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1974-05-14 第72回国会 参議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十四日(火曜日)    午後一時十四分開会     —————————————    委員の異動  五月十日     辞任         補欠選任      戸叶  武君     村田 秀三君  五月十三日     辞任         補欠選任      吉武 恵市君     増原 恵吉君  五月十四日     辞任         補欠選任      増原 恵吉君     斎藤 寿夫君      木島 義夫君     吉武 恵市君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 棚辺 四郎君                 佐々木静子君     委 員                 柳田桃太郎君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 中村 英男君                 村田 秀三君                 須藤 五郎君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        法務大臣官房長  香川 保一君        法務大臣官房司        法法制調査部長  勝見 嘉美君        法務省民事局長  川島 一郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       安村 和雄君        最高裁判所事務        総局総務局長   田宮 重男君        最高裁判所事務        総局民事局長   西村 宏一君        最高裁判所事務        総局家庭局長   裾分 一立君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私から質問をさしていただきます。  まず、この民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案が今回提案されまして、先日は参考人の御意見を伺い、また自民党の後藤先生からの御質問に対する政府の御答弁も伺ったわけでございますが、まずこの法案が提出されるに至ったいきさつでございますね、これがどういういきさつ民事調停法というもの及び家事審判法の今回の改正案が提案されるに至ったのか、まずその経緯を簡単にお述べいただきたいと思うわけでございます。
  4. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 本法案提出に至るまでの経過を簡単に申し上げます。  今回の調停制度改正につきましては、最高裁判所に設けられました臨時調停制度審議会答申に基づく私どもに対する最高裁判所からの立法依頼がございまして、これを受けて法務省立案したものでございます。  ただいま申し上げました臨時調停制度審議会最高裁判所に設置されたものでございますので、その設置、その他審議経過につきましては、最高裁のほうからお聞きいただきたいと思いますが、その臨時調停制度審議会答申に盛られました事項は非常に多岐にわたっておりますが、立法化を要する諸施策のうちには、これを実施するにあたりまして今後なお検討を必要とすると考えられる事項も含まれておりますので、これらの事項につきましては今回立法化を見送ることといたしまして、答申中の緊急に必要とされる最小限度施策に限って立法措置を講じたものでございます。  この間、いわば法曹三者の問題になりますけれども、この法案中身はすでに御承知のとおり待遇改善も含まれておりまして、いわゆる予算関係法案でございます。予算につきましては、本年度の場合は年末におきまして大蔵省との間に妥結を見た次第でございまして、その妥結内容いかんによってやはり改正法案中身が違ってまいりますので、予算妥結を見ましたあとでいわば正式な立法作業に入ったような事情でございます。予算関係法案でございますので、いわゆる提出期限も制約されておりまして、きわめて短期間の間にまとめたものでございます。  以上が簡単な法案立案経過でございます。
  5. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは最高裁のほうから法務省のほうに法案作成依頼があったというお話でございますが、最高裁のほうでどういうわけでこの法律の一部改正ということを御企画なすったか、その点について御説明いただきたいと思います。
  6. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 最高裁判所臨時調停制度審議会を設けました理由につきましては、たまたま昭和四十六年に、調停制度発足以来五十周年を迎えるという機会におきまして、調停制度の機能が低下しているのではないか、その原因は、いわゆるまあまあ調停とかあるいは強制押しつけ調停とか、そういった批判にあらわれているのではないだろうかという点が問題になりまして、調停を担当する裁判官あるいは調停委員方々からも、この機会調停制度について考え直したらどうであろうか、その緊急な改善策検討すべきではないかという声が強まってまいったわけでございます。そこで調停制度運用を担当いたします最高裁判所の中に、時代に即応できる調停制度とじて国民期待に沿うことができるためには調停制度について緊急改善を要する点があるとすればいかなる点かという点についで諮問することになったわけでございます。  そこで臨時調停制度審議会は四十六年の七月から発足いたしまして、四十八年の三月まで二年の間検討いたしまして、そして四十八年の三月に答申が出されたわけでございます。この答申を受けまして最高裁判所といたしましては緊急に調停制度について改善すべき根本方針というものを検討いたしまして、答申の趣旨にのっとりまして、第一に調停委員従前制度である候補者制度、これはいわゆる善意奉仕に依存する候補者制度というものを改革いたしまして、正式の公務員制度にのっとりました非常勤公務員として調停委員として当初から任命する制度を採用する、このことによって調停委員老齢化固定化その他弊害を防ぐとともに、調停委員会としての活動を活発化する、そのために調停委員としての職務範囲を拡張する、それに応じまして非常勤公務員である委員手当を支給できるようにする、こういう基本方針を定めまして予算要求をいたしました。その結果予算が認められましたので、正式に法務省のほうにそれらの根本問題を前提といたしまして立法要請をいたした、こういう順序でございます。
  7. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの調停制度発足以来ちょうど五十年になるというお話でございますが、私ども拝見いたしまして、いままでの調停制度もなかなかいい面が多かったのじゃないかというふうに思っているんでございますけれども、特にどういう点がどうしても急いで変えなければならないということでこの運びになったわけなんですか。
  8. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 御指摘のとおり、調停委員善意奉仕に依存するという点において確かに従前調停制度はメリットを持っておったということは言えるかと存じます。しかしながら、この善意奉仕に依存するという制度といわゆる候補者制度というものが結びつきまして、   〔委員長退席理事後藤義隆君着席〕 最近の時代の変化に対応した非常に複雑多様化した調停事件処理というものが困難になってきているという点が指摘されたわけでございます。結局、候補者制度というものに結びついた善意奉仕という制度は、必然的に運営上調停委員固定化、いわゆる老齢化、一方において、調停事件を担当しない、実際には調停事件処理を担当していない、いわゆる名誉職的な調停委員候補者というものが片方に生まれてくる、反面において、また非常にたくさんの事件を担当していく、いわゆる職業化していく調停委員というものが生まれていく、こういうような弊害臨調審におきましても強く指摘されたわけでございます。そういった弊害を除去するためには、やはり有能であり、むずかしい困難な事件にも対応できる能力のある調停委員方々調停を担当していただく必要がある。それと同時に、調停委員会活動を活発化いたしまして、事件に即応した処理体制ができるような活動領域を広げていく。この二つの面から調停制度というものを根本的に改めなければならないのではないかということがいわれたわけでございます。  ごく簡単に申し上げますと、そういうことになると思います。
  9. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま名誉職的な候補者になっておっても実際に調停仕事をしない人と非常にたくさんの仕事を持っている人があるというお話でございました、現行法では。しかし、これは調停主任裁判官調停委員を指定するわけでございますね。ですから、これはむしろ裁判所の中で公平に事件が行き渡るように配分をするような内輪での打ち合わせをすればいいのであって、別にこの改正をしたからそういう問題が全部解決する、改正しなければ全然解決しないという問題じゃないんじゃないでしょうか。
  10. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 確かに、運用で完全にできるではないか、こういう御指摘がございますれば、ある程度の運用改善が可能であることは私どもも否定できないわけでございますけれども、何と申しましても五十年の歴史の重みと申しますか、この候補者制度と無報酬での奉仕ということが結びついて今日までまいった、その運用の実態を改めていくということは現実の問題としても非常に容易ではないというばかりでなく、やはり無報酬ということでは現在の公務員制度のもとにおいては調停制度運用するのには適当としなくなっておるということも明らかでございます。やはり調停という公務を担当される以上、それに対しては相応の報酬を支払うという本来の公務員制度にのっとりた制度をとるということが望ましいわけでございます。そういう意味臨調審におきましても、この現在の候補者制度というものを廃止して、非常勤公務員として初めから調停委員を任命するという制度をとるべきであるというふうに強く指摘されたわけでございます。
  11. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお話伺っていましても私全然意味がわからないんですけれども。というのは、忙しい調停委員が、事件をたくさん持っている調停委員が一方にいるし、ちっとも事件をやらない調停委員候補者がいるとおっしゃるわけでしょう。それは裁判官が同じ調停委員にばかり事件を任命するんですか、当該事件調停委員というふうに。こう非常に片寄った任命をするから忙しい人がたくさんできるし、また調停委員候補者になっていてもちっとも任命されないから調停事件を扱わないようになっているだけで、これと先ほどお話にあるボランティアという奉仕考え方というのは全く結びつかないんじゃないか。全然関係ないんじゃないかと思うんですけれども調停委員候補者になるについては、むろんいまの調停の日当はこれだけだということをわかった上でみんななっているんですから。ただ実際上裁判官が、自分が頼みやすい調停委員にどんどんと調停委員になってもらうし、それでちょっと頼みにくいとかなんとかいう人を指名しないものだから、だからそういうふうなむらができるわけで、そこら辺は全くこの法改正関係ないと思うんですけれども、どうして関係あるとおっしゃるんですか。
  12. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) まず第一に、私の言い方非常に不正確かも一しれませんけれども、結局頼みやすい人に裁判官が頼む、頼みにくい人には頼まないということがむしろ候補者制度欠陥として出てきているんだというふうに申し上げたほうがよろしいのかと存じます。また片方においては、やはり資質の高い、現在のむずかしい調停事件に対応できる人たち調停委員をやっていただかなければならない、そういう要請が強いわけでございます。二つの面を合わせまして、現在の制度のままではやはり国民期待にこたえる調停運用というのがむずかしいのではないか、そういうふうに申し上げたいと存じます。
  13. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、今度の改正案考えていらっしゃるような事件配分というのは、どういうふうな方法で調停委員に割り当てようとお考えになっていらっしゃるわけですか。
  14. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 結局、いま申し上げましたように、資質能力の高い方々に新しく調停にも多数参加していただくことを私ども考えておるわけでございますが、そういう方方が一体どれだけ調停のために時間をさいていだだけるかという予測がつかないわけでございますけれども、できる限り調停委員としてなっていただいた以上は事件を担当していただきたいというのが私どもの希望でございます。それにしても、時間をさいていだだける限度というのはおのずからあろうかと思いますので、個々の人によってどうしても多少の違いは出てくるとは思いますけれども、一方でいわれます、いわゆる調停委員職業化という弊害ということも指摘されておりますので、特定の方々にだけ事件をたくさん持っていただくというようなことのないように事件分配はしていきたい、そういうふうに考えているわけでございます。
  15. 佐々木静子

    佐々木静子君 私、これ何回伺っても候補者の場合と改正法と同じことじゃないですか。候補者の場合だって頼めばいいわけですし、資質の高い人だけそろえばいいわけですし、そしていま資質が低いから頼まないというんじゃないと思いますよ、私ども見ていましても。事件をたくさん割り当てられている調停委員というものが必ずしも資質が高いからたくさんあの人にいっている、こちらはちっともこないから、資質が低いからいかないというようなことは、私は現実調停を見ていますとほど遠いんじゃないかというふうに思うわけで、今度改正したからといってそういうことがなくなるという保証はどこにもないと思うんですけれども、どういうわけで改正すればそういうことがなくなると、その根拠が全然はっきりしないんですが。
  16. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 結局資質の高い方々調停委員になっていただくことにいたしましても、現在の制度のもとではなかなか事件をお互いにしにくいという面があるわけでございます。ともかく正当な職務に対する手当の支給ができるという制度をとりますならば、広い範囲で有能な方々調停委員になっていただき、お願いできるようになるのではないか。従前制度のもとにおきましては、先ほど佐々木委員の御指摘のとおり、やはり頼みやすい方に頼むということになりがちであるけれども、それは必ずしも望ましい姿ではないわけで、やはり調停に適当な方に調停事件をお願いするという方向で運用していくべきであろうと、そういうふうに考えております。
  17. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、具体的にこの事件調停委員をだれになっていただこうということをきめて頼むのはだれになるわけですか、今度の改正で。
  18. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 具体的な事件について調停委員としての指名をするのは受調停裁判所ということになるわけでございます。
  19. 佐々木静子

    佐々木静子君 現実の問題でそうすると、事件がきて調停委員をきめるまでの事務手続ですね、それをもう少し具体的に説明していただきたいわけです。
  20. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 調停が地方裁判所あるいは簡易裁判所あるいは家庭裁判所申し立てがございますと、事務分配の定めに従いまして調停裁判所がきまるわけでございます。調停裁判所がきまりますと調停裁判所を構成する裁判官ということになるわけでございますが、その裁判官がみずからその調停事件処理することにするか、あるいは調停委員会を構成して調停委員会によって処理するかをきめました上で、調停委員会によって処理するというふうにきめますと、その裁判官で構成される受調停裁判所の名において調停委員事件をお願いすると、こういう順序になるわけでございます。
  21. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうなるとやっぱり前と同じで、頼みやすい人に頼む、あるいはまたあまり気の合わない人に頼んでもうまくいかないと思いますので、やはりある程度意思の通じ合う人に頼む、これはやはり前とちっとも変わらないんじゃないですか。
  22. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者安村和雄君) ちょっとことばを添えて、角度を変えて御説明したらどうかと思うんですが、先ほど民事局長申しましたように、候補者制度でございますとどうしても名誉職というようなことになりますので、報酬もないという状況で調停委員として活動していただく方をお願いするわけですね。いよいよ今度は調停事件がきたのでその方にひとつ調停委員になってもらおうと思うと、いや実は忙しいんだと、こういう仕事があってきょうはできぬと、大体私のところへはそうたくさんは事件を持ってきてほしくないというような方も出てくるわけです。今度の非常勤公務員制度になりますと、調停委員を選びますときから少なくとも一月に一ぺんなり二へんなり、半日はさいてひとつ調停委員になってやろうという余裕のある方で、かつ、いままで五十年の調停制度運用にあたっていろいろ批判されたような欠点のない方をひとつ慎重に選んでお願いしようと。そういうことになりますと、先ほどから佐々木委員心配のような調停委員会、具体的なときには受調停裁判所、結局それは単独の裁判官ということになりますが、この裁判官調停委員をお願いするときに、いやあ私は忙しいから困るとか、いやあ私はそう指定しないでほしいと、調停委員という肩書きさえあればいいんだというようなことをおっしゃることはなくなってくるだろう。やはり候補者制度非常勤公務員制度とでは、名前はたいへんいかめしくて、いかにも官僚的な感じを与えることを心配いたしますけれども、その本質はいままでの欠点を避けて、十分いい運用のできるような方たち調停委員になってもらえる、そこがねらいかと思います。ですから先ほどの、候補者制度時代裁判所運用でうまくいけばいいじゃないかというのにはやはり限度がありまして、おのずから喜んでやってくださるところへ事件はたくさんいってしまう。それからいつもお避けになる方のところへはいかない。これがまた反面、職業化というところにもつながりますので、そういう欠点を避けて新しく今度の改正法案立案をしたわけでございます。
  23. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま詳しいお話がございましたが、いきなり各論に入ってしまったようなかっこうになっているのですけれども、今度の改正調停委員に大体どのぐらいの事件を平均持ってもらおうということをまず考えておられるのか。忙しいとか、事件をたくさん持っているとか、ちっとも持っていないとかいっても、普通同時に何件ぐらい民事にしろ家事にしろ持ってもらうことを裁判所は理想として考えておられるのか。大体調停委員に月のうち何日ぐらい平均出てきていただくのを普通の平均的調停委員として考えておられるのか、そこら辺の見当をまずおっしゃっていただきたいと思います。
  24. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 平均的に見ますと、大体現在でもそうでございますけれども、年間四件から五件ぐらいということに、いまの調停事件数前提にして、調停委員前提にいたしますとそのくらいになると思いますので、その点は大体その程度であろうかと思います。今後もそう違わないのではないかと考えております。
  25. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはちょっともとへ戻りますが、この最高裁で本法案改正というものを企画なさったその段階臨調審——臨時調停制度審議会におはかりになりたわけでございますけれども、これは衆議院段階でも質問に出ていることでございますが、私どもこういう法案改正には法制審議会にはからなければならないんじゃないかというふうに思っておるんでございますが、どういうわけで法制審議会にはおはかりにならなかったのか、まずそれを述べていただきたいと思います。
  26. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 法制審議会に諮問しなかったことは御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、今度の法案につきましては、先ほどからお話が出ております臨時調停制度審議会におきまして一年八ヵ月余にわたる慎重な調査及び審議が行なわれたわけでございます。審議会委員は、学界、経済界言論界、法曹界、学者も含めましていわゆるローヤーがだいぶおられますので、その審議会十分審議をしていただいたという意味で、答申自体がすでに各界の意見を十分反映していると、かつ、法律的な検討も十分加えられておるということを考えたわけでございます。  もう一つの点は、先ほど私が申し上げましたように、本法案予算関係法案でございまして、法制審議会に諮問する時間的な余裕の問題もございました。  なお、このたびの改正法案内容につきましてはいろいろな批判を受けているわけでございますけれども、私ども立案当局としては、民間人司法参与という調停制度の基本的な線については変革を加えるものではないという意味におきまして、いわば基本的な法改正というふうに考えておらないわけでございます。  以上のような理由法制審議会に諮問しなかったわけでございます。
  27. 佐々木静子

    佐々木静子君 これが基本的な法改正になるかならないかというようなことは、そう簡単にこれは解釈できないんじゃないか。条文自身はそう大きく変わっておりませんけれども先ほどお話ございますように、調停委員の身分が変わるということは、これは五十年来の調停制度歴史を非常に大きく変えるものに私はなるんじゃないか。最高裁なり法務省のほうはならないとおっしゃっても私はなるんじゃないか。また、なるんじゃないかと思うからこそ多くの人たちがたいへん心配をして、これがどうなるかということを日弁連をはじめその他の方々が注目しておられるわけなんでございますけれども、なぜこんなにこういう重大な問題を、しかもいまの調停制度というものがそれほど大きな欠陥を持っていると私ども思えない、まずまず不十分ながら回転うまくしていっているんじゃないかと、むろん改めなければならない点も多々あるわけでございますけれども、と思っているところが、非常に緊急性を要するので法制審議会にはかるひまがなかったというようなわけでございますが、まあ予算十億円の獲得ができたということはわかりますけれども、それ以外の緊急性というのはどういうものがあるわけなんでございますか。
  28. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 緊急性につきましては、答申の中にもうたわれておりますとおり、最近における事案の、事件内容複雑多様化ということが非常に急激にその現象を呈していると思われます。一方、調停制度に対する従来からの批判が、事件内容複雑多様化にからみましてさらに批判が強くされているというようなことがございまして、その法改正中身としては、先ほど申し上げましたように、手のつけられる点だけにまず手をつけたというのが私ども立案当局としての考えでございます。
  29. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま調停事件数というものは統計で見ると減っていると思うわけなんでございますけれども、それが、いまの調停制度というものが十分に国民要請にこたえ切れないものであるから調停事件が勢い減っているということもあると思うんでございますが、一面、訴訟事件職権調停に回っているケースもかなり多いように感じているわけでございますが、その具体的な、調停事件がここ五年間どのぐらいの数の推移を見ておるか、そしてそのうち最初から調停申し立てがあった事件と、それから訴訟事件職権調停に回されている事件との比率ですね、それがここ数年間どういう推移を示してきているか、そこら辺を御説明いただきたいわけです。
  30. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 民事調停家事調停では事件推移等についてかなり違いがございますので、民事調停について申し上げますと、新受件数は、昭和三十八年には民事調停の新受件数が五万一千件でございますが、その後漸次減少いたしまして、四十七年度におきましては約四万九千八百件というふうに減ってきておるわけでございます。それから、訴訟から調停に回したいわゆる職権調停の新受件数でございますが、これは昭和三十八年には簡易裁判所と地方裁判所を合わせますと約一万一千三百件でございました。それが漸次減少してまいりまして、四十七年度におきましては六千五百件になっております。
  31. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) ただいま民事調停につきましては民事局長からお答えいたしましたが、家事調停について申し上げますと、昭和三十八年、ちょうど十年ほど前には新受件数は四万二千件余り、四万三千件足らずでございましたが、四十七年にはこれが約七万件になっておりまして、昨年はこれよりちょっと減ったようですが、大体十年間に五割程度ふえておるということでございます。それから、訴訟から調停に回るというのは、人事訴訟から多少家事調停に回るのがないわけではございませんが、これは人事訴訟そのものが数が少ないので、ほとんどそう取り上げるべき数字だというほどのことはないかとも思いますが。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 事件推移でございますが、民事調停のほうはどんどん数が減ってきている。私など、これは第一線の弁護士の方から伺いますと、たとえば交通事件などは、本訴を起こしてもすぐ調停に回る。極端な言い方をすれば、調停前置主義が交通事件にも適用されているんじゃないかと思うくらいに調停のほうに回っている現状であるというような話まで聞くわけでございますけれども、それにもかかわらず調停事件はどんどんこれ減ってきている。この調停法を改正して将来の推移というものを考えるにつきまして、最高裁の——これは国民が起こすものですから見通しといっても非常に無理な話かもしれませんけれども民事事件はどういう推移をたどるというふうな、これからまたふえていくというふうにお思いになっていらっしゃるのか。そのあたりの、どういうふうな計画のもとにこの調停法の改正というものが立案され進められているのか。また、家裁のほうは、これはどんどんふえているようでございますが、今後もますますふえるというふうにお考えなのか、ここら辺で頭打ちで横ばいになるとお考えなのか、減っていくんじゃないかとお考えになっているのか、そこら辺の見通しですね。これは裁判所事件をつくるわけじゃありませんから無理な注文かもしれませんが、ちょっと承っておきたいと思います。
  33. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 交通事故に関する事件につきましては、調停事件のほうも訴訟事件のほうも著しく増加してまいったわけでございますが、この一、二年の間は多少頭打ちの傾向にあるようでございます。調停制度改善で私ども考えておりますのは、交通調停について多少啓蒙活動をしただけでもある程度調停事件及び訴訟事件がふえてきたということにも若干あらわれておるわけでございますけれども調停裁判所調停委員会の機能が充実いたしまして、調停によってしかるべき事件が適正迅速に解決されるということになりますならば、調停事件はおのずからふえてくるであろうと。しかしこれは、本来調停によって処理するのが適当な事件についてのことでございまして、何も訴訟事件で、訴訟として解決するのが望ましい事件調停処理しようということではないわけでございまして、むしろ裁判所にあらわれてこないいわゆる潜在的な調停に適する紛争関係調停の中に出てくるということを私どもとしては期待いたしておるわけでございます。
  34. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 家事調停のほうについて申し上げますと、大体昭和三十九年ごろまではそう急激な目立った増加とは思えなかったのでありますが、四十年度になって以降かなり顕著な伸びが見られるような感じがいたします。ただ、先ほど申し上げましたように、四十七年度に七万件のピークを記録いたしましたが、四十八年度になりましてこれが千七、八百件ほど減少いたしました。その減少いたしました理由が何に基づくかは今後まだ一両年の経過を見ないとわからないのでありますが、私どもの感じでは四十七年度が一応のピークのような感じでありますが、何と申しましても家庭内の紛争はまず家事調停でやるという原則がございますので、家庭内の紛争を裁判所処理してもらいたいという人は一応家庭裁判所調停の門をくぐるということになっておりますので、これがこれ以上ふえるものかどうか、もうちょっと経緯を見守らないと私どもちょっとにわかに判断いたしかねるのでございます。
  35. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、いまも民事局長のお話にもございましたように、むろん、事件の中には訴訟じゃなければ解決できない事件もあれば、訴訟であってもほんとうの解決は望めなくてむしろ調停で解決したほうがほんとうの解決になるという事件も非常に多いわけでございますので、そういう意味において調停制度というものは非常に重要なものだと私ども考えているわけでございますけれども、この調停法の精神からお互いの互譲によって円満に解決をはかると。ところが、いままでの調停のあり方というようなことから考えますと、このお互いの互譲もけっこうなんですが、ともかくやはりこれは裁判所のいかに常識とかいろんな経験、いわゆる民意を反映さすといいましても、やはりそこには一本の筋が要るんじゃないか。ところが、そういうふうな基本となるものがすべて失われて——すべて失われてというよりも互譲のみが強調されて、結局弱い者にしわ寄せがされる調停というものが私どもの知っている範囲でも非常に多いわけでございまして、それで結局裁判所調停へ持っていっても、非常にそうでない場合もたくさんございますけれども、やっぱり力のある者が勝つんだ、力がなかったために泣き寝入りをさせられたという結果を余儀なくされている事件もこれまた非常に多いわけでございまして、これはやはり調停委員資質の問題も非常に重要な影響があると思うわけでございます。先ほどお話ございましたこの調停委員の、非常に今度はりっぱな方を選ばれると。このりっぱなというにもいろいろ見る角度によって、どれがりっぱかどれがりっぱでないか非常に異なってくるわけでございますが、まあいままでの方がりっぱでなかったとはとても言えないと思うわけですが、非常に片寄っておった、あまり広範囲から人選が進められておらなかったんじゃないかということは、これは私は裁判所のほうも率直にお感じになっていらっしゃるんじゃないかと思うんですが、これは民事についても家事についても共通する問題でございますが、特に民事のほうは専門化した事件が多くなったというお話でございますので、今度はどういうところから広く人材を求めようとしていられるのか、具体的にどういう団体の推薦を求めているとか、できるだけ具体的にお述べいただきたいと思うわけなんです。
  36. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) ただいま佐々木委員指摘の御批判を私どもも十分考えておるわけでございまして、確かに従前は比較的狭い範囲、市町村長、弁護士会、医師会等比較的狭い範囲に推薦をお願い申し上げまして調停委員候補者を選んでおったわけでございますけれども、今後はできるだけ各界の広い範囲で推薦をお願いいたしたいというふうに考えておるわけでございます。  現在考えておりますところの一例を申し上げますと、従前どおり地方公共団体、弁護士会のほかに大学、医師会、公認会計士協会、不動産鑑定協会、技術士会、建築士会、中小企業診断協会、税理士会、日本測量協会、日本消費者協会、全国中小企業団体中央会、全日本商店街連合会、全国農業協同組合中央会その他農業会議所、漁業組合、交通安全協会あるいは日本赤十字社、交通医学会あるいは日本学校医会、そういったような団体について私どもいま現在リストアップいたしておるわけでございます。
  37. 佐々木静子

    佐々木静子君 家庭裁判所のほうではどういうふうにお考えでございますか。
  38. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 現在家庭裁判所といたしまして調停委員として御推薦をお願いしている機関のうちでおもなものは、都道府県知事、市町村長、通産局長、弁護士会、調停協会、商工会議所、大学、婦人会などがございますが、それだけでは十分でないということのほかに、御推薦を受けるのがどうも形式的なことになっておるのじゃないかと、そうでなくてもっと実質的にほんとうにいい人を選んで御推薦願うということもむしろ大切なんじゃなかろうかということで、そういうふうな点に力点を置いて開拓していこうじゃないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  39. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると今度は推薦の範囲をだいぶお広げになる御様子なので、これいままでよりもは広範囲から得られるのじゃないかというふうに思うのでございますが、いまの御答弁にもありましたように、ただ形式的にだれか推薦してくれと、そこの会の役員が出てくるというのであってはやはりあまりおもしろくないのじゃないか。これは現実に、いまおあげになったもろもろの団体へ推薦方を依頼されるについてどういうふうに裁判所とすると手続的に、ただ書面をお送りになりてしかるべき人を推薦してくれというのじゃ私はそこの団体の悪く言えばボス的な方が出てきて必ずしもいい方ばかりとは——りっぱな方も来られるでしょうけれども、必ずしも全部がいい方というふうにいかないのじゃないか。そこら辺のこの趣旨の徹底をはかられる、ほんとうに適当な適任者をこの団体——いまおあげになった団体で非常にけっこうだというわけではありませんけれども、そこの、言われた団体の中から一番適任者を選ぶというための努力を具体的に裁判所とすると人を得るためにどのようなことをなさるのかお述べいただきたいわけです。
  40. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 調停委員方々につきましては結局自主的な選考は地方裁判所及び家庭裁判所にお願いせざるを得ないわけでございます。そこで地方裁判所及び家庭裁判所におきまして今度の調停制度の趣旨、今度の改正理由、そういったようなことについても十分説明できるような書面をつくりましていろいろな各会、団体等に、調停委員としてはどういう仕事をされるのかということをまず明らかにする必要があるだろうと思います。そのためには、そういう仕事をするには調停委員としてどういう方が適当であるかということについて一応の基準というようなものもある程度は示す必要があるであろうと。そういうことで私ども現在考えておりますことは、調停委員としてはまず何よりも人間尊重の精神の持ち主である、それから人間関係というものについて深い理解と関心を持っている方であり、また奉仕的な精神も豊かな方でなければならない、また庶民的で協調性があり、誠実に紛争関係について判断をしていくという人柄の人でなければならない、また明確な判断力と新たな問題に対処できる柔軟な思考力を持っておる方であることが必要であろう、また実際に事件を担当して紛争を解決するということについて熱意を有する方でなければならない、また健康状態が良好でなければならない、こういったようなことが調停委員となるべき資質として要請されるのではなかろうか。そういったようなことも明らかにいたしました上で各会に推薦を依頼する。推薦を依頼いたしまして推薦された方々につきましては、また適当な方々、もちろん推薦の母体である団体の適当な方々を含めまして御意見を十分伺う機会をつくる。それと同時に各地方裁判所家庭裁判所の所長なりあるいは調停を担当する裁判官なりが必要があればそれらの方々にも面接をいたしました上で、そういったような点について十分考えていただいた上でもってしかるべき方を調停委員として候補者として最高裁判所あてに上申をしていただく、その上申を待って最高裁判所において任命する、こういう手続を現在考えておるわけでございます。
  41. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実は今度は非常勤公務員という、常時非常勤公務員ということになって、名刺にも調停委員という肩書きを用いることもできるでございましょうし、また、待遇がこの改正案どおり改善され、かつ、事件をたくさん持つとなるとかなりな収入も得ることができるような場合も起こってくるだろうと思うんでございますけれども、役人をやめられた方がこの調停委員になりたいと希望なさるケースがたいへんに多くなってくるんじゃないかと思うわけです。むろん、裁判官の方とか検察官の方などの法曹の方が調停委員になられて非常にりっぱなお仕事をなさっておられるということはたいへんに多いわけでございますけれども、その他の官庁の退職者ですね、そういう方が対象に、この候補者にのぼるという可能性はかなり多いわけなんでございますか、どういうことなんでございますか、候補者というか、調停委員に選ばれるということですね。
  42. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 官庁の退職者であるという理由調停委員として不適格ということにはならないかと存じますけれども、じゃ、官庁の退職者であれば調停委員として適格かということになりますと、そうも言えないであろうと思いますから、一般の民間の企業におられた方々あるいは企業におられる方々、あるいは民間人として独立で仕事をしておられる方々と全く同様な立場で調停委員として適格であれば調停委員をお願いいたします。そうでなければお願いしないということ、その点では全く同じように考えていいのではないかというふうに考えておりますが……。
  43. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、これ、全司法が非常に今度の調停法の改正に反対しているわけなんでございますが、その改正に反対している理由の一つといたしまして、これはいまでも非常に退官後、調停委員としてふさわしい方が書記官あるいは調査官をおやめになって、調停委員候補者になっていらして、かつまた非常にいいお仕事をしていらっしゃる方を私も何人か存じ上げているわけでございますけれども、今度こういうことで、退職後調停委員になるというような道も開けてくるんじゃないか。そのときに裁判所の当局からやはりこれは非常にいい職員だということになっておれば調停委員になるチャンスも比較的多いけれども、これは組合の役員をしたり、そういうことで権力側から気に入られておらないということになればなかなかそういうチャンスは回ってこないというようなことで、全司法とすると、組合の中でいろんな分裂が起こってくるんじゃないか、非常にまずい事態が起こるんじゃないかということが懸念されておるんですが、そのことについて裁判所当局とするとどのようにお考えでございますか。
  44. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 書記官であるからといって特別扱いをするという考えは全くございません。しかし、佐々木委員も御指摘のとおり、書記官の中には法律的な素養の高い方もおられまして、調停委員としてもりっぱにやっていける方もおられると思いますので、そういう方はもちろん調停委員になっていただく場合があり得ると思いますけれども、特別扱いをするという考えはございません。
  45. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから現在の調停委員規則の第六条を見ますと、いまの調停委員候補者の場合でも地方裁判所家庭裁判所調停委員となるのにふさわしくない行為があった場合にはその選任を取り消すことができるというふうな規定があるわけでございますが、これは選任を取り消したケースというものは年間どのぐらいあるわけなんでございますか。
  46. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 実際問題としてこの規定を適用した例はないようでございます。これは調停委員候補者ということで実際上は適当でないということがわかった方もあり得ると思いますけれども、そういった場合は結局事件の指定をしないということで、おのずから、この年が終わりますと、あらためて調停委員としての候補者にはお願いしないということで処理してきておるように承知いたしております。
  47. 佐々木静子

    佐々木静子君 昭和二十六年六月五日の、これは最高裁の事務総長の回答で、いまの候補者制度のもとでも調停委員が指名を受けるとやはり非常勤裁判所職員となって、国家公務員として法律、規則に特別の定めがない限り、身分、任免、分限、服務等に関し、国家公務員法及び人事院規則の一般原則の適用を受けるというお話でございますが、そうなると今度の場合は、もちろん調停委員に選ばれると常時国家公務員法及び人事院規則の適用を受けるということになるわけなんでございますか、どうなんでございますか。
  48. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 現行法下における調停委員の身分につきましては、いま御指摘のとおりでございます。現行法下におきましても事件の指定を受けますと非常勤の国家公務員でございますので、非常勤国家公務員に関する公務員法の適用は現在でもあるわけでございます。もちろん改正後におきましても、国家公務員法の適用は当然あるわけでございますが、内容によりまして全面的に適用のないものも出てこようかと思いますが、改正の前後におきましては適用のありようについては同じであるというふうに考えておるわけでございます。
  49. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうなりますと、国家公務員共済組合の組合員になることができるようになるわけですか、どうなるんですか。
  50. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 非常勤公務員につきましては共済組合法の適用がないと考えております。
  51. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは昭和二十七年の最高裁規則の二十五号で、調停委員は一般の国家公務員と異なり政治的行為の制限がないという規定がございますが、これは今度の改正でもこのとおり変わりないわけでございますね。
  52. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) そのように考えております。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私が主として代理人として関与して、主として家庭裁判所なんかで思うんですけれども、非常にいいお仕事をなさっている婦人の調停委員などによくお目にかかりまして、そうしていろいろ伺ってみると、そこの地方の市会議員さんをなさっている方でよくめんどうを見ていらっしゃるというふうなケースによくぶつかるわけでございますが、そういう地方の議員さんが調停委員になる、これはどの政党であろうと。そういうことについては全然従来どおり選任は行なわれるというふうに理解してよろしゅうございますね。
  54. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 御指摘のとおり従来どおり行なうことができます。
  55. 佐々木静子

    佐々木静子君 それからこれは非常勤公務員でも国家公務員災害補償法の適用は受けるというふうに思うんでございますが、そのあたりはいかがでございますか。
  56. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 仰せのとおりでございます。
  57. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは先ほどの有能な地方議員さんの調停委員がたくさんおられると思うということについて関連しますが、今度の改正によってある政党あるいは与党でない政党の委員を締め出そうとしている、あるいは調停委員になるたけ選ばないようにしているというふうな風評も出ておるわけでございますが、そういうふうなことは全く誤解なのかどうなのか、そのあたりひとつはっきりしてもらいたいと思うわけです。
  58. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) そういう事実は全くございません。
  59. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから今度の非常勤公務員となると役人くさくなるんじゃないかということをたいへんみんなが案じているわけでございまして、むろん御答弁を伺えばおそらくそういうことの心配はないとおっしゃるだろうと思いますから、そういうことはお聞きしないわけですけれども、私どもはその点非常に心配しているわけですけれども、実際問題として調停委員という名刺を持っていろいろな会合なり人に会うと、これは本人はそういうつもりがなくても人はやっぱり役人だと、非常勤公務員だから役人に違いないかしらないけれども、役人だと思うし、また現実にいろいろお隣でもめている、親戚でもめているというようなことがあれば、その人をたずねていって、実はこうこうこういうことで、こうなんだけれども、何とか力になってもらえないだろうかというような問題が、これは本人が積極的にそういう顔は全然しなくても、これはいろいろ言ってくると思うんです。これは言ってこないほうがふしぎで、当然言ってくるだろうと思うんですけれども、そういうあたりはこれからはどういうふうにしていかれるおつもりなんでございますか。
  60. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者安村和雄君) これはいまの候補者制度のもとでも調停委員という名刺をお刷りになったりする方あるわけで、これまでも調停委員の自発的な研修、それからまた裁判所が主催します研修というところで、新任のときはもちろんでございますが、もう繰り返し民間の司法参与ということで国民の基盤の中から出て仕事をなさるんで、役人風を吹かすことはこれはほんとうにもう避けなくちゃ調停の使命にかかわることだということをくどくどこの裁判所でも言っているはずでございます。今回、また予算のことになって恐縮ですが、研修の予算も十分いただけておりますので、なおその点は非常勤公務員制度になったからといって民間の司法参与だという実を失わないように、先ほど申し上げましたような心がけをぜひ持っていただきたいということを十分徹底して間違いないようにしたいと思っております。
  61. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは要するに百の理屈よりもどういう人を得るかということにかかっていると思うんでございまして、もともと権力を——権力を持っているというとおかしな言い方ですが、もともと役所におられる方はそうえらくなったと思わないですけれども民間人が急に役職につくと何かすごくえらくなったような気持ちになって、たいへんにいばり散らす人が中にはいるわけでございますので、今度もそういうふうなことが、これ私はやはり起こるんじゃないかということをたいへんに心配しているわけなんでございます。大かたの調停委員の方というものもいまもたいへんりっぱな方が多うございまして、たいへんに私どもも日ごろ接しまして敬意を表したい方がほとんどなわけでございますが、大ぜいさんの中にはやはりそういう方もいまでもおられるわけですけれども、それがこういうことになるとやはり勢い自分は役所の人間なのだということで、何か調停を受けに来る国民よりもは数段上の人間であるかのような錯覚におちいる、私はその危険が非常に多いと思うのと、それから特に調停を受ける人にしてみると、その調停委員がえらかろうがえらくなかろうが、その人にうまく頼まないことにはこれはどうにもならぬわけですから、なるたけ丁重に扱うだろうと思いますし、そうなると、いきなりそういうことになると、何かすごくえらくなったような錯覚におちいって、そこら辺で非常にまずいことが起こるんじゃないか。私ども裁判官関与の調停ということをやかましく申し上げる理由の一つに、裁判官の場合はそんなに裁判官だからといって調停受ける人よりいばる人はないわけですけれども、そのあたり非常に基準というものがはっきりいたしませんので、たいへんに心配するわけなんですが、いまも話がほかへそれましたが、何とかそういうことを防ぐためにも調停委員会の構成メンバーとして裁判官が入っているわけですから、何とか調停に、特に第一回の調停ですね、第一回の調停には裁判官か主任調停委員ですね、がお入りになるような何かそういうふうなことの実現化ですね、これもぜひ考えていただきたいんでございますが、いかがでございますか。
  62. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者安村和雄君) 仰せのとおり、裁判官調停委員会の構成メンバーとして大事な地位を占めております。実際にいままでの経験からいたしましても、また臨時調停制度審議会での議論を伺っておりましても、裁判官が全部絶えず四六時中調停が行なわれる限り立ち会っている必要はないけれども、おっしゃるような最初のとき、それから問題が法律的な点あるいは事件の進行をこれからどう持っていったらいいかというポイントのとき、こういうときに、すかさず裁判官が参加できるような仕組みをとらなくちゃいけないと思っております。で、これは私の自慢話じゃございませんけれども、東京の地方裁判所の所長をしておりましたときに、私は元来が刑事の仕事が多かった人間でございますから、調停の勉強ということで、東京地方裁判所管内の比較的調停事件の多い簡易裁判所の判事さんに集まってもらいまして、まあこれ臨時調停制度審議会がいまあるのだけれども、一年先なり二年先なりそれまでの間のいまの法律による運用も大事だから、ひとつ現状洗いざらい話し合って運用改善もはかろうじゃないかということで、月に一、二回ずつ集まって何回かやりました。そうしておりますというと、そういう議論をしておりますうちに、簡易裁判所裁判官たちが、いままでよりも一そう自分たち調停委員会のリードといいますか、あるいは相談といいますか、そういうものにもつと積極的に参加しなくちゃいけないのだという熱意がだんだんふえてまいりました。ですから、これからも私どもくふうをこらしまして、従来よく言われましたような裁判官が最後のときだけ出てくるような調停ということじゃなくて、第一回はもちろんのこと、ポイントのときにはすかさず出てくるような、裁判官がいつでも調停委員と連絡をとって、実質的な調停委員会仕事が行なわれているのだというふうに持っていく努力をしたいと思っております。どうぞその点は御心配もおありかと思いますけれども、見守っていただきたいと存じます。
  63. 佐々木静子

    佐々木静子君 私が第一回の調停と言うのは、実はこれは日本調停協会連合会からいただいた資料ですけれども、この「新調停の手びき」を見ましても、この調停委員会というのは裁判官と二人以上の調停委員から構成されておって、第一回期日にはまずそういう方が出てこられて事情を聞くとちゃんと書いてあるわけなんですが、現実の問題とすると、私も調停委員を十年余りさせていただきましたけれども、むしろ代理人で調停に出る機会のほうがずっとはるかに多いわけなんですが、第一回の最初から裁判官がおられる調停というのはもうまずないと申し上げていいわけでございまして、これは調停事件をスムーズに進める上にも、これはやっぱり争点が——法律問題ばかりじゃありませんけれども、しかし争点がどこなのかと方針を立てるのがやはり大事でございますから、むだなことを五回も六回も繰り返したあげくにたまりかねて代理人が裁判官に出会いに行って、これは調停の方向がだいぶ違ったほうへばかりいってるので、何とかかじをとり直していただけぬかと話しに行って、それじゃということで来ていただくということになると、そこに三カ月も四カ月もむだがありますので、やはりこれはできるだけ裁判官が関与して、少なくとも第一回調停で方針を立てるときに裁判官が関与していただくということが大事じゃないか。特に代理人がついておりますと、これはかなり調停委員にも、あなた、先生そう言われるけれども、こうじゃないかということもかなり対等の立場でものが言えますし、また、それでもどうしても争点が変なところへいってるというようなときには裁判官にじかに話もできますけれども、当事者同士の場合はもうとうていそういうことができませんので、たいへんにむだなことが多いと思いますので、また弁護を依頼に来られる方々の不平不満にそういう事柄も往々にしてございますので、その点を十分にこの改正機会に何とかそういうふうに実現するようにしていただきたい。といいますのは、何かもう裁判官の忙しいこともわかるのですけれども、もう行かないのがあたりまえということで、向こうではほかのことを、見たところそう忙しくもなさそうなのに、もう調停委員まかせにしぱなししている。で、裁判官室のぞくと、ああ調停できましたかと、もう成立しましたかというようなことで、成立するまで行かないでいいというふうなもう慣習化されているようなところも往々にございますので、そのあたりがそうならないような具体的な方策というものをもう少し、その理念だけじゃなしに、実際上どういうふうにしていこうとお思いかということをお述べいただきたいわけです。
  64. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) ただいまの佐々木委員の御指摘、私どもも身に痛いほど感じておるわけでございますが、事務総長からのお話もございましたように、最近、裁判官のほうでもかなりその点につきまして考えるようになってまいりまして、まだまだ十分徹底しているとは言い切れないかもしれませんけれども、その方向で漸次改善しつつあるというふうに申し上げてよろしいかと思いますが、この法案が成立いたしましたならば、その機会にさらにその趣旨を徹底いたしまして、実質的な関与を高めていくということに万全の措置をとってまいりたい、そう考えております。
  65. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、先ほど家事事件の趨勢と民事事件の趨勢、ちょっと数字の上で伺ったわけですが、私、民事事件が少なくなって、家事事件が非常にふえている一つの根拠として、やはり民事調停の場合は訴訟と比べると印紙額が少ないですけれども、それでもこのごろ不動産などの価格も非常に高騰しておりますので、これが平均すると本案の場合の六割ぐらいの印紙を払わなければならないために調停に踏み切れない場合があると思うのですが、家事の場合は印紙が非常に安うございますので、簡単に調停を利用できるというところがあるのですが、やはり民事調停の場合の印紙というものが非常に高額過ぎて、交通事件の被害者なども簡単には調停が起こせないという現実考えますと、この調停の印紙というものについて、何かこれはもう少し軽減なさるような案でもお持ちなのかどうなのか、ちょっとお聞かせいただきたいわけです。
  66. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 御指摘のとおり、民事訴訟費用等に関する法律改正によりまして、調停申し立ての貼付印紙が相当大幅に値上げされたことは御指摘のとおりでございます。この法律は四十六年の法律でございますので、いますぐ私どもにおいて、もっと安くするという——その際にいろいろ御審議いただいたと思いますけれども、はたして貼付印紙が高いために仲裁を求められない実情にあるのかどうか等々につきまして十分検討した上でお答え申し上げるべきことかもしれませんが、現在のところ、このたびの改正法、いま御指摘事件の漸減傾向等につきまして十分分析検討した上で、なおこの費用法等の問題を突き詰めていきたいというふうに考えております。
  67. 佐々木静子

    佐々木静子君 この点はぜひ何とか御検討いただきたいと思うわけなんです。  それと、ついでですが、調停が不調になって本訴に移る期間でございますね、これがいま二週間でございますか、たいへん短うございまして、実際上なかなか、本案の用意をしてからじゃないと、うっかり不調にもできないというふうなこともあるわけでございますけれども、そのあたりはやはり現行どおりのお考えなのか、あるいは改正されるような御意図があるのかどうか、そこら辺も承っておきたいと思うわけでございます。
  68. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 調停不調の場合の訴訟の移行の問題につきましては、臨調審におきましても、かなり審議がなされたわけでございますが、なかなか技術的な問題もあって、結論が得られなかったわけで、今度の法改正の中ではその点は出ておらないわけでございますが、裁判所といたしましては、運用上できる限り便宜をはかりたいということで、簡易裁判所事件に関する限りにおきましては、口頭による起訴ができるわけでございますので、調停不調になった場合にどうしても訴訟を起こしたいのだという方であれば、口頭で訴訟を起こすということをおっしゃっていただければそれで受理するということも考えられますし、あるいはもう少しさらに進んで、現在運用面についての検討をいたしておるわけでございますが、調停申立書をそのまま使って訴状にかえることができるように運用上はからえるかどうかといったようなことも検討はいたしておるわけでございますけども、まだ結論は得ないわけでございます。
  69. 佐々木静子

    佐々木静子君 いままあいろいろとお伺いさしていただいたのでございますけれども、実は私この質問をする前に、私の地元の大阪の高裁が土曜日に落成いたしましたので、急いで調停室だけきのうざっと民事家事見せていただいてきたわけで、そのあと家庭裁判所のほうも、今度——いままでは大阪家裁も非常に調停室が少のうございまして、主として調停室があかないために期日の指定ができずにずっと延びておったわけでございますが、今度調停室がだいぶふえましたので、それも急いで見せていただいたようなわけなんでございます。そのときに感じましたのですが、いわゆる法律相談ですね、民事でも地裁でも、それから家裁でも——家裁の場合は家事相談になると思うのでございますが、これは各裁判所でやっておられるわけでございますね。これは一日どのくらい、まず地裁のほうは事件数があるわけでございますか、相談の事件数ですね。そうして、相談に応じている人はどういう方が応じていられるのか、そのことを伺いたいと思います。
  70. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 民事関係でございますけれども簡易裁判所におきましては受付の書記官が適宜相談に応ずるということはあるように伺っておりますけれども、普通全国的に調停相談を行なっているということはないように承知いたしております。ただ、大阪の場合は、大阪の調停協会の方々と、それから弁護士であられる調停委員の方の御協力によりまして、週に二回調停相談ということで、調停申し立てをしてこられた方々から御意見なりを伺いながら、どういう手続をとったらよいかというようなことの指導をしておられるというふうに伺っておりますが、事件数については、最近そういう面での報告がございませんので、どのくらいということはちょっとわかりかねるわけでございます。——大阪の場合におきましては、一月に十四、五件あるそうでございます。そうして、この相談の結果、調停が相当であるということになりますと、書記官に連絡いたしまして口頭受理の手続をとっておるというような運用がなされておるそうでございます。
  71. 佐々木静子

    佐々木静子君 実は昨日大阪家裁で聞きますと、家庭裁判所のほうは一月に四千件ほど家事相談があるという話を聞いて、私実はびっくりしたのでございます。それで、四千件といいますと、一日平均して百八十件でございますか、週当たり千件ですから六で割っても百七十ぐらいになるわけでございますね。ですから、その百七十という家事相談をどのようにさばいておられるのかということと、ちょっとこれ全国的に御説明いただきたいと思うわけです。
  72. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 大阪は四千件ということのようですが、一日にいたしますと十数件ということになろうかと思いますが。
  73. 佐々木静子

    佐々木静子君 一月で四千件です。
  74. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 一月で四千でございますか。大阪の事情だけ特に私よく存じているというわけではございませんが、全国で申しますと、家事相談が大体三十万件余り、三十一万件ぐらいになりましょうか、それは一日平均にいたしますと大体九十件ぐらいということになると思います。大阪では年間一万二千四百件余りになっているようでございますが。ですから、月に四千件というのはちょっと……、それは特に多い月はそうだったのかもしれませんけれども、大体月に直しますと千件ぐらいになるのじゃないかと思いますが。  それで、これを取り扱っているのは、大体、家庭裁判所で申しますと、書記官、事務官、それからある庁では参与員さんとか調停委員さんが奉仕的に無償でお手伝いになっているというふうな事情のようでございます。
  75. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはまあ、実はどういう手違いか知りませんが、昨日家庭裁判所で四千件と伺いまして、その場で計算をお互いにしまして、そうすると、週に千件だから一日に百七十か、土曜日を除くと百八十ぐらいになる。それをどういう方が、何人でさばいているかということを伺いますと、やはり家事相談だから法律相談ではないので、必ずしも弁護士法の問題とは抵触しないであろうという見解から、主として調停委員あるいは参与員の方が……。そうすると、一日五人ないし六人で、朝来ると、もうすでに相談の方がずっと待っているという状態で、そして相談を受け出すと、大体一人三十人ぐらいから相談を受けて、お昼御飯も食べるひまなしに、もうぶっ通しで相談をされてたいへんなのだと。これは私実は前から聞いていたので、私が実は十年余り前に調停委員になれと、候補者になったときも、私は忙しいからその相談はお引き受けできないと最初から申し上げておきましたので、私は実はかってですが、相談をやったことがないわけですが、相談に応ぜられる方も、私もよく話を聞いておりましたが、朝から、きょうは相談日だ、たいへんだという、重労働だという覚悟で出てこられて、そしてもう必死になって相談を受けておられる話は聞いておりましたけれども、一日二十件というと、聞いただけでも、もうぐったりするんじゃないかと思うわけです。  それと、もう一つは、家事相談と幾らいいましても、その中には、たとえば相続回復請求などのように、時効とか除斥期間とかいうようなものもあって、うっかり間違ったことを答えたら、これはもう命取りになるような問題も含んでおります・し、だから、一人で、しかも弁護士の法曹資格のない方が、やっぱり幾ら誠意があっても、一日に三十件も相談に乗るということは、これは私ちょっとたいへんなことじゃないかと。簡単なのもあるでしょうけれども、相続などで家庭裁判所で相当複雑な問題もあるし、しかも訴額からいっても、このごろは相当に大きな額の問題もあるので、うっかり間違えた話などすれば、裁判所で聞いたところがこうだったというようなことになって、取り返しのつかないことも起こるんじゃないか。で、私、それについて、その相談に乗った先生に、いまはどういうお礼をしておりますかということを伺いますと、これは日当の千三百円だというお話で、そしたら、二つ調停した場合の適用はあるのかどうかということも伺ったんですが、その千円プラスという取り扱いはしておらないということで、皆さん奉仕の精神でやっておられる。で、その千三百円の出どころは、これは相談しているうちに、必ず即決に回したら、何かすぐに調停に回したらいいという問題も起こってくるので、そのときに、即日調停か何か、調停として関与したことになって千三百円の日当をお出しするように取り計らっていると、私ちょっとそこのいきさつはよくわかりませんけれども、だから一件の事件を扱ったという扱いになっているんだという御説明を承ったんですけれども、これが全国的なことなのかどうか。それで、これは非常に調停委員の、特に御熱心な先生方がそれこそ捨て身の覚悟でやっていただいていることを私かねて聞いて知っているわけですけれども、これは裁判所としてそういうふうなことでおまかせしておいていいのかどうか、何かそこら辺の対策をお考えいただきたいと思うわけですが、いかがなものでございましょうか。
  76. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 実は、家事相談がいつごろから始まったかということを私十分承知しておらないのでございますが、いまから十数年前、家事相談に非常に問題があるということが指摘されたように私記憶しております。それは、まあ家庭裁判所の門をくぐる方々でありますから、先ほど佐々木委員がおっしゃいましたように、必ずしも法律的な判断ということじゃなしに、もう完全なる身の上相談的な内容を持った方がお見えになることも非常に多いわけでございますが、何にいたしましても、その紛争の中身に入ってある種の見解を示すというようなことは、これは許されないことだと私考えております。したがいまして、いまから十数年前に問題になりましたときも、家庭裁判所の門をたたいてこられる方々家庭裁判所として示し得るサービスの限度は、申し立ての手続に関連して、この申し立てはどういうふうになさったらよろしいとかいうふうな、単に手続的なことをサービス申し上げるというのが限度ではなかろうかと、そして、決して事件中身に入ってはいけないと、もし中身に入って、単にそれがその人のプライベートな意見として述べましても、これは後にどういうふうにその事件がころんでいくかわかりませんから、調停になりましたり、あるいは審判になりました場合に、調停委員会なり家庭裁判所が示す判断と抵触するような場合があっては、これは当事者に非常に申しわけないことでありますし、また誤解も生じますので、絶対にそれはいけないというふうなことでまいったのでございます。したがいまして、現在家庭裁判所が行なっている家事相談というのは、まあ単なる身の上相談でないものも含めて全部大体そういう心組みでやっていただいているというふうに私承知いたしております。  それから、先ほど、その相談に来た事件調停に回って、その調停委員としての日当をお受けになるというお話ですが、私が承知しておりますところでは、当日——まあ大阪で調停委員が扱っておられるということは、最近私聞いておりませんで、参与員さんが扱っておられるというふうに聞いておったんでございますが、当日事件がありまして、参与員としてその事件について意見を述べられたりなんかして、参与員としてのお仕事をなさったという場合には その参与員のお仕事に対して日当が支払われるわけでありまして、その方が時間的余裕があるという場合に無償の奉仕で相談の仕事にサービスをしていただくということはあると、そういうふうに私聞いておるんでございますが。
  77. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私、まあもう一度質問さしていただくことになりますので、そのときにもう一度お尋ねさしていただきたいんでございますけれども、たとえば大阪家裁の中でも相談室というものが それだけの数が来るんですから、相談室だけでも、あれは六つか七つほどあると思いますし、それから、相談に来た人の待合室というのが、やっぱり大病院の薬局並みぐらいのいすは、何十人かは待てるようにこれまた用意してないと、とてもさばけないわけでございますので、やっておりますし、それから地方裁判所でもやはりその法律相談のことが、これは弁護士会との関係でかねて問題になっておりまして、大阪では、問題があるので、調停委員のうちの弁護士が——地方裁判所の場合ですね。これは奉仕で相談に乗っている。ただ、これが東京とか——まあ東京はどうなっているのか知りませんが、大都市の場合は弁護士がたくさんいるから、その相談に乗っても、その事件がたまたま自分のところへまたやってきて、そのために、相談を一言聞いたばかりに事件を受けるに受けられないということが起こらないから、大阪などの場合はいいけれども、地方へいくと、そこに弁護士が二人か三人しかおらない、ところが、そこで相談を自分が受けてしまった、そうなると、今度事件を頼まれたときに断わらないといけないということで、小さい地方へいくほどその相談を引き受ける弁護士がいなくなるんだという悩みもかねがね伺っているわけなんですけれども、そういうことが最高のほうであまり御把握になっておらないとすると、やはり現実にそれだけの人が相談に現在来ているという現実ですからね。その問題をもう少し実情を、これ、各地の実情を御調査いただいて、どういうふうに——これは私、地裁よりもむしろ家裁に、数の上から伺っても問題があると思うんですけれども、次の機会に、それに対してどういうふうに対処していこうとお考えなのかということも御答弁いただきたいと思うわけでございます。  それから、時間がだいぶ何でございますが、先日、日弁連のほうからも、それからほかの参考人の御意見の中からも、この民事調停法の八条の2でございますね。先ほどお話のある非常勤公務員、特に最高裁が任命するということについて、たいへんに反対意見が出ているわけなんでございます。特に、これ、この間からですが、各弁護士会の単位弁護士会からも、この調停委員の身分の点と職域の問題の二点にしぼりまして、この二点はどうしても弁護士会とすると考えてもらわなければならないという強い反対の文書が、きょうもこれ、各委員さんのほうへ来ていると思いますけれども、特に強い要望として出ているわけなんでございますけれども、これはなぜ最高裁判所が任命するのか、そのようにお改めになろうとするのか。私は、民意の反映というか、特に調停委員というものの地方色を生かして調停というものを行なうのがいいんじゃないかという考え方からしますと、最高裁が任命するというふうにわざわざお変えになるという論拠というものはきわめて乏しいんじゃないかと思うんでございますけれども、そのあたりの御説明を、まず伺いたいわけです。
  78. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 調停委員非常勤裁判所職員として任命するという手続をとるということにいたしました場合においては、やはりその他の裁判所の職員とのバランスの問題があるわけでございまして、調停委員裁判官とともに調停事務を担当する高い職務内容を持つ者でございますので、裁判所の中におきましては、やはり最高裁判所の任命という形式によるのが望ましいということで、これは臨調審答申にもそういう意見が圧倒的に多かったわけでございます。
  79. 佐々木静子

    佐々木静子君 その点も次回にまたお伺いしたいと思いますが、そのほかのこの職域の問題でございますね。まあこれもお伺いし出すと切りがないくらいたいさん問題を含んでいるわけでございますけれども、なぜこの三つの点、今度の改正で、八条でお考えになっている職域をふやすという点ですね。今度の調停法の改正の点では、調停委員の待遇が上がるということのほかに、隔地者間の調停などで非常に賛成すべきいい点もたくさんあると私も思うわけでございますけれども、どうも八条自身が、一項にしろ、二項にしろ、ぐあいが悪いところが多いんじゃないか。この八条の一項ですね、「専門的な知識経験に基づく意見を述べ、」というところが、まずひっかかるわけでございますが、先ほど来御答弁の中に何回もお述べになっていらっしゃる調停委員職業化というふうな問題にも、どうもこの「専門的な知識経験に基づく意見」というなことが何かつながりそうな感じがするわけなんでございますが、そのあたりと、そして従来の鑑定じゃなぜまかなえないのか、そのあたりをちょっと伺いたいと思います。
  80. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 八条一項の、いわゆる単独事務というふうに私ども名づけておりますが、調停委員の単独事務を規定いたしましたゆえんは、先ほどからお話が出ておりますように、資質能力の優れた方を調停委員にお迎えすることになりますので、その知識経験及び能力を有効適切に活用さしていただきたいという、またその必要もあるということで設けた次第でございます。  まず、いま御指摘の、いわば第一種の事務としまして、専門的な知識経験に基づく意見を述べることを法律であげてございますが、これはただいま申し上げましたように、各分野の専門的な知識経験を有するいわば専門家がある程度多く任命されるということに相なろうかと思われますので、その委員の知識経験を一そう活用して事件処理の適正をはかろうとする趣旨でございます。具体的にどういう場合にこの専門的な知識経験を活用するかにつきましては、裁判所のほうから詳しくお聞きいただきたいと思いますけれども、私どもといたしましては、いわゆる民事訴訟法上の鑑定とは違った面から専門的な知識経験を述べていただくというふうに考えておるわけでございまして、どうしても証拠資料の収集方法としての鑑定ではまかない切れない面を特に活用したいという趣旨で立案した次第でございます。
  81. 佐々木静子

    佐々木静子君 特にそういうふうな知識経験、具体的に、まあたとえば交通事故の場合だと、後遺症についての医学的な知識が要るとかというような問題じゃないかと私理解しているのでございますけれども先ほど来伺っておりますと、非常に広範な範囲から今度は調停委員を任命されるということでございますと、そういうふうな知識経験の要りそうな事件にはそういう調停委員さんに最初から入っておいてもらえば、この調停委員会を構成している一員として、わざわざこういうことしないでも、そういう調停委員さんに入っておいてもらえばいいんじゃないか。それからまた、私、複雑な事件であれば、いまの法律からいいましても調停委員裁判官外二名ときまっているわけじゃないと思うのでございますので、複雑な事件でこういう特別な知識経験が要るというような場合は、そういう調停委員さんに最初からでも途中からでも入っていただいて、場合によると構成がもう一人ふえてもいいんじゃないか。これは解説書を見ましても、合議できめるとか、こう書いてありますし、同数のときにはどうするなんていうようなことも書いてあるところを見ると、三人とちっとも限定しておらないので、四人の場合も十分にこの調停法は考えていると思うわけでございますので、そういう人に調停委員会に入ってもらえば、こういうややこしいことをする必要もないのじゃないかと思うのでございますが、そのあたりはいかがでございますか。
  82. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) その点は御指摘のとおりだと存じます。法律的にも二人以上となっておりますので、その方に入っていただくことは法律上何ら差しつかえございません。ただ、特別の知識経験を有する調停委員の方がどの程度まあ来ていただけるかという問題もございまして、おそらくすべての事案につきまして十分対応できるだけの員数がはたして確保できるかという問題はあろうかと思います。私どもの——まあこれはむしろ裁判所のほうの問題かもしれませんが、一応立案に当たった者といたしましては、その点につきましては常に各事件について一人ずつ入っていただくほど十分に確保できるとは限らないのではないかということで、いわばその得がたい専門的な方の能力をより有効に活用するということでこの立案に踏み切った次第でございます。
  83. 佐々木静子

    佐々木静子君 ここら辺ももう少し突っ込んで伺いたいのですが、時間の関係がございますので、次の機会に譲りたいと思います。  その次の「嘱託に係る紛争の解決に関する事件関係人の意見の聴取」ですね。これは実際調停委員会がやればいいんじゃないかというふうに私は思うのでございますが、これはどういうわけで調停委員の権限としてこういうことがきめられているのか、きめようとなさっているのか、そのあたりも御説明いただきたいわけです。
  84. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) ただいま御指摘の事務につきましては、まああとで問題になろうかと思います嘱託事実の調査も同様であろうかと思いますけれども調停委員会を設けなければ実施できない性質のものではないと思います。もちろん、その受託、嘱託を受けた裁判所におきまして、裁判官がやったほうがいいというふうに考えれば裁判官がおやりになるわけでございますので、受託、嘱託を受けた裁判所におきまして、事務の内容によって相当であると認める場合には調停委員に実施させるというのがまあ今度のねらいでありまして、またそれで十分ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  なお、嘱託を受けた裁判所のほうで調停委員会を構成することになりますと、いわば一事件につき二つ調停委員会が設けられるということになりまして、これも制度的に見ますと変則的なことだろうと思いますので、その点でも立法論としてはいささかいかがかと思いまして、その調停委員会で事務を処理するという考え方をとらなかったわけでございます。
  85. 佐々木静子

    佐々木静子君 こうなった場合の具体的な実務の取り扱いというふうなことについても、また次の機会に伺いたいと思いますが、特に最後の「その他調停事件処理するために必要な最高裁判所の定める事務」という中に、これは衆議院の御答弁を伺いますと、事実の調査に限るという御答弁が出ておったと思うんでございますけれども、これは家事の場合におきましては家庭裁判所調査官というものがすでにあるわけでございますので、その家庭裁判所調査官の調査との関連で私は必要がないんじゃないか、調停委員にそうダブって事実の調査についての権限を与えるという必要はないんじゃないかと思いますし、それから民事におきましても、さてそれじゃ何をするのかというと、あまり具体的にぴんとわかることがないんじゃないか。わざわざそこまでやらないでも、調停委員会として調停委員会が事実を調べるというのは、これはもう幾らでも調べたらいいわけですから、その当該調停委員会が調べればそれでいいんじゃないかというふうに私思うわけでございますが、その点、できればもっと時間をかけてゆっくり伺いますが、まず簡単に御答弁いただきたいと思います。
  86. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) いまの御質問でございますが、御承知のように、家庭裁判所には家庭裁判所調査官という専門職を設けてございまして、その調査官が事実の調査に当たると、いうふうになっておりますので、御質問のように、それでは調査官の事実の調査調停委員の事実の調査と重複するではないかと、調査官だけでいいではないかというふうな御疑問が生ずるのも、まことにごもっともだと思うのでございます。調査官は、御存じのように、ただいまの現行家事審判規則におきましても、社会学とか心理学とかいったような専門的な知識を活用して事実を調査するというたてまえになっておりまして、まあ言ってみますれば、事実調査を要すべき事項のうちで人間関係諸科学の活用を必要とする場合に調査官が働く本来の分野があるというふうに考えられるのでございます。  ところが、家庭裁判所で行なわれる家事調停の事実の調査を見ますると、人間関係諸科学を活用して調査をする必要のある場合と、それからそれ以外の知識でもって調査をする場合とがあり得るということが言えるのではなかろうかという気がするわけでございます。調査官は、先生御承知のように、調査官研修所で人間関係諸科学を活用した事実の調査の専門家として訓練を受けて、家庭裁判所に配属されていろいろやっておりますけれども、たとえば家庭裁判所事件のうちで、遺産分割の事件などになりますと、遺産をどういうふうに分割するかということが問題になった場合に、当該遺産の中にはいろいろありまして、不動産もありましょうし、あるいはそのほか、各動産、不動産が一体として企業を構成しておるという場合もございます。そういうふうな場合に、その企業を構成する財産とか、あるいは経理の内容等、企業の価値を評価する上で必要な事実の調査をしようという場合に、これは人間関係諸科学を専攻した調査官がやるのには適さない。むしろそうではなくて、やはり会社の経営に練達な人であるとか、あるいは経理士さん、あるいは不動産鑑定士の方とか、そういったような資格を持たれた調停委員さんがそういう事案についてちょっと事実の調査をなされば、それのほうがむしろいいんではなかろうかと思われるような場合がございますので、そういうことのために、ひとつこの道を開いておくのがいいんではなかろうかというようなことを考えておるわけでございます。
  87. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 民事関係におきましても、裁判所が規則で定めたいと考えておりますことは嘱託にかかわる事実の調査でございますので、たとえば東京の裁判所調停委員会事件が係属している場合におきまして、大阪にある不動産の担保価値が大体どのくらいかということが問題になった場合、あるいは当事者の一方が大阪の病院に入院しておって、その病人の病状がどの程度のものであるかといったようなことを調査する必要が出てきた場合に、大阪の裁判所に事実の調査を東京から嘱託いたしまして、そして大阪の調停委員の方に、その方面での専門家である、たとえば不動産鑑定士とかあるいは医師であるとかあるいは建築士であるとか、そういった専門家の調停委員の方に調査をお願いしようと、こういうことを考えているわけでございます。
  88. 佐々木静子

    佐々木静子君 先ほどの家庭局長の御答弁ですけれども、いまの調査官が、主として社会学とか心理学とか、教育学でございますか、そうした分野においての専門的な方がお集まりになっていらっしゃるということはよく承知しているわけでございまして、しかもそういう調査学というようなことをあまりどこの大学でもやっていないんじゃないかと思うんでございますけれども調査学という勉強を、研究をやはり専門的にやっていらっしゃるというように、まあきわめてプロフェッショナルな立場の方がすでにいらっしゃいますね。それに対しまして、いまのお話では、主としてそういう専門分野を生かしての調査調査官の仕事であって、たとえば遺産分割とかそういう事柄は専門外だというお話でございますけれども、実はこの「新調停の手びき」これ、調停協会連合会が出していらっしゃるわけですが、これを拝見しましても、理事長は五鬼上さんでいらっしゃるというようなことで、最高裁の御事情にもきわめて御造諸の深い方がお書きになった本でございますけれども家庭裁判所調査官の仕事として、まず第一が「事実の調査」、その(4)ですね、(4)に「調整活動」というふうな項目になっておりまして、そしてこの調査のやり方として、たとえば遺産分割の場合の財産の調査などには調査官が活躍するというようなことについての詳しい、これ、説明がございますね。また、当事者が不出頭の場合も調査官がその所在を調べるためにいかに活躍するかというような、こういう専門の解説書も出ているくらいでございまして、これは、たまたま教育学とか心理学が専門だからといってそれ以外のことができないというわけじゃないし、また、遺産分割などでたいへんにそういう財産的な知識が近時必要になってきたとすれば、そうしたら、その心理学、教育学の勉強ばかりじゃなしに、そういう勉強もなるたけ調査官の方にやはりやっていただいたらいいわけでございまして、少なくともこの調査ということを専門にやっていらっしゃるわけでございますから、その調査官の活動は、私もこれは調停委員としても若干そういうことがございましたが、当事者、代理人としては、もう常にこの遺産分割事件などで調査官にお世話になっているわけでございますが、これは実に、さすが調査官と思うくらいに調査をなさるわけでございますのでね、だから、せっかくの調査制度というものがこれだけの歴史を持ち活動しているわけでございますから、その調査官の制度というものをもっと生かしていったらいいんじゃないかと思うんでございますが、どのようにお考えでございますか。
  89. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 私のお答えが多少ことばが足りませんでしたと思いますが、調査官は人間関係諸科学を活用した調査のしかたをするというのは、主としてそうだということを申し上げたんで、それ以外のことをすることはできない、あるいはしてはいけないということを申しておるわけではございません。ただ、御承知のように、なかなか家庭内の紛争と申しましても非常に複雑多様でありまして、現在の社会がいろいろいまのような変動していく時代になりますと、いよいよもって複雑になっていきますので、事実調査と申してもその守備範囲というものがはなはだ広いということになりまして、それを社会学、心理学を活用した、まあ先ほど先生の御指摘調査学というものを深めてやるということのほかに、そういう不動産の評価であるとか、そういったようなことまですべてを身につけ、知識を身につけてやるということがなかなかむずかしいと申しますか、まあ複雑な社会ではいろいろ分化していく傾向というものが出てくるんではなかろうか。そうしますと、主としてその調査官が担当する分野、それからそうでない分野というものがおのずからできてくる。それで、そういうふうに考えますと、調査官が主としてやる分野でない部分について便宜な道を開いて、そして国民奉仕するというその調停のあり方がいいんではなかろうかというようなことで、この道を開きたいということでございます。
  90. 佐々木静子

    佐々木静子君 えらいこれはおことばを返すようですけれども、社会が分化して世の中が複雑になって、いろいろと専門化している、調査官にいろんなことをそんなにやらせないということですが、これは調停についても同じことが言えるんじゃないか。調停委員の方はいまも非常にりっぱな方がたくさんいらっしゃいますが、さらにりっぱな方を今度はよりすぐって選任されるということでございますけれども、これはいかにりっぱであっても、やはり能力には限界があるわけでございまして、この調停委員というのは、むしろ判断作用というか、あるいは人を説得するというのが専門の仕事でございますから、事実の調査をやるというのは、調停委員本来の仕事から見ると、それこそ全く異質の仕事になるわけでございますね。その点は、調査官の場合は、その調査の対象が変わるというだけのことであって、もっとこまかく細分化しないといけないというわけで、同質の仕事のようになってくるんじゃないかと思いますので、やはりこの点、調査制度というものをもっと活用していいんじゃないかというふうに思うわけです。  それから、調査官の試験というのも非常にむずかしい。特に調査制度発足のころ、まあいまもそうでしょうけれども家庭裁判所調査官になられて——初めは少年調査官ですか、それから家事調査官ができて一緒になったわけでございますか、その当初の段階で非常に有能な方がたくさん調査官におなりになった。むしろ司法試験なんかも軽くお通りになるような方が調査官のほうをお選びになったというようなことも、個人的にはいろいろございますけれども、そういう方々がしかも調査についてプロフェッショナルの御勉強をなすって、そして、あまりいまの裁判所の中で調査官というものの身分というか、待遇というものが、当初考えておったようにはなかなかいっておらない。むろん、栄進したくて調査官をやっているというわけではないと思いますけれども、満足していまの仕事を一生懸命やっていこうというからには、やはりそれだけの身分の保障とか待遇の改善ということ——これは調停委員の先生方の待遇の改善も大事でございますけれども、また調査官の待遇ということも大事じゃないか、そういうところはどういうふうにお考えでございますか。
  91. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 調査官の待遇の改善、これは人事局の所管事項になろうかと思いますが、一例を申し上げますと、現在調査官は、首席調査官を頂点としまして、次席調査官、主任調査官、それから普通の調査官、調査官補、そういうように分かれておりますが、調査官のうちで一番栄進した人は首席調査官になるわけでありますが、その首席調査官のうちで最高の身分を持っておる人は、現在指定職、中央官庁の局長に匹敵する待遇を与えられております。それから一等級の方も多数おられるというようなことで、待遇は非常に改善されておるというふうに考えております。で、私どもとしては、調査官が家庭裁判所仕事のうちで占める重さというものを昔から十分に認識しておるつもりでございまして、そういう方々の待遇がなお一そう改善されて、そしていい人材が集まってくるようにということを日ごろ念じておる次第でございますし、今後もそうすることによって家庭裁判所が一般の国民に対する奉仕を全うすることができるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  92. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの問題に関連しまして、たとえば公害の調停とか、あるいは交通事故の事件などが多くなってくるということになりますと、民事関係にも調査官というものを新たに設けようというようなお考えはございませんですか。
  93. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 公害事件関係につきましては調査官を設けてはどうかという意見があったことは間違いございませんで、私ども検討いたしましたが、公害事件と申しましても非常に範囲が広いわけでございまして、ほんとうに調査官として役立つ知識をお持ちの方ということになりますと、非常に多数の種類の専門分野を持たれた調査官を裁判所に配属しなければならない。また、事件が何も東京、大阪等の大都市だけでございません。全国どこにでも起こる事件でございます。そういったような関係で、一体そういう調査官をどこに配置するかというような問題もございます。そういったような点も考慮いたしまして、さしあたって調査官を配置するということは一応見送ったわけでございまして、そのかわりに、裁判官としてはできる限り基本的な知識をまず身につけた上で、それぞれ専門分野の方に鑑定をお願いするという形で事件処理していくほうが現在の段階ではベターではないか、そういう形でもっていろいろ予算的な手当て等をしてまいったわけでございます。
  94. 佐々木静子

    佐々木静子君 私、持ち時間をだいぶ超過しておりますので、もうこのあたりで一応打ち切らしていただきたいと思いますが、実は昨日、私の所属しております大阪弁護士会でちょっと大きな会合がございましたので、私もきのう夜出席いたしたわけでございます。そして、単に弁護士会の役員なり担当者の意見というよりも、そこに大ぜいの弁護士が来ておられましたので、これは私から尋ねるまでもなく、皆さんが、当然のことながら、民事調停法がどうなっている、こうなっているということでお話がございますので、多くの弁護士さんといろいろとお話をするわけになって、つい夜おそくまで皆さん方から御意見を伺ったわけでございますが、やはりこの弁護士の方々の中では、例の三者協議の問題でございますね。これは、参議院の法務委員会で、はっきりうたわれているにもかかわらず、日弁連のほうと弁護士会のほうの意向を十分にお聞きいただけなかったということが、まずその問題が非常に大きなウエートを占めているように、私、皆さんの御意見を総合すると、そのように伺ったわけでございますけれども、これは前回の参考人の陳述にも、藤井先生のほうから、三者協議が軌道に乗っておらないということについて日弁連の側からの御意見をお聞かせいただいたわけでございますけれども、その点について、まず最高裁から、どういうわけで三者協議というものがスムーズに復活できないのか、また、今後どういうふうにして——三者協議を開こうとお考えいただいているのだと思いますので、そういうふうな方針についてちょっとお聞かせいただきたいと思うわけです。
  95. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) いわゆる三者協議につきましては、御指摘のように、当法務委員会において、例の三十万円に簡易裁判所の管轄を拡張するという裁判所法の一部改正法案の際に附帯決議がなされていたのでございます。で、その直後から、この附帯決議の線にのっとって三者協議の機会を設けるということで、種々関係機関と折衝を行なったのでございますが、その際の根本的な違いと申しますのは、主として裁判所側といたしましては、そうした司法制度について常時話し合いの機会ということでございますので、常設的なものというふうに考えておったのでございますが、日弁連のほうからいたしますと、御承知のように、臨時司法制度調査意見書の中に司法協議会というものがございまして、臨時司法制度調査会の意見には全部反対ということで、司法協議会には参加をしないという態度を表明しておるものでございますから、そうした常設的なものに日弁連が加わるということは結局司法協議会に加わったことになるのではないかというふうなことで、その辺が主として問題となりまして経過したのでございます。ところが、これも御承知のように、その次の国会に、民事訴訟法の一部改正法案が出されました。これは即決和解に対する請求異議の管轄と、それから裁判官の決定命令の記名の、この部分の改正でございます。この改正が国会に出されまして、この改正法案が衆議院を通過いたします昭和四十六年の三月に、今度は衆議院の法務委員会において、また、三者協議の必要性について附帯決議がなされたのでございます。そのような経過をたどりましたので、昭和四十六年の六月以降、法曹三者の間において、そうした附帯決議の線にのっとりまして三者協議を実現さすべく、いろいろ検討が重ねられてきたのでございます。  で、どういう点が難点かと申しますと、やはり一番の問題は、臨時司法制度調査意見書との関係というのが問題になるわけでございます。すなわち、問題点として三つあるわけでございまして、こうした三者協議というものが臨時司法制度調査意見書にいう司法協議会に当たるのかどうかというような問題、それから、かりにそれが当たらないとしても、臨司意見書の意見をあらためて協議の対象に含めるかどうかといったような問題、それから第三として、かりに協議の対象に含めた場合に、その意見書の意見の実施は一体どうなるのか、すなわち、意見の一致があればよろしいわけでございますが、この三者協議によって意見の一致を見ないという場合に、意見書の意見の実施は一体どうなるのか、こういうふうなことが問題となって、今日まで持ち越しておるのでございます。  で、その後、種々事務的にも、個別的にいろいろ折衝いたしまして、何とか三者協議を実現さすべく検討してまいっておるのでございますが、現段階のことを申し上げますと、第一の、この三者協議が司法協議会に当たるものではないということについては、三者の意見というものは一致しておると思います。それから次に、意見書の意見を協議の対象に含めるという点についても、これは異論のないところまで来ていると思います。と申しますのは、司法制度に関する問題というのはほとんど意見書に網羅されておりますので、何か問題を取り上げますと、当然意見書に載っている事項が問題となるわけでございますので、これも、三者協議をやる以上は、臨司の意見書に取り上げられている事項も当然協議の対象になるということはあり得るわけでございますので、この点も何とか意見が一致しておると思います。結局、残る問題は最後の問題でございまして、そうした意見書の意見が三者協議の対象になった場合に、意見の一致を見たものだけを実行するのか、それとも、意見の一致がなくても、裁判所なり法務省のほうとして意見書の意見を実施することができるのかどうか、そういう点が主として問題になっておるのでございます。と申しますのは、臨時司法制度調査会の意見というのは、これは内閣の意見でございますので、法務省は当然でございますが、裁判所もその意見書を尊重してこれを実施しなければならないという立場にございますのに対して、日弁連の側からいたしますと、右意見書の全部について、その当時、三十九年当時、反対決議をしている関係もございますので、三者協議をやって意見の一致しないものでも、それが次々に実行されるということは、日弁連のほうとしてもいろいろ問題があるのではなかろうか、また、裁判所側といたしますと、意見書の意見である以上は実施すべきだと考えているのにかかわらず、日弁連と意見が一致しないとこの意見書の意見の実施ができないということでは、またこれ、困るわけでございますので、そういった観点で、その点まで問題が煮詰まって今日まできているという、こういう状況でございます。  で、いずれにいたしましても、そういう点も、相互の話し合い、それから理解というものが今後進めば、その点も何らかの打開の方法があるのではなかろうか、いずれにいたしましても、私どもといたしましても、三者協議の必要性というのは十分認識しております。ことに今回の法案等を考えますと、三者協議の必要性というものは十分認識いたしますので、今後十分検討機会を得て、できるだけ早い機会に何らかの形で三者協議が成立するという方向に持っていきたいと、こう考えている次第でございます。  以上でございます。
  96. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、この三者協議というものがスムーズにまだ開かれておらないというような事柄から、これが開かれてさえおれば今度の法案の提出についてもそれほど日弁連との間の対立というものは起こらないで済んだと思うわけなんでございますが、これは前回の藤井参考人からの御意見を承りますと、法務省は、御提案なさる前にも、二日前に、きわめて簡単な御説明があったのみであったということなどの手続的な問題の御不満というものも、日弁連とすると、無論、内容的に不満だということは言うまでもないんですけれども、そういうふうな行き違い——行き違いというか、そういうふうな経過の過程をたどっておるというのは否定できないことでございますが、この提案の過程において、法務省とすると、どのような日弁連との協議をなさったのか、御説明いただきたいわけです。
  97. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 先ほど冒頭に申し上げましたような経過立案をいたしたわけでございますが、予算関係法案の最終閣議予定は二月八日というふうにされておったわけでございます。その立案作業の過程中である一月十九日に、日本弁護士連合会の関係担当者に、私ども、それから最高裁のこの立案に参画した者が法案の要綱案を説明申し上げた次第でございます。この際、日弁連側から出てきていただいた方は、日弁連の中に司法制度調査会という機構があるようでございますが、その中の調停制度に関する部会、これは特別部会のようでございますが、この方々、それから、臨時司法制度調査意見に対する対策委員会という特別委員会もやはり日弁連の中の機構の一つとして設けられておるようでございますが、その各会に属する方々、合計八名おいでいただきまして、私どもから四名、最高裁から二名、その席には日調連の方が四名来られまして、土曜日の午前中だけでございますけれども、私どものほうから御説明申し上げまして、この御意見を承る機会を持った次第でございます。  なお、これも冒頭に申し上げましたように、臨時調停制度審議会におきましては、実務家であるローヤーにだいぶ入っていただいているわけですが、その中に日弁連の推薦にかかる弁護士の委員の方が三名、それから幹事二名が参加されておりまして、十分発言をされておられると承知しておる次第でございます。その意味におきまして、臨調審答申書には実質的に法曹三者の意見が十分反映されていたというふうに私ども理解しているわけでございます。  また、日弁連では、臨調審審議中でございます四十七年の十月、それから四十八年の三月に、二回にわたりまして意見書を公表されております。さらに、臨調審答申が出たあとでございます四十八年の九月に、さらに意見書が公表されております。これらの意見書につきましては、今回の改正法立案過程で私どもといたしましては十分検討させていただきまして、日弁連の御意向も十分しんしゃくしたつもりでございます。事務的な日弁連との折衝のいきさつは以上のとおりでございます。
  98. 佐々木静子

    佐々木静子君 いろいろと経過を承ったわけでございますけれども、昨日も、大阪弁護士会のほうにも、いろいろと最高裁の規則についての特別委員会を設けるようなことが具体的に進められておるとか、いろんな問題もいまかかえているようでございまして、法曹三者があまり対決しないで、これはお互いの問題でございますので、何とか円満に話し合えるような状態を早く見出さなければいけないのじゃないかと、私も、いろいろとそうした先生方のお話を伺って痛感したわけでございますが、その点について、事務総長はどのようにお考えでございますか。
  99. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者安村和雄君) いわゆる法曹三者の協議というものにつきましては、それからまたこれからの裁判所の態度ということについては、田宮総務長が申したとおりなんです。ですから、形式的には法曹三者の協議がおおむねのところでは一致しながら、形としてできてきていないというのが現状かと思います。しかし、形としての三者協議会がなくても、裁判所と弁護士会、法務省との話し合いが何もないというわけではございませんので、現に個々の問題については、担当の部局の者が三者の間の協議をしているわけです。例をあげますと、弁護士会館の敷地の問題だとか、司法研修所の弁護教官の推薦の問題だとか、あるいは国選弁護人の報酬の問題だとかというのがそれであります。で、いまも調査部長が申されたように、二年間にわたって行なわれた臨時調停制度審議会でございますか、この委員にも、そういう意味で日弁連に委員、幹事の方の推薦をお願いしたところ、これは快く委員を三人、それから幹事を二人推薦していただいている。そして活発な御議論を二年間にわたってしてくださったわけです。その過程において、この日弁連の推薦の委員の方、幹事の方は、もう日弁連と十分の連絡をとられたものと見えまして、先ほど調査部長が申されたように、意見書も二回にわたり、答申書が出てからもまた二回にわたってかと思いますけれども意見書あるいは要望書というようなものが出ているわけで、形としての法曹三者の協議会は経なかったことはたいへん残念だと思いますけれども、実質的には法曹三者の協議は尽くされていると、こういうふうに思いますので、ただ、まあ担当した者ですとそういう詳しい事情がわかりますけれども、担当しなかった一般の弁護士会の皆さんは、どうも法曹三者の協議会ができてきてないじゃないか、最高裁は何をしているんだというふうにおとりになる向きもある。これは私どもの説明が足りない点もあろうかと思って恐縮に存じておりますけれども、いま私がたいへんくどく説明申し上げましたように、こういういきさつをわかっていただければ、なるほどそうかと、これならひとつ、佐々木委員の御心配してくださいますように、法曹三者の形としての協議会もできることが望ましいということになるのだなということになろうかと思います。その点につきましては、私どもはきわめて前向きの姿勢で努力したいと思っております。
  100. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひ前向きの姿勢で御努力いただきたいと思いますが、法務大臣はこの点についていかがお考えでございますか。
  101. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 私も在野法曹の一人でございますから、できるだけ在野法曹と最高裁法務省、この三者が一体になって常設的な協議会でもできれば非常に幸福だと思っておりますが、先ほど最高裁の総務局長からお話がありましたように、いろいろこれにはいきさつがあるようでございます。私のほうの法務省としましては、官房長が大体担当しまして、何とかこれを実現するように引き続き努力をしておるような段階でございます。  それからこの法案につきましては、いま最高裁事務総長からお話ありましたように、臨時調停制度審議会をつくる際に、日弁連のほうに正式に委員及び幹事の選出方を御依頼申し上げて、快く委員や幹事を出していただいて、そうしてこの臨調審で御審議に参加していただき、またその際に、いろいろ大ぜいの方ですから、議論がありまして、日弁連出身の委員方々から、この点は賛成だと、これは反対だといういろいろな意見がありまして、成案を得る段階では、そういう反対のあった部分は削除して、大体臨調審が全会一致でまとまったものをこの法案にまとめたというような経過等を聞いておりますので、まあまあいたしかたない現状であろうと、こう思っております。ただ、できるだけ早い機会にこの三者協議の常設機関のようなものができますれば、今後、いろいろな司法上の制度を手直ししたりしていく上にたいへん好都合ではないか、ぜひそうありたいものだと、かように私は考えております。
  102. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまいろいろ御意見伺いましたが、私どもも、ぜひともその三者協議の実現というものに御努力いただきたいとお願い申し上げますとともに、この調停法の改正につきましても、調停委員の待遇をよくするということはかねて私どもも強く望んでいるところでございますので、そういう点につきましては、ぜひとも前向きの姿勢で取り組みたいと思っておるわけでございますが、非常に問題が大きゅうございまして、特に民事調停法の八条あるいは家事審判法の二十二条などについて、まだいろいろとお尋ねをさしていただきたいことがございますので、本日は私の持ち時間もたいへんに過ぎておりますので、このくらいで質問終わらしていただきまして、また次の機会質問を保留さしていただきたいと思います。
  103. 原田立

    原田立君 いまも佐々木委員よりいろいろと質問があったわけでありますが、事は重大な問題でありますから、ダブる点があるだろうと思います。その点、前に話してあるからもうよかろうなんというような姿勢でなしに、きちっと御答弁願いたい。   〔理事後藤義隆君退席、理事棚辺四郎君着席〕  まず最初に思うことは、臨時調停制度審議会昭和四十六年六月一日に発足し、聞くところによれば、七月二十一日に第一回会議を開き、その後、四十八年三月二十六日の約一年八カ月の間に、十数回の会議が持たれたかと思ったらばわずか四回であった。四回の会議が持たれ、そうして答申書の提出を見ておるわけでありますが、この一年八カ月というのは、こういう答申書をまとめるについてはあまりに短期間ではないのか。また、調停委員の身分、職掌、職域の内容、その変更という重大な問題であるこういう審議会の場合に、重ねて言うように、一年八カ月というものは短期間ではないのか。しかも、四回の会議で十分な討議が尽くされず、問題の整理がなされないまま答申書の提出になったのではないかと、こういうふうに思うのであります。もしそうであるとすれば、抜本問題の整理を怠っており、今後に問題を残す結果となりかねない、こういう実は心配もするわけでありますが、どういうふうにお考えになっておられるか。
  104. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 臨時調停制度審議会は、確かに四十六年の七月から審議を開始されたわけでございますが、その第一回の総会におきまして、調停制度改善内容に応じまして、調停委員調停委員会制度に関する調査研究を第一部会が担当する。それから調停の手続については第二部会が担当するということで、第一部会と第二部会という部会を二つ設けたわけでございます。で、その後、結局、四十八年の三月に至るまでの間におきまして、総会を四回開いたわけでございますが、第一部会として六回、第二部会として五回、それから第一部会、第二部会の合同部会を四回、部会は計十五回開いております。その間に幹事会を数回開いております。かなり時間をかけて審議をお願いいたしたというふうに考えておるわけでございます。  なお、二年間という期間は短過ぎるのではないかという御指摘でございますけれども、これは、民間人である調停委員が主宰者として調停事件処理するという基本的な姿勢は動かさないという前提に立っての調停制度及び調停手続の緊急改善を要する事項ということで御審議を願ったわけでございます。  以上でございます。
  105. 原田立

    原田立君 だから、要するに、一年八カ月では少ないんじゃないのかと、もっと慎重にすべきではないのかと、こういう意見をぼくは言うわけなんです。それで先ほどから何度も、日弁連のほうの代表も入っているじゃないかと、日調連も入っているじゃないかと、いまさら何を文句言うんだというふうな言い方を局長も大臣もなされているんです。だけど、それならば、なぜ今日日弁連が強硬に反対するのかという疑問が実は出てくるわけなんです。というのは、やっぱり、十分な論議が、審議がなされていなかったんじゃないのかと、それがいまここにあらわれてきているんじゃないのかと、これを心配しているわけです。だから、いや一年八カ月で十分なんですよというならば、これはまた十五回の審議で十分だという、まあ理由ぐらいもう少しはっきりしてもらわないとならないと思うんでありますけれども、要するに、足らないじゃないかと、足らないからいまごろあっちからこっちからいろいろ意見が出てきて、やれ修正だ、削除だなんというような問題が衆議院あるいは当院でも問題になるわけなんです。要するに、足らないんじゃないかということを指摘しているわけなんです。足りなくありませんよと、こう言ったんじゃ対立的になってしまうんですけれども、重ねて御答弁願いたい。
  106. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者安村和雄君) これは、こういうことを申し上げますとしかられるかもしれませんが、国会のいろいろな議論を伺っておりましても、それから今回の調停法の改正の問題にしましても、やはり問題はそう簡単でない、大事な問題に関係しているわけでございます。ですから、いろいろな方の意見がどうしてもニュアンスが違う。で、議論は十分するのですが、さて議論を尽くしたら一致するかとなると、なかなか一致しがたい点がある。ですから、問題は二つありまして、議論を尽くしたかということと、議論が、結論が一致したかということになろうかと思います。  で、結論が一致したかという点になりますと、これはどうも結論が一致しない点があったかと思います。それから、議論は尽くしたかといいますと、先ほど民事局長申しましたように、相当これは十分な時間と回数をかけたと申してよいかと思います。議事録の厚さも、私も実は委員の一員でございましたけれども、相当な厚さになっております。  で、結局、こういう調停法の改正について意見の一致の最も見れない点は、ですから、今回の改正案では省いたわけでありますけれども、しかし、従来の候補者制度非常勤公務員制度ということになると、前のはほんとうに民間人本位だったけれども、今度は官僚化しているではないかというふうな目でごらんになる点があるわけです。そこのところを強調されますと、あとずっと、あそこもおかしいぞ、ここもおかしいぞというふうになって、疑いが次いで起こってくるわけです。で、その御疑問に対して、私ども一生懸命、そういうことではない、こういうつもりでございますといって、まあ衆議院以来お答えしているわけなんでございまして、私どもの説明のしかたのまずい点はこれは十分反省しておりますけれども、なお十分お聞きいただきまして、立案の趣旨、それから立案後の運用の態度、こういうものをひとつ御理解を深めていただいて、お疑いを少しでも晴らしていただければありがたいと思っております。
  107. 原田立

    原田立君 事ここに至って、簡単に態度は変わるもんじゃないんじゃないですか。  ところで、先ほど事務総長のお話があったけれども、また佐々木委員から指摘があった法曹三者の意見の一致を見て行なうという件につき、参議院でも——また衆議院においても附帯決議がつけられている。で、そういうふうにしたいというふうな御意向でありますけれども、この附帯を決議を受けて、どんなふうな形でなされるのを、法務省としては、最高裁としてはお考えになっておるのか。先ほど事務総局では——最高裁安村さんが大将なんですから、中心者ですから、まさかあなたが出て行くというわけにはいかないだろうとは思うんですけれども、それじゃだれが代表に出て、そうしてやっていくのか。あるいは常時にするのか、臨時にするのかというようなことですね。これは法務省も同じことです。まさか、法務大臣が出て行くわけないし、また、局長も行くわけないんでしょう、おそらく。だから、どういう形、その附帯決議を受けてどんな形に、法曹三者の意見の一致を見るというこの附帯決議を生かすための方策を考えておられるのか。これもはっきりしておかないと、いつまでたっても法案が、何か皆さん方が提案するたびにみんなあっちこっちひっかかりが出てくるんじゃないかと、こう思うんです。基本的にこんな形でというふうに、もしお考えがあればお示し願いたい。
  108. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) まあその点につきましては、先ほど御説明いたしましたように、この三者協議の趣旨、ポイントをどこに置くかというところが主として問題になっておりますので、そうした構成の面といったようなところまで具体的に話は進んでおらないのでございますが、しかし、もちろんそれについての構想を持たないということではございませんで、この三者協議の性質、趣旨、目的等から考えますと、ただいま御指摘のように、局長は出ないのではないかというふうな見方もございますが、やはり私どもとすれば、局長以上が出席する、そうしたものでなければならないであろうと、こういうふうに考えております。
  109. 香川保一

    政府委員(香川保一君) もちろん、日弁連、最高裁判所法務省の司法制度に関するいろいろの問題の協議機関でございますから、当然その責任のある、それぞれの議題に応じたトップクラスが参加して協議するというふうなことは当然のことだろうというふうに考えております。
  110. 原田立

    原田立君 そうすると、それは機会あるごとにつくっていくのか、恒常的につくっていくのか。要するに、臨時的か、定着的につくっていくのか、そこら辺はいかがですか。
  111. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) その点も実はまだ中身が詰まっておらないのでございますが、この点について、私どもの希望といたしますと、やはり常設的なものというふうに——まあいろいろな問題を取り上げるということを考えておるのでございますが、これも日弁連の正式なお考えではございませんが、私が接触する範囲では、やはり何か問題があるごとに、事項ごとにそのつどやっていくというようなことを考えておられるようで、この点についてもやはり意見の調整が今後必要ではないか、そう考えております。
  112. 原田立

    原田立君 今回の改正案作成にあたっては、臨時調停制度審議会答申を十分尊重され、作成されたものと思いますが、答申の中の立法事項のうち、今回の改正案に加えられているのはわずか数項目にすぎないのでありますが、今回の改正案から除いたものの理由、これは一体何なのか。先ほどお話の中では、日弁連のほうともいろいろ話し合って、意見の調整がつかなかったものは省いたんだというようなことがさつきちょっと話がありましたけれども、それ以外に何か理由があるのか、その点はいかがですか。
  113. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 臨調審答申事項のうち、このたび立法化を見送りましたのは、一応題目だけ申し上げますと、「調停委員による期日の実施」、それから「調停主任官」、これは仮称になっておりますが、「調停主任官の設置」、それから手続面におきましては「当事者等の出頭確保」、それから「調停前の措置の実効性の確保」、それから「簡易な訴訟移行」、「調停に代わる審判の紛争解決機能の向上」、「出頭が困難な当事者のある家事審判法第二三条事件の特則」、「履行確保制度の充実」、以上でございます。ただいま申し上げましたうち、「調停委員による期日の実施」、「調停主任官の設置」、「簡易な訴訟移行」、「調停に代わる審判の紛争解決機能の向上」、それから「出頭が困難な当事者のある家事審判法第二三条事件の特則」、これらの事項につきましては、答申自体、問題のあることを指摘いたしておりまして、なお検討すべきものとしております。これらの点のおもな部分につきましては、日弁連の意見も反対の意向が強い事項がございます。また、「当事者等の出頭確保」、それから「調停前の措置の実効性の確保」及び「履行確保制度の充実」につきましては、いずれも過料の適正額の増額を提案しております。この問題につきましては、民事調停法、それから家事審判法のみにとどまりませんで、民事訴訟法、ひいては刑事訴訟法にも波及する問題を含んでおります。これとは別個の問題でございますけれども、民法あるいは戸籍法等の実態を含めまして、過料を規定しているすべての法令にわたって、過料の額の適正ないし均衡の確保という問題が検討されるべき問題となるわけでございます。以上のような事情から、今回の立法で見送った事項及びその簡単な理由でございます。
  114. 原田立

    原田立君 最高裁として、調停委員家事調停委員民事調停委員、どういう理想像、ぜひこういうふうにあってほしいというふうな理想像、どんなふうに考えておられるのか。また、それを確保するにあたって、今回、手当の増額等によって得られやすいようにというふうな配慮にしたんだろうと思うんでありますけれども、より理想的な調停委員を得る具体策についてはどんなふうにお考えですか。
  115. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 調停委員の理想像といたしましては、何よりもまず社会の各界におきましての人生経験、生活経験が豊富であって、的確な事実の認識力を持ち、判断力を持ち、また柔軟な思考力を持っておられる方であることと、それから、事件の種類に応じまして、それぞれ専門的な知識を持っておられる方々、たとえば不動産関係事件で申しますれば、不動産鑑定士とか建築士、あるいはそのほか医師でありますとか税理士でありますとか公認会計士でありますとか、そういった、事件内容に応じまして専門的知識を持っておられる方々、そういった方々であって、人格、識見ともに高く、良識に富み、柔軟な判断力を持って新しい種類の事件にも対応できるような、そういう方々であり、適当な指導力と、また説得力を持った方、そういったようなことが調停の理想像としては考えられるのではないかと存じます。  そういった方々をいかにして調停委員にお願いをするかという具体的な方法でございますけれども、これは、調停事件というものは全国各地で行なわれます関係上、各地方裁判所家庭裁判所にお願いして、適当な方々を選考していただくほかないわけでございます。それの選考にあたりましては、各界、各層の公的な機関にしかるべき方々を御推薦いただきまして、また適当な方々の御意見も十分伺いながら、地方裁判所家庭裁判所の所長あるいは調停担当の裁判官、そういったような方々がしかるべき方法で面接をいたしまして、調停委員としてお願いできる方についての推薦をいただき、それを最高裁判所に上申をしていただきまして、最高裁判所調停委員として任命すると、こういう手続をとりたい、そういうふうに現在考えておるわけでございます。
  116. 原田立

    原田立君 そうすると、各界、各層から推薦をされて、それを地裁、家裁等で裁判官を交えて検討をして、大体きまったやつを最高裁に持ってくると、こういうことですね。
  117. 西村宏一

  118. 原田立

    原田立君 それじゃ、そういうふうにして、一体何人ぐらい調停委員がいればいいというふうに大体判断しているのですか。
  119. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 現在、昭和四十九年におきまして、調停委員の数は、民事家事合わせまして、実人員といたしましてはおおむね二万五千人でございます。その二万五千人の方の大部分の方々現実調停事件処理されておられるわけでございますが、新制度になりますと、現在の方々は一応全部資格を失うことになりますので、新法のもとにおきまして、あらためて調停委員として選任をしなければならないわけでございますけれども、現在、調停委員候補者となっておられる方々は、相当数の方々非常にりっぱな方々であり、新しい制度のもとにおける調停委員としても十分適格性を備えた方々であると考えられますが、さらに各界に広く人材を新しく求める必要がございますので、その推薦をいただくことになると思いますし、また、従前方々で適当でない方々には御勇退願うことにもなるだろうと思います。  しかし、その結果は一体どのくらいの人数になるかという点でございますけれども、新しく調停委員になっていただく方が、調停事件について、どれだけ時間をさいていだだけるかということの見通しがないわけでございますので、ある程度の人数はやはり新しく調停委員になっていただく必要があるんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。また一面、現在進んでおります調停事件、その運営に支障を生ずることも避けなければならないわけでございますので、まあ私どもの想像といたしまして、新制度になりましても、さしあたっては現在の二万五千人程度の調停委員はどうしても要るのではないかと、そういうように現在は考えておる次第でございます。
  120. 原田立

    原田立君 そうすると、二万五千人現在いるけれども、大体それぐらいあれば理想的な家事民事調停ができると、こういうことですか。
  121. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 理想的とまで言えるかどうかわかりませんが、ともかく運営に支障は来たさないものとして考えておるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、新しく調停委員になってくださる方が非常に多忙な方が多いために、事件をそうたくさん持てないというような事態が出てまいりますれば、もっと人数をふやす必要が出てまいりますし、あるいはもう少し調停事件をやってもよろしいという方々が多ければ、そう多くふやす必要はないということにもなりますが、大体二万五千人ぐらいという見当で現在は考えておるということでございます。
  122. 原田立

    原田立君 要するに二万五千人ぐらいいれば調停関係はスムーズにいくと、こういうお考えですか。私は、新法になった場合には二万五千人じゃ少ないんじゃないのか、もう少し増員しなきゃいけないんじゃないのか、こんな考え方を実は持っているんです。そこら辺が、もし考えられていたならばどうかということを聞いているわけです。
  123. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 現在の事件数を前提とすれば、二万五千人あれば何とかやっていけるだろう、こういうふうに考えておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、非常に多忙な方々をたくさん調停委員にお願いするということになれば、数は足りないだろうということが出てまいるのではないかというふうに考えます。
  124. 原田立

    原田立君 それから推薦する団体ですけれども、ここに、おたくのほうから出した書類だろうと思うんですが、若干書いてあるのがありますけれども、推薦する団体はたとえばどんなのがあるのか。
  125. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) ただいま私どものほうで一応考えました団体といたしましては、地方公共団体、それから教育委員会とか、公私立の学校——大学を含めまして学校、それから弁護士会、医師会、公認会計士協会、不動産鑑定協会、技術士会、建築士会、中小企業診断協会、税理士会、日本測量協会、日本消費者協会、全国中小企業団体中央会、全日本商店街連合会、全国農業協同組合中央会、全国農業会議所、全国森林組合連合会、全国漁業協同組合連合会、全日本交通安全協会、日本赤十字社、日本交通医学会、日本学校医会、日本住宅協会、全国宅地建物取引業協会連合会、全国建設業協会、そういったようなものを考えておるわけでございます。
  126. 原田立

    原田立君 たとえば——たとえばの話ですよ。ある地域で十人の人がほしい、調停委員がほしい、それで、十人が十人推薦されたんでは、またやめるといった場合に困るから、じゃ二十人にしましょう、二十人推薦受けて十人ふるい落として十人をつくると、こんなふうになるのだろうと思うんですけれども、そんなときに、その選考の基準ですね、それにとかくの話を実は聞いているわけなんだけれども、そういう心配はないのかどうか、いかがですか。
  127. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) どうも、具体的にその場合どういう基準でということがなかなかむずかしい問題があろうかと思いますが、抽象的に申しますと、年齢の問題とか、あるいはいろいろな職種の方に入っていただく必要があるというような問題もあろうかと思いますし、あるいは、先ほど申し上げましたような、調停委員の理想像というものから見てどういう評価がなされるかということもあろうかと存じます。そのほか、特にどういう点に御心配な点がございますのですか、御指摘いただければと存じます。
  128. 原田立

    原田立君 まあいいでしょう。  次に、第八条のことでありますが、この項目は全く新しいものが入っているものでありますけれども、その職務内容改正に伴い、従来の職務のほかに、他の調停事件について、専門的な知識経験に基づく意見を述べることを職務内容としておりますが、この場合には、直接他の調停委員会に出席して意見を述べるほかに、意見を文書にしてその調停委員会に提出すること、そういうこともできるのかどうか、その点はいかがですか。
  129. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) これは、専門的な知識経験に基づく意見を述べるのは、書面による意見を述べるということは一応は考えておらないわけでございまして、調停委員会の協議の席において意見を述べる、口頭で述べる、あるいは調停期日において当事者の面前で意見を述べる、そういう場合を考えているわけで、書面による意見陳述ということは原則的には考えておらないわけでございます。
  130. 原田立

    原田立君 同じ職務内容改正の「嘱託に係る紛争の解決に関する事件関係人の意見の聴取を行い」と、こういうふうにあるわけでありますが、民事及び家事調停委員はどのような場合に意見の聴取を行なうのか、また、具体的な活動はどのようになるのか、その点はいかがですか。
  131. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) これは、たとえば当事者の一方が遠隔地に居住している場合、たとえば東京と福岡に当事者が住んでおる、東京で調停事件処理されておるというような場合におきまして、福岡におります当事者が調停期日ごとに毎回東京まで出てくるということは、非常に時間的にも経済的にも負担が重いわけでございます。もちろん、当事者双方がそろわなければ調停としての実質的な内容が進められない場合には、ぜひにも御出頭願わなければならぬわけでございますけれど、場合によっては、出頭しなくても、直接その地の調停委員の方に意見を述べることによって調停を進め得る場合もあり得るのではなかろうかというふうに考えるわけでございまして、そういった場合に、福岡の裁判所調停委員の方に——その当事者に福岡の裁判所へ出てきてもらいまして、そこでいろいろ意見を聞いた上で、それを書面にまとめまして東京の調停委員会のほうに送るということによってある程度調停を進めていく、そういうことを考えているわけでございます。
  132. 原田立

    原田立君 同じ中に、嘱託事項を実施させる機関を調停委員会にするのではなくて調停委員にしたのは、機関ではなく委員、人にしたのはいかなる理由からか。本来、このようなことは調停委員会とするのが本筋ではないかと思うんですが、このことは、日弁連の江尻参考人も参考意見として言っているやに聞いておりますが、いかがですか。
  133. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 嘱託にかかる事務内容は、先ほど指摘ございましたように、意見の聴取と、それから規則で考えております事実の調査のみでございます。これらの事務は、調停委員会を設けなければ実施できない性質のものではないというふうに考えられます。嘱託を受けた裁判所のほうで、本来——本来といいますか、現行法はそうございますが、裁判官、あるいは事務の内容によって相当であれば、その裁判所に所属する調停委員に実施させるのが適当である、それでかつ十分であるというふうに考えたわけでございます。で、特にこれらのただいま申し上げました事務は、証拠調べ、正式な証拠調べのように、いわば手続としても厳格なものでないわけでございまして、今回の法改正によりましてすぐれた調停委員が出ていただくということになりますので、その能力を活用して行なう事務としてはきわめて適当なものではないかということを考えたわけでございます。  なお、これらの事務を行なうために、さらに嘱託を受けた裁判所のほうで調停委員会を設けるということになりますと、先ほど申し上げましたように、一つの事件について二つ調停委員会が設けられることになるわけでございます。そういたしますと、やはり制度論といたしましてもはなはだ不自然なかっこうになるのではないかというようなこともございまして、調停委員にこの種の事務を担当していただくということに立案した次第でございます。
  134. 原田立

    原田立君 同じ八条に、「その他調停事件処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」と、こういうふうにきめてありますが、その具体的内容はいかがですか。
  135. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 具体的な内容といたしまして、私ども——これは最高裁判所が規則で定めることになりますけれども、現在私どもとしてお聞きいたしておりますのは、嘱託にかかる事実の調査だけであるというふうに承知しております。
  136. 原田立

    原田立君 じゃ最高裁、そういうことですか。
  137. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 調査部長が申し上げましたとおり、嘱託にかかる事実の調査を規則で定めたいというふうに、私ども現在考えております。
  138. 原田立

    原田立君 私はこういう文書を見るのはしろうとなので「その他調停事件処理するために必要な」云々とこうなると、非常に裁判所、無制限に拡充していくような、そんな感じを実は受けるわけでありますが、この二項のほうの、「民事調停委員は、非常勤とし、その任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。」というのなんて、このことと相まって非常に裁判所の職員化の方向に進む、これなんかも厳に慎むべきじゃなかろうか。あるいはまた職務内容を無制限に拡充していく、こういう考えもよくないんじゃないか。ということは、同時に調停制度の本質に逆行することになり、絶対に避けなきゃならない点ではないのかと、こういうふうに考えるわけでありますが、最高裁法務省のほうは、これが一番いいんだと言って何でもかんでも通そうとこうなさるのだけれども、基本的にいって、調停委員裁判所の職員になるということ、非常勤であってもね。ちょっとおかしいのじゃないか。基本的な問題ですが、いかがですか。
  139. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 八条一項のこの「その他」以降の立法の辞を、何といいますか、法律の形としてなぜこういう形をとったかについて簡単に御説明申し上げます。  御批判がございますように、「その他」云々と書いてございますれば、最高裁判所はどんなことでもきめられることになって、調停委員は何をやらされるかわからぬという御批判があることは十分承知しておるわけでございますが、一応私ども考えましたのは、まず調停委員職務自体を、必ずしも一から十まで法律できめなければならないかどうかという問題があろうかと思いますが、基本的な職務について法律できめておりますれば、あと付随的——といいますか——な事務につきましては、必ずしも法律に一から十まで規定する必要はないのではないかという観点に立ったわけでございます。  この八条の専門的意見の陳述及び関係人の意見の聴取につきましては、もちろん現行法にない規定でございますので、これを法律に掲げたほうがいいということで掲げたわけでございますが、ただいま最高裁からも私からも申し上げました、嘱託にかかる事実の調査につきましては、嘱託自体と、それから事実の調査につきましては、現行法の規則に規定がございますので、これを特に法律にあげるまでもないというような考え方でこうしたわけでございます。  なお、条文を見ていただきますと、調停事件処理するために必要な事務となっておりまして、たとえば極端に言いますと、調停委員一人に調停自体をやらせるという趣旨のことではございませんで、あくまでも、調停事件処理するために必要な事務というふうな客観的な歯どめがあるというふうに考えまして、このような条文の体裁に相なったわけでございます。  なお、当初からの公務員にすることについて、いわば何もそこまでする必要はないのではないかという御批判でございますけれども、現在におきましても事件限りにおきましては公務員でございます。調停委員たる仕事は、やはり裁判所に置かれました紛争処理機関である調停委員会で行なうわけでございますので、もうこれは公務以外の何ものでもないわけでございまして、その職務を担当する調停委員が、非常勤にしろ公務員であるということは、何といいますか、当然のことでなかろうかと思うわけでございます。ただ、現在が候補者制度をとっておりまして、これを任命制の非常勤公務員にすることがいかにも非常に強く響きまして、何か裁判所ないし当局側が、調停委員全体をいわば裁判所職員化、一般の裁判所職員化してしまうというような危惧の念を抱かれたのではないかと思いますけれども、決して裁判所職員にいわば取り込んで、裁判所の手足のように調停委員をいわばこき使う——と言うとたいへん語弊がございますけれども、そういうような趣旨は毛頭ない趣旨の条文でございます。
  140. 原田立

    原田立君 そんな簡単なものならばね、日弁連あたりで強硬にこの点反対するわけないと思うのですよ。強硬に反対するだけの論拠があって言っているんだろうと思うから、それはやっぱり簡単な問題ではなかろうと、こう私は思う。ところで、こういうふうに職務の拡充それから非常勤公務員にするということによって、今後調停委員の確保、先ほど二万五千人ぐらいという、そこら辺でということだそうでありますけれども、今後、調停委員の確保ということがきちんとできるのかどうか。いやあ、そんなもう非常勤公務員になるならわしはいやだというようなのが出てきゃせぬかどうか。それから、その他最高裁の必要な事務をやらされるんだ、そんなに範囲が広くなるんですか、それじゃとってもじゃないですけどできませんというようなことで、必要な調停委員の数の確保ができないんじゃないか。そういう心配はないのかどうか、その点はいかがですか。
  141. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 私どもといたしましては、非常勤公務員として調停委員になっていただくということで、何らかの意味での官僚化というものとはつながらないというふうに考えておるものでございますから、その点で調停委員になるのはいやだというふうにおっしゃる方はいないのではないかというふうに私どもとしては理解しておるわけでございますし、それから、「その他調停事件処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う」ということになっておりますが、これも、先ほど申し上げましたとおり、嘱託にかかる事実の調査だけをここで考えておるわけでございまして、八条一項のすべての事務を考えましても、それほど御負担をおかけすることにはならないだろうと思いますし、また御負担をおかけするにいたしましても、調停委員方々の御都合を伺わずにこういう事務をお願いするということは、調停関係では考えられないことでございまして、必ず事前にこういう仕事をやっていただけるかどうかと、時間の御都合がつくかどうかという点について、調停委員方々の御意向を伺った上でお願いするということになるであろうと存じますので、その点もそれほどの御心配なことはないのではないかというふうに考えているわけでございます。むしろ、積極的に、公務員法体系の上における非常勤委員としての地位が明確になり、それに伴う手当が支給できるということによりまして、私どもとしては、広く各界に調停委員になっていただけるようにお願いしやすくなるのではないか、そういうふうに期待いたしておるわけでございます。
  142. 原田立

    原田立君 この非常勤公務員になるのはおれはいやだと、そんなような形になるのはいやだと、現行の制度でいいんじゃないのかと、こういうふうな意見を言われる弁護士さんが非常に多いわけです。で、もし非常勤公務員なんかになるんだったら、調停委員なんか辞退するというふうな強い意見を言われる人も聞きました。で、現在も臨時公務員としてその事件を委嘱するときにはなるんだと。それで、今度の場合には非常勤公務員として常設的になっていくと。そんなにたいして変わらないんだったらですね、現行制度のままでいいんじゃないですか。あんまり非常勤公務員にするんだという、何が何でもするんだという、あんまりこだわらないほうがいいんじゃないのかと、こういうふうに思うのですけれども、その点はどうですか。
  143. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 現在の候補者制度というのは、現在の公務員法体系の中では異例の存在であるわけでございまして、公務員法体系の上にきちんと位置づけするとすれば、非常勤公務員として当初からお願いするという形になるはずであるわけでございまして、その点につきましては、確かに公務員法体系の上におきましては、候補者制度というものと、当初から非常勤調停委員として任命するということには相違があるわけでございますけれども非常勤公務員非常勤委員であるということは、公務の執行に関して公務員として扱われるというだけでありまして、その点に関する限り、その実質の面をとらえますと、現在の候補者制度と今度の新しい法案による制度とは、実質的に相違はないわけでございます。その点、かりに非常勤公務員として任命されるんじゃいやだとおっしゃる方がおられるといたしましても、その点、十分御理解をいただくことができますならば、御見解をお改めいただけるのではないか、そういうふうに私ども期待いたしておりまして、私ども従前の説明が十分でなかったために御理解いただけなかったとすれば、その点も十分反省いたしました上でもって御協力をお願いいたしたいと考えておる次第でございます。
  144. 原田立

    原田立君 あんまりそういうところにこだわって、何が何でも自分のほうで法案出したんだからこれは絶対通すというんじゃなくて、考えられたほうがいいんじゃないですか。というのは、そんなにたいした変わりはないんだったらばもとのままでいいんじゃないのか。  それから、いままでの候補制度ですね、局長がいま、特異な形で現在あるんだと、こういうふうに表現なさったけれども、それは現行のやつは、現行のは特異であんまりよくないから、だから、一般的ないい面で非常勤公務員化にすると、こういう意味ですか。特異な存在というのがどうもひっかかるわけです。悪いほうに考えているのか、その点はどうですか。
  145. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 現在の候補者制度というのは、調停委員善意奉仕、いわゆるボランタリーに依存する制度として、それと密接に結びついて生まれてきたものである。そういう意味で、まさに特異な制度であるということになるのではないかと思います。調停制度が成立いたしました当時、大正末期から昭和にかけましては、あるいはそういう善意奉仕に依存するということを前提とする調停制度は、それなりに非常に大きなメリット、長所を持って運営されてまいったと思うわけでございますけれども、現在の時世におきましては、そういう善意奉仕に全く依存している制度というもので今後進めていくということは、制度を進めていくということは、やはり望ましくないのではないか。そういう意味で、改正法案内容のほうが望ましい制度であるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  146. 原田立

    原田立君 そうすると、調停委員候補制度というのはあんまり現在ではよくないんだと、いままではよかったかもしれないけれども、現在ではよくないんだ、だから、非常勤公務員化にするんだと、こういうことですか。
  147. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者安村和雄君) ちょっとせっかく民事局長答えるところですが、違った人間が表現しますとまた言い方も違うかと思いますので、少し補足さしていただきますが、いま国や行政機関のいろんな委員会とか、紛争処理機関の委員さん方は、当初から非常勤公務員としてそういう性質を持って委員になり、あるいは紛争処理機関の委員になっておられるわけです。民事局長が特異なと言いましたのは、現在の裁判所調停委員というのは無報酬、あとは旅費とか日当とか、実費弁償程度のものをお支払いする。現在のような時世になりますと、そうそう人さまの無料の奉仕にばかり国の機関が期待して仕事をするというのはどんなものであろうか。国の各種の委員会やら公共団体の委員会の委員さん方は、当初から非常勤公務員ということでございますから、一般職員の給与に関する法律の二十二条の一項というのが当然適用になりますものですから、一万三千円まででございますか、報酬が、手当が出せるということになっております。今回は、そういうことで、最初から調停委員をほかの国や行政機関の委員と同じようにひとつ扱うように改めていただこう、そのほうが、お仕事に対する手当もほかの委員さん並みに出すことができる。そういうふうに理解していただきますと、たいへん俗っぽい言い方のようでありますけれども、いまのような権利意識が高くなっている時代にはふさわしいんじゃなかろうかと、こういうふうに砕いて私は理解しておるのでございますが、こういうこともひとつ御参考に願えればと思います。
  148. 原田立

    原田立君 どうもちょっとひっかかる話で、理解に苦しむところです。  まあそれはさておいて、本改正案では、調停委員の年齢制限等についてはどういうふうに考えておりますか。
  149. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 臨調審答申におきましては、年齢の点につきまして大かたの一致した御意見は、七十歳未満とする、上限は七十歳未満とする、ただし、特に調停委員としてりっぱな方については七十五歳までは認める、こういうような答申になっておるわけでございますが、私ども、現在事務的に考えておりますところでは、非常勤公務員については一種の定年制的なものを設けるのは望ましくないであろう、しかし年齢について何らかの基準がなければならないであろうということで、現在考えておりますところは、年齢としては原則として四十歳以上七十歳未満とする。ただし、調停委員としてかけがえのない方々につきましては、四十歳未満であっても、また七十歳以上であっても、調停委員としてお願いできるんだと、そういう意味で、例外的には制限なしということで考えておるわけでございます。
  150. 原田立

    原田立君 専門的な仕事だと、こうなれば、それぞれの専門的知識の深い人でいいんだろうと思うんですけれども、年齢別ですね、たとえば四十代の人、四十代なら四十代同士でいろいろ話がうまく通ずる。それなのに、七十代の人が四十代の人と相談をしてもなかなかうまくまとまらぬ、こういうふうなことがあるのではないか。そういう面で、年齢層の均等分布というのが肝要なのではないかと、こんなふうに思うのですが、そこら辺はどんなふうにお考えですか。
  151. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 原則として四十歳以上七十歳未満と申しましたのは、やはり調停委員として人生経験、社会生活経験が豊富な方で良識を備えた方ということを考えるわけでございますので、ある程度の年齢に達していることが原則的には必要であろうというふうに考えるわけでございますが、しかし、御指摘のとおり、最近におきましては非常に若い人の離婚事件等もあるわけでございますし、また、年寄りの離婚事件等もあるようでございます。そういった事件に応じまして、やはり調停委員のほうの年齢層もそれに合わせて考えていく必要は確かにあるかと存じますので、その点も十分配慮してまいりたいと思います。
  152. 原田立

    原田立君 ところで、再任なさるのは妨げないんだろうと思うのですけれども調停委員を二年やって、その次また再任するということは妨げないんだろうと思うのですけれども、あんまり再任、再任とこう長くなると、その点問題があるんじゃないか。局長も衆議院でそんなふうな答弁をなさっているようですけれども、再任、再任ですでに十年以上も調停委員をやっておられる方というのが、いまの二万五千人の中ではかなり数が多いのではないだろうかと思うのですが、その点、実態が、数字的なことですから、おわかりだったらば説明してもらいたいと思います。また、今回のこの法施行後における再任については、回数の制限等の考えはあるのかどうか、具体的な方策についてお伺いしたい。
  153. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 確かに御意見のとおり、いたずらに再任を繰り返し、長い間調停委員としてお願いするということは、先ほどから御指摘されております、調停委員のいわば職業化の問題あるいは固定化の問題ということで御批判があるわけでございますので、ある程度のところでもって再任は打ち切って、しばらく調停委員から離れていただいて、また、適当な方であればまたもう一度お願いするというようなことも、運用等の面では必要ではないかと、そういう点は臨調審でも指摘されたところでございます。  それから、現在平均の民事調停委員の在任期間は十一年ぐらいということが出ております。これはしたがいまして、一方では二十年も調停委員をやっておられる方もおられますし、四、五年でやめられる方もおられるということを示すものと思われるわけでございますが、これは調停委員それぞれの人によるわけでございまして、適当でない方にはやはり再任はお願いしないということに運用としてはなるものと思われます。と申しましても、適当な方でも、いま申し上げましたように、やはり二十年、三十年と続けて調停委員をやっていただくことはどうかという問題があろうかと存じますので、十分そういう点につきましても運用の面では配慮していくようにいたしたいと存じます。
  154. 原田立

    原田立君 調停委員の選任の方法ですけれども、たしか答申の四ですね、四〇ページ、「選考の方法等」「できる限り広い範囲から適任者を得るように努めるとともに、関係機関の意見聴取、選考基準の整備等選考をいっそう適正にするための方策を講ずること。」と、その「方策を講ずること」ということの一つに、答申書の中にも、外部の第三者を交えた調停委員選考のための委員会を設けるべきではないか。あるいは、一般市民の中から適任の者を見いだすために、公募による選任を検討すべきではないかと、こういうふうな意見も出ておりますが、このような意見について当局としてはどういうふうにお考えなのか。
  155. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 広く各界から適任者を御推薦いただきまして、その中から真に調停委員として適任な方を調停委員にお願いするという方法をとるためには、広く各界の御意見を伺う必要があるということは、十分私ども臨調審答申及び衆議院の法務委員会の附帯決議においても指摘されたことでございまして、十分考えておるところでございます。  ただ、制度としての選考委員会を設けるということにつきましては、臨調審審議におきましても議論されました。少なくとも、調停委員の選考にあたりましては適当ではないのではないかという御意見が多かったわけでございます。その理由といたしましては、調停委員の数というものは各地方で何百人という数でございます。何百人という調停委員の方を選考委員会で選考するということは、実質的に審査ができない、その意味で、公正、公平な審査をするのにかえって障害となるということと、また、人選にあたっての責任の所在が不明確となると、こういった理由から反対意見が強かったわけでございまして、私どもも同じようにその点は考えておりますので、制度としての選考委員会というものは考えておらない。しかし、実質的にはいろいろ各界の御意見も十分伺っていくようにいたしたいと、そのように考えておるわけでございます。
  156. 原田立

    原田立君 待遇についてでありますが、改正法第九条、家事審判法第二十二条の三についてお伺いしますが、調停委員の日当制度を改め、相当金額の手当を支給することにしておりますが、現行の調停委員候補者制度のもとにおいては、相当な支給額の増額が全く不可能なのかどうか。もし不可能であるなら、その理由を具体的に説明願いたいし、現在のように、千三百円の日当から六千五百円の手当——まあ皆さん方は手当と言っておりまするけれども、六千五百円の日当を払うということは現行法でできないのか、どうか。過日の参考人の、日弁連の藤井参考人からの話では、現行法でもできるんじゃないかということを、具体的な例をあげてお話がありました。条文等については、私メモをしなかったので、ここでちょっと申し上げられないんだけれども、そういう一部には、現行法でも、法改正なんかしなくたっても、現行のままでできるんじゃないのか。まあ一説によると、皆さん方のお話の中に、六千五百円の手当を出すにはどうしても非常勤公務員というふうに身分をかえないと出ないんだ、出ないんだというようなお話を聞いておったわけですけれども、そんな身分かえなくたってもできるんだという御意見が、まあ日弁連の藤井参考人からあったわけです。じゃそんなできるならば、何も改める必要はないじゃないか、こう私は思うのでありますけれども、どういうふうにお考えですか。
  157. 勝見嘉美

    政府委員勝見嘉美君) 前回の藤井参考人の御意見の中に、現行のままで日当額を上げればよいのではないかという御意見がございました。まあ必ずしも、私そばで拝聴いたしまして、どういう御趣旨かよくわからなかったのでございますけれども、あるいはことばだけの問題という御指摘があるかもしれませんが、現在、「日当」ということばにつきましては、法令上の用語につきましては、一応二通りあろうかと思います。まず、公務員でない、たとえば証人、参考人等の日当でございます。それからもう一つは、公務員に対する日当でございます。で、先日藤井参考人も、裁判所の証人に対する日当は相当多額ではないかという御指摘がございました。公務員でない者に対する日当の中身といたしましては、いわば出頭雑費といいますかの弁償のほかに、出頭によるところの収益の喪失に対する補償の要素が加味されているというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、証人の場合には、いわゆる実費弁償のほかに、一種の損失補償という要素が加わっているというふうに考えるわけでございます。この点は、衆議院におきまする江尻参考人の、例としてあげられました国会における証人、参考人についても同様であろうかというふうに考えます。  一方、公務員に対する日当につきましては、旅費法で規定されております日当がございます。いずれにいたしましても、公務員に対する日当の場合も、公務員でない者に対する日当の場合も、共通の性質といたしましては実費弁償が含まれていると、実費弁償が日当の要素をなしておるというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、調停委員を現行のままで日当の増額ができるかという御質問に対しましては、実費弁償という観念である限り、これはもう頭打ちでできない。実費弁償の域を越えた金額は支給することはできないというふうに考えている次第でございます。で、現行の調停委員に対する日当は、御承知のように、支給根拠といたしまして、民調法の現行九条と、家事審判法の五条にございますが、これらの条文は「旅費、日当及び宿泊料」というふうに並べて書いてございます。これは先ほど申し上げました、公務員に対する旅費法上の「日当」に準ずる性質のものだろうと思います。まあ以上のようなことでございまして、現行法のまま日当額を大幅に増額するということは事実上できないというふうに考えております。また現実最高裁判所におきまして、毎年の予算折衝におきまして、この日当額の増額にだいぶつとめられたはずでございますけれども、どうしても壁を打ち破ることができなかったという事実をもってしても、先ほどの現行のままで日当額を上げるということは、事実上も、また法律上も、不可能なことであろうというふうに私ども考えている次第でございます。  それから、現行法のままで調停委員に対する手当が支給できるか、こういう問題に移ろうかと思います。実は「手当」ということばにつきましても、これも必ずしも一義的ではございませんで、まあ私ども一般の公務員に給付されております扶養手当とか、暫定手当とか、通勤手当とかというような形の、基本給に付加して支給されるようなものも手当と呼んでおりますけれども、そのほかに、ただいま問題にしておりますのは、非常勤職員に対する関係では、一般職の給与法の二十二条一項の「手当」というふうに考えておるわけでございまして、これはやはり給与の一種であるわけでございます。で、現行法下におきましても、調停委員は、先ほど私が別の御質問にお答え申し上げましたように、公務を遂行しているわけでございますので、その公務の遂行に対する反対給付として、給与としての手当を支給できるのではないかという問題があるわけでございます。論理的に言いましても、公務員として公務に従事しているわけでございますから、それに対する反対給付として、手当を絶対支給できないという性質のものではないと思います。  ただ、現在の給与法の第二十二条一項に——その前に、先ほどから説明がございましたように、現行調停委員は無償の奉仕ということで発足いたしまして五十年間運用され、また、そのような立法がされておるわけでございます。現に現行法におきましては、先ほど申し上げましたように、調停委員には「旅費、日当及び宿泊料を支給する。」としか書いてございませんので、現行法自体が、給与である手当は支給しないという考えで立法されているわけでございます。  現在の給与である手当を支給しますには、給与法の二十二条一項の要件を満たさなければならないというふうに考えられます。御承知のように、給与法は非常にがんじがらめにできておりまして、法律にのっとらなければ給与は支給できないというのが給与法の原則でございますし、明文の規定もございます。現に、現行法の二十二条一項のそれでは、「委員」というのがどういうものとして考えられているかと申しますと、これは二十二条一項には、顧問、参与というふうなものと並んで規定してございます。これは人事院の解釈もそのようでございますが、いわば高い学識経験を有する民間人であるということが予定されていると解されるわけでございます。現在の調停委員が、これはもちろん中にはりっぱな方——中にはって、ほとんど大多数の方がりっぱな方だろうと思いますけれども制度的に、現在の調停委員がそういう給与法二十二条一項にいう「委員」の程度に程度が高められているかといいますと、やはりそこに問題があるのではなかろうかということでございます。そこで、先ほどからお話が出ておりますように、現在の調停委員の資格要件を高めまして、執務の内容を充実するという方向にこの改正法考えております。で、その資格程度を高めたそのはね返りといいますか、その結果として、二十二条の一項の手当も支給できるということに相なったわけでございます。
  158. 原田立

    原田立君 本改正に伴って現在の日当千三百円が六千五百円になると聞いておりますが、変則的な場合で、たとえば午前中でその日の調停を終わったような場合には半額になるのかどうか、その点はどうなんですか。
  159. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 今回の調停に一日の手当六千五百円というその基礎といたしまして、通常の事態として、一日に午前一件午後一件が行なわれるというのが、いままでの調停の実態から見ましておおむねそういう処理が行なわれているという、それを前提にいたしまして六千五百円という金額が出ております関係上、午前だけ一件担当されたという場合には、おおむねその半額というふうに考えておるわけでございます。
  160. 原田立

    原田立君 先ほど佐々木委員からもちょっと質問があったと思うのですが、現行の千三百円の日当で、それで半日になった場合にはどうなんですか。
  161. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 現在は、半日の場合千三百円、大体原則として支払っておるわけでございます。
  162. 原田立

    原田立君 千三百円に何か手当が千円付いて、そうすると二千三百円だと。現在の、今度値上げになって六千五百円、半額になると三千円強。そうすると、あまり値上げにならないじゃないかというふうな議論を聞いたことがあるのですけれども、この点いかがですか。
  163. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 午前だけで千三百円にプラスするということは実際上はございません。ただ、一人の調停委員の方が午前一件午後一件、相当長時間にわたって処理されたという場合に若干プラスする、千円の範囲内でプラスするという運用はなされておるようでございます。
  164. 原田立

    原田立君 具体的な事件と無関係に、当初から裁判所の職員たる身分を有していれば、いわゆる即日調停を円滑に実施できるということでありますが、そうであるとすれば、それに即応し得る執務体制をとっていることが必要であると、こう考えるわけでありますが、具体的には、何人かの調停委員が常時裁判所に勤務、出勤していることになるのか、非常勤職員になる調停委員は常時裁判所に出勤するのかどうか、その点はどうですか。
  165. 西村宏一

    最高裁判所長官代理者西村宏一君) 調停委員非常勤委員として当初から任命するという制度をとりましても、調停委員につきましては、非常勤の職員につきましては、勤務時間等の定めは適用がないわけでございますので、やはり事件があって調停をお願いした場合においでいただく、こういうようなことになるわけでございます。現在、即日調停につきましては、昭和四十二年十月から、交通事故の関係調停で一部の庁で実施いたしておりますが、これは調停委員の自発的な御協力を得まして、何人かの調停委員方々が、週のうち日をきめて待機しておられるということによってまかなっておるわけでございまして、確かに即日調停というものが実施できますならば、調停を利用する国民の側からは非常に便利なわけでございますけれども、何といってもこれを実施するためには、調停委員はもちろんのこと、裁判官あるいは書記官その他の職員にも全面的な協力を願わなければできないことでございますので、この改正法が行なわれましても、制度として即日調停を実施するということは、現在考えておらないわけでございます。ただ、運用として、相当大ぜいの調停委員のおられるような庁におきまして、即日調停のための待機をしてもよろしいとおっしゃる調停委員が相当数おられるならば、運用としてはまかなうことができるであろうと、そういうふうには考えておりますけれども裁判所の側からやってくれということで制度化していくということは考えておらないということでございます。
  166. 棚辺四郎

    ○理事(棚辺四郎君) 本案に対する本日の審査はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十九分散会