬ。
  182. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) AF2を含めてやります。結局合成殺菌料のうち、AF2だけを表示させるということではなく、合成殺菌料のあらゆるものを品名表示をさすかどうかということにつきまして検討……
  183. 上田哲

    上田哲君 そうじゃないんですよ。いまは合成殺菌料の添加としか書いてないから、AF2の問題が込みになってわからなくなっちゃうから問題があるんじゃないですか。問題じゃないですか、それは。AF2のみならずなんて、私はAF2の質問しかしていませんよ、何を言っているんですか。短かい時間だから正確にお答えなさい。私は、これは禁止すべきだという主張を持つけれども、いいですか、それはできないというのなら一歩進めるべきではないかと提案しているんですよ。だからそのことを受け取れないというなら受け取れないでかまわない。あなたのほうで見解をお出しになればいい。しかしそれをごまかして、一般的な合成殺菌料添加という形にしようというのなら、いまもそうじゃありませんか。何を諮問する必要がありますか。そんなしろうとぽいことを言ってもらっちゃ困りますよ。短かい時間に問題をしぼって聞いているのです、具体的に。AF2の話をしているんですよ、ここでは。ほかの話は要りません。
  184. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) AF2について、そういった点について検討いたします。
  185. 上田哲

    上田哲君 はい、わかった。そう言ってくれれば五分間助かるんです。  これは民族の問題だから大事なんです。学校給食、病院給食、みなひっかかってくるわけだから。  そこで、そういうことが出てくることのポイントになるのは、ベースに食品衛生法の問題があるのですね。化学合成品である食品添加物、これは「人の健康を害う虞」、これがなければ、ほんとうに必要かどうかということを別問題にして認められちまうんですな。いやおうなくわれわれのからだに入ってしまう。食品添加物に対する行政の姿勢は、この際フィロソフィーとしては、化学物質は本質的には生体にとっては害であるという、こういう考え方をとったらいかがか。化学的なものを——何も清浄野菜をみんな食えとは言わないけれども、何か化学万能みたいになってきた社会の一つのひずみとしてのこういう問題だと思いますから、考え方として、できるだけひとつ無理のないものなら乗っけてみようかじゃなくて、あぶないものならやめてみようかという方向をとられることがメンタルに言っても、私は、今日重要な時期に来ているのじゃあるまいか。そういう意味で、まあ、安全性のチェックはもちろんだけれども、現在三百三十七品目食品添加物がありますね。ほんとうにやむを得ず認めなきゃならぬものであったのかどうかということはかなり議論がありますね。たとえば昭和四十年以降、発ガンの疑いがあるというので、せっかく認めたものを使用禁止したものは、着色料の中で五種類もあるわけですね。これは前科があるのだから、厚生省はいいと思ってやっちゃったら間違ったことが現実にあるのだから、そうなれば三百三十七品目ということになればやっぱり問題があるだろう。だから食品衛生法のレベルまで守って、この問題を原則的に基本的にフィロソフィーを変えてみるという立場にお立ちになることはないか。これはAF2の問題でありますけれども、AF2だけの問題ではありませんよ。そういう立場はいかがですか。
  186. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま先生御指摘の条項が食品衛生法第六条に関する部分ではないかと拝察いたすわけでございますが、まあ、この第六条の考え方につきましては、基本的には先生の考えと全くわれわれの考えと同じでございますが、ただこの条文の読み方につきましては、いまの先生の御意見と私の意見が違うかと思うわけでございますが、この第六条は「人の健康を害う虞のない場合」として厚生大臣が指定するという、わりに積極的な姿勢をとっておるわけでございまして、アメリカあるいはイギリスの食品法におきましては、業者からの申請に基づきまして、害がないものを許可をするという、こういう形をとっておりますが、この日本の食品衛生法ではそういったふうに厚生大臣が一方的に考えて指定をするという非常に積極的な態度に出ておるというふうにわれわれはとっておるわけでございまして、その基本的態度はただいま先生御指摘のとおりでございまして、われわれもそういう線で今後行政を進めてまいりたいと、かように考えております。
  187. 上田哲

    上田哲君 それはけっこうです。いままでこの十年ほどの間に国が安全だと認めていた食品添加物でも二十品目近くが、まあ安全に疑問が出たということで取り消しになっていると、まあ、研究なり実験なりが何もずさんであったとのみきめつけるつもりはないけれども、まあ、やっぱり結果の示すところは、その間、じゃあ二十品目を食べていた——生体実験したと言っちゃことばは不穏当になるけれども、結果的にそういう危険を受忍していたということになってしまいますね。それはやっぱりたとえ一品目であっても痛烈な反省がなければならぬということからしますとね、過去のことはともかく、また前に向かって問題が指摘されたときに最高度の慎重な姿勢というものが私はなければならないと思うんです。いま食品衛生法にまで戻って考え方全く同じだと、こういうことを言われたので、その点はその方向を大いに努力していただきたい。一ぺん大臣にも聞いておきたいんですが。
  188. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私も上田委員が先ほど来お述べになりましたような基本的な考え方については同意見でございます。由来私はその食品添加物、特に化学物質を認めるにあたっては、やっぱり疑わしきものは使わせぬというのが私は根本だと思うんです、これ。そういうふうな疑わしきものは使わせない、こういう、まあ基本的な考え方で臨むべきものであると、私はさよう考えておりますので、まあ、いままでその総点検をいたしておるわけでございますが、まだ残っておるのがたくさんありますから、総点検に際しましてはそういう点を十分踏まえて今後とも行政の面において善処していく、こういうふうにしてまいりたいと思います。
  189. 上田哲

    上田哲君 はい。けっこうです。  じゃあ、具体的にちょっと確認しておいていただきたいと思うんだけれども、いまのようなお考えに立って次の三点にしぼっておきたい。  食品添加物は根本的に整理するという方向で洗い直すと、それから二つ目に、このAF2で問題になっているのは突然変異ですから、突然変異を起こす危険があるかどうか、この点についてもすべての食品添加物について調査、実験をすると、それから第三に、今後その食品添加物の認可にあたっては、この突然変異の危険の有無を審査の項目にすると、この三点をひとつ確認をしていただけたらいかがかと思うんです。
  190. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 食品添加物を洗い直すと、これは非常にわれわれもその方向で従来から進めておるわけでございまして、さらに今後その方向を強めてまいりたい、かように考えております。  それから突然変異性、特に今後新たに指定いたします場合の、その突然変異性のデータの整備と申し上げましょうか、そういう点につきまして、これはまあ、新たに今後食品添加物を指定する場合につきましては、今後の問題といたしましてその方向検討してまいりたいと思います。で、従来のすでに指定されております添加物の問題につきましても、同じようなこの再点検の一環、一連の作業の中で検討してまいりたい、このように思っております。
  191. 上田哲

    上田哲君 何だかちょっとよくわからないけれども、まあ、つまりさっきの三点はいいんですな。
  192. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私もあんまり学問的、化学的なことよくわかりませんが、気持ちは全く同感です。私は疑わしきものはもう食品添加物に入れていくことが間違いだと思っているんです。だから総点検においては、いま申し述べましたような突然変異性のあるようなものはもうどんどん落としていくと、これはそうあってしかるべきだと思うんです。ただまあ、一応問題なのは、その毒性の問題と殺菌という有用性の問題の調整をどうするかとかいうことがありますが、これはまあ、学者のいろんな議論にまかして、基本的な線は私はそうあるべきものだと、こう思います。
  193. 上田哲

    上田哲君 けっこうです。  これはもう学問の領域にわれわれが踏み込んでどうしようということではないわけで、学問の結論を最大に尊重するけれども、そのプロセスにおいては行政としては最大に慎重に、この世代だけではなく二世代、その次の世代に至るまでとにかく少なくともマイナスにならぬということに力点を置いて、常に洗い直す姿勢というものを持っていただくと、AF2についてはそういう意味での格段の行政的配慮をお願いをしたい。また、先ほどその面で諮問をするとおっしゃったので、AF2添加ということの表示も出てくるだろうということも期待をしておきます。この点は、非常に厚生大臣が政治的にですな、——政治的ということばはよくない、政治家的に判断をされたので、私は従来問題になっていたところが一歩を進め得たというふうに評価をいたします。間違ってもひとつサリドマイドと同じように被害が広がっちゃってからですね、あのときこうしておけばよかったということのないように、これだけ騒がれ、これだけ指摘をされているわけですから、AF2については、いま御確認をいただいたように、可及的すみやかに行政的な処置をぜひとっていただくことを、これは大いに期待をしておきます。  全然問題は別になりますけれども大臣、一言だけ。生活保護と老齢福祉年金の問題で、七十歳以上の老人で生活保護を受けている人には、現在老齢福祉年金が支払われるとこれが収入認定を受けて控除されると、もちろん、例の老齢加算が同額あるわけだから実質的にはこれは問題ないんだという議論はありますけれども、どうもその実質的に同じだということだけでは納得されない、心情的な問題も出てきている。いろんなまあ、均衡の問題もあるだろうけれども、ここは老人の感情とかいたわりとか、そういう立場を込めて、老齢福祉年金は収入認定からはずすと、これは二本とも出すと、たいした額ではあるまいと思うんだけれども、そういう方向に御努力は、検討は願えないものかどうか。まあ、私のところにもそういう手紙がずいぶん来るんですが、これはぜひひとつ、こういう弱者救済のシーズンのおりから、厚生大臣の前向きの御意見をひとつ承っておきたい。
  194. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは生活保護の基準というものはですね、これはやっぱり国民の税金によって国民の最低生活を保障するという制度ですから、これはやっぱり私はきびしくあるべきものだと思うんです。いやしくも収入があれば差っ引くと、そしてやっぱり自立していくという気持ちを起こさせることが基本なんです。そういう意味において、私はやっぱり収入があれば差っ引くと、これは私はそういう筋で貫いていきたいと思うんです。これは多少上田委員とは意見、ここが違うと思います。意見が違いますが、やっぱり最低生活の保障を国民の税金でやるという制度の上からいえば、いやしくも収入があれば差っ引くと。しかし、差っ引くというてもですね、そこは例の老人対策ということの重要性から考えて、それは一応差っ引く形はとるが、老齢加算というんで足し前はいたしますと、実態は同じなんです。実態は同じなんです。ただ、私はやっぱり生活保護というものだけは自立精神というものを育成することが私は大事だと思うんです。
  195. 上田哲

    上田哲君 七十歳を越して、自立精神はいいですよ。
  196. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) そこだけはどうもちょっと上田委員とは譲れない線じゃないかと、こう思うんですがね。まあしかし、十分考えます。と申しますのは、生活保護というのは戦後できた、——まあ、前からありましたけれどもね、いまの法律は戦後できた法律でありまして、基本的にもう見直す時期が来ていると思うんです。そういうふうな意味で、実は今度の国会にでも出したいといったふうな考えもあったんですが、やっぱりこれはそういうふうな基本的な法律でございますので、もう少し時間をかけたいと、こう考えましたので、その際に十分御意見の点はしんしゃくをいたしまして、研究はいたします。けれども、いまの段階ではですね、ちょっとこれは上田先生とは意見は違う。しかし、将来の問題として十分考慮いたします。
  197. 上田哲

    上田哲君 まあ、七十歳以上ですからね、もう自立だなんていうのは、少しこう曲がった骨を伸ばせという意見に聞こえるわけで、まあ、ぜひこれは弱者救済といいましょうか、いたわりの気持ちで、片っ方出してるから同じこっちゃないかというんじゃなくて、まあ、五千円程度のことですから、気持ちの上でひとつ二本立てというわけにいかないだろうかということを重ねて申し上げておくのと、ぜひひとつ、先ほど来すっきり出たと私は思うんですけれども、問題のAF2については、すみやかに具体的にひとつ対策を講ぜられることを特にお願いをして終わります。
  198. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私は厚生省に若干伺わせていただきます。  まず、薬事行政についてお尋ねしたいと思うんでございますが、これは実は昨年のやはり予算分科会で同じようなことを薬務局長あるいは大臣にお伺いいたしたんでございますが、いまの上田委員からの質問にもございましたように、老人に対する福祉行政の一環といたしまして老人医療の無料化というようなことが取り上げられました。そのこと自身非常にけっこうなことでございますし、またさらに各自治体におきましてはその年齢が場所によっては老人医療の対象が引き下げられている。また乳幼児の医療の無料化というようなことも大幅に進められているようで、不十分ではございますが、まあ、非常に喜ばしいことだと思うんでございますが、それに伴いまして小売り薬局の経営が非常に苦しい状態に立ち至っている。これは諸外国の一薬局の売り上げの比率などとも調べてみたんですが、たいへんに日本の場合は少ない。しかもこの福祉行政が進められた反面、小売り業者の薬品の売却量が減ってきておって、たいへん経営難におちいっている。それに対して大臣並びに局長が、何とかこれは小売り業者の救済をいま前向きの姿勢で取り組んでいるんだという御答弁をいただいておったのでございますが、その件に関しまして一年たっておるわけでございますが、実際上どのような取り組みをしていただいておるか、まず大臣に伺いたいと思います。
  199. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 実は、去年の国会でもお答えしたと思いますが、老人医療無料化、まあ、老人の方々は従来ともやっぱり売薬、一般大衆薬に依存してる面が非常に多かった、ところが無料化になってお医者さんのほうに行くという率が非常に多くなる、そのために薬局が非常に苦しくなっていると、私もそのとおりだと思います。私も率直に認めております。で、私は、これは基本的にはやっぱり医薬分業というものをやるべきだと思ってるんです、医薬分業を。そこで、実はことしの二月から実施いたしました診療報酬の改定ですね、だいぶ思い切って技術料の評価を高く上げました。そのときに調剤料のほうも実は相当上げたんです。薬局のほうの調剤料のほうも相当上げました。まあ、そういうふうなことをいたしましたが、私はやっぱり今後とも必要があれば技術料の評価をどんどんやっていきたいと思ってるんです。できますれば——とんどんといいましてもこれは財政当局またいろいろありますから、大蔵省からいろいろ文句はあるでしょうが、私はやっぱり技術料の高い評価がない限り日本の医療問題は解決しないと、これは私の基本的な考えなんです。そこで私は、診療報酬の改定を発表いたしました際にも、今後とも技術料の評価は積み重ねてまいりますと、そして、できれば五年後を目途として医薬分業を実行するようにいたしましょうと、こういう声明を発表したんです、特別に。これは、診療報酬の改定に医薬分業言うのはおかしな話ですけれども、私の信念でございますので、そういうことを申し上げました。でございますから、長期的には薬剤師の方々の生活安定をはかるためには医薬分業以外にないと、かように私は考えておる次第でございます。  まあ、そういうわけでございますが、短期的には、大衆薬を売る量が減ってまいってきておりますので、この医薬分業を全国的にやる前には、やはり地域地域にやっていかなきゃなりませんので、できるだけ各地方地方で医薬分業をやれるように、至急に医師会と薬剤師会が相談し合ってやってくださいということで、短期的にはその分業を促進するような措置を具体的にいま進めております。それと同時に、調剤料の評価を従来よりもまして高めるようにしようではないか、こういうふうな措置を現在講じておるところでございます。しかしまあ、長期的にはやっぱり医薬分業以外ありませんから、全国的な医薬分業になる前に地域地域によってやれるところからやってくださいと、こういうことで強力に指導をしてまいりたいと、かように考えておるような次第でございます。
  200. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま大臣から前向きの御答弁をいただいたのでございますが、事務当局としたらいかがでございますか。
  201. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 基本的には大臣から申し上げましたとおり、医薬分業ということが日本の開局薬剤師、薬局の機能をフルに発揮するための最善の策であろうと存じます。で、そういった方向に向けまして、今年度におきましては予算の中に——従来とも医薬品検査センターに対する補助金は計上しておったところでございますが、四十九年度ではそのほかに薬局の整備の実情調査、そういったことを行なう予定をいたしております。先生御指摘のような薬局の経営状況等も含めまして、どういったところに問題があるかというような点を分析いたしまして、今後の医薬分業の推進に資する。それと同時に、やはり年間三千億近い大衆薬がつくられ、国民の軽易な医療には役立っておるわけでございますので、こういったものの販売につきましてもやはり適正な薬局、薬店の配置等を通じましてできるだけ薬局の機能が発揮できるような方向に向けると、そのための国民の啓蒙等につきましても並行して努力いたしたいと、そのように考えております。
  202. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの医薬分業のお話でございますが、これが五カ年をめどとして、まあ実施していらっしゃるということでございますが、これを実現するためにはまず国立病院公立病院などにおける外来の通院患者に対して、病院内の薬局で調剤を受けることもできるし、また町の保険薬局で調剤を受けることもできるという、両方のたてまえをとって患者が自由に選択できるような院内外共通の処方せんを発行されてこそ、初めてそれが実現すると思うんでございますけれども、そういうことに対しまして厚生省とするとどのような指導をなすっていらっしゃるわけでございますか。
  203. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) 先ほど来大臣からもお答えがございましたように、医薬の分業はそこにある病院が独自にやろうとしてもなかなか果たせるものではございませんで、先生御指摘の国公立が率先してという御趣旨でございますが、それぞれ国公立といえどもその地域に存在するわけでございますので、その地域の医薬分業の体制が整備される場合は当然率先してこれが実施に踏み切るべきであろうというふうに一般論としては言えると思います。ただ、先生の御指摘の趣旨は、特に病院内の院内処方とそれから院外処方とを共通で自由に使えるようにしたらという御趣旨でございますが、これは確かに検討に値する問題でございますけれども、一応院外処方というものの使う用紙その他のことも考えまして、全く共通というのは現在実施していないと私は思っておりますので、この辺のところは医薬分業の推進の過程として私は一つの案ではなかろうかと考えられるわけでございますので、そのような地域ごとの医薬分業の推進に対応いたしまして国立病院もこれに向かって医薬分業の推進の少なくとも推進役は果たしたいという気持ちでおります。
  204. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、いま御答弁でございますが、医師法の二十二条に処方せんの交付について規定ございますね。これによりますと、「医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当っている者に対して処方せんを交付しなければならない。」となっておりますね。そしてただし書きとして、「ただし、患者又は現にその看護に当っている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。」として、まあ、処方せんを書くことによってたとえばガンの患者が自分の病気を知るとか、治療上よくないとか、覚せい剤を投与するときとかいうふうなことが限定的に載せられておりますね。これは法律の条文からいきますと、この処方せんを交付するのが原則であって、ただ例外的としてただし書きの規定の場合には処方せんを交付せずに調剤して薬を与えていいということになっているわけなので、いま私自身の質問も、これは両方とも二者択一のように申し上げましたが、これも実際は法律の規定からははずれているんであって、本来からいえば処方せんの交付が原則なわけですね。ところが実際国公立病院行きまして、患者が処方せんをくださいということが命を預けているお医者さんに対してなかなか言えないのが現実なんですね。いまも局長もおっしゃったように、院内だけで通用する処方せんとそれから外部の人にわかる処方せんと書き方が違うということでございますが、何か一般の話を聞くところによると、病院内のは、処方せん簡単に暗号のようなものでぱっとわかるようになっているのでお医者さんが簡単にやってくれるけれども、この医師法の二十二条の原則どおりに処方せんを要求すると、まずお医者さんがいやな顔をされる。これは、まあ忙しいからもあると思うんですけれども、あるいは病院の薬局が信用できないんですかというふうな調子にもとられる。命を預けている患者にすると、なかなかそれは言えないということで、事実上この処方せんを要求している患者というのはきわめて少ないようなんでございますね。ですけれども、実際にそれじゃ国公立病院の薬局で薬をいただくのを心から望んでいるかというと、むろんそういう人も多いわけでしょうけれども、これははっきりしたデータは知りませんが、やはりこの病院外の薬局で薬をもらいたいと。といいますのは、国公立病院の薬局では長い時間待たされるのが原則であることと、子供連れの患者などの場合は子供がいろんな病人さんのところへ行って、病院行ったばかりにほかの病気をうつされてくるということもあるので、一刻も早く病院は出て、もよりの薬局で求めたい、あるいは国公立病院の薬局の窓口では、次から次へ薬を交付するためにゆっくり話ができないけれども、よく知っている薬局ならばいろいろ詳しい話も聞けるんじゃないか、お客さんとして扱ってもらえるんじゃないかというようなことで、まあ、病院外の薬局で交付してもらいたいというのが案外多いようなんでございますね。ですから、やはりこれはほっておいたのでは処方せん、か病院内の処方せんだけになってしまう。で、これは例外の場合ですから、病院内の処方せんというのは。だれにも通用する処方せんを書くというのがこの医師法の規定からいっても原則ですし、また薬剤師法の十九条からいっても、そうしなければいけないとなっているわけなんですね。ですから、そのことから考えるとやはりもっと厚生省が積極的に御指導くださらないと、なかなか大臣のお考えになっているところの医薬分業というものができ上がらないのじゃないか。その点いかがでございますか。
  205. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) 法律のたてまえは先生おっしゃるとおりでございまして、ただ、いま先生例に引かれたように医師が病院の薬を出したがるためにというよりも、多少しかつめらしく申し上げますと、そこの薬局がはたしてこの処方に値する薬品その他が整備されて確実に行なえるかというようなことがいまの段階のまだ両方の不信感として残っている問題でございまして、どうしても地域としてやはり医薬分業が推進できる体制を整えるということが重要だと思うのでございます。  しかしながら、大阪とかあるいは東京のような大都会で、たとえば東大のそばに薬局がございまして、これがかなり活動しております。そういうような実際にお互いの信頼関係が確立したところで、なおかつその患者の希望があるならば私は国立病院も率先して希望する患者には院外処方を交付すべきであると、これはこの春の院長会議にも私は積極的に指示してございます。しかしその体制そのものの整備、あるいは医師と薬局との信頼関係、そういうことが確立されているかどうかというところに若干の不安が残っている。それから一〇%、世論調査では一〇%程度でございますが、国民が希望するのは一〇%程度、九〇%はやっぱり病院からもらいたいという、非常に日本的素朴な世論調査の結果が出ておりまして、これらも今後の医薬分業というものをほんとうに正しく理解してもらうためには国民の御理解も推進する必要があると思います。  いずれにいたしましても、先生の仰せのように患者も希望し、しかもその地域でその体制がほぼ信頼できるものが整うならば、私は直轄の国立病院にはもちろん今後とも積極的に推進しますし、また一般公的病院等もその事情が許せばこれに対応するのが法のたてまえからいっても正しい方向であるというふうに考えております。
  206. 佐々木静子

    佐々木静子君 これまあ、御答弁にもございましたように、東大病院とかあるいは大阪大学の病院ではもう早くからこのことが、医薬分業が相当進められているということでございますが、いまもお話にありましたように全くこの関係は鶏が先か卵が先かというような状態で、この受け入れ体制の薬局のほうも、これ、どんどんと処方せんが来なければたくさんの薬を買い入れて資本を寝かしてもちっとも処方せんが回ってこないとなれば、これは大損害になりますし、といって、それで用意をしなければ病院のほうはうっかり処方せんは書けない、回せないということになって、非常に悪循環になるわけでございますが、いまもお話ございましたように、たとえば大阪府の薬剤師会などではこれは非常に厳格な審査を薬剤師会の中で設けまして、処方せんを発行する医療機関というものを、これは各支部から厳格な審査を経て適正な薬局を推薦して、それをまた大阪府の薬剤師会で書面審査をして、そしてまた実際に処方せんを発行してもらって十分に国民の方々に迷惑をかけないかということを現実に確認した方々の推薦薬局というふうなものを、まあ、こういうふうなものを、まあ、こういうふうなものをつくっているわけでございまして、そして、これをいま大阪府下の国公立病院十二に薬局の前に推薦薬局、——ここの薬局であれば処方せんをもらったならば十分にどの処方せんであっても薬はそろっているという表示を薬局の前に——これちょっと御参考までに……。   〔資料を手渡す〕 表示をして、そして一般の患者がどちらの希望でも選択できるようにやっているようでございますけれども、やはり国立・公立病院の中ではこれを持っていくと薬剤師会のほうからちゃんと用意して持っていっても、やあこれはちょっとこんな表示は困るということで断わられる病院も若干あるらしいんです。そこら辺のことがありますので、単によく指導するという抽象論だけじゃなしに、具体的にそういうことが起こらないような行政指導はお願いできるでしょうか。
  207. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) 先生のお尋ねが具体的にその推薦薬局の活用についてということでお尋ねがあるということで、国立大阪病院、大阪南病院等で確かめましたら、この薬剤師会の推薦薬局のパンフレットは窓口に置いてあるということでございまして、まあ、置いてあるだけで、どの程度の利用か、この辺のところは私まだ数字的には調査いたしておりません。したがって、具体的にはやはり大阪の医師会、薬剤師会がお互いに話し合って、そして推薦薬局制度をつくって、しかも国公立等から始めようじゃないかということが地域の医療の中で話し合いの上に行なわれるならば私は非常に望ましいことだと思いますし、これは推進したいと思います。ただ、一部にそういうものが協力しないところがあるというのは必ずしも十分な事前の話し合いがあったのかどうかというようなあたりに疑問がございまして、まあ、この辺のところは少なくとも国立については以上申し上げたような実態でございますし、それによって患者の何人かが処方せんを希望する、こういうようなことが生まれてまいるというふうに思います。  で、一つの例でございますが、私の郷里の長野県の上田地区は有名な個人開業医の医薬分業推進地区でございまして、かなりの医師が処方せんを出しております。そういう地域も生まれてまいっておりますし、今後この医薬分業の問題はその地域地域の実態に応じまして推進されることが望ましいというふうに考えております。
  208. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひそういうことで、これは何も医師会のほうに迷惑を与えようとかなんとかいうんじゃなくて、これは両者の協力あってこそ、初めて国民の医療というものが全うされるわけでございますので、十分に円満な話し合いができて、いまのような表示一つについても、まあ、一部の病院で拒否されるというようなことが起こらないように、これは各医師会、薬剤師会両方の話し合いが大事でございますけれども、またそれについての適切な行政指導というものもぜひお願い申し上げたいと思うわけです。  それから、いま大臣のお話で、その調剤料のことについてお話がございましたけれども、いま病院の薬局が薬事法上の薬局ではなくって、医療法上の調剤所の別名というような取り扱いのように聞いておるわけでございますが、この健康保険法による保険調剤を病院内の薬局の薬剤師による調剤も含める解釈をするように改めることができるかどうか。そうなれば、病院薬剤師の保険調剤業務が金銭上の上でも報酬面も確立されるのではないかと思うのでございます。そのあたりは、私ちょっと専門外のことでございまして、詳しい事情はつまびらかにいたしませんが、どのような御方針なのか、伺いたいと思うわけでございます。
  209. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) いまの診療報酬の問題は所管は保険局でございますので、私の承知しておる範囲のお答えになって恐縮でございますが、いま仰せになりました点、やはり一応機関指定医をとっておりますたてまえから申しますと、病院はいまおっしゃいました診療及び調剤ひっくるめての一つ施設、医療機関としての指定を受けておるわけでございまして、したがって、病院の収入というものが総合的に勘案されるという医療費体系になっておると承知をいたしております。したがいまして、院内のいわゆる薬局、調剤所におきます調剤について独立の薬局における調剤と同様の調剤料を適用するのが適当かどうかという点は、これは総合的な考え方として一つ検討事項であり、現段階ではそういうシステムになっていなかったと承知をいたしております。それから、そういう御要望のあることも承知をいたしておりますし、要はその法律の適用として別の薬局にするということよりも、院内において働いておられる薬剤師の技能というものを、独立して開局しておられる薬剤師の技能と同様に評価すべきではないかという点がポイントであろうと存じますので、この点は私どもと医務局と保険局と今後の医療費の改定にあたりましても十分相談をいたしまして、薬剤師の職能が十二分に評価されるような体系になるように努力をいたしたいと考えております。
  210. 佐々木静子

    佐々木静子君 あまり時間がございませんので、このあたりでこの問題についての質問を終わりたいと思いますが、とにもかくにも、いま局長の御答弁にありましたように薬剤師もその職能を十分に発揮することができるように、そして、これが単にお医者さんと薬剤師のなわ張り争いじゃなくって、ほんとうに国民のためにどうすれば一番いいのか。いま医務局長上田市の例もございますし、また全国的に見て大阪府薬剤師会などはかなり医薬分業の実現に漸進な努力を先陣を切ってやっているんじゃないかと思いますので、そのような実績の積み重なったところからでも少しずつ実現化の方向に向かって進めていただくということが大臣のおっしゃる五カ年計画を実現するのに一番近道かと思うのでございますが、最後にこの点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
  211. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほど来申し上げましたように、医薬分業は日本の医療問題を基本的にやっぱり改善する絶対に必要な要件であると考えておるわけでございますから、医師会、薬剤師会それぞれやっぱり自分のなわ張りに固執することなく、十分やっぱり国民全体の医療ということを頭に描いて十分話し合いをして解決するように、そしてまた、厚生省もそういう方向に行政指導を強化していく、こういうふうにいたしてまいりたいと、かように考えます。
  212. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、ぜひそのようにお願いします。  次に、保育所の問題に移りたいと思います。これは、実は各地方自治体の超過負担という問題、これはもう全国地方自治体の大きな悩みだと思うのでございますけれども、この超過負担解消の先がけとして大阪府摂津市から保育所の建設についての超過負担の請求訴訟が昨年摂津市より国相手に起こされているわけでございます。これは全国的に大きな注目を浴びているわけでございますが、この件につきまして若干お尋ねしたいと思います。  まず、時間があまりありませんから、順を追ってお伺いするわけにもまいりませんので、飛び飛びの質問になってたいへん恐縮でございますが、この事件に関しまして、これは行政訴訟が起こっておりますので、主として国側の答弁を私、中心に検討さしていただいたんでございますけれども、本年の二月二十五日付のこれ、国側の反論に、もしお持ちでございましたら第六ページでございますが、保育所予算というものは「毎会計年度の末に都道府県知事に対し、次年度における保育所施設整備に対する国庫負担についての基本的な国の方針等を局長通知(例えば、昭和四十六年二月十三日社施第十八号厚生省社会局長、児童家庭局長連名通知「昭和四十六年度における社会福祉施設整備計画の協議について」)及び課長通知(例えば、昭和四十六年二月二十五日児福第四号厚生省児童家庭局母子福祉課長通知「昭和四十六年度保育所整備計画の協議について」)によりあらかじめ知らせておき、各都道府県知事をして、新会計年度に市町村が実施しようとする保育所施設整備事業について、その事業内容が具体的かつ確実なものであるかどうか等の基本的な事項」をこれら通知によって定めるというふうな趣旨のことが陳述されているわけなんでございますが、ここに「例えば、」として例示されておりますところの昭和四十六年の二月十三日の社施第十八号の「昭和四十六年度における社会福祉施設整備計画の協議について」、これはどういう内容のものか、あるいはもし資料としてお持ちでしたら提出していただきたいと思うわけなんですが。
  213. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいまお示しになりました昭和四十六年度の社施云々の通牒はお示しのとおりでございます。この内容いま私そのものをお持ちしておりませんので、具体的にごうごうということは申し上げかねますけれども社会福祉施設、これは収養施設もございますし、老人ホーム、特養ホーム、養護施設、それから保育所それぞれにつきましての社会福祉施設を整備する場合の国庫負担の単価、それからその内容を各都道府県にお示ししたものでございます。  さらに一言だけつけ加えさしていただきますと、毎年年度がかわりました段階においてその年における整備計画を立てまして、そして、それを各市町村が都道府県を通じて厚生省に協議をしていただく、その協議の前提となるべき内容について通知を出すものでございます。
  214. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、いまつまびらかにしていらっしゃらないと、にわかのことですから御無理ないとは思うのですが、その資料とか、それからあとの四十六年の、あとで言いました昭和四十六年度保育所整備計画の協議についてという資料、これは提出していただけますか、各資料。
  215. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) お出しいたします。
  216. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実は四十九年のこれは社会保障長期計画懇談会の「社会福祉施設整備計画改定について」という資料、これはやはり厚生省から出していらっしゃるのですか。
  217. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 仰せのとおりでございます。
  218. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいかにももっともらしい計画のように見えるんですけれどもね。私、これどういうふうな遠大な計画を立てていただいているのかと、保育所について。これ、見ますと、ほんとのただの一行ですね。字数にして三十五字もないですね。「保育所」として、「現状における社会的ニードに即し、今後さらに拡充を図る必要があること。」、これはちょっとあまりにもずさんな計画じゃないかと、これをもとにしてどうこう言われても、これはどこのだれでもきまりきったことじゃないか。もう少し計画というのは具体的に書かなくちゃ、これじゃもうあってもなくても同じようなことだと思うのですが、どうなんですか。
  219. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいま仰せになりました社会保障長期計画懇談会のあれは、今後における考え方の大筋をお示しになったものでございまして、これは厚生大臣が昨年でしたか、長期懇のほうにお願いをしたものでございます。私どもが申しております毎年度におきますそれぞれの社会福祉施設計画というものはやはり施設別にそれぞれ計画を立てまして、たとえば保育所でございますと、未設置町村については設置するように、それから人口がふえつつあるところについてはそれを中心に考える、なおまた、さらにこれは公に確定したものではございませんけれども昭和四十六年から五十年に至るまでの間におおむね百六十数万の保育を要する児童を保育所措置できるような計画を立てる。これは厚生省でつくったものでございます。それを根幹といたしまして、いままでの毎年度、それぞれの年度に応じた計画を立てる。長期懇のほうでおっしゃっておられますのは、最近非常に保育に対する需要が増加してきている。したがって、従来の計画というのを検討し直すべきではないかという提案のように私は承知しておるわけでございます。
  220. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、話が変わりますが、この問題について一万戸の保育所補助金とか、あるいは負担金というようなことがたいへんに問題になってきていると思うんです。そして、これ、私もこれは行政法上の定義だと思うのでございますけれども、いろいろと補助金とはいかなるものや、負担金とはどういうものであろうかと検討してみたんでございますが、これ、やはり厚生省の方がお書きになっていらっしゃる児童福祉法の解説によりましても、補助金負担金というものは若干違う。補助金というものは補助をするのであって、いわば恩恵というとちょっとことばが強過ぎるかもわかりませんが、補助するものである。ところが、負担金というのは、それを負担するというのは、やはりこれはある程度の義務を持ったものであるということで、その補助金負担金とは定義がおのずから行政法上も異なっているんだ、これは学者の見解もいろいろあろうかと思いますが、同じであるという人はおらないわけですが、これは厚生省とすると、補助金の定義及び負担金の定義をどのように定義づけていられますか。
  221. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 私ども児童福祉法に基づきます国庫負担につきましては、地方財政法の十一条に基づきまして、それぞれその負担すべき種目、算定基準について法律または政令で定めなければならないということになっておりまして、それに基づきまして合理的な基準を策定いたしまして、そして国なり都道府県が負担すべき範囲をきめる、こういうものが国庫負担あるいは都道府県の負担であると、かように承知しているわけでございます。
  222. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお話であれば、補助金負担金もあまり違わないんじゃないですか。そのおのおのの定義を伺っているわけです。
  223. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 負担金につきましては、ただいま申し上げたような方法並びに内容によって負担するわけでございますけれども補助金につきましては、補助を申請されたものにつきまして、その補助すべき内容にふさわしいかどうかということを判断した上で国が補助するという意味において国庫負担のように種目、算定基準を明確にして合理的な基準のもとに行なうというものとは若干違うのではないだろうか。なお、これは私、いまお答え申し上げた点でございまして、なお、もっと権威のある方がいらっしゃれば、私お説を伺いたいと思います。
  224. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、補助金等適正化法で負担金がきめられる、補助金はやっぱりここできめられるわけですね。
  225. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 補助金並びに負担金についての適正化に関する法律、補助金等の適正化に関する法律、これによって規定されるものだと考えます。
  226. 佐々木静子

    佐々木静子君 どうもこれを見てみますと、負担金というものは一覧表には出てきておりますけれども補助金等と、補助金によく似たものというふうな規定で、この中を見ましてもそれほど補助金負担金とを分けて考えていないように思うんですよね。実際の取り扱いの補助金の申請書あるいは負担金の申請書を見ても実務上もそんなに区別がないみたいに思うのですが、法律の定義とすると、いまも申し上げたように、補助金というものと負担金というのはまるでよく似たものだけれども、お金が交付されるかっこうにおいてはよく似たものであるけれども、その法律上の性格は全く違うんじゃないかと思うわけなんです。そのあたりをどう解釈していられるかということなんですが、いかがでございますか。
  227. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 先ほど来申し上げておりますように、私ども児童福祉法に基づきます国庫負担につきましては国庫負担の合理的な基準を定めまして、そうして協議をし、そうして内示をし、そうして交付決定をする。この事務手続につきましては補助金等の適正化に関する法律に基づいて行なっておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  228. 佐々木静子

    佐々木静子君 この補助金等適正化法というのを、いかにも先ほどからのお話を伺っていますと、金科玉条のようにおっしゃるんですけれども、この法律ができたのは、御承知のとおり全然意味で違うんですよね。災害対策のときに、災害にあったからということで国のお金を補助金として申請しておきながら、災害の復旧に使わずに、ほかのことに使うようなケースが頻発したので、そういうことをやめさすために、他のものに流用するのをやめさすためにこの法律をつくったわけで、大蔵省の主税局がお書きになったこの法律の解説書にも、こういうことでつくった法律だと立法の趣旨ちゃんと書いてありますし、当時の議事録を調べても。これは国がこの範囲内で適当に気に入ったところへ割り振りするための、気に入ったところと言うと、ちょっとことばが過ぎるか知りませんが、法律じゃなくて、たとえば、保育所を建てるということで補助金をもらっておきながらそれを保育所以外のものに使うということに利用されたら困るから、こういう法律をつくったんだとなっているんですよ。ところが、いま各地方自治体、摂津の場合もはっきりした例ですけれども保育所の建設に使うというのは間違いないけれども、摂津の場合なんか、立てかえてもうできてしまったから、その立てかえた地方自治体の費用を穴埋めしないといけないということなんで、他に流用するとかなんとか、そんな邪道の話じゃないわけですね。そういう点において、いまの厚生省がこの法律を、立法の趣旨と全く逸脱したことにお使いになっていらっしゃる、その点いかがですか。
  229. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) いまお示しの補助金等の適正化に関する法律はまさしく手続の問題でございます。私どもは国庫負担の合理的な基準というものを常に改善していくということで従来とも努力をしてまいりましたし、いまお示しの四十五年、四十六年あるいは四十七年に比べまして四十八年は単価で申しますと三倍以上の単価を出すというように改善をしております。なおかつ、こういった国庫負担のあり方につきましては、先ほど来申し上げておりますように、種目、算定基準を明確にいたしまして、そこにいささかでもあやまちのないようにするということが実態でございます。先ほど来お示しの補助金等の適正化に関する法律は、確かにできました趣旨はそうであろうと思いますけれども、私どもはそれを手続の問題としてとらえていると、こういうように申し上げているわけでございます。
  230. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはむろんおたくのほう行政面でベテランでいらっしゃいますが、法律というものは立法の趣旨に返って、これはどういう意味でこの法律ができたのかということでなければ法律を、国会でだけこういう法律をつくっておいて、国民はそのつもりで、国民のためになることだ、幸いだということで、国の税金を取っといて、ほかのことに使われたりしては、国民は迷惑だというので、国会で賛成して通したら、あとはもうこっちのものだということで、そのあとできた法律は、今度は国民をいじめる側に使われる。これはとんでもないことだと思うんですね。もし、そういうふうなことで、いま超過負担の問題が非常に多くて、国の財政でまかなえないならまかなえないで、もう一つ別の法律をつくらなければ、これは災害のそういうことのためにつくった法律なんですからね。全く悪用ですね、これは。私は悪用の典型じゃないかと思うんですが、大臣はどうですか。
  231. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) どうも私の説明が意を尽くしていないのかもしれませんけれども、私どもは、この超過負担の解消ということにつきましては、単に厚生省だけでなく、自治省、大蔵省とも調査もし、それから先ほど来申し上げておりますように、年々内容の改善をはかってきております。したがって、超過負担の解消というねらいにつきましては、できるだけの努力をしてきていることは、先ほど来申し上げているとおりでございます。ただ、その補助金なり負担金の市町村から、あるいは都道府県から協議があり、そしてそれにつきまして内示をし、そして確定をする。確定をするのは、毎年度年度年度において確定をするということをきめておりますのは、補助金等に関する適正化法でございます。かように申し上げているわけでございまして、これによって負担金、補助金を削るとかいうような気持ちは毛頭ないということだけ申し上げておきたいと思います。
  232. 佐々木静子

    佐々木静子君 自治省お越しでございますね。自治省はその点についての御見解はどうですか。それから先ほど来言ってます補助金負担金の定義も、自治省とするとどのような定義を持っていらっしゃるのか、おのおのについて述べていただきたいと思います。
  233. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) 補助金負担金の区分につきましては、現行法では、地方財政法にその趣旨を明らかにした規定がございます。  まず、負担金につきましては、三カ条でございます。  第一は、公共団体あるいは公的に実施いたします事務なり事業のうち、国と地方の相互の利害に関係がある事業の中で、その円滑な運営を期するために、国が進んで経費を負担する必要がある。これはたとえば義務教育の国庫負担金、それから保育所措置費などでございます。  それから第二が、国民経済に適合するように樹立された、たとえば長期計画に従って実施しなければならない建設事業に要する経費の一部を国が負担をする。これは道路とか河川とかいう施設の建設事業でございますが、保育所の建設事業もこの中に入っております。  それから第三が、災害復旧関係費、この三つ負担金でございます。  それに対して補助金のほうは、やや抽象的な規定ではございますが、その施策を行なうために、国が特別の必要があると考え、これはたとえばある施策を実施するのに補助金を出して奨励していかなければならない、かように考えるというような場合であります。あるいは地方公共団体の財政上特別の必要があるといった場合、財政援助をしなければならない、こういう場合に出すものが補助金である。こういう区分がなされております。  なお、先ほど来お話のあります補助金等の適正化法では、この補助金負担金その他交付金なども全部あわせまして、補助金等という名称で一括して定義しておるわけでございます。  それからいま一つの問題は、先ほど来のお話に関連することでございますが、補助金等適正化法は、確かにできましたゆえんなり動機は、おっしゃったようなことであったろうと思います。あったと思います。ただ、でき上がりました法律は、これはまさに先ほど来厚生省のほうから御説明ありますように、補助金の交付申請あるいは補助金の決定に関する手続的な統一した法規でございますので、やはり補助金負担金、両方を通じまして、これによって毎年度ごとの補助金なり負担金の金額は確定しているということであろうかと思います。
  234. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御説明にありました、このたとえば負担金の場合ですね、保育所施設については、これは児童福祉法の五十二条によって、これ全部読むと時間かかりますから、「国庫は、」まあ結局省略して、「政令の定めるところにより、その二分の一を負担する。」というふうになっているわけですね。そして同法施行令の第十五条の第一項によって「前条の負担は、」「精算額に対して、これを行う。」というふうになっておりますね。これが保育所の設置費なんですね。それから、先ほどお話のあった教員の給与費のことを言いますと、これは義務教育費国庫負担法第二条の本文によって、「国は、」「次の各号に掲げるものについて、その実支出額の二分の一を負担する。」というふうになっておって、また事実、教員の給与は、実支出額の二分の一が確実に負担されているというふうに私は理解しているわけなんです。  それから第三の、この道路の新設ですね、地方道路の。この規定を見ますと、これは道路法の第五十六条によって、「国は、」そこちょっと省略して、「予算の範囲内において、政令で定めるところにより、当該道路の新設又は改築に要する費用についてはその二分の一以内を、」ですね、「補助することができる。」となっているんですね。この規定を三つ見ると、これは、あなたの御説明にもあったように、地方道路についての補助のしかたと、初めの保育所の設備、設置あるいは給与の場合の規定と、まるで規定のしかたが違いますね。ところが、給与については、これ文句なしに二分の一国が出しているんですね。どうして厚生省だけがこの条文どおりなさらないのか。その中からまた適正化法案とかいうようなものを持ってこられて、結局それも国民が、災害費が、災害救助のためのお金が流用されたら困るいうことでつくった適正化法案というものを持ってきて、この二分の一という規定をそのまま使おうとする。これは先生の給与については同じ規定なんですが、ちゃんと実現しているわけですね。私は、これは何とかかとかと時間ないので、もう御答弁ゆっくり聞いているひまないので何ですが、おそらくもっともらしい御答弁を厚生当局はなさるんだと思いますけれどもね、これは私は、国民は納得しないと思いますよ。福祉というものをこれほどうたいながら、法律でもうすでにずっと昔にできた児童福祉法でちゃんとこううたっておきながら、このごろになって適正法案とかなんとか言い出して、しかも一番ひどいのは、摂津訴訟が昨年起こされたら、その昨年の十二月の二十三日でしたか、二十三日に、これはもう国会も終わってだれも知らない間に、児童福祉法施行令の一部を改正する政令の施行についてというのを、政令を改正して、そしてこの保育所の費用については大臣がいいと言うた分だけしか保育所の設置費用は出せない。しかも、そのいいと言うた保育所の設置費用のうち、また、これ大臣になっていたか、厚生省になっているか、ちょっと私読むひまないのではっきりしませんが、ともかく厚生当局は、適当だと思う金額の範囲内しか出せない。これは児童福祉法の規定とまるで矛盾するじゃないですか。法律を改めるなら、国会で児童福祉法自体を改正しないといけないわけですね。国会で国民の前には、これだけのことをしているんだと言っておきながら、国会終わるのを待って、厚生省がこういう通達を出す。これは私はけしからぬと思いますよ。ほんとうにいまの政府が標榜しているように、福祉というものを本気になってやるつもりがあったら、むしろこれ、話逆じゃないといけないじゃないですか。こんなものをつくって、結局児童福祉法にある保育所の設置のための国のお金を出さないでおこうというような、これは私は非常にいまの当然政府はとらなければならない福祉政策と逆行するものじゃないかと思うのです。特に、これはやはり児童福祉法によって保育を要する児童がいる場合には、地方自治体はこれを保育しなければならないと義務づけているわけですね。ですから、いま大都市の周辺のドーナツ化現象で、摂津市をはじめとするそういう衛星都市には、保育を要するいわゆる措置入院を要する児童というのは、山のようにいるわけですね。これは地方自治体の義務なわけですね。そしてこの摂津訴訟の場合も、全部措置入院のための保育所、そしてこれは国の法律に基づいて保育所をつくる。そしていまの児童福祉法の五十二条で、当然この国庫が半分負担してくれると思うと、負担してくれない。訴訟を起こすと、これは不利だと思われたのかなんか知らないけれども、去年の十二月になってこそこそっと政令を改正する。まあいろいろと御弁解をなさることは多いと思うんでございますが、時間がございませんので、大臣、そういうことでいろいろと住民は非常にいまの厚生当局にふんまんを持っているわけなんです。そういうふうなことを、やはりこれは政治をやる者として解消するということがまず第一じゃないか、どういうふうな御姿勢でこれから保育所の問題をお取り組みいただけるでしょうか。
  235. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) お示しの点でございますが、確かに児童福祉法五十二条におきましては、二分の一ないし三分の一というように負担の割合を示しております。  なお、地方財政法の十一条によりまして、「種目、算定基準」は、「法律又は政令」と、その政令に基づいております十五条を昨年の十二月改正したわけでございますけれども、御承知のように、義務教育と異なりまして、社会福祉施設、特に保育所は、一部のものを除きましては、この設置につきましては義務設置ではないわけでございます。したがいまして、その義務設置でないものについて厚生大臣が合理的な基準をきめて、それに対して負担をするという従来の方法をとってきたわけでございますけれども、この従来の政令の規定が、ただいま御指摘のように、きわめてあいまいな点がございました。そこで、その点を従来のやり方はやり方といたしまして、明確な種目、算定基準をきめる、法律によってそういう必要があるという判断のもとにきめたわけでございます。たまたま時期が十二月になりました点は、これは九月、十月と各省それぞれ協議を続けてまいりまして、時期がたまたまその時期になったわけでございまして、そういうような御解釈をいただく点については、私どもまことに不徳のいたすところでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、内容の充実改善につきましては、国庫負担の本来の趣旨に沿って、毎年改善をしてきているということは御承知いただけるのではないかと思います。
  236. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私、言いわけするわけではありますんが、はっきり申し上げておきたいと思います。と申しますのは、保育所というものの市町村の設置は義務じゃないんです。任意なんです。つくりたい市町村はつくるというたてまえなんです。そこで法律では、建築に要した経費から保育料等を差っ引いた残りの額について二分の一を補助する、負担するとこうなっていますね。ところが任意ですから、市町村はどんなりっぱなものをつくろうがけちなものをつくろうが自由なんです。それをつくっただけの金に、かかっただけの金の二分の一を払う、こういう補助金は私はないと思うんです。合理的なやっぱり国が補助を、任意ですから、義務じゃないんです、任意につくるなら、私はこんな五千万つくりましょう、ある町村は一千万でいいですと、あるんですよ。それについて五千万の二分の一、片方は節約して一千万で足りるというので、定義が同じだとして、一千万の二分の一、これこそそれやったら不公平になります、むしろ。そこで補助というものをやるための基準というものをつくろうではないか、そこで従来とも、次官通達において毎年毎年予算の範囲内において、こういうふうな何人定員のところは大体この程度の規模でございますと、その程度の規模ならばそれの二分の一の補助をいたしますと、こういう次官通達を出しまして、その次官通達をもとにして、市町村長が国の補助をいただきましょうというので、県を通して補助の申請というものはくるわけなんです。これは実際のやり方です。  そこで、ところが、いま申し上げましたようないろんな誤解もありましたので、かかっただけの半分かという問題がありますので、それではおかしいでしょうというので、はっきりこの際直しましょうということで、その施設については国が定める施設、しかも、その施設については一定の基準を、この次官通達なんというのはおかしいから、もっとはっきりさせましょうと、政令でこれをはっきりさせましょう、こういうことにいたしたわけでございまして、実は実態は、私は弁解するわけでも何でもありません、実際いままでやっていたことを、むしろはっきりさせる、役人のベースにおいて次官通達だとか、局長通達だとか、課長通達だとかというのでやるのは、これこそよくありません、これこそ悪い。ですから、はっきりと、政令によってそうい基基準厚生大臣がきめるようにしましようということにいたしたわけでございます。したがって、保育所の設置が、市町村の義務費でやるならこれはまた別です。任意なんです。たとえば大阪のような富裕な府県は、りっぱな保育所をつくりたいと思うかもしれません。ところが私なのような福島県のようなところは——私、福島なんですが、福島県などは、それはほんとうに財政が苦しいですから、なるべく切り詰めてやるわけです、町村長としては。じゃ大阪あたりで三千万というなら、うちは一千万ぐらいにしましょう、こういうふうにやるんです。かかっただけの半分を補助するといったら、国はたまったものではありません、主導権は向こうにあるんですから、市町村長にあるんですから。どんなものをつくろうが、二分の一出します。これはかえって不公平じゃございませんか。私は、この点は御理解いただけると思うんです。というわけで、弁解するわけじゃありませんが、従来やっていることをはっきりさせたんでございますということでございますから、攝津訴訟を頭に描いてどうのこうのというのじゃございません。それから十二月の末こそこそという御批判ございましたが、こそこそやったのじゃございませんで、たまたまそこの時期になったと、こういうことで、どうかきょうのところは御理解いただきたいと思います。
  237. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間ありませんので、どうもいまの私はあれは御弁解だと思うんですが、まあ、あまり弁解していただかないで済むような保育行政をぜひ実現していただいて、次の予算国会あたりでは、大臣胸を張って、保育所はこういうことをやりましたということをおっしゃっていただきたいということを、特にお願いしまして、私の質問終わります。     —————————————
  238. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 分科担当委員の異動について御報告いたします。  辻一彦君が委員を辞任され、その補欠として瀬谷英行君が選任されました。     —————————————
  239. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 引き続きまして、私も、初めに保育所問題についてお伺いしたいと思います。  私の保育所は、そういう大きいりっぱな保育所じゃなくて、必要に迫られて苦しみながらつくっている無認可保育——もう大臣も担当の方々も御承知だと思いますけれども、当然保育しなければならない子供が、保育所が足りないというために、母親たちがやむなく自分たちでつくっているのが無認可保育でございます。その無認可保育も、実は市町村が責任を持って保育しなければならない、それができないからということで、母親たちがやっているわけですから、当然国としても、それに対して応分の援助もしていただきたいということや、また、その母親たちがやっております無認可保育所、たいへん小規模でございます。ですから六十人とか、まあ小規模ができまして、三十人とかに引き下げられましても、なかなかそれまでに到達することができないから助けてくれというのがみんなの切実な願いでございます。私も四十六年の十月、この問題を取り上げて御検討いただくようにお願いしまして、四十七年になりまして、また予算のここの分科会でも、無認可保育の問題、なんとか考えていただきたいということで要望もいたしておりました。この無認可保育の問題について、四十九年度予算で、この無認可保育に対してこれを解消して引き上げていくというために、どの程度のどういうような考え予算が組まれているか。また、特に、希望している小規模保育所、いま三十人でございますけれども、その定員を引き下げ、基準を引き下げていくというようなことで、母親たちの要求をどういうふうに聞いていただけたか、そのところをまずお伺いしたいと思います。
  240. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 御指摘のように、保育所の中で、法律上認可されていない保育所、それを無認可保育所と通称しておりますけれども、そういうことがあることもよく承知しております。ただいま御指摘ございましたように、予算的な点を申し上げますならば、四十九年度におきまして小規模保育所の数をふやしております。従来三百カ所であったものを四百カ所、これは従来三十人までの小規模保育所の個所数の増でございますけれども、私のほうといたしましては、確かにそれ以下の保育所でも、そういった保育について可能であるということでありますならば、この数を二十人まで下げたい。したがいまして、個所数もそれに応じてふえるわけでございますから、そういう方向で、この保育所の欠乏に対する対処のしかたを進めてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  241. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 この前私が、その問題のお話いたしましたときに、いや三十人というのが最低の基準でというようなことを——いらっしゃいます、松下局長時代にお話になりまして、その基準おかしいじゃないか、少なくとも二十人、児童福祉施設最低基準でいいますと十五人というのが出ていますよね、だから、十五人と出ているんだから、そこまでは下げてもらえるんじゃないかというときに、いやなかなかだめだということで、三十人でがんばられたわけなんです。で、やっと二十人の基準にまで下げていただいて、たいへんありがたかったと思いますけれども、実にもう二年以上たっているというような中でございます。そこで、二十人にまでしていただいたことですから、文句は言いませんけれども、二十人ということでみんなが努力をいたします。そうすると相当申請がたくさん出てくるというようなことも考えられるわけですね。そうすると三百カ所から四百カ所、百カ所ふえたわけですけれども、この二十人以上できちっとやれるというところが数でふえてきた場合、この百カ所というのにはこだわらないで、二十人以上になったんだからということで、当然ワクを広げるということは考えられるわけですか。
  242. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいまの段階では、まだ最終的なことまで申し上げられない。御承知のとおり予算も成立しておりませんし、それからまた事務的な段階における折衝も残されております。しかし、いまおっしゃいました御趣旨は十分踏まえた上でいろいろ対処してまいりたいと、かように考えております。
  243. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 つまり、二十人に基準を下げてくださったということはだいじょうぶ確認できるわけですね、いまこのままでいきますと。そうしますと、二十人でその資格ができるものがたくさんあった場合に、百カ所では——私が言いますのは、百カ所というのが形がきちっとワクがきめられておりますと、百一くらいできたときに、その一というのはどういう評価で落とすかというようなことが出てきますよね。だから、せっかく二十人の基準まで引き下げていただいたんだから、それでそこまで、二十人でやりましょうという、そういう体制ができたところには、百カ所というようなワクでむざんに切っちゃうというようなことではなくて、御配慮いただきたいということを私は申し上げたわけなんで、その点よろしくお願いしたいと思います。
  244. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 先ほど申し上げたように、御趣旨を十分に承知しておりますので、それを踏まえた上でなお検討さしていただきたいと思います。
  245. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃそういうことで、みんなの要望にこたえてやっていただくということで、これを終わりまして、時間がありませんので。  次に、国立札幌病院等における看護婦の確保の対策ということの問題でいろいろ聞いていただきたいと思います。  国公立病院と申しますのは、私が申すまでもなく、救急医療や夜間・休日診療、難病の治療というような高度な医療が保障できるようにしなければならないという大切な位置を占めていると思うんです。国民の健康を守る上からいっても、こういうことはますます考えて、その内容について拡充するということが必要だと思います。その体制、つまり看護婦の体制を考えますと、御承知のように、四十年に人事院の判定が出ました。それから四十四年には、参議院の社会労働委員会で決議も付されてきたわけですね。それでニッパチというような問題も相当改善されてきたと思いますけれども、ある程度改善はされたということは私も認めます。しかし、国立病院で、ずっと資料を調べてみますと、複数夜勤は五〇%程度しか出ておりません。ほとんど変わりないと言っていいぐらいです。それから今度はどれぐらいやっているかという日数、夜勤日数で見てみますと、やっぱり九日以上というのがほとんどになっているというようなわけなんですね。こうしますと、判定が出たのが四十年ですよ、ここの委員会で決議したのが四十四年。にもかかわらず、一人夜勤が五〇%、九日以上というのがたいして減少していないというような状態では、これはなかなかたいへんだろうと思うんです。こういうような人事院判定、ここの決議というようなものを、尊重されるならば、大体いつごろ、見通しとして、これを尊重した人員を確保するということを考えていらっしゃるかどうか、その辺いかがでございましょうか。
  246. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) 人事院の判定につきましては、二人ということと、八日という問題があるわけでございます。私は、医療の確保、特に夜間における医療の確保からいきまして、二人の問題は、人事院の考え方も確かに積極的にできるだけ二人夜勤を医療の確保の面から判定の趣旨としては実現をはかるように希望しておられると思います。それから八日の問題は、ある意味で労働条件でございます。ともにきわめて重要な課題でございますが、これをどのくらいの率に高めていくか、直接判定は国に対してなされたものでございますが、先生もすでに御存じのように、地方自治体等においては二人夜勤の率はかなり高まっておりますが、ただやはり看護婦が十分でない点もございまして、夜勤日数については、かなり八日という実現を完全にしているところは少ないわけでございます。そういう点で、国立といたしましても、もちろん、看護婦全体の需給問題もございますが、われわれといたしましては、基本的には、国立病院としての機能——先ほど札幌等の例が引かれましたけれども、地方がんセンターとしての札幌病院の機能というものに着目いたしまして、それの充実をはかりながら、その結果として、やはりニッパチ体制の充実の方向に進めてまいりたい。わが国全体の看護婦の需給関係は必ずしもニッパチという体制を実施するには何名要るかという計算もできないことはございません。しかし、現実には、われわれといたしましては、そういう角度のみならず、わが国の看護婦全体を医療の面からも充足していかなきゃならぬという角度で考えまして、養成計画を充実すると同時に、国においても、国家公務員の定員の中で、それぞれの施設実態に応じまして、重点的な看護力その他の配分をいたしまして、その結果としてニッパチ体制の向上をはかっていきたい、こういうことで努力いたしております。
  247. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 一応努力するということで、具体的には期限もなしということで、たいへん心細いわけなんですけれども、札幌病院で、国立札幌病院なんですけれども、九日以上というのが実に七一%ですよ。それから最高十四日というのが三人いますね。十二日が三人、十一日やっているのが十七人、十日やっているのが三十四人と、七十四名のうち七一%が九日以上やっているというような、たいへんな状態だということを頭に置いていただいて、次の問題聞いていただきたいと思うわけです。  ここは、おっしゃいましたように、国立病院であり北海道がんセンターという役割を果たしているわけですね。四十八年度の入院定床、ベッド数五百三十です。そして一日平均患者数四百七十一名というお話でした。四十八年度末現在の入院患者数は、定数五百三十床に対して四百四人です。その四百四人のうち、ガン患者が二百四十五人、約六〇%がガン患者ということになっているわけですね。ここで、入院したいと言いながら、待ってくれというので待機させられている患者さんというのも相当あるというわけなんですが、それをそちらで何人ぐらい待機させられているか、とお調べいただいたでしょうか。
  248. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) つい最近の資料で、百七十二名が待機患者としてあげられております。
  249. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうしますと——百七十二名ですね、待機させられているというのが。そうすると、ここはほとんどがガンなんですよ。全道のがんセンターになっているから、ほかの病院に行きたいけれども、ここが専門だというので、ほとんどの患者さんがガンだというわけです。そうすると、この百七十二名というのは、どれぐらいの数かと言いますと、ガンで入院しているのが四月一日の数ですけれども、二百四十一人と。だから、一〇%ぐらい待っているというなら、まだ待機していますということばになるだろうと思いますけれども、百七十二人と言いますと、約七〇%ですよね。だから、もうたいへんな人たちが待機させられていると、こういうわけなんですよね。そうしますと、ガンというのは、ちょっと待ってくれといって、待てば待つほど病状が悪化するわけです。私が行っていろいろ看護婦さんとも話をしたり、お医者さんとも話をしてきましたけれども、そうやって待たされて、入ってきたときには手おくれだという状態。だから、ここの病院に入ったらもう行くところは焼き場だというようなたいへんなところなんです。そういうような患者さんを待ってくれというようなことで待たしているというのは、みすみす悪化させるということなんですよね。だから、ベッドが足りないのかと言ったら、足りなくないんですね。五百三十のベッドに対して四百四ですから、ベッドが足りないわけじゃない。結局は人手が足りない、看護婦さんが足りないということで、これ以上夜勤で押していくわけにもいかないという中ですから、たいへんなことだと思って私は見てきたんですよ。こういうような、ほかの病気で、ちょっと結核で待ってくれなんていうんじゃないでしょう、進行していくガンなんだから。そういうのを待たしておいて、そして何とか拡充しましょうということでは、ちょっと、私は「はい」と言うわけにはいかないんですが、こういうような状態になっている中で、看護婦の拡充、特に、こういうような特殊ながんセンターの役目を果たされているというような場合に、拡充というのをもう少し真剣に具体的に考えていただきたいと思うんですけれども、その辺、大臣いかがでございますか。
  250. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) 確かにおっしゃるとおり、資料に基づきますと、ベッド数と入院患者数の間に余裕が若干ございますが、これは病院側にとりましては、診療各科別のやはりベッドの確保というようなこともございまして、病院運営というものは、大体八〇%ぐらいで運営されるということが、結果的にはどうしてもなってしまう。その点は私は、もう少しその受け入れが、たしか先生の御指摘のような、各科ごとにまた看護力の配置なども数字によりますと違いがございまして、この点をわれわれももう少し努力すれば、この機能をさらに充実できるという期待は持てると思うわけでございます。したがいまして、国立病院全体三万床程度でございまして、総定員法で各年努力をして相当数の人員の増加を実施いたしておりますけれども、それぞれに配分をいたしますというと、かなり薄まってしまうということで、こういう重点的な機能の病院にやるためには、四十九年度はICUと申しまして、インテンシィブのケア・ユニット、特に重症患者の看護を集中的にするところに、定員の配置をお願いいたしましたら、それが認められましたので、具体的には札幌、呉等の地方がんセンターにそれを配付することを予定いたしておりまして、そのようにそれぞれの——全般的にも強化しなきゃなりませんが、特別の機能に着目しながら、行管あるいは大蔵とも折衝しながら、それぞれの病院機能に応じた充実をはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  251. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いろいろとそちらの御事情もおありだろうと思うのです。私はそちらの御事情を聞いているのじゃなくて、患者の立場に立って、命がいま守られるか守られないか、みすみす悪化していくというような状態の中で、これで拡充されないで、百七十二人は待機させられたまんま、だんだん死に追いやられるということを考えますと、そちらの御事情で考えるのじゃなくて、やっぱりもう福祉を大事にするとおっしゃるならば、患者の立場に立って、命を守るという立場に立って善処していただかなければ、おたくのほうの事情からいえば、総定員法だとかなんだとかというようなワクがございます。こういうようなところにはこういたしました。そちらの事情はいろいろあると思うのですよ。だけど、私の言いたいのは、そこのところへ行ってみて、ほんとうに死ななきゃならないもう患者さんですよ。それ看護婦さんがほんとうにからだもふいてあげられないですわ。で、もう患者さん、あかぼろぼろシーツに落ちてますの。看護婦さんに会ってみたら、若い人が全然顔のつやないですよ。もうばさばさした顔ですよね。で、もう帰って寝るだけだと、こういうような中で、みすみすガンで殺されていくというのについて、私はほんとうに考えていただきたいと思ったんです。ここの病棟でも、特に、整形外科の場合を見ますと、定床が六十、入院患者三十四です。そのうち三十三人がガンなんですね。ガンなんです。それで看護婦さんが去年十五人いたのが、今年度は十三人になっているわけなんですよ。そうすると、だんだんよくなっていくというのなら話はまだわかるけれども、去年よりも少なくなった中で、患者三十四人のうち三十三人がガンであると、しかも、それが重症だと、だから、みんな腰痛症になっているのにがんばりながらやってんですね。ここではやっぱり付き添いさんというのがたくさん手助けをしているわけで、付き添いの問題については、あとでまた伺いますけれども、こういうような深刻な状態になっているんです。つまり、看護婦さんたちのもうほんとうに青春を犠牲にして、自分の命を犠牲にして何とか患者さんを見ているというようなことでまかしておいていいのか、そしてまたどんどん進行するガンの人達、患者さんに対して、こんな手で、これでいいと言えるのかどうか。厚生白書なんかもちゃんと去年もことしの分も出てますけれども、こういうような心臓とか、ガンとか、いろいろな問題が出てくる中で、これたいへん大事にしなきゃ、重要視しなきゃならないとちゃんと書いてあるわけですけれども。理屈は抜きにして現実にはこういう状態なんです。こういう状態について御存じなかったかどうか知りませんけれども、いま言ったような状態をお聞きになって、大臣どういうふうに考えていただけるかどうか、お答えいただきたいと思います。
  252. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これはもうすでにお述べになりましたように、現在病院の経営において一番むずかしい問題は、看護婦さんをいかにやって確保するかということが基本だと思うのです。これは私、一昨年の暮れ、厚生大臣に就任して以来、看護婦さんが足りないから、あきベッドをたくさん置いていて、これがあたりまえでございますと、こんなことはまことにお恥ずかしい話だと、こう私申し上げているのです。これは札幌のこと私よく知りませんが、東京の東一ですね、国立第一病院、これなどはほんとうに病院の建物はできた、看護婦さんがいないために、二階も三階もあけておくと、こういうわけだ。こんなばかなことないじゃないかといって、医務局長にやかましいととを言うたことを思い出すわけですが、そういうわけで、病院経営の上に看護婦さんをどうやって確保するか。これはやっぱり質、量両面にわたる待遇改善以外にないと私は思っているんです。質、量両面にわたる待遇改善。したがって質的には、処遇の改善をやらにゃならぬというので、昨年来実は人事院総裁に非常にやかましく折衝をしまして、今度教員と同じような第二次勧告を出してもらう。これはまあ非常に私よかったと思うのです。わずかなり——まあそう言うと皆さん方すぐわずかじゃないかとよく口ぐせのようにおっしゃいますが……。
  253. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 じゃあわずかでもいいですよ、じゃあ言いません。
  254. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) わずかながらもやっぱり努力しているのですよ、努力しているのです。そういうわけで努力をし、ざらにまた今度量の面でもなるべく多くふやそうというので、療養所を増設したりしておるわけでございます。しかし、それだけでも私は十分でないと思うのです。やっぱり勤務条件を緩和する、勤務条件改善、私はやるべきだと思うのです。ニッパチ体制、医務局長はだいぶ消極的な答弁をされておりますがね、私は、国立病院なんかを、まあ大体ニッパチ体制を半分くらいはだんだんやれるようになってきた、私は非常にいいことだと思うのです。これはやっぱり人事院の勧告というか、判定に従って、看護婦さんが気持ちよく働けるような勤務条件をつくってあげる、これがやっぱり一番大事だと思います。ですから、まあ具体的に、札幌の問題のお答えにはならぬかもしれませんが、やっぱり看護婦さんの質、量両面の処遇の改善をはかり、その社会的地位を高めていく、これ以外に看護婦の充足はあり得ない、こう私は考えております。そのことが、病院経営を全うし、国民医療の完ぺきを期するゆえんである、こういうふうに考えておりますので、今後ともそういう方向努力をいたしたいと思います。したがって、北海道の札幌について具体的ないろいろお話ございました。百七十二人待機して待っておる、それはほんとうにお気の毒な話ですよ。こういうことについて、まあ私も具体的な問題をよく調査いたしまして、できるだけこういう方々が待たぬで済むように、あきベッドもあるというのですから、それがまあ各科別でそのくらいはやむを得ないなんということを言わないで済むように、努力をいたします。
  255. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういうわけで、ここの組合としても、非常にいま深刻な問題として地方医務局といろいろ交渉されているわけですよ。先ほどから何度も言いますように、がんセンターの立場で、重症患者が非常に多いという立場から考えますと、やっぱりそういう特殊性というものを尊重してもらいたいと思うわけなんです。医療従事者の定数基準というそのものも改善していかなければ、いまのまんまではとても患者さんめんどう見るわけにもいきません。ですから、当面札幌病院も含めて国立病院に設置しているガン、心臓、脳神経、人間ドックなどのセンター、救急医療部門というのがありますね、国立病院に設置されている。そういうところには、従来の定数にこだわらないで、特別な役割りを考えて配慮していただきたいと。  それでたとえば総定員法というようなのでワクが押えられるとするならば、それじゃこういうような立場に立って看護婦さん拡充するためには、総定員法で押えるのじゃなくて、総定員法のワクから看護婦さんを除外するとか、具体的ないろいろな検討をしていただかなければならないと、そう思うわけなんですけれども、そこのところ具体的にもうちょっと、どういうふうに考えられるか、簡単でいいですけれども、お答えいただきたいと思います。
  256. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) 先生の御指摘の、重要な部門、国立らしい特徴のある部門にやはりもっと充実すべきだ。これは先ほどお答えしましたように、われわれとしてはこの看護婦の確保あるいは定員の要求、そういう面も、そういう点を重点にしながら進めてまいっております。  その看護婦のまあ総定員法から、ワクからはずせという問題でございますが、これは実は、各方面からそういう実は御要望なり、御質問がございました。われわれは行管の総定員法というものは、法律で定められたものでございますので、医師、看護婦といえども、最小限の計算上は入れてございます。しかし、それも受けて、われわれが実施するときは、医師、看護婦はもちろんはずしてございます。総定員法から全部はずして、国立病院ははずしたらどうかという意見も出ます。しかし、そういう国家公務員全体の法律があるたてまえ上、その仲間入りをはずして、それでみずからどういう定員の増をお願いできるかということになりますと、やはりこの総定員法の弾力的な定員を運営していくのだ、そうしてわれわれ国立病院、療養所は常に千名以上の定員をいただいております。ところが、各省庁の関係からは、他を減じて、やはり病院、療養所あるいは文部省関係の必要なところに配置いただいておる。これのワク内に縛られるという感じを持つと、いかにも縛られますけれども、総定員法というものの運営からいったら、そのようにめんどうも見ていただいている。こういうこともございますので、非常に、考え方によっては窮屈ではございますが、しかし、これからはずれて独自にどういう一体定員というものの確保ができるかということは、私は法律のたてまえ上、特に職種的に看護婦だけははずすということはできないと思いますが、看護婦が、大臣のお答えのようにいまの医療の最重点でございますから、定員増は、常に看護婦が最も多く、定員増を実現いたしておりますし、今後ともその方向努力いたしたいと考えております。
  257. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまのお話だと、私が、国立病院だけ看護婦を充実しろ、その中でも札幌だけがんばれというようなふうなおっしゃり方なので、そこを訂正してくださいね。私はそういう意味で言ったんじゃなくて、看護婦さんが足りないのは、深刻な全国的な状態の中で、国立ともあろうものが、こういう重要な部門を併設しているようなところが不十分な体制では、あとにも響いてきて全然よくならないから、ここを取り上げて言ったわけなんですからね。いまの御発言だと、ちょっとそういうふうになって気になりましたから。  そういうようなわけで、いろいろと手だてを変えていただかなければならないというようなことで、何とかやっぱり定数改善をしていただかなければならないということで、いますぐ具体的にどうというお答えはできないかもしれませんけれども、こういうようなほんとうに深刻な状態だということで、定数改善について積極的に御検討いただくということは御確答いただけるわけですね、大臣も。
  258. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) そのとおりでございます。
  259. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういうような状態の中で、たいへん足りない看護婦さん、そこで非常に大きな問題になってきていますのが付き添いさんの問題でございます。  二月一日から実質一七・五%の診療報酬引き上げが行なわれました。この改定にあたって中医協の答申で、「部屋代の差額徴収等患者負担を排除する」ようというようなのが、四十八年十二月三十一日に大臣あてに出ているわけですね。差額ベット、それから付き添い料、患者の自己負担というようなものかいま非常に大きな問題になっているわけなんですけれども、これについてどういうふうに改善をされる、またこれについてどれくらい期待できるというふうにお考えになっていらっしゃるかどうか。
  260. 北川力夫

    政府委員(北川力夫君) 差額ベッドの問題につきましては、中医協の御答申もございましたし、またかねがねこの問題につきましては、現在非常に節度を失して乱に走っているというふうな御批判もいろいろございましたので、御承知のとおり、先般この問題について新しく規制を強化する基準を出しました。これによって、差額を徴収できる部屋は、一人または二人部屋に限る。あるいはまた徴収をいたします場合には、事前に十分な確認を文書等で取りつけて間違いのないようにする。それから、常時そういう問題については追跡をいたしまして、毎年一回実態を明らかにするような調査をする。こういうことで差額問題については、私どもき然たる態度でこの問題は今後処理にあたってまいりたいと思っております。  また、付き添いの問題でございますけれども、これは実は昨年の八月でございましたか、付き添い看護料の実態が、現在の疾病構造の変化に非常にそぐわなくなっているということもございまして、付き添い看護料の支給の緩和の措置を講じました。それは従来は、病重篤で常時監視を要しておる者、あるいはまた病が重篤ではないけれども、手術後常時監視を要する者、こういう者に限ってつけておったんでございますけれども、先般の緩和措置で、寝た切り老人でございますとか、あるいはその他の交通事故患者等についても、付き添い看護料がつけられるように措置をいたしまして、いま先生御指摘になりました両方とも、昨年から先般にかけましてかなりな行政措置をとったつもりでございます。しかし、これだけでまだ十分だとは思っていませんので、今後引き続いていろいろ行政措置を続行してまいりたいと、このように考えておるような次第でございます。
  261. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまのように少しずつ努力していただいているということは、私も認めるわけなんですけれども、たとえばいま問題にしております国立病院の場合で言いますと、今度は、さっき大臣もちょっと言われましたけれども、東京第一病院ですね、東一の病院、ここは特類看護をやっているわけです。ここが非常に付き添い婦が多いというのが、いま調べてみてびっくりしたわけです。  国立がんセンター、これも調べてみました。ここは定床が四百四十五床です。四十八年一月から十一月までの間二十四時間病人に付き添う、つまり付き添いさんですね、病院内で宿泊した付き添い人一日平均三六・三人です。延べ一万三千二百五十一人。これは一日平均で看護婦さんの二〇%近くが患者のベッドに付き添いして宿泊しているということになります。  それから今度は東一の場合には、これは去年の一月から十二月までのを調べたんですけれども、ベッド数が四百四十七床です。一日平均で五五・一人が付き添い人、二十四時間ついていると、こういうわけなんです。だから、がんセンターも、東一も、非常にたくさんの付き添いさんがついていなければならないような状態だということをはっきりさせたいと思うのです。  それから今度札幌病院、これと比較してみました。で、この札幌病院も一類です。ここはもっとひどいのですね、調べてみましたら。これはことしの一番近い時期、三月三十一日の現状を調べました。入院患者四百四人です。付き添い数が八十八名。看護婦の人員からいうと、実に八四・八%が付き添っていると、こういうような状態になっているのですけれども、こういうような国立、いま言ったがんセンター、東一、札幌も国立ですけれども、こういうような状態、御存じでいらっしゃいますか、大臣、全然御存じでいらっしゃいませんか。
  262. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) よく承知をいたしております。
  263. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 こういうふうになりますと、付き添いについては、いろいろ患者の精神的安定を目的としてというようなことで許可をするということになっていますけれども、実は精神的安定どころじゃなくて、実際についていなければ患者さんのめんどうを見られないというようなことになっているわけなんですね。こういうような実情の中で、付き添いさんの問題、一体どう考えたらいいでしょうか。
  264. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) 国立の付き添いにつきましては、大体三万床の一〇%に、家族ないしは家族にかわる職業付き添いの方がおりまして、したがって、これの費用の問題その他、確かに医療の確保、国民の医療の上から重大な問題でございます。  たてまえから申しますと、特類にしろ、一類にしろ、ともかく基準看護をとっている場合について、やはり病院が付き添いというものを、むしろ不当につけさせなければ入院できないというような態度で出るならば、これはもうたいへん問題だと私は思うのでございますけれども、実際のところは、最近の看護婦実態、あるいは患者の病状、たとえば手術後あるいは危篤状態、あるいは盲人、高齢者というような実態を調べてみますと、それぞれに医療の確保の上で看護婦力だけではどうしても十分な医療ができないというような面も率直にいってあるようでございまして、やむを得ず主として家族の付き添いがございます。これにかわって、職業付き添いのあることも否定できません。たとえば東一の場合などでも、東二の場合でも、二十名前後の、それから札幌の場合でも一〇%の十名近い方が職業付き添いであるというふうに承知いたしております。  いずれにいたしましても、この問題は、たてまえからいったら、基準看護をとっている以上、この付き添いの問題についての運営は適正にしなければならぬという認識でございますけれども、一方また、それぞれの患者の症状に応じ、家族の心情によって、付き添いというものもやむを得ず認める場合もある。しかし、たてまえとしては、やはり医療の病院管理の立場から、この点がいたずらに付き添いに依存するという行き過ぎた形にならぬように、あるいは費用の負担等も考えましても、この問題についてはわれわれも今後基準看護のあり方とともに検討しなければならないと思っております。
  265. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまおっしゃいましたように、基準看護だから当然なくてもいいというような状態でないんですね。どうしてもほんとうに必要だからといって付き添いさんを頼まなければならなくなっているわけですわ。だから、基準看護そのもののあり方ですね、基準看護をするための、さっき言った看護婦さんやなんかの定数の問題というようなのも、こういう実情の中でほんとうに考えていただかなければ、解決の糸口というものは出てこないと思うんですよ。基準看護だから、付き添いは置くべきではないというような考え方で、家族が付き添いたいから、付き添っているのだというようなことでいままで言いわけされてきたわけですよね。しかし、決してそんな状態じゃない。ここにも、看護婦さんの方から手紙がきたんですけれども、その看護婦さんは、私の義母が東京の東一病院南九階病棟でガンで入院中です。今月四日夕食の介助に行った義妹に、婦長代理さんから、古川さんだけについていられないので、きょうから二十四時間付き添いをしてくださいと伝えられた。困惑した義妹はすぐ連絡してきました、義妹は、二人とも教員で、年度末の忙しい時期に入ります。とても学校を休んで付き添いというわけにはいきません。かといって、派出婦の付き添いを頼めば、どんなに安くても月十二万円くらいになります。どうしようと迷った私たち夫婦は、月収八万円の看護婦である私——御自分が看護婦さんなんですね、月収八万円の看護婦である私が、一時退職して付き添うよりしかたないとの結論を出すしかありませんでしだと。翌日夫は、医師に病状を聞きましたところ、いつどうなるかわからない状態だと、病棟からは、付き添いをつけないとやりきれないと言われたが、付き添えるかと、こう言われたというような状態ですね。政府が誇る東一病院でも、不当な付き添いをしごく当然のように、しかもきょうから、即時ですね、きょうからと付き添いを要求し、毎月約三割の患者さんに何らかの付き添いがついているというような状態ですと、こういうような実に具体的に、この人は御本人名前もあげてくださってけっこうですというようなわけですよね。そうすると、こういうような状態の中で、ほんとうにこれから、この人たち患者さんなんか含めて一体どうしたらいいだろうか、これ実に深刻な問題なんですわ。それで病院のほうでも、これも婦長さんにしても、病院のほうとしても、これ板ばさみになっちゃっているわけですよね。そこで、具体的にこういうようなことを言っておられたわけなんですわ。つまり、いま基準看護だからいけないという、そういう公式的な見解ではなくて、脳外科の患者で、いわゆる植物人間となって、一カ月以上もそういう状態の患者がいるというような場合、意識がなく、たれ流し、御飯はゴムで入れるというような場合には、これは基準看護であっても、付き添いをつけるということをしなければならないというふうに認めなければいけないのじゃないか、また呼吸困難で酸素テントなどをつけているような危険な状態、それから手術後変化の多い期間、せめて三日程度でもこういう人たちには付き添いをつけるということを、基準看護の病院であってもこれを認めて、そしてこの場合に保険給付の対象にするというようなことは最低しなければ、結局基準だといわれてもそれができない、付き添いさんはやみでつけるというようなことになるから、全部が全部いますぐしろというわけではないけれども、せめてこういうような場合には、当然これは認めて、保険給付の対象にすべきだというような具体的な提案をされているわけなんです。私もなるほどそうだなというふうに考えたんですけれども、これについてはどういうふうに考えられますでしょうか。
  266. 北川力夫

    政府委員(北川力夫君) 非常な看護婦さんの不足している中で、しかも、いま先生があげられました例は、きわめて重症患者の多い場合の話でございます。そういう意味合いで、私どもは、この基準看護というものを設定いたしましたのは、基準給食、基準寝具等とあわせまして、保険医療機関が一定レベルのサービスを常時確保できるというためにつくったものでございますけれども、そういった中で、なかなか看護婦さんの不足のために、いまのようなむずかしいケースについて問題があるということは、現在の時点をとらえますと、きわめて私どもとしてはこれは遺憾なことであり、何とかやってまいりたい、何とか手を打ちたいというふうな考えでございます。ただ、看護体制、先ほど医務局長からもお話がありましたけれども、看護体制というものを基本的にどういうふうにすべきかという問題が一番ベースにはあると思うんです。そういうことから考えますと、現在の保険医療機関としての保険看護のサービスといたしましては、基準看護ということで一つのレベルを設けておりまするので、そういう中で、たまたまそういったケースについてだけ特別に保険給付をする、あるいは保険給付にかわる何かのことを保険のほうで給付をするというふうなことも、実は私ども非常にこれは基本的な看護体制にかかわる問題でございますから、むずかしい問題だと考えております。そういうことで、問題はやはりできるだけこの看護婦さんを早くいい人を充足をする、またそういった重症患者を重点的に収容している病院について、保険医療機関について、基準看護をとっている病院について充足をしてもらう、こういう指導をできるだけ徹底して、関連部局が協力をしながらやってまいろうと、こういうふうに考えておりますのが、現在ただいまの私どもの行政上の気持ちであり、立場でございます。
  267. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私ね、そちらの言い分からの立場でのお答えだったと思うのですよ。私が言っているのは、さっきから言っているように、そちらの基本的な看護体制にかかわる問題だから、それがむずかしいなんという方式ではなくて、そこにつとめている看護婦さん自身も、これはたいへんだと言っているわけですね。患者の立場に立っても、こういうときには、やっぱり付き添いさんもついてもらわなければならないと、そうすると、それは結局医療体制全体の不備の中でできたことですから、全部が全部できなくても、せめていま言ったような、植物人間だとか、呼吸困難酸素テントだとか、それから手術後のたいへんなときというようなものは、これはどうせ基準看護だといいながら、その手当ができないんだから、だから、そういう場合くらいは、それはきちっと付き添いさんもつけてよろしいということにして、そうして財政的にも措置をするというくらいの頭を働かせて、姿勢でやってもらわなければ私は救われないと思うんですね。答申の中でも、政府は、そのために必要な財政措置を格段に講ぜられたいなんて言われているわけですから、だから、たいへん御苦労だと思いますけれども、やっぱりそれはいまできないというんじゃなくて、少なくともその辺のところは、当事者である婦長さんのほうからもそういうような切実な希望も出されているわけなんだから、だから、それについてはやっぱり今後具体的に検討するという姿勢で、私は善処してもらいたいと思う。  それから大蔵省——どなたですか、ああ、そうですか。いつも大蔵省聞いていただくわけなんだけれども、出していただくときはたいへん渋いわけで、きょうも聞いていただこうと思ったんですけれども、こういう人の命の問題がいまどうなるかという中で、やっぱりきちっと予算というものを、そういう命を守るという立場で考えていただかないと、もう救われていかないわけですよね。だから、そういうわけで、大臣いかがでしょうか、私がいま言ったような全部が全部とは言いませんけれども、こういうような特殊な三つのいま言ったような場合には、基準看護の病院であろうとも、付き添いさんをつけて、少なくともそれを保険給付にするというようなことは、いまできなくても、これは当然いいとお思いになるかどうか、どこでもけっこうです。お考えを伺わせてください。
  268. 北川力夫

    政府委員(北川力夫君) 確かにおっしゃったような例の中で、植物人間的なもの、植物人間のもの、あるいはまた非常に高度の手術を受けたあとのむずかしいケース、こういう問題につきまして、おそらく保険医療機関として、基準看護をとっている医療機関が多いと思います。酸素テント等は、あるいは基準看護でないところがかなりあると思いますけれども基準看護でなければ、いまおっしゃったように付き添い問題というのは問題ないわけです。基準看護の場合と基準看護でない場合と、やはりそこは、先ほどからも申し上げておりますが、またそちら側の立場でというお話もございましたけれども、やっぱりそこには線を引いて、看護体制というものを考えておりまするので、いまおっしゃったような御例示に限ってだけ、いま直ちに保険給付にする、あるいは何らかの別な措置を講ずるというふうなことは、私どもいまの段階ではちょっとすぐには考えるわけにはまいらないというような実情でございます。今後、基本的な看護体制をどうするか、基準看護体制まで入り込んでどうするかということになれば別でございますが、そうでない限りは、なかなかむずかしい問題ではないかというふうに考えておるような次第でございます。
  269. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大臣どうですか。
  270. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは先ほど来いろいろお話しのありますように、やはり非常にむずかしい問題です。私は、実はいまの病院経営で非常に問題になっていますのは、こうした付き添いの問題、それから差額ベッドの問題、これをどうするかという問題なんです。差額ベッドについては、この前厳重な通達を出しまして、自粛をお願いすることにしております。そこで、この付き添いさんの問題については、非常に困難な問題でございますが、そういう事例のあることについては、私は深甚なる理解を持っておりますから、きょうはその程度でひとつ……。理解を持っておる、理解を持っております。
  271. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 理解って——理解をしなかったら非人間ですよ、理解するのはあたりまえなんだから、理解したら、それについてはやっぱり具体的に検討するという姿勢は出さなくちゃ。わかりましたと言って黙っているだけではだめですよ。いますぐとは言いませんけれども
  272. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 理解を示しながら、将来の看護体制のあり方とにらみ合わせて、十分検討をいたします。
  273. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 じゃ十分検討していただくことにいたしまして。  それで看護婦需給計画というのが発表されて、いろいろ今年度検討の結果も出ていると思うんですけれども、院内保育事業運営費補助金というのがつきましたですね、二百七十九カ所ですか。これはたいへん一つ前進だと評価するわけですけれども、これは、一つ病院でできない場合には、その近くの病院と一緒に共同運用をするというようなことも運用上考えていただけるのかどうか、その点伺いたいと思います。
  274. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) この院内保育の問題は、四十九年度の新たな事業でございまして、予算上の考え方はA型、B型で、夜間保育にも認めるというような型分けしてございますが、いずれにしても、初めての仕事でございます。しかも、院内保育という、わが国の保育行政の中に一つ割り込んでこういう特殊な対策をやるということでございますので、これが運営は、非常に私も適切にやることが重要な問題だと思っています。具体的には、共同であろうと単独であろうと、やはりわれわれとしては、責任主体がはっきりして、特に、病院側が一役買ってもらわないといかぬと思いまして、そのようなことを踏まえながら、実態で個個にひとつ検討さしていただきたいと思っております。
  275. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういうわけで、病院同士が責任を持ってやるというような場合には、一つ病院でなくても、責任者がはっきりしていれば、共同運営できるということでございますね。——はい、どうもありがとうございました。  それでは、時間過ぎましたけれども、もう一つだけ伺わせてください。難病でずいぶんはなばなしく宣伝されたけれども、ちょっとことしは難病問題というのが静かになってしまって、私もいろいろと難病の方とお話しをいたしましたけれども、やっぱりここでも一番問題になっているのが差額ベッドの問題でした。それから今度は、せめてヘルパーでも来ていただきたいというような要求ですね、それから、介護手当というようなものも出していただけないんだろうかと。それから診断するというような場合にも、これは難病ですから、そもそも原因というのがたいへんむずかしいところへもってきて、地方なんかにいますと、その専門の方がいらっしゃらないわけですね。そうすると、たとえばこれもまた私、北海道で何とか考えてほしいと言われたんですけれども、北海道でお医者さんがいないと、中央まで出てくるというようなときには、たいへん旅費もかかるし時間もかかるというような問題が出てくるわけですね。そうすると、各ブロックごとでそういう難病なんかをかかえて苦しんでいらっしゃるような場合に、そういうような診断をするためには、お医者さんを派遣していただくとか、また逆にこっちへ来るんだったら、その旅費や何か補助していただくとか、いろいろな具体的な要求がたくさん出ているわけですよ。そうすると、介護手当を出してほしいと言っても、老人福祉だったら、老人福祉法があるから、それができるというようだけれども、難病の場合には、それがないわけですね、根拠法になるようなものが。そうすると、結局何もしてあげられないということになりますね。そうすると、これ、一体どういうふうにしたら、この人たちの要求を取り上げて、何らかの助けをすることができるのだろうかということを考えざるを得なかったわけなんですけれども、その辺のところはどういうふうに考えていただけるでしょうか、何かいい知恵ありませんか。
  276. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) いわゆる難病等患者さんの対策につきましては、四十九年度は、さらに治療研究についての促進をやろう、あるいは御承知のとおり、保険で負担できない自己負担の部分の対象疾病をさらに拡大しております。いまおっしゃったような点につきましては、ほかの一般の疾病その他の関連がございます。お気の毒な難病患者さんにつきましては、やはり医療費の負担、さらに基本的には治療研究の促進とか、こういうことに重点が置かれるべきで、寝たきり老人とか、そういう方々の福祉政策という観点から、やはり介護手当等というのは、考えていくのが至当じゃないかと考えておる次第でございます。
  277. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それで、病院なんかも、難病のベッドがだいぶ確保されましたね。病院のベッドは確保されたけれども、専門医がいないという問題がいま出てきていますね。その辺のところの対策、どういうふうになっていますか。
  278. 滝沢正

    政府委員滝沢正君) 難病と申しますけれども、二十にわたる疾患が指定されておりまして、われわれも大きく分けまして結合織疾患とか、あるいは血液性の疾患とか分けておるわけでございます。血液の疾患などには、かなり血液というものの専門医としての意識を持ってやれるのですけれども、一般的に難病というものに、専門医というものがなかなかむずかしい概念でございます。しかしながらこれは、対策として考えなければなりませんから、講習会その他、比較的急性の疾患は国立病院を中心に、それから慢性型は国立療養所というふうにしながら、まず国立関係で多少なりとも先べんをつけると申しますか、そういうことで、四十八年度、四十九年度それぞれ千四百床ぐらい難病用のベッドを整備いたしまして、それで若干のそれに定員を増をしていただきまして対応するわけでございますが、実際は、先生おっしゃるように、そこでどういう患者が来てもこなせる医師がいるということは、たいへんこれはむずかしい問題でございます。しかしわれわれは、その病院の配置を、できるだけ大学病院等と連携できるような場所を選びまして、そして現在の国立の医師の以外に、外部の専門医、いわゆる各方面に詳しい医師を非常勤等でお願いするとか、あるいは研究グループとして一緒になるとかということをしながら、整備された病床というものを、難病対策のために活用できる方向で今後努力していきたいということでございます。何ベッドあるから、何が何人入るというようなことも、国立といえども各地に分散している実態でございます。たとえば弟子屈などは、リューマチのセンターにしたいというふうにも考えております。札幌はガンでございますし、あるいは重症心身それから筋ジストロフィー、これもわれわれにとっては難病でございます。これは八雲をはじめ全国にすでに運営に入っているわけでございます。ですから、あれと同じように、かなり限定されて特徴があって、すぐそれに対応できるというのじゃなくて、かなり広範にわたった疾病にわたるものですから、御趣旨はよくわかりますけれども、われわれがこれに対応していくには、若干の日時と努力が必要ではなかろうかと考えております。
  279. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 せっかくそこまでベッドなんかも確保していただいて、やっていただけているというのはよくわかるのですけれども、やっぱり難病を持った患者さんにしてみれば、一生懸命やっているというだけでは、なかなか命の問題だから、何とかそれを早くやってもらいたいというのが切実な願いでございますしね。私も一番たいへんな方たちだと思いますので、いま言われたような姿勢をひとつ前進させて、何とか早く解決できるように御努力いただきたいということを重ねて申し上げて終わりたいと思います。
  280. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 他に御発言もなければ、厚生省所管に対する質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、本分科会の担当事項であります昭和四十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、科学技術庁、文部省、厚生省、労働省及び自治省所管に対する質疑は終了いたしました。  これをもって本分科会の審査は終了いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  281. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十分散会      —————・—————