○須藤五郎君 あなた、なれ合いというようなことばをいま吐かれましたが、実際二人が、
調停委員がまん中に入ってお互いAとBが話し合ってものがまとまれば、ある見方によればそれはなれ合いかもわかりませんよ、両方がそこらで話つけましょうということになれば、それはなれ合いかもわかりませんけれ
ども、それはりっぱな調停じゃないですか、一つの。だから、そういうことを別にそんな本人同士が話し合って問題が解決することを何も心配する必要もないし、それはいかぬと言う必要もないと私は思うんですね。だからやはり調停の真の目的というものは、二人が納得して、いわゆるある面から見ればなれ合いと見えるかもわかりませんけれ
ども、お互いにそれで満足してその話に応じるということが一番望ましいことのように思うんですね。だから、なれ合いだといって心配して、それを、そういうやり方を
やめちまうと、排除してしまうということは私どうかと思いますよ、その点は。だから大いにそういうことでこの調停というものは処理していくというのが私はむしろ望ましい形じゃないかというふうにも
考えておる一員でございますね。
それから最後に、私は調停制度の今後のあり方ということでひとつ
大臣にお伺いしたいんですが、臨時調停制度
審議会の
答申は、調停制度がその紛争解決機能としての実をあげる上で
裁判官の適正数を確保し、
調査官、書記官の充実や活用とともに、
調停委員の資質、能力の向上をはかるなどによって
調停委員会の活動を、一そう充実強化することが不可欠の問題である、こういうふうに述べておりますね。それは、そもそも調停というものが、簡易、迅速、低廉さそのものを
要求するものから高度な
法律判断を
要求されるものまで非常に広範囲にわたっており、一つ例を申し上げますと、最高裁の
昭和四十年六月三十日大法廷決定があります。これは、夫婦同居義務及び婚姻費用の分担に関する審判の合憲性の問題でございますが、調停不成立で
裁判官が審判をしたものと思いますが、結局特別抗告になった事件で、最高裁は全員一致で憲法違反でないとしました。しかしその理由は八対七に分かれており、あるいはいまの最高裁の判決ならば、自民党内閣の人事で大いに変わっていますから、逆の数字になっているかもしれない
性質を持っております。このように、調停事件は、
法律判断としても、事実の認定の上でも高度なものもあり、さらに私が先ほど述べましたように、いわゆる八っつあん熊さんのような
国民の生活の中で社会的にはいろいろな経験や知識の中から出てくる情というか働くものの悩みを解決する生活の知恵といったものをも
要求され、そこに調停の調停たる本質があると思うわけでございます。ところが現在の調停制度の実情を見ますると、
裁判官が調停に立ち会っていない、真に調停主任の役目を果たし、
調停委員の助けを得て紛争を解決する働きをなし得ないものになっている実情が明らかになっております。中には書記官の書いたメモに目を通すだけといった事務的な関与しかしていないということさえいわれております。
本来、合意を旨とする調停に対して、
委員が当事者に強引に案を承認させる、いわゆる押しつけ調停も少なくないことは公然といわれておるありさまでございます。このような問題のある現在の調停制度を真に
国民のために充実させることが求められているにもかかわらず、今回の
法律案は、
裁判官、職員等の充実などはほとんど措置がとられておりません。
調停委員はといえば、
国民参加ということに意義があったものをわざわざ後退させて、当初から事件を離れても公務員化しておく、しかも、いままでなかった最高裁の定める事務を行なわせ、いろいろ出張までして
調査をさせる。これは、実質的に
裁判官の不在を認めて
調停委員だけに調停の大
部分をまかせ、しかも最高裁によって任命された官僚としての
委員がこれに当たるということになります。
法務省や、最高裁がこれを質の高い
委員に高めることだというのなら、一体調停制度の充実強化とは何であるか、きわめて行政サイドで
結論を押しつけようとするためのものでしかないでございましょう。当事者が誠意を持って話し合う
性質のものでもなく、また
裁判でもないとは言えませんか。私は憲法と
裁判所法などでいう
国民に
保障された
裁判とそのための
裁判制度を
保障し、ほんとうに調停制度の充実強化を願う立場であれば、どうしてもこの
裁判官不在の調停制度の改善を第一に取り上げてそのための努力を大いにしてもらわなければならないと
考えております。そうした
保障のないままに調停制度の真随ともいうべき
国民の司法参加を後退させるような公務員化をもってこと足れりとするような本
法案に対しまして、日弁連は五月二日に決議をされてその成り行きを危惧されておるわけでございますが、この点最後に
大臣の御所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。