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1973-12-13 第72回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十三日(木曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  十二月十三日     辞任         補欠選任      梶木 又三君     斎藤 十郎君      柏原 ヤス君     宮崎 正義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鹿島 俊雄君     理 事                 片山 正英君                 嶋崎  均君                 西村 尚治君                 細川 護熙君                 吉武 恵市君                 瀬谷 英行君                 横川 正市君                 矢追 秀彦君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 大竹平八郎君                 木村 睦男君                 熊谷太三郎君                 黒住 忠行君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 斎藤 十朗君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 高橋 邦雄君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 林田悠紀夫君                 原 文兵衛君                 米田 正文君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 小林  武君                 小柳  勇君                 杉原 一雄君                 鈴木  強君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 鈴木 一弘君                 三木 忠雄君                 宮崎 正義君                 木島 則夫君                 須藤 五郎君                 野末 和彦君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        法 務 大 臣  中村 梅吉君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  奧野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        郵 政 大 臣  原田  憲君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   亀岡 高夫君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      町村 金五君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)        (環境庁長官事        務代理)     保利  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       森山 欽司君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        総理府人事局長  皆川 迪夫君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        防衛庁参事官   長坂  強君        防衛施設庁長官  田代 一正君        防衛施設庁総務        部長       安斉 正邦君        防衛施設庁施設        部長       平井 啓一君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁国民        生活局長     喜多村治雄君        経済企画庁物価        局長       小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        科学技術庁計画        局長       長澤 榮一君        科学技術庁原子        力局長      田宮 茂文君        環境庁企画調整        局長       城戸 謙次君        環境庁大気保全        局長       春日  斉君        法務省刑事局長  安原 美穂君        外務省中近東ア        フリカ局長    田中 秀穂君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君        大蔵省主計局長  橋口  收君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局長  竹内 道雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        文部省初等中等          教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省管理局長  安嶋  彌君        厚生省公衆衛生        局長       加倉井駿一君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局長  高木  玄君        厚生省児童家庭        局長       翁 久次郎君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        農林大臣官房長  三善 信二君        農林省農林経済        局長       内村 良英君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省農蚕園芸        局長       岡安  誠君        農林省畜産局長 大河原太一郎君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        食糧庁長官    中野 和仁君        水産庁長官    荒勝  巖君        通商産業政務次        官        楠  正俊君        通商産業審議官  森口 八郎君        通商産業省立地        公害局長     林 信太郎君        工業技術院長   松本 敬信君        資源エネルギー        庁次長      北村 昌敏君        資源エネルギー        庁公益事業部長  岸田 文武君        中小企業庁長官  外山  弘君        中小企業庁計画        部長       小山  実君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        運輸省自動車局        長        中村 大造君        郵政大臣官房電        気通信監理官   浅見 喜作君        同        牧野 康夫君        労働大臣官房長  北川 俊夫君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        建設省計画局長  大塩洋一郎君        建設省道路局長  菊池 三男君        自治省税務局長  首藤  堯君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)(内  閣提出、衆議院送付) ○昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十八年度一般会計補正予算  昭和四十八年度特別会計補正予算  昭和四十八年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑を行ないます。鈴木君。
  3. 鈴木強

    鈴木強君 通産大臣に最初にお尋ねいたします。  十一月の物価経済動向というのはあす発表される予定になっておりますけれども卸売り物価消費者物価の両方の上昇率は、前月比何%ぐらいの伸びになっておりますか。
  4. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 消費者物価よりも卸売り物価発表のほうが一両日早いのが慣例のようでございます。と申しますのは、卸売り物価は、集計する品目の数も消費者物価よりも少ないし、また、これは日本銀行で取りまとめておりますので、私も十一月の卸売り物価の対前期、対前年期の対比の状況がこの一両日のうちに出ることと期待をして、非常に気にしながら待っておると、こういう状況でございます。
  5. 鈴木強

    鈴木強君 まだきまってないですか。
  6. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) まだ出ておりません。日本銀行そのものでは、私が傍受するところによりますと、十月の対前年比よりも高い結果が出るだろうということが観測されているようでございますが、実際の数字は私もまだ見ておりません。
  7. 鈴木強

    鈴木強君 もう作業は済んで、大体あした発表することになっているんですね。国会発表できないんでしょうか。
  8. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 大体十四日ぐらいの発表だろうと思いますので、いずれ私どものほうにも、これはもう間もなくこういう状況だということが伝わるでしょうし、私のほうからも進んで取り寄せようと考えております。
  9. 鈴木強

    鈴木強君 けさの新聞を見ますと、大体前月比三%程度の卸売り物価上昇しているというように出ておりますが、この見当、間違いないでしょう。
  10. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) それはわかりませんが、私がさきに傍受するところによると、十月の対前年比よりも高いものでありそうだということは、いま鈴木さんが言われたような数字に近いものが出るのではないかということも、私は心配しながら想定もいたしております。
  11. 鈴木強

    鈴木強君 まあ、この数字はそれでは別として、卸売り物価がこのように三%をこすような異常な上昇をしている原因は何なんでございますか。
  12. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これは総理大臣も言われますように、卸売り物価上昇要因には、消費者物価の場合と違いまして、直接的にかなり輸入物資影響が多いこと、しばしば説明をされているとおりでございます。たとえば十月を例にとりましても、十月の卸売り物価の対前年比が二〇・三%というようなものが出ております場合に、その二〇・三%に引き上げ要因輸入物価そのものは、二五%よりも高いような数字になっております。単にその物価指数の比較においてのみならず、卸売り物価引き上げ要因に占める輸入品の割合というものは、これがまたかなり高くて、従来は二、三〇%という時代もございましたが、最近では四〇%以上、四九%ぐらいが輸入物資影響を受けて引き上げられているということがかなり大きな要因一つでございます。  もう一つは、言うまでもなく、やはり総需要抑制というものがまだ——これは遠慮のないことを申しますと、もっと引き締めてまいるべきではないか。したがって、これはまあ輸入要因そのものは直接消せませんけれども国内の手の届くものは、極力この際、総需要抑制政策を堅持するのみならず、さらに強化するということも必要でありまするし、また、私ども担当者といたしましては、抽象的な物価指数を論ずると同時に、あるいはそれよりも前に、個別物資対策として一つ一つ原因を探って押えてまいるとか、あるいは地域的の偏在状況というようなものを、輸送の円滑化あるいは出荷の要請等によりまして手をつけてまいるということもぜひやらなければならないと考えます。
  13. 鈴木強

    鈴木強君 日本経済がいま最悪事態を迎えている段階で、卸売り物価上昇率が、十分この国会数字を示し得ないというようなことについても私は非常に残念に思いますし、いま経企庁長官のお話を聞きまして、確かに輸入資材の値上がり、これもあるでしょうが、私は、ただ単にそれだけではないと思います。企業が、この行き先物不足ということが相当考えられますから、一生懸命で企業内の腕ききを総動員して資材買い急ぎをしているという、こういう現実も見のがせない大きな要因だと思うのですね。  総理大臣ね、あなたは、物価に対しては命がけで取っ組むというので、新陣容でスタートしているわけですね。もう少し現状の経済動向というものを、われわれに納得できるように説明していただけませんか、最高責任者として。
  14. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) きのうから申し述べておりますように、消費者物価というものはいままでは十年間非常に低かったわけであります。一・三%平均ということが十年間でありますから、主要工業国の半分にもならなかったわけでございますが、その後、去年の下半期、十月ごろから急激に上がってきたということであります。この中で最も大きなものは原材料輸入価格が上がっておるということで、輸入価格がその大宗をなしておるということだけは間違いありません。羊毛などは三倍になっておるというような面もあるわけでございまして、ただしかし、それによって卸売り価格が三倍にはなっておりません。なっておりませんが、そういう面で海外物価高ということで、原材料のほとんどを輸入しておるという日本において、その外圧が非常に大きいということだけは、これはもう現実なんです。ですから、それが一つ——一つというよりも、それが一番大きいんです。それで、賃金とか、そういう問題が普通は卸売り物価を押し上げる要因になっているのですが、日本は、相当賃金は上げておりますけれども賃金卸売り物価に対する寄与率というのはそんなに大きくないのです。ですから、ほとんどが輸入物価の押し上げであるということでございます。あとは、率から申し上げても、財政とか、それから金融、それから国民消費がふえておるというような面がございますが、やっぱり卸売り物価の押し上げられの大きな原因、大きな面を占めるものは輸入物価であり、ただ一面いまいわれておりますのは、輸入インフレということをいわれているのはそれなんです。ですから、世界の先進工業国がずうっとそういう状態になっておるものと同じような面が相当出てきておるということでございます。率を述べろといえば、資料によって述べます。
  15. 鈴木強

    鈴木強君 きのうまでの政府側の御答弁で、それはわかっておるんですけれども、私がいまここで特に取り上げましたのは、いまこの瞬間もインフレはどんどんと進行して悪い方向へ向かっているのでございますね。特に卸売り物価が三%以上になったということは、これは非常に重大だと思う。だから、そのことに対していま何かさらに具体的な手だてをしなければならないような事態まで来ているわけですから、急激に三%もこの十一月に伸びたという、その理由が、やはり資材不足物不足という先行きを見越して企業がどんどんと買い占めしているのですよ。持っている人たちは高い値段で売るというような、そういう悪い取引が行なわれているのじゃないかということを私は心配するものですから、そこのところを伺ったのです。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) だから、緊急二法を早く通していただきたいと、こう言うのです。緊急二法を通していただければ、きのうも通産省が述べましたとおり、石油は日本ほど正確な輸入統計を持っておるものはないのです。日報をちゃんと持っているのですから、輸入先がどこで、幾らで仕入れられて、幾らで荷揚げをして、どこの倉庫へ入ったという日報をみんな持っているのです。それが今度、いままで入ったものと、電力が削減されれば製造工程がどれだけでもって生産が動いておる、流通経路はどこですということを日本ほどよく持っているところはないんです。ですから、外国は、日本行政指導というのは官僚統制だと言って非常におこっているわけです。ですから、自由化自由化と言いながら、こんな正確な数字を持っているのは政府が統制しておる証拠だと、こう言われておるわけで、非関税障壁の中で最大のものは何か、行政指導だという、非常に国際語になっているわけです。そのくらいによく知っているんですが、これを調整するだけの権能がないのです。いまは行政的に慫慂をし要請をしやっているわけですが、今度法的裏づけを持てば、これは非常に、相当の流れを公表することもできますし、それでもってまだ売り惜しみをすれば、売り惜しみ買いだめ法律がありますし、うんともうければ課徴金も取りますしと、こういうことでありますから、そこはひとつ、あの法律がいっときも早く必要なんです。ですから、夜もやっていただいておるわけです。  ここで念のために申し上げますと、卸売り物価変動要因に関する試算表というのがございますが、輸入物価は四九%、需給ギャップが一四、通貨供給上の残高が一二、その他が二六、その他というのは、いわゆる情報が不足だとか偏在するとか、いろんなことで買い急ぎをするとかということでございます。この中にはいろいろなものがあります。毛糸が上がっている、羊毛が上がっているというときに、小間物の中でハンドバッグやセーターや、そういうものが一番売れると。まあそうでしょう、寒さに向かってですから。押し入れの中からセーターを引っ張り出すよりも、デパートに行ったほうが早いと、これはどうしても必要だと、こういうことは数字に非常に明らかに出ているんです。ですから、そういう問題、在庫はございますと。洋服などは八百五十万着に対して千百万着から千二百万着あるんですが、何で一というのは、それは政府がそのあることをちゃんと国民に告示しないからだと、こういうことで、今度はテレビで告示しようということをやっているわけです。だから、そういうことをこれからやりますので、異常な状態は避けられる、また避けなければならぬ、こう思っているんです。
  17. 鈴木強

    鈴木強君 緊急二法のことは、これは全く同感ですから、これは野党も一生懸命協力をしております。  それで、それだけでなくて、総理、やっぱりいまの悪性——最悪経済事態というものを何とか乗り切っていかなきゃならぬわけでしょう。その場合に、やっぱり財政金融面からのもう一段のてこ入れも必要でしょう。ですから私は、そういうことを含めて、最悪事態を迎えたいまの時点で政府はどうなさるんですかということを聞くわけですが、ちょっと時間がないものですから、質問のしかたも簡単にやるから、かみ合わないんでしょうが、そこですよ。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、海外物価高要因がありますし、結局は国内においていろいろ買いだめをするような資金もあるじゃないかとか——それは一般大衆ではなく企業間でですね、それは確かにあるんです。財政だけではなく、財政は二兆円も揚げておりますから、これは去年から言うとたいへんなんですが、きのう申し上げたように、日銀信用は四十八年度上期、二兆五千億円の財政の揚げに対して三兆五千億の信用供与になっている。これは数字に明らかなんです。昭和四十六年の一月から十二月までで十四兆九百十五億、四十七年の一月から十二月まで十八兆二千五百四十三億、四十八年一−九月にはこれだけ金融引き締めをやっておりながら、十四兆円をこすんです。ですから、対前年度比二六%、二七・七%というような高い日銀券の発行があるわけですから、こういうものは引き締めざるを得ません。これを引き締めておけば、これはもう当然そういう悪循環は起こらないわけであります。しかし、必要なところ、生活必需物資を製造するために適当な在庫を持つために、安全率を確保するためにというような在庫資金は見なければいかぬから、選別融資はやらざるを得ません、こう言っているわけです。それが、ずっとやってきて、それでもなおということになると、それは今度、国民全体の百十五兆円のうち五十九兆七千億、六十兆円という国民消費支出が問題になるわけですが、そんな国民消費支出を言う前に、こういうところをまず締めなければいかぬということはほんとうなんです。ですから、財政を締めます、その次にはノーマルな状態まで金融を正常化していきます、そして、国民大衆自由意思によって政府の施策に協力することによって国民みずからの幸福や物価の安定ということを求められるという協力を得べきであって、まず前段において強い調整権を発動していこう、こういう考えです。
  19. 鈴木強

    鈴木強君 大蔵大臣にお尋ねしますが、日銀総裁記者会見で、やはり卸売り物価の三%というのはたいへんなことだと、したがって、もう一段のくふうをこらす必要があるということで、公定歩合引き上げなり、長期利債引き上げなり、こういうものをやるべきだという御方針のようですけれども大臣としてはどうでございますか。
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公定歩合につきましては、これは日本銀行の権限でありますから、私はそれに介入しませんが、引き締め基調はこれを堅持しておると、これはもうそうしなきゃならぬと、かように考えております。
  21. 鈴木強

    鈴木強君 金利についてはどうですか、金利引き上げについて。
  22. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一般金利につきましては、これはあれやこれやと考えておるんです。日本銀行がどういう態度をとりますか、公定歩合についてどういう見解を示しますか、それなんかもこれは考えなきゃならぬ材料であります。あれやこれや考えておるが、まだ結論は出ませんと、かように御了承願います。
  23. 鈴木強

    鈴木強君 やはり金融財政面からの引き締めをやるべきだという必要性は認めておるわけだと思いますね。したがって、日銀総裁がおっしゃるように、公定歩合をやはり具体的に一%なり二%なり上げる、それから金利についてもそれに見合うように上げていかなきゃならぬという、そうしないと、この事態を切り抜けられないのではないか、当面、という考え方は支持されているわけでしょう。同調されますか。
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、総需要抑制政策財政金融面ですね、これにつきましては、まあ金融はかなりやってきておると、それでその効果もかなり出てきておると、こういうふうに見ておるんです。しかし、石油というような新事態になっておると、ここでさらに総需要抑制対策を強化しなきゃならぬと、それにはもうやっぱり政府がほんとうにその引き締めの決意をしたと、こういう固い態度を示すべきであると、そこで財政のほうにこれはもう思い切ってきびしい姿勢を打ち出さなきゃならぬと、こういうふうに考えておるんです。それに金融政策というものがまあとにかく補完的に動くと、こういうことが基本的な財政金融政策のかまえであろうと、こういう考え方をしておるんです。  そういうさなかに、公定歩合論争みたいなものがいま出てきておるわけなんですが、それに関連して、金利をどういうふうにするか。これも公定歩合の問題がどういうふうになっているか、その帰趨を見てどういうふうにするか、これをきめていきたいと、こういう考えです。  とにかく、金融政策につきましては引き締め基調を堅持すると、この考え方は、どこまでも物価の安定するまではひとつ貫き通さなきゃならぬと、かように考えております。
  25. 鈴木強

    鈴木強君 それから財政の面で、公共事業費の繰り延べ、これは大蔵大臣は七%とおっしゃる。総理は八%とおっしゃって、一%の食い違いがあるんですが、私が聞いておる範囲では。これはどうなんですか。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は新米で、うろ覚えでありまして恐縮でしたが、これは八%のほうが正確でございます。
  27. 鈴木強

    鈴木強君 で、総理物価抑制という意味において、いまさっき私が申し上げたように、卸売り物価引き上げている要因の中に、非常に企業が先行きを見越してものすごい資材の買い占めをしているんですよ、買い急ぎを。そういうものに対して、政府がぴしっとした姿勢を示すのには、やっぱり財政金融面から少し締めてきびしくいくということが私は必要だと思うんですね。ですから、日銀総裁は、そういうところに考え方を置いて、きのうの記者会見をやっておられると思うんですよ。その点、総理としてはどうですかね。やっぱりやるべきじゃないか、そういうことをもっと積極的にこの際やるべきじゃないか、そういう財政金融面の……。同感ですか。これは福田さんにまかしてあるから、福田さんのとおりですか。
  28. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、これは八%の繰り延べをやっておりますから、財政というものは、去年の六千五百億の補正予算があったでしょう。あの補正予算は、とにかく全部凍結、繰り延べになっているわけです。ですから、これは非常にまああれですから……。
  29. 鈴木強

    鈴木強君 金融面。
  30. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金融面は、これはもうさっき申し上げたように、四十六年の一−十二月でもって十四兆円にしか貸し増ししなかったものを、四十七年は十八兆円というんでしょう。四兆円もよけい貸しているわけですよ。ことしは経済成長を六%しかやらないということになりますと、六%しか経済成長が実質拡大しないのに、金融は十八兆円マイナス十四兆円ですから、四兆円もよけい出ているというんですから、これは金融はまだ完全に引き締まっておらぬと、これはまあ徐々に影響が出ておることは事実です。これは物価指数や土地でもみんな下がっておりますからね。ですから、これは出ておりますが、これはまだまだやっぱり正常な状態——少なくとも日銀券が二〇%以下にならないで、物価問題というものが安定から下降の線をたどるというのはなかなかむずかしいと思うのですよ。ですから、先月は二六・七でありますから、今月はきっと二五・幾らになるか、年末金融がありますから二六になるのかわかりませんが、二七に戻ることはないと思うんです。私がわかりやすく申し上、げたのは、これからとにかく六カ月というと、一%ずつ下がっていかなければ、六カ月問では二〇%にはならぬわけです。ですから、一〇・四%伸びた二十九年から三十九年でも、日銀券の発行状態は年率一四%から一五%であります。三十五から四十五年の十年間でも、一一・一%平均伸びても、日銀券の発行高の最高は一六%をこさなかったわけですから、一〇%余もこしているということは、これは異常であるということだけは認めざるを得ない。だから、公定歩合引き上げとか、預金準備率の引き上げとか、いろんなことをやってきたんですが、日銀の金融調節のおもな対象である都市銀行のシェアは全金融の三〇%を出てないが、こういうところはびっしり締まっているんです。これはもう都市銀行なんて、ひいっというくらい締まっておると、こう言っているんですが、よく調べてみたら、中小金融機関、雑金融機関でもって、中小企業向けにちょうど去年よりも一兆円よけい出しておるという問題もございます。もう一つ、それだけでなく、農協の千億が六千億、七千億になっておるというところでもって、そこらが抜け道だったということですから、今度、国債を出すには、農協的な系統金融の員外貸し付け部分は国債を引き受けてもらうというようなことでもしていけば、金融は合理的に締まってくるということになるわけです。中小企業は締めるわけにいきませんから、だから、そういうことはちゃんと区別をして金融政策をいまやっておるということであります。
  31. 鈴木強

    鈴木強君 金融の面でやっぱり引き締めをすることはわれわれも同感なんですが、ただ、中小企業なんかの場合は、窓口規制もそうですけれども引き締めによってかなり痛手をこうむっております。十月ないし十一月でも、七、八百件の倒産も出ておるわけですね。ですから、この面に対して、年末中小企業対策というのは、これは完ぺきでございますか、具体的な対策を承りたい。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 中小企業に対する金融、特に年末につきましては、完ぺきの体制をとっております。政府機関でも、市中銀行でも、相協力いたしまして、このしわ寄せを受けないように全力をいま尽くしておりますから、御安心願います。
  33. 鈴木強

    鈴木強君 融資の面では具体的にどうなっていますか、各公庫への融資の額というのは。中小企業金融公庫とか商工中金とか。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは年度の途中でも増ワクをしましたが、年末特に三千四、五百億の増ワクをいたしております。かなり潤沢に回るんじゃないか、さように考えております。
  35. 鈴木強

    鈴木強君 それで、大蔵大臣ね、中小企業の皆さん、たいへん金融の面では苦労されているんですね。それで、実は千葉県とかあるいは山梨県に、まだ中小企業金融公庫の支店がないんですがね。これを何とか置いてくれないかという強い希望が地元にあるんですけどね、これはどうでございますか、置いてもらえますか。
  36. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さような話のあることは承知しております。中小企業公庫でありましょうと思いますが、これは関東では山梨、千葉両県からそういう要望がありまして、ただいま、どうするか検討中でありますが、すみやかに結論を出したいと、かように考えております。
  37. 鈴木強

    鈴木強君 山梨県の地方の新聞を見ましたらね、自民党の某代議士があなたのところへ行ったら、何か新宿支店の営業所にして山梨県に置くということをあなたがおっしゃったという記事を見ましたけれどね、そこで言えてここで言えないですか。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは何かの間違いじゃないかと思います。自民党の代議士が参りまして、支店の設置を要望しておるんです。で、これは十分検討いたしましょうと、そういうお答えをいたしてあります。
  39. 鈴木強

    鈴木強君 営業所じゃないですか。
  40. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 営業所というか、支店でございます。支所と言いますが、普通に、俗に言いますれば支店を設けよと、こういう要請でございます。
  41. 鈴木強

    鈴木強君 千葉と山梨だけじゃないですからね。それは置くようにしてくださいよ、これ。そうしないと、手続的にも非常に不便です、その二つの県の人たちは。
  42. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは全国からそういう要請があるんですが、特に千葉、山梨、関東ではその二つが要請がある。そこで、これに対しましては、東京に近いという関係でおくれたわけなんですが、そういういろいろ環境も変わっておりますので、検討いたしまして——これは全国ですからね。これは山梨だけあるいは千葉だけというわけにいかない。そこで、全国を見まして、すみやかに結論を出したいと、こういう考えでございます。
  43. 鈴木強

    鈴木強君 ところで、来年度予算の編成は年内におやりになるようですが、経済見通しの点はどういうふうになるんですか。これは経企庁から。
  44. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 四十八年度が現在まだ十二月の初めでございまして、来年の三月まで、石油事情等いろいろ流動的な面がございますので、私どもは、先般、四十八年度の経済見通しにつきまして、現状に即した改定試算を発表いたしましたことは御承知のとおり。その場合の四十八年度の経済の三月までの推定を含んだ伸び率というものは、当初の、ことしの初め見込んだ一〇・七%というものよりもかなり落ちるだろう、落ちるにきまっていると私は思います。六・四というものを実は出しておるわけであります、四十八年度の改定見通しとして。したがって、私は来年いろいろ石油事情は戻るかもしれない要素もなきにしもあらずでございますが、六・四よりも甘い見通しはすべきではないと、こういうことで、六・四の範囲内においてその最も合理的な数字を固めたいと思いまして、いろいろの諸要素をいま集めて、せっかく検討中でございます。
  45. 鈴木強

    鈴木強君 来年度予算の編成には、まず、経済見通しが立たぬことにはできないわけでしょう。ですから、その辺は、めどはいつに置いているのですか。
  46. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 予算編成方針を固めるのよりも、おそからず早からず、実は昨晩も一緒に大蔵大臣等とそのお打ち合わせをせっかくいたしておる最中でございます。
  47. 鈴木強

    鈴木強君 何といっても、石油危機がどういうふうに克服されているのか、その見通しが立たぬことには、たいへん経済見通しも立ちにくいのだと思いますね。ことしは非常にむずかしい情勢にあると私も思うのです。そこで、石油の来年度アラブ産油国からの生産制限とか、あるいは日本に対する輸入量ですね、こういったものはどの程度になるのか、こういう見通しは立ててあるのですか。
  48. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 紛争関係産油国の生産制限は、御案内のように、二割五分といわれておりまして、この一月からさらに友好国を除いた他の国に対しまして五%の制限を追加するということが発表されておることと、この石油戦術は、紛争の解決の関連において、それが解決されるまで堅持するという意味のことがいわれておるにすぎないわけでございまして、これからの事態の推移にかかるわけでございます。したがって、いまの段階におきまして、どういう状態になりますか、さだかに予測することは至難のわざであると思います。それに加えて、石油の流通秩序が御案内のように世界的に混乱を示しておるわけでございまして、供給制限の側面だけから、石油の供給、最終需要国がどれだけの輸入を確保し得るかと、どの時期にどれだけの油を確保できるかという点を算出すること自体もたいへん困難な状況であることは、いま鈴木さんも御案内のとおりと思うのでございます。したがいまして、いまそういうことについて確たる展望を話しせよと言われましても、たいへん至難なことであると申し上げる以外に申し上げようがないことをお許しをいただきたいと思います。
  49. 鈴木強

    鈴木強君 いま三木特使がせっかくたいへんな御苦労をされておるわけですが、わが国の中東に対する基本政策というものがきちっときまりませんと、なかなかアラブ側だって日本のほうに目を向けてくれないと思うのですね。三木さんが行かれて、どういうふうな方針で中東政策に向かっていくのか、そういう基本政策をひとつ示してもらいたいのですが。
  50. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 中東に対する基本政策は、他の友好の国々に対する態度と同様に、変わらない友好関係を築いていかなければならぬわけでございまして、油の供給を仰がなければならないから外交の基本を変えるべきであるというようには考えていないわけでございます。したがって、先般政府発表いたしました中東政策も、一応油と関係なく、中東紛争の解決はこういう原則を踏まえたものでなければならないということを申し上げておるわけでございまして、この態度は今後も変わらないわけでございます。三木特使といたしましては、それを踏まえた上で、わが国の中東政策をアラブ関係国にできるだけ御理解をいただくように御検討をいただいておるわけでございます。ただいまアブダビからサウジにおられるわけでございますが、この両国とも、わが国の中東政策に対しては理解を示されておりまするし、わが国との友好親善関係は、強めこそすれ、これを末長く維持してまいりたいという意向を示されております。とりわけ、サウジアラビア・ファイサル国王におかれては、日本の友人に対しましてできるだけ自分としても努力をいたしたいと、そのことが近いうちに実を結ぶことを期待するという趣旨のことを述べられたということで、昨夜三木特使から電話をちょうだいいたしたわけでございまして、私どもの中東政策は、そういう意味におきまして漸次アラブ関係国からも理解をいただいておると考えております。
  51. 鈴木強

    鈴木強君 これは石油問題とは全く切り離してとおっしゃるけれども、私はそうでないと思いますね。やはり石油問題がああいうふうになりましたので、これは三木さんがお出かけになったのじゃないでしょうかね。ですから、その見通しというものが一体どうなるかということを見きわめるためには、基本的に日本の外交のあり方というものをやはり改めるところは改めていく必要があるのじゃないですか。
  52. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) きちっとした中東政策をもって臨むということが信頼の基礎であると思うのでありまして、そういう信頼の上に立ちましてわが国のなすべきことをやってまいるということにおいて、その結果として石油供給問題につきましても好転が期待できると思うのでありまして、筋道はあくまでも基本が確立していなければならないと考えております。
  53. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連。  いま鈴木委員は、石油の供給問題と明年度経済の見通しについて触れられておったわけですが、その明年度経済の、四十九年度経済の見通しを立てる場合に、石油問題を全然別にして一応の想定を立てて、石油問題の帰趨によってはこうなるという見通しの立て方をするのか、あるいは何%削減——あるいは二つなり三つなりのパーセンテージを想定して、それに応じて明年度経済の見通しを立てるのか、それとも全然そういうパーセンテージには触れずに一応の見通しを立てておいて、石油問題の帰趨によってはこういう影響も起こるであろうという想定のしかたをするのか、その辺は、どういう四十九年度経済の見通しを立てようとなさるのか、お知らせをいただきたい。
  54. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 何と申しましても、経済見通しというものは、生産の見通しと物価の見通しが基礎になることは申すまでもありません。生産の見通しは、エネルギーの大宗を占める石油の供給状況いかんに大いに関連がございますので、私どもが明年度の経済見通しをつけるにいたしましても、いまお尋ねがございました、石油のわが国への供給の状況判断というものをもちろんこの基礎にいたしております。  しかし、これも御承知のように、いま直接の問題になっておりますのは、アラブ諸国からの石油の供給削減というものが直接表面に出ておるわけでありますが、これはわが国に対する石油供給の四〇%程度でございまして、そのほかの地球上の諸地域からの供給もございまして、これらにもいろいろの変動要因もございますので、どうしてもある程度の幅を見て、来年度の石油の供給が本年度の実績見込みに対してどうなるか、昨年度の実績に対してどうなるかというようなことに対しながら、幅を見ながら幾つかの試算をいたしておるわけでございます。
  55. 鈴木強

    鈴木強君 外務大臣、三木さんの行かれるときに、田中さんの親書を持たれて行っているようですね。それから、具体的に技術援助その他について、何か案を持って行っていらっしゃるのですか。
  56. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいままで、民間ベース、あるいは政府ベースで、アラブ関係国との間で話がありましたプロジェクトを一応洗い出しまして、そのうちで、われわれが積極的に検討して、フィージビリティーが確保されるならばそれに取り組んでしかるべしと考えられるようなプロジェクトにつきましては、先方の意向も十分聴取した上で、具体的な話し合いを特使との間でやっていただいてよろしいのではないかと判断いたしまして、政府部内で御相談をしてお出かけをいただいておるわけでございまして、お帰りいただきましたならば、そういった御報告を吟味いたしまして、できるだけの積極的な協力は惜しまないつもりでおります。
  57. 鈴木強

    鈴木強君 いま考えられる技術援助、経済援助というものはどういうものがあげられますか。
  58. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国によりましていろいろでございまするけれども、石油のリファイナリーの施設をつくるとか、あるいは製鉄工場をつくるとか、その他地域開発のプロジェクトも若干ございますが、いずれにいたしましても、私どもの態度といたしましては、あらかじめ政府の腹がきまらない前にプロジェクトを内外に提示するというようなことは、それが実現できない場合は信用をそこなうおそれがありますので、固まるまでは、国別、プロジェクト別の具体的な件名につきましては公表しないことが賢明ではなかろうかと考えておりますので、その点は政府を信頼しておまかせをいただきたいと思います。
  59. 鈴木強

    鈴木強君 いずれにいたしましても、石油危機の見通しがはっきり立ちませんと、来年度のわが国経済というものがどうなるのか、非常に問題のあるところですから、政府としてはその点をできるだけすみやかに解決をしていくような努力を外交的にもしていただく。  それから来年度予算については、福祉元年といわれたことしの予算がどうもそうでもないようですから、もうひとつ決意を新たにしてやってほしいと思うのです、福祉問題についても。  それから、何といっても当面は物価抑制ですね、物価安定。ここにすべてを置いてやってもらいたいと思うのですが、減税なんかは、田中総理の二兆円というのは、何か一兆一千億か一兆六千億ぐらいにだいぶダウンしてしまって……。これは総理、どうなんですか。そこらはあなたが内外に公表したことですから、減税二兆円というのは、これはやるべきですよ。福田さんは少し渋いようですけれども、その辺どうですかね。そしてしっかりした予算をつくってもらいたい。
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御説のとおり、来年度予算は福祉、これには重点を置きます。ただし、総需要抑制という大方針がありますので、そっちのほうはかなり切り詰めてまいりますから、これは御了承願いたいんです。  それから減税計画につきましては、あの二兆円が発表されましてからこの石油問題が起こってきた。二兆円減税の背景である自然増収が相当狂ってきておるんです。そういうような関係もありまして再検討しておりますが、私も勉強してみますと、なかなか二兆円減税という構想はバランスのとれた姿のいい減税案だ、できるだけこれを実現をしたいと、いまやりくりをくふうをしておる最中であると、かように御了承願います。
  61. 鈴木強

    鈴木強君 それから当面予想されるものが物価の問題で、国鉄運賃、消費者米価、麦価等はもうすでにきまっておるわけですが、さらに郵便料金、それからハイヤー、タクシー、都市ガス、家庭用の牛乳、こういったものが軒並みに上がっていくわけですけれど、たとえば教科書なんかも一一%から一二%くらいの値上がりが予想されておりますが、これに対して公共料金がストップしていくというそういう基本線に立って、まあ価格の問題はなかなか政府もむずかしい点もありますけども、少なくも公共料金は凍結していくという、こういう思想でやっていただけますか。
  62. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公共料金は、公共サービスという面もございますから、公共料金をすべてストップをして財政でめんどうを見るというわけにはいかないものでございます。ございますが、しかし、ここでもってとにかく思い切った物価政策をとる、そのためには総需要抑制もあえてこれを強行すると、こういう姿勢になっておるわけでありますから、そういう意味で経済企画庁、大蔵省を中心にしまして、公共料金というものに対しても極力抑制するという基本方針だけではなく、具体的に一体こういう出ておるものはどうするんだと、押えるだけではどうにもなりません。押える場合には何カ月間も押えると、押えるかわりに企業も努力をしてもらいたい、労働組合のひとつ協力も得たい、そのかわり政府も金は出します、こういうことでなければ、これは社会的要請にこたえられないわけです、ますます社会が混乱するわけですから。そういう意味で、米価にしろ鉄道運賃にしろ何にしろそうなんです。押えれば何か公共負担でやってやらなければいかぬわけです。しかし、そういう負担があっても、ひとつこれだけ物価が大きく問題になっておるときに、物価ということを最優先に考えるという立場で公共料金に対しても一つずつ洗い直して、可能なものなら、それは一カ月でも三カ月でも、とにかく半年でも一年でも延ばせるものは延ばすと。そして、そうすることによって財政がどのぐらいめんどうが見れるのかという問題に対しても、いま政府部内で一つずつ真剣に検討してもらっております。
  63. 鈴木強

    鈴木強君 郵便料金の値上げについては、これは大きいんですけれど、どういう考え方ですか。郵政大臣いますか。
  64. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) お尋ねの郵便料金の問題は、鈴木さんよく御存じであると思いますけれども、今年度の予算をきめましたときにすでに百三十三億の赤字予算を組んでおるという状況で、何しろ郵便は十円のものを一軒一軒人が持って回る、あるいは二十円のものを一軒一軒持って回るという事業でございますから、ほとんどが人件費、したがって、いまのままでいきますと、四十九年度で約九百億の赤字が出るというようなことがいわれておりまして、これらのことにつきまして、目下審議会でどうしたらよいかという諮問をいたしておって、やがて審議会の答申もいただけると思いますが、ただいま総理大臣も発言がございましたように、これを受けて、どうして皆さんにサービスをうまくやっていけるかということを根本に考えて対処してまいりたいと存じております。
  65. 横川正市

    ○横川正市君 ちょっといまの関連して。  私は、いまの逓信委員会にかかっております短期金利引き上げの問題と関連して、総理と郵政大臣に意見を聞きたいのでありますけれども、蓄積をするということは、いまの物価その他から考えてみて、やはり貯蓄をしたほうが得だという、そういう民心を呼び起こすいわば潤滑油みたいなものだと思うんですよ。そういうものがなくして実際上貯蓄心を高めることはできない。いまの貯蓄心というのは、将来について非常に不安定だから貯蓄をしようというので、これはもう貯蓄をする本末が転倒しておると私は思うんで、その貯蓄する目的は、たとえば土地とか家とかというものが確保できるという、そういう将来に対して希望が持てるから貯蓄をするということにならなければいけないと思うんですね。そういう希望を持たせるとすれば、たとえばこの金利については、少なくとも郵便貯金なんかの金利は他の市中銀行あるいは民間のそういうものとは全く別個に、長期に、しかも安定して民心に対して貯蓄をさせしめるようなものを、これを種類として設定すべきだと私はそう思うんですけれども、このことについてのひとつ答弁をいただきたいと思います。
  66. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御趣旨はまことにそのとおりだと思います。それで郵便貯金につきましては定額貯蓄という制度がありまして、これは十年間ですね。それで年がたつとともに有利な利回りがつくと、こういう計算になるわけです。それですから、これはたいへん歓迎されまして、定額貯蓄額はずいぶん伸びる。まあしかし、この預金全体として見るときには、これはどうしても物価を安定させなければいかぬ。これ以外にどうもきめ手はないんです。消費者物価が一四%上がるから一四%の金利をつける、こういうようなことにいたしましたら、さらにそれが循環いたしまして、また物価高を刺激すると、こういうことになるのでありまして、ですから私は、もう何とかして一刻も早く物価の安定の状態をつくり出さなきゃいかぬと、これこそがいま貯蓄しておられる方に対するお報いであると、こういうふうに考えるんです。しかし、現実はなかなかそうまいりません。  そこで、現実とそういう基本的な物価安定策とのつなぎをどうするか、これが問題になるわけなんです。そこで、年末には特別の貯蓄方法を考えて金利の優遇をするとか、あるいはまた何かこう、せめてもこの物価態勢の過渡期におきましてお報いすることはできないかと思いまして、あれやこれやといま考えておる。まあ考えがつきましたら、これはもうほんとうに機を逸せずすみやかにこれを実行してみたい、こういう考えでごごいます。
  67. 横川正市

    ○横川正市君 ちょっともう一問。  大蔵大臣、いまたとえば家や土地を購入するのにローンが使われていますね。インフレの中ではローンというのはいわば借りて長期に払う側の者は得をするわけです。それを逆にしなければ、ほんとうの意味の貯蓄というのは私は増強されないだろうと思うんです。貯蓄していて得をする、いわゆる土地とか家とか手に入るというふうに逆にしていかないと、借金をして土地を、家を買うということでなしに、まあその度合いは別問題として、方向づけていくことが必要なんだと私は思うんですよ。それがないから、いま相当消費支出その他に非常なむだというのが私どもとしては看取できるような使われ方をする、こう考えていいのじゃないかと思います。
  68. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま非常な変則状態なんです。これはまあとにかく油の問題という、いまだわが日本が経験したことのない大事件が起こっているわけです。それで金利体系だ物価だ、たいへん混乱をいたしまして、いま皆さんに御迷惑をかけていると、これが現状なんです。しかし、いまお話のありまする先々に楽しみを持ちながら今日働いて、働いたその成果を積み立てて将来のために準備をすると、こういうのはどうしたって物価を安定させなければ実現できないのです。ですから、とにかく万難を排してもう短期に物価の安定をひとつ実現すると、こういうかまえで取り組む。ただしかし、現実の問題とすると、当面消費者物価が非常に上がっておる、これはもう現実です。これは長く続かせたくない。もう早期にこれを遮断しなければならぬと思っておりまするけれども、このただいまの現実に対しましてどういうふうに処置するか、これは過渡的ないろいろな考え方をとっていかなければならぬ。そういう方法としていろいろ金利の問題、これがあるわけですから、これはひとつ衆知を集めてやらなければならぬ。私もいろいろ考えておりまするが、考えがまとまりましたならば、これは着実に、また急速に実行してみたいと、こういうふうにいま考えるわけであります。
  69. 鈴木強

    鈴木強君 運輸大臣、さっきのハイヤー、タクシーの問題がまだ続いている。
  70. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) ハイヤー、タクシーの問題につきましては、これは六大都市からもその他からも値上げの申請が出ております。で、その値上げの申請と同時に、いまの油のいろいろな事情等もございまして、自主料金をやるぞとか、あるいは暫定的な料金の申請も実は出たわけでございますが、私どもとしましては、何と申しましても油の確保というのが、これはもうLPガスの確保というのが絶対条件だというわけで、先月の末以来通産省といろんな角度からお話し合いを進めてまいりました。その結果、今月の八日になりましてようやく、まず業者の皆さん方に安心感を与える、営業がやれるという安心感を与えるのが第一でございますから、こまかい詰めばともかくも、これほどな油は絶対確保するという数字を早く出すべきだというので、私は陣頭に立って夜を徹してでもやるというので実は張り切っていましたけれども、なかなか問題が明快に解明できませんでしたけれども、今月の八日に十一万五千トンはハイヤー、タクシーのために出すということが通産省のほうとの間に、両政務次官の間に覚え書きも交換するところまでまいりまして、石油連盟もそれを了承したわけでございます。  今度は配分でございます。この配分が自主的な配分でございますから、いろいろな皆さんに言い分があるようでございます。実は昨日までにそれをきちっと整理しろということで厳命しておきましたけれども、個人タクシーの皆さん方からも、もうちょっと待ってくれと、自分たちにももう少し整理するものがあるから、きょう午前中待ってくれということでございますから、きょう午前中にはその返答が来るだろうと思います。これは私のほうが中心になりまして業者間との配分、公平な配分の計画が出てくると思います。  今度は料金の問題でございますが、したがいまして自主料金というのは、そういうふうに油も確保してくれたということで自主料金は撤回するということでございます。暫定料金というのがまだ一つ残っておりますけれども、これは制度的にもいろいろ問題があるようでございますし、十分慎重に検討してまいりたいと思います。その他の正規に申請された料金につきましても、いまここでどうこう申し上げる段階にはございませんが、慎重に検討をしてまいりたいと思います。
  71. 鈴木強

    鈴木強君 牛乳の値上げは、農林大臣どうですか。牛乳値上げ、十六日から上げる……。
  72. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これも輸送運賃の関係とかいろいろなことで、これ、農林物資全般についてそういう傾向がございますので、先般来わがほうでそういうことのないように慎重にやるように指導をいたしておるわけであります。御承知のように、これはメーカーのほうのものと市乳と二つございますので、両方について話をさしておるわけでありますが、まだきまっておりません。
  73. 鈴木強

    鈴木強君 これは聞くところによりますと、八円、七円、四円と、こう上げるんですけれども、これについてはもう少し下げる幅があるようですから、もう少し行政指導の面で強くやっていただけませんか。
  74. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、いままでは一年に一回やっておったものでありますが、ことしはもう二回こういう話が出ております。お説のように、私どもといたしましては、特に上げ幅について当事者間で話のできる状況にあると思いますので、なおそういう点を含んで指導してまいりたいと思っております。
  75. 鈴木強

    鈴木強君 それから労働大臣、山梨県とか全国的の農家でたとえばハウス野菜とか、山梨県なんかブドウ栽培なんかやっているんですけれども、そういう農家で営農用の灯油がなくて非常に困っているわけですね。ブロイラーなんかも、何か去年十二月に五十キロ二十二本もらったプロパンガスが、ことしは五十キロで十二本しかもらえないというので、非常にひよこが育たないというので困っているんです。こういう面に対して灯油をもう少し配給するような計画を通産省と相談してやってもらいたいと思いますが、いかがですか。
  76. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) きのうどなたかの御質疑にお答えいたしました次第でありますが、通産省とは十分に農業用について打ち合わせをいたしておりまして、十分に十二月分には手配をつけておるわけであります。ただ、私ども時局柄電力の消費、それから油の消費等についてはできるだけ合理的にやるように、節約を主としてやってもらうようにということの行政指導をただいま地方農政局を通じて熱心にやっておるところであります。
  77. 鈴木強

    鈴木強君 私は、非常にインフレによってたいへんな迷惑を受けている弱い層ですね、特に老人とか身障者とか生活保護とか、こういう方々に対する具体的な当面の救済的な意味を含めた施策というものをどういうふうに政府がやってくれるのか、これを非常に期待しているわけですね。養老院ではもう灯油がなくて暖房もとれないというのでたいへんな困った事態になっているんですけれども、これは厚生大臣どうでしょう、そういう点。
  78. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) このような物価が上がっておる状況の中にあって社会的に弱い方々、生活保護世帯、老人、身障、こういう方々の生活を守っていくということはほんとうにこれは大事なことで、実は私も頭を痛めておる問題でございます。幸いに生活保護基準につきましては昨年よりも一四%上げ、さらに緊急改定をしようということで十月から五%上げまして一九%と、こういうふうにいたしました。それから施設に入っておられる御老人の方々あるいは子供さん方のために、日常の食費、生活雑費そういうものも五%上げると、こういうふうなやり方をいたしてございます。  さらに燃料費につきましては、御承知だと思いますが、十月、十一月ごろから燃料費につきましてはそういう組織のほかに別に支給をしております。これは北海道と東京によって級地別に違いますが、燃料費は別に追加して差し上げると、こういうことにいたしております。  さらに年末には、御承知だと思いますが、昔はもち代と言いましたが、生活扶助の一時金ですね。これも昨年よりは一九%程度上げまして、大体はっきりした数字はいまあれでございますが、昨年はたしか東京あたりですと、生活扶助世帯一人当たり三千五百円程度でございましたが、ことしは一人当たり大体四千円をこすもち代、ですから四人世帯ですと一万六千円と、こういうふうな一時扶助金も出す考えでございますし、さらにまた、施設に入っておりまする子供や老人のためにはまた一時的なそういう諸雑費に、食費に使っていただこうが何に使っていただこうがけっこうですが、そういう諸雑費も一時扶助として出す、こういうことにいたしたいと考えております。なお来年度におきましては、こういう情勢でございますから、予算編成の際における物価動向やあるいは消費水準、そういうものをにらみ合わせまして、できるだけあたたかい措置を講じていく、こういうふうにいたしたい。努力をいたす考えでございます。
  79. 鈴木強

    鈴木強君 郵政大臣に老人福祉電話の構想についてちょっと承りたいんですけれども、地方自治体ではかなりやっておりますね。国のレベルでやるようなことはいま検討されておりますか。
  80. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) この一人暮らしの寝たきり老人のお宅に配置する福祉電話は、国と地方公共団体、すなわち県と市町村と三者が三分の一ずつ負担をして設置をしていくというやり方でやっておりまして、いま大体千二百ぐらい、年度末には千四百ぐらいになるということを聞いております。そのほかに単独で市町村でやっておるところもございますし、公益的な事業団でやっておるところもございますが、来年度はこれを拡充しようということで、予算的に言いますと約三倍の要求を厚生省からお願いをして、私どものほうの電電公社がこれをつけていく、こういう方法で拡充をしていきたいというふうに考えております。以上でございます。
  81. 戸叶武

    戸叶武君 関連。
  82. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 一問だけです。
  83. 戸叶武

    戸叶武君 いま鈴木さんの最終的な質問において、現実の生活問題と結びついた具体的回答を求めておりますが、それはいわゆるインフレ論と違って、現実インフレ現象における、所得政策のどうのこうのじゃなくて、たとえばいま、私はタクシーの問題でもガソリンに火がついて発火点にまで来ていると思うんです。タクシーの運転手さんに話を聞くと、いままで水揚げが二万六千円あったのが、いまではその半分になってしまった。自分たちの手に入る金もいままでの半分になってしまった。これでタクシーはどうして暮らしていけるか。そのことに対して運輸大臣は、愛知君の葬式の際に、深刻な顔で、あのタクシーの運転手の自殺ということを人ごとじゃないと言ってあなたが受けとめているのを見て、私はこれはなかなか運輸大臣相当なものだと思ったが、それが私はこの暮れにかかって深刻な暴発の要因になると思います。この生活の深刻さというものを受けとめないで、抽象的なインフレ論じゃない、所得政策論じゃない、現実において生活がこれほど窮迫して、自殺に追い込んでいくような、すべてが発火点の寸前にあるんです。この暮れにおけるところのタクシー業者の問題、働かんとして働くことのできない問題、所得が入らない問題、すべてが、農村とこの都市交通の面から私は必ず暴発が起こると思うんです。こう言っては言い過ぎかもしれないけれども、抽象的な論議をここでやっておってはだめなんで、田中さんも福田さんも真剣なようだが、もう一段庶民の生活に密着した具体的施策をやらないとたいへんなことになる。アメリカだって巻き返しをしてきているじゃないですか。イスラエルの問題でキッシンジャーはいま死にもの狂いです。殺されるかもしれません。それほど真剣に各国の政治家が戦っているときに、国会の中でインフレ論か所得論かなんというゆうちょうな抽象的な論議をやっていないで、具体的な回答を鈴木さんに対してももっと親切に、時間がないから一言私は見ていられないので言ったのですが、鈴木さんが非常に謙虚な形で事例をあげています。どうぞ福田さんなり田中さんももっと真剣に——あなたらの真剣はわかる、わかるけれども、大衆が求めているのは具体的回答ですよ。どうぞそういうふうにぴしっと大衆が受けとめられるような回答を出していただかれんことをお願いいたします。(拍手)
  84. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私どもも非常にもう真剣でございます。これはもう何とかしてこの物価、石油問題、乗り切らなきゃならぬ。そして国民に御安心をいただけるようにしなきゃならぬ。とにかく石油問題という、こういう異常な事態が突発した。そこで混乱があるわけなんです。この混乱に対してはできる限りすみやかにこの混乱を押えなきゃならぬ。これはほんとうに私ども昼夜兼行、何とかして国民に御迷惑をかけない、こういうことで努力をしておるわけであります。ことに、当面の問題もありますけれども、根本的に物価を安定させる、これはもうほんとうに全国民が願い、期待しているところじゃないか。全国民の願いというものがそこにあるということを十分かみしめておりますので、ひとつ御理解、また御協力のほどをお願いいたしたいと思います。
  85. 鈴木強

    鈴木強君 労働問題を少しやりたかったんですが、時間がありませんからこれは小柳委員のほうに譲ることにいたします。  それで一つだけ労働大臣にお願いしたいんですが、いま失対労務者がインフレ手当一カ月分を要求しておりますが、これはぜひ出してやってもらいたいと思いますが、いかがです。
  86. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。  先日、公務員に〇・三の公労委の調停に基づいてやったものは年内に繰り上げてやったということでありまして、失対の皆さんも、公務員という資格がございますけれども、十月に五%上げましたので、公務員でありながらもそれを繰り上げてやるという方式には入っていないわけであります。ただしかし、五%上げたことによって年末の臨時給与というものが増額される、それを私たちは期待をしております。
  87. 鈴木強

    鈴木強君 そういう血も涙もないようなことでなくて、やっぱり地方特別公務員ですよ、あの方々もね。ですから、五%上げたからそれでいいんだということじゃなくて、もともと低いから五%上げたんです。上げる理由があったんだ。そこへもってきて物価高が来たんですから、もう一歩努力してくださいよ、これ。検討してください。
  88. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 将来の問題といたしましては、いろいろ考えてみたいと思っております。
  89. 鈴木強

    鈴木強君 将来ではなくて、いま直ちの問題なんです、これは。労働大臣、もっと検討をちゃんとしてくれないと困る。いまのことなんだ、いまの。もっと検討して……。
  90. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまのような問題があると思うんです。それでいまこういう問題、どういうふうにするか、労働大臣が頭をひねっておると、こういう段階でありまするから、もうしばらくひとつお待ちを願いたいと、かように思います。
  91. 鈴木強

    鈴木強君 じゃ、それ、答弁やり直してください。将来の問題じゃないんですよ、いまの時点の問題です、これは。
  92. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) ただいま大蔵大臣もお話がありましたが、将来の問題として——制度的には公務員の今度の〇・三上げたこととは同額にやれないことになっております。
  93. 鈴木強

    鈴木強君 それはいいんだよ。
  94. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) ですから、いまから先の問題としていろいろまた考えてみたいと、こう思っております。
  95. 鈴木強

    鈴木強君 これは将来の問題ということでなくて、やり方は私はどういうやり方でもおまかせしますよ。しかし、失対労務者だけが置いてきぼりを食うというごとはこれは納得できないことですから、英知を集めて、もっと検討して、前向きでひとつやっていただきたい、こういうことです。
  96. 小柳勇

    ○小柳勇君 委員長、関連。
  97. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 一問だけ。
  98. 小柳勇

    ○小柳勇君 私は総理に質問したいんですが、さっき戸叶さんも言われたように、緊急事態です。私は明日、労働問題全般について質問いたしますけれども、公務員が〇・三、まあ皆さんは来年の年度末手当の繰り上げだと言っているけれども、これだけのインフレで生活できないから〇・三の繰り上げをやったことは事実です。それに匹敵する失対労働者は基準がもっと低いんです。一般の公務員よりももっと低いベースの賃金で働いている労働者がその〇・三に匹敵するものが何かないか。そういう将来の問題じゃないですよ。もうきょうは十三日です。きょうきめなければ年内に支給できないでしょう。したがって、労働大臣だけでは判断できないようだから、大蔵省としては検討しているようだから、総理は、内閣としてどうするか、答弁願います。
  99. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公務員に対しては、御承知のとおり公労委の調停をのんだわけでございまして、〇・三の三月末に対する予算措置がしてございますから、この問題に対しては繰り上げて支給する、これは違法でもないし、国会でも御承認いただけることでございます。  そうして失対労務者につきましては、それよりもさきに五%上げているわけです。十月にもうすでに上げているわけですから、政府は誠意をもってやっているわけです。その分は国会の議決も経ているわけであります。ですから、ものには軽重がありましてね、そう大きな声を出されるだけですべてをとにかくやらなきゃならぬということではないんです。ただ、現実的には政府はちゃんと実情は考えていますよ。考えておりますが、考えてもおるし、勉強もしておるんです。しかし、制度上もあるでしょう、予算上もあるでしょう。予算上流用するならばどうしなきゃいかぬのか、ちゃんとそれは勉強するひまもなければ、声だけでかいこと出して、政府が何も考えてないんだと、そんなことじゃいけませんよ。そうじゃないんです。真剣に考えているんです。それはもう公務員を〇・三上げれば、同じ公務員である失対労務者をどうしなきゃならぬか、その程度のことちゃんと考えていますよ。考えておりますが、考えてもおるし、勉強もしていますけどね、それはその中でもってどこを縮めてどこをどうしなきゃならぬかという時間的な余裕ぐらい、そんなことを政府は考えていないということがあるわけないじゃありませんか。十二月の三十一日までには公務員には支給しなきゃならぬでしょう。そういう過程においてどうするかということでして、ただ何も政府は考えていないんだという断定のもとにそうおこられちゃいけませんよ。
  100. 鈴木強

    鈴木強君 どういう方法かおまかせしますから、ひとつ十分検討して前向きにやってもらいたいと思います。  それから時間がなくなりましたので、二、三、ローカル問題で恐縮ですが、お尋ねします。  今月の六日に山梨学院大学の用地をめぐる汚職事件で古屋という前学長が逮捕されておりますが、その事件について文部大臣から概略の説明をいただきたい。
  101. 奥野誠亮

    国務大臣(奧野誠亮君) 山梨学院大学につきましては、いろんな問題がございまして、かつて校地を広げるということで私学振興財団から融資を受けたわけでございましたが、その土地を売却して巨額の利益を得たということでございまして、その土地の購入にからみまして贈賄をしたということで、いま御指摘の事件が明るみに出ておったと、かように記憶いたしておるわけでございます。売却したという事実が判明しました直後に私学振興財団ではその返還をさせたわけでございます。校地を広げるということで融資を受けながらこのような処置、横道をとりましたことはまことに遺憾なことでございます。  同時に、この古屋という方は、かつて補助金等適正化法の違反あるいは教育職員免許法の違反で起訴されまして、その後事件が、刑が確定をしたということもございました。したがいまして、学校法人の理事者にはとどまれないわけでございます。したがいまして、学院とは関係がなくなったわけでございますけれども、なお学院長でございますか、何かの名称で多少まぎらわしいような姿になっていたりしますので、そういうことにつきましても、完全に関係のないことを明確にするように文部当局から学校当局に善処を促しているということでございます。
  102. 鈴木強

    鈴木強君 これはもうどうにもこうにも手がつかぬ大学なんでして、これはやっぱり思い切って名城大学方式でもとらなければしようがないと思っているのです。もう少し実態を大臣お調べくださいよ。私も何回か国会で取り上げているのですけれども、依然として反省の色がない。もっとしっかりした管理監督をやってもらいたい、どうですか。管理監督ということばはいけないけれども、指導ですよ。
  103. 奥野誠亮

    国務大臣(奧野誠亮君) お話のように、鈴木さんから前に決算委員会でございましたか、御指摘もあり、また、その御指摘に基づいて文部省から現地に人も派遣をいたしまして、そうして指導に当たらせているところでございます。今後も徹底を期するように努力をしていきたいと思います。
  104. 鈴木強

    鈴木強君 それからもう一つ、厚生大臣、山梨県の鰍沢町とか増穂町を中心に、集団的に大腿四頭筋短縮症という病気が発生しておりまして、小さい子供百十一人がこれにかかっておるわけですね。この実態についてどう把握されておりますか。
  105. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) お述べになりましたようなことの起こっておることは私も承知しておりまして、県もその原因究明に乗り出しております。そこで、私のほうも県のほうとよく連絡をとりながらその原因究明に当たってまいりたいと考えております。そうしてまた、その子供たちが身体障害者ということに該当するならば、それなりの救済措置を講ずるようにいたしたいと思いますが、原因究明がまず先決だと、こういうことで県といま連絡をとっておるところでございます。最後まで原因を究明したい、かように考えております。
  106. 鈴木強

    鈴木強君 厚生省も大臣、積極的にこれは支援をしていただけませんでしょうか。
  107. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 厚生省も積極的に乗り出す考えでございます。
  108. 鈴木強

    鈴木強君 もう一つ防衛庁長官に、時間がなくなりましたので簡単にお尋ねしますが、北富士演習場の問題については、全面返還、平和利用、これがわれわれの強い要求でありますし、県民の願いであります。しかし、使用転換されまして、いま自衛隊がそこで盛んに演習をやっております。同時に、周辺整備事業についてはいろいろ問題がございますが、その後どういうふうに内容がきまりましたか、これは大蔵省かどうかわかりませんが、その点が一つ。  それからもう一つは、御殿場から中央自動車道に結ぶ東富士有料道路というものが計画されておりますが、通過路線が演習場内千メートルのところかどうかというので意見が分かれている、建設省と。これを早く調整してもらわないと工事がおくれるばかりですから、これに対してどうなさるのか、この点ひとつ説明してもらいたい。
  109. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 地元の問題でございますので詳細を避けますが、委員会等で後ほどまた意見交換したいと思います。  簡単に申し上げますと、周辺整備事業で御異見の——やや異なった異見のほうですが、御異見のございましたコミュニティーセンター、青年の家その他等は、御承知のとおり予算執行をすることにいたしましたが、しかし大蔵省との御相談の過程において、それらの規模その他についてはきちんとした基準で積算をし直しまして、地元の要望そのものではなくて、基準を定めて改定をしたものでもって実施をすることにいたしました。  なお、中央道と東名とを結びます国道のバイパスの富士演習場通過の問題でありますが、これは公団と地元側の御要望、そうして私どもの立場というものを踏まえながら、これを貴重なバイパス路線として実現できるように努力をしてまいるつもりであります。
  110. 鈴木強

    鈴木強君 結論、出ないですか、結論。
  111. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは結論を出すには、地元側のほうは率直に申し上げて演習場の中を通せ、現在の演習場の砲座のあるところも通るような路線を要求しておられます。しかしそれでは、やはり私どもとしては一応演習場というものはただあき地を持っているだけではございませんで、ちゃんと砲座もありますし、射撃もしくは師団、連隊等の規模の演習等もいたす地域、面積も必要でございます。したがって、せっかく払い下げをいたしました二百十ヘクタール、いや、払い下げいたします二百十ヘクタール、あるいは千三百ヘクタール県有林の返還、そういうところ等の地籍等と、実際上にバイパスとして不自然な形でないかどうか、そこらの問題を御相談ごとで解決をしたい。私どもがそのバイパスを妨げるという姿勢はとらない、そういう基本的な立場でございます。
  112. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) お答えいたします。  ただいま防衛庁長官からお答え申し上げましたとおり、建設省としては、道路公団に対しまして、地元の意見並びに防衛庁、大蔵省とよく話し合いをいたしまして、そうして円満に解決できるようにと、私は、大蔵省、防衛庁、建設省三省と地元とということで、それぞれの立場が事務的にあるようでございます。しかし、これを乗り越えて、話し合いは十分つき得るものと、こう確信を持っておりますので……。
  113. 鈴木強

    鈴木強君 めどはどう……。
  114. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) まあ、できるだけ急がせるということ以外には、ちょっと日時を限るということは、ここでは申し上げかねるわけでございます。以上でございます。
  115. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして鈴木君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  116. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 杉原君。
  117. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 私は、質問の柱を大きく三本立てております。一つは、国際的にいま食糧の重大な危機を迎えていると、それに対応する政府の政策、それを明らかにしたい。第二点は、石油危機と関連をしながら、新全国総合開発計画並びにその裏として出る公害の問題等について明らかにしていきたい。第三点は、食糧危機、石油危機、これは国内だけの問題でありませんので、国際的な大きなこの課題に直面する今日のわれわれ民族が、これに対してどう対応するか。それは政治、経済万般にわたる基本的な問題でありますから、基本的な構想について総理大臣の見解を最後にお伺いしたいと、こういう手順で実は進みたいと思います。  で、その第一点といたしまして、特に日本の農業はどうあるべきかという大きな基本構想を進めるにあたって、いま問題になっております三十万ヘクタールの大量農地の転用が総理から至上命令として関係当局におろされ、すでに具体化されていると、こういう段階において、とりあえず、総理が大量農地の転用の構想について国民に実は明らかにしてほしい、こういうことであります。それは、内容的には、三十万ヘクタールでなければならないという理由、それから転用の目的あるいは予定地等々あれば明らかにしてほしい。それから転用達成の年次計画等が具体化されておるならば、それも明らかにしてほしい。それからこれに伴う、あるいは法的な処置、適用等の問題を明確にしてほしい。大体この四点にしぼって総理の答弁をまず要求いたします。
  118. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 食糧の自給度を上げなければならないということを原則にいたしております。まあ国内で充足できる食糧、特に主食や、また地形、地勢上、気候上の適地として、国産によれるものに対してはできるだけ自給自足をいたしたいということを原則といたしております。また、主食につきましては、国内で安定的に供給をするだけではなく、開発途上国に対して援助をしなければならないということもございますので、国内の余剰米をもって援助するというだけではなく、これから外地等において開発プロジェクト等を検討いたしておりまして、そういうところで生産するものを開発途上国に供給するということになれば、金額の点においては約倍額供給できるわけでございますから、そういうものも考えたい。で、また、それは非常なときにおける内地への主食に対する備蓄ともなるわけでございますので、そういう国内、国外両面において考えておるわけでございます。大豆のように、どうしても日本の、気候上の制約から考えますと、北海道を除いては国際価格としては合わないというものに対しては、開発輸入、長期安定輸入というようなことで、まあ日本が場合によっては外地において大きな農地を持ちながらこれを生産するということもございますし、現地とのジョイントベンチャーで行なうというようなことをいま各国との間に詰めておるわけでございます。  私が三十万ヘクタールと言いましたのは、土地は、需要と供給とのバランスの上に地価は起こるわけでございまして、宅地の需要ということは、もうこれは当然のこととして国民的な要望でございます。しかし、まあ限られた、大都市で土地つきの家を与えるということはなかなかむずかしいことでございます。これは世界じゅうどこでもそうでございます。それはどういうことでもって与えておるかというと、結局、市街地の再開発を行なう、立体化を行なうということによりまして、住居面積を与えるということになっておるわけでございます。一つには職住の近接ということで、借家方式をとるということでございますし、もう一つは、ある若い世代においてやはり所有欲というものもございますし、ものを大事にするということもございますし、勤勉の源泉にもなるわけでございますから、そういう意味で分譲住宅という制度がとられております。また、公営住宅のようなものは、やはり低所得者、それから身体障害者とか、国民連帯の思想の中で解決をしなければならないものに順次転換をしていかなければならないということは、これは当然のことであります。昭和二十七年だと思いますが、現行公営住宅法を私が中心になって議員立法を行なったときには時限法でございましたが、これが現行法のように恒久法に転化をしておるわけでございまして、これらの問題は量から質へ転化をすると同時に、やはり国民的な要請にこたえて住宅を与えるという面の一翼をになわなければならないと、こう思います。しかし、一生かかっても土地つきの家を持てないということでは国民の意欲が満たされるはずはありません。そういう意味で、まあ十年たったらどう、十五年たったらどう、二十年たったらどう、三十年働いたらどうということで計算をしてみますと、少なくとも昭和六十年、十二年後の展望に立つと、日本主要工業国の中で賃金水準はアメリカをこす可能性もありますし、まあ今度のようにうんと低い、経済成長率が低い場合には、これは実質的にアメリカをこすということにはならないかもわかりませんが、いずれも百四十五カ国の中のアメリカと争う、一、二を争うというところまでいくことは事実であります。そういう展望に立っていま勤労者財産形成などをやっておるわけでありますが、これは、ただ利息を大きくするだけではなく、土地と住宅に関連を持たしたいと。そうすれば、二十年、二十五年たっているうちに、最終的には土地つきの家はその間においての積み立てで入ると、しかも、少額貯蓄非課税というもので相当部分、これはまあいまは——三百万円に来年度するということでございますが、これも大きくなっていけば、当然いまの価格にして一千万円、二千万円というものの積み立てができるわけでございます。それで退職金はそのまま残るようにと、そういうことになれば、ある一定年齢に達したものがすべて老人ホームに入らなければならないという異常な事態、北欧三国のような状態を避けられるということで、いま長期的な計画を練っているわけでございます。そうすると、昭和六十年度を展望しますと、国民がいま要求しておる住宅の数は三千万戸余でございますが、これらのうち、これはまあ建てかえとかいろいろな問題がございまして、計画的に行なわなければならぬと大ざっぱに考えられるものが千百五十万戸でございます。その中で千万戸ぐらいのものは何とかしたいという考え方を持っているわけです。政府は計画的にやりたい。政府、地方公共団体、農協等は。そうすると、大ざっぱに勘定しますと、土地を与えるものが約五百万一尺それから都市にどうしても集中いたしますので、土地つきではなくとも——土地つきでもいいんです、これは六十分の何戸というふうな住宅の面積で土地を割ればいいわけでありますから。そういうふうな、いまのマンションの分譲のような土地つきということもありますが、不燃建築物がつくられる場合、土地というものはもう固定して考えていい、そうすれば住居面積というものはちゃんと手に入る。そういうものが約五百万戸分と、こう考えますと、六十年までに必要なものが二十八万ヘクタールであります、住宅用地として必要なものが。そうしますと、二十八万ヘクタールというものは市街地区域内における農地が二十八万八千ヘクタールございますから、これが全部直ちに住宅に転換すれば、もう六十年までの宅地は求められるわけでございます、算術的にはそうなるんです。  しかしこれはなかなかうまくいかない。この上に過密をしたら、これはもう動けなくなってしまうし、水はない、電力はない、どうにもならなくなる、公害問題があります。そういう意味で、第二の問題として考えましたのは、全国的な工業再配置とか、いろいろな問題がございますし、それから一次産業比率が下がってくるというその人たちを都会に集めないためにも国土の総合開発計画というものを考えざるを得ません。そうしますと、全国的に見て二十八万ヘクタール、大ざっぱに言って三十万ヘクタール、三十万ヘクタールという宅地を全国的に求めるということはそんなにむずかしいことではないんです。ありません。これはまあ農地として三十万ヘクタールずつを勘定しますと——大体三倍をいま目標にしたわけです。農地からの転用が三十万ヘクタール、それから都市の中におけるものが二十八万八千ヘクタールで約三十万ヘクタール、それから雑地とか、それから調整区域内におけるものを約三十万ヘクタールとすれば、三倍の供給力を政府国民の前に明らかにする。こういうことになれば地価は下がるにきまっておる。こういうことで検討しておったわけでございますが、御承知のとおり、現在まで、四十六年度から四十八年度にわたって、いま生産調整をやっておるものが毎年五十四万ないし五十六万ヘクタールあるわけでございます。しかも休耕面積というものが、この中で二十九万四千ヘクタールが、四十八年度には二十七万三千ヘクタール、こういうふうになっておりまして、本年九月の概算要求でもって来年度を見ましても、作付転換目標としては三十三万九千ヘクタール、通年施行分を四千五百万ヘクタール見ているわけでございますが、これは通年施行が終わればみんな生産地になるわけです。ですから、こういう現実の上に立って調整ができないかということを考えますと、現在でも農地で転換をしておるものが年に約七万ヘクタールずつございます。そうすれば四年間というと二十八万ヘクタールでございますから、無計画に転換をされるよりも、三十万ヘクタールというものを目標にして全国で町村、農協、その他、換地処分を行なったり、いろいろなことをしながら宅地を中心にした土地の再編計画というものができないか。そういうことを言いますと、九州や四国などは軒ばたまで国有地になっておるわけです、明治初年の問題として。非常に困っておるわけです。ですから、そういう国有地を国有林活用法ができておりますから、このようなものを無税地として農民や住民に与えてくれるならば三十万ヘクタールや四十万ヘクタールの転換というものは地域的にはむずかしい問題ではないという現実問題が各地にございます。ですから、知事、市町村長、農協、農民、それから国が一体になって四年間に自動的に転換されるようなものをもう少し具体的に計画を立ててみないかということで農林省に調査を命じましたのが俗に言われる三十万ヘクタールと、こういうことになっておるわけでございますが、これはばらばらになっておるものとか、それから自分のたんぼを、こさになっておってどうにもならないからこれを埋め立てて分家に出したいと言ってもなかなかうまくいかないとか、現実的に現行法による農振法の適用を受けておるのでなかなかうまくいかないとか、それからもう国道沿いは全部現実的には取引が行なわれているにもかかわらず、農振地域であり、優良農地——営農地であるためにこの問題に対しては転用はできないというような問題がございます。そういう問題を全部ひとつ明るみに出して土地の再編成という問題で勉強してもらえないかと、こう言ったわけでございまして、農産物に対する基本的な考えは前段申し上げたとおり、三十万ヘクタールという一般に伝わっておるものに対してはいま申し上げたとおりでございまして、二、三年間かかって国有地との問題、それからいろいろな雑地との交換分合等を考えれば土地問題に対して大きく寄与できると、こういう事実のもとに俗に三十万ヘクタールと、こういう調査をいましておるわけでございます。
  119. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 どうも私が理解をしているのと若干違っている点等があります、たくさん。たとえば年次の問題、それから転用の目的は宅地造成にしぼっておられるようですね。
  120. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中心は……。
  121. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いや、それはいまおっしゃったのは、そういうことは当然ですから。そういう点等も若干私が理解しているのとは違います。同時にまた、総理の手元まで届いていないと思いますが、農林大臣のところへは全国農業協同組合中央会から申し入れが入っていると思います。加えて、きのう全日農からもこの問題をめぐって、その他を含めて農林大臣には要請書があがっている。その申し入れ、要請書、ともに理解の根底にあるのは、少なくともここ一年——総理は三年ないし四年という表現を出しましたけれども、一年にこれをやるのだというような新聞報道等もあったりして、そのことに対する非常に農業破壊だという認識の上に立ったこういう要請なり申し入れば出ていると私は理解します。そうしますと、いまの総理の答弁とは若干食い違いがあるのですけれども、それは総理のおっしゃることがほんとうだと思うが、それは農林大臣の受けとめ方はどうなんですか。
  122. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいまきわめて詳細に総理から御構想の御説明がございました。杉原さん十分御理解いただけたようでありますが、いまのお話のような方向で私どもはこれに対処するために関係省庁の関係官を集めまして鋭意検討する会を開きまして、もうすでに第一回はやりましたし、そこで、ただいまの農協、それから全日農の方々からのお申し入れも私はお目にかかっていろいろお話を承っております。そういう中でも、やはり総理の言われる三十万ヘクタール云々についてはだいぶ誤解もあったようであります。その  ことはただいまの御答弁で氷解いたしたことであると思いますが、やはり関係省庁を集めましてこの実現のために一定期間置いて検討して、間違いないようにいたしてまいりたいと、こう思っておるわけであります。
  123. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 ちょっと、うろんなことを申して失礼なんですけれども、ある権威ある新聞がその辺のいきさつを書いているわけです。でありますから、これをちょっと申しますとこういうことなんですね。「十一月十三日、場所は首相官邸。」総理、「(三十万ヘクタールの)農地転用の促進は、すでに半年前から指示している。一向に進まないではないか。」、農相——当時は櫻内さんですが、「最近の農地転用は、年間六万ヘクタールペースだ。これに長期にわたる休耕田のうち、三万五千ヘクタールを当てて、来年度は合計十万ヘクタールを目標としたい。」、すると総理は、「十万ヘクタールではだめだ。住宅用地、工場用地などでどうしても三十万ヘクタールは必要だ。もう一度練り直して来い。」、こういうことで櫻内さんが首になったわけでもないでしょうが、こういうことまできめこまかく書いているんですが、これは推定の部分もたぶんあると思いますが、その時点の認識なりわれわれの認識は間違いでないように思いますが、それは総理のほうでどう——軌道修正をされた意味なのか、前からそういう考え方なのか、その点ちょっと食い違いがありますから……。
  124. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 軌道修正も何もしておりません。これは供給というものをふやさなければならないということでございますし、これは転作をするということを考え、施策も行ない、予算も要求しておりますが、実際転作をしても農民として合わないものがあるんです。ですから、当初の問題としては、まあヘクタール当たり幾らという補助金を出すということで、転作をやむを得ないということでやっておりますが、しかしどう考えても、まあ豆を一つとりますと、私たちが少年時代は、新潟県などではあぜ豆でもって自分のみそも何も全部できたわけですが、いま、あぜに豆を植えるような農民はございません。それを無理にしなさい、それから豆にしなさい、てん菜にしなさい、こう言ってもなかなか転換が地勢上とか気候上の制約でできないというものがたくさんあるわけです。今度は来年から休耕奨励金補助を打ち切ってしまうということになるわけであります。これは飛行機で御旅行になればすぐわかるんですが、東海道沿線でも全部あの美田のまん中に草ぼうぼうで、日本には発生したことのないような虫が発生して困っているような状態もございます。そういうようないろんな状態を考えますと、いままで食糧増産という立場でもって諸制度、諸法規ができておりまして、そしてそれが増産が行き過ぎて、今度調整をする、調整はうまくいったから今度は休耕補助金を打ち切るというのは、これは打ち切らざるを得ません、財政上の問題としても。打ち切らざるを得ませんが、農民がはたしてこれを長期的にやるかどうか、補助金のあるうちはやります。やむを得ずやっているんです、割り当てだったのですから。しかし、新潟県や京都のようなところでは割り当ててもやらないわけです。やっても合わないからやらないのです、これ。そうしておるということになれば、これ、どうにもならないし、私自身も四反半ばかりのうち一反半は休耕しているわけです。私の母親は農民としてちゃんと休耕しているんです。何にもしないのです。草ぼうぼうなんです。どうにもならないような状態のものがこれだけあるわけでありますので、これを国有地の交換分合とか——北海道、四国、九州には非常に百年間の長い間、問題になっている土地問題があるわけですから、これを永久無税地というようなものか、何年間無税地ということで、所有権まで農民に移さなくとも貸してもらえれば、宅地も工場用地もみんなあるんです。こういう切実な声が九州にも四国にも、東北にも北海道にもあるのです。おたくさんのところにもございます。  そういう問題をあわせて考えますときに、いま一次産業比率は、四十七年でございますが、一四・八%、もう四十八年のいまになると、これ、一四%を割っているわけです。そうすると、ここ四年間、五年間、年率一%ずつ減っているわけであります。百万人ずつ二次産業、三次産業へ移転をしておる。こういう状態から見まして、アメリカの四・四%、イギリスの一・五%、西独の八・八%、イタリーの一四・二%、ECの六カ国の平均一二・七%に比べても、あれだけ平野部分のあるところに比べてもやっぱり日本はまだ七、八%減らざるを得ない。そういう減る時期において休耕補助金もないところをやるわけはないのです。一面においては土地の不足があるということですから、ここでひとつ地域的に洗い直してもらって、農業政策の基本はもちろん変えない、それでもっと手厚くやらなければならぬところは手厚い保護政策をやりゃいいんです。しかし、新しい計算を、再計算をやることによって、これで——三十万ヘクタールという数字はまだ小さい数字なんです。三十万ヘクタールというものを——年々七万ヘクタールずつ転換が行なわれているわけですから、これから四年間といえば三十万ヘクタールになるわけであります。そういうものをいまから計算をして、そして、このうちどうしても転作をしなければならないようなものが何ヘクタールぐらいあるかというような数字をはじき出しなさい、四十九年度予算編成までには、いま要求している、面積ではなく金額が問題になってくるということで、三十万ヘクタール、四年間というものをめどにして再調査をしてやってもらいたいと。これは倉石農林大臣のころだったです。前の倉石農林大臣のころからずうっとやっておりまして、そしてその後ずうっと続けてまいりまして、今度またくしくも倉石農林大臣が実現したわけでございまして、まあこういう問題は、農民にもいいように、国民全体のためにも使えるように、そして一次産業から転出をする人がみんな都会に出ないで済むような一石三鳥、一石四鳥というような政策を基本にして、三十万ヘクタールをめどにして再編成という計画を立ててごらんなさいと、こう述べておるのでございますから、ここはひとつ間違わないでいただきたい。  これは三十万ヘクタール、四十万ヘクタールを一年間でいますぐほんとだれが買うのかといったら、これはもうたいへんなことでございまして、緊縮予算の中でおさまるような問題じゃございませんし、インフレ要因になるわけでございますので、そうではなく、これは一時農協が全部再編成をして、農協がこれを買って自分のところに積んでおけば、残りは年度末に資金運用部から金を貸してもいいし、年度末に利子補給をすれば済むのであって、インフレ要因にはならないで国民には土地が与えられる。それで財形とのつながりを四十九年度につけるには非常にいいと思うから、その基本的な数字を地方別に出してもらいたいと、こういうことであって、これはすなおな考えで述べておるわけですから、すなおにひとつお取りをいただきたい。
  125. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 ぼくはいまだにまだ警戒心が解けないわけですが、結局、展望としては、米を退治するというところに一つの展望があるような気がしてなりません。それはあなたがお書きになった列島改造の一七九ページ、「高生産性農業のカギは土地基盤整備に」という項目の中で、「転用地を差引いた農地を〃永久農地〃に確定し、財放援助によって集中的な土地基盤整備を行なうのである。」というところが下敷きにあるような気がするわけですね。そうして、いま申し上げた米退治、もっと輪を広めれば、農業はひとつそこらあたりでいいじゃないかというような、アメリカで安い麦を買えばいいじゃないかというような思想が下敷きにあるような気がするのであえてこの問題を取り上げておるわけですが、答弁は、ない、ということになりましょうが、この辺の関係はどうなりますか。
  126. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは論文の中でいろんなものを対象にして論じておるわけでありますから、法律になるわけじゃありません、まあ一つのテーマを提供したということと御理解いただきたい。  私も農民なんです。それで、農民で食えなくて東京へ出てきたわけでございますから。私は長男でございますから、また生あればわが生まれ故郷へ帰ろうということで、わが家の後継者は絶対に人には譲らないと、こういうことでございます。だから、八十二歳の母親が死ねば私が不在農民になるわけでございまして、これはまあ一カ月に一ぺんずつでも二回ずつでも行って、職業は農業と、こういうことになるわけです。(笑声)ほんとうなんです。これはまじめな話ですよ。しかし、六反歩、七反歩、一町歩というものでもって、これだけ上がってる国民所得の平均を得られるわけはないのです。どんなことを言っても一次産業比率はどんどん減っておるじゃありませんか。減っておるのです。家もあるし、水もあるし、土地もある、豊かな自然環境の中にありながら、そこを捨ててこのごみごみした東京に来なければならないということ、これは正常じゃないと私は思うのですよ。ですから、そういう意味で、どこの農村でも、きれいな工場であって、自分の娘だけは自分の村のきれいな工場に定着さしたい——娘が定着すれば若い者も定着するにきまっておるのです。そういうことをやりたい、こういうことは全農民の私は希望だと思うのです。ですから、東北六県の統計を見ますと、農民の六三%が出かせぎ収入でございます。青森県はそれよりもっと高いわけです、七〇%近い出かせぎ収入でございます。そういう状態が、出かせぎで済むならいいけど、家も屋敷も全部売って出なきゃいかぬということであれば困るので、どうしても少なくとも全面積の一〇%に対して、その村が離村しないで済むような職場を得たいと言っておるんですが、農振地域であるために絶対に許さない。何年間も計画がストップになっておる例があります。これは、山梨県と同じ供出量を出した新潟県南蒲原郡中之島村という有名な大農があるんでありますが、そこは全部四町歩平均ずつ持っておっても、収入というものはそんなに多くないと。だから、少なくとも一〇%を工場用地にしたり学校にしたりということをやっておるのですが、なかなかうまくいかない。そういう問題をひとつ政策的に洗い直してみたらどうかということでございまして、私はやっぱり六反歩というよりも、専業農家というものは三町歩でも五町歩でもやれるようにならなければ専業農家としてはうまくいかないと思うんです。ですから、そういう意味で専業農家は営農規模を大きくしていく。で、同時に自分で二反歩でも三反歩でも持ちながら、そうして自分たちは工場に働き、農協につとめながら、役場につとめながら、自分の食いぶちだけは自分で取るということになれば、野菜もみんな取れるわけですから、そういう状態でもって、いまよりも理想的な状態を築きたいというのが前提でございまして、主食を外から入れようなんということは全く考えてないです。当分の間、日本は相当大量な食糧援助を外国にしなきゃいけないだろう。このぐらいの前提でありますから、自分の食う米をよそから買おう、そんなことは考えておりません。ましてや、石油はこんなことになっておりますから、米がとまったらたいへんである。しかし、まあ石油問題から変身しているのじゃございませんで、依然として生まれたときからそういう思想であるということをひとつ……。
  127. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いま言われたことの中に、結局、農業の所得が少ないとかなんとかいうことで盛んにおっしゃるわけですが、突き詰めていけば農政の基本的な問題になりますから、これは後ほど質問もし意見も述べたいと思いますので、その辺のところは一応お聞きした程度にとめておきますが、何に土地を転用するかという目的が、農民なり国民にやはり明らかになれば、国民はやはりそのことに対して協力すると思います。  きょう、はからずも東京都が環七線の問題、沿線宅地を緑の防壁、いわゆる緩衝地帯をつくりたいと。そのために住民の請求もこれあり、ひとつ土地を、宅地を希望に従ってどんどんと買い占めていくという条例も遠からずつくりたいといったようなことが報道されているわけですが、これに対して意見を求めようとは思いませんが、こうしたことならば都民も国民も納得する、わかりやすい説得力のある転用計画というものが出されなければならない、こう思います。  そこで、何かこうスムーズにさっさっと行くような感じですが、しかし、それを進めるにあたって、現行法でそのままやっていこうとしているのか、それともまた単独立法をしようとしているのか、その辺のところはどうなんだかということをお聞きしたいわけですが、実は、私もさかのぼって調べてみたところが、昭和四十五年の二月の十九日に農林省次官通達が出ているわけだ。ここらあたりが、もうすでにその伏線が敷かれているわけです。それをまた五十一年の三月まで延長するということを、四十六年の四月に、これまたそのことについての延長の通達が出ているわけです。そういうところなどが、すでに次々と手を打たれながら、いま田中構想ということで三十万ヘクタールと、こう出てきているわけでございますので、その辺のところを立法関係なり法の適用の問題等について——これは農林大臣だと思うけれども、これはどうなっているのか。  引き続いて、いま、総理のそうした至上命令が出たので、農林省は受けて立つということで、今日までどのような機関と、それからそれに対する取り組みをどう進めてきているのか、それを若干報告してほしいと思うのです。
  128. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいま食糧政策について総理大臣から御説明がございまして、万事御理解いただいたことと存じますが、先ほど申し上げました会議は、農林省のほか、行政管理庁、経済企画庁、大蔵省、文部省、厚生省、通商産業省、運輸省、建設省及び自治省の参加を得て第一回の会議を開催いたしました次第でございます。  なお、いまお話のありました農転に関する通達のことがございました。これは、お述べになりました最初のときも、私が農林大臣であったと思いますし、当時は佐藤内閣であったと思います。で、つい最近はやや趣旨を異にいたしておりますけれども、促進方の通達を、これは私から命令して出させました。この趣旨は、御承知のように、農転につきましては農業委員会をわずらわす次第でありますけれども、全般的に調べてみますというと、たいへん停滞しておる地域がございます。で、そういうようなことは、やはり都会地の農業委員会などで月に一ぺんぐらいお集まりになって会議を開かれるという程度で、そして予算につきましても毎年の予算で事務費の要求がございますけれども、いろいろな事情で非常に停滞しておりますことは行政官庁としてよろしくないことだと。したがって、私は、いいならいい、悪いなら悪い、ここを更改、このように改めるべきであるとかというふうな判断をすみやかに出すようにしてもらいたいと、こういうことを通達さしたわけでございまして、これが農地壊廃に通ずるとか、いまちょっとお話のありました、あらかじめ先入観を持ってそういうことをしているんではないかというお話のようでございまして、出させました私が承っておって、たいへん意外に存ずる次第でございますが、やはり行政庁といたしましては、それぞれ国民の各位から、ゆえあって提出されました書類を一年もあっためておくようなことがあっては相すまぬことでありますので、この際行政能力をあげてすみやかに処置をすべきであると、こういうことを通達せしめた次第であります。
  129. 足鹿覺

    足鹿覺君 関連。  総理にですね、三十万ヘクタール転用構想の問題について関連して伺いますが、私のいま聞いておるところによると、少なくとも自然に耕地が転用されるものが毎年六万ヘクタール前後ある。それの上のせをするんだから大したことはないんだと、こういう大体御真意のようなんですね。ところが、この三十万ヘクタールというものを三カ年で最初は一気にやるような新聞記事も出ました。これは十一月の十八日、櫻内農相との協議。その次には、これはまあ急激だからというので世論が反撃を加えたために、今度は三年くらいかかってやろうではないかということに大体方向をまた転進したわけです。いま聞いておりますと、自然減反の上に若干の上のせをすれば、大体四年でいくんじゃないか、こういう御趣旨のようでありますな。それであれば、事新しく三十万ヘクタールの転用を十一月の十八日に農林大臣を呼びつけてこれを御指示なさる真意というものは、私はちょっと違うと思うのですね。そういう点で一転、二転、三転、四転されて、どこに真意があるのか私は伺いたい。  大体、もしこれをやるといたしますと、坪一万円にしましても大体年間九兆円。三万円といたしますと二十七兆円という大金が動くんですよ。四年にしましてもですね、これは若干それが減額になるだけなんです。こういうこの実感を込めて申しますと、転用農地の三十万ヘクタールの三分の一は、あなたの構想は最初十万ヘクタールが道路、公団、学校用、公共用地用として大体考えておられる。残りの二十万ヘクタールを大体宅地としていくという構想のようでしたね。二十万ヘクタールといいますと、一戸当たり二百平方メートルの宅地とすると、一千万戸分の宅地に相当するんですね。現在の東京都の行政区画の面積は二十一万三千九百ヘクタールでありますから、大体それに匹敵する。ばく大なものですね。総需要抑制だといいながら、あなたの農林省をして通達せしめられた十二月八日の農林次官の依命通牒はきびしいものですね。転用促進ですよ。厳正にやれとは言っておりますけれども、転用を促進してやれと、そういうふうに読み取れる個所が深い。この点について、いわゆる事新しく三十万ヘクタールというものを上のせをするのではない。従来の六万ヘクタールの上に若干上のせをするということであるならば、三十万ヘクタールの転用構想などというものは言わずもがなのことなんです。あなたがさようなことをおっしゃることは摩詞不可思議なことである。一転、二転、三転せざるを得なくなったのではないか。この点、真意を……。私は、いままでの経過から見て、農民も納得いたしませんし、農業団体や世論も納得いたしません。真意を伺いたい。  なお、大体、石油危機から生産の縮小、公共投資の抑制、不況が深刻化いたしますと、来年の二、三月には三十万人程度の失業者が私は出ると思う。これはもう報道関係も認めておりますが、特に臨時工、社外工、つまり兼業農民がその犠牲にならざる得ないと思う。そういう立場にあって農工両全的なことをおっしゃいますが、むしろ逆に、農地は転用を抑制して、帰農していく者に農地を保証し、農用地の拡大によって従来の自立農家の育成をあなたははかられなければならない立場であります。あるいはまた、百歩譲ったとしても、その三十万人も想定されるいわゆる社外工、臨時工、土建関係の、末端で苦しんでおる兼業農家に対して、安定した職場を確保されてこそ、私は、あなたの言われる農工両全というものは、ある意味においては若干の効果が期待できるんじゃないかと思う。どちらから見ても、私どもはあなたの真意を疑わざるを得ない。御所見を承っておきたい。
  130. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国民は住宅用地を要望しております。政府はこれに対して与えられるような政策を推進しなければなりません。  それから、農地は、現に農民の意思に反して生産調整ということで膨大な土地を遊休さしておるわけでございます。それで今度、四、五年やってまいりまして、今度は休耕補助金を来年から差し上げませんと、こう言っておるわけです。休耕補助金を差し上げませんが、転作するなら転作料金は幾ばくか出しますと。しかし、米よりも高く転作できるものというのは、イチゴとか、くだものとかあります、それは。しかし、それは全国農地の休耕面積を地域別にやりますと、できないんです。新潟県などはできないんです、何にも。豪雪地帯でございまして、豪雪単作なんです。米以外はできないんです。果樹をつくりますと、ちょうど実がなるころになると、大雪が降ると。水分が多いから根元まで全部裂けてしまって、絶対できないんです。そういう転作ができないんです。転作ができないから、割り当てをしても、裏日本側は——あなたも鳥取県ですから、そうでしょう。まあしかし鳥取はいいところですから、とにかく何かできますが、しかし、あそこよりも北のほうは全部できないんですよ、豪雪単作地帯は。そうしますと、結局離農するんです。これは明治十三年から私は統計をちゃんと持っておりますが、一次産業八〇・九%が四十七年には一四・八%に、年々一%ずつ減っているんです。確実に減っているんです。二次産業比率が六・五のものが三五・七になっている。三次産業は一二・六が四九・五になっている。これは世界的趨勢なんです。ここに各国の例が全部ありますが、ここは避けがたいんです、これは収入面からおいて。それは、あなたが今度一時的な帰休をする人に対してたんぼを与えるということを言いましたが、それは、いまの農地法や、いまの制度の中でもって、行ってすぐ農地が与えられるはずはありません。これはもう、農民が土地を持つという気持ち、それはちょっと来たものに与えるような、そういう簡単な状態でないし、第一、そういうところにすぐ行って収入を確保できるような状態でないことも事実で、そうじゃなく、いま七反歩や九反歩でどうにもならない人を三町歩、十町歩にしなければならない、営農規模を拡大しなければならないということをあなたもちゃんと指摘されておるじゃありませんか。そういうような状態において農地をどうするか、それから国民的な希望をどうするか、こういうことになりますと、実際通達にもございますように、国道の両側はもう排気排煙でもってどうにもならないということで、二百メートルは現行法のいかんにかかわらず農地転用を認める、こういうことになっておりますし、しかも、農民の中にも、何とかして先ほど述べたように一〇%の農地を公共用地や工場用地や住宅用地にして、そしてそこへ村も場合によれば移りたいし、そこで農外収入を得るような、子供を大都会に出さないで済むようなことにしたい、子供を東京の大学へ出すと一人も帰ってこない——一人もと言っちゃいけませんが、その大半が帰ってこないじゃありませんか。なぜならば、帰ってきても働くところがない、こういう現実に対して何かいい方法はありませんかということになると、いま黙っておっても年々六、七万ヘクタール、ことしは七万ヘクタールになるそうでありますが、これはもう転用しているわけです。そうすると、計画なく転用しているのだから、その四年分、五年分というもの、ほぼ三十万ヘクタールということを目標にして、まず農民、農協でもって、農協、市町村で、みずからのものをひとつ計画してごらんなさいと、計画してごらんなさい。それでは一年でもって三十万ヘクタール買えば確かにたいへんですが、あなたの言うように三万円なんて考えていないのです。私は三千円に考えている、十分の一に。反九十万円。これは公共用地の取得の平均価格以下ですから、九十万円ということを考えると、坪三千円ですよ、三千円で考えれば三十万ヘクタール、約三兆円になる。しかし、これも大きなものですよ、三十兆円にならなくとも三兆円になればたいへんなものです。しかし、これをいまのような状態でやれるわけはないですから、だから市町村と農協で話をして、農協と農民が一体にならなければ計画ができないから計画をおつくりなさいと。そして転用するとすれば、それを他に売るようなことをしないで、農協が、これを一時農協や土地公社、市町村や県の土地公社がこれを買っておいて、そしてそのままそれを農協にとにかく貯金しておけばいいじゃないか。そして年次的な造成計画を立てれば、それに新しい労働者財産形成というものをくっつけよう——あなたが申されたとおり、二十万ヘクタールというと、とにかく要らないものができる、二千万戸分できるじゃないか、そう考えてないのです。つくるならば百坪、百五十坪、二百坪、二百五十坪、五百坪で五百万世帯分を考えているわけです、五百万世帯分を。そうして、それは政府でもって、農協がやったものに対して利子補給は——金は動かさない、金を動かしたらインフレになるにきまっておりますから、だからそうではなく、政府が年度の末において補正をするときにその利子補給をすれば……。それは労働者財産形成と結びつく場合にはどうするかといったら、四十七年だったら四十七年価格に資金運用部の資金コストをプラスしたものでもって、地価がそのときによしんば三倍になっておっても、安くこれを与えるということが前提でなければ、財形貯蓄と結びつくはずはないじゃないか。そうすれば財形貯蓄のいまの労働省案は一八%の利息をつけて、その差額分に対しては企業負担をし、労働者負担を小さくして、企業者負担を大きくし、しかもその差額は政府が補てんせよということになっています、これは西ドイツ式です。これよりも土地にくっつければ、そうすれば十五年たてば百坪になる、二十年たてば百五十坪になる、二十五年たてば二百坪になると、こういうことができるんじゃないですかと。農民もそれを望んでおるんだから。ですから六万……。いや望んでないというのは独断なんですそれは。私も農民、私は望んでいるんだから、それを。だからそういう意味で(「農協はそういう意味では言ってない」と呼ぶ者あり)いや農協も言っているんですよ。この問題は何も思いつきでやったんじゃありませんよ。三年も四年も前から農協とも話し合いをし、それから経済団体とも話し合いをし、農業経済連ともあらゆるものと話しをして、そして土地政策というものの中の一つとしての一案を示したのでございますから、何も私は強行しようというのじゃありませんよ。ですから、これをやるのは農民と市町村と農協が主体にならなければこの事業はできないことでございますから、そういう面で検討を、私は一々人の名前を言いませんが、三年間かかってこの問題をやっているわけでありましてね。だから、そういう問題に対しては、私はこれにかわるものがあればまた別だと思いますよ。しかし、私はあらゆる面から考えて、農民のためにもなり、市町村のためにもなり、労働者のためにもなり、国土総合開発の上から均衡ある開発にもつながり、インフレはこれを抑制——こういうことになります。それで人がそこへ出ていけば、大都会の改造もおのずからできると、こういうことでございまして、広範な勉強のもとに考えておる構想であると、こう思っておるわけです。
  131. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 午前中の杉原君の質疑はこの程度にいたし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      —————・—————    午後一時八分開会
  132. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、補正予算三案に対し質疑を行ないます。杉原君。
  133. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 午前中の総理の答弁には納得できない部分がたくさんありますが、後ほどの農業の基本構想の問題等について根本の問題を締めていくことによって明らかにしていきたいと思いますが、その次の段階として農耕地の実態等について、これは倉石農林大臣に聞きたいわけですけれども、長いこと言っても始まりませんので、ここ四、五年間の農耕地面積、その中における、三年前から休耕田になっているわけですから、その辺の休耕田の実態等について報告をいただきたい。あわせて、休耕田の実態から、要するに来年度の問題ですが、それは一体どういう目標で、いわゆる復原の状態ですね、現在のところではどういうふうに判断しておられるか。そこがまあ総理大臣のつけ目ですから、その辺のところを数字的に明確に押えてほしいと思います。
  134. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お答えいたします。  生産調整の実施面積は、四十六年度以降おおむね五十四万ヘクタールないし五十六万ヘクタールの水準でやっておりますが、その中にありまして、転作面積は年々増大いたしてまいりまして、四十六年度の二十四万五千ヘクタールが、四十八年度におきましては二十八万四千ヘクタールになっております。  それから、いま御指摘のありました休耕面積でありますが、これにほぼ見合って減少を続けておりまして、四十六年度の二十九万四千ヘクタールが、四十八年度には二十七万三千ヘクタールとなっております。なお、このうち土地改良事業の通年施行分が年々約四万ヘクタール、これは含まれておるわけであります。それから四十九年度におきましては、休耕奨励補助金を打ち切りまして、転作奨励に重点を置いて進めることといたしておるわけでありますが、どの程度の数量の転作を見込むかということにつきましては、現在、米の需給動向、それから転作の動き等をよく勘案いたしまして検討いたしておる次第であります。  よろしゅうございますか。
  135. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 わりにそこらはっきりしなかったわけですが、ことしの現在、現在の休耕田があるわけですが、それは来年復原すると、その中に幾つかのパターンができてくると思うんです。総理大臣が一番期待するように、来年はそのままほっておきたいという農民もおると思うし、それを転作するという農民、それから稲作に還元するという——いろいろあるわけですが、その辺の分類を明らかにして、それに対する農民の意識の問題ですね、なぜ農民がそういうことを考えているか、その辺のところを、意識を裏打ちしてほしいんですが、何か、数字的にはむずかしいと思いますが、その辺の分析があればお聞きしたいと思います。
  136. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 転作の傾向につきまして申し上げますが、四十七年を申し上げます。住宅が一万九千ヘクタール、鉱工業それから発電施設が六千七百四十九ヘクタール、学校敷地が千百二十、公園、運動場用地、これが千百八十五、それから道路、水道、鉄道等の敷地が八千七百八十一、その他の建物施設が一万三百三十、それから意外に多いのが、植林が多うございまして一万六千六百ヘクタールと、こうなっております。  それから、いまの休耕等に対する意識、そういうことで、せんだって、御存じかと思いますが、全中でもそういう調査をいたしまして、全中の調査によりますれば、休耕田のうち稲作へ復帰するもの六〇ないし六五%、転作に向かうもの一五%、休耕田のまま、ないし転用されるもの、これが二〇ないし二五%となっておるようであります。  農林省でも、休耕に対する奨励補助金打ち切り後、これがどうなってまいるかという見込みにつきまして、市町村と農家に対する二つの調査を行なって、現在その取りまとめ中でございますが、中間的にその概要を申し上げますと、大体次のようでございます。  まず、市町村を対象に行ないましたアンケート調査、これは地域農業生産対策基本調査でありますが、これによりますると、四十八年度の休耕田について、四十九年度に稲作へ復帰するもの大体五八%、転作に向かうもの一九%、それから転用、不作付、これが二三%となっております。それから、全国から二万戸の農家を抽出いたしまして、普及員を通じて行ないましたアンケート調査がございますが、これによりますれば、稲作へ復帰するもの五三%、転作に向かうもの一一%、転用、不作付等が三六%と、こういう意識調査の報告が出ております。
  137. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 その数字は、私かなり重大だと思いますね、農林大臣。それで、特に普及員の調査によりますと、三六%内外のやつは、まかり間違えばこれは草つきになる場合があるわけですね。その他いろいろあるでしょうが、この三六%の数字をあなたは農林大臣として、日本の農政の展望に立って、これをどう理解し、どう指導していこうとするか、基本的な考え方でいいからお聞きしたいと思います。
  138. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 全体として、私ども、事情がだいぶ最近変化してまいりまして、よく御存じのように、本年飼料が非常に高騰いたしました。これは毎年アメリカの作物を当てにいたしておりましたけれども、御存じのように、ソビエトあるいは中華人民共和国などという国が大量な買い付けをいたしました結果、まあやや不況であったせいもありましょうけれども、ああいう状態になりましたので、わが国はその飼料の値上がり、非常に困窮をいたしましたので、政府のストックしております古々米まで出して値上がりを防ぐというふうな状態、ただいまの様子を見ておりますと、天候は昨年ほどではないようでありますけれども、やはりいままでのように、余った農作物は過剰だからというので、諸外国の援助に安く放出しておったというふうな、ああいう態度ではなくて、ある程度の経済的なそろばんをとりながら外国に出していくという傾向、何と申しますか、食糧ナショナリズムとでも申しましょうか、だいぶ余剰であるはずの国でも、いままでと違った傾向が見受けられる。そういうことでございますので、私どもといたしましては、やはりあとう限りの自給度を維持してまいりたいと、こういうことを基本的方針にしてやっておるわけでありますが、それにもかかわらず、もうすでによく御存じのように、われわれが、農業が一つの産業として成り立っていきますためには、規模を拡大して、そして経済的な立場を確固として農業というものをやってもらわなきゃならない、そのためには、やはり集約的な生産対策が必要でございますので、規模拡大に専念をしてまいりましたので——就業人口も御承知のようにどんどん減っております。しかるに生産はふえております。これはヨーロッパの一流国あたりの歴史と同じような歩みでありますが、それで、耕地面積も、御存じのように、たとえばいま五百八十万ヘクタールございますのが、五十七年を目当てにつくりました農林省のおよその指標を見ましても、五百二十万ヘクタール、その間に六十万ヘクタールの差が生じておりますが、そういうふうにして、経済として、産業として成り立つような農業を確立してまいらなければならないという、こういうたてまえでやってまいる。農協等においても、そういう方針でわれわれと協力いたしておるわけであります。
  139. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 すでに大蔵大臣の手で、農林省から提出された来年度の予算要求についてのいろいろ検討が始まっているわけですが、その下敷きといいますか、前提になるものとして、私、七月四日の農業白書の本会議質問の場合でも、前農林大臣にもその点を質問をして、答弁をいただいているわけですが、「農産物需給の展望と生産目標の試案」というのを昨年の十月お出しになったわけです。で、櫻内前農林大臣は、これに若干の訂正をすべき点があるということを認めたわけですが、その後の作業、農政審議会等で行なっていると思いますが、もうすでに、ぼくは政治家として判断した場合に、できてしまっている、これができない限りは予算要求などはできないのではないかという、まあ軽はずみな判断かもしれませんが、判断をしているわけですが、その作業過程はどうなっておりますか。もしそれが進行中ならば、少なくとも、米はどうか、生産目標、小麦はどうか、大豆はどうか、この三つぐらいは、四十九年度の生産目標、それはまあ十年間にわたるわけですが、とりあえず四十九年度だけの生産目標ぐらいは中間発表という形で明示してもらいたいと思うが、どうでしょうか。
  140. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいまお話のございました、昨年の十月発表いたしました五十七年目途の長期計画でありますが、あれを農林省が出しまして、後に農政審議会の需給部会等、もうたいへん熱心に検討していただいております。それで、そういう方々の報告等、傾聴に値するものもございますので、こういう長期の見通しにつきましては目下検討中でございますが、したがって、そういうものが私どものほうでできますならば、これをもちろん公表いたしまして世に問うつもりでありますが、いまそういうことで、鋭意そういう参考になる方々の御意見も拝聴しておる最中であります。
  141. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 ここに、農林省から出された予算委員会の資料の中の第一項には、昨年度——ことしの取れ高が一千二百十五万トンであるという数字も出ておるわけですが、なおかつ需要量の問題として、四十九年度は千百六十万玄米トンと、こう表示されているわけですから、そこまで出しておって来年の生産目標が立たないというのは、論理的にもおかしいと思うんだけども、どうしても明示できませんか。それと土地との関係がからんでくるわけですけれどもね。
  142. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど申し上げました、昨年十月に農林省が発表いたしましたものには、御存じと思いますが、米は一〇〇%、野菜は約一〇〇%、果実は八一ないし八八、鶏肉は約一〇〇%、肉類、これは鯨肉を除くわけでありますが、八二ないし九七%、牛乳、乳製品が八七ないし九七、砂糖は二六ないし二八、小麦が八、大・裸約二八、これも少ないわけです。大豆が一〇、こういう目標を一応発表いたしております。
  143. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それをあれこれ言っても始まりませんが、そこで、今後の生産目標等を判断する一つの大きな基礎になるものとして、食糧の自給率の問題になります。いま、米は一〇〇%と、こう言われたわけですが、その自給率のまた根本を突っ込んでいけば、国民の食糧、食べ物の、まあ主食といいますか、カロリーの問題になってきますが、カロリーを農林省はどれくらいに押えているのか。それから、東畑精一さんを会長とする何とか諮問機関等は三千カロリーを出しているわけですね。わが党は二千七百カロリーを出しているわけですが、農林省はどれだけのカロリーを押えて、来年の、いまおっしゃったようなことなどについての生産目標を立てようとしているのか、それがぐらついては予算要求にならないものですから、その辺のところ、はっきりしてください。
  144. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは本日決裁いたしまして、これから発表するものでありますが、一番新しいものを御報告申し上げます。  私どもの計算しております需給表の要旨でありますが、カロリーは、一人一日当たりの供給熱量は二千五百十三カロリー、これは沖縄を含むわけで、前年との比較は、沖縄を含まないもので見ますというと二千五百十六カロリーでございますので、前年度より三十八カロリーの増加となっております。この増加は、穀類の減少の鈍化いたしましたのに加えて、油脂類、油でございますが、油脂類、砂糖類、果実、肉類が増加いたしてまいったためであると見ております。  なお、わが国の一人一日当たりの供給熱量は、欧米諸国の約三千カロリーに比べますならば、かなりの差があると申せますわけであります。  そこで、主要カロリー供給源を見ますというと、穀類などのでん粉質が五三%、これは四十年度は御存じのように六三%を占めておったわけでありますが、今回は五三%、欧米諸国の三〇%に比較すると、穀類から取りますカロリーはかなり高くなっておるわけであります。それからたん白質でございますが、一人一日当たり供給たん白質は七十八・二グラムでございます。前年度より〇・四グラムの増加となっております。西欧諸国は八十ないし百グラムでございますが、わが国のこの増加は主として肉類の増加によるものでございまして、鶏卵、牛乳、乳製品、魚介類は停滞的でございます。たん白質のうち、動物性食品の割合は四三%、これは四十年度には三六%でございましたが、今回は四三%に高まってまいりましたが、穀類、豆類等の植物性食品の割合は五七%でございまして、四十年度六四%と、依然としてこの点が高いことは変わりはありません。
  145. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 現在の答弁の中で、五三%のカロリーは穀類で日本人は消化しているという答弁ですから、そうしますと、米とか麦とかということになるわけですね。  そこで、先ほどおっしゃったように、米は一〇〇%国内自給ということですが、これはまあそれでいいと思います。総理が言っている先ほどの答弁の中で、日本の主たる食糧は国内で全部まかなうという先ほど発言があったわけですよ。しかし、私、ちょっとその辺、正しい客観的な資料、考え方じゃないんじゃないか。というのは、小麦はたくさん輸入しているわけですね。いわんや大豆もそうでしょう。そういうことだから一〇〇にはならぬわけですが、その点、総理わかっておって言われたんだろうと思うけれども国民はやっぱりそう思い込みますからね。一〇〇%、ほんとうに一〇〇%なのか。農林大臣答えるのでなくて、これは総理のほうで答えてもらいたいと思うんですよ。総理は、あなたの論文には八〇%と書いているんですよ。これはおそらく目標だと思うんです。ことしの状況では八〇%になっていないはずです。でありますから、来年度ではないだろうと思うけど、先ほどの答弁の中で主食は国内でめんどうみるという一つの発言があったので、それはもっと客観的にどうなのか、ほんとうなのか、口がすべったのか、あなたのビジョンなのか、その辺をはっきりしてください。
  146. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたが述べているようなことを私もちゃんと述べております。国内でできるものと国内でできないものとありますと。国内でできないものに対しては長期輸入と開発輸入を考えておりますと。できる米でも、外国において、低開発国等に対して援助をしなければならない部分もございますから、そういう面からの開発輸入、開発も考えておりますと言ったんですから、主食と言った中に——まあ、主食といっても一ぱいありますから、米はと、こう言うべきだったと思います、これは不足のときは、めん類も、ジャガイモも主食だったわけでございますから。そういう不完全なことばなら訂正いたします。米は一〇〇%。そして他のものについても、国内でできるものに対しては自給度を高めるということでございますから。
  147. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 その米以外の問題ですが、これは農林大臣からも明確な答弁をいただけないわけですがね、小麦、大豆の問題。これは前櫻内農林大臣——大豆は現在十万トン内外だと思うんですがね、国内生産は。これでは足りないと、十年後は五十二万トンだと言っておったんですけれども、とうふの値上がり等もあったもんですから、できるだけ早い機会に、少なくとも来年度は四十万トンほどを目標に大豆の生産を奨励したいという、希望的な意見かもしれませんが、申し述べておったわけですが、いま総理の答弁では、それが答えになっていないわけですから、これは農林大臣のほうでその点は受け継いでいると思う、事務引き継ぎしていると思うから。しかし、なおかつ、私の期待としては、四十万トンではみそ、しょうゆ、もやし、納豆などは完全に消化できますか、と思われる。だから、もう少しその辺のところを念には念を入れて答弁してほしいと思うんです。
  148. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど、私が五十七年の見込みを農林省でつけておりますものを申し上げましたのを、大ざっぱに言ってほとんど一〇〇に近いものを期待して、それに向かって進もうといたしておるわけであります、砂糖のようなものは別でございますが。  そこで、先ほども私ちょっと申し上げましたように、当てにしておりましたアメリカの大豆が昨年のようなことになって、これはたいへんなことだと、実は私ども党の政務調査会におりまして、非常なショックを実は与えられました。したがって、これはやはりことしから休耕がなくなるんだから、これへひとつ力を入れて、日本で必ず使わなきゃならない粗飼料をここでつくることにすべきであるということで、予算要求をいたしまして、ことに地域の方々にそれぞれいま相談をいたしておるところでありますが、転作では大豆、麦、そういうものをできるだけ増産してもらうように計画を進めておるわけでございます。  そこで、それと並行して、今度は海外でわれわれと一番提携のできやすい国、しかも相手方の経済復興にもなり、また相手方の農業用の物資も製造することの一方においてはお手伝いにもなると同時に、わが国へコンスタントに、一定量の飼料作物が一定のきまった単価で定期的に入ってこれるような計画を進めるべきではないか。その二つを入れて自給度を高めてまいりたいと、こういうことを考えているわけでございます。
  149. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 先ほどの農林大臣の答弁の中で、農作物が余った場合のことを——開発途上国その他への援助のことだろうと思いますが、それはまあ食糧ナショナリズムとか、新しいことばをお使いになったわけですがね。それはこういうことと理解していいですか。たとえばいまFAO事務局長あたりが提起している世界的な備蓄の問題、別な表現では世界穀物銀行をつくれというような話が出ているわけですがね、そういう思想、そういうシステムと、いまおっしゃったことと関連しているのかどうか。  もう一つ、その場合に、世界穀物銀行等の設置の構想が具体化しているのかどうか。また、意図的には農林省はどう理解し、考えているのかどうか、それがあったら御報告を。
  150. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私、説明がへたなものですから、誤解された点があるようでございまして、私が先ほどショックを受けたという話、それから諸外国の動きを見ておりますと、何となく食糧もナショナリズム的なものの考え方で扱うようになってきたなあと。たとえば、御存じのように、アメリカ合衆国などでは、その昔は、小麦が余って価格が暴落するというので、農業を救済するために、川原で焼いてしまって価格の維持をしたというふうな話がございますが、ところが、今日ではFAOの話に出てくる話の傾向などを読んでみましても、やっぱり外へ出すものはある程度の経済価値を計算して出していこうという思想が国際的にあるようであります。そういうことを私どもは考えておかなければならないのだ。したがって、もちろん外国から輸入できるものはするのでありますが、われわれのほうで自給自足の策を講じなければならないと、こういう意味のことを申し上げましたのであります。  もう一つは、国際協力の話は、いずれ私どものほうでお願いしなければならぬと思っておりますが、開発途上国などで、いまわが国から技術的な協力を受けてやっておる国がございます。そういう各地、世界の四カ所に調査員を派遣いたしまして、北米、中南米、それから東南アジア諸国、そういうところにいろいろ調査員を派遣して研究しておるわけでありますが、そういうところで、技術と資金がこちらから供給されれば、それによって相手方も農作物ができていいのではないだろうか。そしてその開発輸入ということばに誤解があってはならない、困るのでありますが、そういうことよりも、むしろ向こうもいいが、こちらも、そこでできた生産物を安定的に国内へ持ってくることができるようにすれば、一挙両得、両方の国がいいのではないだろうかと、そういうようなことでひとつ自信のある供給をいたしたいと、こういうことを考えておるのでありまして、食糧の輸出などというふうなことは少しも考えちゃおらないわけで、その点、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  それからもう一つ、穀物銀行説がございまして、これは経済界の方々のお集まりの会、それから専門家の御研究の会で、たとえば東畑精一先生が会長をしていらっしゃるような会等でもそういう御意見が出ておることを聞いております。しかし、私どもそれをやるにいたしましても、備蓄それ自体は私どもとしてはあとう限りやっておくことが必要であるとは存じますけれども、いざ穀物銀行ということになりますというと、そのサイロみたいなもの、そういう貯蔵の場合にどういうふうにするか、それからまた、その貯蔵しておく場合には品質の変化もございますし、それから、したがって経済的価値が下落してくる、それからまた、そういうことに対して金利もだいぶ負担がかかってまいりますし、そういったような実際にやることを考えてみますというと、なかなか問題が多いようでございまして、しかし国際的に備蓄の考えも出ておりますので、私どもはそういうことについて研究は進めておりますが、なかなかいまのところは結論を出しにくいという次第であります。
  151. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いま大臣の答弁の中で東畑会長の機関の話が出たわけですが、正式には「国際化に対応した農業問題懇談会」、会長東畑精一ということで、ここではすでに「農業・農村整備近代化に関する提言」というので大臣の手元に出ているわけですが、十分省内では御検討いただいたと思うのですけれども、この中で気がかりな問題がたくさんあるわけですね。一つは、登録農業経営者という、農民は三十万か、ないし四十万にしぼる、中小零細農業はみなやめてしまえと言わんばかりの提案をしているわけです。しかし、一面また、国家の安全上自給率をもっと向上してほしいと。私たちは九〇%、田中列島改造論は八〇%、現状はもっと低い、こういう状況なんですが、この提案では自給率向上というので数字は示してない。あるいは「均衡のとれた価格政策」、これはまあ抽象的ですから何とも言えませんが、一番ぼくは心配しているのは登録農業者の問題です。これは列島改造論と若干重なるところがあるのです。重大なところなんですが、それはどうです、農林省ではどう理解しておりますか。政策に移す意図があるなら、どういうふうに移そうというのか。
  152. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) あの御決定の御提言もいただいて、よく私も拝見いたしております。なかなか御勉強なさっていらっしゃるなあと感心いたして拝見したんでありますが、まだこれについて農林省として意見を申し上げるべき段階に来ておりませんで、それぞれ分担して研究をしております。
  153. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでは今度は省内の問題に移りますが、農林省官房企画室からこういう膨大な本が出ているわけですね。これは「世界の食糧需給の現状と展望」というのでありますが、これは、はしがきを読んでみても——全文をまだ目を通す時間がございませんが、結果的には、これは農林省なり大蔵、経企、気象庁、それぞれ二十三名の団でヨーロッパ、アメリカ等を回ってきた事情をここに書いてあるわけですが——ほくら、こういう出張はちょっとないと思うんですがね。こういう出張をして現にそれを見てきたならば、アメリカの農業政策はこうなんだ、フランスはこうなんだということがわかってきたならば、そのはだで感じたなまなましいものをやっぱり二十三名で集まって集約して、この中から日本の農業にかくあるべきだという提言をするというのが、回った視察団のぼくは任務だと思うんですよ。でありますから、それはここに書いてないのだと、実は口で言えばこうなんだというのがあったら、それを農林大臣から聞きたい。こんな膨大な、結論が出ていない。特にアメリカの農業なんかずばり出ていますよ、これ。しかしキッシンジャー構想と若干違っている。しかしながら、そういう点は農林省はどういうふうな検討をしているのか、これは局長クラスでもいいですから、明確にしてください。
  154. 三善信二

    政府委員(三善信二君) いま先生の御指摘の海外農業の視察でございますが、御承知のように、世界四地域に対して各省でもって編成しました調査団を派遣いたしたわけでございます。その報告書がいま先生お手持ちのこれだろうと思っております。私ども、これ、調査団を派遣いたしまして、帰ってきまして、それぞれ報告書を持ち寄り、一応の概況としてこれはまとめたものでございます。この報告書に基づきまして、実は先ほど来先生が御指摘になっておりました農政審議会で生産目標等を審議しているかというお話もございましたが、そういったところでこの調査の報告を具体的にいたしまして、今後の農業の需給の見通しあるいは生産目標、それに対して新しくどういうふうに持っていったらいいかというような参考資料にもいたしております。また、私ども内部的には、この調査報告をもちまして、今後の世界の食糧の需給が一体どういうふうに、短期的に見ればどうだ、長期的に見ればどういうことだということの結論を出しまして、それに基づいた具体的な農業政策を打ち出すということで考えているわけでございます。予算的にも、その他の今後の施策の中にも、この報告を重点的に採用いたしまして、それに基づいてそういう施策を今後打ち出していくというふうに考えております。
  155. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それで、官房長ではいいでしょうけれどもね、しかし従来、日本の農政、日本の食糧確保の大事な本山ですから、非常に御苦労なさっていると思うのですよ。そこへこういうものが入ってくると、どんぴしゃり、それが政策に乗り移っていかなければならぬのが、これがたてまえだと思うのです。特に総理のようにスピードを大事にする部下としては、ちょっとのろ過ぎる。  そこで私は、ここで問題を詰めていくのは、世界の農業、世界の食糧、それが今日的な状況の中で、どう理解するかという——ぼくは冒頭に申したように、世界の食糧は危機なんだ、特に石油問題とからんで、キッシンジャーが時には非常な危険な発言をしている。事と次第によっては食糧で押えると、世界を支配すると言わぬばかりのことを彼は言っている。向こうの農務長官は、そうじゃいけませんよとなだめている、こういう事情等もありますからね。事の次第によってはそういうことは可能なんだ——可能なんだということは、客観的な世界の食糧状況は非常に危機に直面しているとぼくは理解している。そのことがこの報告などの中で読み取れなかったかということなのです。読み取ったとすれば、食糧危機を、なぜ食糧危機なのか、どこに問題点がある、そうすると国内の生産はどうあるべきかという農林省の対応が出てこなければいけない。その辺のところをはっきりしてほしいから、ぼくはこの種のことを言っているのだが、大臣、少しでもその点について見解を述べることはできませんか。世界の食糧はぼくは危機だと言っているのです。あなたはそうでないならそうでないと、ここで議論は分かれますから、それでやめましょう。食糧危機だというぼくの認識は間違っていれば、はっきり間違っている、こう答えてもらえばいいわけなんです。
  156. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 危機ということばがなかなかむずかしい次第でありますが、先ほど来私が申し上げておりますように、FAO世界食糧農業機構、あそこで先般も会合がありまして、レポートを出しております。そういうようなものを、私、農林省に今度入ります前でありますが、読んでみて、前にわれわれが感じておったようなときとだいぶ世界の人のものの考え方が変わってきたような感じを受けたのであります。そこで、できるだけ私どもは近隣と緊密におつき合いをすることはもちろんのこと、国民の主食でありますので、食糧は、これはぜひできるだけ自給度を高めるべきである、こういう観念に立っておるのでございまして、その点は一農林大臣だけではございませんで、政府がそういう考え方であると申し上げて差しつかえないのでありまして、そういうたてまえで農政をやってまいるつもりであります。
  157. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そこで、日本の農政の今日まで進められてきた基本路線というのはあると思うのです。ぼくの言ったことを間違いなら訂正してもらいたいと思うんですが、それは三つから構成されている。一つは、国際分業体制ということが大きな基本になっているように思います。だから、小麦が足らぬけりゃアメリカから買えばいいじゃないか、大豆が足らなければアメリカから三百数十万トン買えば何とかなるじゃないか、そうして、まあ安いからいいじゃないか、こういう一つの思想、それから経済効率の面からすべて考えられている。そこは農工両全、まかり間違えば工工工になってしまうのですね。そういったような点。それから労働者の確保の問題で、農業近代化、集約化という形の中から農民を工場へどんどんと送り込んできたという経過、こうした経過が今日の農政の大きな流れであるとぼくは理解します。それが間違いならあとで訂正してもらいたいと思うのですが、ただ非常に心配するのは、減反、休耕すでに三年間、そういう中から、私の県の一高岡市という市なんですが、市が調査をしたいろいろなことから見ると、休耕田二百七十三ヘクタールのうち四十六ヘクタールが復帰不可能であると、そういうような状態一つあるということと、あわせて農民の意識の問題。それから休耕制度から農民はどういうふうに意識が変わってきたかということなんですが、農家の兼業化あるいは出かせぎが、だんだんとこれが定着してきたという事実。これがよいか悪いかの評価は別ですが、私はあまり芳しいこととは思わない。それから後継者が足らなくなってきた。農業生産意欲が非常に減退をしてきて、先ほど大臣が引用された全国農協中央会の数字を見ましても、休耕田は草つきにしておくというのが相当、二五%からあるわけですからね。これはたいへんなことなんですよ。土地は金なりなどと言っておりながらもこういう状態を生んできているのは、田中さんの思うつぼにはまるでしょうけれども、しかしながら、農業だと、農家だと、農民だとおっしゃるけれども、ぼくだって水のみ百姓の子なんです。ほんとうに私の気持ちからも、いたたまれない気持ちなんです。二五%も来年も草つきにするなんというような気持ちは、これは、私はがまんできません。そういうことなどなぜ起こったかということなんです。その問題を、先ほどの私の言う農業の基本的な路線と、そうした結果を生んできた関係とは因果関係がある、こうぼくは思うのですが、これらに対して間違いかどうか御判断をいただくというのはかっこうの悪い話ですがね、農林大臣、どうですか、意見ありますか。
  158. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまいろいろお話がございましたが、少し私どもと感触の違うところもあるかと思うんでありまして、まず、たてまえとして国際分業化というのは、農政の上において全部そういうメカニズムを立てて、その中で動いていこうというようなことを考えたことはおそらくないんではないかと思います。つまり、もうすでに御存じのように、われわれがいままでの状況から判断をいたしましても、たとえば麦にしても、それから砂糖にしても、わが国ではいかんともしがたい、そういうようなものについては常に連携を保っておる国との協力関係で輸入を当てにするということは、これはあり得るでありましょうけれども、わが国の農業を全然無視してやっていくような考えをおそらくだれも持ったことはないんじゃないかと思っております。まあ、そういう説をなす者も世間にあるかもしれませんが、少なくとも私どもはそういうことを考えておりません。ただ、農業も産業でございますし、したがって、農村の方々も近代化してまいります社会人の一人として、やはりある程度の近代的生活を営めるようにしてあげなければ、そこに落ち着くはずはないのでありまして、したがって、そういうことを考えてまいりますと、農業者の所得がある程度他産業と比較して劣らないだけの所得を得せしめる努力をしてまいらなければなりません。したがって、そういうことを考えてみますというと、必然的に農業も一つのりっぱな産業でありますので、規模を拡大して、そして能率をあげて農業が産業として成り立つようにしていくということの結果、先ほど総理大臣からもお話のありました諸外国の例も示しますように、たとえばイギリスなんという国は戦前農業はかなりありましたけれども、ほとんど、ああいう経過でありましたが、戦後全体の就業人口の四%足らずかと思いますが、戦前に劣らないような生産力を回復しております。そういうことを考えてみますと、そういう産業としての農業に太刀打ちのできるような農業をつくり上げていかなければならないというのがわが国の農政の中心的な課題であったと思います。ところが、杉原さん御存じのように、そういう傾向は他の経済が発展していくのと並行して出ていくものでありますからして、そこで、労働人口——農業の就業人口が減っても生産は落ちないと、こういう農業が育ってきますというと、そこで小さな畑しかお持ちにならない方は兼業農家として出てこられると、その兼業に現金所得を与えて、そしてなるべく離村しないようにということで先年お世話になりました工業——何と申しますか、法律の名前は忘れましたけれども、農村に公害を伴わないような産業を分散してまいることのできる、助成措置のできる法律どもつくっていただきましたのも一つはそういう趣旨でございまして、農村を荒廃させないようにしながら、そして余っておる労働力に現金所得を得てもらって、そして地元の若者はできるだけ地元の産業で働いていただくようにすべきではないかと、こういうようなことを考えてやってまいったのでありますので、人口が減ったり、それから一戸当たり、つまり農業の一つの単位の耕地面積がぐっとふえてきたりするのは、もう近代的農業が産業としてやっていくためには必然的な傾向でございまして、そのことは杉原さんも御同感だと思いますが、あえて私どもは農業を小さくしていこうとか、無視していこうとかいうことではございませんで、全体の産業の運営の中で農業のあるべき姿というのはそういうことになるのではないだろうかというふうに考えているわけであります。
  159. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 昨年アメリカが小麦が二千三百五十万トン余った、ところがソ連が足らないので千百万トンこれを購入したという、このやりとりがありますけどれも、この中にニクソンとブレジネフとの関係があるわけですが、イデオロギー的には田中さんとぼくとほど違うわけですね。そういう、違いながらもこれが仲よく握手をしなければならぬところに背に腹はかえられないという問題がある。こういう中にもやはり世界の食糧の問題というのは、ときにはイデオロギーを越え、大きな国境を越えるような課題になりますので、今後の食糧政策をなさる場合には、やはり備蓄をも考慮し、かつまた主食をほとんど、総理が言ったように一〇〇%国内自給のできるような農業体制をとることが好ましいと、こう私は思います。  そこで、非常に心配しているのは、先ほどもちょっと触れたように、休耕田等々からあらわれた農民の農業に対するプライド、意欲、そういうものがすこぶる減退をしている。こういう状況下にあって、農業後継者の問題に移るわけですが、七月四日の農業白書の質問のときには、奥野文部大臣は、高校卒業生、農業系統卒業生就職二二%という非常にさみしい、悲しい数字を明らかにしたわけですが、その後農林省は、来年度の高等学校、小中教育等を通じて農業後継者育成についての教育上の新たな展開と申しますか、ビジョンをお持ちであるならば明らかにしてほしいと思います。——これは農林大臣でなくて文部大臣です。
  160. 奥野誠亮

    国務大臣(奧野誠亮君) 先ほど二二%という数字をおあげになりましたが、農業高校の中には、農業土木でありますとか、食品製造でありますとか、そういう学科も含んでおりますので、これをもう少ししぼりまして農業自営業者養成学科について見ますと、三三%になっておるわけでございます。それにしましても低い率であることは、申し上げるまでもないことだと思います。  ことしから高等学校の教育課程の改定を行なったわけでございますけれども、職業教育につきましては、特に知識、技術の修得につとめるというようなことで、実験実習の充実に配慮をいたしてまいりました。同時に、農業につきましては、特に昼間のみならず、早朝、夜間にわたる自然の変化に応じて、土に親しみ、生命を育てる教育を行なうことが、農業自営者の養成については特に重要なことだと考えておるわけでございます。そういうことから、宿舎を持った教育ということに力を入れたいということで、寄宿舎と大型の農場を持つ自営者養成農業高校の整備拡充につとめてまいりまして、現在三十五校が整備されているわけであります。  同時にまた、農業高校を卒業しまして就農いたしました者が、農業経営のかたわら継続して教育を受ける、的確な判断力と高度な経営能力を身につけまして自信を持って農業に従事できますように、農業特別専攻科を農業高校に併置するということにいたしたわけでございまして、現在八学科ができておるわけでございます。将来、こういう面につきましてさらに一そう拡充をはかりながら、農業自営者の養成に教育面からも力を尽くしていきたい、かように考えているところでございます。
  161. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 先ほど手元がちょっと混乱して数字を述べなかったんですけれども、去年の八月の全国農業会議所実施の「農業者青年の意識に関する調査結果概要」というのがあるわけです。これによりますと、農業生産への参画の動機ですが、「やりがいがあるから」というのは二五%、「すきだから」が一七・二%、「都会で暮らすのはいやだから」というのは五・六、「他にだれもつかないから」が四六、「他に働くところがないから」というのは二・九。だから、これはやっぱり意識の問題になってくるわけですね。  私この間、選挙中に一農村へ入りまして、約百頭ぐらいの牛を養っている青年を見つけまして、全く感激して握手し抱擁しました。そういう青年を見つけることは、暁に星を求めるよりはるかに困難です。そういう状況にあるということは、教育も一面責任があるといえば言えるわけですが、根本は、大きな農政の今日までの流れがあると思うのです。でありますから、文部大臣としてはたいへんだと思います。たいへんだと思いますが、大きくくふうをこらしながら、農村に農業従事者が定着するような今後の努力を、私はあなたの意見を聞く以上にこれを希望したいわけですね。そのことをあえて申し上げて、その件の質問は終わります。  次に問題は、午前中に申したように第二の大きな問題に展開をいたしますが、油の問題で、先ほど鈴木さんへの答弁でかなり明らかになりましたから私は重ねて質問をいたしませんけれども、ただ、油の問題で、だいじょうぶだ、まかせておけというような印象をわれわれは受けたわけです。しかしながら、しかしまた節減しなさいよ、農林省から通達が出たぞ、こういう話があったわけですが、今度出される石油需給適正化法案という中で、農民の皆さんよ、安心しなさいというのは、第何条のどこに該当するのか。それを提案者のほうから聞きたいと思うのです。
  162. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 第十条で、公益性の高い事業部門につきまして優先して石油製品のあっせんをするよう、石油の団体に通産大臣が指示することができる。第二項で、需要者を監督する大臣は、通産大臣がそのような指導を行なうよう要請することができるという規定を盛り込んでおる次第でございます。
  163. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 通産大臣が答弁しなかったわけですが、どういうつもりで答弁しなかったかわからぬが、しかし、これはこの額面どおり信用していいですか。政令段階で何かその辺テクニックが入ったとかというようなことなどないのですか。若干いまの答弁には幅があるような気がするのですが、だいじょうぶですかというのですよ。先ほどの鈴木さんへの答えにはだいじょうぶだと言ったのだが、第十条ではそれを保障する、立法的に。そういうふうなとらえ方をしていいのかどうか。通産大臣、答えてくださいよ。   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕
  164. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第十条を見ましても、「一般消費者、中小企業者及び農林漁業者」と特に例示の中に入れておきますのは、農林漁業を重視しているからでございまして、この法律全体が国民生活安定と国民経済の円滑な運営ということが目的でありまして、国民生活の安定ということに一番かかってくるのは食糧とか農林漁業関係のおやりになっていることでありますし、国民生活安定も、ひいては農林漁業のようなものがしっかりして配給されていなければできないわけであります。そういう意味において、国民生活及び国民経済の基礎構造として私たちは農林漁業を重要視して、これについてはわれわれは責任をもって配当するように考えておるところでございます。
  165. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでは次の問題に移ります。  石油がこのような事情にございますから、電力等に対する石油の配分等はかなり規制をするということは伝えられているとおりでありますが、これで非常に心配するのは、ないから悪いので、がまんしろという話になりがちになる。そこで、実は政府委員にもちょっとお願いしたのですが、きょうまだ手元に出ておらないのですが、四十五年度を起点として五十二年度までの間の九電力の燃料の、特に総合S分の推移を通産ではちゃんと握っているはずです。それは、ここでごらんにならない方には理解しにくいのでありますが、その点は守りますかということです。守れるか、守るかということなんです。  おわかりにならぬのならちょっと数字だけ言いますが、たとえば九電力のうち、平均しますと四十五年度はS分のパーセントは一・五八%、五十二年には〇・二九%になるわけです。このような形の方向で行政指導を強化して進められるかどうか。私は、悪かろうで、このことによって亜硫酸ガスが煙突からいままでのように、期待した住民のそれが裏切られてどんどん出る結果になる、このことをおそれるからこういう質問をしているわけですから、その辺のところをはっきりしてください。
  166. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法律できめられた規制は守っていくつもりであります。たしか私の記憶では、アメリカが〇・〇三PPM、日本が〇・〇一七PPMの基準であったと記憶しております。そういう法律できめられた基準は、もちろん守っていくつもりであります。
  167. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 と申しますと、四十八年度は一番S分の多い油を使っているところは一・四〇、残念ながら私の富山県ですね、北陸電力です。それで出る亜硫酸ガスの量は、脱硫装置等の問題はありますけれども、これは点検した結果どうなっていますか。これは大臣じゃなくてもいいと思います。だいじょうぶですか。この規制どおり守っていますか。
  168. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 現行法令にきめられました基準を守っております。いま私の手元にございまする数値で、これは九電力会社が使用いたしまする各種の燃料を全部総合いたしまして、重油換算にしたベースで申し上げますると、四十七年度がサルファ分、これは実績でございまするが、〇・九五でございます。それから四十八年度の計画はこれをかなり落としまして、〇・六九という計画で、排煙脱硫を実施しました後のべースでいいますと〇・六八でございます。
  169. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 その点は答弁を信頼したいと思いますが、ただ、そろそろ油の問題がかまびすしくなると、実業界からも、あちらからもこちらからも大臣のところへ、総理大臣のところへも来ていると思いますが、どうかひとつ公害基準を緩和してくれぬかと、こういう要望が出ていると思います。たとえば東洋工業の松田社長、あるいは昭電、住金等々から、低硫黄の問題その他についてひとつ何とかしてくれないかという要望が出ていると思いますが、その辺は現状はどうですか。通産大臣、来ておりませんか。あなたのところへこれは集中すると思いますが。環境庁かどっちか知りませんけれども
  170. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 口頭で、なかなか守ることはむずかしいというような話はありますが、正式に文書をもって陳情書が来ているということは、まだありません。
  171. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それは口頭で参っておろうと文書であろうと、私は問題でないと思いますが、その辺のところは政治的にどう判断しますか。ごもっともだと——。どうですか、その辺は。
  172. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油の規制をしてまいりましておりましても、法律できめられた基準は守っているつもりでおります。
  173. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それも信じたいと思います。ただ、よく皆さんは、すぐ右へならえされるわけですが、アメリカでは、御承知のとおり大気清浄法の改正が行なわれつつある。上院を通ってしまったから、十一月二十日に。そうしますと、これが変な手本に、モデルになっちゃ困りますのでね、その辺のところお調べになっていると思いますが.実情を聞くと時間かかりますけれども、これは環境庁かどっちかで調べていると思いますが、大気清浄法のアメリカの改正というのは、どういう点のどのような改正なのか。若干、私たちこれからの警戒心を強める意味においても展望を知っておきたいと思いますが、その点はっきりしてほしいと思います。
  174. 春日斉

    政府委員(春日斉君) アメリカにおきましては、最近石油危機対策立法といたしましてエネルギーの緊急法案、ナショナル・エナージー・エマージェンシー・アクトというものが連邦議会に上程されております。先ほどの御指摘のように、十一月二十日に上院を通過したと言われております。  この法案の中には、従来大気汚染防止の観点からいたしまして低硫黄重油を燃料として使用してまいりました工場等、特に火力発電所が中心でございますが、これに対しまして石炭等への燃料転換を命ずる権限を大統領に付与する旨の規定が置かれておるわけでございます。この大統領によります燃料転換命令に服する結果、大気清浄法、クリーン・エア・アクトでございますが、これに基づく排出基準等がどうしても守れなくなった工場等につきましては、当該規制措置の適用を一時的に停止することができる権限を環境保護長官に付与する旨の大気清浄法の一部改正規定が、エネルギー緊急法案に置かれておるわけでございます。ただし、この場合でも、当該地域住民の健康に緊急かつ重大な影響を及ぼす場合は、これは当然除くということが明記してございますし、それから、期限は限定してございます。  で、いま申し上げましたように、この法案は、重油から石炭への燃料転換というアメリカの一つの大きな命題に伴いまして、硫黄酸化物や粉じんの排出増加があるわけでございます。石炭の場合は重油と違いましてはるかに多いというようなことがございまして、現行の大気汚染防止規制に違反することとなる発生源に対しまして、厳格な制限のもとで一定期間の規制免除を与えようとしているわけでございまして、個々の発生源ごとにケース・バイ・ケースでの判断のもとに行なわれるものでございますから、排出基準全般を緩和すると、こういったものではございません。また、排出基準の上にございますいわゆる環境基準につきましては、何らの変更も加えられるものではないわけでございます。なお、この法案は、今後の下院での審議等を通じまして内容に変更が加えられることも、もちろん予想されることをつけ加えておきます。
  175. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それは、それこそ心配せぬでもいいことを心配しているようですけれども、ただ、通産大臣の先ほどの発言を非常に大事にして、今後ともそうした環境庁との連携のもとに、その種のことが起こらないように十分の配慮をしていただきたい。こういうことでその問題は一応とめます。  続いて通産大臣、あなたの所管の中で、どんどんこのごろ爆発しますな。去年の、この間資料をとったのでは、十一月からだけでも十六件。この間、鹿島のコンビナートにおいて旭電化が爆発しました。川崎で、この間また何か鉄鋼関係でノロが流れ出した。もう、ずいぶん多いのですね。一々どれがどうだ、これがどうだと聞いているいとまはございませんが、一番新しい鹿島コンビナートの爆発について、最終的な点検の結果、原因は何か、それでそれに伴う通産行政指導の面ではどの辺が弱かったか、今後どう強めようか、そういうことを若干お聞きしたいと思います。
  176. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近のコンビナートの事故の原因は、出光、大阪石化、チッソ、信越化学あるいは日本ユニカー、東洋曹達、いろいろ見ておりますと、大体誤操作が一番大きいようです。それから点検監視の怠慢、異常事態における判断の不適切ということが一番多いようであります。  それで、旭電化鹿島工場の場合は、十二月四日午前九時三十九分に起こったのでありますが、農薬中間体物質であるクロルメチルアニリンの再蒸留がまが爆発したのであります。当該部門は通常二名の作業員が従事しておりますが、事故直前に異常があったとみえて、工場関係者六名が同装置の周辺に集まったときに爆発が生じたため、死者三名、重軽傷三名という大きな被害となりましたが、工場外の被害はございません。原因につきましては目下究明中でございます。  以上でございます。
  177. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そこで、それはそれでいいですよ、局部的な問題ですから。全体的な通産行政の立場から、そうした事故がどんどん起こるというこの現実、これを集約して、どういう点に問題があったかという、そのバルブがどうだの何がどうだのという問題以前の問題、つまり産業政策と申しますか、あるいは具体的には工業ですね、工業のそうした指導等についての反省点ですか、通産当局としてはその立場から、工場長を責めるのではなくて、通産当局の立場から通産大臣はどうそれを集約して、今後ともそれをやっていけば逆に行政指導を強化することになりますから、その反省点と申しますか、集約をはしょってお聞きしたいと思います。
  178. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 点検したところでは、一つはやはり景気がいいためにフル操業で、そのためにチェックを怠っていたということがあるのではないか。それから第二は、コンピューターその他にたより過ぎて、それで、現場管理をやっておるその現場員の教育訓練を怠っていた。第三番目には、監督者あるいは技術者というものが、そのときにおける対応の方策において、下を指示したりあるいは下を教育している点において、誤りがあったり怠りがあった、そういう点があるように思います。  通産省としましては、これはやはり全体を引き締めなければいかぬと思いまして、社長の諸君を私が呼び出して、社長が陣頭に立って、その事故防止の対策本部をつくり、各工場についても同じようにつくり、責任が起きた場合には社長が責任を負うと、そういう体制をすみずみまで行き渡らせるようにやりまして、全部の会社で社長を中心にする事故対策本部ができまして、そういう引き締めをいまやっておる最中であります。
  179. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いまの集約なり考え方においては私も同感ですが、それはやっぱり責任をもって強化してほしい。そこに総理長官がおりますが、あなたのところさえやったんですからね。これからひとつ、まあじかに行政指導してくださいよ。もう少しお互いが緊張してやってもらわぬと困りますよ。  その次の四の問題に移りますが、苫小牧の東部の工業基地計画の問題です。聞くところによりますと、この十九日に運輸省から港湾審議会に港湾計画が出され審議されると、こういうことなんですけれども、私この論を進める場合に基本的な考え方としては、きのう、きょう総理大蔵大臣ともども需要抑制するんだと、来年度予算はその観点に立って努力すると、公共事業等をも抑制するんだといったような非常にきびしい考え方を述べられたわけです。そこへ今度は、苫小牧東部は工業基地計画を進めよう、どんどんやれという方向にいま進みつつあるように受け取られるわけです。でありますから、このことについて項目別に若干質問いたしますが、第一点は——環境庁長官おりますね。十二月のたしか十日に苫小牧東部開発の十一省庁連絡会議があって、昭和五十三年の時点で石油精製が三十万バーレル、石油化学が四十万トンの工業開発規模で環境アセスメントをしたと、環境庁も条件づきで苫小牧東部の港湾計画決定に同意したようであるが、では、私のお聞きしたいのは、五十三年までのところは大体よかろうと公害防止の判断をなさったわけですけれども、それからあとのところ、この計画によりますと、やはり六十年度を目ざしておりますから、完成年度を。その場合には、その辺のところを環境庁はそこまでずっと読んでこの判断を下したのかどうか、それを長官にお聞きしたいと思います。
  180. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) ただいまのお話につきましては、私もちょっと調べてみましたわけでございますが、いまの東部開発の問題とあわせて西部、現在の苫小牧地区の公害防止計画、このほうを進めることが非常に大事じゃないんだろうか。そこで、すでにその公害防止計画については相当策定が進んでおりますから、来年少なくも中ごろまでにはその策定が実施に移されるようになるんじゃないかと。そういうことを考えてみますと、この地域の汚染度をどういうふうに改善していくことができるかという一つの問題があるだろうと思います。  いまの五十三年以降の問題、東部開発の——このことにつきましては、そういうものもあわせて関連して考えて、現在は、まあとにかく、この間の相談の結果はよかろうと、この程度ならよかろうと。しかし、工場地帯と市街地地区の間には相当広範な緑地地帯等を置いて、そして住民の不安のないようにしつつ、五十三年のその段階に至ってどの程度開発が進みますか、ただいまのような総需要抑制というような話もございますから、なかなか計画どおりにはいかないんだろうと思いますが、もし、かりにいったとして、五十三年度、そういうふうな努力をした結果、どういうふうな環境状況になっておるかということから、その時点で五十四年以降の問題には対処していっていいんじゃないか。一応、当面は五十二年度までの開発計画にのっとって環境施策を講じていくというようなことにしておるようでございますから、当面当地域についての——何さまたいへんな広いところでございますから、御心配になるようなことはないと、私はそう感じております。
  181. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでね、第二点で、あなたも現地を見たりいろいろ計画書をごらんになっていると思いますが、いまおっしゃった現在のところと、東部ですか、その間に勇払という五千五百の人口の町があるわけですね。そうしますと、現在計画の中にはちょっと隠してあるけれども、鉄鋼の二千万トンがあるわけですね。それを工場立地をすれば、勇払という町がはさみ打ちになってしまう。ぼくら水島工業地帯をこの国会閉会中に見たんですが、まあ集団移住したいという希望がこぞって出てまいりましたので、私その旨をいまの環境庁長官に報告しておいたわけですけれども、それと同じことが勇払という町に起こるわけですね。そのことは、いまの見通しの中で考えた場合に、結局鉄鋼の粗鋼年産二千万トンという工場立地が、これは将来の青写真ですけれども、いまから想定するのはどうかと思いますが、すでに今日まで討論されてきておることだが、それはいまの時点で判断したときには無理じゃないか。勇払を残すか、勇払を飛ばすか、いずれかですわね。二者択一なんですよ。それで粗鋼二千万トン、こう関係してくるから、その関連においてどう判断されますか、公害の町、勇払のことを。
  182. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お話のように、現在の苫小牧地区と東部開発地区との間に、勇払あるいは沼の端、そういう両市街区がはさまれ、たくさんの住民がおられるということで、そこで六十年目標の大構想では、お話のような鉄鋼計画、製鉄計画等が持たれておったわけですけれども、それはとても現状において取り上げられる段階ではないと、ともかくもそのほうはそのほうで置いておいて、五十三年までの開発計画を進めて、そこでどうなるか。勇払、沼の端は動かさない、その現状のままで、そして環境が保全されるかどうか、そこを見きわめた上でなければ、その二千万トンという、たいへんなこれはまあ巨大な施設でございましょうから、置けるか置けないかということは、よほど慎重に考えらるべき問題であろうと、こういうふうに考えます。
  183. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いまの長官のお話と、まあ十九日港湾審議会で決定しようとしている港湾計画との関係が出てくるわけですが、運輸大臣、どうですかね。六月の港湾審議会当時の出されたとてつもない巨大な掘り込み港湾計画そのままですね、今度出されようとするのも大体同じじゃないか。そうしますと、いま環境庁長官が言っている、二千万トンがちょっとぼけましたけれども、しかし、これはやっぱり将来構想の中にぼくは入るものだと思います。で、百万バーレルの石油の精製とか百六十万トンの石油化学など、昭和六十年代の工業開発最終規模から設計したいまの港湾計画でないか。言うなれば、入れものはちゃんとつくろうというわけですね。しかし中身は、いま環境庁長官の期待もあるけれども、しかしながら入れものは大きなものであると、こういうことになると、これは一体いまの審議なさる場合には、どういう判断、どういう考え方で審議されようとするのか。その前に入れものだけはとにかくつくろうと、あとはあとの話だと、いま環境庁長官が言ったようなそういう考え方でやろうとしているのか。その辺のところをちょっと運輸大臣の今後の指揮、指導の問題がありますから明確にしてください。
  184. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) この港湾の問題でございますが、御承知のように、港湾法によりますと、港湾計画は、港湾管理者の責任において立案したものを、国は、この中の重要港湾につきましては、当該計画の提出を求めて、そして港湾審議会の意見を聞いてそれを審査すると、こういうことになっているわけでございます。で、いまお尋ねの、入れものを一応用意しておいて、そしてその上で第一期、二期というようないわば計画を持っているんじゃないかという御質問もあるようでございますけれども、私どもは五十三年と。いろんな歴史がこのことにつきましてはあるようでございます。あるようでございますが、私どもは五十三年の計画、五十三年目標の計画ということで考えておるわけでございます。で、この手続等につきましては、港湾管理者の計画に基づき、それぞれの道の議会でございますとか、あるいは管理組合の議会でございますとかいうものを経て提出してきているわけでございますが、五十三年までの計画についての原案が手元に届いて、それを十一省庁でございますか、いろんな角度から検討がされたようでございます。  で、ただいまその検討も終わりまして、私の手元に港湾計画が届いておりますが、ただいまのところ、この計画につきましては、所定の手続に従いまして港湾審議会に諮問したいとは考えておりますけれども、   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕とにかく、この計画そのものの適否というものは、これはもう審議会の慎重な御審議をいただいた答申によって判断しなければならぬと思っております。入れものをつくっておいて、その中身は半分にちょん切って持ってきたんじゃないかというふうには私は受け取っておらないのでございます。
  185. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 終わりますけれども大蔵大臣に二、三して。あなたには質問の通告をしてないわけですがね。結局、港湾審議会にかける分は大きくて、私の理解では入れものが大きくて、予算もそれに相応して、あとは五十三年以降だということになると、入れものは利用しないままでほうっておくという結果になる。予算の運営、財政の運営等から考えて妥当かどうか。その点、総理は、先ほど冒頭申したように、しきりに総需要抑制とか、公共投資を抑制するとか言っておるわけですが、いまこういう問題は具体的に進んでいるわけですね。こちらで論議していることと実態の動きは違うわけです。その辺のところを総理はどう判断されるのか、簡単に最後にお聞きしたいと思います。
  186. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 総需要は厳に抑制しなければなりません。それは当面する問題でございます。ですから、いま実行中の問題でも繰り延べるということでございますし、また来年度も物価抑制の見通しがつかない限り、これはやらなきゃならぬことは言うまでもありません。総需要抑制の中には二つございます。総需要抑制するけれども国民生活の必需品をつくるところには重点的に生産をやらなければいけませんし、場合によってはその設備の拡張も必要であるという面もございます。ただ、総体的に見て、景気刺激は一切行なわないで物価を押えるということでございます。ですから、いまの苫小牧の問題も年次計画があるわけでありますから、年次計画を延ばすということは、これはもう当然考えなければならぬことでございますが、しかしそれだからといって、将来どうにもならないようながたがたのものをつくっていいわけはありません。ですから、ちゃんと長期的計画、必要なものは計画としてつくっておいて、それで年次を延ばすことによって、弾力化することによって物価抑制をはかるということでなければならぬと、こう考えております。
  187. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま総理からお答えをいたしたとおりなんですが、私はまだ苫小牧の問題、よく検討しておりませんが、趣旨だけを申し上げますれば、いやしくも総需要抑制というその大方針があるわけですから、これに反するような計画をやるということはありませんです。そういう方針で厳にやっていくと、こういうふうに御了承願います。
  188. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 杉原さん、私の申し上げ方があるいは誤解を持たれたかと思いますが、六十年目標の大構想がこう出ておるんです。そこへどうしても目が移るわけでございます。しかし、いま申し上げておりますこの五十三年目標の計画は、それにはかかわらず五十三年目標と。したがって、入れものも、おっしゃる受けざらも、五十三年目標の開発計画に相応する計画、したがって、運輸大臣の申し上げられたこともそういうことだと思うのです。どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  189. 戸叶武

    戸叶武君 関連。
  190. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ちょっと、一問ですか、関連ですか。——ちょっと時間を食い込んでおりますので、あとでお願いできませんか。  以上をもちまして杉原君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  191. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 向井君。(拍手)
  192. 向井長年

    ○向井長年君 まず、私は総理に質問をいたします。それは総理の政治姿勢についてまずお伺いいたしたいと思います。  少なくとも、総理は庶民宰相として国民は淡い期待を持って迎えられたと思います。しかし、政権を担当してちょうど一年半になります。今日、国民は全く期待が裏切られたと、こういう感じが非常に強いかと思います。たとえば総理の一枚看板である日本列島改造論、これは今日、インフレ物価の高騰、物の不足、これを現在かもし出しておる。これに対して総理は責任を痛感されておりますか、あるいは反省をされておりますか。
  193. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日本列島改造論というのは、これは私の私的な論文でございますということを間々申し上げておりますし、国土総合開発計画というものは、これは絶対必要であるということを考えております。ただ、私が就任をしたときには、これは世界的な問題が起こってきたというよりも、まあこれは運が悪いというのですか、運がいいというのか、これはわかりません。何びとかがどんな困難な場合でもこれを処理しなければならないわけでございますから、私は運が悪いなどとは考えておりません。これは神のおぼしめしだと、こう考えておるわけであります。しかし、ドルの切り下げが行なわれ、平価調整も行なわれ、国際的物価高になり、また石油問題にぶつかる、まあたいへんなことであると。たいへんなことであっても災い転じて福としなければならない問題でございます。これは日本だけではないのです。アメリカでもそうでありますし、イギリスでもフランスでも西ドイツでも同じような悩みの中にあるわけでございますから、当面する問題は、現実を、これを的確に把握して、適切なる施策を実行する。そして将来にわたっては、この災いというか、このような状態が将来国民の生活の上にプラスをもたらすように努力をしなければならない、その責めの重大さを痛感しておるのであります。
  194. 向井長年

    ○向井長年君 今後国民生活に生かすために努力されることはわかります。しかしながら、今日のこの状態という問題については、やはり反省されなければならぬと思います。  なお総理は、たびたびこの日本列島改造論は私見だと、こういうことを言われておるのですね。確かにそうでしょう。しかし、一国の総理大臣が、何ら行政措置なり法的措置を講ぜずしてこういうことをぶち上げたために、あらゆる土地をはじめとする高騰が始まっておるんじゃないかと、こう国民は見ておるんです。幾らあなたが頭を振られても、そう見ておる。したがって、この問題についてはやはり総理としての立場から考えるならば、これはあらゆる行政措置なり法的措置を行なって、そういう中からこれを進めるというなら話はわかりますけれども、この点についてどう考えておられますか。
  195. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 「日本列島改造論」は、総理大臣になってから出した本じゃないんです。これは通産大臣のときに個人として出したんです。  それで、私はこれは必要であるということを考えておるんです。国民の前にテーマを提供するというのは、政治家の私は責任だと思うんです。ものにぶつかってからだけ対応策をやっていることが政治家の責めを全うするゆえんではないと、こう考えておるんです。ですから、そういう問題に対して、私は日本列島改造論というものは必要であるという信念に対しては、いささかも変わりはありません。これは、この日本列島改造論を世に公にしたことが後世史家にどのように評価されるかということに対しては、私は静かに判断を甘受するつもりでございます。  日本列島改造論というそのことばが、たいへん物価を押し上げているといわれておりますが、私はそう考えておらないんです、現実問題。それはそうじゃなく、ドルの切り下げとか、それからそれに対応して、中小企業日本の特殊性ということを考えて金融の緩和をしなければならないし、金融の緩和だけではなく、税制上も手厚い処置をしなければならなかったし、中小企業対策としてはもっと、このような中小三機関の金融では不足であるという声が国会にもあったわけでありますから、そういうような状態においてやったわけでございますが、ただ、そのときに金融の緩和が過ぎたと。そしてドルは思うよりもよけい入ってきたと。いわゆる外為特別会計の払い超は七兆円にも達するようなピーク時があった。そういうときには、それを的確に吸い上げるというようなことをやはりしなければならなかったわけでありますが、中小企業対策、零細企業対策ということを考えれば、そのようなことがなかなかできなかった。しかもアメリカとの間には、不正常な貿易状態が解決できなければ今日の状態などというもんじゃないと思うんです、私は。日米間がうまくいかないということになったら、石油の二〇%や二五%削られたようなものじゃないんです、これは。日本の全貿易のとにかく四〇%近いものが日米間に行なわれておる。こういうことを考えれば、日米間の正常化が当時政治の最大の課題であったということは申すまでもないんです。世界じゅうからもたたかれつつあったんです。それがとにかく一年間で解消して正常なものになった。  その過程にはいまの物価抑制物価状態というようなものが起きてきて、これからはちょうど年末、第三四半期の末から第四四半期には引き締めの効果は漸次あらわれつつございますと、経済月例報告にも国民の前に明らかにしておったら、そこへきてとにかく石油問題が起こったということでございまして、私を中心にした内閣の政策が完ぺきであったとは申し上げません。そういうものに対しては反省をいたしております。反省をいたしておりますが、この一年半の事実に徴して、今度はもっと的確に効果がある政策を実行しなきゃならないと、こう考えておるんでして、列島改造論ということがすべての諸悪の原因であるなどということをお考えにならんでくださいよ。  これは列島改造論、国総法、ずっと通していきまして、物価はどんどん下がる、国民生活はよくなる、土地も全部提供できるということになったら、そのときにやっぱり列島改造論というものは必要だったなあということもあるわけですから、いま、あなたがどう言ってもいいですよ、自由ですからいいですけれども、私も、どうも諸悪の根源がみな列島改造論と言われることははなはだどうもつらいところでございますから、そうじゃないんですから、どうぞひとつ……。
  196. 向井長年

    ○向井長年君 総理、それは政治の指導者としてはいろんな夢も持たなければならぬ。あるいは構想も持つのはあたりまえでしょう。しかし、通産大臣当時にそれを打ち上げたと言うが、そんなことは国民は知りませんよ。あなたと福田さんが総裁選挙を争ったときに、この列島改造論というものが大きく出て、国民はそこで一つのスローガンとして知ったんですよ、これは。そういう中で今日に来たっておるということですから、したがって、いま総理が答えられた問題についてはあとから私は質問しようと思っておることばかりでございますが、やはりそういうように国民がいま理解しているんだから。土地見てみなさい。現にそうでしょう。違うと言ったって、そうですよ。そういう中から買い占めが起きてきているんですから。だから、そういう点においてやっぱり反省すべきものは率直に反省すべきだと、こう私は思います。  そこで、今回第二次内閣で福田大蔵大臣を任命されました。しかもこれは実力者内閣である。挙党内閣である。まことにけっこうかと思います。私はこれはそれなりに評価いたしたい。しかしながら、総理大蔵大臣、根本的に考え方を異にしているんじゃないですか。いま内閣の大蔵大臣を持たれたから一応いろいろ言っておりますけれども、根本の考え方は違うんじゃないですか。言うならば、総理はやはり高度経済政策を進めようとして今日きた。石油問題は別ですよ。今日のものの考え方というのはそういうところにあったのじゃないか。福田さんは安定経済とこう言っているんだから、この点どうなんですか。一致しておりますか。
  197. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 違いません。これは自民党のワクの中にございますし、自民党の政策綱領を二人ともちゃんと基盤にしておりますし、自民党の所属議員でございますし、政策的には違いません。しかも・大蔵大臣をやってきましたときには同じ政策を私から引き継いだり、ちゃんとしております。  これは現象論としてはありますよ。私は池田内閣から佐藤内閣に通じての三年間、大蔵大臣でございましたから、だから高度成長論者だと、こう言われております。高度成長論者と言われておりますが、その当時は何も、均衡財政でもって公債も出さなかったんです。しかし安定成長論者だと言われておる福田さんが大蔵大臣になったときには、私のあとですけれども、私の政策のあと始末と言えばそれきりですが、とにかく税収補てん債を出さなければならなかったということもございますし、大体それはそのときの事情においての政策でございまして、新潟県と群馬県ぐらいの差はあるですよ。それはございますが、国民に対して責任の地位にある者がそういう観念的な相違はないんです。全くありません。ですから、そこは御心配にならないようにしてください。これは大蔵省に長い間経歴を持っておる福田大蔵大臣は私よりも慎重であり、私よりも正確であり、ものの言い方もすなおかもわかりません。その程度の差でございますから、どうぞ御心配いただかないように。
  198. 向井長年

    ○向井長年君 じゃ大蔵大臣にお聞きしますが、田中総理は、現状においては若干変更はこれはやむを得ぬと思いますけれども、過去において二兆円減税を国民の前に明確にしてきたんですよ。来年度の自然増収の見方から、当時ですよ、いまじゃなくて。これはおそらく、なくなった前大蔵大臣田中総理は十分協議された中でこれを打ち出したと思うんですよ。内容は別ですよ、減税の内容は。しかしながら、一応二兆円減税というものを打ち出された。この当時行管長官をやられておりましたが、福田さんはそれに賛成だったですか。
  199. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) あれは新聞で私見ただけでありまして、別に内閣の議題でもなし、政府というか、大蔵大臣の正式の見解として相談を受けたわけでもなし、私はそれに対して、あれよあれよと見守るというだけの話でございました。
  200. 向井長年

    ○向井長年君 あれよあれよと見守っておると、そんな問題じゃなくて、直接来年度の予算の中で少なくとも減税を総理が打ち出した。それに対して、現在はいろいろ情勢は変わっておるけれども、再検討しなければならぬということを言われておるんですよ。したがって、そういう中から考えるならば、当時あなたの考え方はどうだったか。打ち出されたのは知っているはずですよ。そのとき、ああこれはたいへんだと思ったのか、いやそれはやるべきだと思ったのか、その点どうですか。
  201. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ新聞を見ての感触では、ああいう減税ができれば非常にけっこうだなあと。しかし、これは最終的なその判断は、とにかく二兆円減税ですから、これは財政構造全体を見て結論を出さなけりゃならぬ問題で、さあ公債がどうなるのか、そういうような点を考えてから結論を出すべき問題だと、そういう理解でございます。
  202. 向井長年

    ○向井長年君 そういう気持ちであるならば、同じ閣僚の中でおられて、同じ党の中でおられて、総理があれを打ち出したときに、あなた、意見を言うのがあたりまえじゃないですか。言われましたか。
  203. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはそういう問題は幾らでもあります。新聞あたり見ますと、いろいろめずらしい話なんか出てきますよ。そういうものについて一々閣議で、あれはどうですかと、こういうようなことは実際問題とするとこれはなじまざることである、かように考えております。
  204. 向井長年

    ○向井長年君 総理の意見はそれくらい、何といいますか、国民から見たら重大なことですよ。非常に関心を持っておりますよ、国民はね。それを、幾らでもそういうものがあるというような軽いもので考えていいんですか、それは。どうなんですか。
  205. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういうことは間々あるんですよ。何か記者会見でこういう話があった。その一々をとらえて、あれはどういう意味か、こういう意味ですか、そういう問いただしまして、そして自分の意見を固める、そういうようなことは、これは日常茶飯幾らでもあることでありまして、それを一々取り合っておると、こういうわけにはいかぬ。これはどなたも御理解願えることだろうと思います。こういうふうに思います。
  206. 向井長年

    ○向井長年君 それであれば、やっぱり根本的に違うんじゃないですか。そういう時期にでもそういうことを考えておることであるならば、総理の考え方と大蔵大臣は、ものの考え方が違うということです。いま一致しておるんだと、こう言うけれども、違っておるんじゃないですか、その当時から。どうなんですか。違っておるはずですよ、それは。
  207. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、総理がいま新潟県と群馬県の違いがあると、こういう話をされましたが、私もそのくらいの違いはあると思います。これはとにかく私も見ておりまして、田中首相は非常に威勢がいい。まあ動の田中に対し静の福田というくらいな、そういう違いはあると思うんです。しかし、違いがあって私は一向差しつかえない。その違いが寄り合って国政の中に生かされていくということであれば、それで十分だと思うんです。いま何が大事かといえば物価だ、いまこの物価に取り組むことが最優先の課題であると、こういうことを話し合っているんですから、それで十分であると思います。
  208. 向井長年

    ○向井長年君 物価なり今後の産業政策なり、いろいろあります。しかし、そういうことを内閣でいろいろと検討されるのに、いま言うような根本的なものの考え方が違ったらおかしいから、私は聞いておるんですよ。したがって、そういう笑いごとじゃないんですよ。国民は、田中さんは二兆円減税、内容はどうかは別として、やってもらえるという期待は持っておったはずですよ。それを福田さんは否定しているんだ、いうならば。再検討しなきゃならぬと。あるいは場合によってはそれはとてもそう簡単にできないと。公債の問題もあるでしょう。自然増収の問題もあるでしょう。だからそういうことで国民は、いま言った問題についてはどうしてできないかという問題を明確にしなきゃならぬわけです。これは田中総理、どうなんですか。その当時の考え方と現在と。
  209. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 事態は非常に変わってきております。事態は石油問題にしても非常に変わってきておるという認識は、これはもう閣僚は全部持っております。国民も全部持っておるということは事実だと思います。しかし、減税が非常に国民的要望事項であるということ、これは変わってないのです。ですから、変わっておる現状、変わらない国民的要望、そこをうまく調整をして理想的な予算を組み、減税政策を決定するというのが政府に課せられた使命であります。  ですから、いままでは重要な問題に対して、閣議以外でも全閣僚が参加して、ひとつ国務大臣として議論をしようということで今度もずっとやっております。ですから今度の国民生活法案その他、石油法案に対しても、全閣僚、党の役員もみな入って、とにかく徹宵してもやろう、それが現事態に対処して当然なすべきことである、こういうことでやっておるわけでございますから、先入観を持って、とにかく違うんじゃないかと——。油と水じゃないんです。これはもうほんとうに日本人であることは間違いないし、自民党議員であることも間違いないし、大蔵大臣の経験者であることも間違いありませんし、政調会長の経験者であることも間違いありませんし、そういう意味では、閣内と党に分かれてやっておったこともございますが、しかし重要な政策は全部幹事長と大蔵大臣の合意でやってきたわけでございますから、私は、福田大蔵大臣時代の責任の半分は私にあると思っております。また、私が大蔵大臣やっておるときは、福田大蔵大臣も党の役員をやっておったわけでありますから、そういう意味でそんなに違いはないんです。ですから、結果を見まして、国民の要望にこたえながら、しかも政策的効果をいかに求めたかというところで御判断をいただきたい。
  210. 向井長年

    ○向井長年君 大蔵大臣ね、そうすれば、来年度の成長率は名目どれくらい、実質どれくらい見ておられますか。あわせて、これに対する減税はどれくらい考えておられますか。所得減税。
  211. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ経済計画のほうがきまらないんです。したがいまして、それによって計算されるはずの自然増収がどうなるか、また、それを見てきめる増減税計画がどうなるか、これもきまっておりませんです。
  212. 向井長年

    ○向井長年君 きまっておると私は言っておるのじゃなくて、どれくらい考えておるのだと。きょうの新聞なんかに出ておるわけですね。伸びは二一%台だというようなことね、新聞には。新聞はやっぱり国民は見てますからね、これは信用するんですよ。そして減税は一兆一千億ぐらいだろうというようなことが、「来年度は大幅圧縮の意向」と、蔵相はね。こういう形で見ておられるのですよ。
  213. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それ、いつの。
  214. 向井長年

    ○向井長年君 きょうの。
  215. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府のほうでいま勉強中でありますが、伸び率が二〇をこすなんというようなことは、とうていあり得ないことだと思います。したがって自然増収も、かつて四兆円ぐらいといわれましたが、これはかなり減るんじゃないか、そういうふうに見ております。
  216. 向井長年

    ○向井長年君 二一%から、これはまだ減るということですか。
  217. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そうです。
  218. 向井長年

    ○向井長年君 税のほうはどうですか。
  219. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 税のほうは、伸び率がきまらぬとこれは見積りができない、こういうわけでございますが、かつて言いふらされた四兆円あるいは四兆五千億円、こういう多額な収入はありませんです。
  220. 向井長年

    ○向井長年君 事務当局では相当検討しておるのでしょう。そういうものがこういうところに出るのじゃないですか、新聞に。
  221. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そうじゃない。
  222. 向井長年

    ○向井長年君 そうじゃない。——そうしたら大臣が言われたですか。大臣がこれは発表されたですか、こういうふうに出るのは。
  223. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いやいや全然。
  224. 向井長年

    ○向井長年君 推測ですか。
  225. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 推測でしょう。
  226. 向井長年

    ○向井長年君 じゃ、伸び率は二一%より下になるだろうと。
  227. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ああ予算のですか。
  228. 向井長年

    ○向井長年君 いやいや、そうじゃないですよ。一般会計のですよ。
  229. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は名目成長率が二一%と、こういうふうに伺いまして、それよりは下回るだろうと、こういうふうに申し上げたんですが、予算のほうはまあ二三%の伸びという案があるのですよ。しかし、私はできる限りそれを縮減してみたいというふうにいま努力をしておる、そういう最中でございます。
  230. 向井長年

    ○向井長年君 成長率のほうは、少なくとも名目は二〇%より下である。そうして実質はゼロですか。どうです。
  231. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それらをただいま検討しておる。一番基礎になるのは、石油の供給量がどうなるか、これなんですが、これはいま三木特使が中東へ行っておられる。そういうようなことを見て慎重にきめなきゃならぬ。お帰りになるのを待つわけにまいりませんけれども、いろいろな情報を集めまして、そうして見通しを立てなきゃならぬと思います。そういうのでまだきめておりませんです。
  232. 向井長年

    ○向井長年君 経企庁にお聞きしますが、現在卸売り物価は、正確なところどれぐらい上がっておるのですか。それから卸売り物価、あわせて消費者物価、土地の平均、どれぐらいの値上がりでございますか。
  233. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 卸売り物価は十一月分がまだ発表されておりません。先ほど鈴木強さんからお尋ねがございましたが、おそらくこれは一両日中に日本銀行から発表をされるものを私どもがまとめるわけでございますが、したがって、十月の現在によりますと、昨年の十月に比べますと、二〇・三%ぐらい月別の比較では上がっております。しかし、いままでのところ、年と年、昭和四十八年の全体とそれから昨年の全体とを比べてみますると、一〇数%、私ども経済見通しの改定作業では一七%というような数字を出しております。消費者物価のほうは、これは十月のものでございますけれども、昨年の同期に比べますと、一四・三%ぐらいが上がっておるわけでございます。土地のほうのことにつきましては、建設大臣からお答えをいただきたいと思います。
  234. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 日本不動産研究所の調査結果に基づくわけでございますが、昭和四十七年三月から四十八年三月、全国二五・一%、六大都市においては三一・七%、以上でございます。
  235. 向井長年

    ○向井長年君 総理ね、いま経企庁長官並びに建設大臣から報告がございましたが、こういう値上がり、これはわれわれに言うんじゃなくて、家庭の台所を受け持っておる主婦が理解できるようにひとつこの値上がりの理由を言ってください。
  236. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは経企庁長官から述べたほうがいいわけでございますが、特に御指名がございますので、私から申し上げます。  消費者物価が上がっておることを申し上げますと、一月が六・二、二月が六・七、三月が八・四、四月が九・四、五月が一〇・九ということでずっといきまして、十月が一四・二ということでございますから、平均すると九・九%、一〇%ぐらいのものが出るわけでございます。これは正確に申し上げましょうか。相加平均値を出してもけっこうです。
  237. 向井長年

    ○向井長年君 その内容を言っているのじゃないんですよ。なぜ上がったかということを言っているんです。
  238. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうことでございまして、七一年の物価上昇から見ますと、七一年がマイナス〇・八でございますから、そういう意味から言いまして、この上がり数字というものは二年間にするとこの半分になるということでございます。卸売り物価が上がった寄与率はどういうことかということを申し上げますと、輸入物価が四九であります。それから需給ギャップが一四、通貨供給量の残高が一二、その他というのはこれは国民消費がふえておるということでございまして二六ということでございます。こういうような数字が出ておるわけで、これは大体外国の数字と相当相似の関係にございます。外国の例を述べろといえば、あとから申し上げます。  それからもう一つ申し上げますと、改定の見通しでございますが、国民総生産はこの間改定見通を申し上げましたが、四十七年に対して四十八年を見てみますと、個人消費支出が、四十九兆円が五十九兆円にふえておりますから、十兆円ふえております。それから民間の住宅が、六兆八千億が八兆九千億になっておりますから、二兆円ふえております。ですから、個人の分野が十二兆円ということになります。それから民間の設備投資が、十七兆円が二十一兆円になっておりますから、四兆六千億ふえております。民間の在庫投資が二兆一千億から三兆七千億にふえております。政府支出は、十八兆三千億が二十一兆四千億になっておりますから、三兆円ふえておるということでございます。こういう数字をいろいろ彼此比較をしてみますと、物価にどのように寄与しておるかということはおのずから計算は出るわけでございます。  それで、もう一つ申し上げますと、一番大きいのは何かというと、十一月消費者物価上昇寄与率を見ますと、衣料が一八・七、教養娯楽費が一一%、外食が一〇・三、その他というのは、電気やガス代や保健医療費はマイナスになっているにもかかわらず、菓子とか主食とか、家屋の修繕費とか、文房具とか、こういうものを合わせると、約七〇%近い寄与をやっておって、対前年比一四・八%になっているわけです。それと、もう一つ申し上げますと、金融なんです。これがもう非常に大きな問題でございまして、金融は、正確な数字はあとからまたこまかく申し上げますが、とにかく都市銀行等は、四十六年、四十七年、四十八年を対比しますと、非常に減っております。それから中小機関は四十六年の七−九の四千三百八十一億円が四十八年には一兆三千九十億円になっておる。農協系統は二千九百二十五億円が九千九十一億円になっている。保険その他都市銀行は七−九で一兆二千億が一兆三千億になっておるというだけで、これはもう中小企業対策が非常に手厚くやられておる、そういうために倒産も起きなかったし、輸出力も何とか回復したということになるわけでございますが、どういうことでというふうに的確には述べ得られないと思いますが、おおよそ物価に寄与しているようなものは何かということは、いま申し上げた数字でおわかりになると思います。
  239. 向井長年

    ○向井長年君 そういう要因が生まれてきておることについては、見通しがついたはずですよね、経済の中において。それを放置しておいて、こうなっていますからこうなりましたでは、これは通らないんですよ。その点どうなんですか。
  240. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうところは見通しが少し甘かったと言われてもこれはしようがありません。しようがありませんが、ただ甘かったんじゃないんです。三〇%のドル切り下げというものに対して中小企業というものは一体どうなるのか、零細企業はどうなるのかということで、金融の緩和をやり、三機関に対して積み増しを行ない、税制上の優遇措置をとり、特例法を出してもらったわけです。これで一体三〇%のドル切り下げというものに中小企業は耐えられるかということを国民の皆さんから相当強く言われたわけでございます。そういう要請があったんです。  もう一つは、アメリカに対して一年間四十二億ドルも黒字が出たでしょう。これは日米間がこのままでいったら日米間は破局的な状態になるといわれておったんです。これはもうあなたもよく御存じのとおりでございます。それはもう石油の二〇%削減などの対比じゃありません。これはもう五年間ぐらい逆戻りをするだろう、中小企業や零細企業は全部将棋倒しになる、これが世間一般の考えでございました。しかし、そうではなく、両三年と言ったのでありますが、わずか一年半で四十二億ドルは今年度一−十二月を見ますと十八億ドルぐらいだと思います。三年間で基礎収支を均衡さしたいと言っておったのが、基礎収支は大幅な赤字であります。とにかく、そういうことがちゃんとそういう要請があったわけですから、要請がありましたから補正予算も組まなきゃならなかったし、中小企業金融も積み増ししなきゃいかなかったし、金融の緩和もしなきやならなかった。しかし、その中にドルがこれだけ入ってくるんだから、だからそのドルには裏づけの円があるわけですから、円が放出されるわけです。その場合に、円を吸い上げるということを考えるべきじゃなかったかと。今日になれば、主として外為特別会計の揚げ超が影響しまして二兆円余の昨年よりも揚げ超になっております。しかし、金融はまだ三兆五千億も去年よりも出ておりますから、去年ベースでいうと二兆五千億よけい出ておるということが、対前年度二七%近い日銀券の発行数字につながっておるわけでございます。ですから、そのときに見通しを誤ったじゃないかといえば、それはもう異議ありませんということですな。しかし、一年間に百億ドルとか二百億ドルとかというものが入ってくると何びとが予想できたであろう。何びとじゃないんだ、政府はそれを予想しなきゃいかぬのだと。そのとおりです。そういうものに対しては遺憾の意を表し、反省をしておりますというのですから、これはひとつ御理解をいただきたい。
  241. 向井長年

    ○向井長年君 確かに、私は、見通しの甘さがあったと思います。したがって、金融の緩和あるいは補正予算等も、これは事実上景気刺激策といいますか浮揚策でとられたんでしょう。しかし、実際はそんなに景気がダウンじゃないでしょう。上昇ぎみにあるところへ金融を緩和したために、かえって逆に買い占め等が、あるいは売り惜み等が、これができたんじゃないですか。そういう点については、政府は、この物価を上げた要因というものはそういうところにもあったということは、これはすなおに反省すべきだと思うんですよ。
  242. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘の一面、理解をいたします。六千五百億の公共投資を中心にした補正予算を組んだと。これはそのまま繰り延べられておりますから、実際は使ってないんです。現実的には影響がないと、こう言えるかというと、影響はあります。補正予算を組んだというその姿勢に対して国民に大きな影響を与えていると、これはもうすなおに認めております。  それから少なくともいかに状態がどうであっても、イギリスなどは、公定歩合一二一%と言っているときに、史上最高であるといっても、やっぱり一%とか、〇・二五とか、〇・五とかという在来のやり方で金融引き締めをやってきたという姿勢、これは初めて得た国際的経験ですから、これはまあそうかもしれません。しかし、それはやっぱりもっと引き締めなきゃならなかったかもしれません。一四%から一五%の日銀券がずっと続いてきて一〇・四%の成長ができたんです。一五%台のずっと日銀券の流通でもって一一・一%十年間の成長ができたんですから、もう二〇%をこしたときにはもっと思い切って締めなきゃならなかったかもしれませんよ。いずれにしても、それは、私も、いま、だからそう思っていますよ、二七・七%になったんですから。現在は二八・一くらいだと思いますよ。ですから、そういうことになりますと、まだ一六・一といっても二〇を切るにはまだ六%切らなきゃいかぬのでしょう。ですから、これだけ四十七年には一五・五も上がり、四十八年には一八・五%も給与が上がっているときに、これを吸い上げるということをやらなきゃいかぬのです。だから、そのころには無税国債論も言っておったんです。凍結も言っておったんです。国際経済調整法も提案したんです。ところが、やっぱりそのころまだ国民的コンセンサスが得られなかった、国会のコンセンサスが得られなかったと、こういうことでして、あのせっかくの法律案も流れちゃったわけです。もしあの法律案が成立しておったとしたなら、少しはもっと手きびしくやったと思うんですが、それは死んだ子の年を数えるようなものですから、私はそんなことは申し上げません。それさえも泣いても通してもらわなかったということの責任は政府の責任ですから、その責任までも回避する意思はありません。これは甘んじて受けます。
  243. 向井長年

    ○向井長年君 少なくともこれはやはり金融緩和等に対しての大きな責任がある。したがって、それに対して総理がいま反省されておりますから、これは私はそういうかっこうでこの問題を終わりたいと思いますが、何はともあれ、もっと早く金融引き締めをやるべきだったと思うんですね。だから、この点についてはまた後日に譲りますが、先般、総理は、私はインフレの定義をここで論議しようと思っておりませんが、インフレであれば直ちに所得政策をとらざるを得ないというような、こういうことを発表されておりますが、私はいまのインフレはコストインフレじゃないと思うんですよ。需要インフレでしょう。そうなってくれば、それよりもその前提は利潤の規制ではありませんか。まず利潤の規制。したがって、そういうものは、すぐ所得政策というようなものの考え方を持ってくる前に、まずやはり需要の規制というものが必要だ。これはやりますか。
  244. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま、経済評論家とか学者とかは、数字がだんだん明らかになってきましたので——急テンポの状態における数字というのがなかなか一カ月おくれるとたいへんであるということで的確な数字が出なかった。私は、速報でも、通産省や大蔵省は日報を持っているわけですから、やっぱり日報も表に出すべきだったと思うんですよ。しかし、月例経済報告でも一カ月前のことをやっているわけですな。そういうような状態で、実際の数字をつかむということは非常にむずかしかったという状態だったと思いますが、このごろは輸入インフレだということがもう通説になってきております、輸入インフレであると。それは、先ほど言いましたように、消費というようなものも確かに寄与率は非常に大きい。百十五兆円のうち六十兆円が個人消費ですから、大きいにきまっていますよ、年間対前年度比十兆円多いんですから。これは対前年度比三兆円ぐらい多い、すべての財政支出の三倍以上多いわけですから。しかし、その原因は何かといってもう一枚めくりますと、物価が高くなっているんです。いわゆる輸入価格が上がっておる。羊毛が上がっているからセーターが倍になったと、三倍になるかもしらぬから二枚買おうと、こういうことですから、これは輸入インフレだと、こう言われておりますから、所得政策をとるような状態にないということを私も言っておるんです。これは数字が、所得政策をとらなきゃならない寄与率がちゃんと出れば、これはこういう事情ですよということを国民に訴えなきゃなりませんよ。しかし、そういう事態にないから、所得政策の段階じゃありません、私は考えておりません、国民的コンセンサスを得られないと思いますと、こう言っているんです。  ただ、インフレーションということばを言いますと、日本語じゃありませんから、インフレーションというと、すぐ悪性インフレーション論が世にびまんするわけです。これは早いんですよ。そうすると、増税か所得政策かと、こうオーソドックスな学問をやった人はみなそうなんです。そうなんですよ、本には書いてあるんですから。そういうことじゃ、そういうことにつながっちゃいかぬので、私はインフレーションという御提議に対しては、せっかくの御提案でございますが、日本語でお答えを申し上げますと、物価は憂慮すべき段階にございますと、物価を押えるために政府は全力を傾けますと、こう言っているんですから、ここらは国民の皆さまには理解していただけると思うんです。
  245. 向井長年

    ○向井長年君 それは、総理、ぼくはそういうインフレの定義をいま言っておるのじゃないんですよ。ただ、ああいうことばが軽率に出たから、だから、そういうものじゃなくて、これは需要インフレとなれば当然前提はやはり利潤の規制と物価の規制でなければならぬと思うんですよ。それが主であるぞということを私は言っている。たとえば、配当の減額とか、こういう問題が出てくるはずですよ。そういう立場からこの問題を言うているので、概念として言っておるんですから、これはそういうことでよろしいでしょう。
  246. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価を押えることに全力を上げます。
  247. 向井長年

    ○向井長年君 それで私は衆参両院の質問を若干物価抑制の見通しの問題を見ますと、総理は来年度上期には何とか物価の正常化をしたいと言っている。それから大蔵大臣は少なくともなるべく早く国際水準より下にしたいと、こういう一つの考え方はいいですよ、考え方は。しかし、少なくともこれは次の国民生活法案ですか、この二つの重要法案、これでひとつ協力してくれと、こういうかっこうになると思うんですけれども、最近におきまして短期決戦と言っていますね、短期決戦と。したがって、これはいつごろどれくらいの押え方をしようとするのか、この点、大蔵大臣、どうですか。
  248. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま国民物価の前途について非常に不安を持っている、そういうふうに思うんです。こういう不安を長続きをさせるということは最も悪いことである。これはもう手段の限りを尽くしましてこの不安な状態を解消しなきゃならぬ、これを一刻も早くやり抜かなきゃならぬ、こういう意味合いで短期決戦とか何とかいう表現が出てくるわけなんですが、とにかくそれには総需要抑制政策であるとか。総需要抑制にはどうするかと、こういえば、財政がその先頭に立たなきゃならぬ、そして範を示さなきゃならぬ、同時に金融を通じての産業投資の抑制ということもやらなきゃならぬ。それだけやれば、国民もまた理解を示し協力してくれると、こういうふうに見ておるわけなんです。そういう手段がそろいますれば、これはまあ油が多少とも窮屈になると申しましても、これはそれに対応できる姿勢ができる。その時点でもう物価は安定の基盤を整えたと、こういうふうに言えると思うんです。ただ、そこまでそう長い時間をかけたくないんですが、そのつなぎがなかなかこれは非常にむずかしい問題です。そのつなぎをどうするか。そのつなぎに対しましては、いま御審議願っている国民生活安定法案とか石油の規制法案とか、こういうものが非常に大事な働きをすると、こういうふうに見ておるんです。とにかく、こういう状態を続かせるということは、これはもうよろしくない。すみやかにこれに決着をつけなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
  249. 向井長年

    ○向井長年君 安定法は何品目ぐらい考えておられるのですか、これは。これは通産大臣。それから、特にいま、昨年の原価ですね、原価を検討しておるということですが、この点、どうなんですか、経企庁長官
  250. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私は、物価対策が非常に緊急な政治課題でありますことは、政府の一員としてこれを深刻に感じておるものでございますが、物価対策は、先般来議論になっておりますように、要するに総需要抑制金融引き締め等を含む、それだけでは十分の効果を果たし得ない面があると思うものでございまして、それはなぜかと言うと、結局、物資別の個別対策というものがどうしても必要になる。で、今度の国民生活安定緊急措置法は、もちろん総需要抑制する項目もございます、たとえば設備投資の抑制等。しかし、大部分は個々の物資をつかまえて、そのものに標準価格をつけてまいるとか、あるいはそのものの需給が円滑でない場合には、生産の指示をするとか出荷の指示をするとか輸送の要請をするとかいうような、そういう需給の調整を通じた個別対策をやるということが主としたねらいになっておると思います。前回御制定をいただきました売り惜しみ防止法も、これは私は同じ個別対策の範疇に入るものと思います。  そこで、何をやるかというお尋ねでございますが、これはもう、大ざっぱに言いますと、生活必需物資といいますか、そういう国民の生活上これだけはどうしても安定をさせなければならないというものと、もう一つは、国民経済の基礎になるような重要物資、しかし、そのうちでも、私はこの際は何と言っても足元を固めて国民に安心をしていただく必要がありますので、生活関連物資というものを第一に私としては考えてまいりまして、各省に要請をいたすつもりでございます。そして、それは物資については全面的にやるということが必ずしも可能なこととも言えませんので、一番国民が価格の安定を必要と感じておるもの、また私どもが行政能力から考えましてこれはやれるというようなもの、その両面から入ってまいりたいと思います。
  251. 向井長年

    ○向井長年君 標準価格は、どうして、政府がどういう考え方できめるつもりですか。
  252. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これも最も論議のあるところと思いますが、標準価格をきめますのは、まず、先ほど申しましたような生活関連物資並びに国民経済上重要な物資を指定いたします。その物資を指定しますと、そのものにつきまして、これは必ず標準価格をきめるわけでありますが、その指定した物資も、たとえばトイレットペーパーをとりましても、二百ぐらいの品目があるわけでございますので、その二百について全部標準価格をきめることは不可能でもございますので、その中の標準品目をとりまして、それをねらいとしてきめることがまず第一であります。  しかりしこうして、そのきめ方でありますが、これはやはり標準的な生産費あるいは標準的な販売費並びにそれにやはり取り扱い手数料と申しますか、利潤と申しますか、そういうものを加えたもの、それを算術的に足すばかりでなしに、そのもののその事態のもとにおける需給の状況とか、あるいは国民生活に及ぼす影響というようなものをも背景に置きまして、納得のいく価格としてその標準的なものをきめていくと、こういうことでございます。以下、また申しますと、特定標準価格とかいろいろのものがございますが、第一段階はそういう考えでございます。
  253. 向井長年

    ○向井長年君 総理、いま経企庁長官が言われましたが、そういう価格を政府がきめていくわけですが、これは少なくとも国民生活安定法の審議の中でいろいろと検討しなければならぬと思いますけれども国民生活安定審議会をつくって、そうして、そういう中でこういうものを諮問していくということが必要じゃありませんか。これは検討しませんか。
  254. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それじゃなかなか間に合わなくなるんです。間に合わなくなる。政府もやっぱり行政機構を持っていますから、政府輸入価格も知っておりますし、数量も知っておりますし、これから在庫が一体どこにあるかということもつかんでいるんですし、そういうものをつかんでおらない方々がおきめになるよりも、これはやっぱり今日の段階においては政府の責任においてこれを決定するというのが一番当を得たものだと考えております。
  255. 向井長年

    ○向井長年君 ただ業者主導型になる、業界主導型になるおそれがあると思うんですよ、今日までの価格があるから。こういう中で、やはり一応そういう一つの形を持つということは、これは緊急な問題と、これからの問題とあると思いますよ。したがって、そういう形を、総理、やっぱり持ったほうがいいんじゃないかと、これは一つの提言ですがね。
  256. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) きのうもそういう提言がございましたけれども、これはやっぱり政府がきめるということで御理解いただきたい。そうじゃないと、あまり、それらを業者寄りのものできめる、そんなことはありません。これは正当な標準価格、標準という字に合うような、この法律の目的を達成し、しかも、国民生活を安定せしむるようなものでなければいかぬということですから、政府の責任できめる、こういうことにしていただきたいと思うんです。これは御承知のとおり、いろいろなことをやりますと、それはいいようですが、それはもう異常に低いことを要求されるはずなんです。要求した場合どうなるかといったら、配当もできなくなる。配当できないだけじゃない、春闘を押えることになるんですよ。それは別な意味の所得政策につながっていくんです。そういうわけにいきません。これは私たちもこまかく検討しているんですが、かっこうはいいんですよ。きめてもらったものは、国民の皆さんからきめていただいたんでございますから、と言って、政府は責任が半分くらい軽くなるような気持ちがします。政府は、しかし、ほんとうに社会の安定を確保して、物価をちゃんと安定させなければならない大きな政治責任を持っているわけですから、やっぱり政府の責任できめるということが正しいんです。そうでないと無用な混乱、無用な議論を巻き起こして、思わざる結果が起こって、春闘どころじゃない、とにかくそれが所得政策とうらはらにつながったなどということになっちゃ、これはちょっと思わざる結果でございましたなどという、そんなことはできませんし、政府がそういうことをやらないように配慮しているということですから、適正な価格、標準価格ということですから、そういう意味では相当な決意と配慮を持っているんだということをひとつお考えいただきたい。
  257. 向井長年

    ○向井長年君 これは安定法の審議の中で十分また意見を述べたいと思いますが、次に、長期経済計画の問題でございますが、経済社会基本計画、これは当然変更をするつもりですね。これはひとつ大蔵大臣、どうですか。
  258. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 所管大臣は企画庁長官でありますが、とにかく経済社会基本計画は九・何%でありましたか、相当高い成長率を前提にしておるんです。ところが、最近の石油の状態、また物価状態、国際収支の状態から見まして、どうもそういう高い成長率を維持することが困難になってきておるし、また妥当でないと、適正でないと、こういうふうな感じがするんです。でありまするから、この計画に従って四十九年の予算を組むかというと、そうはいかない。来年は、この計画は見ておきますが、この計画を見ておくという意味は、中身がたいへんよろしいです。つまり中期計画、長期計画といたしまして初めて社会福祉諸問題を取り上げておる、そういうメリットがありますので、これは十分にらんでおきますけれども、かなりのスローダウンはしなければならぬだろうと、こういうふうに考えます。長期計画それ自体は、私は、いまこれを廃止するとか、あるいはそういうようなことをしないで情勢の推移を見て見直してまいると、こういう考え方が妥当じゃあるまいか、そういうふうに思っております。
  259. 向井長年

    ○向井長年君 この問題については、経企庁長官は再検討しなきゃならぬと、これは前に答えられましたね。したがって、これは検討を要すると、修正しなきゃならぬと、こういう立場で本会議で答弁されておりますから私は聞かなかったのです。  そこで、それは検討するとなれば、これはいま計画を持っておられる五十二年度の、たとえば鉄道の問題、千九百キロですか、あるいは道路の三千百キロ、こういう問題はスローダウン、落とすわけですな、五十二年度の分は。六十年度じゃないですよ。
  260. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この成長率、相当高いところを見ておりまするが、それを維持することが困難であるし、また適当でもないと、こういうふうに考えますので、したがって、この計画については、まあいま情勢がどういうふうに動いていくんだと、いま非常な変動期でありますからこの変動期を経過いたしまして見直しをすると、見直しをした際、その内容がどういうふうになっていくか、そういう問題だろうと思うのです。とにかく見直しは将来必要となると、かように考えております。
  261. 向井長年

    ○向井長年君 この見直しと言うが、いまこれ、きめておるのですよ、五十二年度の分としてね、鉄道も、あるいは道路も。これはそのまま実施するのじゃなくてもう一ぺん再検討するということでしょう、見直しということは。
  262. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) とにかく、四十九年度はそれにかかわりなく、その計画は見ながらでありまするけれども、その計画の想定しておる年度割り、そういうものにはかかわりなく総需要抑制政策の見地から予算化を行なうと、こういうことだと思います。
  263. 向井長年

    ○向井長年君 かかわりなくと言えば、進めるということですか、計画どおり。
  264. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) かかわりなくというのは、これは進める部分もありまするし、それから、いままでの予定の年次割り、それはがっちりはしておりません、年次割りは。年割りはついておりませんけれども、大体想像がつく。その想像のつく年割りを必ずしも守ることができないんだと、こういうことです。
  265. 向井長年

    ○向井長年君 総理ね、私が言っているスローダウンするという問題については、六十年度計画もあれば、あるいは五十二年度計画もあると、そういう問題について、いま大蔵大臣も言われたようにもう一回見直しして、そうして、その中で必要なものはやっていくけれども、全部がこの計画どおり進むものではないと、こういう感じに受け取ってよろしいか。
  266. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府が言っていることをすなおにおとりいただきたいのです。長い期間をかけて日本の英知を集めて答申をいただいたわけです。この答申はそのまま政府は閣議で決定し、国会に御提出をしておるということですから、いまの段階においてこれを改定するとか、そういう考えはありませんということは明確に申し述べているわけです。ただし、石油問題が起こっておるのでございますから、現実的には物価抑制、総需要抑制ということになれば緊縮予算ということになります。そういうことで、いまの経済社会基本計画の中には年次計画は出ておりません。総ワクしか出ていないわけです。ただし、ここでも御論議がありましたように、社会保障計画などは早急につくって年次割りを出しなさいと、振替所得の率をどうするとか、とにかく総ワクはきまっておっても、年次計画をきめなさい、年次計画の中身をきめて国会に出しなさいと、こう言われておるわけでございますから、この基本計画そのものは改定をしないでおきますと、しかし、来年度の予算編成に対しては基本計画の中で常識的に言えば五年間から逆算してくればすぐ出るわけですから、五十二年度から逆算してくれば大体ことしは幾ら、ラウンド幾らになるというのが出るわけですから。が、大蔵大臣はそれにはこだわっておりませんと、こだわっておらないで物価抑制ということを前面に押し出して予算を組みますので、おぼろげながら想定される。おぼろげながらというか、常識的にも想定される数字は横に置いて見ながら四十九年度の予算編成はいたさざるを得ません、こういうことですから、そこをひとつちゃんと分けてあれしていただきたい。いま改定すると言ったってできないんですよ。石油がどうなるかわからないんですから。そうでしょう。いまやったら右往左往計画になっちゃうんです、それこそ。ほんとうですよ。石油は一体どうするんだ、それから、これから石炭をどのくらい使うのか、水力発電所をどれだけつくるのかという計画がこれからできるわけです。それで、いままでの重化学工業中心ではなく、輸出中心ではなく、新しい産業構造というものを前提にしてこれは勉強していかなきゃならぬわけですから、そういうものが、全部、不確定要素がたくさんあって、その中で大宗をなすエネルギーが不確定なときに、いま改定できるわけがありません。改定しないとも言えないし、するとも言えない、ということになれば、いまのとおりやっていきます、こういうことになるんですよ。ですから、そこをひとつ十分御承知になっていただいて、四十九年度は五十二年度から逆算をした数字というものを前提にする予算は組みがたいということを大蔵大臣が述べているわけですから、これはひとつ理解していただきたい。
  267. 向井長年

    ○向井長年君 計画は計画としてあるが、財政主導型で行かざるを得ないから、一応それについてはその次に見ていかなければならぬだろうと、変更もあり得ると、こういうことでしょう。あまりむずかしいことばを使わなくて、はっきり言えば、そういうことじゃないですか。
  268. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) はっきり言うと、そのとおりでございます。
  269. 向井長年

    ○向井長年君 物の不足による今後の新しい産業政策のあり方についてお伺いいたします。  これは通産大臣でしょうが、特に当面は石油なり生活二法のこれで対処すると、こういうことだと思います。そこで、これが一応正常になったときに、やはりこれは従来どおり自由競争中心、それから言うならばカルテルに向かわざるを得ないと思うんですよ。この点についてどう考えておられますか。
  270. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) カルテルに向かわざるを得ないということが私に理解できないのでございますが、業者のためのカルテルというようなことは、われわれはできるだけ認めないし、その方向がいいとは思いません。まあ価格の不況カルテルというようなものは、緊急避難として、やむを得ざる行為として限定的に認められておりますけれども、カルテル自体というものは、しょせん好ましいものではないと思っております。
  271. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、新しい今後の産業構造のビジョンというものはどういうものですか。
  272. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり長期的に見ますと、価格機能あるいは市場メカニズムというものを生かした自由競争原理、競争的共存、そういうようなやり方を基本にしながら、しかし、緊急事態が起きた場合、そういう場合には大多数の国民の自由を守るために一部の企業の自由が拘束される、それは政府の名においてそれを行なう、そういうことがやり方としては正しいやり方ではないかと思います。
  273. 向井長年

    ○向井長年君 企業によっては、公企業の積極的な活用の混合経済といいますか、混合経済体制の推進がぼくは必要ではないかと思うんですが、この点考えませんか、そういうことは。
  274. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現代社会においては、先進工業国家においては、多かれ少なかれそういう混合経済的なことで行なわれておると思います。これは、フランスにおきましても、イギリスにおいても、アメリカにおいても同様でありまして、日本もその一つであるだろうと思います。通産省のいわゆる行政指導、各省の行政指導というようなものも、公益を目標にして業界に協力を求める、そういう形で行なわれておりますし、また公社、公団、国有鉄道、そういうようなものもある意味における公的機関としての企業に対する介入でありますから、事実上行なわれていると思います。
  275. 向井長年

    ○向井長年君 今後、こういう問題が起きたんだから、積極的にそれを活用していくという、そういうビジョンがないのかということですよ。この点、どうですか。
  276. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油のような場合には、たとえば石油公団を強化して、いままでのように単に探鉱とか融資源程度でなくして、みずから石油を獲得できるというような形で先兵として働かせるということが考えられます。あるいは石炭については第五次答申によりまして管理委員会という思想が出てまいりまして、そしてある程度の公共性を持った運営がそれで担保されると、そういう形になっております。物資の状況等によって、そういう機能もまた重要視すべき段階があるとも思います。
  277. 向井長年

    ○向井長年君 鉄鋼はどうですか。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 鉄鋼の場合はいままではわりあいに業者間の自主的努力によって、対外的にも対内的にもわりあいうまくいっているんではないかと思うのです。それで、設備調整について話がつかなくなった場合に通産省が乗り出す。そういうことがありましたが、やはりある程度自主的な努力を基本にして、ある限度が来て、彼らが通産省に頼んできた場合に通産省が出ていく。そういうようなやり方が好ましいやり方ではないかと思います。
  279. 向井長年

    ○向井長年君 そこで、これ、通産大臣ね、家庭用のプロパンの値上げが非常に著しいと思うんですが、これは特にこの標準価格の先取りを現在やっておるのじゃないかと思うんです。これは通産省と公取が覚え書きをかわしましたですね、覚え書き。この覚え書きをかわした中でちょっと私わからないのは「国民生活安定緊急措置法の実施等に関し」て、「等」というのは何ですか、一体。そこへ「等」ということを入れてますが、どういう意味でこれは「等」を入れておるんですか。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、やっぱり裁量について弾力性を持たせるために、将来出てくるいろんな事態に対応できるように「等」ということばを使ったので、それは政府が介入して国家権力を持って業者に協力を求めるいろいろな対応があり得ると思うんです。そういうような中で弾力性を持たせるために「等」ということばを使っていると思います。
  281. 向井長年

    ○向井長年君 この弾力性が若干これは悪用されておるんじゃないですか。いま先取りという問題は、どうもそういうものが出るというので若干悪用されているような感じがしますが。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 悪用されているということはないと思います。指導価格をきめましたのは灯油でございますけれども、灯油については三百八十円店頭裸価格というのは、業者のほうがぶうぶう言って、あれを説得するのにずいぶん時間もかかり精力的にもやったわけであります。最近ようやく全国的に浸透しまして店頭三百八十円というのは非常に守られてまいりました。これはやはり業者の協力ということもまたあったわけで、そういう意味で、先制攻撃的にかなりきびしい値段でありましたけれども、こちらがきめましたということは、ほっておくとあれが四百円なり四百五十円になる危険性もありまして、その点ではむしろ価格を安定させる方向に貢献したんだろうと私は思います。いまプロパンガスについてたぶん今明日中にそれをやろうと思いまして、私は委員会に出ておりますから、手配ができたらエネルギー庁長官発表してよろしいと、そういうことを言ってありますが、これも同じように、ほっておきますと、いままで九百円ないし千三百円ぐらいであったのが千五百円、千八百円というようなのが場所によっては出てきつつあります。したがいまして、今度の場合には、業者間あるいは地方に至るまで根回しをよくして、その値段を公示いたしましたら一斉に協力できるような体制をやらせるように根締めをずいぶんやっておるわけであります。そういう形で、これも指導価格をきめまして、千五百円とか千八百円とかいういう値段が出ないように安定させようと思っておるわけです。これらの価格は大体来年三月ぐらいまでを目途に長期持続させようという決意でやっているわけです。輸入価格が暴騰するとか、石油の値段が暴騰するというやむを得ざる事態が出てきた場合はこれはしかたがありませんが、現在の条件のもとにおいては、もうできるだけ今期はそれでもたせようと、そういう意味でやっていきたいと思っているわけであります。
  283. 向井長年

    ○向井長年君 私はこれ新聞で見たんですが、十二月の九日に「業者協定すんなり」として「公取通産省との覚書がアダ」「あすから四四%アップ」これはやみカルテルじゃないですか。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その新聞記事は誤報でございまして、そういう事実は全くありません。
  285. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、これアップはしてないんですか、業界において。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう協定を業界が結んだこともなし、また一斉にそういうことによってアップしたこともありません。
  287. 向井長年

    ○向井長年君 現在プロパン値上げ、どのくらいあるんですか。
  288. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはところにより場所によりいろいろ違いますが、大体十キロ九百円ぐらいから千三百円ぐらいの幅があるだろうと思います。
  289. 向井長年

    ○向井長年君 公取委員長どうですか。そのとおりですか、ちょっと。
  290. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 御指摘になりました新聞記事は確かに誤報でございます。そこにある、当方の公取の部長が語ったということも事実に反します。それで、もう一つ申しますが、この私どもが覚え書きで結んだ標準価格とありますのは末端価格をさしております。メーカーも価格を、たとえば今後法律が通りますればメーカーの標準価格というごとも当然あり得るわけですが、これを守るために特別に業者間で協力するという必要はないんで、標準価格は当然そのまま守らるべきである。しかし、末端価格の場合は、これは業者の数も非常に多い。そこで、上の段階のメーカー等がこれを守らせるためにイロハニのニに書いてある制裁、出荷停止等を行なっても、独禁法上それは違反にはならない。こういう趣旨でございます。
  291. 向井長年

    ○向井長年君 その覚え書きがこれから他の物資にも非常に大きな波及をするんじゃないですか、この点は。石油だけじゃなくて他の問題に。そういう傾向が私はあるような感じがするんですが、いまずっとこの先取りという立場から、この点、どうでしょうか。
  292. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今度の価格並びに物資の調整計画というのは戦争中の官僚統制をやめて、何とかして全国民ぐるみの協力で、官民協調の形で価格を安定させる方法はないものか。戦争中の統制経済とかやみとかというものには非常にこりております。そこで考えました結果、やはり官庁が主導権を持って業界に協力を求めて、そうして業界で協力しない者については業界内部で制裁を行なって、そうして協力してもらう。それを実行するについては消費者から監視してもらう。消費者の監視をわれわれは最大限に取り上げて、いいかげんなことをする業者はこれで締めつける。そういうやり方で国民総ぐるみで安定させようというやり方で民主的調整という形でやっておるわけであります。これ以外にもっといい方法があればそれを考えてもいいと思うのですが、いわゆる統制経済的なやり方を排除しようと思うと、われわれの知恵の程度では、これがいま考えられる一番いいものであるだろうと思っているわけです。それがカルテルになりはしないか、あるいは価格を高く安定させやしないかといういろいろな心配もあることはよく承知しています。また、そういう懸念がなきにしもあらずであるということも知っております。その点は行政官庁としてよほど注意してしっかりやらなければならぬと思っておりますが、しかし、やるやり方としては当面これでいってみて、最善の努力をしてみて、それでもだめだという場合に、今度御審議願っている法律の、石油でいえば十八条を発動して、割り当てとか切符ということへ移ります。しかし、これはやむを得ざるぎりぎりの段階でやらなけりゃいかぬ、そう思っておるわけであります。
  293. 向井長年

    ○向井長年君 通産大臣、趣旨としては私はいいと思うんですよ、それで。趣旨としてはいいけれども、いまこの問題で日用品全般がかけ込みの、言うならば値上げ幅をぐっと伸ばしているのですよ、現に。少なくとも二〇%から六〇%ずつずっと上げておるじゃないですか。これをどうして調整する、いま現在。今後の理想はいいが、現在ですよ。
  294. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり指導価格をきめるときには合理的にきめなけりゃいけません。ですから、石油にすれば着荷の値段、これは公示価格、あるいは運賃、コスト、そういうものである程度わかります。そういうものを基準にして製品にどれぐらいかかるというので灯油やプロパンの値段も出てくるわけであります。それに需給関係も考慮し、適正利潤も考慮しなけりゃなりません。そういうわけで、そこで一々やはり合理的に理詰めで価格をきめるので、便乗値上げは許さぬという方針を持っておりますから、いままでやったのは灯油とそれからプロパンと二つでありますが、それ以外の品物をやる場合にもそういう注意をもってやる予定であります。  プロパンのことを申し上げますと、大体メジャーズから——日本の家庭その他のプロパンは半分は輸入です。外国の業者から買っているわけですが、そのメジャーズから来ている値段というものは大体二・八倍ぐらいに上げさしてくれという要望が来て、もう長い間上げる上げると通産省へ言ってきておるのを実は押えてきたわけであります。もうぎりぎりの限度になりましたから、今明日中に指導価格をきめようということでありますが、来年の一月一日からかなり上げたいと、また、ある程度上げないと実際採算が合わぬというのもあるんであります。しかし、これをしばらくほっといておけば千五百円ぐらいにすぐなっちまう。そういう危険性も感じましたから、今明日中にともかく安定値をきめて、そしてそれを無理でもがまんしてのんでもらうと、それで来年三月ぐらいまでそれでがまんしてやってもらうと、そういう方針でいまは臨んでやっておるのであります。
  295. 向井長年

    ○向井長年君 現在、これは標準価格の基準をつくろうとしていまどんどんとかけ込みの値上げをしていますよ。これは個々にやっているか、業界でやっているか、この点について政府はどういうようにして押えようとするのか。あわせて、こういう問題は内容によっては業界でやっておるところもあると、現に。この点については公取はどう考えるんです。調査しておりますか。
  296. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) いろいろな物資が確かにかけ込み的な値上がりを示していると思います。その中にはカルテルではないかという疑いのものもかなりあるようであります。そういうことに対する情報は幾つも入っておりますが、そういうことについては私どもの能力の限度をもう越えておりますけれども、できるだけの措置をとって、もしその疑いが相当確かなものであれば、これは調査を行ないまして、そういう違反行為をですね、独禁法違反行為に関する限りは私どものほうの手で排除していきたいと考えていますが、ただ単なる業者で、個人それぞれが思い思いに上げているというだけでありますと独禁法は働かないわけでございますので、その辺の区別は厳格にしていかにゃならぬと、こう考えております。
  297. 向井長年

    ○向井長年君 通産大臣どうですか。
  298. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 便乗値上げは許さぬというのがわれわれの方針ですから、その値段が上がってくる前のときの値段、たとえば十月なりあるいは十一月の初めなり、その値段を基準にして、その後かりに上がったとすればどういう理由があるかということを精査して、われわれが納得しない限りそういう高い値は認めない。で、やっぱり上がる以前の値というものが基礎であって、それを基準にして私たちはものを考えていくつもりであります。
  299. 向井長年

    ○向井長年君 この問題はまたあとにしましょう。  そこで外務大臣にお伺いしますが、この石油問題で今日こういう状態になっておるわけでございますが、これはやはりもともとただせば外交という問題に大きな基礎があると思うんですよ、今日まで。この外交に対してちょっとお伺いしたいことは、私は今日までやっぱり、この中東紛争等の問題がございますけれども、基本的に、外交というものはどういうところに基本を置いて持たなければならぬのですか。幼稚な質問のようですが、基本は外交はどうあらねばならぬかということをひとつ外務大臣から答えていただきたい。
  300. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは一つ、国と国との交際でございますから、基本は相互の信頼がなければいけないと思います。相互の信頼の基礎は、やはり約すれば守るということ、守れない約束はしないということが基本でなければならぬと思います。  第二に、日本の国の力、環境、まあ、そういうものを踏まえたものでなければならぬと思うのでありまして、わが国の力をよくはかり、できることできないこと、十分見きわめた上で、わが国の置かれた立場を踏まえた上でやってまいる必要があると考えております。
  301. 向井長年

    ○向井長年君 立場を踏まえたというよりも、やはり外交というものは少なくともまず平和に徹するということね、これは政府がいつも言われていること。あわせてやはり国益でしょう、国益。そして国民の生活でしょう。こういう問題を考えて外交というものはあらねばならぬと、こういうことだと私は思うんですよ。だから、言うならば、アメリカ一辺倒であってもいかぬし、反米であってもいかぬし、親ソ一辺倒であってもいかぬと、少なくともこれは国益という立場から考えるならば、イデオロギーとか党利党略じゃなくて、まず国益と、そしてまた国民の生活、こういう立場から外交はあるべきだと思うんです。この点について、そうじゃありませんか。
  302. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 全く仰せのとおりでございます。
  303. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、いま石油危機が起きておりますが、やっぱりこれは一つには外交の今日までの誤りじゃなかったんですか。アメリカに、あまりにもアメリカの言うがままになっておった外交、真の自主外交ではなかったんじゃないかと、こういう感じがしますが、どうですか。
  304. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) その点につきましては向井さんににわかに賛成するわけにはまいりませんで、そういうことのために石油危機が起こったとは私は考えておりません。
  305. 向井長年

    ○向井長年君 そのために起こったんじゃなかったら、なぜいま外交の若干の転換をしておるんですか。外交の転換をしたじゃないか。
  306. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 外交が転換した覚えはございません。
  307. 向井長年

    ○向井長年君 アラブ諸国に対する今日、先般来イスラエルとの関係の問題で、いままでの考え方と一緒ですか。違うんでしょう。
  308. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いままでの基本的態度に変わりはございませんで、それをより鮮明にいたしたわけです。
  309. 向井長年

    ○向井長年君 アラブ諸国でいま駐とんしておるイスラエルの軍隊は一日も早く撤退すべきであるというようなことをいままで言いましたか。
  310. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) イスラエル軍は占領地域から撤退すべきであるということは、一九六七年以来終始言い続けてきたわけでございます。それをより明確に、全占領地域から撤退すべきであるというように鮮明にいたしたわけでございます。
  311. 向井長年

    ○向井長年君 総理ね、それは幾らだれがどう言おうと、今日までやはり若干のアメリカ等の関係からイスラエルに対する言うならば温情的な外交をとっていたと思うんですよ。そういう点が今日の石油規制に、大きな規制がわが国にも同じように来たんじゃないですか。そうじゃないですか、これ。総理、違いますか、これ。
  312. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いまの石油の供給制限は、アラブ関係国による外交戦略として石油を武器として使っておるわけでございまして、それがいかなる基準によってやっておりますかさだかでないところもあるわけでございますが、あなたのおっしゃるように、親米であるか親米でないかという基準によって供給制限が実行されておるようには私は考えておりません。
  313. 向井長年

    ○向井長年君 アラブとの外交は今日までアメリ外交と同様にやっていましたか、そうしたら。同じような方向で進んでいましたか。
  314. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それぞれの国とわが国との間におきましては、個性的な間柄があるわけでございまして、同一の関係というのはあり得ないわけでございまして、置かれた状況に応じまして誠意を尽くしてまいるのが外交であろうと考えておるわけでございます。アメリカとの間におきましてはたいへん濃密な関係があるわけでございまして、さような意味においてアラブ諸国との間に関係があったかと申しますと、仰せのように、そうではなかったと言わざるを得ないと思います。
  315. 向井長年

    ○向井長年君 それだから、やはりいまは転換したということですよ。そういうことを私は悪いと言っているのじゃないのですよ。パレスチナのあの人権問題でも、いまだかつて言わなかったでしょう。今度初めて言ったのじゃないですか。
  316. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは前々から申し上げていることでございます。
  317. 向井長年

    ○向井長年君 幾ら外務大臣がどう言おうと、やはり今日までの外交路線というものは、そういうように、やっぱり一方に片寄っていたと、私はここで、やはり国益という問題、イデオロギーじゃなくて、そういう立場から今後は考えなければならぬじゃないかと、こういう立場でこの問題を提起したわけですが、それ以上言っても答弁は出ないから私はやめます。  そこで、通産大臣、このエネルギー源の構成実態はいまどうなっておりますか。構成実態。
  318. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の記憶によりますと、電気に関しましては、火力発電系統が七五、六%、それから原子力が三%程度、水力が二三%程度、そういう構成であります。それから別な面から見ますと、大体石油におぶさっている分が、合計しますとやっぱり七〇%以上、それから石炭が一七%ぐらい、それから石油、石炭が電力に変わってくるわけでございますが、水力の部分がたしか六%ぐらいであったと思います。大体そういう比率です。
  319. 木島則夫

    ○木島則夫君 関連。  まず、田中さんに伺いたいのですけれども、先ほど、政治家というものはテーマを先取りして国民に示すことが大事なんだというような意味のことをおっしゃった。そして、それならば、テーマを提示して、そこから引き起こされたいろいろの問題を予想することがあなたはできなかった面があるとするならば、私は、これは重大な欠陥だと思いますよ。影響が引き起こしたというのは、言うまでもなく、土地の暴騰であり、買い占めなんです。百歩譲ったとして、あなたは日本列島改造が行なわれれば、土地、物価はおさまるとおっしゃる。何か、これから先楽しみがあって、そこへ行くまでの産みの苦しみのようなことをおっしゃるけれども国民はその産みの苦しみと思っても、苦しみがあまり長いと、からだの弱い者、ひよわな者は死んじまうのです。一体この苦しみがいつまで続くかということをはっきりしていただきたい。  それから、これは田中さんと通産大臣に特に私はお願いをしたい。政策の面から漏れた、ひよわな人たちがいま一体どういう現実をたどっているか、鳩ケ谷で個人タクシーの運転手さんが自殺をしましたね。これも重大なことです。十二月の四日の運輸省の告示にも、十一月中の認可申請中の者については給油証明がないと認可をしないようなことを言っている。まさに官僚的というのはこのことをもって私は言うべきだと思う。いままでどうですか、新しく個人タクシーの認可がされる、スタンドの実績なんというものはありっこない。それから東京郊外の新しい団地だってそうですよ。つまり、新しく入居をした、そういう人たちはお店なりスタンドの実績がない、灯油に困っているわけですよ。特に私が言いたいのは、養護施設あるいは老人ホームといった施設関係者の困りようはひどい。保母さんがあきかんをかかえて寒い中飛んで歩いて灯油集めに奔走をしている。こういう現実のものをやっぱり一つ一つ救い上げていくことが私は政治ではないかという意味で、ここではっきり皆さん、年内にはこれこれこういうことをするんですということを言ってくださいよ。私が二、三日前に乗った個人タクシーの運転手さんはこう言っていた。いままで一番安全なのは個人タクシーだと思っているでしょうけれども、いま一番安全でないのが個人タクシーになりつつあると、こういうことばなんです。よくこれをかみしめて、お二人から具体的な答えを私は聞きたい。お願いします。
  320. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 列島改造が物価を上げたと考えてないんです。あなたは考えているかもしらぬが、私は考えてないんです。
  321. 木島則夫

    ○木島則夫君 おかしいよ、それば。
  322. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは見解の相違です。あなたの考えだけ押しつけちゃいけませんよ。そして、国土総合開発というものは必要であるということを考えております。私はずっと前から述べておけますとおり、土地が上がったり株が上がったのは、ドルの切り下げ等からきた国内整備と、それから国際収支の問題と、それから中小企業や零細企業に対する対応策をとらなければならないという政治的な要請から金融緩和政策等各般のものをとったわけでありますということは、こまごまと述べているわけであります。そのときに、その金が土地や株に使われたということに対しては熱きに過ぎたということではあったかもしれませんと、その結果に対しては反省をしておりますと、こう言っておるわけでありますから、いつまでも列島改造、列島改造ということを感情的にやられては、私の答弁も感情的にならざるを得ないわけです。そういうことでは私は何も現状を解決することにはならないと思います。ですから、私は、列島改造は私的なものでございますと、国土総合開発は必要なものでございますと、これからもっと必要になると思っておるんです。だから、国土総合開発法を通していただいて、そうして土地の凍結が行なわれ、乱開発が防止され、ほんとうに安定的に土地が提供され、地価が下がったなら、私は先ほどの御質問者に対しては、なるほど国土総合開発法は必要だったなという評価されるときがあります、私はそれを信じますと、こう言っておるのでありますから、そういう問題、御自分のものさしだけで、私にあやまれとか、そういうことではやっぱりいかぬと思うんですよ。  もう一つの具体的な問題、これは石油という問題が急遽起きた問題でありますから、いろんな困難な問題が起こっておる現状はそのまま認めて政府も緊急立法をお願いしておるわけであります。いま政府には権限がありませんが、しかし、行政的になさなければならない最善の策は行なっておるわけであります。これは国民協力を求める、これは当然政府が行なわなきゃならぬことであります。ですから、三百八十円では灯油は売れませんと、売れませんといっても、何とか緊急立法が通れば必要な権限によって石油は供給するし、灯油も供給するからいま三百八十円で売ってくださいと、こう求めておれば、だんだんと三百八十円で売ってくれるようになっておるじゃありませんかということを通産大臣も述べておるわけです。ですから、いまはわれわれは、この価格で売りなさいというわけにはまいりません。これは買いだめ売り惜しみ法律によって措置する以外にはないわけでございますから、できませんが、しかし、法律がないから何もしないなどということで行政の責任が果たせるものではございませんから、これに対してはいま全力を傾けて、通産省や農林省は寝ないで、徹夜でやっておるんです、毎日毎日。これだけ夕方までとにかくやっていただきますと、これからとにかく先ほども申し述べたとおり、あの法律の審議が引き続いて行なわれておりますから、大臣が関与するわけにいきません。いきませんが、その間、事務当局、業界にも、あらゆるところに要請にやっておりますから、その結果、メモを持ってきて、指示しているところまで相手がのんだなら、それを公表しなさいと、こうやっているわけですから、法律がなくても、可能な限り最大の努力をしているんです。ですから、それは今度法律ができましたらもっとやりますと、ほんとうに努力をいたしますと、こういうことを申し上げておるのでございますから、やっぱり政府の善意と、政府法律がなくても全勢力を傾けて短期にこれをおさめたいという熱意に出ておるということは、これは理解をしていただかなきゃならぬと思うのです。ただ、その過程において自殺をされる人もある。これは現実です。いま非常にお困りになっている人たちもあります。そういう人たちには、とにかくこれから国民生活に必要な順位をつけて、可能な限り最大の努力をいたします、それがいま政府の基本政策、基本的な姿勢でございますから、これはひとつお認めをいただきたいと思います。
  323. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恵まれない方や施設の方々に対して十分手当てをやれというお説には全く私たちも同感であり、責任を感じております。  そこで、私ら一番いま心に思っておりますのはプロパンの問題でございまして、全国でばらつきがあるわけです。全体のマスの量においては、融通すれば切り抜けられる量があるんです。しかし、県により、あるいは県の中でも地域によって余裕のあるところとないところがある。そういう意味で余裕のないところあたりでこの間のような、春日部のようなガス欠が起こってきておる。そういう現象が二十日過ぎにばらばら全国で起きやしないかということを非常に心配しているわけです。しかし、全体的に見れば量はあるわけですから、その需給調整をうまくやれば心配をかけないで済むというのが率直な実情なのであります。  そこで、私は通産当局に命じまして、全国の通産局に、通産局長を本部長とする緊急のエネルギー対策本部をつくらせまして、都道府県及び農政局や、あるいは陸運局とも連絡し、そして各府県ごとにその保有量をすみやかに把握して、どこが欠けたらどこのを持っていくと、そういう計画を至急つくれということを、けさ指示いたしまして、全国の通産局にそういう体系で準備体制をつくらせているわけです。しかし、いままでのやり方では、施設ができても、近所の油屋さんへ行って買ってきて、それでなじみになって安定供給という形になって——自由経済ですから国も市町村も介入しなかったわけですけれども、そこで、どっかで足りなくなった、新しい施設ができて、それが売ってくれない、そういう場合は、こういう新しいケースで初めて出てくるわけです。われわれが法律で権限を持っておれば、そういう施設ができたら、おまえのところはどこで買いなさい、おまえのところはあそこへ売りなさい、そういう命令ができ、指導ができるんです。しかし、いまわれわれにはそういう権限はないわけです。ですから、そういう申し出があった場合に、そのもよりの系統あるいはスタンドに対して、あそこへ売ってやってくれ、そういうふうに行政指導をして、申し出を待ってそれを結びつけてあげるということをやる以外にないわけです。だから、申し出がない限りちょっとわからない、現実から申し上げますと。それを市町村等でわれわれのほうへ早く申し出て一けさも一件ございました、三鷹のほうで。そういうのを申し出てくだされば、われわれのほうはすぐ結びつけるようにいたします。法律ができますれば、そういう件について通産省は報告を求めたり、資料を求めたり、情勢によっては立ち入りまでできるという権限がありますから、結びつきも命令によってもできる形になります。ですから、一日も早くこの法律をお認めいただいて、そういう権限をして、いま差し迫っているこの事態に対応できる体制をつくらしていただきたいと思うんです。  なかなか手が回らなくて恐縮ですけれども、いま総理から申されましたから若干申し上げますと、ともかく資源エネルギー庁は、もう法律もつくり、いま政令をつくる、省令をつくる、電気の一月以降の制限をどうする、そういうことで、もう毎晩ほとんど徹夜状態なんです。で、課長一人、それから課長補佐一人がとうとうぶっ倒れまして、もう三日ぐらい入院しておるんです。そういう状態で、全力をあげて、ほかの課からも二十人ぐらい応援させまして、プロジェクトチームをつくって、全勢力をあげてやらしておるのが現状なのであります。どうぞ御理解をお願いいたします。
  324. 向井長年

    ○向井長年君 いま、タクシー問題が出ましたから、ちょっと運輸大臣にお聞きしますが、このLPG問題ですが、これは今回供給をふやすということで、九割程度これを業界が自主配分すると、こういう形になりました。しかし、これは中小会社とか個人タクシーといいますか、こういうところはなかなか手に入らぬ、言うならば実績主義でやる、こういうことが言われて、非常に不利な状態になっているんですよ。この点に関して、公平に指導する、こういう形を私はやるべきだと。この点についてどう考えるか。  もう一点は、今後の値上げの問題でございますが、おそらくしないだろうと思う。料金の値上げはしないと思う。その点どうするか答えていただきたい。あわせて、特にこの個人タクシーとか、中小タクシーに対しては、そういうような情勢の中から非常に困っていると思います。これに対する優遇措置を何らかとらなけりゃならぬのじゃないかと思います。たとえば、一年間の減税、あるいは低利融資を行なうとか、こういう問題について、運輸大臣、どう考えますか。やるべきだと思いますが、どうですか。
  325. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 油の、LPガスの配給の問題ですが、これは木島さんから先ほどお名ざしではございませんでしたけれども、いろいろ個人タクシーのことについてお話がございましたので、あわせてお答え申し上げますが、このLPガスの減配あるいは値上げの問題が昨月の暮れから出てまいりました。これは非常に憂慮すべきことであるということで、いろいろ運輸省におきましても対策を通産省とともに立ててまいったわけでございます。先ほどの鈴木強先生の御質問にもお答えしたわけでございますが、まず、何はともあれ、安心して仕事をしていただくということが第一だと。何はともあれ、それに取っかからにゃいかぬというわけで、十二月のLPガスの配給は十一月の実績の九〇%、十一万五千トンほどは確保いたしますと、通産省からもそういうふうなお約束をとり、石油連盟も了承していただいた。さあ、これをどう分けるかということでございます。これは全国に数多くのスタンドがございますし、また、業者も多岐にわたっておられるわけでございます。私どもも、個人タクシー、いわば非常に弱い立場の方に御迷惑があってはいかぬということで、この配分に対しまして夜を日に継いで実はやっているわけなんです。徹夜しているのはひとり通産省、農林省だけじゃございません。私どもも徹夜してこれらの問題の解決を急がしているわけなんです。ところが、初めてのことでございますし、これはなかなか各団体あるいは各業間に意見があるわけなんです。それで私、実はここでいま、きょうじゅうには必ずその結論を出しますといって言いたいところなんですけれども、あるいはもう出ているかもわかりませんが、先ほどもお話し申し上げましたように、きょう午前中までは、個人タクシーの皆さん方がいろいろまだ御意見があるようで、きのうじゅうに解決をつけようというのが実はきょうに延びているわけでございます。これも皆さん方のお話が、意見が出てまいりますと、大体、先月の実績の九〇%程度のLPガスの確保において公平にこの分配ができるような話し合いができるというふうに思っております。  なお、御指摘のように、一人の、まさに営業を開始されんとした方が非常にこの問題を心配されて自殺されたということについては、ほんとうに痛ましいことでございまして、これは運輸省としましても、決してその責任をのがれるもんじゃございません。責任を痛感しております。今後こういうことのないように全力をあげて問題の解決に当たってまいりたいと思います。  それから東京陸運局が出しました文書でございますが、私も全くそのとおりだと思います。ただ、これはせっかく許可証を差し上げても営業が成り立たぬじゃいかぬ。いま事態はこういうふうなことになりつつあるという、いわば非常な、ある意味では半分は親切を含めたような気持ちでやっているようでございますけれども、それがそういうような、いま御批判を受けたような形で受け取られている。ここが大切なところでございまして、私は、こういういま事態でございますと、私どももこうして一生懸命やっておりますけれども、あなた方も何か手がかりがあれば、ということならば御納得がいくだろうというふうに考えるのでございますが、この点は、特に私は問題を取り上げて、各局、陸運局にも指示いたしました。  それから値上げの問題でございますが、これも先ほどの鈴木強先生にお答え申し上げましたように、この問題はひとつ、いま六大都市からも出ておりますけれども、その他のところからも出ております。慎重に検討していきたいと思います。  それから減税はどうかということでございますが、これは当座の問題として、ややなじみにくい問題であろうかとも思いますけれども、融資は、もうこれは特に油で打撃を受けております中小零細な業者に対しましては十分ひとつ配慮してやって、前向きで検討し、その実現に努力してやらなければならぬと思っております。  以上でございます。
  326. 向井長年

    ○向井長年君 一般の減税を言っておるんじゃないのですよ。これは、そういうところから出てきているから、年末を控えてたいへんだから、年内減税をひとつ考えてやれということと、それからもう一つは、低利融資というものも特殊な問題として、これ、特別につくったらどうだと、こういうことを言っておるのですが、この点どうですか。
  327. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 減税の問題につきましては大蔵大臣からお答えいただきたいと思いますが、融資の問題に対しましては、いま私が当座の問題としてお答えしたとおりでございます。
  328. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公定料金の問題につきましては、非常にいま物価が機微の際でありますから、これは一般論でございますが、一般論として私はぜひ抑制体をとらなきゃならぬと、こういうふうに考えます。ただ、その際に税をどうするか、そういうのはちょっとなじみにくいんじゃないか。金融については、かなりのことが考えられるのじゃないか、そういうふうに思います。
  329. 向井長年

    ○向井長年君 特殊金融ですよ、これのみの特殊金融を考えてやれということですが。
  330. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 特殊金融の線に乗るものにつきましては特殊金融、それから一般金融でなければどうも処置ができぬというものにつきましては大蔵省としてあっせんをするとか、そういう努力は、これはいたす、そういうふうに考えます。
  331. 向井長年

    ○向井長年君 これ、通産大臣、ちょっととぎれてしまったんですが、最悪の場合、石油はどれぐらい削減され、またどれぐらい続くか、これはわからぬのですか。前に、神さまだけしかわからないというようなことを言ったが、本会議では。いまの情勢ではどうですか、三木さんもあちらへ行っておられますが。  それからもう一つ、アラビア石油はわが国の自主開発でしょう。これが五〇%の削減といわれておるんですが、ちょっとこの実態はどうなっておるんですか、この点もあわせて。
  332. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油の削減につきましては、OAPECの動向がどういうふうに動いていくか、まだ見当がつきませんが、いままでの情報では、一月また五%削減があり、その後も予断を許さない、それがいままでの情報であります。しかし、できたら一月もぜひ十二月並みに削減を免除してもらいたい、こういう強い希望を持っております。概して、われわれといたしましては、下期期待に対する二〇%減ということでいけば大体合うんではないかということで、一億二千八百万キロリッター程度の入荷ということを考えております。いままでは一六%減で一億三千四百万キロリッター程度を考えておりましたが、一億二千八百万キロリッター程度と考えざるを得ぬということで、すべて計画を立てております。  それからアラビア石油の問題は、サウジアラビアとクウェートと両方の中間地帯で操業しておりまして、サウジアラビア、クウェートおのおの一〇%の資本参加をしておる国でございます。それで十一月は、九月実績の二五%削減を指示されまして、そのままで来ておるわけです。しかし、一月また五%削減というのはOAPEC一般の線でありますから、それが出てくる危険性は十分ある、そう思っておりまして、三〇%云々というのは、これは誤電であります。OAPEC一般のラインでアラビア石油も拘束を受けている、そういうことでございます。
  333. 向井長年

    ○向井長年君 五〇%じゃない……。
  334. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 二五%、それに一月五%ということで目下のところ来ておる、そういうことです。
  335. 向井長年

    ○向井長年君 大蔵大臣政府は総需要抑制を行なうのは、大体これは財政引き締めを中心として行なおうとしておるわけでしょうが、きょうの新聞に出ておりますが、公定歩合ですね、これは日銀総裁は一%というようなことを言っておりますが、この問題は何%ぐらいを考え、なおまた、いつごろをこれは考えておられるのか。この点とあわせて、中小企業に対してはどういう関係を持っていくのか、この点どうでしょう。
  336. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公定歩合につきましては日銀の権限に属することでございますので、私から意見を差しはさみたくないのであります。  それから中小金融につきましては年末に相当しわ寄せもあろうかと、こういうふうに考えまして、三千四、五百億ですか、の中小三機関による融資をいま実施中であります。
  337. 向井長年

    ○向井長年君 この総需要抑制策は、ただ財政引き締めだけではいかぬと思うのですよ。そういうかっこうだけではいけない。したがって、やはり少なくともこれは財形問題を頭に置かざるを得ないんじゃないか、こう考えます。そういう中から勤労者の財産形成について私はお伺いしたいと思うのですが、これは、政府は預金の吸収策として非課税限度の引き上げ、こういう問題は考えておられますがね、マル優というやつも。あるいはまた、六カ月ものに対しましては一%の利子の引き上げ、こういう問題も。しかし、これで十分であるとは私は思わない。その点どう考えられるか。あわせて、この際思い切った預金吸収策として、勤労者財産形成の画期的な充実をはかるために、政府が税額の控除を中心とした税額控除制度を根本的にひとつ変更してはどうか、こういう感じを持ちますが、これをあわせて。
  338. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この際、預貯金は非常に大事なことでありますので、私も心を砕いておるんです。そこで、課税限度の引き上げだとか、いろいろやっておりますが、財形につきましては私非常に関心を持っているんです。それで、どういうふうにこれを強化しようか。税額控除というふうになりますと、これは政府が補助をする、こういう形になりますので、これは相当問題だと、こういうふうに思いますが、その他何かこれを強化する方法があるかどうか、労働省からもいろいろな提案があります。そういうものをいま検討しておる、そういう最中であります。
  339. 向井長年

    ○向井長年君 預金の割り増し金ですね、低所得階層が五十万円の預金をすると、これに対しての割り増し金、少なくとも二〇%くらいの割り増し金をつける。こういうかっこうでひとつその点は吸収していったらどうです。
  340. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さあ、これは非常にむずかしい問題なんです。つまり、いま六分、七分という利回りの一般の預金水準である。それが今度は補助金をつけると、こういうことになりますと、利回りが非常に高くなる。一般金利水準の問題として非常に問題があるだろうと、こういうふうに思っておるのでありますが、まあ何かほかに財形につきまして道はないか、それをいま探っておると、こういう過程でございます。労働省でもいろいろの意見がある、それを相談をしておるというのが現状でございます。
  341. 向井長年

    ○向井長年君 労働大臣は。
  342. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 財形貯蓄に対しての御推進、ありがとうございます。  この委員会においても、総理大臣あるいは大蔵大臣から財形貯蓄についてだんだんの話が出ておりますし、しかも、やはり貯金がだんだんいまの物価上昇で減るというところ、それを守るのにたいへん苦心をする必要があると思っております。ただいま大蔵大臣も言われましたように、私たちは、この際やはり思い切った援助をして、そして購買力の吸収、さらにまた、働く諸君に、総理の言われるように夢と希望、そういうものを持たしてやりたい。そんなことからいたしまして、審議会から出ております税制控除、あるいはまた割り増し金の創設等々の話もありますので、こうしたことで大蔵省とだんだんの折衝中であります。
  343. 向井長年

    ○向井長年君 税制控除というのは、これは一般論として所得税の問題でしょうが、しかし、魅力ある貯金というものに何かこれは考える必要があるのじゃないかと思うのですよ。そうせぬと、いま金の値打ちがなくなったからその気持ちが非常に薄らぎつつある。したがって、もちろん金利の問題もありましょう。あるいはまた、いま申しました何らかの形の割り増し金という問題、これはひとつ検討してもらったらどうでしょう、大蔵大臣
  344. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま財形につきましては、せっかく検討中である。何かこれを助成する名案がないかなといって労働省と相談をしておると、こういう最中でございます。
  345. 向井長年

    ○向井長年君 それで、ついでですから、労働大臣、雇用問題についてお伺いいたしたいと思いますけれども、来年度の労働需給率はどのような姿になるのか、まず第一に。それから、非常に大きな不安が生じていると思うが、政府はこれに対してどう対処しようとするのか。  それから、続いて週休二日制について、これはまあ、公務員の場合は五十年から検討したいと、こういうことになっておりますけれども、この問題については、こういう時期でございますから強力な指導が必要だと、こう私は思いますが、この点どうでしょう。
  346. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。  御承知のとおり、いま需給関係は非常に逼迫しております。それらを見合って明年度ということになりますが、そういう感じから明年度を洗っていきたいと、こう思っております。さらにはまた、いま現在直ちに離職者とかそういう問題は起こってもおりません。いろいろ新聞等々、話に入ってきますから、具体的に洗ってみますと、まだそこまではいっておりません。しかし、もしそういうことがありましたら、私たちはいまの離職者対策あるいは失業保険制度の活用、そういうものを活用しながら万全の対策を講じていきたい、こう思っております。  週休二日制については、労使の間にだんだん話が進みまして、事業所においては労働者は三七%ぐらいがそこまで進んでおります。内閣におきましても、各官庁が打ち合わせをしながら、これを五十年度までに推進したいという経済基本計画の線に沿ってだんだんこれを推進しておりますが、こういう石油危機、あるいは雇用関係等々見ますというと、石油危機等々を契機にして週休二日制というものは実現する一つの推進の役になるのじゃなかろうか、また石油の消費のためにもいいんじゃないか、こういう環境の中から一そう推進してまいりたいと、こう思っております。
  347. 向井長年

    ○向井長年君 これ、総理ね、この五十年という検討ですけれども、いまも労働大臣が言われたが、こういう時期ですから、これこそ早めたらどうですか。早く検討して一年でも早めると、こういう形で私はすべきだと思うのですよ。そのほうが、いまのような石油の問題からあらゆる問題に対する自主規制の問題も若干でも消化していくと思うのですが、いかがですか。
  348. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 週休二日制というのは世界の趨勢でありますから、日本も大いにやっていきたいということでございますが、そう簡単にいかないんです。これはいま、そうじゃなくとも、中小企業、零細企業という特殊な大きな層があるんですから、これが、そうじゃなくとも石油でもって困っているところへもってきて、また一日ずつ休まれるということになったら、これはもう物価が上がるのに見当がつかない。いますぐこれ、やることがいいというようなこと、とてもそれはできません。それから、週休二日というのを公務員から先にやろうということがいわれていますが、そうじゃなくとも、公務員は、いま、まあとにかく非常によくやっておりますよ、夜まで。夜まで徹夜してもやっていますけれどね、公務員は働かないなんということも一部あるんですから、ですから、やっぱり公務員というものに対してもやるなら、私は、公務員が先じゃないと思うんですよ。公務員はあとでなければ国民の公僕だというようなわけにいかぬと思うんですよ。だから、まあこう、土曜日でも、われわれでもちゃんとやっているわけですから。これはそういうわけでして、そう簡単にいきませんよ。私は、この問題、あんまり少し観念的に考えていると思う。それともう一つは、定年制の延長というのもあるんです。定年制の延長というものと、この週休二日をどういうふうにかみ合わしていくかということ、日本の国情に合わない画一、一律的な週休二日ということを早くやっていくと、これは私は相当混乱が行なわれると。特にいま石油問題ということと物価抑制ということで、ある意味においてはやはり賃金を上げなきゃならぬところは上げなきゃいかぬのですが、あるところはやっぱり少し生産性を上げて物価を下げなければいかぬと、こういう面もあるわけでありますから、私は週休二日制を大筋において国際水準まで持っていかなければならぬということは知っていますが、ただ、失業が一部出そうだからそれを週休二日制をとればバランスがとれてうまくいくじゃないか、というような単純な考え方だけでもって週休二日制をこの時点において直ちに推進をするという考えは持っておりません。しかし、基本的には間々申し上げておるとおりである。社会的混乱を起こさないように、しかも、国民がすなおな意味で週休二日制を容認できるように、しかも、それに中小企業や弱小企業も耐え得るようにという、やはり前提をつくっていかなければならぬということは大切だと思うんです。
  349. 向井長年

    ○向井長年君 労働大臣、違うじゃないの、総理の言うこととね。
  350. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) いままで週休二日制が進んでいるのは労使の話し合いでございます。そういうことでございますから、総理の答弁とは一向食い違いません。
  351. 向井長年

    ○向井長年君 石油問題がある時期に、これをやるのにいい時期だと思っていま言っているのだ。
  352. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 石油問題のときも、石油を節約するためにも、私は一つの考え方じゃなかろうか、こういうように思っております。
  353. 向井長年

    ○向井長年君 早くやるといま言うたじゃないか。総理と違うよ。
  354. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) はい、推進の一つの材料になる、こう思っております。
  355. 向井長年

    ○向井長年君 違うじゃない、総理と。おかしいよ。——まあ、よろしい。一日も早くやってください。  それはまあいいが、ちょっと労働大臣、これはあとで通産大臣に電力問題でお聞きしたいと思っているのですが、いま、言うならば、これは万やむを得ない問題であっても、私から言うならば、これは政府がストライキをやっていると思うんですよ。この電力の二割カットというような問題、これはまあやむを得ないものだと思いますけれども政府がこれ、やむを得ずやっているのか。で、ちょうど八カ月ほど前に、ここで私、労働基本権の問題を総理から答弁をいただいたんですが。ちょうど八カ月ほどたっておるんです。その後どうなっていますか、この問題は。労働大臣の諮問機関として、ひとつ審議会のようなものをつくって十分検討しようと、こういう形で総理が答えられて、労働大臣は可及的すみやかにこれはひとつ検討しましょうと、考えましょうと、こういうことになっておるが、経過はどうなっていますか。
  356. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。  電気、石炭に関するスト規制法の問題でございますが、スト規制法制定以来、この法律に明白に違反する争議行為が行なわれていないので、その点、関係組合の良識に対して深く敬意を払うものであります。  そこで、いろいろこのスト規制法について御意見がありましたので、本年の四月に総理から、労働省にスト規制法に関する研究、検討の場を設けるというお約束がありました。私のほうはそれを受けておりまして、人選をやっております。そして関係組合、関係使用者団体及び関係省とひんぱんに話し合って調査会を発足させるべく鋭意努力をしておるところでありますが、調査会のメンバーは学識経験者七名をもって構成することにしております。しかし、この委員はなかなか、それぞれ御意見を伺うと、人選に非常にむずかしいところがありまして、大かたの皆さん方からは御賛成を得ておりますが、まだ一部については御就任の承諾を得ておりません。しかし、今年じゅうに人選を終えて、来年早々に本調査会を発足させたいと思っております。なお、現在調査会に置かれる参与委員は、労使それぞれ御推薦をしていただいて確定しております。
  357. 向井長年

    ○向井長年君 その構成はどうですか。
  358. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 構成は、先ほど申し上げましたように、学識経験者七名をもって、そして労使からは参与としてそれぞれこれは御承諾をいただいております。
  359. 向井長年

    ○向井長年君 何名ですか。
  360. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 一名ずつです。来春早々必ず実現させたいと、こう思っております。
  361. 向井長年

    ○向井長年君 ちょっとおそまきですが、八カ月たっておるんですから、これはやっぱり早急にひとつ、労働大臣、促進をしていただきたいと思います。これは希望いたします。  そこで、通産大臣にお伺いいたしますが、電力問題でございます。通産大臣は、このエネルギー問題として、石油の危機から、今後こういう問題については太陽熱とかあるいは地下熱とか、こういう問題もあわせて研究し、なお原子力問題開発を促進すべきだ、こういうことをたびたび言われておると思うんですよね。そこで、太陽熱とか、地下熱の問題は、これは研究することはいいんですが、直ちに実用化しないでしょう、おそらくや。そうなれば、やっぱり原子力にしぼられてくるんじゃないですか。この点どうですか。
  362. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) お説のとおりです。
  363. 向井長年

    ○向井長年君 いま、石油問題で電力の場合においては規制をしておりますか、自主的に業界規制になっておりますね。業界においての規制になっておるんですね。だから、この点については二三%規制じゃありませんか。
  364. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 十一月の二十日から大手の十二業種について一〇%カットの御協力を願っておりまして、これは非常にスムーズにうまくいっております。
  365. 向井長年

    ○向井長年君 いや、それは、私の言っているのは電力規制じゃないですよ。石油ですよ。石油がいま十二月分は実際業界の見通しよりも二三%減っているのじゃないかと。そういうことですか。
  366. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうことはございません。大体業界のほうはシビアな見方をしましたことと、それから業界の計算に間違いがありまして、原油と製品と半製品で数えなきゃならぬのを半製品を入れていなかったのです。そのために通産省の数字と食い違いましたが、最近向こうでもそれに気がつきまして、通産省の数字と一致しました。
  367. 向井長年

    ○向井長年君 どれくらい規制なんですか。
  368. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは十一月十六日の決定で、まず官庁は二〇%ぐらいの規制をやっております。これは電気でもエレベーターでも自主規制です。
  369. 向井長年

    ○向井長年君 石油を言っておるんですよ、私はいま。電力用の石油のことを言っているんです。
  370. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 電力用の石油も一〇%の規制です。
  371. 向井長年

    ○向井長年君 一〇%規制というやつが、これは事実上は二三%になっておるんじゃありませんかと、こう言っているのですがね、十二月の分が。どうなんですか。
  372. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) エネルギー庁の公益事業部長がお答えいたします。
  373. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) お答えをいたします。  電力用の石油の確保につきましては、先般来、石油業界、電力業界、相互に協議を進めておりまして、当初二三%不足というような、御指摘のような数字でございましたが、その後順次手当てが進みまして、昨今では、大体一四%不足というようなところまで煮詰まってきております。今後さらに確保をはかりますと同時に、電力会社も一部貯油を食うことによりまして、十二月の電力需給の全うをしたいと思っておるところでございます。
  374. 向井長年

    ○向井長年君 今後の見通しですね、電力に対する石油の。これはこの状態で行きますか、いまの一四%という状態で。
  375. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) OAPECの削減がきびしくなってきておりますから、一月以降は電気事業法を発動いたしまして、やや強い規制をせざるを得ぬ立場になりました。大体一五%から二〇%、その間ぐらいの電力のカット——石油の話ですか、いまのは。
  376. 向井長年

    ○向井長年君 石油の話です。
  377. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おそらく、それに見合うだけの石油もカットされると。したがって、電力もそれだけ減ると。ですから、やはり二〇%ちょっと、少しこえるぐらいの石油カットになるのではないかと思います。
  378. 向井長年

    ○向井長年君 いま、この電気事業法に基づく、二十七条に基づいて来年一月からやるということをきめたのでしょう、閣議で。いまは一〇%の自主規制というかっこうでやっていますね。これが一〇%自主規制、事実上できてますか。いまできていると言うが、できていますか、自主規制。
  379. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 十二業種につきまして電力について一〇%——これは三千キロ以上の大口の業者ですが、これは比較的うまく協力していただいています。
  380. 向井長年

    ○向井長年君 三千キロじゃなくて、五百キロ以上のところにお願いしているでしょう、現在。三千キロはできているけれども五百キロ以上のところはどうなんですか。
  381. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 三千キロワット以上の大口需要家に対しましては、通産大臣から個別に要請状を出して一〇%カットを要請したわけでございます。その他の需要家に対しましては業界団体を通じて一〇%節約に協力を呼びかけておるところでございます。三千キロワット以上の需要家の状況については、私どもいろいろ調べておりますが、かなりよく守られておるというふうに聞いております。
  382. 向井長年

    ○向井長年君 今後ですね。私は守られているとは思いませんよ、現地をずっと見て知っていますから。相当各社が苦労して要請に歩いているけれども、まだ守られていないですよ。今後の問題でしょうが、これは。しかし、二十七条によって来年からこれはひとつ消費規制をやる、こういう中で、やはり用途別の規制と、あるいはまた週二日制とか、いろいろとられると思うのですね。この点については、昔のいわゆる配電線とかと線路が違うのですよ、これは。どういうかっこうでやろうとするのか。自主規制はいいですよ、しかし、消費規制となると、やはり切らざるを得ないという状態が出てくるんじゃないですか。この点について通産省はどういう形でやろうとするのか、非常に困難だと思いますよ。
  383. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 十二月につきましては、御指摘のとおり、行政指導でまいりました。目下一月以降の電力の節減対策というのを詰めておるところでございます。これは油の確保量の見通しいかんにかかることでございますが、場合によっては命令による規制体系というものを考えざるを得ないのではないかと思っておるところでございます。その際に、具体的なやり方といたしましては、使用電力量の制限あるいは特定の用途に対する使用の制限、また戦後やったわけでございますが、休電日制、いろいろなやり方があろうと思っております。これらにつきまして、それぞれの需要家の実態に応じながら最も効果的な組み合わせを考えていくという考え方でございます。
  384. 向井長年

    ○向井長年君 簡単にあなたたち言われるけれども、線路というものに対しては消しちゃいかぬところがあるのですよ、病院とかね。そういう問題が重なっておるところで、それをどういう形で消そうとするのか、ちょっと私はその実態実態に合わないような感じがするのですよ。あなたたちは机の上でそんなことを言っておるが、そうはいかぬのですよ、現地は。これはどうなんですか。
  385. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 御指摘のように、終戦直後の事態におきましては保安用の電線というのは別系統になっておりました。最近はその情勢が変わってきております。ただ、先ほど申し上げました各種の規制につきましては、需要家に対する需要量の抑制という方向でございまして、これは停電の問題とは切り離してお考えいただきたいと思います。
  386. 向井長年

    ○向井長年君 需要量の抑制ということになれば、結局自主規制になるんじゃないですか。需要量の抑制といったら、自分のところで切らなければいかぬわけですよ。通産省から切りに行くの。そうじゃないでしょう。
  387. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) いまの行政指導と命令による体系との違いは、電気事業法に基づく罰則の適用の問題かと思います。
  388. 向井長年

    ○向井長年君 あなたたち罰金の適用って、あの罰金なんか、罰金よりも企業をやったほうがもうかるのですよ。そんな簡単に机上で考えておるけれども、事実上実態が違うということなんだ。ただ、自主規制をやってくれぬか、今度二〇%の消費規制をやるんだと、こう言うけれども、昔は別線路があって、あるいは終戦直後や戦時中ならば、ぽっと変電所のスイッチを切ったらいいのですよ。いまそれはいかない。それは重要な、やはり送電をしなければならぬところがあるのだから、この点をあなたたちは机上だけで考えておってどうするかというのですよ。それ、また別に線路をそこへつくれというの。どうするのだ、それは。
  389. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう点が一番いま苦労しているところでありまして、たとえば交通信号であるとか、病院の保育器であるとか、消防署であるとか、あるいはビルやデパートのスプリンクラーの揚水の電気であるとか、あるいは自動開閉器、エレベーターが途中でストップするとか、そういうようないろんな複雑な問題がありますから、電力会社とも連日いろいろ検討しておるところであります。
  390. 向井長年

    ○向井長年君 通産大臣、大体、強力に自主規制をやってくれと、しかし、法律を改正してこうやるのだ、消費規制をやるのだと、こういう一つのあれはつくるけれども、実際は自主規制をやらすというこの精神からいうと、それでいいですよ。そうであるのか。ほんとうに消費規制といったら、これは切らなければしようがないですよ、使うといったら。それを罰則でやるといったところで、企業をやって、年末からでも来年からでもどんどんどんどんもうけようとすればそのほうが得だ、罰金払っても。こういう状態になるから、その問題については、そう簡単にあなたたちが考えるような状態じゃないですよと、実態は。だから、企業は苦労しますよ、これは。事実上。どうしたらいいのかという気が……。いま総理もちょっと頭を振っておられるが、二〇%ぜひ規制してくれと、消費規制だから、これはもう法律によってやらざるを得ないのだと、こういう強みを持たしてやらそうというのなら、それで話はわかります、エレベーターをとめたり、機械をとめたりするのだから。しかし、それを、やはり消費規制となれば聞かなかったら切らざるを得ないと、こういうかっこうになるんじゃないですか。それをどうお考えになるか。ほんとうの消費規制をやれるのか。
  391. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いままで節約運動で御協力願いましたけれども、どうもいままでの節約運動は自主的なものは成果があまり思わしくない。特にこれはガソリンその他の例を見ますとよくわかることであります。そこで、やむを得ず法律を発動してせざるを得ないということでありつつある状態になっている。そこで、具体的にどうするかということは非常にむずかしい問題がございますが、ともかく、ほっといてはもういけない事態に来ているわけです。だから、何とか知恵を働かしてやる以外にない。まあ私、こまかい技術的なことは知りませんけれども、罰則とかなんとかいうもの以上に、今日、もしそういう点で協力しない、あるいは罰則にかかるような行為をしたものは、社会に公表されれば、非常にそれは社会的名誉の面からも罰則以上の痛手になるのではないかとも思われます。そういうようなやり方は、いままで、各、買いだめ売り惜しみとか、そのほかの、今度の法案でも書いてあるところでございまが。そういうようなあらゆるものを、仕組みを考えて効果的にやっていく以外にないと思います。
  392. 向井長年

    ○向井長年君 それはやむを得ない事態ですから私はわかるのですよ。そうあらねばならぬと思いますよ。しかし、実態は非常に困難です。査察でもずっとするのか、それとも、いま申しましたように、別線路をつくるかというようなかっこうが出てきますが、これは非常に電気労働者は苦労する。これをあなたたちは軽く考えておることは困る。これからあなた、それを……。いまでもどんどん歩いていますよ、皆さんね、自主規制してくださいと。今後これが強くなって消費規制になれば、もっと総力をあげてやらなければならぬ、それに奔走しなければならぬ、そのことがわかりますかというのだ。やらなけりゃならぬということはわかるけれども、あなたたちは簡単に考えているから、公益事業部長もほんとうに簡単に考えているけれども、そんなものじゃないですよ。だから、その点をほんとうに今後どうしていくか。もちろん政府の指導もありましょうが、十分ひとつこれは業界と話し合って、最もいい方策をとっていただきたいと思うのです。  そこで次に、原子力開発の問題ですが、科学技術庁、これ、大体構想はわかってる、年度別の構想はわかっている。順調にこれは進みますか。
  393. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 仰せのとおり、原子力発電がこれからの電力のきわめて重要なにない手になっているということでございますが、現実は、先生御案内のとおり、現に稼働しております原子力発電所は五基でございます。百八十二万キロワット。それで、あと年度内に二基ふえますから、総計で三百七万キロワットという状態でございます。ところが非常に心配しておりますことは、これまた、先生御案内のとおり、現在審査中のものはわずかに一基でございまして、計画に乗ったものはそのほか十五基あるわけでありますが、審査中のものは一基。ところが、ことしに入って原子力発電所の認可の申し出がありましたものは一つもございません。でございますから、この調子でまいりますと、七年ぐらいあとには三千二百万キロワットぐらい原子力発電にたよって、総電力設備の一八%ぐらいということになっておるわけでございますが、計画の半分ぐらいしかいかないのじゃないかということをひそかに心配をいたしておるわけでございます。そうなりますと、千六百万キロワットぐらいしか原子力発電が実現しないということになりますと、これは油に直して二千万トンということでございますから、これはたいへんな量でありまして、十万トンのタンカーで二百ばい分ぐらいの分、原子力がしょわなければならなかった分が、いまのところでは計画どおりいってないということでございます。  それで、原子力だけでございませんで、火力、水力含めて、ことしは昭和四十八年でありますが、昭和四十六年には九割ぐらい電源開発が予定どおり進んでおる、原子力は予定以上いったわけでありますが、全体としては九割ぐらい。ところが、昨年は予定の三二%ぐらいしかいっていません。ことしの七月現在でございますが、これは年度前半ではございまするけれども、わずか一二%ということでございます。そうなると、私は、昭和五十二年、あと五年ぐらいたちますと、これは電力はにっちもさっちもいかないことになるのではないかということを憂慮をいたしておるわけでございまして、その点で向井委員の御議論に対しては全く同感でございます。
  394. 向井長年

    ○向井長年君 そんな同感してもらったって困るのだよ、これは。進めなければ困るのでしょう。もちろん、安全性の問題ありますよ。安全性の問題は確保しなきゃならぬ。しかしながら、現状において、電調審が通ったやつですら計画どおりに行かないでしょう。したがって、この問題については政府はどうしようとしているのか。これはどこに難点があるのか。これは通産大臣にもお聞きしたいのだけれども
  395. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) 原子力発電——発電所全般にまあいろいろな問題がございますが、特に原子力の場合についての問題点を申し上げます。  第一番は安全性の問題でございまして、御案内のとおり、とにかく原子力発電は安全じゃないと、あぶないあぶないという反対運動が組織的かつ根強く行なわれておることは先生御案内のとおりでございます。まあ、私の考えといたしましては、必ずしもそんなあぶないものじゃない。新幹線の故障率よりもっとずっと少ない故障率でございますから、それがあぶないからって新幹線やめろというような議論は成り立たないわけでございますが、それが地域の利害とからみ合って非常な根強い運動になっておる。そこで、私どもは、こういう動きに対しては正姿勢をもって臨まなきゃならぬと思いますが、同時に、やはり安全の問題については、それなりの対策を講じていかなきゃいかぬ。先般、熊谷委員の御質問に対して総理からお話がございました、原子力発電の安全の問題は政府の責任をもって当たるという言明がございましたから、私どもはその総理の御意図の線に沿いまして、安全審査、これはもう画期的に拡充をいたすつもりでございます。かつまた、安全研究につきましても、これはもう格段の前進をはかるようにやってまいりたい。  さらに、これは原子力だけではございませんけれども一般の水力、火力発電等も同様でございますが、やっぱりそういう発電所を地元に誘致いたしまして得するのは電力を使う町場のほうで、発電所を置かれたところは一向に妙味がないというのでもいかぬわけでございますから、何とかむしろ逆に、ぜひ発電所をつくってもらいたいというような、やっぱり施策もこれは講じていかなきゃならないのじゃないかというふうに考えておりまして、目下そのことにつきまして、今年度の予算でも、もう概算要求は八月ごろ出ておるわけでございますが、そうはまいりませんから、ここであらためて出直してやろうというふうに対策を立てております。
  396. 向井長年

    ○向井長年君 通産大臣も同じことを言われると思いますので、ぼくは言いますが、時間もございませんが、とにかく、これはいまや、長官が言われましたように、安全性の問題は完全にこれは確保しなきゃいかぬ。これは原則ですよ、あくまでも。これは科学技術庁の責任。通産省の責任でもありましょう。しかしながら、いまやはりアレルギー症が国民の中にあることは事実ですよ。しかし、アレルギーというよりも、反対するための一つの勢力もあることは事実ですよ。もう悪く言えばイデオロギー的な反対もあるだろう。しかし、それは放っておきなさいよ、別にして。ところが、一般の諸君はそれを信じざるを得ない状態があるんですよ。なぜならば、あなたたちが安全だと言わぬからそうなんだ、政府が。もっと政府が主導的に。業界が幾ら言ったってだめですよ、これは。業界は利害関係が伴うから、かってなことを言うておるんですから信じない、事実。したがって、これは少なくとも政府みずからが、新幹線安全だって、この世の中には絶対というものはあり得ないでしょう。科学的に考えて絶対というものはあり得ない。しかし、安全度というものはある。基準としてあるはずだ。新幹線だって絶対じゃありませんよ、あれは。しかし、人命全部乗っておるじゃありませんか。二百二十キロでビューっと走っている。押すな押すなで走っている。これは政府が督励しておるからやっておるのでしょう。原子力はなぜ今日まで督励しない。してませんよ、これは現に。業界まかせでしょう。したがって、みな業界では一生懸命に苦労していることは事実なんだ。いまになって、そういう、これからせないかぬじゃない、今日まで何していたかと、これを私は言いたいのですよ。言うならば、原子力は、こういう安全性を確保するなら安全であるから心配要りませんよと。したがって、その地域においては十分推進してくださいと。これだけの電力の不足が来てますよと。こういう問題を政府みずからが解いてみなさい。自治省、自治大臣おらぬか。地方議会においてもそうですよ。地方議会とか、地方のいわゆる市町村、あるいは県庁、こういう中でも、そういうことを言われればもたもたしておるじゃないですか、現在。ここに私は一つのおくれる問題があると。この問題について、やはり政府がみずから安全だ、安全確保をする。いま総理が言われた、責任を持つ。責任だけではなくて、PRに皆さんが、科学技術庁も通産省も自治省も、あるいは建設省もそうだよ。農林省もそう。これ、関係があるんだから。そういう人たちがみな乗り出して、こうですと言えば、地域住民は理解しますよ。そんな特定の者が言わなくても理解するはずなんだ。これを今日までやりましたか。やったならやったと言うてもらいたい。
  397. 森山欽司

    国務大臣(森山欽司君) たいへんありがたい御叱正をいただきまして、そういう点、心がけてまいったと思いますが、なおはなはだ不十分な面があったと思いますから、今後これが対策につきましては政府をあげて努力するようにいたしたいと思っております。
  398. 向井長年

    ○向井長年君 総理大臣、どうですか。
  399. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、原子力発電は世界の趨勢でございますし、もう各国ではどんどんやっているわけです。ですから、いままでの問題に対しては遺憾の点があります。ですから、私は、昨日申し上げましたように、安全性の確保に対しては政府が責任を持ちますと、PRはいたしますと。そして、地元は恩恵を受けないわけでありますから、地元に対して恩恵を受けられるようなことは考えます。恩恵とは何ぞやというと、一つには、これだけ問題を起こしてやっとやっても、使う電力はよそに持って行かれるんだということでありますから、少なくとも地元で融通電力として使う場合には、送電ロスぐらいの分は安くできないか。これはいままででも、私は通産大臣時代からさんざん通産省の中でやったんですが、なかなか言うこと聞かない。そういうが問題一つあります。これはすぐ結論が出る問題じゃありませんが、こういう問題が一つあります。  もう一つは、発電所が設置されるところに発電税というものをやらなければいかぬ。いま電源地帯周辺整備法が出ておりまして、あれさえ通らぬわけですが、あれもなまぬるいから通らぬということだった。ですから、やっぱり少なくとも電気ガス税は消費者からいただいておるぐらいのものは、その設置のところへ交付をしなければメリットがないわけです。それで、その村だけがあっても、行政区画が違うから、隣の市町村には何も関連がない。少なくとも、その周辺に対して恩恵を与える、それが単独財源になって、その村も恩恵が与えられるのだということに踏み切らない限り、私はできないと思いますから、これはもう議論の問題じゃないんです。ですから、もう八五年までの濃縮ウランは全部用意してあるんですから。一九八五年までのやつはあるんですから、これもやる気になればやれるんです。ですから、政府はこの事態を十分認識をして、電力で国民に迷惑をかけないということになれば、一番早いのは原子力発電と、安全的な電力としては水力発電があるわけですから、ですから、水力発電もまだ二分の一しか開発をされておらぬということでありますから、これらの問題は重大な決意をもって促進をいたしたい、こう考えます。
  400. 向井長年

    ○向井長年君 その決意のほど、わかりましたし、けっこうですが、現在でも、電調審が通ってもいまだに着工できないところがあるのですよ。特に東北の女川なんかそうなんだ。こういう問題については早急に、通産大臣、促進をすべきだと思いますので、これは強く要望しておきます。  それと、いま総理の言われたその地域の利益をはかるという問題、料金問題とか。これはそういう形は私は悪いとは言いません。しかしながら、現在の原価主義をくずさなきゃなりません。その地へ特殊な形として、そうでしょう。そういうことになってくると、そういう例が各所に出てきますよ。言うならば、それをやるとすれば、やっぱり料金の問題については、これだけ電力が不足しておるんだからということで、多く使う企業に対しましては、やはりいま安いです、大口なんかは。そういうやつを高くして、そうして一般は安くしていくという考え方を持たざるを得なくなりますよ、原価主義をくずすとなれば。そういうかっこうをやりますか。そういう形も検討しますか。
  401. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 電力問題には、私は、現職の通産大臣として提議をし、一年間検討しながら結論が出なかったわけですから、それはむずかしい問題はわかります。わかりますが、東北に肥料会社が行ったというのは、東北は電力が安かったから行ったんだと。ところが、電力がなくなったら雪の中の東北へ何で行くメリットがあるんだと、こういうことでもって昭和電工はもうやめてしまうと、こういうことが現実に起こっているじゃありませんか。ですから、少なくとも融通電力とか、そういう場合に、電力料金は、いままでの電力料金体系や議論の中でだけではなく、発電所ができなければ供給できないんですから、ですから、そういう意味で、地元にも裨益し、貢献するんだという中で、電力料金も一つの重要な問題として検討の素材としなきゃならぬ、それはあたりまえのことだと思うんです。しかし私は、まあ技術的にむずかしいから、一年間やってみまして、元通産事務次官でもって電力会社へ入っている連中みんな呼んで、それは大臣だめですよと言う。だめだと言っているからできないんだと、こう言って議論をしたわけです。だから、これだけでもって、ともかく電力は発電できない限りどうにもならぬじゃありませんか。そういう意味で、融通電力の場合も送電ロスはあるんですよ。新潟から東京までは一割何分もあるんでしょう。何で地元の融通電力に——全部よこせと言うんじゃないんだ、話がつけば建設は認めますと、こう言っておるんですから、やっぱりそういう問題を真剣に検討しなきゃならない、こう言っているんです。
  402. 向井長年

    ○向井長年君 さっき総理は、電気ガス税を徴収して、それだけその地点へ渡してもいいと、そういう話をいましたんじゃないんですか。
  403. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうじゃないんですよ。いや、それは違いますよ。
  404. 向井長年

    ○向井長年君 何——電気ガス税ってどういうことですか。
  405. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 間違わないでいただきたい。そうなると、またできるものもできなくなりますから。そうではなく、電気ガス税という制度があります。一〇%のやつを私はくしくも四%下げたわけです。私が大蔵大臣のときに三年間一%ずつ下げて、今度総理大臣になって一%下げましたから、それで現在六%になっているわけですが、その電力を供給されて初めて消費税が起こるのであって、供給されなきゃだめじゃありませんか。ですから、現在の税体系は、消費税の段階でさえ取っているんですから、発電税というものをつくらなきゃならないということは、これは当然なんです。そうでなけりゃ、山の中で、離村までされて、湖底に沈む村なんていう悲劇を起こしておっても何も裨益するところがない。東京へ出てくりゃ、今度電気ガス税という消費税を取られる、そんなことでもってはだめです。ですから、こっちをこっちへ移すというんじゃありませんが、こういう税さえあるんですから、発電税を考えなきゃならない。実施の段階においてどういうふうに調整するかは、それは別であります。ですから、こっちのものをこっちへ移すというようなことになると、できるものもできなくなりますから、そういうところは高度な政治配慮を必要とするということです。
  406. 向井長年

    ○向井長年君 それはちょっと総理、思いつきはだめですよ、そんなことは。それは、そんな発電税という前に、やはりそういうところに対しては国が助成してやることですよ、まず第一に。国の財源で助成してやることだ、これだけ国家的な問題だから。したがって、電気ガス税というようなものは、これはもう、悪税というのはたびたび言っているんだから、私は、これは言わぬつもりでおったのに、総理から出してくるから言わざるを得ない。これは、少なくとも、いま総理大臣大蔵大臣のときにやられたと言うけれども、これは池田内閣当時ですよ。佐藤内閣のときは絶対やってないんですよ。年々一%やると言ってやらなかった。いま六%になっていますがね、これは自然増収だけでやっておってはいけませんよ。自然増収分だけは減税しておるだけなんだ。本来であるなら、ほんとうの減税は一つもやってない。一般の家庭では全部やはり同じだけ払っているんですよ。だから、この点は根本的にひとつ、これは自治大臣も関係深いわけですし、大蔵大臣も深いんですが、これは十分ひとつ、ことしは六%だが、検討してください。この問題は言わないでおこうと思ったのに、総理が提起したから言わざるを得ない。  じゃ、そういうことでひとつ検討をしていただくことで、私はこの質問を終わります。(拍手)
  407. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして向井君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  408. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 三木君。(拍手)
  409. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 通産大臣が六時二十分までか、何か会合があって……。私も協力する意味におきまして、焦点を通産大臣のほうに先に順序を変更いたしまして質問を申し上げたいと思います。  特に、いま石油問題が一番国民の関心の的になっていることは、これはもう論をするまでもありませんが、特にきょうの新聞等を見ますと、一月度からは石油の供給が二〇%減になるという、こういうふうな報道がされておりますけれども、通産省としてはどういう石油供給計画を立てているのかどうか、この点について、まずお伺いしたいと思います。
  410. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ことしの十一月ごろの見通しでは、下半期期待に対して一六%減であると想定されておりましたが、OAPECの締めつけがより以上にきびしくなりまして、現時点におきましては二〇%減として計算せざるを得ない事態になってきております。その後さらに流動的な情勢であります。そうなりますと、下期に一億三千四百万トン入るという予定が、一億二千八百万トンに減る、それを基礎にして諸般の計画を立てております。
  411. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、たとえばこの二〇%の削減を、どういう形で具体的な削減方法を講じていくのかどうか、これについて伺いたい。
  412. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、大口消費者である電力、鉄鋼、石油化学、セメントあるいはアルミというような、そういう面について、いままで自主的な協力を願っておりました。それから小口につきましても、国民運動的に節約に御協力を願っておりました。これは電力についてであります。しかし、いまの情勢から見ますと、やはりいままで十来ておったものが八しか来ないという形になれば、国民の間に一部に不均等が生ずるという危険性もありますから、ひとしく公平にがまんし合うという体系をどうしてもとる必要がありますので、今回石油需給適正化法並びに国民生活の安定確保に関する法律を御審議願いまして、それによって、情勢やむを得ない場合には、国の権力的な力を背景にして適正需給をやろう、そういう考えでおります。
  413. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 十二月度には一〇%の削減を指導してきたわけでありますけれども、実際にはこれが守られなかったという話を私たちは聞くわけです。こういう点から考えますと、二法案が通れば——通ればという案でありますけれども、実際にこれが通っても公平な割り当てが行なわれるかどうかということは、非常に国民は疑問だと私は思うのです。特に力の弱い人たちのほうには石油が当たらない。たとえば個人タクシーにしても、あるいは漁船にしても、こういう点では非常に問題が大きいのではないかと思うのです。そういうために、やはり公平な割り合て委員会とか、そういうものを明確につくっていかなければならないのではないかという点を私は強く感ずるのですけれども、いかがですか。
  414. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは石油の削減に伴う機動的な臨床的対処の行為でありますから、やはり審議会できめるということはこれになじまない。むしろ、政府の責任においてきめさせていただいて、それを国会において御監督願う、そういうほうが時宜に適していると思っております。政府がそれをじゃ割り当てるという場合、配分をする場合には、これは関係各省で協議いたしまして、通産省はどれぐらい、運輸省系統はどれぐらい、農林省系統はどれぐらい、厚生省はどれくらい、そういう計画を立てまして、そして根元をきめ、それで配分された各省各省が、その自己の所管するところで適正配給をやって調節してもらう、そういう形で進めていきたいと思います。
  415. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、この各省に割り当てをするとしますと——運輸大臣並びに農林大臣に伺いますけれども、たとえば一月から二〇%削減になる、こうなりますと、運輸省あるいはまた農林省ではどういうふうな配分方法をとるのかどうか、この点、ひとつ具体的にお伺いします。
  416. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまの詳細なものを持っておりませんけれども、先般、通産と農林の事務当局が協議をいたしまして、十二月一ぱい用のものは農林物資については十分配慮してきめると、こういうことに決定をいたしておる次第であります。
  417. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 運輸大臣
  418. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) まず、石油の総量を通産省と話し合って、そしてそれの配分につきましては先ほど来お話し申し上げておりますように、たとえばLPガス等につきましてはいま業者と私のほうと、まあ業者も法人業者もございますし、個人業者もございますが、そういうところでよく話し合って、そして乏しきを公平に分けるというところでいま努力をしている最中でございます。
  419. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もう一月から二〇%削減するという通産省の実際の方針ですね。これに対して農林省あるいは運輸省だけではなしに、各省同じだと思いますけれども、具体的なこういう削減方法の——実際足りないんですから、これに具体的な、たとえば運輸省なり農林省がこの具体的な計画を策定しているかどうかということ、あるいはそれを抑制するあるいは作成する配置ができているかどうかという問題なんです。私は聞くところによると、あまりにもずさんな問題があるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  420. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) きょうのたしか政務次官会議で、私どものほうの政務次官がある程度の数字発表しておるはずでありますが、たとえば通産省から受け取ります石油につきまして、年末を控えて北は北海道から南は九州まで、長距離のトラック輸送等、そしていままで中間で、どういうところで油の中継をして、そこでどこの品物はどこへ届けておるというふうな、従来の年末における経路を計算いたしまして、それに要する油については全部協定ができております。一例がそういうことでございまして、その他、農漁村用の油につきましては、先ほど申し上げましたように両省政務次官が、十分事務当局を交えて話し合いをいたしまして、これでよかろうということの協定をいたした次第であります。
  421. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 油のことにつきましては私のほうでもLPガスもございますし、それから軽油も、走っているトラックは軽油で走っているのでございますから軽油もございますし、あるいはガソリンもあるわけでございます。いま一律二〇%というようなお話がございましたが、まあそこまで落ち込むのか、あるいはそれ以上になるのか、まだ実際のところ明確な総量というものをあげての話し合いは詰めておりません。詰めておりませんが、先ほど来申し上げましたように、年末の輸送はこれはまあ別といたしまして、来月からのことについてどうだというようなお話でございましたが、そのことについては、また通産省とあらためて総量等を確認した上で、それぞれの業界と話し合いを進めてまいらなきゃならぬと思っております。
  422. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは通産大臣に伺いたいのですけれども、やはり国民にこの石油危機の現状あるいはまた見通しを率直に訴えて、ほんとうに最悪の場合はどこまでほんとうに削減しなければならないかという、そういう見通しをやはりここ二、三カ月の間に、一月、二月、三月とこういう下半期のわずか四半期ぐらいの見通しは、あらましこの計画は立つぐらいの方向は、いまのアラブの状況から判断して不可能なのかどうか。あるいはまた、いつごろにこの判断を通産省として行なうのかどうか、この点についての意見を伺いたいと思います。
  423. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 石油が不足して削減されているということは、国民の皆さんも新聞やテレビでよく御存じであります。私も十月ごろから計画的にテレビや新聞に出まして、そのことを国民にもよくお訴え申し上げてきたところであります。ただ削減量はOAPECの情勢で非常に流動的でなかなか決定しにくい。今日においてもまだ流動的であるわけです。一月の分につきましても、一応は五%削減といいますが、十八日のアラブの和平会議の動向がどう動くか、いろいろな要素もございます。そういう意味で様相をよくつかみながら、適時、国民との反応を見つつ政策を進めてきたという状況です。しかし、事態は好転するような見通しはございませんから、われわれとしては悪い場合を想定いたしまして、いろいろな政策を進めてきて、そして二法案を提出し、この法的権限をバックにいたしまして、行政指導は強力に行ないます。もし、そういう法的バックがなくしてやった場合には、なかなか守ってくれません。政府が行なって守らない場合には、先に、次に法律を出した場合でも悪い結果が出てまいります。そういう意味におきまして、この法案の成立を待ちまして、私たちはさらに強力に進めていきたいと、そう思っているわけであります。
  424. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 この石油の割り当ての問題で、私は力の弱いもの——こういう大企業には割り当ててもやはりある意味では融通されるという、何か公平の原則が破棄されるような実態になってくるのではないかということを非常に憂えるわけなんです。この点はやはり行政指導として明確な線を私は出していただきたいと思うんです。  この問題に深く入っていくわけにいきませんので、次に通産省のエネルギー庁の汚職の問題に関して一、二伺いたいと思うんですが、特に先般来、エネルギー庁の汚職問題が非常に新聞紙面等で話題になっておりますけれども、このいきさつをいろいろ調べますと、やはり石油の販売価格のやみ協定とエネルギー庁のこの汚職の問題が非常に関係が深いのではないかと思うのです。こういう点で、まず最初に法務大臣に伺いたいんですけれども、この通産省の資源エネルギー庁の課長補佐、これは実際に名前をあげて非常に恐縮でありますけれども、この小田氏が公訴されたこの事実を具体的に説明願いたいと思うのです。
  425. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お尋ねの点は、具体的事実に関する事柄でございますので、刑事局長からお答えをさせたいと思います。
  426. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) お尋ねの小田課長補佐に対する収賄事件の公訴事実の要旨を申し上げます。
  427. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 簡単でいいです、時間がないから。
  428. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) はい。小田課長補佐は通産省の鉱山石炭局の石油計画課のいわゆる計画調査班長あるいは同局の需給班長、あるいは資源エネルギー庁になってからは、石油部精製流通課長補佐としての需給班長というような職務に携わっておったわけでありまするが、昨年の五月十七日ごろ、東京都内の石油会館にあります全国石油商業組合連合会におきまして、同連合会の森下三郎専務理事から、この連合会が通産大臣に対して申請いたしまする総合調整規程の認可及び通産省が策定実施いたしますガソリンスタンドの建設に関する調整、指導等の措置について好意的な取り計らいを受けたということの謝礼と、将来とも同様の取り計らいを受けたいという趣旨で提供されることを知りながら、小田課長補佐が現金十万円を受け取ったということと、同様の趣旨で昭和四十八年六月十二日に自分が飲食した飲食代金約三万円を……
  429. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もういいです。
  430. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 簡潔に。
  431. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 石油連合会に支払わせたというようなことでございます。
  432. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私はこまかな金銭がどうだったとか、一課長補佐がこういう問題で実際にされたということを責めようという気持ちは毛頭ないです。しかし、監督官庁である通産省あるいはこのエネルギー庁がガソリンスタンドの建設あるいは総合調整規程の認可の新設にわたって非常に予算執行上においても大きな問題点を含んでいるという点を私は指摘をしたいんです。特にこの総合調整規程並びにガソリンスタンドの建設に関してはどういうふうな便宜を取り計らったという問題があるかどうか、これについて通産大臣並びに公正取引委員長にお願いしたいと思うんです。
  433. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) つけを回したとかあるいはゴルフに出たとかいう理由によって特に便宜をはかったという事実はないと報告を聞いております。
  434. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) この事件の内容につきまして私どものほうは、どういう点がどうであるのか全く関知しておりません。延長をした部分については十分理由のあることを私のほうも同じように同意したと、延長部分についてはですね。特に便宜を計らったということは私どものほうには全くありませんし、その事件の内容を関知いたしません。
  435. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 現在総合調整規程の問題については公取のほうに届け出が出ておりますか。本来ならば九月の末には総合調整規程が完了していなければならなかったはずじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  436. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) まだ通産省から正式に協議はございません。延長についての協議はありませんが、実質的には話がきまっております。延長する部分を申し上げます、簡単に。品質の制限、役務提供の制限、休日の問題、こういうものについてはなおまた必要が認められると、そういう点でありまして、そのほかの点は非常に長くなりまして、もはや不要と認めてそれは削除しております。
  437. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 本来ならば九月の三十日に改定をしてなきゃならない総合調整規程が、各県段階では行なわれているかもしれませんけれども、通産省から公正取引委員会にこれが報告されてないということ自体は、やはりそれは通産省からまあ便宜をはかったというとり方をとらざるを得ないと私は思うんです。この再認可が十月の一日に行なわれなければならない。しかし、各地方の石油業者はこの調整規程の開設をもって、たとえば市況の建て直しの憲法としてこういう十六条にわたるいろんな問題を認め合っているという点は、ある意味では便宜をはかったというこの問題になるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  438. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 確かに厳格な意味においてはブランクの期間があったわけですが、これはまあ実質上手続が間に合わなかったということから話し合いはもうすでについている。私どものほうで削るべきものは削っていただいたという実績もございますし、近日中に、きわめて近い将来に正式の合議がある、協議があるというふうになっております。
  439. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ近日中、近日中ですけれども、十月一日に改正をしなければならないものをおくらして、やはり便宜をはかったととらざるを得ないわけですよ。本来ならば十月一日にやっていなければならない問題です、これは。これをやらないということ自体がやはり便宜供与をはかったという、したがってやみ協定だ、いろんな問題が起こってきて消費者に迷惑をかけているという理由がここにもあるということを理解願いたいと思うのです。いかがでございますか。
  440. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) この種の問題につきましてやはり業界の希望というものをそっくり認めるかどうかということ、非常にこまかい規程でございます、御承知のとおり。でありますから、公正取引委員会としても慎重にその細部にわたって検討しなきゃならないんだ、そういう点ではどうしてもやはり両省の、通産省との間に常に初めから意見の一致を見るということはありませんので、たいへん日にちがおくれた点は私ども遺憾と存じます。が、話し合いが非常に手間どったということで、しかし、さかのぼってこの効力は認める、こういう扱いをしたいと思っております。
  441. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ話の通らない話で、さかのぼって効力を認めると言ったって、もう過ぎ去ってしまったものを効力を認めるも何もないじゃないか、こんなばかげたことをやっているようでは消費者の味方の公正取引委員会と言っても私は信用されないのではないかと思うんです。この点について通産大臣、どうお考えになりますか。
  442. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総合調整規程は九月三十日をもって適用期間が一応終了しております。現在、十月一日以降について、同調整規程の一部変更認可申請が提出されておりますが、十分説明し得る資料が不足している関係もあって、審議途上にあるという状態であります。
  443. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そういう非常におかしい問題がある。  それよりも私はもう一つ大きな問題は、ガソリンスタンドの建設あるいは全石商との深い関係が予算の中に盛り込まれているという点について指摘をしたいと思うんです。四十八年度の予算で石油協会への十億円の補助金が出ていますけれども、これはどういうふうな計画で補助金をつけたのかどうか、この点をお聞きしたい。
  444. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは社団法人全国石油協会に対する補助金でありまして、それによって基金を造成させて、その果実をもってガソリンの試買検査及びそれに基づく指導、品質管理技術、防火・防災等に関する講習会の開催、廃油処理施設の設置促進の指導等、石油販売業者に対して行なわせ、それを通じて消費者に良質の石油を供給する体制を整備するものであります。これはガソリンの中に鉛を多量に混入した悪質ガソリンを売る業者が中にはあるわけです。それを業者相互によって自主規制をやらせようと、そういう意味もありまして試買検査をやらせて、不正、不当なガソリンを売っている者がいないかどうかを業者の自主規制でやらせるというのが一つの大きな目的で発足している団体で、そういう意味で十億円の補助金を交付するというので計上したのであります。
  445. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあその問題は具体的に私は伺いたいと思うんですけれども、この石油協会という団体は、職員と役員は何人でございますか。
  446. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) お答えいたします。  現在職員は六百五十三名でございます。−失礼いたしました。現在会員数が六百五十三名でございます。役員は、八月十日の定款変更認可でもって、従来八十人の役員を二十五人に減員をいたしております。なお、事務局は従来二名でございまするが、現在、これをこの補助事業遂行のために七人にふやす予定をしておるところでございます。
  447. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 非常におかしな団体でありまして、実際に事務局の職員が二人です。女の子が一人だと思うのです。それから一人は専務理事。今回つかまった森下三郎という全石商の専務理事が兼任をしているわけです。こういうところに、石油の品質検査とかなんとかいう形で、どういう意味で補助金十億円をつけたかということが私には納得できない。この点についての問題について、お答え願いたい。
  448. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 先ほど大臣が答弁いたしましたように、石油製品の品質の向上、災害防止、こういったことが非常に重要な情勢になってまいりましたので、石油販売業者の団体でございまする社団法人全国石油協会に対しまして四十八年度十億の補助金を出しまして、それの果実をもってガソリンの試買検査及びそれに基づく指導、品質管理技術、防火・防災等の講習会の開催、それから廃油の処理施設の設置促進のための指導事業、こういったことをやらすことによりまして消費者に良質の安全な石油製品を供給する体制を整備する必要があると、こういうふうに存じまして補助予算を四十八年度新規に立てた次第でございます。
  449. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 非常におかしなことをおっしゃるわけでありまして、この社団法人石油協会の定款を見ますと、四十七年度あるいは四十八年の八月九日までは定款変更が行なわれてなかった。ところが四十八年の八月十日になると、石油製品のいまおっしゃったそのことばが全部入ってきたわけであります。この石油協会というのは、もともとビルの管理専門のおそらく協会だったのじゃないかと思う。これに補助金をつけるために定款を変更したのが八月の十日ではないかと思うんですけれども、これ事実間違っているかどうか。
  450. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) お説のとおり、八月十日に定款変更を認可しております。それで、この法人がこの補助事業を遂行いたします場合には経理その他の処理も特定事業ということで区分してやらせることにしております。また、事務体制も増強させることにしておりまして、ただし、まだ、石油の情勢がこういう状態になったものでございまするので、補助金の執行はいたしておりません。
  451. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 補助金の執行をしてないから、私はなおさら疑惑を持ってきたわけなんです。十億円についていろいろつつかれるので、心配になって執行はできなくなったと。この問題についての関係をしておった調整協議会に立ち会った担当職員はだれですか。小田でしょう。どうですか。
  452. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 担当は石油部の計画課及び精製課、両方にまたがりまして、その関係者の一人に小田が関係をいたしております。
  453. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは非常におかしな問題なんですね。これは石油基金に使うとかいろいろな名目はあとからつけた問題であって、全石商や、あるいはそういう方向のほうにこの調査委託をするための運用補助金ではないかという点を私は考えるんですが、どうですか。
  454. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 先ほど来、本補助金の件につきましてお答え申し上げておりますとおり、この事業と、それから小田の汚職とは具体的な関係はないと確信をいたしております。
  455. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 通産大臣に伺いますけれども、これ四十八年度の予算に計上するときには、おそらく閣議で了解も得、この問題は承認したと思うんですね。そのときにはこの定款変更は行なわれてなかったはずなんです。それが社団法人のこの石油協会に十億円をつけたという点は、これは納得できないのではないかと思うんです。この点いかがでございますか。
  456. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ガソリンスタンドの中には、無鉛化ガソリンを供給するという規定に違反して、有鉛のガソリンを供給する悪質業者もかなりあったようであります。そういう意味から、これは業者が自分たちで自主的にそういう悪質を摘発してなくすようにしなければいかぬと、そういうようなことから試買検査、そういうものをやらせるという団体としてこれをつくったと、それで予算が成立いたしまして執行できる段階になる、そのときに間に合うようにその協会の定款変更をしてその体制を整えさしたんだと思います。
  457. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これはあとからつけた話でございまして、私は納得のできない問題でありまして、特にこの品質についてそれだけ重視するんであれば、いままでそういう問題をなぜ実行してこなかったかということが非常に私は大きな問題になってくるんじゃないかと思うんですね。十億円補助金をつけた、しかし、それを全然使わない。もし、それほど品質の検査のために必要な基金であるならば、有効に補助金を使うべきだと思うんです。それを使えなかった理由は何があったんでしょうか。
  458. 北村昌敏

    政府委員(北村昌敏君) 補助金を遂行するに足るだけの協会の構成を改善をすること、事務処理体制を整備すること、それから経理の処理規定など、万全の処理体制を確立すること、こういったことの諸般の準備が確立されておるのを確認した上で本協会に対しまして補助金の支出を実施いたしたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  459. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 予算をつける段階からもうそういうふうな意図がなかったということは、いまの発言を見ても私は明確にわかると思うんです。こういうふうな実際に公正を欠いていたとか、あるいは陣容が整ってなかったとか、わずか二人のところに補助金を十億円つけて、この趣旨は何かといえば、トンネルをして、全石商とか、そういうほうに委託するための補助金であり、使われるための、いろんな資金運用のための補助金ではないかという点を私は考えるわけなんです。その点について、もし基金として必要でないのであれば、じゃ通産大臣、これはカットしますか、いかがですか。
  460. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはりガソリンスタンドにおいて有鉛化の悪質ガソリンを売るという行為があるとすれば、それはいけないことでありますから、やはりこの補助金は生かして、この協会を充実さして使って消費大衆の利益を守らなけりゃならぬと思います。
  461. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ本年、十二月を終わろうとしているわけですね。福田大蔵大臣、ちょっと伺いたいんですが、こういう補助金の使い方が国の補助金の中で前例があるのかどうか、これについてお伺いしたいと思う。
  462. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 前例はたいへんあると思います、その種のものは。つまり政府がある団体に対しまして補助金を出す、その補助金を基金といたしまして、その運用益で何か仕事をすると、こういう前例は幾らもあるんじゃないかと思います。ただ、三木さんが御指摘になった問題であります。私も初めてその話を聞くわけですが、問題になった以上は、大蔵省としては、よく通産省から事情を伺いまして、妥当であればまたこれは予算のとおり執行しますし、   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕 妥当でなければ妥当でないという適切な処置をすると、こういうふうにいたしたいと思います。
  463. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私は、これはもう全くずさんな予算編成だと思うんです、この補助金の問題についてはですね。したがって、もうここわずか三カ月で、ばたばた鶏みたいに、急に予算を使うための協会立て直し策をね、そういうふうなやり方をするということが非常に不明朗だと思うんです。国民の血税の十億円を、そういう形で補助金をつけるために定款もわざわざ取りかえる、名前をつくろうための一つの協会にすぎないんじゃないか、こういう問題は、十億円も補助金をつけるということ自体が私は非常に不明朗ではないかと思う。したがって、もし必要であれば、来年度の予算でもう一ぺん検討すればいいんじゃないかと、この補正予算で私は減額すべきじゃないかと思うんですけども、いかがでございますか。
  464. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただ、いまお話を承っただけでは処置をとるわけにはいかぬと思います。なお通産省につきまして十分話を聞きまして、それに対しまして、不当であれば不当であるという措置、不当でなければ予定のとおりこれを執行すると、こういういずれかの処置をとることにいたします。
  465. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 ところが、この予算十億円を石油協会に補助金としてつけているわけですね。ところが、この石油協会のほうでは、事業計画には全然これ含まれてないということなんです。こういう点から見ましても、これは実際にこの石油協会あるいは全石商、あるいは全石協という三団体の役員構成を見ると、みんな同じメンバーでやっているわけですよ。しかし、石油政治連盟ができた意図はあったはずなんです、石油政治連盟ができたのは。昭和四十三年か四十四年に、スタンドを中心とした全国石油政治連盟はあるはずなんです。この全石商とか全石協から、スタンドから集めた会費によってこの石油政治連盟には必ず献金が流れているんです。もしやこの補助金が協会を通って全石商へ——私は、これは四十四年からにらんでおった問題なんです。スタンドの人たちの頭をはねて会費を取り、献金を受ける、あるいはまた、補助金をつけるからという名目のもとに全国石油政治連盟というものがいろんな問題で動いたことも私はうわさではいろいろ聞いているわけです、これは。こういう不明朗な問題、ここに十億円ほかっと出てくる、これは基金とかいろんな名称はつけられるかもしれない。しかし、私は非常に不可解な問題だと思うんですね。スタンド業者からは会費を取る、あるいは補助金をもらう、これから政治献金に流れていくというやり方は、非常に不明朗じゃないかと思うのです。党の名前は私は指摘したくありません、きょうは。しかし、実際に出ているんですよ。こういうやり方をやっていくということ自体が体質的に——特にいまスタンド業者は非常に困っているわけです、正直言えば。小さな石油業者はいろいろ消費者からも言われる、あるいは上から出し惜しみをされる、こういう点で非常に悩んでいる中からこういう動きがあるということ自体も、私は非常にこの石油問題に関しては不可解だと思うんです。こういう体質を改めない限り、ほんとに消費者や、あるいは小さな力のないこの石油スタンドの業者を守ることはできないと思うんですよ。この点について、総理大臣、どうお考えになりますか。
  466. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 石油スタンドの運営に対して、消費者を守らなければならない、良質な、良心的な販売をさせなければならないというために、いろいろな苦情があれば、これに対して何らかの検査や監査制度を設けなければならぬということは、これは必要やむを得ないことだと思うんです。これは消費者を守るというためのことであります。ただ、そのやり方が、政府自身が監督官をもってやらせるか、また民間のものに補助してやらせるか、また基金のようなものを置いてやるかといういろんな手だてがあるわけでございまして、これはまあ話を聞いている限りにおいては、まずそういう必要性があったら予算を組んで、予算が通過後、いかなるものを一体やるのかということで、協会を設立する場合もございますし、適当な協会があれば、それをして定款を変更せしめたり、その補助金を交付する条件を具備さしてから、それを確認をしてから補助金を交付するということになるわけですから、いままでには補助金は確認できないままに交付してないということでございます。しかし、この問題が、そういう業務は必要でないということであるか、それから必要であっても、いまの問題を起こした石油業界というもの自体はどうも望ましくないということか、他に適当のものがつくれるのかという問題に対しては、いま大蔵大臣の述べましたとおり、通産省から事情を聴取して、必要でなければこれは不用に立てますし、必要であるならばこれをまた別に計上してもけっこうですし、いまのものが議会や社会の賛成を得られるような状態なら、条件をつけて交付をしますと、こう言って、慎重な態度をしているわけでありますから、これで御理解いただきたいと思います。
  467. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私が指摘をしたのは、やはり通産省のエネルギー庁の小田とか——まあその小田個人を私は責めるわけではありませんけれども、やはりそういう立場、それから全石商の専務理事、また石油協会の専務理事も兼ねている森下三郎、こういう人間がぐるになってこの十億円の補助金を——まあ裏では、この新聞を読むと、もっと悪いやつがいると言って小田が吐いているそうでありますけれどもね。こういう点から考えますと、石油のこの十億円の補助金は一例でありますけれども、非常に国民の納得のできないような問題で、やはり通産省がいま考えているこの十億円の問題はカットすべきじゃないか、そしてもう一ぺん洗い直して、ほんとうに国民の納得のできるような姿にはっきりすべきじゃないか、それはまさしく総理大蔵大臣の私は態度じゃないかと思うのです。わずか三カ月でばたばたばたばたこれをはたく必要もないのじゃないかという気がするわけですけれども、この点、総理大臣から……。
  468. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、いま突然こう承知をした案件ですから、事情がわからぬわけです。まあ大蔵省というのはきびしいのでして、よほどの要請がなければ、ちょっとやそっとでもって新規の予算なんかとても十億つけるはずはないのです。ですから、苦情があったりいろいろなことがあって、必要やむを得ず計上したと思いますが、しかし、国民の税金を少なくともそういうものに計上していく以上、基金がいいのか、まあ基金といえば、十億というと——あと、またどうするのかわかりませんよ。まだ調べてないからわかりませんが、十億といえば七%としても七千万円。七千万円でもって一体どのぐらいの人をやるのか、これは石油のスタンドの業者のような人ばかりやれば、これこそそんなものやめればいいんでして、これは専門家を置くということで一体やれるのかどうか、そういう問題、私全然承知しておりません。承知しておりませんが、御指摘がありましたことに対して、大蔵省は新しく予算を組む立場にいま立っていますから、慎重に通産省の実情を聞いて、主計局がなぜこれを計上したのかという問題もさだかになって、適当な処置をいたしますと、こう述べておるんですから、これはやっぱり次の予算委員会でもまたきっと問題になると思いますから、いいかげんに処理するわけありません。だから納得の得られるような状態、この補助金を計上した趣旨に沿うものでなけりゃやめなきゃならぬことであります。不用に立てなきゃならぬことでありますから、そういう問題はひとつ大蔵省に検討さしていただきたいと思います。
  469. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 この問題ばかり入ってもおれませんので、こういう問題から考えまして、総理、いま国民がやはり石油危機で一番困っていると、こういう中で、自民党総裁という立場からお聞きをしたいのですけれども、やはり石油連盟とか、また石油の各企業から、四十六年から四十七年の約二年間にわたって二億四千万円の政治献金を受けているという問題ですね。これはいろいろ自民党の行き方とか、いろいろ答弁をされておりますけれども、やはりこういう国民が石油の問題に非常に悩んでいる中で私、具体的なデータを見ますと、各派閥にずっといっているわけです。こういう点も、やはり国民が石油で、灯油を買うにも非常に高い値段で買わなければならない、こういう点から考えたら、総理としても、こういう石油関係と自民党の癒着という問題、あるいはそういう関係がやはり変なくされ縁になって、この石油の立法、あるいはこの供給するものに、強いほうには有利に、あるいはまた、力の弱いほうがどうしても恵まれないという、そういう関係になってくるのではないかという疑惑を持たざるを得ないわけですよ、これはね。こういう点はやはりもう少し石油業界等の献金問題についてもえりを正すべきではないかという点を私は総理に伺いたいと思うのです。
  470. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは一般的な問題でございまして、石油問題がこうなったから、石油業界から、石油の会社から全然政治資金を受けてはならないということをいえば、これは何らかの関連はみんなあるわけであります。これは労働組合でも同じことでありますし、これはもうそうじゃなく、別なもっと零細な協会から受けておるという事実もありますし、政治というものは、国民の支持と理解を受けなければならないと同時に、強要したり、そういうことになったら、これはたいへんなことでありますが、そうではなく、政治というものは、国民の政治参加というものは、これは崇高なものであり、非常に重要なものであると、だからそういう意味で、私は石油業界から特に受けたいという気はありません。自民党の総裁としまして受けたいという気もありません。ありませんと同時に、これを拒まなければどうも姿勢を正したことにならぬというふうには理解できないわけであります。こういうものは政治に対する国民の間接参加ということであって、これは政治資金規正法によって公開をする、公開をすればその判断は、最終的には主権在民でございますから、主権者がこれを判断するというのが新しい憲法のたてまえでございまして、これはまあ具体的に例をあげればもっともっといろいろな問題があるわけですが、政治資金というものは国民の主権の行使の範囲のものである。直接行使は選挙によって行使するわけです。政治資金とか応援とかいうものは間接政治参加という憲法上の大きなこれは一つの権利でございますから、そういう意味では、そう簡単にそうでございますとは、これは各党にも支障がございまして、そう簡単にはお答えできないと思うのです。
  471. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 通産大臣に最後に、この問題に対するお伺いをしておきたいんですけれども、エネルギー庁のこの汚職問題ですね。こういう問題に対してやはり私は、補助金の問題とからみ合わして相当エネルギー庁の人たちは努力をされておると思うんです。最近石油問題で非常に苦慮されていることは私もよく伺っております。しかし、こういうスタンド業者、あるいはまた調整規程等の問題等で便宜をはかるようなやり方ということは、これは考え直さなきゃならない問題じゃないかと思うんです。そのために、通産大臣としてエネルギー庁のこの汚職の問題に対してどう責任を感じられているのかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  472. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) かりそめにもあのような不祥な事件を起こしまして、まことに申しわけないと思っております。以後大いに戒めておる次第であります。
  473. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それでは、公正取引委員長に独禁法の問題でひとつ伺っておきたい。  灯油等の販売に関してのやみ協定がいろいろ公正取引委員会で摘発をされるわけでありますけれども、現在の独禁法では、やみ協定を破棄だけはできるけれども、勧告だけはできるけれども、実際に原状回復というか、その引き戻し権というか、引き下げ権というものがない。したがって、何か消費者から見ると、この取り締まりをして消費者の味方で動いているような感じでありますけれども、現在この灯油というものが下がらない、やはりやみ協定は破られないという問題が出てくると思うんです。こういう点に関して、独禁法の改正の問題についてどういうふうな考え方で取り組んでおるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  474. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 現行の独禁法では確かにお説のように、せっかく価格のカルテルを摘発し、そしてこれに破棄を命じましても、価格そのものを——つまり、協定価格はやめなければなりませんけれども、価格そのものの水準が下がるとは限らないということで、現在私どもがとっております一番きびしい方法としては、告発は別といたしまして、価格を毎月報告せいと、関係者が。違反にひっかかった業者がそれぞれ自分の独自の立場で取引をする価格、それを毎月報告せいというふうなことを義務づけたものがございます。しかし、それを全部チェックしていくとなりますと、これはたいへんな問題が起こりましてなかなかでございます。しかし、いま、ただいまの御意見にありましたように、価格の引き下げ命令というものはやっていいのではないかと私どもは思いますけれども、なかなかいろいろ技術的にたいへん困難な問題を含んでおります。簡単なようでそうでない。そのほかにいわゆる寡占問題、寡占対策に対して何か分割の問題はどうかというようなこともございますし、他にも実は問題点が二つ三つございまして、これはやはり私どもがかってに改正を考えるのじゃなくて、ある程度専門家の皆さまの合意を得なきゃならぬという考えから、明日から——明日は第一回でございますが、独占禁止法研究会、専門家の方及び民間の有力な評論——評論といいますか、言論界の方をメンバーに選びまして、これから着実に研究を重ねて、もしそれによって非常な合意が得られれば、あるいは国民的なコンセンサスを得なきゃならぬものもございますから、そういうものについて十分配慮をしながら、改正の問題に一応取り組むという姿勢をとっております。
  475. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 総理、いま公取委員長から独禁法改正の方向に取り組むという話があったわけですけれども総理として、これは内閣で提出するような形になるわけですね。独禁法改正を提案されるのは内閣だと思うんです。いつもネックになるのはやはり総理のところだと思うんです。したがって、いま公取委員長が非常に前向きになっている発言をされているわけです。私はこれをやらなければ、あるいはいま言われた寡占企業の分割命令等、こういう問題をやはり考えなければ消費者を守ることができないのじゃないかと思うんです。物価抑制することはできないのではないかという点を強く感ずるわけです。この問題に対する総理の考え方を伺っておきたいと思います。
  476. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価抑制、公正な商取引の確立、消費者の保護という立場から独禁法が重要な法律であるということは承知いたしております。ただ、独禁法がどの程度の改正を必要としているのか、公取がどういうような意向を持っておるのかはよく承知しておりません。公取に独禁法の改正案ということの意思があれば、政府内部としては十分検討してまいりたい、こう考えます。
  477. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それでは、総理並びに外務大臣に伺いますけれども、三木特使の中東訪問のこの問題について一、二点伺っておきたいと思うんですけれども、特に副総理の出発に際して特別な問題を託したことがあるのかどうかですね。具体的にこの中東問題、油の問題解決のために総理としてどういうふうな権限を与えたのかどうか、この点について……。
  478. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 訪問七カ国の首脳に対して親書を託しました。で、日本がこの間明確にしました官房長官談話の真意というものは三木特使から十分聞いていただきたい、で、日本に対する要請、要望、またその他の問題があったら隔意なく同特使に述べてほしい、同特使は政府を代表する者であると、ですから、同特使の発言は政府の代表者としてこれを受け取られたいと、なお、三木特使は、緊急に決定を必要とするものに対しては直ちに本国に請訓をすることができるようにしてありますからと、こういうことでありましてね、三木特使にはひとつ胸襟を開いて——石油問題ももちろんあります、石油問題もちろんありますが、いずれにしても、アラブ各国に対して日本が誠意をもってこれに対応したいんだという信念、それから日本の憲法のたてまえ、それから武力による占領の不可、そういうものは容認してない国であると、どんな国よりも最も平和愛好の国であるという日本の国の状態というものを十分述べるようにということを託したわけでございます。
  479. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 具体的な経済援助の問題等についての話は煮詰まって持っていったですか。
  480. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、訪問各国には十七、八件のプロジェクトがございます。で、それはそんなむずかしい問題——まあ、どうにもできないというような問題でないわけであります。条件の問題とか、他の国がもっといい条件でやるとか、しかし、日本にやってもらいたいんだというようなものもあるんです。まあ、やっぱり気に食わないというところもあるでしょうね、いままでの長い関係で、一つの国だけにその投資が片寄っちゃいかぬというような、現地のいろいろな事情もありますから、日本が望ましいというものがございます。で、その中には民間だけではなく政府ベースのものをかみ合わせることによって条件は非常に有利になるというものもありますので、とにかく、先方側の要請にこたえられるような態勢は三木特使が具備して参ったわけであります。
  481. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 外務大臣に伺いますけれども、聞くところによりますと、来年の一月早々に政府はイラクのバグダッドに融資買油のミッションを派遣するという、こういうふうなことを私聞いてるんですけれども、バグダッドへそういうミッションを派遣する計画があるのかどうか。——石油を買うための、それで融資をするということです。
  482. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 政府としてただいまそういうことを考えておりません。
  483. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これはいろいろ通産大臣と検討されているという報告を私は受けているわけです。まあ、発表できないいろんな問題点で差しさわりがあるのなら、私、この問題については深く聞きませんけれども、やはりこういう方向で何かイラクのほうの石油を買うための融資とかいろんな問題でミッションを一月に派遣するということ、あるいは外務大臣が知らない問題を総理大臣は知っていらっしゃるかどうか、どなたでもけっこうだと思うんですけれども、この点についてお伺いしたいと思います。
  484. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いままではアラブ諸国は、大体民間ベースでものをやっておったんです。ですから、政府政府との間にはあんまり連絡がなかったという面もあるんです。ところが、実際のプロジェクト別に検討して各国との比較等を行ないますと、やはり政府が関与したほうが合理的であると、そうすればもっと早く片づくじゃないかというようなものもあるんです。ところが、アラブの国々というのは、日本との間には大きな石油という商売がありましたから、石油の関係者は政府よりももっとこう近しい交流ができたというようなことで、先方側としては政府の代表も、石油を買っているのは大体政府だと思っているわけですから、そういうところに幾ら政府間の接触が緊密でなかったということはあるんです。  今度は三木特使は、こういうようなものがみんなありますが、あなた方は一体これをどう考えているんですか、はっきり申し上げてください、順位はどうなんですと、それでこれは民間ベースだけでやれませんから、そういう場合には、どうしてもというなら政府とかみ合わしてやりますよというようなことが、いままでなかなかうまくいかなかったんです。そこへ日本とアラブとの疎遠、言うなれば、これだけ石油を買っておきながらそう親密じゃなかったじゃないかと、いまごろあわてて何だと、こういう一部の批判があるのは、案外そうじゃないんです。濃密な状態はあったんですが、政府ベースということでなかったというところに問題もあったわけです。今度三木特使が行けば、アラブ諸国との話し合いは政府ベースに乗ると、それで民間でやるものは民間でやりますと、そうして輸銀ベースでやるものはやりますと、しかし、政府取りきめを付与しなければならないものは付与しますと、これに対して、とにかく政府援助というようなものがかみ合わなければ、その部分はどれとどれですというような判断ができるような状態にして出張したわけでありますから、三木特使が帰ってくれば、いままでの問題というものは相当なスピードで解決をするという見通しでございます。
  485. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいまの件は、民間のほうでそういうミッションを出す計画はあるようでございますが、政府としてはございません。
  486. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それでは次に、物価問題のほうで伺いたいと思うのですが、特にこの高騰する物価に対する国民の怒りというものは、これはたいへんなものだと思うのです。特に、やはり政府がいろいろきめた問題が実際に守られないという、特に政治に対する不信というか、政府に対する不信というものは私は非常に強いと思うのです。こういう問題を解決する策をやはり明確に示していかなければならないと思うのです。確かに、石油の問題等で非常に複雑な問題があるでしょうけれども、ここで私は、各経済閣僚にどういう考え方を持っているのかという点を伺いたいと思うのです。したがって、総理をはじめ大蔵、農林、通産、それから経企、運輸等で——通産はいらっしゃらないから政務次官でけっこうです。この物価高原因が何なんだろう、それから、それに対する解決策としての対策はどうするのだ、いつごろまでにそれを押えるという決意をもって進めておるのかどうか、この三点を明確に答えていただきたいと思うのです。初めに経企庁長官から。
  487. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この問題一人一人やっていたらあれだから、私が代表して答えます。
  488. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 各大臣の考え方を聞きたいのです。
  489. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 時間もあれですし、何回もやって述べている問題だから。——これは間間申し上げておりますとおり、原因はたくさんあります。ありますが、その中で一番大きなものは何かというと、これは外的要因であるということはもう先ほども数字をもって申し述べておるとおりでございます、何回も何回も述べておるわけでございますから。この外的要因というのは、これはあに日本だけではなく、アメリカも、ヨーロッパの先進工業国物価高というもののほとんどが外的要因であるというものに比べますと、まだ日本は外的要因というものの比率は少ないけれども、外的要因というものが半分あるということは先ほども申し述べておるとおりでございます。  もう一つはどういうことかというと、金融緩和ということでございます。金融緩和は一体どういうことかというと、ドルの切り下げという大きな問題があったわけであります。そうすると、日本はドルの切り下げという問題に対してはどうしても対応せざるを得ない状態に追い込まれたわけであります。それは中小企業や零細企業がとにかくこれだけ大きな特殊な状態があるわけでございますから、あのままの状態を続ければ将棋倒しになってしまうということになりますから、これはどうしても中小企業対策は、手厚く過ぎるといわれてもやらざるを得ないわけでございます。  もう一つは、対米貿易を中心として貿易の大幅黒字が起こったわけでありまして、アメリカを中心にして、世界じゅうから日本がたたかれておるというような状態でございまして、特に、対米貿易というものは貿易の四〇%に近いものを間接、直接でやっておるんですから、日米間がもう疎遠になるような状態になったならば、それこそもう石油の二〇%削減などというもので済むわけがございません。これは当時の経済評論家が言うように、五年間は逆戻りをするだろうというぐらいな状態でございましたから、そういう状態に対応しなければならない。対応しなければならないとすれば、輸出を国内に転換をしなきゃならない。そうすれば刺激政策をとらざるを得ない。これはちょうど中小企業の問題とあわせて税法上の特例、中小企業の特別対策をとった、金融の緩和を  やった、こういうことでございましたが、そのために対米貿易を含めて、三年間かかるといったものが一年半でもって四十二億ドルが十八億ドルに落ちてしまったというんですから、日米間には問題はなくなったわけです。あれだけ国会でもっておしかりを受けたけれども、あの状態において繊維交渉さえも調印せざるを得なかったという事情はおわかりのとおりなんです。しかし、あれをやったらもう日本の繊維は全部つぶれるだろうと言ったのが、繊維は史上最高の好況決算をしておるということですから、一つの目的は達成しているわけです。中小企業も、対前年度比三〇%の対米輸出をやっているんですから、これも何とか目的を達成した。しかし、その過程において企業の手持ち資金が非常に過剰になって、これが土地にいき、物になり株式になり、そこで引き締めてきたわけであります、もう引き締めてもだいじょうぶだということで。これを引き締めても、輸出ドライブにつながってまた貿易収支が逆転するおそれはもうないなという見通しもついたし、これで引き締め政策に転じても中小企業や零細企業はこれに耐え得るという状態を確認してから引き締め政策に移ったわけであります。これはことしの春から、準備率の引き上げからずっと、公定歩合を短い間に五回という史上最高のものをやっておるということでございましたが、その結果、漸次引き締めの効果は浸透しつつありますというときに、石油問題がどかんと起こった、こういうことでございます。  一つ忘れましたが、その中で六千五百億の補正予算を組んだり、財政規模も大きかったじゃないかというような御指摘がございますから、これに対しては総需要抑制で、ことしの予算も繰り延べておりますし、来年度の予算は均衡予算で組みます、こういうことを申し上げておるわけでございます。ですから、完ぺきに政策は成功されたとは考えておりませんと、ですから反省するところが多々ございます。反省いたしております。しかし、外的要因で戦後初めて経験をしたような問題でございましたのでこのような状態を招来をした。しかし、石油問題は第二の問題でございますから、これはもう前のことも十分考えて、数字も全部今度手の中にあるわけでございますから、この石油問題に対しては国民に対する影響を最小限に食いとめなければならぬ。それにはひとつ最小限政府に権限を与えていただきたい。それが緊急二法になっておるわけでございます。法律がなくとも、徹夜をしていま業界との間に話を詰めながら、当面する混乱状態を避けるべく全力を傾けておるわけでございます。ですから二法案を通していただければ、これを中心にして政府をあげて国民要請にこたえたいというのが政府全体の考えでございまして、これはもう閣議で決定して、ここで申し上げておるわけでございますので、この点、ひとつ御理解をいただきたい。
  490. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 具体的な問題についての反論は、きょうはする時間がないし、ほかの問題を深く入りたいと思っておりますので。  しかし石油二法案が通れば何か物価が下がるような、そういう話では納得できないと思うんですね。買い占めの法律案が通ったときにも、この審議の過程において、これが通れば物価は下がるようなことをずいぶん言っておった。しかし下がらぬですね。したがって、政策に対する、やはり反省という総理の率直なことばも出たわけであります。それは私はくむわけでありますけれども、ここで経企庁長官に具体的な問題として私は伺いたいんですけれども、四十八年度の物価対策予算で、特に低生産部門とか、流通改善対策としての予算を相当組んでおりますけれども、はたして物価抑制の効果になったのかどうか、この点についてお伺いしたいと思う。
  491. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十八年度予算の中には、一兆三千億ぐらいの物価対策関連予算があるんです。これは非常に多岐にわたりますけれども、それぞれその使命を遂行しつつあると、こういうふうに考えております。
  492. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それぞれ遂行しておる意味があるというんですけれども、具体的になっていないんですね。私は、特に具体的に魚の問題、水産物の問題等について、実際これが物価抑制になったかどうか、マグロの問題を取り上げて、具体的にこれが高騰の原因をつくっているということを、私は証明したいと思う。  特に経企庁に伺いますけれども、あるいはまた農林省に伺いますが、水産庁が補助金を出して冷蔵庫をつくっておる。また、経企庁が財団法人流通産業研究所に委託をして、魚介類の流通と価格形成実態調査の報告を受けていると思うんですけれども、これの実態、内容についての報告を受けたいと思います。
  493. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私のほうから魚について申し上げます。   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕  水産物流通の面で、冷蔵庫が果たす任務の大きいことは、三木さんよく御存じのとおりでありますが、そこで、水産物の流通対策事業の一環として、いまお示しのような、冷蔵庫の設置に対しまして助成をいたしております。これがなければ鮮度を維持することもできませんし、仕事に差しつかえるわけでありますが、ただいままで——これ、数がたくさんございますので省略いたしますが、たとえば産地冷蔵施設、それから産地流通加工施設、こういうようなもので、対象はいずれも水産業協同組合でございまして、そういうところで小口で集めましたものを冷凍しておいて、そしてコールドチェーンのようなもので輸送をして市場に持ってくると、こういう関係でございますので、私どもといたしましては、やはり漁業のためには必要なものであると、こう存じて助成金を出しておるわけであります。
  494. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 農林大臣が言われましたように、マグロの冷凍施設は、マグロの価格の安定、ことにそれが季節的な物品ではなしに、周年的な物品として価格の年間安定に寄与していることを私どもは認めるものでございます。数字を一々申し上げませんが、四十八年の一月から十一月までのマグロの小売り価格の推移を見ましても、他の一般の生鮮魚介類の値上がり、値動きに比べまして、かなりマグロが安定しておると、こういう状況があらわれております。
  495. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ価格が安定している——数字的なデータをどこから取り寄せられたか私知りませんけれども、そういうふうないいかげんな答弁をしているようでは、あまりにも情けないと私は思うんですよ。マグロが買い占められて冷蔵庫に入っている、経企庁長官、知っていますか。
  496. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) マグロにつきましては、御存じのように、これは遠い深海に生息していながら、水銀を含有しておるものであるということをいわれておりました。したがって先般、水銀、PCB等の問題が起きましたときにも、近海の魚につきましては、それぞれの手配をいたしましたときに、マグロについても、やはり心配してやるべきではないかと……。
  497. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 簡単でいいです。
  498. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ということがありました。しかし、その後の経過を見ておりますというと、マグロを買い占めておるというふうなことを、私どもはどうも聞いておりません。
  499. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは、私、具体的に冷蔵庫に入って、四十度のところを見てきたんです。総理にちょっと……。(写真を提示)これ、マグロ、全部買い占めでずっとあるわけですね。商社は冷蔵庫を持っている。
  500. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは備蓄マグロでしよう。
  501. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 冷蔵庫をつくったのは、やはり備蓄とか、あるいはいろんな点も一部考えられるんです。確かに備蓄という答弁が私は返ってくるのがあたりまえだと思うんです。そういう答弁しかできないわけなんです。  実際に、それでは具体的に、政府が開発銀行を通して、いろいろ助成をしている、東京の平和島に東京団地冷蔵建物株式会社というのがあるんです。この冷蔵庫をつくるようになった経緯について、運輸大臣に伺いたいと思う。
  502. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) いろいろ、団地の冷蔵庫あるいはまた営業冷蔵庫等につきまして、いま大都市の冷蔵庫の中には約六十万トンぐらいのあれが魚介食肉等を中心としてあるわけでございます。お尋ねのマグロ等につきましては、これはまあ私用の、私設の自家用が多いようでございまして、ほとんど大半が自家用のようでございまして、御指摘の、東京の団地冷蔵庫には五百トン前後のものがいま保管されておると思います。  以上のような状況でございまして、今後とも営業倉庫につきましては、必要に応じて敏速にその実態を把握して、関係の向きに情報を提供してまいらなければならぬと思っております。ただ、営業倉庫につきましての、これは三木先生のほうがお詳しいかもわかりませんけれども、倉庫業法によって運輸省としましてはできるだけの努力をしておりますが、ただいまのところ、定期的に立ち入り検査をやっていると、この程度でございます。
  503. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私は、この団地冷蔵をつくった意味を伺いたいと思っております。特に、この土地が東京都の払い下げの土地で一万四千三百六十坪、約十一億円で東京都から払い下げを受けたわけです。ところが、トン当たり各冷蔵会社が借りているのは幾らかといいますと、八千六百円なんです。一々聞きますと時間がありませんので……。ところが、その営業冷蔵倉庫が貸し与えているこの実態は三万八千四百円なんです、一トン当たり。そうしますと、この建物自身で三十五億円の、ざっとした計算の利益が出るという、これは単純計算。利息返還とか、いろいろな償却がありますけれども、八千六百円で借りて——確かに土地も安かった、坪約九万円ぐらいで東京都から提供を受けているわけです。東京都では、これは東京都の冷蔵施設につくったほうがよかったという意見がいろいろ出ているわけでありますけれども、実際にこれが八千六百円で借り入れられ、冷蔵庫会社に貸しているのが三万八千四百円なんですね。こういう実態をいろいろ調べますと、この東京団地冷蔵建物には、国民の厚生年金とか、あるいは郵便貯金とか、こういうふうな財政投融資の金が約二十八億円投資されているというわけです。ところが、こういう冷蔵庫のあるがために魚の買い占め等をしいられているという実態が、私は調査でわかったわけです。こういう点について、実際に、この冷凍施設をつくった趣旨から、ある意味では趣旨が違っているんじゃないかと、こういうふうな企業優先のこの冷蔵庫をつくるのであれば、むしろこういう消費地の冷凍ポイントも、地方公共団体等に助成をして、そこにつくるような方向を考えたほうが、むしろこの価格の問題に対しても、非常に低廉な形で魚等が提供できるのではないかということを私は申し上げたい。この点について総理、どうお考えになりますか。
  504. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 冷蔵庫をつくれというのは、これはもう魚だけでなくて、野菜でも何でもみなそうです。大都市ほど冷蔵庫をつくっておいて、備蓄をしておくことによって安定供給をはかるということでありますから、冷蔵庫をつくるというのは、これはもう都市としては政策であると、これはもう不可欠の政策である。これは、サンマにしても、どうっと入ったときにはただになって、入らぬときにはうんと高くなるというのじゃ困りますから、その意味で、冷凍倉庫というものをつくらなきゃならぬということは言うをまたないということです。  ただ、業者だけがつくっておるということになれば、業者が、冷凍倉庫というのは腐らぬから、なま身の魚とは違いますから、その意味において、調整もまた行なわれるじゃないかということは確かにあり得ます。だから、その場合は行政によって調整するということだと思うんです。まあ私は、端的に言えば、これは公共倉庫と両方つくっておいて、とにかく不足のものがあれば、これを放出をするということになれば、これは合理的だと思うんです。それは大阪などではそういうことをやっておりますし、まあ東京はその意味で公共的なものが少ないんです。東京というのは一番でかいところでありながら、御承知のとおり公共ではあまりやらないんです。ですから、そういうところにこういう問題が指摘されればあると思うんですよ。私は、これを見てますと、これちょっと、あなたのほうの資料を見せていただいて、四十六年の十一月がキログラム三百五十二円であったものが、四十七年の十一月は三百二十二円である。ここらは非常にこの倉庫をつくったということのメリットがあるわけですが、ここに四十八年十二月に六百一円になっておる、十一月に五百二十二円になっておる。この十二月の数字を見ると、七、八割方上がっているじゃないかと。この中の、ここでちょっと見ましたら、せり業者を九十八から百七十一にしたら、せり業者がとにかくせるもんだから上がるということもここにも指摘してありますが、こういうものの調整は、やっぱり大都市においては、もっと知恵を出せば、もっと合理的な供給は可能である、こう思います。
  505. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 したがって、このストックポイントを、やはり物価対策として、企業のほうに貸し付ける、これ一部——全部が全部なくしようというわけにいきませんけれども、やはり大消費地に、公共機関でこの冷凍施設をつくる方向に国が助成をすべきじゃないか。魚だけではなしに、あるいは野菜等についても、そういうものをどんどん積極的にやるべきじゃないかと……。
  506. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) している……。
  507. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 しているんじゃないですよ、たいしたことやってないんです。大蔵大臣どうでしょう。
  508. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 冷凍倉庫につきましては、開発銀行がかなりの融資をしておるんです。これは消費地だけでございますが、いま三木さんの話じゃ、消費地じゃ買い占めが起こるというような話ですが、買い占めという現象は、消費地であろうが生産地であろうが起こり得る問題だろうと思います。そういう意味じゃなくて、生産地につくるほうがより合理的だと、こういうんなら、また生産地に冷凍庫をつくるということに開銀融資をすることを考える、こういうことかと思います。よく運輸省と相談します。
  509. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 大蔵大臣の言われた消費地、それから生産地も、私、同じだと思うんです。そういうところにストックポイントをつくって、特に大衆魚等の、やはりそういうものが、サンマなんか、たとえば三円で現地生産者は売る、しかし消費地に来ると六十円、七十円になる。そのために、やはり公共機関でこの産地のほうにストックポイントをつくっていくという方向のための助成を、やはり国は私はもっと積極的にやるべきではないかということを提案をしているわけです。
  510. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは重要な問題でございますから、申し上げておきますが、これは公共団体がつくる場合の助成もちゃんと計上してあります。それから組合がつくる場合も計上してあります。個人に対しては体制金融でめんどう見れるようになっているんです。ですから、公共団体とか組合とかというものに対しては、一般会計でもって補助をするような制度ができているんですが、大消費地がこれをつくらないというところに問題があるんです。これは土地がないとか、いろんなことがあるんでしょう。ちょうど築地の魚市場が、とにかくもう五百万人対象でもってつくったものであって、いまもうその三倍、四倍になっておっても、あれがなかなか拡大できないという、いろんな問題があると思いますよ。あるんですが、少なくとも政府が予算で用意したものに対応するような、地方公共団体や組合もそれだけのことをやってもらわなければだめだと思う。何でもかんでも政府がやれるわけじゃないんです。そうじゃなく、もうこのごろ始めましたが、野菜は諸産地にちゃんと補助金を出して、そしてそこへ大消費地の公共団体が倉庫をつくっておって、自分で金は払っておいて、いつでも持ってこれるようにしているんですから、だから気仙沼やそういうところにも、東京都がちゃんと、サンマが出たときには、それをもう、ただのようなサンマなんですから、だからそれを大量に買い入れておって、それで必要なときは東京へ持ってくる。お互いが理解し協力し合わなけりゃ、この大消費地の安定供給というものはできないと思うんです。それはもう政府は積極的にやっております。
  511. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 積極的にやってもらいたいと思うのです。ところが、残念ながら、この一例が、東京団地冷蔵がこれだけの大きな融資を受けていろいろやっているのに、やはりマグロの買い占めというか、大手商社並びに売買参加人というのは関係会社、あるいは冷凍施設は同じ関係会社、やはり大手商社の傘下にみんな入ってこの冷凍施設が使われているというところに問題が私はあると思うんですね。こういうふうな選別をしているところに、やはり物価のつり上げというものが出てきているわけです。  したがって、築地市場に入ってくるマグロについても、当初はせりで仲買い人がだれでも買えたわけですね。ところが、最近は入札制度がふえてきているわけです。入札したものはすぐに小売り店に流れないわけですよ。それはどこへ行くかというと、冷凍施設へ直行するわけですよ。団地冷蔵へ行っちゃうわけですよ。それが適宜に見計らって、またある業者を通して回ってくる。ある意味じゃ、これは深く見れば、市場法違反のような問題が、実はあるような問題が考えられるわけですよ。こういうふうな形で冷凍施設ができたために、マグロが買い占められたりつり上げられたり、その結果入札制がどんどんふえてきた、総理、データを見れば。いままではせりのほうが多かった。ところが、入札がどんどんどんどんふえてきたということは、やはり入札するためには小さな仲買い人じゃ買えないわけですよ。マグロ一匹十万円、二十万円というのを船の半分も買うとなれば資金力がものをいう。ここに大手商社、冷凍施設を持っている売買参加人、丸紅冷蔵であるとか兼松冷蔵であるとか、結局は大手商社が資金をバックにして買い占めをしているというところに問題があるんじゃないかと私は思うんです。  この点をやはり是正し、チェックをしなければ、そういうマクロが——私を見てください、丸紅冷蔵の例なんですよ。そこに入ったらマグロは一ぱいあるわけですよ。こういう、実態は買い占められている。これをやはり具体的に、じゃ買い占めたものを、今回の買い占めの法案でどういうふうに適用した場合にマグロが出てくるのかという問題になってくるわけですね。  この問題、わからぬわけですよ。国民はマグロを食べたいと思っても、あるところには一ぱいあるけれども流れてこないという、こういうふうなものを調べてみれば、冷蔵庫にはがっちりあると。こういうものをやはり入札がどんどんどんどん物語っているんです、数字が物語っているんです。値段もそのとおり上がってきているわけです。いわんや、油危機のために漁船から入る魚が非常に少ない。こういう問題になれば、マグロとか高級魚等についてはますます買い占めが起こってき、この冷凍施設、政府が助成したこの冷蔵庫の中にしまっておく大手商社のやり方ということについてのやはり考え方というものは、私は改めなければならないんじゃないかと思う。この点について伺っておきたい。
  512. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) せりと入札というのは、まあこれは同義語なわけでございますが、実際、せりはそんなにたくさんせるというわけじゃなくて、一匹ずつ出してこうせっていきますから、朝のせり市と、同義語であっても、その入札というのは大量の入札ということで区別をしておられるんだと思いますが、これはやっぱり、せりをするということが一番正しいと思うんです。  で、ただ大量に入ってきたときは、市場が小さいということでもって入札をやらなきゃならぬということもあるでしょう。これは東京都が市場は管理しているわけです。それで農林省が監督しているのですから、農林省と東京都が調整すればこんなことはできる話なんです。  そして、制度上の問題としては、予算では公共団体が冷蔵庫をつくるように助成措置を計上しております。それから組合がやる場合も水産会に補助金が出せるようになっております。それから業者の場合は補助金はないけれども、体制金融で開発銀行から借りられるようになっているのですから、こういうものがバランスがとれて、実際の消費地の官庁がこの調整を行なおうとすれば、市場運営の権限は都知事にあるわけであります、大阪は府知事にあるわけですから、だからこれは調整は可能な問題であるということで、いまの発言に対しては農林省に十分検討させます。
  513. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 東京都が管理する、あるいはまた大阪府が管理するというのは、確かに管理はそうなんです。しかし、二年前に市場法をわざわざ国で変えたんですよ。これを変えたためにやはり入札できるようなメンバーがわっと入ってきているわけですね。ここがやはり問題になったわけですよ。それは東京都はもうあと認可だけなんです、承認だけなんですよ、出してもらったものを承認するだけなんです。ところが、これが拡大をしたわけです、市場法を改正して。そのときに入札できるような大型資本が入ってきたわけですよ。ここにやはり国の大きな市場法変更のときの問題があったのではないかという点を私は指摘をしておきたいんです。
  514. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 市場法を改正いたしましたときの当事者は私でございますが、あのときも趣旨を御説明申し上げましたように、買参人をふやす、いままでのように限られたところではどうもうまくいかぬ、やっぱりふやすほうがいい、そういうことで政府の考えもそうでありましたし、皆さん方のほうでも賛成していただきまして、そういうことにいたしました。  ところが、そういう結果、やはり先ほど御指摘のことが、私ども内容をよく存じておりませんけれども、いろいろな買参人が入ってくることができるようになっておりますので、そういう点であるいは問題があるかも存じません。そういう点ではこれからなお検討してみたいと思っております。
  515. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 やはりこれは私は不公平の問題だと思うんですね。確かに資本力のある者が、買参人がどんどん入ってきて、結局いままで長くこの魚で生活をしておったまじめな仲買い人がつぶれてしまうというようなやり方を広げるということ自体、私は納得できないと思うんですね。だから、そういうものを厳格にやはりチェックしていかなければならない。確かに生協が入ってくる、こういう消費者のための団体が入ってくる場合は私は非常に歓迎だと思うんです。しかし一部の、資本にものをいわせてマグロの買い占めとか、そういうものをやろうというやり方にやはり問題がある。それも冷凍施設ができて、ある意味では卸売り業者にどこから品物が届けられたかわからないんですね、いまの市場法でいきますと。卸売り業者に持ってくるのは、一ぱい船主もあれば、あるいは大手商社もある。総理にさっき見せたのは、私が夜中の一時か二時ごろとってみたんです。そうすると大手商社の車ばかりですよ。これはやはり冷凍施設に入れてくるという形になってくるわけですね。これはどこから届けられたかわからぬから、卸売り業者は伝票でいろいろ整理するわけにいかない。どこが出荷をしているのかということの出荷伝票が明確に整理されないような仕組みになっているわけですね。だから非常にこういう問題が起こってくるのではないか。それは実際に物価をつり上げる、魚をつり上げる一つの大きな結果になってきているんじゃないかと思うんです。  こういう点は、政府が、買い占めだ、あるいは石油法だというけれども、肝心なところはやはり骨抜きにされてしまっているという点では消費者を守れないんじゃないかということを私は指摘しておきたい。したがって、こういうマグロの問題一つとってみても、実際に裏で操作をされて消費者は高いものを買わされているという、こういうやり方はやはり行政の姿としては的確では私はないと思うんですけれども、農林大臣いかがですか。
  516. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 築地市場での冷凍マグロの入札でございますが、一トン以上の単位で漁場別、品種別、体長別で行なわれておりまして、一般のすべてが一度に入札されるということはあり得ないんではないか、こういうふうに私どもは見ております。  それからマグロの値動きでありますけれども、御承知のように、ことしの七、八月ごろ、例の水銀、PCBの問題が起きましたころは若干値下がりをいたしましたが、いまは旧に回復して、特段に高いというわけではございません。
  517. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 上がってないというのは、そうじゃないんです。マグロは水銀マグロのときは食べなかったわけですよ、やはり国民が非常に不安だから。ところが、正月を迎えてどんどん卸売り価格が倍になってきているわけであって、小売りへいけばたいへんなことになってくるわけですね。そういう感覚はやはり農林大臣もしっかり持ってもらわなければ私は困ると思うんです、国民が一番困るわけですから。そういう点をよく理解をしていただきたいと思うんです。  それから卸売り業者に出荷をされるこの出荷明細ですね。具体的な問題になりますけれども、農林大臣、これはやはりどこから出荷をしているかということを明確にしませんと、逆流して市場法違反の疑いになるような問題が数多く出てくるんじゃないかと思うんです。せりに流される、片一方では入札から回って冷凍に入って、ある意味じゃ冷蔵庫に入れて別会社が出荷をするという形に逆流してくるわけですよ。同じルートを経由してくるという、こういう問題が私はいまの市場法では出てくるんではないかと思うんです。こういう点をやはりチェックをすべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでございますか。
  518. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいま申し上げましたように、漁場別、品種別、体長別でやることになっておりますので、ただいまのお話のような点はちゃんとできると思いますが、ただ、御承知のように市場は金の支払い等の状況もありまして、すぐに需要地の市場へ持っていけばいいんですけれども、いろいろ支払いの関係等でまずもって大きいところへ入れて、そしてそれから回送している。これは魚にもありますし、くだものにも野菜にもある例でございますので、そういうことはあるかもしれませんが、私どもは市場法の運営及びこれについていま実は農林省でも検討いたしておるわけでありますので、いまお話しのような点について十分検討してみたいと思っております。
  519. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連。  大蔵大臣にお伺いしたいんですが、いまの予算の中の物価関係対策経費、要するに物価対策費が実際は物価の値上がりになっておるという一つの例であったのでありますが、私もこの問題は前々から感じておりまして、いつも予算の中に出てくるこの対策費がはたしてどれだけ実際物価を安定させるために役立っておるのか。いろいろ項目があげられておりますが、ずっとこの予算委員会でも大蔵大臣が今度の予算編成においては物価対策を最重点に置くと言われておりますが、この物価対策費の考え方をもう一歩考え直されたほうがいいのじゃないか。いまの冷蔵庫の問題もそうですし、そのほか私は一ぱい具体的にあげることができますが、かえって地価対策あるいは住宅対策費がそれを上げておる場合もある。あるいは道路の整備費がはたして物価を安定させるためにどれだけ役立ったか、いろんな点で疑問がいまの段階ではあると思います。そういった面で、予算編成において物価対策費なるものをもう一度洗い直して、来年度予算にはきちっと反映さしてもらいたい、こう思うんですが、それに対する大蔵大臣の所見をお願いいたします。
  520. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 物価対策の見地から見ますと、来年度予算はやっぱり総需要抑制、これがかなめにならなきゃならぬと思っているのです。まあ総需要抑制は予算ばかりじゃありませんけれども金融政策におきましてもそうである。それから同時に関係各省の行なう物資、そういうものにつきましての行政運営、こういうものが全部整合されて初めて物価対策としての効果を生ずる、こういうふうに思うんで、財政としてはそういう総需要抑制という点に主力を置いた編成ということを考えておるわけです。そのワク内におきまして物価対策——流通だとかあるいは個々の物資だとか、そういうものにつきましての対策、そういうものが一兆三千億円ばかりことしの予算にあるわけですが、まあ総需要抑制という見地から見て、また流通対策等、その他のこれを補完する意味合い、そういうものを十分見まして、適切な予算を組みたい、かように考えております。
  521. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それではもう時間もありませんので、中小企業対策の問題について、通産大臣いらしゃいませんけれども総理に大綱的な問題を伺いたいと思うんです。  中小企業の工事関係等においては、材料不足という問題で非常に深刻な問題がございます。特に地方公共団体等に入札している工事関係は、非常な材料不足で、セメントとかあるいは石油製品のいろいろな関連製品あるいは鋼材、こういうものが非常に不足をして、工事を途中でストップをしなければならないというような問題が非常にあるわけです。  そこで、私は、この中小企業の材料不足に対して、政府としてはあっせん所をつくるという考え方、特に石油問題については、何か通産省では、中小企業の材料不足に対するあっせん所というものを考えているそうでありますけれども、この考え方はいかがなものでしょう。
  522. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはもう石油だけではなく、生活必需物資ということに対してはあっせんするということが考えられておるわけでございます。しかし、あっせんといっても、これはこの間のように、ちり紙とかそれから石けんだとか洗剤とかいうものは、製造業者から直売をしてもらって、流通経路を飛ばしてやってしまうということになれば、中間企業とか末端企業が非常に困るわけです。普通は、今度二法が成立をすれば、正常なルートによってやってもらいたい。  ある例を言えば、流通段階が三段で済んでいるものもあるし、二段のものもあるでしょう。生協のように直接といえば段階ないわけですから。しかし、社会的な経済ルールをぶちこわすということじゃないわけですから、正常なものでもって大衆のところに手を入るようにしなきゃいかぬということになります。しかし、目的が達成せられない、消費者価格が混乱をするというような場合には、政府は、地方公共団体や国としても、あっせん所の開設を行なうということは当然でございます。それでなければ、やむを得なければ、これはもう官給を行なうということになるわけです。  工事などをやっておって、どう考えてみても、まあ私は四万円の丸棒をいつも例にとっているわけで、四万円のものが流通経費が三〇%かかるなら五万二千円である、四〇%かかるならもっと高いかもしれません、五万六千円になりましょう。しかし、それが七万円、八万円、十万円になるわけはないんです、どんなことをしたって。そういうことですから、やむを得なければ——いま単価補正をやってみてもなかなかむずかしい場合があります。だから、保育所とか病院とか、どうにもならないのは、官が、地方公共団体が主要資材を買って、セメントや鉄材を供給するということに切りかえれば、単価補正をしないで済むわけです。いままででもしょっちゅうやったんです、これは。官需工事にはそういうものがありますし、直営工事はほとんどそうだったんです、直轄工事はそうだったわけです。  ですから、そういう意味で、資材のあっせん所ということは、これはノーマルな状態を確保するためのものでございますし、必要になれば、資材はこれを直接交付するということも当然考えられるわけであります。
  523. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは石油だけの問題ではなしに、あらゆる建築資材等についても、やはり金を出しても買えないというのが実際の現状なんですね。で、まあ総理の、地方公共団体で材料をあっせんすればいいという、そういう話には現実になかなかいかないわけですね。いかないんです。それをどういうふうに具体的に——いま実際困っているわけです。中小企業のこの下水工事をやったり、そういう人たちは困っているわけなんです。そこへセメントをどういうふうに補給するのか、どういうふうに交付をするのかという、そういうためのあっせん所を政府としてやる意思があるのかどうかということなんです。
  524. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、あっせん所はいま通産省もやっておりまして、過去二、三カ月効果をあげているわけです。しかし、あっせんというのは、あくまでも流通経路というものを守りながら、中間段階をすっ飛ばすことによって問屋もみんな困っちまうというんじゃ、これ、上がったりになります。そういうことをやらないようにやっているわけです。  しかし、これからは在庫調査もできます。流通経路にあるものもできます。そうして今度も予算を組みまして、予算は均衡予算、非常に緊縮予算ということになりますから、ある場合によっては鉄鋼とかセメントは余る状態がくると思うんですよ。余る状態がくると思いますよ。そういう状態になりますと、これはもう需要というものは、民間でも五千平米以上のものはとにかく繰り延べる、三千平米以上も繰り延べる。非常に資材などは明確に、今度、工期によって何月、何月には幾らずつ要るということはわかるわけです。そうすると、セメントは八千八十万トンが一割減っても八千万トンはできるわけですから、そういうものに対して、それによって電力を供給し材料を供給するわけですから、ですから、途中の中でもって不当な滞留が行なわれない限り、正常な価格で最終消費者に届くはずなんです。にもかかわらず届かないような状態が起これば、政府は直接資材を配給してもいいですと——民間工事に資材を配給するわけにもいきませんから、これは今度正常な状態であっせんをする、こういうことでもって、これはいままでとは違って品物はあるんです。いままであるけれども、先高を見越して出さなかったということがあるんです。もう一つは、事業量が非常に大きかったということ。今度は事業量をうんと圧縮するわけですから、これは正常にならないはずはないわけです。これは政府の努力いかんによって、また民間の協力を得れば、十分安定的な状態を確保できると考えております。
  525. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 時間がまいりましたので、最後に、特に私は中小企業の問題については、通産省の一角である中小企業庁だけの問題ではなしに、やはり中小企業省を設置してはどうかということは提案でありますけれども、やはり労働者にしても、約八〇%ないし九〇%が中小企業で働いている人たちが多い。あるいは労働改善の問題にしましても、住宅の問題にしましても、あるいは法人税の問題にしましても、いろいろこの中小企業対策という問題は真剣になって取り組まなければならない問題ではないかと思うのです。したがって、通産省と別個に中小企業省というものを設置してはどうかということを提案をしたいのですけれども、いかがでございますか。
  526. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業省を設置するならばこのときであるという考え方で、通産大臣及び前の愛知大蔵大臣また行政管理庁長官であったいまの大蔵大臣等々と、内々に話はし、勉強してきたことは事実であります。ところが、中小企業省というものをつくることがほんとうに中小企業というものの育成強化につながるのかどうかという問題が非常にあるわけです。まあしかし、いろいろなことがあるにしても、通産省の中の一番上の階を中小企業省が使えばいいじゃないかと、そうすればうまくいくよというところまでやってみたんです。ところが、やっぱり分離をすることによって、輸銀と——いい話じゃございませんが、なかなかこう違うとうまくいかないところもあるわけです。政治の非力だと言われればそれっきりでございますが、経済協力基金と輸銀が仲が悪いとかなかなかあるのです、実際。今度やむを得ず一つのビルの中にほうり込もうと、こういうことでもってやっているのですがね。特に下請代金の支払い遅延とか手形のサイトだとか、それから大企業がいま設備投資をするときには、最低三分の一は大企業が出しているわけなんです。そういう関連がいまの中小企業庁という状態と比べて、これは人事の交流をすればいいじゃないかという、いろいろなことをここ半年間詰めてきたんですが、どうも現在まだ最終的結論が出ないということでございます。  一案としては、中小企業庁の部局をもっと整備したいというような案もありますし、これはひとつ最終的には予算編成の段階までにしかるべき結論を出したいということを前向きに検討していたことは事実なんです。住宅省と中小企業省というものをまじめに考えてきたんですが、住宅省ということを考えると、計画局と都市局が離れた住宅省は存在しないという問題にもぶつかってまいりますし、なかなかむずかしい問題がありますが、勉強していることは事実なんです。勉強していることは事実でございますから、御提言はすなおにちょうだいいたしておきます。
  527. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 以上をもちまして三木君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時散会