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政府委員(
勝見嘉美君) 前回の藤井
参考人の御
意見の中に、現行のままで日当額を上げればよいのではないかという御
意見がございました。まあ必ずしも、私そばで拝聴いたしまして、どういう御趣旨かよくわからなかったのでございますけれ
ども、あるいはことばだけの問題という御
指摘があるかもしれませんが、現在、「日当」ということばにつきましては、法令上の用語につきましては、一応二通りあろうかと思います。まず、
公務員でない、たとえば証人、
参考人等の日当でございます。それからもう一つは、
公務員に対する日当でございます。で、先日藤井
参考人も、
裁判所の証人に対する日当は相当多額ではないかという御
指摘がございました。
公務員でない者に対する日当の
中身といたしましては、いわば出頭雑費といいますかの弁償のほかに、出頭によるところの収益の喪失に対する補償の要素が加味されているというふうに
考えられるわけでございます。したがいまして、証人の場合には、いわゆる実費弁償のほかに、一種の損失補償という要素が加わっているというふうに
考えるわけでございます。この点は、衆議院におきまする江尻
参考人の、例としてあげられました国会における証人、
参考人についても同様であろうかというふうに
考えます。
一方、
公務員に対する日当につきましては、旅費法で規定されております日当がございます。いずれにいたしましても、
公務員に対する日当の場合も、
公務員でない者に対する日当の場合も、共通の性質といたしましては実費弁償が含まれていると、実費弁償が日当の要素をなしておるというふうに
考えられるわけでございます。したがいまして、
調停委員を現行のままで日当の増額ができるかという御
質問に対しましては、実費弁償という観念である限り、これはもう頭打ちでできない。実費弁償の域を越えた金額は支給することはできないというふうに
考えている次第でございます。で、現行の
調停委員に対する日当は、御承知のように、支給根拠といたしまして、民調法の現行九条と、
家事審判法の五条にございますが、これらの条文は「旅費、日当及び宿泊料」というふうに並べて書いてございます。これは
先ほど申し上げました、
公務員に対する旅費法上の「日当」に準ずる性質のものだろうと思います。まあ以上のようなことでございまして、
現行法のまま日当額を大幅に増額するということは事実上できないというふうに
考えております。また
現実、
最高裁判所におきまして、毎年の
予算折衝におきまして、この日当額の増額にだいぶつとめられたはずでございますけれ
ども、どうしても壁を打ち破ることができなかったという事実をもってしても、
先ほどの現行のままで日当額を上げるということは、事実上も、また
法律上も、不可能なことであろうというふうに私
どもは
考えている次第でございます。
それから、
現行法のままで
調停委員に対する
手当が支給できるか、こういう問題に移ろうかと思います。実は「
手当」ということばにつきましても、これも必ずしも一義的ではございませんで、まあ私
ども一般の
公務員に給付されております扶養
手当とか、暫定
手当とか、通勤
手当とかというような形の、基本給に付加して支給されるようなものも
手当と呼んでおりますけれ
ども、そのほかに、ただいま問題にしておりますのは、
非常勤職員に対する
関係では、一般職の給与法の二十二条一項の「
手当」というふうに
考えておるわけでございまして、これはやはり給与の一種であるわけでございます。で、
現行法下におきましても、
調停委員は、
先ほど私が別の御
質問にお答え申し上げましたように、公務を遂行しているわけでございますので、その公務の遂行に対する反対給付として、給与としての
手当を支給できるのではないかという問題があるわけでございます。論理的に言いましても、
公務員として公務に従事しているわけでございますから、それに対する反対給付として、
手当を絶対支給できないという性質のものではないと思います。
ただ、現在の給与法の第二十二条一項に——その前に、
先ほどから説明がございましたように、現行
調停委員は無償の
奉仕ということで
発足いたしまして五十年間
運用され、また、そのような立法がされておるわけでございます。現に
現行法におきましては、
先ほど申し上げましたように、
調停委員には「旅費、日当及び宿泊料を支給する。」としか書いてございませんので、
現行法自体が、給与である
手当は支給しないという
考えで立法されているわけでございます。
現在の給与である
手当を支給しますには、給与法の二十二条一項の要件を満たさなければならないというふうに
考えられます。御承知のように、給与法は非常にがんじがらめにできておりまして、
法律にのっとらなければ給与は支給できないというのが給与法の原則でございますし、明文の規定もございます。現に、
現行法の二十二条一項のそれでは、「
委員」というのがどういうものとして
考えられているかと申しますと、これは二十二条一項には、顧問、参与というふうなものと並んで規定してございます。これは人事院の解釈もそのようでございますが、いわば高い学識経験を有する
民間人であるということが予定されていると解されるわけでございます。現在の
調停委員が、これはもちろん中にはりっぱな方——中にはって、ほとんど大多数の方がりっぱな方だろうと思いますけれ
ども、
制度的に、現在の
調停委員がそういう給与法二十二条一項にいう「
委員」の程度に程度が高められているかといいますと、やはりそこに問題があるのではなかろうかということでございます。そこで、
先ほどから
お話が出ておりますように、現在の
調停委員の資格要件を高めまして、執務の
内容を充実するという方向にこの
改正法は
考えております。で、その資格程度を高めたそのはね返りといいますか、その結果として、二十二条の一項の
手当も支給できるということに相なったわけでございます。