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1974-03-19 第72回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十九日(火曜日)    午前十時三分開会     —————————————    委員の異動     辞任         補欠選任      川上 為治君     川野辺 静君      宮崎 正義君     渋谷 邦彦君      黒柳  明君     柏原 ヤス君      萩原幽香子君     中沢伊登子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鹿島 俊雄君     理 事                 片山 正英君                 嶋崎  均君                 西村 尚治君                 細川 護煕君                 吉武 恵市君                 小野  明君                 加瀬  完君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君     委 員                 今泉 正二君                 小笠 公韶君                 大竹平八郎君                 梶木 又三君                 川野辺 静君                 木村 睦男君                 熊谷太三郎君                 黒住 忠行君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 塩見 俊二君                 高橋 邦雄君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 濱田 幸雄君                 原 文兵衛君                 米田 正文君                 上田  哲君                 神沢  浄君                 辻  一彦君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 宮之原貞光君                 山崎  昇君                 柏原 ヤス君                 沢田  実君                 中沢伊登子君                 春日 正一君                 須藤 五郎君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  中村 梅吉君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        郵 政 大 臣  原田  憲君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   亀岡 高夫君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      町村 金五君        国務大臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       保利  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       森山 欽司君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        人事院事務総局        任用局長     大塚 順七君        青少年対策本部        次長       吉里 邦夫君        防衛庁参事官   大西誠一郎君        経済企画庁物価        局長       小島 英敏君        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        科学技術庁原子        力局長      牟田口道夫君        科学技術庁原子        力局次長     伊原 義徳君        科学技術庁原子        力局次長     生田 豊朗君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君        大蔵大臣官房審        議官       大倉 眞隆君        大蔵省主計局長  橋口  收君        大蔵省関税局長  大蔵 公雄君        大蔵省国際金融        局次長      藤岡眞佐夫君        文部大臣官房審        議官       奥田 真丈君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省体育局長  澁谷 敬三君        文部省管理局長  安嶋  彌君        日本ユネスコ国        内委員会事務総        長        西田亀久夫君        文化庁次長    清水 成之君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省畜産局長  澤邊  守君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        農林水産技術会        議事務局長    小山 義夫君        通商産業省生活        産業局長     橋本 利一君        資源エネルギー        庁長官      山形 栄治君        資源エネルギー        庁石油部長    熊谷 善二君        資源エネルギー        庁公益事業部長  岸田 文武君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        労働省労働基準        局安全衛生部長  中西 正雄君        建設省都市局長  吉田 泰夫君        自治大臣官房審        議官       近藤 隆之君        自治省行政局長  林  忠雄君        自治省行政局公        務員部長     植弘 親民君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、春日君の質疑を行ないます。春日君。(拍手)
  3. 春日正一

    春日正一君 きのうも申しましたように、今日の事態は、米騒動のとき、第二次大戦直後のあの混乱した時期、あれに匹敵する歴史上まれな異常な状態であるというふうにいわれております。こういう異常な事態のもとでは、やはりそれにふさ・わしい思い切った手段をとる必要があるんじゃないかと、そう思います。そこで当然石油値上げということになればこれはすべての物価に影響してくるわけでありますから、原油が上がったから石油製品を上げるというようなありきたりの手段ではこれどうにもならない。政府のやり方を政治抜き算術計算だという批評をしておる人もあります。その気になれば対策は当然あるはず、その点で政府はどれだけ苦心をされ、そうしてどういう手を打たれてきたのか、その点聞かしてほしいと思います。
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 価格決定にあたって一番苦心したことは、国民感情に合った価格決定、また合理的な、ある意味においては経済的に持ちこたえる価格決定、それと同時に物価引き下げということも考えた価格決定でなければならぬと思っておりました。もう一つ無視できない要素は、あまり極端に下げ過ぎるとメジャーズやその他外国からの供給量が減ってきて、そのためにまた国民の間に不安、動揺を起こしてはならない。そういうようないろんなむずかしい要素を勘案いたしまして、一つは、昨年以来メジャーズが、日本石油会社等先取り値上げで取得したいわゆる便乗利益と思われるものを全部吐き出させると、これがやはり国民感情に合ったということであります。でありますから、昨年の上期においては、大体日本石油企業収入というものはキロ五百円ぐらいでありましたが、これを二百五十円は吐き出さぜる、下期においては約六百五億円と思われる便乗値上げがありましたが、これも全部吐き出させると。そして、その後の、今後の経営につきましても、できるだけ低い価格物価政策に協力してもらい、また内部留保の吐き出しとか、あるいは重役賞与の削減あるいは辞退とか、あるいは結局配当においても無配ないしは減配ということに結果的にそうなるであろうと思われる自粛をしてもらうと。そういうようなことを一応石油会社側にはわれわれ要望をすると。また一面において、と言ってそれがために採算割れがして外国から日本石油を供給することが著しく削減されたり減っては困ると、そういうような均衡水準を考えて、そして外国に比べて著しく引き延ばして日本石油を上げることをおくらせたということが、ほかと変わっていることであると思います。
  5. 春日正一

    春日正一君 まあそういう御説明聞いても、結局便乗値上げでもうけた分が幾らか減ったという時期で上げたということなんで、原油が上がったから石油上、げたという算術計算にはこれ間違いないと思うんですよ。そうじゃなくて、石油価格上げないようにする、たとえば石油関係税金ですね、これは関係諸税を除いてこれを大幅に減らすというようにすれば、石油の原価が下がるわけですから、それだけ上げ幅を少なくすることができる、そういうことは考えられませんか。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 共産党皆さんの御指摘は、所得税あるいは法人税特別措置を除けば約一兆円出ると、それでカバーせいと、そういう御議論であったように思いますけれども、しかし、それらの特別措置が行なわれているにはそれぞれの理由があって行なわれておる。たとえば重油関税のようなものは、皆さん方が御主張しておられる石炭政策補給金その他で炭鉱労働者のめんどうを見さしていただいているという面もあるわけです。そういうものをむげに取り去るわけにはいかない。そのほか農業の所得税であるとか、そのほかいろんな面でそれぞれの理由があるわけで、急にこれをやめるというわけにもまいらないと思うのであります。そういうような諸般情勢を勘案して、また世界的な水準日本経済水準を移行させて、早く均衡水準をつくって国民に努力の目標を示すということも政治の大事な要点でもございます。そういう諸般のいろんな情勢を考えて今度の価格決定ということをいたしたわけであります。
  7. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話しのように財政手段でこの石油価格引き上げないで済むかということもいろいろ考えてみたんです。まあ考え方といたしましては、石油関税あるいはガソリン諸税というものを引き当てにしたらどうだと、こういう意見もあったわけです。しかしそれは、石油関税について言いますれば、これは重油関税ですね、重・原油関税、これについて言いますれば、いま通産大臣がお話し申し上げたような事情がある。それからガソリン諸税は、これは大かた道路財源になっているわけです。そうしますと、それを据え置きのために使っちゃうということになると、その財源を一体どうするか、こういうことになる。結局、赤字公債ということになってくるわけです。これがいまの物価問題とどういう関係になるかということを考えると、なかなか赤字公債に踏み切るというわけにもいかない。そういうようなことであるし、もう一つは、かりにちょっとしばらくの間、あるいは半年、一年つなぎましても、いずれ財政負担をそういうふうに長い間続けるわけにいかない、その際にはやっぱり値上げをしなければならぬ、そういう問題に当面をするわけでありまして、結局、当面を糊塗するということになっちゃうのです。そこでまあ厳重な第二次製品に対する目張りをする、そうして価格体系には悪影響ないようなことをやってみる、そこで値上げをする、こういう決断をいたしたわけなんです。それからガソリン税につきましては、これはわが日本とするとそう高いわけじゃないのです。一バーレル大体各国とも十ドル以上の税を取っております。わが日本は三ドルぐらいであります。そういう点から見ても、いまのガソリン諸税を撤廃する、これは国際的環境の中でいかがなものであろうか、そういうふうにも考えるわけであります。
  8. 春日正一

    春日正一君 いまの話の中で、大蔵大臣通産大臣関税の話を出しましたけれども、わが党は関税をなくせとは言ってない、関税は除いておりますから。これはNHKの日曜の討論会でも通産大臣がそれを言われたのですけれども、少なくとも日本共産党ですから、天下の、そこの政策ぐらいはよく読んでから判断をしていただきたいと、この場でもお願いをしておきます。  そこで、私のほうも石油諸税が何に使われるということは、よく存じておるわけです。だけれども、そういうものについてのかわり財源があればそれは満たされるのではないか、赤字公債出さなくても済むのではないか、そういう立場から提案をしておるわけです。この石油関係諸税をなくすということは、これは国民にももちろん歓迎されることであります。それから産油国は、われわれの公示価格の増大を批判する前に消費国石油税を検討せよ、こういうふうに言っておりますよ。ここで、昨年の十二月二十三日のOPEC共同声明でこの問題に触れられた個所がありますが、ここのところをひとつ通産あるいは外務の政府委員のほうから読み上げていただきたいと思います。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この十二月二十三日の一三〇%の再引き上げ発表後の記者会見におきましてイランのパーレビ皇帝は、今回の価格は穏当なもので、これはオイルシェール、タールサウンド開発石炭ガス化などの代替エネルギー生産に要するコストを勘案したものであると述べるとともに、石油は有限な資源であり、その用途も多様なので、でき得る限り付加価値を高めるよう利用すべきであると言及されております。御質問がそれを意味するものであるか、どの発表を言われるのかちょっと私も理解しかねますが、この価格決定に、再引き上げに関連してこういう意見が表明されておるということを御報告申し上げます。
  10. 春日正一

    春日正一君 こう言っているのですね。「本価格引上げの根拠としては、1代替エネルギー生産コストが7〜8ドルといわれていること」「2 73年12月以前の産油国政府収入は、関税消費税など先進国政府石油諸税を大幅に下回っていたこと」、つまり消費国石油税金をうんと取っているということが値上げ一つ理由になっておりますし、この間来ましたサウジアラビアのナーゼル長官、この人も、石油価格引き下げを考えるなら、消費国政府がかけている石油関係課税引き下げから検討すべきだと、こう言っておりますよ。これ御存じでしょう。
  11. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 産油国でそういうことを言っている者があることは承知しております。また、私どもが考えましても、そういう感じを抱くであろうということは理解できます。ところが、先進諸国では、ガソリンその他石油製品ですね、これを非常に課税負担力という見地から見まして課税対象にする好個の材料である、こういう見方をしておりまして、先進諸国大体もう一バーレル十ドル以上です。わが日本はそこが三ドルでございますから、まあ問題はあると——私はわかります。そのアラビア諸国の気持ちというものはわかる。わかるけれども、わが日本が主たる批判対象になる、そういうふうには考えておりませんです。まあ私は、だんだんだんだんとアラビア諸国は、日本石油に対して非常に軽い税をかけておるのだということは理解しつつある、こういうふうに考えております。
  12. 春日正一

    春日正一君 OPEC諸国のこういう批判を、一番石油について弱い立場にある日本がまっ先に受け入れて石油関係税金引き下げるということになれば、今後産油国との直接交渉の場合、有利な立場に立てるということは私は間違いないと思う。そういう意味でも、この石油関係諸税引き下げということは重要な意味を持っておるというふうに思うわけです。それから、いろいろな財源に使うということを先ほど来言われましたけれども、しかし大体、いままで政府高度成長ということでいろいろな形、引き当て金あるいは特別減税というような形で税金減免をやってこられた。だから、そういうものを削る、あるいはなくすというようなことにすれば財源は十分あるわけです。  そこでお聞きしますが、私どもの推算でも、そういう大企業のための特権的な減免税というものは、政府発表によるもの、そういうものも含め各種の引き当て金法人税で一兆七千百六十九億。それから所得税関係で、政府発表によるものその他含めて一兆九千百六十四億円。合計三兆七千百三十三億円という計算が出ております。このうち、資本金十億円以上の大企業分が六割ないし七割というふうに見られるわけですから、大体二兆二千億ないし二兆六千億というようなものが、資本金十億以上の大企業のために特別に減免されておるということですから、その分をせめて半分削るということだけでも、石油諸税に匹敵する一兆円をこえる税収はあるわけでありますから、だから石油諸税を全部なくしたとしても、道路その他に対する財源というものは補充できるじゃないか。これをおやりになるかどうか。
  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま春日さんがおっしゃられましたのは、積み立て金残高の数字だろうと思うんです。それは減税額はそうじゃないんです。毎年毎年そういう積もり、積もるための積み立て額、それが減税に影響してくるわけでありまして、その積み立ての残額を全部落としてしまうなんということになったら、これはたいへんなことになる次第でありまして、これは何かの誤解があろうかと思います。
  14. 春日正一

    春日正一君 それではお聞きしますが、退職引き当て金について、資本金十億円以上の企業退職給与引き当て金に対する減免税額、これを、四十七年実績と四十九年度の推計額、これを聞かしていただきたい。
  15. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) お答えいたします。  退職給与引き当て金につきまして、現在実績が判明いたしておりますのは四十七年度末でございますが、四十六年度末が一兆四千二百億、御指摘の十億円以上の法人につきまして一兆四千二百億、四十七年度末が一兆六千二百七十億でございますので、差し引き増加額は二千億、二千六十六億ということに相なろうと思います。御質問は、これに対する減税額という御質問でございますが、大臣が申し上げましたように、これを、全部引き当てを認めないということにいたしますれば、それは一兆六千億の三五%なり四〇%という計算は出てまいります。
  16. 春日正一

    春日正一君 いまの答弁を聞くと、これだけでちょっとあれですね、四、五千億の税金が出てくる勘定になる、認めないといえば。しかし、私ども大蔵省のほうから出してもらったものでは、四十七年実績七百五十九億二千六百万、それから推算して、四十九年度では千三百二十九億、このぐらいは出るだろう、こういうことになっているんですね。それがその他の税金でも言えるわけです。そうして、この退職引き当て金といいましても、中小企業ではあまりやれない。資本金十億円以上の大企業で、五〇%もの従業員が一度にやめるというような事態が至るところで起こったら、これは日本経済の破滅するときです。そんなことはめったに考えられないことだ。それを五〇%主でまけておるというととは、きわめて不当な減免税だ。  これは一つの例ですけれども、そういう形で計算してみて、先ほど言った私ども主張、特別に積み立てたものを減らせという主張は、私は間違いじゃないと思う。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは税法の立て方いかんでとれはいかようにもなる問題です。ただ、いまの税法によりますればそういうふうになっておるわけでありまして、結局積み立て金が三兆円ある。三兆円の残高を全部否認してしまうというようなことになれば、それに対して法人税率が、税率がそれにかかってくると、こういうことにるわけです。つまり、実質的に法人税増税をいたしなさいと、そういうことだろうと思います。法人税増税で、二兆円をこえるというような石油対策必要額が充足できるかどうか。まあ、充足できないとも理論的には言えませんけれども、もしそういうことになって、一体経済の仕組みというものがどうなるか。私どもはとうていそういう実現性のないことにつきましては考慮の余地はないと、かように考えます。
  18. 春日正一

    春日正一君 この大企業税負担が極度に低いということ、これは大蔵省主税局長高木文雄という人が「東洋経済」に書いております。それによると、一億円以下の人の法人税負担割合は三二・五%、一億以上百億、これが三三%、百億以上は三・一%。大企業が一番安い。その不公平をなくすべきだと。  そこで私、ついでに申し上げますけれども、いままで大企業中心高度成長政策で、いろいろな形で企業資本蓄積を早めるために減免税をやってこられた。いまそれがもう極端まできて、今日この政策を変えなければならぬということが問題になって、総理も発想の転換を言われておる。大蔵大臣も、いままでの蓄積をさらに生産に回してという、タイプを変えなければいかぬと言われておる。まさに政策転換ということは、この大企業優先政策をやめて国民本位に変える、そのために、大企業に特別認めてきた資本蓄積財源国民のために向けて物価の安定をしろということは、当然の転換じゃないですか。政府転換というのはそれじゃないということですか。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府政策の基本的方向につきましては、私は春日さんがおっしゃることとそう違いはない。ただ、それを実現するために、春日さんは非常に極端なことをおっしゃる。それは採用できませんと、こういうことを言うのです。私どもは現実的な方法をとっているわけです。法人税につきまして四十九年度税制改正、これは中小企業につきましては法人税率を据え置きます。しかし、大企業につきましては税率を四〇%に引き上げますと、こういうことをいま御提案をしておるところなんです。私どもは現実的に実行可能な施策を行なう、こういう考え方でございます。
  20. 春日正一

    春日正一君 それでは結局、大企業擁護という立場に変わりはないということだと思います。  そこで、次にメジャーの問題についてお聞きしますけれども、昨年の二月とことしの二月の原油の値段の中で、メジャーの取り分が幾らから幾らになったか、その倍率も教えていただきたいと思います。
  21. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) メジャーの現在の標準的な油種でございますアラビアンライトの例で申し上げますと、現在バーレル五十二セントぐらい取っているということになるわけでございます。  ただ、これは非常にむずかしい御質問でございまして、一つの油種の、まあ一キロリットル当たりの……
  22. 春日正一

    春日正一君 ちょっと、昨年二月のを先に言っておいてください。
  23. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) 昨年の二月はバーレル当たり三十七セントでございます。これを非常にこまかくいろいろと計算しなきゃいかぬわけでございますが、結局、バイ・バックの分の割り戻しをどう計算するかということにかかわるわけでございますが、中間を抜きまして結論で申し上げますと、キロリットル当たりの円で、昨年の二月が五百三十四円、これに対しまして、四十九年二月が七百三十五円でございます。したがいまして、約二百円、キロリットル当たり取り分のあれが上がったわけでございますので、三割五分ぐらい上がったんじゃないかという計算になるんじゃないかと思います。
  24. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 関連。  石油を値下げさせるためには、メジャーにもメスを入れなきゃならないと私は思います。現在、日本石油は、メジャーが輸入原油の八割を押えております。日本経済はメジャーによって思いのままに振り回されておると言って過言ではないと思うんです。メジャーは、石油危機の中で、日本をはじめ消費国国民の苦しみをよそに、ばく大なもうけを上げております。アメリカの大メジャー、エクソンのもうけ、皆さん、七二年に約十五億ドル、七三年には約二十四億ドルと、五九%ももうけをふやしております。米系メジャー全体の利益は五五%もふえ、もうけのふえた額だけでも、日本の金で六千三百八十億円にもなっておるわけです。このもうけを減らせば、それだけ原油価格が下がり、石油製品の値上がりを押えられるはずだと考えます。私は、政府がメジャーを神聖化し、タブーにすることなく値下げのための交渉を行なうこと、また、メジャーとの輸入契約を公開させ、政府原油輸入価格の基準をつくって、輸入価格をかってにつり上げさせないようにすべきだと思いますが、どうでございましょうか。
  25. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油は典型的な国際商品でございますから、日本だけで必ずしも左右できないところもあり、また不適当な要素もあるわけでございます。なるほど、メジャーズは七三年において、エクソンが約二十四億ドル、それからテキサコが約十二億ドル、それ以外のモービルその他は約七、八億ドルの収益を上げておるようでありまして、これはやはり昨年における石油製品価格の値上がり等も反映して収益が増加したと思われます。これは世界的規模において収益が増加しているということでありまして、単に日本だけでうんともうけたということではないんです。アメリカの国会において東半球でもうけたというようなことが伝えられましたから、いろいろその点につきましてもワシントンで調べてもらいましたが、やはり世界的スケールにおいてこれはやっておるということであります。そこで、われわれとしてはできるだけ安い石油を入れるということが重要でございますから、その点についてはメジャーズに対しても常にそのことは言うてあります。きのうも大メジャーの一人の社長がやってまいりまして、私は会いまして、ともかく、石油の値段について新しくきめたことについて、彼らは彼らの感想を言っておりました。しかし、お互いに長いつき合いなのであるから、お天気のときもあれば寒いときもある、しかし長いつき合いでお互いが共存共栄するということは両方の利益になる、日本の民族系の会社はあなた方以上に非常に苦しい採算面にあって苦難をしておる、そういうときでもあるから、あなた方もがまんをして日本に対していままでどおり安定供給をしかとしてもらいたい、そういうことを私は申し述べたのであります。そういうような立場を堅持しながら、日本物価政策ということを一番頭に置いて今後われわれは政策をやっていきたいと思いますけれども、しかし、これを経済的合理性を全然無視して切り下げたりいたしますと、日本に対する供給が減るということは当然であります。これはメジャーは世界的企業でやっておる大きな会社でありますから、バーレン島から出てくるタンカーを、電報一本で、東京へ向けているのをロンドンに向けるということは容易にやれることでありまして、そういうような、ある限度以下に経済性が無視されれば、そういう危険性はなきにしもあらずであります。日本のインフレを静める一番大事なところは、物を豊かに国民の目の前にお出しするということが大事なのであって、その基本は、石油の供給に不安なからしむるということが根本であると私は思っております。そういう面からいたしさして、現在の世界的仕組みの中で石油の供給というものが行なわれているこの現実を無視しないで、できるだけ日本物価を下げる方向でこの問題を処置していきたい、こう考えております。
  26. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 委員長
  27. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) なるべくもう一問に。
  28. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もうこれで終わります。  中曽根さんのいまの答弁は、これまで何回もぼくらは聞かされておる答弁です。ただお願いするという姿勢が、値上げ分を国民にしわ寄せする結果をもたらしておる、こういうことでございます。政府の力では思うようにならないという態度、それがメジャーを神聖化することになると思います。そういう姿勢が、日本石炭産業を今日の状態にまで荒廃させる大きな原因にもなっておるではありませんか。また、契約内容の公表はできないとおっしゃいますが、公開した例は前にもあります。昭和二十四年三月二十五日締結の日本石油とカルテックス・ジャパンとの契約が「現代日本産業発達史」の三九九ページに載っております。中曽根さんも読んでいただきたい。この中にはこう書いてあるんです。メジャーの言うなりになる必要はございません。「日石の受託販売はカルテックス(日本)の指値によること。日本政府石油製品の販売価格を設定する場合においてはカルテックス(日本)は、自由の判断によって契約破棄をなし得ること」、こういうことがちゃんと出ておるわけです。だから何も向こうの言いなりになる必要はないことだと私は思います。前例がこのとおりはっきりしておるんでございますから、できないはずはありません。中曽根さんがほんとうの民族の立場に立つならば、この問題は契約の自由ということで片づけられる問題ではございません。しっかりとがんばるべきだと私は思います。
  29. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) いまの御質問に関連いたしましてちょっと御説明申し上げますと、いま御指摘のとおり、メジャーと日本石油との関係の契約、これをできる限り改善すべきだということで、昭和四十四年度以降の設備許可等に必要な原油につきまして、外資比率をこえる分については、これはそのメジャーがいわゆるひもつき原油という名前で高い原油を押しつけるのはおかしいということで、当時非常に強く通産省といたしましてメジャーとも折衝いたしまして、そういう一定比率につきましては、外資系の会社においてもフリーハンドを持つ、いわゆるフリーハンド条項というのを設定したことは事実でございます。われわれはいま大臣がお話しのとおり、いろいろとメジャーとの接触をいたしておりますが、そういう具体的なる対応につきましても、過去にもやりましたし、今後もそういう方向でそれは当然に努力をいたしておるわけでございます。
  30. 春日正一

    春日正一君 結局、大企業の特別な減税も取り上げない、あるいはメジャーの利益というものに対しても本気で取り組む気もないということになると、結局この物価値上がりの原因というようなものをすべて国民の負担にしてしまうことになるということになると思います。  そこで、私はこの問題はこれだけにして、次に農業の問題に入りたいと思います。  わが国の食糧の自給率がイギリスよりも低く、しかもなお減り続けております。これについて、食糧が第二の石油になるんじゃないかという声も高まっております。総理は、わが国の食糧自給率がなぜこんなに低下したのか、これをどのように理解し、どのように対処しようとしておいでになるのか、お聞きします。
  31. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いま石油問題が起こっておりますし、食糧問題はより重要な問題でございますから、いままでのような考えで食糧はだいじょうぶなんだという考えではなく、新しい世界的な視野で食糧問題と対処しなければならぬということは事実でございます。これはまあいつも申し上げておりますとおり、国連で今世紀末の事情をコンピューターではじいたときに、今世紀末の世界的な一番大きな問題は何だろうと、それは東西問題でもなく南北問題でもなかろうと、それは主食と水だと、こういわれておるのでございます。三十七億の人間が七十億になり、やがて百億になんなんとするということを考えた場合、非常に食糧問題、水の問題等がたいへんな問題であろうということは申すまでもないことでございます。そういう中から生まれてきたのが、その上に第三の問題として、地球をきれいにしようという問題でございます。ですから、やはり日本もその例外たり得ない。いま一億一千万人の人間が、昭和六十年、十二年後には一億二千五百万人に、千五百万人もふえるわけでございますから、そういう面から考えても、食糧の自給度を上げなければならないということを考え、鋭意施策を進めておるわけでございます。  米に対しては、これはもう余って減産をしたこともあるわけでございますから、これはまあこれからいろいろな施策を行なうことによって、主食の一〇〇%自給自足はできるわけでございますが、その後、安いから安いものは買ったほうがいいという考え方、石炭よりも石油は安いからということで石炭政策を行ない、石油に切りかえたら石油が倍に上がったと、こういうことでありますので、そういう意味で、日本の地形、地勢、気候上からの制約もございます。ございますが、主食に対する日本の食糧自給度を上げなければならぬということはもう申すまでもないことであります。そういう意味で、小麦とか大豆とか、また飼料作物とか、いろいろな問題に対して自給度を上げるべく、御審議を願っておるこの四十九年度の予算でもいろいろな施策を行なっておるわけでございます。また、それだけでできないという問題に対しては、いろいろな方法において、海外において日本が投資をし、現地と協力をすることによって長期的開発、安定輸入ということもあわせて考えまして、どっちへころんでも、世界がどんな状態になっても、国民の食糧というものは確保する。しかもこの食糧は——まあ石油は、これは経済問題の中で経済原則をたてまえとして解決しなければなりませんが、食糧の問題になると、食管法を依然として堅持しておるように、これは全部負担にはできません。食糧が倍になるときにはこれは据え置かなければいかぬ。その場合は、もう増税をしても全国民の食糧は確保しなければならぬというほど重要な問題でありますから、そういう問題に対して、政府も、より広い新しい視野と立場で食糧問題と鋭意取り組んでおるということをこの際明らかにいたしておきます。
  32. 春日正一

    春日正一君 では、具体的な問題でお聞きします。  いま、農業基本法の中で重視されて、選択的拡大ということで進めてきた畜産が、今日えさの異常な値上がりでまさに危機に瀕しておるという状態になっております。そこで、畜産物の自給の目標と、その現状を説明してもらいたいと思います。
  33. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 選択的拡大の中の大きな眼目でありまする畜産、酪農等でありますが、四十六年度におきましては、牛乳、乳製品は八八%、肉類は八三%、鶏卵九八%となっておりますが、四十七年も大体これと同水準であります。農業生産の振興にあたりましては、いま総理大臣からもお話がございました。今後の食糧需要の変化を踏まえまして、長期的観点から生産を誘導する必要がございますし、その場合、国内で生産が可能なものはできるだけ国内において生産することが必要であることはもちろんであります。このような考え方から、さきに発表いたしました五十七年度をめどに私どもの試算をいたしておるわけでありますが、それによりますと、牛乳、乳製品九二%、肉類は八九%、鶏卵は一〇〇%の自給を目標としておるわけであります。このために、飼料基盤の整備をはじめ畜産物の生産、流通、輸入等の対策を濃密に行なって、国民の食糧に不安なからしめるように努力をいたしたい、こういう方針で進めておるわけであります。
  34. 春日正一

    春日正一君 牛乳の生産量が前年より減っていますけれども、これはいままでに例のないことだと思います。養豚農家は、豚一頭出すごとに五千円札張って出すようなものだと言っておる。養鶏も、えさが暴騰しているのに卵価が去年の三月よりも下がっておる。これでは畜産農民は離農か死ぬか、選択を迫られておると言っても過言ではないと思います。一体政府はこういう現状をどう受けとめておいでなのか、どんな対策を立てようとしておいでになるのか、しっかり聞かしていただきたいと思います。
  35. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お話のありましたいわゆる畜産危機というのは、いろいろな理由を調べてみますと、一番大きいものはやはりえさの値段が上がったということであります。これは春日さんも御承知のように、大部分は海外に依存しておるものでありまして、一昨年はアメリカ合衆国も天候不順でありましたが、例年になくソビエトロシア、それから北京政府から大量の買いつけがアメリカに殺到いたしまして、そのためにわが国が予定いたしておりましたものも、量は間に合いましたけれども価格が非常に高騰いたしてしまいまして、いままで食管会計などでは輸入小麦が四万円そこそこでありましたので、かえって六百億あまりの黒字を出すというふうな状態であったのでありますが、ただいまの現状では、輸入麦価と、それから国内産とがほとんど匹敵するような価格まで上昇してしまいました。それからまた、そのほかに石油関係等も原因の一つでありますが、フレートが非常に高くなってきております。そこへ持ってきて、円安という為替関係の差異も出てまいりまして、かたがた、輸入飼料が非常に高騰いたした。しかしながら、牛のような大家畜は配合飼料を食べる分が非常に少ないのでありますけれども、いまお話しの鶏卵であるとか、豚であるとかというふうなものは、配合飼料を非常に消費するほうでありますので、したがって、飼料価格が高騰いたしたということによっての困難が加わってきておるわけであります。そこで、現在私どもは、今月の十一日から畜産振興審議会を開催いたしまして、鋭意これらの関係者に御審議を願っておるところでありますが、すでにぼつぼつ部会のほうの結論が出かかっております。やはり当面行なうべきことは、飼料高騰によってお困りの酪農畜産家に対する金融措置等についても、これは行なうべきであるという考え方が出ておりますし、それからまた、今月末にその答申を待って法律によって価格決定することになっておりますのは、加工原料乳と豚価であります。そこで、これらの価格につきましては、私どもといたしましては、物価等についても十分考慮しなければなりませんが、さりとて、いま総理もお話のございましたように、選択的拡大の重要品目であります酪農製品等、これらについて再生産が行なわれないような価格で定められるということはたいへんなことになりますので、そういう点については、十分勘案して、酪農家が安んじて酪農をやっていただけるようなことにいたしたい、こういうことでいま努力をしておる最中でございます。
  36. 春日正一

    春日正一君 お話を聞いても、安いからといってアメリカのえさにたよりきったということがどんな結果をもたらすか、今日の状態が一番はっきりこれを示しておると思います。そこで、当面の策として融資ということを言われましたけれども、この融資だけでほんとうの解決にはならないと思います。一体、二年間で四分の利子というけれども、じゃ二年の間に酪農が完全に立ち直って、借金を返していけるようになるという見込みはお持ちですか。
  37. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いま申し上げました畜産振興審議会の中には生産者もおられます。消費者代表もおられますし、第三者的な専門家の学者先生方もいらっしゃいまして、たいへん御熱心にやっていていただくわけでありますが、そういうことをやっていただいております反面におきまして、私ども、つまり私自身をはじめ農林省の担当者は、酪農家の代表等としばしば接触をいたしております。それで、先生方のその答申も十分尊重いたすわけでありますが、そのほかに、やはり実情をよく精査いたしておりますので、価格決定等にあたりましては、十分それらの方々の意思が貫徹できますように、いろいろな手だてについてただいま御相談をいたしておる次第であります。
  38. 春日正一

    春日正一君 私、この問題では、北海道、青森、神奈川、静岡その他、実際調べてみました。相模原の農民に言わせると、金を借りて利息を払って生産して生活できればけっこうと思っておるけれども、いまではもう経営努力じゃどうにもならぬと、こう言っております。そこで、価格に反映させるということですけれども政府がみずからきめられる価格というのは加工乳と豚肉だけではないかと思うのですけれども、それ以外のものはどうなさいますか。
  39. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 春日さん御存じと思いますが、乳価と豚価はいま申し上げましたような手だてでいたします。それから鶏卵、ブロイラー等は、ブロイラーは今日すでに若干オーバープロダクションと申しますか、生産過剰の段階にきておりますので、これはやはり生産調整ということばが当てはまるかどうかわかりませんが、これは養鶏家たちと十分話をいたしまして、これの価格をある程度維持できるように、しかも消費者に御不満を与えないような程度の生産を調整するということでやっております。養鶏については私ども安心しておるわけでありますが、ことに液卵公社の買い上げ額をふやすという資金的な援助もいたしておりますし、そういうことで鶏卵のほうはやっております。  それからして、またもう一つは大家畜のほうでありますが、この大家畜は、御存じのように国際的に減少ぎみにあります。ことに私どもの国では、これにつきましては、ちょっと高くなれば、高い高いと消費者から言われるわけであります。そこで、先般九万トンの輸入牛肉の手当てをいたしましたが、値段が非常に下がってまいりました。そういうことではやはり生産者の意欲を阻害いたしますので、下半期九万トン持っておりますワクの四万トンは禁止いたしまして、それで価格の維持をはかっているという次第でありますが、これは需要がまだ十分堅調でありますので、私どもといたしましては、この肉牛についての生産の阻害にならないように、極力努力をして価格の安定をはかるということが最善の道である、こう思っております。御承知のように、大家畜は配合飼料はあまり要りませんで、草でありますので、四十九年度予算におきましては、この草地に対する助成金を四十九年度予算案に計上いたしまして、そうして五十七年までにさらに四十万ヘクタールを増強しよう、こういうことで対処いたしている次第であります。
  40. 春日正一

    春日正一君 いろいろ言われましたけれども、液卵公社の買い入れの拡大といっても、現にキロ当たり三百円以上もコストがかかっている。それ以上なければやっていけないといっています。それなのに、価格は二百四十円前後に落ちて、赤字がはっきりしているのに買い入れがされてない。農家は非常に困っています。確実に引き合う価格にこれを引き上げさせるという保証はありますか。
  41. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは自由な品物でございますので、そこでさっき申し上げましたように、昔、ある時期には、非常に高騰いたしましたときには、中華人民共和国あたりからも輸入がかなり行なわれておりました。現在でも行なわれておりますが、そういうことで生産過剰にならないように、養鶏家と十分打ち合わせの上で価格の維持もはかるようにいたしております。
  42. 春日正一

    春日正一君 自由にならないと、そういうことなので、設立されてから現在まで液卵買ったのが九百九十二トンしかない。しかも、生産調整をやるといったって急の間に合わない。そうして生産調整をやって品物を減らして値を上げるということになれば、消費者も卵を少なく食えということになるし、小さな養鶏家はつぶれなければならぬということになる。別の手を考えなければならぬのじゃないか。その辺、どうですか。
  43. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私のことばがちょっと足りませんでしたが、ワクを広げると同時に、買い入れの価格を、当然今日の状況でございますので、引き上げなければならないと思っております。
  44. 春日正一

    春日正一君 異常な下落の下ざさえを問題にしているのではなくて、牛肉はどうしてそろばんがとれるような価格を保障するかということを私は問題にしているわけですけれども、採算のとれる値段にするにはどうしますか、この牛肉の場合ですね。
  45. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 牛肉の場合は、さっき申し上げましたように、大体価格としてはいいところでありましたが、昨年ごろは非常に高騰いたしました。肉が高い、肉が高いという苦情が、消費者からずいぶんまいったわけでありますが、そういうことを考慮いたしまして、輸入ワクの拡大をいたしました。さっき申し上げたとおりであります。昨年下半期に九万トンのワクを出したわけでありますけれども、それの影響も若干あったでありましょうが、肉の価格が下落してきた。非常に生産者から小言が出てまいりました。これは私ども立場としてはたいへんむずかしいところでありますが、一方において、消費者のためには価格は安いことがいい。しかし、あまりそういうことに熱中いたしますと生産者の意欲を阻害するという、そういう調整がございますが、そこで、私どもは観測いたしまして四万トンを押えてしまったと、こういうことのために、最近は価格が上昇してまいっております。そこで、これは国際的に肉類が非常に減ってきたということを私はいま申し上げましたが、わが国では、そういうことを考慮いたしまして、この国会に御審議を願っております農用地開発公団の構想がございますが、これは未利用地や、それから荒れ地等で、なおかつそういう牧畜などには適しておるような地域、それからまた、地方から非常に代議士さんをはじめ県知事等から要望がございまして、とりあえずは、北海道の根室をはじめ九州の阿蘇久住に至るまで、大体大きいところ四ヵ所、そのほかに二ヵ所ほどございますが、そういうことをいたしまして、そして畜産家の生産を上げ得るような施設を講じて肉類の繁殖をふやしてまいる。この数年来、林野庁の森林の中に二百五十頭単位の放牧をいたしました。当時は試験的でありましたが、今日は非常に喜ばれてまいりました。成功してまいりました。そういうようなことで、いまは全国に大体八ヵ所ぐらいあると思いますが、わが国ではやっぱり草地の増強というのは可能な面積がかなりございますので、そういうことで、大家畜、すなわち肉牛の養殖についてはうんと力を入れてまいりたいと、こういう考え方でやっておるわけであります。
  46. 春日正一

    春日正一君 結局、値段の面では間接的に操作するという以外にないということですね。  そこで、政府価格決定できる加工原料乳と豚肉の価格は、幾らにきめるつもりですか。
  47. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 数日前に全国の大会が東京でありまして、全国農業中央会の会長外数名お見えになりまして、この大会の決定事項等についてお話を承りました。それによりますと、八十八円幾らでありました。しかし私どもは、いま申し上げましたように、畜産振興審議会で鋭意その点について検討を加えておっていただくわけでありまして、その審議会の中には全中の人も代表者として入っておられます。したがって、生産者と消費者の御意見を十分承り、今日の流通状況、それから価格状況等と照らし合わせまして適当なところできめたいということで、いま部会で一生懸命やっておる最中であります。
  48. 春日正一

    春日正一君 審議会の中で審議しておるということですから、いま言ってくれと言っても無理かもしれませんけれども、しかし、畜産物の価格安定等に関する法律第三条の第四項では、「安定価格は、原料乳又は指定食肉については、これらの生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、これらの再生産を確保することを旨とし、」というふうに書いてあるのですね。再生産の確保を旨とする価格ということは、少なくとも経営が赤字にならない価格、あるいは資本蓄積ができていく価格、こういうものでなきゃならぬと思うのですけど、その点どうですか。これ、確認しておきたい。
  49. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お話のように、生産者の意欲を阻害することのないようにせよということが法律に命令されておる目的でございますので、先ほど来申し上げておりますように、そういうことを、それから今日の経済事情等勘案をいたしまして、妥当であると思われるものの答申がやはり部会から出てくるものであろうと、こういうふうに存じております。
  50. 春日正一

    春日正一君 総理、えさ代は一年間に四回も上げられておるのに、そして畜産農家が赤字で四苦八苦しておるというときに、政府が畜産を大切なものと考えるなら、少なくとも赤字の出ない価格を保障するということは当然政府の責任だと思いますけれども、この際、総理からお答え願いたいと思います。
  51. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) おっしゃるとおりでありまして、私どもといたしましては、やっぱり生産者側の生産意欲を阻害されることのないようにしなければなりません。赤字のままでこのままやっていけということは、それは無理なことでございます。物価を安定して消費者に安心してもらうという大方針は大事でありますけれども、その中においても、やはり再生産の確保ということができる程度の努力はしなければならない、そういうことで鋭意努力をいたしておる最中であります。
  52. 春日正一

    春日正一君 総理にひとつ。
  53. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 畜産は非常に重要な問題でございます。これは日本だけじゃありません。これはもう全世界的なものでございます。各国でも食肉——まあブロイラーの問題に対しては、まだ多少の余裕ございますが、肉に対しては、もうヨーロッパでも、ソ連邦でも、どこでも需要が非常にふえてきた。いままで魚だけでたん白を補給しておったものが、肉の需要量というのは年々加速度的にふえているわけでございまして、そういう意味で、畜産の将来というものは、私は国際的にもそう下がってくるということではないと思いまして、国内では畜産がここ二、三年乗り越えていけば希望が持てるものになると思います。ただ、外国のえさ代とか、そういうものに全部たよっておったというところに問題がございますから、そういう意味で、今度ASEAN諸国等を訪問しましたときも、これは長期安定輸入ということでなく、開発輸入ということでひとつやろうということで、いま考えておりますのは、中国では雑穀が東北地区——旧満州地区というところでいま考えられるところであります。あとはカナダで、長期的なものをひとつ日本との間で話を詰めよう。それからもう一つは、アルゼンチンでひとつ計画しよう。それからブラジルがございます。それから豪州、ニュージーランドがあるわけです。その上に加えてインドネシア及びフィリピン。こういう問題、一つずつ適地適作ということで考えております。その意味で、今度国際協力公団ということで一なかなか一次産品というものには商社でも手を出さない。商社でもと、こう申し上げますが、何でも取り扱う商社でも、なかなか長期的投資で合わないという問題がございます。だから、そこで政府開発融資というものと現地政府というものとがこん然一体となって、大ざっぱに言うと、半分は現地に、二分の一は——四分の一は日本に、あとの四分の一は他の国に対する供給にというようなことで、ひとつ合理的なものを考えよう。インドネシアだけでも大体一万ヘクタールずつ十カ所ぐらいの十万ヘクタールはそうむずかしい問題じゃないようですが、日本が本格的にやれば三十万ヘクタールぐらいの農用地の提供ということがいま考えられておりますので、そういう意味で、ひとつ長期的な見通しで、日本の人口がふえて、どの程度の食生活が変わって、国内に持ち込まなければならない飼料が一体どうだということを計画的に進めるということを長期的に考えています。  それから、いつも申し上げておりますが、百九十万ヘクタールないし二百万ヘクタールの農用地の転用がきく面積がまだ日本の国内にあるわけですからへそこで牧草をやろう、飼料をやろうと、その場合、財政的なめんどうはどうしなければいかぬのかということを、いま現に進めておるわけでございます。残るのは、いまの問題をどうするかということでございますから、いまの問題は、融資もありますし、それから価格決定の問題もございます。で、また飼料に対してどういう補助金制度をとるかというような問題もあるわけですから、そういうような問題に対して——これは避けがたい問題なんです、子供はパンと肉を食ってずっと育っているわけですから、これを米食とみそにしようといったって、できるわけございません。そういう現実を踏まえて、当面する問題、中期的な問題、長期的な問題等をあわせて検討を進めておるというのが現状でございます。
  54. 春日正一

    春日正一君 先の問題は、またあとであれしますとして、いま私がはっきりここでお聞きしておきたいのは、いま赤字で非常に四苦八苦しておる農家に対して、法律でもきめておるように、やはり少なくともこの赤字がなくなる経営をしていけるような保障を政府としてやると、これを総理の口から聞かしてもらいたいんですが、みんなそれを耳をそばだてておると思います。
  55. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 消費国民大衆には安い品物を多量に提供するということでございます。同時に、畜産農家の生産が維持できるようにしなければならないと、こういう考え方でございます。ですから、保障するということは、すぐ私が申し上げれることではございません。
  56. 春日正一

    春日正一君 引き受けると言ってほしい。
  57. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあ、そういうことでなければ生産しないわけですから、生産は継続し拡大をしていくようにいたしますと、そして、消費者には、安定的に安い品物、良質低廉な品物を提供する、こういうことでございます。具体的な問題は、いま農林大臣が詰めておりますから、農林大臣に、もう一ぺん答弁さしてもけっこうです。
  58. 春日正一

    春日正一君 農林大臣はもういいです。  そこで、いま総理も、それから農林大臣も言われましたけれども、農家の赤字が出ないような価格にするというのは、これは当然やらなきゃならぬことだ。ところが、その結果、今度は値が高くなって、消費者が高い牛乳や肉類を食べなきゃならぬということになると、これは国民生活を非常に脅かすことになる。この矛盾をどう解決なさるか、それをお聞きしたい。
  59. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私がるる申し述べておりますように、生産者農家の所得は確立し、保障ができるような体制をつくりながら、安定的低廉良質な品物を多量に提供したい、その調和をいま政策の上で鋭意検討中であるというのじゃなくて、いま施策を実行中でございますし、また、これからなさなければならぬ問題に対しても広い角度から検討しております、こういうことでございます。
  60. 春日正一

    春日正一君 そういう意味で、一つの問題は、えさ代を下げるという問題だと思います。いまのところ、政府は、えさ代の値上げはやむを得ないというふうに考えて、これを引き下げる努力はしておられないように思う。消費者も生産農民も犠牲をしいられていることになるわけですけれども、そうしないために、政府は今度の一万一千六百円という大幅な値上げを押える対策に真剣に取り組む必要がある。そこで、飼料生産の四割を占めておる全国農業協同組合連合会、全農の今回の値上げの説明資料を見ますと、円の為替相場が安くなったために輸入原料が高くなったといって、一万一千六百円値上げの根拠として、一ドル三百八円プラス一円、九円という相場で計算をしておりますけれども、現在の円相場は二百八十二円前後だと思います、最近の新聞を見て。そうすると、これで計算すれば、約二千五百円は引き下げられることになるはずだと思うのです。この点はどうなんですか。
  61. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 飼料の流通経路は、御存じのように、全農から県の経済連へ参ります。それから今度はその下の総合農協、それから農家と、こういう段取りで行くわけでありますが、商人経営では、飼料メーカーから支店、営業所を通って需要家に行くと、こういうことでありますが、一番の大手はいまお話しの全農であります。これは先物を約束いたすわけでありますから、約束いたしましたときの価格はたぶん三百八円だろうと思います。いまは円が若干高くなってきておりますから、現在のそろばんで計算いたせば春日さんのおっしゃるとおりだと思います。しかし、これ、現実に品物を引き取る時代になってまいりましたときに、円為替がどの程度になっておるかということはまだ未定でございますので、現在の段階で計算をいたしますのと、現実に物が入ってまいりますときの価格では、若干狂いが生ずるかもしれません。しかし、一番大手の全農というものは農業家の集団でございますので、これがやはりいまお話し申し上げたように、為替レートの差益が出るようなことになれば、これは農業団体自体でございますので、農業団体として内輪のことでありますので、適切な措置を講ずるでありましょうし、私どももそういうことを期待いたしておりますが、まだ現実に品物を引き取りますまでの、その決算をいたします時期の円レートが未定でございますので、ただいまのところとしては何とも言えないと思います。
  62. 春日正一

    春日正一君 将来のことがはっきりしないからということで、一番もうけの多い、一番高いレートできめるということは不当だと思いますよ。私が聞いてみたのでは、三百八円では一つも買ってないというように思います。だから、農民の農業経営を安定させるというように、いまの値段で低くきめて、もし将来上がった場合には、それを政府として補給するというような処置をとるべきだと思うのですよ。大体政府は不公平ですよ、総理。この前のドルショックのとき、大企業の為替差損に対しては五年間にわたって損金算入というような措置をとって救済措置をとっている、農民に対してなぜそれがやれぬのか、お聞きしたい。
  63. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これはちょっと、昨年来のことを御存じだとすれば、私どもとしては、あまり正確な御発言ではないように思うのであります。なぜかと申しますと、私はその当時は農林省におりませんでして、党の政務調査会。で、私どもが中に入りまして、たいへん苦労をいたしまして、そして飼料の基金の中へ、財政当局に頼みまして、二百十一億円の繰り入れをいたしまして、そしてそれと同時に四分の低利資金で四百億融資をいたした。そのほかに、食管会計で抱いておりました古々米、初め二十五万トン、さらに追加して全体でどのくらになりましたか、かなりの量を、帳簿価格十五万円以上になっておりますものを一万円そこそこで大量に出してあげて、そして飼料の値段を上げるのを押えたと、こういう努力をいたしておるわけでありまして、今回の値上げについて、飼料の高騰について同じようなことをやれるかというと、これは畜産振興審議会の先生方でも、そういうことは二度とはできないことはよくわかっていると。しかし、まずとりあえず困難しておるから、融資はできるだけめんどうを見るべきではないかという御意見が圧倒的でありました。したがって、そのことは財政当局にも要望いたすつもりでおりますが、そのほかに、先ほどお読みになりました法律の文言のとおりに、再生産を確保するための価格決定につきましては、やはり現在の経済状況等を勘案いたしまして、これらの要素を加味した適切な価格というものが生み出されるべきものではないだろうかと、こういうことで苦労しているというわけであります。
  64. 春日正一

    春日正一君 そういう苦労はされておいでになるけれども、私は、いまその為替の問題として、それを問題にしておる。だから、その点はやはりそういうふうに大企業並みには扱ってあげなければ、これは気の毒です。  そこで、そういうことのために農家が非常に困難して、この時期に自殺した方が少なくありません。私、静岡へ行って、実際に遺書をここにお借りしてきていますけれども、静岡県榛原郡金谷町の松浦正一さんという方、五十一歳、これは六百頭から九百頭養豚をしておる大きい養豚農家です。この方が十二月の十三日に自殺をしております。そしてそれは、こういう紙の裏に、「おとうさんをお許し下さい、お母さんあとをたのむ、幸雄、今後養豚はやめなさい」と、こう言っておる。  それからもう一つ、えさ代値上げのために、将来の希望を失って自殺した青年がおります。静岡県小笠郡浜岡町、松下正名君、二十五歳の方です。この青年は、農業後継者として生きる決意をして、昭和四十四年につとめ先をやめて実家に帰って、養豚を始めて、六頭から九頭、十二頭、二十頭と着実に経営規模を広げて、五十頭にするといって豚舎の建設の計画を進めていた人で、非常にまじめな篤農青年だということで、将来を嘱望されておったんですけれども、この青年が去る十日に自殺したんです。ここにその遺書ありますけれども、それにはこう書いてあります。これはまあ本物をよごすと悪いから、写しに筋を引いたのですけれども、「今の生活は、無気力さは変りはないけれども、楽しさは何もない。小さな百姓はだめだと思う。俺が結婚出来ないのもこの為だと思う。」、「こんなわけで自分は一生独身、そして小さな百姓、何もかもたえられなくなってしまいました。死ぬことはつらいとは思いません。」  総理、これ読んでみてほしいと思う。少なくとも手に取って見てほしいと思う、遺書を。(資料を示す)いいですか総理。なぜこの青年が死ななければならなかったか、希望を失ったからです。そしてこのおとうさんが私に、むすこは殺されましたと、農民にしわ寄せするようなことをするなと総理に伝えていただきたいと、こら言っております。この青年の死をむだにしないためにも、政府のやるべきこと、できることはきちっとやらなければいけないと思いますけれども、これは私に対する回答としてではなくて、自殺した方々に、全国の畜産農民に対する答えとして、できることはきちっとやるということをお答え願いたいと思う。
  65. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいまのお手紙のような事情を承りますというと、まことに私ども暗然とするわけでありますが、私どもここでつとめなければならないことは一つ二つあると思います。   一つは、畜産家が安定的な運営ができるように、これに最善の努力をいたすこと。それから政府は一まあ農林省のことでございますが、一般の農業をしていらっしゃる方々に、私どもの考え方をもう少しよく徹底してもらうということの必要を痛感いたしておるわけであります。で、毎々申し上げておりますように、私どもといたしましては、今日のような国際情勢のもとにおいては、特段に自給度の維持向上、しかも国民生活に密接な大事な食糧生産については全力をあげるのだという、その方針に基づきまして、しかも先ほどお話のございました基本法による選択的拡大の大きな題目であります酪農、畜産等については多々ますます弁ずるわけでございます。ただしかし、飼料等につきましては、御存じのように、国内で全部まかなうわけにいきませんから、できるだけの生産増大をしようということで、小麦、それから大豆、飼料作物等の増産対策は四十九年度予算にも計上してあるわけでありまして、そういう考え方をひとつ皆さんによく知っていただきたい。  もう一つは、農業として成立いたしてまいりますためには、できるだけ規模を大きくしていくということが大事なことでございます。そうでありませんというと、せっかくつくりました品物が国際的に比べてみて割り高だということになれば、生産者よりも消費者のほうがはるかに頭数が多いのでありますから、この消費者の海外に食糧を依存するという考えを断ち切るわけにはいきませんので、やっぱりわが国が産業として成り立つような農業をしていくということ、そういうことのために、小さな農家の人はどういうふうにしていただくべきであるかというふうなことをわれわれはそれぞれ検討して方向を出しておりますので、そういうことに十分の御理解を持っていただきさえすれば、私はいまお読みのような暗たんたるお方が出てこないで済むのだと、私どもはいまのお話を承って、まことに申しわけないことだと思いますが、私どもといたしましては、やはり農業の成り立つように、しかも畜産酪農が成り立ってまいれますようにということで、いま鋭意努力をいたしておるわけであります。  しかも、さっき申し上げましたように、今度農業団地をつくりまして、そこを畜産基地にして、さらに畜産酪農を拡大していこうという最中でありますので、これはひとつ、今度、今月末にきまります酪農、乳製品、それから豚価等につきまして、もちろん皆さんが御納得をしていただけるような価格決定することに最善の努力をいたしてまいりたい、こう思っているわけであります。
  66. 春日正一

    春日正一君 そうすると、できるだけのことはしてくださるということなら、政府が支持価格をきめることになっておる飼料用のふすまですね、これは四月に上げるというようなうわさを聞いているのですけれども、これは上げないでおいてくれますか。
  67. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 政府操作用のふすまでございますが、現在六百七十七円という価格で売り渡しをしておりますが、明年につきましても、できるだけ輸入原価のいかんにかかわらず、畜産経営の安定をはかるということで抑制をしてまいりたいと思っております。
  68. 春日正一

    春日正一君 えさ代の中で比重の非常に高いトウモロコシとマイロですね、これは民間ベースで輸入されているので、国際価格が高くなるとそのままえさ代の値上げにつながるということになるわけですけれども、この際、飼料需給安定法に基づいて、食糧庁が直接買い入れて安い値段で売り渡すということにすれば、えさ代を安定させることができて、また引き下げさせることもできると思うのですけれども、この点、農林大臣の決断があればできることだと思いますけれども、おやりになるかどうか。
  69. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御存じのように、いまはそれを、トウモロコシ、マイロ等については食管で扱っておりませんが、大前提は、わが国の食糧を安定させるという方針でございますので、それに基づいていろいろなことを検討いたしておるわけであります。
  70. 春日正一

    春日正一君 はっきりした答えがもらえないので、非常に残念だと思います。飼料を自給するということが根本の解決だと思いますけれども、それはきょうは、議論が長くなりますから省きます。  結局、問題は、農業の経営は保障していかなければならぬ、しかも消費者に対しては安くて良質のものを供給しなければならぬという、この矛盾を農業はかかえておる。しかも、大企業のように、相談して価格決定して好きなようにつり上げるということにいかぬわけですから。そうしてまた、大企業、工業のように、急速に生産性を上げろといっても、そう急速にはいかない、十年も十五年もかかる問題です。そういうことになりますと、やはり政府として、農民にとっては採算のとれる価格保障をしてあげる、そうして消費者に対しては、やはり生活を圧迫しないような、食糧を安く提供するというようにすることがどうしても必要だろう。これは、米の例で見れば一番よくわかりますよ、米とはちょっと違いますけれども。こうした財政援助を惜しんで、安易に、安いからといって外国のものを買い込んできておったということが、石油の場合でもそうだけれども、特に今日、日本の農業をこの深刻な危機に追い込んだということの原因であるのじゃないか。そういう意味で、えさの暴騰による畜産危機というものを反省して、価格保障ということを全面的に実施する必要があるのじゃないかと思うけれども、その点どうですか。
  71. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 酪農品、それから肉類等、そういうものにつきましては、いまお話のございましたように、国内でまかない得る飼料作物等——小麦、大豆もそうでありますが、全力をあげてこれの生産増強をはかるつもりであります。しかし、すべての農産物について保証価格というお話でございましたが、大体、春日さんも御存じのように、いま農産物では七割ぐらいのところはほとんど私ども政府介入の価格決定をいたしております。野菜でもそうでございますし。したがって、いまの酪農、畜産等を見ておりますというと、やはり流通機構によって、かなりの消費者の手に渡ります価格決定に災いをしておるところがあると私どもは思いまして、先年、市場法の改正等をいたしたわけでありますが、なおひとつそういうことについて、流通機構の改善に力を入れてまいりたい。  もう一つ、何と申しましても、やはり規模を大きくして、みんなで集団的に集まってもらって、生産コストを下げていくということが大切なことだと思います。むしろ、価格決定というふうなことになりますというと、あるときにはやはりそのときの実勢に合わなくなってしまう面もございますので、そういう点を考慮いたしまして、できるだけ生産者の手取りが多くなり、規模が拡大されて、コストダウンができるようにいたしてまいりたい、こういうことでいろいろ努力をいたしておる次第であります。
  72. 春日正一

    春日正一君 先ほど来の答弁でも、引き合うだけの値段を保証するかといえば、どうもはっきりしない。将来規模をどうするとか、こうするとかというような、先のほうの話ばっかりしておいでになる。もちろん、先のほうの話も大事だけれども、この基本ですね、いままでの安い農産物価格で農民を犠牲にして大企業を太らせるという政策、この基本を改めなければ農業というものは発展するということはできませんよ。  そこで、全部の農産物と言ったけれども、私ども全部のものというわけじゃないんですよ。米を除く主要な農畜産物二十六品目について私ども計算してみたのでは、さしあたって、米並みの労賃保障をするのに四千数百億円上積みすれば足りるというふうに思います。多少の違いはあるにしても、そのくらいで足りると思う。このくらいな金は、農業の安定と発展、そういうためにお出しになるべきだと思うけれども、その点、総理どうですか。農林大臣じゃだめですよ、総理、はっきり答えてください。
  73. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) まあ、世界各国おしなべて拝見いたしまして、少数の国は価格政府決定している国もあるようであります。私どもといたしましては、やはりそういうことをして、単なる農業労働的な立場にお立ちになるよりは、むしろ生産性を上げて、自分の努力がそれだけ報いられるような畜産、楽しみのある酪農というふうに持っていきたい、そういうことでございますので、畜産物等について、米と同じような価格決定をいたすというふうな考え方は持っておりませ  ん。
  74. 春日正一

    春日正一君 楽しんでというけれども、楽しいことは一つもないと、死ぬのは苦しくないと言って、さっきの青年は自殺しておるんですよ。みんなそういう思いで農民は暮らしておる。だから、ここは総理にお伺いしたいのですけれども、わが国で高度成長政策ということで、重化学工業を中心とする大企業の発展と、工業の発展ということのために、国の総力を注がれたと思う。そうして、先ほど私申しましたけれども、租税特別措置だとか、各種の引き当て金だとか、償却を早くさせるとかというような形で、年にすれば何兆というような特別な減免税までし、あるいは国の予算の重点をそこに注いで、工業用地の造成だとか、そういうことをやっておいでになった。だから、この短い期間に総理が自慢するような日本のすばらしい工業生産力もできた。そうして、大企業が肥え太って、今日では売り惜しみや買い占めをやって、国民経済を撹乱して、ひどい迷惑をかけるというような、そういう状態にまできてしまった。国の力を注いで、工業をここまでやった、その間に農業や漁業や、そうしたものが犠牲にされてきたわけですから。いまそうして、その高度成長政策に対する反省が出てきて、環境をどうしなければならぬ、あるいは社会保障その他国民生活を高める、それに重点を移さなければならぬと言われておるんでしょう。そうしたら、その工業の陰に隠れて立ちおくれてきた農業、これを安定させて、将来に向かって発展させていくというためには、先ほど来倉石農林大臣も言っておりますけれども、十年、二十年先に向けて、しっかりとした農業の自給発展の計画を立てる。そうして、そこに到達するまで時間がかかりますから、それまでの間、農民が安心して農業を営める、希望を持って農業生産を拡大していけるように十分な価格保障をやるか、そういうことだと思いますよ。そうして、その財源というようなものは、高速自動車道路計画がある、新幹線の計画もある、そういういろいろな計画の一部を延期さえすれば浮かすぐらいなことは世話のないことです。それをやるかやらぬかということが、ほんとうに日本の農業を真剣に考えておるのか、それとも骨の髄まで大企業本位の立場に立っておるのかということの分かれ目になると思います。  このことをはっきり申し上げて、私の質問を終わります。(「総理答弁」と呼ぶ者あり)
  75. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 大体御意見として総理もこれを承っておりますので、了承しておりますので……。  以上をもちまして春日君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  76. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 宮之原君。(拍手)
  77. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 総理は、施政方針の演説の中で、政府は新たな決意をもって教育内容を、教育の刷新充実のための施策を積極的に進めると、こう言い、なかんづく初等中等教育について、その教育内容を精選をすると、こう言われておるのでありますが、その総理の考えておられますところの教育内容の精選というのはどういう内容なのか、お聞かせ願いたい。
  78. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 明治の教育の刷新、また戦後の教育のスタート、まあ二つの教育に対しては大きな歴史があるわけでございますが、戦後教育の発足からすでに足かけ三十年近くということでございます。日本の教育はある意味において世界に誇り得る教育であるということは、明治、大正、昭和、現在も国民はそう信じておるわけでございますが、しかし、教育の中にも、まあこの教育制度そのものが非常に議論のあった教育制度であることは申すまでもないことでございます。六三三四制などという輸入的な教育が一体日本に定着するであろうかと非常な問題をはらんでおったわけでございます。しかし、もう四半世紀以上日本に定着をして今日に至っておるということでございます。まあお互い、すべてのものに対してでございますが、過去を振り返りながら、修正すべきは修正をし、また、よりよき道が選択できるならその方向に方向転換を進めるということは、——生きとし生けるものがすべてのものに対して絶えず考えを移さなきゃならぬものであることは申すまでもありません。特に、教育が最大の重要事項であるということに思いをいたすときに、教育の、三十年近い教育というものを振り返って、修正を加えるものありとせば、これに対しては勇気を持って対処しなければならないと、こう考えておるわけでございます。  まあ、その選択をしなければならない、新たに加えるというようなものは一体どういうのかということでございますが、私はそういう意味で、三十三年から道徳教育も始まっておりますが、やはり人間として、二十年時代には考えられなかった世界の中の日本、国際的な三十七億の中の一億一千万人、こういうような立場で、日本人のあるべき姿というものをやっぱり教育の中に盛り込まなきゃならぬだろう。また、歴史の問題もそのとおりであります。われわれはいまこつ然としてここに存在をするわけではないわけでございます。歴史は二千年、二千五百年という短いものであっても、われわれが今日生命を継続してまいる過程において何十万年、何万年という歴史の上に今日がある。われわれの生命そのものは、肉体的生命は短いにしても、子や孫に伝承する民族の生命は悠久であるということを考えれば、歴史のよしあし、いいこともあった、悪いこともあったということは別でございますが、真実を知らないで、真実を理解せずして私は現状を認識することもできないし、将来的展望に立つこともできない。そういう意味で、もっとこう日本の教育の中に付加ていかなきゃならないものがたくさんあるんじゃないかということを考えております。  権利は、いま主張をすることは十分わかっておるようでございますが、権利と義務は同義語だということも教育の中には大切だと思うのです。善悪というものに対しても、とにかく人類に奉仕せよ、世界の平和に寄与せよという前に、そういう大目的を達成するためには、兄弟は仲よくしなさい、まあやっぱり親に愛情を持ちなさい、共同生活をやっていく多数のためには、多数の利益を守るために、公益のためにはみずからも奉仕しなきゃならない。奉仕しなきゃならない裏には、自分の権利も制約されることはやむを得ない。こういうやっぱりもう少しわかりやすい、子供に対して、特に子供に対してこう付加しなきゃならないものがあると思います。私はしかし教育者じゃございませんから、そういう意味では国民的な立場政治の主管者として行政を預けられておる者の立場として、いいものはいいと評価する、もっと付加しなきゃならないものは付加しなければならないと、こういうことを国民の前に明らかにして、国民の判断を常に仰いでいくという姿勢をとるべきだ。教育は絶えずお互いがよりよき教育を確立するためにどうすべきかということに全精力を傾けるべきだと、こう考えておるのであります。
  79. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 質問に的確に答えてもらいたいんですがね。私は教育全般のことについて聞いておるんじゃないのです。まず、総理が強調しておるところの教育内容の精選ということばを使っておられる、精選ということははたくさん加えることじゃないんですよ。現在あるもののエキスをやはり持っていきたいというお気持ちだと思う。その精選ということは何を中心にして考えられておるかと、そこを聞きたいんです。
  80. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 精選ということは、ただいまあるものを選別するだけじゃありません。精選とは教育の内容、教材、いろいろな制度その他のものに対して取捨選択を行なう。それはもういいものはそのまま育てる、悪いものは除く、より付加しなきゃならぬものは付加する、こういうことでございまして、全般的に述べなければならない、全般的に考えておることでございます。
  81. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その全般的の取捨選択をする、取捨する、その選択ですね。   この間、おたくと山岡荘八氏とのテレビ対談を聞いておりますと、非常に知育教育の偏重という  ことをあなたは強調されておったんですが、その面から見て選択をするところの分野というのはありませんか。どうですか。どうお考えですか。
  82. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 知育、徳育、体育と、こういわれるわけでございますが、私、徳育の面をもう少し重視しなきゃならぬ、もう少しじゃなく相当重視しなきゃならぬ、こう考えております。
  83. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その徳育の問題は、あとからまたお聞きしますから。いわゆるあなたがおっしゃったところの知育偏重の知育の問題について、どうお考えになりますか。
  84. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 知育面に対しては相当な高水準のものであるということを考えております。ただ知育だけでして、徳育と知育、体育も一体になってバランスのとれた教育、人間で知恵だけあっても全然からだが虚弱であってはものの用に立たないということもございますし、徳望がなくて、徳を積まずして知恵だけあると物質的に行き過ぎていろんな問題も起こり得るということもございますから、知、徳というものは全く同一でなければならない。教育の中でもこれはもう徳育、知育は一体のものであると、こう考えております。知育の中でもやり方によってはいろんな問題があると思いますよ。これは外国語など文字で教えるというようなことだから、大学を出て外国の大学へ行っても、入学はさせるけれども卒業する者は四%だと。入ることに意義があると言う人もあるでしょうし、行くだけでもいいんだと言う人もあるでしょうし、いろいろあるでしょうが、やっぱり大学へ入ったなら私は卒業することが望ましいことだと思っております。もう親の立場であり、祖父の立場にございますから、私はそういう意味じゃやっぱり入ったら出なさいと、出ることだけでも意義がありますよと、こういうやっぱり考え方を持っていますが、そういうことになると、原書は読めても初めの一年間は全然わからぬ、教壇に立った先生の言っていることがわからぬと言っているうちに一年たってしまった。しかし、やり直してというか、またやり直して卒業証書を手にした人もございますが、ここらでもうやめようといって帰る例もたくさん私は知っております。そういう意味で、知育の教育のしかたというようなものにもいろいろやっぱり長い歴史もございますが、もっと時代に対応するような、先ほども言ったように、国際的な問題、そういう問題に対応するような教え方というようなものも、教材の選択のしかた、いろいろ取捨選択すべきものはあると考えております。
  85. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうも答弁をはぐらかしておるみたいですがね。じゃ、角度を変えましょう。  今日、詰め込み教育ということが非常に大きなやはり世の中で問題になっておるわけでありますが、そのことについてはどうお考えになりますか。
  86. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 詰め込み教育という——まああなた教育者の御出身でございますが、私は教えられたほうでございまして、教えた側じゃないわけです。教えられるほうから考えますと、親が、能力的に他に能力がある、もう大学へ行かなくとも、法学士にならなくてもいい、文学士にならなくてもいい、わしはテレビやカメラの研究をさしたらだれにも負けないという自信がある子供に対して、頭が痛くなるような子供を大学へ大学へと言っているような、そういうやり方というのはまずいと思いますよ。同時に、そのために詰み込み教育をされなきゃいかぬということは、これはもう子供は被害者だと思います。資質どおりに伸びられないわけですから、それは社会がゆがんでいるところは直さなきゃいかぬ。それで有名校を選ぶというのは、それは学校を卒業してから後の就職がやすいとか、あそこに行けばエリートコースであるとかいうようなことで有名校を選ぶと。有名校を本人が選んでないのに、まわりがそうする。また、いまの試験制度ということがある。これは試験に受かるまでには徹夜をしてやる。あまりやって、人間は一生徹夜はやれないものですから、試験が受かったら、もう二年ぐらいはがったりと休んでと、これじゃ制度が悪いにきまっておる、そんなものはね。その程度の理解は私はあるんですよ。自分で教えたことは——私も少し教えたことはあります。各種学校で少し教えたことはありますが、大体教わるほうでございましたが、そういう意味から考えてみまして、詰め込みというものには弊害があります。弊害はあるが、ある意味においてプラスもある。明治の教育においてはそのプラス面だけが強調されたんです。戦後はマイナス面だけが強調されておる。  それは一かどになるには、ある水準まで勉強するには、ほんとうに練成をして、ほんとうに努力をして、それは螢雪の功といわれるように、努力を置くということが前提でなくして私は一人前になれるとは思いません。人間好きほうだいなことをやっておってですな、ほんとうになれるとは思いません。だれだってみな一人前になるには、これは努力を積み重ねておるわけでありまして、制度上の試験地獄というようなものと詰め込み教育というのとの利害を全く混淆する議論には首肯できないわけであります。私などはあるときには集中的にやります。詰め込まなかったら国会答弁できないわけです。(笑声)これは全部詰め込みをやっているわけですからね。これはいいところと悪いところ——全部悪いと言われたら私はどうしようもないと思うのですよ。そういうところはいままでタブーのようにだれも触れない。制度が悪い、受験制度が悪い、そのいいところは何にも評価しない。一つのやっぱり制度がなければ子供も勉強しませんよ。だから、弊害のあるところは除去する、いいところは伸ばすという意味で、必ずしも、詰め込みということばは大体あまりいいことばではありませんよね。詰め込みといえば、電車に詰め込まれるか、どこかに詰め込まれる、いいことばじゃありません。しかし、教育上の詰め込み教育というものは、一つの短い期間をもってたたき込むという、柔軟な脳細胞に刻み込むということには一つ手段である。私はそういう意味で、絶えず全部が悪いんだというような画一、一律的な考え方は持っておりません。
  87. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうも総理は、いわゆる教育界で言われておるところの詰め込み教育の問題について、むしろ積極的な評価の面を言っておられるんですが、実は私はそれは非常に問題があると思うんですよ。あまりにも教育という問題を常識論で片づけようというところに私は問題があるんじゃないかと思うんです。あなたも御承知のように、今日初等教育の中には、教育内容をきめるところの教育課程が非常に肥大化している。それに基づいて教科書も膨大なやはり知識量を盛り込んでおる。したがって、学校の先生なり子供たちは、その消化のために追い込まれておって、自主的にものを判断する、創造的にやり上げるという余裕がないという、一つの今日の大きな小学校、中学校教育の問題点があるんですよ。したがって、これは識者でも指摘をされておるし、文部省自体そのことを認めておるところなんです。したがって、そういうところから、今日、このきめられたところの教育課程をこなさないがために、結局先生がそれをこなさなければ、これは法律違反だどうだと、こう言われるから、勢い子供たちを積み残していっちゃうんですよ。そのために、小学校の子供たちの二分の一とか、あるいは中学校の三分の一ぐらいは、いわゆるお客さん扱いにされておるという声があるんですよ。それだけに、教育内容の問題については、そういう見地から相当精選をすべきだという意見が今日教育界では高まっておるんです。そのことについて私は先ほどから聞いておるんだけれども、あなたは一般論で片づけておるんだけれども、一体この点は、文部大臣、どうなんですか。
  88. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 総理は、技術的な問題じゃなしに広い角度からお答えになっておったように思います。知・体・徳、調和のとれた人間を育てていかなければならない、また、勉強するときにはしっかり勉強しなければならないというような気持ちを強調されているし、その点については私も同感でございます。  ただ、小学校、中学校、高等学校の教育課程審議会、これまでも精選ということが言われながら、それじゃ現在の教育課程がはたしてそう徹し切っているかということになりますと、御指摘のようにたいへん問題が多いわけでございます。そういうこともございまして、いままでのように小学校教育課程審議会、中学校教育課程審議会、高等学校教育課程審議会、ばらばらじゃうまくいかぬだろうというようなことで、昨年の十一月に小中高を通ずる一貫の教育課程審議会を発足さしたわけでございます。私もやはり小学校や中学校では、いろんなことを覚え込む、覚え込むことも大切だけれども、より以上に覚え込める力をつちかう、基礎的な力をつちかうことが大切だろうと、こう考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、若干の諮問をしているわけでございますけれども、その諮問の中におきましても、学習負担の適正化をはかって基礎的な部分の指導の徹底を期する、そういう意味で教育内容を考えてくださいよと、こういう注文もしているわけでございます。いろんなことを詰め込むということよりも基礎的な力をつちかっていく、そして変化に対応できる人間を育てていかなきゃならない、こういう気持ちで今度の教育課程審議会等は取り組ましていただくということで進めております。
  89. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  90. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、宮之原君の質疑を行ないます。宮之原君。
  91. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 文部大臣の答弁によりますと、教育内容の精選の問題については一貫した教育課程をどうするかという問題で諮問中だという御答弁でございますが、その諮問をしておるところの重点、あるいは進行状況についてまずお聞かせ願います。
  92. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 一つは、すでに九〇%の人たちが高等学校に進学しておりますので、国民教育的な性格を高等学校が非常に強めておるわけでございます。したがいまして、この機会にまず高等学校の教育内容のあり方、これを考えていただきたいということを言っておるわけでございます。二番目には、小学校、中学校、高等学校を通じた統一と調和のとれた教育内容をつくり上げてもらいたいというお願いをいたしております。これは御承知のように、いままでばらばらに進めてまいりましたので、中学校の教育課程は義務教育の最終年次だということでかなり盛りだくさんな内容が盛られておったわけでございまして、高等学校に進みますと、もう一ぺん中学校で学んだことを蒸し返すというような面があったりするわけでございますので、高等学校の教育内容を定めて、そして中学校、小学校とおりてくる、小中高を一貫して統一と調和のとれた教育内容をつくってもらいたい、こういうお願いをしておるわけでございます。第三には、先ほどお触れになったことでございますが、学習負担の適正化、そして基礎的な部分の指導の徹底をはかっていきたい、基礎的な力をつちかっていきたい、そういう見地に立って教育内容をきめてもらう、おのずから精選するというようなことが重要なポイントになってくるだろうと思います。  その三点を中心にして、なおいろいろな御注文を申し上げているわけでございますけれども、御検討いただくということにしておるわけでございます。きょうも五回目の教育課程審議会の総会を開いていられるところでございまして、まず二十一人の方々にお願いをしておりまして、大所高所からの議論をまずやってもらう、その後に個々の問題を掘り下げてもらうために多くの分科会に分けなければならないだろうと思います。その際にまたそれぞれの見識ある方々に多数加わっていただこうと、こういう予定で進めさせていただいておるところでございます。まあ、おおむね二年ぐらいのうちには結論を出していただこうと、こう思っておるところでございます。
  93. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その学習負担の過重の問題でございますけれども日本の教育はどうしてこんなに何もかも教え込まなきゃならないんだろう、教え過ぎてかえって子供の創造性を扼殺をし、みずみずしい感性を失わせておるというのは、やはり教育の実際を見ておる者の大きな私は批判一つだと思いますけれども、いわゆるこの問題の根源はどこにあるんだというふうに理解をされていますか。
  94. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 第一回の教育課程の審議会のときにもそういう議論が出まして、教科書を書いてみようと思うとなかなかたいへんだ、勉強しなきゃならないというような議論がございました。私はその際に、学習指導要領が要求している以上のものを盛りだくさんに盛り込まれているんじゃないんでしょうかというお話をしましたら、そう言われてみればそうだというお話がございまして、やはり学習指導要領よりも、これと関連して教科書の問題があるわけだから、やはり教科書についても一つの検討課題として取り上げていかなきゃならない、こういう議論があったところでございました。皆さんたいへん御熱心に教科書を編成していただくものでございますので、あれもほうり込みたい、これも追加したいというようなきらいがあることは事実のようでございます。
  95. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、やはり今度の教育界のこの問題の一番の根源は、いわゆる教育界の全体にびまんをしておるところの受験万能主義ですよ。言うならば学歴社会、学歴がなけりゃどうしても社会の正面に出られぬのだと。ここは私はやっぱり一つの大きな根本的な問題があると思う。この問題に穴をあけないでおって幾ら技術的に私はこれをいじっても、この問題の抜本的な解決にならない。したがいまして、私はこの問題を後ほどまた総理からもお聞きいたしたいと思いますが、もう一つは、いま大臣指摘をされたところの教科書の問題ではないその以前の指導要領のあり方にも問題があるんじゃないだろうかと見ておるんです。御承知のように、指導要領の非常な国家基準性が強まって拘束性を持つ。そのために現場ではこことこことは取捨選択をするんだという選択権がない。そのことで指導要領に示されておるものはみんなこなさなけりゃならない。言うならば教育課程の示すものをみんなこなさなけりゃならない。ここのところに大きな私は要因の一つがあると見ておるんですが、その点はいかがですか。
  96. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 先日もある討論会で学習指導要領が先生方をがんじがらめに縛っているということをおっしゃった方がございました。私は、学習指導要領というのは非常に簡素なものですよと、あなたは学習指導要領を見ておられぬですかと言いましたら、見ていませんというお答えでございました。これはテレビの討論会でございますので、国民皆さん、聞いていただいていることでございます。ほんとうに学習指導要領は宮之原さんは詳しいわけですから、そんなこまかいことをたくさん書いていないわけでございます。しかし、教科書をつくる段になりますと、これに基づいて教科書をつくるんですけれども、たいへん、まあ、あれも盛り込む、これも盛り込むというようなことになっているのが実態のようでございます。したがいまして、今度の教育課程審議会におきましては、この教科書との関連についても大きな問題として取り上げていただかなければならない、こう考えているところでございます。なお、入学試験のお話がございましたが、入学試験で難問、奇問を出されますと、どうしてもそれに答えられるように在学中にあれも覚えておく、これも覚えておくということになる。したがって、入学試験の出題、学校における基礎的なものさえちゃんとつかんでいれば何にも不安はないんだというような内容にしていかなきゃならない。そういうことで、高等学校や大学の入学試験出題、それについて改善を加えていただきますように今日までずうっと努力を続けてまいってきているわけでございます。したがいまして、入学試験の出題について基礎的な力さえ在学中に養っておけば何の不安もないような姿に持っていかなきゃならない。同時にまた、教科書等があまり過重な詰め込みを求めないようにしていかなきゃならない。そういうことを通じて改善をはかっていきたい、かように考えているところでございます。
  97. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 教科書をおたくのほうで実質的に、まあ、検定みたいなかっこうでいろいろ指導しておられる。その一番もとは何かというと、学習指導要領に沿っているか沿っていないかと、ここのところが一番問題になっているでしょう。したがって、ここのところをこの問題についてはやはりいじらない限り私はだめだと思うんです。その点は大臣の答弁では、そんなものはたいした拘束力はないんだと、こう言っていますけれども昭和三十三年以前と以後とではたいへんな違いですよ。私から端的に言わせれば、はしの上げおろしまでだいぶきびしくやっておると、こう言いたいくらいなんです。私はやはりこの指導要領に伴うところのこの基準性をもう少しエキスだけとって、そしてやはり教師の自主性、創造性というものを相当大幅に認めていくという方向にこの問題は私はやはり検討しなけりゃならぬ時期にきておるんじゃないかと、こう思うんです。文部大臣は育ちが育ちだけに、なかなか統制がお好きのようでございますけれども、この問題は私はきわめて大事だと思いますけれども、そういう方向性をお持ちになりませんか。
  98. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 教育課程審議会におきまして、先ほども申し上げましたように、小、中、高を通じまして統一と調和のとれた教育内容をつくり上げてもらいたい、同時にまた、学習負担の適正化を期して、基礎的な部分の指導の徹底がはかれるように思い切った精選を加えてほしいと、こういうことを言うているわけでございますので、学習指導要領につきましても、どの年次でどの程度の教育内容を持てばいいかということにつきましても、いま申し上げましたような線に沿って改善がはかられるものだと、かように考えておるわけでございます。繰り返し申し上げますけれども、学習指導要領はもう基本的なことしか書いておりませんので、やはりその基本的なことにつきましても、いま申し上げました線に沿う改善は必要でございましょうが、教科書その他等の問題につきましてあんまり過重なことが求められないような努力、どういう形でするか、今後結論を得なければなりませんけれども、そういう配慮も非常に必要になってきているということを私、御理解いただけるのじゃないだろうかと、かように考えているわけでございます。
  99. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その問題といま一つ関連をいたして、いわゆる教育内容の精選の問題と週二日制との問題のかかわりを大臣としてはどう考えておるかという問題です。十六日の労働省の調査結果の発表によりますと、大企業では十人に八人、全体で二人に一人の労働者が何らかの形で週休二日制に入っておると、こういう発表がされている。いずれ私はやはりこれは公務員、あるいは学校教育の中でも現実の日程にのぼってこなければならない趨勢だと、こう思うんです。そういう観点から考えてみた場合に、今日の小、中学校の授業日数の問題にいたしましても、二百四十日というのはいわゆる先進国といわれているところの国では一番長いわけなんですね。したがって、この週二日制とその授業日数という問題とを関連して考えてみても、いわゆる大なたをふるわなければならない私は時期にきておると、こう思うんですけれども大臣のように、二年がかりでやりますからそのときまで待ってくださいということでは機を失するのではないでしょうか、どうでしょう。
  100. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 教育課程審議会に諮問いたしました三点を先ほど申し上げたわけでございますけれども、そのほかにも、いま申し上げました教科書との関連の問題もございますし、また社会情勢の変化にどう対応していくかという問題もございます。こういう問題はまさしく社会一般が週二日制をとった場合に学校教育はどうあるべきかということでございます。そういうことを頭に置きまして、社会情勢の変化、今後どうなっていくか、それと学校教育がどう対応していくか、こういうこともこの課題にしていただいているわけでございます。当然また教育課程もそれと合わせましていかに精選をしていくかというような問題もからんでまいるわけでございます。社会情勢の変化に対応する学校教育のあり方、適正な結論を出していただけるものと、かように期待しておるわけでございます。  同時にまた、私は、人、づくりは学校教育だけでやっているわけではなしに、学校教育、社会教育、家庭教育、みんなが分担をし合って努力をしているわけでございます。特に学校在学中におきましても社会教育の役割りは大きいんじゃないだろうか。低学年の者、高学年の者、一緒に責任を分かち合って努力をしていく、その中におのずから協力関係が生まれてくる。社会生活のあり方が社会教育の中においてつちかわれていくということにもなるわけでございます。そういう意味において、私は社会教育においても、ひとつ教育の分担をするようなあり方を考えてもらいたい。という意味で、学校教育と社会教育との体系的な結びつき、これもくふうしていただきたい、こういうお願いをしているわけでございます。全体を通じまして、社会情勢がどうなろうと、人づくりに知、体、徳、適正を期し得るような配慮をはかっていきたいものだと、かように考えているところでございます。
  101. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これはだれに聞いていいかわかりませんが、いわゆる一般労働者の週休二日の問題と関連をして、学校を含むところの公務員の週休二日制の問題というものは、もうすでに具体的な日程にのぼってきておると思うんですが、この問題についてどう政府はお考えになりますか、これは総理に聞きましょう。
  102. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 週休二日というのが労働界でだんだん採用されつつあるということは、これは私はいいことだと考えております。しかし、こういう物価高という問題もございますから、こういう石油やとにかくいろんな物が上、かってくる、国民生活が上がってくるといえば、やはり少し週休二日制を延ばしても、働くことによってコストを下げて、とにかく物価を下げるというような問題も起こってくるわけですが、長い面から見まして、週休二日制という方向で世の中が進んでおるということは、まあ人生には限りがあることでございますから、まあ私は、働くことによって生きるんじゃなく、生きるために働く、こういうことでありますので、そういう方向は人類の英知だというふうに理解しております。しかし、第二の問題の学校、特に小学校、中学校の週休二日制というのには、私個人では反対なんです。それは、やっと五日間ぐらいでもって、六日間で一日休んでももとへ戻ってしまうという年ごろですから、これは年ごろで非常に柔軟なときであって、覚えるのは、さっき詰め込み論もございましたが、人間というのは、十七、八からもう先はだんだんだんだん覚えることが少なくなって、二十五、六になれば老化現象が起こってくるというのが、これが医学的にはそういうことなんですから。ですから、そういう意味から考えてみても、やはり子供のときに、週六日間教えないで五日間にしたら教えただけ忘れてしまうと、私はすなおにそう考えておるんです。私は、自分で中央工学校という学校を経営しておったり、また理事長、校長ということでもって、非常に短かい、恵まれない人たちが夜三時間ずつでもってやっておると。集中的にやっておるだけに非常に教え込まれておるし、相当な優秀な技能者になっておると。こういういう人たちの声を聞いてみても、若いうちの勉強というのは、非常に一生にどのぐらい役に立つかわからぬが、年とるとだんだんだんだんと覚えるのと忘れるのは同じ、まあ、これ四十ぐらいになると大体忘れるほうがだんだん多くなって、死ぬときにはほとんど覚えていないと、こういうことがいわれておるんですから、私は、まじめな意味で、学校というのは週休二日、私は奥野文部大臣とも論争したこともあるのです、論争というのじゃなく意見交換やったのですが、簡単に週休二日やっちゃだめですよと、私はこういうことを言っているんです。それでそのためには、夏と十二月と一月にどうしても、もう少し、一週間というのじゃなく、三、四週間ぐらい、そして、それ全部一年間を通算すると子供は夏に一カ月、冬に一カ月ということになれば、自然にも楽しめるし、雪の中にも行けるしということで、どうも週に二日ではおかあさんが子供を三人も二人も、家が狭いのにとにかくおやじさんと一緒に全部週休二日だったらこれはもう神経衰弱が起こると、ほんとうにまじめな考えなんです。そういう意味で、現実の上から考えてみて、私はやはり、そして冬一カ月間、子供の休みがあれば先生は外国へ行ってその間にやってくれば、代替教員を置かなくとも、夏と冬でもってちゃんと外国でもって研修もできるんですから、そういう具体的な問題にして十分私は検討すべき問題だと政府としては考えています。  それから公務員は、これはやはり一番最後だと思っているんです。私たちもお互いにこれは物価問題ありますから土曜日の夜八時まででも何でもやっておるわけですが、やはりこれ勉強するひまがないと答弁もうまくいかないと、これは事実ですよ。これだけの広範な問題に対して実際勉強するひまがなければだめですよ、現実問題としまして。私はやはりそういうことの必要性十分考えます。考えますが、やはり国民が先だ、憲法の精神からいっても公務員は奉仕者であると。公務員から一番先やればいいという考えにはこれは納得できません。これはやはりやるにしたら、少なくとも、社会の機構が週休二日になったら公務員はやはりその後だ、こういう考え方。私はもうこれは思いつきで言っているんじゃありません。この問題に対しては、私は真剣に自民党の政調会長時代からも検討しておる問題でございまして、いろいろな角度からやっておりますが、すなおな私の感じというものと突き詰めた結論というものはやはり一つだ、こういう感じでございます。しかし、これは政府が押しつける問題ではなく、社会の趨勢もありますし、世の中の討議にまって、やはり盛り上がりということを前提にして結論を出すべきだろうと、これはそういう意味では謙虚には考えておりますが、考え方としてはやはりそうだろうと、こう思っております。
  103. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 総理の個人的見解わかりましたが、少なくとも、やはり時代の趨勢であることはこれは否定できません。したがって、また公務員の場合は国民が先だということもわかります。しかしながら、この問題はやはり検討しなきゃならぬ時期に来ておるということだけは明白ですよ。しかも、教育だけがそのワク外にあるというわけにはまいらない。ただ私も、それは学校教育の場合は、いわゆる社会教育のあり方、家庭教育のあり方、特に社会教育の充実という問題と関連をさせながらこの問題は検討さるべきだということはこれは否定しませんけれども、少なくとも、学校教育だけは別ワクに置くべきだと、こういうことだけは、これはやはり幾ら総理の個人的見解でも時代の趨勢の中で考えていただきたいと、こう思います。その点どうですか。
  104. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) それは私もあなたとは考え方は変わってないんです。私も全く異なった考え方を持っておるわけじゃないんです。生きるための手段として働くということであって、そしてまた、将来の歴史を永続させるためにお互いが後代のために努力を積み重ねていくと、こういうことでありますから、これはもう生きとし生けるものすべてそういう原則にのってやっておるわけですから、働いているうちに人生終わったということでは、これはもう本末転倒だと思いますので、ある程度の教養、勉強のためにも、合理的な人生を送るためにも週休二日ということは趨勢である。しかも、その中に公務員といえども、また、学校制度といえども例外たりえない、これはよく知ってます。ただ、学校の特殊性から考えますと、大学は別です。また、幼稚園の三年保育なんというものは、六日間びっしりやらぬでもいいんです。これは三日でもよし、二日でもいい。これはちゃんと年齢によって取捨選択されておるわけですから、しかし、いまの小学校、中学校というようなものは、これは一週間のうちに五日というのじゃ戻ってしまうので、そういう意味では、あなたの言う社会教育、私よく知ってます。社会教育の状態がつまり具備されることも必要でございますから、そういう問題と、もう一つは、学校の先生はほんとうに代替教員がなければ海外研修旅行に行けませんというのではなく、やっぱり研修するために合理的にどうするかということです。体育もやはりほんとうに冬、祖父の墳墓の地、どこへでも行けるということになれば、それは私は非常にいいことだと思うのであって、やはり制度の中でも年間を通じて週休二日になるかどうかという問題は取捨選択して考えるべき問題だと、これは公務員を含めて週休二日制というような方向に動いておる。それに対して真摯な検討を続けなければならぬ、これはもうそのとおりでございます。しかし、そういう方向だけを見て一瀉千里にいって、あとからしまったというようなマイナスはつくらないように、やはり政府としても十分な検討を必要とする、こういうことを述べておるわけです。
  105. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、先ほどから教育内容の精選の問題、いわゆる詰め込み教育の解消という立場からいろんな問題を提起をし、お聞きをしたんですけれども、どうもやはりこう歯切れが悪いんですね。それで私は、具体的にこの問題について、こういう方向はどうだという問題提起をしておきますから、ぜひともやっぱり検討しておいてもらいたい。というのは、少なくとも、現在の学年別の教育課程というものは、一つの全体的の一貫性、発展性を持たせるという意味で、ただ小中高一貫というような大きなことじゃなくて、たとえば小学校の低学年——前期、一年から三年まで、あるいは小学校の四年から六年までと小学校を少なくとも二つぐらいに割って、それから中学、高校、大学という一つの大きな区切りをしたところの中での教育課程の一貫性を持たせる、こういうものでのものの考え、あるいは少なくとも、現在の教科の盛りだくさんの中で基礎教育、特に読み書き、昔でいえばそろばん——数学を重視をさせるとか、科学を重視をさせるというところに力点を置いた教科の組み合わせですね。そういうような点から私に言わせれば、現在小学校の一年生から三年生あたりまで、やあ社会科だ、理科だといって盛りだくさんのものを一律に入れるよりは、むしろここでは算数とかあるいは国語というものを力点に置く組み合わせ方ということを考える時期にきておるのじゃないか。しかも、また授業の場合でも、やはり一時間目に体操があったり、二時間目に音楽があったりするのじゃなくて、いわゆる集中的に午前中子供だちの身体の状況あるいは精神状態を考えて、そこに主要教科を織り込んで、午後のほうに、たとえば芸術的な面、体育とかあるいは美術というものを思い切って午後に回して、クラブ活動と一体的にさせて、いわゆる拘束されたところの時間をできるだけ少なくして集中的に勉強さしていく。あるいは先ほど申し上げたところの授業時間にしても、現在の二百四十日というのをヨーロッパ並みに二百日前後まで切り詰めていって、もう少し子供たちを伸び伸びとした形で、受験競争に終わらせないような形の教育課程の編成ということを相当積極的に私は考えるところの時期だと、こう思うんです。したがって、私は、これは教育課程審議会にまかせてあるんだからといって手をこまねいておるのではなくして、ほんとうにこの問題について、文教の責任者の文相あたりも考えてもらいたいと思うんですが、どうなんですか。それに対する所感があったら聞きたい。
  106. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 先ほどもちょっと触れましたように、小中学校は基礎的な力をつちかうところだと、いろんなことを覚え込むというよりも基礎的な力をつちかう。変化に対応できる力を養うところだと、こう考えておるわけでございます。いまの御提案、研究課題として大事な諸問題でございますので、研究課題として受け取らしていただきます。
  107. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 次は、高校教育のあり方の問題についてお聞きしたいと思います。  高校教育は今日一番日本の学制の中で混迷をしておると言われておる、それぐらいに私は非常に多くのやっぱり問題点を含んでおると思うのですがね。そこで、端的にお聞きしたいのですが、この間、東京の都立高校の合格者の七千百六十五名が入学を辞退をした、こういう記事が報道されておるのですが、そのことについてどうお考えになりますか。
  108. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 東京都自身、学校群制度について何か考えなきゃならぬという気持ちを持っておられるわけでございますので、それなりにその成果に期待いたしたいと思います。やはり、いまの高校生活は同時に有名大学に進みたいという気持ちが非常に強いわけでございますだけに、有名大学に進むためには、むしろ私立の高校に行きたい、その結果多数の辞退者が出たんじゃないかと、こう思っておるわけでございます。いずれにいたしましても、自由に学校を選べる、その自由な学校を選ぶについて公正な方法ということになりますと、自然競争試験ということになってくるわけでございます。その場合に、やはり能力、適性に応じて高等学校を選んでいただきゃよろしいわけでございますけれども、ただ、有名校に走る空気が非常に強い。ですから、なるたけ高等学校、大学を自由に選べるという姿を私は残したいなあという気持ちが強いわけでございます。ただ能力、適性を度外視して特定の有名校へだけかり立てている社会の姿、これをやはり何か是正できないものか。また、是正しようと思って学校群制度などを考えられたと思うのでございますけれども、やはりそこにも若干問題がある。したがいまして、中学区といいましょうか、あるいは大と中と合わせた学区といいましょうか、何かそういう方向をとっている県が大多数でございますけれども、いまのところそういう方向のほうが望ましいんじゃないだろうかなという感じを私としては持っているところでございます。いずれにいたしましても、東京都が真剣に御検討になっているようでございますので、その成果を待ちたいと思います。
  109. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうも見方が私から言わせれば非常に薄っぺらだと思うんですよ。  もう一つお尋ねしますが、この間、衆議院の予算委員会の分科会でも問題になったらしいですけれども、大分の県立の高校の問題ですね。記憶あるでしょう。いわゆる入試に関係のない教科の授業をカットして、指導要録にだけはちゃんと載せたと。こういう問題を、どこに問題があるとお考えになっていますか。
  110. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 進学率の高からんことを願って、基本的な高校における人づくりが粗略にされたということではないかと、かように考えておるわけでございます。
  111. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、先ほどの都立の高校の入学辞退の問題といまの問題は本質的に一つだと思っておる。それは何かというと、いまや日本の高等学校教育が大学受験のための準備校化されておるところに問題があるのじゃないですか、受験準備校化されているというところに。したがって、その根本を私はやはり解明をしない以外はこれらの問題についての解決方策はないと見ておるのですよ。まあ、これは余談ですけれども、いわゆる都立の高校生の入学辞退の問題を、そういう本質的なところの問題にメスを入れないで、橋本幹事長は、あれは過激な学生があの高校卒業生に多いからだと、日教組が悪いんだと、こういう三段論法でもって妙な新聞談話を発表しておりますけれども、政党の幹事長ともあろう者がこれはどうだろうかと思うのですがね。それはまあ余談ですけれども。ここのところにも問題が私はあると思うのです。したがって、今日の高等学校の混迷云々といわれたところの根源は、この大学の予備校化したところの、ここのところにあるんだから、それを解決するにはどうすればいいかと、ここのところを少なくとも私は、文教の責任者考えなきゃならぬと思う。それはどうですか。
  112. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 御承知のように、戦前は小学校から中等学校へ進む方々が二五%でございます。中等学校から高等学校、専門学校へ進む方々が同一年齢層の五%でございます。さらに、大学へ進む方々が一%余りでございます。だんだんとある意味においては、能力、適性に応じた進学の道がその中でつくられておったと言えないこともないかもしれないと思います。今日は全部小学校から中学校へ進みます。中学から高等学校へ九〇%の者が進むわけでございます。それから大学へ進みます者が同一年齢層の三三%でございます。で、そうなりますと、やっぱり能力、適性に応じて算数とか理科とかいうことについてさらにうんのうをきわめたいという方もあれば、あるいは芸術方面に自分の才能を伸ばしていきたいという人もある。そういうふうに能力、適性に応じて進学の道をおのずから選んでいけるような態勢ができないものだろうかと、これが私の一番の希望でございまして、それにしては社会があまりにも学歴偏重であり過ぎるんじゃないかと、また、それを受けて父母がただ有名校へかり立てる、有名校を卒業すれば就職は楽にいくというようなこと、やはりまあ全体の考え方を改めていかなきゃいけないんじゃないかなと、こう思うんでございまして、宮之原さんは中学校から高等学校へ進むそこだけで解決しようというお気持ちが強いんじゃないだろうかなあと、こんな感じもするわけでございます。やはり総合的な角度からこの問題の解決をはかってかなきゃならない。それにはまず、高等学校の教育内容も問題でございますし、また、大学の入学試験の出題の内容も問題でございますし、あるいは社会の学歴偏重の姿の是正も必要でございますし、それを受けての父母の考え方の是正も必要、やはりまあ総合的に解決をはかっていく以外にはないんじゃないだろうかなあと、こんな気持ちを持ってるところでございます。お気持ち私よくわかるわけでございます。しかしそれだけでは、また高等学校時代になりますと能力、適性というものは非常に複雑でございます、いろんな方面に伸び盛りなときでございますので、その芽をつむようなことになっても日本の将来を考えた場合には適当とは言えないんじゃないかと、こんな心配も持ってるところでございます。
  113. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 大臣は、私の言わんとするところをだいぶ先回りをし、非常に予防線を張りながら、しかも、あなたは別なとらえ方をしておるんですよ。私が言わんとしてるのは、この問題は、それは入試の解決、入試のあり方ということも大事だけれども、一番の根本のやっぱり学歴社会のあり方にどうメスを入れるかということを政治の力の中でやってもらわなければこれは解決つかないんです。これをあなたは社会も考えてもらいたいというきのうはよそごとみたいな発言をされていましたけどね、私はそれでは済まぬと思う。  私は、この際やっぱり総理に聞きたいんですけど、この問題について、一九七〇年に来たOECDの教育調査団はおもしろい指摘をしておる。日本の社会には出生によるところの階級はないが、十八歳の大学入試によって階級が発生をすると、こういうおもしろい指摘をしておるんです。これは、端的にやはり日本の社会が学歴社会だということを物語っておるんです。ネコでも何でも大学出なきゃだめなんだと、この頭がこびりついておるんです。ほんとうはここに大学を出ないでも一国の総理になられるという生きたところの見本があるんだけれども総理が手本があるんだけれども、その総理にはならわないでおって、とにかく大学を出すんだと、大学を出さなきゃだめだという社会の風潮、社会のあり方、ここのところを私はやはり政治の力でこの際指導してもらわなきゃならぬと思うんです。したがって、そういう意味では、物価問題について強力な行政指導を発揮される、それは非常にいいと思うんです。しかし、この問題の除去は、国民皆さん考え直してくださいでは済まぬと思う。むしろ、やはり行政にあるところの一番最高の責任者あたりが積極的にこ  の問題に取り組んで、これをどうすべきかという姿勢をいまこそ私は強く示すべき時期に来ておると思うんですがね、その点いかがでしょう、総理
  114. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 先ほどまあ私が、戦後三十年になりましたからまあ教育制度も考え直さなきゃいかぬということを申し上げたところまでは、どうもあなたと私との考えには立場上の違いがあるような気がしましたが、あなたの御発言をずうっとこう聞いておりますと、やはり同じところがうんとあるということです。これは私もそういう気持ちなんですよ。実際上いって、この教育制度というのは、メモランダムケースの中で一番強いものでございましたことをお互いに知っているわけです。しかし、これではもう日本の教育はできませんと、アメリカとは違うんですからと、ニューディールの残党がニューディールでもってできなかったものを、日本をモルモットにしてやらせるたってけしからぬといったら、けしからぬというやつはやめろといって、幣原内閣を投げ出して教育制度を発足したことは事実でございます。そういうことでありますが、日本人の英知はこれを消化して三十年近い間定着をさせてきた、ですから、それはそれなりに評価があります。ありますから、全部悪いというんじゃありませんが、しかし、そこでもっていろいろなものがもっと修正が加えられるとしたら、お互いに後代のことも考えながら修正しようじゃありませんか、そのいま好機だと思いますと私、述べたんです。さすがにあなたは長い教育の経験者だけあって、私は非常に教えられるものをいま覚えたわけです。小学校の中で、何でもかんでもいいからといってあれだけの詰め込みをやってはこれは無理ですよ。それはやっぱり生きるためにどうしても必要なもの、これは一年生、二年生、三年生のときに基礎をしっかりしておかないと中学にいっても、高校にいっても、大学にいっても困るものがあるんです。それは何かといったら算数であり、読み書きであり、これはもう過去も現在も将来も変わらないと思うんです。ですから、そういう意味で、やっぱり低学年ほど必要なものだけをしぼって教えていく。だんだんだんだんと余裕が出てきたらいろんなものをこう教えていく。私はだから小学校の四年までは算数を中心にしておって、修身というものがありましたよ、善悪というものがありましたから。そういう人間の道などを中心にして教えながら、能力が出てくる、こなせると、消化力が出てきたときに地理を入れてきた、理科を入れてきた、歴史を入れてきた。そして、それから少したつと今度ローマ字を入れてくると。私はそういうことにしぼっていくということは正しいことだと思います。そういうことをやっぱり真剣に、まあ古い教育の経験もあり、そのマイナス面もよく知っておられる人たちが健在であるうちに——戦後の教育だけが万全じゃありません。これはもう一こまでしかない。ですから、いまの方方も古い教育の善悪もみなプラス面、マイナス面知っている方が健在なうちに、私はもう検討すべき段階を迎えておると、こう述べておるわけであります。まあ非常に傾聴に値する御発言だと思います。  それからいまの高等学校もそうなんですよ。実際、中学と高等学校と、大学に入った初めの二年間、何も違わないじゃありませんか。学生は勉強しないんです。そうして高校はもう全く大学の予科と同じことなんです。だから入るとまた高校の延長みたいなものが一年も二年もあるというので、これは入るまではまあしようがないから勉強する。入ったらまあ二年ぐらいは勉強しないでいいと、大体そうなんです。私、若い連中に聞いてみますと、何でこれだけ苦労して大学入って一年ぐらい遊んでるんだと言ったら、いやそれはもう去年のうちに勉強しましたからと、こういうことでありますから、ここらにメスを入れなきゃだめだ。そうすると、大学制度をどうするかという問題と、私は、高校制度というものをどうするかという問題になると思うんです。ですから、高校というものを、まあここら私の一つの考え方でありまして、まだまだこんなもの押し通そうなんて気は全然ありません。とにかく小中学が九年になったら、その上に私は高等学校というものは、理科は理科、こういう系統に分けて、そしてきのう申し上げましたが、看護婦学校というような各種学校を高等学校の中に取り入れてしまう。そうすればもう不平は何にもなくなりますよ。実際、看護婦などというのは大学よりも一年少ないだけであると、高専と同じことですよ、やっているんですから。高校出てから三年やっておる。あと一年行けば大学の卒業生になれるわけですが、看護婦学校は三年いっても依然として各種学校の卒業生であると。そして、あなたが最後に言われた社会的な制度の中で不公平感を生んでいるから非常に不満があるわけです。これを高等学校という制度を、ただ、いままでのような何もかにも中学の延長として大学に続いている中間的機関であるというのじゃなく、ここでもってもう、少なくとももうやめても中級の技術屋にもなれるし、何にもなれるというような自信を持った高校の制度ができないだろうか。私は私なりにやっぱり二十何年間ずっと勉強しているのですよ。大学もそうだと思うのですよ。何も総合でもって二万人、三万人の中で医学部だ何部だ何部だといっておってもひまな者もあるし、毎日勉強しなかったら博士になれないという人もあるのですから、医師の免許状取れないという人もあるのだから、これは医科大学みな単科大学にしたほうがよほど進む道は明らかになる。もう青春時代でもって非常に感受性の強いときに迷いが起きないような、そういうすなおに進めるような制度というものに、やっぱり私はもう制度にメスを入れるべきではないかと、こういう感じを持っておるわけでございます。  それでもう学歴偏重というのは、これはもう明治からの学歴偏重、東大出とかもう大学出は——大学出でもありません。これはまあ私学も官学もないのですが、いわゆる元の高文——行政科、司法科、いろいろなものを取っておる者は資格者というからまあところてんでもないですが、ずっと局長まではいくと、私大出は地方の局長までは、まあまあ地方の部長まではいけると、こんなのはナンセンスだと思いますよ、私は。こんなことはもうほんとうにナンセンスだと思いますが、まあそのほかに学校出なくても専検制度とかいろいろなその制度があったんですが、まあこのごろは国家試験制度が出てきましたからいいですが、この試験も受けるには、独学でやる人は非常に困難な、道は閉ざされております。私はやっぱり、それで博士になるには、昔は大学出てなくてもちゃんとした論文書けば博士になれたのですが、今度は大学出てなければ博士にしないと、こういうのだから、じゃまあ学士試験委のようなものをつくって大学を出ても学士試験に通らなきゃ学士にしないということにしようかと、大学行ってないでもってところてん式に卒業しているのもあるようですから。まあそういうことを考えるわけですよ。これは国民のすなおな私は声だと思う。ですからあんまり学歴偏重——まあ学歴はあるにしくはない。しかし、学歴があるからといって、社会が悪いのだ、政治が悪いのだといって、学歴の重みに泣く人をつくっておるとしたなら、それはやっぱり政治が正さなければならぬことだと思うのですよ。  それであとは女子に対して、大学出しておかぬと嫁の行き口が悪いから、そういう考え方も誤りである。日本人、そこらでひとつ線を引いて静かに考えるときだろうと、ほんとうにまじめにそう考えております。やっぱり人間というものは、そういう直さなきゃならぬものに対してはただ議論するだけではなく、まじめに考えていくべきだと思う。そう思います。ですから、いまでも、私はまあそういうことを強調したので、官庁などではこれはまあ官学、私学ということがないようになりましたし、特に特進といわれておった人たちでも本省の局長になれる。これは次官の一人でも特進組でぱんと出すとね、そうすると少ししゃんとするのですがね。法律つくるよりももっと道が開ける、私はそう思っておるのです。ですから、各大臣には、優秀な人を見つけて局長に登用しなさい、その中で一人でも特進の次官が出るとしたら、私が総理大臣になったなどの何百倍もその影響がある、こう思っておりますから、御声援のほどをお願いします。
  115. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 あなたという生きた見本が、手本があるにもかかわらずそのとおりになっておらぬところに問題があるのですよ。だからぼくは何もいま、大臣総理のほうから長々しい学制改革の構想を聞こうとは思っていないのです。私が質問しているのは、この学歴社会といわれておるこの矛盾、この弊風をどう政府がイニシアをとってこれを打破していくかと、その積極的な姿勢を見せてこそ、いわゆる高等学校から中学校、小学校までもう受験準備のためにあるという今日の教育のゆがみを是正できるのですよ。そこのところを聞きたいのですよ。たとえば先ほどあげられたように公務員制度の問題にしても、もう上級試験を大学出たときに受かったら、そのままエスカレーターでずっと上がっていくという、初めからもうエリートコースだと。ここまでしか行けないというのがあるでしょうが。それを一体どう改めてくれるのか、あるいは大企業に対しても積極的にあなた方大企業に非常に影響力持っているのだから、集めてですね、一体特定の大学を出なければ採用しないという、いわゆる学歴の上に学閥までからんだところの今日の社会の状態ね、これを具体的にやつ。はり手直ししていく、ここのところを示してこそ、私はやっぱり国民は納得すると思うのですよ。そこを聞きたいのですよ。
  116. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いや、私も長い演説をしようと思ったんじゃないのです。あなたが非常に傾聴すべき御発言がございましたので、この席をかりて意見を述べる好機であると、こう考えてです。私はいわば一つのきっかけをつくるということによっていろいろな方々が広く議論をしていただくということで申し上げたわけでありまして、あなたの御質問に対して、私、学制の問題まで全部申し上げるという特異な意味じゃなかったわけですから、これはひとつ御理解をいただきたい。共感を覚えて発言をしたいということで御理解をいただきたい。  で、そのいまの学歴偏重というのは長いこと言われておるのですけどね。これはまあ官学をどうするかということにも、もうそこまでメスを入れなきゃならぬかもしれぬのですよ。これはもう日本も低開発国じゃありませんから、明治初年と違うんです。ですから、かつて国民のよき指導者、よき官吏を養成するために、官学、国学が必要であったというような時代とは全く違う。にもかかわらず、長い百年の歴史というものは、国民生活や制度の中でそれを拘束しておる。制度上はなくとも、現に拘束しておるとしたならば、打破する道を新たに採用せざるを得ない、そういうことで国家試験制度ができたわけです。実際、いまの建築士にしろ電気の主任技術者にしろ理髪師にしろ、いろんな士がついて、さむらいの士が一ぱいつく法律がどんどん戦後議員立法されたということでございまして、このごろは政府も立法するというふうになっております。看護婦の婦じゃだめだから、あれを二級医師というふうにするか、看護士にしたらどうかというような、いろんな議論がやられておること、これ当然なんです。これを一つの実情に合うように打破しなきゃだめなんです。事実そうです。  ですから、そういう意味で、行政の中でもこのごろ上級職登用試験というのがございましてやってますが、これも、経験だけというよりも、やっぱり学術的な面だけを試験する。学術的な試験でもって運転免許をとった人は、これは運転が全然まずくてどうしようもない運転手もできるわけですから、両々相またなければいかぬというところに調和点があると思うんですよ。だから、占領軍が来ましたときに、公務員は次官から局長、全部試験を受けさせられたわけです。これはもう、大学を出てからちょっと三年か五年たった連中と、局長、次官になって、習ったものは全部忘れた人たちと同列に試験受ければ通るわけがなかったんです。(笑声)ほんとですよ。それでやめた人もありますよ、局長で。こんなばかな試験でもってやれるかと言ってやめた人もある。私は惜しいと思いますよ。ですから、いまの試験制度、私は内容を見てるんです。警察官がずっと警部から警視になり警視長になる。いろんな管理職になる登用試験があります。あれはへんぱなくやるでしょうが、どうもこの試験も学術中心になり過ぎて、六法全書と首っ引きでもって勉強しなきゃ通らぬような試験、こんなものはやっぱり再考をすべきだと。だれが見ても、あの人でなければあそこはわからないんだという人は、あの人が一番確かだという人はどこにもおるんです、各局には。そういう人たちが、学歴がないというゆえをもって登用されないというようなことは、いいことじゃないと私は思います。  特に教育者などは、学歴だけではなく、人物でなければ大教育者になり得ない。こういう意味からいいまして、私は、やっぱり教育者とか、学校制度の中などでは、小学校の先生やなんかで、すばらしい教育者という人にときたまぶつかります。大学の先生などよりもはるかにりっぱな中学の校長もお会いします。高等学校の先生の中で、すばらしい人がおる。こういう人が必ずしも制度上恵まれておるかどうか、こういうものに対してメスを入れております。ですから、私も、ある意味においては、試験制度、資格制度で、この試験を通ればあらゆる角度で学歴というものとは別に登用されるんだと、弁護士試験と同じように。そういうものをどう調和させるかということで真剣にこれ検討しております。真剣に検討している。この問題は。まあ時間をたいへん急いでいるようですが、ほんとうに重要な問題ですから真情を吐露して申し上げておるわけであります。
  117. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まだ抽象的な御答弁しか聞こえませんけどね。大臣はこの間の答弁の中では、いわゆる国鉄の民営移管論をぶつぐらいに一それはあまり賛成しませんけれども、それぐらいの思い切ったところのことを言う総理が、事この問題では、あまりにも少し——私はもう少し積極的な総理意見を聞きたかったんです。まあそれはまた後の機会にしましよう。  もう一つは、私は、高等学校の問題で一つの問題点は、職業高校のあり方の問題だと思うんです。これは一月に、職業教育改善委員会が一つの中間報告みたいにして白書を出しましたね。これを文部大臣はどういうように理解されていますか。
  118. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) お話のように、職業課程の高等学校の教育の内容その他どうあるべきかということにつきまして、理科教育及び産業教育審議会、そこで御検討いただいているわけでございます。中間報告がいま御指摘のようにあったわけでございまして、その中で、生涯教育、どんどん技術が進歩していくんだから、やはり基礎的なものにしぼって重点的に考えたらどうだろうかというような指摘もございました。そういう点について私全く同感だなあという感じも抱いたわけでございます。  反面、私あの報告の内容をつかみがねているんですけれども、地域の実態、生徒の要望、これは非常に種々なものだから、それに対応できるように弾力条項を考えなければならないということも書いておりました。同時にまた、職業課程を卒業した人たちが大学へ進んでいく、そういう人たちを受け入れやすいようなくふうもしろ、これもごもっともなことだなあと考えておりまして、そういう点につきましては対応できるような措置をくふうしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  119. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その中で、諸学科の問題でだいぶ出ましたですね。技術が、職業学校で非常に細分化されて、驚くなかれ二百五十七種類もあるわけでしょう、いろんな科が。秘書科ありインテリア科あり、それから和裁科あり、電気工事科、装蹄科とか、非常にたくさん細分化されておる。このことについて非常にやはり職業高校に入っておるところの生徒たちは拒否感を示しておるんですよ。したがって、やはりこの中から諸学科の統合という問題がある。これはやっぱり多様化という問題と非常にかかわりのあるところの問題なんです。どうも先ほどの総理の御答弁を聞いておると、このことに対するところの職業高校のこういう批判に対してはもっともっと多様化すべきだという御意見のようですけれども、一体あなた自身はこの問題についてどうお考えになるんですか。
  120. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 一つには、先ほど申し上げましたように、基礎的なものを精選して重点化をはかっていったらどうかという意見がございました。ごもっともだと、こう思っておるわけでございます。ただ反面、「地域の実態に応じた」ということが書かれておるところがございまして、中小企業の多いところにつきましては、やはりそれなりにそれに即応した技術を身につけている人をその地方としては希望されているのかもしれないな、そうすると、そういう地域の特性に応じた高等学校の教育内容をやはり考えなければならないな、こう思っておるところでございます。したがって、基本的にはしぼっていかなければならない、重点化していかなければならない。しかし全国的にそれを一律に強行するんじゃなくて、地域の実情に応じた、また、特別な技術教育というような高等学校のあり方もくふうしなければならないな、かような考え方を持っておるところでございます。
  121. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私がお聞きしておるのは、諸学科の統合という問題をどう考えておられますかと。二百五十七種類もあるというんじゃ、これはほんとうにもうたいへんだ。言うなら各種学校化されていますよ、いまの職業高校は。だから、また生きていかないんだ、逆に言えば。今日社会の進展が非常に目まぐるしく変わるところの中で、非常にこまかくこま切れされているところに、これは問題があるんですよ。そのことをどう考えておられるかということと、もう時間がありませんのであわせて聞きますけれども、普通学科と職業学科の接近ということをやはり強調しておるんですよ。これはどうお考えになりますか。
  122. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 簡単にかいつまんで申し上げてしまいますと、諸学科統合の方向で研究すべきだ、こういう結論でございます。しかし、例外はあるだろうということでございます。  普通科と職業科の接近と言われますと若干問題があるように思うわけでございますけれども、普通科につきましても、少なくとも三年ぐらいのときには、文科系と理科系ぐらいの分け方をくふうしたらいいんじゃないか。職業科についても、いま御指摘になっていますように、思い切った統合を考えたほうがいいんじゃないか。これを接近と言えば言えないこともないと思うのでございますけれども、いずれにいたしましても、せっかく御審議いただいているわけでございますので、その御結論を待ちまして方向を定めさしていただきたいと思います。
  123. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは私は、総理とはだいぶここのところになりますと見解が違いますけれども、いまはもう高校の段階から、ほんとうに本人から見れば、高等学校を出て大学へ行くときの進学でも、何を選ぼうかと迷うぐらいの生徒というのがだいぶ多いんですよ。けれども、もう中学の段階から、おまえこっちへ行け、あっちへ行け、こうやって二百五十七もあるところの細分化されているところにやられるからいろんな問題を起こしておるわけなんですよ。したがって、入ったならば、たとえば一つの科に入ったけれども、入ってからでも子供の特性によってほかの科に移動できるとか、あるいは普通科に行けるというような、相当融通性を持ったところの総合的な高等学校のあり方、そこのところを私は考えられなきゃならぬ時期に来ていると思うんですよ。それを、おまえはこれだと初めからレッテルを張って、おまえの能力はこれだけなんだと、こういうものを若い時代の中から一体つけられるものかどうかということになると、非常に問題がある。ここにも日本の教育のゆがんだところの姿勢が一つあるんですよ。したがって、いま文相は普通科と職業科の接近というものについて非常に抵抗があるようなことをおっしゃったんですけれども、私はやはりこの二つの問題を接近させた中でいわゆる高等学校の制度のあり方をどうすべきか、こういう問題も真剣に考えるところの時期に来ておると思うんですがね。その点いかがお考えになりますか。
  124. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) あなたの御発言、理解できます。これは両面あるわけです。  一つは、画一、一律的なものであり過ぎるという戦後の教育制度、これは何もかにもみな予科の連続である——予科というのは、ひまではでなく、向上する大学の予科という一みんな中学、高校と大学に入った初めの一年は全く同じであるという弊害をどう是正するかという問題が一つございます。  もう一つ、あなたが言われておるようにして、どうも初めから方向をきめ過ぎて全く変化に対応できないという問題、これはもうよくわかります。そういう問題、両面から検討しなきゃならぬ問題だと思います。私学の中でなかなかうまくやっていると思うんですよ。これは教育制度の問題でなく、実際問題として、初めは獣医学部か何かに入った者でも、そのうち転部を認める、一年しか転部を認めないものが、転部は二年に認める、三年に認める、夜間の者も昼間に、試験を受ければ一部に転部すると、そういう制度上は運用をうまくやっている人もございますが、あなたの指摘されるのはそういう具体的な問題よりも、制度の中で初めからおまえは農業だ、おまえはどこだ、こうやるのがどうも少し早過ぎるじゃないか、あんまり細分化し過ぎてるんじゃないか、二百五十何種類ですか、二百五十幾らですか——これは確かに私もまだ勉強しなきゃならぬところがあると思います。両面からでございます。  ただ、アメリカなどでいい面もあるわけです。アメリカなどは、教師が非常に少数でもって——大きな講堂に集めてマイクを持って、というようなことではなく、非常に少数で、できれば管理者を入れて、先生と生徒が同数であるというような私学がたくさんあるわけですが、そういうところは、もう初めからハーバードを望む人は自動的にハーバードに入れる、君はコーネルだ、君はどっちだ、こう、もう大体分けて、その場合は内申書がきくわけです。なぜかというと、先生が生徒を非常に親よりもよく習性を知っておるだけじゃなく、入学のときの身上調書を土台にして、入学の日から卒業の日までのプラス・マイナスを全部記録をしておるものがあるわけです。そうして、それをちゃんとテーブルの上に置いて、君は自動車学校へ行ったほうがいい、君は海軍へ行ったほうがいいと思うというようなことを具体的に指導していることは事実です。そのときに、わしはハーバード大学へ行こうと思うんだがと言うと、君の在学中はこういうことであって、この部分はごく悪いがここは異常な能力を持っていると思うんだが君はどうだと、こう言うと、大体納得して行くわけです。ところが、日本人はそうじゃないでしょう。大体みな、NHKを受けたい、新聞社を受けたい、新聞社を落ちたら今度どこへ行くかというので、まあ、郷里へでも帰って小学校の先生をやるか、そういうのが私たちのところに来ますと、名刺は書かないんです。君はもう一ぺん勉強し直して来い、こういうことが現実であるので、そういうものは、教育制度、どこの国にもあって、プラス・マイナス面があるわけですから、あなたがいま御指摘されたようなものも含めて、まあ専門家が、あなた方のような専門家がたくさんおられるわけですから、やっぱりそういう専門家がいいものはいい、悪いものはこれは禁止せよと、そういうときを迎えておると思う。ですから、それは審議会、審議会といって逃げるつもりはありません。国会の御発言も十分慎重にお聞きします。それで政府は、これ、一政府がなし得る問題じゃありませんから、これはもう国民的な支持を得なければ教育制度なんというものは変更できるものじゃありません。だから、そういう意味で、これはもう国民的課題としてひとつこの国会を契機に、ほんとうに検討していただくということなら政府もありがたいことだと、こう考えております。
  125. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 総理ね、私は先ほど来、受験体制の問題や詰め込み教育の問題、高校教育の問題について申し上げてきたんですが、世の親たちが苦しみ悩んで、早く解決をしてもらいたいというのはこの問題なんですよ、事教育の問題で一番は。決して総理がこの間来、総理や文相がハッスルしているところの日教組対策の問題じゃないんですよ、これは。したがって、私はこの問題こそ総理が取り上げて、提起をして、国会の中でも十分議論をしていくところの値打ちがあるところの問題だと思っておるんですよ。そういうことをしないでおって、まあ八百長質問か何かわかりませんけれども、ただ日教組けしからぬ、どうだこうだって、あっちこっちで花火を上げているだけでは、総理ね、これはあなた、一般のマスコミが見ておるように、物価で分が悪いから日教組問題を正面に打ち出して、教育の問題を正面に打ち出して参議院づくりの一つの花火にするんだというような——おそらく本心じゃないでしょうと思いますけれどもね、書かれるのですよ、これ、総理。したがって、ここのところを私は考えてもらいたいと思うんです。私もやっぱり教育界におりましただけに、いろんな親たちとも接しました。しかし世の親たちは、自分の子供には、せめて子供たちを伸び伸びとたくましく、そして豊かな人間をつくりたいという気持ちはあるんですよ。それが先ほど来申し上げているように、小学校から、幼稚園の段階から知識獲得の競争というか、大学に行くならこの大学を望ませようという教育ママというものが出てくるだけに、ほかのことは顧みないところの利己的な人間を、もう幼稚園のころからつくり出しておるのですよ。そこに私はやはり教育上今日の大きな問題点があると思うんです。そのことを世の親たちはわかりながらも、しかし世の中のこの学歴主義の社会の中で自分の子供だけは逆に脱落者にしたくないという親の情のために、かくすればかくなるものとは知りつつも、やはりその中に一枚かんでいくんですね。したがって、私どもやはり政治家として考えなきゃならないのは、そこのところ、やはり教育の問題ですね、解決をしていくと。先ほど来、総理の答弁をお聞きすると、だいぶ合意点もあるわけですから、そういう合意点をやはり土台にして、それならばどうするかという問題をこの国会の場で教育論争としてこそ私は値打ちがあると思うんですよ。それを、日教組がどうだこうだという花火だけ上げたんでは、これは決しておたくの参議院選挙の態勢づくりの有利にもならぬと、私はやっぱり警告をしておきますよ、この際。それで私はもうそのことについては答弁は要りませんからね。  続いてもう一つの問題に移りたいと思います。それは、総理の去る一月の東南アジア歴訪の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。これは、教育支配の脅威をぬぐい去って……。経済支配の脅威をぬぐい去って東南アジアの各国との協力関係を確立をしたい、さらには、いわゆる、いわれているところの資源外交だと、こう伝えられておるわけですがね。そのように理解してよろしゅうございましょうか、どうでしょう。
  126. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 教育問題で、日本とASEAN諸国、東南アジア等の間に連携をとりたいというようなことではございません。これはもう……
  127. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 教育じゃないですね、経済支配
  128. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 経済支配の……
  129. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 の脅威をぬぐい去りたいという気持ちとですよ。
  130. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 経済支配の問題に対しては、これはもう現地の人たちとの間には、日本で報道されておるように、日本人が考えておるようなものよりも理解は十分深まっておるということを私は真にこのはだで感じてまいりました。もう一つは、やはりかつてアメリカ人等を中心にした占領軍が日本においてふるまったように、やはり日本人というものに対する一つの反発というものがあります。それで、それにはそれなりの理由がある。で、これはただ持てる者と持たざる者というような立場ではなく、日本人は一皮むけば非常にいい人なんだが、どうもつき合いにくい状態、日本人ていうのはこんな日本人じゃなかったはずだというような問題の指摘を受けまして、いわゆるこれから世界は一つだと、こういって、日本の宿命的な立場を考えますと、単独で生活ができない、生き得ない日本でありますので、尊敬される、信頼される日本人になるためには教育的にも考えなけりゃならぬ問題もあるなあという二つの問題を考えてまいったわけでございます。  経済支配の問題に対しては、これはもう日本開発途上国にとってなくてはならない存在であるし、お互いが理解をし協力を進めてまいろう、友好を進めてまいろうということは基本的には両国とも一致をしているわけでございますので、トラブルを起こさないために、また、トラブルになり得る問題を排除するために精力的な努力を続けなきゃならぬということでございまして、私は、世界各国と日本との友好関係、信頼関係というものは十分努力の上に実現が可能であると、こういう深い確信を得てまいったわけであります。
  131. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そのときに、特にタイやらインドネシアで非常に学生の反日デモが巻き起こりましたですね。これはどういうふうにあなた受け取っておられますか。
  132. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私はタイのデモというのは、反日というものを中心にして起こったものではないと、それだけが理由ではないと、インドネシアにおいても特にそうだと思います。これは両国ともそうでございますが、政府首脳やすべての人々はよく承知をいたしております。これは、特にタイで王様が避暑地においでになっておるというのでお会いできなかったわけでございますが、特に特使を立てられて、本事件が日タイ友好のために悪影響を及ぼすようなことのないように十分な理解をいただきたいと、こういうあたたかい御伝言がございました。まあ、日本も戦時中タイではたいへん待遇を受けておりましたし、日タイ友好というものは長い歴史の上にあるわけでございまして、こういう一こまによって両国の親善友好が傷つけられるということはごうもございませんと、私たちも代議士に出たころ日本でもたびたび起こった問題でございまして、これはお互いが努力をすることによって、学生その他就職のできないような人たちの不満がなくなるようにお互いにレベルアップをするために最善の努力をいたしたい、日本も応分の協力をいたしますと、こういうことでございました。  これも一つの例をちょっと申し上げますと、大丸でございますか、何か小さなデパートがあるわけですが、そこが集中的にやられたわけですが、それはいままでは、やられるときには日本の商品だけ集中的に売ったものだから、そこでもって非常に反日的なものが業者間に起こったと、今度そうじゃないんです。今度のやつは、現地の要請を受けて現地の品物を三分の二持ってきたものを売って、日本からの品物は三分の一しか売らなかったんです。非常に包装紙がいいとか、非常にサービスがいいとかいうので、そのまわりの中小企業との対決があって、それがデモの背景にもつながっておることは申すまでもないことでございます。ですから、右のほうへ行って右寄りで悪過ぎるから、もうちょっと左へ行けったら、両方でやられておって、じゃまん中で、中庸の道ということにだんだん海外企業もなるわけでございますから、これらの問題は、日本人が、ある時期を看過するわけにはまいりませんが、もって他山の石となそうと、こういう考えでございまして、私は、より友好を増進をする一つのきっかけになったと評価をしているわけでございます。  インドネシアは、これは報道されているように、別な目的もあったようでございますし、そういう意味では、私たちが日本とインドネシアの間には十分な理解があると、私はもう信じております。何回もその後御連絡をいただきましたが、私は、あのような状態で、日本とインドネシアの間がどうこうなるものでもありませんし、まあ、その中に若い人たちが閉鎖的であるとかいろいろなことの示唆を受けた面もございますが、そういう問題に対しては施策の上でこれを生かすということによって、私はもっともっと日本とASEAN諸国、東南アジア各国との友好は増進されるということで、意義ある旅行であったと、こう評価しておるのであります。
  133. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 総理は、このことについて衆議院本会議でわが党の村山喜一君の質問に答えて、商社、企業のこともさることながら、当該国政府国民へのPRの不足、日本の教育のあり方に欠陥があるという筋のことを言われておるのでございますけれども、私はそれも全然ないとは言わないにしても、むしろ政府のいままでの対アジア外交、なかんずく経済援助のあり方について根本的に洗い直しと発想の転換が要求されておると、こう見ておるのですがね。その点いかがでしょう。
  134. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) それはございます。それはもう全くそうです。とにかく、私はきのうも申し上げておりますように、タイでもインドネシアでも——タイは、一つの例だけをあげましても、日本の原材料を九〇%受けているところがあるわけでございます。それで操業をしているわけです。ですから、ここに塩ビの原材料が行かない、石油と関連がありますから行かないということになったら、そうでなくても大学を出て一割の人たちはアメリカ及びヨーロッパに職を求める。あとの九割の人は国内で職が求められないというところで、ようやく稼働しておる工場であります。それらも、日本との間の合弁企業であると、また一つは、向こうの政府企業であると、そういうことで、日本からの供給というものが確保されなければたいへんな混乱を起こすということが一つでございますから、そういう面から言って、日本とタイとの間の友好親善がいかに必要であるかということは当然でございます。  インドネシアにおいては、これは肥料の問題がございまして、最小五十万トン、最高七十万トンというのでございますが、四−六月三十万トンだけは引き受けるが、あとの二十万トンは保しがたいということでおるわけですが、それで一体バングラデシュに対する米はどうするんですか、タイに対してはどうするんですか——インドネシアは一万ヘクタールずつ十カ所も土地も出すと言っているんです。できれば三十万ヘクタールの土地を出してやろうと言っているんだから、そういう問題に対して。一億三千万人おるわけです。一億三千万人の人をお持ちでですな、一万数千の島を持っておるインドネシアの状態を考えるときに、しかもあれだけの資源があります。しかし資源は活用しなければ何にもなりません。そういう希望あるインドネシアの将来を見るときに、日本がいかに協力しなければならぬか、これは言うまでもないことでありますが、ただ、やり方において、アメリカでもそうですが、同じ金を出すにもうまい出し方があるじゃないか。金を出しているんだから、われわれが手を引いたら困るのはそっちだろうと、事実そうであっても、そういう思い上がった姿というものが、国際的に、交付をした利益の何倍もマイナス面としてはね返ってくる。こういうことは心しなければならぬことであるということは、もう申すまでもありません。そのために、今度国際協力公団でもつくりまして、一次産品など、もうからぬからやりませんよという商社、まあ商社中心の略奪的にというようにとられてはいけないような、そういう商社活動にすべてをまかしておったということではなく、政府も商社もみんな一体になって現地政府とも話し合いをして、これだけの投資に対して生産をされ、物の分配まできめて、インドネシアに対して国民が使うものが何十%である、日本に対する備蓄は何十%である、あとの残りはいわゆる友好国に対する援助等に使うというようなことの話し合えるようなことをやりましょうと、こういうことで国会にも予算及び法案として御審議をいただいておるわけでございまして、それなりの反省もし、それなりの努力も傾けておるというのが実情でございます。
  135. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その開発援助の質的改善の一つですかね、総理はいろいろな国で民間先行型を政府主導型に転換をして経済活動を節度あるものにしたい、こういうことを言われておるのですがね。これは関係国のそれぞれの当該国にすなおにそういうようにそのことは受け入れられると思っておりますか、どうでしょう。
  136. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いままでが民間主導型であったことは事実でございます。これは政府援助というものが非常に率が少ないということを見ても、GNPの一%は経済援助を行なっておるわけでございますが、DAC平均から見ますと政府援助ベースは〇・二三%と、〇・三二%だったものが〇・二三%に逆転をしたというようなことでございますから、この面からも政府援助は必要である、アンタイイングの推進が必要であるということはもう論をまたないところでございます。しかも、いままでのように、石油とか、それから鉱物資源とかというものは商社中心でもよかったわけです。また、ウランの開発とか、いろんな問題がございますが、もう石油の場合はよかっても、ウラン開発ということや濃縮ウラン工場ということになると、政府ベースでなければもうどうにもならぬわけでございます。ですから、日本とアメリカ、日本とカナダ、日本と豪州、日本とフランスというような意味で、これはもう当然そういう問題が起こってくることは国際的な趨勢として避けがたいことでございます。  もう一つは、現地が望んでおる事業でほんとうにやってくれているのは何かというと、林業開発などは、これは現地は非常に高く評価します。これはもう木を切って植えればいいと思っておったら、そうではないそうです。私は非常に勉強してきたんですが、日本人が来てから非常によくわかったと。ラワンというのは一反歩に一本か二本しかない。そうすると、それを切って搬出をしたら、そのあと植えてくれないと思って……。日本人を評価した。何だ、日本人は切りっぱなしでという、一時そう思ったら、そうじゃない。日本の林業の技術屋は非常に賢い。ラワンという大きなかさの下で全然育たなかった木をちゃんと添え木をして起こしていってくれていると。それがいま新しい産業として立ち上がっておる。いわゆる割りばしとか、それからようじとか、非常にまさ目でもってぼんぼんと割れるというものであって、これが大きなラワン材、何百年たったようなラワン材の輸出よりももっと大きなものに十年、十五年でもってなる。そういうものは非常に高く評価されているわけですが、他のところでもってやると、まあ金を出すと豚はすぐ持ってっちまう、何を持ってっちまうということで、地元に食糧危機があっても計画どおり搬出していってしまうと。それは契約であっても、それはどうも首肯しがたいというのが現地の反日感情になっているわけですが、やっぱそういう問題に対しては政府援助というものでないと、商社の責任だけでは三年も五年もくぎづけになるような投資、利益の薄いものはできませんと、やっぱり投資したもりは経済ベースで引き上げていくんですと、こういうものの調整はやっぱり国と国とのつながりというものが必要であるということで、まあこれらASEAN諸国は大体そういう形でこれからやるべきだろうと。これはASEAN諸国だけではなく、豪州ともそういうことで話しておりますし、また、ブラジルともカナダともそういう話を続けておるわけでございますので、広範な意味で、いままでのように業者主導型、民間主導型というマイナス面は十分この処理ができて友好関係は増進できると、こう考えております。
  137. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、それが決定的な非常に改善の役割りをするとはどうしても思えないんです。なぜかならば、タイやインドネシアを見ても、日本の資本なりあるいは政府から出されている財政援助なりにしても非常にたくさんになっておる。言うなら、ぼくはやっぱりそれぞれの当該国には、民間が先だとか、あるいは政府が主導権というよりも、現地の国民の多くからは、日本の場合は官民一体になった形でやはりこの問題は来ておるというふうに受け取られているところの側面が多いのじゃないですか。私はそう見ますよ。ですから、むしろせっかく皆さんが、よかれかしとやっているところの形のものが、何ら国民が一番願っているところの経済自立に大きな役割りを果たしておらない。また、そういうふうにすなおに受け取られておらない。そこに私はやっぱり問題があると、こう思うんですよ。それは民間型から云々と、こう言いながら、政府主導型と言いながらじゃ、一方韓国には逆なことを今度やろうとされているでしょう。これは外務大臣に聞きたいんですけれども、いわゆる十二月の日韓定期閣僚会議では、いわゆる逆に、民間先行の経済援助をやりたいということを強く打ち出されている。そうすると、これは国によってそういうやり方が違うというかっこうになるのかどうかね。むしろ私は、やはり外交、特に経済援助のあり方について一貫性のないところが、なおいろいろ誤解を与えているのじゃないだろうかと思うんですが、その点はどうなんですか。まず、外務大臣からひとつ。
  138. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 経済協力を考える場合に、その相手国の事情を考えなければならぬわけでございます。相手国が発展途上国である場合が経済協力と申しておるわけでございますが、その場合、相手国がようやく自立経済が離陸の状態に達しまして、政府の協力を必要としない、民間の経済交流で十分であるという状態を私ども望むわけでございまして、韓国の場合は、いまの第三次五カ年計画の満了の年をもちましてそういう状態になりたいということを先方の政府も言っているわけでございまして、それはわれわれも望むところでございますので、政府援助という姿のものはだんだん薄くなりまして、民間交流に座を譲るということは自然の成り行きだろうと思うのでございます。しかし、そういう状態になっていない低開発国の場合におきましては、そういうかげんにはまいらないということでございますから、一がいに日本経済協力の方針はこうだと相手の事情をかまわずに原則を立てることは私はできないと思うんでございますので、そのあたりのことは御理解をいただきたいと思います。
  139. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いま外務大臣述べましたとおり、国によってみな違うわけです。まあこれ、大ざっぱに分ければ、開発途上国は政府が中心になっていってまいりまして、それでだんだんだんだんと民間に拡大されていくということになります。それから、経済的に自立をしておるような国は民間ベースでもってやれるということに、まあ大別されるわけでございます。ですから、今度石油問題に対しては、石油は、日本は民間業者、向こうは政府ということで十分やれたわけでございますが、今度石油問題が起こってから、政府政府が話をつけなければだめだということで、アラブ諸国に対しての経済協力を正式にして、そして民間との調整、調和をはかってまいろうということになっているわけです。それで、いまのブラジルに対しては、初めは政府でやって、ウジミナスの製鉄所というものは、これはもう政府政府との間ということで話し合いを詰めているわけであります。それからシベリア開発になれば民間と先方側、体制の違いがございます、政府でございますが、しかし、それではどうも均衡を失すると、いろいろな問題があるので、民間のベースではやりますが、政府取りきめを付与しますと、こういうことになっているわけです。いままでASEAN諸国やそういうものに対しては、いままで民間が中心でやっておりましたが、多少問題もありますので、民間がやっていると、まあ民間は経済ベースに合うもの、もうかるものしかやらないということになりますし、政府の場合は、もうからなくても民生の安定とか両国友好のためのものがかみ合わせられるので、より信頼と評価を受けるということでございます。ですから、いまの状態では個々にみんな違います。違いますが、まあ民間といっても日本政府が風当たりが強くなるときは、日本政府の、日本の旗に風当たりが強くなるわけですから、そういうことのないように調整機能を果たそうということにしたわけでございます。ですから、いまインドネシアでは、旧軍人で、セレベスという島でほんとうに裸になって農工一体ということでやっているんですが、農のほうはまず自立ができるようになったが、少なくとも大きな農業を維持するために必要な農機具や肥料というものの第一段階におけるそういう投資は日本でやってもらいたい、こういうことで、まあ民間もかんでおりますが、民間だけではなくて通産省がやっぱりそれを調整しながら、もういろいろな破綻を起こさないような体制をつくってからスタートしょうということで、これはもう両国官民ともに合意に達しておるわけでございます。あと残るのは、民間が投資をしたり日本が投資をしたりしたものはいつまでも株を五一%持ってられちゃかなわぬという問題が起こってくる。これがずうっと続けば、ちょうどアメリカの石油資本を接収するという問題になりますから、今度はいま豪州との話し合いなどで言っているのは、あなた方が五一%でもけっこうです、こちらが五一%でもけっこうですと。五〇、五〇でもけっこうですと。場合によったらあなた方が、全部日本の国内で政府を通じて全資金を調達してもけっこうですと。それで、日本が五一%持っておっても、何年間でこれを全部あなた方に株はそのまんま切りかえてもけっこうですから、問題は、低廉良質なものを長期安定的に供給を受けるという両国の取りきめが前提であれば、株などには固執しません。こういうことを述べて、それならばというんで、ウラン開発その他に対してはもう一切民族資本以外はやらぬと言ったものが、日豪間で話し合いを進めようと、こういうふうになっているんですから、ケース・バイ・ケースで相当違ってくる。いずれにしても、こっちも利益を受けますが、あなた方の利益も十分確保される。それがお互い、両方どんな角度から見ても理解される、評価されるということが国際協力の大前提にならなきゃならぬ、こう思っております。
  140. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、いま一つの大きな問題は、日本の東南アジア諸国に対するところの経済援助あるいは企業の進出のあり方が、その国の政治権力すなわちその政権と癒着しておるところにも一つの問題があるんじゃないだろうかと、こう思うんですよ。これはもうすでに多くの新聞が指摘をしておるところでございますけれども、そのことが、その国民民衆に、ほんとうに自分たちのためになっておるんだというものをからだから受けとめることのできなかったところの、一つの大きな私はああいう問題が起きているところの要因だと、こう思うんですが、その点はどう見ておられますか。
  141. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 遠くから常識的にすなおに考えるとそういう議論が起こることは私もよく承知しております。しかし、実際開発途上国であり、他国の援助を受けて自立をするということになりますと、その過程において、政府対象でなければならぬということは、もう当然なんです。  これは、日本が明治初年から、外資を入れるとすれば政府が国債を発行する以外になかったと。製鉄所が外資を入れるとすれば官営八幡製鉄所でなければならなかったと。それが、もうだんだんと経済が大きくなってきて、日本企業そのものが国際的に通用できるというようになれば、国営企業がだんだんと移ってきたという過程において、かつて逓信省だったものが公社になり、鉄道省だったものが国有鉄道公社になったというふうに、だんだんだんだんと、同じ逓信省の航空であったものが日本航空になり、純然たる民営であるところの全日空になっておるという、これは過程でございましてね、やっぱりその国の代表はその国を支配しておるというか、その国を代表しておる政府であるということで、政府間でもって話をつけていく。いままでは、アラブやその他に対しては、日本は比較的に政府間ではなく、民間ベースでやり過ぎたと。今度は政府ベースでやる必要があるということを相手側から求められておる。これはもうASEAN諸国は全くそうなんです。三木大臣がもっと早く来てくれればもっと早く友好国にしたのに、全然来ないで、そうして石油会社の代表ばかり来ているから、だからこんなもんちゃくが起こるんだと。だから、政府の代表が言えば、すぐ直ちにというように友好国に切りかえられると、こういうことですから、政府政府が話をしていることが国民の反発を受けると。それはもう好むと好まざるとにかかわらず現に存在する政府はその国の正規な機関として国民が選んだ政府でありますから、そこまで、政府政府との話し合いが全部政権にてこ入れするものだとか、そういう考え方は少し飛躍的にも考えられるんです。だから、実際は国民が中心ですから、国民批判を浴びないように、もう細心の努力をする必要はございます。必要はございますが、政府対象にしないではとても開発途上国とは話を進めていけないということだけは事実でございます。
  142. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 あなたはそういうふうに理解していますけれども、ここに「田中総理の東南アジア歴訪に関する海外論調」、これは外務省の情報文化局で出しているんですよね。これは、言うならば、あなたの内外記者会見及び今度の一連の東南アジアに起きたもろもろの問題に対するところの関係国の論調ですよ。これを見れば、あなたがどう抗弁しようとも、多くのやっぱりジャーナリストは、おそらくその国の国民の民意が相当反映されておると私は思いますけれども、いま申し上げたように、何か反共政府のてこ入れにあんたがやっておるみたいな、そのことに対するところのやはり国民の、民衆の批判、そういうものが圧倒的だと。したがって、そのやり方がほんとうに、それはもちろん話をするときには政府と話しするでしょうけれども、直接やっぱり国民生活の水準引き上げるように、あるいはその貧富の格差が大きくならぬような援助のしかたというものが考えられないから私はこうなったんだと思うんですね。その点、やはり反省すべき点が相当あるんじゃないですか。
  143. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そういう、マスコミやジャーナリズムに対しても批判を受けないようにしなければならぬということで努力しているわけですよ。  これは日本でもありましたよ。アメリカから援助を受けるな、アメリカから何をやるな、さんざんやったけれどもね、国民の大多数は、やっぱりアメリカから援助を受け、協力を得たから戦後の復興はあったんだと、こう理解していますから、これはもう一人でも反対論がなければいい。反対でなくても、事実を知らぬ人でも、観念的にも、せっかく努力をしているのに、汗かいているのに、あれはどうも特殊な連中と手を組んでやっているんだと痛くもない腹を探られないように、全力を傾けるべきである。それはもう申すまでもありません。  ですが、それには手は二つしかないんですよ。一つは、もう世銀だったら世銀にやるとか、アジア開発銀行に拠金をしまして、どうぞもうそっちからお借りくださいと、こうすればいいんですが、それじゃ日本の財政ももたぬと、こういうことで、アジア開銀の二分の一は日本が持ちましょう、こう言っているんです。年間二億ドルないし三億ドル、世銀の金もコンスタントに拠出をしましよう。世銀から第二世銀に対して、無利息五十年で低開発国援助を行なう資金が流れる、その資金の大半も日本が受け取りましょう、やりましょうとやってるんですが、それだけにまかしておけない。日本日本で、石油はとにかく確保してこなければいかぬし、木材は確保してこなければいかぬし、いろんなものを確保してこなければいけません。そういうために、やはり直接もやらなければいかぬし、そこらのバランスの問題であります。  しかし、いままではやはり民間中心主義であり過ぎたということで、どうも経済ベースに走り過ぎたと。日本は、日本のためになるやつだけではなく、現地のためになるもの、それがもうからないものであっても、植林とか土地改良とかそれから肥料工場とか小型の農機具修理工場とか中古の自動車の修理工場とか、そういうものをやってもらったほうがいいと。それだけじゃなく、一次産品の豚とか牛とか雑穀を生産することにも協力をしてほしいと言うから、それは民間の経済ベースじゃできませんから政府の金以外ありませんと、そういう意味で国際協力公団をつくって政府援助を流しましょうと、こう言っているんですから、これは相当身を一まあ身を正すというよりも、相当ジャーナリズムにもこたえておる。それはそうでなければもうならぬし、非常に日本はその意味でね、われわれが知っている時代に、十年か二十年前に、日本国民日本のジャーナリズムが書き立てたことと同じような事態を現地で起こしたくないということで、真実はいっかわかるなんてことを言っていられないと思うんですよ。国際的な間ですから、間違いでもね、間違った評価を一つでも起こさないように細心の努力をしておる、胸を痛めておると、こういうことですから、ここらはひとつ十分理解をしていただきたいと思いますよ。
  144. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 起こしたくないということが起きておるんですよね。これは、少なくともマスコミのいろんな批判というものは、私はやっぱり日本政府としても謙虚に聞いて、謙虚な立場経済援助なりいろんな問題に投資をしていくという、こういうものの考え方を捨てたんでは、たいへんなことになると私は思うんですよ。  私はそのことと関連して聞きますけれどもね、その中にはやはり、意識しようが無意識であろうが、とにかく、われわれが施してやるんだという、あるいは日本人はアジアでは一番えらいんだという、妙な大国意識が介在しておるんじゃないでしょうかね。どうなんですか、そこは。
  145. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) それは全くありません。あなたにもないでしょう。あなたにないものをわしらにあるわけないんです。ないんですよ。日本人はある意味では何か卑屈過ぎると、どうも卑屈過ぎると。私ども、やっぱり私たちの時代ではなかったけれども、われわれがこの地球上に比きておって、もの心づいてからいろいろな御迷惑もかけましたよと、こう言いますと、まあ過ぎ去ったことですよと、相手は非常にそういうことを理解していますよ。日本人がそんなことを考えることありません。そういうことよりももっと、日本人をどのようにたよっているのか、どのように日本人を評価しているのかということに対して、日本がやっぱり責任を負ってもらうということのほうがよりお互いのためにプラスをもたらすと。ある意味では卑屈過ぎるとさえ言われておるんですから、どうもそこらは日本人のよさでしょう。しかし、いまいばっている人というのは日本人はあまりないんじゃないですか。ほんとうに堂々闊歩せよということは言いたいんですが、ほんとうに腹から大国であって、世界じゅうを押して歩いて、われ大国人であるなんて、そんな人、私はないと思いますよ。ですから、商社の諸君でも、大国人意識だと思われておったようなことを考えてみると、そうじゃないんだと、それはだからいろんなことが言えると。若い人が閉鎖的だ、それは日本の教育なんですかなあということを私は何回も言われたんです。それは日本の教育を受け、戦前の日本人と生活をともにしてきておった大統領とか、非常にいい高い人であり、相当な職司のメンバーなんです。日本をよく知っておる人です。過去も、戦前、戦中、戦後の日本人を知っておる人たち、そういう人たちがこんな日本人になるはずはないと考えていると——それは日本人がいばっておってプンとしているのじゃなく、日本人は恥ずかしがり屋だと。こんなもの、何でも日本語でしゃべってもこっちが日本語を覚えますよと、われわれも戦時中覚えた片言ですが、引き出されれば日本語でも応待しますよと。それで話そうと言ってこなければだめだと思って、危うきに近寄らずで、すっとこう、それが閉鎖的に見えるんだと。いろんな現地へ行くといろんな示唆に富んだものがあるわけです。  ですから、日本人が伸び上がっているとか、いばり上がっているというのをマスコミがもし書くとすれば、ほんとうにマスコミにもそういう気があるのかなと。私はありません。あなたにもないと思いますよ。日本人というのはそんなことありませんよ。ですから、過去はすなおに非は非として認めて、口で言わなくてもいいと思うんですよ。私はやはり心の中で頭を下げるというぐらいな、そういうことが私は人間の姿勢だと思うんです。そういう意味で、日本人が思い上がっているとか、大国意識だとかということを、どうも日本人の中でそう考え過ぎるのじゃないかと、思い半ばに過ぐるのではないかと。しかし、いささかでもそういうものありとせばお互いが注意して直さなきゃいかぬし、政府が直せるものなら絶対直したい。そういう意味で、教育がもし原因とすれば、教育にもメスを入れなきゃならないんじゃないですかと、こう述べているわけですから、相当まじめに受け取っておるということで理解をいただきたい。
  146. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 総理は、いわゆる言ったならば、それぞれの国の指導者とだけ会われるからそう思っておるかもしれませんけれどもね。やはりいろんなああいう事件が起きたところの背景あるいは潜在意識あるいはそれぞれの関係国のマスコミの取り扱うところの論評のしかたというのは、ものを言わない国民のことばですよ。それを代表して言ったものだと、そのようにぼくは受け取らなきゃならぬと思うんです。その点は、それはないと言いたいのだけれども、やっぱりあるというところに私は現実の問題があると思うんですよ、これは。現に総理自体も若干持っておられるのじゃないかと思いますよ。あなたは色をなすかもしれぬけれどもね。たとえばこの間の衆議院本会議の公明党の竹入委員長質問、それに答えて、朝鮮半島を「合邦時代」という表現のもとに、「日本の教育制度、特に義務教育制度は今日でも守っていけるすばらしいものである」とか、あるいは「台湾統治の中で」という表現のもとに、民族的に相結ばれたところの心の触れ合いはいまでも高く評価をされておると、こういうものの言い方ですね。それは確かにある人が言ったかもしれない、あなたに。あるいは部分的には、一、二の国民の中にはおるかもしれない、相互の間にはね。しかしながら、いわゆる朝鮮民族が、そういうふうにあなたが手放しで言われるぐらいにあの三十六年間の植民地時代を受け取っておると、あなた、ほんとうに思っておるんですか。そこに私はすでに潜在意識としてあるんじゃないかと思っておるんですよ。
  147. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 潜在意識は何にもございません。私はそういう意味では全くありません。それで私はあの問題を見てつらつら思ったんですが、これは本会議では原稿どおり読むべきだなということをほんとうに感じたんですよ。(「ここだってそうだよ」と呼ぶ者あり、笑声)ほんとうにそうですよ。しかし、あじけないことになりますよ、それなら。それはもう勉強することもないんですから、あなたが何と言おうと、質問を受けようが、書いてもらった答弁書を読んでれば時間がくるということになるんでして、それは民主政治の危機にもなる。そんなことでなく、それはちゃんとした真実を述べようと、こう述べておるんですよ。私は前向きなんです。あれは違うんです。私はここで申し上げなくてもいいと思いますけれども、(「やはり明確にしておいてください」と呼ぶ者あり)あれはこういうことなんですよ。  鉄道を敷いたり、学校をつくったり、港湾をつくったり、金を出したり、そんなものは一顧だに値しないと、心の触れ合いというものが大前提であると。ですから、いまも経済協力とか、いろんなことで、港湾をつくり、鉄道をつくり、何をつくるといったって何にもないじゃないかと。ですから、韓国や台湾というものに対して、お互いが一つの国であった時代でもいろんなことがあった、水豊の発電所も残してきた、何もあると。しかし、そんなものは一顧だに値するものじゃないじゃないかと。ありとすれば、小学校時代の小学校の先生の面影をまだ覚えておる人もあるし、いろんな技術協力なども、それはほんとうに資格者でもなく、工業学校を出たような人だと思いますよ、そういう人たちがわらじばきでもって歩いた足跡というものはいまだに残っておると。ですから、これからは金を中心、物を中心というような経済協力ではなりませんと。こういったことは行間ににじみ出ておるはずなんですが、短い間に何か与党のほうでは早く答弁終われ、終われと、こう言っておるんですし、(笑声)とにかく一問でも落とせば再質問と、こういう進退きわまっておる。ほんとうですよ、本会議というものは。真実も述べなければいかぬ、それで誤解されちゃいかぬというところに——私は、あれも一貫して読んでいただければわかると思うんですよ。しかし、自分の身の安全を考えれば、木で鼻をくくったようでもしようがない、書いたものだけ読むか。だから総理は少し長いけれども、一問一答になるとよくわかりますが、どうも本会議は木で鼻をくくったようだと言うけれども、それはやはりちゃんとしたあぶなくないことでほんとうに答弁するには、原稿しか読まないということになる。だから、あんなものはちょっと原稿を読まないと——ほんとうのことをちょっとでも申し上げようとすると、時間がないので舌足らずになる。以後は本会議はもう一切原稿でいたします。ここも原稿にせよということでございますが、ここは原稿を見ながら正確なものにいたします。
  148. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 質問に答えていない。あの気持ちをここで言ってください。
  149. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) だから、ここで言ったじゃないですか、いまちゃんと。
  150. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 何を……
  151. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) あなた、何聞いておられるんですか。ちゃんと言ったですよ。これは物や金中心の援助ではだめなんだと、心と心の触れ合いができるような、真実を前提としたものでなければならぬと、それを前提として引用したものが、そういうものが——あれは言わなきゃよかったんです、そんなこと考えたことないんですから。韓国や台湾における実績などを言ったんじゃなくて、あの質問がそうじゃないですか。韓国や台湾に対してどう考えていますかという質問じゃないもの。経済協力——物や金を出して反発を受けるような経済協力いいと思いますか、という質問に対して私答えておるのに、言わずもがなの引用をしたと。こういうことを言うなら、もっと時間をかけてやるべきだったということで、私はここで述べておるんです。ですから、物や金ということではなく、真に相手側になった気持ちと気持ちとの触れ合い、いつまでたってもこれはお互いに協力してもらったんだと、協力をしたんだと、あと味のいいものを前提とした経済協力でなければならぬということを述べたものである、これは明確にいたしておきます。
  152. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いまの総理の、いわゆる国際交流あるいは国際提携について、いわゆる誠心誠意、同じ立場に立った心の触れ合いというのが大事だというならそれはわかりますけれども、少なくともあの本会議の答弁を、大使館から抗議が来たようなぐらいに、とてもやはり誤解をされておりますよ、率直に申し上げますけれども、これは。そうでなければ官房長官が弁明、釈明なんかする必要はないんだから、だから、その点が意識的に私はあったんじゃないだろうかと勘ぐりたくなるんで、しかしながら、総理がそういう気持ちがないと言うならば、それで理解しました。しかし、今後はそういうことのないような細心の配慮ということを、一国の総理ですから、特に私はその点は考えていただきたいと、こう思います。時間がありませんから、次の質問に移りたいと思います。  最後に、離島の物価対策について関係大臣に伺いたいと思います。  御承知のように、わが国の離島は、離振法の指定を受けておりますところの島嶼が七百二十二、百四万の人口を擁する。これに特別措置法をそれぞれ持っておるところの沖繩、奄美、小笠原を加えますと、実に二百万という人口を擁する地域であるわけでありまして、それぞれやはり本土から遠く離れておるために、経済文化の面あるいは政治的な面でも非常に立ちおくれておるところがあるわけでありますが、ここで私がただしたい点は、特に、今日狂乱物価といわれておる中で、この離島の住民は非常にやはり生活上狂乱物価以上の物価苦に悩んでおるんです。こういうことを関係大臣であるところの経企長官あるいは自治大臣、総務長官はどういうふうに理解をされておるのか、まずお聞きしたいと思います。
  153. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) お答えいたします。  ただいま御指摘のように、離島の物価問題は非常に重要でありますし、また、私、沖繩を担当さしてもらっておりますが、特に輸送運賃、そうした問題についてやはり特別な援助を常に要請されておるわけでありまして、われわれもそうした方向の中で関係閣僚と十分打ち合わせしながら、物価の安定に努力をいたしておるわけでございます。
  154. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 経企長官はどうですか、あなたは離島の責任を持っておられるでしょう。だって、離振法はあなたの所管でしょう。
  155. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 離島は、本土から離れた非常に不便な地域にあるだけに、物価問題あるいは島民の生活環境におきまして非常に不利な場合が多いのではないかと私も想像をいたします。それがために離島振興の特別計画もございますので、そういった精神にのっとりまして、離島におられる住民が物価の問題で取り残されることがないように、私どもは、本土について行なっておりますところの総需要政策はもとより個別物価対策、あるいはまた特に貯蔵とか輸送とかいうような、あるいは港湾施設とか、そういうような離島振興対策の精神にのっとる施策を充実をいたしまして、できる限りの同じような措置を講じてまいりたい考えでおります。
  156. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 自治大臣はどうですか。
  157. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 離島は、私が申し上げるまでもなく、経済的にもいろいろ不利な点がございます。したがって、その地域の住民の生活は、何といいましても、まだまだ本土に比べてみると非常におくれておるということは、常にわれわれも感じておるところであります。御承知のように、いま、政府といたしましては、離島振興法、さらに沖繩あるいは奄美大島、小笠原諸島に対しましては特別法を設けて、そのおくれと申しましょうか、その弱い面をできるだけ是正をし、本土と大差のないような生活水準ができるようにしなければならぬということで、自治省の立場からいたしまするならば、そういったことを推進しておりまする市町村に対する財政援助というようなことには特段の配慮をいたしておるところでございます。
  158. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 非常に抽象的なそれぞれの大臣の答弁ですがね。ただ、特に経企長官ね、何もことばじりをとらえるわけじゃないですけれども物価の問題でも不利な状態に置かれていると想像しておりまするの程度では、ちょっとやはり離島振興法を所管するところのあなたの答弁としては、私は情けなく思うんですよ。とにかく、いま住民は狂乱物価の中でさらに高い物価に坤吟をしておるというのが離島の住民の偽らざるところの生活実態ですよ、これは。  例を申しますと、たとえば奄美大島の場合でございまするが、これは中心地の名瀬市と本土の鹿児島市との生活必需物資を対比をいたしますと、鹿児島市を一〇〇といたしますれば、主食は一〇六でございますけれども、調味料が一四九、野菜一六九、燃料二二九と非常に割り高なんです。わずかに生鮮食料品だけが低いんですよ。さらに灯油の問題にいたしましても、三百八十円で、離島の指導価格として四百三十円ですけれども、実際はこれは五百六十円から六百円で売られておるんです。でなければ手に入らない。チリ紙の問題にいたしましても、やはり一束八百枚入りが二百三十五円で、いわゆる離島の指導価格は二百四十五円で十円の値上がりだと言われておりますけれども、それは強力な行政指導があるから店として売らなければならない。しかしながら、売っちゃうと、運賃だけの面で見ますと、一束当たり三十三円も運賃がかかっておるんですからね、ほかの品物と抱き合わせでなければ売らないというかっこうになってきておるんですよ。こういうように、離島の皆さんにとっては、非常にこの物価高の中で泣かされておる。ただ、非常に僻遠の地であるだけに、この問題がたいへんだ、たいへんだという政治の場にのぼってこないというところに私は一つの問題点があると思う。  したがって、私は、やはり関係大臣としては、この問題について重大な関心をもってやらなければならない問題だと思っておるんですが、そういう点から見ますれば、一番そのネックになっておるのは貨物運賃の問題が一つの大きなポイントだと思う。たとえば二月一日から貨物運賃が二五%ぱっと上がっちゃった。そのために、いま申し上げたところの物の値はさらに高くなっておるんです。一体、これをそのままにしておいていいのかどうか。特にまたこの貨物運賃の問題としては、それと関連する中で経企庁長官あたりはどう考えておられるのか。あるいは運輸大臣としては、これらの問題について、やはり海上運賃の輸送の問題を扱っておられますだけに、これは考えてもらわなければならない問題ですがね。どういうふうに理解されて、どう対処されようとしているのか、お聞きしたい。——経企長官、まずあなたからですよ。一生懸命いまごろになって聞かれたってだめですよ。
  159. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) いやいや、運輸大臣から具体的にお答えを申し上げたほうがわかりがよかろうと。私が直接離島の諸問題をあずかっておりますので、ある場合には地方公共団体の長と、生産から、あるいは流通から消費に至るまできめこまかい行政指導をお願いしなければなりませんし、いまお話がございましたような貨物運賃の問題でありますとか、私が述べましたような港湾施設の問題あるいはその貯蔵施設の問題等につきましては農林大臣等、それらの方々の協力をいただきませんと、これは確かに離島というところは本土から離れているだけに、物価の問題ばかりじゃなしに、社会福祉あるいは医療その他の面におきましても、いろいろな不便、不利があることをこれは想像をいたしております。想像ということばが悪ければ想定、あるいは確信をいたしておりますので、これは私がいまほかの諸君に聞いているというわけではなしに、具体的のお答えをしてほしいと、こういうことを申し述べたわけでありますけれども、いまそれぞれ御答弁がありました閣僚の方々とも協力をいたし、あるいはまた離島振興なり、あるいは具体的な計画、補助の積み上げ等、いろいろな問題を通じまして、同じ日本国民でいらっしゃるわけでありますから、不利がないような、でき得る限りのことは尽くしてまいりたいと思います。
  160. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) お説のように、三月十日に運賃の値上げをやったようでございます。これは認可料金でないところにも一つの問題がございますが、貨物は自由運賃で、いわば協定の届け出の運賃制度になっておりますために、運び出すほうの側と受け入れる側ということでいろいろ問題があったことは、先生あるいは御存じかと思いますが、私どもとしましては、この貨物をなるべく低位に安定させるということで、その間に立ちまして、たとえそれが自主協定運賃でありましょうとも、何とかこれに押え込もうということで努力をしたわけでございます。その結果、二五%ということに落ちついたわけでございますが、今後におきましても、奄美群島振興特別措置法の改正にあたりまして、衆議院の地方行政委員会でいろんな附帯決議がついております中にも、「奄美群島における輸送費等による離島特有の高物価問題に対処するため、港湾機能施設の充実、商業の協業化等による流通の合理化」云々とありまして、「本土、奄美、沖繩を通ずる国鉄航路の開設について検討すること。」というような一項もついております。私どもといたしましては、こういう面につきましても今後検討を重ねてまいりたいと思います。
  161. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、経企長官から協力をいただきたいという、ほんとうは協力をいただくためにこうしておりますということが聞きたかったんですよ。けれども、申し上げません、そこまでしか実態ないんですから。しかし、少なくとも協力を、こういう協力をしてもらいたいというものを示されるように、ひとつ次の一般質問のときまでには答えを用意していただきたいと思うんです。  いま、運輸大臣からお答えがあったわけでありますが、やはり国鉄の恩恵を受けておるところの本土では、いわゆる赤字ローカル線沿線でも格差がないわけなんです、この運賃やいろんな問題については。しかし、この離島は船舶の輸送にたよらざるを得ない。しかも先ほど御答弁があったように、貨物運賃は届け出制になっておる。したがって、強力なチェックができないと、一つのやはり問題点があるんです。そういうことから、少なくとも離島だけの、離島の主要航路だけは国鉄運賃並みの船客あるいは貨物を何とかしてもらいたいと、こういう強い声があるんですが、これはどういうふうに事務当局では——前向きの検討、海上国道の問題で検討だというお話があったんですが、やられておるか、お聞かせ願いたいと思うんですが。
  162. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 貨物の輸送につきましては、あるいは旅客もそうでございますが、離島航路補助制度というものがございまして、いろいろこういう面で補助をいたしておるわけでございますが、ただ、奄美の場合は古仁屋と与論島、それから名瀬と喜界島だけが一社における航路を持っておるために、これしか実は手当てができないわけでございます。競合航路を持っておる会社に対しては補助ができないというところにも一つの問題があろうと思います。こういう点についても、今後どういうふうにこれをやるかということについて検討を加えてまいりたいと思います。  それから国鉄の貨物でございますが、これは一昨年から先生いろいろ御指摘があったようでございまして、私の答弁資料に、持ってきておるところを見ますと、昨年の四十八年八月から奄美諸島と本土間の鉄道小荷物の連絡運輸について、照国郵船が名瀬、古仁屋、亀徳港でございますが、この間でそれぞれ本土並みの取り扱いを実施することになったということでございます。なお、これ以外の地域につきましても、連絡輸送につきまして海運関係の事業者と相談いたしまして、運輸省としましては、今後ともこういうような実施を検討してまいりたいと、かように考えております。  なお、沖繩、奄美の離島につきましては、空港の整備、それから港湾の整備につきましては、特に今年度は、もとが小さいからあまりいばれた話じゃございませんけれども、約八〇%の伸びの予算をもちまして、一約十億でございますけれども、さらに一段と港湾整備に力を入れてまいりたいと、かように考えております。
  163. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いわゆる離島航路運賃、航路の補助費の問題は、私はやはり大臣指摘されたところに一つのネックがあると思うんです。一会社しかやれないという、その問題の改善というのも今後相当やっぱり積極的な手を打たなきゃならないところの問題だと思うのです。  そこで、総理にお尋ねを申し上げたいと思いますが、まあこれは総理の執念みたいにまでなっておるわけでありますが、本州と四国の間には三本の本四架橋、あるいは北海道の青函トンネルとか、あるいは本土には日本列島十数本の新幹線を通すというような、いろんな構想を持っておられるわけでございますが、いずれにいたしましても、本土内におけるところの輸送体制の整備というものは非常に積極的に進められ、また、進められる方針が出ておるわけなんです。けれども、いま私が申し上げたところの離島、特に外海離島ですね、これはそのまま非常に問題が置き去りにされておるというのが率直なところなんですよ。それで、実はいま沖繩と奄美と、それから種子島、鹿児島をつなぐところの線を海上国道という形にみなしてもらって、ちょうどそこには国鉄連絡船並みのやっぱり国鉄の船を走らすとか、あるいはそれと同じようないろんな面での財政援助をして、ひとつ船を走らせてもらいたいという非常に強いところの要望があるんです。その点については、運輸大臣のほうからも、衆議院の地方行政でもいろんな問題が出たという話をされたんですが、どうしても、いわゆる決断と実行をスローガンにしておられるところの総理大臣ですが、この問題は、火急に私は手をつけなきゃならぬ問題だと思いますが、どうお考えになりますか。
  164. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 離島との問題は、交通の確保ということが一番重要な問題でございまして、いま、離島における小型空港の整備、また港湾整備その他も考えておるわけでございますが、しかし、いまの御提案というものも、大きな島に対して当然考えられることでございます。いま道路運送法に移行しましたけれども、旧道路法では海上も国道として指定をしておったわけでございます。これはもう有名なものの一つとして、府県道も海上をそのまま通っております。新潟−佐渡相川線と、こういうのがございまして、これはもう当然道路法の適用で、海上はやむを得ず連絡船をもってということもあったわけでございます。これはまた、橋がかからなかった場合、賃取り船、渡しということで道路法上の運航もしておったわけでございますが、その後道路運送法に移行されたことによりまして、現在は船でというこになっております。しかし、第二架橋のように、関門の隧道があり、また、第二架橋が終われば海の上でも国道になるわけでございます。今度の本四連絡架橋も、一番西は道路法に基づいて認定をしておるわけでございますから、いまの愛媛、広島両県を結ぶ三橋のうちの一橋は道路法による交通網の確保でございます。  まあ、いまの問題、私も承知しております。陳情等を受けて、その後処理をすべく努力をしたこともございますが、一つの会社がやっておるということでございまして、これは二つやってくれると競争するからいいんだということでございますが、一つだけでもあまり黒字にならぬということで、なかなかめんどうであったわけですが、複数でもって、もう一つそこを中継基地として、別なところへそこを終点とする二本の線を入れようということで解決が済んでおるのではないかと考えておりますが、そういうものは別な地区にもございます。  そういう意味で、いまの状態では、やはり連絡船というのは相当な利用客がなければならないわけでございまして、ある程度の交通を確保するということに対しては、私鉄運賃助成法のように、航路助成ということを行なうことによりまして、現実的には国営の連絡船一道路法に基づくものと同じような効果をあげ得るということで処理すべきものではないかと、私は現在はお答え申し上げるとこういうことでございますが、これらの問題に対しては、これはもう非常に重要な問題なんです。  離島はいまあれですが、離島の開発というのは離島島民の理解がなければできませんが、これは大学とかその他いろんな離島の効用というものは、いままでは離島は非常に恵まれなかったということですが、島民が望むならば、別な効用というものがあるんです。水の問題さえ解決できれば、離島問題、あります。これは、ある離島は、もう化学工場の基地にしたいというような例も幾多あるわけでございますが、水の問題が解決しないという問題、島民の理解というものが前提でなければならぬというような問題で、いままでの状態だけで離島の交通ということをなおざりにするというわけにできないんです。  ですから、離島交通というものは、住民福祉の向上を大前提にしながら、どうすれば一体一番合理的なのか、十分政府も検討してまいります。
  165. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 総理は、いまの質問に対するところの理解のしかたが違っておるんですよ。違っておるというのは、あなたの奄美の航路の問題は、それは奄美本島と喜界島という一部の日発航路の問題なんです、あなたが答弁をされたのは。私が言っておるのは、鹿児島から奄美を通って沖繩に行くこの幹線は、これはやっぱり国鉄並みの線にしなければならぬし、現に、沖繩が復帰したときに、国道五十七号線を道路審議会で認めたんですよ。そのときにも、いわゆる道路法の五条によるところの解釈はどうかと言ったら、沖繩のあの辺土岬からずっとあとは海上の道、国道だとみなして鹿児島につないで五十七号線を認めましたというのが、建設大臣の当時の答弁だったんです。それからみても、当然これはやっぱり国道線として実質的に、道路法の解釈の拡大らしくなるかもしれぬけれども、なっておるわけなんですよ。そういう中で、非常にこの地域の住民の多数の人間を考えてもらった場合には、これは検討しますという、ただおくところの問題でなくて、積極的な、前向きな姿勢で、この問題は総理として関係大臣に検討させるぐらいの、やっぱり熱意を私は示されてしかるべきだと思いますが、どうでしょうか。
  166. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 検討させます。これはもう非常に重要な問題ですから、検討させます。これは関釜連絡船もなくなったわけでございますし、それから関門のものもなくなりますし、じき、青函連絡船というものも形が変わってまいりますし、これは沖繩本島との幹線、これはもう国道一号線、二号線、三号線といえば——四号線ですな。いや、三号線ですな、四号線は別ですから。三号線の先は、ここのところ沖繩まで四号線になるべきであって、鹿児島までで三号線を打ち切って、東京から今度青森まで四号線になったということには、これは沖繩もいろいろ問題があるわけですから、これは十分勉強もいたし、検討もいたします。
  167. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 前向きでやってくれますな。
  168. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) とにかく、検討いたします。
  169. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして宮之原君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  170. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 辻君。(拍手)   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕
  171. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、最近非常に問題になっております原子力問題、それから農業、食糧問題についてお伺いいたしたいと思います。  昨年の秋の石油危機以来、原子力問題が非常に論議をされるようになってまいりました。政府は、非常に急いで原子力の開発をはかろうとしているようでありますが、これを批判する国民や住民の声もまた非常に強いと、こういう住民がなぜ批判をしているか、それは単に反対のための反対ではない、どういうところに問題があるかと、こういうことを私は質疑を通して明らかにいたしたい、こういうように思うわけであります。  そこでまず、総理は、昨年十二月の本委員会におきましても、また、いままでの委員会におきましても、原子力の安全については絶対政府が責任を持つと、こういうことをしばしば繰り返されておりましたが、原子力問題は、私はすべて安全にかかるとも思いますので、いま一度総理の、いわゆる政府の絶対安全とは何を意味しておるか、このことについてお伺いをいたしたいと思います。
  172. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 石油問題を申すまでもなく、エネルギーの多様化をはからなければならぬことは御承知のとおりでございますし、その中で原子力が大きなウエートを占めるということも、また避けがたい事実でございます。また、国際的にも原子力に移行するということに対しては、これは不可避の状態として現に開発が行なわれておるわけでございます。しかし、何ぶんにも新しいものでございますから、国民が危惧の念を持つことは申すまでもありません。それはろうそく時代がランプになり、電気になった過程においてもいろいろな問題が起こったわけでございます。また、それらに比べて、原子力というものがより人体に大きな影響を及ぼすものであるということをもってすれば、いろいろ反対も起こり、また、理解しがたい面も起こることは十分理解いたします。しかし、これを採用することは不可避の状態であるということであるならば、国民に理解を求めるということがまず第一でございます。理解を求め得るように安全性を確保するということが絶対の条件でなければならない、こう考えるわけでございます。  ですから、政府が緊急に必要とするエネルギーの確保、原子力開発、発電の推進という過程において、安全問題に対して、まず学問的にはこのように安全でございますと、また、申請された審査案件に対する審査はこのようにいたしております、国際的の状態から見てもこうでございますし、また、日本で法律に基づいて審査をした状態もだいじょうぶでございますと、なお、その後もし起こったらという場合に対しての責任も、政府がこのようにして具体的に負いますと、こういうふうに明確にして、避けがたいものであり、国民生活に不可欠のものでございますので、それらに対しては政府の責任を明確にしながらこれを開発してまいりたいと、こう考えます。
  173. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、いまの総理の考えにつきまして、具体的な質疑の中でそれぞれ問題を明らかにしていきたい、こう思います。  そこで、まず最初に、きのう、日本原子力発電株式会社の敦賀発電所について被曝問題が取り上げられました。私も若干関係がありますので、この問題に触れたいと思います。  すでに、きのうの質疑を通して問題は明らかになっておりますが、若干その問題に二、三点をつけ加えますと、一つは、本人が阪大病院に行ったときのいきさつは、自分の隣の労働者が造船所でコバルトを手でつかんだ、そのために放射能において傷害を受け、手が腐ってきた、これを阪大病院で削り取ったと、こういうことから、隣にその人がおって、あなたも放射能でやられておるようだが、このままでいくと足を削らなくちゃならなくなると、こういうことを聞いて阪大病院に飛び込んだというのが第一歩のようであります。  第二に、十月の十八日に、主治医と本人と大阪大学の原子力専門家の三名が、敦賀原電の現場を確認に行っております。そして、本人が工事をしたT字型のパイプ現物、現場を確認をして、それは報告されておりますが、海水の流れるパイプ、原子炉補器の冷却水のパイプであるということは明らかであります。  それから、会社側は当時のモニターの記録を不用意に出しましたが、それには一時間当たり十ミリレントゲンが出ておった。なぜこれだけのレントゲンが、レベルが出るかといいますと、これに対しては答えがなかったということであります。しかし、これは六月二日の空間線量であって、五月二十七日のそれではないと。五月二十七日のを要求しましたが、それはそのときには見ることができなかった。それから、当時、日本原電の要請によって、立ち会いに東大放射線健康管理専門の吉沢康雄教授が見えておった。そして、いろいろ話を聞いて、これはベータ線による被曝の可能性を調べるべきだが、それを調べたかと、こう聞いたところ、会社のほうはそれを否定することができなかった、こういうことがあります。  これらの事実から、阪大におきましては、専門医の意見をいろいろ総合して、この田代医師が、ベータ線によるひざの被曝であろうと、こういう判断をおろしたということを聞いております。  そこでお伺いしたいのは、本人が炉室を出るときにポケット線量計を持ってはかったといいますが、あと、フィルムバッジではかった。一ミリだから心配ないと、こういわれておりますが、一体アルファ線、ベータ線、ガンマ線のうちどれを一体はかったのか。ベータ線をはかっておるかどうか、この点をお伺いいたしたい。
  174. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 原子力発電会社の敦賀発電所の事件につきましては、昨日報告をいたしました。昨日、黒柳委員の御質疑の過程におきまして、昨年の十月ごろからわかっておりながら、この三月まで話がなかったことについてお話がございましたので、本日正午に、大臣室に原子力発電会社の社長を招致いたしまして、昨日の国会の趣旨にのっとりまして、今後こういうことのないように、すみやかに連絡してくれるようにという話をいたしました。  なお、それらの会談並びに昨日以来今日までの経過について、科学技術庁として明らかになった若干の事情がございますから、ただいま先生の御質疑と関連をいたしまして、政府委員からお答えをいたしたいと思います。
  175. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) ただいま御指摘のございました、何を測定したかという点でございますが、空間線量計、私どもの調査では、当日は一時間あたり〇・七ミリレントゲンというふうに聞いております。それから、空間線量計及びポケットチェンバーではかりますのはガンマ線でございますので、したがいまして、ベータ線のみを発生する放射性核種がございました場合には、十分ポケット線量計ではかれないという御指摘かと思いますが、原子力発電所におきましては、ベータ線のみを放出する核種、それだけが単独で存在することはあり得ないと考えておりまして、必ずガンマ線を放出する核種と混在する。したがいまして、もしベータ線放出核種があったといたしましても、混在するガンマ線放出核種がございますので、空間線量計、ポケット線量計あるいは出入りにおきますハンド・フット・モニターにおいて捕捉され得るものと考えます。また、ベータ線の汚染につきましては、別途、表面汚染のテストをいたしております。それにおきましても汚染の事実は認められておりません。
  176. 辻一彦

    ○辻一彦君 阪大で、アメリカで囚人によって千レントゲン以上のベータ線を当てると、そのデータと比べて、それに非常に似かよっているという点から、いろんな点を総合してベータ線と専門医が判断したようでありますが、ベータ線による被曝を否定することはできますか。
  177. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 先ほど御説明申し上げましたように、原子力発電所におきましては、ベータ線のみを発生する放射性核種、これはきわめて特殊なものでございますが、それが単体で大量にあるということはあり得ないと考えております。したがいまして、先生御指摘の、たとえば千レントゲンというふうな照射を浴びせるようなベータ線放出核種、それがもしあったと仮定いたしますと、相当量のガンマ線の計測が同時にその現場においてあり得る。ところが現場におきましては、そういう計測によります異常値は全然出ておりませんので、私どもといたしましては、ただいままでの調査の結果では、ベータ線によって千レントゲン程度の照射があったと考えることは、通常の考え方では非常にむずかしいのではないかと考えております。
  178. 辻一彦

    ○辻一彦君 このベータ線の場合、衣服がぬれて、数ミリキュリーが、これが一時間ぐらい作業しているときに接触するとすれば、大体この程度のレントゲン量を受けると聞いておりますが、どうですか。
  179. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) ただいままで私どもで調査いたしました結果では、そういうことは通常は考えられないのではないかと、こう考えております。
  180. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは非常に学問的な論議を要すると思いますから、科学技術庁もいま十分な調査を行なっておると思いますから、それをなお待っていろいろ論議する必要があろうと思います。  そこで、ちょっと長官にお伺いいたしたいが、きのう長官は、ICRPの二十五レムを引用されて、二万五千分の一だとこういうことを言っておられましたが、一体二十五レムというのは、原子炉がどういう状況においてのことをお考えになっておるのか、お伺いいたしたい。
  181. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 二十五レムの数値は、昨日も長官が御説明申し上げたかと思いますが、国際放射線防護委員会においてきめられました数値の一つでございまして、それ以下では人体に対して放射線の障害があらわれないであろうと考えられておる数字でございます。
  182. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、私の言っているのは、原子炉がどういう状況のときになっておるのか、このことをお伺いいたしたい。
  183. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) これは、その原子炉の運転状況によりましていろいろの可能性があると考えますが、これはまず考えられない程度の異常事故が起こった場合、あるいは異常事故でございませんでも、従業者の不注意によりまして、立ち入ってはならぬところへ長時間立ち入るとか、そういうことによりまして、その程度の放射線を浴びるかもしれない。しかしながら、わが国におきましては、多数の原子力施設がございますが、まだそれだけの大量の被曝を受けた例はないと承知しております。
  184. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、要するにあれですよ、原子炉が暴走して最大事故が起こったときのことを言うんでしょう、二十五レムというのは、ぎりぎりの限度を。だから、こういう原子炉が暴走して最大事故が起こった、そのときの基準を引いて何分の一である、こういうことは、私は比較としては非常に問題があると思いますが、いかがですか。
  185. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 二十五レムの数字を長官が引用されましたのは、その数値以下では身体的な障害があらわれないということにつきまして、それが国際的な基準の一つになっておると、そういう趣旨で申し上げたものと理解しております。
  186. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあこれに時間はかけられませんが、引用する基準が非常に問題があると思います。  そこで、きのう黒柳委員に対する答弁で、専門医の診断を受けぬと労災の適用はできないと、こういうことでありましたが、大阪大学付属病院の皮膚科の専門医師が出した診断書でなぜ労災の適用を受けることができないか。
  187. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 労災で支払いをいたしますためには、労災のほうでそれは認定が必要でございますから、労働基準局において、また局において適当な方途がなければ、労働省においておやりになるものであると私は考えております。また、原子力損害賠償法によりまして措置をとる場合につきましても、やはり専門医の認定が必要であるというふうに考えておる次第でございます。
  188. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、専門医というのは、大阪大学の権威ある皮膚科の医師が専門医の意見を総合して出した診断書が認められないのかどうか、いかがですか。
  189. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 大阪大学の先生のお調べになられましたことにつきまして、私は昨日格別のコメントは申しませんでした。ただ、科学技術庁として措置をいたします際には、やはり専門家が十分調査をする必要があろうと思います。したがって、その調査によって報告をいたし措置をいたしたいと、そういうふうに考えております。労働省についてもまた同様であろうと私は考えておる次第であります。
  190. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ労災適用について阪大の診断書でできるのかできないのか、政府の見解を求めたい。
  191. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えします。  労災ということになりますと、ただいまの岩佐さんの問題は私のほうには全然いままで報告がありませんです。大体労災の場合は、それが業務上の災害であるかどうかという認定があってはじめて私のほうは発動するわけでして、その事前の問題がいまあるわけでございます。
  192. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、阪大のこの申請書を、いま労働省ですか、出先へ出せば認めるんですか。
  193. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) その前に、(「いまのは認めるか認めないか答えればいいんだ」と呼ぶ者あり)それが業務上の災害である場合には、私のほうでは認めます。しかし、まだそういう問題が私のほうへ来てないんです。
  194. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、その申請書が出されたならば認めるんですか。
  195. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) この問題については、きのうからお話のありましたように、労働省といたしますと初めてのことでありまして、岩佐さんの問題についてはいままで地元の局長のほうにも報告がありませんので、私のほうから実情を聞いております。そしてそういう書類が参りましたならば、それを検討して、それからの態度ということでございます。
  196. 辻一彦

    ○辻一彦君 総理は、この安全性について政府は絶対の責任を持つと当初にお述べになっておりますが、こういう問題が出れば、少なくもまず労災——本人は非常に困っておるんですね、実際としては、いま生活状況は。少なくもその労災対象に、早急に認定の手続をすればするべきであると思いますが、いかがですか。
  197. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 原子力の問題については、これに携わる者に対するずっと法律の規定がございます。それが下請であろうが、法律上の規定がございます。ですから、いま述べられた方が、原子力会社の作業の過程においてそういう障害を受けられたものだということになれば、これはもう当然労災の適用を受けるべきでございます。まだ全然、国会の問題になっておっても、政府機関の窓口にも出てきておらぬ問題でございます。国会でもって言われれば、窓口へ来たらすぐ文句も言わずにやるのかということになれば、国会が全部そういう問題の取り次ぎをしなけりゃならないということにもなりますので、まあこれだけ問題になっていますから、これはもう窓口で迅速にこの事実関係をまず認定するということが先でしょう。  それで、認定をするにしても、幾ら早くやっても時間が幾ばくかかると、その場合、本人は困っておるんだから中間的なつなぎがないかということでございますが、そういうものがあるのかないのかという問題につきましては、これはひとつ政府部内で検討させます、もうきのうからの問題ですから。きのうはおしかりを受けましたけれども、ちょっとわからなかったんですよ。これは政府に出ているにもかかわらずということであれば、おしかりを受けてもよかったんですが、きょう新聞ずっと見ましたら、いまのあなたの御発言どおり、本人も作業中のものかどうかわからなかったというのが、ある時点において同じようなケースがあって、じゃぼくもそうだったかということでその診断を受けたと。そうしたら、医師はいろんな専門家の意見を徴したと刀そのとき現に現地調査も行なって、大体これに間違いなかろうということで診断書を書いたということであって、政府ベースに乗っていないわけです、まだ行政ベースに。  ですから、きのうからきょうまであれだけ大きな声でおしかりを受けたわけですから、これはもう関係者は相当勉強しているはずですよ、実際において。ですから、そういう意味で、御本人がこれは請求されなけりゃどうにもなりませんが、これはもう請求されれば直ちに作業が行なえるような態勢ができているはずでございますし、適法な処置をとるということで御理解をいただきたい。で、まあ普通なら科学技術庁からも本人のところへ連絡して、ひとつあんた、まあとにかくすぐこっちへいらっしゃいよというところまでやれば、行政はかゆいところに手が届くということになると思いますよ。ですから、そういうことに対して、これはきのうからの御指摘でございますから、政府部内も誠意をもって行なう。ただ、これだけの阪大の教授のものがあったから、これですぐどうかという問題に対して、いますぐにわかにどういたしますということは申し上げられませんが、これは窓口に持ってこられれば適法な措置を迅速にいたしますということで御理解いただきたい。
  198. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) そこで、こういう機会ですから、気のついたことを申し上げておきます。  私のほうでは、業務上の疾病が発生した場合には、当該事業者は、労働者死傷病報告書を遅滞なく所轄労働基準監督署長に提出することになっている。また、業務上の疾病にかかった労働者が、労災保険による給付を受けようとするときには、所要の請求書を所轄の労働基準監督署長に提出しなければならないと、こういう規定がありますけれども、先ほどからお答えしたように、岩佐さんは請求書も報告書も何も提出されておりませんので、私のほうで実は調査をしているわけであります。  しかし、その際といえども、岩佐さんの問題につきましては、当該病状が業務に起因する放射線被曝によるものであるかどうかということを調査しまして、それが業務に起因する放射線被曝によるものであるとすれば、早急に総理が言われたような所要の措置をとると、こういうことでございます。
  199. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は阪大の先生のためにちょっと申し上げておきますが、田代医師は昨年の八月に初めて診断したときに、当初は非常に疑問に思ったと、しかし、十数種の薬による炎症の可能性を一つ一つつぶしてみた結果、さらにまた四十六年六月四日に山口医院で初診の診断書が見つかり、その中に直径八センチの虫に刺された傷を思わせる皮膚炎とあり、自信を持つに至ったと、阪大専門医の意見を総合して診断書を書いたと、こういうことでありましたから、だから私は、この診断書によって少なくも、まず労災の適用がすぐできるように、これはひとつ手続がなされましたら、さきの総理答弁のとおり迅速に努力をしていただきたい、こう思います。
  200. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 昨日来問題になっておりますように、普通では考えられないような事態でございますから、その真相をまず究明する必要があろうかと思います。したがって、科学技術庁といたしましては、これが真相の究明に全力を尽くすつもりでございますし、また、そのことは御当人のためであり、かつはこの種問題について今後の例を聞くことにもなろうと思いますから、慎重に処理し、特に先ほど労災適用の問題もすみやかにこれを実施に移されるように労働省と十分連絡をして処置をいたしたいと考えております。
  201. 辻一彦

    ○辻一彦君 長官にお伺いしますが、日本原電の管理責任者が、原子炉に何ら知識のない作業員に対して、十分な教育もなしに、このような場所に二時間半も二人だけを放任しておいたという事実、それからもう一つは、当初建屋に入るときに、使用器具は汚染をする場合には廃棄をしなくてはならないと、数百万する器具なので、器具を捨てても補償してくれればいいが、人間のほうをどうするんだという、こういうやりとりが実際にあったわけでありますが、その使用器具を何らチェックすることもなく外部に持ち出している。この二点は原子炉規制法の第三十七条第一項に基づく保安規定に反しないかどうか、これはどうですか。
  202. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) ちょっと伺いますが、それは今回の事件に関連してでございますか。
  203. 辻一彦

    ○辻一彦君 はい
  204. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) そうすると二、三年前のことでございまして、私自身はお答えする知識を持っておりませんから、政府委員のほうにおいて調査がそこまで進んでおるかどうか、政府委員のほうからお答えいたさせます。
  205. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) ただいままで私どもが調査した範囲におきましては、下請従業者についての放射線管理は保安規定の規定に従いまして十分行なわれておると聞いております。また、作業具につきましても、作業場から出る際に汚染の有無をチェックしたと聞いております。しかし、なお事実について調査を進めたいと思っております。
  206. 辻一彦

    ○辻一彦君 それは調査されていない——まあ、これは診断書もついていますが、本人のいろんな申し立て書といいますか、報告書がありますが、これによると、工具等はチェックをせずに出たので、あくる日、二日たって本社のほうから直ちに堺市の放射線センターに行ってこの器具を測定をしろと、こういう指示を受けて、そこに出かけてチェックをしている。これを見ても、器具に対するチェックは行なわれていないということは明らかですが、これをやっていない場合は保安規定に反するかどうか、いかがですか。
  207. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) ただいままでの調査に基づきますと、翌日御当人が工具の検査をされましたのは、御当人が自発的に放射線センターでございますか、そこに参って作業工具などの汚染の検査をされたと聞いております。  なお、一般的に申しますと、放射能による汚染の可能性のある地域から出ます場合には、作業者自身の放射能汚染のチェックとともに、工具等についてもチェックをいたすことになっております。
  208. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。  なっているかなっていないかということを聞いているんじゃないですよ。辻君の指摘は、辻君の指摘のとおりのことは監督の立場にある者が行なっておらないと、そういう調べを受けていると、行なっておらない場合には違反にならないかと聞いているんだから、なるとかならないとかそれだけ答えりゃいいんだ。
  209. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 敦賀原子力発電所の保安規定によりますと、汚染管理区域から物品を搬出する際には汚染の有無を調べることになっておりますので、もし行なっておらないとすれば、保安規定のその条項に違反することになると考えます。
  210. 辻一彦

    ○辻一彦君 私がこれを読み上げれば時間があんまりかかってどうにもならないので読み上げませんが、あくる日、本社のほうから、チェックをしていないから器具を持っていってチェックをしてくれと、こういう電話がかかって本人が行っておるんですね。ここに全部いきさつが書いてあります。これから見れば、明らかにこの保安規定に器具の点においては反しているということを私は言わなくてはならない。こういう点について、科学技術庁長官は十分状況を把握されておるか、いかがですか。
  211. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 昨日申し上げましたとおりでございまして、現在その調査を進めておる次第でございます。つきましては、ただいまのは診断書の付属書類でございますか——もしそういう書類でお差しつかえなければ、そういう資料もぜひいただきたいと思いますし、私どもも調査をいたしたいと思っております。
  212. 辻一彦

    ○辻一彦君 読んでみてください。私が読むと時間がかかってどうにもならぬ。(資料を示す)
  213. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) それじゃこれ、お預かりをいたしておきます。
  214. 辻一彦

    ○辻一彦君 先ほど長官は調査に全力を尽くすと、こう言っておられますが、いまの状況ではまだ全力は尽くされていない、すみやかに私は立ち入り調査をやって実態をもっと明らかにすべきであると思いますが、いかがですか。
  215. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 必要に応じてそのように考えます。
  216. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、必要があるんじゃないんですか、いま。いかがですか。
  217. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 科学技術庁長官に御一任願いたいと思います。
  218. 辻一彦

    ○辻一彦君 全力を尽くすことを、それを前提にして、早急に立ち入り調査を行なってもらいたい。  そこで、この日本原子力発電所の二、三発言に非常に問題があるところがあります。たとえば去年の七月二十九日、アメリカの有名なタンブリン博士が同所を視察に行った。私も同行しましたが、そのときに、この敦賀発電所の所長がタンプリン博士に、ECCS、緊急冷却装置の安全の問題はひまな学者先生に考えてもらえばいい、こういうことを放言しておりますが、緊急冷却装置は一昨年の六月にアメリカで問題になり、日本じゅうの原子力施設に重大な問題として取り扱われておりましたが、ひとつ、このような姿勢や感覚というものはいかがお考えになっておるか。あわせて、九月の三十日、敦賀発電所のPR館長が、前前田科学技術庁長官を誹謗するような発言をしている。国会で、わからない国会議員と何もわからない大臣がやりとりをしておる、こういうことを述べておりますが、これは科学技術庁に調査を私は依頼してありますが、その状況を御報告願いたい。
  219. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) お話がございましたので、調査の結果について政府委員のほうから私のほうに報告がございました。時間が許せば、どういう発言をして、その真意はこうであったという釈明があり、それについてわれわれがどのように考えているかを申し上げてもよろしいのでございますが、それでよろしゅうございましょうか。  四十八年七月二十六日に、敦賀発電所の浅田所長が、ECCS、緊急炉心冷却装置の問題は、ひまな学者先生が考えればいいことであって、われわれ現場の人間は忙しくてやっておれないという趣旨のことを述べたようであります。そこで、所長のほうにその実情をただしましたところ、ECCSの作動性については、定期的に発電所で検査試験を実施しており、必ず作動するものと確信している。また作動後の性能については、きわめて高度の専門的判断を要するものであり、このことに関しては十分時間をかけて専門の学者に検討していただくことが重要であるという趣旨を説明したものであるという釈明でございました。この問題につきましては、日本原子力発電所は、関係官庁、安全審査の先生方、他の電力会社等に対し、発言の真意はこうであったとして説明を行なったようでございますが、ただいまお聞き取りのとおり、本人の真意が必ずしも新聞に伝わらなかったとの釈明があるわけでありますが、しかし、そのような誤解を与えるような不用意な発言をなされた点については、原子力発電会社に厳重に注意をしたというふうに聞いておる次第でございます。  次に、九月三十日の新聞記事で、「最近、原発の悪宣伝をする人がいて困る。」、「何も勉強していないくせに原発の安全性に疑問を投げかけた質問をしている。受け答えする科技庁も同じだ。知らない同士がバカな議論を繰り返している。」、「米国のアーサー・タンプリン博士も原発の危険性について講演しているが、彼は米国でも一匹オオカミで、人にも相手にされていない。」、「日本科学者会議には何も知らない高校の先生まで入っている。そんなことで何がわかるか。NHKの原発番組も安全性に批判的な者しか出演させていないのはおかしい。労組が番組の編成に圧力をかけているせいではないか。」という趣旨の記事が出たようであります。これについては次のように釈明をいたしました。「国会で御両人がどのように発言したかは知らないが、科技庁、環境庁の数字はいずれも正しいと思う。くい違いがあるのは気象条件の違いによるもので、どちらが誤りであるかという議論があったとすればおかしな話だ」と述べた。四十八年七月二十九日柏崎市におけるタンプリン博士の「プルトニウムがペインの密輸入同様に出来るような発言」は学者として問題があると述べた。「日本科学者会議には何も知らない高校の先生までいる。そんなことで何がわかるか」の記事については、見学者の「反対者の中には学者もいるのではないか」との質問に対し、「日本科学者会議の人達に多い」と答えたことによるものと思う。なお、高校の先生以下は、ある特定の先生のことを念頭に置いて発言したもので、高校の先生全体を無知扱いしたわけではない。「放送や新聞は偏向している」と述べたといわれている点については、「マスコミに一方的見解があるのではないか」という質問があったので、「最近の報道の中に社会に不安を投げかけるような内容のものを見聞するが、マスコミは事実をわかり易く説明して一般の不安解消に努めてもらいたい」と希望を述べたものであり、「労組が編集に圧力をかけている」とは述べていない、という本人の釈明でございました。  その処置といたしましては、国会関係では、原子力発電会社は、辻議員、福井県社会党県連、関係官庁に対し、誤解を受けるような発言を行なったことは遺憾である旨釈明いたしました。また、報道機関関係は、原子力発電会社が敦賀市記者クラブ、福井県政記者クラブ加盟の各社に対し上述同様の釈明を行ないました。NHK労組から、この記事に関連して抗議文が日本原子力発電会社社長あてなされたので、上述の趣旨の回答文を発電所長名で送付をいたしたという報告を受けております。  いずれにいたしましても、不用意な発言がなされ、原子力発電会社としては本意でないような結果になったわけでございまして、政府としても今後十分注意をいたしたいと思います。政府としては、いささかも安全を軽視することがないように、今後ともきびしく対処してまいる所存でございます。
  220. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ、申し上げたいことはまだありますが、この点はこれでとどめます。  そこで、わが国の原子力の施設には非常に下請をやっている人が多い。そういう人たちがより社員よりも多くの被曝を受けている事実があります。この実態について、東京電力の福島発電所の実態を科技庁から御報告をいただきたい。
  221. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 東京電力の福島原子力発電所におきましては、東京電力の社員と請負業者とが一緒になっていろいろな作業をいたしておる場合が多いわけでございますが、その記録によりますと、たとえば昭和四十七年度第一・四半期におきましては、社員が百九十八名、請負業者が四百三十八名仕事に従事いたしております。その中で、三カ月にわたりまして三レム以上の被曝を受けた人数はゼロでございます。それから一・三レム以上三レム未満、これもゼロでございます。あと、いろいろ数字がございますが、詳細は後刻御報告申し上げたいと思います。
  222. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは、ちょっとその資料を見せてください。私のとだいぶ食い違いますよ。社員と請負の間には明らかに数倍の被曝の差がある。(政府委員伊原義徳君資料を示す)資料は同じですが、読まれるところが違う。社員を読んだならば、下請業者の数を、ひとつ被曝の状態を明らかにしてもらいたい。
  223. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) ちょっと表が入り組んでおりますので、読み上げまして、うまく御理解いただけますかどうかちょっと疑問でございます。たとえば、四十七年度第二・四半期におきましては、社員が二百二十二名、請負業者が八百四名働いております。
  224. 辻一彦

    ○辻一彦君 四倍……。
  225. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) はい。それで三レム以上は、社員がゼロ、請負業者がゼロ。一・三レム以上三レム未満が、社員がゼロ、請負業者がゼロと、こうなっております。
  226. 辻一彦

    ○辻一彦君 そのレムの数の多いところを読んだらどうですか。三期、四期とあって、四十七年の三期には社員三百二十七、請負は千二百七十四名、三レム以下一・三までが六人。それから四期においては社員が二百九十七、三レム以下一・三まではなしと、そして総数では請負の場合は六百二十九名、一・三から三レムまでは五人と、こうなっていますが、これを見ても下請業者が二・五倍から四倍に及ぶところの被曝を実際受けている。三レムというのは、これは一つの三カ月における限界なんですから、非常にこれをこえれば問題があるのは明らかです。これを見ても、いかに下請の業者が組織がなくて弱いために危険なところに働いているか、そして放任されておるか、こういう実態は明らかであろうと思います。  そこで、こういう実態に基づいてこの原子力施設に働く下請労働者の安全対策について十分な調査を行なって対処すべきであると思いますが、いかがですか。
  227. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 原子力損害賠償法あるいは原子力労働衛生法、いずれの法律におきましても、放射能につきましては、事業者ばかりでなく、その下請あるいはそこに働いている職員あるいは下請の職員、十分それの防護措置を徹底してやるようにというふうに規定されております。そういう趣旨に合うように今後とも指導してまいりたいと思っております。
  228. 辻一彦

    ○辻一彦君 総理にお伺いいたしたいんですが、政府はこの安全に責任を持つというのは、私はこういう状態をなくするということであり、しかもきのうの発言では、化学工場ではいわゆる下請をなくすると、こういうような御発言がありましたが、こういう下請の状況をなくするといいますか、安全対策、こういうことに私は本格的な対策を立てるべきであると思いますが、いかがですか。
  229. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 災害が起きないように万全の措置を講じなきゃならぬことは申すまでもありません。ただ、下請をなくするということができるかどうかというのは、これは技術的な非常にむずかしい問題でございまして、全部が直用にできるかどうかということはむずかしいことでございます。これは実情に合うようにしなきゃいけないと、こう思いますが、いずれにしても、災害防除というものに対しては万全の対策をとるべきであることは申すまでもありません。きのう私が述べましたのは、続発する化学工場の爆発事件などにつきまして、一体これだけの精密な、合理的な機械設備の中で何で爆発するんだということを調べてみますと、それはそういう大事なところの管理をし、大事なところの修理をしているような人たちが本社の、当該会社の社員ではなく、また直用でもなく、下請の下請がやっておったので、中に入っておる人よくわかりませんと、こういう事態じゃ、それで一体化学工場の災害が排除できるのかと、こう思っておりましたら、それは経費の問題であるという、経費の問題であるといっても、元も子もなくしておるじゃないか、しかもその原因の究明そのものがわからないような状態になっておるじゃないかということに対して、それぞれの新しい施設を持っておる会社、これはコンベヤー式にみんなオートメーション化しておりますから人も少ないわけです。少ないから災害が起こったときわからないわけです、どっから起こったか。起こったといっても、ビルごと燃えてしまうのと同じことで、工場ごと燃えてしまう。そしてそのときに修理しておった人がだれかというと、下請の下請でわかりませんと、これじゃもう、よくまあそんなことやっているなと、こう言ったら、そういうものは全部直用に切りかえたと、こういうことを聞いておりますので、これは直用に切りかえられれば責任体制は一番よくわかるわけです。けれども、技術的な専門家ということで必ずしもそういうものを全部直用にできるのかどうかという問題とは別な問題でございますので、いずれにしても、周到なる用意をすることによって災害は未然に防止するということに最大の努力を尽くすべきだと思います。
  230. 辻一彦

    ○辻一彦君 原子力発電の長期計画を今日見直しているということを聞いておりますが、稲葉試案が大体まとまったと聞いておりますが、その実態はどうか、長官からお伺いしたい。
  231. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) お答えいたします前に、先ほど下請労働者の安全確保の問題についてちょっと——先ほど法律の名前で原子力損害賠償法と申しましたが、法律は原子炉等規制法であります。それから労働衛生法は労働安全衛生法でございます。法律には十分な規定がございますから、要は、それを着実に実行していくことであろうと思いますので、ただいま総理のお話もありましたので、この際労働省と相協力をいたしまして万全の態勢をとるように努力をいたす所存でございます。  それから原子力発電の計画につきましては、昭和四十七年六月でございましたか、原子力委員会が決定したわけでございますが、その後御案内のとおり、非常な事情の変化がございます。そこで、執務上の参考のために、当面の事態についてどういう見通しでいったらいいかということ、で、政府といたしましても通産関係で総合エネルギー調査会が仕事を始められたようでございますが、原子力委員会といたしましては、昨年原子力委員になりました稲葉秀三先生にお願いをいたしまして、これは試案でございますが、エネルギー問題の権威でございますから、稲葉原子力委員にお願いをいたしまして試案の作成方を依頼をいたしました。第一次の案がようやくできたところでございますが、なお検討しなければならないということでございまして、まだ今日当面の成案を得るには至っておりません。成案を得ました際には、あらためて御報告をいたしたいと思います。
  232. 辻一彦

    ○辻一彦君 ちょっとお伺いしたいが、この前に出た原子力の長期計画を上回るものであるのか、下回るものであるのか、第一次試案はどうなっておりますか。
  233. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 第一次試案を私が拝見をいたしましたところでは、昭和五十五年は従来の原子力委員会の計画よりも下回ります。それから昭和六十年、一九八五年につきましては最低限の努力目標として従来の計画同様の数字が上がっておりました。なお、その他の面はもう少し検討をして成案を得た結果、御報告をいたすということにさしていただきたいと思います。
  234. 辻一彦

    ○辻一彦君 最低限で従来の線と言えば、おそらく上回ることを考えておられると思いますが、現在の状況とその間にはかなり大きな距離がありますが、今日、原子力発電の開発国民的なコンセンサスが得られないとなかなか容易でない。そういう点で、今日、国民のコンセンサスを欠いている面が多いと思いますが、この点について総理はどうしたいと考えておられるか。
  235. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 先ほど申し述べましたように、原子力発電の必要性は十分御説明申し上げておるわけでございますし、国民も理解をしておると思うのです。そうして現に国際的には原子力発電所は現実的に稼働しておる。それは日本がこれから計画しておるものよりもはるかに大きいものであるということも事実でございます。それでまたフランス、西ドイツのように、ヨーロッパ諸国はこの石油の問題を契機にして原子力発電というものの計画を大幅に改定をいたしつつあるということも事実でございます。でございますので、まず政府は、国民に対して安全性、安全のものであるというPRを十分しなければなりません。また、安全であるということをただPRするというのではなく、安全を確認をして、その事実を国民の理解を求めるようにPRをするということでございます。  その方法としては、どういうことかというと、外国でやっておる例を十分国民に理解してもらう、専門家の理解を得るという問題もございます。それから外国の学者やその他と共同研究を行なうというような問題に対して、そういうことを日本に導入をするということも一つの方法だと思います。それから政府が自信を持って調査もし、自信を持って作業もせしむるということで、国民に対しては絶対に災害をもたらさないという自信ある行動ということでないと、何か、腹の中に自信があっても、ぼそぼそぼそぼそしゃべっておって、聞いておるとどうも自信がないのだなということは、かかる問題に対しては非常にまずい問題でございます。ペニシリンなどが来たときには、確かに一万人に一人ショック死をしたような人もございますが、しかし、ペニシリンはだいじょうぶなんだということに対しては、まあとにかく例がばあっと出ましたから、長いことなおらなかった病気もなおるというようなことでございましたが、この原子力発電というものは非常に放射能の影響等を受ければ相当なものでございますから、学問的にも、現実的にも、体制的にもこうである、それでなお万一にということで、万一の場合は政府はこのような措置によって補償します、対応します、こういうことに全力をあげるべきだ。そうでなければ、広島の大本営が、とにかくかがり火のほうが火事が出ないのだと、電気は火事になるおそれがあるという歴史を、いまになってまたその轍を踏むというようなことで、事態に対応できるものではない。アメリカにおいては、とにかく月ロケットを飛ばすほどの大きな事業をしておるわけですし、それからソ連においては、原子力発電所が日本において立地困難になれば南樺太に大きな発電所をつくって、電力だけ日本に送ってやってもいいからということが首脳会談で提案されておるわけでありますから、そういうものをひとつ——いまのワルシャワ条約機構の国々に供給されている発電所はどこにあるかというと、発電所は全部ソ連の領内にあるわけでございまして、長距離送電線によって各国に配電をされておると、こういう事実が現にあるわけですから、そういう問題に対して国民はどう理解しておるか、どのように技術的に科学的に万全なのかというような問題は、これは国民に十分理解させ得ると思います。政府は努力すべきだと思います。日本人は、そのような科学的、技術的な問題を十分理解する水準にあると、こう考えております。
  236. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ、PRが足りないというようなお考えのようですが、そのPRの前にやらなくちゃならないことが多い。まず第一に、それでは立地の基準、それから平常運転時における基準において世界一きびしい基準をとるべきであると思いますが、いかがですか。
  237. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあ、基準というものは、きびしいほどいいということはもう当然でございます。人命に関する問題でございますし、日本は狭いということでございます。他の公害もありますし、日本人の体質そのものがこういうものに対しては相当敏感である、こういう国民性もあります。ですから、これは水準が高くなければ案外過敏ではないのですが、水準が高いと、理解力があればあるほど万全の態勢を要求すると、これは当然のことです。ですから、そういう意味で、基準はきびしいほどいい。ただ、それはもう全然できないようなきびしさを要求されても、これはどうにもならないわけでございますが、人命の安全というものに対してのきびしさに過ぐることはない。ですから、これは国際的な水準プラスアルファということになるのでしょう。
  238. 辻一彦

    ○辻一彦君 プラスアルファがついたわけで、もしそれをやってもらえばだいじょうぶだと思いますが、いままで国会において政府科学技術庁長官や原子力委員長、あるいは大臣は、当初、二年半ぐらい前は、世界一基準はきびしいとしばしば言明をしましたが、最近においてアメリカの低人口地域との比較、国民総線量の目安、最近におけるドイツの安全防護基準と、こういうものが論議をされるに至って、世界のきびしい国の一つであるというように答弁を変えてまいりました。このことは世界一きびしいと言えないということを私はあらわしていると思いますが、立地の基準並びに平常の運転基準において、世界一きびしい内容に見直しをする用意があるかどうか、いかがですか。これは総理に、いまの御答弁を願いたい。
  239. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これは基本的姿勢を述べたのでございまして、これは国際的にとにかくあらゆる角度から、あらゆる立場から検討して、科学的、技術的にこの基準を上回る状態であればよろしいということになれば、これは基準というのは一つの基準でございますから、それを下回ればもちろん問題がありますが、この基準というものが、国際的な基準、ものさしが示されればそれでいいわけでありますが、あなたが、世界一日本に狭いのだし、国民性もあるし、知的水準も高いのだから、そういう人を納得せしむる国民的合意を得るというためには、より慎重な配慮をしなさい——それはもう望むところでございますと、こう述べておるわけでございますから、その間の事情は、科学技術庁でいまどういう作業をしているか、科学技術庁の答弁も聞いていただきたいと、こう思います。
  240. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 原子炉の立地条件につきましては、辻委員御案内のとおり、昭和三十九年三月二十七日、原子力委員決定による原子炉立地審査指針に基づいて適否を判断をしておるわけであります。この判断指針の内容について一々申し上げますか。よろしゅうございますか。——現在の段階でかかる原子炉の立地審査指針につきましては、見直す考えは科学技術庁としては持っておりませんでした。いま総理からいろいろ御意見があったようでございますので、総理の真意もよく御相談をいたしまして措置するということにさしていただきたいと思います。
  241. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ総理は、やはり日本の人口密度、広島、長崎における被爆体験、いろいろな国民の点から考えて、世界一きびしい基準を持つべきは当然である、こういう御発言であった。私は、その方針をぜひ科学技術庁に指示をして、これはやっぱり世界一きびしい基準をつくるために見直しの作業にぜひ入っていただきたい、このように思います。
  242. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 先ほど申し上げたとおりでございまして、総理と御相談をいたしまして善処をいたしたいと思います。
  243. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、いま科学技術庁は原子力委員会で平常時のこの基準の見直しをやっていると聞いておりますが、その作業はどうですか。
  244. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 政府委員よりお答えいたさせます。
  245. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 平常時の基準につきましては、先生御高承のように、国際放射線防護委員会におきまして、一般住民に対して一年間につき五百ミリレムと、こういう数値がございます。この数値は世界的な共通の基準になっておるわけでございますが、しかし、先ほど申し上げました国際放射線防護委員会は、この許容線量というものは、そこまで受けてもいいというものではなくて、不必要な被曝は避けたほうがいいということをあわせて述べております。経済的、社会的な考慮を計算に入れた上で、すべての線量を容易に達成できる限り低く保つべきである、こういう勧告を行なっております。したがいまして、原子力委員会におきましては、従来から安全審査におきまして、容易に達成できる限り低く保つという趣旨を取り入れまして、たとえば先ほどの五百ミリレムに対しまして、百分の一の五ミリレムという程度に周辺公衆の許容被曝線量を下げるということを目標といたしまして、安全審査をいたしております。なお、御高承のとおり、私どもが年間に平均受けます自然放射線は、大体百ミリレムでございます。原子力委員会におきましては、このような考え方で、できる限りと申しますか、容易に達成できる限り線量を低く保つということの検討をいたしておりますので、その結論を待ちまして、科学技術庁といたしましても必要に応じて所要の措置を講じてまいりたいと、こう考えております。
  246. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ、たいへんめんどうぐるしいんですが、アメリカは設計基準で五ミリを文書に規定していますね。日本も文書に規定しますか。
  247. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 原子力委員会の結論が出ました段階で十分検討いたしまして、文書でもって、明文でもって定めるかどうかの扱いはきめたいと考えております。
  248. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、世界のどの国よりもきびしいと言えば、少なくも私は、保安基準で、現場でどうこうというのでなしに、基準としては文書で明確化すべきである、こう思いますが、重ねていかがですか。
  249. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 先ほど御説明申し上げましたように、原子力委員会の結論を待って至急検討いたしたいと思いますが、ただ現在、原子炉の安全審査を行なっております実例から申しますと、すでに五ミリレムを大幅に下回っておるというケースが大部分でございます。したがいまして、実行上は、原子力発電所につきましては五ミリレムをさらに下回っておるということを御報告申し上げます。
  250. 辻一彦

    ○辻一彦君 原子力委員長にお伺いしますが、長官、文書に規定しますか、いかがですか。文書に規定をいたしますか。
  251. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 原子力委員会でよく相談の上、処置いたしたいと思います。
  252. 辻一彦

    ○辻一彦君 あなたは原子力委員会の委員長でしょう。方向はここで御答弁できるはずでしょう。いかがですか。
  253. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) きわめて専門的事項でございますから、委員長がその場の考えで処置することは適当ではないと思います。
  254. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、そんなことは専門的じゃない。二ミリとか三ミリとか、五ミリ以下にしたら、それを文書できちっとアメリカのようにやってもらいたいということなんですよ。何も専門的じゃないですよ。いかがですか。
  255. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 放射能の問題はきわめて技術的、専門的でございます。
  256. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、意味がわからないですね。(「文書にして悪い理由は何ですか」と呼ぶ者あり)
  257. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) アメリカの様子は、放射能の基準を改正したのではなくて、運用方針としてそれを低くしてやっておるということであります。そういう限度内において、必要があれば文書化するということについては異存はございませんが、しかし、やはり原子力委員会として事をきめるわけでございますから、委員長だけで独走することはいかがかと思っております。御了承願います。
  258. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、総理が世界一きびしくするという方針の明示をして、原子力委員長はここにいらっしゃる。きめられたことをなぜ文書にできないのか、私はわからない。
  259. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 今後のやり方につきましては、先ほど申し上げましたように、総理と相談をして措置をいたしたいと思いますが、そういうことで、運用についてそういう配慮をするということになりますれば、これはまあ口先だけというわけにいきませんでしょうから、何か書きものにすることにはなろうかと思っております。
  260. 辻一彦

    ○辻一彦君 アメリカは設計基準というのですね、明確に文書化していますね。日本もやりますか。
  261. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) きわめて技術的でございますから、この程度の答弁でひとつお許しを願いたいと思います。
  262. 辻一彦

    ○辻一彦君 やはり、いろいろ問題があって文書にできない事情が私はあるように思いますが、その事情は何ですか。
  263. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 原子力委員会は合議体でございますから、他の委員の諸君の意見も聞いて最終的にきめたいと思いますが、事は何ミリレムではありません。ただ、委員長のほうでかってにきめて、特に国会で約束して帰ってくるというようなことはあまり適当ではないから申し上げておるのでございますが、たってということでございますから、御説のように文書化するについては異存はございません。しかし、あまり適当なことだとは思っておりません。
  264. 辻一彦

    ○辻一彦君 その答弁さえあれば時間がかからない。  そこで私は、次に、安全にいろいろかかわりのある問題でありますが、非常に地域住民から、あるいは原子力施設から関心を集めている関西電力美浜発電所の二号炉の、原子炉の心臓部と言える核燃料の曲がりの問題についてお伺いをいたしたい。  わが国で初めてといわれますが、一部新聞でも大きくこれは報道されておりますが、これの経過と実態について簡潔に御報告いただきたい。
  265. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) これは辻委員お得意の場面でございますが、きわめて技術的なことでございますから、政府委員をして答弁いたさせます。
  266. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 御指摘の問題は、昭和四十八年九月に開始いたしました美浜二号機の定期検査におきまして、燃料集合体の一部に燃料棒の曲がりのあるものが発見されたという件であろうかと思います。  この件につきましては、すき間ゲージによる検査をいたしました結果、燃料棒の間隔が〇・八ミリ以下になっていた燃料集合体が五体、それから〇・八ミリをこえ一・七ミリ以下になっておりました燃料集合体十一体でございました。なお、水中テレビによる検査の結果、燃料棒同士が接触している集合体はなかったと報告されております。  この件につきましては、原因等もいろいろ究明をいたしましたが、結論といたしましては、燃料集合体を構成する燃料棒と、それから制御棒の案内管の熱処理の相違による伸びの差が原因であろうと、こういう事情がある際に、支持格子の拘束力が大きいとこういう事態が起こるというふうに報告をされております。  なお、この問題につきましては、曲がりのあった燃料集合体十六体はすべて交換をいたしました。また、支持格子の支持力は、今後使用に伴って弱まる傾向にありますので、今後曲がりの問題は発生は少なくなるというふうに考えられます。また、いろいろ研究いたしました結果、燃料棒の上下のすき間をとるというようなことによりまして、問題の今後の発生を防ぐようにいたしました。これらいろいろ安全の対策を講じましたので、運転を開始いたした次第でございます。
  267. 辻一彦

    ○辻一彦君 ちょっと事の問題上、技術的になるのでお許しをしばらくいただきたいと思います。  この燃料棒事故の検討のために、通産省は原子力発電技術顧問会が三回にわたって開かれて、いろいろ難航したと聞いておりますが、開催の日時並びに検討内容を報告されたい。
  268. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 三回開催いたしました日時は、第一回が四十八年十一月十二日、第二回が十二月五日、それから第三回が一月十八日、以上三回でございます。  これらの討議に際しましては、それらの原因はどういうことであるか、また実情はどうであるか、これらに対する安全性を確保するにはどういう措置を講ずべきか、外国の事情等も徴しながら、また独自の計算もいたしまして審議をし、先ほど申しましたような対策を講ずることで委員会の了承を得たという経過になっております。
  269. 辻一彦

    ○辻一彦君 その内容については、まあ資料とあわせてあらためてあとでお伺いします。  科学技術庁に伺いますが、一月三十日に原子力局発表によって、この燃料棒の二〇%、二十四体を取りかえて万全を期したと、こう発表されておりますが、万全を期するとは一体どういうことですか。
  270. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 二十四体の燃料棒を取りかえましたが、これは同様の事例がすでに米国において発生いたしております。米国の場合は、その異常現象を知っておりますけれども、しかしながら、運転を停止して燃料を取りかえるということはいたさなかったと、そのまま運転を続けておると承知しております。科学技術庁並びに通産省両省で十分相談いたしました結果、米国と同様に、運転を続けても安全上支障はないと思われるけれども、この際、安全第一ということで燃料体を取りかえるということに、両省協議の結果、その方向でよろしいのではないかということで、電気事業者を指導いたしまして万全の措置をとったと、こう御理解いただきたいと思います。
  271. 辻一彦

    ○辻一彦君 そうは理解ができない。  そこで、通産省や科学技術庁の報告を聞いて、原因や、これからどうするかということは出ておりますが、なぜ燃料棒を取りかえたかということについては何ら明らかにされていない。一体、廃棄処分にしたというか、取りかえた燃料棒の廃棄処分の評価、価値は幾らですか、損失額は。
  272. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 二十四体の燃料集合体を取りかえたわけでございますが、これらはいまだ完全な燃焼を済ましておらない状態で取りかえましたので、これに対する評価額をいろいろ試算をいたしてみますと、新規の集合体一本当たり五千万円と評価をいたします。それから推定をいたしますと、全体で取りかえ分が四億四千万円と推定をされております。
  273. 辻一彦

    ○辻一彦君 単純計算で、いろいろむずかしい計算がありますが、四億四千万の燃料体を廃棄処分にしたと、一応これはいろいろプールにつけておるわけですが、そこで、さっき原子力局次長の答弁では、アメリカのポイント・ビーチという原子炉が同様の曲がりを起こして、しかし、アメリカAEC——原子力委員会はその運転を許可してやっている。しかもこれは一年そのまま動いておるんですね。アメリカの原子力委員会の言うことはピンからキリまで全部、ある意味においてはうのみにして安全と言うわが国の原子力委員会、科学技術庁、通産省が、なぜこの場合だけ四億四千万の損失をあえてしてこの燃料を取りかえたのか、この科学的根拠、私はわからない、聞かしていただきたい。
  274. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 通産省と科学技術庁と合議いたしました結果、経済性を犠牲にしても安全性を第一に保つべきであると、こういう判断をいたした結果でございます。
  275. 辻一彦

    ○辻一彦君 言いかえれば、経済性を犠牲にしなければならないほど安全上に問題があったということでしょう。その科学的根拠を聞いておるんです。それを聞かしていただきたい。
  276. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) この件につきましては、科学的根拠と申しますよりも、むしろ行政的な判断である、こう考えております。
  277. 辻一彦

    ○辻一彦君 科学技術庁でしょう、曲がったかぎじゃなしに、科技庁なんでしょう、ちゃんとした。科学的根拠を聞かしてくださいよ。四億四千万を捨てて、いや行政的に捨てましたと、そんなことで通用しますか。
  278. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 先ほど御説明申し上げましたように、米国の例におきましては運転を継続いたしております。わが国におきまして、同様の判断もなし得たと思いますが、特に安全性に重点を置きまして燃料の取りかえを適当であると判断した次第でございます。
  279. 辻一彦

    ○辻一彦君 そんな根拠は、どこかほかの官庁が言えばいい。科学技術庁は科学的根拠を示しなさいよ。
  280. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) この燃料が曲がります現象につきましては、先生御高承のように、運転を続けてまいりますと、その曲がりがさらに成長と申しますか、ひどくなる可能性がございます。曲がりがひどくなりますと、燃料体から熱をとる熱のとり方が平常の場合に比べまして少なくなる可能性がございます。計算上は、運転を続けましても安全性に支障がないと判断されたわけでございますけれども、安全性に特に重点を置くという観点から、取りかえたほうが適当であると、こういう判断に至ったわけでございます。
  281. 辻一彦

    ○辻一彦君 私はわからないですね。じゃ、アメリカのポイント・ビーチは、いつから曲がったまま安全だということで動かしておりますか。
  282. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 手元の資料でございますが、四十七年九月から四十八年二月まで、ポイント・ビーチの一号炉、第一回燃料取りかえ、そのときに燃料棒の相互間隔が狭くなっているものが発見され、そのまま運転が承認されたと、こういうふうになっております。
  283. 辻一彦

    ○辻一彦君 去年の五月からでしょう。だから、もう一年近く動いている。それはわかっているのでしょう。そして四億四千万を捨てなければならぬというのは、やはり安全上に問題があるからでしょう。  私は、具体的に手に入れた資料と照らし合わせてこの問題をひとつ伺ってみたいと思います。  それでは、まず燃料棒の検査というものをどういう順序でやっているのか。
  284. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 燃料集合体に漏洩がないかを調べますために、まず燃料集合体、全数百二十一体ございますが、これをシッピングにて検査をいたしまして、これはガスを入れまして、その漏れているガスに放射能があるかないかという検査でございます。検査の結果、漏洩の疑いのある燃料集合体が六体ございました。ただ、この六体のうち一体は、外観検査ですでに発見されていました。その後、外観の様子を調べますために燃料集合体百二十一体全数を水中テレビで検査をいたしました。検査の結果、曲がりのある燃料集合体が十六体発見をされております。  以上のような経緯をもちまして、曲がりのある燃料集合体十六体につきまして、さらに水中テレビで詳細に観察をしました上で曲がりの状態の判定を最終的に行なった次第でございます。
  285. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、テレビ水中カメラによって、並びにすき間ゲージによって、燃料棒の状況を観察あるいは調査をした、その結果、いつ通産の顧問会議に報告したか。
  286. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 先ほど三回審議をいたしましたと申しましたが、その第一回目、四十八年の十一月十二百に報告をされております。
  287. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、テレビカメラでどういう観察をしたか報告していただきたい。資料を何だったら出していただきたい。
  288. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 水中テレビによる観察は、最初に十月二十日から二十六日、百二十一体について行なっております。なお、その他の検査を済ました後、十一月二十六日から十二月二十一日にかけて十体の調査及び問題のない状態、合わせまして五十三体について再度水中テレビによる調査をいたしております。
  289. 辻一彦

    ○辻一彦君 よく聞いてください。通産省の顧問会議に、いつ水中テレビカメラの実測結果を報告したか、その日はいっかというのです。
  290. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 第一回目の全数にやりました調査結果、先ほど申しましたように十月二十日から二十六日に行ないました調査結果、これが十一月十二日に報告されております。それから先ほど申しました二度目に調査いたしました状況は、第三回目に報告をされております。
  291. 辻一彦

    ○辻一彦君 この水中テレビの結果、燃料棒が接触したという情報が非常に流れて、いろんな方面からその情報が流れてたいへんな騒ぎになっておりましたが、いまの御報告では接触していない、こう言われますが、通産省の顧問会議に提出されたその中に、テレビカメラの実測のゼロはなかったかあったか、御報告ください。
  292. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 報告の中には、そのような状況は報告されておりません。
  293. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、通産の会議に出された資料を提出をしていただきたい。私がもらった資料じゃないですよ。顧問会議にお出しになった資料です。
  294. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) そのような方向で措置いたしたいと思います。
  295. 辻一彦

    ○辻一彦君 いま、燃料棒が接触したか、していないかは国際的な問題ですよ。アメリカだって起こっていないんでしょう。アメリカには軽微な曲がりがあった。だから安全だといって動かしている。日本の曲がったのは、いろいろな点からいえば大きく曲がっているし、接触しているのもあるし、あるいは漏れの疑いがある、燃料棒の曲がりがタブっているということも言われている。そういうことを、これはもう安全にかかわる重大な問題ですから、資料をしっかり出してもらわなければこの問題の論議はできない。すぐ出していただきたい。
  296. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 提出するようにいたします。
  297. 辻一彦

    ○辻一彦君 いつ出してもらえますか。
  298. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) できるだけ早く提出をいたします。
  299. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、きのう質問の内容を聞きにお見えになったので、観測の実測のデータを、いろんなことを聞きますから持ってきていただきたいと、こう言ったはずなんですが、どこに一体あるんですか。
  300. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 曲がりの状況につきましては、どの程度曲がっているか、また、それがどこの位置に多く発生をしているか、また、全体として燃料棒の配置の中でどういうふうになっておるか、さらにまた全体として、全体の燃料体の中でどのぐらいの比率を占めているか、以上のような資料を別途お届けをいたします。
  301. 辻一彦

    ○辻一彦君 テレビカメラで見て、くっついてないと言われるなら、その通産の顧問会議に出された資料をここにお出しになればすぐにわかる。すぐ出してください。  続いて、私はもう一つ伺いたいが、燃料体の中に、福井県の議会でも大きく問題になっておりますが、燃料集合体のシッピング、いわゆる漏れを調べた。雑音レベルが約三倍の信号が出て穴があいている、燃料棒に穴があいて放射能が漏れていると見られるものが二つ。このほかに、ピンホールの疑いを持ったものが十二月には二十五体と言われたし、いまは十一体と言われている。これは京都大学の原子力研究所、関西電力の資料を全部お持ちになっている若林教授が出されたメモで明らかです。ところが、いまの報告によれば五体になっておる、数字が非常に食い違う。だから一事の事実を明らかにするには、通産の顧問会議に提出された資料を出せば事実は明白になる。それを出していただきたい。   〔理事吉武恵市君退席、委員兵着席〕
  302. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私、本日手元に持っておりませんものですから、入手次第お届けをするようにいたしたいと思います。
  303. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、ゆうべ、燃料棒の曲がりは重大な問題だから、観測の結果、データを持ってきてもらいたいと言ったはずですが、どうして持ってこられないのですか。
  304. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) どうも連絡の行き違いのようでございまして、申しわけございません。
  305. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、伺いますが、もう一つ、ピンホールの疑い、燃料棒に穴があいて放射能が漏れる心配があるのをピンホールと言いますが、この疑いのあるもの十一体あったということは、これは明白に出ていますが、この事実はどうですか、なかったかあったか。
  306. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 先ほど御報告いたしましたように、今回定期検査を行ないまして、その間ピンホールの有無等について調査を行なったわけでございます。私どもの得ました調査の結果では、百二十一体の燃料集合体のうち六体に漏洩のおそれがあるということが報告をされております。漏洩の疑いのある六体は、シッピング検査で五体、外観検査で二体。しかし、そのうち一体はシッピング検査と重複をいたしておりまして、以上六体というふうに報告をされております。
  307. 辻一彦

    ○辻一彦君 福井県の議会でも非常に問題になり、十一体の問題が出て、県当局も答弁に困っている。いま関電や科技庁の出先はこの対策で、収拾をどうするかやってるはずなんですよ。あなた、もし御存じないのなら、それを明白にする、なかったという燃料棒の検査資料を出していただきたい。
  308. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 問題があるということを聞きましたので、六体というものが一体どの燃料体であるのかというようなチェックもいたしてみました。私どもの得ました情報では六体ということになっておりまして、十一体という数字が一体どういう根拠であろうかと、私ども関電の資料もひっくり返して見ましたが、先ほど御報告申し上げました中のテレスコープによる検査の対象がちょうど十一体になっておりますので、あるいはその数字のことではないかなというふうに思っておるところでございます。
  309. 辻一彦

    ○辻一彦君 福井の中川県会議員が若林教授から手に入れているメモでは、外観検査の結果を総合してピンホールの疑いが持たれたもの十一体あったと、こうありますが、この事実をいまいろいろと追及を受けて非常に困っておりますが、これは全然うそですか、そういう情報、何も持っておられないのですか。
  310. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 先ほど申しましたように、私どもの得ております報告は六体となっておりますが、なお、御疑念がございますようでございますので、私ども十分この実態を究明をいたしてみたいと思います。
  311. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、通産に出された顧問会議の資料はいつ出ますか。
  312. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 来週早々には用意できると思います。
  313. 辻一彦

    ○辻一彦君 それでは、その資料をきょう持ってきてもらうように私は言ったのですが、連絡の手違いでいま手元にないということですが、じゃ一般質問において、その資料の提出をもってこの問題については論議を、質疑をいたしたいと思います。  それじゃ申し上げますが、この通産の顧問会議に出されたテレビカメラの実測結果、この資料をひとつ出していただく。それから燃料棒のいま言った問題は、これはダブリと、いわゆる曲がりとピンホール——漏れが重なっているという懸念がありますから、これを明らかにするために、百二十一体の燃料棒を調べておりますが、そのうちの特に時間の点から言って二十四体、これについて検査の資料を提出をいただきたい。それを待って私は次にこの点については論議したいと思います。  そこで、原子力計画の発電計画が大きく打ち出されておりますが、この福島県では第一発電所に一つから六つ、さらにまた一つができている。若狭湾におきましてはいま問題になっている蒸気発生器でオシャカになるかわからないといわれる三十五万の一号炉原子炉、その横にいま問題を持っている燃料棒が二号炉五十万、その横に八十万、その隣に百十七万という形で急速な大型集中化が行なわれておりますが、これは私は技術の段階から見ればかなり暴走的な開発じゃないかと、こう思いますが、この点についていかがですか。
  314. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) これらの原子力発電所が密集している地域は、それぞれ立地条件がかなっているということで手をつけておるものだと了解をしております。
  315. 辻一彦

    ○辻一彦君 時間の点もありますから私は緊急冷却装置、蒸気発生器、燃料棒の収縮、それから制御棒、いま問題になっている各地の原発を見て歩いてたくさんの問題点がありますが、これは一応きょうはおきます。しかし、アメリカの原子力委員会の見解を聞かなければいつの場合にも判断ができないという、私は日本の技術の、自前技術の状況では非常に問題があると思いますが、原子力開発は、大規模に進める前に、まず自前の技術を着実に一つ一つ積み上げていくということが一番先決であると考えますが、この点長官どうお考えですか。
  316. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) わが国の原子力開発利用がおくれて着手したことは御案内のとおりであります。したがって、まず技術の導入をはかることとして、米国の技術による軽水炉原子炉の実用化を行なってきたことも御承知のとおりであります。  で、現在はこれらの技術を消化吸収し、逐次、国産化の体制を固めつつあるわけでございますから、これらの原子力の運転につきましても、先ほど燃料棒の曲がった問題がございました。アメリカではそのままやっているじゃないかと、日本はなぜそういう、変えたのだということにつきましても、いろいろ技術上の御意見はあろうかと思いますが、私は大局的に見まして、やはりわが国はわが国の立場から、念には念を入れてやっていこうという、そういうことのあらわれだというふうに私は理解をしておるわけでございます。  原子炉の安全性につきましては、安全基準、安、全評価等に関し、わが国独自のデータを得なきゃならない。ただいま御主張のとおりでございますから、そのことを目的として昭和四十九年度から特に安全研究に力こぶを入れ、これを強力に推進するために多額の予算を計上しておりますことは御案内のとおりであります。また、かねてから実用化を目ざしておりますナショナルプロジェクトとして実施をいたしております新型転換炉及び高速増殖炉につきましては、これはもうその安全性に関する技術開発をも重視しながら、自主開発を強力にいま進めておるわけでございまして、まだわが国においては新しい技術であり新しい産業でございますから、いろいろ留意しなければならない事項はございますが、どうかひとつ格別の御庇護によりまして、この産業並びに技術の発達をはかるようにお力添えをお願いをいたしたいと思います。
  317. 辻一彦

    ○辻一彦君 いま資料の問題等が出ましたが、私は資料公開について若干申し上げたいと思います。  日本の原子力の安全性について、問題は、専門の学者の見解が非常に分かれているということがあります。この見解を縮めるためには、どうしても安全審査の過程を明らかにするということが私は大事だと思いますが、この審査の資料は、ごく一部の政府系の専門学者が独占をするだけで、何ら公開をされない。学問的な論議も私は十分にできないと思いますが、そういう意味で、審査過程の資料の公開をすべきであると思いますが、この点いかがですか。
  318. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) ただいまお話がございました、安全審査の経緯を明らかにする資料を公開せよというお話でございます。御説のとおり、原子力発電の開発国民的な課題でございますから、国民的な合意を得るようにしなければならないことは、先ほど総理からお話があったとおりでございますし、また原子力基本法第二条によって、成果の公開の原則もあります。でございますから、できるだけそういう資料を公開してまいりたいと思うわけでございますが、公開の原則必ずしも何でもかんでも見せるということではございませんで、やはり成果が出てくる過程の問題は、ある段階的なところでその成果の発表をする、公開をするということであり、また企業上の秘密、あるいは特許権の問題等につきましては、それを尊重してこの原則を運用しなければならないことも御案内のとおりでございます。また原子炉の安全審査につきましても、原子炉安全専門審査会に対して申請書及び付属書類、その他の付属的なデータが出ておるわけでございますが、これらの添付書類、付属データなどは原子炉の安全審査会の委員がそれぞれ意見をまとめる際に読むものでございまして、したがってこれらのデータ、資料は、その目的に照らして、最終的な評価と必ずしも結びつくものではないという点もございますから、必ずしもこれは公開するのが適当でないのではないかと思います。審査会の審査の内容は、審査会の結論を示した安全審査報告書に盛り込まれておりまして、こういう観点に立って、従来から安全審査会報告書を公表をいたしておる次第でございます。できるだけ辻委員の御趣旨に沿うように努力はいたしますが、こういうようなことでございますから、御了解を願いたいと思う次第であります。
  319. 辻一彦

    ○辻一彦君 安全審査の四段階におけるそれぞれの申請書から報告書に至るまでの過程、どういうものがあるか御報告いただきたい。
  320. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) ただいま先生御指摘の四段階という御質問でございましたが、原子力委員会の安全専門審査会での安全審査の手続を簡単に御説明申し上げますと、設置許可申請書というのが出てまいります。それと、その添付書類というのがあるわけでございます。で、その両方の書類をもとにいたしまして、随時、専門審査委員から資料の要求があった場合に、その資料を申請者側から提出をする。いろいろな仮定を設けての計算書などが提出されるわけでございますが、最終的には安全専門審査会の報告書というものとなって原子力委員会に報告されるわけでございます。  なお、先生の御指摘の四段階と申しますと、そのあとの設計一工事方法認可と、こういう段階、さらには検査、こういう段階がございます。そういうものを含めて四段階ということでございましょうか。あるいはちょっとその点が十分あれでございますが……。
  321. 辻一彦

    ○辻一彦君 私が二年半前に国会に出たときに、安全審査の資料を出してくれと言ったら、出されたのはこれ一枚。それから大飯の発電所百十七万キロワット、世界最大、これと同じアメリカのセコイヤーの資料を調べて要求して、ついにそれは要求されて出された。これが十八冊ある、十八冊。このくらいありますよ、このくらい。十八冊。そしてこれと比べてどうだと言ってようやく出されたのがこの添付書類。この添付書類の性格をちょっと説明してください。
  322. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 原子炉等規制法におきまして定められております提出書類は設置許可申請書でございますが、さらに同法の規則等によりまして、必要な添付書類を添付すると、こういうことになっております。なお先生御指摘の米国の申請書につきましては、多少日本とシステムが違うわけでございまして、最初に安全解析報告書というものがまず出まして、それから環境報告書などが出るわけでございますが、最初の申請書の段階におきましてかなりの資料が出ると。その資料は、日本におきましては、設置許可のあとで設計及び工事方法の認可という段階で出てくる詳細設計的なもの、そういうものが最初の段階でかなり米国では要求されると、こういうふうに制度が違っております関係で、資料の量がある程度違うと、こういうこともございます。以上でございます。
  323. 辻一彦

    ○辻一彦君 そこで総理にお伺いしたいんだが、審査の資料過程は、アメリカはこうやって違うから、ずんと資料を出すとそこで、日本にもあるはずですね。それで、これはまだ一般に——国会では別として、一般には出されていないけれども、安全審査の審査の資料がありますね。ずいぶんある。こういうものを全部未公開にしておいて、専門の学者の論議をして、そして国民のコンセンサスを得ようとしても、私は絶対不可能だと思う。そういう意味で、こういう審査の資料を公開をして、そして専門の学者がほんとうに論議をしてお互いに確認をしていく、そういうバックダラウンドをつくるべきだと思いますが、総理いかがですか。
  324. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) アメリカのように、公開のできるものは公開をしたほうがいいと思います。しかし、何から何まで全部公開するということにも問題があると思います。これは制度の上で可能な限り、また出したほうが理解できるというものに対しては、これはもう資料を提供することが、新しいケースのものですから一番いいことだと思います。
  325. 辻一彦

    ○辻一彦君 この専門学者の論議は、少なくとも私は専門的な資料が出されなければ論議にならないと思うのですが、いかがですか。
  326. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあ新しい問題に対しては、日本においても、学者もいろんな角度から右往左往しているところもあると思うんです。これは事実そうです。私も理化学研究所におりましたときには、いろいろなものがございましたが、やっぱり新しい問題になると経験がない、基礎的な知識がないということでもって、いろいろな考え方が出てくることは当然でございます。ですから、これは実用化の段階でございますから、特に国民の安全に対する安堵感を求めなければならないということでありますので、各方面から研究できるような体制にするということは非常にいいことでございますが、しかし、すべてのものが出し得るものかどうかということは、これは私も専門家じゃありませんから、いま科学技術庁長官述べましたとおり、出せるものは出しますということでございます。出せないものはどういう理由があるのかということに対しては、科学技術庁長官がまた答弁してもけっこうです。
  327. 辻一彦

    ○辻一彦君 出せないものはどういうものが出せませんか。
  328. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 従来出しておりましたものにつきましては、先ほど申し上げましたとおりでございます。今後これをどうするかという問題について、さらに改善の余地があるかどうかについて、よく事務方のほうとも相談をいたしまして善処いたしたいと思います。
  329. 辻一彦

    ○辻一彦君 原子力基本法の三原則、自主、民主、公開がありますが、私はこの公開の原則に従っても、安全審査が終わった審査資料は、研究成果として提出されるべきであると思いますが、いかがです。
  330. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 安全審査が終わりましたあとの段階で工事に入り、かつ実際の運転に入っていくわけでございますから、ある段階におきましては、御見解のとおりの結論が出る場合もあろうかと思いますが、それらのことにつきましては検討方を御一任願いたいと思います。
  331. 辻一彦

    ○辻一彦君 研究成果を公開するというのは原子力基本法にもうたっておるんですが、審査が終わったら、十分な研究論議がされたのですから、それは出していいんじゃないですか、いかがです。
  332. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 論争するわけではいささかもございませんが、審査の成果は報告書でございますから、申請書あるいは付属書類、参考データ等はその中には含まれないと考えます。しかし、できるだけよけい出したらいいじゃないかというのは一つの方向であろうと思いますから、ある段階においてできるだけ考慮するように研究したいと、そういうことを私が申し上げておるわけでございますから御了承願います。
  333. 辻一彦

    ○辻一彦君 それは研究成果は報告書だけって、そんなことはありませんよ。いろいろな論議をされた過程は研究成果に入ります。いかがですか。
  334. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 申請書の添付書類もできるだけ出すような方向で考えていきたいと思っております。いま、しかし、どの段階でどうだということをはっきり返事をしろと言われてもはなはだ困りますので、そういう方向で努力をするということで御了解願いたいと思います。
  335. 辻一彦

    ○辻一彦君 添付書類はもう科学技術庁の資料室に出してあるじゃないですか、全部。審査資料。
  336. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 添付書類につきましては、先生御指摘のとおり、すでに公開資料室で閲覧に供しておりますが、先ほど大臣が申し上げましたのは、今後その添付書類の数をなるべくふやすという方向で進めてまいりたいということでございます。  それから審査資料でございます。審査資料につきましては、私どもは原子力基本法第二条、研究の成果の公開の成果に該当するものとは考えておりません。
  337. 辻一彦

    ○辻一彦君 その見解は一体どこで出されたのですか。
  338. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 科学技術庁の見解でございます。
  339. 辻一彦

    ○辻一彦君 これはそういう見解は非常に問題があると思います。法制局でいかがですか。
  340. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) ただいま通産省からたびたびお答え申し上げましたように、公開すべきものは研究の成果ということになっております。したがって、研究の成果、原子力の開発利用及び研究の成果ということでございますが、その成果というものはどういう段階で研究が行なわれ、開発が行なわれ、利用が行なわれたかという技術的段階をずっと追ってみまして、最後にそこで、これが研究の成果として世に問うべきものとして出てくるというところを判定をして、それを公開して、一般の利用を大いに促進しようというのがこの公開の原則の立法理由であると存じますので、要するにそういう趣旨から申しまして、さかのぼって公開すべきものの範囲は定まると思います。したがって、その研究、開発、利用の各行程をずっと検討をしてみまして、その結果として世に問うべきものはどの範囲になるかということが確定されるだろうと思います。いま直ちにどの書類が公開の対象になるということをこの場で申し上げられるような問題じゃございません。
  341. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ科学技術庁のその見解は私は非常に問題があると思います。しかし、ここでは、時間の点から別の機会にこの論議を移したいと思います。最大限、私はこういう審査資料は、ほんとうに国民のコンセンサスを得るために、専門の学者が理解し合えるようにするために出されるべきである、このことだけを強く要求しておきます。  そこで、議事録というのはどういうようにしてつくられておるか、これを伺いたいと思います。
  342. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 議事録は特につくっておりません。議事の概要をつくっております。
  343. 辻一彦

    ○辻一彦君 なぜ議事録をとらないんですか。
  344. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) ただいま議事録と申し上げましたのは、委員の一人一人の方の発言を正確に記録いたしました、たとえて申しますれば速記録のようなものはつくっていないということでございまして、議事の概要を記録したものはつくっております。
  345. 辻一彦

    ○辻一彦君 なぜ速記をとるといけないのか。
  346. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 技術的な安全審査の委員会でございますので、各委員の御発言を一語一語正確に記録いたします必要は必ずしもないと思います。むしろ、全体の御発言あるいは御審議の内容を正確に記録するだけで十分だというように考えている次第でございます。
  347. 辻一彦

    ○辻一彦君 議事録要旨というのは、たとえば日本原電敦貸発電所についてこの程度なんですね。ところが、これは議事録として——これはまあ日本原電がつくった議事録と思われますが、こういう議事録はかなり詳しく出ておりますが、これは通産と科技にありますか。
  348. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 科学技術庁にはございません。
  349. 辻一彦

    ○辻一彦君 ないんですか、科学技術庁。通産は。
  350. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 通産省の顧問会につきましても、正確な議事録はございません。
  351. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、これはひとつ通産省、よく調べていただきたい、ほんとうにないかどうか。いつ調べてもらえますか。
  352. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 帰りましてさっそく調べます。
  353. 辻一彦

    ○辻一彦君 (資料を示す) この中にはかなり委員の詳しい発言がずっと出ていますね。いままで科学技術庁は、原子力委員会は個々の発言を載せるということは困ると言って速記録をつくらなかった。しかしこういうものがつくられて、委員の間に、科技庁や通産の間に回っているはずなんです。これはいままでの論理と食い違いますが、いかがですか。
  354. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) ただいま拝見いたしましたところ、先ほども申し上げました安全審査委員会の議事の概要と申しますか、議事のあらましを記録したものというように理解いたします。
  355. 辻一彦

    ○辻一彦君 私らが要求すると、出されるのはこれなんだけれども、これが同じ敦賀の原電ですね、これはあるのですか、そうすると。
  356. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) ただいま先生お手持ちのは、昭和四十年ごろの議事の概要でございますが、最近は私どもの手元にございますのは、その記録のように、個人個人の発言者の名前をつけた議事録はとっておりません。
  357. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは科学技術庁も通産も見たことはないですか。
  358. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 調査することにさせていただきたいと思いますが、おそらくこれはオブザーバーとしてあるいは説明者として出席いたしました電気事業者がつくった議事録ではなかろう・かというふうに考えております。
  359. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、だからこれがないかどうかと言って聞いておるのです、だれがつくったかは別として。
  360. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) それと同様のものはな  いと思います。
  361. 辻一彦

    ○辻一彦君 いままで議事録、速記録をつくらないという理由の中には、答弁の内容が出たんでは困るという理由がありましたが、このようにしてすでに委員の間に記録が出されておるとすれば、私はこの程度のものは少なくもこれから記録をつくるべきであると思いますが、いかがですか。
  362. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) ただいま拝見いたしますものは、それは速記ではなくて、要旨を記録したものであろうかと思います。が、安全審査委員会の性格上、はたして記録としてそういうものを発表していいかどうかはまた別個の問題であろうかと思います。これはたまたま通産、科学技術庁、両省以外の者がつくったものであろうというふうに推察をいたします。
  363. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、私の言っているのは、すでにこの程度の記録が委員の間に配られているならば、少なくもこれからはこの程度のものはつくるべきでないか、こう言っているのです。それはどうなんですか。
  364. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) ただいま拝見いたしました資料につきまして、特に個々の発言者の名前が明確に記されているわけでございますが、これは議事の内容から考えまして、自由潤達な発言を制約するおそれがございますので、私どもは個々の発言者の名前をつけない議事概要をつくっているわけでございます。
  365. 辻一彦

    ○辻一彦君 日本の専門的な学者で、学問の権威にかけても自分の発言したことをそんなこわがることは私はないと思いますが、いかがですか。そんな自信のない方が安全審査の専門委員なんですか。
  366. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 個々の委員がいかなる発言をしたかということを記録に残すことが適当なときもあり、また適当ならざる場合もあろうかと思います。私は、現在のような状況下におきまして個々の委員の発言を記録をするというようなことは、必ずしも潤達な意見の交換に資するゆえんではないと考えております。
  367. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、いままでそういう見解が述べられましたが、記録をとると活発な意見が出ないというので安全審査の専門委員会は記録を残さないと、こうしばしば言われたが、私はそれは非常におかしいと思う。学問の権威においても、日本で選ばれた有数の人が、自分の発言したことにはちゃんと記録に残っても責任が持てる、そういう人を安全審査の委員に選ぶべきでないんですか。
  368. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 委員各位の多数の意見は、発言者の名前を一々記録にとどめるような記録を残すことに賛成でなかったとのことであります。
  369. 辻一彦

    ○辻一彦君 総理に伺いますが、私は学問の権威においても、安全審査の中身に自信が持てる、発言は記録されてもいいと、そういう人はたくさんいると思うんですが、それで確信が持てぬ人は委員をかわってもらっても、確信を持てる人を選ぶべきである、それが国民の合意を得る道につながると思いますが、いかがですか。
  370. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まず、事を分けてお考えいただきたいんですが、安全審査会の委員の正確な記録はとるべきであるということは一つあります。とった場合でも、公表すべきであるかないかということはまた別な問題であります、これはもう。そういうふうに分けて、これは公表しませんから、しませんが、正確な速記をつけますよ、ということも一つの方法であります。そしてまた、速記をつけないで、要旨は正確に記録をしておきます、ですから潤達な御意見をお出しください、ということも一つのやり方であります。これは政府の中でもっていろいろな審議会などがございますが、実際公開ということになると、まあ議論が及ぶような発言はなかなかしないということもあります、これはもう。そういう意味で潤達な議論をするということは、正確な記録——だれが言ったということは別にして、記録は正確にしておいてくださいということを言う人もございます。ですから、あなたが、これだけ国民の関心事であるものに対して、委員として選ばれた以上どこへ出されてもいいじゃないか、ということは一つの考え方ですが、必ずしもすべてのものに当て、はまるわけはありません。ですから、私の名前は伏せてもらいたいということもあります。ありますしね。これはしかし、すべてのものを公開するということは別な観点から考えるべき問題であって、これは記録が必要であるということに対して——これは記録の必要性というものは、私は正確性を後に、何十年後でも、やっぱり正確にやっていたんだなあということでもって公文書として残すことの必要性という面からの御指摘なら、これは私も理解できないことはありませんよ。しかし、これを全部記録はしなさい、これは国会に出しなさい、国会だけではなく、広く各学者の、識者の資料として世に頒布すべきものだと言うと、行政権行使の間には出せないものもあります。これは、そんなことは言われなくても、あなたは技術屋ですから十分おわかりのはずなんですよ。これはいままで被爆者のいわゆる症状等、新しい治療方法などを世の中に出したいというけれども、人権の問題とか、いろいろな問題があって、出せるものと出せないもの、本人の承諾を得なければ出せないものもあります。(「違う、すりかえるなよ。」と呼ぶ者あり)いや、それはもうすべてを全部公開をしたほうがいい、いろいろ参考のために、資料のためにということでございますが、行政権行使においては、それはあなたの断定されることに、すべて、そうでございます、あしたからやります、ということにはならないわけですから、あなたの御意見は御意見としまして、いままでの記録のやり方ということがいいのか悪いのか、政府部内で検討することは十分やりますが、やらぬのはおかしいという議論には直ちに承服はできません。
  371. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。  質問の展開は、原子力の放射能の被害者が出た、そこでどうしても将来原子力が大きなエネルギー源となるという場合でもありますから、原子力の被害というものを極力国民的にこれは防いでいかなければならない、そういう立場に立って辻委員質問をしたわけです。  そこで、そうすると、原子力の研究なり、原子力被害の防御なりということについて、これは原子力委員会の秘密の中に対策が講じられるということだけでは事足りないじゃないかと。ですから、当然隠さなきゃならない部面もあるかもしれないけれども、一応公開の原則で、これはどういう審議をしたかというものを、一般国民ではない、その専門家に資料を提供する。外側からも原子力の安全確保のために総力をあげて目的を達するということは、当然これは行なわれていいことではないかと。そこであなた方がどんなに隠しても、一部ではこういうふうに出ているという状態でありますから、それならばもっと原子力委員会が責任を持ってきちんとした資料もつくって、それをあなた方がこの研究者ならいいという者に限定してもいい、専門の研究家には提供して、国民的——総理のよくお好みになる——総意によって、この原子力の放射能対策というものを講じていくのが当然ではないか、こういう意味質問をしているわけですから、不特定多数の者にビラみたいに配れと、こういうことを申し上げておるわけではないですから、誤解のないように。この質問者の真意をくんでください。
  372. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 原子力発電の開発は、現在におきましては国民的な課題であり、国民の合意が必要でございます。また、それだけに、安全性の確保の問題は国民的課題であり、多くの国民の合意を必要とする事柄であります。政府も、この問題につきましては、政府の責任をもって処理するような体制をつくるべく、目下鋭意努力をいたしておる次第でございますが、御案内のとおり、いろいろ問題もございまして、日夜努力をいたしておる次第でございます。まあその観点から、基本線といたしまして、原子力基本法の成果の公開の原則の線に沿って、できる限りの努力はいたしたいと考えておりますが、そのことは先ほど申し上げたとおりでございます。しかしながら、一つ一つの問題で、この段階でどれをこうする、これをどうするというふうなことは申し上げかねるわけでございまして、今後善処をいたす所存でございますから、どうかひとつ御了解を願いたいと思う次第でございます。
  373. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは、やはり国民の安全に関する問題であるから、やはり基本法に基づいて公にしてもらいたいと言っているのです。  それから、どういうようにしてその安全審査がなされたかということについて、やはりわからない場合にいろんな疑問が出てくるわけなんで、これを解くためにも、私はその経過を明らかにする、経緯を明らかにする、こういう意味で公開されなくちゃならないと、こういうわけですから、この点、いま長官の発言もありましたが、総理、もう一度、重要な資料公開でありますから、御発言ください。
  374. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 原子力発電が不可欠なものである、急を要するものである、しかし、国民の生命、健康保持のために国民の理解を得なければならないということも当然であります。そのために、政府は可能な限り最大の努力をしなきゃならないということは間々申し上げておるとおりでございます。でありますから、法律も原子力基本法第二条において、審査の経過を公表すべしということになっておりますから、これが報告書は世に明らかにしておるわけであります。その世に明らかにしておるもの以外に、審査の過程において提出された参考書類、その他すべてのものを、そこにあなたが持っておられるような、四十年時代にはいろんなものもあった、もっとこまかいものもあったじゃないかと、そういうものを記録——いまは名前を特定な氏名を書かないで記録をとっているというが、四十年時代には明確に発言者の記録もあったんだから、そういうものも記録をとって世に公にしたほうがいいんじゃないかと、それで国民の理解をより得られるという問題。また、過程において原子力基本法第二条において世に明らかにしておらない文書もあるわけです。審議の過程において、参考資料として、どこの国ではこうやっております、アメリカではこうやっております、こうやっておりますといっていろいろな外交ルートで集めたものもみんな出してやっているわけですから、そういうものは原子力基本法第二条に基づく報告資料としては世に明らかにしていないわけです。だから、それも明らかにしたらどうかということをあなたはお考えになっているんでしょう。そうすれば、それは世の中の学者も非常に新しい分野だから、しかし、基礎的知識は持っていると。そういうものであらゆるものをやっていると、政府は万全の対策を持ってやったんだなあと、しかもこれだけ斯界の泰斗がこういうふうな見解を持っているということで理解を早めることには非常に資するじゃないかと。あなたの気持ちもわかりますよ。わかりますが、ものには際限がある、際限というものがね。際限をこして議論をしたらだめなんですよ。これはやっぱり三権というのがお互いにあって、裁判というものが有罪にします。しかし、裁判が主文を書くまでの過程のものは国会の要求に対してもこれを出しちゃいかぬという問題もありますよ。行政権を行なう場合でもあります、これは。それを何もかにも一緒にしたら際限のない議論になるというので、政府の姿勢はあなたと同じですから、政府もいっときも早く国民の理解を求めなきゃいかぬ、そして原子力発電所はどんどんやらなきゃいかぬ。しかも、真に安全を確保しなきゃいかぬのですよ、政府は。通ればいいんじゃありません。安全を確保しなければ、原子力発電所では絶対に起こったことのない事例が、きのうからきょう、あなたと黒柳さんによって指摘されたわけでしょう。いままでなかったんです、こんなものは。全然なかったんです、こういうものは。そういうものが指摘されているようなことですから、何年たってもそれは政府の責任は免れるわけにいかぬのです。ですから、私たちは、本件解決のために必要なものは、出すものに対しては積極的なんです。しかし、いま私が言外に申し述べましたように、この安全を確保するためにあらゆる角度から資料を集めてきているものでありますし、中には政府ベースでは提供するがこれは困るというものもあるわけです。それをひっくるめて全部出しますとは言えないのです、これは。これはおのずからあると思うんです。税に対しても、脱税事犯も重要である。しかし、その取り調べの過程を全部出せといっても、それにはおのずから限界があるわけです。ですから、そこらはひとつ理解をしてください。政府の前向きの姿勢は認めて、とにかくより国民が理解するように努力すべし、こういうことでひとつ御理解を賜わりたい。
  375. 辻一彦

    ○辻一彦君 原子力の問題はもう少し論議をしたいことがあるんですが、私はきょう農業問題にどうしても一言触れたいと、こういう点で、残念ですがこれはちょっと一般のまた質疑のときに移したいと思います。  そこで、大蔵大臣にちょっとお伺いしますが、わが国の収支が百三十五億ドルか、たいへんな赤字が出ると、こう出ておりました。こういう中で油と鉱物資源と食糧の大きな量をいま外国からわが国は輸入をしている。そうすれば、今後の経済のあり方として、せめて食糧は最大限国内で自給をして、まあ外貨のほうはあまり使わないようにしよう、そういうほうが好ましいとお思いになりますか。この点、いかがですか。
  376. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国際収支の点に触れられましたが、これはなかなか重大な問題になってきておると思います。まあ四十八年の輸入を見ましても、油が六十億ドルぐらいの輸入になります。それから食料品がまた六十億ドルぐらい、まあ同額になるんです。これが四十九年になりますと、油のほうは非常なふえ方になるだろう。食糧のほうもかなりの値上がりがありまするので、これもふえるだろう。そういうことを考えますと、これからのわが国の経済運営ではこの国際収支問題というのを度外視して考えるわけにいかぬ。きのうも申し上げたのですが、石油がどんどん入ってくるというような情勢になりましても、入ってくるから買うというわけにはなかなかいかぬだろう、そういうふうに思うのです。国際収支の体質をどういうふうにするかということは、これはもうほんとうに真剣に取り組まなければならない問題であると、そういうふうに考えますが、そういう考え方の中で食糧政策をどういうふうに持っていくかということ、これはまあ長い問題になりますが、これはやっぱり見直すべき時期に来ておると、こういうふうに思います。お話しのとおり、自給度というようなものを、何でもかんでもというわけにはまいりませんけれども、品物によりましてはそういう考え方をかなり濃厚にしていかなければならぬだろうかと、さように考えております。
  377. 辻一彦

    ○辻一彦君 そういう観点からいきますと、いま経済協力という名のもとに農業の開発輸入、こういうほうに大きな資金を投資しようとしているこういう方向と、国内により食糧の自給度を高めるためにそういう経費を使っていくという方向と、日本経済の基盤を固めるという点からいってどちらが大事だとお思いになりますか。
  378. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ開発輸入というのは、結局、わが国の力をもって開発するわけではありまするけれども、輸入は輸入なんです。でありまするけれども、とにかく食糧は国として何としてもこれを確保しなければならぬ。その量の確保というのがまず先に要るわけです、最低限の量を確保するということが。それからその確保する方法をどういうふうにするかと、こういう問題が私は次に考えらるべき問題じゃないか、そういうふうに思います。ですから、先ほど申し上げましたとおり、食糧につきましては自給度の向上ということをこれは考えなければならぬが、同時に、非常に重大な問題といたしまして開発輸入もまたこれと同様あるいはそれ以上のウエートをもって考えなければならぬ問題であると、そういうふうに考えます。
  379. 辻一彦

    ○辻一彦君 農林大臣にお伺いいたしますが、国際収支という点から考えても、食糧はやはり自給をなるべく高めなくちゃいかない。同時に、国の安全という点からいって、去年は大豆に振り回された。去年の秋は石油に、そうしていま論議をした原子力も、もとをただせば濃縮ウラン。ウランは全部外国のもの、全部外国に依存せざるを得ないと、こういう中で、せめて食糧は最大限わが国で自給をして、日本の自主性と安全ということをそういう観点から確立すべきであると思いますが、この点、農相としてどうお考えになっていますか。
  380. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そのとおりでございまして、国家の安全保障というのは、やはり国全体が経済的にも安定していくことが大事なことだと思います。そこで、いまお話のございましたように、私どもは国内生産が可能なものは全力をあげてやっておることは、御承知のとおりであります。ただ、不足しておりますものが、基本法で言っております選択的拡大と言われておるような物資、そういう物資を生産いたしますために必要とするところの飼料穀物等が不足をして、それが今回いろいろな理由で高騰いたしておるので打撃を受けておる。したがって、私どもは、国内でまかない得るものは全力をあげて国内でまかなうと同時に、さらに必要ではあるが不足しておるものを全力をあげてその増産対策をいたしたい。それは四十九年度予算でも申し上げておりますし、新しく発足いたします農用地開発公団などもそういう目的のためにやっておるわけでありますが、しかし、なかなか自給度と申しましても四麦を含めてそうでありますが、飼料作物等においても一挙にはまいりません。そこで、安定的な輸入を確保すると同時に、ただいま大蔵大臣からお話のありましたように、私どもといたしましては、やはり海外にわが国に協力を求めておる国がかなりございます。たとえばブラジルあたりでは、相当な面積を出してこれに対して飼料穀物等をひとつやってもらえないかという、それからまた、その他の国でも、肉牛をやってくれないかという要望もあります。そういうようなものをこちらから技術を提供して開発をすることによって、わが国に必要なものを先方と話し合ってこちらのほうに供給してもらうということになりますれば、いまは一カ国から主として買っておりますが、これを多角的に買い入れることができる。ことに、御存じのように、このごろは農作物については非常に気象予報なんかも気にしなければならぬ状態になっておりますので、そういう意味で私は多角的な輸入を必要とすると、こう考えております。
  381. 辻一彦

    ○辻一彦君 大体、あれですか、いままで財界のほうを中心に進められた農政は国際分業論によって農業政策が立てられておったと思うのですが、こういうものから本格的に転換をしていくというように考えていいのですか。
  382. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いま民間でやっておりますいろいろな開発輸入の計画もあったようでありますが、いまあんまり大きなものはありません。たとえばインドネシアにあるミツゴロなどというのはかなり成功した部類だろうと思っておりますが、政府といたしましては、一定量一定価格で安定的に持ってこられるという確信がないというと政府としては食糧の計画が立ちませんので、やはり政府間ベースでやることが一番いいのではないかと、こう思っております。
  383. 辻一彦

    ○辻一彦君 ちょっと私の質問の意思が通じていないのですが、いままでは、財界とのつながりにおける農政は、国際分業論で安いものは外国から買えばいいと、こういう考え方が強かったのですが、そういう点からかなり明確に政策転換をして、国内で自給を最大限に高めようというほうに踏み切ったと理解していいかどうか、この点をお伺いしたい。
  384. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 国際分業ということはある程度においては必要なことかもしれませんが、食糧というのはやはりいつ何どきどういうことがあるかもしれませんからして、やむを得ざるものは安定的輸入を計画するのでありますが、できる限りやっぱり自給自足をすべきではないだろうか、こういう考えで自給率を高めることに努力しているのでありますが、たとえば米は、いま、加州米を入れても、わが国の食管の米の価格と大体同じようになってきております。先年は半額以下であった。そういう場合に、いまお話のありましたように、そういうものは安いものを入れるほうがいいじゃないかというふうな意見もありましたが、御存じのように、農林省は、そういうことに耳をかさず、今日まで自給率を高めるという方針でやってきていることは、御承知のとおりであります。
  385. 辻一彦

    ○辻一彦君 きょう小倉米審会長に参考人で来ていただこうと思ったのですが、外国へ旅行中だということで見えませんが、現行の農業基本法の立法責任者であった小倉さんが、十一月の米審のあと、一委員立場であると、こう前提は置いていますが、「現行の農業基本法では日本の食糧の安定供給を期すことができない。自給率は三割台に落ち、世界の先進国の中で最も自給率の低い国になってきた。食糧の安定供給を果たすために現行の農業基本法を改正して食糧農業基本法を制定すべきである。」と、こういう建議を前櫻内農林大臣にいたしておりますが、私は、昭和三十五年に農業基本法制定の責任者であった当時の事務次官の小倉さんがこういう発言をされるということはきわめて重大なことじゃないかと思いますが、こういう点において、農業基本法を改正をし、本格的な食糧政策を確立するために農業食糧基本法を制定する、そういう考え方はありませんか。
  386. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いま小倉君が建議をされたというお話でございますが、建議をしたわけではありません。そういう話をしたということはうわさに聞いておりますが、いろいろな学者たちがいろいろなことを申しますけれども、私は、農業基本法というのは、何べん読んでみても、やはりちゃんと農政の方向の指針を与えておると思っております。ことに、第二条二号等においては、生産に対する総生産の増大と、それからまた他産業に比べて劣らないような農業を育成していく必要があるといったような、そういう方向につきましては、私どもやっぱり農業基本法というものは厳として存在いたしておると思っておりますので、改正というふうなことは少しも考えておりません。
  387. 辻一彦

    ○辻一彦君 食糧の自給率を計算するときに、いろいろなあらわし方がありますが、オリジナルカロリーで計算する方法が現実的でないかと思いますが、いかがですか。
  388. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) おなくなりになりました農業総合研究所に中山さんという先生がおられまして、この方がオリジナルカロリー論というものを持ち出してこられたのでありますが、あなたも御存じのように、いまたとえばFAOというような国際機関で各国の自給率などを表示いたしておりますのも、やはり、日本と同じように、その販売価格を基準にいたしましてやっております。で、オリジナルカロリーという説はその中山先生がお出しになりましたけれども、いま御承知のように、そういう話は日本のそういう学者ではありますけれども、世界的にそういうものを採用いたしておるものはございません。そこで、私どもといたしましては、たとえばカロリーの面からいいまして、野菜のようなもの、くだもののようなもの、これはカロリーの点においては非常に低い。しかし、これはやっぱりだれしもほしがる大事な作物であります。そういうことから考えますというと、やっぱり、でん粉からとりますたん白源、こういうようなものは人間のからだにいざというときには非常に大切なものではないかと思っております。したがって、オリジナルカロリーという計算をいたしますと、いまの自給率は大体五五%ぐらいになると思うのでありますが、まあ国際的なやり方で現在やっておりますようなことがいいのではないかと、こう思っております。
  389. 辻一彦

    ○辻一彦君 時間がもうないのですが、卵の自給率は何%になりますか。
  390. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ブロイラーと卵は大体一〇〇%に来ております。そこで、経営を楽にするようにしないといけないと思っています。
  391. 辻一彦

    ○辻一彦君 そういう計算でいけば一〇〇%ですが、えさは全部外国から入れていますね。それを考えると自給率はどうなりますか。
  392. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは養分換算をいたしますというと、自給率というのは卵の量でやっておりませんで可消化養分としてやっておりますからして、その卵及び鶏を育成します飼料は八〇%海外に依存をしておるということから考えますというと、ここに問題があるわけであります。でありますからして、私どもは、自給度を高めるために全力をあげなくちゃならぬと、こう言っているわけであります。
  393. 辻一彦

    ○辻一彦君 だから、従来の自給率計算でいけば卵は一〇〇%自給と。しかし、えさを計算すればうんと低くなると。そこに、今日、食糧自給が政府は七十何%と言いますが、実際はかなり低いという矛盾があるのじゃないんですか。
  394. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そういうことはおっしゃるとおりであります。でありますから、私どもとしては、それを育成していく飼料について全力をあげて増産対策をしなければならないと、こういうことであります。
  395. 辻一彦

    ○辻一彦君 えさの自給をはかる努力はけっこうですが、従来七二%ですか五%というこういう自給率、しかし、実際は、えさの輸入も全部計算すると三七%、私たちが計算してみると。あるいは政府は五二%とおっしゃるが、そういう形で、自給率は実際は諸外国に比べても先進国に比べても非常に低いところになってきているのじゃないか。こういう点でオリジナルカロリーで計算すれば私は実態はもっとはっきりすると思いますが、いかがですか。
  396. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) オリジナルカロリーについても大事なことであります。決してむだに考えておるわけではありません。そういうようなことを十分勘案いたしまして、国民食糧の安定的供給をすることがわれわれの重大な任務だということで苦労しているわけであります。
  397. 辻一彦

    ○辻一彦君 これで終わりますけれども、全国に、私が建設省からいただいた資料によると、ゴルフ場が、現在六万一千ヘクタール、建設中二万五千ヘクタール、計画が五万八千ヘクタール、合わせて約十五万ヘクタールにゴルフ場ができております。これを一つのゴルフ場が幾らでできるか計算すると、巨額な私はお金がかかると思いますが、日本のこの状況からして、十五万ヘクタールというようなゴルフ場は、非常なむだなやり方ではないかと、こういうものを押えて、もっと草をつくるとか、えさをつくるとか、そういう方向に私は農政といいますか、国の政策の重点を置いてほしいと思うんですが、この点について最後でありますから、総理にお伺いして終わりたいと思います。
  398. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 農産物の自給率を上げなきゃいかぬというような問題、またえさや雑穀、牧草の栽培等、意を尽くさなきゃならぬということは申すまでもありません。そういうところで、穀物及び牧草等の生産のできる農地に転換できるところは、大体二百万ヘクタールばかりあるわけでございますから、この百九十万ないし二百万ヘクタールというものは、これは十分ひとつ注目をしながら長期的な施策を進めていかなきゃならぬと思います。同時に、水田の裏作というものも考えられるわけですから、これはまた別な面から十分進めてまいらなければなりません。ゴルフ場というのも、これも国民的な健康、ある年齢以上の人の健康ということになると、これ、なかなかそう簡単な問題じゃないと思うんです。ですから非常に健全な健康、特に緑に親しめない都会の人たちが、しばし緑をということになりますと、これはやはりいろいろ考えなければならぬと思うのです。そう簡単に割り切るわけにいかぬと思う。アメリカは大体一万カ所以上、それから日本よりも小さい、人口の少ないイギリスで二千五百カ所でございます。いまの日本で、いまあなたが御説明になられたものは、全部が全部できるとは思いませんが、もう資金がなくて投げ出すというものもございます。そういうものも相当ございますから、全部が全部できるとは思いませんが、全部で十五万ヘクタール程度であるということはそのとおりです。個所にすると千四百カ所余であります。千四百カ所余でありますから、ですから、そういう意味で、国民生活の内容の変化によって、これは健康なレクリエーション、健康保持ということでありますので、まあそんなにゴルフ場を目のかたきにするような問題では私はないと思う。そこらは現在の日本、あしたの日本、また国民全体の健康ということも考えながら、国土の総合利用という中でしかるべく解決すべき問題だと思います。いずれにしても未利用地を利用しながら農産物の自給度を上げるということには賛成です。
  399. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして辻君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  400. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 小野君。ちょっと入って下さい。十分ほど。小野君。(拍手)
  401. 小野明

    ○小野明君 五分程度しかございませんが、要約をしてお尋ねをいたしたいと思います。  まず総理にお尋ねをいたしますが、十六日に石油価格を、キロ当たり八千九百四十六円に指導価格をおきめになりました。  そこで、三月十六日に配られました緊急対策本部の決定、この資料を見ましても、またエネルギー庁から配られました資料を読みましても、八千九百四十六円に総理が裁断をされました根拠というものがわからないわけであります。そこで、かえって新聞なんかを読んだほうがよくわかるという状態です。どういう理由で、根拠で八千九百四十六円におきめになったのか、そこのところを御答弁いただきたいと思います。
  402. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 詳細は通産省当局から答弁をしますが、原油の輸入価格が上がっておるということは事実でございます。原油価格が上がった場合に、石油価格をどうするかということは、あと入れ先出しというような方法が各国でとられておることも事実でございます。これは、原油は、いずれにしても、いつの時点から上がるということになりますと、その時点までに安い石油も入ってきておるわけでございます。しかし、安い石油が入ってきておることは別にして、もう上がったらすぐその日から新しい上がった価格でもって売っていく、そしてある時期でいままでのものをならすという方法もございます。  ところがもう一つは、原油価格は引き上がりましたけれども、現にまだストックはあるわけですから、備蓄はあるわけですから、この備蓄を使い切るまでの間は古い価格で押えておって、それで、上がったらそこで切りかえるということになれば国民も理解するわけでございます。ところが、今度は、その上がったというときにすぐ上げないということを、これは当然のこととしてやったわけです。同時に、安い価格でもって備蓄やいろんなことをやっておったものも、いわゆる輸送途中のものも全部使い果たすまで引っぱったわけであります。それだけではなく、なお使い切った日から上げるということもしなかったわけであります。なぜかというと、国民物価に重大な影響があるということでございますから、それでとにかく第一段階も実行せず、第二段階のほうもとらず、第三段階をとったわけであります。第三段階は、では上がった分だけそのままに自動的、算術的にスライドしたのかというとそうではないのです。これは低く押えたわけです。なぜかというと、まだこれから入ってくるという量や、国際的石油価格が固定的なものになっておらない、非常に流動的であって捕捉しがたいという理由をもって、入ってきておる価格よりも安く押えたわけであります。ですから言うなれば四段目のやり方ということでございます。で、四段目だけではなく、いままで便乗値上げをしたといわれるものがあるのだから、この分を六百五億としてこれをひとつ加味しよう、こういったわけであります。これは押し上げるように加味したのではなく、低くするように加味したわけでございます。その上なお石油価格が、石油のいろいろなものが上がっては困りますからというので、まあ配当も制限できないか、赤字も、ということで、四分の三バルクラインをとらないで二分の一平均方式をとったということでございますが、これを普通に移行しても半分は赤字が出る、こういうことをとったわけでありますから、まあ五段か六段目ぐらいの厳重な査定を行なった。だから物価に対して十分な配慮をして決定をしたということでございます。  数字的には必要があれば御説明申し上げますが、大体その書類には数字的には説明してあるはずでございます。
  403. 小野明

    ○小野明君 まあ数字の上の説明が資料にはございません。いま総理が言われるように、在庫評価を業界がごまかした、あるいは先取り値上げというものも吐き出させた。しかし、それがどういう根拠になっておるのか、この点が相わからぬわけです。総理が裁断をされましたのは、最初この委員会で十五日に言明をされたのは、九千百六十四円です。十六日にきめられた、発表されましたのは、残りが三案あったと思いますね。バルクライン方式が九千百二十一円、加重平均値が八千九百四十六円と八千七百四十六円であったと思います。これはそれぞれ利潤を二百五十円、五十円と、こう見込んでおるようでありますが、ここらで、つかみといいますか、政治的な計算総理が裁断をなさったのではないかと、こう思うのですが、この辺いかがですか。
  404. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これは政治的では、低く押えようという政治的な気持ちはありますが、当委員会で申し述べましたように、理由なくして足して二で割るというわけにいかないということで、理由はあるものであった。だから、一番初めここで申し上げた通産省試案の九千百六十四円というものに対しても理由はあったのであります。それから、第一案は四分の三バルクライン方式、第二案は二分の一方式、第三案は四分の一方式と、こういうことになるのでございまして、これには理由がございます。ですから、その第二案を採用したというのは、それは第一案ですと、石油業界がまだ配当はできなくとも、少なくともこれから何とかやっていけそうだと、だからまた国際石油価格が下がったときには、すぐ下げなければいかぬというくらいのことが国民大衆として考えられるわけであります。そうして、あともだんだんと詰めてまいりますと、そうすると第三案をとった場合には、赤字会社がうんと、民族資本の会社はほとんど全部赤字になってしまうということになると、民族資本会社は石油を買い付けることもできないというようなことになれば、今後の量的確保がむずかしくなります。そうすれば、外国資本にいやおうなしにシェアを食われるということになりますから、そうすると、第三案をとれば、これは外国石油会社育成のためにやったのではないかという議論も国内的に起こることはこれは当然だと思うのです。ですから、その意味で二分の一平均法を採用したわけでございます。だから四十六円というような六円もついておりますから、これはもう非常に正確な数字であるというふうに御理解をいただきたい。
  405. 小野明

    ○小野明君 端数がついているから正確というわけにはこれはいかぬ。  それで、大蔵大臣にお尋ねしますが、為替レートの見通しですね。二百九十円で油の場合計算をされておるようですが、これはなかなかむずかしい問題かと思いますが、見通しをひとつお答えいただきたいと思います。
  406. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 為替の見通しは、為替変動制のもとである今日非常にむずかしいのです。これは何人も予言はできないことかと思います。ただ、私といたしましては、とにかく円を大事にしたい、国際収支を、いまは悪いけれども、将来はいい見通しだなと、そういう評価を受け得るようなものにしたい、そういうふうに考えておるのです。したがって、いま二百八十二円、まあだいぶ改善されてきたわけでありますが、何とかしてよくしたいと、こういう気持ではありまするけれども、何せたいへんな国際経済の変動期でありますので、外国でちょっとした事件がありますと、わが国際収支にも響きまするし、また、為替レートにも響いてくる、こういうので、どうも将来のことは私はまあ極力円の価値の維持につとめたい、また改善につとめたいとは思って駆りまするけれども、予言することはできないと、残念ながらそういうふうにお答えするほかないのであります。ですから、こういう油の適正価格決定するというような際には、まあ過去何日間の平均値をとるとか、そういうような方式でも採用するほかないんじゃないか、さように考えております。
  407. 小野明

    ○小野明君 さっぱり見通しについてわからぬわけですが、この点は明日再度お尋ねをいたしたいと思います。  そこで、まあ総理も言われておりますが、通産大臣もこの前から石油会社があまりもうけないように、ため込んだ分を吐き出すように、配当減配ないしはゼロと、こういう御答弁ございました。そのとおりかといいますと、まあ私がわかりませんのは、一キロリッターについて二百五十円のもうけと、この根拠がわからぬ。まあこれは一つのヤマカンではないかと、この辺を私は総理に申し上げたかったわけです。たとえば三億キロリットルとすれば、かりにですよ、輸入するとすれば、七百五十億円の利益が出るわけです。為替差益が一ドルで十円、こう見ますと、年間一千五百二十億円のもうけになるわけです。まあいま大蔵大臣言われますように、きょうは二百八十二円、先物はちょっと安いようですけれども、それで見通しをお聞きしたわけですが、赤字になるなるという業界が宣伝をしておる。これはまあどこの国でも石油業界というのはそういう宣伝をするようであります。これらを見ますと、二百九十円で一ドルを据えておると、まあ動きの要素はありますけれども、一千五百二十億円というようなことを考えますと、いま二百八十二円、十円ぐらい違いがありますが、業界の宣伝には根拠がないと、このように言えるのではないかと思うんです。この辺の御答弁をいただきたいと思います。
  408. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昭和四十八年の上期を基準にしまして過去六期の利潤率を石油会社に見てみますと、キロリッター当たり約三百四十七円ぐらいの利益率になっておりまして、それをそのときでも大体石油業界の利潤率と申しますか、一般産業と比べてみると、一般製造工業が五、六%のときに二・五%ぐらい、それが下がって三、四%のときには一・六%ぐらい、常にほかの産業よりも半分ぐらいの利益率で、まあ石油というものは薄利多売の商売であったと思います。その過去六期の三百四十七円ぐらいのものに対して二百五十円にさらに安くしたものでございますから、石油会社としてはかなりきつい面があると思います。それによって、たとえば配当の問題、あるいは従業員に対する退職積み立て金の問題、あるいは内部留保の問題あるいは公害に関する諸般の準備金の問題、そういうような問題まで考えてまいりますと、かなりきびしい査定になっていると私は思います。それで、大体総原価で割ってみまして二分の一のバルクラインにいたしましたから、まあ半分の会社はそれでも赤字になる。半分の会社——まあ会社の数によるわけじゃありません。それは価格による二分の一という形になりますが、そういう形でございますから、やはり査定としてはかなりきびしい。で、大体メジャーを持っておるイギリスとかあるいはアメリカのような国が一月の十一日ごろから値上げを始めて、その値上げ率がやっぱり八千九百円前後であったと思います。メジャーを持たないドイツあるいはイタリア、その他の国は二月の半ばごろまでに上げておりますが、その値上げ率は日本よりもっと高い、八千九百円から九千円近くに、たしか九千円近いほうの数字になっております。それらは日本より先に上げて、さらに高い率をやっておるということを見ましても、日本が引っぱって、できるだけ凍結しておいて、しかも、同じメジャーを持たないドイツやイタリーよりもさらに低い水準でくぎづけにしたと、こういうところはやはりわれわれの査定がきびしかったんではないかと思います。
  409. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 小野君の残余の質疑は明日これを行なうことといたします。  明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後六時十一分散会