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1974-04-04 第72回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月四日(木曜日)    午前十時四分開会     ————————————— 昭和四十九年三月三十日予算委員長において、左 のとおり本分科担当委員を指名した。                 熊谷太三郎君                 高橋 邦雄君                 竹内 藤男君                 橋本 繁蔵君                 細川 護熙君                 吉武 恵市君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 宮之原貞光君                 矢追 秀彦君                 中村 利次君                 加藤  進君     —————————————     分科担当委員の異動  四月一日     辞任         補欠選任      橋本 繁蔵君     内藤誉三郎君      瀬谷 英行君     小柳  勇君      加藤  進君     須藤 五郎君  四月二日     辞任         補欠選任      中村 利次君     木島 則夫君      須藤 五郎君     渡辺  武君  四月三日     辞任         補欠選任      羽生 三七君     鈴木  力君      宮之原貞光君     辻  一彦君      木島 則夫君     中沢伊登子君      渡辺  武君     小笠原貞子君  四月四日     辞任         補欠選任      高橋 邦雄君     岩動 道行君      鈴木  力君    茜ケ久保重光君      小柳  勇君     佐々木静子君     —————————————   出席者は左のとおり。      主 査        矢追 秀彦君      副主査        細川 護熙君      分科担当委員                 岩動 道行君                 熊谷太三郎君                 高橋 邦雄君                 竹内 藤男君                 吉武 恵市君                茜ケ久保重光君                 小柳  勇君                 佐々木静子君                 鈴木  力君                 辻  一彦君                 中村 利次君                 加藤  進君    国務大臣        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       森山 欽司君    政府委員        科学技術庁原子        力局長      牟田口道夫君        科学技術庁原子        力局次長     伊原 義徳君        科学技術庁原子        力局次長     生田 豊朗君        文部大臣官房会        計課長      三角 哲生君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省社会教育        局長       今村 武俊君        文部省体育局長  澁谷 敬三君        文部省管理局長  安嶋  彌君        厚生省医務局長  滝沢  正君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        自治大臣官房審        議官       山下  稔君    説明員        人事院事務総局        給与局次長    長橋  進君        科学技術庁放射        線医学総合研究        所障害臨床研究        部長       熊取 敏之君        大蔵省主計局主        計官       廣江 運弘君        文部省大臣官房        人事課長     望月哲太郎君        厚生省医務局歯        科衛生課長    笹本正次郎君    参考人        大阪大学医学部        助手       田代  實君        大阪大学理学部        講師       久米三四郎君        日本原子力研究        所保健物理安全        管理部長     宮永 一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選参考人出席要求に関する件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————   〔年長者吉武恵市主査席に着く〕
  2. 吉武恵市

    吉武恵市君 ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条により、年長のゆえをもちまして私が主査及び副主査選任につきその議事を主宰いたします。  これより主査及び副主査選任を行ないますが、選任は投票によらず、主宰者の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉武恵市

    吉武恵市君 御異議ないと認めます。  それでは、主査矢追秀彦君、副主査細川護熙君を指名いたします。     —————————————   〔矢追秀彦主査席に着く〕
  4. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 一言ごあいさつを申し上げます。  ただいま皆さま方の御推挙によりまして主査をつとめることになりました。皆さま方の御協力を得てその責務を果たしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。  審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりいたします。  本分科会は、昭和四十九年度一般会計予算同時別会計予算、同政府関係機関予算中、科学技術庁文部省厚生省労働省及び自治省所管審査することになっております。  八日の委員会において主査の報告を行なうことになっておりますので、議事を進める都合上、主査といたしましては、本日の午前を科学技術庁、午後に文部省、五日の午前を文部省、午後に労働省、六日の午前を労働省、午後に自治省、八日は厚生省という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 次におはかりいたします。  慣例では、予算の細部にわたる説明を各省庁審査の冒頭にそれぞれ聴取するのでございますが、時間の都合上省略し、これを当日の会議録の末尾にそれぞれ掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  8. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  本日、昭和四十九年度総予算中、科学技術庁所管審査のため、大阪大学医学部講師久米三四郎君、同大学医学部助手田代實君及び日本原子力研究所保健物理安全管理部長宮永一郎君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  10. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 昭和四十九年度総予算中、科学技術庁所管を議題といたします。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙中のところ、本分科会審査のため御出席いただき、ありがとうございました。これから御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上、委員からの質問にお答えいただく形で進めたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次発言願います。
  11. 辻一彦

    辻一彦君 私、予算委員会で問題になっておりました日本原電敦賀発電所被曝問題について質問いたしたいと思います。  参考人先生方、忙しいところどうもありがとうございます。  まず、科学技術庁長官にお伺いしますが、予算委員会の席上しばしばこの問題が論議をされて、そこで大阪大学田代医師診断についていろいろな御見解や御意見がありましたが、これについていまどういう科学技術庁として御見解を、政府として持っておられるか、お伺いをまずいたしたいと思います。
  12. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) 科学技術庁といたしましては、専門医師の御診断そのものは御診断として、放射線による被曝があるかどうかということにつきましては、そのときの作業環境等を勘案してこれを判定すべきものかと考え、いずれにしても本件に関する調査についてはさらに諸般の環境状況等を勘案して調査を進めたいと考え、目下準備中でございます。
  13. 辻一彦

    辻一彦君 前回の予算委でも、一ミリにおいて被曝が起こるということは問題があるじゃないかと、こういう会長の医師診断に対する御見解もあったように思いますが、この診断についてそれ以上の御見解はいまのところありませんか。
  14. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) こちら側でたびたび申し上げましたことは、一ミリレム被曝自体身体障害になる放射線被曝があるとは通常考えられないということを申し上げでおるわけでございます。
  15. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、前の文部大臣の御発言もございましたが、この診断の過程についていろいろな御見解があったようでありますので、きょうは参考人田代医師においでをいただきまして、どういう経緯でどういう順序を踏んで診断されたか、このことにつきまして若干詳しくまずお伺いをいたしたいと思います。
  16. 田代實

    参考人田代實君) 初めにお断わりしたいんですけれども、私、この問題の岩佐氏の診断及び治療に当たっておる田代でございます。一般的に言いまして、医師というのは、医師法に基づきまして、業務上知り得た秘密患者秘密はどんなことがあっても守らなければならないというふうに存じております。で、このことはおそらく法的な理由がない場合、根拠がない場合には、たとえ政府であろうが国会であろうが、そういうところからの要請であってもやはり個人秘密というのは守る義務があるというふうに私は解釈いたしました。で、今回、昨日公明党の矢追先生のほうから参考人要請がございまして、実は患者岩佐氏に連絡いたしまして来ていただいて、こういうことであなたのことについて国会参考人として出席を求められておる、了解してほしいということを申し述べて、岩佐氏も、ここまで新聞なんかでも報道され、自分としてもこの問題やはり国民の皆さんにはっきり正確な事実というものを知ってほしいと思うので、それはけっこうです、という御返事をいただきましたので、その範囲内できょう述べていきたいと思います。  それで、診断経緯についてですが、こまかいことは省略いたしまして、昭和四十八年八月十四日に岩佐氏が阪大病院皮膚科の外来を初めて受診しました。その当時一番最初に診察したのは、ちょうど私の診察室の隣の場所診察しておりました私の同僚医師であります。部大病院では、特に私ども皮膚科の教室では、患者の問題に関しましては随時診察中も意見を交換しながら診察に当たっておるわけですが、特に夏休みのことで非常に患者さんも多い時期であったと思いますが、その医師から、患者さんは、原発へ入って、どうもそれで起こった症状じゃないかというふうに言っておるということで、ちょっと見てほしい、自分としては放射線皮膚炎考えるがどうか、というふうな意見を求められまして、そのとき私としては、まあ、患者の言い分といいますか、というのはかなり主観的な判師も入っておりますから、やはりこの際ほかの診断考え、そして時間をかけて検査及び調査をして正確な診断をつけていかなければならないので、ちょうど私そのときに見まして、放射線皮膚炎以外にもう一つの診断といたしまして、薬による副作用として発しんが出る場合があります。固定薬しんという診断でございますが、そういうものも考えられると。これを除外していかなければいけないんじゃないかというもうな意見を申しました。私、実は薬のアレルギーのほうをかねてから専門にしておりまして、固定薬しんに関しましても、四十三年ごろから患者さんの調査、その原因になる薬剤調査とかそれの試験法とか、そういうふうなものの研究に当たっておりましたので、その関係谷垣医師ですが、その医師がそちらのほうは一緒に見ていこう、岩佐さんに関して一緒意見を交換しながら診断に当たっていこうということで、その後主として二人で診察に当たってまいりました。  で、まず八月十四日の初診の段階でどういう症状があったかということを申しますと、ちょうど右のひざの関節の内側、ちょうどひざの骨、膝蓋骨のちょっと内側のあたりに非常に大きな——直経約九センチの黒褐色の大きな班点がありました。で、これはまあ色素沈着というあれですが、黒褐色から少し赤紫色の色調を帯びております。そうしてその中に数個の脱色素斑といいますか、色の抜けたところですね、場所が点々と見られるそれから、少し皮が鱗屑といいますが、一番表面の皮が剥離するような状態が見られる。そういったことで第一にやはり急性放射線皮膚炎後の色素沈着ですね、こういったものを、患者の言う経過からそういう診断考えなければならぬ。それから第二に、先ほど申しました固定薬しんというものを考えなければならぬ。そこで方針といたしまして、第一の放射線皮膚炎に関しては、何せ被曝したと思われる可能性のあるのが四十六年の五月二十七日、これも初めは日にちも正確にわからなかったわけで、後に調査で明らかになったわけですが、要するに、四十六年で、二年前のことだったわけで、こういった場合、やはりその当時の被曝があり得たかどうかというふうな作業環境調査を徹底して行なうということが唯一の手がかりということになるんじゃないかというふうに判断いたしました。で、この線で調査を進めようという方針、それから第二点の固定薬しんを除外していかなければならないという点に関しましては、まあ、できるだけ精密に患者記憶を呼び起こして、どういう薬をいままでに飲んだか、その薬と関係してこういうものが出てきたんではないかということを聞きただしていく、そういう方法と、それから、もちろん人間のことですから、古い記憶は非常にあいまいなことで、そういう記憶だけにたよるわけにはいかないので、検査ですね、疑わしい薬を飲んでいただいて、それでその場所炎症が起こってこないかどうか、これは誘発テストというわけですが、これを「疑わしい薬剤」、これは私、先ほど申しました四十三年以来の薬剤アレルギー研究で、大体そういう固定薬しんを起こす薬剤というのは頻度の高いものはどんなものかということはよくわかっておりますので、そういうものを順番に飲んでいただく。そういうふうな検査を進めていったわけです。それで、まあ日本原電ですかの方にも来ていただいたりいろいろ調査を進め、それからそういう諸検査を試行していって、四十九年の三月二日の段階に至りまして、まず放射線皮膚炎考えて間違いなかろうという、その時点での結論に到達したわけです。  一応大ざっぱな経過はそういうことです。
  17. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、いま経緯伺いますと、昨年の夏以来、ずいぶん段階を踏んで三月診断をされておると、こういうふうに至ったと思います。特にこの同僚医師とのいろんな論議やあるいは原子力関係の学者とのディスカッション、そういうことをやりながら、薬剤等についても慎重に検討されて、そして現地も調査をした上、診断をされたと、こういうふうに伺いました。こういう診断書が出るに至った経緯考えて、科学技術庁としましては、まあ、この診断についていろんな御意見があったように私聞いておりますが、どういう点が問題があるとお考えになっておられるか、この点ひとつ長官、お伺いいたしたい。
  18. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) 先ほど申し上げましたとおりに、医学的な診断そのものということは、私どものほうで、先ほどの私どものほうの所感といたしましては、この際、人体に障害あるほどの放射線被曝がその当時の作業環境として考えられるかどうかということについての調査、つまり原子力発電所から聞いたり現場へ行ってみたりということでいたしましたのでございますけれども、繰り返しで恐縮ですが、一ミリレムということの被曝記録しか考えられませんので、一ミリレム被曝から通常身体に障害ある被曝程度とは考えられない、こういうことでございます。
  19. 辻一彦

    辻一彦君 その一ミリレムでどうかという問題はちょっと先にひとつ議論をすることにしまして、一応まあ経過を伺ったんですが、さらに田代参考人から、まあ、患者の中身ということは普通医師としてなかなか明らかにすることはできないんだが、御本人の了解も得て、この際日本の原子炉問題の安全性論議するためにひとつ話をしてもらってもいいというような了解をいただいておるということでありますので、若干その診断内容といいますか、あるいは症状等について、一応われわれが理解できるように、スライド等も使ってもうちょっと御説明をひとついただきたいと思います。
  20. 田代實

    参考人田代實君) 時間もございませんようですので、スライドを二枚用意いたしましたので、見ていただいたほうが、一番わかりやすいと思います。
  21. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  22. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 速記を起こして。
  23. 田代實

    参考人田代實君) 先ほどちょっと申し忘れましたが、その症状経過といたしましては、患者の申すところによりますと、原電へ入ったのが五月二十七日で、六月の——正確には記憶はないようですが、六月の初旬から右ひざの、いま示しました内側ですね、右ひざ内側が赤くはれてきて非常に痛みが出てきた。で、熱感といいますが、かっかとするような感じがする。そういうことで、そのあとしばらくして、また水ぶくれがその赤くなった中にできてきたと。そういう症状が、つまり原発へ出作業をして約一週間後と思われますが、そのころからそういう症状が始まった。で、その後だんだん赤みとか水ぶくれはなおっていってあとが少し浅いかいようになったり、それからいまごらんに入れました色素沈着を来たすようになったということであります。で、現在見られる症状としては、主として色素沈着、それから部分的な皮膚萎縮及び脱色素というもの——色素か抜けることですね、脱色素、こういうものが見られるというわけです。  それで、放射線皮膚炎診断した根拠ですが、まず放射線皮膚炎というのは、大きく分けまして急性放射線皮膚炎慢性放射線皮膚炎というふうに分かれます。で、急性放射線皮膚炎というのは、被曝一定潜伏期間を置いて、まあ、これは一週間である場合もあるしもう少し長い場合もあるし、それは線量とか線種——線の種類とか、それから個人差といったものでいろいろあるわけですが、そういう一定潜伏期間を置いてやけどのような症状ですね、皮膚が赤くはれてくる。それから場合によっては水ぶくれができる。非常に強い場合はかいようができると、そういうようなやけどのような症状が起こってくる。それが次第におさまっていって黒い色素が沈着していく。そういう症状を呈するのが急性放射線皮膚炎というわけです。それで、慢性放射線皮膚炎というのは、そういう急性期症状がおさまって一応なおった、形だけになってなおった状態が非常に長い間続いた後に、これは人によっていろいろですが、十年、十五年、二十年としてから慢性放射線皮膚炎の像が顕著になってくるわけですが、これは非常に特徴があります。急性放射線皮膚炎のほうは、あまり見ただけでこれが間違いなく急性放射線皮膚炎だという特異的な症状というのは乏しいんで、普通のやけどとか、かぶれとか、そういうものと見分けがつかないわけですが、慢性放射線皮膚炎になりますと非常に特徴的な像が出てまいります。これは皮膚萎縮——皮膚かやせ縮むということですね、皮膚萎縮、それから脱色素が非常に著明になる。それから毛細血管が拡張してくる。それから真皮が非常に繊維化してかたくなってくる。そして、やがてそこに非常に難治性かいようができてくるというふうなのが慢性放射線皮膚炎の像であって、これは非常に特異性が高くて簡単に特異的に診断ができる像であります。で、岩佐さんの場合、私の考えでは急性放射線皮膚炎慢性放射線皮膚炎のちょうど中間期というふうに現在判断いたしております、症状の上から。  それから今後のこの経過についてですが、これは一がいに申せません。このまま色素沈着だけで漸次なおっていくという場合も考えられますが、まあ、最悪の場合としては、やはり晩期障害としてガンの系統のものができてくるというふうなケースも考えられて、これはいま予測することはできません。
  24. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、スライドも見せていただき、それからこのずっと経過を追うての診断経過、そういうこともかなり詳しくなったと思うんです。そこで、こういうふうにして段階を踏んで診断をされたこの診断について、さきの予算委員会長官から、この診断書では困るような意味発言、そしてほかの専門医でなくては困るいうような意味の御発言を私は伺ったように思っておりますが、この点、長官発言でありますから、長官からひとつ御見解を、こういう診断経緯について問題点があるのかどうか、これ、ひとつ長官からお伺いをいたしたい。
  25. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) この問題が当初国会で取り上げられましたのが三月の十八日の予算委員会黒柳委員から取り上げられた。次いで御質疑のある辻委員から翌三月十九日に御質疑があったわけでございます。この事柄のそもそもは、先ほど来お話がございますように、昭和四十六年五月二十七日、約三時間原子力発電株式会社敦賀発電所において作業員作業中に被曝を受け、その被曝によって皮膚炎を起こしたのではないかというような御質疑でございました。四十六年の五月二十七日と申しますともうすでに三年近く前のことでありますが、私どもの耳に入りましたのは本年の三月に入ってからであるということでございます。そして、私ども調査をいたしましたところ、被曝線量——二人入っておりまして、被曝線量は一人はゼロ、一人は一ミリレム、当該の該当者は一ミリレムということでございまして、この程度の問題では、あれは放射線障害を受ける被曝線量はICRPによれば二十五レムですね。それから放射線炎症を起こすということのときには二百レムでしたか、とにかく大きな値であります。それに比べて一ミリレムということでございますから、まあ、かりに二十五レムにいたしましても二万五千分の一ぐらいでございますし、わが国の原子炉規制法に基づく許容基準等から見ましてもはるかに下回る、まあ、問題にならぬと、通常ならそういうことでそういうことが起きることはあり得ないというふうに私ども考えておったわけでございます。しかし、国会で御指摘がございましたから、実情は調べなきゃならないということでございまして、四十九年三月二十五日に科学技術庁職員原電敦賀発電所立ち入り調査をさせたわけであります。すなわち、三月十八日の黒柳委員、三月十九日の辻委員、御両者の御質疑にお答えする意味において三月二十五日に科学技術庁職員をして立ち入り調査をいたしまして、調査の結果、当時の被曝記録及び作業状況から判断すると、今回問題になっております者の原電における被曝線量被曝記録が示す数値一ミリレムをこえるということがまずないというふうに私どもは確認をいたしたわけでございます。  そこで、まあ通常ならばそんなことが考えられないことが大きく問題になっておるわけでございますし、まあ、こういうものの判断は医学的な見地からの御判断もございましょうし、それから、そもそも敦賀発電所において作業中にその放射線を受けてこういう皮膚炎になったかどうかという因果関係は全く明らかでないわけで、通常はまあ常識上考えられないことでございますから、まあ、私どもといたしましては、一つには御本人のためにも、実際はどうなんだということを明らかにすることが大事だと思いますし、かつはまた、一般の人たちに対して、原子力発電所に対してあらゆ疑惑を招くようなこともいかがかという点を考えまして、医学的判断のみならず、総合的にいろんな観点から調査いたしたいということで、先ほど原子力局長からお話がありましたように、真相究明につきましては大いにその熱意を燃やして当該問題に取り組んだ。この問題、決してうやむやにしようなんて気はいささかもないのでございます。あり得ないことであるけれども、しかし、御本人のために、また世の疑惑を解くためには真相究明をしなきゃならぬ。そうして医学的見地はもとよりのこと、その他の現地の状況、あるいはその他の立場のいろんな方々から総合的に判断して真相究明に当たりたいというふうに考えておる私の考え、立場についてどうか御了解を願いたいと思っております。ただ、専門的な事項につきましては、これは学者でございますが、放射能線医学総合研究所の熊取博士がお見えになっておられます。ビキニの患者等を診療されて、その道の権威であると承知しておるわけでございますが、医学上の問題等につきましては、私からこの機会にいろいろ申し上げても皆さんも御信頼を願えませんでしょうし、やっぱりその道の第一人者と考えて差しつかえない熊取博士の御意見等もひとつお聞き取り願えればと、こういうふうに考えております。
  26. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、時間が一時間ちょっとですからね、だから、伺いたいことが私あるので、熊取先生、余裕がありましたらお伺いします。それから委員の皆さまもいらっしゃいますから、この委員会半日全体を通して御見解を伺えばいいと思いますから。そこで、まあ——じゃあせっかくですから、ちょっと時間を急いでいますので、ごく簡潔に御見解だけ、要点だけちょっとお願いをいたしますか。
  27. 熊取敏之

    説明員(熊取敏之君) 一般に放射線障害といいますのは、放射線を受けないと出ない、これはもう事実でございます。それから、まあ、たとえばいま皮膚が問題になっておりますけれども皮膚の場合は確かに放射線障害の歴史から考えまして、皮膚障害というものが最初にまあ認識されてきたということがございまして、それから放射線治療による経過とかというようなものでかなりよく知られております。しかしながら、これはもう放射線障害一般について言えることであります.が、放射線障害の変化というものは、特にこういうふうに何年かたって起こってくる晩発障害というもの、それは医学的といいますか、いろんなことを調べましても、いわゆるこの変化があったら放射線障害であるぞという特異性がないというのがいまの医学的な常識であります。したがいまして、その全く医学的なことから何年前にさかのぼりまして、これが放射線であったかどうかということを見るということは私はほとんど不可能だと思っておるわけでございます。で、したがいまして、この放射線を受け、しかも、それが皮障の障害を起こすようなものであったかどうかというそのことがもう一番のきめ手になると思います。
  28. 辻一彦

    辻一彦君 ほんとうは詳しくお伺いしたいんですが、時間が限られておりますので、また全体を通してお願いしたいと思います。  そこでちょっと簡単に伺いたいんですが、長官、ほかの専門家に見せなくちゃいかぬということで、三月三十日本岩佐氏はある人と一緒に大阪から空路羽田に飛んで、日本原電差し回しの車で千葉大学医学部に診断を受けに行ったと聞いておりますが、それは事実ですか。
  29. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) そういう事実があったと承知しております。
  30. 辻一彦

    辻一彦君 それからこの本人は、特別の診断と治療が受けられるというので、千葉大学医学部の皮膚科の某教授の診断を受けたが、某教授は診断して、これはひどいと、田代医師と同じことしかできないと、特別な方法や治療はないとこう言われて、約束が違ったと言って本人が大阪に帰ったという、これも事実ですか。
  31. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) 詳細どういうやりとりがあったかは存じませんが、政府委員のほうで承知しておると思いますから、直接政府委員をして答弁いたさせます。
  32. 辻一彦

    辻一彦君 簡潔に頼みます。
  33. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) 私の聞いておりますところでは、診断、治療等の見通しを立てるためには若干時間を要するであろうということを病院側が申し上げたところ、そのつもりでは来ておらないとおっしゃるから、そういうような点で両方の御意見がそこのところで合わず、また追って、これは原電側は本人の診断と治療のために取り計らったものと考えますけれども、そういう努力は怠らないけれども、その当日はそれで御本人はお帰りになったと、かように聞いております。
  34. 辻一彦

    辻一彦君 政府の言うその真相究明というのは、専門の判断において医者がいろんな過程を経て、その良心と責任において、医師法において診断をしたと、その結果に何か問題がありとして患者を引き回すようなことが真相究明の中身ですか、いかがですか。
  35. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) 先ほど申し上げましたように、こういう放射性障害というものはいろんな面から、いろいろな環境をとらえて究明しなければならないと考えますところに加えて、時間的にもだいぶたっておりまするので、そういう意味では、調査とそれから意見が、いろんな意味で各方面の意見を聞かなきゃならない——事実についてもあるいは意見についても——考えることであって、その一つとして、いま原電のほうでは、患者さんをより一そう治療と診断のために万全を期したいということの一つのあらわれであったと考えますけれども、御説のような、患者さんを引き回すということが当方のねらいではないことはもちろんでございます。
  36. 辻一彦

    辻一彦君 その最後のことばどおりであってほしいと思います。  そこで真相究明の、内閣にも首相特別指示で究明委員会が置かれるということですが、私は、やることは、先ほどから問題になっているように、日本原電敦賀発電所で当時の状況からは徹底的に洗い直すということがこの一番大事な真相究明の中身であると思いますが、長官いかがですか、簡潔に。
  37. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) 真相究明につきましては、先ほど申し上げましたように、通常ならば考えられないような事情でございます。すなわち被曝量わずかに一ミリレムであるといわれておりますし、そして、それが放射線皮膚炎であるという診断を受けました。先ほど熊取博士からお話がございましたように、だいぶたってからこれは放射線皮膚炎だと診断することは非常に困難である、医学的に困難である。だから、ほんとうにその放射能を相当大量に浴びたのかという事実が、はっきりさせなきゃこれはわからぬと、こういうお話でございます。そして、いずれにしてもそういうむずかしい問題を、そしてまあ世間でいろいろ原子力発電の立ち直し等が大きく期待されておる時期にこういう問題についてこういう結果が出たわけでございますから、やはり政府としては真相を究明することは当然でございまして、総理からも十分これについて調べるようにというお話が閣議であったことは、これは事実であります。したがって、私どもは、それのみならず、たとえば原子力損害賠償法とかあるいは労災法とかいうことで、もし労働災害であるならば、これに対して補償問題も起きてまいりましょう。さらにまたこの原子力損害賠償法にも下請の関係者は規定があるということ。まあ、両方一緒にやるかどうかは別といたしまして、いずれにしても、もしそういうことがあれば、そういうことまで考えなきゃならないと、そういう因果関係があるならば。したがって、そういう際には、金を払う以上は政府としてはちゃんと間違いのないものであるということをはっきり確認しなきゃいけませんですからね、そういう意味でも、御本人のために、そして一般の人が疑惑を持たないために真相を究明しなきゃならぬということは私は当然のことだと思いますね。また、そのことについてはもう辻委員も全く御異存ないものというふうに私は確信をいたしております。
  38. 辻一彦

    辻一彦君 私の聞いているのは、敦賀原電の四十六年五月当時の環境や状況を徹底的に調べるということが真相究明の一番大事な点だと、こう言っているのです。そうであるかないか一言でけっこうですから、いかがですか。
  39. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) そのことも重要なことの一つであろうと思います。
  40. 辻一彦

    辻一彦君 そこで問題は、私は、診断はいま専門的な御見解も御報告もあり、その論議は別として、医師法に基づきそして医者の良心と責任で私は下された診断であり、これについてとかく言われることはないということをいま伺ったわけです。そこで、一ミリレム被曝ということが、もう常識的にいって、そういういわゆる障害が出るというようなことが考えられないということが一つの問題でありますが、もう一つは、このガンマ線とベータ線が発電所で一緒に出るとすれば、ガンマ線が一ミリぐらいしか検知できないのだから、ベータ線はたいしたことはないだろうと、こういうような前国会での発言もありました。ここでは私は現場のいわゆる四十六年五月二十七日に、そこを押える一番ポイントであると思いますが、一ミリレムというガンマ線の検知ということが全然被曝に問題がないのかどうか。これをちょっと専門田代、久米先生から、残された時間十五分でありますので、それをひとつ含んでお話をいただきたい。
  41. 田代實

    参考人田代實君) 初めにちょっとあれですが、診断を下すに至った一つの根拠としまして、実は一週間日ぐらいからそういう炎症症状が起こってきたということを患者が申し立てておったということを言ったわけですが、実はこれの裏づけは、客観的な裏づけは取っております。六月四日に近くの山口医院というところに、そういう症状があったので行って診断を受けて治療を受けているという事実が、山口医院からの診断ではっきりいたしております。やはり八センチぐらいの大きな赤い斑点が、炎症症状があったというふうに記載されております。  それから、一ミリレム被曝で起こり得るかという問題でありますが、これは非常にこのことが私の診断に何か疑惑を持たれる一つの大きな根拠となって、新聞紙上なんかで、こんなことは放射線医学の常識では考えられないとか、ICRPの勧告でもそんなことはないとかいうふうにいわれておりますが、この点、実は放射線医学の専門家であれば、こういうことはまさか言えないとぼくは思っておったわけです。私の口から申すよりも、この本を持ってまいりました。これはここにおられる熊取先生や東大の吉澤教授その他放射線医学の専門家の書かれた「放射線の防護」という書物でありますが、そこで吉澤教授が三百十ページに書かれておる文章を読ましていただきます。「放射線皮膚炎検査」という項目で書かれておることでありますが、「しかし、個人モニタリングの技術的制約などのため、個人用モニターには過剰被曝記録されていないのに皮膚障害を発生することがあるので注意する必要がある。」というふうに書かれております。これはちょっと解説しますと、ポケット線量計とか、エリアモニターとか、空間線量率計と、こういったものは主としてエックス線とかガンマ線とか、非常に透過力の高い放射線を測定する機械でありまして、ベータ線とか、そういう透過性の少ない、透過力の少ない放射線に関しては全く検知することかできない。——全くというのはあれですが、まず、ほとんど検知することができないわけですね。ですから、首からぶら下げたポケット線量計及びエリアモニターなどのエックス・ガンマ線用のサーベイで一ミリレムだから皮膚障害は起こらないというふうなことは暴論だと思います。で、この点に関しては、専門であられます久米先生のほうからも、もう少し詳しくお話ししていただけるんじゃないかと思います。
  42. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) ちょっと初めにお断わりいたしますが、この問題については、田代先生から、昨年の八月にわれわれのほうに相談がありまして、そのときは、田代先生、先ほど言っておられますように、放射線皮膚炎だという診断が一応出ているんだけれども自分としてはそれについて自信が持てないのでまだまだこれから調査したいと、ついては原子力の専門家の皆さんの協力を得たいという、そういう申し出がありました。同じ大学のことですから、私たちも一緒に協力しようということになりまして、主として私の共同研究者でございます岡村助手、この方が中心になりまして、それ以来、ずっと数カ月にわたって田代先生と共同作業をやってまいりました。私もそれの相談に乗ってまいりましたが、その岡村さんが現在病気で倒れておりますので、やむを得ず私が出ることになりました。  それで、もう時間がございませんので単刀直入に申しますが、先ほどからの科学技術庁のあれを聞いておって、非常に私は寒心にたえないわけです……。
  43. 辻一彦

    辻一彦君 十一時五分までありますけれども……。
  44. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) それで、一ミリレム被曝があったと盛んに原子力局長は言っておられますが、これは間違いでありまして、その点を、これは、この間からの新聞なんかを書いておられる記者の皆さんもおそらく理解をしておられないのでそのままうのみに書いておられるので、そうではないのです。はたして岩佐氏のひざに何ミリレム当たったかということは全然いまのところ証拠がないわけです。あるのは何か。こういうポケット線量計というものは、皆さん御存じだと思いますが、きょう持ってくりやよかったんですが、忘れてきたんですが、万年筆のようなものがございます。これはもう原発へ行かれたらございますが、それを首から彼はぶら下げさせられたんです。ここの、ここで受けた線量、しかも、先ほどから問題になっておりますこれはガンマ線です。ガンマ線で一ミリレムここで感じたと——一ミリレントゲン、正確に言いますと、一時間一ミリレントゲンという数がここに記録しておったという、それだけでありまして、それをあたかも一ミリレム被曝を受けたのにあんな皮膚炎が起こるはずがないと——ここか問題のすりかえなんです。この点は、議会の議員の皆さんもぜひ勉強をしていただきたい。で、あった事実は、ここの、このぶら下げておった、このたよりない——これは、われわれは非常に信頼がおけないということでもう私たちの研究室ではこれを使っておりません。そういうもので出た、そのあやしげな線量が一ミリレントゲンであったというそれだけです。  それで敦賀のやつをいろいろ調べてみますと、使っておる線量計が二つございまして、一つはこの万年筆、それからもう一つは、ここに持ってまいりました、これ、皆さん御存じのGM管というやつですね、ガイガーカウンター。こういうふうに鳴ります。それでこの部屋にも自然放射能がありますから、これ、鳴っているのがそうです。それでそいつがベータ線には全然だめだということを、もう実験で示します。ここへ持ってまいりましたのは、これ決しておそろしいことでございませんから、十分、科学技術庁長官も認められた法律以下の量でございまして、持ち歩いてもいい量でございますが、これは何かと言いますと、セシウムです。これはやはり敦賀原電原発の中でできる死の灰の中の代表的なものです。これにはベータ線とガンマ線、両方出てまいります。これは遺伝に非常に影響を与える、われわれの睾丸とか、そういうところへ入り込んで非常にこれは影響を与えるもんでございますが、このセシウムからはベータ線とガンマ線が出ているんですね。それでこの薄い、皮膚ぐらいの厚みのものの、こっち側に乗ってあります。それでこっち側からやりますと一これ、鳴っていますね。これは何が鳴っているかというと、これがベータ線の音です。それでその敦賀原電などで調べられたというのには、線量計というのは、その前にこういうキャップがかぶせてあって、こうやってはかるんです。そうすると、全然鳴らぬでしょう。これなんです。こういうものではかっているわけですよ。それで、一ミリレントゲンとかなんとか言っているのであって、私たちは、そうではないと——それは事実として認めようと——その事実自身も、あとでまた時間があったらお話ししますが、非常に疑わしいんです。疑わしいですが、百歩譲ってそれを認めたとしても、岩佐氏の足に、そういうベータ線の汚染ですね、あのちょうど十センチぐらいになりました、ああいう形で、ここに局部的にその死の灰の成分がそこに落っておったのではないかと。  その岩佐氏の作業——これは詳しくは申しませんが、その四十センチのパイプにもたれかかって、足でくっと力を入れて、それでハンド——手で持つ旋盤で穴をあけるというそういう作業なんです。それを三時間にわたって彼がやっていた。その労働のときに、ここの、この足を、そのパイプにつけているわけです。もしも、そのパイプにそういう汚染があったら、その三時間の間、ずうっとここで、この音がしているベータ線にさらされているわけです。詳しいことはやめますけれども……。  ここで、原子力局長さんがおっしゃられるように、一時間一ミリレントゲンあったとしましょう、ガンマー線で。それでよろしい。そうしたら、そのときに、ここに死の灰がついておって、どれぐらいになるかということ——これは熊取先生なんか計算されているはずなんです。こんなにりっぱな方が政府におられるのに、いまごろ私どもがどうしてこんなことを言わなならぬのか、もうほんとうに情けない話ですが、ここに、ひざで一時間で数千レントゲンになるという——数千レムです、正確に言うと——まあレントゲン、とちらでもいい。いいですが、そのベータ線によって数千レントゲンの被曝——これこそまさに被曝です。そういうものを皮膚は十分受けよる。その数千レントゲン、あれぐらい、まっ黒になるぐらいのものがここにあっても、ここで、そういうポケット線量計というようなもので見ておったならば、それはわずか一ミリレントゲンしか出ないという——こんなことは放射能のイロハです。こんなことは、もう政府委員がりっぱなのがおられるのに、どうして私は国民にそういうことを正直に言われないのか。で、あたかも一ミリレントゲンであって——それはそうてす——もしも被曝が一ミリレントゲンだったら出ないというようなことはだれだってわかっているんで、田代先生だって、そんなことはとうにおわかりなんです。だけど、そういうものでモニターをしておったら、皮膚の障害なんかを見落とすから気をつけろと、それがさっき田代先生の言われたその本なんです。これも放射線の防護の常識であります。熊取先生なんかも特にそういうことは御存じなのに、あえて何か証拠をあれしない。それはそうです。はっきり証拠が出ないとそれは放射線障害かどうかわかりません。しかし、そういう可能性があるという認識のもとに真相調査とやらをやられるか、あるいはそんなことは常識で考えられないというそういう非科学的な態度で真相究明に乗られるかによって、まるっきり話が変わってくるんです。この本はぜひ——この委員会は科学の専門委員会だそうでございますので、政府考えておられることは、どこかインチキであって、どこをごまかす——ことばが悪いかもしれませんが、私にはそう思える。で、私だったら、普通の科学者だったら、そういうベータ放射線被曝は十分あり得るから、そうしたらあと問題は、そういう局部的な汚染が当時あったか、なかったか。これは三年前のことですから、私はたいへんだと思いますが、それを徹底的に調べるということこそ、行政なり、あるいはそれをあれされる立法府の責任であろうと思います。それを調査の前から、そんなことはあり得ないので、まるで、寝言みたようなことを言うなと言わんばかりに長官ないしは原子力局長がおっしゃったら、これははたしてどういう調査ができるか、私は非常に寒心にたえないんです。  それで、まだ時間がございましたら、そういう可能性があったかどうかということについて申し上げさしていただきたいと……。
  45. 辻一彦

    辻一彦君 ええ、まだ、十一時五分までですから、あと二分ぐらいですが、どうぞ。
  46. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) ちょっとその図面を。  非常にこういうのは具体的でございますから、ぜひ具体的に議論をしていただきたい。  それで、岩佐氏がどういうところで作業をしたかということを、これは私は行っておりませんが、先ほど申しました共同研究者の岡村が一緒に参りまして、田代先生と一緒につぶさに現場を見てまいりました。それで、この間から新聞を読ましていただきますと、何か日本原電もそれと一緒と言うとあるいは語弊があるかもしれませんが、科学技術庁の方も、当日、作業をしたのは、汚染監視区域であって汚染区域でないと。これもおよそ放射能のイロハをわきまえていない方の発言でありまして、汚染監視区域というのは、汚染があるかもしれないから気をつけよと——これがわれわれの常識なんです。私たちもずいぶん、二十数年間実験室におりますが、汚染監視区域というのは、そこではひょっとしたら汚染が起こるかもしれないから気をつけよと、そういう意味なんです。それを汚染をしておった場所ではない、汚染監視区域であって問題ないというような、そういうばかげたことを白昼堂々と答えられるということの中に、現在私は非常に不安を感じておるわけです。  どういうところで作業をされたか。実は、私もこれ初めて聞いてびっくりしましたが、これ、原子炉の炉室なんです。全体のまでは書いていませんが、皆さん行かれたあのドームがございますが、あのドームが、一番外の円です。それでそこは普通の者はめったに入れませんで、ああいう二重とびらになっているんですね、一番はじ——矢じるしになっているところ。で、あそこから、これは岩佐氏によると、これはここに入るのに非常に抵抗したのにもかかわらず、何かあれですね、万博で非常に急いでおるからどうしてもやってくれという、いやがる本人をこの炉室へ連れ込んでいるわけです。そうしてあの二重とびらから入れて——あんなところ、一般人は私は入れるべきでないと思うのを、それを、案内人をつけさして、それを入れて、それで矢じるしの場所に行って、あそこの赤く塗ったところ、あそこで作業をやった。どんな作業をやったかというと、ちょうどあの赤い場所にさっき言いました四十センチの海水の通るパイプがある。そのパイプをはずしてきて壁ぎわに置いて、ここでやれというふうに指示したんです。それがあの赤い場所です。ところが、それは汚染監視区域であると言っておられるわけですが、一番問題は、それは原子炉の一番まん中、よごれているところ、「格納容器」と書いてございますね、あそこは当時といえども汚染が非常にある場所であるということははっきりこれは証人があります。もう原電の方が田代先生のところへ来られた証言で、あそこはその当時からもうよごれておってあたりまえです。あれは一番汚染区域のひどいところの一つですが、それへの出入り口なんですね、あそこにこう書いてありますね。あれはこう囲いがありましてね、普通はあそこは入れないようにしきいがしてあるんですが、その当時、岩佐氏の証言によると、その辺は人がだれもおらなかった。この炉室——これ一階になるんですが、その一階の自分の近傍には二人だけ、その労働者二人だけを残してみんな出て行ってしまったと。そういう状況にああいうところを置いているわけです。しかも、これはもっと重大ですが、いろいろその当時の記録を調べますと、この当時この原子炉の中で非常に重大な事故が起こっている。何かというと、燃料棒が大破壊を起こしておりまして、この炉室の中に数千キューリー、それは保安基準をすでにこえておって、そういうことが起こっておる。ですから、一次冷却水の中もかなりな死の灰があったということは十分想定できる。しかも、その格納容器の中で当日もそうですしその前後も作業をやっておられる。その格納容器の出入り口というのはまさに向こうしかないわけですから、そういう点でそこからよごれたものを持ち出されたという可能性も、これはちゃんと記録を調べないと、ここからは私の想像でございますが、そういう可能性も十分ある。そのときに何かそこによごれものが局部的につくという、そういう可能性も十分あるんではないか。そういうことを裏づける一、二のあれがございまして、まず岩佐氏が行ったときに、その案内をしたある方が、その中ではビニールを敷いてこの上でやってくれ、もしもそのビニールからはずれるとよごれるかもしれぬ、それであなたが使う道具もよごれるかもしれぬが、よごれたらそれは置いていってくれと、そういうことを本人に言っている。それからあの赤い地点で、さっきから盛んに一ミリレントゲンであるとかというふうなことを言っておられますが、これははっきり向こうの課長さんが持ってこられた資料、ここにございますが、それにはあの赤いところで五とか十とかそういうふうなミリレントゲン毎時、そういう値も出ております。それは私の常識では非常に局部的な汚染がその周辺にあったのではないかということを疑わすに十分であります。しかし、こういうことは全部想像でございまして、そういういまから三年前で非常に困難ではございますが、その辺は非常に汚染源に近かった、それで汚染しておったかもしれないということを考え調査をすべきであるというのが私の意見です。最後に申しますが、私も長い間放射能の実験室をいろいろあずかってやってまいりましたけれども、私の実験室でも作業員の方に入ってもらうことがあります。しかし、そのときにどうしてもやらなければならないことが一つあるんです。何かというと、その作業をする場所の空間線量といいます、こういうものではかるんですね。こういうものではかって、一体何ミリレントゲンあるかということを調べること、これが一つ。それからもう一つは、いまのようなパイプをさわるような場合は、そのパイプの表面がよごれていないかどうか、実際作業する場所がよごれていないかどうかということを点検する。この二つのモニターをやって初めて作業員を入れるというのが常識でございます。これは放射能の実験室あるいはその他の放射能を扱う部屋を管理するイロハであります。これを全くやっておられない。これは安全課長に、来られた方について質問をいたしましてもそうでございまして、モニターの記録はその日からはずれたところのものしかないとか、あるいはその汚染にしましても、検査をしたけれども、その周辺はやってありますけれども、肝心のパイプそのものの汚染検査をやったという証拠はいまだに原電のほうは出すことができないんです。そういうふうな状態でありますから、普通の犯罪にたとえますならば、その犯罪の起こった情況証拠は私は十分そろっておると思う。それだけでも有罪の判決が出ると私は信じております。
  47. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、時間が大体来たわけですが、熊取さんにちょっとお伺いしますが、常識では一ミリレムではそういう被曝はあり得ないと言われたんですが、いまのお話によると、ベータ線の場合はそういう可能性があるということ。これは実は田代医師や岡村助手日本原電の現場へ行ったときに立ち会いに東大の吉澤教授が見えて、そのときにベータ線による汚染の可能性はどうかということについてはやはり会社は否定することができなかったという事実がありますが、この点、いかがですか。
  48. 熊取敏之

    説明員(熊取敏之君) 私の申し上げましたのは、そういういま皮膚の障害が残っておる、そういうことからだけはいけません。ですから、そのベータ線、情況証拠ですね、それがベータ線の、しかも皮膚に変化を起こすような照射があったのかどうか、そういうことをはっきりさせることが一番でありましょうと、こういうことなんです。
  49. 辻一彦

    辻一彦君 私の伺いたいのは、それはわかりますが、一ミリといえども、ガンマ線が一ミリ検知されても、ちょっと離れたところにベータ線の強力な線源があり得るということは可能性はあるわけですね。
  50. 熊取敏之

    説明員(熊取敏之君) ベータ線の場合は、これは保健物理の専門家の方から言っていただいたほうがいいかもしれませんが、非常に飛程が短いのです。たとえば私ども経験いたしました例の福竜丸の事件でございますが、あの場合、船員は木綿のシャツ、それからゴム長、それから帽子をかぶり、それからゴムの前かけをかけて大体作業しておったわけです。そうした場合に、皮膚の障害が起こりましたけれども、それはほんとうに露出部だけでございます。つまり、そういうふうな皮膚にベータ線を出すものが密着いたしまして、そうして皮膚の表面がある線量を受けて、そこで皮膚の紅斑なり何なりそういうものが起こってくる。こういうことでございます。ですから、そういうことがあったのかどうかということですね、それが一番大事なことであります。
  51. 辻一彦

    辻一彦君 ですから、ポケットの首つりの線量計ではガンマ線の検知が一ミリであっても、たとえばいま先ほど参考人述べられたように、ひざにベータ線が衣服にくっついて、水にぬれてそこに密着しておれば、やっぱりそういう被曝の露出といいますか、くっつく可能性があるということは言い得ると、私はいまの御発言から思います。そこで現に六月二日にいわゆる正規の形式による用紙に空間線量ですね、ガンマ線五−十ミリレムというのが日本原電が出された資料に検出できるわけですね。そうしますと、ガンマ線の五−十ミリレムが空間線量ではかられたということは、これはかなり場合によれば大きな線量があり、ベータ線の存在も私は、これは状況をよく確認しなければいけませんが、ないということはなかなか否定できないんじゃないかと、こういうように思うわけです。そこで、どうしてもこれには五月二十七日に原票できちっと書ける形式のものがありますが、整理したものじゃなしに、原票による被曝状況、放射汚染の状況をきっちり出すことと、それから、これにかかわる五月前後のやはり原子炉のいろんな状況、作業日誌、線量、こういうものを一切のやはり資料を国会に提出をいただいて、これを具体的に究明する中で私は国会における真相を明らかにすることができると思います。そういう意味におきまして、そういう資料の提出を私は要求いたしたいと思いますが、長官いかがですか。
  52. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) いまお話がありました事項につきまして、まず政府委員から説明をさせます。その後にその資料等の問題はあらためて理事会でいろいろ御相談願って御処置を願いたいと思います。
  53. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) 簡単に申し上げまして、あと技術的には局次長から申し上げます。  まず第一に、ポケット線量だけにたよったということではございませんで、その当時の管理体制がそのとおり行なわれていたかどうかと、たくさんのチェックポイントがございますから、そのとおり行なわれていたかどうかということ、そのほかの空間及び表面等の線量もはかってどうであったかということをもちろん総合判断する必要があると、そういうことで申し上げたわけでございます。それから、なおそういうことでいろいろな面でこの後は調査というものは総合的にいろんなところを勘案していかなければなりませんので、先ほど辻先生の御質問に対して私は患者さんを引き回すことだけが目的ではないと申し上げましたが、今後は本件については患者さんの御協力を必要とすると考えておりますことをつけ加えさせていただきます。
  54. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 私ども調査の結果を簡単に申し上げますと、当時におきます放射線管理はポケット線量計だけではございませんで、出入り口におきましてハンド・フット・モニ夕ーによって十分汚染検査も行なっております。それから先ほどベータ線だけが出てガンマ線が出ないからというお話がございましたが、そういうことは、原子力発電所では単体でベータ・エミッターだけが大量に存在するということは考えられないということかと存じます。  それから当時、同様の作業をほかの方がやっておられまして、その方々の被曝記録から見ましても、非常に受けた線量が少ない。それからその作業場の周辺を毎日何回か表面汚染のテストをいたしておりますが、このテストの結果から見ましても、この値が許容表面汚染限度の二けたぐらい低いところである。この測定結果、調査結果はあとで御報告申し上げますが、二けたぐらい低い。これは十五カ所にわたっての表面汚染のチェックをいたしております。そういうふうな関係、その他各種の調査結果を総合判断いたしますと、そのような局部的な汚染はあり得なかったというのが調査結果の判断でございます。
  55. 辻一彦

    辻一彦君 資料はどうなの、要求した資料。私の質問したことに答えてくださいよ。
  56. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 先ほど申し上げましたように、たとえば表面汚染検査の資料等は御提出できると思います。
  57. 辻一彦

    辻一彦君 これで終わりますが、その十月のコピー私見ております。しかし、いろいろ問題がある。だから、時間があればいろいろまだまだ参考人意見を聞いて論議をしたいんですが、その時間がございませんから、あとまた各委員でひとつそういう事実を明らかにしていただきたい。  そこで、その一枚のそういうものをもらっても、整理されたものを見てもしようがないので、やはり私は五月前後における敦賀の原子炉で燃料棒等のいろんな問題があって、その時期にやはり汚染物がいろいろ移動されている可能性が十分あるわけですから、そういう状況を確認できる私は一切の資料をひとつ提出をいただきたい。そういうものを解明することで私は真の原因、事実が究明されていくと思います。その点の資料要求をぜひお願いしたいが、これは主査からひとつ確認していただきたい。
  58. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) 私どものほうといたしましても、すでに三年前のことで資料がどの程度あるものか存じませんけれども、極力その御趣旨に沿って努力はいたしてみます。私、そういう意味で検討してみたいと思います。それから同時に、その検討の経過——これは理事会というのかあるんですかな、分科会ですから。予算委員会の理事会ですか、経過で、これは委員会の御要望としてまとめていただくにつきましては、いま辻委員の御要望でございますから極力御趣旨に沿うようにいたしますが、私は、まあそういう資料が全部そろい得るものかどうかということについては極力努力はいたしますが、できなかったらどうだと言われてもいかがかと思いますから、その経過等につきましてはまた各党代表の方々、あるいは予算委員会の理事の方々に御相談して処置をする、こういうことにさしていただきたい、こう思います。
  59. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) ただいまの資料要求の件につきましては、後日理事会でこれを検討いたします。   〔主査退席、副主査着席〕
  60. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 私は、同僚委員辻委員が多少時間をお使いいただきましたので、簡単に二つ、三つお尋ねいたします。  第一の問題は、いまいろいろ御質疑等がありました放射線被曝の問題でございますが、これがどうであったこうであったという内容につきましては、いろいろ問答もありましたし、また後ほど御質疑もあるようでございますから、その内容には立ち入って申し上げませんが、十分ひとつ真相の御究明をお願いしたいということが一点。  それから、こういう問題がありますと、またそれが取り上げられまして、原子力発電所管理の守全そのものが非常に大きな問題としてクローズアップされてまいりますので、今後こういう作業等をなすような場合には、あらゆる点から十分の関心と注意を払っていただきたい。そうして後日そういうことが問題にならないように万全の処置を講じていただきたいということでございます。  この二つにつきまして長官のちょっとお考え伺いたいと思います。
  61. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) 熊谷委員仰せのとおり、きわめて重大な問題でございます。私どもは、先ほど来申し上げますように、常識では考えられないようなことでございます。ではございまするけれども、やはり御本人のためにも、また世の中の人たちの疑念というものに対処する意味におきましても、事態をはっきりさせなければならぬということにつきましては、真剣にこれと取り組んでまいりたいというふうに思っておる次第でございます。御趣旨に沿うように大いに努力をいたします。  この機会に主査に一つ申し上げたいのでございますが、先ほど科学技術庁のことに対して参考人から、非科学的だというような表現とか、インチキというようなことばを使いました。私ははなはだ遺憾でございます。速記録を取り調べまして御善処を願いたい、このことをお願い申し上げておきます。かりにも参考人として国会でいろいろ御発言になる以上は、議員同士のことでございますればその場のはずみでいろいろやりとりをいたしますから、そんなこと一々私は申し上げませんけれども、議員外の者が政府の立場に対してインチキだとか非科学的だとか——「非科学的」ぐらいのところまでは立場の相違でよろしゅうございますが、インチキなどということばは使うべきでないと思いますので、どうかひとつよろしくお願いします。
  62. 細川護煕

    ○副主査細川護熙君) その件につきましては、理事会で善処いたします。
  63. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 もう一つあとの、今後そういう問題が起こらないように……。
  64. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) きわめて重要なことでございますから、今後こういうことが起きないように最善の努力を尽くしたいと思っております。その意味におきましては、いろいろ各方面の御教示も得て善処をいたす所存でございます。
  65. 竹内藤男

    竹内藤男君 関連。  ただいま久米参考人田代参考人のお話を聞きますと、その被曝された方が入られたときに、その作業環境検査、監視が十分であったか、あるいはそのコンクリートのパイルですか、これの表面の検査、監視が十分であったか、そこら辺に一番の争いがあるようでございまして、一ミリレム被曝でいまのような皮膚炎が起こるということはなさそうに私は判断したわけでございます。その意味におきまして、科学技術庁におかれまして、今後検査、監視の体制につきまして、今回のことを戒めとして改善をされる、そこの点が一番焦点だろうと思いますが、その点につきまして今後の検査、監視の体制をどうされるか、一言だけお聞きしたいと思います。
  66. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) 先ほど申し上げましたように、事の起こりは昭和四十六年五月二十七日でございますが、私どもの耳に入りましたのは昭和四十九年三月でございます。そうして原子力発電所がこの事態を承知いたしましたのは、私ども調査によりますと、昨年の八月ごろだと聞いております。しかし、昨年の八月ごろにいたしましても、そういう事態があればわれわれの耳に入れてもらわなきゃ困るじゃないかということは原子力発電所のほうにも申しております。そうして原子力発電会社の敦賀発電所のただいまお話がありましたことにつきましては、格別私どもは弁護しようなんという気はいささかもございませんから、もしそういう点で問題がありますれば、これを遠慮なく指摘をいたします。また今後そういうことが起きないように十分やりますし、また当該会社の当該発電所ばかりでなく、全体としてこういう問題についてもう遺憾のないように努力を尽くしたいと考えておる次第でございます。
  67. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 それから、いま御提案になっております電源開発促進対策特別会計でございますが、所在県のほうに交付されることにもしこれが成立すればなりますその県に対する額等については、いずれ政令か何かでおきめになることかと思いますが、大体でけっこうですが、どういう標準でお考えになっておられるか、もし差しつかえなかったらお話しをお願いしたいと思います。
  68. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) ただいまの点でございますが、先生御承知のように、今回国会で御審議を願っております三法案が成立いたしますと、二種類の交付金が出ることになっております。一つは発電所の所在市町村及び周辺市町村に対する交付金でございまして、これはその設備の能力、容量に応じまして一定の比率で交付金を地元に交付するということでございます。ただいま先生御質問の点は県に対する交付金でございますが、これはその第二のほうでございまして、原子力発電安全対策等交付金という名前をつけておりまして、所在県が行ないます原子力発電につきましての安全対策に対して国が援助をするという形で交付金を出すことにしておりまして、四十九年度は約九億円をそれに充当することにしております。その内容でございますが、三つございまして、一つが環境放射能の監視機器、いわゆるモニタリングでございますが、モニタリング関係の機器の整備の費用でございます。それから第二が温排水関係調査費でございます。それから第三が主として安全問題につきましての広報、PRにつきましての費用でございます。この三つにつきまして先ほど申しました総額約九億円の金額を原子力発電所の地元の県に支出するという計画でございます。
  69. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 このPRの問題でございますが、御承知のように、たとえば福井県などでは例の原子力センターというのがございまして、これがPR等に非常な役割りをやっていくということになってますが、これはやはり現在の状態で企業がやりますか、百尺竿頭一歩を進めて、安全について責任を持たれる国そのものがおやりになるのが当然ではないかと考えますと、そういうPRのために運営されるものについての費用もまた国がもうほとんど持ってやっていただくというのが当然ではないかと考えるわけですが、現在、御承知のように、その建設費に間接にその一部を持っておられるだけでございますし、また今後の運営についてはほとんど県なり市なりあるいは企業なりが持って、国は関与されないというような状態ではないかと思うわけでございます。よくメリット、メリットということが言われますが、いまお話しになったようないろいろの基準は、まだメリットまではいかなくて、当然国が持たねばならぬというのを県が行なってるものに対しての費用だけは考えようという程度でございまして、とてもそのいわゆるメリットというような段階にはいかないと、それは万々御承知のことと思いますが、そういう事態でございますが、しかも、その国が持たねばならぬという費用の中にもまだまだいま申し上げましたような原子力センターの運営等に関する費用などはまだ考えられていないのではないかと、われわれとしてはこういう当然の費用を、まあ仕事させるのは県に直接にやらせるとしましても、この費用は当然国で考えていただくべきであり、しかも、それ以外にそういう原子力発電所所在のためにいろいろな問題に対処する県としての問題がありますので、やはりまあメリットと言うといかにもちょっとこう何ていいますか、ものほしそうなことになるかもしれませんが、しかし、日本の現状ではやはり必要経費の上にこういうメリットがあるということでなければこのような問題をスムーズに処理して原子力発電所の推進をはかるということはむずかしいのではないかと思います。一応まあ現在のこの法案は、法案としていま出されたばかりでございますので、今回はまあ何とかしてこの法案の成立を期待しておりますとともに、すぐ近い機会におきましていま申し上げたような点を十分御考慮願いたいと考えるわけでございますが、そういう点に対して長官の御方針、お考えを承りたいと思うわけでございます。まあ、局長でもけっこうでございます。
  70. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) ただいま先生御指摘の点につきましては、福井県は先生重々御承知のとおり原子力発電の集中地帯でございまして、その集中地帯に原子力の主として安全問題を中心にいたしましてPRをいたします原子力センターが設立されてますことは、私どもとしてもたいへんけっこうなことだと考えておりますし、県当局とも十分連絡をとりましてできるだけの御支援をするということで進めております。で、御承知のようにすでに四十八年度につきまして動燃事業団を通じまして三千万円出資しております。今後の建設の見通しにつきましてまだ最終的な計画が確定していないわけでございますが、最近の建設施設費の高騰その他もございますので、今後も十分県当局と御連絡をとりましてできるだけの御援助を差し上げたいというふうに考えている次第でございます。  それから、PR事業全般についてでございますけれども、先ほど県への交付金につきまして一般的な基準を申し上げたわけでございますが、これは各県一律に割り当てる、金を配賦するということではございませんで、集中県には当然それだけの割り増しと申しますか、を考えておりますので、大体標準的なケースに比べまして三倍ないし四倍程度の交付金が福井県には交付されるというような計画を持っておりますので、全体としてそのPR事業の運営につきましてはほかの県に比べまして集中県であるだけの相当念の入ったPR事業をやっていただけるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  71. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 時間が十分ございませんので、最後にもう一つお尋ねいたしますが、まあ、いまの件は、いまさしあたってのことにつきましてはいまお答えになったとおりでもうそれでよろしゅうございますが、しかし、とうていこのような程度では不十分であると考えますので、ひとつできるだけ早い機会にもっと積極的なそういう考え方を実現していただきたいということを重ねて申し上げておきます。  それから、これはやはり多少——多少じゃありませんが、自治省の御関係になりますが、しかし、やはり当局の科学技術庁で御推進を願わなければならぬことだと思いますので、どちらからでもけっこうですが、お答えをいただきたいと思いますが、ちょっと固定資産税の問題。  この今度の地帯整備法なりあるいは特別会計なりのたてまえからしまして、いま建設中のものについては発電税の特別会計からそれぞれの基準に合わせて交付金が交付されるということになっておりますが、従来、もう既設の分については特別にそういうものはいかないということになっておりまして、そのかわりに固定資産税を従来より幾らか緩和すると、特例を緩和するというようなことになっておるようでございます。まあ、緩和しないよりはいいんですが、大体三分の二の五年間の特例、三分の一の特例が三分の二になり、それから三分の二が六分の五になるというようなことで、まあ一思いに全額というようなことにしていただければいいと思いますが、何か激変緩和といったような趣旨でそういう小刻みにおやりになる、そういう点についてもいろいろ議論の余地もありますがいまいたしませんが、しかし、激変緩和ということならば、ことしはかりにこういうふうにもうすでに原案としておきめになったことですからいたしかたないとしましても、来年から全額に直していただいてもいいんじゃないかというふうにも考えるわけでございます。  で、なぜこういうことを申し上げるかといいますと、いま非常にこの原子力発電所は各地とも受け入れ困難の状態になっているわけでございます。しかるに、まあ、自分の県のことを言うんではございませんが、私の県のみならず、やはり先にこの原電を、原子力発電所を受け入れたという地点なり県なりがほかにあるわけでございまして、そして、それを受け入れました県は、原子力発電所を推進するというたてまえからいえば一種のパイオニア的な役割りを果たしているわけでございます。しかも、その後いろいろ住民の間の不安を喚起するような議論も盛んに行なわれまして、そしてそういう混乱の矢面に立って非常に困難を重ねてきておられるわけであります。したがって、私は、どういう額になるか知りませんが、こういう推進的な措置がとられるとすれば、先にいろいろな困難をおかしていわば国策に協力したところに対してこそそういういろんなめんどうをむしろよけい見てやっていただきたいというくらいにさえ思うわけでございますので、せめて、直ちに実行できる方法としましては、激変緩和などといういわばどこでそれが標準になるかわからないようなそういうことではなしに、そういう特例は全部廃止するということをぜひとも実行していただきたい。  これもさきの問題と同じように、いま直ちに実現することは困難にいたしましても、そういう点、十分にお考えいただいて、これまたできるだけ早い機会に、そういう先に受け入れたところに対してのいろいろなメリット、実際、こういうところもいろいろ具体的に、あれの費用が要る、これの費用が要ると。監視体制とかPRとかあるいは温排水とかといったような問題以外に、いろいろその市町村は市町村なりに費用が要っているわけでございまして、いま資料は持ってきておりませんが、やはりそういう費用を抜き出してあげてきますと、一年に、大きいところではやっぱり数千万円の経費がうせておりまして、原子力発電所があるための経費というものも決してばかにはならぬわけでございます。でき上がってしまったからもういいというようなそういう冷ややかな態度では、ほんとうに今後の原子力発電所を推進するということにはならないんじゃないか。先に受け入れたところがそれだけの経費も十分に見ていただいて、その上にまた一面にメリットもあるという手厚いやはり考え方がなければ不十分ではないか。安全の確保の問題と並行しまして、地元に対するメリットをいま申し上げたような内容に考えていただいて、一刻も早く実現をはかっていただきたい、こういうことでございますので、簡単に、それはいかぬとか、それは今後考えるとか、そういう結論だけでよろしゅうございますから、御返事願いたいと思います。  これで私の質問は終わることにいたします。
  72. 山下稔

    政府委員(山下稔君) 発電所の立地に伴いますいろいろの財政需要に対処するために、発電所所在市町村に対しましてできるだけの財源を賦与するという必要があるということは先生御指摘のとおりで、私どもも同様に考えております。そのために今回、従来講じておりました発電所にかかる固定資産税の軽減の特例を廃止することにいたしたわけでございます。ただ、昭和四十九年一月一日までに建設されました発電所につきましては、すでに固定資産税が十年間は軽減されるという前提を置きまして事業計画が作成されているというような点もございますので、一挙に特例を廃止いたしまして負担が激増する、ひいては電力料金へも影響を及ぼすというようなことがあってはと考えまして、軽減の割合を半減するという経過措置を講じたわけでございます。したがいまして、いま申し上げましたような趣旨から申し上げますと、今回改正いたしました点を直ちにまた改めるということは適当ではないのではないかというふうに考えております。
  73. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) 最初のお話のPRの問題につきましては、そういう方向で今後努力いたします。  それから、固定資産税の問題は、熊谷委員が昨年の十二月、予算委員会でやはり御発言になられたと記憶しておりますが、あのころに比べますと今回若干前進したとは思っておりますが、しかしながら、ただいま自治省政府委員から、きわめて、何と申しますか、われわれが期待しておったよりはいささか慎重な措置のように思いますので、私もこの問題につきましてはさらに自治大臣等と相談いたしまして、さらに改善の余地がないか検討するようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  74. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 先ほど来辻委員からも質問がございましたのに続きまして、先日来問題になっております放射線被曝を受けた皮膚炎の点についてお伺いしたいと思います。  まず初めに、田代参考人にお伺いしますが、先ほど来御説明になりました放射線皮膚炎診断をされた根拠ですが、いろいろお伺いいたしましたが、まあ固定薬しんの疑いについては、決定的なチェックをされても、それは全然陰性であったので、そういうことは考えられない。そのほかに可能性として、何と何と何をお考えになり、それに対して、どういうふうな検査をされて、そういう可能性もないと、したがって、過去に被曝を受けたか、受けないかということだけの問題になると、こういうふうに至られた経過ですね。特に、私も、過去病理を少しやっておりましたので、病理組織診断をやりますと、かなりいろんな点がわかると思います。まあ臨床診断でだめな場合も、病理組織診断でかなり解明されますので、病理組織診断はされたのかどうか。されたとしましたならば、もしスライドをお持ちならありがたいんですが、もしお持ちでなければ、大体の病理組織像を言っていただいて、これはたとえばガンですね、私はまあガンの疑いを感ずるわけですけど、そういうことも、ガン細胞は発見されなかったという点がはっきりしておりましたら、お答えをいただきたい。その点簡単にお願いします。
  75. 田代實

    参考人田代實君) どういう診断考えて、それをどう除外していったかという御趣旨だと思うんですが、先ほども申しましたように、一番考えられるのは、放射線皮膚炎及び固定薬しんというふうに考えております。そのほか熱傷ですね、やけど、それから化学かぶれですね、接触性皮膚炎といったもの、それからあるいはまあ虫刺されというふうなものでも、短期間はそういう炎症症状を起こしてくるわけですから、そういうものも考えたわけですけど、これはまず、本人の問診の上からも、まずそういうことはなかったということは信じていいと判断しておりますし、第一、やけどとか、虫刺されとか、接触性皮膚炎、かぶれですね、こういうものでは、それほど長期間にわたってああいうものが残るとは考えられないんだと。まず、ほかのものは、ほとんど絶対といっていいぐらいその三者、やけど、かぶれ、虫刺され、そういったものは考えられないというふうに考えます。まあ固定薬しんにしぼって除外をしていったわけですね。これに関しては、もちろん診断には絶対ということはないんで、絶対確実だとか、絶対安全だというようなのは、科学ではあり得ないというふうに私は考えておりますし、それがまた正しい科学的な態度だと思います。ただ固定薬しんに関しては、私どもの経験から、大体誘発テストを行なったその頻度なんかから考えて、まあ九〇%方は除外できているというふうに、これも別に非常に正確に測定できるわけじゃないわけで、感じとして九〇%ぐらいは除外できている。  そうすると、放射線皮膚炎としての診断根拠というのは、これはもちろん特異的な部分が非常に多いので、症状からだけではなかなか診断困難であるということは、私も初めから考えておったし、熊取先生も同じような意見だと思いますが、その点で、作業環境調査というのが、もう第一義的に重要なものである。この点に関して私は、再三再四原電側に対して、運転停止期間中ですね、五月三日から六月何日でしたか、約二カ月間の停止期間中の全作業日誌、それから全測定記録というものを要求してまいったわけですが、出されてくるのは、非常に部分的な、私どもから見れば、非常に安全側だけを強調したような部分だけのデータが出されてきているということで、その中でも、先ほど久米参考人がおっしゃったように、十ミリレムというふうな個所の近くで作業していたということで、可能性としては非常に濃いというふうに考えたわけであります。この点は、もちろん今後さらに、内閣のほうでも何かそういう資料をどんどん請求していただけるようですので、これはぜひわれわれに検討させていただきたいと思います。それから組織診断もちろんやっております。病理組織学的な検査もやっております。それからそのほか内臓のいろんな機能の検査、それからレントゲン学的な検査をやっております。  病理組織診断に関しましては、ちょっと日は忘れましたが、昨年の九月か十月ごろに施行しておりますが、この限りでは悪性の変化は全くありません。ガンのような変化は全くありません。主として二次的な色素沈着、それから軽い表皮の萎縮、それから真皮上層の軽い炎症とリンパ管ないし毛細血管の拡張というのが病理変化のおもなものでございます。
  76. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 熊取研究部長にお伺いしたいんですが、先ほど来いろいろ議論になっておりますが、熊取さんとしては、いろいろお話聞かれて、これは放射性、いわゆる放射線皮膚炎とは断定しがたい、こういうお考えですか。
  77. 熊取敏之

    説明員(熊取敏之君) 私自身まだそういう患者さんのことを全然見ておりませんし、その症状についていま伺っただけでございます。何回も申しますように、一つの所見がありまして、そしてそれを過去にさかのぼって、これが放射線だということを断定するのは、まずほとんど私は不可能だと思うんです。ですから、いま言われましたような所見から、つまりいままでのあれからしますと、放射線を確かに受けた、それでこういう変化がいま残っておるというようなことの所見はずいぶんあると思うんです。ところが、その所見だけ見まして、二年前、三年前というようなものに何があったかということを断定することは、ちょっと非常に困難なことだと思います。
  78. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま言われた問題、ちょっとあとで聞きますがね、その前に、あくまでも放射線による皮膚炎診断を下す決定的なものは、過去に被曝があったか、なかったか、それだけですね。要するに、表へ出た症状としては他の炎症、いろんな炎症があります。それとの鑑別はむずかしいと、こういう御見解ですか。
  79. 熊取敏之

    説明員(熊取敏之君) そのとおりだと思います。しかも、過去に放射線を受けましても、それが特に皮膚の場合なんかですと、皮膚に変化の起こるのはこれぐらいだというふうなデータがだいぶあるようでございますので、そういうような被曝があったかどうかということが、一番問題になることだと思います。
  80. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 熊取さんに御認識いただきたいことは、いまのお話だと、現在起こっておると、それから過去二年前を類推しておかしいんじゃないか、そういうことはちょっと早計過ぎる疑いがあるんじゃないかと言われますけれども、実際患者さんは、もうすぐにお医者さんに行っているわけですよ。六月四日に、もうすでに早朝に右足に痛みが出て、体もだるく、熱があるんで、近所の山口医院に行ったと、要するにもうすでにすぐ出ているんですよ、この症状の最初が。だから、いま言われた、いま起こったから、じゃ昔はどうなんだということは、私はそれにはならない。むしろもうすぐ病気は起こっておる。ただいろいろ病院を転々としまして、最終的に阪大へ来られてこういうようなことになったと、こういう結果でして、阪大へ来て出たから、それから過去を類推したということは決してない。それをひとつしっかり認識をしていただきたいと思います。だから、やっぱり私は、もうすでにこの作業をしたあとから病気が始まっておると、そう考えなくちゃいけないと思うんです。これはすなおな見方だと、こう思いますので、その点ひとつはっきり認識してください。
  81. 熊取敏之

    説明員(熊取敏之君) 特に、そういうふうに作業しまして、そうしてすぐ起こったと、かなり短い期間にそういうものが起こった、そういう場合ですと、なお、そこのところにかなりな線量被曝がなければ起こらなかったということだと思います。ですから、そういうことの事実が考えられるのかどうか、あるいはそういう事実があったのかどうか、そういうことが一番問題になることであります。
  82. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうすると、もういよいよ問題は、やはりこの被曝があったのかなかったのかという当日の状況証拠と、こういうことになるわけです。先ほど一ミリレムは心配ないと、久米参考人は、一ミリレムでもあぶないんだと、こういうふうに力説をされました。で、実際そのポケット線量計に出た一ミリレムは、たとえば一メートル離れたところではどうなるんですか。ガンマ線、ベータ線についてちょっと久米参考人からお聞きしたいんです。だからあぶないんだと、こういうふうなことになるんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがですか。
  83. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) ちょっとその前に森山長官のほうから御指摘を受けましたんですけど、私としましては、この八月から、その患者さんのあれをめぐりまして、いろいろ当然そのポケット線量計の値その他は直後に報告されておりましたから、そういうことも考慮に入れて、いろいろ可能性を検討してまいりました。それに対してあまりにも最近の国会その他で、私たち新聞でしか読めませんが、その記事が私たちまあ多少でも放射能をやっている者から見ると、非常に納得できないものが多いですので、それで先ほど何かインチキというようなことばも言ったそうでございますが、もしもそういうことを言っておりましたら、これは委員会の皆さんに非常に迷惑かけたと思いますので、その点はすべてこの委員会の皆さんのあれにまかしたいと思いますので、よろしく。  それで、いま言われましたちょっと矢追先生のおことばでございますが、一ミリレムでも起こるというふうなことは私は決して言っておりませんで、もうちょっと正確に言いますと、レムというのは、被曝量でございます。で、その盛んに言っておられるのは、計器で振れた目盛りが毎一ミリレントゲン前後であったと、そういうことを言っておられるんであって、私は、一番大事なのは、その皮膚が受けた、これこそまさに被曝線量ですね。これはベータ線であれ、ガンマ線であれ、線量に持ってきてレムという単位にしますと同じですが、そういう放射線を受けた被曝線量というのが、このいま問題になっている患部で一体どれだけであったかと、そういうことについて何のあれも出ていないと、そういうことを言っておるわけです。それで、一つの例といたしまして、そこに非常に集中的な汚染があって、それの一つの例としてパイプ作業をしておりましたパイプ、その状況は、そこで数時間それに非常に強く接触するという状況がございました。で、田代先生もおっしゃいましたように、しかも、旋盤でくって水で足がぬれるという、そういう状況でございますので、そういう状況では、そういう非常に局部的な汚染から、足が汚染——レムですね、そういうものを受ける可能性がある。しかも、その首につっておるという、そういう状況では、そこから出るガンマ線で受ける量は、見かけ上毎一ミリレントゲンという数字を示してもふしぎでないと、そういう一つの状況を設定してお話ししたわけでございます。  それで、先ほど原子力次長さんですか、何か私は、ベータ線だけしかないというような非常識なことを言っていると、そういうことは全然申しておりませんで、先ほど皆さんにお見せしましたこのセシウムも、ベータ線も出ればガンマ線もほぼ同数ずつ出ております。そういうもので、感じるのはガンマ線だけであって、皮膚をやった主力はベータ線であると、そういうふうに申しておりますので、原子炉の中で、もちろんベータ線ばっかりのものもたくさんありますが、それだけにわざとこじつけて言っていると、そういうことではございませんので、その点は了承していただきたいと思います。  なお、ちょっとうまく伝わってないかもわかりませんので、質問していただきましたらお答えしたいと思います。
  84. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ちょっと私も専門外ですので、よくわからないのですが、その当時の状況を先ほど少しおやりになりましたが、この作業をしておる岩佐さんが、いま、まあかりの仮定ですが、そのパイプが、その辺に非常に汚染物があったと、それが直接ひざについていると、そして作業をした場合、そのまあベータ線、ガンマ線両方出すものとかりに仮定をして、そのポケット線量に当たるのが一ミリの場合ですね、大体まあこれくらいだったら一メートルぐらいじゃないかと思いますが、その場合、そのもとの線量は大体ガンマ線ではどれくらい、これははっきり出るわけですね、推定。それからもしベータ線が——これははかれませんが、ありとすれば大体どれぐらいのものを考えたらよろしいかと、こういうことなんです。
  85. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) それそういうふうにきめますと非常にはっきりいたしますので、ですから、ガンマ線で一メートー離れたところで毎時一ミリレントゲンというような値が出たといたしますと、それはまあいろいろガンマ線のエネルギーもありますし、ベータ線のあれもございますけれども、大体の非常に大ざっぱな目安といたしまして、まず——その前にちょっと言っておかなきゃいけませんが、普通は線量計で問題になるのは、空間線量と申しまして、その辺の空間が一様にそういう均一な一つの放射線の場にあるという、そういうことを前提で被曝線量なんかを評価するのは意味があるわけですが、いまのように、非常に固まった局部的な汚染があるというときには、そのときには正しくそれを表示しない。それでいま言いましたように足についておるというような状況で、まずガンマ線のことでございますが、ここで一ミリレントゲンというのが出ましたのを、今度足の、ほんとうにそのよごれのあるところにこの計器を移すとします。いままで一メーター離れておったやつを、ゼロメーターに持っていったとしますと、それで約一万倍になります。ですから、そのガンマ線だけでも、それで一万ミリレムでございますね、それぐらいの値になります。  それで、今度はベータ線がありますとどうなりますかというと、ベータ線は皮膚に対して非常に、ほとんど完全に皮膚で吸収されてしまいます。それの吸収のされぐあいは、ガンマ線を一といたしますとベータ線は一〇〇でございます。ベータ線は一〇〇としますと、全部吸収されますが、ガンマ線の場合はそのうちの一つ、これも平均のほぼの値でございますが、ほぼ百分の一程度しか作用しない、吸収されないというわけでございますから、ですから、ベータ線の場合は、そのほぼ一万倍にまたほぼ百倍を掛けまして大体百万倍ぐらいになる。ですから、結局ここで毎時一ミリレントゲンというのが出ても、足で百万ミリレム、ベータ線の被曝として。それぐらいになって、この百万ミリレムというのは千で割りまして千レムという、そういう値でございまして、それはどういうものがそこにあったかとか、そういうことがちゃんとわかりますと、もっとちゃんとそれは計算ができます。それからその患者がどういう状況で作業をしておったかというようなことを細分できますと、もっと正確に計算できますが、私が強調したいのは、一ミリレントゲンであって、そんな被曝は起こり得ないというのは、あまりにも、またそういうことを言ったらしかられるかもしれませんが、そういう放射能あるいは放射線ということの基礎的なことをわきまえない発言ではないかというふうに思って先ほどから言っておるわけです。
  86. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 科学技術庁にお伺いしますがね。いま久米参考人の言われた話の中で、これはあくまでまだ確定されたわけじゃないんですから、その点は誤解せぬといてもらいたいんですよ。私が聞いたのは、いまの想定ですね、かりに想定された場合、いま久米先生の言われたように、ポケット線量計では一ミリレムであっても、実際はその直接もし何かがあった場合は、こういういまの百万倍ですかになる、こういう理屈ですよ、これはね。これはお認めになりますか。そうあったかどうかの、これはまだわからぬですがね。
  87. 宮永一郎

    参考人宮永一郎君) ただいま久米参考人が計算されたのは、もちろん各種エネルギーその他によって違うというおことばもありましたように、正確ではないかもしれませんけれどもほぼ正しいと思います。
  88. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もう時間がありませんのでね。私のほうはもう少しで終わりますが、結局、問題点は、結局しぼられたのは、大体きょうの概略を通して私の感じとしては、要するに、いまの宮永さんのお話から考えまして、久米先生の言われる理屈の上からはもうほぼ間違いない。要するにあと現場にそういう非常に強いものが工事のときにあったかなかったかということだけになってくると思うんです。そういうのがあったかなかったかの疑いと、科学技術庁もずっと否定的にこられているわけですよね、いままで。ただもう一ミリレムだから心配ないんだ、心配ないんだという一点ばりでこられたわけです。だけれども、それは私はもうその前提はくずれたと、要するに、たとえポケット線量計では一ミリレムであっても、その作業場に何かすごい汚染物がもしあった場合は、これはもうそういう被曝可能性はあると、それはポケット線量計には出てこないとある程度きめていいんじゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  89. 宮永一郎

    参考人宮永一郎君) あの計算の限りにおいては確かに正しいと思いますが、まあ原子炉の中、それは原研の経験によりますと、たとえばJPDRというのが商業発電用ではありませんけれども、同じ種類の燃料を使い、同じような方式の運転をしておりますけれども、JPDRで経験しました過去三十件ばかりの表面汚染の経験を見ますと、大体表面の汚染密度というものは、普通は十のマイナス四乗マイクロキュリー一平方センチ、一番高いところでも十のマイナス自乗くらいです。で、先日、私がこれをお聞きしましたときに、一番初めに感じましたのは、確かに久米参考人がおっしゃるように、いわゆる表面汚染の問題であるということを感じましたが、普通われわれやっております放射線管理という立場から、患者岩佐さんも認めていらっしゃる一つの事実がございます。それは、汚染監視区域から出るときに、必ずハンド・フット・モニターというのにかかる。もしも久米さんが計算されたような、ああいう放射線あるいは表面線量に相当する汚染がかりにひざのところにあったといたしますと、これはハンド・フット・モニターで十分検知できる。ハンド・フット・モニターで検知できる数値と申しますのは、おそらくあれの数千分の一くらいになるかと思います。もしもあれだけの線量を与える汚染があったといたしますと、その汚染が一体どこからきたかということが問題になるわけでございますが、原子炉の中で一番濃度の高い汚染度を示しておりますのは一次冷却水でございます。たしかこの時点は、原子炉がシャットダウンいたしましてから約二十日間たっておりますので、一次冷却水の濃度というのは、これも原研の経験でございますが、おそらく十のマイナス自乗マイクロキュリーくらいになって、あの計算から出てくる数十マイクロキュリーあるいは数百マイクロキュリーというのと非常に違うということが、まあ放射線管理的と申しますか、原研の経験から申しますと、非常に疑問であるというふうに感じます。
  90. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もう時間過ぎてますので、これで終わりますが、非常に、私まだ言いたいこと一ぱいあるし、疑いもかなり深まってきておりますので残念ですが、したがいまして、あと状況証拠として御提出いただきたいのは、日常の原発作業はどうなっているのか、それから五月三日の運転停止のときの作業はどうなっていたか、それから、その後の作業日誌——辻先生とダブる場合は一緒でけっこうですから、それから五月三日近辺で何が起こったのか、それから五月三日から岩佐さんが作業をしたときまでの放射線の測定記録、この原簿、それから、管理区域はそのつど危険なところを設定しておるが、この時間の区域設定はどうなっていたのか、この五点の資料を要求して、また今後科学技術特別委員会等でさらに詰めていきたいと思います。一応これで終わります。
  91. 牟田口道夫

    政府委員牟田口道夫君) ただいまの資料につきましては検討させていただきます。
  92. 中村利次

    中村利次君 非常に時間が短いのですけれども、私は、やはりこの問題で、御当人の岩佐さんを、表現は、これは非常に悪いでしょうけれども、   〔副主査退席、主査着席〕 関係の科学者も、あるいは行政府も立法府もその他すべてがやっぱり、表現が悪いかもしれませんが、モルモットみたいに扱うということは、これはもう断じて許されないことだと思うのです。それからもう一つは、やっぱりこういう問題は、国民の皆さんにわかりやすく、正しい認識をしていただく努力をこれはしなきゃいかぬと思う。  先ほど久米参考人の公述の中にこの問題、岩佐さんが敦賀で作業をする前に、あそこでは大爆発が起きて、数千キュリーの汚染がそのときにあったかもしれないではないかという、こういう意味の公述がございましたけれども、私が聞いておりますのは、ピンホールがあって、一次系にヨードの一三一が出たということは聞いている。ところが、私の認識では、これは補機冷却系には関係がないと認識していますが、宮永参考人いかがでしょう、その点については。
  93. 宮永一郎

    参考人宮永一郎君) 補機冷却系の冷却水は純水であるかと思います。さらに、いまおっしゃった補機冷却系というのは、どちらかちょっと判断に迷うわけですが、先ほどから出てきております海水のパイプというのは、その純水の補機冷却系——補機を冷却している水をさらに冷却している海水でありまして、通常の場合はここには放射能はないと考えます。
  94. 中村利次

    中村利次君 それから、その作業のときに数千キュリーの汚染があったかもしれないという御公述でありましたけれども、であるとかりに仮定をすれば、これはバックグラウンドの検査をやっているわけですから十時に、当日も。そこで検出されないはずは私はこれはあり得ない。科学者の立場から言って、これも宮永参考人いかがでしょう。
  95. 宮永一郎

    参考人宮永一郎君) 放射線管理の汚染検査、いわゆる表面汚染検査と申しますのは、約百平方センチないし千平方センチくらいのところをサンプリングして、スミアーと申しまして床をこすったものを放射能測定器で測定するという方法をとりますので、必ずしも非常にその汚染のあったところにいつも行き当たるという確率があるとは申せません。しかし、先ほども申しましたように、管理区域を出るときにハンド・フット・モニターに乗るということは、これは個々の人が行なう行為でありまして、その人に汚染があったかどうかというのは、その測定器の検出感度以上のものが検出できるということになると思います。
  96. 中村利次

    中村利次君 これ、やっぱりあくまでも私たちは事実を究明をすべきであると思うんですよ。そういう意味で、小さいようで実は私はたいへん大事だと思うんですけれども、公述された中に、あるいはその図もそうですけれどもその下の、私はやはり誤りがあると思いますね。あのドーム——建屋といいますけれども、建屋の中に原子炉があのようにありまして、その中にいわゆるコンテナ、格納容器がある。その外は、これはコンフリーですよ。あの図のとおりではないんです。  それから、田代参考人診断書の中に、「原子炉炉室内」という表現がございますけれども、これは炉室内は誤りであると、しろうとですから断定はいたしませんよ。しかし、一般にいわれるのは建屋でありまして、原子炉炉室と言うと、何かこの原子炉の中でたいへん危険であるという印象を知らない人たちは抱くんではないか。図にありますように、原子炉があって、それを格納容器で囲って、その外はコンクリーで囲ってある。したがって、あの図で言いますと、あの作業をされたあそこはもうちょい行くとエレベーターですから、そこは二階、三階に行く作業員の通路ですね、一般の。こういう点はやっぱり正しい認識を私は、どなたにも与えておかないと誤解があっては困ると思いますね。  それから、もう一つは、これも田代参考人の先ほどの公述の中で、十ミリレムのところで作業をしていたので、この可能性が強いと思ったという公述がございました。しかし、同時に、田代参考人は、やっぱり単位をミリレムで言いますと、四十万ミリレムから百万ミリの被曝をしなければ放射線皮膚炎にはならないという立場をおとりになっておる。十ミリレムというのは、これはどうも問題にならないと思いますし、また、四十八年の九月の診断書を拝見をいたしますと一レントゲン検査の結果、骨の変化が見られると、こういうことを診断書に書いてありますけれども、これは何回ぐらいレントゲンの検査をおやりになったんでしょう、それだけでけっこうです。
  97. 田代實

    参考人田代實君) 幾つかあったと思うんですが、一つは、この原子炉の構造が間違っているということでございますか、この絵が。
  98. 中村利次

    中村利次君 いや、その外は、コンテナーの外はコンクリーで囲われておるということですね。
  99. 田代實

    参考人田代實君) 黒いのは全部コンクリーのつもりですが。
  100. 中村利次

    中村利次君 そうですか、格納容器だけで、コンクリートのあれがないですから。
  101. 田代實

    参考人田代實君) いや、そうじゃないです。あの赤線は汚染区域という意味です。そういう意味でございます。
  102. 中村利次

    中村利次君 時間がないですから、どうぞ質問だけに。
  103. 田代實

    参考人田代實君) それから炉室という表現を書いてあるのは、ぼくは原子炉の専門家ではございません。ただ、敦賀の原電の田中放射線管理課長ですか、安全管理課長なんかと何回かお会いしていろいろお尋ねしている中で、この建物を炉室というんだと、その二番目の丸がドライエリアで、中が炉心だというふうな御説明だったんで、そのまま表現したわけでございます。  それから診断書の件でありますが、まず昨年の九月の診断書でございますか、これで……。
  104. 中村利次

    中村利次君 骨の変化。
  105. 田代實

    参考人田代實君) 骨の変化ですね。
  106. 中村利次

    中村利次君 レントゲン検査
  107. 田代實

    参考人田代實君) レントゲンは一回秒速撮影しております。それは角度は側面、正面とっております。  それから何でしたか……。
  108. 中村利次

    中村利次君 いや、それだけでけっこうです。
  109. 田代實

    参考人田代實君) もう一つあったですね、皮膚症状が出るのに……。
  110. 中村利次

    中村利次君 いや、それだけです、質問したのは。
  111. 田代實

    参考人田代實君) いや、もう一つおっしゃいましたと思いますが。
  112. 中村利次

    中村利次君 いや、質問はそれだけです。
  113. 田代實

    参考人田代實君) いや、十ミリレムのところで働いたというけれども皮膚症状は何か四十万ですか、ミリレムとかいうふうに考えているかというお話ですね。これは先ほど来久米先生及び宮永先生ですか、の言われておる中でもはっきりした問題だと思いますので、起こり得るということをお答えしておきます。
  114. 中村利次

    中村利次君 これは、ここにはレントゲン検査でレントゲンの照射をしても数百ミリ、大体一般に二百ミリ前後ぐらいの被曝をするというのが常識のようでありますけれども、それからまあ、大体いまのところガンマ線がたいへん問題になっておるようですね、いやベータ線が。ガンマ線の問題はあまり問題になっていません。ベータ線の被曝ではないかと判断されたその理由はどういうところにあるんでしょう。
  115. 田代實

    参考人田代實君) 第一に、ガンマ線とかエックス線の被曝とすると、ああいうふうに非常に局部的に症状が起こるのは非常に特殊な条件が要ると、つまり一定の照射野をきめて、そこへガンマ線を集中して当てると、つまりガンの治療にコバルトとかレントゲンを深部治療でかけます。そういう場合にしばしば見られる。そういう条件は、おそらく原子炉の中ではあり得ないというふうに考えたわけですね。それで、あるとすれば、表面汚染による皮膚被曝であろうということは当然考えられる、そういうプロセスでございます。
  116. 中村利次

    中村利次君 原子力発電所に、ベータ線だけを出す核種があるとお考えでしょうか。これは久米参考人はそういう核種はないという公述のようでしたけれども、もし、久米参考人でもけっこうですよ。ベータ線だけを出す核種があるということでしたらお教え願いたい。
  117. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) 先ほども申しましたが、原子炉をとめてからどれだけの時間かによってずいぶん違います。とめた直後は総体的にはベータ線ばかり出すものがずいぶんたくさんあります。で、時間がだんだんたってまいりまして、岩佐さんの、いま被曝のようなとき、先ほどお話した三日にとめて二十七日と、そのころにある核種はそこに書いてございますが、その中では大半のものがガンマ線も伴っておる、そういうことです、正確には。  それから、ついででございますが、ちょっとやっぱり中村議員のほうは……。
  118. 中村利次

    中村利次君 ちょっと待ってくださいよ、時間が私は限られておりまして、申しわけありませんが……。  同じ質問を宮永参考人にお伺いしたい。原子力発電所内にベータ線だけを出す核種があるかどうか。
  119. 宮永一郎

    参考人宮永一郎君) 先ほどの田代参考人、久米参考人のお話は正しいと思います。核種は、確かにストロンチウム九〇、イットリウム九〇というのは、これはベータ核種で、原子炉に関係はありますけれども、そのほかにはほとんどベータだけを出す核種はありません。
  120. 中村利次

    中村利次君 これはベータだけを出す核種がないということになりますとね、やっぱりポケット線量計、これはちゃちであってあんなのは役に立たぬという御意見のようでありましたけれども、事実はやっぱりハンド・フット・モニターにもかかって、御本人も青のランプがついたということは確認されて記憶をされておるということでありますから、したがって、ベータ線だけを出す核種がないということになりますとね、やっぱりあれじゃないですか、ガンマ線が計測された、それを根拠としてものを考える以外はないと思うんですが、そのほかに何か、それ以外の根拠というものがおありでしょうか。田代参考人にお伺いしたいと思います。
  121. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 田代参考人、簡潔に願います。
  122. 田代實

    参考人田代實君) この点は久米参考人のほうが答えられると思います。私は、ガンマ線を伴っておっても、距離の効果で一ミリレムぐらいあっても、十分ひざにベータ被曝、千ラドほどの被曝があり得るというふうに考えます。
  123. 中村利次

    中村利次君 診断書は、田代参考人がお書きに.なったものですね。
  124. 田代實

    参考人田代實君) そうでございます。
  125. 中村利次

    中村利次君 いろんな方の御意見をお聞きになったかもしれない。しかし、少なくとも、最終的な診断書をお書きになる場合には、これはやっぱり医師としての、科学者としての主体性に基づいて確信を持ってお書きになったに違いないと私は思うんです。ですから、これはいま専門家にお伺いしておるところでは、原子力発電所では、ベータ線だけを出す核種はないということになりますと、ベータ線の被曝ということがどういう理由で想定をされるのか、それをお伺いしたいと思います。
  126. 田代實

    参考人田代實君) 診断書は、あくまでこれは医師個人の責任において書くものであります。これはだれからも容喙されるところではありません。  それから診断書には一ミリレムでこの症状が起こったとは一言も書いておりません。  それから、何でしたか……。
  127. 中村利次

    中村利次君 私の質問の要旨が……、一ミリレム放射線皮膚炎を起こしたとは、確かに書いてない。そんなことはだれも言ってないんです。先ほどからの御公述では、ベータ線による被曝によって皮膚炎を起こしたと想定をしたということでありましたから、いろいろ専門家にお伺いをしたところでは、ベータ線だけを出す核種は原子力発電所にはない。ないということになりますとね、ガンマ線、ベータ線同時に出すということになれば、これはガンマ線を測定できれば足りるわけですね、わかるわけですね。ですから、ベータ線による被曝という想定をされたのは、ほかに何か理由がおありでしょうかということを聞いているんです。
  128. 田代實

    参考人田代實君) 先ほどからかなり専門的にいろいろその辺の説明はなされたので御理解願えているんじゃないかと思っておったんですが、私も、決してこの診断書にはベータ線だけで起こった症状とは一言も書いておりません。ですから、当然ベータ線だけを出す核種しかないんだというふうに、それによって起こったんだというふうには初めから考えておりません。
  129. 中村利次

    中村利次君 であるとすれば、これはガンマ線はバックグラウンドのこのモニターで検出されているんですね、一ミリレム以下。
  130. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) そうじゃないんです。
  131. 中村利次

    中村利次君 いや、記録はそうなっているのです。それに異論があれば、それなりの調査をなさればいい。  それから本人が、ポケット線量計、これも一ミリレムであり、ハンド・フット・モニターにもこれはかかって、そして異常がなかったと、こういうことになっているわけですから、ベータ線だけの核種がないということに同意をされたわけですね。ガンマ線、ベータ線あったら。それだったら測定が根拠がないと、誤っておるということは、これは科学的に言えないという理屈になるんです。
  132. 田代實

    参考人田代實君) 組織に対する障害というのは吸収線量が問題になるわけです。で、皮膚にベータとガンマがかかったと思います、当然、あの場合に。しかし、主としてそういう生物効果というわけですが、皮膚障害を起こすのはベータ線のほうが寄与は大きいということを言っているわけです。ガンマ線ももちろんかかっております。しかし、それは非常に透過性が強いですから、皮膚に全部吸収されるというわけにいかぬわけです。深いところまで通ってしまう。だから、皮膚症状に関してはベータ線のほうが寄与が大きいということを申しておるわけです。
  133. 中村利次

    中村利次君 どうも十分の理解ができないんですけれども、それでは、これはこういう議論をいつまで続けてもしようがないですから、百歩譲って、かりに、ベータ線による被曝だと、これは仮定ですね。私はベータ線だけを出す核種がないと、ない以上これは計測されていた、こういう答えにならざるを得ないと思うんですが、仮定の問題として、ベータ線の場合確かに透過性が悪い。透過性がむしろないと言ったほうがいいぐらい。いまそこでテストされた場合も、そのふたをかぶせるとベータ線は通らないわけですから、透過性がない。すると、岩佐さんはこれは裸でなくて作業服を着たとおっしゃっている。作業服は私も知っておりますけれども、相当厚いんです、これは。そのほかに下着も着ている。透過性のないものが皮膚まで通さない。ガンマ線は皮膚を通して肉に、中に入っていくけれども、ベータ線は皮膚すら通さない、厚い作業服を着て、下着を着ていた。それがやはり透過をして皮膚炎を起こしたという判断はどういう根拠でおあげになったのでしょうか。
  134. 田代實

    参考人田代實君) もちろん当時、そのとき作業服を着ておったわけですね。厚みに関しては、これはきちっとはかってみる必要があると思いますが、何ミリというふうなこと。生地はそれほど密なもんではない、私も着ましたからわかっておりますが、で、これはベータ線のエネルギーによって違うと思うんです。非常に弱いエネルギーのものであれば、たとえばC一四とかそういうものであれば、おそらく衣服で引っかかってしまう、皮膚には到達しないと思いますし、もっとエネルギーが高いやつだとまあ衣服は通ると。で、皮膚の表面で吸収されるということは起こり得るわけですね。それからいろんな状況を考えてみますと、当時作業で水を使いまして、ひざのところがぬれたということを本人は言っております。それで、実際作業には水は不可欠のようです。そのことを考えますと、水を通してしみ込んで皮膚に付着するということはあり得るということですね。それでよろしいでしょうか、御説明としては。
  135. 中村利次

    中村利次君 これはそういうことは確かに私も想定されると思いますけれども、どうも私の判断では、あまりにもこれは非現実的、とにかく皮膚を通さない、透過性のきわめて乏しいベータ線が、作業服を着て、その下には下着をはいているところを通して、そうなりますと、私は、こいつは事故、そういう放射線が、ベータ線があったとすると、これは事故なんですね、であるべきなんです。ところがそういう状況というものがあったのかなかったのか、そこまで調査されましたか。
  136. 田代實

    参考人田代實君) 初めに言いますけれども、あの症状というのは放射線皮膚炎としては私は軽い症状だと思います。というのは皮膚でも厚みがございます。深いところまでいけば当然かいようが出てきます。非常になおりにくい深いかいようが出てきます。そういうことはなかったわけですから、ごく皮膚の浅いところの変化にとどまっておった。それはおそらく衣服を通してとか、そういう条件があったからそうなんだろうと思うわけです。  それから事故だとおっしゃいますが、これは事故というのは表現の問題でありまして、どっからを事故というか、ぼくはそれほど大げさに考える必要はこの場合にはないと思いますが、非常に日常的に起こり得るべータ線を主体とした被曝——被曝というか、汚染によって起こった障害というふうに考えておるわけで、それほど大げさに事故だ、事故だというふうに誇大化する必要はないというふうに考えます。
  137. 中村利次

    中村利次君 私は、田代参考人がおっしゃっているように、やっぱり放射線皮膚炎を起こすのは四十万ミリレムから百万ミリレムという、その立場をとりますと、やっぱり透過性のきわめて乏しいベータ線が衣服を通して——私は通さないと思うけれども、通して四十万ミリレムから百万ミリレム被曝皮膚に与えたということは、私は、そういうのはもう事故であると、こういう認識を持っておるんです。ですから、そうでしたら、私はバックグラウンドの検査に出てないはずはない、科学的に。こういう私の少なくとも放射能に関する知識では、これは時間があれば専門家の方たちに私は全部お伺いをしたいと思うのですけれども、私の認識が誤まっておるのか正しいのか。ですから、そうなりますと、もう時間がないそうでありますから、まとめて質問をいたしますけれども、とにもかくにも田代参考人は、診断書の中に、放射線皮膚炎、二次性リンパ浮腫、この診断書に対してだれもこれは異論をとなえるものはないと思うんですね。これは全然異論をとなえるものはありません。しかし、その二として「上記疾患は、昭和四十六年六月初旬に発症したものであり、原因として、昭和四十六年五月二十七日、日本原子力発電株式会社敦賀発電所原子炉炉室内での作業中の放射線被曝考えられる。」ということをつけ加えていらっしゃる。私の認識するところでは、原子力事業従業員災害補償専門部会の議事録なんかを拝見をしますと、医学的に業務の起因性を証明することは事実上できない、こういう意味発言を私はよく目にします。  それから先ほど熊取先生のお話の中にも、大体これと同じような因果関係をはっきりただすことは、もうこれは不可能なんだというのような御発言があったと思うんです。その場合、こういう診断書をお書きになった田代参考人は、業務の起因性を証明することができるとお考えだろうか。
  138. 田代實

    参考人田代實君) 「考えられる。」と書いた意味が一つそこにあります。「考えられる。」と書いてあります。それで可能性が高いと、どの程度かということはこまかく議論すれば言えるんですが、「考えられる。」と書いております。可能性が非常に高いという意味であります。断定はしておりません。  それからどのようにして証明するかということでありますが、これは一つは、医学的なアプローチは非常に困難だということは確かであります。で、一般に職業病とか、労働に起因する業務上の疾患の因果関係の証明に関しては、非常に単純な場合は即座に断定できます。しかし、非常に昔のこととか、非常に慢性的にそういう作業環境で働いているという場合は非常に困難であります。一つの方法論といたしましては、疫学的なアプローチがあります。つまりそういう作業環境で働いておる人に同じような症状が、ほかの職場以上に高頻度に見られるということを疫学的に証明していくという方法が一つあります。で、ただこれも、原子炉に関しては非常に困難であることは確かです。しかし、イギリスの文献なんかを見ますと、原子炉内の事故として——事故というか、放射線障害として年間四十例ぐらい皮膚障害が起こっておるということは、あるイギリスのコミッティのリポートにございます。そういうふうなことから、起こり得ない事故では、障害では決してない。  それからもう一つ、特にこういう業務上疾患の認定というのは、これは純粋医学的な立場の問題ではございません。社会医学的な立場というのが入るわけですね。これはやはり安全側というか、に立って考えて対処していくという行政的な、行政的といいますか、そういう公衆衛生的な社会医学的な立場というものが入ってくるわけでございます。だから、ある程度極端に言えば、疑わしきは罰す、これは公害病でもそういう原則がつくられていっているわけですが、そういう立場でやるべきだというのが通念だろうと思います、現在の。で、あくまでも純粋医学的に科学的に因果関係をきちっと証明できるというのは、いまの医学では非常に残念ながら困難な場合が々少いわけです。だからといって、それに対する予防とか、予防医学的なアプローチとか、産業医学的なアプローチというのを放てきしてはならない。だからこそ、そういう疑わしきは罰すというふうな原則というのがだんだん確認されてきているわけですね。そこをお考え願いたい。
  139. 中村利次

    中村利次君 すみません。ほんとうに時間がなくて、これはいろんなことを明らかにすることができなかったんです。非常に残念に思いますけれども、これはいずれかの機会に、私はぜひ、こういう、これはもう国民的な課題だと思うんです。正しい認識を持つ、あるいは与える。  そこで、これは最後に診断に当たって合議制をおとりになったかどうかということ。それから、合議に参加した人たちをお差しつかえなかったら、どういう方たちとの合議をされたのか、あるいは専門家の意見もお聞きになったかどうか、その専門家とはどういう方たちであるかということを、もしお聞かせ願えればお聞かせ願って私の質問を終わりますが、特に私は、これは要望しておきたいと思いますが、いまやっぱり代替エネルギーとして何を選ぶべきかというたいへんな国民的な課題について——こういう事件、これはもうほんとうに国民の前に事実を明らかにするという、そして、不安なものならやらない、不安でないものを不安という認識を与えるならばこれを取り除かなきゃならないという、私はやっぱり使命がこの国会にあると思いますので、今後機会を得て、こういう時間をたっぷりとってやっていただきますよう、私は強く要望して質問を終わります。
  140. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 簡単にお願いいたします。
  141. 田代實

    参考人田代實君) ちょっと御質問の趣旨がよくわからないんですが、合議制というのはどういうことでございましょうか。医者の常識といたしまして、これはいろんな自分専門以外の、たとえば内科とか、放射線科とか、整形外科とか、そういう関係した分野のコンサルテーションをとるというのはこれは常識でございます。当然やっております。それ以外にこの場合に関しましては、医学だけでなしに、そういう原子力放射線関係の、放射性物質関係専門家に多数御意見を求めておりますし、私自身も、つたないながら、それなりに非常に勉強しております。文献その他専門書を読んで勉強しております。
  142. 加藤進

    加藤進君 最初に、簡単な具体的な質問をいたしますが、先ほどの御発言の中に、もし岩佐さんが皮膚炎を起こされるというようなことであるなら、この炉の設備から出られるときにそんなことはチェックできたはずじゃないか、こういう御発言があったと思いますけれども、はたしてこの炉の施設の出口等々にこれをチェックできるようないわば体制があったかどうか、これは科学技術庁にお尋ねして、また参考人からも御意見をお聞きしたいと思います。
  143. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 先ほどの図で示されておりますように、汚染監視区域、これは格納容器の外側でございます。汚染監視区域から出るところでは、ハンド・フット・モニターで十分チェックをいたしまして、出るということになっております。それは保安規程に基づきまして厳重な管理がなされております。したがいまして、チェックをされないで出るということはあり得ないと考えております。
  144. 田代實

    参考人田代實君) 私も十月の十八日に現場確認に岩佐氏と同行して炉の中へ入ったわけですけれども、そのときやはりどういうふうにやっているか、たとえば——日常やっておられるとおりやられたと思うんですが、実は出てくるときのチェックというのは、出て、まず着ておった作業着ですね、黄服といいます、黄色い服、これを脱ぎまして、それから手袋、くつ、それからくつ下といったものを全部脱ぎまして、パンツ一枚になりまして、それから手を洗います。それからハンド・フック・モニターに突っ込むわけですね。で、あれは、ですから、そういう手順考えますと、どうも人体に対する汚染をチェックする目的ではなしに、外へ何か持って出さないためのチェックであって、その個人にどれだけ被曝したかというのをチェックするシステムとしては少しおかしんじゃないかというふうに私は感じました。で、衣服が汚染されているかどうかはあれではチェックできない。  それから第二点として、ハント・フット——クロス・モニターと正式には言うんだと思うんですが、衣服の検査もできるようになっております。しかしそれは、岩佐氏には何ら指示は与えられておりませんでした。したがって、付属のクロス・モニターでこうやったらいいんですけれども、それは全然無知な職人ですから、そういうことは一切やっておりません。ですから、皮膚に、ひざに実際汚染があったかどうかということは知りようがなかったというふうに考えられます。  それから機械の性能といたしまして、手と足を測定する、手と足の裏を測定する機械、装置になっております。したがって、まあこれは若干計算してみないといけないと思いますが、ひざにどれぐらい残っておったら感知できるかということは、ちょっといますぐぼくは答えられないのですが、おそらく非常にひっかかりにくいんじゃないかというふうに考えます。
  145. 加藤進

    加藤進君 説明をお聞きして次第に明らかになったわけですけれども、どうも科学技術庁の言われる、チェックをしております、体制はありますと言われるけれども、中身は専門家から見ると、いま言われたようなきわめてずさんなものであって、何らこの放射能汚染についての症状を明確にキャッチすることも不可能だと、こういうことがいまの問題だけでも私は明らかにされたと思います。  それからもう一つ私は、今度の問題が、国会論議されたときに、科学技術庁をはじめ政府が、どういう立場で、いわば田代さんの診断書に対して反論をしたかといいますと、第一に、大体田代さんは、独断的過ぎる、専門家に相談もしないでこんなことを軽軽しくきめるべきものじゃない、こういう反論でございました。ところがきょうお聞きしてわかりましたように、大学の使命を十分自覚されて、学術の中心という立場から、医学部、理学部のワクを越えてとにかく協力して真実を追及しようとする努力をしておられることも明らかでありまして、これについても政府はじめ科学技術庁の言い分というのは、いかにも常識的に、わかりやすいことばですけれども、まさにその真実を示すものではない、こういうことが私は第一に言えるかと思います。  それから第二の問題は、一ミリレムの問題でございますけれども、これも政府答弁で何度も発言がありました。あたかも一ミリレムといえばきわめて微量でございますから、そんなことで症状が起こるはずがないという一般の国民の受け取り方が出てくると思います。こういうことを、いかにも利用するかのごとく、この点が強調されたということは、私は科学技術庁の態度としては許しがたいものであるというふうに言わざるを得ないと思います。そういう点につきまして、私はさらにこの問題以外の問題につきまして、科学技術庁の所見をお伺いしたいと思います。  それは私が過ぐる二月二十五日に、決算委員会において沖繩バックグラウンド調査の中の、海底土中の放射性各種の分析結果の報告の中に、きわめて高度なコバルトの検出があった、この問題々私は重要視して指摘しました。これに関して科学技術庁のそのときの答弁は、議事録に明確に出ておりますけれども、ここにおられる政府委員伊原原子力局次長は、これは、そのある程度の部分け原子力潜水艦のものであると推定がなされるかと思いますと、きわめて明確にこれを肯定する答弁をされたわけであります。これは決して一時の思いつきの答弁でないことはその間の議事録をごらんになれば明らかであります。再度にわたってこのことは言われているわけであります。ところが、そのあと三日たたない間に、この答弁の内容が全く変わったわけであります。参議院においては、原子力潜水艦によるものであると推定されると肯定されながら、その三日後にはどう言われておるかというと、結論といたしまして、原因については全く不明であると言わざるを得ません、科学技術庁政府としては、この原因については何一つはっきりできませんと、こう答弁をなされたわけであります。こういう変化は一体どうして起こったのか、これは伊原原子力次長のお考えが変わったのか、それとも森山科学技術庁長官の御指示があったのか、この点明確にしていただきたい。
  146. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) どうも先ほどの原子力発電会社の敦賀発電所の問題で、きわめて一方的なことを言いっぱなしにされて、はなはだ私は遺憾であります。しかし、そういうことについて一々きょうやりとりする時間はもうあまりないようでございますから差し控えますが、ただいまの問題につきましては、まず伊原次長のほうから発言いたしまして、それから必要があれば私から発言いたします。しかし、伊原次長は専門家でございますからその技術者の立場から話しになっておることであって、科学技術庁長官が何か政治的に曲げるような発言を言ったのではないかと疑惑を与えるがごとき発言ははなはだ遺憾にたえません。そのことだけはまず前置きとして申し上げておきまして、伊原君の答弁によってまた御質疑があれば私から申し上げます。
  147. 加藤進

    加藤進君 簡潔に願いますよ。
  148. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 先生御指摘の参議院決算委員会での私の発言につきましては、説明が非常に至らなかったために誤解を与えまして、たいへん申しわけないと思っております。  コバルト六〇が、海底土あるいは海水中にどういうふうな原因で検出されるのかということについての原因、これが放射性降下物による、あるいは鉄の中にはことによってコバルト六〇が含まれておる、そういうことは知られておるわけでございますから、それから原子力潜水艦の可能性ということも言われておりますけれども、実はこれは、科学的にいろいろまだ議論があって明らかでない点が非常に多いということでございまして、ただその沖繩の数値につきまして、加藤先生から御指摘いただきましたときに、数値の信頼性はまた別といたしましても、現在までのデータによりますと、沖繩の数値、特に那覇港の数値が、原潜が寄港していない港に比べてやや高いと、こういう御指摘でございましたので、あるいは放射性降下物のみによるものではないかもしれぬ、原潜の疑いは全く否定できるほどの科学的根拠がいまのところはないかもしれないということを申し上げたつもりでありますが、これは一つには、多量のという御指摘がございましたが、人体に影響が全く考えられない程度の微量のものであるということでもありますし、コバルト六〇がいかにして海底土の中にあるかという原因についての知見が現在まだ十分ではございません。放射性降下物によりますこういった場合の最高値がどの程度あるか、こういうこともまだ明らかでない、こういうことでございますので、結論といたしまして原因については全く不明であると言わざるを得ないと、こう申し上げた次第でございます。これにつきましては、今後とも追試を重ねまして、コバルトの減衰状態を見ることにいたしておりますので、私の説明が非常に舌足らずで誤解をお招きいたしましたことにつきまして、再度おわびをいたします。
  149. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) やりましょうか。
  150. 加藤進

    加藤進君 もう一言申し上げました上でお答え願います。  きわめて微量だとおっしゃいました。微量か多量かということは、これは比較の問題でありますから、それはどこに根拠があるか、どこに基礎があるかということで変わるわけでしょう。あなたは、健康被害にはあまり影響がないようなきわめて微量だと言いました。しかし、沖繩で検出されたコバルト六〇は微量などじゃないですね。原子力潜水艦が寄港しない他の港湾におけるコバルト六〇の存在があります。しかし、このピコキュリーなるものはわずか十以下です。ところが、沖繩那覇港において検出されているのは最高百七十八ピコキュリーです。十八倍に達する。これ少ないと言えますか。十八倍ですよ。こういう現実の数字に対して、科学技術庁は、本来国民のこの問題についての疑惑に答える責任があるじゃないか。責任があるのにかかわらず、わからない、わからないと言うならば、科学技術庁は存在する理由も、必要もないじゃないですかと私は言いたいのであります。
  151. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 原潜が寄港しない港についてコバルト六〇の値につきまして、私どもがいままで得ております最高の値は、八十二・八ピコキュリーという数字が、佐世保で昭和三十九年十月十三日の採取で、すなわち、原潜入港以前の値としてすでに得られております。そういうふうなことでもございまして、絶対的に非常に質的な違いがある数字であるということがはたして言えるかどうかということについては、いま少し専門家の御検討が必要であると、こう考える次第でございます。
  152. 加藤進

    加藤進君 だから私は言うんですよ。この数値について、国民は非常に不安に思い、疑惑に思っているから、この疑惑を解明するという立場に立ってしっかりとした検討をしてほしいと再三言っておるわけです。しかも、あなた言われました、佐世保でどれだけかが検出されたと言いますけれども、ではこの沖繩において検出された時点の数値に比べて、その時期における日本の他の開港におけるピコキュリー、コバルトの検出量はどれだけかということは、もう数字的にもあなたたちの科学技術庁のやっておるもの、水路部等々の出しているもの等々で、もう明確になっているじゃないですか。さまざまな数値があります。この数値は十以下であります。十以下であるような日本全国の港湾に対して、沖繩の那覇港は百七十八あるいは百四、九十九等々を記録しているという事実に対して、私たちはこれを否定するようなことをやるならば、これは科学技術庁のなすべき使命じゃない、これを解明するという努力をやるべきである。ところが、その結果はどうかというと、この一部は、原子力潜水艦によるものと推定されますと言っておきながら、その三日後に、結論としては原因は全く不明でございますというような、不明論におちいっている、不可知論に入っている。こんなことなら科学技術庁は何を仕事とするんですか。わからないというのなら、われわれ国民も全部わかりませんよ。科学技術庁の知能を集めて、各大学の諸君の研究室の知能を集めて、この問題を解決をしますと、こういうことがまさに科学技術庁の責任ある態度ではないかと、私はこう申し上げたい。森山長官この点についてはいかがですか。
  153. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) 伊原原子力局次長の表現が、参議院において必ずしも十分ではございませんでしたが、これはひとえに加藤委員の馬力のある質問にあおられまして、趣旨が十分徹底しなかったんだと思います。で、この点を衆議院において明らかにしたものであろうと思っておるわけでございまして、真意は先ほど来申し上げたとおりでございますしいたしますので、どうかその点について先ほど来伊原次長も遺憾の意を表しておられまして、きわめて有力な加藤委員の当初の御質問に対して舌足らずの発言をいたしたことは、遺憾の意を表する次第でございますが、最終的にやはり出ている意見が伊原次長の答弁である、くれぐれも申し上げておきますが、私が誘導尋問して答弁を変えたというほど、それほど私は知識もございませんし、それからそれほどの馬力もないつもりでございます。どうぞひとつその点御了承をお願いいたしたいと思います。  なお、そういうことにつきまして、どういうようなことで他の港より沖繩の港においてピコキュリーが高いかということにつきましては、なお検討を進めるようにいたしたいと思っております。ピコキュリーの問題につきましてはいろいろ申し上げたい点もございますが、昨日衆議院でちょっと申し上げましたのが新聞記事になって、またいろいろ書き立てられますので、きょうはこの程度でひとつお許しを願います。
  154. 加藤進

    加藤進君 そこで、伊原政府委員ね、聞きますけれども、じゃあ、この数値が出るのにはしかるべき理由があるはずであります。その理由として、伊原次長自身が決算委員会でも述べられております、放射能降下物によるもの、あるでしょう、ここでもカチカチいっておるわけですから。ある部分は、鉄の中に含まれるという可能性もある、これもありますね。そしてある部分は、原子力潜水艦によるものですと答えられておるわけです。私は、これに加えるならば、原子炉のある地域においてはまたその放射能の可能性だってあるんじゃないかと思いますけれども、幸か不幸か那覇港には原子炉はないようでございますからこれは別とするならば、これ以外にいわばコバルト六〇の異常数値を引き起こす原因というのは何があるのか。どうお考えになりますか。
  155. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) たとえば放射性アイソトープの治療ということで病院でコバルト六〇を使っておるケースがございます。したがいまして、これもまず考えられないことではあるかもしれませんけれども病院などから出てくるというケースもあり得ると思います。
  156. 加藤進

    加藤進君 いろいろあるからわからぬという結論だと思うんです。病院から出る、こういうものなら何も那覇港において異常な数値で出るはずはないと思うんです。それから天然降下物、放射能降下物ということになれば、これはもう那覇港の上空だけで非常な降下物が出たというようなことは、私は何ら情報としては知っておりません。これもないと思う。鉄については、もうどの程度の鉄の中からコバルト六〇の検出ができるかということは、もう数値がちゃんとできております。きわめて微量であります。だとするならば、ほかの港湾と、那覇港との間の違いはどこにあるかといえば、まさにそのようなコバルト六〇を出すと予想をされるような原子力潜水艦の機構と出入に問題を求めなくてはならぬ、原因を求めなくてはならぬというのは、これは常識的に当然じゃないですか。科学者じゃなくても、そのくらいのことはできます。科学技術庁であればもっと真剣にこの問題について取り組んでもらう必要があるんではないか、私はこういう点について質問を申し上げておりますけれども、伊原次長どうですか。
  157. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) この関係につきましては、専門家の間でもいろいろ議論がございまして、昭和四十八年十一月の第十五回放射能調査研究成果発表会というものがございます。そこでの専門家の御発表の中でも、検出されたコバルト六〇については、これが何からもたらされたものであるかを明確にすることが困難であるという御意見が出ておるわけでございます。私自身非常に勇み足で何かわかったようなことを申し上げたのはたいへん申しわけないと思っておる次第でございまして、専門家の間の御議論でもはっきりこうだという結論はまだ出ておらないというのが実情であると私は承知いたしております。
  158. 加藤進

    加藤進君 私は、この点について、私の期待するような答えを科学技術庁からお願いしようとは思っておりません。しかし、原子力潜水艦によるものと推定されるということはもう大体世論です。こういう世論に対してそうでございませんというなら、より以上の根拠を出していかなくてはならぬのではございませんでしょうか。これを、不明でございます、結論的には何もわかりません、こういうことなら科学技術庁の中の放射線課というのは一体何をやらなくちゃならぬかと言わざるを得ません。この点を私は、時間がもうありませんからあと申し上げませんけれども、その点だけは今後ともしっかりと私は科学技術庁の所信について究明していきたいと思います。  最後に、森山長官に関連する問題でございますが、私は何も誘導尋問をやったつもりはない、その点はひとつ信頼をしてほしいというおことばでございました。私も信頼しようという態度にやぶさかでございませんけれども、しかし、現実に会議録の中に、こういうことばが出ておることだけは私たちも忘れてはならぬと思うのですよ。いいですか、森山国務大臣、これは衆議院です、衆議院でやられたいわば私に対する答弁として出た、原子力潜水艦によるものであると推定されるということをくつがえされる発言のきっかけはここにあるのですよ。こう言っておられますね。「ただ、先生が先ほどおっしゃいましたコバルト60の問題でございますか、沖繩の問題につきましては、実は私は専門家でございませんから、ピコキュリーなんというのが出てまいりますと、どういう単位なのかわかりませんし、またそういう単位で出てきた数値というものが、ほんとうに危険なものかどうかということについてもよくわかりませんし、」なかなか正直におっしゃっています。「またさらにそれがアメリカの原子力潜水艦から出たのではないかと受け取れるような発言が、先般原子力局次長からございましたが、その点についても、はたしてどうなんだということで、私自身も関心を持って、その問題の調査を、事情を聞いてみましたが、どうも私は専門家でございませんから、専門家の原子力局の次長から、この問題についての解明をいたさせたい」こう言って、原子力局次長の答弁が出てきて、結論的には原子力潜水艦によるものではない、よるものと言えないといういわば不可知論に導いてきておる。あなたの、誘導ですよ、これ。あなたの発想じゃないですか。あなたがそう感じて、どうだ、あんなことを言ったけれども、おまえ、そう言っていいのかということでしょう。もう少し調査したという名目で、もう少し答弁を変えろということじゃないですか、これは。こういう態度で、私は、科学技術庁が運営されるということになれば、それはあの分析化学研究所と全く内容は同じであって、あなたたちが、いかに気勢だけはいい発言はされても、これは国会の中だけ、議事録の中だけですよ。国民信頼しません。科学者は信頼しないのですから。そんな科学者にも信頼されない、国民にも信頼されない、国会においても詭弁のようなことを繰り返しておるというような状態で、科学技術庁、ほんとうに政府の機関としてやっていけますか。その一つの実例として、いまだに学術会議の所見は聞いていない、聞こうとしない、これが一貫した科学技術庁の政治姿勢である、この点私は警告いたしまして、こういう点についての大臣をはじめとして、ほんとうにあの分析化学研究所の問題から深く遺憾に思い、反省をするということなら、こういう一つ一つの事柄について国民の信頼と期待にこたえるような努力をしていただきたいということをお願いいたしまして、残念ながら私の時間がございませんから、これで質問を終わります。
  159. 森山欽司

    国務大臣森山欽司君) 先ほど速記録をお読みになって、なかなかその当時としてはきわめて適切なる答弁をいたしました。その後ピコキュリーのことは勉強いたしましたから、少しピコキュリー論議をやりますと、先ほど申し上げましたように、きょうは公開の席で、新聞記者の諸君が手ぐすね引いて待っていますから、きのう来それが盛んに出て、私は別にそういうことをにぎわすことをむしろ好まないのでございますが、私がいす言ったりしたりすること、一挙手一投足そういう扱いになるわけでございますから、きょうはピコキュリー論争はあえて先ほど申し上げましたように慎みます。しかし、きわめて正直に私が申し上げた疑問は、まことにピコキュリーについての知識はふえましたけれども、ほんとうに原因かどうかということは言えるのか、そうだと言えるのか、そうじゃないと言えるのかということについては、これは間違いのないことでございまして、矛の点について伊原次長が、加藤委員のきわめて含蓄、その非常に勉強されて非常に馬力の強い御発言にやっぱりあおられて、衆議院ではああいうように答弁をしたのでございましょうが、私がそう言ったから、伊原次長がそういう答弁をしたと私はいささかも思いません。やはり技術者というのは、そういう点はきわめて正直でございまして、是は是とし、非は非とする、技術者の立場にありながら、私が大臣だから、それに迎合するような発言をするということは、今日まで数カ月間一緒に仕事をしてまいりまして、伊原次長はその点について最も信頼する——ときどき、したがって私の言うことも聞くときもあるし、聞かないときもある、技術的な問題ですよ。行政の筋としては、私は、大臣でございますから、行政の筋はきちんとやってもらわなきゃならぬと思っておりますが、技術的な見解というものは、やっぱり技術者の立場において発言をしており、私もそれを尊重してやっておるということでございますから、どうか、おまえがよけいなことを言ってあんな答弁をしたんだろうというふうにひとつおとりにならないで、善意にお考え願って、なかなか森山大臣は正直ではないかと、よく言っているよというふうにひとつお考えを願って、ひとつ御処理を、格別の御理解を賜わるようにお願いをいたす次第でございます。
  160. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 以上をもちまして、科学技術庁所管に対する質疑は終了いたしました。  参考人には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。    午後一時三十分再開することとし、休憩いたします。    午後一時二分休憩      —————・—————    午後一時三十七分開会
  161. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) ただいまから予算委員会第四分科会を再開いたします。  分科担当委員の異動について御報告いたします。  高橋邦雄君及び小柳勇君が委員辞任され、その補欠として岩動道行君及び佐々木静子君が選任されました。     —————————————
  162. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 昭和四十九年度総予算文部省所管を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  163. 辻一彦

    辻一彦君 私、きょうは、社会教育主事の制度問題について若干お伺いいたしたいと思います。時間が限られておりますから、要点だけになろうと思います。  その前に、文部大臣にちょっとお伺いしたいんですが、過日の予算委員会におきまして、敦賀での発電所の被曝事件に関して、阪大の田代医師診断について合議制がとられていない、慎重な配慮を阪大に求めたいというような御発言がありましたが、一体その合議制というのは、どういうことを言われておるのか、あるいはそれは何か法的な手続における合議制をさしておられるのか、そこらの真意をちょっと聞かしていただきたい。   〔主査退席、副主査着席〕
  164. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 法的な問題じゃなしに、やはり国立大学の病院となりますと、相当な結果については権威があるものとされていると、こう思いまして、今度のような問題になりますと、いろいろ議論のある性格のことなものでございますので、できるだけ慎重な結果を期待したい。それが従来からの国立大学の附属病院のあり方じゃないだろうかと、そういう気持ちを持ってこの間の予算委員会の答弁をさしていただいたわけであります。法的な問題というよりも、やはり国立大学の病院診断結果というのは、非常に権威のあるものだから、同時に、今度のような問題につきましては、どのような判断が出ましても、非常に議論の出てくる性格のものなものしでございますので、やはりあとう限り慎重な進め方をしてもらいたい、こういう気持ちで答えたわけでございます。
  165. 辻一彦

    辻一彦君 実はきょう、午前中、この場所で科学の分科会がありまして、阪大の田代医師とそれから久米講師とお二人に参考人として御出席いただいて、いろんな御意見を伺ったわけですが、それによりますと、まあ田代さんが去年の八月に、この患者岩佐さんを診断された、ちょっとその前に、同じ病院の谷垣先生が御診断になって、これは直ちに放射線皮膚炎であるという診断をそこでおろしたと、こういうことになったということですね。しかし、まあ放射線皮膚炎といえば、たいへん問題は重要だから、十分もう一度ひとつ検討しようじゃないかというので、谷垣さんの部屋へこの田代さんが行かれて、みんなでいろんな相談をしたと、それは去年の八月ですが、以来十数種にわたる薬害といいますか、薬炎、こういうものの可能性がないか、一つ一つそれをずうっと点検をし、陰性であるものはつぶしていったと、さらに、教室のみんなの意見を必要な段階でそれぞれ聞き、さらに、原子力の専門の学者の意見を聞いて、こういう段階をこの半年近く踏んで、そして外科、内科の意見、それから原子力関係意見、こういうものを十分聞いた上で診断をおろしたと、こういうことを午前中、参考人として御発表になっている。私はこれを見ますと、そしてまた、スライドでその症状等もここで御報告いただいたわけですが、ずいぶん慎重な段階を踏み、それぞれの専門分野の方の御意見を聞いて、しかし、最終的には医師法によって医師の良心と責任において自分診断書を書いたと、こう言っておられますが、こういうような経緯を見れば、法的な根拠における合議制というものがあれば別として、一般的に言われる多数専門的な意見を聞きながらやっていくという点については、まあ文相、いわゆる合議制が、私は具体的な中身はどこまでさすかわかりませんが、慎重な態度をとられたと思いますが、この点、この経緯から推して見解いかがですか。
  166. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) いまお話伺っていますと、御本人としては、十分慎重な態度をとったというお考えのようでございます。おそらく御本人としては、そういうつもりであっただろうと思います。私たちの目から見ますと、やっぱり助手の方のようでございます。教授とか助教授の方もおられるわけでございますし、それぞれの病院については、部局ごとに責任者もおられるわけでございます。こういうような性格の問題になりますと、やはりもうちょっとわれわれから言うと、関係者についての判断も求めるという点についてはとるべき措置があるんじゃないかなと、こう思うわけであります。助手だからどうの、教授だからどうのと言うわけじゃありませんけれども、やはり大学ということになりますと、それぞれの責任者がはっきりきまっているわけであります。個人の診療所じゃございませんで、やっぱりそれぞれの部局の責任者と話し合いをして結論を出す方法が私はほんとうじゃないだろうかな、こういう気持ちを持っておるものでございます。まあ、そういう気持ちもあって申し上げているわけでございます、本人としてはそれは精一ぱい慎重にやったつもりでおられるだろうということは、いまのお話からもよくうかがえます。
  167. 辻一彦

    辻一彦君 まあきょうは、これが本論ではないのでありますが、いま大臣も認められたように、御本人としては、十分な、慎重な段階を踏んだと、しかしまあ、政府のほうから見ればもう少しこういうふうにしてほしかったと、こういうことで、これはまあいろんな合議制というものが法的にきめられておれば、これだけの設備を踏まにゃならぬということがはっきりものさしが引けますが、そうじゃなければ、これはどこまでやればその基準に合うのか、この中身に合うのかどうか、これはなかなか結論の出ないところでありますから、御本人も十分慎重にされたということを確認され、なおもう少し、こういうふうにやってほしかったという政府側の御希望があると、こういうことで私はきょうは受けとめておきます。  そこで、社会教育主事の問題ですが、この問題について二、三点伺いたいんですが、たしか、一昨年ごろかアンケートがありまして、まあ、貧弱な町村に社会教育主事が置けないので、財政が貧弱な場合ですね。だから国と県が経費を持って市町村に社教主事を置くことをどう思うかと、こういうような趣旨のアンケートがあって、私は、そういう意味であれば当時けっこうではないかと、こういうことをまあアンケートに答えた覚えがあります。しかし、いま出されている内容を見ますと、いわゆる今日の市町村に社会教育主事を置くのを国や県が補助するか、そういうんじゃなしに県が任命をしてその「求めに応じて」云々と、こうございますが、市町村に派遣をすると、こういう形になりますと、これはまあ私どもはいろんな体験から推しても、社会教育というものの姿をゆがめているんではないかと、そういう点からこれはちょっと賛成はできない、反対せざるを得ないと、こうまあ私いま考えております。  そこで、第一に伺いたいのは、社会教育というのは、国民が、あるいは住民が行なう総合教育でないのか。何か国が行なわせるというようなものじゃないと思うんですが、社会教育の本質をどういうふうにお考えになっておるのか、まず、この点をお伺いいたしたいと思います。
  168. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 国が社会教育の教育内容の基準をきめて、その実施を都道府県市町村に求めるという性格のものでないことは御指摘のとおりでございますが、その内容が総合教育であるかどうか。総合教育面は非常に多うございますけれども、まさに、社会教育は地域の実情、個人の学習意欲に応じてやる教育でございますから、総合教育という形をとることもあれば、そうでない形をとることもございます。
  169. 辻一彦

    辻一彦君 この社会教育は、国自体がきめてやるものではないという、その本質については御確認をされておりますね。そこで、社会教育法の本旨からいっても、住民がみずから行なう総合教育、まあいろんな学習形態が私はあると思いますが、そういうものを十分行なうことができるような環境をつくるということが国のやるべきことじゃないかと、こう思いますですね。そのために、市町村に社会教育主事を置くのが本旨ですね。国はこれに援助するとか、こういうことならばわかるんですが、県が主事を任命して、そしてその派遣をするという制度、これは国や県がみずから社会教育を行なうという、こういう教化主義的な一つの発想につながらないかと、私は懸念をいたしますが、その点どうお考えになっておりますか。
  170. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) この制度が、県が一方的に人を任命して一方的に市町村に派遣をするという御理解での御質問のように思いましたが、私どもは、そういう仕組みをとっておらないのでございます。県と市町村が協議いたしまして、そして市町村の求めがある場合に県から適材を市町村に派遣をするということでございます。そして市町村に派遣された県の職員は、市町村の職員としての身分もあわせ有しまして、市町村教育委員会の監督に服する、そういう仕組みになっておりますので、教化主義的な、あるいは県が市町村を一方的に支配するような、そういう意味での社会教育が行なわれるようなことはないと思います。
  171. 辻一彦

    辻一彦君 そういう考え方であれば、むしろ、市町村が多く社会教育主事に援助をする、助成をする。あくまで市町村に主体を持たせて、そこに置かれる社会教育主事に支援をしていくと、こういう体制をとるのが私は本筋ではないかと、こう思うのですが、この点はいかがですか。
  172. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 一応先生のおっしゃるような考え方もしてみました。しかし、それでは現実問題がうまくいかないということに気づいたわけでございます。つまり、昭和三十四年以来社会教育法の上で、入口一万以上の市町村には社会教育主事を設置すべしという設置義務を課しております。設置義務を課しておることでございますから、文部省としましては、たびたび行政指導を行ない、設置義務を果たしていない市町村の名前をあげて設置を促したこともございますが、それでもなお、その義務設置の人口一万以上の市町村のうちでは一割の市町村が社会教育主事を設置していないわけでございます。任意設置になっておる一万未満の市町村のうちでは四割が未設置でございます。それらの実情をよく調べてみますと、市町村の財政力の問題もございますけれども、現実にすべての市町村に資格を持った社会教育主事がいるとは限らないというような一面がございます。また、市町村におきましては、社会教育主事が市町村役場の人事の一環として行なわれますので、平均しますと、四・八年という非常に短い期間で社会教育主事に就任し、社会教育主事を去っております。一方、学校教育のほうは、三十年、四十年という勤務によって専門職だといわれるところまで深まっておるわけでございますが、現状のようなことでは、社会教育はいつまでたっても教育のしろうと論の域を低迷するだけでございます。したがって、市町村に直接補助いたしましても人がおりませんし、非常に短期の期間で異動いたしますので、そうではなくてもう少し長く、できれば終生社会教育に従事して、そして社会教育の専門家であるような社会教育主事もほしい。こういうようなことで、社会教育主事を県で一つの目で見、県に資格を持ったある数の社会教育主事をプールしておきまして、市町村の求めに応じて市町村に派遣する。そして同一の社会教育主事がある町からある市へ、あるいはある村へいうふうに転勤もできるというようなことになってまいりますと、社会教育が次第に専門化してまいりまして、学校教育、社会教育の連携が説かれております現在の生涯教育の態勢に沿うことができるのではないかと、かように考えたわけでございます。したがって、直接市町村に補助するといたしましても、それらの難点は解決できませんので、こういう形をとったわけでございます。
  173. 辻一彦

    辻一彦君 確かに時間がかかる。手っとり早くやればいま言われるような私は構想があると思うんですが、しかし、角をためて牛を殺すということばもありますが、戦後二十年この社会教育というものがようやくこの地域、自治体に芽をふき、根を張ってきたと、そういうものが押しつぶされる私は心配がないかと、こういうことを懸念しますね。まあ、いまあげられたように財政の問題資格の問題、それから期間が短い、それから終生やるようないろいろな条件があったわけですね。しかし、何といっても、   〔副主査退席、吉武恵市君着席〕 財政の問題は、私は、あとにちょっと触れたいと思うんですが、やはりその貧弱な町村ですから、ほんとうにこの財政の面において裏づけるものがあれば、私は人を確保するということはそう不可能ではないと思うんですよ。で、たとえば、いまあなたがお話になりましたが、短い期間だと、こういうお話ですね。しかし、この主事の任用は大体二、三年ということですね、この制度によると。そうしますと、たとえば私は福井県ですが、福井県はこの制度はかなりあります。市町村財政が貧弱だからということでまあ県が力を入れたわけですね。それはそれなりの成果があったと思いますが、非常に問題ある。というのは、校長さんや教頭になる前に、派遣されてきて、まあ二、三年。だから初め一年は、皆さんとこう接触をするために、なれるのに必要だと、二年目でまあようやくこうなれていく、三年はまたかわっていく準備と、こういうことで、ほんとうに落ちついて社会教育ということがやれないんじゃないかと、こういう私は、話といいますか、よくいろんなこと聞きます。特にこの地域に、私もこの青年団体のことを長くやっておりましたが、全国の各地にそういう人がたくさんおりますが、十年打ち込んで、そうして、その住民や青年や婦人とほんとうに解け合ってそこからほんとうの社会教育がようやく芽をふいていると、二年や三年で、私は、その成果をあげた、そういう社会教育ができるというように思わぬのですが、社会教育はそういう二、三年の、そういう短期で成果があがるものと、こういうようにお考えになっていますか。いかがですか。
  174. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育主事が同一市町村に二、三年いて、その地域の人々と接触をして、そうしてすぐ他へかわっていくということによって地域の社会教育が大いに振興するなどとは考えておりません。
  175. 辻一彦

    辻一彦君 二、三年でかわっていくことはないという意味ですか。
  176. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 御質問が、二、三年で効果をあげられるかという御質問でございましたから、二、三年在職して他へかわっていくようでは効果はあがらないと思いますと申し上げたわけでございます。
  177. 辻一彦

    辻一彦君 それは私と同じ考えですが、そうしますと、こういういわゆる派遣制度というのは、大体任期といいますか、どのぐらい考えておられるのですか。
  178. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 私ども国の立場としては、任期は、県、市町村の任意であると考えておるわけでございまして、それで、多少補足いたしますが、福井県で実施しておられた制度は、福井県独自でやっておられたわけでございまして、学校の先生の中堅を市町村へ派遣すると、それなりの効果をあげて、福井県としても社会教育の上で全国の中でも目立った実績を示しておられます。しかし、その運用次第では、十分な効果があがらないことは先生の御指摘されるようなことであります。したがって、今後私どもが求めておるのは、学校の先生から来て、社会教育の世界に二、三年入って、また学校へ引き上げていくということではなくて、できますならば、十五年でも、二十年でも社会教育の専門家として育っていただきたい。そういう社会教育の専門家を確保するために、派遣社会教育主事制度を始めていこうと思っておるわけでございます。したがって、福井県で運用されておる実態が、そのまま全国に及ぼされるものだという前提で御質問なさるのであれば、私どもの意図とは少し違う点があるということを申し添えておきたいと思います。
  179. 辻一彦

    辻一彦君 いや、まあ福井のをそのまま私は申し上げておるのではないのですが、一つの例ですがね。しかし、文部省が今度考えておられる派遣制度は、教師から任用して、大体三年程度で転勤といいますか、かわっていくという、そういうことをお考えに全然なっていないのですか。
  180. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) その辺に少し意見の相違があるようでございますので、説明さしていただきます。  私どもとしては、社会教育がいつまでもしろうと、教育しろうとで行政の域に低迷していてはいけない。   〔主査代理吉武恵市君退席、主査着席〕 生涯教育という教育の理念が得られて、学校教育と社会教育が有機的な連携を保っていくべきであると、こういうことが、いま明治以来百年の学校制度の反省に立って新しい時代を迎えて提唱されております時期であるだけに社会教育の専門制を追求していかなければならないと思うわけでございます。ただ、いかんせん従来の歴史があり実績がございますので、社会教育主事の人材源として現在のところ多くを学校の先生に求めざるを得ない。しかし、すべて学校の先生から求めるというわけではなくて、民間団体において社会教育の実績をあげておられる人々あるいは市町村の社会教育主事としてすでに実績をあげ、今後長く社会教育に従事される職員については、これを今回派遣社会教育主事の人選の中に入れていただきたい、入れてほしいということも申し上げておるわけでございます。ただ、歴史的な経緯もございますので、当面のところ、学校の先生に人材源を多く求めますけれども、決してそれを恒久的な仕組みにしようというわけではないわけでございまして、最終のねらいは専門的な、そうして長続きのする社会教育主事を求めていきたい、そのための措置をしたいということでございます。
  181. 辻一彦

    辻一彦君 私は、その社会教育主事に、派遣制度に、もしなった場合ですね。その主事が十年、十五年終生社会教育をやられる、これはたいへんけっこうですよ。しかし、二、三年で、ほかをこう動きながら終生やられるというのと、一つの場所に定着をしてそこに十年打ち込んでほんとうに地域の人と結びついてやっていくのとは、同じ終生でも非常に違うわけですね。だから、あなたの、文部省考えておられるその十年、十五年、終生というのは、一つの場所に、そこの地域に住みついてやっていく、そういう意味を言っておられるのか、その点どうなんですか。
  182. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 私が申し上げた意味は、市町村を転勤することもあるけれども、通じて十五年、二十年あるいは三十年という長い間社会教育の仕事に従事していただきたいという意味で申し上げたわけでございます。
  183. 辻一彦

    辻一彦君 いや、そこなんですよ。十年、十五年、二十年社会教育に打ち込まれるということは、それはたいへん大事だし、やってもらわなければいかぬ。しかし、私のさっき言ったのは、やはりほんとうに社会教育というものが総合教育であり、住民の中に根をはやしていく、ようやく育ってきたこれを発展さしていくには、やはりそこに飛び込んで、そしてその若い人や婦人や住民の人とほんとうにいろんな暮しもやり、そういうことによってだんだんその成果があがるんであって、一年来てまずなれて、ようやくなれて、二年目に仕事ができて、三年目にはまた、三年もすれば大体みな動いていますからね、ほかへ動いていくということになれば、やっぱりその地域に定住、定着したものではない。それを見ますと、やはりいろんなこの弊害といいますか、マイナス点がある。  ほんとうの社会教育をやるにはやっぱり十年、十五年それこそ住みついてやっていくことが必要ではないかと。そういう点から言えば、従来ようやく社会教育主事としてそういう形で育ってきた人たちが何か押しつぶされて、そして本物のほうが私は育っていかないと、こう思いますが、その点はいかがですか。
  184. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 従来から育ってきておる社会教育主事がいるとおっしゃることも事実でございます。しかし、全体的に計数的に統計をとってみますと、市町村の社会教育主事の平均勤務年数は、四・八五年でございます。そして現実には社会教育主事として多くの人々に触れて評判のいい人は、市町村長部局のほうへ教育委員会から早く引っこ抜かれていく。そして市町村長部局と教育委員会の一連の人事交流として人事が行なわれておるわけでございますが、社会教育主事としても成果のあがらなかった人が長く居すわるといったような傾向もあるわけでございます。先生のおっしゃる正反対の現象もやや目立つ点もございます。それから非常によろしい人でも十年、十五年たってまいりますと、本人自身もあきてしまって、あるいは地域の人からもあきられて、何かいままで持ってきた成果を、体験をよその市町村で生かすならば、私ももっと張り切ってやれるんだがというような感想を持つ人もおるわけでございます。したがって、先生のおっしゃることも全く事実でございますけれども、その反対の事象もしばしばございます。また、それは確かに個人に依存することも多うございます。したがって、今回派遣社会教育主事制度を創設するにあたりまして、それらについて、国が特別に三年とか五年とか限定いたしておりまするのは、地域の実情に即してほんとうに市町村の社会教育振興のために役立つような任期を都道府県教育委員会と市町村教育委員会とが協議してきめていただきたいという意図で国としては別段の指示をしてないわけでございます。
  185. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、私も、それは中にはやっぱりいろんな町村がありますから、いい人だなと思った人がほかへ移ったと、残念だというような例にもまた出つくわします。だから、そういう私は一面があると思います。しかし、むしろ、この社会教育というものがなかなか重要視をされないという中で、がんばっているそういう人たちが熱意を持ってやれるような条件をやっぱりつくって、そういう人たちが長く続くようなその努力を国がやるということが私は先決で、何か県のほうからの派遣制度であれば、もう市町村ではどうにもならぬから、まあ思うようにやってくるんじゃないか、こういうことはどうも社会教育をじっくり根をはやして進めていく視点からいえば非常に私は問題があるように思います。  そこでもう一つ、こういう派遣制度というものがおそらく私はやられるとすれば、なかなか五年も十年もそこに定着するということは、県のいろいろな異動の中身を見てもなかなか私はそう長くは無理だと、そうすれば、どうしても三年あたりでこの異動ということが出てくるのじゃないか。そうなると、どうしてもかまえが県のほうを向いている、上を向いている、市町村や住民のほうを向いてそしてやっていくというよりも県のほうを向いてやっている、だから市町村と同じプログラムが組まれて、そして、そのときに、たまたま県のほうでいろいろな会合があるとすれば、どっちが優先するかというと、やはり県のほうにいってしまうという、こういう形が私は事実としてあると思うんですよ。そういう点で、常に上のほうを向いてものを考えていく社会教育主事が派遣制度という中で常にできていくのじゃないか、それは私は、社会教育の筋から言うと逆じゃないかと、こう思いますが、この点どう考えておりますか、
  186. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 心身の未発達な子供に対して人類の文化遺産を伝える学校教育におきましてはやっぱり全体として一定の基準が必要でございます。そういう場合におきましては、その基準をきめるところ、あるいはそれに近いところを見る、現場の教員が見るという意味で上を見るという必要性があろうかと思います。しかし、また一方、子供を見詰めなきゃならぬという必要性もあるわけですが、それに比べて、社会教育のほうでは国のほうで定めている教育内容の基準がないわけでございまして、住民のほうを見て仕事をしない限り社会教育そのものが成り立たないわけですから、社会教育に従事する人々は、現に住民の中から起こってくる学習要求、それを受けとめなければ仕事になりませんし、それを受けとめて仕事をしていればおもしろくてしかたがないというような仕事だと思います。したがって、社会教育に熱中する社会教育主事が県のほうを見て、上を見て下を見ないとおっしゃる理屈が私には全くわからないという感じがいたします。
  187. 辻一彦

    辻一彦君 三年ぐらいで移るというようになると、ある程度期間中に成果をあげようと、ちょっと見ばえのいいようなほうに力を入れて、じっくり落ち着いたほうにちょっと私は現実にはなかなかできないというふうに思いますね。まあ、点数をというとちょっと語弊があるかもわからないんですが、見ばえのいいようなところに力を入れてやっていくという、こういうかまえが出る心配はお考えになっていませんか。
  188. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 過去百年の教育制度、今後百年の教育制度を見比べながら現在社会教育を担当しておる私自身の立場からいたしましても、見ばえのいい仕事をやるといったことを考えられる雰囲気でない、素地がないような感じがするわけです。いま何かやらなければならない、双葉を一生懸命になって育てていくというような気持ちが現在の社会教育の関係者になければ社会教育はほんとうにおざなりのものになってしまうのじゃないだろうか、そういう私自身の気持ちがございますので、どうしてもこの先生のおっしゃるのが、県の教育委員会の人事担当者の顔を見ながら仕事をするようなお話でございますが、何か実感がないのでよくわかりません。
  189. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、上を向いて、そしてこの中央や県からの指示を常に受けるという、私はそういう懸念といいますか、この派遣制度の中には教育の分野における何か中央集権的なそういう感じが非常にするんですが、まあ実感がわかぬと、どちらが実感がわくかは、これは時間がいろいろと証明を私はすると思いますがね。この社会教育主事のこういう方向の中に、学校教育の分野と同じように教育の中央への集権化、まあ東京へ、そして県へというこういうような構想につながる派遣制度ではないかという懸念がいたしますが、大臣、この点はどうお考えですか。
  190. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 社会教育行政のあり方、やはり現状を踏まえて判断をいたしますと、やっぱりできる限り技術援助といいましょうか、知能援助といいましょうか、そういう力を貸す必要が多分にあるのじゃないだろうかと、こう思うわけでございます。理想的にいっているところもあると思いますけれども、私は、大多数は現状ではうまくいってない、それはやっぱりそれなりの人が得られにくいということじゃないだろうかと思うんであります。得やすいようにしようとしますと、やっぱり県が積極的にそういう人を確保してくれる、それを求めに応じて派遣をしてくれるということじゃなかろうかと、こう考えておるわけでございます。あくまでも市町村の社会教育を振興させる、それにはどんな手当てが一番必要だろうか。金の問題じゃなくて、いまはやっぱり知能を援助するということじゃないだろうか、あるいは技術援助ということじゃないだろうか。そうすると、人材を求めに応じて派遣してあげることじゃないだろうか、こう考えておるわけでございまして、おっしゃいますように、この運用のいかんによっては県ばかりながめるようなことになりはしないか、そういうおそれもないわけじゃないと思うのであります。しかし、あくまでも、いま申し上げますように、市町村の社会教育を振興したいんだ、そのためには、やっぱり金の問題よりも知能をお世話してあげることだろうと、そういう意味でこれを発足さしているわけでございますので、そういうたてまえを今後とも一そう明らかにしていくことだと、こう思っております。
  191. 辻一彦

    辻一彦君 たいへん時間が短かいんですが、「求めに応じて」と、こう言われますけれども、こういう制度ができると、実際としては財政が貧弱な町村ではそれにたよっていこうと、こういうことに私はなるので、自治体が非常にその自主性が強くて、そしてその財政力が心配ない、こういう状況であれば、これは「求めに応じて」といっても私はまあいいと思いますけれども、実態は、これはもうその中身としては、それはひとつそちらのほうにたよっていこう、こういうことが私は起こると思うんですよ。だから、「求めに応じて」というたてまえがとられても、もしこれがやられるとすれば、実際的にはほとんどそちらのほうに動く私は懸念があると思うんです。だから、「求めに応じて」という項があるから別にその市町村の自治の自主性といいますか、自治権というか、そういうものは心配ないんだと、こういうことは、これから動いていく現実を見るとたいへん甘い感じがします。  そこで、もう一つ伺いたいのは、社教主事の資格ですが、いまお話を聞くと、いろいろな専門的な知識が必要だと、こういうお話ですね。そこで、大学で正規の社会教育主事の単位を取って、そして卒業している人がかなりおると思いますが、その数と、そして、その中でほんとうに社会教育に就職しているというか従事している人の数、これはどのくらいになりますか。こまかくなくていいですが。
  192. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 大学で社会教育主事の資格を取って卒業する人の数、いま正確に覚えておりませんが、現在全国にいる社会教育主事の数と同じかあるいはそれよりも多かったぐらいじゃないかと思います。しかし、その人が市町村の社会教育主事として採用されているという例はほとんどないわけでございます。むしろ、会社とか、そういう方面へつとめている人が多くて、市町村役場の、市町村の教育委員会の事務局職員になっているような人はりょうりょうたるものであるという現状でございます。
  193. 辻一彦

    辻一彦君 大学で単位を取って、資格を取って、もうなかなか採用されないというような状況がかなりあると思うんですが、そういう人をもっと利は活用していくというか、ほんとうに打ち込んで社会教育をやってもらう、そういうことに力を入れるということが大事で、今度の中では、国立の社会教育研修所ですか、ここで主事養成をはかっていこうというような考えですね。私は、正規の資格を持つ人、そういう人がほかに——まあこれは個人の自由ですから、意思ですから、そういかない面もありますが、極力そういう人がこの社会教育の分野に活躍してもらうような条件をつくる、これが第一じゃないですか。
  194. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 専門の資格を取った人が社会教育主事として働いてくれることが最善だと思います。ところが、現実にいかないのは、一つの町の教育委員会に入ってしまいますと、現在の制度のもとでは、社会教育主事になって一生社会教育主事で暮らすことになるというような現実がございまして、まあ人情として、そういう仕事に行くよりも、もっと別な仕事を求めていく、会社などに入って人の世話をするといった仕事のほうがまだおもしろいという現実があるわけでございます。  それからまた、いまおっしゃいましたことで、社会教育研修所でとおっしゃいましたが、全国で十八の大学及び社会教育研修所で資格付与の講習会をやっておるわけでございます。
  195. 辻一彦

    辻一彦君 しかしこれはあれでしょう、実質的には国立の社会教育研修所ですね、ここにこれからの重点を置こうという考えじゃないですか。私は、ここはその資格を与えるには、ここにおける職員の身分といいますか、こういうものが行政機関から大学のように総体的にやっぱり独立しているというか、中立的で保障される、こういう条件がないと、そこでの養成によって資格を与えていく点については、非常に問題があると思うのですが、こういう研修所というのは、一体身分の確立とか、こういう点で、どういうふうにお考えになっていますか。
  196. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育法の第九条の五に、「社会教育主事の講習は、文部大臣の委嘱を受けた大学その他の教育機関が行う。」ということになっておりまして、十八の大学それから教育機関としての社会教育研修所がやっておるわけでございます。社会教育研修所は文部省の所轄機関でございます。大臣の指揮監督のもとにある。しかしながら、評議委員会がございまして、所長の人事については、評議委員会の推薦によって大臣が任命するというような形になっておる次第でございます。
  197. 辻一彦

    辻一彦君 ちょっと確認しますが、社会教育研修所で大量の主事の養成をはかるというような考えはないのですね。
  198. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育研修所は、現在十九名の職員がいるだけの小さな研修所でございます。そして都道府県の現職の社会教育主事等の現職教育を主としてやっておるわけでございます。そして、最近やや定員もふえ、力もついてまいりましたので、十八の大学にならって社会教育主事の資格付与の講習会もここ二年間できるようになったということでございまして、社会教育研修所を中心にして、社会教育主事の養成をするという意図は全くございません。
  199. 辻一彦

    辻一彦君 それは、そういう場所で大量の主事の養成を考えていないということは伺いました。  時間がもう参っておりますが、最後に、一昨年でしたか、文部省は、公民館関係者に公民館主事制度の確立を約束したと、こう聞いていますが、公民館主事制度、それから図書館であるとか施設の職員専門制や身分の保障ですね、こういうことを確立するということも社会教育にほんとうに力を入れていくためにたいへん大事だと思いますが、将来これをひとつどういうように身分の確立等について考えていられるのか、この点伺いたい。
  200. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 四十六年に出されました社会教育審議会の答申に、社会教育施設の職員の身分待遇、そういうものについて考慮するようにという趣旨のことがございます。身分待遇について考慮するということでございますが、現在、公立の社会教育施設の職員は、すでに地方公務員としての身分上の保障はあるわけでございまして、そのほかにプラス何かをというようなことになりますと、資格要件になってまいります。資格を高めて待遇をよくするということでございますが、現実に公民館の主事として働いておられる方々の学歴なり実績なりを見ますと、とたんに資格を上げてしまいましては、脱落者のほうが多く出てしまうというような形でございますので、そのあたりに専門性を求めたいわけでございますが、どういう形で資格要件を高めていくかということについては、現職教育の内容あるいは養成制度ともからんでまいりますので、現在、社会教育審議会において社会教育主事の身分確立に引き続いて検討をお願いしておるところでございます。
  201. 辻一彦

    辻一彦君 これで終わります。  ごく簡単に、大蔵省おられますか。おりますね。私は、社会教育の本来の姿からいって、市町村の交付税の中に人件費やいわゆる社会教育が行なわれるような経費をもっと底上げをしなければ、結局財政が弱くて、県や中央に依存する形になると思いますが、将来交付税の中に底上げをすることについてどう考えておられるか、それが一つと、それから限られた時間できょうは、そういう問題について二、三にとどまりましたが、この制度は、どうしても、派遣制度という名のあらわすように、中央集権下の教育における社会教育の分野におけるこの懸念が非常に強いと思うんですが、こういうものを再検討されるような考えはないのか、この二点を伺って終わりたいと思います。
  202. 廣江運弘

    説明員廣江運弘君) 最初の御質問は、ちょっと私担当外の主計官でございまして、先生のお考えはよく担当のほうに伝えたいと思いますが、まあ、先生御指摘のとおり、現在すでにそういうものは地方交付税の中には積算されているわけでございます。先生はそれをより一そう底上げといいますか、充実するというような方向はどうかというようなお話でございますが、それにつきましては、御意見を十分伝えさせていただきたいと思います。  二番目の社会教育主事の問題につきましては、先ほど来今村局長からお話があったような線で考えていくべきではないかと思っております。もともと非常に社会教育主事というものが非常に専門的な知識も要しますし、また、人事の弾力的な運用もはからなければなりませんので、現在の段階では、そういうふうに考えておりますが、なお今後とも、文部省ともよく御相談をしてまいりたいと、かように思っております。
  203. 辻一彦

    辻一彦君 終わります。
  204. 岩動道行

    岩動道行君 私は、本日は、高等教育の改革に関して特にその拡充整備の問題を中心としてお伺いをいたしたいと思います。  まず、四十九年度の予算編成の過程におきまして新学園公団というような構想が政府部内にもあったやに聞いておりまするが、これは遺憾ながら実現の至りにならずに四十九年度予算国会でただいま審議中になっておるわけであります。そこで、このような公団構想も含めまして、新学園構想というのは一体どういうものかということをこの機会にあらためて伺っておきたいと思いますが、その前に、文部省の中に高等教育懇談会、そして新学園建設等調査会と、こういうような審議機関がございまするが、これは法令に基づいてどきたものではなくて、文部大臣の私的と申しまするか、そういう省内限りの機関だと思いまするが、この両者についてまずその性格とかかわり合いを伺っておきたいと思います。
  205. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 高等教育懇談会は、大学局でお世話をしておるものでございますが、国立私立の大学関係機関並びにわが国の高等教育に御関心が高いと思われます関係名層の方々に御参加をいただきまして、自由な立場でわが国の将来の大学のあり方等について忌憚のない御意見を交換していただく場だと、こういうことでお世話をいたし、お集まりをお願いしておる次第でございます。
  206. 岩動道行

    岩動道行君 そこで、何か近く新学園建設に関して答申が出るというようなことも聞いておりますが、その時期、それから大体どうなことが答申として出てくるのか、そこ辺を簡潔にお答えいただきたいと思います。
  207. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 先ほどお話がございました新学園建設等調査会でございますが、これは高等教育懇談会におきまして高等教育機関の全国的な配置という課題について御検討いただいておるわけでございますが、その基本的な考え方に従いまして、一方、最近の高等教育機関の立地条件が年々悪化いたしておりますので、これを改めまして、恵まれた自然環境の中に新学園を建設をしたい、その場合の基本的な事項についていろいろ御審議をいただくというのが新学園建設等調査会の任務でございます。この調査会は、高等教育懇談会につきましてただいま答弁をいたしましたように、それと同様、大臣の事実上の諮問機関ということでございまして、法的な性格を持っておるものではございません。この調査会の過去一年近い御審議の結果、大体の結論がまとまりましたので、今月半ばごろ基本的な事項について御報告をいただきたいというふうに考えております。  内容といたしましてはごく基本的な事柄でございまして、新学園の基本的な考え方、それから新学園の形態、規模あるいは新学園の環境、それから新学園が建設されまするいわゆる新学園都市とのかかわり合いの問題、それから新学園並びにその新学園都市建設のための行政上の、あるいは財政上の措置についてのごく基本的な方針、そういったものをただいま申し上げましたように月半ばに御報告をいただきたいというふうに考えております。
  208. 岩動道行

    岩動道行君 まず基本的に、新学園と筑波学園——筑波大学ですか、あれとはどういう関係になりますか。
  209. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 先ほど申し上げましたように、自然環境に恵まれたところに新しい学園をつくりたいというのが新学園の基本的な考え方でございまして、昨年の春の通常国会における田中総理の施政方針演説におきましてその基本が示されておるわけでございますが、私ども考えでは、筑波の学園都市というものもやはりこの新学園の実質的には一つであろうというふうに考えておりますが、ただ、今回御報告をいただきまする方向、結論は、これは筑波は筑波ですでに整備が進んでおるわけでございますから、これに遡及して適用するというふうなことは考えておりません。実質的には筑波も新学園の一種だとは思いますが、今後建設される新学園都市についての基本的な方針ということで報告をいただきたいというふうに考えております。
  210. 岩動道行

    岩動道行君 答申の出る前に、文部当局からその具体的な内容を伺おうとしてもこれは無理で、また、失礼にもあたると思いますので、いずれ答申を見て、また、機会を得て、いろいろと検討さしていただきたいと思いますが、まず、新学園構想のその前の段階で公団構想のときには、全国に何カ所かの新学園をつくりたいという構想が実はあったと承知しておりますが、これらのことは、大体どんなことを考えておられたのか、そこをまず伺わせていただきたいと思います。
  211. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 四十九年度の概算要求におきまして新学園公団という構想の要求をいたしたわけでございますが、その当時の考え方は、全国に十七カ所新学園を整備をしたい。その中で、これはまあ何カ所というふうに特定はいたしておりませんでしたけれども、何カ所かにつきましては土地の購入を行ない、あるいは購入した土地の荒造成を行なう、そういう構想で政府の出資金約十億と財投約百九十二億の要求をいたしたわけでございますが、関係各省と折衝をいたしました結果、さしあたり土地の購入にとどめるということにいたしまして、その土地の購入につきましては、現在計画中の国土総合開発公団においてその衝に当たっていただく、こういう考え方に落ちついたわけでございます。
  212. 岩動道行

    岩動道行君 まあ、できてなかったものについて、これを追及してまいるのもどうかと思いますのであれですが、今度の予想される答申の中では、やはり全国的に見ますと、この高等教育の地域差というものが、非常に日本の中では激しいものがあるというふうに私は考えております。これは資料によりますと、ブロック別に見ましても、北海道での大学、短大の進学率は、およそ二五%、東北ブロックにおきましては一九・三%、関東は三八・五%、北陸・甲信越は二八・五%、東海が三五・七%、近畿が四二・四%、中国が三六・四%、四国三一%、九州二四・七%、全国平均で三二・二%と、こういうことになっておりますが、さらに、これを都道府県別に見てまいりますと、非常にまた格差がはなはだしいのでありまして、たとえば第一位は東京であります。この進学率は五六・四%、最下位の青森は一五・九%、四十七番目であります。その一つ上、四十六番目が岩手県でございます。鈴木先生もここにおられますが、私どもまことに遺憾であり、もう何と申していいか、心強い鈴木先生もおられますので、何とかこれはやらなければいかぬわけですが、もう一つ上の四十五番目が、これが秋田県であります。そして、四十三番目が山形、四十二番目で福島、そして東北の中心地である宮城県、これがようやく三十五番目と、中位にもいっておりません。二三・四%、平均以下であります。  こういったようなことを見ますると、非常にブロック別に、また、県単位に見ましたときには、格差がはなはだしい。これでは、国の立場から見て、高等教育施設あるいは進学の問題大きな課題を文部省がかかえており、国も解決していかなければいけないと、私ども国会の立場からも、これはぜひ解決をしていくべきものと、かように考えておるわけでございます。  このように、進学率が低い、あるいは施設がないということが、各県別、ブロック別にもあるわけでありまして、たとえば東北ブロックにつきまして、その施設に対して地元から進学している者とそれから他のブロックに進学している者、これを見ましても、昭和四十八年度で、東北ブロックは、充足率がわずかに五四%、当該ブロックからの進学者が一万六千人がブロック内で収容されている。そして、ブロック外に行っているのが二万三千人、こういうようなバランスになっております。北海道で申しますならば、これはどういうことでありまするか、北海道内で当該ブロックに進学しているのが一万四千であり、その他の地域に出て行ったのが一万人、また、関東を考えてみますると、当該ブロックから当該ブロック内の高等教育に進んだ者が十四万三千人、そして他から来たのが十万五千人、こういうふうにして、この収容力と申しまするか、これが一・六六、東北はその三分の一と、こういったようなことで非常な格差が出ております。その格差のはなはだしいのは中国地区あるいは四国あるいは北陸地帯、こういったようなところが非常に悪いということで、先ほど申したようなこととかみ合わせてみましても、非常にアンバランスがある。しかも、この悪いところにこそ恵まれた自然環境がある。こういうことから考えてみましても、私は、早急に新学園構想というものを具体的に実行に移していくべき時期がきているものだと、かように考えますが、大臣の御所見をまず最初に伺っておきたいと思います。
  213. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 全くお説そのとおりに考えておるわけであります。進学率の低い地域は、大学の施設に恵まれていないという事情がございます。同時にまた、国土の均衡ある発展を考えていきますと、文化のセンターの役割りをするようなものをおくれている地域、文化水準の低い地域に持っていかなきゃならないんじゃないだろうかと、かように考えるわけでございます。そういうこともあって、新学園構想というものが生まれてきているわけでございまして、御指摘の東北地方に私たちとしてもぜひ新学園を建設したい、かように考えておるわけでございます。ぜひ、適切な土地をお教えをいただきたい、そういう気持ちでございます。
  214. 岩動道行

    岩動道行君 たいへん前向きなお答えをいただいて心強く、鈴木議員と一緒にひとつやっていきたいと思います。  そこで、この中ごろに予定されている答申の中で、私の一人だけの推定でありまするが、いろいろな基本的な事項と同時に、具体的にどういうところにいまの新学園をつくるか、こういうことになりますると、やはりいま数字で具体的に申し上げたように、高等教育施設の少ないところ、進学率の少ないところ、これは昭和六十年くらいをめどにいたしまして、高等教育への進学率を四〇%というふうに文部省あたりでも考えておられるようでありまするが、まあそれを目標にして考えた場合に、いま申した高等教育施設の少ないところ、進学率の少ないところ、そうしてまた、恵まれた環境の中において土地が入手しやすいところ、こういうことが一つの具体的な基礎的な基準なり条件になるだろうと、かように私は予想をいたしておるわけでございます。  そこで、この新学園構想自体はまだでき上がっておりませんけれども、たとえば、四〇%の進学率ということを考えてみますると、北海道大学がおよそ一万人の規模であります。四〇%を想定すると、北大を百つくらなければ間に合わない、こういうようなことが考えられるわけであります。たいへんなことであります。しかしながら、これはそういう目標に向かって努力をしていただかなければなりませんが、そういう中におきまして、私はひとつ具体的に検討していただきたいのは、ただいま大臣からも、東北にも新学園はつくりたいというお話でございましたが、かねてから私の郷里でありまする岩手県、これは北海道に次いで都道府県の中では一番広い面積を持っております。四国四県と同じであり、また、東京近辺で申しまするならば、東京、千葉、神奈川、埼玉、山梨の半分、これくらいの面積を持った岩手であります。人口はただいまおおよそ百四十万、そしてここ三年もいたしまするならば、新幹線が盛岡までまいります。あるいは縦貫自動車道も開通する。かようなことになりますると、首都からもわずか三時間以内、二時間三十分で盛岡まで到達ができると、こうなりますると、文化のあるいは教育の一つの中心地としても、私は、岩手というものは重要な地位を占めるものではないかと、かように考えるわけであります。そういうようなことを考えて、しばらく前から岩手大学に人文系の学部がないということで、人文学部あるいは経済学部あるいは法律学部、何かそういう管理機能を果たし得るような人材養成の学部をつくることをかつてこの分科会においても私、提案をいたしたことがあるわけでありまするが、遺憾なことにこれがいまだ具体的なコースに乗っていないというのが実情であります。  そこで、このようなことがこのまま放置されてまいりますると、地域的なアンバランスからも私は重要な教育施設としての欠陥が生じると、そういう意味におきまして、岩手大学に既設の学部に加えて人文系の学部を設けるか、あるいは新たに土地を求めて、そうして新学園をつくっていくと、それくらいのむしろ前向きの大胆な構想で進むほうがあるいは適切ではないかと、こうも考えておるわけであります。そういうような意味において、この点に関する大臣のまずお考えをこの機会に伺わしていただきたいと思います。
  215. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) お話たいへんごもっともなことだと思っております。東北全体として見てまいりますと、先ほど御指摘ございましたように、進学率が低いわけでありますが、専門分野別にも人文社会系の占める比率が低くなっているようであります。全国平均が五六%であるのに対しまして、東北地方は三四%と、そのようでございます。岩手大学は教育学部、工学部、農学部、三学部ございますけれども、人文社会系の学部がない。そういう意味で、前から人文社会系の学部をつくれという御指摘をいただいているわけでございます。どのような形において設けていくことがよいか検討をしたいと思いますが、ぜひ、なるだけ早い機会に新学園の建設等も含めまして人文社会系の大学をつくっていくという方向で努力をいたしたいと思います。
  216. 岩動道行

    岩動道行君 そこで、実は岩手大学の中におきましても、そのような人文系の学部を設置するために、学内において、設置推進と申しまするか、そういう関係委員会をつくって検討を進めており、われわれもまた、意見を求められておったのでありまするが、どうも一向にばかばかしく進んでおりません。これは、岩手大学のことを云々するわけではございませんが、そういう学部の中で、しかも、いま大臣が言われましたように、岩手大学の場合には、農学部、工学部、そして教育の系統の学部、こういうところだけで、その新しい学部をつくる斬新な構想というものは、なかなか私は出てこないのではないか、むしろ積極的に文部省も参加をし、また、これはわれわれも反省しなければなりませんが、地元も積極的にこのような構想を進めてまいるということでなければならぬというふうに反省もし、また、お願いもしなければならないと、かように考えておるわけでございます。そのような意味において、今後具体的に公団ができるできないとは別個にやはり既存の大学に学部をつけるほうが手っとり早いということもございます。そのようなことも含めて積極的な前向きの検討を進めていただきたいとこう思いまするので、これはまだ時間も余っておりますが、鈴木先生もお待ちなのでお譲りいたしたいと思いますので、強く要望申し上げ、大臣に最後にもう一度このような新学園構想というものを、岩手だけじゃございません、青森等のところでも最下位でございまするから、非常に強い要望があると思います。どうかかような観点から、全国的な立場からもひとつ積極的な御答弁をこの機会にいただいて、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  217. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 岩手県に人文社会系の大学をつくるという問題は、先ほど申し上げましたように、文部省としても必要なことだと、かように考えております。経費の面だけで考えますと、既存の大学に学部を増設するということが一番簡単に済むわけであります。しかし問題は、よき人物を育て上げるということでございますので、金の面だけを考えないで、教育効果を重視しなければならない、かように考えるわけでございます。したがいまして、単科大学をつくるとか、あるいは新学園の建設とか、いろんなことを総合的に考えながら、いま御要望に沿えるように努力をいたしたいと思います。
  218. 鈴木力

    鈴木力君 私は、時間がどうもだいぶ少ないそうでありますから、簡単に二つのことをお伺いいたしたいんですが、その前に、いまの岩動委員から提起されました、まあさっき応援団に来ましたと言って笑いましたけれども、これは経過がございまして、昨年の決算の総括の質問のときに、私が田中総理に質問いたしましたときに、新学園構想は構想として研究を進めるけれども、まず、地方大学の拡充をこれはまず手をつけなければいけないということでは、政府側と私どもの間でも見解が一致しておったと思うんです。だからまず御要望申し上げておくのは、大学問題もそうでありますし、いろんなことを言いながら、結局研究期間で時間をかせいでというようなことにいく傾向がありますから、文部省前向きにということなんですけれども、実際は上を向いておって前を向いていないんじゃないかというような感じがよくいたしますが、これはいまの岩手大学だけじゃなしに、すべてそういう形でひとつお取り組みをお願いしたいということを先に申し上げておきます。  それはなぜかといいますと、もう一つの面から言えばよく、これは文部省だけにどうこう言ってもしようのない話、政府全体の問題でありますけれども、この設置法の出し方が私はおそいと思っております、基本的に。たとえば、大学設置法を今度の国会にも改正を提案されているようでありますけれども、もうきっちりでき上がって実際もう開幕の準備ができてから設置法が国会に出てくる。そうすると、国会というのは政府の事業の追認機関であって、審議機関ではなくなるんですね。これは正直のところ、この間総理府の小坂総務長官にもそういうことを申し上げました。迎賓館をつくる、それのための総理府設置法の改正案が国会に出ますけれども、落成式の準備までしてから、法案を審議しているというようなことを繰り返しておるわけでありますから、これは大臣、具体的に今度のことをどうこうということじゃありませんで、特に政府全体として、この設置法の出し方を国会が審議できるような出し方をひとつ行政的にこれは検討し直すべきだと、こう思います。そういう中で、岩手大学とあるいは新構想大学と、そういう問題の関係がはっきりと、こう具体的にコースとして見えてくるわけでありますから、そういう形のものを、これは文部省だけという意味じゃありません。重ねて申し上げますけれども政府全体として、そういう問題を提起されながら進めていただくことを最初に御要望申し上げておきたい、こう思います。  その次に、ことしと予算を見まして、私がどうしても理解ができないのは、教育職員の海外派遣ですね。まあ、教育職員を海外に派遣をして研修の機会を与えるということは私は非常にこれはいいことだ、いいことに文部省も踏ち切られたと、応は評価できると思うんです。ただ、しかし五千人という派遣要員ですね。そういたしますと、現在の対象になる教育職員——義務制の小中並びに高等学校まで含むと思いますが、私立まで含んだら対象になるべき教育職員は何人あるんですか。おおよそでいいですよ。百人違っていたからどうと文句は言いません。
  219. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 小、中、高等学校の教育職員、およそ九十万人でございます。
  220. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、五千人ずつ海外に派遣をしていきますというと、この九十万人の教育職員のうち何人まではこれに該当するので、何人は除外されるという計算になるんですか。
  221. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 勤続年数を一応三十年と仮定いたしますれば、十五万人という数字が出てまいります。
  222. 鈴木力

    鈴木力君 私がこういうことを御質問申し上げているのは、せっかくよいことをやるんだけれども、外国へ行ってきたほうが、研修の機会を得て見聞を広めて、いい教育者になれるんだという考え方がある。しかし、その人たちはかりに九十万人のうち、これから変わっていくから厳密な数字にはならないんだけれども、十五万人はその機会が与えられる。そうすると、十五万人がそういう機会を与えられれば教員のそういう海外研修というものの任務というものが達成するのかどうかですね。そうすると、十五万人という基準は一体どこから出てくるのか、金がないから十五万人にきめましたということでは、あまりにも教育行政の責任者の答えとしては少しさびし過ぎる。だから私が言いたいことは——時間かないからあまりくどいことは申し上げませんよ。いきなり文部大臣予算要求しても直ちに予算というのは全部満額つく世の中でないことも十分承知しながらも、せめてこういう制度をつくったら私はやっぱり計画的に、実際の勤務年数か三十年と——いまは三十五年から四十年近いと思いますけれども、せめて三十年のうち一人は行けるんだというところに意欲的に取り組んでみる気持ちがないのかどうかということ、まず、基本的にそれ伺いたい。
  223. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 海外派遣の五千人という数字は、四十七年度は九百人でございました、一挙に四十八年に五千人にふやしたわけであります。私としては、四十九年度も引き続いてさらに大幅にふやしたい、こういう考え方を持っておったわけであります。ところが昨年の秋以来石油問題が起こってまいりまして、わが国の外貨が大幅に海外に流出すると、国際収支が大きな課題になってきたわけであります。昨年の暮れに、率直に大蔵大臣にこの五千人をふやしてもらいたいということを申し上げました。そうしましたら大蔵大臣は、四十九年度の予算にあたってはやはり国際収支で非常に頭が痛いもんだから、これは一応四十八年度にふやしたことだからそのまま横すべりさせてくれぬかと、こういうお話もあったわけであります。伺いますと、やっぱりそれもごもっともなことでございますので、四十九年度引き続いて大幅に増額するということはあきらめまして、さらに五十年度を期したい、こういう気持ちでおるわけであります。私も、この制度をぜひ大幅に将来さらに拡充させてほしいものだと、かように考えております。
  224. 鈴木力

    鈴木力君 これは、私は教員の気持ちになってみたら、九十万人のうちいまのまんまでいったら十五万人しか該当しない。これがきわめて文部省の重要政策であり、教員の研修政策であると、宣伝をされているところに——宣伝というのはことばが悪いが、そこに重きを置いているところに、一体教員の研修とは何ぞやということになってくる。執拗に要請されることは、私はいいことだと思いながら聞くんですけれども、ほんとうは、これは予算がついたつかないという議論する前の本質的な議論をすべきだと、こう思うのですね。そういう意味で申し上げているんです。だから、ことし五千人だった、まあ予算要求一万になさったことは知っていますよ。それが五千人になった、その事情は私は知っておりますがね、一万人にしても三十万人でしょう、九十万人のうちの三分の一だ、しかも、教員定数というのは、いまの定数ではだめだということは文部大臣もわかっていらっしゃる。将来はもっとふえるというふうに見通しがつかれるわけでしょう。三十年後なんていうのはおよそ想像もつかないぐらいで、そういたしますと、こういう制度をつくるときに、本気に将来どうなるかという検討をやっぱり私はすべきだということなんですね。だから、あまりくどいこと申し上げませんけれども、現在のままでいけばやはりある一部でいろんな——大げさに言うほどでないにしても、トラブルが起こったんですね、結局は行政側のほうに非常に覚えめでたい教員だけが行く、まあ報奨制度の一つの外国行きみたいになってしまっているというと言い過ぎかもしれません。そういうような印象を教員の中に与えることだったら、私は、こういう制度は思い切ってやめるべきだと思う。逆に教育に対する意欲というものをそんなことで失っていく者が七十五万人、意欲を燃やしていく者が十五万人というようなことだったら私はやめるべきだ。しかし、せっかくいいことをやり出したなら、ほんとうの所期の目的を達するような、そういう努力というものを本気になってやるべきだ、そういうことが一つです。それはさっき大臣から、大臣のお気持ちと私とあまり違っていないと思いますから、これはもう本気になってひとつお取り組みをいただきたい。まあ歴代の大臣で、私にやると言って完全におやりになった大臣まだお目にかかっておりませんから、奥野文部大臣を最初にそういう大臣にお目にかかったということに記録に残したいんですが、ひとつこれはお願いしたい。  それからもう一つは提案ですがね、せっかくの教員の研修の機会を与えて教育に役立てようとしてこの制度をつくったもんですから、それならあと二年でやめるというような方をやるというのは、長年御苦労さまという意味でやるというのなら、そういう制度に変えるほうがよろしいし、これから日本の教育に役立てようというなら、もう少し若い層を派遣をして、そして、その若い層の人たちが教育の推進力になるための大きな一つのかてになるような考え方というものを持つべきではないのか、こういうふうにも私は考えます。これはひとつ提案を申し上げるということにしておきたいんですけれども、一応御所見を伺っておきたい、こう思います。
  225. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 私どもも先生と同じような考え方で、大体できれば四十歳程度の方を行っていただきたいということでございますが、今度の短期派遣、特にこれは各県でおやりいただいた方の中には五十歳以上がやはり三%ぐらい含まれておるということでございます。これは初めてのことでもございますし、先生もちょっとおっしゃいましたように、多少いままで御苦労というふうな方も入っておられるかとも思いますけれども、これは各県に一応おまかせしたということで、これから先もそういうふうにしたいと考えておりますので、この際は、私どものほうからは特に文句はつけないというふうなつもりでおるわけでございます。御趣旨につきましては、私どもも同感でございますから、そういうふうに指導したいと思っております。
  226. 鈴木力

    鈴木力君 いまのことは、そういう御要望で、始まったばかりでありますから、まだ歴史も浅いことでありますし、いろいろ直すべき点が出てくると思いますが、どっちかにやっぱりきちっとして、どの教員もが納得できるような制度というものをつくるべきだという意味でいまのことを申し上げたのであります。  時間がありませんので、もう一つのことで、僻地教育をどうするかということであります。これは正直言いまして、私自身も、少し僻地教育というものをいままで考えてきた人間の一人だと自負しておりますが、しかし、今日の僻地の実態をある程度踏み込んで見たりいたしますと、どうなるのかということでは、もう自分自身はもちろん、よくわからなくなってしまったようなことなんです。そこで、簡単に一つ伺いますけれども、へき地教育振興法ができて、ずいぶんこれはあの振興法ができたときには、画期的な法律だったと思うし、あれ以来文部省も相当な努力をされて、今日なりには相当の成果があがってきているという評価は私はできると思います。ただ、その僻地の実態が、へき地教育振興法をつくったころとはまた違ったものが出てきているのではないかという感じがいたします。だから僻地教育を振興させるためには、一つは、いままでやってこられましたへき地教育振興法——現在の振興法に基づいたそれぞれの施策がどれだけ充実をしていくのか、スピードがどうだったかという問題が一つある。それからもう一つは、その僻地の実態が変わってきているということに対応するものを何かひとつこれから検討すべきときに来ているのではないかというふうに考えるので、そういうつもりで、簡単に若干のことをお伺いいたしたいのですが、僻地の態様が変わったということを私申し上げたのは、当時だってもちろん過疎現象がそういう地域に多くあったのでありますけれども、いまこの僻地に指定を受けるような地域に、極端といいますか、過疎化現象というものがものすごく大きくなったということが一つあると思います。そしてまた、これは前から続いていることでありますけれども、そういう指定されているような地域ほど、財政負担力がますます低下してきている、そういう問題を合わせて、特にこの過疎化現象がひどくなった。そういたしますと、勢い学校の統廃合ということが出てまいると思います。文部省は、一般的に言いますと、学校の統廃合については、あまり行き過ぎないようにといいますか、統廃合統廃合といって、適正規模をはずれないようにという御指導をなさっていらっしゃるということも聞いております。これは、私は適切な指導だと思います。一時のはやりみたいに、何でも統合統合といって、市町村長の選挙運動の材料みたいになってきたんではまずいですから、その御指導は適切だと思いますが、しかし、この僻地の指定校になりますと、やっぱり統廃合という問題を簡単にブレーキかけるわけにもいかない事情がある。そういたしますと、私は、そのうちのいろいろな問題がありますが、一つの例をとりまずと、スクールバスというのが、どうしてもやっぱり僻地では大きな一つの何といいますか、道具になるわけであります。ところが、この予算を見てみましても、要求よりはもちろん減っておりますが、前年度よりはふえておる、しかし、これはバスの値上げ分を見ればそんなにふえたとも思いませんけれども、問題は、このスクールバスあるいはボート等につきましての維持費の問題だと思います。現在はおそらく私の知っている限りでは、運転手さんの人件費も、それからその他の維持費についても、全部市町村支弁だと、こう記憶をしておりますけれども、私はやっぱりこういう維持費、運営費というものに対する手当てというものも、もう国が直接乗り出していいのではないかというふうにも思うのですが、これはどうなっておりますか。
  227. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) スクールバスの維持運営費につきまして、地元のほうから国のほうでもめんどう見てくれというふうな要望があることは承知をいたしておりますけれども、現在これは地方交付税の積算の基礎に、基準財政需要額の中に、百七十万の、年間でございますが、維持運営費を密度補正というふうな形で織り込むようにいたしておるわけでございます。直接補助するか、あるいは交付税のほうで財源措置をするかという問題につきましては、これは財源措置のしかたでございますから、実際に支障がなければ、私は地方交付税で財源措置をするというやり方でもいいんじゃないか。また、補助金でございますと、いろいろ適正化法その他めんどうな手続等もございますし、それからいざふやすとなりました場合にも、なかなかふやすのもたいへんでございますけれども、交付税の際には、私どもとしましては、それなりの便利な点もあるわけでございまして、現在のような形で、私は、市町村のほうで御迷惑でなければこれでよろしいんじゃないかというふうな感じを持っております。
  228. 鈴木力

    鈴木力君 これは統計をとったわけじゃありませんけれども、私が申し上げているのは、どこの市町村長と会いましても、僻地をかかえている市町村長のほうは、補助金にかえてほしい、そういう要求が非常に強いということであります。あるいは市町村長ばかりじゃなしに、関係者からもそういう要望、要請が非常にある。これは統計じゃないから、そうだ、そうでないと議論しても始まらない話であります。しかし、さっき言いましたように、大体が級地の指定を受けている地域ほど財政負担力が非常に弱い、これは一般的傾向としては間違いがないと私は思うのです。それなればなるほど、このスクールバスというのも、だんだんにバスは買ったがあとでもてあますというような現象が、これはあることは、現に僻地で統合されているところからどちらへ行っても聞く声であります。したがって、これはどっちでもいいという、制度上からいえばどっちでもいいことになるので、そういう議論をすれば補助金なんというものは要らなくなる、全部が交付税でやってもいいわけなんですけれども、特に補助を要するというものは、交付税でいっているはずだということでは実情に合わないことが出てきているから、補助という形になってこなければいけないと思います。これは、自治省はえ抜きの大臣が一番よく事情がわかっていらっしゃると思いますけれども、いずれ、この点について私は御検討をいただきたいと予算を見ながら思っておるところであります。  それからその次に、いろいろ寄宿舎等についても努力をされておると、大臣の予算説明によりますと、「きめこまかく配慮いたしました。」と、こう言うのですけれども、そのきめこまかく配慮をなさっても、実際にやられないと現地は困るわけなんでして、たとえばいままでの継続事業——継続事業というとことばがあれですが、前からの制度でずっとやられてこられたことでも、たとえば教員の宿舎の建築費、これを見ますと、単価が引き上げられてはおりますけれども、三万八千五百八十円になっております。そうすると、この三万八千五百八十円で教員の宿舎をいまつくると、どんな宿舎ができるだろうかということです。低過ぎはしませんか。いまやっぱり平米三万八千円で普通の家はできないんじゃないかと思いますけれども、どうなんです。
  229. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 教員住宅の四十九年度の単価でございますが、木造でございますと、四万七百円、ブロックでございますと、四万九千九百円ということになっております。当初要求単価よりもその後の物価の上昇等にかんがみまして予算の単価が上がっておるのでございます。
  230. 鈴木力

    鈴木力君 主査、ちょっと伺いますがね、文部省から出されている資料の中で、そういう説明はどこかにありますか。これはあとで新しいのをくださいませんか。四万円になると、まあ多少はということになりますけれども、しかし、それにしても、いまの教員がりっぱな宿舎があるから行こうやという気持ちにはそんな単価では私はならないだろうと、こう思います。だからその点は自治体の超過負担ということもあります。だんだんそういうことに負担がかかっていくと、結局はこれも思うような実現はしないだろう。これは宿舎だけを申し上げておるわけじゃありません、寄宿舎もそうだと思いますけれども、そういう形では、大臣、これはもう少し進行していきますと、情勢によってはこの単価は年度途中にでも改定するということはどうなんです、これは可能ですか。私はそういう——去年も校舎の単価の改定はしましたですね、年度内に。こういう僻地のこれらについては特に必要だと思いますけれども、そういう配慮はなされていらっしゃるんですか。
  231. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 教員住宅の単価につきましては、四十八年度におきましては二回にわたって改定をいたしております。四十九年度の、ただいま申し上げました単価は、これは年央と申しますか、年度中間の単価として現段階では私どもは妥当な単価だというふうに考えております。
  232. 鈴木力

    鈴木力君 これは、私は古い人間だから坪で言いますが、坪十二万円で、いまどこへ行ったら坪十二万円で人が住める家が建つんでしょうかね。これはちょっと教えてもらいたい。私もそこへ引っ越して家を建てようかと思う。
  233. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) これは、実は教員住宅の単価は、公立文教施設の単価とバランスをとってきめておるわけでございまして、根っこの単価が適正かどうかといったような問題があるわけでございますが、根っこの単価につきましては御承知のとおり、超過負担という問題がございまして、六・九%の超過負担のかさ上げというものをやっておるわけでございます。四十九年度単価はそれを含めた単価ということになっておるわけでございますが、御指摘のような問題もなお残されておろうかと思いますが、そうした点につきましては今後とも実態を十分見きわめまして、実情に即した方策について今後とも検討してまいりたいというふうに考えております。
  234. 鈴木力

    鈴木力君 これは教員住宅で申し上げましたけれども、言い方が少し、ことばが悪いかもしれませんけれども、やはりどこかとのバランスとか、そろばんでは家が建つけれども、大工さんと左官を頼んでは家が建たないという予算をつくっておって、妥当でありますということをおっしゃるのは、少し私は妥当な御答弁じゃないと思います。やっぱり年度内でも実態を調査なさって、特に私は僻地の場合を言っておるわけですよ、全体の場合はそれでいいということにはなりませんけれども、特にこの僻地指定地域のことを考えますと、そういう御配慮というものは、私はいまのような状態の場合には予算の当初からそういう点を配慮してスタートしなければなかなか事業というものは進まないんじゃないか、そういうふうに考えて申し上げたつもりです。  一つ一つ伺っておると時間がたつばかりでありますが、私はもう一つの問題は、いまのような宿舎にしても、特に私は——寄宿舎にいたしますと、小中学校の寄宿舎ということを一応考えていらっしゃる。これはいろんな議論をする人がありますけれども、できれば小学校は寄宿舎制度をとらないほうがいいということは、もうこれも議論の余地がないだろう、しかし、非常な過疎地域でどうにもならないで寄宿舎をということも、これもやむを得ない事情だと思います。そういう配慮で小中学校の寄宿舎ということを文部省考えていらっしゃると思いますが、特に私はこの寄宿舎で、こまかいことを申し上げませんけれども、いままでの文部省の寄宿舎の考え方では、父母との生活のスペースというのは考え方になかったのではないかという気がするんですね。私はいつかそういうことを文教委員会で、四、五年前でありますか、提案をしたことがあるんですが、要するにこういう意味ですよ。これは大臣にもひとつお聞きをいただきたい。過疎地域の小学校の生徒をどうしても寄宿舎を使わなければいけない、そういう事情がどうしてもあるわけで、親元で育てればいいんだというのは、理屈はそのとおりだけれども、その場合に、たとえば父母——父母といっても、父母そろってというわけにはそうはいかないにしても、たまには母親が寄宿舎に来て、子供の様子を見たい、あるいは一週間に一ぺん、定期的でないにしても、着がえを持ってくる、そういう親の希望はやっぱりあるようですね。そうすると、小学校の低学年——低学年を寄宿舎に入れるというのにはいろんな議論がありますけれども、小学校程度の場合ぐらいでも、寄宿舎にそういう母親を泊める施設をつくったらどうだということなんです。そうしてそれが一緒に、母親が一緒に来るわけないもんですから、幾部屋かそれをつくっておいて、そういう場合には特に母親とその子供が一室で一晩でも暮らせるような、そういう施設というものを考えてみたらどうだろう。そのことによって低学年の寄宿舎という心配が、どの程度という数字ではあらわせないけれども、何となく親子の交流の機会というのを与える場に、一つの寄宿舎をつくるということに私は教育的な意義があるのではないか。そういう形に持ってくると、いま、統廃合ということになると、何か非常にややこしい地元の反対とか賛成とかいつも起こるけれども、そういうものに対する理解を求めるということも効果がある。それはともかく、教育的にはそういう設備がぜひほしいなと、こう思うんです。これもことしの予算には入らないけれども、今後の僻地の寄宿舎というような場合の、そういう考え方というものはどうなんだろうか、これは一つの提案なんですけれども研究に値するんじゃないかと、自分はそう思っているんですけれども、いかがですか。
  235. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) たいへん重要な課題のような感じがいたします。すぐ補助対象にするのか、あるいは市町村がそういう寄宿舎の設置を考えた場合に、少なくともその部分については地方債資金の対象にしてもらうとかいう問題はあろうかと思います。いずれにしても、重要な課題だと思いますので、今後とも市町村の要望等に応じまして、それが実現できますように協力をしたいと思います。
  236. 鈴木力

    鈴木力君 もう一つだけ、私は、この僻地の問題で実際に困っておるのは、人事の配置だと思うんですね、教員の配題。これはさっき岩動氏も言われたように、私は岩手県で、僻地をかかえていることでは全国でも最も多いといわれている県でありますけれども、見ておりますと、これは行政側も教員側も、もう少しやり方があるんじゃないかということがあるにしても、基本的には、教員配置は、私どもに言わせますと、毎年毎年悲劇ですね。それは何かというと、僻地出身の教員数が非常に少ないものですから、それが長年続いているものですから、過密地域から教育職員を送り込む、そうして、送り込んで、今度先に行っている人を救い出す——救い出すということばは悪いけれども、事実上は救い出さなきゃいけないわけです。そういう結果が、今日ではもう四十歳から五十歳ぐらいの世帯を持っている婦人教師が、夫や子供を捨てて自分が着任をしなきゃいけない、一週間に一度も帰れないというような極端過ぎるような現象がいま起こっているんです。これは私はけしからぬと言ったって、これ、行かなければそちらの教育ができないという現実がありますのですがね。こういうことを、しかしいつまでも繰り返しておったら、基本的に解決の道というものはあまり有効でないじゃないか。従来文部省がこの点についての御指導をいろいろされて、たとえば給与問題等について、僻地の勤務年数についての加算給というような制度を御指導なさったり、いろいろくふうなさっていらっしゃるけれども、それではなかなか解決をしない。ですから、どうも夢みたいなことを鈴木はとおっしゃられるかもしれませんけれども、たとえば、これは全く思いつきみたいなんですが、教員養成の段階で何か一つ考える点がないだろうか。これは直ちに比較をすることもあまり自分も自信がありませんけれども、たとえば医師不足の場合の医師の養成ということがその地域で考えられる。そして、その間の育英資金といいますか、学費等の補助というものが、その一定期間の、条件はそういう地域に勤務をするんだという一つの任務を与えてやるとか、そういうようなくふうということをもうしていなければ、いまのような問題も根本——それだけでもいくかどうかわからないけれども、解決というのは非常にむずかしいではなかろうかという気が私はどうもするんです。岩手県の状況を見てみましても、この僻地出身にも若干教師がいないわけじゃないけれども、ある一定の年数がたちますと盛岡市に家を建てることを考えたり、またそれもせっかくの人数も出てしまっていく。それをこう何回か繰り返して、もう行き詰まっておるというのが現状だと思うんです。しかしやっぱり地元のはえ抜きの教師をある程度確保するという道を見つけ出したら、私は若干の緩和にはなるだろう。そういうところから落ちついた、そういう地域での教育活動ということがまたやり直せるのではなかろうかという、そんなことを考えてみたんですけれども、そういう考え方をこれから御検討いただきたいと私は思っているんです。そうすると、国立大学の教員養成学部なりあるいは国立大学ばかりでなしにしても、私立大学も含めてもけっこうだと思います。教員養成の教科に進学をする者に対して、それを何か学費を府県が持ってやって、そのかわり五年とか七年間というものは県の指定する地域で教育を行なうというような奨励制度というものをつくらなければという感じがする。まあ思いつきみたいですけれども、どうでしょうかということ。
  237. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 御指摘のようにむずかしい問題もいろいろございまして、養成側だけの措置でうまくいくとも思いませんから、御意見のごとく、その県の行政当局との関係で何かかみ合う施策を考える。これは私どももやはりその方向で検討しなければならぬと思っております。医科大学をつくるにつきましても、ただ養成だけでなくって、その後の地域の診療とのからみをどうするかということをやはり第一に考えていかなきゃならぬ。僻地につきましては、もう申し上げるまでもございませんが、かつて僻地教員を養成するための県立の教員養成施設が設けられている。へき地教育振興法でもその場合に国の補助があるというような明文の規定も設けられたような経緯もあるわけでございます。今日各県から僻地の教員養成について実はそれほど積極的な提案なりお申し出を受けておりませんけれども、いま御指摘のような点につきましては、これから関係者ともいろいろよく相談して知恵を出してみるべき課題であるというふうに考えます。
  238. 鈴木力

    鈴木力君 これで終わりますけれども、いまの問題、やっぱり私は教員養成の問題よりも、よりもというか、それがいま局長のおっしゃるように大事なことです。もう一つやっぱりそういう地域ぐるみの、地域が教員を確保するという方向の御指導というもの、ぜひひとつこれをやってしかるべきだ。何かそういう声がないというのは、私も歩いてみると、鈴木さんそんなこと言ったっていまの政府じゃだめですよと、もうあきらめておるほうが先ですからね。それほどでもないということを文部大臣一言おっしゃると、希望がわっとくるんじゃないかと、こういうふうに思います。これは必ずしも私が言ったような方向という意味じゃありません、私はたとえばこんなことをというつもりで申し上げたんですけれども、僻地の指定地域にどうして教員を確保するかということについては、これは一つの制度的な問題も含め、ひとつ真剣にもう取り組んでいただきたい。そういうことと同時に、もう一つは、へき地教育振興法をつくったころのあの僻地の実態というものと、非常に過疎化現象がなだれ的にこう出てきた。それが今度は地域の開発という問題とくるめた別のまた一つのいろんなものがそういう地域にまた進出をしてきたといったような、非常に錯綜された要素が僻地の地域に入り込んできておりますね。そういうものにメスを入れながら、このへき地教育振興法と僻地教育の振興というものをあわせた検討にもう入る時期だというふうにも考えるんで、そういう点を申し上げて、これはまあ、申し上げてと言うとたいへんなまいきなんですけれども、私の質問を終わりたいんですけれども文部大臣もひとつ研究してみるぐらいのことはおっしゃっていただいて終わればたいへんいいと思うんですがね。
  239. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 僻地の問題は年々かなり大きく姿が変わってきていると思います。したがいまして、僻地を対象に文部省もいろいろな補助施策をとっているわけでありますけれども、絶えず見直しながら実態に合ったような努力をしていかなければならないと思います。根本的には、僻地でありましても、総合的な施策を通じまして文化的な生活が確保されるような仕組みを絶えずしていかなければならないということではないかと、かように思いますので、関係各省がそれぞれ協力し合わなければできないことだと思います。そういうことで絶えず見直しながら努力を続けていきたいと思います。     —————————————
  240. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 分科担当委員の異動について御報告いたします。  鈴木力君が委員辞任され、その補欠として茜ヶ久保重光君が選任されました。     —————————————
  241. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 奥野文部大臣と文部行政について少しやりたいんだけれども、どうも時間がないので残念ながらやれない。残念です。きょうは時間がもう少ないので、私は国立学校というか、地方にある教育大学というか教育学部というか、その付属学校の問題に限ってきょうは質問します。ほかの問題はまたあらためて文教委員会にもおじゃまして奥野文部大臣とひとつと思っていますが、それは後日に譲ります。  今国会文部省はだいぶ長ったらしい名前の法案を通しました。「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」と、舌をかむような長い名前ですが、まあ、いわゆる人材確保法案といわれた法案が通って、約一〇%の教員の給与がまあ上がるわけでありますが、文部大臣はこういう措置をかなり強行されたかに思うんでありますが、とにかく通りました。そしてこれは人事院の勧告もあったようでありますから、この一〇%給与の増額が逐次なされていますが、これによっていわゆる義務教育と申しますか、の教育における大臣の期待のような教員と申しますか、先生が教育界にどんどん入ってき、   〔主査退席、副主査着席〕 その結果、日本の初等、中等教育というものがあなたの期待されるような内容を持った教育が推進できるものと、こういうふうに確信していらっしゃるのですか。この人材確保法案という法案をお通しになって一〇%の給与増額をされまして、その結果がいま申しますように、人材がどんどん集まって、あなたの期待されるような教育が推進できるというように確信をされていらっしゃるかどうか、この点大臣にお伺いしたい。
  242. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 教育の基本は教育のにない手である教師その人にあると、こう考えているものでございますので、教育界になるたけ人材を招き入れたい。その招き入れるための一つの施策にはなるんじゃなかろうか、かように思います。これだけであとは要らないんだということは毛頭考えておりませんけれども、一つの施策にはなるんじゃなかろうかと、こう思っております。
  243. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 これが一つの施策とすれば、ほかにもいろいろあるわけでありますが、このほかに大臣がお考えになっている、いわゆる優秀な人材を確保し、日本の初等、中等教育を期待する方向に推進するために、ほかにあなたがお考えになっている、これと別な一つ、二つの重要な点がありましたら、ひとつお聞かせ願いたい。
  244. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) やはり教育界に職を奉ずる以上は、安んじてその職務を遂行できるような環境をつくっていくということが大切じゃないか、こう考えます。安んじてその職務に専念できる環境の中にはいろいろなものがあろうと思います。まずその一つとしては、停年を延長して、やめてから不安のない生活が送れるようにしてあげる、これもまあ大切なことじゃないか、かように思います。あるいはまた教育界に職を奉ずることによって世界を見ることができる。そのような自信、世界を見た目で教育に当たるという自信をもって、あるいはまた誇りをもって教育に当たれるようにしてあげることも一つじゃないかと思います。そのほかいろいろなことがあろうかと思うわけでございますけれども、そういうような条件を整えるということが大切なことだと、かように思っております。
  245. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 まあ、先ほど鈴木議員の質問に対して、たとえば僻地における教員の住宅問題がありましたが、まあ、それを聞いておりましたので、ちょっと途中で口をはさむんですが、坪十二万円や十三万円ぐらいの住宅をつくるようなお考えでは、私はいまおっしゃった環境の整備にはならぬと思うのですよ。いまね、幾ら地方でもね。都市に行きますと、地方でも二十万か二十数万。農村に参りましても二十万以下の住宅はできません、そういうとこ。それを十二万の査定して、これが適正というようなお考えでは、これはあなたのいまおっしゃられるようなことはとてもできませんよ。言っていることとやっていることと違うんだな、あなたたちのやり方はみんな、そういうふうに。だから、これで長いこと勤めなさい。聞いているとなかなかうまそうな、だが実際はそうじゃないんだ。それが如実にその住宅問題に出ていると思う。これはまあ、いま議論しておったら時間がありませんから議論やめますが、やっぱりそう環境の整備とおっしゃる以上は教員の皆さんがほんとうにまあ、あなたのおっしゃるように教育に自負を持ち、自分の仕事に自信を持ち、その他また、経済的にもね、また住居の面でも環境を維持することが大事ですから、これは大臣ね、まあひとつ、口だけじゃなくて具体的にぜひ推進していただきたいと、この点は要望しておきます。  私は、昭和二十七、八年ごろから約十年ぐらい群馬大学付属——当時学芸大なんですが、付属幼稚園、小学校、中学校のPTAの会長をやったんですが、当時、やはり私が会長をしておるときに、PTAの会費が市内の小中学校と比較すると約十倍くらい高かった。それが高い理由は、その付属学校の先生の研修費とか出張費とか、そういうことが低いためにPTAの費用から補助をしたということです。それから施設が非常に整ってないので、施設の拡充に使ったということです。まあ、その他いろいろありますが、とにかく自己負担が非常に大きかった。私らも当時ずいぶん学校長とけんかをしたものですが、学校ではどんどんPTAの会費を上げるためにいろいろなことを要求される。私はいかぬと、足らぬならば、これは国立だから国に要求しなさいといってずいぶんトラブルやったんですが、結局、結論としては、やはりないものですからPTAがまあ負担することが多かった。当時聞きますと、何か付属に普通の公立学校から転勤すると給料がかなり低くなって入ってきたんです。したがって、その大学の付属学校の先生は市中の先生よりもかなり低いということがあったんですが、それからまあ、約二十年たっております。今回また、つい先般学校関係の人、PTAの役員の諸君が請願書を持ってまいりました。それを見ますと、こういう請願書ですね。国立大学付属学校における教職員の給与等の適正化と施設整備の拡充に関する請願書、こういうような請願書を受けました。ありますがですね。大臣は、いま私は二十年前のことを指摘したのですが、今日の時点で一般の公立学校の初等中等の教職員の給与とあなたの直轄下にある都道府県にある教育学部の付属学校の教員の給与がどういうふうなことになっているか御承知か。御承知ならば御説明願いたい。これは大臣からひとつ。
  246. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 公立の小中学校の先生が国立大学の付属の小中学校の先生になられますときに、俸給の調整の問題が起こるわけですけれども、平均いたしまして、三号俸前後公立の場合のほうが高いという事情のようでございます。
  247. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 人事院見えてる——次長、いまのことあなた御承知。
  248. 長橋進

    説明員(長橋進君) お答えいたします。  人事院は公立学校の教員に対しまして、これは直接所管しておりませんので正確に全容をつかんでおるというわけにまいりませんけれども、この職種につきましては国立と公立との間で教員の人事異動がございまして、その場合に調整問題について慫慂を受ける場合がございます。そういう際に御指摘のような事実をつかんでおるわけでございますけれども、先ほど文部大臣から御答弁ありましたように平均三号俸前後公立のほうが高いということを人事異動等に際しまして承知いたしたということでございます。
  249. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 どういうことでそういうことになっておるのか。これは担当局長でいいからひとつ説明してください。
  250. 望月哲太郎

    説明員望月哲太郎君) 御承知のように、教育公務員特例法第二十五条五の規定によりまして、「公立学校の教育公務員の給与の種類及びその額は、当分の間、国立学校の教育公務員の給与の種類及びその額を基準として定めるものとする。」ということになっておりますが、現実に都道府県によりましては初任給あるいは昇給期間等が国立学校の教員と違って運用されていることがございます。そのために、結果といたしまして公立学校の先生を国立の大学の付属学校に採用することにいたします際にかなり給与に差が出てきているということになっておるわけでございます。
  251. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 大臣、あなたいまお聞きのとおりですね、あなたの直轄の国立大学の付属学校の先生は、たとえば三号俸、私の直接聞いたところによりますと、先般見えた陳情団の副学校長——いま副学校長というのができているんですね、付属学校は。副学校長が、何か自分と同じに師範を出た公立の学校の先生と六号俸違っているそうです。金にして一万九千何百円違っているそうです。ということなんです、現実に。まあ、先ほど冒頭に申し上げた、せっかくあなたは人材確保という法案をつくって、まあ、一〇%お上げになって、これはおそらくみな喜んでおると思うのです。反面あなたの直轄の学校の中にそういうものがあるんですな、現実に。これはどう思いますか、このことに対して。付属学校の教職員は一般の公立学校の職員よりも程度が低いと思っているのですか、あるいは学力的にまずいと思っていらっしゃるのか、どういうことでこんなことが現実の姿としてあるのか。私はどうしてもふしぎでならぬ。しかも二十年前に私がPTAの会長をしているときにあったことが今日なお残っているということはどうも私にはげせないのですよ。しかもあなたのような教育熱心な、学校の改革に非常な推進力を持っていらっしゃる奥野文部大臣にしてこんなことがあるということは、私はこれはどうもげせないのだが、どうお考えですか。
  252. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 付属の先生方は国家公務員でございますので、全国を通じまして同じような人事制度のもとで運営される。したがいまして、俸給表に従った給与が支払われている、反面公立学校の先生方は地方自治のたてまえに従いまして府県ごとに給与制度がつくられて、その府県の給与制度はいま事務当局から申し上げましたように国の給与制度を基準にするということになっておるわけでございまして、全く右へならえとは書いてないわけでございます。したがいまして、府県によりまして初任給に差がある、また昇給させる場合についても特別の配慮をいろいろなされる府県がある、したがいまして、府県相互間に若干の食い違いが出てきているわけでございます。もし俸給制度全体が今度のいわゆる人材確保法がねらっておりますように、一般の公務員よりも優遇されなければならない、そういうたてまえで高  いほうできまってくるとしますと、私はだんだんと差が縮まってくるんじゃないかと、こう考えるわけでございます。その差を縮めようとしてあの法律を出しているわけじゃありませんけれども、結果的にはそう大きな隔たりが今後なくなっていくんじゃないだろうかな、こう思っておるところ  でございます。
  253. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 そんなことはわかっているでしょう。よくわかっているのならこういうこと何もおっしゃらずに、これはあんた変えようと思えば変わるんですね。あなたがいま言ったように、教員というものは大事なもんだから特に一般の公務員よりも上げるということをおっしゃっている。だから結局その付属学校の教職員が国家公務員のあれでいっているということはわかっておりますよ。教育が非常に大事で、教員が大事ならば、当然これは変えるんですよね。いま、先ほどの、あなた人材確保法と同じような、経済力、これは人事院だってぼくはいかぬと言えぬと思う。国家公務員にもいろんなワクがありますな、研究員とか何だとか。決して国家公務員は一律じゃありませんよ。文化、技術あるいは研究員、いろいろあって、特別なあれをしている点がありますね。したがって、できないわけじゃないんですから、これを私は是正すべきだと思うわけですね。私は端的に申し上げて、付属学校については特殊な意見を持っておりますけれども、これはここではいま申し上げませんが、そういったいまあなたがおっしゃるように、だんだん狭まっていくだろうということでは、これはおそらく狭まらぬと思うんですよ。その証拠には、二十年前の、つまり昭和二十七、八年ごろと全然変わってないんですから。むしろ二、三日前聞きますと、幅があって、何か新しい先生で二、三号俸と申しますから、五、六千円ですか。いま言った副校長といったような級になると六号俸、つまり二万円前後違う。たいへんな差ですよね、この差というものは。また出て行く場合には幾らか上がるそうですが、かりに付属学校、私がPTAに関係しているときも、長い人は十年も十一年もいらっしゃる、同じ学校に。するとその間たいへんな負担ですよね。これはやっぱり大臣、この辺は何とか考えてくれなきゃいかぬじゃないか。まあ、特に付属学校の場合には調整を指導されますわね。さらにまあ、その都道府県の教育センター的な役目もなさっている。いろいろ実際研究されています。私は公立の学校の先生と付属学校の先生が優秀である優秀でないということは申しません。これは申しませんが、少なくとも非常に研究をし、勉強をされていることは事実だと思うんです。そして、いま言ったように調整の指導なりあるいは研究設備等々で県下のそういった先生方研究のリーダーとしてやっていらっしゃる。教育活動としてはかなり重要な位置を占めていらっしゃると思うんです。だから私は優遇しろとは言ってない。ただしかし、せめて公立学校の先生と同じ待遇にはこれはしなければならない。これに対して大臣は、まあ、いま説明はちょっと待ってもらって、前向きに何かそういった面で、これはおそらく法律的なことがありますから一挙にいきませんし、一がいに言えませんけれども、こういった実態を見詰めながら文部大臣として、これに対してはやっぱり何らかの前向きの施策をすることが必要ではないかと、こう思うわけです。いかがでしょう。
  254. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) お話を少し私、取り違えておったようです。おっしゃっているのはおそらく公立の小中学校から付属の小中学校へ移ってきた場合、俸給が引き下げられる、それは不合理じゃないかという意味でお尋ねになっておったようですが、そういう点は私たちとしてもできる限りそういうことのないように努力をしたい、また、そういうことで文部省が人事院当局と打ち合わせをしてまいりまして、現在では三号俸までの調整は文部省にまかせるということにしていただいているようでございます。今後ともできる限り付属へ来る場合には俸給が引き下げられるというようなことの少ないようにしたいと思います。しかし、全体的に御指摘のように付属の学校の先生方、仕事はかなりきついわけでありますけれども、給与が悪い。そういう意味では文部省としては実習手当、この増額をしてほしいということで大蔵省当局とも話をしてまいってきているわけでございます。四十八年度一時間三百円だったのがわずか四十九年度は三百六十円になっただけのことであります。私もこれは努力が足りなかったなあと、あとで付属学校のPTAの方からいろいろな話を伺いまして、これは今度は何とか解決しなければいけないなあと、私に与えられた宿題のような気持ちを今日持っているわけであります。もっといい方法があればその方法をとればよろしいんですけれども、さしあたりはやはりこの実習手当を大幅に引き上げてくれるように大蔵省と折衝することだなあと、こう思ったりしているわけでございます。ぜひ付属の学校の先生方の処遇の改善がはかられますように文部省としては積極的な努力を払うべきものだと、かように考えております。
  255. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 次長ね、いまお聞きのとおり非常に格差がひどいんですね。これは付属学校の教職員は国家公務員だから、これはやっぱりあなたのほうで一応基本的には賃金の点についてやられるんでしょう。どうなんですか、その点は。文部省にいま聞くと三号ぐらいまでの調整はできているとおっしゃるが、それ以上はおそらくあなたのところだろうけれども、どうなんですか。
  256. 長橋進

    説明員(長橋進君) 申し上げるまでもございませんけれども、制度のたてまえとしましては公立学校の教員の給与についてきめます場合に国立学校の教員の給与制度を基準としてきめるということになっておりますので、制度のたてまえとしてはそういう関係になっておるということは申し上げるまでもないと思いますけれども、国立学校の教員とそれから公立学校の教員の給与との間につきましては十分な均衡がはかられなければならぬということでございますので、これからもその点につきましては十分留意してまいりたいということでございます。
  257. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 これもう、あんた、はっきりしているんですからね。同じ教育公務員でありながら地方の公立学校の先生と国立学校の先生が同じ卒業生、同じ勤務年限を持っている人が六号で二万円違う。たいへんなことですよ。これは人事院だって、あんた、だまっていませんよ、こんな差が存在しているというというのは。よく私は付属の先生がだまっていらっしゃると思っているんだが、しかしいよいよだまっていられぬので、こういう請願書が出てきたわけですよ。しかも、あんた、おそらくは私がタッチしてから二十年ですが、先生方にはたいへんなもんですね。十年も、あんた、そこにいたら月に二万円、一年で二十四万円、十年で二百四、五十万円なんて差ができてくる。これは、あんた、問題だと思うんですよ。で、文部省はいろいろ法的な問題があるとおっしゃるが、しかし、あんたのほうは給与の問題で勧告することはできないんですか、どうなんですか、あんたのほうで。国家公務員に準ずる地方公務員は高くて、基準の国家公務員である国立学校の先生は低いということはおかしいと思うんですね。この点どうなんですか。できないの。できたらちょっと勧告ぐらいできないかと思うんですが、どうですか。
  258. 長橋進

    説明員(長橋進君) 繰り返し同じことを申し上げるようになりまして恐縮でございますけれども、制度のたてまえとしましては先ほど申し上げたとおりでございますけれども、国立学校の教員の給与の改善につきましては今後とも努力を重ねていきたいということでございます。
  259. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 努力ったって、あんな、だから勧告することはできないの。国立学校の付属学校の教員の給与はこれは低いんだから、これは文部省はあるいは国は、国会は勧告することはできないかと聞いている。どうなんです。
  260. 長橋進

    説明員(長橋進君) 改善につきまして努力の結果、成案を得ますればそれに基づいて勧告するということになるかと思います。
  261. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 ぜひね、努力してもらいたいですね。これはやっぱり私は何というかな、いまの事態で、文部省にも要請しました。いま大臣もお聞きのような答弁をされた。私はやはり日本の教育の、付属学校のあり方についてはいろいろと意見持ってますけども、今日では一応やはり都道府県の教育センター的な一つの役割りも持っていらっしゃるし、教生の指導もしていらっしゃる大事な方だと思う。もちろん私はいま先ほど言ったように一般の公立学校、小中学校の先生よりも優秀だとか偉いとかいうことは考えておりません。けれども、実際にはやっぱり必ずよくしていただきたい。そういう人が私は公立学校の先生より上になれとは言ってない。せめて同じレベルまでに引き上げる努力はこれは当然国としてはすべきじゃないかと、こういう気持ちなんです。ぜひ検討をしてもらいたい。これは国会があると毎年毎年やってますが全然進歩しなかったら、これはまた別なあれを出しますよ。それで、いま大臣のかなりの積極的ととれるような答弁だったんですが、大臣自体がお骨折りになって、いま手当ね、これは幾らかふやしてもらったんですが、やっぱし実情とはいまあなたもおっしゃったようにかなり違うんですよね。それはあなたの努力は決して私は認めぬわけじゃありません。今度はたいへんなんだ。やっぱりいま申しましたように、本筋はね、その給料を上げていただいて、まあ増額してもらえたらいいんですが、どうしても給与ができない場合はね、これはやっぱりひとつ諸手当を漸次上げていただかぬと……。これは端的に申し上げて、私がいま申しました二十年前にPTAの会長をしたときの付属学校の先生がですね、県下を回ってみますとほとんど県下の大学校の校長や教育事務所の所長さん、そういった県内の教育の行政面の実権を握っていらっしゃる方が多数あるんですね。まあ、そういうふうに、これは端的に申し上げて付属学校でしばらく苦労されると、いまではかなり将来にはあれがあるという見通しがあるようですね。それも一つの私は励みとは思いますけども、それはそれとして、いま言ったようにぜひひとつ具体的な点について御答弁を願いたいと思います。  そうしたらもう一つ、これもですね、何かこれは担当者はだれですか、学校の衛生費、これは非常に少ないそうだな、聞きましたらね。具体的に言うと、群馬大学の教育学部の付属小学校は約九百人の児童がいるんだそうですが、五万円だそうです、五万円、衛生費が。これは一人当たりで五円ですか、五円五十銭ですか、これでは注射一本打てぬと言うんだな。これは少し私は常識はずれて少ないんじゃないかと思んだが、何か根拠があってやっているのか。この辺だれか、——こういうふうに聞いてきたんだが、どういうことなんです。衛生費。わかっていたらひとつ。
  262. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 学校の経費は文部省のほうからは一括して、何にどれだけということではなくって渡しておるわけでございます。そして、学校の中で現実の運用はそれぞれ必要に応じて支出をしてもらうようにということで心がけておりますから、基本的には教官の数に応じて一定額を配るとか、あるいは児童生徒の数に応じて一定額を配る、こういうような措置をとってきておりまして、それでその中の措置として個々の学校に運用してもらっておるわけでございます。ただ、そうした場合に、児童生徒の衛生関係の仕事に全然経費が回らないというのでもいかがかと考えるわけでございまするから、定期の健康診断等、明確にわかっておりまする部分につきまして、全体としての積算を四千万円ほど、これは付属の学校全体として計算をしております。これは子供たち一人当たりに対して約三百九十円見当になっておる金でございます。で、もちろん実際の支出がどのくらいになっているかという点につきまして、ちょっと決算のとりょうが特定の費目ごとにとっておりませんので、実際にこれだけ使ったという答えができないので、お答えにはならぬのでございますが、しかし今日までのところ、個々の学校から格別特定の費目についての苦情があるということではございませんで、一般的には衛生費と限らず、学校で使える金が窮屈であるということなど指摘がありまして、特に小学校、幼稚園並びに特殊学級につきましては、四十八年度に相当大幅な単価改定をさしていただきまして、四、五年前に比べますと二・二倍以上に実際の学校経費を総ワクで広げておるのでございます。でございますから、まあ、今日の事態ではそう窮屈な問題はなかろうかと思っておりますが、また個々の事例等御指摘がありますならばよく検討したいと思います。
  263. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 もう時間がないのであれですが、大臣いま言ったように非常に保健費が少ないんですね、聞いてみますと。だからどうにもならぬという。したがって、まあ、そういうのはみんないままでPTAが負担しておったですよ。いろいろまだ問題はたくさんありますけれどもですね、きょうは給与の問題に限って指摘しましたが、先ほど大臣はかなり積極的な御答弁でありますので、一応行き先を見詰めております。まあ、大臣からでも問題は解決しなければいかぬ。ひとつ、全国の重要な、教育的な役割りを演じていらっしゃる国立学校の教職員が、たとえ幾らかの差があったとしても、やはり国がわれわれの存在を認め、またその役割りを考えながらわれわれのために必配しているのだと、あるいはいろいろと考えているんだと、こういった面がやっぱりわからなければいかぬと思いますね。そういう、いますぐにとは言いませんけれども、そういうところをあの人たちが感じられて、いよいよ教育効果があがるような働きをしてもらうような点に向かってですね、一そうの御努力と御精進をお願いして私の質問を終わります。
  264. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私は、初めに先日来文部省のほうで発表されました学校保健統計調査速報、これについて少し御質問いたしたいんですが、この昭和四十八年度の速報のデータについてどのようにお考えになっておるか、まずお伺いしたいんです。
  265. 木田宏

    政府委員(木田宏君) ちょっと担当局長おりませんので、的確なお答えにならないかと思いますが、最近の児童生徒の体位につきましては身長、体重等非常に大幅な伸びを来たしておるのでございます。そして、過去と違いまして、学生の疾病の態様にもかなりの変化が起こっております。かつて子供の病気といわれておりましたトラホームといったような、トラコーマといったような疾病は逐年非常に少なくなってまいりましたが、一般的に、まあ文明病と申しますか、近視眼でありますとかあるいは虫歯といったような面につきましては疾病の罹患率が非常に高まっておる。世の中のいろんな事態の動きに対応して子供の健康、体位のあり方にかなり時代を思わせるような変化が出てきておると、このように考えておる次第でございます。
  266. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま言われましたとおり身長等については確かにいいわけでありますが、いま言われました視力の点と、それから齲蝕、いわゆる虫歯、この問題はあとで触れたいと思いますが、その前に私ざっとデータを見ましたんですが、ぜんそくがわりあい前年度よりふえておる年齢が多いわけです。その点についてはどのようにお考えになっておりますか。
  267. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) ぜんそくなどの呼吸器系の疾患が最近ふえる傾向にございます。まだその全体的な比率、数としてはそう多くはございません。その原因等につきまして必ずしも一がいに言えないと思うわけでございますが、やはり最近の大気汚染の傾向、そういったものも関係があるというふうに思われます。
  268. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その他の疾患についていま視力の点と虫歯については別といたしまして、そのほかのじん臓、心臓、そういった点についてはどのように分析をされておりますか。
  269. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 御指摘のようにこの十数年間児童を取り巻く生活環境その他がかなり変わりまして、まず、結核とかあるいは寄生虫卵、トラコーマ、そういうのは急激に減少いたしたわけでございますが、一方いま御指摘の心臓あるいはじん臓の疾患、呼吸器系の疾患、あるいは特に近視、虫歯の増加、あるいは情緒障害、公害によります異常といいますか、そういったものを問題として、特に学校の保健上問題としてとらえる必要がある、そういうふうに理解しております。
  270. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私は個々についてはまた機会をあらためましていろいろお伺いをしたいと思いますが、きょうは特に虫歯についてお伺いをいたします。  で、四十七年度と比べますと男性女性ともに、特にまあ、女性の一部においては齲蝕にかかったパーセンテージが減っておるのも少しございますが、男性の場合は夜間の十五歳以外を除いて全部齲蝕はふえておるわけです。それから処置をしておる、していない、これにつきましても男女とも——女性の場合はかなり高校生になりますと処置をしておるのが減ってきておりますけれども、やっぱり一般的にふえる傾向にある。そういう点でこの虫歯がかなりふえてきておるわけですけれども、先ほどまあ、文明病といわれると言われましたが、私はそれはその程度で片づけては相ならぬと、しかも罹患率が御承知のように男女合計いたしますと九四・七が幼稚園で、一番低いのを見ましても六歳の八九・九四が最低で、最高は九五・四八ですね。そういうふうに九五%ぐらいは虫歯になっておる、こういうことが男女合計の平均では出てきておるわけでして、こうやって年々これはずっとふえ続けて指摘をされてきたところでありますので、やはりこれに対する原因というものももちろん虫歯の原因にはわからない点が多々あります。しかし環境的な原因というのはある程度わかっておりますので、その点について文部省、それから厚生省、どのようにお考えになっておるか、この点をお伺いしたい。
  271. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 先生御指摘のように児童生徒のほとんどの子供が虫歯にかかっている、あるいは一ぺんかかりまして処置はいたしたが、とにかくまあ、ほとんどの子供が虫歯を経験するような事態になっておるわけであります。虫歯の原因につきましては、専門的にいろいろな点があげられると思うわけでございますが、まず、母体のときからの歯そのものの構造がじょうぶでないといったようなこと、あるいは食物のとり方といいますか、特に戦争中はこの虫歯がほとんどなくなったわけでございますが、砂糖の摂取が多過ぎるといいますか、そういったようなこと、それから食後の歯の清潔といいますか、歯の不潔、そういったようなこと、いろいろあろうかと思うわけでございます。いずれにいたしましてもいろいろな児童生徒を取り巻く環境あるいは生まれながらの歯の体質、それから食事の問題清潔、そういったいろいろなところに原因があるのではないかと、一応そういうふうに理解いたしております。
  272. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) 厚生省でも虫歯がふえたということにつきましては、私のほうの六年に一回の歯科疾患実態調査というものをやっております統計からも出ておるわけでございます。やはりふえましたのは生活環境ということが非常に大きな原因であろう。特に砂糖との関係ということにつきましては疫学的な調査からだんだん明らかになってきて、最近ではそれのメカニズム等がまだ全部解明されておりませんけれども、それが解明できるような端緒がだんだんつかめてきたというふうな状況にあるわけでございます。したがいまして、やはりふえたということにつきましては、生活環境の変化と、これは非常に高度の、何といいましょうか、文化的な生活になってきたということが大きな原因じゃないかというふうに思っているわけでございます。
  273. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 先ほど私が言いましたように根本的な原因というのはまだまだわかっていないわけでありますが、一つは砂糖というものを多く消費すればふえるというデータは、これはもうずっと昔からいわれている状態でして、特に最近非常に砂糖の消費がふえておりますし、これ農林省からとりました統計でも、四十六年の実績で精製糖で二百九十六万トン、それから四十七年の見込みで三百二万二千トン、四十八年の見通しで三百九万九千トンと、ずっとふえつつあるわけです。一方においては、いま砂糖はいろいろ値上がりの問題とか、あるいは供給の問題、まあ、いろんな問題が砂糖にはあることは御承知と思いますが、やはりここらあたりで、一度砂糖の、いわゆるお菓子あるいは食物中における量というものをどうすべきか。特に児童に対して、これは検討する必要があると思うんです。学校給食の場合は、かなりその点は、先日も栄養士の方にお伺いをいたしましたが、いろいろ考えておられるようですけれども、やはり学校給食でも、その点はきちんとしなければいけないと、こう思います。この点について、どういうお考えであるか、それが一点と。これは体育局長と、それから厚生省と両方お聞きしたいんですが、やはりある程度はお菓子の中における砂糖量の規制といった面が、もうぼつぼつ検討されなければならぬと、幸い砂糖が足りないといっているんですから、もう私は一番いいチャンスだと、こう思うんですけれども、その点についてお伺いしたいと思います。
  274. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 先生はこの方面の御専門でいらっしゃいますので、私から申し上げるまでもないわけでございますが、御指摘のように、砂糖と虫歯の関係はずっと前からいわれております。厚生省でもその後の調査で、かなり関係が深いということが明らかになりつつあるわけでございます。私どもしろうとでございますが、戦争中にはほとんど砂糖がなくなりに近くなりまして、現実に児童生徒の虫歯がほとんどなくなったということを考えましても、非常な関係があると思われるわけでございます。そういう意味で、最近はキャラメルなどもあまり子供が食べないようになりつつあるようでございますが、学校給食を通じまして、あるいは保健指導を通じまして、そういう方面の趣旨の理解徹底といいますか、食事のあるいはおやつのとり方等につきまして、一段と留意すべきものと考えます。
  275. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) やはりおっしゃいますとおり、特に砂糖そのものよりも、砂糖が加工されて歯にくっつきやすい形で間食として絶えず口の中にとられているということが、非常に大きな問題だと思います。また、学会等でもその点が強く指摘をされておるところでございますけれど、そういうふうな点から当面私どもとしては、間食の制限というと、ちょっと語弊がございますけれども、砂糖の多くないものをとるようにするとか、あるいは回数、間食の回数というふうなものを中心に、歯科衛生思想の普及という点で進めてまいりたい、また現にそういうふうな方針で進んでおるというふうなところでございます。
  276. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 厚生省のほうにお伺いしたいんですが、特に子供が好む食品の中の砂糖の含有量というものを、調査されたことはございますか、予防歯科の立場から。
  277. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) 私どもの立場からは、調査したことはございません。
  278. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その点は、またあとでまとめて文部大臣に、いろんなことございますので、お伺いしたいんですが、まあ、これだけ古くから砂糖との関係がいわれておりながら、現在これだけ、特に子供の虫歯がもう九〇%をこえ、もう九五%というところまできておるにもかかわらず、まだそういった砂糖の含有量の点検すら、これはまあ、農林省あたりに聞けば案外出ているかもわかりませんし、私、その辺まだ調べたことないんですが、今後調べてみたいと思いますが、また簡単に私はできることであると思いますので、その点はひとつ今後本気になってやっていただきたいと思うんです。  元来、虫歯の問題については、やいやい言われながら、全然関心がないとは言いませんけれども、非常に歯科という面については、おざなりにされてきた点があるんです。六月四日の虫歯予防デーぐらいでありまして、実際全国的な週間とか、そういう啓蒙されるようなことが、あすこしかないわけです。しかも、あすこでは歯の女王のコンテストぐらいでしてね、しかも、あの女王になった人が、そのあくる年、虫歯になった例もあるんですよ。だからほんとうの歯の女王かどうか、そのときは虫歯がなくて美人だったというんで、当選している程度でして、その問題私はこれ以上触れませんけれども、まだまだ関心と突っ込みが足りないと、こう思いますので、ぜひいま積極的な発言をされましたので、これを機会に子供の好む、——おとなの場合はこれはてき上がっておりますから、ある程度はいいと思うんです、全然いいとは言いませんよ。しかし、特に子供の場合は子供の好むおやつ、これについては私は徹底的な探索をしていただきたい、これはぜひお願いしたいんですが、重ねてお伺いしたいんですが、その点どうですか。
  279. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) まことに御指摘のとおりでございまして、学校保健の分野におきましても歯科衛生、口腔衛生、虫歯対策は昔から非常に重要視されているにかかわらず、虫歯は減るどころでなく、むしろふえる傾向にあるというのが現実でございます。学校保健管理の面、保健教育、保健指導の面ますます重要、重視する必要があると思いますが、実は本年度から財団法人日本学校保健会に補助金を支出いたしまして、その中の一つのねらいといたしまして、健康相談事業というのを始めたわけでございます。それは特に虫歯、齲歯対策、それから最近の肥満児ということがよくいわれますが、その肥満児の問題それから先ほど御指摘がございましたが、ぜんそくなどの呼吸器系疾患などの問題、この三つを特に健康相談事業として取り上げまして、実際の学校を小中学校それぞれ二校ずつ研究協力校に委嘱をいたしまして、学校歯科医、学校医の先生方、学者の方、現場の校長、養護教諭、保健主事の方、そういった方の御協力を得まして、学校におきます健康診断の結果、それを精密検査をいたしまして、さらに健康相談をいたしまして、それからいろいろなデータ、いま先生が御指摘になりましたような個々の生徒につきましてのデータもとりまして、それからさらに研究協力校には口洗場といいますか、給食のあとのうがいその他のための口洗場を設けるための補助もいたすことにいたしまして、いま御指摘のような具体的な鶴歯対策に取っ組んでいただくことにいたしております。砂糖との関係等の問題につきましても、その中にそちらの方面に詳しい学者も入っておりますので、ぜひ究明をしていただきたいという趣旨で、そういう事業も始めておるところでございます。
  280. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) お菓子の中の砂糖の問題につきましては、調査等につきましては前向きの姿勢で検討さしていただきたいというふうに思っております。
  281. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ぜひそういう点をお願いしたいと思います。  次に、学校歯科医の問題ですが、これは子供たちが学校でちゃんと歯医者さんが来て、齲蝕の汚点がどうあるかチェックされてカードが返ってくるわけです。それで要治療ということで必ず治療しなさい、そういうことで治療しなきゃいけないということがわかっておるんですが、学校でその未処置のデータがかなり高いのは、治療しなきゃいけないということがわかっても、実際それを受け入れるだけの開業医並びに病院の体制が実はそろっていない。特に最近子供の虫歯がふえてきておりますので、そうでなくてもいま大体歯医者が足りない状態です。そこへ持ってきて子供さんが一ぱい参りますと、ますます、そうでなくてもいま開業医は予約制をとっておるのがほとんどですから、子供さんはみんなはみ出しておるわけです。で、非常に困っている状態。特に歯医者さんの立場も、患者さんがふえる、そこへ持ってきて子供が一ぱい来られたらこんなもの見ておられぬと。しかも保険が多くなれば、収入等の面も考えると、子供を一生懸命見ることは得策でないと、こういうことで、非常に子供の好きな歯科の先生なら一生懸命やられますけれども、そうでないなら、大体もう子供さんはシャットアウトというのが非常に多いわけでして、この点、学校歯科医というのは非常にむずかしい問題があると思うんです、いろいろな面で。だけど、ただ診断だけしてこれをなおしてこいと、それだけじゃちょっと問題ですので、その地域の歯科医師会なりあるいはその地域の公立病院、あるいは大学病院があれば大学病院、そういったところの連係プレーの中で、もうちょっと未処置の歯のあるもののパーセンテージを減らす努力を私はしていかなければならぬと思うんですけれども、その点についてはいかがですか、現状掌握と今後の対策。
  282. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 現状はただいま先生の御指摘のほとんどとおりだと思います。私どもも昔から目は心の窓、歯は健康の窓といいますか、そういわれておるわけでございますが、それから特に虫歯の場合は、すべての健康問題疾病問題がそうでございますが、早期発見、早期治療という最も代表的な一つの疾病といいますか、ポツンとちょっと黒くなったときに治療いたしますれば、比較的簡単に治療ができる。放置しておきますとますますひどくなりまして、本人も健康上よくない、痛くなる、歯医者さんのほうもなおすのにたいへんだということで、特に学校保健におきましては早期発見・早期治療ということを非常に重視いたしておるわけでございますが、現状は先生御指摘のような実態がございましてなかなかうまくいかないわけであります。ニュージーランドなどにおきましては、歯科医の指導のもとにデンタルナースという制度がありまして、そういうきわめて簡単に治療できる段階の虫歯につきましては学校で治療をするという制度があるようでございますが、それぞれの国の法律、制度その他がございますので、直ちに日本でそういう制度を取り入れることはむずかしいと思うわけでございますが、いま先生御指摘のような問題は、今後非常に真剣に検討すべき問題と考えられるわけでございまして、幸い学校歯科医会等非常に御熱心に御協力いただいておりますので、そういう方面とも、あるいはこれは診療体系にも関係いたしますので、厚生省等とも連絡しつつ真剣に検討していくべき課題であると、そういうふうに思います。
  283. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 厚生省のほうはどうですか、この問題について。
  284. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) 御指摘のとおり、小児の治療についてはよく私どもも、断わられたというふうな話を聞いておるわけでございます。で、確かに最近学問の進歩とともに小児歯科というものがだんだん独立しつつある形にあり、また、現に東京等大都会では小児を専門にやっておる診療所というものももうすでに幾つかできてきておる、そういうふうな状況でございます。ただ、何ぶんにも絶対数が足りないというところでいまのような問題が起こってくるということでございます。  なお、一部では歯科医師会等が口腔センターとかあるいは歯科衛生センターというふうなものをつくりまして、そこで予防を重点に身障者等の特殊治療、あわせて子供の早期治療というふうなものもだんだんやられてきつつあるというふうなところで、十分とはいきませんけれども、そういうふうなものを中核に、これからもう少しそういうふうなものも伸ばしていきたいというふうに思っているわけでございます。
  285. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま小児歯科という問題が出てまいりましたので、これは大学学術局長にお伺いしたいんですが、現在各国立大学の歯学部あるいは私立の歯科大学で小児歯科学の講座のあるのはどれだけですか。
  286. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 国公立私立二十三大学、歯学関係の大学の中で小児歯科の講座を持っておりますのは十二でございます。
  287. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私いただいたデータではたしか私立大学で十二、国立大学で一つと、計十三じゃないでしょうか。
  288. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 学校数で申しまして一つ間違えたようでございますが、十二校で、学部で申しますと十三学部ございます。
  289. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私立のほうは、ないところのほうがむしろ少ないわけです。ないところは東北歯科大学、松本歯科大学、それから福岡歯科大学、三校だけです。ところが国立大学の七つ、それから公立大学の九州歯科大学、この八つの中で、あるのが東京医科歯科大学だけでありまして、小児歯科学の講座については私立大学のほうがむしろ先行して、国公立大学がおくれておる、こういうふうなことになっておるんですが、この点はどういう理由でこういったところがおくれてきたのか、その点をお伺いします。
  290. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 歯学関係——歯の問題につきましては戦前から私立が中心になって学校の整備が行なわれてまいりました関係上、いま御指摘のように、歴史の長い私立の大学におきまして小児歯科までの整備が進んでおる。国立は七つございますけれども、そのうち二校を除きまして、つい最近誕生したばかり、こういう状態でございまして、今日まで全体の整備が進んでいない、こういう発展の過程をそのまま示しておるかと考えております。
  291. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ついででまことに恐縮ですが、ちょっと質問通告しておりませんでしたのでデータがなければやむを得ません。あればちょっとおっしゃっていただきたいんですが、付属の衛生士学校と技工士学校、これが併設されておる大学ですね、恐縮ですが、ちょっと名前言っていただけますか。まず、衛生士学校でどこと、どことどこにあるか、付属としてある学校ですね、それから技工士学校と。済みませんが……。
  292. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 現在、学校別のものがちょっと手元にございませんのですが、歯科衛生士の学校を持っておりますのは各種学校として五校、短期大学で六校、文部省所管では十一校ございます。厚生省所管の養成所は六十三校でございまして、あわせて七十四校でござ、ます。  歯科技工士につきましては、厚生省所管の養成所は四十五校でございまして、文部省所管のものといたしましては医科歯科大学に一校あるだけでございます。——失礼、たいへん恐縮でございました、矢追先生の一番御存じの阪大にも一つあることを落としておりました。
  293. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま言われたその歯科大学が、大体が私立から始まった点は、これは認めますし、おくれた点もやむを得ないと思いますが、この一覧表を見ますと、まだまだ、たとえ私立大学に小児歯科の講座があるといっても、教員数等を見ますと非常に少ないわけです。まだ岩手歯科大学はおそらく教授一人だと思いますから、それから城西歯科、日本大学の松戸歯科大学、それから日本歯科大の新潟歯学部、これが、鶴見大学が一つとこれはおそらく教授一人で、あと助教授も講師もおられないと思うんです、非常勤でおられるかもわかりませんが。非常に、あるといってもその内容はまだまだこれからだと思いますし、特に医科歯科大学でも二人、こういう状況でありますから、これはひとつ本腰を入れて、もちろん私立にまかしておくだけではなくて、やはりこれからの、いま言ったような特に学童の齲蝕がふえておる状況ですから、もちろん、ふえたからふやすんじゃなくて、むしろ減らす努力のほうが私は先にやらなくちゃいけないと思いますけれども、それと相まって、やはりこの虫歯を減らすためにもいろんな専門的な研究、もちろん口腔衛生という、いまは予防歯科というのが多いんですが、予防歯科というのもございますから、それでいいという考えもあるかもわかりませんけれども、この小児歯科学の講座は各大学ともかなり強い要望もございますので、ぜひ年次計画をきちんと立てて、そうして設置へ前向きにお願いしたいと思うんです。あわせまして、歯科衛生士というものもやはりこういう点には非常に関係をしてまいりますので、これの充実・強化、この二点についてどういうふうな方針なのか、これは大臣かちお伺いしたいと思います。
  294. 木田宏

    政府委員(木田宏君) ちょっと、私から先にお答え申し上げまして、あと大臣から御返事をさしていただきたいと思います。  御指摘のように、歴史的な経緯のあることでございますが、いままでのような大学の必要講座のかまえでいいかどうかという点も考えなければならぬ段階に達しておるわけでございまして、私どもも、いま設立を急がれております歯学関係の大学の拡充・整備にあたりまして、今後基準をどのように改善するかということもせっかくいま検討を急いでいただいております。いままでの齲歯の多かったこと等から考えますと、ややおそきに失っしておるきらいはございますが、できるだけ検討を急ぎまして基準等が今日の事態に適合できるような措置を講じたいというふうに考えておりますし、その際も、人の養成は若干の年限を要することでございますが、小児歯科の担当者等の養成もその研究、教育の課程の中から十分に生まれていくように配慮をしてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  295. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 大臣にお答えいただく前にちょっともう一点。  いま局長さんは、かなりこれから、いままでおくれてきたのでやりたいというお考えですが、この四十九年度予算の中で見ますと、どこの項目にそれが入れられておるのか。歯学部をつくるための準備とかいろいろございますけれども、何か入っていないような気がするんですが、この点はどこの中で入れられようとされておるのか。もしなければ、今年度、総需要抑制というものもありますから、むずかしいかもわかりませんが、ひとつ、来年度からはきちんとこの点をお始めいただきたい。この点をお答えいただいて、あわせて文部大臣から……。
  296. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 四十九年度の予算では、歯学関係の整備といたしましては、徳島大学に歯学部をつくるべく創設準備の経費を計上いたしてございます。そのほか、歯学関係の講座の整備並びに北海道大学と九州大学に歯学部の大学院、歯学の大学院を設置するという手順その他を進めておるところでございます。一方、先ほど申し上げました歯学関係の基準の再検討ということは、すでに四十八年度予算のころから視学委員あるいは設置審議会の歯の関係委員等をもちまして、今後の新しい基準の考え方の検討を急いでおります。そうした事実上の措置も加えまして、四十九年、五十年と必要な体制を整えてまいりたい、こういう所存でございます。
  297. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) いろいろ御指摘いただきましたように、歯の疾患が非常にふえているわけでございます。同時にまた、健康全体の上で歯の重要なことは言うまでもないことでございます。そういう意味において国立大学の歯学部の充実、これも大事なことでございますので、各国立大学からの要請に応じまして御指摘の小児歯科学の講座等充実をはかるように協力をしていきたい、かように考えます。同時にまた、文部省の体育局に今度養護教育の指導に当たる専門家を置けるようにしていただいたわけでございますので、学校におきます保健の指導につきましてもさらに一そう努力を払うことができる、かように考えておるところでございます。
  298. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、虫歯の予防に関連をいたしまして、少し弗素の問題に触れておきたいと思いますが、これは厚生省のほうにお伺いいたしますが、日本においても一部において、京都あるいは特に新潟がいま一生懸命やられているようなんですが、弗素を水道水の中に入れる問題でありますが、これについては現在厚生省としてはどういう姿勢で取り組んでおられますか。
  299. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) 御承知のとおり、弗素が虫歯の予防に有効であるということにつきましては定説になっておるところでございます。従来、私どもでは弗化物の歯面局所塗布、いわゆる歯に弗化物を塗って予防しようというふうな局所応用を中心に推進をしてきたところでございます。これは現在でもこの方向で進んでいきたいというふうに思っておるところでございます。  なお、水道の中に弗素を入れるということにつきましては、昨年私どもの口腔衛生学会というところでもその有効性を認めてこれを進めるべきであるというふうな結論を出しておるわけでございますけれども、その実施につきましてはやはり至適濃度、たとえばどれだけの弗素を入れたらいいのか、あるいは衛生管理上の問題あるいは不慮の事故に対する対策等、そういう点を十分に考慮してから行なうべきであろうというふうなところで今後慎重に検討していきたいというふうに考えておるところでございます。
  300. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この件については、WHOの決議については厚生省としてはどう考えられて、これに対してどういうふうなことをされようとしておりますか。
  301. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) WHOの決議が昭和四十四年に第二十二回の総会で決議をされて、その加盟各国に対して弗化物の応用による虫歯予防について検討すべきであるという勧告が出されておるわけでございます。これに従いまして私どものほうも特に局所応用についてはさらにこれを推進していきたいというふうにしておるわけでございます。  上水道弗素添加につきましては、先ほど申し上げましたようなことで慎重になお検討する必要があるというふうな段階でございます。
  302. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 現在のところ、やられておるところはもう御承知だと思いますが、過去においては京都の山城地区あるいは三重県の朝日町、新潟では三地区においてやられておるわけでありますが、特に沖繩ですが、沖繩の米軍が主体になっておったときは七十五万人を対象として十五年間沖繩に実施されておりましたが、その返還時においてはかなりいい結果が出ておったにもかかわらず、その後本土復帰とともに中止をされておる状態です。これは御承知と思います。これはどうして引き継ぎができなかったのか、その点についてちょっとお伺いします。
  303. 笹本正次郎

    説明員笹本正次郎君) たいへん不勉強で、完全なそのときの状況、事情を実は聞いておらなかったわけですけれども、三重県の朝日町がやはり四十二年からやったわけですけれども、現在中止しておる。そのときの理由が、やはり住民の意見というふうなことが強く反映をされたというふうに聞いておりますので、沖繩の場合については、私まだ十分にその間の事情を実はつまびらかにしておりませんのでわかりませんけれども、おそらくそういうふうないろんな事情があったんではなかろうかというふうに想像されておるわけでございます。
  304. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ひとつ、沖繩の点はよくお調べいただきまして、いいという結果がはっきりしておりましたならば、あとぜひ推進をしていただきたいと思います。  アメリカは御承知のようにもう古い歴史がありまして、三千八百二十何都市、七千四百六十万人、これが上水道の弗素を飲用してかなりの成果をあげておるわけですが、日本においても、先ほどもお話がありましたように、WHOの勧告に対して共同提案国になってサインをしておるわけですから、やはりこれに対していろいろこれからも学問的な点もきちんとした上で、ぜひお進めをいただきたいと思います。  これはちょっと文部大臣の所見をお伺いしたいんですが、やはりこういうふうな実際何カ所かでやられておる効果のあるものもありますので、ぜひ学童のこういった状況ですから——私は、根本的には先ほど最初申し上げたように、弗素をやっておさめるのではなくて、一つはやはり砂糖の消費量の面、これの規制をぜひやってもらいたい。これが一つ。  もう一つは母親に対する教育、これはもう御承知のように、歯ができ上がるのはもうすでに母体の中にあるころから始まるわけですから、生まれてから歯ができ上がるんじゃないわけですから、やはり母体というのが非常に大事です。最近ある小児歯科学会の研究発表では、どれだけの関係があるのか、これは一つの研究ですから私はわかりませんが、最近の若い母親は母乳をあまり飲まさなくなった、母乳を飲まさないので、だから乳歯の虫歯がふえるんだと、こういうふうなデータが、ある先生の発表で出ておるんです。そのかわり、私は、母乳を飲まさないから減るんじゃなくて、母乳を飲まさないでそのかわりにいろんなものを飲ますから、その中に砂糖とかいろんなものが入っておってふえるんだと思うんですけれども、とにかく母親に対する教育、それから砂糖の消費量の規制の面、それからいま言ったこういう弗素の問題ですね、この三点についてひとつぜひ、これは厚生省まかせにしないで、学童全部をあずかられる文部省ですから、ただ小児歯科学の講座をふやしていただくのは、これはまことにお願いをしたいと思いますけれども、それだけではなくて、厚生省文部省がひとつ連携をとられまして、徹底的にやはり退治しないと、次の世代がやはり問題になりますから、ひとつぜひお願いをしたいと思うんですが、いかがですか。
  305. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 御指摘のように、母親に十分な知識を持ってもらうことが非常に大切なことだと思います。また、文部省は学校教育だけじゃなしに、家庭教育、社会教育についても広く配意していかなきゃならないわけでございますので、御指摘の点も踏まえて、家庭教育、社会教育の充実をしてまいりたいと思います。  なお、その他の御提案につきましても、厚生省とも協力をしながら、今後の保健指導に万全を期せられるように努力していきたいと思います。
  306. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 虫歯の問題はこれで終わりまして、次に、もう時間がありませんので、簡単に近視の問題、これは質問で予定通告してなかったんですが、近視のほうもずっとふえてきておりまして、私も自分がめがねをかけておりますので、あまりえらそうなことを言えぬのですけれども、やはりこの原因といいますか、特に男性の場合、小学生より中学生、高校生とだんだんかなり進んできておるわけです。夜学生のほうがむしろ低い、昼間のほうが高いというデータが出ておりますね、男性の場合に。女性の場合も同じですね、やっぱり昼のほうが伸びております。その点で、やはり高学年といいますか、中学、高校になるほどふえてきておるということは、やっぱり受験勉強というのは相当の影響があるんじゃないかと思うのですけれども、その点は体育局長はどう分析をされておりますか。
  307. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 御指摘のように、虫歯と並びまして近視が年々ふえてまいりました。ただ、昭和四十四年度をピークといたしましてやや横ばいになってきたわけでございますが、しかしいま御指摘のように、高校生になりますと非常に高い率になっておるわけであります。  近視の原因には、いろいろいわれておりますが、一つは近業をすること、一つは照明が適当でないこと、それから学習その他読書のときの姿勢が悪い、あるいは目に適当な休養を与えないといったようなことが原因としていわれておるわけでございますが、やはり一つには、日本語というものに宿命的な一つ問題があるんじゃないか。英語の字引き、その他字引きにいたしましても、日本語の活字体というのが特に字引きなどの場合は密植いたしておりまして、あれがローマ字の場合と非常に違うわけであります。それからやはりいま御指摘の大学入試その他、かなり苛烈な受験勉強といったようなことも関係がないとは言えない、そういうふうに思っております。
  308. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 時間がありませんのでこれで終わりますが、ひとつ大臣に最後にまとめてお伺いしたいのですが、やはり総理も知育、体育、徳育と三本の柱を最近強調されております。その一環として体育の面を一つ取り上げたわけですけれども、ただ単に対症療法的なものではなくて、もっと根本的な問題をやはりひとつぜひ改善をしていただきたい。たとえば大気汚染というようなものが先ほどのようにぜんそくに影響が出ておる。これはやっぱり公害をなくすということ、これをやらなくして幾らぜんそくだけなおす努力をしても、これはだめなんですから、そういう点。  それからまた、いまの近視の面については、やはり入試地獄が影響を及ぼしているとなれば、入学試験をどういうようにしていくのか、非常に根本問題というのがやはり解決されない限り、ただ具体的に出た面だけをどうする、こうするではいかないわけてして、そういった点てひとつ——ここまで確かに体位の向上も一面はあります。だけれども、一面においては悪くなっている面もあるわけですから、まあ、背たけばっかり大きくなっても、やはりからだ自身が弱くなれば意味がないわけですから、その点、ただその問題だけをつかまえてどうするのではなくて、根本的な面、また環境の面、それにはやはり政治全体がいろいろ考えなければならぬ面が一ぱいあると思いますので、その点を含めまして、まあ、非常に大ざっぱな質問で恐縮ですけれども、大臣から所信をお伺いして終わりたいと思います。
  309. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) さきに保健体育審議会から「児童生徒等の健康の保持増進に関する施策について」の答申もいただいているわけでございますが、最近の児童の体位の変化に応じて、国としてとるべき施策などの御意見もいただいたわけでございまして、こういう意見も十分施策に織り込むように努力したいと思います。ことに最近の児童生徒が二歳ばかり早く成長するけれども、ひよわくなってきておる、背たけだけ伸びてきておるというようなこともいわれておりますだけに、一そう知育のみならず、体育、徳育、人づくりというために総合的な施策に力を入れなければならない、かように考えるわけでございます。同時に、先ほども申し上げましたように、学校教育だけじゃなしに家庭教育、社会教育を通じて健康な人づくりが果たされますように、総合的な配慮を加えてまいりたいと、かように考えます。
  310. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私は夜間中学のことについて若干お尋ねいたしたいと思います。  未曾有の経済成長でわれわれの生活がたいへん豊かになったといわれてはおりますけれども、この繁栄から落ちこぼれている人たちの中に、義務教育を経わっておらない人がいままだ全国的にずいぶんあると聞いているわけでございます。   〔副主査退席、主査着席〕 日本は九九・九%の義務教育の就学率を誇っているわけでございますが、だが一〇〇%じゃなくて〇・一%の人がやはり取り残されておる、そういうふうにいわれておるわけでございますが、いま文部省のほうでは全国的に見て義務教育の未修了者何名というふうに把握しておられますか。
  311. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) ちょっと手元に資料ございませんが、先生御指摘のように〇・一%くらいの者がはずれておるということであろうと思います。その一番大きな原因は、もう御案内のとおりと思いますが、いわゆる重度の精神薄弱者を含めます、まだ義務教育の施行されておりません養護学校あるいは特殊学級の対象者がそのうちの大部分であろうというふうに推測をしております。人数としましては、ちょっとうろ覚えでございますが、五十万ちょっとでございますか、ということで、数字もちょっとあれでございますが、不正確でございますからその点……。
  312. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、もうちょっときっちりした数字を調べてきていただかないと困りますね。きょうの予算分科会で夜間中学のことについて質問するということは前もって通告してあったわけです。うろ覚えで答弁していただいたんじゃ、これは、そのうろ覚えとおっしゃる答弁をもとに質問をするというようなことであっては、ほんとうの意味国会審議できないんじゃないですか。そのことについて大臣はどうお思いになりますか。大臣にこまかい数字を求めているわけじゃありませんが、夜間中学について質問をすると言ってあるのに、数字もわからないというのではちょっと困るとお思いになりませんか。
  313. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) いま事務当局からお答えをしましたように、身障者に対しまする義務教育はまだ猶予されている、結果的には、そういう方々が就学の猶予免除の適用を受けておられる。そういう方が、私の記憶では、その分が毎年一万九千前後じゃないかと思うのでございますけれども——その程度じゃないかと思います。しかし、その分につきましては、御承知のように、五十年度から義務制に移すということで整理を進めておるところでございます。
  314. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) ちょっと手元に数字がございませんでしたが、全国で、これは昭和四十五年度の国勢調査報告書によりますと、五十七万二千九百七十九人が未就学者でございます。そのうちで六十四歳以上の方が三十六万五千五百四十五名でございまして、そういう方が大部分を占めておるということでございます。
  315. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁でございますけれども、この障害者のために就学免除、——免除というといかにも恩恵的に聞こえますけれども、要するに文部省としては、本来ならば、何らかの形で義務教育を終わらせるようにしなければならないけれども、それを受け入れられないということで、非常に免除というのは私おかしいことばだと思うんですが、就学免除ということで教育を受ける権利を奪われた人がいるというわけでございます。けれども、そのほかに、たとえばこれは大阪市の調査でございますけれども昭和二十六年当時ですが、この小学校の在籍者二十四万人のうち、小学校では一%二千五百人が、中学校では中学生八万人のうち四千五百人、これは実に五%ですけれども、その当時は非常に生活の苦しい時代で長期欠席をしておって、そうして特に女の生徒は子守りとか家事のお手伝いのために——これは中学が義務教育になって間もないころだったために、家庭の貧困とか、あるいは理解が乏しいために学校へ行くことができず、これは長欠ということで、結局卒業したことになっている人もあろうとは思いますが、義務教育未修了者ということで中学を卒業できずにおった人です。これがいま二十何年かその後たっておるわけでございまして、そういう人たちも、いまお話の義務教育未修了者に入っておる。また、私の調べましたデータでは、一番未修了者の多い年齢は三十歳代の後半から四十歳代にかけて、これは戦争の末期あるいは終戦直後義務教育を受けることができずに、一家離散のうき目にあったり、あるいは外地から命からがら引き揚げてきたりした、というような状態の人たちが、いま壮年になって、義務教育を受ける機会がないままにいま一家の中心になって働いている人がかなりの人数である。  これは実は昭和三十五年の大阪府議会における教育長の答弁では、これは三十五年の国勢調査によると百三十万人という答弁になっているのですけれども、何かいまのお話の五十何万人というのとずいぶん開いているようでございますが、そこはどういうわけで開いているわけですか。年配の人がなくなったから、五十何万人がもうなくなったというわけなんでございますか。
  316. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) そのとおりだと思います。先ほど申し上げましたように、六十五歳以上の方が五十七万人のうちの三十六万六千人以上を占めておるわけでございますから、そういうことでございます。
  317. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは結局、もうそういう人が死んでしまったから数が少なくなったというふうに、数字の上からはつかめるかもしれませんけれども、これは、このとき、夜間中学のことを大阪府議会で取り上げて問題にしてからもうすでに二十年——二十年もたっておりませんか、かなりな年数がたっておるわけでございまして、その間もその人たちは義務教育も終わっておらないんだ、憲法では教育を受ける権利というものが保障されているけれども自分は不幸な星の下に生まれてもうこのまま死んでいかなければならないという、たいへんに気の毒な、憲法の保護に浴さない状態で世を去ってしまったわけで、まずそのことだけで数が減ったと、文部当局は胸を張っておっしゃれる事柄じゃない。自分たちの文部行政の不行き届きのために、そういう不幸な状態のままにあの世へ行かなければならなかった方が実に数十万という数が出ている。そういうふうに問題を把握なさるべきではないかと思うのでございますが、その点いかがでございますか。
  318. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 御案内のとおり、戦前は義務教育の期間が六年でございましたから、私どもも、六年間の義務教育ということでございましたけれども、その中でも、やはり新しい義務教育ができました最初のころは、そういうふうな趣旨の徹底もございましたでしょうし、あるいはまた特殊教育の対象になられるような方々を収容するような能力もなかったということで、いわば落ちこぼれの方が非常に多かったのじゃないかと思います。そういう意味では、そういうふうな憲法上の義務あるいは権利の対象にならなかったという方が多かったということは事実でございます。
  319. 佐々木静子

    佐々木静子君 しかし、これは過去の話じゃなくて、現在でもそういうことで落ちこぼれの人がずいぶんだくさんいるわけです。しかも、いま申し上げましたように、三十歳代の後半から四十代の前半にかけての年齢の人が非常に多いわけでございまして、そういう人たちがつとめ先でなかなか正規の企業につとめることができない。履歴書を出さなければならない企業につとめようということになると、これはまずもう就職願いを出す段階にも至らない、あるいはいろんなことで気に入られて、それじゃ正式採用するから履歴書を持ってこい、というふうに言われると、もうその瞬間から、自分は義務教育を受けておらないのだということを知られることのおそろしさから、もう黙って退職しなければならない。そういう悲劇は、これは実に本人のせいじゃない、全く戦争とか戦後の混乱というような状態、あるいは貧困というような本人の責めに帰すべき状態でない事柄によって、この人たちの一生あるいはその家族にまでたいへん深刻なしわ寄せを寄しているわけでございまして、そういう人たちの気持ちとすると、年は幾つになっても、自分はどうしても義務教育だけは終了しておきたいという気持ちを持っている人が非常に多いわけでございますが、そういう事柄に対しまして、その自然の要求から生まれたのが夜間中学ではないかと思うんでございます。  この夜間中学の問題につきまして、これは当初大阪市内にも昭和二十二年に市内の勝山中学校に、あるいは昭和二十四年に市立の玉津中学校に事実上設置されたわけでございますが、当時の文部省方針とすると、夜間中学というものはなるたけつくらないほうに持っていこうという文部行政のお考えでございまして、それは結局なくなったわけでございますが、その後、御承知のとおり、神戸の同和地区で、どうしても勉強したいという義務教育未修了者を先生方が見かねて、宿直室で夜間に塾のようにして字の書き方などを教えたというのがもととなって、神戸市に夜間中学が発足して、いま全国主要都市あちこちに夜間中学ができているわけでございます。が、いま文部当局とすると、夜間中学は全部で何校あり、またそこに在籍している生徒数あるいは教員の数——専属の教員ですね、それをちょっと数字でお示しをいただきたいと思います。
  320. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 夜間中学を設置しております都道府県は現在六つでございます。夜間中学を置く、夜間学級を置く中学校の数は二十六でございまして、生徒の数は千二百七十七名でございます。そのうちで十五歳未満がわずか〇・五%、人数にしますと六名でございまして、その他の方々はいずれも学齢を過ぎた方で、先生御指摘になりましたように、まだ義務教育を受けておらない、そういう方々が大部分お入りになっているような学校になったわけでございます。  それから教職員の数は、専任の教諭が百二十五名、助教諭が二名、それから講師が、常勤が四名、非常勤が二十三名、養護職員が三名、事務職員が九名、用務員が十名、その他十二名、合計百八十八名でございます。それに対しまして、兼任の者が教諭五十名を含めまして合計百二十八名ということになっております。
  321. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ、実は東京と比べますと、ずいぶんおくれまして大阪にも夜間中学ができたわけでございますが、初め第一回の開校のときに予定していた人の数の数倍の方が入学さしてほしいという話で、その後も一向に減るどころか、入学希望者はふえるばかりである。そういうことから見ましても、非常に社会的に要請の強いことだと思うのでございますけれども、そういう夜間中学、当然憲法上国が果たさなければならない義務の一つである教育を受けさせる、受けたいと求める人に教育を受けさせる機会を与えなければならないこの夜間中学に対しまして、国の予算措置というもの、これがきわめて微々たるもののように思うわけでございます。いま教員の数も伺いましたけれども、この本年度の予算、これは夜間中学に対してはどのように計上していられるわけですか。
  322. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 現在予算措置としましては、この夜間中学を対象にしたものは五百十九万円というふうな金額でございます。これは御案内のとおり、夜間中学につきまして初めは実際に昼間の中学校に行けないような子供たちを収容してまいっておりますが、ただいま先生御指摘のように中身が変わってきたわけでございまして、それに伴いまして今後どういうふうに夜間中学校を運営していくのかというふうなものに対する調査費でございます。そのほかに、夜間中学のためということではございませんけれども、全般的に義務教育として扱っておりますものですから、たとえば教科書の無償でございますとか、それから教職員定数の配分でございますとか、そういうふうなものにつきまして、一括しまして義務教育と同じような扱いをしているということでございます。
  323. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ、本来ならば、国民に教育を受けさせるというようなのは国の義務の一つである。そういうことから、学齢に達すると、これは親のほうは黙っておっても、役所のほうから学齢に達したから、と入学の通知なり何なりをよこす、しかし、この夜間中学に対しては、全く国としての積極的な啓蒙というか、そういうふうなことが全然行なわれておらない。これ、実は大阪にも夜間中学を守る会——これは全国的な組織ですけれども、これなんかも、夜間中学を守る会に、私も会員の中に入って微々たる寄付を、カンパをさしてもらっているわけですけれども、こういうふうなのもみんな——   〔パンフレットを手渡す〕 こういうふうな募集もみんな民間人が五百円、千円、あるいは百円、二百円のお金を出して——本来なら国がしなければならないこういうものをつくって、義務教育を受ける機会のなかった人には夜間中学というものがあるんですよと、これを啓蒙しているわけでございまして、これは本来、国とか、あるいは地方自治体がやらなければならない仕事じゃないかと思うんですけれども、全くこれはそういうことを憂えている個人の負担で、これは実は私の家の前にも張ってあるわけですけれども——これは非常に私、文部当局としては怠慢じゃないかと。夜間中学を育てようという、こういうパンフレットまで、これも民間でつくっているわけなんです。そしてこれ、パンフレットを家の前にも張ってある。夜間中学というのはどういうのですか、と尋ねてくると、実はこういうのだと説明する。渡したって字が読めない方がほとんどですから、かたかなも、ひらがなも読めない方がだいぶいらっしゃるわけですから、これをこちらが読んでわかるように説明をしなければならぬ。  これは本来、国が当然やらなければならないことじゃないかと思うんですけれども、こういうふうなことが全く有志のうちの一部の人にゆだねられている。そのあたりを、私、文部当局とすると、やはり国民の教育を与える義務、国民から見れば教育を受ける権利を保障するために、もっと何らかの措置を講ぜらるべきではないかというふうに私思うんでございますけれども、いかがですか。大臣、これどういうふうにお考えになります。
  324. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 義務教育という見地でとらえますと、六歳から十五歳まで、義務教育を受け入れるだけの制度を講じなきゃなりませんし、また、父母も通わせなきゃならないということになるんだろうと思います。いま御指摘の問題は、義務教育に準じた処遇をしていこうじゃないかということで進められているわけでございまして、したがいまして、市町村が夜間中学でそういう人のお世話をされる、国としては義務教育としての対応策をとっていく。そのために教科書も無償で配付するし、必要な教育の費用の分担をするということであるわけでございます。やはり積極的には六歳から十五歳までの方々について全面的に教育を受けさせる努力をするということ、これがもう中心でなきゃならぬのじゃないか。それ以後の問題につきましては、私は義務教育という見地でとらえるんじゃなくて、社会教育的な見地で考えていくとかいう性格のものではなかろうか。しかし、幸いにして、従来から夜間中学で、六歳から十五歳の人で通えなかった人たちをそこで救ってきたわけでございまして、それが今日では、もう義務教育の年限は過ぎたけれども、進んで学びたいという人のために門戸を開いているわけでございます。ですから、これはやはりそういうかっこうでそういう施設は残したいし、また、国も義務教育と同じような対応策でそれについて経費負担をしていくということでよろしいんじゃないかという感じを持っているところでございます。
  325. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、義務教育というものは、それは原則は六歳から十五歳という年齢的な問題だと思うのですけれども、さればといって、その年齢を過ぎた者に対しては国家は何もしなくていいか、そういうことは私はおかしいと思うのです。これは義務教育を本人の、六歳の子供が自分の意思で義務教育を受けないというようなことじゃなくて、全く他動的なことで、たとえば受ける機会のなかった引き揚げ者とか、そういうふうな人とか、あるいは戦後の混乱で本人の意に反して一家離散して受けられなかった方々、そういう方々が年齢が過ぎたからというので放っておいたのでは、その方々の教育を受ける権利が単に奪われるというのじゃなくて、生存権そのものが否定される結果になる。  もうこれは一々申し上げるまでもなく、いま一例として、履歴書で中学校を卒業してない、小学校も卒業してないということがわかれば、少々気に入られておっても正式採用にはなれない。また結婚にしても、義務教育を終わってないとなればこれはなかなか結婚というものもむずかしい。そのほか、たとえば調理士になろうと思う、美容師になろうと思う、看護婦になろうと思っても、これは義務教育修了の証明がなければたいていの国家試験は受けられない。かりに独学で幾ら勉強したところで受けられないというのが現状でございますから、やはりこれに対しては国がもう少し教育を受ける権利を保障するようにやっていかなくちゃいけないんじゃないか。  これ全く国のほうは、認知しない子供のような状態で夜間中学というものが存在し、かつ、大阪でも最初にできてからあっという間にいま十校夜間中学ができているわけでございまして、しかももっともっとつくってほしいという要請も広まっているわけで、いま大阪府下では千人をこす夜間中学生がいるわけでございますが、そういう現状に対して、これはしゃくし定木に年齢が超過しているという問題じゃなくて、国はやはり義務教育を与える義務があるんじゃないか。私はそう考えるわけですけれども、今度は文部当局のほうに伺います。いかがでございますか。
  326. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) まあ、かた苦しく法律上の権利とか義務とか、そういうふうな問題は抜きにいたしまして、義務教育を修了する程度の知識なりその教育というものは、やはり社会生活をする上の最低限度のものであるというふうな考えに立ちました場合には、義務教育の機会を何かの理由で逸せられました方に対しましては、それを補うような手段を講ずるということは、やはり地方公共団体とかあるいは国もお手助けしてやるべき事柄であると思います。しかしながら、大臣申されましたように、法律上の義務その他から考えますと、これは地方公共団体あるいは国が義務を負っているわけではもちろんございません。しかし、やはり社会の最低の教育を行ない、社会の秩序を維持していくという観点から考えますと、これは当然望ましいことであるし、またある意味では地方公共団体あるいは国がやるべきことであるというふうに観念することもあながち不自然なことじゃないというふうに思っております。
  327. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは統計で調べましても——なぜ夜間中学に来るのか、その統計を見ましても、五〇%以上が義務教育を終えたいというのがその回答、これはおそらく大臣も局長も御存じだと思いますけれども。それから現に卒業生がどうしているかと思いますと、これは夜間中学を卒業して、高校——これは昼間のもあれば定時制高校に進んでいる人もかなりあるわけです。これは五十歳過ぎてからやっと夜間中学を終えたからというので、高校に進んでいる人もこれはあるわけなんですね。そのほか、職場がいいところに移れた、あるいは同じ職場でも地位が上がった、そういう人たち。あるいはいままで就職できなかったのが就職できたとか、現実にそういうこともあれば、またいまさっき申し上げた国家試験を受けることができるようになったということも現実にあるわけでございますので、これはやはり単なる社会教育の問題じゃない。  社会教育であれば、単に教養をつけただけでも、やはり義務教育未修了という肩書きは本人に一生ついてまわるわけで、本人が幾ら努力してもどうにもなる問題でもない。ですから、ぜひとも社会的に夜間中学をもっとたくさんつくってほしい、内容の充実したものにしてほしいという要望がある以上は、文部当局はやはりそれにこたえていただきたいと思うのです。前向きにひとつ取り組んでいただくようなことを大臣はお考えになりませんか。
  328. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 御承知のように、小中学校は、市町村が建設をいたしまして管理をしている、先生も県のほうから配置をしている、その費用については国庫が負担をしておる、こういうたてまえでございます。不幸にして義務教育を受けていない、そういう方が義務教育を受けたい。それを受け入れて市町村が夜間中学等をおつくりになる、その場合には文部省は、一般の義務教育と同じようにこれを処遇していくということはこれまでと同じように続けていきたいと思います。
  329. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの大臣のお話でもわかりましたように、いままでと同じように、私はいままで以上に進めていただきたいと思うわけですが、先ほども伺いました専任の先生の数も非常に少ないわけで、現場の先生の話を聞きますと、全く奉仕的にやっている。たいへんに待遇も十分なものじゃない状態で、一つの自分の社会的な信条でやっておられるというような状態なんでございますが、特に夜間中学で感じますことは、いま普通の義務教育のクラスと同じように一人四十人クラスということになっているようでございますけれども、いまも申し上げたように、年齢差が——これは学齢の人も中にはおる、しかし六十代過ぎた者もおる。そしてそのやった学習というものが、小学校の一年生も未修了の生徒も入ってきている。ひらがなも書けない、九九も知らない、一けたの足し算、引き算を、指を折って数えなければできないという人もあれば、もう中学二年まで行ったけれども、卒業できなかったという人も入っておるというような状態で、たいへんに千差万別である。  特に最近の傾向といたしまして、外国から引き揚げてきた人が行くところとして、夜間中学はいまたいへんに利用されておりまして、大阪府下の夜間中学を見ましても、日本語がしゃべれない生徒がたいへん多いわけでございまして、私も見学に参りました一夜間中学では、日本語がしゃべれない、全く片言である、全然わからない。それじゃ、ほかに使う外国語は何かといえば、朝鮮語もあれば、中国語もあれば、また南米からの引き揚げ者がかなり多うございまして、ポルトガル語しかわからない、スペイン語しかわからない、そういう雑多な人を四十人預かって、それはもう見ておっても、先生は気の毒で、これはもうほんとうに何とかしなくちゃならないということを痛切に感じたわけでございまして、先生も、この授業に追っつくために、スペイン語を勉強したり、ポルトガル語を勉強したり、普通の人間ではできないような多くの負担を、本来の教育以外の負担をしょい込んで、悪戦苦闘しておられるというのが現実でございます。  こういうふうな事柄に対して、きょういま、文部予算も見せていただきますと、外地からの引き掲げ者の子女の教育ということで予算が組まれておりますが、いま文部当局でやっておられる外地の在住者の子女、あるいは引き揚げ者の子女の教育というのは、むしろ平均水準よりもいわば高い。エリートに属する家庭の子女が主としてその恩恵を受けておって、——まあいろいろあるてしょうが、南米から引き揚げてくるという人などというのは、いわば向こうで食い詰めて、もうどうにもならないからということで母国へ帰ってきている。そういう人たちにとっては、向こうでも日本政府のあたたかい手はもうとても行き渡らない。こちらへ帰ってきてからもどうすることもできたいということで、かろうじて夜間中学を見つけできているということですが、そういう事柄に対して、文部当局としては、それら引き揚げ者に対する、それも最も底辺にある引き揚げ者、そういう人たちに対する教育をどのようにお考えになるか、それちょっとお述べいただきたいと思うわけです。
  330. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 先ほど来御議論ございますように、まだ義務教育を終えておられない方に対しまして、私どもは義務教育を受けさせる機会を与えるということにつきましては、大臣から御答弁申し上げましたように、できるだけのことをいたしたいと考えております。しかしながら、引き揚げてこられました方が、日本語も含めまして、日本の生活に適応するということまで、私どものほうで、めんどうを見ろと言われましても、これはちょっと能力の外になりますし、それからまた、学校の先生につきましても、それは日本語まで教えるというふうな免許もやっておりませんし、訓練もやっていません。したがいまして、先生方にそこまでお願いするというのは、これはいささか酷じゃないか。そういう引き揚げられました方々が日本の生活におなれいただくというところまでは、これは厚生省のほうでごめんどうを見ていただくというふうな行き方もあるんじゃないか。これにつきましては、国会におきまして、四十八年の三月に、厚生大臣とそれから社会党の横路先生との間で議論がございまして、厚生大臣からも、何かセンターというようなことが、いいのかどうかわからないけれども、そういう体制をつくることについて積極的に努力をしていきたいというふうなお答えもございます。まあ、中学校に行かれる方もあるいはほかの分野で御活躍される方もいろいろおられるわけでございますから、とにかく日本の生活に適応されるまでは、そういう方々全般について何らかのごめんどうを見ていただいて、その上で中学校の教育課程を終えておられない方については、私どものほうでお世話をするというふうな行き方ではいかがかというふうに考えるような次第でございます。
  331. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁を伺いまして、これは文部省が手が回らぬから厚生省にやってもらうんだ、それじゃ、なかなか話が進まないと思いますよ。これは、やはり義務教育をそういうようなことで受けることができなかったから、もう一度義務教育を受けさしてほしいということ——もう一度といってもまだ一ぺんも受けてないからですけれども。きている国民の要請に、やはり文部当局としてもこたえなければならない。  これは、厚生省がたぶん何かやるだろうというようなことで手をこまねいている。厚生省のほうは文部省が何かやるだろうと。この社会教育は文部省の御担当ですから、かりに大臣の御見解で社会教育という立場をとるにしても、やはり文部省は責任ないというわけにはいかない事柄じゃないか。また、海外で生活している子女、あるいは海外から帰ってきた国民、子女の教育というようなことで予算も組んであるわけですから、そういう項目——私いまここへちょっと出てきませんが、拝見したわけですから、そういう項目がある以上、やはり文部省の所管でもあることは間違いない。むしろ厚生省文部省とで力を合わせて、海外から帰ってこられた方々が日本で安心して住めるように教育をするということが、これはやはり文部省ももちろん重要な一翼をになっていると思うんでございますが、そのあたりはいかがですか。
  332. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 学齢の方々につきましては、御指摘のとおりでございます。私どものほうでも、海外に勤務された方々の子女の方で日本の生活に適応されておらない方につきましては、付属の学校でございますとか、そういうところに収容して、日本の生活になれた上で適当な学校に行っていただくというふうなこともやっているわけでございまして、まあそういう意味の海外子女教育の充実ということにつきましては、私どもも努力をしているわけでございます。しかし、ただいま先生御指摘になりましたような、ブラジルあるいはチリあるいは韓国その他からお帰りになりました義務教育対象外の方がたくさんおられるようでございますけれども、そういう方々につきましては、これは夜間中学の場所を借りてはいかぬということではもちろんございません。あるいは非常勤の職員がそういう方に日本語の訓練をするという場としてお使いになることは別に差しつかえないと思いますけれども、しかし、いわゆる中学校でそういうことを全部やれと言われましても、そもそもそういうふうな目的のために中学校ができておらぬものですから、教員の養成その他につきましても手が届いておらないというのが実情でございまして、その辺は御賢察いただきまして、適当ないい方法をお教えいただければ私どももそれに応じて対策を立てるということにいたしたいと考えております。
  333. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうことだとしますと、これは中小学校のみでその引き揚げ者の問題を考えることできないとすれば、しかし私は、これはやはり義務教育の問題であり社会教育の問題であるというふうに考えますので、大臣とすると、それじゃ、こういう人たちに対する教育を与える機会てすね、こういうふうにして——日本の社会になじめといっても、そのなじむような教育をする場がなければ、これはなじみようがないわけでございますので、本来日本人でありながら、それをどのようにお考えになるか、大臣とするとどういうふうな方針をお持ちか、承っておきたい。
  334. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) いまお話を承っておりますと、義務教育の年齢を越えた人で海外から引き揚げてこられたことについての御心配だろうと思います。やはり帰ってこられた方が、日本の生活に適応できるような配慮を私はすべきだと思います。それはやはり厚生省の所管の仕事じゃないかと思います。そういう方々がさらに勉強したい、したがって、夜間中学があるのだからそこに通いたい。これはまたやはりそこで勉強できるようにお世話をしたらいいことだと思います。その場合に、夜間中学の定数をふやせと、こういう御指摘のようでございますが、関係の団体からの申し入れがあります場合には、文部省としてもできる限りそれに協力していくべきだろうと、こう思います。
  335. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはまあ日本になじむというても、字を覚えなければなじみようもないわけですね、日本語が読めなければ、また書けなければ。まず字を覚える、あるいは書けるようにならなけりゃ、日本での生活というものは実際問題として、動物じゃないんだからできないわけなんでございますね。ですから、やはりこれはどこかでなじんで、その人が勉強したければ学校へといっても、字が読めたり書けたりしなければ、日本での生活というものが全然できないわけなんでございますので、ですから、やはりこれは私は、単に厚生省だと突き放してしまえる問題ではないんじゃないかと思うわけです。  ここで議論していてもしかたございませんので、大臣に特にお願いしておきたいことは、この夜間中学ができて、これは東京でも相当歴史を持っておりますが、大阪ではわりに歴史が新しいんですが、たちどころに十校できた。そしてもっともっとつくってほしいという要請があるし、もう募集している人間よりもずっとたくさんの人たちが応募してきて、先生方はてんてこ舞いをしている。まあそういう状態でございますので、ぜひこれからの予算措置とかあるいは先生の身分の問題、あるいは学校施設の問題などもございますので、これをやはり法制化していただく、そういうこともこれは強く教職員組合からも要望されていることでございますので、真剣に御検討いただくべき時期が来ているのではないか、そのように思いますが、いかがでございますか。
  336. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 夜間中学の運営については、各自治体でたいへん御苦労いただいていると思います。この御苦労いただいている夜間中学につきましては、国も義務教育の施設を運営していただいているというたてまえで対処していきたいと思います。
  337. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは最後にいま法制化の問題。直ちに法制化にするという御答弁はいただけなかったんですが、前向きに取り組んでいただく、そしてこの学校教育法の二十五条にこの「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない。」というふうになっておるわけですが、むしろこれは保護者を対象にするよりも、学齢児及び保護者というふうに、この夜間中学を対象にする場合においては考えていただくべきじゃないか、そういう意味での改正の必要も生まれてくるんじゃないか。さらにこの学校教育法の七十五条にこれはまあ「特殊学級」ということばを用いております。私、いま特殊ということばは、あまり好きじゃございませんので、障害児学級というふうに言い直すといたしますと、それに、これ、障害児じゃむろんないですけれども、先生が一人当たり受け持てる限度は現場の先生方に聞くと、いろんな年齢の、いろんな社会的経験の違う人、しかもその能力、知能水準というものは全くいろいろであるので、せいぜいやはりこの障害児教育と同じぐらいの人数しか良心的には受け持てないんじゃないか、そういうふうなことからこの条項を準用するような規定の設置というようなことが、これは強く求められているわけでございますので、ひとつその点についても、今後文部当局とすると前向きにお取り組みいただきたいと思うわけです。これは、ただ、いまの教育が日本の非常に受験教育である、エリートを養成する教育で、それから落ちこぼれた者はもう、かってに生きるなり死ぬなりせよ、というふうな文部省の教育方針のように私ども思わざるず得ないわけでございますが、もしそうでないとするならば、この落ちこぼれた人に対する教育というものがまず第一に考えられなければならない。これをほったらかしにしておけば、幾らかっこうのいいことを言われても、やっぱり一部の優秀な人のみを教育してそしてそれから脱落していったものはもうかってにしろといういまの文部行政、一般にそのように批判されている文部行政をそのまま裏づけることになるんじゃないか。そのあたりにおいて、こういう問題をぜひとも大物の文部大臣のときに何とか実現していただきたいと特に要望するわけでございます。大臣と局長に最後にこの件についての御所信をいただきたいと思います。
  338. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 経済的な理由で就学できないような方々をなくすというために、現在就学奨励費というふうな制度を設けまして要保護、準要保護児童、合わせて一〇%の方々につきましては、これは学用品から通学用品に至るまで、あるいは給食も含めまして無料で就学できるような措置を講じております。これが前段に先生から御指摘いただきましたものに対する対策でございます。  現在夜間中学校は、もう学齢を過ぎた方々が入っておられまして、そういう方につきましては、そういうふうな援助の方法というのは、まあないわけでございますが、これは実態は私ども十分承知をいたしておりません。どういう角度から、つまり引き揚げ者に対する援助という意味でやるのか、あるいはその家庭の貧しい方々に対する援助という方法でやるのか、いろいろやり方はあると思いますけれども、そういう方に対してどういうふうにするかということは、この条文とは直接関係のないことでございますが、そういう問題につきましても十分検討していく必要があろうと思います。  それから学級編制の問題でございますけれども、これは特殊学級につきましては学級編制の改善、いま十三人でございますが、さらにこれを改善しようということで法律案も提出をいたしております。そういうふうな教育の効果を高めるための施策につきましては、これは全般的にやはり検討して、さらに進めていく必要があろうということで、この点につきましては努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  339. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 夜間中学の問題につきましては、実態に合うように今後とも善処していきたいと思います。ただ、いまおっしゃいました、文部省がエリートのための教育をやっているというおことば、これはぜひ考え直していただきたいと思います。文部省は国民のための教育をやっているんです。また九年間義務教育、全部が九年間の義務教育を適正に受けられるように努力しております。高等学校へも九割の方々が進学しているわけであります。ためにすることばだと思うのですけれども、これはぜひ取り消しておいていただきたいと思います。
  340. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひそれを裏づける施策を行なっていただきたいと特にお願いする次第です。  質問終わります。
  341. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 文部省所管に対する本日の質疑はこの程度といたします。  次回は明日午前十時二十分に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十七分散会      —————・—————