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1974-07-16 第72回国会 参議院 農林水産委員打合会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年七月十六日(火曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 梶木 又三君     委 員                 佐藤  隆君                 高橋雄之助君                 棚辺 四郎君                 神沢  浄君                 工藤 良平君                 鶴園 哲夫君                 塚田 大願君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        農林政務次官   山本茂一郎君        食糧庁総務部長  杉山 克己君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十九年産米穀政府買価格に関する件     —————————————   〔高橋雄之助君委員長席に着く〕
  2. 高橋雄之助

    委員長代理高橋雄之助君) ただいまから農林水産委員打合会を開会いたします。  ただいま農林水産委員長は欠員となっておりますので、便宜私が本日の打ち合会を主宰させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  昭和四十九年産米穀政府買価格に関する件を議題といたします。まず、政府から説明を聴取いたします。食糧庁杉山総務部長
  3. 杉山克己

    説明員杉山克己君) まず、去る十五日の米価審議会への諮問を申し述べます。   一、昭和四十九年産米穀政府買価格について、米穀需給関係を勘案するとともに、生産費及び所得を考慮して定めることにつき、米価審議会意見を求める。   二、なお、食糧管理運営の実情にかんがみ、今後の米穀政府売渡価格改定について留意すべき事項につき、米価審議会意見を求める。 以上でございます。  次に、諮問について御説明申し上げます。まず、政府買価格についてでありますが、米穀政府買価格は、食糧管理法第三条第二項の規定により、生産費及び物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再生産確保をはかることを旨として定めることになっており、その算定については、昭和三十五年以降生産費及び所得補償方式により行なってきたところであります。  米穀需給につきましては、過剰米について前年度をもってその計画的処理を了したところであり、また生産調整についてもその計画的実施の四年目を迎え、政府持越在庫の造成を含め、おおむね年々の需要に見合う生産が行なわれてきております。本年度においては、休耕奨励措置を打ち切り、転作及び土地改良事業通年施行によって生産調整をはかるとともに、一連の経済情勢をも考慮して、需給余裕を持たせ、政府持越在庫の大幅な積み増しを行なうこととしたこともあって、需給はおおむね均衡を維持できるものと考えております。  しかしながら、今後の米穀需給均衡をはかるためには、なお稲作から需要の増大している他作物への転換の促進とその定着化につとめる必要があります。特に来年度以降につきましては、古米の政府持越在庫がすでに余裕をもった水準に達していることでもあり、米穀需給均衡の維持には、これまでにも増して一そう意を用いる必要があると考えます。  他方、米穀生産費につきましては、労働時間の一貫した減少傾向等により生産性の向上がみられます反面、物価賃金等の著しい上昇により最近時の価格評価がえした生産費は昨年に比しかなり増高となっており、この点について十分に配慮する必要があると思われます。  上述のような諸事情を総合的に配慮して、これに即応した米価の適正な算定を行なうため本年産米穀政府買価格算定につきましては、生産費及び所得補償方式によることとし、以上申し述べた事情を勘案して算定することとしてはどうかということであります。次に、政府売渡価格について御説明いたします。米穀政府売渡価格は、食糧管理法第四条第二項の規定により、家計費及び物価その他の経済事情を参酌し、消費者家計を安定させることを旨として定めるべきこととなっており、従来から、この規定趣旨により、家計伸びの範囲内で、一般物価政府買価格及び政府経費との関係財政事情等総合考慮の上、決定してまいりました。  米穀政府売渡価格政府買価格との関係は、現在においても大幅な逆ざや関係にありますが、特に本年産米穀政府買価格が引き上げられれば、その逆ざやはこれまでに例をみない大幅なものとなることが見込まれ、実施を延期しております政府売渡価格改定を十月から予定どおり実施いたしましても、このような逆ざやの一部を解消するにしかすぎず、なお大幅な末端逆ざやを残すという状況にあります。  このような大幅な逆ざやは、本来の物のコストを反映しないひずみのある価格関係であり、米穀自主流通の発展の阻害、不正規流通誘発等米管理の健全な運営に重大な支障を生ずるおそれがあります。また、このような両米価逆ざや関係により、財政負担も巨額にのぼっており、今日の米穀流通をめぐる諸状況のもとでこのような財政負担の意義をどう考えるかという問題も生じております。一方、最近の消費者家計かなり伸びを示しており、家計費に占める米支出の比重も漸次低下してきております。また、米の品質や食味に対する消費者の関心が増し、米穀自主流通定着をみている状況のもとにおいて、政府売渡価格のあり方をいかに考えるかという問題もあります。  以上のような諸事情にかんがみ、政府売渡価格改定についてどのように考え、どのように取り扱うべきかということであります。  それでは次に、お手もとの資料をごらんいただきます。「昭和四十九年産米穀政府買い入れ価格試算」この初めのページ算式が示してございます。符号で示してございますが、これはわかりにくいので、すぐ次のページの具体的な数値をもってお示ししている算定のところをごらんいただきたいと思います。  一として、求める価格、つまり全体の米の平均としての生産費を算出いたしております。これは分母収量を取りまして、分子生産費を出しているわけでございます。単位当たりのそれで生産費が出て、それに六十キロ一俵の数量をかけまして、一俵当たり生産費単価を出しておるわけでございます。分母の四百九十二キログラム、これは収量は前年が四百八十六キログラムでありますから、一、二%のアップということになります。それから、分子の十万三千六百八十七円という生産費は前年が八万一千六百三十二円でありますから、二七%のアップとなります。求める価格でいいますと、これは前年が一万七十八円でありますから、二五・五%のアップとなります。  この平均価格からさらに運搬費がかかるということで、二の基準価格算定されます。運搬費一俵当たり七十九円を加えまして、一万二千七百二十四円、これは平均価格でありますが、実際の米はいろいろな米がある。等級品位がさまざまに分かれておりますので、その代表といたしまして、うるち軟質三等の裸価格をまず出します。  三といたしまして、二の基準価格一万二千七百二十四円に一等から五等の平均価格と三等の価格との等級間格差を足しまして、これから歩どまり加算平均単価十九円を引きまして、一万二千八百三円というものを出しております。このようにしてうるち軟質三等裸価格を出しましたあと、さらに実際の農家生産者の手取りはどの程度になるかといいますと、一般的に一等から四等の米が扱われているというように考えられます。そこで、一−四等の平均価格、それから実際には裸ではなくて包装に入れますので包装代を加えまして、四の一−四等平均価格算定されるわけであります。その算式過程は省略いたしまして、結論のところをごらんいただきますと、一万二千九百二十七円。試算米価試算米価と言われておりますのはこの一−四等平均の一万二千九百二十七円のことでございます。前年が一万三百一円。前年と申しますのはこれは決定米価でございます。試算段階からその後若干の調整を経て現在の決定米価決定されているわけですが、それが一万三百一円でございますから、これに比べますと二五・五%のアップということになります。  次に、算定要領を御説明いたします。  まず、十アール当たり平均生産費算定するわけでございます。これは四十六年、四十七年、四十八年の各年の米販売農家の十アール当たり平均生産費平均するということにいたしております。その場合、以下に掲げてあるような評価がえを行なうということにいたしておるわけでございます。この評価がえ、そのほか算定要領を個別に詳しく説明しますと時間がかかりますので、たいへん失礼でございますが、ごく要約して申し上げたいと思います。なお、ただいま私平均と申し上げましたが、四十八年につきましては昨年と同じように必要量生産費という算定方式をとっている関係からそのかっこの中にありますように、「四十八年産にあっては、米生産費調査の米の販売農家を六十キログラム当たり生産費高低順に並べ、生産費の低いものからの累積販売量が総販売数量の九七%になるところまでの米の販売農家についてのもの」、これについて生産費算定いたしております。  そこで評価がえでございますが、家族労働費、これは賃金現物給与相当額を加算して通勤手当相当額控除して算定するということになっております。いま申し上げました算定の結果の数値都市均衡労賃として一時間当たり男女込みで五百七十円五十七銭、男子で六百九十八円五十五銭ということになります。男女込みの場合は、これは前年に比べまして二九・八%のアップでございます。男子の場合は三〇・四%のアップでございます。いずれにしてもほぼ三〇%のアップということになります。なお、この場合の都市均衡労賃としてどういうような水準のものをとるかということでございますが、製造業常用労働者数規模五人以上五百人未満の事業所賃金をとっております。その次には、賃金のとり方について加重平均をしておるということを書いてございます。ここで一つ申し上げたいのは、昨年とまた現在の決定米価と大きく変わる点は、賃金対象期間、とる期間を変えていることでございます。従来は前年の五月から当年の四月までの期間平均賃金をとっておったのでございますが、ことしの試算当たりましては最近の賃金物価動向を的確に反映するということで、前年四十八年の六月から本年の五月までの平均賃金をとっております。  それから現物給与相当額通勤手当相当額、いずれもそこに書いてあるようなことで算定いたしております。説明は省略さしていただきます。  次に、物財雇用労働費でございます。これにつきましても従来どおり各年の生産費基準に対しまして所要の物価修正を行なっております。変化率は四十六年産米にあっては一四二・四九、四十七年産米にあっては一三七・八二、四十八年産米にあっては一二八・二二というふうに最近時点までの物価水準修正をいたしておるわけでございます。  それから副産物価額副産物につきましては、わら及びくず米の価格変化率によりましてただいまも申し上げました物財雇用労働費と同じように物価修正を行なっております。数値はそこにあるとおりでございます。  次に、資本利子でございます。これは従来と同じ資料を使いまして、借り入れ金自己資金の割合を分けるわけでございます。借り入れ金が三五%、自己資金が六五%、そのおのおのにつきまして、借り入れ金の場合は年利七分五厘、自己資金については年利七分三厘ということで資本利子の額を算定いたしております。前年は借り入れ金につきましては六分二厘四毛、自己資金につきましては六分一厘ということで算定いたしておりますから、いずれもそれぞれかなりの引き上げとなっております。最近の物価賃金と同様、金利水準も上がっておりますので、その動向を反映したわけでございます。  次に、(5)の物件税及び公課諸負担でございますが、これはそこにあるとおりでございますので説明は省略させていただきます。  次に地代。自作地につきましては現行小作料最高統制額、いわゆる統制小作料をとっております。それから小作地作付地以外の土地につきましては、これはいわゆる実納小作料、これをとっております。数値はお示ししてございません。  (7)のところの数値は、これはいままで、以上申し上げましたようなことを全部合計して出したところの生産費でございます。四十六年は十万七千八百九十九円、四十七年は十万三千四百四十八円、四十八年は九万九千七百十四円、平均して十万三千六百八十七円ということになるわけでございます。これが一番初めにごらんいただきましたところの「求める価格」のところの分子として使われる数字でございます。生産費であると。  それから、それをまあ平均収量で割れば単位当たり生産費が出るわけでございますが、平均収量はどうやって見ているかというと、四十六、四十七、四十八年の各年産米販売農家の十アール当たり平均収量平均して算定いたしております。四十六年が四百六十四キロ、四十七年が四百九十五キロ、四十八年が五百十六キロということで、平均して四百九十二キロということになっております。これは、前年が四百八十六キロでありますので、前年より一・二%の収量アップということになります。  次に運搬費運搬費は合計で七十九円。その内訳はそこにお示ししてあるとおりでございます。  なお、この要領には、修正いたしましたので、ここから落ちたため当然出ておりませんが、概算金利子控除のことがございます。従来は、概算金利子政府概算金を支払いますと、これは無利息でございますので、本来なら農家自己資金にせよ、あるいは借り入れ金にせよ、資金調達をする分がその分だけ軽減されるということになります。それに伴って、生産費の中から利子負担がそれだけ軽減されるということになるわけで、その分を生産費から控除しておったわけでございます。しかし、御存じのように、先ごろ概算金単価も一俵当たり一千円から三千円に増額いたしました。このことは、最近の物価賃金動向をやはり勘案して、農家にできるだけ前払いの額をよけいお渡しするということであったわけでございます。また、概算金性格につきましてはいろいろ御論議もあったところでございますので、農民、各方面からの御要望もありまして、それらを勘案して概算金利子控除は本年はとりやめるということにしたわけでございます。  以上が大きく変わっている点でございます。  それから次の右側の長い表は、これは一覧表算出基礎を取りまとめたものでございます。各年とも、原生産費を出しまして、ただいま私が算定要領でもって御説明申し上げましたような評価がえの方法を使って、各年の最近時点におけるものに、価格決定のものに引き直した評価がえ生産費を出しております。そしてこの各年の評価がえ生産費平均して生産費を出すということにしているわけでございます。  なお、労働時間でございますが、その下にありますように、各年、逐年短縮されてまいっております。直接労働が九九・一時間から八九・六時間、さらに八三・七時間と、この三年間にかなり短縮されてまいっております。間接労働も同じような傾向にございます。  収量は、先ほども説明しましたが、そこにもあらためて計上されております。  以上でございます。
  4. 高橋雄之助

    委員長代理高橋雄之助君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより本件に対する質疑を行ないます。質疑のある方は順次発言を願います。
  5. 佐藤隆

    佐藤隆君 私は、質問はいたしませんが、意見だけを一言だけ農林省当局にこの場をかりて申し上げておきたいと思います。  実は、昨日諮問された二五・五%という数字は、一口で言えば私どもはきわめて不満な数字でありまして、全く取るに足らない、どういう気持ちで農林省試算をされたものか実は疑うわけであります。農民に対する誠意、あるいは国民食糧確保という観点からも誠意を疑わざるを得ない、そういう数字であります。しかし、諮問が出され、いま米審の最中でありますから、私どもは私どもの党の総合農政調査会農林部会、あるいは自民党米価対策議員協議会、この名においてそれぞれ検討を進めておりますが、具体的に、われわれはわれわれの試算をひとつはじき出そう、そして政府に対して強く要望して、われわれの試算を実現しようということで、私どもは作業中でございます。なぜそういうことになっているかというと、たとえばいま説明のありました家族労賃あるいは物財雇用労働費、これ等をとりましても、もうはなはだ納得しかねる数字になっておるわけであります。労働省数字を借りてそして試算もしておられるようでありますが、労働省にもわれわれ独自の立場でこれをただし、そして春闘以後のはね返りというものがどういうことになっているかと。そういう実態も明らかにしながら、われわれ独自でとにかく試算をしなければ、こうした問題をはじめとして数多くの問題がございますので、われわれ独自の試算をしているところであります。  特に一言つけ加えたいのは、バックペイの問題にいたしましても、バックペイそれ自体を取り上げるというわけにはいかないというその考え方はよく理解できます。しかし、何がしかの形においてこれをこのたびの米価において償わなければならぬということもわれわれ承知しておるところでありまして、そうしたこと等も含めて私どもはいま試算をいたしておりますので——政務次官もおいででございますので、どうかひとつ農林大臣におかれても、十分そうした各般にわたって検討されたわれわれの試算というものも一両日中にひとつ出したいと思っておりますので、それを十分ひとつ加味して、適正な米価というものを、非常にむずかしいいまの環境下にある、内外ともにたいへんな時期にあります食糧事情というものをよく頭に置かれて、世界の米の流通量ということもわずかである、そういうことも頭に置かれて、気象条件等も頭に置かれて十分配慮されるよう。そして農民生産意欲を減退させない、そして消費者のためにも、生産者のためにもなる米価というものをひとつきめていただく、こういうことで特にお願いをいたしておきます。強く要望いたしまして、農林省が出した試算米価ははなはだ不満であるということだけを重ねて申し上げて、意見として申し上げておきます。
  6. 工藤良平

    工藤良平君 私は、昨日この資料をいただきましたが、これは本来から言いますと、詳細に検討いたしまして、一々数字をあげて御質問するのが至当だと思いますけれども、そういう時間もございませんので、大まかに問題点についてお聞きをしてまいりたいと思います。  まず、この諮問でございますが、第一の生産者米価に対する諮問でございますけれども、この本文、これは四十七年産米諮問の際に私はこの点を指摘をしたと思いますけれども、「四九年産米穀政府買価格について、米穀需給関係を勘案するとともに、生産費及び所得を考慮して定めることにつき、米価審議会意見を求める。」、これは私くどく議論をしたことがあるんですけれども、本来、食糧管理法の第三条の第二項に書かれているこの米価決定というものは本来生産費というものが中心であって、それに経済事情を参酌して最終的にきめるものだというようになっているわけです。この点は指摘をいたしまして、それは間違いだということを政府も、まあ間違いとは言いませんでしたけれども、やっぱり考え方の問題として、そのとおりごもっともですという御答弁をなさってきたわけです。けれども、今回のまたこの諮問を見ますと、とにかく需給関係をまず勘案をして米価というものをきめていくんだということが先入感として前面に打ち出されているわけですけれども、これは本来私は食糧管理法趣旨からいたしましても、まず生産費というものを、いま佐藤委員も御指摘になったのですけれども、やっぱり正確にきちんと出す。その上に基づいて経済的な、あるいは生産に必要なもろもろ条件を加味して最終的に政治的な判断できめるということであればよろしいと私は思うんですけれども、どうも本末転倒しているような気がするんですが、その点についてまず御見解をお伺いいたしたいと思います。
  7. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 食管法三条の規定は二項におきまして「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」とあります。生産費が一番先に書いてありますし、また、実際の米価算定の上にあたっても、これが一番中心となることは申すまでもございません。ただ「物価其ノ他ノ経済事情参酌シ」ということで、これらの経済事情も参酌されることは当然でございます。その場合の経済事情には何が入るかといえばいろいろございましょう。財政負担事情あるいは国際動向あるいは国内の需給事情その他もろもろ経済事情が入ると思います。そういう経済事情が著しく重要な性格を帯びているというときにはやはりそれなりにそれに応じた配慮がなさるべきであろうかと思います。いま生産費だけでもってむしろ考えるべきではないかということでございますが、第一条の目的と照らし合わせて考えますというと、第一条のほうは「本法ハ国民食糧確保及国民経済ノ安定ヲ図ル食糧管理シ其需給及価格調整並ニ配給統制行フコトヲ目的トス」とありまして、一国民食糧確保」ということをうたっております。国民食糧確保のためにということで三条も読むべきであろうかと思います。その観点からいたしますというと、需給事情を全く無視するというわけにはいかない。具体的に申しますというと、生産費だけを考えてごくごく高い金に、生産刺激的な価格というようなことになりますというと、これは過剰生産をもたらすということもあり得るわけでございます。国民食糧確保という観点からその点は十分経済事情一つとして需給事情を参酌するということは、やはり依然として稲作転換を行なっておりますような今日の需給事情のもとではやむを得ないことかと考えております。
  8. 工藤良平

    工藤良平君 私は、これはあくまでも米価決定一つ段階であって、この諮問がそのまま決定されるということであれば、そういういろいろなもろもろ条件を加味して数字を出すということも考えられますけれども、しかし、やっぱり諮問というものは、その最終決定を出す一つ過程としてまず計数的なものを明らかにしていくということが非常に大事ではないのか、そういう意味から私はまたまたやはりここに第三条にそのことを明確にうたわれているのではないか、このように思います。  それと同時に、それじゃもう一つお伺いいたしますが、施行令の第二条二項に著しく経済事情変化があった場合には米価改定をすることができるということになっているわけですね。それがやはり明確に、この生産費調査というものが明らかになっていなければその尺度というのは出てこないわけであります。当初から政治的な判断のもとに諮問が出されるということは、私は、非常にこの米価決定そのものをゆがめてしまうという気がするわけであります。やはりこれはあくまでも事務当局のレベルで考えるべきものであって、この諮問段階で政治的ないろいろな問題が入るということについては私たいへん大きな問題が起こってくるような気がいたします。  したがって、本法でいう第三条とそれから施行令でいう米価決定にあたっては、経済事情変化があった場合には改定することができるという、この二つの関連の中からいたしましても、私は、当然この問題といたしましては、やっぱり数字的なものを明確にまず出すということが必要ではないのか。それが経済事情、いろいろなもろもろ条件の中から出てきた数字が、非常に低いとか、あるいは異常なものが出てきたということになると、それは、その次の項における、いわゆる後段における参酌の条項が適用されるわけであって、私はやはり当然明確な数字というものは出されてこなければ将来にわたっても非常に大きな問題が出てくるような気がするわけであります。  ですから、たとえば、四十八年産の追加払いの問題にいたしましても、当初の農林省数字からいたしますと、これは明らかに数値の是正をしなければならないということが言われているわけでありますから、そうすると、これは施行令の第二条というものが生きてくるわけでありますから、そういう意味合いからいたしまして、私はまずこれは計数的なものを諮問段階では出す、最終決定にはいろいろな経済事情が入ってくるということはやむを得ないと思いますけれども、またそういうものがたてまえではないかと思うのですが、事務当局としてどうなんですか。そういうことが、あらかじめ政治的なものが入ってきてしまったら全く比較対象にならなくなってしまうじゃありませんか。あとでまた私は、問題を指摘しますけれども、その点は基本的に伺っておきたいと思う、もう少し明確に。
  9. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 施行令二条のほうの経済事情に著しい変動があった場合の規定は私も承知しております。ただ、これは経済事情だけを単純に考えるということではなくて、やはり国民食糧確保ということ、そのために著しい支障を来たすような、というふうな一つの前提があるのではないかと思っております。それからまた、算定方式の問題ともこれはからみ合わせて、その著しい変動であるかどうかということを検討する必要があろうかと思っております。  それからなお、いま先生のおっしゃったことは、単純に生産費だけを算定して、あとの参酌事項はこれは別なプロセスにゆだねるべきだというようなお話のようでございますが、政府としましては、政府がきめる米価でございますので、これはやはりそういった事情算定の中に配慮いたしまして、あとは、それはまたそれなりに米価審議会にも、いろいろそういった配慮が妥当であるかどうかというようなことも含めて御諮問をして御論議をいただく。そうして答申を承った上で適正に決定するというプロセスを経ることとなっておりますし、私どもも、従来それで差しつかえないというように考えてまいっておるわけでございます。
  10. 工藤良平

    工藤良平君 それじゃもう少しお聞きをいたしますが、確かにたとえば、いままで四十三年までは算定の方式が違っておりましたですね。昨年、ことしと米販売農家生産費なり、反当収量を出すようになりましたね。従来はそうじゃなくて、平均生産費あるいは平均反収、しかし、平均反収では問題があるということで平均収量マイナス・ワンシグマということで若干の幅を持たして運用というものをやってまいりました。これは米の、もちろん需給が逼迫しておるときに生産を刺激するという意味で高い米価を比較的数字的に出すというかっこうをとってきたわけですね。ところが、現在は確かに過剰の状態になってきたから、その取り方というのは変わってまいりまして、販売農家生産費販売農家の反当収量というものを出すようになったということから、従来の比較というものはなかなか比較できないようなかっこうになっています。これは、私は、本来の生産者米価決定の計数的な問題からいたしますと問題があるような気がするのですね。だから、過剰な状態にある、過剰な状態にあるから、農家の皆さんに、それじゃ生産者米価を安くしてよろしいということをやったのでは大きな問題があるわけでしょう。ですから、それはやはり政策的な問題として、その過剰な問題については別個の立場からこれは対策をすべきものであって、それを生産者農民に、たくさんできているから、あなたたちはしんぼうしなさいということは、私は、問題が起こるような気がするんです。生産費が高くかかっているとするならば、これはやっぱり当然そのものに対する補償というものはすべきものであって、それが本来のやはり生産者米価に対する考え方ではないのか。過剰とかいう問題については、やはり私はこれは別の角度から対策を講ずべきものではないかと、このように基本的に考えますが、その点はどうですか。
  11. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 食管法趣旨が、先ほど来申し上げておりますように、国民食糧確保という点にあるわけでございます。必要量を確保するという観点からしますというと、これは過剰生産するということを認めているとか、あるいはそういったことは当然だということにはならないのであろうかと思います。したがいまして、生産費そのものを全面的にということではなくて、やはり生産費の見方そのものに、要素のとり方に需給事情を勘案した配慮があってこれは私は差しつかえないというように考えております。
  12. 工藤良平

    工藤良平君 それでは私、具体的にもう少しお聞きをいたします。  じゃ、四十三年までの従来の算式でまいりますと、一体いまの、ことしの生産者米価数字というのはどういう数字が出てまいりますか。
  13. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 四十三年の方式についてはちょっと計算いたしておりませんが、四十二年、この年が実は生産者にとっては一番有利であった算定方式の年であります。端的に申し上げまして、価格が高く出るような算定になっておる年でございます。四十二年の方式でことしの要素を当てはめて計算いたしますというと、米価は一俵六十キログラム当たり一万七千六円という計算になります。
  14. 工藤良平

    工藤良平君 いまお話しのように、計算のしかたによってずいぶん違うわけですね。だから、いま米が、この本文にもありますように、まず「需給関係を勘案する」ということ、いわゆる百三十五万トンの生産調整をやっていると。したがって、米価についてはやはりある程度押えなければならないという一つの大きな政治的な動きというものがある。その中でいまのこの算式のしかたというものが変えられてきているわけですね。ですから、いまおっしゃるように、四十二年産の米で計算をすると一万七千円をこすという数字が出てくるわけですが、そうすると一万六千七百四円という農協米価というものも必ずしも不当なものではないという議論が出てくるわけなんです。私はその点を主張したいわけなんです。本来やっぱりこの諮問にかけるべきものはそういうものをかけるべきであったが、それが、こういうものが出てきたけれども、現在の需給事情からいたしまして、このようにしなければならないということは、次のやはり私は付帯事項として出てくるものであって、本来やっぱりそういうものを出すべきじゃないかと、こういうような気がいたします。この点は議論をいたしましても、これは双方見解の相違だと思いますけれども、いまおっしゃいましたように、一万七千六円という数字が現実には四十二年の計算をやってみると出てくる。そこまでやはり生産費のとり方によっては非常に——このいまの生産者米価というものはとり方によってたいへん大きな違いがあるということを私はまず理解をしなければならぬと思います。まあ、その点についてはそういう程度にしておきたいと思います。  そこで、あとで具体的にもう少しお聞きをいたしますが、この諮問の第二項、「食糧管理運営の実情にかんがみ、今後の米穀政府売渡価格改定について留意すべき事項につき、米価審議会意見を求める。」、こういうことになっておりますが、これは十月一日から生産者米価が引き上げられることにすでに決定を見ているわけでありますけれども、さらに追い打ちをかけて、これは引き上げるということの意味なのか。それとも、これは私が再三今日まで指摘をしてまいりましたように、現在の売却の方法によって食管会計の七千億というものが、生産者にも消費者にもあまり役に立っていない部分が、かなりの部分があるんではないかということを私は指摘をしてまいりましたが、たとえば現在の売却価格ですね。政府の売却価格、これは銘柄、非銘柄でそれぞれ違いますけれども、その売却価格とそれから実際に店頭で小売りをされている部分の中に、標準価格米、十キロ当たり千六百十円という標準価格米がありますが、自主流通米として二千五百円、二千七百円あるいは三千円ということで十キロ当たりが売られている。その中にやはり政府の手持ちの売却米が自主流通米として売られている。この部分がおよそ検討いたしましても三百万トン程度あるのではないかという推測ができるのでありますが、そういうことになりますと、おそらく千六、七百億円から二千億程度のお金が全く宙に無為無策として使われているのではないか。私はそのような気がするわけでありますが、そういう面をさして売却の技術的な問題について検討を加えるために必要なのか、それとも、実際に消費者米価をさらに追い打ちをかけて上げるということのこれは諮問になるのか、どういう意味をさしているのか、私は解釈に苦しむのでありますけれども。そういう技術的な内容についてなお十分な検討をする必要がある、その検討の上に立って政府消費者米価というものを見直すということになるのか、その前の段階で解決をしなければならない問題がある、そのことをさして言っているのか私は解釈に苦しみますので、その点の御説明をいただきたいと思います。
  15. 杉山克己

    説明員杉山克己君) この諮問文をごらんいただきますと、「なお、食糧管理運営の実情にかんがみ、今後の米穀政府売渡価格改定について留意すべき事項につき、米価審議会意見を求める。」と、あります。その2のほうの「改定について留意すべき事項につき」云々の文言でございますが、これはおよそいま先生のおっしゃられたような問題も含めて一般的に改定にあたってどういうことを考えなくちゃならないか、ということについて諮問申し上げている精神でございます。単に消費者価格を上げる、生産者価格の引き上げ分を消費者に転嫁させればいいんだと、そういうような安易な思想でもって出している諮問ではございません。  それから、なお、先生がいま質問の中で御指摘になりましたいわゆる標準価格米の格上げといいますか、政府の売った米が標準価格よりも高い価格で売られているもの、これについてどうするかというお話でございますが、確かに政府は、非銘柄米、標準価格米の原料となる米を数量にしまして全体の流通量の四一%程度売却いたしております。それに対しまして実際に消費者が購入しておりますところの標準価格米の数量は、これは約三一%程度と推定されます。そうしますと、四一%と三一%の差一〇%程度の米が標準価格米でない、もう少し高い価格で売られているということが推定できるわけでございます。そういう価格がどうなのかということでございますが、私ども、いまは、物価統制令の適用を廃止して、米の価格については制度的、法律的には上限を規制いたしておりません。ただ、それが野放しになっていいということではなくて、消費者家計の安定をはかる。安い米がどうしてもほしいという方々のために——物がよくさえあれば幾ら高くてもいいというような方、これは別でございますが、そういういわゆる標準価格米を欲せられる方々に対しては、これは御要望のある限り標準価格米を提供するということにいたしております。そういうことからしますというと、その原料米はやや余裕を持った数量を、これを販売業者に売却するという必要があるわけでございます。そして、残った分については——標準価格米がないということはこれは許されないわけでございますが、それを御要望にこたえて売って残った分につきましては、これはそのほかの価格、いわゆる中米程度の価格として売るということはこれは差しつかえないということで認めておるわけでございます。  ただ、そういうことをやりますというと、安い政府財政負担のかかっている米をむやみに高く売るというようなことになりますと、これは確かに問題でございます。そこで、私ども販売業者の利潤、いわゆるマージンでございますか、それを適正に押えるということは必要であると考えておりまして、いわゆる価格指導、上米、中米につきましても、標準価格米と同じように、各都道府県の協力を得まして、まあむしろ直接には各都道府県が価格指導をやっておるわけでございますが、全国的に監視をしているところでございます。
  16. 工藤良平

    工藤良平君 現実に標準価格米が全体の消費量のどれくらい出回っておりますか。私は私なりにうちの県の調査等も——私のほうは生産県ですけれども、これをやっておるのですけれども、それからいたしますと、政府買い入れ米のたとえば四十七年産五百四十二万トンのうち、実際に標準価格米として売られるものは二百万トンぐらいじゃないですか。そうすると、あと三百万トン前後というものは、当然これは格上げ米として実際に市場に出回っているという私は気がするのですよ。そういうことになりますと、たいへん大きな問題で、むしろそういうことのほうを米審の中で十分に審議をしていただくということのほうがまず先の問題じゃないか。物統令をはずしたその以降におけるもろもろ条件というものを出し合ってみて、どこに矛盾があるのかと。非常に大きな矛盾が出ているのじゃないか。そういうことを問題提起をして、解決をした上において、なおかつ、食管の問題を検討していただくということになるとそれなりに私は意義があると思うのですけれども、こういう状況をそのままにしておいて、私は価格の上積みをもし議論をするということになりますと、たいへん大きな問題が起こるような気がいたしまして。これはまあ再三私は予算委員会なりこの委員会でも議論をしてきたところでありますけれども、その点についてもう少し私は御見解を聞きたいと思います。
  17. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 流通段階における不正利得、これを防止するということは、これは当然でございます。そのことは標準価格米を十分提供している限りにおいては目的を達しているからいいじゃないかというようなことだけでなしに、その標準価格米であるべき原料米をさらに高く売る、上米として極端に高い価格で売るというようなことがあれば、これは私ども放置できないと思っております。その面から、先ほども申し上げましたが、今後とも販売業界に対する価格指導は厳重にやっていくという心がまえでおります。  なお、数量の話でございますが、私どもちょっと手元に持っております資料は……。
  18. 工藤良平

    工藤良平君 いいですよ、きょうはあまり詳しくやりませんから。日をあらためてまたやりますから。  それでは、もう一つ私は具体的にひとつお聞きをいたしますが、このいまの第2項の問題については、私は消費者米価の問題を直接諮問をしたものでないと理解をいたしたいと思います。が、そうじゃなくて、これは具体的に消費者米価の問題について諮問をしたのだ、とそう端的にもしお答えいただけるならば明確にひとつ答弁をしていただきたいと思います。
  19. 杉山克己

    説明員杉山克己君) これは「今後の米穀政府売渡価格改定について留意すべき事項」、ですから、改定するのかしないのか、どのような幅なのか、いつなのか、というようなもちろん改定自体の問題もありますが、いま先生が御指摘になりましたような、そういう売り渡しの問題に関連いたしまして、流通業界でいろいろ改善すべき、是正すべき点があるなら、それはそれとしてやはり基本的に留意すべき事項として指摘もされ得るであろう、当然そういったもろもろの問題を含んで諮問申し上げたつもりでございます。
  20. 工藤良平

    工藤良平君 私は、さっき申し上げましたような問題があるから、その問題をまず解決をすべきだということを意見として申し上げておきます。  それでは、時間があまりありませんから、あともう六、七分ですから、先を急ぎますが、具体的な事項で一つだけ私疑問がありますからこれをお聞きをいたしておきたいと思います。それは、反収のとり方の問題であります。  先ほど米販売農家平均反収をとったと、こういうことで四百九十二キロというものが三カ年平均で出てきておるわけでありますが、ところが、この算式を見ますと、この資料の中には四十八年産が五百十六キロということになっておりますが、農林省からいただきました先ほどの資料によりますと、どの資料を見ましても、米生産農家の、販売農家の全階層平均、それから、これ全部見ましても、五百十一キロということになっておるわけでありますが、これはどこでどういう違いがあるのでありますか御説明を、簡単でよろしゅうございますから、一ぺんお聞きしておきます。
  21. 杉山克己

    説明員杉山克己君) これは、先ほど御説明いたしました算定要領の一番初めのところに、四十六年、四十七年、四十八年の各年産の米の販売農家の十アール当たり平均生産費というのが書いてございますが、そのところのカッコ書きで、これは先ほど読み上げましたので省略いたしますが、いわゆる必要量生産費ということで、四十八年産につきましては、全体の平均をとっておらない。米の生産費高低順にこれを販売農家を並べまして、調査対象の農家を並べまして、生産費の低いものからの累積販売量が九七%になるところまで採用いたしまして、その平均をとったと、その関係から、その対象農家平均収量が五百十六キロとなっておるということになっておるのでございます。
  22. 工藤良平

    工藤良平君 そうすると、この資料に基づく説明は反当収量の場合には違いますね。販売農家平均収量をとったと、こういうことになっておるわけでありますが、生産費のほうは、いま言うように、四十八年については、六十キロを高低に並べて九七%を確保するということでとったということですけれども平均反収——反収の場合には平均反収ということになっておるわけですが、私もおおよそそういうものをとったのではないかというように理解をしたんですけれども説明にはそうなっておりませんので、この資料によりますと、五百十一キロという平均が出ておるわけですからね。その点をひとつ明確にしておいていただきたい。この資料のそうすると説明が違うということになるわけですね。
  23. 杉山克己

    説明員杉山克己君) いま先生のおっしゃったのは、試算の一ページのところの算式、その説明のところでの、十アール当たり平均収量というところを御指摘になったんだと思います。
  24. 工藤良平

    工藤良平君 そうです。
  25. 杉山克己

    説明員杉山克己君) これを、算定要領のほうでもって細部について解説をしているわけでございますが、そのところで、先ほど私が読み上げまた、御説明しましたような、四十八年産についての、こういう必要量計算から出てまいるところの平均反収をとるのだ、ということが補足的に説明されておるわけでございます。
  26. 工藤良平

    工藤良平君 そうすると、四十八年産生産費のとり方と同じところを、反収をとったというようになるわけですね。もう一ぺん言いましょう。四十八年産の場合には、さっき言ったように、生産費の場合には、九七%確保するというところをとったわけですね。その九七%のところの反収が五百十六キロということになるというように理解をすればいいわけですか。
  27. 杉山克己

    説明員杉山克己君) そのとおりです。
  28. 工藤良平

    工藤良平君 私は、一応この当初の説明は、販売生産農家平均収量と、こういうように説明になっておりましたから、それを見ると五百十一キロだと、そうするとやっぱり六キロ違いますと。出てくる答えは違いますからね、そう思ったんですが、そのように理解をすればいいわけですね。
  29. 杉山克己

    説明員杉山克己君) はい。
  30. 工藤良平

    工藤良平君 わかりました。それでは問題はそのまま残します、私非常に問題があると思いますけれども。  もう一つ。この米価決定にあたって、私は非常に大事なことは、特に今回の米というもの、米価というものの決定に当たってたとえば畜産あるいは果樹、そういうものにいたしましても、異常な状態が起こってきているということですね、ことしの場合には。そういう状態を踏まえて、いわゆる米以外の農業収入と米価関係を無視できないところに今回の場合にはきている。したがって、最終的にはやはり政治的な決断に基づいた大幅な米価の上昇というものが必要になってくるわけだと私は思っているんです。ですから、最初に言ったように、数字数字としてこう出てきた、四十二年で計画すると一万七千六円になると、そういうものを踏まえてどうするか。しかも、ことしの場合には、畜産も果樹もたいへんな事態に立ち至っている。そういうものを踏まえてやはり米価というものは、今回の場合には決定しなければならないという状態なんだということ。その点について、私は、最終的な結論、これは政務次官のほうに特に要請しなければならぬことだと思いますけれども、こういう点を特に強調いたしたい。  それとまた私は、この前田中総理とも決算委員会で議論をいたしたわけですけれども、現在のわが国の資源の乏しい状態の中において、依然としてやはり貿易立国というものが叫ばれている。資源がないから外から入れてきて、日本の唯一の資源である労働力を使って、いわゆる貿易を拡大することによって日本の経済というものを立てていくのだということを主張いたしております。しかし、それをやるにいたしましてもやはり労働力というものがその中心になるわけです。労働力を養うためには食糧が大事なんですね。そうすると、この食糧というものは、経済問題をある程度度外視しながら、むしろこれは資源という立場から農業というものをとらえていく、自然保護という立場からとらえていくということが非常に大事になってくるのじゃないか。農業に投下する資本というものは資源を保護するという立場からとらえられなければならない。そういう議論というものが今、回やはり大きく展開されていいのではないか、こういう気がいたします。で、そういう観点に立たないと、私は、現在のように、諮問段階で適当に大蔵の圧力に屈して本来二十数%、三〇%をこして出さなければならぬ問題が、いや二二%だ、二十何%だということで、そこで政治的ないろいろな問題が出てくるということ自身に私は非常に大きい不信を持つわけであります。ですから、そういう意味合いから、特にこの農業という問題が、これからの大きな問題としてやはり資源問題として重要な課題を帯びているのだという観点から、今回の米価というものを最終的に決断をすべきではないか。こういうように私は考えますが、時間がありませんからごく要約して申しましたけれども、その点について政務次官——本来からいうときようは大臣に来ていただいてその点も私はとくと申し上げたかったのですけれども、時間がまいりましたから、ぜひ政務次官からその点に対する見解をひとついただいて、最終的な米価決定における大きな役割りを果たしていただきたい、このように考えます。  以上申し上げて、私の質問を終わります。
  31. 山本茂一郎

    説明員山本茂一郎君) ただいまの御意見は十分に拝聴いたしました。そういうような考え方一つの顧慮せなければならぬ問題であると考えますが、現在、農林省といたしましては、ここに出してありますような行き方が現状に合うものと考えまして、そうして諮問そのほかの手続をとっているということだけを、御承知のとおりでございますが、申し上げたいと、こう思います。
  32. 神沢浄

    ○神沢浄君 大臣がおいでにならぬからあまり政治論めいたことは避けたほうがいいと思うのですけれども、私がこの諮問なるものを見まして一番先に感じましたのは、結局、米、米価、これらの問題に対してのいまの政府の基本の考え方というか思想ですね、ことし当初、農林大臣が所信の表明をされて、その表明の中でもって、いま当面しておる日本の食糧事情その他、これは世界事情というものの中に位置づけられる日本の食糧問題こういうふうな見地から、食糧自給のための農業の再建を、かなり高々とうたっておるわけです。そういうような考え方のもとに、米であろうと、したがって米価の問題であろうと、当然位置づけがされていかなければならないじゃないか、こういうふうに私などは期待をしていたところです。  ところが、これを見ますと、財政的な見地からの説明とか、あるいは若干、何といいますか、米の需給関係だとかいうようなものについては触れておられるようだけれども、そういう肝心かなめのところが全然出ておりませんですね。そこで、端的にお聞きするのですけれども、いまの日本自体が直面をしておる食糧問題というようなこういう重大な局面の上に立って、米に対して大体政府はどういう考え方をしているのか、こういう点をまず伺いたいと思います。
  33. 杉山克己

    説明員杉山克己君) いま御指摘ありましたように、本年度におきましては、国内自給の確保ということあるいは自給度の向上ということが農業政策の重要な課題となっております。米につきましては、幸い現在一〇〇%あるいはそれ以上自給できるという状況にございます。今後とも米については完全自給ということで進めてまいりたいというふうに考えております。
  34. 神沢浄

    ○神沢浄君 そこで、米については一〇〇%の供給ができる、こういうことですが、それは現状においてはそうだろうと思います、現象としては。私がお聞きしているのは、そういうただ目の前の状況の問題じゃなくて、とにかく世界じゅうが食糧不足の状態へいま進みかけておる。日本の食糧自給率というものは漸次下がってきて、石油ショックなどでもってかなりの教訓を得ましたけれども、石油が入らぬでも、まあああやって大騒ぎをするのだから、もし食糧がこうやって自給率が低下しておる現状の上でもって、石油同様のような危機でも訪れるというようなときには、これはたいへんなことになる。これは、石油問題に続いてそれこそ国民一般の心配なんです。そういう状況の上に立って考えてみると、とにかく日本農業の歴史を見てもそうですけれども、それは米の生産というふうなものについては、これは日本の農業が一番にない得る部面なんですが、いま目の前が需給均衡がとれておるから、したがって米の問題は、まあそこへ置けばいいというような考え方でもってはたしていいのかどうなのか。私は、むしろそんなことであってはならないと、こう思うわけです。そうすると、この際やはり米価の問題について考えてみても、生産増強のための農民の意欲が増進をされるような方向に、ことしの米価はきめることにしたいと思います、というようなものが出てこなければおかしいとぼくは思うのだけれども、そういうようなものは全然触れていないわけですね。だからそういうことに対する見解と、それから、それに関連してついでに、いまのその米の需給関係、それから備蓄の関係、こういうふうなものを多少、ひとつ数字などをあげて説明をしていただきたいと思うのです。
  35. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 世界的な食糧需給事情は、仰せられるように、長期的に見れば種々問題もあろうかと考えております。そういった観点も踏まえながら、当然生産対策、国内の米価対策そのほかも進めなければいけないということも、これも一つの御意見だと思います。ただ、私ども、目前に、いまにも食糧危機が来る、国際的に穀物の供給が遮断されて日本は全部食糧を国内で自給しなければならなくなるというふうな異常な事態が発生すると思っているわけではございません。長期的に見て、問題があることは事実であり、また、短期的にもかなりそれなりのそれぞれの時点における供給確保の問題はあろうかと思いますが、私どもは、むしろ海外の穀物生産国、主としてアメリカとかあるいはカナダ、オーストラリアといったようなところになりますが、そういった国から安定的に買い付けるための努力をする、そのためにはできるだけ先行きの買い付けを行なう、あるいはそれらの穀物についてある程度のストック、余裕を持つようなことを考えるというようなことを進めて、安定的な確保ということを第一に考えるべきだと思います。やはり自給自給と言いましても、特にえさの問題など、これは私どもの所管を越える話ではありますが、関連いたしますので申し上げますが、えさの問題——飼料の問題などを考えますと、すべてが完全自給できるというふうには、これはとうてい現実的に思えないわけでございます。そういった中で、できるだけ——幸いにして国内で過剰なぐらい供給できる米に依存していくということ、これは必要であるし、望ましいことだというふうに思っております。  ただ、四十二、三、四、あのころの需給事情を考えますというと、まさに異常な過剰をかかえて苦しみに苦しみ抜いたという経験がございます。七百万トンの過剰、これを処理するのに五年かかっておるわけでございますし、また、そのことのために一兆円という膨大な財政負担をしております。ほんとうにナショナルセキュリティーといいますか、安全のためにそのくらいの投資もいいじゃないか、ロスも覚悟すべきだという考え方もございますが、やはりそれだけの財政負担をするなら、もう少し何かほんとうに国内で要るもの、有効に使われるものをつくるべきではないかという考えもこれまたあるわけでございます。そういったもろもろの点を国際需給の問題なり、あるいは過剰の問題なり、双方の面を総合的に考えまして、現在の農林省の各種の政策が進められている段階だろうと思います。  そこで、米自体についての需給関係を申し上げますならば、現在はことしの米穀年度末、十月末において大体百十万トンの古米の持ち越しができるという状況になっております。年度の切りかわり、米穀年度末の古米の持ち越し量は、何といいますか、一つ需給のバロメーターといいますか、どの程度余裕があるか、あるいはどの程度問題が深刻であるかということを判断するバロメーターになろうかと思います。私ども大体百十万トンもあれば、一とおりの需給変動、問題の発生した場合に十分対処し得ると考えておるわけでございます。百十万トンという数量は、生産量からいいますというと、大体一割くらいの作況の変動に耐え得る数量でございますし、それから需給操作の上からいえば、二カ月以上の需給操作は可能であるという数量でございます。これをどの程度持ったらいいか、多々ますます弁ずというわけにもまいりません。先ほど申し上げましたようにむやみにたくさん持てば、いずれは要らないものとして処分せざるを得なくなるという事態も考えなければならないわけでございます。  しかし、先ほど来御指摘ありますように、最近では確かに石油危機以来穀物についても慎重に考えなければならない事情がいろいろ出てまいっております。それらのことを考えまして、四十九年度の稲作転換、これにつきましては、本来ならもっと数量を増して生産調整を、稲作転換をはかるべきところを、最終的には在庫の積み増しを六十万トン行なうということにいたしまして、生産調整数量を百九十五万トン行なうべきところを百三十五万トンにとどめたということがございます。それらのようなことから、五十米穀年度末、来米穀年度末におきましては、私どもは、米の古米持ち越しはおおむね、若干の需要の増加も見込みましても、なお百五十万トンは持ち越せると見ております。百五十万トン持ち越すということは、これは相当の財政負担を覚悟して万一相当のことがあっても十分対処し得るように措置したものだというふうに思っております。
  36. 神沢浄

    ○神沢浄君 米食い率が非常に落ちてきておるということ、これはお米のほかに食べる物を入れておるから、結局米に依存しなくなってきているわけなんでしょうけれども、そこら辺は——そんなことに時間を私はかけたくないから、自分の意見だけを述べておくにとどめますけれども。日本人は相当高い米食い率でやってきているんだから、これはまた米食い率が上がるような方針がとられれば、そう返ることは僕は間違いないというふうに思うんですよ。その辺を考えていかなきゃ、日本の食糧問題というのは、これは考えることはそれこそむずかしいようなことになるんじゃないでしょうかね。どうもそういうふうな考え方というようなものが、ことしの諮問の中などにも全然見えないので、僕はそこを指摘をまずしてみたんです。  そこで、私などが聞いておるところによりますと、たまたまこれは何か石油ショックなどの刺激もあったかもしれませんが、あの時点あたりから再び米食い率というものが上昇してきていると、こういわれるんですが、その辺はどうなんですか。
  37. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 米の一人当たり消費量は昭和三十八年度がピークで、この年は一人当たり百十八キロでございましたが、その後年々減少してまいっております。最近では四十七年で九十一キロ程度に落ちてまいっております。その間直線的にずっと一人当たり消費量が落ちてまいったのでございますが、その中でも傾向がございまして、ごく最近では減り方がやや鈍化してきているのではないか。同じ減ることは減るにしても、減り方がにぶってきているのではないかというふうに見受けられます力  特に最近は、昨年の十二月からことしの一、二月にかけてでございますが、売却量が特に前年に比べて大幅にふえております。これは前年が若干落ち込みだったというようなこともあってどうなのかというように、やや慎重に見守っておったのでございますが、その後も売却量は若干ふえているという傾向にございます。  一方、一人当たり消費量だけではなくて、人口の問題もありますから、絶対量、総体としての量が若干ふえるようなことがあっても、一人当たりはやっぱり減っているのかという判断もできますが、全体としての傾向がどうなのかということにつきましては、売却量だけではちょっとまだ判断しかねる状況にあると思います。  と言いますのは、いろいろやはり物不足等の問題が騒がれ出して以来、それからまた生産者米価が上がるのではないかというようなことから、いろいろ懸念いたす向きもあって、若干手持ち量が消費者段階においてもふえるというようなことも考えられるのでございます。ちり紙とか、トイレットペーパーとか、あるいは砂糖とか、そういったほかの商品と違いまして、供給が潤沢にあるんだ、保障されているということから、それほどまだ買いだめというようなことは考えられませんが、幾分そういった消費者在庫の量がふえるのではないかということも考えられます。したがいまして、もう少し売却なり、あるいはそういった流通、家庭消費の状況を追跡して、やや期間を置いて将来の見通しを見定める必要があろうかと思います。  ただ、全体の傾向としては、かなり確かに一人当たり消費量の減り方が鈍化してきている。ことによると横ばいくらいになっているのではないかというふうに推察されます。そうしますと、人口がふえますから、今後消費量は、全体としての消費量はそんなに減ることはまずないのじゃなかろうか。  それからなお三百申し上げておきますが、いま先生もお触れになりましたように、これからの国内の食糧供給はできるだけ米に依存することが望ましいと私どもも考えております。それなら小麦の輸入を制限したらどうか、粉食を押えたらどうかというような意見もあるところでございますが、ただ、現実にまだ供給が潤沢に確保されており、国民の嗜好も粉食に向いておる、かなり向いておるということも事実でございます。それらの実態を、人為的にといいますか、強制的に方向づけをしていくということはいろいろ問題もありますところで、私どもといたしましては、いろいろ米の消費の増大をはかるような観点から米の消費についてのPRをする、学校給食などを特にてことしてこれを進めていくということを考えております。
  38. 神沢浄

    ○神沢浄君 いまの米の消費率の問題に関してですけれども、これはほうっておいても消費率低下が鈍化してきている。ということは、米食い率がまた復元しておるということにもなるわけでしょうからね。それを少し政策的に米を食わせるというような方針がとられれば、ぼくは日本の食糧問題という中における米の位置づけというものがやっぱりはっきりしてまいるわけであって、それがないというところにぼくは非常な不満があるんです、一つの問題としては。  そこで、去年の暮れあたりから、自然のままでもまた米消費率というようなものが回復しつつあるというような状況の上に立って、先ほどのお話の百十万トンですか、約二カ月くらいの分と。こういうようなことで安全ですかね。これからある程度米の消費率が向上に向かう、計画的には百十万トンでもって、だから言うならば過剰的傾向だからと。これ読めばそういうことになっちゃうんですね。そんな私はきわめて不安定な要因に立っていると、こう思うんだけれども、どうなんですか。
  39. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 日本の米の収量は、比較的安定していて、それほど大きな変動はないという前提が一つございます。それに対応するためには百十万トン程度あればまずまずであろうということもありますが、もう一つ御記憶いただきたいのは、私先ほど説明で落としたんでございますが、その時期、米穀年度末の十月末にはすでに新米、その年のとれている米がかなり出ているという事実がございます。大体数量にして二百五十万トン以上、そういたしますというと、大体十月末の在庫は四百万トン以上というふうに考えられるわけでございます。ですから百十万トン百十万トンといっておりますというとその古米、その持ち越し分だけが一つのアローアンスというふうに受け取られがちでございますが、実際の需給の面では、その時点でもなおかつ四百万トン以上の米が現実に存在しているということになるわけでございます。
  40. 神沢浄

    ○神沢浄君 こんなことであんまり時間を使っちゃっても困りますから次の問題に移りますけれども、さっき工藤委員からの質問の中でも指摘がされておったようだけれども生産費計算でもって、いわば試算説明を見ると平均方式がとられている。これはきのう私は米価審議会の会場に参りましたら、通称大衆団交というんですか、次官が出られましてね、渡辺次官が農民の代表者とやりとりをされておりましたけれども、その中の問題として、私にも確かにちょっとわかりかねる点があるんですが、平均方式というやつをとると、平均まではこれは補償される。しかし今度は平均以下の場合は、これは実際には生産費が補償されないということになるわけです。ところが、日本の農業の実態というのはむしろこれは平均以下が大きな層を占めておる。そうすると、生産費所得の補償ということをうたっても、現実の問題としてはこれは生産費の補償にならないということになるんじゃないでしょうかね。私もあのやりとりを聞いておりまして非常に疑問を持ったわけなんですが、そのあたりのちょっと説明を願いたいと思うんです。
  41. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 生産費を見る場合、どの水準で見るべきかということは確かにいろいろの問題のあるところであろうかと思います。かつては限界的な生産農家も対象に含める生産刺激、生産奨励をするということから、いわゆるマイナス・ワンシグマ反収をとったことがございます。現在は平均反収をとっておるわけでございますが、いまのそれによる平均生産費、これでもってどれだけ実際に農家がカバーされるか、償うかということになりますというと、現在の米価算定生産費は、御存じのように、先ほど来御説明申し上げているような評価がえ、あるいは物価修正等いろいろの措置を講じられているわけでございます。これを原生産費——なまのままでもって出た生産費、これでもってみた場合どうかという比較が私は、必要であろうかと思います。原生産費でもってみました場合には、いまの平均生産費でもって、大体販売数量にして九〇%の数量がカバーされるというような状況にございます。原生産費も一〇〇%カバーしてないではないかという問題がございますが、問題といいますか御指摘があるいはおありかもしれませんが、評価がえその他を行なっていることから、かなり原生産費に対しては高い水準米価となっておりまして、原生産費でこれを見た場合、九〇%近くがカバーされているという状況でございます。
  42. 神沢浄

    ○神沢浄君 それは、農林省の計算の上の一つの理屈ということにまあなるでしょうね。実際には、これは時間がなくて問題の検討をしておるわけにもまいらぬですけれども、方式上であってもそういうふうな矛盾を蔵しておるわけだし、それから確かにそれは平均方式というやつはかなり無理には無理ですよ。日本の農業の規模というか、要するに専業農家なんていうものはごくわずかで、あとはほとんど一種、二種の兼業になってくるというわけでしょう。そういう中でもって平均方式をとるというようなことになると、これはかなり矛盾したものが生じてくることはいなめぬと思うのです。  それはそれでおきまして。それでもう一つ、これは実際に苦労して米をつくっている者の側からの不満というのは、やはり労賃ですね。労賃の問題にやっぱりかかっていくようなんです。私も実は例の日農などが算出しておるものあるいは農協が算出しておるもの、こういうふうなものを見てそう思うんですけれども、日農の場合は百人以上くらいの都市労働者、企業の労働者の賃金の、男も女も一緒にして計算をしておる。農協の場合はこれは五人以上規模のものを男女平均をして計算をしておる。それが日農のやつは八百二十八円ぐらいになり、農協が六百十一円と九十銭くらい。政府は五人以上五百人までというようなことでやっておるわけですね、これを見ますと。これはどういう理由に基づくんですか、五人から五百人と切っちゃったのは。
  43. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 評価がえをする場合、どのような水準の労賃に評価がえすべきかということは以前からいろいろ議論のあるところでございます。食糧庁としての一つ考え方は、昨年の試算なり、それ以前においても用いておったわけでございますが、地方労賃、農家の労賃を均衡さすべきは、それぞれのその地域における都市勤労者の労賃と均衡さすことでもっていいのではないか、という考え方があったわけでございます。しかし、それをとりますというと、現在とっておりますところの五人以上五百人未満よりはかなり低い。むしろそういうものよりは、実態としては地方労賃という考え方もあり得るけれども、中小企業規模とバランスといいますか、それに評価がえの水準を合わすべきではないか、という議論が一つあったわけでございます。そこで私どもといたしましては、中小企業ということになりますと、これは三百人未満ということになるのでございますが、実際の統計としては、そういう段階賃金調査はない。そこで五人以上五百人未満の事業所賃金をとるということにしたわけでございます。  なぜそういう水準のものがいいかということでございますが、全規模をとらないかとか、あるいはむしろある規模以上の大きいところだけのものをとらないかという議論があるわけでございますが、やはり私ども米の需給は、同じことを先ほどから繰り返して恐縮でございますが、依然としてやはり潜在的には過剰であると、それから他作物への転換を進める必要があるという状況のもとでは稲作所得均衡をはかるという考え方からすれば、中小企業従事者を、バランスさせる対象としてとることが適当であるというふうに考えております。
  44. 神沢浄

    ○神沢浄君 いろいろ納得のむずかしいようなことばかりでありまして、しかし時間の関係で、これはまたいずれあとの機会での論議に残しますけれども、もう一点お聞きしたいのですけれども農民からかなり強い追加払いの要求というものがありますよね。ところが、この諮問には全然それは触れておりませんね、この追加払いについては。これはぼくは理屈に合わぬことだと思うんですよ。もう一般勤労者だってインフレ手当というようなことがいわれておるし、われわれも何か先払いでもらっておる。こういうふうな状況の中で、大体一年前のデータに基づいて米価というものはきめられて、その収入でもって一年後の生活をささえるわけですね、農家の経済というものの実態は。そうすると、狂乱といわれるようなああいう事態があって、今度のデータには当然それなりな繰り込み方はされているでしょう。しかし、今度のはあれですけれども、昨年のやつはこれは全くそれ関係ないですからね。昨年の米価の不足分というやつは、これはまあ当然管理制度のもとに運用されている米価であれば、これは政府は追加払いをすることはあたりまえのことだし、それからそれと同様に、今度かりにここで新米価がきまっても、いま盛んに秋初頭にでも第二次インフレというか、こういう、政府だって新価格体系だなんて言って、ていさいのいいことを言いながら、言うなれば高物価安定的な政策が用意をされているわけですね。そういう際には、これはこのデータはくずれるのだから、当然これは追加払いというものが必要になってくるわけでしょう。四十八年度産米についての追加払いだって、あるいはこれからの見通しでもって経済の状況変化に対しては、これは四十九年産米についてだって、これは追加払いというものが約束されなければ、これは農家としては安心はできないと、こう思うんです。そういう点の考え方はどうなんですか。
  45. 杉山克己

    説明員杉山克己君) そのときそのとき生産されていくような年間を通じて生産の行なわれる工業製品なら、やはり物価賃金の変動をそのときそのときの製品価格に反映させるということができますが、農産物、特に米のような一年に一ぺんの収穫物というのはどうしてもそういう時間的な問題が生ずることは、タイムラグといいますか、その問題があることは事実であろうと思います。ただ、いまの算定方式におきましては、そういうようなことの起こることも考えまして、全体として安定した推移が期待できるように生産費所得補償方式ということでまいっておるわけでございます。むしろそういう物価賃金動向をそのつどそのつど反映しなくちゃいけない、そして変動が大きいときは追加払いなり修正を行なうのだということならば、むしろ方式としてはほかの方式、指数化方式とかあるいはパリティ方式とかいろいろございましょうが、そういった問題のほうが妥当なんじゃなかろうかというところまで、いわゆる生産費所得補償方式の問題までさかのぼって検討しなければならない面があると思います。  それから前年の生産費をとっているではないかということでございますが、前年の生産費といいましても、それは諸要素はそれで確かにとっておりますけれども賃金については例年四月まで、特に本年は五月まで、あるいは物財費については直近時のやはり五月までをとるというようなことで、全く前年の数値そのものではございません。物財に関しましては大体五月までの物財費をとりますれば、もちろんその後の物価上昇はないとは申しませんが、かなりの実際の生産費に近い価格動向が反映されているのではないかと思われます。  それから昨年の米価決定にあたりましては、これはやはりもろもろ事情を考えましてかなり大幅な価格引き上げになったというようなこともあり、追加払いは政府としては前回の、前回のといいますか閣議決定も行ないまして、これをいたさないということにいたしたわけでございます。  ただ、物価賃金の変動があるということは、これがしかも非常に大きくて、著しくて農家経済に影響を与えているということは事実でございます。そこで、そういったことを的確に反映するという考え方で、今回の四十九年産米穀価格については、それなりに従来の算定方式に先ほど御説明したような修正を加えておるわけでございます。  それからまたもう一つ、今回米価決定に先立ちましていわゆる前渡し金といいますか、概算払いが行なわれるわけでございますが、その予約時の概算金の額を一俵当たり一千円から三千円に増額したわけでございます。これもやはり物価賃金の変動に伴って農家家計がいろいろ問題を生じている、そういったものの一助になればという気持ちも込めて増額したという経緯もあるわけでございます。  それからなお反論ばかりしていてたいへん申しわけございませんが、公務員だとか一般勤労者にインフレ手当が出ているではないかというお話がございましたが、公務員の場合は、これはインフレ手当というような追加払い的なものではなく、いずれベースアップ等もあるいは給与改定が行なわれるというように承っておりますが、それらの今後期待される給与改定の中から差し引かれるのだと、いわば一種の前渡しだというように私どもは聞いております。
  46. 神沢浄

    ○神沢浄君 これは大いに異議があってね、米価といったってね、それは生産費なんというものはかかった経費でしょう。所得といったってこれは労賃ですよ、農家のね。農家の労賃ですよ。勤労者の月給と変わりませんよ、ちっともこれは。これは日当を取る人のその日その日の賃金と変わりませんよ。それが所得なんです。それと同じことじゃないですか、これ。勤労者のためにインフレ手当を考えたり、狂乱物価というか、経済の変動に対応しての措置を講じていかなければならぬというのと同じで、政府の責任として管理制度というものがあってやっていく以上は……。これはどういうことになりますか。これはただ生産費所得補償方式というそういうことでもってやっておるから、もうあとのことはかまわねえんだという、こういうような言い方にしかいまの説明は受け取れない。米価の実態なんというものは、別にほかのものをみんなはいで拾てれば、残るのはわずかなもので、その労賃の決定の基準だってまことにお粗末千万なものです。これはあとからの問題ですけれどもね。で、ただ単なる労賃取りにしかなっていないのでしょう。これは月給取りが月給をもらっているのとちっとも変わらないんだから。それがやはりこういう狂乱といわれるような異常な経済情勢になった場合に、これは政府の責任でもってそれを考えていかなければならぬなんということはあたりまえのことだと思うけれども、その点をひとつお尋ねして終わります、もう時間がないから。どうですか。
  47. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 同じことを繰り返すことになりますので、答弁はもうこれ以上は省略さしていただきますが、追加払いは政府としては、これはやはりいま申し上げましたような事情で行なわないということにしているわけでございますので……。
  48. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ちょっと関連して。ぼくはいま工藤さんと神沢さんの質問を聞いておりまして、追加払いですね。時間が非常に短いですから簡単に伺いますけれども、追加払いというのは、先ほども工藤委員のほうからありましたように、施行令によって著しく事情が変わった場合は改定するという、そういうことまで設けてあるわけですよね。それじゃ、この一年間著しい変化はなかったのか——これは戦後最大の変化ですよ。生産資材にしてみても、農林省の発表にしても、労賃だって、前年五月に比べれば、三四%上がっているというし、生産資材は三三%上がっているという、消費財は二六%、パリティは二八%、こういうことは、戦後二十数年の間なかったことですよ。それなら、ちゃんと設けてあるわけだから、改定をするということになっているのだから、改定をなさるという必要があるのではないか。改定をするということであれば、これは当然追加払いというのは出てくるわけです。改定をするということをしない、いや改定というか、追加払いをしないということを閣議でおきめになったとおっしゃるけれども、理屈としては私は改定すべきだと思うのですね。どうおっしゃろうと改定しなきゃ、これだけの大きな変化が起こっているのだから。最大の変化ですよ。これは需給関係もありますよ。しかし需給は、生産調整をやっているから、ぎりぎり一ぱいやっていらっしゃるわけだから。その意味でいいますとこれだけの大きな変化があった場合に、米価改定をしないということは、それは食糧庁自身がつくっておられる施行令というものを踏みにじるものだと私は思っております。これほど大きな変化はないですよ。  それを一つ御答弁いただくことと、もう一つ賃金ですね、賃金説明を私聞きましてね、聞いておってね、この賃金考え方は、とんでもない、おかしい。というのは、これからつくる米でしょう、これからつくる米の値段をきめるのに、昨年の、ことしは一カ月ずれて、昨年の六月からことしの五月までの平均賃金を出すのでしょう。それがおかしいのですね。全然おかしい。私は、これからのものだからこれからの労働賃金というなら、四、五、六春闘相場そのものを賃金にすべきだと思うのですよ。昨年の六月から五月までの平均賃金を出すというやり方は、それは賃金を低めるための単なる詐術にすぎないのですよ。技術です。低めるための技術というふうに思わなきゃならぬのじゃないでしょうか。去年の米価の話をするならわかりますよ。これからのいま米価の問題を論議するのに、昨年の六月からことしの五月までの平均賃金を出してやるという考え方はこれはとんでもない、おかしい。昨年の五月に比べてことしの五月は三四%上がった、その三四%分というものをそのまま賃金に繰り入れていくというなら別ですけれども、その点が一つ。何がゆえに過去の平均賃金を用いなきゃならないのか、私はこれからの米価の問題なのだからこの四月、五月、六月という賃金できめればよろしい。大体そうすればこの一年間の賃金はそれで見合う。そう変わりません、昇給以外には。全体として変わらない。その賃金を考えるべきだということですね。  なお、さっき私は改定のことを言いましたが、肥料問題が論議になりましてね、肥料問題はいままで一年間に一ぺんしか肥料価格を変えなかったのですよ。この間は農林省は非常に肥料等の会社ともいろいろと御相談の結果、異例な、年間に二度肥料をお上げになったのですよ。いままでにないことだ。肥料を二度上げる、それからそれ以外の農機具、農薬の問題にいたしましても、資材の問題にいたしましても、何回も上がっているのですよ。だからさっきみたいな異常な状態になっておるわけであって、だからぼくはどうしても再計算をしないという、再改定をしないということがわからない。やるべきだ、当然これは追加払いというのをやるべきだ。  それから、もう一つはさっき工藤さんが質問したのですけれども販売農家生産費とか、それから販売農家平均反収とか、そういうとり方は、どうも私は、何というのですか、えらく政治的だという感じですね。ですから、工藤さんの言うように、四十二年の計算でやるというと、一万七千何がしになると、これは農協の要求と全く同じですよ。農協の要求よりちょっと大きくなる。農林省でもそういう数字をはじいてこられたわけなんだから。それをこの販売農家生産費とか、反収とかということでお考えになりますと、これはもうだれが考えたって経営規模のでかいやつですよ。販売農家といったら経営規模のでかいやつです。どうしてもでかくなってくる。こんなやり方をおとりになったのでは、これは農家は信用しませんわな。  なお、米の需給というものはこれは農家を含めないで考えていらっしゃるのですか。そうじゃないでしょう。農家の保有米といいますか、農家が食う米も含めて日本全体としての需給関係というものを考えていらっしゃるのじゃないか。いや農家は別である。農家をはずして需給関係を考えているということであれば、わからぬ点もないような気もするのだけれども、そうじゃないだろうと思うのだけれども。だからそういう問題もどうも私は農林省は……。  それから、さっき工藤さんは諮問の二番目の質問をしましたね。これは重大な問題ですね。物統令をはずしたということは。一体どのくらいの、まあ言うならこれまでは十キロ当たりで千六百円という価格で大体売られておったのですから、四、五年前までは。それを物統令をはずしたことによって三千億から四千億というものが浮いているわけですよね。ですから、そういう問題が非常に重要な問題であって、それを、ここらあたりでぼくは農林省として論議をしてもらわないというと、食管会計、何もかにもごっちゃまぜになった食管会計、あるいは六千幾ら赤字になって、今度はまた一兆円くらいになるとか、私はつまらない話だと思うのです、これは。だって、えさだって、あの中に入っているわけですよ——麦だって二千億くらいの赤字が入っているわけだし、えさだって五百億くらいの赤字が入っているわけだし、古米の取り扱いの金だって入っているわけだし、それ以外の自主流通米に対する奨励金の問題だって入っているわけだし、食糧庁の人件費も入っているわけだし、輸送費や運送費やその他も全部入っているわけですよ。米だけのいわゆる逆ざやという点でいいますれば、これは数字が出ているように千九百億円しかない。何か大蔵省のぺースに乗り過ぎて、大蔵省食糧庁じゃないかというような感じを盛んに受けますね。まあ同じ政府だからこれはやむを得ない点もあるかもしれませんが、私は農林省としてもっとすっきり考えてもらいたいと思うのですけれどもね。時間の関係もありますから、いま私は羅列をいたしましたけれども、その点についてひとつ一括してお答えをいただきたいと思います。
  49. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 施行令二条に確かに「経済事情の変動が著しい場合においては、これを改定することができる。」という規定がございます。ただ、この規定趣旨物価その他の経済事情、しかもその経済事情の中には、物価だけでなく、物価のほか需給事情でありますとか、稲作農家の経営の実情でありますとか、あるいはほかの農産物価格動向、買い入れ価格と売り渡し価格との関係、財政事情、そういったもろもろ事情が考えられると思います。そういった問題を総合的に全般を含めまして著しく変動し、まさに食管法第三条第二項の規定趣旨から見て、再生産確保のために必要があるという場合には、そういう改定も行なうということはあろうかと思っております。  ただ、いまの方式が先ほど来申し上げているように、そういうことにどちらかといえばなじまない、そういうことになじまない生産費所得補償方式でやってまいった。これはこれで安定したすぐれた方式であると思っておりますが、そういったところに一つ問題があろうかというように考えております。  それから賃金の問題につきましては、最近の、あるいはむしろこれからの生産を行なうならば、今後の賃金を取り上げるべきではないかという御指摘でございますが、現在の生産費所得補償方式は、基礎となる生産費につきましても、それからその評価がえにつきましても、過去に実現されたデータに基づいて行なうという考え方のもとに成り立っております。従来からもそういう考え方に基づいて直近一年間の平均賃金を採用してまいったわけでございます。先生おっしゃられるように、最近の短期間の、あるいは今後の賃金をとるということになれば、生産費計算のもとになっておりますもろもろの要素、たとえば収量でありますとか、労働時間でありますとか、そういったものについても、それと合わせたような期間のものをとるべきであり、あるいはまた、推定をもって今後の見込みを立て、それと平仄を合わして算定すべきであるというような議論も生じてまいろうかと思います。それらのことを全体として調整いたしまして、おそらくいまの生産費所得補償方式というのは長い歴史を持って確立されてきたのだと思います。  それから物財費につきましても、これまた推定を入れてはと、あるいは最近のえさの値上がりが反映していないという御趣旨の質問でございましたが、えさそのもの——肥料とおっしゃったのですか、飼料でなくて。失礼いたしました。ちょっといまのところを取り消して肥料の話にさしていただきます。肥料につきましては、大体五月までの物財費の動向が入れば、おおむね農家は本年産の米についての肥料手当ては済んでいるといいますか、まかなわれているのではないかというように思われるわけでございます。  それから、需給事情の場合、農家消費の問題を考えているのかと、これは当然でございます。農家も含めて全体としての需給を考えるということでございます。需給計画においても農家消費の動向というのはきわめて大きなファクターとなっております。その場合、直ちにそれが米価算定において平均生産費を出す場合、そういう飯米農家、そういう分の生産費平均生産費の計算に入れるかどうかということになりますと、これはまた需給において、農家の自家消費を計算に入れるということとは別な次元の問題であろうかと思います。  それからその次に、消費者価格の問題でございます。工藤先生の御質問にもお答えしましたように、いろいろ流通段階で問題があるとするなら、それは当然私どもは排除しなければならない。またそのことのために財政負担が必要であるということならば、財政負担が行なわれているということであるならば、そういう財政負担は、これは避ける、節減しなければいけないと思っております。財政負担の点に関しましては、なお直接の政府の売買逆ざやだけでなしに、もろもろの経費もあるではないか、たとえば、人件費等も含めての管理費、それから自主流通米の奨励金といったようなものもあるではないかというお話でございますが、私ども、やはりこれだけ大きな食糧管理制度というものを国が持っております以上、それなりの財政負担は当然必要であると考えております。頭から財政負担をしない、独立採算でいくんだというようなことで議論をいたしたつもりは毛頭ございません。どの程度の財政負担がしかるべきであるかということの判断になりますというと、これはいろいろな説があろうかと思います。いま私どもがいろいろ各方面に申し上げておりますのは、同じ財政負担の中でもコスト逆ざや、管理費まで含めた、そういう経費まで含めたコスト逆ざやを解消しろというようなことを言っているわけでもなければ、売買逆ざや——高く買って、これを安く売る、そのための価格逆ざやを解消しろと言っているわけでもございません。政府が売った価格流通段階のマージンが加えられまして末端価格が成立しております。その末端価格よりも政府の買い入れ価格が高い、その差、いわゆる末端逆ざや、これはどうしてもおかしいのではないか、この分は解消したいということを言っているわけでございまして、もちろん自主流通米の奨励金でありますとか、管理費でありますとか、そういう経費面についての節減は必要でございますが、そこを何も米価の問題で解決するとかいうようなことを、解消したいというようなことを現在申し上げているわけではございません。
  50. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 もう一つ。  これだけの大きな変動があって米価改定しないということは何としても理解できないですね。これは一応価格決定なさったということ、それをよりどころにして総務部長はおっしゃる以外にないでしょう。しかし、これは考え方として、これだけ大きな変動があったのに米価の再改定をしないなんて、いつやるんですか。こんなおかしな話ないですよ。これだけの大きな、戦後最大の大きな変化があったのに考えないというのは理解できないですね。自分みずから、食糧庁自身がつくった施行令を踏みにじるようなものですよ。  それからもう一つ。私は、物財費その他に豊凶——これは米というのは豊凶がありますから、ですから、三年なら三年の平均をとっていろいろお考えになるということはわかりますよ。ただ賃金は違うということなんですよ。賃金はこれからの問題なんだから、賃金については過去一年間の平均をとってそれが賃金だと言うのはおかしい、これは。賃金だけは、少なくともこれは春闘なら春闘相場というところでお考えになったらどうですか。それ以外のいろんな点については、それは二年なりそれなりのものをお考えになることはけっこうですよ。ですけれども、総務部長としては、所得補償方式というものはこういうものだから、だから、それで言えばこうだと、それはそのとおり。私は、それにとらわれているわけじゃないです。改めていかなきゃならぬ面は改めるべきだという考え方を持っておりますから、特にいまの賃金の問題で一年間の平均で出すという考え方は、これは何とも納得できないですね。公務員の賃金を出すのに過去一年間の平均賃金出しましたなんと言ったら、けたくられますよ、それは公務員に。そんなばかなことするやつあるかということで、これはひどい目にあっちゃうですよ。もの笑いです、これは。ですから、私は、賃金についてはこれからのことなんですから、少なくとももっと——農民だって現場のそのときの賃金で動くんですよ。米をつくってみたり、できたらどこかへ出かせぎに行くということになるわけですよ。ですから、これはことしの春闘相場というものをはっきりさせれば、それでもう大体一年間動かないのですから——動かないと言って過言ではない。それを入れるべきだ。そういうことをお考えにならないで、どうして過去一年間の平均賃金でやるのか。そして、それが農民賃金だなんというようなことを言ったら、それはおかしな話じゃないか。これはもの笑いですな。天下のもの笑いであるということをぼくが言ったということを、ひとつ覚えておいてもらいたい。  それから地代ですね。この地代は——これも時間がありませんが、地代は、自作地統制小作料だと言うんですね。それで小作地は一〇%ぐらいしかないでしょうが。もう一〇%もないでしょうけれども小作地は自由の小作料をとる。それもどだいおかしいですね。地価がたいへんに上がっているでしょう。これまた非常に上がっておるですね。そういう場合に、この地価のとり方が、小作地はそのときの調査、しかし自作地は法律があって、そして小作料というものが行なわれているからそれをとると言う。じゃ、小作地だって小作料という最高小作料の額というものはきまっておるのですから、どうしてそれをおとりにならぬかということになるし、地価がこれだけ上がっておるのだから、だから地価についての考え方もお変えになるべきじゃないか。金利はお変えになった、今度。金利の変え方も少ないですけれども、農協金利ですからやむを得ない。ですが、この地価についても根本的に考え直すべきだというふうに思いますね。  そういう点についてひとつ……。これで私は終わります。
  51. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 労賃の単価のとり方につきましては、これはもう先ほど来たびたび御答弁申し上げているところで、重ねて同じことを繰り返すのはいかがかと思われますので……。  地代の点について申し上げますならば、地代を何によるかということはいろいろ議論のあるところでございます。ただ地代は、本来はもろもろの合計した収入からほかのコストを差し引いたいわゆる残渣という性格を持つものであろうかと思います。それは米価がどうきまるかということ自体あるいは生産者のおのおのの自家労働評価をどうするかということ、そういったことの関連によってむしろ結果的にきまってくるものではないかというような議論もあるわけでございます。米価算定にあたりましては、従来から統制小作料以外によるべき適当な基準がないということで、自作地小作地を問わず統制小作料によってまいりましたが、昨年、先生御指摘のような問題もいろいろありまして、実際にそういう地代を支払っている者は残渣とかなんとか言っても、そうではないじゃないかという話もあり、それらのことを考えて小作地については実納小作料をとるということにいたしたわけでございます。いろいろ地価が上がっているということ、これはもう疑いもない事実でございます。いろいろ宅地化でありますとか、開発が進んでおりまして、農地の価格も上がっている、地価が上がっているということは事実でございます。ただ、これはやや私どもに言わせれば、農業の本来から離れた別な次元での話であり、そこまでも米価の中ですべて解決するということは、いささか能力を越えた範囲の仕事ではなかろうかと、分野ではなかろうかというふうに思っております。
  52. 塚田大願

    ○塚田大願君 だいぶ論議が行なわれましたので、私もあまり重復しない範囲でお聞きしたいと思うんです。  やっぱり、先ほどからお話がありましたように、今度の諮問の二五・五%、それはもうとても農民が納得できるような数字ではない。これははっきりしていると思うんですが、特に、いまお話が出ました労賃の問題なんかも、私は、今度のこの諮問試算の場合に、たいへんやはり一番大きい矛盾じゃないかと思っているんです。そこで、いま鶴園さんからもお話がありましたが、労賃は少なくとも四、五、六、最近の三カ月をとるべきじゃないかという意見に対して、農林省は、生産費所得補償方式ということだから、それは違うんだと、こうおっしゃるんですけれども、ここに私、一つ材料があるんですが、この間、田中総理が北陸地方の農民の代表に対しまして、こういうふうに返事されておるんですよ、これは十二日のことですけれども。「昨年と同じ方式で算定すると低額になるので、労賃を四月−六月の三カ月分を織り込むよう農林省に伝えてある。」と、総理みずからが、この労賃の算定は、このようにすべきだというふうに言われておるんですね。で、これについては、農林省はどういうふうにこの総理の要請に対してはおこたえになったつもりですか。
  53. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 総理が、北陸で、そのような発言をされたということは、私初めて承知いたしました。特別いま御指摘のような、四月から六月までの労賃を算入すべきことを農林省に指示しているというようなことは、私ども承知している限り、そういう事実はございません。ただ、総理——もちろん総理のほかも、農林大臣にいたしましても、そのほか関係政府首脳それぞれいろいろお考えがあって、選挙中いろいろ御発言があったことと思われます。それらのことを総合的に考えますと、私どもといたしましては、農民の要求もいろいろあることであるし、最近の物価賃金動向をできるだけ反映しろという御趣旨かというふうに受けとめているわけでございます。今回の算定におきましては、先ほど来の御指摘では、それは不十分であるし、改善は見られないというようなことでございますが、私どもは私どもなりに、政府として説明のできる限り、いま申し上げましたような物価賃金動向を適切に反映するという考え方のもとに、たとえば、五月までの労賃をとる——従来、四月であったものを一カ月時期をおくらせる、労働省の協力を得まして、資料の提出等についても、いろいろ御無理を願ったというようなこともありまして、五月までをとるということにしたとか、金利につきましても、これは最近の実勢に合わせた金利水準をとるとか、あるいは概算金利子控除も、従来行なっておりましたものをこれをとりやめるとか、それなりにそういう御趣旨は体しておこたえしたつもりでございます。
  54. 塚田大願

    ○塚田大願君 いまの総理のこの意見というものは、直接農林省に反映していないようですけれども、これはだれが考えても常識的なことなんで、春闘相場が三二・九%ということから考えれば、これは当然のことで、特に総理が政治的に選挙の中で発言をしたというふうなものではないと私は考えるんです。ですから、少なくとも政府の最高首脳者がこう言われておるので、やはりこの辺で私はひとつ農林省は考え直してみる必要があるんじゃないかと思うんです。いま、北陸地方で云々という話ですが、これは北陸地方で言ったんじゃなくて、北陸地方の代表が田中総理の自宅にたずねて、そのときのお答えなんです。事実関係だけはそういうことですが、とにかくこれはだれが考えても当然のことだし、それから二五・五%というこの問題も、単に労賃だけの問題でなくて、農業資材、こういう問題が、これが農林省の発表した数字を見ましても、大体二月段階で前年対比三八・六%というふうになっておるわけでありますから、当然私は、農協なんかが要求している一万六千七百四円、この米価というものは、最低の私は要求だと見ていいんではないかと思いますが、これはどうですか。
  55. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 農民なり農協はそれぞれのお考えで最近の物価賃金等の動向をお考えになって要求を出しておられるものと思います。それを私どもの立場から、とやこう言うことは差し控えたいと思いますが、政府といたしましては、現在この米価が適正であるということで考えて、米価審議会試算諮問申し上げているところでございます。米価審議会の御意見も十分承りました上で、適正な決定をしたいということでございます。
  56. 塚田大願

    ○塚田大願君 ところが、この農林省のこの諮問数字というのは、先ほどからもいろいろ意見がありましたが、要するにやはり一つの政治的なもので、科学的な根拠というものにはたいへん薄い、こういうふうに私ども考えておるんです。と申しますのは、きのうも米審の会場での団交の中で渡辺政務次官が、とにかく去年どおりの試算でいくと大体二〇%ぐらいなんだと、しかし今度は二五・五%までしたんだと、こうおっしゃっておるんですね。ですから、この諮問数字そのものがすでに非常に政治的なものであって、一部にはこれはもう政治加算の先取りだと、こう言われているわけですよ。あるいは農林省のさじかげんでこういう二五・五%という数字が出てきたんだと、全く茶番劇にひとしいと、こういうふうに手きびしく批判している新聞もあります。これはごらんになっておると思うんです。  そこでお聞きしたいのは、こういう状態だとすれば、この二五・五%というものも、ほんとうに確定的なものではないのではないかというふうに考えられるんですがね。現に渡辺次官がきのうもそういうふうに言っておられるんです、確定的なものではないのだと、こういうふうに言っておられるんですが、その辺はどうですか、農林省はこれを確定的なものと考えていらっしゃるのかどうかですね。
  57. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 私ども政府が出しました諮問試算が適正なものと考えております。
  58. 塚田大願

    ○塚田大願君 まあ農林省としては確定的というふうにお考えでしょうけれども政府筋がそういうふうにおっしゃっておるわけですから、もしこれが渡辺次官がおっしゃるように確定的なものでないということになれば、農民の皆さんが、四十二年度の試算ですね、これを基礎にしてくれと、こういう要求をされておるんですが、この要求にこたえる用意というものは、農林省は全く考えていらっしゃらないわけですか。
  59. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 四十二年の生産費所得補償方式に基づく米価算定は、当時の需給事情を反映しまして、必要量を絶対確保するという考え方のもとに、増産を奨励する、増産を刺激するということから、要素の取り方に種々配慮を加えておるわけでございます。一つ一つこまかく申し上げますというとわずらわしいので、省略いたしますが、全体としてそういう意味で、今日よりも結果としての米価がきわめて高く出るような算定方式となっております。あるいは算定方式の要素の取り方となっております。先ほど工藤先生の御質問にもお答えしましたが、今日の要素をそれに当てはめて引き直して計算をいたしますというと、六十キログラム当たり一万七千六円という価格になります。そういう四十二年方式に戻して算定するつもりはないかということでございますが、全体としての需給事情をはじめとする経済情勢生産費ももちろんでございますが、そのほかもろもろの総合的な観点からしますと、今日四十二年方式をとることは妥当でないと考えております。
  60. 塚田大願

    ○塚田大願君 四十二年方式をとるのは妥当でないとおっしゃるのは、要するに食糧事情、米の生産事情が変わって、先ほどから農林省がおっしゃっているように過剰傾向にあると。かつては不足ぎみだったからそういう方式をとったけれども、いまはその必要はないんだと、こういうことだと思いますが、ところが、それならば、先ほどから私総務部長のその意見を聞きながら、ここにも一つ矛盾を感じたんですがね。これは、倉石農林大臣が七月一日に発表されたことなんですが、これからは米を増産するんだと、こういう方針を堂々とお出しになっておるんですね。七月一日ですよ。ついこの間です。この基本方針をお出しになったのは、要するに世界的な食糧不足が出てきておる、しかも米価は国際的には非常に高騰してきておる。で、政府の買い入れ価格とほぼ似たところにきておる。特にタイ国などの米が非常に高騰しておる。そういう環境の変化があるから、これから米は増産に転換をしていくんだと、こうおっしゃっているんですがね。そうしますと、事務当局農林大臣意見というものは、このものの見方というものはまるで逆になっておるんですが、これはどういうことですか。
  61. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 農林大臣が発表したとおっしゃっておられるわけでございますが、私ども、そういうようなことを公式に発表したというようなことは承知いたしておりません。ただ、米の生産について今後どうするかということについては、確かにいろいろ議論のあるところでございます。世界的な今後の需給事情を考えて、世界的な規模で——これは何も米だけではございませんが、穀物全体としての備蓄をどういうふうに考えていくべきか、その場合米は世界的な観点から日本としてどういうふうに扱っていくべきかというような議論もあります。さらに援助とか、国際協力というような面から、米を何か活用する方途は考えられないか。日本が過剰生産といいますか、潜在的にそういう能力を持っているならば、それは活用することは考えられないか、というようなことで、いろいろ議論の行なわれていることは事実でございます。これは何も農林省というよりは、各方面でそういう論議があります。そういったことの一つが、そういう形であるいは新聞記事で取り上げられたのかと思いますが、農林省として、特に大臣がそういうことを発言したということは私どもは承知いたしておりません。
  62. 塚田大願

    ○塚田大願君 どうもきょうは大臣がおられないから、知らぬ存ぜぬとおっしゃるのだけれども、こうやって新聞に堂々と一面のトップに出ておるような記事でありますから、(「選挙用だ、それは」と呼ぶ者あり)選挙用ということもあるでしょうけれども、それにしても、もしこういうことになったら、まことにますますもって農民は農政に対する不信感を強めていくだろうと思うのですね、米価を含めまして。問題は、私はやっぱりいま一番おそるべきは、こういう農民の不信感だ、こういうふうに考えておるわけですが、それにしても、いまの、ここで発表されました倉石農林大臣の発表なるものを見ましても、これはやっぱりそれなりの一つの筋が通っているわけで、いままでは、国際的な米価と非常に政府買い入れ価格の差があって輸出もできないというふうなことでしたのですけれども、こういうふうに国際情勢が大きく変わってきておるのですから、しかも日本は米どころ、米の生産国でありますから、そういう有利な条件をどんどん生かして、もっと米をつくっていくということは決して荒唐無稽な考えではないと考えるわけです。ですから、これはひとつ農林省事務当局としても、今度の米価決定するに際して、やはりこういう国際的な政治情勢というものも当然お考えになってきめていただかなければ、私は農民の皆さんを納得させることはできないだろうと、こういうふうに考えるのですが、その点、ひとつ政務次官もいらっしゃるので、きょうは大臣にかわって、今後の農政についてひとつ所見を聞かしていただきたいと思うのです。
  63. 山本茂一郎

    説明員山本茂一郎君) お答えをいたします。  ただいまの問題でございますが、大臣がおっしゃられましたことのほんとうの趣旨はどこにあったかということも私は存じませんし、またその事実も存じません。しかし食糧問題というものが世界的に見て一つの大きな問題になっておるという、これは現実の世界の情勢だと思うわけであります。そういう点を考えますというと、また大臣がおっしゃられましたような趣旨一つ考え方であると思うわけであります。ただ、私ども農林省としてやっております事務的の問題といたしましては、現実の問題を前提としてやっておるわけでございまして、そういう意味におきまして、先ほどからここにおいて御答弁申し上げましたようなことは私は正しい意見であると、こう考えておりますが、先ほど言いましたように、広い意味におきましては、この大臣の御趣旨というものは、私どもは頭に置いてまた考えなきゃならぬ面があるのではなかろうかと、こう考えておるわけでございます。
  64. 塚田大願

    ○塚田大願君 いまお答えがございました大臣の意見も考えなければならないのではないかという御趣旨でございますが、私は、この際それを、この米価諮問に際してひとつ考えていただく必要があるんじゃないか。きわめて具体的な問題として提起申し上げたわけでありまして、この点はこれ以上論議しても具体化はここではしないと思いますので、ひとつ御検討願いたいと思うのです。  次に、今度は消費者米価の問題でお聞きしたいと思うのです。これは端的にお聞きしますけれども、この諮問案を見ますと、先ほども論議されましたが、ここには数字も何もないわけでありまして、ただ一つ、留意すべき事項について意見を求めるというふうな程度でありますが、端的にお聞きいたしまして、要するに、消費者米価は、もちろん十月からの米価値上げがきまっておりますが、それに上積みして米価を引き上げるおつもりがあるのかどうか、この辺ひとつお答え願いたいと思うんです。
  65. 杉山克己

    説明員杉山克己君) いま、先生御自身が質問の中で申されましたように、いままで延期されておりますところの、この十月から予定されている政府売り渡し価格の引き上げ、これは予定どおり実行いたすということは、これは私どもそのように考えておるわけでございます。ただ、それに上積みして改定するかどうか、特に今回の生産者価格の引き上げとの関連においてどう考えるかということになりますと、種々御論議のあるところであろうかと思います。政府としては、現在の段階では、そのようなことについてまだ上積みするともしないとも方針を確定いたしておりません。したがいまして、今回の米価審議会におきます種々の御論議を参考にいたしまして、私どもの考えを今後きめるようにしてまいりたいと思っております。
  66. 塚田大願

    ○塚田大願君 とにかく、この米価の、消費者米価を値上げするというのは、食管法の精神からいって、たてまえからいって、これは間違っていると私は思うんですが、政府は、しばしば食管会計が赤字なんだと、今度もこれだけの米価を上げれば一兆円に近い赤字になるんだと、やむを得ないんだと、こういう説明を繰り返しておられるんですが、はたしてそういう考え方が、この食管法という本来の精神に照らして、やはり正しいというふうにお考えになっているのかどうか。私ども、どうも赤字だ赤字だといって、まあいわば国民を脅迫するような言い方をして、そしてこの食管法をなしくずしにしていく、こういう考え方はやっぱり非常に間違っていると思うんですけれども、その点はどうでしょうか。
  67. 杉山克己

    説明員杉山克己君) 確かに食管会計の赤字の問題、これは非常に大きな問題でございます。しかし、財政当局と異なりまして、私どもはそれは食糧管理の仕事をやっている担当の責任官庁でございます。その観点からいたしますと、もちろん赤字の問題を忘れることはできませんが、それ以前に、物の価格のあり方、流通管理、流通規制、およそ食糧を全体として管理する場合、それがいかなる価格体系になるかということを先に考える必要があります。その点からいたしまして、米が消費者の手に安く届くということは、これは必要なことでございましょうが、安くというならどこまで安くすべきか、どの程度まで政府価格として負担すべきであるかということが議論になるわけでございます。  その場合いろいろ御論議はありましょうが、先ほど来お答えしておりますように、いまの段階で私どもは、何も赤字を全部解消したいとかなんとかということを言っているのではなくて、価格として逆流をもたらすような、そういう不自然なものは解消すべきであると、むしろ財政負担の問題よりも価格観点から、価格自体の観点から消費者米価の問題を考えているわけでございます。  それは確かに食管法規定は、「消費者家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」とありまして、消費者家計のことを忘れるわけにはまいりませんが、ただ安ければ幾らでもいいと、およそ無原則で価格水準がきめられるというものではないと思います。その場合、どこにめどを置いて、よりどころを置いて価格をきめるかということを考えます場合、私どもは現在の消費者価格、したがいまして、そのもとになる政府売り渡し価格は、これは低く過ぎるというふうに考えております。
  68. 塚田大願

    ○塚田大願君 その価格体系という観点から論議が行なわれているんですが、なるほど一つの政策的な問題として価格体系の問題もございます。ございますが、この米の場合というのは、私は単に一般的な価格体系論で律すべきものではない。いわば国民の主食であります。エネルギーの源泉でありますし、こういうものをただ一般論として論ずるということは、私は非常にそれは政治的に間違っていると思うんです。そればトイレットペーパーであるとか、洗剤であるとか、こういったものをどうするかということはあるかもしれませんけれども、少なくとも事、主食に関する限り、私はそういう一般論ではいかぬと。やはりこの問題は、国民の食糧をどう確保するか、食糧の自給をどうするかという、やはり大所高所に立った、いわば国家百年の大計の上に立った論議でなければいけないんではないかと、こういう観点で私どもは考えているわけですが、どうもその辺の認識論が私は違うように思うんです。事務当局としてはわからないことはありません。しかしやはり、政府ということになれば、私はそういう考え方ではいけないと思うわけです。で、問題は、国民の主食をどう確保するか、日本の農政を今後どのように進めでいくか、この観点からやはり考える必要があると思うんですね。そこでその問題が、いまのところ、とにかく米だけが価格が保障されておる。しかしその他の農作物は全くされていない。米以外にはもう食っていけないということで、やはりこの米価の問題というのは非常に深刻な問題になってきているわけです。そこで私は、やはり政策的には、単に価格体系論ではなくて、やはり農作物の、農産物の価格保障政策というものをここであらためて考える必要があると。米以外の主要な農作物、これで十分生活ができると、出かせぎしなくても済むと、こういうふうにならなければ、本来農政としての立場というものは失ってしまうだろうと思うんです。  そこで、もう私の時間もきましたが、最後に、政策的な観点から見まして、私ども政策を選挙のときにも出しましたけれども、少なくとも米以外の主要な農作物、たとえば小麦、大豆、カンショ、牛肉、豚肉あるいは果樹など、大体三十一品目の生産費などを調べてみまして、こういう作物に対して米並みの労働報酬を加えたらどのくらいの財源が必要であるかということを試算してみましたら、何と皆さん、この結果が四千七十九億円という程度で済むという試算が出ましたが、この四千七十九億程度のものでしたら、これはまあまず今日の一般会計の規模からいいましても、三%ぐらいにしか当たらないんですね。こういう程度で日本の農業というものが大きく発展していく道を見出せるとすれば、私はたいへん安いもんではないかと。こういう問題をやはり政府としては政策的にはっきり打ち出していただかなければ、ただ米価を押えることだけできゅうきゅうとしているような農政では、大体食糧の自給なんというようなことを言うことすらおこがましいということに私はなりかねないと思うんですが、この価格保障制度ですね、これを政府としては今後おやりになるのかどうか、この辺はしっかりひとつ答弁を願いたいと思うんですが、一つのいわば分岐点といいますか、これからの日本の農業が発展するかどうかという分かれ道になるようなやはり政策問題だと思うんで、この辺のお答えをひとつお聞きしたいと思うんです。
  69. 山本茂一郎

    説明員山本茂一郎君) ただいまお述べになりました事項につきましては、私、この三十一品目といいますか、内容そのほかを存じないものでございますから何とも申し上げかねる問題ではございますが、この問題については私どもは研究をさしていただきたい、こう考えておるわけであります。
  70. 高橋雄之助

    委員長代理高橋雄之助君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  これにて農林水産委員打合会を終わります。    午後零時五十一分散会