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1974-03-23 第72回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十三日(土曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  三月二十三日     辞任         補欠選任      田代富士男君     中尾 辰義君      矢追 秀彦君     柏原 ヤス君      藤井 恒男君     高山 恒雄君      喜屋武眞榮君     野末 和彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鹿島 俊雄君     理 事                 片山 正英君                 嶋崎  均君                 西村 尚治君                 細川 護熙君                 吉武 恵市君                 小野  明君                 加瀬  完君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君     委 員                 今泉 正二君                 大竹平八郎君                 梶木 又三君                 木村 睦男君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 高橋 邦雄君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 原 文兵衛君                 前田佳都男君                 米田 正文君                 上田  哲君                 杉原 一雄君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 宮之原貞光君                 沢田  実君                 中尾 辰義君                 藤原 房雄君                 高山 恒雄君                 須藤 五郎君                 星野  力君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  中村 梅吉君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣  亀岡 高夫君        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      町村 金五君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君    政府委員        総理府人事局長  皆川 迪夫君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        警察庁刑事局長  田村 宣明君        北海道開発庁総        務監理官     秋吉 良雄君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁物価        局長       小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁調査        局長       宮崎  勇君        環境庁長官官房        長        信澤  清君        環境庁長官官房        審議官      橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       森  整治君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  安原 美穂君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        戸田 嘉徳君        大蔵省主計局長  橋口  收君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局次        長        井上 幸夫君        大蔵省国際金融        局長       松川 道哉君        国税庁次長    吉田冨士雄君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        厚生大臣官房審        議官       三浦 英夫君        厚生省児童家庭        局長       翁 久次郎君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省畜産局長  澤邊  守君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        通商産業審議官  森口 八郎君        通商産業省産業        政策局長     小松勇五郎君        通商産業省機械        情報産業局長   齋藤 太一君        資源エネルギー        庁石油部長    熊谷 善二君        資源エネルギー        庁公益事業部長  岸田 文武君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        建設省計画局長  大塩洋一郎君        建設省河川局長  松村 賢吉君        建設省道路局長  菊池 三男君        自治大臣官房審        議官       近藤 隆之君        自治省行政局選        挙部長      土屋 佳照君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        日本国有鉄道総        裁        藤井松太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、前田君の質疑を行ないます。前田君。
  3. 前田佳都男

    前田佳都男君 きのうは複線電化の点について御質問をしたのでありますが、きのうに引き続きまして、二、三の点について、主として国鉄総裁にお伺いをしたいと思います。  複線電化がとにかく幹線であるとかあるいは大都市近郊旅客輸送、そういう点に重点を置いて複線電化をする、特に標準はございませんけれども、大体そういう点に重点を置くのだというふうに、きのう念を押したところ、さようでございますという御答弁がございました。ところが、大都市から私鉄が出ております。その私鉄の先に国鉄があるという場合、その場合はどうも、国鉄において、私鉄の先に国鉄がある、連絡はしておるのでありますが、私鉄があってその先に国鉄があるというその国鉄の線については、どうも重きを置かない。大都市近郊でありながら、どうも重点を置かない。具体的に言いましょう。大阪の難波から橋本まで南海電鉄が行っておる。その先に和歌山線という線がある。和歌山線国鉄ですよ。しかし、五十年一日のごとく、がたごとがたごとと全然スピードも変わらない。ただ、無人駅はふえました。しかし、無人駅はふえたけれども、無人駅にはとまってくれない。また、スピードも、私が子供の時分と同じことであります、五十年一日のごとし。はたして一体これでいいのかどうか。とにかく、沿線の連中は一生懸命これについて陳情しておる。なるほど、地元の電鉄の局は局長以下一生懸命にやってくれております。その点は私は評価しますけれども。とにかく、はたして一体全体これでいいのかどうか。紀伊半島というのは房総半島に非常によく似ている。大阪近郊線として特に重きを置いてもらわなくちゃいけないと思うのであります。ことに、石油問題が出て以来、通勤輸送としての和歌山線というものは非常に重要性を帯びてきておると思うのでありますが、これについて、思い切って複線電化をすべきであると思いますが、国鉄総裁はどういうふうにお考えになるか、その点を簡単、明瞭にお伺いしたいと思います。
  4. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答え申し上げます。  複線電化は一体どういう基準でやっているのかというような御質問から出発したように思いますが、国鉄といたしましては複線にし一かつ電化をするということは相当お金がかかりますので、そのお金をかけてもなおかつ輸送需要でそれがカバーできるということが第一義たらざるを得ない、そういうようなことでございまして、第二点の和歌山線に関連しまして、大阪地区私鉄の先つぼに国鉄があって、これは何がまま子みたいな扱いになっているということでございまして、これはやっぱり連絡運輸をいたします関係上、実際問題としては、そういうおしかりもある場所もあると思いますけれども、要は私鉄国鉄が一丸になって輸送要請にこたえるということが主眼でございますので、輸送要請さえ十分にございますれば、私鉄の系統ともよくお話を申し上げまして、おしかりのような問題を解消いたしたいと、かように考えております。  それから、まあ御指摘和歌山地区に関しましては、私が申し上げるまでもなく、これは和歌山通勤圏でもあり、さらに大阪のベッドタウンであるというような言い方もできますので、国鉄といたしましては輸送要請とにらみながら電化複線と申しますか、そういうものを積極的に検討していきたい、かように考えております。
  5. 前田佳都男

    前田佳都男君 前向きの答弁でけっこうでありますが、複線電化について非常に金がかかるということは、ただいま総裁もおっしゃいましたが、それがために地元負担をして、利用債というものを相当国鉄からもお申しつけがあり、これに対して協力をしておる。大体利用債というものは、全体の経費のうちで何%を利用債負担するように考えているのか、その点をひとつお伺いしたい。
  6. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答え申し上げます。  利用債というようなものは、地元に借金するということであって、国鉄の本来の考え方からいえばあまりほめた態度じゃないと思いますけれども、まあ御承知のような国鉄財政状態でございますので、なおかつその複線電化というようなものは、地元の方にも喜ばれると同時に、御利便を非常に与えるというようなことで一過去におきましては、これ、どれぐらいとおっしゃられても、要するに現在ある線路電化する、その追加投資といったようなものになり、複線となりますと線路一線増設も加わりますので、金高は相当になりますが、まあ過去の国鉄財政の最も金繰りの苦しかった時代は、そういうものは一〇〇%近く追加投資地元にお願いいたしておったと思いますけれども、漸次、先ほど申しましたように、これは地元に借金して、ちょうだいする金じゃないんでございますから、金利が安いとかなんとかいうことはあまり考えるべきじゃないと私は考えております。
  7. 前田佳都男

    前田佳都男君 複線電化のために相当の金がかかると、設備投資がたいへんだと、国鉄経営だって非常に苦しいということはよくわかります。したがいまして、私はこういうことをお伺いしたいんです。すべて、全部路線まで、電車のポールまで全部国で持とうというんじゃなくて、国有国営という考え方じゃなくて、設備については民間が出資すると、民有国営ということ——全部するんじゃないですよ。ある一部分だけ民有でするんだと、そうしてその経営国鉄がやるんだという考え方は一体どういうふうにお考えになります。別に私は、日本国有鉄道という文字のとおり、すべてのものをみな国で持たなくちゃならぬという理屈はないと思うんであります。その点はどうですか。それからまた、別に私は、国鉄民間経営しろ、そういうことを言うとるんじゃないんです。設備民間で持たして、その上を国鉄が便ったらいいじゃないかという点を、特に私鉄との関連において私はお伺いするわけであります。
  8. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答えします。  最後におっしゃいました、私鉄に御負担を願って、それを借りて国鉄を動かすということは、これは相互乗り入れというのは全部そういうたてまえに立っておるんでございまして、これはまあたいした問題なく、相互乗り入れをするかわりに、その線路使用料をちょうだいすると、あるいはこちらが払うということは、これはまあ当然のことでよろしゅうございますけれども、前段のお話がございました、路盤のほうは民間で建設を願い、御負担を願っておいて、それを借りてやったらどうだということになりますと、これは私は経済上の問題あまりようわからぬのでございますけれども、投資したものが現在のあれでもってペイするだけの使用料を払わないと民間でもつくってくださらぬということになりますと、国鉄がつくったことと何も国鉄経営上たいして楽にならぬのじゃないかということを、私はまあしろうとでございますのでその程度のお粗末な答弁しかできませんが、それでもってひとつ御了承願います。
  9. 前田佳都男

    前田佳都男君 民間設備投資をする場合は相当もうけなくちゃいけないという考え方で、その点が心配だというふうに私は理解するんでありますが、民間もその路線の上を使うんです。それからまた国鉄民間路線の上を使うと、現にこれはやっているわけですね。相互乗り入れをやってますわね。ただ、民間設備をした上を国鉄が乗り込んでいくという場合に、別に私は特にそれほど神経質にならなくても、現在の相互乗り入れと同じ考え方で、民有国営というとあまりにも話が固くなり過ぎますけれども、少しそういう点を特に私鉄国鉄が連係しておるような場合は、ほんとう国鉄沿線一つ電化をしてくれないんですよ。総裁、してくれないんですよ。幾ら陳情したってできっこない。いやそれは問題になりませんということを地元局長あたりは言っている。それはそうでしょう。しかしそれじゃ困るんです。ほんとうがたごとがたごとということで五十年一日のごとく走っておるんでは地元は発展しない。ただ私鉄沿線だけは、その近くの私鉄沿線は同じ距離をわずか三十分か四十分で走っておる、一方は一時間半以上もかかっていると、こんな格差があるんです。これじゃ地元の発展たまりません。われわれは国鉄であるとか、あるいは私鉄であるとか、そういうことは関係ないんです。便利がよけりゃいいわけでありまして、その点をひとつとくと研究していただきたい。どうですか。
  10. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答えします。  交通機関は、申し上げるまでもなく、私鉄であると国鉄であるとを問わず、御利用願う方に最大の御便宜を与えるということが本来の使命たるべきものであって、私鉄と協調、相互乗り入れをやることによって地元の方々の御利便が増大するというようなことは、御指摘のとおり、積極的に進めていきたいと、かように考えておりますが、私鉄にし国鉄にしろ、おれの領分はこっちだというようなことで先生御指摘になったようなこともなきにしもあらずと思われますんで、そういうことは十分留意いたします。
  11. 前田佳都男

    前田佳都男君 私鉄国鉄というふうに別々に考えないで一本になって考えるという考え方は非常にけっこうでございます。  それにつきましては、それでははなはだ具体的になって恐縮でありますが、南海線和歌山線阪和線、この線を一本にして連結して——まずその前提には、和歌山線電化せにゃいけません。電化をした後において連結をして、ループラインといいますか、循環線というものをお考えになっちゃどうかと、これはひとつ私の提案として申し上げたい。どうですか、それについては。
  12. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答えします。  ただいまの御指摘のように、和歌山線のほうが電化されていないんで、ループ線を構成するのには現在は不便であろうということはこれは事実でございますけれども、これとてもジーゼルが電化した区間を走れぬわけじゃないんで、あけてやれば、一〇〇%の効率は出ないにしても、そういうことは不可能ではない。そういうループを構成することによって地元に御便宜を与えるということになれば、将来はこの和歌山線といえども強力に電化とかなんとかを進めざるを得ないものだろうと思いますんで、そういう事態になれば御指摘のことがより容易になると、かように考えますので、ひとつこれも積極的に御意見を受けとめて検討していきたいと、かように思います。
  13. 前田佳都男

    前田佳都男君 国鉄公共企業体として現在の財政状況が非常に苦しいということもよくわかりております。営業主義重点を置くということは非常によくわかる。ただ、どうもその経営の方針、やり方を見ておりますと、観光収入というか、それがドル箱になっておる。優等列車重点主義である。通勤輸送については二の次に考えておる。定期旅客ではもうからないと、これも大きい原因であろうと思いますけれども、どうも通勤列車を二次的に考える、そういう傾向が強いと思うんです。紀勢線は今度電化されるわけです。国鉄が英断をもって電化されます。この際に、電化の機会に、通勤列車をもっと優遇するような、紀勢線についてそういうお考えはございますかどうか、お伺いしたい。
  14. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) お答えします。  線路容量がございますれば、これは優等列車だけ走らせて通勤を虐待するなんという意思は毛頭ございませんけれども、線路容量が現在は行き詰まっておる線路が多いということで、したがって、国鉄財政が苦しいということになると優等列車を優先さすということもなきにしもあらず、これはこの点地元の方におわびするんでございますが、漸次——新幹線網等の議論などをやるとちょっとしかられるかもしれませんけれども、ああいったことで旅客輸送があのほうにそれてくると現在線はあいてくる。したがって通勤輸送ローカル輸送あるいは貨物輸送、こういう線路容量に余力ができますんで、これを基軸にして大いに強化していきたいと、かように考えておる次第でありまして、国民鉄道でございますので、国鉄はもうからぬものはやらぬのだということじゃ決してございません。
  15. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) これにて前田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  16. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 杉原君。
  17. 杉原一雄

    杉原一雄君 大きく分けて三つの質問をしますが、一つは、自由社会総合開発独禁政策、それから第二点は、農業問題、なかんずく農産物需給の展望と生産目標試案等について、第三点は、日本海をきれいな海にというテーマを中心にしながら、環境保全の問題について質問をしたいと思います。  第一点の、自由社会の問題ですが、経済企画庁長官にお伺いするわけですが、自民党が各種選挙等を通じて自由社会を守ろうというのが最大のスローガンでありますので、経済企画をする立場に立つ長官として、自由社会というのは、理念はどういう理念に立ち、どういう経済機構社会構造を念頭に置いてこれが進められているかについて、きわめて概念的ですが、お尋ねいたします。
  18. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私もその方面のエコノミストではございませんので、必ずしも十分なお答えができませんけれども、私などが経済企画庁におりまして考えるところは、自由経済というのは、個人創意くふうによって経済が発展し、国民生活が豊富になるようなことをまず第一の前提とし、次には、経済運営というものは、市場経済を軸として必要なところに必要な資源配分が行なわれ、また価格が形成されて、それによって最も能率的かつ有効な経済運営がなされるということ、それから第三番目には、しかしながら、今日、たとえば私どもは経済企画庁として与えられておる使命も、御承知のように、経済計画大綱の策定でありますとか、あるいは経済総合政策調整というようなことを任務といたしておるところから考えましても、さきに申しました二点のままの、いわゆる自由放任経済ではなしに、一つ総合計画の中における、右に申しました二点の運営を効率的にやってまいる、簡単なことばで言いますと、これはまあやぼな表現になるかもしれませんけれども、近代社会における自由経済、あるいは新自由経済というようなことばもあるようでございますが、さような観点からの経済運営政策であって、昔のような、アダム・スミスやリカルド時代のような放任経済ではない、こういうふうに考えまして運営をいたしておるつもりでございます。
  19. 杉原一雄

    杉原一雄君 ちょっと答弁不足ですがね。どういう経済機構というのは、簡単に言ってくださいよ。いまのは機能的な分類をしましたけれども、どういう機構なんですか。それは学問的にはちゃんと分類されていますからね。
  20. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) どういうふうに申し上げたらよろしいか、産業経済と、こう一口に申しましても、その中には、一次産業、二次産業、三次産業というようなものがございまして、国民生活水準の向上とか、あるいは国の発展というものは、そのいずれに片寄るべきでもない。一次産業、二次産業、三次産業等が適正に配分され、また比較生産費と申しますか、適正な分業が国内的にも国際的にも行なわれるというような大ワクを国が計画的に考えながら、その中において、各種企業また各種産業というものの創意くふうを発展させると。しかし、これはまた他の面からいいますと、今日、国土、エネルギーは有限でございますし、ことに環境とか公害とかいうようなものが非常に大切な時代でございますので、そういうものを守りながら、一面においては、ワクの中の企業個人の自由と創意を十分に駆使せしめると、こういう表現もできるかと思います。
  21. 杉原一雄

    杉原一雄君 あなたは、あとからしっぽのつかめぬような言い方をしておるわけなんだ。どういう経済機構ということには、学問的に分類があるわけね。たとえば、資本主義とか社会主義とか、あるいはあなた方が言う得意な全体主義とか、いろいろありますね。そのどっちの範疇に入るのですか。
  22. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 社会主義にあらず、また、先ほども申しましたような古い観念における資本主義でもなしに、新時代における福祉自由経済主義というような表現を、私に文章でも書かせれば、使いたいところでございます。
  23. 杉原一雄

    杉原一雄君 大臣として、はっきり言ってくださいよ。私では困る。
  24. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) もちろん大臣の地位にある私として、そのように考えます。
  25. 杉原一雄

    杉原一雄君 つとめて資本主義と言うことをあなたは回避しているのですが、資本主義でしょう。
  26. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 資本の横暴自由というものを許すという古典的な資本主義ではない、このように御理解をいただければ幸いでございます。
  27. 杉原一雄

    杉原一雄君 ちょっとその辺の境がわからなくなりました。あなたはえらい進歩主義者のようだが、どうなんですか、古典的のと、いまの資本主義と、どこが違うんですか。
  28. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 先ほども申しました、国民の福祉あるいは社会環境を守るという、そういうワクの中における企業個人創意くふうの発展、また資本の活用と、こういうふうに私は考えます。
  29. 杉原一雄

    杉原一雄君 大蔵大臣ね、あなたの見解をひとつ、いまのときに求めておきたいと思うんですが、これに(資料を示す)書いてあるわけよ、ぼくはわかっておるのだよ。あなた、いまここでひとつ言ってみてください。内田長官の言うとおりでいいのかどうか。
  30. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、個人の尊厳というか、それを尊重する社会、これが自由社会だと思います。ただ、個人を放任しておきますと、どうしても弱肉強食、優勝劣敗になる。そこで、国家権力というものがこれに介入いたしまして、その間の調整をいたすと、こういう形が現代社会であると、こういうふうに思います。
  31. 杉原一雄

    杉原一雄君 大蔵大臣ね、とっぴであったから申しわけないのだけれど、あなたが、これに書いてあるのでは、喜多幡さんですか、その対談の中で、「私は、自由主義だ、社会主義だ、そんな主義には全然とらわれる考えは持たない」と、こういう言い方をして強調していることは、社会連帯を強調しておる。内田さんも、なかなか創意とかいろいろ言っているわけですが、そういうあなた方の理念とか構想される経済構造からいえば、いわゆる衆参両院を通じて明らかになった独占の存在、悪徳商社の存在については、まずどこが悪いとかいいとかでなしに、あなた方の経済理念からいえば、それはどうなる。
  32. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 独占、私は全部悪いというわけではございませんけれども、少なくともその独占が管理価格を生じたり、あるいはまた経済の主人である人間生活の幸福や福祉を害するような独占のあり方はよろしくないと、是正されるべきものだと考えます。
  33. 杉原一雄

    杉原一雄君 まだほかにありませんか、悪い点は。
  34. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) いや、まあそういう二点だろうと思います。
  35. 杉原一雄

    杉原一雄君 いやいや、それだけじゃない。
  36. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) だんだん、それはひとつ問答を重ねさしていただきたいと思います。
  37. 杉原一雄

    杉原一雄君 問答重ねては……。大蔵大臣どうですかね。
  38. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は社会連帯ということを強調するんです。これが全体主義だ、あるいは自由主義だ、個人主義だということを論ずる、これはもうほんとうにあまり益のないことである、つまり、人間は一人で生きるわけにはいかぬと、どうしても長短相補うというか、そういう形で、まあ小さくは地方社会をなし、国家社会つまり国をなし、その中において自己を完成していくと、こういうことだろうと、こういうふうに思うわけでございますが、そういう考え方の中において現在の諸制度をどういうふうにとらえていくかと、こういうことが一つ一つの施策を考えるその基本でなければならぬと、こういうふうに考えておるんです。独占禁止法、そういう問題もそういう角度でとらうべき問題である、そういうふうに考えます。
  39. 杉原一雄

    杉原一雄君 東大の非常に若い助教授が——名前を言ってもいいですよ、公に論文を発表しているからね。竹内啓さん、最近の論文です。彼は経済活動のルールとモラルということを言っているわけです。その論文を要約すると、資本主義社会の大原則は、すべて人々が社会や他人の利益を直接考慮することなく——わかりますね、自分の利益を最大にするように行動するということであると理解していると、こういう言い方をしている。こういう若い教授がこう言っているわけです。これに対して長官の言っていることとはだいぶ違いますね。どうでしょうか。これはすなおに受け取れますか。
  40. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) そのプロフェッサーの所論を私は読んではいませんけれども、若い教授だとおっしゃるわりには古典的な資本主義、自由主義にこだわっているような、古くて若い方のようにしか私には受け取れません。
  41. 杉原一雄

    杉原一雄君 でありますから、この人の議論を発展させますと、あなたが悪徳商社、財閥ということは全面的に悪いとはおっしゃらないけれども、彼も、できる限り安く買って、できる限り高く売るということは資本主義社会におけるいわばゲームの基本的なルールである、何が悪いんだと、こう言っているわけです。だから、この人をどうしようということは私は言いませんよ。そういう考え方の人があるということで、一方、内田さんは前進しているということで感心しているんですよ、ぼくは正直なところ。  そこで、うしろに奥野文部大臣がおりますが、これをもって教育の問題に触れようとは思いませんけれども、教育の場における自由、創意資本主義というものに対する扱い方は、学習指導要領等において、どういう見解をとっていますか。
  42. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) いま御指摘のような問題で、わが国におきまして、先般企業エゴがかなりきびしく批判されてまいりまして、残念なことだと考えているわけでございます。憲法の前文にも、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」ということばが使われております。国際社会でそうでありますように、国内社会においても当然そうでなければならない、がように考えるわけでございます。自由の問題をお話しになりましたが、自由を生かしていきますためには、他人の自由も尊重しなければ自己の自由は存立いたしません。そういう点が、戦前の反動と申し上げましょうか、少し行き過ぎたきらいが他面にある、こういう点を今後の教育の上において正していかなきゃならない、こういう気持ちを強く持っているわけでございます。そういう意味においては、学校教育だけじゃなしに、社会教育の役割りにまつところも大きいんじゃないだろうかと、こういう気持ちを持っております。
  43. 杉原一雄

    杉原一雄君 大蔵大臣、失礼ですがね、けさの新聞ですから、やむを得ません。通告はしてありません。衆議院の大蔵委員会においていろいろ議論された結果、結局反社会的企業に対してどう金融関係の規制をするかということについて大蔵当局の見解がまとまったように受けとめる。ここに書いてあります。それによりますと、反社会的企業とは、起訴や告発の事実、安定法などを無視したこと、あるいは政府施策への違反等々が抽象的にあげられているわけですが、これはこのとおり確認していいですか、どうですか。
  44. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まだまとまっておると申し上げられないんです。いま関係各省の間で協議中である。もうそう時間はかからないと思いますが、これ、私は反社会的行動をとった、その行動に対しては制裁を加うべきであると、こういうふうな基本的考えであります。その考え、その制裁の方法につきましては、刑法の規定もありますけれども、行政上何らか考える余地があると、こういうふうに考えておるのでありまして、その一つがこの金融の問題である。  そこで、その金融的制裁をどういうふうに加えるかということになるわけですが、刑法でいいますれば、これは刑法に該当する要件というものが非常にはっきりしておるんです。ところが、その行政でどういうことをするかというと、それがなかなか、これをきめることがむずかしい問題であります。むずかしいといっても、私はこれを放置しておくという考え方はとりません。そこで、主務官庁、つまり、まあ通産省が一番多いわけでありますが、通産省がどういうふうな考え方をするかということが大事なことになるのですが、農林省もあります、あるいは厚生省もある。いろんなそういう関係各省と、制裁を加えるケースをどういうふうにとるか、また、その制裁を加えるその制裁の方法はどういうふうにするかということについて詰めを行なっておるというのが現況でございます。
  45. 杉原一雄

    杉原一雄君 まあ、さきの判断では石油十二社など該当すると書いてある。もはや判決が下っているわけです。その中で、特に私気がかりになるのは、政府施策への違反というのが抽出されてくるわけですね。この辺のところ、私非常に心配なんですよね、政府の政策的判断に従って可能であるわけですから。これはどういうことになるか。よろしいといえばそれまでのことだけれども、この辺のところ、もう少し注釈を加えていただかないと困るわけです。
  46. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 反社会的行為につきましては、それぞれ法律に規定があるわけなんです。たとえば独禁法違反という反社会的行為につきましては独禁法にその制裁規定があるわけでありますが、行政的にそれにつけ加え、どういうことが考えられるかということが、いま私どもが考えている問題です。それと、刑法に違反するような行為ではございませんけれども、あるいはそれぞれの法律に規定されておるところの制裁規定に違反する行為ではないけれども、商社あるいは企業の行状からずっと積み重ねてみまして、これは行政的に放置しておいていいものかと、こういう問題があるわけなんです。その行政的な制裁の方法ですね、どうするかということをいま検討しているんですが、これを法律に書くとすれば、左の条項に該当するものに対してはこれこれの融資は行なわないと、こういうようなことになる。そういう性格のものを行政的にやろうというんですから、なかなかこれは基準の判定というものは慎重でなければならぬと、こういうので詰めを行なっておると、こういうのが現況でございまして、まだ具体的にこういう結論になったと、なりそうだと、こういうふうなことを申し上げることができないんでございます。
  47. 杉原一雄

    杉原一雄君 だからね、いま言われたことはわかるんだけれども、政府施策への違反というところがね。あなた方の政策は、確固不動の、十年計画なら十年計画に従って、社会主義中国のようにずうっと系統的にいっているんなら話はわかるけれども、極端に言ったら、くるくる変わるわけですよ。そういう状況の中で、政府施策の違反だということで、はんと金融を押えると、こういうことがこれに例示されているわけです。その点について、ぼくは内田氏が言うような自由の問題、創意の問題、そういった問題から考えると、かなりこれは抵抗を感じますが、私の抵抗を解消してください。
  48. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) たとえば、今回政府が行政指導をいたしまして、価格の引き上げに対しまして届け出制をとると、こういうようなことであります。そういう際に、金融政策上の、あるいはその他の行政措置としての制裁を加えるかどうかと、こういうことになると、これはなかなか、まあむずかしい問題じゃないかと思います。私が申し上げておりますのは、まあ法令ですね、法令に違反をいたした、あるいはそれが繰り返されたと、これはどうしても反社会的行動と見なけりゃならぬと、こういうようなものに対しまして、その法令が規定するところの制裁規定、それはあるいは罰金だとか、あるいは個人に対する懲役だ、禁錮だと、こういうことがありますけれども、そのほかに、政府といたしまして、あるいはこれは輸出入銀行の、あるいは開発銀行の融資を停止するというようなことを考えられないかと、こういうことをいま検討しておるんです。どうも、政府が行政指導をした、それに対しまして、きっぱりと政府の方針といたしまして、これは政府資金を融資いたしません、政府資金の貸し出しは引き揚げますと、こういうようなことをするのは、これはなかなか問題のあるところじゃあるまいか、そういうふうに考えます。
  49. 杉原一雄

    杉原一雄君 私は、少なくとも、あなた方はきらいであると思いますが、社会主義国家、おととし行ってまいりました朝鮮民主主義人民共和国、三月二十日、人民会議——国会ですわね。国会で、政府の発表によると、今後四月一日から税金は取りませんと、こういう発表、きのうは夕刊に出ましたが、四、五日前からこのことはある新聞で報道されていたんですが、正式にきまった段階でお尋ねするわけですが、そうした意味の国の経済政策、あるいはそういうものについての見解、これは内田長官にひとつはっきり答えていただきたいと同時に、あわせて、どうでしょうか、去年の一月ごろに私たちは政府から経済の見通しをお聞きしました。たとえば成長率は幾ら、それから卸売りが二%、消費が五・五、てっきり合っていないわけですね。そこで、ことしの予算編成期において見通しは立てられた。しかし、いま三月は終わろうとしている。四月一日からもう雑多な条件が重なってきましたから、現在現在、経済企画庁は成長率を幾らに押えて考えているか、卸、消費ともに将来一年間の上昇率をどう見込んでいるか、きょうはひとつはっきり聞かせてほしい。それについて、あんた腹切るとまで言われぬでもね、責任を持ってもらいたい。
  50. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 前段のお尋ねの税の問題でありますがね、無税国家、これは私は、まあ不思議な国だと思うんですが、お金がなくてどうして国家が経営できるでありまし工うか。それ、どうやって調達するんでありましょうか。私は北朝鮮人民共和国の無税国家という報道につきましては、その内容は知りませんけどね。共産主義国におきましては、税の形で財源を調達すると、これはもう非常に少のうございます。しかし、そのかわりにですよ、あるいは公団、公社をたくさんつくりましてね、そして生活物資をそこに集めるわけです。そうしてそれを各個人に売ると、その売り値の中に、まあ税がうんと、実質的な税がうんと含まれておる、石けんを売ります、その中にはもう八割だ九割だという税が含まれておると、こういう状態でありまして、私は、無税国家と言うと響きは非常にりっぱなように響きますけれども、実態は、これは応能負担というか、わが国がとっておるような累進所得税方式なんかに比べると非常な悪平等的なやり方じゃあるまいか、そういうふうに思うんですよ。まあソビエトが一番巨大な社会主義国家でございますけれども、その収入の大部分をそういう形で徴収しておる。おそらくいろいろくふうして、消費物資を売り払うという際にも、まあ応能負担的ないき方、そういうことは考えておるんだと思いまするけれども、それにいたしましても、わが国のような、所得に応じ、企業に対しましても法人に対しましても累進的な課税をしておるというような形、これは私は非常に合理的だと、それで初めて所得の再分配というものが行なわれ、私が提唱しておるところの社会連帯、社会的公正というものが進むんじゃないか、そういうふうに考えます。
  51. 杉原一雄

    杉原一雄君 このことだけで大蔵大臣と議論すると長くなりますが、資本主義制度と社会主義制度との制度的な問題がありますから、あなた、そういう累進税率とか不平等だとか言われても、これは合わないですよ。だから、もちろん、あなたのおっしゃるとおり、二%です、税金の問題は。しかし、工業生産品その他は国営なり何なりでやってますから、その生産品にはそうしたそろばんに合うようなことはやっておるわけですけれども、それは階級なき社会ですからね、話が違うですよ。もう一つは、三月一日から工業製品に対する三〇%の値下げを断行しているわけです。本国のようにどんどん値上げをしているという状況下の問題とは違うから、その点は意見の問題じゃなくって、実態の把握の問題になりますから、きょうここで論争しません。十分御検討いただいて、まあ、あなたに社会主義者になれと言っても無理ですから、まあ死んでからの後でございますから、それはひとつ今後の研究課題にしていただいて、こういう政策目標もあり得るということをやはり了解してもらいたいと思うんです。  それはそれで終わりますから、あとのところ……。
  52. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 四十九年度の経済見通しでございますが、これは杉原さんもその経緯等よく御承知のように、昨年暮れに一たん見通しを立てましたものを、ことしの新年に入りましてから、石油に関する大きな変動事情等もさらに再検討の上、若干の微調整といいますか、手直しをいたしました結果が、もうこれ、よく御承知のように、いまの現在から見通すと実質成長が二・五%ぐらい、それから名目の成長率——つまりデフレーターといいますか、物価を加味いたしましたものは、これがたしか一二・九%ぐらいの増加、つまり、名目では一二・九%増加するが、実質的には二・五%しか経済の成長はない、——これは実質について見ますと、過去おおむね十年ぐらい、昭和三十五、六年ぐらいから過去十年ぐらいは、実質成長も年率一一%ないし一〇・六%ぐらいございましたのが、昨年の昭和四十八年度も、まさにそのような実質成長を当初見込んでおりましたのを、いろいろ石油事情その他を織り込みまして、これを六・四%に、これは私が就任いたしましてから下げる、実質成長がそんなにないと、大きくはないということで、下げる修正をいたしたことがございますが、明年度はそれよりもさらに成長は少ない、しかし、物価は、上昇の足取りは、私どもがこれを第一の政治上の課題、行政上の課題として物価対策をいたしますけれども、それでもなお物価の上昇を全然とめるわけにはまいりませんので、物価をそれに加味いたしました成長率が、先ほど申しましたような一二・九ぐらい。したがって、卸売り物価の、明年度の昭和四十八年度に対する上昇率というものはなお一四・六%ぐらいの上昇率を見込んでおりまするし、消費者物価におきましても九・六%ぐらいの上昇率を見込んでおると。これが従来、過去十年間ぐらいは、先ほども杉原さんから御指摘がございましたように、大体卸売り物価の上昇率は二%程度、消費者物価でも五・五%程度の上昇ということでございました。実際は、消費者物価などはそれよりもややその実績はよけい上がっていることもございました。しかし、来年度におきましては、いま申しますように卸、消費者物価とも、なおそれだけのものが残るという見方をとっておるわけでございます。しかし、そうした卸売り物価、消費者物価の範囲に物価の上昇を押え込んでいくということも、とても私は手放しではむずかしいことであると思いますので、経済見通しと一緒に閣議で決定をいたしました明年度経済運営の基本方針でも述べられておりますように、総需要の抑制というようなもの、これ、まあいろいろな面がございますし、お話しすると長くなりますので省略はいたしますが、そのとききめました経済運営の基本的態度というものを堅持するたてまえのもとに、物価もその程度で押えていこうと。しかし、経済の実質成長などにつきましては、なおゼロ成長と見込む人もありまするし、また、ある程度もら少し高い成長も見込めるだろうと述べておるエコノミストもございますが、政府としては、いま申し述べたとおりでございます。
  53. 杉原一雄

    杉原一雄君 長官でめんどうなら、局長でもいいと思いますが、日本開発銀行の下村氏が、日本経済はゼロ成長の軌道に入った——竹中氏が、根拠のないゼロ成長論と言うて、これ、下村氏に反論をしている。金森久雄氏も、成長路線はゆるぎないと、こういう判断に立っておって、それぞれ、竹中氏は五ないし六の成長、それから金森氏は八%の成長、こういうとらえ方を実はしているんです。で、おたくの部課のほうではこの論文を、まさかはな紙にしているようなこともない、議論をしていると思いますが、こうした問題の出どころについて、あんたところの官庁内における議論のあらましをお聞きしたい。いわゆる反対、賛成、いずれか、ありましたら。なければないでけっこうです。なければ不勉強だということになりますから。
  54. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私が先ほど御答弁のしまいのほうに、いろいろの見方があると申しましたのはそのことで、不勉強をいたしておるわけではございませんし、ちらちら私自身も見ておるわけでございます。しかし、そのことにつきましては、もしよろしければ担当の調整局長がおりますので、経済企画庁の中のそういうものに対する評価というものを答えさしたいと思います。
  55. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、いろんな見方がございまして、来年度の経済の見通しというのは非常にむつかしい局面に立っておるわけでございます。で、私どもも庁内でいろいろ勉強研究はいたしておりますけれども、総体といたしましては、私どもは現在の見通しの数字というものを変える必要はないと考えております。と申しますのは、若干いろいろ情勢の変化はございますけれども、現在の物価の情勢を見ますと、成長はむしろ低目に押えて総需要抑制策を堅持していくということが必要だと考えておりますので、実質成長の二・五%という程度が経済運営の方向としては堅持すべきだというふうに内部では議論しております。
  56. 杉原一雄

    杉原一雄君 ついでに、春闘は戦われつつあるわけですから、ぼくは春闘応援派のほうなんです。その春闘が物価にどういうはね返りがくるか、試算をしておりましたら、その数字を御披露いただきたい。想定はいろいろありますけれども。
  57. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) 春闘のはれ返りの数字というのは非常にむつかしいもんでございまして、一部私どものほうのある局で試算いたしましたものが外へ出た経緯もございますが、その出ましたものは、モデルに入れまして、ある想定をおいてモデルに入れた数字でございまして、現実の数字はもっといろんな要素を加味して研究しなきゃならぬということになってまして、それはある一つの資料であったわけでございます。で、私どもは、現在いろいろな試算はしておりますけれども、一体どうなったら、どれくらいになったら、どういう影響を及ぼすかという最終的な庁内の意見を取りまとめた数字は現在までつくっておりません。今後ある程度の数字が出てまいりましたら、その影響等は試算しなければならないと思っていますが、現在、あらかじめ数字を想定して、それがどういう影響を及ぼすかというものを庁内全体で検討して確定した数字というものは現在持っておりません。
  58. 杉原一雄

    杉原一雄君 八%といっているんじゃないの。
  59. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) それは、一部の部局で、ある想定を得てモデルに機械的に入れた数字が一部出たわけでございますが、これはいろいろ問題がございまして、これをもって企画庁の見解とするようなところまで検討した数字ではございません。
  60. 杉原一雄

    杉原一雄君 OECDの物価上昇率、検討していると思いますが、幾らですか。
  61. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) OECDの数字でございますか。
  62. 杉原一雄

    杉原一雄君 消費者物価値上がり、日本。
  63. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) 日本でございますか。
  64. 杉原一雄

    杉原一雄君 推定をしていますか。
  65. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) これもいまちょっと手元に持っておりませんが、日本のわれわれの数字より若干高い数字をOECDの事務当局が試算しております。
  66. 杉原一雄

    杉原一雄君 公取委員長、先ほどの新しい内田資本主義というのが出ましたんで、そういう状況の中でも、いま示されたように、成長率を、あるいは消費者、卸売り物価等々についての指標を出しながら、これもなかなか不安定、確信のある答弁ではないように思いますが、これをより的確にし、かつまた、日本の今日のような経済混乱、物価の大狂乱等を起こさないために独禁法を強化すべきだと思うけれども、それは公取のほうではどのような立法作業が進んでいるか、政策提言がどのようにまとまりつつあるか、その点をひとつ簡単にお願いします。
  67. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 御承知のとおり、独禁法強化の必要があるということで、昨年来、昨年の十二月から、まあ経済専門家、法律専門家、評論家等による比較的人数の少ない研究会でございますが、それを数回すでに開いております。最初は一般的な問題をまず討議したわけですが、次に価格引き下げ命令権、これはまあ非常にいろんな問題がございますが、これについて目下なるべく仕上げを進めるようにしておりますけれども、必ずしも全体の意見がまとまるというところまでは行っておりません。まあいろいろ理由はございますが、要するに、独占禁止法というものの本質に対するいろいろな問題、つまり、私どもから言わせますと、独占禁止法を非常にかたく守るという考え方、それに対して、まあわれわれ公正取引委員会側の意見、あるいは一部の方の意見は、やっぱりもっと前向きに立法政策的に考えていいのじゃないかという点がまだ完全に一致を見ないおもな理由でございます。
  68. 杉原一雄

    杉原一雄君 委員長ね、そうすると、今期国会において法案を出して、いまのような混乱の事態に備えるような仕事の段取りがそこまで行っていないわけですね。それに対する、つとめて努力するという方向ではいかがですか、そこまで言明できませんか。
  69. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) いま、この種の審議会的なものとしては比較的テンポは早くやっておられると思うんです。よくやっていただいておるんです。だけども、ほかに問題がたくさんございますから、企業の分割命令というような非常にむずかしい問題とか、そのほかに幾つか、おもなるものでも五、六項目ある、さらに検討項目として二項目ぐらいあるというぐらいでありますので、私どもとしては、いまのテンポで行ったんじゃこれはとても通常国会に間に合わないという考えでありますが、会長のほう、会長と打ち合わせなどいたしまして、場合によったら、先生方、夏になりますと休みがとれるということで、これは合宿をやるというふうな、まあ言ってるんですから、そういう方法までとってやれば、これはもう一回に二時間、三時間やるというものに比べると非常に進捗が早まるということでありますので、できればそういう方法をお願いしたいというふうに思っておりまして、会長はその気になっておられる。ですから間に合わないということはないんじゃないかと。全部私どものほうの考えどおりいくかどうか、それはわかりません。しかし、そういう方法をとれば、それはもう何十回分を一ぺんに開いたと同じような効果がございますから、お互いの意思の疎通、その他においても非常に能率があがるんじゃないかと思いますので、私ども何としてでも時間的には通常国会に間に合う程度に詰めをはかりたいと、こう考えております。
  70. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは、自由社会総合開発計画の関連について質問する予定でありましたが、飛ばしまして、より具体的な問題として、列島改造論にも一四〇ページに書いているわけですが、苫小牧東部開発の問題について、十二月十三日の総括質問で私やったわけです。その後、推移をずっと見ておりましたら、一月十二日に港湾審議会において答申の概要が決定したようでありますから、これは答申の内容、大まかに運輸大臣のほうから。
  71. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) その前に、一言お断わり申し上げなきゃならないんですが、昨年の十二月十三日の予算委員会におきまして、私はちょっと説明が足らぬところがございまして、提出されました港湾計画が、「港湾管理者の計画に基づき、それぞれの道の議会でございますとか、」と、あたかも北海道議会を経てきたような発言をしておりますが、これは誤りでございますから、ここでつつしんで訂正さしていただきます。これは港湾計画じゃなくて、そのバックグラウンドになった、背景の、北海道第三期総合開発計画でございますとか、それに伴う用地の予算の決議でございますとか、そういうことと混同いたしまして非常にあいまいな答弁になっておりますから、お断わり申し上げまして、訂正さしていただきます。  それから港湾審議会の答申及びその内容でございますが、これは昨年の十二月十九日と、それから本年の一月十二日の二回にわたりまして開催したわけでございます。その開催にあたりまして、参議院、衆議院両院におきまして、この問題はいろんな角度から取り上げられまして御討議いただいたわけでございますが、その点等も十分背景に、内容を含んで十分検討してもらいたい、慎重な御審議をお願いしたいということでお願いを申し上げた次第でございます。その結果、本年一月十二日に、審議会では、主として計画目標の年次、これはもちろん五十三年でございます。それから港湾取り扱い貨物量の想定の根拠でございますとか、西港地区との機能の分担でございますとか——今度の場合東港でございますから。それから港湾施設の法線形状、それから規模、それから地元との調整などについて論議が行なわれまして、昭和五十三年を目標年次とする苫小牧東港地区の港湾計画案については「おおむね適当である」という答申がなされたのでございます。なお、この答申には、安全と環境への配慮についてでございますとか、施設計画の一部についての将来の検討問題とか、西港と東港との補完の問題につきましてとか、実施に対する慎重な配慮、住民への計画趣旨の徹底等についての要望が付帯意見として付せられておる次第でございます。
  72. 杉原一雄

    杉原一雄君 きわめて、私は手元に資料があるからわかるが、お聞きになっている方は全然わからぬと思うんです。ただ、大臣答弁の中で、この答申の中に安全、環境等の問題についてはそう大きなベージをさいてありませんし、地元との調整についてもこれはゼロです。そういう点について、特に地元の問題について大臣の把握している点、ちょっとお願いします。
  73. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 地元との調整の点については、港湾審議会において付帯意見として付せられておるわけでございます。これ、先ほど申し上げたとおりでございます。  地元との調整の点につきましては、これはあるいは開発庁からお答えいただいたほうが適当であるかとも思いますが、この港湾計画は、地元の公共団体、すなわち北海道並びに苫小牧市からできております一部事務組合であるところのいわゆる港湾管理者によって立案されたものであるということが、地元との関連のある第一番の問題でございます。それから港湾管理者は、苫小牧市がさきに作成しました苫小牧東部開発の基本方針による昭和五十三年の工業開発規模を踏まえまして港湾計画を立案をしております。また、この案の作成にあたっては、地元の港湾審議会に諮問をいたしております。また、苫小牧港湾管理組合議会への説明も行なっておるわけでございます。運輸省としましては、この港湾管理者から提出されました港湾計画を港湾審議会へそういう手続を踏んでいたしたわけでございますが、港湾審議会としては、審議するにあたりまして、住民の意思を十分参酌するため、審議会の席上にいろいろ御議論のある方々の代表に意見の表明も行なってもらう機会を与えるという、審議会としては異例な措置もとったわけでございます。運輸省及び地元市長からも情勢の報告を受けて、二回にわたって会議を開催して慎重に審議をいたしたと。また、参来両院のいろんな御議論を十分伝えまして、慎重な御審議をわずらわしたのでございます。また、港湾計画の審査の結果を港湾管理者あてに通知するにあたりまして、港湾計画の趣旨について地元住民に十分徹底するよう今後とも特段の措置を払うように指示をいたしております。  以上のように、港湾計画の決定にあたっては、いわゆる地元住民の意見というものの尊重にも、できる限りの私どもとしては努力を払って慎重に進めてきたつもりでございます。
  74. 杉原一雄

    杉原一雄君 北海道開発庁からだれか代表が来ていると思いますが、その点はどうですか。いま運輸大臣が申したようなことで、地元ではもう心から、ちょうちん行列をするような状況にありますか。いわゆる手続的にはぼくは大体わかります。運輸大臣の言ったとおりだと思うけれども、しかし、ほんとう地元民、勇払ですか、どこかそういったような町民等の気持ちはどうです、その辺はあなた一番わかるはずだ、県知事もしておったから。
  75. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 苫小牧東部の開発問題、たいへん大きな計画でございまして、当初この計画につきましては、地元はたいへん一致してこれを歓迎するというようなことで発足をいたしたような次第でございます。しかし、その後におきまして、御承知のように、公害問題等が先進工業地帯において非常に激化をいたしておるというようなことから、地元におきましてもこれに疑問を差しはさむ者も出てまいる、中には反対をする者もあるというものが出てまいったことは事実でございます。まあしかし、苫小牧市といたしましては、この計画は地元の将来の発展のために大きく貢献できるものだ、こういう考えのもとに、地域の方々に十分御理解を願わなければならないということで、市長といたしましては、あるいは各地区の方、あるいは団体を通じまして、たしかこれは昨年の夏から秋にかけてだと私は聞いておりますが、約三十回にわたりまして説明懇談会を開くということで、できるだけ地域の方々の了解を深めるという努力をいたし、さらに市議会におきましても、こういったことを踏まえて市長が提案をいたしました基本方針については、市議会もまた賛成であるという結論を得ましたので、それに基づいて、市長としては、ただいま運輸大臣が御説明になりましたような海湾計画についても、審議会に付議をして御決定願うという措置をいたしたのであります。私が申し上げるまでもなく、今日の社会は非常に住民の意思が多様化しております。したがって、いろいろこれについては十分説明は加えたようでございますけれども、必ずしも全部が全部まで了解をしたというところまではいっていないかもしれませんけれども、しかし、私どもの見るところでは、大体地域の方々はこれに了解を与えておる。市議会もまたその結論を出しておるというふうに私ども見ておるどころでございます。
  76. 杉原一雄

    杉原一雄君 長官ね、勇払の町だけに限定しましょう。そこの辺は大体——大体じゃなくて、おそらく一番これ、関係のあるところですから、全町民あげて納得しましたかどうか。
  77. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) いま御指摘のございました苫小牧市の勇払地区という、ちょっと飛び地のようなところがございます。これは山陽国策パルプの工場がございまして、それを中心としてでき上がっておるところの部落でございます。これは私が申し上げるまでもなく、現在開発計画を進めておりまする東部地区には一番近いところであります。それだけに影響を最もこうむるところであるということからいたしまして、この地域の方方の中にはかなりの、まだ理解を得るに至らず、反対をしておる方がおられるということは、私ども承知をいたしておるところでございます。
  78. 杉原一雄

    杉原一雄君 その反対の方というのは、ぼくは必死だと思うんです。だから、先ほど冒頭に言った自由社会とは何だというのがそこらあたりに来るわけです。その反対だという人たちに対してどう今後対処するかということは基本的に大事です。これは三木長官にも出番があると思うんですが、公害問題ですからね。そういう点で、三木長官は太鼓判を押しておられるようだが、その点はまだ不十分な点等があると思われるふしもありますから、この委員会を通じて三木長官からもその点は明らかにしていただくと同時に、北海道開発庁では勇払のいわゆる納得できない人たちに対する納得の方法、努力ですね、努力しますだけではなくして、もっと具体的にそれを言えることがありましたら御披露いただきたい。
  79. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 苫小牧市長としましては、やはり一番地域も接近をしており、問題が一番多いこの地域の方々に対しまして、特に力を入れて私は了解を求める、説明をしておるというふうに承知をいたしております。しかし、なかなか実はそう簡単に理解が完全に得られるというところまでは、まだ私はいっていないように見ておるのでございます。したがって、今後この東部の開発計画というものは、私どもの理解をいたしておるところによりますると、たいへん大型なプロジェクトではございますけれども、非常に広い地域をこの地域に充てておるのでありまして、いままでの先進工業地帯における御承知の非常な過密の弊、それから起こりまするところのいろいろな弊害というもりが、今度のこの地域においては起こらないようにしたい、起こらないような理想的な工業地帯をつくろうということが一つの大きな眼目になっておるわけでございます。したがって、そり地域に近いところの、いま御指摘になりました勇払地域というものに対しましても、地域の方方が十分安心をしていただけるような、ただ単なる説得だけでは私は問題の解決にならないと思う。やはりこれらの方々が十分、客観的にも主観的にも安心していただけるというような、今後の工業地帯の開発に関連をいたしまして、十分その点を配慮していくべきだ。御承知のように、大体いままでできておりまする素案によりますと、一万ヘクタールの中で五千ヘクタールは緑地あるいは公共用地にしよう、半分はしたい、こういう計画のようでございますから、そういった勇払に近いところについては、特に緩衝緑地というようなものを非常に広くつくるということと、その地域にかりに位置されるであろうところの工業につきましても、そういった点が特に配慮のされるような工場を立地させるというような種々の角度から、これらの問題については具体的な案を持って、地域の方々が安心していただけるような措置を講ずべきものだと、かように私は考えております。
  80. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 苫小牧の東部開発計画に関連した港湾計画は、昭和五十三年の規模を想定して、北海道庁が環境のアセスメントをやったわけです。このアセスメントを審査して、二つの条件をつけて環境庁はこれを認めた。一つの条件は、公害問題に関連する環境調査というものは、項目をあげまして、もう少しやはり補完的な調査をしてもらいたい、もう一つは、具体的な企業の立地については、環境の条件が許される範囲内で工業の立地を進めていく、だから環境の条件を満たされぬ場合には、計画変更をわれわれのほうから指示する場合もあるということで、二つの条件を付してこれを承認したものでございます。その条件を厳格にわれわれは履行することによって、公害問題を起こさない苫小牧の東部開発を進めていきたいという所存でございます。
  81. 杉原一雄

    杉原一雄君 建設大臣、いまいろいろなことでおわかりだと思いますが、この計画に対して建設省はどの形でかかわり合いを持ち、参画し、かつまた、協力をしておいでになるのか、そういう点を簡単でいいですからお伺いしたいと思います。
  82. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 主としてこの苫小牧の開発計画に伴う基幹道路、高速道路の問題が一つございます。また、都市計画の面においての街路の設定の問題があるわけでございます。建設省といたしましては、やはりこれだけの大きな開発を行なってまいりますためには、所管大臣からもそれぞれ答弁がございましたように、やはり従来いろいろ指摘されました住民に対する悪影響をできるだけ排除する。たとえば道路、街路を一つ考えてみましても、町村北海道開発庁長官からお話がございましたように、余裕を持った道路の幅をとるとか、あるいは街路樹を二重にも三重にも植えられるような立場をとるとか、いままで住民からいろいろ指摘をされております既工業地帯における問題が解消するような立場で、道路行政、都市住宅行政、総合的な観点からやってまいる。一例を申し上げますと、せっかく住宅地区をつくりましても、道路行政との関係で、そのどまん中を道路が通るというようなことが、しばしば実は今日まで不手ぎわをやっている例があるわけでございまして、このような苫小牧の開発をする場合には、その点をあらかじめ横の連絡を十分とらせまして、そうしてしかも、なおかつ、地域の住民の方々、市当局、道庁並びに道議会等の意見等も十分取り入れまして、もう計画の上からも住民運動なんかないように協力をしてもらえるという立場で、道路、特に高速道路の路線決定等については慎重な配慮をしなさいということで、事務当局に命じておるところでございます。
  83. 杉原一雄

    杉原一雄君 大蔵大臣、十二月十三日のあなたの答弁がここに速記があるんですよ。きわめて簡単ですから読みますから。「国務大臣(福田赳夫君) ただいま総理からお答えをいたしたとおりなんですが、私はまだ苫小牧の問題、よく検討しておりませんが、趣旨だけを申し上げますれば、いやしくも総需要抑制というその大方針があるわけですから、これに反するような計画をやるということはありませんです。そういう方針で厳にやっていくと、こういうふうに御了承願います。」——それで私了承したんですよ。どういうことになったんですか、これは。
  84. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのとおりに心得ております。この問題はいろいろ地元でいきさつがあることはよく承知しておりますが、これがいずれ中央段階の問題になってき、私どものほうにもあるいは接触があるかもしれぬ、そういう段階があるだろうと思いますが、その際には、ただいま申し上げましたような方針で私としては対処いたします。
  85. 杉原一雄

    杉原一雄君 というのは、抽象的なんですが、どういうことですか。ストップをかけるということですか、修正をするということですか。その辺のところをはっきりさせてもらいたいと思います。
  86. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いずれにしても、国の大型プロジェクトという問題は、これはこれから日本の経済がとにかく鎮静化していく、とにかくこれだけの大混乱のあとの日本経済でありますからどういう姿になるか、これは予見はできませんけれども、はっきり申し上げ得ることは、国際収支のことを考えましても、物価の状態を再びこのようなことを繰り返さしてはならぬということを考えましても、あるいは公害、そういうような問題の配慮、自然環境というような問題を考えましても、もういままでの考えられてきた大型プロジェクトに対する諸計画、これは根本的に考え直さなきゃならぬ、こういうふうに考えているんです。そういう角度で、これは苫小牧の問題、これも例外ではないと、こういうふうに考えておりまして、ただ、まだ私どものところに、接触段階まで来ておらないんです。私もですから具体的にどういうふうな進め方をしておるかということについてはつぶさに承知しておりません。国会の論議を通じて承知するというくらいな程度の問題でありますので具体的なことは申し上げられませんけれども、基本的にはそういう考え方でお答えをいたしたい、かように考えます。
  87. 杉原一雄

    杉原一雄君 では次、大きな二に移るわけですが、私の質問の先に、まずもって特別にお願いしたいのは、きょうの日本農業新聞で「農協長会議で決定」ということで、全道生乳ストライキを二十八日に強行するということがはっきり出ております。委任状九九%。そこで、これは要するに、すでにピントを置いて頭に構図を描かれたと思いますが、二十七日の畜産振興審議会の酪農部会の結論に対して——こういうことなんですが、これに対応して、この委員会を通じてストライキをしようとする人たちに対して納得のできる説得をひとつお願いしたいと思います。
  88. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) その新聞記事はまだ読んでおりませんけれども、しばしばここでもお話がございましたように、酪農につきましてはなかなかいま重大な段階に来ております。これはやはりもう御存じのように輸入飼料が非常に高騰してまいった、そこで生産費がかさんできておる、そのことだけお取り上げになれば非常に御心配なさることをわれわれもよく理解しておるわけであります。そこで、できるだけ生産者団体等にも働きかけまして、われわれの考え方についてしばしばお話し合いをいたしておるわけであります。したがって、いま御指摘のように畜産振興審議会で各部会に分かれまして鋭意検討中であります。それでそれに基づいて、私どもといたしましては今月中に価格をきめるということであります。そのきめます価格につきましては、もちろんそれぞれの関係筋にも相談をいたさなければなりませんが、そういうことで当然私どもといたしましては、畜産は御承知のように農基法でいっております選択的拡大の大きな一つの題目であります。これが生産が減退するというようなことになりましたら国民の食生活にも大きな影響を持ってまいりますので、生産者が生産意欲を阻害することのないようにもろもろの施策をいたすことも必要でありまするし、またやはり価格等にも当然反映してくるのではないかということで、いま努力をしておる最中でありますので、気短にお考えにならないで私どもの努力を待っていただきたい。  先般も大会がありまして、農協中央会会長ほか全国のおもな生産者団体の代表が来られましたときにも十分そういうお話し合いをいたして、いま詰めにかかっておるところでありますので、安心をしてひとつ生産にいそしんでいただきたいということを心から念願いたす次第であります。
  89. 杉原一雄

    杉原一雄君 価格引き上げへ総力を結集するという決意表明ですが、その新聞では社説の中で「畜産の危機は民族の危機」と、こういう副題をつけながら筆をふるっておりますが、私同感だと思うんです。これについてはもう日本人のカロリーを幾らにするとか、食糧自給率をどうするかという議論はいま控えますから、ただ、そうしたいま農林大臣の対策というものは、一つの大きな農業政策というものがあってそれが出るわけですから、その農業政策の核になっておるとぼくはいままで期待しながら実は待望していた問題があるわけなんです。  それは昭和四十七年の十月の農林省発表の「農産物需給の展望と生産目標の試案」があるわけです。これは繰り返しぼくは農水でも、あるいは本委員会でも、本会議でも質問し尽くしてきているわけです。結果的にぼくの理解する最後の案は、三月末までにこれを改定するという農林省の答弁です。それは櫻内さんのときですが。しかし、それがいまどうなっていて、きょうの時点でも資料要求しても出てこないわけなんです。これは一体、農林大臣、どうなっているのですか。
  90. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまお話しのございました農林省が策定しております農産物需給の長期見通しにつきましては、四十八年の四月に農政審議会に需給部会が設けられまして、その検討をいま進めておる最中であります。そこで、現在までこの需給部会は専門委員会を含めまして八回開催されました。世界の農産物需給動向と今後の見通し、それから農産物需給の展望と生産目標の試案の見直しを中心にいたしまして検討が行なわれておるところであります。特に、麦、牛肉、飼料、大豆の四品目につきましては、最近の諸情勢を踏まえまして、さらに追加の検討を進めていただくことにいたしております。それから二月末の農政審議会におきまして需給部会の検討状況につきまして説明を行ないました。で、同審議会では今後懇談会をしばしば開催いたしまして、最近における経済情勢等を考慮いたしまして総合的に各委員の意見の調整を行ない、その結果を踏まえて今後のことを取りまどめを行ないたいと、こういうことになっております。したがって、私どもといたしましては、当初は三月末ごろまでには一応の結論を得る予定でございましたが、なお、ある程度の時間をかける必要があるんではないかと、現在の進行状況から見てそのように判断をいたしておる次第であります。
  91. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうしますと、いまストライキに対応する一つの価格政策の問題のように問題は局限されますけれども、本来は昭和四十七年のこれによりましても、たとえば基本目標が明示されてるわけ。たとえば一人当たりの消費量なども、牛乳の問題でも五十・一キログラムとか、それが五十七年には八十・二とか、みんな書いてあるわけですよ。この路線をいま歩いていますか。歩いていくとすれば、二十八日のストライキに備える答えは、いまの大臣のような非常にスマートな答弁だけでは納得しないでしょう。どれだけの価格であるからだいじょうぶだ、まかせろというところまでは言い切れないのですか、まだ。その部会なら部会でやらなければ大臣は言えないと、こういうことですか。重大なピンチに向かっているのですよ。
  92. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私がお答え申し上げておりますのは、農政審議会の答申が出なければということではないんでありまして、農政審議会はよく御存じのように、農政の基本について、またこれからのわれわれが施策を進めてまいる指針とするために諮問機関としていろいろ勉強していただいておるわけであります。畜産振興審議会は三月中にきめることに法律できめてあります酪農製品の乳価、豚価を決定すると、こういうのでございますので、私がいま申し上げましたのは、畜産振興審議会における答えを待ってきめることは例年のとおりでありますが、本年はこういう事情もありますので、いつもより早く開催をしていただきまして鋭意検討中であると。そこで、ぼつぼつそのいろんな部会で審議がまとまりかけておりますので、そういうものを基本にいたしまして、私どもといたしましては、たとえば昨年も実行いたしましたけれども、ある程度の——まあ昨年より私どもの腹案では若干ふえるかもしれませんけれども、特別の融資などもぜひ必要であると、それからまた価格にどういうふうにはね返らせるかというふうなことについては、その答申を待って一ぺん計算をしてみなければなりませんが、そういうことで、結論から申せば、先ほども御指摘のありましたように、これは日本の食糧政策の中で重大な任務を占めております酪農でありますので、これが再生産の確保ができないようなことになってはたいへんなことでありますので、その再生産を確保するために必要なる施策は講ずる決意でありますので、安心をしてひとつ進めていただきたい。御存じのように、一昨年に比べて昨年は若干牛乳の生産など落ちておりますけれども、私どもといたしましては、飼料対策その他の種々の手当てを講じまして、さらにこれが上向きに生産されてまいるように骨を折ろうとしておるところでありますので、生産者におかれてもそういうことを十分御理解の上、安心してやっていただきたいと、こういうことを申しておるわけであります。
  93. 杉原一雄

    杉原一雄君 そこで、基本的な問題として、この目標によりますと乳用牛は四十五年は百八十万四千頭ですね。で、この目標の到達点は五十七年ですから、これについては三百八万頭、こう書いてある。しかもその内容、考え方の基本には完全自給ということを書いてあるんですね。なおかつ国際競争力を強めながら自給体制をとると、私たちがほれぼれするようなことを書いてある。その大原則は農林大臣、あなたも継承し、それに対して行政努力をするということの決意表明……。   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕
  94. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そういう方向で進めておるわけであります。
  95. 戸叶武

    戸叶武君 関連質問。  いまの決意表明がきわめて簡単なので不満足ですが、私は、田中内閣において非常にじみな努力をしているのが福田大蔵大臣、倉石農林大臣というふうなところで、ほかに三木さんや保利さんもいますが、特に私は石油ショックの後において日本で重要に考えなけりゃならないのは、エネルギー資源の問題と食糧の問題というものがこれが外交手段に使われたときには非常にこわいという危機感でございます。燃料は節約して対処できる場合もあるが、食べものを一週間なり十日枯らしたら暴動が起きます。世界の革命史を見るならば、すべてそのきっかけは食糧暴動です。寺内内閣が一挙に倒れたのも、滑川の遠洋漁業に行く漁民の奥さんたちが立ち上がったからです。米がないのではないのです。独占資本の買い占め、値段のつり上げです。日本の危機はいま迫っておるのです。そういう点において二点ほど質問いたします。  倉石さんは一九二九年の世界経済恐慌のあらしの時代、われわれと同じくイギリスにおったはずです。あの苦悩を体で受けとめておるはずです。イギリスはそれまで安閑と暮らしておったが、古い社会主義が音を立てて崩壊して、リベラルな社会主義はケインズなりクリップスの登場によってイギリスの労働党の体質を変えていったんです。それは何か。失業保険とか失業手当というだけでなく、働かんとする者に職を与えよ、生産の拡大によって問題解決しようと、古典的な社会主義は崩壊して新しい一つのケインズ理論の社会主義との結びつきがあったのです。それと同じく食糧の問題は急を要するのです。いまのようなことをやっておるならば、石油のようなぶざまをやるならば、日本は一週間足らずに暴動が起きます。あなたたちが日本に暴動を誘発させる張本人です。そういう意味において、倉石さんは、この前はしろうとだったから農政にはきわめて見識は薄かったが、最近は真剣に取り組んでるようだから、一点はいわゆる食糧自給の対策というか、確立の基本方針をもっと示してもらいたい。その価格ベースでいくのか、それとも農業総合研究所の中山誠記氏がとなえたようにオリジナルカロリーでもって割り出していくのか。国際的には価格ベースでいってるが、問題はこのオリジナルカロリーの問題も軽視することはできない。そういう問題と、やはり米、麦、大豆あるいは酪農、いろいろに分けてきめこまかく農政は具体的に展開しなければならないのですが、そういう問題に対して基本的な取組みをどうやっているか。それと同時に、この飼料の問題がきわめて重大で、アメリカでも拙劣なニクソンの政策によって値上げどころか国内における畜産が滅びようとするような危機にある。この石油以上に大きな危機が、石油におけるトラック輸送業者のあのストライキなりデモなり以上にいま農民がニクソン大統領をぶつ倒そうという機運が出てきている。裁判所にジャーナリストは眼を向けているが、政治は生活に密着してるんです。それひとつお願いしたい。
  96. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 食糧の重要なことは申すまでもございませんが、私ども常々考えておりますのは、やはり一流国家をこう見渡してみまして、大体食糧供給の安定している国であります。いまお話のございましたようなイギリスは、少しほかの国と比べますと落ちておりますが、それでも戦後は農業について非常な努力をいたして、いまりっぱな成績をあげております。私どもは、いまお話のございました自給度につきましては、しばしば申し上げておりますように、米、野菜、くだものそれから肉類、そういうようなものにつきましては大体八〇%、あるいはその上にいくものもありますが、自給度を維持することができておりますけれども、たとえば園にしても鶏卵等にしても、それを育成してまいります飼料につきましては、その多くを輸入に依存していると、こういう立場でございます。ところが、それを全部国内で生産するということは実際において不可能なことであることはもうおわかりのとおりであります。で、私どもはしばしば財界の方々などのおっしゃることで「国際分業」ということばを聞きますけれども、これはいろいろに解釈されることばでありますが、私ども、やっぱりある程度のものは国際間でまかなうよりしかたのないものもたくさんございます。ことにいま問題になってまいりました飼料が非常に高騰いたしました大きな原因は、   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕 一昨年たいへんアメリカも天候が悪かったし、いままでそういう市場では問題にもなかったようなソビエトロシアとか中国大陸のような国々が膨大な供給をアメリカから仰いだと、そういうような特殊な事情がありますために飼料がむしろ若干の不足を生ずる傾向もあり、価格も高騰いたしたと、そこへ持ってきて石油の値上げ等によるフレートの高騰、それから円安というような為替関係も加わりまして、小麦であるとか大豆、トウモロコシ等非常に高騰をいたしたと。そういうことが今日の日本で畜産危機といわれることばの中の大きな一つのファクターであります。そういうようなことにつきましては、私どももそういう経験がありますので十分調べておりますが、新聞報道にもありますように、昨年はアメリカは史上まれに見る大豊作だといっておりますし、数日前ソビエトロシアの大使館でいろいろ懇談をいたしましたとき、ソビエトも非常に昨年は大豊作であったと言っております。私どももそういうことをずっとフォローしておりますけれども、アメリカ側では、わが国が大体ずっと計画的に買い付けの指導をいたしておりますものに対して十分に約束を履行できるかどうかという、つまり、わが国に対する輸出量についても正確な確約をほしいというふうに言っておる状態でありますので、供給については少しも不安は感じておりませんが、価格の問題があります。  そこで、先ほどの御質問にもお答えいたしましたように、こういう原料価格の高騰は生産品の中に織り込まれることはやむを得ないことであると、そういうことで努力をしておるから生産者も御安心願いたいと、こう申し上げたわけでありますが、私どもは、それにもかかわらず、やはり生産量の少ない小麦——まあ、四麦を含めてそうでありますが——小麦、それからトウモロコシ、マイロ等について——まあマイロはだめでありますけれども——大豆、そういうようなものについては、国内でいま米の生産調整も、休耕田に対して補助金を出す制度をやめた年でありますから、ことしは。そういうものの転作を奨励すると同時に、小麦その他のなくてならないものの増産には、御審議願っております四十九年度予算にもそれぞれ助成金を交付することにいたしまして、現にその効果もあって、麦などは十八万ヘクタール、つまり昨年の十五万よりは若干植え付けが増強しておるというふうな状態であります。  そういうようなことで、国内でまかない得るものは全力をあげて自給度を維持すると同時に、さらにまた、不足のものは奨励をいたしまして国内でできるだけ生産をするようにいたしますると同時に、大家畜に必要な粗飼料である草地は五十七年までに四十万ヘクタールを増強いたしましてこれは自給自足ができる態勢を得るのでありますから、これをまあ外国から持ってまいりました草でも、たとえばイタリアンライグラスなどというのは非常に日本向きでありますし、そういうようなことで、われわれも詳細な計画を立てましてそれに従って進めておるわけでありますので、そういうことで、この国内の食糧につきましては絶対に皆さまに御不安をかけないという決意と自信を持っていま対処いたしておるわけであります。
  97. 戸叶武

    戸叶武君 もう一問。  福田さんと倉石さんの間はなかなかストレートで話が通ずると思うんですが、問題は、農政上における改革においても大蔵省がきんちゃくを締めておっては、やることもやれない。問題は、やはり公共投資の中における農業、近代的な農業に発展させるための基盤整備のためには思い切った金が必要なのです。日本の自民党農政の一大欠陥はごまかし農政をやったというんです。西ドイツと日本の農業基本法のやり方を見てごらんなさい。米だけに価格政策をしぼって、ほかの農作物が立ち行かないようにやったのは自民党の農政じゃありませんか。アメリカの余剰農作物を受け入れるために、日本でできるものも押えてアメリカのものを買うという占領政策のしわ寄せが日本農業の今日の致命的な面をつくり上げたのであります。西ドイツをごらんなさい。倉石さんがいま言ったようなことをすでに十五年前から、ハノーバーの地域においては、具体的にモデル農場をばんとつくって機械化を行ない科学的な経営をやって実践し、具体的な実験によれば、イデオロギーでは農民は動かない。もうかれば、所得を得れば、成長率が高まるだけじゃなく、価格が、所得がふえれば農民はそれにならう。こういう実践をやったじゃないですか。日本は青写真だけをつくって、テーブルプランをやって全部——北海道において、何です、あの砂糖がもうかったときのビートのつくり方は。全部むだにしているじゃないですか。養蚕が、桑を抜けと農林省が言ったときに、抜かないでいればすぐに絹は値上がりする。全部テーブルプランで、実践を経ない官僚のテーブルプランで日本農民はほんろうされたじゃないですか。今度は倉石さん、あなたの夢を地上に現実に具体化するためには福田さんを押えて、ない金でも出しなさい、ふだな金は使わないように。これだけの気魄を持たなければやれないと思いますが、まあ、あなたに言ってもしようがないから、福田さん、たまにはあんた、いいこともやらないと福田なんという名前にしみがつくから、どうぞそれをやってください。
  98. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 関連はこの程度にお願いをいたします。簡潔に。
  99. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、だれよりも農民を愛すと、こう言っているわけで、農村に対しては非常に関心を持っておるんです。私は、日本の農業というものは非常に条件が悪い、そこで、どうしても保護政策をとらなけりゃならぬという基本的な考え方に立たなければならないと、そういうふうに考えております。しかし、その保護の方法というのは、これは価格補給というような考え方、これでなくて、農業が農業として自立し得るような基盤整備というところに努力目標を置くべきだと、こういうふうに考えておりまして、四十九年の予算でも、公共事業はうんと締めるというさなかでも農業基盤整備につきましては特別にこれを見ると、こういうような考え方をとっておるわけですが、しかし、価格補給的な考え方、これは非常に事態がむずかしいときだというような際には、ときに考えなきゃならぬこともあることも御承知おき願いたいんです。しかし、これは原則じゃない。どこまでも基盤を整備いたしまして農業の生産性を上げるというところに主力を置かなけりゃならぬと、こういう考えでありまして、倉石農林大臣もそのような考え方でありますので、相携えて農業の振興に取り組みたいと、かように考えます。
  100. 杉原一雄

    杉原一雄君 戸叶委員質問のやりとりで次の私の問題提起がかなりはっきりいたしました。それは、わずか二六ページにわたる「世界の食料需給事情とわが国の食料政策の方向・昭和四十九年三月・農林省」と、このパンフがなかなか、農林大臣、ぼくの手に入るまでたいへんむずかしかったんですよ。入って読んでみました。そんなびっくりすること書いてない。いま農林大臣答弁したことなど等が大体これに即応しているように思います。だから、追い詰めていけば、戸叶さんの意見もそうだが、世界の食糧危機ということばがあります。それを農林大臣としてどう理解し、それを解決するために小麦、大豆と、こう出るのか、日本農業の基本的な政策についてもっとはっきりした大胆な展開をはかろうとするならば、それは一言で述べればどういうことになるのか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  101. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまお話のございました「世界の食糧需給事情とわが国の食糧政策の方向」というのは、私どもが勉強の一つの資料としてつくったものでございまして、これもまた農政審議会でも検討していただいております。  それで、私、先ほどのお答えに一つ漏れておりましたのは、やはり国内で生産し得るもの、そういうものには全力をあげて自給度を高めるというたてまえはもう基本的な態度であります。さらにまた、可能な地域、たとえば、この国会で御審議を願っております新しい農地開発公団、これはとりあえずは全国に大きなものが四カ所、その他小さいものも北海道にありますけれども、そういうところではやはり未利用地、低位利用されておりますような地域を集団的に開発いたしまして、そして、いわば大きな畜産基地のようなものを造成していこうと、これは与野党を問わず国会議員さんなどでも非常に御熱心に御賛同いただきまして、幸い予算も通りました。通りましたというより、予算に計上することができました。そこで、そういうようなことに全力をあげますことが一つ。  もう一つは、同じくやはりこの国会で御審議を願うことになっております海外経済協力の事業団であります。これらはやはりしばしばこの席でも田中総理からもお話がございましたけれども、ただいま日本に対して協力を求めてきている国がかなりございます。たとえばマダガスカルあたりで肉牛をやりたい、そういうことについて協力してもらいたい。あるいはブラジルなどは一定の広い面積を提供して、それでわが国の農業について指導を受けたい。それで考え方は、やはり先方とこちらとの政府間ベースで話し合いはいたしますが、あちらさんでもやはりだんだん生活が安定するに従って、いわゆる選択的拡大のようにいろんな食糧が需要が多くなってきます。そういうものを先方に供給する反面において、その余力をもってわが国のほうにも一定量、一定の安定した価格で輸出をできるようにと、こういうようなこと、東南アジア諸国でもそういう希望がございます。現にフィリピンからもございます。そういうようにいたしまして、国内生産で可能なもの、同時にまた国内の未利用地、低位利用地を開発して経済的に大きな規模の農業、畜産等をやってまいると同時に、安定した価格で安定した量を、やはりいま申し上げましたような、つまり、アメリカ一カ国では何が起きるか、昨年のようなこともありますので、多角的にひとつ輸入先をしっかりきめておきたいと、こういうような考えであの公団、事業団を考えたわけでございます。  世界のことになりますと、なかなか問題は大きいんでございますけれども、紀元二〇〇〇年になれば七十億の人口であるそうであります。これはたいへんなことになるわけでありますが、私どもといたしましては、まず世界のそういういろいろ需給の関係を見ましても、どうしてもやっぱり必要なのはわが国の自給度を満たすということでありますので、そういうことに全力をあげてやってまいりたいと、こう思ってやっておるわけであります。
  102. 杉原一雄

    杉原一雄君 そこで、そうした方針に従って、先ほど小麦、大豆のことに触れられたわけですが、もう一度、小麦をどういう一かりに二千円かぶせるとか二千五百円どうするとかいう話も聞いているんですが、それについては展望がなければいけないと思うんですよ。これによりますと、五十七年にはやっぱり小麦の自給率というのは一〇%をこえないわけですよ。そういう展望でいまのような作付を奨励していくのか。もっと展望を変えて、私たち九〇%内外の自給率をわが党は出しているんだけれども、そういう方向に向けて進めようとするのか。大まかなマクロな展望だけははっきり出してほしい。大豆もそうです。それを、二千円がどうだの、二千五百円がどうだのとけちなことぼくは言わないんですよ。もっと展望を出しながら農民に自信と勇気を与えてもらいたい。  私は選挙がありますので、至るところで、山村なり農村で農民とひざを組んで語る。どんなに言っても理解しない。今日の農政について信用を絶対にしません。おれは一・五ヘクタールたんぼをつくった、何十俵米しか出せない、その銭は全く機械と農薬と肥料に取られてしまうんだ。おれとおっかあと二人で会社へ行って働いてきた銭でやっと生活しているんだという言い方は、これは大体共通項じゃありませんか。  そういう状況の中で、いわゆる皆さんがやっぱり小麦がどうする、大豆がどうする。全く、いま手を切ったから赤チンを塗るというような程度の対策ではこれは困るんです。戸叶先生が言われたように、もっと展望を持って農民に自信と勇気を与えるように、これをやったら間違いないという提案のしかたしてもらわないと、私はやっぱり農政を憂える者としては納得できません(拍手)。大臣どうです。はっきりしてくださいよ。
  103. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 短い時間で意を尽くすことはなかなかむずかしいんですけれども、いまお話のありました稲作につきましても、私どもはやはり規模を大きくしてまいって生産性を高めるということがわが国の農業においてもまずもって一番大事なことだと思っております。  それからもう一つは、小麦のお話がございましたけれども、小麦の生産については、いまお話しのありましたように、一俵当たり二千円の助成金を出すというふうなことを計算いたしてみますると、これは小麦だけではないんでありますから、たとえば十アール当たり五俵、大体富山県でも五俵ぐらいだと思いますが、五俵でも二千といえば一万円であります。それにいまの粗収入で大体一万円といたしますと、裏で二万円になりますから、これは現に農業をやっていらっしゃる方どの話し合いをしてみますというと、北海道あたりではこれならやろうと喜んでおっしゃってくださる方もございます、地域によっていろいろありましょうが。私どもは、先ほど申しました基本的な展望につきましては、五十七年度をめどにいたしました将来の見通しでありますけれども、それは若干状況に応じて変化があるだろうというのは、さっき農政審議会の経過をお話し申し上げましたが、あそこに書いてありますように、自給度をできるだけ高めるという基本政策、この上に立脚いたしまして、すべての政策を集約してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  104. 杉原一雄

    杉原一雄君 前の櫻内さんに私はいろいろ質問している最中にも、ぼくが質問をしないのに、杉原さん、ネコの目農政とは何ごとだってぼくに反発してきたんですね。ぼくはネコの目農政って何も言ってないじゃないか、雨待ち農政だ、去年は雨が降らなかった、そう言って相手のほこ先を切りかえたんですけれどもね。それぐらい前の農林大臣は頭にきておったんですよ、ネコの目農政。ところが、国民が頭にきてたんですよ、ネコの目農政。たとえば、これ、真偽を確かめてみないとわかりませんが、だが出どころははっきりしております。三月十九日の読売です。「稲作品種をふやせ、農林省異例の指示」、こういうのが載っている。点検しますと、三月三十一日ごろに各農政局にこれを通達するとありますが、これは真実かどうか。
  105. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは、私も技術会議の事務局長にも言っており、また研究もいたしておるんでありますが、御承知のように、麦と稲が同じ時期に錯綜いたしてまいりますので、なるべく早く米の収穫のできるように、そういうようなものを、この麦の収穫ができるようなことにすることが必要ではないかと、つまり土地利用度をできるだけ多くしようと、こういうことで種を研究いたしまして、そしてその麦と稲を交互に表、裏ができるような種苗をひとつ検討することが麦の増産に必要なことではないかということで研究をさしておる、こういう実情であります。
  106. 杉原一雄

    杉原一雄君 それは農林大臣、把握のしかたが違っておりませんか。この記事が間違っておるならぼくは議論は控えます。そうでなくて、いままで奨励品種、そういうある特定の奨励品種を奨励してきた、ほかのいわゆる多収穫のやつは押えてきた、そういう問題等がいまではもうその時期ではないと、食糧自給度を高めるという観点から多収穫品種をつくることによって、ことにことしは冷害だと、冷害が起こる場合には、その冷害の被害を分散すると、こういうことを書いてあるんですよ。それと違うの。それだと私は、いままでの進め方とネコの目のように変わるということを結論として言いたかったんです。そうじゃないですか。どうです。
  107. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまお話しになりました種苗の研究については、実は私はあんまり詳しい報告受けておりませんが、私が、麦の自給度も高めたいということで、品種の改良をして、稲と麦がいままで重なる時期があるものですから、そのために麦をつくることがおっくうになってやめておりましたので、重ならないような品種を何とかして勉強しろ、こういうことを言っておるわけでありまして、ただいまの、あとで御指摘になりましたことは、実は私はまだそこまで報告を受けておりません。
  108. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) ただいまの御質問に補足してちょっと御説明申し上げますが、おそらくそれは、いつもいまごろことしの長期の天気予報と申しますか、それに従いまして、本年の農作物全般につきまして、いわば技術の指導方針というのを毎年出しておる例がございまして、そういう恒例でございまして、その中で、稲だけではございませんで、各作物について、すべてにつきましてこういった全体の長期の予報を見ていわば技術の指導をする、こういう機関でございますが、おそらく御指摘の問題は、稲の品種につきまして、御指摘のとおり、従来いわば食味と申しますか、そういうことで品種が非常にふえてまいりました。それに対しまして、単にそれに片寄らずに、いわばことしの全体の天候もございますし、作柄の安定を考えて、固定的にそれらに限定せずに、もう少し幅広く品種の選択もするように、たしかそういう趣旨のことではなかったかと存じますが、そういうことを含めまして本年の状況に適合したいわば技術指導をしているという趣旨のものでございます。
  109. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうすると、従来うまい米何とかという進め方の指導方針がぼくは転換したと見るんですよ。そうでしょう。どうですか。適合した、一時的なものじゃないでしょう。
  110. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) その点は、基本的に転換したわけじゃございませんで、従来とても単に食味だけとは申したわけではございませんで、食味と収量、両方見合わせましてやってまいったわけで、一方的に食味オンリーと、収量は落ちてもと言ったつもりではなかったわけでございまして、一般に優良品種というものは両者が並行するのが普通でございます。ただし、地域によりまして食味ばかりに偏しますと不安定な要素がございます。したがって、地域地域に適合したいわば食味と収量、安定性というのを兼ね備えたものを地域の実情に即して入れるようにという基本方針でございまして、この基本方針は別段本年も変わっているわけではございません。ただし、本年の場合に特に天候等もございますから、そういう点をさらに慎重にという趣旨で申したわけでございまして、基本方針が変わったというふうに私たち指導したわけではございません。
  111. 杉原一雄

    杉原一雄君 あなた方の旗振りはいろいろな農業の、農民に影響を与えますよ。汽車に乗ってずっと回ってみなさいよ。どこの県へ行ったって、日本一うまい米福井米、日本一うまい富山米と書いてある、うそばっかりついている。そうでしょう。それがいま売りことばになっているわけでしょう。そこに合わせて農民がつくっているんでしょう。それはあなた方の指導、発言があったからでしょう。だから大きな政策転換です、これは。それをなぜ認めないの、そういうことを率直に。だからネコの目だと言うんですよ。
  112. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 御指摘のように過去相当品種が変わってまいりました。ただし、ちょっと答弁がまずい点あるかも存じませんが、その場合でも、あくまでもいわゆる優良品種につきましては、単に食味だけとは申したわけじゃございませんで、食味と収量、安定性と、しかもそれは地域でかなり違いますものですから、その点を十分適合してやるようにと、ただし、地域によりましては確かに食味というふうに走り過ぎたきらいがございます、いわば売らんかなという意味で。そういう点、私は否定いたしませんが、一般の技術方針としましては、三者を兼ね備えたものを指導するという方針でまいったわけでございます。そういう意味で、その基本が変わっているわけではございませんで、特に本年あたりがらっと食味はどうでもよろしいと、もっぱら多収だというふうに変えたつもりはないわけでございまして、本来の筋道をことしの状況に照らしてやるようにという指導をしたつもりでございます。
  113. 杉原一雄

    杉原一雄君 それ以上深追いしませんけれどもね。ひまがあったら各県の農林部長がどういう指示をしているか調べてみなさいよ。あまりその場のがれのことを言ってもらっちゃ困ります。  そこで、ぼくは一つ前提を持っているわけだ。農政はネコの目のように変わるという前提を持っているんです。ところが、それに合ったような発言をしたのが倉石農林大臣の部下におります、しかも高級官僚。「これもまた場当たり批判ということになる。そこで私はあえて言いたい。場当たりという批判は甘受せよということである。」——これはたいへんなことでしょう。「特に昨今物価騰貴、石油危機等の、日本経済が激動している中で私たちの場当たり——担当している農林行政も伝統や因習にとらわれては追いつかない、場当たりと言われても気にしないで施策を選択、転換すべきものは勇敢に転換し、時代に迅速、的確に対処すべきである。」と言っているわけです。だから、これは農林大臣の大切な人ですから、これ、言われたことは肯定できますね。そのとおりですか。
  114. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) どういうところでどういう話をしたのか知りませんが、私どもは、やっぱり一ぺん一つの問題について方向をきめたらそれを動かすことができないというふうなことでは、現在の社会には対応できない場合も数多くあるんではないかと思っております。しかしながら、農政には農業基本法という一つの基本がございまして、しばしば問題になりますが、あの基本法の趣旨に沿うて私どもといたしましては自給度を高め、生産を拡大し、農業が他産業に比べて劣らない所得を得られるようにという目的でありますので、まあ中間における雑音は雑音としてお聞きのがしをいただいて、私どもの方針としてはもうそういうたてまえでございます。
  115. 杉原一雄

    杉原一雄君 農林大臣ね、ぼくはうわさとかそういうことを言ってるんじゃないよ。重大な省内の庁報の中に出ているわけですからね。これはきわめて私は重大な発言だと思うが、その人の責任を問うとか、そういう意味じゃない。だからネコの目農政という問題が、先ほど大臣がおっしゃったように、長期展望に立って、自信を持って、農民が惑うことなく、ほんとうに喜びを持って働けるような農政を、それこそネコの目のように転換してくださいよ、大胆に転換してくださいよ。それは自給率確保です。そういうことをぼくは最後に提起して農政問題についての質問を終わります。  第三点の日本海をきれいにということで、環境庁なり通産大臣の見解を伺いたいと思うのでありますが、それは昨年の九月八日に金沢において日本海環境会議があったわけです。大臣も出席しておいでになって、かなり格調の高い意見を並べ、見解を表明しておられるわけですが、そのときの模様も一々御報告いただこうとは思いませんけれども、その会議を受けて、主として環境庁の担当する分野でございますので、環境庁はそれに対していかなる政策、作業を進めておいでになるか、このことをお伺いしたいと思います。
  116. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これからの開発に日本海沿岸というのは非常にやはりいろいろな意味において重大な意義を持っておると思うんです。それは一つには、太平洋沿岸の開発というものが環境の破壊とか、公害の発生とか、いろんな反省を持っておるわけですから、日本海の沿岸の開発というものが、環境保全しながら開発をしていくという一つのモデル的な開発ということに持っていくべきだという点が一つ。もう一つは、日本海は沿岸諸国との間に、ソ連とか中国とか朝鮮半島、そういう取り巻かれた一つの海域でありますから、日本だけの努力というわけにもいかない。これは沿岸諸国が協力し合って日本海をきれいにするという国際協力の実験場でもあるわけでございます。そういう点で、非常に日本海の沿岸地域というものは、開発にとって、いろんな大きな意味を持っているわけであります。  去年の、御指摘になった九月の終わりから十月にかけて、日本とソ連との間に沿岸の市長会議というものが開かれて一日本海をきれいにしようという国際協力の場というものが開かれているわけです。こういう会議を通じて日本海をきれいにするための国際協力というものが具体的に進んでいくことは、単に地域開発という面ばかりでなく、非常に国際的な平和、大きな意味における平和の保持という意味においても意義を持っておることでありますので、こういう国際会議というものが回を重ねて、お互いに協力し合うような面が実を結んでいくことに対してわれわれはできるだけの協力を惜しまないという考えであります。環境庁としても、日本海をきれいにするためには、やはり日本海沿岸の地域というものに対する相当広範な公海水域の環境調査を行なったわけであります。そういたしますると、かなり問題のある地域が出てきた。  たとえばPCB汚染の実態調査をいたしました。また、水銀等の汚染に対しても実態調査を行なったわけでありますが、PCBについては敦賀湾、水銀の汚染については酒田港、富山港、伏木港というところに環境基準を越える状態というものがその結果発見をしたわけであります。そのためにヘドロの処理というものを急がなければならぬ。ヘドロの暫定除去基準というものをつくりましたから、その暫定除去基準を越えたヘドロを処理しようということで、すでに伏木港については除去をいたしました。引き続いて今年度他の港についても汚染のヘドロというものを除去するための工事を進めていくという計画でございます。また、ソーダ工場などに対しては、これをクローズドシステムに変え、さらに隔膜法に転換をすることによって水銀汚染の懸念というものを一掃したいということで、これは通産省の指導によって着着と進められておるわけでございます。また、発電所などに対する温排水なども、これはやはり将来問題になる点でありますから排水規制というものをいたしたいということで、目下、中央公害対策審議会において環境基準設定のための検討を進めているところでございます。  こういう点で、環境保全の面から日本海沿岸を公害に汚染されないきれいな水域に維持したいということで鋭意努力をいたしておる次第でございます。
  117. 杉原一雄

    杉原一雄君 長官、二点はっきりしてくださいね。  一つは実情について、日本の実情はわかりました。そうしますと、対岸のソ連の実情、それから南北朝鮮の実情、公害あるいは環境の問題でその点をひとつ明らかにしてほしいことと、もう一つは、あなたがその会議の席上でやはり記者団会見で明らかにされた、だから日本海環境保全条約を締結する方向で政治努力をするということをお約束しておられるわけですが、それは事実であるか、しかもなおかつ、今日その考え方には一寸のゆるぎもない確固たる考え方にお立ちになっているか、しからば、どういう行動を今後ともなされようとするか、長官と同時に副総理でもありますから、高邁な時点でその見解を明らかにしてほしいと思います。
  118. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ソ連と朝鮮半島の事情については、われわれとしても環境の状態を把握はしていないわけであります。日本の側から日本海沿岸の環境調査を行なっているわけでありますが、どうしてもあの日本海というものを考えた場合に、沿岸諸国の国際協力というものを除いてなかなか日本海をきれいにする目的は達成できない。ところが、国際条約ということにすぐなってきますと、いろいろ国際関係、非常に複雑な国際関係を沿岸諸国との間に持っておるのですから、将来は私はやはり条約を結べるようなそういう沿岸諸国との間にそういう条件が成熟して、そうして皆が国際協力でひとつ日本海をきれいにしようではないかということになって、それが単に環境の保全ばかりでなくして日本の平和という意味においても大きな意義を持つ、もし日本の平和というものがくずれる日があるとするならば、それは日本海からである。日本海の平和を維持するということは、日本全体の平和を維持するということにこれは通じていると私は確信するものです。  そこで、単に環境保全ばかりでなくして国際協力というものをあそこでできるならば、これは非常に大きなやっぱり国際的意義を持っておるというわけです。しかし、御承知のように国際環境複雑ですから、私は、やはり学術的な調査を進めていったらどうだと、沿岸諸国に呼びかけて、そしてそれを政治を中にからましますと、なかなかこれは問題ですよ。すぐに国際条約といっても、いろいろ北朝の問題も出てくるでしょうし。そういうことですから、いまはそういう政治というものを真正面から取り扱わないで、環境保全という見地から沿岸諸国がこの学術的な調査に協力できるような雰囲気ができることが問題を具体化していける一つの第一歩だと思うわけであります。そういうことで、私もそのシンポジウムには出席をいたしまして、それを強く訴えたわけで、今後ともそういうふうな国際的な環境が生まれるようにわれわれとしても努力して、どんな協力でもしようと思うんです、非常に意義のあることですから。そういう考え方を持っておるものでございます。
  119. 杉原一雄

    杉原一雄君 一昨年イルクーツクに行ったら、州副知事ですかに会ったとき、公害ありませんかと言うたら、公害って何ですかという反問がありまして、向こうでは公害という意識がないわけですね。事ほどさように、向こうはまあ完全にきれいとは言いかねますけれども、シベリアの大陸ではありますから、われわれが考えるような公害問題の認識は非常に浅いと思います。それで、いまの答弁の中で、自民党政府が一番仲のいい韓国ですね。私は韓国と言いにくいんですが、南朝鮮と言ったほうがいいと思いますが、そこでは公害立法あるいは公害の実情等について、長官、おわかりになっているかどうか。
  120. 信澤清

    政府委員信澤清君) 事実関係につきまして、私から御説明いたしたいと思います。  韓国では一九六三年、ちょうど昭和三十八年でございますが、二月に公害防止法というものが制定されているようでございます。内容的には、日本で申しますと、大気汚染防止法とか水質汚濁防止法あるいは騒音規制法等々に分かれておるわけでございますが、この種のものにさらに下水道法等を加えたいわば総合立法と、こういうふうに承知をいたしております。この法律に基づきまして日本で申します排出基準等をきめ、必要な規制を行なっているというふうに承知をいたしております。
  121. 杉原一雄

    杉原一雄君 国際環境保全条約等については、いま新しい提起をしているようだけれども、実は先進国がたくさんあるわけね。たとえば北海あるいはライン川等々にあるわけですが、そうしたことについて環境庁が掌握しておられる、あるいは根本になる考え方、問題点、そういうものがもしあったら御披露いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  122. 信澤清

    政府委員信澤清君) 御指摘のように、国際水域といわれるようなものにつきまして、沿岸の諸国の協力によりましていろいろ条約、協定等が締結される機運にございますことは御承知のとおりでございます。私ども承知いたしております範囲内におきましても、北東太平洋地域につきましては、一九七二年に主として海上に対する有害物質の投棄を規制するオスロー条約というものがすでに締結されております。なお、陸上からの汚染源を規制するための条約がこの一月にパリで調印されたという情報がございますが、内容については詳細存じておりません。それからなおバルト海につきましては、きょうの新聞で先生御案内のように沿岸諸国による汚染防止のための条約ができたというようなことを承知しております。なお、地中海あるいはペルシャ湾、そういった地域についても、沿岸諸国の協力によって条約その他の規制措置を進める動きがあるわけでございますが、御指摘ございましたように、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、やはり各国の協力がなければこの種の体制はできないわけでございますので、したがって、私どもといたしましては、できるだけそういった情報を集めると同時に、いわばそういう条約を締結するに至ります手順等につきましても十分検討いたしまして、先ほど来お話が出ておりました日本海の環境保全の問題についても対処してまいりたいと、このように考えているわけでございます。
  123. 杉原一雄

    杉原一雄君 長官が言っているように、この問題の提起は、究極するところ日本海の平和、これは私の従来政治的な命がけのテーマなんですけれども、それに通ずる。それは要するにアジアの平和に通ずる、世界の平和の原点だと、こういう理解のしかたをしておいでになるし、非常に共鳴いたしますが、その意味においても環境保全条約をすみやかに締結する、これが非常に大事。ところが、想定する問題点は北の問題だと思うんです。朝鮮民主主義人民共和国と日本とは国交正常化されていない。ソ連とはある程度の平和協定があるけれども、大切なところが抜けているわけですね。だから、そういう外交路線の大胆な転換なくしては、長官のいまの理想は私は困難である。その面の努力も、お答えをいただきませんけれども、ひとつ大いに奮闘していただきたい。こういうことを最後に申し添えましてこの点のピリオドを打ちますが、ただ、通産大臣に、いま申し上げた論議はお聞きのとおりだと思いますが、日本の政府が経済援助の名においてあれほど国民の世論のはげしい中で、金大中事件をめぐっての中で、経済閣僚会議式なものをお開きになって経済援助等おきめになった韓国の問題、その南朝鮮に対して日本の資本がどんどん進出しているということは、金大中の論文にも載っているし、向こうから得たいろいろな論文には載っているわけですが、これに対して、通産大臣としてどう今後規制していくか、ただ手離しでいいのかどうか。非常なきびしい批判があります。だから、いま田中総理も行けばまた袋だたきになる、タイと同様に。そのような状況にいまあることを非常に憂うるわけです。お答えいただきたい。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 韓国に対する民間投資はたしか三億八千万ドルぐらいにのぼっておると承知しております。金大中氏の事件のような不幸な事件もあり、また内外における世論等もありまして、先般、昨年の暮れに、経済閣僚会議を開きますずっと前に、私は、通産省の内部におきまして韓国に対する投資方針と申しますか、経済協力の方針について部内において方針をきめました。それはやはり韓国国民の福祉向上につながる、そして平和のための機能を果たすものでなければならぬ、それと同時に、やっぱりアジア全体とのバランスも考えたり、あるいは韓国国民によって歓迎されるようなものに考えを寄せて、そして一つの分野に集中することを防ぐことも必要である等等の大体の方針をきめまして、そういう方針にのっとりまして今後両国民に祝福されるような形で経済協力も進めていきたいと考えているわけでございます。
  125. 杉原一雄

    杉原一雄君 抽象的でありますけれども、何らか投資の基準とか、そういったようなものをおきめになっているのですか、どうでしょう。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは部内限りで私が大体産業政策局とも相談をしましてつくりまして、そういう基準にのっとって今後やるようにと残してあるわけであります。
  127. 杉原一雄

    杉原一雄君 それ、いただけますか。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あとでそちらへ提出いたします。
  129. 杉原一雄

    杉原一雄君 もう一点、最後に全体を通じて私、結論的なことを申し上げるのは、悪徳商社をいじめることも方法でしょうが、私、ぎりぎりにいま物価問題のところは政財界——政界と財界と官僚、特に官僚の問題で、各省事務次官の退職後の職歴調べをいただいたわけです。同時にまた在任期間の短いこと、東大がほとんどであることなどなど、ここにいただいたわけですが、こうした資料についてお出しいただいた総理府当局のこれに対する見解、つまり官僚のあり方、そういうことについて原則的なことをお聞きしたいと思います。
  130. 皆川迪夫

    政府委員(皆川迪夫君) 御要求がございましたので、各省にお願いをしまして資料を提出したわけでありますが、御質問の趣旨があまりにも大きゅうございまして、私でようお答えができないかもしれませんけれども、私たちとしましては、今日非常に何といいますか、国民の要求が各般にわたりまして、それをどういうふうに行政の中でさばいていくかということが一番焦点であろうかと思います。ことに、その立場立場といいますか、集団的な要求がいろいろな形で出ておりますので、国民全体の奉仕者としての行政が、どういう中で、それを取捨選択し、調整をしていくかということが一番大事であろうと思います。  お話のございましたように、確かに事務次官の在任期間が十分必ずしも長くないというような御批判もございますけれども、この点については、単に役所の中の組織から事務次官だけを取り上げて考えるわけにはいかないのでございまして、やはり役所全体の機能が最も効率的に働くように配慮をしてまいらなければならないと、かように考えておる次第でございます。
  131. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) これにて杉原君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後一時十六分開会
  132. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を行ないます。嶋崎君。
  133. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私は、本日の一般質問におきまして、経済運営、財政、税制等につきまして基本的な問題にしぼりまして政策運用のあり方についてお聞きしてまいりたいと思います。  まず、最初に、「昭和四十九年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」につきまして経済企画庁長官にお伺いいたします。  この「経済見通しと経済運営の基本的態度」を政府でおきめになりました際に、四十九年度の場合は石油危機といったような非常に大きな問題があって、過去の各年度の見通しのつくり方というようなものと少し違った発想と段取りにおいてこれがつくられたと私は想定しておるわけでございますが、いかがでございますか。
  134. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 嶋崎さんには私は非常に答えにくい。なぜならば、あなたはすでに経済企画庁の幹部としていらっしゃいましていろいろなことをその手法を御存じでありますから答えにくいのでありますが、いまの点についてはあなたのおっしゃるとおりでございます。ことに、四十八年度の経済見通しが一年間の間にあのとおり狂ってしまいました。これは、石油の問題もございましたが、石油以前の問題もあったこともあなた御承知のとおりでございますが、そこで、四十八年度の経済見通しを私が就任後御承知のとおり手直しをいたしますとともに、四十九年度の経済見通しにつきましては、あれに一緒になっておりますところの四十九年度における経済運営の基本的態度、すなわち、エネルギーについての政策とかあるいは総需要の抑制とかいうようなものを中心とした物価対策あるいは物資の需給対策というようなものをにらみながら、現実に即した見方、それも、四十八年の年末につくりましたものをさらに四十九年の新年に入りましてからさらに見直しまして調整を行なったようなわけでございまして、つくり方の手法におきましても、いろいろなGNPの諸項目に物価の上昇を掛け合わせてそれを総合するというような、従来のやり方が主としてそういうやり方だったと思いますが、今回の場合にはそれをももちろんやりますとともに、石油の供給源あるいはその価格上昇等に基づく実体経済の動きというもの、これをまた上から計算しまして、それに対して物価政策を勘案しながら経済成長率を出すというような、上下から見直すような作業をいたしまして現在の四十九年度の経済見通しをつくったわけでございます。この辺御承知のとおりでございます。
  135. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 確かに、従来の経済見通しをつくる態度というのは、まず需要項目の見通しを積み上げて、逆に言えば、名目的な需要項目をつくって、それからデフレーターを想定する、すなわち、消費者物価なり卸売り物価の上昇率を想定する、そして実質がどの程度になろうかと、こういう手法が従来通例だったように私は思っておるし、また、それがそういうことが行なわれてもおかしくないような状態であったろうと思うのです。しかし、四十九年度の場合は、原油の輸入量が一体どの程度に想定されるだろうかということを起点にしまして、それから鉱工業生産がどの程度になろうか、あるいはその他の生産がどの程度になろうか。そこで、実質成長率というものがまず最初に想定されて、それから物価上昇、それから名目的な各項目と、これが基本でもちろんあったろうと思うのです。もちろん、それは一方的にそういうことではなしに、試行錯語的に両方からいろいろ詰められたと思いますが、基本はそこにあったはずだと私は思うのです。  そこで、通産大臣にお伺いいたしたいのですが今年度の経済見通しの作成をするにあたって、その基礎になりました原油の輸入量をどの程度に考えておられるかということ、それからまた、鉱工業生産は四十八年度と四十九年度と比べて伸び率が一%とこの見通しではなっておるわけでございますが、この一%の鉱工業生産の伸びと実質成長率との関係、あるいは石油輸入量と鉱工業生産の関係といったような点について計数的に御説明を願いたいと思います。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体、石油の輸入量は二億七千万キロリッターを予定しております。鉱工業生産は一%アップと見込んでおりますが、それらの関係につきましては政府委員から御説明申し上げます。
  137. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) お答え申し上げます。  GNPとIIPの比率でございますが、大体、過去の趨勢を見ますと、四十四年からずっと見てまいりますと、やはりある程度の相関関係はあるというように考えておりますが、必ずしも弾性値一ということではございませんので、GNPが二・五%でIIPが一%というようにIIPがむしろ伸び率が下回っておるというのは、たとえば四十六年度について申しますと、GNPは六・六%でありますが、IIPは二%の伸びにとどまっておるという事情から御了承いただきたいというように思います。  次に、石油の消費量とそれからIIPの伸び率との関係でございます。大臣申し上げましたように、石油の消費量は四十九年度は二億七千万キロリットルというように見ておりますので、四十八年度の供給量から見ますと、三、四%減少に相なるということとなっております。これに対してIIPは一応一%上昇するわけでございますので、おかしいじゃないかというような御疑問があろうかというように思うわけでございます。ただ、過去の伸びを見ましても、IIPの伸び率とエネルギー消費の伸び率との間にはやはりほぼ一というような関係がございますけれども、たとえば四十七年度について見ますと、IIPは一〇・八%伸びておりますが、エネルギー消費の伸び率は五・八%というように、必ずしも照応しておらない年があるということが一つ。それからもう一つ経済計画を立てるにあたりまして、当然石油の需給は緩和しておりますものの、今後やはり石油の需給は相当窮屈になるということで、エネルギー消費の節約ということを経済計画の中で当然織り込んでおるわけでございまして、こういうような点とか、あるいは原子力発電の新規運開とか、あるいはLNGの輸入増加とか、その他のエネルギーの増加ということを考慮に入れまして、石油消費は主ないし四%減りますけれども、IIPは一%ふえるというような前提をとったわけでございます。
  138. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 ただいまの御説明にありましたように、過去のこれらの指数間の関連につきましては、景気動向その他で相当斉合性の欠けた数字が出ておるということは承知をしておるわけでございますけれども、われわれ思い起こすのに、昨年の春以来非常に物価が高騰してきておる。そのきっかけとなったのは、やはり部分的な物不足、需給の不均衡というところが非常に大きな問題になったはずだと思うのです。そういう意味で、今後の経済考えていく場合に、その基本になる石油の輸入量が今後どういうぐあいに変わっていくかということは非常に重要なことであるというふうに思うわけでございます。  そこで、次にお伺いしたいのですけれども、私は、先ほど御承知のように石油の値上げが行なわれまして八千九百四十六円というキロリッター当たりの値上げになっておるわけでございますが、そういう価格の引き上げではたして原油の確保に支障がないかどうかということを非常に心配しておるわけでございます。昨年の上期は石油の輸入量が非常に多かった。下期相当少なくても、御承知のように、二百八十万キロリッター程度のあるいはそれ以上の輸入量が確保できたわけでございますが、今後石油会社が非常に経営が悪いというようなことになれば、安い原油を拾ってきてまで損をする精製はなかなかやらないだろう。また、昨年の暮れ非常に思惑違いなほど石油が入ってきた理由の一つは、商社がスポットものを非常に買いあさってきた。それがいいか悪いかは別にして、それが量的な確保に非常に寄与したわけでございます。今度、政府が行政指導を強めて相当低く押えた油の販売価格というものをきめられたわけです。平均とかあるいは四分の三バルクラインとかいったような議論が行なわれましたけれども、およそ、資源を輸入する場合、あるいは資源を開発する場合、考えられることは、そういうやり方によっては限界的なものが切られていくという心配が実はあるわけでございます。そういう点から考えて、はたして原油の輸入確保ということが可能なりやどうか、その見通しを通産大臣にお伺いいたしたい。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう心配は私も嶋崎さんと同じように若干持っております。今度の石油の価格についてかなり厳重な査定をいたしました。そういう行政指導の結果、最近の石油会社の動向を見ますというと、また、海外からのメジャーズの動向等を見ますというと、やや消極的な傾向が見られ始めているような情報もございます。しかし、四十九年度全般の国民経済運営を見ますと、相当な総需要カットをやりまして、国民経済自体はそれほど成長するという方向ではございません。したがいまして、昨年の経済の伸びその前の年の経済の伸びと比べてみて、成長率はかなり落ちておるわけでございますから、それに見合う石油の量も減っていていいわけであります。だから、私は、ちょうどその辺で見合ってくるのではないかと、うまくそういうふうに見合わせればこれはりっぱなものだと、そういう気がしております。大体三月までは需要期で寒いものですから石油の入荷量というのは非常に多いのですけれども、四月以降になると灯油やその他あまり要りませんし、不需要期に入りまして、四、五、六ぐらいは大体入荷量はいつも減ってきておるのです。ですから、来月の供給目標を近くきめたいと思っておりますけれども、それも三月に比べてみて若干減らそうと、もし余裕が少しある場合には備蓄量がずいぶん減りましたから、若干そっちの積み増しのほうに少しずつ向けたらどうかと、そういうような気がいたしておりまして、まず二億七千万キロリッター程度のものは入るのではないかと、そう考えております。
  140. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 この点については、私は通産大臣と必ずしも同じ意見なり見通しを持っておらぬわけでございます。石油業法によって毎月の計画はつくられていくわけでございまして、小さい計画を意識してつくるのか、あるいは小さい計画しかできないのかというのはたいへんなことだと思います。今後の推移をよくひとつ見ていただいて、再び物不足によって非常にショッキングな状態というものを来たさない、ましてや秋口以降の備蓄に支障を来たさないような運営というものをぜひはかっていただきたいとお願いを申し上げたい。  そこで大蔵大臣にお聞きしたいんですけれども、一ころ物不足というような時分に、非常に物動予算というんですか、パーフォーマンス予算というようなことを非常に真剣に議論をされておったわけでございます。ことしはその点どういうような検討をされておりますか、御説明をお願いいたします。
  141. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 物動予算的配慮、これは考え方としては必要なことだと、こういうふうに思います。しかし、いわゆる物動というのは、鉄の生産が五百万トンありましたと、そのうち軍需に二百五十万トン回します、準軍需に幾ら回します。またその軍需なら軍需でその内訳をこまかくですね、準軍需ならばどこの工場に幾ら、どこの工場に幾ら、そういうようなことでございますが、そういうこまかい考え方はとてもとれない。それはいたしません、これならば完全に戦時統制経済と、こういうことになるわけですから。しかしそうじゃなくて、国全体といたしまして、いまお話の石油が幾ら輸入可能であろうかと、それで需給はどうなるであろうかというようなことを大まかに考まして、そして予算につきましては物件的経費ですね、これを締めつける。ともかく需給の均衡をとるということは大事ですが、供給をふやすという方式ですね、これはまたそれ自体がインフレを刺激するということになりますので、この際とすると需要を押えるほかはない。その需要を押えるという立場におきまして、石油はどうだろうか、鉄鉱石はどうだろうか、そういうことを大量的に観察いたしまして予算の編成をいたしております。
  142. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 先ほどの中曽根大臣答弁に関連して大蔵大臣もう一つお伺いしたいんですけれども、大蔵大臣答弁と総理のここにおける答弁というのを——きょうは総理はおいでにならないのは非常に残念ですけれども——聞いておりますと、石油の輸入量の問題につきましても、どちらかというと大蔵大臣は、これ以上の高い成長はなかなかむずかしいから、資源の輸入というものについてなるべくセーブをしていきたいというニュアンスが非常に強く出ており、総理は、物価はどうもやはり供給面からの問題が相当多いから、できるだけ石油は拾って量を拡大して生産に支障がないような感じで運営をしたいと、どうもそういうぐあいに私は委員席におって聞いておりましたんですけれども、大蔵大臣の御意見をもう一つ確かめておきたいと思います。
  143. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 角福調整相当完全にやっておるはずなんで、あまり食い違いはないはずなんですがね。  私は、石油につきましては、これはかりに輸入量が増大し得ても、なかなかこれを増大するということはむずかしいし、またいたすべきじゃない、こういう考え方です。つまり石油の輸入量を増大するという考え方は、また成長を拡大させるという考え方につながっておるわけです。まあ何がしかの成長は必要だ。しかし、これを努力をして石油の輸入量をふやしにふやして、そうしてまた高成長を試みると、こういう考え方をとりますと、またこのいま問題になっておる物価の困難なこの状態を復元をするということになる。それからさらに大事な問題は、とてもいま外貨事情からいいまして、そんな高い石油をよけいに買うという力は日本経済にはありませんです、これは。あるいは環境と公害というような問題を考えましてもかなり問題がある。そういうことを考えますときに、これはまあふやすことができるにいたしましても、それは物価との調整、国際収支の可能な限度、また公害、自然環境というようなものをよくにらみ合わして、その程度のことであると、そういうふうに考えております。おそらく総理大臣もそういう考え方だろうと私は確信しておりますが、言い回しが、多少まあ聞き方によりましては、あるいはそういうお感じを与えたのかもしらぬと、そんな感じでございます。
  144. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 この問題は、一応あとからもう一度戻ってくるかもわかりませんが、これまでにしまして、四十九年度の経済見通しによりますと、雇用者所得の伸びがこの付表の一番最後のところで一七・六%となっております。また雇用者の伸びは〇・八%となっておりますが、経済企画庁長官にこの見通し作成の根拠をお伺いいたしたいと思います。
  145. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 雇用者所得の伸びの表が経済見通しの参考表としてつけてございます。これはもうGNPとは違う総分母でありますこと申すまでもありません上に、これは全く一つの何といいますか、モデル、一つの従来の型を示したものでございまして、昭和四十九年度における雇用者所得の伸びが一七・六が一番の理想的な数値であるとか、政府がその数値を期待しているとかいうことではございません。もう一つのほうの雇用者総数の伸びも、四十七、八年ごろの雇用者総数の伸びに比べますと、伸び方が落ちておるわけでありますが、これはまあ経済の実質成長の率が、たとえば従来の十年間あるいは前年度に比べましてはなはだしく小さいところの二・五と、こういう想定をとります場合には、有効求人倍率というようなものも当然落ちてまいるわけでございますし、人があってもあってもなお足りないという従来の状態とは違う状況になることを一つの型としておるわけであります。その双方の関係も見ますと、それだけたとえば時間外の所得が減ったりするというようなことにもなりますので、自然私どもが想定した経済見通しの実質成長率のワク、あるいはまた非常に引き締めて計算をいたしておりますところのデフレーター、すなわち物価のワクの中におきましては、いまお尋ねのような一つの型の数字が出てくると、こういうふうに御理解をいただきたいと、ことに申し添えますことは、これを一つの賃金統制あるいは違ったことばで言うと所得政策の基準にするというような考え方は毛頭ないことも申し上げておきます。
  146. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 経済見通しの付表であるにしましても、こういう数字が出ておるということは、やはりその本文にありますところの経済見通しなり、あるいは運営の基本的態度なりとある程度の整合性を持っておると考うべきであると思いますが、重ねて御意見を伺いたいと思います。
  147. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 経済見通し、経済運営の基本的態度というものを前提に置きまして、そうしてそのシミュレーターといいますか、モデルチェックといいますか、従来の型を当てはめていきますと、機械的にああいう数字になるわけであります。しかし私は、物価の問題にいたしましても、経済成長の問題にいたしましても、これはいろいろの企業努力あるいは生産性の向上その他等等によっていろいろの幅も出てまいることでもございましょうし、たとえばこれは、前年あるいは前々年等の給与所得の同じ意味の参考数字を比べてみましても、当初の想定の数字よりもかなり実績のほうがふえているというような状況でもございますので、しかし、あの付表をことしに限って取ってしまうということは、私どもが、これはまあ給与所得者のみならず個人業主所得あるいはその他の所得の配分の面において何らかのごまかしをしておったり、また関心をなくなしたような形になることも適当でないと考えましたので、一つの型としての、先ほど申しますようなものをつけ加えたと、こういうふうに御理解をいただきとうございます。
  148. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 個人業主所得のことに及びましたので、個人業主所得のこの欄を見ますと、四十九年度は七・八%の上昇というようなことになっております。昨年はそれに対しまして二七・六%という数字になっております。いかにもこの数字の落ち方がきびしいではないかと、これは一つは、先ほどおっしゃられた大蔵大臣経済運営についての基本的な態度からこう策定されておるのかとも思いますが、経済企画庁長官、大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  149. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) この個人業主所得の計算のしかたは非常に複雑な過程を経ておりまして、私がここで政治的とも思われるような御説明を申し上げますよりも、うちのエコノミストに説明をさせたいと思います。
  150. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) 個人業主所得の計算の方法でございますが、個人業主所得は大ざっぱに言いまして二つの部分からなっております。一つ個人非農林水産業所得でございまして、これが大体七割強の割合を占めております。もう一つは、農林水産業所得でございまして、この構成比は約三割弱でございます。この二つにつきまして、その個人業主の非農林水産業所得につきましては、個人企業の利潤と企業者及びその家族に対するいわば雇用所得と見なされるものなどの混合したものがこの構成要素になるわけでございますが、これがさらに別かれまして二つの分類が大ざっぱにできます。一つは商業サービスによるものでございまして、これが約四割強を占めております。それからもう一つのカテゴリーは製造業などによるものでございまして、これが構成比が約三割弱ということになっております。  このうちの農林水産業関係につきましては、農林水産業のその生産額とか、あるいはその経営に要する費用とかによってきめてくるものでございますが、もう一つのほうの非農業につきましては、それぞれ個人消費の伸び、あるいは鉱工業生産指数の伸びと卸売り物価指数の伸びの合成というようなものからはじかれるわけでございます。四十九年度につきましては、個人消費支出が本年度の二二%から約一七%というふうに落ちてまいります。それから、鉱工業生産の伸びも九%から約一%に落ちるわけでございます。それから卸売り物価指数の数字も四十八年度の二〇・二%から一四・六%に落ちるというような関連指標がすべて弱くなっておりますので、この数字は四十八年度に比べますとはるかに低い数字になっていると、こういうことでございます。
  151. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 結局その問題は四十九年の経済成長を一体どういうふうに考えるかという問題に総合されるわけです。これは二・五%の実質経済成長、それに消費者物価、卸売り物価、これを加味して名目成長率というものが出てくるわけなんですが、そのカットダウンというか、そういう問題と御理解を願いたいのであります。なぜ、とにかく二・五%というような、ここ十数年来初めてのそういう低成長をとるかということになりますと、これはとにかく混乱した物価状態、これを一度流れを変えてしまわなきゃならぬと、こういうことなんです。その流れを変えるためには一つのショック療法というか、そういう手法を必要とする。二・五%といいますけれども、これは年間平均の話です。上半期はかなりもう低い、下半期に多少の上がりがある、それ平均してまあ二・五だと、こういうので、上半期の経済というものをできるだけ締めてみたい、そしてその結果は所得全体に波及する効果を持つと、こういうことになる。そういう考え方の数値は、ただいま御指摘のような数字となってあらわれてきていると、こういうふうに御理解願います。
  152. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 国民の所得分配というのは非常に私は重要なことだと思うんです。ここらに出てくる数字を見ましても、非常に雇用者所得の伸びと個人業主所得の伸び、もちろんこういう所得の数の変動というのはある程度あるんだろうと思いますが、それを加味してもあまりにも極端な数字ではないか。試みに昨年の数字を見ますと昨年は二七・六%ですが、当初の見通しは一一・一%でした。その前の年はどうかといったら当初の見込みは八・六%であったのが一七・八%というような数字になっておるわけです。過去のいろんな数字の検討というものもおありでしょうけれども、かりに雇用者所得が非常に伸びるというようなことになれば、当然農業の物資につきましては、米にしてもあるいは麦にしても、まあパリティなりあるいは生産費所得補償方式の考え方というものがあるはずだと思います。商業者の所得というものもある程度伸びるということが確保されるということは大切なことであると私は思うわけでございます。そういう意味合いから見て、どうも数字的に整合性がないように思うんです。過去の実態から見ましても、いかにも本年の見通しのこの数字はおかしいような気持ちがしますが、その点重ねて経済企画庁長官の御意見を承りたい。
  153. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) ただいま先生御指摘ございましたが、個人業主所得といいますのは、その経済活動の状況によって非常にフレが激しい所得項目でございまして、たとえて申しますと、昭和四十六年、これは非常に不況のときでございますが、この伸び率が一・八%でございます。それから四十八年度はこれが二七・六%というふうになっておりまして非常にフレの激しい項目でございます。来年度は、先ほどから申し上げてもおりますように、実質成長率二・五%ということでございまして、経済活動が物価の関係から総需要抑制をいたしまして引き締めて、ある意味で沈滞をする時期でございますので、こういう時期にはやはり個人業主所得というのは伸び率が他の項目に比べまして落ちてまいるという傾向がございますので、そういう点を加味してこういう見通しを立てたわけでございます。
  154. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 農林大臣かあるいは経済企画庁長官になるのかもしれませんが、農林漁業の生産指数というのが同じく付表に出ておるわけでございます。これとの関連におきまして農業についてはどの程度の見通し、業主所得の伸びを見ておるんですか。
  155. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私の間違いない記憶では、農業生産のほうが鉱工業生産よりも五割方伸び方はなお高いと、たしか鉱工業生産指数の伸び方は一%でございますが、農業所得のほうは一・五%の増加と、こういうふうに見ております。
  156. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 そこで農林大臣にお伺いいたしますけれども、最近三月末には御承知のように畜産物の価格を——加工原料乳の価格、豚肉の価格あるいは生糸の価格、さらに四月の十日になればてん菜の値段をきめなければならぬ。それからメジロ押しに、農業の産品につきましては政府が何らかの形で価格の保証政策をとっておる。私の調べたところでは、七五%程度それがカバーをされておるというような実態にあると思います。どうもしかし、目先のそういういろんなことについては非常にこの委員会でも問題になっておりますけれども、実は、いま時分から野菜の作付期に入るわけでございます。野菜につきましては皆さん方も、当然大臣も御承知だろうと思いますけれども、野菜価格安定制度によるところの保証基準価格というようなものがある。ことしは、われわれ地方へ行って調べてみましても、非常に農業資材が高くなっている、あるいは種の値段が高くなっておるというようなことで、実は農民が、ほんとうにことし従来のような安定価格制度のもとにおいて作付していいのだろうか、われわれのコストがこんなに上がっておるのに、それからできるところの野菜の値段が暴落をしたのじゃこわくてしようがないということで、非常に園芸連あたりで、作付の制限をどうするかというようなところまで真剣に考えておるような状態でございます。  そういうことを考えますと、この基準価格の算定、従来、趨勢値を伸ばして、そして価格を算定をしておりますけれども、この点について、やはり資材の値上がりなり、出荷、包装費の値上がりが非常に大きいわけですから、そういうようなものについて何らか手直しの方策というものを考えて、あらかじめ安心をして作付をさせるということをしないと、ことしの春、夏、さらに秋野菜の暴騰を来たすおそれがあるのじゃないかというふうに思っております。この点について農林大臣はどういうぐあいにお考えでございますか。
  157. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 現在の野菜の安定価格制度におきましては、その保証基準価格について、市場の趨勢値を基準としてきめております。この趨勢値、趨勢価格は、趨勢的な物価変動が当然織り込まれておりますけれども、最近のような著しい変動、こういうものは織り込まれておりません。そこで、四十九年度の保証基準額につきましては、ただいまお話しのように、われわれのほうでは七〇%あまりの農産物について、大体介入価格でございます。そういうことでございますので、最近の生産資材、それから包装資材費、それから出荷、運送費の異常な値上がり、これを織り込んだ価格を基準として、生産県、生産者団体とも協議の上に、できる限り早く決定いたしたいと考えております。したがって、そういうことでありますので、いろいろの地方からお話がございますけれども、大体そういう考え方を示しておるわけであります。
  158. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 もう一問農林大臣にお伺いいたしたいと思いますが、ぜひひとつそういう価格は早目にきめて、作付に支障がないようにしていただきたいということをお願いしますとともに、今後この業種所得の見込み、非常に低い見込みになっておりますけれども、農業パリティの伸び方から考えてみましても、さらによその所得との均衡というようなことから考えましても、米麦その他につきまして、しかるべき価格を設定をしなければならぬというようなことで、結果としてこの見通しが当たらないような運用ということを農業については必ずやらなきゃならぬというふうに私は考えておるわけでございますが、御意見をお伺いいたしたい。
  159. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私ども物価に関係あります閣僚の間で、最近の石油のこういう異常な事態、それに伴って諸物価が非常な変動を生じておる。そこへ加うるに、農産物は輸入品が非常に多いわけでございます、飼料、その他。したがって、そういうものを一つ一つのものにつきまして、法律で定めてあります文言から言いましても再生産の確保と、こういうことでありますので、再生産の確保のできるように、そのときの経済情勢等を勘案してやらなければなりません。したがって、全体の物価の中でどういうふうにこれを処理すべきであるかということについて、いろいろ検討いたしておるわけであります。ばらばらに上下になることは、私は国民全体の経済の上から見ましても、また生産に従事しておる農業の、先般来お話し合いのありました、たとえば食糧品の自給度を高めるといたしましても、やはり生産性の向上と同時に、生産に楽しみを持っていただくようにしなければなりませんので、そういう点を考慮いたしましてこの体系をひとつ考えてまいりたいと、こう思っておるわけでございます。
  160. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 非常な生産コスト、生産資材、包装費等の値上がりの中でございますから、ぜひひとつことしは、この異常な事態に対処する臨時的なものに終わっても、相当思い切った作付ができるようなやり方で価格を設定していただくことをお願い申し上げたいと思います。  農林大臣、それでけっこうでございます。  そこで、経済企画庁長官にお伺いいたしますけれども、四十九年度の物価上昇につきましては、見通しで、卸売り物価は年度中上昇率四・八%、年度平均上昇率一四・六%。消費者物価につきましては年度中上昇率五・二%、年度平均上昇率九・六%とされております。従来の見通しのつくり方とは、また標準のしかたとはここが変わっておるわけでございます。その意図がどの辺にあるのか、その点について御説明願いたいと思います。
  161. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) おっしゃるとおり、ことしは少し物価の面を二重の表現をいたしてございます。カッコ書きであらわしました。それは、四十九年度の前年に当たります四十八年度の物価上昇が、言うまでもなく非常に著しいものがございましたので、四十九年度、私どもが懸命に物価政策を進めてまいりますと、一面においては、四十八年度がうんと上がってしまったから、それに比べると四十九年度はほとんど上がらないというような形にもあらわれることになりますが、実際はそういうわけではないので、四十九年度は、やはり年度が始まる四月から年度が終わる三月までの間には四十九年だけ物価がどのくらい上がるかということも見ておかないと、また、それは知っておいていただかないと非常に不親切になる、こういうふうに考えまして、ことさらに年度間の純粋の上昇率、こういうものをあらわした次第でございます。
  162. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私も大事なことは、物価が対前年でどれだけ上がったということだけではなしに、物価においてはその趨勢がどうなるかということが基本的に大事なことであるというふうに思っております。したがって、この見通しの中で重要なところは、年度間の上昇率の部面であるというふうに判断をしておるわけでございます。しかし半面、私ごく簡単に計算をしてみましても、四十八年度の物価上昇が、非常に今年度に入ってから異常な状態、特に去年の秋以来異常な状態になっておる。そのために、四十八年度の経済見通しというものが非常に狂っておるというふうに思うわけでございます。  かりにそれを物価について見ますと、二月の卸売り物価を横ばいにかりに計算しましても、四十八年度中の平均と比べまして一七・六%上がることになると思います。それから東京の消費者物価につきますと、この二月で見ますと二・五%、平均とこの二月の水準との乖離がある。それくらい四十八年度の見通しが違っておるということで、だから私は物価上昇率の見方が違うからおかしいじゃないかというような不毛な議論をここでやる気持ちはありません。しかし、年度間の上昇率を政府が考えておられるような線にどうして持っていくのか、その基本的な戦略をひとつ大蔵大臣からお伺いいたしたいと思う。
  163. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 御指摘のように、もう四十八年度は済んじゃったことで、これをどうこうするということよりも、四十九年度、つまりこれからの物価を一体どうするんだ、こういうことがこれはもう非常に大事な問題になってくるだろうと、こういうふうに思うんです。  それで、四十八年は下半期が全くの日本経済混乱状態である、これをすみやかに鎮静しなけりゃならぬ、こういうふうに考えるわけでありますが、いまのというか、四十八年下半期における物価の情勢、これはとにかく一人一人の国民の御家庭におきましても、あるいは企業の活動、運営におきましても、これはもう先々の計画ができない。まあ夢を見る人生というか、そういうようなものが全く望み得ないような状態になるわけです。老後のこと、これも見通しが立たない。子供をどういうふうに育てようか、これも見通しが立たない。サラリーマンは住宅をどうするか、全くこれは高ねの花である、こういうようなことになっちゃう。この状態をほうっておくということになりますと、これは日本社会はどういうふうになっていくかわからぬ。  そこで、いわゆる短期決戦というか、少しきつい施策にはなるけれども、早期にこの混乱状態を収束しなけりゃならぬ、そういう考え方をとったわけでありますが、ところが、今日のこの物価というものが、これが普通の物価と言われるような物価であれば、これはなかなかその処置がむずかしい。つまり物価というものは、生産費がある、それに適正の利潤がある。末端に至る間におきましては流通経費というようなものもありましょう。そういうものの積み重ねが一つの目安となりまして、それがそのときの需給によってある程度の振れがある、こういう状態がまあ普通の物価です。ところが、いまの物価というのはそうじゃなくて、私はよく相場だと、こう言うのですが、仮需要に基づくところの投機的価格である。いわゆる水ぶくれの価格。この水抜きが可能である、こういうふうに考えます。  これはどうするかというと、これはもう需給状態を供給過剰の状態に持っていくことである。そういうことを考えるときに、これは供給をふやすわけにはいかぬ。つまり、それがまたインフレを刺激するということになる。そこで需要を詰めるほかはない。この総需要抑制政策というのはそういうことで考えたわけでございますが、この政策を財政の面から、あるいは金融政策の面から推し進めるわけです。ただ、この総需要抑制政策というのはきめが荒いです。大謀網と申しますか、そういうような形の政策です。そこで、きめの荒いところの詰めは、いわゆる物資三法というものでこれを詰めていかなければならない。  この総需要抑制政策と物資三法、これをずっと推し進めますれば、私は今日の異常な事態というものはかなり早期に解決し得る、克服し得ると、こういうふうに考えておりますが、現にもうかなりその効果は出てきつつある。二月、三月、とにかく物価上昇の勢いというものは頭打ちになっておる。これから一、二ヵ月か、二、三カ月でございますか、その間には私は鎮静は定着してくる、こういうふうに見ておるわけですが、そういう手法をもって当面のこの流れを完全に転換していきたい、そういうふうに考えております。
  164. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 最近の物価の傾向が非常に鈍化のきざしがあらわれてきておるということについては、これを私は認めるにやぶさかではありません。しかし指数面の上では、ガソリン等の値上がり、それが相当高く三月にはまた出てくるだろうというふうに心配をしておるわけです。しかし、それは別にしましても、ともかく大蔵大臣は、現在の物価はまだ水ぶくれであるとか、あるいは相当超過需要があるのだというぐあいにおっしゃっておりますけれども、金融面の指標から見ますと、私はどうもそういうことは必ずしもいまの段階ではいえなくなってきているのじゃないか。また現実にわれわれは選挙区を歩いてみましても、もうほんとうに猛烈な金融引き締めという感じを持っておるわけでございます。  そこで、お伺いいたしたいのですが、金融の引き締めの浸透状況を諸資料から見て、どういうことになっているのか、経済企画庁長官からお伺いしたい。
  165. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これは御参考になるかどうか知れませんが、お尋ねの点をある面からあらわします若干の指標がございますので、そのまま申し上げます。  第一に、物的、つまり需要の伸びの収縮をあらわす指標がここに二つございます。それは一つは機械受注でございますが、機械の受注、これは設備投資一つの先駆的な指標になることは言うまでもなく御承知のとおりでありますが、それがこの一月には、前月十二月に比べまして一七・六%の純落ち込みを示しております。でありますから、機械受注はそれだけ減ってきている、こういうことであります。それから建設の受注でございますが、これがこの一月には、十二月に比べまして一〇・三%落ち込んでまいりました。二月の指標はまだ出ておりません。  それからこれは大蔵大臣の領分でございますが、よく言われます日銀券の平残、平均発行残高が、それがこのところ毎月減ってまいりまして、この一月では、十二月に比べまして平均残高の増加が二三%。これは十二月は二六%でございました。それが二月の数字が、平均残高の増加が二一・八%。ふえてはおるが、ずっと二〇%近くに落ちております。最近日本銀行総裁等の観測によりますと、三月は、日本銀行の平残は対前年同月比二〇%を割るだろう、こういわれておりますので、日本銀行の発行状況がこのとおり弱まっておる。  それからいわゆるマネーサプライ、これは通貨に預金を加えたものでございますが、これも一月が、十二月に比べますと一八・九%の増加でございますけれども、しかし、十二月と申しますか、十月−十二月、第三四半期の増加は二一・三%でございます。もっとさかのぼりまして七月−九月が三二%でございましたが、この辺から金融引き締めがきいてまいりまして、マネーサプライは七月−九月のいま申す三二%増から、二一%の増になり、さらに一月には一八・九の増ということで、ちょうど日銀券の平残と同じような落ち方をいたしております。  百貨店の売り上げが、二月の数字がここにございますが、一月が二六・九%の増加でございましたのが、二月には二一・五%の増ということで落ち込んできております。  それからいわゆる企業の手元流動性、例の企業の製造高とか、あるいは売り上げ高をもって企業が持っておる現金預金高を割った数字でございますが、これも各期ごと、各月ごとに減ってまいっておりまして、昨年の七−九月期では一・四八倍でございましたのが、十−十二月では一・三三倍になり、それからこの二月ごろでは、それが一・二六倍というぐあいに手元流動性が落ちてまいってきております。それはすなわち、企業の手持ちが非常に詰まってきたと、こういうことでございますので、金融の数字の詰まり方、それの反対面の機械受注、建設受注というようなことについてもさっき申しましたが、これはもう純粋に落ち込んでおる。卸売り物価などにつきましては、御承知のように二月は実質的には全く横ばいであったと考えていただいていい。あるいは、実質的には外国から入ってくるものを別にしますと、落ち込んでおったのかもしれません。三月上旬でも〇・四%増加ということでございますが、これも御承知のように、そのうちの海外要因が九七%ぐらいございますので、実質的には物価の面でも卸売りに関します限りは上昇といいますか、むしろ非常に下降傾向も国内面ではあらわれているということは申せると思います。
  166. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 ただいまの数字からごらんになっても、まあ相当の引き締めの浸透状況がうかがわれるわけでございます。私の手元にある数字で見ましても、いま御説明のありましたたとえば通貨供給量の伸び率でMとかMを調べてみますと、ともかくその水準は、ことしの一月、たとえば雌で見まして一八%、M2で見て一七.二%です。これをさかのぼって、そういう時期はいつかということになりますと、もう過剰流動性がいわれた時期よりもずっとさかのぼった時期の数字になっておるわけでございます。また、企業の手元流動性をとりましても、ことしの一−三月のところを見ますと、大体、主要企業で〇・八九、それから中小企業で一・三六という数字になっておりますが、それぞれをさかのぼって見ますと、たとえば四十六年の一−三月でも主要企業については一・〇四であり、中小企業については一・五七である。金融面から見ますと、非常な引き締めの浸透ぶりがわかるわけでございます。実は、こういう感じは、われわれ選挙区を歩いてみましてほんとうにこんな猛烈な引き締めを行なっていいのだろうかと、いまにも倒産をするのではないかということで、もう金融手当てに奔走をしておるという人にほんとうによくぶつかるわけでございます。もちろん、私が選挙区へ帰ったのは、もうちょっと早い時期でございますが、最近のこの数字は傾向的に見るともっと下がっておるのではないかということを非常に心配をしております。そこで、今後もなお引き続き引き締め政策をとっていかれると、もちろんいままでのわが国の経済成長の高さというものから安定成長へ変わる過渡期的なつらさということは理解ができるにしましても、あまりにも金融引き締めの状態というのは強過ぎるのじゃないかというのが一般の声でありますが、大蔵大臣の御所見を伺いたい。
  167. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 金は潤沢に使えるということは、だれしもこいねがうところだろうと思うのです。しかし、他方において、まあ少し苦労しても、このような物価状態は何とかひとつここでとり静めてもらいたいと、こういうのもまた国民のこれは圧倒的多数の人の願いであろうと、こういうふうに思うのです。とにかく、これだけの異常事態をひとつ克服しようと、そして日本経済の体質を全く生まれ変わったようなものにしようというのですから、これはなまやさしい事態ではないと、こういうふうに思うわけであります。でありまするから、総需要抑制政策を中心とする経済安定工作、これはかなりきしみも出るでしょう、摩擦も出てくるでしょう。しかし、それでたじろいでおったらこれは日本経済の体質というものは改善されません。私は、でありまするから、もうこれで多少金をゆるめても日本経済の動揺というのは起こらないと、こういうはっきりした見通しがつくまではこの引き締め政策は断じてこれを曲げることはないと、こういうかたい決意を持って臨んでおるわけです。ただ、そういう際にはどうしても小さい者、弱い者、こういう者にはしわ寄せが行き過ぎます。そういう傾向を持つ、そういうものに対しましては、それ相応の手当てをしなきゃならぬ。その辺はよく心得ておりますが、この基本路線、この機会こそいい機会だと、これは災いを転じて幸いとする、そういうためには多少の摩擦、困難も、あえてこれを乗り越えていかなければならぬ、そういうかたい方針を持っていかなければ、このむずかしい時局はとても乗り切れたものではない、こういうふうに思います。御理解をお願い申し上げます。
  168. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私は、そのいまの金融の引き締め、これいたずらに緩和をしなければならぬというふうには思っておりません。日本の現在置かれている状態、それからこういうもののアク抜きをしなければならぬ、そのことはよく理解をできるわけでございます。  そこで、角度を変えてお伺いいたしますが、経済企画庁長官、最近の物価上昇の要因、内容といったようなものにつきまして、昭和四十七年あるいは四十八年の中ごろまでといっていいかと思いますが、そのころまでの状態と、最近の状態というのは、私非常に変わっておると思うのです。その物価上昇の要因についてどういうぐあいな御判断をされておるか、御説明願いたい。
  169. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) おっしゃるとおりの面もございます。しかし、昨年の後半からの狂乱といわれる物価上昇と、または卸売り物価などは、御承知のとおり一昨年の秋ぐらいから上がっておるわけでありますが、その時代と似たところもございます。似たところというのは、とりもなおさず海外要因でございまして、最近の、昨年の暮れからの物価上昇というものは、申すまでもなく石油価格の上昇というものが非常な大きな要因にもなっており、また一部の農産物価格、飼料等の影響もございますが、一昨年から昨年の前半にかけましても、国際的要因といたしましては、もう世界的に通貨価値が低落したと申しますか、陥没傾向が見られるようになり、世界的インフレというようなものに加えて、ことに気候不順等に基づく食糧、原材料、資材などの値上がりが非常に旺盛でございました。これは一昨年ごろからのロイター指数なども見ましても、同じ調子でずっと引き上げてきておりますので、その点は同じ要因であると思います。ただ非常に違ってまいりました一あるいはこれはまあ私どもが言うべきことでないかもしれませんが、まあ昨年の春ぐらいまでは、何といいましても国内的要因としては、通貨の過剰流動性というものは、もうその原因については、申すまでもなく、過剰のドルが何年かの間、日本に流入してきた、その見返りの円がよけいに出たと、また、日本の輸出が非常に旺盛でありましたために、それは反面に置くと日本が不景気であったと、輸出物資が勝っておったというようなことで、景気政策というようなものもあったことも事実でございまして、そういうもののズレ込みが私は昨年のやはり四月ごろぐらいまではあったと思いますが、最近はいまあなたから御批判があったようにズレ込みどころではなしにオーバーキルのような金融の引き締めではないかというおしかりを受けるような事態までもなってきていると、総需要の抑制というものは非常に緻密にきておると、こういう点が違うと思います。しかし両々相まって、物価の上昇を来たしておりましたけれども、最近では一つの要素のほうが、物価抑制要素のほうが勝ちつつある面が認められることもございますので、私も大蔵大臣とおおむね同じ意見で進みたいと考えております。
  170. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 どういうぐあいに集約していいのかよくわかりませんけれども、私は一九七〇年から一九七二年、昭和四十五年から四十七年までの状態というのは、非常に卸売り物価が安定をして、消費者物価が上がっておりますけれども、私はそれは生産性格差インフレーションというのですか、そういうような性格のものであったろうというふうに思っております。それに対しまして、一九七〇年から少しオーバーラップしておりますけれども、その時分から御承知のように日本の経済を取り巻く条件というのは非常にきびしくなってきた。一つは海外市場の制約というような問題が出てきた。それからこの資源的な制約というものが出てきた。それから各国とも国内政策に目を向けて高い成長率をやってきた、そういうまたこれ自分の国内の市場をできるだけ自分の国の産業にというような思想が出ると、あるいは極端には、資源を自分の国に確保して、外には少しけちけちして出そうと、まあ端的にあらわれたのが油でございますが、そういう資源的な問題が非常にクローズアップされてきたと、そういう意味で、いままでそういう制約条件がない非常に楽観的な高度成長の時代というのは、私は一九七〇年に入ってから非常に極端に変わってきておるんだろうと思うんです。特にそれが典型的にあらわれたのが、実は昨年の石油危機であろうというふうに思います。そこで、みんながあわてふためいて、ともかく石油が削減をされる、値段が上がる、操業率は落ちる、コストは生産性を上げて対応するということがなかなかむずかしい、それに国内的にはこの立地の問題、公害の問題があって、景気も悪かったこともありまして、一九七〇年以後非常に設備投資が落ちてきた、そういうものの複合が現在の狂騰物価になった。その中に非常にこの企業の社会的な責任が問われなきやならない、そういう行動があったし、またカルテルが横行しておったという現実もあるわけです。やっぱり、そこをきちっと区分をして今後考えていく必要があるんじゃないか、私は物価上昇の原因についてそういうぐあいに考えておるわけでございます。それは一つ意見としまして、私は、そういう極端な石油の上がり方、それが一体理論的にどういう形に卸売り物価なり生産者価格に反映をするのかということについてお伺いいたしたいと思います。  私の見たので「経済評論」の三月号に、通産省の統計解析課におられる中西英夫氏の分析というのが載っておりますが、通産大臣御存じですか。
  171. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) 御指摘の「経済評論」に載っておりますものは、当省の調査統計部の職員が個人的に勉強したものを雑誌に発表したものかと思われます。  原油価格の上昇が卸売り物価の上昇に与える影響については、いろいろなところで勉強いたしておりまして、当省でも勉強はいたしておるわけでございますけれども、ただ私のほうは、現在の段階では個別品目の価格上昇について産業連関表を使っておるという状況でございまして、全体の卸売り物価の上昇について産業連関表を使って試算をするという段階にまでまだ立ち至っておらないわけでございます。したがって、当省の職員の書きましたものではございますけれども、当省としてこれについて公式にどうであるかということをコメントするような段階に立ち至っておらないというのが現状でございます。
  172. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 けさほども議論になりましたけれども、また一方、経済企画庁では、経済企画庁お持ちのモデルに数字を織り込んで計算をしたらどうなるかというのが、たしか日経の二月の二十五日の版に出まして、それがあっちこっちで問題になって、実はあれは公式なものではないというような話があったということまで私は承知をしておるわけでございます。しかし、そのモデルにしろ、産業連関表にしろ、これはもうきちっとした基本になる数字があるわけでございます。そこへ単純に数字を当てはめていく。いろんな条件はあるにしましても、それは相当意味のある数字だと判断をしなきゃならぬというふうに私は思うんですが、その点経済企画庁長官の御意見を伺いたい。
  173. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) あれ、まことにむずかしくて私にもよくわからないんですが、たとえば連関表というのは昭和四十五年のいろんなファクターをそのままの姿にして組み立てておるようであります。でありますから、その後、たとえば企業の生産性が伸びておるものもございましょうし、あるいはまたかえって資材なんかの関係設備のフル稼働が行なわれているような企業もございましょうし、国際環境もまるで違ってきておる。また賃金のベースアップ等も、もちろんいろいろの前提となるファクターが変わってきておるわけでありまして、その連関表にそれらの条件の変更をすべてネグレクトして、これはまあテンタティブの一つの試算である。傾向値は出るにしましても、石油がこれだけ上がったならばほかの商品の卸売り価格なり消費者価格にどう影響するか、また逆にそれが賃金にどれだけ響くか、今度はまたもし賃金がこれだけ上がったならば、それは物価をどれだけ押し上げるかというような、そういう単純な計算はそのままのめるものではないと、私のようなまあしろうとではありますけれども、常識的の経済学者には思えるわけなんですが、それが、若い諸君が勉強のために、マクロ的な一つのモデルであるとか、あるいは一つの実験室的な数字の動きをシミュレートして、生きた社会にそれがあたかもそのまま適用されるがごとき試算をされるということは、勉強の過程においてはいいかもしれませんけれども、事実経済企画庁の調査局でありましょうか、経済研究所でありましょうか、若い方々がそういうことをやっておったようでありますが、それは全く私の取り上げるところではありません。しかし、諸君はそういう勉強をするなということを押えつけてもいけませんし、もちろん発表などはいたすべきものでもございませんし、前提によっていろいろな数値が出ますこと、当初申し上げたとおり、そのように理解をしていただきとうございます。
  174. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私は非常にいまのお答えに不満でございます。と申しますのは、産業連関表というものは、その性格から考えまして、確かに四十五年の静止的な経済前提にしてつくられたものであるということはわかっております。当時の原油の輸入量というのは二億キロリッターちょっとでございましょう。現在はそれをはるかにこえた状態になっておるわけです。もし産業連関表をつくり直すとするならば、日本のように激しく動く経済の中では、かえって重いウエートを持っておると判断するのが通常、常識であろうと思います。また、経済は生きものであって、これを上げたらいろんな過程で吸収をされたり、拡大をされたりするということについて、私は何も異論を申し上げておるわけではありません。しかし、通常そのままの産業連関表というものを前提にして計算をするならば、それはやはり正直に答えが出てくるというのが、まず理論的にはそれをのみ込んでかかるというのが通常でございます。ましてや、日本の政府に非常に欠けているのは、何か政治的にそういう数字を考えるよりは、はるかに国民経済全体の立場をとり、その中でやはりいろんな試行錯誤をやってみて、そして見通しをつくったり、経済計画なり、あるいは経済運用の基本的な態度をきめていくことこそ重要であるというふうに思います。その点について再度御意見を承りたい。
  175. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) おっしゃることはそのとおりでいいわけでございます。現に、昭和四十五年、いまから四年前にいまの産業連関表があるわけでありますから、あれでいろいろな前提を同じだとしてはじき出したものがそのまま通用するならば、この四年間の日本の経済というものは、物価の面におきましても、あるいは経済成長におきましても、そんな大きな狂いはなかったと思うわけでありますが、あの連関表を用いてコンピューターにほうり込むソフトウエアのつくり方が問題になるわけでありまして、したがって、先ほど来申しておりますように、あれはあれなりのマクロの一つの傾向値あるいはモデルとして大いに意味があって、勉強の素材にはなるけれども、うかつに、あれが来年の姿であるとか、あるいは経済のいろいろな要素を組み合わせるとこういうものになるんだということを言いますと、いろいろな方面に誤解を与える点を私は心配をする。これはまあ簡単な卑俗なことばで申すと、経済は生きものでありますし、また、創意くふうや技術の進歩というような中での私どもの経済運営がなされているというような状況のもとにおきましては、あれだけではなしに、あれは基礎として非常にいいものだと思いますが、プラスアルファ、プラスベータというものを乗せて、そしてこれは政治の目標にしなければならないと私はまあ思っておるわけでありますが、嶋崎さんのその議論を私は決して否定はいたしません。
  176. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 あれとかこれとかでやっておりますけれども、実はこの中西さんの論文を読みますと、原油が四倍に上がったときには生産者価格は四・九%上がりましょう。生産者の価格です。賃金が二〇%上がったときには六%上がるという答えになっております。そして卸売り物価は、それぞれ九・九%、六・四%というようなことになります。それが複合された場合にはどういうことになるかというと、これはほとんど足し算に近いところですから、数字は読み上げません。しかし、同じような考え方で、まあそれが電力に響いたらどうなるか、あるいはバスだとか、そういうようなものに響いたらどうなるかということを計算をしていくと、相当なことに相なるわけでございます。  そこで、私は先ほど物価上昇の基本的な原因についてお伺いしたのですが、実は、金融の引き締めが行なわれておる、しかし、そういうコスト要因がいろいろ出てくる。そしてその中で物価問題を解決しようということになりますと、特定のところにしわが寄る。あるいは、水ぶくれのところの水をとるということなら非常にけっこうですが、しわが寄る可能性が非常に強いと私は思うんです。この点について、大蔵大臣経済企画庁長官の御意見を伺いたい。
  177. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 実は、お尋ねがあるということで、この通産省の中西君の「経済評論」の論文を、私は出してもらって写しを持ってきておるわけです。しかし正直のところ、これ、私にはむずかしくてわからない点もございますし、先ほど来たびたび申しておりますように、ある幾つかのきまった前提というものを各カードに織り込んで出しての結果でございますので、それはそれなりの評価を私はいたしますけれども、逆のことばで申すと、それはまたそれなりの評価しかできないと、こういうことでもございます。ただ、それはもちろん石油が上がれば、それは石油製品の値上げに伝わり、また石油製品の値上がりに伝わりますと、それは生活関連物資やわが国経済の重要資材に、それぞれここにあらわれているようなパーセンテージの影響を及ぼすわけでありますが、われわれは政治の担当者としては、原油が上がっても、それを石油製品まで及ぼす幅は八千九百四十六円、平均で押え込むと。上へ飛び出す分があっても、それは企業努力でやりなさいというようなことで押え込み、しかも、八千九百四十六円上がったものが、他の凡百の資材、商品に及ばないように、凍結とか事前了承制とかいう、私の申すプラスアルファをやるものですから、必ずしもこのとおりにはならない。しかし、石油が上がって物価が下がるという要素は全然ありませんので、必ずそれは長い間にはいろいろな問題が出てまいります。これは電気料が上がったらどうするか、電気料が上がって、今度は私鉄が上がったらどうなるかというようなことで、だんだん、そうなると人件費その他に及ぼす影響等も出てくるものでありますから、一つの傾向とか、マクロの形としては、私は、これはこれなりでいいと思います。これは経済企画庁の若い諸君が研究されましたという、賃金が幾ら上がったらこういう結果になるということにつきましても同じでございまして、賃金は高くすれば高くするほど、かえって賃金をかせいでくる生産の場を狭めたり、有効雇用倍率というものが小さくなってしまったり、あるいは失業率が高くなったり、物価にも影響を及ぼすという、その方向はそのとおりになるわけでございます。しかし、あそこに幾つかの賃金上昇のパーセンテージを並べて、そのうちの一つを選び出して、これでいけば以下ずっとつながるような、まことにいいかっこうになるから、政府はそれを目標として春闘に関与すべきであるというような結論を、私は出すべきでもないし、出すことは危険であり、また出そうとも思っておらない、こういうだけでございまして、これらの関連表の仕組みは、私は、これはエコノミストの諸君の非常な勉強の結果編み出した一つの定理であり、高論であることは、これは考えるわけでありますから、その点はあなたと同じ考え方もあるわけでございます。
  178. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 今日の物価情勢は、とにかく二つの問題が混在をしている。つまり景気抑制、総需要抑制、そういうような考え方から、需給要因ですね、これは非常にゆるんでいる。むしろ供給過剰、そういう状態というか、そういう方向へ移りつつある段階である。ところが、物価は需給ばかりできまるわけじゃない、コスト要因というものがあるわけですね。このコスト要因から見ますると、現に石油の輸入価格の高騰問題と、こういう問題があったわけです。これからその影響を受けまして、電力問題をどうするかという問題がある。それから、重大な問題でありますが、春闘問題というものがある。あるいは私鉄問題というのが懸案になってきておるわけですね。国鉄の料金問題というものもある。また、この四月から始まりまして、間欠的に、食糧——国内農作の価格の問題というものがある。これはコスト要因です。そのコスト要因としては、どうしても物価は上がる傾向を持つわけですが、今度は需給要因からは消す傾向を持つ。その暖流と寒流とがどういう交錯をするか、どういう調和点に達するか、これが今後の物価問題の見通しだろうと思う。そういう際において、いま嶋崎さん御指摘のように、しわ寄せの問題、それはあると思うんですよ。たとえば、賃金問題をとらえてみましても、力のある企業というものは、賃金上昇いたしましてもこれは耐え得る、しかし、力のない企業というものは、これに耐え得ないというので非常な重圧をこうむる。もしそれが一律にいけば、という話です。そういうような問題があるわけでございますが、だんだんしかし、暖流、寒流、これが交錯、その時期を終えまして、安定点というものがどの辺になりますか、求められる。その時期以降におきましては、価格の上昇というものを踏まえて新価格体系というか、新価格水準というものが設定される、おのずからきまってくる、そういうふうに思うのです。そのあとの物価水準というものは、これは海外要因はどうしても押えられません。しかし、国内的要因というものにつきましては、これは総需要抑制政策、これは、程度は寛厳よろしきを得なければなりませんと思いますけれども、それを踏まえまして、いやしくも仮需要が起こる、需要供給の関係で物価が乱されると、そういうような事態がないように運営してまいりますれば、私は新しい経済社会というものが構成されてくる、こういうふうに思います。
  179. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 衆議院で、水野委員質問に対して経済企画庁長官は、所得政策をタブー視する時期ではないというようなことを言っておられましたが、その真意はどこにあるかというのが一点。  それからもう一つは、所得政策というものの考え方が、欧米諸国で取り上げられたその経緯なり意義なりというものについて、御見解があったら御披露願いたい。
  180. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 衆議院の委員会で、私がお尋ねのような答弁をいたしたことはございます。しかし、それはいま読み返してみましても、経済企画庁なりあるいはいまの政府が、所得政策を政策の課題として今日実行すべき時期に来ておるということでは全くございませんで、要するに、毎年経済が大きくなってくると、付加価値といいますか、その付加価値を給与、勤労と——それから、あるいはまた地代とか金利とか、あるいは資本の利潤とかというものを、あるいはまた、これ、先ほども論議がございましたように、それぞれの業種によってどう分けるかということが、大きく申すと私は所得政策で、その分け方に政府が干渉をすることが狭義の私は所得政策になると思いますが、その狭義の所得政策で、ことしの賃上げが幾らだ、ことしの配当は幾らに制限するとかいうことはやらないが、しかし、毎年増加する付加価値分というものをどのように分けることが、今後の社会の進歩でありまた人類の幸福か、また、経済が回転して円満な順調な成長をしていく道かということは、当然政治家として念頭に置くべきことであると私は思う。だから、所得政策といえばうしろを向いてしまう必要はないことだ、という意味のことを申しました。  海外において、アメリカとかイギリスにおきまして、所得政策をとっているのには幾つかの理由があるようでございますが、一つは、国際収支が非常に悪化してきておるにもかかわらず、賃金、物価が高い、国際競争力が不利になって輸出が出ないというようなことに関連をいたしまして、アメリカでもイギリスでも、具体的な所得政策がとられたり、あるいはまた賃金、物価がスパイラルに上がってしまった結果、経済は停滞してスタグフレーションになってしまって、残るのはコストインフレの要素だけが残っている、これではもう経済の運行がとまるというようなことに関連して所得政策に踏み切ったようであると私は思いますが、しかし、その結果は必ずしも所期の効果をあげてない。短期的には効果をあげている面があるようでありますが、やや長期に見た場合には、資源配分を妨げたり、経済の円滑な、あるいは社会の円滑な運営、発展を阻害をしているような要素も残しておるので、わが国においては、私が申しますような狭義の所得政策、英米流の所得政策をいま直ちにとることは適当でないと、こう私は考えます。
  181. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 労働大臣にお伺いいたしますが、労働大臣は、たしか当委員会での質問に対しまして、所得政策について見解を述べられたことがあると思いますが、再度、どういうお考えを持っておられるのか、お聞きしたいと思います。
  182. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) これは私も、ただいま経済企画庁長官が申されたように、日本ではナショナルコンセンサスをとることがむずかしいし、わが内閣としては、所得政策を採用する気持ちがないということに理解しております。
  183. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 関連。  労働大臣にお尋ねいたしたいんですが、というのは、中労委のあり方、これについてお尋ねしたいと思うのであります。と申しますのは、いまからもうだいぶ、四十何年前ですが、日本のいわゆる労働運動のすこぶるはなやかな時代があったわけです。私は大正末期から昭和初期の大きな労働争議は、全部というほど体験いたしております。西尾君のリーダーの、ある銅山の問題とか、松岡駒吉君のリーダーの野田大争議とか、こういう問題を見まして、当時、御承知のとおり日本にできましたのが労資協調会です。いまと違いまして、人権尊重はなし、自由はなし、治安維持法あり、治安警察法あり、そういう中に、あまりの深刻な労働争議に対しまして労資協調会というものができた。しかし、当時の労働運動というのは、御承知のとおり、みんな政治的な大きな背景を持っていたわけですね。たとえば総同盟から分かれた労働組合評議会、これは共産党でございます。政党としては労働農民党である。それから河上丈太郎君、麻生久君、この日本労働組合、これも総同盟から分かれていわゆる中間派で、これは政党としては日本労働党。それから総同盟自体というものは社会民主党、これは片山哲君ですね。そういうような背景はございましたけれども、とにかく経済闘争としての労働運動というものは、それは毎日、新聞の一ページを飾っていたのです。そういうような、自由もなきその時代にできたこの労資協調会、これがやった仕事というものはそれはたいへんなものなんです。労働争議がございますればどんどん積極的に仲に入って、そうして労使双方の意見を聞いて、でき得るものはこれを調停した。あの毎日毎日、約一年かかった野田争議、これは毎日血を見ていたのです。その大争議も労資協調会がこれは片づけたのです、調停をいたしたのです。その労資協調会のあとにいまの中労委というものがあるわけなんです。  そこで、私は中労委というものを見ていますと、何かこう、受けて立つ、受けて立つようなきらいが非常に多いように感ぜられるのですが、労資協調会などは、ただ単にその労働組合のいわゆる労働争議だけでなくして、社会の底辺に住む人たちの実情調査と、これへの積極的対策までやったのです。私自身が嘱託で頼まれまして、三河島の貧民窟——いまはございません。それから、山谷はいまでもございます。山谷の簡易宿泊所、ここに私は一カ月泊まりまして、そうしてその実態というものを私は書いて、これは私の本になっています。そういうように、いまから四十何年前に、しかもそういった、もう時代も違う、政治も違う、そういう中に労資協調会というものがそれだけの仕事をしたのです。だから、まあごく極左の組合からはこれはいろいろ批判されました。しかしながら、少なくとも中間派、総同盟関係からは非常に感謝をされた。これは常に積極的に動いたというわけです。その当時の中心になった人は、常務理事で添田敬一郎という有名な人ですが、そういう点等々から見まして、何かいまの中労委というものはあまりに政府即というような感じがいたすのですが、現在の中労委の機能なり、それからまた、私が申し上げたように、受けて立つのではなくして、自分から立ち入ってひとっこれの解決をしなけりゃならぬ。それにはまあ人事院の問題とか、いろいろあるでしょうけども、何か大きくならなければ動かないというような、こういう状況は、私どもはほんとうに寒心にたえないのです。この点についてひとつ労働大臣の意見を伺いたい。
  184. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 日本の古い労働運動の歴史は、ただいま大竹先生がおっしゃったことに象徴されると思っております。その時代は、政府が一生懸命やってそういう労資協調会等々でいろいろとあっぜんを願ったわけであります。しかし、終戦後の日本、これだけ労働運動が盛んであり、また組織率がイギリス、アメリカに負けないだけの組織を持っている今日は、それだけに政治的、経済的、文化的に組合の諸君もまた責任があるわけであります。  そこで、今日の中労委は、御承知のとおり公益委員の方々、この方々の推薦の場合には、労働組合の方々、経営者の方々の同意を得ながら、そして公益委員、労働組合側、経営者側、こういう方方が三者一体になって話をし、そこで解決しております。ですから、賃金問題もそこに調停がかかれば三者で話をする。一方においては、日常は、不当労働行為とか労働者の不利益処分等々についてこういう専門の先生方にごあっせんを願っているかっこうでございまして、多少時代の相違というものがあると同時に、組合の方々あるいは経営者の方々、公益委員、この三者の中に、健全な日本の賃金問題あるいは労働問題の育成、こういうものをやっているということを御理解いただきたいと思います。
  185. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私は、経済運営の目的が、究極的には社会福祉にあり、したがって賃金、所得の上昇というものについて決して消極的な考え方ではないので、そのために、その実質的な上昇のために経済を運用しなきゃならぬというぐらいに思っておるわけでございます。しかし、そういうことを前提にしましても、経済企画庁で、これは間違えて出ているのかもしらぬが、モデルで計算したところによると、あまりに大幅な賃上げというものは、結果的に実質的な成長なりを阻害をするというような数字も出ておるわけでございます。そういう意味で、さきの国会で消費者物価の上昇の要因の分析として、経済社会計画推進委員会で経済社会基本計画フォローアップの報告の中に、消費者物価、いままでどうも卸売り物価のところに問題が片寄って議論をされておるのですが、消費者物価の上昇と、そしてその上昇要因というものを分析した数字があるわけでございますが、その点について御説明を願いたいと思います。
  186. 宮崎仁

    政府委員宮崎仁君) お答え申し上げます。  いま御指摘のように、これは昨年十一月三十日の経済計画のフォローアップ委員会の報告でございまして、少し時点が古いわけでございますが、これによりますと、消費者物価の上昇の要因といたしまして、一つは賃金コストでございますが、これが大体六、七%ぐらい消費者物価指数を押し上げる要因になっておると。寄与率で見ると八割から九割という非常に高い率でございます。  それから卸売り物価でございますが、これは大体四十七年度ぐらいまではほとんどたいした影響がなかった。四十八年度上期にこれがかなり上がりまして、最近ではもっとこれは上がっておるわけでございます。寄与率で見ますと一四%ぐらいに四十八年上期にはなっております。  その他の要因として公共料金、これが消費者物価指数として約一%ぐらいの増加要因となっておる、こういったような分析をいたしておるわけでございます。  最近の事態は、まただいぶ高くなっておりますので、この推定式がそのまま通用するとは思っておりませんけれども、この時点においてはこうだったということであります。
  187. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 先ほど来いろんな資料で議論をしておりますように、結局コスト側の要因、それが非常に最近の卸売り物価あるいは消費者物価——まあ卸売り物価についてはともかくとして、相当大きなウエートを占めてくるということは、理論的に言うと、どうもそういうことは避けられない答えのように私は思うんです。  そこで、私はこの春闘とか何とかということを抜きにしましても、欧米諸国の場合に、やはり国民経済全体の中で、ともかく五割以上のウエートを占めるような賃金問題、それからそれと経済との連なりの問題について、政府のどの部局で一体責任をもってこれを考えるのかということをひとつお聞きをいたしたいと思いますが、経済企画庁長官
  188. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これはいろいろな経済要素の総合的な場面から判断をしなければならない問題でございますので、大蔵省がいいとか、労働省がいいとか、通産省がいいとかということではなしに、いまの行政機構のたてまえから申しますと、たいへんどうも私どものほうもむずかしい問題で、手を焼くとは思いますけれども、やはり経済企画庁関係の官庁の方々や、また民間のエコノミストの方々にもお集まりをいただいて、そうして一つの方向が出るかどうか、検討を進めることが一番いいのではないかと私は考えるものでございます。
  189. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私もつい先ごろまで官庁に勤務をしたことがある人間ですから、よく承知をしておるのですが、労働省、まあ言っては悪いけども、ザ・ハイヤー・ザ・ベターなんです。大体そういうことだと言っていいと思うんです。しかし、その経済企画庁の中を調べてみましても、調査局でもない、計画局でもない、調整局でもない、物価は物だから関係はない、国民生活局でもない、こういうようなことで、どこが責任かさっぱりわからない。  それから総理府にもいろんなこういう問題を議論するところがあるようですし、また閣僚会議もあるようですが、およそそういうことが議論される場ではないように思う。大蔵省にももちろんそういうところは、該当するところはないわけです。まあいま経済企画庁長官、それは最終的には経済企画庁で引き受けなければならぬと。これは力のないことでは有名な役所でございます。しかし、いずれにしましてもですね、私はこのいま直ちに所得政策を日本に適用すべしということがいいか悪いか。私は物価の現在の非常事態を考えるならば、ある程度、政府がそのことしの経済運用と賃金の問題について態度を表明すべきであるというふうに思いますけれども、しかし、それは幾ばくがよろしいというようなところまではとてもいく準備もなさそうに思います。そういう中途はんぱなことなら、あるいはことしは困難かもしれませんが、少なくともそういう部局なり組織なりというようなものをぜひともつくる必要があるというふうに思います。これは私の提案でございますが、大蔵大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  190. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、まあ春闘の問題もあるがですね、今回のこの事態を克服した後の問題を考えますと、賃金問題というのは非常な重大な問題になってくると思うのです。つまり、いままでの賃金というものはこれは非常な高率で上昇してきておる。しかも、卸売り物価はこれを安定せしめ得た。この二年間は違った要因が出てきておりますが、過去、その前の十五年ばかりの間というものはそういう状態で推移してきておるんです。つまり、それはどういうことかというと、給料生活者の賃金が上がる。上がりましても、企業は、規模の利益といいますか、設備の拡大をする、業容が拡大される。そういうことで生産能率を向上させる。そこでですね、この生産性が賃金の上昇を吸収すると、こういう状態にある。そこで、卸売り物価は十数年微動だもせずという形になってきた。ところが、そういういわゆる高度成長、そういう経済状態の中で取り残されるものがあるのですよ。それは何だといいますると農村、中小企業。これは大企業のように生産性——業容を拡大するわけにいかぬし、またしたがって生産性を向上するわけにはいかぬ。しかし、さらばといって、大企業の労務者が賃金を上げる。それに対して平準化作用をしないというわけにはいかぬ。そこで賃金は上がる。そうすると、結局そのしわ寄せはどこへいくかというと中小企業物価、農村物価、そういうものが引き上げられるという形になり、それが消費者物価——消費者物価というのは中小企業物価であり農村物価なんです。それは、だから消費者物価は上がる。卸売り物価と小売り物価の乖離という問題はそういうところから出てきておったと思うのです。今度はこの混乱を経過いたしますと、そういうタイプの経済はもう許されない。つまり、もう高度成長だ、設備の拡大だ、そして賃金は上昇させます、それでも物価はだいじょうぶですと、こういう状態は許されない。また物価ばかりじゃないです、経営自体が許されない。そこで、どうしても低成長下におきましては、もうほんとう経営者もまた労働者も、考え方を一変する必要があるんじゃあるまいか。そういうふうに思うのです。まあ混乱を乗り切りましても、その後の経済の状態を考えますと、これはもう賃金の上昇があれば、これは生産性に吸収されるというわけにはいかぬですから、やっぱり大かたは物価にはね返るということになる。そういうことになりますれば、これは国民経済として非常に重大な問題になってくるんじゃないか、そういうふうに思いますので、いままで一〇%上がりました、一五%上がりました、二〇%上がりました、ことしは二五%ですなんという、そんな安易な考え方は、これはもうとても成り立ち得ない、そういうふうに思うんです。ちょうどこのことしの春闘というものがその境目なものですから、ちょっとデリケートな問題でありまするけれども、基本的に考えますと、その先の賃金問題というものは国民経済に非常に重大な関係を持ってくる、そういう性格になってくるであろう、このことは私は、これはもう財界も、あるいは勤労者も、あるいは国民も、すべてが理解してかからぬと、日本経済の行き方というものをもうほんとうに根本的にあやまってしまう、こういうことになるであろう。私は、政府としては声を大にしてそういう理解を国民に求むべきだと、こういうふうに考えております。
  191. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私は、近い将来、日本は非常に困難な経済状態になると思います。それはスタグフレーションの危機だと思います力そういう中で、やはり国民の分配というものを考えていくならば、当然私は、ほんとうに先取りをして問題を議論をするというならば、当然ことしからもそれがどの程度で春闘賃金というものはあるべきであるかというようなことが論議されてしかるべきだと思います。しかし、どうも用意がないというようなことのようですから、私は何かそういうものを勉強する機関を早くつくれという提案をしておるんですが、それについてはお答えがないんですが、大蔵大臣としてどう考えおられるか。総理の候補ということになっておられるわけですから、ぜひひとつ。
  192. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私どもが、いま当面の問題に取り組んでおりますが、当面の問題のさばきも、その先々のことを考えなけりゃ適正なさばきにならないんです、これは。先々どうするかということは、もう当然考えておる。大蔵省でも考えています。企画庁でも、もとより中心となって考えておられる、こういうふうに思うんですが、この混乱した事態を乗り切ったあとの日本経済の歩みをどういうふうに持っていくか。もういままでのいろいろな長期計画というようなものがありますが、ああいうものは全部見直しをしてかからなきゃならぬだろうと、こういうふうに思うんです。そういう立場に立ちまして、新しい日本の歩みをどういうふうにしていくかということは、これはもうぼつぼつ考えておる問題ですが、まだこれはなかなかそう簡単に成案の出る問題じゃありません。しかし、大筋だけは早く固めておきたいと、こういうふうに考え関係各僚とも話し合ってみたいと、かように考えています。
  193. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 時間がだいぶ迫ってきました。  確かに、御指摘になるように、一九六〇年代の高度成長の中で日本は各国と比較してみましても驚くべき高い実質賃金の上昇——単に名目賃金ではなしに、実質賃金の上昇を示しております。時間がありませんから、ここで一々数字は読み上げませんけれども、そういう非常に楽観的な時代というものは私は去ったと思うんです。これからほんとうに、日本の経済を取り巻く内外の非常に困難な諸条件をどうして克服して、あすの新しい福祉国家をつくるか。そういう中で、国民の分配の問題のウエートというものは非常に高まってくると思います。いままでは、あるいは経済が表に立っても、国民の望むところの八割は、経済にまかしておいてもあるいは達成できた時代であったろうと思います。しかし、いまこそ私は政治がほんとう経済の大ワクをどうリードするかという、非常に重要な責務をになわなきゃならない時期に来ておると思います。そういう意味では、私は本年は政治元年でなければならないというふうにすら思うわけでございます。関係閣僚のこの物価、あるいは経済全体の問題にわたるひとつ御検討を強く望みますとともに、経済の変化に対応して、どうして機動的に対処するか、その点に抜かりのないように、ひとつ御要望を申し上げる次第でございます。  時間もありませんので飛ばしていきますけれども、一九六〇年代、非常に日本の経済は高い成長を遂げてきました。その中で私は財政、金融、特に税制、これの果たす役割りは非常に大きかったと思います。しかし、先ほど来議論をされているように、日本の経済は大きな曲がりかどにきておる。そういうときにあたって、この四十九年度の財政が、予算が編成をされ、また経済の運用の方向が示されているわけですが、今年度の予算、そういう転換期に対応するものとしてどういう性格を持ち、将来への連なりにおいて、また過去の反省の中でどういう位置を占めるか、その点を御説明願いたいと思います。
  194. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 池田内閣以来のわが国の経済、非常に発展をいたしまして、世界でも驚異だ、あるいは奇跡だと、こう言われた状態でございますが、これは何といっても設備投資主導型の経済成長であった、こういうふうに思います。私はその行き方というものを高く評価しております。つまり、そのゆえに、いまや日本の経済の工業力というものは世界で第三位を占めると、こういうことにもなり、そしてわれわれの生活も、とにかくいろいろの問題をかかえながらもここまで来られた、私はたいへんいいことをやったと、こういうふうに思います。   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕 しかし、経済の成長発展というものはそれが目的じゃないのです、実は。これはどこまでも手段なんですね。この経済成長発展の目的というものは何だというと、われわれの生活の安定です。われわれの社会を健全化することである、そこに目的があるわけなんです。もうここまで発展してきたわが日本とすると、その原点といいますか、経済成長政策の目的意識に立ち返って事を考え直さななければならぬ、そういう時期である。まあ嶋崎さんが新日本元年と、こういうふうに言われますが、まさに私はそういう意味におきましては全く同感であります。このでき上がったパイを基礎にしていかなる国づくりをするか、こういうことになる。そうすると、やはり設備投資主導型の経済というものが、国づくり、福祉といいますか、健全な社会をつくる、それへの努力を中心とした経済運営に移っていかなければならぬ、そうすると、どうしても財政にウェートをかける、そういう方向への考え方というものを定着さしていかなければならぬだろうと、こういうふうに思うのです。そうは申しましても、これは今日のようなこの時点で財政をふくらます、こういうわけにはいきません。しかし、これを克服し、新しい国づくりをどういうふうにするかということになると、財政がやはり主導的な役割りを演ずる、こういうような経済運営にならなければならぬだろう、こういうふうに考えるのです。そして成長、これはもとより考えなければならぬ。しかし、それがもう主軸じゃない。やはりこの健全な社会づくり、社会保障政策を進めなければならぬ、あるいはわれわれの生活環境を整えなければならぬ、あるいは文教諸施設を充実しなければならぬ、まあいろいろの問題がありまするが、そういうわれわれの生活環境、われわれの教育の諸問題、あるいは福祉社会の諸施設、そういうものが整えられる、それだけのとにかく力を持ってきたわが日本である、そういうことでございますので、そういう大きな財政政策の運営の方針におきましても転換が迫られておる時期に来ておる、こういうふうに見ております。
  195. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 少しく技術的になりますけれども、GNPに占める財政の割合、先進諸国に比べてどの程度になっておるか、その中で経常支出、その中でさらに国防費、それから資本支出と振替支出、その他の区分においてどのようになっておるか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  196. 橋口收

    政府委員(橋口收君) GNPに対する政府の財貨サービス購入の割合でございますが、一九七〇年で、日本その他諸外国と比較して申し上げますと、日本におきましては一八・八%でございます。アメリカが三一・三%、イギリスが三三%、西ドイツが三五%、フランスが三四・八%でございます。これは正確に申しますと、財貨サービスの購入の統計のないところがございますから、一般政府総支出という概念でくくって御説明申し上げましたが、これで大体傾向がわかるかと思います。
  197. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 ちょっと内訳を、先ほどの区分において……
  198. 橋口收

    政府委員(橋口收君) お尋ねございましたのは内訳としての経常支出でございますが、日本が八・二%、アメリカが二〇・八%、イギリスが一七・五、西独が一五・九、フランスが一二・一。それから資本支出は日本が五・〇、アメリカが二・七、イギリスが四・八、西ドイツが四・三、フランスが三・二。それから振替支出もたしかおっしゃったと思いますが、振替支出は日本が四・三、アメリカが七・三、イギリスが八・六、西ドイツが一二・七、フランスが一六・七でございます。  なお、日本は最近、先ほど大臣からお答えがございましたように、財政の性格も変わってまいってきておりますので、御参考までに一九七四年度の計数を申し上げますと、経常支出が九・三、資本支出が六・〇というふうに上がってまいってきております。それから振替支出が六・〇、これは四・三から六・〇ということで一・七%向上いたしております。で、一般政府総支出の対GNPに対する割合は二二・五というふうに上がってまいってきております。これはやや蛇足になりますが、経済に占める財政の割合は、実績で見ますと、民間経済の勢いが強いという関係等もありまして、実績値と申しますか、決算で見ますと経済に占める財政のウエートは下がっておりますが、経済政策を立案し、経済運営に対して立ち向かう政府の姿勢としては、GNPに対する財貨サービスの購入の割合を上げるということで、まあ一九六〇年代から今日までやってきておりますが、実績で見ますと、先ほど来申し上げておりますように、民力に追いつかないというのが現状であろうかと思います。
  199. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 ただいまの数字を見ますと、やはり日本はチープガバメントであったと、そのなごりがまだ十分残っているということです。そのことが高い経済成長をささえる一つの大きな原因であっただろうと私は思うんです。しかし、この数字を見まして私はつくづく思うのは、資本的な支出はともかくとして、振替支出なりあるいは経常支出なりというようなものを見ますと、まあ全体のその予算の規模が小さい、あるいは財政規模が小さいということにもよるわけでございますけれども、いかにも低い形になっております。それが一つは日本の経済社会の貧しさというものを反映しておるんじゃないか、またそういう不満が強いというふうに思われるんですが、大蔵大臣の意見はいかがですか。
  200. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま数字が述べられましたように、わが国の財政の国民経済に占めるウエートはまあ非常に諸外国に比べて低いんです。これはなぜかと申しますと、諸外国は軍事力のためにかなりの額を投入しておると、わが国はそういう負担がまあ少ない、非常に少ないわけです。そういう点があるし、それからやはりこのチープガバメントに対して、明治以来ずうっとなれきっておるのじゃないかと、こういうふうに思います。いま二兆円減税、まあ二兆円にはなりませんけれども、いわゆる二兆円減税というものが言われておる。これはまあ国民がこいねがっておりますがね。反面においてわが国は諸外国に比べるともう非常に多額の公債を発行すると、こういう状態ですね。公債を発行してまでとにかく減税をせいという国民の声、こういうものがある。つまり租税負担というものに対する認識というものが、これが諸外国と非常に違うところがあるんじゃないかという点も考えられます。  それにいたしましても、まあとにかくそれはそれといたしまして、わが国の財政の国民経済に占めるウェートが少ないわけですから、少ないその中におきましても、公共投資はこれは非常に多いんです。これはもう予算の中における公共投資の額といたしますと、圧倒的にわが日本の比率が高いわけであります。これは金額にいたしますとアメリカに次ぐというわけでありますが、そのアメリカのこの公共投資、あの広大な領域を持つアメリカの全国土に対する公共投資、その額にもう及びつこうとしておる額の第二位でございます。したがって、他の一般経費というものはいかに少ないかとこういうことで、まさしく今日、チープガバメントそのものであると、こういうふうに言っていいと思うんでありまするが、そういう中でありますので、いわゆる振替所得、社会保障諸施設に対する配分は、これは他の諸国に比べると非常に低位にありますが、まあとにかくわが国は、公共投資つまり社会環境の整備なんというのは非常におくれておるものですからね。そっちのほうも国民が整備を急げ急げといって期待をいたしておるわけです。そっちのほうへ金を注ぐ、これもやむを得なかったことであるし、まあ経済の混乱を克服すれば、そのほうにまたかなりのものを投じなけりゃならぬという立場に置かれておりますが、同時に、何とかくふうをいたしまして、振替所得といいますか、社会保障といいますか、そういう方面への努力も精一ぱいしなけりゃならぬ立場に置かれておるわが国であると、かように考えております。
  201. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 まあ、四十九年度予算の規模を見ますと一九・七%と、わりあい縮めたといいながら相当高い伸び率になっておるわけです。それにもかかわりませず、全体的の政府財貨サービス購入で見ますと、一二・九%ということになっております。そういう意味では名目成長率とのからみももちろんありましょうけれども、わりあい妥当なところじゃないかと思うんですが、どうしてそういう関連になるのか、御説明を願いたいと思います。
  202. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 計数の関係でございますから、私が御説明を申し上げたいと思いますが、御承知のように、財貨サービスの購入と一般会計の伸びとは必ずしも突合いたしておりません。一九・七%と申しますのは、昭和四十九年度予算の四十八年度の当初予算に対する伸び率でございます。財貨サービスの購入は、御承知のように、四十八年度の実績見込みに対する四十九年度の伸びでありますから、そういう角度で比較をするということになりますと、四十八年度の補正後のベースに対して、四十九年度の予算の伸び率がどうなっているかということになりますが、それは約一二%でございます。  それからもう一つは、財貨サービスの購入は、中央と地方と両方ございます。さらに中央政府の中でも、一般会計のほかに、特別会計とかあるいは政府関係諸機関等も入っておりますので、計算のベースが異なっております。  それからこれもよく御承知だと思いますが、財貨サービスの購入は、政府が財貨なりサービスを購入して仕事をすると、仕事の量をはかる目盛りでございます。それに対しまして一般会計の予算は振替所得その他移転支出、国債費等も入っておりますから、あるいは食糧管理費のような損失補てんに関する経費も入っておりますから、これは経済に対する影響がほとんどないということで、いわゆる財貨サービスの購入からは除外をいたしております。そういう計算の要素の違いがございますので、一般会計の対当初予算の伸びは一九・七%でございますが、財貨サービスの購入は一四・七となっております。したがいまして、その内訳で申しますと、さらに中央政府、地方政府ございますが、それはこまかくなりますので省略をいたしますが、中央政府の関係のほうの伸び率が低いというのが実際の姿であろうかと思います。
  203. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 国民は案外そういうことを承知をしておりませんので、なるべくよく理解をして、予算の大きさというものが経済と非常に関係を持っておるんだということを、よくPRをしていただきたいという意味でお尋ねをしたわけでございます。  ところで本年の公債発行額でございますけれども、二兆一千六百億、対前年度当初に比べましては千八百億の減ということになっております。しかし異常非常の時代だと大臣言われますけれども、そういう時期にしましては、ちょっと公債の発行額が大き過ぎるというのが私の感じでございますが、予算編成の苦心ももちろんわかりますけれども、いまの段階でどうお考えでございますか。
  204. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 確かに公債の発行額はこれはまあ多過ぎます。これは諸外国に比べましても、これだけの多額の公債を発行しておるという国はもう珍しいです。これはなぜこういうことになったか、私は、四十九年度の予算を編成する作業というものはもう秋口から始まっておって、とにかく公債の発行額はもう四十八年度に比べると多少ふえてもやむを得ないんじゃないか、また、せめて国家財政の中における依存度だけ下げることを考えようじゃないかというような考えだったんです。だったんでありますが、考えてみていかにも多過ぎる。そこで私は率、依存度ばかりじゃなくて、額まで減らしたいというので、精一ぱいの努力をして今日御提案を申し上げている予算案になったわけでありますが、その過程におきましては、いわゆる二兆円減税という問題があったわけです。この二兆円減税をかりに半分ぐらいにしちゃうというようなことにいたしますれば、かなり国債の発行額も減るわけなんですが、これももうずいぶん国民も期待していることであり、そういうわけにもいかぬということで、まあ公債発行額はいま御提案のような額というふうになったわけですが、これは一挙にはそう簡単にはまいりません、流れがありますから。しかしだんだんとこれを縮減していかなきゃならぬと、こういうふうに考えておる。これはちゃんとした経済運営さえやっていけばそうできるんです。現に、昭和四十一年度のとき多額な公債を初めて発行すると、そういうことになったわけでありますが、逐次縮減いたしまして、数年間の間に公債の発行はもうしなくてもいいかとも思われるくらいな状態まできたわけなんですが、今後は財政の運営その節度を失わず、今日のような多額な公債を発行するという事態をだんだんと是正していきたいと、かように考えております。
  205. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 まあぜひとも、年度内にでも極力公債の発行額を縮小するように、今後のいろんな経済運用とのからみもありましょうけれども、御努力をされ、望むらくは一両年中にこれをゼロにするんだというぐらいの気持ちでひとつぜひ運営をいたしたいと思います。  そこで関連して、お話が出ましたからお伺いしますが、まあ一兆四千五百億の大幅所得税減税を今度行ないました。私は、従来の国際的なバランス等から考えてみて、ほんとうにこういうでかい減税をやらなきゃならぬのかどうかという疑問すら抱くほどの大幅減税だろうと思います。各国の課税最低限度はどういうことになっておるのか、御説明願いたいと思います。
  206. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 日本は御存じのように百五十万七千円、これは夫婦と子供二人のサラリーマンの場合でございますが、それと同じ家族構成の場合、アメリカが四千三百ドルになります。これを円に直してみますと大体百三十万ぐらい。それからイギリスは、ことしの数字はまだちょっと正確にわかりませんが、七三年の数字で千百七十五ポンドでございますから、約八十万ぐらいでございます。西ドイツが八千マルク強、八千八十マルクということでございますので、八十七万円。フランスが二万七百フランでございますから、約百二十五万円ぐらいということになろうかと思います。
  207. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 社会保険料負担額を合わせた租税負担率というのはどういうぐあいになっておりましょうか。
  208. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 日本の場合、四十九年度で租税のほうが現在の見通しでは一九・九%、社会保険負担が五・四%、したがって、合わしたところで二五・三という見込みでおります。
  209. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 最後の合計の数字だけでいいです。
  210. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) アメリカは日本の四十六年に対応します数字が三六・〇、イギリスが四六・三、西ドイツが四五・一、フランスは四七・一でございます。世界で一番この率の高いのはスウェーデンでございまして、五七・六%ということになっております。
  211. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 ただいまの数字から見ましても、日本がチープガバメントであるというのは、相当税金が安いということにからまってきておると思うんです。笑い話じゃありませんけれども、国家公務員の上級職の試験に、世界各国で、左記の国で一番税金の高い国はどこかといって上級職の試験に出したら、全部日本にまるをつけたという経験があるわけでございます。どうもそういうことがあまり認識をされてない。またチープガバメントであるということが、先ほど来いろんな議論がありましたように、日本の豊かさというものと非常に微妙に関係をしてきておる。そういう意味で、今後の財政運用について大蔵大臣の御意見を承りたい。
  212. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これから先になりますと、わが国といたしましては、この経済成長発展の成果を踏まえてわれわれの生活環境を整えるとかあるいは教育を充実するとか、まあいろいろな国内の建設ということに主力を注がなきゃならぬ、社会保障もとよりでございます。そういうことになりますと、やはり国家資金の配分におきましては、逐次——これは急にはいきません、逐次財政にウエートを置く、こういう方向をとらなければならない、こういうふうに思うわけであります。その財政をどういうふうにまた配分するかということになりますと、いろいろ問題がありまするけれども、わが国のおくれておるという社会福祉の諸問題、こういう問題はまず優先的に取り上げられなければならぬ問題だろう。また同時に、われわれの生活環境というものは住宅その他において非常に立ちおくれておる、そういう問題を取り上げなければならぬ。また公害、これもわが日本は公害世界一だ、こういうふうに言われますが、こういう問題の克服、こういうものにも取り組まなければならぬだろう、また長い目の問題とすると、教育諸施設、そういう問題も重要になってくるであろう、こういうふうに思いますが、とにかくそういうことを考えまするときに、やはりいままでのような二〇%内外というような租税負担率、これじゃとうていやっていけません。やっぱりこの比率というものは逐次上がっていかざるを得ない、そういうことにつきましての国民への理解ですね、これに相当力を入れなければならないのじゃないか、そういうふうに考えます。
  213. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 直間比率というのが問題になりますが、いま七〇対三〇というような形になっていると思うのです。間接税の比重を高めるといっても、付加価値税の問題はなかなかむずかしい問題があります。私、たまたま手元にありますが、「健康のため吸いすぎに注意しましょう」と書いたたばこを売っております。百円でございます。諸外国のたばこの販売定価、従来の消費者物価との対比、ちょっとその点について御説明願いたい。
  214. 戸田嘉徳

    政府委員(戸田嘉徳君) お答えいたします。  諸外国のたばこ、これはちょっといろんな銘柄がございますので、その国で上位五銘柄、よく売れている五銘柄の平均価格を申し上げますと、アメリカでは「ウィンストン」以下五銘柄でございますが、円に換算いたしまして二百円から二百十四円、これはニューヨーク州の小売り価格でございます。それから、イギリスでは「プレイヤーズNo.6」と、いうやつ以下五銘柄ですが、平均で大体百五十五円ということに相なります。それから、西ドイツは「エッチ・ビー」以下五銘柄でございますが、平均で二百四十二円というように相なります。それからフランスは「ゴロワーズ」、「カポラル」以下五銘柄でございますが、「ゴロワーズ」という非常に安いのが入っておりますが、平均で百十三円というように相なります。  日本の場合は、これに比較しまして、「ハイライト」、「セブンスター」、「チェリー」、「エコー」、「ホープ」というようなところが上位五銘柄でございます。これ平均いたしますと八十七円、かように相なります。
  215. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 まあ私は、ことしたばこの値段を上げると予算にも何にも書いてあるわけじゃないし、そんなこと議論するというんじゃないんですが、直間比率を直税の減税だけでいつまでもやっていこうというと、先ほど来の御指摘のような問題があります。私は、この百円、いつまでも百円であっていいんだろうかという疑問を持つわけでございますが、大蔵大臣の御意見を。
  216. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も嶋崎さん同様、ことしこういう際にたばこの値上げを考えるというような気持ちは全然ありませんけれども、これはやはり、これからの先々の財政ということを考えても、あるいはたばこが注意書きが載せられるようなものであるというようなことも考えて、これはかなり値上げ問題というものについて考えていいんじゃないか、それはタイミングが大事でございまするが、そういうふうに考えております。
  217. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 最後に、公益法人の課税についてちょっとお伺いいたしたいと思いますが、公益法人の収益事業に対する課税はどういうことになっておりますか。
  218. 吉田冨士雄

    政府委員吉田冨士雄君) 公益法人の場合には、収益事業を持っておりました場合には、その収益事業につきまして課税を行なっております。それ以外の場合には非課税でございます。その課税の実施方法としては、収益事業をつかみまして、できるだけ適正に課税するようにつとめております。
  219. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 いろいろな議論は時間がありませんから、はしょって言いますが、公益事業の中の出版業というのは収益事業に該当しますか。
  220. 吉田冨士雄

    政府委員吉田冨士雄君) 出版業は収益事業の中に該当して列挙されておりますが、その際、一部の条件がある場合には非課税になる場合がございます。
  221. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私は、この非課税の規定を読んでみますと、「(特定の資格を有する者を会員とする法人がその会報その他これに準ずる出版物を主として会員に配布するために行なうもの及び学術、慈善その他公益を目的とする法人がその目的を達成するため会報をもっぱらその会員に配布するために行なうものを除く。)」と書いてありますが、そのとおりでございますか。
  222. 吉田冨士雄

    政府委員吉田冨士雄君) 前段はおっしゃるとおりでございまして、同窓会の会報等が適用となります。  後段につきましては、政党の機関紙その他が適用になるわけですが、「会報をもっぱらその会員に配布するために行なうものを除く。」と書いてございます。
  223. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 「赤旗」という新聞がありますけれども、「赤旗」の日曜版は何部ぐらい発行され、通常日々配布されるものは何部ぐらい配布されるか。申告はされてありますか。
  224. 吉田冨士雄

    政府委員吉田冨士雄君) 私の手もとには四十七年十月現在で時事通信の「現代ジャーナリズム」というのが一番新しい公刊されている発行部数でございますが、それによりますと、「赤旗」は、日刊で五十五万部、それから日曜版は二百万部でございます。
  225. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 二百万部なり、あるいは二百二十万部なり、二百五十万部なりといわれているものを——私実は「赤旗」を愛読をしておる者の一人でございます。電話帳を調べますと、電話帳の一ページ半にわたって販売所が書いてあります。朝日新聞の倍あります。——それは冗談でございますけれども、蛇足でございますけれども、そういう場合に、この規定はどういうぐあいに当てはまりますか。
  226. 吉田冨士雄

    政府委員吉田冨士雄君) 実は、先ほど御指摘の出版業の政令につきましては経緯がございまして、昭和四十一年に施行令が改正になっておりまして、それまでは、「赤旗」ではございませんが、ほかの政党紙の機関紙が課税になっておりましたが、先ほどお読みになりました政令改正によりまして、これが課税から落ちておりまして、非課税になっております。その経緯といたしましては、政党機関紙がもっぱら会員に配布するために出版されるという認識のもとに立って、その当時以来非課税となっているわけでございます。
  227. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 どう見ても、そういう読み方は私はできないと思いますが、大蔵大臣、この私の読み上げた条文等の関連で、どうお考えになりますか。
  228. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) あまり詳しくありませんけれども、いま応答を伺っておりますと、まあ「赤旗」が日曜版を二百万部ですか、二百万部の「赤旗」を一体どういうふうに販売しておるんだろうか、こういうことが疑問になります。これが、党員が申し込みをいたしまして購読しておるものとは思われない。どうも、駅頭で立ち売りをいたしておりますとか、そういうような形で売っておるんじゃないか。そうなりますと、これはいま政府委員から読み上げました通牒の精神と反するようなことになるんじゃないか、こういうふうにも思われます。これは、よく私も国税庁に実態を調査してもらいまして、課税すべきものであれば課税する、しなくて済まされるものであればそれはしない。これはけじめをはっきりさせたいと思います。
  229. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私は、この条文からいったら、当然、税金は自主申告をするのが普通でございます。どういうぐあいになっておるのか、明らかにしていただきたいと思います。  私の質問をこれで終わります。(拍手)
  230. 吉武恵市

    ○理事(吉武恵市君) これにて嶋崎君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  231. 吉武恵市

    ○理事(吉武恵市君) 藤原君。(拍手)
  232. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 私は、公明党を代表いたしまして、予算三案並びに財政投融資計画に対する質疑を行ないます。  最初に政治姿勢といいますか、最近の政治の問題につきまして若干質問したいと思います。議会制民主主義におきましての根本ともなります、民主政治の根底ともなります選挙のことについてでございますが、事前の運動等につきましては相当法的にもきびしくこれが規制されておるわけであります。しかし、案外投票したあとの、開票後における問題につきましても、最近はいろいろ新聞をにぎわわせる事件が起きております。これ、自治省にお願いいたしまして、事例についてちょっとまとめていただいたわけでありますが、最初に自治大臣から、数年の間に起きました事例について、二、三ちょっと御報告いただきたいと思います。
  233. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 事務当局から……。
  234. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 御指摘の開票事務等に関しても若干問題がないわけではございませんが、二、三の事例を申し上げてみたいと存じます。  最近調べましたところでは、四十七年の参議院議員の選挙の当選無効確認事件がございますが、これでは得票中に二十票以上の無効投票があった。また、無効投票とされたもののうちに、原告の得票とすべきものが二十票以上あるというようなことで、四十八年の十月一日の東京高裁にかかったわけでございますが、これはいろいろその後実情を調べてみますと、実態の認識に問題があったようでございまして、訴えの取り下げによって終局をいたしております。それからその前では、四十六年に北海道の知内町でございますか、議会議員の選挙事件がございました。有効に行なわれた不在投票が、投票所の閉鎖時刻までに投票管理者に送致をされなかった。まあ不要になったというようなつもりでございましょうか、これらの投票が焼却をされたといったようなことがございまして、札幌高裁にかかった事件がございますが、この点につきましては、選挙の効力を無効と判断した町及び選管の決定、裁決を認めたことによりまして、原告は上告をしなくて訴えを取り下げたというような事例でございます。前にさかのぼるとまだ数件ございますが、一応最近の二例だけを申し上げた次第でございます。
  235. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 まあ、この選挙、特に開票時においての問題というのは、これは神聖なもので私どももほんとうに信頼しておりまして、事故なんというのはあり得ないものという、こういう考え方でおるわけでありますけれども、実際いま二、三報告ありましたように、投票上の問題もございます。それから四十六年の岩手県の江刺の市長選挙のときには、市の職員が投票用紙を盗んで開票中に水増したというような、こんなちょっと考えられないような事件も起きているわけであります。  私は過去のことをどうこう言うわけではありませんけれども、これは決して見過ごしてはならない大きな問題であるとこう思うのですが、大臣、どうでしょうか。
  236. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 民主政治の発展のために選挙がきわめて公正に行なわれなければならぬということは申し上げるまでもございません。そういったことから考えてみまして、選挙の投票あるいは開票の管理というものはきわめて厳格に行なわれなければならないということは申し上げるまでもないのでございまして、私は、比較的厳正に総体としては行なわれてきておる、こう考えておりまするけれども、いま選挙部長からお答えを申し上げましたように、時にそういった若干のきわめて不都合な事件が起きておるということはまことに遺憾千万なことでありまして、今後ともそういう事態の起こらないように極力われわれといたしましても配慮もいたし、また、選挙管理に当たっておりまする選挙管理委員会の指導にもひとつできるだけの努力をしてみたい、かように存じておるところであります。
  237. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 これは自治省の事例の中にはないんですけれども、昭和四十二年の四月に宮城県の名取市の市長選挙がありまして、このときもやはり非常に疑いが持たれたわけでありますが、これはいま大臣の決意ではございますが、二度と再びこんなことが起きてはならぬという、神聖なものだという観点から私申し上げておるわけでございまして、重大な決意で臨むということでありますから、それはそれで了といたします。けれども、この名取の問題をずっと考えてみますと、想像できないようなことが多々あるわけであります。  一つは、開票時におきまして梱包が、まあ次の選挙を行なうまで四年間あるわけでありますけれども、途中でそれがあけられたのではないかという疑いも持たれるような事実がある。ちゃんと名前の書いてあるところが字がずれておったり、セロテープが、一本のセロテープで全部くくったはずのものが二本のテープで、途中から二本のテープで二種類になって継ぎ目をとじておる。それから、とじたところに必ず判を押すわけですけれども、この判がずれておるという、こういうことで、何者かによってあけてはならない封印があけられたんじゃないかという、こういう非常に疑義の持たれる実態があったわけであります。こういうことになぜなったのかということですが、実際ある候補が当然これは当選したという、そういうことで立ち会い人の人たちが当選の合い図をしておりましたところが、実は間もなくこれが逆転になったということから事が起きまして、こんなぎりぎりになって、勝敗がはっきりしておったものが、途中からこんなすりかわるなんということはあるはずがない、こういう疑義からいろんな問題が発生し、いろんな議論、調査が始まったわけでありますが、この詳しいいろんな問題については、これは今後いろんな立場の方が明らかにすることだろうと私は思います。けれども、ここで見過ごしてはならないことは、開票事務の流れの中に、どう見てもこれではまずいなと思う点が二、三あるわけであります。こういう点をしっかり銘記していただきませんと、三千近い市町村の中のことでありますから、今後どこにこういうようなごとが起きないとも限らない。開票のこういう事務的なことにつきましてはあまり詳しい規定がないようでございますので、厳格に、こういう問題について、起こったことについて、その分析をし、そしてそれを基として、同じ轍を踏まないような対策を講ずることが必要だということで私申し上げているわけであります。  名取市におきます集計事務は、開票係がおりまして、開票したものが計算係で計算され、それが集計係で集計し、集計したものを、今度は立ち会い人、それから開票管理者というところで最終的な確認の判が押されるようになっておりまして、これ、実は集計係というのは重要な立場にあるわけでありますけれども、これがまあ計算係からすぐ集計の係に行き、ここで集計して、だれが幾らというものがまとめられてしまう。ここではっきりまとめたものが、こちらのほうへ行くときには、これは確認というだけのことでありますから、実はこの集計が非常に重要な位置を占める、これが早くにこの位置に来ている。ほかの市の場合ですと、計算を二カ所でやりまして、それからペーパーカウンターを通りまして、立ち会い人で印を確認しまして、確認したものが開票管理者を通って、初めて集計係を通って、ここで票の確定というものがなされる。これが正常な流れであろうと思うんですけれども、名取の場合はそうじゃなくて、計算係から集計係、そこで集計しますと、これはだれが幾らという五十束にしまして、それで確定するわけでありますから、それが立ち会い人や開票管理者のところに行くときには、これはただ確認ということだけのことでありますから、その流れの上において大きな相違がある。ここに一つの大きなあやまちをおかす原因があるのではないか。  で、開票終了後に、選挙長、集計係長や主任の方々、また開票立ち会い人の方が突然三十分いなくなったとか、こういう疑義の持たれるような行動もあったわけでありますし、その三人が消えて、三十分いなくなったあとに、得票数の発表があって、先ほどもう勝ったと思ったのが、これは逆転するような形になったというこういうことであります。当然だれが見ても勝ったと思った人が逆になったという、こういういきさつ等からいたしまして、この集計係の——集計係というのは非常に重要な地位を占めるわけですけれども、この集計係に、市の三役——収入役というような立場の人が責任者になって十数年ずっとやっておった。こういうところにもまた疑義を持たれる点がある。やっぱり事件の起きるところというのはそういう起きるような素地があるということ、まあどこからかんがみましても、これははっきり言えるというこういうことが、何の規定もなく今日までなされておった。  まあ、その後に、これは当然変えられたことだと思いますけれども、こういう集計はどうするか、それから開票管理者はどうするか、立ち会い人はどうするかという、そういうことについてはいろんな規定はあるんですけれども、こういう一つの一貫した流れといいますか、こういうものについての規定といいますか、厳格なものがない。こういうところに一つの大きな問題があったのではないかと思います。こんなことは二度と起きてはならぬことであります。それだけに私はこの席をかりて、大臣にもこの実態というものをよく知っていただき、二度と再びこんなことの起きないように、厳重な措置をとっていただきたいということで、ちょっと見てください。(資料を示す)  先ほど決意のほどはお伺いしたんですけれども、具体的にそういう流れの上においてということと、それから管理事務に携わる者についての資格ということ、こういう規定をはっきりいたしませんとならないという、こういう具体的な問題について、今日まで報告を受けたことがあるかどうかわかりませんけれども、何かそういうことについてお考えや、また御検討なさったことがございますでしょうか。
  238. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) ただいま昭和四十二年の名取市の市長選挙のことに関連をしてのお尋ねでもあり、また当時の関係の写真などもいま拝見をさせていただいたわけであります。先ほどもお答えを申し上げましたとおり、いやしくも選挙の結果について国民の疑惑を招くような開票が行なわれるということは、全く許すことのできない事柄でありまして、自治省といたしましては、そういった点はかなりきびしい配慮のもとに指導をいたしておるつもりでございますけれども、何といいましても、たくさんの人間の中で何とかそういった非違をあえてしょうというような人間がおりますると、なかなかこれは防ぐことは容易ではないというように思います。しかし、いま御指摘もございましたように、そういった過去のいろいろ非違の事例というものを私どもは十分検討をいたしまして、再びそういうことが繰り返されることのないようにしなければならぬ、かように考えておるところでございます。  いま御指摘のございました、たとえば計算係から集計係へ参るといったような筋道が、場所によって違うといういま御指摘のようでございますが、それらの点につきましては、選挙部長からお答えをいたさせますが、いずれにいたしましても、そういった点は今後十分ひとつわれわれといたしましては注意をいたしたいと思いまするし、なおそこに従事いたしまする人の問題、たとえばいまおっしゃったような助役であるとか収入役というようないわば比較的政治的な立場におるような者がそういう業務に携わるということは、時に非違を出す原因にもなりかねないというような感じもいたすわけでございます。いずれにいたしましても、そういう点は今後の指導上に十分ひとつ配慮をいたしてまいるようにいたしたいと存じます。
  239. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) ただいま御指摘の点は非常に重大な問題でございますが、過去におきましても、実はたとえば前々回の東京都議選のときに、江東区で開票の集計ミスというのがございましたり、そういうこともございまして、東京都あたりでも、その際委員会等をつくって十分検討いたしたわけでございますが、私どももそれと一緒になって、どういった流れ、どういったチェックの方法がいいかということを検討いたしまして、そういった結果、全国の市町村の選管等に対しましても十分そういった点を検討をし、ミスの起こらないようにということをたびたび連絡もいたしておるわけでございます。ただいままた名取市の例について御指摘をいただいたわけでございますが、そういった点、さらに私どもも検討いたします。  なお、選挙に対しては私ども一々チェックノートみたいなものも配付をいたしまして、粗漏のないように指導もしておるわけでございますが、いまの票の流れ、あるいはまた人間の資格、そういったこと等についても今後とも十分に留意をいたしまして指導いたしてまいりたいと考えております。
  240. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 地方議会における選挙のことにつきましては、四十六年五月十三日の衆議院の公選の特別委員会で、当時の秋田自治大臣が地方選管の強化をはからなければならないということを述べたことがあるんですが、   〔理事吉武恵市君退席一委員長着席〕 これは自治省でも相当この問題については真剣に取り組んでいらっしゃったんじゃないかと思うんですけれども、機構のこと、それから機能のこと、具体的なそういう問題について取り組んでまいりましたことがあったら御答弁いただきたいと思います。
  241. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 選管の機構を充実さして選挙の管理執行を適正に持っていくということは、これは非常に重大なことでございますので、私どももそういった点については職員の充実等についてかねがね配慮をするように連絡をしておるわけでございます。ただ、何せ御承知のように、選挙の事務が、かねがねもうそれぞれございますけれども、選挙時において膨大に拡充をするわけでございます。そういったこと等もございまして、実際の執行にあたりましては、それぞれの市町村の他課の職員等の応援を頼むとか、そういった執行体制というものを整えてやっておるわけでございます。しかしながら、人手だけにたよるということも問題もございますので、それ以外に機械化、合理化といったようなことも考えておりまして、たとえば最近非常に新しい正確な計数機等もできておりますので、そういったものの導入を選挙の執行経費等から払えるようにするとかいったようなこと等もあわせまして、執行体制が整備されるように努力をいたしておる次第でございます。
  242. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この問題につきましては、投票用紙すりかえ事件ですね、名取の。この問題につきましては仙台の検察審査会で、昨年、不起訴は不相当として仙台地検で再捜査することになったわけでありますけれども、不起訴になった事情につきまして御説明いただきたいと思います。
  243. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 具体的の事件でございますから、刑事局長からお答えさせます。
  244. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) この名取市の市長選挙、昭和四十二年の四月の選挙、それから市会議員の四十三年一月十八日の選挙、二つの選挙につきまして先ほど御指摘のように、それから五年たちました四十七年の二月二十三日に市長選で落選をされました丹野さんから告発がございまして、検察庁におきましては約一年間にわたりまして捜査をいたしましたが、いずれにつきましてもその告発の事実は、主たるものは、名取市長の選挙の際におきまして、開票所において選挙長丹野氏が作成権限を有する選挙録に、ほんとうは荘司候補の得票数が丹野候補のそれよりも少ないのに、当選人荘司庄九郎七千八百五十七票、丹野富男七千六百四十一票と虚偽の記入をして虚偽公文書を作成したということが中心の告発事実でございます。市議選につきましても、投票の増減を行なって選挙録に虚偽の記載をしたということが中心の告発でございますが、これにつきまして仙台の検察庁で捜査をいたしまして、昭和四十八年の三月二十二日、約一年たちました後に、いずれも犯罪の嫌疑がない、証拠が不十分であるということで不起訴になっております。  その理由といたしましては、捜査をいたしました結果、検察庁の調査によりますると、先ほど御指摘の候補者得票数の集計表に記入されておる両候補者の各投票数と選挙録、いま問題になっております選挙録の得票数とが合致しておるということ、そして、その集計するにあたりましては、第一計算係、第二計算係、速報係と、三つの段階でチェックをいたしまして、それぞれそれを検算をして、お互いに食い違いがなかったというような——捜査の結果、選挙録の記載がうそであるということを立証する証拠がないということが中心で、嫌疑なしということになったのでございます。これにつきましては、その後、告発人のほうから仙台の検察審査会に不服の申し立てがございまして、昭和四十八年の十一月二十九日に検察審査会で、この虚偽公文書作成罪についての捜査は不十分である、不起訴は不当であるという議決がなされましたので、仙台の検察庁におきましては、主任検事を刑事部長に切りかえまして、昭和四十八年十二月六日から、自信を持って不起訴にした事件ではございますけれども、検察審査会の議決を尊重いたしまして、あらためて捜査をするということで、現在さらにあらためて証拠の検討を行なう、いわゆる捜査中であるということが現状でございます。
  245. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 いろいろ議論のあるところですが、時間もございませんので、私は次の機会に譲りたいと思いますけれども、冒頭申し上げたように、これは二度と起きてはならぬ、また、こんな疑いを持たれるだけでもたいへんなことでありますので、この問題につきましては、ひとつはっきりさしていただきたい。これは私は心から願うわけですけれども、法務大臣ひとつ決意のほどをお聞かせいただきたい。
  246. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お話しのように、厳正に捜査を進めて適当な結果を出すように努力をいたしてまいります。
  247. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 次に移りますが、北海道の石狩湾の新港地開発のことにつきまして概況、そしてまた経緯、また最近の状況について御報告いただきたいと思います。
  248. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 石狩湾新港地域の総合開発というのは北海道第三期総合開発計画における大事なプロジェクトの一つでございまして、北海道開発庁といたしましては昭和四十七年の八月に基本計画を作成をいたしまして、大体の開発の構想を明らかにいたしたのであります。この基本計画は御承知のとおり、今日北海道開発の中枢的な役割りを果たしております札幌・小樽圏における生産及び流通機能の強化拡充をはかるということを目途にいたしまして、石狩湾沿岸の約三千ヘクタールめ地域に流通港湾を核とする流通基地を建設をいたし、あわせて消費財を中心とする都市型工業の開発を計画的に推進しようとするものであります。この計画の中心となる新港湾は開発地域のほぼ中央に建設をいたし、流通地区は水際線に近接して配置をいたし、さらにその両側に工業地区を配置するということにいたしております。なおまた、開発地区における既存の海岸保安林及び耕地防風林につきましては、将来とも緑地としてその保全につとめてまいるとともに、新たな緑地も造成し、良好な環境の保全をはかるということに配慮をいたしておるわけであります。この石狩湾新港地域の開発は、六十年代に及ぶ長期かつ広範多岐にわたるものでありますので、さきに開発庁が作成をいたしました基本計画の具体的な展開にあたりましては、今後における経済社会情勢の変化に応じて弾力的に対処していくという考えでございます。
  249. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 北海道の三期計画の三本柱の一つとして、大きな事業であることはいまお話がございましたが、緑地帯をつくって公害の緩衝地帯をつくるとかというお話がございましたけれども、軽工業団地も一応お考えの中にあるわけですけれども、札幌、小樽などの都市から参ります企業というのは、公害企業が大体ここに集約されるような形になるんじゃないか、こういうことに対して公害ということが一つ懸念されることと、もう一つは、石狩湾周辺は気象的に札幌の北東部に非常に大きな影響力を持っているということで、大規模団地の計画がずっと張りつけが大体考えられておるわけですけれども、ここに公害の企業が参りますと、非常に大きな影響力が出るんじゃないか、また近隣の市町村にも公害規制というものをしっかり考えないと、あとで取り返しのつかないことになるんではないかという、こういう住宅環境に対する考え方等についても十分な配慮がなければならない、このように考えるわけでありまして、現在の大きな経済変動の中にありまして、そういう点を十分にお考えになって計画を進めているのかどうかということが一つ大きな問題であるわけですが、その点については一つ一つこれからお話をしていきたいと思うんですが、農林省にちょっとお伺いいたします。新港計画の中に、これはできますと中心的な地域になるわけでありますが、現在明治乳業に貸し付けておる土地があるわけですが、ここの経過や現状について御説明いただきたいと思います。
  250. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府委員からお答えいたさせます。
  251. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 御指摘の石狩町にございます農林省が持っておりまして明治乳業に貸しております畑は、かつて、いま札幌市に入っております旧天塩町が石狩町に飛び地として持っておった土地、そこを明治乳業が畑として使用していたということでございまして、農地改革のときに、自作農創設特別措置法によりまして不在地主ということで買収されたわけでございます。御存じのように、買収されますと、国が原始取得するわけでございますけれども、その上にあります使用収益権は、その買収の時期に設定されたものとみなされるということで、自後、国有地に対する耕作者というかっこうで明治乳業に使用さしていると、こういうふうなことで現在に至っているわけでございます。そして、特別会計の国有財産管理規定に基づきまして、二十五年四月一日に文書契約にして、そして毎年契約を更新する中で現状に及んでいると、こういうふうなことでございます。まあ、現在の使用状況は、クローバー等を植栽して飼料畑ということになっております。
  252. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この土地は、いまのお話ですと使っているようなお話のようでありますが、実際、ここの関係者の——関係といいますか、農業委員会や携わる方々にお聞きしますと、実際は、ここ数年は使っていないというのが現状のようなんです。道のほうから、そういう使っているという報告があったというようなことでございますけれども。しかも、これは所有地という——写真ありますけれども、看板を立てておった。いまお聞きしますと、また経緯からいたしまして当然これは所有地なんということはとんでもないことでありますが、こういうことについて明確にいたしませんと、現在はあまり町の中心でもございませんからあれですが、やがては、新港ができますと中心地になりますし、相当な評価がなされておるわけであります。やはり、そういう不信感を抱かせるようなことではならないと、こういうように私は思うんであります。当然、これは、石狩町でも札幌でも、ここの使用についてはいろいろ考えがあるようですけれども、農林省の土地でありますから、当然、これは会社に払い下げるなんということは考えられないことだと思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  253. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 経過はいま政府委員からお答えいたしましたとおりのようでありますが、お話のございますことでありますから、なお調べてみます。
  254. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 これは、石狩町では、非常に土地のない町でもありますので、将来、学校を建てたいとか、いろいろな計画——まだこれは実際的に具体化したものじゃございませんけれども、お考えがあるようなんです。こういうことからいいまして、自治体で使用目的というものがはっきり設定されますと、当然、地方公共団体に払い下げるようになるだろうと思うんですけれども、その点はそれでよろしゅうございますね。
  255. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 先生の御指摘は、国が持っております農地について不要地認定をして公共団体に売り払ってはどうかと、また、そういう場合の手続はどういうことだと、こういう御質問だと思うわけでございますが、先ほど先生御指摘のような使用の状況というものについては、われわれなお調査したいと思っておりますが、いずれにいたしましても、農地法によりまして不要地認定をいたします場合には、それが公用なり公共用の具体的な計画が立てられていることが一つ前提になるわけでございます。そして、また、現在の賃貸借契約の相手方になっております明治乳業との間の離作の合意というようなことも必要でございます。さらには、旧所有者でございます札幌市の転用同意が必要でございます。こういったような条件が整いました場合に、国は耕作者と合意解約の上で、旧所有者である札幌市に時価の十分の七という、七割という例の価格で売り払うことができるわけでございますが、もし札幌市において買い受けの希望がないということで石狩町が直接買うというようなことに相なりますと、このときは時価をもって売り払いすると、こういうふうな手続に相なるわけでございます。
  256. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大蔵大臣、いまお話がありましたように、条件さえ整えば当然地方自治体に払い下げになる、こういうことでよろしゅうございますね。
  257. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 農林大臣、農林省から申し出があれば、それはおそらく適正なものであろうと思いますが、適正なものでありますれば、それはもう大蔵省といたしましては、農林省の御意見を尊重いたします。
  258. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それから、開発庁長官、これだけの大きな事業ですから、いろんな問題が起きるだろうと思いますけれども、この開発計画を進めるにあたりまして心がけなければならないことは一体何でしょうか。
  259. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 先ほどお答え申し上げましたが、この石狩湾の新港開発計画というのは、いままで全く何もないようなところに港湾をつくり、またその後背地に軽工業団地というようなものもつくる、さらにはそれらの地域の開発に従事する人のための住宅団地なども適正に配置をしようというようなことに相なっておるのであります。しかも、この場所が小樽市とそれから石狩町、札幌市の三市町村にまたがっており、各市町村ごとに若干開発計画に対する考え方も違っておるというような事情もあるようでございます。さらにはまた、先ほど藤原議員もちょっと御指摘になりましたが、そういった全く何もない所にこれからいろいろな施設をつくるということになりますので、あるいは地域の者は、工業開発が行なわれれば公害等によって今日までのまことにきれいな地帯が汚染をされはしないかというような懸念をいたしておるということも、私ども当然考えておかなければなりませんので、そういったことも今後の計画を進めていく上においては十分配慮をいたしていかなければならないのではないかと。  いずれにいたしましても、なかなか多くの問題が今後起こるであろうということが予想されるわけでございますので、そういったことにつきましては、この開発は主として今後第三セクターというものがつくられまして、これによって主たる事業は行なってもらうということにはなりますけれども、当然、関係地方公共団体は道路その他の関係においては十分配慮をしていかなければならぬというような問題等もございますが、開発庁といたしましては、そういった点、総体としてこれらの仕事が円滑に、しかも地域住民の生活がこれによっておかされるということのないように、できるだけ十分な配慮を加えてまいりたいと考えておる次第でございます。
  260. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この開発計画が進められる中で三千ヘクタールの土地が先行取得されておるわけでありますが、この買収の状況と、また未買収の土地等について御報告いただきたいと思います。
  261. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) お答えいたします。  ただいま大臣から、対象工業基地面積といたしまして約三千ヘクタールと御説明ございましたが、この三千ヘクタールのうちに防風林等の面積もございますから、それらを控除いたしました買収対象面積は千四百五十六ヘクタールでございます。で、いままで道において先行買収いたしました実績は千三百七十七ヘクタールでございますから、買収率は九四%、未買収地は八十一ヘクタール、こういう数字に相なっております。
  262. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 先ほど大臣からお話がありましたように、地域開発の中で忘れてはならないのは、やっぱりこの地域住民の立場も、これは忘れてはならないことだというお話がございました。これだけの大きな事業ですから、いろんな立場の方もいらっしゃるわけなんでありますが、いま大体九四%ですか、先行取得したということでありますけれども、この中に河本さんという方がまだ未買収でここにいらっしゃるはずですけれども、この件については報告を受けておりますか。
  263. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 御指摘の河本さんの土地につきましては、一部買収済みがあります。買収済みは四万五千六百二十五平米でございますが、なお家族の方々についての未買収地が合わせまして約五万平米まだ残っております。
  264. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この河本さん夫婦はこの未買収地に住んでいることを報告を受けておりますか。
  265. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 私がただいま手元にいたしております資料によりますと、河本さん御主人は現在札幌に住んでおる。それからその妻の河本さんはやはり同じところに住んでおると。それから子供さんは青森県のほうに住んでおると、私の手元の資料にはそうなっておりますが、なおそれ以上のこと、確定的なことは、ただいま申し上げるだけの資料を持ち合わしておりません。
  266. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣、この河本さんは御夫婦で未買収の土地に住んでおるんです。これは住民票もあります。私も実は会ってまいりましたけれども、実際住んでおるのです。で、これは、前お住みになっていたところから、作業所といいますか、物置きといいますか、かまぼこ型のところに去年の暮れから移っておるのですけれども、そこで夫婦で住んでいらっしゃるんです。どこからどういう報告があったか知れませんけれども、札幌にということでは決してないんです。住んでいらっしゃる。ここで問題なのは、この方は絶対もうここからは動かぬという、こういう主義、イデオロギーか何かで云々しているのじゃございませんで、明治十八年ですか、入植いたしまして、三代になるわけです。それで、自分は五十五、六になって、ここから自分が離れてもいますぐに生活のめどが立たないし、まあ五、六年の間ここで農業を営ましてもらいたいというのが、この河本さんの心情でありまして、単に感傷的になっているんじゃなくて、実際に自分の生活のこれからのことを考えると、農業しか自分の生きる道はないという、しかし、いつまでもということじゃないんだということで、十町歩のうち五町歩は売りまして、五町歩だけでそこに生活しておるわけです。ここで、こういう方に対して、先ほど大臣お話にもありましたように、やはりこういう方々に対しましても十分な配慮がなければいけないと思います。何もえこじになってどうこうということじゃ決してございませんので……。ところが、この方が去年の暮れに電気を切られたり、いろんな、ここに住んでいられないような仕打ちを受けているという現状を見まして、これは先ほど大臣のおっしゃったお考え方からすると、ずいぶんかけ離れた状況にある。この開発のために、たとえばこういう方々、話せばわかる方なのに、泣かされておるという、こういう現実は、これは黙っておられない。ぜひ大臣にこの現状を知っていただいて、この方に対して十分なる配慮による処置をしていただきたいというのが私の切なる希望なんですけれども、報告によりますと札幌にいるということですし、十分な掌握がないようなんですけれども、実際住んでいることは間違いありませんし、電気も去年の暮れに切られて、そしてほんとうにこれはとほうにくれている。バッテリーで、小さい豆電球で生活しておる。こういうことは政治不信につながる。この河本さん一人のことじゃ決してございませんで、あの開発のためにやっぱりあんなことになるのかという、こういうことになるんではないかと。こういうことから、この現状というものをもっとしっかり見定めて、こういう、一人といえども犠牲者のないように配慮をしてもらいたいと思いますが、大臣、どうでしょうか。
  267. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) いまのお話、私初めて伺い、政府委員との御応答もいま伺っておったところであります。確かに、先祖伝来の土地を失うということは当人にとっては耐えがたい気持ちになられる方が、こういう場合には常にあるのではないかと、かように私はお察しをいたしておるところでございます。しかし、いま藤原さんから伺いますれば、御当人はそういつまでも長くここにがんばっているつもりもないというような、たいへん柔軟な考えを持っていらっしゃる方のようでありますから、十分関係者の間でお話し合いを進めていくならば、おそらく私は円満に解決の道があるのではないかというように、ただいま伺ったところでは、そういう感想を持ったわけでございますが、いずれにいたしましても、大きな事業をするからといって、一人でもそういったひどい目にあわされるというようなことの絶対にないようにしていかなければならぬということは申し上げるまでもございませんので、ただいまの点は、今後開発庁を通じまして、十分御当人が納得していただけるような方法で御協力を願うように、ひとつ話を進めさせていただきたいと、こう存じます。
  268. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 電気も、去年の暮れに切られておるんです。これは通産省のほうにも、この事情についてはお話ししたんですけれども、どういう事情で電気を切ったという報告が来ておりますか、ちょっと御報告願いたい。
  269. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 北海道電力の送電の停止の件については、「需用家が電気の使用廃止をするときは、同社の電気供給規程に基づいて、あらかじめ廃止の期日を定めて北海道電力に通知することになっており、需用家が定めた期日をもって電気の供給契約を終了する」と、そういうことになっているそうです。河本さんの場合は、北海道電力の話によりますと、十二月二十二日、電話によって廃止の申し入れがあったので送電を停止した、こういう報告がわれわれのところに来ております。
  270. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それは北電から来たことですから、通産大臣にどうこうと言う筋はないかもしれませんけれども、本人が住んでいらっしゃるのに   これは実際はまあ私は本人から聞きましたからあれですけれども、ここにいるにもかかわらず電線を切っていったんじゃないか。で、あとで聞いたら、これは盗難にあったというような、こんなことも言っておったわけでありますけれども、これは警察庁で調べていただいたんですけれども、盗難届けは出たのですか。
  271. 田村宣明

    政府委員(田村宣明君) ただいま御質問の盗難届けでございますが、これは四十八年の十二月二十一日に、北海道電力株式会社の手稲電業所長から札幌北警察署の新札幌団地警察官駐在所に対して、二件の盗難届けが出されております。  一件につきましては、同年の十一月七日から十二月十三日、大体三十五日間ぐらいの間で、日は特定しがたいのでございますが、石狩郡の石狩町樽川、ここの樽川幹線の五十七号柱から七十五号柱の間の高架架線千三百九十八メーター、時価にいたしますと約五万六千円相当でございます。これが盗難にかかったという届けが一件。  もう一件は、四十八年の十二月十三日から十二月二十日までの大体七日間ぐらいの間に、第一回目と同じ電線の、その延長でございます、すなわち、樽川幹線の七十五号柱から九十五号柱までの、やはり高架架線三千四十六メーター、時価にいたしまして約十二万一千八百円相当の電線が盗難にかかった、こういう盗難届けを札幌北警察署において受理をいたしております。
  272. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 通産大臣、いまお話しのように、本人が住んでいるのに、決して電話をかけることはございませんし、盗難届けが出ているという、場所は同じなんです。電気事業法の十八条からいって、本人がそこにいる以上は電気の供給をしなきゃならぬはずです。まあ盗難にあったということですから、すぐというわけにいかないかもしれませんけれども、現実におるわけですから、これはすぐひとつ調べていただきまして、処置していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  273. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 実情を正確に把握いたしまして、適切な処理をいたします。
  274. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 開発庁長官、開発計画のこの副題に、「生産と生活が調和する豊かな地域社会の先駆的実現」というりっぱな副題がついておるわけでありますが、先ほどの所信表明のように、先ほど決意のほどお話がありましたが、どうかひとつ、一人もこういう開発の犠牲になることのないように御配慮いただきたい。  それから次は、漁業補償のことについても、これもまた非常に大きな問題ですが、時間もございませんので、一々申し上げることはできないんですが、これもまた、どこでも起きることですけれども、これは社会的公平さを失う、はたの組合員の方から見ますと、まあ妥当性を欠くようなことで、よくトラブルが起きるわけでありますが、石狩につきましても同じことがやっぱり言われているわけであります。また、石狩のサケ定置漁業権につきましても、一号から七号まであるんですが、この五号、六号につきまして、新五号、新六号について問題が起きているわけであります。それから消滅地域の漁民の生活に対しての補償ということは当然でありますけれども、あの大きな規模の開発が進みますと、石狩湾全体、八単協につきましても当然将来のことについての考え方というものもなければならない、このように思うわけでありますが、この漁業補償のことにつきまして、いま報告を受けてないかもしれませんけれども、重大な問題なので、ぜひひとつ御配慮いただきたいと思いますが、この点いかがでしょう。
  275. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 御指摘の漁業補償の問題につきましては、関係者の間で鋭意話し合いが遂げられまして、昨年の三月三十一日、十三億九千五百万円で漁業補償の調印が行なわれておるわけでございまして、御指摘のように、配分の問題につきましてはいろいろ問題があるように私どもは承知しておるわけであります。なお、御指摘の港湾区域外の問題につきましては、これは漁船の安全操業等いろいろ問題のあるところでございまして、道が中心になりまして鋭意この問題の解決に当たっておるような状況でございます。
  276. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 そこで、この開発で問題になります公有水面の埋め立てについてですが、三月十九日付で改正政令が施行になったわけでありますが、この改正になった理由について、あらまし御説明いただきたいと思います。——建設省ですか。
  277. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 公有水面埋立法の一部を改正する経緯でございますけれども、最近における社会経済環境の変化、それにかんがみまして、公有水面の適正かつ合理的な利用に資するために、その埋め立ての適正化につとめてきたのでございますけれども、特に自然環境の保全、公害の防止、埋め立て地の権利移転または利用の適正化等の見地から、現在の公有水面埋立法の規定が不十分であるということを各方面から指摘されてきたわけでございます。従来の公有水面埋立法は大正十年に制定された古いもので、その後今日まで実質的な改正は一度も行なわれなかった。最近のように、埋め立て規模の大型化、それから埋め立て地利用の多様化、その他の社会情勢に適合しなくなった面があったわけでございます。それで、現行法のワク内では行政指導を強化することにもおのずから限界がありますので、この改正を行なったということでございます。
  278. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 昨年の十二月の十一日付で、石狩新港港湾管理者の長の北海道知事より石狩町議会議長あてに、依然として旧法による公有水面の埋立法の意見を求めてきたわけであります。申請人は北海道開発局であります。しかも、九十日以内に回答を求めるということですから、三月十七日ということで新法施行の二日前ということですけれども、これはかけ込み申請につきましても規制があるわけでありますが、この間のことについて御説明いただきたいと思います。
  279. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) このかけ込み申請につきましてり措置でございますけれども、公有水面埋立法が九月二十日に公布されたわけでございますが、その後政令、それからこれの実施が三月十九日から実施されているわけでございます。その間にかけ込み申請のおそれがあるということで、建設省、それから運輸省、これが一緒になりまして通達を実は出しております。この通達の趣旨といたしましては、この間におきましても、今度の新法の精神を生かして、いやしくもかけ込みによってでたらめな認可をすることのないようにするのが趣旨でございます。  それで、二項目ほどこの通達に書いてございます。その一つは、「埋立ての免許等にあたっては、改正法の免許基準等の趣旨にのっとり、慎重に審査すること。」ということにしております。これは新しい改正法の内容といたしまして免許基準が制定されたわけでございます。その内容としては、国土利用上適正かつ合理的であることとか、埋め立てが環境保全及び災害防止について十分配慮されたものであることとか、また、埋め立て地の用途に照らして公共施設の配置及び規模が適正であること、その他にもありますが、こういうような項目のいわゆる免許の基準というものができておる。その免許基準にのっとってその間の免許の措置もやっていくというふうな趣旨でございます。  それから、さらに第二といたしまして、「大規模な埋立てその他土地利用、環境保全等に特に配慮すべき埋立てについては、」、先ほどの「一の措置のほか、改正法の趣旨にそって関係者の意見調整を十分行なうよう出願人を指導すること。」ということにしております。新しい改正法によりますと、届け出がありましたならば、この届け出書類の縦覧とか、利害関係者の意見提出の制度、こういうような制度が新しくできております。この制度ができるまでの間の措置といたしまして、単に免許者がこれらの利害関係者との意見調整をするのみならず、出願者におきましてもこれらの調整を十分行なって、合理的なものについてそれを反映させるというふうな措置をとりたいということで、この通達を出しておるわけでございます。
  280. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 せっかく住民の意見を尊重するという形で改正になったわけであります。当然、いまのお話からいたしまして、石狩町議会で今回のこの問題については結論が出なかったわけでありますから、北海道開発局の石狩町花畔の地先海面の埋め立て申請、これは新法で行われるべきだと、こう思いますけれども、運輸大臣、それから建設省ですか、どうでしょう。
  281. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) さっそく調べたところによりますと、石狩湾新港の埋め立てにつきまして現在計画しておるものは、国が施行するものが一三・二ヘクタール、港湾管理者である北海道が施行するものが一〇・八ヘクタール、合計二十四ヘクタールが計画されているとのことでございます。現在、北海道が施行しようと思っておりますところの一〇・八ヘクタールにつきましては、いまだ埋め立て免許の出願が出ておりません。しかし、国の行ないますところの一三・二ヘクタールにつきましては、先ほど先生がおっしゃいましたように、昨年の十二月十日に、小樽開発建設部長から港湾施設用地その他を埋め立て目的といたしまして出願されております。現在、これを北海道知事におきまして、旧法における埋め立て承認は留保いたしまして、改正埋立法の手続が準備されていると聞いております。
  282. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 地域住民の意見を尊重しなければならないという先ほど開発庁長官お話がございましたが、この振興計画に対しましては、小樽から十五項目にわたる意見が指摘されておるわけでありますが、この点については御検討いただいたでしょうか。
  283. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、との港湾は小樽市の一番はずれのところにありまするし、小樽は元来港湾の町でございます。したがって、離れたところにもう一つ石狩町と境を接した新しい港ができるという事情もございますので、小樽市としては、自分の母港ともいうべき旧来の小樽港と、この新しい港湾とができるだけ調和され、両立されることがきわめて必要だという基本的な立場にあることは、私どももよく理解をいたしておるところでございます。したがって、そういうような立場から、いろいろ希望もあり、意見もあるということは当然でございまして、その意見書につきましては、目下北海道庁において十分検討を加えておるところだそうでございまして、これに基づいてできる限りの措置を今後いたそうと、その場合、関係省といたしましても、それらの点は十分配慮をして、この計画が円満に進むように私どもも配慮をいたしてまいりたいと存じておるところであります。
  284. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それから石狩町からも意見書が出されておりまして、石狩湾振興地域開発基本計画、後背地基幹産業道路花畔、樽川市街化区域中住居地域の迂回を求める意見書というのが出ておるわけでありますが、これはこの産業道路が市街化区域の中を、住居地を通らないで迂回するようにということなんですが、これは当然過ぎるほど当然なことだと、こういう意見書が出るということは、最初の計画に住民の意思が反映しなかったんじゃないかというような感じがするんですけれども、この点についてはいかがでしょう。
  285. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) ただいまの基本計画に基づきまして、後背地の土地利用計画あるいは道路のネットワーク、都市計画というものの決定をしなければならないわけでございます。ただいまの後背地の基幹産業道路というものがどのことをさしておるのかよくわかりませんけれども、国道もございます。また、そのほかの幹線の街路もございます。その街路の計画につきましては、まだ、地元の道あるいは開発局、関係市町村というところで現在検討中と聞いております。これがきまりますと都市計画決定という手続になるわけでございますが、ただいま私どもの調べましたところでは、幹線街路で花畔団地という住居地域を通るのがございます。あるいはそのことかとも思います。また、国道の二三一号線が現在その花畔の市街地の中を抜けておりますけれども、これが今度計画を変えまして、一番その団地の住居地域の端っこに持っていくと、それ以上持っていきますと、茨戸川という川がありますので、川沿いに持っていこうということで住居地域を避けようというような計画で、全部これは都市計画決定というような形で、地元の住民の方々の御意見もそこに十分入れながら計画をきめてまいりたいというふうに考えております。
  286. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 非常に大きな規模で行なわれるわけでありますので、いろんな影響があると思いますが、ひとつ大臣の最初の御意見のように、しっかり住民の意思を尊重し、副題に沿った開発が行なわれるように心から希望する次第であります。  次に、いま畜産が大きな危機に立たされておるわけでありますが、このことについて二、三御質問したいと思うのであります。  輸入牛肉の問題でありますが、昨年の上期に八万トン、四十八年三月一日に緊急輸入一万トンしております。それから下期には九万トン、これは四万トンは二月凍結ということになっておりますが、輸入いたしまして、四十八年度には約十七万トン一応輸入する予定になっております。そうしますと、上期で事業団と日食協で、調整金トン当たり平均約三万といたしまして十三万トン、この中には四万トン凍結を除いておるわけでありますが、これを計算いたしますと、両者で調整金約三十九億ということになるわけでございますけれども、この内訳は、日食協が四億二千万、事業団が三十五億、この調整金の収入になるわけでありますが、この調整金の支払い先、またこの使用法についてどういうふうになっておるか、御報告いただきたいと思います。
  287. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府委員からお答えいたします。
  288. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 輸入牛肉につきまして、畜産振興事業団輸入分並びに民貿分につきまして、いずれもいわゆる輸入調整金を徴収しておるわけでございますが、これは輸入肉と国内産の牛肉の価格の格差が依然としてございますので、国内生産に著しい影響を及ぼすのを回避するという意味でとっておるわけでございます。その額は、牛肉の規格部位によりまして差がございまして一律ではございませんが、平均をいたしましてフローズン——冷凍品でございますが、これは十円から三十円、それからチルドビーフ——冷蔵品でございますが、これは部位によりまして三十円から六十円それぞれ徴収をいたしております。  なお、畜産振興事業団が九〇%輸入のシェアを持っておりますので、畜産振興事業団がみずから買い入れ、輸入をいたしましたものに、ただいま申し上げました部位ごとの価格を上乗せして販売をし、さらに約一割の民貿分につきましては、食肉関係の社団法人でございます日本食肉協議会が輸入牛肉を買って取り扱います販売業者から、ただいま申し上げました部位別の調整金を徴収いたしまして積み立てて、それを生産あるいは流通対策に使用しておるわけでございます。
  289. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 具体的にどう使用したか。
  290. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) その具体的な使い方でございますが、畜産振興事業団が四十八年度に予定をしております、一部をすでに実施しております対策といたしましては、総額十四億七千三百万円を計画いたしておりまして、肉用牛の価格安定事業、これは各県ごとに子牛価格の価格の安定をするための基金を設置しておりますが、これが補てん財源に不足する場合に融資をするための中央団体をつくっております。これに対します補助費でございます。それから肉用牛緊急生産振興対策事業費というのに十一億五千三百万円を四十八年度において計画をいたしております。これは最近のわが国の国内肉牛生産の停滞にかんがみまして、子牛を生産した農家に対しまして、子牛一頭当たり約八千円交付するというものを、これは各県の生産者団体を通じて農家に交付するという事業を実施をいたしております。  次に、日本食肉協議会、これは約一割の民貿分について徴収いたします調整金を財源といたしまして、四十八年度に計画しておりますのが合計三億六千二百万円でございますが、そのうち肉畜生産増強対策費、これは二億九千三百万円。これは先ほど申しましたと同じような趣旨で、わが国の国内牛肉の生産を振興するために、まあ普通ならば廃牛にするようなものを、さらに繁殖に使うというために繁殖期間を延ばすというのに対しまして、一頭当たり約二千円というのを団体を通じて農家に交付するというものでございます。  さらに、食肉流通改善対策費といたしまして、これは輸入肉につきまして、指定店あるいは展示店を通じまして、一定のマージンの範囲内において安売りをするように指導しておりますが、これを監視するといいますか、モニターを設けて、はたして適正な価格で販売しているかどうかというようなことを監視するためのモニターを設置しておりますが、それの手当というものに対して助成をいたしております。  さらに、最近の牛肉の流通の近代化、合理化の一つといたしまして、冷屠体取引の促進を奨励をいたしておりますが、それに必要な冷蔵輸送に対する補助といったようなものが主要なものでございまして、合計三億六千二百万円の事業を今年度計画をいたしております。
  291. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 畜産局長の諮問機関の輸入牛肉調整金監理委員会というものね、まあそれの趣旨に沿って次の事業を推進するとなっていまして、肉畜生産増強対策、この中に価格安定推進事業というのがあるのですが、いま自殺者も出るような畜産の危機の中にありまして、やはりこの生産農家に対して保護を与えるという最大の眼目を忘れてはならぬと、この点についてどのように対策を講じていますか。
  292. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) ただいま先生御指摘ございましたように、調整金の使い方につきましては、できるだけ国内の生産振興、あるいは牛肉を中心といたします食肉の流通の近代化のために効率的に使うということのために、第三者をもちまして調整金の監理委員会というものを設置をいたしまして、その使途の基本について方針をきめ、それに基づいてやっておるわけでございますが、その際、生産対策を重点といたしまして、まあ流通対策にも、先ほど申し上げたようなことに今年度使うことにいたしておるわけでございますが、価格安定対策という点につきましては、先ほど申し上げましたように、わが国の牛肉生産、肉牛生産というのが最近非常に停滞をいたしておりまして、なかなかふえないということのために、特に繁殖、子牛を生産する子取り生産と申しますが、その関係経営が非常に伸びないという点を考慮いたしまして、各県で子牛が一定価格以下に下がった場合には、その基準価格から下がった分を補てんするという事業を、畜産振興事業団の援助のもとに設置をしてやっております。ただ、これが補てん財源に不足するような場合、補てん財源の不足分を融資をするというのを、そういう機能を行ないます中央団体を設置いたしまして、先ほど申しましたように、それに対して援助をしておるわけでございます。これが約三億二千万でございます。これが先生御指摘になりました、生産者に対します価格安定対策を通ずる援助でございます。  なお、先ほどお話しございました、養豚その他非常に現在畜産経営が困難に当面しておると、それに対して積極的に生産対策をやるべきだという点につきましては、この調整金の財源が輸入牛肉にかかわるものでございますので、主として牛肉を対象にして生産対策並びに流通対策をやっておるわけでございます。
  293. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 先ほど輸入牛肉が、十一月の在庫が三万七千トンだったという、まあなぜ十二月に一万四千九百八十トン、また一月には一万一千二百八十八トン輸入したのか。凍結したと、こう言っていますけれども、このように在庫があるにもかかわらず一万トン以上輸入しているということは、結局畜産農家を苦しめる、こういうことになっているのではないか、こう思うわけでありますが、四十九年度につきましては、輸入牛肉についてどういうふうに取り組んでいくのか、この件についてお伺いしたいと思います。
  294. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 昨年は御存じのように、たいへん牛肉が高い高いという苦情をたくさん聞きました。そういうこともございまして、先ほどお話のございましたように、下期九万トン、ワクを与えたわけでありますが、そうこういたしておりますうちにだんだんと牛肉価格が下がってまいりまして、こういうことでは畜産家を脅かすことになるという考えをもちまして四万トン押えたと、こういう結果であります。私どもといたしましては、やはり価格、まあそこのところがむずかしいわけでありまして、消費者サイドの物価安定という見地、同時にまた、それが行き過ぎますというと生産意欲を阻害するということでございますので、その辺の調整がたいへんむずかしいところでありますが、現在は、藤原さん御存じのように大体安定いたしておりますし、それから、これからもやはりいま申し上げましたような操作をいたしまして価格の安定をはかってまいりたいと、こういう考え方でやっておるわけであります。
  295. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この海外市場から持ってきたものが、食肉輸入商社協議会、それから日食協や畜産振興事業団、この流通経路があるわけでありますが、輸入牛肉の各団体別配付についてずっと見ますと、配付先については、前期の実績に照らして比率が割り当てられるようになっておるようであります。しかもその団体は、日食協の調整金を受けている団体も、事業団からも、それから日食協からも受けている団体があるわけであります。その上にまた、各団体では、その割り当て量に対しまして多額の手数料を取っているのであります。これはちょっと見ますと、四十八年度の輸入牛肉の各団体の割り当て量、手数料と、その徴収額、大体こちらの試算で、輸入牛肉フルセットで一キロ当たり九百五十八円から千五百六十円で、大体平均千円として試算してみたわけでありますが、日本ハム・ソーセージ工業協同組合、これが割り当てが一万七百トンで、一キロ〇・五%の手数料率徴収額が五千三百五十万円、これ全部言いますと時間もありませんので、社団法人の日本冷凍食品協会、これは割り当てが二千六百トン、それから手数料の率が一キロ当たり五円ということで徴収額が千三百万円。全農が割り当て量が六千八百トン、手数料率が一キロ当たり三・五%ということで二億二千八百万。それから社団法人の食肉市場卸売協会というのが割り当てが四万四千三百トン、手数料率が一キロ当たり二%で八億八千六百万、このようになっておりまして、その他というのが二万九千二百五十トン、これは一キロ当たり手数料率が五円ということになっておりまして一億四千六百二十五万円になっておるわけでありますが、このように表面的に計算しただけでおよそ十三億ですか、各団体より手数料が徴収されるようなことになるようであります。  しかも、輸入牛肉の二万トン近くも輸入商社に割り当てられておる。その他という中に商社の割り当て額が入っておるわけでありますが、これらの輸入牛肉の問題についてどのように考えていらっしゃるか。輸入商社というのは相当なもうけをしておるわけでありますから、再びたくさんの二万トンからの割り当てを受けるということは不当なことではないか、こういう考えがするわけでありますが、この点いかがでしょう。
  296. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 先ほどもお答えいたしましたように、現在の牛肉の輸入制度におきましては畜産振興事業団が約九割——約でございますが、九割を取り扱いまして、残り一割がいわゆる品質分ということになっております。  先ほど先生からいただきました資料で流通経路の図がございますけれども、この中で食肉輸入商社協議会あるいは日本食肉協議会というところが上のほうにございますが、こういう団体はございますけれども、これらを通じて割り当てをしておるわけではございませんので、直接に畜産振興事業団に、あるいは民貿分は商社に割り当てておるわけでありまして、商社協議会に割り当てたりあるいは日本食肉協議会に割り当てるということはいたしておりません。各実需者団体ごとにさらに配分をいたしまして、それの注文をとる、あるいは注文なくして事業団が見積もりで輸入を実施してから配分をするといういろいろなやり方をしておるわけでありますが、実需者団体別に配分をいたします場合は、従来の牛肉の取り扱い量、あるいは輸入牛肉の取り扱い量、あるいは最近の全体での生産量等を勘案いたしまして配分をいたしておるわけでございます。  その場合、畜産振興事業団につきましては、先ほど申し上げましたように、約九割につきまして、商社から畜産振興事業団が輸入肉を買い付けしたものに対して、販売する場合、調整金を上のせして販売をするということをやっておるわけでございます。現在、輸入商社は全部で二十九社ございます。これは二十四社となっておりますが、最近は二十九社ということにふえております。これは一般の食肉の輸入実績の全体の二%以上を取り扱っておる実績のある商社について輸入牛肉の取り扱いを認めておるわけでございます。
  297. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 畜産危機のたいへんなときでありますから、先ほど指摘した問題等、資金の問題や調整金のことや、いろいろなことについて畜産農家を守ることに総力をあげるべきだという、そういうことからいたしまして、この輸入牛肉につきましては、そういう適切な飼養目的に沿っているかどうかということについて疑義が持たれる。  協同組合等におきましても、お互いに出資し合ったものでありますから、これがいつの間にか利権の団体になるようなことがあってはなりませんし、また牛肉をつり上げるような形になってはなりませんし、こういうことで輸入牛肉のあり方につきましては問題がしばしば提起されておるところでありますが、今後につきましては、現在たいへんな危機に画面しているだけに、大臣におかれましても十分な配慮をいただきたい、こう思うのですが、御決意を。
  298. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いま政府委員からもお答えいたさせましたように、調整金という制度につきまして、われわれもかなりいろいろ考えてみました。しかし、やっぱりいろいろ見てみますというと、中間のマージンに吸い上げられる分が多くなるよりは調整金という制度でこれを納めてもらって、そうして畜産の振興等に事業団が使う、こういうほうが合理的であるという考えに立ったわけであります。  もう一つは、ずっと前は、御存じのように、かなり商社系の取り扱い量がふえておったのでありますが、だんだんといまは畜産振興事業団に集中いたしまして、いま申し上げましたように九割は畜産振興事業団でやっておるわけでありますが、なお、こういう品物の流通につきましては、藤原さん御存じのように、なかなか昔からいろいろな歴史もあるようでありますけれども、私どもはこれをつとめて近代化してロスを防ぐようにいたしたいと思っております。
  299. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それから次は飼料の問題ですが、大幅な飼料高騰が畜産危機を招くまた大きな問題になっているわけでありますが、昨年十一月、二百十億の飼料の価格補てんを行なったわけでありますが、この二百十億の分配につきまして、これがえさの価格安定にどれだけの寄与をしたか、この間についてちょっと御説明いただきます。
  300. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 今回の二月の値上げの前に、昨年の九月にトン当たり約一万円の配合飼料の値上げが行なわれました。その一万円のうち平均約三千円を補てんするということで、先ほど御指摘のございました二百十億の国庫支出をしたわけでございます。したがって、九月の値上がり分約一万円のうち三割が補てんによって対処されたというふうに御理解をいただきたいと思います。  なお、残りの七千円分につきましては低利融資ということで、四分の二カ年間の低利融資の措置を実施いたしております。
  301. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 二百十億の供給先が、四十八年十月から四十九年の三月までの半年に、全農系基金に八十八億、商社系基金に百十三億、専門農協系基金に八億、こういう三つの基金にあれしているわけですけれども、これは畜産農家との年間契約になっておりまして、政府が二百十億の価格補てんをしましても、この基金に入ってない人は何の恩典にも浴し得ない、こういう問題があるのですけれども、これは非常に片手落ちじゃないかと思いますが、この間のことについて説明いただきます。
  302. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 全農その他の基金に対しまして約二百十億の補てん財源の補助をしたわけでございますが、その基金に加入しておる農家は約八二%というふうに把握をいたしております。これは零細飼養規模の農家は基金に入っておらない。これは積み立てをしなければいけないことになっておりますので、積み立てしてまで補てんを受けなくてもいいというようなお考えの方もおられるわけでございます。それから逆に非常に大きな規模の企業的な経営をやっておられる方、これも一部入っておられない方がおられまして、ただいま申したように約八二%の加入率になっておりますので、先般の国の補てん財源に対しての援助につきましても、残りの一八%の方はこの恩恵を受けられないというような現状になっております。
  303. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それはいろんな事情があるかもしれませんけれども、八二%というと一八%、二割近い人がこの恩典に浴し得ないわけでありますから、その点についてもひとつ十分御検討いただきたい。  それから四十八年の九月から四十九年の三月までの間に畜産農家の購入する配合飼料の一部に対して、低利融資、これは約四百十億ですか、これの据え置き期間とそれから償還期間をやはり見てあげなければならないんじゃないか。償還期間は二年、据え置き期間は六ヵ月ですか、これを据え置きを少なくとも一年、償還を少なくとも五年ぐらい見るようでなきやならぬというように思うんですけれども、この間についてはいかがでしょうか。
  304. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 九月に実施いたしました低利融資につきましては、六カ月の据え置き、二カ年間の償還期間で、金利は四分ということで実施をいたしておるわけでございますが、これはえさ代で普通の運転資金でございますので、長期の貸し付け期間は必ずしも適当ではないという判断に基づいたわけでございます。この点につきましては、将来適正な畜産物価格の形成が行なわれますれば償還財源が可能になるのではないかというふうに考えております。
  305. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 時間もございませんので次に移ります。  厚生大臣それから法務大臣に一緒に来ていただくなんという機会はないもんですから、ちょっと時間もございませんであれですが、質問主意書というか大体お知らせしておりますが、人工中絶につきましての法律や通達ですね、これがどういうふうになっているかということ。  それから七カ月の子供は生存可能なのかどうか、それに対する見解。それから中絶のために母体から出た七カ月の子供を人間としてみなすのかどうか。こういう七カ月を中心にいたしましていろんな議論のあるところですけれども、この間の議論について厚生、法務でおのおのどういう見解を持っているか。これを救済するために実子特例法が云々されているわけですけれども、この間のことについての御見解をお伺いしたいと思うんです。
  306. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 人工妊娠中絶は、母体の外に出て生存することのできない期間に人工妊娠中絶をやることができる、こういうふうになっておるわけでございまして、次官通達で八ヵ月未満、こういうふうになっておるわけでございます。  そこで、これにつきましては、最近の医学、医術の進歩に伴いまして、人工妊娠中絶はもう七カ月未満くらいにしたらどうかといったふうないろんな意見があるようでございます。しかし、どうも私、これ、専門家じゃございませんが、やっぱり従前のとおり八カ月未満というのがまあ適当ではないだろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  307. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 厚生省の通達というのがあるそうでございますが、法務省の立場から言いますと、やはり堕胎罪との関係がありまして、刑法三十五条、三十七条ですか、要するに、母体に特殊の事情がありまして堕胎をする場合には堕胎罪になりませんが、もし健康体であれば堕胎罪になるというような判断をしておるようでございます。  なお、詳しいことがもし必要でございましたら、事務当局からお答えさせるようにいたします。
  308. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 発言者に申し上げますが、時間ですので——これでよろしゅうございますか。
  309. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) お答えいたします。  いま大臣の申されましたとおりでございまして、母体の外において生命を保続し得る期間前の排出につきましては、優生保護法第十四条で刑法三十五条の法令による行為として違法性が阻却されるわけでございますが、それをこえました場合における母体外への排出行為ということは、これは原則といたしまして刑法の堕胎罪を構成するということになるわけでございますが、一律にそうも申しませんで、先ほど大臣が申されましたように、妊娠中絶をしなければその母体の生命が維持できないというような、いわゆる緊急避難のような場合におきましては、違法性が阻却せられる場合もあるということが言えると思います。  なお、先生の御質問の御指摘にございましたが、そういう母体外において生命を保続できるような状態の胎児の生命を断つことは殺人罪ではないかという御指摘があったように聞いておりまするが、やはり刑法の立場から申しますと、民法とは違いまして、胎内において胎児の生命を断つということは、これは堕胎罪の対象にはなりますが、それはいまだ人ではございませんので、殺人罪の対象にはならない、かように考えております。
  310. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) よろしゅうございますか。——これにて藤原君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明後二十五日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十八分散会