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1974-04-25 第72回国会 参議院 農林水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十五日(木曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員異動  四月二十四日     辞任         補欠選任      亀井 善彰君     平泉  渉君  四月二十五日     辞任         補欠選任      高橋雄之助君     若林 正武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         初村滝一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高橋雄之助君                 足鹿  覺君                 鶴園 哲夫君     委 員                久次米健太郎君                 田口長治郎君                 棚辺 四郎君                 温水 三郎君                 平泉  渉君                 堀本 宜実君                 神沢  浄君                 工藤 良平君                 沢田  実君                 塚田 大願君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   山本茂一郎君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        林野庁長官    福田 省一君        林野庁林政部長  平松甲子雄君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        自治省行政局公        務員部公務員第        一課長      宮尾  盤君        日本国有鉄道施        設局長      篠原 良男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農用地開発公団法案内閣提出衆議院送付) ○保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十四日亀井善彰君が委員辞任され、その補欠として平泉渉君が選任されました。     —————————————
  3. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 農用地開発公団法議題といたします。本案に対する質疑は、すでに終局しております。  塚田君から委員長手元修正案提出されております。この際、本修正案議題といたします。まず、塚田君から修正案趣旨説明を願います。塚田君。
  4. 塚田大願

    塚田大願君 私は、日本共産党を代表して、ただいま審議中の内閣提出にかかる農用地開発公団法案に対する修正案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  案文は、お手元にお配りしておりますので、御一読をお願いすることといたしまして、私の朗読は省略さしていただきます。今日、食糧を第二の石油にするな、と言われているように、これまで政府が推し進めてきた大企業優先高度経済成長政策のもとで、農業の破壊、農家経営危機が生み出され、食糧自給率の急速な低下をもたらしています。とりわけ、畜産は、この一年間に約二倍という、飼料大幅値上がりによって深刻な危機におちいっています。  わが党は、今日の畜産をはじめとする農業危機を打開するためには、まず何よりも、真に採算のとれる農畜産物価格保障制度を確立し、農家経営生活を安定させる必要があると考えます。また、飼料をはじめとする農業用資材について、大企業の不当なもうけを押え、農民に安く、安定した供給を保障することです。同時に、農産物海外依存政策をやめ、国内で、食糧自給体制を確立するためには、農業生産の基礎である農用地積極的拡大は不可欠の課題であります。  農用地積極的拡大という点では、わが党はすでに、大企業大山林所有者所有地のうち、農用適地を優先的に確保し、国費による農用地開発基盤整備計画的に実施する第二次土地改革を提案しております。その意味では、本法案未墾地低利用地農用地開発を促進するという趣旨については、その意義を積極的に評価するものであります。しかし、この公団事業については、幾つかの問題点指摘せざるを得ません。  その一つは、この公団対象とする事業については、拠点開発ということで、集中的に資金を投ずるが、他の地域については、農民要求があっても、事実上軽視され、地域的な選別政策を進める結果になるのではないかということであります。  さらに、この公団事業濃密生産団地をつくるとして、農民要求地域の実情に沿わない規模拡大を押しつけ、農民に多大の負担を背負わせ、しかも、現在の日本農業をささえている大多数の中小農民をこの事業から排除して、一部の資本家的経営を育成することになるならば、日本農畜産業の全体的発展にとっては、むしろ大きなマイナスとならざるを得ません。  日本共産党は、以上の弊をなくし、本法案に基づく公団事業が、真に日本農畜産業の発展に寄与し、農用地拡大を望むすべての農民が安心して参加することができるようにするため、最低限の条件として、当該農民意向を十分に反映できるよう、制度上も明確にし、下からの民主的開発を保障するため修正案を提案するものであります。  以下、修正案概要を御説明申し上げます。  第一に、都道府県が申し出をする際に、この事業に参加する予定の農民をはじめ、地域農民の発意を十分くみ取るようにするための措置であります。  第二に、公団計画を作成するにあたって、計画の内容について、当該農民意向が十分反映されるようにするための措置であります。  以上が本修正案概要であります。何とぞ委員各位の御賛同を賜わりますようお願い申し上げます。
  5. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論を行ないます。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより農用地開発公団法案採決を行ないます。  まず、塚田提出修正案を問題に供します。  塚田提出修正案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  6. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 挙手少数と認めます。よって、塚田提出修正案は否決されました。  それでは次に、原案全部を問題に供します。  本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  7. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  ただいま可決されました農用地開発公団法案に対する附帯決議案が先ほどの理事会においてまとまっておりますので、便宜私から提案いたします。案文を朗読いたします。    農用地開発公団法案に対する附帯決議(案)   政府は、最近における世界的食料需給ひつ迫等に対処して、食料自給体制の確立のための諸施策を策定し、併せて乱開発を防止し国土有効利用を図るため、農地法等に基づく転用規制を厳正に実施して優良農地確保に万全を期する一方、未利用地等を積極的に農用地に造成するとともに、本法の施行に当っては、左記事項の実現に遺憾なきを期すべきである。         記  一、公団事業用地確保するため、農地保有合理化法人等先行取得及び資金確保措置を推進し、林野開発規制草地利用権設定等制度の活用を図るとともに、入会権等権利関係の円滑な調整に努めること。  二、公団事業実施に当っては、その効果を十分発揮させるため、できるだけ工期を短縮するよう措置すること。  三、公団事業の採択は、地域に応じた弾力的運用を行うとともに、営農類型の策定に当っては、事業対象地域の特性に応じ、事業参加資格者等地元意向を十分反映して画一的になることのないよう措置すること。  四、各地域における農家経営の安定を図る見地から、公団事業国庫補助率財政資金貸付条件等につき今後とも改善に努めること。  五、公団事業が未利用低位利用地域対象としていることにかんがみ、すみやかに生活及び生産・流通に必要な道路網等公共用施設整備に努めること。  六、濃密生産団地がその本来の機能を十分発揮するよう事業完了後の施設維持管理及び営農に関し、十分な指導、助成等の必要な措置検討すること。  七、農地開発機械公団から引き継がれる公団職員の処遇については、すみやかにその給与が他の政府関係機関と均衡するよう措置するとともに、定員外職員定員化その他労働条件改善等に努めること。   右決議する。  以上であります。  それでは、本附帯決議案採決を行ないます。  本附帯決議案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  8. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本決議案は、全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣
  9. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重して善処してまいる所存でございます。
  10. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  12. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案趣旨説明は、前回聴取いたしておりますので、これより質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
  13. 工藤良平

    工藤良平君 先日、大臣並びに福田長官から、今回のこの法案延長に対する御説明がございましたが、私は、少しその問題につきまして基本的に二、三の問題について議論をしてみたいと思います。すでに保安林制度問題検討会によりまして、これらの問題についてかなり前進的な提言がなされておるようでありますが、私はこのような観点から二、三まずお聞きをしてまいりたいと思います。  保安林制度ができましてからすでに二十年が経過をいたしまして、その有効性とさらに必要性に基づいて延長されるということになるわけでございますが、私は、この延長される趣旨については十分わかるのでありますが、でき得るならばもっとやはり補強すべきではないかという実は考え方を持っているわけであります。特に、この中でも指摘をされておりますように、都市近郊林に対する考え方というものはかなり強く出されておるようであります。  私は、いま麹町の宿舎に住んでおりますけれども、ことしになって、私は非常にさびしさを感じているわけですが、それはなぜかといいますと、いままで朝早くからキジが、私の隣では鳴いていたわけであります。東京のどまん中で、宿舎の隣でキジが鳴くという、たいへん珍しい傾向がありました。非常に楽しみにしておったんですが、ことしは全然それが声がなくなったわけですね。近ごろ行ってみますと、参議院の宿舎とそれから衆議院の隣に職員宿舎がありますけれども、その敷地の中は、そのまま木が温存されておりますけれども、一歩その外は完全に木がなくなってしまいました。ですから、私は、今回のこの延長にあたって、一体都市サイドにおける緑の問題をどのような形でわれわれは理解をしていったらいいのか。基本的に言いますと、現在のこの新都市計画法にしても、全く——緑ということは、ときどきは表現上は出てきますけれども、緑に対する感覚がない。セメントを積み上げていけばいいというような、そういう積み木式都市計画になっているような気がして、どうも私はしようがないわけであります。むしろ、私は、この保安林の問題を検討するにあたって、もう少し、やはり、生態学的にものをとらえるという、基本的な観点からこの問題を取り上げていく必要があるんではないか。このような気がいたしますが、ひとつ、根本的に、将来にわたって、都市サイドにおける都市林の問題についても、やはり広い視野から問題を取り上げていくというような感覚がおありであるかどうか。どうも、山の奥のほうの森林については、目は向いているけれども、肝心のそこに目が向いていないような気がするのですけれども、その点、まず当初にお伺いしたいと思います。
  14. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 都立周辺には、大体森林の約一割に当たる二百万ヘクタール程度の森林がございまして、これらの森林は、従来から、木材生産のほかに、保健・休養の場の提供、それから大気汚染、騒音の防止、局所の災害防備等の、そういったような役割りを発揮しておるわけでありますが、近年の都市生活環境の悪化に伴いまして、ただいまお話しのありましたような、これらの環境保全機能への要請が特に強まっておると私どもも存じております。  このような情勢に対処いたしまして、都市緑化保全法等に基づく施策と相まちまして、林野行政といたしましても、都市及びその周辺森林や樹木の環境保全機能維持増大をはかるために、まず第一に、保健、それから風致の保存に資する林野保安林に指定いたしましたり、それから伐採及び都市形質変更規制を行なうなどをやっております。それからまた、国土保全機能保健機能をあわせて持つ保定林改良造成に対する助成を行なっております。四十九年度からは、新たに都道府県保健保安林を買い入れする場合、助成を行なうことといたしております。それからまた、四十八年度に設立いたしました財団法人日本緑化センター助成を行ないまして、ただいまお話しのような都市緑化の推進に資するなどの措置を講じておりますが、今後、さらに改正森林法に基づきまして、無秩序な開発行為規制をはかること。それからまた、保安林整備臨時措置法の一部改正によりまして、保健保安林指定整備を一そう積極的に推進してまいるつもりでございます。それからまた、造林事業に対する助成をさらに拡大することにいたしておりますし、そういうようなもろもろの施策を講ずることによりまして、ただいまお話しのございました同じ趣旨で、私どもといたしましても、林地保全のために、さらに力を入れてまいるつもりでございます。
  15. 工藤良平

    工藤良平君 さっき私が申し上げました検討会の、この提言の中の「保安林現状課題」というところの第(2)項に、特にそのことが強く指摘をされているわけであります。その中でも、特にヨーロッパ、「パリーのブローニュの森、ウィーンの森、フランクフルトの都市林」と、こういうふうな具体的な事例もあげながら、取り上げられているわけですが、私がさっき申し上げましたように、どうも、すべてにわたってそうですけれども、たとえば、環境保全問題等につきましては、西ドイツあたりでは、環境庁というのは農林省の所管になっているわけです。私は、やっぱり、そういう生態学的に見た場合に、森とか、林とか、そういうものはやはり農林省的な感覚で、生態学的にものをとらえていくということをやらないと、何か都市における林というものが、建設の付属的な、ごくささいな問題として取り上げられていくという感じを私は受けてならないんでありまして、今回の都市緑化保全法にいたしましても、これが、農林省サイドで、なぜ考えられていかないのかという点について、私はきわめて強い不満を持つのであります。そういう意味から、特にこの問題については、この環境保全という意味から考えてみましても、やはりもっと広い意味保安林というものを考えていいんじゃないか。こういうような気がいたしますから、この点については、この提言にありますようなことについても、今後一そう、ひとつ、大臣のところでも御検討を深めていただきたいという気がいたします。  さらにもう一つの問題は、この保安林ができた歴史的な経過というものは、二十八災のあの大水害、特にあの関西を襲いました大水害を契機にいたしまして、この法律ができたということが言われているわけであります。したがって、この治山治水水源涵養というのがそのあとでくっついてくるわけですけれども、出発というのは、治山治水というのが主目的でありました。で、その目的というのは、かなり達成されていると私は思います。  しかし、近ごろの災害の状態というものを見ますと、むしろ非常に平坦地における、下流地域における水害というのが圧倒的にふえてきている、こういうような状況があるのではないか。この点を、私、さらに詳細に検討してみると、現在の農地、いわゆる優良農地転用というものが、やはり下流地域における水害の非常に大きな要素をなしているように私は思います。日本農業関係の、ある科学者に言わせますと、水田の持つ湛水能力——湛水能力というものは、国土保全意味からいいましても、非常に重要なものがあると、こう言われているんです。一体日本の全水田に水をためた場合に、幾らの水がたまるかということを農林省はお考えになったことがございますか。林野庁保安林を考える、治山治水を考える場合に、さらに大きな意味からいって、いわゆる水田の持つ湛水能力というものは、日本国土を守り、災害を防止する非常に大きな力を持っているということですが、どれくらいの湛水能力があるか御存じでございますか。
  16. 福田省一

    政府委員福田省一君) 非常に、私、不勉強で申しわけございませんけれども湛水能力があることは承知いたしておりますが、どれくらいあるかということは、実は承知いたしておりません。
  17. 工藤良平

    工藤良平君 ある農業科学者に言わせますと、十数兆億トンの実は湛水能力があると言われておるんです。これは、やはり今日まで、雨の、風水害の非常に多い日本都市の中で、ささえてきたのは、ダムでもなければ、何でもないんだと。結局、水田というもの湛水能力というのが、非常に災害を防止し得た大きな力になっているんだと、こういうことが言われているわけです。その水田が、どんどん、どんどん壊廃していって、あるいは転用されていって、この湛水能力というのは非常に減少しているわけです。私は、こういう問題を総合的に考えてみて、保安林の持つ治山治水としての任務というものが、より大きく地域的にも拡大されていかなきゃならぬ、このような気がするわけです。そういう意味から、ただ単に、山に向かって、保安林だけを考えるんじゃなくて、やはり平坦地におけるそういう問題についても考える必要がある。  そこで、これは大臣にお伺いしますけれども、農振法ができたときに、私はこの問題を担当しまして、ずいぶん議論をしたわけです。けれでも、農振法というのは、新都市計画に基づいて農用地をいかに守るかということで、農林サイドから考えられた法律なんですけれども、残念ながら、農業振興地域、あるいは新都市計画法の中の調整区域の中におきましても、どんどん乱開発が行なわれてきている。これはもちろん知事権限の中で、一定面積以上については開発許可してもよろしいということになっているものですから、それを最大限利用して開発をした。そのために全く緑が都市近郊でなくなってしまっている、というこういう現状を、どのように一体私たちはとらえたらいいのか、現実に新都市計画法ができ、そしてまた、農振法ができて、一定規模以上の開発許可を許すというようなことから、相当な面積開発のためにつぶされていったと思うんですけれども、その点について、進林省としてはどのような把握をしていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。   〔委員長退席理事高橋雄之助君着席
  18. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) お話しのように、都市計画法ができましたときに、御存じのように、市街化区域調整区域を分けまして、市街化区域は、将来、それぞれの都市において、どの地域までは市街化計画を立てると、こういうようなことでございましたので、私どもといたしましては、そういう傾向はまた、やむを得ないものであろうと。しかし、そこで、さりとて、その反面においては、一定量農産物確保する重要な任務がわれわれのほうにあるので、そこで区域内に入りましたものは、私のほうからの許可を必要としないことにするが、調整区域以外は、きびしく、ひとつ農地保全のことに協力してもらいたいと、こういうことになりまして、調整区域をつくったわけであります。  そうしてまた、いまお話しの、農振法につきましては、将来の農産物計画に基づいて、これだけは絶対に必要なものであると、確保していかなきゃならぬということで——   〔理事高橋雄之助君退席委員長着席〕 農振法をかけましたのは、当時はよく、農業領土宣言というふうなことをわれわれのほうでも申したんでありますが、その実施から今日までの経過を見ますというと、やはり私どもはもう少し、優良農地確保するということについて、補うべき問題があるのではないかというふうなことを考えまして、今回、農振法の改正案を提案いたしまして、御審議を願うことにいたしておるわけであります。が、いま私は、あの法律ができまして以来、どういうふうになって推移をしてきたかということを、資料を持っておりませんけれども、私どもといたしましては、農地及び森林につきましては、先ほど来お話しのありましたような、多角的な重要な意味を持っておりますので、これを乱開発することにつきましては困るということで、前に御審議を願いました森林法及び組合法等につきましても、そういう趣旨でやっておりますし、農振法の改正につきましても、同じような趣旨で農村に優良農地確保する目的——これ、なかなか、実際問題としては、口じゃやさしいんですけれども現実推移を見ておりますと、よほど重大な決意をいたしまして対処していかないといけないと思います。先ほど、ヨーロッパ諸国お話しどもありましたけれども、私はやっぱり日本人全体が、そういうことについて、もう一ぺん目を開いて見ていただくような運動を展開していくべきではないかと、そういうふうな感じを持っております。
  19. 工藤良平

    工藤良平君 私は当時、やはりこの乱開発を予測をいたしまして、かなりこの問題について突っ込んだ議論をした記憶があるわけであります。私どもが、この調整区域なり、あるいは農地振興地域のこの線引きの中で、きびしいやはり統制を加えながら、農用地転用というものを、いかに押えていくかということに最大限の努力をすべきだということで、議論をしてきたわけですけれども、非常に、小さな転用については、確かにきびしい規制をしております。農家の皆さんが一つ施設をつくるにいたしましても、非常にきびしくて、なかなかつくれないというような、そのような極端な事例もあるわけですけれども、一方では、たしか、あれは十五ヘクタールでしたか、十五ヘクタール以上の開発については、知事権限で、農林大臣許可を得て開発をしてよろしいと、こういうことで、そういう意味開発というのは、非常に、一方で進んでいるわけですね。こういうことがやはり緑をなくし、いわゆる都市近郊における災害というものを非常に大きなものにしていっている。私は、そういうことについて非常に大きな疑問を持つわけです。  したがって、さっき申し上げましたヨーロッパのような都市林というものに対する考え方というものも、農林省的な林野一つの分野として考えてもいいんじゃないかという実は気がするわけですね。そういうことを考えていかないと、私はこの都市サイドで、とにかく家をつくるということに終始してしまって、緑がなくなってしまうということになってくるわけなんで、そういう点を非常に私は心配するわけでありますから、ぜひひとつ都市林に対する考え方というものをある程度明らかにすべきではないか。たとえば、やむを得ず十五ヘクタールの許可をする、こういうことが起こった場合に、そのうちの二割なら二割、三ヘクタールはこれは緑地として絶対に残すか、あるいは緑地をその中の部分として組み入れるということを義務づけるとか、私は、ある程度そういうことをやっていかなければ、全く緑がなくなって、どんなに奥地で保安林をつくってみても、これは追っつかない計算になってくるわけです。そういう心配がありますので、こういう点についての一つ基本的な、いま直ちにはむずかしいでしょうけれども、そういうことを入れながら、たとえば今回出ている都市緑化に対する法案等についても、きびしいやはり注文をつけていかないと、法律はできたけれども、適当にそこらの木は切ってしまうということが起こってくるんじゃないかという感じがするんです。  ボンで、日本の大使館の公館をつくるのに二年もかかった。何でかかったんだと言ったら、土地がないということと、土地は見つけたけれども、庭の木一本切ることができない。そういうことのために二年もかかった、という事例——私は、それくらいあってもいいと思うんですね。それくらいやらなければ、緑は残らないと思うんです。そういうサイドからもの考え方、こういうことを私はやはり基本に据えるべきだと思います。その点についてもう一ぺんひとつ大臣のお考えを聞いておきたいと思います、決意のほどを。
  20. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほど申し上げましたように、農林省におきましては、いま農振法の改正案を、御審議願うものを出しておりますその精神も、やはり乱開発を極力防止して、大事な農地を守る、こういう趣旨が貫かれておる。今回森林法につきましても、森林関係法でいろいろな御審議を願っておりますのも、やはり従来御説明申し上げておりますような趣旨で、ただいま工藤さんおっしゃいましたのとわれわれの考え方とは全く同じでございまして、そういう趣旨において、最善を尽くしてわれわれの任務を遂行いたしたい、さらに将来とも最大の努力を続けてまいりたい、このように思っております。
  21. 工藤良平

    工藤良平君 次の問題は、この森林の持つ役割りというもの。これは非常に大きな役割りをあらゆる面で持っている。したがって、そういう面から、いわゆる公益性からいたしましても、負担の問題ですね。指定をされる——もちろん国有林とか、公有林であればさほどでもないわけですけれども、民有林もこの中に含まれていくわけでありますから。そういたしますと、やはりその公益性という面については、私ども十分わかるわけでありますけれども、だからといって、農山村のみにその負担を課するということについては非常に問題がある。したがって、この公益性からいたしましても、特にこの受益する地域というものは、森林を持っていない地域のほうが、その受益する効果というのは非常に大きいわけでありますから、それに対する一体負担についてどう考えたらいいのか。たとえば一定の見積もりをして、保安林に指定されたものについては、金利程度の負担をなさるようでありますけれども、それにつきましても非常に安い見積もりのようでありますけれども、もっともっとやはりそういう面については、ある程度の高い代価を支払って、そしてこの保安林としての機能と同時に、それをきちんと確保していくということが必要ではないかと私は思います。その点に対しても、この提言の中にもはっきりと提起されておるわけでありますが、その点に対する御見解を伺いたいと思います。
  22. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林の効果が、大体重要な保安林、特に水源涵養保安林であるとかいうふうなものにつきましては、下流の人たちが受益するのは先生御指摘のとおり当然でございます。従来は、保安林を指定いたしました場合に、持っている人たちに対しては、たとえば造林等の助成措置であるとか、あるいは融資についての措置であるとか、あるいはまた税制上に有利な措置をとってきておったのでありますが、とてもそれだけでは足らぬじゃないか、特に、水の問題につきましては、きわめてはっきりとその受益の効果というものが下流の人たちにとっては明らかにあるわけでございます。ですけれども、従来、森林法の中にもそういったことができる制度はございますけれども、とってなかった理由は、やはりその範囲であるとか、その程度であるとかということが、はっきりしなかったのが問題だったのでございます。  そこで、昭和四十六年から三カ年計画をもちましてこの森林の持っております公益的な機能の計量化調査ということをいたしまして、先般その中間報告をしたのでございます。その一年間の効果というのは、金に換算いたしますと十二兆八千億ありますというのを一度調査しております。特に、その点につきまして、さらに四十九年度は、具体的にその負担のやり方あるいは度合いをきめるために、利根川を中心といたしまして現在具体的な調査をいたしております。それをもとにしまして、下流の受益者からどの程度のどういう範囲の負担をし、それを山に還元したらいいかということを、できるだけ早く確立したいと思っておるわけでございます。  実例といたしましては、先生御承知かと思いますけれども、木曾川の三川につきまして、すでに岐阜県の造林事業に対して、その下流の愛知県とか、そういった地帯から造林費を還元しております。県あるいは電力会社等はその負担をしておるわけでございます。もう一つの例は、滋賀県の琵琶湖につきまして、その下流の受益する大阪府であるとか、こういった関係の人たちから琵琶湖にその造林費を還元しておるという実例もあるのでございます。そこでいま申し上げましたこの還元の方法につきましては、利根川の例をいま中心にしてやっておりますけれども、できるだけ早期にその方法なりにつきまして制度を確立したい、こう思っております。
  23. 工藤良平

    工藤良平君 これ、私ちょっと勉強不足で、そこまで検討しなかったわけですけれども、その場合に、林野の特別会計の中でまかなうわけでございますか、一般会計からの大幅な予算措置によってそれらの問題がやられているのかどうか。私は、その予算的な問題で全体的な綿密な計画ができないとするならば、これは非常に大きな問題であって、私は、国総法案の詳細については検討はしておりませんけれども、私は、日本農業の中で一番、これは大臣聞いていただきたいと思うのですけれども、やっぱり欠陥は何かというと、全体的ないまの日本国土における現状、どういう山の状態があり、どういう農地の状態があり、どういう耕地があるかということですね。そういう綿密なやはり計画の上にこれからのこの森林はどうだ、あるいは治山治水のための措置はどうだ、あるいは農用地としてこれは必要だとか、畜産開発のためのまだ未開発地域はこれこれある、こういうような綿密な調査というものはきわめて必要になってくる。そこに私は、非常に大きな欠陥があるような気がするのですけれども、いまお話のように、利根川なりあるいは木曾川を中心にした流域の調査というもの林野特別会計の中でやられているのか。それともかなりの一般会計からの大幅な予算措置によって、それが公益的な公共性のあるものとして措置されているのかどうか、その点についてちょっとお伺いしておきたいと思います。
  24. 福田省一

    政府委員福田省一君) 利根川の前に、いま申し上げました木曾三川それと琵琶湖の例は、現にそういった下流の県なり電力会社がお金を出しまして、源流地域にこれを投資しているわけでございます。返しているわけでございます。それで造林事業、治山事業実施しているわけでございます。これが一つの例でございます。そういうふうな例をもっと全国的にふえんしていかなきゃならぬという考えでございまして、これは別に国有林と限らず、民有林につきましても、全国の森林につきまして、やはり下流の受益される人たち、たとえば電力関係であるとか、あるいは水道の関係であるとか、農業用水とか、いろいろございましょう。そういった人たちがやはりそういった水源地帯の造林なり治水事業費なりというものを負担していただくということを申し上げているわけです。そのやり方の具体的な事例調査を、基本をつくるための調査を利根川で四十九年度から実施しております。大ざっぱには、先ほど三カ年がかりで十二兆八千億という、効果がありますよというものを出した。あれでは不十分でございますので、具体的な基準をつくるための調査を利根川で四十九年度から実施しているということでございます。  なお、国有林の特別会計につきましては、特にそういう公益的な面の代表的な事例は治山事業でございます。国有林の事業はやはり木材生産以外にもそういった公益的な事業も当然含んでおるのでございまして、これは治山事業なんか最も代表的な例でございますから、これにつきましては、一般会計から特別会計に治山費の大部分を導入してもらっておるんでございます。しかし、同様な考えに立ちまして、治山事業以外の、たとえば造林事業であるとか、あるいは林道事業につきましても、そういった公益的な機能があるわけでございますので、そういった面についての導入をどうするかということも引き続いて検討中でございます。特別会計については、いま申し上げましたように、治山事業についてそういう制度が認められておるということでございます。
  25. 工藤良平

    工藤良平君 独立採算を非常に強く強制するあまりに、公共性の部分についておろそかになるということになると、先ほど冒頭にお話がありましたように、現在の森林の持つ役割り、こういうような新たな任務からいたしましても、非常に大きな問題があるわけで、この点については、現在の林野行政のもっと幅広い公共性というものが前面に出てくべきものなんであって、そういうことになると、おのずからこれは、ただ単に林野庁だけの問題ではなくて、全体的には日本全体のものでありますから、これは大臣の御努力によって相当大幅な、そういう公共性の部分を織り込んだやはり予算的な措置なりそういうものがはかられてしかるべきではないだろうか、このような気が私はするわけであります。そういう点で、特に、農山村にかなりの負担を負わせて、公共的なものについて、ある程度犠牲になっていただくということがあってはいけない。そういう措置については万全の対策をとる必要があるのではないかと、このように考えるわけでありますから、この点についてはぜひひとつ来年度予算からの問題について、大臣としても鋭意努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思うんです。  それから次に、保安林対策の具体的な問題としていま問題になっておりますのは——これはもう全体的に林野行政について言えることと思いますけれども、特に過疎化が進んでまいりまして、造林に対する人手不足、そういうことから、かなり総合的な山荒れというものが起こっているんではないかということが懸念をされまして、現実に私どもも、そういうことに打ち当たるわけでありますけれども、その点に対する具体的な対策というものがどのようにお立てになっているのか、その点をお聞きをしたいと思います。
  26. 福田省一

    政府委員福田省一君) 農山村の過疎化現象については、最近、非常に造林を中心として、特に労働力の不足ということが影響いたしますので、問題になっておるわけでございます。で、最近しかし、労働力の減少傾向について若干の変動がございます。と申し上げるのは、昭和三十八年ごろに林業労働力が国有林、民有林を通じまして、約三十五万人ぐらいございました。それが昭和四十六年が十七万人というふうに、半減したのでございます。ところが、四十八年から——四十七年の統計では、これが十七万から十八万ちょっととふえておりまして、四十八年度の統計ではこれは二十一万と、若干ふえておるのでございます。  内容を見ますというと、やはり減少した原因は、製炭に従事しておった人たちの減少が主でございます。——まあ若干ふえてまいりましたが、これで安心できるものではございません。内容を見ましても、専業化あるいは常雇い化という現象がございますので、そういう意味では、最近の都市からのUターン現象ということもございますし、私たちは若干心強くは思っているわけでございますけれども、やはりそういった地帯の労働力確保の対策といたしましては、やっぱり若い人たちの、Uターンされた人たちが、やはり喜んで山林の事業に従事できるような労働条件なり労働環境というもの改善していく必要があるというふうに思っておるのでございまして、そういう意味で、国有林のみならず、民有林の対策といたしましても、そういったような通年化あるいは労働環境をよくするためのいろいろな通勤あるいは職場の設備その他の対策をとっておるのでございます。さらに、それを積極的に実施してまいりたいと思っております。  特に、その造林の事業につきましては、最近、非常に、特に拡大造林——拡大造林と申しますと、御承知のとおりでございますが、昔の薪炭林のようなものを優良な造林地に変えていく作業でございますが、この拡大造林が非常に減っておるということも問題でございます。しかし、全体を通じまして、昭和三十八年ごろから昭和四十八年の間の十年間の経緯を見ますというと、森林面積そのものは一%増という統計が出ており、まあほとんど変わらない。それから蓄積が約一〇%増と、ふえております。それから造林地が非常に最近停滞しておりますけれども、全体としては二六%増でございます。まあそういうことでございますが、そういった山村地帯の労働力対策をさらに拡充しまして、その造林の停滞現象というものをさらにもっと促進するようにしてまいりたいと、こう思っておるところでございます。
  27. 工藤良平

    工藤良平君 いまお話しのように、この造林関係につきましてはかなりこの面積も増加をしておりますし、人口の問題、いわゆる就労人口につきましてもかなり挽回をしてきているというお話なんですけれども、もちろん、これは一時的に非常に農村から流出をして行った、出かせぎに行ったというような状態、しかも現在の非常な経済の変動の中で、やはり都市生活に耐え切れずに農村に帰ってくるという、Uターン現象というものが非常に起こっておることも私も十分承知をしているわけです。農業経営についても、都市のそういう経済の中でもまれて帰ってきた人たちの経営が、比較的安定し成長しているということも知っているわけであります。それと同時に、また、米の減反政策から、山林に対する関心というものが強まったし、一時的ではありましたけれども、非常に木材の価格が高騰していったというような、もろもろの条件が私は、そういう問題を引き起こしている現象だと思うんですね。ただしかし、これから先、それがまた経済の変動で大きく流出をしていくということになると、これはたいへんでありますし、何とかしてやはりいまここでこの林野労働力の定着というものをはかっていかなきゃならぬという気がするわけでありまして、そういう点からこれからの林野行政の非常に大きな役割りというものが必要であると思います。  そこで私は、そういう全体的な問題と同時に、これは一つの案でありますけれども、従来私どもが、やはり山を育てるということを、農村の一つの大きな私どもの心として、いわゆる農業に従事する者の心としてやってきたわけですね。それがやっぱりなくなって、だんだん薄れてきていたというような気がいたしますので——これは教育の部面に入り込んでしまいますけれども、やはり学校林なんというのは、もっともっとこれは農林省としても奨励していいんじゃないか。もちろん小学校については無理でしょうけれども、中学あたりからは特にそういう面、夏休みを利用してやるとかというようなことは、かなりやっていいんじゃないか。ただ、勉強勉強で、全くそういう自然を忘れた中で勉強にかりやられていく。農業高校なんかでも、何か普通高校化してしまっているような気が非常にするわけなんです。  私は、一昨年、北朝鮮に行きましたけれども、北朝鮮はどこに行っても、はげ山だと、こう聞いて行ったけれども、全くそれは逆であって、どこに行っても、一つの土地だって、はげ山というものは見当たらない。全山どこへ行っても、りっぱな松の緑におおわれている、という姿からしても、りっぱにそういうことを達成をしている。だれがやったのかと聞くと、これは全部学生の仕事だ、中学生以上の学生の仕事だと。山をつくるのは学生の仕事だということで、そういうときからやはり国土保全、緑というもの、自然というものに対する心を養うということは徹底していると。私、そういうことは、いまの変動の大きい世の中には非常に大切ではないかという気がするわけです。が、これらにつきましては、ただ単に農林省だけということにはいきませんでしょうけれども、やはり文部省あたりともかなり緊密な連絡をとりながら、そういう点をずっと入れていくということが非常に大切ではないだろうかという気がするんですが、そういう点についての御見解はどうでしょうか。
  28. 福田省一

    政府委員福田省一君) 森林の造成、特に緑化思想を基底にしていきませんと、究極的にはやはりなかなかむずかしいということは先生御指摘のとおりで、私も常々そう思っておるものでございます。で、学校の児童を中心に、小さいときからそういう教育をしていくということはまことに必要なことでございますので、一つの方法としまして、国有林の場を提供しまして、それで学校の児童があるいは生徒が、学生がそこに造林する場合の部分林の制度を実はつくっておるのでございます。小学校におきましては五年生以上の生徒百人につきまして約一町歩、中学校になったならば百人について二町歩とか、高等学校の場合は百人について三町歩というふうに、こういう一つの標準をつくりまして、分収歩合は比較的実はよくしまして国二、学校八というふうな基準でだいぶ部分林を設定いたしております。昭和四十六年の実績は三百三十五ヘクタールでございまして、小学校が九十三、中学校が五十六、高等学校四十二、これは個所でございますが、合計百九十一カ所というふうにやっております。これだけでは、実は十分とは思っておりませんが、そういうことで、現地に行って自分で苗木を植えて、そのあとを育てる、手入れをしてやる、かわいがってやるということで、子供のときからそういうことをやるのが必要だということで、そういうことをやっております。  それからもう一つ、この緑化事業の一環としまして、国土緑化の推進委員会というのがございまして、御承知のように毎年一度、天皇陛下のおいでを願って各県を順繰りに緑化事業をやっている。ことしは五月の十九日に岩手県で実施することになっておりまして、その際には、農林大臣にもおいでを願うことになっておりますが、この緑化推進委員会の行事のそういう全国植樹祭のほかに、各県単位の、最近は、そういったような植樹祭を盛んにやるようになってまいりまして、それについての助成もいたしております。その際に、学校の児童が、そういった緑化事業を行なう場合のいろいろな助成措置も講じております。また子供が生まれたときの誕生記念あるいは入学したときの入学記念、結婚したときの結婚記念、そういったような場合の植栽をする、植樹をする、緑化をする場合の補助制度も最近導入いたしております。そういうことを通じまして、小さい子供のうちからそういう緑化を実際に自分でやると、そして植えたあとをまたいろいろと世話をしていくというような考え方に立っての緑化思想の普及ということを、教育を中心にやっていくことをただいま拡充していきたいと、こう考えているところでございます。  なおまた、大学の演習林のようなものもございまして、国有林の場を提供して、いろいろと大学の演習林等設置する場合も、ございますけれども、これは文部省の所管として大学演習林でございますが、いま申し上げましたように、できるだけ小さいうちからそういった緑化思想を植えつけていくということに今後とも努力してまいりたいというふうに考えております。
  29. 工藤良平

    工藤良平君 いまお話によりますと若干でありますけれども、そういう制度は採用しているということで、話に聞きますと百九十何カ所ですね。これは私はやっぱり、もっともっとそれを拡大していって、農村部では日常ふだんにそういう自然に恵まれておりますから、接するということは非常にたやすいわけですから、夏休みの利用等によりまして、いわゆる農村の学校と都市の学校との交流によってそういうものがより大きく拡大をしていくということになっていくと——私は、ただ単に町部で大事にしなさい、大事にしなさいと言ってみても小さいときからのそういう教育というものが身についていくことが非常に大事ですし、そういうことによって私は全体的な発展というものが期待できるのではないかと思いますので、これはぜひ大臣ひとつ文部省ともう少し積極的にこういう問題を取り上げて、予算的な措置等につきましても、そういうことがやっぱり大々的に運動として起こされていく。ちゃちな形式的なことじゃなくて、もっとやっぱりほんとうに踏み込んだそういう対策というものが私はこの際必要ではないか、このように考えますので、ぜひひとつ——ただ単に労働力だけの問題じゃなくて、全体的なそういう自然を愛するというような意味からも、教育一辺倒の詰め込み主義から脱皮していくためにも非常にいい方向ではないかというふうに私は考えますので、この点についてはぜひ大臣にも積極的にこれを取り上げて、要求をより大きく拡大できるような措置をとっていただきたい、このように思うんですが……。
  30. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) たいへん大事なことでございますし、ただいま林野庁から御報告申し上げました精神は、私ども同じでありますが、教育という面からもたいへん大事なことでございますので、政府部内においても、私、担当者と十分相談をいたしましてそういう方向に持ってまいりたいと思います。
  31. 工藤良平

    工藤良平君 次に、保安林の解除の問題でありますが、近ごろ、保安林が非常に拡大をしていっているわけでありますけれども、一方におきましてはやはり保安林の解除というものが行なわれております。もちろんそれは公共的なものもあるし、あるいはいろいろと私的なこともあるわけでありますけれども、私は、解除というものは全くゼロでいきなさいということではありませんし、ケース・バイ・ケースによってそのつどやらなければならぬと思いますが、ただ、解除と同時に、それにやはりかわるべき、ちゃんとした指定というものが、次の段階では必要になってくるだろうと思うので、解除に対する基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  32. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林の解除につきましては、二つの場合がございまして、森林法二十六条に規定しておるんでございますけれども保安林の受益対象が消滅した、なくなったとき、それからもう一つ保安林そのものが何らかの、たとえば天災地変等で消滅したとき、それからもう一つは、代替施設ができて保安林機能にかわるものができたとき、こういう場合には保安林を解除しなければならないものとなっております。もう一つは公益上の理由が生じたときには保安林を解除することができるというふうに法律にはきめておるのでございますけれども保安林を解除いたします場合には、保安林の重要性というものを考えまして、これを第一級から第三級まで区分してございます。できるだけ重要な保安林はこれは解除しないということにいたしておりますので、解除する場合においても、ほかのあまり重要でないような保安林にそれを変えてもらう。原則としては重要な保安林は解除しない。また、解除する場合におきましても面積は必要最小限度にする。そして保安林機能にかわる施設を必ずそこに実施するというふうにしておりまして、できるだけこれを解除することを消極的にいたしまして防いでおるつもりでございます。  ただ、比較的件数が多いのは、道路をつくったような場合とか——これは件数が一番多いのでございます。電線の塔をつくるとか、こういったようなことがございますけれども、できるだけ保安林は原則としては解除しないようにする。する場合には最小限度にして、しかも代替施設を行なっていく、こういうふうに指導をいたしております。
  33. 工藤良平

    工藤良平君 いま電線の問題が出ましたが、先日私どもは、静岡に調査に参りましたときに、その意見が出ておりまして——非常に美林が続いているわけですね。ところが高圧線が通っておりまして、高圧線の高さが低いために、かなり広範囲にわたって森林開発に非常に支障を来たすというような点が出ておりました。もちろん高圧線の下等については補償金等も払われておりますけれども、それ以上に、もう少し技術的に高圧線等の高さを高くするとかいたしまして、十分な配慮をすることによって、両立できる面もかなりの部分があるんではないかと、このような御意見を、私は先日、静岡でいただいたわけであります。で、ぜひこれらの点については、ただ単に、そういう点について解除したりあるいは補償金を幾らか取ってやればよろしいということではなくて、もっと大きな意味での私は対策というものが必要ではないのかということを痛感をいたしたわけです。  その点については、特に、これはどこの所管になりますか、相手はそれぞれの企業ですから通産になりますか、ぜひひとつ連絡をとっていただいて御検討いただけないものか、非常に強い要請が出ておりましたのでこの点をひとつ御検討をいただきたいと思うんですが。
  34. 福田省一

    政府委員福田省一君) 具体的な例でございますので、私のほうで、さっそく調査をいたしまして、関係の省、たぶん通産省ではなかろうかと思いますので、よくまた打ち合わせいたしたいと思います。
  35. 工藤良平

    工藤良平君 この点は特に、産業優先という意味から、当然電力の公共性というのもわかるんですけれども、お互いに、公共性を持つものでありますから、私はその点の調整というのをもっとはかって、技術的に可能なものであれば、それが両立できるような形というものが一番いいわけであります。もちろん補償をなくすということじゃない。補償をやると同時に、その山が保存できるならば、なおさらけっこうでありますから、そういう点で再検討すべきだと、こういう点も申し上げておきたいと思うんです。  それからもう一つは、せっかく保安林を指定をいたしまして、りっぱに育っておりますけれども——近ごろよく私は、私のところの現場でも見かけるんです。私も、しょっちゅう向こうに帰りまして、自分で運転してよく山なんかに入るんですが、近ごろ見かけることは、特に大分県の場合は、北九州あたりからトラックでもって、いわゆる花木が非常にいま盛んだものでありますから、そういう意味合いから、松とか森林の盗伐、盗掘、そういうものが非常にひんぱんに起こっているわけですね。私も何回か見かけたわけです。おかしいな、こんなところでこんなものを売ったのかというような、まだ七、八年から十年生ぐらいの松がどんどん掘り出されているわけですね。おかしいなと思ってあとで聞いてみると、どうもこれは売ったはずはないと。全部盗伐、盗掘ですね。もうひどいのがあります。もう山が全く姿が変わってしまったぐらいの盗掘が行なわれているわけです。やはりこの監視体制というものが、いまの陣容等におきましては——もちろん県なり林野庁なり、それぞれの市町村、自治体で協力をしてやってはおるようであります。近ごろ特にそれがクローズアップされてまいりましたから大きく出てきてはおりますけれども、まだまだその体制というものが私は問題だと思いますので、この方法について、ひとつ積極的に検討してみる必要があるんではないかと思いますが、その点の実情なりひとつ御検討の何かなさっていることがあればお聞かせをいただきたい。
  36. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま先生から御指摘ございましたように、確かに、道路ができましてから、森林地帯から、高山植物であるとか庭木等の盆栽等のいい材料になる木の盗採が多いわけでございます。できるだけ、国営の場合には、担当区その他の職員を巡視さしたりいたしまして見張りにつとめておるのでございますけれども、もう一つは、非常に山火事が多くなってきておることでございます。たばこの吸いがら——昔は農業のための焼き畑ですか、原野に火入れからの山火事が多かったんです。このごろはたばこ、たき火の原因のほうが多くなってきております。これは結局若い人たちが山に行ってたき火したり、たばこの吸いがらを捨てたりするところから発生するのでございまして、そういう盗採の問題、山火事の問題につきましては、特に国営の場合は、いま申し上げましたようなことで、予算措置を拡充してまいっておりますが、民有林の場合におきましても、やはりその必要があるというように痛感しておるところでございます。で、このいわゆる森林の保全管理の事業費としまして、民有林、国有林を通じまして四十八年度は一億七千三百万円ぐらいそういう経費を計上いたしております。四十九年度も二億五千四百万円の予算でこれを実施しておるのでございます。ではございますけれども、やはり取り締まりだけではなかなか徹底しないと思いますが、先ほど先生も御意見ございましたように、この辺もやはり教育の問題から出発しなければならぬとも私は思っているんでございますけれども、そういういわゆる保全管理につきましては、一応、予算措置はできるだけ今後拡充してまいりたいと思っております。
  37. 工藤良平

    工藤良平君 もっともっとたくさん御意見を聞きたいわけでありますけれども、この問題はいずれ……。この法案は、非常に大切な、どうしても残さなければならぬ法案でありますので、これ以上くどくど申し上げませんけれども、要するに、この法案が今後さらに十年間延長される。延長されるとするなら、私はもっともっとやはり充実をすべきではないか、補強すべきものは補強すべきではないか。こういうような気がするわけで、単純にただ期限だけを延ばしていいというものではないんではないか、むしろやっぱりもっと補強すべきではないか。それは森林法との関係の中でもちろん強化をされるべきところは強化をしていかなければならぬと思いますし、その関連の中で進められると思いますけれども、せっかくある法律でありますので私はやっぱりもっと補強していくべきではないかという見解に立つわけでありまして、そういう意味合いから、ぜひひとつこの法案の扱いについては、そういう点を十分に含めてひとつ皆さん方のほうでもやはりきびしい態度で臨んでいただく。そういうことによって、国土の保全あるいは水源の涵養さらには環境保全という非常に公益的な重要な任務というものを達成できるのではないかと、このような実は気がするわけでありまして、そういう点から、まだ必ずしも予算的な措置につきましても私は十分だとは思いませんし、あるいは地方自治体と国との関係等におきましても、もっともっとやはり緊密にすべきところは十分に緊密な連絡をとりながら、万全の態勢をとる必要があるんではないか、このような気がいたします。したがって、そういう点を十分に配慮していただきまして、この法の運用については、ひとつ全力をあげていただく、こういうことを特に私は強く要請をいたしまして——当初に申し上げましたように、町のほうの木の一本までもやはり監視の目がむしろ農林サイドで生態学的にとらえていくという、私はやっぱりそういう基調というものを据えるべきではないかということを痛切に感じますので、その点を強く私は主張いたしまして、この程度で終わりたいと思います。
  38. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  39. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) じゃ速記起こして。
  40. 神沢浄

    ○神沢浄君 いまの工藤委員の質問に関連して、私も保安林のいわゆる解除行政というものについてちょっと伺っておきたいと思うんですが、まあ法律はけっこうです。ただ問題は、その法律実施にあたっての実際の行政上の姿勢というようなものが伴わなければ法律は生きないということになってしまうのではないかと思うんです。  そこで、私は一事例をあげて、お尋ねをするわけなんですが、これは先般の森林法審議の際にも、私が、一つ問題点として提起したわけなんですけれども、私の県で、肉牛センターというのを今度、計画をしているわけです。四十九年度から実施に入っているというんですけれども、これはおそらく先ほど議決になりました農用地公団法の関連だろうと思われます。ところが、その地域というのは、ちょうど山梨県と長野県の県境に位置するんですけれども、小淵沢町、長坂町、大泉村というような、三町村にわたりまして、約三百二十ヘクタールくらいを用地に該当さしているわけです。ところが、その中には、相当部分の保安林が存在をするわけなんです。水源涵養あるいは災害防止というような、——ここに図面などもありますけれども。それで、この前、森林法審議の際にも、私は、一つの疑問点として提起したんですが、結局、保安林の場合は、それは指定並びに解除の権限農林大臣に帰属するんでしょうが、実際の手続上からいきますと、これはやっぱりその府県の、私が、いまあげておる事例からいたしますと、山梨県の知事の意見書というようなものが、これは相当の影響力を持つんじゃないかと思われるんです。そこで、知事の意見書等が出てまいりましたものに対して、国のほうは、どの程度の審査というのか、対応をされるのか。私は、その辺が実際問題としては、かなりこの法律を生かすか、生かさぬかというようなところにかかってくるような気がしてならないんです。いま私が申し上げておるその事例からいたしますと、これはもう相当の美林地帯であって、いま申し上げたように、かなり保安林も相当の部分を占めておる。こういうようなもの計画をするに際して、当然県は、国に対して所定の手続をとってきているわけなんでしょうが、国とすれば、私どもがしろうと判断をするように、簡単に審査を通してしまうようなケースではないと思うんですが、その点については、県からの手続に基づいて、国のほうでは、どの程度の審査をされておるのか、これをひとつ伺っておきたいと思うんです。
  41. 福田省一

    政府委員福田省一君) いま御質問のございました小淵沢の事例につきましては、林野庁のほうでは、県からの協議を受けまして、ただいま審査中でございます。で、これは、畜産局のほうとも十分連絡をとりまして、それで、具体的にきめてまいりたいとは思っております。先ほど工藤先生の御質問にお答えいたしましたように、基本的には、保安林を解除する場合の二十六条の関係を申し上げたわけですけれども畜産振興もこれは重要な問題でございます。で、また保安林の行政も重要な問題でございますので、よく畜産局と協議いたしまして、現地の実情を十分調査した上で決定いたしたいと思って、ただいま審査中でございます。
  42. 神沢浄

    ○神沢浄君 私が疑問を持つのは、実はここに、その地域の住民の方からの、何というんですか、陳情文みたいなものもあります。その地域の住民の代表の人の意見書のようなものもあるんですが、何かここは歴史的に見て非常に山の災害に苦しんだ地域なんですね。ですから、その地域の住民は、今回の事業計画にたいへんな不安を感じておられる。そういうような点から、私ども手元に陳情や意見なども寄せられているわけなんですが、そうであります以上は、これはよほど慎重でなければならない。こう考えますし、何か、山梨県の県史料にもあがっておるような、大きな災害の歴史なども持っているようであります。そういう事例が一方にあり、また、一方には、今度事業計画がなされております地帯のすぐ近傍に、広さからいっても、同じ程度の、三百ヘクタール内外くらいの県の放牧場があるんです。この放牧場というのは、実はもう十数年前になるんですけれども、県で設置をいたしまして、その目的は、何というんですか、私は、名前をよくわからないんですけれども、バンビに似たような牛がありますね、シカに似たような顔をした牛がありまして、それの普及のためにやった計画だと思うんですけれども、これは成功しませんでした。  したがって、いまその放牧場というのはほとんど実際には生かされないままに残っているわけです。そういうようなものがすぐ近傍にあるんですから、それらを利用するような——今度のほうが、それは地理的に見て、交通上の関係とかなんとかから、非常に計画の立てやすいような場所であるかもしれませんが、しかし同じ国の行政の中でするのですから、やっぱりこれは保安林の問題も重要でしょうし、ましてやこの地域が、かって災害に苦しんだ歴史を持っておるというような地帯であれば、なおさら慎重でなければならない。しかも、その近傍に、活用し得るような、かっての放牧場が、同じくらいの広さをもって存在をしておる。こういうような事柄と関連して考えてみますと、私は、やっぱり県の計画がどうあろうとも、もちろんそれは畜産の問題も重要でございますが、そういうふうな問題については、国がよほど——ただ、県まかせで、私がちょっと懸念するのは、知事の意見書でも出てまいりますと、これは知事のメンツもあるしというようなことでもって、どうしても国のサイドからすれば、府県まかせになってしまうような傾向が強くあるんじゃないか。そういうようなことが、ややもすると、せっかく法律はりっぱな法律がありましても、行政の姿勢上、つい法律を生かし得ないような結果になりはせぬかという点を非常に懸念をいたしますので、特に慎重な留意を求めておきたいわけなんです。これはあとからひとつ御検討いただくように、先ほどの御答弁のようにお願いをいたしたいと思います。  それから、その問題にも関連してですが、保安林の中に、ちょっとこの法律を読んでみましても、たとえば水源涵養だとか、あるいは災害の防備だとか、こういうようなものについては、非常に国の指導や監督というものも行なわれるような仕組みになっておるようですけれども、しかし、その他のいわば軽い程度の種別の保安林については、ほとんど府県まかせというような傾向があるんではないでしょうかね。もう知事のところでもって知事がきめれば、あとはもう国のほうでは何もしない、ほとんどこれは知事にまかせたままだと。こういうような実態というものはないんでしょうか。その点ひとつちょっと伺っておきたいと思うのですがね。
  43. 福田省一

    政府委員福田省一君) 確かにいま先生御指摘ございましたように、保安林の中で水源涵養保安林と、それから土砂の流出、それからもう一つ土砂の崩壊、その三種類の保安林は直接大臣が指定をすることになっております。また、解除の場合にも直接大臣が解除をするというふうになっております。で、それ以外の保安林と申しますのは、十七種類のうちいま申し上げた三種類、このほかは、機関委任としまして知事にその権限を委任してあるわけでございます。その理由は、いま申し上げた三つの種類の保安林というのは、その与える受益対象区域というのは非常に広い。特に水源の問題であるとか、土砂の流出の問題、これについてはそういった意味でございますし、また、保安林の全体が現在のところ約二八%ぐらいになっております、全森林に対して。このいま申し上げた三つの種類だけで、保安林全体の中で九七%を占めておるのでございます。あとの十七種類は、数は多いのでございますけれども、わずか三%であるということでございますし、この保安林は、大体が受益対象というか、受益の対象区域、人は特定されておるということで、知事に委任さしておる経緯がございます。ではございますけれども、先生御心配の点は十分私たちも配慮いたしまして、指導の面で遺憾なきを期していきたいと思っているわけでございます。が、特に先般の森林法改正によりまして、保安林以外の普通林につきましても、これを森林以外に利用しようとする開発を行なう場合には、やはり知事許可制ということにしておるわけでございます。それらの点をあわせまして都道府県知事のところで十分その辺の指導、監督をしてもらうように、私たちは考えておるところでございます。
  44. 神沢浄

    ○神沢浄君 関連で時間を使ってたいへん恐縮です。  いただいた資料を拝見いたしますと、ここ数年、大体四、五年の数字が出ていたようですが、保安林の解除の件数というのは相当増大の傾向が出ております、年を追うてふえてきておるようですね。そこで、大体この保安林の解除事由は主として何かという、その内容的な説明、それから今度、逆にいま審議をしておる法律に基づきまして、ここ四、五年来保安林の指定をされた件数と、それからこの広さですね。そういうようなものを、ちょっとこの際お聞きをしておきたいと思うのですが。
  45. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林の解除の件数でございますが、確かに最近はこの解除の件数がふえてまいっております。昭和四十七年度は国有林、民有林を合わせまして千九百五十二件、約二千件近いのでございます。その前の年の四十六年は千三百十六件、その前が千百十四件というふうなぐあいになっております。この内訳を見ますというと、四十七年度一番多いのは林道、農道そういったような道路の解除でございます。これが全体の中で約六割を占めておるのでございます。それから鉄塔とか、あるいは放送無線施設、こういったようなものが約一割ぐらいを占めております。その他まあ建物の敷地とかというふうなものが多いのでございます。この傾向は全体としましてそう四十六年も四十七年も変わりないのでございます。  それから、指定と解除の関係でございますけれども、昭和三十九年から四十七年までのおよそ十年近い統計の合計で申し上げますが、保安林を指定いたしました面積の計は、国有林、民有林合わせまして二百九十一万六千ヘクタール、約三百万ヘクタールでございます。それに対しまして解除いたしました面積、これは国有林、民有林を合わせまして五万二千ヘクタールというふうになっておりまして、総数からいきますというと指定したほうがはるかに多いのでございます。
  46. 神沢浄

    ○神沢浄君 その指定しました保安林の中に、この保健保安林、それから風致保安林というものについてはどのくらいありますか。
  47. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保健保安林が千七百ヘクタールでございまして、全体から見ますというときわめて面積は少ないのでございます。今後はこの保健保安林についての要請も非常に強いのでございまして、水源涵養保安林と同様に、この保健保安林の指定をさらに強化していきたいというふうに考えております。
  48. 神沢浄

    ○神沢浄君 さっきの工藤委員の質問の中でも、特に強調して触れられておったように、結局森林機能というのが非常に広範になってまいっておると思いますし、国民の保健的な見地からして、その役割りも非常に増大をしてきておると考えます。そういう見地に立って、これは私は、大臣の御意見も聞いておきたいと、こう思うのです。  私の県には、御承知のとおり富士山があるわけなんです。その富士山のふもとに、これはまあ問題になっておりますけれども、例の北富士演習場と称する相当広い地域があります。今度その演習場の一部が、演習場の区域から除外をされました、約二百十ヘクタールですが。その所在するところは、富士五湖と称せられるうちのまあ代表的な山中湖、それから河口湖をつなぐ国道の百三十八号線というのがございますのですが、その国道百三十八号線の沿道なんですよね。これは、確かにもう日本を代表するような風致的な地域なんです。従来は、演習場の地域内に包括をされていたわけなんですが、昨年の四月から自衛隊への演習場に使用の転換がなされる際に、二百十ヘクタールという沿道の部分が、それは従来まあ演習場の地域内にあったとはいえ、実際にはこれはもう演習場に使えるような地点ではありませんから、今度まあそれが除外をされました。除外をされましたから、普通国有地になったわけでありますね。普通——まあもともと森林ですから国有林です、国有林になったわけなんです。それをまあいろいろ何かいきさつももちろんあることはありますが、その地域の一林業団体に払い下げをするわけです。私どもはそれに反対をしております、いろんな見地から。  しかし、いろいろの見地の一つの部分、いわゆる森林問題としてまた、この保安林問題として考えてみましても、昨年あたり、その演習場というのは毎日やっておるわけじゃありませんから——やらない日もあるわけですから、その日には演習場内の出入も許されます。そういう際に、もうすでに何と言いますか、演習した弾丸が地内にもぐりこんでおって、そしてそれがときどき急に爆発をしたなどして被害を起こすことがあるわけなのです。そういう危険や不安があるにもかかわらず、昨年あたりの例を見ましても、その演習場地内に、富士の風光をめで、あるいは休養のために出入をしているところの人は、主としてこれは東京都民などが多いわけですけれども、数万を数えております。演習のないときにだけ出入をしているところの国民の数が数万を数えている。いまや東京都民などの全く息苦しい日常の都市生活から少しでも開放されようという、こういう状況というものは、これはその例を見てもまことに明瞭だと思うわけなのです。  私がいま申し上げておるその二百十ヘクタール、百三十八号線の沿道地帯、山中湖と川口湖を結ぶそれは、それこそ日本を代表するような風致地帯、これがせっかく今度は普通国有地、いわゆるしかも森林ですから、国有林になったんですから、演習場から除外をされて。私は、国の考え方としては、まず第一義的に、このようなところこそやはり風致保安林というか、あるいは保健保安林というようなものに指定をすべきところ、これはもう当然の常識だと思うわけです。それもいろんな、もちろん既往の経緯があるとはいいましても、払い下げをしてしまうというような——いま大体法律趣旨からいけば、保安林は国が買収しようという、こういう積極的な姿勢が盛り込まれておるわけなのですから、せっかく国有林としてあるものを払い下げをしてしまおうというような、こういう姿勢というのは、私はこの法律に照らしてみますと、まことに逆行するもはなはだしいものであると思うのです。もちろんこれは演習場などにからむ問題でありますから、なかなかその農林省としての立場、あるいは林野庁としての立場だけでもって解決し得るものではないでしょうけれども、国全体の私は、行政の中でもってやるものを、農林省林野庁あたりの発言というものが、ただ見て見ぬふりをしておるような姿勢ではならぬのじゃないかという感じを強く持つわけです。事、どうも防衛庁の関係だからとか何とかというようなことで——あの地帯をぜひ国民のいわゆる休養センターとして何とか国で考えてもらいたいという、こういう国民運動が非常にしきりに行なわれているわけです。本院に対してもそういう、そっちの委員会だと思いますけれども、請願などがたくさん出ておるような事実もあるわけです。そういうような情勢にあるだけに、私はやはりほんとうに森林行政というものを真剣に取り組むとするならば、何らの一言の発言もなしに、ただ防衛庁などのなすにまかせるというような姿勢であってはならないではないかという、こういう感じがしてならないのです。その点についてひとつ大臣の所見、それから長官の所見等をちょっと伺って終わりたいと思います。
  49. 福田省一

    政府委員福田省一君) きわめて実際の問題でございますので、林政部長からまず答弁させていただきます。
  50. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) ただいまの東富士の演習地につきましては、先生御指摘のとおり、これは米軍が使用いたしているということで、米軍に提供されているということでございますが、いまお話しの解除された部分につきましては、これは戦争中あるいは戦争前から旧軍用地として使用しておったということでございますから、そこの中の森林も、ほとんど全部が、大蔵省所管の普通国有財産でございます。その中に十一ヘクタールほど国有林の苗圃があったかと思いますが、ただいま先生御指摘のように、その森林について、森林の持つ公益的な機能、特に富士山麓であるということから、そのことについての配慮をすべきではないかという御意見につきましては、山梨県の希望その他を徴しまして、大蔵省とも必要があれば協議してまいる、ということにいたしたいと思います。
  51. 塚田大願

    塚田大願君 先回、森林法改正にあたりましても、いろいろ保安林の問題につきまして質問をいたしましたが、今度のこの保安林整備臨時措置法改正本案提案理由説明を拝見いたしますと、たいへんやはり当然なすべきことが書いてございまして、私は、この趣旨そのものには賛成であります。たとえばこの補足説明の中にございますけれども、「その第一は、森林環境保全機能等に対する国民的要請の高まり」の中で、こういう要請に「対応して都市周辺部を中心として保健保安林等の積極的な配備が必要」となった。あるいは二番目には、この水源涵養保安林の配備が非常に緊急な問題になった。あるいは三番目に、最近の国土開発に伴って今後この種の災害を防ぐ意味において重要であると、こういう趣旨が述べられておりますが、私は、前回の森林法改正のときにもいろいろ御質問いたしました。特に、この開発規制を厳格にやるべきだ、また、開発許可にあたっては、地域住民の意向を十分に参酌してもらいたい、聞いてもらいたいということも要請をいたしました。これに対しては、農林省としては積極的にやる、こういう御答弁があったと思うわけであります。  そこで、今度のこの法案改正にあたりまして、この保安林の具体的な整備の問題が出ておるわけでありますが、農林省から出されましたこの参考資料書を拝見をいたしまして、私はたいへん奇異に感じたことが一つあるわけであります。   〔委員長退席理事高橋雄之助君着席〕 一ページでありますが、この一ページには、保安林面積の現況というふうになっておりまして、保安林種、それから所有区分、それぞれデータがございますが、その中で防雪保安林というこの林種に関しては全くこれが数字がない、ゼロです。国有林、民有林にわたって全くゼロになっている。で、ここで私たいへんふしぎに思ったわけであります。防雪保安林というものは今日必要はなくなったのかどうか、そのためにこの数字がゼロになっているのか、これがどういう理由でこういうふうになったかという問題、あるいはこの防雪保安林機能とかいうものがどういうふうになっておるのか、この辺をまず第一に教えていただきたいと思うんです。
  52. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま御質問の中で、保安林十七種類あるわけでございますが、防雪保安林だけがないというのはどういうわけかというようなお尋ねでございますが、この防雪保安林は実際問題としましては雪国地帯——北海道、東北方面におきましては、防風保安林あるいは飛砂防止保安林、あるいはまた、防霧保安林というふうなものと兼種になっておるということが一つの理由でございます。実際に、鉄道防雪林という例があるわけでございますけれども、雪のために——雪のためと申しましても特に雪を交えた風のために運転が非常に危険であるとかいうふうなこと、そういったことを防ぐのがこの防雪林の目的だと思います。でございますが、防風とか飛砂防止とか、あるいはまた防霧、そういったものは大体兼種のために、特に防雪保安林というものを国では指定しなかったのでございます。しかし、今後の問題としましては、特に高速道路等を考えますというと、いま申し上げた運転の安全ということを考えますならば、この防雪保安林というものは次第に必要になってくるんではなかろうかというふうに考えております。そこで、この保安林目的別には十一、種類別には十七ございますけれども、いずれはこの保安林整備臨時措置法と、それから森林法の中の保安林の部門というものとの調整をはかって、それで恒久法化していく必要があろうというふうに考えておることを、御質問には答えてきておるのでございますけれども、そういう必要性は今後出てくるというふうに考えますので、今後十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  53. 塚田大願

    塚田大願君 いまの御説明で、いわば防風とか飛砂防止であるとか、防霧であるとか、いろいろ兼種しておるということは当然考えられるわけでありますが、少なくとも、この保安林種にこういうきちっと規定がある。ところが数字はゼロだ。これは、今後いろいろ考えるとおっしゃるんですか……。  もう一つお聞きしたいのは、じゃ、こういう規定が全くいままで無用だったのか、つまり、かつてはこういう防雪保安林というものは全くなかったのかどうか。しかし、その後国鉄やなんかに所管が移管をされたということで、その防雪保安林というものがなくなったのか、その辺の経過をちょっと簡単でよろしゅうございますから、お聞かせ願いたいと思います。
  54. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林の中に一応こういう規定はございますけれども、いままでは、この防雪保安林としての指定をいたした例はございません。
  55. 塚田大願

    塚田大願君 私が聞いた範囲では、昔はあったと、だいぶ前の話ですね。しかし、昭和二十八年ごろ、こういう防雪保安林、つまりこういう指定というものを解除して、そういう防雪保安林であったものは国鉄の防雪林として国鉄に移管されたということを聞いているんですが、そういう事実はございませんか。
  56. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林としての指定は実はないのでございます。で、国鉄のほうに聞きますというと、国鉄としては防雪林というものはございます、保安林には指定はしてございませんけれども。約一万三千四百ヘクタールあるそうでございます。この一万三千四百ヘクタールのうち、いま申し上げた吹雪を押えるのを目的とした防雪林が一万ヘクタール、それから、なだれを押えるのを目的とした防雪林が三千四百ヘクタールあるそうでございます。いずれも先ほど申し上げた防風の機能、あるいはなだれ防止と兼種のような形になりましょうけれども、一応保安林としては指定はされていないのでございます。
  57. 塚田大願

    塚田大願君 そこで、おかしいんですね、森林法にはこういう林種が、防雪のためということが、保安林の規定の中にはちゃんとございます。それだったら、いままで全く無用なものであったならば、こういう規定があるということがおかしいし、現実に考えてみましても、この保安林十七種類、これはもう私はやっぱり全部必要なもんだろうと考えるわけですけれども、どうもその辺が納得できないですね。十七種類のうち十六種類は全部一応国有林、民有林ともにちゃんと指定があると、しかし防雪保安林だけは全くないと、何十年にわたってこれが適用されたことがないんだという説明は、それだったら、法規は、何のために森林法があるんだという疑問も出ますし、非常に矛盾を感じますが、とにかく一応いま長官がおっしゃることが正しいと、つまり、いままでそういう指定はしたことがなかったということならば、それはそれとして今後なお研究する課題として残します。  私がきょうお聞きしたいのは、実はこういう国鉄の防雪林がゴルフ場になってしまったという事実があるんです。ですから、防雪林というものは、森林行政の上からいっても重要だと思うんです。それが保安林であろうとなかろうと重要だと思うんですけれども、それがゴルフ場に転売された、この事実を私はお聞きしたいわけです。その例は北海道の新得町であります。北海道の新得町に、かつて国鉄の旧狩勝線が通っていたわけでありますが、これが廃止をされたということから、国鉄の防雪林が昭和四十六年の暮れに六百十一ヘクタール新得町に払い下げられた。そのときの価格が一億七千万円。ところがこれが一年半後、つまり昭和四十八年の六月に、この六百十一ヘクタールのうち四百七十五ヘクタールというものが、この新得町からパシフィックエンタープライズという観光会社——ゴルフ場会社と言ってもいいでしょうけれども、こういう観光会社に価格二億四千万円で払い下げられたという事実があるんです。これは事実であります。で、ここに、これは国鉄の用地、国有財産でありますけれども、そしてこれは防雪林であったわけでありますけれども、これがこういう形で町に払い下げられ、そして一年半後には民間業者に、観光業者に払い下げられて、そしてこれがゴルフ場をいま建設されておる、造成されておる、こういう問題なんです。ここに契約書その他みんなございますから、この事実については間違いございませんし、北海道の道議会でもこれが過般問題になっておるわけでありますから、この事実については疑う余地はございません。  そこで、私がお聞きしたいのは、とにかく農林省の指定した防雪保安林ではないけれども、かつて国鉄の防雪林となっていた国有地が、こういうゴルフ場に転売されたという、——こういうことが、はたして森林法や、あるいは今度の法案ですね、保安林整備法案なんかの精神に照らしてどういうふうに解釈していいのかという問題です。こういうことがはたして正当なのかどうかという問題であります。その点について、ひとつこれは大臣にも御所見を伺いたいと思うんです。
  58. 福田省一

    政府委員福田省一君) 狩勝峠を越す国鉄が、つけかえになりまして、したがって、狩勝峠にあった国鉄の防雪林が、新得町に払い下げになりましたことは、ただいま私も伺ったのでございますが、防雪林につきましては、保安林の種類の中にはございますけれども、いままで指定されたことはないし、またその理由も申し上げたのでありますけれども、今後は高速道路の発展に伴ってこの点は十分検討をしたいということはお答え申し上げたとおりでございます。で、実は保安林の種類が——十一の目的があって、十七種類があるということを、実態を今後は検討いたさなければならぬと考えておるわけでございます。この保安林整備臨時措置法を恒久立法化する必要があるんじゃないかという御意見をたびたび国会でもいただいておりますが、その中で私は、将来こういった保安林種の一つの整理統合ということの必要があることはお答え申し上げておるのでございます。そういった中で防雪林の保安林指定をどうするかということも検討してまいりたいとは思っております。それは将来の問題でございます。  さて、鉄道が、国鉄がこの防雪林をゴルフ場に転用したということは伺ってはおりますけれども、これを規制する方法はいままではなかったのでございますが、先般成立いたしました森林法改正案に基づきまして、今後はこういった一町歩以上の開発をいたします場合には都道府県知事許可制になるわけでございます。そこで、その中でこういうふうな普通林を、森林以外の目的にこれを利用する場合におきましては、水の関係に影響はないのかどうか、国土保全に影響はないかどうか、もう一つ環境保全に影響がないかどうかというふうな基準によりまして、都道府県知事がそれを判断するわけでございます。また、その基準につきましては、ただいまこの内容についてできるだけ詳細に、科学的に基準を作成することをただいま検討中でございます。でございますので、今後はそういったことにつきましては、いま申し上げたような判断を都道府県知事にそれぞれしていただくわけでございますが、従来のところでは、そういうことを規制をする方法はなかったのでございます。
  59. 塚田大願

    塚田大願君 いまおっしゃったように、こういうやり方は、いまの改正された森林法によれば規制ができたわけですけれども、いわばその直前に、こうしてかけ込み開発といいますか、くぐり抜け開発といいますか、そういう形で行なわれたのは、法律的には確かに従来これを規制する方法はなかったのですが、これからはもちろんのことでございますけれども、こういうかけ込み開発なんかを、いまの時点で何とか規制する方法というのは全くないのですか。それとも何か研究すれば何らかの方法は考えられるのか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  60. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 先生御指摘のような事案が起こるのではないかというようなお話も、今回の森林法審議の際にだいぶ御議論があったわけでございますが、法律で、権利についての制限を加えるというような法律ができます場合には、原則として遡及しないというのが法律解釈上の通念でございますので、その権利に対する規制というものについては、いま先生御指摘のような形で、さかのぼって法律上の規制を加えるということはなかなかむずかしいのじゃないかと思います。ただ、森林法改正以前にも都道府県で、相当数都道府県の条例、要望その他で行政指導が行なわれておるということでございますから、その意味においてのチェックと申しますか、法律上の強制力はないにしても、そういうようなものが存在をしておるということで、この具体的な事案につきましては、それが適用できなかったということでございますけれども、相当数そういうようなものによって規制はされておるということではなかろうかと思います。
  61. 塚田大願

    塚田大願君 全く手おくれと申しますか、いまさら法的には何の手はない、法律の遡及というのはできない、こうおっしゃるわけですが、おっしゃるとおりだろうと思うのです、法律的な解釈から言えば。しかし、このゴルフ場は、先ほどちょっと説明を落としましたが、民間のゴルフ場というのは、パシフィックエンタープライズという会社でありますが、これはあの有名な、悪名高い太平洋クラブという会社の子会社であります。太平洋クラブは、これはずいぶんいろいろと方々で問題になった会社であります。そこの子会社、これがですね、町から払い下げを受けてやったという、こういうことなんですけれども、どうもそのときの経過が必ずしもまだ十分私どもにわかっておりません。たとえば国鉄から町に払い下げられたときの条件というものが契約書にあると思うのですが、国鉄のほうに要求しましたけれども、この契約書がまだ提示されておりません。しかし、大体私どもの聞いた範囲におきましては、町が、国鉄に払い下げを受けるときの申請書を見ますと、こういうふうになっておるのですね、買い受けの目的として、「町有林野並びに農家林拡充用地」とつまり町有林とそれから農家林の拡充、こういうふうになっておりまして、一言で言えば、あの辺は酪農地帯でありますから、酪農振興あるいは森林振興ということが大体申請の中身だったろうと思うんです。ですから、これは国鉄としても、これはよろしいということで払い下げをしたんだろうと思うんですが、この場合、とにかく国有地を払い下げるわけでありますから、もっと慎重にやるべきだったと思うんですが、その契約書がありませんから、これはひとつ国鉄さんからも出していただきたいと思うんです。どういう契約でやったのか、たとえば用途指定などをしてなかったのかどうかという問題です。この点は、ひとつ国鉄の代表来ておられると思うんで、この当時の経過について、簡単でよろしゅうございますから、お聞かせ願いたいと思うんです。
  62. 篠原良男

    説明員(篠原良男君) 先生御指摘のとおり、新得町長から鉄道林——これは御承知だと思いますが、根室本線がルート変更いたしましたので不要になった鉄道林でございますが、払い下げ申請がまいりまして、その申請の理由は、先生がおっしゃるとおり、町有林野並びに農家林拡充用地として払い下げを受けたい、こういうことで、私のほうは相手が自治体の町長でございますので、契約をいたしまして売却した次第でございます。  なぜその用途指定あるいは買い戻し特約等をつけていなかったかと、こういう御質問だと思いますが、私のほうは、国鉄財産を市あるいは県、こういうような公共事業体に売却する場合には、用途指定あるいは買い戻し特約をつけておりません。といいますのは、これをつけることによって売却の評価価格が安くなるんじゃないかということと、あとあとトレースをする必要がある。本件のように、国鉄が線路をはずしてルート変更して要らなくなったところをまたトレースしに行かなきゃならぬというようなこともございますが、相手が信用のできる市町村あるいは県の場合には、用途指定をしていないというのが通例でございます。その用途指定をしていなかったために、町が、かかるいわゆるゴルフ場に売られたというのは、実は新聞を見て初めて知ったわけでございますが、まことにこれは遺憾なことだと考えております。  それから、契約書の写し出せということでございますが、これは契約書は、随契でございまして、相手の新得の町長の御了解がいただけましたら、私のほうは契約書を出すのにやぶさかでございません。書式、その他でしたら、いつでもお出しいたしますが、契約書そのものにつきましては、相手の新得町の御了解をいただければ提出さしていただきたい、かように思っております。
  63. 塚田大願

    塚田大願君 では、ひとつ積極的に——こういういま森林の保全ということが非常にやかましく言われて、そしてこの法案がかかっている、こういう状態でありますから、そういう契約もひとつはっきりさしてもらいたいと思うんです。国鉄からも、町長に申し入れてもらって、ぜひ出すようにひとつ努力していただきたいと思うんです。とにかく結果から見ますと、こういうふうになっているわけです。ですから、国鉄としては、用途指定までやる必要はないと善意に解釈されてこういう結果になったのかしれませんけれども、しかし、結果から見ると、これはたいへんなことになっておるわけですね。国有財産がいつのまにか業者のゴルフ場になってしまった。しかも、面積は五百ヘクタールもあるわけでありますから、たいへんな損害だったと思うんです。  しかもこれは、今度自治省も来ておられるから自治省にも一言お聞きしたいんですが、この町がゴルフ場に転売するときの契約書は私持っておりますが、これを見ますと、面積は先ほど申しましたとおりですが、この財産の中身を見ますと、土地のほかに立ち木幼木約十五万本と書いてありますね。あの辺の立ち木というのは非常にみごとな美林だと、私もあの線は何回か通ったことがありますし、地元の方はよく御存じだと思うんですが、十五万本を含めてこの土地が売られておるわけです。そしてまる坊主にされてしまったと、こういうわけであります。まる坊主といっても全然立て木がないわけじゃないでしょう。ゴルフ場でありますから、あちこちに若干は残っているかもしれませんが、まあこういうやり方なんです。  ところが、ここで一つ問題が出てきましたのは、このときのこの町の助役が、この転売が行なわれた直後に、この会社の出張所長に天下っておるという事実もあるわけであります。この人の名前もわかっております。山本実という人であります。四十八年の七月任期切れで退職をして、このパシフィックエンタープライズの新得出張所長に就任をした、売ったのが四十八年の六月であります。そして転任したのが七月であります、同年の。こういうことでまことにこの辺には薄暗いものを感ずる。町当局と業者との癒着というふうな暗いものが残るわけでありますが、こういうことに対して自治省としては、こういう問題をどういうふうに考えておられるかですね。こういうことを事実また知っておられたかどうかということもありますけれども、その辺の見解を聞かしていただきたいと思うんです。
  64. 宮尾盤

    説明員(宮尾盤君) 御質問の事柄につきましては、私ども、どのような経緯でその元助役が当該会社の出張所長として就任をしたかということは承知をいたしておりませんので、具体的な問題についてのお答えというのはできかねるわけでございますが、まあ地方公務員法の関係で申し上げますと、特にこういった元助役が一般企業に就職をするというようなことは禁止をされておりません。ただ、一般論といたしまして、住民からたとえば非常に疑惑の目で見られるような形であるとすれば、そういう行為は好ましくないという一般的な見解を申し上げるにとどめさしていただきたいと思います。
  65. 塚田大願

    塚田大願君 いま国鉄並びに自治省に御質問申し上げましたこれは、今回はその面を私は、特に強調しようということではないわけでございまして、これは、そういう経過の中で出てきた幾つかの疑点として私が問題を提起したわけでございますから、いずれこの問題につきましては、ひとつ国鉄も、あるいは自治省としても、それぞれ監督なり指導なりをもっと強めていただきたいということであります。  そこで、なお農林省に御質問を続けますが、とにかくこういう経過で、せっかくの美林が、防雪林がゴルフ場になってしまったと。ところが、この町の地元の方々ですね、新得の皆さんは、この問題が起きましたときには、いろいろ陳情もされておるんですね、町議会にも。たとえばこの地域を酪農振興の地帯にしてもらいたい、つまり混牧林地としてひとつこれを活用してもらいたいというふうな要請もあったわけでありますが、これが無視をされて、町長がいわば——単独ではありませんけれども、町議会にも十分にはかることなく簡単に払い下げをきめてしまったという経緯がございます。また、こういう状態でいまゴルフ場になりますと、やはり一つは自然環境を破壊するのではないかということで、地元の方々が非常に不安を持っておられる。あるいは風害が起きるんではないか。先ほど長官が防雪と防風は兼種をしておると言われましたが、確かにそんな防雪林というだけのものでないことは確かだろうと思うんです。それだけのものを切れば、今度は防風の被害が起きる可能性があるということで、そういう災害の心配もされておるわけでありますけれども、こういう点から見まして、どうも今度のこのこういう措置法律的にはどこに責任があるということはないけれども日本全体のこの森林行政という観点から見ますと、たいへんに悪い結果が起きてしまったということでありまして、この点を今後、十分法律に基づいた行政指導を私は厳格にやっていただきたいと、このことを要請するわけでありますが、大臣からもぜひこういう問題についてどういうふうにお考えなのか、ひとつ御所見を伺いたいと思います。
  66. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほど来、いろいろ質疑応答ございましたように、なおこれからも私どものほうにおいては、慎重に対処してまいるつもりであります。
  67. 塚田大願

    塚田大願君 最後に一つだけお伺いしておきたいんですが、この今度の法案で、保安林整備あるいは買い上げということが強調されておりますが、いろいろ資料を拝見いたしますと、昭和三十九年でありますか、いまから十年前に保安林整備計画というもの農林省で出されました。この保安林整備計画を見ますと、とにかく十年間で三十一万ヘクタールでありますか、そのうち実質買い入れが二十五万ヘクタールということのようでありますけれども、この資料を見ますと、実際には五万ヘクタールしか達成されておらない。だとすると、大体目標の五分の一ということになりますけれども、こういう状態の中でもちろん農林省林野庁は努力しておられるんだと思うんです、いろいろ条件がむずかしくなってきておるということもあると思うんです。ところが一方においては、こういうふうな事態が起きておるという点で、やはりこの辺をはっきり解決しませんと、この計画もいつまでたっても達成されないし、いろいろ弁解をしてみたところで始まらないということにもなりかねないと思うんです。この点については、やはり積極的にいま言ったような問題を含めて、やはり森林行政というものをもっともっとですね、強化していく。そしてただ、法律上の問題だけでなくて、たとえばこういう事態が、今度のこういう新得町の問題が起きるような場合には、もっと地元の住民の意向なんというものを、ふだんから林野庁は反映するようにしておかれれば、私は、こういうことはかなりの程度防げるのではないかと思うのですが、そういうこれからの行政指導の姿勢について最後にお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  68. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林制度を今後拡充してまいりたいということは、しばしば申し上げているとおりでございますが、特にこの森林法の中におきます保安林制度と、このたび御審議願っております保安林整備臨時措置法、この辺の関連も考えまして、特に、この保安林行政の指導を徹底してまいりたいと思っておるわけでございます。御指摘ございますように、森林法の中におきます森林計画制度であるとか、この保安林の行政を行なってまいります場合に、関係する地帯における住民の皆さんの御意見を十分尊重していかなきゃならぬということは、十分私たちも考えております。まあ具体的には、たとえばそれぞれの地域におきます森林審議会であるとか、あるいはまた計画制度をつくります場合に、地元の方々に随時集まっていただいて協議会を開くとかというふうなことも実施いたしております。  いずれにしましても、やはり国有林は国民全体の森林でございまして、それを林野庁の職員が預かって管理しておるという姿勢でございますし、また、民有林におきましても、それぞれ所有形態は都道府県所有あるいは市町村所有、特に私有林の所有が相当多いわけでございますけれども、やはり今後はそういった森林の公益的な機能を重視していかなきゃならぬわけでございますので、そういった規制をいたしますと同時に、助成制度の拡充もいたしていきたいと考えております。そういう考え方からいたしまして、森林全体についての管理体制をさらに強化し、指導に十分配慮してまいりたいと考えております。
  69. 高橋雄之助

    ○理事(高橋雄之助君) 暫時休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      —————・—————    午後一時三十五分開会
  70. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  71. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 法案は、単純延長でありますから、特にどうということはないんですけれども保安林が国民からたいへんな期待を持たれておりますし、ますます期待を持たれるというような、あるいは関心を深めるというような状況でありまして、運営上いろんな重要な問題があるんではないか、こういうふうに考えますので、そういう点に  ついて五、六点お尋ねをいたしたいわけです。  その一つは、この法律が昭和二十九年成立して、第一期の十年が終わり、第二期のまた十年が終わろうとしておるわけですが、ちょうど十九年、その間に、保安林の配置といいますか、これは非常に計画を上回っておるわけであります、ちょっと役所の仕事としては珍しい。保安林の配置は目標を上回っておるという状況でありまして、そして、量的にたいへん大きなものになった。六百九十何万町歩、六百九十四万ヘクタールという、国有林の四五%は保安林だと、民有林の中では一九%が保安林だと、たいへん大きな面積になったわけですけれども、しかし、中身は——量的にはたいへん拡大をしたけれども、二・八倍という拡大をしたが、中身が伴っていないのではないかという感じを非常に受けるわけであります。これはいろんな制約があって、そういうことになっているんだと思うんですけれども、この中身を質的に高めるという努力を、これからはやらなければならぬじゃないかと私は思っております。  そこで、一つの例として申し上げたいんでありますが、いま言いましたように、国有林の四五%が保安林になっている。そこで、保安林が国有林の中でどんどん面積拡大するに従って、保安林としての役目を果たしているのかということになりますと、どうも質的にはそういう面がないところがあるんじゃないか。一つとして、国有林の中における災害ですね、これを見ますと、どうも国有林が拡大するに従って災害が金額的にいうと、ふえてきているという印象を非常に受けるわけです。物価の値上がり等差し引いてみても、目に見えて災害がふえてきている。そして昭和四十七年は、御承知のように、たいへんな被害を受けたわけですね。これは国有林、民有林を問わずたいへんな被害を受けたわけですが、それがまた今度のこれからやろうとなさる一つの柱にもなっておるわけですけれども、これを見ますと、量的にはたいへん拡大をしてきているんだけれども、質的には問題があるんではないかという推測をしておるわけなんです。事実私はそういうふうに思っておるんですけれどもね。ですから、質的に問題はどういうところにあるのか、簡単でいいですから、ひとつお聞きしたいわけです。
  72. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林の量は拡大したけれども、内容のいわゆる質的な面で欠陥があるんではないかという御指摘でございます。先生御指摘のとおり、やはりその点については十分反省しなきゃならぬ点があると考えておりますが、そこで四十六年から三カ年計画で指定施業要件の見直しの調査をいたしております。これは、先生御承知のように、保安林の場合におきましては、特に水源涵養保安林、これは伐採種の指定をする場合と、しない場合とがございますが、つまり禁伐、択伐あるいは皆伐もできるようなふうになっておるわけでございます。それはその地域の実態に応じてきめておったのでございます。そういう点に一つ問題があるんではなかろうかということも考慮いたしまして、最近、集中豪雨等による災害も多いものでございまして、その指定施業要件はこれでいいのかどうかという検討をいたしました。その中間報告でございますけれども、四十七年度末現在におきまして、その調査した個所の約半分がやはりこれは問題があると、指定施業要件の見直しをしなきゃならぬ、変えなきゃならぬという結果が出ております。その半分のうちで、要するに、もっと指定施業要件を強化しなきゃならぬというのは八八%になっております。逆に、いやもう少し緩和してもいいんだろうというものも数パーセントはございますけれども、大部分は指定施業要件の強化をしなきゃならぬという結果が出ておるのでございます。  これはどういうことかと申しますと、いままでの皆伐、この皆伐におきまして、この面積をもっと小さくし、これをさらに分散させる必要があるというふうな結果が主でございます。国有林におきましても、特にこの点に配慮をいたしまして、昨年度新しい指定施業要件というのを出しまして、特に保安林の場合におきましては、この伐採の規制をさらにきびしくするという措置をとっておるのでございますけれども、今後は、この指定施業要件の内容はもっときびしくしていくという点に質的な改善の点を求めておるのでございます。
  73. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ぜひ質的にも、保安林としての機能を高めるように努力をしてもらいたいと思います。何せ十年時限立法ですから、保安林を指定をする、配置をするということで急がれたこともわかりますし、ですが、今日十九年たってみて、中身がやはり伴っていないというところから、保安林としての機能の欠ける面があるという点を非常に強く私は感じておりますので、ぜひいまお話のありましたように、指定施業の面についての強化を進めていただきたいと思っております。  もう一つは、先ほども塚田さんのほうから若干出ましたのですが一十九年間に保安林として国有林で買ったものの買収面積、これがだんだんだんだん減ってまいっておりましてですね、この第一期は二十九年から三十八年までに五十万ヘクタールという目標を立てていらっしゃったわけですが、実際は二十万ヘクタールしか買えなかったと、四〇%ぐらいになりますですか、達成率は四〇%。第二期の三十九年から四十八年まで、これはまあまだ完全に終わっていないわけですけれども、集計的に終わっておりませんですが、これが目標は二十五万ヘクタールであって、そして達成できたのは五万七千ヘクタール、二三%程度の達成率になっている。しかも、だんだんだんだんだん近年になるに従って金額はともかくとして、面積はどんどん目だって少ないという事態で、五万七千という達成率で二三%ということになっております。これから買われる、これから十年で買われるという目標もお立てになると思いますけれども、まあどういうわけで、こういうふうな目標に対して、特に近年になって著しい低下を来たしているのかという理由をお尋ねをしたいわけです。
  74. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま御指摘ございましたように、まあ第一期には五十万町歩の計画のうち二十万ヘクタール、第二期では二十五万ヘクタールに対しまして約六万ヘクタールと、目標に対してきわめて少ない数字にとどまったのでございますが、まあその原因を幾つか申し上げますというと、一つ権利関係調整が十分に進まなかったということが一つございます。まあたとえば入り会い林に関係するような問題等もあるわけでございますが、それから切りかえが不十分であるというふうな点もあったのでございます。それから事務的な問題でございますが、登記の未整備、そういったような事情によって買い入れが不調に終わったというものもございます。次には買い入れの基準の問題でございますが、できるだけ国有林と接続して大きくまとめて購入するのがよろしいという考えのもとに、基準としまして三百ヘクタールというもの一つのそういう団地を、以上ということにしたのでございますが、これが非常にまとめて三百町歩以上となるとなかなか容易じゃなかったと、結果から見るとそういう問題もあるのでございます。次には、特にこれは最近の問題でございますが、土地、それから立木につきまして、従来から値上がりの傾向があったのでございますけれども、最近特に開発の進展などによりまして値上がりが加速度的になってきておった。で、所有者の値上がりの期待による売り控えが増加したということでございまして、売買の希望単価が折り合わないために売買契約が締結できなかったケースが相当あったのでございます。当初、もう一つは、交換による収得を約八万ヘクタールぐらい予定しておったのでございますけれども、四十二年度以降交換財産の用途、それから交換の相手方をきびしく制限いたしましたいきさつがございます。そこで計画を大幅に下回ってこの八万ヘクタールという交換が五千ヘクタールにとどまったということがございます。もう一つは国有林野事業特別会計の収支悪化の問題でございまして、こういったことが原因で買い入れ財源の制約があったというふうなことがおもなる理由であるというふうに考えるのでございます。今後それではどうするかということについては、また御質問があればお答え申し上げたいと思います。
  75. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 長官のおっしゃるような理由が確かにあったと思いますし、特に近年においてその林地の値上がりがする、木材の値上がりがするというような関係もあって減ってきたと、いまお話のように交換についても種々問題がありましたし、その経緯の中で相手を厳選するというようなこともあったわけでありますが、私は長官が一番最後に述べられた、買い入れの原資を、金を林野の特別会計の中から出しておるということが私は一番大きな原因になるんじゃないかというふうに見ておるわけであります。で、これはどうしたって国有林は赤字になる場合が多かったわけですから、あるいは黒字が非常に少ないという例が多かったわけですから、どうしてもこれは赤字になるんならこれは買うという金がないわけですし、買いたくても買えないわけですし、それからまあできるだけ小さな金にしようということになるのは、これはあたりまえの話だと思うんです。それで私は、この十年ぐらいの間、いわゆる林野庁が買い入れた面積と、それから売り払った面積と、これは面積で比較しちゃ悪いですから、金額で比較してみますと、売り払った金額はたいへん大きい。ところが、買い入れた金額は非常に少ない。これは林野特別会計が苦しいということから、そういう事態にならざるを得ないんだろうと思うんですね。  で、私のところに資料がありますけれども林野が苦しくなると、林野特別会計が赤字になってくるというと、非常に売り払いの面積が多い。そして買い入れの面積が非常に小さい、こうなるんですね。ある程度潤沢でありますと、ある程度な、というときになりますと、売ひ払った金額は、たとえば四十四年に二十二億円売っておる、国有林を。そして買っておる面積はちょうど半分ぐらい、十二億ぐらい買っているんですね。ところが四十六年になりますと国有林がまだ非常に苦しくなるんですが、ここらあたりになりますと五十七億円売り払って、八億円買っている。だから、売り払った金額に対して一五%ぐらいになっている。さらに、四十七年になりますと、百八億円というたいへんな売り払いをやっている。そして買い入れは四億円、四%です。四十八年は、これは一応まだ予算であってはっきりしないわけですけれども、四十八年の場合は、予算の面では六十億円売り払う、そして買い入れば三億円だと、そうすると、五%ぐらいになりますですね。ですから、国有林が苦しくなるというと、山を売り払って赤字を補てんするというような意味が非常に強いのじゃないか。そういう中で保安林を買おうと思いましても、これは買えないというのが、買いにくいというのが実情じゃないかと思うんです。それがいまのような形になって、なかなか目標を達成できない。買いたいと思っても金がないし、売り払った金は、国有林の赤字を埋めなければならないという形になると思うんですよ。これからまた、どうしても買わなきゃならぬところが、これから十年の間に相当出てくると思う。その場合に、こういう状態では私は目標を達成するということはできないと、目標を達成するどころじゃなくて、どうにもならぬのじゃないか。ますます林地は上がっておりますし、これから上がりますし、特に休養保安林がこれから重点になっておるわけですから、最も大きな重点になっているわけですから、都市近郊になるでしょう。そうしますと、どうしてもこれはたいへんな金になりますし、国民の側から買おうと思ったって買えないということにならざるを得ないのじゃないかと思うんです。ですから私は、保安林というのは非常に公益的な機能を持っているわけですし、本来経済機能的なものよりも公益的な機能というものを非常に重要視しているわけですし、これからますます関心が高いし、そうしてもらいたいという国民の期待が大きいと思うんですね。その場合に、特別会計の中からやるということでは、これはいけないのじゃないか。  ですから、農林大臣にお尋ねをいたしたいのですけれども大臣は二時から三十分衆議院の関係で欠席されるということですので、大臣に私はあとで申し上げたいのですが、いま林野に対する、国有林野なりそれから林業に対する、森林に対する国民の期待というのはますます強まってくると思うんですけれども、どうもはっきりした、鮮明な政策というものが少ないという気を強くしているわけです。まず、これから重要であるものを買う場合に、一般会計から持ってくるのが至当ではないか。買うことはむずかしいかどうかという問題もありますけれども、公益的機能を持っておるものを買うわけでありますから、しかも、これから休養のこういう保安林というのが高い、面積は少ないけれども高いのだから、これはまた、国民に直接すぐに影響のある問題でありますから、一般会計から持ってくるという、そういう考え方を明らかにすべきじゃないかと私は思うのです。これは、従来の長い間の経緯もあります。国有林野特別会計、いろいろな経緯もありますが、それはもう私はここらあたりで、林野行政について、いろいろな面で新しい鮮明な考え方というものを出すべきときにきていると、こういうふうに思っているのですけれども、その一つはこれです。一般会計の中から金を出すという制度——これは制度でなくてもいい、予算上そういうものを考える必要があると、こう思っておりますけれども大臣の見解を承りたいと思います。
  76. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 国有林につきましての歴史的沿革はもうよく御存じのとおりでありますが、国有林というのは、ますます公共性、重要性を持ってまいっておることは、しばしばここでもお話し合いの出たとおりであります。そこで、たとえば治山治水、そういうような問題につきましては、特に私どもは、一般会計で見るべき必要性のあるものもあると思いますが、やっぱり従来、国有林の経営につきましては独立採算制で、そういう精神でやってまいりましたが、現状御存じのようなことであります。で、一方においては、国家の必要性、重要性、一方においてはやはり国有林の経営、運営というものとマッチするようにやっていかなければいけないと思いますので、やはり公共性のある事業でありますので、国全体が、これをめんどうを見るということも、その前提においては、やっぱり国有林経営の合理性というものを無視するわけにはいかないのではないかと思います。したがって、私は、一般の公社等の経営とは性格が違うと思いますけれども、やはりいま一般国民の中で、しかも国家の、国全体の国有林、民有林を含めての林政の重要性に目ざめておられる各層の方々の御意見を聞いておりましても、やはり全く経済的に非常に扱いにくいような運営であるならば、この運営の形態を改めるべきではないかというような意見も出ておることは御存じのとおりであります。われわれといたしましても、国有林の、林野庁のあずかっております部面の仕事につきまして、やはりそういう合理性についても相当突っ込んだ研究をしなければ、国民に対して相済まぬことだと思っております。しかし一方において、御指摘のように、われわれもまた、国土保全環境保全の立場から、国家全体が、これに対して責任を感じてもらうべきであるということにつきましては御同感でありますが、その前提として、やはり経営をきちんとやってまいるということが前提でなければならないだろうと、こういうふうに考えておる次第であります。
  77. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 おっしゃるように、大臣のお話のように国有林野特別会計が企業体として運営をいたしておりますから、したがって独立採算という制度で合理性を追求していくということは当然だと思うんです。ですが、いま問題になっております保安林の買い入れ、あるいはこれから問題になります特に大きな問題になります保健休養林の買い入れというような問題は、これは国有林なりの独立採算性というものとは一応切り離して考えてもいいほどの問題だと思うんです。これは林野の問題だけじゃないと思うんです。これからの都市生活上、何といっても欠かせない問題、都市計画上不可欠の問題で、そして、これを民間やその他にまかしておって、できるという問題では全然ないと私は思っております。特に、自治体の場合においても、私はそう思っております。これは、あとほどいろいろお尋ねをいたしたいと思っておりますけれども。ですから、国民の立場からいっても、それから都市計画からいっても、これから非常に重要であるこういうものの買い入れについて、これをすべて国有林の特別会計、国有林の独立採算制のそれに負わせるということでは済まされない大きな問題だと思うんです。で、私は全部と言わなくてもいい、まずある程度の一般会計からの金を追給するという考え方を出す、そういう時期ではないかと考えております。  ですから、大臣、ぜひこれはひとつ決断をしてもらいたいと思いますね。林野の問題だけじゃないです、これは。いま言ったように、合理性の追求はいいし、独立採算制でもけっこうですから。この保安林の問題については、いまこれから問題になるような点については、これは百万町歩の、これから百万ヘクタールの中の五十万ヘクタールというのは保健休養林にしようという考え方でしょう。しかも、これはこれからたいへん問題だと思うんですよ。環境保全というのは、これからの最大の私は政治課題だとも思っている。その意味で、これは特別会計に全部背負わせるということでは、過去の実例が示しておるとおりであります。ですから、一般会計の中からある程度の金を持ってくるという考え方をこの際はっきりしておくべきじゃないか。治山や治水の関係についてのお話ありましたですけれども、ぜひそういう考え方を持ってもらいたいと、私は思っております。どうですか大臣、それぐらいなことは決断なさっていいと思うんですがね。これは、非常に重要なことだと思いますけれどもね。再度大臣にお尋ねします。
  78. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) こういう林政を憂えていろいろお話しいただく国政の中の重要な問題でありますので、あまりいいかげんなことを言っていることはよくないと思うんであります。で、私どもの考えておるようなことを率直に言わしていただくんでありますが、大体、民間の企業に比べまして、政府関係機関、そういうものは、仕事をしても税というのはありません。そういうもので、同じような企業を営んでおりましても、おしなべて民間人は、公営企業等は非能率だと言われております。私どもは、そういうようなことは、国民に対して預かっております側から申せば、責任を十分感じてそういう非難を受けないようにしていかなければいけないと思っております。これはすべての公共企業等について申し上げることでありますが、林野庁林野行政につきましては、もちろんもうわれわれも公共性、これを強調いたしまして、予算編成等の場合においては、財政当局との論争においてはかなりいろんなことを主張してやっておるわけであります。一面において、国民に対して経営上指揮されることのないような注意をしながらやらなければならない義務を反面において負っているわけであります。  で、私は、したがって、単に林野行政を預かっております林野庁だけの問題として考えるということでなくて、国全体の国益に立った場合に、独立採算制的な考え方だけで、林野庁に責任を負わしておるようなことでは仕事になりませんよ、ということについては、ずいぶん強調いたしておりますが、一面において合理性を貫いていかなければなりませんという立場も御理解いただけることだと思っております。したがって、そういう点の両方の調和をどういうところでとるかというところにむずかしさがあるんでございますが、基本的には鶴園さんおっしゃいますお考え、うまり森林必要性、しかも午前中も工藤さんのお話にもございましたように、ヨーロッパのおもな国々では森林を愛せざる国は滅びるとか、いろんなことばが先祖代々ありますようなぐあいで、非常に大切にしておるその気持ちは私どもも十分理解し、私どももそういうつもりでなければならぬのに、最近の風潮は、はなはだいとうべき一部に風潮がございまして、乱開発が行なわれている日本傾向につきましては痛ましいことだと思っております。したがって、国有林、民有林を通じてわれわれはいまにしてこういう風潮を阻止し、お互いの国土を愛好する精神を盛り返し、また、行政に当たる者は、そういうふうにしなければならぬというつもりで、ただいまの林野庁当局も全く私の申し上げることと同じつもりでやっておるわけであります。  その辺のところでありますので、鶴園さん御存じのように、予算編成は政府部内においてなかなかいろいろ伝統もありますし、よその役所との平衡関係もありますし、しかし結論から申せば、私はやっぱり国土保全環境保全のために森林政策には国全体として特段の負担をする考え方を持っていただくという気持ち、これはそのつもりで対処いたしておる次第でございます。
  79. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私さっき申し上げましたように、四十七年で言えば百飛び八億円国有林を売り払っている、そして必要な買いたい面積、買い入れた金というのは四億円だという。そうすると、百飛び四億円という金はこれは国有林の中の赤字といいますかね、そういうふうに見ざるを得ない。こういう状態なんですね。ですから、百何億円の財産を売っ払っちゃって、そしてその買い入れはわずかに三億円、四億円だというようなことでは、これはどうにもならない。これから私は、買い入れなければならぬところのものは、一ぱい出てくると思うんですよ。そういう場合にこういうことではどうにもならぬ。たとえば百飛び八億円売っ払ったと、そしてそのかわり百億円ぐらい買ったというんならまだいいんですけれどもね。そうじゃないんですよ。それは独立採算制という立場があるから赤字のとき売っ払っちまう、がばっと売っ払っちまう。そんながばっとでもないですかね、でかいですから。売っちゃうと。まあまあ、それはまあいいとしても、この保安林をこれから買うという金ぐらいは一般会計の中からある程度持ってくる。私は、努力していらっしゃるという話ですから、一そう努力をしてもらうようにひとつ要望をいたしておきます。あとでまた……。  これと関連をするんですけれども、何せ国有林の中の四五%が保安林になっておる、さらにこれから相当数ふえるんだろうと思います。ですから、半分ぐらいをこすようなもの保安林になる、そしてその保安林について、質的に高めるということもあって、いろいろな規制を受けざるを得ないと思うんですね。従来よりもきびしい規制を受けなければならぬだろうというふうに思いますし、さらに、経済林として運営をしていらっしゃる、経営をしていらっしゃるところについても、いろいろな意味で近年制約を受けておりますですね。合理性の上からいえば、それはもう全部、皆伐したほうがいいということだってあり得ること、これは、かつてやった。しかし、だんだんこれは、なかなか皆伐するというわけにいかなくなってくるとか、いろいろな制約を経営林のほうでも、経済林のほうでも受けざるを得ないという状況なんですよね。その上にもってきて、いま私が言うように、これから必要な保安林も特別会計の中から買っていかなきゃならぬというんじゃどうにもならぬので、私は一般会計から国有林にもっと持ち込むという努力を——いままでもやっていらっしゃるわけですけれども大臣もそういう話でしたけれども、ぜひそのようにやってもらいたいと思うんですね。長官のお考え方をお聞きしたいと思います。
  80. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま大臣からもお答えがございましたように、国有林の経営改善の努力の中で前向きに検討したいと、こういうお答えだったわけでございますが、いま先生から御指摘ございましたように、金額にすれば確かに買い入れた数字と売り払った数字からいきますというと、売り払った金額が大きいのでございますが、私からちょっと面積を申し上げますというと、面積は、三十九年から四十七年までの合計でいきますと、買い入れました面積は約六万八千ヘクタールでございます。それから、売り払いました面積は三万四千ヘクタールと、半分でございます。なぜかと申しますと、大体買い入れましたところは治山事業を必要とするような場所、たとえば脊梁山脈地帯のしかも西のほうに比較的多いのでございます。売り払いました場所というのは、大体は国有林の過密な地帯でございます東北部の国有利、ないしは、最近それぞれの市町村におきまして、たとえば公園、墓地のような、そういうレクリエーションの場として保存していきたいというふうな場所とかいうものが多いので、比較的買う場所は単価が安く、売る場所は単価が高いということもございまして、ただいま先生御指摘のような結果にもなっているのでございます。でございますが、面積が売ったのよりも買ったほうが多いからいいんじゃないかということは私は申し上げたいとは思っておりません。  先生も御指摘でございましたように、やはり国有林のいまの分布状態を見ますというと、東北、北海道におもにございまして、西のほうは比較的少ないのでございます。また、最近、水の不足の問題あるいは災害の発生の度合い等を見ますというと、むしろ台風常襲地帯の西のほうにそれが多いわけでございますから、でき得れば、国有林は、その国有林の活用法案の八条にございますような趣旨に基づきまして、その売却した代金をもって、でき得れば西のほうの地帯に、いま申し上げたような原因もありますから、買って再配置を考えていくべきだというふうに思っております。しかし一歩前進して考えますと、そういう治山を必要とするような山岳地帯であるならば、これは経済林として成り立てさしていくのは非常に問題のあるむずかしい地帯でもございますから、御指摘のように、一般財源の応援をまつべきではなかろうかということについては、私もそう希望いたしております。ただいままでのところ、治山事業そのものについては一〇〇%まではいきませんけれども、大部分一般財源からの応援を得ておるわけでございます。  また、国有林野事業特別会計法の附則の第五条にありますように、これは先生も御存じかと思いますが、国有林野事業勘定においては保安林整備臨時措置法第二条の規定による保安林整備計画に基づいて森林等を買い入れることができるとして、第二項ではこの「規定による買入及びその買入に係る森林等についての治山に関する事業に要する経費の財源に不足するときに限り、予算の定めるところにより、一般会計は、国有林野事業勘定に繰入金をすることができる。」という制度もあるのでございます。したがいましまして、ただ、あるからくれというわけでは、国民全般の皆さんの御納得がいかないと思います。国有林の経営改善という、そういう大臣が先ほど言われましたような、そういう姿勢の中でこの制度を生かしていかなければならぬというふうに考えております。したがいまして、そういう意味におきまして、先生御指摘の線に沿うて今後も私たち最善の努力をしていきたいというふうに考えております。
  81. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、十九年間の実績の上に乗っかって言っておるわけなんです。それで、第一期の買い入れの実績、第二期の買い入れの実績、これから第三期をお始めになるわけですけれども、この実績からいって、これはたいへん問題があるというふうに思いますですね。私先ほど申し上げた四十四年から四十八年、五年間に二百七十一億円の国有林を売り払っている。そして買い入れた金額は四十億円、一五%ぐらいですよ。だから二百七十一億円というものを売っ払って、その中の一五%だけの金額で買っているわけですね。これはなぜこういうことになるかといえば、国有林が——これは独立採算制の立場に立って一生懸命努力しておるけれども、これは、山というのは、農業よりももっと収益性の少ないものだといってもいいんでしょうから、農業も困っておりますけれども、林業は一そうまた困っている面があると思うのですね。そういう中でどうしてもこういうことにならざるを得ない。だから、これから買い入れは私は、非常に重要だと思うのですけれども、これはやはり特別会計に背負っておる限りはなかなかこれはむずかしい、十九年の歴史が示しておるじゃないか。特に近年になってはずっとそういう強い傾向があるじゃないか。だから一般会計から負担すべきである。  しかも、これがこれから問題になりますと、これはやっぱり何としても休養の保護林、休養林でしょうからね。ですから、その意味ではぼくは、非常に公共性の高いといいますか、公共性そのものだといってもいい。そういうものを特別会計の中だけで何としても負担しなければならぬという私は、理屈はないというふうに思います。これは先ほど申し上げましたように、林野だけの問題、林業だけの問題ではなくて、都市計画の問題からいいましても、国民の立場からいいましても、これからは最も大きな問題だと思うのですよ。それだけに若干の金を一般会計から持ってこれないなんというのは、三億や四億の買い入れというような形で処理されたのではどうにもならない。あとほどまた大臣にも強く要望したいのですが、もっと大臣にはかみつきたいのですけれどもね、もっとしっかりしてくれと言いたいのですけれども。ぜひいまおっしゃるように、独立採算制というものを貫いていく、合理性を追求していくというだけでは済まない問題がここにあるわけですから、一般会計から持ってくるようにぜひ努力をお願いをいたしたいと思います。  次に、だいぶ時間が制約されておりまして、二時間しかないわけなんですよ。ですから、若干飛び飛びになって申しわけないんですが、一期、二期のこの十九年間の保安林の配置というのが、たいへん計画を上回って配置されたわけですけれども、これはいままでの経済情勢からいって、そういうことになると思いますが、これからはこれは容易じゃないと思うんですね。何か聞きますと、十年間に百万ヘクタールの保安林を配置したい。その中の五十万ヘクタールというのは、休養保護林だ、保安林だ、休養の保健休養林だ、保安林だというわけですね。これはなかなか私は、これからの状況としてはたいへんだと思うんですね。ですが、林野庁としてはどういう具体策をもって進めようとされるのか、基本的な考え方を伺いたいと思うんです。
  82. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま御指摘ありましたように、今後、保安林として増強してまいりたいと考えておりますものは、主として二つ、まあ小さくは三つございます。  その一つは、最近、建設省で調査した結果によりますというと、全国的に見まして、水の不足する地帯というのが八地域ぐらいございまして、約四十二億トンの水が不足するという結果も出ておるわけでございます。そういう意味もございまして、そういう水の不足するような地帯におきましては、これも先ほど申し上げたように、大体関東から西のほうの地帯に多いのでございますけれども、そういう地帯での水源涵養保安林というものをさらにふやしてまいりたいというふうに考えております。昨年これを全国森林計画の中できめたのでございますけれどもおよそそういったものが三十万ヘクタールございます。  もう一つは、これもやはり台風常襲地帯におきまして、そのほか集中豪雨等によって相当被害を受けている地帯がございます。そういう場所におきまして、土砂流出あるいは防備、そういった保安林の増強をしなければならぬところが約十五万ヘクタールあるのでございます。  そのほか大きくは、ただいま先生からお話もございました保健保安林でございます。現在のところ、あまり数はございませんけれども、特に中小都市を中心としまして、そういう近郊に保健保安林を増強していきたいと考えておりますが、これが約四十七万、約五十万ヘクタール近くあるわけでございます。それらを含めまして、いま全国森林計画では約百万ヘクタール近くというふうに予定いたしておりますが、いずれこの法案が成立いたしました暁には、この配備計画というのを検討いたしまして、その結果確定いたしますが、もう少しふえてまいろうかというふうに予想いたしております。  いずれにしましても、都市近郊の地帯に保健保安林をふやしていくということは、先生御心配いただいておりますように、非常に問題がございます。特にこの地帯は他の土地利用との競合が激しいということは、当然予想されるわけでございます。それからこの地帯は、非常に入林者が多いわけでございまして、いろいろな被害を受けやすい。たとえば火災の害であるとか、あるいは病虫害、そういったような被害を受けやすいというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、公的な所有形態にするということがやはり適当とする場合が多かろうと思うわけでございます。  四十九年度からは、そういう意味もございまして、この保健保安林につきましては、都道府県はぜひこれを所有して、つまり民有林を都道府県有林として購入して、それでこれ保全をはかっていきたいという希望が相当出てまいっております。そういう意味でございますので、四十九年度からは都道府県が購入する場合においては、国がそれに対して三分の一補助する。なおまた、その森林の内容を改良していくという事業費については二分の一を補助すると、こういう制度を四十九年度から発足させることにしたんでございます。  こういうふうなことでございますけれども、なお、保安林の指定に伴う損失補償の問題であるとか、あるいは税制上の優遇措置であるとか、あるいはいま申し上げたような火災なりあるいはその他の公害を受けやすい地帯でございますので、保護巡視等の適当な制度を強化していくというふうなことも考えていかなきゃならぬというふうに思っております。いずれにしましても、なかなかむずかしい問題であることは、私たちも十分覚悟しておるところでございますが、非常にこれは需要の強い制度でございますので、万全の策を講じて拡充してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  83. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまお話のありましたようなところはわかりましたですが、保安林に指定をするということは、これから従来よりも非常に困難になるんではないかというふうに思いますが、その場合に、いままでやっていらっしゃる優遇措置ですね、いろいろありますね。税制の問題だとか、あるいは造林について補助するとかいろいろありますが、いまあります優遇の制度よりも、もっと優遇するという制度をとらないと困難ではないかと、非常に困難ではないかということを私は感ずるわけですね。その点についていま優遇するというお話なんですが、具体的に現在ある優遇措置よりも、さらに強化していきたいという具体的な検討があるわけですか。その点、税制上なりそれから補助金の問題なり等々について、いま都道府県の問題はわかりましたですけれども、それ以外に、造林の場合だとか何だとか、——税制上の問題もありますですね。そういう問題でさらに優遇を強化するという具体的な検討を進めておるのかどうか。
  84. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保健保安林と限りませず、保安林全体について相当規制を今後強化していくという方針は、お話申し上げたわけでございまして、したがいまして、この内容につきましては、保安林の場合には特に四十八年度、四十九年度と分けてこまかには申し上げませんけれども、たとえば造林事業におきましては普通林の場合におきましては、新植の場合しか補助いたしておりません。保安林の場合には新植したあとの手入れ、そういった場合にも補助をする。それから補助率を加算する、こういうことを次第に強化してまいっております。たとえば、そういったような補助の問題、それから融資の場合等におきましても、やはり保安林の場合におきましては、その金利であるとか、あるいは償還期限の問題、これも優遇するようにいたしております。それから税制の場合におきましても、登録税その他の免除であるとか、あるいは譲渡税の軽減であるとかというふうな措置をいたしておりますが、これで十分だとは考えておりませんので、指定施業要件等を強化をしながら、保安林をさらにきびしく内容を充実し、指導していくとなりますれば、いま申し上げたような種類のものにつきましても、さらにこれを強化していかなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  85. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今度一番大きな柱は私は、休養保安林だと思うんですが、保健保安林だと思うんですけれども、まあ五十万ヘクタールというこれは森林法の二十五条に、一号から十一号まで目的で分けてありますが、その中の一号から三号までは国が取り扱うことになっておって、四から十一までは都道府県知事に委任してあるわけですね、指定を。それで一号から三号までは国が買い入れることができることになっておりますけれども、四号から十一号までは都道府県が買い入れるという規定はないわけですね。それで、今度問題になります保健保安林、これは十号に当たっているんだと思うのですが。したがってこれは都道府県知事が買い入れるという規定はないわけであるのですが、そういう規定は設けないで、先ほどお話のように、国が財政的に積極的に応援をする。二分の一の補助をするとか、あるいはその施設をする場合においては三分の一の補助をするとかというようなことでやろうというわけですか。都道府県知事が買い入れるという規定は置かなくてもいいのかどうか。先ほどお話のような形でやれるかという問題ですね。
  86. 福田省一

    政府委員福田省一君) 一号から三号と申しますと、御承知のように水源涵養保安林と土砂の流出または土砂の崩壊の防備保安林でございます。これが全体で九七%を占めておるわけでございます。これは水の問題であり、災害の問題につながり、人命に直接影響を与える重要な保安林でございますので、これは大臣が直接指定なり解除をいたしますし、また国が買い入れる場合も対象といたしておるわけでございます。四号以下につきましては、保安林としては重要ではございますけれども、一号なりあるいは一号ないし三号と異なるところはやはりその受益の対象がやや限定されておると。特に、保健保安林というものにつきましては、確かに非常に要望の多い機能を持った保安林ではございます。直接、いま申し上げた一号ないし三号と比べて生命に直接の影響を与えるというものではないのでございますので、その点を区分したいということでございますが、そこで都道府県知事がこれを買い入れたいという計画があった場合に、これに対して補助をするということにしたのでございます。ではございますけれども、やはり四号以下の保安林につきましても、今後はこれで特にその区分け等につきましても検討しなきやならぬというふうには考えております。そこでいま先生の御質問の御趣旨は十分わかりますし、保健保安林の重要性についても一号ないし三号とは性格が違いますけれども、全体の中でこの保安林の林種というものをさらに今後検討し、国が買い上げる場合、あるいは都道府県が買う場合、その他の場合等に区分して、どういうふうな措置を講ずるかはなお引き続き検討しなければならぬというふうに考えてはおります。
  87. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この休養保安林保健保安林、これは都道府県知事に委任してあるわけなんですが、国が指定をするということはできるのですか。十号だから、これは都道府県知事に委任してあるわけでしょう。そうすると、約五十万ヘクタールの休養保安林を指定をする場合に、農林大臣はできないんですか、都道府県知事だけ、のみがやるのですか。
  88. 福田省一

    政府委員福田省一君) 四号以下につきましては、国有林につきましては直接農林大臣が認定できるわけでございます。
  89. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは国有林について認定できるのかなあ、自分のところだから。しかし何だなあ……。
  90. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林の指定につきましては二つの道がございまして、一つは申請による手続きでございますし、もう一つは認定による手続きでございます。で、いま申し上げましたのは、国営の場合には、農林大臣がみずからこれを認定することができるわけでございます。
  91. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、これはこれから非常に重要だと思うものですから、あらゆる面で保健保安林は重要だと思うものですから、ちょっとばかり伺うのですが、一号から三号まで農林大臣権限、その権限を四号から十一号までは都道府県知事に委任してある。その都道府県知事に委任してあるところに休養保安林保健保安林が入っておるわけですね。だから、保健保安林の指定をいうのは都道府県知事がやるんであって、国がやるんじゃないでしょう。国がやれるんですか。
  92. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) 先生御案内と思いますけれども保安林に関する森林法の規定につきまして、保安林の指定その他につきましては、森林法の施行令の第五条で、民有林に関する保安林の指定については「都道府県知事が行なう。」という規定があるわけでございます。で、その第二項で、「都道府県知事が行なう。」と書いて、「農林大臣が自らその権限を行なうことを妨げない。」となっておりますから、第一項の規定に関する限り「都道府県知事が行なう。」という、まあ専管みたいな形になるわけでございますが、機関委任でございますから、農林大臣都道府県知事に指示と申しますか、こういうことをやってほしいということで、都道府県知事にやってもらうということは十分できるわけでございます。また国有林につきましては、農林大臣がみずから行なうということになるわけでございます。
  93. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 権限の「一部を都道府県知事に委任することができる。」と、森林法第四十条ですね、「委任することができる。」と。だからいま林政部長がおっしゃるように、私が問題にしているのは、その休養、保健保安林。国ができないのかどうか、民有林については。この権限を一部委任しているわけだから、「することができる。」ということなんだから、大臣として指示したりなんかすることができるという意味ですな。大臣直接はできない……。
  94. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) ただいま先生御指摘森林法の規定を受けまして、施行令の第五条で、その「(権限の委任)」の態様をはっきりさしておるわけでございます。で、第五条の第一項で、民有林の指定に関する事務は「都道府県知事が行なう。」ということになっておるわけでございますから、民有林の保健保安林に関する権限都道府県知事がやると、指定は都道府県知事がやるということになるわけでございます。ただ機関委任でございますから、農林大臣都道府県知事に対してこういうことをしてほしいということは十分言えるわけでございますから、そういう意味において都道府県知事にやってもらうということはあり得るわけでございます。また、国有林については、都道府県知事に委任いたしておりませんから、農林大臣がみずから行なうということになろうと思います。
  95. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まあしかし実際は委任しておれば、いま林政部長のおっしゃるような、民有林についてこうしてくれというようなところはできるのかなあ。実際いままでやったこともないんじゃないかなあ、どうかなあ。これは私が心配するのは、保健休養林、保健保安林というようなものは、何としても私は国がやる必要があるという考え方を持っているわけなんですよ。
  96. 平松甲子雄

    政府委員平松甲子雄君) まあ確かに先生おっしゃるような形で、保健保安林について最近要望が非常に強まってまいっておりますから、保健保安林の指定というものについて、国が直接やったほうがいいという事態もあり得るかと思いますけれども、一号から三号までの保安林のように、直接その受益が広範囲に及ぶとか、あるいは生命、財産に危険を及ぼすとかいうふうなものと違いまして、やはりある一定地域の方が受益されるというようなことで、その特定地域についての行政管轄をしておられる都道府県知事が直にその需要を受けとめられると、それが都道府県知事を飛び越えて農林大臣のほうまでくるという場合というのはわりあいに少ないんではないかと。ですから、そういうような形で都道府県知事都道府県民の間に意思の疎隔があって、どうして都道府県知事がやられないというふうな場合があり得るかということになるわけでございますけれども、そういう場合がもしありとするならば、農林大臣としてそれが必要であろうというように考えた場合は、先ほどのような形で都道府県知事にお願いするというような形になろうかと思います。
  97. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほど長官のお話の中に、都道府県保健保安林をやりたいという希望が相当強まっているというお話がありましたですが、確かにそのとおりだと思うんですけれども。その場合に私はいつも気になるのは、それを聞いただけで気になるのは、何か都市近辺にある国有林の売り払いを考えているんじゃないかというような、すぐそういう気になるわけなんですよ、従来の長い経緯から見ましてね。そんなことじゃないかというような気がするぐらいに、あまり気持ちがよくないですけれども、こういう話があるということは、よくないんだけれども。まあそれは別にして、国有林で都市近辺にたくさん飛び地がありましたね。たくさんあったですね。それで、それは三十ヘクタールのやつもありますし、それは二百ヘクタールぐらいのものもあるし、つまり国有林の団地から離れてあちこち都市近辺にたくさん飛び地があったわけですよね。そういうものがこの十数年の間に、まあえじきになっちゃったような感じがするわけですよね。そして至るところを売り払った。公共用地とか何とかということで売り払った。しかし十年の期限がたちますと、これはどう使ってもいいわけですわね。ですから、実際そういう都市近辺にあったたくさんの、そういう国有地の飛び地、これがいろいろな形で払い下げられて、それは一体どういう形になっているのかということになりますと、私は、非常に遺憾な状態になっているように思うんですよ。  それで最近でも、近年でも何か三十町歩か五十町歩国有地払い下げてくれと、それは緑の山にするんだと、あるいは市の山にするんだという話がある。ですが、よく聞いてみると、三分の一は売り払うと、財政的に苦しいですからね。三分の一は売り払って、あと三分の一以下ちょっぴり山を残して、あとは公会堂をつくるんだとか、公共施設をつくるんだというふうな話なんですね。そういうのがいままでの歴史じゃないかと思うんですよ、この十数年の間の。これがもしいま今日残っておれば確かにりっぱな私は保安林になっておったと思うんですね、休養保安林になっておったと思うんですよ。たいへんそれが残念だと思うんですけれどもね。そういうことについてどういうふうに考えていらっしゃいますか。いまたとえばいま都会の近辺に、小都市でもいい、大都会でもいい、たくさんの国有林の飛び地があると思うんですよ。それをどういうふうに処理されるという考え方ですか、これから。それをお伺いします。
  98. 福田省一

    政府委員福田省一君) 先ほどもちょっと触れましたように、国有林の分布を見ますというと、東北、北海道が非常に多くて、九州の南部に少しかたまっていると。あとは非常に西のほうが少ないという現状でございます。そこで、国有林の活用法案にもございますように、この国有林を農業のために、あるいはその他公益的な事業のためにこれを売った場合におきまして、その財源を西のほうの地帯の、主として脊梁山脈地帯のほうにまとめて購入していくというふうに自然しなければならぬというふうに考えているわけでございます。いまお話のございました都市周辺におきます、非常に飛び地になっておる小さい団地もずいぶん国有林の中にあるわけでございます。これらにつきましては、一応考え方としましては、都道府県なりあるいはそれぞれ地域の市町村等から、最近はたとえば墓地公園であるとか、あるいは住宅団地の施設にしたいとか、そういった意味での公共的なものに使うという希望が相当出てまいっております。でございますが、この小さな団地につきましては、その国有林が一つ経営単位としてみた場合に、森林として今後これを保存していく、あるいはもっと拡大していくかということを考えなきゃならぬわけでございますが、数町歩の小さいものでございましたならば、それぞれの地域の市町村等あるいは県等におきまして、これをいま申し上げたような理由に使いたいという場合は、要請がございまして、それが県会なりあるいは町村会等において議決され、地域の住民の方々が非常な強い要望があるという場合におきまして、しかもそれが将来ほかに転用されずに確実にそういった目的のために将来にわたって利用されるであろうということでございますれば、国有林の活用法案趣旨に基づきまして協力してまいる態度でございます。  大きくはやはりいま申し上げましたように、西の地帯の台風常襲地帯、また、水の不足する地帯におきまして、国有林をふやしていく場合が相当出てこようと思うわけでございまして、この場合の財源措置等につきましては、御質問の趣旨に、大臣がお答えになりましたようなことも踏まえて、今後私たちは関係省とも折衝してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  99. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私がいま問題にいたしておりますのは、そういうお話のような中の一つ、休養保安林について言ってるわけです。それでその休養保安林について、国が買うということできないわけですね。しかし国有林の中には小都市、大都市近傍にたくさんの国有林の飛び地がある。二十ヘクタールの場合もあるし、五十ヘクタールの場合もあるし、二百の場合もある。小さな飛び地が幾つもある。林業経営からみれば、これは林業経営としてやっていくことにはならない不合理性がある。それはぜひこれは休養保安林として国が直接やってもらいたい。いま都道府県があるいは市町村が、休養保安林にしたい、休養保安林にしたい、ということで、いろいろな申し入れがある、希望もあるというお話がありましたけれども、過去十数年の経緯からいって、十年たてば、——まあたたぬうちですよ。初めから譲り受ければ、国有林を買えば、すぐその中の三分の一を売り払わざるを得ない。いまの市町村の財政からいったって必ず売り払う。その金でそこに公会堂をつくる、公民館つくる、あるいはいろいろな施設をつくるということになっちゃうのですね。森林はほんの一部しか残らない。目先のことで問題考えちゃいけないのだ。私は、五年、十年、百年のやっぱりことを考えて、こういう問題を処理しなければいけない、せっかく国が持っておるのですから。ですから、そういう飛び地について、これから休養保安林として、保健保安林としてやるという土地については、国がやるべきではないかという考え方を持っておるわけなんです。それは過去十数年にわたる経緯からいって、国がやったほうがよくはないかというふうに思うわけなんですよ。国有林だって何やつたっていいでしょう、林業に関係することなんですから。保安林ですから、保安林として国がやっていいと私は思うのですね。まあ過去売り払った経緯からいって、そういう場合が非常に多いですよ。今後も私は、十年たったらどう処理したってかまわぬわけですから。それは目先のことにどうしてもとらわれがち、五年の先ぐらいまで目先のことにとらわれがちですが、これはもう小都市におけるそういう小団地というのは無数にあるわけですから、たくさんあるわけですから、そういうもの保健保安林として国がその管理運営をしていくという体制をとる必要がある。外国ではそうなっておるんですよ、これは。さっきもちょっと工藤さん、言っていましたですがね。どうですか。
  100. 福田省一

    政府委員福田省一君) 確かに先生御指摘ございましたように、過去におきましては開拓のため等に国有林を相当解放いたしました結果、それが他に転用された事例というのも相当でございますし、これをまた再び国有に戻してもらったような事例もあるわけでございます。それからいま問題になっております保健休養林というふうなものにつきましては、最近特に非常に強い要望が出てまいっておりますし、今後もこういったような要請はますます強まってくると思うわけでございます。そういったことを踏まえまして、最近それぞれの都道府県のほとんど全部が何らかの形でそういった規制の条例もつくっておりますし、また、県みずから いこいの森とか、そういったような保健休養の林をつくっております。また、市町村等におきましても、そういったような条例を制定し、またそういったような施設をつくっているものもございます。でございますので、過去がこうであったから今後これはあぶないのだというぐあいに、都道府県なり、あるいは市町村を疑うことも、私から見ますると、たいへん失礼ではございますか——いままでこうだったから今後だめだというふうに断定するのは早いのじゃなかろうかと思うわけでございます。そういうことも私は全然心配してないというふうには考えておりません。で、ございますから、これはやはり、いまの保安林整備臨時措置法というものと、それから森林法保安林制度というもの一体にして、いずれは恒久法としてこの保安林の地種区分をし、いかなる場合に国が購入し、いかなる場合に都道府県が購入する、それに対して国が助成をするというふうな、もの考え方は、相当まだ検討の時間をいただきたいと、こう思っているわけでございます。そういう意味で、御指摘の点については今後十分に検討してまいりたいと思っているわけでございます。  また、国有林につきましては、御承知かと思いますけれども都市近郊に、自然休養林という名前にいたしまして、数百町歩単位の保健休養林をそれぞれ設定しております。東京都では「高尾の森」がそれでございます。そういった数百町歩あるいは数千町歩単位の国有林の中に、そういう保健休養林を自然休養林という名前で、すでに四十九年度までに七十カ所設定しておりますが、これを近い将来に約百カ所ぐらいにはふやしてまいりたいというふうに考えております。そういう意味で、国有林は、現在持っております森林につきましても、そういう機能を持たしてまいりたいというふうに思っております。いま御指摘都道府県、あるいは市町村、そういったところにおきまして、保健休養林をつくる要望が非常に強いのは現実でございます。それに四十九年度は、都道府県が購入する場合に、先ほど申し上げましたように、補助する措置を講じたわけでございますが、いわゆる地方のそういった市町村、あるいは都道府県が行ないますそういう事業に対して、どういうふうに国が協力していくかは、なお慎重に御趣旨の点を尊重いたしまして、検討してまいりたいというふうに考えております。
  101. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、過去十数年なわたっていろんな経緯があると申し上げました。自治体が、休養保安林みたいなものを持っていきたいという気持ちはそのとおりだと思うのですよ。ですが、実際問題として、財政的になかなかそういかないのだというのがいままでの経緯ですよ。苦しいのですから、背に腹はかえられぬということになっちゃうのですね。いま自治体が、財源的に若干の余裕があるというならいいのですけれども、なかなかそうはいかないのですね。私の市にもそれは、「明治の森」なんてのをつくりましたが、いまはもう二ヘクタールくらいのものですよ。初めはでっかいですよ。だんだんだんだんなくなっちゃっているのですよ。二ヘクタールしかない。二ヘクタールないでしょう。そうなっちゃうのです。それはなぜかというと、財政的に背に腹はかえられぬ、住民は住民として住宅の問題を考えざるを得ないのです、目の前にあるから。五年後の、十年後の、百年後のことは考えられないですよ。ですから、いつの間にか住宅地になっちゃっているのです。それも、全部住宅にするというから、われわれ周囲の者が大いに反対して、やっと二ヘクタールぐらいしか残っていないのですよ。みんなあとは住宅地になっちゃっている。いまになって、何と言うかと、あれは残しておけばよかったと、こう言うのです。高尾の山にあるとおっしゃる。私は東京に三十年住んでいるけれども、一回しか行ったことないですよ。それも慰霊祭があったから行ったのです。あんな山のすみっこにそんな山があったってしょうがないじゃないですか。——しょうがないことはないけれども、やっぱり都会の近くに、すぐそこにある、すぐそこにあるというような休養保安林を持たなければ、三十キロ奥にある、四十キロ奥にあるというような保安林じゃ困りますわね。  ですから、いま、都会の中にそういう飛び地があるわけですよ、国有林は、あると思うのです、幾らでもあると思う。それを私は、県に売り払ってもいいものもある、しかし国が持っておって保安林にしてもいいじゃないか、国が持ってやったらいいじゃないか。国が持つ限りにおいては五十年、百年後も持ちます、これは。私は持てると思う。それがないからみななくなっちゃうのです。   〔委員長退席理事高橋雄之助君着席〕 東京だってそうでしょう。一ぱい国有地あったんですよ。いまは何にもなくなっちゃった。住宅の上を高速道路が通っているなんていうのは、世界じゅう例を見ないですね。住宅の上を高速道路が通っているなんていう事態になっちゃっている。それで、私は、やはりそういう意味で、休養保安林について、飛び地、これは国が持つものは国が持つというくらいの、国が持つものがあるというような考え方でやってもらいたいと思うんですね。私は五十年後、百年後のことを考えておるわけですよ。それを全部市町村や県にやらして、県に買わせるのだという話では、私は歩どまりがうんと悪いと思う。それは県が無視しているわけじゃないんですよ。財政的に苦しいから、背に腹はかえられないんですよ。何かそこに施設をつくるについても、三分の一は売るんです、すぐに。売ってそこにつくらざるを得ないのです。それがいままでの経緯なんです。ですから私は、この保安林について、休養保安林については、飛び地の国有地、その中で国がやるというものも相当あっていいと思う。そういう考え方でやってもらいたいということを言っているわけです。大臣どうですか、賛成してくださいよ。いいんじゃないかな。
  102. 福田省一

    政府委員福田省一君) 私お答えいたしましたのは、いまあります飛び地を積極的に売りましょうと言って、宣伝する意味ではございません。これはもうどうしても、やはり市町村としても、これはこういった理由でほしいんだということがはっきりした場合、しかもそれが転用される心配がない場合に限って限定しているのだということを申し上げたのでございます。いまある飛び地の具体的な例でございますけれども、たとえば、いまの目黒の林業試験場、あれを移転いたしますけれども、あれをあとは公園にして、あそこに一つの林業、農業博物館でも残しておくというふうなこともございます。原則として、あるいはまた貯木場なり、あるいは苗畑なりが整理されてまいりますというと、国有地として残るのはたくさんあるわけでございます。そういった場所については、地元の市町村、あるいは県当局との間で、そこを公園にしてもらいたいとか、いろいろ出ます。ですから、これは国がそのまま持っておって、それで利用する場合もございましょうし、ぜひ実は県なり市町村が持ちたいという場合には、それはいま申し上げたようなことがはっきりすれば、それを譲ってあげる場合もあるということを申し上げたのでございまして、基本的な考え方においては決して先生にさからっているわけではございませんから、御了承願います。
  103. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 時間がないのでね、ちょっと急いでおるんですがね。  次に、流域保安林のことについてお尋ねしたいわけなんです。これは、先ほど工藤委員のほうから質疑がありましたときに、林野庁長官が答弁になったのですが、この流域保安林について、先ほど長官のお話にありましたように、受益者の側が、木曾三川の場合、岐阜とか、愛知とか、三重の県並びに関係市町村、そうして関西電力、こういうところの出資、あるいは寄付金、そういうものによって、木曾山林の山元の造林公社ができているという話もありました。あるいは、滋賀の造林公社について、大阪府、あるいは京都府その他が一部の出資をしてやっているという例もありました。なおまた、昨年の九月ですか、群馬県の県議会が決議をして、そうして群馬の山について、これの影響を受ける受益者であるところの六県——何県になりますか、利根川の下流の六つの府県が治山、あるいは造林等について責任を果たすべきだと、こういう決議もいたしておりますね。ですから、私は、なおまた林野庁でおつくりになっておりました保安林問題検討会ですか、その保安林問題検討会も同じような趣旨を言っておりますね。受益者の負担というものを考えるべきだと、検討すべきだということを言っておりますですがね。ですから、私は、林野庁が地方行政のあと追いのようなことにならないように、すみやかにこういう受益者の負担というものを、これは検討するのではなくて、踏み切るべきだと私は思いますですね。地元の山だけが、山だけじゃなくて住民だけがたいへんな負担を背負っちゃって、そして、そのために利益を受けている人たちは知らぬ顔というんじゃなくて、いまあちこちにできておりますような事例も出ておるわけですし、保安林問題検討会のほうでも、こういうふうにはっきり言い切っておるわけですから、林野庁としてはこれを受けて、ここで受益者が負担するという検討をすみやかに始めるべきだと、踏み切るべきだと私は思うんですけれども、その点お伺いします。
  104. 福田省一

    政府委員福田省一君) 森林の公益的な機能の計量化調査については四十六、四十七、四十八年三カ年で一応終わったのでございますが、これはまあほんとうのマスプランでございまして、具体的にこれをきめるために、利根川の事例を、利根川におきまして四十九年度、ただいま調査をいたりております。すでに森林法の三十六条にもそういうふうな制度どございますし、先生御指摘のように、早急に結論を出して関係省庁と折衝してまいりたいと、かように考えます。
  105. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 じゃあ、ぜひそういうふうにひとつお願いをいたしたいと思います。   〔理事高橋雄之助君退席委員長着席〕  あと三十分になりましたので、もう一つは、保安林の、これ先ほども出ましたですが、保安林の解除の問題と、保安林行政というのがあるのかどうか知らぬですけれども保安林行政、この点についてお尋ねをしたいわけなんです。私は、森林法の一部改正審議の際に、保安林行政は一名、俗称その解除行政だというふうな皮肉った言い方をしたわけですが、それはまあ近年たいへん保安林の解除の申請が山積をするということになって、そのために保安林行政を取り扱っている人たちが忙殺されているということの、まあそのためにそういうような言い方がクローズアップしたんだろうと思うんです。ですが、それにいたしましても、近年の解除申請というのは山積みになっておるんじゃないですか。そうでもないですか。たいへんなものになっておるんじゃないかというふうに思いますし、処理状況というのは、申請して許可したというのは少ないようですけれども、それにしても年々ふえていますが、一体どの程度の申請があるものなんですか。これは県にも行くんですか。国に来るものと県に来るものと二つあるんですね、これはどうせ。どの程度これはあるものなんですか。  それで、ついでに聞いておきますが、そしてこれは保安林行政全体について、つまりその保安林を指定していますね、たいへんな、七百万町歩近いやつを。で、これからさらに百万町歩という指定をする。その中にはたいへん重要な、これはものすごく監視や管理経営の非常にめんどうな休養保安林というのもできるんですが、この保安林行政についてどの程度の人員が従事し、組織はどうなっているのか、そういう点を説明をしていただきたいと思います。
  106. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林の申請に関しまして、指定すべきもの、あるいは解除すべきもの林野庁には一号から三号のものがついて上がってくるわけでございますが、毎年約二千件ございます。なお、都道府県等において、知事限りで処理をいたしますものは、およそその三分の一ぐらいであろうというふうに推定いたされます。この保安林開発規制の体制を強化いたしますために、林野庁におきましては、現在十五名の人員を充てて行政の推進に当たっているんでございますが、森林法改正によりまして、開発規制の事務もまたこれに加わりてくるわけでございまして、四十九年度からは、このためにさらに治山課におきまして班を一つ増設をいたしました。なお、職員も二名増員したところでございます。同時に、都道府県においても鋭意体制の強化をつとめてまいっておりますが、県、それから本庁その他出先機関を通じまして、保安林行政担当職員は四十九年度の二月一日現在で実質四百五十八名にのぼっております。そのうち、専任の者は二百四十三名でございます。なお、開発規制実施に伴いまして、さらに職員の増員、あるいは係の新設など、体制の強化につきまして指導してまいりたいと考えております。
  107. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは話にならぬですね。林野庁は十五名で保安林行政やっておられると、いや、これはとても話にならない。これは大臣、よくひとつ判断をしてもらいたいと思う。十五名でこの大保安ですわ。七百万町歩に及ぶですね、をさばかなきゃならぬ。年間二千件あるというんですから、これはたいへんですな、容易じゃないなあ。それで、国全体としてというよりも、県も含めて実質二百四十三名ですな。これは私は、とてもこれじゃだめだと思うですね。これから十年の間に五十万ヘクタールの休養保安林をおつくりになる。その休養保安林というのは、これは人が自由に出入りをしなくちゃならぬところであるし、たいへんな出入りをしなければ価値ないわけですし、その経営なり管理なり監視なりというのは、これはたいへんだと思うですね、容易じゃないですね。私は、アメリカの例をこの間ひょっととってきまして、うらやましいと思ったですね。全然それはもう違うですね。ですから、七百万町歩に及ぶ保安林について、いろいろ管理をし、あるいはそれを監視する、あるいは巡視するというための経費も二億幾ら組んであるとおっしゃいました。まあこれは民間の人に頼んでやっていらっしゃるんだろうと思うんですけれども、ちょっぴりした日当を出してこういうことをやってみてもしようがないんじゃないですかな。これはだから私は、保安林行政というのは、いま言ったように、これが非常に重要視されるわけですし、重要視されなきゃならぬわけであって、その場合、いまのような行政組織なり行政の定員というものでは私は大きな問題があると思いますですね。まず、この組織の定員について、員数について、積極的にひとつふやしてもらうというふうにしてもらいたいと思いますね。これは国だけの問題じゃなくて、県にも及びますですけどもね。容易じゃないですね、これは。  それはまたもう一つあとほどでも申し上げることにいたしまして、この解除についての具体的な基準、さっきちょっとお話がありましたですがね。私、気になりましたのは、いろいろその事例を承知しているわけなんですよ。この保安林の解除の事例。まあ有名なのは、向こうのあれですわな、長沼のもありますわ。これも一ぺんやろうかと思ったんですけども、きょうはもう時間もありませんから。長沼の問題もあるし、それ以外の問題でも承知をいたしております。私が気になりましたのは、先ほど私、申し上げた保安林問題検討委員会というんですか、林野庁でつくっていらっしゃる。あるいはその保安林についての答申を出しているようですね。その中に、この解除について具体的な基準のことをいっていますね。どうもはっきりとした基準というのがないのではないかという印象を受けたのが一つ。もう一つは、この指定解除等の事務ですね。事務処理体制を整備せいというふうに書いてありますね。それからもう一つは、この検討会の答申によりますと、一定面積以上については利害関係者の意見を聞くことをやれと、検討せよということを指摘していますね。こういう問題についてどういうふうにおやりになるおつもりですか。いま、解除について具体的な基準のことが指摘してある、どうもはっきりないような指摘ですね。それからもう一つは、この指定解除、保安林の指定解除等についての事務処理体制を整備せよと書いてありますね。それからもう一つ、いま言ったように、一定面積以上については市町村長や利害関係者の意見を聞くようにというのが書いてありますね。で、いろいろこの検討委員会の報告書の中には問題にしたい点もあるんですけども、この三つについて、この保安林の忠告、三つについてどうなさるおつもりか伺いたい。
  108. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林の解除につきましては、森林法二十六条にございますように、指定理由の消滅の場合、それから公益上必要がある場合と、そういったことに基づきまして一応指導いたしておるところでございますが、具体的にはどのような指導をしているかと、また今後していくかという御質問でございますけれども、実はこの保安林の指定あるいは解除、これの基準と同様に保安林以外の普通林につきましても今回森林法改正していただきましたので、その中におきましてこの普通林の開発の、つまり普通林を森林以外に転用しようとする場合の判定の基準というものをいま作成中でございます。普通林につきましてもそのようにしていく方針でございますので、保安林につきましては、先ほど申し上げましたように、指定施業要件等、質の点で充実してまいりたいということについて申し上げたわけでございます。その中間報告の結果も申し上げました。これらの結果を待ちまして、保安林の解除の場合につきましても、普通林の場合と並べまして、その基準というものをはっきり定める準備をただいまいたしておるところでございます。  それからその事務処理体制につきましては、組織、人員の問題でもございます。ただいまこの点について御指摘がございました。なお今後とも、この林野庁のみならず、営林局あるいは都道府県等におきまして、この組織の点におきまして、あるいは人員の点におきまして、一そう拡充していく努力をしてまいりたいというふうに思います。  それから一定面積以上のものにつきましては、関係者からの意見を聞くべきではないかという御意見でございます。まあこれにつきましては、ただいま申し上げております基準を策定する場合におきまして、森林審議会の意見等も聞く考えでございますし、また関係市町村等の意見も参考にしてまいりたいと思っております。これは、そういった基準をつくるばかりでなくて、相当大きな面積にわたるものにつきましては、いま申し上げた森林審議会あるいは地元市町村の意見を聞いて、十分その意見を取り入れてまいるというふうにしてまいりたいと考えておるところでございます。
  109. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣にお尋ねをし、また大臣考え方を伺いたいんですけれども、いま私、保安林行政について長官に伺ったわけです。で、まあこの保安林問題検討会の中にも指摘いたしておりますが、保安林の指定解除についての事務体制を整備しなさいと、それについて長官もお答えがありました。ですが、私は、この保安林がいま七百万ヘクタールあると、さらにこれをこれから十年の間に百万ヘクタールプラスをしていく。その中には、特に休養保安林保健保安林というものが五十万ヘクタール、あるいはそれをこすということにもなるでしょう。そういう保安林の量を拡大すると同時に、質を強化していかなきゃならないということになっておりますし、特にこの保健保安林等については、こへは管理、監視の体制というものが非常に必要だと思うのですね。で、今後ますますそういう意味で、この保安林行政というものは量的に質的にその事務というのは非常にふえてくる。それに十五人じゃこれはどうにもいけません。課ぐらい一つつくってですね、それで県も少ないんですね。都道府県もですね、専任は二百四十三人なんですよ。一県に五名ぐらいしかいないところがありますよ。これじゃどうにもならない。ですから私は、この保安林行政についてぜひ、これは重要な問題でありますから、今後ひとつ根本的に考えてもらいたい。保安林行政の組織と定義について考えてもらいたい。  それからもう一つは、これは森林法改正のときに大臣にもお尋ねをいたしました。で、それは、民有林に対する指導の組織というものと定義というものがはなはだ不足しておる。いま国有林というのは長い間、林野庁と言う人は林野庁の人だけであって、まあもののわかっておる人は林野庁とは言わぬ、国有林をやるところだと思っておるのです。民有林は国有林の二倍以上の面積を持っておる。しかも指導すれば森林の資源としてもうんと発展する潜在力を十分持っていますね。で、それに対する民有林のその指導の体制、あるいはその人員、組織というものが非常に不足しているのです。ですから保安林行政、それからいま言う民有林、これはもう一緒の問題なんですが、そういう行政について、組織と機構、定員の問題についてですね、大臣ひとつはっきり、ひとつ決断をしてもらいたいと思いますね。で、先ほど私が申し上げましたように、その森林に対する期待なり希望なりというものは、いまその林野庁におる者だけじゃない、林業に従事している者だけじゃなくて、いろいろな意味で国民が非常な関心を持っているのです。それだけにたいへん重要なものになってきていると思うのです。そこでいま言うこの機構や定員の問題について根本的にひとつ考えてもらう、決断をしてもらいたいと思う。いまも努力していらっしゃっていることはわかっておりますですけれどもね。その点をひとつお尋ねをし、大臣のひとつ御意見を聞きたいと思います。
  110. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 一般の人々の中には、農林省全体の人員の数を言うと、びっくりしている人はたくさんおります。そんなに大ぜいおって、どういう仕事をしているんだということを、しろうとはよく申します。で、まあ私どもとしては、食管にしても、林野にしても、それ相当の非常に重要な仕事であることを解説はいたしておりますが、まあ林野庁につきまして、仕事の重要性というのは私どもよく認識をいたしておりますが、いまの保安林行政等につきましても、私、本庁と地方関係のことをあまりつまびらかにしておりません。仕事の重要性にかんがみて、たお長官をはじめ部内の状況を相談をいたしまして、これはもう仕事が十分できないようではいけませんので、そういうことには力を入れてまいりたいと思っておりますし、林野庁職員全体の組織、機構についても、これは部内でも検討いたしておりますが、なおそういうことについては私も特別な関心をもってやっていきたいと思っております。  それから民有林の行政でありますが、これはいま御指摘ございましたように、全山林面積の三分の二は民有林が占めておるわけでありまして、しかもまた、民有林、山を持っていらっしゃる方には、常にこの林野庁の指導、つまり何といいますか、政府の指導というものにかなりのウエートを置いてお考えになっていらっしゃる、この傾向は、よく私どもは気がつくのであります。そういうことにつきましては、われわれにとっても重要な仕事でございますので、これからも民有林の行政について力を入れてまいりたい。また同時に、そういう力を入れられるような組織、機構にもいたしたいと思っております。四十九年度予算等でもそういうことを配慮いたしまして——民有林関係の予算につきましては毎年拡充がはかられておりまして、四十九年度予算額は約一千三百七十億円と、四十年度予算に比べまして約四倍の伸びを示しております。それからまた、この間における国有林野事業特別会計の予算額は約二・五倍の伸びを示しておるわけでありますが、職員数は、御存じのように、各省の定員が削減されておる状況にありまして、四十八年度は八十九名、四十九年度は七十四名と一般林政関係の定員数は逐次増大いたしております。それからまた、職員に一生懸命でやっていただくための処遇の改善等につきましては、これも並行してわれわれ一同で努力をいたしておるわけであります。こういうことにつきましては、従来もしばしばこの席でもお話があったわけであります。そういうことで、林政の大事な部分を担当してまいる者の組織、機構については、さらに一段と検討をいたしてみたいと思っております。
  111. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ぜひ大臣、いまの保安林行政並びに民有林行政につきまして一段のひとつ御努力を御要望いたしておきたいと思っております。  私は、農林省のPRをするわけじゃないんですが、農林省は、人間が多いというような話をよく——大臣もお聞きのようですが、私もよく聞くんですけれども、何を言うかと——何せ六百万ヘクタールの農耕地を農林省が管理したりいろいろ指導しているんだと、さらに日本全体の山を管理したり指導しているんだと、さらに日本の領海はもとより、世界の七つの海を管理運営をしているんだと。何を言うかと言って、私はよく言うんですよ。はあはあ、なるほど、と言ってみんな納得しますね。(笑声)七つの海をやっておるんですからたいへんです、これ。そして事業者は小さいし、漁家も小さいし、農家もたくさんありますし、たいへんですよ、これ。  最後に、先ほど以来、長官のほうからも出ましたですけれども、この保安林の臨時措置法を今回延長いたしまして三十年になるわけです。三十年の時限立法ということになるわけですけれども、しかしこれは、この過程の中で、明らかにもう質的に変わったというふうに見なきゃならぬと思います。決して臨時的な、緊急な、そういう法律ではなくなっていると。三十年という時限立法、しかも、これからもますますこの保安林というものは重要視されなければならない性格のものだと思います。そういう意味で、私は、森林法の中に保安林のことを取り扱った一つの大きな柱があるわけでありますから、その中に組み込んで恒久的な法律として処理する必要があるんではないかということが一つ。  で、もう一つは、森林法の二十五条の中に保安林目的保安林のつまり十一の目的が書いてありますが、それから、いまのこの問題になっております保安林の臨時措置法の政令によりますと、十七の保安林の種類が掲げてあるわけですね。それらを見ますと、なかなかもう時代に沿わないようなものになっているという印象を非常に強く受けるわけです。ですから、こういう保安林のその十一の目的、十七の種類、こういう問題についても新しい段階に立って再検討をされる必要があるのではないか。それが森林法のまた改正という形につながってくると思うんですけれども、そういうことについてのひとつ長官の御見解を聞きたいと思います。
  112. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林種の問題につきましては、十一の目的、十七の種類がございます。これにつきましては、先生の御指摘がございましたように、新しい時代の要請に沿うように今後十分検討してまいりたいと考えております。また、この森林法の中にありますところの保安林制度の問題と、この保安林整備臨時措置法の今度延長していただくこの問題、これは十年延長でございますけれども、十年の経過を待つという意味じゃございません。いずれできるだけ早い機会に、この森林法保安林整備臨時措置法と、二つを一緒にしまして恒久化するように検討を急ぎたいというふうに考えておるところでございます。
  113. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 別に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  114. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) では速記を起こして。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより採決を行ないます。  保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  115. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  ただいま可決されました保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案が先ほどの理事会においてまとまっておりますので、便宜私から提案いたします。  案文を朗読いたします。   保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  わが国の著しい経済発展と都市化により、森林及び林業をめぐる諸情勢はきわめてきびしく、保安林に期待される役割はますます重要になつている。  よつて政府は、保安林の配備、機能の維持、管理等について適切かつ厳正な運用を推進し、保安林の保全及び充実に関する公約負担の拡大を期するとともに、森林・林業政策全般との関連において保安林制度を再検討し、総合的な施策整備を図るべきである。  右決議する。  以上であります。  それでは本附帯決議案採決を行ないます。本附帯決議案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  116. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって本決議案全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣
  117. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し善処してまいる所存でございます。
  118. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) なお審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十一分散会      —————・—————