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1974-03-06 第72回国会 参議院 本会議 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月六日(水曜日)    午後一事四分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十二号   昭和四十九年三月六日    午後一時開議  第一 外務省設置法の一部を改正する法律案     (第七十一回国会内閣提出衆議院送付)  第二 文部省設置法の一部を改正する法律案     (第七十一回国会内閣提出衆議院送付)  第三 割増金付貯蓄に関する臨時措置法案(内     閣提出衆議院送付)  第四 印紙税法の一部を改正する法律案内閣     提出衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、所得税法及び災害被害者に対する租税の減   免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正す   る法律案法人税法の一部を改正する法律案   及び租税特別措置法の一部を改正する法律案   (趣旨説明)  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。この際、おはかりいたします。小枝一雄君、田中茂穂君からいずれも病気のた一十三日間、工藤良平君から海外旅行のため来たる十三日から十七日間、藤原道子君、浅井亨君からいずれも病気のため二十日間、それぞれ請暇の申し出がございました。  いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。      ——————————
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) この際、日程に追加して、、  所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案  法人税法の一部を改正する法律案  租税特別措置法の一部を改正する法律案  以上、三案について、提出者趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。福田大蔵大臣。    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  初めに、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  まず、最近における国民負担の状況にかんがみ、特に給与所得者負担を大幅に軽減することを中心として、給与所得控除抜本的拡充人的控除引き上げ及び税率緩和を行なうことといたしております。  すなわち、給与所得控除につきましては、定率控除控除率を大幅に引き上げるとともに、現行年収六百十六万円で控除頭打ちとなる制度を改めることといたしております。また、控除の大幅な拡充に伴い、現行定額控除制度廃止し、別途低額所得階層について最低五十万円までは必ず控除する制度を設けることといたしております。  次に、人的控除につきましては、基礎控除及び配偶者控除をそれぞれ三万円、扶養控除を八万円引き上げて、各控除一律同額の二十四万円とすることといたしております。  これらの改正により、給与所得者課税最低限は、平年分で、独身者の場合では現行の四十五万円から七十七万円に、夫婦と子供二人の場合では現行の百十五万円から百七十万円にそれぞれ引き上げられることになります。  以上の改正にあわせまして、所得税累進構造緩和するため、課税所得二千万円以下の部分について、税率適用所得階級区分現行の約一・五倍に拡大することといたしております。  これにより、昭和四十九年度における所得税一般減税の総額は、初年度一兆四千五百億円と空前の規模のものとなります。  さらに、退職所得者税負担軽減をはかるため、三十五年勤続した場合の退職所得非課税限度を一千万円に引き上げることとし、昭和四十八年度に引き続き退職所得控除引き上げを行なうことといたしております。  以上のほか、白色申告者専従者控除現行二十万円から三十万円に引き上げ、また、少額貯蓄非課税制度非課税限度額現行の百五十万円から三百万円に引き上げるとともに、生命保険料控除及び損害保険料控除控除対象限度額引き上げるほか、寄付金控除のいわゆる足切り限度額を大幅に引き下げる等、所要改正を行なうことといたしております。  また、災害被害者負担軽減するため、災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律によって所得税軽減または免除する場合の所得限度額を倍額に引き上げることといたしております。  次に、法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  まず、法人税基本税率法人税法上三五%と定められておりますが、租税特別措置法規定により昭和四十九年四月末までの間の暫定措置として一・七五%が加算され、現行は三六・七五%と相なっております。昭和四十九年度税制改正におきましては、法人税負担水準適正化をはかる見地から、法人税法規定改正によりこれを四〇%に引き上げることといたしております。  次に、中小法人適用される軽減税率は、中小企業の現状にかんがみ、特にこれを据え置くとともに、その適用所得の範囲を三百万円から平年度七百万円に引き上げることにいたしましたが、さらに、内部留保充実に資するため、同族会社留保所得に対する課税についての定額控除額を五百万円から千万円に引き上げることにいたしました。  このほか、申告及び納税手続簡素化のため、中間申告書提出不要限度額を五万円から十万円に引き上げることといたしております。  最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  まず第一に、法人税基本税率引き上げに対応いたしまして、配当課税率を二六%から平年度三〇%に引き上げることにいたしました。  第二に、資源の節約、消費抑制道路財源充実等の観点から、二年間の暫定措置として、揮発油税につきましてはその税率を一キロリットルにつき現行の二万四千三百円から二万九千二百円に、地方道路税につきましては同じく四千四百円から五千三百円に、自動車重量税につきましては、営業用自動車を除きその税率を原則として現行の二倍に、それぞれ引き上げることにいたしました。第三に、株式売買損失準備金繰り入れ限度額引き下げ特定合併をした場合の割り増し償却制度廃止等、既存の特別措置整理合理化を行ない、また、交際費課税の強化をはかるため、交際費損金算入限度額引き下げを行なうことにいたしました。第四に、貯蓄の奨励、勤労者財産形成及び住宅対策見地から、少額国債非課税制度及び勤労者財産形成貯蓄非課税制度等非課税限度額引き上げるとともに、確定申告を要しない配当所得限度額引き上げることといたしております。また、勤労者にかかる住宅貯蓄控除制度及び住宅取得控除制度控除額引き上げ等を行なうことにいたしました。第五に、公害防止に資するため、金属鉱業等鉱害防止準備金制度の創設を行なうとともに、公害防止準備金制度適用期限を延長することにいたしました。以上のほか、中小企業対策技術振興資源開発農林漁業対策私学振興宅地対策等に資するため、それぞれ実情に応じ所要措置を講ずることといたしております。以上、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げた次第であります。(拍手
  7. 河野謙三

    議長河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。辻一彦君。    〔辻一彦登壇拍手
  8. 辻一彦

    辻一彦君 ただいま提案のありました税法三法の一部改正案につきまして、私は、日本社会党を代表しまして、総理大蔵厚生自治の各大臣質問いたしたいと思います。  四十九年度予算編成方針の最重点課題は、物価抑制に置かれております。それを前提にして税制改革案提出されておりますが、その内容は、物価対策の面におきましても、さらにインフレ物価高に苦しんでいる勤労国民経済面においても全く不十分であり、依然として勤労所得に重く、資産所得法人所得に軽いといった税負担の不公平、不平等の是正は行なわれていないのであります。  税は、その負担の重さもさることでありますが、不公平感国民の不満が強いのであります。昨年八月に行なわれた総理府の世論調査では、公平と思わないとする者は全体の六七%を占め、四十六年調査の五四%を大きく上回っておるのであります。このような国民の税の不公平に対する実感に対して、総理はどう考えておられるかをまず伺いたいと思います。  政府は、勤労者税負担軽減をはかるといたしましていわゆる二兆円減税実質一兆四千五百億の所得税減税を大きく宣伝をしております。しかし、今日悪性インフレによる物価高消費者物価上昇率が年率にして二〇%をこえるという投機的狂乱状態の中で、名目所得累進税率課税すれば実質増税になるのは明らかであり、この程度の減税は当然のものと言わなくてはならないと思います。  問題は、減税内容であります。所得税減税の中身は、給与所得控除につきまして現在七十六万円の頭打ち限度額を設けていますが、これを青天井としたために、所得額が大きければ給与所得控除額も大きくなり、従来年収一千万円の控除七十六万円が二百五万円もの控除を受けることになり、高額所得にきわめて有利な改正となります。年収百五十万円の課税最低限すれすれの人は二万九千円、所得に対して一・九%の減税にすぎないのに、年収一千万の場合は九十一万円で九・一%、二千万円の場合は二百万円で、所得に対して一〇%であり、全くの金持ち減税であると言わなくてはなりません。このように上に厚く下に薄い減税はこのまま行なうべきでないと思いますが、どうですか。  この際、政府案の欠陥をカバーし、かつ物価狂乱下緊急減税方式として、四人家族十二万円の税額控除を行なえば、課税最低限も二百三十五万円に上がり、より低額所得層に厚い減税となるが、この方式をとる考えはないか、お伺いをいたしたい。  四十七年度における国税庁の給与所得者階層分布によりますと、年収百万円以下五十万円までは三八%、千百万人に及んでおります。これらの低所得層、すなわち課税最低限以下の所得層はいわゆる二兆円減税の恩恵に一切あずからないが、政府は、このインフレ下にこれらの層にどのような対策考えているか。また、生活保護者施設をはじめとする最も弱い層にわずかに二千円や二千五百円のインフレ手当では、まさに焼け石に水と言わなくてはなりません。税の機能である所得の再分配をいまこそ発揮して、経済的弱者インフレ最大犠牲者に救済の手を差し伸べるべきでないか、総理並びに厚生大臣決意とその具体策伺いたいと思います。  次に、個人所得の不公平について若干お伺いいたしたい。  配当所得優遇措置によって、標準四人の家族配当所得生活者は三百五十七万まで無税であります。給与所得者がこれだけの所得があれば十八万八千円の所得税を取られる。これは課税不公平の端的な事例であります。資本をかき集めた過去の高度経済成長型税制から脱却すべきときに、このような不公平な特別措置はすみやかに廃止すべきと思いますがどうか。  福田大蔵大臣が創設しました土地譲渡所得課税は、一方では土地成金を生み、他方では法人土地買いを進め、総理列島改造論とあわせてこれに拍車をかけ、総理大蔵大臣が車の両輪となって地価暴騰を推進し、インフレを促進しました。高額所得者所得源はほとんど土地譲渡であり、分離課税軽減税率適用を受けております。東京都の調査では、一億円以上の所得者は二三・一%の税負担で済み、これを総合所得方式によれば八五・九%になります。一億円の所得者は、土地分離課税で実に六千二百万円の税金軽減されているのであります。土地税制土地譲渡をしやすくすることをねらったが、結果は完全な失敗であり、直ちにこの特別措置廃止すべきでないか。  次に、高度経済成長税制のほかの柱は企業課税優遇措置であります。当初、配当課税率三〇%引き上げ基本方針が二%も後退しましたが、その理由は何か。この二%だけでもその軽減分は数百億から一千億にのぼるといわれるが、政府幾らと見ているのか。また、財界の圧力に屈したといわれるが、その真相を明らかにされたい。  つい先日も、わが党の同僚議員から、大企業税負担の異常ともいえる低い事実と、その原因が各種の租税特別措置にあることが指摘されました。多くの減免措置をさらに二年間延長する必要があるのか。また、この減免税額国民の前に明らかにされたい。  四十七年の企業交際費支出は一兆三千億円と報告されておりますが、四十九年は二兆円に達しかねない。大手商社は一日五百万円の交際費支出しているといわれております。交際費企業モラルの低下に手をかしていることは、衆目の一致するところであります。損金算入限度引き下げ方式も現実的ではありますが、特別措置法課税する方法を改めて、本法化する段階に来ていると思いますがどうか、お伺いをいたしたい。  今回の改正案では、消費者抑制見地から、少額貯蓄非課税限度を百五十万から三百万に、別ワク国債のそれは百万から三百万に、また、財形貯蓄の名で百万から五百万に引き上げております。これに郵便貯金預け入れ限度三百万円を加えますと、元本で一世帯四千百万円、年利七%としまして年間二百八十七万円の利子収入非課税になります。しかるに、国民大衆の一世帯当たり貯蓄額は、保険金の積み立てを含めて二百十万円であるという貯蓄増強委員会調査があります。さらに少額貯蓄口座当たり利用額は、平均で二十七万円にすぎないのであります。少額貯蓄非課税限度拡大という耳ざわりのよいキャッチフレーズが、実は四千万円の預貯金を有する資産家のための優遇措置拡大につながっていると言わなくてはなりません。ところが、一方において、物価狂乱悪性インフレのもとで、国民大衆個人預貯金は大きな目減りを起こしております。四十七年三月、個人預金残高は四十八兆八千五百四十七億円、消費者物価上昇率五・二%で、元金減価分いわゆる目減りは、単純に計算しまして二兆四千百四十九億、四十八年度預貯金額六十二兆一千六百八十二億、物価上昇分一四%といたしまして、七兆六千三百四十七億に達する見込みとなります。四十九年度においては、預金の伸びを二〇%と控え目に見ましても七十四兆六千億、物価上昇政府経済見通しの九・六%といたしましても、目減り分は六兆五千三百億、合わせて十七兆円の目減りとなるわけであります。もし物価が四十八年度並みに上がるならば、四十九年度は八兆八千億の目減りとなり、目減り合計は二十兆円に達することになります。これはまさに国民大衆に対する最大インフレ収奪ではありませんか。政府は、一体このような膨大な目減りをどのように計算しておるのか。特に田中内閣が誕生してからこの目減りは著しい。ほんとうに少額貯蓄を優遇する道は、この目減りを補償することにあります。政府はどうするつもりか、総理大蔵大臣にお伺いをいたしたい。  現在の法人税制は、中小法人に対して軽課税率適用しているものの、大は新日鉄のごときマンモス企業から、小は町中の八百屋に至るまで、法人組織である以上、同一の法人税制適用されております。これは大きな矛盾であります。大法人には累進税率適用すべきではないか。また、法人税負担増配分比につきまして地方自治体にもっとウエートを置くべきと思うが、どう自治大臣考えるか。  四十八年度は、租税特別措置によって国税減収分四千六百四十五億、これに対応する地方税減収分は千二百七十四億、交付税減収分千四百八十六億、合計二千七百六十億の減収となっております。第一に、四十九年度減収分幾ら政府は見積もっておるのか。第二に、このような制度をどう考えるか。また、特別措置による地方税への影響を遮断せよという意見があるが、どう考えるかをお伺いいたしたい。  また、ことしは三十八年以来の豪雪といわれておりますが、豪雪積雪地方には想像できない多くの苦労と大きなマイナスがあるわけであります。何らかの税制上の配慮をする考えはないのか。  今回の石油危機を契機に、資源の乏しいわが国は、省資源省エネルギー政策をとるべきだと政府演説でも触れられておりますが、このような産業政策転換税制の中に何らあらわれていないのであります。産業政策転換租税政策をどう考えているのか、このことを明らかにされたい。  石油危機における不当利得は、これを徹底的に吸収し、被害者たる低所得層に再分配せよというのは、国民の声、天の声であり、国民感情であります。政府は一体この声を聞いておるのか。総理は、むずかしい問題だから与野党意見調整をして議員立法でと言いますが、政府にとり都合のよいときはむずかしい問題を単独採決までやって立法化しながら、いまさらむずかしいのは議員立法でなどと、私は筋が通らないと思います。これは政府責任回避という以外にない。真に政府不当利得を吸い上げる決意があるのかどうか、はっきりと総理にお伺いをいたしたい。  大蔵省法人利得税利潤税に反対と聞いているが、さき衆議院において福田大蔵大臣は、不当利得吸収について、社会党案は簡素な税制であり、魅力を感ずると答弁をしている。それならば、社会党法人付加税構想を積極的に政府は取り入れるべきであると思うがどうか。  最後に、総理にお伺いいたしたい。政府不当利得吸収に大きく踏み切れないのは、また、与党案なるものが後退後退を重ねておるのは、さき社会党参議院議員会長藤田議員が本院において鋭く指摘をしましたように、政府与党首脳が諸悪の根源といわれる大手商社大手企業から多額の政治献金を集めているからではないか。この機会に、財界政府与党の癒着、政治献金にメスを入れ、政治資金等寄付金控除廃止をし、国民の疑惑を晴らす考えはないのか、このことを私は総理に強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 辻一彦君にお答えをいたします。  まず第一は、国民の税に対する負担感をどう把握しておるかということでございますが、政府が年々減税につとめてまいりましたことは御承知のとおりでございます。先進国を例にとるまでもございませんが、国民所得に対する税負担保険料との合算額は、西欧先進諸国は御承知のとおり四五%から最高は五五%、北欧三国は五五%に至っておるわけでございます。にもかかわらず、わが国のこれらの合算額は二四・一%でございますので、その面では諸外国の二分の一にも満たないわけでございます。しかし、にもかかわらず、税負担感が重いということは一体どうしたことだろうかと、こういう御質問だと思いますが、これは戦後一貫してとられてきた直接税中心主義というものから来る一つの税に対する国民負担感ということが避けがたいものだと考えておるのでございます。そういうことでございますので、本年度は、このような情勢下にもかかわらず、大幅所得減税を行ないますとともに、一部間接税の増徴をはかったわけでございます。まだまだ先進工業国水準に達するというようなバランスではございませんが、直接税というものの比率が下がっていくということによって国民税負担感緩和をはかってまいらなければならない、こう考えておるわけでございます。  次は、低所得者対策についての御言及でございますが、政府昭和四十九年度予算におきまして社会保障充実に特段の意を用いておるところでございます。特に生活保護基準老齢福祉年金引き上げ厚生年金及び国民年金についての物価スライドによる給付水準引き上げ等措置を講ずることといたしておるわけでございます。また、生活保護世帯及び社会福祉施設入所者に対しては、昨年すでに二回にわたる特例措置を講じておるところでございますが、今回さらに特別一時金を支給するとともに、老人、身体障害者母子世帯等福祉年金受給者に対しても緊急生活資金給付金を支給することといたしたわけでございます。  年度内減税に対しての御言及がございましたが、現在の経済情勢のもとにおいて、政府財政金融政策の総力をあげて物価の安定につとめておるところでございますので、この意味から、減税年度内に繰り上げて実施することは考えておらないわけでございます。  所得税減税についての御言及がございましたが、来年度所得税減税においては、特に給与所得者負担軽減中心に行なうことといたしております。その結果、夫婦子二人の給与所得者課税最低限は、現行百十五万円から平年度百七十万円と大幅に引き上げられるわけでございます。また、低所得者層に対する給与所得控除につきましては、五十万円の定額控除を新設しておるわけでございます。このような課税最低限引き上げは、従来の引き上げのテンポに比べましても、まさに画期的な引き上げであると確信をいたしておるわけでございます。先ほども申し上げましたとおり、諸外国の例をとるまでもございませんが、ちなみに課税最低限につきまして諸外国の例を申し上げてみますと、イギリスは七十九万一千円、西ドイツは八十七万六千円、フランスは百二十六万二千円、最も高いアメリカでも百二十九万円からは税金がかかることになっておるのでございますから、百七十万円まで税金をかけないということが画期的なものであるということは、数字の示すとおりでございます。また、超過利得税につきましての御言及がございましたが、企業超過利得吸収のための措置につきましては、政府も早急に成案を得たい考えで、せっかく検討いたしておるわけでございます。与野党の間でも、これが立法化について真摯な努力が傾けられております。野党各党案はすでに公にされております。政府与党たる自由民主党におきましても、鋭意作業を進めておるわけでございます。私は、この種案件について、国民の期待にこたえ、与野党間に意思の調整が行なわれることに大きな意義を覚えておる次第でございます。寄付金政治資金等に対してでございますが、政治資金につきましては、間々申し上げておりますとおり、選挙制度その他の問題と一貫した問題として十分勉強を続けておるわけでございますが、法人支出する一般寄付金等につきまして、損金算入限度が、法人事業を営んでいく上にはある程度の寄付を行なうことも必要であるとの見地に立って認められておるものでございます。また政治資金も、これらの寄付金ワクの中から支出をせられておるわけでございますが、これらを引き下げるとか規制をするとかいうことは現在考えておりません。    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答え申し上げます。  辻さんから、重役減税といいますか、高額所得者減税はやめて、その分は大衆減税に回したらどうかと、こういうような御所見でございました。私も、実は、この所得税減税案が初めて発表されて、そうして新聞の論説なんかで解説もされ論評もされておる、そういうことを見ておりますと、これは重役減税じゃないかというようなことがいわれるんです。大蔵省がそんなことをするはずもないなと重大な関心を持っておったのですが、はからずも私が大蔵大臣に就任したわけであります。そこで、税制調査会等の雲行きを聞いてみますると、やっぱり初めそういう意見がかなりあったそうでございます。しかし、議論が進んでいくに従いまして、そういうことであってはならない、事業所得者等の権衡を考えること、また、税率調整というものが多年の懸案であったこと等を考えまして、この際は中堅以上の所得者につきましても税率調整並びに給与所得控除の恩典を波及せしむべきであると、圧倒的に多数をもってそういう結論を出したわけであります。私もよく考えてみると、それもそうだということで、今回御提案を申し上げた次第でございます。  また、政府減税案にかえまして、税額控除制度を採用したらどうか、こういうお話でございましたが、これはおそらくそれによって税率の刻みをもう少しきびしくせいと、こういう御意図かと思うのであります。しかし、私どもが検討いたしました結果、今回御提案を申し上げておる税率の刻み、これはまあ各方面の意見を伺ったところでありまするけれども、妥当なものである、こういうふうに考えますので、その税率の刻みにつきましてもっと累進率を高くするとかなんとかという考えをとる余地はないのじゃあるまいか、私はさように考えております。  それから配当生活者につきましての御言及でございますが、配当所得だけで暮らしておるという人は、おそらく非常に少ないのじゃないか、私はそういうふうに思います。しかし、かりに配当所得のみで生活しておる人がありとせば、これは辻さん御指摘のように、三百五十七万円までは課税されない、こういうことになるわけであります。課税最低限が、今回百七十万円になるというのに対して配当所得生活者は優遇され過ぎるじゃないか、こういう御意見でございます。これは、この配当というものに対しまして一方において法人税がかかる、また所得税がかかる、この二重課税廃止しようという趣旨に出ておるものでありまして、これをどういうふうに調整するかという問題は、これは法人税所得税を通じての基本的な問題につながる問題であります。私は、しかしながら、まあちょっと見たところで、いろいろの感触を与える税制である、そういうふうに思いまして、税制調査会の中に部会を設けましてこの問題についての集中審議をお願いしたい、かように考えておるのであります。  それから土地譲渡所得に対する分離課税優遇税制を即時撤廃せよ、こういうお話でございます。御指摘のように、この税制は私が前に大蔵大臣をやっておったときに創設されたものでありますが、創設した目的は、小口の土地供給を廃止し、大口に土地が供給されるように、つまりこま切れ供給を防止する、それから土地の供給量自体を拡大する、こういうことで住宅政策等の見地から出たわけでございますが、その目的は私は到達されたと思うのです。しかし、御指摘のような他面において問題もあります。そういうふうに考えておりますので、この税制昭和五十年度をもって終わりといたしますので、次の通常国会まで十分この対案をつくりまして御審議をお願いしたい、かように考えております。  それから配当課税率が当初の構想三〇%から二%後退した理由はどうだ、こういうお話でございますが、これは利益が少なく配当性向が高い法人に対しまして配当課税率が四%一挙に上がるというその影響を配慮して小刻みにした。四十九年度は二%上げる、さらに五十年度におきまして二%上げ、合計して四%上げにする、こういう考え方に基づくものでありまして、まずまず妥当なところではあるまいか、さように考えております。  それから大企業優遇の租税特別措置の問題でございますが、これは大企業優遇というおことばは私は当たらないと思う。これは、大企業といわず、中小企業といわず、あらゆる法人に対してひとしく適用される法律であります。しかしながら、法人税法に対しまするこれは特例でありますので、これはその特例を設けました趣旨が実現された暁におきましてはすみやかに整理改廃すべきである、さように考えておりまして、ずいぶんそういう方向の施策を進めておるわけであります。これが既得権化するとか、慢性化するとか、そういうことのないように、毎年毎年見直しを厳重に進めていきたい、かように考えております。  それから個人預金目減りの問題でありますが、これはちょっとお話がありましたので計算してみますると、四十八年上期における個人預金の金融機関における残高は、これは五十一兆円になるわけであります。かりに四十八年上期におけるがごとく消費者物価が八・六%上昇いたしました、こういうことになりますると、四兆四千億円の目減りとなる、こういう計算になります。もっとも利息がつきまするから、そういう意味においての目減りはもっと少なくなるわけでございまするけれども、そういう巨大な額にはなるわけでありまするが、これに対してどういう対策をとるかと、こういうことになりますると、これは非常にむずかしい問題であります。これを預貯金金利の引き上げによって対処するかということになりますれば、その財源を一体どうするのだと、こういう問題があるわけであります。金融機関に持たせるということになれば、これは貸し出し金利を上げなければならぬという問題になり、わが国の金利体系全体を引き上げてしまう。これが貿易立国であるわが国としてどういう問題であるか、あるいはインフレ、異常物価高対策としてどういう問題になるのか、これを考えますると、軽々なことはできない。また、それじゃ政府がその金利差を負担したらいいじゃないかというお話もありまするけれども、これとてもそう巨大なものを政府財政で負担をする、赤字公債を増発してまでと、こういうことになりますると、これがまた物価対策上どういうふうになるかという重大な問題がありまして、そう、言われるように簡単な問題じゃないのであります。しかしながら、私は、貯蓄者の立場、そういうものを考えるときに、これは何らかの対策を講じなければならぬと、かように存じまして、金利体系等の均衡、そういうものに配慮をしつつ、できる限りの措置を講じてまいりたい、かように考えております。  最後に、超過利潤税につきまして大蔵省が消極的であるというようなお話でありましたが、私はこれは消極的じゃございませんです。こういうような情勢の中で不当な利得をした者に対して税法上におきましても経済的な制裁を加える、これは私は当然なことであると思う。そういうような考え方に立ちましていろいろ案をつくってみたんです。三つ、四つ、いろいろつくってみて、その利害得失、適用のしかた、そういうものを検討しましたが、これは一長一短です。私はきびしい国会の質問等にたえ得るようなそういう自信に満ちた提案をいまなし得るような立場にない。そこで、各党にもお願いいたしまして、何かお知恵はありませんでしょうかというのが今日の段階でございます。私は、各党各派でいま検討されてくださっておるようでございますので、その検討の結果を待ちまして、どういうふうにいたしますか、善処をいたしたい。気持ちは私は積極的であると申し上げます。  また、社会党案がどうだと、こういうようなお尋ねでございますが、超過利潤方式というのは国民感情じゃ非常に合うんです。超過利潤、不当にもうけたその金を出せと、こういうんですから。ところが、この超過利潤は一体どういうものなんだというその判定の問題になりますると、非常にこれはむずかしい問題であります。そういうことを考えますと、社会党が提唱されておる付加税方式、まあ累進方式が加味されますが、付加税方式、これは国民感情にはぴったりはこないと思うんです、みんな一律に法人税を増徴しようと、こういうんですから、画一的かもしれませんけれども、まあ非常に簡素にやっていけると、そういう面から見ますると、私は社会党案に対し魅力を感ずる、こういう心境でございます。(拍手)    〔国務大臣齋藤邦吉君登壇拍手
  11. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。  低所得者に対する援護につきましては、厚生省としては最も力をいたしておるところでございます。総理大臣からもお答えがございましたが、数字をまじえてお答えを申し上げます。  最低生活の保障でありまする生活保護につきましては、昨年の四月、一四%引き上げたのでございますが、その後の物価動向にかんがみ、昨年の十月、五%を引き上げ、すなわち一九%アップといたしたわけでございますが、さらに昨年の暮れには、年末一時金として上積みをいたしてまいりました。明年度におきましては、昭和四十八年度に比較いたしましてさらに二〇%引き上げると、こういうことで予算を編成し、提案をいたしておるわけでございます。そういうふうなことでございますが、最近における物価の動向にかんがみまして、四月までのつなぎとして、今回、生活扶助その他につきまして緊急な一時金を支給するということにいたしたわけでございます。生活扶助につきましては、家族一人につき二千円ということでございますから、四人家族ですと八千円の上積みをする、さらに、養護老人ホーム等に入っておられる方々に対しましても、あるいはまた老人、身障、母子、こういうふうな福祉年金を受けておられる方々に対しましても、二千五百円の一時金を支給すると、こういうことにいたしたわけでございます。  なお、今後とも私は物価の動向に十分慎重な関心を払いながら臨機応変の措置を講じてまいりたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣町村金五君登壇拍手
  12. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 租税特別措置法によりまして地方税減収するという制度が存在をいたしておるわけでありますが、この特別措置の中には、地方税においても同様の軽減を行なうことが適当だと考えられるものもありまするし、また、地方税でその影響を回避することが課税技術上きわめて困難だというようなものもあるわけであります。ただ、一般的には、地方税については、国税の租税特別措置が自動的に地方税に影響するということは、可能な限りこれは避けるべきものであると考えております。従来から、できるだけその影響を遮断する措置を講じてきておるところでございますが、なお今後ともこの方向に沿って努力をしてまいりたいと存じます。  それから次に、豪雪積雪地帯などの地域的な生活条件の差異などの個々の事情を地方税制上にしんしゃくするという問題につきましては、これは言うまでもなくおのずから限界があることでございます。非常にむずかしいものと考えられます。  なお、固定資産税につきましては、積雪寒冷地域の家屋は他の地域の家屋に比べまして損耗の度合いが大きいので、積雪寒冷補正として最高二五%までの割り増し減価を行なうというような配慮を加えておるわけでございます。(拍手)     —————————————
  13. 河野謙三

    議長河野謙三君) 鈴木一弘君。    〔鈴木一弘君登壇拍手
  14. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました租税三法の改正案に対して、一括して総理及び大蔵大臣にお伺いをいたします。  いまわが国は、終戦直後に匹敵するような破局的インフレに直面しており、この一年で卸売り物価消費者物価ともに急上昇し、物価の狂乱状態はついに朝鮮動乱のときを上回る勢いとなっております。田中内閣発足以来、列島改造計画をはじめ、為替政策や財政金融政策の失敗によって、土地投機をはじめ、株式や商品の買い占め、便乗値上げ等を引き起こした政策インフレは、国民生活を破壊し、さらにおそろしいほどの富の逆再配分が起きているのであります。すなわち、インフレによる物価上昇が、持てる者にさらに富を持たせ、持たざる者の富を奪い去って、所得配分の不公平をますます拡大させ、富める者と貧しき者、強者と弱者の差は急速に拡大され、まともに老人や母子家庭、身障者、生活保護家庭などの経済的に弱い立場の人々を直撃しているのであります。老後の保障や生活防衛の自衛手段として身を削る思いで積み立ててきた預貯金や年金は、インフレで大幅に目減りし減価し、その反面、大企業はその金を低利で借り入れ、ばく大なインフレ利得を得るという、いわゆる著しい富の逆再配分が起きているのでありますが、これらは総理の主張するところの、正直者がばかを見ることのないよう社会的公正を確保するということと全く正反対の現象を起こしているではありませんか。しかも、大企業は、石油危機に便乗し、先取り値上げや価格操作、売り惜しみ買いだめ、さらにばく大な利益を隠匿しての脱税など、ぬれ手でアワのぼろもうけをしており、まさに許すことはできません。これら不当の暴利を国民消費者に戻させ、さらに巨大な富の逆再配分をどう是正するかということが、当面の税制最大課題でありましょう。これら大企業法人がかかえるばく大な土地資産はきわめて安い価格で帳簿上にあらわれており、それは時価に換算すれば膨大な含み利益となっているはずであります。  そこで、お尋ねしたい第一点は、これら資産を総洗いして再評価する用意がないかどうかであります。また、当面の臨時措置である超過利得課税については、田中総理与野党意見調整を心から期待するとしてきわめて消極的でありますが、不幸にして意見調整が不調に終わった場合、政府が独自でも実施する決意があるのかどうか。いまや議論の段階ではないと思うが、三月決算に間に合うのかどうか。以上三点について総理の御所見を伺いたいのであります。  第二の点は、このたびの所得税減税についてでありますが、まず指摘したいことは、上厚下薄の減税であることであります。すなわち年間所得三千万円前後の高額所得者までに累進税率緩和し、さらに給与所得控除の最高限度額を全廃して今回の改正では青天井にしてしまうという高額所得優遇のいわゆる重役減税であるということであります。その結果による試算では、給与所得者の場合、四人家族の標準世帯年収二百万円の場合は、わずか四万五千二百円の減税であります。これから見れば、年収二千万円の場合は十倍の四十五万二千円ならばわかるのでありますが、二千万円の年収では、なんと二百一万二百円の大減税となっております。高額所得者ほど天井知らずに減税額は上昇することになっております。このような野放し青天井でなく、最高限度額を設け、あるいは逆に一千万円以上の高額所得に対しては累進税率を強化するなどの措置が当然必要と思うけれども、大蔵大臣の所感はいかがでございますか。  次に、人的控除についてもお尋ねいたします。  総理府の統計局で発表した昭和四十八年度の全国勤労世帯の家計調査報告によると、一世帯消費支出は月に十一万七千円であり、年間では百四十万円となっております。いま四十九年度物価上昇に伴う支出増をかりに三〇%と単純に計算をいたしても、消費支出は年百八十二万円となり、月平均約十五万となってまいります。今回の改正では、基礎控除配偶者控除扶養控除をそれぞれ引き上げて二十四万円としておりますが、これを四人家族に当てはめればわずか九十六万円であり、この九十六万円が生計費に見合う額とすれば、月わずかに八万円ということになるわけであります。これを見ても、いかに総理府の家計調査の生計費と比較して著しくかけ離れているかがわかるのであります。一体この程度の人的控除引き上げがはたして生活実態として妥当だとお考えなのでしょうか、政府の本意をお伺いいたしたいのであります。  さらに、今日のわが国所得税制の最大課題となっている総合課税、累進課税等の基本点についてお尋ねを申し上げます。  今回の所得税改正案による課税最低限は、四人家族標準世帯勤労所得者では初年度年収約百五十万円に対し、配当所得者では三百五十七万円となっており、その格差は実に二百七万円にも拡大され、資産所得高額所得者税率が不当に低く押えられ、著しく優遇されております。  また、さらに特筆しなければならぬ点は、四十四年の土地譲渡所得にかかる分離課税の特例であります。その結果は、租税負担公平の原則を著しくゆがめ、数々の土地成金長者を生み出し、土地は放出されたが肝心の庶民大衆の手には届かず、結果的には不動産業者や土地ブローカーに買い占められて、彼らのふところを肥やしたにすぎず、逆に税金は地価に上乗せされて買い主に転嫁される始末と相なったのであります。  以上の諸点は、税制の基本である総合累進構造を著しく歪曲、形骸化させ、税制の持つ所得再配分の機能を減殺するものでありますが、総理はこの点をどういうように考えられているのか、お伺いしたいのであります。  第三点は、法人税及び租税特別措置についてであります。  いまさら指摘するまでもなく、わが国法人税及び租税特別措置法には数々の大企業優遇のための恩典があり、なかんずく租税特別措置は、世界にその類例を見ない数多くの恩典、特例を規定して、わが国税制上に大きな弊害と汚点を残しております。申すまでもなく、わが国法人税率は諸外国と比較してもきわめて低く、今回の改正では基本税率を四〇%まで引き上げて、その実効税率は五〇%近くなると政府は主張しております。しかし、これは単なる数字の上だけの税率であって、実際は数々の特別措置によって、大企業になるほどこの数字とはかけ離れた二〇ないし三〇%というはなはだ軽いものになっているのが事実であります。すなわち、大企業、大法人は、数々の引き当て金、準備金、特別償却制度等の措置によって大幅な課税軽減がなされており、さらに、支払い配当の軽課、受け取り配当の益金不算入制度など、中小零細企業には縁遠い数多くの優遇措置であります。  今回の改正では、石油危機の発生で極度の不況が来るという前宣伝で財界や産業界に踊らされ、基本税率などのわずかな手直しにとどめて、結局は中途はんぱな改正に終わっているのであります。政府が本気で経済政策の転換とか発想の転換を主張するのであれば、わが党の主張するごとく、この際、基本税率を四二%以上にし、さらに累進課税にするなどの措置をするべきであると思いますが、政府の御見解を伺いたいのであります。  次に、交際費課税についてでありますが、四十七年度交際費支出総額は一兆三千二百五十五億円という膨大な額に達しており、毎年の交際費の激増は目に余るものがあります。しかるに、今回の改正案では、若干の手直しがなされておりますが、決して総需要の抑制のための社用消費節減というにはほど遠く、いまさら中小企業への配慮を大義名分にして大企業交際費削減を回避する理由は全く成り立っておりません。現在のようなときこそ、大企業の社用消費を大幅に削減する好機でもあると考えるが、さらに一段と改善する用意があるかどうかをお伺いいたしたいのであります。  最後に、大蔵大臣に、国税当局の税務調査について伺いたいのであります。  企業の三月決算期を迎える今日、石油危機に便乗して得たばく大な利益をいかに隠匿していくか、あるいは、いま立法化が予定されている超過利得税をどううまく逃げるかと、大手商社や石油関連企業は、利益操作、経理操作に頭を悩めている最中と思うのであります。国税庁は、特別体制をしいて、三月決算前に事前調査を行なうと聞いておりますが、各種の引き当て金、準備金、減価償却制度などによる利益操作や利益の隠匿、すなわち逆粉飾決算に対し、国民の期待にこたえられるようなきびしいチェックとその結果が得られるかどうか、また、その結果について可能な限りにおいて国会に報告ができるかどうか、その決意をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 鈴木一弘君にお答えをいたします。  まず第一番目は、法人所有地の再評価についての御発言についてでございますが、法人の現に保有する土地につきまして再評価をさせ、その評価益に課税せよという趣旨だと存じますが、最近において投機目的のために取得した土地には税負担が相対的に低く、古くから保有して本来の事業の用に供している土地ほど税負担が重くなる等の種々の困難な問題がございまして、現在まで勉強はいたしましたが、これを実行する考えはございません。  第二は、超過利得税についてでございますが、先ほどもお答えをいたしましたとおり、この問題につきましては野党各党の案が発表せられており、自民党の案も近く本ぎまりになると思うわけでございます。これを議員立法にするか、あるいは政府提案とするかというような問題を考える前に、まずその内容をどうすればよいのかについて与野党間で精力的に意見調整が行なわれることを期待しておるのであります。  分離課税についての御所論に対して申し上げますが、所得税の基本が総合累進課税にありますことは、御指摘のとおり、申すまでもないことでございますが、各種の政策的要請から総合課税とされていないものがあることもまた事実でございます。たとえば利子や配当につきまして、貯蓄の奨励、個人株主の育成という見地から、納税者の選択によって分離課税とすることが認められておるわけであります。また、土地譲渡所得に対する分離課税等につきましては、税制調査会の答申も明確に指摘をいたしておりますように、税負担の公平を犠牲にしても土地供給の促進をはかることが必要であるとの判断のもとに創設をせられたものでございます。  残余の問題については、関係閣僚からお答えを申し上げます。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  16. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答え申し上げます。  まず第一は、今回の税制改正所得税改正案が上厚下薄である、この際、給与所得控除の最高限度廃止、また高額所得に対する累進税率緩和、こういうものを是正すべしと、こういうような御意見でございますが、これは先ほども申し上げたところでございますが、さような御意見もあり得ると思うのです。税制調査会におきましても、最初さような意見をする人もかなりおったそうであります。しかし、諸外国の状況、また給与所得資産所得などの税負担のバランスの問題また事業所得所得税との権衡の問題、また今日の累進税率が長きにわたって据え置かれておると、そのよって来たるところのひずみをどうするかということが相当議論されておったわけでありますが、まあとにかく二兆円減税とも言われるようなこの大減税をする際にこの問題を解決しないわけにはいかぬじゃないかという圧倒的な多数の方の御意見がまとまりまして政府に答申をされたわけです。政府は、そういう答申を尊重いたしまして、今回所得税改正案を御提案いたしておるわけであります。  それからもう一つは、鈴木さんから所得税人的控除は少し引き上げ足りないのではあるまいか、生活実態と食い違いがあるのじゃないかというお話でございますが、これは、今回とにかく扶養控除を十六万円から二十四万円に引き上げる、また基礎控除配偶者控除を二十一万円から二十四万円に引き上げる、これはかなり思い切った引き上げであります。したがいまして、課税最低限給与所得者におきまして百十五万円から百七十万円に引き上げられると、こういうことになるわけでありまして、まあ精一ぱいのことだと、こういうふうに考えますが、これでもおしかりを受けるということはまことに残念でございます。  それから法人税率を四二%に引き上げよという御所見でございますが、今回の四〇%引き上げ案は、これは地方税を含めての法人の実効税率から言いまして大体国際水準ということに相なるのでありまして、まず妥当なところではあるまいか。鈴木さんは、特別措置があるから日本の法人の実効負担はもっと低いのじゃないかというお話でありまするが、それは特別措置の問題であります。  それから交際費課税をさらに強化せよとのお話でございますが、交際費はこれはまあ企業の営業のために必要なものである。その営業を執行するための交際費をどうするかということは、これは企業のモラルの問題なんです。これを税制でどうこうということ、これはまあなかなかむずかしい問題でありますが、まあ税制の運用におきましても補完的な役割りはなし得ると、かように考えておるのでありますが、損金算入限度の資本金基準の引き上げ、今回多少の交際費課税の強化を御提案を申し上げておるわけでございます。  それから三月期決算の企業に対し税務調査を厳格にせよと、こういうお話でございますが、これはごもっともなお話だと思います。まあ巷間伝えられるところによりますると、減価償却の方法を変えるとか何とかして三月期決算の利益金を隠すと、こういう工作が行なわれているというようなことでございまするが、さような意図をもちまして減価償却方法を変更するなど、利益操作を行なうことに対しましては、厳重にこれに対処いたします。たとえば減価償却の変更等につきましては、これはもう認めない。もし妥当な事情がありまして認めなければならないというような場合におきましても、これはもう国税局長で専決するわけにはいかぬ、国税庁長官まで上申をいたしましてその指示を待たなければならぬと、こういうふうに考えておるのであります。また、価格が非常に上昇した暮れからのあの状態、その中には法人でかなりの収益、所得をあげたものがおります。そういうものにつきましては、優先的にかつ重点的に調査を厳重に実行するということをはっきり申し上げさしていただきます。(拍手)     —————————————
  17. 河野謙三

    議長河野謙三君) 栗林卓司君。    〔栗林卓司君登壇拍手
  18. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、所得税法法人税法及び租税特別措置法の一部改正案に対し、総理並びに関係大臣にお尋ねをいたします。  今日、最大の課題がいわゆる狂乱物価の鎮静にあることは申すまでもありません。そこで、まず総理に、総需要の抑制と今回の大幅な所得税減税との関係について、どのような見通しと対策をお持ちなのか、お伺いをしておきたいと思います。    〔議長退席、副議長着席〕  もっとも、かりに物価対策に支障が出たとしても、この減税案が生活物資の値上がりに苦しむ国民に対して特に心を配った内容であるなら、十分説得力を持つと言えると思います。しかし、問題はその内容であります。初年度一兆四千五百億円の減税のうち、だれにでも当たる人的控除等の引き上げ分は四千六十億円であり、全体の二八%にすぎません。残りの七二%、一兆四百四十億円は主として税の構造の見直しに基づく修正であり、すなわち税制調査会の答申が示すごとく、中高所得階層について税負担軽減度合いを大きくした結果にほかなりません。もちろん、高額所得者だから減税しなくてもよいという理屈はありません。しかし、問題は、そのような税の構造の手直しを特にいま急いでやる必要があったのだろうかという点であります。物価の逆進性から考えて、高額所得者の方がより物価上昇の圧力を受けることが少ないと想像することは許されるでありましょう。したがって、税構造の見直しなどという仕事は、物価が落ちついてからゆっくりと取りかかればよろしいと思います。それにもかかわらず、この物価戦争の最中にあって、総需要抑制への悪影響をおかしてまで、なぜ高額所得者により多くの減税を振り向けたのか、理解に苦しむと言わざるを得ません。これを減税額で見れば、年収百五十万円の標準世帯減税額が二万六千五百十円であるのに対し、年収二百万円ではその二・一倍、年収三百万円では四・三倍、五百万円では実に十一・一倍、二十九万五千四百六十五円の減税であります。そしてこのような結果を生んだ税構造の見直し作業について、税制調査会の答申では、全面的な見直しを行な機会は、現実問題としては低所得層負担を大幅に軽減する場合に限られることになろうと述べております。すなわち、これはいわゆる二兆円減税構想が絶好の機会となったことを暗に指摘しているわけであります。しかし、これでは悪乗り以外の何ものでもないではございませんか。結局、周到な準備もなしに二兆円減税構想を見切り発車させたとがめがここにも出ていると思いますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。  また、この重大な時期に、なぜ物価への悪影響をおかしてまであえて高額所得者に配慮した理由、また、税の構造の見直しをするとしながら、利子配当分離課税、有価証券のキャピタルゲイン非課税土地譲渡益の軽課等の措置がなぜ温存され、何一つ改善、改正を行なわなかったのか、大蔵大臣にお尋ねをいたします。  また、物価減税の関係について、一言つけ加えてお伺いをいたします。  昭和四十七年の調査でも、給与所得者のうち、所得税を納税している者は八七・一%であり、約二二%の人たちは納税するに足りる給与水準に達していません。納税していないわけですから、物価幾ら上がっても減税による救済はありません。したがって、もともと減税物価上昇の救済策としては限界があると言わざるを得ません。この意味で、本筋の対策としては賃金水準引き上げに帰着せざるを得ません。ここで必要なことは、正常な賃金上昇が可能であり、かつ大企業中小企業の賃金格差の解消が可能であるような経済環境、雇用環境をどう整備するかであります。そしてこれは政府がその一翼をになうべき課題だと言わなければなりません。では、この分野の問題について総理はどのような産業経済政策で臨んでいかれようとするのか、お伺いをいたします。  また、同様の理由で、貯金の目減り対策も本筋の対策だと思います。この点に関して、一、今回の減税案ははたして適正な規模であったのか。二、いわゆる二兆円減税に取り組むゆとりがあるぐらいなら、財形貯蓄について政府支出の増加を裏づけとした飛躍的な充実が可能であったのではないのか。三、同様に、高金利付の安定国債を発行し、これを凍結して総需要抑制をはかるとともに、貯蓄目減りを救済する道を講ずべきではなかったのか。以上三点について大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。  次に、租税特別措置を含めた法人税関係についてお尋ねをいたします。  従来から、法人配当軽課制度については、自己資本充実の役割りをほとんど果たしてこなかったにもかかわらず、その変更による影響が個別企業によって異なること、あるいはその廃止税負担の激変をもたらすという理由で温存されてまいりました。しかし、いまや状況は大きく変わり、いわゆる便乗値上げのもとにあって、激変しているのは税負担ではなく企業の利潤そのものであります。したがって、この際、思い切って配当軽課制度廃止に踏み切る絶好の機会だと思いますが、いかがですか。  また、法人税基本税率についても、政府は国際比較を一つの根拠として四〇%の妥当性を主張されているようであります。しかし、企業会計の基準も、諸特別措置の実態も、決して一様ではありません。しかも、わが国において従来から企業に手厚い租税特別措置が講じられてきたことを考えると、法人税基本税率はさらに引き上げてしかるべきだと考えますが、いかがでしょうか、大蔵大臣にお伺いをいたします。  また、法人関係の税制について、従来から、政府提案に先立って、産業界の代表との緊密な打ち合わせが重ねられてまいりました。その間にあって、政府が主張を取り下げ、産業界の意向をくむ例も少なくないと聞いております。もちろん私は、この打ち合わせ自体を悪いと言うつもりはありません。政府は政策の決定にあたって多くの意見を聞くべきであります。しかし、では所得税に関しては、労働組合をはじめ、給与所得者が構成する団体が数多くありながら、なぜ事前の打ち合わせの機会に恵まれないのでありましょうか。経営者との相談が済んだ法人税の提案と、あてがいぶちの所得税の提案とのきわ立った違いについて、総理の御見解を伺いたいと思います。そしてこの問題を解消する道は、政府が国会の審議を通じて常に修正する決意を持ち、その慣行をつくることだと思いますが、いかがでございましょうか。  最後に、自動車関係諸税の増税について、総理並びに大蔵、運輸両大臣にお尋ねをいたします。  よく自動車から税金を取るという表現がされます。しかし、自動車が税金を払えるはずはありません。払うのはあくまでも自動車を利用している国民であります。では、今回の増税はどのような所得階層の国民から取ることになるのか、また、その人たちはどんな自動車の使い方をしていると承知しておいでになるのか、総理伺いたいと思います。  昭和四十八年のある調査によると、勤労世帯の乗用車保有台数は六百六十一万台となっております。そのうち年収百万円未満が一一%、年収百万円以上百六十万円未満が三九%、すなわち今回政府が提案した課税最低限百七十万円未満の世帯が約半分を占めております。では、何の目的で使っているかといえば、そのおもなものは通勤であり、買いものであり、家族の移動であります。現在スプロール化しつつある都市郊外の姿を考えれば、これがどのような切実な必要性を意味しているかは多くを申し上げる必要はないと思います。自動車を持たずに雨の中をからかさをさして歩していこうとするには、あまりにもみじめな交通環境、都市環境しか存在しておりません。  また、われわれは、物資の流通において配達という方法があることを当然のこととして受け取ってまいりました。しかし、これは個別輸送の問題であり、面の交通の問題であります。公的大量輸送機関で代替し得る分野ではありません。また、配達では料金が高いから直接買いにいこうとなれば、そこにまた面の交通が発生いたします。そしてこの交通手段の役割りを果たしてきたものが自動車であり、その結果、自動車が国民生活に深く食い込んだ存在となるに至ったということでありましょう。すなわち言いかえれば、面の交通、あるいは個別輸送に対する社会的需要が存在する限り、また、この需要を効果的に解決する総合交通体系が開発され、定着されない限り、自動車関係諸税の増税は、国民いじめ、弱い者いじめに終わるしかないでありましょう。ある国では、乗用車にかわる交通手段の開発育成の方法として、無料バスの運行を試みているといわれます。しかし、わが国では常に増税のみが前面に出てまいります。しかし、自動車の利用抑制を税のみにたよるやり方が正しい政策のあり方かどうか、総理伺いたいと思います。  しかも、その税負担は、かりに六十万円の車を購入したと仮定した場合、初年度で十六万九千円、六年間分を通算すればほぼ自動車の購入価格に匹敵する五十九万四千円に達し、しかも、その税の種類は八種類に及んでおります。加えて今回の増税案によってさらに追加される税負担は、初年度で三万円をこえるでありましょう。この重税もさることながら、八種類にも及ぶ自動車関係諸税を一体いつになったら整理をされるのか。また、通勤、買いもの、配達といった個別的な面の交通手段として、政府は今後具体的にどんな対策を用意していかれるのか。また、その前提として、懸案の総合交通体系をいつまでにどのような手続で策定される予定なのか。自動車を所有する勤労世帯のうち約半数が年収百七十万未満であり、その周囲には劣悪な交通環境、都市環境が横たわっていることを重ねて強調しながら、大蔵大臣並びに運輸大臣にお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 栗林卓司君にお答えをいたします。  第一は、大幅所得減税が総需要抑制に及ぼす影響はどうかということでございます。所得税減税によりまして個人所得がふえ、消費支出が増加することになれば、総需要抑制見地から問題があるとの議論が存在することは、私も承知をいたしております。しかし、最近の物価情勢にもかんがみ、可能な限り所得税負担軽減適正化をはかることが国民の期待にこたえるゆえんであると考え、大幅減税に踏み切ったものであります。  また、所得税減税高額所得者に手厚いのではないかとの趣旨でございますが、来年度所得税減税は、給与所得者負担軽減中心とし、給与所得控除抜本的拡充に重点を置き、あわせて人的控除引き上げ税率緩和を行なうことといたしたわけでございます。この結果、標準世帯課税最低限現行百十五万円から百七十万円に、また、独身の給与所得者課税最低限も四十五万円から七十七万円へと大幅に引き上げられたわけでございます。  なお、中間層や高額所得者までに対して税率緩和を行なったことに対しての御言及がございましたが、所得税の中における税率是正の必要性は過去毎年議論をされてきたことは御承知のとおりでございます。特に非常に初任給が安いときに職業につき、それで人生三十五歳ぐらいから五十五歳ぐらいまでの間であって、親もあり、また、子供も全部学校に通わさなければならない、人生において最も大きな支出負担をしいられる、この避けがたい国民の中堅となるべき層に対してもっと効率的な減税を行なうべきであると、こういう議論は毎年行なわれてきたわけでございますが、しかし、乏しい財源の中で効率的な減税を行なうということになると、やはり低所得者中心ということで、課税最低限引き上げに重点を置かざるを得なかったことは、過去の歴史が示すとおりでございます。しかし、先ほどもお答えを申し上げましたように、今年度減税というものは過去の減税と違いまして、課税最低限引き上げは、イギリスや西ドイツの約二倍以上に引き上げられるわけでございます。また、フランスよりも四十五万円、世界で最も裕福だといわれておるアメリカよりも四十万円も課税最低限引き上げられるという、大幅な思い切った減税政策を断行するときでありますので、多年懸案であった中堅層に対しての税率緩和を行なうべきであるということは、これはほんとうに一つの好機として税制調査会でも指摘をされたわけでございます。  青天井の問題に対していろいろな御指摘がございますが、これらは税の本質的な問題にもなりますので、予算委員会の審議の過程において十分私からもお答えを申し上げますし、また、大蔵大臣からもこまかくお答えをいたすつもりでございます。これらは税の本質的な問題でもございますし、これは他の目的——自己資本の拡充とか、また、日本人自体のほんとうに働く意欲というものを助長するためには税制上どうすべきであるかというような問題もございます。しかし、そういう問題をすべて税制の中で、税理論の中で画一、一律的にこれを行なうということは無理があるわけでございます。ですから、国民の英知や努力というものを国民全体の水準を上げるために大いに慫慂するとともに、弊害があれば、これらのものに対しては大いに努力をしてもらうかわりに相続税率引き上げるとかその他というバランスをとる道はあるわけでございます。画一、一律的な税制を行なうことによって惰民政策に通ずるような税制は厳に避けなければならないということはもう当然のことでございまして、多年議論せられた国民的課題を少なくとも今次の税制改正において手をつけたということでは、シャウプ税制以来、戦後足かけ三十年、初めての税制の大改革であるということは事実だと思うわけでございますので、そのような角度と立場から今度の税制改正を御批判、評価をいただければ幸いだと考えるわけでございます。  賃金水準引き上げ等についての御指摘がございましたが、わが国の賃金水準は高い経済成長にささえられて他国に比べて最高の伸びを示しておることは御承知のとおりでございます。七三年におきましては、一時間当たりの名目賃金は、イタリア、フランス、イギリスを追い越し、西ドイツの約三分の二、アメリカの二分の一以上の水準に達しておるのでございます。今後とも賃金格差を縮小させていくためには、基本的には後進部門の経済力を高めることが必要でありますとともに、労働政策の面でも労働市場機構の整備充実をし、労働力の流動性を高め、需給関係のアンバランスの是正につとめることが必要であると考えておるのでございます。特に中小企業などの低生産性部門における賃金の改善につきましては、生産性向上のための総合的施策を進めますとともに、労働面においては、実効ある最低賃金制の拡充、近代的労務管理の推進等をはかってまいる所存でございます。しかしながら、現在の非常事態のもとにあって、しかも高度成長から安定成長への政策転換期にあたって、賃金の引き上げ国民経済の成長に伴ってみずから節度あるものでなければならぬことは言うまでもないと考えておるわけであります。  それから税制改正は民意を反映をさせるべしというような御所論でございますが、今回の税制改正案は、政府・与党において鋭意検討を行なったばかりではなく、各界の学識経験者で構成される税制調査会において十分論議を尽くし、その答申を得て作成せられたものであり、広く国民各層の意見を反映したものと考えておるのであります。もちろん国会において十分審議を尽くされることを心から期待いたしておるわけでございます。  自動車関係諸税についてのお話がございましたが、いま栗林さんが御指摘になったような見方もございます。しかし、狭い日本でございますし、燃料は全部外国から入れなきゃならないという状態でございます。年々三百万台ないし三百五十万台も車がふえ、列島改造論では昭和六十年に三千九百万台ないし四千百万台になるかもしれないと言っておりますが、六十年を待たず、このような状態では五十五年には四千万台になんなんとするのが現状でございます。こういうような現状に対して各国はどういうふうにしておるかというと、御指摘のように総合交通体系の中でこれを吸収しておるわけでございます。そういう意味では、自動車は近距離通勤用に、鉄道は中距離通勤用に、長距離は海運にということを各国がとっておるわけでございまして、四面海で囲まれておる日本、南北に列島形態をなしておる日本としては、各国に先がけてこのような総合交通体系をとらざるを得ないことは申すまでもありません。ところが、なかなかそのような合理性が貫けなかったのが現状でございまして、おそまきながら政府は交通の総合体系ということにいま着手しておるわけでございます。総合交通体系を進めるためには税が有力な手段として誘導税制、禁止税制等に使われておることは、先進工業国の例に見られるとおりでございます。そういう意味で、ガソリン税が目的税となり、自動車トン税が新設をせられた経緯がございますので、これらの問題は、ただ一面に税理論の上だけではなく、日本の持つ地形地勢上の特殊性、そして総合交通体系の中でしかも財源確保という面から応益負担を貫きながら国民的な課題を解決するという一つの有力な手段であるということで、税制調査会の答申も待ちながら、道路財源充実、利用者負担の適正、また資源の節約、消費抑制という面でかかる税制改正案を御提示申し上げたわけでございますので、広い意味からの御判断を願いたいと考えておるわけであります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、いわゆる二兆円減税というのは妥当な幅のものであるかと、こういうようなお尋ねであり、なお、それに関連いたしまして、財形貯蓄拡充強化せよと、こういうお話でございまするが、まあ、理論上は、こういう異常な物価高の際に減税をする、こういうことは物価対策と相反すると、こういうことも言えるわけであります。しかしながら、この減税計画が持ち出されてもうすでに久しいわけです。国民も非常な期待をしておる。こういうような状態でありますので、この計画は完全に実施すべきものである、かように決意をいたしたわけであります。しかし、それに伴う理論上の提起される問題点はこれを解決しなきゃならぬということから、お話のありましたように、財形貯蓄制度拡充する、税額控除の率を引き上げますとか、あるいは財形貯蓄をした者に対しましてかなり思い切った多額の融資をするというようなことを考えますとか、いろいろなことを考えまして、この減税計画がこの物価高に対して悪影響がないように配意をいたしておるのであります。まあ財形貯蓄ばかりじゃございません、預金金利の引き上げの問題でありますとか、割り増し金付預金制度の創設の問題でありますとか、いろいろの貯蓄手段を考えておるのであります。  なお、国債につきまして、この際、高金利の特別国債を発行いたしまして過剰流動資金を吸収すべしと、かようなお話でございまするけれども、それはまあ一応そういう考え方もできるわけでありまして、そういうことを言う人がたいへんおります。しかし、そういう特殊な国債を発行するということに相なりますれば、ほかの国債はこれは売れないことになります。また、ほかの社債だ、証券だ、これも売れないと、こういうようなことになり、特別の金利の国債という考え方はなかなかこれはとりにくいと思います。これは一般的に何とかして預貯金者、そういう方々の立場を保護するというくふうをこらすほかはないのじゃあるまいか、かように考えております。  次に、利子配当分離課税、有価証券キャピタルゲイン非課税土地譲渡益に対する軽課措置を改めよと、こういうお話でございます。御趣旨のほどはよくわかりますが、利子配当分離課税につきましては、五十年にその時限の期限が到来するわけでありまして、それ以前に十分検討いたしたい。また、有価証券キャピタルゲインの非課税の問題につきましては、これは株式の売買につきまして、もうけた場合につきましては課税問題が起こるのですが、損をした場合に一体どうするか、こういう問題もありまして、また、そのほかに、一体売買の損益をどういうふうに捕捉するかという問題もありまして、なかなか困難な問題でございますが、しかし検討は続けてみたいと、かように考えております。  土地譲渡益に対する分離課税廃止の御意見でございますが、これは先ほどもお答え申し上げたのですが、私がこの制度を創設する当時ねらいといたしました土地のこま切れ放出の阻止、そういう目的を私は十分達したと思うんです。しかしながら、一方におきまして、その制度に乗りまして土地を買った人がいわゆる売り惜しみをしておる、こういうような問題もありますので、この問題をどうするか、これも五十年には時限が到来いたすのでありますので、十分検討いたしまして、次の通常国会において御審議を願いたい、かように考えております。  法人税基本税率をもっと引き上げよ、こういうお話でありますが、これは先ほど重ねて答弁をいたしたところでありますが、まず四〇%に引き上げて、それで実効税率といたしますと五〇%になる、まずまず妥当なところではあるまいか、さように考えておるわけであります。  また、大法人に対する配当軽課制度廃止せよと、こういうお話でございます。これは御趣旨は私はよく理解できるのでありますが、現在の法人税制というものが、お話しの配当軽課制度法人の受け取り配当益金不算入制度配当控除制度、こういうものと不可分の関係にありまして、いわば法人税体系の根幹をなす問題である、かようなことでありますので、直ちにこれを廃止するということはこれは困難でございますが、しかし、御趣旨のほどはよくわかりまするので、これは税制調査会に専門的な部門を設けましてひとつ検討をお願いをいたしたい、かように考えておる次第でございます。  それから最後でありますが、自動車関係税制を整理簡素化せよというお話、私も気持ちといたしましては全く同様に思います。とにかく自動車関係諸税九税目もある、こういうような状態でございますが、なぜそういうように税目が非常に繁雑になっておるかというと、これは課税態様の担税力にふさわしい負担という理論的な考え方からそういうふうに分かれちゃうという一面と、課税主体が国、都道府県、また市町村というふうに一本化されておらぬという点にあるわけなんであります。しかし、これは感じといたしまして栗林さんがそうお考えになるのは、私はもう理解できます。何とかして簡素化のほうを努力しなければならぬと、かように存じますので、そういう検討をいたしたい、かように存じます。    〔国務大臣徳永正利君登壇拍手
  21. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) 御質問の配達、買いもの、通勤等の輸送目的に対応する交通手段としましては、もちろん地域により異なるものと考えられますけれども、一般的には、買いもの、通勤等につきましては、都市地域では鉄道あるいはバス等の公共交通機関が主体となり、過疎地帯においてはバス、乗用車など道路輸送を主として、場合により鉄道が使用されることが、資源エネルギーの適正配分の点からも、環境保護の点からも見まして適切であると考えております。また、小口配達につきましてはトラック利用が主体となっておりますが、共同配達等について今後積極的に検討いたしまして、輸送の効率を高めるよう誘導してまいりたいと思います。  なお、総合交通体系につきましては、総理から御答弁がございましたが、現在の総合交通体系の考え方は、運輸政策審議会において約二年にわたる慎重審議の結果、昭和四十六年七月、その答申を得たものであります。また、これと前後して、政府においても臨時総合交通問題閣僚協議会が設置され、関係各省の意見調整を経て、総合交通体系についての基本的な考え方の指針が作成されたのは御案内のとおりでございます。将来の総合交通体系につきましては、特にエネルギー資源等の供給に制約があるという点及び環境の保全についてさらに一段の努力をすべきものであるという点に考慮を払う必要があろうと考えております。したがいまして、新しい総合交通体系の具体化につきましては、経済全般の長期的展望の見通し等の推移を見守りつつ、慎重に対処してまいる所存でございます。(拍手)     —————————————
  22. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 渡辺武君。    〔渡辺武君登壇拍手
  23. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係大臣質問いたします。  いま、物価狂乱、いわゆる物不足によって、老人世帯、母子、生活保護世帯などはもとより、一般国民の暮らしはひどい危機に見舞われております。ところが、その反面、売り惜しみ、買い占め、大幅値上げなど、悪の限りを尽くした大企業が驚くべき暴利をむさぼっていることは、衆議院での審議によっても明らかなところであります。このようなときに、政府がまずなさねばならないことは、大企業の横暴をきびしく押え、悪性インフレの被害を一番強く受けている国民の生活安定のための緊急の措置を断行することであります。これは、税制についても例外ではありません。ところが、今回、政府が宣伝している空前の規模の減税なるものは、一般国民にはかえって重税を押しつけ、社長、重役など高額所得者ほど大幅な減税となるだけではなく、荒かせぎをしている大企業に対しては租税特別措置その他による特権的減免税をさらに広げようとするものであります。たとえば、今回の所得税減税は、低額な給与所得者や零細な事業所得者が強く求めている基礎控除配偶者控除扶養控除などの人的控除引き上げは、四人家族でわずか九十六万円までにとどめ、給与所得控除の従来あった七十六万円の上限を取り払って、高額所得者を優遇するというものであります。このため、四人家族年収百五十万円の人は二万九千四百七十八円、一日当たりわずか八十円の減税にしかならず、この物価暴騰のおりに−最低生活を守るために必要な賃上げをすればたちまち税が重くなるというものであります。ところが、年収五百万円の人は二十四万二千四百二十七円、年収一千万円の高額所得者は実に九十一万一千四百五十円の大幅減税となるのであります。わが党は、このような重役減税ではなく、何よりも人的控除で四人家族課税最低限を二百万円にし、住民税、個人事業税の課税最低限所得税に準じて大幅に引き上げ、また、障害者、特別障害者、老齢者、寡婦、勤労学生などの特別控除政府案のようにわずかなものではなく大幅に引き上げ、いまこそ生活費非課税の原則をきびしく守って、最も苦しめられている所得の低い人たちの生活困難を解決する一助にすべきであると思いますが、総理並びに関係大臣の見解を伺います。  次に、入場税の問題であります。この税制が文化芸術をぜいたく視した戦時課税の引き続きであることは、あらためて指摘するまでもありません。政府は、F4EJファントム戦闘機五機の購入をやめれば解消できる百十億円の入場税で国民の文化活動を圧迫して恥ずかしくないのですか。政府は、懸案となっている映画、演劇、音楽、舞踊についての入場税をいまこそ撤廃すべきであります。  また、政府は、母親たちが子供の文化的教養のためにわずかなお金を出し合って運営している団体であり、文部省もりっぱな社会教育団体と認定し、地方公共団体からも補助金の出ている団体である福岡子ども劇場などに多額の入場税をかけております。政府は、全国の子ども劇場、親子劇場など、社会教育団体の活動に対する入場税は直ちに非課税とすべきであります。政府の見解をただします。  次に重要なのは法人税であります。今回の法人税引き上げ措置は、あまりにも低かった税率昭和三十年の水準に戻したにすぎません。しかも、四〇%の比例税であるため、現在、異常な暴利をむさぼる大企業の反社会的行為を規制するには効果の薄いものであります。大企業国民生活を踏みにじって暴利をむさぼっている今日、この程度の措置では絶対に満足できません。  政府は、このような大企業に軽い税率ではなく、法人所得十億円以上には法人税率を四三%に引き上げるべきであり、もうけの多い企業には正当に税金を払わせるよう、法人税の高度累進制をとるべきであります。  また、大企業の売り惜しみ、買い占めなどの反社会的行為による不当な暴利に対しては、臨時的に超過利得税を課して、これを吸収する措置が必要であります。ところが、伝えられる自民党案は、超過利得の額も税率も低く押え、その上に大企業に利益隠しのできる道を残すなど、きわめて効果の薄いものであります。その上に、この税制を、賃金に対する国家統制をおもな内容とする所得政策導入の布石として使おうとしております。わが党は、このようなものではなく、昭和四十六年、四十七年の平均半年の所得を基準とし、それを三〇%以上上回る資本金十億円以上あるいは年所得五億円以上の大法人超過利得に対して一〇%から三〇%の累進税率法人税に付加し、また企業租税回避行為を完全に阻止して超過利得の九割を吸収するきびしい超過利得税にすべきことを主張しております。  また、昭和四十五年度から四十八年度までに土地、有価証券を五〇%以上ふやした資本金十億円以上の大企業課税し、土地、株式などの買い占めを規制する臨時資産税を早急に創設することを主張しております。政府は、大企業の投機をきびしく規制する以上の政策を三月期決算から実施に移して、その財源を国民生活防衛のために使うべきであると思うが、はっきり御答弁を願います。  また、所得政策は絶対にとるべきではないと思うが、この点も明確な答弁を求めます。  次に、租税特別措置であります。石油危機の業界決算第一号といわれた東亜燃料工業や三菱油化の十二月決算案、さらには大和証券がまとめた東京証券第一部上場会社三百七十三社の三月期決算見通しでも明らかなように、買い占め、売り惜しみなどによって暴利をあげた大企業が価格変動準備金、貸し倒れ引き当て金、退職給与引き当て金、海外投資等損失準備金など引き当て金、準備金を使い、あるいは減価償却制度の恣意的な変更やたな卸資産の評価がえなど、あらゆる手だてを尽くして利益隠しに奔走しております。政府は運用面で対処するなどと述べておりますが、はっきりしていることは、単なる運用面の封じ策ではなくて、資本金十億円以上の大企業の価格変動準備金、海外投資等損失準備金、その他の特権的減免税制度をいまこそ撤廃しなければならないということであります。ところが、今回の政府税制改正は、この特権的減免制度を存続させるだけではなく、さらに拡充さえしているのであります。わが党は、先に述べたわが党の臨時利得税案においても、当面、臨時的特別償却の損金算入の中止、各種引き当て金、準備金で一定限度をこえる額の益金算入、減価償却方法、たな卸資産評価方法の恣意的な変更の禁止による租税回避行為の阻止を明文化しておりますが、大企業の利益隠しについて政府はどのような効果ある措置をとられるのか、また、さらに進んで、大企業に対する特権的減免税を完全に撤廃するかどうか、明確な答弁を求めます。  最後に、総理並びに関係大臣伺います。  最初に強調したように、政府減税措置にもあずからない低所得者層こそインフレの最も大きな被害者であります。この人たちの生活を守ることが政府の最も緊急な政治課題であり、四十九年度予算に盛り込まれた措置では全く不十分であります。政府は、生活保護世帯、母子家庭、ハンセン氏病患者などに三万円のインフレ手当を支給し、年金、生活保護費などを三、四カ月ごとに物価にスライドして見直すなど、思い切った措置を早急にとるべきであると思うが、どういう措置をとられるのか答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 渡辺武君にお答えいたします。  第一は、今回の税制の視点についてでございますが、今回の税制改正は、給与所得者負担軽減中心といたしまして大幅減税を行なおうとしておるわけでございます。また、課税最低限につきましても、先ほども申し上げたとおり、イギリスの二倍以上、西ドイツの約二倍、アメリカの百二十九万円よりもうんと大きいのでございますから、課税最低限というものの今度の改正案は国際的に見て低いものでないということは数字があらわすとおりでございます。  それから住民税、個人事業税の課税最低限等について申し上げますと、住民税の課税最低限につきましては、毎年度相当程度の引き上げを行なっておりますが、昭和四十九年度においても標準世帯で八十六万五千円から百一万六千円に引き上げることといたしておるわけでございます。また、個人事業税につきましても事業控除を八十万円から百五十万円に引き上げ、その軽減をはかっておるところであります。  それから法人税についての累進課税方式をとれという話でございますが、先ほどから大蔵大臣も述べたとおり、累進課税方式は、生産規模、組織、株式の構成その他において多種多様である法人を対象とする法人税において基本的にはなじまないものでございます。今回、法人税率を四〇%に引き上げるということがまだ低いと、四三%ということでございましたが、まあここらは議論の存するところでございます。去年度税制改正では、確かに去年度では少な過ぎるから四〇%に上げよというのが御主張でなかったかと思うんです。まあこちらが三六%なら三八%、三八なら四〇、四〇なら四三と、こういう御主張であれば、いかんとも申し上げがたいわけでございます。いずれにしましても、現在の法人基本税率は三五%であります。それに一・七五の暫定税率が加算せられて三六・七五になっているわけでございます。ですから、このままにしておけば、一・七五が取れて基本税率の三五に戻るわけであります。そうではなく、これを組み入れて四〇%にするというのでございますから、三五%の基本税率を五%引き上げて四〇%というのでございますから、これは相当な引き上げであるということは、半年前、一年前に野党の皆さんから御指摘を受けて、四〇%にすべしと、こう言われたことを採用いたしておることもひとつ御理解をいただきたいと、こう思うわけでございます。  それから所得政策についてでございますが、政府は、現下の物価情勢に対処するために、財政金融を中心とする総需要の抑制、個別物資の対策等、最大限の政策努力を傾けておるところでございます。いわゆる所得政策については、わが国においてはその実施について国民的コンセンサスが必ずしも形成されていないということで、慎重に考えるべきだと常に御答弁を申し上げておるわけでございます。しかしながら、今後経済の実勢を無視した高率の賃金上昇が続くならば、物価上昇や失業の増大等を招くおそれも強いのであります。したがいまして、労使双方においても、いたずらな便乗値上げや賃金の過度の引き上げ国民生活を脅かし経済社会の基盤を危うくすることであることを十分認識して、節度ある行動をとるように望んでおるのであります。  それから租税特別措置についてでございますが、一定の政策目的を実現するために租税の誘導的機能または抑止的機能を活用するものであることは申すまでもありません。また、現在残っております特別措置の相当部分は中小企業対策あるいは公害対策等を目的とするものであることを考えますれば、これを直ちに廃止することは適当でないと考えておるのでございます。  入場税その他につきましては、大蔵大臣から答弁をいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  25. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず第一に、大企業の諸引き当て金、準備金の積み増し、減価償却方法の変更等について厳重に対処せよと、こういうお話でございますが、もろもろの引き当て金、準備金につきましては、法律に定めがありまして、これはそう問題の起こらないところでございます。ただ、減価償却方法につきましては、これは注意を払わなければならない、かように考えております。従来の減価償却方法を改正するということが三月期決算等において行なわれるという際におきましては、出先がこれを専決してはならない、必ず国税庁長官に稟議をし、その承認を得た上その許否を決定すると、こういうことにするなど、利益隠蔽のために特別の経理操作を行なうということがあることに対しましては、厳重にこれに対処してまいりたいと、かように考えます。  次に、映画、演劇、音楽、舞踊等に対する入場税を撤廃せよ、子供劇場、親子劇場等の入場税を非課税化せよと、こういうお話でございます。この点は、前に私が大蔵大臣をしておるときも伺った話でありまして、ずっといきさつのある問題でありますが、映画等入場税の撤廃問題は、これは通行税、娯楽施設利用税、料理飲食税、そういうものとの関連がありまして、これはなかなか撤廃というのは困難な状態なのであります。また、子供劇場の非課税問題につきましては、これまた、一般の催しものとどういうふうに区別するか、これもなかなか実際問題とするとむずかしいんです。これは文部省でも頭をいまひねっておるというところでございますが、さようなやっかいなむずかしい問題であるということを御了承おき願いたいのであります。  法人税率を四三%に引き上げ、累進課税にせよと、こういうお話につきましては、総理の答弁と重複いたしますので省略をいたします。  それから、大企業優遇の租税特別措置を撤廃せよという御所見ですが、租税特別措置は大企業だけの優遇措置じゃございませんから、これは中小企業みんなひっくるめての特別措置でありますが、特別措置というものはその名の示すごとく特別措置なんです。これは法人税に対しまして例外を設けるものでございますので、これはもう設定をいたしました目的が到達された、あるいは客観情勢が変化したということに応じまして改廃を考慮すべきものである、かように考え、この制度がいやしくも慢性化する、あるいは既得権化するというようなことにつきましては、これがないように毎年厳重な見直しをすべきものである、さように存じ、四十九年度税制におきましてもそのような方針で対処いたしております。(拍手)    〔国務大臣齋藤邦吉君登壇拍手
  26. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 御質問減税の恩恵が及ばない低所得者層に対しましては、その生活の安定と福祉の向上をはかりますために、今日まで、生活保護基準の改定やあるいは福祉年金の引き上げ等の施策を進めてまいっておるところでございます。  最低生活の保障でありまする生活保護につきましては、すでに御承知のように、昨年の四月、一四%引き上げ、さらに昨年の十月には五%引き上げる、こういう措置を講じてまいり、四十九年度におきましては、さらに四十八年度に比較いたしまして二〇%の引き上げを行なう、こういう措置を講じておるわけでございますが、最近の物価動向にかんがみまして、一月から四月までのつなぎといたしまして一時金を支給することにいたし、家族一人につき二千円、四人家族ならば八千円と、こういうつなぎの一時資金を出すことにいたしておるわけでございます。由来、生活扶助というものは物価の動向に対処して考えらるべきものでございまして、三カ月ごとに改定をするという制度にはなじまないものであることを御承知いただきたいと思うのであります。  また、年金につきましては、昨年、五万円年金という大改正を行ないまして、そのあとを受けまして本年度におきましては、拠出制年金につきましていわゆるスライド制を初めて実行することに相なっております。それと同時に、福祉年金につきましても、老齢福祉年金その他、前年度に比較いたしまして五〇%の増額をいたしておるわけでございまして、老齢、母子その他の福祉年金を三万円に引き上げる、こういう考えはいまのところ考えていないことを明らかに申し上げておきたいと思います。(拍手
  27. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。      ——————————
  28. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第一 外務省設置法の一部を改正する法律案  日程第二 文部省設置法の一部を改正する法律案   (いずれも第七十一回国会内閣提出衆議院送  付)  以上両案を一括して議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長寺本広作君。   〔寺本広作君登壇拍手
  29. 寺本廣作

    ○寺本広作君 ただいま議題となりました二件の法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。この二件の法律案は、いずれも前国会からの継続審査法案であります。まず、外務省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。本法案は、わが国のアジア外交の積極的な推進に伴う事務量の増大に対処するため、アジア局に次長一人を置くこととするものであります。委員会におきましては、わが国外交の基本姿勢、アジア外交の体制の整備、文化・経済外交のあり方、在外公館の強化、在外子女の義務教育問題等について質疑がなされました。その詳細は会議録に譲ります。質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。     —————————————  次に、文部省設置法の一部を改正する法律案は、高等教育の拡充整備とその改革及び学術研究の振興並びに教育・学術・文化の国際交流等を積極的に推進するため、本省の内部部局として、新たに大学局及び学術国際局を設置し、学術国際局にユネスコ国際部を置くこととし、これに伴い、大子学術局及び日本ユネスコ国内委員会事務局を廃止しようとするものであります。委員会におきましては、日本ユネスコ国内委員会事務局を内局化することの是非、外国人留学生の受け入れ体制の整備、著作権保護についての文部省の姿勢、私立大学の定員超過入学問題国民体育大会のあり方等について質疑がなされました。その詳細は会議録に譲ります。質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法案は多数決をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  30. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。  まず、外務省設置法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  31. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。      ——————————
  32. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 次に、文部省設置法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  33. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。      ——————————
  34. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第三 割増金付貯蓄に関する臨時措置法案  日程第四 印紙税法の一部を改正する法律案   (いずれも内閣提出衆議院送付)  以上両案を一括して議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長土屋義彦君。   〔土屋義彦君登壇拍手
  35. 土屋義彦

    ○土屋義彦君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。まず割増金付貯蓄に関する臨時措置法案について申し上げます。本案は、最近における経済情勢に即応し、総需要抑制策の一環といたしまして、貯蓄手段の多様化を通じて貯蓄の増強をはかるため、二年間を限り金融機関等に対し、割り増し金つき貯蓄の取り扱いを認めるほか、割り増し金つき貯蓄の条件等について所要規定を設けようとするものであります。次に、印紙税法の一部を改正する法律案について申し上げます。本案は、今次の税制改正の一環といたしまして、最近における経済取引の実情に即応し、印紙税負担適正化をはかるため、売り上げ代金の受け取り書について、一律の定額税率から階級別の定額税率に改めるとともに、その他の文書について税率引き上げを行なうほか、納税手続の合理化等、所要規定を整備しようとするものであります。委員会におきましては、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案に対し、貯蓄増強の手段として、射幸心をそそる割り増し金貯蓄を設定することの妥当性、預金のキャピタルロスを回避するための金利引き上げについての政府見解、割り増し金つき貯蓄により集められた資金の使途のあり方等について、また、印紙税法の一部を改正する法律案に対し、国税収入に占める間接税の位置づけと課税のあり方、印紙税の脱税状況等について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  二案に対する質疑を終了し、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案について討論に入りましたところ、日本社会党を代表して戸田委員より、公明党を代表して鈴木一弘委員より、民社党を代表して栗林委員より、また日本共産党を代表して渡辺武委員より、それぞれ反対の意見が述べられました。  討論を終わり、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案について採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次いで、印紙税法の一部を改正する法律案については、討論なく、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案に対し、政府は、銀行に吸収された資金の運用が総需要抑制策の効果を減殺しないよう万全を期し、預金金利のあり方について検討を加え、募集について過当競争及び労働強化を来たすことのないよう指導すべきである旨の附帯決議が全会一致をもって付されました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  36. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。  まず、割増金付貯蓄に関する臨時措置法案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  37. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。      ——————————
  38. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 次に、印紙税法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  39. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十二分散会