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1974-05-16 第72回国会 参議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十六日(木曜日)    午前十時二十三分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月十五日     辞任         補欠選任      斎藤 寿夫君     木島 義夫君  五月十六日     辞任         補欠選任      山本茂一郎君     柴立 芳文君      小枝 一雄君     鍋島 直紹君      重宗 雄三君     平泉  渉君      吉武 恵市君     山下 春江君      村田 秀三君     小谷  守君      藤田  進君     中村 波男君      内田 善利君     柏原 ヤス君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 棚辺 四郎君                 佐々木静子君     委 員                 木島 義夫君                 柴立 芳文君                 鍋島 直紹君                 平泉  渉君                 吉武 恵市君                 小谷  守君                 中村 波男君                 柏原 ヤス君                 須藤 五郎君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        法務大臣官房長  香川 保一君        法務大臣官房司        法法制調査部長  勝見 嘉美君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  安原 美穂君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       安村 和雄君        最高裁判所事務        総局総務局長   田宮 重男君        最高裁判所事務        総局民事局長   西村 宏一君        最高裁判所事務        総局家庭局長   裾分 一立君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (刑法改正に関する件) ○民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  山本茂一郎君が委員辞任され、その補欠として柴立芳文君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 原田立

    委員長原田立君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは私からまず、一昨日に行なわれました法制審議会刑法改正問題について、いよいよ新聞で拝見しますと二十九日に答申が行なわれるということでございますけれども、その件について伺いたいのでございますが、次回二十九日に残りの論議を尽くされて結論を出すということにきまった、そのことはそのとおりでございますね。
  5. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 御承知のとおり、先日十四日にいわゆる要綱の各条についての審議を終わりまして、それを前提としてこういう案で刑法全面改正することが必要かどうかという議論に入りまして、十人足らずでございましたが、各委員から活発な全面改正の要否についての議論の開陳がございましたが、事柄重要性にかんがみましてさらに審議を重ねるということで、次回二十九日を予定しておりまするが、二十九日で必ず終わるということではなくて、審議の模様によりましてはさらに回を重ねるということもあり得るわけでございまして、二十九日に結論を出すという予定にはなっておりませんが、目下の見込みでは、二十九日におおむね各委員意見表明が終わるのではないかと予測はしておりますが、予定はいたしておりません。
  6. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、法制審議会委員の方全部が、お一人お一人が意見をお述べになるわけでございますか。そのうちの十何人かがお済みになったというわけでございますか。
  7. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) いま二十六人の委員がいらっしゃいますが、別に一人ずつにしいて発言を求めるという運営ではなくて、自発的に御意見の御表明をいただくということで、自発的に各委員から御表明がございまして、約十人あまりが前回お述べになったということでございます。
  8. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、その質疑をなさる要望のある方というようなのはあと何人ぐらい残っていらっしゃるのか、そのあたりはいかがなものでございますか。
  9. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 二、三の方につきまして次回発言をするということを予告しておられる方がございますが、特に委員会の席上で次回発言の方のお申し出を求めたということはございませんので、何人になるかはちょっとわかりません。
  10. 佐々木静子

    佐々木静子君 法制審議会の様子を新聞その他から承っておりますと、ほぼ大多数の方が全面的に賛成――賛成といいますか、改正をすべきであるという結論になりそうである。反対意見を開陳された方は、日弁連代表委員が強い反対意見を、改正反対意見をお述べになったということを承っているわけでございますが、新聞などで報ずるところによりますと、これはほぼもうこのまま通ってしまうのじゃないかということが予測されておりまして、これは前回衆議院法務委員会におきましても中村法務大臣が、このまま答申案が今度の審議会の日に全面改正が必要という結論が出されたとしても、政府案とするとかなり手直ししなければならないというような御意見が出されて、御答弁をなすったということを承っておりますが、見通しとすると、全面改正が必要であるという結論が出そうであると私も感じておるわけでございますが、それを法務省でかなり手直しをされるというお考えでいらっしゃるわけでございますね。これは大臣に伺いたいです。
  11. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは、手直しをするという前提ではございませんが、法制審議会の中にもいろいろ意見があるようです。私も大体大要を聞きましたが、せっかく長い年月をかけてこれだけ慎重に逐条審議をしてきたのだから答申をあくまで立法化すべきであるという強い意見と、答申は尊重すべきであるけれどもさらにいろいろ問題になった点を再検討して立案しろというのと、それから一部全面改正反対であるというのと、大体三色ぐらいに意見が分かれるようでございます。  法務省としましては、答申をいただいてから十分に検討いたしたいと思います。もちろん、この審議会の中で、内部で出ました少数意見などについては、それらの扱いについてどういうふうなことになるか十分に検討をして、十分世間の納得いくような、せっかく改正する以上はりっぱな改正をいたしたいと、かように考えておるわけでございます。
  12. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは法制審議会審議というものが、非常に秘密秘密ということで一般に知らされないわけでございまして、今回の場合も日弁連代表委員の御意見だけは新聞に載っているけれども、あまりほかの点は、どなたがどのようにお述べになったということが報道されておらないわけでございますが、これはやはりわれわれにも知る権利があるのじゃないか。そういう意味において、できるだけ明らかにしていただきたいと思うのでございますけれども、私の聞いておるところによりましても、委員の中でも、一応この答申が出ても法律案とするには相当修正をしなければならないであろうという発言があったということもお聞きしておりますが、そういう御意見もかなりあるわけでございますね。そういう発言があったかどうかまず伺いたいと思います。
  13. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 法制審議会審議の公開の問題でございますので、私のほうからまずお答え申し上げます。  現在の法制審議会につきましては、審議会議事規則第四条で公開しないこととされております。これはその趣旨会議におきます、いわば各委員方の自由な言論を確保するためというふうに私どもは解しておるわけでございます。ただ、このように、したがいまして議事録会議非公開とされているという趣旨から公表しないこととしているわけでございます。しかし、このような会議非公開、それから議事録非公表ということはあくまでも各委員発言の自由の保障ということでございますので、その差しつかえない限りはすでに御承知のとおり報道機関を通じまして会議における論議内容を、それから審議の経過の概要等につきましてそのつど報道機関を通じまして、これを発表しているところは先ほど申し上げましたように御承知のとおりのところでございます。
  14. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの申し上げました、そのような発言があったかどうかということをまずお答えいただきたいわけです。
  15. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) いま大臣も申されましたように、一部委員の中に刑法というものの性質にかんがみて法制審議会答申そのままではなくて、いろんな意見を組み入れて政府案の作成の過程においては、修正についてはひとつ積極的に修正を試みる態度でやっていいのではないかという御意見があったことは事実でございます。ただ、法務省事務当局といたしましては法制審議会答申を求めております以上、その法制審議会答申をできるだけ尊重するという態度だけは変えたくない、かように思っております。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常に委員発言というものを尊重しなければならないというふうなお話でございますけれども、私は尊重しなければならないのは国民の批判じゃないかと思うわけです、むしろ。法制審議会委員の自由ということも、むろん大事ですけれども、むしろそれはどのような発言をされたかということで、国民がそれに対して率直な意見を述べる機会を与えるということが、それこそ私は大事なことじゃないか。問題のウェートがいまの勝見部長の御答弁だとひっくり返っているんではないかと思うわけです。これでは、それはその部分新聞報道するというようなこともありますけれども、やはり国会その他には法制審議会議事録なりその内容をやはり当然に私ども要求があれば、これはお出しいただきたいし、また私のほうから、各委員のほうからどういう審議があったかというと、当然これは御答弁いただかなくちゃいけないことだと思いますが、いかがなものでございますか。
  17. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 具体的な問題といたしまして、刑法というものの重要性にかんがみまして、特に主管をいたしております刑事局といたしましては、審議会が終わりますたびに新聞記者クラブに担当の審議官がおもむきまして、議論内容を一切精密に細部にわたって御紹介を申し上げて、報道機関を通じて国民皆さん方にお知らせいただくようにお願いをしておるわけでございますが、それはそれといたしまして、お説のとおり刑法というものの性質にかんがみまして、ますます非常に国民各界各層意見というものに謙虚に耳を傾けるべきであるということも事実でございます。そこでこの法制審議会での言論の自由の保障ということは、だれがどういうことを言ったかということがわかることが将来における自由な発言を妨げるということでございますので、議論要旨は伝えるにいたしましてもだれが言ったかということだけは秘匿しなければならないということはぜひ守らなければならない。そこで先般米田委員発言要旨を発表されましたが、それは御本人がその自由を放棄しておっしゃったことでございますが、それは妨げるつもりは全然ないわけでございます。それから刑法性質にかんがみまして、かりに御答申を得ましたならばできるだけ広く国民各階層に答申内容が何であるかということを正確に御理解いただくという意味におきまして、金を惜しまずいわゆる内容周知徹底をはかるという努力はぜひ尽くしたい、かように思っております。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常に刑事局長のおっしゃるとおりにしていただけるとけっこうだと思うわけでございますが、それでは実は法制審議会の小委員会議事録でございますけれども、これは一昨年の末くらいまでの分が当院の調査室にも法務省からいただいているわけでございますが、それからあと議事録はでき次第各委員というとこれは部数がたいへんだと思いますので、この委員会調査室へ御提出いただけますでございましょうか。
  19. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 国会審議過程におきまして御要求がございますならば、先ほどの私申し上げました趣旨にのっとりまして審議内容要旨議事要録というような形にいたしまして御要求部分参考資料として御提供申し上げるつもりでございます。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひお願いしたいと思います。そして前にいただきました分は法務省でおわかりだと思いますけれども発言された委員名前を秘匿して、そして御発言はそのまま出していただいているという状態でございますので、それでけっこうでございますから、そのようにして、全委員というのはたいへんですから、調査室へお出しいただけますですね。
  21. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) どの程度のボリュームになりますか、私、はなはだ恐縮でございますが正確に存じませんので、なるたけ早く取りまとめて提出申し上げるようにいたしたいと思います。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは話がもとに戻りますが、法務省からその法制審議会諮問して、法制審議会とするとそれに対して答申をすればそれでいいのだと思うのでございますけれども、伺っているところによりますと、この委員名前は差し控えたいと思いますけれども、いまのお話のようにこれは一応どういう答申になったところでこれを法案にするには相当手直しをしなければいけないと思うという意見が述べられたということは、私はいまもお伺いさしていただきましたところによりましても事実だと思います。そういう意味において、かりに今度の答申全面改正の必要があるということに答申されたとしても、その必要があると言っていらっしゃる委員の方の中にも常に多くの疑問というか、このままでいいとは思っておらないというようなお考えが潜在的に存在しているというふうなように解釈されると思うわけなんでございますが、この普通の法案をつくるときには政府原案というものがあって、それに対して委員会諮問されるというのが普通じゃないかと思うのでございますが、これはそういう過程はとっておりませんですね。部分的に少しずつやられて、それをこう積み重ねた結果一つの刑法法案というものにつくり上げられたというふうな非常に変わったプロセスをとっているのじゃないかと思うのでございますが、それはどういうわけでそのようにされたのか、御説明いただきたいと思います。
  23. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 全般法制審議会諮問事項の態様につきましては調査部長から全般的なお答えをいただきたいと思いますが、事刑法に関しましてはやはり全面改正をする必要があるかどうか自体が事務当局できめるというべくあまりにも重大な問題であるということで、改正する要否から問いかけて諮問したということであろうと思います。
  24. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 諮問形式について簡単に申し上げますと、いろいろな形がございます。当面御質問にございます刑法につきましては、諮問第二十号として「刑法全面的改正を加える必要があるか、あるとすればその要綱を示されたい。」このような形になっております。なおこれもだいぶ問題になっております少年法改正につきましては、第二十七号で「少年法改正する必要があると思われるので、別紙要綱について意見を承りたい。」というような形で事務当局でつくりました要綱について意見を承りたいというような諮問形式になっております。各法規の改正内容に従いまして諮問内容はたいへん多様な形になっております。
  25. 佐々木静子

    佐々木静子君 部分的に改正案を出されたために、結局全部をこう集めた場合に、その改正案が非常に不満足な、御自分の考え方とは変わっているけれども部分的なところがそうなっておれば筋を通すためにもやむを得ずそれに同調せざるを得なかったというようなお話も非公式に法制審議会委員先生方からもお聞きするわけなんでございますが、いま、これは最初、昭和三十八年でございましたか、諮問に付されたときに選任された法制審議会委員と現在の法制審議会委員、これはその役職の立場で当然にその方がその任を、その役職から離れられたならば当然に変更されるという役職の場合は別ですけれども、そうじゃなくてお入りになった委員のうちで途中でおやめになった委員は何人おられますか、また、それはどういう方で、どういう肩書きの方でいらっしゃいますか。
  26. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) ただいまお尋ねの委員変更の問題でございますが、たいへん恐縮でございますが、いわゆる総会委員変更でなくて……
  27. 佐々木静子

    佐々木静子君 総会委員です。
  28. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 総会委員でございますか。
  29. 佐々木静子

    佐々木静子君 はい。
  30. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 刑法審議にあたりましては、あるいは不正確かもしれませんが、総会委員につきましてはおやめになった方はおらなくて、中川善之助氏、それから村松元高裁判事、この二人が追加選任されております。
  31. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは新聞でもいろいろと報ぜられておりますし、また学者の間でも、また弁護士会その他からもたいへんにこのことが問題にされているわけでございますが、後ほど審議いたします民事調停法及び家事審判法の一部の改正案においても、これは政府から調停委員年齢というようなことがたいへんに問題にされまして、民意を正確に反映していくためには、やはり年齢に対してある程度のワクを設けなければいけないんじゃないかと、むしろこれは前回の、一昨日の政府の御答弁、これは調停委員でございますので、法制審議会委員とは若干違うかもしれませんけれども、そういうことで私はこの御答弁には非常に不満なんでございますが、四十歳以上七十歳以下というワクを設けておるというふうな御答弁があったわけでございますけれども、この法制審議会総会委員の、これは先日の新聞にも載っておりますが、御年齢も載っておるわけでございますが、非常に高年齢の方ばかりお並びになっていらっしゃる、それはどういう意味なわけでございますか。
  32. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) すでに新聞紙等報道されておりますように、法制審議会委員方々年齢について問題があるという御指摘がございます。私どもといたしましては、法制審議会はいわば基本法についての調査審議が任務でございまして、学界法曹界等を代表いたします、いわば学識経験豊かな第一級の方々審議していただいているということでございまして、平均年齢がどうしても高くなるということはやむを得ないものというふうに考えておる次第でございます。  なお、御承知のとおり、法制審議会には調査審議する事項に応じまして部会を設けられることになっております。現にこの刑法改正につきましては刑事法特別部会というものを設けておるわけですが、その部会には比較的若手の学者実務家等委員幹事として参加していただいておるわけでございまして、審議会全体の構成年齢的に見ました場合には必ずしも高くないというふうに考えている次第でございます。
  33. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあこれは、これが必ずしも高くないということですか、平均年齢が。いま私ちょっとよくわからなかったんですが。
  34. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 法制審議会のいわゆる総会委員方々平均年齢は確かに御指摘のとおり相当高くございますが、特別部会平均年齢を申し上げますと、この刑法改正全面改正に関する報告をいたしました四十六年の十二月十五日現在で、刑事法特別部会委員方々平均年齢は六十・四歳、それから幹事平均年齢は四十四歳ということになっております。私最後に申し上げましたのは、審議会の全体のメンバーの年齢構成としてはそのようなことでございますので、必ずしも年配者に片寄り過ぎているというようなことではないというふうに考えている次第でございます。
  35. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ、大臣のお時間があるようですのでなんでございますが、まあ幹事はなるほど若いですが、幹事には表決権がないと伺ってるわけでございますし、それから私は御年齢の方がよくないとはちっとも言っておらないので、非常にりっぱな方、お一人お一人はたいへんにごりっぱな方ばかりだと思うんでございますけれども、この総会のほうにしても必ずしも高くないと、刑法部会にしてみても高くないと、年齢は高くないとおっしゃるわけですが、そうほんとうに法務省がお考えだとすると、やっぱり刑法のように今後百年にわたる日本の法律の一番基本的なことになる、法律ばかりじゃない、道徳とか倫理とかの一番の基本になる今後の将来に向かってのことをきめるのに、やはりこれは年齢的に片寄っているんじゃないかと、これはだれしもそう思うんじゃないか。もし法務省だけお思いにならないとすれば、法務省考え方というものが国民から非常にかけ離れたものであるということを証明することになるんじゃないかと思うんですけれども、そうした点について、大臣はお幾つなのか私存じ上げませんが、非常にごりっぱなお方で、こういうふうに年齢を離れてごりっぱな方ばかりだと、年齢がどうだからどうだというわけではありませんけれども、やはり年齢各層の方がこの委員会に入る必要があるんじゃないかと、これは各新聞紙でも言われておりますし、国会でもこれ何回も言われておったわけですが、ここで、もう今度一回でたぶん終わるであろうという段になって言ってみたところでもうおそかりしということかもしれませんが、大臣はこの点率直にどういうふうにお考えでございますか、委員の人選について。
  36. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) やはりこういう特別の仕事でございますものですから、一流人物ということになるとどうしても高年齢の人が多くなる事情にあると思います。ただ、そこで部会をつくりまして幹事さんを東大の若い先生とか大学の諸先生、そういう若い最近の刑法学者等、できるだけ若い方々に入っていただいて、幹事のほうの年齢は四十歳ぐらいというような事情にありますので、まあ幹事といいましても実務をとる方々でございますから、こういう方々にできるだけ御参加願うような心がけをいたしておるわけでございます。どうも一流人物ということになると、どうしても高年齢になるという可能性があるわけで、もうこれはいたし方ない事情ではないかと、かように思っております。
  37. 佐々木静子

    佐々木静子君 やっぱり一流となると高年齢になるというところに法曹界というか、この特に刑法学界などのもうどうしようもない古さがあると、ほかの社会では一流即高年齢ということは必ずしもつながっておらないんじゃないかというふうに私思うわけでございますが、そうした事柄の中にもたいへんに国民全般の感情から離れた古色蒼然とした感じというものはこれは否定できないと思うわけなんでございます。それからたとえばこの間の衆議院法務委員会の御答弁でも、たとえば大臣とすると報道の自由というものは保障しようと考えておるというふうな御答弁を伺っておりますけれども、まあ大臣お一人で全部おきめになるわけにはいかないとは思いますけれども大臣は具体的にどうして保障しようとお考えになっているのか、その点だけでもちょっとお述べいただきたいと思います。
  38. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) いままでありました二百三十条ノ二というのを今度の改正では落としておるわけでございます。これは皆さんごらんいただきましても、私どもも拝見しても、あの二百三十条ノ二というのはまるで取ってくっつけたような条文であることは間違いない。何かの必要があってああいう取ってくっつけたような条文を追加されたんだと思いますが、審議会委員方々の御意見を聞きますと、最高裁の判例等で、新聞等が起訴前の事実を報道することはこれは公共の利益に合致するんだという判断が出ておりますので、まあ委員方々意見としては、そういうように最高裁の判例でもうすでにきまっておるんだし、わざわざ取ってつけたような条文はなくてもいいではないかという御意見で削除になったようでございます。しかし、これを何かほかの方法で――急にあるものがなくなったということで妙な感じを与えるよりも、もっと何か自然の形でそういう報道の自由というものを保障される条文の書き方はないものだろうかということを実は私も言っておるし、おそらくそういう条文が幸いにして見つかれば審議会委員方々の精神とも合致するので、決して背反しておるんじゃないというように思いますので、さような点を今後検討いたしたい、こう思っておるわけでございます。
  39. 佐々木静子

    佐々木静子君 いろいろもっとお伺いしたいんでございますが、大臣のお時間の御都合があるようでございますから……。  そうしますと、一部の報道ではもう一年ぐらいの間に法律案として出すことができると思うというような報道もあれば、また二年、三年かかるんじゃないかという御意見もあり、また、これはとうてい法律案としては提出できないんじゃないかというふうな風評もいろいろ出ておるわけでございますけれども大臣とするとこの答申を――まあ予測されるところでは今月二十九日に答申を受けられたら、その後どのぐらいの期間で法律案になさるおつもりなのか、あるいはもう法律案として作成して提案することは無理だとお考えになっておられるのか、そのあたりの見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  40. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 実は審議会答申が近く出そうであるという段階になりましたので、省内におきましても、これを一般に周知徹底をしたり、それから問題の点をさらに検討をしたりするのにどのくらいの時間がかかるだろうということを相談しておりますが、大体次官はじめ役所の人たちの意向としては、少なくとも一年はかかるだろう、これはそのくらいな期間をかけて十分に練らないというと完全なものができ上がらないんではないかというように言っておりますので、私もそうかなと思っておるようなわけでございます。
  41. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、これは伺っているところでは、与党内部でも相当批判があるようでございますし、社会党ではこれを強くこの刑法全面改正反対している。これは人権じゅうりんの規定であり、重罰主義、まあ少なくとも新憲法下には全くふさわしからぬ刑法になるということで強く反対をしており、また労働者の方たち、総評なども強い反対運動を闘争しておりますし、また日弁連あるいは学界、宗教界においても強い反対があるわけでございますので、ぜひともそういう国民の声を、これは前回の御答弁でも伺いましたけれども、十分に耳をお傾けになって、できればこういう国民反対するものはもう法律案として提出しないというふうな強い姿勢で、法律家の大臣でいらっしゃいますから、臨んでいただきたいと思うわけでございますが、まあ少なくともいまの憲法下にふさわしい人権保障の規定とあまりにも多く距離の離れたこの改正案でございますので、そういうことにならないように最大限の努力をしていただけるというお約束はできるわけでございますね、どうですか、大臣のこの点についての御所信を伺って私の質問を終わりたいと思っております。
  42. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 法制審議会答申が出ますと、われわれとしては法制審議会答申をできるだけ尊重する、できるだけというよりつとめて尊重するという立場をとるのが当然でございます。それから法制審議会の内部の意見を聞きましても、反対というのは三、四名の程度のようでございます。そこで問題は、同じ改正するにしても、できるだけりっぱな改正をさしたいというのが法制審議会委員の大部分の御意見のように思いますが、問題は、刑法ができましてからもう六十年もたちますし、部分的な改正はしてきましたけれども、世の中もかなり変わっておりますから、この段階でやはり法制審議会答申に基づいて改正を志すということは私は適切であろうと思うんです。ただ問題は、世間にかなり誤解というか、周知徹底しないために誤解を生じてる向きがかなりあるようでございますから、こういう点はできるだけ払拭するように最善の努力を尽くす、また、反対しておる少数意見に対しても、少数意見のあり場所というものをよく検討して、それに答えるような努力をすることはこれは当然に必要だと思うんです。まあそういう意味合いにおきまして私どもとしましては、まだ答申の出ない段階でございますが、答申の出た暁においては以上申し上げたような考え方で、決してあわてたりなんかしないで、十分に慎重に取り扱ってまいりたいと、かように思っております。
  43. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひとも慎重に取り扱っていただきたいということと、反対している少数意見という話でございましたが、委員は少数かもしれませんけれども国民の大多数は反対しているということを、これを十分にお考えいただいてお臨みいただきたいということを特にお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  44. 原田立

    委員長原田立君) 本日の調査はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  45. 原田立

    委員長原田立君) 民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  46. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 きょう私は最初のほうと最後のほうを大臣にいていただきたいと思ってるんです、大臣に対する質問がありますんで。しかし最初のところは、大臣が私の質問が済むまではここにおることができないんだということをいま大臣から訴えられました。それで、最初のほうと――私の質問はすべてで大体十二、三問なんです。それで、最初のほうと最後のところを大臣が見えてからということに保留しまして、それで私はこの法案内容についてのところを、第七問から私は質問に入りたいと思っております。どうぞ大臣はお引き揚げくだすってけっこうでございます。できるだけ早く帰っていただきたいと思います。  時間にも限りがあることと思いますので、大体四点ほどにしぼって法案内容について私は質問をいたしたいと思います。  私はこの法案で、大きく分けまして三つの点でどうしても賛成できない問題点があると見ておったわけでございますが、そのうちの一点は、衆議院におきまして全会一致で削除されました十六条の二の、いわゆる調停委員会による調停条項の提示の問題で、これはいままでにも押しつけ調停の批判があったものを一そう助長するおそれがあるものですから、当然削除されてしかるべきものであったと、こう思っております。  次に、改正案の八条の一項のいわゆる他事関与で、こういう項目にはすべて反対するわけでございますが、そのうちにおきましてお聞きしておきたいと思いますことは、最高裁で定める事務につきまして、答弁では事実の調査に限るのだと、こういうふうなことを何度も繰り返されて、それを規則で定めるとおっしゃっておりますが、私は、最高裁のほうで幾ら事務は限定されているとおっしゃられても、結局、法律で明文化されない限り非常にあいまいなものをそのまま白紙にして規則にゆだねることになる。もちろん事実の調査ならいいと言っているわけではありませんが、規則にまかせておくということは国会答弁されております。歯どめから拡大してつくられない保証というものはどこにもありません。そのことを私は非常に心配しておるわけでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  47. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) まず、法律条文のていさいでございますので私から申し上げたいと思います。  御指摘のとおり、第三種の事務といたしまして、「調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務」という形になっております。私ども立案いたしました際に、歯どめがないという御議論に対しましては、まずこの「事務」につきましては、調停事件を処理するために必要な事務であるという意味におきまして調停そのものはもちろん含みませんし、あくまでも調停事件に関与することが主体でございまして、その補助的な事務といいますか、それが考えられるので、当然にこの条文があるためにとどめなく広がるという趣旨のものではないというふうに考えておるわけでございます。  それから、これも一つの御批判がございましたわけでございますが、「裁判所の命を受けて、」というのがこの第三種の事務にもかかるわけでございますが、調停事件が裁判所に係属いたしますと、受調停裁判所として調停委員会でやるか単独裁判官でやるか二つの方法がございますが、調停委員会で調停をやる場合におきまして、受調停裁判所が命じ得る事務というものも客観的にはやはり制限があると、これも一つの私どもの立案したときの理由でございます。  それからもう一点の、本来公務員の職務内容法律で定めるべきではないかという御批判も裏にはおありかと存じますのでお答えさしていただきますと、なるほど公務員の職務内容につきましては法令によって定められるべきことはこれは当然でございますが、一から十まですべてのことについて必ずしも法律で定めなければならないものではないというふうに考えます。調停委員の主要な事務である調停事件の関与のほか、いわば補充的な、補助的な事務につきましては下位法令に委任しても差しつかえないというような考え方から、このような条文のていさいになった次第でございます。
  48. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は実際に調停委員になったこともございませんし、こういう仕事に関与した経験を持っておりませんが、その私が心配する点は、この第八条に「裁判所の命を受けて、他の調停事件について、専門的な知識の経験に基づく意見を述べ、嘱託に係る紛争の解決に関する事件の関係人の意見」を聞き、というふうになってますね。そうすると、実際にある問題にAとBの人が調停委員になっておると。ところが、その人の意見を越えてCたる者が裁判所の命を受けて意見を述べるということは、AとBの正式の調停委員意見が曲げられる場合もあるし、その調停がじゃまされるというような事態が起こりはしないかと。これはしろうととしての私の考え方なんですね。だから、その第三者の意見ですね、もちろんこれは。「他の」「事件」というんですから。第三者の意見を聞くその範囲とかそれに対するウエートですね、そういうことはどこに歯どめされておるかということを私ははっきりここで伺っておきたいと思います。
  49. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 御指摘の御懸念は、全くそういう御懸念はよくわかるわけでございますけれども、私どもの立場から申し上げますと、まずすべてに通ずる問題点について申し上げますと、その際の、いま御指摘のC調停委員の立場は、その調停委員会がAとBの調停委員構成されているという場合のCの立場は、あくまでも調停行為そのものはCはできないわけでございまして、また、そのA、Bが担当している調停事件についてCがいわば自主的に関与するということはもちろん許されておらないわけでございます。  で、御懸念の、これらの事務をやることによってA、Bの調停委員構成されている調停委員会にいわば有害な影響を与えてしまうのではないかと、こういう御意見でございますが、まず第一種の事務について申し上げますと、この「専門的な知識経験に基づく意見」の陳述につきましては、その当該調停事件をその調停委員会がどういうふうに持っていこうか、その専門的事項がからんでおりますので、いわばその調停委員会の進め方そのものについて意見を聞くということが主要なことになろうかと思います。  それから第二の「嘱託に係る」「事件の関係人の意見の聴取」でございますが、これは遠隔地にある関係人から意見を聞いてほしいということに尽きるわけでございまして、嘱託を受けた裁判所の所属の、まあいま先生の御指摘のC調停委員が、その調停事件につきましてどうのこうのという自主的な意見を当事者に、関係人に述べるわけも――述べてはもちろんいけないわけでございますし、その嘱託の事件でございますし内容もよくわからないわけでございますから、嘱託にかかる意見を聞いてほしいということで、いわば客観的にその意見の聴取を行なうだけでございますので、嘱託をしたほうの本来の調停事件については実質的な影響はないと、また、あってはならないというふうに考えております。  それから先ほど御指摘の、嘱託にかかる事実の調査につきましては、いわばこれも客観的な事実の調査を嘱託されるだけにすぎないのでございまして、実質的に、いわば頼んだほうの調停事件について影響を及ぼすということはまずあり得ないというふうに考えておるわけでございます。
  50. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたの話を伺うと、それならばそんなことをする必要はないんじゃないかということも私は言えるように思うんですね。これはあくまでも裁判所の参考意見として聞くんですか。この調停委員、A、Bの調停委員が第三者の意見も聞いてほしいということを言ったときに、そういうことをするんですか。それならば、A、Bの調停委員がそんなこと必要がないと拒否されれば、第三者のCの調停委員意見を聞くということはなさらないのか。それとも裁判所として、どうもA、Bの意見があるが裁判所としてはどうも納得のいけぬ点があるから裁判所としてまた第三者のCの意見を聞いておきたいというような立場で聞かれるのか。どういう立場でこれを聞かれるのか、お聞きしたい。
  51. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 説明がつたなくて誤解をいただいている面につきましてはお許しいただきたいと思いますが、たとえばこの遠隔地にいる「関係人の意見の聴取」につきまして具体的に申し上げますと、甲の裁判所に事件が係属しております、そこで調停委員会を構成しまして、まあ裁判官はちょっとのきまして、AとBの調停委員がおりまして、でAとBの調停委員裁判官で構成している調停委員会が、まあ関係人として遠隔地にいると、その人の意見をぜひ聞きたいと、こういうふうに考えたといたします。で、その意見内容はまあ至って簡単なことで遠くからわざわざ来ていただくまでもないという場合に、こういう事実についてそれではその遠隔地にいる関係人の所在地の裁判所のほうにお願いしようではないかというふうに調停委員会がきめまして、それでその裁判所から遠隔地の裁判所に、この事件についてこういうことをその関係人から聞いてほしいという嘱託をいたすわけでございます。で、嘱託を受けた裁判所のほうで適当な調停委員を選びまして、遠い裁判所のほうからこういう意見の聴取をしてほしいという依頼があったということで、その嘱託を受けたほうの裁判所のC調停委員が関係人に会いまして、この事件について調停委員会のほうでこういうことを聞いてくれと言われたのでお聞きする、で、その聞いたことを調停委員がそのまま客観的な形でもとの調停委員会に結局は報告するという形になるわけでございまして、その調停事件そのものについてC調停委員がああのこうのというようなことを言うということにはならないというふうに考えているわけでございます。
  52. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、くどいようですが、だめを押しておきますが、最初AとBの調停委員がやる。それで、それに裁判官が一人加わって調停委員会を形成する。そして、その三人の意見として、この問題はもう一人現地の人の意見を尋ねてみようではないかということで聞く。そして、その現地の意見が提出された場合は、その三人がそれを聞く、こういうことですね。それで、その三人がこの意見はおかしいということになれば、それはもう放棄されてしまう、何ら権威を持たないものだ、ただほんとうの単なる参考意見として聞くんであって、ということになるわけですね。そして、その三人の調停委員の中でかりに一人でもそんなこと聞く必要ないと、こういう意見になれば、そういうCの調停委員意見は求めないと、こういうことなんですか。こういうふうに理解していいんですか。
  53. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 私、先ほど具体的に申し上げました遠隔地にいる関係人の意見の聴取につきましては、C調停委員自身の意見というものは全然表面には出てこない筋合いのものであろうかと思います。その点ではいまの御心配は全くないというふうに考えます。  それから、第一段の「専門的な知識経験に基づく意見」、これはまさにC調停委員意見でございますので、調停委員としてそのC調停委員意見を聞くという形になりますので、誤解のないように申し上げたいのは、この最初の事務とあとの事務は、いまの御質問に関連して申し上げますと、ちょっと結果が――結果といいますか、違う性質のものであるというふうに御理解いただきたいと存じます。
  54. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最後のところもう一ぺんちょっと。
  55. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) ここに書いてございます最初の「専門的な知識経験に基づく意見を述べ。」、これはC調停委員が自分自身の意見として述べることでございます。それから第二番目の、遠隔地にある「関係人の意見の聴取を行い、」というのは、C調停委員が関係人の意見を聞いて、その聞いたまんまをもとの調停委員会にいわば報告するといいますか、そういう形になりますので、あとの事案につきましてはC調停委員意見がそのもとの調停委員会に関係、影響するということはあり得ないということを申し上げているわけでございます。
  56. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、C調停委員意見というものは、これに反映しないと……
  57. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 第二種の事務につきましては。
  58. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 C調停委員が現地の人の意見を聞いて、それをこっちへ報告すると、こういうことですね。それでも私は一つの危険を感じるわけですわね。かりにある男と男の争いがA、Bの調停委員の調停にかかっておる。そうすると、Cがその現地でたまたま尋ねた、意見を求めた人が、現在調停になっておるどちらか一人の側に特別な好意を持っておる。個人的な関側とか、いろいろなことで、特別な好意を持っておる。悪意を持っておる場合もありますね。そういう人がたまたまそこへ出てきて、そうしてCに自分の意見を述べる。そうすると、Cはそのままこっちへ反映してくるということになると、やはり私はAとB調停委員考え方というものが何か拘束されたり、また拘束をというか、影響を受ける場合が起こってくるような感じがするんですね。だから、実際に公平な正確な調停というものがそこでおかされる心配があると、私はそういうふうに感じるわけなんですよね、人間のことですから。ですから、もしもそういうことがないというならば、これはもうA、Bにまかしておいて、それで裁判官が入って三人で、文殊の知恵ですよね、三人でいろいろ意見をかわして、そして結論を出すということでもうこと足れりと、私はそういうふうに思うんですよ。それより、ほかのものがまじってくるということは、プラスになる場合もあるけれども、マイナスになる場合もあり得るじゃないかというのが私が述べている意見なんですね。だから、そこをどうしたら、マイナスになる面は絶対ありませんと、こう言えるか。Cが言ってきた意見をA、Bが取り上げないというならば、最初から聞く必要がないのでありまして、そこをどういうふうにやっていくか、非常に疑問が残るわけですね、私は。
  59. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 申し上げますが、事件がありまして調停を進めますにつきましては、やはり事件の背景になったり、あるいは基礎になったりするような事実関係は、これは十分調停委員皆さんがお聞きにならなくちゃいけないわけです。で、その資料の一つとして遠隔地にあるこういう人の意見をひとつ嘱託して聞こうじゃないかと、こういうことを委員会でおきめになって、そうしてお聞きになるわけですから、調停委員会のほうはもう自分がひとつ聞いてみようじゃないかということをおきめになってお聞きになるんですから、いま須藤委員がおっしゃったような御心配は実際には起こらないと存じます。
  60. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それならばもう聞く必要はないということですね、私は。A、Bが、調停委員結論を出されて、影響を受けないならば聞く必要はないと思うのですね、私は。もしも影響を受けるとならば、これはまた問題が起こってくる。こういう関係になりはしないかと、こういうふうに私は思っているのですね。
  61. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 須藤委員の御疑念ごもっともでございますけれども、今度の調停制度の改善の一つの方向といたしましてと申しますか、その前提として、調停に対する批判の一つといたしまして、調停委員会が事実関係の紛争の実態を正確に把握しないままに無理に調停案を調停委員会で押しつけているのではないかと、こういう批判があるわけでございます。そこで、その批判に答えるために、調停委員会としてはやはり紛争の実態をなるべく正確に把握いたしまして、その紛争の実態に合わせまして適正な解決案を導き出していこう、その必要があるのではないかということになったわけでございます。その一つの方法といたしましてこの八条の一項に掲げてあるような事務というものを調停委員にやはり認めたほうが望ましいのではないかということでございまして、ただいま例にあがっております「嘱託に係る紛争の解決に関する事件の関係人の意見の聴取」の関係でございますけれども、これは、一つには、当事者の一方が遠隔地に住んでおりまして調停期日に毎回出てこれないという場合に必ずしも両当事者がそろわなくても一方の御意見を伺うだけである程度調停を進め得るという場合に備えて、当事者の便宜のために遠隔地の方にはその地におられる調停委員の方をわずらわして御意見を伺おうという機会をつくるということと、あわせてその事件の関係人で重要な関係人の方々に御意見を伺うということができるようにしよう、そういう目的でできたものでございますので、あくまでも関係人の意見という形でもとの調停委員会のほうに提出されますので、そういうものをしんしゃくいたしまして事案の内容というものを調停委員会としてできるだけ正確に理解し、その上で適正な解決案を導いていきたい、そういうことでございますので、これによってこの関係人の意見によって影響を受けるといえば影響を受けるわけで、それによって事案の内容を把握するわけでございますから影響を受けるということになりますが、その意見が適切でない、真実でないということになれば、そこには両当事者にもこの関係人の意見というものは示されるわけでございますから、当事者の側から、その意見はおかしいということをおっしゃっていただき、また、別の人の意見を聞いてくれという申し出をしていただければ、また、その別の方の御意見も伺うと、こういうことで進めていくということになるわけでございます。そういう意味で、須藤委員の御心配になっている点は、まず、ないのではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。
  62. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 たびたび御説明を受けましても、私にはやはりまだ危惧が残るんですね。それなら、いっそのこと、A、Bの調停委員が、むしろ現地に出張なすって、そして意見を求めてくるということのほうが私は正しい感じがするんですよ。A、Bが遠いところへ行けないから、現地のCをわずらわして意見を求めるというんでは、これはA、Bと、それから裁判官の三人がやるという、この原則が私はくずれていくような感じがするんですよ。そうすると、そこへCというのが入ってきて、結局四人じゃないかという感じもしてくるわけですね。だから、調停委員会の原則がくずれるおそれがあるし、またそれだけ危険も多くなると。やはり裁判というものは、まあこれ裁判じゃないっていえば裁判じゃないかもわかりませんけれども、やはり厳正で、一分の間違いもないようにしていくというのが私は裁判の精神であり、調停の精神だと思うんですよ。そういう点からいくと、何だか私は不安が残る。むしろ、それならば、かりに出張旅費かかかっても――そんなことは問題じゃないですよ、調停委員がその現地へ行って、そうして二人で行って、また裁判官も参加するなら、三人で行って、そうして聞いてくると、このほうが私は正確が期せると、こういうふうに思っております、どうですか。
  63. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) ちょっと、須藤委員のおっしゃる調停の精神は、まさにそのとおりであろうと私ども存じます。確かに調停委員会、最判官を含めました三人の方が現地へ出かけていって意見を聞くとか、その調査を行なうとか、それができれば最も望ましいわけでございまして、それをまた、してはならないというわけではございません。それもできることに現在もなっておるわけでございますけれども、現実の問題といたしまして、三人の方々がそろって出かけていくということのためには、非常に時間的なロスが多いわけでございまして、たいへん御多忙な調停委員方々をわずらわして調停をお願いしているわけでもございますので、なかなか、そういう期日を取りにくいのではないか、実際問題としては、半年ごとか一年後にということなら別でございますけれども、切迫した期日の間でもって、そういう日をとっていただくということは非常に困難なのではなかろうかと、そういうことも考えた上での、この法案の立案の趣旨でございます。
  64. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、調停委員やっていらっしゃる方は、決してあんたのおっしゃるように、忙しいからといって、片手間に調停委員をやっているとは私は思っていません。やはり調停委員になられた方は責任を感じて、そしてやっていらっしゃるんで、おれはひまがないからそんなところへ行けないやと、調査なんかに行くひまがあるかというようなことじゃないと思うんですね。やはり、その調停を、正しい調停を引き出すというためには、あらゆる努力をされるのが、これは調停委員だと私は思っています。また、調停委員の方には、そうあっていただきたいと私は思っているんですよ。それを肝心なあんたのほうで、忙しいからそんなことできまいというふうに安易に片づけてしまうということは、私、調停委員に対する侮辱じゃないかと思うんですよ。調停委員は忙しいから、そんなことをお願いできないだろうというのは、調停委員考え方に対する、あなたたちは親心だとおっしゃるかもしれぬけれども、逆にそれは侮辱だと思いますよ。調停委員は忙しいからどうのこうのといって、そんな考えは持っていない。私はあくまでも正しい調停という立場に立つならば、たとえ一日家業を休んでもおれは行くという方だと思うんですよ。そういう点からいったら、どうも裁判所の考え方、あなたたちの考え方は便宜主義的な感じがしてしようがないんですよ、私は。どうですか、その点、おそらく私は将来問題が起こってきやしないかという懸念がまだ晴れません、あなたが説明なすっても。もう一ぺん答えてください。これ以上、私はもうこの問題については追及しませんが……。
  65. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 調停委員のお気持ちは、確かに須藤委員のおっしゃるとおりのお気持ちを持っていただいておるものと思うわけでございますけれども、やはりそれぞれ本職をお持ちになっていらっしゃる方々が、大部分調停委員を占めておられるわけでございまして、本職のほうの仕事の関係もございます関係で、そう三人の方が同じ日にぴたっと時間をあけて、そのために何日間かをさいていだだけるということを期待することは、たいへんやはり御無理ではなかろうかというふうに私ども考えているわけでございます。
  66. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いままでの説明では、私の疑念は晴れませんが、これ以上追及していく時間的な余裕もありませんし、どうも新しい考え裁判所の方が立たれる可能性もなさそうですから、いま分、どうも我を守ってらっしゃるようですから、私はこれ以上はもう追及しませんが、こういうものの考え方賛成できないということだけは、私ははっきり申し上げておきます。そうして将来問題が起こった場合は、皆さん方責任を感じなきゃならぬということだけは、はっきり申し上げておきたいと思います。  次に、事実の調査についてお伺いしますが、八条では、自分の担当しない事件について調停委員が事実の調査をすることができるように伺っておりますが、そういうことができるのかどうか。
  67. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) ただいま御指摘の点は、先ほど申し上げましたように、必要な最高裁判所の定める事務として、最高裁判所のほうでお定めになる予定というふうに承知しております。  できるかどうかという御趣旨でございますが、先ほど申し上げました八条の趣旨からいいまして、その趣旨の規則を定めることはできるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  68. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、また話が戻るようでございますけれども、やはり問題になってはプライベートに関する問題も出てくるんですね。ある、夫婦別れのような場合には、夫婦の間におけるいろいろな問題ですね、あんまり適当なことばじゃないかしれぬが、性的な関係の問題から、財産の問題、教育の問題、いろいろな問題が私はあると思うんですね。その場合、A、Bがやっておって、Cもそれをある程度委嘱されれば、ある程度突っ込んで調査する権限といいますか、そういうものが与えられるわけですか、どうなりますか。
  69. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 御指摘のとおり、調停事件、特に家事調停においてはそういう問題が比較的多いかと存じますけれども、やはり人の秘密にわたることが非常に多いと思います。普通の調停事件を担当している、現在において担当していただいている調停事件についても全く同様でございます。その点につきまして、こういう職務を拡張したことによって、人の秘密に介入する可能性がまた多くなるのではないか、そういう御指摘のお尋ねであれば、確かに量的にはそうなるというふうにお答えせざるを得ないと思います。しかし、調停委員調停委員会を構成して仕事をやっていただく、あるいは今度の改正法によって、調停委員が独自で事務を行なうという場合におきましても、やはりその事件の性質からくる人の秘密の関係は、やはりどうしても避けがたいものだと思います。その場合に、当然のことでございますが、調停委員は、その際、公務に従事しておるわけでございますので、人の秘密、公務によって知り得た秘密を漏らしてはならないわけでございますので、もちろん調停委員のお心がけを高めていただくということは当然のことでございますし、制度的にも、現行法にもございますように、人の秘密を漏らすということは、やはり制度として制裁を設けて、人の秘密を漏らさないような保障をしていくというふうにお答えせざるを得ないと存じます。
  70. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 調停委員が事実の調査に行く場合がありますね。そうすると、その場合調書をつくらなきゃならないという問題が起こってまいりますね。そうすると、当然書記官が立ち会ってつくると、こういうことになると思いますが、そうなりますと、民事調停規則十二条の改正が必要になってくるわけだと思います。そこでわが党の議員が衆議院段階で質問しておるわけですが、正森君が質問しておると思いますが、調停委員の質問事項や答えですね、それと書記官の作成した調書に食い違いが出てきた場合ですね、非常に私は問題が複雑になって困難な問題が起こってくるんじゃないかというように考えるわけです。それを規則を定める際に十分検討されるような御発言をされておりますが、その辺の矛盾はどういう形で矛盾のないようにされていくおつもりなのか、その点を伺っておきたいと思います。
  71. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 調停委員による事実の調査も調停手続の一環として考える限りにおきましては、手続の適正保障という観点から書記官が立ち合い、手続について調書を作成するというのが本来の姿であろうかと存じます。しかし、確かに御指摘のとおり調停委員につきましては裁判官と異なりまして、書記官に対する職務上の命令指揮権はございません。その意味で、書記官と調停委員意見――意見と申しますか、判断の食い違いが生じる余地は理論的にはあり得るわけでございます。本来、調書を作成する職務及び権限は書記官にあるわけでございますので、形式的に見ますと、書記官が作成した調書がまさにその事件での調書ということになるのではないかと思います。しかし実質的には、その調査をするのは調停委員のほうてございますので、内容的にいいますと、調停委員の聞いたほうが本来正しいのではないかという問題もあるわけでございます。その点の調整を、裁判官の場合でございましたならば、裁判官が命令することによりまして調書の記載内容を変えさせる、そして書記官がそれに同意をしない場合には書記官の聞いたところを調書に付記する、こういう形で解決をつけているわけでございますが、調停委員につきましてはそういう解決の方法ができないわけでございますので、突き詰めてぎりぎりのところを本質的に考えますと、結局その矛盾している部分に関する限りは調書の内容的な効力がないというふうに考えざるを得ないだろうと思うわけでございます。したがいまして、どうしてもその部分がはっきりさしたいんだということであれば、あらためて裁判官による調査をやり直すというふうなことにせざるを得ないんじゃないかと思います。しかし実際問題といたしましては、調停委員の方も書記官の方も良識と学識を持った方々ばかりでございますから、実際上はそう矛盾が生ずる場合というのはないのではないだろうかというふうには考えておるわけでございますけれども、理論的にはおっしゃるとおりの問題があろうかと思います。
  72. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その点、書記官のほうからも意見があると思うんですよ。また調停委員のほうでもあると思うんですね。調停委員二人と書記官と三人で行く。そうすると、向こうの言ったことを書記官がメモなり書類にする。そうすると、それがまず権威を持って、調停委員意見がそれと違っていて、おれはこう聞いていると言っても、書記官の書いた文書がまず権威を持って、調停委員意見は全然無視されておる、権威を持たないということが起こる場合が起こってくると思うんですね、これは。私はきょう初めて聞いたことですけれども裁判官といえども裁判官の意見、あるいは裁判長、私はこう聞きましたと言って書記官が文書を出せば、裁判官といえども書記官の意見を尊重しなきゃならぬと、そういうことがある。それほど書記官は権威を持って責任を持っているということが言えると思いますね。ところが、調停委員について書記官が行く。非常な時間のロスや仕事がオーバーになって書記官も困るというような問題が起こってくる。書記官の側からいえばそういうことで、権威があっても仕事がえらいという問題も起こるでしょう。片方の調停委員からいえば、おれたちは調停委員であっても書記官の書いた文書のほうが権威があるのだ、おれたちの聞いたのは権威がないということにもなりかねない場合ですね、そういうことが起こると思うのですよ、実際やっていけば。だからそこらを、その矛盾がないようにどういうふうにこの点を考えておるか、この法律ではそういう矛盾についての何ら意見が出てないわけですね、矛盾が出た場合には調停委員意見を尊重するとか書記官の意見を尊重するというような、どちらも書いてないのですね、これ。見てみるとね。だからやはりそこの矛盾をどういうふうに処理していかれる考えかということなんですね。非常にあぶない点じゃないかと思うのです。
  73. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) その点につきまして、先ほど申し上げましたように、裁判官の場合におきましても裁判官は書記官の調書が誤っていると、自分はこう聞いたのだという場合には自分の聞いたとおりに調書を書かせるということができることに法律上なっておるわけでございます。しかし書記官がそれをどうしても自分は別に聞いているのだ、違ったふうに聞いているのだという場合には、その旨を書記官は調書に付記するということになっておるわけでございます。要するに裁判官の聞いたということと書記官が聞いたということとが調書上併記されることになるわけでございます。この場合におきましても、どちらのほうが権威を持つかということについては、法律は何らの規定を置いておらないわけでございまして、実質的には結局その部分に関する限りは調書の記載自体が内容的には効力を持ち得ないものになるという可能性が強いのではないかと考えるわけでございます。調停委員の場合につきましてもその点ではやはり同じことなんで、書記官が控えたことと調停委員が控えたことと矛盾があり、ある場合においては内容上やはり調停委員会としてはどちらを信頼していいかということはきめ得ないわけでございますので、内容上の証明力はやはり持てないものになる、その点では裁判官の場合と変わらないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  74. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私参考のために伺っておきたいが、裁判の場合、裁判官の意見と、考えと、それと書記官の文書と食い違った場合ですね、    〔委員長退席、理事佐々木静子君着席〕 その場合、その書記官の文書がまず公の文書として成立する、しかし裁判はそれによってしない、裁判官は自分の考えによって裁判をする、こういうことなんですか、どういうことなんですか。その書記官がつくった文書によって裁判をするのですか、裁判官の意見裁判するのですか、その場合。
  75. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 調書の記載につきましては、先ほど申し上げましたように、裁判官は、書記官がまず調書をつくるわけでございますが、その調書を見て裁判官としてここは自分は違って聞いている、こういうふうに聞いているのだという場合には、裁判官の聞いたとおりに訂正させる権限が裁判官にはあるわけでございます。そういたしますと、書記官としては裁判官の聞いたとおりに一応調書は訂正することになるわけでございます。しかし書記官としてはそれは承知できないという場合には、自分は裁判官とは違ってこういうふうに聞いているのだということを調書に付記することになっております。そういう付記が出ますと、実質問題といたしまして調書としては確かに裁判官の言うとおりの調書が一応はできるわけでございますけれども内容上は実質的には証明力を持ち得ないものになる可能性があるわけでございます。もちろんこれは形式的な記載事項と違いまして、実質的な記載事項、たとえば証人の証言のようなものになりますと、その証言を聞いた裁判官自身が自分の記憶によって心証を形成することはできるわけでございますから、調書の記載どおりと申しますか、裁判官の命じた調書の記載どおりの内容を調書にすることはできるわけでございますけれども裁判官が交代いたしたりいたしますと、裁判官としてはあとは調書によってしか証人の証言内容は理解できないわけでございますから、その場合には、調書に書いてある内容と書記官が付記している内容とが違っておりますると、裁判官としてはどちらをとるかということは、また全然別に検討せざるを得ないということになるわけでございます。結局、どちらもとれないということになれば、もう一ぺん証人に聞き直さざるを得ないと、こういうことになるわけでございます。
  76. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 国会にはこういうふうに速記がついていますね。少なくも複数でついているわけです。一人ということはないんですね。で、私たちの発言を速記者が速記してますね。私たちはこの速記を、権威を認めておりますよ。自分が都合が悪いといったって、速記直せなぞということは私たちは言っていない。速記のとおり。私たちは尊敬して、そうして速記の文書に対して私たちは責任を持っておるわけですね、自分の発言に対しては。それほど私は必要なものだと思うのです。そうすれば、裁判所といえども書記官の文書はまず尊重しなきゃならぬ。裁判官は、いやおれはこう聞いたと言っても、ちゃんと文書に残る以上は、ちゃんとそれを尊重しなきゃならぬというのがたてまえだと思うのです。それでなかったら書記官というものはつまらないことになってしまう、書記官の権威というものが全然認められないで。そういうことだと私は思うのですよ。ところが、裁判官が、いやおれはそんなことは聞いてない、おまえのつくったものが間違っているから訂正せいというようなことを言うと、これまたおかしなことになっていくわけですね。それで、書記官が言うこと聞かなきゃ書記官を罷免するとか左遷するとか、そんなことするならば、これはとんでもないことになっちゃうんですね。裁判官の独裁的なことになってしまうのですね。そういうことをまさかなさるまいとは思いますけれども、だから書記官の身分保障というものがはっきりしてなきゃならないと私は思うのですよ。自分の書いたものには自分が責任を持つ、そのかわり、裁判官と意見が食い違っても、自分たちのそれに対しては責任を持って、そして権威が守られていくという、そういう立場が私は書記官にとっては必要だ。書記官はそのことを要求していますよ。希望しているのですね。  ところが、今度は、出張して調停委員と行くと、そうすると、調停委員が、おれはこう聞いたけれども、書記官はそう書いている、いやおれはそう聞いてないと言って問題が起こった場合に、それをどう矛盾を処理していくかということなんですよね。そこらにも非常な問題がある。それの場合にどうするか。調停委員と書記官との意見に違いが起こった場合、それはどういうふうに処理していくんだということをはっきり伺っておきたいと思うのですね。
  77. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 私ども調停委員と書記官との場合におきましても、これは手続関係の問題として処理される場合におきましては、まず書記官が書記官の聞いたところでもって調書は作成する、そして調停委員として、それが自分は違ったように聞いているという場合には、調停委員調停委員として、自分はこういうふうに聞いたという書面の報告書を別につくる、それを合わせて調停委員会のほうへ提出する、こういうことになるのではないかと思います。
  78. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 どうもすっきりしないですね。そこらが私たちこれならだいじょうぶだという、そういう感じがしないのですよ。まあそれ以上のことを皆さん要求しても無理かもわかりませんけれども、しかし、そういう点はやはり起こり得る問題だということは常に念頭に置いておいて、その場合どういうふうに処理していくんだということは、今後の課題としてぼくは裁判所関係でも、法務省でも大いに検討しておいてもらいたいと、こういうように思いますよ。  それから大臣もう一つ、待ってください、大臣に対する質問、最初に戻りますから。  次に、八条二項で、調停委員は当初から非常勤職員として最高裁の任命を受けることになっているわけでございますが、この点は前項の他事関与とともに私どもの最も反対しているところでございます。この八条に対しましては、御承知のように日弁連をはじめ、裁判所の職員の方々も早くから反対の決議をされ、また削除の要望も強い。わが党の衆議院における正森議員の修正案にも削除するようになっておりましたが、残念ながら否決されてしまいました。    〔理事佐々木静子君退席、委員長着席〕 私はこれまでの審議経過から見ましても、八条二項の公務員化は、日当増額と引きかえに、手当制の導入を理由に、そのために、現行法でもできる手当をそうしないで、公務員化したところにむしろ目的があったのではないか。先ほど来の御説明を聞いておりますとそう思うわけでございますが、どうでございましょうか。
  79. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 従来の御説明とまた重複するわけでございますが、あらためて申し上げますと、このたびの、ただいま御指摘の任命制の公務員にすることと、待遇改善、改正法における手当支給とは、当然手当を支給するために任命制の非常勤公務員にした趣旨ではございません。現在の制度は、すでに御承知のとおり、いわば一部篤志家の善意の奉仕者に依存する制度でございますが、この制度では不十分ではないか。特に資質のすぐれた民間の有識者を多数調停委員に迎えて、その知識経験を有効に活用できるような新しい職務内容――この点につきましては、先ほど御批判をいただいた点でございますけれども、いずれにいたしましても、複雑多様化している調停事件の事案を十分把握した上で、積極的な説得を行なうという意味で、充実した職務活動をできる体制を整えたいというのがこのたびの法改正のねらいでございまして、そのためには、これもどなたからも異議がございませんけれども、いわばその地位と職務内容にふさわしい待遇を与えるとともに、当初からの任命制の非常勤公務員にする身分関係を明確にする必要性があると考えておるわけでございます。従来の候補者制度でございますと、現実そうでございますように、必ずしも全員に職務の担当を求めるという体制にはございません。当然には候補者制度の弊害ではございませんけれども、従来の制度でいわば調停委員の固定化、職業化といいますか、かつ高齢化を来たしているというようなことで、調停事件の処理に実際のあるべき調停からだいぶ離れつつあるのではないかというような批判もございますので、今回の改正におきましては、先ほども申し上げましたように、高い資質、能力のある適格者を選びまして、全員に職務担当を求めるということになりますので、積極的に調停委員方々に依頼してなっていただくという制度に改めた次第でございます。それに伴いまして、その地位と職務内容がいわば制度的に高められることに伴いまして、従来手当を支給できなかった点につきまして、今度は手当を支給できるというふうに考えてこういう改正法案になった次第でございます。  なお、先ほど御質問の中に、現行法制度のままでも手当を支給できるという御見解も衆議院の段階でもお伺いをいたしました。私どもといたしましては、これもすでに御説明申し上げましたけれども、手当といいますのは公務員に対する給与の一種でございます。申し上げるまでもなく公務員に対する給与の支給は法律に基づかなければなりません。現行給与法の二十二条の一項に「委員」という文言がございますが、この「委員」には、現行法下の調停委員が当たるとするには問題があるのではないかということで、この際資格を高めまして任命制にいたしまして、身分をはっきりして、二十二条一項の手当は支給し得るという形に相なったわけでございます。
  80. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 何で公務員にしなきゃならぬかということについて、この前の参考人を呼んだときにも意見を求めたんですが、どうもはっきりしないんですね。それで、弁護士の藤井さんでしたか、副会長の。その方は、何もそんなことする必要はないんだという御意見もありましたし、それから、この日当と手当の問題ですね、これは何も公務員にしなくてもちゃんとできるんだという意見も具体的に出されたと思うんです。私もそれはできることだと思っております。それをなぜこういうふうに公務員にしなきゃならぬか、裁判所のひもつきの調停委員をなぜつくらなきゃならぬかと、こういう感じがするわけですね。そうして、私は、こういうことにしたら官僚化するおそれがありはしないかということに対して、官僚化とはどういうことだという御意見を述べられた参考人もございました。しかし、私は、これはすべての調停委員の問題じゃないんです。調停委員の中にはそういう考え方を持っていらっしゃる方もあるということを私は伺っております。公務員になったほうが、自分が何かえらくなったんだと、おれは公務員だという気持ちになって、これまでよりもえらくなったんだというような優越感を持たれる人もあると、現にそう言っている方もあるということを私はほのかに伝え聞いておるわけですね。それからもう一つは、これは非常に子供っぽいことだと思うんですが、公務員になったほうが、勲章もらうときに階級の上の勲章がもらえるんだという、こういうことを言っていらっしゃる方もあると、こういうことなんですね。もしもそれがほんとうならば、その考えそれ自体にやはり官僚主義的な考えが私はにじみ出ているように思うんです。だから、何も裁判所のひもつきの公務員にしなくても、現行でちゃんとやっていけるものをなぜ公務員にしなきゃならぬかという点は、裁判所の御都合じゃないかと思うんですよ。裁判所の御都合、すなわちひもつきということだと思うんですね。裁判所がこれやれといえば、はいといってやらなきゃならぬ、いわゆる自分の事件以外でもいろいろ調査に行ったりなんかしなきゃならぬというような、裁判所のひもつきで、裁判所に踊らされる公務員、それが調停委員になっては私はいけないと思うんですね。調停委員というものはもう裁判と権威と何ら関係がなく、ほんとうに国民を中心にものを考えて、そして何とかこの世の中が円満にいくように、けんかしている夫婦ならば、ちゃんとうまくおさまって、できればちゃんと夫婦生活がいけるように、できぬ場合は、両方が納得のできるような解決をお互い両方の意見を聞いて尊重してやっていくと、すべてそういうふうに円満に問題を解決していこうというこの精神が私は調停委員基本的な考え方だと思っておるんですね。それを何も公務員にしなくてもいいじゃないかと、裁判所のひもつきの公務員にする必要がないというのが私たちの意見ですよ。なぜ公務員にしなきゃならぬかというその説明がどうも納得いかないんです。納得のいくような説明が皆さんからなされてないというのが事実だと思うんですよ。だから、私はその説明を納得のいくようにしてもらいたいと思うんですかね、どうですか。――大臣がお答えくださるなら、大臣お答えくださってけっこうです、お待ちしておりましたから。
  81. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 実は調停委員というのは現在でも非常勤公務員でございまして、ただ候補者制度をとっておりますものですから、候補者の間は別でございますが、事件を担当いたしますと担当している期間非常勤公務員になる、こういうたてまえでございます。それからもう一つは、一般各政府機関がつくります審議会委員というのも、これは非常勤公務員でございます。こういう非常勤公務員は別段行動、言論に一切制約を受けません。ですから、何かこう非常勤公務員というと窮屈になるような感じが一般的に起こりやすいと思うんですけれども、ほかのことを考えますと、審議会委員になっても非常勤の公務員であり、別段何にも制約受けておりません。これと同じ形でございますから、やはり手当を支給する関係等から見、また職務の実態から見て、職務が紛争をさばくお役目でございますから、やっぱり公共の機関でございますから、そういう意味において非常勤公務員にするというのは、考え方によっちゃむしろ当然であるように思うんです。ですから、非常勤公務員というものに対する観念が、一般のこの審議会委員と同じようなことに考えていただければ御納得がいただけるんじゃないか、かように考えております。
  82. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私はね、調停委員というものは、国民の代表であって、裁判所が任命すべき性質のものじゃないというのが私たちの基本的な考え方なんですね。そうあってもらいたいです。その精神はあくまでも尊重していってもらいたいと思うんですね。ところが、裁判所が任命するとなると、あの調停委員は次のときにはもうやめてもらおうか、裁判所は任命取り消そうじゃないかというような意見も出てくると思うんですよ。まあかりにですよ、私が調停委員になりますね、最初なる。そこで、労使の関係が紛争が起こる。その場合、私がその労使の争いの調停に立つとしますか。そうすると、いまは問題ないけども、私が労働者側に立った――大体正義は労働者の側にあると、働く者の側にあるというこの原則から判断して、やはり労働者を搾取しておる資本家には不利な意見を述べるかわからない。これが私たちは正論だと思っていますが。そうすると、もうあの須藤調停委員はどうも労働者側につき過ぎると、労働者側の利益ばっかり考えていると、だからもうああいう委員やめてもらおうじゃないかと、裁判所は、これ「任免」ですから、できますよ、それがね。それでは私はほんとうの国民調停委員にはならないと思うんですね。だから、私は、こういうことをやれば、いわゆる裁判所ひもつき、いわゆる官僚化していくおそれがあると、こういうふうに思っておる。そこらの懸念というものがどうしても払拭できないですよ、皆さん答弁では。だから、私たちはこれを反対している。私たちのみじゃないです。弁護士会反対しているんですね。反対論が多いんですよ。何で反対論の多いこれをあなたたちは押し切らなきゃならぬかと、こう私は言いたいんです。どうですか。弁護士会でですね、弁護士の先生たちの御意見をひとつもう一ぺん伺って考え直ししたらどうですか、この点。どうですか、非常に反対が多いですよ、先ほど佐々木さんもおっしゃったが。
  83. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) この点につきましては、この審議会をつくりますときに、やはり日弁連のほうへ代表の委員幹事の御推薦をお願いして、この方々も入って参画して審議をされたわけですが、ほかに問題点がありまして、その問題点は削ったようでございますが、これらの点は問題なく通ってきたようでございます。そこで、問題は、この調停委員というのは、民間人である。確かにそのとおりで、民間人であることがとうといわけでございますが、民間人というども調停委員となって紛争をさばくことになれば、少なくともその期間中は非常勤公務員にならざるを得ない。  それからもう一つは、調停委員、それじゃだれが選ぶかということになりますが、これはかってに出てきて、かってにやらせるわけにはいきません。それじゃますます紛争が紛争になりますから、だれかが任命するか、委嘱をするかの形をとらなきゃならないわけでございますが、まあ最高裁が任命するということになったのが何かかちんときておるような気がいたしますが、最高裁といえども、どの地区ではだれが適任かなんということはわかりません。したがって、地裁、家裁でそれぞれの各種団体等にお尋ねをして、適任者を出していただいて、その適任者の中から候補者を選んで、最高裁へ推薦をして、最高裁はそれで発令をする。要するに、こういうことにおそらく審議会でなったのは、地裁、家裁ごとに任命するよりは最高裁の任命というほうが権威があっていいじゃないかというような考え方から私は最高裁の任命ということになったと思うんですが、さもなければ地裁、家裁ごとに任命しても同じであったと思うんですが、しいてこれが最高裁の任命ということの答申になったということは、そういうような点からきているんではないかと想像いたしております。ですから、最高裁といえどもこれは実態を各地裁、家裁の地域ごとに詳しく知っておって任命するわけにはもちろんいかない、とても最高裁の目はそこまで届くはずはないんですから。やはり地裁、家裁でたんねんに選考してそこ候補者を推薦してくるということになるので、実態としては不都合はないのではないかというように考えますが、いかがなものでしょうか。
  84. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう私の最初の質問に戻っておるわけですが、この法案審議がどういうふうな経過を経て法案が成立したかという点に戻るわけですが、衆議院におきます皆さん答弁を読んでみましても、今回の法案法制審議会の議を経ていない、こういうことははっきりと言われておるんですね。その理由といたしまして、予算関係法案なので時間的に余裕がなかった、調停制度の本質についての基本的な改正ではないから、こういう御意見を述べていらっしゃるように私は読みました。私どもは、この改正によりまして実質的には調停制度の基本を変えようとするものである、こういうように考えております。ですから皆さん方考え方とまっこうから対立しておるわけなんですね。そこで、この調停制度の基本とは何をさして言っておられるのか、またなぜ法制審議会の議を経られなかったのか、この点をまず私は順序として伺っておきたいと思います。
  85. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 法制審議会諮問しなかったことは御指摘のとおりでございます。また、衆議院の段階で申し上げたことをつけ加えさしていただきますと、私ども法制審議会諮問しなかった理由の第一といたしましては、先ほどからお話が出ております臨時調停制度審議会答申に基づく立法依頼によるこのたびの改正法の作成に相なったわけでございますが、この審議会構成といたしましては特に法曹界の代表の方々が多数参画しておられまして、しかも期間が一年八カ月余にわたる慎重な調査審議を経て答申が行なわれたものでございます。中身を拝見いたしまして、法律的な検討も十分加えられたというふうに考えられたからでございます。それが第一の理由でございます。次に、先ほど時間的な余裕の問題も申し上げたわけでございます。  それから後段のお尋ねの法制審議会にかけなかった理由の中で、それではこの調停法の基本的な性格というのはどういうことを考えておるかというお尋ねかと存じますが、これは結局民間有識者の参与、いわゆる司法参与を求めまして、裁判官とともに調停機関を構成することが第一点だと思います。それから第二点は、調停法の冒頭の条文にございますように、当事者の合意に基づいて紛争の解釈をはかる、条理にかなった、実情に即した紛争の解決をはかるという点が第二点の本質かと思います。その意味におきまして、このたびの改正法につきましては私ども考えではこの調停制度の基本的な性格を変えるものではないというふうに考えた次第でございます。
  86. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 従来こういう問題は審議会にいろいろかけてきているわけでしょう。何でこれだけ急ぐからというようなことを理由に法制審議会にかけないできめてしまったかという点は、どういうふうに説明なさるんですか。
  87. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 法制審議会にかけなかった理由は先ほど申し上げたとおりでございますが、民調法を取り上げて申し上げますと、現行民調法を制定いたしますについては法制審議会の議を経ております。その後二回改正がございましたが、これについては法制審議会、もちろん内容次第でございますので、この際かけておりません。それから家事調停を規定しております家事審判法につきましては、制定当時はまだ法制審議会が設けられておりませんでしたので、家事審判法法制審議会諮問をいたすべくもなかったわけでございます。なお、家事審判法改正はその後五回行なわれておりますが、これはいずれも法制審議会に対して諮問をしておらないような状況でございます。  なお、法制審議会にかけた法令につきましては、確かにおっしゃるとおり民法、商法、刑法、民事訴訟、刑事訴訟、こういう基本法は、大基本法と申しますか、改正はもちろんのことでございますが、これに関連する基本法律の制定、改廃については原則として法制審議会諮問することとしております。過去の運用を見ましても裁判制度、それから強制執行あるいは競売制度、司法試験制度等の改正につきましてきわめて広範囲にわたって諮問を行なっておるわけでございます。ただ、私どもこの法制審議会をどう考えているかということになりますけれども基本的な法律でありましても、この際、基本的な法律改正であればどんな改正であっても諮問を行なうべきであるというふうには必ずしも考えておらないわけでございます。
  88. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 法制審議会にはかけなかったが最高裁の臨時調停制度審議会にかけておるからそれでいいんじゃないかというような御意見と受け取れますが、やはり大切な国民に親しまれておる調停法でございますから、念には念を入れて法制審議会にかけたほうがよかったと、こういうように私は思います。  調停制度の基本につきましての私の考えがございますけれども、それはあとで申し上げることにいたしまして、次に移ることにいたしましょう。  臨時調停制度審議会についてお伺いしますが、これはもともと最高裁のほうで規則の制定を念頭に置いて答申を出されたもので、そのまま立法化されることはあり得ないわけで、法務省がその一部を立法化されたのでしょうが、答申では「社会の変化に即応する適切な施策を講ずる緊急の必要がある。」となっておりますね。そうすると、昨年の三月に答申が出されて、緊急な施策が必要であれば中には規則によって改善ができるものもあると思うわけでございますが、立法化のために一年半以上も待たなければならない、改善ができない理由は一体どこにあるかということでございます。立法以外にどうしようもなかったんでございましょうか。私はまだ方法があったように思うんです。規則によって改善できる例もあると思うんですが、それをなぜ一年半もほっといて立法化せざるを得なかったのか、そこの点をお答えを願いたいと思います。
  89. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) ただいまのお尋ねの中で裁判所のほうからお答えいただいたほうがいい部分につきましては裁判所のほうからお答えいただきたいと存じますが、私どもといたしましては、申し上げましたように最高裁の、裁判所からの立法依頼によって立法いたした次第でございます。  確かに御指摘のとおり臨調審の答申は非常に多岐にわたっております。一応分けて考えますと、運用によってこれを改善すべき点と、規則も含めまして法令の改正によって改善すべき点というふうに分けられると思います。運用の改善につきましては、先ほども申し上げましたように裁判所のほうからお答えいただきたいと存じますが、法律の面だけについて申しますと、御承知のとおり裁判所には法案提出権がございませんので、私どもが責任を持って御提案を申し上げている次第でございますが、先ほどから問題になりました身分、待遇の改善という問題がございます。待遇の改善は予算を伴いますので、まず予算の折衝を裁判所のほうで行なわれたわけでございまして、いわゆる予算の妥結を見た年末から本格的な立法作業に相なったわけでございまして、その間一年半もという御指摘でございますけれども、私ども法律の立案に関する限りはそのような経過でございます。
  90. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 答申の中におきまして純然たる運用の改善等を目的としている事項につきましては、私ども答申を受けまして以来、調停を担当する裁判官の方々にも十分答申趣旨を御説明申し上げまして、裁判官、書記官の方々の運用改善についての検討をお願いし、また私どももその検討を進めておる段階でございます。しかし、規則を改める事項、規則の改正を必要とする事項もございますけれども、何といっても一番重要なことは法律改正していただかなければならない事項があるわけでございまして、法律改正ができました段階で法律意味に基づく規則と固有の規則でまかなえる事項とあわせて規則の案を立案してまいりたいと、そう考えておるわけでございます。
  91. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 先ほどのお答えで日当の増額の問題ですね。これはこういう法改正をしなきゃどうしてもできないのだと、こういう御意見ですが、現行の法のままでも手当を支給することはできるのじゃないですか。絶対にそういうことはしていませんか。どこの裁判所でも、どこの家裁におきましてもそういうことはしてないというのですか。これは法を改正して公務員にしなきゃどうしてもそういうことはできないという、こういうお答えですか。しているところがある、できているんだと、できるんだということを私は聞いておりますが、どうですか。
  92. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 支給の実態につきましては裁判所のほうからお答えいただきたいと思いますが、手当として支給している実態は私はないというふうに考えております。  それから法律論といたしまして現行法のまま手当を支給できるかと、こういうお尋ねでございますが、先ほど大臣からも申し上げましたように、国家の紛争処理機関である調停委員会が裁判所の中にあるわけでございますが、国の事務として調停をやっていただくわけで、調停行為自体はもう公務でございます。その公務に対する給付といたしまして給与を支給できないというわけのものではないと思います。ただし、先ほども申し上げましたように、公務員に給与を支給するためには法律上の根拠が必要かと存じます。現行法は大正十一年以来の調停制度発足以来五十年余になりますけれども、その間発足以来この制度は無償奉仕という趣旨から、精神から発足いたしまして、現行法を見ていただきましても手当を支給するという条文はないわけでございまして、現行制度はもうそういう給与を支給しないという前提で制度が組まれ、またそのように運用されてきているというふうに私は考えるわけでございます。で、法律論として、現行制度のままでそれでは何も変えないで手当だけを支給できるかということになりますと、これも先ほど申し上げましたように、給与としての形で支給するためには給与法の二十二条一項の委員でなければならないというふうに考えますが、現行法のままで二十二条一項の委員というふうに考えることには問題があるのではないかということで、やはり私どもといたしましては法律改正をして二十二条一項の委員としての手当を受け得るという形にしたわけでございます。
  93. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 裁判所のほうは。
  94. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 現在、日当は一日につき千三百円以内で支払うということになっておるわけでございます。これは大体調停事件の一件当たりの期日、一回期日の時間が大体において二時間ないし三時間という実績を考えまして、大体午前中一件、あるいは午後一件というのが実務の運用上の実態のようでございます。そういうことで、大体一日当たり千三百円以内ということで日当を支払っておるわけでございます。
  95. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 弁護士の方々はできるなどという御意見を持っていらっしゃることを私は聞いておりますけれども、この問題はこの程度にいたしておきましょう。  衆議院での質問や、参議院の参考人の方にも私からお伺いしたことでございますが、この法案の立法過程で日弁連との連絡を十分にとられておらないということを伺いましたが、一体これはどういうことなのか、その経過はどうなっておるのか。
  96. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 一応客観的な事実だけを申し上げますと、先ほどから申し上げておりますように、私どもの立場から申し上げますと、今回の立法は最高裁からの立法依頼に基づいて立法作業に着手したわけでございます。弁護士会との関係でございますが、弁護士会に対しましては大体改正法案の骨子がまとまった一月十九日の段階におきまして、法律案要綱に基づきまして日弁連の方々に御説明を申し上げたことでございます。ただいまのお尋ねの中身は、弁護士会一般とのいわば協議といいますか、連絡の点だというふうに拝察いたしますので、つけ加えさしていただきますと、先ほど大臣からも申し上げたと思いますが、臨調審には日本弁護士連合会からの御推薦の委員の方三名と幹事の方二名が入っておられまして、その中で積極的に発言しておられます。また、日弁連におかれては臨調審の審議過程におきまして二回、意見書を公表されております。それから答申が出ましたあとでもまた意見書が公表されております。私どもこの法案を作成するにつきましては、これらの意見書を十分拝見した上で検討さしていただきまして、この法案改正の作業を行なった次第でございます。
  97. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま、時間がないから早くやってくれという紙が回ってまいりましたが、私の質問は十一時五十七分から十二時五十七分と、こういうふうになっております。紙に書いてあります。こういう紙をいただいておりますので、私はゆっくり大臣がお見えになるまではということでやっておりましたんで、その点は御了承願いたいと思います。  この問題では臨時調停制度審議会に弁護士の方が入っておられるといっても、二十数名の中でわずか二、三名の方がおられるだけでございますね。これで意見が反映しているからと考えておられるんでございましょうか。あまりにもこじつけの感がしないでもないのでございますが、形式だけ踏んでいらっしゃるように私たちには受け取れるんですが、これでは、さきに第六十五回国会で、在野法曹と密接な連絡をとると、こういうふうに言っていらっしゃる趣旨が全くといっていいほど生かされていないと、こう言えると思うんです。その上予算関係法案ということで、作業を急ぐあまり、日弁連との協議が一回しか持たれなかったという話ですと、密接な連絡とか、意見の調整をはかるなどということは、絵にかいたもちではないかという感じがいたします。  ここに昭和四十六年三月二十六日の六十五国会で附帯決議が出されております。民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議、その第二項に、  政府及び裁判所は、司法制度の改正にあたり、 在野法曹と密接な連絡をとり、意見の調整を図 るように努めるべきである。   右決議する。 と、この決議に対しましては、政府当局も、裁判所のほうも、この趣旨を尊重するということをおっしゃっているはずなんです、この附帯決議で。この附帯決議の精神と皆さんがやられたこととは、どうも一致しないと私は思うんでございますが、大臣どうでございましょうか、これでこの附帯決議の精神が十分生かされていると、そういうふうに大臣は御理解になるんでしょうか。
  98. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私の見方から言いますと、臨調審をつくるときに、委員の数は二十数名ですが、日弁連のほうへ代表の委員を出していただくように最高裁がお願いしたようで、その結果、三名の委員と二名の幹事さん御推薦いただいて、この人たちの御参加をいただいて審議を二年近くやったわけでございます。そこで全体から見れば、その三名の委員と二名の幹事というのは相当の数で、この人たちも、委員になりまして活発な意見の交換をされて、最終的には意見の一致したものを今回の改正に取り上げて、意見の一致しないものは落としていくという方針で大体立案をしたようでございます。したがって、日弁連との関係は、臨調審組織のときに委員を出していただいたことによって一応解決しておるんではないか。  弁護士会というのは、大体大ぜいの集まりですから、なかなか全体の意見一致ということはむずかしい性質のものでありますし、立案段階でさらに法務省と最高裁と両方から出て、日弁連の担当委員方々と懇談したといいますか、法案要綱を説明して、いろいろ御質問をいただいて、そこで意見の交換をした事実があるようでございますから、これ以上なかなか手の尽くしようがないんではないか。あとあれば、日弁連、最高裁、法務省で、できれば常設の連絡機関というものをつくってやればよろしいんでございますが、これがなかなか意見の一致を見ませんで、それぞれつとめておりますし、法務省としては官房長が中心になって、何とか早くそういう実現をしたいということであせっておるんでありますが、なかなか意見の一致を見ないで、まだそれができておりません。この常設の懇談会、意見交換の機関ができておれば、私はこんな問題起こらなかったんだと思うんですが、これはまあ一つの難点でございます。これはしかし、国会の附帯決議の御趣旨もございますし、また考え方からいいましても、最高裁、弁護士会法務省というものは全く一体になって常に意見交換をすべき性質のものでございますから、私どももぜひその実現につとめてまいりたいと、かように思っております。
  99. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は弁護士会にも所属しておりませんし、弁護士会内容については私は何も存じないわけでございますが、それにしましても、日弁連との協議がたった一回しかなされなかったということを伺っておるわけですね。こういうむずかしい問題になれば、一回ぐらいでやめないで、もっと数回重ねて意見の交換をし、意見一致を見るというのが私はやり方としては正しいやり方じゃないかと思うんです。そうすると、どういう方がこのとき代表として出られたか、その代表として出られた方は、日弁連として皆さんが納得のいく代表であったかということにも問題があるわけですが、そういうことは私は触れません。私はわかりませんから、そういう問題には触れませんが、しかし、どうも私手続としても少し手抜きがあったような感じがするわけですね。もしもこの決議の精神を政府裁判所がほんとうに尊重なさる精神の上に立っているならば、「在野法曹と密接な連絡をとり、意見の調整を図るように努める」と、こういうふうになっておるんでございますから、そこまでなされば、私はこういう問題が起こらなかった、もっと弁護士会意見もこの中へ含まれて、みんなが賛成のできるような改正ができたんじゃなかろうかという気持ちがするわけですね。ところが、その手が尽くしていないために、いま非常な反対意見が強いということですね。これは何といっても私は残念なことだと思うんですが、やはり政府当局、裁判所関係にもやはりその責任はあると、こういうふうに思いますが、中村大臣どうですか、その点は。
  100. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 実はこの臨調審の答申が出ましてから、心組みとしては臨調審答申の精神を生かして改正をしたいということでは、おそらく最高裁はあったと思うんですが、問題は昨年の年末予算編成がありまして、予算編成で、いままで千三百円の実費弁償しかしていなかったのを、今回は六千五百円にしようという案になったわけですが、この予算が固まらないことには最高裁も本腰で足を踏み出せなかったわけです。それで法務省法案立案の委託を受けて作業に着手をしたわけですが、二月八日というのが国会における予算関連法案提出期限ということをきめられまして、これまでにはどうしても予算関連法案で出さなくちゃならぬ。ですから正味は全くその期間がなかったわけです。できればお説のとおり、日弁連のほうとも、もっと回数を重ねて討議を尽くせば、かりに意見の一致を見る見ないは別として、討議を尽くせばよかったと思うんでありますが、そういういとまがなかったというのが、十二月の末から二月の八日までの間しかないものですから、こういう結果になったと思うんです。今後はひとつわれわれこういうような立案を、法律改正をする際に、なお十分考慮してまいりたい、かように思っております。
  101. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もうあと私の質問は三点で終わりますから、お許しを願いたいと思いますが、日弁連の要望書を伺っておりますと、臨調審の答申の名簿にあらわれていない最高裁判所の定める事務という部分まで法律に出てきております。しかも、これが改正の中で日弁連がまっこうから反対しているものの一つであり、改正の本質問題にもかかわるようなものですから、法は先ほどの附帯決議をどれほど尊重されておるのか、疑問を消すことができないわけでございます。この点で大臣は、国会の附帯決議というものを、こういうことで守られていると考えられておるのか。また大臣も弁護士としてちゃんと立場を持っていらっしゃる方で、長い経験を持っていらっしゃる方でございますが、日弁連にももちろん籍を置いていらっしゃるわけで、その立場からもひとつお願いをいたしたいと思います。
  102. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) この条文にその他最高裁の定める事務というのがありますが、これはおそらく最高裁の立場としては、条文に列記して書いたけれども、それ以外にも事務が出てくるのではないかというような想定から、こういうようなその他最高裁の定める事務というようなことが入ったと思うのです。私ども会議員としての立場から言いますと、従来から法案制定のときにこまかい点は書き切れないので、政令にゆだねるというようなことをよく本法に書きますが、そういうときには一体政令の内容はどういうのだと、政令はいまどういうことを考えているんだと、その考え内容を聞かなけりゃわれわれ議決できないということをよく言ったものでございますが、それと同じように、私はその他の事務ということは、いま裁判所が何を考えておるかということをできれば御質問いただいて、裁判所からこの機会によくお答えをされて御安心のいくようにしていただいたらどうかと、こういうように考えます。
  103. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 衆議院の段階で、この附帯決議に対する意見について大臣答弁を求められたときに、こういうふうに答えておりますね。「まだ協議会というような形はとれていないようでございます。ですから、私どもといたしましては、何か適当なきっかけがありましたら、そういうようなものをつくって、年に何回か集まって三者で懇談をするような機会を得たいものだ、かように思っておりますが、まだそこまで達していないというのが現状でございます。」と、こういうふうに答えていらっしゃいますが、これは、この気持ちはずっと今後も貫いていくお考えでありますか。
  104. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) この点は私もそう思っておりますし、したがって、私のほうでは官房長がこの仕事を担当しまして、最高裁、日弁連との連絡もしております。最高裁のほうも早くやりたいというお気持ちのようでございますが、何ですか、何かの委員会か何か……、寄り寄り連絡はしておるわけですが、何か意見の一致を見ない点かありまして、それをしぼるのに日数がかかっておるというのが現状でございます。従来からの衆議院でお答えした考え方は全く変わっておりません。
  105. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 できるだけ早くこういう意見の不一致とか、そういうことをなくすためにも大いに三者で話し合って、そして皆が賛成のできるような結論を出していくようにひとつ努力をされたいと思っております。  それから最後の質問に移りますが、次に現行民事調停法第七条のいわゆる合意調停委員、臨時調停委員につきまして、さきの参考人の方にもお聞き申したわけでございますが、今回の法律案ではこれが削除されております。私はこの制度が活用のしかたによっては調停を非常に国民の身近なものにし得る民主的な本来の調停のあるべき姿を制度として保障しているとも言えるものだと、こういうふうに考えておるわけでございます。あなた方は専門家で足りるとか、当事者との結びつきでなれ合いになるということをおっしゃっておるようでございますが、わが党の正森議員か家事調停の例をあげまして質問をしておりますように、これは法律家や専門家ではほんとうに書けないような、りっぱな情のこもった調停をされておるのを見ますると、専門家や法律家でなければできないものは当然あるわけでございますから、それを否定するというのではなく、身近な人に調停をお願いすることによって一そう事件の実情をつぶさに理解していただける、しかも当事者の職場調停に対する履行がそのままで責任というか、めんどうを見ていただけることのできる事件が非常に多いように私は思いますが、そこに法律的には裁判官の方がおられるわけですから、訴訟にまで至らないような事件の調停という妙味が出てくると思いますが、なぜこの七条を削られたんでございましょうか。その点を伺っておきたいと思います。
  106. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) まず合意調停委員でございますが、これは先ほど御指摘のとおり、当事者双方で合意で定めたものであれば、当事者との関係で、いわば説得力に欠けるところはなかろうということで設けられたものと思います。で、これからの調停のあり方として、いま御指摘の、両当事者がほんとうに、まあ個人的に親しい方を合意で調停委員に選んで、その方に調停をやっていただくということでなくて、やはり客観的に事案の的確な把握をした上で、その上に立って客観的に妥当な解決をはかろうというのが調停の本来のあり方ではなかろうかというふうに考えまして、いわば、なれ合いということは申し上げてないつもりでございますけれども、当事者との個人的な関係を重視している合意調停委員という制度は、やはり今回の法律改正においてなじまない、これを廃止すべきではないかということで廃止した次第でございます。  なお、現実の運用を拝見いたしますと、お聞きいたしますと、この合意調停委員の制度があまり活用されていなかったという実情にもあるようでございます。
  107. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私はね、調停委員というものの性格から言って、この合意調停ですね、こういうことがむしろ裁判所としても奨励すべき方向にあるべきものじゃないかと、私はそういうふうに思います。あまり情に流れるかもわかりませんけれども、私はそういうふうに考えておるんですね。まあこの間も笑い話の一つとして、落語に出てくる長屋の家主さんが、長屋のけんかの調停に入ってうまくおさめていくという、そういうことも私は尊重していかなきゃならぬことじゃないかというふうに実は考えておる一員なんですね。それにかかわらず合意調停委員や臨時調停委員というものをこの法律から全部削除してしまったということは、私たちの考えと何か逆行していくというか、私たちの考え方が全然否認されておるというような感じを受けるんですが、特にこれを削除しなきゃならぬという強い意見ですね、それは一体いまあなたがおっしゃったようなことじゃなしに、何かもっとはっきりした意見があったのですか。これはこんなことしちゃ公平を欠くとか、なれ合いだというような、そういう御意見でこれを削除されたんですか。削除のほんとうの原因は何ですか、理由は。
  108. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 極端に言いますれば、あるいはなれ合いになるということもまあなきにしもあらずだと思いますけれども、しかし、ただいま御指摘のようなこの現行制度の評価につきましては、やはり賛否両論があり得るかと思います。ただ私ども考えでは、国家の紛争処理制度として裁判所に設けられる調停委員会の調停委員構成を、選任を考えた場合に、やはり先ほど申し上げましたように客観性というものがどうしても要望されるのではないかということで、この制度を廃止した次第でございます。  なお、改正法下におきます調停委員の資格要件につきまして、何度か申し上げましたように、資格要件を高める、あるいはその身分、職務権限が違うという改正法案考え方からいきますと、この合意調停委員といわば普通の調停委員との間で全く異種の、異なった二種類の調停委員が置かれることになって、いわば立法論としても妥当を欠くというような考え方もあったことは事実でございます。  なお、私先ほど申し落としましたけれども、七条三項にあります臨時調停委員のことについて答弁が漏れておりましたので、つけ加えさせていただきますと、この臨時調停委員につきましては、おそらく趣旨といたしましては、その事件事件によってどうしても専門的な知識経験を有する者を臨時に活用する制度として設けられたものというふうに考えられるわけでありますが、このたびの改正によりまして調停委員には一般の専門的知識経験を有する方に来ていただくという考え方を持っておりますので、これらの調停委員を活用することによって、この臨時調停委員はなくてもよろしいのではないかということで廃止したわけでございます。  なお、臨時調停委員につきましては、先ほど合意調停委員について申し上げましたように、その資格要件におきまして、改正法下における調停委員とやはり異なった種類の調停委員を設けることになりますので、これもいささか妥当を欠くのではないか。それから臨時調停委員につきましても運用の実際をお聞きいたしますと、ほとんど活用されていないというような現状にあるようでございます。
  109. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなた、なれ合いというようなことばをいま吐かれましたが、実際二人が、調停委員がまん中に入ってお互いAとBが話し合ってものがまとまれば、ある見方によればそれはなれ合いかもわかりませんよ、両方がそこらで話つけましょうということになれば、それはなれ合いかもわかりませんけれども、それはりっぱな調停じゃないですか、一つの。だから、そういうことを別にそんな本人同士が話し合って問題が解決することを何も心配する必要もないし、それはいかぬと言う必要もないと私は思うんですね。だからやはり調停の真の目的というものは、二人が納得して、いわゆるある面から見ればなれ合いと見えるかもわかりませんけれども、お互いにそれで満足してその話に応じるということが一番望ましいことのように思うんですね。だから、なれ合いだといって心配して、それを、そういうやり方をやめちまうと、排除してしまうということは私どうかと思いますよ、その点は。だから大いにそういうことでこの調停というものは処理していくというのが私はむしろ望ましい形じゃないかというふうにも考えておる一員でございますね。  それから最後に、私は調停制度の今後のあり方ということでひとつ大臣にお伺いしたいんですが、臨時調停制度審議会答申は、調停制度がその紛争解決機能としての実をあげる上で裁判官の適正数を確保し、調査官、書記官の充実や活用とともに、調停委員の資質、能力の向上をはかるなどによって調停委員会の活動を、一そう充実強化することが不可欠の問題である、こういうふうに述べておりますね。それは、そもそも調停というものが、簡易、迅速、低廉さそのものを要求するものから高度な法律判断を要求されるものまで非常に広範囲にわたっており、一つ例を申し上げますと、最高裁の昭和四十年六月三十日大法廷決定があります。これは、夫婦同居義務及び婚姻費用の分担に関する審判の合憲性の問題でございますが、調停不成立で裁判官が審判をしたものと思いますが、結局特別抗告になった事件で、最高裁は全員一致で憲法違反でないとしました。しかしその理由は八対七に分かれており、あるいはいまの最高裁の判決ならば、自民党内閣の人事で大いに変わっていますから、逆の数字になっているかもしれない性質を持っております。このように、調停事件は、法律判断としても、事実の認定の上でも高度なものもあり、さらに私が先ほど述べましたように、いわゆる八っつあん熊さんのような国民の生活の中で社会的にはいろいろな経験や知識の中から出てくる情というか働くものの悩みを解決する生活の知恵といったものをも要求され、そこに調停の調停たる本質があると思うわけでございます。ところが現在の調停制度の実情を見ますると、裁判官が調停に立ち会っていない、真に調停主任の役目を果たし、調停委員の助けを得て紛争を解決する働きをなし得ないものになっている実情が明らかになっております。中には書記官の書いたメモに目を通すだけといった事務的な関与しかしていないということさえいわれております。  本来、合意を旨とする調停に対して、委員が当事者に強引に案を承認させる、いわゆる押しつけ調停も少なくないことは公然といわれておるありさまでございます。このような問題のある現在の調停制度を真に国民のために充実させることが求められているにもかかわらず、今回の法律案は、裁判官、職員等の充実などはほとんど措置がとられておりません。調停委員はといえば、国民参加ということに意義があったものをわざわざ後退させて、当初から事件を離れても公務員化しておく、しかも、いままでなかった最高裁の定める事務を行なわせ、いろいろ出張までして調査をさせる。これは、実質的に裁判官の不在を認めて調停委員だけに調停の大部分をまかせ、しかも最高裁によって任命された官僚としての委員がこれに当たるということになります。法務省や、最高裁がこれを質の高い委員に高めることだというのなら、一体調停制度の充実強化とは何であるか、きわめて行政サイドで結論を押しつけようとするためのものでしかないでございましょう。当事者が誠意を持って話し合う性質のものでもなく、また裁判でもないとは言えませんか。私は憲法と裁判所法などでいう国民保障された裁判とそのための裁判制度を保障し、ほんとうに調停制度の充実強化を願う立場であれば、どうしてもこの裁判官不在の調停制度の改善を第一に取り上げてそのための努力を大いにしてもらわなければならないと考えております。そうした保障のないままに調停制度の真随ともいうべき国民の司法参加を後退させるような公務員化をもってこと足れりとするような本法案に対しまして、日弁連は五月二日に決議をされてその成り行きを危惧されておるわけでございますが、この点最後に大臣の御所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  110. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 調停はできるだけ調停の精神が生かされるということがとうといことでございますが、この間も最高裁のほうからもほかの方の御質問でお答えがあったと思いますが、最高裁としてもできるだけ裁判官が少なくとも事件の争点がどこにあるかという把握をするまでは調停の機会に出席をするように指導をしていくというお話がありました。まことにごもっともだと思います。まず、争いというのは、争いの中心がどごにあるかということをやはり能力のある人が判定をして、その中心をむかんで初めて糸をほごす動機になるわけでございますから、そうした上で調停委員方々が常識的な社会一般の考え方でそのもつれたものをほごしていくということにすることによって調停の精神が生かされると思います。どうかそういうような運用をされまして、できるだけこの調停制度というものがさらに社会的にも活用されるようになることを念願しておる次第でございます。
  111. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最後に、この私のところへ日弁連から全体理事会としてこの法改正に対する決議を送られてきております。御参考までに読みますが、「調停制度の真髄は、国民の司法参加にあり、調停をする調停委員国民各層から選ばれ、調停を受ける人と同質の国民である点にある。しかるに、今参議院で審議されている本法案によると、調停委員に選任されると公務員とされ、かつ、その職務も事件担当のみならず、無定量に拡大されている。かくては、公務員による職業的調停化をまねき、調停の生命を失うことになりかねない。万一これが成立するような場合は、調停に対する国民の信頼を失い、調停事件の減少、調停委員辞任、その推せん拒否等の事態が発生するおそれがある。よって、本案に強く反対するものである。」という決議が私のところへ送られてきております。こういうふうに、日弁連でもまっこうから反対して、こういう全員で決議まで出しているような法案でございますから、その点、政府は、強引に押し通すというんじゃなく、こういう国民の声に耳をかして、省くものは省いて、修正すべきものは修正して、そうして、皆が納得できるような法案として私は成立さしたい、こういうふうに思っております。
  112. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) どうも私ども考えますと、非常勤公務員というのが、だいぶ社会的に誤解されているように思うのですが、先ほど申し上げたように、一般審議会委員と同じようなものでございますから、しかもこの非常勤公務員というのは、行動、言論の自由を束縛されるものでは、一般の常勤公務員とは違いますので、その点をよく理解していただくことが大事だと思うんです。実は、この法案に関係しまして、私も日弁連の会長、副会長、六、七人の方々と一ぺんお目にかかりました。反対要旨何ですかと言うと、大体の要旨は、調停の官僚化だと、官僚化がけしからぬと、いうことでした。その官僚化の、じゃ内容は何かというと、非常勤公務員にすることがいかぬ、ということ、それからもう一つは、調停に当事者が同意をすれば調停条項をつくって、調停をきめることができるというような点をあげておりましたが、これは私も申し上げたんですが、本人が、当事者が同意した場合に、なるほど調停条項ができる規定がありますけれども、これは本人が一ぺん同意したから、それじゃあくまで調停条項で押しつけて、本人がいやでもやってしまうのだという精神ではないと思うと。運用上、一ぺんは同意したけれども、寝て考えてみたらいやだと、次の調停条項をきめる期日に出てきて、あれはおまかせしましたけれどもいやですと言えば、必ず取り消されるに間違いないから、そういう点は運用の面で十分注意すればいいんじゃないですかという話をしたのですが、いずれにしても、そういうようなわれわれ疑問を持っておるから、そういう疑問の点について、国会で十分に討議を尽くして解明しておいてもらいたい、速記録に残しておいてもらわぬと、大臣から口で聞いたってだめだと、こういう話でございました。ですから私どもも、この民事調停及び家事審判の制度ができましたら、できるだけそういう運用については裁判所におかれても注意をしてやっていただきたいと、こう思っております。
  113. 原田立

    委員長原田立君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後二時再開することとし、休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ―――――・―――――    午後二時十四分開会    〔理事棚辺四郎君委員長席に着く〕
  114. 棚辺四郎

    ○理事(棚辺四郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  内田善利君及び村田秀三君が委員辞任され、その補欠として柏原ヤス君及び小谷守君が選任されました。     ―――――――――――――
  115. 棚辺四郎

    ○理事(棚辺四郎君) 休憩前に引き続き、民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  116. 原田立

    原田立君 先日質問して若干残りましたので、最後、補足という意味で質問いたします。  裁判官の適正数の確保という問題であります。先ほども須藤委員のほうから若干質問があったと思うのでありますけれども、重複する面はありますが、お答えを願いたい。  まず、答申書の中に「裁判官の絶対数に不足があるならば、改善の効果を十分に発揮しがたいこともまた明らかであるから、最小限必要な調停担当裁判官の員数につき十分な検討を加えたうえ、所要の調停担当裁判官の適正数の確保を図るべき緊急の必要性がある」、こういうふうに答申書の中では指摘しているわけですけれども、この点について、最高裁では調停担当裁判官の適正数をどのように考えているか、どのぐらいが必要であると考えているのか、また、答申にも「緊急の必要性」と強く訴えておりますので、この点についての対策もあわせてお伺いしておきたい。
  117. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) ただいま原田委員から御指摘ございましたように、裁判所といたしましては、臨調審の答申にもございます調停担当裁判官の適正数を確保するということは今後の運用上の最大課題であるというふうに考えて、答申を受けまして以来、鋭意調査、検討を開始しておるわけでございますが、いまだに適正数が何名という数字を示すことは困難でございますけれども、この問題につきましては、あわせて裁判官の調停に立ち会ういわば意識の問題にも多少は関連するわけでございます。そういった点につきまして、各調停を担当される、裁判官の方々も、この答申を受けまして調停に対する考え方といったものにつきまして反省を加え、調停に実質的に関与していくその姿勢というものを、あらためて強く自覚した上でもって調停運営の衝に当たられてきておるわけでございますので、そういった運営の動き、今後の動き、また調停事件数、訴訟事件数の推移等を考え合わせました上で調停を担当すべき裁判官の適正数というものを考え裁判官の配置の問題を含めまして増員及びその他諸般の具体的な施策を早急に樹立いたしました上で、その実施に向かって前進してまいりたいと、そう考えております。
  118. 原田立

    原田立君 答申の中では、いま、まだ実際に数がきまってないんだと言うんだけれども、その数をはっきりしなさい、早くやりなさいと、こういうことを言っているわけですよ。めどはどうなんですか。
  119. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) ただいまちょっと申し上げましたように、結局、運営のあり方、調停の運営のあり方、それに対する裁判官の関与のあり方、そういったものと調停事件数と調停担当裁判官の配置、こういったものを関連いたしました上できめていかなければならない問題でございますので、その調停運営の実態がかなり改善しつつある状態において、なかなか数字としてすぐに出てまいらないわけでございますけれども、しかし、ともかく多忙であってとうていまかない切れないという裁判所はおのずからわかってまいると思いますので、近いうちに増員等の問題につきましては十分対策を講じ得るような資料を得られるのではないかと、そういうふうに考えております。
  120. 原田立

    原田立君 具体的にはどのぐらいふやしますとか、このぐらいにしますとかなんというのは、これはあとでいいんですよ。要するに答申趣旨からいけば、調停担当裁判官の員数につき十分な検討を加えた上で適正数の確保をはかりなさいと、こう言っているんですから、まず数ぐらい出てこなけりゃ先へ進まないはずなんですよ。だけど、しっかりやるという話だからそれが半年先なのか一年先なのか、それを実は聞きたいわけなんです。答弁がないから、近いうちだということで理解しておきましょう。  それから昭和四十九年度の裁判所職員の増員を見ても、判事補二名、簡裁の判事三名の計五名の増員にとどまり、しかもこの五名もそのまま調停委員会に充足されるとは限っておらない。また、裁判官不在の調停はけしからぬという世論もあるし、各委員からの指摘もあるとおり、このような状態が続けば今後ともますます国民の司法に対する不信が高まる一方であろうと思うのであります。このような実情では、調停制度の強化充実とは有名無実と言わざるを得ない。裁判官の増員充実こそが、最優先に考えてこそ、調停制度の充実につながることであろうと思うのであります。過日、当委員会で、裁判官五名ですね、増員の法案をやったわけでありますけれども、そのときも指摘したのは、たった五名ぐらいの増員で一体何ができるんですかという質問をしたらば、今度も足りないんだと、またあとで増員するんだというふうなことを言っておりますけれども、広い意味での裁判官の増員充実計画、これはどんなふうにお考えになっているか。
  121. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 裁判官の適正数の確保という問題につきましては、定員法の御審議の際に、原田委員からも十分その点を御指摘いただいたのでございます。その際、御説明いたしましたように、現在の事件数から考えますと、裁判官の負担量というものは、全国的にそう数年前よりも負担過剰ではないんではないかというふうなことでございます。ただ、しかしながら、緊急必要なものについてはそのつど手当てをする必要がございますので、今回増員をいたしました五名のうち、二名は判事補ということで、高等裁判所における刑事長期未済事件の処理等に当てるということで増員をお認めいただきました。それからまた、簡易裁判所判事の増員の点につきましても、これも簡易裁判所におけるところの道路交通事件というものが増加しておりますので、それの手当てということで増員をお認めいただいたのでございます。裁判官の必要数が幾らかという問題、いろいろむずかしい問題もございますが、いずれにいたしましても、当面緊急に必要な事件の増加、事件の内容の複雑化に対応するための措置というものは、今後もそのつどやっていきたいというふうに考えております。  なお、調停関係でございますが、いわゆる裁判官不在調停というふうに従来いわれておりますのは、必ずしも裁判官の数が足りないからというよりも、裁判官が現におっても調停にはあまり顔を出さない。先日、佐々木委員から御指摘ありましたように、裁判官がおっても、でき上がったときだけちょっと顔を出すというふうな運用がかなり一般化しておるのでございます。これも先ほど来民事局長が御説明いたしましたように、今後運用を改めまして、裁判官ができるだけ調停に関与するということになりますと、そこでおのずから裁判官がどのくらい足りないのかということがかなりはっきり出てくるのではないかというふうに考えるわけでございます。まあ現状におきましては、くどいようでございますが、裁判官不在調停というのは、裁判官がおっても調停に顔を出さないと、まあこういう慣習といいますか、そういう傾向が従来あったことはたしかでございます。まあそういうことでございますので、御理解いただきたいと思います。
  122. 原田立

    原田立君 数は足りないことはないんだと、慣習として裁判官が調停に出なかったんだと、そういうために裁判官不在の調停というのがあったんだと、こういうふうな説明のようにお伺いしました。ところで、他の委員からも質問があったように、要するに裁判官不在の調停委員会はよくないんだということを、たしか当局のほうでも御答弁なさっているはずなんですけれども、そこで、初回だけでも、第一回だけでも必らず出るべきではないかというようなことが言われてもおりますけれども、その点は改善されるんですか。
  123. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 御指摘のとおりでございまして、現在裁判官の方々もその点について十分自覚をされまして、第一回の期日と、少なくともその後におきましても、重要な問題点が起こりました場合には、調停委員から相談があれば必らず応じられる体制には少なくとも持っていくべきであろうという形でもって、かなり運用の面では改善されつつあるわけでございます。もちろんまだ理想的にまでいっているとは申しませんけれども、かなり改善されつつある状態にあると申し上げてもよいのではないかというふうに考えております。今後こういった改善の帰趨を見ました上で、やはりどうしても裁判官が足りないという数字が出てまいりますれば、それに対しては、十分こちらとしては具体的に対策を講じてまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
  124. 原田立

    原田立君 臨調審の答申の一項目の中に、「調停委員の執務能力向上のための研修、研さんを充実強化する」旨の答申がありますが、この研修、研さんに対する現行の実態と、今後の充実強化の具体的計画、簡単でけっこうですから。
  125. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 現在におきましても、調停委員の研修といたしまして、裁判所が担当する研修と、また日調連もしくは各地の調停協会が主催されておる研修と二本立てで行なわれておるわけでございます。この方向は今後とも維持されることになろうかと思いますが、裁判所のほうの担当する研修予算も本年度はかなり増額を認めていただきましたので、充実した研修ができるものと考えております。主として裁判所が担当いたします研修というのは法律面に関する研修ということになるわけでございますが、調停委員方々はすべてりっぱな学識経験を持たれた方々、いわば完成された人格の持ち主の方々でございますので、一般職の職員に対する研修とはおのずから方法が異なるわけでございますけれども調停委員の中にも法律には無関係な職業に従事しておられる方々もたくさんおられるわけでございますので、少なくとも新任の調停委員方々には、調停法なりあるいは頻発する事件に関係する法律、たとえば借地借家法とか、自賠法とか、そういったような法律基本的な知識はやはり得ていただく必要があろうかと考えておりますし、また、今後新法が制定されましたならば、新法の概念についても一応知っていただく必要があろうかと存じますので、まあそういった面を中心として裁判所の研修が行なわれるものと考えておりますし、これに対しまして調停委員方々は、民間の知識経験を調停の上に生かすことが本来の任務でございますので、その民間人としての知識経験を調停にいかにしたならばうまく生かせるかという、そういった面での研さんということが必要であろうかと存じます。そういった面につきましては、やはりすぐれたベテランの調停委員などを中心といたしまして、調停委員方々の自発的な研修というのも望ましいのではないかというふうに考えておりますので、それはそれとして、自発的な研修も常に行なっていただきたいと思っておるわけでございますし、裁判所といたしましてもそれにできるだけの御援助は申し上げたいと、そういうふうに考えております。
  126. 原田立

    原田立君 財団法人日本調停協会連合会に対して、昭和三十一年から三十九年まで五百万円前後の国庫補助金を出しておられますが、昭和四十年から補助金制度の合理化に伴い打ち切られているが、その後の援助の経緯について説明を願いたいのだが、昭和四十九年度においては、調停相談事業委託費という名目でわずか七十一万円しかついていないというふうに聞いておりますけれども、いまの局長の、援助をもっとしっかり強化したいというのからいけば、現実は非常に逆行しているんじゃないかと、こういうふうに思うんですけれども、その点はどうかというのが一つ。それから援助は、もっと研修、研さんをもっとしっかりやるために、日調連のほうに対してもっと援助を増額してやる考えはないのかどうか、その二点についてお伺いしたい。
  127. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 仰せのとおりに、補助金は三十九年に打ち切られたわけでございますが、打ち切られました際に、従前補助金として支出されておりました目的として主たるものは、調停運営協議会――調停委員の協議会の費用と調停相談の委託費でございます。その中の調停相談の委託費の関係が、従前どおり委託費という形で残りまして、調停関係の協議会の費用が裁判所の予算という形で入ってまいったわけでございます。したがいまして、実質的にはその予算は従前どおりに使われていたということが言えるのではないかと存じます。しかし、本年度は幸いに、調停の協議会なり研修なりの予算もかなり大幅に認められましたし、そのほか調停委員の調停事務に携わるにあたっての教材、資料、そういったような関係も新たに認めていただきましたので、かなり積極的に調停活動の上で貢献していただけるのではないかと、そういうふうに考えております。
  128. 原田立

    原田立君 局長は金額の面で一言も言うていないんだけれども、金額は一体どのぐらいになるのか。また調停委員の執務向上面からも協会独自の研修、研さん等の実施のためにも補助金の復活、基本的な補助金の復活そのものが必要なんじゃないのか。局長、それから総長、大臣も責任ある立場だから、あわせて御答弁願いたい。
  129. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) まず予算の関係でございますが、研修関係の予算としては従前はおおむね二千四百万円余りでございましたが、本年度は三千九百万円余りということで、約千五百万円の増額が認められております。  それから調停委員用の執務用の図書あるいは研修用の教材費として従来は全然認められておりませんでしたのが、今回約千九百万円余りが新しく認められたわけでございます。  なお、補助金の問題につきましては、これは私どもの伺っておりますところでは、補助金というのは国民に対して直接事業を執行する場合のその執行を国にかわって団体が直接国民に対して事業を行なう場合に補助金を支出するというのが原則であるというような関係で、調停関係で申しますと調停相談の委託の関係がある程度これに相当するわけでございますが、あと調停委員の研究会、研修会といったものは直接補助金の対象にはなりにくいように承知いたしておるわけでございます。そういう意味で私どもとしては調停相談の関係を今後伸ばすことに努力していきたいと考えておりますけれども、研修関係は非常に無理ではないだろうかというふうに考えております。
  130. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 今年の予算におきましては、調停委員に対する手当がたいへん増額したということと、ただいま民事局長が説明いたしましたように、調停関係の予算が相当ふえていただいている。補助金の点はいま申しましたようにむずかしい問題がございますが、今後調停の仕事が円滑にできますように予算の点も十分努力したいと思っております。
  131. 原田立

    原田立君 大臣にはまた一括して御答弁願いたいと思います。  昭和四十九年度予算要求額の中で二億九千万円が施設等の整備に対する予算として要求なさっておられると聞いておりますが、その中で、答申の中にも執務参考資料の充実ということを非常に強くいわれている向きがあるんでありますが、この調停の執務のための参考資料の整備、充実をはかることは調停をより円滑に、かつ、充実したものにするためにはどうしても必要なことだろうと、こう思うんです。早急に全国の施設を総点検し、この点の充実をはかるような考えはないのかどうか。要するに、いろいろ不備な点があるのを、今回の答申を受けて全国的に点検をして、そうして参考資料の充実をはかるべきではないか、こう思うんですが、いかがですか。
  132. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 御意見のとおりでございまして、現在私どももその準備を進めております。できる限り御要望に沿えるように最善の努力をしてまいりたいと存じます。
  133. 原田立

    原田立君 交通調停の即日調停についてお伺いいたしますが、交通事故の激増に伴い、その被害者からの損害賠償請求に調停制度の利用を容易ならしめるための措置として最高裁の民事局長名で通達が出されておりますが、そのうち口頭受理件数及び支払いを求める金額を確定しないで申し立てられた件数は、昭和四十七年は若干前年を下回っているものの、いずれも順調に伸びており、通達の効果も発揮しているように思うんでありますけれども、即日調停実施件数を見ると、これはだんだんだんだん先細りとなっております。昭和四十二年が一カ月平均七十二件、四十三年が四十七件、四十四年が三十九件、四十五年は二十五件、四十六年は三十一件、四十七年は十二件と、だんだんだんだんこうずうっと少なくなっている、まあこれは表に出ておるんでありますが、そうなると即日調停のこの点が有名無実の感が強いんでありますが、その原因についてはどのように考えておられるのか。また即日調停がもっと活用されるようにすべきではないかと、こう思うが、どうですか。
  134. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 御指摘のとおり確かに即日調停の実施件数は減少してまいっております。その原因につきましては、私どもといたしましては確かに広報活動等があるいは行き届かなくなってまいったのかということも反省いたしておるわけでございますが、何よりこれはやはり調停委員方々の全面的な御協力をいただかなければできないことでございまして、その意味調停委員としてはせっかく午前中から待機していただきましても全然申し立てがないということになりますと、その時間だけむだに空費したということになるわけで、たいへんその点で申しわけないわけでございまして、そういう意味もありまして相当数事件のある庁において、しかも調停委員の方の数が非常にたくさんおる庁におきまして、そういう即日調停を実施するについて協力してもよろしいという方が相当おられる庁においては実施できるわけでございますので、今後その面での運用面ではもちろん国民の役に立つ調停ということでできるだけ努力して広げてまいりたいと思いますし、広報活動もあわせて活発に進めてまいりたいと思いますが、なお一言これに関連して申し上げますと、即日調停の実施とあわせまして交通事故調停につきましては裁判所のほうにおきましてもくふうをいたしまして、いわゆる定形申し立て用紙というものを作製いたしまして、これを窓口に備えつけ、それに申し立て人のほうで適当に記入をすればすぐ申し立て書ができるという形のものをつくっておるわけでございまして、この申し立て書の要件に当てはまることをすべて記載していただきますと、大体申し立て人の要求することと、それに関連する証拠、どういうものを集めたらよいかというようなことも申し立て人自身にはわかるようになっておるわけでございまして、この定形申し立て用紙というものを広げていくということも、この即日調停の実施と同じような効果をあげ得るのではないかというふうに考えておりまして、そちらの方面でも今後とも全国的に実施できるように現在その体制をとりつつある状態でございます。
  135. 原田立

    原田立君 家事審判法第四条では家事審判官及び参与員に対し除斥、忌避、回避の規定が定められておりますが、調停委員の場合その趣旨が明らかに規定されておりません。一体どうして規定されておらないのか。
  136. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 調停委員につきまして除斥、忌避、回避の規定がないことはただいま御指摘のとおりでございます。私どもといたしましてもこの改正にあたりまして十分検討に値する問題であるということで検討いたしたのでございますけれども、次に申し上げるようなことで改正をいたさなかった次第でございます。  もともと除斥等の制度はいわば裁判所による権力行使の公正を担保するものでございます。訴訟におきましては紛争のいわば強権的解決をはかるものでございますけれども、訴訟とは異なりまして調停におきましては当事者の合意に基づいて自主的解決をはかる制度でございますために、特に強制的な公権力の行使に直接関与することのない調停委員につきましてはこのような制度を必ずしも必要としないというふうに考えられるわけでございます。ただ、実際上の問題といたしまして御指摘のようなケースも出てくることは十分考えられるわけでございますが、受調停裁判所で調停委員を指定するにあたりまして、調停委員会の信頼を確保するにつきましては十分の配慮がなされるべきでありましょうし、万一指定後におきまして調停委員と当事者との関係から事件の適正な処理に不都合を生じるというようなことが懸念される場合には、受調停裁判所におきましてその指定の取り消しを行なうことができるわけでございまして、いわば差しかえてその他の調停委員になっていただくということができるわけでございます。現行の調停法規もいま申し上げましたような考えから御指摘の除斥等の制度が設けられていないというように考えておる次第でございます。  以上のような理由から御指摘の点に関する改正についてはこのたびは行わなかった次第でございます。
  137. 原田立

    原田立君 要するにいまの説明では、調停委員の場合は家事審判法の場合とは別だから要らないと、こういう断定で、今後そんなことは考えないというのか、それとも、あるいはというふうに説明があったから必要性は多少認めておるのかどうか、それで今後また再度考えるという、つくるというそういう意図は含んでいるのかどうか。その点はどうですか。
  138. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 先ほど申し上げましたように、この問題は確かに検討すべき問題であるということで十分検討いたしたわけでございますが、まあ制度論でございますので絶対必要ないという趣旨で申し上げたつもりでございませんで、いわばこの段階で必ずしも必要としないと考えたので制度として設けなかったというふうに御理解いただきたいと思います。なお今後の調停の運用におきまして、その種の制度はやはり設けるべきであるということがだいぶ顕著に出てまいりましたならば、当然のことでございますけれども、やはり制度として立法化をはかるべきことは当然だと思っております。
  139. 原田立

    原田立君 これで最後にしたいと思うんでありますが、本調停制度は、法律的見地ばかりでなく、条理や健全な常識に基づき当事者の互譲、実情に即した解決をはかるとともに、手続が簡易な上、早く解決し費用も低廉であること等、いわゆる本人主義的な面からもわが国民性にも合致した方法であり、多くの人たちに利用されてきたものだと思うんであります。このような調停制度をより一そう国民各層に知らしめ、利用度を高める必要があることを私は思うのでありますが、この点の普及方法についてあまり政府のほうでは、最高裁のほうではあまり熱心でないのじゃないか、こういうふうな感じもするわけでありますけれども、今後のPRの方法、それらについてはどういうような方法でどういう予算で組まれてやるつもりでいるのか、その点をお答え願いたい。
  140. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 調停関係について適切な広報をなすべきであるという御指摘はまことにそのとおりでございまして、確かに私ども従前の調停関係についての広報が十分であったということは自信を持って申し上げられないわけでございますが、幸いにこのたびは広報関係の予算も若干認めていただきましたので、今度の調停法改正が幸いに成立さしていただきましたならば、その改正法の趣旨を含めまして今後の調停の運用の裁判所のあり方等についても十分国民の皆さまにわかっていただけるような方法で広報活動を実施いたしたいと考えております。で、その方法といたしましてはポスターあるいはパンフレット等を作成すること、また新聞あるいはテレビ等のマスコミを利用すること、それからポスター等の掲示をすること、あるいは市町等に置かれておりますいわゆる行政相談を行なっておられる方々との間で十分連絡をとりまして、調停に適する事件があれば調停裁判所のほうにおいでいただくように連絡していただく、そういったような方法を講じまして、できるだけ広く皆さまに理解していただけるように広報を進めてまいりたいと、そう考えております。
  141. 原田立

    原田立君 予算関係は。
  142. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 口頭受理体制をとるということ等含めまして、広報関係の予算として約一千万円今回認められているわけです。     ―――――――――――――
  143. 棚辺四郎

    ○理事(棚辺四郎君) 質疑の途中でございますが、委員異動について御報告いたします。  小枝一雄君が委員辞任され、その補欠として鍋島直紹介君が選任されました。     ―――――――――――――
  144. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは前回に引き続きまして、前回十分にお伺いできなかったところを若干質問さしていただきます。  まず前回もちょっと質問に触れましたけれども、今度の改正案民事調停法第八条の点につきまして、これは一項、二項とも日弁連その他非常に反対意見の強い条項でございますけれども、そこで特に「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」という個所でございますね、その点につきまして、これ再三衆議院段階でも裁判所当局から御答弁いただいておりますけれども、これは「必要な最高裁判所の定める事務」ということに対して非常にわれわれ国民は不安をいだいているわけでございまして、一たん法律になってしまうと往々にして最初の立法趣旨を離れてひとり歩きをして、思わぬことに法律が利用されるというようなことがいままでも幾たびかあったわけでございますので、そのあたりについてさらに確認しておきたいと思うんでございますが、事務総長にお伺いいたしたいと思いますが、この「必要な最高裁判所の定める事務」というのはどういうことであるのか、はっきりと御答弁しておいていただきたいと思います。
  145. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 私ども考えております限りでは、嘱託による事実の調査という一点に限られております。
  146. 佐々木静子

    佐々木静子君 その嘱託による事実の調査以外には一切なさらないということは御確約できるわけでございますか、今後におきましても。
  147. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 確約することができます。そのとおりでございます。
  148. 佐々木静子

    佐々木静子君 確約していただいても、実はその事実の調査だけでも日弁連その他非常に問題だというふうに考えておるんでございますけれども、特に家事審判法の第二十二条の二におきまして、これは嘱託による事実の調査というふうになっておりまして、前回もお伺いしましたように、家庭裁判調査官というものが、すでに事実の調査をする専門の調査官がいるわけでございますので、その点前回もお伺いしたことでございますが、これは全くダブっているんじゃないか。そして家庭局長からの御説明によりましても、調査官は教育学とか心理学とか、あるいは社会学の専門家であって、たとえば遺産分割について財産の評価などを調べるについては専門じゃないというふうなお話でございましたけれども、現実にはどこの裁判所でも事実の調査調停委員会自身が当たれない部分については家庭裁判調査官がやっておりますですね。私も幾たびか担当した事件で家庭裁判調査官をおわずらわせしたわけですけれども、これ、やはりプロフェッショナルなだけあって、きっちりと調べてくださっている場合がたいへん多いわけでございますので、これは専門は何はともあれ事実の調査は全部家庭裁判調査官という制度がある限り少なくともこの家事審判法の二十二条の二は必要じゃない、この事実の調査調停委員がやるということは必要じゃないんじゃないかというふうに私ども思うわけなんでございます。そのあたりいかがでございますか。これは調査に当たっている調査官自身も、いままでちゃんとやっているのを、横から――横からと言っちゃ悪いですけれども、なわ張り争いじゃないですけれども調停委員がいや自分も調査するというようなことで出てきてやるというのはどうもおもしろくないんじゃないかと思うんですが、そのあたりいかがお考えでございますか。
  149. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 一昨日も佐々木委員からその点を指摘されたのでございますが、なるほど条文の上では事実の調査ということばから見れば、このたびしようとしている調停委員の事実の調査と家庭裁判所における調査官の事実の調査と文言は全く同じでございますけれども、御存じのように、家庭裁判調査官は先ほども指摘受けましたように社会学とか心理学とか教育学とかそういったような専門的知識を学生時代に習得してそういうふうな科目でもって試験を受けて裁判所に採用されてくるわけでございます。で、調査官研修所におきましてもそういうふうな知識を臨床面でどのように応用していくかというようなことを十分研修いたしまして、    〔理事棚辺四郎君退席、委員長着席〕 そしてお役に立つように育て上げていっているわけです。その意味におきまして調査官はこの前も申しましたように人間関係の紛争を取り扱う専門家だということをわれわれも申しておりますし、調査官たちもまたそういうふうな自負を持っているんだと私は思うのでございます。で、このたびの御質問では、たとえば遺産分割などの事件で財産状態なんかも調査官が調べるではないかというふうな御指摘で、まことにそれはそのとおりでそういうふうにやってまいっております。しかし、それは当事者がどういうふうな財産を持っているか、また不動産はどことどこにあるかといったようなことを法務局などに参りまして登記簿の謄本を見たりしてどこにどういう財産があるということを調べたりするようなそういうようなことは調査官がやってはおりますけれども、それよりさらに進みまして、その遺産の対象となっている資産の構成がたとえば企業であるような場合にはその企業を遺産分割すれば企業自体が生命を失う、そしてその遺産の分け前にあずかろうとしている人たちが十全な利益を受けられないというような事案については、やはり会社経営に練達な人など、調停委員さんの中にそういう方がおられますが、そういう方の知識を提供していただくのがよりベターではなかろうかと、そして調査官は本来の人間関係についての調査をいままでよりもさらに深めていくことによってその専門性がいよいよ高まると、そしてそのことは同時にまた調査官たちの社会的な評価あるいは地位といったようなものの向上に資するんではなかろうかというふうに考えておるのでございます。
  150. 佐々木静子

    佐々木静子君 御意見よくわかりますけれども裁判所のほうで調査官というものはこういうものだと、かってに教育学、社会学、心理学の専門家を集めておいて、その勉強をさして、それで調査官というものはこういうもので遺産のことはわからない、会社の経営のことはわからないというふうにきめていらしゃいますけれども、それはそういう必要があるのならそういう勉強もしていただくようなチャンスもつくる、あるいはそういう方面からも調査官をもっと広く求めるとかいうふうなことも必要なんじゃないか。もう少し柔軟に――こういうものだときめてしまってこれに入らない部分があるからだめなのだと。これはやっぱり前回申し上げましたが、調査学というものを専門に二年間勉強していらっしゃるし、私もこの間調査官研修所も見せていただきましたところ、非常に行き届いた設備なり、それからいろいろと教科内容もそろっておるようでございますので、そういうところで勉強された方にやはり調査調査として頼むべきじゃないか。そしてまた、前回も申し上げましたが、それだけその専門職として非常に誇りを持って、またかなり高い水準で勉強していらっしゃるわけですから、調査官の方々の身分というものの、前回あまりいい御答弁を、的確な御答弁をいただいておらぬのですけれども、確保というか、向上というふうなものにもっと努力をされるべきではないかというふうに私は思いますので、ぜひそのように考えていただきたいと思うんでございますが、事務総長いかがでございますか。
  151. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 佐々木委員のおっしゃいますのは、裁判所で従来養成しております調査官をもう少し弾力的に分野を広めて教育をし役立てることはどうだろうという御趣旨のように伺うわけで、まあ私どもかたくなに従来そうだったからこれからもそれ一点ばりでいくというふうにばかり考えるのもこれもどうかと思います。ですから、この点は従来の長い伝統もございますので、さてこれを分野を拡張するということになりましたら、またいろいろと影響するところもございますんで、御趣旨を十分頭に入れまして、これは検討したいと思います。今回の事実の調査の関係ではずいぶんいろいろと御心配をかけて御質問いただいているわけでございますけれども、一つにはああいう規定のできましたあらわれは、従来の調停が裁判所の関与の点でもこれは改善しなきゃならない点がある、それ以上にまた、調停を進めますのに、事案の基礎になっている事情、背景になっている事情をよく見きわめて妥当な調停案を作成する、そういう点ではやはり事案の核心と申しますか、そういう事実を十分頭に入れた上での調停案の作成が望ましいという反省に立っておりますので、私どもの運用といたしましては御心配になるような運用をいたしませんで、十分ひとつ気をつけていい調停案の基礎となるような事実の調査というふうに努力してまいりたいと思いますので、その点ひとつ十分御理解を賜わりたいと思います。
  152. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常に前向きな御答弁をいただきまして安心したんでございますが、いま私の申し上げましたことに若干誤解があるといけませんので、といいますのは、私の考えとして、いろんな幅を広げて、それを最高裁で調査官にいろんな教育をもっとやれということであるとすれば、これはたいへんな誤解でございまして、現在聞き及んでおりますところでもすでに、このごろ教材の中にはたとえば法律についての勉強が非常にウエートが多くなってきているために調査官の方々の中での御不満も多いということも伺っているわけでございますので、そのあたりは十分に調査官の自主性というふうなことも御尊重いただいて、そして本来の持っている調査官制度というものの趣旨が阻害されないようにぜひお願いしたいと思うんでございますが、だからといってこれだけしかできないんだときめつけるのはちょっとおかしいんじゃないかというわけでございますので、この二十二条の二の案文につきましては大いに問題があるんじゃないかというふうに私ども考えているわけでございます。  それから前回も他の委員から御質問がございましたが、調停委員の任命の基準でございますね、それは一応最高裁のほうで用意なさっている規則によりますと、年齢的には四十歳以上七十歳までというふうな、特別の方は別としてというお話でございましたが、まあ御趣旨はわからぬでもないですけれども、やはりそういうふうにきめてしまうことは問題が多いんじゃないか。たとえば前回もちょっと指摘いたしましたように、七十歳になられても、たとえば裁判官をおやめになって定年で七十でやめたというような方とか、あるいはずっとそれまで仕事をしておられる方は概して七十になっても非常に調停が支障を来たすほど老化現象があらわれておらないというと変な言い方ですが、非常に熟達されたよい調停をなさる能力をずいぶん持っていらっしゃるし、また、その年齢に達しておられなくても、もうどうも調停委員としてははたから見てていかがかと思われるということもございます。またそれと逆に、三十歳代の調停委員でも非常にいい方がいらっしゃるんじゃないか。これは一般的な裁判所でもそうじゃないかと思いますが、私も調停委員させていただいたのもむろん三十代ですけれども、大阪でも、大阪家裁でも婦人の調停委員などは、婦人の弁護士などは特に、十年たたなくてももう調停委員になるように、弁護士会の基準は大体十年たてば候補者にのぼすというのがいままでのなにですけれども、婦人の場合はもっと、三十そこそこぐらいでも候補者にどんどん上げるように、むしろ婦人法律家協会から働きかけておりまして、どんどんと年齢が若くなってきておって、若いためにうまく調停がいかなかったという苦情は聞いておりません。まあ能力不足でうまくいかないことはあるでしょうけれども年齢のためにうまくいかなかったというようなことも聞きませんし、特に家事事件におきましては、若い男女間の問題などですと、来た当事者がもう、どういう年齢の違う方からお説教されるのかと思っていたら、わりに話が通ずるということで喜んでいただくような調停委員も三十代の方にもかなりいらっしゃいますので、だから年齢制限というものはあまりこだわる必要はないんじゃないかというふうに考えているんでございますけれども、そのあたりはいかがお考えでございますか。
  153. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) ただいまの佐々木委員の御意見、まことにごもっともであると、私ども同じような考えでございます。まあしかし原則は原則でございまして、これは臨調審の答申にもございましたように、やはり生活経験豊かな方ということが大前提になりますので、原則的には四十歳以上という数字は望ましいのではないかと考えておりますが、あとは、例外のほうは、確かに調停委員としてりっぱな方々年齢にとらわれずにおられるわけでございますので、その辺は弾力的な運用というものを考えてまいりたいと思います。
  154. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、この調停委員の選任の基準についての、これは全般にわたると思うんですが、「最高裁判所の定める」という、この最高裁判所の規則というものをつくるにつきまして、これは何か委員会諮問されるのか、もう諮問されずにおつくりになるのか、それはどういうふうな御予定になっているわけですか。
  155. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 法律が幸いに成立いたしますと、直ちに準備をいたしまして、規則制定諮問委員会を開く予定でおります。
  156. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、いまのお話で、調停委員の資格選任の基準ですが、生活経験豊かなとか、またいままでは徳望良識ということが何回も出てきたんでございますが、私は、ぜひこの調停委員選任の基準の中に、人権意識があるとか人権感覚が豊かなというのは、これはぜひ基準の中に入れていただかないといけないと思うんです、これは民事におきましても家事におきましても。それで、この調停法が、前回にも申し上げましたが、条理によっていろいろ常識なり、ともかくお互いに妥協し合って円満に解決するということですけれども、やはり筋の通った解決じゃないとこれは解決にならないわけでございますので、その意味においてはどうしても人権意識の豊かなということは、これぜひその規則の中にも入れていただかないといけないんじゃないか。非常にりっぱな調停委員の方はたくさんいらっしゃるんですけれども、やはり調停を受ける側の方からは、よくそういう御不満を聞くわけなんです、現実に。でございますので、やはり選任の基準の中に人権意識というものを入れていただきたい。そのあたりはどのようにお考えでございますか。
  157. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 御意向を十分考えさせていただきたいと思います。
  158. 佐々木静子

    佐々木静子君 織り込んでいただけるんですか、どうですか。
  159. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 十分検討させていただきたいと、こういうことでございます。
  160. 佐々木静子

    佐々木静子君 どうもあまりはっきりしませんが、まあ善意に解釈して、たぶん織り込んでいただけるというふうに判断して間違いございませんか。
  161. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 規則制定の段階におきましては制定諮問委員会等にも十分御意見をはかることになろうと存じますので、私自身でどうこうするというわけにまいりませんものですから、その点御了承いただきたいと思います。
  162. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあ、ぜひお考えを、与党の議員さんからも人権意識の豊かな方をぜひ入れたらいいなという発言もあったわけですから、そこら辺は与野党ともそういう考えなのだということをはっきり御認識なさっておいていただきたいと思うわけでございます。  それから、これは先ほど来お話があった、裁判官不在の調停の問題とも関係するんでございますけれども、先ほど来法務大臣の御答弁にも第一回の調停には、ぜひ裁判官に出てもらうようにというふうなことを慣習づけたいというお話もございましたが、私はぜひそれを実現していただきたいと思うわけです。といいますのは、私もこの申し立て人の代理人を実はたくさん、たくさんというか、いろいろやらせていただきまして、一番調停に当事者が不満を感ずるのは、これは代理人もですけれども、第一回の調停期日に出頭したときなんです。これは無理からぬことでございまして、私が自分が調停委員をしておりましたときのことから考えましても、何日にこうこういう事件の調停をやるから何時に出頭されたいという通知がくるわけでございますが、弁護士の場合は毎度裁判所へ行っておりますから、その日までに、私は少なくとも必ず記録を――ほかの事件で行ったときにその記録を出してもらって読んで、その日の調停に当たるというふうにしておったわけでございますけれども、ほかの、裁判所と関係のないお仕事をしていられる方は、その通知をもらって初めてその時期に行かれる。そうすると、そのとき初めて記録をごらんになるわけですね。そうすると、当事者はもう、裁判所はちゃんと事件がわかってくださっているんだということで張り切って調停に臨む。調停委員はそのときになって、ああ、何の事件ですかとかいうようなことで、それから記録を見られるということが多いわけです。それも申し立て書が一ページとか一ページ半ぐらいのきわめて簡単な場合ですとよろしいですけれども、特に裁判所から職権で調停に回ってきているような事件では、本を読んでもらうといっても、その間ぼんやりと待たなければいけないわけでございますし、また調停委員の方によっては、にわかに争点がわからない、それじゃ、ということで一回むだに過ごさないといけないということが非常に多うございまして、この点、第一回の調停に裁判官に臨んでいただくと同時に、その第一回の調停に臨む前に調停委員は必ず記録を読んで臨むというふうな慣習をつけていただかないと困ると思うんです。で、お話にもありましたように、このごろは非常に事案が複雑化してきております。裁判官の場合は記録をうちに持って帰って読んでくるわけですから事件の下調べができますし、また当事者は自分のことだから事件を知っている。弁護人のほうもその間に依頼者から何回もいろいろと話を聞いておるし、少なくとも前日にはもう一度やはり記録を読んでいくから事件がわかっておりますが、調停委員だけ記録もないし準備もしていないということで、だんだん事件がわからないままに調停が進んでいくというようなことも起こりかねないと思うのでございますが、この調停委員が記録を読むような制度とか、あるいは読むような設備が調停室にないわけですね、どの調停室を見ましても。団らんする調停委員の控え室はあるんですけれども調停委員がちょっと勉強する部屋というものが全然ないわけで、特に裁判所からかなり複雑な事件が調停に回ってきますでしょう。それで本も何もないし、その場で読んで事件を頭に入れようとすると、その団らん室じゃちょっと無理なので、ちょっと勉強するところというようなものが設備の上からもないし、あまり裁判所はそうしたことを考えていらっしゃらないと思うんです。これでは調停が非常に実をあげにくいと思いますので、その点はどのようにお考えでございますか。
  163. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) ただいま御意見ございました裁判官による第一回期日の立ち会いの問題、また調停委員による事前の記録の調査の問題また調停委員の研究室の問題いずれも非常に大事なことでございまして、裁判所といたしましては運用改善面における最大の課題として受けとめて、今後ともその方面については最大の努力を傾けてまいりたいと思いますが、設備の点についても十分御希望に沿えるような方向に努力してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  164. 原田立

    委員長原田立君) 質疑の途中でございますが、委員異動について御報告いたします。  重宗雄三君及び藤田進君が委員辞任され、その補欠として平泉渉君及び中村波男君が選任されました。     ―――――――――――――
  165. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思いますとともに、これは非常に手続的なことで恐縮ですが、まず家事調停の場合はちょっと問題があるので、必ずしもお願いできないと思うんですが、民事調停の場合に、これはやはり第一回に副本なり何なりを必ず出して、相手方に送達をできるようにするとか、あるいは調停委員が二人なら二人がそれぞれが記録を持てるように、民事の場合は、家事の場合と違いますから、その副本などを用意させていいんじゃないか。複雑な事案ですと手元に何もないと、それから一つの調書を裁判官もやるとすれば、三人が同時にのぞき込まなければならない。一人の人が読んでいる間、一人の調停委員はぼんやりすわって読むのを待っていなければならない。非常にむだが多うございますので、そのあたりは何か手続的にも改善なさったほうがいいんじゃないかと思うんですが、いかがでございますか。
  166. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 申し立て書のリコピーを謄写いたしまして、調停委員方々にも差し上げるような方向でいま検討いたしております。
  167. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではそれも早期に実現するわけでございますね。スムーズに調停を進めようと思えば必要なことだと思いますので、ぜひ早急に実現方をお願い申し上げたいと思います。  それから私この間も、これは大阪高裁管内ですが、調停室を見せていただいたわけでございますが、大阪の今度の新庁舎には一つだけ大きな調停室があったわけでございますが、これから公害事件の調停とか、あるいは住民訴訟的な事件の調停とかということで、当事者がたくさんの調停もふえてくるんじゃないかと思うんですが、そういう場合、裁判所のほうで設備はどのように考えていらっしゃいますか。いまの既存の調停室で間に合うわけですか。どういうふうになさるおつもりですか。
  168. 西村宏一

    ○最高裁判所長官代理人(西村宏一君) いまの大きい調停室が一つあれば、期日の関係で大体間に合うんじゃないかというふうに考えておったわけでございますが、どうしても間に合わないということであれば、ほかの裁判所のしかるべき部屋、たとえば会議室のようなものを使用できるかどうかというようなことについても検討してみたいと思います。
  169. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、これは制度的な問題でございますが、そういう場合に代表当事者制度というふうなものも今後考えていく必要があるんじゃないかと思うんですが、そうした点についてはいかがお考えでございますか。
  170. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 代表当事者制度、選定当事者に相当するような制度というものも調停の中では必要ではないかということで、現在検討中でございます。
  171. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから公害事件の調停などは、ぜひ簡裁じゃなしに地裁へ管轄を持ってきていただきたいという要望もございますんですが、そのあたりはどのようにお考えでございますか。
  172. 西村宏一

    ○最高裁判所長官代理人(西村宏一君) 原則的には簡易裁判所ということでございますが、当事者の合意が成立すれば地方裁判所でできるわけでございますので、両当事者で合意をしていただいて地方裁判所へ持ってきていただくというふうに運用でまかなってまいればと考えております。
  173. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、この調停事件について前回も、訴訟で解決するよりも調停で解決したほうがほんとうの解決が得られる、また非常に調停事件に親しみやすい事件もいろいろあるんじゃないかということから、ただその調停を利用しにくいのは費用が高くつく、印紙代が高いからたいへんにむずかしいという問題がございますが、特に交通事件なんかの場合に印紙代に困るわけでございますが、これは訴訟と同じように訴訟救助の適用を調停制度にもお考えになるような余地はございませんですか。
  174. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 訴訟救助につきましては、御指摘のとおり、現行法のもとにおきましては調停には適用がないというふうに考えられておるようでございます。実は臨調審の答申の中にはその点が盛られておりませんが、事務当局裁判所ともども検討いたしたことがございますが、まだ成案を得るに至っておらない状態でございます。  ただいま御指摘のように、また前回指摘がございましたように、印紙の額の問題訴訟救助の問題、将来いろいろな問題が出てくるような状況にありますれば十分検討いたさなければならないというふうに考えております。
  175. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはぜひおはかりいただきたいと思うわけです。といいますと、交通事故の場合なども、本案で解決しても、結局勝訴判決を得られても、相手方が納得していないためにその履行がはかれないというようなことがたいへんに多いわけでございますので、ぜひその被害者の人権を守るという意味からも、調停による解決というものがやりやすいようにぜひともそういう立法もお考えいただきたいと思うわけでございます。  それから、これは家事事件についてでございますが、いまあまりその話を聞きませんが、かつてもう家事事件は全部調停、家裁でやって、人事訴訟というものはもうなくしてもいいんじゃないかというような意見もいっとき聞いたわけでございますが、これは日本婦人法律家協会などが強く反対しておるわけなんでございますけれども、そういうことは全然いまお考えになっていらっしゃらないでしょうね。いかがでございますか。
  176. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) その点につきましては、現在特に考えておりません。
  177. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから前回家庭裁判所にお伺いいたしました家事相談の件でございますね。その後の御調査の結果、たとえば大阪家庭裁判所のことをこの間申し上げましたが、実情はいかがでございますか。
  178. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) この間御質問がございましたので、私どものほうで調査いたしましたところ、大阪につきましては、大体年間本庁で九千件余り家事相談の事件を取り扱っているようでございます。支部がございますので、先日一万二千件余りの数字を申し上げたかと思いますが、あれは支部を入れた数字でございまして、本庁では九千件、九千二十件というふうな数字が出ておるようでございます。  で、この家事相談を担当している者は家庭裁判所の職員――調査官、書記官、そのほか民間の篤志家として、大阪ではやはり参与員の方が奉仕をしておられるように伺いました。参与員さんの数字は、大阪の本庁では八十名余りのようでございますが、そのうちの五十四名の方が家事相談に当たっておられる。その内訳を申しますと、男性が二十九名で、女性が二十五名というふうな数字になっておるようでございます。そして弁護士の方が五十四名中十七名、その他の方が弁護士でない方というふうなことでありまして、この民間の方が奉仕しておられるのは、大体週に一回――家事相談は毎日やっておるわけでございますが、週に一回というふうにきめてあるようでございまして、午前中にその四、五名、また午後に同じ数ぐらいの方がこれに当たっておられる、まあ週に一回。したがいまして、同じ参与員の方がたとえばきょう家事相談に当たられますと、大体次回は一カ月半か二カ月ぐらい後にまた順番が回ってくるということになろうかと思います。  相談の件数は、この数字が示すところによりますと、参与員の方が御担当になるのは一日に約二十件余り、二十三、四件ということでございまして、したがいまして、この参与員さんお一人がお取り扱いになる相談件数というものは、二件ないし三件というふうに承知しております。
  179. 佐々木静子

    佐々木静子君 何か私がこの間聞いてきたのとだいぶ話が違っているみたいなんですが、何はともあれ、その家事相談というのは今後ずっとお続けになるおつもりですか。そして、その場合の日当といいますか、手当ですか、それはどのようになるわけでございますか。
  180. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 先日も申し上げたかと思いますが、現在、全国で家事相談の件数が三十一万件余りになっております。で、私どもはこれは国民に対する裁判所の受付事務に伴うサービスとして非常に大切なことだというふうに考えております。したがいまして、これをやめるとかどうとかということは考えておりません。むしろちょうどいまから十八年前でございましたか、三十一年ごろに、家事相談を何とか立法化したいと、法律でできないまでも受付事務に関する大切な事務として規則で何とかできないだろうかということで、ちょうど履行確保の制度が立案されたときに、家庭規則制定諮問委員会に家事相談のこちらの考えた案をかけて、いろいろ御意見を伺いましたところが、私の記憶では、当時在野法曹の反対がかなりありまして、そして、これはなお十分検討してみなければいかぬというふうに思い直しまして、そのときはその規則をつくることができなかったわけでございますが、続きまして、昭和三十七年に、やはり家事相談について何とかめどをつけようということで、いろいろ検討いたしましたが、なかなかどうもこれを規則化することがむずかしい情勢で、そのときはあきらめたということで、その後、検討はしておりますけれども、なかなか成案を得られないんで、これはもう二十年近くもいろいろ方法を考えてやってまいったのでありますけれども、いまだに成功しておりません。今後なお努力して、国民のサービスに遺憾のないような方法を考慮したいと思いますが、この家事相談は、この前も申し上げましたように、もしその相談の過程で事件の実体に入り込んでいきますと、非常に弊害もありますし、その点が在野法曹が非常に懸念なさるところであると思います。それで、それは私どもといたしましては、まことにごもっともなことでして、これは十分そういうところは検討しなければ、安易な気持ちでこれを実現しようということではいけないんだろうというふうに考えて今日に及んでおる次第でございます。
  181. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、結論的には手当はどうなるんでございますか。
  182. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) ただいまのままでは、家事相談をしたことに対する報酬というものはお払いできないというたてまえになっておるわけでございます。
  183. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、今次の改正には、この問題は解決できないというふうに……。それでは、そういうふうな問題もあらためて近い将来解決なさろうというわけでございますか、どういうふうな御計画ですか。
  184. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 今次の改正には間に合いませんでしたですが、いろいろ検討して、もし皆さま方の御納得のいくような案ができれば、そういうふうなことを考えたい、こういうことでございます。
  185. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあ待遇の問題になりましたので、ちょっと……。今度非常に待遇がよくなるというふうなふれ込みでございますけれども、現実にはあまりそういい待遇でもないんじゃないか。調停委員の方ですね、いまの問題と関連いたしますけれども。特に調停委員方々の職業、これを調べてみますと、この表を見ましても、三分の一が無職でございますね、大体家庭の主婦の方じゃないかと思うんですが、この家庭の主婦で調停委員をしていらっしゃる方々が、今度こういうことで、いまの税法で、まあ大蔵省いらっしゃらないわけですけれども、扶養家族から除外されるのが、いま年収二十四万円だと思うのですけれども、そうすると、この調停委員になって調停に月何回か出ていこうと思えば、留守番も頼まないといけないし、何だかんだ、月額二万円と見れば、二万円ぐらいのお金はすぐ要ってしまって、たいしてプラスにもなっていないのに、扶養家族から除外されて、税金の控除もなくなるというふうなことで、主婦の調停委員の方の中には、むしろ前の日当制度のほうがよかったという考え方もかなりあるわけなのでございますが、これは根本的には、いまの扶養控除制度の二十四万円というのが非常に低額過ぎて、これは社会的に妻が働く場合、現実に二十四万円をオーバーすると扶養控除からはずされるというこの税制自体がおかしいと思うので、私もこの間別の委員会でそのことを大蔵省に追及したのですけれども、実際のところ、いいいいと言うわりにはあまりよくないのだと調停委員方々は言っていられるんですが、今後実質的にもっとよくしようという努力はお続けになることになっているんですか、どうですか。
  186. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) ただいまの御指摘の配偶者控除についてでございますが、ただいまの二十四万という数字は、所得税法の八十三条一項のいわゆる控除額が二十四万という御趣旨だろうと思います。結論的に申し上げますと、私どもの調べた限りで申し上げますと、妻である調停委員が支給を受ける手当の年間合計額が七十万円以下でありますれば、もちろん他に給与所得等がない場合でございますが、七十万円以下であれば、その夫の所得に関する所得税法上の配偶者控除には影響を及ぼさないということになろうかと思います。ただいま申し上げました手当合計額七十万円は、六千五百円で割りますと百七日になりますので、実際上も配偶者控除にはまず影響がないというふうに考えている次第でございます。  なお、将来のこの手当の増額につきましては、私どもの希望的観測かもしれませんが、給与法の二十二条一項の手当は、ある一定間隔をおきまして公務員の給与のベースアップに応じまして随時ベースアップされておりますので、その意味での待遇改善ははかられるものというふうに考えております。
  187. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、これだけに御満足なさらずに、今後とも待遇改善に御努力いただきたいと思いますとともに、前回も若干触れましたが、その選任方法について、もっとその待遇を上げていただきたいと同時に、ふさわしい調停委員を選んでいただくということについても鋭意御努力いただきたいと思うわけですが、特にこの任期が二年になっておりますが、再任回数について、これはぜひ制限を設けるべきじゃないかという意見が日弁連などからも出ておりますし、いままでの任期一年のときでも、私ども調停委員同士でもそれをよく言っておったのでございますが、五回再任すれば、しばらく休むとか、少なくとも家裁から地裁へ回すとか、そうしないと、どうしても職業化してしまうと思うわけなのです。でございますので、これはやはり二年だとすれば、三回再任すればしばらく休んでもらうとかいうふうなことが非常にいいんじゃないかと思うわけですけれども、伺ってみますと、やはり先ほど須藤先生お話にもあったように、勲章制度との関係で、途中で一服すると、もらうはずだった勲章がもらえなくなるから、だからそれだけはかんべんしてほしいと、むしろその勲章をおもらいになれる年齢に近い方々がたいへんに反対をされるというふうに、これは裁判所の事務当局の方から伺うわけなんで、全然でたらめな意見でもないと思うんですけれども、そのあたり、この勲章のためにみんながどうかと思う調停委員にいつまでもいてていただかないといけないというのもどうかと思いますので、その再任の回数について何とかお考えになるお気持ちはございませんですか。
  188. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者(西村宏一君) 佐々木委員のただいまの御意見は、臨調審においても出された御意見でございまして、私ども十分検討しておるわけでございますが、ただ、再任の回数につきましても、画一的に何回というふうにきめることが望ましいかどうかということも、また別に問題があろうかと存じますので、その辺はまさに弾力的な運用がなさるべきではないか。また、佐々木委員先ほど仰せのとおり、調停委員としても非常にかけがえのない方もおられるわけでございます。そういった方と普通の場合と同じに扱うというのも適当ではなかろう、そういった点で十分運用面では弾力的に考慮してまいりたいと存じます。  なお、勲章の点については、私どももそういう立場ではございませんけれども、単なる年数だけで勲章を出すということでは決しでございませんので、その辺も十分今後運用の面で配慮してまいりたいと思います。
  189. 佐々木静子

    佐々木静子君 あんまり名誉意識――この調停委員になることに誇りを感じていただくのはけっこうですけれども、それをもって、たとえば勲章と結びつけて考えるという考え方の方は、ちょっとこれはぐあいが悪いんじゃないか、そういうとこら辺で、やはり先ほど申し上げた人権意識などとともに、調停委員をただ形の上だけじゃなしに意識の面からもぜひとも厳選していただきたいということを特にお願い申し上げたいと思います。  それから実はこの調停制度の問題で、私も何人もの弁護士の方々にも御意見を承らしていただいたわけなんでございますが、やはりまあいままでの裁判所と弁護士会との関係、特に先日来問題になっておりますところの参与裁判官制度というような問題が、いよいよこの二月から全国的に行なわれたというような事柄から、現地の弁護士さんの方々は、まあ調停制度の問題もさることながら、三者協議がうまくいっておらないためにいろんなトラブルがある、たとえばこの参与裁判官制度についても弁護士会、あるいは個々の弁護士さんとすると、非常に反対をしているけれども、事実上これがあちこちの裁判所で行なわれている、そういう現状を考えると、今度の調停法もいろいろ問題が、これから先、運用の面で起こってきても、いま御答弁ではいい御答弁をいただいておっても、またいろんな問題が起こってくるんじゃないかという点で、たいへんに懸念なさる御意見がお強いわけなんです。現実に参与裁判官制度、これは私も何回かこの当委員会で最高裁当局にも質問をさしていただき、日弁連がこれだけ反対しているのだから、できることなら何とかやめていただきたいということも何度もお願いしたわけでございますけれども、遺憾ながらそのお願いが実現せずに現在に至っておるわけでございますが、この参与裁判官制度について最高裁当局は今後どういうふうにするおつもりなのか、一度そのあたりの方針を聞かしていただきたいわけでございます。
  190. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) いわゆる参与規則の問題でございますが、これもただいま佐々木委員から御指摘のように、まあいろいろその当時も問題を持っておりまして、また現在もいろいろと日弁連のほう等で御批判を受けておるのでございます。で、この参与規則の問題でございますが、いろいろ御批判はございますが、私どものほうの基本的な態度といたしましては、要するにこれは未特例の判事補の事務処理能力の向上、すなわち研さんというものと、それから単独体の審理の充実を目的とするということ以外の何ものでもございませんので、そうした目的から考えますと、それが活発に各地で活用されるということを実は望んでおるのでございます。しかしながら、考えますと、この参与規則の運用、すなわち参与させるかどうかというようなことは、司法行政上の問題と申しますよりはむしろ裁判のやり方自体に密接に関係することでございますので、要するに結論的に申しますならば、各地の実情に即したところの運用にまかせざるを得ないということでございまして、現にそういう態度で臨んでおるのでございます。  で、それからまた一方、この未特例判事補の研さんという目的からするならば、むしろ合議事件をふやすべきではないか、この参与規則のために、しいて合議事件のほうを減らして、どんどん単独事件で処理するのではないかという御批判もございますが、未特例判事補の研さんの目的という点からするならば、やはり合議事件によって未特待判事補を研さんさせるということも一つの方法でございますし、こうした機会に合議事件で事件を処理するということが今後ふえるということも、私どもとしてはあわせてこれを期待しているというのが現状でございます。
  191. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひとも、その未特例判事補の研修というような意味ならば、合議事件を充実することによって十分にやっていけるんじゃないか、そのほうが本来では裁判趣旨に全く合致するのではないかというふうに私も考えますので、ぜひ、そうして一日も早く弁護士会が強く反対をしておりますところの参与裁判官制度というものにはピリオドを打っていただきたいというふうに思っておりますが、事務総長、そのあたりについてはいかがでございますか。
  192. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) ただいま総務局長が答えましたとおりでございますが、まあこの参与規則についていいますと、これは参与をさせる判事といいますか、この方がやはり若い裁判官から魅力があり、かつ、信頼を受ける方でないと効果があがらないかと思います。それからまた、参与するほうの若い裁判官からいいますと、やはり大いに実務をやってみて、陪席だけでない単独事件の一端にもひとつタッチしようじゃないか、で、特例を得たらそのときにはひとつ自信を持って仕事しようじゃないかという意欲が十分ある方でないと、これまた効果があがらないと思います。ですから、参与規則にありますように、参与しなければならないというのではなくて参与させることができるという規定でございます。ですから、規則の趣旨についてたいへん、まあ私どもからいうと誤解と存じますけれども、いろいろの方が心配をしてくださっているので、どうぞそういう心配がないようないい運用を定着させていきたい、ですから、決して無理をしないで、だんだん皆さんに参与制度の趣旨を了解していただいて、そして無理のないところで役立てていただきたいと、こういうふうに思っております。
  193. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは御答弁の御趣旨はわかるんですが、やはりこの三者協議の問題、解決しないと、これは日弁連でその点全く了解できたというようなことにはいまの段階ではとうていむずかしいんじゃないかと私どもも思うわけでございます。  それから、これは日弁連からの要望でございますが、国選弁護を引き受ける場合に、自分は参与裁判官のついている事件はいやだと、それなら国選弁護は引き受けたくないという弁護士さんがかなりいらっしゃるそうなんでございます。それで、国選弁護を引き受けるときに、参与判事がいる事件かどうかということを、その受けるときにはわからないですから、受けてしまったあとやめるといってもこれは相当問題があるので、それがわかるようにしていただきたいというのが日弁連の要望なんでございますが、何かそのことについては日弁連と最高当局もかつてお話し合いになったけれども、それについての御回答を得てないということなんでございますが、そのあたりについてはそうした御配慮をしていただけるんでしょうか、どうなるんでございましょうか。
  194. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 具体的には、いま言ったようなお話、まあ御要望というのは、直接受けたことはございません。ただ、昨年の暮れにちょっとお会いしたときに、広島でそういうふうな例があったというようなお話がございました。まあそういうふうなことも含めまして、こうした規則の運用の問題につきましては、もっぱら各地の実情におまかせしているという状態でございますので、まあ私どものほうでどういうやり方をしろとか、こういうやり方をしろというようなことは、一切していないというのが実情でございます。
  195. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはこれだけの強い反対のあることですから、ぜひとも何とか日弁連の希望も通るようにひとつ運用していただきたいと思うわけです。これは現地の弁護士さんのおっしゃるところでは、ともかくその当該事件でその問題については個々に争うよりほかないという状態なので非常に困るという弁護士さんの――これはまあそうだと思います、事件かかえてその裁判所と参与のことでごてごてするというのは非常にまずいことでございますし、それからその当該裁判官は、実はこれ自分の個人的見解とすると参与制度は反対なのだという方も、これはその場ではおっしゃらないけれども、まあ前から聞いておるというような裁判官と争ってみても、これ個々的にしかたがないわけで、何とかやはり最高裁当局としてもこれはぜひお考えいただきまして、いまお話にございましたその合議制度の充実というような方向に方向転換をしていただいて、裁判本来の趣旨に、これだともう全く皆さんがもろ手をあげて賛成なさるんじゃないかと思いますので、ぜひそのように今後ともお願い申し上げたいと思うわけですが、今後ともそのように御努力いただけることは間違いないわけでございますか。
  196. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) まあ日弁連と申しますか、弁護士会の皆さまにもどうぞひとつ参与規則の心配なさる面と別にですね、積極面のあることもひとつ御理解を深めていただきたいように思います。そして、運用しますものとしましては、先ほど来総務局長が答えておりますように、実はもう規則を最高裁判所でこさえておりますと、あとその運用は個々の裁判所の問題になりますので、これは裁判官がそれぞれ良識をもってしていただく。で、あとは、まあいろいろな制度がありますというと、制度の心配の面だけを強調なさいますと、いかにも悪いようなことになりますけれども、まあこれから先のことが言いようによってはこれ誤解を受けますけれども、どんな制度でも、一〇〇%欠点のない制度というものはないかと思います。で、もちろん制度をこさえますときには、欠点のない制度をつくるということでつくるわけでございますけれども、さて神さまの目から見て完全な制度というものはそうなかなかできるものじゃない。しかし、そういう完全でない要素、人間のことでございますから、人間のすることでございますから、はらんでいる制度であっても、運用に気をつければ、これは積極面がよく出て、いい運用になる。で、裁判の充実にもなれば、未特別例判事補の実力の涵養にもなると、運用にも慎重を期しているということで、運用さえよろしければいいので、私どもはいい運用の定着に気をつけて、その運用のあと弁護士会の皆さまにも見ていただいて、だんだん安心していただけるようになればと思っておるわけでございます。
  197. 佐々木静子

    佐々木静子君 御承知のとおり、この本案のこの改正案につきましても、いろいろと日弁連、まあ全司法などが心配しているわけでございますので、いまの御答弁にもございましたように、その運用の実際の面で心配が杞憂にすぎなかったというふうにぜひともこれは最高裁の責任においてそれを立証していただきたいと思うわけですが、この改正調停法の今後の運用ですね、について、まあどういうふうな運用をしていこうと思うか、事務総長に伺いたいと思うわけでございます。
  198. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) まあ今回の質疑を通じましていろいろなことを伺わしていただきましたので、これは十分念頭に置いて運用に当たりたいと思います。しかし、何をいいますのにも調停が民間の司法参与である。で、民間人の協力を得て司法のたいへん重要な部分が行なわれていくわけでございますから、その点の本質を見失わないように進めてまいりたいと思っております。まあ大きな目標といえばその一点になると思います。
  199. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは最後に大臣にお伺いしたいと思いますが、私どももかねてからこの調停委員の待遇をよくするということはこれは強く希望し主張してきたことでございますので、そういう点においては、待遇をよくするという点においては大いに賛成でございますが、まあいま申し上げたようないろいろ懸念されるところもある。特に三者協議の問題などが十分に解決しておらないようなことからいろいろな問題がこの調停法が施行された場合に起こってくるのじゃないかというようなことを心配しておりますが、これ大臣としては法務省の責任者としてそういう心配がないようにまあ御努力いただけると思いますが、最後に大臣のお考えを述べていただきたいと思います。
  200. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) かねがね申し上げておりますように、三者協議の機関はできるだけ早くつくって、いまの参与判事の問題などにつきましてもいろいろやはり疑心暗鬼といいますか、よけいな心配もしなきゃならない事情にあるようでございますから、そういうことが話し合いを通じて一切解決できていくと、そこに初めて在朝在野の法曹の緊密な連絡がついていくわけでございますから、そのように私どもとしては努力をしてまいりたいと、かように思っております。
  201. 原田立

    委員長原田立君) 他に御発言もなければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認めます。  須藤君及び後藤君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。  この際、本修正案を議題といたします。  須藤君から修正案の趣旨説明を願います。
  203. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ただいま議題となっております民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案に対しまして、修正の動議を提出いたします。  修正内容は、お手元に配付されております文書によりましてごらんをいただきたいと思いますので、その朗読は省略させていただきます。  修正を動議する理由につきまして簡単に趣旨を御説明申し上げます。  第一は、調停委員の名称を民事調停委員及び家事調停委員と改める改正部分のすべてを削除して、調停委員の名称を現行法どおり残そうとする修正の理由でございます。  現在の調停委員を民事調停委員と家事調停委員に分けて、それぞれ専門化しなければならない合理的な理由が見出せません。臨時調停制度審議会答申の中にも全く含まれていないこのような制度上の変更を行なうことは、調停委員の中に無用な差別を設けるだけでありますから、これは避けるべきであると考えます。  第二に、調停委員の選任及び職務等に関する改正部分修正案のように修正する理由について申し上げます。  調停委員の選任方法を最高裁判所の定める規則に委任し、最高裁判所が現行法の定める選任方法を全面的に改廃し得る道を開き、また調停委員の職務として定着した本来の任務のほかに、自己の担当していない他の調停事件に関与し得る職務権限を新設しようとする改正案は、調停委員の身分を事実上常勤の裁判所職員と同様、一種の専門職化し、国民が広く司法手続に参与するという調停制度の国民的な、また民主的な性格をそこない、官僚化するおそれがあります。よって、現行法に修正案のような改良を加え、これを残すことにするのが必要だと考えます。こうして現行法の持つ民主的性格を維持し、さらに発展すること、また現行法の運用上あらわれている弊害を除去することも可能となると考えます。  また、調停手続における共助体制は、常勤の裁判所職員をもってこれに当たらせるべきであって、非常勤の調停委員にそのような任務を課すのは民事手続制度に混乱を持ち込む結果となります。また、特定の事件において、専門的な知識、経験に基づく意見が求められる場合には、鑑定を命ずるか、または専門的な知識、経験を持つ調停委員をその事件の調停委員に加えるべきであります。  第三に、調停委員の身分及び給与等に関する修正の理由について申し上げます。  調停委員が非常勤職員であり、現行の身分のままでも手当を支給し得ることは、現行法の解釈上何ら疑念を差しはさむ余地がありません。したがって、この点に関する民事調停法改正案第八条第二項及び家事審判法改正案第二十二条の二のような規定は全く不要であって、これは削除すべきであります。しかし、現行法の実際の運用では、調停委員を事実上名誉職扱いとしておりますので、このような運用のしかたを改めるためにあえて修正案のようにすべきだと考えます。  以上をもちまして、修正を動議する理由につき趣旨説明を終わります。
  204. 原田立

    委員長原田立君) 次に、後藤君。
  205. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 私は、自由民主党を代表して、民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案に対する修正案の内容について御説明を申し上げます。  政府原案は、第二条、家事審判法改正規定中、第二十二条の二第一項において、家事調停委員の職務内容の一つとして、「調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」こととしておりますが、これは、政府及び最高裁判所の説明によりますと、民事調停委員についてと同様、嘱託にかかる事実の調査予定しておるとのことでありますが、家事調停については家庭裁判調査官が事実の調査を行なうものとされており、家事調停委員に右の事務を行なわせることは必ずしもその必要がないと考えられまするので、この部分を削除しようとするものであります。  以上が本修正案の趣旨及びその内容であります。
  206. 原田立

    委員長原田立君) それでは、ただいまの修正案に対し質疑のある方は順次御発言願います。――別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  207. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案に対する意見を申し述べたいと思います。  この政府原案につきましては、審議過程においてもいろいろと明らかになってまいりましたけれども、現行民事調停法及び家事審判法をわざわざ改正するまでもないのではないか、むしろこの運用面において鋭意努力をはかられたならばこれらの問題はすべて改善されるのではないかと思えるところより見ましても、私ども政府原案には反対態度をとっているわけでございます。とりわけ、民事調停法の第八条一項に定めておりますところの民事調停委員の職域を不当に拡大しようとしている点、特にこの第二項におきましては民事調停委員を非常勤公務員とし、かつ、その任免に関しての必要な事項をわざわざ「最高裁判所が定める。」というふうに改正しようとしている点につきましては、これは官僚主義につながるものであって、民意を反映して国民の司法参加という意味においてのこの調停法の趣旨を阻害するものであると、これは反対の意思を表明したいと思うわけでございます。  また、この家事審判法の二十二条の二によりましても、いま後藤委員より修正の動議が出されたわけでございまして、この修正部分については調査官制度というものが存在している限りこれはもっともな御意見であると思うわけでございますけれども、その余の部分についても、先ほど来申し上げましたような理由によりまして、やはりこの条項自身非常に問題点を多く含んでいるのではないかと思いますので、賛成しかねるわけでございます。  そういう意味におきまして、民事調停法及び家事審判法全域につきまして、やはり調停法、今度の改正によってこの調停委員の待遇の改善がはかられるということを考えますと、その点では、調停委員の待遇をよくするという点におきましては非常にけっこうなことだと思うのでございますけれども、これはわざわざこの改正によらなくても、先ほど来申し上げましたように、現行制度でも調停委員の待遇というものの改善はこれは十分にはかれると私ども考えるわけでございますので、何らこの改正の必要はないと考えるわけでございます。  そういう意味におきまして、政府原案及び後藤委員より提出されました修正案には、社会党は反対の立場をとる次第でございます。  また、日本共産党須藤委員より出されました修正案につきましては、個々の問題点につきまして私ども心配している点は一応この修正によって除かれるのではないかと考えますので、この修正案に対しまして賛成の意思を表明する次第でございます。
  208. 棚辺四郎

    ○棚辺四郎君 私は、自由民主党を代表して、民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案に対する須藤委員提出の修正案に反対、わが党提出の修正案並びに修正部分を除く原案について賛成意見を申し述べたいと思います。  申すまでもなく、調停制度は、大正十一年に借地借家調停法が施行されて以来今日まで五十年余の歴史を経るとともに、国民の間に深く根をおろし着実な進歩発展を遂げてきましたが、最近における国民の権利意識の向上、経済規模の拡大、社会生活の変化等社会情勢の変動に伴い、民事及び家事の調停事件が複雑多様化するとともに、交通事故、公害等にかかわる新しい類型の紛争が加わって一そう複雑困難なものとなっております。  このような実情にかんがみ、調停委員会の組織及び機能を充実強化するため、調停委員の身分を明確にし、その職務を拡充し、あわせて給与面の待遇向上をはかるとともに、被害者の簡便な救済及び紛争の適切な処理をはかるため、交通調停事件及び公害等調停事件の土地管轄の特則を設け、さらに、遺産分割調停事件においていわゆる当事者出頭主義の例外を認める等調停の手続に関する規定を整備することは、まことに時宜に適した改正であると考えます。  また、わが党提出の修正案は、現在家事調停においては家庭裁判調査官が事実の調査を行なうものとされておりますので、家事調停委員は嘱託にかかわる事実の調査を行なう必要がないこととするものであって、妥当な措置であると思われます。  よって、私は、わが党提出の修正案並びに修正部分を除く原案に対し、賛成の意を表するものであります。
  209. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 私は、公明党を代表して、民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案に対して、須藤委員提出の修正案には賛成、後藤理事提出の修正案並びに修正部分を除く原案について反対の討論を行ないます。  現行の調停制度は、国民の司法参加によって当事者間の紛争を解決する制度として、訴訟と並んで非常に重要な制度であります。このすぐれた特色を発揮して、さらに充実強化すべきであるというのが関係各界の基本的な要請であります。このたび提案されましたこの改正案の中には、調停制度の充実強化よりは、むしろ、それに逆行するような点が含まれていることが心配されるのであります。  その第一点として調停委員の身分の改正であります。  今回の改正案では、現行の調停委員、候補者制度を改め、当初から非常勤の裁判所職員としているところであります。調停委員を最高裁判所の任命制とし、具体的な調停事件を離れても、その身分を公務員化し、職務内容を無制限に拡充することは、現行調停制度の最も特色とされている国民の司法参加の原則を大きく後退させ、調停委員の専門化、官僚化の促進につながるおそれが多分にあり、この点には強く反対せざるを得ないのであります。  第二点は、調停委員の職務権限の拡張に関する問題であります。  改正案では、従来の職務のほかに、他の調停事件について、専門的な知識経験に基づく意見陳述、嘱託にかかわる事件の関係人の意見聴取、さらに、「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」ことになっております。このことは、いたずらに調停委員の職務の拡張をはかり、調停委員の公務員化と相まって、いっそう官僚化のおそれがあり、あわせて、調停委員を常時裁判所に拘束する可能性を伴うものであります。そのような余裕のない者は、たとえ適任者であっても調停委員となることができなくなり、資質、能力等においてすぐれた調停委員を得ることができなくなること等を心配するものであります。  その他、臨調審の答申書にも強く要望のありました裁判官の適正数の確保、第六十五国会での附帯決議で法曹三者の十分なる協議と意見の一致という点等々、問題があります。  以上、申し述べ、私の反対討論を終わります。
  210. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表して、民事調停法家事審判法の一部を改正する法律案について、自民党提案の修正案及び原案に反対する立場で討論を行ないます。  本法案は第一に、調停委員を最高裁判所の任命制とし、従来と異なり、事件の指定を離れても調停委員を非常勤の国家公務員とするものであります。  政府は、調停委員に手当を支給するためには右改正が必要であるというのでありますが、わが党が独自に提出した修正案でも明らかなように、調停委員の待遇改善は、政府案のごとく身分を任命制にし、公務員化しなくとも、第九条を改正するだけで十分可能なのであります。しかも本法案は、国民国民による国民のための調停を行なう上で、従来も一定の役割りを果たし今後も活用さるべき当事者が合意で定める調停委員等の民主的規定を削除しています。それゆえ本法案は、調停委員の待遇改善を名目に調停委員の官僚化を促進するものであると言わなければなりません。  第二に、本法案第八条及び第二十二条の二では、調停委員に新たに種々の事務を負担させ、特に「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」と定めて、最高裁判所の規則で事務を拡大する余地を残しています。これらは、裁判所書記官の仕事の過重化、公証機関としての書記官の権限のあいまい化をもたらし、民主手続制度に混乱を持ち込むとともに、調停委員の公務員化と相まって調停委員の一そうの官僚化につながるおそれがあります。  なお、自民党提案の修正案については、修正によって第二十二条の二の第一項中「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務」が削除されても、同項の残余の部分は依然として、家事調停委員が当該事件を離れて、家庭裁判所の命を受けて裁判所の仕事をするものであり、先に述べたその弊害が除去されるものではありません。  わが党は、この修正部分そのものに特に異論はありませんが、この程度の修正によって、本法案第二十二条の二の第一項の趣旨が本質的に改善されることにならないので、この修正案には反対せざるを得ません。  第三に、調停委員の中で弁護士の比率は非常に高いわけですが、本法案のように公務員化されますと、弁護士本来の法曹の在野性が失われて、いわば体制に奉仕する面との相反する二足のわらじをはくことになります。現在、司法の反動化が進んでおる中で、弁護士までもこれに組み込むでいくものであり、弁護士の官僚化ともに司法反動の一そうの促進が危惧されるからであります。  第四に、本法案は手続的にも法制審議会の議を経ず、また第六十五国会の附帯決議の精神に反して、調停について最大の協力を得べき在野法曹、日本弁護士連合会との十分な話し合いもなしておりません。  このことは、日本弁護士連合会の本年五月二日の決議にも見られるごとく、「万一これが成立するような場合は、調停に対する国民の信頼を失い、調停事件の減少、調停委員辞任、その推せん拒否等の事態が発生するおそれがある。」という強い反対意見を日弁連自身が表明せざるを得ないところまできておるのであります。この法案政府があくまで押し通すとすれば、調停制度の運営にも重大な支障を来たすおそれがあるのであります。  調停制度の改善は、現在の裁判官不在庁並びに裁判官不在の調停を改めること、調停委員の選任を民主的に行なうこと、待遇をわが党独自の修正案のごとく抜本的に改善すること、かつ、第七条、第八条及び第二十二条などの従来の規定中、民主的部分をさらに活用すること等によって実現されるものであります。  以上、日本共産党は、司法の民主化、調停制度の民主化を願う見地から、本法案反対の意思を表明するものであります。  なお、わが党は、原案中、交通公害事件の管轄や、あるいは遠隔地の家事調停事件の配慮については必ずしも反対ではありません。  以上で私の討論を終わります。
  211. 原田立

    委員長原田立君) 他に御意見もなければ討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  212. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。  まず、須藤君提出の修正案を問題に供します。須藤君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  213. 原田立

    委員長原田立君) 少数と認めます。よって、須藤君提出の修正案は否決されました。  次に、後藤君提出の修正案を問題に供します。後藤君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  214. 原田立

    委員長原田立君) 多数と認めます。よって、後藤君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  215. 原田立

    委員長原田立君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  佐々木君から発言を求められておりますので、これを許します。佐々木君。
  216. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は、ただいま可決されました民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  一、最高裁判所は、改正後の民事調停法第8条第1項の規定により最高裁判所規則に委任せられた「調停事件を処理するために必要な事務」定めるにあたつては、民事調停委員の負担過重とならないよう必要最小限度のものにとどめるべきである。  二、最高裁判所は、民事調停委員及び家事調停委員の任命にあたつては、調停制度の本旨にかんがみ、民間の司法参与の実を挙げるため、関係各方面の意見を聴取し、民間の各界各層から適任者を確保するよう配慮すべきである。   右決議する。   以上でございます。
  217. 原田立

    委員長原田立君) ただいま佐々木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  218. 原田立

    委員長原田立君) 全会一致と認めます。よって、佐々木君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、中村法務大臣及び安村最高裁判所事務総長から発言を求められておりますので、これを許します。中村法務大臣
  219. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) ただいま御決議のありました附帯決議に関しましては、その御趣旨を最高裁判所に十分お伝えをし、御趣旨に沿って措置されまするよう要望いたしたいと存じております。
  220. 原田立

    委員長原田立君) 安村事務総長。
  221. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 最高裁判所といたしましても、民事調停委員の負担が過重とならないよう配慮し、また調停委員の任命にあたっては適任者を確保するよう努力したいと存じております。
  222. 原田立

    委員長原田立君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会      ―――――・―――――