運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-03-18 第72回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十八日(月曜日)    午前十時四分開会     —————————————    委員の異動  三月十八日     辞任         補欠選任      大森 久司君     小笠 公韶君      志村 愛子君     黒住 忠行君      平島 敏夫君     今泉 正二君      後藤 義隆君     塩見 俊二君      稲嶺 一郎君     熊谷太三郎君      橘  直治君     川上 為治君      柏原 ヤス君     宮崎 正義君      高山 恒雄君     萩原幽香子君      加藤  進君     春日 正一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鹿島 俊雄君     理 事                 片山 正英君                 嶋崎  均君                 西村 尚治君                 細川 護煕君                 吉武 恵市君                 小野  明君                 加瀬  完君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君     委 員                 今泉 正二君                 小笠 公韶君                 大竹平八郎君                 梶木 又三君                 木村 睦男君                 黒住 忠行君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 塩見 俊二君                 高橋 邦雄君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 濱田 幸雄君                 原 文兵衛君                 米田 正文君                 上田  哲君                 神沢  浄君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 宮之原貞光君                 山崎  昇君                 黒柳  明君                 沢田  実君                 宮崎 正義君                 萩原幽香子君                 加藤  進君                 春日 正一君                 須藤 五郎君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  中村 梅吉君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        郵 政 大 臣  原田  憲君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   亀岡 高夫君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      町村 金五君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       保利  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞貝君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       森山 欽司君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        人事院事務総局        職員局長     中村  博君        総理府統計局長  川村 皓章君        青少年対策本部        次長       吉里 邦夫君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局経済部長  熊田淳一郎君        行政管理庁行政        管理局長     平井 廸郎君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        経済企画庁国民        生活局長     喜多村治雄君        経済企画庁物価        局長       小島 英敏君        科学技術庁原子        力局長      牟田口道夫君        科学技術庁原子        力局次長     伊原 義徳君        科学技術庁原子        力局次長     生田 豊朗君        法務省民事局長  川島 一郎君        外務省条約局長  松永 信雄君        大蔵省主計局長  橋口  收君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局長  竹内 道雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        文部大臣官房会        計課長      三角 哲生君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省体育局長  澁谷 敬三君        文部省管理局長  安嶋  彌君        厚生省医務局次        長        宮嶋  剛君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局長  高木  玄君        厚生省児童家庭        局長       翁 久次郎君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        通商産業審議官  森口 八郎君        通商産業省貿易        局長       濃野  滋君        通商産業省基礎        産業局長     飯塚 史郎君        通商産業省生活        産業局長     橋本 利一君        資源エネルギー        庁長官      山形 栄治君        資源エネルギー        庁次長      北村 昌敏君        資源エネルギー        庁石油部長    熊谷 善二君        運輸省自動車局        長        中村 大造君        労働省労働基準        局安全衛生部長  中西 正雄君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        建設省住宅局長  沢田 光英君        自治省行政局選        挙部長      土屋 佳照君        自治省税務局長  首藤  堯君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、前川君の質疑を行ないます。前川君。
  3. 前川旦

    前川旦君 私は石油値上げの根拠についてお聞きしたいと思っておりましたが、まだ資料が出ておりませんので、それは後の機会に譲りたいと思います。  そこで、土躍日に配られました資料の中から、国民生活安定緊急対策本部決定石油価格の改訂と物価安定対策の強化について」、この文書の中に、「油種別価格については、今需要期家庭用燈油価格を据え置く」と書いてありますが、この場合の「今需要期」とは一体どの時期をさすのでしょうか。
  4. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) お答え申し上げます。  家庭用灯油につきましては、東京から西のほう、東京以西につきましては三月末。それから東京以東といいますか、北といいますか、四月末というのが従来の慣例でございます。
  5. 前川旦

    前川旦君 その次の行に、プロパンについては「当面これを据え置く」とあって、いまの灯油と若干表現ニュアンスが違いますが、どうしてこういう表現ニュアンスが違うのか。プロパンについての「当面」とは一体いつまでであるのか、お尋ねいたします。
  6. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) プロパンガスにつきましては、これは五割以上が輸入でございます。われわれが現在考えておりますのは、四月以降大幅な値上げ通告がまた来ておる、輸入品値上げ通告が来ておるわけでございますけれども、これは家庭にとって非常に大事なものでございますので、当分これを指導によりまして据え置きをいたしたいということでございまして、現在、これが何月何日までというようなことをきめておるわけではございません。
  7. 前川旦

    前川旦君 昨日、総理は一年程度は凍結したいとおっしゃいました。たいへん私は重みのあることばとして受け取っておりました。しかし、いまのお話を聞きますと、三月、四月の段階までだと、これは灯油です。それからプロパンガスについては当面ということで、ちっともこれは明らかになりません。総理としてのお考えはどうなんでしょうか、はっきりしたところをお伺いいたします。
  8. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が一年間ぐらいと言ったのは、石油のことを申し上げたわけでございます。その他の問題は、これはいま山形君から述べましたとおり、外国から直輸入しているものが、外国がうんと上げれば、その間、輸入価格が上昇したときに、ある時期まではいろいろな施策によって押え得るとしても、絶対的に押えることには限界があるわけでございますから、まあ当分の間と、こういうことにしているわけでございます。  ただ、まあ石油というものに対しては、これからそう上げないように、国際価格も上げないように外交的にもいろいろな努力を続けるということでございまして、量的にも、また価格の面においても、そう極端な値上げが行なわれることのないような状態を想定をいたしておりますし、あらゆる角度から努力をしてまいりたいということでございまして、石油に対しては、今度行政指示価格をきめたわけでございますから、きめたものを半年ぐらい、いや、とにかく一年ぐらいは何とか守っていきたいと、こういう基本的姿勢を出したわけでございます。しかし、原油が倍になるといえば、またこれを押え切れないわけでございますが、ですから、念のために申し上げておきましたのは、原油価格が引き下がれば直ちにこの価格を引き下げるようにいたしますと、それで、引き上げられた場合でも、直ちに改定をするようなことはいたさないで、上がった場合は極力今度の指示価格を守っていきたいと思いますと、下がった場合は下げるつもりですと、こう述べておることで理解をいただきたい。
  9. 前川旦

    前川旦君 石油油種別価格をいろいろおきめになりましたが、キロリッター当たり二百五十円の利潤を見込んで、あれでやっていけるということでおきめになったはずであります。したがって、これは得率によって出てくるのが灯油でありますから、灯油据え置きということは前提にして、灯油プロパンガス据え置き前提にして、そしてほかへしわ寄せを持っていったという御説明であったと思うのです。しかるに、灯油は四月までだ、あるいは三月までだ。たいへんおかしいじゃありませんか。これはやはり一年なら一年、半年なら半年、はっきりここでお返事をいただきたいと思うのです。この点いかがでしょうか。あいまいなんですね。
  10. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 灯油とLPGにつきましては、現在標準価格を設定して指導しております。今回の大幅な値上げの時期にこれが動くことは非常なる混乱に相なるわけだと思うわけでございまして、これを据え置く措置をとったわけでございます。当然その分は、この間お話しいたしましたように、ほかの油種になるわけでございますが、一つ問題でございますのは、これをずっと永遠に据え置いておくということでございますと、灯油を例にとりますと、これからあたたかくなりますと不需要期に入るわけでございます。生産業界及び販売業界といたしましては、不需要期の間に灯油を、ストックをずっとだんだんとふやしていきまして秋口からの販売に備えるわけでございます。したがいまして、これを永遠に据え置くということになりますと、むしろ灯油価格の総体的な概念がくずれますことによりまして、この春先から夏場にかけての灯油のいわゆる量の備蓄というのが若干私問題になるんではないかという感じがいたしております。むしろこれは秋口及び冬先の量を確保するということが問題でございまして、先般、昨年の灯油の場合におきましても、十月初めの在庫を五百万キロリットルまで引き上げまして、それでいわゆる指導価格設定に踏み切った経緯もございまして、一番問題なのは価格も問題でございますが、量がうんとございませんと灯油問題というのはこれからまた非常に大きな問題が出る、こういう点をわれわれいまから非常に心配いたしておるわけでございます。何ぶんにも灯油を取り扱う流通段階は十三万軒という非常に多くの小売り及び薪炭業があるわけでございまして、これに、全部に量が行き渡って初めて末端の全国二千万世帯にこれが行き渡るわけでございますので、その辺の量の確保も含め、それに必要な在庫の積み増しということも含めて、これから夏以降の灯油問題というのはそういうことも含めまして考えるべきであろうかと私は考えておるわけでございます。
  11. 前川旦

    前川旦君 たいへんゆゆしい答弁だと思いますね。据え置いたのでは量的に確保するのがあぶないからということは、先高をあらかじめ示しておいて量を確保するんだというような御答弁だった。据え置くという考え方といまの御答弁とはだいぶ違う。四月までを据え置くというのですか。四月までというと、あとわずか一月ちょっとですね。ことしの暮れの需要まで据え置くということでなければほんとうの意味据え置きにならないんじゃないですか。その点いかがなんですか。通産大臣答えてください、これ。
  12. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) 私は非常に事務的に答弁いたしまして誤解が若干あるかと思いますが、私は四月以降これをすぐ上げるということを言っておるわけでございませんで、夏場以降その量的な問題も考え業界指導しなきゃいかぬということを申し上げたわけでございます。
  13. 前川旦

    前川旦君 つじつまが合わないから、これははっきり責任のある答弁をしていただきたい。据え置くと言いながら、夏場の不需要期には先高を見込んで増産さすんだというような答弁ではおかしいじゃありませんか。
  14. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) くどいようでございますが、量の問題が大事でございます。われわれといたしましては、最も国民生活に直結した灯油でございますので、価格につきましてはできる限りこれを据え置いて、かつ量の三カ月分ぐらいの在庫秋口需要期の前までこれを積ませるような努力を両面あわせましてこれからやっていきたいということをもう一回申し上げたいと思います。
  15. 前川旦

    前川旦君 ことしの秋には灯油を上げるのですか、上げないのですか。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回の元売り仕切り価格の上昇につきましても、これは経済動向等もにらみ合わして、たとえばOAPECの原油の値上がりがどうなるであろうか、あるいは為替相場変動がどうなるであろうか、そういうものは変数の函数として残してある、いま総理がお答えいたしましたように、下げられる場合にはできるだけ早く下げられる、しかし、上げるという場合にはできるだけおそくする、そういう基本原則をもってやっているわけで、生きている経済に対して、相手の変化に応じて取っ組むという姿勢を示しているわけです。これが行政指導価格でいくということで、にわかに標準価格に移行できないという理由でもあるわけであります。したがいまして、新しい価格体系を実施しましたあと、各油種別の間のバランスがどういうふうに均衡していくか、あるいは国際関係がどういうふうにこれに反応するか等々を見ながら、できるだけ石油の量を確保しつつ、値段については低位に押える、そういう方針で具体的なケースに遭遇しつつ、われわれは運用していこうと思うわけでございます。変動函数は幾つもあるわけでございます。しかし、基本原則は、総理やわれわれがいままでここで御答弁申し上げましたような方針でやるつもりでありまして、それはそのつど皆さま方に御報告もいたす考え方であります。
  17. 前川旦

    前川旦君 変動の要因はたくさんあると思いますけれども、灯油プロパンは据え置いたままで、ほかのところでそれを吸収するということじゃないんですか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは油種別の内部においておのおの反応し合うということはあり得ると思います。しかし、最高価格としてあれは指導価格を設けておるわけでありますから、もしある油種において利潤がよけい出る、全般的に見ても出る、そういう場合にはこれを引き下げるということも考えられることであります。しかし、まあいま始めたばかりでございますから、どういう情勢で動いていくか、もう少しよく情勢を見ながら均衡水準を見きわめていきたいと考えておるわけでございます。
  19. 前川旦

    前川旦君 じゃ、方針として、ことしの秋の灯油はやっぱり据え置く方針でいかれるのかどうか。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 下げられるものなら下げたいと思いますが、しかし、量を確保するということが一番大きな使命であります。ことしはやはり灯油について、去年は春先からこれを増産してくれということを常に要望して、そしてあれだけのストックが、五百万トン以上もありましたから、わりあい灯油について石油のパニックが起きた場合でも供給でき、対応できたわけであります。そういうような国際情勢石油情勢変化に対して一番大事なことは供給を確保するというポイントである、それから値段の問題である。私はやっぱり供給のほうに一番心配国民の皆さん持っておるのじゃないかと思います。そういう二つの点を考慮に置きながら行政を進めていきたいと思います。
  21. 前川旦

    前川旦君 どう考えてもことしの秋の灯油値上げ前提とした答弁としか聞こえません。いかがですか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはできるだけ抑制すると、そういう考えで進みたいということを申し上げます。
  23. 上田哲

    上田哲君 関連
  24. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) なるべく簡潔に願います。
  25. 上田哲

    上田哲君 一言だけ、イエスかノーかで伺うのですが、日本語としてどうも先ほど来の御答弁がぐるぐる回っておってよくわかりません。石油製品の八千九百円をこえる大幅値上げがあって、一体これから先、波及の、値上げの大津波がどういうふうにかぶってくるかということが国民全般のたいへん心配をしているところです。したがって、いま前川委員灯油の問題を具体的に指摘してお尋ねしているわけでありますから、これは、需給関係の結果としてどういう形になるかというような一般的経済見通しを述べていただくのが政治の問題ではない、いま私たちが伺っているのは、政治方針としてどのような態度をおとりになるかということを聞いているのでありまして、そういう意味では、灯油が量によってはどうなるかわからぬと、あるいは四月までだという期限の切り方は、政治方針としては非常に不明確かつ不親切であります。通産大臣のおことばを逆に返すならば、量が第一であって価格が二番目だと。国民にとっては、いま何としてもまず価格最大関心事でありますから、そこで量が第一で価格は第二だという言い方でいいのかどうか。そのことであるなら、第二に、量が十分に確保できるためには値上げもやむを得ない、それは四月以降あり得ると、こういうことになると言わざるを得ません。量の問題によっては、四月以降値上げがあり得るということであるのかどうかを明確に御答弁いただきたいと思います。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 量も大事であり価格も大事である、行政当局政治当局としては当然両方考えなければならぬところです。それから値段につきましては、極力いまの現行体系を維持していく、これは秋についても同様に維持していく。総理も、この新しい石油価格というものはできるだけ長期にわたって維持していきたいとおっしゃるのですから、この油種別パリティもできるだけこのパリティで維持していく、そういう基本方針で進んでいきたいと思います。
  27. 上田哲

    上田哲君 関連。   一言ですがね、方針を聞いているのです。たくさんある油種号の問題の中で、一つ灯油を取り上げて聞いているのです。きょうから上がるこの日に、たった一つ政治方針としては国民不安解消のために一言きちっと述べるべきです。つまり、どうあっても灯油に関しては上げないということがどうして方針として言えないんですか。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま御答弁申し上げましたように、現行価格体系をできるだけ維持していく、つまり灯油は現在の標準価格を維持していく、そういう方針で臨みたいとお答えいたします。
  29. 前川旦

    前川旦君 時間がなくなりましたので、最後に一問だけ。  好むと好まざるとにかかわらず、電力値上げはもう現実の問題となってきました。上げざるを得ないという段階になってまいりました。そこで、いまの電力コストは、火力発電で一キロワット五円程度と聞いております。石油が上がっても八円ぐらいまでだろうというふうに聞いておりますが、現在の家庭用電気料金は一キロワット当たり十一円八十銭です、約十二円です。したがって、コストよりかだいぶ高い。産業用は四円から六円の間と聞いております。したがって、今後電力料金を上げるという、上げざるを得ないというときがきても、民生安定の立場から、家庭用電気料金は上げないという約束をしていただけますかどうか、この点いかがでしょう。
  30. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点につきましては、いま審議会で新しい料金体系について審議していただいている最中でございます。大体の方向としては、産業用のほうを上げる比重を高くして、家庭用のものは上げる比重を少なくする、そういうふうな関係で原価主義を見直しておるはずでございます。三月末ぐらいまでに答申が出ますから、その答申をいただきましたら、それを検討して政策に織り込んでいきたいと思っております。
  31. 前川旦

    前川旦君 三月の末に審議会の答申が出るのはもう既定の事実。せんだって中間報告出ましたね。すでに中間報告出ました。したがって、私はこれは国民の不安を解消するという意味から、電力コストよりかこれほど家庭用電気料金が高いのですから、うんと高い、倍以上なんですから、家庭用電気料金は、たとえ電力料金を上げるときでも、民生安定のために据え置くという基本方針をやはり貫いてもらいたい。これは審議会の結論が出てから検討するというのじゃなくて、審議会の結論は二十日でしょう、もうあさってでしょう。ですからこの際はっきり国民に約束していただきたいと思いますが、その点総理いかがですか。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御発言の心情はわかりますが、そのように明確なお答えはできません。これはもう物価を抑制しなければならぬということで、産業用を上げれば物価が上がるにきまっておりますから、だから、民生安定のために最大の努力をするという基本的姿勢は変わりありません。ありませんが、端的に観念的に、電力を上げるなら家庭用を据え置いて全部産業用にしわ寄せをします、それで物価を押えます、そういうことは申し上げられないことは当然でございます。
  33. 前川旦

    前川旦君 いまの問題、ちょっと問題があります。というのは、産業用の、製造業で占める電力料金コストに対する割合というのは、一%ともいわれ、二%ともいわれている。ですから、産業用電力をかりに倍上げたとしても、そのコストにはね返るのはせいぜい一%か二%だといわれていますね。それは企業努力で吸収できるはずなんですよ。ですから、そういうことを考えれば、この際、やはり総理は決断をしてもらいたいと思うんですね。私はあえて、これはしつこいようですけれども、その決断を私は総理に迫りたいと思います。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたの言うことはわかりますが、観念的にだけ決断できるものじゃございません。だから、審議会が十分専門的に検討して答申をするわけでございますから、その答申を受けて、政府が電力料金をきめなければならないというときありとせば、その場合は、民生安定ということには十分ウエートを置いて審査をするということまでは申し上げられますが、初めから据え置きますとはとても申し上げられません。
  35. 前川旦

    前川旦君 時間が参りましたので、私の持ち時間なくなりましたので終わります。(拍手)
  36. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして前川君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  37. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 黒柳明君。(拍手)
  38. 黒柳明

    ○黒柳明君 質問します。  私、まず石油の再値上げの問題について総括的に総理にお伺いします。  昨年のいわゆるトイレットペーパーのパニックに始まりまして、総理をして言わしめれば、戦後四半世紀の最大の経済危機だと、大蔵大臣も狂乱物価だと、こういう異常事態が発生したわけです。国民の皆さん、あの寒空の中に、非常に日常物資の購入について苦労された。総理ないしは大臣の家庭ではこういう経験がないので、私は国民の皆さん方の実際的な苦労はわからないのじゃないかと、こう思うのですけれども、まずそれはさておきまして、ところが、今回の値上げは、政治の権力、総理の裁断によって値上げがきまったわけであります。非常に国民一般大衆の人方は、あの昨年の何だかわからないときですらもこんなに物価高になった、今回は政府が大上段から物価の値上げをきめた、当然それに物価の値上げ、昨年以上の物価高が来るのではなかろうかと非常に心配していると思います。物価高の恐怖におののいていると思います。総理はこの国民の皆さんの心理を、心配をどう理解しているか、まずお伺いしたい。  とともに、さらにどういうふうにして物価を安定させるか、夏までにはと、こういうことであります。具体的にわかりやすく説明していただきたい。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 石油原油価格が引き上げられておるわけでございまして、中東諸国、アラブ諸国の石油問題に対して毎日報道しておるのでございますから、石油に対して国民の理解というのは相当深まったという感じでございます。去年の十二月ごろはどうなるかしらんと、日本にどのぐらい石油が入ってくるのかもわからぬ、実際においてその輸送中のものがどうなっているのかわからぬ。いずれにしても上がる要素はあっても下がる要素はない、こういうことでございまして、これはトイレットペーパーとか塩まで買いあさったという面があるんですから、ですから、それはなるほどちょっと先を読み過ぎたなあということで、国民も大体落ちついてまいりました。国会でもって三カ月間もこれで毎日御審議いただいておりますし、政府も、物価は押えます、石油はこうして入ってきます、もう量的にも、価格も頭打ちだと思います、そうして頭打ちになるように努力をしますと。それでいまのままでほうっておけば、業者は一万二千円も、一万三千円も、一万五千円も上げるということでございますから、先取りは幾らあったか、吐き出させるものは幾らあるか、まだまだ配当を押えられるものかどうか、重役のとにかく賞与もがまんしてくれといえば、どこまで押えられるかということで、全部やって、今度三月末の決算になっても、まだ石油会社全部でもってトータルすれば、百億ないし二百億も赤字が出るということを前提にして石油価格を押えたわけでございますから、今度は政府はやったなあということは、これ理解していると思うんです。これ、すなおな感じなんです。これはイギリスにしろ、西ドイツにしろ、フランスにしろ、イタリーにしろ——イタリーは一万二千何百円上げているわけですから、しかも去年の十一月から上げているわけですから、そういう意味で、まあ去年の十二月は少し便乗値上げを許したなどということで、政府は少しもたもたしておったようだが、今度はすばやく相当思い切ったなあと、こういうことでございまして、石油に対して国民はちゃんと世界情勢知っておるんです。ですから、政府も本腰を入れて押えてきた、こういう状態。特に、まだ石油が上がりかけておるときの灯油を、今日うんと上がってからもまだ据え置いているというだけでも、政府の姿勢もよくわかってきたし、大体行政の態度もレールに乗ったなあと、こういう感じが非常に大衆的には私の耳にも入ってきます。ですから、なるべく情報を国民に提供してくれまして、塩までなくなったというような錯覚を国民が起こさないように、テレビや新聞で国は広告しなさいよというのが、もうこのごろはそういうことなんです。われわれも灯油を買ってマンションの廊下に積んでおくとあぶなくてしょうがないと、ガス自殺が始まるとマンションごと爆発するおそれが出てくるというので、そういうことをしないで済むように、政府はテレビでもって広告してくださいというのが一日にたくさん来るわけですから、私はそういう意味では政府の姿勢もよくわかっていただいたし、国民も必要やむを得ざる状態でもって買い置きをする必要はない、買い置きをしておってはばかくさい、こういう気持ちがだんだん定着をしてまいりまして、私は今度の石油というものに対して危険のあるのは、何だかんだ言っても石油の二次製品はやっぱり供給は少なくなるなあと、こういうことで、抱くか抱かないかというところに問題があると思うんですから、そこは金融で水ぶくれをびっしり締めて、在庫ができないようにしようと、こういう考えでございますので、これはすなおに水は流れる、こういうことであって、流通経路の混乱を未然に防止すれば、価格は、国民が理解できる価格体系ができる、こういう考えを持っています。
  40. 黒柳明

    ○黒柳明君 何か総理答弁、私の質問に対して適切な御答弁じゃないように判断しますが、私は国民の皆さんが石油に対する認識を深くした、これはそのとおりだと思います。しかし、いま総理がおっしゃったように、総理が、国民の物価高に対する不安は理解してないんです。そのことは問題なんです。また、政府よくやったなあとおっしゃるのは総理の自画自賛です。国民の皆さんはそんなこと思っていません。これ以上物が高くなる可能性があるということで非常に不安に思っていますよ。まあ、それはけっこうです。  ところで、昨日、総理は鳥取の記者会見で、国際情勢が、海外的な要因がなければ夏までには物価は下がるだろう、落ちつくだろうと、こうおっしゃった。ところが昨日のOPECの発表ですと、七月一日まで原油は現価格凍結すると、もう原油の安、そしてわが国の石油ないし物価の安ということは、これ見込めませんね、要するに凍結ですから。そうなると、海外要因というものが全く流動的です。海外要因によって、また夏までに物価の安定があり得ないという事態がここに出てきたんじゃないんでしょうか、いかがでしょう。
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、そうとは思いません。これは海外要因としては、ここでもって一割上げようという議論がありましたが、それも押えて、三カ月間はいまの価格でいこうというんですから、これはもういまの価格でもって推移すると。これが三ヵ月後に一〇%上がるか、二〇%上がるかという懸念もありますが、一〇%下がるという懸念もあるわけです。懸念ではなく、そういうこともあるわけです。あり得るわけですな。学問的な問題であり得るわけですな。上がることだけ予測しておって、下げるという努力をしなければ、これは日本もアメリカもどこも困るけれども、開発途上国が困っちゃうんです。開発途上国は、第一、上がった場合に——上がらなくともいまの価格でも、一体肥料が四−六月確保できるかどうか、できなければ今年度の食糧の確保ができないという人道問題、ゆゆしき問題が起こるわけでございます。いまちょうど——いままで二、三年前まではほとんど手持ち外貨がなくて、みんな先進工業国や、国際機関から借り入れておったもののたな上げをやっておったわけです、返済猶予。それが国際穀物物価の高騰によって、十億ドルとか十二、三億ドルずつ、一ころに比べると驚くほどといわれるほど開発途上国は持っています。持っていますが、十億ドル、十何億ドルなんというものは、肥料が上がっただけで飛んでしまうわけでございまして、これは非常な困難な問題があるので、世界の外交舞台で検討されるべき問題もあるわけでありまして、これはOAPEC諸国が上げるからといって、それだけで石油が上がるものでもないし、そういう意味で、国際的に、この中でもってやはり対米禁輸はやめよう、サウジとエジプトはとにかく一〇%下げよう、こういうことも考えているわけですし、日本といまいろんな国とが経済協力をやっておりますが、経済協力はバーターにはなりませんが、しかし、何分の一は現地でもって製油し、何分の一は原油で積み出し、何分の一は二次製品として日本が買い取るということによって、二国間では入札だけではなく、この投資に見合う石油の量に対しては別な価格体系をきめようという広範な動きがあるわけでございますので、私は、そう上がることだけを懸念しておらないで、下げるのだ、下げるためにあらゆる努力をするのだというやはり政治努力をしていかなければならぬと思います。
  42. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も何も上がることを懸念しているわけではなくして、下がることもまた期待もしなければならないと思うのです。しかし、流動的だと私は言ったわけです。上がるか下がるかわからない。流動的だ。ただし、七月一日までは凍結ですから、だから、原油が安くなればわが国の石油製品も安くする可能性がある。これは安くならない、凍結だから。まず安くなるということはこれは期待薄ですね。そうなると、この次上がるか下がるかわからないけれども、流動的なのだから、総理は夏までには海外要因がなければ下がる。あれば下がらない。むしろ上がる可能性もあるということを認めざるを得ないのじゃなかろうかと、私はそう言うのですよ。
  43. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは石油が五%や三%や八%上がりましても——まあこれ、二〇%も三〇%も上がったらたいへんですよ。そうじゃなく、私は大ざっぱに言って一〇%くらいの上がりよう、まあ一つの試算でございます、上がることは好ましくないのですから。しかし、上がった場合も——下がったことはかり、もうかることはかり計算していると夢になりますから、やはり損した場合にどうするかということを考えると同じように、下がることを努力して、下がった場合に、上限価格もきめているのですから、ですから、それはひとつタイムリーに下げよう、こう言っていますが、もし上がった場合に、日本の物価にどう影響するかということに対しては、やはりいろんな試算をしなければならない。先ほどから前川さんが とにかくどういうことがあっても灯油だけは据え置くと言いなさいよ、言いなさいよと言ったけれども、もし上がった場合があるかもしらぬものを言えないと同じことで、それはやはりいろいろ考えているのです。ただ、国際的要因よりも——私は国際的要因というものに対しては、去年の十二月と違って、もう頭打ちというような感じで、少なくとも十五ドル原油とか十三ドル原油とかいうことじゃなく、十ドル原油というものが一体九ドルになるのか、十一ドルになるのかという問題に局限されている、こういうふうには見ているわけです。石油も、くまなければ、いつまでも地球の中に保存しているのだからいいという問題じゃないのです、これは。稼動率の問題もございましてね。そういう意味では、量的な問題も価格の問題も、とにかくわれわれが予測し、予想できる状態に入っている、こう考えているわけです。そうすると、その国際的波動要因がもしマイナスに動いた場合に夏までの物価要因どうなるかというのは、この国内的にしぼっていく政策的効果と一体どういうふうにバランスがとれるのか、国内的なものが五%だけしかメリットがなくて、海外要因が一〇%あれば、マイナス五%上がるわけですな。しかし、海外要因が五%であって、国内的な引き締めのメリットその他が、企業努力というものが一〇%あれば、プラス五%、物価には引き下げられるという要因に働くわけですから、そういう意味で、国内的に見ますと、まあ倒産を防ぎながら余剰資金の吸い上げその他総需要の抑制政策がぴっちり進んでまいりますから、国際的な多少の波動かあっても、努力いかんによっては——努力いかんである、努力をなすことによって所期の目的を達成したい、これが政治の基本姿勢であります。
  44. 黒柳明

    ○黒柳明君 国際的に値段を下げる努力といったって、わが国はなかなかそこまで手が届かないわけですよ。まあ次の質問をしましよう。  今回の値上げは、何か政府と自民党、業界と密室の中で、一キロ当たり六二%アップと、こういう決定がなされたような感じがします。これは価格の凍結ないしは事前届け出制等、手を打ったようですけれども、私は次の四点につきまして非常に疑惑があるんで、まとめて御答弁ください。  第一点は、衆議院の予算審議の終了後、あまりにも急速にこの価格決定が行なわれたこと。第二点は、石油業界の先取り値上げによる不当利得、これが明瞭になってないこと。第三点は、石油輸入原価がはっきりしてないこと。第四点は、石油需給適正化法の十三条による石油需給調整審議会にもはからずに決定したこと。この四点につきまして、総理の所見をお伺いします。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 衆議院の審議が終わるまではもたもたしておったが、終わったらすぐやったから政治的だと、そういうことじゃないわけです。これはもう衆議院の予算委員会とあたかも時を同じくしたというにすぎないのであって、その間、便乗値上げ分が幾らあるか、国際的な石油状態がどうなるか、価格の動向がどうであるか、引き上げた場合に、価格の改定をした場合、他の生活必需品にどう影響するかということをしさいに検討しておったことは事実でございます。そして、それがとにかく、まだまだ慎重に検討したかったのです。まだ。一日延ばしに、上げるものというのは一日でもおそくしたほうがいいということで、あなたと同じ考えです、人後に落ちないのです、これは。そういう意味でやってきましたが、値上げには全部反対な新聞でも、社説で、そういう経済理論にもとる行為には限界がある——こういう社説が出るやつ、待っていたわけじゃないのですよ。それはやっぱり民主政治というものは、新聞は世論なりと、こういっているから、やっぱり社説をよく見なきゃだめなんだ。(笑声)その点こんな押えられないことを——これは事実を言っているのです、事実を。
  46. 黒柳明

    ○黒柳明君 新聞の社説は反対だよ。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いやいや、そんなことはないですよ。これは純経済的なものに対して押えるには限界がある。だから、私たちは、全部、世論も動向を見ましたよ。ですから、押えられないものを押えろと、こう言っておれば、何か別に救済方法を加味せざる以外は正常な経済活動を妨げる。それで、それはある時期押えられても、今度そこに無理があると、経済が混乱をしまして思わざるところに要因が働くという問題が起こるので、行政の介入というものはできるだけ小さくすべきである、これは自由経済の原則でございます。水の流れるように、需給のバランスの中で、そうして大きな波動があったらそれは行政でもってチェックすべきだ、こういうふうに学界も経済界も世論もだんだんとそうなってまいりました。それで、もうすでに、あとは、去年の十一月から逐次上げている国があるのに、日本は三月まで待ったと。そうすると、日本は三月まで待っただけに他の国よりも高く上げるのか、三月まで五カ月間も引っぱっておきながら低く押えられるのか、その理由はどうかということを国民は注視をしておったのです。そういう意味で、三、四カ月引っぱったけれども、一万二千円も三千円も上げたわけじゃないし、その間に余剰資金も全部計算ができて——まあ千百億だと野党の方は言っておりましたし、業界は三百億だと言っておったらば、通産省が六百五億というものはちゃんとして、それから経理の状況もみんなやって、それでまあ少なくとも家庭用燃料であるところのものはいま据え置く、こういうことをやっても何とかやっていけるな、こういう状態まで把握すると同時に踏み切った、こういうことでございまして、そういう意味では可能な限り最大の、短時間で、そして合理性を追求しながら国民生活への影響を最小限に食いとめられるようなという、政府としては最大の努力を行なった。これは、密室でということでございますが、密室ではなく、これはもうこれだけのことを——下げたのじゃなく上げるんですから、あなたにいま御説明を受けているように、これきめれば、毎日国会で追及を受けて、その過程において全部その間の事情が国民の前に明らかになる、御追及によって政府が大いに努力をしたことがよくわかっていただけるということを承知してやったわけですから、これはもうほんとうにまじめにやってまいったということでございます。  審議会にはからなかったということは、これはそういう必要があるのかないのか、これは、法制的な問題は、いまちょっと私が答弁できませんから、通産大臣からでも答えます。
  48. 黒柳明

    ○黒柳明君 輸入価格の明示。輸入価格、明示されてなかった。輸入価格の明示。四項目あるんだ、四項目。
  49. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総理答弁漏れの中で、石油会社の利得の問題、それから赤字の問題、経営の問題、この二点につきましては、資料を提出しようと思っていま用意しております。委員長や理事から御指令があれば、すぐ提出する用意ができております。  それから、審議会にかけるという問題は、価格の問題は非常にデリケートな問題で、これが事前に漏れるということは売り惜しみを誘発すると、そういうことがありましたので、こういう問題は事後報告が適当であるということで、本日以降できるだけ早い機会に審議会を開きまして、御報告をし、御審議を願うことにしてあります。
  50. 黒柳明

    ○黒柳明君 いまの通産大臣への資料要求——価格明示、それから不当利得に対して委員長の要求があれば委員会に出すと、ひとつ要求してください。
  51. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいま発言者より要求がございました。通産大臣はその資料の御提出を願います。よろしゅうございますか。
  52. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 承知いたしました。
  53. 黒柳明

    ○黒柳明君 輸入価格なんか全部一応押えているには押えているんでしょう、価格
  54. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろん押えております。
  55. 黒柳明

    ○黒柳明君 審議会の問題、後ほどやります。  それから、総理、密室でやらないと——まだこれは前提ですから、質問してから四分です。まだ四十六分ありますから、いかに密室で行なわれていたか、これから徐々にやります。ひとつ期待しておいてください、やられたんですから。  それから、一昨日の発表、資材関係が五十三品目、生活関連が百四十八ですか、価格凍結。農林関係がちょっと少ないと思うんですが、これ、追加の項目はあるんですか、総理。それから、新製品でどんどん、どんどん値上げをすると、これはいままでと同じように値上げをされるという可能性があるんじゃないですか。この二つについてどうですか、総理。これを防止するためにどうしますか。(「農林大臣」と呼ぶ者あり)農林だけじゃない。全体的なこともありますよ。
  56. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農林物資は、御承知のように特別に食管等の扱いのものがかなりございます。それはそれぞれの法律でやっております。それは、これでやれますし、それから買い占め売り惜しみ防止法の対象に九つの品目を定めております。そういうことで、それらも重複いたしたものをやっておるわけでありますが、大体あれだけのものを行政指導で当分やっていき、その経過を見て対処したいと、こう思っております。
  57. 黒柳明

    ○黒柳明君 追加はないということですか。あり得る……。
  58. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまのところは考えておりませんが、全然ないとは申し上げかねます。
  59. 黒柳明

    ○黒柳明君 考えていないけれども、ないとは申しかねるということはどういうことですか。あり得るということですか。
  60. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そうです。先のことは、これからの推移を見まして考えます。
  61. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう一つ
  62. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 五十三品目及び百五十品目弱というものは、いま国民生活に必要なものとしてピックアップしたわけでございますが、まだまだこれでもって全部目張りがしてあるとは思っておりません。これはもっと事態の推移の中で、ああ、こんなものがあったじゃないかということがあれば、それはもちろん取り上げなければならぬし、これは名前を変えて、製品の原料にちょっと別なものを入れて、全然名前は一いままではアメリカ名前だったものを、イギリス名前の製品も売り出せるわけですから、それが倍になったということじゃ、それは目張りになりませんから、そういう問題に対しては十分な配慮、具体的な配慮を続けていくと、監視の目は依然として光らしていくということでなけりゃ、完全な国民中心の物価対策ということにはならないと、こう考えます。
  63. 黒柳明

    ○黒柳明君 インフレによる企業の不当利得、まあ超過利得税も各党並列で何かはっきりしませんけれども、一つの提案にもなりますけれども、いまやっぱり資産の再評価ということがいわれております。なかなかこれも具体的にはどうやったらいいか煮詰まらない。そこで、まず法人の土地の買い占め、これは言うまでもなく激しいです。土地の再評価、これをやって、これについての再評価税を課すと、こんなことをどうですか。たとえば、私、例をあげましょう。これは四十八年九月現在、大手商社の土地の所有状況。三井物産が三百四十八万四千九百八十二平方米、この簿価が二百億六千三百万、それから住友商事が二百四十四万五千四百二十九平方米、この簿価が百六十四億九千百万円。あと伊藤忠、丸紅、日商岩井、トーメン、大体簿価が二百億ぐらいですよ。持っている土地が、多いところは丸紅の九百万平方米、少ないところでも住友の二百五十万平方米。ところが、これを今度は具体的に、丸紅の千葉港の中央土地、これは八万一千四百六十八平方米あるんです。これが簿価が、七億一千五百万。ところがどう見ても、ここは一平方米当たり十万は下らないんです。そうすると、八万一千四百六十八平方米ですと、時価は八十一億四千六百万と、こうなるんです。さらに、住友の川崎倉庫、これは五万四千六百三十二平方米です。この簿価が十三億五千八百万。ところが、ここもどう見ても一平方米十五万下らないんです。そうすると、時価は八十一億九千四百万。いまの簿価と時価と、十一倍、六倍、圧倒的に時価が多いこと間違いない。ところが、試算の中では、この十分の一、ひどいところは二十六分の一ですよ、そういう簿価になっている。これを一回再評価して、それでその再評価によって出たものを、あるいは臨時国民福祉年金あるいは物納については減税処置をするとか減免処置をとるとか、こういうことをやる気ありませんか。
  64. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 遺憾ながらやる気はございません。これは戦後一回やったわけです、財産税ということで。それで今度やれば第二次財産税ということになるんですが、財産税を徴収するということになるときには、よほどの事情を考えないで財産税の徴収をなすべきではないということは、もう当然でございます。  それで、これはその後財産税と同じようなことで、地方税制とか、いろいろな不動産に対する税率の改正ということで、だんだんと税率が引き上げられてきておるということが、言うなれば第二の財産税的な効果を持っておるわけですが、いまの御提案のように、すべてのものを評価がえをしてということは、これはいろんな弊害を起こすんです。これは土地は、昔買えば安いにきまっているんです。二十歳のときに坪五万円で買って、年率一〇%ずつの複利計算で、六十年たって八十になって売ると、五万円の土地は千二百万円になるわけであります、原価が。ですから、これはもうあたりまえのことでございます。だから、私有欲というものを満足させるようにして、個人に与えておって——土地はほんとから言ったらもうからないんです。これは一〇%でもって、六十年で二十歳のときに買ったものが千二百万円になるわけですから、それは国が持てば合わないんです。ですから、国民に持たしておって、その地租は税の大宗である、こういうことでずうっときているわけでございますから、これはまあ自由主義経済というもののよさはそこにあるわけです。国が全部持って、税金の財源にもならない、それで国民に安く提供していくということは、国の財政の面からいってもなかなか合理的な制度とも思わないわけでございます。ですから、そういう意味で、古く買ったものは、確かに簿価は安いにきまっておる。それで、六十年前に買ったものは五万円簿価であるし、高くいま買ったものは千二百万円ですから、八万円と九十万円なんという差じゃなく、それはもう何百分の一というのがあるにきまっております。  ですから、そういうものを一律に時価評価をしてやるという場合、税法でもってやれということでもって地方税などでは修正をしておりますが、これを財産税的な見地でやると、現に営業の用に供しておって売れないものがうんと高くなって、あとから買って、幾らかもうかったら売ろうとしておるものが安い税しか納めないという問題が起こってくるわけでありまして、これはもう企業、経済を根底的に混乱に導くおそれがあるということで、これはなかなかできがたいものでございます。ですから、この前の資産再評価の場合でも、法人の土地に対しては再評価を認めないということを国会でもって決定をしたわけでございますから、そういう意味からでも、土地に対しては、四十四年の四月一日からですか、企業が税の特例法によって買い入れたものは、今年三月三十一日までにこれを売り払わない限りにおいて、四月一日から普通の法人税プラス二〇%の重課が行なえると、こういうふうに税法の改正をして、二〇%の重課をするわけですから、その上に、財産税的な土地の再評価をやって財源に充てようというのは非常に無理があるということを遺憾ながら申し上げておきます。
  65. 黒柳明

    ○黒柳明君 大蔵大臣、どうですか。
  66. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは総理からのお話で尽きておると思いますが、一番問題がありますのは、保有土地を売し払うという際の問題だろうと思うのです。売り払う際におきましては、法人税が三五・七五%かかる。その上に地方税がかかる。今回提案をしております法人税法によりまして、この三五・七五%が四〇%になるわけでありまして、その上に、短期保有の土地を売り払う場合におきましては、その法人税のほかに二〇%を増徴する。分離課税であります。そういうことになりますと、企業が持っております土地を売ると、実に七〇%、中央、地方を含めましての税がかかるというので、これはかなり高率のものだろうと思うのです。そういうことで、形式的に帳簿上の評価がどうあるかという問題は、これは会社経理の問題といたしまして、会計制度とするといろいろ問題がありましょうが、そういう税の問題から見ると、かなり実質的に重課されておると。私はこの税制でいいと思うのです。  ただ、将来、今日の異常事態が克服された、そしてこれからは国の経済をなだらかにやっていかなければならぬという際に、帳簿上の価格が非常に不合理のものがあると、こういうのは、税の問題をひっからめるかどうかは別といたしましても、調整する必要がある。いま戦争じゃありませんけれども、いわゆる戦後処理というような角度の問題ですね。いまは物価の異常な変化によりまして、でこぼこがずいぶんできておる。いずれその地ならしをしなければならぬ時期が来ると思うのです。そういう際には、その一環といたしまして、この土地の評価問題、これも項目になってくると、かように考えます。
  67. 黒柳明

    ○黒柳明君 将来というと、どういう条件が伴った将来でしょうか。いまの物価は鎮静したという表現をされましたけれども、非常にやっぱり土地の問題は重大問題なわけですよ。どういう要件が伴った将来にそういう可能性がありますかね。
  68. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま、とにかくこの物価状態を鎮静させなければならぬ、この作業があると思うのです。かたがた、石油の問題電力の問題、いろいろやってくる。そこで、新しい物価水準というものが出てくると思うのです。そういうあとで、やはり日本の国のこれからの将来の経済運営をどうするか、これは非常に大きな問題になってくると思うのです。もう再びこういうような物価混乱を起こしちゃならぬ。また一方において、国際収支の問題があります。また、資源、これは石油に限らず、非常に食糧その他の問題でむずかしい問題が出てくる。ですから、戦後処理というか、そういう感覚で、新しい国づくりをどうするかという問題があろうと思う。そういう際に、この一ですから秋以降のこれは少し時間の長い問題になりましょうけれども、ずいぶん荒れ果てたこの日本社会、それを地ならしをすると、こういう作業の一環として、ずいぶんひどいでこぼこのできたこの土地の価格、これをどういうふうになだらかに調整するか、こういう問題が起こってくるということを申し上げておるわけです。
  69. 黒柳明

    ○黒柳明君 要するに土地についての戦後処理はできてないと、こういうことですね。  具体的に私、問題を変えまして、総理が喜ばれる政府・自民党と業界との癒着問題なかんずく石油業界との癒着について具体的に質問します。  総務長官ですか。大臣、政務次官等の営利企業との兼職の問題の規定はどうなっているか。
  70. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) お答え申し上げます。  きわめてこれは、営利企業に対しましては、政務次官も、また国務大臣も、兼職をいたさないという基本的なはっきりとした取りきめの中で行動いたしております。
  71. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう明快であります。  中曽根通産大臣、前政務次官の矢野氏、いつからいつまで政務次官だったでしょうか。事務当局に聞いてください。
  72. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) ちょっと不正確かもしれませんけれども、去年の七月から十二月までだったんじゃないかと私は思います。
  73. 黒柳明

    ○黒柳明君 けっこうです。四十七年十二月二十六日から四十八年十一月二十七日。相当不正確ですね。ここまで覚えるのはたいへんだ、いまたいへんなときですから。中曽根通産大臣、この約一年間、非常に次官としてよき伴侶であったと思うんですが、どうですか。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一生懸命よくやってくれました。
  75. 黒柳明

    ○黒柳明君 と、通産大臣には映っているんですよ。この政務次官矢野登氏が営利企業の社長をやっていたことを御存じですか。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 存じておりません。
  77. 黒柳明

    ○黒柳明君 次官は総理の任命ですね。総理、いかがですか。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 承知しておりません。
  79. 黒柳明

    ○黒柳明君 やっているんです、現在も。こんなこと、たいした問題じゃないですよ、と私はまず前段で言いたいんです。だけれども、やっぱり通達規定があるんですから。業者と、やっぱり行政の長にいる大臣、政務次官、癒着しちゃいけないという規定があるんです。総理大臣、そうでしょう。それを、その規定も守らないで——まあ、忙しいからということもあるだろうと思いますよ。だけど、大臣、政務次官じゃないですか。最高の長じゃないですか、行政の。その長がそういう単純——私、そう言いたい、たいしたことないと。このあとがたいしたことが出てくるからです。この問題たいしたことないというのは、別に無視しろということじゃないんですよ。無視できないんですよ。全政務次官、いまどうなっているか、調べさしてください、総理総理の任命なんだから。
  80. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いまの次官ですか。
  81. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、全部の次官。
  82. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いまの全政務次官……。
  83. 黒柳明

    ○黒柳明君 全政務次官、どうなっているか、調べさしてください。すぐ。
  84. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大臣は営利企業についてはならないということでございます。これはもう、法律では内閣総理大臣が何か特認をすればいいようなあれになっていますが、一切いかぬということになっています。それで、政務次官も同断であります。これは、特別職といえども、政務次官、内閣官房副長官総理府副長官、これは特別職ではございますが、こういう者に対しては、営利企業に対しては職を離れるようにということをやっております。特にやむを得ざる場合は所属長の許可を得るようにということになっています。どすから、そういうことはないと思いますが、これは、全部が全部公安調査庁でもって調べているわけじゃございませんから、だから、それはわかりません。ですから、いま事務当局に調べさせます。
  85. 黒柳明

    ○黒柳明君 全部が全部そうなっているのじゃなくて、次官、大臣に任命するときには、その規定をやっぱりきちっと見なければならないのじゃないですか。それで、矢野さんは石油販売会社の社長さんです、当時もいまも。ですから、これは非常にやっぱり問題なわけですよ。ね。どうですか、中曽根通産大臣。よき伴侶であった、だけどそんな基本的なことを知らなかった——うまくないんじゃないですか。まだこれは序の口ですよ、この問題は。
  86. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もしそういうことでありましたら、はなはだ遺憾なことでございます。大臣、次官の就任するときに官房から注意がありまして、そういうような営利企業について一々届け出さして、やむを得ざるものについては承認を得なければならぬと、大体全部営利企業をはずすと、そういう方針できておりますから、矢野さんの場合もそういうふうにやっておると私思っておりました。
  87. 黒柳明

    ○黒柳明君 思っておったじゃなくて、そうじゃなかったのだから。
  88. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もしそういうことでありますならば、はなはだ遺憾であります。
  89. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうであればじゃない、決定的なんですよ。  それからさらに、この矢野登氏が通産政務次官のときに、いまもそうですが、全石連の名誉会長をやっている。これを知っておりますか。名誉会長といったって、そこらの置きものの名誉会長ではないんです。これ、どんどん言いますけれどもね。完全に業者サイドべったりの名誉会長ですよ。この事実、まず通産大臣知っておりますか。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それも存じておりません。
  91. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理大臣、どうですか。
  92. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 全く承知いたしておりません。
  93. 黒柳明

    ○黒柳明君 だからね、こういう規定も皆さん方ははっきりしない。官房長官も責任があるかわからないよ。いま官房のというようなことの話が出たから、たばこなんかくわえてゆう然としているときじゃないですよ、きっと。官房の責任かもわからない。しかも、なぜ私は、この名誉会長うまくないか、いろいろ事実がある。その一、二を言いましょう。これは二足のわらじなんですよ。片一方は通産政務次官で行政に携わっている。これはもう言うまでもありません。最高責任者、頂点ですね、大臣とともに。よき伴侶であった。片一方は全石連という石油販売業者、この名誉会長、しかも、名誉ということは、実際的なそこらの名誉じゃないんですよ。たとえばこういう事実があるんですよ。十一月二十二日、これは全石連の理事会に出まして、こういうことを言っているんです。十一月——まず十三日から言いましょう。第一に税の問題だが、大蔵省はガソリン税三〇%、軽油引取税二五%の増税案を撤回しないで、むしろ消費抑制に必要だとしているが、その感覚が原油高騰を招いている、国会内にも増税見送るべしの良識論も出ている、いま増税するなんてとんでもない話で、絶対反対だ、こう、石油業者の、販売業者の最高の集まりの中に行って、こういう増税反対——消費者の立場ならいいですよ。だけれども、行政の増税を、政府案をつくる中心者じゃないですか。その中心者が、片一方では政府案をつくり、片一方では増税反対だなんて、こんなことはどうですか、通産大臣
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、国会議員としての立場で、よく大会や会合に出まして、そうして、反対である、わが党は反対である、あるいは、われわれは反対であると、議員としての主張を言うことは間々あります。米価の大会へ行って、値を上げろ、あるいは酪農大会へ出ていって政務次官もやります。これは議員としての行動で許されるのではないかと思います。  それから、名誉会長というものが給与を得ている会長であるか、単なる名誉職としてやっておるのか、その点もよく究明する必要があるのではないかと思います。
  95. 黒柳明

    ○黒柳明君 それならば、この発言している揮発油税、地方道路税、それから自動車重量税政府案、いま審議になっている案、アップのパーセントはどうなりましたか。さらに、軽油引取税政府案、どうなりましたか。通産大臣——経済企画庁長官ですか。揮発油税、地方道路税政府案、いま審議中の案、政府案が何%アップで、いま何%になっているか、法案として。軽油引取税政府案が何%で、いまはどうなったか。
  96. 首藤堯

    政府委員首藤堯君) 地方税につきましての軽油引取税、これは今回の増税はいたしておりません。
  97. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃない。政府原案が出たじゃないですか、政府原案が。
  98. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 揮発油税は、現行はキロリットル当たり二万四千三百円でございますが、改正案では二万九千二百円となっております。地方道路税は、キロリットル当たり四千四百円でございますが、五千三百円ということになっております。
  99. 黒柳明

    ○黒柳明君 アップ率です。政府原案のアップはどのくらいで出てきたかというのです。しょうがないね、そんなあれじゃ。軽油引取税の政府原案のアップ。
  100. 山形栄治

    政府委員山形栄治君) ガソリン関係でございますが、揮発油税が二万四千三百円、キロリットルでございますのが、二万九千二百円、それから地方道路税が四千四百円、キロリットルが五千三百円、合計しまして、ガソリン関係で二万八千七百円であったものが三万四千五百円と、約二割のアップでございます。それから軽油引取税に関しましては、キロリットル一万五千円のものがそのまま据え置かれておるわけでございます。
  101. 黒柳明

    ○黒柳明君 いまおっしゃったとおり、政府原案は三〇%アップ。これが道路税、それから揮発油税、二〇%になったんです。それから軽油引取税が三五%アップの原案がゼロになった。据え置きになったんですよ。現実にこうなったんです。私は、これがはたして政務次官の発言でこうなったなんていうことは言いませんよ、総理。だけど、現実にこうなっていることは間違いないじゃないですか。原案をつくる、片っ方で。片っ方では業者のほうに行ってかっこういいことを言う。それで現実にはそうなっている。通産大臣、国会議員としての発言、私はだから、一番冒頭に営利企業の社長、さらには、名誉という名誉は置き物じゃない名誉ですよと。まだ一ぱいあるんですよ。業界べったりですよと、こう言ったんです。国会議員としてじゃないですよ。しかるべきところに名誉会長の位置としてちゃんと出ているんですよ。みんな業界紙だってちゃんと書いてありますよ。どうですか、これ。ただ単なる国会議員としての発言としてではありません。現に政府原案はこういうふうになっちゃっている。ゼロになっちゃった。どうですか。
  102. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 税がきまりますには、自民党の政調会の税の調査会、税制調査会というのがありまして、そこでずいぶんすったもんだやって、小委員会まできめていろいろな調整をやり、それから大蔵省の税制調査会があり、そのいろんな複雑な過程を経て、均衡を考えながらきめられるので、矢野君がそれまで力があるとは思いませんね。(笑声)やっぱり税制調査会の中枢にすわっている人の発言権が非常に多いので、むしろほかに有力な議員が自民党には多々いると思います。
  103. 黒柳明

    ○黒柳明君 力があるかどうか国民はわからない。私もわからない。あるいは力があるかもわかりませんよ。それは否定できない。だけど、政務次官というのはやっぱり重要職であることは間違いないでしょう。だから、企業との癒着を避けるために営利企業の役員にするなと、こうきめてんでしょう。しかもそれが名誉会長としてやっぱりこういうところに出て業者サイドの話をどんどんする。十一月十三日、十一月二十一日は先ほどからの灯油価格ですよ。灯油価格については、まず灯油小売り価格の問題だが、通産大臣は四百円、エネルギー庁長官は四百五十円と、こう言っていると、しかし——中は飛ばします——全石連としては、灯油は自信を持った価格のあり方で進まないとたいへんだと、家庭用灯油は最大の政治課題だが、もちろん安易な妥協は許すべきではない。——これも業者のつどいですよ。国会議員としての発言、これはうまくないじゃないですか、やっぱり。業者サイドに、要するに政治と妥協しちゃだめだぞと、おれたちのペースで行こうじゃないかと、しかも御当人は販売会社の社長さんなんですよ、やっぱり。どうですか、通産大臣、そんな簡単なことばで片づけられますか、これを。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは本人からそのときの情勢を聞いてみないとわかりませんが、やっぱり税金を上げることは国民は歓迎しないと、特に家庭生活に密着しているもの等については国会議員は非常に鋭敏でありますから、大体どの党を問わず税金を下げようという方向にみんな動くんじゃないかと思うんで、矢野君もその一人じゃないかと私は思います。
  105. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、結果的には政府原案というのがやっぱりぐっと後退したんです。これは消費者にとって、ユーザーにとってはいいでしょう。だけど、やっぱりその原案をきめる中心にいるんじゃないですか。その一人じゃないですか。一人であることは間違いないじゃないですか、通産政務次官ですから。それが今度は業界に行って、そういう案に対して反論をする、業者サイドの発言をする。どうですか、こういうのは。総理、何かじゃべりたいようで、どうぞ。
  106. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 税に通産政務次官は関係していません。これは税は、地方税においては自治省の税務局、それから国税においては大蔵省の主税局、で、主税局もそれから自治省の税務局も政府の税調に諮問をして、税調の決定がなければ法案を提出をすることはできないということでございます。党においては政調の中に税制調査会が設けられておりまして、小委員会は全然別なものであって、そこには政府関係者は関与しておりません。
  107. 黒柳明

    ○黒柳明君 灯油価格は。
  108. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 灯油価格は、これは通産省、経企庁、大蔵省というものでございまして、これは通産政務次官は省議で通産省案をきめるときには、これはもう当然省議メンバーでございますが、しかし、ここらは経企庁それから大蔵省というような関係の省庁の事務当局で練り上げまして、政務次官、大臣のところへ上げるときには省議の席で上げるということでございまして、これはまあ事務機構、官僚機構はそうなっておりまして、政務次官が影響力をうんと持っておるというふうには——これはまあメンバーの一人として討議に参加すると、このように理解いただきたい。
  109. 黒柳明

    ○黒柳明君 私もどういう影響力を持っておるかどうかわからないんです。実際にこの問題、ぐんぐん調べてみたわけじゃないんです。しかし、まず第一段階、常識的に判断して、いいですか、一段階として、常識的に判断して、灯油価格なんか、事務当局でどうあれ、やっぱり大臣、最終的に今度の再値上げみたいに、総理大臣が最終値段を裁決するんでしょう。同じようなシステムを通していくんじゃないですか。そのやっぱり長にあることは間違いないんじゃないですか。そうでしょう。その長にある者が、やっぱりこういう価格について、業者サイドとして、自分も業者なんですから、これは政治と妥協できないと、こういう発言もする。まあいろいろありますよ。うんと取り上げたって同じことです。税金はそうじゃないんだ。それじゃ灯油はどうか。灯油のほうは事務レベルでやったと、そんなことは常識としてこれはおかしいんじゃないんですか。どうですか、総理
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 灯油は全事務的にあれは大体きめまして、ともかく秋は凍結しようと、で、九月の値段の平均相場、キロリッター一万九千八百円でしたか、それできめて、そうしてそれ  行政指導価格にしてそれを標準価格に移行すると、大体秋から一貫した考え方を持っておりまして、事務当局からそういう考え方を押し上げてきて、われわれがそれを是認したのでありまして、大体これは事務ベースでそのまま流れてきたと見ていいのでございます。
  111. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、何も一政務次官、前政務次官、このことを取り上げるつもりじゃないんです。一つ具体例がないとやっぱり説得力がないから、営利企業の社長、これはうまくないというんでしょう。全石連の名誉会長、これも許可を取ってない、だめなんですよ。そういう立場から、さらにいまの発言になるんですよ。通産大臣、どうですか。許可してない、だめなんじゃないですか。
  112. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 上げようというのじゃなくて、安くさせようという、結局、業者の不利な方向にきめさせてきているわけです。
  113. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、私の言っているのは、営利企業の社長、いけないんでしょう、いけないんだと、こうきているんじゃないですか。それがもう大前提じゃないですか。
  114. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、ですから、いまはたしてそうであるか、官房のほうで調べてもらっております。もしそういうことでありましたならば遺憾であると申し上げたとおりでございます。
  115. 黒柳明

    ○黒柳明君 全部書類をもらっているんですよ、官房じゃなくて通産から。局長からもらっているんです。届けも出てないんです。認可もしてないんです。いいですか、総理、それを前提にして、いけないのに、なおかつ、そういう発言しちゃこれはうまくないじゃないか、疑惑がさらに増すじゃないかと、販売会社ですから、全体的に。大企業もみんな入っているんです、ここの中には。どうですか、総理。もう判然としているんです。資料は。そんな資料をこちらがいいかげんでやるわけないですよ、私は。総理、いけないことについているんじゃないですか。
  116. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ通産政務次官の現職にありながら、石油販売会社の社長をそのまんま兼務しておったということが事実であれば、中曽根通産大臣が述べたとおり、遺憾でございましたということに尽きます。ですから、これからは……。
  117. 黒柳明

    ○黒柳明君 全石連の名誉会長。
  118. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 全石連の問題は、まあいろいろまたあると思うんです。これはよくその内容を見てみませんと、これは給与をもらっておるかどうかというようなものがありますから、これはとにかく、私企業で、自分がこっちの手では行政を行なっておって、こっちのほうでは受けているというようなことじゃ、これは妥当性の問題でございまして、これはやっぱり許可する場合でも、全然別な仕事をやっているというならこれは別でございますが、そうじゃなく、通産政務次官がその石油販売会社の社長とか、農林政務次官が肥料会社の社長とかというのは、どうもこれ、ちょっと妥当性を欠くということに対しては遺憾の意を表しているわけですから、これからは御注意をひとつ将来の戒めの資といたしたい、こういうことを……。
  119. 黒柳明

    ○黒柳明君 全石連のほうはどうですか。
  120. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 全石連のほうは、よく私わからないものですから、いま調査をしないであまり思いつきで答弁することはよろしくございませんから、そこらは少し時間をかしていただきたい。
  121. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も非常にものわかりがいい男ですから、調査ということで逃げるなら時間をかしましょう。調査してください。全部こちらは資料あるんですから……。  それじゃその次、私これはおかしいと思うんです。いけない、いけない、いけないというところについて、国会議員という発言だ——とんでもないですよ。二足のわらじです。よく東映映画に出てきますわな、片っ方で十手、片っ方でさいころ。だけど、この悪人は映画では滅びる。だけど、はたして現実は滅びるかどうかはわかりませんよ。非常に疑問ですよ。東映映画じゃありません、これは。しかし、そういう面で私、調査の結果と言うなら結果を待ちましょう。  それからさらに、その次にくるのは、これはもう総理がちょっと突っぱねてきたから、こっちもそれじゃ相当攻撃に出ましょう、攻撃姿勢。——こんなことやったってだめですよ。それじゃさらにいきましょう。  まずここに、——いまのは中央ですよ、今度は地方へいきます。十一月九日、油政連——石油政治団体。政治団体だから自由ですな、業者が集まって政治団体、届けしていますから。ところが、こういう政治団体に一般的に公務員が参加するということ、どうですか、人事院総裁。
  122. 中村博

    政府委員中村博君) お答えいたします。  国家公務員法及び人事院規則の規定に抵触いたします政治的行為は禁止されてございます。したがって、先生の御発言の中で、その態様等詳細にお知らせいただけませんとちょっと該当するかどうかということは判断できかねます。
  123. 黒柳明

    ○黒柳明君 政治団体の会合、いま言ったのは。
  124. 中村博

    政府委員中村博君) 政治団体の会合にも、人事院規則では政治目的、政治的行為という二つの種類を定めておりまして、両者に該当するときに初めて政治的行為となるわけでございまして、個別なそのときの事情をいろいろ知りませんとにわかに判断できませんが、一般的にはそのような行為は望ましくない、かように思います。
  125. 黒柳明

    ○黒柳明君 一般的には望ましくない、総理大臣、いいですね。これは当然ですよ。政治団体の会合に国家公務員が出席する、これは一般的に望ましくないのはあたりまえです、いま局長さんおっしゃったように。  具体的に言いましょう。十一月九日、石油政治連盟、この総会に、これには自民党の大物の議員も出ています。まあ関係ないから個人名は省きましょう。だれが出ていたか。福岡通産局の村上鉱山部長公正取引委員会の本多福岡事務所長、しかもこの席上では、この九州地区の次期参議院候補者の決定の推薦をして、出た自民党の議員に決定決議も出した。完全に自民党の次期参議院候補者をきめる会合です。そこに国家公務員が出ているんです。しかも公取の関係が出ている。どうですか、公取委員長
  126. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 私はその事実を全く存じませんでした。事実であるかどうかは早急に調べますが、またその会合の趣旨等に照らしまして、不都合千万であるということであれば、それなりの十分な行政処分をいたします。私、知りませんでしたから、その点どうにも何ともいま申し上げられません。
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 公取委員長、すみませんね、お足の悪いところ。事実であるから言っているんです。事実であったら、これは不届き千万でしょう。事実であったら不届き千万でしょう。
  128. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) そのとおりであると思います。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 けっこう。通産大臣
  130. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現職の国家公務員がそういう政治行為を行なったとすれば遺憾でございます。ただしかし、そういう場合に、決議に参加するとか、あるいは運動方針で行動をともにするとか、そういうことがあれば政治行為と言われますけれども、たまたま呼ばれて出ておって、そしてどっちかというと、そういう積極的な行為に参加しないで、ただおったというだけで、はたして政治行為であると言えるかどうか、これはもう少しよく詳細調べてみないとわからないと思います。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 どう政治行動に参加したかしないか、いまこれだけ世間で問題になっているときじゃないですか。十一月九日、石油のパニックが始まったころ、出ること自体やっぱりうまくないんじゃありませんか。疑惑で見られることは間違いないじゃないですか。政治行動どうやったかこうやったか、それは別の問題としても、さておいて、自民党の次期参議院候補者を決議するそういうところに出ること自体やっぱり問題じゃないですか。疑惑で見られるじゃないですか。どうですか。そこでまずあれしましよう、疑惑でしょう。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく前後の事情を正確に調べてみませんと、こういう公の場所でございますから、また一身上のこともございましょうから、正確に調べてから御答弁申し上げます。
  133. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理、いまおトイレの最中に話し合ったんですけどね、公取の人、あるいは通産局の事務局の人が、自民党の候補者を議決するそういうところに出ていたんです、政治団体の集まりに。これは非常にうまくない、こういうことをいま論議をした。公取は、もうそれは事実だったらうまくない、こういうふうにも発言をしているんです。総理、どうですか。やっぱりこういう疑惑を招くことはやめたほうがいいですよ。これだけはもうしっかりしてください、総理大臣、疑惑を招くことはこの際やめろと。ついせんだっても、おとといのこともあったじゃないですか。
  134. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公の職務を遂行しなければならない立場にある者は、いやしくも疑惑を招くような行為は釐毫もあってはならない、原則論はそのとおりに理解をいたします。  ただ、まあいま通産大臣が……
  135. 黒柳明

    ○黒柳明君 それが余分だ。そこが余分なんだ、あんたは。(笑声)
  136. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いやいや、通産大臣が述べましたとおり、これは個々のケースの内容を十分調査をして、もって正さなければならないような事情であれば正します。しかし、内容の中で、全部が全部画一、一律的というと、ほんとうに相手が、意志のない行為までが、あたかも悪いことを承知しておってやっているようになっちゃ困りますのでね。
  137. 黒柳明

    ○黒柳明君 利用されちゃうから……。
  138. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうそう。だから、きょうは石油の問題で、重要な問題でありますから、ぜひ御出席賜わりたいという案内で電話がかかってきて行って、それで重要な話をずっとやって、終わって帰ろうとしたときに、きょうはひとつ参議院選挙で、自民党を推そうと、社会党を推そうと、公明党を推そうと、こういうことになったということになったら、それはそういう問題でやっぱり情状があるわけですから、そういうことは一律、画一的にはいかないということで、やっぱり中曽根通産大臣が事情を取り調べの上申し上げますというのが、公式な席上でございますから、何でもかんでも早くのみ込んで、しかりさようですと、こうはなかなか言えないということだけは念のため申し添えておきます。
  139. 黒柳明

    ○黒柳明君 だけど、もしそういう行政指導や陳情があったとしたって、そういう政治的な行為をする席には、当然判断して、欠席すべきですよ。退席すべきです。ここらあたりは当然じゃないですか。
  140. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはよくわかります。きょうはやっぱりそういうことをやるらしいなと思ったら、そういうことばが出たら、すぐさっと退席するぐらいな機敏の行動が必要である、それはそう思います。(笑声)
  141. 黒柳明

    ○黒柳明君 そのとおり。通産大臣、どう、もう一ぺん答弁してくださいよ。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石商連の会合があって、それが油政連に切りかわるということはよくあるわけです。ですから、石油商業組合連合会の会合でいろいろ説明したり何かするということはいいことだと思いますがそれが油政連というふうになったら、これはやっぱり機敏に、さっと去るほうが賢明であると思います。(笑声)
  143. 黒柳明

    ○黒柳明君 何も私は、国会審議というのは、しかめっつらして、お互いに対決するばかりが審議じゃないと思うんです。お互いに理解することも必要だと思うの。だから、笑いもあってもいいと思うんですが、そんなに笑う状態じゃないんですよ、実はこれは。いいですね。その点を理解してくださいよ。そんな、総理が前向きの発言をしても、私は、いろんな問題があるんです、ここに。あるけれども、総理の、そういうことはうまくないと、もしそうだとして譲ったとしたって、すみやかに出るのが公務員としての常識だと、そういう発言、また、これから前向きにそういう問題はやれと、善処すると、こういうことで私は了とします。というのは、一国家公務員のことを云々する場じゃありません。重要な物価国会の場ですから。  それからもう一つ、それじゃもう一つだけ総理ね、うんとありますけれど、また名前が出てきて申しわけありませんけれども、自治大臣、地方税の特別徴収制度とその軽油引取税について簡単に説明してください。簡単でけっこうです、自治大臣。これ、簡単に触れておきましょう。
  144. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 御承知のように、軽油引取税につきましては、特別徴収義務者というものをきめて、それに徴収を依頼をいたしておるというたてまえでございます。
  145. 黒柳明

    ○黒柳明君 内容をちょっと説明してください、どういうものか。
  146. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) これは、御承知のとおり、現在約千五百億円ほどの金に、税金になっておるわけでございまして、結局、全国の特約業者、あるいは元売り業者に対しまして、特別徴収義務というものを命じておるわけでございます。これに対しまして、今日まで各府県の大部分は、若干の、たとえば御承知のように、かなり立てかえをするというような事情等もございましたので、各府県ともそれぞれ若干の交付金というものを出しております。この交付金が各県の間で一律になっていない、ぜひこれはやっぱり統一してもらいたいという強い要望がございましたので、昨年五月に自治省といたしましては、大体交付金を出す場合には一定の基準をもってやってほしいということを通知いたして今日に至ったということでございます。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 すみません、自治大臣、四十八年五月二十四日に通達を出されましたですね、料飲と軽油のこと、これについての説明、通達の。それから通達を出す経緯ですね、それについて簡単でけっこうです、これは本論じゃありませんので。
  148. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) これは、ただいま申し上げましたとおり、料理飲食税と、それから軽油引取税につきましては、いま申し上げたような特別徴収義務者にいろいろな義務を課していると申しましょうか、かなりの負担をかけておるというようなことから、それぞれ各府県においていろいろな形で交付金を出しておりました。しかし、これがたいへんばらばらになって不統一になっておる、ぜひこれを統一してもらわないと各府県としても取り扱いに非常に困るというような事情もございまして、昨年そういった通牒を出しまして、一定の割合のものをそういった義務者に交付するということを指導をいたしたようなわけであります。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 この一問、これ最後です。  要するに、料理飲食店、それから揮発油業界、これについていろんな事務経費がかかる。だから、業界で税金を集めてもらって、そのリベートということばは悪いかわかりませんが、リベートで一%やると、こういうことですが、やっぱりそれは料飲とか揮発だけじゃなくて、ほかの業界だってそういうシステムやるところがある。あるいは手形が切られる、それだって、木材関係だって切られるというようなことがあって、私はこの五月二十四日の通達を出したことについて若干やっぱり問題があるんじゃないか、こういう気がするんですけれども、大臣のお考え、どうですか、これで大臣の答弁は最終にしますが。
  150. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 御指摘のように、確かに他の税金につきましても特別徴収義務者に徴収を委託をしておるというものも相当にあることは事実でございますけれども、各府県におきまして、従来の例を見ますると、この料理飲食と、それから軽油引き取りにつきまして一番手数がかかるというようなことで、交付金を支給をいたしておったということでございます。いま御指摘がございましたが、この交付金につきましては、県によりまして、かなりの金額を出しておるところもあり、あるいはきわめて少額の、僅少の定額でもってやっておったというようなところがございまして、それがかなりのばらつきになったのでありますが、この通達を出すことによりまして、大体各府県ともほぼ一律の基準でこれからは交付金が出されることになるということでございます。したがって、この交付金というものがいままで出ていないようなところ、あるいはきわめて少額なところにも今度出るようになったというところに、いろいろ御批評があるいはあることかと思うのでありますけれども、私どもといたしましては、やっぱり今日までの実情にかんがみて、この程度の交付金を各府県が支出をいたしますることは、まあやむを得ないのではないか。ただ、こういう時期でございますので、いろいろ問題があろうということは承知をいたしておるところであります。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後の、こういう時期だからいろいろ問題がある、そこなんですよ。やっぱりこれね、料飲だけが、手形で決済がおくれて貸し倒れが多いということじゃない。しかも、この抽出はごくわずかの抽出しかしなかった。全国的にどうだか実態わかってますか、わかってないでしょう。そういうことから、やっぱりいまのこの石油の時期に、一千五百億の徴収、そのうちの一%、十五億ですよ。これが業界にいく、こういうシステムについてはやっぱり問題があるんじゃないでしょうか、遺憾じゃないでしょうか、こういう通達を出して全国一律にやったということは。どうですか。そこらあたり、はっきりしてもらわないと、さらにこまかく煮詰めますよ。
  152. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) いま御指摘になりましたように、また先ほど私もお答え申し上げましたように、まあ従来ほとんど出していなかったというようなところも、今度は一定率で出すようになる、こういうことでございますので、その点は確かに御指摘のような問題もございます。いわんや今日のようなこういう時期でもございますので、まあ私どもとしましては、この通達についても若干の問題があるということでは遺憾に存じますけれども、今後ひとつ、さらにこの問題については十分検討をすることにいたしたいと思います。
  153. 黒柳明

    ○黒柳明君 若干問題がある。地方税はいま足らない。足らない、貧乏県なんか。その足らないところに一%地方税からさかれる、県としちゃ困るじゃないですか。しかもこれは、料飲税と揮発油引取税だけじゃないですよ、業界にそういうリベートやっているのは。全業界、そういう徴収、そしてリベートをもらえるなら全部やりますよ。しかも、四十八年の五月二十四日まで実施していた県は、一%は二十二県ですよ、残りが十九県あったんですよ。五月の二十四日この通達を出したら、全部で四十二県がこれをやったわけじゃないですか。地方税からも、これは非常に憲法上でも問題ですよ、これは。一局長の通達で、全然根拠がないこういうものを出しちゃう、憲法的に問題じゃないですか。大蔵大臣、これ、どうですか、一局長の通達で。
  154. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、予算の執行でございますから、それをこの予算案に基づいてそうするとか、あるいは法律、条例に基づいてそういうふうにするとか、そういうことになってれば、憲法に違反するというまで大きな問題にはならないんじゃないか、そんな感じがします。
  155. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃ、何に……。
  156. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 行政運営上妥当であるかないかと、こういう問題が残るのではあるまいかと思います。
  157. 黒柳明

    ○黒柳明君 妥当かどうか、どうですか。
  158. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私もよく実情を承知いたしておりませんので、これが妥当であるかないか、これは自治省にも伺ってお答え申し上げます。
  159. 黒柳明

    ○黒柳明君 遺憾であると言うんですよ、自治大臣は、こういうやり方について。一局長の通達で地方税を圧迫するようなことはどうなんですか。事務手続なんというのは各業界全部ありますよ。どうして料飲と揮発だけなんですか。−ちょっと待ってくださいよ、もう自治大臣は遺憾であるということを言っている。
  160. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 自治大臣が、とにかく問題があるから検討すると、こう言っておりますからね、私もよく自治大臣の検討の結果をお待ちいたしたいと、かように存じます。
  161. 黒柳明

    ○黒柳明君 けっこう。その問題がある。私に言わせれば、この十五億は全部業者サイドに流れる。それも公平に流れるならいいですよ、スタンドまで。そうじゃないですよ、特約店、元売りだけです、これは、もらうのは。それにもかかわらず、今度は橋本幹事長と竹下副幹事長と小沢経理局長が石連の幹部を自民党本部に呼んで、二月の六日、選挙頼むぞ、こういうことを言っている。さらに小沢辰男経理局長はこう言っているんですよ。六月は正念場だ、全国六人の推薦者、参議院候補ですよ、ぜひとも強力な支持を賜わりたい、これは石連の会合でですよ、党は全力を挙げて全石連の期待にこたえていきたい——党ですよ、今度は。特に軽油税の交付の一%以上の完全実施をつとめていきたい、お互いの問題解決のために、皆さん方の問題として自分たちの健全経営のためにも、参院選はよろしく願いたい。機関紙だといったってこういうこともどんどん書いている。秘密でも何でもないんですよ。こういう不届きで問題がある一%について、参議院選挙を応援してくれ、そのかわりこの一%は全県に交付してやると、こう言っている。どうですか総理
  162. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 選挙に際して国民に訴える、各企業、団体に訴えるということは、これはもう当然だと思うんです。これは各、別な党でも労働組合向きの党は労働組合に行って、わが党を推してくれ、これはもう当然のことであります。まあ、そのときに違法行為や非違行為を公約するということじゃ困りますが、相手側が陳情書を出し、そしてまたそれが制度上にのっとっておるものであるということであれば、これはそういういろいろな国民的な立場で要望が出ているものに対して、これはひとつ大いにわが党はやりたいと思いますという、党としての活動、これはいいと思うんです。あると思うんですよ。これはまあストライキを支持する、それから大幅の賃上げは大いに支持する、週休三日制も支持する、こういうことはやっぱり言いますからね。ですから、それは党はどこでもいいんですが……。
  163. 黒柳明

    ○黒柳明君 問題が違う、問題が。
  164. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そこで、いまの自治大臣の問題は、これは自治大臣が検討すると言っております。これは経緯がずっとあるんです。これはもう国会でも十分御承知のとおり、料飲と軽油引取税の問題に対しては徴税上非常にむずかしい問題であって、これは一%にかえがたい、これはもう地方で困りましてね、現実的にその税の適正な徴収をやるためには何倍も金がかかるというようなことで、結局、その地方税の徴収の中でもって編み出した一つの調整策であります。それはしかし、出すところもある、出さないところもあるということでは、それは不公平じゃないかという世論が起こって、そして一%というものをきめるにはそれなりの長い歴史があり、この税を創設したときからの問題としてあるわけです。それでまあ、こういう制度でもって均衡のとれた、また徴税の合理制をはかりましょうと、こういうことでやったものであって、私はこれをやめるといっても現実的にはむずかしいと思うんです。ですから、これはいま大蔵大臣がとっさに答えました法律とか条例とか、そういうものでやれば、これはもう違法性はありません。ありませんが、長い歴史があって、この税の特性から来て、全廃をしなさい、しかし全廃できない、漸減をしてくる。しかし、漸減であるからといって、税法がある限り、これは徴収できないというようなことでは困るので、適切なる徴税を行なうための便法、手段としてとられたものであるということでありまして、まあこれからの問題に対してなかなか陳情、請願、文句もあるんです。とにかくちゃんとして払っているところもあるし、払ってないところもあるじゃないかというようなことに対して、これを全国的なもの、四十七都道府県一律にこれを実行するようにということは、民間側の要請、国民側の要請として政治の面で反映を求められておるということに対して、まあ言ったと思います。私はまあ総裁ですが、それはあなたにいま指摘されてやっとわかったわけですが、自民党は行き過ぎのあるようなことはやってないと思うんです、これは厳に注意をしておりますから。以上。
  165. 黒柳明

    ○黒柳明君 質問に答えてもらわないとだめ、質問に。これは行き過ぎしてない。私はまだこの段階で行き過ぎしていると言っているんじゃないですよ。まず一%の徴収に対していろんな問題がある、そんなことも言っているんじゃないですよ、私。総理大臣、いいですか。そんなこと知っています、私も。ただし問題は、これについて問題があるんです。遺憾なんです。自治大臣のかわりとして、大蔵大臣答えられないじゃないですか、この問題。担当大臣が問題で遺憾がある、そういうものを自民党の経理局長、言うならば二百億の金元ですよ。その人が実施してやるから、そのかわり応援してくれと、こういうような発言を軽々しくやることは、これはどうあれ、うまくないじゃないですか。こういうことについては。私は、これは利益誘導とかなんとか、そこまで入っていませんよ。いいですか、そんなことまで入っていませんよ。こういうことをやることは、またさらに疑惑を増すだけじゃないですか。そこだけです、いま論じているのは。
  166. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自民党には非違事項もありませんし、違法性のある行動は絶対にやっておりません。おりませんが、しかし、あなたにそれだけ言われてもマイナスでございますし、政府与党としてはやっぱりちゃんとして姿勢を正すところは正します。正すように厳に指令をいたします。選挙を頼むことと公私の混淆と思われるような記事になるようなことは釐毫も行なってはならない。いずれめしの時間にでも言います。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 何も私は記事になったから言うんじゃない。記事にならないことがもっとこの何千倍あるでしょう。氷山の一角でしょう。記事になったことだって、もっともっとやりましょうか。
  168. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いやいや、いい。
  169. 黒柳明

    ○黒柳明君 いいでしょう。いいでしょう、総理、やってもらわなくて。私もいろんなテーマがあるから、ここら辺にしときます。ともかく私は、記事になるとかなんないとか、利益誘導になるとかなんないとか、そんな問題まで突っ込みたい。だけれども時間もない。まだ二テーマも三テーマもある。こういう問題が次から次から出てきたら……。  石油問題でこれは密室でやってませんよって言ったって、通産大臣、通産政務次官が——大臣じゃない。すみません。政務次官が、片っ方は行政の立場、片っ方は業者サイドで、これ、密着しているような疑惑が起こる。党の中心者の、経理担当中心者が、片っ方じゃ業者のほうに行って、疑義がある問題について一%実施してやる、さらに国家公務員がそういう政治団体のまっただ中の中で自民党の候補者を決議するような中に出席している等々等々、あげればまだうんとある。こういう自民党と政府と業界と、なかんずく石油業界とのこの密着というものをここでほんとに正していかなかったら、どうきれいごと言ったってだめなんです。これも氷山の一角ですよ。総理が希望なら、どんどんどんどんわが党やりましょう、こういう問題を、希望があるなら。ないでしょう、希望なんかない。やりましょう、ね、こういう問題を。いまの発言で私は了としますけれども、こういう党、政府含めて、ほんとうに国民の生活、物価高あるいは石油問題に対して、前向きに真剣に命をかけてやる総裁、総理ならば、こういう、私に言わせればくだらないといえばくだらないかもわからない。だけど、こういう氷山の一角が隠れた大きなところで何か行なわれているんです。可能性があるんです。疑惑も出ている。各大臣が次々に立って、遺憾だ遺憾だ遺憾だとおっしゃる。総理大臣も、何もあるということを私前提で言いたくないですよ。しかし、少なくともいま表面に出たことについては遺憾である、全面的、こういうことはね、政府、与党、自民党としても、全面的こういうことはやめなさいと、この際、こういう大号令をかけて、そして夏に向かってのまっしぐらの物価問題に進んでもらいたい。どうですか、決意。
  170. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府も与党も国民の批判を受けるようなことを厳に慎まなければならぬということに対しては、そのとおりでありまして、厳に姿勢を正してまいりたいと、これはもうそのとおりでございます。ただまあ選挙運動、選挙に際していろいろその準備運動をしなければならぬということも、これは事実でございます。そういうわけで、自民党にもいわば選挙の事前——事前運動じゃなくですな……(笑声)
  171. 黒柳明

    ○黒柳明君 事前、事前。
  172. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いやいや、いや準備運動、準備。準備をしなければならない権利はあることを、これは認めていただかぬと困るんです。ただ、そういう権利行使において、その御指摘を受けるようなことじゃ困るんです。また、小沢君が経理局長として出ているんじゃないんです、これは。小沢君、この間まで総務局長だったんです。選挙局長だったんです。で、久野君とかわったんですが、まだ暫時事務引き継ぎの過程にあるので、その個々のケースのときに小沢君と久野君が一緒に出ると、こういうことが、またそういうことになるんでしょうが、いずれにしても、政府与党としてこれはもう指摘をされるだけでも与党の票もふえるわけはございませんから、そういうメリットのないことを、また姿勢を正さなければならぬことを、というようなことをちゃんとわきまえて、党運営をやってまいりたいと、こう思います。
  173. 黒柳明

    ○黒柳明君 いまの問題で私は午前中の質問を終わりたいと思いますけれども、まだ若干時間ありますけれども、まあこの問題については。ですけれども、やっぱり経理局長だ、総務局長だ、事務引き継ぎだと、こんなことを言っているんじゃないんです、私は。いろんなところにまだまだ——冒頭に言ったでしょう、はたして国際情勢が流動的だから上がるのかわからない、物価は。夏までどうなるかわからない。さらに、いろんな値段価格だといったって、オープンみたいなオープンでないみたいな、そういう疑惑があるんです、いろいろ問題が。疑惑というよりは心配が。その心配がこういう問題からさらに助長されたら困るし、いうならば、この一%のあれですよ、あの特別徴収なんていうのは、もしかして厳密にやれば、これはリベートかわかりませんよ、党に対しての。あるいはそれによって票を固めるリベートかわかりませんよ。そんなところまで私は厳密に指摘してこの論争をしようとは思いませんけれども、非常にやっぱり疑義があって問題がある問題なんです、こういうことは。ですから、私はあえて相当の時間を使ってこれを言ったわけです。まあ、こういう問題については、まだまだこれはいっぱいあることは間違いありません。また次回に譲って、私はこの問題はこの辺にしましよう。  その次、科学技術庁いますか。——原子力、国会でもいろいろ問題になりましたね、安全性について。あれ以来どう対処されたか、あの問題だけじゃなくて、ひとつ総括的に原子力問題と安全体制について。
  174. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 日本分析化学研究所の問題と関連いたしまして、原子力の安全性の問題が大きくクローズアップいたしたわけでございますが、先般もこの委員会で申し上げましたが、原子力の開発は、軍事利用から始まり、そして平和利用に移行して実用段階に入って十七、八年ぐらいでございましょう。歴史もまあ新しいわけでございますし、産業及び技術の発展段階といたしまして、念には念を入れて、そういう問題については気を使っていかなきゃならない、いわゆるテクノロジーアセスメントというものの考え方の上に立って、この原子力産業の平和利用、特に原子力発電の問題に取り組んでおるわけでございます。しかし、私どもは安全性の問題について念には念を入れてやっていかなきゃならないということと、原子力発電が直ちにもって安全ではないということは、これは別問題であるというふうに考えておる次第でございます。しかしながら、念には念を入れるという意味におきまして、昭和四十九年度予算につきましても、昨年度の安全性の確保に関する予算が、債務負担行為七十億円に対しまして、四十九年度は債務負担行為を合わせまして百五十億円、倍以上——総需要抑制のなかなか予算編成むずかしいおりからではございましたが、この問題につきましては倍額以上の予算の増強をし、この両三年、この動向をもちまして、安全性の確保につきましては、政府が責任を持ってこれに当たる体制を確立をいたしたい、そういう考え方で臨んでおる次第でございます。
  175. 黒柳明

    ○黒柳明君 けさの新聞ですと、高速増殖炉が何か試運転段階、それについて説明していただけますか。
  176. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) ただいまの問題は、事務当局より説明をいたさせます。
  177. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) お答えいたします。  私、けさの新聞、正確にまだ拝読しておりませんが、動力炉・核燃料開発事業団が、大洗におきまして、熱出力五万キロワットの高速増殖炉を現在建設中でございます。この高速増殖炉は、まだ全体が完成はいたしておりませんけれども、近く完成を目ざして工事中でございまして、その暁には、ソ連、英国、米国、フランスに次ぎまして、将来の高速増殖炉の基礎になるデータを十分とれる実験炉といたしまして、研究開発の中心になる予定になっております。
  178. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕  〇委員長鹿島俊雄君) 速記を起こして。
  179. 黒柳明

    ○黒柳明君 昭和四十六年五月の二十七日ですか、福井県敦賀で、何か作業員の方が事故を起こされた云々ということがありますね。科学技術庁のほうでどのくらいつかんでいるか、御答弁いただけますか。
  180. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) けさの日刊紙の一部にこのことの記事が出ておりますが、私どもも最近このことについて事務方より報告を受けたわけでございます。二、三年前、敦賀の原子力発電会社の原子炉において、下請の作業員の方が放射能を受けたのではないかという疑いを持たれておると、で、そのことについては、許容量一ミリレム程度の状況でありまして、これによって放射能障害を受けるようなことは常識上、通常まあ考えられないという報告を受けました。  そこで、私は、まあそういう状況であるにしても、実情をもう少しよく調査し、特に専門医によく見てもらって、御当人にとっても、また、国の原子力開発の問題にも関連をすることでありますから、実情をよく専門医に見てもらって調べて、また状況をよく調査して、善処をしなきゃならぬというふうに命じてある次第でございます。
  181. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 十二時五十五分まで休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      —————・—————    午後一時開会
  182. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、黒柳君の質疑を行ないます。黒柳君。
  183. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど大臣からありました四十六年五月二十七日、岩佐さんが原発の配管工事をやってたときの状況をひとつ詳しく説明いただけますか。事務当局でもけっこうですけれども。
  184. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 当時の状況でございますが、会社から聴取いたしましたところ、作業の状況は、日本原子力発電株式会社敦賀発電所の海水から冷却水を取り入れますパイプに関連する工事をしていたそうでございます。そのパイプが通常は縦についているパイプでございますが、それを工事の都合で横に倒しまして、そのパイプにまたがって穴をあける作業をしていたということでございます。  それで、この作業場でございますが、これは通常汚染監視区域といわれるところでございまして、通常は放射能のないところでございますが、念を入れまして、この作業場全般の空間線量を把握しますための線量計、それからその作業場の壁、床あるいは個々の器材の表面の放射能を測定いたします線量計、そのほかに作業員の個々の被曝線量を測定いたしますためのポケット線量計、この三つによりまして測定をいたしております。そのほか、場外に出ますときにさらにカウンターによりまして放射能を測定しております。  その結果、作業当時におきましては、空間の放射能、それから表面の放射能はいずれもございません。それから、この本人のポケット線量計につきましては、作業場に入るまでが二ミリレム、それから出ますときが三ミリレムというように記録されておりますので、その結果、作業場におりました間の被曝量が一ミリレムというように推定されるわけでございますが、他の同時に作業をしておりました作業員につきましてはゼロというようなものも多数出ておりますので、その辺非常に微量なものでございますので、そのくらいの誤差があったものだと考えております。  以上でございます。
  185. 黒柳明

    ○黒柳明君 最近の同種類の事故につきましてはありますか、最近の。
  186. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 同種類の事故はございません。
  187. 黒柳明

    ○黒柳明君 それじゃ最近の事故、人体的な。
  188. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 最近の事故につきましても、実験段階は別にいたしまして、現在の原子力発電所が実用段階に達しましてから以後は人体に許容以上の被曝があったという事故はございません。
  189. 黒柳明

    ○黒柳明君 作業員の事前の訓練とか事後の放射能の測定とか、そういうことは完全にやられたんですか。まず訓練のほうはどうですか、教育訓練。
  190. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 教育訓練につきましては、原子炉等規制法に基づきまして保安規定を各事業所ごとに設けておりまして、その中の一項目といたしまして教育訓練を十分に行なうようにいたしております。
  191. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、いまの状況説明ですと、放射能で何らかの事故を受けるという可能性がないところで作業をしていたと、こういうふうに判断してよろしいですか。
  192. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) その点につきましては、先ほど大臣の御答弁もございましたように、今後権威ある機関によりまして詳細に調査をいたしたいというふうに考えておりますが、私どもの常識といたしましては、かような障害が起こるような環境ではなかったというように考えております。
  193. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこで大臣、ここに診断書があるわけです。阪大の付属病院の診断であります。これは港区——要するに岩佐さんの住所番地、氏名、生年月日。それで一番初めは、この阪大の医学部付属病院で診断をとったのは四十八年九月二十九日。そのときには放射線皮膚炎の疑い、こういうことです。それについている説明があります。ところが、四十九年の三月二日、同じく医学部の付属病院田代という医師ですが——の診断によりますと、「放射線皮膚炎(右膝)、二次性リンパ浮腫(右下腿、足)」、こうなっているんです。そして、上記疾患のため四十八年八月以降休養安静の上通院加療中である。その原因としては、敦賀発電所原子力炉炉室内での作業中の放射線の被曝が考えられる。まだこれ、医師の段階です。しかも、このお医者さんと東大の技術者とこの状況証拠というものをすでに見に行っているんです。どうですか、この診断書。
  194. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) ただいまの診断書につきましては、これは医師という専門的な立場で書かれたものでございますから、私はとかくのことをこの機会に申し上げたくはございません。しかし、先ほど政府委員から御説明をいたしましたように、今回の事故が起きたと考えられる場所は、一般人の出入りを制限している区域、かつ、場合によっては放射能の汚染が発生するおそれがあるかもしれぬというので念のために放射能の監視を行なっている区域、これは汚染区域として放射線量以上の放射能汚染が存在するかまたはそのおそれのある地区で原子炉内部等がその対象になっているという、そういういわゆる汚染地区ではございませんけれども、注意したらいいという地区でございますから、そこに入ります際にはさるまた一つ、ふんどし一つになりまして、白い作業衣を着まして、それでポケット線量計などをつけて仕事をしておるわけでありますが、そのポケット線量計による計量数値は、先ほど政府委員からお話がありましたように、一ミリレムという数字でございますし、ほかに作業した人もおるようでございまして、ほぼ同じような程度の被曝であります。放射能を受けておるわけであります。しかし、この一ミリレムというのは、通常存在している自然放射能は百ミリレムぐらいある。レントゲンをやりますと三、四百ミリレムあって、普通存在する一般放射能の百分の一、レントゲン撮影なんかやったときの三百分の一ぐらいだということでございますし、特に、国際放射線の防護委員会というところでやりましたその根拠によりますと、二十五レムよりも高い線量の事故による被曝は潜在的な重大な結果をはらむものとみなさなければならないので、適切な治療措置及びその後の職業上の被曝についての勧告を求めるため専門医にゆだねられなければならない。二十五レムというのが国際放射線防護委員会の限界になっております。それによりますと二万五千分の一ぐらいでございますから、通常の場合の常識といたしましては、これによって直ちにもってこの放射線皮膚炎がその原因であると言うわけにはいかないと思います。それからまた、専門のお医者さんに聞いてみますと、なかなか放射線皮膚炎の診断というのは容易じゃないようで、なかなかむずかしいようでございます。そこで、いずれにいたしましても、しかし、そういうことで心配しておられる方でございますから、個人の立場におきましても、何とかできる限りのめんどうは見て差し上げなきゃならぬと思っておりますし、また、先ほど来先生がおっしゃっておられるように、特に国の立場からしてみましても、安全性の立場からこれをはっきりさせなきゃいかぬということも考えておりますので、先ほど申し上げましたような意味において、放射能の専門医の人によく見てもらわなきゃ、よく見てもらいませんと、たとえば労災保険の適用だとか、あるいは原子力賠償法等の適用がむずかしくなりますんで、とにかく早く見てもらって真相をひとつ医学的にも明らかにし、また、先ほど政府委員から話がありましたような、二、三年前のことではございますけれども、当時の実情についてさらに十分検討して実情を電力会社からも、その他の角度からもよく調べてみなきゃいかぬというふうに考えまして、午前中にお話しいたしましたように、専門医に見せてよく見てもらう、実情調査を進めるように私は指示をしておいた次第でございます。
  195. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連関連ですから簡単に二つだけお伺いします。  まず初めに、今回のこの事件につきまして科学技術庁としてはいつごろこのことを掌握されましたか。きょう質問になって初めて聞かれたのではないはずでございますから、いつからこれが掌握されておったのか、まずこれを最初に聞きます。
  196. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 正確な日付は記憶しておりませんが、今月に入って最近のことであります。
  197. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これはかなり前から問題になっておったわけであります。で、最近科学技術庁としては掌握されたと言いますけれども、やはりこの問題はそう簡単な問題ではないと思います。やはりもっときちんと公表もし、こういった経過について国会でこのような問題が出されたからあわてていろいろやるのではなくて、そうしないと、その当時の状況についてもはっきり把握ができないわけでありまして、この診断が正しいかどうかについてはいろいろ問題があるかと思いますけれども、事実この放射能の被曝があった場合、放射線の被曝があった場合、非常にこれだけの病気を起こす場合は相当の放射線でありますし、はたしてこの方が相当な地域に入っておられたかもわからないし、また、原子炉自身がどうであったのか、やはりいろいろ問題があります。最近のいろんな安全性が非常に問題になっておる事故もありますし、いろんな穴があいておるというところもあります。あるいはこの原子炉については一次冷却水、二次冷却水と分かれておりまして、本来であればここには放射能はあってならぬところでありますが事実こういうことになっておる。そうなると、炉の構造に何か欠陥があるのではないか、あるいはまた、一次冷却水と二次冷却水の間のところに何かまた問題があるのではないか、いろいろ考えられるわけでありますので、ただ、この辺の状況をいいかげんにしないで、もっときちんと、まずその当時の状況、あるいはその人がどこへ入ったのか、あるいはまたこの炉自身の構造なり何なりに欠陥がないのか、徹底的に私はこの際調査をしてもらいたい、これは要望でございます。それに対する答弁を伺いたい。  それからもう一つは、次に、大体いままでの被曝を起こした人たち、もちろん研究者の方もありますが、たいていはいわゆる下請のいわゆる作業員の方が多いわけです。かつてもたしか東海村であったと思いますが、「放射能男、町を歩く」という新聞記事にもなりました事故もございました。要するに、そういった作業員の方は、先ほど黒柳委員から質問もありましたように、十分な知識の教育もありません。また、そのあとの処理も非常にずさんであります。そういったことで、非常にそういういいかげんなことが行なわれているわけです。現実にこの事故が出ているわけですから、過去に何回か。今回のもこれは単なるやはり作業員でありまして、こういったことは十分考えられることでありますので、やはりめんどくさい点もあるかと思います。だから、めんどくさいから裸でやったりそれからあと検査しなかったり、予備知識もなくて炉の中へ入っていくと、こういうことが非常に多いわけでありますから、この点についてもっときちんとした対策をやってもらわなければまだまだこれからこういった事故は続くわけであります。その点についてどのような対策をされるか。  最後にもう一つだけ。これは個人被曝線量等の登録管理について個人被曝登録管理調査検討会報告書というのが昭和四十八年の二月十四日に原子力局から出ておりますが、このことについて一もずっと昭和四十年からこの個人被曝の登録管理について検討がなされ、専門の委員会もできていろいろ報告がされてきております。これ、九年たったわけですね、もう昭和四十九年の三月ですから。九年間もたってまだまだこれがきちんと実行に移されていない。いろんな私はいい提言がこの中にもあると思います。これについて大臣としてどのようにこれからされていくのか。この報告書を受けてどのような対策を具体的にやろうとされておるのか。ただし昭和四十九年度の原子力局としてやる事業の中にはこの問題は入っていないように思うんでありますが、今後どうされていくのか、その三点についてお伺いしたい。
  198. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 午前中お答えいたしましたように、黒柳委員御質問の前にこのことについての検討は開始をいたしたわけでございます。しかし、この医学的な判断が一つございますし、他方現場における実情調査というほうの事柄がございますので、この両者について遺憾なく調べて報告するようにというふうに話してございましたに引き続きまして、本日の黒柳委員の御質疑があったわけでございます。もちろん、その報告を受けまして、当該問題になっておられる作業員の方の治療問題とかあるいは今後全般的にどうこの種の問題について措置するかということについて科学技術庁側の考え方をまとめて何らかの機会に公表する考え方でございました。しかし、きょうはたいへんいい機会に黒柳委員から御指摘がございましたから、さらにこの問題につきまして大いに今後努力を進めてまいりたいというふうに考える次第でございます。  それからもう一つは……。
  199. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 個人被曝線量の……。
  200. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) そのことは事務当局のほうから答弁いたさせます。
  201. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 もう一つ、作業員、いわゆる下請の作業員の……。
  202. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 下請の問題は、本来のそれぞれの親会社が責任を持って処理することになっておりますが、しかしながら、矢追委員お話しのように、必ずしもその親会社の指導が十分じゃない点があるといたしまするならばそれははなはだ遺憾にたえないところでございますから、今後この点に特に注目をいたしまして、これは労働省のほうの作業指導とも関係がありますので、よく労働省のほうとも打ち合わせをいたしまして万遺憾なきを期するように努力してまいりたいと思います。
  203. 生田豊朗

    政府委員(生田豊朗君) 個人被曝線量の登録制度でございますが、前向きに実現をはかるべく検討を進めておりまして、近く中間報告をまとめる段階まで進んでおります。
  204. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣はこれを最近知ったと、こういうことですけれど、そうなると、これは原発のほうで隠してたか、技術庁のほうが怠慢であったか、このどちらかですよ。なぜかならば、この被害を受けたとき敦賀発電所の所長の浅田さん、医師の田代さん、このことを知っていますよ。それから昨年の十月二十七日ごろ会社から当人に五十万の見舞い金を持ってきていますよ、五十万の見舞い金。どうですか。原発はそれじゃこの事実を隠していたんですか。
  205. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) はなはだ遺憾なことでありますが、原子力発電所から、つい最近こういう事態について調査が始まるまで報告がございませんでした。
  206. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理、こんな怠慢な姿勢でいいんですか、原子力問題で。答弁、まずそこから。まだ続いてあります。まずその姿勢総理答弁してください。こんな、政府がね、これだけの問題、こんな怠慢な姿勢でいいんですか。答弁してください、総理。担当大臣、それから総理
  207. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 担当大臣といたしましては、先ほど申し上げましたような事情ではございまするけれども、やはり問題が起きた以上は科学技術庁のほうに報告すべきものであると考えておる次第であります。
  208. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) こういう事故が起きないように東海村の問題の事故のときも厳重な注意を喚起をしておるわけでございますし、これらの問題に対しては、事故が起こったら直ちに政府当局でもこの事情の把握につとめて適切な処置を講ずべきだと考えます。
  209. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど大臣が言ったのは、診断書はともかくと言いながら、全部これを否定する発言じゃないですか、総理お聞きになったように。医者のここに状況証拠があります。大体千レムぐらいの被爆状態と考えられる。一レムなんかとんでもない。しかも、これも慎重にこの診断をしたと、重大な問題だから。こういうこともある。しかも、会社のほうだって、いまから約三年前になりますよ。三年前になる事実。しかも、これだけの問題になったいま、発言されてけっこうですって、とんでもない、大臣。もう一回大臣、答弁しなさい。
  210. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) いまお教示のとおりでありますから、われわれは調査をしてそして真相を明らかにしたいと、こう言っておるのでございますから、どうか御了承願います。
  211. 黒柳明

    ○黒柳明君 御教示のとおりだからということじゃないです。人一人の命を三年間もほっぽっといて、その間原発はこれを伏せてきたんじゃないですか。いま教示されたから、だから調べると、そんな態度でいいんですか。とんでもない。人一人の命をどういうふうに思ってるんだ。どう考えてんですか、人一人の命を。いま教示をされたから、三年前のことを、だからこれから調べる。とんでもない話じゃないですか。そんな政府ですか。そんな科学技術庁の態度ですか。人一人をむざんにも見捨てんですか。
  212. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) やはり実情は調査してすみやかに対処をしなきゃならないという決意を述べております。原子力発電会社の措置については必ずしも好ましいものではございませんから、よく注意をいたすつもりであります。
  213. 黒柳明

    ○黒柳明君 「必ずしも」ぐらいじゃないでしょう。大問題じゃないですか、隠していたことは。必ずしも好ましくないなんてとんでもない発言だ。もう一回答弁しなさい。全面的好ましくないじゃないですか。とんでもないことじゃないですか。
  214. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) ただいま事務方より聞きましたところ、原子力発電会社も昨年の十月に初めてその事情を知ったとのことでございます。
  215. 黒柳明

    ○黒柳明君 十月だったら、それから半年たってんじゃないか。どうなんだ。
  216. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 初めから事態を知りながらひた隠し隠したとは考えておりません。
  217. 黒柳明

    ○黒柳明君 この半年間はどうだ。この半年はどうだ。
  218. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) この半年間について、すみやかに科学技術庁に報告がなかったことは遺憾であります。
  219. 黒柳明

    ○黒柳明君 遺憾であると大臣の責任、どうとる。大臣、これ責任どうとる。遺憾であった、報告なかった、これから調べる。そんな簡単な問題じゃない、人一人の命が。どうする。どう責任とる、これ。三年前の問題だよ。原子力発電所だって半年前にわかったんじゃないですよ。もっと前からわかってんですよ。遺憾である、御教示いただいたからこれから調べる。そんな態度でいいのか、この問題。
  220. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 黒柳委員の御教示をいただいたから調べるというのではございません。その前から調べておるのであります。
  221. 黒柳明

    ○黒柳明君 半年間の責任はどうするのかってんです、原発が隠していた。
  222. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) これはことば表現になりますが、三月二日までは疑いがあるというだけでございまして、先ほど御提示になりました診断書のように断定をするに至っておらなかったようであります。
  223. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃない。ちょっと読みなさい。三月二日断定だ。三月二日断定だよ。さっき言ったじゃないの。九月が疑いだ。
  224. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 三月二日に初めて断定されたわけであります。
  225. 黒柳明

    ○黒柳明君 九月が疑いだよ。疑いのときにはいいんですか。放射能の皮膚炎の疑いのあるときは無視していいんですか。
  226. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 無視していいとは思いません。ですから、遺憾であると、こう言っておるのであります。
  227. 黒柳明

    ○黒柳明君 遺憾であるから責任をどうとるかと言ってんじゃないか。何を言うか。同じことを堂々めぐりだ。その責任をどうとるかと言ってんじゃないか。
  228. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 科学技術庁長官としては全力を尽くしております。
  229. 黒柳明

    ○黒柳明君 おかしいですよ、総理、これ。全力を尽くしてるったってね、半年間知らなくって、ひた隠しに原発は隠したじゃないですか。何ですか、いまの答弁は。全力を尽くしたったってね、もう結論としてはこれから調べなきゃなんないということなんですよ。おかしいじゃないですか。おかしいよ、そんな答弁
  230. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 一応発言者に御注意申し上げます。発言を求めて御発言を願います。
  231. 黒柳明

    ○黒柳明君 責任をどうするかと言ってんだ。全力を尽くしているかどうか、あたりまえだ、そんなことは。全力を尽くさない政府があるか、そんなものは。尽くしていることはあたりまえだ。どう責任をとるかと言うんです。(「黒柳さん、立って」と呼ぶ者あり)だから、いまの答えが返ってこない。答えが返ってこない。
  232. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) この際、委員長から科学技術庁長官に要望いたします。発言者の要旨を十分におくみ取りの上で的確な御答弁を望みます。
  233. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 黒柳委員の御質問は、安全性を重視すべきである、それについて日本原子力発電所がこの半年間この問題を科学技術庁に報告がないことは困るではないかというお話でございまして、その点は私もまことにけしからぬことであるというふうに考えております。今後二度とこういうことのないように、日本原子力発電所ばかりでなく、原子力を扱う個所につきましては努力をいたすつもりでございます。そして、そういうような事態が再び起こらないようにすることによって責任を果たしてまいりたいと考える次第であります。どうか御了解を願います。
  234. 黒柳明

    ○黒柳明君 何もこれ以上やるつもりはないですけれども、総理大臣、つい先だってもそんな答弁したんです、国会で。しかも、こういう会社に直属してない作業員ですな、随時来る臨時の。こういう人たちは、こういう問題で非常に困っているということは前から聞いているんです。もうこの際、そんな二度とないと言ったって、もうこれで二度も三度もやっているんです。総理大臣、ひとつ科学技術庁に対してしかるべく処置をしないと、処置というよりも、総理大臣の意をきちっとあれしないと、また二の舞い三の舞いをすぐやりますよ、この後。こんなことになったらどうなっちゃうかわかりませんよ。いまの答弁、われわれは了としますよ。了としますけれども、この際、最高責任者の総理大臣が、これからエネルギーの問題で原子力の問題を真剣に考えなきゃならないんでしょう。私たちも真剣に討議する姿勢はある。だけども、こういうことが続けば、そんな討議なんかというところに入りませんよ。こういう不信というものが前提になって、すべて原子力問題政府はやる気ないと、こうなっちゃいますよ、総理大臣。ひとつもう一回、総理大臣の監督官庁である科学技術庁に対してのいろんな見解、それからいまの事実上に対しての問題——居直り発言なんか、とんでもない。全力をあげてやっているなんて、とんでもない。やってないじゃないですか。総理、もう一回最後の締めくくりの答弁、お願いします。
  235. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 原子力発電の過程において起こる放射能の汚染の問題その他新しい技術開発の過程において思わざる、いままでの経験上判断できがたいような新しい問題が起こってくることは事実でございますから、こういうものが起こり得る事態を予測して、起こった場合の処置、行政権に対する報告、また、それが事後措置等に対して可能な限り行政的に指導もし、制度も確立をするように努力をしていかなきゃならぬことは言うをまちません。  いま御指摘になったような問題は、これはもう端的にその間の事情をあらわすものでございますが、高度の化学工業の中では、どうも専門的な技術屋を全部が全部制度の中で採用していくということはなかなかむずかしいのでございまして、そういう意味で、まあ原子力発電所なんかの問題でも、下請を使う、又下請を使うという——まあ孫請ということがあります。そういう意味で今日の問題が起こっておるわけですが、これは別な意味で、化学工場などでもって爆発事故なんか起こって、こういう重要なところを会社が、どういう責任か、だれがその管理しておったのかわからぬのかと言うと、実際調べて見るとわからないのと同じ問題なんです。下請下請でもって、会社の名前でもってやっておっても、全然会社以外の人が中枢部をやっているわけですから、こんなことで新しい化学工場が全部爆破されたらどうするんだと、これでやっと、いろいろな石油化学の爆発事故を契機にして、全部直用制度に切りかえつつあります。そうしないと全然会社が責任を負えないような、専門的な下請、そのまた下請、また下請に出しているんですから、帽子もかぶり服も着ており、会社の人だと思っておっても、全然会社とは関係のない人が重要部分をやっているわけです。ですから爆発事故を起こすというわけじゃありませんが、ほんとうに会社に聞いてもわからない。これは事実の立証はわからぬことがあるかと聞いてみると、その下その下という、三段も五段も先があるんで、そんな、どこの人かわからない、身分もわからないような人たちに新化学工場の心臓をまかしておる。そんなもの釘一本入れれば爆発するにきまっているじゃないかと、こういうことを言って、まあそれは言われればそのとおりであると。政府もそこまでこまかく言っておるんで、まあこの強大な日本の経済の中にも盲点はあるなあと、しみじみと思っているわけですよ。ほんとうですよ。ですから、これはもう生命に関する問題、又請又請でまかしていけるところじゃないじゃないかということで、それは少し金がかかっても全部会社が直用するということで直営系統に切りかえています。ですから、そういうことで化学工場の爆発もなくなったわけですし、爆発に対しては会社は直ちに手を打てるようになる。これは当然のことだと思う、これは心臓ですから。  それと同じ意味で、放射能を浴びるというようなものは、これはもう会社の者ならすぐ問題になると思うんです。そうじゃなく、又請又請ですから、結局いまのように診断書か明確に出るまではこれは非常にむずかしいもので、ですから、病院などでもコバルトなど入れたら、コバルトとかそういうものの危険なものに対する従事員は、少なくとも病院の職員でなけりゃいかぬ、大学の職員でなけりゃいかぬ、それが次ぎ次ぎ又請ですから、実際会社、学校でも病院の人でもない人が来てやっているから、ほんとうにいまその診断書が出てくるまではつかみようがない。ですから、まあそれは科学技術庁長官に下請の下請のまた下請までおまえ知っておらぬからけしからぬと、こう言われても、なかなかむずかしい問題です。ですから、そういう問題に対しては事故が起こったら直ちに報告をしなさい、これに対して処置をしなさいというような、やっぱり制度上の問題は完備していかなきゃならぬと思います。だから、私もそういうことは十分理解できますし、まあ、いまあなたは診断書を持ってこうやられたですから、まあよくわかりますけれども、やっぱり科学技術庁でも原子力開発をやっておる主管者も、出てこなければ、なかなか——東海村でもって穴があいて全身にかぶったというのはすぐわかりますけれども、普通なら起こり得べからざるような状態が起こって、そういう診断書になっている。ですから、そういう問題は、これを契機に、そういう問題が起こらないように、起こった場合にはちゃんと上までさっと電光石火上げてきて指示ができるようにしたい。そうじゃないと、何もかもみんな政府が悪いんだと、こう言われることになりますし、原子力発電を進めることにも支障になりますから、そういう意味で、まあ人命尊重は大前提でありますが、そういう新しい問題に対しては未知の世界がたくさんありますから、より万全の体制をとる。われわれひとつ、科学技術庁だけではなく、いろいろな研究所その他に対しても十分なる配慮をいたすようにいたしたいと思います。
  236. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理の発言は反省しているんだか弁解しているんだか、ちょっとわからない。
  237. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 反省たって、わからないじゃないですか、そんなことは。
  238. 黒柳明

    ○黒柳明君 何ですか。反省たってわかんないですか。反省しなきゃならない問題じゃないですか、それは。不謹慎ですよ、総理。反省たってわかんないじゃないですかって、反省しなきゃなんない問題じゃないですか。
  239. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 黒柳さん、何でも反省しますということだけで済む問題じゃありません。いま提示をされただけでは、又請の又請の又請まで……
  240. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは政府の問題ですよ。
  241. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、それはすべてが政府の問題じゃありません。
  242. 黒柳明

    ○黒柳明君 おかしいですよ。
  243. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 放射能に対して万全の措置を講じなさいということは、これからとにかく整備が万全でなければ将来起こり得る問題に対して整備を万全にいたしますと、未知の問題が起こってくるものに対してどこまででも政府の責任だと断定されたら、普通なら起こり得べからざるものであるというのが実際起こっていますから、これは事情は十分調査をいたしますと、それでどこに手違いがあったのだということをただしますと、今度そういうことのないようにちゃんといたしますということで、それ以外にないじゃありませんか。ただあやまれば何でも行政機構は済むと思ったら——それはああ済みません済みませんで済む、そんなことじゃありませんよ、それは。あなた私のところに立ってごらんなさいよ。それはこれだけの広範な……
  244. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃ、こっちに来なさい。こっちに来なさい。ぼくすわりましょう。こっちに来なさい。
  245. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そう簡単にかわれませんよ、それは。(笑声)
  246. 黒柳明

    ○黒柳明君 何言ってんだ。総理の発言は、みずからの責任をこっちに押しつけるような発言ですよ。いまは、半年間の原発のこういう姿勢、どう思うかと、こう言っている。何かごちゃごちゃ、下請だ下請だ下請だ、そんなことばかり言っているじゃないですか。ほんとうに反省の色、あるんですか。
  247. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 事情をよく調べて万遺憾のないように将来いたしますと、こう言っているじゃありませんか。それ以外にないじゃないですか。それは半年間どういう経緯をとっていたか、まだ何も知らない。あんた知っているからそんなこと言いますけれども、私いまこれ初めて聞いたんですよ。
  248. 黒柳明

    ○黒柳明君 知らない責任をどう取るかって言ったんじゃないですか。
  249. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 何でもかんでも知れと言ったって無理です、それは。(黒柳明君「おかしいじゃないですか」と述ぶ)(国務大臣田中角榮君「何言ってんだ」と述ぶ)(黒柳明君「何言ってんだとは何だ、おかしいじゃないか」と述ぶ)
  250. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ちょっとお待ちください。  発言者に求めます。黒柳君……(黒柳明君「おかしいですよ、このいまの総理の発言は」と述ぶ)  速記をとめて。   〔速記中止〕
  251. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 速記をつけて。
  252. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 原子力の発電問題に対しては、人命に損傷を起こすような重大な問題が起こり得る危険性は十分承知をいたしております。これが、制度上、または内閣の行政指導に対しても、まだ完備をしておらない不完全な面が御指摘のとおりあるわけでございますから、十分国民の生命財産の安全性を守るべく最善の努力をいたしたいと存じます。  御提示の問題につきましては、半年間の経緯に対して政府が実情をつかみ得なかったマイナス点は十分理解をいたしておりますので、これが経緯を十分取り調べて御報告をいたしたいと存じます。  なお、将来かかることのないように、制度上欠陥があればこれを正し、政府の万全の施策が末端まで徹底するように努力をいたしたいと存じます。  不規則発言に対しては、これは不規則発言がございましたので申し上げたわけでございますが、これは意思があって申し上げたわけでなく、全く不規則発言でございますので、友情に免じて御了承を賜わりたいと思います。(笑声)
  253. 黒柳明

    ○黒柳明君 友情に免じてつだってね、私は——何かおかしなふうに聞こえるじゃないですか。友情なんかありゃしません、そんなあなた。(笑声)  まあいいです。いろんな質疑の次の方もある。時間がたっちゃう。——いまの時間、とめておいてくださいよ、この変な時間は。いいですか。
  254. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) いや、やってありません。
  255. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃ委員長、提案します。いまの問題は、実はもっと深刻なんです。某党の某議員、この押えにかかったといういろんな情報があるんです。ですから、いま調査する、けっこうです。調査してすみやかに、そしてその医師の診断をつけて、全面的な全貌というものをこの委員会に報告してください。そしてまた、それに対して私はさらに質問しましょう。その質問保留と、全面的な報告をすみやかにやるように要請してください。
  256. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) この際、委員長から科学技術庁長官に、ただいまの黒柳発言につきまして十分なる解明をお願いをいたします。あらためて次回でけっこうでございます。
  257. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 先ほど総理からもお話がありましたとおり、また私からその前にお話をいたしましたとおり、こういう事態が科学技術庁のほうに通報されないでおるというようなことは再び起こらないように善処をし、また今回の問題につきましては、放射能の専門医……
  258. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくてさ、すみやかに結果をここに報告するということを……。
  259. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 経緯を調査いたしまして、すみやかに……(黒柳明君「ちょっと大臣たるんでるぞ」と述ぶ)とりあえずの調査をいたします。
  260. 黒柳明

    ○黒柳明君 もうどこに質問が行くかわかりませんよ。ひとつ大臣、目をあけてぱっちりしていてくださいよ。何かもう私、そんなものでおこりたくないんです、もうきょうは非常にいい雰囲気でやろうなと思って——とんでもないじゃないですか、これ。ね、しっかりしてくださいよ、大臣。  次、時間がなくなっちゃう、金融問題についてあれします。なかんずく輸銀、開銀について衆議院の大問題になりました。その問題について、私、時間の許す限り触れていきたいと思います。  まず第一、大蔵大臣、市中銀行——まあ公取の発言もありました。系列化、支配化、非常にうまくないと。まあいろいろあります。今日も問題になっています、融資の問題。そういう問題を踏まえて、どうなんでしょうか、市中銀行から役員として各企業に、こう、どんどんどんどん出向していく、こういう姿は原則として私は好ましくないんじゃなかろうかと、こう思うんですが、一般論でけっこうですが、いかがですか。
  261. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 金融機関の役員は、これは兼業をするというか、他の企業の役職を兼ねる、こういうことにつきましては金融法上規制を受けているわけであります。大蔵省では、法律によりましてその規制を厳重に実行しておる。たとえば、銀行が他の企業の役員を兼ねる、こういうものは地方銀行でたしか二件ぐらいありましたが、これは承認、許可を与えております。  それから、出向者の場合につきましては、これは相手から出向を求める場合が非常に多いのであります。たとえば開発銀行、これは非常に開発銀行融資を通じまして金融全般についての知識を持っておる。そういう知識を活用いたしたい、こういうような趣旨から出向を求められることが相当あるわけであります。そういうことから、出向という事例はかなりあります。  それからもう一つの事例は、いわゆる天下りでございます。天下りにつきましても、開発銀行等の知識を吸収したいというようなことから、これを求められることが非常に多い。それは開発銀行の融資先ばかりじゃないんです。融資を受けない、全然関係のないところから、開発銀行というところはなかなか優秀な職員がある、それを使用したいと、こういうようなことで就職を求められることがある。そういうものには応じておるし、また融資先でその出向を求めるというようなことがありまするけれども、これは、あるいは債権を開発銀行として管理をしなければならぬと、こういう立場をとることがあるのです。  そういうたてまえから出向というようなことを認める事例がありますが、いずれにいたしましても、かなり大蔵省といたしましては、この出向だ兼職だ、あるいは天下りだということにつきましては、慎重に規制をいたしておると、かように御了承願います。
  262. 黒柳明

    ○黒柳明君 私の調べによりますと、いまの、ちょっと大蔵大臣のと私のと場合が若干違うんです。兼任の役職とか、そういうことじゃなくして、三菱銀行から七十八人、第一勧銀から七十五人、富士銀行六十一名、住友は五十七名、三井が三十三名、まあこの五社だけで三百四名、一応こんな量にのぼっています。もしそちら、あるんならば、資料があって訂正していただくなら、していただきたい。これがますます多くなるとやっぱり企業の系列化というものが進むんじゃないんでしょうか。こういう観点から一般論としてやっぱり望ましくないんじゃなかろうかと私は思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  263. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私の手元には開発銀行だけがありますが、開発銀行は民間企業へ七十八名転出しております。うち取引先は四十七名、そういうことになります。それから出向ですか。
  264. 黒柳明

    ○黒柳明君 市中銀行、都市銀行。
  265. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 市中銀行は……。それじゃ政府委員から。
  266. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 先ほど大臣がお答えいたしましたのは、銀行の役員が出向する場合の例でございます。で、法律の規定では、銀行の職員が一般に出向くということについては規定がございません。ただ、法律の精神にかんがみまして——法律の精神と申しますのは、金融機関の役員はその専念義務があると、同時に、できるだけ中立的な形でやるべきであるというのが理念かと思いますが、ただ、現在のところ、職員が出ておりますのは、大体一社一、二名ずつでございますが、それがあまりにも多くなるようでございますれば、これはもともと銀行が良識をもって判断すべきことではございませんが、できるだけ避くべきことではなかろうかと、かように考えております。
  267. 黒柳明

    ○黒柳明君 大蔵大臣、それでけっこうです。銀行の中立性から、やっぱり各企業一、二名だったって全体になると三百も四百もある。これは野放し、法律の規制ありませんからね。千にも二千にも一万にもと極端な例ができたらこれはどうしようもないわけですよ。銀行員は全部各民間企業に入るなんということになる可能性だって、いま歯どめがありませんから。そういうものについてはやっぱり好ましくないと、こういう観点ですがね、局長答弁でいいんですけれども、もう一回、この観点からひとつ大蔵大臣。
  268. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 出向以外につきましては、これは非常に厳重に調査もし、また規制もいたしております。それから出向につきましては、先ほど申し上げましたような事情で出向を求められる場合がある。また、銀行としての債権管理上、人を派遣すると、こういう場合もあるんです。だから、ある程度はやむを得ないと思いますが、これは度を越すことのないように注意してまいりたいと、かように存じます。
  269. 黒柳明

    ○黒柳明君 一般的にやっぱりその傾向はうまくない。まして政府関係の開銀から民間企業に行くのは、やっぱりそれもうまくないんじゃないですか、なおさら。どうですか、なおさら一般論としてはうまくないんじゃないですか。
  270. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府関係でありますれば、これはなおさら注意しなけりゃならぬことであると、かように考えます。
  271. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこで、開銀から民間企業に対する役員の進出の状況、どこですか、事務当局でけっこうですけれども。
  272. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 三十年度以降の計数で申し上げますと、総数九十四名でございます。うち民間企業七十八名と、かようになっております。
  273. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、氏名、開銀の役職、行った民間企業、そのときの役職。
  274. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 九十四名、それとも最近のことにいたしますか。九十四名でございますと、後ほど資料で提出さしていただこうかと思います。
  275. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、だからその九十四名のだれがどういう開銀の役職のとき、どういう会社にどういう役職で行ったのか。
  276. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 手元の資料で精緻にお答えすることはむずかしいかと存じますが、業種名について述べることでお許しいただきたいと思いますが、運輸業が十九名、サービス業十三名、金融業十名、化学八名、不動産賃貸八名、卸売り業、これは日本銀行の大分類による卸売り業でありますが、三名、石油精製三名、電力二名、金属二名、機械二名、電算機賃貸二名、非鉄金属二名、証券一名、石炭一名、ガス一名、保険一名、以上七十八名になっております。
  277. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから私言っているのは、だれが、どういう開銀の役職の人がどういう民間企業に、それでどういう役職になったのかと。
  278. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) それでは、大体理事または監事の方々の場合と、あるいは部長クラスあるいは次長というのがございます。大体役員は監事、理事でございますが、いま申し上げましたような業種の中にそれぞれ入っております。これを全部七十八名について……
  279. 黒柳明

    ○黒柳明君 石油関係だけでけっこうです。名前と開銀の役職、どこ。
  280. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 石油関係でございますと、ごく最近、現在行っているとおぼしき者を申し上げますと……
  281. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、全部だ、そんなにないでしょう、石油関係は。四、五名しかないじゃないですか。
  282. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 共同石油が二名、アラビア石油一名、九州石油一名、鹿島石油一名ということになっております。監事、理事、それから検査部長あるいは支店長といったところでございます。
  283. 黒柳明

    ○黒柳明君 さっきから言っている。だれがどういう役職のとき、どこの会社にどういう役職で行ったかという……。
  284. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) それでは申し上げます。  共同石油は高野子氏が理事でございましたが、常務で行っております。それから同じく四十三年には石渡監事が監査役で行っております。それからアラビア石油には菅野理事が行っております。九州石油には森検査部長が行っております。それから鹿島石油には尾崎高松支店長が行っております。
  285. 黒柳明

    ○黒柳明君 そのときの出向前と出向後の融資額。
  286. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 現在手元にその出向前の融資額ということをわかっておりません。現在の融資額しかわかっておりません。
  287. 黒柳明

    ○黒柳明君 現在のでもけっこうです。
  288. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 共同石油は四十八年九月末残高三百十九億、九州石油は六十一億、鹿島石油は同じく百六十四億、以上でございます。
  289. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう一つある、アラビア石油
  290. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 現在、融資ございません。
  291. 黒柳明

    ○黒柳明君 融資額なし、アラビア石油はないですか。
  292. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) はい。
  293. 黒柳明

    ○黒柳明君 私、いまの七十四名全部、人名、役職、こうありますよ。それから融資額。それで何が問題になるかというと、やはり天下ること、市中銀行だって問題がある。まして政府機関の銀行から企業に行くについては注意しなければならない。ある面では問題もあり得る。ところが、ここに全部一覧があります。この人が行ってから全部融資、七百十一億、この下のほうは倍以上になるんです。いわゆる天下り、全部で二千四百十二億六千九百万、こういうものが出向する前、いわゆる天下り、癒着する前は全然融資がないんです。その後に融資が全部つくんです。しかも、それが倍以上に全部融資がつくんです。こういうあり方というのは、私は、いろいろ個々には問題があると思いますよ。実情はあるかと思います。しかし、七十四名が全部、出向前ゼロだったのが出向後には一躍何十億ってつく。億の単位がつく。いま言った下のほうのこれは倍以上になる。こういう融資のしかたについては、個々には、私は何回も言うように、妥当性と不妥当性があるかと思いますよ。だけど、出向自体、天下り自体に問題があるわけですよ。あるといえば慎重を期さなきゃなんないんですよ。ところが、二千四百十二億六千九百万、こういう開銀の融資に対して、七十四名に対してすべて出向前がゼロだったのが、一躍、出向になってから、要するに持参金つきですよ。さらに、出向前は少なかったのが出向してから、もう一番多いのは六十五倍ですよ。日本電子計算機。こういうことについては、私はこれはこの際一つ一つやっぱり吟味してかからなきゃならない。どうですか、大蔵大臣。
  294. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 黒柳さん御指摘の点は、これはもう注意しなけりゃならぬ問題だと、こういうふうに思います。つまり、開発銀行の役職員が企業に出て行ったと、そのとき何か裏で約束をして、これがこういう地位につけば幾ら出しましょうなんというようなことがあったら、これはたいへんなことであります。いやしくも開発銀行は、これは政府関係機関でございまするから、そういうことがあってはならない。あってはならない。しかし、御指摘でございますので、そういうことをなおチェックしなけりゃならぬ。チェックする方法については考えてみたいと、さように考えます。
  295. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは、やっぱり衆議院でも問題になりましたね。政府融資の中の大きな問題ですから、だからチェックしてすみやかに報告してください、当委員会に。それで、私はまたそのときにいろんな個々の妥当性、不妥当性というものを質疑して指摘したいと思うんです。委員長、要求してください。
  296. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは資料を整えまして御報告申し上げます。
  297. 黒柳明

    ○黒柳明君 ここで大蔵大臣、ちょっと違いますが、やっぱり開銀の融資の問題ですけれどもね。貸し付け目的、これについて、その目的の中に「一般の金融機関が行なう金融等を補完し、又は奨励する」と、こういう目的ですね。これにホテルやビルが補完奨励する必要があるかどうかという疑問を私は持つのですが、いかがでしょうか。
  298. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 地方開発というようなたてまえからホテルを地方開発上建てたいと、こういうような要請がずいぶんあったんです。そういうようなことから地方のホテルへ開発銀行が貸したというような事例はあります。それから市街地というか、都会におきましては市街地整備というような関係でビルに対しまして金を出すと、こういうようなこともあったわけであります。そういう事例は、私も大蔵大臣になる前からちょいちょい聞かされております。ただ、いまとにかく総需要抑制と、こういう大政策が推進されておる最中でございますから、こういう際におきましては、さようなものにつきまして、これは厳重な抑制方針をもって臨んでおります。
  299. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ、三井不動産が四十五億、住友不動産が四十億、あの新宿のにょきにょきビルですね。副都心でああいう高層ビルを建てることが悪いということじゃないと思うんですよ。だけど、霞カ関の場合には開銀の融資はないわけですね、四十階の三井不動産の場合には。ですから、総需要の抑制の面から、しかもやっぱり、それから東急不動産が十七億、これは東急プラザホテルですね、赤坂の。オータニ、これは二十三億、いま四十階建てのオータニタワーというものを建てていますね。こういう融資というものは、オリンピックのときからこのホテル関係は始まったんだと思うのですけれども、いまはやっぱりこんなものは引き揚げること、今後は中止することも含めてやっぱり検討しなければこの開銀の融資の目的にははずれると、こう思うのですが、いかがでしょう。
  300. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) とにかく今日は、これは総需要抑制政策でありますからね。これはビルでありますとか、あるいはホテルでありますとか、そういうものにつきましては、これは厳重に管理、抑制いたします。
  301. 黒柳明

    ○黒柳明君 また、若干問題を変えましょう。  大蔵大臣、先日衆議院の反社会的行為、これに対してルールづくりをやっていると、その後どうなりましたか、御報告いただきたい。
  302. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいまルールづくりをやっている最中であります。もうおっつけ結論が出ると、こういう段階でございますが、まあそれが出ない間といえども、これは手をこまねいておるわけじゃありません。大蔵省独自の判断といたしまして、これは問題がありそうだという企業に対する輸銀融資、開銀融資につきましては、これを留保しておると、そういう措置をとっております。
  303. 黒柳明

    ○黒柳明君 いま問題がある企業で留保している社はどのぐらいありますか、開銀、輸銀。
  304. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 開銀が三件でございます。それから輸銀が二件あります。
  305. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは開銀には共同石油も入っているわけでしょうね。あと四社、どこでしょう。
  306. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 開銀のほうは、全部これは石油関係であります。輸銀は商社でございます。
  307. 黒柳明

    ○黒柳明君 個々名はだめですか。
  308. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 個々名は、まだ留保しているという段階でありまして、まだ反社会的企業というようならく印は押しているわけじゃございませんものですから、これはごかんべん願います。
  309. 黒柳明

    ○黒柳明君 反社会的企業ということについてやっぱりルールづくりが必要でしょうね。反社会的企業かどうかのルールづくり、それが出てから、輸銀、開銀をどうするかというルールづくり、こういう二つになるのですか、どうでしょう。
  310. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま留保しているというのは、これは臨時措置です。いずれ近いうちにルールが関係各省との間にできます。そういう際には、ルールに従いまして融資をする、あるいは融資を抑制する、こういうふうにいたしたいと考えております。
  311. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理大臣も、これは断固としてやるというお考えでしょうか。
  312. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはもうなすべきであります。
  313. 黒柳明

    ○黒柳明君 農林大臣、衆議院で取り上げられた問題、反社会的行為があった企業、言ってください。
  314. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 反社会的行為というのは、いろいろ考えられると思いますが、そういう業界、問題になりそうなところには、私ども個別に呼んでいろいろ注意をいたしております。
  315. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、いま言ったのは、反社会的行動をした企業、もう衆議院でやった問題ですから、どういう会社か、どういう企業か、これを言ってください。
  316. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農林関係について、特別にこの事案というので取り上げられたものはないようであります。
  317. 黒柳明

    ○黒柳明君 日商岩井。
  318. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 昨年でありますか、モチ米をいわゆる買い占めたという事案はございました。これはもう厳重にそういうことのないように、ことにモチ米などはそういうことのできないようにもいたしております。
  319. 黒柳明

    ○黒柳明君 日商岩井の木材は。
  320. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 日商岩井であります。
  321. 黒柳明

    ○黒柳明君 木材、上のせしたじゃありませんか、トン当たり百五十ドル。
  322. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) それは、もちろん私どものほうで事情を調査いたしております。まだその結論は出てまいりませんけれども、十分林野庁において調査をいたしております。
  323. 黒柳明

    ○黒柳明君 大蔵大臣、反社会的行為をしたという断定はどこがしますか。
  324. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま、そのルールをきめようという段階でありますから、主としてこれは主務官庁、通産物資につきましては通産省の意見が尊重される、また、農林物資につきましては農林省の意見が尊重される、さように考えております。
  325. 黒柳明

    ○黒柳明君 通産大臣、そのルールづくり、説明してください。
  326. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは私があの事件が起きてから考えて事務当局に検討を命じている方法でございますが、反社会的行為というものは、衆議院でもあのころ論争になりましたように、通常利益以上の便乗利益をむさぼったとか、あるいは脱税行為、あるいはそれにまぎらわしき行為をしたとか、そういうようなものをさすんだろうと思います。それから、それに対する処罰、応報措置としましては、私か命じて研究させているというのは、輸銀の場合は、これは外国との契約をやっておるわけですから、その下に相当なプラントメーカーが中小企業で日本の場合くっついているわけです。商社の場合は、その窓口というような使命を果しておりまして、その商社の名前のもとに大ぜいの中小企業その他がメーカーとしてくっついているわけでありまして、これをぶった切るということは、中小企業の下請メーカーにかなり影響が出てくる。それからもう一つは、相手の国に対して不信を買う、そういうことがあるから輸銀の場合は国益を守るという意味において慎重にやらなければならぬ。この場合は契約は認めてやろうと、ただし、一たん契約が成立してスタートしたあとにおいて輸銀の負担する部分と民間銀行の負担する部分を、変えられれば、民間銀行をふやしていって輸銀の分を減らしていくと、こういうふうにして応報措置をやったらどうかと、これは国益を擁護するという面と、下請中小企業の関係を考えてやらぬといかぬ。それから国内的の場合には、これは開銀にしましても、あるいは沖繩公庫にしましても、北海道東北公庫にいたしましても、これらはストップ、削減、停止、そういうことは、情状によってやってもいいんではないかと、そういうふうに二つに分けて考えたらどうかということをいま検討を命じておるわけであります。
  327. 黒柳明

    ○黒柳明君 公取委員長、やみ価格協定を四回も五回もやって、言うことを聞かなかった企業がありますね。これは支社会的行為でしょうか。公取を無視してやったわけですからね。
  328. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 私の知る限りにおいて、三回、四回というのは一つ業界にとどまらない、実はほかにもあるわけです。ですから、それらは独禁法軽視というか、それ以外に自己の利益だけを追求して他の迷惑を顧みないと、そういうあり方をやっぱり十分考慮に入れて反社会的であると。私のほうの立場から申せば、もちろん、数多くひんぴんと繰り返したものは反社会的な企業であると、こう考えざるを得ませんが、総合的には、それらの反省のあり方等も十分見た上で、反社会的な企業であるときめつけるものだと思います。
  329. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、反社会的企業であると、大体。そうすると大蔵大臣、これは輸銀、開銀の融資を中止ないしはペンディングする要素、土俵の中に入りますね、反社会的企業の中に。
  330. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) その辺が非常に問題なんです。公取委員長は公取委員長で、その立場がありますからね。まあ公取が注意を喚起したというような段階からすでに反社会的企業だというような考え方を持つかもしれませんけれども、これは企業の信用にも関する問題なんです。また同時に、通産大臣から話もありましたが、これは国策的見地ということも考えなきゃならぬ問題であると、総合的にいろいろ考えなきゃならぬ問題がありまして、たとえば反社会的企業であり、反社会的行為であるというその基準を一体どこに置くか、あるいは独禁法違反について言いますれば、告発があった段階に置くのか、あるいは起訴があった段階に置くのか、まあ起訴の先、またこれ裁判になりまして判決があった段階——そんなことは考えておりませんけれども、少なくとも、告発か起訴かと、こういうようなことはよほど慎重に考えなきゃならぬ問題であると、こういうふうに考えまするし、さて、その違反が去年の五月に行なわれたんだというようなことまで含めるのか、あるいはこの石油混乱という時期以降の行為をとらえて言うのかとか、いろいろそういう問題があるんです。それでありますものですから、ルールづくりというものがそう簡単にいかないので手間どっておったと、こういうことでございます。その辺を慎重にいま検討中でございます。
  331. 黒柳明

    ○黒柳明君 農林大臣、日商岩井、いま調べていると言いましたね、何を調べているんですか。
  332. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど二つのことを申し上げました。  一つは、モチ米であります。
  333. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、衆議院であったことを前提として……。
  334. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 衆議院のいわゆる集中審議というのを注意して聞いておりましたが、そこでは出ておりませんでしたけれども、木材のお話につきましては若干そういうことがありました。そこで、林野庁といたしましては、これに対して厳重な注意をいたしておると、こう申し上げたわけです。
  335. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、反社会的企業であるかどうかと言ったら、それば調べていますと。だから、何を調べているんですか。厳重な注意とかなんとか、それはけっこうですよ、そのとおりですから。
  336. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そういうことであります。
  337. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃない。反社会的企業であるかどうかという、いまルールづくりをやっているわけですね。
  338. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いま、反社会的行為というのにつきましては、大蔵大臣がるる申し上げましたとおりでありますが、そこで、私どもといたしましては、ことに国民食糧でありますモチ米のようなものを買い占めるというふうなことは、実に反社会性のはなはだしいものでありますので、そういうことができないように、本年はもう早目に手当てをいたしてしまいましたと、こういうことを申し上げておるわけでありますが、そういうような行為をいたした者に対しては厳重な警告を出しております。  それから木材等につきましては、まだ行なわれることもございますからして、そういうことについて、それがないように、私どものほうといたしましては取り扱っておる者に注意をいたしておると、こういうことであります。
  339. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、反社会的行動のルールをつくっている、行動の企業かどうか。だから、日商岩井、木材で一トン百五十ドル上のせしたでしょう。辻社長も、うまくなかった、社会還元しますと、この日商岩井を反社会的企業と見るかどうかということなんです。それに対して調べている——じゃ何を調べているか。
  340. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまお話のございましたような件について、私どもの関係しておる物資の取り扱いについて注意をいたし、どのようにすべきかということを研究しておると、こういうことを申したのであります。
  341. 黒柳明

    ○黒柳明君 木材のことは反社会的行為ですか。
  342. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは、いま申し上げましたように、林野庁において十分その経過を調べておりますので、そういうことで私どもといたしましては判断をいたしたいと思っております。
  343. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう辻社長が認めて、社会還元すると言っている。何を調べているんですか、林野庁長官答弁してください。何を調べているのか。林野庁。
  344. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 林野庁長官は、急な話でありますので、いま来ておりませんです。おりませんが、私が報告を受けておりますので、こういうことにつきましては十分調査をいたして……。
  345. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、何を調査するのか。
  346. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまのお話の、いわゆる上のせというのが問題になりました…….
  347. 黒柳明

    ○黒柳明君 社長は問題だと、社会還元すると結論つけているじゃないですか。
  348. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これがどういうような経過でそういうことになっておるかということを十分調べて報告をしなさいと、こう命じておるわけであります。
  349. 黒柳明

    ○黒柳明君 衆議院で、もう辻社長があやまったんですよ。それでも反社会的企業であるかどうかということなんですよ。あと何を調べるんですか。社会還元するというんですよ。反社会的じゃないですか。何をそれ以上調べるんですか。何か基準があるんですか、調べて。
  350. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 大体取り扱いにつきましては、商社は商社なりにいろいろの取引についてやっております。それがまことにいわゆる反社会的なことになるようなことがあるならば、それは厳重にこれから警戒しなければなりませんし、そういうところには、私どもとしてはこれからの発注については十分注意をすると。したがって、どういうものが反社会性であるかということを私どもとしてはいろいろ深く調べております、これにつきまして処置をいたしてまいりたいと、こう思っております。
  351. 黒柳明

    ○黒柳明君 あれだけのことをやったって反社会的と断定できないんですか。反社会的行為ということをさらに調べる余地があるんですか。
  352. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私どもは反社会的な行為だと思っております。
  353. 黒柳明

    ○黒柳明君 思っているんでしょう。
  354. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そうです。
  355. 黒柳明

    ○黒柳明君 それを早く言わなきゃ……。
  356. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そこで、事実関係をよく調べた上で、やはりこちらかしかるべき——しかるべきということばは適当であるかどうかわかりませんが、厳重なる警告を発するためには、経過を十分調べた上でということで調べさしております。その結果、私といたしましては厳重に警告いたしますし、いろんなものを取り扱っていただくにも、やはりこちらではそういう前歴を注意  しながらやらなければならぬと、こう思っているわけです。
  357. 黒柳明

    ○黒柳明君 通産大臣の分野で、反社会的行為をした企業、ちょっとあげてください。
  358. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、たとえばゼネラル石油の場合、あるいは伊藤忠の場合……
  359. 黒柳明

    ○黒柳明君 ゼネラル、反社会ですね。伊藤忠も反社会ですね。確認しておかないとだめです。
  360. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) と私は思います。
  361. 黒柳明

    ○黒柳明君 はい、はい、けっこうですよ。通産大臣、これだけですか、もっとあるでしょう。
  362. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま突然質問されましたので、思いついたままを申し上げたわけですが、さらに詳細に、御要望があれば調べて御報告いたします。
  363. 黒柳明

    ○黒柳明君 ルールづくりをやっているんだから事務当局でもいいや、事務当局。通産関係で、反社会的企業だと、まあこれは政治的発言だから大臣の補足発言も必要でしょうけれども、そういう企業を羅列してください、反社会的行為をした企業。まず、その土俵をつくらなきゃ。反社会的企業の土俵をつくっている……。
  364. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま、そのルールをつくっている最中でありますから、いまここで、まだそのルールに該当するという企業をあげるわけにはいかないんです。先ほど申し上げましたように、石油関係で三件、大蔵省では融資を留保しておる。また輸銀関係では二件融資を留保しておる。これはそういう疑いがあるからそういうふうにいたしておる。それからほんとうにこれは政府融資等を抑制しなければならぬ、そういう反社会的企業ということにつきますると、これは会社の信用にも関する、名誉にも関する。そういうことでもありまするし、またその当該融資が国策のどういう部面に関連しておるのかという問題もありますので、ちょっとまだ具体的なケースにつきまして、本日ここで申し上げる段階にはなっておらない、こういうことであります。
  365. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど大蔵大臣は、反社会的行為ときめつけるのは担当大臣だと言ったから、いま農林大臣に聞いているんです。そういうことで聞いている。担当大臣が断定しなきゃ……。そういうことで聞いている。
  366. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それは、その反社会的行為に該当する企業はどこの会社であるかというその判定のいま基準をつくっているんです。基準にのっとって各省が、これはこういう企業は開銀の融資をしてはならぬとか、輸銀の融資はこうしなければならぬとか、こういうことになりますので、まだ具体的にこの企業をどういうふうに格づけするかという段階まで来ておらぬと、こういうことであります。
  367. 黒柳明

    ○黒柳明君 来ておらぬと言ったって、いま中曽根通産大臣、伊藤忠とゼネラル石油の名前あげましたよ。中曽根通産大臣、あげましたよ、二つ、反社会的だ。公取委員長もあげましたよ、原則として反社会的行為をやったって、あげましたよ、いま。通産大臣、もうありませんか、いま、だから事務当局と、こういうふうに言ったんです。
  368. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 反社会性ということを行政的にどういうふうにとらえるかという限界がなかなかむずかしいようであります。それで国会側でいろいろ御指摘を受けた諸企業がございます。独占禁止法違反容疑、それがたび重なった場合、また悪質であると思われるケース、そうでないケース、いろいろございます。あるいはもっと下の段階になりますと、便乗値上げをやったと予想されるケース、あるいはもっと悪質な脱税であるとか、あるいは買い占めであるとか、ともかくいろんなケースがございます。そういうような中で、私が名前をあげました二つは、私が警告書を渡したり、あるいは呼び出して責任をとらしたりしたことで、これはもう反社会性と断定していいと、そう思いまして申し上げたのであります。それ以下のボーダーラインにつきましては、これはやはり各省でそごのないように基準をきめる必要があると、そういうように考えております。
  369. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、通産大臣の所管で三菱商事、民生用灯油を工業用として売った。これは反社会的じゃないですか。
  370. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうようないろんなケースはございます。先ほど申し上げた便乗値上げであるとか、買い占めであるとか、そういうようなものについて、これは農林省、通産省あるいは厚生省おのおの一つの水準でやらないと不公平が生ずる、こういうわけで、いま各省間でルールづくりをやっている最中でございます。
  371. 黒柳明

    ○黒柳明君 建設省、関係ありますか。
  372. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 建設省関係につきましては、おそらく住宅金融公庫の融資先というような点においてではなかろうかと思うわけであります。そのほかにつきましては反社会的行為と、建設行政関係において、私の知る限りにおいてはそういう事態はないように私は記憶いたしております。
  373. 黒柳明

    ○黒柳明君 通産大臣、大昭和は反社会的じゃないですか、便乗値上げした。
  374. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大昭和につきましてはいろいろ論議がありまして、問題点もあると思います。これらはやはり相当な関心を持ってわれわれは措置しなければならぬケースではないかと思います。
  375. 黒柳明

    ○黒柳明君 反社会的であるかどうか。
  376. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ基準がやっぱり安定したわけじゃございませんから、ここで申し上げる段階ではないと思います。
  377. 黒柳明

    ○黒柳明君 日本石油はどうですか。
  378. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まあ、この場合は独禁法違反の疑いとか、そのほかの問題があると思います。いまいろいろ具体的に御指摘をいただきましたけれども、ともかくどの水準で、どの喫水線でやるかと、それで通産省、農林省、大蔵省、みんな公平な措置ができるかと、そういうことでいまルールづくりをやっている最中でございますので、いまここで御答弁申し上げることは御猶予願いたいと思います。
  379. 黒柳明

    ○黒柳明君 公取委員長、もう一回お尋ねしますけれども、やみ価格協定の破棄、何回勧告しても聞かなかった、これは先ほど原則としてはもう反社会的行為であると——宇部興産、旭化成工業、チッソ、電気化学工業、日本化薬、主薬油化、徳山曹達、日産化学工業、日本セメント、三菱鉱業昭和油化、日本油脂、本州製紙、これは反社会的企業であると、こういうことでよろしいわけですね、先ほどの答弁あったわけですけれども。
  380. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 私は先ほどの答弁においても、独禁法違反を何回か犯したと、それだけで反社会的だというふうに、他の一般の政府機関の融資をとめるとか、そういうことの判断にすべきかどうかについては断定的には申しておりません。ただ、公取の立場から申せば、そういう企業がまああり方としてあまり反省の色がない、そうして企業が利潤を追求するのは私は当然だと思うのです。企業は利潤を追求するものなんです。ただ、そのやり方が法令をいろいろ無視して、あるいは脱税しても、それからまた、さらにもっと手の込んだ、穏やかでない方法で利潤を追求すると、他を顧みないと、一般的に申せばそのようなことになるのではないかということを申し上げたわけです。ですから、その辺につきましては各省でいまそれぞれルールをつくっておられるということでありますので、私どもも独禁法違反を何回か繰り返せば直ちに反社会的企業であると、こういうふうに断定することについては、ややちゅうちょするものであります。その点は不明確かもしれませんけれども、そのやり方、ただ反則の回数だけでなくて、それは非常に悪質であると一いうことになれば、いま私が申し上げたような単なる利潤追求にしても度が過ぎると、反社会的であると、こういうふうになるのではないかと思います。  なお、ちょっと黒柳さん、申しわけないんですけれども、先ほどの私どもが変な会合に列席したことについて、簡単に釈明さしていただいてよろしゅうございましょうか。
  381. 黒柳明

    ○黒柳明君 またあとで報告を聞きますから、ほかの問題のほうがあったでしょう。(笑声)釈明は釈明ですから。(笑声)  大蔵大臣、脱税関係です。三井、三菱、住友トーメン、丸紅、これは反社会的行為ですか。
  382. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一口に脱税と言いましてもいろいろ内容が違うんです。それで、たとえばある申告をした、それが国税庁と意見が違いまして、そして追徴を受ける、こういうような場合がある。それからさらにそれが少し脱税の意図、いわゆる脱税の意図を持って計画的にやられたというようなケースになりますと追徴金をそれに賦課すると、こういうようなケースがあります。それからさらにこれがひどいものになりますると、これは告発し、そして刑事問題化する、こういう問題があるわけです。大体三つあるんですが、まあ大企業なんかは大体経理が非常に近代化されまして、たいした問題というものは起こさないケースが多いのでございますが、間々見解の相違というので追徴、そういう処分を受けることがずいぶんあります。それから多少異例なケースに属しまするけれども、追徴金を課すると、こういうようなケースもあるわけであります。まあ告発あるいは起訴というようなケースは最近はほとんどないくらいな状態になっております。
  383. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、結論としては、反社会的行動をした企業と見ますか、見ませんかということ。
  384. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これが告発を受けるような事態になれば、これはもう私は反社会的な行為をした企業であると、こういうふうに断ぜざるを得ないと、こういうふうに思います。  それから追徴金を課せられるという第二のグループ、これになりますると、手口等が非常に悪質なものだかどうかというような関係がありまして、一がいにこれをもって反社会的な行為であったと、あるいは反社会的な企業であったという認定をいたして、それに従いまして政府関係機関の融資をどうこうするというのは非常に困難なことじゃないか、まあその情状によろうかと、こういうふうに思います。
  385. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理大臣、いまお聞きのとおりです。大体網羅しました、三十九社。こうなると、あれだけ衆議院で問題化して、マスコミがたいへんだたいへんだといって、反社会的行為は共同石油とゼネラル石油の二つ、こうなっちゃうんですか。どうなんですか総理大臣、ひとつ見解を。
  386. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 企業の社会性が強調されなければならないことは当然でございまして、反社会性を帯びたような行為を排除すべく努力をしなければならぬこと、また当然でございます。まあ、反社会的な行為があったものに対して政府関係金融機関等から融資をしないということも一つの制裁の道でございます。制裁は基準がなくして制裁をしたらこれはもう権力乱用になります。また、国民の受け得べき権利の拘束にもなりますから、こういうものに対しては国民の生活を守る、社会性を守っていくということを優先せしめての一つの制裁であり、科罰でありますから、そういう意味でやっぱりルールをつくらなければならぬということは当然だと思うんです。ルールづくりにいま専念をしておるということであります。国会で指摘を受けたからそれが全部反社会的な企業であると認定することは、それは非常に無理がございます。そして、しかも制裁を受けるような基準に合致をするかどうかということを、いま制裁する基準ができておらぬわけでありますから、これは認定することも非常に無理がございます。まあ常識的に述べますと、何万種類も扱っておる商社が一種類とにかく反社会的だと思われる行為を行なったと、しかし、制度や企業の構成上から考えて、社長や管理者がこれの謀議に参画するような状態にはなかったと、これは全くあらわれた現象に対して遺憾の意を表する。遺憾の意を表したから直ちに反社会的なものだといったら、これはもうほとんどなると思うんです、これは。ですから、そういうもので基準が必要であると、こういうわけです。とにかく家族が多くなれば、家族の中で一人ぐらい悪いことをする者もあります。そうすると、その家族はみんな犯人かと、こういうことはもうこれは危険な思想でございまして、やはり会社ぐるみでやったというようなこと、これは反社会的企業ですよ、これは。ですから、そういう意味で、世の中に与えた影響の度合いもあります。それから非違なるということを承知しておりながらやったとか、だから、いま大蔵大臣が述べましたとおりに情状をよく見なければならぬと思います。まあ社会の秩序を乱したという面の大きさということを考えないと、違法行為であっても厳重注意というものもございますし、また税金を後納させるということもございますし、追徴を行なうということもありますし、立件するということもある。裁判の判定を求めるというみんな段階があるわけでございますから、どのようなものを社会的企業悪と、いわゆる反社会性を持つ企業と断定するのかと、こういう問題に対しては、やはり自由主義経済の中で国民生活を守っていくという、公共性を高めるということでおのずから倫理基準を設けようということでございますので、そこらは非常にやっぱりある意味で慎重でなければならぬ。慎重だからといって、しり抜けで何もしないということになっちゃこれはもういけませんから、そこらはやっぱり社会的に認められる基準というものでないと、角をためて牛を殺すということになっちゃ、もうこれは大もとで国民生活を守ることはできない。そういうことでございますから、一つの報道機関が間違った報道をすると、場合によってはこれは名誉棄損でもって起訴されると、こういっても、その一事をもってこれを反社会的な出版企業であると、こう断定はできないわけです。これはもうしょっちゅうやっておったら、これはもう言うまでもなく反社会的な企業ということで、これは累犯を重ねるということになればもういかんともなしがたい、これはもう常識論でございまして、そういうところはひとつ国民が納得するラインということが望ましいものであると、こう考えております。
  387. 黒柳明

    ○黒柳明君 いま総理答弁からは、反社会的企業であるというのは一応三つ、会社ぐるみでやったこと、非を知っていてやったこと、社会に与える影響の大小によってきめると、こういうこと。大蔵大臣、どうですか、このあたりのワク。
  388. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、大体そんなことじゃないかと思いますが、(笑声)精細にいまその基準を詰めておると、こういうことで御承知願います。
  389. 黒柳明

    ○黒柳明君 通産大臣、いま三つの点が出ました。大体そんなことで非常にたよりがない答弁ですが、通産大臣、どう思いますか。
  390. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私もまあそんなところじゃないかと思います。(笑声)  ただ、やはり会社にとりましては、名誉に関する非常に大きな問題で、また対外的信用にも関する問題でございまして、それはまあ刑事事件と同じぐらいに会社にとっては経済行為として痛手を受ける問題でありまして、まあ普通ならば、刑事事件なら弁護士がついて攻撃防御の論告があるわけでございますが、官庁の一方的処断で行政措置でやるという場合には、やはりしっかりとした場を踏んで根拠を固めて、そうしてかたい基準をつくってやらぬとこれは長続きしない、間違ったことになると思いますから、慎重にやりたいと思います。
  391. 黒柳明

    ○黒柳明君 公取委員長の見解。
  392. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 総理のおっしゃられたこと、私はたいへん常識的といいますか、うまいことを言っておられると思います。  で、要するに、私が先ほども言いましたが、企業というものは本質的に利潤追求を事とするものである、これは争えないことなんでございまして、そのやり方について、もうたとえば上は社長から実際の行為者に至るまで組織ぐるみでやっておると、そういうことをたびたびやって、他のいわば利益を著しく害すると、これがやっぱりそういうことを何とも思わないような企業、これがやはり非常に悪質なものであるから、したがって反社会的企業である。私どものほうでも、ですから、何回か独禁法違反を犯しましても、直ちにそれだけで告発に踏み切っておらない。まあ告発というのはかなり重大な問題でございますから、それだけ慎重になっておりまして、告発をするにあたっては相当考えておるという事情も御賢察をいただきたいと思いますが、回数だけの問題ではない。ただ社長が——しかし、あんまりぼんやりしているということも、これは下まかせであって、責任をほとんどとらないような体制になっているということはこれは好ましくないと、非常に好ましくないと思いますけども、まあしかし、下の者だけでかってにやったというふうな場合には、必ずしも会社自体がその社会的な相当きびしい制裁を受ける、それに値するかどうかという点に問題がございますから、まあまあ、先ほどの三つのような要素、私はおっしゃることと本質的には変わらないと思いますが、大体のいい線をおっしゃっておられると思います。(笑声)
  393. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、会社ぐるみ、非を知ってやった、社会に対する影響、あのやみ協定の四回も五回も破棄なんというのは完全にこの三つに、いい線に合致しているんじゃないですか、どうですか。
  394. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) もう私どももその辺の調査が十分には行き届かない点もあるんですが、化学工業の場合に非常に多いのです。商品の種類が多過ぎて、化学工業に多いんですね、何回もやったというのは。社長が実は把握しておらぬという実態がしばしば、私のほうの調査では、知らないということなんです。だから、知らないから十分監督するようにということを警告しておるにもかかわらず、またそういうことをやる、こういう点は私どもたいへん頭の痛いところでございますし、したがいまして、直ちにいま反社会的でないとは申しませんが、しかし、であると言うのには、もうしばらく様子を見て、またやったら今度は私どもは告発に踏み切ることもあるでしょう。まあただ告発ということは、御承知のとおり検察庁にとっては初めてのケースでありますけれども、石連についてたいへんな人員、労力を費やしておられるという問題でございますから、そうあだやおろそかにちょいちょいと告発するというわけにはいきませんけれども、しかし、告発しないから直ちに反社会性がないんだというふうには考えません。その点はちょっと別の問題ではないかと思います。
  395. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、社長が知らなかったことが、唯一の反社会的企業であるかどうかの疑問点なんですか。
  396. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) それだけで判断じゃありませんが、一つの要素ではあります。それは一つの要素にすぎません。そして会社が常々いわば法網の裏をくぐって意識的に利益を増大しよう、あるいは増加した利潤を何らかの方法で隠そうというふうなことをやっていると、そういうことはやはり国が政府資金を融資して援助したりするには値しないのじゃないかという考え方であります。
  397. 黒柳明

    ○黒柳明君 また、農林大臣すみません。さっきの日商岩井、この総理のいい線に合致しているんじゃないですか、どうですか。
  398. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御存じのように、商社は通産省が所管で監督しておられるようでありますが、問題になっております木材は、全部輸入品の問題でございまして、これは輸入各社によってインボイスがそれぞれ違ってまいりますので、どの程度どういうことであるか、実は私もあんまりまだ報告受けておりませんが、大体これからいろいろなことをお願いいたします業界に対しましては、ただいま総理がお答えになりましたような、ああいう基準でものを考えて判断してまいりたいと、大蔵大臣のお話の中には関係省でルールぎめをやるとおっしゃっておられますので、そういうときにもろもろのことを参考にいたしまして、われわれの腹をきめてまいりたいと、こう思っております。
  399. 黒柳明

    ○黒柳明君 いつごろまでをめどにルールづくりするつもりですか。
  400. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは非常にむずかしい問題ではありますが、鋭意いまそれを詰めております。そう時間はもうかからぬ段階まで来ておると、かように考えております。
  401. 黒柳明

    ○黒柳明君 脱税の問題なんか、このあれに適応するんじゃないですか。会社ぐるみ、いま公取がおっしゃった、社長も当然知っている、悪いことを知ってやっていた。相当社会に及ぼす影響大きいですよ。どうですか、これ。
  402. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 脱税と申しましても、先ほど申し上げましたように三種類ありまして、いま問題になっておりますのは第一類、第二類、第三類、その三つのうちのまん中の追徴金を徴収するかどうかという種類の問題です。それで、その追徴金を課するという租税通脱事案につきましては、これはその内容をよほど調査してみませんと、これがほんとうに社会的制裁を加うべき種類のものであるかどうか、これ、判定できないんです。いま黒柳さんが御指摘の問題は、おそらくただいま調査進行中のケースについての御言及かと思うんですが、そういうものでありますれば、これは調査の結果を待って判断せざるを得ないと、こういうことでありまするし、もう終了、税務調査があるいは課徴金を取りますとか、あるいは修正申告をとりますとか、そういうことで解決してしまったものについてまでこれを今回の金融制裁を加えるということについてはちょっと問題があろうかと、かように考えております。
  403. 黒柳明

    ○黒柳明君 通産大臣、そうすると、反社会的企業、伊藤忠とゼネラルとあると、こういうことですが、通産関係で、社長が、企業側が認めた事実、悪うございましたと、社会還元するとかなんとかいろいろ結論が出ていますけれども、そういうものを反社会的企業に入れるという可能性はあるんじゃないでしょうか、どうでしょうか、事実関係がはっきりしたもの、会社側がそれを断定して。
  404. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはケース・バイ・ケースで、たとえば伊藤忠のような場合は、文書を出しまして、伊藤忠マークをはずせとか在庫を整理せよとか、こういうのがありまして、それはわれわれのほうは強制捜査をしてみましたら、そういう事実、結果はありませんでした。文書を出したことは出したことで、そういうこと自体がいけないと、そういうことで社長を呼んで警告書を出しましたが、実態を調べてみると、マークをはがしたり在庫を隠したりしたという事実はなかった。しかし、伊藤忠ほどの大きな会社が、そういう文書を出したこと自体がこれは不穏当である。そういう意味で、会社全体のものに対して警告する意味で、一何とか流通センター管理室長の仕事だけでやっておくべきではないと、そういうことでやりました。それに対して、じゃ、社会的責任をとって、いまのような応報措置をとってよろしいかどうか、これはちょっとゼネラル石油の場合と違いますですね。ゼネラル石油の場合には実行行為まであったように思うんです。ですから、これはケース・ハイ・ヶ−スでよく慎重に見きわめた上で相当の資料を持ってやるべきであると思います。
  405. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、伊藤忠のあの通達と、共石のにせ通達と同じような性格じゃないでしょうか。そうすると共石も反社会的企業と、こうなるんじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  406. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは法律学に詳しい専門家によって鑑定してもらいまして、そしてそれによってやはり科学的に検討してやらぬといかぬと思います。
  407. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、法律の今度は解釈もその中に入るというんですか、反社会的企業の範疇に。
  408. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれ政治家が思いつきで、これは右、これは左というふうに仕分けしては危険だと、やはりその情状、内容そういうようなものを専門家に鑑定してもらいまして、それによって量刑と申しますか、処分の内容、そういうようなものをきめないと危険だと、そういうことを申し上げたわけです。
  409. 黒柳明

    ○黒柳明君 結局、結論としては、そうすると伊藤忠とゼネラル石油は完全に反社会的行為をしたと、大蔵大臣、そうするとこれは輸銀、開銀、打ち切りないしは保留というものは当然すると、こういうことですね。
  410. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 通産大臣が、反社会的行為をした企業というふうに二つをあげて申しておりますが、これはその行為自体をさして言っているんじゃないかと、こういうふうに思います。企業ぐるみこれは反社会性のある企業だと、したがって、経済的制裁を与うべきものであるという問題になりますると、これは相当大きな問題でありますので、厳重な基準を設けてその判定をしなけりゃならぬと、こういうふうに考えておるわけです。いずれ一そう時間かからぬと思いますが、基準ができます。それに照らしまして、これは経済的制裁を加うべき企業であるかどうかを判定いたします。
  411. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 輸銀の場合は、先ほど私御答弁申し上げましたように、特に慎重を要すると。と申しますのは、外国と契約してやる仕事でございまして、商社のような場合は窓口になっておって、そしてその仕事を引き受けたプラントの内容については何百という、または何十という中小企業のメーカーがくっついておるわけであります。したがって、その仕事がもし不調に終わるというような結果になると非常に国益を害するし、また中小企業に迷惑がいくということにもなります。現在、日本のプラント輸出は外国に向かって非常に立ちおくれておりまして、プラント輸出の面については力を入れなきゃならぬという段階でもあるわけです。そういう意味で、輸銀は国益も考えてこれはできるだけ契約は締結させると、輸銀のめんどうも見てやる、ただし契約が一たん成立したあとは、その輸銀で出す分を市中銀行に肩がわりさせて負担を重くさせてやることを検討したらどうかと、そういうふうな模様がえを事後において考えて事実上の応報措置を考えると、したがって、輸銀についてはそういう対外的な考慮をいたしまして一律に取り扱うことはむずかしい、これは先ほど申し上げたとおりであります。
  412. 黒柳明

    ○黒柳明君 すみやかに、すみやかにと、先ほど四回これでおっしゃったんですけれども、大体のめどはどうですか。
  413. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も何せもう日夜、予算委員会は昼間やると、夜は大蔵委員会だというようなわけで、余暇がないんですよ。こういうような状態でありますので、いつまでというのをお約束することはまあできませんけれども、もうそう時間は要しないと、かように御了承願います。
  414. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど大蔵大臣が、反社会的企業はこれは行為だろうと、こうおっしゃった。だけど、行為をつかまえなきゃ反社会的企業かどうかわからないんじゃないですか。ちょっと大蔵大臣のことば気になったんですが、いかがでしょう。
  415. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはおそらく伊藤忠の例を私があげまして、文書は出したと、文書の中身は不穏当であると、これは警告を発しました。しかし、実行行為があったかというと、それは実行はしてなかったと。そういう部分で、これは情状酌量大いにさるべき要素もあるわけであります。そういう文書を出して実行したものと、文書だけは出したが、これは何とかセンター流通室長というのがやったのであって、そして上の連中も知らなかったと。そういうケース・バイ・ケースによって中身が違いますから、われわれはケース・バイ・ケースによってその中身をよく審査しながら判定をきめるべきものである、こう申し上げたわけであります。
  416. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、だんだん私は——総理大臣がこの問題は断固としてやるとおっしゃった。大蔵大臣もすぐやると、時期のめどはつかないが。だけど、非常にむずかしい問題だと思うのですよ。各省庁の調整だってなかなか、できているのかできていないのかわからない。だけど、結局は、あれだけ問題になったって、反社会的企業というものがはっきりしなければ、反社会的企業に基づいて今度は輸銀、開銀どう打ち切るか、中止するかというルールをつくる。いかないんじゃないですか、そこまではっきりしなかったら、その次の段階に。そこの間口でいまうろうろしているんじゃないですか。どうなんですか、これは一体。
  417. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 確かにこれは非常にむずかしい問題なんです。つまり、左の企業は輸銀、開銀についてはこういう抑制を受ける、こういうことをきめるわけですからね。これは法律にそれをするというようなことになったら、これはたいへんむずかしい問題だろうと思う。それは法律問題には及ばない性格の問題であります、行政措置でございますから。行政措置にいたしましても、これはまあ国民の権利義務をそれできめる、こういうような措置でございまするから、そう簡単じゃないんです。しかし、これはだいぶ煮詰めてまいりましたので、そう時間はかかりません。ルールはちゃんとしたものをつくりまして、国会でもいろいろ御議論がある。また各界においていろいろ御意見もあります。そういう御期待にこたえるようにいたしたい、かように考えております。
  418. 黒柳明

    ○黒柳明君 通産大臣ですね、伊藤忠とゼネラル石油は、やっぱり開銀——輸銀はいろいろ問題がある。輸銀も含めて、開銀の場合には、これはやっぱり中止ないし保留するケースと考えているんですか。
  419. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはやはり基準がきまらないうちにいまここでやると断定するわけにはまいりません。特に、輸銀の場合は国益を考えまして慎重にしなければならぬと考えます。
  420. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは総理大臣、もうあと二分しかない、もう一分三十秒ぐらいでしょう。もうほんとうにこれはやる気があるのか、やる気がないのか。やります、やります、それは私は信用したい。だけど、幾ら私純真でも信用できませんよ。こんな、やる気あるんだかないんだか、うろうろしていて、非常に反社会的企業というのはむずかしいということでしょう、これだけ結果は出ていても。どうなっちゃうんですか、それじゃ。あれだけ社会に影響を及ぼした。もう大騒ぎじゃないですか。やっぱり悪徳企業だったのか。会社ぐるみ文書を出した。社長も知った。あやまっているじゃないですか。しかもそれは非としてやっていることは当然じゃないですか。そういう総理の三つの条件を兼ねた企業が一ぱいありながら、反社会的企業ときめるのすらむずかしい。きめなければ、輸銀、開銀、政府融資に対しての、ペンディングにするのか、中止するのか、見当もつかない。こんなものをほんとうに断定できるのか。早急にやっているのか。いま聞いたら、私が朝に晩に忙しいからやってないんですよ、というようなことをおっしゃるんじゃないですか。どうですか、総理大臣。ほんとうにこれは国会対策用の答弁じゃなくて、ほんとうにこれは断行する、すみやかに大蔵大臣が言ったようにやると。そのためには反社会的企業であるという、その定義づけを早く各省庁の大臣にさせなきゃ土俵に乗っからないんじゃないですか。どうですか。
  421. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 問題は、自由企業、自由経済を原則としておるということが一つでございます。自由経済の中にあっても、企業の社会的公共性は守られるべきである。そしてその裏側から申し上げると、反社会的な行為は許されない、こういうことでございます。で、反社会的行為というものに対してどういう制裁があるのかというと、これは違法行為が行なわれれば、立件せられて科罰せられるわけでございます。また、税のように立件はせられなくても、第二の段階として追徴金を課されるということもございます。重加算税までは、立件はしないが重加算税は課すぞということがございます。それから、そうではなく、また第三の段階においては、厳重警告を発し、以後やってはならない。以後やったら出入り禁止にするぞと、公入札も参加権を停止をすると、こういう行政的な手段がございます。これは米やモチ米の問題等に際して、農林省の取り扱いの免許を取り消すと、こういう手段、外米を入れる権利を剥奪すると、こういうようないろいろな段階があるわけでございます。段階があるから、ちゃんとそういうものに対しては適切なる処置が行なわれるようになっているわけです。そこまではいかないが、自由企業は利益というものを追求するものである。企業とは適切なる利益を追求するものであるということであっても、いろいろな手練手管を講ずることによって、社会的に見て適切ならざると思われるような方法で金をもうけておる者を一体どうするか。こういう問題が問題であるわけです。違法行為があれば自動的に、法律的に処罰をされるわけですから。処罰には至らないが、国民がこれだけ物価問題でもってせつながっているときに、そこらを、ましていろいろなことをしながらもうけているような者は、少なくとも反社会的な行為じゃないかと、これが国会における御審議でございます。そうでなければ、国会だって告発でも何でもできるわけですから。そうじゃなく、こういうときに、国民が困っているときに、自分はもうけ得る立場であるというようなことで、もうけている者は反社会的と認めないか。罰は受けなくても、政府がそういうようなもうける人に政府機関から金を貸したりしていることはおかしいじゃないかというのが国会における結論なんです。そうでしょう。ですから、それは必要であっても、とにかく輸銀でもって長い金を貸し、しかもそれに海外経済協力基金を抱き合わせたり、そういうようなことをするときには、反社会的な行為をした企業はやっぱりある程度の制約を受けるべきじゃないか。これは国会議員としては当然論戦として出てくる問題だと思います。  開発銀行でもそうじゃないかということでございます。ただ、開発銀行とか輸銀とかというものは、一つには国益を守るためにつくられた機関であることは事実でございます。これは返済能力があるかどうか。それから他に比べて、そういう金を貸すことによって、国民生活にプラスをもたらせるかどうかということだけでございます。相手が、多少前にいろんなことをやった人でも、安いものを入れてくれて、国益が守れるなら貸せると。これは純経済的に考えなければならぬのであって、これはかって罰を受けたから、前科があるからというようなことで、政府関係機関の貸し出しも対象にならぬということではないわけです。もしそうであるならば、他にそれにかわるべき保証人が出れば当然貸さなければならぬ。ところが、もうそれを貸さないということになったら、今度法律によらずして差別をすると憲法違反の問題が起こってまいります。これはもう当然なことです、これは。ですから、国民がひとしく持っておるものを差別するということをやるわけですから、行政権において差別をするということを高橋君がさんざん言っているように、幾らでも国民の生活を制約する場合には法律によらなければならぬと書いてあるじゃないかと。だから、石油を安く押えるについても、行政指導でやることにははなはだ遺憾であると、こう述べておるのが、そういうわけですから、これはやっぱり政府関係金融機関といえども、ルールがなくて、社会が公共性ということでこれは認めるという厳粛なルールがなくして、政府の恣意によって差別ができない、これはひとつ御理解をいただきたいと思うんですよ。ですから、何万種類も扱っているものが、一種類悪いことをしたからといって、これはすぐ反社会な企業だと、その会社が要請する輸銀資金は全部対象にしないということはできないので、そういう意味で、ルールづくりは各省で専門家を入れて十分考えましょうと。普通なら、これは野党の方々は、これは法律によらなければ、政府の恣意によったらまたどうも自民党系みたいなところばかりやるといかぬから、そういうものはいかぬ、法律によってきめるべきだと、こういう議論が普通なら起こってくるわけでございます、普通なら。しかし、どうもこの雰囲気の中じゃ、あの連中は罰さえ受けなければ何でもやるしろものだから、ここらでひとつ押えろという、こういう国民的感情、わかります。だから、政府もそれに対して、行政権行使の過程においてでき得るものに対しては採用いたして努力を続けてまいりますと、こう述べておるわけですから、そこをそうあんまり拙速を旨としてばたばたとやってしまうと、手ぎわはよかったな、決断もしたなというかわりに、憲法違反と、こういう問題が出てくるわけでございますし、行政訴訟を受けて立つという種のものである。これはもう確かにそうであります。ですから、そういう意味で、政府は、御指摘になること十分わかるのです。それに対応して前向きの姿勢をとろうということを言っているのですが、これは行政権の行使に対してはより慎重でなけりゃならぬということはもう当然なことでありますから、そこらはひとつ御理解いただきたい。
  422. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう時間もありません。非常にやっぱり企業寄りの総理答弁と、こう私は思わざるを得ないんです。あれだけ問題になった、先ほどから何回も言っているように。ほんとうに前向きにやる気があるのかどうか非常に疑問です。ですから、私はもうこれ以上言ってもしようがありません。国民はやっぱり自分たちの税金です、輸銀だって、開銀だって。それをたった一種類だったって、反社会的行為、国民をごまかすような企業に対しては絶対貸すなと、これが声ですよ。だけど、ここに国際情勢とかなんとかいろんな問題あります。しかしながら、その問題よりも、国民の感情から見ると悪徳商法、国民の税金をわざわざ政府が取って、それを今度は自分たちをいじめた物価高、悪徳企業に貸すことは、たとえささいなことでも、これはまかりならぬ、これが国民の偽らざる率直な感情なんですよ。ですから、総理もその国民の感情を主体にしていただきたい。企業を擁護するなんということはやっぱりこの際やめなきゃ、積極的にルールづくりなんか進まないと思うんです。私、最後になりましたが、最後にひとつ積極的にやってもらいたいと、こう希望するとともに、最後の一言お願いします。
  423. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 行政行政のためにあるのではなく、国民のためにある行政でございます。ですから、国民の真意をそんたくしつつ、あり得べき姿で行政を進めてまいりたい。そのためには、真摯な立場で本件と取り組んでいることを理解願いたい。
  424. 黒柳明

    ○黒柳明君 以上であります。(拍手)
  425. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして黒柳君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  426. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 萩原君。(拍手)
  427. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 「老耄れて歩みかねたる人の世を 如何にせよとやインフレの風」、これは一人の老人から私に寄せられた年賀はがきでございます。老人にとっては一生懸命の訴えですが、この答えは私にはできません。総理、大蔵大臣、どうぞ私にかわってこの老人に納得のいく御答弁をお願いいたします。
  428. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御老人のこの考え方、よく理解いたします。政府も、このような社会的な情勢の中にあって、国民の負託にこたえて、よりよいあしたをつくるために日夜努力を傾けておるわけでございます。しかし、この御老人が示しておられるように、理想的な社会、理想的な状態、この御老人の世を嘆ずるような状態が一人でもなくなるような事態にいまだ至らざることに対して、まますその責任を痛感いたしておるわけでございます。戦後のあの困難な中から、足かけ三十年、よくもまあここまで来つるかなという気持ちもあります。ありますが、その中で、最後のどたんばになって、二十九年目、三十年目というときにこのようなはがきを、もう人生あと幾ばくもないという老人の方から、新春に際してこれをあなたのところへ届けられるということは、政治をあずかる人、行政をあずかる立場の者としては、こういうものを看過してはならない。こういう方々がなくなるように最善の努力を傾くべきである。その任いよいよ重きをしみじみたる思いで感ずるわけであります。
  429. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいまのおはがきを拝見しましたが、そういう感じは、これはもうひとり老人ばかりの問題ではないと思うんです。あるいは家庭の主婦も、若い人も、あるいは事業家も、どうも先々がわからない、あるいはこういう異常な物価高で社会的不公正が広がる。非常に嘆いておるのは国民各界階層、全部じゃないかと思うんです。これに対してほんとうにお答えするという道は、私は、こういう異常な事態を一刻も早くこれは断ち切ることである、これ以外に道はない、こういうふうに考えます。しかし、そうは考えましても、でき得る限りの手当てというものを世の中の弱い立場の人、小さい人、そういう人たちにはしなければならぬ、そこが政治だと、そういうふうに考えております。
  430. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 非常にどちらさまも抽象論だと思うんです。ですから、もう少し具体的にお答えいただかないと、この老人は納得できないんじゃないか、こういうふうに思います。いかがでございましょう。
  431. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その意味で、衆参両院を通じてずうっと御審議をいただいておるわけでございます。なかなかむずかしい問題でございます。これは国際的な要因もございますし、国内的な要因もございます。しかも、これは戦後吉田先生が内閣をつくられたころ、この困難の中で、主食がないことによって一人の餓死者も出さない、これは鮮烈な政策だと思います。全部これは成功なさったわけでございます。これは国民の英知と努力を背景にしながら、一人の血の粛清も行なわず、死の犠牲者も出さず、餓死者も出さずして戦後の困難な状態から脱却できたことは、国民はよく理解できることだと思います。また、岸元総理のときのように、日本人がこれからよくなっていく過程において生命と財産と独立を守るためにどうするか、それは日米安全保障条約の締結以外にない、これも鮮烈な政策だと思うのであります。これはそうでなければ、日米安全保障条約をだめだというなら、じゃ別に税金を何倍出してもいいから軍隊持ちますか、こういうことにもなりますし、それはもう全然持たないで裸でいれば平和が来るということは国民は納得しません。鮮烈な政策であります。反対もあるかわりに賛成もある。池田さんは月給は二倍のほうかいい。これは二倍、二倍のほうがいいにきまっているのです。三倍のほうもいいわけです。非常に鮮烈ですが、ここらへまいりますと、もう社会も厚みが非常に厚くなったし、広範になったし、世界じゅうが何十時間でばっと回れるような、これだけの世界情勢の中における日本、日本だけ単純に存在できない、こういうことでございます。中東において戦争が起こったら直ちに日本じゅうに大騒動が起こる、こういうことでございます。これはもうほんとうに毎度やられ、御審議をいただいておった防衛論争も、外交もみな中止をして、とにかく石油だと、こういうくらいなこの事態でございますから、あなたがいまここでちょっと答えろと。さっと一言で答えられれば、野党の質問はみななくなって、しっかりやれということになるのですが、そういうわけにはいかないわけでございまして、日夜全力投球しておるということでひとつ御老人にもぜひ御返事をお書きいただきたいと、こう思います。
  432. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 大臣、たいへん私の答えをうまくお逃げになりました。  私は、ここで、それじゃひとつこういう中で、冷たい世相の中で最近心あたたまる話がございます。それは私どもの支持団体であります全金同盟の埼玉地方金属の労組が、今春のベースアップの一部をカンパして、県内の母子家庭に対して、母親が死亡した際、その遺児が百万円受け取れる団体生命保険に肩がわり加入の制度をとりました。こういうことを私は考えますときに、まだまだおやりいただける問題だってあるのではございませんか。平均二千円を今度下さるわけでございますね、困っている人に。それをこの際残っておりますところの予備費四百三十億を今年度内にその対象者にお渡しいただくということになると、いまの三倍にもなる。こういうようなことに対してもう少しお考えいただいて、私は、実はこういうお話を私に返してくださるのではないかと思って、実は期待をしておりました。ところが、いまの御答弁では、まことに抽象論でございます。そんなことを言ったっておまえさん、野党の質問がなくなっちゃうよみたいなことをおっしゃったんではまことに困ると思うのです。そこで、そういうことではなくて、もう一つ四百三十億の問題についてもお答えをいただきたい。  それから、いかがでございましょう、総理。この際、各大臣や国会議員がその所得の一部をカンパして、こういうインフレの波に押し流されようとしているような人々に対して救済をするというような御提案はなさいませんか。私は大いに喜んで参加をいたします。こういうことをやることが社会的連帯感の率先垂範になると思うのですけれども、いかがでございましょう。四百三十億の予備費、そして私のいま申し上げた提案、これに対してのお答えをいただきたいと存じます。
  433. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 四百三十億円予備費の残額があると申しますが、これは引き当てがありまして、それは二月から医療費の単価是正があったわけであります。それに大かたを引き当てると、こういうことになりまして、それから、あとこまごましたものがありますが、それらを抜きますと、大体十億ないし二十億でしたかね、余るところは。そういう状態なんです。ですから、いま萩原さんのいろいろなお考えがあろうと思いますが、それを実行するというのは、予備費のほうじゃ大体十億から二十億程度の問題であると、こういうふうに御了承願います。
  434. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 具体的にものを示さなければならないということでございまして、それはそのとおりです。具体的なものが一番いいわけです。ですから、ささやかではございますが、二千円ないし二千五百円ということをやったり、それから低所得者や恵まれない方々に対しまして、年度の途中であってもできるだけのことをやらなければいかぬ、五%というようなものを続けてきているわけです。これは過去にはなかった、異例なこともやっているわけです。ただ、その中で予備費の問題、いまもう全く支出をしなければならないというものでも、予備費の残額はないという問題もございまして、あと残るものは議員として率先垂範をしなければならないということで、この間から、自民党でそういう決議を出そうか、法案を提出しようかという動きがあって、私に総裁として相談がございました。しかし、これは与野党の間でもって静かに御相談いただくことであって、あなたの言うとおり、こういうときでありますから、与野党が歳費の一部をさいて有効にこれを使うということもあります。自民党の案としては、去年の分を据え置いて、その後上がったもの、これから上がるものを、物価が正常の状態になるまで、これ全部の方々がやらなくても、自民党だけでもやりましょうかと言うから、それはどうもあんまり穏当な話じゃない、それは私よくない、そういうことよりも、内閣や議員が果たさなければならないものは公の立場で果たすことが一番である。やっぱり具体的には非常にメリットはありますけれども、皆さん全部で、与野党から盛り上がる力ならいいけれども、与党だけでもやりましょうかといったら、それはもう選挙運動でやったと、こう言われるにきまっておる。そうすればかえって国民に悪い影響を与えるからおやめなさいということだった。それで、歳費のうちある一定の額、その限度までと、それから議員の特殊な行動をするために必要な給付がありますから、それを除いたものの相当なものをここでもって法律を出しても拘束していいじゃありませんかということで、非常に強く要求がありました。ありましたが、それをやるなら、内閣の閣僚、政務次官でもって先にやるから、そっちを待ってくれと、こういうことを言ったわけです。それはなかなか功罪、プラスマイナス面、両面あるのです。そしてささやかでございますが、目に見えないような処置をとったわけでございます。もうこういうものはみんなに呼びかけてやるものじゃございません。盛り上がるような状態でやらなければならないということで、ささやかなことをやることによって、まず議員がみずから拠出をして一つの先駆をなそうという考え方は慎重にやろう。過去もあったことなんです、何回も。ございましたが、御提示のお気持ちよくわかりますが、なかなか、それなら歳費だけはストップしょうということも考えられる。そういう案も考えました。とにかく物価がストップするまでの間は、議員は一般の公務員の最高を下らない給与を受けると、その条文の停止条項をひとつ法律で出そう。出しても、これは必ずもうあまりいいことはないのですね。そういう意味で、公の責めを果たすことにまず専念をすると、こういうことでございますから、これまたあなたのいまの御発言で各党もまたきゅう然と盛り上がってくるというなら、これは私も政党人でございますから、私の月給みな差し上げます。そんなのは一向差しつかえございません。ということをやりますが、そういうことはなかなか端的に行ない得るものじゃございませんから、これはひとつどうぞ、せっかくの御提案でございますが、少し考えさしていただきたい。皆さんのほうから、野党から御提案になって、自民党のみなさい、こういうことになれば、総裁として私も検討を命じます。どうでしょう、ここで内閣の首班としていたしましょうということは申し上げかねる案件でございますので、御了承賜わりたい。
  435. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 私は非常に虚心たんかいな気持ちで申し上げたわけでございました。しかし、いま総理のおっしゃることもわかるような気がします。しかし、私は、公の費用でほんとうにこの困った人がまかえないという実態を考えたときに、どうしてもじっとしておれない気持ちでこういう御提案を申し上げました。私の意のあるところをおくみ取りいただきたいと思います。  それでは、四十九年度は一体どのような予算が組まれておりますのでしょうか。
  436. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 四十九年度は、申し上げるまでもございませんけれども、総需要抑制というので、予算規模をできる限り圧縮したのです。特に物を使う公共事業なんかにつきましては、これはもう四十八年度以下の水準に押える、そこまでやったのでありますが、しかし、こういう物価高の際でありますので、世の弱い人、そういう人の立場はそれはそれとして考えなければならぬと、こういうふうに存じまして、いわゆる社会保障のごときは三七%近くこれを増額をするというふうにいたしておるわけです。生活保護費が二〇%アップになりますか、これは大蔵省からそういう査定案を厚生省に示したのですが、厚生省は、びっくりしたということもあるいはなかったかもしらぬけれども、まあずいぶんよく見てくれたというのでその額できまると、こういうことになったくらいでございまして、十分そういう方面の配慮をいたしております。
  437. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 物価高に対する悩みや苦情は私にはあとを断ちません。そこで私はあせり、苦しみ続けながら、仲間の協力を得て、大、中、小都市、農山漁村の家庭の主婦八百名と老人グループ五十名を対象に暮らしの実態調査をしたわけでございます。この内容を詳しく申し上げる時間がございませんが、この調査に答えた人のうち、約八〇%が、昨年の二月から現在まで生活物資は三〇%以上上がっていると答えております。特に食料品は七〇%から八五%、ものによっては二倍にもなっていると訴えております。しかも、値上がりだけでなく、品質の落ちたもの、量目不足のものもあると述べているわけでございます。  ここで、調査にあらわれた主婦のなまの声を二つ紹介をしてみたいと思います。「実際には倍に近い値上がりをしている品物もあり、子供のキャラメルなど二十七円が四十五円にもなっています。LPガスの値上げが通達され、ふろの回数も半分に減らしています。最近の新聞では、原油が倍になるので、通産省の指導で六〇%から七〇%石油製品が上がるということですが、物価へのはね返りがおそろしいようです。物価をこれ以上上げないために政府はどう考えておられるか、私どもの安心のできるような説明をしてください。」、これが一つ。それから次には、「ワサビのかん入りを買ったとき、おばあさんが六十円と言われたのに、中で聞いていた御主人が、それは七十円と、みすみす十円掛け値を言われました。日に日に小刻みに値上がりする天井知らずの物価高がこわいようです。このように簡単にどの商品も値上げされているのかと思うととてもたまりません。また、ものによっては品質が悪くなっているものや、量目の足りないものもたくさんあります。」、こういうことを訴えてきているわけでございます。この主婦の苦しみに対して、総理並びに経済企画庁長官はどんな打開策をお持ちになっておりますのか、承りたいと存じます。
  438. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) ごもっとものお尋ねであり、私自身もそのような話をしばしば聞かされるわけでございます。いまお話もございましたが、昨年の二月に比べます本年二月の消費者物価指数の上昇、これはまあ東京でございますが、御承知のように二四%上がっておる。卸売り物価では、二月が三七%上がっておるという状況でありますが、   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕 私どもも、訴えられますところは、政府の数字以上に自分たちの買いものはさらに上がっているような気がするが、一体どうしたんだということをまず尋ねられますが、それは御承知と思いますが、消費者物価にしても、卸売り物価にいたしましても、何千の、たとえば消費者物価ですと約八千ぐらいの消費者世帯、その大部分、六、七割は勤労者家庭でございますが、そういう家庭の毎月の支出額につきまして、それぞれそれに標準的なウエートをつくりまして、各品目の上がり方とウエートを掛け合わせましたものを総合平均して消費者物価を出すわけであります。ところが、毎日買うようないまのお惣菜とかあるいは季節商品、生鮮魚介類のようなものは、それが上がりますと非常に高く感じます。たまにしか買わないようなものがかりに下がっておりましても安く感じないと。  しかし、それは感じばかりではございませんので、私はここに数字を持っておるんでありますけれども、たとえば昨年の二月からことしの二月に比べました消費者物価の中で、総平均すると二四%の上昇でございますが、実際は、これはまあ萩原さん御承知だろうと思いますけれども、季節商品の値上がりが昨年二月に比べると五五%、季節商品を除いた総合商品の値上がりが二一%というようなことでございますが、季節商品とは何を言うかというと、これ、大体申し上げますと、野菜でありますとか、生鮮魚介類でありますとか、くだものでありますとか、そういうものが非常に実は高くなっておることがこの物価上昇の一つの原因になっております。しかも、こうしたものは毎日買うものでございますから、非常に高く感ずるということも争われません。  そこで、これから先、物価対策をどうするかということ、これは非常に大切なことでございまして、これはまあおおむね三つぐらい大ざっぱに言うと対策を考えなければならないと思いますけれども、一つは、もうしばしば申し上げますように、総需要の抑制、つまり、民間企業の設備投資に金を出しますとか、あるいは国や地方公共団体が財政を膨張させるというようなことをはじめといたしまして、要するに、需要の面をふやすことをいろいろな手段をもって極力押えてまいりますこと。  それからもう一つは、何と申しましても、やはり個別物資対策で、今度の石油製品の値上がりなどにつきましても、いろいろ苦情はございますけれども、この値上げ幅というものは必要最小限度に押えるのみならず、それによって、それが他の生活関連物資その他に影響してくることを全部押え込んでしまうのみならず、企業努力、あるいは先取り値上げ等の関連をも考慮いたしまして、さらに引き下げさしてまいるというような、たとえばそういう個別対策。  それからもう一つ、私どもか非常に希望を持っておりますことは、いま申しました二つのいわゆるデマンドプル、コストプッシュということばが物価上昇の原因であるとしますならば、もう一つのスペキュレーションマインドというものがいままでございました。大蔵大臣がしばしば言われる、あれは投機価格だと言われるわけでありますが、そういうものを鎮静させてしまうと。もうこれから先、物も十分出てくるし、値段も高くならないんだということになりますと、仮需要と申しますか、スペキュレーションあるいは買い置きというようなものがなくなる状況が現実に出ておりますので、そういう作用を組み合わせながら物価を押えてまいる。ただし、日本の物価の影響は、もうこれも十分御承知のように、海外からの原材料その他の関係から値上がりをいたすものも非常に多うございますので、これをどのようにして吸収するかという問題がございますので、そういうことも十分頭に置きながら、これ以上物価が上がるような足並みを押えてまいるということをやってまいるほかないと、こういうことで一生懸命にやっております。
  439. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いまここに、一つ忘れて一おりましたのですが、農村の主婦から次のような切実な訴えがありますので、お答えいただきたいのです。「農業機械のバインダーを使っていますが、この機械にぜひ必要なバインダーひもが非常な値上がりをして、生産にも大きな障害になっています。昨年の十月には一本のひもが千円でしたが、今年にはこれが二千五百円にもなっています。実に二・五倍の値上げです。ほんとうにこんなに値上げしなければならないのでしょうか」、こういう質問があるわけでございますが、先ほどの経済企画庁長官の御答弁では、私は、どうもその辺納得いきかねると思うのです。この点について、もう一回御答弁いただきたいと思います。
  440. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) まあ、これは個別物資でございますから、私から申し上げますよりも、通産大臣なり農林大臣なりから詳しくお話を申し上げたほうがあるいはよろしいかとも思いますけれども、すでに一昨日の発表にもございますように、今度の石油値上がりに関連いたしましても、この農業機械、ことに農業で使います肥料とか農薬とかそれらのもの、これは農家の必需品でございますけれども、農林省がつくらしているわけではないんで、通産省関係の物資でございますけれども、そういうものをできるだけ多く押え込み、物資の中に取り入れてございます。ということは、それは、そういう機械類のコンバインなりトラクターなり、その本体だけ押え込めばいいということではございませんで、それのパーツとか、ある一部分がないと動けない、また、修繕もきかないというようなものまで含めまして、通産省にも、ぜひこの制度の目的を達するように、経済企画庁のほうもお願いをしたり、協力をいたしておりますので、お尋ねのような件につきましては、これから十分間に合うような方向でつとめてまいるつもりでございます。
  441. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 通産大臣、いまの問題についてお答えください。
  442. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは企画庁を中心にいたしまして、政府全体で物価の目張りを励行いたしまして、国民皆さま方の御期待に沿うようにいたしたいと思っております。
  443. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 通産大臣、違いますよ。いま私が言ったのは、バインダーのひもの問題ですね、二・五倍に上げたんだが、こんなに値上げしなければならないのかと、こういう問題について答えていただきたいのです。
  444. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 御指摘の農業バインダーについてお答えいたします。  先生御承知のとおり、農業用のバインダーは、ひもメーカーが農機具メーカーに納入いたしまして、農機具メーカーが全農あるいは農協等を通じまして最終末端需要者である農家に渡っていくと、こういうルートをたどっておるわけでございます。ただいま先生御指摘のような値上がりの問題もございますので、当方では、ひものメーカーを呼び出しまして、原料事情あるいはコスト事情等を調査しております。  特に、原料について申し上げますと、サイザル麻につきましては、タンザニアだとかケニア等で自国で製品化するということで、輸出制限などを実施いたしておりまして、そういった影響もございまして、昨年の一月、キロ当たり百二十円のササイザル麻が現在では三百六十八円に値上がりしておる、かような事情もございますわけでございますが、事、農業に手わたっていく製品であるということで コスト事情等もあわせて現在調査中でございまして、適正な価格はいざ知らず、それ以上の不当な便乗価格を来たさないように行政指導してまいりたいと考えております。
  445. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 これまで申しました主婦の心配が、きょうから現実の姿になってまいりました。石油の一キロリットル八千九百四十六円、これに対して、私たちの暮らしにどう響いてきますか、具体的に、正確にお答えをいただきたいと存じます。
  446. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) たまたま私が、これは全体的な数字ですが、ポケットにその関係を心配して持っておりました。こういうことになります。昨日から引き上げすることになりました石油製品は、これは原油の精製品でございまして、石油製品そのものは直接消費者物価に響くようなものはたくさんはございません。たとえば化学工業原料のナフサとか、重油とか等々は消費者物価に関係ございませんので、消費者物価に直接響いてまいりますのは、まず、灯油とガソリンということになると思います。灯油は、これも御承知のように、標準価格を当面据え置きますので、それはきょうもあすも消費者物価には響かないわけでございますが、ガソリンにつきましては、いままでの八十円前後のものが、今度税金も四月一日から高くなりますが、百円ぐらいになるということになりますと、それはもう明らかに消費者物価に響くわけでございますが、総体として申しますと、その分が消費者物価の引き上げの要因になるものは〇・一三%ということになります。でありますから、それは上がる、上がるんでありますけれども、これはまあこれといたしまして、先ほど来申しましたような、他の総需要の抑制でございますとか、いろいろのデマンドプルの解消、あるいはスペキュレーションマインドの解消というようなことを含みまして、また、幸い御承知のように、物価がこのところ停滞の方向に来ておりますので、そういうものをもって石油の値上がり分は吸収をしていくことができるだろう、できるだろうということよりも、どうしてもそうやるんだ、こういうつもりで考えておるわけでございます。  卸売り物価のほうにつきましては、〇・一三%よりも、これは〇・八六%の石油そのものの値上がりはございますが、これも同じようなことで、先ほど来申しますように、製品は〇・八六%値上がりをしましても、それは生活関連物資、あるいは基礎資材等の値上げは全部押え込むということを同時にやりますこと御承知のとおりでございますので、末端のいろいろな物資には響かないようにと、こういう努力をいたしておるわけでございます。
  447. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それじゃ、経済企画庁長官、私たちがもし出ていろいろ婦人から話を聞きましたときには、ほんとうにこういうふうに灯油石油が上がりましても、私たちの生活物資には関係ございませんよと申し上げてよろしいわけでございますか。
  448. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) そのようにぜひ萩原さんからも関係の婦人団体等に申し述べていただくのみならず、そういうことになっているんだから、お互いに監視しましょうということで、ぜひひとつ小売り価格の上昇が凡百の物資に影響することがないように、皆さん方でもひとつ押える努力をしていただきたい。これは通産省も農林省も、あるいはその他いろいろな官庁が、御承知のモニターを何千人かお願いをいたしておりますが、このモニター等も通じて、そういう価格の押え込み情報を出していただくのみならず、ごく最近の間に、各都道府県の物価調査官等の会合も開きまして、萩原さんにそう言っていただけるような客観的な情報をつくるつもりで実はおるわけでございます。
  449. 木島則夫

    ○木島則夫君 関連。  生活関連物資、基礎資材について、五十三品目については当分の間上げないのだ、当分の間といっても、これは一カ月かもしれないし、あるいは一カ月半かもしれませんね。ですから、われわれとしては当然、当分の間というのをはっきりしてもらいたい。これを長期にわたってというふうに言いかえていただきたいというのです。その裏には、もう当然、企業というものは先取り便乗値上げ分を含んだ値段をもってしているわけですから、私はこれは決して無理ではないと思う。そして、もしその価格を各官庁の事前了承によって引き上げようとする場合には、一体何をもって基準とするのだろうかということですね。私は先取り便乗値上げ、つまり、水ぶくれが完全に吐き出された時点、そしてもう一つは、企業の合理化というものが完全に行なわれた、自他ともに納得がいく時点でなければこれは許すことはできない。はたして、そういうことがいまの物価監視体制の中で行なわれるものであるかどうかということですね。この辺、はっきりしてもらいたい。先ほどから、政府と業界との癒着が大きな問題になっているおりから、この辺はやはり物価を押えるということが大前提であるならば、萩原委員の質問にも答える意味で具体的におっしゃっていただきたい。  それから、もう一問、先ほどから企業の、あるいは商社の反社会的行為ということが問題になっています。私は、マスコミの立場から、反社会的行為をしているもの、あるいははっきりと疑惑を持たれているスポンサー、企業、商社というものが堂々と民間放送の画面の中に出ているという、この事実なんですよ。政府機関からの融資がいま大きな問題になっている。そういうときに、疑惑を持たれている商社、あるいははっきりと反社会的行為をしている企業というものが、堂々とスポンサー名を名乗って国民の電波を使っている、こういうことが一体許されるかどうか。これは私は、担当大臣ではなくて、郵政大臣の経験もあり、マスコミの造詣も深い田中総理にもぜひこのことはお伺いをしたいと思います。これは言論表現の問題ともからみますから、私は慎重にしなければいけないと思います。そして、萩原さんはこのあと、子供の教育の問題をも取り上げるわけです。おかあさん、この番組はいい番組だねと言ったときに、一体スポンサーがそこでだれであるか、ああ、これは公取の調査を受け、反社会的行為をしたこれがスポンサーなんですよということになったときに、一体親は、おとうさんはどういうふうに説明ができるかということにもつながってくると思います。御答弁をいただきたい。
  450. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 木島さんのお尋ね、そのとおりであると私は思うわけでありますが、私どもも当分の間という言い方をいたしておりますのは、これは三月一ぱいとか四月一ぱいとかということではなしに、しばしば総理大臣はじめ大蔵大臣等もおっしゃっておりますように、全体として物価の鎮静する間は、その間は押え込んでいくと、こういう考え方でございます。したがいまして、あるやむを得ざる客観情勢が生じて、それらの価格——これは物価ではございません、個々の商品についての価格を引き上げざるを得ないような事態が生じたときは、これはまあ法律上の制度でないから、法律上の制度として問題にされると、それはまた法制局長官からでも一お答えをいただかなければならぬのかもしれませんが、一種の事前認可制というような、事前了承制というようなもので、その企業の合理化余地があるか、ないか。また、いま木島さんからお話がございましたような、先取り値上げ等の残りがあるか、ないかというようなものも十分審査をしていただいて、そうでない限り事前了承を与えないと、こういう考え方でおります。
  451. 木島則夫

    ○木島則夫君 その審査ははっきりできますか。
  452. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) その審査は、各物資の諸官庁でやってもらおうと。これは単に経済企画庁長官のていさいで申し上げるわけでもないし、また、通産省、農林省だけの考え方でやるわけではなしに、ほんとうにいまの自民党政府というものが、国民の信頼ある、国民のための政府としてやっていくためには、それはほんとうに一体となってやっていこうと。まだその他にいろいろの要素なきにしもあらずでありますが、それらの要素につきましても、いま私が申し述べた同じラインで同じ配慮をやっていきます。  それからもう一つ最後に、郵政大臣の経験があられる総理大臣からお話があるのかもしれませんが、私は実は昨晩あるテレビに出ました。これはそういうことを申すといけないのかもしれませんが、民放に出ましたんですが、それは石油製品価格の引き上げ並びにそれに関連する物価の抑制等についていろいろお話をしたんですが、その中で、私もあまり口がいいほうじゃないものですから、私がせっかくこんな話をしても、私の話の前後に企業の広告か何かの放送が出てきて、あれ買え、これ買えというようなことが出るかもしれないが、そういうものに惑わされてはいけませんということを、私は堂々と実はその民放で言ってしまいました。たいへん恨まれた——民放から恨まれたか、その企業から恨まれたか知りませんが、私は、近来いろいろな広告主が、需要者の選択に応じないで、いろいろ需要者をまぎらわすような広告も決して少なくないと思われますので、私がせっかく民放でそういうことをやりましても、その前後でみんなそれをくずすような、購買欲をそそられたのでは何にもならない、こう思いまして、そういうことを申したことも、これはよけいなことでございますが、ほんとうのことでございますから。
  453. 木島則夫

    ○木島則夫君 大臣、こういうことですよ。いわゆる反社会的行為をしたもの、あるいはその疑いがあるものが国民の電波に堂々と登場して、顔を出していいか。顔を出すというのは企業名ですよ。そういうことがあっていいんだろうか。これは国民感情をさかなでをするものではないだろうかということを私は申し上げているのです。
  454. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私も国民の一人として国会に出てきておるものといたしましては、木島さんと、これはまあ大臣の地位を離れまして、同じような気持ちを私も持つものでございます。  ただ私は、企業の反社会性はもう一つの裏面がございまして 企業の社会に対する貢献度とか有用性とか、あるいはまた改悛の経過とかいうものを考えて進まないと、私は先ほどの問答を決して政府側から否定をするものではございませんけれども、それらのものを全部棒を引いてしまえばそれですべて世の中がうまくいって、そして人々が幸福になるということばかり考えませんので、いまの広告主の場合も、そういうことをも頭に入れながら、有用性とか貢献度というようなことも頭に入れながらやらなければならないことのように思いますので、お答えといたします。
  455. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 放送——テレビ、ラジオ等は国民の限られた電波を一定の業者に与えておるわけでございます。で、これが電波法及び放送法に抵触をすれば、ある時期が来た場合、再免許を行なわなければ一秒間も電波を発射できないわけでございます。そういう意味で、新聞とか雑誌とかいうものとは違う公共性の非常に高いものである、ある意味の制約を受けるものであるということは、これは当然でございます。  しかし、マスコミというものは国民の判断にゆだねることが望ましいということで、政府は放送倫理規定も法律にうたわない、それから各社において放送番組審議会というものをつくって、自主的に電波法や放送法の精神が実行できるようにと求めておるにすぎないわけでございます。ですから、政府はそういう意味で、番組の内容に対しても番組審議会という自主的なものにまかしておるわけでございますし、それからスポンサーの問題に対して政府がとやかく口をいれる意思は全くありません。これはもうその放送会社、その企業、新聞でも雑誌でも同じことです。そういう意味じゃ、まあ望ましくないということでございましたら、そうやればいいんですが、いま内田企画庁長官からも述べましたとおり、気持ちの上では、国会でもって追及を受けておる企業がスポンサーになって、大いに売らんかなとやっている、こういうことに対する気持ちはわかりますが、それはあくまでも国民の選択にまかすべきものでございまして、これをただ、国会に呼ばれたから、何とか還元いたしたいと思います、違法性はないが、まあもうけ過ぎたような気がいたしますのでと——そういうものをすく反社会的企業ときめつけて、スポンサーにもしちゃいかぬということ、これは郵政大臣であっても国務大臣であっても、もちろん内閣総理大臣としてそういう制約をするつもりはございません。これはほんとうにスポンサーの選択はその放送会社そのものが行なうわけでございまして、これは電波法、放送法の運用上においても制約ができない問題であるということをひとつ考えていただきたい。
  456. 木島則夫

    ○木島則夫君 現在の郵政大臣からも一言お願いいたします。
  457. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 郵政、放送事業について最も経験の深い総理大臣が御答弁になりましたので、私から申し上げますと、そのとおりということになるのでありますが、もう少し補足さしていただきますと、木島さんも専門家でよく御承知のとおり、これはいま総理が言われたように、われわれが放送番組について一々口出しすることはできません。  しかし、ここで御議論があるように、この一般放送事業者が、今日の起こっておる社会の情勢考えて、まああなたは専門家ですが、よく番組の中に何々グループだとか何々何とかいってスポンサーが出てきますが、そのことについて放送事業者が良識をもって番組を編成されていくことを私どもは望んでおります。ただ、これをこうしなさいということの権限がないことは御了解を賜わりたいと存じます。
  458. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 十年間も営々と貯金をして、さてマイホームをと考えた勤労者の夢も、たいへんな土地の値上がり、建築資材の暴騰にあえなく消え去った例も枚挙にいとまがございません。  そこで私は、経済企画庁長官並びに総務長官に要望したいのは、各層別、目的別に物価上昇率を作成し、それを参考にきめこまかい物価行政を展開していただきたいと考えますが、この点いかがでございましょう。
  459. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) そういう考え方も、各方面と申しますか、一部に要望としてはあるようでございます。しかし、先ほども申しましたように、消費者物価をつくりますのには、約八千の勤労世帯、七割ぐらいとりまして、その世帯の四百二十数品目の家計支出の品目、これは品物ばかりではございませんで、大工さんや左官屋さんの手間賃や植木屋さんの手間賃や授業料まで入っている、要するに家計支出指数のようなものでございまして、非常に複雑で、目的を一つきめたとしましても、その拾い分け方がちょっと片寄りますと非常におかしいものができることも心配をされます。先ほどの季節商品と一般商品を比べてみますると、申し上げたように、一般商品は二一%の上昇だけれども季節商品は五五%というようなことも出ますので、その辺の問題。  それからもう一つは、国際的にきめられた方向でこれがつくられていることでありますが、ただ私、二、三年前に、あなたとときどき国会で問答をしたり、お教えをいただいた仕事についておったことがございますが、たとえば社会の弱者といいますか、そういう谷間におられる人の生活と、いまの消費者物価指数の一般的なものとがマッチするかどうかということがあるのではないかと思います。消費者物価は二四%上昇なんだけれども、それは一般の八千世帯の話であって、老人や身体障害者や母子家庭の生活がそれに非常に多く反映されているというものではないわけでございますから、年金用とか、あるいは生活保護用の消費者物価をつくる必要があるのではないかというような話があるわけでありますが、それ、にわかにそうしましょうということでもないような点もございます。これはほんとうを申しますと、総理府統計局がおつくりになるものは経済企画庁が実はそれを活用しておる、卸売り物価は日本銀行がつくりますものを活用しておるということでございまして、あるいはあと総務長官からお答えがあられるかもしれません。
  460. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) お答え申し上げます。  実感としての物価指数がやはり非常に遠いという感じは、これは御指摘のとおりだと思います。しかし、これはいまこの時点で総理府統計局の統計システムそのままを変えていくということは非常に困難でございまして、この点につきましては前々からも総理からもいろいろと話が出ております。技術的にもいろいろ詰めてもらっておりますが、統計の基準年次が四十五年から五十年まででございまして、いろいろな内容的な手直しをするのはやっぱり五十年からの新しい年度において、年次においてそれを扱わなければならぬという技術的な大きな問題が一つございます。  それからもう一つは、いまの御指摘のように階層別な方々の感じる物価指数というものを出しましても、これを必ずしも私は物価政策に直接すぐ使えるとは思えないのでございまして、むしろ現在われわれが試みとしてやっております、一つの商品が消費者の手元に渡るまでの段階の中でどのような形態の変化をしているかという、その縦割りのと申しますか、流通行程の解析をやっと物価異常事態の中で、この数カ月の間にある程度開発をいたしまして、それのほうを特に関係各省に示して、物価の抑制ということに統計的な面から見ての協力をいたしておるわけでございます。
  461. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 やはり私はそういうものをつくっていただきたいと思いますのは、そういうものによってきめこまかい物価行政ができるのではないかということを考えたから、そういう御提案を申し上げたところでございます。できるだけきめこまかい物価行政と、こういうことをお考えいただきたいと思うのです。  それから、さっきちょっと私お伺いし忘れたのですけれども、凍結の問題ですが、凍結が解けたときに急に物価が上がるという心配はございませんか。その点いかがでしょう。
  462. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 全体といたしまして、私どもはこれは個々の物資の価格については一つ一つ下げるものも考えたり下げさしてもおるわけでありますが、全体といたしましては、私どもの物価政策というものは、物価水準がいままでのような狂乱の足取りをとどめる、鎮静化するということでございますので、萩原さんがおっしゃるように、凍結が解けたときに段差をもって物価水準が上がるということにしないように、たとえば事前了承の問題にいたしましても、あるいは公共料金政策などにいたしましても、十分御趣旨のあるところは考えてやらなければならないと思います。
  463. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それじゃはっきり具体策をもって臨んでくださると、こういうわけでございますね。
  464. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) なかなか一品ごとの具体策というものをいまのところ申し上げにくい点もございますけれども、私が述べましたような方針、方向をもって進むということは申し上げられます。
  465. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうしますと、何か私は実感的にはやっぱり凍結が解けたときには非常に物価が上がるという心配は消えないのですね。その点いかがでしょう。
  466. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) これは押し問答のようになりまして、まことに恐縮でございますが、私は現在年間に物価が、消費者物価でも二十数%、卸売り物価が三十数%上がるというような状況は正常なノーマルな状態ではないと考えますので、そういう状況は、総理がしばしば言われますように、私はもう少し早くやりたいと思うんですが、総理は慎重に夏までと、こう言われておられますが、夏までの間には、そういう状況ができたら平らぐらいにしたいぐらいのつもりでやってまいりますので、いまの石油製品価格がこれ以上、いまの十ドル、十一ドルベースというようなものが、またOPECのオーストリアのウイーンの会議などにおきまして特別の事態でも生じない限りは、これは問答みたいになって恐縮でございますけれども、御心配のようなことがなしに平静にまいるようにする考え方で進みます。
  467. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それではお約束をいただいたと私は了解をいたします。家庭の主婦にもそのように申し伝えます。  これまで衆参の審議は主として大手メーカーの問題が取り上げられてまいりましたので、私は物価つり上げの大きな要素と考えられます流通段階の問題についてお尋ねをいたします。  今回の第二次石油値上げ関連して、通産省はメーカー、百貨店、スーパーに対して生活関連物資の値上げ凍結を要請されているようですが、代理店、卸問屋など流通の中核になる部分についてこれまでどのような措置をとられたか。また、今後どのようになさるおつもりか承りたいと存じます。
  468. 森口八郎

    政府委員(森口八郎君) お答え申し上げます。  仰せのとおり、百貨店、スーパーの段階につきましては、基準的な品目、百五十品目を示しまして、値上げ自粛を求めたところであります。流通段階、特に卸の段階につきましては非常に流通過程が複雑であります。そういうようなわけで、卸のおのおのについて値上げの自粛を求めるということは、一般的な呼びかけは別といたしまして、なかなか実際問題としてはできない問題がございますので、小売りの代表的なものであります、特に価格の決定力について相当影響があります百貨店及びスーパーについて値上げの自粛を求める。これがひいては一般の小売り段階値上げの自粛機運が広がるということを期待いたしたところでありますし、こういうような点が卸段階値上げの自粛を求めることにもなろうかというような考え方で実施をいたしたわけでございます。
  469. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 政府のこれまでの態度は、どうも流通問題に手薄いというふうに私は思うんです。その証拠としてカルテル、価格協定の問題がございます。公取委員長にお伺いをいたしますが、昭和四十七年、四十八年について、メーカー、団体の価格協定に対する勧告と、流通団体に対する勧告件数をそれぞれお示しいただきたいと思います。なお、四十八年の場合、流通団体に対する勧告のうち、石油団体その他の団体の件数についてお伺いをいたします。
  470. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 生産段階流通段階、まあ流通段階の中にサービスも若干含みますが、四十七年度、それから四十八年度はこれはまだ終わっておりませんが、三月の十八日まで——まあ本日まででございますが、生産段階では六十四件、それから流通段階とサービス段階が二十六件、合わせましてカルテルの合計、カルテルだけでございます、そのほかのものは含んでおりませんが、カルテルの合計が九十件でございます。  なお、ちょっと申しますが、いま年度で仕分けるようにというお話でございましたが、流通段階と申しますのは、大部分は——大部分ではありませんが石油が非常に多い。それからプロパン関係を含みまして、両方でこのうち十七件はそれに該当いたしますが、それからなおサービス関係では、これはちょっと変わっておりまして、カラーラボ、これは現像の料金でございます。これが二件。それから電話の保守料金一件ということになっておりますが、いずれにしても、流通段階と申しましても、これらは主として石油スタンドの組合ですね。石油スタンドの商業組合がございますが、そういうところが主体となって行なったものでございまして、卸段階はほとんどございません。
  471. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いまの公取委員長の報告でもわかりますように、流通団体のカルテル勧告件数はたいへん少ない。その中で石油商業組合を除けば他の業界はまことに微々たるもの、こういうことになりますね。そこで、ほんとうにその他の流通業界のカルテルは少ないんだろうかどうだろうかというふうに私は思います。  私は、ここで女性とは特に密接な関係を持ちます紙についての流通団体のやみカルテルでお伺いをしてまいりたいと思います。これは大阪洋紙同業会のものでございますが、この紙問屋の団体は全国の紙流通量の約二五%、全国第二位の大きな団体で、大阪の主要な卸問屋がすべて入っております。もちろん公取にも届け出がなされております。この大阪洋紙同業会は昨年の二月から九月にかけてやみカルテルを結んでいたと思いますが、公取はその点御存じでございましたか。
  472. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) ただいま御指摘の件は調査をいたしておりません。事実を承知しなかったわけでございます。  しかし紙の関係は、段ボールの原料になるようなもの、つまり厚紙のもの等、それから高級のものとしては上質紙などたびたび生産段階でのカルテルはこちらで規制しております、勧告をしておりますが、いまおっしゃられた大阪地方におけるそういう問屋の段階でのカルテル行為というものは遺憾ながら把握しておりませんでした。
  473. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 これは大事なことでございますから、御存じなかったというのは私まことに残念だと思います。  これを見ますと、紙が値上がりした時期、つまり昨年の二月、最初にこの紙の規格と価格表が出されております。そしてこれにははっきりと大阪洋紙同業会と明記して、上質紙、コート紙、純白ロールなど、紙の各種類についての値段がきめられております。そのときの価格は、たとえば上質紙四十連量は百三十五円となっております。これが三月には百四十円、八月には百六十円、こういうふうになっているわけですけれども、この価格表が九月までつくられておりまして、十月以降はございません。これは例の石油危機で価格表を出さずに大幅値上げを行なったというふうに考えられます。これは明らかに独禁法第八条一項の違反ではないかと考えるわけでございますが、公取委員長いかがでございましょう、これをひとつ見ていただいて御答弁をお願いしたいと思います。(資料を示す)
  474. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) これを拝見いたしますと、大阪洋紙同業会となっております。これはおそらく届け出のあるものだと思いますが、いわゆる私どもでいう、八条で禁止しております事業者団体の行為と——これは事業者団体でございますから、みずからきめて、その構成員をしてそういうカルテルと同じ効果のある拘束的な行為を行なわしめた場合で、この裏には同業者の会合がもちろんあるわけでございますが、これは八条違反というふうに断定して差しつかえないと思いますが、ただ時期が、いまおっしゃられましたように九月で終わっておりますと、その後のものについて私どものほうは証拠を把握しなければなりませんので、この点については留保いたしておきます。いま現に行なわれているかどうかはわかりません。  しかし紙の価格がメーカー段階から相当大幅に引き上げられ、それがひいては学習用のノートなども二倍になるというふうな結果を招いている、これは事実でございまして、その原因について、なぜ紙が高いか、目下実は厳重に調査させております。どうして紙が高いのかという点は、もちろんこれは通産当局の御所管でありますが、私どものほうとしましても、カルテルに非常に関係が深いし、それから理由がどうもわからない、おそらくパルプのところに問題がある、隘路があるということで、若干売り手市場になっている——若干どころか、かなりおそらく売り手市場で、自由に価格をあやつれるような状態になっているのではないかと思いますが、それがなぜ打開できないのかという点についても、私どもは調査研究をさせている段階でございます。
  475. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 こうした例は氷山の一角にすぎません。  そこで公取委員長に重ねてお伺いをいたしますけれども、さきの衆議院予算委におきまして、わが党の小沢議員の質問に対して、過去の独禁法違反についても罰則をかける方向で検討をしたい、このようなお答えがあったわけでございますが、具体的にはどのようになさるおつもりか承りたいと存じます。
  476. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) その点は、現在の法律では、過去のやみカルテルについては何の手段もとることができない、破棄勧告ができない。ですから、これは立法措置として考えるべきじゃないか、そうでないと、すでに終わってしまったものは前歴がないことになりますから。しかし中には、最近は、すでに終わってしまったといいますか、暴露してしまって自主的に改めるというものにつきましても、破棄勧告をしたと同様の措置をとらせるように、これは私のほうで要請をしておるという例もございます。
  477. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ぜひそのようにお願いをしたいと思います。  私は流通段階のこのようなやみカルテルについて、ほとんど勧告がなされてないということに大きな不満を持つものでございます。この原因は一体どこにあるのでしょうか、これも承りたいところです。  先日、私どもは公取の大阪事務所に実情の調査に参り、そこで知りましたことは、この五年間二十二名で、人員増が全然ない、しかも審査課はわずか五名です。これでは仕事にならないのはあたりまえで、したがって昨年は二件の勧告にとどまった。こう考えられます。そこで地方事務所のおもな対象である流通団体の監視が全くできないというのも私はあたりまえだと思うのです。中央の公取委は現在非常に活躍をしていただいておりますが、地方の実情はこのような状態でございます。この点につきまして、総理並びに公取委員長の御所見を承りたいと存じます。
  478. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 確かにおっしゃるとおり、私どもで痛感しておりますのは、とても人間が足らなくて十分な活動ができないということでございます。これは何も私ここで御質問を通じて、わがほうの予算定員をふやすように陳情するわけではありませんが、実情として、いまおっしゃるとおり、地方の場合には今年度の場合でございますと、八十一名、これが七つの地方事務所に分かれておるわけでございますから、平均いたしますと、十一、二名ということになります。来年度実員で若干増がありますが、それは二名でございます。ですから、八十一名が八十三名になるだけです。それから本省のほうが若干はふえますが、来年度の増を入れましても二百八十六名でございます。合わせまして定員の総数が三百六十九名である。せめて地方の場合ですと、私のほうはまあ倍ぐらいにしなければ何もできないというふうに感じておりますし、本省のほうもやはりいまたいへん私ども問題をかかえながら全部は処理できないというのが実情でございますので、やっぱり定員の問題に結局戻ってくるのではないかという感じがいたします。
  479. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ただいまの公取委員長の御要望に対して、総理はどういうふうに・考えでしょうか、どう処理なさるおつもりでしょうか、承りたいと思います。
  480. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今度の予算はもうすでに御審議をお願いしているわけでございますが、これから公取では独禁法の改正案に対しても勉強しておるようでございますし、また人員、予算その他の問題につきましても、公取が果たさなければならない責めの重大さを十分認識をしまして、これから政府部内にしても予算編成の過程において十分公取の意見を聞いてまいりたい、こう考えます。
  481. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 アメリカでは連邦取引委員会の職員が実に千三百六十九名、捜査についてはFBIの職員約一万四千名を使用し得ることになっております。ところがわが国では全体で三百六十三名。この例から見ましても、独禁法に対する取り組み方、熱意が全く比較にならないという感じを受けます。  そこで政府がほんとうに競争の長所を生かし、独禁法を発展させようというお考えなら、当然人員は大幅にふやし、具体策をお立てになる時期だと思います。総理は先ほどこれから公取委員長と相談をしてということでございましたが、できますようにやっていただけますか、再度総理の御決意を承りたいと存じます。
  482. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今度の石油問題等を契機にして、公取の活動というのは国民的に評価されておるわけでございます。そうしてまた、私的独占禁止法の改正案の必要性というようなものも国民的に認められつつございます。しかし政府も勉強しておりますが、これらの問題については公取を主体にした勉強にまちたいという姿勢をとっておるわけでございます。政府の出店のようにならないようにということで非常にこう慎重にかまえておるわけでございますが、これから社会構造が複雑になってまいりますし、なかなか高度な社会経済活動が行なわれてくるということになると、やはりいままでと別な観点から私的独占禁止法、公取の活動というものも重視をしなければならない状態にあることはわかります。そういう意味で、有能な公取委員長を得たわけでございますので、公取委員会もひとつ勉強を続けてもらって成案が得られると思います。政府は真摯な態度でこれに対応してまいりたい、こう考えます。
  483. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 公取委員長、それでよろしゅうございますか、いまの総理答弁でよろしゅうございますか。
  484. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 私どもは別に、有能と言われるが、ごくあたりまえのことをしているのです。しかし非常な激動期でもありますし、これからも非常に不安定な状態が続く。そして物不足的な状態のもとではカルテルは非常にやりやすいといいますか、もうやすやすと便乗値上げもできるというようなことでありますので、個別政策はあまり総需要抑制政策に比べれば役に立たないと私は思います、はっきり申し上げて、どのような統制をやりましても、それよりは基本的にはやはり総需要抑制政策を徹底的にやるということが何よりだと思いますが、しかしそれだけでやっていきますと大不況を引き起こすというところまでいかなければなかなか防げない、物価騰貴は。そういう点にやっぱり個別政策も必要であるし、独禁政策も——物価政策そのものではありません、これは競争政策でありますけれども、やはりそういうものを確保していくという必要はあるので、ちょっとかってなことを申しましたが、総理のおことばですが、私大ざっばに言いまして倍ぐらいの人間が必要なんです、はっきり言えば。しかしそんなことを言っても建物は狭くて入りませんし、どうにも問題になりませんから、ある程度とにかく建物も含めて考えていただかないと、これはもうとてもどうしようもない。  いまおっしゃった中で、アメリカの場合は司法省が六百人の反トラスト部を持っているわけです。それがFBIを指揮できるというようなかっこうになっておりまして、アメリカが一番徹底しておりますが、私はヨーロッパとの比較からいって、あんまりぜいたくは言えないと思います。ヨーロッパの中にも独禁対策に対して非常に強弱があるものですから、そういうことで日本だけあまり飛び抜けたことを要求するのはどうかと思いますが、まあ常識的な範囲で最大の御配慮を願いたいと考えております。
  485. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 公取委員長は非常に謙虚な御発言でございますね。私は国民の信頼にこたえるために、いまこそ公取がもっとほんとうにしっかりした強い態度で臨んでいただきたいと思っているのです。その意味で、まあ建物が狭ければ建て増しをしておもらいになればいいんでございましょう。ですから、そういうことをおっしゃらないで、総理もいま公取の言われることをよく聞いてとおっしゃるのですから、強い姿勢でどうぞ臨んでくださることを要望しておきます。  次に、紙ばかり取り上げるわけですが、紙の価格の具体的な問題をお尋ねをするわけでございます。  ここに一枚の納品書がございます。これは大手商社の兼松江商株式会社が出したもので、納品した製品は大王製紙の上質紙でございます。で、この商品を買ったのはユーザーの印刷屋さんです。  そこで、まず通産省にお伺いをいたしますが、大王製紙の上質紙のこの一年間のメーカー出し値はいかほどでしょうか、お教えいただきたいと存じます。
  486. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 大王製紙のメーカー出し値は、現在時点ではキロ当たり百六十五円になっております。昨年一月ないし四月にかけましては大体九十円程度でございます。
  487. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それじゃ去年の十一月、ことしの一月の出し値をお伺いしたいと思います。
  488. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 十一月はキロ当たり百四十円、ことしの一月は百七十五円でございます。
  489. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ところが、この印刷業者は十一月に発注いたしまして、兼松江商から一月三十一日に納品を受けております。その値段は何と二百七十五円にもなっております。こういうことはたいへんな問題だと思うんです。その利益というのは実に六一%というべらぼうなものです。しかもこの印刷屋さんは十トンも買っているわけですから、価格はむしろ安くなってもいいはずのものなんですけれども、そういうことになっていることについて、通産大臣はこの事実をどのようにお考えになりますか、承りたいと存じます。——大臣から承りたいと存じます。
  490. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 大臣がお答えいたします前に、事務当局から当省で調査した結果をお答えいたしたいと思います。  いま御指摘の兼松江商の件につきまして、当方で調査した結果は、昨年十二月上旬に兼松江商の大阪支店が市内の包装加工業者から、ただいま御指摘のように、包装紙用上質紙百八十連、約十トンの注文を受けたわけでございます。当時、需給が非常に逼迫いたしておりまして、発注者としては高値でもやむを得ないということも言っておったようでございます。兼松江商といたしましては、適量を持ち合わせておらなかったために、従来から取引のある大王製紙に対しまして、自社の社内報に使う紙及び関連企業用として発注いたしたわけでございます。その時点におきまして、大王製紙におきましては、この量に対応する上質紙の在庫がなかったために、発注者の了解をとりまして、すでに大王製紙から代理店、卸商を経由いたしまして別の包装紙加工業者に売り渡していた品物を、本年の一月二十八日と二十九日の両日にわたりまして、約二十四トン、キロ当たり二百六十円で買い戻しをいたしたわけでございます。で大王製紙はこの買い戻した品物を同じ値段で兼松江商のほうに売り渡した。兼松江商といたしましては、この二十四トンのうち約十トンをキロ当たり二百七十五円で注文者に対して一月三十一日に出荷した。これが当方で調査いたしました事実関係でございます。  ただ、いまも先生から御質問ございましたように、昨年十一月時点の正常な卸売り価格はキロ当たり百四十七円から百七十五円、本年の一月に引き直しましても百九十五円ないし二百十円前後でございます。当時、二百七十円ないし三百円といったような便乗価格が一部末端の卸業者で出ておるということで、われわれもいろいろと警告を発しておったわけでございますが、このケースにつきましては、関係者間で商取引上の合意は一応あったようには聞いております。しかし、かような大企業がこういう便乗的価格の売買に介入しておったということはまことに遺憾である、かように考えておるわけでございまして、さらに調査をいたしまして、その結果に応じまして、払い戻しをさせるよう指導する必要もあるかと考えております。
  491. 木島則夫

    ○木島則夫君 関連ですから短くいたします。  いまお答えになったことをあるいは私はもう一度再確認するという意味で、重複するかもしれませんけれど、お聞きください。  兼松がいうそのユーザーのためにわずか十五円の手数料しか取っていないというのは、これはちょっと私はおかしいと思いますね。この点について再度御答弁をいただきたい。  このとき、兼松は二十四トンの仕入れを行なっていたというんですけれど、残り十四トンは一体幾らで売っているかということですね。  それから大王製紙は末端ユーザーに売ったものをまた取り上げて、それを兼松に売ったということですけれど、いろいろ商取引というのは私もよくわからない。わからないけれど、こういうことが実際に行なわれているとするならば、これは大企業の横暴と言わざるを得ません。この辺もその後どういう取引があったのか、証拠がありましたらば、これは後日でけっこうですから明らかにしていただきたい。  もう一つ納得できないのは、この大王製紙が上質紙のメーカーであるわけです。このメーカーが発注を受けてから納品まで二カ月以上もあるのに、自社製品を直接売らないで、末端に売ったものをもう一度取り上げて兼松に売っている、この辺がどうもよくわからない。一体、どういうふうになっているんだろうかと、だれしも疑問を感ずるのは当然であります。この辺、もう一度確認の意味答弁をしていただきたい。
  492. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいま御指摘の点につきましてはさらに調査いたしたいと思いますが、第一点の点につきましては当方でやはり調査した結果さようなことを言っておるわけでございます。  それから第二点につきまして、十四トンは、一部は先ほども申し上げましたように自社の社内報用の紙として使っておりますが、ごく一部はまた別のメーカーに出しておるかもしれません。これはいまのところで確認いたしておりません。  それから三番目の発注から納入まで二カ月ということでございますが、大王製紙の月間生産量は百五十トン程度でございまして、そのうち兼松江商に納入いたしておりますのは、過去の実績等からいたしまして月四十トン、こういう規模でございますので、一応先ほど御答弁申し上げたようなことが事実かと思いますが、さらに精査してみたいと考えております。
  493. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 このような無責任な便乗値上げ、これが起こる原因は一体どこにあるのでしょうか。今後このような問題を引き起こさないために通産大臣はどのような対策をお考えでしょうか、具体的にお伺いしたいと思います。
  494. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) このケースは、五十五キロにつきまして高値で見てもやはり六、七十円ぐらいの利益を得ておるわけでありまして、明らかに便乗的要素が非常に強いように思います。したがいまして、これは行政指導によって十分調査の上、もし必要がある場合には払い戻しをさせるようにいたしたいと思っております。  なお、こういうようなことが起こることをおそれまして、自来、通産省では、二月五日からあっせん相談所をつくりまして、そうしてそのあっせん相談所の運営を改善して低廉な価格で公正な配給を行なうように、かつまた、価格を公表するということが非常に大事であるというので、そういう措置をとりました。自来、便乗的な価格は次第に影をひそめたものと思われます。  なお、印刷業者等、紙の需要者から高値の通報制度を新設して、一部末端卸商の便乗的価格の再発を防止するための監視制度をいま強めております。もし今後このような便乗的な高値が発見された場合には、企業名の公表、出荷停止の要請など、強力な規制措置を行なう所存でおります。
  495. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ぜひお願いいたします。  消費者、末端需要者は、製品価格については小売り店頭価格しかわからないわけです。したがいまして、メーカー、流通段階で便乗値上げが行なわれていても全くつんぼさじきに置かれていて、不安な状態にあると思うのです。そこで、私は、消費者、末端需要者の不安をやわらげるために一つの提案を申し上げたいと存じます。それは、現状のメーカー出し値、代理店出し値、卸問屋出し値についてそれぞれ価格を公表し、これをテレビ、新聞などで広く国民に知らせるということなんです。こういうことをやっていただきたいんです。これはどうしてもやっていただきたいと思います。通産大臣経済企画庁長官、この私の提案を実施される決意がおありかどうかを承りたいと存じます。
  496. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) それはおっしゃるとおりやれれば一番いいことだと思います。しかし、小売り価格につきましては標準価格をつけるというようなことを、まあたくさんではございませんが、やってまいったのもその一例でございまして、わりあいにやりやすいかもしれませんが、中間の卸売り価格というものは、わが国の流通過程というものが非常に複雑でございまして、これは御承知のとおり、一次問屋、二次問屋、それに何かまたその横っちょに問屋類似のものが出ておったりしますことは、灯油の場合なんかでもさんざん私ども知らされたわけでございまして、その中間価格というものが、売買数量それから売買条件、つまり、お金を現金なのか手形なのか、手形とすれば何十日手形なのかというようなことがありまして、中間段階が複雑過ぎて、おっしゃるようなぐあいにはなかなかきめられないという事情にあるものも多いというようなことでございまして、まあそれは私どもはかってなことを申しますと、私どもの立場は萩原さんの立場と同じでありますから、通産省よ農林省よこうやってくれということばかり言うのでありますけれども、なかなかいま申すような事情があるようでございます。  それからもう一つは、へたに小売り価格をきめるというと、高橋公取委員長がそれはやみ再販であると、こういう御批判になりますし、また、いま石油製品価格値上げしましてそれを押え込みの段階でありますから、ちょっといままでとはこれは違いますけれども、ごく最近までは、この間もここで私は申したのでございますが、繊維品などはもう値段を安く張りかえるというような、そういう事態にまで来ておりますので、標準価格でございませんでも、へたに小売り価格ということをわかりやすくきめますと、それが高値小売り価格の安定というようなことにつながる物資も事実ございました。そういうようなことでございまして、むずかしい点はございますが、それはおっしゃることはよくわかりますので、国民大衆が一体どういう過程を通って値段が幾らになるのかということがなるべくわかったほうがいいと思いますので、この上とも政府部内みなで協力しまして、できるものはそのようにやるのがよろしいと思います。
  497. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 これはどうしてもやっていただかないと、全くつんぼさじきになっちゃうんですね。どこでどういうふうに上がっているのかさっぱりわからない。ですから、これはどうしてもやっていただきたいんですよ。通産大臣、これはいかがでございましょうかね。
  498. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御趣旨はよくわかりますが、ただいまも長官が御答弁申し上げましたように、契約は非常に千差万別で、条件ごとによって非常に違うわけであります。それからやはりまけさせたりいろいろ商人の腕前の要素もあるし、長いつき合いか、支払いがいいか、そういういろいろな条件があるわけです。その有機性がこわされるというと、非常に硬直化してくる。それで、各分野におけるマージン率みたいなものが固定されて出てきますというと、今度は引き下げするという場合に、それに便乗されてなかなか引き下げがむずかしくなる。上がりかけているときにはそういう要素も必要ですけれども、今度は引き下げなきゃならぬというときに便乗される危険性もあります。ですから、これは一長一短でございまして、まあ私の感じでは、末端価格だけは非常に監視させておく必要がある。これは消費者に直接触れるからであります。その中のことは、その業者間のいろいろな関係を尊重して彼らに独自性でやらせるほうが賢明ではないかと、長い目で見るとそのほうが消費者の利益になると、そういうように感じます。
  499. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それね、通産大臣、私は、企業の人たちの道徳、商道徳といったようなものが確立した場合にそれはいいと思います。しかし、いまのような状態ですと、やっぱり平均的にでも大体のそういうものがきめられていることのほうが大体消費者は目安がつくということを考えるのですが、その点いかがでしょうか。
  500. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、たとえばLPGとか灯油の場合には、元売り仕切り価格と小売り価格と、大体その中のマージン率というようなものをこれはある程度見当はつけてやっております。これは国民生活上非常に緊要な物資でありますから、基準点になるからやっておるわけです。しかし、それ以外のいろいろな消費関係の物資全般についてそれをやるということは、やはり経済がややもすると統制経済の色彩を帯びてくるのであって、長い目で見ると決して国民のためになりません。それよりも、やはり末端価格を監視しておくというほうが私は賢明ではないかと思います。
  501. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いま紙の例がございましたでしょう。ですから、紙なんというようなものはある程度そういうものが必要になってくるのではございませんか。
  502. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまのような例はあまりよくない例で、そればかりではないと思いますし、一般の商売をやっている間には、やはりお得意先との長いつき合いというような面でいろいろな複雑な有機的な要素もあると思うのです。そういうものは る程度尊重するのが自由経済で、そこに創意とか働く喜びというものも多少はあると思うのです。反社会的なことはわれわれとしては取り締まらなければなりませんけれども、経済の原理として、われわれが行政当局として取り扱う場合には、そこまで硬直性を持たせるということは全般的には不適当である。ただし、生活関連の物資あるいは国民経済運用上の重要物資について、これだけは必要だと思う部分についてはそれも適当であると思いますけれども、文房具とか紙とか、そういういろいろな諸般のものについて始めますと、これはもう一波万波を呼ばなきゃならざるを得ぬと、そういう気がいたします。
  503. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 通産大臣が消費者の不安を取り除くのに一番いい方法はこれだというふうな見きわめをつけておやりくださるのなら、私はそれでけっこうです。それだけはしかしぜひお願いをしたいと思います。  次に、私は品質表示並びに価格表示についてお伺いをいたします。現在は価格にのみ焦点が当てられておりますために忘れられている問題でございますけれども、非常に重要な問題だと思います。ここにほんの一例ですけれども、これでございますが、薬と紙の品質表示について、それと価格表示について抜けているものを持ってまいりました。たとえば紙の場合、昨年までは製造年月日あるいは責任者の印がちゃんと表示されておりました。ところが、ことしからはほとんどのメーカーにも製品についてのそういうものが抜けているわけなんです。この例は薬も全くそのとおりでございますが、私は、この事実について、日時を入れなかったのは、紙は今後も必ず上がると見込んで買い占め売り惜しみのできるやすいようにとの配慮であり、責任者印を押さないのは、いわゆる品質の低下の責任の所在を明らかにしないためだと考えました。これは私の邪推でございましょうか。やはり、私は、従来どおり、製造年月日と責任者の印は入れるように業界指導すべきだと思いますけれども、いかがでございましょう。薬についても、同様、価格表示がございません。このことについて通産、厚生大臣のお考えを承りたいと存じます。
  504. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 医薬品のほうからお答えを申し上げますが、医薬品につきまして小売り価格が書いてないというお話、まず第一点それでございます。そこで、この問題は、先ほど来お話のありましたように、価格を表示することがいいかどうか、これは非常にむずかしい問題があるわけでございます。と申しますのは、民薬品の流通機構というものは非常に複雑でございまして、価格というのは、御承知のように、取引条件なり、決済条件なり、それから取り扱いの数量の多寡、そういうものによっていきますのが相当多いのでございまして、流通過程が複雑でありますために価格をはっきりさせるということが非常に困難なものがあるわけでございます。特に小売り価格でございますが、これは再販でない品目につきまして価格を表示して小売り店を縛るということになりますと、これはやみ再販ということでおしかりをいただくわけでございます。したがって、再販でない薬について価格をきめましても、それは希望価格にすぎない、こういうふうなことになるわけでございまして、医薬品のように多少上がりぎみであるようなときにそれをかえって希望価格として書くことがいいかどうか、その辺は私は問題があるのじゃないかと思います。しかし、先ほど来先生のいろいろお述べになりました御意見、私は十分理解できまずから、十分研究をさしでいただきたいと思います。  なお、品質について記載がないというお話しでございますが、これは薬事法によってちゃんと品質なり数量を書かなければならぬということになっておるわけでございますから、もし品質や数・量、まあその成分ですね、それが書いてないというならば、これは私は厳重に取り締まるべきものだと思います。それからなお、製造年月日という問題でございますが、これは有効期間との関係がございまして有効期間等につきましても適当な指導をいたしておるわけでございますが、いずれにせよ、品質を書いてないというならば、これは薬事法違反、もしそういうことがございましたらおっしゃっていただければ、私のほうは厳重にこれは取り締まる考えでございます。
  505. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いいえ、薬について品質表示がないということではございません。これはそうじゃございません。これは誤解願わないようにお願いしたいと思います。価格表示がございませんので、末端の消費者というのはこれは幾らで買ったのがほんとうなのかということがわからない、こういうことがございますので、昔はあったわけですね、これは何ぼと。いまは全然ございませんから、そういうことについてどうなのかということをお尋ねしたわけでございます。  では、通産省のほうからひとついまの問題についてお願いいたします。
  506. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 紙につきましては、従来、製造メーカーは、一般印刷用紙を出荷する場合は、包装のラベルまたは包装内に紙片を入れて次の事項を記載しております。会社名、銘柄、それから連量、それから寸法、製造番号、これらの表示はユーザーからのクレーム処理を行なうための品質管理の一環として実施されているものであります。製造年月日の表示については、従来上記項目にあわせて年月を記載していたメーカーが多うございますが、昨年来中止しているものもございます。ただ、製造番号でこれにかえているものがございます。たとえば一〇二二〇一S八というような場合に、最初の一というのは一月という製造月日をあらわすと、そういうような意味でやっているのはあるそうでございます。印刷用紙は経年変化する商品ではありませんが、製造年月日を表示するほうが好ましいと思われます。したがって、製造番号の表示に月の字を補う等、しろうとでもわかりやすいように表示方法を改善する等の措置を指導してまいりたいと思います。  なおまた、必要があれば各メーカーに対してラベル等の記載方法等を今回一斉に調査する考えでおります。
  507. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 現在、他の主要日常用品についても、物不足と価格問題が焦点になって、品質があまり問題化されておりません。ところが、おとうふの味が一般に落ちてきていることも御承知のとおり。また、パンの味が落ちたことも御承知のとおり。そういうようなことで、いままでのようななめらかさもなく、ばさついているというのも、主婦が指摘しているとおりです。ちくわにしても、穴ばかり大きくなったのではいただけません、こういうことでもございます。この際、各官庁は、主要日常用品について、価格表示が明確になされているか、あるいは品質が落ちていないか、量目が不足していないかなどについて一度全国一斉に調査を行なうべきだと思いますが、総理並びに各省大臣の御決意のほどを承りたいと存じます。
  508. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 商品の品質、量目等につきましては、家庭用品品質表示法、あるいはJAS法、計量法、それから景表法等によりまして規制されており、関係各省庁は、都道府県において立ち入り検査等を実施して、あるいはモニター等も使って調査を行ない、不適当なものについては是正をはかっております。今後もこれらの立ち入り検査や試買テストあるいはモニター等による調査を一そう強化して不当な表示を排除するようつとめてまいりたいと思っております。  また、小売り価格表示については、現在特定物資以外には一般的な表示の義務っけがございませんので、メーカーの希望小売り価格表示を含めてその表示の実態とあり方について調査検討してまいりたいと思います。
  509. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ここに一つまことに悪質な問題がございます。ノートメーカーの極東でございますが、十一、十二月の物価大幅値上がりのときにノートの表示の上にラベルを張らせたわけでございます。ところが、これについて文房具屋に指示したのは、その古い値段を隠した便乗値上げ、これだけでも問題なんですけれども、私が特に憎いと思いましたのは、そのシールを文房具屋さんに対して二百四十枚を七十五円で売りつけている、そしてそのあとすぐにまた百二十円にしたと、このようなシールまで買わせるような悪質な例は私は聞いたことがない。このやり方について、通産、文部両大臣はどのようにお考えになりますでございましょうか。通産省はこの実情について調査をして対策をお考えいただきたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  510. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 御指摘のような事態があったということは非常に遺憾でございます。シールが有償であれ無償であれ、旧価格を隠蔽するために配付されるということは、きわめて遺憾な事態かと思います。ノートなりあるいは学習帳の価格引き下げ指導段階にあたりましても、本来旧価格で仕入れたものは旧価格販売するようにあわせて指導しておるやさきでございます。かような事態は放置しておくわけにまいりませんので、そのシールを回収するよう指導いたしたいと考えております。
  511. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ありがとうございました。  そこで、給食についても四月から値上げされるということですが、教育の一環としてなされる給食ですから、値上げは絶対しない配慮が必要だと存じますが、文部大臣はその点についていかがでございましょうか。
  512. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 給食につきましては、御承知のように、施設設備、これは全額公費でまかないます、同時にまた、人件費、これも全額公費でまかないます。食材料費は父母負担ということになっているわけでございます。その食材料費でありましても、要保護家庭の子供さんたち、また準要保護家庭の子供さんたち、これは全額公費でまかないます。  なおまた、国の物価物資政策に乗るものにつきましては、それなりに国が助成をしてまいるわけでございます。たとえて申し上げますと、小麦粉につきましては、昨年三五%原麦売り渡し価格引き上げが行なわれましたけれども、給食用の原麦につきましては、九月まで据え置くという方針がとられているわけでございます。そういう国の物価物資政策に乗らないものは、やはり父母負担の原則に従いまして、残念なことでございますけれども、食材料費がかなり値上がりいたしておりますので、その分は父母負担の増加につながっていくということは、やむを得ないんじゃないかと、かように考えているわけでございます。
  513. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 しかし給食をやめるような学校が出てきたりするようなことについては、やはり文部省としても御配慮をいただきたい、そういうふうに思います。  私は家庭を預かる主婦の立場での物価問題、特に流通問題についてお尋ねをしてまいりましたが、これらの問題の調査にあたって、特に痛感をいたしましたことは、個々の消費者、末端の業者は現在のインフレ状況の中で、受け身の姿勢で踊らされて苦しんでいるという実態でございます。したがって、それぞれに言い分があり、理由もございます。問題はやはり、この状況をつくり出した政府の物価政策の失敗に尽きると、こう考えるわけでございます。  総理の真摯な御反省と今後の物価行政に対する御決意のほどを承って、次の質問に移ります。
  514. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価安定に対して、精力的な努力を傾けなければならぬことは申すまでもないことでございます。  今度のような異常物価というこの状態に対処して、いろいろ政府が新しい視野と立場と角度から、物価安定に対して、具体的に数えられるものもたくさんございますし、また、何しろ世の中のほうは知恵がありますから、もうけるようなことをするには、なかなか手も込んでおりますし、まあ役人や官僚機構だけではなかなかできないと思うんです。ですから、相当こんなことを、たくましいことをやっているんだなということも、御提示をいただいて、びっくりするようなこともあるわけです。いま、シールを売って、シールをまた買えと、こう言うんだから、まあたくましき商法かなと、こう思っておるわけですが、こういう問題、やはりいろいろ政府も勉強しました。ですから、これから政府が行政指導やいろいろなことを行なう過程においては、十分参考になるものは取り上げてやってまいりたいと、こう考えております。  とにかく物価の安定ということは、最大な眼目でございますし、まあ政府だけでできるもんじゃございません。これは、一つには国民の物価に対する協力、物価というものに対するいわば認識というものを前提にしながら、政府はこれに対応していかなければいかぬと。まあ特に悪徳商法というために、物価が引き上げられるということは、これはどうしても避けなければならぬことでありますので、精力的に物価安定に資するよう努力してまいりたいと、こう考えます。   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕
  515. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 次に教育の問題に入ります。  政府の一貫した大企業保護政策が物価高をつくり出した原因の最たるものであることは論を待ちません。しかし、企業に企業倫理がないところにも大きな問題がございます。また一面、寄らば大樹の陰ということばの示すように、大企業の傘下に入るため、友人を踏み台にして省みない受験戦争が横行して、人間性没却の教育を受けた者が次の企業活動をになうというところにも私は問題があると思います。  そこで私は、政府の経済政策の貧困に対する追及とあわせて人間性をつちかう教育政策という角度から質問をしてまいりたいと思います。  私は、一人の主婦から最近の国会審議の状況を見てという感想文を受け取りました。その中で彼女は、いまの日本社会は不信感でおおわれていると指摘をし、こんなことでこれからどうなるだろうかと不安を訴えています。こんな混迷の世の中だからこそ、国会では人間をつくる大切な教育についてもっと真剣な論議がほしかった。いぼの激しい受験競争の実態や、それがひいては不信感の社会をさらに激化させるもとであることを思えば、教育こそ一番大切な問題だと考えている私には、いままでの国会審議は、いささかわびしいものであったと批判をしております。  そこで私は、このまじめな一主婦の願いにもこたえて、お願いを申し上げたいと存じます。  かつて私は文教委員会で、東京都下のある幼児グループが、その地域の人たちに迷惑をかけている例を取り上げて、全国の幼児の実態調査をお願いしたわけでございます。そのことについて時の坂田文部大臣は、調査をしましようというお答えをいただいたわけでございますが、もうすでに調査は完了したことと存じますので、三歳から五歳までの幼児の現状についてお伺いをいたしたいと存じます。
  516. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 三歳から五歳前の幼児につきまして、保育所に通っている子供さんたち、あるいは幼稚園に通っている子供さんたち、その状況でございましょうか。
  517. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 むしろその谷間の人のことを聞きたいんです。
  518. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) ああ、かぎっ子なんかのことでございますか、ちょっとおっしゃってください。——いまその比率かと思いまして、資料とりに戻ろうかと、こう思ったわけでございますけれども、おっしゃっている実態とおっしゃるのは、どういう生活をしているかと、こういう意味合いのことでございましょうか。
  519. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 はい。
  520. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 御承知のように、核家族化というようなところから、従来でございますと、縦の姿におけるいろいろな教育環境に恵まれておったけれども、それが困難になってきているとか、あるいは子供さんが少ないものですから、要するに産児が少なくなってきている。したがって、家庭の中における子供社会というものがなくなってきている、あるいはまた都市におきます遊び場というものがたいへん不足してきている。したがって、子供と子供との触れ合い、これが少なくなってきているんじゃないか、これはたいへん心配されている姿でございます。それだけにまた、幼児につきましては保育所とか幼稚園、そういうところで共同社会の生活をさせる、これもたいへん重要な段階にきているんじゃないか、かようにも考えているわけでございます。そういうところを通じて社会性、自主性を育てるための努力、従来よりも一そう必要ではないかというような結論を持ってまいってきているところでございます。
  521. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 文部大臣、私がお尋ねしましたのは、前の東京都下の幼児グループの実態を大臣御存じございませんから、そういう御答弁になったと思います。私がお尋ねしますのは幼稚園にいきたくてもいけない、保育所にいきたくてもいけないといういわゆる幼稚園、保育所の谷間の幼児というものがあると思うんです。それがどういう数を示し、どういう生活をしているかと、こういうことをお尋ねしたかったわけでございます。
  522. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 五歳児で申し上げますと、これ全国平均でございますけれども、六〇・六%が幼稚園、そして二四・四%でしょうか、が、保育所、ちょっと正確な数字欠いているかもしれませんが、大体八五%が全国平均で見ますと幼稚園なり保育所なりに入っているようでございます。あと一五%ぐらいのものが全国平均で見ますと、どちらにも預けられていない。その中にはいきたいんだけれども施設がない、そのためにいけないという子供さんたちもおるようでございます。このことも全国的に見ます場合には、地域的に非常な違いがございます。幼稚園と保育所との不均衡の点についても、よく御承知のところだろうと思います。
  523. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それが実はたいへんな問題になってくるわけなんです。数で、言えば一五%ぐらいだからよろしいというわけにはいかない。そういう子たちが非常な問題児になってくる、こういうことも考えていただきたいと思います。現在幼児を扱う施設としまして幼稚園と保育所がございますが、その両方の目的についてあらためて文部、厚生両大臣から承りたいと存じます。
  524. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 御承知のように、保育所は三歳、四歳、五歳、さらにまた乳児保育ということも最近始めておることは御承知のとおり。大体全国で百三、四十万人の子供が保育所に入っておるわけでございます。そして幼稚園に入る適齢な年齢になりますと、文部省の定める幼稚園の教育課程に従って教えておりますが、保育所というのはその字句のとおり、保育に欠ける子供を預かる、すなわちおかあさんが働きに行かなければならない、貧困のために働きに行かなければならない、そういう子供を預かるというふうなこととか、いろんなことで子供の養護を保つというのが保育という定義だと思います。子供を養護するということでございます。ところで、大都会におきましては御承知のように社会生活が非常に複雑であり、困難になってまいりましたので、保育所の増設の希望が非常に多い。これは大都市において特に多いわけでございまして、私ども年々保育所につきましては五百カ所ないし七百カ所増設をいたしておるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、それでもさっきもお述べになりましたように、幼稚園にも行けない、保育所にも行けないという谷間におられる方々、私は相当あると思います。そういう方々のためには文部省のほうにおいて幼稚園をふやすということも大事でございましょうし、さらにまた生活が非常に苦しくなってまいりましたから、保育所のほうも拡充していかなければならぬというようなことで、私どもは保育所の拡張計画というものを昨年来社会保障長期計画懇談会でございますか、それによって増設をはかっておると、こういう次第でございます。まあいずれにせよ、最近の経済社会が複雑になってまいりましたために養護を必要とする子供、これに対して保育所においてこれをお世話をすると、こういう趣旨であろうと考えておりまして、その必要性を痛感いたしておる次第でございます。
  525. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 四歳児、五歳児につきましては五十七年までに全員を就園させたいということで、施設の整備を急いでおるところでございます。同時にまた、幼稚園につきましては、これも御承知のように、適当な環境を与えてその心身の発達を助長させる、これが目的でございます。教育的な目的を持っておるところに保育所と若干違った面があるわけでございますが、保育所におきましても教育的な配慮をしていただかなきゃなりませんし、その場合には幼稚園における教育指導要領に準じてやっていただくということで保育一元化といいましょうか、そういう運営に配慮するということにいたしておるところでございます。
  526. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いま厚生大臣は養護を必要とする子供に対してと、いわゆる養護が目的だとおっしゃいましたね。そして文部大臣は教育ということを考えるんだとおっしゃいましたですね。私はそこに、子供というものは自分の置かれている環境によって差別を受けてはならない、これが私は大原則だと思うんです。したがって、幼児の保育の場というものは内容的に格差があってはならない、そう差えているわけなんです。ところがこの点につきまして、現状は多少、私の願いとは違ったものがある。こういうことについて文部大臣、厚生大臣はどのように把握をされておりますか、承りたいと存じます。
  527. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 先ほども申し述べましたように、保育所と幼稚園とそれぞれ性質、目的が違うわけでございますが、いまお述べになりましたように教育というものは、環境の差によって教育は差があってはならない、これは私もごもっともだと思うのです。そういう意味において、保育所においても幼稚園に入ってしかるべき年齢の子供につきましては文部省の定めた教育基準要領というのですか、それに基づいて教育を施すということにいたしてはございます。教育はいたしてございます。しかしまあ、まだ不十分な点も私はないでもないと思います。地方によりましては、四歳、五歳といったふうな子供のほかに、やはり乳児の保育も扱っているところもあるわけですから、そういうことで多少そういう欠ける点はあるいはあるかもしれません。しかし、私どもは、今後とも、環境の差によって教育の内容に差があってはならない、こういう考え方でそういう方面に今後は努力し、保育所の質的な改善をはかっていく、こういうふうにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  528. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 幼稚園のほうは三歳から五歳までをお預かりするわけでございますけれども、現状の在園児で申し上げますと、三歳の場合には六%ぐらいでございます。四歳の場合で四五%ぐらいでございます。五歳になりますと六〇%をこえているということでございます。保育所の場合には、御承知のように、これまた満一歳から学齢まで、場合によっては十八歳までというような仕組みになっておりますので、たてまえはやはりかなり違っているのじゃないだろうかという感じを持っているわけでございます。ただ、教育という面につきましては、先ほど申し上げましたように、なるべく両者歩調を合わせて進めていかなきゃならないのじゃないだろうかと、かように考えておるところでございます。そういう問題になってまいりますと、三歳児ないし五歳児についてどう処理していくのかということになるわけでございますけれども、三歳児ないし五歳児につきましての在園の姿はいま申し上げましたようなところでございますので、自然、さしあたって五歳児ぐらいについては教育問題については両者一体的な運営が望ましいのじゃないだろうかと、こう考えられるわけでございまして、そういう方向の努力はしていかなきゃならないと考えております。
  529. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうしますと、厚生大臣も文部大臣も、子供が自分の置かれている環境で差別を受けてはならないという大前提はどちらも御認識のわけでございますね。そういうふうにいたしますと、やはり私は幼・保の先生の一元化の問題がある、また待遇の一元化の問題も考えていかなきゃならない、こういう問題があろうと思いますが、時間がございませんので、この問題については後日詳細にお尋ねをしてまいりたいと思います。  性格形成期にあります幼児の育成の場については格別のあたたかい御配慮が願いたいわけでございますが、総理大臣、両大臣、その御決意のほどをちょっとお聞かせをいただきたいと存じます。
  530. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 幼児教育の必要性、十分感じております。私も孫を持つような身になりましてこう見ておりますと、やはりこれちゃんとした教育、必要だなと、われわれのように七つにならなければ、八つにならなければ——学校へ行くというようなことではなく、いまテレビや何かございますから知恵がついておりますから、これはもう相当しゃんとした教育が必要であるということをほんとうに考えております。特にまた、要保護家庭や谷間の人たちという、それも施設が少ないとか、環境上まあ小学校まで待てばいいのだというようなものは、先ほど御指摘がありましたように、そういう人こそ重点的に教育を行なうということを考えないと、昔の小学校ぐらいのものは三、四歳でもう知恵がついておりますから、人間形成というものがやはり相当繰り上がっておると、そういうことで考えなきゃいかぬということをこのごろ痛感いたしております。これは公私とも両面からその必要性を十分痛感をしておりますので、これが施策の拡充に対して努力を続けてまいりたいと、こう思います。
  531. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 幼児の養護の問題は乳幼児の養護を含めまして最もこれは大事な問題でございます。将来すこやかに心身ともに育つように全力を尽くして今後ともいかなければならぬであろうと、かように考えておる次第でございます。
  532. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 幼児期に将来にわたる人柄の基礎が形づくられるわけでございますので非常に大切な時期だと思いますし、理屈で覚えるよりもからだが覚えていく時期でございますだけに、環境の整備には格段の努力を払わなければならないと、かように考えております。
  533. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いろいろまだ聞きたい問題一ぱいでございますが、時間がございませんので。  いまは受験シーズンで親も子もまことに息苦しい時期でございます。私がおそれていますのは、きびしい受験競争の中で子供たちは友だちを失い孤独になっていますが、しかもそれをささえてやるところのおとながいないということでございます。  ここに二人の中学生の作品と一人のおかあさんの手紙を紹介をしてみたいと思います。  「ほんとうの友情で結ばれている人は、たいへんすくないとぼくは思う。ぼくはほんとうの友だちなど作ろうとも思わないし、そのような友だちのいないことを、さいわいに思う。   なぜなら、信頼できるのは自分だけであり、友だちを過信しすぎると、とんでもないことになりかねないからである。広く浅くつきあうのが無難だと思う。」  これが中学三年生の男の子。  また女の子は、   「私は、二年生のころから、ずっとKさんと友人関係が続いています。はじめは遊び友だちのようで楽しかったのですが、三年になり、Kさんが家庭教師について勉強をはじめたころから、いっしょに勉強することもすくなくなりました。おたがいに、ライバル意識を燃やしはじめたのだと思います。   私は、週にいちど新宿へ英語を習いにいっています。ですから、英語の場合はどうにかなりますが、数学でいくら考えてもわからないので、つぎの日、学校でKさんに聞くと、  『バカねえ、簡単じゃない。』  と、いわれたことがありました。そのときは、くやしくてくやしくて、どうにもなりませんでした。   あとで聞けば、家庭教師に習ったといいます。私のひがみかもかもしれませんが、ここまでくると、意地でも、  『Kさんには負けない。』  と、ライバルというより、敵のように思えることもあります。」  「このまま、いつまで友人としてつきあっていけるか、全然自信がありません。私には美しい友人関係など、いまのところ考えられません。  『私は友だちがひとりもいない……』  と感じると、心に穴があいたように、さびしくなることがあります。」こういうのでございます。また、あるおかあさんは、  「中学三年の子どもの母です。もう三日、子どもは一言もものを言いません。理由をいくらきいても話してくれないので、近所の同級生の子にきいておどろいたのですが、子どもは体育の時間は外に出ず、ホームルームの時間にも話し合いに参加しないで、他の勉強をしているのだそうです。」  内職をしているのだそうです。  「そうした事が度重った為担任の先生からひどく叱られたという事でした。  最近子どもの横暴ぶりはすさまじく、弟や妹もオドオドしています。私はこんな状態は過度の勉強のためだと思い、塾をやめるよう言いきかせたところ、試験におちて困るのはボク自身だ、いいきってさっさと自分の部屋に行ってしまいました。最近家庭の空気はこの子一人のためにみんなノイローゼ気味です。」  何ともわびしい話ではございませんか。  また、さきに総理府の青少年対策本部で行なった世界青年意識調査の結果で、わが国の青年の意識は、他の世界各国の青年たちに比べて、人間不信感や友情欠除感が信じられないほど異常に高い比率を占めていることが明らかになり、世の識者をがく然とさせたということですが、こうなった原因は一体どこにあるとお考えでしょうか。総理並びに文部大臣の御見解を承りたいと存じます。
  534. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 御指摘にありますように、入学試験中心に子供さんたちが生活させられているというんでしょうか、しているというんでしょうか、そういう方々の多いこと、たいへん残念なことだと考えております。小さいときから有名校に入らせるために進学塾へ通わせる。おかあさんの中には、知育は私がやりますから、しつけは学校でしっかり頼みますよと、全くあべこべの話さえもあるわけでございます。やはり一つには、学歴偏重の社会を改めていかなければならない。戦前は一%余りの人しか大学を出なかったんですけれども、今日では、同一年齢層の三三%が大学へ進んでいるわけでございますので、大学を出たからといって特別の教育を受けたわけじゃございません。その辺から社会の考え方も変えてもらわなきゃならない、こう思っておるわけでございます。  しかし、現実はこういうことでございますが、文部省といたしましては、小中高の学校におきましては、ただ覚え込むんじゃなくて、あくまでも基礎的な力をつちかえばいいんだというふうに持っていきたいということで、教育課程の改正にこれまで取り組んでまいったわけでございます。知・体・徳・調知のとれた人間をつくっていくんだと。だから、思い切って精選をしようと。さらにまた、体育やクラブ活動重視のような方向も取り上げてまいったわけでございます。高等学校につきましても、九八・六%の方々は高等学校へ進んでおられるわけでございますけれども、有名校を選ばれるものでございますので、自然有名校へ有名校へということで、中学校におきましても入試中心の勉強が多くなっている。これは現実でございます。同時にまた、高等学校なり大学なりにおきまする入学試験の出題のしかた、これが難問、奇問を出していきますと、やっぱり進学塾にかり立てることになっていくわけでございます。したがいまして、入学試験のあり方も、小中で基礎的なものをちゃんと勉強してさえすれば何も心配ないんだという出題にしていかなきゃならない。そういうことで改革を次々に加えてまいってきているわけでございます。総合的な対策で問題の解決をはかる以外はないだろうと。いまも申し上げましたように、教育課程のあり方をまず変えていきたい、入学試験の出題の内容を改善していきたい、学歴偏重の社会も改めていきたい、そこから父母の有名校へかり立てる姿も是正をしていきたい、かように考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、わが国は、どの学校を選ぶか、どういう職業を選ぶか、これは全く自由な社会でございます。その点において私はたいへん望ましいことだと思うんでございますけれども、そこに競争が始まるわけでございます。競争につきましては、あくまでも公正な競争を守らなきゃならない。そうなりますと、入学試験ももっぱら推薦入学か何かで、あるいは内申書だけできめていけばいいじゃないかと。こうしますと、あるいは問題の解決がある程度できるのかと思うんでございますけれども、それだけでいきますと、一体どこで線を引くのか。ずば抜けてできる子供さんはわかりますけれども、そうでないところになりますと、一点違いで何百人入ってくると、こういうことでございますので、やっぱりいまのような試験も無視できない。したがいまして、総合的な改革、特に学歴社会のあり方の改革、父母の認識の是正、総合的にひとつ努力を続けていきたいと、かように考えております。
  535. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 文部大臣がるる述べましたが、私は、あなたがいまお読みになりましたことは、ほんとにそう感じるんですよ。子供のころの不満というのは、三十年、四十年——また明治のほうが単純だったと思うんです。これは、貧乏なうちの子供は御飯を持ってこれなかった。アルミニウムの弁当を持ってくる人、こういうものの差をどうするかというようなものがありました。また、乱暴な子供に行き帰りいじめられる、何とかしてもらわなきゃいかねというような、単純な不満だったんです。やっぱり、私たちも子供のとき徹夜して勉強したこともありますし、受験勉強またよかったと思うんです。受験勉強したときぐらいのことしか覚えていませんから。ですから、それはそんなに、何か観念的に、画一、一律的にあまり専門的な分野からだけ私は教育制度を考えているところに誤りがあると思います。だから、もっと国民的に、自分の子供という立場で、やっぱり、もう足かけ三十年ですから、考え直すときが来ていると思うんですよ。そうでないと、いまのあなたがお読みになったのは、それはおとなの悩みですよ、ほんとうに。それは、これだけ国民所得や国民総生産が上がったり、まあ、明治、大正、昭和と比べてみて、子供の生活だってみんなよくなっているわけなんです。よくなっているけれども、心はすさんでいますよ。おとなの悩みを持っている。  これは私がASEAN諸国へ参りましたときに、いみじくも言われたんです。私の舌っ足らずの発言というか、理解をされなかったことは遺憾でございますが、日本人がこれだけたくさん出てきておって——こう言ったんです。——古い人たちとのつき合いは、案外、目でもわかるし、いずれにしても年配の人とは通ずるんですと。大学を出て新しい教育を受けたエリートたちがどうもうまくいかないんですと。なぜうまくいかないんだと言ったら、非常に若い人は閉鎖的であると。それは私は幾つかの国で若い人ともみんな会った。学生と会ったときも言ったんですが、それは教育のせいじゃないんだと。それは、アメリカ人とかヨーロッパ人と長いことあなた方もつき合ってきたわけですが、目の色が違うということで、習慣が違ってもこれはしようがないと。日本人は顔色も、しゃべってみなけりゃ同国人じゃないかと思うのが原因じゃないかと言ったら、そうじゃないんですと。呼んでも出てこない、ゴルフをやれば日本人だけでやっておる、それで、話しかけても、奥さんや子供は絶対に一つのテーブルで隣の者と話さない。閉鎖的だということを私は五カ国で言われた。これはやっぱり教育の欠陥じゃありませんかと——まあ欠陥ということは申さなかったんですがね。日本とは、まあ首脳部もみんな戦前から戦中、戦後、日本人とつき合っているわけです。日本人のいいことも悪いことも、残虐なこともみんな知っておるわけです。知っておって、これだけの高度成長を続けてきておる日本、言うなれば指導的な立場にある日本人の、特に若いエリートはどうも閉鎖的であると。これが非常にうまくないということを、私はそういうことをどこでも聞いたり、自分の娘でも、ずっと前の子供を見ておっても、やっぱりこれは子供が親に対してとか、兄弟のうちの目上、まあ姉や兄に対して感じたような抵抗感というものは、もっと素直なものだったと思うんですが、このごろちょっとどうもこわいところもあると。ほんとにあなたがいまお読みになったように、おとなの文章ですよ、それは。友だちなんか要らぬ、こんな不信感はと、こういうですね——これは、私たちはまあいなかの出身でありますから、緑もあったし、いい悪いにかかわらず、雪が降れば上級生に連れていってもらわなければ、雪の中でもってどこへ行くかわからなかったですから、そこにコミュニケーションがあったわけです。それが、都市化現象が進んできたり、家庭がみんな密室のようになってくると、人間同士のコミュニケーションが、親子もなくなる、夫婦の間でもなくなる、それはもう子供の間でもそうなる、そういうやっぱり社会環境というものも素直に認めなければならぬだろうと思うんです。私たちは、自分の時代がよかったとは思いません。だから、そういう社会環境にどう対応するかということ。それで、ここでまあ三十三年から道徳教育などもできておりますが、やっぱり善悪——善悪のけじめというのは、私は、中国へ行きましたときに、ほんとに簡単に教育の基本が書いてあります。ああ、これは昔の五カ条の御誓文と同じものだなあと思ったですよ、実際。ほんとに簡単に、これはいいこと、これは悪いこと、してはならぬと書いてありますよ。ところが、日本の教育に、してはならぬことといいこと——権利は主張する。権利と義務は同義語ですよと。人に迷惑かけてはいけませんよと。やっぱり先生方が紙のものさしぐらいでびしっと——竹のものさしでは痛いから紙のものさしぐらいでばちんとやれるぐらいの先生、そういうことをまじめに考えないで、私はほんとに日本人の人格形成というものはできないと思う。まじめにそういう問題をお互いに国民的課題として——これは政党政派の問題じゃありません、一政府の問題じゃありません。ですから、それはもう給食を幾らやっても、毎日毎日牛乳何本飲ませても片づく問題じゃありませんよ。制度の問題だけではなく、ほんとうに日本人の教育制度はどうあるべきか。私は、画一、一律的な、全部大学を卒業させるというような、そういう教育も間違いだと思いますし、音楽をやったら天才的であるという子供に、母親がどうしても大学へ行って工学士に、法学士になれと言ったって、これは無理だと思うんです。そういうところをやっぱり十分私は検討しながら、ここらで教育を見直すときではないかと。たがためでもない、ほんとうに全日本のためだと、こう私は考えております。
  536. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 総理のお話を伺っておりますと、私も何かしらぬけど、昔をいまになすよしもがな——というような感じやふっといたしました。しかし、精神的にきわめて不安定であり、しかも強烈な自我意識の芽ばえる青年前期から中期にかけて、三年ごとに高校入試、大学入試と、二度の苛烈な選抜試験を受けていくようないまの段階、状態の中で、祥かな人間性をつちかうということは非常にむずかしいことになるんじゃないか、そういう感じを私は持つわけでございます。  ところで、先ほど文部大臣のお話にもございましたが、現在の高校進学率はもう九〇%。そういうことになりますと、高校はもう義務化に踏み切るときではないでしょうかと私は考えるんです。そこで、そういうことになりますと、中学と高校を通じて一貫した後期中等教育としての構想をもう考えてもいい時期じゃないかと、そういうことを私は考えるんですけれども、文部大臣、いかがでございますか。
  537. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 高校義務化の問題につきましては、九〇%まで進んではいるわけでございますけれども、その時期における能力、適性、いろいろでございます。子供さんによりましては、高等学校へ行かないで、あるいは裁縫なり、あるいは料理なり、それぞれ自分の特技に精魂を傾けたい、各種学校へ進みたいという方々もあるわけでございますので、画一的、形式的に縛りたくないという気持ちを持っているわけでございます。要は高等学校へ進むべき方々は当然これを受け入れていけるような施設整備に全力を傾けるべきことだと、こう思っているところでございます。  なお、中学校と高等学校、一貫して教育すべきじゃないかというお話がございました。教育内容の問題につきましては、昨年教育課程審議会を発足させまして、もう今日ではほとんどみんな高等学校に進んでいるわけですから、まず高等学校の教育内容はいかにあるべきか、これをきめようじゃないかと。その上に立って中学校の教育課程、さらに小学校の教育課程というふうにして、重複を避ける、精選をする、一貫して教育が進められるように運びたい、かように考えているところでございます。  制度的な問題につきましては、現在、私立の学校では中学校、高等学校併存の形でございますけれども、ある程度一貫教育がくふうされている。また国立の付属につきましては、そういうところもないわけじゃございません。全国一律にそういうかっこうに持っていきますことにつきましては、なお慎重を要するんじゃないだろうかと、かように考えているわけでございまして、今後もなお研究課題ではなかろうかと、かように存じております。
  538. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ぜひそれ、ひとつ研究課題にしてお願いをしたいと思います。と申しますのは、こういうことをやりますと、一応高校入試というものを避ける、こういうようなことになりますと、その過度の受験競争は緩和されて、生徒たちは、ゆとりのある学園生活の中で個々の適性を見出しながら将来に備える道が開けるのではないか、こういうことを考えるわけでございます。  で、私たちは高校の義務化ということを促進してほしいと思っているわけでございますが、いま大臣の言われたことについての考えがないというわけではございません。しかし、こういうことを考えますときに、私立高校のこれまでに果たしてきた役割りというものも考えないわけにはまいりません。そこで、こういう私立高校の位置づけというものを明確にする。そして公立高校の水準を目標に、私学に対して抜本的な助成措置をはかるべきだと、こういうことを考えておりますが、私立高校に対しての助成措置、こういうものについてどういうふうにお考えでございましょうか。
  539. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 高等学校以下の経常費助成は、昭和四十五年に国が大学に対しまする経常費助成を始めましたときに、都道府県でやってもらうということで財政措置がなされたわけでございます。したがいまして、高等学校以下の私立の学校に対しまする経常費助成を、四十九年度では、自治省のほうで地方財政計画に五百十九億円計上していただきまして、そしてそれを地方交付税上の都道府県の基準財政需要額に算入していただいているわけでございます。各都道府県を通じて、それだけの財源を保障するということでございまして、この額は、対前年度で比べますと七八%の増額になっておるわけでございます。要するに、五カ年計画で始められた私学助成の一応の完成年度だということでございまして、専任教員の給与の五割は補助できるようにしたいということでございます。
  540. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 この地方交付税のような形になりますと、都道府県の財政状況によって非常に違ってくると思うんです。そこで、もう少し私立高校については、文部省としてのちゃんとした助成措置というものを講じていただかないといけないのではないか、こういう感じがいたします。  それから大臣、先ほど私が申しましたいわゆる高校入試、こういう問題についてはどうお考えでございましょうか。
  541. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 高等学校以下に対しまする助成のあり方は、やはり都道府県が責任を持ってもらったほうがいいんじゃないだろうか。と申しますのは、大体都道府県内の住民の子弟をその都道府県内の私立高等学校に通わせるんじゃないだろうかと。そうしますと、都道府県議会がこういう問題につきまして絶えず関心を持って大いに議論をしていただかなきゃならない。それを都道府県も助成をするが、中央政府も幾らか国の予算に計上して助成をする。何か責任が二分されるようになると思うんでございまして、やはり責任の所在を明確にして、都道府県が助成をする、しかし、それだけの財源は国として十分配慮していくということでなければならないんじゃないだろうかと。自治団体でございますから、国が考えたとおりの助成にはならないでございましょう。全体として見ますと、国が考えたよりも都道府県の支出額のほうが多いんでございます。しかし、個々の団体で見ました場合には、国が考えたよりも小さい、少ないところもございます。これはやはり、地方自治の問題になるんじゃないだろうかと、かように考えているところでございます。  第二の高校入試の問題でございますが、私は、基本的には生徒の能力、適性に応じて高等学校へ進んでいくんだと、高等学校は、またそれぞれのカラーを持ってしかるべきだというふうに思っているものでございまして、高等学校が何にも特色がなくていいんだろうかという気持ちもあるわけでございます。しかし、あまり特色を言っておりますと、また入学試験で競争がかり立てられるわけでございますけれども、その場合に、何か、ただ有名校、有名校へと進んでいくようないまの姿、言いかえれば過度の競争——競争はこれまた好ましいことでございますけれども、過ぎますとやはり弊害が出てくるわけでございます。いまは弊害の問題が起こっておるわけでございますけれども、そうかといって高校の一律化も避けたいなと、こういう気持ちを抱いているところでございます。要は、過度な入学試験——能力、適性を異にして高等学校を選ばせるような愚なことは避けられぬものだろうかと、そういう配慮を、あらゆる面から解決をしていきたいんだということで、先ほどお答えをさせていただいたところでございました。
  542. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 文部大臣のおっしゃること、わからないではないんですけれども、先ほど、高校にしましても、たいへん府県によってばらつきがあると、そういうことを考えましたときに、やはり私はある程度、国のほうの助成がきちっとしたほうがよろしいんじゃないかと、そういう貧しい県ということになりますと、そういうものがまたますます使われなくなるという問題も出てくるんじゃないかと、こういうことも考えるんです。ですから、これは国のほうでひとつ助成措置というものを考えていただいたほうがよろしいんじゃないかという、私の理論はここから生まれてくるわけでございます。ますます格差が大きくなる、こういうことだと思います。  最後に、私は大学の格差是正についてお伺いをいたします。  受験競争の激烈な現状について述べてまいりましたが、その最大の原因は、国公私立大学問の著しい格差があげられると思います。で、この格差が生まれた歴史的、社会的な背景はいろいろあろうかと思いますけれども、その原因の一つとして、教育費負担と教授陣の問題があろうかと思います。一方では、多額の国費で十分な教育が受けられる、そういう国立大学があるかと思いますと、一方では、ほとんど全額父兄の負担によってまかなわれなければならない私立大学がある。また教授にいたしましても、一方では、時間が非常に少なくて十分研究できるというような教授があり、一方では、非常に、一週十二時間も授業をやらなければならないという教授もある。こういったような中で、私は大学というものに格差ができてくることは当然だと、こう考えるわけなのでございます。これでは、大学間にこういう格差があっては、どうしたっていまの受験競争というものはもう避けられなくなる、こういうことを私は考えるわけでございます。この大学間の格差というものが、やはりまた高校以下の受験競争に拍車をかけているということも確かでございます。いまの大学というのは、国立大学だから貧しいのが入っているかというと、これは問題は逆でございます。幼児、幼稚園の時代から、いい大学へ入るためにずうぶんと努力をして、親はいろいろな苦労をしながら、幼稚園から小学校、中学校、高校と、塾に通わせ、家庭教師につけて、ずいぶんお金を使っている。その結果が、いわゆる国立大学の入学ということになる。そして、そういうことのやれなかった者がむしろ私立大学に入って、その段階では非常な父兄の負担を受けている、こういう現状を私はどうしたらよろしいのでしょうかと、これ、ひとつ文部大臣、あるいは総理大臣から承りたいと存じます。
  543. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 大学の格差の問題は、国公私立の問題もございましょうし、また国立大学でありましても、中央と地方の大学の格差の問題もあろうかと思います。  国立大学について申し上げさしていただきますと、戦後、占領軍の指令によりまして、一県一大学、したがいまして、各県にあります師範学校も、高等商業学校も、高等工業学校も、みんな一つにして大学に昇格さしたわけでございまして、その結果、従来の帝国大学と比べますと、たいへんな格差でございます。したがいまして、今日、学科の増設、施設設備の整備にあたりましても、あとう限り地方の大学から進めるというような努力を進めておるわけでございます。しかし、お話にもございましたように、基本的には質的な格差、言いかえれば教授陣営が奮起して努力をしていただかなきゃならない、こういう問題にもなろうかと考えるわけでございます。  また、国立と私立との間の格差の問題、私立大学は、それぞれ、それなりに建学の精神を持って大学設置に当たっていただいたことだと考えるわけでございまして、そういう意味で、大いに特色を発揮していただかなきゃならない、かように考えるわけでございます。同時に、大学が社会に果たしている役割り、そこから、三三%の方しか大学に入っていないわけだけれども、国民全体が税金を出し合ってまかなっていこうじゃないかという部分がございます。これは国立大学であれ、私立の大学であれ、同じにしていかなきゃならない、かように考えるわけでございます。そういう意味におきまして、私立大学に対する経常費助成、これの毎年毎年の増額に当たってまいったわけでございまして、ことしも切り詰められた予算の中でも、私学助成につきましては、国の上で、たしか四五%ぐらい増額さしていただいたと、かように考えているわけでございます。一応、五年計画はこれで完成年度になったわけでございますけれども、私としては、来年度以降、さらに充実した助成になるように努力をしていくべきだと、かように考えているところでございます。
  544. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いまこそ、政府は日本社会の現状をもう少し直視していただきたい。国民の要望にこたえて、いわゆる国公立の大学の増設をはかっていただきたい。そうして、少なくとも国公立大学にはすべて夜間部を設けていただきたい、こういうことをお願いしたいんです。また、国公私立に対する助成、あるいは教授陣、あるいは試験問題などもばらばらになって——いま、文部大臣おっしゃいましたから、この問題についてあまり触れませんが、こういう状態の中で、その入試、いわゆる試験問題の平均化と、こういうこともまた考えていただかなければならないわけです。そこで、そういう問題について、もう少し十分に詰めていただいて御検討をいただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  資源の乏しいわが国におきましては、人間を豊かに育てる教育に金を惜しむことなかれ、私はこのことを御忠言申し上げて、教育に関する質問、終わりたいわけでございますが、あらためて総理の御決断のほど承りたいと存じます。
  545. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、教育に対しては、あなたのいま述べられたとおり、教育に対して予算を惜しんではならない、こう考えております。これは私も大蔵省に参りましたときに、ほんとうに驚いたのは、いまよりも何十分の一、百分の一にも満たなかった明治時代、明治初年に、あの全国律々浦々に義務教育の校舎をつくったわけでありますから、いまから考えれば、もうすべて鉄筋コンクリートの校舎を提供をしても何ら問題ないぐらいの国力がついているわけです。そういう意味で、まあ物質的なものだけじゃありません、これはもう制度の上でも、また学校の内容も、十分整備していかなきゃならぬと思いますが、教育に対する投資というものを、やっぱり制限しちゃいかぬと思います。その意味で、今度一年間に一〇%ずつという、義務教育の教員に対する特別な昇給ということも考えたわけです。まず、やはり待遇をよくしなきゃいかぬ、安んじて教育の聖職についていただかなきゃいかぬと、こういうことをまずやったわけです。あれだけでも、まあ二年分を全部平年度化すと——将来的には、平年度三千億になるわけです。そうすると、あれをもう一〇%、一〇%で、六千億になるわけです。あれをまあ自民党が考えたように五年間ずっとやられるとすれば、一兆円にもなるということでありますから、これはそういう意味では、非常に、教育というものに対して目ざめてきておるということは言い得ると思うんです。  私はここで一言だけ申し上げたいのは、大学の問題は、どうも画一、一律的な大学、総合大学としておるのがどうも問題があると思います。ですから、先ほどあなたは高校を義務教育制にしたらどうかと、こういうことがございましたが、まあそれも一つ考え方でしょう。ただ、高校も、いまの各種学校という、看護婦学校のような各種学校、あれをいまの高校の中に、全部、生徒の中に取り入れて、とにかく工業高校、それからいろんなもの、看護婦でも何でも——いわゆる工業学校といえば、もう数え年二十になるわけですから、高等学校を卒業すれば。十八歳まで選挙権を下げようという議論もあるときですから、やっぱり私はそういう現実を踏まえて、もっと若い人たちに適合するような教育制度というものをつくって、社会でへんぱな待遇を受けないで済むようにしなきゃいかぬと思いますよ。  そして、あなたいまもう一ついいこと言われましたか、大学に夜間部——ほんとうです、これ。私立へ行ける人は別にしましてね。やっぱり国公の大学には夜間部をつくるとか、そうすれば、これから週休二日制になれば若い人たちが全部大学を出れるんです。自分の希望する学部を出れるということなんです。いまはもう総合大学の中で、医学部など困っているんですよ。医学部が一番活動的になるんではなく、医学部というのはやっぱりめんどうですし、教師の投資もみんな違うわけです。そうすると、そうではない普通の文学部、法学部の連中が、医学部や工学部と実じような費用を出せ、予算を計上しろというのが紛争の一つのもとにもなっているわけですから、大学も、すべてのものの学部を全部築くというような総合大学よりも、もっと日本人に合う大学、そういうものにもつと変えなきゃいかぬ。そして必要な金は出してやればいいんですよ。夜学部の学生は、私は国公の夜学部の大学生は、ほんと、ただでもいいと思うんですよ。医学部の学生なら、こんな安い月謝もらわなくても、全寮にして、ただでもいいと思うんです。そのかわりに、五年間は北海道ヘでも行ってちゃんと働いてくれ、無医村対策やってくれと、そういう制度をほんとうにまじめに考えないで、ただ税金をつぎ込めばいい国民ができるとは思わないんです。ですから、もう足かけ三十年ですから、テーブルの上へみんな上げて、国民的課題として、与野党の別なく、先入感を持たないでひとつやろうじゃありませんかと、こう述べているわけです。
  546. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 国公立の夜間部、いかがでございますか。
  547. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 夜間部は、望ましいことでございますけれども、夜間部に入った人たちが、翌年は、また昼間の入学試験に通りますと、昼間に振りかまってしまうというような方がずいぶん多いようでございます。ほんとうに夜間しか勉強できない方が夜間に来るのじゃなくて、昼間の学校に入れなかったから夜間に入って、またその次には昼間にかわると、こういう傾向になったりするものでございますので、なかなか国公立大学が夜間部の増設をしない、これが現状でございます。しかし、いずれにしましても、だれでもが大学の勉強ができるのだというように持っていかなければなりませんので、放送大学といったようなものも、現実の問題として、もう二年前後のうちには実現と見られるところまで準備が進んでまいってきておるわけでございます。御心配になっておるような趣旨をいろんな角度で生かさしていただきたい、かように考えておるわけでございます。  同時にまた、国公立をふやすという御指摘もございました。かつては学生数の三割くらいが国公立でございましたが、現在は一七%ぐらいでございます。六十一年までには、同一年齢層の四〇%が大学に進んでも受け入れられるようにしたいと考えておりますが、その際には、二五%は国公立で受け持てるようにしようじゃないかというのが、現在の高等教育懇談会で出されておる結論でございます。その方向で努力をさせていただきたいと思います。
  548. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 時間がなくなりましたので、次の問題に移りたいと思います。  次に、私は、婦人の地位の向上をはかる施策の推進について若干のお尋ねをしてまいります。  総理はこのたびの施政方針演説の中で、特に婦人問題を掲げられ、私はこの問題でうれしく思いました。わが民社党におきましては、老人福祉、児童福祉とともに、母性福祉をわが国社会福祉の三本の柱と考えて、この確立を目ざして努力を重ねてまいりましたが、このたび母性保障基本法を近く国会に提案する所存で作業を進めておるところでございます。で、この法案の基本方針は、現行の諸立法を単に統一化するだけではなく、現行の母性保護対策の一そうの水準向上をはかるとともに、未来の国家社会をになう健全な子供の育成のために、国及び地方公共団体の責任において強力な母性保障の充実推進を期するものでございます。この内容を詳しく申し述べる時間はございませんが、あまりにも不備な現行法のもとで、妊産婦や新生児の死亡率が、欧米諸国に比べて三倍ないし五倍もあるこの現状にかんがみ、私たちはこの法案提案に踏み切ったものでございます。国会審議の際にはぜひ成立を期したい念願でございます。  そこで、まず総理、厚生大臣、文部大臣、三大臣から、母性保障に対する御所見を簡単に承りたいと存じます。
  549. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 母性保護の重要なことにつきましては、私もまことに同感でございまして、私どもも、今日まで母性の保護につきましては非常な努力をささげてまいったつもりでございます。御承知のように、お述べになりましたように、妊婦の死亡率というものは、西欧諸国に比べましてまだ少し高いのでございますが、戦争前に比べればずっとよくなってまいりました。さらにまた、母性と相並んで大事な乳幼児の死亡率、これは結核と相並んで、戦後の日本の衛生というものは非常な成功であったと思います。乳児の死亡率は、いまや西欧先進諸国よりも少ない状況になっておるわけでございます。そういうふうなことを背景といたしまして、私どもは、御承知のように母子保護法というものを制定いたしまして、御協力いただきまして、その法律をつくりまして、そして、母性、乳幼児に関する健康問題衛生問題に全力を尽くしておることは御承知のとおりでございます。妊婦につきましては、御承知のように妊娠中毒症に対する医療援助の問題あるいは新生児の援助の問題、あるいは乳幼児の健康診査を無料にするとか、いろんなことをやってまいりました。さらにまた、出産につきましての経費負担を、経済負担を軽くするというふうなことで、昨年の健保法の改正におきましては、出産手当を六万円にするとか、いろんな改革をやってまいってきております。しかし、こういう制度というもの、あるいはまたその内容というものは、これでもう完ぺきでございますなどということは言えるものではありません。今後とも母性の保護のためには全力を尽くしていかなければならぬ、かように考えておるものでございます。  お述べになりましたように、民社党におきましては、母性保障基本法でございますか、それをお出しになるということでございますが、まだ内容を私も全然見ておりませんので、その法案が出ました暁におきましては慎重に検討さしていただきたい、かように考えておるような次第でございます。
  550. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 現在、小学校の先生の半数以上は御婦人になっているわけでございます。それだけに、母性保護の問題も、教育の社会において特に私たち重視していかなければならない課題だと考えているわけでございます。またそういう面におきましては、国会におきましても育児休暇の問題が論議されているわけでございますし、また法案も紆余曲折を経てまいってきておるわけでございます。こういう経過から見てまいりますと、むしろ政府の責任で提案をさせていただくことによって早く解決をすることが大切じゃないだろうかなと、こんな気持ちも持たせていただいているところでございます。あわせまして、学校教育の一貫性も確保できるんじゃないかと、かようにも考えておるところでございまして、たいへん大事な問題だと考えておりますし、学校現場における問題は、そういう問題につきましても解決の促進に努力をしたいと存じております。
  551. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 母性、乳幼児の保護に対しては、重点を置かなければならぬことは申すまでもないことでございます。そういう意味で、戦後はだんだんと母性及び乳幼児の保護対策に対しても改善が行なわれてきたわけででございますが、しかし、長いこと男尊女卑の制度の中におりまして、まだまだ私は女性は恵まれない立場にあると思います。特に農村などの女性を見ますと、働く一方であるということを考えると、もっともっと考えてあげなければいかぬということをまじめに考えております。そしてその保護だけではなく、まあ中にはもう強くなり過ぎたという面もありますよ、ありますが、相対的に見て、やはりまだまだ男性に比べていろんな制度の上でも欠陥があります。ですから、そういう意味で、婦人の資質向上というためにも、もっと施策を行なうべきだということをほんとうに考えております。
  552. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 たいへんあたたかい御答弁をいただいたわけでございます。文部大臣もいま育児休暇は政府提案にでもしたいということでございましたね。これ、ぜひやっていただきたいんですが、そのときに大臣、ぜひこれは私、有給休暇ということをひとつ御提案しておきたいと思うんです。その点について大臣いかがでございましょうか。
  553. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) いまお話しの点が、従来から一つの議論の焦点だったと思います。ノーワーク・ノーペイの大原則もあるけれども、先生方の立場を考えると、何らかそこに配慮を加えるべきだという意見、これも大切な考え方だと思います。そういう問題を詰めまして、私としては、早期の解決に努力をしたいと、かようにかんがえてるところでございます。
  554. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 たいへんありがたいことでございます。ぜひ、休んだ先生たちが生活できるという形においての育児休暇法案、こういうものを御提出いただきたいと存じます。  そこで、あわせて今後、保母とか、看護婦、一般勤労婦人についても、同様の措置がとられるべきだと思いますけれども、その点につきまして、厚生、労働大臣の御意見を承っておきたいと思います。
  555. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 看護婦さんや保母さんの仕事の重要性にかんがみまして、育児休暇の制度を設けるということは、私は望ましいことだと思います。望ましいことだと思いますが、先ほどお述べになりましたように、有給にしたがいいか、無給にしたがいいかといったふうな問題もあり、なかなかこれは制度として確立するということはむずかしい問題でございます。望ましいとは思いますが、まだ成案を得ておりませんので、私どもはこういう制度ができますように、今後とも努力をいたしてまいりたいと、こう考えておる次第でございます。
  556. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 先ほどの保障法案は、私のほうでもお待ちしております。ぜひひとつお出しいただいて、参考にさしてもらいたい。  それから、いまの休業期間中の生活安定については、専門家で研究もしておりますが、だんだんと考えてまいりたいと、こう思います。
  557. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 時間がだんだんございませんので、妻の座向上の問題に移りたいと存じます。  すでに総理、大蔵、法務各大臣のお手元には、いまはなき民法学者我妻博士の、夫婦共有名義登録の慣行をつくれという御講演内容をお届けしてございますので、ごらんいただけたかと存じます。労働省は、婦人の地位向上のためには常にあたたかい御配慮をいただいておりますので、この際、我妻先生のこの御主張をPRしていただきたいと考えておりますが、これも後ほどあわせて御答弁をちょうだいしたいと思います。  従来、私は幾度か夫婦財産のあり方、夫婦間の相続、贈与税をめぐって質問を続けてまいりました。その都度、各大臣は前向きに対処する旨の御答弁をちょうだいしました。総理は昨年の六月の決算委員会で、気持ちはあなたと同じなので、十分勉強しますと御答弁をくださり、福田大蔵大臣は昭和四十四年の予算委員会で、夫婦間の生前贈与についての今日の扱いは薄いので、今後この問題に取り組みたいと、あたたかいお答えをいただきました。そして田中前法務大臣は、昨年の本会議で、憲法の男女平等のたてまえからも、夫婦共有制は当然と賛意を表してくださいました。こうした御答弁の成果を織り込んで、御所見を承わりたいわけでございます。  ただいま、いろいろ私は考えてまいりましたときに、この具体的な進展がまだ見られないという中で、不幸な妻が次々できております。たとえば、結婚後十年でマイホームを購入した百貨店勤務のサラリーマン夫婦が、夫の不貞から別居することになり、妻は夫名義で購入した土地家屋の所有権の帰属を争う訴訟を四十八年に起こしました。しかし、これは敗訴に終わっております。まことにお気の毒でございます。もうこれ以上ほうっておくわけにはまいりません。  そこで、私はこの国会で、いわゆる夫婦財産制に関する民法の改正案を民社党から提案をすることにいたしました。  その骨子は、第一は、夫婦の協力によって得られた財産については、それが夫の名義であっても、妻に原則としてその財産の二分の一の価値が受けられる権利を認めること。また、夫が妻に無断でこの財産を処分した場合は、妻がこの権利を保全できるような措置を講ずること。第二は、離婚死亡により婚姻が解消したときは、この権利を実行に移すことができることとする。この二つの点でございます。憲法に照らして私は当然の主張だと存じますが、その実現を念願をしておる次第でございます。最後にこのことに関しまして関係大臣からあたたかい御理解ある御答弁を求めて、私の質問を終わります。
  558. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま萩原さんからお話しのように、萩原さんたいへん妻の座と税の問題のことにつきまして御熱心でありまして、御主張は所得税につきまして二分二乗方式をとるべきである。こういうことが一つ。それから生前贈与につきましていま御指摘もありましたが、これは薄いのではないか、これを厚みのあるようにせいというお話。それから第三は、遺産相続の場合に、もう少し妻の座を尊重すべきではないか、こういうお話かと思うんですが、第一の二分二乗の問題は、これはメリット、デメリット相当ありまして、ちょっと結論の出ないようなむずかしい問題なんです。なお検討はしてみますが、そういう事情であることを御了承願いたいと思います。  それから第二の生前贈与を受けた妻の税の問題、これは萩原さんが、私の記憶では、初めて私に御要請ありましたのは昭和四十四年かと思いますが、そのとき妻が夫から受け取りました財産、そのうち住居用のものは何がしか控除すると、こういう制度がありまして、当時は二百万円であったわけであります。それをとにかく今日は六百万円まで引き上げておると、こういう状態でございます。しかし、物価事情なんかがありまするから、今後もこの引き上げ方につきましては考えることにいたします。  それから第三の遺産相続の問題につきましては、いまの妻の法定相続分にかかわらず三千万円まではこれは無税であると、こういう措置になっているんですが、この三千万円というワクは、特殊な資産家あたりを除きますと、大体これは大かにの妻に均てんをすると、こういう程度の額でありますので、まあ今日わが国は夫婦別産制をとっておる、しかし実態は共産制だと、こういうふうに考えてもいい。しかし形式的にはとにかく別産制だと、そういう法制的立場にあるわけでありまして、そういう制度の中ではまあ精一ぱいのところではなかろうかと、こういうふうに考えます。  ですから、第一点の所得税につきましてはなお税制調査会で検討をする。第二の生前贈与につきましては、物価の情勢等を考えて今後もこれが増ワク方を検討する、かように御理解願います。
  559. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま大蔵大臣非常に前向きな答弁を申し上げましたが、私もこの夫婦間の問題場合によれば親子の問題、二親等、三親等といわれるような問題に対してもう少し合理的な税制が考えられないかと、長い主張でございます。しかし、まあことしは二兆円減税ということでございまして、この次は片づけるものは何かというと、まず夫婦の問題なんです。これは生きている場合のいわゆる所得に対する、別産制ではあるが、しかしこれも、別れる場合など自動的に裁判に持ち込まなくとも、もうこれだけは自分のものである、それで名前は、りこうな人は、新しく家を建てるときには、十分の六は主人の名前、十分の四は妻の名前というようにもうやっていますが、そうじゃなく、まさか別れるなんて思いませんから、ということでみんなおやじの名前にしておくと、不貞を働かれて今度裁判をしなければならぬと、これはもう日本の家族制度や社会制度の根幹に不信感をもたらすものであると、そういうものをまずやりたいということが一つあります。もう一つは妻が、別産制を法律ではとっておるけれども共産制なんだという前提に立ちまして、夫がなくなって妻がなくなるときまでは、二分の一だったら二分の一の財産は妻の名義にした場合、相続税のかからないようにして、妻がなくなったときに初めて遺産相続税がかかると、そういう制度になぜ踏み切れないかというのを私もいま検討しているわけです。そうすれば、うちへ寄りつかなかったような子供がみんなおやじが死ぬと寄ってきまして、うちを売らなければいかぬ。せめて妻がなくなるまでは、これはうちは夫のにおいのするうちでずっと終えんの地を迎えられると。そういうところがどうも画一、一律的である、情のない税制だということで、私たちもしろうとはしろうとなりに検討しておるということでございまして、これは次に税制に手をつけるときには何とかしてこの問題だけは均分相続という戦後の制度の中で、より合理的なもの、そうすれば御主人がなくなっても、子供におばあちゃんがじゃまにされるようなことはないわけです。そういう、ほんとうに、私が死んだらどうぞお分けなさいということになれば大切にもしますよ。そういうようなほんとうに社会の中における夫婦、親子というものを税制上どう調整するか、これはまじめに検討してまいりたいと、こう思っております。
  560. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 総理大臣、大蔵大臣から非常に前向きな話が出ましたが、私のほうとしますと、夫婦ともどもに働いた財産でございます。そういう意味から、前向きの姿勢をとりながら、また大事な経済制度に関係いたしますから、総理府のほうに調査会をつくりその結論をお待ち申し上げると。  PRのほうにつきましては、我妻さんも書いておりますが、婦人団体に対して、制度の改正もいいが、そういう慣習をつくる運動をしてくれと。マイホームとかマンションなどではもう夫婦の共同名義になっておるのがたくさんあるですね。そういう意味でひとつよくPRのほうを、私のほうもやりますけれども、あなたのほうでもお願いしたいと思います。
  561. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 民法についてはよろしくお願いします。  じゃ、終わります。(拍手)
  562. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして萩原君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  563. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 春日君。  ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  564. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 速記をつけて。
  565. 春日正一

    春日正一君 きょうから政府は石油製品を一キロリットル当たり八千九百四十円値上げをしましたけれども、これは昨年の暮れ以来の便乗値上げの上にメジャーの利益を組み込んだ価格をきめたものであって、政府がみずから介入してやったやみカルテルであるといっても言い過ぎではないと思います。この値上げ国民生活と日本経済に与える影響というものは深刻なものがあると思います。政府は、価格を凍結すると言っておりますけれども、これは一時的な麻酔薬にすぎないものであって、おそらくすべての物価が高騰を誘発されるでしょう。  そこでお聞きしますけれども、去年の石油危機のときの値上げ幅はどれだけだったか。去年上半期と去年の十二月で全油種の平均幾ら上がったか、通産大臣から説明を願います。
  566. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原油価格は一月以降二倍以上に引き上げられました。また、わが国だけが国内価格を低く維持することは、石油の国際商品としての性格から供給の減少を招くおそれがあります。さらに、不自然な水準に固定することは、長期時に見てエネルギー節約型の産業構造への転換をおくらせることになります。こういうような要素から、やむを得ず必要最小限度の値上げを実行した次第でございます。  その根拠といたしましては、四十八年度上期の原油価格は、CIFで五千百九十二円・キロリッター、四十九年度上期の原油価格は、CIFで一万四千十六円・キロリッター、四十八年度上期に対する要値上げ幅は、これは石油輸入価格上昇に直結した値上げ要因その他の値上げ要因を含めまして、これは一万三千七百五十九円・キロリッター。これに対して四十八年度上期利益を吐き出したもの及び四十八年上期の利益の半分を吐き出したもの及び四十八年十二月までの既値上げ分の控除、それはいわゆる便乗値上げの分、これがキロリッターについて四千八百十三円。これで、残りといたしまして八千九百四十六円・キロリッター上げるということにしたわけでございます。  で、この基本的な水準に基づきまして、各油種別に開いたわけです。そのうち灯油とLPG、家庭用のものについては現行標準価格を維持するということで値上げはゼロ、そのほかのものについてこの基本水準を開いたというのが今回の油種別値段でございます。
  567. 春日正一

    春日正一君 私の聞いたこと、答えていないんですね。まあ先へいきますが、資源エネルギー庁の石油部の「最近の石油事情」というもので見ますと、私が聞いた昨年の上半期死均九千七百九十四円、十二月一日一万四千三百五十七円、四千五百六十三円の値上げということになるわけであります。これを私は聞いたので、今後聞いたことを答えていただきたい。  昨年の石油危機のときに四千五百六十三円だった。それであれだけ騒ぎになったんですね。それを今度は八千九百四十六円と約二倍に上げるわけですから、だから福田大蔵大臣はあのときに物価狂乱という名旬を吐かれましたけれども、今度は狂乱どころではなくて大狂乱、錯乱になるのではないかというふうに心配されるわけであります。総理は、この石油値上げによる影響をどういうふうにお考えになっておいでか。どのような対策を持っておいでか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  568. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 去年の石油は、御承知のとおり、突然起こった中東戦争という思わざる結果でございましたし、また当時石油価格をきめられるような状態になかったわけでございます。国際的には流動しておる過程における問題でございました。そういう中で便乗値上げが行なわれたということでございますので、狂乱物価というようなものであったわけでございます。まああのままのでんでいけば、今度は怒濤のごとくとか錯乱状態とかということが確かに考えられるわけでございますが、怒濤物価にしたくない、錯乱物価にしたくないということで、今度の石油価格をきめたわけでございます。この価格をきめたという中には、各国でもって上げている、最高一万三千円近く上げているところもあるわけでございますから、そういうものから過去の便乗値上げ分というものや利益を得たものを吐き出さして、石油企業が一部赤字になるというようなところまで押え込んできめたわけでございますし、また去年の狂乱物価というような背景にあったそういう体質改善というものを前提考えております。金融の引き締めを行なう、総需要の抑制を行なう、それから指定物資には、指定をするという前段において行政指導物資を五十三も押えておるわけでございます。行政的にどうしても上げなきゃならぬというなら政府の認証を得なさい、承認を得るにはそれなりの理由を政府に示さなきゃならぬ、こういうことでありますので、これはもう錯乱物価とか狂乱怒濤というようなものには絶対にしたくない、してはならぬ、こういう重大な決意のもとにあることを申し上げておきます。
  569. 春日正一

    春日正一君 急に上がらぬというふうに言われて、五十三品目を凍結するとか、あるいは百貨店やスーパーに上げないように要請するとか、いろいろ処置をとられたようですけれども、凍結するといわれておる五十三品目のうちで、公正取引委員会によってやみカルテルの勧告を受けた品目、立ち入り検査を受けた品目は何と何がありますか、それは合計何品目になりますか、公取にお知らせ願いたいと思います。
  570. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 立ち入り検査をした件数というのを的確にお答えする資料がいま手元にはありません。これはこういうふうに申します。審査件数として、事件として取り上げたものが、昨年四月から本年二月までの間で、新たに発生したものが九十八件、そうして前年度からの繰り越しが七十九件ありまして、合計は百七十七件であります。そのうち六十三件勧告しておりますが、もし御質問の趣旨が違っておりましたら訂正いたします。
  571. 春日正一

    春日正一君 こういうことなんです、私の聞いたのは——これ、委員長、時間に入れないでくださいね。五十三品目が凍結ということで政府から指定されているわけですけれども、その中で、昭和四十七年以降に勧告または臨検査中の品目を聞かせていただきたいと言って——私、これ、公取からいただいたのを持ってるんですよ。だから、これをきちっと教えていただければけっこうなんです。(「時間ちゃんととれ」と呼ぶ者あり)質問に答えないで、そこがどんどんどんどん減っていくのに、そういうひきょうなやり方、よくないですよ。
  572. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 発言者に御注意いたしますが……
  573. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 答えます。
  574. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 明確に、よく質問の趣旨をお聞き取り願います。
  575. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 質問の御趣旨がわかりましたので申し上げます。  これは、その品目はいまの五十何品目の中にこちらで臨検検査を行ないました。それはアルミ地金、アルミ圧延品、アルミサッシ、高圧ポリエチレン、中低圧ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニール樹脂、セメント、上質紙、段ボール原紙、ナイロン長繊維、アクリル短繊維、ポリエステル短繊維、ポリエステル長繊維、住宅設備機器、即席めん、それから塗料、農業機械、これはただし塗料と農業機械は目下また臨検審査中でありまして勧告の段階に至っておりません。したがいまして、勧告を行ないましたものが十六品目、なお二件懸案と、こういうふうになっております。
  576. 春日正一

    春日正一君 結局、これで見れば先取り便乗値上げをやったものを上げぬでくれということで高値安定ということになってしまうわけです。百貨店、スーパーも、参議院の物特委員会に出席した松下省二日本百貨店協会の常任理事は、在庫のあるうちは約束を守るというふうに言っております。ということは、安く仕入れたもののあるうちは上げないけれども、仕入れが高くなれば上げるということになるんじゃないだろうか。そういうふうに考えてみますと、百貨店に要請しましたとか、凍結しましたとか言っても、これでは全く当てにならないということになると思います。  そこで、その次に問題になるのは、この石油値上げで当然いろいろな物価が上げてもらいたいということを言ってくる。特に、まあ私鉄、ガス、電力、国鉄運賃、消費者米価、こういうような公共料金の値上げが大体いま問題になっているわけですけれども、これは上げますか、上げませんか。
  577. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国民生活に影響のある公共料金については、従来どおり抑制の原則を貫いてまいりたいということを申し上げておるわけでございます。
  578. 春日正一

    春日正一君 そうすると、その抑制はいつまで抑制するのか。私、心配するのは、電力コストの中には石油の比率が非常に高いわけですね。それが今度はさらに石油値段が上がったということになれば、この値上げ前から電力は上げてくれというようなことを言われておったものが、さらに上げたということになれば、値上げ圧力というものはもっと強くなるんじゃないか。だから、そういうふうに考えてみますと、極力と言われても、極力というのはどこまでなんだと、三月一ぱいが極力なのか、四月一ぱいなのかということが不安になるわけですわ。そこで、値上げしないでやる具体的な方法というものを考えておいでなのか。それとも値上げしないという確認はできないということなのか、どっちなんですか。
  579. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 石油値上げですぐ電力が影膨を受けることは当然でございます。電力料金の中に占める石油のウェートというのは二〇%といわれております。これが倍になれば四〇%になるわけです。それで春闘がありますから、五〇%に影響するということになるわけです。これはもうとにかくたいへんなことであることは事実なんですが、石油価格が上がってすぐ電力が上がるというと、生産からすべてのものに影響があるわけでございますので、石油価格を上げても他の物価が上がらないように目張りをしておるわけです。ですから、そういうものの安定的な状態を見ないで、とにかくこれを上げてもまだだいじょうぶ、だいじょうぶというわけになかなかいかぬので、そういうことを慎重に配慮しておるということだけは事実でございます。しかし、石油は上がるんですから、もうとにかくきょうから高い石油をたかなきゃいかぬということですから、電力会社が困ることはほんとうに私困ると思います。思いますが、そういう意味で、まあとにかくこらえられるだけこらえてくれと、中には去年から上げなきゃならぬという東京電力もあったわけです。おととし四国電力と関西電力の改定をするときに、東京電力も一緒でなければだめだと、何年も、十年も、一体月給が上がってきておって、とにかくこれだけのことを企業努力でやれるわけがないと、しかも公害投資をこれだけ要求されて、できるわけがないじゃないですかというものを押えておったんです。また石油ですから、これはたいへんなことはよくわかるんです。これは数字を見なくたってわかるんです。わかるんですが、国民生活に及ぼす影響の重大さを考えながら、とにかく可能な限り最大の抑制をしてまいりたいと、こういうことで、それはただできるものじゃありません、電気が消えたら困るんですから。そういう意味で、外債の許可をするとか、それから特融を考えてもよろしいし、それから必要ならば資金運用でもって金利調達が行なわれる道がないのか、商法の特例法が必要なのかどうか、そういうものを政府全体として検討を進めておるのでございまして、いつまで据え置きます、いつまでになると上げます、そういうことを言えないぐらい重要な問題である。こういうことです。ひとつ御理解をいただきたい。
  580. 春日正一

    春日正一君 そうすると、結局のところは上げざるを得ないというふうに考えてもいいわけですね。
  581. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうも端的に、上げるんですねということを言われても——上げないようにいま努力しているわけです。しかし、それは無制限に押えられるものじゃない。これはそういうことでございます。
  582. 春日正一

    春日正一君 そこで、こういう物価値上げの圧力が強まってくるという状態のもとでは、公正取引委員会の果たす役割りは非常に重要になってくると思うんですけれども、その点、総理はどうお考えですか。
  583. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどの御質問にもお答えしましたように、公取は物価の番人、独禁法の番人として非常に重要な地位にある、近来とみにその成果をあげておる、こう理解しております。
  584. 春日正一

    春日正一君 それでは、やみカルテルなど公取に対する独禁法違反の申し立ての受理件数、実際にそれを処理した件数、発生件数といいますか、はどれだけあったか。昭和四十六年度以降の各年度について公取のほうから知らしていただきたいと思います。
  585. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) お答えのしようがいろいろございますが、一般からのいわばやみカルテル等の違反があるというふうな申告につきまして申し上げますと、これは単純に件数をただ足しただけでございますから、あとでまた申しますが、四十六年度は二百九十九件、四十七年度は五百六十件、四十八年度は四月から本年の二月までの間で一千二百四十六件受け付けております。しかし、この中には相当同一事件に対する重複がございまして、厳格にいまその全体の件数を申し上げることができないんですが、まず当面私のほうが本来ならば立件調査をする——立件と申しますのは、事件として審査をすることを要するものと考えられるもので、これが二十九件たまっておるわけです。しかし、三十件近い件数のほかに、まだあるんです。予備調査をしているものが二十九件ありますが、これを全部手がけるというわけには、おそらくまいらないだろうと思います。  それで、処理件数につきまして申しますと、四十六年度に、年度内に新規発生いたしました件数が九十八件ありまして、勧告に至ったのが三十七件、それから四十七年度に百十六件の新規発生がありまして、勧告に至ったものが三十件。それから四十八年、これは二月までの数字でございます。先ほどとちょっと違いますが、九十八件の新規発生がありまして、六十三件勧告しておるということになります。この差はどうかといいますと、この中で、これは全部その年度の分をその年度の勧告数と比較しておりますが、ずれずれがございますけれども、勧告に至らない件数の中には、自発的にやみ行為等を、違反行為を取り消したというものを不問にいたします。それから証拠がどうしても 握できないということから打ち切りになったものがございます。ですから、それらが勧告を受けないものでございますが、本年の場合ですと、九十八件立件いたしまして、六十三件というふうな非常に高い勧告件数になっております。
  586. 春日正一

    春日正一君 いま言われたように、四十七年が五百六十件、四十八年度二月までで千二百五十件というようなたくさんの問題が出てきておる。ところが、この処理件数があんまり進んでいないというのはどういうわけですか。
  587. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 結局、この調査をいたしますについて、共同の行為がもう大部分でございますから、まあ私的独占禁止そのものの事件もございますが、大部分はカルテル的行為である。といたしますと、これを立証するのになかなか準備段階から相当手を要します。全然、たとえば何もなしに価格が同じだからというだけで立ち入り検査をした場合には、しばしば失敗に終わりますので、事前調査を相当やらなければなりませんし、また、その調査をしたあとの始末においては、最近たびたび私申しますが、黙秘権を行使する者が非常に多い。検察庁に行けばこれはちゃんとしゃべるんでしょうけれども、私のほうでは検察庁のような強権を持ち合わしておりませんから、そういうために調査に非常に労力を要するということで、一つの案件を片づけるのにも相当な日数を要します。そういうことで、まあおそらくスピードとしては、私はできるだけ早くやっているつもりでございますが、何といたしましても陣容の不足から全部に手が回りかねると、こういうことでございます。
  588. 春日正一

    春日正一君 衆議院の予算委員会高橋公取委員長はこういうふうに言っておられますね。阿部昭吾さんの質問に答えて、「各方面からいろんな情報の提供がございます。その中には、やはりカルテルであると思われるものはありますが、これを割愛しているような状態でありまして、なおかつ取り上げた問題は、若干いま多過ぎます。」と、こういうふうに答弁しておられますね。そこで、このやみカルテルと思われる疑いのあるものまで割愛しなければならないということは、これは重大な問題だと思いますよ。みすみすそこに問題があるのに目をつぶってなきゃならぬと、これでは法の厳正な運用が困難になるんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点、総理はこういう状態でいいと思いますか。
  589. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは政治論からいたしまして、疑いがあるものに対してはすみやかにその真偽を正されるということが望ましいことは申すまでもございません。まあ公取側で独禁法の改正問題も勉強しておりますし、また人員の整備、機構の整備等もいま検討しておるようでございますから、先ほども述べましたとおり、公取の結論を待って予算編成の過程においてできるだけ前向きにこたえてまいりたいと、こういうことを述べておるわけでございます。
  590. 春日正一

    春日正一君 まあ努力しても結局こういう状態ということですね。  で、公取委員長は、こういう状態を打開するために当然増員を要求しておいでだと思うんですけれども、四十六年以降の各年度の定員、増員要求の人数、実際にふえた人数はどうなっておりますか。
  591. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 申し上げます。  四十六年度、定員は三百五十六名、要求数は三十六名となっております。そして増員は九名で削減が四名ございますから、純増は五名。四十七年度、三百五十八名になった定員に対しまして、要求数は十九名、そしてプラスマイナスございまして、純増は二名。四十八年度、三百六十三名でございます。要求数二十五名で、これでふえたのが純増では五名。四十九年度でございますが、これは三百六十九名というのは、これは実は間違えまして、いずれも定員は要求じゃなくて、そのふえたあとの数字でございますから、現在三百六十三名のものが三百六十九名になる。要求数は五十四名でございましたが、増員の認められたものは十一名でございまして、削減が五名ございますから純増は六名と、こういうことで、その結果が三百六十九名の案で御審議を願っておるというわけでございます。
  592. 春日正一

    春日正一君 総理、お聞きのような状態で、五十四名要求して六名しかふえてない。その結果、探知担当職員、これ、やみカルテルなんかを専任に調べる職員はわずか三名というような状態になっている。まあこれは応援を求めてやってもおるようですけれども、系統的、専門的にそういうものを追及していくということがまあほとんど十分にできないような状態になっておる。そこで、これではやみカルテルや大企業の横暴を取り締まる保証がないわけですね、野放しになるわけですから。公取をもっと増員して体制を強めるべきだと思うんですけれども、その点、総理どうですか。
  593. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどから何回も申し上げておりますとおり、いま公取では私的独占禁止法の改正案も勉強中のようでございますし、また、機構や人員等に対してもいろいろ検討を続けておるようでございますので、年度予算編成の過程においてはその結論を待って対処してまいりたい、公取の重要性ということは十分認識しておりますと、こう述べておるわけであります。
  594. 春日正一

    春日正一君 十分認識しておいでなら、去年以来のあのカルテル騒ぎで公取の役目がどれほど大事かと、しかも、それが現実に、公取委員長が国会の場で疑いあるものを割愛せざるを得ないということばで、見のがさざるを得ないということを言っておるんですら、これはいますぐふやしてけっこうだと思うんですよ。ふやせるでしょう。どうですか、要求だけふやしてもらえませんか。
  595. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 来年度の予算編成にあたりまして、各省定員の相談をいたしました。これはもう春日さんよく御案内のように、いかに行政費を節約して、この多様化、複雑化した行政需要に応じて満足に人員を充実するかということは、これはたいへんなことですね。いま公取委員会に対してたいへん御理解を深くしていただいておっしゃっておりますけれども、各部署、部署、いずれも行政需要が非常に多い。その中で、定員をふやさないでそしてこの行政需要にこたえていこうということについて、これは内閣がよほどしっかりした姿勢をとらない限りはたいへんなことなんでございます。幸いにこの数年間、計画削減の方途をとって、そしてできるだけ中央官庁の定員がふえないようにと、で、まあ二次にわたる削減計画でとにかく五千人か——一般職員の五十万六千・四十二年度末の定員が、今日は五十万一千台に抑制されている。これは多くの国民の方々の期待にこたえているために、それは内閣の方針に従って各省それぞれ非常な努力をしていただいた。そのために、公取委員会のみならず、各省とも今日の行政需要に応ずるためにはたいへんな苦労をされておる。私はその点については深く敬意を表しておるわけでございます。  公正取引委員会につきましても、もうだんだんお話しのようでございます。行政管理庁としても、定員査定にあたりましては十分理解をもって、そして正直、四十九年度五十四人の定員増のお話があって、それをまあとにかく十一名おふやしをすると、しかし、五人の削減計画がありますから、純増六人になっております。それで、大防地方事務所のほうには取引課も置いていただくようにまとめて、これは今日取引課、公取の任務というものが非常に重要でございますからたいへんだと思いますけれども、これはひとり公正取引委員会だけでなしに、各省非常な苦労をしておるということもあわせて考えて、幸いにいま総理もお話しになりますように、独禁法の改正作業が行なわれておる。それが成案を得るようになりますれば、あわせて十分前向きで対処していかなきゃならぬ。しかし、どっちにしても、どの部署といえども、特にあるいは今日においては公正取引委員会はそうだろうと思いますが、十分の人員でなしにやっているということだけは、私は地方職員のこの増加傾向を見ますときに一そうその感を深くいたしております。一方、中央政府のほうは五千人から減ってきておりますが、県市町村のほうは一般職員だけで十万からのふえ方をしておるということを考えてみますと、この定員の抑制がいかに困難であるかということを御理解をいただきたいと思います。
  596. 春日正一

    春日正一君 その点は、行管長官の苦衷はわかるんですけれどもね、私いま言っているのは、いま一番大事なところにふやすべきじゃないのかと。公取の職員組合からの陳情によれば、日曜も休めないで多くの人たちが残業をおそくまでやって、くたくたになるほどやっておると。それでも、国民のやみカルテルを押えてくれ、便乗値上げはとめてくれという願いにこたえ切れないで、公取委員長が国会のこの席でもって、そういうものまで割愛せざるを得ないという、つらいことを言わなきゃならぬわけでしょう。だから、私は何でもふやせと言っているんではない。いま一番国民の関心のポイントはここなんだから、ここの五十六名ぐらいふやしたらいいだろうと。五千人余りの定員の余分があるわけでしょう。予備費もあるわけでしょう。だからふやしたらどうだと言っているんですわ。それを聞いてもらえるかどうか、総理にもう一言だけ、イエスかノーか聞かせてください。
  597. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま予算審議中でございますから、これはもう予算を変更するというわけにはまいりません。まいりませんが、公取の重要や任務というものは十分理解しております。また、公正取引委員会の要請をしておるという状態も承知いたしておりますので、これはひとつ次年度の予算編成というときには十分前向きに検討してまいりたいということでございます。まあ公取委員長からは、またひとつ実情をもっとこまかく聞いてみます。
  598. 春日正一

    春日正一君 私はきょうはここで打ち切りましょう。時間でしょう。いいです。(拍手)
  599. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) それでは、春日君の残余の質疑は明日これを行なうことといたします。  明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十分散会