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1974-03-26 第72回国会 参議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十六日(火曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員異動  三月十五日     辞任         補欠選任      高橋 邦雄君     小枝 一雄君      川野辺 静君     重宗 雄三君      棚辺 四郎君     町村 金五君  三月十六日     辞任         補欠選任      町村 金五君     棚辺 四郎君  三月二十五日     辞任         補欠選任      小枝 一雄君     川野辺 静君      重宗 雄三君     中村 禎二君      野坂 参三君     春日 正一君  三月二十六日     辞任         補欠選任      川野辺 静君     小枝 一雄君      中村 禎二君     重宗 雄三君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 佐々木静子君                 内田 善利君     委 員                 川野辺 静君                 中村 禎二君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 中村 英男君                 春日 正一君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        法務政務次官   高橋文五郎君        法務大臣官房長  香川 保一君        法務省人権擁護        局長       萩原 直三君        法務省入国管理        局長       影井 梅夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       安村 和雄君        最高裁判所事務        総局総務局長   田宮 重男君        最高裁判所事務        総局人事局長   矢口 洪一君        最高裁判所事務        総局経理局長   大内 恒夫君        最高裁判所事務        総局刑事局長   千葉 和郎君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        法務省入国管理        局次長      竹村 照雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (アジア卓球選手権大会参加のための未承認国  選手団入国問題に関する件)  (在日朝鮮人の出入国問題に関する件) ○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  小枝一雄君、重宗雄三君及び野坂参三君が委員辞任され、その補欠として川野辺静君、中村禎二君及び春日正一君が選任されました。     —————————————
  3. 原田立

    委員長原田立君) 次に、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原田立

    委員長原田立君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事棚辺四郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 原田立

    委員長原田立君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではまず、この間から問題になっておりますところの第二回アジア卓球選手権大会の未承認国選手団入国についてお伺いしたいと思います。  この開会式がもう四月二日と迫りまして、第一陣の選手陣はいよいよきょうあすじゅうに入国というふうにお聞きしているわけでございますが、問題のカンボジア王国民族連合政府選手団入国あるいは南ベトナム臨時革命政府選手団入国というものが非常に難航しておりまして、新聞の報道によりますと、外務大臣国会答弁では、まずそれらの未承認国選手入国を許可するような方針であるということが早くから報ぜられておったのでございますが、法務当局のほうでいろんな点での難航を示しているというふうに報ぜられておったわけでございますが、聞くところによりますと、大体入国が実現しそうだ、開会式に間に合うようなふうにも聞いておるわけでございますが、その間の経過をまず法務大臣にお伺いさしていただきたいと思います。
  7. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御承知のように、今度のアジア卓球大会というのは、スポーツ交流として、われわれもできるだけ前向きの姿勢で問題を解決していきたいという考え方に立っておるわけでございます。ただ問題は、未承認国との関係につきましては、その地域日本承認しておる国なり政府なりがありますので、それらとの外交上の関係十分考慮をしながら、どういうような呼び名入国を許可するか、あるいは日本滞在中どういう行動をとるかというようなことにつきまして、主催地である横浜の事務局と緊密な連絡を現在とっておるような次第でございます。その問題さえ解決すれば入国承認する方向目下検討を続けておる次第でございまして、いまだ結論が出ていないというのが現状のように承知いたしております。後刻必要に応じて事務当局から詳しく御説明をさせたいと思います。
  8. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま大臣も前向きの姿勢で御努力いただいているということを承ったわけでございますが、何はともあれ、スポーツを通じてアジア各国が友好をはかっていこうという重大な行事でございますので、それが全く単なる手続的な問題とか行きがかり上の問題でうまく事が運ばないというようなことになりますと、これは日本国民気持ちのみならず、アジア国民全体の気持ちと全ぐ反するような結果にならないかと、この日時が迫っておりますだけに、たいへん気にしているわけでございます。このことにつきまして、いま大臣の御答弁いただきましたが、入管局長からも事務当局としての御答弁をいただきたいと思います。
  9. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) ただいま大臣から御答弁がありましたように、まあ一般論原則論といたしましては、日本承認していない国、ないし日本承認しておりません政権地域からの入国というのは、これは一般論といたしましては、その交流は認めないということが言えるかと思いますけれども、他方、本件日本開催地といたします多数国の国際的なスポーツ大会である、したがいまして、そのスポーツ大会、政治的な意味合いを持ちませんスポーツ大会という性格、これが明らかでありますならば、ただいま大臣の御答弁のとおりに、私どもといたしましても、この入国に対しては異議を唱えないと、この点につきましては外務省と私ども法務省と意見は完全に一致しております。外務省の御見解も、こういった未承認国ないし未承認政権地域からの入国を無条件に認めるという御趣旨ではございませんで、ただいま私が冒頭に申し上げましたような前提のもとに入国を認めるという意味合いでございまして、この点も外務省法務省との間にはいささかの見解の相違もございません。  そこで、現在どうなっているかという問題でございますけれども、こういった日本承認しておりません国ないし日本承認していない政権地域から、いわば特例といたしまして、今回の大会性格にかんがみまして特例として入国を認めるということでございますので、そこにはまあおのずからいろいろの制約が出てまいるというのはこれは当然かと考える次第でございます。その制約を考えるにあたりましては、日本がそれらの国ないし政権承認しているというふうな意味合いを生ずることのないようにと、これが私ども考慮の基本にあるわけでございます。この私ども趣旨は、大会組織準備委員会のほうにも十分に御了解いただけていると私ども信じておりまして、目下その詳細な話し合いの詰めを行なっておると、そう時間を要しないうちに結論が出るであろうというふうに私ども考えております。
  10. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま詳細な御答弁をいただきましたが、そう時間を要しないうちに結論が出ると、これは出ないことにはどうにもならないわけで、四月二日から会が始まるわけでございますから、見通しとすると具体的に何日ごろ結論が出て、何日ごろ入国できるような見通しであるのか、具体的に御答弁いただきたい。
  11. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) まだ話し合いが完全に合意に達してない段階でございますので、なるべく早くということで私どもも考えておりますし、もちろん大会準備委員会のほうでもお考えになっていると、ただ、まだ合意に達してない点が残っているということでございますので、現在この段階におきまして、何日のいつごろということをこの場で申し上げるのはひとつ差し控えさせていただきたいと思っております。しかしながら、私ども見通しといたしましては、私どもの考えております趣旨は十分に準備委員会のほうにおいても理解されておりますので、そんなに時間を要しないだろうというふうな見通しを持っております。
  12. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは未承認国というのもこの二つだけじゃございませんでして、たとえば朝鮮民主主義人民共和国の代表団もすでにもう入国が近いというふうに聞いておりますし、これは趣旨アジア民族アジア国民スポーツを通じてお互いの親善をはかっていこうという、非常にだれから見てもけっこうな催しなわけでございますから、だからその会の趣旨というものをよく踏まえていただいて、未承認国だから当然にいろんな制約があるんだというふうに頭から前提を置いていろんな制約をおつけになるというよりも、むしろこうしたアジア各国国民が望んでいるというスポーツ交流というものが実現しやすいようにぜひとも御努力いただきたい。むろん日時ははっきりわからなくても、四月の二日の開会式には間に合うように御努力いただいているということは、これは間違いないわけでございますね。
  13. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) 私どもそのつもりで極力話し合いを進めております。
  14. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではこの件について大臣の、これからどういうほうに解決していこうか、まあおそらく先ほどの御答弁にもありましたように、アジア大会がスムーズに実現できるように大臣としてはどのような態度でお臨みになるか、御所信を述べていただきたい。
  15. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私どもの考えておるところによりますと、問題は、スポーツ以外の活動をしようということはあり得ないことだと思いますから、この点は問題はないと思いますが、もう一つの点は、南ベトナムの臨時政府かりカンボジア民族連合政府ですか、のほうなり、どういう一体チーム呼び名にするかということがいま話し合っておる中心のようでございますから、これも準備事務局のほうでもこちらの考え方を十分理解してくれておるようでございますし、先方と連絡中であろうと思いますので、その問題さえ片づけば問題がなくなるんではないかというように考えております。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではぜひ、そういう形式的な、手続的な問題、本質的にもいろいろな問題を含んでおりますが、できるだけアジア国民が望んでいる大会の実現に向かって御当局としても前向きの姿勢で取り組んでいただきたい、また、取り組んでいただくべき事柄であろうと考えますので、特にそのことを要望いたしまして、次の質問に移りたいと思います。大臣のお時間があるようですから、先に大臣に対する質問をさしていただきます。  これは去る三月十八日に札幌地方裁判所で、弟が日本密入国をしようとしてきて、それを助けたとして出入国管理令違反に問われて国外退去処分を受けていたところの在日朝鮮人柳チョン烈という人が、強制退去処分命令を受けて、そしてその取り消し訴訟を起こしたところ、この取り消し訴訟が認められた。これはこの柳チョン烈さんに強制退去令を出したのは法務当局の、法務大臣裁量権乱用であるという点で札幌地裁柳チョン烈さんの勝訴ということで、この問題についての判決を言い渡したわけでございますが、いまこの問題は単に柳チョン烈さん一人の問題ではなくて、いま日本に滞在しているところの朝鮮人の方々の人権問題、特に在日滞在の保障というような問題について、たいへんに大きな意義を含んでいると思うわけでございます。特にこの出入国管理令というものが一般外国人対象にしてつくったものであって、御本人が好むと好まざるとにかかわらず、日本に来て生活をしなければならなかった、戦前から日本に連れてこられて、あるいは日本生活する以外に方法がなくて、日本に来て、そして在日朝鮮人として何十年間か日本生活をしてきた人たちに対して、単なる外国人というようなことで、国外退去という過酷な処分をいままで幾つか法務当局が繰り返してこられたわけでございまして、それに対しまして、私ども在日朝鮮人人権を守ろうという立場で、社会党を中心に何回も法務当局朝鮮人人権を守っていただきたい、滞在日を保障していただきたいということを何回もお願い申し上げてきたわけでございますが、まずこの件について、大きな点が三つ争点として出てきたわけでございますが、特に強制国外退去命令を出すということが法務大臣裁量権にまかされているところ、その法務大臣裁量権乱用だという点でこの判決柳チョン烈さんの勝訴になっておりますが、在日朝鮮人に対する、特に特別法該当者に対する強制退去令というものは過去何件ぐらいあるのか、まずそれをお伺いさしていただきたいと思います。これは当局からお伺いさしていただきます。
  17. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) 在日朝鮮人中心とする問題で、この人たちに対して密入国幇助、そういう罪によって退去強制手続をしたのは何件あるかという点で、昭和三十年以降の分を調査しましたところ全部で四十件ございます。この四十件、年間を通じますと、少ない年というのはゼロ、多い年で九件というのがございますけれども、大体平均しまして一、二件というような経過をたどっております。詳しいデータ完全にとっておりませんけれども昭和四十二年以降の分を調べてみましたところ、退去強制手続をとった件数は、四十二年以降で見ますと四件ございますが、四件の中で退去手続を最終的に確定したものが三件、一件は法務大臣裁量によって特別在住を許可しておるという実情でございます。ただし、これらの人の今度は身分でございますが、先生が御指摘になりました意味合いでは、たとえば現在、朝鮮人たち韓国日本との地位協定に基づきまして、いわゆる協定永住権を持っておる人と、それを持たずに戦前から引き続き日本におるということで、法律第百二十六号の該当者としておる人と、それから密入国をしてきたり、あるいは密入国をして特別在住を許可されたり、あるいは一般外国人と同じように戦後やってきた人たちがおります。そういった観点で、それらの身分事項を明らかにする統計がございませんけれども 四十二年以降の分につきましては、法律第百二十六号の該当者とか、協定永住者というのはございません。全部戦後の不法入国者でございます。戦後不法入国して特別在住を許された人が密航を幇助したり、そういうようなことで退去強制手続を受けたという内容のものでございます。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、いま伺いました三十年以降が四十件というのは、これは出入国管理令の第二十四条一項四号のいわゆるルに該当する人というわけでございますね。
  19. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) そういう意味でございます。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 そして、いまのお話では、在日朝鮮人の中には、日韓協定永住権を持っている人と、それから、いわゆる百二十六号に該当する人と、それから不法入国者というふうにいま分けて考えていらっしゃる。その間にその子供というようなものもあるでしょうけれども、大ざっぱに分けるとそういうことになるというお話でございますが、そのルに、いま申し上げたこの出入国管理令二十四条一項四号のルに該当することで強制退去令を受けた人は、全部不法入国者であるというふうに私はいまちょっと理解されたのですが、そういうことでございますか。
  21. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) 補足いたしますと、数字の上では昭和三十年以降四十件あると、しかしその身分関係は全部明らかでない。しかしながら、その四十二年までの分を全部記録を引っぱり出して調査しました結果、四十二年以降四件ございますけれども、この四件の分については、それぞれの身分がはっきりしている。その四件の人はいずれも法律第百二十六号の該当者ではない。戦後不法入国して、一ぺん特別在住を許されておった人、そういう人です。特別在住が許されておりながら密入国幇助したということで退去強制手続が進められた。その結果、三人はそのまま退去強制手続が確定しておりますけれども、一人は特別在住が許されておるということでございます。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま申し上げました柳チョン烈さんは、これは百二十六号の該当者でございますね。そうすると例外中の例外とおっしゃるわけでございますか。
  23. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) 例外中の例外といいますか、たまたまこのケースとしてあらわれた密入国幇助の中で法律第百二十六号に該当した人は私の知っている範囲内ではないけれども、この柳という人はたまたま法律第百二十六号の該当者であったということでございます。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 このいわゆるルで強制退去令を受けたのは昭和四十二年以後は四人とおっしゃいましたですね。最終的にはいつの方が一番最終でございますか。
  25. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) 昭和四十八年でございます。これは男の人で、三十一年の二月に不法入国した人でございますけれども、現実に密入国幇助をしたというのは七十一名の人を運搬したという専門的なブローカー事案でございますが、懲役一年の実刑判決を受けております。
  26. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはこの判決でもそのことが問題になっているわけでございますが、業としてこの密入国を助けたというふうになっておっても、いわゆるいまの道路交通取締法違反事件でも「業として」と、あるいは業務上過失傷害などで、自動車事故があった場合はたまたま生まれて初めてそのときハンドル持った場合でもこれを業としてというふうに認定するのが、まあこれは一般常識とは非常にかけ離れますが、法律実務上の常識ではないかというようなところから、この柳さんもこのルに該当するということになったと思うんでございますが、柳ざんの場合は実の弟が日本の大学で勉強したくて密入国してきた、これを助けるのが——これ助けるといっても、これは兄弟として弟が密入国してきたのをほっとくというようなことは、これもう人間の情としてできないのはあたりまえで、これをいわゆる密入国ブローカーと同じように考えているというところにたいへんに問題があるんじゃないか。そういうところからなおのことこの判決がたたかれているわけなんでございますが、で、またそうした事情をちょっと調べればすぐにわかっている、わかっていらっしゃりながら国のほうがこの柳さんを強制退去させようとした。四十何年間、営々として築いてきた日本における社会的な実績というものを根こそぎ失わさせるような強制退去令を出して、しかも妻や子供と生き別れをしなければならないような命令を出したというようなことから見ますと、これは例外中の例外という点についてはことばは濁されましたけれども、非常にいまの法務当局入管行政やり方というものが、これはもう全然極端な言い方でも何でもない、血も涙もないやり方であるというふうに批判されてもこれはしかたがないんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけでございますが、これはいまの担当の方にそう申し上げてもこれはずっと前に四十二年に起こったことですので、いまはそうじゃないというふうにたぶんおっしゃるだろうと思いますし、またそうおっしゃっていただかないと困るわけでございますが、その当時の入管行政といまの入管行政とではだいぶ取り組み方とか姿勢というものは変わってきていられるんですか。旧態依然昭和四十二年ごろの方針でいまなおやっていらっしゃるんですか。そのあたりをまず事務当局のほうから伺いたいと思います。
  27. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) やはり入管行政の実施にあたりましては、そのときどきの情勢とそれからその後の情勢の変化というものを常に念頭に置きながら行なう必要があるという意味におきまして、まあ表現は不適当かもしれませんけれども、十年、二十年常に変わらない、一貫したと申しますか、硬直した姿勢はとるべきではあるまい、やはりそのときの情勢、将来の展望というものも頭に入れて入管行政を行なうべきだろうというふうに私ども考えております。
  28. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常に抽象的な、そつのないと申しますか、御答弁ですが、そういう抽象論伺ってもしかたないので、時々刻々、十年、十年というようなおっしゃり方でしたが、いまの時点でのことを私伺っているわけでございますので、いまは入管局長はどういう姿勢でやっておられるのか。四十二年と同じ姿勢なのか、あるいは変わったのか。変わったとするとどういう国際情勢だからどのように変わったのか、具体的に御答弁願います。
  29. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) 昭和四十二年という時点を考えてみますと、韓国との間の協定ができました比較的直後の状態でございます。その後朝鮮半島をめぐります情勢というのは相当に変わっているというふうに私ども考えますので、それに即応いたしまして四十二年当時と同じ姿勢ということは不適当であろうというふうに考えております。
  30. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、もっと柔軟な姿勢にお変わりになったということですね。
  31. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) 方向といたしましてはまあ柔軟という方向に向かうべきだろうというふうに考えております。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 話がもとに戻りますが、このいわゆるル号に該当する事件強制退去令を受けている四十件というもののうち、いま訴訟になっている事件は何件ございますか。
  33. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) このルに該当することで訴訟になっておる事件は現在この本件だけでございます。
  34. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、この在日朝鮮人のうちで特別法に該当する人で強制退去令を受けておって、そして訴訟になっているというのは何件あるわけですか。
  35. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) 特別法といいましても、要するに法律第百二十六号に該当する人たち行政訴訟対象になっているのはこのほかに三件ございます。いずれも仙台と聞いております。
  36. 佐々木静子

    佐々木静子君 それらの事件もいま局長おっしゃったように、日韓協定ができたその直後ぐらいに起こった事件についての分じゃないんですか。
  37. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) おそらくそういうケースで、この三件は、これは正確でございませんけれども一般刑罰法令に該当したケースではなかったかと思います。この三件のうち、二件はすでに結審しまして判決言い渡しまでなっております。一件はこれは犯罪を犯した上で退去手続が進められて行政訴訟になって、それで仮放免中にまた同じ犯罪を犯して現在服役中で、したがって結審にならず係属しているという事案でございます。
  38. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣に伺いますが、大臣のお時間があまりないようでございますから、いまは局長並びに次長に御質問さしていただいておりますようなとおり、この柳判決がこれはいまの日本在日朝鮮人、特に百二十六号該当者に対するところの入管行政というものを如実に物語っているケースではなかったかと思うわけでございますが、いま局長の御答弁にもありましたように、時々刻々この朝鮮半島をめぐる政治情勢の変化に伴っていわば柔軟な行政に切りかえつつあるというような趣旨の御答弁のように伺ったわけでございますが、一番の法務の御責任者としての大臣がこの判決をどのようにお考えになっていらっしゃるか、またこういう判決が出た趣旨あるいはいまの日本朝鮮半島をめぐる問題などをお考えになって今後在日朝鮮人の問題を特に一二六号該当者あるいはその子孫に対する人たち身分保障というものを大臣とするとどのようにお考えになっていらっしゃるか、その点だけをお伺いしたいと思います。
  39. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) この問題の柳さんという人は戦前から日本におられて、まあ先ほど来お話しの一二六該当者でございますから、裁判所もおそらくそういうような歴史があり、妻もおり子供もあるというような諸般の情状を判断して今度の判決をされたものではないかと思います。ただ察するに、私ども当時のさかのぼったことよくわかりませんが、一二六該当者でございますけれども、たぶんこの弟が密入国するについて積極的に事前の準備をするとか密入国の便宜をはかるとかいうような積極的な処置があったんで、当時こういう酷な結論が出て強制退去というようなことになったんではないかと察しておりますが、まあ密入国というのは日本の国として韓国との関係から見ましても、あるいは韓国で兵役の義務等がありまして非常にやかましく言うものですから、こちらも厳重に取り扱わなきゃなりませんけれども、まあ幇助者といわれておる柳さんという人が一二六該当者であるという点から見れば特別な考慮をしてもよろしいんではなかったかというような気もいたします。したがいまして、この判決があってから控訴期間もありますが、これをどう扱うかにつきましては目下慎重に検討を続けておるという段階でございます。まだ結論は得ませんので申し上げることはできませんけれども、十分にいま入管局長から御説明申し上げましたような趣旨にのっとって検討を進めたいと、かように考えております。
  40. 佐々木静子

    佐々木静子君 最後に一つ大臣に、いまも前向きの御答弁いただいたわけでございますが、この判決というものはおそらくいまの日本国民のほとんど大多数の人が支持していると思うわけです。これが法務省が単に訴訟の当事者の一方というような狭い観点からこの国民の支持を受けている事柄に対して控訴をなさるというようなことはぜひお差し控えいただきたい。これはこの強制退去令自身が法務省の権限乱用のような意味でこういう判決が出ているわけでございますが、さらにこれに対して控訴を法務省がされるとなれば、これはまさに控訴権の乱用というふうに私ども受け取らざるを得ないわけでございます。ですから、いまの大臣の御趣旨を実現する意味におきましてもぜひともこれは確定さしていただきたい。それからいまなお入管次長からの御答弁にもございましたように、ほかにも同種の日韓協定直後の事件が係属しているわけでございますが、これだけ日本の政治情勢が変化しているわけでございますから、この政治情勢の変化に即応するようにぜひとも、これは単に当事者の側の一方という立場じゃなしに、もう少し高い立場からこのいまの日本の政治情勢の変化に即応するように在日朝鮮人身分保障、特に滞在在日身分保障というものを法務当局のお手によってぜひとも前向きに積極的に実現していただきたい。これが私ども国民朝鮮半島に住んでいる国民とが一番願っているところの日朝友好にも一番つながっていく問題ではないかと思いますので、ぜひともそのことを最後にお願いして一言最後の御所信を承りたいと思います。
  41. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御高説の点は私ども十分承知しておりますが、事務当局によく聞いておいてもらって、検討する当事者でございますから聞いておいてもらいたいと、かように思っております。
  42. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) 法一二六該当者に対する強制退去手続をめぐる行政訴訟というのは一年前はたしか三十件をこえておったと思います。これらの点につきましては私ども現在の行政運用の立場から次々に特別在住を許して訴訟を終結してまいりました。その結果、先ほど申しました三件のみが残っているという状態であることを御理解いただきたいと思います。
  43. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま入管次長そのように積極的に前向きにお取り組みいただいているということで、今後なお一そうそういう姿勢でぜひとも国民の期待する入管行政というものを実現をしていただけるように特にお願い申し上げたいと思います。  それから人権擁護局長お越しでいらっしゃいますので、これはやはり在日朝鮮人人権問題としてこの点についても伺っておきたいと思うわけでございますが、こういう一二六号該当者の問題についていろいろ日本の中でこの在日資格の保障その他さまざまな社会的身分差別などを受けて多くの問題があると思うわけでございますが、人権擁護局とすると、こういう問題は具体的にどのようにいままで取り組んでおられるのか、あるいは人権擁護局で在日朝鮮人の問題として人権問題としてお取り扱いになったケースというのは年間何件ぐらいあるのか、その点をちょっと伺いたいと思います。
  44. 萩原直三

    政府委員(萩原直三君) 人権擁護局でいままでそのような問題につきまして取り扱ったケースはほとんどございません。ただ一つ具体的な例といたしまして、昭和四十五年に、姫路の私立女子高等学校に韓国人の女子学生が入学を申し出たというときにそれを拒絶したという事案が一件ございました。その程度でございます。
  45. 佐々木静子

    佐々木静子君 人権擁護局が全然取り扱っておらないというのはあまり自慢にできる話じゃないんじゃないかと私は思うわけなんでございますが、あまりそういう種類の申し立てがないからということなのかもしれませんが、そういう問題についても、これは今後積極的にぜひとも前向きな姿勢で取り組んでいただきたいと、この際重ねてお願い申し上げておくわけでございます。そうしてこのような柳判決趣旨というものを一これ入管局におきまして特に御尊重いただきまして、すでにもう幾つものケースでそのように実現して特別在留資格を認めているという御答弁でございますけれども、さらにこういう問題がもう二度と起こらないようにひとつ御尽力のほどをお願いしておきたい。そうして大臣にとくとお願いしておきましたが、本件についての控訴というものはこれは入管だけじゃなしに、法務省の訟廷部の御担当になるかもしれませんけれども、入管御当局として特にこの事件は確定させていただきたい。つまらない控訴権の乱用というようなことは絶対にお差し控えいただきたいということを最終的にお願いしまして、私のこの件に関する質問は終わりたいと思います。この件について局長いかがでございますか、御答弁だけいただいておきたいと思います。
  46. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) 佐々木先生の御趣旨、私ども先ほどから伺っておりまして誤解のないように理解しているつもりでございます。他方で問題が密入国幇助という一つの基本的な問題にもからみますので、先生の御見解を十分に念頭に置きながら私ども最終的な結論を出してまいりたい、このように考えております。
  47. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常にまた抽象的な御答弁なんですけれども、これはむろん密入国幇助があったから事件になっているわけで、それがただ弟が日本へ勉強したくて来ている、それを助けた、かりに事前に相談があったかなかったか知らないけれども、私、日本人の大半の人がその立場に置かれたら助けると思うんです。これは、そういうふうな人情の自然というようなものを全く無視して、そして四十数年間築き上げた日本での実績とか、妻子と生き別れにしなければならないような法務行政というものが法務省の権限乱用だということで国が敗訴になっているわけなんですから。それに対して、やはりこの判決趣旨というものは尊重なさるべきだ。これに対してまたさらに争うということで控訴するということになれば、これはそれこそもう権限の乱用の上塗りではないか。しかも、政治情勢の変化に即応して入管行政は変えていっていると、いま局長自身がおっしゃったわけですから、これは日朝友好のためにも、基本的な人権の尊重という最低ぎりぎりのところにまで譲歩してもこれは確定させるべき事件だというふうに考えるわけでございますので、もう少し前向きの御答弁はできないわけですか。
  48. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) 先生の御見解は十分に私ども念頭に置かせていただきまして、本件事案の具体的な事実をあらためてもう一度よく究明いたしまして、慎重に考えてまいりたいと考えております。
  49. 原田立

    委員長原田立君) 本日の調査はこの程度にとどめます。     —————————————
  50. 原田立

    委員長原田立君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  51. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について質問をさしていただきます。  この法案は、これは毎年この時期に法務省から提出されるわけでございまして、私もこの法案についてもう何回か法務当局あるいは裁判当局質問さしていただいておるわけでございますが、これは自民党も含めて、各党、裁判所の職員が非常に不足しておる、裁判官が足らない、職員が足らないということを、野党はもとより、与党もそのようにおっしゃり、かつ、裁判所御当局もそのことを認めていらっしゃるわけなんでございますけれども、それがまた、やはり同じように非常にわずかな増員しか今度も行なわれておらないわけでございまして、毎度同じようなことばかりになるわけで、たいへん残念に思うわけでございますが、特に今度は裁判官の増員というものがきわめて少ない数なんでございます。これは、国民が期待している裁判国民の期待に沿うための裁判を行なうためにどうしてもこの人員では不足しているというのがもうだれしも明らかでありながら、なかなか十分な期待にこたえるだけの人員が配置されない。そこらはどこに原因があるのか。まず、根本的な問題においてもっと大幅に増員をしなければ裁判が十分にその機能を果たせないのではないか。あるいは、そうじゃなくって、もうこれで十分人員は足りているのだとおっしゃるのか。その点、まず事務総長から、どういうふうにこの人員のこのをお考えかということを基本的な問題としてお伺いいたしたいと思います。
  52. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) いま佐々木委員からおっしゃいましたように、裁判所の裁判官の人員が十分であるとは申せない現状かと思います。しかし、さりとてこれで裁判所の運営に非常に迷惑のかかるほどの不足かというとそうでない。現在の人員をいろいろのくふうをして、国民裁判について迷惑をおかけしないように努力しているわけでございます。裁判官につきましては、やはり何といいましても判事補と判事とありますわけで、判事補のほうはこれは修習生からなっていただく。判事のほうは現在の状況から言いますと、判事補が十年たった中からなっていくということで給源がたいへん限られているわけでございます。でありますから、修習生から判事補になります人は何といいましても一人前の仕事ができない、一人前に仕事をしていただくのは判事でございます。ただいま申しましたように、判事の給源が限られております点をも考えまして、本年どうしても必要だというものをしぼって要求したというのが実情でございますので、その点御理解を十分いただきたいように思います。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 本年は非常に数が少なくて、判事補が二名、簡易裁判所の判事が三名、そういうふうな状態でございますけれども、そうすると、これで足りるというふうに当局はお考えなわけでございますか。
  54. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 国民に御迷惑をかけないように、本年のところはこれで何とかくふうしてやってまいりたいと思っております。
  55. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、この裁判官の欠員というものが何人くらいあるのか、これは人事局長に伺います。
  56. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 現在、裁判官でございますが、これは非常に流動的でございまして、きょう現在といいますと実はなかなかつかめない面がございますが、大体昨年末現在ということで申し上げますと、判事、判事補、簡易判事合わせて七十名前後の欠員ということでございます。
  57. 佐々木静子

    佐々木静子君 この欠員は主としてどういうことで起こるわけでございますか。
  58. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御承知のように裁判官の大量に増員いたします時期と申しますのは春でございまして、修習生から裁判官を採用いたすのが一番大きな給源となっております。この場合は判事補の採用ということでございます。それからしばらくいたしますと、大体春から夏にかけてでございますが、簡易裁判所判事の試験等をいたしまして、相当大量に採用いたします。それ以外の点は、御希望の方がございますような場合に常時できるだけ裁判官の充員をやっていくという観点から、適当な方においでいただいておるというのが実情でございます。
  59. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、判事補の給源というような話が先ほどから出ておりますので、実は二十六期の司法修習生のほうからいろいろと要望書がたくさん出ておりまして、実は司法修習生の問題につきましては、わが党の他の委員から詳しく御質問をさせていただく予定になっていたんでございますけれども、若干私のほうから質問させていただきますと、二十六期の今度の修習生の中に、例年よりも非常に裁判官希望者が多い、九十一名というふうに聞いておるわけでございますが、そのとおりでございますか。
  60. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御指摘のとおりの数字でございます。
  61. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、二十六期の修習生から出ております要望は非常に多岐にわたるわけでございますけれども、そのうちのおもな一つといたしまして、この任官希望者を全員任官できるようにぜひ実現してほしいという要望が強く出されておるわけでございますけれども、今度の二十六期の修習生のうち、判事補に全員任官されるだけの受け入れ態勢ができているのかどうか。最高がお考えになっていらっしゃるところの任官受け入れ数というものは何人であるのか、それをおっしゃっていただきたい。
  62. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 先ほど、裁判官全体の欠員数を申し上げましたが、実は一月、二月、三月というところになりますと、その時点においておやめになる方が毎年相当数あるわけでございまして、まだ発令はされておりませんが、すでに退官をお申し出になったような方もあるわけでございます。そういたしまして、さらに判事補に修習生から採用させていただくわけでございますが、その四月になりますと、佐々木委員もよく御承知のように判事補十年ということで判事資格ができます。判事のほうに相当大量に移行されるわけでございます。そういうことで判事補の欠員というものは採用の時点になりますと相当数になってまいります。  それからまた、簡易裁判所判事と判事補というのは、判事補が三年たちましたところでは、有無相通ずるわけでございます。そういうことがございますので、判事補の御希望の方が多数にあります場合には、簡易裁判所判事の採用のほうを手控えることにいたしますと、その分判事補の採用ができるということになるわけでございます。結局のところ二十六期の御希望九十一名でございますが、もちろん十分にいろいろの観点から選考をさせていただいて、裁判官会議で慎重におきめいただくわけでございますが、定員だけの関係から申しますと、九十一名全員採用するのに全く支障がない、こういうことでございます。
  63. 佐々木静子

    佐々木静子君 この九十一名全員採用が全く支障がないということを伺ってまずたいへんにけっこうなことだと思うわけでございますが、これはもちろん判事補としてでございますね、簡裁判事じゃございませんね。
  64. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) ただいまも申し上げましたように、簡易判事の定員と判事補の定員というものは、ある程度有無通ずることができるわけでございますので、判事補として採用するのに定員上支障はない、こういうことでございます。
  65. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすれば、定員上支障がなければ、ぜひ、かねて毎年同じことばかりになりますので、重ねて申し上げませんけれども、ぜひとも全員採用できるということになれば二十六期のいまの要望の主要な点が一つ解決するわけでございますので、ぜひともその実現方に御尽力いただきたいと御願い申し上げるわけでございます。  これは大体いつごろ、何日にわかるわけでございますか。
  66. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 現在いわゆる二回試験を終了いたしまして、まあその二回試験の結果が、いまいわゆる採点されている段階でございます。それから明日から三日間でございますが、裁判官希望者につきまして、事務総局のメンバーをもちまして採用に当たります面接を行なう予定でございます。来月に入りますと、大体この三十一日から始まる週を予定いたしておりますが、最終の司法修習生の考試委員会が開かれまして、そこで修習生として合否の判定が行なわれます。修習終了の時点は四月の十一日を予定いたしております。そこで来月の七日に始まる週におきまして、大体裁判官会議におはかりいたしまして、採否の御内定をいただく、正確に申し上げますと、判事補として採用すべき者の名簿に登載することの御決定を裁判官会議でいただく、それで閣議を経まして発令になる、こういう段取りでございます。
  67. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはぜひ修習生の希望を実現していただきたい。また、かつ、単に修習生の問題だけではなしに、法曹がいま非常に疑惑を持っておりますところの司法の独立の問題、司法の反動化が行なわれているのではないかという非常に大きな疑惑をぬぐい去る意味におきましても、あまりいろいろと奥歯にもののはさまったような言い方をしなければならない結果が起こらないように、ひとつどうぞこれは事務総長のほうにおきましても、何とかその点、前向きの姿勢でお取り組みいただきたいと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  68. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 佐々木委員の御趣旨も十分頭に入れまして慎重に検討したいと思っております。
  69. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、修習生の問題を先にお尋ねしましたので、あわせてお尋ねいたしますと、これは昨年私は質問さしていただいた件なのでございますが、任官説明会というのをことしだけはしていただけなかった。それがまた非常に疑惑の一つになっているわけでございまして、修習生に言わせれば、おっしゃるところによりますと、任官希望者が非常に多いために、最高裁御当局が非常な高姿勢になった。それで十分に、これから裁判官になろうと、あるいは裁判官に限らなくとも法曹の一翼をになうものになろうとしてやっていこうという者に対して、御当局説明会も開いていただけない。修習生の大多数の者が書面をもって要望しているにもかかわらず、これが実現しないというのは非常に遺憾なことであるということでの要望書が、私どものほうにも何ほか参っているわけでございまして、その点についてはどういうことなのか、ちょっとわかるようにお話しいただきたいわけです。
  70. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 任官説明会でございますが、大体修習生になりまして研修所に入りますと、前期と後期というのがございますが、この前期に一度、それから後期に一度ということでいたしてきておりまして、もっとも昔からそういうことをしておったわけではございませんで、ここ数年、そういうことをいたしてきておったわけでございます。まあ率直に申し上げまして、修習生の方は二年間研修所でおやりになるのみならず、現地で裁判所、検察庁、弁護士会、それぞれ実地の御修習をなさるわけでございます。   〔委員長退席、理事後藤義隆君着席〕  近時ことに司法問題についていろいろの観点からこれは論議があるわけでございまして、いろんな書物等によりましても、昔と比べますと、この修習問題等につきましてのいろんな資料等も非常に多くなってきているわけでございます。かてて加えて、先ほども申しましたように、現地で十分の修習をされるわけでございます。ことに二十六期の方、前期の修習の際にはこちらから出向きまして、一般的な説明もいたしてきたわけでございます。また佐々木委員も御承知のように、昨年におきましては任官説明会をいたしまして、それを修習生のほうで私の説明を克明に速記にとりまして、りっぱな印刷物にして一般修習生に配付したと。で、いろいろ聞きますと、二十六期の修習生もそれは十分読んでおるということのようでございます。そういうふうになりますと、あらためて、私が出向きまして御説明をいたしましても、実は私どものほうで御説明をしたいと思いますことは、大体あの速記録のとおりでございまして、特に変えて御説明をしなければいけないという点もない、またいろいろと違ったようなことを申しますと、あれとこれとの違いはどうなんだというようなことで、かえって誤解を生じてもいけないのではないかどいうような感じもいたしました。御承知のように、十二月というときは予算の復活折衝等のときでございまして、私、それに加えまして人事では春の異動を計画いたしますはしりになってまいりまして、実は非常に多忙なときでもございます。まあそういうこともございますので、ことしは任官説明会というのを特に省略させていただいてはどうであろうかということで取りやめにさせていただいた、こういうことでございます。
  71. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは修習生関係ばかり伺っていても時間がございませんから、この定員法そのものについてお伺いしたいと思いますが、いま裁判官の一人当たりの手持ち事件数、これは民事と刑事の別もございますし、また単に一つといっても大きな事件もあれば、実に簡単な事柄もあるでしょうけれども、これは東京、大阪のような大都会の場合と、人口の増減があまりない地方都市の場合と、大体手持ち未済の事件数、刑事と民事に分けてどのようになっているのか、平均的に見てどのようになっているのか、まずそれをお伺いさしていただきたいと思います。
  72. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 裁判官一人当たりの負担件数でございますが、現在一人当たりの未済件数の負担はちょっと手元にございませんで、たいへん申しわけございませんが、全国の地方裁判所の本庁のみにつきましての未済事件の件数がございますので、これを申し上げます。   〔理事後藤義隆君退席、委員長着席〕  これによりますと、昭和四十七年度の事件では民事では百五十九件、刑事で九十一件という数字が出てございます。で、一般的には私ども裁判官の負担件数といいます場合には、主として新受件数を言っておりますので、新受件数で見てみますと、裁判官一人当たりの負担件数でございますが、これは主として訴訟事件に限って申しますと、御承知のように、訴訟事件が主たるものでございまして、そのほかいろいろ雑事件がございますが、裁判官の負担を考える場合には訴訟事件中心となりますので、訴訟事件について見ますと、これも佐々木先生御承知のように、大都会の裁判官では民事なら民事、刑事なら刑事ということでそれぞれ裁判官、専門的に携わるわけでございますが、全国的に見ますと、一人の裁判官で民事を担当すると同時に刑事も担当するということもございますので、そういった観点全部ひっくるめますと、昭和四十七年の件数でいきますと、民事では七十六件、刑事では六十四件、一人の裁判官が民事七十六件、刑事六十四件を負担する、合計して百四十件、もちろん民事と刑事と負担の割合は若干違うと思いますが、一人の裁判官が民事、刑事、両方を担当するとすれば、昭和四十七年度で見る限りは百四十件ということになっております。  なお、東京と大阪のお話が出ましたので、東京の本庁と、それから大阪の本庁について申し上げますと、東京の本庁では民事は百二十二件、刑事百二十九件、大阪の本庁では民事九十九件、刑事百二十四件というふうに、まあ数字的にはこうなるのでございます。数字の上では外部から見るよりも負担が軽そうに見えますが、しかし事件の内容等、最近複雑困難化しておりますし、特に大都会の裁判所におきましては、単に事件数というよりも事件の内容にもよりますので、単に数字だけでそうした東京、大阪のほうが全国より若干軽いとか重いとかいうことは言えないと、そういうふうに思います。
  73. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま手持ち事件の概要をお伺いさしていただいたわけでございますが、最高裁がこれが理想だと思ってらっしゃる手持ち量というものは大体どういうものなんでございますか。理想だと思っていらっしゃる数ですね。
  74. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 裁判官の手持ち件数、手持ちというか、裁判官の負担件数がどの程度なら理想的であるかということでございますが、裁判官の負担と申しましても、単に件数のみでございませんで、先ほども申しました事案の内容等にもよりますし、また訴訟関係人の準備、協力等のいかんによってもいろいろ変わってくるわけでございまして、裁判官の理想的負担件数というものを、特に私ども十分検討しておらないのでございますが、まあ事件数として見ますと、たとえば昭和二十六年ごろから比較いたしますと、事件としては大体一人当たりの負担件数、まあ事件数だけについて申し上げますと、昭和二十六年当時と、事件数、一人当たりの負担件数としてはそう変わっていないというふうに思われます。  また、なおつけ加えさしていただきますと、裁判官の適正負担件数がどの程度が適当かということは、結局は審理期間をどの程度にセットするのが理想的かという問題ともからむのではないだろうかというふうにも考えられるわけでございます。で、お手元に配付の資料にございます、資料の一番最後にございますように、刑事、民事とも訴訟事件の既済の平均審理期間が若干ずつ延びておりますが、しかし、これは全体として延びておるということでございまして、大かたの事件、たとえば民事につきましては一年以内に終わるという事件が六〇%ぐらいございますし、刑事の場合でございますと、やはり六カ月以内で終わるという事件が七〇%程度ございます。そういうような観点から、民事では理想的な審理期間はどのくらいであるか、刑事では理想的な審理期間がどのくらいであるかというところから逆算すると申しますか、そういうふうな形で一人当たりの負担件数という、あるべき負担件数というものは考えられないかというようなことについて目下いろいろな角度から検討しておると、まあそういうことでございます。
  75. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、昭和二十六年ぐらいと比べると、裁判官の負担している事件数、あまり変わらないというようなお話のように承ったんでございますが、これは私の資料の間違いなのかもしれませんが、昭和二十六年ぐらいに比べますと、現在裁判所にある事件数というものが三倍ぐらいたふえているというふうに、私のほうの手元の資料ではそのようになっているわけでございますが、それに比べまして裁判官の増加数というものが二割ぐらいじゃないか。そうなってくると、やはり手持ち事件というものはふえざるを得ないんじゃないか。あるいは右から左へ処理するのが早くなってちょうど持っている事件数というものが変わらないようになっているのかもしれませんが、どういうことなんでございますか。
  76. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 二十六年当時と比較いたしましたのは、私どものほうでは、先ほども申しましたように裁判官の負担を考える場合には訴訟事件中心になるということで、訴訟事件だけをとって一人当たりの負担件数というものを出してみたわけでございます。で、そうしますと、たとえば地方裁判所の場合には昭和二十六年当時では民事五十二件、刑事八十五件、合計百三十七件。それから昭和四十七年度におきますところの一人当たりの負担訴訟件数を見ますと、民事では七十五件、刑事では六十四件、合計百三十九件、このような数字になっておるのでございます。その間、裁判官は地裁の場合には約二割程度ふえておるということでございます。まあ佐々木先生がどういう御資料で御検討いただいたか詳細存じませんが、最近におきます統計では訴訟事件のほか、その他の事件というものも一緒にいたしまして、全部を民事事件、刑事事件というふうに統計上出しておりますので、昭和二十六年当時の訴訟事件と比較いたしますと、まあかなりふえているという、数字の上では出てくる、そういうことではなかろうかというふうに思うのでございます。
  77. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、裁判官自身の仕事量とすると、そうふえているわけではないとおっしゃるわけでございますね。
  78. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) まあ数字の上からだけ申し上げますと、そういうことでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、事件は最近、社会の変動に応じましてその事件の内容というのは非常に複雑、困難になっておりますので、昭和二十六年当時の民事事件、刑事事件一件とそれから現在の民事事件一件、刑事事件一件というのは、その内容においてはかなり相当の重さの開きはあろうと、そういうふうに思っておる次第でございます。
  79. 佐々木静子

    佐々木静子君 これまた人事の問題になりますが、この裁判官の給源でさっき判事補のことを伺いましたが、簡裁判事——まあことしはその判事補の希望が多ければ簡裁判事のほうで調整するというふうに承ったんでございますが、簡裁判事というものは大体今後どういうところから給源を得ようとしていらっしゃるのか、あるいはやはり大体の目標として毎年どのぐらいを新たに採用しようという御予定なのか、ちょっと伺いたいと思います。
  80. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 簡易裁判所判事でございますが、やはり給源としましては大別して二つあるわけでございます。すなわち判事、検事等の有資格の方、そういう方が定年等でおやめになりまして、なお簡易判事をやりたいというふうに御希望になり、おいでいただくという方、それからもう一つは長年裁判事務等に携わりまして、書記官等の十分の経験を持っておる人から厳重な試験選考をいたしまして簡易判事になっていただく方と、この二つでございますが、このところ数年の状況を見てみまして、大体判事、検事から簡易判事になって来ていただく方が毎年二十人ぐらいございます。それからまた、書記官等いわゆる法律事務に長年携わって来ていただく方、これが四、五十人ございます。そういう方でこのところ六、七十人の方に毎年簡易判事になっていただいておるという状況でございます。そういう簡易裁判所の裁判官の待遇等につきましても、当委員会等でも格別の御配慮をいただいておりまして相当充実いたしてまいっておりますので、有資格の方で簡易判事になりたいという御希望の方が例年急速にふえてまいっております。で、できるだけそういう方に多くなっていただきまして、なおそれで足りない部分等は多年法律事務に携わった書記官等の優秀な方になっていただくということでやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  81. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから裁判官の資格をお持ちで、事務局の仕事をしていらっしゃる方、これは全国で何人いらっしゃるのか。また、あるいはそれがふえているのか減っているのか。
  82. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 最高裁の事務局関係では、私どもを含めまして三十九名でございます。で、そのほか各高等裁判所には裁判官資格の高裁局長が八人ございますので合計四十七名でございまして、昨年のいまごろから申しますと、昨年のいまごろは最高裁の事務局が四十名でございましたので、まあ一名現在減っておると、そういうことでございます。
  83. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから話が変わりますが、裁判官の不在庁についてちょっと伺いたいのでございますが、裁判官が常時常駐していない裁判所というものは全国でどのくらいございましたか。これは地方裁判所の甲号支部、乙号支部、家裁についても同じこと、あるいは簡易裁判所について各別に数をお出しいただきたいと思います。
  84. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) これは昨年の六月末現在でございますが、裁判官の不在庁は、甲号支部の場合に不在庁一でございます。これはまあ佐々木先生昨年御指摘いただきました五条支部でございます。で、乙号支部のうち不在庁は九十五庁ございます。それから簡易裁判所でございますが、簡易裁判所のうち、乙号支部と一緒にあるところの簡易裁判所で簡易裁判所判事がいないという庁が十一庁、それから独立簡裁が二百六十ばかりございますが、そのうち不在庁が百四十四ということでございます。
  85. 佐々木静子

    佐々木静子君 こういうようなところは裁判官が填補に来られるということになるのだと思いますが、裁判官の併任庁とそれから填補庁、これはどういう区別をして考えれば、まあどういう区別になっているのですか。あるいはその填補庁は幾つあるのか。そのあたりをお答えいただきたい。
  86. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) そのような不在庁をかかえておりまするところの裁判所でございます地方裁判所もしくは家庭裁判所でございますが、実はこうした不在庁を置きますのは、前々から申し上げますように、裁判官の負担件数として、まあ一人置くのには満たない、たとえば〇・一人とか〇・二人というふうな形になりますので、これをまあ当該地方裁判所全部ということで計算いたしまして人員をきめるわけでございます。で、その方々のうちどういう方をどこの簡易裁判所に、どういう方をどういう乙号支部に填補をさせるかということは、これは当該裁判所の事務分配の問題でございますので、当該裁判所における裁判官会議におきましてそうした填補庁をきめるということに現在ではなっておるのでございます。
  87. 佐々木静子

    佐々木静子君 こういうふうな裁判官の不在庁で、これ五条支部のときにも申し上げましたように、そこの市民の方が非常にお困りになる、あるいはそこの職員が裁判官がおらないためにたいへんに困るという問題が起こっているというようなことをよく耳にするわけでございますが、その件について最高裁とするとどのようにお考えでございますか。
  88. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 先生御指摘のように当該不在庁における職員もしくは当該不在庁の地元の方々にまあいろいろな面で迷惑をかけているということはある程度あろうかと思うわけでございますが、まあ何ぶんにも事務量からしましてそこで一人の裁判官を常駐させるということになりますと、また片方の裁判所のほうにその迷惑がいくというような形にならざるを得ないのでございます。したがいまして、そのような填補をする場合におきましても十分その職員もしくは当該住民に迷惑をかけないということを目標といたしまして填補し得る限りは填補していただく。もちろん交通事情その他がございまして、自由に毎日行くというようなことはございませんが、必要な限りできるだけ填補に行って十分仕事をしていただくというのを私どもとしては常に念願しておる次第でございます。
  89. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは時間があまりございませんから、書記官その他の裁判所職員のことについて伺いたいと思いますが、書記官あるいは調査官、速記官、廷吏、事務官、それからいわゆる行(二)職員など各職種別にかなりの欠員があると思うわけでございますが、いま申し上げました職種別に欠員数の内訳というようなものをお示しいただきたいと思うわけです。
  90. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 一般職員の欠員状況は、お手元に配付しております参考資料の三表にございますとおりでございます。こうしますとかなりの数の欠員があるのではないかということでございますが、御承知のように裁判所の組織は地方裁判所、家庭裁判所、それからさらには検察審査会というふうに全国で百四十ばかりの組織に分かれておりますので、したがいましてこれだけ多くの組織をかかえておりますと、どこか一つの庁である職種の欠員が生じたということでありましても、全国的に見た場合には相当な欠員数になるということでございます。したがいまして、各時点時点においてある程度職種はそれぞれ違うと思うわけでございます。片っ方では廷吏がやめた、そのかわりに片っ方では事務官が採用になったというようなこともございますので、それぞれの時点におけるとこらの職種別の欠員数はそれぞれ違うわけでございますが、裁判所全体としての職員の欠員ということでありますと、そうした組織がたくさんあるということから、おのずからある程度の欠員というのは、常時かかえていざるを得ないという状況だろうと思うわけでございます。ただ、同じ年度の途中で欠員になりましても、行(二)職員、それから廷吏といったような場合にはすぐさまそこで補充するということができるのでございますが、御承知のように書記官とか家裁の調査官の場合には一定の資格要件が必要でございますので、年度の途中で欠員が生じてもその際直ちにこれを充員するということができませんで、結局毎年のことでございますが、裁判官の場合と同じように、四月になってそうした資格者が出た場合に、これによって埋めるということになるのでございます。以上でございます。
  91. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは書記官とか速記官などは調査官も含めまして欠員ができてもすぐに補充はできない職種だと思いますので、四月に補充をするというお話でございますが、各別にその年間に退職する人というのはどのぐらいの数になっているわけでございますか。たとえば書記官とか家裁の調査官あるいは速記官などでは年間におのおのがどのぐらいやめていくわけでございますか。
  92. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 相当数がやめてまいりますが、たとえば裁判所の書記官で申し上げてみますと、大体年度当初には一応充員ができるわけでございますが、年間を通じまして約百数十名という者の欠員が出てまいります。これの中には書記官の場合必ずしも全員が裁判所をやめるというわけではございません。御承知のように、事務官のほうに行くあるいは庶務課長兼書記官ということになりまして、書記官の仕事もいたしますけれども、形の上では事務官が本務になるというようなのもございますので、実質にやめていく方というとまあ百名前後というふうにお考えいただければというふうに考えております。  ただ、そういった方に対しまして毎年補充をいたしますのは、書記官研修所を修了いたします者が大体百五、六十人おるわけでございます。それから部内の昇任試験、これは厳重な試験をやっておりますが、そういう試験によりまして書記官の資格を取得いたしますものがやはり六、七十人おるわけでございます。そういったもので補充をいたしていくというふうにいたしております。  調査官でございますが、調査官の減耗というのはあまりございません。もっとも首席調査官等で長年つとめまして、一定の年齢になりまして勇退されるという方が毎年ある程度の数ございますが、これは制度としてやむを得ないものというふうに考えられますところ。これも御承知のように、毎年調査官補の上級職試験、採用試験がございまして、そういう方が大体五十名前後常にあるわけでございます。で、これが一定の年数たちますと調査官研修所を修了いたしまして調査官資格を取得いたしますので、これによって補充をいたしていくと、こういうことになっております。  速記官の場合は、これも書記官研修所に速記官の養成部がございまして、二年間の研修をいたしましてそれを修了した者を速記官に補充していく。一方、速記官の減耗というのはあまりございません。十名までないわけでございます。養成いたしまして速記官になる方と減耗との差額というものが確実に充員されていくというような状況でございます。
  93. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいま速記官のお話が出ましたので、ちょっと速記官のことについて伺いたいわけでございますが、速記官のほうからかなりの要望書がたくさん出ているわけでございます。それをかいつまんで申し上げますと、御当局も御承知のとおりに速記官というものが、速記官制度というものが出発する時期におきましては、非常に新しい職域の開拓者として主として裁判所の職員の中からむつかしい試験を受けて速記官の道を歩むようになったわけでございますけれども、その後この速記官独自の職務権限というものが十分に確立されて——職制というものが確立されておらない。また職務権限というものも非常に狭い範囲にしか現在のところは認められておらないというようなところで、いま裁判所速記に従事している方々の中に非常に大きな不満と、またその将来というものに対してどういうふうに自分たちの身分保障というものがされていくのであろうかということに疑惑を持っておられる。また統計によりますと、いま自分の速記官としての仕事に満足しているという人が非常に少のうございまして、できれば転職したいという希望者が現在の速記官のうちの三分の一以上を占めているというような状態なのでございますが、この速記官制度というもの、これが出発した当初におきますと、最高裁もかなりPRなすったようでございますし、また、その途中において国会の御答弁あるいは事務総局からお出しになっていらっしゃる裁判所法の逐条解説などによりましては、その職務権限の強化とかあるいは職制の確立とかいうようなことも若干お触れになっているようでございますけれども、この速記官制度というものに対して将来どのような展望をお持ちなのか、このあたりをお伺いしたいと思うわけです。
  94. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 制度ということでございますので、あるいは総務局長からお答えすべきことであろうかと思いますが、速記官の将来というようなことも関連いたしますので、私のほうから一応先にお答えを申し上げたいと思います。  御承知のように昭和二十五年ごろでございますが、裁判所のいわゆる記録と申しますか、裁判の記録というものはこれはやはり逐語訳でなければいけないというふうに考えられました。ことに交互尋問制度というようなものが戦後大幅に採用されてまいりますと、一言一言がきわめて重要性を持ってまいりますので、これはできるだけ正確な録取というものが行なわれなければいけないということで速記制度というものが発足いたしたわけでございます。その点につきましては私どもは今日におきましても、裁判について正確な記録が必要であるということについては全く当時と同様に考えております。もっとも、いかなる事件もすべて速記制度でやっていいかどうか、そこまでやらなきゃいけないかどうかということについては、いろいろ問題はございます。しかし一定数の割合の事件というものについては正確な記録が必要であるということで、それは今日もその方針に全く変わりはないわけでございます。ただ速記官という制度を発足いたしまして、これを裁判所法の改正によりまして正確に速記官という職種を設けておるわけでございますが、ただ問題は、法廷の記録ということについての全責任を持っておりますのは御承知のように書記官でございます。そこで供述の録取という関係において、正確な録取の役割りを果たします速記官と書記官との関係をどのように考えていっていいかということは、速記制度が始まりまして以来私ども常に検討を続けておるところでございまして、書記官の側からするいろいろの見方、また速記官の側からするいろいろの見方、いろいろございます。目下引き続き検討をいたしております。現在のところ録取ということに関しては速記官が、実際上でございますけれども、全責任を持って速記のついた事件においてはやっておるという状況でまいっておるわけでございます。  で、私ども速記官の養成ということの必要性というものも十分考えておりまして、できるだけ多数の速記官というものを養成して各庁に配置いたしていきたいということを考えるわけでございますが、しかし一方、事実上の障害もないわけではございません。たとえば実際問題といたしまして、非常に優秀な職員、ことに女子職員ということになるわけでございますが、高校を卒業しまして書記官研修所の課程を受けるわけでございますが、女性が非常に多い職業でございます。仕事の性質上そういうことに相なろうかと思いますが、そういたしますと、全国配置ということになりましても転勤等の問題がございまして、比較的若い女性を全国に、まあいわゆる土地になじみのないようなところに行っていただくというようなことにしようといたしますと、かなりの障害がございます。国会などでも速記をおやりになっておりますが、これは国会は東京に一つでございまして、ここで御勤務になる以外に転勤というような問題ございませんが、裁判所の場合には御承知のように、全国津々浦々に裁判所があるわけでございます。そういった点の隘路というものもあるわけでございます。それからまた、何ぶんにもまだ始めましてそう時間がたっておりませんので、速記官に関する職制と申しましても、これはたとえばの話でございますが、主任速記官とかあるいは首席速記官というふうにするといたしましても、それにふさわしい方が出てまいりませんと、そういう制度というものを発足させるわけにはいかないわけでございます。で、現在速記官の平均年齢というのは三十歳を少し過ぎたところ等でございまして、ようやく一般的に速記官の人員の充実ということが行なわれてまいりましたけれども、そういった制度を確立していくのが実は今後の問題であるわけでございまして、私ども速記制度というものの重要性と、それからそれを現に埋めております速記官としての充実ぶりと申しますか、これは技術的にも年齢的にもいろいろな観点から見なければなりません。そういったものをにらみ合わせまして今後の速記制度の確立ということを考えていきたい。一方、技術革新というようなことも当時から見ると非常に目ざましいものがあるわけでございます。録音といったようなことによる制度、裁判事件記録の作成というようなこともやはり同時に検討いたさなければいけない面もございます。目下そういったいろいろの面をひっくるめまして鋭意検討いたしておるという段階でございます。
  95. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常に詳しい御答弁をいただいたわけでございますが、いま職制の問題でございますが、平均年齢三十歳というお話ございましたが、速記官制度ができてからもう二十年余り経ております関係から、もう四十四、五歳に最年長者の方はなっておられる、そういう方もかなりおられるわけでございまして、しかもこの速記という仕事が非常に肉体的にかなり疲れる仕事でございますので、年齢的に四十五歳までが限度だとかあるいは五十歳ぐらいまでしかできないのではないだろうかというふうなことを各人の方々がお考えになっていらっしゃる。そうなってくると、二十数年間裁判所で速記官の仕事をしてそのあとどうなるかという不安がこれつきまとうのは当然だと思うわけでございます。特にこれ裁判所の職員の中から速記官に、しかもむずかしい試験を受けて、何十人に一人とかという試験を受けておなりになった方が、その試験に受からなかった職員の方と比較いたしまして、むしろその試験が受からなくて普通にほかの道を歩まれた方がすでに管理職になっておられる。この統計いろいろ比較して資料もこちらにいただいているわけでございますが、同じに、同じ経歴で同じ年度に裁判所に入って、一方は速記官、一方は別の分野をお歩きになって管理職などにおつきになって、いま給与の差が月額四万円以上になっている人も、速記官になったがゆえに手取りの給与が少ない、そういうふうな資料も私いただいておるわけでございますし、また調整手当が速記官にはついておらない。そういうようなことから、実際の手取りの給与は、最初になったときはまあよかったのでございましょうけれども、中年ぐらいになってくるとそこで大きな差が開いてきているということで将来たいへんに不安な思いをしている。そういうようなことでぜひ書記官と対等な関係に立てるような職制——主任速記官とか、いまおっしゃいましたようなあるいは首席速記官というような制度も早く確立していただきたい。これ、いままでの御答弁にも出ているようでございます、国会の。それからこれは四等級が最高のようでございまして、四等級のところでみんな頭打ちになっているけれども、ぜひとも三等級に進めるような事柄も考えていただきたいという要望も強く出ておるわけでございまして、そのあたりはひとつ、まあまだ平均気齢が三十歳だからというふうに大ざっぱなことじゃなしに、もう二十数年、二十年以上つとめている人もすでにかなりできているわけでございますので、その点についての御構想なり将来のお考えというものをちょっとお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
  96. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) これは制度の問題として非常にむずかしい問題でございますが、そういう点は抜きにいたしましても、裁判所に速記官制度を導入いたしまして、書記官研修所で速記官の養成を始めましてもう相当の年月を経過するわけでございます。で、先ほど申しましたように、当初に速記官になったような方々は一定の年齢に達しておられて、佐々木委員御指摘のように、ある程度の年齢になりますと、やはり技術的な問題でもございますので非常に速記をすべくやや年をとってきたのではないだろうかといったような問題も出てまいることは御指摘のとおりでございます。そういたしますと、今後どういうふうな方向に進んでいくかということをきめるべきかという点につきましては私どもも慎重に検討しなければいけない、早急に検討しなければいけない問題であろうということは十分にわかっております。速記がやれなくなった、だからもうその辺でというようなことを考えておるわけでは毛頭ございませんで、やはり裁判所の職員として来ていただいて働いていただいておりますので、十分いつまでも裁判所で仕事がおできになるような体制というものをとっていかなきゃいけないというふうに考えております。その点は、御指摘の点十分に私どもも認識をいたしておりまして、目下そういったこと及び制度の問題もひっくるめまして、鋭意検討を急いでおるという段階でございます。
  97. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、いま新しい方式の機械力を用いての記録の作成の構想というようなことも若干お触れになったわけでございますけれども裁判所とすると、将来この記録というものをどういう方法でとることをお考えになっていらっしゃるのか。たとえば、現在でも検討されております、また事実上一部で実施されていらっしゃるところの部外速記者の動員制度、あるいはいわゆる民事三五部方式による録音筆耕方式、あるいはコンピューターの導入計画など承っているわけでございますけれども、これらのことがどうなっておりますのか。たとえば、いわゆる民事三五部方式というのも、これも昨年にお伺いして、最高裁のほうのこの方式についての将来の見通しども書面でいただいているわけでございますし、また現に、これは千三百万円でございますか、予算も計上されて、昨年度でございましたか、おったと思うわけでございますけれども、どういう方式に持っていらっしゃるような御構想なのか、お聞かせいただけたらと思うわけです。
  98. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 裁判所におきますところの供述調書、証人等の供述調書をどういうような形でやっていくかという問題でございますが、基本的には、先ほど来人事局長が申し上げましたように、速記官によるところの速記、これは他にかえがたい特徴または利点を持っておりますので、基本的にはそういうことであろうと思うわけでございます。  で、ただいま御指摘のいわゆる三五部方式といったようなものも、これは当面、速記官が若干不足するという面を補うという点もないこともないのでございますが、この三五部方式は、そもそもはむしろ書記官の調書作成の負担軽減といった点から発しておるのでございます。と申しますのは、最近におけるところの当事者、関係人の逐語調書に対する要望というものはかなり強いものがございます。しかも、その逐語調書と申しましても、全部速記によるところの逐語ということではございませんで、事件に直接関係のある重要な部分についてはできるだけ詳しい調書をということが、関係人の希望としてはかなり強いわけでございます。書記官のほうも鋭意自分の能力をあげて、そういうふうな調書作成に努力しておるのでございますけれども、より正確にということでございますと、自然録音機等を使って、それに基づいて調書を作成する。じゃ、その調書を作成するということについて、これもかなりの時間を要しますので、書記官の負担ということを考えますと、これを外部に出して録音機から反訳をさせるという方法はいかがなものであろうかということで始まったものでございます。そういった意味で、現在の速記官制度と相対立するものではないというふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。  で、この三五部方式につきましては、そのように裁判所で本来書くべきものを外部に書かせる——もちろん最終的には書記官がそれに署名押印するということで、書記官がその内容を検討した上で署名捺印をするということで、書記官作成の文書ということにはなりますけれども、その過程において外部の人につくらせるということは、法律的にはとにかくとして、やり方としてはたして妥当なものかどうかという点の問題もございますし、また反訳業者にほんとうにしっかりした方が得られるかどうかといったような問題もございますし、いま直ちに三五部方式を全国的に広げるという点までは考えておらないのでございます。なおまたコンピューターの話が出ましたが、コンピューターにつきましては、御承知のように、現在速記官がソクタイプによって速記いたしましても、これを反訳しなければならないという作業があるわけでございます。これはアメリカ等におきますと、自分の書いた速記録を録音に吹き込んで、ほかのタイピストがそれを聞きながらタイプを打つというようなことで、これは英語の特色だろうと思うわけでございます。日本語の場合には、やはり漢字まじりの文を書かなくてはいけないということで、かなりこれが負担になっておるのでございます。その点、現在のソクタイプと申しますのは、手書き速記と違いまして、記号によってタイプをするものですから、これをコンピューターにかけて反訳することはできないかということで研究開発を進めてまいっておるのでございますが、いろいろ難点もございまして、今日の段階で直ちにこれを裁判記録の中に取り入れるという段階までまだまいっておらないわけでございまして、なお研究開発を続けていく、そういった段階でございます。
  99. 佐々木静子

    佐々木静子君 これからの訴訟というものがいろいろと専門化してまいりまして、ますます速記なり、正確な記録を必要とされる事案というものが、これからだんだんとふえていく趨勢にあると思いますので、いろいろなことを御検討なすっていただきたいと思いますが、やはりいまの御答弁にございましたように、既存の速記官が合理化の波によってその職を失ったり、あるいは著しく不利益な立場に立たされるというようなことが、もうすでに起こりつつあるわけでございますけれども、これ以上起こらないようにひとつ十分に御配慮をいただきたいと思うわけでございます。  それと同時に、いま裁判所速記官というのは非常に仕事量が多い。先ほど人事局長の御答弁にも、国会の速記官の方との比較が出ておりましたけれども、労働時間などにおきましても、大体一人当たりの負担が三倍ぐらいになっておる。これは手書きの場合と機械を用いる場合との差はあるとは思いますけれども、労働時間が非常に長くて労働が過重である。ともに国家公務員としての速記の重要な仕事に従事していらっしゃるお仕事でございますので、その方々が健康を害することなしに、無理な労働をしいられることなしにこの職業を全うすること、その職業を十分に、健康をそこなうことなしに、できますように十分な御配慮をいただきたいと思うわけです。これは東京地裁の刑事部でも、さきに速記官のうちの三分の一、すなわち、その当時としますと、これは三十八年度でございますが、二十五人の人が職業病にかかりた、あるいは鳥取地裁の速記官におきましては、一〇〇%職業病にかかって、みな休職、一時療養をせざるを余儀なくされたというふうな非常な労働強化が行なわれている。そういうふうな事柄も十分御配慮いただきたいと思うわけです。特に、これは、昨年もこの点についてかなり詳しく質問をさしていただいたわけでございますが、頸肩腕症候群とか、あるいは書痙などのような独特な職業病として典型的なものに罹病される方が多いわけでございますけれども、昨年も承らしていただきましたが、昨年から比べまして、この災害補償の請求というものが裁判所の中でふえているのか、あるいはかなり片づいて減ってきているのか、そこら辺のところはいかがなものでございますか。
  100. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御指摘のように、昨年もお尋ねがございましてお答えを申し上げたわけでございますが、公務災害を主張いたしまして、これを公務災害と認めない場合には、災害補償審査委員会に申し立てをするということができるわけでございますが、災害補償審査委員会の審査案件といたしましては、目下係属中の事件は非常に減少をいたしております。大部分の事件委員会としては片づいておるという状況でございます。
  101. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、裁判所に健康安全管理規程というものは、もうつくられたんでございますか。これもかねて全司法から要望があると思うのでございますが、もうつくられたわけでございますか。まだできていないわけでございますか。
  102. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) はなはだ申しわけないわけでございますが、まだ規程としてはできておりません。ただ、同様の趣旨を盛りました関係局の通達はいたしておりまして、実際におきましては規程と同様の運用をいたしておるという状況でございます。
  103. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうでございましたら、規程を早くおつくりいただいたらいかがでございましょうか。いつごろおつくりになるようなことに予定はなっているわけでございますか。
  104. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 二つの面がございまして、一つはいわゆる職員の健康の点からする問題でございます。一つは庁舎の管理等の関係からする、いわゆる安全管理と申しますか、そういう面からのものでございます。これ、所管といたしましては、実は事務総局でも人事、経理、総務等にわたっておりまして、関係の部局が集まりまして鋭意そういった規程としての形を整えるべく作業中でございます。
  105. 佐々木静子

    佐々木静子君 ちょうどいまおっしゃった三つの局長さんが全部おそろいでございますので、ぜひとも鋭意実現方御努力をいただきたいと思います。  それから、通達を出していらっしゃるということでございますが、その通達のコピーを委員会のほうにお出しいただいたらけっこうだと思いますが、いかがでございましょうか。
  106. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 通達、個々の点にわたっておりまして、一本の通達というわけではございませんので、後刻佐々木委員のお手元に事実上お届けさしていただくということで御了承いただきたいと思います。
  107. 原田立

    委員長原田立君) 局長、佐々木委員だけじゃなくて、委員会に御提出願いたいと思います。
  108. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 非常に多岐にわたっておりますので、どのところまでお出し申し上げる——結局、規則をつくります場合に、どの程度の内容に盛るかという点とあるいはそごをいたす点があろうかと思いますが、できるだけ全体の通達を収録いたしましてお手元までそれではお届けするようにいたしたいと思います。
  109. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、いまの裁判所は、これだけの事件をかかえて、夢物語のようにお考えになるかもわかりませんけれども、いまいろんなところで週休二日制というふうな声が広まってきておりますけれども裁判所とすると、今後の展望として週休二日制というようなこともお考えになっておられるかどうか。これは事務総長に伺いたいと思います。
  110. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 週休二日制につきましては着々と検討しておりまして、できることならば本年の四月から土曜日を休めるようなふうに持っていきたい。しかし、土曜日を休みましても、裁判の全体が落ちて——失礼いたしました。来年の四月をめどに鋭意検討しております。ただ、そういうことをいたしましても、裁判が遅延をしたりいたしまして、国民の皆さまに御迷惑をかけては相なりませんので、その辺のところを勘案しながら、どういうふうにして実現するかということをいま着々とやっているところでございますので、これはもうしばらくお待ちいただきたいと思います。
  111. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま週休二日制の御構想を伺ったわけでございますが、そうなった場合にどのようになってくるのか、たとえば能率がかえってあがるのか、あるいはやはり裁判が遅延するのか、そういうふうな詳しいデータもいろいろいま最高裁で御検討だと思いますけれども、そういうようなことも私どものほうにもまたいろいろとお聞かせいただきたいと思うわけです。また、これは裁判所でお仕事をなさる職員の方はもとより、この裁判所を対象に仕事をしているところの弁護士その他の週休二日制にもそのままつながっていくわけでございますので、大体どのような御構想であるのか、あるいはそうなったときに、いまも申し上げましたように、実際の訴訟がどういうふうになっていくのかというようなことも十分に——たとえば日弁連などとも十分に御協議いただいてお進めいただきたいと申し上げたいと思います。  それから最後に、話はかわりますが、裁判所職員の指定管理職員というものがいま非常に裁判所の中にふえてきている。大体がほかの省では八%ぐらいが管理職員であるところが、裁判所の中では一六ないし一七%ぐらいの数字を占めており、たとえば家裁調査官などでは大体半分ぐらいが指定管理職になっておるというふうな実情のようにお聞きしておるわけですが、そのとおりでございますか。
  112. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 管理職員の指定の点でございますが、現在大体一五%が管理職員に指定をされておるという状況でございます。まあ各省庁いろいろのように承っております。裁判所よりも少ないところもおありのようでございますが、たとえば、例をあげてあるいは失礼かと思いますが、自治省でございますとか、法務省でございますとかという点は、私どもよりもその割合は多いというふうに承知いたしております。
  113. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは人事院はどのくらいのパーセンテージを普通標準にしていられるのか、ちょっと聞かしていただきたい。
  114. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 人事院がどういう標準をなさっておりますかということにつきましては、この制度をつくられました当初とかなり公務員の職員構成も変わってきておりますし、職種も変わってきておりますので、きょう現在においては正確には承知いたしておりません。大体一二、三%というところをお考えになっておるのじゃなかろうかというふうに承知いたしておりますが、これは必ずしも正確なパーセントではございません。
  115. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは指定管理職が拡大されると、人員の不足というものがやはりその結果起こってくるのじゃないかということを危惧するわけでございますが、最高裁とするとどのようにお考えでございますか。
  116. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) かつて当委員会でもお尋ねがあったと思いますが、裁判所の特殊性といたしまして、比喩的に申しますと、どうしても各人が独立して仕事をされるという分野が多いわけでございます。行政官庁でございますと、局とか課とか部というような一つの単位がございましてその単位で仕事をなさるわけでございます。裁判所は御承知のように各裁判官が独立して、単独の裁判官が一裁判体を構成してお仕事をなさるというような特殊性がございます。それに伴いまして裁判体に付属するものとして主任書記官以下の系列というものができてまいるわけで、勢い裁判所の性質上細分化された、独立した一つのかたまりと申しますか、組ができるわけでございます。で、裁判所は行政官庁が組織的な仕事をなさるのに比べますと、どうしても管理職員の割合というものがよその官庁よりも多くなるということでございます。しかし一方たとえば主任書記官というふうになりましても、この主任書記官は管理だけをするわけではございませんで、一面やはり合議事件の立ち合いでございますとか、自分の仕事もいたすわけでございますので、そういう意味で管理職員の割合が裁判所は他官庁に比して決して少なくはございませんけれども、そのことによって管理職員でない職員の数が——管理者ばかり多くていわば非管理者がいなくなるというような事態は裁判所においては生じない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  117. 佐々木静子

    佐々木静子君 まだいろいろとお伺いしたいことがたくさんあるわけでございまして、特にほかの、きょうお尋ねさしていただく時間のなかった局長さんもお運びいただいたのですけれども、私ばかり質問するわけにいきませんので、次の委員会のときまでに質問を保留さしていただきたいと思うわけでございますが、いずれにしましても、これは先年日弁連が発行している「自由と正義」で、裁判がどのようなわけで遅延しているかというようなアンケートでも、裁判官が不足しているから、あるいは裁判所職員が不足しているからという回答が圧倒的に、そうじゃないと言った人は一人もなくって、全員が、それが裁判の遅延の一つの大きな要素を占めているということを回答しているわけでございまして、それから見ましても、国民がいま裁判所に期待していることを実現する意味におきまして、どうしても裁判所の職員の定員の増加というものは、これはどうしてももっとがんばって、これで十分だなどというようなことはとても考えられないので、思い切って裁判官あるいは裁判所職員というものを大幅にふやしていただくように、御当局としても鋭意御努力いただきたいと思いますとともに、いままた単に職員をふやしたからといって、それが国民が期待するところの裁判が実現するわけでは直ちにないのでございますので、その裁判官が、あるいは裁判所職員が安心して働けるだけの職場、環境というものをぜひともおつくりいただきたいと思うわけでございます。そういうことを重ねて御要望申し上げまして、もう一度次回に質問を続けさしていただきたいと思いますけれども、最後に、そういうふうな点につきまして、事務総長に本件についての御所信というものを伺っておきたいと思います。
  118. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 表現の点で多少のニュアンスが、人が違うことによって生じてくるかと思いますが、私どもの心配しておりますこと、あるいは私どもが考えておりますことを佐々木委員にもおっしゃっていただきましたので、そういう表現で十分御安心いただけるかと思います。
  119. 春日正一

    春日正一君 今回の定員法改正では、裁判官五名、職員二十五名の増員ということになっておるんですけれども、いままでの衆議院の委員会などで行なわれた質疑を見ておりますと、やはりこの程度の増員では、国民が憲法で保障された裁判を受ける権利を保障するということにはほど遠いものであるという印象を深くしておるわけであります。私ども共産党は去年の第十二回党大会でも、憲法に規定された国民裁判を受ける権利を保障する措置をとるということを党の方針としてきめ、いままでにもそういう立場からいろいろ政策も出して努力をしてきたんですけれども、現在訴訟が遅延し、国民への著しいサービスの低下が起こっているというような重大な問題を一つとってみても、そこには裁判官の不足、職員の不足といったことが大きな要因として存在するというように思います。これは労働者の側から見れば労働強化の問題であるし、国民の側から見れば裁判を受ける権利がいろいろな形で侵されておるということのあらわれであるとも思います。そこで、きょうはこういう問題のすべてにわたってお聞きする時間もないし、ほかの委員からもいろいろ質問も出ておりますんで、職員の不足、特に速記官の不足による問題を質問したいと思います。  そこで最初にお聞きしたいんですけれども裁判所に速記制度を取り入れられた、これは非常に高い評価が与えられて、正確な訴訟の記録、事実審理には欠かせない真実な発見と公正迅速な裁判の実現という、人権を擁護するという司法の目的にかなったものだというふうに重視もされておるんですけれども、こういう仕事に実際に従事しておる人々の人数はどうなっておりますか。予算定員と実際の人員、その点聞かせてほしいんですが。
  120. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判所の速記官につきましては、お手元にも資料が参っておろうかと思いますが、定員といたしましては九百三十五ということでございます。この九百三十五と申します数字は沿革がございまして、裁判所の書記官あるいは事務官等から速記官に定員を組みかえていったわけでございます。と申しますのは、法廷の記録等につきましては、書記官が主として録取を担当いたしておりましたが、これを速記でやったほうがいいんじゃないかという、先ほど来申し述べておりますような趣旨から発足いたしまして、これを書記官の人数を速記官の人数に組みかえていくという措置をとりました。具体的にそういう措置をとり始めましたのが昭和三十一年でございまして、それから約九年かかりまして書記官、あるいは書記官補、事務官というところから組みかえてまいりまして九百三十五という数字になったわけでございます。で、現在の速記官でございますが、これは御承知のように書記官研修所で養成をいたしまして、そして各地に配属いたすわけでございますが、書記官研修所に入っております人間も加えまして速記官の実人員は、大体この定員から百数十名下回っておるという状況でございます。で、お手元の資料では百何名ということで欠員が出てございますが、これは書記官研修所で養成中の者を含んでおりませんので、潜在的な速記官というものもひっくるめますと、大体百数十名が欠員というのが現在の状況でございます。
  121. 春日正一

    春日正一君 その資料、この中のどこにありますか。
  122. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) お手元の「関係資料」の、「参考資料」の三ページでございますが、「裁判官以外の裁判所職員の新旧定員内訳」というのがございますが、正確に申し上げますといま申し上げたようなところでございますが、「その他」というところの欠員の中に含まれておるわけでございます。速記官といたしましてはいま申し上げたとおりでございます。
  123. 春日正一

    春日正一君 これ速記官という字が出ていないんですな。秘書官、それから書記官、家裁調査官(補)、事務官、その他と。この「その他」の四百二十八というのがあれですか、速記官ということになるんですか。
  124. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) その中に速記官でございますとか、行(二)職員でございますとか、廷吏でございますとか、いろいろ含まれておるわけでございますが、お尋ねの速記官で申し上げますといま申し上げたようなことに相なるわけでございます。
  125. 春日正一

    春日正一君 そうすると、この中には速記官そのものの数字というのはないわけですね、この資料の中には。
  126. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 内数として出てまいるわけで、そのとおりでございます。
  127. 春日正一

    春日正一君 私どもこの「裁判所速記官白書」というのですか、「速記部同窓会」編さんと、こういうものの資料で見ますと、昭和三十一年が予算定員三百十六から始まって、それで四十八年が九百三十五、実定員六百五十三、欠員二百八十二と、こうなっているんですけれども、四十八年、これは六月十五日現在ということになってんですけれども、この数字は間違ってるということになるんですか。
  128. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 必ずしも正確な数字ではないのではないかというふうに考えております。
  129. 春日正一

    春日正一君 そうすると、正確な数字をいま聞いたんだけれども、九百三十五、これは間違いないとして、実人員が何名で欠員が何名というのをもう一度言ってくれませんか。
  130. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 先ほども説明を申し上げましたように、速記官として現在いたしておりますのは、それよりもある程度数下回った数字でございます。で、正確に申し上げますと、七百九十名余り、一、二名の誤差はあろうかと思いますが、七百九十名ほど現在いたしておるということに相なるわけでございます。
  131. 春日正一

    春日正一君 そうすると、百四十五名欠員ということになるわけですか。
  132. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) ちょっと正確な数字が、一、二名の誤差はあろうかと思いますが……
  133. 春日正一

    春日正一君 若干のあれはちょっと、ほぼということでですね。
  134. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 大体その程度でございます。
  135. 春日正一

    春日正一君 それで、この欠員が、いまの白書によれば二百八十二名が欠員となっています。いまあなたの御説明でも百四十五名が欠員となっているわけですけれども、これは一体どういうわけなんですか。
  136. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 先ほど来御説明をいたしておりますように、裁判所の速記官は特殊な機械速記でございまして、二年間の書記官研修所におきます養成をいたしまして、その養成が終わった者を裁判所の速記官に採用するということで、実は給源が限られておるわけでございます。で、裁判所の速記官を九百三十五名の定員にいたしました際も、先ほども申し述べましたように、書記官補でございますとか事務官を組みかえまして九百三十五というところでこれを充員いたしたいということで今日に至っておるわけでございますが、養成をいたしまして、その養成が追っつかないというのが現状でございまして、その差額が欠員として出てきておるというのが現状でございます。
  137. 春日正一

    春日正一君 そうすると、足りないということは御承知になっておいでのわけですね。
  138. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 定員どおり充員いたしたいというのが念願でございますけれども、なかなかそれに追っつかないということでございます。ちなみに、これまで書記官研修所で養成いたしました数はこの定員を上回る人数を養成いたしたわけでございますが、御承知のように結婚退職とかいろんな自然減耗もございまして、現在員は定員を下回っておるというのが結果になっておるわけでございます。
  139. 春日正一

    春日正一君 そこで、足りないで困っておいでになって、といってしかも給源が限られておるというふうに言われるのですけれども、やはり私ども裁判所の仕事というのは国会と並んで非常に大事なものと見ておるわけですわ。国民の基本的人権を守るという一番大事な任務を持っておいでなわけですから、少なくとも裁判所の機能を充実していく、そういうためには金を惜しんじゃいかぬ、そう思っている。そうすると、あなた方としてはその不足のものを埋めていく努力をいままでされてもきたと思いますけれども、ずっとこの表を見てみますと、相当長期間にわたっていまのような状態が続いておるわけですね。少しずつは減ってきておりますけれども、私はこの「裁判所速記官白書」というほうの数字で言いますけれども、三十九年度九百三十五名に定員をされた最初のときが三百三十六人ということになって、それがだんだん減って四十八年で二百八十二ということですから、減ってはいるけれども、十年かかってその程度ということではおそ過ぎるんじゃないか。何か対策を講じて急速に充実するというようなことは考えておいででないんですか。
  140. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 実は速記制度を始めまして当初は高校卒業をしました職員をストレートに採用をいたしました。そういうやり方を途中でやめて、現在では部内の職員から速記をやりたいという人を採用するという方向へ変えたわけでございます。これを部外からとりますと相当数の方々を急速に充員できるのではないかというふうに考えております。過去にも急速な速記官の充員という際にはそのような措置をとったわけでございます。  ではどうして結局部外から採用しないのかということでございますが、実はこの速記制度というのは非常に適性が問題になるわけでございまして、新年度に部外の職員を百人とりましても、結局適性があるとされる方はその半分、場合によっては三分の一ぐらいになってしまうわけでございます。そういたしますと、その方々に一カ月あるいは二カ月の適性検査をしました本格的な研修をさせる時点において相当数の方にやめていただかなければいけないという問題が出てまいりました。そういたしますと、そのように優秀な部外の方に来ていただいて一、二カ月の間に速記には向かないからということでやめていただかなければいけない、これは非常に残念なことでございます。また、来られた方ももうすでに一、二カ月をたちまして速記に向かないからやめていただきたいというふうに申しますと、その時点では一般の採用の時期が過ぎておりますので再就職をされるということについても非常な困難が出てまいるわけでございます。そこで今日、これではいけないということで部外採用をやめまして、部内から採用するということにいたしました。しかし、部内から採用いたしましても実は同じことでございまして、本年度等におきましても部内から約百名近くの優秀な方に速記の入所試験を受けてもらって一応入所するということで第一次入所ということをきめたわけでございますが、結局適性検査をいたしますと、約三分の一が残るだけで三分の二の方が向かないということになります。部内からの採用でございますと、そういうふうに向かないとされた方はまたもとの職に戻ってもらうことができるわけでございます。そういうことで実は今日運用をいたしてきて、部外採用というのをかつてやりましたけれども、まあ今日にはそれに踏み切れないでおるという段階でございます。ただ問題はそのように部内採用を続けております限りにおいては、なかなか急速な大量増員ということが困難でございます。まあ全面的な部外採用をするか、あるいは一部的な部外採用をするか、いろんなことがございますけれども、急速に速記官の充足ということについては、この辺で構想を新たにして考えていかなければいけないんじゃないかというふうには考えておるわけでございます。
  141. 春日正一

    春日正一君 この白書の中でも「人員拡充についての私たちの主張」として、「速記官人員の別枠定員を確保すること」と、あるいは「速記官の養成を受ける者を部外からも公募することを復活させ、大幅な養成をはかること」、「当面の緊急事態に対処するため、予算定員に満つる分だけでも早急に養成すること」というような具体的な提案もしておるわけですね。そういう点については検討をされたんですか。   〔委員長退席、理事後藤義隆君着席〕
  142. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 速記制度を始めまして、すでに相当の期間を経過いたしておりまして、裁判所における速記制度というものは完全に定着をいたしておるというふうに考えております。また速記の必要性というものも、今後、増大することこそあれ、減るという問題は起こってこないという認識に立っております。したがいまして、少なくとも予算の定員に至るまでは、できるだけ早くこれを埋めていかなければいけないということは私どもも真剣に考えておるわけでございます。ただ先ほど佐々木委員からも御質問がございましたが、相当の年月をたちますと、年齢的にもうそろそろ速記に不向きになってきておる方もちらほら出てくる時代でございますので、そういった方をどのように部内において適正な処遇をしていくかということとあわせて考え、速記制度を全体として充実していきたいというのが今日の緊急の課題として私ども取り組んでおるところでございます。
  143. 春日正一

    春日正一君 それで速記というのは非常に大事なことですし、私も何回か裁判を受けて意外なことを書かれて腹が立った経験も持っているわけですから、速記というものは非常にこれは大事なことですし、だからそういう意味ではこういう具体的な提案も、それをやっておいでになるこれは速記部同窓会というのですから、おそらくそれをやっておいでになる方々のグループだろうと思うんですけれども、そういう人たちが具体的に提案しておるわけですから、それは真剣に取り上げて、できるだけ早い時期にこの定員を充足するということはぜひやってほしいと思います。  そこでもう一つの問題は、現実に速記官が不足していることでまあいろいろ問題が起こっておるわけですね。先ほど佐々木委員のほうからも話がありましたけれども、人員が不足して速記の利用が一方では高まっておるというような中で、職業病の罹病率がふえたというようなことがいわれております。現に、御存じだと思うんですけれども昭和四十九年二月十八日付で、横浜地方裁判所内の全司法労働組合神奈川支部から、この衆参の法務委員会に出ておる要請、これを見てみますと、「裁判所職員の定数増員を要請する数」といって裁判官五名以上、書記官二十四名、速記官十六名と、いま横浜だけで十六名が要請されておるし、中に具体的に川崎支部で速記官二名とか、横須賀支部は速記官二名とか、小田原の速記官二名というような形で具体的な数をあげて要請してきておるんですね。私は現場へ行って見てみませんし、行ってもしろうとがひょっと行っただけですぐに妥当かどうかということはわかりませんけれども、しかし、少なくとも労働組合がこうやって国会に要請を出してくるというからには、相当な根拠を持って要請してきておると思うんです。そうすると神奈川県ですから、横浜の裁判所ですから、この管内だけで十六名ということになると、全国にすればかなりな数が要求されておる、実際には。そうしてそれがない状態で仕事をしておるものですから、だから病人やそういうものも出てくるということになっておるんですね。そういう点については、あなた方のほうではどういうふうに把握して、その勤務の状態、病気の状態というようなものを、そうしてどういうふうにそれに対処していっておいでになるか、そこを聞かしてほしいんですが。   〔理事後藤義隆君退席、委員長着席〕
  144. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 速記官をふやせという各庁の御希望というものは、全国的には相当な数にのぼっておるようでございます。私ども先ほど申しましたように、できるだけ速記官を充足していきたいと思っておりますが、なかなか養成いたしました速記官も各庁の御希望どおりのところへ行ってくれないといったようなこの転勤等の問題もございますので、そこは非常に困難でございますが、鋭意そういった意味で必要なところに速記官が持っていけるようにこれは努力をいたす、現在もいたしておりますし、今後もいたす所存であることは先ほど来申し述べておるとおりでございます。  ただ、御指摘の速記官が足りないことのために健康等の問題で非常に憂慮すべき事態があるのではないかという点は、ちょっと御説明を要するかと思います。と申しますのは、速記は御承知のように非常にまあ短時間に神経を集中いたしまして根を詰めてやらなければいけない仕事でございますので、速記制度が発足いたしまして以来、私どもどの程度に速記官に仕事をしていただくのが適切な適正な仕事量であるかということは検討を続けてまいりました。これは相当なエネルギーを費やしまして検討いたしたわけでございます。で、各庁現在のところ大体、一週間に速記をしていただきます時間は二時間前後ということで扱っております。また、そのことは速記をいたしました時間の報告等を見てみましても、これは全国ほとんど平均いたしますと二時間前後で、長くても二時間半というようなことでございます。そうしてその二時間ないし二時間半で打ちました速記を、大体十倍の時間をかけて反訳をするということをいたしておりまして、個々の速記官に対しましては、それ以上に仕事をしてもらうということはもういたさないようにいたしておるわけでございます。そうなりますと、速記の需要と速記官の速記能力との間にギャップが出てまいりますが、このギャップは場合によりましては、先ほど総務局長が申し上げましたように、書記官が録音を使って一応これを埋めるとかあるいは外部速記で埋めるというふうにいたしておりまして、そのギャップがあるところを速記官のいわば過重な勤務によって補うということだけは絶対にいたさないようにということで今日まで来ておるわけでございます。ただ、そうといたしましても、やはり高年齢等になってまいりますと、なかなか肉体的な障害も出てくるというような問題もあり、頸肩腕症候群の発生とか、いろいろな問題があることも十分承知いたしておりますが、少なくとも速記官の数がその需要に満たないから、その分、速記官をよけいに働かすというようなことだけはいたさないというふうに十分注意をして全国に指導をいたしておるということでございます。
  145. 春日正一

    春日正一君 こう言ってんですね。「裁判所の速記官と国会の速記士」ということで、ここにおられる速記の方と比較して、国会の場合はごらんのように二人ずつ組になって十分で交代してやっておいでになる。ところが裁判所の場合は一人で、そうして十分間交代ではなくて、ほとんど一時間ないし二時間連続してこれをやるというようなことをやっているわけですね。これはやはり非常に疲れる仕事だと思いますよ。たとえば交付して二時間やるのと、詰めて一時間やるのとでは、あるいは詰めて一時間やるほうが神経をすり減らすようなことになるだろう。そういう立場から速記官の仕事というのが相当なつらい仕事というか、そういうものになっておるということをここで述べて、そして人員をふやしてほしいということを言っているわけですけれども、これは「最高裁判所が行なった労働科学研究所の調査、あるいは速記部同窓会と法政大学芝田ゼミナールが共同して行なった裁判所速記官の立会、反訳の疲労度調査」、こういうものによればと言って、「かなりオーバーワークになっていることが、計数上も、労働科学上も明らかになっております。これはこの人たちうそを言っているわけじゃないでしょうね。そういうことでしょうね。どうなんですか。
  146. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 私はその白書、正確には承知いたしておりませんので、後刻拝見して、また場合によっては正確なところを申し上げさしていただきたいと思いますが、私どものほうで労働科学研究所等に調査を依頼いたしましてやりましたものでも、一日二時間以上続けてやるのはいけないという結論でございまして、そのことを一つ重要な参考にいたしまして、先ほども申し上げましたように、一週間に大体二時間、これは何も一回に詰めて二時間という意味ではございませんで、一週間のうち速記立ち会い時間が合計二時間または二時間半と。ただ、場合によっては続けて二時間やるということもございます。しかし、そういうところでとめておるわけでございまして、そういった疲労度が非常に急速に加わるというようなことも十分勘案して、大体の一般的な平均的速記時間というようなものを出し、それで各庁が大体その線に沿って運用しておるという実情でございます。
  147. 春日正一

    春日正一君 組合のアンケートでも、ここにも出ておりますけれども、大体七八%ぐらいの人が胃が悪いとかどうとかという健康上の異常を訴えておるというような状態、これはやはり過労ということになると思うんですよ、そういう状態がくるということは。だからそういう意味で、やはり一番根本の問題になるのは、数を早く充足するという問題だと思うんですけれども、その問題は一番最後にあれするとして、これで見ますと、民間速記者へ出して——録音をとって——先ほど話がありましたね、出して復演するというようなことをやっておると。それから三五部方式ですか、そういうような形でもやっておいでになるというんだけれども、これはどういう仕組みでどのくらいな量をやっておいでになるんですか。
  148. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) まず第一の外部の速記者、すなわち裁判所の速記官ではなくて、民間の速記者に頼んで速記をしてもらうというやり方でございますが、これはごく限られておりまして、東京地裁の、しかもそれは刑事部でこれを若干活用しているという状況でございます。御承知のように、刑事事件では、学生事件それから公安事件等、普通の事件でも速記を要する事件というものがかなりございますので、それを補うという観点から、外部の速記者に頼んでやってもらう場合があるという程度でございまして、全国的に速記官が足りないからということで外部の速記者をどんどん使うということはやっておらないのでございます。  第二の、いわゆる三五部方式と申します、これはおわかりにくいかと思いますが、東京地裁の民事の三五部というところで最初に始めた方式でございます。これは書記官が法廷に録音機を持ち込みまして録音をしたものを、これも反訳業者がおりまして、反訳業者にその録音テープを貸しまして、反訳業者はその録音を聞きながら反訳して下書きをつくる。その下書きをまた裁判所に持ってきまして、担当の書記官がその下書きを見て、必要なところは残し、それから要らないところはそれを削る、もしくは、簡単にすべきところは簡単にするというようなことでそれに手を加えます。手を加えた上で、また反訳業者にそれを清書をさせると。清書してでき上がったものに書記官が自分の名前を署名捺印して、自分の調書として裁判記録とする、こういうふうなことでございます。これは先ほど御説明いたしましたように、このほうは外部速記と違いまして書記官の執務を軽減するという方向から始まったのでございます。それが半面、速記官が不足するのでそれを助けるという部面がないこともないのでございますが、主たる面は、書記官が調書を作成するその補助としてそういうやり方はどうであろうかということで始まったものでございます。この点につきましては、外部にそうした裁判所の、かりに録音したものであっても録音テープを外部に出すとか、それから書記官が書かないで外部の人が下書きでも書くということが、はたして妥当かどうかといったような問題もございます。それから特に刑事事件でございますと——刑事事件でありましても法廷は公開でございますので、外部の人がそれを見るということ必ずしも違法ではございませんが、刑事事件ですと、やはり人権保障というような観点からやたらに外部の人が法廷におけるところの証言を聞くということもいかがかといったようないろいろな問題点もございますので、この点につきましても、これは単に東京地裁の民事のごく一部の部でやっておるのでございまして、これも実験ということで一部やらしておりますが、いまのところ、これを全国に広げるというところまではいっておらない、こういう状況でございます。
  149. 春日正一

    春日正一君 民間へ下請に出すにしても、裁判は公開ですからそれは外に出して人に見られて悪いというものではないけれども、少なくとも裁判所が判決を出すことに関係のある文書ですわ、これは。こういうものを裁判所の職員でない民間の、どういうところか知りませんけれども、とにかく、民間の下請に出してというか、そういうものを入れて速記をさせるとか、あるいは録音にしたものを反訳させるとかするにしても、やはりそういうやり方というのは、ともすれば、へたをすれば裁判の権威にかかわるようなことが起こりかねない。そういう可能性を含んでいると思いますよ。必ずそうなるとは言わないけれども、そういう可能性を含んでおると。だから、そういう意味でいえば、こういうものがいいか悪いか検討中というようなことではなくて、やはり事裁判に関する問題は裁判所の機構の中できちんと国民の信頼の得られる形でやるというふうにすべきだと思いますよ。だから、そういうふうに考えてきますと、やはり速記官の欠員の充足あるいは定員を必要なまでふやすという問題は焦眉の問題だと思うんです。  先ほど来いろいろ苦労されて、外部から入れるとこうなる、内部から登用してもこうなるというようないろいろ話がありましたけれども、しかし、そういって、それでは欠員をそのままにして、このままずるずる、もう十数年欠員をずって持ってきているわけですから、そういうことではこれはぐあい悪いと思うのです。私は、いますぐ充足させるといったってこれは無理だと思うけれども、少なくとも二年なり三年なり、比較的短い期間のうちにどうして充足させるかということを真剣に考えなければ、あなた方が職務の怠慢だということになるわけでしょう。人がありませんから間に合いませんというだけではこれは済まないわけで、間に合わせるのがあなた方の職責ですから、それで高い月給もらっているわけですから、だから間に合いませんでは済まぬ。私は、公募せいという意見もあるし、そして公募する方法も先ほど言われたようないろいろ欠陥があるとすれば、どうしたらそういうことにならぬように公募するか、そういうことも詰めて研究される必要があるだろうし、内部から募集するとしても、それが足りないという、足りないにはそれだけの理由があるはずだと思うのです。先ほど佐々木委員も言われましたけれども、この速記官になってやっている間に格差ができちゃって月給の違いが出てきたとか、あるいは身分が一段下がったとかいうようなそういう問題があるとすれば、それもやはり部内の問題として解決できない問題ではないわけですから、当然解決しなければならぬ。そういうふうにして二年なり三年なり、できるだけ短い期間にこれを埋めるということをやる必要があると思うのですけれども、どうですか、その点ではどのくらいな期間で埋められますか。
  150. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 現在私どものほうで養成いたしております速記官には養成期間が二年かかるわけでございます。きょう採りましても、二年先でございませんと一人前の速記官にならないという状況がございます。問題は、先ほど御説明いたしましたように、速記官そのものを採用するということについて何ら異論はないし、またたくさん採りたいというのが念頭でございますが、適性なしと一般的な検査ではわからなくても、実際に養成を始めてみますと適性がなしとされるおそれが実はあまりにも多過ぎるというところが問題でございまして、詰めてまいりますと、現在の機械速記というのはそんなに実はむずかしいということになるならば、このやり方を変えなくていいのかという実は根本的な問題にまでさかのぼるわけでございます。私どもそういった問題をひっくるめて、実は事務総局におきましても最も緊急なる課題として現在も検討をいたしておるわけでございます。ただ、そういう検討はそう簡単には、なかなか技術的なものも含まれますので結論が出ないとすれば、外部採用ということにともかくも非常なロスを覚悟してもう一度踏み切ってみるかということを、これは決断の問題であろうかと思います。そういう点も加味いたしまして早急な結論は出したいと念願をいたしておる、そういう状況でございます。
  151. 春日正一

    春日正一君 いま、きょうから始めても二年かかると言いましたけれども、私もあと三年任期が残っているわけです。その私の任期の終わるごろまでにはどうですか。
  152. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) できるだけ努力をいたしまして、おほめいただけるような結論になりたいと考えておりますが、ただ障害となります点が先ほど来るる申し上げているようないろいろな点に入ってまいりますので、お約束というところまではいきかねるわけでございますが、鋭意努力をさせていただきたいと、こういうふうに御了承いただきたいと思います。
  153. 春日正一

    春日正一君 いろいろ苦労されている面もあると思うのですけれども、やっぱり現場で働いている職員の方々は、それなりに、こうすればいいじゃないかというふうな意見も持っておいでだと思うのですよ。そういう意味では、労働組合なんかの意見も十分聞いて、この問題は至急片をつける必要がある。充足できませんということで十数年欠員をかかえてくるというようなことは、これは重大な職務怠慢だと思うのですよ。  そこで、この問題はこれだけにしまして、あと裁判官及び職員の定員についてこれは簡単にお聞きしますけれども裁判官並びに裁判官以外の職員が定員に満ちてないというふうに聞いておるのですけれども裁判官のいない庁ですね、これが二百四十庁というふうにいわれていますけれども、また一部裁判所は裁判官の負担過重が顕著であった、そのために審理期間がはなはだしく延びておったというようにも聞いております。特に民事訴訟を取り扱わない簡易裁判所があるというふうにも聞いておるのですけれども、この民事訴訟を取り扱わない簡易裁判所というのはどのくらいあるわけですか、どことどこと。
  154. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 簡易裁判所のうち民事訴訟を取り扱わない庁は三十八庁でございます。
  155. 春日正一

    春日正一君 その庁がどことどこか、ずっと全部名前書いて——ここで一々読んだら時間もあれですから、資料としてもらえますか。
  156. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 後刻作成しましてお届けいたします。
  157. 春日正一

    春日正一君 それにしても、民事を扱わない簡易裁判所ということはどういう理由なんですか、これは。
  158. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 裁判所の規模から申しまして、民事訴訟事件がきわめて少ないといったような関係で、そのようなところの事件はむしろその近くの簡易裁判所で事件を取り扱ったほうが全体として適正な処理がなし得ると、そういった観点から民事訴訟を取り扱わない簡易裁判所をきめておるのでございます。
  159. 春日正一

    春日正一君 簡裁で民事裁判を扱わない、これはいまの説明を聞くとちょうど国鉄側の合理化みたいなもので、貨物が少ないから貨物取り扱いを廃止して近所の大きな駅にみんなまとめてしまうというような感じがするのです。それは役所のほうから見ればそのほうが都合がいいかもしれないけれども、しかし貨物を取り扱わなくされた駅の周辺の住民というものは、あのために非常な不便をこうむっておるわけですね。わざわざ隣の駅まで持っていかなければならぬというようなことで、時間的にも経費的にも非常な不便をこうむっておる。同じように、やはり事件が少ないから民事は扱いませんというような形でものごとを処理していくというやり方というものは、やはり国民に対するサービスといいますか、そういう国民の権利を守るという裁判所の役割りを低下させる、そういう傾向になるのじゃないか。だから、非常に数が少ないというような問題があるにしても、できるだけ近いところで裁判は扱ってもらえるようにすべきじゃないかというような気がするわけです。これは単に裁判官の人数が足りる足らぬという問題じゃなくて、そういう意味ではやはり考えてもらいたい問題だと思います。  それから東京、大阪というような大都市でも、裁判官の配置が民事事件に薄くて刑事に厚いというようなことを私聞いているんですけれども、それはどういうわけでそうなっておるのか聞かしてほしいと思います。
  160. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 東京、大阪等で、人員の割り振りと申しますか、裁判官が、刑事のほうが民事に比べて若干負担が軽いと申しますか、その辺のアンバランスがあるんじゃないかというお話でございますが、実は当該裁判所で、民事担当の裁判官を何名にするか、刑事担当の裁判官を何名にするかということは、それぞれの裁判所におきます裁判官会議によって、事件の状況等勘案してきめるものでございますので、特に最高裁のほうから、民事としては何名、刑事としては何名というふうな指定をしておりませんので、それぞれの庁の内部で、それぞれの事件状況によって公平に裁判官の数を分けておられるものだというふうに私ども考えております。
  161. 春日正一

    春日正一君 最高裁がそうせいと言って命令したわけじゃないと、だから最高裁としては直接責任というか何というか、それはかかわりないわけですけれども、しかしいま東京とか大阪のようなところで、いま私がお聞きしたように、刑事のほうが裁判官が多くて、民事のほうが薄くなっていると、刑事に厚くなっていると、配置がそうなっているということの理由ですね、それはどういう事情でそうなったんだというようなことは、最高裁としても一応は理解しておいでなわけでしょう。
  162. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 先ほども申し上げましたように、それぞれの裁判所で、どの裁判官にどういう刑事なり民事なりを担当させるかということは、これは当該裁判官会議の専権事項でございますので、私ども外部から見てあれこれと想像する面はないこともないのでございますが、それぞれ裁判官会議におきまして、各種データ等十分検討された上で人の割り振りをやっておるものというふうに考えておるわけでございます。
  163. 春日正一

    春日正一君 それは裁判所ですから、民事を軽く見るとか刑事を軽く見るとかというようなことはなしに、両方にわたって十分にやろうというふうに考えておられると思いますが、そういう立場にありながらも、結局配置として薄くなるというようなことになるとすれば、やはりしろうとの考えでいけば、裁判官が足りないから、足りない場合にどう配置するかということになれば、こうするよりしようがないというようなことになっているんじゃないかと。これは私がそう考えるということですが、そういう意味から見て、この昭和四十七年十月現在で予算定員に満たないものは、書記官が四十名、調査官百十名、それから速記官三百四名、廷吏四百三十五名、その他というように聞いているんですけれども、一番新しい資料では、裁判官を含めて裁判所の職員の予算定員とそれから実人員との間の欠員ですね、これがどうなっておるか知らしてもらえますか。
  164. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 私どもの手元にございます最も新しい数字といたしまして、裁判官の場合を除きますと、裁判所のその他の職員で、欠員が二百七十一名ということでございます。
  165. 春日正一

    春日正一君 それは全部でですか。
  166. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 行政職(一)表の職員でございまして、行政職(二)表の職員もこれを加えて申し上げますと、欠員は全体で二百四十五名ということでございます。
  167. 春日正一

    春日正一君 これは時間もあれですから、書記官、調査官、速記官、廷吏、それから事務官、そういうものについて、あとでリストにしてもらえませんかね。
  168. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) ただいま御指摘の職員、これは行政職(一)表の職員であろうかと思いますが、表にしてお手元にお届けいたしたいと思います。
  169. 春日正一

    春日正一君 私これで質問を終わるんですけれども、最初にも言いましたように、裁判所というものは憲法に基づいて国民の基本的な権利を守る、そういう意味では一般の行政機関と違って特別重い役割を持っておるわけですし、またそれなりに十分な機能が果たせるようにしなければならないわけです。ところが先ほど来お聞きしてみても、たとえば速記官のごときはずっともう欠員が十数年にわたって続いておる、なかなか埋まらぬというようなことでそのままになっております。それからいまもちょっとお聞きしましたけれども、その他の職員においても欠員がある、あるいは裁判官が足りないというような問題もあるということになると、これはやはり憲法にきめられておる国民裁判を受ける権利というようなものが十分に保障されると言いがたいような状態ということも言えるわけなんで、そういう意味では、きちっと定員も充足し、あるいは足りないところは足り得るようにふやしていくというような処置をとるべきだと思うのです。そして、そういう意味でいえば、この司法権の独立を財政面で保障するために、財政法の十七条から十九条、ここでは国会、会計検査院とともに、裁判所に対しても、いわゆる二重予算というようなものを認めて、一般の各省の予算と違ってもっと強い立場で堂々と予算の要求ができるということになっておるわけです。だからそういう意味で、私、衆議院での正森委員質問応答を読んだんですけれども、最高裁が自民党の治安対策委員会のほうにその資料を出したとか説明をしたとかいうようなことでいろいろ質問応答ありますけれども、そういう卑屈な態度じゃなくて、やはり最高裁としては、裁判所の機能を十分発揮していくためにはこれだけのものが必要なんだということをはっきり、何も与党に対してだけ説明するんじゃなくて、野党に対しても、全国民に対しても、こういう条項を使って堂々と要求して、これを実現していくというような態度をとるべきだと思うんですよ。その点について事務総長のほうから、どうされるのか、その点をひとつ答弁願って、私の質問を終わりますから。
  170. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) ただいま二重予算制度のことについてお話がございましたが、二重予算制度のもとにおきましては、普通の省庁が予算要求——概算要求でございますか、大蔵省に出すのを、裁判所のほうといたしましては内閣に出すわけでございます。内閣に出しますと、内閣はこれを大蔵省に回す。それからあとの折衝はほかの省庁と違わない過程をもって行なわれるわけでございます。ですから、大蔵省と裁判所との折衝の過程においては、裁判所の要求しているところが十分大蔵省に理解いき、私どもの要求しているところが理解を得て、そして予算が認められるということになるわけでございます。しかし、私どもが十分説明いたしましても大蔵省が聞き入れてくださらぬというときには、私どもの主張が正当であるならば、二重予算制度ということで要求ができるわけでございます。過去にも両三回、それを使おうと、使ったことがございます。しかし、これは国家全体の財政といいますか、予算の中での仕事でございますので、そういう全体的な考慮の中で裁判所は裁判所の要求するところを貫いていかねばなりません。ただ、裁判所がひとりがむしゃらに、これは裁判所で必要だからということで最初から二重予算の要求をするというわけにもまいらない、やはり最後のとりででございます。しかし、私どもの主張が十分理由があると思いますときには遠慮なく使うつもりでございます。ですから、その点はひとつ御安心いただいてけっこうだと思います。
  171. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 ちょっとお伺いします。  速記者のことですが、外部から採用して、そうして研修所に入所中に適性を欠く者が相当数あると、こういうようなふうなお話であったのでありますが、そうすると、速記者として適性がないという、いわゆる適性を欠く者を一体その後それはどんなぐあいに処遇するのか、その点についてお伺いしたいのでありますが。
  172. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 速記ということで採用をいたしました場合には、適性を欠くということになりますと、書記官研修所を退所の扱いにしなければならないということでございますし、裁判所職員、一般の職員として採用をしたわけではございませんので、書記官研修所を退所するということは、すなわち裁判所をやめていただくということになるわけでございます。ここに先ほど来申し上げております問題があるわけでございます。その時点では、もうよその就職等、みんな大きい会社等はきまっておりますので、時期おくれの就職ということは困難になってまいる、御本人に非常に気の毒なことになるということが外部採用に踏み切れない——かつて外部採用をいたしましたけれども、今日外部採用に踏み切れないでおる最大の理由でございます。
  173. 原田立

    委員長原田立君) 矢口局長、ただいまの春日委員と先ほど佐々木委員が要求した資料、できるだけすみやかに委員会に御提出くださいますようにお願いいたします。
  174. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 承知いたしました。
  175. 原田立

    委員長原田立君) 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十三分散会      —————・—————