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1974-05-30 第72回国会 参議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月三十日(木曜日)    午前十時五十五分開会     —————————————    委員異動  五月十七日     辞任         補欠選任      柴立 芳文君     山本茂一郎君      鍋島 直紹君     小枝 一雄君      平泉  渉君     重宗 雄三君      山下 春江君     吉武 恵市君      小谷  守君     村田 秀三君      中村 波男君     藤田  進君      須藤 五郎君     野坂 参三君  五月二十一日     辞任         補欠選任      村田 秀三君     加藤シヅエ君      柏原 ヤス君     内田 善利君  五月二十二日     辞任         補欠選任      加藤シヅエ君     村田 秀三君  五月二十九日     辞任         補欠選任      村田 秀三君     田中  一君  五月三十日     辞任         補欠選任      重宗 雄三君     増原 恵吉君      吉武 恵市君     小川 半次君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 棚辺 四郎君                 佐々木静子君     委 員                 増原 恵吉君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 中村 英男君                 藤田  進君    委員以外の議員        発  議  者  萩原幽香子君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        法務大臣官房長  香川 保一君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省矯正局長  長島  敦君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    法制局側        第 五 部 長  浅野 一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (刑法改正に関する件) ○民法の一部を改正する法律案萩原幽香子君発  議) ○熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願  (第二七号)(第五四一号)(第一二六二号) ○法務局保護局入国管理局職員大幅増員等  に関する請願(第二九七号)(第二九八号)(  第二九九号)(第三〇〇号)(第一一六二号)  (第一一六三号)(第一二八五号)(第一二八  六号)(第一二八九号)(第一三七二号)(第  一四一二号) ○保護司活動の強化に関する請願(第一二二七  号) ○松山地方法務局岩城出張所存置に関する請願  (第一九一五号)(第二一八二号)(第二四一  三号) ○鹿児島地方法務局天城出張所存置に関する請  願(第三一三九号) ○松山地方法務局岩城出張所存置に関する請願  (第三二九四号) ○夫婦共同財産制についての民法改正に関する請  願(第四二四七号)(第五四八一号) ○治安維持法等による犠牲者に対する国家賠償に  関する請願(第五三七六号) ○継続調査要求に関する件     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。  村田秀三君が委員辞任され、その補欠として田中一君が選任されました。     —————————————
  3. 原田立

    委員長原田立君) 次に、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事内田善利君を指名いたします。     —————————————
  5. 原田立

    委員長原田立君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、昨日法務省法制審議会で最終的な答申が出されました刑法全面改正の問題について質問をさしていただきたいと思います。  この刑法改正問題につきましては、当委員会におきましてもすでに数回にわたりまして法務大臣及び関係局長その他の方々お尋ねさしていただいたわけでございますけれども、まずこれは私どもが強く、このような答申が出るのではないかということに対して危惧の念を抱いておったわけでございますが、まず予想されておったような刑法全面改正という答申法制審議会で出された、その事柄について社会党をはじめとするところの野党が強く反対の声明を昨日発表いたしましたとおりでございますし、また日本弁護士連合会をはじめとするところの多くの民間団体が強くこの答申につきまして反対の、反発の色を示しているわけでございますが、まず法務大臣に伺いたいと思いますが、この答申が出されて、そしてその後事務的にどのように法務省とするとこれから具体的にお取り組みになる御予定なのか、まずその点についてのことをいままでもお尋ねしておりましたが、まあその段階ではまだ答申も出ておらないのでという保留つきの御答弁しかいただいておりませんでしたので、いよいよそれが現実化したわけでございますから、今日のこの段階において、法務省としたら今後どのようなことをなさるのか、具体的に御答弁いただきたいと思います。
  7. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) まだ昨日答申を受けたばかりでございますので、よく内容検討いたしておりませんが、従来審議会の過程においても議論になった点、その他十分に再検討をいたしまして成案を得たいと、かように思っております。  そこで従来の審議経過等についてはこれから大事な問題だと思いますが、私ども列席しておりませんので、必要がありましたら当時その席に列席しておりました者からお聞き取りをいただきたい、かように思います。
  8. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、この審議経過につきまして御担当刑事局長から御説明をいただきたいと思います。
  9. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 審議経過ということは、二十数回にわたります法制審議会総会審議のすべてを申し上げるお尋ねのことではなくて、要するに結論についての意見内容をかいつまんで申せというお尋ねと理解申し上げましてお答えを申し上げたいと思いますが、結論から申しまして、昨日の審議会総会におきまして、多数をもちまして刑法全面改正の必要がある、その場合に、改正要綱改正刑法草案によるというのが多数の意見でございまして、しかし、それは全員一致ではなくて、少数反対意見があったというのが結論内容でございます。  それからなおその多数意見、いわゆる必要性があるという意見と、必要はないという意見中身を概括して申し上げますと、賛成論方々は、現行刑法施行からすでに六十年余りを経過しており、その間における社会情勢及び国民のものの考え方変化には著しいものがあるので、現代要請に真に適応した刑法改正が必要であるということを必要性の大前提となさいまして、国民にわかりやすい刑法という観点から、現代語を用いて、かつ、判例のとる理論をできる限り明文化しようとしている点は評価すべきだ。それから処罰すべき行為と処罰すべからざる行為とを明確に区別しようとする罪刑法定主義趣旨に沿って、総則及び各則の規定を再検討し、また、責任主義に立脚して幾つかの規定を整備しておるという点は評価すべきだ。近年における刑事政策発展及び犯罪者処遇技術の進歩を考慮し、保安処分累犯者に対する不定期刑などの制度新設した。保安処分は、社会からの隔離よりも本人の治療に重点があり、不定期刑も量刑の一般基準にのっとって量定されるので、いわれるように不当に人権を侵害するおそれはないということで、そういう新しい刑事政策発展に即応した制度として評価すべきだということ。それから時代の変遷による新しい犯罪現象に対応して、集団反抗とか、騒動予備とか、人質強要とか、あるいは企業秘密の漏示、自動車の不法使用、あるいは自動設備不正使用等新設をしたが、それぞれについて、その必要性人権保護要請とのかね合いが慎重に考慮されておって、不当に人権を侵害するものではない。それから重く処罰すべきものは重くし、軽く処罰すべきものは軽くしていると見られるので、全体としてはバランスが保たれているので、重罰主義批判は当たらない。特に、死刑を科し得る犯罪の数が大幅に減っているということ等を内容として賛成論が述べられたということが言えると思います。  それに対しまして反対論立場の方は、改正草案というものは準備草案を踏襲し、その準備草案戦前刑法改正仮案を土台としているため、改正草案の基本的な性格は戦前の仮案と全く同じであり、憲法精神を無視し、極端な国家主義に立つものであるという御批判。それから構成要件の不明確な規定が少なくない、それは人権の侵犯につながるということ。あるいは保安処分とか不定期刑制度は、いずれも要件が不明確で、乱用のおそれがあり、拘禁の長期化によって人権侵害を招くおそれがある。特に保安処分については、精神医学界等反対があって、科学的にそのメリットが確実に立証されておらない段階でそういう制度をとるのは時期尚早であるというような意見がございました。それから処罰の範囲が著しく拡大しておる。集団犯罪、各種秘密漏示罪の新設等により、正当な権利の行使や表現の自由が抑圧される懸念がある。それから犯罪が減少しつつあるのが現状であるのに、いたずらに刑罰を重くする重罰化の傾向が著しいというような点をあげられまして、改正刑法草案に盛られる要綱草案中身によるならば刑法改正をすべきではないという御意見であったということが法制審議会結論に至る直前におきますところの各委員の表明の内容でございます。
  10. 佐々木静子

    佐々木静子君 この採決の結果は、二十人のうち十五人が賛成で、五人が反対、ほかは欠席、あるいは留保というふうに報ぜられておりますが、そのとおりでございますね。
  11. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 何票対何票であったかということは、審議内容秘密ということには当たらないと思いますので、あえて申しますと、おっしゃるとおり十五対五。賛成十五、反対五でございますが、つけ加えて申し上げますと、欠席された方は、海外渡航とか、いろいろなことで欠席の方がおられましたが、その中には前回の、きのうではなくて、その前の五月十四日の総会におきまして、賛成の、いわゆる、賛成と申しますか、改正の必要ありと、そうしてその場合にはこの要綱によるべきだという意見を表明された方がほとんどでございます。その点をつけ加えて申し上げておきます。
  12. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいろいろの御配慮から、あるいは他の用件から欠席なすったのだと思いますけれども、少なくとも三対一というふうな関係で、かなり、このように非常に国民からたいへんに激しい批判を受けている法制審議会のメンバーの中においてすらということばをあえて使いますが、四人の弁護士会代表方々が強く反対されたほか、東大の憲法学者の宮沢さんが反対されたというようなこと。このようなことから考えましても、この法制審議会委員というものは、必ずしも国民の世論というものをまっすぐに反映したところの方々ばかりでないということは、かねてもう当委員会でも何回も取り上げたことでございますが、そういうふうな事柄について、また私ども聞き及んでいるところでも、またいま御報告で承ったところでも、たいへんに強い反対論が展開されたということでございますが、そういう中で、あえて多数決で採決されたところのこの法制審議会結論というものを、法務大臣とするとどのように受けとめておられるのか。かなり多数の反対意見があったということについて、どのように大臣はこの答申を受けとめて今後対処していかれるのか、そこら辺の大臣の御所信というようなものを伺いたいと思います。
  13. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御指摘のような結論であったようでございますので、私どもとしましては今後検討する機会に、従来の法制審議会における少数意見というものについては、その少数意見にはたして十分の理由があるのかないのか、そういう点を十分に検討してまいりたい。法制審議会で多数で通過したから民主的のつもりで、多数の意見が正しいのだというとり方もいかがなものかと、かように思っております。したがって、そういう方向に向かって今後省内あげて十分な検討を続けてまいりたいと、かように思います。
  14. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、前の法務大臣田中法務大臣は、何度もその法制審議会答申というものに自分たちは必ずしも拘束されないと、全くの参考意見であるという御答弁を、これ議事録でも明らかなように、何回も繰り返されておられるわけですが、中村法務大臣もやはり同じ考え方でいらっしゃいますか。
  15. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは法制審議会でどういう結論になろうとも国会の同意がなければ成立しない問題でございますから、国会、各方面の意見、また審議会における少数意見等、十分にこれは掘り下げて検討をして、しかる上に成案を得るように努力すべきである、かように思っております。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 その事柄につきましてはあとで承りたいと思いますが、この事務的な手続面のことにつきましては、具体的に、これは国会の御答弁いただきましても、いずれも、答申がまだ出ていないからという仮定的な御答弁しかいずれの政府委員の方からも、あるいは大臣からも伺っておりませんが、先ほど申し上げましたように、いよいよ正式に答申が出されたわけでございますが、いま大臣がおっしゃいましたように、国会へ出すについてはいろいろの人の意見を聞いて法務省の間で練り直さなければならないという、必ずしも法制審議会答申というものに拘束されるわけではないという御趣旨の御発言に承ったわけでございますが、これは結局、そのような作業を進めるについて、どのぐらいの日数といいますか、年数を考えていらっしゃるのか。それよりまず前提として、この答申刑法全面改正が必要だという答申が出されたわけですが、法務省とすると、刑法全面改正をなさるおつもりなのか、それとももう一度検討なさるおつもりなのか、まず第一段階としてそのことを伺いたいと思います。    〔委員長退席理事後藤義隆君着席〕
  17. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 刑法それ自体は御承知のとおりたいへん長い年月を経てきておりますから、また条文ていさいなぞも片かな式の昔流でございますから、現在に合ったような改正をするという基本には私ども賛成してよろしいと思います。ただ改正中身については、これはいろいろ議論があった点もございますので、おそらく反対しておる人たち刑法改正が頭からいけないんだという御意見じゃないだろうと思うんです。やはり幾つかの問題点について御議論があるわけでございますから、そういう点について十分検討してまいりたいと、かように思います。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 やはりそうすると改正をするということにおいてはもう既定の方針どおりというふうに承っていいわけですね。そうしますと、いま反対をするものも必ずしも頭から反対でないだろうと思うという御発言でございました。そこは私どもといたしましても、片かなを平がなに直すということぐらいのことであれば、これは必ずしも反対というわけではございませんけれども、この刑法改正案、この答申内容を見ましても、非常にこれは全体的にもう国家主義的な、権威主義的なものであるということで、私どもはもう全面的に強く反対しているわけでございますけれども、個々的な問題についてはあとで質問さしていただきますが、具体的にそうすると、全面改正を法案として国会にお出しになるまでにどのような作業をされて、かつ、どのぐらいの日にちに国会へ上程される御予定なのかということを具体的にお話しいただきたいと思うわけなんです。
  19. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) これからの作業予定でございますが、先ほど大臣申されましたように、現在の刑法施行になってからすでに六十年の経過、その間における国民社会生活変化、その他刑法理論発展というものを考えますと、やはりこの際刑法改正する必要があるということについては大臣の仰せられとたおりであると思います。問題はこれからの作業あるいはその内容の問題でございますが、さしあたり私ども事務当局として考えておりますことは、昨日答申をいただきました改正刑法草案というものの内容につきまして、審議会でどのような審議がなされて、その審議会が多数の意見がよしとした内容がどういう背景でどういう理由でかようになったかという審議経過を含めまして、それぞれの条文につきましての説明書をつくると。それによってまず何よりも私痛感いたしますことは、改正刑法草案内容というものが正しく国民の皆さまに理解を得まして、それを賛成されるかどうかは別といたしまして、どういう内容であるかということを正しく理解された上での国民各層の御意見を伺うということがぜひ必要でございまして、それを見ないで、単にこう一定の立場から反対反対と言われては困るということ、それでは責任のある政府案をつくれないので、答申中身を正しく理解されるために、まず解説書等あるいは審議経過等を明らかにする作業事務当局としてはしなければならないと。それをやったあとで、政府案の作成ということに、刑法そのものについて作業に取りかかるわけでありまするが、同時に、この刑法改正要綱を見ますると、保安処分新設とか独立処分としての没収の言い渡しというようなことで、刑法の中で保安処分という制度ができましたけれども、どのような手続でそういうものを言い渡すことになるのかという手続法規定刑事訴訟法改正という形でなされなきゃならないだろうということがございますので、まず刑事訴訟法改正についての考え方というようなことをいろいろまとめなければならない。  それから刑法改正に伴いまして、矯正関係法規監獄法とか、あるいは保安処分を受けた者を収容する施設の法律とか、あるいは保護観察を中心といたしまして保護関係法規改正を加える必要のある部分もありますので、これは刑事局というよりも矯正局保護局において刑法改正に伴う必要な改正が何であるかということの検討を進めなければならないというようなことが省内の手続ではまず必要でございますし、そのほかに今度の刑法改正におきましては爆発物取締罰則とかあるいは公害罪法とかあるいはハイジャック法というような特別法規定されておりましたものを刑法の中に取り入れている部分もございますので、そういう従来の特別法にあったものを取り入れたことに伴うそういう関係法規との整備の問題、あるいは懲役刑禁錮刑の最低が三月ということになりましたり、罰金の一番下が一万円ということになりますと、従来の行政法罰則刑法とのバランスにおいて妥当かどうかというような問題というようなことがございまして、各省所管行政罰則との調整の問題もありまして、その点におきましては各省庁とも連絡をとらなきゃならないというような仕事もございますので、事務当局として事務的に事柄を進めていくといたしましても、さようなことのおおよそのめどがつくのにおそらく一年ぐらいは早くてもかかるのではなかろうかと予測しております。そういう意味におきまして、刑法改正というのは大作業でございまして、きのう答申を得たからあす提案というようなことにはまいらないということを考えております。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまお伺いしてますとたいへんに膨大な作業をなさらなければならない、私もこれ全面改正ということになると当然これはもうたいへんな作業法務省の中で待ち受けておると思うわけですけれども、それをいまの御答弁で伺うようにわずか一年でできるというふうにお思いになるわけですか。
  21. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 人のなすことでございますから確実にとは申せませんけれども、一応事務当局ではそのようなめどでやれる自信はあるということでございます。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまこの刑法中身を知らずに国民がいろんな批判をするのは好ましくないから、できるだけその内容国民に明らかにして、いろんな団体などにこれについての意見を求めるようにするというお話でございましたけれども、大体どういう団体、どういうところに意見を求められるのか、ずいぶんたくさんあると思いますけれどもお述べいただきたいと思うわけです。
  23. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 御指摘の、どのような団体に聞くということまでは別にきめておりません。ただすでにもう日本弁護士連合会その他、各界各層からある程度専門家筋意見は出ておりますけれども、私ども特にどの団体からどういう方法でとは、あるいは公聴会を開いてという具体的なことは考えておりませんで、まず何よりもそういうものを天下に明らかにいたしますれば、国民皆さんが関心をお持ちのことでございますので、きゅう然として賛成反対意見が集まってくるものと見込んでおりますが、具体的にどの団体にどうしようということまでは考えておりません。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 刑法問題は最近各新聞でかなりに取り上げられておりますので、だんだんと国民の中にもほんとうの外側の輪郭ぐらいはわかりかけているわけでございますけれども、これは正直申し上げまして私どもの手元などにも非常に資料不足でございます。こういう法務省からの刑法改正草案などはいただいておりますけれども、非常に法務省での、何といいますか、いままでの法制審議会審議でも秘密主義をとられておられる。そういうことで、正しいことを知らずにいろいろと批判されては困るという刑事局長の御発言でしたけれども、正しいことを知ろうと思っても皆さんこう隠してしまわれてなかなか知らしてもらえない。国会国政調査権を持っておるところにおいてそうでございますから、ましてやほかのところで正しいことを知りたくても、正確に知りたくてもなかなか資料が手に入らないというのがこれ現実でございまして、そういう点におきましてもっと資料を公開なすったらどうなんですか。そんなにいまのお話のように国民に広く意見を求める、りっぱなものであるならばなおのこと、たとえば法制審議会における審議の状態などを少なくても国会議員とかあるいは日弁連その他ですね、知りたいと思っている人たちに、やはりこれだけの大きな問題なんですから、少々費用がかかっても議事録などをもっとどんどん公表なさらないと、これは全部を知らずにいいかげんなことを言うなとおっしゃるけれども、それは知る由もないというのが現実でございますので、そのあたりはいかがでございますか。
  25. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 自由な審議を活発にやっていただくという観点から、法制審議会議事は非公開の原則で今日まできておりまして、特に問題とすべきは、だれがどういうことを言ったかわかるということが各委員審議発言の自由に対する制約になるおそれがあるということで、そういう観点から、だれがどう言ったというような意味での議事の公開ということは慎むべきであるという考えでおりますが、内容、一般的にどういう議論があったかということは、実はいままで法制審議会のあるたびに法務省記者クラブに参りまして担当官からこまかく御説明を申し上げてきたわけであります。しかし、どこまでもまだ法制審議会審議中であったということもありまして、広く世間の皆さんにその中身を広報するということはとらなかったわけでありまするが、いまや法制審議会答申を得た段階におきまして、政府が責任を持って政府案をつくる段階にまいりましたので、この際は、先ほど申しました非公開の原則の精神に反しない限度におきまして、どういう審議が行なわれて、どういう過程でかような意見になったかということをできるだけ詳細に国民皆さんに知らせる努力は怠るべきではないと考えておりますので、できる限り佐々木先生御指摘資料等につきましても御提供申し上げる努力は怠らないつもりでおります。
  26. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは前回にも申し上げましたが、法制審議会議事録ですね。これは途中まで刑事部会のはいただいている。調査室にいただいているわけでございますが、これはちょっと二年前の段階までですが、その後何回も督促させていただいてるんですが、まだできてないとかなんとかいうようなことでございまして、いま承ってみると一年たてば大体そういうふうなもろもろの作業も終わるんだということであれば、早くそのぐらいの資料国会に出していただかないと、もういただいたときは読む間もなく、すべてのことが法務省で終わっているというようなことであればどうしようもないわけでございまして、今度の結論も出たわけですから、これらの資料議事録を何日ごろに国会のほうへお出しいただけますでしょうか。
  27. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 法制審議会議事録の整理等に当たっておりますのは、実は刑事局ではなく、司法法制調査部の所管でございますので、いつまでにそういうものが段取りができるかということはちょっと私からお答えいたしかねるわけでございまして、ひとつその点御了承願いたいと思いますが、早くそういうものを提供してほしいという佐々木先生の御要望があったことは調査部に十分伝えたいと思っております。
  28. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実は調査部長にも私最近もお願いしてあるわけなんですが、まだ整理ができておらないと。しかし、できておらないと言っても、前にいただいたのは二年前のことなんで、きのうの分をきょう出してくれという無理なことは言っておらないんで、また一ぺんにもらってもみなが読めるわけでもないですから、いつぐらいまでのはできておるんですか、それは刑事局だっておわかりになるんじゃないですか、刑事局だってできたその資料はごらんになるんでしょうから。
  29. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) いま佐々木先生御指摘の二年前というのは部会の案の説明書のことだという理解なんですが、そういう説明書は、先ほど申しましたように、できるだけ早くつくって差し上げたい。しかし、いま担当審議官の話じゃ、説明書といいましてもできるだけ詳細に議論経過等を書くとするとやっぱり二ヵ月ほどかかるであろうと、こう言っております。
  30. 佐々木静子

    佐々木静子君 いや、きのうの分が二カ月かかることはわかるんですけれどもね、もうそれまでにだいぶ整理できてる分があると思うんですよ。二カ月かかるとしたらいまから二カ月前までの議事録はできていると思いますので、ですから、そのできた分だけでも早くお出しいただかないと、見せていただくほうにしたところで一ぺんに読めるわけじゃないんですから、できている分からだけでも早く御提出いただきたい。それはお約束していただけますね。これは刑事局長さんのほうからの責任で、これは調査部が御担当か知りませんが、すぐにでもお出しいただけますか。
  31. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 先ほど冒頭申しましたように、議事録はだれだれ委員がどういうことを言ったという内容議事録が正式の議事録でございますから、それは公開するわけにはいかないといたしますと、その点についての発言趣旨、真意は間違えないようにして、そのだれだれ委員であるということは秘匿したような、いわばそういう意味での編集をしなければならないという作業がどうしても必要なわけでございますので、その点で日数が少々かかってもしかたがないんじゃないかと思いますのと、従来議事録そのもの、あるいはいま申しました編集した議事録そのものの提出ということは、対国会関係におきましては当該法案が提出されるときに審議資料として出しておったというのが慣例のようでございます。そこで調査部としては、従来の慣例との関連においてどのように対処すべきかということを考えておるんじゃないかと推測するのでございますが、いずれにいたしましても、先ほど私が申し上げましたように、何らかの方法で審議会審議がよくわかるような、議事経過がわかるようなものを早くつくって差し上げるということだけはやるべきであろうというように考えております。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 何回も同じことを言っておりますけれども、いまの分はいいんですけれども、いままでの分はお手元にあるはずですよ。いままでも半分いただいているのですから、あとの半分がもうほったらかしになっているというわけじゃないと思います。  それから、おことばを返すようですけれども、これだけ大きな国民の問題であり、かつ、私どもの世代だけじゃない、次の世代あるいはその次の世代にも影響を及ぼすような重大な問題で、これを法制審議会のメンバー二十何人というような人のその人権とかなんとかいうことも考えないといけないかもしらないけれども、その発言を人に知られては困るとか隠してやらなければならないというその問題と、どういう過程でこういう法案ができたのかということを知らして正しく国民批判をさせなければならないというその利益を考えると、もちろんあとのほうにウエートを置かなければならないのがあたりまえのことであって、これは法制審議会内容は知らすわけにいかない、委員発言は守ってやらないといけない、そういうふうなことばかり言って、これは徳川時代の知らしむべからず、よらしむべし、そのものじゃないかと思うんです。そしていまも、先ほどから答申内容を各界に問い合わせて広くそのことについて意見を求めるなどと言われても、資料もなしに意見を求めるなどと言ったってそれは全く形式的な法務省の言いのがれ以外にないと思うのです。まず、意見を求めるならば資料を提出しないといけないし、それから法制審議会に正式にかかってからだって十年以上かかっているわけでしょう、専門家が集まって。刑法改正作業を始められたのがもう大正年間なんですから、もう半世紀かかっているわけのものの集約したものを、それは法務省もたいへんかしらないけれども、それに対して意見を求められる各団体にしたって、少なくても早く資料を出さなければこれはわからない、検討のしようがないわけですね。ですから早急になぜそういう資料をお出しにならないのか、お出しにならないとすれば国民に知られては困ることがたくさんあるからお出しにならないと私どもは解釈せざるを得ないわけなんですが、その点はいかがですか。
  33. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 先ほどから私の申し上げていることがよく理解していただけなかったのが残念でございます。私ども法制審議会審議内容秘密にして刑法改正をはかろうなどというような考えは毛頭ございません。ただ、だれがどう言ったかということまで言わなくても審議内容が詳細にわかれば、それでいわゆる皆さんに御批判をいただく資料としては十分ではないか、そういう意味の限度において非公開の原則を守らしていただきたいと、こう言っておるわけでございまして、審議内容が誤解されたり隠したりということになってはならないことはもう御指摘のとおりでございますので、できる限り早く正確な資料を出すということをお約束したいと思います。
  34. 佐々木静子

    佐々木静子君 では資料の話はまたあとで伺うといたしまして、ともかく正確な資料を少なくても国会には全部そろえて出していただかないと、いまのお話のように、普通資料は法案が来てから出すんだ——それじゃ、たとえば政党の意見を求めるなんと口先だけのことであると、そのことだけでもはっきりわかると思うんですよ。各政党の意見をよく聞いて、そして法案をつくるなどと一方ではおっしゃっておりながら、一方ではまた、そうした資料国会へ上程したときに出せばいいんだ——それじゃ政党の意見を聞こうなどということは全くから念仏であって、口先だけのことだと思うんですけれども、いかがですか。大臣はその点、資料のことについてどうお思いになりますか、なかなか私どものほうに資料はないわけですけれども
  35. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 国会成案を得て御審議を願う段階でできるだけ詳細に出すことは当然でございますが、お話のように、資料の整備ができ次第、できるだけ早く国会調査室あたりには資料を出しまして、議員皆さんがごらんいただけるような体制をつくって御検討願うのが当然だろうと、かように思っております。
  36. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは早急にいまお持ちになっている資料は出していただくということは約束していただけますね。——うなずいていらっしゃるのでそういうことは約束いただけたと思って次のことに移りますが、いま、各界の意見を聞くと同時に、刑事訴訟法改正を準備しなければならない、たとえば保安処分とか没収なんかが新たに新設されたり、あるいは没収の規定が変わったりしているために刑訴法を改正しなければならないというお話でございますが、これは刑事局長に伺いますが、具体的に刑事訴訟法をどのように改正する準備をしていられるのか。たとえば保安処分の問題で、これは私ども強く反対しているわけでございますが、特に心神喪失者あるいは心神耗弱者などの精神障害者ですね、精神障害者に対してこの保安処分を、これは看護処分ですか、言い渡すというふうな場合、これはどういう訴訟手続になるのか。これ、無罪の判決を受けても、これは保安処分は言い渡される場合もあれば、不起訴の場合でも保安処分を言い渡される場合もあるようでございますけれども、そういう場合の手続法をまずどのように考えていらっしゃるのか、簡単に御説明いただきたいと思うわけです。
  37. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 御案内のとおり、この特別部会に刑法改正の問題が総会から付託されました段階におきまして、特別部会ではさらに五つの小委員会を設けまして、前後百五十回にわたる審議をしたことは御承知のとおりでございますが、その小委員会におきまして、保安処分制度そのもののほかに、一応やはりどういう手続で言い渡すのかも少し頭に置きながら保安処分制度というものを考えるべきだという小委員会の御意見で、保安処分制度を扱った小委員会におきまして、決定とまではいきませんが、大体小委員会ではこういうことを検討すべきではないかという一つの要綱の案がございますが、その要綱の案などを重要な参考資料としてこれから手続法考え方をまとめていきたいと、かように思っておりますが、それによりますと、「独立の保安処分請求を認める範囲」をどうするかとか、あるいは「手続の大綱」としては、保安処分手続は、若干の特則がある場合のほかはやはり刑事手続の例によってやるべきであろう、あるいは「保安処分言渡前の身柄の措置」をどうするか、あるいは「保安処分の請求」はだれからするのか、「検察官の請求がなくても保安処分を言い渡すことができることとするかどうか」というようなこと、あるいは独立の手続保安処分を言い渡すとすれば、検察官の請求によって開始することにすべきか、そして請求の方式としては公訴提起の方式に準じてはどうか、あるいは「弁護人」につきまして、「保安処分の適用が予想される被告事件の手続及び独立手続においては、弁護人がなければ開廷することができない。弁護人がないときは、国選弁護人を付する。」、あるいは、保安処分を言い渡すについては、やはり重大なことでございますので、その要否に関する証拠調べをするべきではないか、その手続はどうするかというようなことを小委員会の過程におきまして要綱としてつくっておりますので、かような点につきましてこれを重要な参考資料としながらこれから改正要綱をまとめていきたいと、かように思っております。
  38. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、そうすると普通の場合は起訴状の中に保安処分を求めるというのも一緒に書くようになるのですか、どういうふうになるのですか。全然手続はまた別の裁判になるのですか。どういうふうになるのか、非常にこれは全く解せないわけですし、まずこの保安処分というのは大体責任能力のない人間に裁判をするわけですから、これ、刑事裁判の根本からくつがえすことになると思うのですけれども、そこら辺は、責任能力が、責任がある場合に有罪判決を受ける、責任があるということが前提に立つ普通の刑事事件の起訴と、保安処分を求めるという起訴というものは、これまるきり異質のものだと思うのですけれども、それをどうやって一本にするのか、全くこれは解せない規定だと思うのですけれども、そこら辺、もう少し具体的にどういうふうなことを法務省は考えていられるのか、おっしゃっていただきたいと思います。
  39. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 法務省考え方は先ほど申しましたように、これからまとめるわけでございますが、その場合に小委員会でつくられた要綱を重要な参考の資料にしたい。その小委員会要綱によりますと、いまお尋ねの点は意見が分かれておりまして、いわゆる責任能力がないので訴追をしないとかあるいは親告罪について告訴がないので訴追をすることができない場合というような場合に、独立の保安処分請求ということが考えられる、そういうときには検察官の請求によってそういうことをやることにしてはどうかという案になっておりますし、なお、そういう訴追をして刑事責任を問うが、同時に保安処分の必要もあるという場合もあり得るという制度になっておりますが、その場合におきまして、検察官の請求によって裁判所が言い渡しをするようになるのか、あるいは検察官の請求がなくても裁判官の判断において言い渡すことにするのかという点は、小委員会におきましても意見がまとまらなかったと聞いております。
  40. 佐々木静子

    佐々木静子君 そして、これ保安処分を一たん言い渡されても、治療処分などの場合ですね、これは「三年とする。」となっておりますけれども、また「裁判所は、必要があると認めるときは、二年ごとにこれを更新することができる。」というふうなことになっておりますが、これは更新するのも、やはりもちろん更新の裁判というものを公開の場でされるわけなんでしょうね、そこら辺はどうなっているのですか。これ、うっかりすると、もうこの規定どおりいくと、そのまま刑務所の中に、治療という名前でほうり込まれてしまう可能性がきわめて多いし、またこの百四条の第二項によりますと、この更新が二回までできるが、ただし「短期二年以上の懲役にあたる行為」というと、かなりのものがこれに入ると思うのですけれども、それを「するおそれのあることが顕著な者」という、何もそういう罪を犯したものじゃなくても、これはまた「短期二年以上の懲役にあたる行為」をしそうだという場合には、この限りではないですから、これだったら一生ほうり込もうと思えば、これは幾らでも可能なわけですけれども、これらの手続は一体どうなるわけなんですか。
  41. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) その点、更新につきましては、もちろん裁判は必要であるというふうに私ども考えておりますが、公開するかどうかについてはまだこれから検討する必要があるというふうに考えております。  それから原則は結局二回の更新、最初が三年でございますから、最大限七年が原則である。ただ、重い刑罰、これは殺人とか強盗とか強姦の場合ということになると思いますが、そういう重い犯罪を犯すおそれのあることが顕著な者についてはこの限りではないということで更新が許されるということでありまするから、そうどんなものについても更新がなされるというようなおそれはないと思います。
  42. 佐々木静子

    佐々木静子君 これを公開か非公開か考えておらないというのは話にならぬのじゃないですか。これほど重大な、しかも何も罪を犯していない人を入れるわけでしょう。それを非公開の場でやるなんというようなことはもってのほかじゃないですか。  それから中へ入れられている人ですから社会との接触はないわけでしょう。その人が短期二年以上の犯罪を犯すおそれがある——おそれがあるかないかというようなことをだれが証明するんですか。日ごろ接触しているのは刑務所の看守しかおらぬですよ。その人がおそれがあると言えばたぶんそういうことになるんでしょう。裁判官にしたところで公判で初めて顔を見る人が——犯罪の事実を調べるのは裁判官の仕事だけれども、これからこの人間がどんな悪いことをするであろうかなどということは、裁判官はそんなことできないはずですよ。そういうふうなことをもしどうしても裁判官がやらなくちゃいけないというようなことになれば、これは日ごろ接している人といったら看守ぐらいしかいないでしょう。看守の人が、刑務官が、これはまた悪いことをしそうだと言えば、そうかなということになる可能性が非常に多いんじゃないか。そこら辺のところは一体本気になってお考えになっていらっしゃるのかどうなのか、どういうふうなことを考えておられるんですか。
  43. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) もちろんまじめに考えておるわけでございまして、深刻な思いでこの法案に臨んでおるわけでございますが、先ほど、何もしていない者がとおっしゃいますけれども、百二条をごらんいただきますとおわかりのように、「精神の障害により、第十六条第一項(責任能力)に規定する能力のない者又はその能力の著しく低い者が、禁固以上の刑にあたる行為をした場合において、」——いわゆる客観的に犯罪行為をした場合において、「治療及び看護を加えなければ将来再び禁固以上の刑にあたる行為をするおそれがあり、保安上必要があると認められるときは、」ということで、あくまでも責任能力のあるなしあるいは高い低いは別といたしまして、禁錮以上の刑に当たる行為をしたことを契機といたしまして、将来にさらにそういう行為をするおそれがあるという場合でございますから、何もしない者を保安処分で入れるというようなことではございませんことは、それはもう佐々木先生も御承知のことと思います。ただ、いまおっしゃるその「おそれがあり」の認定が刑務所の看守あたりしかわからぬじゃないかという御指摘でございますが、これはあくまでも最終的には裁判所が判断をなさることでございますので、わが国の司法裁判所は、こういうことについては慎重かつ的確な御判断をなさるものという前提で、乱用のおそれはないというふうに考えておるわけであります。
  44. 後藤義隆

    理事後藤義隆君) 質疑の途中でございますが、委員異動について御報告をいたします。  重宗雄三君が委員辞任され、その補欠として増原恵吉君が選任されました。     —————————————
  45. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、何もしておらないと——これは何もしておらないんじゃないですか。今度の改正を見ても、刑の執行と治療処分との場合は刑の執行が先行しているわけですから、普通原則として。だから、刑の執行を終えたらその罪はもう清算されているわけでしょう。それからあと保安処分というのは、何もしていない者を拘束しているわけでしょう、治療という名前で。そして、さらにそれを二回更新して、そしてさらにまだ何かしそうだという全く一方的な主観でまた拘束しようというわけですから、これは私が思い違いをしているのでも言い間違いをしているのでもなくて、まさに何もしていない者を拘束しようという規定で、これは私の言っているとおりじゃないですか、どういうふうに言いかえられようと。  それからもう一つは、これは何といっても裁判官が慎重に適正に御判断なさることだからと言うけれども、これは裁判官は法律の勉強はしているでしょうし、法律の専門家ではいらっしゃいましょうけれども、将来この人間が悪いことをするかどうかなどということを法廷で顔を見て見抜くような、そういう能力というものは裁判官は普通の人よりもすぐれているという保証は何一つないですよ。精神科のお医者さんですら、これから先何をするかということがわからないのはむろんのこと、現在この人たち精神障害者であるかどうかという認定も専門の精神科医ができないということをこれは精神神経学会で表明しているわけなんですから、それを、将来この男が何をするか、犯罪を犯すか犯さないか裁判できめろと言われたって、幾ら慎重か適正か知らないですけれども、そんなことできるはずがないじゃないですか。でたらめにもほどがあるんじゃないですか。その裁判官をきめる基準に、将来この人の運勢を当てるような能力にすぐれているかどうかというようなことで裁判官というものがふるいにかけられているわけでもなければ、司法試験の中にそういう学科があるわけでもないし、研修所でそういうふうな占いを習ってきているわけでもないし、できようはずがないじゃないですか。そこら辺はどう考えておられるわけですか。
  46. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) まだ政府案を提出しておる段階でございませんので、政府案として説明する立場にもございませんけれども法制審議会におきましては、さような判断のときはもちろん専門家である精神科の医者の鑑定というようなことを当然の前提として裁判所は判断するであろうということであったと思います。特にまた、そういう判断が裁判所でできなければこういう制度は適用されないということに帰着すると、かように思います。
  47. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはもう法務省で十分刑事局長御承知のとおり、日本精神神経学会がこのようなことはできないと早くから声明して強く反対しているわけでございますし、それでわれわれが実務家の端くれとしても、この精神鑑定というものがどんなにまちまちであるか、一つの事件についてでも。まあ正直なところ、これは心神耗弱だとか喪失だとかいうふうになるたけ鑑定してほしいなというときにはあの先生だったらたぶんそうするであろう、いやそうならぬほうがいいなというときにはこの先生だったらたぶんそうであろうというふうな、これは精神医学者というものには非常に個別差があって、もう百八十度違う結論が同じときの鑑定でも出るというのが、これは裁判の上では常識なわけでございますから、そこら辺のことを考えたら、おそらくこれは検察側がまた拘束しようと思うときには何でも精神病だというふうな傾向の強い精神科医師に鑑定させるようになるでしょうし、これは本人は拘束されている、しかも少なくとも多少は普通じゃない、それが精神故障者ということになるかならないかは別として、非常に孤独な立場で、しかも社会から隔離されている、それだったらこれは防御のしようもなければ、そういう傾向の人たちにこれは精神病がまだなおっておらぬと言われればこれは幾らでも更新できる。もう一たん入ったならば永遠に出てこれない、死ぬまで入っていなくちゃならないというふうな可能性は、これはきわめて多いじゃないですか。大体健全な人間でもこんなところ——刑務所にやはり長いこと入っていれば多少は狂ってくると思うんですけれども、そこがますますこういう状態に置かれたら、これはもうとてもまともじゃしゃばには帰れないというふうに思うんですが、そこら辺公正な裁判ができるというふうにお考えになるんですか、どうなんですか。
  48. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) いま佐々木先生御指摘のように、一部精神医学界の方からこういうことは不可能であるという意見が出ておることは承知しておりますが、それがすべての精神医学界の意見であるかどうかについては若干問題があるのではなかろうかと思いますし、従来わが国の精神医学者が犯罪人の責任能力についての鑑定というものを裁判所は尊重いたしまして判断をしておりますが、そう誤りがなかったというのが実績でもございますので、こういう判断ができるものであろうということで法制審議会はかような制度を考えたものと推察いたしておりまして、そういうことが科学的に絶対だめなものであるということになれば、御指摘を待つまでもなく、かような制度はとるべきではないということに相なりますが、その点は慎重に検討していかなければならぬと思っておりまするが、法制審議会としてはそういうことが科学的に可能である、そうして裁判所がそれをそういう鑑定を経て慎重な判断をして的確に適用するであろうという信頼のもとにかような制度についての答申があったものと考えております。
  49. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから矯正局長に伺いますけれども、これはいろんな矯正施設を見学さしていただいたりしましても、たいていのところで医者がいないので困るとか、週に一回だけ来てもらってまとめて見ているとか、まあいろいろな話を聞くわけです。内科のお医者さんは何とか無理してぎりぎりにでも確保していらっしゃるけれども、ほかの専門医というものはなかなか矯正施設では手に入らない、たいへんに御苦労なさっているという御陳情をどこの刑務所なり拘置所へ行っても伺うわけなんです。そして、前にも伺ったんですけれども精神科医というのはほとんどいまの矯正関係のところにはいらっしゃらないと。何か全国で精神科医というのか心理学の専門家が五人しかおらないとかいうようなお話。まあ、これは精神科医とはまた違いますけれども——というような話も伺ったんですけれども、そこら辺のところ、これ、いろいろこういうような人たちを預かるといっても、また刑事局長お話では、有能な精神科学の力でそれができるんだというようなお話ですけれども、これは鑑定だけじゃなしにここで治療をやるんですから、普通の病院でもこのごろは精神科のお医者さんというものは全然数が足らなくて引っぱりだこなわけですけれども、そういう人が、かりにこういう法律をつくって、矯正施設へ来てくれるという自信がおありなんですか。かり自信があるとおっしゃれば——まあ、あるとおっしゃることは簡単でしょうが、どういうわけでそういう方々を確保することができるというふうにお考えになるのか。これ、専門医がいなくちゃ、この人たち、ほうり込んだって単に拘束しておりの中に入れておくというだけのことで、何にも治療にならぬと思うんですけれども、そこら辺のめどはどうなっているんですか。
  50. 長島敦

    政府委員(長島敦君) ただいま御指摘がございました刑務所の医療問題でございますけれども、先生御指摘のように一般社会も医療で困っておりまして、矯正施設も同様たいへん困っております。ただ、先生おっしゃいました数は多少誤解がございましたと思いますが、精神医学者——まあ心理学者はもっと多数入っておりますが、精神医学者につきましても——御承知の医療刑務所がございます。医療刑務所の中の八王子にございます医療刑務所とかあるいは岡崎の医療刑務所、あるいは九州の城野でございますが、この三つの医療刑務所は、精神疾患を持っております受刑者もそこへ集めてくるということで、ここには精神医学者が配属になっております。この新しい保安処分ができますと、当然のことでございますが、そのための新しい施設ができる——できなければならぬと思います。その施設は、精神障害者を入れます場合には、当然のことですが、精神医学者を中心とした施設ということでなければならないわけでございまして、そのためにはたいへんな苦労が要るというのが率直なところでございます。ただ、いま八王子等でかなり修練を積んできておる医者も一部はございますので、そういうようなお医者さんにお願いを申し上げまして、極力そういうお医者さんを確保するという努力を今後続けなければならないというふうに思っております。同時に、この施設をつくるということになりますと、施設の敷地の問題とかいろいろなまた難問がございます。で、これらの問題も、結局こういう処分がつくられるということになってまいりますれば、その執行当局としてはあらゆる努力を今後重ねてまいりまして、確保に努力したいということでございます。  なお、一言申し上げますと、この保安処分施設、特に精神障害者を入れますような保安処分施設という考え方になりますと、これはもう刑務所と申しますよりはむしろ非常に精神病院に近いものに性質上なるものだろうというふうに考えております。そういうかっこうのものができますように、今後この保安施設法というものを考えてまいりますのと並行いたしましてそういう面の努力を今後続けたいというふうに考えておるわけでございます。
  51. 佐々木静子

    佐々木静子君 この間も実は刑務所の中で自殺者が非常に多いというお話を私も数字を聞いてびっくりしたわけです。まずこれは、ことしになってから全国で何人ぐらい矯正施設の中で自殺をしてられるのですか。
  52. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 正確に、ただいま資料を持ってまいっておりませんので、記憶ございませんが、約十名前後であるというふうに記憶いたしております。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはまあ拘置所もあるでしょうが、原則として刑務所ということになれば、責任能力のある人ばかりが入って、そしてそういうふうにやはり半年の間に十人とかなんとか自殺者が出ておる。そういうときに伺いますと、何ぶん人手が足らない、予算が少ないからなかなか十分なことができないんだと。また私も事実そのとおりだと思います。担当者が怠慢だからそういう事故が起こっているんじゃなくて、いろんなことをやっているけれども、やはり人手とか予算などの面で十分なことができずにそういう事故が起こるんだというふうに理解さしていただいているんですけれども、今度は心神喪失やら耗弱の人をたくさん、どういうことにしろ預かるわけですけれどもね。いまのように責任能力のある人ばかりが入っていてもそういうことが起こる。一体これで矯正当局はほんとうに責任を持てるという御自信がおありなのですか。矯正局長、非常に理想主義的にこの刑務行政ということに対して意欲的に取り組んでいらっしゃると思うんですけれども、そこら辺、ほんとうに理想的な矯正というようなものをやることが、いまの法務省のこれで、多少は法改正になれば予算とかなんとか変わるでしょうけれども、こういうスタッフでできるというふうに本気になってお思いになりますか、どうですか。
  54. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 御指摘のように、精神障害者というのは非常に自殺の可能性が強うございまして、現在民間の精神病院等でも自殺が大きな問題になってきておると聞いております。現在持っております陣容ではとうていここに予想されておりますような保安施設はできないと思っております。で、外国の例なんか、私も二、三そういう施設を外国で見てまいりましたけれども、非常に整備されたりっぱな施設でございます。そういうものをぜひこの制度を取り入れるといたしますれば実現したい、そうでなければ、おっしゃいましたようないろんなむずかしい問題が起こるというふうに思っております。
  55. 佐々木静子

    佐々木静子君 この精神病者は非常にいろいろな点で事故があったり、あるいは十分な医療が受けられないというのは、むしろこれは経済的な理由によることがたいへんに多いと思うんですよ、国の行政の貧しさから起こっている問題で。かりにいまのその外国のようなりっぱな施設をするとすれば、むしろ現行法のままで厚生省のほうへそれだけの予算を回して、厚生省でもっと——精神病で入院したいけれども、もう受け入れがないから入れないとか、それから精神病で入院するというのは非常に費用が高くつくので、家族としても.しかたがないからうちの中で座敷牢のような状態に入れておくとかいうようなことが多いからいろいろな問題が起こっているので、これはむしろ厚生行政が貧困だからこういうことになってきているというふうに私ども思うんですけれどもね。そういう点で、外国でこの保安処分というのがあるから日本でもしなくちゃならないというふうにお考えか知らないけれども、これはいまのスタッフとか、いまの状態で保安処分という制度を導入しても、これは頭の、机の上ではなるほどこれはいいかもしれないなと思うかもしれませんけれども、これは私はもうほんとうに、絶対と言っていいくらい、うまくいくはずはないと思うんです。  これは私も、ついこの間も、私は民間人だから看守の人と出会うことがわりと仕事の関係でありますけれども、別に私悪いことをして刑務所なんかに入っていって看守と出会っているわけじゃなくっても、おい、こら、おまえとぼろくそですよ。この間も私、公務員の名刺で行っているのに、私はどづかれなかったけれども、ほかの弁護士は看守になぐられた。これは別に表ざたにしようとは思いませんけれども法務省のお役人にはそういう人に限って非常に丁寧にされるから、看守というのはまずまず信用できるというふうにおそらく矯正局長は思っていられるんじゃないか。矯正局長にはそれは礼儀を尽くされるでしょう。まさか、おい、こら、おまえとは言わないでしょう。ですけれども、一般の民間人には、それはもうむちゃくちゃにひどい言動を吐いている人も大ぜいの中にはいるわけです。これは大ぜいいらっしゃるから、全部に教育が行き渡らないとおっしゃるし、また私もそうだと思うんです。資質のいい方もいらっしゃるけれども、大ぜいの中にはやはりいろんな方がおられるというふうに理解しているから、その事柄をどうこうと言おうとは思いませんけれども、しかし社会から隔離された中にあって、しかも収容されている身分で、しかもその人が精神に異常があるとなれば、これはよほど高度な資質を持った、よほどの人権意識の高い人間じゃなければ、これはとうてい安心できる状態には置けないんじゃないか。そして大ぜいの中には一人や二人むちゃなことをやるのができるとおっしゃるけれども、これは、外部の者に対してはどなろうと多少暴力をふるうようなことがあっても、それはいいですよ。だけど内部にこれは国家権力で拘束しているんですから、その人たちに対して人権じゅうりんをするようなことが起こり得るという可能性がゼロ%ではないわけですからね、そこら辺のところを矯正局長としてほんとうに自信があってこういうことを言っていらっしゃるのか、これはやっぱり無理なんじゃないかなと、私はほんとうは無理なんじゃないかと思っていらっしゃるんじゃないかと思うんですけれども、その点矯正の行政について一〇〇%の御自信を持ってこういうふうな保安処分というものを導入しようとお考えになっていらっしゃるのかどうか。まあ自信がないとはおっしゃらないでしょうけれども、いかがですか。
  56. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 先生御指摘のように、一部の職員にたいへん態度が不良な者等がおりましたそうで、まことに申しわけないと存じております。実はいま矯正を社会にもっと理解してもらうようにということをいつも私は主張し、事あるごとにそう申しておるわけでございまして、そういうことで、一般の方々に対する接遇の態度、所内に対する、収容者に対する態度ということについてもっとみんなで考え直さなきゃいかぬということで事あるごとにいま指導を進めております。で、おっしゃいましたこの治療処分を入れます保安施設でございますけれども、これまた今後これを検討してまいるわけでありますけれども、私の理想から申しますと、これはやはり精神病院に似通ったような、そういう雰囲気を持った施設、いわば入ってくる人は罪を犯した人ではございましょうけれども精神病ということで入ってきておりますから、その病院としては病人として扱うというのが本則でございまして、ちょうど八王子の医療刑務所等もそういうことで、あすこへおいでになりますと一般の刑務所とはかなり変わった雰囲気があるというふうに私も見てまいりましたのでございますけれども、そういうことで、もしこういうものをつくるということになりますれば、そこの職員は十分に選びまして、また研修もしまして、病院的な雰囲気をつくって上げていくという努力を続けていかなきゃならないというふうに考えております。
  57. 佐々木静子

    佐々木静子君 それからこれに関連して、話は変わりますが、監獄法の、というよりも今度は矯正施設法ですか——改正の問題を、これはもう以前から六、七回にわたってこの委員会でも伺ってるんですけれども、その作業はもうどこら辺まで進んでるんですか。これも何かいまの局長お話では一年後ぐらいに国会に出せるんじゃないかというふうなことだとすれば、もうかなりの輪郭ができ上がってしまっておらないととうてい間に合わないし、また監獄法自身にしても、これは関係団体とかいろんなところに意見も聴取していただかないと、頭から、こんなものつくったからこれでやれと言われても、これは日弁連その他非常に困るわけでございますので、大体どこら辺までどういう作業が進んでおるのか。そして、その進んでいる段階においてやはり国会に大体こういうものをつくりつつあるんだという御報告なり資料の御提出なりをこれはぜひしていただかないと困るわけですが、どうなっているんでございますか。
  58. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 監獄法でございますけれども、今回の刑法改正草案答申されたわけでございますが、ここの中に、直接現在の監獄法に影響を及ぼす規定がいろいろございます。その一つの規定は、今度の四十七条という草案がございますけれども、そこに、「刑事施設における行刑は、法令の定めるところに従い、できるだけ受刑者の個性に応じて、その改善更生をはかるものとする。」という一つの受刑者処遇の基本原則が示されております。「個性に応じて、その改善更生をはかる」というのがございますので、当然のことでございますけれども、個別処遇ということに重点を置きまして、その改善更生ということをはかると、これが新しい監獄法をつくってまいります場合の基本になるものというふうに考えております。同時に、刑法改正によりまして、たとえば拘留刑というものが従来より長い期間、九十日以下になってまいります。そうしますと、こういう短い拘留刑をどういうかっこうでやるのかということも当然に監獄法の問題で起こってまいります。そのほかに従来から進めております監獄法改正作業というものは、それを別といたしましても、新しい国際的な刑事政策といいますか、監獄、行刑の進歩に応じまして新しいものを取り入れていくと、もっと有効な方策を取り入れると、あるいは一方では収容者の法的地位と申しますか、そういうものを、いまの監獄法はあまり簡単でございますから、もう少し具体的にはっきりとしなきゃならぬというような問題がございます。さらに新しい問題と申しますか、としては、さっきも申し上げましたけれども、将来の行刑というものができるだけ市民に開かれると申しますか、隠密裏の隠れた行刑ということでない、そのためにどういう方策をとっていけばいいのかという点も一つの問題と思います。  こういう問題がございまして、実は先生御承知のように、矯正局の内部で従来作業を進めておりまして、一応の矯正局の中の考え方というのはまとまったわけでございますけれども、私参りましてから、これを省内の関係部局を網羅いたしまして、そこから参事官級の方に御出席いただいてずっと審議を続けております。何しろ問題が非常にむずかしい問題が多数ございまして、昨年一ぱいかかりまして大まかにいろんな問題点について自由討議をいたしました。本年に入りましてからそれを少しずつ詰めてきておるわけでございまして、現在の進行状況は、全般から申しますと約三分の一程度までまいったかというふうに考えておりますが、今後入ってまいりますところは、いよいよ収容者の処遇の基本的な問題にこれから実は取り組んでまいるということでございまして、また、そういった省内の関係部局との連絡調整にいま時間をかけておりますので、それが終わりますと局長会議、省議等で御検討いただきまして、お許しを得て法制審議会にこの要綱を御説明申し上げて御審議をお願いしたいというふうに考えておる段階でございます。そういう意味でたいへんおくれておるのでございますけれども、まだ局長会議、省議等にかける段階にも至っておらないのでございますが、刑法答申がございましたので、全力をあげて極力この作業を進めたいというふうに考えております。
  59. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、めどとするといつ大体でき上がるわけですか。
  60. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 私の努力目標としましては、私の手元でやっております調整を年内に終わりたいというふうに考えておるのでございます。
  61. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、私ども刑法と違って監獄法改正ということは、早くこれは改正すべきであるということを、前から強く主張しているわけでございますが、まあこれは刑法と不可分一体の関係かもしれませんが、大体一年ほどおかかりになるという刑事局長の御答弁でございますので、監獄法というか矯正施設法の御提案はそれと同時期ぐらいになさるおつもりなのか、どうなんですか。
  62. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 法制審議会審議がどういう状況になりますか、これまた各界の皆さんの御意見を聞きまして、私としては理想的な新しい刑事施設法をつくりたいという念願に燃えております。そういうことで法刑審議会がどういうふうに進行してまいりますか、その状況にもかかるわけでございますけれども、できれば事柄の性質上、刑法改正案がかかりますれば監獄法改正案も同時に国会にかかるということが私個人としては望ましいと考えております。
  63. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは刑事局長に伺いたいんですけれども、私ども刑事政策の本で保安処分というのはいいのだというお考えのお話もいろいろ読ましていただいたわけでございますけれども、大体の刑事政策の本には、まあすべての先生——私は不勉強だからあまり全部の先生のことは知りませんが、短期自由刑というのは非常に弊害があるというふうな説がたいへんに多いのではないかというふうに考えているわけでございますが、今度の刑法改正で拘留の刑が上限が九十日にまで引き上げられていままでの三倍になった。と同時に、いままで拘留の規定は三つしかなかったのが今度は数えてみると二十一ございますね。非常に拘留の範囲が広くなったとか、刑法だけじゃなしにいろいろな特別法で拘留に処するというのがほかにも、特別法にもずいぶんございますから、こうなってくると、私ども刑事政策の面では保安処分というものも一応理屈としてはいいんだという考え方もかなりあるということになってくると、今度それと同時に進められる短期自由刑ですね、これはどういうわけで——刑事政策的には好ましくないというふうに教えられておりますし、また事実、再犯者の中に受刑中にいろんなことを覚えてきたり、悪い友だちをつくったりして再犯に落ちているというようなケースがたいへん多いことなど考えますと、どういうわけでこういう拘留というようなことの幅を広くおつくりになったのか。それと、言うまでもなく懲役とか禁錮なら執行猶予がありますけれども、拘留の場合は執行猶予がないわけでございますから、これは形の上では軽くても実際に行かなくちゃならないということになってしまうわけです。そこら辺はどういうわけで、どういう刑事政策的な意味から拘留刑の幅を非常に広げられたのか、そのあたりの御説明をいただきたいわけです。
  64. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 従来、短期の自由刑については弊害があるという刑事政策学上の主張もございますが、他面におきましていわゆるショートショックといいますか、短いショック療法というようなことにも意味のある場合もあるという説もございまして、法制審議会審議の過程におきましては、そういうショートショックによって矯正できるような人間に対する刑として拘留刑というものは存在の意味があるということであったと承知しております。
  65. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいろいろ考え方があるかもしれませんけれども、この拘留罪というのは、ショートショックというような御説明もありますけれども、これは私は実際にそんなに拘留でぼんぼんほうり込むということよりも、拘留するぞということでこれは国民を威嚇するという効力というものに非常にウエートを置いていらっしゃるんじゃないかと、私はそのように解釈できるわけです。そして非常に幅を広げていられるでしょう。罰金刑だけで十分だと思うことを罰金と拘留とを併科している。一般的に罰金刑だけだったものに対して今度自由刑を科しているという部分ども目につきますけれども、そのあたりなど、これ重罰主義ということで非常にたたかれている根拠の大きな一つだと思いますね。ほんとうにささいなビラ張りとか——ビラ張ったところで今度だったら上限がたいてい科料ですから九十日ほうり込まれる可能性だって出てくる。軽犯罪法で見ると、道路の上にたんつばを吐いただけでも科料ですから、これだってへたすると九十日ということも、ほうり込まれることも可能である。これ一般的な国民感情からは全然合わないですよね。実際に裁判の上で、たんつばを吐いたからということで九十日、二へん吐いたからということで併合罪で百二十日というような判決は、まず幾ら非常識な裁判官に当たってもそういうことはしないと思いますけれども、それは犯罪を予防という意味ではそういうことはある程度の意味はあるかもしれないですけれども、そういう刑罰を科するぞ科するぞということで国民を指導していこうというのは、これは非常にまずいんじゃないか。これは私どもの生活の中に警察の目がいつでも光っているというふうなことによって国民ににらみをきかすというようなことにつながってくるんじゃないか。そのあたりは大臣はどうお考えになりますか。長い問の弁護士としての御経歴のお深い大臣は、その点をどうお考えになりますか。
  66. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) まだよく検討しておりませんのではっきり申し上げかねますが、私どもの考えから言えば、刑はそう重くなくても、一年懲役に行くのも五年行くのも、一年行っても反省する者はしますし、五年行っても反省しないやつはしないんですから、まあそういう点はこれからの検討材料ではないかというように考えております。
  67. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはぜひ非常にベテランでいらっしゃる、御経験の深い弁護士でもいらっしゃる大臣にこの量刑のことについても特に力を入れてお考えいただきたいということと、それから先ほど来お話にありました、いままでの判例にあったところをこの刑法総論に非常に条文で織り込んでいるわけですね。これは判例でほぼ固まっているから条文にしたと、おそらくそういうふうに御説明になると思いますけれども、私はこの総論を見まして、これは一体事件を頼まれたらどうして弁護士するんだというふうに、これ非常に弁護活動というものができなくなってしまいますね。こういうことになりますと。これは刑法のおもしろさというか、刑事事件のおもしろさというものは、いろんな学説があって、その学説を戦わせるところに刑事裁判のおもしろさがあるわけで、弁護する者の立場にとってもいろんな角度から弁護できるわけですけれども、もう今度はこれ共犯問題にしても錯誤の問題で多少ちょっと申しわけみたいに色をつけただけで、もうともかく何でもかでも検察側にとって有利な判例を全部法文化してございますね。おそらくこれでいままででも共謀共同正犯というものが非常に幅広く解釈されて、私どもの目から見ればたいへんに乱用である。何でも正犯として処断されているところが、今度はそれが単なる判例なり学説上の問題じゃなしに、法文で共謀共同正犯というものをがちっと打ち出してしまったら、これはもう従犯なんていうものはほとんどなくなってしまうんじゃないか。しかも最高裁の判決によってすら共謀共同正犯というものが成り立つためには相当制約があるにもかかわらず、今度のこの規定ではおそらくもう実に簡単にだれもかれもが共同正犯に仕立て上げられる可能性がたいへんに強いんじゃないか。そういう点でこれはどうして弁護をするんであろうか。また、これ一審判決を控訴なり上告で争うにしても、いままでは学説上の争いあるいは判例がよくない面があればこっちのこういういい判例があるからこれに従うべきだというようなことで論争ができ、かつ、それによって被告人の人権を守ることができたわけですけれども検察側に都合のいいのをみんな法文化してしまったのではこれはもう全くどうしようもないんじゃないか。そういう意味において私はいままで総論のところはあまりよう勉強さしていただいてなかったんですけれども、よく読んでみますと、これじゃがんじがらめでどうにもならない、たいへんに人権保障に欠ける規定がもう随所にあらわれていると思うんです。そのあたり、やはり大臣も、何も日弁連の会員だから弁護士会側についていただきたいというわけではありませんけれども、これは法務大臣としてのお立場で、在野法曹としての御経験を十分に活用されて、これは国民が納得されるような、かりにどうしても改正されるなら、これじゃとうていだれも納得するはずがないと、各論に至ってはなおのことですけれども、総論だけで時間がかかっちゃったわけですけれども、そのあたり大臣、どのようにお取り組みいただけるでしょうか。
  68. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) まだとくと検討いたしておりませんが、あるいは草案起草者が罪刑法定主義を基本としてはっきりとっておりますから、そういうようなことであまり厳格過ぎておるかもしれませんが、これらの点につきましては十分検討いたしたいと思います。
  69. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひそのようにお願いしたいと思いますことと、各論に全然触れる時間がないものですから、大急ぎで各論のところに若干入らせていただきたいと思いますが、今度の各論を拝見しまして、その罪が一般的に重くなったというのでも、それが全部が高くなっているならまだしものこと、国家法益に対する罪、たとえば公務執行妨害罪などが三年から五年に上がっている、それでいながら公務員の職権乱用とか、そういうのはちっとも刑は上がっておらない。そういう意味において非常に国民を取り締まり、お上を大事にするというふうに、たいへん一方的な刑の引き上げ方、それから特に集団犯罪ですね、いままでこれは処罰の対象にならなかった集団で何々をしたもの、集団反抗罪とか、それから準恐喝ですか、それから集団で何々した場合というのに対する処罰がたいへんにきつくなっている。新たに設けられている。そこら辺に、今度の刑法改正の政府の意図しているところ、あれやこれやおっしゃっても、これは国民大衆を弾圧するためにおつくりになった法律だというふうに考えられても、知らぬでおまえら言うているんだとおっしゃっても、これはだれもそんな当局の説明には納得しないと思います。非常に片寄った処罰規定が設けられていると思うんですけれども。  それともう一つは、罪刑法定主義罪刑法定主義とおっしゃるけれども罪刑法定主義とおっしゃりながら、非常にその構成要件がばく然としているのが多うございますね。たとえば、これは前回にも申し上げました騒動罪あるいは騒動予備罪などですね。騒動罪でも、前の騒擾罪と概念は同じだというふうにおっしゃるけれども、私はそれだったらもとどおりでも、字がむずかしかったら騒乱罪でいいんじゃないか。ところが、騒動罪とすることによって、もうちょっと小規模な騒乱でも有罪とすることができるというふうなところも意図しておられるんじゃないかと思うし、特に共犯者に対して、付和随行者がいままで罰金刑だけであったところが、今度は自由刑を科しておりますね、ことばは変わっておりますけれども、「これに関与した者」に。そこら辺でたいへんにその騒動罪というものに対する処罰がきつくなってきた。それでいながら、騒動罪の概念というものがほとんどはっきりしない。その上、いままでなかった予備罪というものを設けていらっしゃるわけですけれども、この定義などをちょっと伺ってみたいと思うんですが、これは準備草案のときには、騒動予備罪については、武器を準備して、多衆を集合させた者というふうに規定しておられたわけなんですけれども、今度でき上がったところによりますと、二人以上通謀して、多衆を集合させた者、または凶器を準備した者というふうに非常に幅が広くなってしまっているわけですけれども、そのあたりは、この規定ですね、どのように定義づけて考えたらいいのか。これは刑事局長から御答弁いただきたいと思うわけです、騒動予備罪の概念について。
  70. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) その前に、刑の引き上げの問題でございますが、法制審議会におきます各則の罰則の刑の問題につきまして、基本的に考えられたこととして私どもの承知しております点は、まず従来の現行刑法よりも、生命、身体に対する罪というものについては、少し財産犯に比べて刑がバランスがとれない、もう少し刑を引き上げるべきではないかという考え方が基本にあったと聞いております。したがって、公務執行妨害罪の刑が引き上げられたのも、公務員の生命、身体に対する罪という観点から見れば、刑が引き上げられてしかるべきではないか。なお、職権乱用については、すでに公務員の職権乱用については刑が引き上げられておるということも念のために申し上げたいと思います。さようなことで、法制審議会が、単に重罰というよりも、やはり賛成意見にあるように、重かるべきものは重く、軽かるべきものは軽くという観点から多数意見ができたというふうに私どもは聞いておる次第でございます。  それから騒動予備関係でございますが、御指摘のとおり、準備草案では、武器を準備して、多衆を集合させたということでございますが、今度の改正草案では、多衆を集合させ、または凶器を準備した者という意味におきまして、準備草案の場合よりも予備罪の範囲が広がっておるということは御指摘のとおりだと思います。ただ、構成要件といたしまして、「二人以上通謀して、」という点が準備草案にはないという点では一つのしぼりがかかっておる。しかしまあ結果的には準備草案よりもやや広がっておる構成要件になっておるということは御指摘のとおりだと思います。
  71. 佐々木静子

    佐々木静子君 二人以上通謀してといっても、人が集まるのに、何の会合しようにも一人でやることなんてほとんどないので、二人以上で話し合って、こういうことをやろうかと、別に犯罪じゃなくったってですね、会を持とうとか、どこへ行こうとか、これは一人でやるというようなことはまずあり得ないわけで、これは二人以上通謀してということばを使ったからといって、しぼりということには全然ならないわけだと思うのですが、どういうわけでこれはこの範囲を広めて、こういうふうに構成要件をばく然とさせたわけですか、もう少し合理的に納得のいく説明をしていただきたい。
  72. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 要するにばく然とさせたというよりも、構成要件としては、準備草案構成要件の明確さにおいては違いはない、ただ範囲が若干広がっておるということでありまして、ばく然ではないと思いますが、要するにいわゆるこの種騒乱、騒動の罪の実態に照らして、準備草案規定では、騒動の予防をはかるための処罰規定としての騒動予備罪としては狭きに過ぎるという御意見であったというように聞いております。
  73. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから先ほど申し上げました騒動の罪ですね、この関与者に対しても体刑をもって臨んでいるというのは、これは私は、こういう何かがあれば、これはもう全部ひっくるめて一網打尽に警察がつかまえやすいように、こういうふうに単に関与したという者までも全部ひっくるめて逮捕することができるというのがこのねらいだと思うのですけれども、どういうわけでそういうちょっとこれに関与したぐらいの人、いままで付和随行であれば罰金であったところが、どうしてこういうふうに刑を高くされたわけですか。
  74. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) これまた審議会審議経過に徴しますと、付和随行というのは、単に付和随行したと、文字どおり付和随行でも処罰できるということでありましたが、最近におきます判決の動向を見ますと、単に付和随行したというよりも、やはり共同加功の意思を持って、参画の意思を持っていわゆる付和随行の形で参画しているという者を処罰するように解釈が、運用が狭くなってきておるその実態に即しまして、この付和随行ということばと現在における裁判例の動向とのギャップを埋めるという意味におきまして、現在の裁判例の動向に従いまして、この改正案のように「参加し、」ということばにして、付和随行よりも、明確にこの騒動に参画する意思を持って参加したという者を処罰するということにしたほうが明確になる、そのかわりに付和随行というものが、当初構成要件の解釈から予定されるよりも、参画の意思を持って参加するということでございますから、科刑についてはきびしくなってもいいのではないかというお考えと聞いております。
  75. 佐々木静子

    佐々木静子君 ほかにもいろいろお尋ねしたいんですが、時間の関係もありますので、一つだけ伺いますと、国家公務員の機密漏示罪ですね、これの機密が、これは御説明によっても、実質的な機密だというふうに説明書にもなっておりますが、それはそのとおり間違いはないわけでございますね、形式的な秘密じゃなくて実質的な秘密だ。
  76. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 御指摘のとおり、秘密というよりも実質的に高度の秘密ということでございまして、単に形式ではないというふうに考えております。
  77. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、それが当然に秘密に該当するかどうかということは裁判所の判断にゆだねられる、そういうふうに解釈していいわけでございますね。
  78. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 御指摘のとおりでございます。
  79. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、なぜこの公務員の機密漏示罪というものを設けたかというこの説明書に、国家公務員法百条あるいは地方公務員法で処罰できないところの公務員もあるから対象にしているというふうな説明書法務省のこの書類に書いてあるんですけれども、それはたとえばどういう職業の公務員をいうわけですか。
  80. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 特別職の公務員といたしましては、たとえば国会議員というものは特別職の公務員である、それは国家公務員法の規定の対象外でございますから、そういう人がいわゆる現行におきましては秘密を漏らしましても、モラルとしてはともかく、法律的には犯罪にならないということはございますが、今度この刑法改正草案が実現を見ました場合におきましては、秘密の程度は機密でございますが、それを漏らしたということになればその人たちは処罰の対象になるという意味において、従来よりはある意味で処罰の範囲が広がるということにはなると思います。ただ、刑法犯と入れた事情といたしましては、機密という高度の秘密は、それを漏らすという行為は単なる取り締まり法規違反ではなくて、自然犯と同視すべきだというお考えでかような規定が取り入れられたものと聞いております。
  81. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実は昨晩も私、衆参両院の秘書団に刑法改正についての講義を頼まれまして話をしたんですけれども、これは国家公務員の秘密漏示罪に特別公務員が漏れておるからそれらを取り締まるためにというのが法務省のねらいのようだと、そうでしょう、いまのお話、これもそう書いてありますけれども。ところが特別公務員、順番に調べてみますと、裁判官の場合は裁判官の法の中でみんな秘密を漏らしてはいけない、順番に全部なって、考えてみると、これは国会議員国会議員の秘書とどうもこの二つがねらわれているというふうに、これは順番落としていったら全部落ちるんですよ。国会議員が職務によって、職務上知り得たことを漏らしたら、これは法務当局乗り出してきて、あるいは警察が乗り出してきてそれを処罰するというのは、これは私はむちゃくちゃな話じゃないかと思うんですけれども、これは実は秘書団も私もそこまでよく考えておらなかったんですが、これ順番にお互いに研究していくとどうも国会議員国会議員秘書がこの対象にしぼられそう。これはおそらく考えてみると、国家権力のほうは、与党のほうはあまり問題になさらぬだろう、野党の議員が職務上知り得たことを国政報告で地元へ行ってやれば、これは正当な理由に基づくかどうかという判断は、そんなものは警察官がやるんですから、これは国会議員としての職務上知り得たことじゃないかと言ってつかまえようと思ったら幾らでもつかまりますよね。これは私とんでもないことだと思いますよ。これは立法権に対するたいへんな、とんでもない規定だと思いますね。国会議員にまでこういう警察権力の手を不当に伸ばす、正当な理由がある場合はその限りじゃないなんて言って、裁判の結果無罪になったって、国政報告をやっている最中に警察官につかまって何日もほうり込まれたりしたら、これは現実の問題として国会議員発言を封ずるという一番陰湿なやり方だと思いますけれども、そういうことはどういうふうに考えていられるんですか。
  82. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) おことばでございますが、国会議員発言を封ずるというようなことが目的ではございませんで、あくまでも国家のいわゆる機密に類する高度の秘密は何人といえども刑罰をもって処罰するということをもって防ぐべきだということが基本でございまして、それが自然犯であるという考え方でございますが、その結果、国家公務員法の適用を受けない国会議員、それから行政府に参画されます大臣、政務次官等の特別職の方も機密を漏らす限りにおいては一般公務員等と同じように処罰されるぞということでございまして、ねらいを国会議員につけたなんてとんでもないことでございます。そんなことは全然考えておりません。結果的に、自然犯に類する機密の漏示は国会議員といえども処罰の対象になるぞということでありまして、国会議員を処罰したいから設けたということは、これは逆でございます。
  83. 佐々木静子

    佐々木静子君 まさか国会議員を処罰するためにつくった法律でございますとは刑事局長おっしゃらぬと思いますけれどもね。しかし、法律というものはできればひとり歩きするものですからね。これはどう考えてもおかしいですよ、こういう法律は。それで、また沖繩密約の問題一つ見ましても、機密機密とおっしゃるけれども、いまの自民党政権にとって都合の悪い機密だけを、これはいままでの例から見ても問題にされるんじゃないか。そうなると、政府に対する批判とか、そういうことがなかなかできないようになるんじゃないか。また警察官は、この悪いやつをつかまえてきましたと、これは政府に気に入ろうというようなことで、出過ぎたことをやるのもいろいろ出てくるに違いないと思うんです。こういう規定をつくるとですね。そこら辺はどういうふうに考えていられるのか。一たん法律というものができれば、刑事局長はそういうつもりでつくったんじゃないとおっしゃっても、これは法律ができてしまうとひとり歩きするわけですから、大臣はその点どうお考えになりますか。
  84. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 非常に重要な問題で、十分検討すべきだと思っております。
  85. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは一つ一つを申し上げていると何時間あっても切りがございませんから、また逐次私のほうもいろいろと今後も続けてお伺いさしていただきたいと思いますけれども、例示的にどこを取り上げても、これはほんとうに見れば見るほど、よくもこれだけ問題があるものだ、よくもまあこれだけ問題のある改正案というものをお考え出しになったと、これはもうほんとうにつくづく慨嘆せざるを得ない。大臣は最初は、何も全部が反対とはおっしゃらないだろうとおっしゃいましたけれども、ここの表現さえ変えれば何とかなるでしょうとか、あるいは切り紙細工みたいに、ここをこう切ってここを継ぎ足したならば何とかおさまるでしょうとかというものじゃないように思いますね。ですから、これはほんとうに一ぺん、この法制審議会答申もさることながら、いまも大臣もおっしゃったように、これに拘束されるわけじゃないということをおっしゃっているわけですから、もう一度何とか白紙の状態に返して、小野先生をはじめおえらい先生方はこう言うておられたと、しかし、国民はずいぶんたくさんの人があるんだし、何も法律学者の意見だけで日本の百年の計をきめる刑法というような重大な問題をやる必要はない……。  それから、私はそのテレビを見なかったんですけれども、多くの方々から聞きましたけれども、数日前にも小野博士がテレビに出演されて、この刑法改正案はおそらく国会は通らないだろう、しかし、自分の刑法理論の水準の高さを世界に示せば自分はそれでいいんだと、そういう趣旨の御発言があったと。これは私は聞かなかったのを、方方からあとで見た方に聞いたわけですけれども、そういうふうな、これは幾らおえらい学者であっても、あまり国民をばかにしていただきたくないというわけです。しかし、幸いに大ものの中村大臣法務省にいらっしゃるわけですから、法制審議会の会長さんのお考えはどうであろうと、やはり国民のための刑法というものをどうしても改正なさるなら、それは国民のための刑法改正をしていただかなければならない。また、これはもう刑法をこの時期には改正しないほうがいいんだということにお立ちになるならば、これはまあここまで進んできたことだけれども改正は思いとどまる、そこら辺のところはほんとうに、先ほどのお話にもありましたように、慎重に御検討いただきたいと、これは心よりお願い申し上げたいと思います。  最後に大臣の御所信を伺って、私の質問を終わります。
  86. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私もまだ詳しいこと存じませんけれども、問題は、しぼりのかけ方なり、それがうまくかかるのかどうかという問題の点がたくさんあると思うんです。たとえば保安処分一つについて考えましても、保安処分というもののしぼりがどういうふうにうまくそれが表現できるのかどうか。ただ、実際問題として考えますと、このごろのように麻薬が流行したり、それから大ぜいの中には精神分裂症がおりまして、そういうような心神耗弱あるいは喪失の人たちは、判決をする際に、鑑定の結果心神耗弱なら執行猶予にするとか、心神喪失なら無罪にするとかするわけでございますが、ただ禁錮以上の刑を犯したけれども、執行猶予である、無罪であるという場合に、そのまま一体ほうっておいて一般社会というものは安全かどうか。私知っている友だちのうちに、中学生時代に精神分裂症になりまして、もう四十幾つにその子なりますが、親としても精神分裂を起こすというとあぶなくてしようがないというので、ふだんは何でもないおとなしい子なんですが、やむを得ず精神病院へずっと入れっぱなしのうちがある。これはまあ金があるからそれできますけれども、金のない人だとそれやっぱり世の中へほうってあるわけですから、そうするとその人たち人権もなるほど考えなけりゃなりません、人権も大事でございますが、一般社会の被害をこうむるほうの社会人の人権も考えなけりゃならないという意味からいってですね、先進国でやっておる例などをよく検討しまして、一体うまくしぼりがいき、やった結果うまくいくのかどうか、そういう点をもっと掘り下げてやるべきではないかというように考えております。実際問題として、それはないより保安処分はあったほうがいいのかというと、私はやっぱりうまくしぼりさえかけられれば保安処分というものはあったほうが社会は安全だと思うんです。精神分裂の人たちがそこら町を歩かれたら、何が一体起こるかわかりませんし、麻薬の常習患者などもその口でございますから、こういうものに対してうまいしぼりがかかって、適度の矯正方法ができれば、私は保安処分というものもあっていいと思うんですが、問題はやっぱり先進国のやり方とか、実際問題とか、そのしぼり方とか、実施する方法とかいう問題、いろいろたくさんからんでくると思います。まあこういうような点につきまして、これはいま保安処分だけ申し上げましたが、その他の点につきましても、十分に法制審議会成案に対してわれわれとしては掘り下げた検討をしていきたいと、かように思っております。
  87. 原田立

    原田立君 ただいまは佐々木委員よりこまかな質問がありましたので、私はしろうとで大ざっぱな意味の質問をしたいと思います。  今回、法制審議会から答申が出たんでありますけれども、その前に法務省として全面改正する、そういう気持ちで諮問したのかどうか。まあ答申全面改正しろと、こういうふうなことは言ってきたわけですけれども、その前の段階で、刑法改正についてどういうふうに扱うか、どういうふうにしたらいいのかと、その諮問のしかたですね。それはどんなふうだったんでしょう。    〔理事後藤義隆君退席、理事佐々木静子君着    席〕
  88. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 法務大臣の諮問は刑法全面改正を加える必要があるかということが基本のお尋ねでございましたから、法務省といたしましては全面改正をする必要があるという結論に達しておったわけでないことは明らかでございますが、現行刑法が成立いたしましてからすでに六十年、その間に社会情勢変化とかあるいは刑法理論発展とか、あるいはその間に新憲法施行というような法律制度に変更もあったので、何らかこのままでいけるかどうかということを一度検討してみる必要があるという考え方があったことは事実でございます。しかし、大問題であるから法制審議会お尋ねをして態度をきめようと、こういうことであったわけでございます。
  89. 原田立

    原田立君 法務大臣は去る四月二十四日の衆議院法務委員会答弁で、答申をそのまま法案とはしない、手直しを検討したいと、こういう御答弁をなさっておられるようでありますが、全面的に取り上げるんじゃなくて手直しは当然ある、そこら辺またこれからの検討でしょうけれども、腹案等はおありなんですか。
  90. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは手直しと言うとまた語弊がありまして、法制審議会から言われれば、結局十年もかかって苦労して答申したのにおまえかってにいじるのかということになると思うんですが、そうじゃなくて、やっぱり法制審議会の中でも幾つかの問題についてはかなり激論を戦わせて議論した点もあります。しかし、それは少数で破れたり、多数決できまったりしておりますから、そういうような点をもっと掘り下げて検討をするということと、もう一つは、幾つか考えられるようなしぼりの問題が確かにありまして、このしぼりのかけ方がうまくいかないならいっそやめたほうがいいというのもあると思うのです。しぼりがうまくかかるならこれは実行したほうがいいというのもあると思いますので、そういうような点を十分に月日をかけて検討させてみたいと、かように思っておるわけで、事務当局としましては、そういうような検討をするのには最小限度一年はかかるだろうと言っております。確かにそのとおりで、あるいはそれ以上かかるかもしれませんが、これはもう不十分でなく十分な検討を続けてまいりたい、かように思っております。
  91. 原田立

    原田立君 今回の答申が出たことによって、もうマスコミ関係のテレビ、ラジオあるいはまた学者、あらゆるところでこれに対する強い批判がきのうの夜からけさの新聞等にかけてずっと出ております。非常に大きい反響を呼んだわけでありますけれども、それは多くの人たち意見を聞いてみると、現在、終戦後つくられた新憲法のいわゆる基本的人権、国のほうの権力を少しセーブして、それで一般大衆の国民人権を尊重するという、そういう思想がここでくずされるんじゃないかという、そういうようなことが記事に載っておって、それで反対だという意見が非常に強い。だからこういう答申が出たと、答申を出した学者のいろんな考えがあって出たんだろうと思いますけれども、さて今度はこれをどう受けとめてどういうふうに今後していくのか。もちろんその基本は、現在世界に冠たるわが日本国の憲法ですね、これを、憲法を基本にして、そうしてつくられていかなければならないんであろうと、こう私はしろうと考えで思うわけでありますけれども、先ほどから大臣の、あるいは局長答弁なんかを聞いてみると、より深く掘り下げていく、しぼりががっちり合えばいいんじゃないかというような意味合いの話が出ているわけであります。けれども憲法を順守してこの改正のことは考えるんだというお話はまだ、先ほどからずっと聞いていて、まだ一言も出ていない、その点はいかがですか。
  92. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) もちろん申し上げるまでもなく、これは当然のことでございますが、現行憲法というものがある以上は、憲法精神を十分に生かした刑法改正が行なわれるべきである、私どもは当然基本としてそう考えております。そこで問題は、日弁連や何か代表を法制審議会委員に出しておりまして、大体御意見のほどはその話を聞いただけでもわかるわけです。どの点はこういうわけだから反対である、この点はこういうわけだから反対であるという点はよくわかっておりますが、一般世間は、私ども見ておると、一体刑法改正草案というものなり何なりよく読んでいて反対しているのか、読まないで反対しているのか、わからない面もあるような気がします。これは新聞を見ただけでも、新聞で今度の改正草案で刑罰が重くなった分だけけさ書いておる新聞もあります。しかし軽くなった部分もたくさんあるわけです。死刑が十近くか十以上ですかな、死刑がなくなったり、軽くなった面もあるのです。ですから書くならやっぱり重くなった面も書くし、軽くなった面も書いて、そうして両方比較検討して、一般世人が良識ある判断をしていただけるような報道を願いたいもんだと思うのですが、これからわれわれのほうとしましては、そういったような努力も続けて、正しい一般世論というものを反映するようにつとめてまいりたい、かように思っています。
  93. 原田立

    原田立君 日弁連ということとそれから一般の国民のと、こういうふうなことで二通りに分けて大臣いま仰せになったけれども、新聞やテレビなんかに出ているのはそれなりの学者の皆さん方で、国民一般大衆というよりかやっぱりかなり刑法に詳しい方々が言っている意見なんですから、これは日弁連はきちんと——そういう人たちが横っちょへはずれて無認識な評価をしているとはぼくは思わない。ちょっと大臣、もしそういう無認識の評価をしているのだというような意味の御発言ならちょっと不謹慎過ぎるんじゃないかとぼくは思うんです。  それはそれとして、もちろん憲法精神は守らるべきだというお話でありました。基本的人権、主権在民、これらの思想は十分保障されたような、守るような刑法改正、そういう方向に目ざしていくんだと、こう理解してよろしいですか。
  94. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) そのとおりでございます。  それからちょっと訂正しておきますが、確かに世の中いろいろだと思いますが、まあ宮沢俊義先生は反対のようでございますが、その反対論を聞きますと、やっぱりいままで新聞等に出た議論の要旨を見ますと、どうもいまの憲法精神が生かされていないじゃないか、これが自分は反対のもとだということを言っておられるようです。大体いままで表に出た御発言としてはかなり抽象的でございますが、こういうような宮沢先生のような憲法の権威者でございますから、われわれとしましては憲法精神がどこが生かされていないか、もっと生かす道はあるかないか、そういうようなこともこれから法務省成案を得る段階で十分検討して、あらゆる方面の意見に耳を傾けて、聞かないで通っちゃいけませんから、十分耳を傾けて検討して成案を得るように努力していきたいと、かように思っております。
  95. 原田立

    原田立君 この答申が出されてから、その賛否が非常にやかましいわけでありますけれども、先ほど佐々木委員のほうからも質問がありましたが、この騒動罪ですね、騒動罪、いろいろやかましくいわれる意見の一つにですね、騒動罪を新たにつくった、さあそれによって大衆運動や労働運動に対して取り締まりをしようとする意図があるんじゃないのかと、こういうふうに新聞あるいはテレビ等で指摘されているわけですけれども、そういうような範囲まで拡大していこうという気持ちがあるのかどうか、それはどうですか。
  96. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) おそらく法制審議会委員の諸君もそういうことは考えていないんだろうと思うんですけれども、問題はやっぱりそういう疑念の起こる余地のないようなしぼり方をし、あるいはそういう表現を何かくふうして考えるべきじゃないかと思うんです。ただ、この予備罪を一体根本的にけしからぬという御意見があるとすれば私はそれに反対で、最近の学生の内ゲバなんかを見ますというと、もう初めから鉄棒をたくさん用意したりですね、けんかをするための石をたくさん用意したりというようなことがあっても、現在では予備罪がないものですから検挙はできない。これはやっぱり予備段階で検挙できればもっと被害も少なくなるのじゃないか、社会的なこの弊害も少なくなるのじゃないかということが考えられますので、これは問題は、ですからそういったようなことを取り締まろうというのがおそらく審議会委員のお考え方だと思うのですけれども、これが一般に安心のいくようなやはりしぼり方が非常に重要な点ではないか。ある種のものについては確かに私は予備罪というものはあってしかるべきだし、あったほうがいいと思うのですが、問題はそういう点にかかっているように思いますので、まあこれらの点も含めてこれから十分な検討をいたしたいと、かように思っております。
  97. 原田立

    原田立君 名誉侵害罪あるいは公務員の機密漏示罪あるいは企業秘密漏示罪、こういうようなのはですね、いわゆる国民の知る権利を不当に押えるものだと、こういう批判があります。それから外国君主、使節に対する暴行罪というものを今度はつくったと、答申でできているということは、これは天皇に対する、皇室に対する不敬罪の復活への伏線ではないか、こういう議論もある。もうきのうからけさにかけて大々的にマスコミで報道されている、そういう点であります。それに対してどういうふうにお考えなんですか。二つ合わせてお伺いしたい。
  98. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) いま御指摘企業秘密漏示罪あるいは名誉棄損に関するみなし規定の削除等につきまして、いま御指摘のような批判があることは十分承知しておりますし、外国元首に対する侮辱罪等につきましても、そういう特別の罰則を設けるべきではないじゃないかという御批判のあることも聞いておりますが、いま御指摘のように外国元首の罪についての加重規定は、これは不敬罪の復活になるという議論もございましょうが、これはやっぱり国際協調主義ということのあらわれとして外国元首に対しては丁重に扱うべきだという議論で、多数意見としてこのようなものが採用されたというふうに聞いておりまして、御指摘のように批判のあることは十分に踏んまえながらこれから政府案の作成に取りかかりたいと、かように思っております。
  99. 原田立

    原田立君 局長、要するにね、その外国君主、使節に対する暴行罪と、こういうものをつくったのはどういうわけかという理由はあなたいま説明があった。だけど、それは不敬罪復活への伏線ではないかと、こういう批判があると、その点はどうですかということに対するお答えはなかった。いかがですか。
  100. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) それは不敬罪を復活するということは、これは立法府が最終的に御決定になることでございますから、そういうことに対して立法府が御賛成にならなければ復活しないはずでございますし、法制審議会の意向としては国際協調主義ということであって、天皇に対しても当然にそういう暴行罪というものについては重く処罰する規定を設けるべきだという議論は全然なかったということを申し上げたいと思います。
  101. 佐々木静子

    理事佐々木静子君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  午後二時再開することとし、休憩いたします。    午後零時五十八分休憩      —————・—————    午後二時九分開会
  102. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  民法の一部を改正する法律案を議題といたします。  発議者萩原幽香子君から趣旨説明を聴取いたします。萩原君。
  103. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) 民法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  戦後、民法改正されて、家庭における婦人の地位は次第に向上してまいりましたが、憲法第二十四条が婚姻における夫婦の平等を規定し、財産権に関する法律の制定は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべき旨を述べているのに、これを受ける民法の夫婦財産制に関する規定は別産制をたてまえとするにとどまるため、夫の財産取得についての妻の寄与が正当に評価されず、婚姻の破綻や相続に際して妻に不当な結果をもたらす場合がきわめて多いのであります。  ことに、家族構成が以前とは変わってきて、核家族化されているのが現状であるため、親族間の助け合いが十分に行なわれず、年老いて残された未亡人の生活の悲劇が増加しています。  夫の収入は、生活の分業、すなわち妻の家事労働その他の夫に対する物心両面での協力によって得られたものであることを考慮すると、夫の名義の財産であっても、妻の協力によって得られたものについては、妻に帰属すべき分があると考えるべきであります。  つとに、戦後の新民法制定当時にも、夫婦財産共有の主張がされたのでありますが、実現に至りませんでした。近年、家庭生活の構造と意識の急速な変化に伴い、夫の名義で得た財産について、その一部が妻に帰属するものであるとの意識が高まりつつあり、学説、判例にも、このような傾向が見られるのであります。  昨年十月二十一日急逝された故我妻栄先生の最後の御講演は「夫婦の財産」についてであり、「夫婦が一体となって働くのは世の中の大原則です。したがって、どちらが取得した財産でも共有になるのが理想です。」と語っておられます。  現行民法の夫婦財産制に関する規定は、財産取得についての妻の寄与について、配慮に欠けている点で、もはや国民感情に合ったものとは言えなくなってきており、この点、世論も高まってきているので、夫婦財産制を国民感情に合うように改める必要があると考えます。  この法律案は、右に述べました理由から、憲法第二十四条の精神に基づき、夫婦間の財産関係における両性の本質的平等をさらに推進するため、夫婦財産制について所要の改正を行なおうとするものであり、その内容は次のとおりであります。  第一は、夫婦の一方が、夫婦の協力によって得た財産については、他方に、寄与分としてその財産の額のうちその協力の程度に応ずる割合の額の分与を受ける権利を認めるものとすることであります。この寄与分の割合は二分の一と推定するものとし、また、夫婦の一方が婚姻中に得た財産は、原則として、夫婦の協力によるものと推定するものとしております。なお、この寄与分は、婚姻中、これを譲渡し、または裁判上請求することができないものといたしました。  第二に、右の財産の管理処分については、他方の意思を尊重しなければならないものとするとともに、他方の意思に反して不当に右の財産を減少させたときは、減少した寄与分相当額を請求することができるものといたしました。なお、この請求権は、その行為があったことを知ったときから二年間行使しないときは時効によって消滅するものとし、その行為があったときから五年を経過したときも同様といたしました。  右のほか、施行関係及び関係法律の整理について、所要の規定を設けました。  以上が民法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願い申し上げる次第でございます。
  104. 原田立

    委員長原田立君) 以上で趣旨説明聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  105. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、まず提案者の萩原先生に伺いますが、このいまの提案理由の御説明にもございましたように、憲法で保障されているところの男女の平等、夫婦の平等というものを実質的に保障していこうという意味でこの改正案を御準備され、御提案なさったということにつきましては敬意を表するわけでございますが、どういうわけで現時点でこの法案をお出しになったか、この現時点が最も適切であるという御判断の上だと思うんでございますけれども、どういうわけでいまお出しになったのか、それを御説明いただきたいと思います。
  106. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) 実は、私は三十年になんなんとする身の上相談のおばちゃんでございます。ところが、私のところへはいろいろな問題が次々持ち込まれてまいっているところでございます。この問題に私が取り組みましたのはもう五年になるわけでございまして、その当時も実は、四十五年の予算委員会のときにもこの問題について質疑をいたしわけでございます。そのときの御答弁の中にもございましたわけですけれども、どうもいまの民法改正しないことには税法の問題にもなかなか手を触れることができない、こういうような御答弁もあったわけなのでございます。したがいまして私は、いまこういう問題をほんとうに改正しない限り、いわゆる夫婦平等ということはなかなかになし遂げられるものではございませんし、また、こういう問題がおくれているために不幸な目にあっている人たちがずいぶんあるということなのでございます。私の知っている例でも、老未亡人のいわゆる自殺未遂事件がひんぴんと起こってまいりましたり、あるいはまたその妻の中で、一生懸命になって二人で働いたのにもかかわらず、夫が死亡したときには三分の一しか自分に権利がない、こういうこともまことに不合理なことではないでしょうか、こういうような訴えも次々と参っているところでございます。しかも四十五年以降私は、予算委員会、決算委員会あるいは本会議を通じましていろいろこういうことについての質疑を重ねてまいったところでございます。ところが租税三法の質問をいたしましたときに、田中法務大臣も、いまの憲法からいって、夫婦が二人で獲得した財産が共有でないということは憲法のどこにも書かれていない、だからこういうことはやっぱり法制審議会に早くよい答申を出していただかなければならない、こういうことをお答えになっていらっしゃるわけでございますし、また予算委員会での質問に対しましても、福田大蔵大臣は、税制だけではどうしようもない、やはり基本法の民法改正しなければ税法の問題を解決することもむずかしい、こういったようなお答えもあるわけなのでございます。で、田中総理も、私自身もそういうことについてはあなたと同じような考えを持っている、こういう御答弁で、各大臣ともに非常に私の主張に対して賛意を表してくださっておりますのにもかかわりませず、なかなかにこの問題が進まない。進まない間に不幸な人が次々出てきている、この現状を私は見過ごすことができなくなりました。そこで今度は何としてもこの民法改正というものを出しまして、皆さん方の御協力をいただきながら、これをたたき台にしていただきながら、法制審議会のほうにおかれましても、この問題が早急に何かの形をあらわしていただくことを願いながら提案をさせていただいたような次第でございます。
  107. 佐々木静子

    佐々木静子君 法制局にちょっと伺いたいのでございますけれども、これを法案におまとめになるお手伝いをなさいまして、たいへんに御苦労なさったと思うわけでございますが、この改正案の七百六十二条の二の第一項ですね、「夫婦の一方は婚姻中自己の名で得た財産で夫婦の協力によるものの管理又は処分については、他の一方の意思を尊重しなければならない。」の規定、これは全く精神的な規定という趣旨でございますね。それ以上の何かをこの規定であらわしているというふうにお考えでございましょうか、どうなんでございましょうか。
  108. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) ただいま先生の御指摘がございましたとおり、精神規定でございます。
  109. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはそのあとの第三項と第四項にいずれも推定規定をつくっていられますね。これは、推定規定ということになりますと、「寄与分の割合は、二分の一と推定する。」、あるいは「夫婦の一方が婚姻中自己の名で得た財産で現に存するものは、相続、贈与又は遺贈によるものを除き、夫婦の協力によるものと推定する。」という規定でございますから、これはむろん推定ですからくつがえすことができる。こうなりますと、この夫婦の寄与分ということにつきまして、一応の基準はここに示しても、いろんな点で夫婦間にその寄与の程度とか割合について争いが起こるんじゃないか、そのあたりはどのようにこれをまとめられるについてお考えになったんでございますか。
  110. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) いまの三項、四項の規定でございますけれども、いずれも先生の御指摘のとおり推定規定でございます。したがいまして、相手方がこれに反する事実を立証してまいりましたら、当然くつがえることになると思います。したがいまして、この規定が推定規定であるために夫婦間でこれに反するかどうかというような紛争が起きることは当然予測されることだろうと思います。しかし、夫婦が円満な婚姻生活を営まれていく限りは、まずそういう紛争は起きないんじゃなかろうかということを考えましてこういう規定を置いたわけでございます。
  111. 佐々木静子

    佐々木静子君 この規定内容について法制局へお伺いするのはどうかと思いますが、第二項の主として法律上の問題について、「夫婦の一方は、寄与分として、その財産の額のうちその協力の程度に応ずる割合の額の分与を受ける権利を有する。」、これは個々の財産についてそのような分与を受ける権利を有するというふうな判断なのか、全部の包括的な財産について分与を受ける権利を有するというお考えなのか。またこれは、この権利というのは債権上の権利なのか、あるいは物上請求権のようなものなのか、そこら辺はどのようにお考えになったわけですか。
  112. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) 二項で考えております財産は、個々の財産ごとに寄与分があるというふうに私どもは考えております。  それからこの権利の性格でございますけれども、この権利は債権である、こういうふうに考えております。
  113. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは第五項で、「寄与分は、婚姻中、これを譲渡し、又は裁判上請求することができない。」となっておりますね。これは立案者の萩原先生の御意図といたしましても、おそらく婚姻中にその寄与分を第三者に譲渡したり、あるいは夫婦の間で裁判所に請求をするようなことがあるとすれば、これは円満な婚姻関係を維持するということが非常にむずかしいというようなことからこういう条文を入れていらっしゃると思うんでございますが、これはむしろ萩原先生に伺うほうが適切じゃないかと思いますが、これだったらいっそのこと婚姻中は別にどれだけの持ち分があるというようなことをおきめになる必要はないんじゃないか、もう夫婦として生活している以上は、だれが何分の一持っていようと別にたいして変わりがないんじゃないか、同一の生活共同体ですから。そこらの辺のところは、なぜこういうふうに婚姻中にそれぞれの持ち分をきめないといけないというふうにお考えになったのか。むしろ趣旨からいいますと、婚姻が終了したときにそれがどう帰属しているかということがむしろ実際上の問題になるのであって、婚姻が継続しているときは別に全部が夫のものであろうと、全部が妻のものであろうと、これは一つの生活共同体ですからどうでもいいんじゃないかというふうに思うんですが、あえてこれをこのように幾ら幾らというふうにおきめになったというのは、どういう趣旨からそのようにお考えになったわけですか。
  114. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) おっしゃるとおりだと思うんです。しかしながら、財産を途中で減少させないという意図、そういうものがあると考えていただいたらよろしいのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。婚姻中に分与いたしましてもやっぱり贈与にならないということでございますね、こういう規定を設けておきますと。ですから、その意味ではやはりこういう規定を置くということが必要ではないだろうかというように考えるわけでございます。
  115. 佐々木静子

    佐々木静子君 贈与にならないとおっしゃるけれども、贈与にならないと、かりになってもいいんじゃないか。ならないということに対する実益というのは、贈与税がかかるかかからないかと、そういう問題じゃないんですか。こういうふうにしておけば、妻が自分名義の財産を持っても贈与税がかかってこないですけれども、夫の名義を半分自分のものにしようと思えば、無収入の妻の場合は贈与税がかかってくる、だからこうしておけば贈与税がかからない、そういうふうな御趣旨でございますか。
  116. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) そのとおりでございます。  ですから、もうちょっとつけ加えさせていただきますと、やはりこれとあわせて税法の改正が必要になってくるわけでございますね。そういう意味からやはりこの規定というものは設けておかなければいけないのではないかというように考えて、あえてこれを入れさせていただいたと、こういうことでございます。
  117. 佐々木静子

    佐々木静子君 主として婚姻中のものはこれは税金面の関係であると、そういうふうに承っていいわけでございますね。
  118. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) 私のほうから補足させていただくのもなにかと思いますが、補足させていただきますと、確かに婚姻中の権利を認めましたのは、それが贈与になるかならないか、権利がありますれば当然債権の弁済という形になりまして、贈与にならないということになることが一点でございますが、もう一つは、これが妻のほうの意識の問題でございまして、お小づかいを夫からももらうという意識でおるのか、いや、これは私の権利としてもらうという意識でいるのかという差があるんじゃないかと、そんなことを考えまして婚姻中の権利を認めたわけでございます。
  119. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) ちょっとすみません、もう一つ。これは四十六年の三月二十日に私はこの問題を出したわけでございますね。我妻先生を参考人にお迎えをしてこの問題をやりましたあとで、いろんな方からいろんなお話がきたわけでございますが、そのときに、いわゆる相続ということになります場合に、私たちは、相続税だったら贈与税よりも安いということを税務署から言われた。そのときに、私は非常に割り切れないものを持ったとおっしゃった奥さんが座談会の席上でございましてね、なぜ二人で働いてつくったものが二人のものであるということを認めていただけないのか、なぜ正常な形の中で生きて喜び合うということができないのかということを非常に強調された奥さんがございまして、そのとき大ぜいの方がいらしたのでございますけれども皆さん異口同音に、あるいは離婚とか、あるいは死別するとかいったようなときにだけこういうことが認められるということは私どもにとってはまことに残念なことだ、生きて喜べるという形にぜひ持っていってもらいたい、こういうお話が非常に強く出ましたし、そういう考え方に対するいわゆる支持者が非常に多いという現状からこの項を入れさせていただいたと、こういうことでございます。
  120. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私も予算委員会で実は同じ趣旨の質問をしているのでございます。といいますのは、私も先生の選挙区の兵庫県で、主として芦屋市、西宮市、尼崎市で二百回ほど婦人の方方に講演をやっておりまして、いや、もっとやっているのですが、アンケートをとったのは二百回ほどで、そうしてこれは、月給袋の中身はだれのものかという問題のアンケートをとりましたら、これは意識の問題といま浅野部長さん言われたですけれども、夫のものだと答えた主婦はだれもおらないわけで、みんな自分のものだと思っているわけなので、そういう点ではいまさら法律をつくらなくても、主婦は大体もう半分は自分のものだと思っているし、もっと多い人は七割か八割ぐらいは自分のものだというふうに、ちょっとびっくりするくらい皆さん自分のものだと思っていらっしゃるわけなので、わざわざ法律をつくらなくても、そこら辺の民法趣旨というものは、これはもう非常に徹底しているんじゃないかというふうに私思っているわけなんですけれども、これはやはり実際問題とすると、もうどうせ自分のものだと思っている人が多いのだから、わざわざいまさら半分だというようなことをきめる必要はないんじゃないか。そこら辺はどうですか、萩原先生は非常にこの問題について深く御研究なさっているということでございますけれども、いまやはりこの二分の一という推定規定をつくるということにかなりな社会的意義というようなものがあるとお考えになりますか、どうですか。
  121. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) 私は意識がそうなっているということを非常に重要視した。といいますのは、この問題を国会に提出いたしましたときに、中年の男性の方から非常にいいお手紙を私はちょうだいいたしました。その中身は、そういうようにみんな思っているのにもかかわらず、いわゆる法律のほうが一歩おくれているんではないだろうか。ですから、少なくとも法律というものは、国民意識というものとできるだけ合ったものにしてもらわなければならないのではないか。意識でそう思っているにもかかわらず、財産を移転しようと思ったらやはり贈与税がぽっかりかかる。そのときにこれはこれはといって驚くようなことはやはり望ましいことではない。こういうことで、私はやはりこの問題は入れていかなければいけないというふうに、私の気持ちの上からもそのように考えているわけなのでございます。
  122. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから次の項に移りますけれども、第六項で「夫婦の一方が他の一方の意思に反して不当に第一項の財産を減少させたときは、他の一方は、その者に対し、その財産の減少部分に係る寄与分に相当する額を請求することができる。」、これは萩原先生、むろん婚姻中に減少した部分の請求ができるというお考えでございますね。
  123. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) そのとおりでございます。
  124. 佐々木静子

    佐々木静子君 法制局に伺いますが、「一方の意思に反して」という、その定義はどのようにお考えになるのか、まずそれを伺ってみたいと思います。
  125. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) 文字どおり「意思に反して」でございますから、それ以外に別に意味はありません。
  126. 佐々木静子

    佐々木静子君 この「寄与分に相当する額を請求することができる。」というこの填補請求権、これはやはり債権あるいは損害賠償債権の一種というふうに考えていいわけでございますか。
  127. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) この権利も債権でございます。その性格は、はっきり損害賠償債権といえるかどうか疑問ではございますが、損害賠償的な債権でございます。
  128. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは損害賠償債権ということになると、まあならなくても、この規定の上から見ると、これは一般民事事件となるわけですか、訴訟で請求する場合には。家庭裁判所で請求することができるというふうにお考えなのか、普通の一般民事事件として地方裁判所へ請求訴訟を起こすことができるというふうに考えられたのか、法制局に伺います。
  129. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) その事件は権利の存否に関する事件でございますので、普通の民事事件として普通の裁判所にかかるものと思います。
  130. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、この民事事件の一般事件として地方裁判所でこれを審理するということになると、この「不当に第一項の財産を減少させた」というような事柄の認定も、一般民事事件の財産権上の争いとして民事事件として取り扱われることになりますね。私この条文を見まして、これじゃ不当であるかどうかというようなことなどは非常にこれは一般の民事事件で審理するに適さない事件ではないか。これは本来家庭裁判所で判断——もしこういうものをやるとすれば、少なくとも地方裁判所よりも家庭裁判所に親しむべき事柄じゃないかと思います。特にこれが婚姻解消ということを前提にせずに、婚姻中でも起こせるというのが普通のかっこうだと思いますので、そのときに家庭生活の中で配偶者の一方が使ったお金が不当な支出であるかどうかというようなことを地方裁判所で審理の対象にするということは、非常にいまの家庭裁判所の制度趣旨から考えておかしいんじゃないか。また調停前置主義というものがいま家事事件については一般にございますけれども、特に婚姻中の夫婦間における争いを地方裁判所で一般民事事件として争うというようなことはもうどう考えてもおかしいんじゃないかというふうに思うんですけれども、そのあたり法制局はどのようにお考えになったんですか。
  131. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) 先生の御意見もっともでございますけれども、われわれといたしましては、これはやはり権利の存否に関する問題ではなかろうかと、そうしますと、やはり普通の裁判所に取り扱わせるのが適当じゃないかというふうに考えました。  それから調停前置の問題でございますけれども、この事件は家事審判法にいう家庭に関する事件ではないだろうかと私は考えます。そういたしますと当然家庭裁判所の調停前置になるんじゃなかろうかと、こう考えます。
  132. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはそういうことで確定判決をとるとしますね。そうすると、これ一方では家庭生活を夫婦で営んでおりながら、一方では執行吏を使って差し押えにいくというようなことにもなるわけで、しかも夫が妻のお金を使ったとか、妻が夫の金を使ったからとでもいうならまだしものこと、夫が夫の金を使って妻から差し押えられるわけでしょう。逆に妻が自分の収入を使って夫から差し押えられるわけでしょう。これ妻がいかにそういう要望が強くて、夫婦の実質的な平等というものをはからなければならないという要請があるとしても、私はもう一般的な国民がそういう法律を要求しているかどうかということ、私は非常にちょっとおかしいんじゃないか。その点は疑問に思うわけですけれども、そのあたりは萩原先生にどういうふうに、やはりそこら辺までもやらなくちゃならないんだと、そういう御意図のもとにこれを立案されたわけですか。妻の地位を高めるためには、場合によると、家庭では夫婦として生活をしておりながら、一方では執行吏に頼んで亭主の財産を押えにいくと、そこまでやらなければいまの日本の妻の座は守れないんだと、そういうふうな御意図のもとでこの立法をおつくりになったのかどうか。
  133. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) 私は、もしそういうことをやらなければならないということになりましたときは、もう破綻の域に達していると見ていいんじゃないだろうかという感じがするわけです。たとえばそういうことになる前段では、夫婦の間ではいろいろ話し合いもなされたりあるいは注意もし合ったりしたその結果ではないだろうか。にもかかわらずそういうことが聞き入れられないということになりますと、この婚姻というものははたして継続していける状態であろうかどうだろうかということがまず前段の問題になってくるんではないかしら。私はそういう訴えもたくさん聞きましたわけでございます。ところが、そういうことを私のところに訴えにこられる段階というものは、もうすでにその婚姻生活というものを継続していこうという意思が非常に薄れている場合ということが考えられると思うんです。ですから、こういうこともやはり一つのいわゆる実質的平等をはかるためには、夫婦それぞれの財産権について法律上の保障というものを高めようとすれば、そういうこともまた必要なことになってくるのではないか。こういう実質的ないろいろな資料の上に立って、あるいは実例の上に立ってこの問題を入れていきたい、このように考えたわけでございます。
  134. 佐々木静子

    佐々木静子君 しかし、この規定からいいますと、婚姻中であるということになるわけでしょう。婚姻解消した後であったら離婚による慰謝料請求権というのもあるし、財産分与請求権もあるから、何もこれによらなくたっていいわけですから、これはやっぱりあくまで婚姻中のそれらの権利が発生してない時点におけるときにはこれしか使いようがないわけですけれども、これは先生が御立法なすったんですから、これをわざわざおつくりになった御意図というもの、やはり先生のお考えとすると、そこまでやらなきゃいまの家庭の妻の座は守れないんだという、そういうお考えからお出しになったのかどうかということを伺っているわけです。いまの先生のお話だったら、別にこれによらなくたって現行民法でもできると思うんですよ。いかがですか。
  135. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) やっぱり良識ある妻の場合あるいは夫の場合でございますとね、その妻あるいは夫の不当な財産損失というようなものについても婚姻を継続していこうと思えば目をつぶることもあろうかと私は考えるわけです。ですけれども、婚姻継続中といえども、もうここまできてしまったときという段階ではやはりほんとうに正常な形にはなってないんじゃないかという感じが非常に強くするわけでございますね。だから、離婚だとかそういうことにはまだなっていないといたしましても、私はやはりそういう良識的な現状である場合には、こういうことはおそらくがまんしましょうということもあり得る問題なんだ、そこまでやろうとするというときはもう破綻の一歩手前のところだというふうな感じ方でこの問題をあえて私は立案をさせていただいたと、こういうわけでございますね。
  136. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはしかし、相手方に強制執行までするといえばそれは普通の状態じゃないと思いますけれども、この規定からいくと当然それがそういう権利までうたっていらっしゃるわけなんですよね。ただ、夫婦の一方が他の一方の意思に反して財産を減少させたと、そういうようなことは普通の家庭生活の中でも幾らでもあるんじゃないか。たとえば給料生活者の場合ですね、たくさん飲んでしまって給料が半分になってしまったというようなこともあるわけで、それだってこれに該当する。しないとは限らないわけですね。また、たとえば議員に立候補する、自分でためたお金で選挙に打って出る、しかし配偶者から見ればつまらないことにお金を使うというようなことで、自分のお金を使っておきながら、その半分を差し押えられると。別にそう破綻に瀕してない場合だってそういうことはずいぶん幾らでもあるんじゃないかと思うんですけれどもね。そういうことまで一々ここにうたう必要があるかどうかですね。これはやっぱり法律問題じゃなくって、これは法律の外に置いていい問題じゃないかというふうに思うんですけれども、かえってそのほうが家庭生活を円満に維持することができるんじゃないかというふうに思うんですけれども、そのあたり萩原先生はどういうふうにお考えになってこの規定を設けられたか。私はこれは正直に言って、婚姻中の夫婦がこれだけの権利をお互いに主張するという立法を何もつくらなくてもいいんじゃないかというふうに私は考えるものですからお伺いしているんですが。
  137. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) あのね、やっぱり夫婦間の関係というのは人それぞれございますと思いますね。ですから、最低というものを法律に載せていったと、こういうことだと御理解をいただきたいと思うんです。しかも、私のところに持ち込まれました問題を考えてみますときには、やはりそういうことをはっきりうたっておいたほうがよろしいんではないか、こういうことを思いましたので、これをあえてうたわせていただいたということでございます。ですけれども、いまおっしゃいますように、人それぞれ生き方もございますし、またそういうことがあったとしてもお互いに納得し合って了解できるという問題だってあろうかと思います。御主人がたくさん飲み過ぎたとかあるいは選挙に打って出るためにお金を使い過ぎたとか、そういったような問題はもう夫婦の間で何とか解決のいく場合が多いんじゃございませんでしょうか。それさえもできないという段階ということになれば、私はもうこれはそれこそ破綻の前ということも考えられますし、そういういろいろな立場の中で、法律というものはやはり最低で、守っていかなければならない最低の線だということで、やはりこれをうたっておいたほうが無難ではないだろうかというような気持ちでうたわせていただいたということでございます。
  138. 佐々木静子

    佐々木静子君 最低とおっしゃるけれども、これは最低どころかあまりにも強過ぎてですね、法律というのは、最低の線というのはこんなことを含まないですね。これは最低どころか普通よりもずっと強過ぎるんじゃないかということを私は伺ってるわけですよね。だから、夫婦の間で話し合いができるということであれば、わざわざこういう権利をうたう必要がないんじゃないか。また、それがどうしても話し合いできないとなれば幾らだってほかの既存の権利でこれを主張し合えるわけでございますから、何もこういう填補請求権というようなものまで、しかも民事上の民事訴訟まで起こせるような権利を婚姻中に持たす必要はないんじゃないかと、私はそのように考えるのでお伺いしているわけなんでございます……。
  139. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) いまの問題についてちょっと。それは先生と私との考え方の違いということもあるかもしれません。私もこれから先生のおっしゃったこともよく考えながら研究はさせていただきたいと思いますけれども、いままで私が取り扱ってきました問題の中から、やはりこれはどうしても最低限こういう問題をうたっておかないとやはり問題の解決がたいへんむずかしいというような場面にたいへん多くぶつかってまいりましたので、こういうことをあえて書かせていただいたと、こういうことでございます。しかし私の申し上げておりますことが全部よろしいと言っているわけではございませんので、今後の問題としてまたいろいろ法制局の先生方にも御研究も賜わり、民法法律の大家でいらっしゃる先生方にもいろいろ御意見をちょうだいいたしながら考えさしていただきたいと思いますけれども、いま申し上げましたように、私のところに持ち込まれました問題の大多数を私は考えましてこういうことをあえてうたわせていただいたと、こういうわけでございますので、ひとつこれからの研究課題ということにもさせていただきたいと存じます。
  140. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいま私も申し上げているように、一般の婦人の考え方とすると、填補請求権まではとても要求しておらない。これは言うまでもないことじゃないかと思います。婚姻中に夫がほかのことにお金を使い過ぎたからといって、それを裁判所に訴えてまで取ってやるんだという婦人は百人に一人ぐらいいるかもしれないけれども、まずないんじゃないか。それからまた夫のほうにしても、半分は妻のものだよと言っている人でも、だからといって、自分の給料なり自分の収入を自分が多少使い過ぎたからといって強制執行まで受けねばならないというような目にあわされるというようなことを希望している男の人はほとんどないと思いますし、私はこの第六項は行き過ぎじゃないか。しかも破綻に瀕しているという場合はほかに幾らでもいまの既存の民法で救済する方法があるわけですから、私はこれはいかがかと思いますので申し上げているわけですが、さてそこで民事局、法務省のほうにお伺いしたいのでございますが、これは婚姻中の夫婦の実質的平等ということを確保するためにお出しになった法案でございますが、民事局のほうで親族法の一部改正というようなことで法制審議会にも何度か諮問に付されているということを伺っておるわけでございますが、主として妻の財産的権利の問題につきまして、大体いままでの経過というようなことを若干御説明いただきたいと思います。
  141. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 法制審議会におきましては民法部会でちょうどこの夫婦財産制の問題を審議しておるところでございます。民法部会におきましては昭和四十六年以降相続制度検討を始めたわけでございますが、妻の相続分をどのように定めるかという問題に関連いたしまして、そのもととなっている夫婦財産のあり方というものをもう一度見直してみる必要があるということになりまして、一昨年、四十七年の十一月ごろから数回にわたってこの夫婦財産制度に関する審議検討を行なったわけでございます。その結果、委員方々の御意見はかなり分かれましていろいろな御意見がありましたので、もう少し突っ込んだ検討をする必要があるということで、昨年は外国の制度のうちから幾つか選びまして、それをそれぞれの担当の学者の方にお願いして、英、独、仏それからアメリカのカリフォルニア州、この四カ所を選びまして学者の方に研究していただいて、その結果を報告していただいたわけでございます。現在はその段階でございますが、今後その研究の結果を参考にいたしまして、さらにいままでの議論もにらみ合わせながら最終的な意見のまとめに入っていきたいと、このように考えておるところでございます。
  142. 佐々木静子

    佐々木静子君 具体的に、できましたらもう少しお話しいただきたいと思うわけですけれども、たとえばどこの条文について検討していらっしゃるのか、こういうこととこういうこととの考え方があるためにこの点は保留になっているとか、そういうことを若干具体的に御説明いただきたいわけですが。
  143. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 先ほども申し上げましたように、非常に委員の御意見が分かれておりまして、具体的にと申しましてもむずかしいわけでございますが、御承知のように、夫婦財産制につきましては大きく分けまして別産制と共有制、この二つの考え方があるわけでございまして、現在の民法は別産制をとっておりますけれども、共有制にしてほしいという意見がかなり婦人団体のほうから出ております。そこで共有制をとることはどうかというのが一つの大きな問題点でございます。それに関しましては、たとえば共有制を認めるとした場合にその根拠をどこに置くか、たとえば、夫婦であるということに基づいて当然に共有となるというふうに考えるのか、あるいは夫婦が協力したという、その協力関係に中心を置いて共有を認めるのかというようなところから出発いたしましていろいろこまかい議論に入っていくわけでありますが、共有となる対象財産の範囲をどういうふうにするかとか、あるいはその共有の割合をどういうふうにきめるか、また、共有となった場合に財産の公示方法、これは取引に関係があるわけでありますが、その公示方法をどういうふうにきめたらいいのか、あるいは債務についてはどういうふうに考えたらいいか、それから共有である以上いつかは分割ということが起こってくるわけでありますが、その分割はどういう要件のもとに認めたらよろしいか、そういったような問題があるわけでございます。  それから共有制がむずかしいといたしました場合に、それでは現在の別産制の基本を維持しながら、どういう点に修正を施す余地があるかということをまた別の立場から検討しておるわけでございますが、別産制で問題になりますのは、先ほど御議論に出てまいりました税との関係、これをどのように考えるのか、それから別産制のもとであっても、まとまった財産を妻が支出したいというような場合があるわけでございまして、そういう場合に、たとえばその妻が自分の親を扶養するための費用を支出する、その場合に現在の別産制のもとでどのような方法があるか、もしむずかしいとすればそれに対してはどういう制度を考えたらいいかとか、それから居住家屋についての妻の居住権というもの、これをどういうふうに考えるか、ことに夫がなくなった場合の妻の居住権というものを保護する必要があるんではないか、そういった問題、それからいわゆる別産制のもとにおきましても、夫婦の協力によって得た財産というものは潜在的共有というふうにいわれておりますが、この潜在的共有というものを、現行法では、たとえば離婚の場合の財産分与請求権というようなものに一つの発現を見るわけでありますけれども、それ以外に何らかこの潜在的共有の実をあげるような制度が考えられないであろうか、こういったようないろいろな問題が検討されておるわけでございます。  それからもう一つ大きな問題として相続権との関係があります。現在妻の相続分は、子供があります場合には三分の一となっておりますが、先ほどの潜在的共有というような考え方をとってきました場合に、これでは少な過ぎる場合があるのではないか、そういった場合をどのようにカバーしていったらいいか、こういうようないろいろな点につきまして検討しておるわけでございまして、これについての意見はまだまとまっておりませんので、問題点をあげるだけにとどめさしていただきたいと思います。
  144. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいま御説明伺いましたように、非常に複雑で、そう簡単にぴしゃっと割り切れない問題がたいへんに多いと思うわけでございます。これは実は日本婦人法律家協会でもずっとこの問題について検討いたしておりまして、いま主としてこれは、婚姻中の財産を分けるということについては、いまそこまで話はいっておらないわけでございます。主として相続とか婚姻解消の場合のことですけれども、寄与分に関する研究会というのを定期的に持っているわけでございまして、これは単に配偶者の寄与分ばかりじゃなくて、同居の家族ですね、その寄与分というものを考えていかなくちゃならないし、また、これは必ずしも親族ばかりとは限らない、相続の場合でも必ずしも法律上の相続人に該当する人でない場合の非相続人の寄与分というようなことも、いま定期的に検討中なんでございますけれども、そういうふうな問題から考えますと、この今回出されました立法の寄与分という問題、非常にむずかしい問題をはらんでいると思うわけなんです。たとえば、いま妻が、妻の親族を扶養する場合にどうすればいいかという問題がございますけれども、これは萩原先生のほうに……。この場合はどうなるのですか、たとえば男やもめの人が子供を何人かかかえて生活しているところに、妻をもらったとしますね。この規定でいくと二分の一は妻のものになっちゃうわけですね、夫の収入の。そうなると、妻をもらわなければ十分子供を養っていけたものが、妻をもらって半分取られる——取られるというわけじゃないけれども、半分妻のものになってしまうと非常に生活がやりづらくなってくる、この公式論のこの規定どおりにいくと。それじゃそういう場合は、寄与分を少なくしてもいいのじゃないかという話が起こるかしれませんけれども、これは夫婦だけで生活している妻よりも、夫の子供まで、自分の子供じゃない夫の子供を養育しなければならない妻のほうが、それは相当に精神的にも実際的にも負担が重いわけですね。で、そういう人が、ただ夫婦だけで生活している場合とかあるいは夫婦と夫婦の間の子供を養育している場合よりも寄与分が少なくなるというのは、これまた非常に均衡を失するのじゃないか。さりとて二分の一妻のほうにやってしまったら、夫のほうの親族の生活が成り立たなくなるんじゃないか、そこら辺の不合理は萩原先生はどう考えられますか。
  145. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) 私がいま提案しておりますのは、まずこの夫婦というものを中心に考えて、ここに中心を置いたわけでございます。したがいまして、いまおっしゃるような問題が出てくることも、私どもも予想をしておったわけなんでございますね。しかしながら、税制調査会あるいは法制審議会がむずかしい、むずかしいとおっしゃって、なかなか遅々として進まないために、その間に非常に困った人がたくさんできている現状を考えますときに、まあ私はしびれを切らしたということになったわけでございます。したがいまして、今後の検討に待つことが非常に多いだろうと思うわけでございます。いま先生が御指摘になりましたようなことも、確かに考えなければならない面だと思います。私のところへも、そういう後妻に入った方々のいろんな訴えも出てきているわけでございます。したがいまして、こういう問題は、これからの検討に待たなければならないと思いますが、まず、私はいまのところは、夫婦というものを中心に考えながら、この問題を提案させていただいた、こういうわけでございますので、あと指摘のような問題につきましては、後々まだまだ検討をしていかなければならない、このように考えているところでございます。
  146. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、この法律精神とすると私も非常に賛成なんですけれども現実に私も幾つもの事件を取り扱ってきまして、夫婦は夫婦だけの収入で生活できる家庭なんというのは、いまの日本の社会ではもうきわめて少のうございまして、それぞれがだれかを養育しなければならない、また親を養わなければならない、いろんな問題をかかえているのが日本の現実の夫婦だと思うわけなんです。だからそういう意味で、これをぴしゃっと二つに割って、夫の収入の半分は妻のもの、あるいは妻の収入の半分は夫のものということになってくれば、これはなかなかそう簡単にいくものじゃないんじゃないか。そこら辺で、むしろそういうものは何もきめずに、生活共同体の中で、そんなに数字を割り出すようなものじゃなくて、それはそれぞれの家庭の事情に即応して、権利の帰属をきめるということのほうが、私は現実に合うんじゃないか。先生の御精神は非常にけっこうだと思うんです。たとえばこれを見ましても、相続とか遺贈とかによったものは対象から除くとしてありますね。これはけっこうだと思うんですけれども、たとえば親族集まって、まあ親が医院を経営しているから、一人だけむすこをあと継ぎにしようということで、一生懸命その人だけ医者にして、そして親の病院をそのまま継いで医院を開業した。そうすると、その奥さんが来て、その医者の収入の半分は自分のものだと、私はそういうふうに割り切れないと思うんですよ。それは、いろんな有形無形の、たとえば、その相続した家そのものは、医院そのものは別にしても、その不動産を利用しての収入というものもあれば、それから無形のいろんなことによってふえる収入もあれば、また、妻の寄与分が多いといっても、またそれによる母親の寄与分もあるでしょうし、あるいは他の兄弟の寄与分もあるでしょうし、だからそう簡単に二分の一というふうに割り切るということは、これは実際——妻の権利を高めようという御趣旨には、非常に敬意を表しますけれども、婦人全般から見たときに、これによって婦人の権利が完全に高められたというふうには、私は必ずしも言えないんじゃないか。  御指摘のように、いま家庭裁判所などの財産分与などという額が非常に少ないということは事実ですけれども、それはやはり、いまの法律をもっと憲法精神に合うように運用していくことによって、これは相当妻の権利というものも確保できるんじゃないか。この法律をつくったから、いまよりよくなるということには、そんなに運用面でならないんじゃないかというような感じがするんですけれども、そこら辺の不合理、たとえば、いまの医院の例ですけど、これは農家の主婦の場合も当てはまると思います。農村収入によってこれだけのものがあがるといっても、その土地とか田畑は、先祖とかあるいは一族の者がいろいろやってきて、いまこれだけの収入があがる、そうしたら半分は自分のものだということになってくると、それによって非常に生活を脅かされたり、困る人も出てくるんじゃないか。また、妻の場合にしたところで、結婚はしたけれども、自分の親族を扶養しなければならない。そのために共働きをしている。ところが、その収入の半分は夫のものだというようなことになってくると、いろんなところで不合理が出てくるんじゃないか。実際の家庭では、夫婦だけの収入で夫婦が好きなように生活しているというのは、全体から見てみるとごくわずかじゃないか。そういう場合の不合理を先生はどういうふうにお考えになりますか。
  147. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) 私は、私のところへ強い要望がきているものを重点的に取り上げたわけでございますし、先ほどおっしゃるように、妻の寄与よりも夫の両親の寄与が大きいような場合だって私は考えられると思うんです。そういうようなことは、やっぱり個々別々に考えるということになりますと、非常にむずかしい問題もございますが、やはりこれは一般的には、寄与分を妻のは二分の一と推定するというような考え方よりしかたがなかったということで、そういう特別の寄与については、これから別途立証していくよりしようがないんじゃないだろうかということが考えられるわけでございます。私どもが考えましても、いろいろの分野についての改正ということになりますと、妻の代襲相続というようなことも考えていかなければならない。いわゆる農村の場合なんかでしたら、一生懸命になって親をみて、そうしてほかの兄弟たちは皆別居しているのに、三男なら三男が親のめんどうをみてきたと、ところがそういう場合に夫がぽっかり死んでしまったといったような場合の妻というものの立場は非常にみじめでございますね。ですから、そういうことになりますと、妻の代襲相続というようなことも考えなければなりませんし、また夫の兄弟と妻との寄与の関係というようなものも考えていかなければならない。おっしゃるように非常に複雑な問題を含んでおりますけれども、やはり私は夫婦平等な立場というものを考えましたときに、そういったような、この法案のような形のものを一応取り上げさしていただきたい、こういうことでございます。  しかしながら、これはいまおっしゃるような、御指摘のようなものは、私もおそらく出るでございましょうということは十分承知をいたしております。そういう問題を含めまして、これからいろいろな形での検討を進めていただく中で、やはり非常にみじめな形の妻というものを考えていただかなければならない。私のところへも、最近六十八の老婆が自殺未遂事件を起こしたという問題が出てまいりました。これは若いときから二人でこつこつ働いて、たんぼも三反くらい買いました、そして家もつくりました、ところがたまたま去年の十一月に夫であるおじいちゃんがなくなりました、みんな別居していた三人の子供たちが返ってきて、それぞれに土地も、そして家も屋敷も全部分けたわけです。それでこのおばあちゃんというのは、この三人の子供の家を一月ずつたらい回しにさせられたといったような悲劇もあったわけでございます。こういうことを考えてみますときに、私はやはりこの妻、このおばあちゃんがせめておじいちゃんとつくった家ぐらい私のものにしておいてもらったらという嘆きが非常に強かった、そしてそのあげくの果ては自殺をはかった、こういうこともございますために、私は何としてもいまのところはこういう妻を守るという形を強く打ち出していかないことには、ほんとうに老後何にも働きがなくなったときの老未亡人を一体だれが守っていくのか、こういうことを考えまして、いま私はこの問題を夫婦中心に考えてみたところでございます。しかし、御指摘の点は十分私も考えておりますので、こういう問題については、ひとつ皆さんで衆知を集めてほんとうに妻が救われますように、国民全体が安心して暮らせるような形に持っていきたい、こういうことでございますので、ひとつよろしくお力添えをお願いいたしたいと思います。
  148. 佐々木静子

    佐々木静子君 先生のおっしゃっていることと私の言っていることは、何も食い違っているわけじゃないんですけれども、先生のおっしゃるのは、こういうふうなのが原則であって、それ以外のが例外であるから、特例法でも設けて何とかすればいいというふうにおっしゃるけれども、それほど日本の家庭というものは裕福でもなければ恵まれてもおらないのが普通の家庭であって、私も幾つも相続事件とか離婚事件いたしましたけれども、そのときの財産を分けて、それで食べていけるなどというような人は、まあ千分の一ぐらいしかないんじゃないか。これはいまの離婚の際の財産分与請求権などといいましても、分けるような財産があるのは、全体から見るときわめて少なくて、むしろ実際のところは、将来の扶養というふうなことになって、だれが将来配偶者を扶養していくかというようなことで、将来働いて得た収入のうちからどれだけを妻に渡すとかいうふうなことで、何とかかんとか解決しているのがいまの日本の現状でございますので、いまの自殺なすったおばあさんも非常にお気の毒だけれども、そこに至らない人のほうが、財産分けどころじゃなくて何も分けるものがない、けれどもどうやってやっていこうかというのが非常に多いんじゃないか。  そういうことから考えますと、ともかく夫婦で一生懸命働いて食べていくのがやっとこさというのが日本の平均的家族だと思いますので、残ったものをどう分けようかというのはまだ非常に恵まれた階級じゃないか、そういうふうに思いますので、むしろやはりその寄与分のことも、その夫婦間の財産の帰属というものをはっきりするということも大事でございますが、むしろ一般的な問題とすると、先ほど民事局長からもお話がありましたように、妻の相続分というようなものをもう少し考えていただくということのほうが現実的なのじゃないか。一緒にいる間は別にどっちに帰属したところでたいしたことないけれども、夫が死んだときに、自分のものだと思ってたものが三分の一しかもらえないというのは、これ、たいへんな悲劇でございますので、そこら辺は二分の一、あるいは二分の一以上にまで持ち上げてもいいんじゃないか。これはあるいは夫の財産が二分の一とし、また相続分二分の一とすると、あるいは四分の三ということになりますが、二分の一の相続分あるいは三分の二ぐらいの相続分にまで改正してもらったほうが、これはむしろほんとうの意味の妻の老後というようなことの保障に現実的になるんじゃないかというふうに私は思うわけなんです。そのあたりの相続分のことについて、これは具体的には申し上げるわけにはいかないと民事局長おっしゃったけれども、相続分の割合についても法制審議会でかなり議論にはのぼっているわけですか、いかがですか。
  149. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 議論はいろいろやっておるわけでございます。相続分は現在のままでいいかどうかという点も確かにおっしゃるように問題があるわけでございます。それと同時に、あまり多くした場合に、今度は結婚の期間が非常に短くて、あるいは夫婦がけんかして別居しておったというような場合を考えますと、一がいに相続分さえ多ければいいのかという点に問題があるわけでございまして、そういった問題もいろいろ出しながら、目下この夫婦財産制の問題とともに相続分について検討いたしております。
  150. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは前回予算委員会のときにも申し上げたんでございますけれども、妻の相続分ということについてもできるだけ前向きに御検討いただきたいということと、それから同世代夫婦の間の贈与とか、相続について、これはいま大蔵省いらっしゃらないので、大蔵省の方も一ゼネレーシヨンかわるときにはかなりの税金がかかってもしかたがないけれども、夫婦の間は全く帰属が判明しない財産が非常に多いのだから、だからそれについては税金を課さない方法というようなことを、これは民法の問題じゃなくて税法の問題として考えていただくべきじゃないか。また税金が不合理だからといって、最も基本法であるところの民法を税金の不合理さのために変えなければならないというようなことは、これは本末転倒じゃないか。これは税法がそのときどきの、時々適切に調整すればいいことであって、基本法である民法を税法の不都合をカバーするために変える必要はないんじゃないか。そういうふうな意味で私は萩原先生のこの御提案には、この精神については非常にけっこうだと思いますけれども、むしろ実質的な妻の権利の保障とすれば、相続分、相続税法の改正ということを、できましたらいろいろな団体意見どもお聞きいただきまして、できれば作業を、さらに御検討を願うほうが実質的に妻の老後というものは保障されるんじゃないか、そういうふうに思いますので特にそのことを申し上げたわけでございます。
  151. 萩原幽香子

    委員以外の議員萩原幽香子君) おっしゃるとおりでございます。それで私も相続税のことについても申し上げまして、実は去年の、四十八年の六月十八日の決算委員会のときにもこの問題を取り上げましたところが、田中総理のほうから、「気持ちはあなたと同じでございますし、これが国民大多数の考えであるということも理解します。」ということで、いわゆる相続税というものについては、世代を越えてかけたらいいもんだというふうに私も考えると、こういうことはすでにもうおっしゃっておるわけでございます。ですから、この相続税の問題につきましては、もうたび重ねて私も質問をしてまいりましたし、そのたびごとに総理からもそういう御答弁もいただいているわけでございます。したがいまして、これはやらなければならない問題だということ、相続税も贈与税も、いわゆる夫婦の間のものはやらなくてもいいんじゃないかという考え方も持っていらっしゃるようでもございますから、この問題はやらなければならないと思います。しかし、私は何と申しましてもやはり民法改正されて、家庭における婦人の地位が向上する、いわゆるほんとうの意味での個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚するということになりますと、私は税の問題もそうですけれども、やはり基本法である民法改正ということが必要になってくるのではなかろうか。そういうことをすることによってあるいは税法といったようなものにも関係を持つことができるのではないだろうか、こういうことをまあ考えているわけでございます。しかし、いままでこうした問題について国会の場で十分審議をされておりませんでしたので、いまの相続問題についてもいろいろ考えていかなきゃなりませんけれど、いま申し上げたようなことになりますと、大体まあ老未亡人が受け取れるものは二分の一と、それから残された夫のものの相続分の三分の一、つまり三分の二が妻のものに、老未亡人のものになっていくということでございます。  ところで、先ほど先生のほうから御指摘がございました、残されたものを分けるようなのはまだしあわせなほうだというお話でございました。ところが、静岡県のいわゆる民生委員の方から私のところに持ち込まれたお話によりますと、実は庶民階級というのは、家あるいは土地づきの家ぐらいを持っているのが庶民の大多数だと、こういう人たちがいまこの問題について真剣に考えているんだというお話でございました。そこで、私はこういう問題が、まあこういうことを出すことによって、妻がこうしたことに啓発をされるということから、乏しいものをよりよく分けられるというような方向にまで持っていけるということこそ望ましいことではなかろうか。まだまだ知らない人があまりにも多過ぎるということを私はこの際はっきり申し上げておきたいと思うわけでございます。
  152. 後藤義隆

    後藤義隆君 ちょっとお伺いいたしますが、提案者からでもあるいはまた法制局からでもよろしゅうございますが、この七百六十二条の二の中の一項にも二項にもあるいはまた四項にも「協力」ということばがございますが、その「協力」の意味でありますがね、これはどういうことを意味しておるんだろうかというようなふうに、あまりに抽象的だから、はっきりわからないんですが、たとえば会社員が会社でつとめておることは配偶者の一方の協力があるのかないのか。これは公務員にしても同じ。あるいはまた一般の会社員でなしに会社の重役、そういうようなふうな人がつとめておるのもやはり配偶者の一方の協力というようなふうに見ていいのかどうか。あるいはまた国会議員国会活動しておるのは、配偶者の一方がこれはやはり協力になるのだろうか。大臣大臣の名でつとめておる、これはやはり配偶者の協力ということでもってあらゆる権利があるんだろうか。それからまたもっとほかの例でいいますと、商店を持っておって——商店というのは商売をやっておって、商店と全然別なところに別荘があって、そこに奥さんがおって、店には全然もう手も出さぬ、顔も出さぬというようなふうなときに、その商売上の利益について、これは配偶者の協力を得たということになるのかどうか。これは非常に問題だと思いますから、その協力の定義をちょっとここで伺っておきます。
  153. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) 現在の民法でもそういう夫婦の協力という規定はいろいろございますとともに、ここで「協力」と申しますのも現在の民法規定しております協力でございます。その「協力」とは何であるかということでございますが、それは社会常識的に夫婦の協力と考えられる、精神的にも、物的にもすべての協力がそこへ入るだろうと、こういうふうに考えております。
  154. 後藤義隆

    後藤義隆君 それからその次に、夫婦の一方が全く関知せなくて財産を取得するということもあります、夫婦の一方が。あるいはまた関知せないぐらいじゃない、反対したにもかかわらず、片一方のほうが株を買うとか、あるいは土地を買うとかして、そうして財産がどんどんまた値上がりしてもうけたというようなことにもなるという場合もあるが、これはやはり協力になるのか、ならぬのか、そこは一体どうなんでしょうか。もちろん、その買う初めの金は全然別個な金ではなしに、そこのうちの財産から買ったものには相違ないんだが、そういうような場合には協力になるのか、ならぬのかどうなのかね。
  155. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) たとえば株を買ったような場合に、株を取得する原資が夫婦の協力によって得られたものであれば、その結果である株も協力によって得たものであると、こう考えます。
  156. 後藤義隆

    後藤義隆君 いま株の話をしましたが、株でも、それから土地でも同じでありまするが、片一方は絶対反対したんだ、だから、協力どころじゃない、反対したのを片一方が押し切って株を買ったり、あるいは土地を買ったりして、そうしてそれが値上がりをして財産ができたような場合には、これでもやはり協力になるかどうか、非常にこれは問題になると思うが、そのことはどう考えておるのか。
  157. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) それは外形的には反対しておりますが、やはりその株なり物なりを買う原資というものが夫婦の協力によって得られたものであれば、それは協力によって得た財産であると考えざるを得ないと思います。
  158. 後藤義隆

    後藤義隆君 それから今度は、よくこれはあることでありますが、夫婦のうちの、主としてでありまするが、主人が借金がたくさんできたと、ある程度財産もあるということになった場合に、この規定から見ると、財産の約二分の一は、自分のほうでもってこれに対して分与権を妻なら妻が持っておるということになるが、そうすると今度は、主人の借金のために債権者が主人名義の財産を差し押えることができるかどうか。その財産のうちのさっきからお話しの二分の一は妻の財産で、妻がとにかく分与権を持っておるんであるが、それでもって第三者の債権者はそれを差し押えることができるかどうか。できた場合に——できるかどうかというのが第一問題だが、その点はどうですか。
  159. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) ここで規定しております分与請求権というものは債権にすぎませんので、夫名義の財産に対して夫の債権者は差し押えることができると思います。  その場合に妻の立場はどうなるかということだろうと思いますが、その場合は妻は普通の債権者と同じ立場になると、こう考えます。
  160. 後藤義隆

    後藤義隆君 普通の立場というと、もちろん私もそれをお聞きしようと思っておったのだが、二分の一の配当要求権があるということになりますか。いわゆる債権者が差し押えた。今度は妻は、主人が債務があって差し押えを受けて競売になったような場合に、それに対して、要するに妻は、私は二分の一の分与を受ける権利を持っているのだからといって、二分の一の配当要求権があるかどうか、これひとつどうですか。
  161. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) ただいまの配当要求権の問題でございますけれども、この債権は婚姻中裁判上請求することができない債権でございます。したがいまして、妻には配当要求権はないと考えております。
  162. 後藤義隆

    後藤義隆君 それからこの条文から見ると、財産に対して、まあ夫ということに限らぬが、夫婦の一方の財産のことについて非常に触れております。財産のことを主としてここには記載してあるが、負債のことについては全然触れておらないのだがね。財産権がそれほどあるならば、今度はそこに借金ができたならば、その二分の一かなんか、やはり配偶者の一方のほうにも負債を負わせることが相当ではないかと思うが、その点は一体どうですか。
  163. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) 負債の問題はいろいろ考えましたのですが、結論といたしまして、ことでは積極財産だけに対する分与ということを考えたわけでございます。
  164. 後藤義隆

    後藤義隆君 それだから、もちろんそう考えたのだが、それが不合理じゃないかと私は思うのです。財産だけあげておいて、負債はもう一切負担せないのだと、こういうようなふうなことになると、ちょっとどうかと思うのですがね。だから、要するに夫婦の片一方の名義でもって借金をしておいて、財産でもなんでも取得しておいて、今度は片一方のほうは財産分与権だけを持って、借金の責任は負わないということになると、そこが非常に不合理になりはせないかと思うのです。そういうことに条文がなっておるから、そのこと自身がやはり考慮が足らないのじゃないか。財産分与権があるなら、もっと負債についてもやはり何かそこへ責任を記載すべきじゃないかと、こういうようなふうに私は考えておりますが、その点はどうですか。
  165. 浅野一郎

    ○法制局参事(浅野一郎君) その点ごもっともな意見だと思いますけれども、負債まで妻のほうに背負わせていくのはどうかという疑問がございまして、結局こういう結論に落ちついたわけでございます。
  166. 原田立

    委員長原田立君) 他に御発言もなければ、本案に対する本日の審査はこの程度にとどめます。     —————————————
  167. 原田立

    委員長原田立君) これより請願の審査を行ないます。  第二七号熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願外二十二件を議題といたします。  まず、専門員から説明を聴取いたします。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  168. 原田立

    委員長原田立君) 速記を起こしてください。  第一二二七号保護司活動の強化に関する請願は、議院の会議に付するを要するものにして、内閣に送付するを要するものとし、第二七号熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願外二十一件は保留と決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  171. 原田立

    委員長原田立君) 次に、継続調査要求に関する件についておはかりいたします。  検察及び裁判運営等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  172. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  173. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十一分散会      —————・—————