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1974-03-13 第72回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十三日(水曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員異動  一月二十九日     辞任         補欠選任      小平 芳平君     塩出 啓典君      加藤  進君     渡辺  武君  二月六日     辞任         補欠選任      黒住 忠行君     小林 国司君  二月七日     辞任         補欠選任      小林 国司君     黒住 忠行君      木島 則夫君     高山 恒雄君  二月八日     辞任         補欠選任      高山 恒雄君     木島 則夫君  二月二十五日     辞任         補欠選任      高橋 邦雄君     小林 国司君      米田 正文君     二木 謙吾君  二月二十六日     辞任         補欠選任      向井 長年君     高山 恒雄君      渡辺  武君     加藤  進君  二月二十七日     辞任         補欠選任      小林 国司君     高橋 邦雄君      二木 謙吾君     米田 正文君      加藤  進君     渡辺  武君  三月十二日     辞任         補欠選任      上田  稔君     今泉 正二君      白井  勇君     濱田 幸雄君      渡辺  武君     加藤  進君  三月十三日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     初村瀧一郎君      小山邦太郎君     中村 登美君      三木 忠雄君     沢田  実君      塩出 啓典君     中尾 辰義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鹿島 俊雄君     理 事                 片山 正英君                 嶋崎  均君                 西村 尚治君                 細川 護煕君                 吉武 恵市君                 小野  明君                 加瀬  完君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君     委 員                 今泉 正二君                 小笠 公韶君                 大竹平八郎君                 梶木 又三君                 木村 睦男君                 熊谷太三郎君                 黒住 忠行君                 古賀雷四郎君                 高橋 邦雄君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 中村 登美君                 初村瀧一郎君                 濱田 幸雄君                 林田悠紀夫君                 原 文兵衛君                 米田 正文君                 上田  哲君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 宮之原貞光君                 山崎  昇君                 沢田  実君                 鈴木 一弘君                 中尾 辰義君                 加藤  進君                 須藤 五郎君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  中村 梅吉君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        郵 政 大 臣  原田  憲君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   亀岡 高夫君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      町村 金五君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       保利  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       森山 欽司君    政府委員        内閣審議官    小幡 琢也君        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        警察庁刑事局長  田村 宣明君        防衛庁経理局長  小田村四郎君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁物価        局長       小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁調査        局長       宮崎  勇君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君        大蔵省主計局長  橋口  收君        大蔵省理財局長  竹内 道雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       松川 道哉君        文部大臣官房審        議官       奥田 真丈君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        厚生省社会局長  高木  玄君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        食糧庁長官    三善 信二君        通商産業審議官  森口 八郎君        資源エネルギー        庁長官      山形 栄治君        資源エネルギー        庁石油部長    熊谷 善二君        資源エネルギー        庁公益事業部長  岸田 文武君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省航空局長  寺井 久美君        労働省労政局長  道正 邦彦君        建設省計画局長  大塩洋一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○公聴会開会承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会開会いたします。  この際、委員異動に伴う理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事木島則夫君を指名いたします。     —————————————
  4. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  理事会におきまして、三案に対し、総括質疑は本日から七日間とし、質疑総時間は千八十五分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党それぞれ三百八十五分、公明党百四十分、民社党及び日本共産党それぞれ七十分、第二院クラブ三十五分とし、質疑順位につきましては、とりあえず本日は、お手元に配付いたしました質疑通告表のとおりとすること、一般質疑は三月二十二日から六日間とし、質疑総時間は八百四十五分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党それぞれ二百九十九分、公明党百九分、民社党及び日本共産党それぞれ五十五分、第二院クラブ二十八分とすることに協議決定をいたしました。  そのように取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 次に、公聴会開会承認要求に関する件についておはかりいたします。  公聴会は来たる三月二十九日及び四月一日の二日間開会することとし、公聴会の問題、公述人の数及び選定等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 参考人出席要求に関する件についておはかりをいたします。  三案審査のため、本日、日本銀行総裁及びその役職員参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  10. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) それでは、これより総括質疑を行ないます。羽生三七君。(拍手)
  11. 羽生三七

    羽生三七君 四十九年度予算審議関連して当面する諸問題についてお伺いをいたします。  今日の物価高インフレ要因は、私は国際的な要因、たとえば輸入インフレ、あるいは国際通貨体制、あるいは石油等の資源問題などのそういう国際的要因が多くの問題を示しておることを十分承知いたしております。しかしそれとともに、この一、二年来の国内政策、すなわち景気政策はじめ経済運営基本政策失敗から生じた一種の政治インフレであることもまた明らかであると思います。物価に対する田中内閣政策上の失敗については衆議院でずいぶん論議をされました。だから同じ問題を私はここで数多く蒸し返そうとは思いません。しかし参議院予算委員会としては本日が最初でありますから一応問題点指摘しておかなければなりません。  問題点の第一は、田中内閣成立後の四十七年の大型補正予算、それから四十八年の調整インフレ的超大型予算等、一連の景気刺激政策とともに、列島改造論新幹線計画等々の登場によりましてインフレ風潮を一段と刺激して、これが当時の通貨過剰流動性と結びついた政治インフレであると思います。さきにも触れましたように、私はこの物価騰貴国際的要因を無視するつもりは毛頭ありません。十分承知をいたしております。また内政上の問題につきましても、田中内閣成立以前からの自民党の高度成長政策の体質に伴う問題点も、これまた十分よく認識しておるつもりであります。しかし、それにもかかわらず、田中内閣成立後、世界一ともいわれるような驚くべき物価上昇を示したことは、内政上に多くの問題のあることを示しておる証左であると思います。その証拠には、田中内閣成立以前の四十六年一月から四十七年七月まで、つまり田中内閣誕生のその月までの十九カ月間をとってみますと、この十九カ月間の卸売り物価上昇率は、ゼロどころではない、マイナスであります。ところが、総理が就任された翌月の四十七年八月から物価上昇に転じまして、一けたが二けたになり、ついに最近では対前年同月比三十数%という上昇を見るようになったわけであります。これは一つには、私は田中さんが総理に就任された時期が悪かったと、これは皮肉ではない、これは時期的な問題も一つあると思います。そういう問題とともに、この政府失敗の陰に隠れて、そうしてつくられた物不足を現出し、買い占め売り惜しみ便乗値上げ等、数々の不当行為によってばく大な利益をかせぎまくった大企業、商社等の不当、不法行為、これは重大な反社会的な行為としてきびしく糾弾しなければならないことは当然であります。しかし、同時に、なぜそういう状態が惹起したのか、引き起されたのか、つまり経済運営のあり方についても、これをわれわれが問題にすることは当然であろうと思います。この間の問題を顧みて、総理は現在どのように反省をされておるのか、問題を認識されておるのか、まずこの点からお伺いをいたします。
  12. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価抑制は、当面、緊急最大国民的課題でございます。政府全力をあげてこの目的達成のために努力をいたしておるわけでございますし、自後も努力を続けてまいりたいと考えます。御指摘のように、物価上昇要因は多々あるわけでございますが、政府は、それらの問題に対して取捨選択をしながら全力を傾けてきたつもりでございますが、しかし結果的に見て反省をすべきところがないとは考えておりません。こういう問題に対しては、理由はあるにしても、事実を的確に把握をし、転換すべきものは転換をし、また、ただすべきはただして、事態に対応してまいらなければならないと考えておるわけでございます。  また、御指摘のとおり、私が内閣を組織をしてから物価は上がったという御指摘でございます。これは数字が示すとおりでございます。私が内閣の首班の地位にあるうちに、いままでよりももっと、最もひとつ物価を安定せしむるということを、もしではなく、これはどうしてもなさなきゃならぬことでございますから、そういう事態を招来することによって、前半における御指摘と相殺し、功罪相半ばすると言われるように努力を傾けてまいらなければならないという異常な決意をもってこれに臨みたい、こう考えるわけでございまして、格段の御声援をお願いしたいと思います。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 本論に入る前にお尋ねしたいことは、総理は本国会施政方針演説の最後でこう言っております。「国民の支持と理解を得ながら冷静な判断と俊敏果断な行動をもって対処し、その結果については責任をとってまいります。」と、こう述べられております。結果について責任をとるという場合、たとえば物価安定などについて、一応の時期的なめどを示さなければ、責任ということが単なることばの遊戯になると私は思います。したがって、一応の時期的なめどを持っておられると思いますが、それは衆議院で言われた四−六月、あるいは夏ごろまで、この線までに物価を一応安定させると、こういう総理の心境と理解してよろしゅうございますか。
  14. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そのとおりであります。で、なお、まあ物価要因というのは、先ほども御指摘がございましたように、いろいろな要因がございます。こういう要因に対して、各国の比較もございますし、避けがたい数字的な結論がございます。にもかかわらず、昨年の後半から異常な物価高売り惜しみ買い占めとか、その他、便乗値上げとか、指摘されるような面があって、今日のような状態を招いておるわけでございますが、学問的にも、実際的にも、国民各層から容認されるような状態以外の物価高というようなものは、これは許されるはずはないわけでございます。これはもう政策責めに帰すると断じられてもいい問題でございますので、これら現在ございますような異常な状態というものをノーマルな状態に復し、だれが見ても、まあ石油が上がり、賃金が上がり、そういうコスト計算をした場合に、このようなものは是認しなければならないだろうというような、経済学上から見ても、まあだれがやっても同じことだなと、これはもうやむを得ないものであるという状態をつくらなければならないということは、私自身心に期しておるわけでございます。異常な物価高というような問題をノーマルな状態まで落ちつかしたいという、時期的目標を夏ごろまでということに置いているわけであります。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 ノーマルな状態とはそもそもどのような問題かということがありますが、これはまたあとに、時間があればということにいたします。  私は総理責任を追及すればこと足りると決して思っておりません。それどころか、私は、夏ごろまでに言われるように物価が安定して、総理政治責任問題なんかは笑い話になるような、そういう情勢の到来することをむしろ期待しておるのです。なぜなら、国民大衆は今日物価安定に最大の期待をかけておるからであります。しかし、にもかかわらず、いつまでたっても現在のような状態が続く場合、そこにおのずから政治責任の生まれることは、いま総理自身も認められたとおりであります。総理は、過去三回、一昨年の十一月、昨年の三月及び十二月、過去三回、私の経済問題と政治責任に対する質問に対してかなり重大な答弁をされております。しかし、私はその問題を蒸し返そうというつもりはありません。いまここで私が申し上げておることは、先ほども触れましたように、施政方針演説関連をして、総理大臣ことばの重みというものを権威あるものにするためにも、この物価の安定に一定の時期を設定して、その目的達成のために全力を傾注すると、しかしその時期が大きくくずれた場合には、おのずからそこに責任を明らかにするような態度を示すという、これが私は政治の常道だろうと思うんです。したがって私は、いま総理が言われたノーマルということの内容は、そもそもどのようなものかという問題はありますが、やはり衆議院で言われた夏ごろまでの線に物価が安定しなければ責任をお感じになると、そういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 夏を待たずしても、いまその責めの重大さを痛感いたしておるわけでございます。これはもう夏までには全力投球を行なう、夏までではなく、これから長期的な物価安定という問題に対しても全力を傾注してまいりたいと考えます。まあ物価他動的要因もございますし、いろいろな問題がございます。ございますが、夏には、夏前、初夏を待たずして参議院通常選挙という場面もあるわけでございまして、国民判断というものをそこで得なければならない、政治責任はおのずから問われる、自動的に問われるという前提に立っておるわけでございます。これは公人として全力投球を続けてまいりたいと考えます。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 責任という問題で、だいぶ総理と私の間に食い違いがあると思うんですね。総理参議院選挙国民の審判を受ければそれで足りると、こういう御理解のようですが、私はそうではない、それも一つの問題でありますけれども、やはりみずから、大きく目標がくずれた場合には責任を明らかにする態度が必要だということを申し上げておるんです。  それから、それとともに、もう一つ確かめておきたいことは、昨年の十二月本委員会で、私の質問関連してわが党の鈴木強委員質問した際に、総理はこう言っております。そうして所得政策もあえて実行しなければならないというときになれば政治責任が起こると思っております、と。したがって、所得政策をとれば政治責任を明らかにするという意味のことをはっきり述べられたわけです。あれは非常に当時大きな問題になったわけでありますが、このことは、総理所得政策を導入しないと、そう言われたものと理解してよろしゅうございますか。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 民主政治は申すまでもなく国民を主体にする政治でございます。そういう意味で、国民的コンセンサスが得られないという場合に、どんなにそれが望ましい政策であっても国民的コンセンサスを得るべく努力をしてまいらなければならないということは、これは民主政治を守るための大前提だと思います。私はその意味——小選挙区法などは私の案じゃないんです。二十四年間も日本の知能が結集して出された結論でございますが、これを国会のテーブルに乗せるに対してもコンセンサスが得られないという世論が一部に存在することを私は考えて、あえて国会議題にもまだ供さないでおるわけでございます。そのくらい私も慎重でございますので、そういう意味では所得政策ということを——まあこれが、日本勤労所得が世界で最高になったと、それでなお上げるんだと、そのために日本経済も破壊をされるし、国民生活そのものがどうにもならなくなるというような状態では、まだ、ないわけでございますし、ようやくいま西ドイツの三分の二、アメリカの半分ちょっと、六割というようなところでございますから、これだけの成長を続けてきた日本でありますし、給与所得者というものは国民の六割、七割、八割にもなんなんとするような状態から考えて、国民コンセンサスが得られない限り、俗にいう所得政策というものを採用すべきではないという考えは、私自身そう信じておるわけでございます。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 したがって、所得政策をやるようになれば重大な政治責任が生じると言われましたから、このことは、所得政策をとればやめると、したがって、所得政策をとらなければそのまま在任するという、こういう意味以外にこれの解釈のしようがないわけですから、日本語では責任をとるということはやめるということなんです、これは日本語解釈でありますから。だからそういう意味で、私は、所得政策総理は在任中はとられないと、そういうように理解しておりますが、それでよろしゅうございますか。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 所得政策を正式に取り上げなければならない、それが真に国民利益を守るために必要であるという事態が起これば、これは信を国民に問うて国民判断を求めてからでなければとらない、このように理解していただいてけっこうです。
  21. 加瀬完

    加瀬完君 ちょっと関連。  総理はいま、いろいろ羽生委員質問に対してお答えになりましたが、そのお気持ちはわかりますけれども、それならば、おっしゃるように、責任を果たすということが物価政策に対してあらゆる対決をしていくのだということであれば、四十日にわたる衆議院の審議について、どういう点を反省をし、どういう点を問題と感じ、あるいはどういう点に対して至急に対策を立てなきゃならないという御判断をなさったか、具体的な総理のお考えを国民は聞きたいと思っているに違いないと思います。私もお気持ちはわかりますけれども、具体的にそれでは早急に解決するということは、衆議院の審議の過程においてどう御決断をなされたか、その御決断を承りたいと思います。
  22. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 衆議院において与野党を通じていろいろな示唆を受けたわけでございます。これらの審議の過程における発言、また御提案等も含めて政府は広く意見をまとめて、しかも的確に現実を把握をして、これに対してタイムリーな施策を実行すべきであるということを心から感じたわけでございます。いままでは、政府は行政権の発動でなぜ物価をもっと個々に押えないかというような問題ございました。さて、いよいよというところになると行政権の限界というものがあるのだ、また国民生活安定法によらなければならない。また、物価統制令の発動を考えておらないか、いろいろな問題、私が衆参両院を通じても申し上げたとおり、なかなか行政権というものに対してもいろいろな制約もございますし、政府に与えられる権能というものや、政府が動き得る限界というようなものもだんだんと整理をしていただく過程において物価に対する政治責任を果たしてまいりたいということを述べておるわけでございますが、衆議院質問を通じていろいろな具体的な問題が提示をされました。政府は、行政権で行なうものはどれまで、また法律で行なうものはどこまでということに対しては、大体衆議院における質疑を通じて一つめどが示されたと思います。そういうことを政府はすなおに判断をしながら時期を失することなく適切なる施策を実行する、そうしてその実行した結果についての批判と評価はひとつ国民各位また両院の皆さんから判断を仰ごう、こう決心したわけでございます。
  23. 加瀬完

    加瀬完君 御感想はわかりますが、私は御感想を承っておるわけではない、強く反省をしたことは一体何か、どうしてもこれだけはやらなければならないとお感じになった対策は何か、一点ずつでけっこうでございますから具体的にお示しをいただきたい。
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これを全部述べろというと参議院の審議を通じて述べなければいかぬわけでございまして、関連質問に答えて私がちょろちょろっと述べられるようなら物価ももっと早くおさまっておるわけでございます。それはとても無理なことでございますが、私に一点だけ申し述べろということでございますと、自由主義経済というものを前提にしております新しい憲法は企業活動といえども自由でなければならない、また、自由濶達な経済活動が戦後の経済再建をもたらしたものであることは何人も否定できないことであります。しかし、憲法の条章にありますように私権の制限は最小限でなければならない、自由は大前提である、しかし、社会公共のためにはあえてこれを制限することもやむを得ない、こういうことに対しては衆議院においては具体的に質疑応答がかわされたわけでございます。ですから、もう夏をめどにしてという状態でございますし、ここらで政府が行政的に、また法律の実施という上において、もう時間を限って行政権の発動を行なわなければならない、こういうことを十分感じたわけでございます。でございますので、これから政府はじんぜん日をむなしゅうする、結果的に国民の声を聞く、また両院の御意見も聞いてというような段階はもう過ぎた、行政権は的確に発動さるべきである、そうして、その結果に対してはまた御審議をいただくということが一番大きな問題であって、これからまだ国民の声を聞きます、実態を調べます、そういう状態ではもうないということをしみじみと感じました。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 私はこれから具体的にお尋ねしたいと思いますが、きょうの質問の趣旨の第一は、当面の物価問題が短期決戦で片づくのかどうか。第二は、かりに一応物価が短期決戦で安定したと仮定して、これを長期安定路線に結びつけることが可能かどうか。また可能とすれば、いかなる政策が必要なのか。第三は、インフレ物価高で損失をこうむった人たちに対する損失補てんの問題であります。もちろん、このほかに、農業問題をはじめとして非常に重要な問題がたくさん山積しておりますけれども、いま申し上げた三点に問題の中心を置いてお尋ねしたいと思います。  そこで、総理衆議院で、物価安定の問題に関連して、先進十カ国の平均物価水準程度に下げたい、また昨年の十月以前の水準に戻したいと、こう答えられておりますが、そのとおりでよろしゅうございますか。
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そう理解していただいてけっこうです。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 この石油の再値上げが近く行なわれることになるわけでありますが、これに伴う石油関連の基礎物資や、基礎資材や、生活物資の価格を一時凍結するにしましても、本格的に製品価格にはね返ってくるのは時間の問題であろうと思います。  総理がこの物価を昨年の十月以前の水準に戻すという場合、それは石油の再値上げ及び石油関連製品の価格のはね返りを見込んで昨年の十月以前の水準と言われたのか、それは全く別個の問題と言われるのか、その辺はどういうことでありますか。
  28. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま二つ御指摘を受けましたが、国際的な物価水準ということには理由があります。これは同じ石油を使い、同じ状態における主要工業国でございますから、この水準というものを目標にして、これよりも上回らないということは、理論的にも価値ある判断だと思います。  それから、日本の国内における物価というものは、異常なものは昨年の十一月以後でございますから、異常ならざる——まあ、卸売り物価が非常に低かった。過去十年比べれば主要工業国九カ国の半分程度であるというような面もございますが、しかし、目標を、国内物価に対しては、昨年の十一月のノーマルな事態というものを目標にしていかなきゃならないということは事実だと思います。  ただ、その後石油が二万円になり、三万円になり、五万円——まあ、五万円にはなりませんと思いますが、そういう、だれが考えても動かすことのできないものというものは、これは計算できる問題でありますので、これらを勘案をしながら、正常な状態というもので物価指数を押えてまいりたいということは事実でございます。これはそれなりの理由を持って私はそう思っておるわけでございます。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 どうも明確でないと思うんですが、昨年の十月以前の水準に戻すということは、石油及び石油関連製品の値上がり、今度の新たに起こる値上がりの問題、それが値上がりしても昨年の十月以前の水準に戻すと言われるのか、それは別の問題だと言われるのか。これははっきりしていただかんと、これは非常に問題あると思います。
  30. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ですから、第一の問題、国際的には、同じ石油を使っておって、同じ石油の値上がりがあるわけでありますから、それだから、国際的に主要工業国十カ国のうちの九カ国平均に押えたいということには意味がある発言であるし、また、これは一つの目標としては正しい、評価さるべき目標だということを申し上げております。  そして、もう一つの国内的な問題としては、昨年の十一月までは、石油の値上がりという異常な状態を前提としない物価の値上がり、物価状況でございますので、だから、昨年の十一月というものまでずっと物価上昇が推移してきたような、その状態で押えたいということを言っているわけです。  そうすると、具体的に申しますと、あなたは、では昨年の十一月までの大根は幾らだった、それから新聞用紙は幾らだった、鉛筆やノートは幾らだった、自動車のガソリンは幾らだった、それから一万円も二万円も石油は上がっても、上がらないときの十一月に押えるのかどうかと、こういうことを言っているわけですが、それはおのずから限界があるわけです。石油が上がらないときの状態に押えられるかどうかということでありまして、それは異常という、先取りや、いろんなことを、売り惜しみ買い占めをやったために、十二月に入ってから急速に上がっているわけですから、そうではなく、ノーマルな状態、ノーマルに近い——まあ十一月以前がノーマルとも思っておりません、私は。それはそれなりの中小企業対策もあったし、ドル対策もあったし、いろいろなものがあってのことでありますから、必ずしもノーマルな状態においてきめられた価格だとは思ってません。思ってませんが、十二月以後の石油が上がるということを前提にして、その思惑で、いま狂乱物価と言われておりますが、そういうような状態の以前の状態に戻したいということは、ではダイコンも幾ら、魚も幾ら、何もみんな幾らかということと判定をされるような羽生さんでもないと思うのです。そうでしょう。そこらはひとつ私の誠意というものと目標というものを正確に理解をしていただけると思います。(「そこらがわからない」と呼ぶ者あり)そうだと思うのですよ。当然だと思うので、おわかりにならないというのはおかしいんで、それはわかっていただかなくちゃいかぬ、こう思います。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 ダイコンから魚のことまで私は言うわけじゃないのですが、石油製品の値上がり——九ドル、十ドル原油というものは、衆議院予算審議の段階でもうわかっておったわけなんです。その衆議院予算委員会の審議の際に、昨年の十月水準に戻したいと言っておるのです。だから、その後の石油値上がりがあって——これから私、あとの値上がりがたいへんなものだと思いますね、いろいろ。それを勘定の中に入れても、なおかつ昨年の十月水準に戻せると確信持ってお言いになれるのかどうか。それはまあ新しい事態だから別だと、こうおっしゃっておるように思いますけれども、そうじゃないのですよ。これはもう衆議院の審議段階ではっきりわかっておったことですから、そのときの答弁をもとにして私は質問をいたしておるのです。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 明確に申し上げます。昨年の十一月水準に戻したいという理想に向かって全力を傾けてまいりたいということであります。具体的には、十一月以後、思惑によって物価がつり上げられておる、その水ぶくれは全部取ってしまいたいという考えであります。取ってしまいたい。  それから、石油は上がりますから、上がるのはこれは算術的に上がるわけです。上がったものが、十上がって、十一思惑で上がっているなら、石油が上がってもなお一だけ下げたいということであります。一の部分だけ下げたい。十上がっておって、九だけは思惑であったというなら、あとの一が物価上昇にどういうふうに加算をされていくかということ、これは算術的にできるわけでございます。十を九だということは、私が幾ら強弁をしても、それはできるものじゃありません、これは。そういう意味で、そういうところはもう自動的に御判断できるものでございます。  そうじゃなく、それは十分理解しておるが、衆議院において十一月の水準に下げるということは、個々の品目において、石油が幾ら上がっても、十一月以前の品目の価格に引き下げると、そう判断する、それに反したならば政治責任が起こるのだ、こう認定するというなら、もうどうぞということ以外にはないですな、そこらは。
  33. 上田哲

    上田哲君 関連。  伝えられるところによりますと、あさっての十五日には石油製品の値上げということになるという話であります。国民最大の関心は、政府や日銀がいま報告されておりますように、どうやら天井横ばい態勢に入った物価だというのですが、これはもう上がるだけ上がってしまって、三ドル、五ドル問題が一巡した結果だ。そこでもう一つ石油の再値上げということになると、それに関連する大きな生活関連物資の大波がまた襲ってくるだろう、こういう問題があるはずであります。  いまの羽生先生の御質問にそこで関連するわけでありますけれども、政府がしきりに言われております、便乗値上げの部分と、それからいわゆる四十一品目への凍結論ですね、この凍結の可能性が一体どういうふうに試算され、手が打たれるのかということをひとつ具体的に伺っていきたいわけであります。つまりは、第一にこれはいつやるのか。石油製品の値上げというものとぴったりこれは同時でなければならぬというのが常識だと思うんですけれども、これはいつやるのか。それから第二に、どの線でやるのかということになるだろう。これは一体便乗値上げ分をほんとうに、さっき総理は水ぶくれとおっしゃったけれども、その水ぶくれをちゃんと具体的にお取りになれるのかどうか、こういう問題があります。最終的に言えば、私はそれはやれないんじゃないかという疑念を持って質問するわけでありますけれども、そこで、ここに政府の試算をされた、原油価格上昇に伴う主要製品上昇率と実績上昇率との比較という試算表があるわけであります。たとえば合成ゴムが、元来の計算値でいえば九・八%が四九・六%になるとか、厚板が元来五・四%のものが六一・五%になるとかなどなどあるわけでありますけれども、こういう具体的な数値をひとつ具体的に見ながら、産業連関表によって試算されている政府の数値を具体的にどのように現実の凍結価格の上に生かされるかということをお伺いをしたいわけです。  具体的に申し上げる。塩ビを一つ例にとりたいわけですけれども、塩ビの場合は、昨年の六月から十二月に原油が一バーレル当たり三ドルから五ドルに上がった場合に、石油製品の仕切り値が平均一キロリットル当たり九千七百九十四円から一万四千三百五十七円に上がった。そこで通産省の産業連関表による試算によると、これが塩ビに与える影響が七・六%であると、いわゆる計算値であります。そこで、四十八年六月の市況が一キログラム八十七円であったわけですから、そして十二月の一キログラム当たりでは九円上がって、したがってその計算からいうと、九十六円までは計算されるというのが通産省のレベルであります。ところが、実際に調べてみますと、四十八年十二月の市況は一キログラム百四十六円三十銭でありますから、つまりこの百四十六円三十銭から九十六円を引いた五十円三十銭というのが、総理の言われる水ぶくれであります。これを具体的に、政府の産業連関表による、通産省の数値によるこれは試算いたしますと、こういう数字が計算されざるを得ないんです。つまり値上がり率は六七%でありまして、これは通産のいわれる理論値の九倍になっているわけであります。これは四十八年の十二月でありますけれども、あえて四十九年三月の市況を調べてみますと、ちょっと下がりまして——まあ総理はそこのところを言われるんでありましょうけれども、確かに下がっておりまして、百四十六円三十銭は百三十四円になっております。しかし、百三十四円であっても、前述申しました九十六円を引きますと、三十八円の不当利益ということになります。つまり、もう一ぺん申し上げれば、総理の言われる水ぶくれというのは、今日も塩ビ三十八円ということになるわけでありまして、そこで問題は、政府がここで一キロリットル当たり九千円前後の値上げを認められると伝えられているわけでありますけれども、これによってこの産業連関表の試算の上昇部分を見込みますと、塩ビへの価格の影響というのは一五%程度だと私は計算されることになると思います。この一五%が違うというのであれば、一五%でないという数値をひとつ明確に出していただきたい。一五%であるといえば、一キログラムについて百三円というのが出てまいります。したがって、百三円と考えても、なお一キログラム当たり三十一円が不当にもうかるということになる。つまり、結論的に申し上げると、政府は一体凍結値を百三円でやるのか、百三十四円でやるのか、この三十一円の差というものをどうするのかということが根本的な問題になります。  セメントの場合は、同じように、九・九%というところが三二%の実勢でありまして、九千円程度の石油製品の値上げを考えても二〇%でありますから、その差が一二%、一トン当たりで千四百十四円ということになります。  つまり、申し上げたいことは、塩ビでは三十一円、セメントでは千四百十四円を下げて凍結値をきめるのか、あるいは下げないでするのか、この結論的なところをひとつぴしっと出していただきたいと思います。
  34. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 上田さんのお尋ね、個別物資でございますから、必ずしも私が数字をあげてお答えすることが適当ではないかもしれませんけれども、今度の原油の入着価格の値上がりに伴う石油製品の値上がり、それが影響する基礎資材、あるいは国民生活関連物資等の値上げの誘発ということは、物価の基本に関する問題でございますので、私どもも通産省の行なう計算あるいはそれの影響につきまして、慎重かつ重大な関心を持って相談に応じているわけでございます。簡単に申しますと、石油製品の値上がりを幾らにするかということをいませっかく詰めておりますけれども、それを幾らにするかということは、その値上がりがいま申しました国民生活関連物資や基礎資材の値上げを誘発しないような範囲にでき得る限りとどめることと、また、いまの第二次関連物資の値上がりを来たさないような、まあこれはことばはいいか悪いかわかりませんけれども、押え込み政策というものを、これは他のことばで言うと目張り政策というものを完全にとるという方法を講じながら、いまの石油価格対策に対処すると、こういうことでせっかくやっているところでございます。
  35. 上田哲

    上田哲君 もう一つ。全然答えていただいてないんですよ。結論的なことを、途中の経過をちゃんと申し上げたんだから、途中の経過は時間を省きますから申し上げない。結論的に申し上げたのは、たとえば石油製品の値上がりの九千円前後、この九千円前後を幾らにするのかということを、きまっているんなら言ってもらいたい。しかし、この数値は政府の専決事項でありましょうから、御判断でありましょうから、こまかい数値まで聞きたいということは言いません。しかし、常識的に九千円前後というのはしっかり出ているわけです。一五にしても出ているわけです。ですから、そこのところをカッコに包んでも、通産省自身が出されている数値の中で、産業連関表でしっかり出ている、計算値というのは実勢値と一緒に出ているんですから、その計算をいたしましたら、塩ビでいうなら三十一円、セメントでいうなら千四百十四円というものを入れた実勢値で凍結をするのか、その分を総理はさっき水ぶくれと言われたんだから、その水ぶくれをはぎ取って、その分だけ下げて、便乗値上げを取ったところで凍結をするのか、そこのところがはっきりしなかったら、切れないなら便乗値上げを認めるということになるじゃありませんか。下ざさえではありませんか。そこのところをはっきりしていただきたい。  もっと具体的に言えば、アルミは実にやみカルテルの勧告を受けまして、七万円の差がありますよ、なおかつ。徹底的に二十八万までおろさなきゃならないのをなお七万円残しているというのは、政府みずからが公取とズレを持ち、しかも、具体的に政府みずからが水ぶくれを認めた下ざさえの凍結価格を出そうということになってしまうではないか。ここのところはイエスかノーかしかないんです。これはひとつ私は総理からぴしっと伺っておきたいのであります。総理から、ここのところはぴしっと伺っておきたい。総理自身が言われた、数字的に言うなら三十一円、千四百十四円という水ぶくれを取るのか取らないのか、そこのところをはっきりお伺いいたしたい。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだ石油価格はきめておりません。またそれが及ぼす影響というものをいま全部計算をいたしておるわけでございます。石油が上がるということは現実でございますが、これはしかし、石油価格が上がったからそのまま全部上げるということではございません。これは諸外国ではあと出し、前出しというようなやり方がありまして、そして、石油が上がればその原価をそのまんま加えるというところもございます。しかし、日本政府としてはいままでの値上げ、便乗値上げというようなものも全部計算をして、これからも、過去の蓄積もあるんだから、企業の社会的な責任というようなことも加味して、可能な限り低く押えてまいりたい、こういう基本姿勢でいま調査を続けておるわけでございます。だから、いま凍結されておる生活必需物資というものがどういう価格でもってきめられるのかということに対して、局限して御発言があるわけでございますが、これは石油が上がったからそのままそれを加算して上げるというわけにはまいりません。いまの価格の中に水ぶくれの部分もあるし、先取りの分もございますし、現実の問題にして計算すれば、そのようにもうけも何にもない、経費も出ないというような、業界から出ておる試算数字はございましても、過去の蓄積もあるのだし、物価に対するとにかく協力という意味で無配にしたり、それから役員の給与を減殺したり、いろいろなことも要請をしながら、国民皆さんから見て、まあこれ以下には切れないなというところまで切り詰めて、最終的な価格を決定しようということでございます。ですから、引き下げられるような要因が起こってくれば、直ちに引き下げるという考え方なのです。  ただ、石油がまた上がった場合に、今度も自動的に上げるのか、こういう問題が今度うらはらになってまいりますが、下げるときは国民のためでありますから下げたいし、上げるときはやはり相当時間的ズレがありますよと、このくらいなこまかい配慮をしておるわけでございますので、まあ数字的に品目をあげて、通産省がいま出した試算数字、そのままの表を当てはめて、いまあなたが言うように、九千円上げてもまだ幾らかしか——そういうほんとうに一〇%も上げればもうそれで済むんだと、そうでなくても、この製品はこれ以下で済むんだというような状態に、右から左へすぐなるとは言いませんが、しかし、水ぶくれ部分は当然いまの計算の中に入れて、そしてその指示価格をきめなきゃならぬということはそのとおり理解していただいてけっこうだと思います。これはもうできるだけ低く押えようと、計算上どうしても一万一千円に出ても、九千円とか八千円とかということを言っているわけですから、異常な決意をしておる。いままでのものを全部はき出してもらわなきゃだめだ、そうでなければ、もうすでに三百億と言われ、自民党は五百億と言い、野党の皆さんは千百億も石油はもうけたと言っておりますが、一日八十億ずつ損すれば、三十日間で二千四百億マイナスになるわけですから、そういうことを承知しながらも、まだ石油の価格をきめないでおるわけでありますので、政府の基本的姿勢はそのようにひとつ理解をしていただきたい。  それから、いまきめておるものでも、石油は上がっても絶対きめた価格を動かしたくないというものがあるのです、絶対に。灯油なんかは動かしたくないんです、上がっても。そうしますと、灯油の動かさない分は、どこかでもって、何十%か見てやらなきゃいかぬというものもあるわけです。そうでしょう。ナフサにするか、ガソリンにするか、どっちかにするか。そういう同じ石油製品として出てくるものの中でも、灯油は動かさないとすれば、灯油は半値以下で売るわけですから、現実問題として。そうすると、その分が自動車のガソリンに一体幾らかかるのか、航空用のガソリンに幾らかかるのかという問題は、これからきめ方によって変わってくるわけです。しかし、基本的には、最終価格をきめるときには、水ぶくれと思われるものは、当然それは計算の中に入れてやるということはそのとおりに理解していただいてけっこうです。  ただ、これを逆手をとって、出した計算書があるじゃないか、このとおり一円でも多くちゃこれは公約違反だ、こういうことはひとつ、これはなかなかめんどうな問題でございますから、そういうことはおっしゃられないで、政府の基本的姿勢は、あなたが御発言のように理解をしていただいてけっこうです。
  37. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 日程の消化の関係もございますので、簡潔にお願いします。
  38. 上田哲

    上田哲君 確認だけしておきます。つまり、政府の、計算値と実績値があるわけですから、総理のいまの御発言は、実績値、実勢値どおりには凍結価格はきめるのではないということで理解をしてよろしいですね、ということが一つと、それから、九千円前後の石油製品の値上げということになった場合の四十一品目への波及パーセンテージというのを、ひとつ資料として具体的に御提出を願いたい、この二点だけ確認をしておきたいと思います。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは水ぶくれというのは不当な値上げでございますから、不当な値上げ部分は、当然、石油は上がっても、この製品の凍結価格を変更する場合には、その中に織り込んで計算をするというふうに理解していただいてけっこうです。  それから、計算書を出せというのは、きまったら、こういうふうに石油価格をきめました、それで四十一品目はこういうふうになりましたと言えば、どうしてなったのかということは、これは黙っておっても御要求がありますから、そうなれば自動的に御説明申し上げるようになりますから、しばし、かすに時をもってしていただきたいと思います。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 新たな値上がり分を、一部物資は凍結するものもあるようですが、いずれそれは解除になるわけですから、その場合に、この新たな値上がり分は、卸売り物価、消費者物価にどのくらいな影響をもたらすのか、お知らせいただきたい。
  41. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 各一品目ごとの凍結解除の、それは卸売り物価、消費者物価に対する値上げの影響というものは、いまだ計算をいたしておりませんが、私どもの考えでは、羽生さんが御心配なされるのは、いずれ凍結を解除した場合には、石油製品値上げの影響あるいはその他の影響が、もう一ぺんその物資に働いてくると値上がりになるではないか、そうすると物価全体を押し上げる、そういう御心配だろうと思いますが、そういうことがないようにいろいろの行政的施策につとめます一方、また物価全体のレベルを押し下げまして、いろいろの他の要素が加わってくる分もございましょう。これら、たとえば石油ばかりでなしに、農産物等の輸入価格の影響等のものも私は心配をいたしておりますけれども、そういうものも、総需要の抑制その他の方策による物価の引き下げの中にみな押し込んでしまって、さっき総理が言われますように、ある時期におきましても、その物価は昨年の秋のレベルで安定をするというような方向に持っていく、各般の行政的施策を尽くしてまいる、こういうことでいろいろやる考えでおります。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 この一応一時押えても、解除になれば、いわゆる当分の間が終われば当然物価はまた再び上がることになるにきまっているのです。新たな値上がり分をはたして予定どおり押え込めるかどうか、私は重大な疑問があると思います。  それと、その物価安定という、物価は夏までに安定ということと、この新たな値上がりというものはどう結びつくのか、つまり、当分の間はいつまで続くかという問題もありますが、まあ際限なしに押えているわけにいかぬと思いますね。そういう問題と、物価の夏までの短期決戦という問題と、この新たな値上げという問題とどういう関連になるのか、どうも私その辺がのみ込めないから、これを明確にしていただきたい。
  43. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 四十九年度に入るわけでありますが、四十九年度中はその物価を安定させる。安定させるということは、それは昨年の具体的な何円何十銭の価格に下げるということ、これはなかなかむずかしいことでございますから、物価の動き、ひとり歩きというものは、いまのような上昇の過程をたどらないで鎮静をするというところに持っていく、こういうことに御理解をいただくほかないと思います。その場合に、当分の間は生活関連物資あるいは経済の基礎資材等を、石油製品価格が上がりましても凍結で押え込んでおきますものがいつまで続くか。これはまあ正直に申し上げますと、いずれはまた電気料金の値上げというようなものもございましょうし、あるいは公共料金の値上げというようなものも、それはいつまでも押え込むというわけにいかないので、その場合にどうなるかということを心配をいたすわけでありますけれども、しかし、それらの要素を除いた現在の物価上昇の基調というものは、御承知のとおり最近たいへんゆるんでまいってきております。あるいは下向きになってきております。たとえば卸売り物価が、この二月に——二月の物価上昇としては三・九%上昇という昨日の発表がございましたけれども、それはいわゆる前月のげたの関係がありますので、上がってはおりますけれども、実質的にはほとんど上がっていない、というと言い過ぎかもしれませんけれども、そういう状況にありまするし、いろいろの品目の中でも下げているものは出ておりますので、ここで私どもは総需要の抑制その他の方法を一そう推進をいたしまして、そこへ将来、羽生さんが御心配になるような物価の上がるものをその下げる中に押し込んでしまう。そして総平均としましては、それの上昇というものは、ひとり歩きで異常な上昇をしないということにもっていくと、こういうことをいま申し上げたわけでありまして、繰り返しそのような考え方で進んでまいるつもりでございます。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 総理がちょっといま席をはずされておるようですから、ちょっと飛ばして次の問題に移りますが、それは、私はそんなうまいぐあいに物価を押え込めるはずはないと思いますが、これはまたあとからにしまして、この日銀の統計資料で見ると、四十年——あ、総理が来られましたから……。  そこで、電力料金、私鉄運賃等の値上げというものは、いつごろお認めになるのですか。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私鉄運賃につきましては、いま審議会で審議中でございますから、これは審議会の答申が出ましたら、そこで政治的な配慮を加えると。配慮を加えるというのは、繰り上げてよけいやろうというんではなくて、なるべく繰り下げて、どこまで繰り下げられるかという問題でございます。これは、繰り下げるといっても、とにかく私鉄でも春闘で賃金が上がるわけですから、押えることによって上げた賃金を払えないというわけにはいかぬので、これはやっぱり金融の問題とか、いろいろな問題がからんでくるわけでございますので、そういう問題、とにかく慎重に、物価のいわゆる抑制を最重点にしているだけに、これは私鉄の方々の協力も得ながら、とにかく出た段階において、ひとつ十分な検討を続けてまいるということでございます。  それから電力は、まだ申請が出ておりません。出ておりませんが、もうこれは石油価格が変わらないために出せないわけでございますが、石油価格がきまれば、自動的に電力には影響があるわけです。影響があれば自動的に計算できるわけですから、これはもういつか出てくると思います。ですから、石油を早くきめれば早く出てくるから、とにかくなるべくおそくなればその申請が出てくるのもおそくなる、こういうことでございます。しかし、実際の経済的な見方から、政治的に押え得るものでないので、物価政策という面から、少なくともタイミングを調整することによって物価に対して逆戻りをしないというために政府の配慮はわかるが、そのために来年度の四月一日から、年度計画も立たない、事業計画も立たない、そんなことをしておったら、春闘の賃上げを押えるためではないかなどという、思わざる議論まで出てくるわけでございます。そんなこと全然考えてないです。必要な賃金を上げなきゃいかぬと、こういう、もう実に理解ある態度をとっているわけでして、思わざるそういういろんな議論も起こってまいっておりますので、これはやっぱり自動的に計算をして、ぼーんと上げるんじゃないが、今度押え得る限界をきめて政府が踏み切るならば、政府はやはりいっときも早く避けがたきものは決断をして、そうすることによって、政府はたたかれても、国全体の経済から考えるとそのほうがより合理的だという議論も新聞の社説その他で堂々と出ているわけであります。そういう意味で、そうするとまた値上げを誘発するから、そこらはひとつ考えものだということで、非常に慎重な配慮をしているわけでして、いまここで電力や私鉄をどうするかということは述べがたき状態である、苦慮しておる状態であると、こういうふうに理解していただきたい。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 時期はとにかく、いずれ電力料金等をはじめ、値上げを認めることは、これは必至であります。そうなれば、これがまた新たに各種の製品価格にはね返ってくることも、これまた当然であります。さらに十月になれば、消費者米価、それから国鉄運賃、これの値上がりが始まる。ちょうど、すべてのそういう物価の値上がりが各商品部門にことごとくはね返ってくるのは、むしろ私は夏ごろがその山場を迎えるのではないかと思う。ですから、そのことと短期決戦とどういうことになるのか。短期決戦ではない、これは長期決戦にならざるを得ないんじゃないですか。短期決戦で片づきますか。私は非常にむずかしいと思うのですが、どうですか。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、あなたは経済的専門家でございますから、なかなかいいところを一つ指摘になっていただいております。私もそういう感じなんですよ。にもかかわらず、夏までにやろうと、こう言っているのが短期決戦なんです。短期決戦というものはどういうことかといえば、経済学的に見て、だれが考えても避けがたきものであるというようにちゃんと算術的に出るものは、これはいいわけです。ですから私は、主要工業国十カ国の日本を除いた残り九カ国というものの平均数字というものを目標にしてやっておりますと、こう——これは伏線じゃないのです、これはだれが見てもあたりまえのことを言っているわけです。ですから、短期決戦でもって臨んでおる物価というものは、異常な物価、不当と言われておるような物価、先取り、買い占め売り惜しみというような状態において起こった物価状態、その部分をノーマルな状態にしなければいかぬ。ですから、これは私はあなたに対して、夏ごろの目途ということを言っていることは、それは相当な責任を感じてです。これはあなたからいうと、そんなことを言うと追い込まれるがなあという友情もあると思いますが、にもかかわらず公の立場で私があえて言っているのは、それから離れて、石油が上がろうが何が上がろうが、春闘で何%賃金が上がっても、それは全部下降線だと、こういうわけにはまいらぬわけです。ただ、水ぶくれとか不当だと言われる部分だけは、これは政治の、また行政の力でやらなければならぬ。そのためには、また一つの大きな問題として、金融がまだまだ相当やはり、流通経路に抱いているものがある。ですから、これがちょっと締めると、いままでは史上最高であると言っておった紡績とか羊毛とかというものが暴落でございます。暴落だけじゃない。これはいままでは、糸が買えないでどうにもならなかったところの中小企業が、今度は糸を抱いておってどうにもならない。手形金融ができないために倒産をするというような状態まで来ているわけです。ですから、大阪でもっていま綿製品などは半値で売られておる。こんなもの正常なものじゃありません、実際において正常なものじゃありません。だから正常な状態にしなければならぬということは、それは正常な金融はしなければいかぬ、しかし、いままで抱けるような、抱いておれるような金融をしておったものは、これは金融はやっぱり締めなければいかぬ、これはあたりまえのことであります。そして経済法則によって、流通経路にあるものは、この品物は二カ月、この品物は三カ月というのは、これは全部どなたも知っていることでございますから、流通経路に異常な状態において品物が退蔵されたりしない、こういういろいろな政策をかみ合わしてまいっておりますので、あえて短期決戦ということを申し上げておるわけであります。短期決戦とは、異常な状態においてかもし出された、俗にいう空虚な、名目的にと言ってもけっこうです、そういう価格をノーマルな状態に押し下げる、こういうことを一つ目途としておるということは、これは御理解いただきたいと思うのです。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 この一、二カ月ぐらい前に言っておった短期決戦ということと、いま先ほど来の問答で明らかになったように、だいぶその内容がくずれてきて、ほんとうの自信を持っておられるのかどうか疑わしくなる場合もあるのですが、どうも私は、すべて参議院選挙までという感じがするんです。参議院選挙が済むと一斉に値上がりがするのではないかという感を深くするんですが、この物価安定という場合、どの程度押え込めば安定と言うかという問題もありますが、物価を大きく引き下げることは困難であるが、高値安定であっても騰勢が一応おさまればそれを安定と言うのか、あるいは、あらゆる輸入資源が高価格になっておるこの今日、物価体系が高価格に移行していく傾向が強いけれども、そういう中で、なお長期的に物価低値安定へもっていける確信があるのかどうか、高価格体系に移行する傾向がまことに顕著です。しかもその中で、短期決戦で下げる下げると言っておるけれども、はたしてそういう高価格体系に移行する世界的な趨勢の中で、ほんとうに自信を持って、この短期決戦で低値安定——高値安定じゃないですよ、低値安定に押え込める自信を絶対にお持ちですか、お伺いいたします。
  49. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま物価問題が最大のときに、自信はございませんなどということを言えるわけはありません。絶対の自信を持って、これが理想達成のために全力を傾けると、こうでなくて国民理解や協力を得られるもんじゃありません。これはもう、そこらはひとつ政治的に十分御理解をいただきたい。これはもう私たちも命がけであるということだけは、これは理解していただきたい。参議院選挙などというものを目標にしてません。参議院選挙などということを目標にしておっても、来年の四月にはまた統一選挙があるんです。これは毎年毎年あるんですから、そんなことを言っても、それはもうそんな勘定をしておりませんから、物価を押える、国民生活を安定せしめる、これがもうほんとうの目標であるということだけは、これはひとつ真に理解していただきたい。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと順序を変えますが、次にお伺いしたいことは、物価抑制の中心的な柱であるものは、総需要抑制です。この抑制政策です。そこで、私はその内容を少し検討してみたいと思います。私は、まあ率直に言って、この日本経済の構造的要因から生じた物価問題が、総需要抑制政策だけで本質的に解決できるとは考えておりません。しかし、他に適当な手段がなければ、この総需要抑制政策を効果的に運営する以外に方法がないわけです。だから、その物価抑制の主たる柱である総需要抑制政策が効果的に運営されているのかどうかということを、これからお尋ねしてみたいと思うんです。  その問題に入る前に確認をしておきたいことは、一つには、金融引き締め政策は民間も政府も同じかどうかであります。第二は、総需要抑制政策は、四十九年度だけではなく、四十八年度——現在ですね、四十八年度においても重要な政策として行なわれるべきものであるか。それから三には、財政金融一体の需要抑制によって、物価狂乱、インフレを阻止したいと、これがまあ当面物価へ臨む政府の基本的な方針と理解してよろしゅうございますか。
  51. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのとおり御理解願ってけっこうでございます。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、四十八年度の財政投融資は、前年度に比べまして二八・三%の伸びで、六兆九千二百四十八億円という大規模なものであったことは、もう言うまでもございません。ちなみに、四十九年度は伸び率が一四・四%、前年のほぼ半分に圧縮されたわけであります。政府は、この財投計画の執行が始まる四十八年四月十三日に、「財政の弾力的執行について」、また、四十八年八月三十一日には「財政の執行の繰り延べについて」を決定して、財投の四千九百六十四億円の繰り延べを決定したわけです。この政策は今日も生きていることはもちろん、むしろ政策の強化がまだ必要な段階だと思っておりますが、それもそのとおりでよろしゅうございますか。
  53. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのきまった政策は今日なお生きております。そればかりじゃございませんで、その上さらに追い打ちといいますか、たとえば、第四四半期におきまする財政執行とか財政投融資の執行、これをさきに決定した抑制方針に上乗せをして抑制をする、そういういろんなくふうをいたしております。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 いま確認をしたことを、前提として確認をした問題を踏まえて伺いたいのでありますが、四十八年度のこの財政投融資の実行状況を見ますと、四十七年度から繰り越されたのが一兆三千億でありますが、この消化をはじめ、一兆三千億の消化をはじめ、四十八年度分についても、一月時点では前年度のほぼ二倍のスピード、すなわち四十七年度が二兆七千百五十五億円、四十八年度は五兆四千百十七億円が使われていることになっております。これでは確認事項、その財政執行の繰り延べ、総需要抑制ということとたいへんな矛盾になるんじゃありませんか。こんなたいへんな相違というものは私はどうしても理解できません。
  55. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) どういう御資料で申されているのか私承知いたしませんが、景気に及ぼす影響は、財政なり財政投融資の契約率、これが問題なんです。その契約率につきましては政府委員から数字をお答えさせますが、これはかなり率が低下しております。過去こういう政策をとったことが何回もありますが、そのとき以上にさらにこの数年間にわたりましては最も低い契約率ということになっております。さらに第四四半期におきましてはそれを要するに追い打ちをかけようと、こういうのですから、年度全体としてもかなり低いものになるんじゃないかと、そういうふうに見ております。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 その契約率はあとでよろしゅうございます。  四十八年度の財投計画の残額を一月の時点で見ますと、当初計画総ワクに対して約一兆三百億円程度になっておると思います。この中から四十八年九月七日の閣議決定の執行繰り延べ予定額、四千九百六十四億円を差し引きますと、残高は五千三百億円くらいしか残りません、この程度しか。ところが、逆に、四十七年度の財投の一月末残高は三兆三千九百十九億円であります。これを比較すると、四十八年度の財投はたいへんな繰り上げ執行がなされているわけです。契約率のことはあとから申し上げます。これは、閣議決定の執行繰り延べとはたいへんな違いになっておるんじゃありませんか。
  57. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それは資金運用部からの放出……。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 そうです。
  59. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういうことを言われておるんじゃないかと思いますが、資金運用部の金は政府機関等に出るわけです。その政府機関等がどういう契約をするかというのが景気に影響があるわけでありまして、財投から出るのはそのときの金融情勢、また金利の情勢、そういうものできまりますので、それは景気には何らの影響はないと、かように御承知願います。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 いまの財投の運用というのは、財政金融一体の総需要抑制と矛盾すると思うし、それからまた、四十八年度の超大型の財投を順調に使い切るというやり方は——これは順調に使い切っておるんですよ、いま。このやり方は、四十八年四月十二日の弾力的運用方針、さらに先ほども触れました八月三十一日の物価安定緊急対策できめた財政執行の繰り延べ方針ともこれは矛盾すると思うんです。どうでありますか。
  61. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 財投の資金をたとえば住宅公庫に渡す、その渡す額を言われておるんじゃないかと思いますが、住宅公庫でありますとか、あるいは住宅公団でありますとか、そういうところで執行をする、それを押えておるんです。それがなぜそういうことになるかというと、それが景気の動向に影響があると、こういうことなんであります。財投からの金を、二月でありましたか、かなりそういう政府機関等に回しております。それはなぜかというと、二月に金利の改定をやったんです。この上がった高い金利ではとても住宅公団等が事業がやりにくいと、そういうので、前の金利の水準で渡していこうと、こういうので、前渡しをしたような額もあるんです。私どもは、閣議決定どころじゃない、それに追い打ちをかけようという意気込みをもちましてやっておりますので、この総需要抑制対策、これはもう実に誠実にかつ精力的にやっておると、こういうふうに御理解をお願いを申し上げます。
  62. 羽生三七

    羽生三七君 ところで、四十九年一月、本年一月ですが、異常な多額な財投資金が資金運用部から出されておりますが、その額はどのくらいですか。
  63. 竹内道雄

    政府委員竹内道雄君) 財政投資融とおっしゃいますのは、まあ主として資金運用部資金のことであると存じますが、大体一兆九百億程度の貸し出しが一月中になされております。
  64. 羽生三七

    羽生三七君 私の調べたところでは一兆一千四百九十三億円でありますが、この四十八年度の第三四半期、四月から十二月までの資金運用部資金特別会計を中心にした原資は四兆二千六百億円程度使われたのでありますが、四十九年一月、本年一月は約一兆一千五百億円が使われております。これは四月から十二月までの九カ月間の使用分のほぼ三割を一カ月で使っておる。例年の一月はむしろ財投資金は超閑散なはずでありますが、先ほどの金利のせいがあったにしても、何か、こんなにばく大なものを一月一兆一千億も特別に資金運用部資金から回すということは特別の事情があったんですか。
  65. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 羽生さん、使った使ったとおっしゃいますが、使ったんじゃないんです。資金運用部から住宅公団に回す、あるいは輸出入銀行に回す、その輸出入銀行や住宅公団のところへ滞留をしておる、こういう性格のものです。なぜそういう措置をとったかと申しますと、二月一日に金利の改定があった、金利が高くなる、その高くなった金利ではなかなか円滑な宅地行政、これができません。あるいは輸出入金融がまかなえませんと、そういうようなもろもろの事情がありましたので、資金運用部から在来の金利で回しておくと、こういう、何というか、一つの調整措置をとったわけです。金利を上げましょうと、こう言いますと各省がそれじゃ困ると、こう言って反対をするわけです。そこで、それを、その反対を緩和するというような意味合いもあります。しかし、各省が反対するのは何だと、こう言いますれば、事業の執行がそういう高い金利ではやりにくいと、なだらかに高い金利に移っていくように調整措置をとってもらいたいと、そういう意向がありまして、それに応じて、一つの措置といたしまして、資金運用部から在来の金利で金を渡しておきましょうと、こういう措置をとったわけです。そこで、景気に対しましては、資金運用部から輸出入銀行に金が回りましても、あるいは住宅公団に金が回りましても、これはまあ何の影響もない。影響があるのは、住宅公団が土地を買いますと、こう買いに出たときの話で、そういうことで、住宅公団やもろもろの政府機関などが金を使う、その使い方につきましては政府は厳重にこれを管理していると、こういう現状でございます。
  66. 羽生三七

    羽生三七君 たとえば、いまお話のあった住宅金融公庫は四月から十二月までの九カ月間の二千六百億円をこえる二千六百七十五億円が一月だけで資金運用部から貸し付けられておるんです。一月だけでそんなに急に民間住宅が建築されたわけではない。特に問題だと思うのは、いまもお話がありましたが、たとえば開銀は、四十八年四月から十二月までの九カ月間に千八百八十億円を資金運用部から貸し付けられたのが、四十九年一月の場合は一カ月だけで千百五十億円、それから輸銀は、四十八年四月から十二月の九カ月間に四千百十億円の貸し付けを受けておるのが、四十九年一月は、一月一カ月だけで千四百五十億円貸し付けを受けております。これは一月に急にそんな多額な資金需要が起こったのかどうかという——それぞれの金庫あるいは公団ですね、銀行や公団に急にそんな資金需要が起こったかどうかということについては、これはそうではない、その後の処置をしたと、こうおっしゃるんでしょうが、たとえば、これを詳しく見ると、住宅金融公庫の資金供給は、四十八年一月の場合は二十億円、それが本年一月は二千六百七十五億円、開銀は、四十八年一月、去年一月はゼロ、それが本年一月は千百五十億円、輸銀は、四十八年一月は六十億円、ところが本年一月は千四百五十億円、全くめちゃめちゃですね。こんなやり方というものは、幾ら金利問題があるにしても、私は納得できない。
  67. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も、それを集計しまして一兆をこえるという額が二月に資金運用部から政府機関等に移っておる、それを見まして、少しこれは多いなという感じを持ったんですが、よく聞いてみますると、これはもう金利操作の関係なんです。実需があったというわけじゃない。そこで、その実需につきましては、実需がありましても、こういう総需要抑制政策だという体制の中では、みだりにこれに応ずることはできない。たとえば、いままあ土地が全国的に頭打ちです。そこで、土地を持っている人が売ろうとする、買い手がない。そこで、一つの傾向といたしましては、住宅公団あたりへ土地を売りたいという人が殺到するわけです。あるいは地方公共団体の開発公社、これにも殺到してくる。これをむやみに、そういうふうに売りに応じましたならば、これは土地の高値安定になっちゃうんです。そこでこれは厳重に締めなきゃならぬというので締めておるのですが、そういう政策をとっておりまするけれども、まあ資金運用部の金を、これは使うんじゃない、移しかえなんです。そしてまあ金利の高騰に伴うところの住宅対策の問題等をなだらかにやっていきたいと、そういう考えでございます。
  68. 羽生三七

    羽生三七君 いま大蔵大臣から御説明がありましたけれども、最初に私が確認した、民間も政府も一体となって金融引き締めを強化することになっておるわけです。確かに民間は昨年と様相を一変するほど締めております。たとえば全国銀行勘定の貸し出し金では、四十七年四月から十二月までの間に約十兆五千億の増加が、四十八年四月から十二月までには七兆八千億と、ほぼ三兆円貸し出しが減っておるわけです。引き締められておる。それなのに、政府資金のこの元締め的な地位にある資金運用部の貸し出しが、四十八年四月から十二月の間に約四兆円ふえている。その上に、さきにあげた、一月だけで資金運用部を中心に一兆一千億もの貸し出しをやっておる。これは総需要抑制政策のしり抜けと……。それはすぐ使わないからいいと言っておりますが、民間だけ締めて政府関係はこんなばく大な資金の放出をやっておるということは、これは総需要抑制政策のしり抜けと言われてもしようがないと思う。これがもし民間だったらどういうことになりますか。これ、たいへんな問題だと思うのです。
  69. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 使った使ったというふうに言われますがね、これは使ってないんです。ただ、政府機関あるいは準政府機関と政府との間に、まあその金の置き場所を変えたと、こういうだけの話なんです。その変えたのを一体どうなのかということは、先ほど申し上げたとおり、これは金利の引き上げの調整、これは御理解願えると思うんですがね。そういう関係でやっておると、こういうことなんです。しかし、総需要抑制政策、これはまあ私もほんとに命がけで取り組んでいるわけなんです。この方針に背反するというようなことは万々あり得ない、これはもう断言いたします。
  70. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど来大蔵大臣は金利のことを言われましたが、この二月一日から金利を上げたわけですね、七分五厘です。一月二十五日の時点では六分七厘五毛だった。〇・七五%上げたんです。そこで、その一月の下旬ならいいけれども、一月二十五日に一兆円のかけ込み融資が行なわれておる。一兆円ですよ。これは要するに、貸し出し金利の安いうちに貸し付けたというのが、これ、実態だと思います。この政府関係機関たる輸銀や開銀が安い金利で借り受けるということは、これは自由であります。これはわからぬわけじゃありません。しかし、資金運用部資金は郵便貯金や年金など国民の零細な金を原資として運用するものであります。それが一月二十五日から二月一日まで一週間待てなしに、そして一兆円もの低金利で貸し付けをして、それによって七十五億円の金利を損をしておる。これはほかの問題とは違いますよ。国民の零細な郵便貯金や年金の積み立て金ですよ。それが原資になっておるのに、幾ら同じ政府関係機関同士であろうとしても、わずか一週間待たなしに七十五億円も損をして、一兆円ものかけ込み融資をやらせるということは、私、断じて了承できない。これは納得できません。
  71. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、金利の引き上げは二月一日に実行しておりますけれども、その前から方針をきめておるわけです。そういう方針に基づきまして、関係各省と大蔵省は、来月からおたくの所管の政府機関に対する融資の金利が上がりますよと、そういう交渉をするわけです、上げますよと。そうしますと、各省のほうでは、上げちゃ困ると、われわれのところの行政がうまく執行できないと、まあ農林省なんかが非常に多いわけでありますが、農林省に対しましては、ですからその長期の金につきましては、これは例外的に上げないと、こういうような措置をとったわけでありまするが、しかし、上げるというふうに承知する役所におきましても、上げるについては、急にそう上げないで、しばらくはまあひとつ前の金利で、あるいは少しずつ上がるようなことでやってもらえぬかというような要求をする。これは関係各省とすると当然だろうと思います。そういうことを配慮をいたしまして、その交渉段階において、まあ少し安い金を渡しておきましょうと、ですから、原則的には高い金について承知してくれよと、なるほど閣議にはかけるけれども、その閣議にかけたときには、承知しましたという大臣の回答がほしいなあと、こういうような交渉がずっと行なわれておるわけなんです。そういう間におきまして、政府機関等に対しましてまあかなりの額を安い金でこの際、いま出しておきましょうと、いずれ高い金というようなことになりますが、まあそれまでのつなぎという役割りを尽くすじゃありませんかと、こういう交渉をしておるんです。一般の金利水準が上がった、そこで、政府機関につきましてもこれに同調させなきゃならぬというのが大蔵省のかたい考えでございまするけれども、まあ役所役所におきまして、そういうことをされると自分の役所の仕事の執行に支障があると、こういうようなその事情もわかるその調整措置といたしまして、かけ込み融資と言われましたが、一月末に、下旬にまあ相当多額の金を資金運用部から各政府機関に移しておる、しかし、移したその金は使うんじゃない、これは厳重に管理しておると、かように御了承願いたいと思います。
  72. 羽生三七

    羽生三七君 住宅公団だけでなしに、そういうものだけでなしに、たとえば開銀や輸銀なんかは企業にも融資をします。で、この一週間だけで十九億五千万円、もうけておる。それからその金はすぐ使うわけじゃないと言いますが、どういうことになったか御存じですか。それはすぐ資金需要がないので、それは短期証券を買いあさったんです。だから、金融市場が一時混乱をしたとさえいわれておる。そういう問題があるんですよ。だから、財投の原資の中心を占める郵便貯金や年金に対して、これ、いまインフレ対策という問題が重要な問題になっているときに、資金運用部が私は金もうけをやる必要は毛頭ないと思う。しかし、一週間待てば七十五億円というものが資金運用部は損をせなしに済むのに、一週間待たなしに一月二十五日にかけ込み融資を認めて、みすみす七十五億円損をしておる、損をするということはどうしても私納得できない。それから、むしろそういう場合には、いま問題になっておるインプレー時金、こういうような問題を、その利子の増加分——今度の場合も、全体として低所得者に出す一時金は百二十六億円でしょう。その半分より多い七十五億円を年金やあるいは郵便貯金の原資で損をしておる。こんなやり方というのは、単に総需要抑制政策がしり抜けであるばかりでなしに、いまのインフレ下における問題認識としても私はこれは問題にせにゃならぬと思う。それも先ほど申し上げたように、そういう金を、資金需要がいますぐあるわけじゃないんです。短期証券を買っておるんです、みんな。そういう事実を見れば、私はこれは必ずしも納得いかない。
  73. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 短期証券に運用しておるという話でございますが、資金運用部に、かりにですよ、留保しておきましても、資金運用部はただ無利子の預金をしておくわけじゃないんでありまして、これを各種の方面に運用する、こういう措置をとっておるわけなんです。資金需要がない、実需がない、それにもかかわらず、そのコストを安くするというために資金運用部から各機関に移しかえをしておるわけでありますから、そこには余剰が残るのは当然です。その当然残ったところの余剰資金を、これは寝かしておくわけにもいかぬ、そこで、いろいろ有利な方向へ運用する、これも私は当然である、こういうふうに考えます。  ただ、これはまあいま物価が非常に激動しておる、そういう際に、それに合わした財政操作というものは、なかなかいろいろ手の込んだ措置を必要とするわけであって、そういう中の一こまとしての操作であると。しかし私、集計してみましてね、一兆円をこえるという額に一カ月でなった、実は私も少し多過ぎたかなあと、こういうふうな感じをあとで持っておるわけなんでありますが、これはまあ御指摘になられました点はごもっともな点だと思います。そういう御指摘の御意見等を踏まえまして、今後におきましては、これらの措置につきましては厳重に注意してまいりたいと、かように考えます。
  74. 鈴木強

    鈴木強君 関連。  ただいまの一兆円のかけ込み融資の問題に関連をしてお尋ねをします。  まず、日本輸出入銀行とそれから日本開発銀行に対して、ここ五年間ですね、昭和四十四年から四十八年までの間に資金運用部からどれだけの貸し出しをしておりますか、それをひとつ教えてもらいたい。
  75. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いまここで申し上げるんですか、資料を出すんですか。
  76. 鈴木強

    鈴木強君 いや、教えてください。
  77. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ああ、そうですか。——ちょっと待ってください、すぐわかります。
  78. 竹内道雄

    政府委員竹内道雄君) お答えいたします。  昭和四十四年は開発銀行二千二百八十六億でございます。四十五年が二千六百三十二億円、四十六年が三千五百二十億円、四十七年が三千六百四十億円、四十八年度が当初計画で三千八百五十七億円、四十九年度は御承知と存じますが、三千九百八十億円でございます。  輸出入銀行につきましては、昭和四十四年が二千八百二十億円、四十五年度が三千三十億円、四十六年度が二千八百四十億円、それから四十七年度が二千九百五十億円、四十八年度が当初計画で四千八百六十五億円、四十九年度は五千五百六十五億円の予定でございます。
  79. 鈴木強

    鈴木強君 それで、そのうち十六商社、それから石油関係企業に対して、この五年間にどれだけの年度ごとに融資がされておりますか。
  80. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 正確な御要求に応ずる資料というものは、いまここに持っておりません。後ほどつくりますが、むしろ残高で申し上げる以外にはございません。何年間というわけにはございませんが、商社につきましては卸売り業という分類になっておりまして、残高といたしましては七千億円でございますが、このうちには小売り業を含みます。したがいまして、十大商社というものを取り出しますと六千億というのが残高でございます。輸銀につきましては石油ということは比較的少ないと思いますが、いまそういう分類をちょっとしておりませんので、お時間を拝借したいと思います。
  81. 鈴木強

    鈴木強君 いまの問題になっております三井物産、これが千六百四十九億、これは四十八年九月末現在ですね。それから三菱商事が千四百五十四億。丸紅が八百九十億、伊藤忠が六百二十七億、住友商事が四百四十九億、日商岩井が四百三十億、トーメンが三百五十一億、兼松江商が百二億、安宅産業が百億、日綿実業が八十二億と、こういうふうに相当多額の資金運用部資金からの輸出入銀行に貸し出した金の中から十大商社のほうに融資をされておる事実がございます。それから日本開発銀行から石油関係企業に対しては、大体貸し出し残高で一応見ますと千三百四億円。その中には、今度非常に問題になりました東亜石油、三菱石油、大協石油とか丸善とか、要するに諸悪の根源石油にありと、こういうふうにまでいわれた企業があるんです。買い占め売り惜しみをして物価狂乱をつくった元凶がここにあると私は思うんです。ですから、そういう大手の商社や、あるいは石油危機は千載一遇のチャンスだ、通産省や消費者やマスコミの目をごまかしてかせげるだけかせげと、悪の限りを尽くして、企業の社会的責任なんというものを忘れて、反社会的な犯罪的な商行為をやったこれらの企業に対して、少なくともわれわれの郵便貯金や簡易保険の零細な金が貸し出されておるということについてはどうしても納得できない。これは大蔵大臣が先ほど十分に検討をされるというお話でございましたけれども、これはひとつ直ちにこういうものは商社や石油企業の姿勢が直るまではやめてもらいたい、そしていままで貸したものは引き揚げてもらいたい、どうでございますか。
  82. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お話の御趣旨は私もよくわかりまするし、私もそのように考えるのでありますが、最近商社でありますとか、あるいは大企業でありますとか、そのお行儀と申しますか、マナーの問題がたいへん論議をされておるわけです。そこで、反社会的な行動をとった企業等に対しましてどういう措置をとるかということは、これはもとより通産省の問題ではございまするけれども、金融面においても考えなきゃならぬ問題であると、そういうふうに考えまして、特にそういう際に、政府資金を、それらの反社会的行動をなした企業に対して制裁としてこれを抑制するというようなことを考えるべきだと、こういうふうに考えまして、実は通産省との間に、そのルールを体どういうふうにするか、大蔵省が通産省の管理する企業に対しまして、これは反社会的行動をしたというらく印を押すわけにもいかぬ。そこで、どういうルールにいたしますかということをいま相談をしているんです。しかし、相談は手間がかかる、その際にも政府資金を貸してくれという企業が出てくる、そういう場合があるわけですから、そういう当面の措置といたしましては、これは大蔵省が独自に判断いたしまして、そしてとりあえず、仮処分でもございませんけれども、暫定的な措置をとろうと、こういうふうに考えているんです。ですから、現にある商社が輸銀の金を貸してくれ、こういうことを言ってきております。ところが、この商社が、問題になっておる商社があるわけなんです。そういうものに対しましては、その融資を留保するというような措置をとっておるんです。いずれにいたしましても、大蔵省があの企業はけしからぬと言うわけにはいかない。これは会社の名誉にも関する問題でありますので慎重にきめなければなりませんけれども、そのきめるルールにつきまして、ただいま政府間において話し合いをしておる、こういうふうに御了承を願います。
  83. 鈴木強

    鈴木強君 いまの問題について、簡単に通産大臣からもお伺いしたいし、それから総理からもひとつお答えをいただきたいんです。
  84. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま大蔵大臣から述べましたとおり、衆議院においてもそういう御発言ございますし、反社会的な行為ということをやったというようなものに対しての融資ということに対しては慎重を期さなければならないということは、いま政府では考えておりますし、またこれがルールをどうするかという問題も非常に重要な問題でありますので、そういう問題も検討いたしてまいりたいと考えます。しかし、いままでは一つずつのプロジェクトに対して商社は窓口になってやっておりましたから、そういうことは非常にやろうとすればできたわけでございます。しかし、このごろは、石油の開発にしても、またいろいろな海外における投資も、ジョイントベンチャーのように全商社が全部メンバーになって、総合的な投資をしようというようなものが近ごろ非常にふえておるわけでございます。国際的にもジョイントベンチャーでやると、国内的にもいままでは商社同士がせり合ってダンピングを行なったり、いろんな問題が現実に起こっておるわけです。そういう意味で、商社が個別に入るというよりも、まあアフリカのガボンの鉄道建設でも石油開発でも関係会社が全部入ると、それだけではなく、そこに石油公団も入っていく。今度の国際経済協力公団、国際協力公団では国の援助もこれにあわせる、こういうような問題で一社ずつの問題というのは非常に少なくなってまいりました。しかし、まだ各社別に輸銀の資金の申請もありますし、現実的にあるわけでありますので、これが反社会的行為というものが明確になってくるということになれば、これはもうそういう問題を取捨選択をしながらやっていかなきゃいかぬと、これはもう現実問題として検討いたしております。ただ、石油会社のように、全部の石油会社がみな公取から告発を受けるということになると、日本石油会社は全部政府資金を使えないという問題が起こっても困りますし、そういう問題は取捨選択をしながら——あなたの言う意味、よくわかるんです。だから、取捨選択をしながら、国益を損せず、一罰百戒は行なわれるというような状態で十分な効果をあげてまいらなきゃならない、こう考えております。
  85. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま、総理、大蔵大臣が述べましたようなことであると思います。で、この点については、一面においてそういう不当な行為をやった商社に対して一罰百戒をやるという必要性ももちろんございます。が、しかしまた一面においては、国家的見地から国益を害しないという配慮が海外事業については必要なことでもございます。そういう両方の面を考えまして、いま関係各省の中でいろいろなルールづくりをやっている最中でございますので、その結果を見て御報告申し上げたいと思います。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題に移る前に、もう一度申し上げておきたいことは、先ほど申し上げたように、財投の原資である資金運用部資金というものは郵便貯金や年金等の零細な国民の金が積み立てられたものです。しかもその中で七十五億円、一週間待たなしに公団その他に融資をしたために七十五億円損をした。今度の政府の生活保護世帯、あるいは老人、身障者、母子家庭等に対する助成金はわずかに百二十六億円です。その半分以上もこの原資で損をしておるわけです、資金運用部資金で。ですから、ほんとうに政府がそういう貧しい人たち、恵まれない人たちに何らかの一時手当金を出そうとするならば、まだ出す余地はたくさんある。これは私、午後申します、この点は。だから、そういうことを考える場合に、単にこの資金運用部資金が同じ政府機関にただ金が移動しただけだというだけの問題ではない。いまのインフレ下におけるこのわれわれの問題認識というものはいかに欠けておるかを証明するものであるということで注意を喚起して、私、次の問題に移りたいと思います。
  87. 小野明

    ○小野明君 関連があります。  ただいま羽生委員指摘をされました七十五億円の金利差の問題、さらにそれぞれ融資を受けた先が短期証券を買いまして、市場が混乱を生ずるというような事態を起こした問題もございます。これらの問題、特に年末——一月末に一兆円のかけ込み融資、さらに鈴木委員指摘いたしましたいわゆる問題企業への融資、これらに対するそれぞれ大臣の御答弁がありましたが、お聞きをするところ統一されていない。そこで、午後の冒頭に、これらの問題に対する政府の統一された見解をここで述べていただきたい。これを要求いたしまして、私の関連を終わりたいと思います。
  88. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府の見解が統一されてないと言うのですが、私が一人でいまの問題を答えておるので、私の意見で統一をされておるわけであります。私の御答弁が足りないという点があれば何なりとお答え申し上げます。
  89. 小野明

    ○小野明君 それはね、この問題に対する総理の見解というものはまだ一回も承っていないんです。そこで、まあ選別融資等の問題もありますが、通産大臣の御答弁ではわれわれ納得いたしかねる点がございます。これらの点について、それぞれ正式な見解を総理から承りたい、こういう考え方でもっていま統一見解を午後の冒頭に私は要求をしたわけです。
  90. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は先ほど羽生さんと鈴木さんの発言に対し答えておるわけでございます。  これはまあ二つの問題がございまして、一つは、政府関係の機関といえども資金運用部の資金を運用するということで、時を誤る、時の判断ということを誤ったり、高率運用ということからその配慮に欠けておると、そういう意味で七十五億円も、まあ普通なら資金運用部が直接運用しておればそれだけの利益が得たじゃないかと、そうすれば、それを原資として何らかにまた使えたじゃないかということを指摘されてます。もう一つは、まあそういう資金運用部の立場からいうと高率運用しなきゃならないと、また資金を遊ばしておけないということがあるからということで金を貸し付けたんだが、それが必ずしも理想的に使われているとも思わないと、それは金融引き締めのしり抜け、一つにはそうなっておるじゃないかと、こういうことを指摘されておるわけですから、これらの問題に対しては、まあこれから資金運用部の問題として検討しなきゃならぬ問題だということは私も理解します。  これは資金運用部の問題に対しては私も間々申し上げておるのですし、政府部内でも検討しておるのです。資金運用部の資金が絶えず預金者保護というようなことや資金運用部の独立会計という性質上、絶えず黒字を出さなきゃいかぬということに対しては、もう少しその観点を変えて考えなきゃいかぬじゃないかと、黒字を出さなきゃいかぬということになると絶えず運用しなきゃならぬわけです。(発言する者あり)いやいや、原則的問題なんです。絶えず黒字を出さなきゃならぬと、絶えず黒字を出すということになると、引き締めをやっておるときにも、資金運用部の金というのはいままではなかったわけですが、いまはこの預貯金を非常に、貯蓄増強しておりますから資金運用部の金、だぶついておるわけです、実際は。ですから、この金を全部運用するといういままでの状態を続けると、羽生さんが言ったように、一つにはしり抜けになるおそれもあります。(「そのとおりじゃないか」と呼ぶ者あり)おそれがあるんです。ですから、そういう意味でね、資金運用部というものに対しては、まあ非常に長い歴史を持つものでありますので、まだ議論がたくさんありますが、資金運用部の金は外為会計の金のように政策的に使うので、ある意味において赤字が出ても計上しておけばよろしいという法改正を出すべきじゃないかということも、私も長いこと大蔵省との間に合議もしておるわけです。そうすると、預金者保護という面からなると、これは今度は金利を上げる場合の原資がなくなると、そうすると、結局低金利で押えられるというマイナス面があると、それには一定の水準金利を維持する差額は一般会計から補てんしてもいいじゃないかというような問題を提起して、いま検討をずっと続けておることは事実なんです。だから、まあ続けてはおりますが、長い歴史を持つ資金運用部資金というものの運用というものと制度上の問題がありますので、これはまあちょうどあの第二特会を、外為特会をつくるかどうかという問題で議論したと同じようなむずかしい問題が存在することは事実です。そういう問題に対して政府部内で鋭意勉強しておるということであって、にわかにこの問題を午後の一時からすぐ答えられるような問題じゃないわけですから、皆さんの中でも、ひとつ資金運用部資金というものは一体どうあるべきかという問題に対しては、御検討いただきたいと思います。  もう一つの問題は、政府関係機関から商社その他に貸しておるという問題に対しては、これはルールづくりをしなきゃならないということでいま各省間で考えております。ルールはすぐきめろと言っても、じゃ、その反社会的行動ということになると、今度起訴されるかもしらぬ石油会社が全部やられたら、日本石油会社には全部政府資金貸せられないということになりますから、まあ現状においては、国際的にも国内的にもジョイントベンチャーというようなことになっておりますが、個別でもってやるような特殊な資金というものに対してどう制約ができるかという問題、すぐ結論が出る問題じゃないので、政府間において、一罰百戒というように何らか取捨選択をしなきゃならぬと大蔵大臣が述べておるわけです。私もそう理解しておるんです。通産大臣もそう言っているんです。ただ、いまのように一律のルールをきめるわけにはまいりませんので、十分各省間で詰めよ、それでまず反社会的行動がなくなることが原則である。(「商社の過保護はしない……」と呼ぶ者あり)過保護はいたしません。
  91. 小野明

    ○小野明君 どうもいまの御答弁では納得できないですよ。それは、じゃ、検討されることはいいですよ、検討中であるということはいいが、この総需要抑制のこの際に、一月の末にこれだけ多額の金を運用された、とのことの是非、善悪、これは一体適切ではないではないか、こういう指摘に対する答弁というものは一向聞かれないわけです。この問題に対する正式のはっきりした見解をいただきたい、こう申し上げておるわけです。これは休憩のあとでいいです。
  92. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) それでは午後一時まで休憩いたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後一時五分開会
  93. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、総予算三案に対する羽生君の質疑を続行いたしますが、その前に、大蔵大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大蔵大臣。
  94. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 午前中の羽生さんの御質問に対しまして、まとめて私からお答え申し上げます。  資金運用部の一月の貸し出し額が、昨年に比べ大きくなっておることは御指摘のとおりであります。これは二月一日から資金運用部の貸し出し金利の引き上げが予定されていたため、財投対象機関が借り入れを希望してきたわけであります。金利といたしましても、二月の貸し出し金利の引き上げ幅が大きく、これが財投対象機関の経理に大きな影響を及ぼすことを配慮いたしまして貸し出しを認めた次第であります。しかしながら、資金運用部からの貸し出し金は、各機関から直ちに支出するものではありません。機関の内部に滞留させて、逐次民間への貸し付けや支払いに回っていくものであります。一方、各機関の民間への貸し付け、支払いにつきましては、既定方針どおり繰り延べ措置を講じ、これを抑制しているところであり、資金運用部資金の各機関に対する貸し出しが行なわれたからといって、総需要抑制政策の趣旨に反することはないのであります。  なお、資金運用部資金の運用につきましては、郵便貯金、国民年金等を原資としておりますので、今後とも慎重にこれが運営をはかるよう特段の配慮をいたしたいと存じます。  次に、融資対象の企業に反社会的行為があった場合に、輸開銀融資をどうするかという御質問につきましては、ある企業が反社会的企業に当たるかどうかの判定は、企業の名誉にも関する問題であり、慎重に考えなければなりません。また、何をもって反社会的行為と考えるのかなどの問題があるほか、具体的にいかなる対応措置をとるかにつきましては、当然政策金融の対象としての当該プロジェクトと国益と、その企業の反社会性の程度とを比較検討する必要があり、最終的には当該企業の主管官庁の判定に待つべきものでありますが、その斉一的な扱いにつきましては、現在関係各省と意見を調整中でございます。
  95. 羽生三七

    羽生三七君 私が、先ほど資金運用部資金を原資とする財投の使い方についてお尋ねしたのは、やはり、いま大蔵大臣から御答弁がありましたけれども、当面の物価を安定させるには、総需要抑制以外にない、それが最大の柱であるという、私はそれでもおさまるかどうか疑問でありますが、政府の言うように、総需要抑制で物価を安定させるとするならば、それを効果的に運用する以外にない、それにしては、民間と比べて政府資金関係がしり抜けではないか、こういうことを申し上げておるのでありますが、それに続いて、公共事業の執行の問題でありますが、また、本年度も、先日閣議で、公共事業を下期に繰り延べることを検討して、総需要抑制の効果を上期に集中するように閣議決定をされておるようでありますが、四十八年度の公共事業予算の執行は、私、納得できない点があるのであります。特に、第三四半期の運用はどうかと思います。四十七年度の第三四半期の契約額は九千九十五億円、それから四十八年度は一兆六千五百八十六億円で、差し引き七千四百九十一億円もの増加となっております。これは、公共事業費の八%削減を閣議決定をした四十八年の八月三十一日のそのあとの、第三四半期の公共事業の進め方でありますから、これは非常な私は矛盾と思う。私は、そういう矛盾と感ずるのは、いま申し上げた数字から見て当然だろうと思います。ここにも実は総需要抑制対策のしり抜けといいますか、そういう点があるんではないかと思いますから、この点は納得のいくようにひとつ御説明をいただきたい。
  96. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 確かに羽生さんの御指摘のように、本年度の第三四半期の契約額、また、したがって支出額、これは昨年の同期に比べましてかなりの増加であります。八千億になりますか、その程度の増加になっております。これは八千億という数字をごらんになりますると、大幅なこれは増加だと、こういうお感じかと思いますが、実際しさいに点検していただきますと、これはたいへん努力してくれたなあと、そのおほめをいただくに値する数字だと、こういうふうに思います。つまり、昭和四十八年度の公共投資の予算額は総計約七兆円であります。そしてこれは、四十七年度、前年度に比べて三二%の増加になるわけであります。いま第三四半期、これを第一、第二、第三、第四、平均的に払うといたしますれば、第三四半期の支払いは、まあ予算額の、前年度予算に比べて三二%の増加と、こういうことになるわけであります。四十八年度の予算額は約七兆円でありまするから、まあ大ざっぱに言うと二兆円近くの額が支払われてしかるべきである、あるいは契約されてしかるべきである。ところが政府は、いま御指摘のように、公共事業費の年度中の執行の繰り延べ措置等を決定しております。それを厳格に順守しております。なお、その上にも、まあ努力をしておるわけでございまするけれども、そういう結果、二兆円近くにもなるべかりしものが、これが八千億前後になったというので、非常に抑制をしておると、こういうことをしさいに点検していただきますると、御理解が願えるのではあるまいが、さように考えております。
  97. 羽生三七

    羽生三七君 そういう説明も一つの説明のしかただと思います。ところが、この今日のインフレ、物価高の原因の一つが、四十八年度のこの超大型予算、四十七年の大型補正予算から四十八年度の超大型予算、ですから、予算の額が多いから、それに比べればと、こうおっしゃいますけれども、それほど多い予算であるがゆえに、通貨過剰流動性と相まってインフレ、物価高を起こしたのでありますから、たとえ、予算の比率からいえばもっと二兆円もあっていいやつが、八千億ぐらいに減らしておるのだから、大いに努力したとおっしゃいますけれども、そうではない。もっと徹底的に第三四半期、減らさなければ効果的な運営ができない。四十九年度の予算を圧縮するだけではいかぬのです。四十八年度の運営そのもので十分な効果をあげていかなければ、決して短期決戦で、総需要抑制で物価安定ができないということを私は申し上げておる。  それから四十七年から四十八年へ繰り越された公共事業費は千二百六十五億円と思いますが、四十九年度へ繰り延べられる予定額は八百七十一億円、これは総需要抑制の見地からすると、前年度に比べて私は少な過ぎると思う、繰り越し額が。さらに、公共事業の規模の拡大が四十七年度、四十八年度ではたいへんな違いです。先ほど申し上げたとおりです。それから四十七年度の対前年度増加額が四千八百二十九億円、四十八年度の対前年度増加額は六千九百二十三億円でありますから、総需要抑制を本気でやるとするならば、四十九年度への繰り越し額八百七十一億円は、これは少な過ぎる。ほんとうに総需要抑制をやろうと思うならば、効果的にやろうと思うならば、これよりもっと多い額が繰り越されなければならぬと思うのですが、この点はいかがですか。
  98. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは御説のとおりであります。四十七年度が繰り越しがわりあいに多かったのは、一昨年の秋に補正予算が組まれました。この補正予算において公共事業費、かなり多額のものが成立をしておる。そういう関係で、消化不良といいますか、なかなか消化が間に合わなかったという関係もあり、繰り越しが多くなったのでありますが、それはそれといたしまして、四十八年度におきましては、計画繰り延べをいたしておるわけです。それは、あげてこれは繰り越し措置をいたします。同時に、そのいままでの計画のほかに、一−三月におきましては、かなりの額をさらに上積みといたしまして、計画繰り延べをただいま実施中でございます。そういうものを合わせ、また、その他計画に乗らないもろもろの事業もあります。そういうものを総ぐるめにいたしますと、昭和四十八年度から昭和四十九年度に繰り越される額は、かなり大幅にふえるであろうと、かように考えております。
  99. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題に移りますが、私、繰り返して申し上げますけれども、先ほど財投の運用のあり方、それからいま公共投資の問題等に、繰り延べの問題等に触れましたのは、物価短期決戦という場合に、ほんとうに短期決戦でおさめるために、総需要抑制を唯一のきめ手とするならば、効果的にやらなければ短期決戦でおさまるはずがないと、私はそう思う。この物価問題をやっておれば、次のことができなくなりますので、私は次の問題に移っていきますが、その点はよく理解をしていただいて、短期決戦でかりにおさまっても、はたして長期安定路線に乗せることができるのかどうか、また何かくれば、物価、かりに一時おさまって元戻りになるのか、長期に安定するのかという問題です。  そこで、その問題に関連してお尋ねしたいことは、かりにこれは政府の言うように、物価が近く安定すると見ての、それを前提としての私の質問ですが、物価の観点からすると、財政需要抑制は相当長期でなければならぬと思います。物価に一応目鼻がついた段階で、そういう段階では資源配分とか、中小企業救済等の観点から、総需要抑制の解除あるいは手直し、そういう要請も起こってこようと思います。その場合、漫然と解除あるいは手直しをすれば、再び同じ愚を繰り返す心配もあるわけです。政府の言うように、夏が来れば物価が下がって、そうして総需要抑制を解除あるいは手直しをする、あるいはそういうことをしても問題がないと、そういう情勢が実際に到来するのかどうか、その辺の判断はどうされておりますか、お伺いしたい。
  100. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 今日の事態は、まさに異常だと、こういうふうに思うのであります。この異常な事態、まあ短期決戦と、こういうことで乗り切っていくわけでございますが、その乗り切りが完了したあとの国の財政経済の施策をどういうふうに運営するか、これはまあただいまの短期決戦同様に、あるいはそれ以上に重大なことじゃなかろうか、そういうふうに考えます。私は、そういう異常事態を乗り切ったあとの国づくり、それを踏まえての財政経済の運営の方針といたしましては、もう異常の事態、混乱以前の状態日本社会を復元させるのだ、こういうその考え方は基本的に私は捨てるべきだと、こういうふうに考えます。つまり、いまわれわれが当面している資源の問題が起こってきております。また、物価の問題でこれほど苦労しておる、あるいはまあ国際収支というのが、これはたいへんな深刻な事態になってきておる。そこへまた公害の問題もあります。そういうようなことを考えまするときに、混乱以前のような高い成長率、それを前提としての経済財政の運営というのは、これはとるべきではない、やっぱり国際水準であろうと思います。世界水準がどういうふうに動くであろうか、その辺を目安にして、わが国の成長の高さというものをきめていかなければならぬ。そうすると私は、実際問題としてかなり低目になってくるのじゃないか、その低目の成長というものを、一体どういうふうに持っていくかということになりますると、混乱以前の財政政策あるいは経済政策、金融政策であってはならない、やはり基調は、そういういわゆる安定成長路線というものを実現するに足る十分な要件を備えているものでなければならないと、こういうふうに考えておるのであります。混乱が克服された後のかじのとり方につきましては、それらを考えてよほど慎重にやっていかなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  101. 羽生三七

    羽生三七君 安定成長に乗せるにはどうしたらいいかということはこれからあとに伺うことで、当面の問題としていま伺っておるんですが、日銀総裁はその辺の判断をどうなさいますか。
  102. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) 当面の経済情勢は、御承知のように二月の中旬から卸売り物価が持ち合い状態に入っております。それから、機械の受注高などを見ましても、相当落ち込んでおるというようなことから、やや落ち着きは見せておりますけれども、今後予想されます物価上昇、それは原油価格の影響等でございますが、そういう中で、やはり物の値段についてとかく上げ基調といいますか、上げに賛成というような気分がまだ消え去っておりません。まだ実際の物の需給関係も完全にゆるんだとも見られません。したがって、私どもとしては、当然、当面いまの金融引き締め政策を続けていくべきだと、こう考えております。  今後こういう事態が続いてまいりましたときにどうするか、この点につきましては、中には景気の落ち込みを心配する人もございますけれども、私どもとしましては、そう大きな落ち込みが近くくるとも考えておりません。したがいまして、いまの引き締め政策は基本において維持してまいりますと同時に、一方、具体的に問題を生ずる中小企業その他のものにつきましては、それぞれ個々の問題として対策を講じていく、基調といたしましては金融引き締め政策を続けていく、堅持する、こういうふうに考えております。
  103. 羽生三七

    羽生三七君 今日の事態を招いた原因は、第一に政策上の失敗という問題もありますが、それとともに政策の実行や行政指導の場合、それがスローテンポであったり、タイミングを誤ったりしたことも私は非常に大きな原因だと思います。今後についても、インフレが終息していないのに景気刺激政策をとったり、あるいはデフレになっても、なおそれに対する必要な手段がおくれたりというようなタイミングの問題があると思うんです。  そこで問題は、短期決戦で物価が思うように下がらない場合です。——下がれば問題ないですね。下がらない場合に、なお依然として物価高の基調であるのに、経済界やあるいは景気はデフレ基調、不況という状態が起こった場合、物価は下がらないのに、つまり不況下の物価高ですね、そういう状態のときには景気政策の立場から総需要抑制あるいは金融の緩和あるいは公共事業の繰り延べ解除というような政策をとるのか。それとも、物価対策重点の見地から規制はゆるめないという、そういう方針をとるのか。この点、私、非常に重要だと思うんですね。物価がほんとうに下がればよろしい。しかし、物価は下がらない、しかし、景気はデフレ基調になった、その場合には依然として同じような政策をとるのか、あるいは総需要抑制や公共投資の繰り延べをゆるめて景気刺激政策をとるのか、あるいは物価重点で依然として引き締め政策を続けるのか。これは非常に問題のポイントでもあると思いますが、この点をひとつお伺いをします。
  104. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私どもは物価情勢は近く鎮静すると、こういうことをかたく信じております。しかし、お尋ねのように、もし万一ですね、物価は鎮静しない、しかも不況状態であったという際に、物価対策を重しとするか、あるいは景気対策を重しとするか、こういうお尋ねと理解しますが、その際にはちゅうちょなく物価対策を重視をいたします。とにかくこれだけの混乱経済でございまするから、これを乗り切るためにはどうしてもきびしい処置が必要である。そこで総需要抑制政策を打ち出しておるわけであります。その結果、必然の結果として経済界は不況状態になっていくであろう、こういうふうに思うんですが、その不況状態からかもし出される、あるいは中小企業問題でありますとかあるいは連鎖倒産問題、そういうものに対しましては、いま日銀総裁からお話がありましたように、個別対策としてこれは対策をとる。しかし、総需要抑制政策物価鎮圧と、こういうことはわが日本国といたしましてよけて通ることのできない問題であります。これはき然として立ち向かわなけりゃならぬ。多少景気がどうのこうのという事態がありましても、基本的な姿勢といたしまして総需要抑制、物価鎮圧と、この姿勢をくずしては相ならぬと、かように考えております。
  105. 羽生三七

    羽生三七君 先ほども述べましたように、可能かどうかはとにかくとして、短期決戦で物価の安定が実現した場合、これを長期安定路線にどうして結びつけるかと、これが当面の物価問題とともに今日の最重要課題であると思います。これは私は特に言いたいことは、先ほどもちょっと触れましたが、今日の物価高の原因の一つは、大企業の寡占体制が強大な支配力をふるって、政府の行政指導くらいではたいして痛痒を感じないほどにわが国経済の中に構造的に深く根をおろしておるという、こういう事実をまず深くわれわれ自身が考えておかなければならぬと思います。したがって、従来の高度成長の性格、そのパターンをそのままにして——その性格をそのままにしておいて、それを一時的に縮小均衡するだけではなしに、高度経済成長の性格そのものを再検討を含めて問題の解決を考えなければ、決して根本的な解決にならないと思うのです。この点は、これは田中総理からお伺いをしたいと思います。
  106. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価抑制最大の課題であるということで正面から取り組んでおるわけでございますが、物価上昇の原因というものを全部把握をしまして、これに適切なる目張りを行なうということが物価抑制の処方せんでございます。この中でいろいろございますが、なかなか押え切れないものというものがあります。これは石油が値が上がるというような問題、これは押え切れないわけであります。また鉱物資源やその他が上がるということも押え切れない問題であります。それからもう一つは、給与が相当上がってくるということもこれ押えがたい問題でございます。しかし、そういう押えがたい問題と、それからなお、そうではなく、他の要因によって上がっておるというものとの比較を十分してみて、そして石油の価格は上がる、それから原材料が上がる、給与が上がる、それはコストアップ要因になるわけですが、しかし、それよりも他の要因によって物価が押し上げられた面が大きければ、それは相殺をしてなお余りがあるわけですから、物価は長期安定路線に乗せ得るということになります。それから、そうではなく、コストアップ要因というものが、これはもう不動なものであってどうにもならないということになれば、どんな合理化政策をやっても、ある意味においてはコストインフレ式なもの、言うなればスタグフレーション的な、先進工業国がとっておるような状態をたどらざるを得ないということになります。これはもう生産は不況感というようなものよりも縮小均衡まで持っていくとしても、これはものには限界がございますから、そういう物価状況というものは国際的に見ては、いまの状態で人間もふえる、生産も上がるけれども、人間のふえる率が多い。しかも、人間の一人当たりの消費というものも多様化してくるので消費水準も高くなる。だから、緩慢ながら幾ばくかの物価上昇というものはこれはもうやむを得なかろう。そういう意味で、ノーマルな生産状態を続けながら、年率一%とか、そういう低い、ゆるやかな物価上昇過程は世界的な傾向であると、こういう議論がなされておりますから、こういう国際的な議論や現状というものに日本状態が合うようになれば、これはノーマルな状態と、こう言わざるを得ないわけでございます。これは、そういうことはいまこまかくやっておりますが、まあ、率直に申し上げると、羽生さんもそうでございますが、一つには、全部財政が大きかったと、ですから、この財政を引き締めなきゃならないと、こういうことが言われております。これはわれわれももう財政が先行的要因であると、先駆的な役割りをなして、これが行なわれることによって大きくなるということで、第二次的には設備投資が付随して起こってくる、そうすると景気が過熱をする、それは悪循環として物価上昇につながると、こういう御所論に対しては、これはもう反論はいたしません。いろいろ理由はあるんです、これは。もう、あなた方も言っているように、どんな場合でも社会保障というのは拡大しなきゃいかぬ。生産性を上げて需要と供給のバランスがとれれば物価は落ち着くにきまっていますが、生産性を押えておって、消費というものは上げなきゃいかぬ、社会保障も上げなきゃいかぬということになれば、これはなかなか、原則的な議論としてはなかなかそこはむずかしいところであります。しかし、賃金の問題や社会保障の拡大の問題とかいうものはこれはもう別にして、物価問題はひとつ考えなきゃいかぬということで、総需要抑制政策ということに踏み切っておるわけですから、その意味においては、まず物価抑制のために、これだけ、物価の真犯人は、物価のきっかけをなすものは、大宗をなすものは財政の拡大だと、こういわれてきておりますから、まず総需要の抑制に踏み切っておることは事実なんです。ですから、これは、まだ予算がいまでもなお大きいというなら、これは年度間の執行を思い切って押えていけばいいわけでございますし、二〇%でも三〇%でも場合によっては五十年度に繰り越すというところまでいけば、これはもう予算が、財政が刺激をするということはあり得ないわけであります。これはもう、土地を買いたいといっても、大蔵省は押えておって起債を認めないということですから、いまはもう、土地は買ってくださいと言っているにもかかわらず起債を認めなければ地方財政としては均衡財政を維持する以外にない。それで買わなければ土地は下がるにきまっておると、こういう状態を続けていますから、財政が景気を刺激をしないということにはなります。もう一つの問題は、私が申しておるんですが、なかなか理解を得られないわけでございますが、まあ、このごろはどうも理解が得られるような徴候があると思うのは、金融と財政というものが、これはどっちが主体でありどっちが補完的なものであるかは別にしまして、あなたが先ほどいみじくも述べられたように、政府部内であっても、しり抜けになるおそれがあるということで、御指摘になった財投の問題があります。これよりももっと大きいのは、とにかくピーク時においては十五兆円に近い金融の緩和があったんじゃないかと言われておる議論もあります。最低でも十二、三兆円はあった。そのうち外為の払い超は昭和四十六、七年で六兆一千億もあるということは、これはもう世間周知の事実であります。そういう意味で、これを全部合わせると約倍の十五兆円がよけいになるんだと。だから、それが物価の押し上げ要因になっていることは事実なんです。これは大体常識的に半分ぐらい吸い上げた——これはずうっと財政対民間収支は揚げ超基調が続いておりますし、外為会計もあのような状態ですから、一時のようなことはありません。半分ぐらいは揚げたと。しかし、残っている半分がありとせば、それを吸い上げなきゃどうにもならぬ。それはどこにある。——それが土地になり株になり、まだ株は上がっているじゃないかということを——一週間ばかり前まで、どうして株は上がるんだろうということだったんです。これは持ち合いをするから、原資が続けられてというような面もありますが、払い込みができるというところです。払い込み資金というのは貸し増しをしないのにもかかわらず、時価発行の払い込みや転換社債の引き受けが現に企業において行なわれておる。それで企業が持っておるものを売ろうとはしておるけれども、まだ売ってないということは事実です。ですから、正常な経済上必要な手形金融は行なう。行なわなければ黒字倒産になり、もしかしたら計画倒産になって三年間は寝ておられようものなら、これは土地は下がらないでスタグフレーションにつながるということになりますから、正常な金融をさせながらある時期を限って、土地になっておるようなものを、要すれば、その企業が本質的な営業上必要でない資産を買ってそれを担保に金融したものが、いまつなぎ資金は出してやるが、これ三カ月、六カ月の間に売り払って換金をして、そしていまつなぎ融資をしているものに振りかえていくということが行なわれない限り、企業の過剰流動性というものはこれはもう吸収できないわけで、個人は月給が上がるからとにかく手元の資金や預貯金の率が多くなるということもございます。けれども、それは所得政策につながるからそういうものには触れないということでございます。それでまた一年間に約六百億であったものが、何分の一かに税金が下がっておっても三千五百億、四千億の税収があるわけですから、一〇%にすれば三兆円、四兆円という金が個人の土地の売り払い代金として個人に渡ったことは事実なんです。そういうものがどういう状態において吸収されるかというのが、いまわれわれが金融面において吸収しているわけですから、それが財政と金融が両建てになって締めていけば、正常な状態が保てることは言うまでもありません。これを早く締めろといえば、これはもう黒字倒産になるということでありまして、そういう限界を承知しながら金融を締めておる。で、金融がうんと締まるときには財政は柔軟に、財政が緩慢になっているときには金融を締めていくというようなことで財政、金融を一体になっていま運営をしているわけでございますから、私はいま御指摘のような状態というものを起こさないように、これからやはり毎月、毎月の資金回収というものと経済実態というものを把握しながら、非常にむずかしい仕事でありますが、そういう最終段階に入ったと、私はそのような考えを持っていま政策を進めておるわけであります。
  107. 羽生三七

    羽生三七君 あのね、私が質問したのは高度成長の性格そのものをそのままにしておいて、単に縮小均衡しただけでそれでいいのかということを承ったんですが、いま総理が触れられた問題は、あとに時間があればまた触れます。  そこで高度成長関連をして、もし日本経済のあり方を変えるとするならば、お尋ねしたいことは、列島改造論は、当面この物価上昇、インフレがおさまればまた復活するのかどうか。要するに一時休止、インフレ物価高下の一時休止で、これがおさまれば列島改造論はまた再び登場してくるのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  108. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 列島改造というのは田中角榮個人の論文でございます。田中角榮の著述になるものでございます。そうでなく、国土総合開発まあこれ、国土総合開発という、どうも「開発」ということばはおきらいなようでございますから「国土の総合利用」ということにこのごろ振りかえられておるようでございます。それ、けっこうです。狭い日本を全部利用しないで一体地価が下げられるかどうかという問題、公害が除去できるかどうかという問題、交通難が緩和できるかという問題、一体それだけではなく、生産コストが下げられるかどうかという問題、水が一体あるのかどうか、東京や大阪や名古屋に電力を供給できるのかどうかという、こういう問題があるのですから、これは物価問題とあわせて考えること自体おかしいんです、これは。
  109. 羽生三七

    羽生三七君 おかしくない。
  110. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、それはあなたそういう感じですけれども、それはそうなりませんよ。そこは、だから、私は衆議院でよく言いましたがね、新幹線やめろという質問があったので、じゃ、あんた、九州まで歩いていくんですかと、——いや、それはほんとうはそういう極端な議論を言うとあなた笑うでしょう。私からも言うと、やっぱりそういうことになるんですよ。いまの問題は治にいて乱を忘れずということで、これは宿命的な日本がこの狭い国土の総合利用を考えないですべての政策を行なえるとは考えておりません。これは私の政治的信条であり、政治的な思想なんです。ですから、北海道をこのままにしておけば北海道の人は、これはどんどん、どんどんと東京へ寄ってくるにきまっておるんです。社会保障制度が拡充すればするほど寒いところにいるよりも東京へ行けば国民は食わしてくれるから、北欧と同じ道を歩かざるを得ない。それで五七・五%も税金や保険料を負担しようという気持ちはないんです、私は。ですから、そういう意味国民の負担を軽減しながらより理想的な将来の日本を築いていくという理想図はちゃんと持ってなきゃだめです。長期計画を持たなきゃだめじゃないかという常に御指摘があるとおりなんです。長期計画は持っておるが、ばかの一つ覚えのように、それがいまの物価問題に逆作用するようなことは厳に避けなければならない、そういうことでございまして、列島改造というのを国土総合開発に、国土の総合利用にとさえ、こう謙虚な気持ちで述べているわけですから、そこがなきゃ——政治の上でどうしたってやらざるを得ません。
  111. 羽生三七

    羽生三七君 私は、必要に応じて国土の部分的改造は今後もあり得ると思うし、あっていいと思うんです。しかし、総理の言うような列島改造論は著者だと言われますから……、しかしあれが出たとたんにインフレ風潮を激化さして、それが当時の通貨過剰流動性と相まって今日の事態を招いた事実もこれは疑いのない事実であります。だから、総理列島改造論に見られるようなこのばく大な資金、資材を必要とする大規模開発計画は国土を改造する面もあるけれども、国土を破壊する面もある。同時に環境の破壊から公害の拡大——いま公害を縮小されると言いましたが、公害の拡大に通ずる面もあるし、さらに何よりも私はこのインフレと結びつく危険性が十分あると思うんです。しかも、この次に来る矛盾は現在よりももっと大きな私は矛盾に発展すると思う。だから、そういう意味で部分的な改造は今後あるのは当然だと思いますが、総理の言われるような大規模な、自然が破壊されようがそれはまたあと環境の問題で、あとから直していけばいいというようなことでなしに、できるだけ自然を破壊しないように、公害を拡散しないように、そういう配慮のもとで国土の部分的改造は今後もあってもいいけれども、いまの総理の言うようなこのばく大な資材、資金を要するインフレと結びつくような計画についてはお考えいただいたらどうですかと、こういうことを言っておるんです。
  112. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうふうに分けて考えると、私とあなたの考えにはそう差はないということでございます。これは、あの列島改造論が出たときから急にときあたかも物価が上がっておると、これは私は、その他の要因もあるし、それからまあ、国土というものが総合的に利用されるということで、北海道などは見向きもされなかったような坪当たり五十円、七十円というものが五百円になり千円になったと、これは列島改造だけではなく、エアバスが就航すれば北海道はこよなきいこいの地になりますよと、これはもうキャッチフレーズとして新聞に出ておるわけです、週刊誌にも取り上げられておるわけですから、そういうときにちょうど北海道やとにかく離島の土地を買えるような余剰資金が国民の間にあったと、特に企業の間にあったと、こういうことがときあたかもあったんですが、国土の総合利用が必要でないということで一言だけ申し上げますと、年間百三十五万人ずつ人間はふえるんでしょう。昭和四十八年の十二月三十一日現在人口は一億一千万人をこしたんです、政府の正式統計によって。百三十五万人ずつふえれば十二年後の昭和六十年には一億二千五百万人から一億三千万人になるんです。これから千五百万人も千七百万人もふえるものを大都市に自然流入を許していって物価が下がるとお思いになりますか。自然環境が保護できるほど財政が負担できるとお思いになりますか。地下鉄もキロ当たり百億ずつかけて国民が負担にたえるはずはありません。そういう意味で国土の総合的利用というのは不可欠なものですから、理想的な長期展望を持たざるを得ません。石油だけじゃないんです。これは。水も空気も緑もということになりますから、それは持たざるを得ないということは事実であります。だから、それは長期計画を持ちますと、しかしその実行に際しましては慎重でなければならない、それはそのとおりなんです。十九兆五千億、五カ年の道路計画をやっておりましても、また、社会経済発展計画というものがあって、年次計画があっても、その中でどんなに生産が落ちてもやらなきゃならぬのは社会保障の長期計画の額だけは五年間ではどうしても実現をしたい、年率九%が五%になってもこれは実行したい。しかし、そうではなく、新幹線の問題でも、本四連三絡橋の問題でも四十九年度は一年間ストップをしておるじゃありませんか。そこらは弾力的運用でなければならない。それ区分けをしておかないで、何もかにもすべて列島改造だと言っておると、東京は地震が来たら、五百万人も死んだ場合にだれが責任を負うのかということになるので、政治の上でそんないますぐ地震が来ても生命財産を保護できないというようなものに対しては、青写真も持たなかったということでは政治責任が果たされるはずありません。ですから、私は、列島改造論がここちょうど衆参両院を通過するころに土地の投げものがうんと出てきて物価が下がってくれれば、これは神さまもあるなあとほんとうに思っているんですよ、私は。(笑声)ほんとうですよ。まじめなことをそんなに……。長期計画も持たないで東京や大阪に津波が来たら何百万人もとにかく生命が保しがたいという現状にありながら、目先のことだけで政治責任を果たせるものだとは考えておりません。そこらを区分けしてあなたもお考えいただきたい。
  113. 羽生三七

    羽生三七君 この参議院は持ち時間が片道幾らということになっておるので、しゃべっておったら持ち時間がなくなっちまう。総理のほうは幾らでもしゃべれる。だからいまのことに反論しようと思えば幾らでも反論する意見を持っておりますけれども、時間の節約上次の問題に移りますが、いま総理がたまたま新幹線に触れられたんです。私は新幹線計画のすべてに反対するものじゃありません。必要なものもあると思っております。しかし、今日の問題の多くがスピードさえアップすれば片づくというような発想には私は無条件では賛成しかねる。これはGNP万能主義が人間の幸福の指標たり得ないと同様に、スピードさえアップすれば何もかも問題が片づくようなそういう発想は価値観の再転換を必要とするのではないかと思います。そういう意味で、これは飛行機にも当てはまる。それから新幹線問題では公害訴訟がさらに日本の方々の地域に発展していくかもしれない。そこで、総理と運輸大臣に私特に望みたいことは、現在の在来線です。現在線です。現在線をもっと見直してもらいたいのです。そうして、これを複線化して特急を走らして本数をふやす。なぜ新幹線だけが日本の問題のすべての解決に役立って、在来線のことなんかまるでほったらかしにしておるようなことで、どうしてほんとうの意味の人間の幸福というものが実現できるかということ。だから、そういう点から私は新幹線のすべてに反対しているのじゃないですよ。必要なものはやらんならぬ場合もあるでしょうが、新幹線をいまやっている三線に、整備五線に、新しい計画十二線、これを全部やれば日本の問題が大部分片づくというような、こういう発想には私は組みするわけにはまいらない。いまの路線というものをもっと大事にしてもらいたい、これ、意見を伺いたい。
  114. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはもう私は全く賛成です。これはある意味においてきょう私は初めてここで申し上げることになるかもわかりませんが、これはこういう事態を考えますと、新幹線自体を幾ばくか、計画を十二年間を十三年間、十四年間にしても、これは限られた財源の中であれば、これは在来線を複線電化にするということが前提であります。これは新幹線というのはどういうことかというと、私はここでもって申し上げておったのですが、時間かかるからということでございましたから、こういう問題はほんとうに重要な問題なんですが、いままであまりに一顧だにされなかった。それは急速なモータリゼーションという問題を前提にしまして、これは人間の欲望だからやむを得ないのだということで、私が道路三法という道路のガソリン税の目的税法とか、有料道路法とか、現行の、大正八年制定の道路法を抜本的に改正した提案者の代表は私でございますから、昭和二十八年施行であります。それは日本は山岳がございますし、四九・五%雪の降るところがあるので、道路には限界があるということであります。それで、とにかく一年間に三百五十万台もふえ、二十年前に百三十五万台であったものが今年度もう三千万台をこすと、列島改造論にあるところの六十年度に三千九百万台ないし四千百万台というのは、六十年なんか待たないで、いまのスピードでいけば五十五年で四千万台をこすという状態でございます。そこにちょうど石油問題が起こってきたので、これはある意味においては神のおぼしめしだと、こう言っている人もあるわけです。私は石油問題が起こらなくても、これはどうしてもある程度総合交通体制を整えなければいかぬということによって、自動車トン税、田中税といわれた自動車トン税の新設に踏み切ったわけであります。これは、近距離は自動車で、中距離は鉄道で、長距離は海運でということ以外にない。ですから、中距離と、ある一定の距離以上はトン税をかける。ある一定の距離以上は鉄道が遠距離逓減をやっておりますが、これは今度近距離逓減でなければいかぬのです。とにかく九州から野菜を東京までトラックで持ってくる、石炭をとにかく北海道から四国まで持ってくる、こんなことが制度上許されていいはずがないんです。そういう意味で、とにかく自動車をいまのままにしていくと、昭和六十年、まあ私、一つの試算として、一兆三千二百億トンキロになる、貨物が。それをとにかく全部自動車で運ぼうとすると、それは運べません。運ぼうとすると、とにかく二千五百万台も三千万台も車が必要だ。第一、運転手がそんなにいないじゃないかと、そうすれば、国民生活を守るためにどうするかといえば、とにかく内国海運四〇%のシェアを五〇%に上げなければいかぬ。あとの残りの半分の荷物を、少なくとも半分以上は鉄道にしなければいかぬ。そうすれば、在来線二万二千キロのうち二万キロは複線電化にしなければだめだ。そして、これは近距離通勤用と貨物用にフル運転しなければならないんです。その場合に必要なものは何か。航空機にまかせておけば一番いいと思うでしょう。しかし、航空機といってもなかなかむずかしい。その意味で新幹線というものが必要である。だから、新幹線はその時点におけるちゃんと計算をして、新幹線九千キロないし一万キロの計画を立てたわけでありまして、これは、そういう意味で私は誤りではない。ただ、あなたが、いま自動車で石油がこんなになる、と。あすにも石油も軽油も倍になろうという時代でしょう。そういうときですから、このときこそ、ちょうど米が、外米が半分だったからということではなく、外米はもう上がってきているんだから、国内に麦や米をつくると同じように、自動車万能、モータリゼーションを認めるということよりも鉄道に転換せよ、全くあなたと同じ考えなんです。ただ、複線電化というもののウエートは非常に小さかったんです、いままで。あなたのように堂々と複線電化をやるべしということは、予算委員会でもあまり出なかったと思うんですよ。旗振っているのは田中角榮だけだと思ったくらいに悲しかったんですが、ほんとうにそういう思想なんです。ただ、その場合に人を運ぶものは新幹線を考えざるを得ない。いまから百年前に三六の鉄道をつくったんですから、この国民総生産と国民所得の中で広軌の新幹線というものは夢どころじゃないんです、それはもう。明治時代の人はもっと大きな夢を見たわけでございますから、そこらの調整をひとつあなたにも考えていただきたい、これが政府の切なる願いでございます。
  115. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 総理から詳しく御答弁がございましたからつけ加えることはございませんが、全く私、羽生委員の御意見に同感でございます。したがいまして、再建計画の中でも、複線電化というものを重要視しておるわけでございますが、今後も、省エネルギーの資源の立場からも、この問題は十分解決していかなければならないと思います。整備していかなければならないと思います。  したがいまして、今年度は、総需要の抑制という立場から新幹線に対しましては、四十八年度の予算に対して八〇%、二〇%切られたわけでございますが、これはこれとしまして、在来線の強化のために一二五%の予算を盛ったわけでございます。これからも、これで十分であるとは申しません、今後も、十分御指摘の点等も考えあわせ、また、私どもも全く同感でございますから、在来線の整備強化につとめてまいるつもりでございます。
  116. 羽生三七

    羽生三七君 新幹線問題は、私は、やはり当面の物価対策、物価問題の間だけ一時見送るというのではなしに、根本的な問題を十分考えてもらいたいということをあらためて要請をしておきまして、次の問題に移ります。  この経済社会基本計画の公共投資九十兆円、これは、わが国の経済の現況に照らして、その規模を圧縮するか、あるいは五十二年終了目標を二、三年延期するか、いずれかを考える必要があると思うんですが、特に、この経済社会基本計画の説明書の中に、インフレーションの回避に十分配慮しつつと示されております。そういう意味で、これは規模を縮小するか、あるいは計画年次を二、三年延長するかする必要があると思うのです。このままやれば、私は、インフレーションはなかなか——このインフレにやはりつながると、こう思いますが、この点はいかがですか。
  117. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私も羽生さんと同じ考え方であります。  第一、昨年つくりました経済社会基本計画の当時に比べまして、物価でありますとか、あるいは資源エネルギーの状況などが大きく変わってまいってきておりますので、あの九十兆円公共事業計画をやろうと思ってもできないことでございます。そこで、当然、おっしゃるような方向を頭に置きながら変えてまいりたいと思います。  ただ、総理大臣もしばしば述べられておりますように、あの九十兆円計画の中には、単純に公共事業と申しますが、その中にはいわゆる社会福祉施設とか教育とかいうような面を従来の公共事業よりも重視した点がございますので、一律それらのものをも圧縮するということではなしに、これは、政府全体で、これをフォローアップして計画をつくり直す場合には、相談をいたさなければならないことでありますから、私の一存ではございませんけれども、私は、社会福祉施設というようなものにつきましては、あのペースを落とすことなしに充実してまいることがいいだろうと考えております。
  118. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、経済社会基本計画にある実質成長率九・四%、これは政府——総理大臣の演説から大蔵大臣の財政演説、経済企画庁長官の経済演説、すべてに、いままでのようではいかないから今後は転換が必要であると言われておりますけれども、その転換に見合うのが九・四%なのかどうか。私は、成長率だけ下げれば問題がすべて解決するなんて毛頭思っておりません。問題はその成長の内容であると思うのです。にもかかわらず、九・四%が、いま政府がしばしば、いままでどおりではいかないから今後は転換しなければならないと言う、その転換に見合っておるのが九・四%なのか、あるいはそれよりももっと下げるということが安定成長というのか、その辺はどう考えておるのか、お伺いいたします。
  119. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 従来の日本の実質経済成長率は、この十年間ぐらいを平均をいたしますと一〇%をこえております。一〇・六か一一%くらいになっております。しかし、この経済社会基本計画におきましては、これは、決して古い計画ではなしに、新しい意識、新しい理念を取り入れまして、この計画の主導的な考え方を導入いたしておりますので、当時の考え方といたしましてはそれを引き下げまして九%余にいたしております。しかし、あの中にもございますように、昭和五十年以降、六十年ぐらいまでを想定します場合には、この経済成長率というものは七%台に調整することがよかろうという意味のことも述べておりますし、私は、かりに、フォローアップの結果、あの計画をもう一ぺん検討し直すとしますならば、経済成長率は九%以上ではなしに、国際的な各国の成長率、あるいは新しい日本資源エネルギーその他の状況等をも取り入れまして、もう少しモダレートな、低いものにならざるを得ない、そうするのがいいと考えます。
  120. 羽生三七

    羽生三七君 私は、現在九%成長は可能だという議論があることも承知しております。私の言いたいのは、可能かどうかじゃない、適正かどうかということです。そういう意味で、現時点においてどの程度が適当か、私はパーセンテージだけを問題にしておるわけじゃありませんが、しかし、それにしても、現時点に見合う安定成長の実質成長率というものはどのくらいが適当とお考えになるか、これを大蔵大臣からお聞かせください。
  121. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 当面は非常に混乱状態であります。でありまするから、昭和四十九年度の成長率は二・五と、こういうふうに見ておるわけなんでありまするが、この混乱を収束した後の成長率いかんということになりますると、私は、まず、物価の混乱を再び起こしてはならぬ、国際収支は改善しなきゃならぬ、それから、資源の輸入というものに見合うところの成長率でなければならない、また、公害環境の問題に十分配意し得る成長の高さ、速さでなければならぬ、そういうふうに考えておるんです。そういう成長の高さ、速度というものは一体どういうものであろうか。こういうことは混乱を収拾した後の日本経済の姿を見ないと、現実にどうだということは申し上げられませんけれども、まあ一つ大きな指標というか、われわれが注目しなければならぬのは、やはり日本も、だんだんと国際水準並みの行動に移らなければならぬ、こういうことだろうと思うんです。世界経済の動きがどうなるか、国際社会の成長水準がどこへ行くか、その辺はわが国の経済の運営のかじとりといたしまして大きな指標になるところではあるまいか、そういうふうに考えております。
  122. 羽生三七

    羽生三七君 たとえば、どの程度……。
  123. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) したがって、九%成長というようなことはとうてい考えられない。かなりそれよりも低目のものであろう、こういうふうに考えております。
  124. 羽生三七

    羽生三七君 それから、先ほどたまたま総理が触れられましたが、投資問題に触れられましたけれども、今日まで高度成長を推し進めてきた基盤は投資主導型経済であったと思うんです。それで、GNPに占める総投資の比率を国際的に見ますと、アメリカ、イギリスが一〇%台、それから西独、フランスが二〇%台、日本のみ、ひとり三五%以上です。この高投資が結局高成長につながったのでありますから、この民間設備投資から政府部門も合わせて、総括して総投資と申しますが、この比率は、私は、二〇%と必ずしも申しませんが、少なくとも外国の一〇%とか、二〇%でなくとも、少なくとも三五%以下に下げる必要がある。また、下げなければ、この投資主導型経済から脱却できないと思いますが、いかがでありますか。これは、さっき総理自身が触れられた問題でありますので伺います。
  125. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、日本独自の問題として、外国の例も十分徴しながら慎重に、具体的なプロジェクトを積み重ねながらきめていかなければならぬ問題だと思うんです。これは原則論からいって、いままでのように、昭和二十九年から三十九年まで一〇・四%平均、三十五年から四十五年まで一一・一%というような状態が続けられないということはもう言うまでもありません。じゃ九%は続けられるのか、九%も続けられないということも、これは理解しております。そのとおり受け取っていただいていいと思うんです。ただ、いままでのGNP論というのは、これは大ざっぱな議論なんです。だから、私は、十カ国平均ということを一つめどにしておるわけですが、十カ国平均の中でもアメリカの状態、西ドイツの状態、フランスの状態、イギリスの状態でもって、みんなプラス・マイナスの面は明らかになっているわけです。ですから、そういうものの前車の轍を踏まないように日本はやらなければいかぬ。だから、北欧のように、社会保障を完備することはいいことだ。いいことだけれども、じゃ十万円のうち五万七千五百円も税金と保険料を払ってもいいのかというんじゃなくて、それは二四・二%という先進工業国よりも半分以下の負担で、一日も早く先進工業国並みにならなければいかぬというのが社会保障の長期計画でなければならぬ。ですから、悪いところもひっくるめて全部まねをするということになれば、それは薬の公害でもって同じことの道を歩くと同じことになるわけですから、そういうことではなく、やはり日本独自の状態というものを把握して、最も理想的な計画を立てなきゃならぬということが一つであります。  もう一つは、われわれは、道路を見れば舗装の率は全く世界最低じゃないか。二十年前はインドに次ぐのが日本——インドよりも少しよかったんですが、インドに次ぐぐらいだったと思います。ですから、下水はどうだと、一体住宅はどうだと、公園もないじゃないかと、避難場所もないじゃないかと、子供の遊び場はと、こういうことを考えますと、蓄積を持っておる先進工業国と、蓄積のない日本というものを同列にするわけにはまいりません。ですから、アメリカの公共投資は一般に占める比率が三・五%ないし四%であるとか、それから西ドイツはこれが一〇%であるとか、イギリスとイタリアは、いやフランスは六%ないし七%であるとか、日本だけがなぜ二〇%だというような、数字だけをとるわけにはまいりません。それなら、とにかく車の通らない道でがまんしなければならぬし、くみ取り便所でがまんしなければならぬわけですから。そうではなく、水準まで上げるためには、ある意味で先進工業国よりも勤勉でなければならぬし、多少高い成長率を維持しなければならぬということは、これはだれでも是認することだと思うのです。  それと、もう一つは、質の問題があるわけです。一次産業も二次産業も、三次産業の比率というものが全く何にも研究されないで——日本がいま先進工業国の中で三次産業の比率が最も高くなって、急速に高くなっている。そのためには物価に寄与する面が非常に大きい。ですから、十円のものが二十円で最終消費者に入るものが、十円のものが三十円でなければ入らないというような事態、これを是正するようにしなければならぬので、これももう社会主義国のように一次産業と二次産業だけがGNPでもってあらわされておるのと、三次産業というサービス産業や流通産業まですべて、銀行のとにかく活動も全部GNPの中で計算をされているというような日本のGNPと、一次産業と二次産業だけしか計算しておらない中国やソ連のGNPを同列に論じられないことは言うまでもありません。  そこでもって、たった一つだけ救いのあるのは、国民総生産や財政の中に占める軍事支出というもののウエートが非常に少ないので、その差額を一体どれだけGNPを低下させることにカバーできるかということを私は質的に議論をしてみなければ、これから十年、二十年という、日本のGNPが幾らでなければならぬか、安定成長はどうあるべきであるか、また社会保障はその中で何年たてば先進工業国の現在の水準まで達することができるのか、賃金が一体世界で最高にならなくとも西ドイツ並みになるにはあとの三分の一を何年間で一体縮めて西ドイツと一緒になるのかということを考えないで日本のGNP論を展開することはある意味では無意味だと思うのです。そういう意味で、GNPの量的な問題、質的な問題も、やはり長い間、少なくとも一次、二次、三次産業はこうする、社会保障の現状をこうするとかということで、ある意味で逆算をしてこないと、一つめどはできない。これは、積み重ねで日本のGNP論を議論することは、それは当を得たものではない、私はそのように考えております。
  126. 羽生三七

    羽生三七君 次に、物価と独禁法との関係ですが、私は率直に申して、経済の純粋の自律運動、自律性、その場合にはなるべく介入しないほうがいいと思うんです。これは自由経済の原則からいって、介入しないほうがいいと思う。しかし、明らかに反社会的な共同謀議、やみカルテルをはじめとする人為的、作為的な、計画的な行為に対しては私は介入してもいいと思うのです。そういう意味で公取委員長がこの間試案を示しております企業の分割命令なり、あるいは値下げ命令権を含む一連の改正について、公取委員長の考えはわかりましたが、総理大臣としてはこれに賛成かどうか。これは非常に今後の重要な問題であると思いますので、お伺いをいたします。
  127. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 独占禁止法の改正案については、公取を中心にしていま検討中でございます。政府でもせっかく勉強中でございますから、これは公取の自主的な原案の作成ということに対しては、政府側としては口を出さないで、公取の成案を待っておるわけです。しかし、これを国会に提案をするという段階においては、政府との意見も十分調整をしなければならないと考えております。  で、分割命令とかいろんな問題がございますが、これ、なかなかめんどうな問題です。これはもう私が申すまでもなく、羽生さん十分御承知のことであります。まあ、戦後、占領軍が最も大きなメモランダムケースとして取り上げたものが、財閥の解体であり、農地の解放であり、第三には経済力集中排除法であった。経済力集中排除をやったために、民主化は促進ざれた。しかし、二十八年のこの法律廃止までは、日本はもう国際経済にも加入できないほどの暗たんたる状態であったということで、独占禁止法は残したけれども、経済力集中排除法は、これを法律から削除したわけであります。それから、くしくも二十九年から三十九年まで十カ年、一〇・四%の成長を続けて今日を来たしたということも歴史的事実であります。  ですから、そういうやはり目の前の現象だけでもって経済力集中排除を行なうということは、これはむずかしい問題だと思うんです。これは証券法六十五条と銀行法との調整を一つ考えてみても、えらい問題が存在することは、もうこれは申すまでもないことでございます。ですから、その意味では、これは国会でも、行政府でも、日本の特性を考えながら十分やらなければならぬ問題であって、静かにいま公取の成案を見守っておるのが現状でございます。  ただ、一つだけつけ加えて申し上げるのは、商社の活動というものが何でもやれるということですな。これは昔の形の変わった財閥じゃないかという考え方、少なくとも商社に対しては経済力集中排除法のようなものが必要でないか、商社法が必要でないかという議論がありますが、私は、銀行法や証券取引法のように商社法をつくるということには賛成はいたしません。ただ、これはなぜかというと、つくらなくともできるんです。商社が、大手業者と同じように、全部建設省の指定業者になるとか、マンション業者になるとか、もうウナギ屋から、何でも経営しているんですから、パーマネント屋まで。これには金融を制限すれば済むわけです。払い込み資本金の十倍をこして金融することができないという銀行局長通達を一本出せばできるんです。これ、行政の範囲でできることでありますから、(「なぜだ」と呼ぶ者あり)いや、そういう問題は、いままでは、憲法の規定で自由濶達な経済活動こそという議論が圧倒的だったんです。いまになってこんな問題が起こったんで、商社を目のかたきにしますが、そうじゃなかったんですから。ですから、そういう感情論ではなく、商社がいかに、どういう面で必要であり、どういう面で反社会的行動ができないようにするのかということは、他に方法があれば、法律によって私権を制限すべきではない。こういう問題もありますので、ここらはひとつ行政府の中で十分検討しまして、国会の負託にこたえられるようにいたしたい、こう思います。
  128. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題は通産省ですが、企業の原価公開という問題は、当面の各方面の強い要請で、私も同感です。ところで、私が通産省に特に要望したいことは、企業自身の原価公開が実現する前に、通産省自体が、企業の原価を確実に掌握できるような体制にあるかどうかということ、これが問題だと思います。石油業法にも、販売価格の標準額であるとか、国民生活安定法には標準価格とありますが、標準額なり、標準価格なり、指導価格なり、その名称はいずれにいたしましても、通産省自体が企業の原価を絶対確実に掌握していなければ、どう指導するのか、何が標準なのか、これ、わかるはずはないと思うんですね。だから、国民責任をもってこたえるために、通産省自体がそういう原価を一〇〇%完全に掌握できる体制にあるのかどうか。これを伺います。
  129. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府及び自民党は統制経済をやる考えはございません。自由経済の中で、自由な市場機能、あるいは価格のメカニズム、そういうものを通じて経済が円滑に運営されると、そういう基本的観点に立っておりますから、各企業について原価を精査するという権限を持つという考え方を持ってはいなかったわけであります。しかし、公益事業のような公共性の強いものにつきましては、電気事業法とかあるいは私鉄の問題、その他認可を与えるというような場合について、これは原価を精査するという権限も持っております。私はこういう基本的考え方が正しいと思うのであります。でありますから、先般来御審議願いました石油二法につきましても、原価を精査するという権限はまだ得ていないと私思います。  標準価格を設定するという点については、これは標準的な生産費あるいは販売費あるいは標準的な利潤、さらにその地域的特性とか、あるいは需給状況とか、そういうものを考えて標準価格をきめるという形になっておりまして、厳格な意味における原価という形ではないわけであります。これはやはり臨時緊急の対策として、物価を押える意味で、ある時点における、つまり暴騰する前の時点の価格というものを中心にして、ばさっと押えようという基本的考え方でできておるので、やや行政的なにおいのする価格である、つまり自由裁量を持ちながら、市場機能をある程度期待しつつ物価を鎮静させよう、そういう自民党の政策が基本にあってできている価格であると思うのであります。でありまするから、そういう基本的観点に立っておりまするから、公共性なり公益性の強いものを除いては、原価を法律を出して、その権限まで獲得するという考えは私ら現在持っておりません。
  130. 羽生三七

    羽生三七君 通産大臣、その公共性の強いものについて、通産省自身が原価を一〇〇%正確に掌握できる体制にあるのかどうかということです。
  131. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、公共性ということが、非常に物資が逼迫してきた場合に変化が出てまいります。たとえば、子供の学用品のようなものは、物資が非常に逼迫してきた場合には、かなり公共性が出てまいりますが、ふだんの場合はそういう要素はございません。しかし、石油のような場合につきましては、これはある意味において産業の血液のような要素があって、食管における米のような要素も出てまいります。でありますから、石油のような問題については、今度二法で、標準的な価格という意味において、通産省がある程度介入できる余地をつくっていただいた。私はこういうようなやり方が適当である、そう思っておりまして、公共性が出てくるものについては、そのつど国会の立法を得まして権限を得るという形がいいのではないかと思います。総括的な意味で原価をつくるということは、やはり統制経済が前提になって、その頭がないとなかなかできないと私は思います。
  132. 羽生三七

    羽生三七君 質問に答えていないんですよ。(「そういう能力があるかどうかということです」と呼ぶ者あり)そうなんです、そういう体制。それを国民に公表するかどうかは別問題です。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 権限がないから能力は完全にはございません。しかし、行政指導によって、ある程度において調査はやることができます。
  134. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、標準価格だって、標準額にしたって、指導価格にしたって、正確に原価を把握できないのに、何が標準価格なんですか。非常なあいまいなものになるじゃありませんか。それが問題になっている行政指導と標準価格との問題に関連するこれは重要な問題だと思いますが、いかがでしょう。
  135. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはやっぱり社会党と自民党の政党の差が政策の差として出てきたと思います。つまり、正確な意味において原価を把握するという体制を、自民党はいまのところまだ不要である、そういう考えにありますから、権限もないわけであります。権限がないから、完全にはできないということであります。
  136. 加瀬完

    加瀬完君 関連。  それではね、標準価格というものを、どういう経路によって決定したのか、その経路並びに決定の要素ということについて説明を求めます。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは企画庁長官の御担当でございますが、先ほど申し上げましたように、標準価格というのは、ある意味においては行政的なにおいのする価格で、去年の石油の危機にかんがみて、石油が暴騰する大体その直前の、比較的ある時点における安定的な値段というものを基準にして、そうしてそれ以上上げまい——でありますから、LPガスあるいは灯油につきまして、たとえば十一月の元売り仕切り価格の一万二千八百何円、そういうものを元売り仕切り価格として押えて、そうして、それ以後はそれ以上あまり上げないように行政指導価格をきめ、それがある程度安定したら標準価格にそれを移行させる。そういう考えにあったので、戦時中行なわれたような意味における原価ではないわけでございます。
  138. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと質問に明確によくお答えをいたしますが、これは、政府はすべての原価主義をとるということは、これは国際的な一つのケースはございます、いろんな問題あります、とにかくこういう方式でもって計算をすればいいじゃないかということはありますが、自由経済を主体としておる日本としては、わが国としては、全部が全部捕捉できるような状態にないということはこれは事実であります。しかし、公共性の強い企業、特に認可料金等の企業に関しては、これは認可する場合には経営の実態、料金の算定基準というものを全部洗わなければきめられないわけでございますから、電力やガスに対しては、これはもう通産省はつかんでおります。それから私鉄やバスに対してはこれはもう当然運輸省がつかんでおります。で、物価局というのが経済企画庁にできましたけれども、いまの物価局の法制上の地位や、またいまのような陣容で、すべてのものに対して原価を全部計算ができるというような体制にないということも事実であります。ただ、現状に徴して指定価格とか標準価格を決定しなければならないようなもの、特定な物資に対しては原価に近いもの——原価といっても、これはもうどれだけの給与がいいのであって、しかしこれは、給与は全部右へならえでもって春闘がきまるわけじゃありません。これは会社別によってみな違うわけですから、これは同じ製品であっても、会社別に出るものは全部原価が違うのであって、これは公定価格のようにはまいりません。まいりませんが、少なくとも現状に徴して一定の基準価格というものを強制的にきめなきゃいかぬということに対して、この算定は、経済の原則である需給のバランスの上にずっと長い歴史の上で形成をされてきた価格、それは思惑とか買い占め売り惜しみがなかったときの価格が大体そうでありますから、去年の十一月かその前、まあ過去三年とか過去二年とか、四十七年一ぱいの価格とか平均価格とか、それから急に上がった直前の価格とかいうものを基礎にして、その後計算をされるものを政府で計算をしまして、これが妥当な価格だと思うと、現在幾らラーメンが上がっておってもこれが妥当だと思う、しかし、現実的には私のほうは、給与は、あなた方が言うように一〇%じゃありません、一九・七%、二一・一%上がっているんです。そういうものを加減乗除をしながら適正だと思われる価格を算定する、それは局限された品目においてはできますということでございます。ですから、総合商社のように何万点も扱っているものを全部直ちにその実態を把握せよということはできませんが、これはふろ屋をやると同じことですね、私鉄やバスやその他のものの原価計算に近いものができない、近似値が算出できないというものではないということだけは明確に申し上げておきます。
  139. 加瀬完

    加瀬完君 私のほうでは、何も原価を公開せよとか、そういうことを申し上げておるわけではない。標準価格というものを出すには、それは適正条件というものがその中には当然含まれておらなきゃおかしいじゃないか。適正かどうかという調査が十分になされないで標準価格というものは定まるべくもないはずだ。どういう要素によって適正か標準かということをきめるのか、その手続があるかと、こういうことを伺っておる。ですから、そうでないと、国民の一般が心配するように高値安定という形でときどきに標準価格をきめても、それはいつでも高値が基準になってきめられるということであっては、いま一番物価が問題になっているときに物価の抑圧にはならないんじゃないかという心配がありますので伺っておるわけです。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 標準価格をきめるためにいろいろ通産省や各省が調査をし、また精査するということはできます。ただし、これはいわゆる標準価格であって原価ではございません。
  141. 加瀬完

    加瀬完君 原価は聞いていない、標準価格の手続を聞いている。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そこで、標準価格とは何ぞやという形になりますと、LPGならLPG、あるいは石油なら石油の大体この中の、群の中の模範的な象徴的なもの、たとえばキーポジションにあるようなもの、こういうようなものについて標準的な生産費、あるいは販売費、あるいは利潤、あるいはさらにそのときの需給情勢、あるいは地域的な特殊性、そういうようなものを勘案しながら、まずこの辺が妥当である、これでいけば物価を安定させる可能性のある、そして便乗値上げを防ぐことができる、そういうような判定に基づいて調査をするというのが標準価格でございます。これは先ほど申し上げましたように、ある一定時点において、物価が上がり始める前のある一定、安定していた時点の値段というものを基準にして、そうして、そのときのいろいろな諸経費その他も調べてみ、その後いろいろな要素が新しく入ってきて、国際的要因とか、国内的要因とか、労銀問題だとか、いろいろ入ってきて、そうして、それと比べていま出ようとする値段が妥当性があるかどうか、社会性があるかどうか、そういうものを比べてみる、そのスタンダードとしての標準というものを見ることは、これは厳格にいまでもやっておるわけでございます。
  143. 加瀬完

    加瀬完君 関連ですから、これでやめます。  生産費を調査するというなら、当然、品目によっては原価というものも調査をしなければ適正かどうかという判断がつかないでしょう。だから、それを公開するかどうかということではなくて、場合によっては、原価というものをはっきり調査をする、あるいは把握をする、これだけの考慮というものは当然政府においてあってしかるべきだと思いますけれども、生産費を調査をするということは、原価も含めて調査の対象にしておるのだと了解してよろしゅうございますね。
  144. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 生産費の中にはいろいろな要素がございまして、原材料費もございますし、利子もありますし、あるいは地代もありますし、いろいろな要素がございます。そういう要素は一応は調べてはおります。しかし、われわれが電力料金やあるいは鉄道運賃等についてやっているような意味の、電子計算機まで入れた正確な意味の原価というところまではやっていないわけであります。そういう程度で御了解願いたいと思います。
  145. 羽生三七

    羽生三七君 これは新聞報道ですから正確かどうかわかりませんが、新聞を見ますと、通産大臣は先日、標準価格を設定しない理由として、行政指導でやっていきたいということですね。その理由として、為替相場と原油価格の不安定をあげておる、そして標準価格が朝令暮改になるおそれがあると、こう言っておられるようですが、標準価格でなくても、指導価格の場合でも、為替相場と原油価格の変化が起これば、指導価格自体を変えなければならない、朝令暮改、同じことが起こるのじゃないでしょうか。これはあえて標準価格だけの問題ではない、指導価格だって同じことじゃないでしょうか。
  146. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは同じことでございますが、標準価格のほうは固定性が多いと見ておるわけです。行政指導価格という場合には裁量の余地が非常にある。いわゆる行政裁量で、この辺が妥当であるという形で指導していくというものでありますが、標準価格になりますと、全国一律で、大体同じ価格でやらせるという形になります。そうすると、もう一たんきめますというと、なかなかこれは変えにくい。標準価格でやるという場合には、ある程度の生産費その他も調べますから、では、春闘で労働賃金が三〇%も四〇%も上がったという場合に、じゃ、上がったんだからってんで、今度は、向こうのほうから上げてくれと、標準価格を上げろという権利が向こうに出てまいります。しかし、われわれとしては、物価を押えたいということで、行政的に、ある意味においてはまあわれわれの気魄で押えている要素も、率直に言ってあるのです。これは物価を押えるという当面の緊急の至上命令について、われわれは必死になってやっているからでございます。そういう意味におきまして、行政指導価格と標準価格の間には固定性、弾力性において差があるというふうに考えております。
  147. 羽生三七

    羽生三七君 時間がありませんので次の問題に移りますが、今後、金さえ出せば石油は自由に無制限に入ってくるという、そういうときが来た場合、そういう場合に、通産省は本年一ぱいというようなことを言われておるようですが、そうでなしに、長期的に見て、高度成長から安定成長へ転換していくという場合に、輸入規制なりあるいは消費規制ということが将来あり得るのかどうか。金さえ出せば無制限に入ってくる場合ですよ、それは野放しなのか、高度成長から安定成長に転換する場合には輸入規制なり消費規制というものは将来あり得るのかどうか。これは通産大臣というより……、これ、通産大臣ですか。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油の輸入規制という問題はなかなか国際的にデリケートな問題でございまして、輸出と輸入の問題というのは世界各国が非常に重大な関心を持って見ているわけです。保護貿易に転ずるのか、あるいは輸出奨励のために積極措置をまた政府が乗り出してドライブをかけるのか、日本の動向というものは非常に大きな影響を世界的にも与えているわけであります。したがって、日本が輸入について保護政策に入って輸入規制に入り始めたという形になると、世界じゅうにそれを誘発して、そして、それが結局また日本のためにならない。日本の輸出が自然な形においても阻害されてくるという傾向を生み出す。少なくとも相手にそういう口実を生むというおそれもなきにしもあらずであります。したがいまして、この辺は法的なものを利用してやるということはあまりなじまない世界であります。しかし、総需要カットというような形によって自然に需要が減ってくる。そのために業界からも買う要望や買う力がなくなってくるというやり方なら、これは合理性のあることであって、私たちは、そういう考え方に立ってやっていくことはまず妥当であると考えております。
  149. 羽生三七

    羽生三七君 当面の石油危機が一応おさまりましても、石油あるいは食糧等、資源問題が重要な問題になると思うんですが、特に石油がそうだと思うんです。この場合、いままでのようなあり方にそのまままかしておくんではなしに、国家が管理するとか何らかの方法で国がこれをコントロールする体制をつくることが必要ではないかと思いますが、そういう考えは政府にありませんか、伺います。国家管理。これは総理大臣からひとつ……。
  150. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 石油の国家管理ということは現在は考えておりません。現在考えておりますのは、民間の力だけではどうにもならないという問題に対して、石油公団法の拡充によりまして、石油公団が株の取得ができたり、試掘だけではなく採油もできる、また備蓄もできるというようなことにしなければならないということや、国が関与する場合に、大規模な世界的な試掘、探鉱、それから備蓄用の貯油所というようなものに対しては国際的ジョイントベンチャーにおいて行なおうということで、各国の間で話が進んでおるものもございます。石油そのものを米のようにして国家管理するという考え方は持っておりませんし、これはいま通産大臣が述べたように、なかなか影響の大きい問題でございまして、柔軟に対処していくべきだと思うんです。実際において、国内的に石油の消費や何かをコントロールすることは十分できるわけです。これは石油に対するガソリン税を引き上げる、トン税を引き上げる、いろんなことをすれば、何でもできるわけでございまして、そういう問題は、国際収支の問題とかまた代替燃料やエネルギーの開発の関係とか、いろんな問題がございますので、また、いまのように重化学中心の工業部門が現地に移っていくということ、これは望んでおるわけです。石油を半分日本に出すけれども、半分は現地で精油して、二次製品まで加工するようにということがいま中近東との間にどんどん進んでいるわけですから、そういう意味で、固定的な観念で国営にするとか、国家管理にするとか、どうするとかということではなく、現在ある制度の中で十分に調整は可能であると考えております。
  151. 羽生三七

    羽生三七君 実は、最初から申し上げておるように、物価は短期決戦で鎮静させることが可能であるかどうか。それから、かりに短期決戦で一応落ちついたとしても、それを長期安定路線に乗せることができるのかどうか、そのためにはどうしたらいいかというようなことを、私はない知恵をしぼって幾つか考えられる問題を提起したわけです。  そこで問題は、この三番目には、インフレで被害をこうむった人たちに対してどういう対策をとるかと、こういう問題であります。そこで、政府は、先ごろ、生活保護世帯、それから老人、心身障害者、母子世帯などに対して五百円から二千五百円まで、平均二千円の一時金を支給するようにきめたことは聞いております。これは、人員にして六百八十五万人、支給額は百二十六億。これは、一人当たり二千円ですから、年にかりに一回とすれば、一日に割ればわずか五円余です。一日五円余で何がインフレ手当ですか。こんな百二十六億ばかりのものをインフレ手当なんというのは私は絶対了承できない。私は、これは、すみやかに四十八年度の補正予算を組んで、さらにもっと大幅に増額すべきであると思います。インフレ手当の名に値するように増額をしてもらいたい。いかがでありますか。財源はまたあとから私申し上げます。こんなことじゃ承知できません。
  152. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。  最近における物価高の影響を最も受けますのは、最低生活に悩んでおる生活保護世帯でございます。それで、生活保護世帯に対しましては、扶助基準を常に物価の動向ににらみ合わせながら今日まで改定をしてまいったわけでございます。さらに、四十八年におきましては、四十七年度に比較いたしまして一四%アップの扶助基準を上げてまいりました。ところが、その後物価が上がってまいりましたので、昨年の十月から五%を引き上げ、すなわち、一九%の扶助基準の引き上げということになってまいりました。そこで、物価もどんどん上がってまいりましたが、さらに、十二月に一時金の二千円というものを支給してまいりました。そこで一応、十二月までの情勢から申しますと、物価動向ににらみ合わして扶助基準はそれよりも上回ったところで今日まで続けてまいりました。ところが、一月になりまして——扶助基準は前年度に比べて一九%アップでございましたが、一月になりまして消費者物価指数が二三%という数字が出るようになりましたので、今度は物価のほうが扶助基準よりも上回ってまいりました。そこで、これを直さなければならない。ところが、いまから一月分をさかのぼってやるというわけにはまいりません、扶助というのは、御承知のようにあと払いではございませんので。そこで、最近における物価動向ににらみ合わせまして一、二、三月分、それを、二千円といたしまして一時金の二千円を出すことにしたわけでございます。その二千円というのは、扶助基準で計算いたしますと、一カ月分で計算しますと一八%分になります。それを一、二、三の三カ月、まあ、あと払いというのもおかしい話でございますが、一応、一、二、三の三カ月に割るということになりますと一カ月六%。すなわち、従前の一九%プラス六%——二五%でございますから、すなわち、消費者物価は前年度に比べて二三%でありましても扶助基準は二五%になる、こういう計算で二千円というものを扶助の中で一人当たり出すことにいたしました。したがって、四人家族でありますれば八千円、三人家族でありますれば六千円というものを追加することにいたしまして、そして、今度は、四月になりますと、ただいま御審議をいただいておりまする来年度の予算は、四十八年度に比べて二〇%のアップになるわけですから、そこで一、二、三のつなぎとしては一人当たり二千円というのが適当であろう、こういうふうにいたしたわけでございます。  それに関連いたしまして、すなわち、特別養護老人ホームとか、その他社会福祉施設に入っておられる方々については二千円、最低は五百円——五百円と申しますのは保育所の子供さんでございまして、これは家から通っておる子供さんでございますから、何がしかの、まあ、学用品というわけではございませんが、それを足し前にしましょうと、こういうことにいたしました。それと同時に、いわゆる老齢福祉年金の七十歳以上の方、身体障害者の方々、あるいは母子年金を受けておられる方々、福祉年金を受けておられる方々、この方々については、多少、世帯的な要素もございましたので、扶助基準の二千円とは違って二千五百円、こういうことにいたしたわけでございまして、私どもは、最近の物価動向にかんがみまして、この一−三月から来年度のつなぎという意味合いにおいて一時金を緊急に出すと、こういうことにいたしたわけでございまして、物価動向とにらみ合わして慎重に善処いたしたつもりでございます。
  153. 羽生三七

    羽生三七君 いろいろ御説明ありましたけれども、私が先ほど申し上げたように、平均二千円というものは年に一回だけの支給なら、一日にすれば五円余なんですよ。それは予算で見ると幾らになるとかいろいろ言われますけれども、一番端的に示していることが、一日五円余で何のインフレ手当か、こういうことを私は言っておるのです。そこでこれを補正予算で増額するか、それとともに、もう一つは、いまの保護世帯、老人、身障者、母子世帯等については、四十九年度のこの福祉予算は確かに相当大幅に伸びております。しかし、いまの物価値上がりから見れば、これはもうこれだけでは問題にならぬから四十九年度予算を修正してはどうか、もっと増額修正してはどうか。衆議院通過後であっても参議院で修正できるはずであります。これは両院協議会が必要なだけだ。でありますから、四十八年度補正予算なり、四十九年度予算において修正するなり、私は増額をしてもらいたいと思う。これはいまの一時金です。それから社会福祉関係予算についても四十九年度において増額修正してもらいたい。  これはほんとうに真剣な問題だと思うんです。これはぜひ総理も少し所見を述べてくださいよ。
  154. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) いま申し述べましたのは、昭和四十八年度の一−三月に対処する臨時の一時金の対策でございます。そこで、四十九年度ということになりますと、先ほども申し述べましたように、扶助基準を二〇%アップする、こういうことでございます。さらに、老人福祉、特別養護老人ホーム等の措置費も二〇%アップする。それから老人、身体障害者あるいは母子等につきましての福祉年金につきましては五千円から七千五百円、あるいは障害者の年金につきましては七千五百円を一万一千三百円、こういうふうに上げておるわけでございます。もとより、いろいろ御意見のあるところだとは思いますが、私どもは、この苦しい財政の中で社会福祉だけは何とかしなきゃならぬ、特に物価動向に注意をしなきゃならぬ、こういうことで措置したつもりでございます。  しかも、今度の一時金は、御承知のように、昭和四十八年度の予備費で出しておるわけでございまして、まあ大蔵大臣の言うことなのかもしれませんが、予備費を全部使い果たすといったふうな気持ちで、しかも予備費でございますから、今月の三月三十一日までに本人の手元に渡らなければならない、こういうようなことで緊急に措置したものであることをどうか御理解いただきたいと思います。
  155. 羽生三七

    羽生三七君 年一回だけですか。
  156. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) これは先ほども申し上げておりますように、ことしの一月の消費者物価が、すなわち扶助基準が一九%あるのに消費者物価が二三%に上がったという事態、それを踏まえて四月になると二〇%上げるんですから、そこで、つなぎとして、一時金として出したわけでございまして、四十八年度限りの措置でございます。
  157. 小柳勇

    ○小柳勇君 ただいまのに関連して、一問質問をいたします。  いまのインフレ下における国民の最低生活保障というのは一体どういうことかということは、私の持ち時間の中で討議したいと思いますが、いまの生活扶助基準以下の年金生活者がどのくらいいるかということを先日から調査をいたしました。各省庁から書類を出してもらって調査したのでありますが、地方公務員共済とか国家公務員共済などは、先般、最低保障額ができました。しかし、この最低保障額は、現在、東京都における一級地七十歳の男は生活扶助額が二万七千六百九十一円でありますから、生活扶助額よりも最低保障額が少ないのです。国家公務員、地方公務員などもですね。それはそれとして、それはもう現在二万六千八百円ですから、一応それはおきます。これは私の時間で討議いたしますが、それよりも以下の、二万七千六百九十一円より以下の年金受給者が厚生年金の場合に約七十一万人、それから公企体職員の場合に約七万人、それから、年金でありませんが、普通恩給の場合に三万四千二百三十八名と、こういうような数があります。言うならば、約八十万ぐらいの方がこの生活扶助基準以下です。いま、生活扶助基準については、羽生さん不満だとおっしゃいました。私も不満です。その世帯が二千円、今度受けるわけですね、三月受けるわけです。ところが、この生活扶助以下の年金受給者の人は何にも受けないわけです。昨年の暮れも受けておりません。今度も受けません。こういう人が一番いまインフレの波をかぶっておるわけですね。したがって、この生活扶助基準の——私はその二千円では少ないと思いますけれども、それを認めるといたしましても、このような人も同時に考えなければ、国民に対する差別扱いじゃないかと思うのです。この点について、厚生年金というのは厚生大臣の管轄ですから、どういうようなお考えを持っておられるか。それから公企体の問題については運輸大臣から答弁をいただきたいです。  以上です。
  158. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 厚生年金の最低の金額を受けておられる方々で二万幾らという数字の方が何人おるか、その数字、私、いま存じておりませんが、厚生年金の老齢年金には、御承知のように最低保障がございません。最低保障という制度はございません。けれども、昨年の改正によりまして、二十年勤続未満の者も、二十年のいわゆる年数による給付金が出るわけでございますから、一年千円といたしますと二万円ということになります。それに報酬比例部分が入るわけでございますから、二万円を下回るということはないはずでございます。二万よりも二万五千円とか、それくらいになるはずでございます。  ところで、こういう方々に対してはどうするかということでございますが、これはもう昨年いろいろ御協力いただいて成立いたしました年金法によって、物価スライドというものが適用されるわけでございます。したがって、物価スライドにつきましては、昭和四十八年度の物価指数が前年度に比べて何%上がるかわかりません。一応予算的には一四%と積算をしておりますが、あるいはそれより上になるかもしれません。あるいは二〇%になるかもしれません。ですから、二〇%になれば、それだけスライドして上げていくという形になるわけでございます。そこで、最低保障という制度はございませんが、少なくとも二万円以上には必ずなるはず、それはすなわちスライドと。年金は、御承知のように、救済という制度ではございません。お互い労働者の方々が長いこと働きながら、積み金を納めながら老後の生活の足しにしようと、こういう制度でございますので、あるいはお述べになりましたような事態もあると思いますが、物価スライドによって本年度対処していく、こういう考え方でございます。  遺族年金につきましては、最低保障はございます。
  159. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 共済年金に関連いたしました問題につきまして、福祉年金受給対象者につきましては、今度の一時金の対象になっておるわけでございます。しかし、その他の年金につきましては、共済年金の改正等によって増額をやろうとしているわけで、このたびの対象にはなっておりません。
  160. 小柳勇

    ○小柳勇君 いまの厚生大臣の答弁は納得できません。それはもちろん生活扶助の人も生きる権利はありますから、憲法上保護されなければなりません。それよりも以下の人が、もちろん精算すればもっと出るかもわかりませんが、いま数字を言いました。しかも、この人たちは、晩年は自分たちの掛け金で生活しようと思って営々としてかけてきたわけです。二十数年かけているわけです。言うならば、もっと国がいわゆる損害賠償としても考えなければならぬでしょう。にもかかわらず、さっきおっしゃったようなものについては、わずか一日五円であろうと支給される。であるならば、当然、厚生大臣は、これはどうしようかと考えるのが大臣としての任務じゃないかと思うのだ。にもかかわらず、二万五千円ぐらいありましょうから、それでまあごかんべんをというような、そこまで言いませんでしたけれども、そういうような気持ちじゃ納得できないですよ。したがって、さっきの羽生さんの御意見もあります。今度早急に補正を増額せよとか、あるいはさっき厚生年金のスライドをおっしゃいましたけれども、あの改正では、ことしの十月一日からしか適用できませんよ。しかも、昨年からでしょう、このインフレは。昨年の暮れに、私は、失対事業の一時金のことで大きな声を出して、総理から反駁をかったけれども、去年から問題が起こっているのです。そうしてことし、去年とことし。それにしては一時金が出ます、ほかの人は。この年金受給者は二万七千円以下、生活費以下の人ですから、当然考えるのが大臣としての任務じゃないかと思うわけですよ。それをそういうような言いのがれでは納得できないが、厚生大臣、総理とも相談してないようでありますが、ひとつ厚生大臣のあと総理大臣の決意を私聞いておきたいです。そしてまた、その答弁によって私の持ち時間でも少し討議いたします。
  161. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 御承知のように、厚生年金は拠出制でございまして、これは本年物価上昇の率に準じてスライドして上げていくと、こういうやり方にしておるわけでございます。いまお尋ねの二万幾らという数字は、いつの数字かよく私存じませんが、実は昨年の十一月に再改定をしておるわけでございまして、二・二倍引き上げた金が本年の二月から支給されておるはずになっております。あるいはその前でありますと再改定前の金かと思いますが、それは一応別といたしまして、最近における物価動向にかんがみまして、物価スライドを本年十一月から実施すると。これにつきましては、もう少し繰り上げることができぬだろうかという考え、タイムラグを短縮という問題があるわけでございまして、実はいろいろ私も研究してみたわけでございます。ところが、御承知のように、昭和四十八年度の消費者物価指数が全部統計的にできますのが五月の初め、三百五十万の方々についてその年金額を全部改定していくというのはたいへんな業務量——業務量なんということを言うのはどうかと思いますが、そんなこともありまして、いまの段階では十一月を繰り上げることは非常に困難ではないかと、こういうふうに考えられておるわけでございます。
  162. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、一つの考え方として、小柳さんが発言をしておられることは理解できます。理解できますが、これは制度が違うということを率直にこちら側の立場として申し上げます。そして今度支給した百二十六億余の金は、だれが見ても国民的にこれはもう社会保障の対象人員であって、これは社会保障的な立場でこれを救済をしなければならないという考え方で、政府は、そのときそのときに、段階的ではございましたが、時期に適応した施策としてかかる措置をとったわけでございます。あなたが御指摘になっておられる方々、これは内容的にどうこうと言うんじゃございませんが、これは年金の受給額が月当たり二万何千円ということでございまして、まあ、反論するわけじゃありませんよ。しかし、これは制度上の問題として申し上げるんですが、必ずしも、受給する金額は小さいけれども、その方々個々の中でそれ以外に収入が全くない人たちであると、社会保障の対象人口であればその中でもって処理されるわけでありまして、八百万人の中に入っているわけですが、少なくともそうではなく、受給する金額が少ないということでございますので、やはり制度上スライドの中でこれを処理するということで、この問題も、私と厚生大臣の間にも、また大蔵大臣を交えての会議でも、いろんな議論をしてみたんです。それで繰り上げることができないかということでございまして、非常にむずかしい作業であるけれども、もう徹夜でもやってみましょう、やりましょうということになっているわけです。ですから、何も考えもしない、勉強もしないというんじゃありませんが、制度上の違いということもありますので、これらの年金受給者、低額年金受給者に対してはスライドの中でひとつ処理をするということで理解をいただきたいと思います。
  163. 羽生三七

    羽生三七君 政府は、物価抑制の見地から貯蓄を奨励する政策をとるわけですが、先日成立した割増金付貯蓄に関する臨時措置法、これなんかは、結局、射幸心をあおるだけではなしに、預金者同士の損失で当選者が得をするということだけで、私は根本的な問題の解決にならぬと思います。それともう一つは、これからのこともさることながら、いままでの損失をどうして補てんするかと、これが一つ問題点だと思うんです。  実は、私、ことしの正月、郷里のある会合に出ました。そうしたら、一人の労働組合の人からこういう質問を受けました。私は年末手当、ボーナスを全部貯金したと、しかし、いま考えてみると、こんなに物価が高くなり、インフレになっていくのに、貯金をそのままにしておいていいのか、おろして物を買ってしまったほうがいいのか、どうしたほうがいいのか、ひとつ教えてもらいたいと、こういう質問を受けたんです。率直に言って、私、瞬間、答えに窮しました。こう答えました。もしみながみな貯金をおろして物にかえるようなことになれば、インフレは一そう激化して、貯金は一そう目減りするであろうと。それのみならず、非常に重大な事態に発展するかもしれない、だからしばらく貯金はそのままにして様子を見てはどうですかと、こう答えました。その席には大ぜいの人がおりました。  しかし、いま考えてみて、まだ私はそのときの答えが胸にひっかかっておる。はたして私の答えは親切であったのかどうか。いまのような際限のない物価騰貴、インフレ傾向を見て、貯金はそのままにしておきなさいと言った私の答えが親切であったかどうか、非常に私いまでも心にかかっております。ですから、いまこれは一労働者の質問だけではない、国民の大多数がこれだけこのインフレの中で、はたして貯金の目減りというものはどうなるのか、それに一体政府はどうこたえてくれるのかと、それが非常な今日の国民の関心事だと思うんです。これに対して、問題はむずかしいということはわかります。わかりますけれども、しかし、いまの一時金が一部の人たちに配られると同じように、ある一定の時期を限って一時金を支給するような方策をとることはできないかどうか。むずかしいということはわかるけれども、ひとつお聞かせをいただきたいと思う。
  164. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この問題は、御説のように、なかなかむずかしい問題であります。つまり理論的に考えましても、この異常な物価高、インフレと呼ばれるようなこの状態、これは社会のバランスを非常に乱るわけであります。つまり金銭債権者は損をする。これに反して金銭債務者は得をするというようなことがありますが、その他、この異常な物価高というものは、これは国民すべてに非常なアンバランス、不公正な状態をかもし出すと、そういうようなことでありますが、それに対しまして、一体どういうふうにそのこうむるところの損害を補償するかと、こういう問題をいま提起されておるわけでございますが、たとえば貯蓄をしておる人の問題、つまり金銭債権者であります。その人に補償を考えられるかと、こういうことでございますが、さあ、その補償をするとなれば、貯蓄者以外の金銭債務者に対してどういう措置をとるのだと、こういう問題もあります。それから、この物価高によりまして、金銭債権者ばかりじゃありません。いろんな意味において不公正な影響を受ける人々、これを一体どうするんだと、こういう問題がある。そういういろんな問題があるその中におきまして、預金者だけに対して目減りを補償するというような措置をとるということがはたして考えられるのか、られないのかと。考えられるとすれば、すべての経済現象に対する損害をこうむった人に対して考えなけりゃならぬ問題だと、こういうふうに思うんです。そういう問題がある。  それからもう一つは、この補償の財源を一体どうするんだと、こういう問題があるんです。財源を金融機関に負担せしむるということになれば、自然それは貸し出し金利のほうへいっちゃう。そうすると、貸し出し金利の引き上げの問題にとどまらないで、あるいは社債の問題だ、国債の問題だ、いろいろな問題に波及をしてきて、結局、これは日本経済全体の金利水準の底上げということになる。そういうのを貿易立国の立場をとらなきゃならぬわが国としてどういうふうに考えるかと、こういう問題があります。これはつまりそういう面においては物価対策と相矛盾する施策になってくるわけであります。  それからもう一つ、それじゃ国家がその金利差を補てんすると、こういう考え方はどうかという議論もあるかと思いますが、そういうことをしたら財政の負担はたいへんだ。それの財源を一体どこに求めるかということを考えますと、これもまた物価対策に背反をするということになってくるんです。結局、私もずいぶんこの問題は深刻に考えているんですが、考えても考えても帰着するところは、これは短期決戦、早期にこの異常な状態を克服するというほかはないということなんであります。しかし、さらばといって、過去のことを考え、また、将来の貯蓄ということを考えて、何も手をこまねいていていいんだというわけじゃないんでありまして、そこで貯蓄の増強、また、貯蓄をする人に対するところの何らかの配意ということに思いをいたしながら、昨年は、とにかく二%の貯金金利の引き上げを行なうとか、あるいは暮れには六カ月定期という考え方をとるとか、あるいは先ほどまあ御批判もありましたが、割り増し定期というようなこともとりますとか、あれやこれやと努力をしておるんです。まあ、金利体系の基本に触れず、かつ当面の緊急な要務であるところの物価対策と矛盾せずという範囲内において何か手があればといって考えておるのでありますが、まだ具体的に、これでこれをもう一つ追加するんだというお答えができない、そういう段階でございます。
  165. 羽生三七

    羽生三七君 いまの国民大衆は、これから貯蓄するどころの騒ぎじゃないんで、もっと貯蓄なんかできないような状況にだんだん追い込まれつつあるんです。  それはそれとして、いま財源のお話がありましたから私申し上げますが、いま問題になっておる超過利得税を与野党間の話し合いというようなことだけにほうっておくことなしに、政府も積極的にこれに参加して、すみやかに超過利得税を立法化して、それを財源にして、そしてインフレ手当基金制度、インフレということばが悪ければ生活対策基金でもよろしゅうございます。そういうファンドをつくったらどうか、それの財源にこれをしたらどうか。財源がないことはない、やり方で私はあると思います。いかがですか。
  166. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 超過利得税の構想につきましては、私も前々から考えておるんです。つまり、いま日本じゃう皆さんがみんな物価高で悩んでおられる、また、心配もしておられる。そういう混乱の際に乗じまして不当の利得をする、買いだめだ、売り惜しみだ、便乗値上げだ、そういうような手段によりまして超過利得をあげたという人に対しまして、経済的制裁としての課税という問題は、これは当然考えなければならぬ問題だと、そういうふうに思うんです。  私は、そういう考え方に立ちまして、どういう方法がいいかと、こういうふうに考えておったんでありまするし、また、大蔵省としても一案、二案、三案、いろいろ考えてみた。ところが、これがみんな一利一害あるんです、一長一短。そこで、私がこれを国会へ提案をする、そして、きびしい皆さん方の質問責任を持って、自信を持ってお答えをできると、こういう案をまだつくるに至らなかったわけなんです。そういう段階において、私は、たまたま二月の初めでございましたが、テレビ討論で、わが自由民主党の政務調査会の田中副会長、それから野党四党の書記長、この皆さんとこの問題を論議する機会があったわけであります。その際、これは皆さん、やろうじゃないかと、こういう御意見。私もやるんだと、こういう意見。いま私はいい考え方がないんだが、野党の書記長の皆さん、何か一つ名案はないもんでしょうか、ひとつ相談してくれませんかと、こういうことをお願い申し上げた。  そうしたところが、皆さんが、よし、ひとつ相談しましょうと、こういうことになって、いま与党、野党五党間の話し合いの段階に来た、こういう段階になってきておるのです。それで、皆さんがいまお話し合いを始めておられるそういう段階に、私が、そういういきさつのあるこの問題を、割って入ってどうだというのもいかがであろうか、こういうふうに考えたのですが、私としては、何とか五党間の話がまとまって、そしてこの構想というものが具体化されるということを念願しております。そして、それがきまりますれば、これはある程度の増収が期待できるわけであります。その増収を一体どういうふうにするか、これにつきましても、各党、皆さんの御意見をよく承ってみたい、かように考えております。
  167. 羽生三七

    羽生三七君 それを財源として基金制度をつくるとともに、もう一つ私は財源をあげたいのです。それは、企業の再評価をやったらどうですか。これは立法が必要になりますが、その再評価益金を、これは一般会計でもよろしいし、それを財源にしてもよいし、財源は、自然増収もありますけれども、やろうと思えば私はあると思う。企業の再評価問題はいかがでありますか、おやりになる意思がおありですか。
  168. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 資産課税につきましては、御承知のとおり、土地をはじめいろいろな形の課税がされておるわけであります。それに並行いたしまして所得課税をやっておる、その体系でひとまず安定しておるというのが現状でございます。そういう際、しかも、経済がこういうふうに激動しておるという際に、新しい体系を一つまた加えると、臨時的にはなりましょうが、そういうことになる。これはかなり経済界を混乱させるということになるのじゃないか、そういうふうに考えます。それでこれ、そんなことをやって、はたしていまの短期決戦というのに役立つかということを考えますと、そういう効果がなくて、むしろ経済界を混乱をさせる、こういう影響を持つのじゃあるまいか、そういうふうに思うのです。  しかし、私は、この今日の異常な事態を克服する、そのあとで日本経済をどういうふうに運営するかというその段階になりますると、税制等につきましてもいろいろは考え方があり得る、こういうふうに思うのです。また、この混乱期にいろいろ異常な物価、そういうことの影響を受けて、国民各界、各層の間にアンバランスが出てきておる、そういうような問題をどうならしていくかということも非常に重大な問題になってくるだろう。そういう際に、いろいろな構想ができてくるわけでありますが、そういう際に検討さるべき問題の一つである、そういうふうに考えております。
  169. 羽生三七

    羽生三七君 なぜ私はこういうことを申し上げたかといいますと、蔵相自身が財源問題を持ち出したので、たとえばということを申し上げたのですが、これは経済企画庁の国富——国の富ですね——この調査によれば、四十五年、これは十五年間に四十五年時点で九・六倍、約十倍にふえておるのです。現時点で私は十数倍だと思う。だから、ここで企業の再評価をやったらどうかというのが一つの私の提案です。しかし、もう時間が来ましたからこれでやめますが、いずれにしても、きょう私は、当面の物価問題、それからこれを長期安定路線に結びつける場合、どうしたらいいか、それから、いまのインフレで損失を受けておる人たちにどう補てんするかという問題を申し上げましたが、政府の言うように、短期決戦で片づくかどうか、私は疑問だと思います。火の種はなかなか消えません。どうか今後とも、私は、ない知恵をしぼってほんとうのわずかな提案をいたしましたけれども、政府も十分考えてもらって、これは与党、野党の問題だけではない、これは国民として重大な問題でありますので、真剣に今後とも物価問題に対処することを要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  170. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもって羽生君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  171. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 林田悠紀夫君。(拍手)
  172. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 昭和四十九年度予算の参議院における審議が始まるにあたりまして、当面の政策運営の基本的問題について、総理以下関係各大臣に対し質疑を行ないます。  最初に、昨日突発いたしました那覇空港における日航機のハイジャック事件についてお伺いいたします。  戦後三十年間の長期にわたりまして、ルバング島において孤独の生活を続けて帰国されました小野田さんの不屈の精神力に心からの敬意を表しました私は、同時に発生いたしました一少年の金銭欲のためのハイジャック事件に、まことに残念に存じた次第であります。この事件は、幸いにすみやかに解決されましたが、このように多数の乗客を有する巨大なエアバスが一少年によってハイジャックされるということでは、安心して航空機を利用することができなくなります。  そこで、運輸大臣にお伺いしますが、航空機搭乗前の検査をはじめ、ハイジャックの予防のためにいかなる対策をとっておられるかということでございます。
  173. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 昨日の事件は、報道されまして御承知のような結末をつけたわけでございますが、まず、航空機は、御指摘のように安全でなければならないんであります。これはもう至上の命令であり、一〇〇%安全を確保するということでなければならないと思っております。機器の整備ももちろんのことでございますし、ハイジャックに対するいわゆる防止もその一つでございます。四十七年度の統計でございますけれども、一日、国内線が大体五万二千人、国際線が一万四千人のお客を運んでおるわけでございます。したがいまして、ハイジャックに対する防止というのは、法律的には、御承知のように、四十五年に制定されました航空機の強取等の処罰に関する法律、いわゆるハイジャック防止法でございます。これはヘーグ条約と俗称されまして、国際条約も批准をいたしておるのでございます。しかし、これはやったやつに罰を食わすというので、防止という面からは直接的には働きませんけれども、この法律によって厳重な処罰が課せられるわけでございます。なお、この国会に、モントリオール条約と称しまして、民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約というのを提出いたしております。これも国際条約でございまして、この国会で御審議いただきたいと思っているのでございます。  そのほか、国内におきましては、現在、検査機器を持っております空港は六十四空港日本にあるわけでございますが、この中で五十三空港に金属探知機を整備いたしております。さらに、ジェット機が就航いたしますそのうちの十六空港につきまして、新型のエックス線探知機とかあるいはマグネット探知機とか、新型の探知機を整備いたしておるのでございますが、この十六空港のうち、ただいままでに完備いたしております空港は八空港でございます、東京、大阪、千歳、福岡、名古屋、宮崎、鹿児島、那覇と。そのほかの空港につきましては、今年度中にこの探知機を整備いたす予定でございます。  なお、ボデーチェックとかあるいはその他いわゆる監視、警備員によります荷物の点検等は、厳重にこれを施行しております。なお警察当局との連絡、また応援を得まして、十分な安全を確保するように努力をいたしておる次第でございます。昨日も——昨十二日でございますが、七時三十五分発の福井行の便で工具が一式、七時四十分の那覇行の手荷物の中にはうちょうが一本、それから八時五分の秋田行の手荷物の中で工具、そのほか別の人がナイフ等を持っておったのが検知されまして、お預かりいたしておる次第でございます。なお、その他の警備並びに——警備と申しますか、点検につきましては十分なる配慮をいたしまして、乗客の皆さんに不安のないように今後つとめてまいりたいと思います。
  174. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 相当努力がなされておるようでございまするが、今後とも十分な努力をお願い申し上げます。  この問題は、これでおきまして、まさに狂乱物価といわれまするように、昨年以来の物価高騰に際しまして、国民は毎日のようにマスコミの活字を読み、あるいは声を聞きまして、いつ、いかにしてこれが安定するのか、今後自分たちの生活はいかになっていくのか、不安と焦燥の日々を送っております。特に、昨年十月の石油危機にあたりましての企業の便乗値上げによりまして、消費者としての大衆の間に、企業は悪なりとの思想がびまんして、消費者は企業悪の犠牲になっているというような見方が広がっております。特に、インフレは老人、心身障害者、遺家族、母子家庭など、社会的に弱い者の上に最も過酷な運命をしいるものであります。いまほどわが国におきまして社会正義の実現が要求されることはありません。政治はそのために全力を尽くし、国民の不満と苦痛を解消し、国民の祖国に対する愛情を回復し、この困難な時代を切り抜けて、新しい彼岸へと日本を誘導しなければならないと思うのであります。  総理は、先般の施政演説でも、企業に対し、目先の利益にとらわれて便乗値上げや投機的な行為をやらないように要請して、不当な利益を得るような者に対しては、法の厳正な運用によって対処するというように述べられました。また、政府は、政策目標と政策手段を選択して、国民理解を得ながら冷静な判断と果敢な行動をもって対処し、その結果については責任をとるとも言われました。総理、大蔵大臣をはじめ政府は、物価安定のために昨年以来最大努力を続けておられることは申すまでもないところであります。しかしながら、田中内閣発足以後の内外情勢は、歴代内閣が経験したことのない困難な問題に直面しております。豊富な原料資源を自由に輸入し得た時代から、急激に物不足の時代へと世界は転化し、先進国のうちでその最も大きな打撃を受けているものは、資源の乏しいわが国であります。その政策運営の困難性は国民各位も認めるところでありますが、政府は、英知をもって従来の惰性にとらわれない新しい政策を打ち出し、この危急を救わねばなりません。  そこで、最初に総理に端的にお伺いしたいことは、物価はいつごろ安定するめどを持っておられ、また、安定とはいかなる安定を言うかということであります。この二月にはようやく総需要抑制の効果があらわれて、卸売り物価の鈍化が見られてきましたが、石油製品価格の値上げ問題や、春闘による賃金上昇等の問題が控えておりまして、きまめてむずかしいことでありますが、国民にその見通しをお示し願いたいと存じます。
  175. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価抑制が、当面する緊急最大の課題であるということは、間々申しておるとおりでございまして、これが抑制に対して政府最大努力をいたしておるわけでございます。  いつごろ一体物価が安定をするのか、いつごろをめど政策を進めておるのかということでございますが、先ほども述べましたとおり、夏ごろまでには正常な状態ということを求めたいということで努力を続けておるわけでございます。先ほど羽生さんの御発言がございましたが、これから石油をきめる、まあ、石油をきめれば電力も上がる、電力が上がれば生産にも響く、春闘で相当大幅な賃金アップも行なわれる、なかなかこれで、どうも夏までには——一番夏が悪くなるのじゃないですかと、こういう御発言がございましたが、そういう見方もございます。ございますが、とにかく一年も二年もこのような状態を続けていけるわけはございません。そういう意味で、とにかく夏ごろをめどにして、いかに困難な問題であっても物価抑制の実をあげたい、こういうことで日夜取り組んでおるのでございます。  それから一体その物価の安定状況というのはどういうことかということでございますが、先ほども述べましたとおり、価格は需要と供給のバランスの上につくられるものでございます。でございますので、少なくとも昨年の十二月ごろからは異常な物価上昇石油の量的、質的な問題、両面から来る問題、またその上に買い得るだけの資金も供給されておったというような事態で、非常に不安感が消費者にございました。同時に、そこにいろいろな商行為も行なわれたということで、便乗値上げといわれ、望ましいことばではございませんが、先取り、便乗値上げと、こういうことがもう国民的な話題になって、テレビの中でも、もう時代を代表するような一つことばになっていることははなはだ遺憾でございます。子供までがそういうことを言うというようなことでございますから、おそろしい世の中だということを、ほんとうにそう感じております。  ですから、正常な状態が続けられてきたと思われる時期——去年の十一月以前というものをまず基準にしなけりゃならないと思います。土地などは去年の十一月かというと、そうじゃなく、土地などはもっと前が基準にならなきゃなりません。正常な取引が行なわれておったという事態におけるものということがまず基準でなけりゃならない。その上に正常な状態、だれもが常識的に認められる種々な条件が加わります。月給は二〇%上がった、今度春闘で二〇%ぐらい上がるということになれば、それだけがコストアップの要因になることは事実でございます。また、金利がうんと上がったということで、金利差がどのように価格に影響するかということも事実でございます。とにかく石油が上がり、電力が上がるということになれば、これはもうコストアップの要因としては明確に認めなければならない事実でございますので、それとノーマルな状態の数字とをまず比較をする。そのまん中にもう一つあるわけです。このままAからBに移行するなら、それはそんなにむずかしい問題じゃないと思うのです。  そうではなく、この間に、石油が入っておったにもかかわらず、古い石油を使ったにもかかわらず、便乗値上げをしたというものがあります。それは石油が上がった価格でも、なお石油を相当の程度上げても、その程度にしかならないじゃないかというものに近いほど、もう先取りをして上げているじゃないかというものもございますし、また、そうではなく、見込みとして半分ぐらい上げているものもございます。そういうものを十分引きまして、それでノーマルな状態における基礎数字はこれだということで、まずそこで安定することが望ましい。しかし、石油を使い、電力は上がり、議論になるということでもしあれば、それに当然加算さるべきもの以上に加算されないような物価情勢というものをつくらなきゃならない、こう考えておるわけであります。  特に、仮需要ということで上がっておるわけです。土地などは仮需要です。土地などは。この三月の決算、五月の支払いがあるわけです。四月には給与が上がるわけですから、給与が上がろうが、配当の時期が来ようが、土地や株式や、俗にいう商売と無関係なものを担保にして金を借りたものであったならば、それを換金しない限り融資はしませんと、こういうことを言えばつぶれるか売るかなんです。つぶしちゃならぬから売るはずです。これは必ず売るはずです。その場合には、これは必ず下がるはずなんです。仮需要というものは全部吸収されれば下がるわけであります。  そういう金融財政というものを一切考えながら、実態を把握して、そして適正なノーマルな状態にしよう。これは中には、こんなことを言っても、そんなことならアメリカでも、イギリスでも、西ドイツでも、フランスでも、みんな物価は押えられるはずだと、そうじゃなく相当上がっておるじゃないかと、こう言っております。ですから、主要工業国の日本を除いた九カ国の平均ぐらいを目途にすれば理解が得られるだろう。その間に、それらの国々よりも蓄積も少ないし、日本のほうがたいへんな不利益状態はあります、石油は全部入れなければいかぬというものまで。原材料を全部入れなければいかぬ、国際高はまるかぶりになる、総かぶりになるという日本でありますから、他の先進工業国とは違うわけであります。  しかし、それにちょうど、それを地ならししていいぐらいな面も一つあります。それは国民総生産の中に占める国防支出というもののウエートが小さい、その面でバランスをとるように考え得るわけであります。日本の勤勉性もあります。そういうような面から考えて、ノーマルな状態ということを前提にして物価の安定をはかろう、それから、なお石油が上がったからといってまた物価が倍になる、四十品目を四百品目、千品目に標準価格品目を広げていかなければならないというようなことが起こらないで済むような状態をつくりたいというのが、政府が企図しておるものでございます。
  176. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 総理もお述べになりましたように、この物価の動向はなかなか予断を許さないものがあると思うのであります。それでいままでの努力を今後とも一そうお続け願うように要望いたします。  まず、この物価の動向にあたりましての問題は、石油製品の値上げ問題であります。原油の公示価格が昨年一月一日に二ドル五十九セントにありましたが、今年の一月一日には十一ドル六十五セントと、実に四倍半の引き上げを見ております。特に本年一月一日にその前の倍に値上げされました原油が一月末以来日本に到着をしておるわけであります。ところが、昨年十月の石油危機のときに石油関係業界では先取り、便乗値上げが行なわれたということもわかっております。したがって国民は、石油企業はそれだけ利益を得ておるのだから、いまさら値上げしなくてもよいのではないかというような、石油業界に対する不信の気持ちを持つのも当然であります。  新聞報道によりますると、原油値上がりに伴う石油製品価格の引き上げ問題で、去る五日の閣議におきまして田中首相は、「石油製品価格の引き上げは避けられない」というように中曽根通産大臣がおっしゃったのに対しまして、首相は、「自民党とも協議のうえ、引き上げの時期は私が判断して決定する」と強いことばで述べて、事実上通産大臣の要請を拒否したとかいうように伝えられております。また通産大臣は、製品価格の引き上げは避けられない、しかし、これが他の生活関連物資に波及するのを防ぐために、政府は価格凍結策を進め、また総需要抑制も堅持するんだ、通産省はこの方針に沿ってすでに百貨店、スーパーに生活物資の凍結を申し入れたというように説明をせられたそうであります。山下事務次官が言っておりますものは、石油会社の赤字が現状のままにとどめると一日八十億円に達する、できれば三月十日過ぎには引き上げに踏み切るべきだというような立場をとっておるというのであります。  それで、それに対しまして総理は、引き上げにあたっては、昨年末の便乗値上げで得た約八百億円と見られるもうけをまず吐き出させる、それから石油会社がたとえば無配に転落するほどの深刻な経営状態にまで追い込まれているかどうかということをなお見きわめる、また最近DD原油が従来ほど高くなくなるなど、国際価格面での変化が見られるので、これらもよく見きわめたいというような意見であったと、かように伝えております。首相は、政権を担当するにあたられまして、決断と実行を約束しておられまするが、今回の場合、決断は慎重冷静に考慮して、しかる後果断に実行されるということは、りっぱな態度であると思うのであります。ワシントン四日発のAPによりますると、キッシンジャー国務長官が八日間にわたりまする中東欧州訪問を終えて帰られまして、米国ではこれを契機に石油の対米禁輸が来週初めにも解除されるというような見通しが急速に強まっている、また石油価格も、現在の一バーレル当たり十一ドル六十五セントから七ドル程度に引き下げられそうだというような観測もあったわけであります。ところが、この観測につきましては、イランの反対もありまして、簡単に値下がりは期待できないというような説もあります。また、本日からトリポリでアラブ石油担当相会議が開かれておるということであります。  そこで、まず通産大臣にお伺いしたいのでありまするが、原油価格の見通しにつきまして、これは世界的な原油価格の見通しでありまするが、どういうふうな見解を持っていらっしゃいますでしょうか。
  177. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一月一日から値上げがOAPECによって実施されておりますいわゆる十一ドル六十五セントというのは、仮価格になっておりまして、これで決定した正式の価格ではないのであります。これはインドネシアその他の石油についても同様でございまして、たとえばインドネシアの低サルファのミナス原油のようなものは、十ドル八十セントといわれましたが、これが十二ドルを突破する追加料金を請求されてきつつあるという状態でございます。これがまず第一で、まずこれが正式に決定した固定した価格でないということでございます。  それから第二に、将来の展望でございますけれども、これは国際政治のいろんな複雑な要因がからんでおりまして、たとえばサウジアラビアあるいはエジプト等は、下げる方向に努力しているやに伝えられております。現に日本へ来られたヤマニ石油大臣も、下げる努力をするということを言っておられました。しかし、アルジェリアの副首相・工業大臣は、下げることには反対であるということを日本で言っておられました。この方はOAPECの議長をされております。そのほかOAPECの内部におきましても、イラクそのほかは上げるという方向にむしろ動いてきているように思われます。その間にクウェートとかアブダビがあっせん仲介しているという方向に動いておるんではないかというような感じがいたします。それでトリポリの会議でどうかと思っておりましたが、これは会議は開かれないということになって、十六日からウイーンで会議が開かれます。このウイーン会議の動向を非常に注視しておるわけでございますが、願わくは下がってもらいたいと思いますけれども、いまのような内部の情勢から見ますと、必ずしも下がるという保証はない、むしろ国際政治の中でこの問題はまだ漂うている、そういうのが現状ではないかと思って、私たちは、むしろあまり楽観しないでものを把握していこうと考えておるところでございます。
  178. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 私は、不確定要素が多いというときには、いましばらく慎重に推移を見守るべきであるというように思うのであります。十月の中東戦争が起こりまして、石油の削減があったときには、石油をはじめ重要物資の価格凍結をまず指導しまして、そして石油の輸入状況を見きわめておったと、まああとから石油はわりあい入ってきたということでありまするが、そういうように石油の輸入状況を見きわめておりましたならば、大企業は悪なりというようにいわれるような便乗値上げは行なわれなかったのではないか、かように思うのであります。  それで、いまお話がありましたように、十六日からウイーン会議が開かれるそうでありまするが、そういうのを見きわめられまして、そして石油製品価格の値上げを考えられるというようなことにはならないものかどうか。まあ毎日八十億ドルのいま赤字が生じておるというのでありまするから、その後の推移を見ますると、製品価格を据え置き得ないというような情勢にもあるようでございまするが、この差し迫った石油製品価格値上げにつきまして、どういうふうな考え方を持っておられまするか、お伺いいたします。
  179. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) かりに将来、石油の価格について多少上下の動きがあると思いましても、それはかなり大きな幅のものではなくして、一ドルとか二ドルとか、あるいは数セント、数十セントという幅のものではないかと私は想像いたしております。そういう面から、現在十二月と一月の落差、約一万円ないし一万一千円のこの落差の大勢に影響を及ぼすような変化はないだろうと私は考えます。そういう面から、国民経済の運営あるいは日本に対する石油の安定供給の保証等々、諸般の点を考えてみまして、やはり近い将来に、石油の価格は最小限の限度において引き上げられなければならない情勢に立ち至っております。  ただ、この際、いま御指摘がありましたように、石油企業は暮れにかけまして便乗値上げによってもうけたと思われる、われわれの推定では約六百億円ありますが、これは全部吐き出させる、それから無配ないし減配のところまで石油企業は協力しなければならないであろう、それから重役賞与等もこれは自粛すべきである、さらに内部留保も、たとえば退職積み立て金のようなものはやむを得ませんけれども、それ以外のものは、たとえば不動産を売るとか、ともかく国民が納得するような措置を石油企業がやるということを条件にして、必要最小限のものは上げざるを得ないであろう、そういうように考えまして、そういう方向に措置していきたいと思っております。
  180. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 そういたしますると、次には石油価格引き上げが物価に及ぼす影響を伺いたいのでありまするが、昭和四十五年の産業連関表を基準としまして永井純一氏が試算したところによりますと、原油価格が五〇%上昇すると、そのために卸売り物価は一・四%上昇することになっております。かりに四十五年と四十九年の投入係数に大きな差がないというように仮定しますると、原油価格の四〇〇%の上昇は、それだけで卸売り物価を一一・二%上昇させる効果があります。そこで、石油価格を引き上げた場合、物価にどういうふうな影響を及ぼすというようにお考えでございましょうか、これは企画庁長官にお願いします。
  181. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 林田さんのお尋ね、まことにごもっともでございます。原油価格がおっしゃるとおり、ことしの一月一日から大幅に引き上げられまして、そのために、通産大臣がただいまお答えになりましたように、現在その原油から精製した石油製品の総平均をした売り出し価格といいますか、蔵出し価格は全く逆ざやになっていることは、これはもう御説明を申し上げる必要はないわけであります。  そこで、それの対策として、石油製品の引き上げをいたします場合には、御心配のように、それが産業連関表を持ち出すまでもなく、当然他の基礎物資あるいは生活関連物資の値上げを引き起こすことになるわけでありますが、私どもは、これは林田さんも同じ考えからのお尋ねだと思いますが、そのような石油製品の値上がりが、国民の生活上あるいは日本経済の運営上必要な物資の引き上げを誘致しないような、そういうことをやらなければならないと考えますので、これはそのものずばりではっきり申し上げますと、そういう関連物資の価格は押え込んでまいる、押え込んでまいるばかりじゃなしに、先ほども野党のどなたからかお尋ねもございましたが、押え込んだ上でなおかつ先取り利益が残るような計算が成り立つ場合には、さらに引き下げの行政指導もしていただく。これはそれらの物資の生産段階のみならず、さらに途中の流通段階あるいは小売り価格につきましてもいろいろの有効な行政措置を講じまして、結論といたしましては石油製品価格の値上げが卸売り物価、消費者物価を一般的には押し上げないような方途を現在いろいろ煮詰めておるわけであります。これにつきましては、林田さんは党の政審会の副会長をなさっておられたり、あるいはまた経済通でいらっしゃいますので、またぜひいろいろ御忠告をいただいたり、お知恵もおかりしなければならないと思います。
  182. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 いま企画庁長官からおっしゃいましたことは、ほかの製品の価格を押え込んでいこうというようなことが中心になっておるようでございます。それでこの石油製品の関連物資の価格の中には、十月の石油危機以来すでに便乗値上げされたものが相当あるわけでございます。それで今回石油製品価格を引き上げるといたしましても、卸売り物価にそんなに影響しないんじゃないかということを聞いておるわけであります。その辺はいかがでございましょうか。
  183. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私も林田さんと同じような面がいろいろの物資あるいは企業によりましてはあるだろうと思います。  でございますから、石油製品価格を引き上げるような事態になりましても、そういう関連企業あるいは関連製品における先取り利益というようなものの中に石油製品の値上げを埋め込んでしまう、のみならず、それでもまだおつりのくるものは吐き出させる、こういうそこに可能性の余地もある。もっとも全部の企業、全部の製品についてそういう状態ではございません。先取りをしなかったまじめな企業もございますし、またたとえば公共料金なんかはそういうことになりますが、先取りのしようがないもの、あるいは公共料金でなくてもそれに近い物資もございますが、そういうものにつきましては、国家、国民のためにしばらくは配当を制約をしていただくとまでは言わなくても、極力企業の合理化等々につとめていただきまして、そうして物価全体の水準を引き上げないようにこれもしていただく、両々相まって私どもといたしましては国民に心配をかけないような方途を何とかひとつとってまいりたい、かようなわけでございます。
  184. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 これは通産大臣にお伺いしたいんですが、製品価格を引き上げるというふうになった場合に、漁船や農業用耕うん機に使用されるA、C重油とか、あるいはバス、トラックの運賃引き上げを起こしまする軽油の値上げ幅縮小の要求というようないろいろ要求がございます。またすでに標準価格のきまっておりまする灯油やプロパンの価格がございます。そういうふうなものに対しましては、いかなる考え方を持っておられるかということが一点。  それから先ほど企画庁長官からお話ございましたように、石油を上げましても、電力料金とかあるいは鉄をはじめ基礎物資、生活必需物資の価格を凍結するんだということがあるわけでありまするが、その凍結はいつごろまで大体可能であろうかということ。並びに百貨店、スーパーに対しましては、生活必需品を中心に小売り価格の凍結を要請しておられまするが、凍結は小売り段階までできるというようにお考えになっておるのでありましょうか。
  185. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず第一に、軽油、A重油、プロパンガスあるいは灯油等につきましては、特に政策的配慮をいたしまして、できるだけ低位に落ちつけるように努力いたしたいと思っております。これらの点につきましては、関係各省といろいろ相談をいたしまして、各省の御要望も取り入れて協議してやっていきたいと思います。  第二に、小売り段階の問題でございますが、これはスーパーやあるいは百貨店がプライスリーダーという形になると思っております。したがって、これらの方々に全面的に協力していただいて、まず低水準の基礎をつくる、それと同時に、商工会や商工会議所にもいろいろ直接お願いをしてありまして御協力を願うわけであります。ただ小売り段階の場合には、価格は千差万別でございまして、全国一律というわけにはまいりません。また出荷価格も違いますし、各商店におけるいろいろ契約条件等も違いますから、これは一律に幾らというふうに指定することはできないので、やはり各企業企業の良心に従って、自分のうちでは前はこうであったからそのとおりする、そういう形で協力願うよりしかたがないと思っております。  それから最後に、公共料金の問題で、電気、バス賃あるいはそのほかに波及するという問題ですが、これは公共料金抑制の趣旨にのっとりまして、できるだけ抑制していく。さっそく出てくるのは、実は電気料金の問題があるわけです。電気会社の状況を見ますと、いままではいわゆる油代と称するものは二〇%ぐらいであったわけですが、これが四〇%前後に上昇してきておる。そういうことからいたしまして、電力会社ではもう普通の状態では経営できないぐらいに採算が悪くなっておるのがございます。そういうものを放置するわけにはいきません。これらにつきましては、いずれ適当なときにそれらの対策を政府全体として取り組んで、そうして国民経済の安定的均衡水準をつくっていく必要があるだろうと考えておりますが、いますぐどうするということは考えておりません。
  186. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 外務大臣にお伺いしたいんですが、先般の石油消費国会議におきまして、産油国と消費国その他の発展途上国をも含めました全体会議が持たれるようになる、そのための準備の調整グループ会議が開催されることがきまりまして、すでに三月十一日、十二日にはブラッセルで開催されたように聞いております。それからまたその会議におきまして、あるいはアメリカ当局との会合におきまして、いわゆる二国間取引につきまして、日本のように石油の乏しい国と米国のように石油資源を持っておる国とはおのずから立場が違います、そういうような点につきまして先般ECと米国との断絶なども起こっておりまするが、米国との間には十分理解が得られておるのかどうか、そういう点についてお伺いをいたします。
  187. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先般、二月に行なわれました国際石油エネルギー会議で生まれました調整グループの会合は、仰せのように三月十三、十四日ブリュッセルで開かれる——きょうから始まっておるわけでございます。この会議におきまして、仰せの消費国と産油国を含めた会合におきましてお話し合いが行なわれて、何らかの見通し、展望が出てくるのではないかとわれわれは期待いたしておりますが、まだその内容につきましてはさだかに展望いたしかねる状況でございます。  それから第二の御質問でございますが、二国間取引というのは、過去においてもDDオイルの売買という姿においてあったわけでございますが、最近、とりわけこれが問題になってまいりましたのは、産油国側のほうでいわゆるパーティシペーション・オイルというものの分量がふえてまいりまして、二国間取引にかかる分量が多くなってまいりましたので、にわかにこれが問題になってまいったわけでございます。けれども、これはこれから先どのような秩序のもとでこれが行なわれるかということでございまして、ただいまこの問題が石油取引の大きな分量を占めているわけでは決してないわけでございます。  ワシントンにおける会議におきましては、コミュニケにもございますように、一般的な原則がアメリカを含め、それからフランスも含めてうたわれておるわけでございまして、すなわち二国間でティールー二国間取引というのは道を閉ざすわけではないけれども、国際経済秩序との調和をはからなければならぬというきわめて一般的な原則がコミュニケにうたわれたことでございまして、今後、これがどういうように発展してまいりますかはこれからの産油国、消費国との話し合い、その他の事情から申しまして進展が見られることと思うのでございまして、いままで確立した合意というのは、あのコミュニケにうたわれた一般的なもの以外にはございません。
  188. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 通産大臣にお伺いしたいと思いますが、それは今後のメジャー対策でございます。  現在、日本物価安定のために最大努力を傾注しておるさなかにありまするが、このときにあたりまして、石油の数量及び価格はそのかぎとなるものであります。わが国の石油供給の六〇%を占めておりまするメジャーの中には、三月は二月に比べて供給量を二五%減らす配給計画を通告してきたというようにいわれております。メジャーの今後の石油供給に対する見通しとその対策についてお伺いしたいのであります。  また同時に、国内の民族系石油会社は高いDD原油に依存する率が多いですから、不利な条件に立っておることはよくわかります。そういう会社についての費用の節約と申しまするか、何か合併とかそういうようなことによりまして合理化できるというようなことがないものかどうか。先ほど羽生議員は国営というような話も持ち出されましたが、そういうことではなくって、民族系石油会社がメジャー系の石油会社に対抗いたしまして、何かやっていけるというような、そういう考え方はないものでしょうか、お伺いいたします。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) メジャーズの中には、二月ごろから石油の値段をこういうふうに凍結されておかれておるのではたえられない、ヨーロッパはすでに一月十一日ごろからもうほとんど上げておる。したがって、この現状が続くというと日本に対する石油供給が減少する危険性が生まれざるを得ない、そういうような見通しのようなことを言ってきたのはございます、数社。また最近におきましては、三月における供給計画において一五%カットを考えざるを得ない、これは毎旬ごとにチェックいたします、そういうようなことを言ってきたのもございます。二五%というのはまだございません。  こういうような情勢がありまして、石油というものは国際商品でございますから、供給すればするだけ赤字が出て損をするという国には売らなくなるのはあたりまえであります、これは商人でございますから。ようやく最近人心が鎮静化し、物価が安定化しつつあるのは品物が豊富に日本に出回ってきたその安心感からきていると思いまして、これでまた石油が削減されて減るという形になると、また心理的パニックが起こる危険性なきにしもあらずであります。そういう面から、この石油という独特の国際商品の性格をよくのみ込んで、ある程度の安定供給を確保しておくということが日本物価政策の上においても非常に重要なポイントである、われわれはそういう確信を持ちまして、石油の供給をあまり阻害しないという意味の価格体系のことも考えざるを得ない、こう考えておるわけでございます。  しかしメジャーズに対しては、日本に対してへんぱな扱いをしないように、またわれわれとしては石油というものが国際性を持っておる商品であるということはもちろん知っておる、だがしかし日本物価政策についてもメジャーズ側は協力してほしい。あなた方で節約できるところは節約し、あるいは値段を最低限に押えられるところは最大限に押えられるように君らも協力してくれ、いままで日本市場というものでやはり利益がきて共存共栄してきたのであるから、こういうときにはあなた方がまた協力してくれということも私は直接彼らに言っておるところでございます。まあこういうふうにして、今後とも、ある程度国際的調和を保ちながら政策を続けていくということが必要ではなかろうかと思います。  第二に民族系の問題でございますけれども、確かに民族系といわれるものは産油国の直接売り出しの油を入札で買っておるものですから、かなり高いものになっております。ある会社のごときは、大体キロリッター四千円以上高いものについておる、こういう情勢で、大体それがDDオイルの平均的な高さになっているのではないかと想像されます。そういう情勢ですから、値段のきめ方によりましては、民族系がばたばた倒れていくという情勢になります。通産省でいろいろ石油会社の内部経理を洗ってみまして大まかな試算でございますけれども、この三月までの赤字の予想を見てみますと、民族系の四社で約千百億円赤字が出る。それに対してメジャー系は八社で約六百億円という数字が出ているのがございます。これを見ましても民族系がわずか四社で千百億円に対してメジャーズ系が八社で六百億円というんですから、かなり経営力に差が出てきているということがわかります。価格のきめ方によりましては、民族系がばたばた倒れてメジャーズに吸収される、そういう不況時における大型による吸収という歓迎すべからざる情勢が出ないとも限らないわけでございます。  で日本石油事情を考えて、通産省は歴代の大臣が努力いたしまして、大体原油の処理能力においてメジャーズ糸と民族系を五〇%、五〇%まで育てたい、それから販売能力において同じく五〇%、五〇%まで育てたいというので営々として努力してまいりまして、ようやく処理能力においては五〇%、五〇%までまいりました。ただ民族系はどちらかといえば値の高い油を精製するというよりも値の安い大ざっぱな精製方法だということであります。それからガソリンスタンドの販売能力におきましては、メジャーズ系がまだ五四%持っておりまして、民族系が四六%でまだ劣位にあります。しかし、ともかくここまでようやく持ち上げてきまして、国際的な拘束をできるだけ離脱して日本の独自性を回復していこうという努力をしてきたのでございますが、これが一朝にしてまたもとのもくあみになるということは耐えがたいところでもあります。そういう点も考えながら、今後の石油政策を考えていかなければならない。  しかし、われわれはここで統制をやる考えはございません。したがって民族系をみんな集めてしまって一つの統制会社的なものにしようとか、そういう考えはございません。まあ今後の石油情勢の変化をよく見きわめながら、最も適切な石油政策をやろう、こういうわけで現在総合エネルギー調査会にこの石油事情及び今後の方針について諮問をしておりまして、この答申を得ましてわれわれはそういう問題についても処理していきたいと考えております。
  190. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 次に、物価に非常に影響を与えまするのは今回の大規模な春闘でございます。春闘はいまや年中行事となっておりまして、賃金の上昇が企業の生産性の上昇によりまして吸収される限りは物価に中立的でありましたが、いまや毎年の賃金上昇は生産性を上回るに至りました。ところで、今年の春闘は、物価上昇の幅が大きくて前年度の賃金上昇を実質的に無意味にしたことから、大幅賃上げによりこれを復元する要求となってあらわれておりまして、理解すべきことであります。しかし、今日のような物不足経済におきましては、安易に製品価格に転嫁されまして、結局、春闘を行なった労働者を含めまして消費者を苦しめることになるのであります。四十八年度について言うならば、春闘の二〇%の賃上げを企業は生産性の上昇でどこまで吸収できたとお考えなのでしょうか、企画庁長官
  191. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 林田さんの御心配になられる点、私にもよくわかります。しかし、春闘というケースがいいかどうか別といたしまして、そもそも賃金は労使の間の相互の協議によって合理的にまた平和裏にきめられるべきものであると私どもは考えますので、政府が積極的にこれに干渉をすると、いわんや所得政策的な手法を用いてこれを押え込むということが適当であるとも考えません。ただ、すでに御承知のように、昭和四十八年度の経済見通しにおきましても、いろいろな諸条件の変化によりまして当初の経済成長を縮めて見直さなければならない事態がございましたが、ことに四十九年度はさらにその諸情勢がきびしくなりまして、そして日本経済の実質の成長率が戦後かつてない程度のわずかの成長率さえ見込めないようなきびしい客観情勢にあることは申すまでもありません。こういう中におきまして名目的に高い賃金をきめますということは、これはそもそも賃金でありましても、他の所得の配分についても私は同じであると思いますけれども、実質的な国民経済における成長分、付加価値の増加分をお互いが分けることにならないで、いまおっしゃるように、単に物価を引き上げたり、またスタグフレーションといいますか、経済の停滞を招いたりするようなことにもなりかねないことも心配をされますので、私は、今回の賃上げのことにつきましては、労使双方が、いま私が申し述べ、また林田さんが御理解くださっているようなきびしい経済の実勢を理解されまして、国民経済的な視野において妥当なきめ方をされることが、勤労者をも含めまして国民全体のために一番いいことであると、また、それをまあ祈るような気持ちで願っておると、こういう気持ちでございます。
  192. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 経済企画庁の試算でありましたか、二〇%賃上げが行なわれたら八%の卸売り物価上昇をもたらすというようなことがあったように思うのであります。それで、大企業の労組と官公労の大幅賃上げが消費者大衆や弱い層の人々に大きな影響を及ぼすことが避けがたいのじゃないかというように心配するのであります。そういうことですから、今回の春闘につきまして中核部隊でありまする総評も、今年の春闘を国民春闘というようにしたのだろうと思うのであります。かりに、労組の要求しまする三〇%以上とか、あるいは三万円以上というような大幅賃上げが行なわれました場合に、物価にはどういう事態が起きるのでありましょうか、こういう問題につきまして試算をされたりしておるようなことはありませんか。
  193. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) いまお尋ねのことは、経済企画庁として試算をしておるという筋のものではございません。また、私は軽率に試算をすべきものであるとは思いません。新聞の一部に経済企画庁の作業の一環として、いまお話がございましたようなケースが載っておりましたことも私は承知しておりますけれども、それは私が承知をしてきめたものでもなければ、あるいは経済企画庁としてまとめ上げたものでもございません。ことに賃金上昇の幅を二五%ときめた場合はどうということではございませんで、三〇%にきめたらどう、三五%にきめたらどうと、逆にまた、二〇%、一五%、一〇%の場合はどうというような、何というのでしょうか、あるいはむずかしいことばがあるようでございますが、シミュレーターモデルというような、電子計算機に一定のフィックスした、きまった条件を与えてやりますといろいろな答えが出るようでありますけれども、しかし、私は、日本経済が非常に伸びたり、付加価値がふえたりするような場合には、賃金が上がるほどそれだけ購買力もふえるわけで、日本経済はそういう過程においては発展してきたと思いますので、何も押える必要は少しもない。しかし、日本経済が伸びない場合には、いまの経済企画庁の試算というようなものではなしに、先ほど私が述べましたようなことになるであろうと思います。ただ一般的に、これは別に経済企画庁は正式に出しているわけではございませんが、いまのようなきびしい経済事態のもとにおいて賃金の名目的な幅を情勢を無視して伸ばすということは、いまお尋ねのように、もちろん物価を押し上げることになりましょうし、また、雇用率と申しますか、有効求人倍率というようなものが小さくなってまいりましょうし、また、スタグフレーションといったような状況を起こしかねないということは、これはいろいろの前提を考えてみましたきびしい事態のもとにおいては、何%ならいい、何%なら悪いと、こういうことではございませんけれども、そういう傾向は見られると思います。しかし私は、いま、総理大臣が先般も言われましたように、所得政策というものを国民的コンセンサスもなしに国の行政的な政策手段として用いるというようなつもりは私自身もございませんので、いままで申し述べたようなことを言ったわけでありますが、しかし、自民党政府というものが、御承知のように、来年度はいわゆる平年度二兆という大減税をやりますことは、私なんかもそれはいい意味の犯人の一人かもしれませんけれども、給与所得者——いま御心配になられた勤労所得者を対象として、いままでのようなけちな給与控除ではなしに、大幅な給与控除をして税金を安くしていこうというようなことは、これはまあ自民党の皆さま方とも相談をしてそういうことになってこの予算に織り込んでおるわけでありますが、そういう点をもごらんくださりますならば、政府も、わが自民党というものも、給与生活者の賃金の幅を押えつければ押えつけるほどいい、また、その犠牲においてこの苦況を乗り切ろうという考えのものではない、このように御理解していただければ幸いであると思います。
  194. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 企画庁長官は、去る二月の月例経済報告におきまして、物価上昇がデマンドプルからコストプッシュの性格に転じてきたという認識を明らかにされております。これは日本経済の体質にとりまして重大な認識であると考えるのであります。すなわち、当面生産性を飛躍的に増大させる新技術の蓄積は見当たりませんし、合理化によっても生産性の大きな向上が期待できないとするならば、昭和三十年代から最近まで続きました財政経済運営の発想を根本から転換しなければならぬと考えるのであります。高い水準の名目賃金の上昇、それから製品価格への転嫁というような無限の悪循環におちいりまして、経済体質は弱化して国民生活の向上にはかり知れない打撃を与えるのではないかとおそれるのであります。で、この悪循環におちいることを何としても食いとめなければならないと思います。それで、コスト・プッシュ・インフレが進行し始めたという認識に立つ限りは、今年の春闘とそれ以降の物価につきまして、労組、企業あるいは政府が今後の物価や賃金のあり方につきましてよい慣例をつくり、コンセンサスを求め得る条件をつくるべきだと思うのでありまするが、政府はどのようにこれを認識していらっしゃるのでしょうか。  去る二月二十一日には総理官邸で政府と労組四団体代表の懇談会が開かれまして、総理は春闘に節度を要求されましたが、春闘に対する総理の基本的認識についてお伺いいたしたいのであります。また、労働大臣はいかにお考えでございましょうか。
  195. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 賃金が上昇するということは望ましいことでございます。できれば賃金は世界で最高になればこれは一番いいことであると、こう考えておるわけであります。まあ労使というような状態よりも、西ドイツにおいては日本と違って管理職は非常に少ないわけでございます。いま日本においては、管理職といわれるような、俗に工場で生産部面に従事する人と管理部門、経理部門その他営業部門全部入れると、一人で働いたものを一人か一人半で売りさばいておるというような、よくこういう形態ができるものだなあと思うぐらいな状態もございます。そういう中で分配が行なわれておるわけでございますから、私は労働賃金や給与所得というものが増大することを一つの目的としております。これは国民のうちの六〇%、七〇%、場合によれば八〇%、いまはまあ大企業の社長などといってもこれはみな給与所得者でございまして、少なくとも二〇%とか——一〇%の累積投票権を持つ株主も少ないと思うのです。ましてや過半数を持っている者もないし、三分の二の特別議決権を持っているような戦前のような例は全くない。これは給与所得ということでございますから、給与所得の向上ということは国民所得の向上につながるもので、これは望ましいことであって、できれば世界最高のものにしたい。ただ、一歩誤って、五年間でやるか十年間でやるかというものを、二年間でやろう、一年間でやろうというと、国民生活を全く破壊するおそれなしとしない。これはもうそのとおりでございます。ですから、あなたが先ほど、賃金が上がったら一体それがいま当面しておる最大の問題である物価にどう影響するかと、これはもう賃金と物価との悪循環という問題は戦後議論された問題でございますし、これはもう学問的にも重大な要素でございますから、いま賃金問題を全然考えないで、ただ上がればいいんだというようなことは国民的な立場において考えられるものではない、無関心で過ごせるものでないということは事実でございまして、政府も重大な関心を持っておるものでございます。持ってはおりますが、しかし、民間における賃金というのは労使の間でもってきむべきものでございます。そして官公労その他の賃金に対しては制度がございまして、人事院勧告、仲裁というようなものがございますから、民間給与体系と見合って官公合計予算上資金上どうにもならない場合以外はこれを完全実施をするということになっておるわけでございます。しかし、こういう制度そのものが戦後の混乱期と違いまして、民間と官公労といわれるような賃金給与体系そのものを一つの中でやっていくことがいいのかどうかという問題も、これは国民的課題としてもっと検討しなきゃならない時期に来ていると思います。これはそうでなけりゃ、政府物価抑制をしようと思っていても、政府自身が予算上資金上ということで国会に疎明しない以上は、もう物価上昇ということが確実に考えられても、事実これを調整する機能もないということであるならば、これはいろいろな問題が存在することは事実であります。ですから、そういう問題に対しては静かに見守りながら重大な関心を持っておるということは事実でございます。場合によると、これらの問題がいわゆる民間の給与体系と官公吏というようなものとの給与体系という制度上の問題にまで発展をする一つのきっかけをなすということもあり得るわけでございまして、これらの問題に対して重大な関心を払っておるということは事実でございます。  それから、まあここでもって申し上げますと、主要国の賃金上昇率を見まして、私はこの間からこれは労働関係にもこれをちゃんとやっておきました。この数字をひとつ土台にしてこれでお互い議論しようと、国民の間に労使というような関係よりも国民的課題としてひとつやりましょうというので、政府試算を届けておきました。そうして、これは六三年から七三年まで十年間を見ますと、カナダが二倍、デンマークが三二倍、スウェーデンが二・四倍、オランダが二・八倍、イタリーが三・〇、フランスが二・五、西ドイツが二・三、イギリスが二・八、アメリカが一・七、日本は三・八であります。これは数字だけの問題じゃなく、これを過去十年間で消費者物価と実質賃金でもってやってみますと、これは一番低いアメリカ、イギリスの一・一に対して日本は二・二倍であるというような問題、消費者物価一・八倍に対して三・八倍、これはアメリカの一・七に対して約倍以上であるという問題、それからGNPに対する賃金上昇の増加率を見ますと、アメリカの一・七に対して日本は三・八であり、これはもうカナダ、デンマーク、スウェーデン、オランダ、イタリー、フランス、西ドイツ、イギリス等に比べてもはるかに高いわけであります。そういう意味で、非常にチープレーバーといわれておった日本が、このごろ国際的には低賃金ということは全く言われなくなったというほど内容が充実しておるということは事実でございまして、これらの問題とやっぱり四十九年度における賃金上昇という問題は十分考えてやっていただかなければならぬ問題であるということは明確に申し上げておきたいと思います。  それから春闘というものが、賃金とか労働条件とか将来の保障というような純粋な経済闘争、経済的な問題でストライキが行なわれるとか、いろいろな手段がとられるということではなく、国会で議論をしなきゃならないような問題、低所得者に対してどうしなさい、年金法をどう改正しなさいというような問題でスケジュール闘争が行なわれる、それが物価に悪影響を及ぼし、国民生活に重大な影響を及ぼすということになると、これは非常に問題がございます。これは国民の一人として看過することはできない。しかも、その最も主力が、政府がその責任を持たなきゃならない官公労が主体をなすということになりますと、これはそのまま私たちがただ労使の話し合いというような安易な体制で見ておることはその責めを果たすゆえんではない、こう考えておるわけでございます。ですから、あからさまにそういうことは総評の代表にも、また同盟の代表にも、各代表にも政府の意のあるところを十分伝えてございます。国会の場で論争しなきゃならないものを、もう労働問題としては条件はほとんど具備されるし、そうでなくともいいところまで上がるだろうと。そうすれば、まあひとつここで政党と同じようにということでやられるということになって、主目的がそのように切りかえられると、これは労働組合ということで政治資金規正法にも届け出られておらない労働組合の経理も政治資金規正法の対象にしなきゃならぬということにもなるから、そういうことはむしろ明確に国民の前にひとつ考えて良識ある行動をとられたい、こういうことでございまして、政府はこの問題に対して、物価と正面から取り組んでおるときに全く無関心であるとか、そういうことではございませんで、重大な最大の関心を持つものである、良識ある解決に期待をしておるわけでございまして、政府が援助し協力をする場合があれば、いかなる協力もいたしたい。いわゆる計画的なストライキ、スケジュール闘争というようなことによって物価を押し上げ、国民生活に混乱をもたらさないよう善処を期待しておるわけであります。
  196. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) ただいま総理から詳しく御答弁がありましたが、今度の春闘は私たちは第二の国難、すなわち及ぼす影響が国民生活、あるいは全般的にたいへんなことだ、こういうことから、総理にはまず経済界の代表にお会いいただき、さらにはまた労働四団体の方々にもお会いいただき、そして、そのあとは私はじめ各閣僚がそうした労組の代表諸君に全部お会いして、ただいま総理が申し上げたようなことが私たちの気持ちである、こういうときにこそ国民の連帯感でほんとうにいままで積み上げた繁栄を、平和のうちにしっかり積み上げようじゃないかという話し合いをしておるわけでありまして、そういうよき慣行をいまから先もつくることには御努力申し上げて御協力したい、こう思っております。
  197. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 物価の暴騰によりまして最大の影響を受けるものは社会的に弱い人たちでありまして、物価問題は社会正義の問題になるわけであります。で、先ほど羽生委員からも質問がありましたが、政府は生活保護世帯あるいは社会福祉施設入居者に対しまして特別一時金二千円を支給することを決定されましたほか、老齢、障害、母子、準母子の福祉年金受給者にも一律二千五百円を支給することを決定されました。これらの恩恵を受ける六百八十五万人の生活困窮者の方々にとりましては、たとえわずかな金額とは申しましても政府の配慮は評価できると思うのであります。予算のワクという制約の中におきまして、年度末に予備費あるいは既定経費を洗いざらい集められまして、百二十六億円を調達されました厚生大臣の労苦を多とするものでありまするが、世上求められておりまするのは、あらかじめ物価上昇に即応しまして自動的に福祉政策がとれる基本方針を確立しておくべきだというようなことであります。厚生大臣の御所見を伺いたいと思います。
  198. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 最近における物価の動向にかんがみまして、昭和四十八年度の年度末における緊急一部措置を講じたわけでございますが、そのうちで一番問題になりますのは生活扶助基準のきめ方が一番の中心になると思うんですが、この生活扶助基準のきめ方というのは、物価の動向のほかに、一般消費生活水準というものも考えていかなければならない。そういうものでございますので、むしろこういう生活扶助のようなものは物価の動向に応じて自動的にスライドするということよりも、やっぱり物価の動向なり消費生活水準なりを総合的に勘案して、そして一般消費者の生活に近づけるという方向がむしろいいのではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。ただ厚生年金とか国民年金のいわゆる拠出制年金につきましては貨幣価値の実質的な価値を維持していくという必要がありますから、これはやはり自動スライドが適当ではないかと思いますが、生活扶助のようなものはやはり生活全般を総合的に見ていくということのほうがむしろ適当ではないだろうか、こんなふうに考えておるわけでございまして、今日まででもそういうふうに努力してまいりましたし、昭和四十九年度におきましても二〇%の生活扶助基準の引き上げというものをいたしてございますが、四十九年度、今予算が成立いたしました暁におきましても、総合的に物価なり消費生活水準というものを見て総合的に勘案していく、こういうふうにいたしたい、かように考えておるような次第でございます。
  199. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 先ほどの後者の問題でありまするけれども、老齢福祉年金につきまして、昨年の十月から五千円になり、今年は十月から五割アップの七千五百円になる、来年は一万円になるというように内定をしておるようであります。この段階的引き上げを内定いたしました一昨年の当時と、今日は隔世の異常事態になっておりますので、これを思い切って引き上げまして、年老い働く能力もない年金受給者の老後の生活安定に寄与すべきではないかと考えるのであります。厚生大臣いかがでございましょうか。
  200. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) お答え申し上げます。  老齢福祉年金につきましては、昨年五千円に——三千三百円から五千円と、で、本年度は五千円を七千五百円——障害福祉年金をそれぞれ引き上げたわけでございます。で、これをもっと上げたらどうだろうという——まあだいぶ前に総理が発言されて、年次別に上げていきたいということで始まったわけでございますので、まあこれをもっと上げてはどうだという御意見、私もそれはそれなりに理解をいたしておるわけでございますけれども、この五千円を実は七千五百円と二千五百円、まあ一人当たりにすればわずかなものでございますけれども、実はこれやっぱり相当な金額なんでございます。昭和四十九年度におきましては十月からこれを実施するわけでございまして、四十九年度でやっぱり四百四、五十億かかるわけでございます。で、これをさらに平年度分に直しますと千四百億円の巨額の金になるわけでございまして、一人当たりならなるほど二千五百円というわずかなようでございますけれども、国費としてはやはり相当な額でございまして、まあ五千円を七千五百円、物価動向との関係もありますが、まあ五〇%上げたんだと、その辺にアクセントを置いて御理解いただければしあわせではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  201. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 よくわかりますが、今後とも御努力をお願い申し上げます。  次は年金給付の物価スライドの問題でありまするが、昨年は福祉元年にふさわしく思い切った大改正で年金もILOの勧告水準に達しまして、欧米の年金にひけをとらぬところにまで到達したわけでございます。それで、年金につきましては物価スライドが導入されておりまして、予算編成期における予想される消費者物価上昇率は一四%ということで予算額が計上されているようでありまするが、物価が一四%以上上昇しておるというような場合に、この五万円水準年金というものはどういうふうな水準になるのでありましょうか、厚生大臣にお伺いいたします。
  202. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 拠出制の厚生年金並びに拠出制の国民年金、昨年の年金法の大改正によりまして五万円年金、それと同時にスライド制を実現をしたわけでございます。これはお述べになりましたように、年金の五万円水準というのは、標準報酬の六〇%を基準としたものでございますので、その額としては欧米各国の年金額に比較いたしまして絶対に遜色のない、ILOの百二号でございましたか、その条約から申しましても平均賃金の四〇%を下らないようにということがございますが、それなども比較してみますと、日本の五万円年金額というものは相当西欧諸国に劣らない額だと考えております。そこで、この年金額につきまして、物価上昇の率に応じてスライドしていくと、すなわち実質価値を維持すると、こういう考え方でございます。そこでまあ来年度の予算におきましては、昭和四十八年度の物価上昇率を前年度に比べまして一四%にはなるであろうというので、一四%の予算の裏づけはいたしてございますが、三月まででないとこれ全部わかりません。そこで、かりに一四%が一五%あるいは二〇%前年度に比べて上がっておるということがわかりますれば、上がっただけスライドしていくわけでございます。したがって、二〇%かりに物価が上がっておったとするならば、昨年度にきめました五万円水準年金は名目六万円水準年金に上がると、こういうことでございまして、物価水準の上がった率によってやりますから、私どもはこれをひとつも値切ろうなんていう考えは全然ございません。はっきり出た統計によって二〇%になれば五万円水準年金は六万円水準年金になる、こういうことで作業をいたしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  203. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 次に、経済の長期見通しにつきまして少しお伺いしたいんですが、わが国はいままで、金を出せば幾らでも原料資源を外国から入手できるという与件のもとに経済の高度成長をなし遂げまして、福祉中心の政策に転換してまいったわけであります。しかし、一昨年ごろから世界は物不足時代に突入いたしまして、わが国の経済発展の与件があらゆる分野で大きく変化してきました。特に昨年十月の中近東戦争以来とられましたアラブの石油戦略は資源ナショナリズムを誘発しまして、わが国経済に課せられる与件の変化を決定的なものとしました。そこで昨年二月に策定されました経済社会基本計画は基本から練り直さねばならない。すなわち相当長期にわたりましてエネルギーの代替資源の大量な確保は困難であり、石油輸入の絶対量は実質GNPの成長率を規制すると考えざるを得ないのであります。また、外貨面で必要とする石油を十分入手できるかいなか疑問を残しております。しかもなお、国民の要求を満たすためには成長は必要であるわけですが、今後の長期の経済の実質成長率をどのように考え、またどのような水準の成長を維持することが望ましいとお考えでございましょうか、大蔵大臣に。
  204. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これからの経済運営は世界情勢の推移に応じてこれはかなりかまえを変えていかなければならぬかと、こういうふうに思います。まあとにかく当面は物価の鎮圧、これにある。いままで物価は、これはもう、何と言いますか、仮需要、つまり投機相場的な動きをしてきた。いまそれに対して総需要抑制政策をとっておる。この効果が着実に私は出てくる、こういうふうに見ておるわけです。しかし、その前途には、一つは、いまお話しの石油危機という問題が出てきております。それに関連いたしまして石油の価格を引き上げなきゃならぬという問題がありますが、その波及を、いわゆる目張りというものを政府としては完全にひとつとらなけりゃならぬ、とる、こういうかまえを持っておるわけですが、これはまあそういうことで乗り切っていく。  それからもう一つは、私は、先ほどお話もありましたが、春闘の問題だろうと思うんです。この賃金の上げ幅という問題もあります。しかしなおさらに重大な問題は、これがストライキに発展をする。ゼネストというような形をとる。特に交通運輸の関係でストライキになるというようなことがある。その中でも海運ストというような事態があるというようなことになりますると、これははかり知れぬ影響があるんではあるまいか。これを非常に憂慮しておりますが、何とかして労使の良識のもとに解決を見たい。そういうことができますれば、私は総需要抑制政策というものは着実にその効果を発揮しまして——そう時間はかからぬと思うんです、もう人々が競って物を買いだめいたしましょうとか、あるいは値は幾らでもいいですというような、これまでのいわゆる狂乱状態というものは、これはもう大きくその流れを変えていく、こういうふうになると思うんです。  その次にくる問題は、やはり私は電力問題でありますとか、私鉄の問題でありますとか、あるいは国鉄の問題でありますとか、公共料金問題というのが次に控えておる。そういうものはもう夏ごろまでになりますれば大体の展望ができる、こういう状態になるだろうと思うんです。新価格体系ができる。その後を受けてこれからの経済運営をどうするか、こういう問題になると思いますが、私は、その時点における経済の運営というものは、もう再び物価のこのような高騰を来たしてはいかぬ。あるいは国際収支の面について重大な関心を払いながら進めなければならぬ。  それからもう一つは資源、つまり石油をはじめ資源小国たるわが国が入手し得る可能性、そういうものを十分踏まえていかなきゃならぬ。また公害や自然環境の破壊、こういうような問題につきましても配慮しなければならぬ。そういう配慮の中においてとにかく成長政策を進める。ですから以前のようないわゆる高成長ということでなくて、巷間いわれる安定成長路線に日本経済の運営のかじを完全に乗っけたかじとりをしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  205. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 次には四十九年度の経済の見通しでございます。  この経済成長がどういうふうになるかということは、原油の供給見通しによってまずきまってくるんだと思いまするが、四十八年度の見通しとしてはどのぐらいのものを見込み、また実績としてどの程度入る見込みでありますか。また四十九年度は価格の問題とかあるいは外貨の問題になってまいりまするが、どの程度を見込んでおられますか。そういうことによりまして実質成長率二・五%ということになっておる根拠をお示し願いたいと思います。
  206. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 石油の輸入見通しに多くこれは依存することにもなりますが、林田さんも御承知のとおり、最近のわが国の経済におきまする石油の輸入増というものは、年々二〇%ぐらいの増加を示しておる場合が多かったようでございます。したがいまして、昭和四十八年度の経済見通しを立てます場合にも、鉱工業生産その他の関係から、石油の輸入見通し、原油の輸入見通しを三億五百万キロリッターぐらいに実は見ておったわけでございますが、十月以降の石油危機等の状況がございまして、幾ら多く見積もりましてもせいぜいそれが二億八千万キロリッターというような数字だろう、こういうことになっておりますことは、これも御承知のとおりでございます。  したがいまして、当初は四十八年度の経済成長を実質一〇・七%ぐらいの成長率に見ておりました。名目では、物価上昇をいたしますのでたしかそれ以上一四・数%ぐらいの見通しであったと思いますけれども、しかしそれは残念ながら、あるいはそれがほんとうかもしれませんが、年末に至りまして四十八年度の経済見通しを改定せざるを得なくなりまして、御承知のとおり実質成長見込みというものを六・四%ぐらいに改定をいたして今日に至っております。  しかし、それに反して物価のほうが予想以上上がりましたので、名目の成長率というものは対前年二一・九%ぐらいの増加を見込むような形にならざるを得なかったと思っております。私は今日におきましてもその見込みはそれでいいと思います。  四十九年度におきましては、その石油の見通しは大体四十八年度の二億八千万キロリッター、あるいは減っても二億七千万キロリッターというような見通しもあるわけでございますが、いずれにしても三億キロリッターにはならないという見通しから出発し、ことに物価の抑制策といたしまして、申すまでもなく総需要の抑制政策を財政の面、金融の面、設備投資の面、その他の面におきまして非常にきつくとることになりましたので、したがいまして、経済の実質成長の大きさというものはたいへんきびしいものにならざるを得ないということで、そういう関係から、いろいろ期間を分け、推算をいたしました結果、目下のところ明年度の経済成長実質見通し二・五%、こういうことに相なっておるわけでございます。  物価のほうは、物価抑制という見地もございますので、名目の成長率は、昨年のような二一・九%というようなことになることなしに、一二・九%の増加と、こういうことでございまして、やっぱりその間、前年度との物価の対比、すなわち、げたというものもある関係もございますけれども、やはり実質の成長率よりも名目の成長率のほうが若干多い。しかし、本質的には、先ほど来お答えを申し上げましたようなきびしい状況にある、あらざるを得ないだろう。中には、明年度は、下村治君のように、実質経済成長率〇%と見るべきだというような議論を今日も変えない方も世の中にはあるようでございますし、さらにまた、楽観的に見る人もあるようでございますが、経済企画庁といたしまして、エコノミストの諸君を集めて推定をいたしますと二・五というようなところにあるわけでございます。
  207. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 次に、国際収支問題についてお伺いしたいんですが、資源ナショナリズム傾向によりまして各国ともに経済は縮小方向をたどっております。その伸び率は鈍化するということでありまするし、また年間六百ないし六百五十億ドルのオイルダラーが先進工業国からOPEC諸国に支払われる。ところが、こういう国にはそんなに需要はありません。そういうことで、日本はいままで貿易収支の大幅黒字で貿易外収支の赤字と海外投資をまかなってきましたが、今年の国際収支はどういうように考えておられますか。  また、そのオイルダラー対策についてお伺いしたいんですが、かつて国際通貨問題を危機的状況におとしいれましたユーロダラーの規模が大体五百億ドルから七百億ドルというように言われておりましたのに比べますると、毎年六百五十億ドルに及びまするオイルダラーがいかに使われるかということは非常に大きな問題であります。そのためには世界的な機構を早急につくらなければならぬというようなことも言われておるわけでありまするが、日本の考え方はいかがでございましょうか、大蔵大臣ひとつ。
  208. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国の国際収支はなかなか重大な段階にきておるわけですが、とにかく昨年一年を見ますと、赤字が実に百億ドルに及ぶと、こういうことになってきたわけです。私は、この百億ドルにも及ぶ赤字というものは、これはもうほうっておくわけにはいかぬ、こういうふうに考えておるんですが、その赤字を出したゆえんのものを考えてみますと、これが九割以上は長期資本投資の赤字であります。ですから、この長期資本投資について考え方を変えなきゃならぬと、こういうことになるのは当然だろうと、こういうふうに思います。同時に、いわゆるインビジブル、貿易外収支の赤字というものもあるわけでありまするから、どうしても、幾ら長期資本投資を改善いたしましても、これを黒にするわけにはいかぬ。九十数億トルの赤字——まあ私は大体四十九年はこれを半分ぐらいの赤字に持っていこうと思っておりますが、その赤字をまかない、かつ貿易外収支の赤字もまかなうということを努力するわけでありますが、そのためには貿易収支の改善ということに努力をしなけりゃならぬと、こういう立場に置かれておるわけなんです。  貿易収支のほうは、これは石油の輸入が大幅に値上げされたという影響を受けまして、輸入が非常にふえてくるわけです、輸入額が。それから、これに反して輸出は一体どうなるかということを考えてみるわけでございますが、この輸入の増加をまかなう、これはたいへんなことでありまするが、やはり私は傾向的に見てもそういう感じがしておるのですが、世界的な物価騰貴の情勢を受けまして、わが国の輸出価格もまた上がる傾向を示しております。したがいまして、輸出の量につきましても努力はいたしまするが、同時に、輸出の価格が引き上げられるという傾向がありまして、油の価格が上げられましたに伴うところの輸入額のかなりの部分も、輸出額の増強によりましてまかなうことができる。かなめは、ですから結局、長期資本投資をどうするか、こういうことに帰着するわけです。  そこで、この長期資本収支が昨年なぜ九十億ドルをこえるような大幅な赤字を示したかということを考えますと、わが国が昨年の二月には実に百九十億ドルの外貨を保有するということになって、世界各国からこれは非難される。そういう状況に対処しまして、外貨減らし政策というものをとったんです。その結果、外貨が入ってくるのはこれはひとつ抑制をする、しかし、出ていくことは奨励するというような外貨政策がとられたわけですが、それをほんとに完全に裏返しをした政策をとり始めておるわけなんです。その効果はかなり今日出てきています。これによって、大体ただいまも申し上げましたように、長期投資収支はその赤字を大体半分ぐらい改善することができるんじゃないか、そういうふうに考えております。  総合いたしまして、わが国の基礎収支といいますか、基本的な国際収支の帳じりは、昨年は百億ドルの赤でございまするけれども、四十九年度におきましてはおおむね大体その赤字を半分ぐらいに持っていけるんじゃないか、ぜひそうしたいと、こういうふうに考えております。一挙に改善ということはとてもむずかしい、百億ドルという赤字を一挙にというのは。まあ四十九年度においてはその半分を赤字を解消する、こういうことを目標にして外貨政策を進めていきたい。  それから第二は、オイルダラーに対してどういう政策をとるかという問題であります。  これは一月のローマにおける二十カ国蔵相会議でも主たる論議の課題になったわけでありますが、国際社会で、IMFを中心といたしまして何とかこの過剰オイルダラーを一つのルートに乗っけて、それを外貨事情のきびしい発展途上国などに回そうという考え方が展開されております。それからもう一つは、世界銀行を中心にいたしまして、世界銀行のルートによって再配分を考えたらどうだという考え方も出てきておるのです。それからさらに、新しい何かオイルダラー金融機構というものの機構を考えたらどうだろうというような案が出ておるわけでございますが、どういうふうにいたしますか、これはわが国は国際経済社会においては有力なる一員でありますので、積極的にこれらの相談に参加いたしまして、そうして、いずれにいたしましても再配分が適正にいくように、ことに、発展途上国に対しても経済の破綻を来たすというようなことがないように協力をいたしていく、こういうので、わが国も係官を派遣いたしましたり、あるいは私自身もいろいろそういう相談に参加いたしましたりいたしまして、何か適正な構想がまとまるようにと、そういう努力をいたしておると、その最中でございます。
  209. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 もう一つ大蔵大臣にお伺いしたいんですが、国際通貨情勢の推移を見ておりますると、EC特にフランスは、公的金の価格を再評価もしくは自由化するというようなことをしようと、こういうふうに聞いておるのであります。そういうことがあるのかどうかということでありますが、それから、それに伴いましてわが国の対策はどういうふうな対策を立てるのかと、また、わが国の公的金保有が幾らになっておりまして、昨年自由化以降金保有をふやす対策はとったのかどうかと、また民間保有はどれぐらいあるのかと。実は、この問題は、ソ連が一昨年アメリカから穀物を大量に買い入れたことがありまするが、そのときは、ソ連はヨーロッパで六十ドルで金を売却をいたしまして、そうしてアメリカに金を支払ったわけであります。そういうことで、金が再評価されて金価格が多くなるというような場合に、日本物価にも非常に大きな影響があると思うのであります。そういうような見地から、どういうふうにお考えであるか、お伺いしたいと思います。
  210. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国際通貨社会での金の位置というものが非常な変わり方をしておるんです。つまり一つは、アメリカがベトナム戦争十年の間に相当の国際収支上の赤字を出しておる。で、ドルの地位が不安定になって、その結果と申しましょうか、アメリカはずいぶん多額の金を保有しておったんですが、だんだんその金の保有額が減りまして、ドルと金を結びつけておくというわけにはいかぬ。そこで、金保有を離脱すると、こういうような事態まで進展したわけです。そういう問題が一つある。  それからもう一つは、金の地球上における埋蔵量がだんだん先が暗くなるような情勢であります。そこで、金を国際通貨の基本とするという体制ですね、また金に基づくドル体制、こういうものがいまやくずれてきた。そしてドルの価値も、昨今は幾らか改善はされておりまするけれども、しばらく前はたいへんな不安定な状態になってしまった。そこで、金やドルを国際通貨決済の手段として使うという考え方をいままでのようにとってきていいものか悪いものかという議論がありまして、そこで、いま国際通貨社会におきましては相談を進めておるんです。で、金あるいはドルというものをもう重く見ない。そこで人類の英知といいますか、そういうものに結びつかない新たな決済手段というものをひとつ模索しようじゃないか。そこで、IMFに設けられましたSDR、この制度をあるいはそういう方向で使うことはできないか、そういうようなことでいま検討が進められておりまして、去る一月のローマにおける二十カ国蔵相会議におきましては新しい方向の決済手段をきめる。その際、SDRをかりに採用するとすれば、その新決済手段であるところのSDRの価値は、これは非常に安定し、かつ、価値の高いものとしようじゃないかという方向が打ち出されまして、いま専門家の間におきましてその詰めに入っておる。そこで、六月の中ごろ、さらに二十カ国蔵相会議を開きまして、その方向、大方針につきましてひとつ決着をつけようというところまできておるわけなんであります。そういうことで、だんだん国際決済手段というものは、ドルや金から離れまして、新しい国際管理通貨と言いますか、新しい決済手段の方向へ方向へと動いておる、かように御了承願います。  その間におきまして、わが国の金はこの金問題にどういうふうに対処するかと。国際通貨制度自体の問題としてはただいま申し上げたとおりでありますが、わが国は公的外貨保有、つまり準備通貨といたしましては、これは金の保有が非常に少ないんです。八億九千万ドル、二月末においてであります。そういう状態で、金の価格がどうなるかということは、狭い日本の立場からいきますると、わりあいにウエートの少ない問題でありまするけれども、大きな問題は、金の価値を再評価する、そういうことは、これは一つのインフレと言いますか、そういう方向へ大きな刺激となる——これは国際経済社会においてであります。そういうようなことで、いま林田さんからお話もありましたが、フランスは金をうんと持っているんです。その金を再評価しようじゃないか、そういうふうな動きを示しております。そうなりますと、国際決済手段がフランスではうんとふえていくことになる。国際決済手段がふえていくとなると、それが国際社会におけるインフレ傾向というものにもつながってくるというようなことを考えますと、わが国としては重大な関心を持たなければならぬ。しかし、どういう政策態度をとるべきかということは、いまちょっと国際経済そのものが激動しております。その動き、それからオイルダラーをどうするかというような処置とも深く関連する問題でありますので、わが国の国益も見ながら、また世界の経済が安定しなければならぬと、そういうような両面の立場から対処していきたいと、かように考えております。
  211. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 農林大臣にお伺いしたいと思うんですが、食糧の自給問題でございますが、やはりこれは物価に非常に大きな影響がありまするので取り上げたいと思います。  わが国の食糧自給率は依然として低下を続けまして、四十七年度の総合自給率が七三%というように、前年度をさらに一%下回っております。また、オリジナルカロリーであらわしますると五三%の水準となっておりまして、わが国は食糧の半分近くを海外に依存しておることになるわけであります。一九七三年の農産物輸入額が推計六十五億ドルでありまして、七〇年は三十二億ドルでありまするから、わずか三年間に倍になったということであります。そういうことでは、地球が小氷河期に入りつつあるといわれております時代にきわめて不安なことでありまするし、また、物価騰貴の大きな原因をなしております。で、イギリスの自給率を見ますると、大体日本と同じでありまするし、西独は六割でありまするけれども、EC全体としまして九割の自給率になっているわけであります。だから、これはEC全体としての自給率を考えなければならないわけで、イギリスに比較しましても日本が非常に不安定にあるということが言えるわけであります。この自給率を高めるということが非常に重要な問題でありまするが、今後どういうふうにしてこれを高めていかれるか、農林大臣にお伺いいたします。
  212. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 最近の国際的な食糧事情等を見ましても、わが国の国民生活に必要欠くべからざる食糧につきましては、その自給度を維持、拡大していくということはもう十分必要なことでありますが、農林省は昭和五十七年を目途に農産物の需給見通しを立てて、それに基づいてやっておりますが、その中では、御存じのように、米、野菜、果物、それから肉類、鶏卵、牛乳、乳製品、これらにつきましては八〇ないし九〇%を維持していく、その方向でやっております。もう御存じのように、国民の食生活がだんだんいわゆる向上してまいりまして、そのために、増産されてもやはり必要量がだんだんふえていくことはもう御存じのとおりでありますが、中でも私どもが一番不足と感じておりますのは飼料作物であります。そこで、昭和四十九年度予算には、小麦その他飼料作物に対する生産奨励金を給付することにいたしまして、現に小麦などの植えつけを見ましても、現在までは大体十五万ヘクタールぐらいでありますが、今回は大体十八万ヘクタールの植えつけが済んでいるというふうな状況であります。そういうことで、これらの不足しておるものの生産の増強をはかっていくことにいたします。  それから同時に、ただいままで未利用地でありましたようなものの開発を含めまして、御審議を願っております農用地開発公団といったような構想をつくりまして、そして畜産振興につとめてまいりたいと、こういう考えでございます。
  213. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 私は、えさを自給するという問題が焦眉の問題であると思うのでございます。それで、えさの自給のためには、日本が、発展途上国におきまして、その国の利益をはかりながら飼料生産を開発しまして輸入するという方法がありまするが、インドネシアにおきまするミツゴロ農場におけるように、発展途上国も食糧不足に見舞われると、日本へ輸入することができないわけであります。そうしますると、やはり日本の狭い国土の中ででき得る限り自給することを考えなければならぬわけです。ところが、手っとり早くこれを自給しようということを考えました場合には、やはり裏作を放棄しておるところに裏作を進めるということが最も早いんじゃないかと。その場合に、暖地の水田におきまして米の二毛作をやりまして、二回目をえさにするというようなことができないものかどうかということでございます。また、裏作麦をわせ化いたしまして、あるいは青刈りでサイロに詰めて飼料化するというようなことが必要でございまして、まあ、これは今回の裏作麦の増産ということはそういうことだろうと思うのであります。その場合に、農協が経営受託をいたしまして集団的に行ないまして、そして農協が流通をはかっていくというようなことが考えられないものかどうかと。また、農地問題がネックになっておりまするから、農業改良制度というのが長い間あるのでありまするが、これを技術改良ばかりでなくて、経営及び土地を含めました指導組織にいたしまして、そして農地問題も取り扱っていけるということがいいんじゃないかと思うのであります。何にいたしましても、裏作を早く進めていくということが必要でございまして、裏作をやるということは、同時に備蓄ということにも通ずると思うんでありまするが、いかがでございましょうか。
  214. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お説のとおりでありますが、飼料自給度の向上をはかりますために、昭和五十七年、先ほど申しました五十七年までに草地牧草の作付面積を六十四万ヘクタール、それから既耕地の飼料作物の作付面積、約九十九万ヘクタールを目標として草地開発事業を計画いたしております。なお、来年度からは、新たに既耕地への飼料作物の導入を強力に推進いたしますために、飼料作物生産振興対策、これを講ずることといたしておりますが、先ほど申しましたような未利用、低位利用の土地資源に恵まれた地域を対象に、草地基盤の整備はもとより、経営施設、ただいまの農協の話がありましたが、経営施設、経営手段の整備導入までを一体的に実施する新たな畜産開発事業団を行なう等の措置を講ずることにいたしておりますが、ただいま裏作利用のことについてお話がございました。で、御存じのように、農林省の技術会議では、この稲作と麦作との間が重なり合うという最近までの傾向、これ、まあいろいろ育種の進歩等によってこういう結果になったのでありますが、それをさらに改善いたしまして、ダブらないようなための発見等について鋭意検討中でありまして、大体いい模様であります。したがって、できるだけ裏作を利用するための施策を講じてまいることに、農林省は鋭意進めておるわけであります。
  215. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 昨年来、配合飼料の原料が倍に暴騰いたしまして、畜産はいま崩壊の危機に追い込まれていることは御承知のとおりであります。ところが、そのコストをすべて畜産物価格に課するという場合に、物価対策上また大きな問題になってまいります。昨年九月の配合飼料値上がりの際には、財政資金二百十億円を投入されまして農家の危機が緩和されたわけでありまするが、今回はどういうふうな方法を考えておられるでしょうか。  また、問題は米の値段でございます。昨年の生産者米価は、八月に一六・一%という史上最高の引き上げが行なわれました。当時は石油危機もなく、物価も比較的安定しておりましたが、そのときに比べますと、いまの農業を取り巻く環境は、農民にとって非常にきびしいものになっております。農業パリティ指数が、昨年十二月では二九一・二四ということになっておりまして、前年の同月に比べますると二三・九%も上昇をしておるわけであります。その後も、農薬、農機具あるいは肥料というようなものがさらに上昇をしております。また一方、様子が変わっておりまするのは、外国の農産物価格が倍以上に暴騰しておるということによりまして、日本の米も外国の米に比して高くないというようになってきておるわけであります。そういうことも踏まえまして、すでに農業団体では、本年産米価を米の作付前にきめるというような運動を開始をいたしておりまするが、こういう問題は、物価対策上非常に大きな問題になると思います。農林大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  216. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 第一に、ただいまのいわゆる畜産危機といわれておりますことの問題でありますが、いまお話のございましたように、昨年は基金に二百十一億を繰り入れたり、それからまた、低利の融資をいたしたりいたしましたが、今年同じようなことをいたすということはなかなか困難がございますので、ただいま、実は今日もそうでありますが、十一日から畜産振興審議会を開催いたしまして、その中の各部会が、ただいまの問題につきましてそれぞれ検討しておっていただくわけであります。そこで、まあそういう御答申を待ちまして対処いたしたいと思っておりますが、ともかくも、ただいまお話のございましたように、飼料をはじめ、いろいろな物資が高騰いたしております。そういうものの中にあって加工乳及び豚価をきめるという状況にございますので、やはりそういう事情を勘案いたしまして対処すべきではないかと。ことに、融資をいたしてあるものの返済期限を延長するとか、もろもろのそういう手段をいま検討中でございまして、要は、そういうふうにいろいろなデータを集めまして、審議会で熱心に検討していただいておるわけでありますが、究極において、私は先ほど申し上げましたようなことになるのではないかと、こう思っておるわけであります。  それから米価のことにつきましては、やはり米作農民の方々の諸掛かりが高騰いたしておることも御指摘のとおりでございますが、そこでやはりただいま植えつけ前にこれをきめると申しましても、生産費所得補償方式でございますので、生産費等のまだ計算が間に合っておりませんし、それから、大体例年六月ないし七月に米価は決定されておるわけでありますが、そのころになりませんというと——そういう決定時期の一番最短距離のやはり生産費等を勘案してやるということが私は一番実情に即したものであり、米作農民の方々の利益にもなるのではないかと思っておりますが、まだ、いつ米審を開いて何をするかというふうなことにつきましては、農林省といたしましても全然考えを固めておるわけではございません。
  217. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 公正取引委員会委員長にお伺いします。  公正取引委員会は、今年に入りましてから値上げ協定の破棄勧告や立ち入り検査を相次いで行なっておられまして、また、石油元売り十二社に対しましては、独占禁止法違反で最高検に告発という強硬な措置をとっておられまするが、これは独禁法の番人としましての姿勢を示されたものとして高く評価するものであります。  そこで、根本的な問題として公取委員長の見解をお伺いしたいことは、現在の経済が需要超過基調の物不足経済でございます。そういうときには、やみの話し合いが行なわれなくとも、プライスリーダーが価格を引き上げれば、業界一斉に値上げというようなことになりやすいわけであります。その場合に、独禁政策そのものは、物価政策上どの程度まで有効であると考えるかということでございます。  それから第二点といたしましては、行政指導による価格形成でありまするが、これにつきましては、公取委員長は、何の法的根拠もなく財産権を侵害してはならないとの憲法二十九条に違反するという見解を持っておられるように聞いております。ところが、需要過多で競争原理が物価抑制につながらない場合、しかも、物価抑制を緊急に必要とする場合、公益的見地から、各省設置法によります権限に基づきまして各省が行政で指導価格をつくるということは、一がいに排斥すべきではないんではないかというようにも考えられるわけであります。これについての御見解を第二にお伺いしたいのであります。  それからもう一点は、企業の寡占的支配力が最近強まっていることに対しまして、弊害除去のために市場構造そのものを変えるという見地から、企業分割規定の復活論も出ておりまするが、非常に効率のよい企業が市場競争を通じて寡占化した場合に、それを分割したり規制したりすることが、消費者利益の面から真に望ましい結果をもたらすかどうかということでございます。  以上、三点につきまして御見解をお願いします。
  218. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 最初の点につきましては、いまの日本の大企業を中心にしまして、一般に寡占化の傾向が強まっております。そういうことから、物不足経済に直面した場合に、とかくカルテルによって、実際に競争状態——物不足状態でありましても競争はあるわけですが、そういうことではなくて、カルテルによって大幅な値上げをねらうと、こういうことが現に行なわれております。それは、プライスリーダーがあって、それがあればあと話し合いなしに暗黙のうちに追随するというケースは、これはなるほど証拠の把握は困難でございます。しかし、昨年来、寡占とは申しませんが、寡占を含めまして、おもだった業界に対して、私ども石油危機以後特に精力的に立ち入り検査を行ないまして、幾つかの案件を処理しております。現にまだ継続中のものもございますが、特に源をなした石油の大幅値上げ、石油製品の大幅値上げというようなものについては、これは社会的にも相当な追及を受けた、その結果、今後の値上げそのものについては若干影響をもたらすというふうに思います。ただ、私どもいまの法制下におきましては、必ずしも十分な排除措置はされておらぬ。本来ならば、排除するということの中には、もとの状態に戻し、競争状態をつくるということでございますが、特に物不足経済で売り手市場である場合に、そういうことを言ってみましても、実際にいまの実態はむしろ値上げをしていると、排除措置を受けた上でかえって値上がりが起こっているというふうな状態でございますので、これは立法の問題として研究していかなければならぬというふうに考えております。  次に、いわゆる行政指導による価格の問題でございますが、この点、私は問題を二つに分けて御理解願いたい。行政指導によって価格をいま下げているものがございます。私どもが摘発いたしましたものについて、やはり便乗分が含まれたと私どもが認定するよりも、むしろ監督官庁のほうでそう思われて、そして値下げを要請しておられる。それに従うということについては、私ども、必ずしもしゃくし定木に考えて、これが新しいカルテルだとは申しません。そのように解するべきではないと思います。カルテルでありましても、そういう場合には何も何の反社会性がないというふうに解しております。  しかし、今回行なわれようとしております石油の大幅な値上げの場合には、これはいささか事情が違うのじゃないか。というのは、勧告操短はかねてから違法である、独禁法違反であるというふうに認定されております。実際にそういうケースもございます。価格を勧告でやると同じことでございますが、価格の場合にはより重要な問題でございまして、しかも、いまおっしゃいましたように、価格の決定権はだれにあるかという点になりますと、法律があればその法律できまります。それは法律できまる限りはカルテルでも何でもございません。その間に多少の交渉がありましても、私は、その結果が業界の意思ではありません、業者の意思ではありませんから、これはカルテルとは申さない、当然のことでございます。しかしながら、行政指導によっては価格は設定されません。法律がそれを、権限を与えない限りは、価格は生まれないのです。決定されるのは業者自身によって決定される。といたしますと、もう昨年一年間に五回も違法なカルテルをやった実績がある石油業界でありますから——まあ何も実績がなくても同じことでございます。そういうものに勧告によって価格を設定させようとするということは、私どもの立場から言えば、もう非常に微妙な、まあカルテルとほとんど変わらないようなものになってしまいます。そして独禁法の適用除外を受けるものはすべて法律によらなければならぬとなっておりますから、それが行政指導によって実質的に破られてしまう。そうすると、大きな風穴を独禁法にあけたと同じことになりはせぬかというふうに考えますので、その点はぜひとも、技術的に、物理的に不可能であるというならば、これはまた暫定的に、私は緊急避難と申しますが、それはけっこうでございましょう。しかし、できるだけ早く——法律がそのためにあるんです。通産大臣の指示する価格云々という覚え書きがございますが、これは国民生活安定法が上程されましたときには、すでに企画庁長官との間で法律に基づく価格というふうになっておりますから、それは改められておるはずでございます。ですから、通産大臣の指示する価格を順安するため施策に協力する云々というようなことは、その点については是正されているわけでございますから、法律によっていただきたいというのがこちらの要望でございます。強い要望でございます。  なお、第三番目の問題といたしまして、いろいろ分割というふうなことが言われておりますが、この企業分割につきましては、私はいま、まだ検討中でございまして、はっきりここで申し上げないほうがよいと思いますが、いまおっしゃったような、同情的なと申しますか、人情の側から見れば、企業努力を精一ぱいやったところが自然に独占的な地位を占めるに至った、だから気の毒ではないかというふうな考え方があります。しかし、私はそういう問題は、経済的な競争政策の立場からはきわめてドライに考えていかなきゃならぬ。競争がない状態はこれは独占でございますから、その独占を廃止する、独占を禁止するための法律があるわけでございますから、したがいまして、これは自然に競争上そうなっちゃった場合、これは矛盾のようでございますが、やはり新しい競争をつくるような経済構造をつくり上げること、そういうことも一つ政策として当然、構造的な問題でございますから、長期的な観点で処理すべき問題ではないか、こういうふうに考えております。
  219. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 行政指導によりまする価格は、やはり国民生活の緊急安定法によって標準価格をつくったほうがよろしい、こういうようなお話であるように思うのでありまするが、この問題は、きのうから政府におきましてもいろいろ検討をされておるそうでございまするので、これ以上申しませんが、早くしっかりきめられまして、この問題で国内に、たとえば行政が会社に密着しておるんだ、企業に癒着しておるんだというようなことが言われないように十分対策を立てていただきたいと思います。  それから外交の問題でございまするが、田中内閣になりましてからの国際外交をめぐる情勢は大きく変わってきております。すなわち、中国の国際社会への復帰によりまして、米ソ二大国の時代から米、ソ、中、日、欧の五極外交の時代に入ったかと思いますると、さらにまた発展途上国の発言権増大によりまして一そう多極化して、最近では全方位外交の時代ともいわれております。しかし、外交はいつの時代でも善隣友好が基本であり、どこの国とも仲よくするというのが基本でなければならないと思うのであります。いまアラブをはじめとする産油国が石油を値上げしたり、供給制限をしたりいたしまして戦略的手段に使っておりまするが、これをあまり長く続けますると、先進国の国際収支の赤字がふえまして、発展途上国に対する援助が減ったり、あるいは工業製品の輸出価格が高くなるという形ではね返ってまいりまするし、また日本からの中国や東南アジアに対する肥料輸出が減るということで世界の食糧問題にまで及ぶといったぐあいで、世界は資源のある国もない国も、お互いの立場を理解し合っていかなければならないと思うのであります。日本の中東新政策発表後、日本の外交姿勢に米国その他から若干の批判があったようでありまするが、この機会に中東戦争以後の日本外交の基本方針を明らかにお示し願いたいと思うのであります。
  220. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まず、中東戦争に関してでございますが、ただいま中東戦争は兵力の引き離しという段階でございます。で、これからあと占領地からイスラエル軍が撤退するということが実現され、さらにパレスチナ人の権利がどういう姿で回復されるかというような手順で今後推移していくものと思うのでございます。わが国といたしましては、先般発表いたしました中東政策というものを堅持いたしまして、かの地に永続的な平和が保障されるような状況が招来いたしますように、国連その他の場でわが国の能力に応じて最善を尽くしてまいるべきものと思うのであります。  それから、アラブ諸国との外交でございまするが、その他の地域外交と同じように、林田さんが御指摘のように、善隣友好の度を深めてまいらなければならぬことは当然でございます。すでにわが国も、円借款の供与、延べ払い信用の供与という姿で数々の協力をやってまいりましたし、千七百名に及ぶ留学生の受け入れ、六百名に及ぶ専門家の派遣等を通じてアラブ諸国の国づくりに御協力してまいったのでございますが、ただいま多くのアラブ諸国からわが国に対する経済、技術協力の申し出が多く提出されておるわけでございまして、わが国の財政能力、援助能力というものをはかりながら、われわれが約束いたしたものは誠実にかつ着実に実行してまいることによって、友好親善の度を深めてまいりたいと考えておるわけでございます。さらに、全部の国ではございませんけれども、若干の国はわが国に決定的に大切な資源の供給をしていただいておる国でございます。わが国が資源の供給の多元化を幾らはかってみましても、その大宗はどうしてもアラブ産油国に仰がなければならぬ状況というものは変わらないわけでございます。今日まで産油国の理解とわが国官民の努力によりまして、欧州各国等と比較いたしまして、決して不利な立場は、石油の輸入につきましてとっていないことは幸いであると思いますけれども、今後も十分の信頼と理解を深めてまいりまして、大切な資源の安定確保ということにつきましては万全の備えをやってまいらなければならぬと考えておるわけでございます。
  221. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 次は北方領土の問題でありますが、昨年十月に総理がソ連を訪問されましたときの共同声明によりまして、第二次大戦後の未解決の諸問題を解決して平和条約を締結するということが合意をされました。そして、総理の大奮闘によりまして、その未解決の諸問題には北方領土の問題が入っているというように聞いておるのであります。これはいかがでございましょうか。
  222. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 鳩山訪ソによって日ソの国交が開かれたわけでございますが、御承知のとおり、日ソの間にはまだ平和友好条約が締結されておらないわけでございます。モスコーと東京とは離れておりますが、日本海という小さな海を隔てて隣国にあるわけでございます。そういう意味で、日ソ両国の間にはできるだけ早く平和友好条約を締結することによって真の友好関係を築きたいという意思は双方とも表明しておるわけでございます。日本の立場といたしましては、訪ソのときに明確に申し述べましたとおり、北方四島がまだ日本政府の施政が行なわれないような変則的な状況にあることは御承知のとおりでございますので、日本の古来からの領土である北方四島、すなわち歯舞、色丹、国後、択捉の四島の早期復帰に対して合意を得たいということを強く申し入れたわけでございます。しかも、私どもが訪ソに先立って衆参両院が満場一致でこの四島返還の決議案が採択せられておるという事実に徴しても、これは全国民の悲願であるということをるる述べてあるわけでございます。その意味でこの四島の返還を前提として日ソの平和友好条約を締結し、末長きにわたって両国の親善友好をはかりたいということでございまして、引き続いて平和条約交渉とあわせて四島の返還問題に対して両国の交渉が行なわれることでございます。議題に四島の問題がのぼっておることは申すまでもないことでございます。
  223. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 サンフランシスコ条約によりまして放棄をしました千島には、歯舞、色丹、国後、択捉の四島は固有の領土でありまするから入っていないというように了解をしております。したがって、この四島は無条件で返還されるのが筋だと思うのでありまするが、いかがでございましょうか。また、平和条約締結の交渉は七四年中には開かれるというように言われておるのでありまするが、大体いつごろというような見通し、あるいはどこで、どのレベルでやるかというような見通しはついておるのでございましょうか。
  224. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 前段の、サンフランシスコ条約によって放棄した千島の中には、国後、択捉、歯舞、色丹の四島は含まれていないという立場に政府は立っております。それから本年中に平和条約の締結交渉をするという約束は、去年の総理訪ソの際の両国の合意事項でございまして、どこで、どのレベルでいつやるかということにつきましては、外交ルートで相談をしなければなりませんが、目下国会開会中でございますので、まだこの交渉を始めておりませんけれども、国会の様子を見ましてできるだけ早く詰めをいたしたいと考えております。
  225. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 最後に、教育問題についてお伺いしたいと思います。  日本は資源のない国であり、日本をささえるものは優秀な日本人以外にはありません。その日本人をつくるものは教育であります。また、教育は物をつくるにあらず人づくりなりというようにも申しますように、豊かな人間性と広い視野を持ちました創造力のある日本人をつくるのがわが国教育の目的であると思います。しかるに、今日の教育の現状を見まするときに、日本人としての国民道義や精神文化がなおざりにされまして、伝統ある日本人の豊かな心がいまや荒廃に瀕していると憂うるのは私一人ではないと思います。高校の校長を教組の教職員十数名がなぐる、けるの暴行をしましたり、大学生が学長を監禁、暴行しましたり、日教組批判の新聞記事を書いた生徒が自殺に追い込まれたり、生徒が授業したくないといえば解散させたりというようなことを聞いております。もちろん、これは少数の例であることを希望いたしますが、人間形成の過程にある年若き者にとりまして、指導者としての先生の資質がいかに重要であるかは申すまでもないところであります。教師が教育に対する熱情と正義感と使命感に燃えまして潤達な教育活動が展開されるようにすることが、わが国の教育にとりまして根本問題であると思うのであります。そのためにわれわれはまず第一に、教職にすぐれた人材を得ることが先決であるというように考えまして、いわゆる人材確保法を制定しまして教師の給与を改善し、優秀な人材を教師に得たいとしたのであります。  そこで、教育現場の荒廃や教育不在は一日も早く解消して、人づくりという教育本来の目標にのっとりまして教育の正常化をはからなければならないと思うのであります。文部大臣は、日教組が社会主義革命に参加している団体とみずから規定しているというように言明されましたが、これをどのように受けとめ、今後どう対処していくのか、国民理解と協力を求めるために態度を明らかにしていただきたいと思います。
  226. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 教育のにない手は教師でございます。それだけに、また教師、また教師集団と、教育諸条件の整備を担当しております文部省なり教育委員会なりの行政当局とが手をつないで努力をするのでなければ、教育振興の実をあげることは不可能だと、かように考えるわけでございます。組合の中には、政治的には不偏不党だということを旗じるしに掲げておられるところもございますけれども、日教組につきましては、私は、その運動方針なり、あるいはスケジュール闘争その他を通じて見ますと、階級的大衆組織であって社会主義革命に参加するものとみずから規定していると受け取らざるを得ないのでございます。もちろん、組合員の多くの方々はそういう気持ちは持っていらっしゃらないと思います。しかしながら、組合を流れている流れというものは、私はそう受けとめざるを得ないんじゃないかと、かように考えておるわけでございます。そういう意味で、ぜひ考え直してもらいたいものだという希望を強く抱いておるわけでございます。  そういうことを申し上げますのは、一つには、教育の使命あるいは教育の目標は社会主義社会の実現にあるという基本的な理念を持っておられるようでございます。  さらにはまた、青少年は社会主義社会実現のにない手として育てていくんだという考え方が述べられております。やはり教育基本法には、学校は「政治的活動をしてはならない。」、こうも定められておるわけでございますので、特定の政治思想を押しつけるような形になりますことは、ぜひみんなで慎んでいきたいものだと、かように念願をしておるわけでございます。  三つには、また、国際社会の見方につきましても、資本主義社会は動揺と混乱を深めている、社会主義社会は着実に前進していると、こう述べられておりますし、同時にまた、組合は階級闘争の立場に立った組織だとされておるわけでございます。そして資本及び資本家階級の政府を打倒するんだと、こうも述べられております。そしてまた、安保条約廃棄、基地撤廃、あるいは小選挙区制断固粉砕、参議院選挙に勝利を占めて反独占の政治体制を確立しようというようなことが運動方針として書かれておるわけでございます。同時に、先生方については政治活動が制限されております。選挙活動も制限されております。この撤廃を希望しておられるようでございまして、政治活動の制限は人事院規則に示されておるわけでございますけれども、その一つ一つを空文化していく戦いを強力に進めていくのだというようなことも書かれておるわけでございます。  また四つには、いわゆるスケジュール闘争、この四月にもまる一日のストライキをやるのだと、こう言っておられるわけでございますが、そのことは昨年の七月の群馬県の組合大会で決定されているわけでございます。昨年の四月にも半日ストが行なわれまして、二十六万人の先生方が参加されました。このことも一昨年の大会で決定されているわけでございます。一年も前に決定されている。ストライキは、申し上げるまでもなく、法律で禁止されているわけでございます。法律で禁止されているストライキを、しかも一年前に決定されているということになりますと、これは労働基本権とはかかわり合いを持たないきわめて政治的な色彩の多い行動だと、こう判断せざるを得ない。で、こういうことを通じまして法律秩序を破っていく、たび重なる行動を通じまして、こういう法律規定を空文化していく心配があるわけでございます。私は、やはり教育は法治国家の国民を教育するわけでございますので、まず先生方が法秩序を守る、こういう姿勢をとっていただくことがきわめて大切ではなかろうかと、こういう判断をしているわけでございます。  五つには、いま教育の現場がすさんでいること、いろいろ御指摘がございました。私もたいへん心配をいたしておるわけでございます。それじゃ日教組の運動方針とどういう点でかかわり合いを持つのかということについて一、二触れさしていただきます。たとえば職員会議の決議機関化ということを運動方針にあげておられるわけでございます。職員会議を決議機関にするということは、職員会議が学校の行事とか校務の分掌とか、そうしたいろんなことをきめていくんだということでございまして、教育委員会でありますとか、あるいは校長さんでありますとか、そういう方々の正当な権限を排除していこうと考えておられるようでございます。したがいまして、学校行事でありましても、運動会に例をとりますと、日曜日父母の参加のもとで行なわれる、月曜日は代休、しかし日曜日にやるのはいやだから平日に開催をする、それを職員会議で決定される、父母はやはり日曜にやってもらって参加したい、校長さんは板ばさみになってしまうわけでございます。やはり職員会議というものはそういう性格のものじゃございません。何か、職員が学校を管理していく、あるいは組合の分会が学校を管理していく、そういうふうな考え方をとっておられるんじゃないか、こう考えるわけでございまして、やはり日本は議会制民主政治をとっておるわけでございますので、やはり法律に基づいて学校を運営してもらわなきゃならないわけでございます。  そういうことで、むう一つ例をあげますと、学習指導要領の法的拘束力を撤廃するんだと、そして教育課程は学校現場の教師集団がきめていくんだと、こういうことを組合の運動目標にあげておられるわけでございます。学習指導要領は学校教育法に基づいてきめられていくわけでございまして、したがいまして、これは守ってくれなきゃ困るわけでございます。この学習指導要領に基づきまして教科書も編成されておりますし、また、学校がこれを基礎にして教育課程をつくっていくわけでございます。一体どういう形で学校現場の教師集団が教育内容をきめていくんだということをきめたんでしょうか。そんな法律はどこにもございません。やはり議会制民主政治は私は守ってもらわなきゃならないと思うんでございます。そういうことから道徳教育はおれたちはやらないんだというようなことも生まれてきたりしているわけでございます。あるいはまた官製の講習会は粉砕だというようなことも言っておられるわけでございまして、私は、憲法を守ると言っておられるのだから、憲法及び憲法に基づく法律も守っていただかなければならないのじゃないか、かように考えているわけでございます。  そういう意味におきまして、私は、いま組合が組合大会等で決定をしておられます考え方につきましてはぜひ考え直していただいて、そうして文部省や教育委員会や、あるいは組合や先生方や、みんな一緒になって、ひとつ教育の振興に力を尽くせるような環境をつくれないものだろうかと熱願をいたしておるところでございます。何といいましても、先生方が使命感に燃えて教育に情熱を傾けていただかなければならないわけでございますけれども、それはあくまでも正常な教育秩序の中において行なわれることを心から期待をいたしているものでございます。
  227. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 関連。  いまの文部大臣のだんだんの話を聞きまして、ぼくらは大体のことは知っておりましたが、実は現場における教育のあり方というものにびっくりいたしております。これは総理にお聞きしますが、私は、との傾向が激しくなったというのは、破防法の適用容疑団体である日本共産党、これに籍を置く教員が非常に多くなってきた(「ばかなことを言うな」と呼ぶ者あり)ばかなことじゃないよ、現実ですよ、これは。そんなこと知らぬでどうするのか。
  228. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 玉置さん、発言を……。
  229. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そこで、小中高の公立学校の先生方が共産党に籍を置いて、そのために、いま文部大臣が答えたような内容のこと、たとえば議会制民主主義を破壊するような、こういう暴挙をあえて現場でやる、これは私はゆゆしき問題だと思う。それで、この問題についてはすでに昭和三十五年ごろに当時の荒木文部大臣が答弁をいたしております。そういう傾向がいよいよ激しくなった場合には、日本共産党員という資格でもって、そうして現場におるということについては、これはやはり政府としてこの傾向は重要視しなければならぬ、そこでこういう教員に対しては情報の収集ということはなおざりにしてはならぬということの答弁がなされております。私はそれは正しいといまも思っておりまするが、これについての総理の見解、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  230. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 教育の問題は、これはもう全国民的な問題であって、一党一派の問題じゃありません。民族悠久の問題でございます。私は、そういう意味で教育が裁判官以上に中立性を守らなければならないものであるということはもうこれは不変の鉄則であろうと思うわけでございます。そういう状態で教育基本法ができておりますし、また、教育公務員の政治的中立が確保されなければならないことになっておるわけでございます。しかし、現状は、いま文部大臣が指摘をしましたように世間周知の状態であることは事実であろうと思います。長い間政権の座にあった自由民主党、また現内閣としても、やっぱりこういう事態を起こした、またそれをそのまま容認してきた責任というものは、これは国民に負わなければならないものだと信じております。とにかく、かつて教育公務員の政治的中立の確保ということで刑事罰というのが原案で政府案が提出をせられたわけでございますが、最終段階において行政罰に修正をされて成立をしたことは事実でございます。そのときは、人を教える立場にある教員というものが刑事罰を受けるような行為を行なうはずはない、ですから、それを万が一にも、あるとしてこういうものを法制化することには問題がある、ですから、第一段の段階においては行政罰をなすべきである、こういうことで与党もこれを了として、参議院の最終段階においてこれは修正可決せられたわけであります。その間の経緯を、あらためて申すまでもないことでありますが、念のため申し上げるとすれば、小選挙区法案と一緒にきたわけでございますが、これは小選挙区法案か、いずれをとるかという与野党の間の話し合いがあったわけです。小選挙区法案というものよりも教育の重要性ということを考えて教育法案を与党がとったと私は記憶をいたしております。そして、小選挙区法案は衆議院を可決せられながら、教育の中立性を守ろうというために、あえて廃案をのんだわけでございます。しかし、会期ぎりぎりまで教育法案が通過せず、時間切れになるおそれがあるというところで——これを廃案にしたほうがよかったという議論もあります、現在になって。そのようなものなら廃案にして、そしてもう一ぺん新しく刑事罰の法案を出すべきだったという議論もございましたが、そのような経緯のもとに行政罰になったわけでございます。しかし、私は、この罰則が適用せられないことを心から国民の一人としてこいねがってきたわけでございますが、しかしその後、この法律が、初め憂慮したような事態が随所に起こっております。起こっておるだけではなく、その後行政罰さえも執行せられないということにおいて、まあたいへんな事態があることは、これはもう私はそのまま事実として認めます。これは全く一部の問題だけじゃありません。これは相当な問題として、これはもう自民党とか社会党とかという問題ではなく、全国民が、やはり足かけ三十年、メモランダムをもらって、幣原内閣は、このようなメモランダムを実行すれば日本の教育には責任が持てないという歴史的な事実がありました。しかし、占領目的達成のためにメモランダムを実行しない内閣は退陣すべしということで、幣原内閣はついに瓦解をしたわけでございます。そういう歴史的事実の上に今日の日本の教育制度があるわけでございまして、まあ知育、徳育、体育ということでございますが、知育と体育の問題は私行なわれておると思いますが、徳育の問題に対しては、長い、道徳教育はいかぬとか歴史教育はいかぬとか、いろいろな問題があって今日に至っております。しかし、子供の徳育よりも教師の徳育そのものが云々せられる段階であることは、はなはだ遺憾であります。これは全く遺憾であります。われわれがこの世に生きる生命というものはそう長くはありません。しかし、われわれの子供や孫に伝えられる日本人の歴史は悠久であるということを考えれば、私は、少なくとも教育制度というものに対しては、すなおな気持ちで見直し、そして正すべきものは正さなければならない時を迎えておるというふうに考えるわけでございます。  私は、もう特に中小という義務教育において、これは判例を待たなければわからぬことでございますが、判例が出る前に、国会は法律を制定する唯一無二の立法機関として存在するわけであります。これは一部の人たちが、どこからどんな好きな教科書を持ってきて教えてもいいということは——大学なら別でありますが、六つ、七つの子供にそんな教育というものが、私は、正しい、ノーマルな教育状態であるとは思いません。これはやっぱり、経験をしたおとなが、お互いが、自分の子供には教科書はこうこうあるべきだと、そういうことがなぜタブーのようにして今日まで至ったのかということをほんとうに感じております。ほんとうに自分の子供でも七つ八つになれば親の言うことを聞きませんよ。ですから、ほんとうに教職という、聖職という専門家の手にゆだねて、よりよき日本人をつくってもらわなければならぬ。親にかわっての教職でありますから、これは聖職であります。ですから、そのためには、制度が悪ければ直す、また身分保障や給与があったなら、私は最高裁の判事よりももっと、ある意味においては高い待遇をしてもいいと思います。そういうことの必要な時代を迎えておるということは事実でございます。私は、そういう意味で、少なくとも国が義務教育として定めておる中小の学校の先生、どうすれば一体ほんとうの日本人として世界に恥ずかしくない日本人をつくり得るのか、教育できるのかということを考え、そして国民に訴え、そういう問題の改革に着手すべきときである、このように考えております。
  231. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 だいぶ教育の話がありましたので、あと簡略にいたします。  それで最後に、今後の教育のあり方、なかんずく期待する人間像はいかにあるべきかというような問題について伺いたいと思います。総理は、施政演説の中で、教育は、民族悠久の生命をはぐくみ、日本文化の伝統をつちかう最も重要な国家的課題である、と力説され、さらに、青少年が公共に奉仕する使命感に燃え、国際人としても信頼されるたくましい日本人として成長することを期待すると、教育のあり方に対して真剣に取り組む強い決意を表明されましたことは私も全く同感であります。さきの総理の東南アジア訪問先で各国の首脳から指摘されるまでもなく、高校生の爆弾事件とか、一般人まで巻き込む学生のセクト間の内ゲバの続発あるいは国際的犯罪となりましたアラブゲリラ等々を見ますると、目的のためには手段を選ばない、人命軽視、人間性無視の事件が頻発しておるのは一体なぜでしょうか。いまや、新しい時代の教育改革に果敢に取り組むべき時期であり、努力を怠ることを許されないと思います。期待される教育としまして、文部大臣の見解をお伺いいたします。
  232. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) これからもわが国が繁栄を続けまして、平和のうちに物心ともに豊かな社会を築いていかなきゃならないと思います。そのためには、国際社会の一員として、国際協調の精神に基づきまして、世界の平和、人類の福祉のために貢献をしていくことが何よりも肝要だと、かように考えますでございます。そういう意味合いにおきましては、いまお話しになりました、心身ともにすこやかな、豊かな心情を持ち、創造力に富んだ、そして進んで社会に奉仕する責任感に満ち、国際社会から信頼される高い倫理性を持った日本人を育てていくことが基本的な課題ではなかろうかと、かように考えておるわけでございます。  また、今後の教育にあたりましては、教育内容、教育方法、いずれにつきましても抜本的な改革を続けていくべきものだと、かように考えるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、高等学校以下の教育につきましても、新たに小・中・高一貫の教育課程審議会を発足させていただきました。また、高等教育につきましても、高等教育懇談会におきまして、昭和六十一年には四〇%の人たちを大学に迎え入れるけれども、その大学のあり方につきましては、またいろいろな視野から思い切った改革案を練っていただいているところでございます。文部省といたしましては、何といいましても教育者の処遇、これを抜本的に引き上げていかなければならないわけでございますし、同時にまた、物的な諸条件も整備していかなければならない、かように考えているわけでございます。そして、何といいましても基本的には教育秩序を確立していくことだと。これには学校の先生あるいは児童、生徒、学生ばかりじゃなしに、社会の皆さん方が大きな関心を寄せていただきますことが、いまの日本にとってきわめて大切なことではなかろうかと、かように考えているわけでございます。国民総がかりで日本の教育の立て直しにいまこそ努力をしていかなければならないときだと、かように存じているところでございます。
  233. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 最後に、これで終わりますが、昭和四十三年から四十四年に起こりました大学紛争に対処するために、大学の運営に関する臨時措置法が制定されまして、それ以後、大学側の努力もあり、大学紛争は急速に鎮静いたしました。この臨時措置法の大学紛争に対する抑止力は高く評価すべきであり、国民もまたそのように考えているものと思います。現下の学園の状況は五年前とはかなり変わっておりまするけれども、なお紛争は安心できる状態にはございません。臨時措置法は、その廃止時期を来たる八月に控えておりまするが、どのように対処する所存でありまするか、お伺いいたします。
  234. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) お話しのように、大学運営臨時措置法は五年以内に廃止すると書かれておりまして、その五年が八月十六日でございます。同時にまた、あの法律が大学紛争に対しまして相当な抑止力を持ったと考えるわけでございます。それは、紛争が続きますと、やがては学校のそれぞれの機関が休止する、休止すれば先生方が休職になる、学生はその間は在学期間に算入されない、というようなところにあったのではなかろうかと思います。四十三年、四十四年のような大規模な紛争は今日かなり少なくなっているわけでございますけれども、ある意味においては内攻している。また、むしろ悪い面が出ているという心配さえ持っているわけでございます。そのことは、内ゲバで殺人事件まで起こっていることが端的に証明していると思います。また、東京大学におきましても、地震研究所、応用微生物研究所、精神科病棟といったところが、三年有余にわたりましてなお秩序を回復し得ないで今日あるわけでございます。また、神奈川のある大学におきましては、学生が授業を放棄した。そこで教授がロックアウトをやろうじゃないかと言うた。その先生方の授業になりますと、学生が妨害をするわけであります。その先生方に授業を持たすべきでないという決議を教授会がしているわけでございます。私はこれは学問、研究の自由を放棄した姿ではないかと思うのでございまして、大学の自治というものは学問の自由を保障するためにあるのでございまして、大学の自治が目的じゃございませんで、学問の自由、これを保障することによって未来を切り開いていきたい。にもかかわらず、その学問の自由が、いま申し上げますように、教授会自身によって破られている大学さえあるわけでございます。  こういうことでございますので、多くの方から伺ってみますと、やっぱり廃止のしっぱなしにはできませんよと、こうおっしゃるわけでございます。しかし、なお時期もあることでございますので、現行法の継続だけでいけるものやら、あるいは廃止するかわりに、新しいいまの事態に合った適当な立法をするほうがよいのやら、慎重に考えさしていただきたいと、かように思っているところでございます。
  235. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 終わります。(拍手)
  236. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして、林田君の質疑は終了いたしました。  鈴木君の質疑は明日行なうことといたします。  なお、質疑順位につきまして、日本共産党及び第二院クラブから御意見の申し出がございますので、この取り扱いにつきまして理事会で協議いたすことにいたしたいと存じます。  暫時休憩いたします。    午後五時五十九分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕      —————・—————