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1974-05-09 第72回国会 参議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月九日(木曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員異動  五月八日     辞任         補欠選任      小枝 一雄君     星野 重次君      木島 義夫君     長屋  茂君  五月九日     辞任         補欠選任      星野 重次君     小枝 一雄君      長屋  茂君     木島 義夫君      村田 秀三君     戸叶  武君      野坂 参三君     須藤 五郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 棚辺 四郎君                 佐々木静子君     委 員                 長屋  茂君                 星野 重次君                 柳田桃太郎君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 中村 英男君                 村田 秀三君                 須藤 五郎君    政府委員        法務大臣官房長  香川 保一君        法務大臣官房司        法法制調査部長  勝見 嘉美君        法務省民事局長  川島 一郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長   西村 宏一君        最高裁判所事務        総局家庭局長   裾分 一立君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    参考人        大阪地方裁判所        調停委員     曾我 益井君        日本弁護士連合        会副会長     藤井 英男君        一橋大学教授   竹下 守夫君        東京都立大学教        授        江藤 价泰君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  木島義夫君及び小枝一雄君が委員辞任され、その補欠として長屋茂君及び星野重次君が選任されました。     —————————————
  3. 原田立

    委員長原田立君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  本日、民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案審査のため、大阪地方裁判所調停委員曾我益井君、日本弁護士連合会会長藤井英男君、一橋大学教授竹下守夫君及び東京都立大学教授江藤价泰君参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 原田立

    委員長原田立君) 民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  皆さまには御多忙中のところを御出席いただき、まことにありがとうございます。  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案について皆さまから忌憚のない御意見を拝聴し、本案審査参考にしたいと存じます。つきましては、議事の進行上、曾我参考人藤井参考人竹下参考人及び江藤参考人のこの順序で、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答え願いたいと存じます。よろしゅうございましょうか。——それではまず曾我参考人にお願いいたします。
  6. 曾我益井

    参考人曾我益井君) ただいま御指名を受けました参考人大阪地方裁判所民事調停委員曾我益井でございます。  本日の会議に付されておりますところの民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案につきまして、いささか意見を述べさせていただきたいと思います。と申しましても、私は専門家法律を学んだ人間でもございません。一民間人として地方裁判所長から民事調停委員としての選任を受けておる者でございまして、そういう専門的な知識のないままに、ただ、調停自分の与えられました奉仕仕事として一意専念してまいりましたその経験を踏まえたものであるということを前提にしてお聞きいただきたいということ並びに御了解を得たいということを前もってお願いいたしておきます。  今回付されておりますところのこの政府提案になります民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案各項にわたりまして解読さしていただきました。理解度におきましては、先ほど申しましたように専門家でございません、だから専門的深遠なものではないかもしれませんが、一般国民司法に参加することができるというこの調停制度、その調停制度の中の調停委員としては、各項にわたりまして、かくあるべきではないかという見地に立たざるを得ないものがありましたので、全面的に賛意を表することを前提とした意見をこれから述べるわけでございます。この私のつたない意見改正法に少しでも参考になり、お取り上げいただきますならば、この上もないしあわせでございます。しあわせといいましても、単に参考人一人のしあわせではないのでありまして、高度の経済成長狂乱物価に伴い急激に変動するところの現社会の情勢下民事調停にしましても家事審判にしましても、求めずして起こったところの民間紛争解決一般民間人も参加できておるというこの調停制度が、またその調停制度の一翼をになっておりますところの一調停委員が、より前進しより高く評価されるということは、当事者双方が納得のできる円満解決を見て双方当事者から感謝され喜ばれるという結果になりますならば、これはすべての国民利益を受けることでありまして、主権在民福祉国家の面目も保てるものだということを私は考える一人でございます。  この民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案のうちで、民事調停法第八条、家事審判法第二十二条の二の、調停委員身分を当初から非常勤公務員にするということでありますが、現在でも、事件指定を受けますと、それは公務員としての本人もその自覚を持ち、また公務員としての関係当局も扱いをなさっております。その証拠は、公務員にあらざるべきことをした場合は、伴うところの罰則もそれについておるようでございます。担当事件解決をしてその事件の終末を見ましたときに職を離れて一般民間人に返るということになっておりますけれども、通常一人の委員が数件の事件を持っております。そういたしますと、一方で事件が引き続いて解決を見ないというものがありますならば、これは公務員身分を解除されたということにはなっていないのでありまして、おそらく年間を通じて公務員であるべき身分を持っておるものだと思います。のみならず、毎年、いままでは一月一日付で所長より選任通告を受けておりました。その通知書には〇〇年度民事調停委員家事調停委員選任するということが明記されております。ところが一方、調停委員制度規定を見てみますと、それは単に調停委員候補者であるということでありまして、事件指定を受けましたとき初めて民間人というその籍から離れて公務員であるという調停委員になるわけなんでございますけれども、それが何かはっきりいたしませんし、あいまいな点があります。しかし、いままでの委員なり現在の委員は、時間の許す限り裁判所のお仕事に協力をしております。当事者双方に感謝をせられることを喜びとしまた小さな一つの誇りとしまして、自分奉仕精神ということで努力を尽くしてきておるわけでございます。非常勤公務員民間人であって国民全体の奉仕者精神に徹し、現在も公務員であるという自覚はすべての委員が持っておるものと確信をいたします。調停を通して国民全体の奉仕者であり、全体を通して調停奉仕するということは、公平無私であらねばなりません。先入観や偏見を捨てて誠実に奉仕しているというのでありまして、公務員肩書きを当初からもらったからと思い上がるような委員はないと思います。また、そのような人は調停委員としては不適格でありますから、今後新しく調停委員になる方はむしろ初めから確固たる心がまえとその信念と自覚とを持っていただかなければならないと思います。  こういうふうなことを考えますときには、当初からの公務員であるという調停委員任命をされることは、考えようによりましてはこの制度の長所ともなるのではないかとも考えます。したがって、手続が簡単で、費用も低廉で、訴訟に比べますと迅速な解決が、しかも双方が納得して得られるところの調停の特色と持ち味で広く国民から親しまれてきた調停制度、その調停委員としての自覚を持ち、公平無私を順守すべきところの信頼のできる公務員に当初から選任をされるということは当然なことではありますまいかとさえ私は考えるものでございます。今回の改正法によりましてこの身分が正確に明文化されましたことによって、調停委員専門職となり官僚化して、官僚主義的観念をもって委員肩書きを乱用する、そういう弊害が生じるかもしれないと懸念せられまして、その御意見によって反対をしておられる向きがあるようにも承っておりますけれども、従来の委員としましての心がまえらいたしましても、その身分公務員であるということ、あるいはまた今度の任命権者最高裁判所であるということなどに対しましても、最高裁であるか下級裁判所であれ任命をされるというようなことになりましても、委員仕事に携わるところの精神には何らの変動もないということを信じます。調停制度は五十年の歴史を持っております。その五十年の歴史の間にはそういうようなことがあったかもしれません。肩書きによって幾らか問題を起こされた方があったかもしれませんが、私の知っておる限りにおいてはございません。けれども、そういうふうな些少なことによってこの制度を大局的に傾けるというようなこと、あるいはそのものを批判されるというようなことはどうかとも考えるものでございます。要は委員となる者の人格、性格、人柄によるものでありますから、選任をなさいますときに慎重に考慮され、そうして十分に検討をされて、しかるべき適格な方であるという方にこそ選任をされることが望ましいと願ってやみません。  同じく、八条の項でありますけれども、「調停委員会で行う調停に関与するほか、裁判所の命を受けて、他の調停事件について、専門的な知識経験に基づく意見を述べ、嘱託に係る紛争解決に関する事件関係人意見聴取を行い、」というような節でありますが、自分が持っております事件にいたしましても、またほかの方が扱っておられます事件にいたしましても、適切な解決が得られるならば労をいとわず専門的な意見知識、豊かな社会的の経験を生かしたところによって、実情に即した公正かつ迅速に円満な解決に努力することはこれまた当然の調停委員の責務であり、調停委員制度のよさであろうかと思うわけでございます。「事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」ものとありますが、この最高裁判所不定量職務を与え、大量に事件を能率的に処理させるようなことはないということを信じます。こまかい点において示されておられませんので、はっきり把握をいたしかねますが、私の思いますのには、裁判所も無制限に、深く高く広く調停委員委員としてのワクをはずして行ない、行なわしめるというようなこともさらさらないものであろうかということを思っておるものでございます。もちろん調停委員としましても、身分的優越意識でもって、官僚的な仕事ぶりあるいは執務態度をとるような独善的権威主義調停を行ない、国民に迷惑をかけるというようなことはないということを、いままでの委員、現在の委員方々の言動からいたしましても、そのように信じておるわけでございます。そういう計らいをいたします委員でありますならば、決して押しつけ解決になり、押しつけ決定をし、調停成立に圧力をかけていくというようなことは決してないと思います。国民生活に寄与していくために、調停委員会委員として命を受けて、ほかの事件調査、事情の聴取もそれをすること自体は時宜にかない、当を得た計らいであって、解決策一つではありますまいか。  待遇改善の九条でありますが、日当でなくて手当として、しかも現在を上回った額であるというようにお聞きをしておるわけでございますが、紛争事件内容も複雑多様化してきております。その解決には相当の専門的な知識も必要とされてまいっております。そういたしますと、委員としましても、いままでのような安易な解決、解釈、また足して二で割るというような方式ではできないような事件も出てまいっております。事件処理主体となって、裁判官とともに調停事件実情調査する必要も出てくるのではありますまいか。高度の良識と豊富な経験を生かしまして、当事者の期待に沿うような、また沿うことのできる資質を備え、能力を養成するという点にも調停委員としてはつとめるべきは当然だと思います。いままでのボランティア式では、そういうことだけでは体制自体も不備であり、そういうようなことを勘案いたしますと、一年であった任期を二年にし、当初から調停委員として非常勤公務員というそういう自覚を与え、その自覚に対する責任額責任に対する報酬といってはたいへん卑しいようなことばになりますけれども、給与規定手当支給されるということ、しかもそれが現在よりも増額されていくということであろうことに対しましては、全調停委員にかわりまして謝意を表するものでございます。  以上述べましたことは、この改正する法律案について、私の委員としてのすべての賛成意見主体にしましたところの、参考とした意見でございます。これがお取り上げいただきたいと思うのでございますが、終わりに私ちょっとこの際私見ではございますけれども、裁判所側に、政府側にお願いをしておきたいことがあります。  当事者からは信頼され、世間からの高い評価を得て、紛争内容複雑化に備え、委員資質向上能力養成の一端として新しく選任を受ける者、現在の委員が再任を受けるもの、そういうふうな委員に対しまして、一定の期間を定めて基礎的な研修制度を国の費用で持ってもらいたいと思います。私、大阪のほうでは、それぞれが協会を持ち、大阪調停協和会という会を持っております。その会が研究会研修会というのを毎月開いておりますけれども、これを全国一律の線を引かれましたところのそういう研さん、研修の場を国の費用で持っていただきますならば、よりよい調停委員ができ、国民利益を受けますところのよりよい調停制度が拡充してまいることであろうということを信じまして、たいへん大まかなことを申し上げましたが、私の粗末な意見といたします。御清聴ありがとうございました。
  7. 原田立

    委員長原田立君) どうもありがとうございました。  次に、藤井参考人にお願いいたします。
  8. 藤井英男

    参考人藤井英男君) 私は日本弁護士連合会の副会長藤井英男でございます。御審議中の民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案につきまして、日弁連の代表的な意見を申し述べる機会を得ましたことを厚く感謝いたします。  調停制度改正改善につきまして、日弁連としましては必ずしも全面的に反対をしているわけではございません。たとえば調停委員資質能力向上、そのための待遇の大幅な改善、それから交通調停公害等調停の管轄を広げることなどにつきましては大いに賛成でございますし、調停委員候補者選任方法あるいは現行制度改善などにつきましては、積極的な提案もしているわけでございます。しかし、どうしても本法案の中で反対せざるを得ない三点——幸いにその一点である調停強制一般化という点につきましては、衆議院段階で削除されました。国会良識にわれわれ深く敬意を表する次第でございますが、残る重要な二点、すなわち一つは、調停委員身分事件を離れて非常勤公務員化すること、これは改正民事調停法の八条の二項、それから家事審判法の二十二条の二の二項でございます。それから第二の点は、これと関連いたしまして、調停委員職務担当事件外に拡張すること、これは民調法の八条一項、家事審判法の二十二条の二の一項という問題でございます。この二点につきましては、衆議院で無修正のまま可決されまして当院に送付になったのでございますが、これははなはだ遺憾に考える次第でございます。この二点に関します日弁連の基本的な見解につきましては、さきに衆議院法務委員会江尻参考人が表明されました意見と同じでございますが、なお衆議院における審議経過を踏まえまして、多少の補足をしながらこの二点についての意見を申し上げたいと思います。  まずその前に、これは江尻参考人も言われたことですが、本法律案提出に至る経過において、日弁連としては何らその協議にあずかっていないということを申し上げたいと思います。本年一月十九日に法務省から事務的な説明を受けたのみであり、協議は何らされておりません。このことにつきましては、あるいは臨調審——審議会での審議段階日弁連の推薦の委員審議に参加しているじゃないかという御意見もあろうかと思いますが、御承知のように、昭和四十五年五月十三日の当法務委員会におきまして、裁判所法一部改正法案審議の際に附帯決議がございます。その附帯決議は、申し上げるまでもなく、今後司法制度の改革を行なう際には法曹三者が協議をして意見のまとまったものを国会に持ってこいと、こういう趣旨にわれわれ受け取っております。その趣旨は、そのころでも、そのときでも審議会とか諮問委員会があったんでございます。それに日弁連はやはり委員を送っております。しかし、そこで意見を聞くだけでなく、この附帯決議は、それだけでは不十分で、法曹三者が十分協議して、あまり意見の違ったものを国会に持ってくるなと、こういう趣旨だと附帯決議を解釈しております。不幸にして法曹者協議会というものは正式に成立に至っておりませんが、最高裁日弁連の間には数年前から、御承知のように裁判所弁護士連絡協議というものもございます。それから最高裁法務省法案国会に提出されるにつきましては、日弁連協議しようとされるなら、幾らでもわれわれ方法はあるはずだと思います。それをあえてされようとしない最近の当局のやり方というものは、私ども一からしますと、全く日弁連あるいは弁護士というものを軽視しておる、極言するならば無視されておるというふうに考えざるを得ないのでございます。今回の改正法案にいたしましても、一回だけ事務的な説明会があっただけで何ら協議らしい協議をされようとしておりません。時間的な余裕がなかったとおっしゃるかもしれませんが、それほど、今回の改正案協議をするいとまもないほど、緊急性、緊迫した必要があるのかということをわれわれ申し上げたいと思います。ともかく、この点でまずまことに遺憾でございます。  次の点は、法案内容について入りたいと思いますが、まずその第一点の、調停委員身分事件を離れて当初から非常勤裁判所職員とすること、このように改正する理由につきまして、本年二月に出されました最高裁判所法律案説明書によりますと、このように改正する理由というのは、調停委員待遇改善の必要があるんだと、そして民間の有識者が非常勤で公務に携わる場合には一般職職員給与法二十二条一項の規定が適用になるので、その中の委員として一定額手当支給する、そのためにこのように身分改正するんだと、このように説明書には理由が書いてございます。ところが、衆議院法務委員会段階における説明速記録で読みますと、そのほかにいろいろの理由がこれにつけ加えられたのでございます。法務省勝見部長最高裁西村局長説明を読んでみますといろいろなバラエティーに富んだ理由があげられております。  そこで説明された理由を私なりに大きく整理いたしますと、三つあるように思います。一つは、この説明書にもあるとおり、調停委員待遇改善のために身分を当初から任命制改正する必要があるんだ、そうすれば先ほどの一般職職員給与に関する法律二十二条一項の委員ということで手当支給ができるんだというふうな、これが第一点です。それから、第二の御説明を要約しますと、調停委員身分を当初からの任命制にすると、新しい職務内容を今度課するということと相まって、資質能力のすぐれた人材が得られるんだ、こういう説明をしておられます。それから研修充実ということもできるんだ、このような理由をあげられております。それから次に、任命手続をすっきりしたいということも言われております。現在の候補者制度は、あらかじめ候補者として選任して、事件ごと指定すると。しかも指定するのは手続上の裁判所であると。これは非常に変則的だという、こういうことが述べられております。やはりこの任命司法行政機関による任命制としてすっきりしたいんだと、こういう理由が述べられております。まだその他多少バラエティーがございますが、大体大きく分けるとこの三つだと思います。これに対する私、考え方を申し上げたいと思います。  第一の、待遇改善のために身分公務員化が必要だという、多くの調停委員の方もそのように非常に安易に、この当局側説明によって安易に考えられております。日調連幹部の方も、公務員化委員待遇改善のためにはしかたがないではないかという言い方をわれわれにされるのでございます。当初からの任命制にしますと、調停委員は、先ほど言った職員給与に関する法律二十二条一項の委員と解することができるのだと、手当支給できると。しかし、現在の調停委員ではどうして右の、この法律委員と解することができないのか。その点になると理由があまりはっきりしておりません。  この点、衆議院でもだいぶ問題になりまして、三月二十二日の法務委員会では、勝見部長はこういうことを言っておられます。「現在の調停委員が、現在のように候補者制度をとっているということ自体で、調停委員手当支給することができないというふうには言い切れないものがあろうかと思います。」、こういうふうに申されております。この委員手当支給できるという根拠につきまして、時間がありますればもう少し御説明したいと思いますが、ございませんので、あとで御質問をいただきましてその根拠を詳しく申し上げたいと思います。  それから、かりに一歩を譲りまして、どうしてもこのように身分改正しないとこの給与法委員と解されない、手当支給が困難だというふうに一歩譲りましても、日当増額をすればいいのではないか、日弁連ではこのように主張しております。この日当増額方法につきましても、時間があれば詳しく私申し上げますが、これもあとで御質問をいただいて詳しく、この日当増額は十分技術的に法律的に可能であるという根拠は後に御説明をむしろ時間の関係でしたいと思います。  それから次に、調停委員身分を当初からの、事件を離れての公務員とすれば、そのように改正すれば、委員資質能力のすぐれた人材を得られると、この理由でございます。それから研修充実ということも期待できるという、この説明がなされておりますので、それについて触れたいと思います。調停委員をはっきりとした公務員にする、役人にすると。するとすぐれた人材が得られると。私どもこれは全く官僚的な発想であると思います。全くその理由がわかりません。日調連の幹部の方にこのことを聞いても、どうしてこういうふうにすればいい人が得られるのかと。この点もはっきりした理由が得られません。いままでの選任方法は、地家裁があらかじめ候補者選任して事件ごと調停委員指定しております。指定されれば、その間は公務を担当する、こういうふうなたてまえ。終われば公務を解かれる。形式的には民間人司法参与の方式として、私、これはきわめて妙味のある制度だと思います。司法委員なども現在このようになっております。それをやめて、当初から委員をはっきりとした公務員として任命する。そうすればすぐれた人材が得られるのだと。どうもこの理由がわかりません。むしろ衆議院説明で、最高裁西村局長は、この点でいみじくも、改正後においても一現在の調停委員の大多数は任用資格のある方々であると。それほど大きな差異は出てこないというふうにはっきり告白されております。ことに規則では任命権者最高裁とする予定だということが説明されております。その根拠は、衆議院説明では、裁判所職員の中の事務局長だとか次長、首席書記官らの高い職務任命権が現在最高裁にある、それとのバランスの上から調停委員任命権も最高裁に置くことが望ましい、こういう説明をされておるのでございますが、これも全く私、官僚的な、中央集権的な発想だと思います。これらの事務局長とか首席書記官というのは全国的に転任の問題がございます。あるいは全国的になるべく均質をしなきゃならない、質を同じにしなきゃならぬ、こういう要請もあるので、そのような官僚機構の中にある職員についてはこのような要請も妥当だと思います。しかし、調停委員はどうしてそのような必要があるのか。これは最もローカルであってよろしい。むしろそのほうが望ましいとわれわれ考えます。現在の司法委員だって、家裁の参与員でも、みんな地家裁の任命です。何ら中央集権化する必要はないと思います。  また、この研修充実にしましても、裁判所主宰である必要は何らない。むしろ調停協会などの自主的研修が望ましいと思います。裁判所はこれの研修充実のために十分な補助金を出されればいい。私どもそう考えております。  最後に、理由任命手続をすっきりしたいという御説明、その改正理由、これも私、官僚的な発想だと思います。現在は毎年候補者選任し、具体的事件のために調停主任あるいは家事審判官がそれぞれ適当な方を指定されます。この指定は私は委嘱の性格を帯びるものだと思います。しかし、調停主任官あるいは家事審判官は手続上の裁判所であって司法行政機関ではない、変則的だという御説明でございます。司法行政上の機関による当初からの任命制にしたほうがすっきりするという、このような御説明でございますが、これも全く官僚的な発想あるいは権威主義的な発想といってもいいと思います。調停委員はあくまで国民民間人司法参与、本来公務員と性格を異にするというのがその本質でございます。何もはっきりした公務員と考えて当初からの任命形式とする必要は何らないと考えます。むしろ選任あるいは事件ごと指定という、一般公務員とは違った形式をとるところにこれはきわめて妙味があるというふうにわれわれ考えます。アメリカでは、御承知のように裁判官すら公選制が多い。現在五十州のうち三十五州は公選制であることは御承知のとおりでございます。公務を担当するからといって当初からの任命制にする、あるいは画一的にすっきりする必要、どうもこういう発想が私たちには全くうなずけないのでございます。もともと調停制度というものは法律専門職である裁判官、しろうとの国民が参与して、それが両々相まって調停委員会というものを構成する、そうして調停をするところに妙味があるのでございます。何も一律に任命形式、身分を画一にする必要はないと思います。違うところにむしろ妙味がある。この根本は何ら私は変更する必要はないと考えております。  最後に、時間がございませんので次の改正案である調停委員担当事件外への職務範囲の拡張について一言申し上げたいと思います。つまり従来の調停委員事件担当し、その事件担当するという公務でございましたが、今度はそのほかに新たな事件外職務を正式に制度上課する、こういうことでございます。改正法案民事調停法八条の一項と家事審判法二十二条の二の一項でございますが、これは私、身分公務員化ということと不可分の関係にあると理解しております。すなわち、この改正によりますと、調停委員というものは、従来の調停事件担当するという本来の任務のほかに、裁判所の命を受け、ほかの事件、専門的知識経験に基づく意見を述べる、あるいは嘱託事件関係人意見聴取をする。その他最高裁の無定量の義務を課すと。この衆議院説明では、規則で嘱託にかかる事実の調査というものだけが予定されておるというふうに説明をされておりますが、つまりこの改正理由は、改正法によって資質能力がすぐれた調停委員、いわゆる専門家が多く得られるであろう、それを担当事件外にも活用して調停事件の処理に機動性を持たせるというふうな説明がなされております。しかし、先ほど来申しましたように、調停制度法律家の裁判官、それにしろうとの国民が参与しまして、この異質のコンビネーションによって調停の妙味を発揮するというところに本質がございます。調停委員には資質能力の高い者が望ましいのでございますが、そんなに専門家である必要はない。たとえば、交通調停、公害調停など特殊な事件を除けば、一般調停あるいは家事調停でそんなに専門家を必要としない。もし必要ならば、そういう事件になるべく専門的な知識経験のある委員を選んで、それを指定して担当させればいいのでございます。要するに、調停というものは事件担当当事者の言い分を十分理解して説得する。それを調停事件担当しない者に意見を述べさせる、関係人意見を聞かせる、あるいは事実の調査をする、事件担当しないで、少しばかり持っているからといってそういうことをさせる。これは全くこういうことを制度化するのは私邪道だと思います。訴訟であれば受命裁判官、受託裁判官という制度がございますが、裁判官は大体等質でございます。また手続上の担保もございます。しかし、調停は訴訟と同じではございません。ことに、その他「最高裁の定める」というふうな規則で拡大する可能性のある条項をこの中に入れるということは全くこれはわれわれ反対でございます。  最後に、時間が多少超過いたしましたので、日弁連といたしましては、要約いたしますれば、もっと運用——現在の運用というものをちっとも改善してない、その努力をしてない。ですから、確かに調停委員待遇改善とか、あるいは交通事件、公害事件等の管轄の拡張とか、そういう必要な改正はございます。しかし、その他の多くいわれていることは、ほとんど現在の制度を、もっと運用を改善すれば十分これは可能でできることでございます。何もこんなふうに身分を変えるとか、職務外の事件担当させる、こういうふうな大改正までしなくても現在の調停のいろいろの弱点というものは十分これは運用の改善によって克服し得るんだと、こういうことが大体日弁連の根本的な見解でございます。  衆議院では附帯決議をつけていただきましたけれども、私どもはやはり附帯決議では不十分である。というのは、過去に附帯決議をいただいても、どうも当局附帯決議を守っていただけない、先ほども申し上げたように。やはり附帯決議というものは拘束力のないもので、やはり立法で、こういうようなものは、やはり附帯決議をつけていただいただけではどうしても国民のためにわれわれ安心できないということで、いわゆる附帯決議でなくどうしても、ことに八条は一番問題の、それから家事審判法の二十二条の二でございます。これは問題の条文でございますから、当院の御審議によりましてこの点は何とか削除されるようにお願いしたいと思います。  多少関連して申し上げたいことございますが、時間がだいぶオーバーいたしましたので、あとは御質問によって詳細な点を御説明したいと思います。
  9. 原田立

    委員長原田立君) どうもありがとうございました。  次に、竹下参考人にお願いいたします。
  10. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 参考人竹下でございます。  本日は、民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案につきまして私の考えますところを申し上げて御参考に供したいと存じます。  民事及び家事の調停制度改正というような問題を考えます場合にはいろいろな側面から検討を加えることが必要かと存じますが、本日は時間の関係もございますので、私はもっぱらこの調停制度を利用する側から見てどう考えたらいいかという角度から意見を申し上げたいと思います。幾ら理念としてすぐれた制度であっても利用されなければ意味がないわけでございますので、利用者の角度から問題に迫ってみるというのも十分理由のあることではないかというふうに考えます。  私が申します意見内容は、大体次のような順序にさせていただきたいと思います。一番初めは、現在調停制度というものが存在している理由をどこに求めたらいいかということでございます。それから二番目は、その調停が近時機能低下の傾向にあるということでございますので、その原因はどういうところに求められるかということでございます。それから三番目に、そういった二つの観点を踏まえまして改正案の評価ということにしたいと思います。  御承知のとおり、わが国における調停制度は大正十一年の借地借家調停をはじめといたしまして小作調停、商事調停というようなぐあいに特定の分野ごとに順次制定されてまいったものでございます。これらがそれぞれ制定された時期におきまして一定の政策的な目的によってつくられたものであるということ、たとえば借地借家調停であれば借地人、借家人の権利主張を一定限度に制限するというような政策的な目的があったということ、それから小作調停であれば小作争議が激化しないうちに芽をつみ取ろうというようなそういう意図があったということ、こういう事実はほとんど現在では否定できないことというふうに承認されなければならないだろうというふうに思います。一言で言ってみれば、戦前のそういう調停制度の成り立ちの中には今日の目から見れば非合理的ないしは非民主的な要素があったということでございます。しかし、日本国憲法下の今日におきまして調停制度が存在している理由あるいはそれが現に利用されている理由というものは、こういった過去の立法者の意図とは別のところに求められなければならないし、また求めることができるというふうに考える次第でございます。現在の調停がもしこのような非合理的、非民主的な制度であるといたしまするならば、ここ数年間のみをとりましても新受調停事件総数が民事と家事合計で、第一審の訴訟新受事件数の六〇%ないし七〇%にも当たるという、そういう事実を説明することはとうてい不可能であろうというふうに思います。  それではなぜ調停が現にそのように利用されるのか、そしてまたなぜしたがって存在するのかということになるわけでございますが、私は一応次のような三つの点をあげてみたいと思います。  第一は、調停の簡易性、要するに手続が簡単であるということでございまして、これには手続の経済性、迅速性ということが結びつきます。ここで私が手続の簡易性というふうに申しますのは、手続が非法律家たる一般国民にもよく理解できるという意味でございます。そのために非法律家たる一般国民は特別な法律専門家を使わないで自分でこの制度を利用することができるわけでございますから、すでに経済的という利点があることは言うまでもございません。しかし調停手続が簡明であって、しろうとにもよくわかるということの利点は単に経済的というだけにはとどまらないように思います。現在このような管理社会の中にあってやはり自分の権利がどういう手続でどのようにして処理されていくのかということを当事者自分の目で見、自分の耳で確かめることができる手続というものはやはりそれなりに重要な意味があるというふうに思うわけでございます。むろん非常に多額の事件ということになりますれば、これは簡単な手続で済ますというわけにはまいりませんから、訴訟制度の必要性ということは当然肯定されるわけでございます。そうなりますと、調停の簡易性というのはことに少額事件というものの処理に適しているというふうに言うことができるのではないかと思います。  それから第二に、調停が利用される理由として考えられますることは、争いの解決内容が柔軟だということでございます。一例をあげますれば、交通事故によって人身障害を受けた者、それによって労働能力を失ったという者が損害賠償をしてもらうときには定期金で賠償をしてもらいたいというのがまず多くの場合考えられることであろうと思いますが、現在の訴訟の制度のもとではこういった定期賠償というような方法一般にできないというふうに考えられているわけでございます。それは実体法がそういった損害賠償の方法を認めていないからでございます。現在のように流動化する社会で、またその流動する中で、個々の時点で非常に複雑多様にからまり合った社会関係というものが形成されております時代には、あらかじめ権利の発生の要件を発生する権利の内容とともに固定しておいて、その法規を適用して争いの解決をするという、そういう方式が必ずしも具体的な妥当性を得るゆえんではないという事件が次第に増加しているわけでございます。これが世界の各国におきまして、いわゆる訴訟の非訟化あるいは非訟事件の増大という現象を呼び起こしている理由であるというふうに思われます。調停は、やや大げさになりますが、こういった現象の背後に横たわる問題の一つ解決方式としても十分意味があるというふうに思われます。  さらに第三に、調停には民間人たる調停委員というものが存在しているということからくる国民の親近性といいますか、そういうものが非常に注目されなければならないと思われるわけでございます。ここでは、法律専門家に話をするという場合に感ずる気詰まりといいますか、何か自分の言いたいことを十分に理解してもらえないのではないかというような不安というものが除去されるわけでございます。調停委員は利用者と同じ民間人でございますから、利用者の立場からものを考え、紛争解決に当たってくれるという、そういう信頼感があるということになるわけでございます。家事調停につきましては、なおこのほか、手続の非公開性というようなことをも調停制度が利用される理由としてあげることができるかと思います。要するに、調停は、決して過去の遺物なのではなくて、現代においても、訴訟と並ぶ民事紛争解決制度としての存在理由を持つものであり、調停に適する事件、一口で、やや卑見でありますが、まとめて言うとすれば、少額の、しかも非訟的な処理に適するというような、そういう事件というものはやはり調停によって処理されることが望ましい。それがまた本来の訴訟の負担過重を解消するゆえんでもあるというふうに思うのであります。  ところが、近時、紛争解決制度としての調停の機能が低下する傾向にあるというふうにいわれております。統計を見ましても、確かに民事調停事件では新受事件数が漸減の傾向にありますし、民事、家事両方を通じて、調停成立率といいますか、成功する率が減少しております。こういった傾向が、いわゆる国民の権利意識の向上の結果であって、むしろ歓迎すべきものであるというのであれば何も問題はないわけでございますが、しかし、そのようにばかり見るわけにはいかないのではないかというふうに思います。調停の機能低下の原因として、私は、利用者のほうの立場から見た場合には、次の二点を指摘することができるのではないかと思います。  第一は、調停において提供される紛争解決案が調停制度の利用者の要求に合致していないのではないかということでございます。現代における調停の利用者は、先ほど申し上げましたように、決して調停に没法律解決を求めているわけではないのであります。制度の前述の意味での簡易性とか柔軟性、あるいは親近性というもののゆえにこれを利用しているわけでございます。このことは、調停の実証的研究をしております学者によって証明されているところでございます。ところが、調停において提供されるサービスというものは、利用者の新しい需要に応じ切れず、しばしば前法律的あるいは没法律解決案であるということがあるようではございます。このことは、調停における事実調査の不足という手続面と、それから調停委員の現代に期待される調停委員としての適格性の欠除という主体面と、その双方に原因を有するというふうに言えるかと思います。  調停の利用率が落ちてきたと考えられる原因の第二といたしましては、現在の調停制度の仕組みが利用者の便宜にマッチしていないということでございます。いわば調停制度の利用者へのサービス不足というふうに言えるかと思います。たとえば、確かに調停は話し合いによる紛争解決でありますから、調停を申し立てるほうが相手の住所地の裁判所に出かけていって調停をするのが原則であるということはそれでよろしいと思います。しかし、不法行為によって身体障害を受けたような者までが、現在の制度では相手方のところへ出向いていかなければならないということになるわけでございますので、被害者がこういう場合には初めからこの制度を利用する気にならないということになるだろうと思われるわけでございます。また、それと関連いたしまして、遠隔地にいる者同士の調停というものにつきましても、単に三千円の過料で、その心理的圧迫で出頭を期待するというようなことではとても不十分であるということは言うまでもございません。さらに、調停は簡易な手続であって、自分で利用できるところがメリットだというふうに申しましても、実際にこれを利用するには、利用者の側から見るといろいろの制約がございます。一番大きな制約の一つと考えられるのは時間的な制約でございます。そこで、いわゆる即日調停とか、時間外調停というような、調停を申し立てたらその日にすぐ自分の言い分を聞いてくれるとか、夕方五時過ぎでも裁判所へ行って申し立てをすれば調停を受け付けてくれるというような、そういうサービスがないと、国民はこの制度を広く利用することが困難になるわけでございます。アメリカの少額裁判所——これすべてであるかどうかは私も存じませんが、アメリカの少額裁判所のうちの少なくとも一部のものは、夜間に、しかも即日に判決をするというようなことが報告されております。こういうことは調停についても十分考えるべきであろう。ことに、先ほど申しましたように、わが国の調停というのが少額事件の処理に適しているということであれば、ますます考慮すべきであろうというふうに思われるわけでございます。やや誇張して申しますれば、現在の調停制度はサービスが不足している上に、なされているサービスも利用者の需要に合わない面が出てきたということでございます。  そこで、このような観点から見て、では今回の改正案をどういうふうに考えるかということになるわけでございますが、私は、このような現行制度の欠陥を是正しあるいは是正し得るような制度的整備をはかろうとするものとして、大筋において賛成をしたいというふうに思います。  第一に、これから、もうあまり時間がございませんので、こまかい点は後ほどもし御質問でもあればお答えしたいと思いますが、ごく大まかに申しますと、まず第一に、改正法は、交通調停について被害者の住所地、それからまた公害等調停につきましては被害発生地の裁判所にそれぞれ管轄を認めております。これは言うまでもなく調停を利用しやすくするものであります。  それから第二に、改正法は、隔地者間の調停を円滑ならしめるために二つの新しい制度を導入しております。改正民事調停法八条で、調停委員——これは家事審判法二十二条の二も同様でございます。一々お断わりすることを省略さしていただきたいと思いますが、改正民事調停法八条一項では、調停委員職務として、「嘱託に係る紛争解決に関する事件関係人意見聴取」というそういう制度を定めました。また、家事審判法改正二十一条の二では、遺産分割に関する調停の特則を定めております。これらは言うまでもなく、離れた地にいる関係人、ことに遺産分割の場合にはそれが多数にのぼるということが多いわけでございますので、そういう者の間でもなお調停が行なわれるようにしようとする努力であるわけでございます。  第三に、私は、改正民事調停法八条二項、同じく家事審判法二十二条の二第二項でございますが、これが調停委員を当初から非常勤公務員として任命するということにしているのにも賛成したいと考えます。非常勤公務員化することによって、手当支給されることになり、大幅な待遇改善がなされるということは、言うまでもなく、よい人材を集めるのにきわめて有効であります。しかし、私が非常勤公務員化賛成したいと思いますのは、決して調停委員待遇改善という理由のみによるわけではございません。それと並びまして、この改正によって調停利用者へのよりよいサービスが期待できるというふうに思うからでございます。現在の調停委員候補者制度のもとでは、担当事件を離れて調停委員職務はあり得ないわけでございますから、改正法八条一項が意図するような先ほどの隔地者間の調停の場合の、嘱託による関係人意見聴取というようなことは不可能でありますし、ひいて管轄の拡張だけをしてもその実効があがらないおそれがあるわけでございます。今回の改正により、一方で、被害者の住所地、被害発生地の管轄というものが認められました。こうなりますと、必然的に相手方の住所地外の裁判所での調停という場合が増加するわけでございますから、隔地者間の調停を円滑にさせるという措置を伴わないで管轄の拡張だけ認めてみても、結局は絵にかいたもちになる危険が多分にあるわけでございます。したがいまして、管轄の拡張に伴って今回こういった隔地者間の調停を円滑ならしめるような措置を講じたということは、必然的な結びつきがあるというふうに私は考えるわけでございます。また、先ほど申しました即日調停や時間外調停のための執務体制というものを整えることも、現行の調停委員候補者制度のもとではきわめて困難でございます。あるいは現行法のもとでも、若干の裁判所で即日調停の試みがなされているというようなことも仄聞したことがございます。しかし、これは現行法でもできるではないかということではないのでありまして、これは国民の期待に沿うような調停を実現しようとすれば、どうしても担当事件職務の範囲にとどまることはできないということを意味するものだというふうに考えるべきだと思います。さらに、調停委員候補者制度のもとでは困難でございますが、非常勤公務員制度のもとでは調停委員研修ということもきわめて円滑に行なわれ得るということになるわけでございます。このように調停利用者の立場から見ますと、調停委員非常勤公務員化するということは、自分たちへのサービスがそれだけより多くなるということになるわけでございまして、たいへん望ましいことであるというふうに私は考えるわけでございます。しかし、非常勤公務員制度のもとでは、調停委員の負担が逆に過重になり、かえって人材を集めにくくなるのではないかという懸念が出てくることもまた無理からぬものがあるというふうに思います。しかし、担当事件外の職務は、何もすべての調停委員が遂行しなければならないということにはならないわけでございます。現在の制度のもとにおきましても、調停委員候補者裁判所から、調停主任から指定を受ければ原則として辞退はできないということになっております。しかし実際の運用におきましては、各調停委員のそれぞれの時間的余裕等を考えまして、決して担当事件数を一律にしているわけではないわけでございます。今度の改正後の非常勤公務員制度のもとにおいても、当然同様の配慮はなされるはずであるというふうに考えて差しつかえないと思うわけでございます。で、それよりも、調停が一そう国民に利用されるものとなり、簡易な紛争解決制度として愛好されるようになれば、それだけ国民司法参加の意義も高まるわけでございますから、調停委員の職を引き受ける層が広がるということを期待しても、あながちそれは望みのない期待ということは言えないであろうというふうに思います。  私はこのように今回の改正の大綱に賛成するものでありますが、言うまでもなく、調停制度改善が必要なところは決して今回の各事項だけに尽きるわけではございません。ことに裁判官不在の調停というのは、法の予定するところから逸脱しているということは否定できないわけでございまして、かかる事態が早急に改められるような必要な方策がとられるよう、この機会にあわせて要望しておきたいと思います。
  11. 原田立

    委員長原田立君) どうもありがとうございました。  次に、江藤参考人にお願いいたします。
  12. 江藤价泰

    参考人江藤价泰君) このたびの改正法律案につきまして、一法律学者としての意見を述べさせていただきたいと思います。  この法律案につきまして私の率直な感想を最初に申し上げますと、いわゆる角をためて牛を殺すという結果を招くことになりはしないかという危惧の念を抱いているということであります。それについて若干これからお話ししていきたいと思いますが、順序としましては、最初に調停制度というものをどう考えるべきかということと、それから先ほど竹下参考人のほうから言われましたけれども、簡単に歴史をながめまして、今回の改正についてそれを反省の資として見ていきたいというように思います。  御承知のように、調停におきましては、第三者が双方を仲介し、折り合わせて紛争解決に協力すること、これが大体において調停の概念規定になるかと思います。要するに、あっせんと調停案の提示ということの二つの内容をもって調停成立しているのではないか。そうしますと、調停人による調停案の提示というものは勧告的のものであって、紛争がその解決を見るということは、双方がこの調停案を承諾するということによって和解が成立するからであるというように考えられるわけであります。したがいまして、調停人の判断が当事者を拘束するということはないという点で、仲裁判断とは全く異なるという実質を有するものというように言うことができるわけであります。このように第三者のあっせんがまた存在する点においては、調停はいわゆる和解というものとも異なってくるわけであります。で、このような調停の性質ということからいたしますと、いろいろな点で微妙なバランスの上にこれが成立しているのではないかというように考えられるわけであります。いわばかつて中世期において行なわれましたような一種の同僚裁判的な内容調停が持っている場合におきましては、両当事者調停人という三主体がそれぞれ平等な法主体として存在することになるわけでありますから、調停人による調停案の提示、またあっせんというものも、自主的な解決としてなされる可能性を多分に含んでいることになると思うのでありますが、しかし調停人というものが一定の優越的な地位というものを持っている場合においては、この調停案の提示ということが、この調停制度に対して何がしかの陰を投げざるを得ないという側面は否定できないのではないかというように思うわけであります。そういたしますと、調停制度がそういう当事者の自主的な紛争解決意思というものを前提にして成立している以上、その意思を尊重するということが、その制度の運用いかんによってははなはだ微妙な陰のもとに置かれてしまう、したがってまたその本質が否定されてしまうということにすらなるのではないだろうかというふうに考えるわけであります。その意味におきまして、国家的制度として調停一般的に行なわれる場合には常に、繰り返すことになりますが、いま申し上げたような危険を常に内在しているというように考えられるわけでありまして、今回の改正案について見ますならば、非常勤公務員化ということによりまして、その点により大きな陰が投げかけられるということになるのではないだろうかというように考えられるわけであります。さらにまた国民司法参加という場合の側面から考えましても、決してこのような非常勤の国家公務員化ということによりましては、一般国民の参加ということは、やはり相当程度限定されるということになってまいりますので、国民司法参加ということも実質的には相当程度後退せざるを得ないということになるのではないだろうかと思うわけであります。したがいまして、当事者の自主的の紛争解決の意思の尊重、また先ほど申し上げましたような同僚裁判的な特質というものを維持して、調停を本来の調停として機能させるということのためには、今回の改正はその点では私はマイナスのものとして考えざるを得ないというように思います。  次に、簡単に歴史について考えてみたいと思いますが、御承知のように、わが国におきましては、先ほどの竹下参考人説明がありましたように、大正期において各種の調停法が出てくるわけでありますが、この各種調停法というものが、大正デモクラシーの時代において、一定の家族国家原理によってのみでは体制を支配し得なくなった、維持し得なくなったということから、借地借家調停法、あるいはまた小作調停法、労働争議調停法といったように、家族国家原理外のいわば特殊意思というものを暗黙のうちに承認するということによって成立してまいりまして、その間における紛争というものを解決するということになってきたわけでありますが、この場合に紛争解決されたといたしましても、たとえば借家人あるいは小作人あるいは労働者というものの保護の機能を一定程度果たしたということは否定できないことでありますけれども、実質的にはこの調停制度によってはそれぞれの権利保護ということにはならなかった。要するに、かりに実質的な成果を得たといたしましても、それは家主あるいは資本家あるいは地主の恩恵的な譲歩でしかないということであったのではないだろうか。そのように本来調停というものは国民の権利意識というものとの関連で見ますと、はなはだマイナス的な役割りを歴史的には果たしてきた。あえて言えば、国民の権利意識というものを抑制するということをその機能としてどうしても持たざるを得なかった側面が戦前の歴史においてはあったのではないだろうか。  そのように見てまいりますと、戦後において調停法というものがどのような形で機能すべきかということになりますと、一つは、先ほど申し上げましたような同僚裁判的な色彩をより持つべきではないだろうか。さらにまた、国民の権利意識をより助長させ、伸長させる方向において運営されるべきこと、そういうことになるべきではないだろうかということになると思うわけであります。そのような形で本来調停制度が戦後においてはあるいは改正されるべきであったんではないかと考えるわけでありますけれども、民事調停法の制定におきまして、このような戦前における基本的な理念というものについての反省あるいは転回ということはついに意識的になされなかった、意識的な形でなされなかったということが戦後の歴史において検証されることだろうと思うわけであります。わが国家体制の戦後における転換ということから考えた場合、やはりそれに合わせた、単に各種調停法を統合整理するというものではなくて、新しい理念に立った調停制度というものが考えられるべきであったのではなかろうかと。繰り返すことになりますけれども、国民の権利意識を確立する方向で、さらにまた国民の自主的な紛争解決権能というものを尊重する上に立っての調停法というものが制定されるべきであったと思うわけでありますが、ついにそれがなされずにそのままで来たわけであります。しかも、現在の現行法制上見た場合に、民事訴訟との関連で見た場合、単に調停法というのは並列的、重畳的、選択的な制度にとどまるものではなくて、むしろ競合的な性質をすでに有する重大な紛争解決制度になっている。この点は戦前におけるとは全く異質なものとすら評価できるんではないだろうか。  それは一つは、職権調停というものが大幅に認められているということだろうと思うわけであります。で、この点におきまして調停法というものが単に一つ国民によってたまたま訴訟を選択するか、あるいは調停を選択するかという問題ではなくて、訴訟の過程においても争点の整理あるいは証拠の整理というものが完了しない限りにおいては、当事者の合意がなくても職権調停に付することができる。その後においても当事者の合意があれば職権調停に付することができる。しかも、他庁調停、自庁調停というようなことが認められておるわけでありますから、相当程度その調停の果たす機能というのは比重が戦前においてとは質的に異なるほどに変化してきている。  そのような調停制度というものを、先ほど申し上げたような意味で、調停調停として機能させるというためには、やはり繰り返すことになりますが、理念の転換が必要であるのではないか。そのためにはまた調停主任としての裁判官、これは先ほども竹下参考人の御意見にもありましたけれども、現実に行なわれたような調停主任不在の調停ではなくて、主任としての裁判官が常におり、また公証官としての裁判書記官というものが常におる。それによっていわば法的側面が担保され、他方事実について言えば当事者の現実というものに立った情理に基づく判断というものが他方調停委員によってなされるという、その二つの事実面と法的側面というものがかみ合うことによってよりうまく調停制度というものがいくのではないだろうか。  まず第一に、私はなされるべきことは、やはりこのような調停主任としての裁判官不在の調停ではなくて、それこそがまず第一に現行の今回の改正においてなされるべきこと、あるいはまたこれは法の改正を待つまでもなく実現され得ることなんでありまして、その充実増員ということがまず第一に望まれなければならないであろう。そのような法律家というものと調停委員、全く一国民としての調停委員が参加するということによってよりよく国民にサービスをし期待にこたえるものになっていくのではないだろうかというように考えるわけであります。  さらに若干ふえんいたしますと、今回の非常勤公務員化ということについて考えますと、確かにいろいろな面からそれを主張される理由というのは私としても十分理解できるわけでありますけれども、この点はさらにもう一つの問題点を含むのではないだろうか。それは現実に弁護士総数の三〇%が調停委員として活動しているという現実があるわけでありまして、そういたしますと、弁護士の中に二つの弁護士というものを実は現実につくり上げていくことになるのではないだろうか。要するに、非常勤公務員としての身分を持つ弁護士とそうでない弁護士という二つの弁護士をつくり出すということは、やはり弁護士の在野性の喪失という問題との関係あるいはまた弁護士の性格といった点で非常に大きな問題を投げかけているのではなかろうかというように思うわけでありまして、この点につきましては御質問等があればあとでお答えしたいと思うわけであります。  さらに今回の職務の拡張といった点について考えた場合に、先ほど申し上げました非常勤公務員ということ自体によって調停委員調停委員候補者から非常勤公務員になるということは、結果的にいえば調停委員の性格の変質であるというように考えられるわけで、その面からすればやはり国民司法参加の可能性というものは減少するわけですが、そういったような調停委員が現実に行なう職務と定められている場合に専門的知識経験に基づく意見ということが一つは重要視されているわけでありますが、これは調停委員を鑑定人化することではないだろうか。その点でやはり問題を含んでくるのではないだろうか。要するに、専門家ということの色彩が強くなってくるということによりまして、私が先ほど申し上げましたような同僚裁判的な色彩というものが後退せざるを得ないというように考えられるわけで、しかもまた専門家としての調停委員のあっせんということはより強制、いわゆる実質的な意味での強制調停へと強制に転化し得る実質というものを持ち得るのではないだろうかというような点でも危惧を抱くわけであります。  第二に、嘱託にかかわる紛争解決に関する事件関係人意見聴取ということがあるわけですが、この場合にも隔地者間の調停とか負担軽減等等といったように確かにメリットがあることは否定し得ないわけでありますけれども、そういったような単にメリットだけにとどまらず、やはりこのような場合におきましても全くしろうとの調停委員が関与するというのではなくて——関与するということによりますと、事情聴取についての手続的保障もない、その後におけるまた修正手段というものも担保されないということになってくるわけでありまして、そのためにはやはり調停委員会として、調停主任である裁判官を中心にした調停委員会がこれに当たるということによって初めて手続的な担保もなされるのではないだろうかというように考えるわけであります。  最後に、また、「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」という点につきましても、この点も確かに一定の限定ということがなされておるわけでありますけれども、法というものが一たん制定された場合には一人歩きするということはこれは否定できない事実であるわけでありまして、今後においてどのような形でそれが広がっていくかということについての担保というものは現実にはなきにひとしいのではないだろうかといった点で、やはり非常勤公務員化というものと結びつけていって非常に問題を投げかけてくるのではないだろうかという危惧を抱くものであります。  要するに、最初に申し上げましたように、法的な意味での一定のサービスということも確かに調停というものについて現在においては要求されているかもしれないということは否定できないわけでありますけれども、その場合にやはり法的なものとしていわば弁護士あるいは専門家集団というものを利用するということによって実は調停の本質というものが否定されていく傾向になっていく、さらにまたその結果として、弁護士というものについて問題がまた生じてくるといったような点で、私はこの改正というのが結果的に申しますと、やはり調停というものの角をためて牛を殺すことになるんではないだろうか、微妙なバランスの上に立っている調停というものの実質を変質さしてしまうのではないだろうかというように考えるわけであります。簡単でございますが、これで終わりにさしていただきます。
  13. 原田立

    委員長原田立君) どうもありがとうございました。     —————————————
  14. 原田立

    委員長原田立君) 委員異動について御報告いたします。  野坂参三君が委員辞任され、その補欠として須藤五郎君が選任されました。     —————————————
  15. 原田立

    委員長原田立君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私から参考人の先生方に対して質問さしていただきます。  きょうはお忙しい中を御四名の参考人の先生方お出ましいただきまして、貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。時間がたいへんに限られておりますので、簡単に各参考人にお伺いさしていただきたいと思います。  まず、曾我参考人にお伺いいたしますが、先ほど来の御意見をお伺いいたしておりますと、非常に現在の調停制度というものがうまく運営されているというお話を承りまして、たいへんに心強く思っているわけでございますが、それなれば現在の調停制度でいいのではないか、どこも悪いところがないのではないか。もちろん手当を、いまの日当増額するということはもちろん私どもも非常にけっこうなわけでございますが、先生方の御意見承っておりますと、まあ奉仕精神に基づいて非常にうまく運営できているというお話で大いに敬意を表するわけでございますが、それでは何ゆえに改正しなければならないのかということにたいへんに疑問を抱くわけなんでございますが、いまうまくいりているという御趣旨の御説明じゃなかったわけでございますか、簡単にお答えいただきたいのです。
  17. 曾我益井

    参考人曾我益井君) お答えいたします。  いま現在はスムーズにより有利にいっているということではありますけれども、調停委員そのものにいたしますと、常にえりを正して責任を感じ自覚を持っております。そういたしますことは、当事者と少しのそこに差をつけるといっては語弊がございますけれども、当事者自身も信頼の度合いが高まるのではないか、この方たちは国から、関係当局から命ぜられたところの自分らよりの紛争に対して解決をしていただくことの能力のある方であるという、そういうお気持ちを持たれるということ自体は、目的の事件解決をよりスムーズにするわけになるのではないかと思うわけなんであります。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま御意見承りましたが、まあこの調停制度というものが、自分たちと同じ民間人調停に関与していただくということに調停制度のたいへんに利点があるのであって、国から任命されているから自分たちよりえらいんだということで調停というものが解決されるとすると、ここに大きな私は本質的な問題があると思うわけでございますが。  次に藤井参考人にお伺いさしていただきたいと思います。まず先ほど来の御意見の中で、特に日弁連を代表しての御意見というふうに承ったわけでございますので、この弁護士——これは江藤参考人の御意見にもございましたが、弁護士調停委員が、弁護士の会員のうちで調停委員の方が三分の一以上に及んでいるというような関係もございますので、この改正案というものが弁護士会推薦の調停委員に対してどのような影響を与えるであろうかと日弁連としたらお考えになっていらっしゃるのか、その点をまずお述べいただきたいと思います。
  19. 藤井英男

    参考人藤井英男君) 現在弁護士調停委員である者が、全体の調停委員の中の約一割程度と聞いております。しかも地方のほうにまいりますと、地方の実情は非常に弁護士が訴訟事件に追われて忙しくて、なかなか調停責任を持って顔を出せないというような実情もございます。それに今度のように、それを年間の任期を切って非常勤公務員化ということになり、かつ、担当事件外のときどきものを担当しなきゃならないというようなことになりますと、これは非常に弁護士としては相当いろいろな、ことに地方なんかでも辞退者が出るのではないかと。現に私なんかも非常にときどき忙しくて、責任ある調停委員としてつとめられないということで、司法委員は四、五年やりましたけれども、そういう趣旨から調停委員を御辞退しているような……。これがいまのような制度になりますと、現実的にやはり相当これじゃつとまらないというふうな動きが出るのではないかと、こういうふうに影響を考えております。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 こうした点について同じく江藤参考人が、先ほどから弁護士会の会員のうちの三分の一ぐらい調停委員になっておるような事柄であるが、今度の改正について、この弁護士調停委員というものがさらに調停に参加し得る可能性というものができるのか、あるいはそういう人たちが今度の改正によって調停委員としての責任を負いかねるというような事態が起こるというふうにお考えか、どのようにこの問題をお考えでございますか。
  21. 江藤价泰

    参考人江藤价泰君) 私は現実にどういう形で弁護士の方が対応されるかということはよくわかりませんけれども、先ほど私が申し上げましたのは、調停委員総数で見れば確かに弁護士の数は一割ぐらいであるかもしれないけれども、弁護士総数ですね、その中での三〇%ぐらいが現に調停委員になっているということを申し上げたわけで、そういたしますと約三分の一の弁護士が、他方非常勤公務員になるということになりますと、弁護士の性格に変化が生じてくるんではないだろうかということであるわけです。要するに、一方では非常勤公務員としての身分を持つ弁護士と、他方ではそうではない弁護士、しかも二年ごとにこれが選任がもしもかりにぐるぐる繰り返されることになりますと、弁護士というものは非常に簡単なことばでいえば在野法曹だということになっているわけですけれども、他面ではそうではないという側面を持たざるを得ないということになってまいりますし、さらにまた、いわばその性格の質の変化ということによって、先ほど申し上げましたような非常勤公務員化ということによって弁護士の性格の質が完全に変化してしまうということすら理論的には考えられるのではないだろうかというように考えるわけです。あるいはまたそこまで考えなくても、弁護士一般、中にはそういう可能性を持つということになってきますと、いわば弁護士法一条でいっているような「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」ということ、それからまた高度の自治権を持つということとの関連でも、弁護士というものあるいは弁護士会というものが非常勤公務員化ということによって何らかの変化を受けざるを得ないということになってくるんではないだろうかと思うわけです。一般政府委員とこの点では明らかに私は違うんではないだろうかと。個別、具体的な事件、私権に関するあるいは基本的人権に関するような事件というものがまさにその紛争内容になるわけでありますから、そういった紛争に関与する者が、片や非常勤公務員であり、片や人権のにない手というような形で位置づけられるというのは非常に奇妙なことなんではないだろうかというように私は思うわけであります。ただ、この点について、あまり弁護士会のほうで意に介されていないのか、あまり御議論がそう出ていないようですけれども、はたから見ているとはなはだ奇妙な気がいたしまして、弁護士会の在野性ということは何もあるいは政府、裁判所と対抗するということだけではなくて、より協力してやっていくということであるわけでありますけれども、理念的に考えた場合に、やはり個別、具体的な紛争媒介としては、裁判所あるいは検察官と弁護士は対立する存在であるということになっているわけでありますから、それがいわば、あまりいいことばではありませんけれども、二足のわらじをはくようなことになってくるということは非常に妙なことだろうというように考えております。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 竹下参考人にお伺いいたしますが、竹下先生のほうはこの非常勤公務員というのはむしろ好ましいんじゃないがというお話のように承ったわけでございますが、いまの最初の先生の御説明調停制度の利点というものをおあげになりまして、民間人紛争解決に参与するということにたいへん意義があるというふうな評価として承ったわけでございますが、その点非常勤公務員化するということは先生の当初の御説明ともちょっと変わってくるんじゃないかということを私感じたわけでございますが、そうした民間人であるということの利点ですね、そういう点についていまの先生の御説明との関係でどのような、何ゆえに非常勤公務員のほうがいいのかというふうな論拠をおとりになるのか、私はそこに最初の御説明と若干矛盾するように承ったわけでございますが、いかがなのでございますか。
  23. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 私は非常勤公務員化賛成というふうに申し上げたのでございまして、御指摘のとおりでございますが、その理由はむしろ国民に対するサービスが期待できるからということでございます。つまり、藤井参考人の御意見などとはまさに反対でございまして、利用者の立場から見れば、調停委員が現在のように事件担当、依頼された指定された事件だけしかやらないというよりは、もっと国民が利用しやすい形で職務をやってくれるというほうがいいだろうということでございます。つまり、即日調停とか時間外調停とかいうことに端的にあらわれてくると思います。したがいまして、決して非常勤公務員化がいいというのと、前と矛盾しないと思うわけでございますが、——ちょっと失礼しました。矛盾すると御指摘の点は、民間人が関与しているというのが調停のメリットの一つであるというふうに申したところと矛盾するのではないかという御趣旨だと思いますが、その点は実は私はそれほど質的な違いはないのではないかと考えているわけでございます。つまり、現在の候補者制度のもとにおきましても、結局事件担当するときには公務員という身分になるわけでございまして、その意味ではいわゆる非常勤ではないかもしれないけれども、やはり非常勤公務員には間違いないわけでございます。あるいは臨時の公務員というふうに言ってもいいのかもしれませんが。そういうことでございますので、特に、だからといって民間人としての特質が失われるというふうには考えておりません。その点はいまの江藤参考人のほうからお話がございましたような、つまり、各種の政府の委員会の委員などでも同様でございまして、別にああいう委員会に委員となっておられる方はおおむね非常勤公務員、今度の改正法のもとでの調停委員と同じことだと思いますが、別に、だからといって民間人としての意味が失われるというようなことではなく、むしろまさに民間人であるからこそ委員になっていただいて、政府の行政等に意見を反映させるということになっているんだと考えます。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御意見で、それではたとえば時間外調停あるいは即日調停というものは非常勤公務員じゃなくてもこれはできるんじゃございませんでしょうか。いままでも夜間調停などをやっていることもございますし、また即日調停にしても、そのときにおられる調停委員さんの候補者の方に、手のあいておられる方に当該事件調停委員になっていただくということも、これはいまでも幾らでも行なわれておることでございますので、その点は非常勤公務員とあまり関係ないんじゃないでしょうか、どうなんですか。
  25. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 一部の裁判所でそういう試みがなされておるということは私も聞いてございます。しかし、これがそれほどの広い範囲で行なわれているとは私は考えないわけでございます。それから現在行なわれているので運用でもできるのではないかという御趣旨現行制度の運用でもできるのではないかという御趣旨だと思いますけれども、それは運用をいたしておりますのは多分に偶然的な要素にからんでおるか、あるいは事実上調停委員の本来の職務外のことまでやってもらっているか、どちらかになるのではないかというふうに思います。つまり、たまたまそのときに、即日調停の申し立てがなされたときに手のすいている調停委員担当を引き受けてもよろしいと言う方がいるかどうかという偶然的な事情にかかっている、あるいは現行制度のワクははみ出すけれども、事実上お願いして若干の方々担当事件を離れて裁判所のほうへ出向いていただいておるか、どちらかではないかというふうに思うわけでございます。で、偶然的な事情でできたりできなかったりというのは制度として好ましくないということは当然でございます。それから後のような事情であるとすれば、それはやはり現行法では無理なのであって、非常勤公務員化することによってスムーズに行なわれ、したがって、また全国的な規模でそういう試みがなされる道が開けてくるだろうというふうに思うわけでございます。
  26. 佐々木静子

    佐々木静子君 あまり時間ございませんので深くお尋ねすることはできないわけですが、そうすると、竹下参考人の場合は、非常勤公務員として一定の時間、何時から何時まで、用事があろうとなかろうと裁判所へ行っていると。そういうふうな状態になるということを頭の中に描いていらっしゃるわけでございますね。
  27. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 先ほど申しましたように、実際の運用のしかたはいろいろあるかと思いますが、単純に申しますれば、委員の方でそういうふうな勤務のしかたをしてもよろしいと、時間の都合がつくから——たとえば一月に一回なり一週間に一回なり、午前中とか午後とか裁判所へ来ておられるという方がおられれば、そういう方に、いま佐々木委員のおっしゃられましたような形で裁判所へ出頭していただいてすればよろしいではないかと考えておるわけでございます。その場合に、むろん、そうなると拘束時間が長くなるではないかという問題が出てくると思いますが、それは、先ほど申しましたように、決してすべての人がそうしなきゃならぬということになるわけではないわけでございまして、時間のつく人にやってもらえばよろしい。調停委員は現在でも相当多数いるわけでございますから、全然そういう人がいないというようなことは考えられないというふうに思う次第でございます。
  28. 佐々木静子

    佐々木静子君 あまり時間がございませんので簡単にお答えいただきたいと思いますが、参考人の先生方四人ともが裁判官不在の調停ということについての御批判を出していらっしゃるわけでございまして、裁判官が、調停主任官が調停に参与するということがもとより望ましいという御意見を四参考人ともお持ちであろうというふうに承ったわけでございますけれども、これは簡単にお答えいただきたいわけでございますが、それでは、今度の改正によって、裁判官は調停委員会の構成のメンバーとして調停にいまよりもずっと関与するようになるであろうという担保があるとお思いになるか、どのようにお思いになるか、順番に曾我参考人からお答えいただきたいと思います。これで、裁判官が調停委員会が開かれるごとに出てきていただけるように変更できるというふうにお考えかどうか。結論だけでけっこうです。
  29. 曾我益井

    参考人曾我益井君) お答えいたします。  調停裁判官はお一人でもってあまたの事件をお持ちになってはおられますけれども、それに加えまして、加わるところの調停委員がそういう非常勤公務員であるというようなことを勘案いたしまして、それに対して、また、そういうふうな委員が事情を、その話し合いの結果をそれぞれ報告もいたしておりますし、裁判官からの意見あるいは指導を受けてやっておりますから、そういうふうなことからいたしましても、当然、これは参画しておられるものだと私は見計らいます。
  30. 藤井英男

    参考人藤井英男君) 藤井でございますが、今回の改正法案で裁判官不在の調停が解消する担保は何らございません。もう従前とその点——これははっきり、衆議院段階でも当局説明でもそれは運用でやっていく以外にないというふうなことをはっきりおっしゃっておりまして、改正法案でもそのことは全然改善されません。
  31. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 私もその点については同様でございまして、今回の改正によって、別に、裁判官の出席が可能になるということは全くないと思います。まさに、それゆえにこそ、今回の改正には賛成であるけれども、なお、その点についても、運用なり制度的な裁判官増員等の方法によって裁判官が常時出席できるような道を開いていただきたいというふうに要望した次第でございます。
  32. 江藤价泰

    参考人江藤价泰君) 私も同じ所見で、決して担保されていないということでございます。
  33. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお話を承りまして、四参考人がこぞって主張された、裁判官不在の調停ということについては今度の改正で何ら改善されないということがはっきりしたというふうに私も承って、その点非常に遺憾に思っているわけでございますが、特に藤井参考人にお伺いしたいと思うわけでございますが、先ほど来、このように法曹として非常に重要な問題を含んでいるところの今回の調停法の改正について、事前に何らの御相談にあずからなかった、閣議決定するその直前になって、こういう改正をするのだということを日弁連のほうにお話があったのみである、その点について、さほど緊急性を有するというふうにも日弁連としては受け取れないのに、何ら御相談がなかったことについてははなはだ遺憾であるという御趣旨の御説明を承ったわけでございますが、これは昭和四十五年の五月十三日、当法務委員会におきまして附帯決議として確認されました法曹三者の協議でございますね、それが、現在いまだ実現されておらず、全く遺憾な状態に立ち至っているわけでございますが、日弁連とすると一この法曹三者の協議をするためにどのような努力をされてきておられるのか、簡単に経緯を述べていただきたいと思いますとともに、どうすれば法曹三者協議というものが実現できるとお考えになるかということもお述べいただきたいと思います。
  34. 藤井英男

    参考人藤井英男君) お答えいたします。  法曹三者協議につきましては、先ほど言いましたように、まだ協議会というようなものは成立しておりません。先ほどの附帯決議は、申し上げましたように、審議会とか諮問委員会はあるけれども、それ以外に、やっぱり法曹三者がこういう国会法案を提出する場合はあまり対立した状態で持ってくるな、なるべく意見を一致させて持ってこい、そのための協議をということが趣旨だろうとわれわれは解釈しております。附帯決議がございまして間もなく最高裁から三者協議をやろうではないかという申し入れを受けまして、それに対して日弁連でいろいろ討議いたしましたが、御承知のように、昭和三十九年に臨司意見書が出ております。この臨司意見書の内容というのは御承知のことと思いますが、司法制度全般をきわめて官僚主義を強化する、中央集権を強化するかなり便宜主義があるということで、これはわれわれはずっと強い反対をしてまいりました。やはり三者協議でも、臨司意見書に沿うた協議をするということではわれわれは困る、もう総会で反対決議もあることで、だから臨司意見書というものにとらわれないで、自由に拘泥しないで大いに協議することは賛成である、こういうことで、条件としては臨司意見書に拘泥しない協議をやろう、こういうふうな回答をしたわけです。幾つか表現その他において最高裁法務省といきさつございましたが、最終的には法務省もいろいろ最高裁意見を取り次がれまして、臨司意見書に拘泥しないという意味は、臨司意見書に書いてあることはしかじ司法制度全般にわたることじゃないか、それを協議にのせないということは司法制度改正についての協議ができないということになりはしないかという質問がありました。その点はそうでない、臨司意見書に書いてあることを議題として大いに協議するのはよろしい、ただしそこに書いてあることに従って協議する、それを実施するための協議では困るのだという回答をしまして、最終的には法務省でそれならわかった、それならそういう趣旨でという法務省案を示された。日弁連としては大体その法務省案ならよろしかろうということで法務省に一切をお預けしました、最終的に。そうすると、最高裁がそれに対してさらに、いやそれでわかったけれども、もう一つ覚え書きをつけてくれ、やはり臨司意見書の協議事項を協議しても、協議がまとまらない場合は原案執行権ができる、原案執行ができる、こういう一札をさらにそこへ入れてやってくれ、こういう最高裁から最終的に申し入れがありまして、そこまで最高裁こだわるならこれはとても無理ではなかろうかという、最高裁のその申し入れのままこの三者協議は残念ながらとだえた。  しかし日弁連としては、できるだけ法曹三者が国民のために、ことに重要な司法制度改正するのにこれは大いに協議していただく、これはけっこうである、もう積極的にそれは本年度も協議のひとつ場をつくろうじゃないか、この努力は日弁連の執行部としてやろうということが本年度の強い方針としてきまっております。
  35. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから藤井参考人にお伺いいたしますが、いま江藤先生のほうから本調停改正について日弁連の反応について若干御批判があったわけでございますが、日弁連がこのことについて反対意見を表明していらっしゃるということは、衆議院段階においてもいろいろと議題となっておるわけでございますが、最近の五月二日に日弁連の全国理事会で本調停法案について新たに意思表明がなされたということを伺っているわけでございますが、その内容など若干御説明いただきたいと思います。簡単にお願いしたいと思います
  36. 藤井英男

    参考人藤井英男君) その全体理事会で決議した内容をちょっとお配りする——してないかもしれませんけれども、結局、これは先ほど申しました二点に強く反対をするということでございます。本来なら、これは五月二十五日に総会がございますので総会決議案として、各地から出ているので——総会決議では時間的にいま大事な法律審議段階に入っているから、むしろこの全体理事会でこれを本日満場一致決議しようということになりまして、緊急的にこの間決議になったわけであります。なお従来、全体理事会、御承知のように日弁連はそう官僚システムでございません。きわめて自由な討議がなされます。全体理事会も必ず反対論も出る、批判論も出る。ところが、この決議については、ふしぎに反対、批判の意見は出ませんで、むしろ満場一致、強い地方のほうからも支持があった。ぜひこの段階でやるべきだ、こういうことでこの決議ができたわけです。
  37. 佐々木静子

    佐々木静子君 江藤参考人にちょっとお尋ねしたいのでございますが、これは裁判所職員組合、全司法が強く反対しておるわけでございますが、その反対の論拠の一つに、調停委員が事実調査についての権限を持つようになれば、特に家事審判法におきまして家事調査官ですね、調査官のプロフェッショナルな調査権とダブってくるのじゃないかということで、主として家庭裁判所調査官がこの点について反対意見を表明しているわけでございますが、江藤参考人はそういう点についてどのようにお考えでございますか。
  38. 江藤价泰

    参考人江藤价泰君) 実は私、あまり家事調停のほうはよく知らないのでございますけれども、確かにいま言われたように、家事調査官の調査権というものとオーバーラップしてくるということはあると思います。ですから、また特に専門的知識云々ということでうたわれているわけですけれども、そういたしますと、その面から見ても、かえって鑑定人的な役割りを持たされてくるのではないだろうかというように、他面また危惧するところでもあるわけでございますけれども。
  39. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは最後に藤井参考人に伺いたいと思いますが、本改正が、これは調停委員がもっぱらいままでの、現在の調停法によりますと、もっぱら調停委員奉仕に依存してこの調停というものが進められている、非常に経済的に調停委員に報われないお仕事として調停に関与していただいているということから、この調停委員待遇改善するというのがこの本改正のうたい文句になっているわけでございますが、これは日弁連も、もちろん待遇改善については御異論ないどころか、かねてより待遇改善を御主張なさっておられたとおりだと思うわけでございますが、これが日当増額というものについて、いま先生のほうで、いまの調停法で日当増額は可能であるというお話がございましたので、その論拠を若干お伺いさしていただきたいと思うわけでございます。
  40. 藤井英男

    参考人藤井英男君) いまのと関連しまして、先ほど委員手当だって支給できるということですが、これは時間の関係で詳しく申し上げませんが、今回の改正案で、たとえば民事調停法の九条ですね、これはちゃんと手当を、最高裁の定める手当支給、この九条——八条がなくても、われわれ九条で手当支給できるというこれはもう考え十分持っているのです。だけれども、その点はいま御質問にございませんから日当の点で申し上げます。現行法、調停委員日当の額につきましては、民事調停法では九条で最高裁が定めるということになっております。それを受けて調停委員規則の十条で「日当の額は、一日当たり千三百円以内において、裁判所が定める。」、こういう規定がございます。この額は、その調停委員規則で定められている額は旅費法で定める内閣総理大臣の旅行日当と同額である、現在は千七百円だということで、それが最高限だというふうな説明当局によってなされております。この旅費法の日当というのはあくまで実費弁償という性格を持っておるんでございますが、ところが、日当というこのことばですが、法令用語はこのような旅費法で定める日当に限定されてはおらないわけでございます。たとえば、証人とか参考人、あるいは鑑定人、国選弁護人らに対しても日当というものがちゃんと支給されております。かなりの額でございます。そういう日当は出頭雑費の実費弁償のほかに出頭による収益の喪失という補償の要素が入っておる、そのことを衆議院勝見部長もはっきりおっしゃっております。そうしますと、日当には二通りあって、旅費法の日当とそれからそれ以外の、特に根拠法を定めれば、そういう日当ということで限定しない額を支給できると、こういうふうに法のたてまえはなっているわけですね。そうしますと、先ほど申しました証人、参考人、鑑定人、国選弁護人の日当の額というものはそれぞれ根拠法で支給しておりますので、現行調停委員に対する日当も、現行法九条のたとえば表現を少し変えれば、これ十分可能である、それを受けた調停委員規則で日当の最高額というものを引き上げる改正をすれば幾らでも日当の額の引き上げはできるのじゃないか、このようなふうに解しております。それですから、私ども申し上げたいことは、待遇改善のためにもう少し法技術的なくふうや努力をして——そういうことをしないで直ちに調停委員身分を変更して当初からの公務員にしないと改善ができない、これがおかしいと思うのです。もう少し、幾らだって専門家でいらっしゃる者がくふうすれば、われわれ少し考えても、身分をこうしないとできない、あるいは事件外職務を拡張しないとできないなんという、そういう八条がなければ九条が改正できない、九条の日当というものが旅費法に押えられちゃうんだと、こういう根拠はきわめておかしいと思うのです。そういう点、もう少し当局で御研究願えれば、このような八条というような問題のこれがなくても十分待遇改善できる、こういうようにわれわれ考えております。
  41. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ、もう一つ最後に、この民事調停法改正案の八条全部の削除という御要望が日弁連から先ほどの御意見にも出ておるわけでございますが、この八条の二項、身分に関する問題として、この任免権者が最高裁判所になるということも中央集権的で非常に好ましくないと私も思っているわけでございますが、この八条一項の問題でございますが、「嘱託に係る紛争解決に関する事件関係人意見聴取」、これは日弁連とすると、いままでのように受命裁判官とか、そういう制度で十分にまかなえるのではないかというお考えと承っていいわけでございますか。
  42. 藤井英男

    参考人藤井英男君) そうでございます。
  43. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務」ということについて日弁連はどのように解釈をしておられるのか、そして、解釈しておられることの中で、これならかまわないであろうと思われるような事務があるのかどうか、あるとすれば、それをここで最高裁規則に譲らずに法律で織り込んでいくということもお考えなのかどうか、そこら辺の御意見を聞かしていただきたいと思います。
  44. 藤井英男

    参考人藤井英男君) 隔地者間の問題につきましては、いまおっしゃったとおりでございます。そのほかの、たとえば隔地者間の関係人意見聴取とか、それから専門家として意見を述べる、その他最高裁の定める事務ということでございますが、それは衆議院段階における説明によりますと、事実の調査に限定するんだ、規則でそうするんだと、こういうような御説明をされております。日弁連としましては、このような事件を離れて、事件の本質に、当事者の言い分や何かを十分聞かない、たまたま専門家であるというようなこと、あるいは離れておって事件を十分聞かない第三者がこういうようにやすやすと、どんどん裁判所の命令で意見を述べたり、それから意見を聞いたり事実調査をされる、これは根本がおかしいじゃないかと言っておるわけなんですね。それで、先ほど竹下先生は、そういう面でサービスになるじゃないかというようなことなんですが、これは幾らでも現行法で方法があるわけですね。隔地者間の場合は、向こうの裁判所に頼んで、それで向こうの調停委員会——調停委員会というものは、これは裁判官と両方で構成されますから、一人の調停委員ということよりかなり公正が担保されてくるわけなんです、聞いていただくような場合。それから事実の調査。たとえば家事審判法なんか、もう優秀な調停委員がいまおるわけですね。そういう制度が十分あるのに、わざわざこういうふうに一人の中の調停委員に、しかもその事件担当しない者にそういう事実の調査を命ずるというようなこと、これはきわめておかしいと思う。だから根本に、民調法八条あるいは家事審判法二十二条の二というのはどうも構想がおかしくないかと、こういうのが根本の意見ですが、なお、いま言われた、その他最高裁の定めるという不定量事務、これにつきましては立法上もおかしいと思うのです。前の二つが並べてあるのですね。関係人意見聴取とか、それから専門家として意見を述べるということ、明文で書いてある。なぜ——事実の調査に限定するんだという御説明ならば、ここへ事実の調査と書けばいいじゃないかという、どうしてそれが法で限定できないのか。最高裁は従来規則で定めるからそうしたいんだとおっしゃるけれども、今回、こんなに問題になっているんですから、いいじゃないかと思うのですが、ところが、それはさっき言ったように、大前提がどうもおかしいということで、われわれはむしろ民調法の八条全体、それから家事審判法の二十二条の二全体、これ自体きわめておかしな構想であるということで反対しているわけです。
  45. 佐々木静子

    佐々木静子君 どうもありがとうございました。  もっとお尋ねしたいんですが、持ち時間がきましたので、私の質問終わりたいと思います。
  46. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 佐々木委員から詳細な御質問がありましたので、ごく簡単にお尋ねいたしますが、   〔委員長退席、理事佐々木静子君着席〕 まず、曾我先生にお伺いいたしますが、御承知のとおり、現在でも担当事件については公務員という資格を持っておるわけでありますが、これを非常勤公務員にしたからといって、これはいままでと異なって官僚主義というか権力主義というようなことにはならないと、自分としてはそういうようなことはないということをさっきおっしゃっておったわけですが、これは非常にけっこうなことだと思っておりますが、やはり私はいろいろその点も問題だと思っておりますから、それは非常に、あなたの御意見はよくわかりますが、そこでもって、他の調停委員の方はあなたと大体同じようなふうな考えを持っておるであろうか、それとも非常勤公務員になったから、自分はいままでとは特に違ってえらい者になったと、権力主義というか、あるいはまた官僚主義になるというようなふうにお考えになるか、そこの点をお伺いいたしたいのと、もう一つまとめてお聞きいたしますのは、日調連の先生方は、やはりこれを改正することに、今度の改正をすることに多少は反対もあるかもしれませんけれども、大部分の者としては賛成の方向でしょうか、それとも反対の方向でしょうか、その二点だけをお伺いいたします。
  47. 曾我益井

    参考人曾我益井君) お答えいたします。  初めの御質問に対しましてでございますが、これは絶対にそういうふうな非常勤公務員として与えられましても、官僚的になったり独善的になるというような御心配はさらさらないものであるということを確信を持っております。そういう確信に対しましては、今度のこの改正法につきまして、私どものほうでは印刷物に、複写印刷をしまして、全委員とまではいきませんでしたかもわかりませんけれども、年度の初めでございましたので、各委員の会がございました。そういうふうなときに会長がそれぞれ説明もいたしましたし、その口調連のほうからの十六問十六答というようなことを印刷しましたものによって会員に、委員に周知徹底をいたしました。そういたしますと、こういうふうな改正を加えられましても、私ども委員としては従来のとおりの精神に何ら異同はしないというその終局に至りまして、それでその皆さんの意見をまとめましたところ、この改正についてはそういうふうなことになりましても非常勤公務員になったからといって、そのことの権力を振り回すようなものでもないし、またそういうふうなことではないという信念に基づいて、先ほど来に申し上げましたようなことでございます。それで、その日調連意見といたしましては、その臨時調停制度審議会には私どものほうの会長は役員をいたしておりますし、上京のつどその審議会日調連としての意見もいろいろとお話し合いになりましたことをお帰りになられますと報告を受けております。その報告に対しまして、また意見聴取されます。そういうふうなやりとりがありまして、まあほかのところもたぶん私はそうであろうと思いますが、大阪委員としては全員がそのように感じ、また今後ともそうあるべきだという信念に何らやぶさかでないものを持っております。
  48. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 次に、藤井先生にお聞きいたしますが、実は先日私の部屋に日弁連の幹部の人が数名見えまして、そしてこれに対する反対の御意見をいろいろお話があり、私も長い間御意見を伺い、また私のそのときの気持ちを申し上げたわけですが、その中に、先ほど先生からもお話がありましたようなふうに、この昭和四十五年の五月の十三日の参議院の附帯決議のことで、これはいわゆる裁判所法務省弁護士会の意見を調整しなければいけないという趣旨附帯決議の問題が出まして、そして、自分たちには何も要請——自分らというか、日弁連のほうには何も要請がない、十分な連絡がないんだというようなふうな非常に御不満なことがあったから、それで私はそのときに、これはほんの考えつきですけれども、こういうことも言ったわけなんです。それは、いろんな世の中のことには賛成もあれば反対もある、ことにまた国会でも、予算にしてもその他法律にしてもやはりああいうようなふうなぐあいでもって賛成もあれば反対もあって、ずいぶんひどい反対もあってもそれが国会で一応通れば、たとえ反対であってもそれが国民を拘束する一つのりっぱな法律になるんだから、あなた方のほうでもって、いろんな最高裁やあるいは法務省が考えを持っておって、それに反対でも、あくまで絶対反対だということをおっしゃらずにあなた方の意見は十分、要するに述べて、相手方に反省を求めて、そしてりっぱな制度をつくるようなふうにすることはいいけれども、どこまでも徹底的に反対だということは好ましくないんだがということを私はそのときに、そのときの率直のことばをそのときに申し上げたわけなんですが、そこでそれを繰り返すわけでもないですけれども、この参考附帯決議を見ますと、こういうようなふうなことも書いてありますが、「法曹三者(裁判所法務省弁護士会)の意見を一致させて実施するように努めなければならない。」というようなふうなことが書いてあって、何だかちょっと、要するに非常に確定的なものじゃない、多少要するにそこへ何かゆとりのあるようなもの、この決議は実は私どもも一緒にやったわけなんですが、そこでもってこれを法曹三者の意見がまとまらなければ法案を提出してはならないというようなふうな非常な拘束力のあるものでなしに、これを「努めなければならない。」と、いわゆる、そしてどうしても話がつかないときは、これは提案権を持っておる法務省のほう、最高裁あるいは法務省のほうがこれを提出して、また国会でもって賛成反対でこれはまあ決議をするというようなふうなことに私はなるべきだと、こう思っておるわけなんです。  いわゆるつとめなけりゃならぬて、それを先生のさっきのお話のようなふうに、全然つとめなかった、一口も一言半句もなかったということならば、これは要するに、法務省なりあるいは最高裁のほうがそういうできがいいとは言えない、これは手落ちじゃないかというようなふうにも、まあ私は考えるわけですが、しかし一応それから法務省のほうにまた最高裁のほうにもまあいろいろ聞いてみたのでありまするが、これは皆さん御承知のとおりに、参考人の先生からもさっきちょっとお話があったが、一月の十九日に日弁連担当の江尻先生その他の会に裁判所やあるいは法務省のほうから出まして、この趣旨の御説明——まあもちろんこれは提案前でしょうが、趣旨の御説明をしたと、これはしかし十分な了解は得られなかったのでしょう、さっきのお話でもって。さっき、それは黙ってつんぼさじきでしたというわけではなくしてそうしたんだと。それからなお、いわゆる臨時調停制度審議会日弁連のほうから御推薦になった三人の弁護士さんがお出ましになっておって、これ十分検討なさっておるわけなんです。そうして最終的にこういうようなふうな案がきまったわけであって、これは日弁連は全然もう関与はしないぞ、知らぬぞというわけでもない。やはりこういう制度であれば、日弁連が御推薦になった三人の弁護士の先生が御出席になって、その中にメンバーとして入っておるわけなんですから、そこでもって全然無関係で寝耳に水だというようなふうなわけでもないのじゃないか。それと同時に、さっき先生のお話の中にありましたようなふうに、まあいまから何年前でしたかね、四、五年——五、六年前に臨時司法制度調査会というのが長い間、二年かかってやりましたが、私もやはり初めからしまいまであのメンバーであって、弁護士会の島田先生もそうじゃなかったかと思うが、何か弁護士会から神戸の先生も入っておりましたが、そうしてとにかく臨時司法制度調査会は満場一致でもってあれはまとめたわけなんです。そこでもりて日弁連はもうこれは徹頭徹尾あれには反対だというようなふうないま態度をとっておられますが、ところが、やはり最高裁としては、二年がかりでもってつくったああいうようなふうな制度であるから、全然あれは抜きにしてしまって、無視して、そうしてまるであとは真正面反対のことを自分のほうでもって何するということは、よほどのそこに決心が必要なんです。だから大体あの趣旨に沿うようなふうに、やっぱり努力をせなけりゃいけないんじゃないかというようなふうに最高裁として考えるのは当然だと、まあ思っておりますが、そこでもって一応その趣旨に従ってあなた方のほうに、最高裁のほうから日弁連あるいはまた法務省のほうから日弁連のほうに三者協議を持とうということでもって、さっきのお話でいろいろな折衝があったけれども、あの臨時司法制度調査会のあれを基礎にするようにあれば、基本にするようにあれば、もう反対だというようなふうのことのお話は先生からさっきあったわけですが、やはり現在先生はそれをどうお考えになっておるのか、あまりくどいことを申しましたが、意見がまとまらなければ、三者の意見がまとまらなければ絶対法案を出しちゃいけないというようなふうな御意見か、それとも要するに意見がまとまらなくてもそれはやむを得ないけれども、意見を求めることについて十分な手段を尽くしておらぬじゃないか、その点が手落ちじゃないかといってそれをお責めになるのか、その点を一応伺っておきたいと思います。
  49. 藤井英男

    参考人藤井英男君) まあともかく参議院が最終段階で、われわれこの調停法には重大な関心を持っておりますので、多少ことばが強かって、ただいま先生のおっしゃるような響きを持ったかと思います。私の言う趣旨は、日弁連協議をしなかったから、それで国会に出せないとか、法的拘束力がないという、そういう趣旨ではもちろんございません。その真意は日弁連をもっと尊重してもらいたい。こういう大事な改正をするんだったら、今回だって一回説明会があっただけ、正式には。それで最高裁日弁連との間には、従来、裁判所弁護士会連絡協議会というものをお互いに持とうということで持ったんです。そこへも全然出されない。それから法務省でも説明会されましたけれども、もう少し日弁連協議を求めようと思えば、これについてどうだろうというお求めになるのならいいですが、もう意見書その他出ているからわかっておると、協議しなくてもわかっておるというふうな御意見で求められぬ。これははなはだ遺憾であるということです。今後はもう少し日弁連を尊重してもらいたい。これは法曹の中で裁判所は二千人、それから法務省の検事さんはもっとたくさんですが、もう弁護士は一万人おります。そういう多くの法曹のおる団体でございまして、これは直接加入、全国。こういう意見は、いまのようにもう反対はわかっているから協議しなくてもいいんだと、今回のように予算が通っているからもう間に合わないんだと、こういうようなことでは今後困るでないかと。で、さきの附帯決議精神もおっしゃるような精神。まずもう少しそういうことを尊重して、国会でもせっかくああいう附帯決議をいただいているんだからということでございます。  それからあと臨司意見書の点は、先ほど満場一致で可決になったとおっしゃいますが、これちょっと御記憶違いじゃないかと思います。簡裁の判事あるいは副検事等に法曹資格を与えるとか、そういうような点では強く審議会段階反対をされたんでないでしょうか。そういうことが記録に残っております。それから日弁連はこれに対して、この臨司意見書が出て、間もなく全面的に批判書というものを採択しております。その批判書でずいぶん検討したところ、この臨司意見書は法曹一元の基盤を培養すると書いてある。基盤を培養すると書いてあるのに、実際最高裁がおやりになることは、基盤培養とまるで——法曹一元というのは、できるだけ弁護士からなれるようなふうな体制をつくってもらう、それから、その裁判官をできるだけ一律階層性というものをなくするというのが、御承知のように英米の法曹一元制度です。待遇とか地位がなるべく裁判官には階層を設けないようにする、官僚性、集権的でない、裁判官会議が重視される。これが法曹一元で、そっちに向かってこれを実施されるならいいけど、どうもいまの最高裁の、われわれのほうから見てみますと、司法政策というものが逆なほうへ、そういう法曹一元の基盤を培養せよという臨司意見書の基本が書いてあるんですが、逆のことをどんどん実施される。だから、われわれその実施に反対だということになったわけです。その点ひとつ御了解願いたいと思います。
  50. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 次にお尋ねいたしますが、先日やはりこういうお話もあったのでありまするが、この中に、やはりここにもあるようでありますが、非常勤公務員にするということが絶対まあ反対だと。その理由には、おことばの中に、官僚主義になるとか権威主義になるとかいうような御趣旨のお話もあったのでありますが、どうなんでしょうか、いま弁護士さんが考えてですね、一般公務員を権力者だというようなふうに考えて尊敬しておるのかどうか、弁護士さんがですよ。そうしておるのかどうかと。それはある一部の者は何かそういう権力を持っておる人もあるかもしらぬけれども、おおむね弁護士さんが一般公務員をそうまで権力者だと思って尊敬しておるのかどうかと。それから現在の弁護士さんから調停委員になっておる人が、非常勤公務員にしたからといって、いままでと自分の考えが違って、そうして自分非常勤公務員になったんだから、非常にまあいままでとは全然違う人格を持っているのだと、そうして官僚主義になるとかあるいは権力主義になるとか、そんなぐあいに気持ちが変わるようなふうにあなたはお考えでしょうか、どうでしょうか。いままでの、なっておる弁護士さんのお考えを……。  そうしてこれは特に、もう一つつけ加えて申しますが、これは弁護士さんのことをいまお聞きしたわけでありまするが、私は現在の一般国民の考えから申しますると、非常に意識が、国民意識が向上してまいっておりまするから、まあ昔の官尊民卑の弊害のあったときは、官僚を非常にまあ尊敬しておったでありましょうが、いま一般国民は官僚をそんなぐあいに、要するに、だから非常に権威者だとも何とも思って尊敬しておるわけでも何でもないわけですが、これを非常勤公務員にしたからといって、非常にそこが意識的に変わってくるだろうかどうかということが私はやはり疑問なんですが、そういう点はどうでしょうか。まず弁護士さんがどう思っておるか。それから一般国民がどう思うておるか。その二つの点についてお聞きをいたします。
  51. 藤井英男

    参考人藤井英男君) 私どもが今回の改正反対しているのは、いままでの制度をこういうふうに当初からの任命制、こういう公務員にする必要が全然理由がないじゃないかということ。ことに、それとこの八条が結びついて不定量——担当事件を従来担当している以外にまた、担当事件外のいろいろなこういうふうな職務を課せられる。そういうことをする必要がどこにあるか、従来のままで運用の改善をすればいいんじゃないか、選考方法とかそういうものをですね。調停委員の質を高めるとか老齢化、固定化を防ぐ、待遇改善すると、こういうことで十分まかなえるのに、どうしてこういうふうなことをおやりになるのだということで、何もこういうことをやったから権威主義的になる、官僚になるというふうなことを意識、そういうようなことを強く言っておるわけじゃないのです。今回こんなふうな改正をされることが非常に官僚的発想じゃないか。ことに最高裁任命にするというようなことをさっき申し上げましたが、むしろ調停委員はローカルであっていい。どういうふうにして、なぜそういうふうにこういかにも権威主義的なそういう発想を持たれるかと、その点を非難しているわけです。もちろん一般国民も私はこの理由を的確にしたならばどうもおかしいと言う国民方のほうが大部分だと思います。やはり調停委員というものは従来のような選考方法で、従来のように裁判官は法律専門、調停委員はしろうとの感覚、しかも時代に合うなるべく今後は近代的な感覚を備えた調停委員、これを選ぶ努力をする、それは運用によってできると。ただ待遇改善だけはさっき言うように多少法律、規則をいじらなきゃなりません。そういうことはわれわれも必要であるということを言っておるのでございまして、別に役人になってどうこうというようなこと、そういうことをあんまり強くは言っておりません。
  52. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 これも先日私よく話したわけでありまするが、八条と九条の関係でもって、私のうちに見えられた方は、やはり八条を変えるから、八条をこういうようなふうなぐあいに変えるから、それでもってやはり九条が変わってくるのだと、九条と八条は切っても切れないものだというようなふうな御趣旨のお話があったから、それで私は、それはそうも考えないと、これはいわゆる最高裁がそれを任命するというようなふうなことがあっても、それは私は任命するから、それでもってこれをいままでの日当手当にする、要するに、だから最高裁任命じゃなけりゃこれができぬというようなふうなわけには考えないがと。しかし最高裁任命することがいいか悪いかということは、八条と九条を切り離して別個にぼくは判断すべきも一のだと。そうして何ぼ最高裁任命するからといって、全国の調停委員はだれも最高裁の人は知っておる人は一人も——一人もないと言っては語弊があるかもしれぬが、まあ大部分の人を知らないわけなんだ。やはり地方のほうに頼んで、地方裁判所か何かに頼んで、そうして適任者をピックアップして、その中からするわけなんだから、それでもって最高裁がそういうようなふうな状態だから、それにしたからつてそうたいした弊害はないじゃないかということと、それから九条との関係は全然別だということでもって、いまあなたのお話もあったわけですが、もしなにするならば、九条を変えるために八条も変えるんだというふうな御趣旨であったから、私はこれと関連する必要はないんだということを言ったわけなんですが、そして今度の九条では御承知のとおり、いままではただ旅費と日当とそれから宿泊料ということになっておったのを、これに対して手当を加えたわけでありまするが、私は、もし変えるならば手当だけをここにまた入れて、八条というものは抜きにしてしまって、あなたのさっきのお話のように、八条はもう削除してしまって、最高裁任命するのがいかぬという絶対結論が出ればこれは削除してしまって、九条の中に手当ということばを二字入れれば私は差しつかえないんじゃないかと、こういうようなふうにも考えます。  ただこの九条の点をいま考えてみると、さっきからあなたもいろいろお話があったのでありまするが、やはりこれは何か変えなけりゃならぬなら——現在の公務員の旅費法の中に内閣総理大臣とか、あるいはまた、最高裁の長官の日当は、現在のこれは旅費法の中でもって一日が千七百円になっております。そして今度は調停委員の方にはこれを手当ということでもっていろんなものをその中に含めて六千五百円ということにして、普通の日当とはまるで違ってしまった、そこへ大きな金額をふやすわけなんですから、それでもってやはりいままでの状態で、このままでもってただ金額をここに増しさえすればいいじゃないか——いままで千何ぼだったのを六千何ぼにするというわけにはやはりいかないんじゃないかと、それでもってこれを変えたからといって、この中に手当というものを入れたからといって私は相当これを不都合だというようなふうにもならないのじゃないかと、こういうようなふうにも考えるのだが、その点どうでしょうか。
  53. 藤井英男

    参考人藤井英男君) 先生のような御解釈ですと、私、八条——民調法ですね、家事審判法は別にしまして、民調法の八条が削除されるならば九条はそのままでもいいと思うんです、もう十分そのような御解釈で。これはたしか衆議院段階における青柳代議士の修正案にもやはり委員手当支給するというのを立法化する、こうなっています。九条をそのままでいいという先生の御解釈のようですと、私はそれでいいと思うんです。ただ先ほど一歩譲ってと言ったのは、そこなんですが、どうも現在の調停委員制度では給与法にいう委員と解釈するのが無理だというふうな盛んに当局側の御説明があります。それおかしいと思うんです、私は。おかしいと思いますが、それを一歩譲りまして、そうやりましても日当増額ということは可能であります。日当は先ほど言いましたように二つあるんです。旅費法にいわゆる実費弁償、内閣総理大臣が最高千七百円というそういう旅費と宿泊料と並ぶ日当、実費弁償というもの、それからほかにさっき言ったように、証人、鑑定人、参考人、国選弁護人、日当ということばは別にある。この日当額はもっと高いです。これは実費弁償のみならず、先ほど言ったように、補償の要素が入ってくると、これは衆議院勝見部長はそう御説明になっている。だから、そちらのほうの日当というそういう解釈で立法的に技術的に解決すれば十分待遇改善できるじゃないかと、こういうことなんです。
  54. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 大体あなたのお気持ちもわかりましたが、何か法律改正するか、いま言う九条のこの手当のことでありまするが、改正するか、別な法律改正するか、あるいはまたそうでなくて、これをいままでとはまるで違った観点からこれをもっと要するに幅広く解釈して、いままでの日当を今度は六千五百円に上げるというようなふうないわゆる拡張解釈をすればあるいはいいかもしらぬ。それは法務省の人がだれかお答えになったんだけれども、それがはたして適当かどうか、そんな場合に拡張解釈することがわれわれとしてはにわかにそういうやつはやっぱり賛成できないような気持ちもします。やはりこれすっきりその中に、ただ日当だけじゃなしに、普通の、さっきあなたの言うような裁判所に出る証人とか参考人とかそれの日当は御承知のとおりごくわずかでありまするが、それに比べたならば非常に段違いに違うわけでありまするから、やはりここでもって、どういう法務省の役人の人がだれか、部長さんか局長さんか知らないけれども、答弁したということでありまするが、私は、そうでなしにここですっきりやはり法律改正する必要があるんだと、こういうようなふうにすることのほうが正しいんだと、ただ法律をそんなぐあいに幅広く便宜主義にやることはあまり適当でないというようなふうに、これは私の気持ちでありまするが、そう思います。そうじゃないと、そんなことを言ったからといったって、こんな考えは間違いじゃないかといって国会で必ず問題になると思います、これは私の考えだけですけれども。——よろしゅうございます。
  55. 原田立

    原田立君 佐々木委員並びに後藤委員らいろいろと質問がありましたので大体大かたのことをお聞きしたように思うんでありますが、二、三つけ加えて、念のためというふうな意味を込めて御質疑をいたします。  第八条の二項に「その任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。」と、最高裁任命するという点について、藤井参考人のほうからは、こんな最高裁判所なんかじゃなくて、地裁及び家裁のそういう任命でいいんじゃないのかと、現行法のままでいいんじゃないのかと、また調停委員そのものはいわゆるローカルな性格のものなんだから最高裁まで持ってこなくったってもいいんじゃないのかと、こういうような御意見がありましたが、それをなおもう少し深めて御説明願えればありがたい。またこれについて、そういうふうな考え方について竹下参考人のほうでもどういうふうにお考えになりますか、お答えいただければと思います。
  56. 藤井英男

    参考人藤井英男君) その点、先ほど申し上げたところですが、少し補足いたしますと、最高裁判所任命にするというのは、御承知のように、今後そういう規則でそうすると、こういうふうな御説明でございます。それで、どうしてそうするんだという根拠衆議院で御説明になっていますが、裁判所職員の中で事務局長とか首席書記官などが最高裁任命だから、それとのバランス、つり合い上そうしたいんだと、こういう御説明に尽きているんですね。そうすると先ほど言ったように、首席書記官なり事務局長というものは、これはもちろん全国的に考えて横に転任をさせなきゃならぬ、だからどうしても最高裁が人事をにらんでいて全国的平均のそういう事務局なりそういう職制をつくると、これは十分理由のあることです。ところが調停委員は何ら転任とかそういう問題はございません。そういう問題がないばかりか、むしろ地方地方によってローカルに、この事件担当してもらうのにこの人が適当であると簡易に指定できるわけですね、従来の制度だと。そういうもののほうがむしろ実情に合うんではないかということです。それから最高裁任命になるとかなり時間もかかりますし、どうして最高裁任命するのか、中央集権的にするのかということがわれわれわからない。従来司法委員だって家裁の参与員だってみんな地裁、家裁の任命ですね。調停委員だけどうして最高裁任命にするのか。大体同じような仕事というようなことで、この程度は何も変える必要ないんじゃなかろうかということが私の意見です。
  57. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) ただいまの御質問は八条二項にございます「民事調停委員は、非常勤とし、その任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。」ということで、今回の改正によって民事調停委員家事調停委員任命最高裁判所がするということにしたことについてどう思うかということでございますね。率直に申しますと、私はこの今回の非常勤公務員化ということが必然的に最高裁判所任命ということに結びつくのかどうかということについては、必ずしも十分納得がいっているわけではございません。ただ裁判所部内におきましては、いま藤井参考人からも御指摘のありましたようないろいろな人事というものがございますので、やはりそれとのつり合いということもあるのではないかというふうに考えます。したがいまして、もしそういうことからいって調停委員も今回身分が変わり職務内容も変わったということによって、従来の地家裁の段階から最高裁判所に変えるということであれば、それは別に不当なことではないであろうというふうに思います。
  58. 原田立

    原田立君 問題の非常勤公務員化するという問題でありますが、先ほどの御説明の中にも、現行の調停委員の方も、仕事担当をすれば臨時の公務員になる、やめればまた一般に戻る、そういうのと、非常勤公務員化というのはそんなにちっとも大差がないんじゃないかというような御意見が先生からあったわけでありますけれども、日弁連のほうの御意見等は、基本的にその性格を変える問題でこれは見のがしがたいという強い御意見であるので、どういうものかというふうに私しろうとでありますから先ほどからお伺いしているわけなんですが、また先ほどの曾我参考人のお話では、そんな非常勤公務員になったっていまの精神とちっとも変わりはないんだと、そんなに変わる変わると考えるのは少し神経こまか過ぎるんじゃないかというような意味合いに拝聴したわけでありますけれども、もちろん法律がひとり歩きするということからいって細部にわたって神経こまやかに配慮しなければならないことはぼくは当然だろうと思うのでありますけれども、さて非常勤公務員化になるのと、現行法の臨時公務員になることですね、事件担当が終わればまた一平民に戻る、一民間人に戻るということ、そういう大差があるのかどうか、そこら辺のところをまた藤井参考人並びに竹下参考人からお伺いできれば幸いだと思います。
  59. 藤井英男

    参考人藤井英男君) 先ほど来申し上げますように、もし従来とあんまり大差がないというのならどうしてこういう改正するんでしょうか、従来のままでいいじゃないかと思います。選任方法としては候補者として指定する、これは正確な辞令を私も見たんですが、何年度の調停委員となるべきものとして選任すると、こういうことばになっておりますね。その中から調停委員に一番適当なふさわしい人を指定してなっていただく。それで二つは二つできる。それで事件が終われば一回のそういう公務担当を解かれる、これでいいじゃないですか、十分民主的で、これが最も国民にむしろ親しみがあって。どうしてこの制度が悪いんでしょうか。これをどうして一挙の、一律の任免にして、おまけに最高裁まで持っていって辞令もらって任命する、もう一生懸命私は衆議院段階からどうしてこんなふうにするんだろうと、待遇改善ということを言われているが、待遇改善についてはそんなことをしなくたってできるんじゃないか。それからほかの理由もどうもいろいろ考えてもいろいろある。それから先ほどちょっとほかの参考人のことばで反駁して——反駁というわけじゃないが、ちょっと多少私考えておったんですが、竹下参考人がおっしゃったんですが、夜間調停とか臨時にできるんじゃないか——これはいまだってできるんじゃないでしょうか。同じだと思うんです。ちっとも国民へのサービスというものは——いやこれはやり得る、だから私運営だと言っているんです。運営によって幾らでも可能である。むしろこういうことが一般化してできないのは裁判所職員の勤務関係、労働基準法あるいは公務員法、そういうような関係でなかなかそれが実現できない。むしろそういうことを制度化してそういうことを解決するならもっともっとサービスが強化できる、現在の制度で十分できます。どうしてそれを非常勤公務員にしなければそういうサービスが強化できないのか。  それで、先ほどの御説明でちょっと、私の尊敬する竹下先生ですけれども、優秀な調停委員を得るには待遇改善——非常勤公務員にして待遇改善をすれば優秀な調停委員が得られるという御説明ですが、それはまさしく前提が、さっきのようにもう少し検討してくださればこれは解決する問題ではないかと思うのです。
  60. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) ただいまの御質問現行制度とそれからこの改正法のもとでの非常勤公務員化というものとで、私が先ほど、それほど実際には違いがないんではないか——身分の点でございますが——というふうに申し上げて、それがどういう観点から見て違うか違わないかということでございますが、一がいに違うとか違わないということも言いにくいかと思います。ただ私は身分という側面から見ますと、おそらく公務員法の適用の関係とかそういう面でも別に変わりはないのではないかというふうに思うわけでございます。政治活動の自由の制限というようなこともございませんし、兼業禁止というようなことも非常勤であればはずれておるということになるわけでございます。ただ時間的に、現在は事件担当している間だけということでありますが、今度は初めから非常勤公務員化ということになれば直接事件担当していなくても同様なことになる、同様な地位につくということになるだけでございます。ただ職務内容は、これは藤井参考人の言われるとおりたいへんに変わるわけでございまして、私はむしろ変わっていいんではないかということでございます。確かに運用で現在でもできるではないかという御意見でございますが、しかし、ほかの職員の労働基準法等との関係ということもございましょうが、しかし、事件を離れて職務担当しないということであれば、それは担当している職務については、あるいは場合によっては夜間にするということも可能かもしれませんが、初めからそこに調停委員候補者が行って一般国民が申し立てをしてくるのを待っているという制度的な裏づけはないということになる、そういうことにしなければならぬということはないということになるのではないかというふうに私は考えるわけでございます。
  61. 原田立

    原田立君 非常勤公務員と臨時公務員、そんなに大差はないんじゃないのかという、大差がないのであったら何も変えることはないじゃないかというこういう御意見、まあそれもそうだなという思いもしているわけですけれども。  ところで、先ほどから佐々木委員等の御質問によって大体日弁連の考えわかったわけでありますけれども、こういう重要な改正をいわゆる待遇改善というようなものとくっつけてやることに対する不満さというものがあるんじゃないかとぼくは思うわけでありますけれども、片方であめで片方でむちでというふうな感じのように先ほどから聞いているわけであります。まあむちであるかあめであるかその点ははっきりいたしませんけれども、この待遇改善ということについては私は全面的に賛成、四人の先生方も全面的にその点は賛成であろうと思うのです。で、法解釈、法の運用ということを藤井参考人言われておりますし、多少改善すればいいんじゃないかという、それで十分ことは足りるのであって、非常勤公務員、いわゆるいまの制度を変えなくてもできるんじゃないかというようなことでありますが、これはまた後ほど当局のほうに聞いてみなければならぬ問題だと思います。藤井参考人が一番これは専門的に詳しく御存じだろうと思うので先ほどの話お伺いしているわけなんですけれども、できましたらもう一ぺん御説明いただければ幸いです。
  62. 藤井英男

    参考人藤井英男君) それは身分とそれから職務を変えなくても待遇改善だけはできる、そういうだけの法律改正なり、規則の改正をやれば場合によればできると。解釈上は多少無理だとするならば、そういうことです。なぜ待遇改善するのに身分をこういうふうに変えたり、それから職務を、担当事件外の職務まで担当しなければ待遇改善できないか。それから日弁連では決して少々じゃなくて、待遇は大幅に改善すべきだと、こういうふうに申し上げております。待遇改善についてはその身分の変更、このような身分の形式にしなくても、職務はこのように拡張しなくても、待遇改善だけで十分立法技術上のくふうによって容易に可能であり、容易である、こういうことを申し上げておきます。
  63. 須藤五郎

    須藤五郎君 いろいろ皆さん方から貴重な御意見を伺いましてありがとうございます。私、共産党の須藤五郎でございますが、まず江藤先生に三点にわたってひとつ御質問申し上げたいと存じます。   〔理事佐々木静子君退席、委員長着席〕  一々質問して答弁いただいてしておると少し時間がかかりますし、もう時間も切迫してきておりますので、かためて三問江藤先生にお尋ね申し上げたいと思います。  先生も御意見の中で述べられましたが、第一点は、法律案第八条二項で、調停委員を最初から非常勤公務員化することに今度の法案はなっておりますが、こういうことになりますと、調停制度上あるいは裁判制度上どういうことになるのか、もう少し詳しく御意見を聞かせていただきたいと思います。国民司法参加がなくなってしまうのではないかというような気持ちがするわけなんです。  それから第二点は、調停委員の中での弁護士の比率を見ますと非常に高いわけでございますが、法律案のように公務員化されますと、弁護士本来の在野性が失われて、いわば体制に奉仕する面との二足のわらじをはくことになる点を先生指摘されましたが、私はこれは重要なことだと思っております。現在司法の反動化が進んでおりますが、弁護士までもこれに組み込んでいくといったねらいのものであるのではないかと考えるわけでございますが、この点をもう少し説明をしていただきたいと思います。  それから最後にもう一点、法律案第八条一項は「民事調停委員は、調停委員会で行う調停に関与するほか、裁判所の命を受けて、他の調停事件について、専門的な知識経験に基づく意見を述べ、嘱託に係る紛争解決に関する事件関係人意見聴取を行い、その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」と、こうなっておりますが、この点で最高裁への規則の委任事項がほとんど無制限になっておる点につきまして、裁判所法との関係を含めまして御説明をお願いいたしたいと思います。まず江藤先生この三点についてお願いいたします。
  64. 江藤价泰

    参考人江藤价泰君) 先ほど申し上げたことの繰り返しになってしまうわけですけれども、最初は、非常勤公務員という場合に、確かに現在でも調停委員候補から調停委員になったときには公務員になっているということは変わりないと思うのですが、これは一般国民裁判所において調停委員調停という機能を営む以上万やむを得ざることだろうと思うわけで、何らの身分を持たない者が裁判所へ行って調停委員をかってにやるということはあり得ないわけですから、これは当然のことで、これは承認せざるを得ないことであるし、またそれによって決して調停委員とそれから当事者との同質性が失われるという性格のものでもないだろうと思うわけですが、今回のは非常勤公務員化されることによって、いわば公的な調停委員方々の意識とかなんとかという問題ではなくて、制度としてやはり日常的に非常勤公務員としての身分を持つということになってくるとすれば、変質がやはり起きるのではないだろうかということを私は気にしているわけで、その点から先ほど申し上げましたような弁護士との関連という問題がもう一つ出てくるわけで、弁護士はたまたま非常勤、現状のような形で調停委員になるという場合には、それなりの矛盾というのは先ほど申し上げたのと同じような形でないわけでありますけれども、日常的に非常勤公務員という身分を持つ場合には、やはり先ほど申し上げたような二面性を弁護士は持つことになってくるのではないかと思います。制度の問題として私は非常勤公務員というのは問題を提起するということになってきて、単に調停制度だけではなくて、弁護士制度、特にまた弁護士法二十五条等に「公務員として」云々というようなことが規定がございますけれども、そういう問題との関係でも、問題提起は非常に大きくなされてくるようになるのではないか。さらにまた国民司法参加といったことについても、やはり非常勤的な公務員ということによって非常に狭められてくるということになりますと、ますます現状よりも国民司法参加というのは後退してくることになるだろう。さらにまた八条の一項の具体的なこういったような鑑定人的な色彩等々の問題がある場合には、やはり国民司法参加ということがより狭められていくということになるのではないだろうかというふうに考えるわけでございます。簡単でございますけれども……。
  65. 須藤五郎

    須藤五郎君 江藤先生、私たちはね、もっと世の中が民主化されていくならば、一つの工場で労働者の間に起こる争いとか、まあ労働者の夫婦関係の争いとかいうものでも、労働組合の中でいろいろ処理ができていくというような、そういうことも起こってくると思うのですね、民主的にずっとなるならば。それでほんとうの調停精神らいったら、そういうことも好ましいことじゃないかと私は思っておるのです。しろうとですから、法律に関して、私法律的にことばを使うことはわかりませんが、まあ落語なんかにも、長屋の争いは長屋の家主さんが出てきてうまくさばいていくというような、こういうこともあるわけですね。そういう精神らいいますと、今度のこの公務員的な性格を与えていくという、公務員としての性格を与えていくということは、何か私は逆行していくような感じがせざるを得ないんです。それで私たちはこういう条項に対しましては賛成しがたいという気持ちを持っておるわけなんですが、先ほどから藤井先生の御意見を伺っておりましても、また江藤先生の御意見を伺っておりましても、やはりここに一番大きな危惧の念を持っていらっしゃるように私伺ったわけなんです。将来私たちが持っている危惧の念が全然ないというふうに考えられるものかどうかという点ですね。ひとつ藤井先生にも伺っておきたいと思いますし、竹下先生はそういうことはないという御意見らしいんですが、そういう懸念をどうしたら防いでいくことができるのかという点ですね、これをひとつ竹下先生の御意見も伺っておきたい。
  66. 藤井英男

    参考人藤井英男君) 先ほど私従来の現行制度を頭から任命制にした、はっきりした非常勤公務員とすることは理由がないということを申し上げまして、あまり変わりがないなら、なぜ変えるのかということを申しました。それをあえて変えようと、これだけ反対しているのにどうしても、同じじゃないかと言いながらこれを変えようとする、そこに私はやはり非常に何かあるのじゃないかと、これは日弁連のほうでもそこを非常に問題にしているわけです。従来の制度と同じじゃないかと言いながら、はっきりした初めからの任命制にしますと、非常勤公務員として任期をきめてやりますと、どうしても官僚制が一歩前進することはこれはもう言えますね、形式の上からも。それからあえてどうしても最高裁任命までしてこういうふうな系列にしようという、そこに非常な私は意図を感ずる。だから具体的にそれが権威主義とかなんとかという、直ちにそういうことがないにしても、現在のそのほかの司法政策一般と合わせますと、非常にどうもいまの最高裁はじめおやりになっている司法政策が私ども在野の者から見ますと、どうも権威主義的、それから中央集権を強化すると、官僚制を強化すると、こういう方向に大きな司法政策の流れが行っております。まあそう見ざるを得ない。これは現在でも問題になっております参与判事補の問題でもそうです。それから裁判官会議という、これは非常に民主的な制度でアメリカなんか非常に活躍されている。そういうものがだんだん権限が縮小される。それから具体的な裁判でもどんどん非常に交通事件なんか行政裁判化しております。こういう意味で、われわれそれを現在の司法政策がきわめて合理化政策をとっているということで問題にしておるわけですが、この調停制度にもそういうあれを感じるわけです。最近いろいろ聞く話ですが、裁判官が前は事件数をどんどん処理しろということで一生懸命やったと。ところが、どんどん控訴がふえ上告がふえるということで、最近は事件数を処理を急ぐんじゃなくて和解で片づけるようにと、こういうふうな雰囲気が相当あるそうです。それと同じように、どうも調停でどんどん訴訟になる事件を片づけて、それで調停委員をこういう官僚的系列の中に置いて、そうして調停事件でできるだけ事件を処理して、いまの司法の現状をそういうことでどうも糊塗されようとしているんではないかと。それでなければ何で、同じだ、同じだと言いながらなぜこんなにがんばられるのかと、どうしてこんなふうにこういう法律案をつくられて、あくまでこういう形を固執されて通そうとされるのか、この点非常にわれわれ在野の者としては問題にしているわけです。今後は私ども日弁連はできるだけ、そういう司法政策は逆行していると、むしろもっと司法というものを民主化して、そして官僚制とか中央集権制、そういうものをできるだけ少なくするように在野は努力すると、そういう意味である程度最高裁意見が対立すると、そういうこともやむを得ないが、まあできるだけそれは協議なりいろいろなことでやっていこうという日常努力をそこに集中しているわけです。そういうことを申し上げているわけです。
  67. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) まことに恐縮なんでございますが、先ほどの須藤議員の御質問趣旨がちょっとわかりかねるんでお伺いしたいんですけれども、何かについての懸念があるが、それをどういうふうにしたら守れるか、保障する手段は何と考えておるかというふうなお話だったんでございますが、何についての懸念ということなんでございましょうか、それをちょっと。
  68. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたは公務員にすることに御賛成のような御意見でございましたが、私たちは公務員にするといろいろな面で、いま藤井先生もおっしゃったような懸念すべき事態が起こるんじゃないかということを私感じるわけですね。
  69. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 具体的に申しますと、その懸念する事態というのはどういうことなんでしょうか、官僚化とかいうことでしょうか。
  70. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうですね。そういうことがあなたは全然懸念がないんだとおっしゃるならば、そういうことがなぜ起こらないかということがわれわれに納得のいくように説明をされるか、そういうことが起こったときにどうするかということですね。
  71. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 官僚化する、官僚主義になるというふうに言われるわけですが、実はこの官僚化ということの内容も何をさして官僚化と言い、それがどうしてマイナスかというふうなことが必ずしも明確でないわけでございます。どうも先ほど来の御発言の内容とか、それから実は私、その点きのう辞書などを調べまして、官僚化ないし官僚主義というのはどういうことを、つまり否定的な意味においていうのかというのを見たのですが、結局は上の者が下の者の意向を聞かないで一方的な命令を発するとか、そういう趣旨のように読めましたのでございます。そうなりますと、調停の場合に、いまは事件担当しているときは公務員だけれども、事件担当してないときは公務員でないというのを、今度は事件担当していないときでも非常勤公務員だということになったということとがどうやって結びついてくるのか、どうも私にははっきりわからないわけでございます。現在でも調停をしてもらっている当事者と接しているときは公務員のわけでございますね。で、今後ともそれ以外の場面で一般の利用者が調停委員と接触をするということはないわけでございますので、今回の制度改正がそのことと結びつくとは私は考えないわけでございます。ただ先生がおっしゃいますように、調停委員の中にいま申しましたような意味で官僚主義的な人がいるのだということでありますれば、これはあるいは事実としてはそうなのかもしれないし、またそういうことを私もこれまでにもいろいろなところで聞いたことがございます。しかし、それは多分に人の問題になるのではないか、現在の制度でもそういう官僚主義的な人がいるというようなことでございますので、どうも制度の問題とは直接結びつかないのではないか、むしろ制度の問題としては利用者の便宜をはかる、利用者のための調停制度というような仕組みになっていないとそういうことが起こりやすいので、むしろ利用者が使いやすいようなそういう調停制度というのをつくっていけば、やはりそういった官僚主義的発想というものも防げるのではないかというふうに私は考えているわけでございます。
  72. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、竹下さんの意見を聞いておると、それじゃ藤井さんのおっしゃるように、何も公務員にしなくてもいいじゃないかということにもなるわけですね。今日のままでも一向差しつかえないじゃないかと、私たちはしろうととして考えるのですがね。何で公務員にしなきゃならぬかというそこが、もう一つ私には納得できないのですよね。それ、公務員にしなきゃ日当を上げることができないとか、そういうのならば、そんなことをしなくても日当をちゃんと出せるようにできるのですから、それだけの問題だったら、経済的な面だけだったらそんなことをする必要がないわけですね。なぜ最高裁任命する公務員にしなきゃならぬか、そこに私たちは何か納得できないものがあるわけなんですね。それは藤井先生の話も伺いましたし、大体私は理解できるのですけれどもね、そういう点を私は申し上げるわけなんです。あなたがあくまでも公務員にしなきゃいかぬという強い意見をお持ちならば、なぜしなきゃならぬのかという点がね、私は疑問として残るわけなんですね、公務員じゃなしに普通にこれまでどおりやったほうがいいんじゃないかという私たちは強い気持ちがあるわけなんです。  それから江藤先生にお尋ねしますが、「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」と、こういうようになっていますけれども、この「最高裁判所の定める事務」というものは、どういう内容をさしているものなんでしょうか、どうなんでしょうか。
  73. 江藤价泰

    参考人江藤价泰君) 当該事件に関する調査等といったようなことが説明でなされているわけで、正直言って私もそれじゃわからないわけです。どこまで定められるのか、そこまでだというふうに言われればそれかもしれないのですけれども、先ほど申し上げましたように、はたしてそのままでいくのかどうかということについての保証は全くないのではないだろうか。一度やはりできてしまえば、あとでひとり歩きしていくということも十二分に考えられるわけでして、その点ではやはり不満——不満というか危惧を抱かざるを得ないということなんです。具体的な事務については、どこまでかということについては全く私にはよくわからないことであります。
  74. 須藤五郎

    須藤五郎君 藤井先生にもう一点お伺いしておきたいと思います。  先生の御意見の中で重要だと私考え、思う点がございますが、それは、この法律ができる過程では法務省から十分御説明がなされていないという手続上の問題があると思うのですね。これは在野法曹との連絡をとるという第六十五回国会附帯決議に反しておると思いますが、弁護士会としまして今後責任を持って協力できなくなると、こういうふうに考えられるのでございますが、その点はいかがでございましょうか、御説明をお願いしておきます。
  75. 藤井英男

    参考人藤井英男君) それはまあ今後この法案がどうなるかということで、先ほど他の委員もおっしゃったように、一たん法律としてきまった以上やはりそれを尊重して守るべきではないか、これは確かに法律家としてはそう思います。やはり法律としてできても、われわれ法律家はそれを絶対その法律がもういいんだ、それに絶対従わなければならないという面と同時に、あるいはやはりこの法律に対する批判、次の改正を促す、こういうことも同時に使命でございますから、それはそういう意味では法案がいずれになりましても、その法案がきまったから、もうという、尊重という動きばかりでないと思います。いまおっしゃるように、場合によれば、とてもこういうことはつとまらぬ、あるいは弁護士会として、各単位会としても、そういうことでは今後調停委員の御推薦は遠慮しようというような動きも出るかもわかりません。それは今後のこの法案のぐあいによって、できぐあいによってそういういろんな動きが出ることは予想されます。その点はいまのところ、どうするとか、こうするとかいう方針を、まだ法案が最終結論が出ないうちに、日弁連としてはまだ具体的方針をきめておりませんが、そんなようなことは十分推測されるのではないかという点は申し上げてよろしいかと思います。
  76. 原田立

    委員長原田立君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、本日は長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  本案に対する本日の審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後一時十二分散会      —————・—————