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1974-04-23 第72回国会 参議院 農林水産委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十三日(火曜日)    午後一時四十一分開会     —————————————    委員の異動  四月十三日     辞任         補欠選任      平泉  渉君    久次米健太郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         初村滝一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高橋雄之助君                 足鹿  覺君                 鶴園 哲夫君     委 員                 佐藤  隆君                 田口長治郎君                 棚辺 四郎君                 温水 三郎君                 堀本 宜実君                 神沢  浄君                 工藤 良平君                 沢田  実君                 塚田 大願君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   山本茂一郎君        林野庁長官    福田 省一君        水産庁長官    内村 良英君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        水産庁漁政部漁        業保険課長    山内 静夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○沿岸漁場整備開発法案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず政府から趣旨説明を聴取いたします。倉石農林大臣
  3. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  現行保安林整備臨時措置法は、昭和二十八年の大災害を契機として山地災害防止を主目的に、昭和二十九年に制定されたものでありますが、その後、国民経済発展に伴う水需要の増大に対処して、水源涵養保安林配備の促進を主たる目的としてその効力が延長され、今日に至っております。この間、土砂の流出防備及び崩壊防備水源涵養等目的とする保安林配備は、ほぼ当初の目標を達成する等相当成果をおさめたのであります。  しかしながら、最近における都市化進展に伴い森林保健休養機能に対する国民的要請が急速に高まっているほか、国土開発進展等に伴って一部地域では集中豪雨等による山地災害の発生や水不足の事態が起きるなど、保安林をめぐる情勢はかなり変化しており、これに対応して適切な保安林配備を進めるとともに、保安林機能を十分発揮させるため適正な施業を行なうことが緊要となっております。  このため、保安林の量的質的な整備を計画的に進めるとともに、保安林整備一環として、国による保安林買い入れ措置を継続して実施する必要があり、保安林整備臨時措置法有効期間を十年延長することとしたのであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  4. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。福田林野庁長官
  5. 福田省一

    政府委員福田省一君) 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  現行保安林整備臨時措置法昭和二十九年に制定されて以来、保安林整備は、十年ごとの二期にわたり保安林整備計画に基づき実施されてきたのであります。  この間、保安林の面積は、昭和二十八年度末の二百五十二万ヘクタールから、昭和四十七年度末の六百九十四万ヘクタールヘと大幅に拡充され、また、保安林整備計画は、第一期、第二期ともに目標を上回った実績をあげる等相当成果をあげていると考えております。  しかしながら、最近における保安林をめぐる情勢変化は著しいものがあるのであります。  その第一は、森林環境保全機能等に対する国民的要請の高まりであります。近年の都市化進展の中で、緑の確保が強く叫ばれ、森林の有する生活環境保全、レクリエーションの場の提供等機能に対する国民の期待は非常に強いものがあり、これに対応して都市周辺部を中心として保健保安林等の積極的な配備が必要となっております。  第二は、水需給の逼迫の問題であります。すなわち、過去二十年にわたる水源涵養保安林等配備は、全体としての水需給の緩和に大きく寄与したものと考えますが、今後の水需要の動向を考えますと、人口、産業集中化等に伴い、なお地域によっては水不足を来たすことが見込まれ、これに緊急に対処する必要があります。  第三に、災害防止の問題があります。最近の災害傾向として、集中豪雨等による被害が多く見られますが、最近の国土開発進展等に伴い、今後この種の災害は一そう広範に及び、また深刻化することが懸念されるのであります。  以上申し上げました量の面での保安林整備要請に加え、保安林質的向上もまた緊急を要するのであります。  すなわち、保安林につきましては、その指定施業要件を定めて施業合理化をはかることとしておりますが、最近における国土開発進展等に伴い、保安林保全対象が大きく変化していること、森林の有する環境保全機能に対する国民要請が強まっていること等を考慮に入れ、この指定施業要件適正化をはかり、緊急に保安林内容向上させる必要があるのであります。  また、保安林整備一環として実施する国による保安林買い入れにつきましては、保安林整備計画の一部である買い入れ計画を再検討した上で、国土保全国民生活の安定の要請にこたえるべく、さらにこれを継続してまいりたいと考えております。  これらの目的を達成するため、本年五月一日をもって失効することとなっております現行法律有効期間を、さらに十年延長するのが、この法律案内容であります。  以上をもちまして、保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案提案理由補足説明を終わります。
  6. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 本案に対する質疑は後日行なうことといたします。     —————————————   〔委員長退席理事高橋雄之助君着席〕
  7. 高橋雄之助

    理事高橋雄之助君) 次に、漁業災害補償法の一部を改正する法律案漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案沿岸漁場整備開発法案、以上三案を一括して議題といたします。  三案の趣旨説明は前回聴取しておりますので、これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、今回提案されております漁業災害補償法改正案漁業近代化資金助成法並びに中小漁業融資保証法改正案、そして沿岸漁場整備開発法案の三法案について質問を行ないます。  まず、これら三法案内容に入ります前に、わが国漁業役割り、さらにまた、わが国漁業をめぐる環境変化、そして将来の展望等についてお伺いをしてみたいと思います。  わが国漁業は、関係者努力によって昭和四十七年に一千二十七万トンという千万トンの大台に生産量が上がっておるのであります。さらにまた、金額的に見ましても一兆一千九百万以上、約一兆二千億という大きな金額に上がっております。これは、量的においても、金額の上においても非常に高い水準になっておって、国民食糧、特に国民食生活に最も重要な動物性たん白質供給、あわせて漁業の経営の安定、さらには生活向上のために非常に貢献しておると私は思うのであります。  最近、国民食生活向上に伴って国民一人一日当たりの動物性たん白質摂取量欧米諸国並みに近づいてきておるというような数字が出ておるのであります。その要因はやはり私は、畜産物とともに魚介類が、その過半を安定的に供給をしておるからである、こういうふうにまあ解釈しておるわけでございます。以上のとおりであるとするならば、食糧産業として重要な役割りを果たしてるわが国漁業でありますがゆえに、こういう立場をすべての者が注意して見るようになってきておる、というような関係からいたしまして、この国際環境が非常に恵まれ  何というか、急転して変わりつつあるということでございまして、同時にまた、私は、わが国漁業にとって非常にきびしいものを感じられるというふうに考えておるわけでございます。そこで、政府においては、わが国漁業の安定と発展のために積極的に取り組む姿勢を持ってもらいたい。また、そういうことを期待しながら次の四、五点についてお尋ねをしてみたいと思います。  まず第一が、国連における第三次海洋法会議についてであります。これは、ことしの六月の二十日からベネズエラの首都のカラカス、ここで実質的な第三次海洋法会議が開催されるのでありまするが、これは何といっても、ここで大きく議題になるのは領海の幅員、排他的経済水域、あるいはまた大陸だな、さらに海峡の交通権、そして海底資源開発等、この新しい海の秩序を確立するための重要な問題が討議されると思いますけれども政府は、この海洋法会議にあたってどういう考え方、どういう姿勢で、どういう決意をもって臨もうとしているのか、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  9. 山本茂一郎

    政府委員山本茂一郎君) ただいまの御質問の中にございましたように、日本漁業相当な進歩をいたしまして、将来に対して大きな希望を持てるものがあると思われますが、それと同時に、第三次海洋法会議そのほかのこういう情勢考えてみますというと、世界的な立場において、いろいろと考えていかなければならない点があると、こう考えるわけでございます。ことに、ただいま御指摘になりましたように、国によりましては、これは、世界の一流国でないと言うと、ことばは悪うございますが、そういう国の中におきまして、二百海里ないしいままでわれわれの持っておった常識以上の広い場面を、自分専有漁場にするような考えを持っておりまして、またそのほかにおきましても、日本食生活におけるたん白資源の増加そのほかというような問題からまいりまして、ここにわが漁業の前途に一つ大きな問題が提起をされたものと私ども考えておるわけでございます。  この海洋法会議をそのまま見ましても、私どもは、専有のその広い場面の主張に対しましては、そこの優先権的なものは考えますけれども一つの領海的なものの考え方に対しては私どもは、農林省としてはこれは反対であります。それがために必要なる処置を、今後いろんな機会において処置をとりながらやっていきたい。また、これらの国等に対しましては、その他の分野におきまして、経済的あるいは技術的な協力問題、そのほかの処置も進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  10. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いま政府考えを聞いたわけでございますが、やはり私ども日本は、三海里を十二海里までは、という一応の腹案があるようでございますが、やはりそういう点を十分強く守るためには、そういう理解各国にしていただくというようなことが必要かと思いますので、一そうの政府の強い決意のほどを要望いたしたいと思います。  第二点は、日ソ漁業交渉についてであります。これは先日、私ども自由民主党水産部会において、ことしの日ソ漁業協定内容報告を聞いたわけでございます。その報告を聞いたのでありまするが、ことしの日ソ漁業交渉は従来にない非常にきびしいものを感じられるのであります。したがって、わが国は従来の、漁期に迫られて不満ながらも、しかたなしに合意をせざるを得なかった、という過去の実績を踏まえて、ことしこそは、そういう不如意ながら、不満足ではあるが漁期に迫られてそれを合意をするというようなことのないようにひとつ、早くから交渉を進めているようでありまするから、こういう点、国民にそういう影響、考え方を与えないような進め方をしてもらいたいと思うのでございますが、この点について政府考え方をお願いしたいと思います。
  11. 内村良英

    政府委員内村良英君) 本年の日ソ漁業交渉は御案内のように日ソ漁業委員会日ソカニツブ交渉とも三月の初めからモスクワで開催されております。現在、交渉は、本年の規制措置審議に入っておりまして、私どもといたしましては、できれば今週中に話をまとめるようにしたいということで、現地代表団とも連絡をとりながら交渉を進めている段階でございます。この日ソ交渉につきましては、わが国サケマス漁期が、いわゆるB区域については四月三十日、A区域については五月十五日、それからカニ漁業につきましては四月二十五、六日ごろから漁期になるということで、漁期に迫られて日本側はいろいろ譲歩してきたのではないかということがございますが、私どもといたしましては、そのようなことがないように今年は努力し、かつわが国漁業に困らないようになるべく早期に妥結するよう努力をしている最中でございます。
  12. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私はやはり両国間で、日ソ間で漁獲量が非常にかみ合わない、そのためにやはり漁業資源の保存と発展のために共同処置をとるというふうになっておると思うんです。——これはやはり両方の科学者考え方にも相違があろうかと思うのです。そういう点で、もう少し両国間のそういう措置が近づけるような方法はないものかどうか、これがあれば私は両国交渉というものがスムーズにいく。こう思いまするが、この点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  13. 内村良英

    政府委員内村良英君) 確かに、ただいま先生から御指摘がございましたように、日ソ漁業委員会科学技術小委員会両国科学者会議を持ちまして、資源の状況について審議をしているわけでございます。  そこで、本年もマス白ザケ紅ザケそれからマスノスケ銀ザケという、それぞれのサケの種類につきまして資源評価をやったわけでございますが、意見の一致したものもございます。たとえば、銀ザケとか、マスノスケにつきましては、近年の平均的水準を若干下回るだろう、あるいはほぼ同様の水準だというようなことで、この二つの魚につきましては意見が一致したわけでございますが、白ザケ紅ザケについては意見が一致しなかったわけでございます。  すなわち、紅ザケについて申しますと、日本側は近年の平均的水準に近いと。資源は減っているけれども、比較的安定しているという見解を出しておるのに対しまして、ソ連側は、昨年の一九七三年の水準よりも低く、日ソ漁業条約締結以来最低であるというような見解を、ソ連側科学者は出したわけでございます。  そこで、これらの点について科学的な意見が一致すれば、あとの規制措置その他の話が非常にスムーズに進むのではないかという御質問でございます。そこで、資源評価のやり方でございますが、こまかい技術的なことは除きまして、方法論におきましては、ソ連側のやっておること、日本側のやっておること、大体同じなんでございます。ただ、データの読み方が違ってくる。たとえばいわゆる統計数字を読みます場合にも、統計には誤差がございます。そこで、平均で見るか、誤差範囲の上限で見るか、下限で見るかというようなことによって、数字見方が非常に違ってくるということもあるわけでございますが、同じようなことがございまして、その辺の見方によって意見が違ってくるということがあるわけでございます。  なお、資源評価相違をなるべくなくすようにしようということは、今日まで両国科学者がいろいろ努力しているところでございまして、今後におきましても、この点につきましては、努力はわれわれといたしましても続けなければならないと考えておりますけれども、その評価のしかたになりますと、そういった面もあるということで意見相違が現在のところ出ているわけでございます。
  14. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 第三点に、私は日中漁業協定についてお尋ねをしてみたいと思います。  これは十八日に、中国において、政府間漁業協定の実現を目ざす第一回の日中漁業専門家会議が開催されております。その前に、日中航空協定が事実的に成立したやさきでもあることだし、私は、今回の第一回の日中漁業専門家会議に、水産庁安福次長が出席されたということを長崎の新聞の記事で読みました。そして私は、非常に両国間にいいきざしが見えたというふうに喜んでおるわけでございますが、大体協定の見通しとか、あるいは内容等について明らかにされる範囲内でよろしゅうございますから、御答弁願えれば幸いかと思います。
  15. 内村良英

    政府委員内村良英君) 日中の漁業協定は、日中共同声明第九項に掲げる実務協定一つでございまして、できるだけ早期に締結すべきものでございます。この点につきましては、本年一月大平外務大臣中国に行かれました際も、両国間で意見が一致しているところでございます。さらに、今月に入りまして、中国側から漁業協定締結予備会談をしたいという申し入れがございまして、これは、かねがね日本側から、そういった会議を持とうということを申し込んでいたわけでございますが、それを受けまして、会議をやろうということで、現在水産庁安福次長を団長とする日本代表団現地に参りまして、十八日から会議を持っております。これは漁業協定自体交渉会議ではございません。漁業協定会議を持つための予備会談でございます。  そこで、今日までのところ、どういうところが行なわれておるかと申しますと、東海黄海漁業資源につきまして日本側見解中国側見解を述べまして、魚種について資源がどうなっているかという話し合いをしております。とあわせまして、御案内のように、現在、日中間には、民間漁業協定がございますが、これが六月の二十二日で期限が切れるわけでございます。したがいまして、六月の二十二日までに、政府間協定ができるような協定交渉をやりたいということで、積極的に中国側と折衝しておるわけでございます。したがいまして、話がつけば六月二十二日までに、政府間協定ができるように政府間の協定交渉会議を持つということになると思いますが、現在の予備会談からそのまま政府間協定交渉会議に入るのではなくて、予備会談は今週で打ち切りまして、そこで帰ってきてからあらためて本交渉をやるということになるのではないか。その場合に、わが国といたしましては、わが国としての日中漁業協定につきましての条約案というものをつくりまして、それを提示する。そうなりますと、おそらく中国側中国考え方を出してくるということになりまして、そこで交渉が始まる。こういう段取りになるのではないかと思っておりますけれども、その辺のところを、そのように進めるように、現在、安福次長以下、日本代表団が一生懸命交渉している段階でございます。
  16. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 そういたしますと、予備会談ですから引き下がってきて、日本側日本側としての成案をする。その場合に、特に黄海東海を主漁場としておる生産者ですね、漁民。こういう方々の御意見も私は、十分取り入れて、実際はこうなんだと、科学的にはこうであるが、実際はこうなんだというような御意見を取り入れる必要があると思う。そういう用意があるかないかお尋ねしたい。
  17. 内村良英

    政府委員内村良英君) 過去十年以上民間協定がございまして、それによって日中間漁業秩序というのが維持されていたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましても、政府案——かりに五月なら五月に本格交渉をやるということになった場合に、政府案をつくらなければならぬわけでございます。その政府案の作成につきましては、関係漁業者方々意見は十分聞いてつくりたい、というふうにやりたいと思っております。
  18. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次は、非常にまあ問題が大きい捕鯨問題についてお尋ねをしてみたいと思います。  昭和四十七年の六月に、ストックホルムで開催されました国連人間環境会議において、米国提案に基づいて商業捕鯨を十年間禁止するというような提案が議決されておるわけでございます。そこで、その提案が勧告になって、採択されてから以来というものは、国際捕鯨取締条約に基づいて、国際捕鯨委員会四十八年会議においても、同様な問題が提案された。ところが、そのときには、科学的な根拠がないじゃないかということで葬られたわけですね。ところが、一方、南氷洋捕鯨においては、ナガスクジラを捕鯨すること——とることは、一九七六年の六月三十日までに、すなわち昭和五十一年の六月三十日以前にやめてしまえというようなことにきまっておるわけなんです。また、その他の鯨においても、量的に非常にきびしく制限をされておるわけでございます。で、わが国捕鯨をめぐる国際環境がそういうふうに非常にきびしいのでありますから、これに対して——この捕鯨に携わる漁民は五万と言われております。その五万に対する家族その他も生計を捕鯨によって立てておるということを十分私どもは知らなければならない。現に行なわれている捕鯨の、鯨をとるなという禁止運動には科学的な根拠がないように私は聞いておる。そうだとするならば、積極的な外交を展開して、あらゆる機会に私は、やはりわが国立場を説明して、米国にしましても、カナダにしましても、関係各国に対して、正しい理解を得るような運動をすべきではないかというふうに考えるわけでございますが、政府のこれに対する考え方、取り組み方、これをお伺いしたいと思います。
  19. 山本茂一郎

    政府委員山本茂一郎君) ただいま御指摘になりました捕鯨の問題につきましては、従来から、わが国としては、外交チャンネル等を通じまして十分説明をし、理解を求めておる次第でございます。しかし、ただいま御指摘がありましたように、科学者によるところの問題に必ずしも十分でなかった点があるかもしれません。われわれとしましては、これは将来、今後におきましても、さらに情報機関そのほかを通じまして、この点に対して理解を求めたい、こう考えておるわけであります。また、一般の通信網そのほかによってもこの点について将来努力をしていきたい、こう考えておるわけであります。こういうような方法によりまして、わが国立場関係諸国に十分御理解をいただくように今後においても大いに力を入れたい、こう考えておるわけでございます。
  20. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私どもが聞いた範囲によりますと、この反対運動が、小学校の子供の作文になって、田中総理とか、あるいは日本から行く方々に宣伝をするというようなことを聞かされれば、やはり私は総理にいたしましても、十分その真相を知らなければやはり情に引かされるわけでございます。したがって、わが国外交に当たる外務大臣にしましても、米国を訪れる各大臣諸君にいたしましても、十分私は、日本捕鯨という実態を知らな過ぎるんじゃなかろうかと思いますので、特に農林省において、こういうものだということをよく知らして、もしそういう陳情があれば、実はこうなんだというような、お答えができるような、予備知識を与えてもらいたい。そうすることが、日本捕鯨相手国に知られる一つ方法ではなかろうか、かように考えますので、一そうの御努力をお願いいたしたいと思います。  次に、私は漁業用燃料、燃油、漁業資材等についてお聞きをしてみたいと思います。漁業用燃料は、従来いわゆるA重油がほとんどであって、四十八年度の統計を見てみますと、国内補給が六百万キロリッター、保税油と海外補給油を百万キロリッター、合わせまして七百万キロリッターを必要としているのであります。この燃料油の量の確保及び価格の動向いかんは、やはり私は、漁業経営の死活を制する重大な問題であると思うのであります。  そこで、次の諸点について端的にお伺いをしますので、また、端的に、やれるかどうか、やりましょう、やります、というようなお答えを願えれば幸いかと思います。  まず、量の確保の問題でありますが、農林漁業における特殊事情といたしまして、従来二百五十万キロリッターを製品輸入していたのであります。今後においても、やはり製品輸入をする必要があるのでございます。政府は、さきに石油製品の価格引き上げにあたって、政策的配慮をなしたと。これは国内精製にかかわるA重油については、元売り価格を八千九百円の値上げ幅として押えた。それで平均元売り価格をキロリッター当たり二万五千三百円とすることとして、末端価格についても、元売り価格の上げ幅をこえないように、その上げ幅以下になるように強力な指導をしておったのであります。このような国内の処置によって、国際価格より国内価格のほうが低くきめられておるわけですね。そういう関係から、A重油を輸入する場合は、キロリッター当たりに約二千円の割り高となるわけです。したがって、これを二百五十万キロリッター輸入する場合には、五十億円の差損を生ずる計算になるようでございます。そこで、この種の差損については政府が補てんするかどうか、補てんする考えがあるのかどうか。あるいは何らかの手当てをして輸入の確保につとめて需給の円滑化をはかるべきであると思うわけですがね、この点を端的にひとつお答え願えれば……。
  21. 内村良英

    政府委員内村良英君) それでは端的に答えさせていただきます。  確かに今後におきましても、漁業用のA重油につきましては、輸入油に依存せざるを得ないということになる面が多いと思います。そこで、現在のところ、輸入のA重油のほうが値段が高いと、そこでその差損が出るから、それを見なければ、漁業者に安定した安いA重油が供給できないのではないかという御質問だと思います。私どもといたしましても、この問題は非常に重要だと思っております。そこで今後の問題につきましては、A重油が国際的な市況に左右される商品だということがございますので、価格の動向が、今後どのように推移するか、現在のところ、関係の人々の意見を聞きましても、必ずしも的確な見通しを立てられる段階ではないというふうに聞いております。もちろん今後さらに高くなるという意見も一方にございます。そこで、私どもといたしましては、今後の状況を見て、この問題には対処しなければならないのではないかというふうに考えておりまして、現在のところ、政府といたしましては、この問題の重要性にかんがみて、もう少しその情勢を見て対策が必要ならとりたいというふうに考えておる段階でございます。
  22. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 やはり私は、せっかく政令で定めた、閣議決定等もあるわけでございますが、漁民が年間五十億という値段を、価格を負担するということは非常に心苦しいのじゃないか、経営面に非常に赤字を生ずる。端的に私が聞いてみますと、油代をかせぐために漁業するようなものだ、という声もあるわけなんです。したがって、こういう点は率直にひとつ割り切って、政府も方針を定めてもらいたいと思います。  次に、関連しまして、従来、買い手市場であった関係から、わが国特有のA重油を輸入しておって、このA重油については、関税暫定措置法の別表に、ここにありますがですね、「温度一五度における比重が〇・八三以上で引火点が温度一三〇度以下」云々とこうありますね。これは大体無税とされておったように聞いております。ところが情勢変化によって、輸入されるものの規格が、A重油に当てはまらずに、何かしら軽油のようなものになる。したがって、関税定率法の別表で定める「軽油」に解釈すると、キロ当たり千八百九十円の関税がかかるという矛盾を生ずるわけなんですね。こういう点で新しい問題が生じてきたと私は聞き及んでおるわけでございますが、やはり国民生活安定のための食糧等を確保する産業であるならば、この点についても私は、本来の趣旨を生かす、すなわち無税とする趣旨を生かすために努力してもらいたい、私はこういうふうに考えますが、これについてのもしお考えがあればひとつお答えを願いたい。
  23. 内村良英

    政府委員内村良英君) A重油及び軽油の関税につきましては、従来から政府部内におきまして検討が行なわれてきております。  そこで、先生御案内のように、免税A重油の規格については、当初比重が〇・九〇三七以下〇・八七五七以上のものとされていたのを、その後〇・八三まで引き下げまして、通常軽油といわれるものにまで食い込んで免税の対象とされているようになっております。しかしながら、この規格にも該当せず、関税定率法上完全に軽油であるというものにつきましては、御指摘のとおり、これについて関税がかかっておるわけでございます。  そこで、最近のA重油の輸入問題に関連いたしまして、こういった規格の軽油がだいぶ入ってくるのではないか、これについて免税にしたらどうかということでございますが、この点につきましても、私どもといたしましては、今後の漁業用石油の一つの問題としていろいろと検討はしております。しかしながら、この問題は石油全体の関税問題にもかかわってくる問題でもございますし、場合によっては、法律改正が要る問題でもございます。  そこで、現在の関税制度の運用上の問題について、これが解決の方法がないかというようなことも現在関税当局といろいろ話し合いをしておりますけれども、なかなかむずかしい問題がいろいろあるというふうに聞いておりまして、現在のところ、関税当局といろいろ話し合いを続けている段階でございます。
  24. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 なかなか関税当局もむずかしいような答弁はすると思いますけれども、やはり無税にするという精神を貫くために、農林省はひとつがんばってもらいたいと思います。  さらに、当面の緊急処置といたしまして、私は、やはり国の利子助成等によって低利資金の融通をはかるか、あるいはまた、既融資については融資条件の緩和をはかるということで、金融政策を並行して積極的に講ずる必要がありはしないかと思うわけでございますが、この点を御答弁願いたいと思います。
  25. 内村良英

    政府委員内村良英君) 漁業の種類によって多少影響は違うわけでございますが、いずれにいたしましても、石油の値上がり、資材の値上がりということによって経費が非常に上がっている。それに対して、他産業の場合、特に製造工業の場合には、大体そういった動向を見取りまして、ある程度価格に織り込むということができるわけでございますけれども、水産物の場合には、御案内のように、需給によって価格がきまってくるという面が強いもんでございますから、なかなか経費の上昇を価格に織り込めないという問題があるわけでございます。したがいまして、今後、魚価の低迷がかりに続くというようなことになりますと、これは漁業経営にとってゆゆしい問題になってくるということはもう先生の御指摘のとおりでございます。  したがいまして、当面経費の上昇に見合う運転資金の増加部分について、何かの金融措置がとれないかという御質問だと思いますけれども、それらの点につきましても、現在水産庁といたしましては関係方面といろいろ相談をしております。しかしながら、御案内のように、いわゆる漁業の系統金融の場合には、非常に金が少ないというような問題もございまして、この金詰まりの世の中で、どうやって原資の調達をしていくかというような点についてなお検討すべき大きな問題がございますので、関係方面ともいろいろ話し合いはしている段階でございますが、結論を得るには至っておりません。
  26. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、漁業用資材についてお尋ねをしたいと思いますが、漁網とか、ロープ、こういうものは、すべてナイロン製、あるいはビニロン等を材料とした合成繊維であって、これはもう言うまでもなく石油製品であります。したがって、こういう漁網とか、ロープ等の価格の安定と、それから量の確保、こういう点の見通しをお聞かせ願えれば幸いかと思います。
  27. 内村良英

    政府委員内村良英君) 漁網綱につきましては、これもものによって違うわけでございますが、昨年の暮れからことしの二月ぐらいにかけまして、ものによっては二倍ぐらいになったものもございます。  そこで、水産庁といたしましては、これは漁業の重要な資材でございますから、何らかの形で価格の凍結ぐらいまでの措置がとれないかということも検討したわけでございますが、流通の形態から見てなかなかそれがむずかしいということでございますので、通産省ともいろいろ相談をいたしました結果、漁網綱の主要原料であるナイロン繊維、ポリエステル繊維等について当分の間価格を据え置く、いわゆる原料を押えてもらうということ。これはメーカーも非常に数が少なくて行政的にやり得ることでございますから、こういった原料の繊維の価格を据え置いてもらう、凍結してもらうという措置をとりまして、それによって末端価格も安定するようにするというようなことで現在指導している段階でございます。  ただ、大きな網というようなものは、先生御案内のように、注文生産みたいなものも多いわけでございまして、なかなか末端の価格を凍結するということは技術的にも非常にむずかしい。そこで、原料を押えながら価格の安定をはかっていくという措置をとっているところでございます。
  28. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 一応大綱の質問は終わりまして、いまから三法案についてお伺いをしてみたいと思います。  まず、今回提案されております三法案内容は、沿岸漁業を中心とする中小漁業の振興あるいは中小漁業経営の安定をはかろうとするものであって、しかも関係漁業者の要望をほとんど内容に取り入れておるのであって、私は、大筋において大体よく理解するところであります。ただ、若干の点についてお尋ねをしてみたいと思います。  まず、沿岸漁場整備開発法案についてお尋ねをいたします。  沿岸漁業生産量の推移をずっと見てみますと、おおむね約二百五十万トン程度漁獲量があるわけです。したがって、総体の一千二十七万トンの約二五%を停滞的に推移しておるというのが現状であろうかと思います。これを、量ではそうでありますけれども金額について見ますと、四十七年の統計では四千六百九十一億円、対前年度比において一〇・八%。五年間の平均を見てみますと、伸び率が一〇・六%で、生産量の停滞傾向に対して著しく増加しておるわけで、全体に占める割合もやはり四二%程度になっております。  沿岸漁業は、需要の高い中高級の魚介類の生産割合が大きいので、この種の魚の値段が非常に高いわけなんですね。したがって、そうであるとするならば、やはり私は、今後において沿岸漁業生産量をいかにして増大させるかというのが大きな課題であろうかと、かように考えます。  そこで、私は、積極的に沿岸漁場を新しく開拓するということ、これが第一点。それから、効用の低下しておる漁場を復旧するということ、これが第二点。第三点が、人工的に大量の種苗を生産してこれを放流するということ。  以上三つの体制を整えることが施策の三本の柱でなければならないと私は考えますが、長官はどうですか、この考え方について。
  29. 内村良英

    政府委員内村良英君) まことに、先生御指摘のとおりでございまして、同感でございます。
  30. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 ありがとうございます。  だから、やはり私は、こういうことをするには、何はさておいても、予算の裏づけをやってもらわにゃいかぬ。私は、ただ項目だけ、いかがですか、——さようでございます、と言ったところで、やっぱり予算をつけてもらわにゃいけませんから、それを十分心して、五十年度からは、うんと水産の予算を倍加するようにお願いをいたしたいと思います。  本案においては、第二条の定義にずっと書いておりますが、第三条の沿岸漁場整備開発計画に規定しておりますとおりに、漁礁等の設置によって漁場つくりを行なうとともに、漁場復旧事業を実施するための沿岸漁場整備開発計画を閣議できめて、強力に実施しようとする意図は十分理解されるわけでございまするけれども、第六条以下の規定により、放流された人工種苗の育成事業を実施する仕組みになっているようでありますが、肝心の種苗の生産施設の整備については、栽培漁業の振興として、第十六条に、「国及び都道府県は、沿岸漁場整備開発事業及び特定水産動物育成事業の実施を水産動植物の種苗の生産施設の整備運営と併せて推進することにより、栽培漁業の振興に努めなければならない。」と規定するにとどめて、具体的な実施規定を設けておらないようですね。閣議決定に基づく五年を一期とする沿岸漁場整備開発計画と歩調をそろえて、栽培漁業の振興計画が不可欠であるという考え方だが、これらの点に関して政府は、どういうふうな考え方をしておるのか、これをお聞きしたいと思います。
  31. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先生御指摘がございましたように、今後わが国国民に対する動物性たん白質供給ということを考えました場合において、水産業の重要性ということは言うまでもなく、さらに昨今のいろいろきびしい国際情勢その他を考えますと、どうしてもわれわれといたしましては、沿岸漁業の生産の拡大をはからなければならないわけでございます。そこで、その場合のやり方といたしましては、先生の御指摘のございましたように、漁場の造成、栽培漁業の振興、構造改善の推進というようなことになるわけでございますが、漁業生産の場を造成するための計画的な漁場整備開発を進めるにあたりましては、それとあわせて、種苗の大量生産と放流を行なうことが必要になるわけでございます。  そこで、その趣旨が第十六条の規定に明記されているわけでございますが、具体案としては、それはどうなるかということでございます。そこでわれわれといたしましては、栽培漁業の振興につきましては、現在、瀬戸内海に栽培センターを持ち、さらに四十八年度から裏日本に大体五カ所の県営の栽培センターを設けたわけでございますが、四十九年はさらにそれを拡大いたしまして、今後、県営の栽培センターを整備し、それを瀬戸内海の栽培センターとの有機的な連係をとるようにして栽培漁業の振興を大いにはかっていこうというふうに考えているわけでございます。  それからなお、その場合の栽培漁業の種類でございますが、現在、御案内のように、マダイ、クルマエビ等が行なわれているわけでございますが、そういった魚の種類につきましても、今後さらに放流、人工ふ化をして放流するものをふやすようにしたいと思って、いろいろ研究開発等も進めているところでございます。
  32. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 四十九年度の予算説明にあるとおりに、沿岸漁場整備開発事業については、全国の四十都道府県に大体委託して、沿岸漁場整備調査を六千六百五十二万ですかでやっておる。さらにまた、育成水面制度については、全国の十地域を指定しまして、千三百六十八万円の予算で調査することとしておるようですね。五十年度から五十四年度までの五カ年計画で事業を実施することとしておるわけであるが、本計画による事業量等が沿岸漁業者の期待にこたえる画期的なものでなければならないことは、これは言うまでもないわけなんですけれども。ところが、四十九年度の調査結果を見なければ私は具体的な内容は言明されないと思うんだけれども、この点をどういうふうに考えておるのか。
  33. 内村良英

    政府委員内村良英君) 計画の対象となります沿岸漁場整備開発事業の具体的内容につきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、四十九年度各県に依頼いたしまして調査をして、その調査結果に基づきまして計画をつくり、できれば五十年度を第一年度とする五カ年計画で事業をやりたいと、こう思っているわけでございます。  そこで、どういうことをそれでは想定しているのかということでございますが、現在、計画対象として想定し得るおもな事業をあげますと、従来から実施してまいりました大型漁礁の設置事業、浅海漁場開発事業、漁場の造成事業、漁場環境の維持保全対策事業等が考えられるわけでございますが、このほかに新たに漁場の大規模開発を行なうための大規模な増殖場の造成や天然礁に準ずるような規模の大きい漁礁の設置等についても——これはまあ技術的にいまいろいろ問題があるようでございます。そこで、水産庁といたしましても、技術者を集めましていろいろ研究しておりますが、そういったことも将来は規模の大きな事業として実施したいというふうに考えて検討しているところでございます。
  34. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、この沿岸漁場整備開発計画と、さきに皆さん方が実施しておる第二次沿岸漁業構造改善事業との関連が微妙な立場になる。そこで、第二次沿岸漁業構造改善事業は昭和四十六年以降九カ年間に全国で百八ですか、百八地域について事業に着手するようにしておりますね。四年目を迎えて沿岸漁業者の期待は非常に大きいわけでございますけれども、この構造改善事業のうちで、漁業近代化施設整備事業はともかくとして、漁場整備事業及び大型漁礁設置事業は、本案による沿岸漁場整備開発事業の内容と同様のものであって、当然両者の調整が私は必要であるというふうに考えるわけでございますが、水産庁は、どのように調整をして運用する考えなのか、お考えを承りたいと思います。
  35. 内村良英

    政府委員内村良英君) 沿岸漁場整備開発計画制度のねらいといたしましては、国みずからが、沿岸漁場の大規模拠点開発等を志向して、基盤整備及び漁業保全の事業を総合的かつ計画的に行なおうとするものでございまして、現在私どもが力を入れてやっております第二次構造改善事業よりも、さらに国が表に出てやろうということを考えておるわけでございます。  そこで、第二次構造改善事業の今日までの運用状況を見ますと、ただいま先生から御指摘がございましたような、いわゆる近代化共同利用施設というものが大体、いわゆるわれわれは上物と言っておりますけれども、上物が七割ぐらいになっておるわけでございます。そこで漁場整備のほうは三割ぐらいになっておりますので、いままでのところ、漁場整備について別に力が入れられていなかったわけではございませんけれども、構造改善事業は上物整備のほうにかなり力が入れられているという現状もございます。そこで、今度のこの沿岸漁場整備開発計画によりましては、漁場整備ということをやろうとしておりますので、むしろ構造改善事業と十分調整しながらやはり進めなきゃならぬと。しかしかなり規模の大きいものも先ほど御答弁申し上げましたように考えておりますし、構造改善事業をむしろプッシュするような役割りを果たすことになるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  36. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の改正についてお尋ねをしたいと思います。  漁業近代化資金制度は、漁協系統資金を活用して漁業者、水産加工業者の資金装備の高度化及びその経営の近代化を促進するために昭和四十四年に創設されたものであります。当初百億円であった融資ワクも、四十九年度——ことしは七百億というふうに増額して順調な歩みを続けておるのであります。この間、関係漁業者から改善を要望したり、あるいはまたその中で、特に、貸し付け限度額の引き上げ等は、いずれも今回の改正案に取り入れられておって、改正案内容そのものは、けっこうであると一応解釈するのでありますが、最近起こっておる金融情勢から末端金利を年六分ものと、それから市中ものの二種類として、そしてさらに利子助成を、都道府県及び国からの利子助成を年三分ものとあるいはまた二分ものと、そして漁業等の金融機関の基準金利を年九分としていることについては、私は、若干問題があるのではないかと思うわけであります。四十九年度は、全国の漁業協同組合連合会に対して、漁業金融推進臨時助成補助として約八千百三万円の補給をしておる、——これで大体関連してつじつまを合わせようとしているように思われるわけでございますが、次年度以降どのように対処しようとするものなのか、この点をお伺いしたいと思います。
  37. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先生からただいま御指摘がございましたように、漁業近代化資金の資金ワク及び都道府県が行ないます利子補給にかかわる政府の助成額等は逐年増大してきたわけでございます。今後におきましても、資金需要額及び漁協系統資金の動向等を十分に勘案しながら、資金ワク及び利子補給の助成額については拡大していって、ますます近代化資金を充実させたいと思っております。  そこで、その場合に、ただいまの御質問では基準金利の九分というのは問題があるのではないかという御質問だと思います。この近代化資金の金利につきましては、御案内のように、四十八年の四月、一律に年〇・五引き下げたわけでございますけれども、金融情勢の変動によりまして本年二月一日から再び〇・五引き上げまして、末端貸しつけ金利につきましては年六%または七%となっており、その基準金利九分との差は県及び国が助成しておるわけでございますが、現在のところでは、私どもの見ておるところでは、基準金利九%を、漁協の系統機関の資金コストの面から見ると、資金原価プラス貸し出し経費とほぼ見合う形になっておりますので、これによって系統機関の運営が直ちに困難になるとは思われないわけでございます。ただ、さらに最近公定歩合の引き上げ、その他一そうの金融引き締めの声がございますが、これ以上金利が上がりますと、非常に問題が出てくるのではないかというふうに考えております。しかし、基準金利の問題は、農業の近代化資金、その他の制度資金の原資の問題として非常に重大な問題でございますので、私どもといたしましては、そういった事態が起こってまいりました場合には、やはり関係方面と相談して何らかの対策をとる必要があると思いますけれども、現在のところでは、九%の基準金利で系統機関の運営が直ちに困難になるとは考えていないわけでございます。  なお四十九年度に出します漁業金融推進臨時助成補助金八千百三十万円はこれを各信用の漁連に交付する予定になっておりますが、この内容は、近代化資金制度及び中小漁業融資保証制度の改正に伴う普及徹底のための経費及び漁協の信用事業推進実態把握のための経費に充てるものでございまして、こういった補助金によって漁協の経営がかなり助かるのではないかというふうに考えております。
  38. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 中小漁業融資保証保険制度の改正についても、中小漁業融資保証保険制度問題検討会が、昭和四十八年の三月行なった内容をほとんど取り上げておる。その改正内容は、漁業関係者の期待にこたえたものと理解しますけれども、農業における農業信用保証保険制度と本制度は同様な制度であると私は考える。農業信用保険協会が行なう融資保険及び低利融資事業を、本改正案においては、中央基金を設けて行なわせようとしておるようでありますが、実施機構について、特別の考え方をもって改正しようとしているのではなかろうか、というように思うわけでございますが、そういうふうに仕組んだ政府考え方を明らかにしてもらいたい。
  39. 内村良英

    政府委員内村良英君) 現在、保証保険制度は、漁業の場合には、特別会計がこれを行ないまして、国が全面的に保険責任を負う制度として担保されているわけでございます。そこで、それを農業と同じように、この法律によって設立される中央漁業信用基金へその特別会計の機能を移譲したらどうかということも考えられるわけでございますが、現在の不安定な漁業情勢のもとで、国の特別会計を民間に移譲するためには、まず資金的に大幅なてこ入れが必要でございますし、いま直ちに特別会計を民間に移譲することはむずかしいというふうに考えたわけでございます。また、融資保険及び低利融資の事業を国の特別会計で実施することにつきましては、これも新しいこととして今回制度の中に織り込んだわけでございますが、これを特別会計でやるのには次のような問題がございまして適当でないという問題がございます。  そこでまず、融資保険につきましては、その対象が農林中金の中小漁業者等に対する資金の貸し付けのみでございますので、国の特別会計で実施する場合には、農林中金が国へ出資することはできないために、国が、特定個人のために全額国庫負担で融資保険を行なうということになるわけでございます。そのようなことは適当でないということで、今度新たに設立いたします中央漁業信用基金でやることになるわけでございます。  それから次に、低利融資事業でございますが、これを国の特別会計で行ないます場合には、国の財政会計法規が適用されますために、融資業務の機動的な運営が困難になるおそれがございます。かつ、国の特別会計で実施する場合には、農林中金及び基金協会からの出資が受けられないというような問題もございます。しかしながら、今日、国の制度の中で特別会計が融資事務を行なっているものが全然ないかと申しますと、それは若干ございますが、その場合も相手が地方公共団体でございまして、しかも貸し付け期間が非常に長期にわたるものということになっております。したがいまして、このような低利融資の場合には、やはり特別会計で行なうのは適当でないので、中央基金で行なわせるということにいたしたわけでございます。  なお、これと関連いたしまして、特別会計の移譲という問題も考えたらどうかというかなり有力な御意見もございます。現に農業のほうはそうなっておりますので、水産庁といたしましては、こういった問題を総合的に検討するための予算を、額はわずかでございますけれども、四十九年度予算に計上してございます。したがいまして、こういった検討を通じまして将来の問題を探っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  40. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 この中央基金の規模は、政府が七億九千七百万、農林中央金庫が三億二千万、基金協会が四千万、こういうふうに予定しているようでありますが、このうちに政府は、融資資金に五億五千七百万、これを充てていることにしておりますが、農林中金の出資分を含めて四十九年度における融資資金の額はどの程度に予定しておるのか。さらに、融資資金の使途は、いわゆる不振協会ですね、不振協会に重点的に行なうべきであると考えるのでございますが、政府の基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  41. 内村良英

    政府委員内村良英君) 融資ワクは約九億でございます。  それから、不振協会に対して優先的に融資ワクを与えるべきでないかという御意見でございますが、まあ不振協会とはどのような協会をいうのか、問題が若干ございます。で、四十七年度の決算を洗ってみますと、欠損を計上している協会はございませんけれども、代位弁済の額が多額となりまして、その代位弁済に充てるために、出資金を取りくずしている組合が約九組合ございます。それが非常に、漁業的には重要な県の組合がその中にかなり入っております。そこで、これらの協会に対しましては、補償額の伸長あるいは事故防止対策等について現在いろいろ指導を行なっておりますけれども、今度の制度改正によります中央基金からの低利資金の貸し付け額についても、ある程度配慮いたしまして、そういった協会の経営の立て直しに資したいというふうに考えているわけでございます。しかし、基本的にはやはり補償額を伸ばすとか、あるいは事故防止対策を十分立ててやらなければならぬという問題が根本的にはあるわけでございます。
  42. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 最後に、漁業災害補償法改正案についてお尋ねをいたしたいと思います。  今回の改正案内容は、発足以来九カ年の経過と漁業の実態の変化に即応するために、漁業共済制度検討協議会報告、それから養殖共済制度問題検討会報告内容をそれぞれ取り入れて、そうして採そう業とか、採貝とか小型漁船漁業及び定置漁業等について、いわゆる義務加入の道を開いて、てん補水準の引き上げ、てん補方式の選択制の導入、養殖共済については赤潮特約の創設、特定養殖共済の試験実施等がはかられるようになっておって、大幅な改善処置が取り入れられておるのでありますが、本改正案の実施によって、特に漁業共済について、地域的に片寄りがあるばかりでなく、全国的に低い加入率となっている点が改善されて、従来とかく義理加入的なものが相当あることが指摘されていたところでありますけれども、今後は、漁業者が、本制度の趣旨を理解して進んで加入することが最も望ましいわけでありますが、この点に対する政府の見通しなりあるいは考え方を聞きまして、私の質問を終わります。
  43. 内村良英

    政府委員内村良英君) 今回実施しようとしております漁業災害補償制度のおもな内容につきましては、ただいま先生から御指摘があったような点でございます。そこで、それらの改正によりまして、現在加入率は必ずしも高くございません、特に漁獲共済の場合には加入率が一一・二%、養殖共済で三二%というようなことになっておりますので、私どもといたしましては、共済事業の拡充のためにはこの加入率を上げていかなければならぬということを常々考えていたわけでございます。  そこで、今度の改正によりまして、従来漁業者が漁済制度について持っていた不満のかなりの点が解消されております。したがいまして、これによって新規加入が大いに高まるというふうに見ているわけでございますが、数字的には、四十九年度予算におきまして、赤潮特約関係を除き改正事項の施行を十月とした場合に、共済金額は四十八年度対比で二三%増と見ております。したがいまして、四十九年度はこの改正が実施される初年度でございますから、共済金額において二三%増程度というふうに思っておりますが、なお、この制度の改正の趣旨等を十分周知徹底されるような措置をとりまして、今後においても漁業共済の加入の増加については一そうの努力を払わなければならぬというふうに思っているわけでございます。
  44. 神沢浄

    ○神沢浄君 私は海なし県の生まれで海なし県の育ちですから、事、漁業ということになるとまるっきりの門外漢なんですが、したがって、きわめて初歩的、基礎的なことからお尋ねをしてまいりたいと、こう思うのです。  さっきの御質問の中でも触れられております、私ども国民という立場からいたしましても、このいわゆる第三次海洋法会議というのには、これは非常に大きな関心を抱くわけであります。何か、私どもが、漁業関係の問題などの書かれておるようなものを見ておりましても、かりに、途上国と称せられるような国々の主張のように、領海が延びて、それから経済水域を含めて二百海里というような主張がもし実現をするというようなことになりますと、これは、いまいわゆる一千万トンと言われておる水揚げ高の半分ぐらいは減ってしまうんじゃないかというようなことを、五百万トンくらいは漁獲不能になってしまうんじゃないかというようなことなども書かれておるものなどを目にいたします。そうなりますと、先ほど来お話もありましたように、確かに国民食糧たん白資源というふうな見地からいたしますと、一方、畜産などもこれは飼料などの関係で、たいへん不安定な状況にありますし、加えて漁業の面でもってもし言われるような状態が現出していくなどということになりますと、これはただ単に漁業だけの問題じゃなしに、日本の国家的重大な問題として私ども非常な不安を感じざるを得ないんです。  そこで、先ほどの御質問に対する政府の御答弁がありましたけれども、これは日本としては、領海の拡幅というようなことには、あくまでも反対の主張というものを貫いていきたいと。こう言うんですが、相手のあることですから、これはなかなか日本でばかりそうきめ込んでおりましても、そのようにいくものであるかどうかたいへん心配なところですし、現に、けさNHKが、テレビでもって放映をしておりましたが、先ごろのナイロビ宣言ですか、途上国七十七カ国の決議などに対して、国際的な動きとしてはかなり支持的な方向が強まるではないか、どうもカラカスにおける第三次海洋法会議においては、日本は、かなり苦しい立場に立たされるんじゃないか、というようなことが、——実はけさ、そういうテレビ放送などがありまして、私も聞いたんです。  そこで、お尋ねをしたいのは、いま大体見通してどんなような情勢になっておるのか、日本としてはどういうふうな手を打っておるのか、われわれは国民としてある程度政府の対策というものに安心して見ておっていいのかという、こういうふうな点についてまず伺っておきたいと思うのでございます。
  45. 山本茂一郎

    政府委員山本茂一郎君) ただいまお聞きいたしました全般の御所見というものは、私らもそういうように感じておるわけでございます。ことに、日本の現状におきましては、遠い距離の遠洋漁業については、先ほど、ほかのほうで申しましたような領海の問題もございますし、また、沿岸漁業に対しましては、ただいま御指摘になりましたように、いろいろな不利な情勢がございます。埋め立てでございますとか、そのほかいろんな問題がございます。この沿岸の漁業は、日本の約四割ぐらいの程度持っておると思いますが、いろいろの一般の情勢から、これがそのままにほうっておけば、相当不利な情勢に移っていくのじゃないかということは考えられるわけであります。そこで、当局といたしましては、これらの沿岸漁業を回復といいますか、現状を維持するごとくいろいろな処置をとっていきたい、こういうことに今後、いままでよりも力を入れていこう、こういうように考えておるわけであります。
  46. 内村良英

    政府委員内村良英君) それに関連いたしまして、第三次国連海洋法会議の見通しはどうか、という御質問があったわけでございます。これは確かに御指摘のように、わが国漁業にとって非常に大きな影響を与える問題でございます。そこで、具体的問題といたしましては、ことしの六月からベネズエラの首都のカラカスで会議があるわけでございますが、いろんな情報を総合しますと、なかなかこの会議ではまとまらないのではないか。ということは、各国の利害が非常にふくそうしている。単に漁業だけではございませんで、軍事上の問題、あるいは航行権の問題その他の問題、あるいは大陸だなの資源の問題というような問題もからみますので、各国の利害が非常にふくそうしておるということでまとまらないのではないか。通常の国際会議でございますと、次の会議の場所というものを想定しておく会議はあんまりございませんけれども、この会議は、来年さらにまとまらない場合には、オーストリアのウイーンで会議をやるということまできめているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、これはまあ断定はできませんけれども、なかなかまとまるのはむずかしいと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、現在開発途上国さらに一部の先進国、すなわちカナダとか、豪州とか、ニュージーランドというような国が、二百海里経済水域をつくれ——領海は大体十二海里というのが多いようでございますけれども、そういった経済水域をつくれと、中国も同様の主張をしております。ということで、そういったかなり広い経済水域あるいは排他的な漁業水域の設立ということが、そういった方向に動いていく可能性は非常に強いというふうに私ども見ておるわけでございます。  そこで、一体そうなると、わが国漁業に対する影響はどうなのか、ということが次の問題として出てくるわけでございますけれども、この際、特に申し上げておきたいことは、私どもが新聞等見ておりますと、二百海里というものは開発途上国が非常に主張しておるわけでございます。したがいまして、二百海里経済水域というようなことがかりにできたとすれば、日本漁業は、アフリカの沖だとか、中南米の沖からシャットアウトされるのではないか、あるいはフィリピンの沖とか、インドネシアの沖からシャットアウトされるのではないか。その影響が非常に大きいのではないかというような取り上げ方が、新聞紙上等を見ておると、多いように感ぜられるわけでございます。  そこで、統計で調べてみますと、わが国が、去年、外国の二百海里でとっている漁獲高は次のようになっております。すなわち、北部太平洋のベーリング海でとっておりますものが約二百九万トンでございます。それからオホーツク海の北部が三十五万一千トン、オホーツク海の南部、ここには樺太それから例の歯舞、色丹、千島列島が入るわけでございますが、ここで八十八万八千トン、それから日本海のソ連の二百海里、あるいは韓国の二百海里になりますところで約三十万トン、それから中国と非常に関係がございます東海黄海で五十三万六千トン、で、いわゆる開発途上国の水域でとっているのは六十一万八千トンでございます。したがいまして、かりに二百海里の経済水域というものが認められたということになりますと、一番影響を受けるのはわが国の北洋漁業なわけでございます。  そこで開発途上国に対しましては、水産庁といたしましてもそういった国々の漁業というものが、まだ非常に幼稚な段階でございますから、これに対して、技術指導あるいは資金的な援助等行ないまして、向こうの漁業向上させながら同時に、わが国漁業もやらしてもらうというような形で、そういった国際協力を通じて漁場の確保をはかっていきたい。ただ問題は、相手はソ連、アメリカ、カナダ、中国と、こういうことになってくるわけでございまして、これらの国々はいわゆる先進国でございまして、いまさら技術援助というような問題あるいは資金援助というような問題もございません。したがいまして、こういった国々とは資源の維持ということを前提にしながら、いろいろ国際的な二国間あるいは三国間の協定をつくりまして、そういった協定によって、わが国は北洋で大きな実績を持っておりますから、そういった実績を背景に主張をし、同時に、資源保護については、やはりわが国も協力してやるということでやらぬと、そういったことは成り立ちませんので、現在日米加漁業条約、あるいは日ソ漁業条約でやっているようなことをさらに拡充いたしまして、わが国漁場の確保に遺憾なきを期したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  47. 神沢浄

    ○神沢浄君 水域の問題とあわせて私どもが聞いておるところによると、いわゆる潮河性魚種というんですか、サケマスの問題があるわけです。これは、そういう点になると、カナダなどが非常な大きな利害上の関係ということになります。結局、カナダあたりは、自分の川から始まったものは、ある種の支配権というようなものを主張をする。これが利害上の関係から、いまのいわゆる途上国などの水域各国の主張と連合をして——どうもどちらの面からいっても、いわゆる水域の面からいっても、潮河性魚種の問題についても、日本がどうも不利な立場に追い込まれていくおそれがあるんじゃないか。したがって、この際、同じような立場に立つ日本とソ連ですかが、もっとこの漁業に関する限りは、言うなれば連合戦線を張る必要があるんじゃないか。そういうふうな点でもって、どうも政府の打っておる手が、少し手ぬるいんじゃないか、というようなことを書いておるものも目にしたことがあります。  そんなような点をも含めて、いまお聞きしますと、すぐ目の前の会議の中では、いろいろ意見も分かれておるところだから、そうにわかに結論めいたものが生じはしないだろうけれども、しかし、将来的には、結論なしのままに推移しようということも——これは楽観に過ぎるかもしれませんが。この点私は、漁業はまことに門外漢ですが、日本の重大な食糧政策というような見地からいたしますと、これは、ただ単に水産庁というようなことでなしに、もっとほんとうに日本の死活にかかわる外交として、これはやっていただかなきゃならぬ問題じゃないかというようなことを痛切に感ずるわけなんです。そういうふうな点でもって、いまのいわゆる政府の取り組みといいますか、そういうようなことについての決意などを含めてもう一度御所見を聞いておきたい、こう思います。
  48. 内村良英

    政府委員内村良英君) ただいま先生から御指摘がございました、いわゆるサケ等の溯河性魚類の問題、これは私ども非常に心配している問題でございます。と申しますのは、先生からも御指摘がございましたように、ソ連は現在のところ、遠洋漁業国でございます。したがいまして、二百海里の経済水域にも反対しております。その点につきましては、わが国漁業立場と非常に似ているわけでございますけれども、ただ、アジア系のサケマスはソ連の川で生まれて公海に出て、ソ連の川に帰ってまた産卵をしているわけでございます。その点につきましては、いわゆるカナダのウェージャー川のサケ、あるいはアメリカのアラスカのサケと同じなわけでございます。したがいまして、潮河性魚類については、沿岸国、すなわち河川あるいは湖水を有している国に管轄権があるんだという主張を米加がしているわけでございますが、その点については、ソ連も米加に同調しているわけでございます。したがいまして、今後、わが国北洋におけるサケマス漁業、特に公海漁業というものは非常にきびしい試練に直面するのではないかということで、私ども非常に心配しております。  ただ、その場合におきまして、それじゃ一体どういう主張をするのかということでございますが、私どもといたしましては、やはり過去戦後二十年、すでに北洋におきましては、大きな漁業実績を持っているわけでございます。したがいまして、そういった実績者を排除するということはなかなかできないことでございます。と申しますのは、現在、アメリカ、ソ連とカニの協定をやっております。と申しますのは、大陸だな条約というものができまして、それをアメリカとソ連は批准したわけでございます。メンバーになっている。ところが、日本はその協定を批准しておりません。したがいまして日本といたしましては、アメリカのあるいはソ連の大陸だなの資源というものを尊重しなきゃならぬということはないわけでございますけれども、やはり、向こうと協定をしなければ、ソ連及びアメリカが、大陸だなの資源だといっておるカニをとることができないわけでございます。これは政府間協定をやっておる。それじゃ、なぜアメリカなりソ連がそういう政府間協定を受けたかと申しますと、やはりそこには、日本漁業実績があったということで、これをただ一片の法律あるいは条約によって排除するというわけにはいかないというところから、それぞれの国際法上の立場を留保しまして、実体的な問題を解決するために、現在、カニ協定をアメリカとも、ソ連ともやっているわけでございます。  同様なことで、今後そういった湖河性魚類についての新しい条約ができました場合におきましても、わが国といたしましては、大きな漁業実績というものを背景にして交渉しなきゃならない。ただ、その場合に一番やはり留意しなければならないのは、資源保護を一緒にやるということでいかないと、乱獲をしてはいけない。これは当然のことかもしれませんけれども、そういったことをわが国の基本的な態度として臨んでいきたいと同時に、先ほども申し上げましたけれども開発途上国につきましては、いろいろな資金及び技術の援助と結びつけながら漁場の確保をやりたい、というようなことで、いずれにいたしましても、今後一そう国際協調というものを基礎にしてやっていかなければ、わが国の利害だけを主張してもこれはなかなか通らなくなるだろうというふうに考えております。その点につきましては単に水産庁だけではなくして、外務省その他の機関とも十分連係をとりながらいろいろな外交を展開したい、また、しなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  49. 神沢浄

    ○神沢浄君 海洋法会議の問題にちょっと関連してもう一点お伺いしておきたいと思うことは、これは私は、新聞に出た知識にすぎないのですけれども、国内においてもいわゆる領海の拡幅、経済水域の拡大というような、言わば政府考え方とは逆の方向を期待している向きもある、ことに沿岸漁業の場合においては、ソ連などの船団に非常にいじめつけられておる、こういうようなことで。これは国内問題としての調整事項のことでしょうけれども、そういうような点については水産庁の指導的見解というのはどうなっておるのか。
  50. 内村良英

    政府委員内村良英君) 御指摘のように、最近ソ連の船団がわが国の沿岸でかなり広範な漁業活動を展開し、それによって、ことしのごときは、わが国のサバの有力な産卵場でございます静岡の沖合いの銭州にまで入ってきまして、わが国漁業規則によりますと一本釣りしかできないところを、トロールで引き回すというようなこともございまして、沿岸漁民の感情を非常に刺激しております。その結果、沿岸漁民が早く領海十二海里あるいはもっと大きな領海を宣言してわれわれの利益を守ってくれという陳情が水産庁その他に出ております。これは確かに沿岸漁民の感情というのはそのとおりだと思います。そこで、私どもといたしましては、これをどう解決するかということについていろいろ検討したわけでございますけれども、とりあえず、今日までわが国の沿岸漁民の受けました損害について、国として、ソ連に対して損害賠償の請求をしたわけでございます。と同時に、これを日ソ漁業条約のワク内で片づけたらどうかという意見がございました。しかし、日ソ漁業条約の魚種の中にサバなりその他の沖魚を取り入れるということはこれはなかなかわが国漁業にとっても重要な問題でございます。  そこで調べてみますと、そういった沿岸漁民との紛争を避けるために、ソ連はアメリカと米ソ操業協定という協定をつくっております。これは七三年でございますから去年できた協定でございます。それからさらに、ソ連は、ヨーロッパにおける大きな漁業国でございますノルウェーと、ソ連ノルウェー漁業操業協定というものをつくっております。そこで、私どもといたしましては、ただいまやっております日ソ交渉が済み次第、なるべく早い機会にソ連と話し合いまして、日ソ漁業操業協定というものをつくりまして、沿岸漁民との紛争を避けるようにするというような措置をとりたいということを考えておりまして、ソ連側も内々でございます——まだ正式に返事はございませんけれども、内々やろうじゃないかというような意向を示しておりますので、操業協定によって、今日わが国の沿岸漁民が、ソ連の操業によって悩まされている問題を片づけたいというふうに考えております。
  51. 神沢浄

    ○神沢浄君 それでは次に移りますけれども、最近しきりに産業公害あるいは開発によるところの漁業に及ぼす公害問題、こういうようなものが言われているわけでありますけれども、これらの影響、これはある程度具体的、たとえば数字的に把握できておりましたら、その点についてのお答え及びこれに対する今後への対策、国としての考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  52. 内村良英

    政府委員内村良英君) 最近、御案内のように、沿岸地帯の埋め立てあるいは都市化進展、海上交通のふくそう等によりまして漁業は大きな影響を受けております。特に埋め立て面積は、数字で申しますと、戦後七万六千ヘクタール、うち海面が五万五千ヘクタールにのぼりまして、卵や稚魚の育成場になっておりますモ場の消滅は、これは瀬戸内海のケースでございますが、昭和四十六年十二月には、二十六年当時の六五%に達しております。また、突発的な漁業被害、これは油濁だとか、その他のいろいろな赤潮等の被害があるわけでございますけれども、そういった被害は四十七年度には約百十六億円に達しております。  そこで、それじゃ、どういう対策をとるのかということでございますが、これらの漁業被害に対処するためには、海洋汚染防止法、水質汚濁防止法、瀬戸内海環境保全臨時措置法あるいは公有水面埋立法等、公害関係のいろいろな法律の厳正な運用によりまして、漁場環境の悪化を防ぐことが重要でございますので、これらの法律の厳正な運営につきまして、関係省庁といろいろ密接な連係をとっているわけでございます。と同時に、水産庁といたしましても、汚染状況調査あるいは公害防止資器材の設置、公害防止調査・指導体制の整備、あるいは海底の堆積物の除去等をするための公害による被害防止をはかり、さらに、昨年は非常に騒ぎが起こりました水銀等の汚染被害業者に対しましては、特別融資措置をとる。あるいは今日、千葉等で非常に大きな問題になっております原因者不明の油濁による被害漁業者の救済等について、何らかの制度をつくりたいということでいろいろ努力しておりますし、それから、今度の漁業災害補償法の改正で赤潮特約等を入れまして赤潮の被害、これは人災的な面もあるわけでございますけれども、これを漁業災害補償制度の中に取り入れまして、被害漁民の損失を補償するというような制度をとろうと、いろいろ努力をしておるところでございます。
  53. 神沢浄

    ○神沢浄君 特徴的な国際・内の問題について若干お伺いをしてみたわけでありますが、そういう点から私どもが判断できることは、日本漁業を取り巻く情勢というのは、必ずしもこれは楽観的なものじゃない、ということになるんではないかと思うのです。で、私どもの聞き及んでおりますところでは、国民食料としてのたん白資源供給をになってまいりましたのは、大体畜産と漁業でもってフィフティー・フィフティー、こういうように聞いてきているわけであります。  繰り返すようですが、畜産の前途必ずしもこれを明るくない、まことに容易でないような情勢があるわけであります。そうなりますと、われわれとすれば漁業に期待するものは必然的に大きくなるわけでありまして、心配にもなります。そこで、ひとつ、これからの需給等の見通しを含めて日本漁業というものを守っていくために、いままでとは違った、言うなれば今度の三法もその一つの関連にはなるわけでしょうけれども、何か青写真的な構想というようなものをお持ちであるならば、それを聞かしていただきたいと思いますし、それから、まとまったものまでいかなくても、今後こうありたい、進めたいというような御見解をお持ちでありましたら、それをひとつお聞きしておきたいと、こう思うんですがね、概略でいいですから。
  54. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先生からただいま御指摘がございましたように、わが国動物性たん白質供給におきます漁業役割りというのは、今後もその役割りの重大さというものは、大きさというものは変わっていかないのではないかというふうに見ております。  それで、現在、数字を見てみますと、わが国は約七百万トンの魚介類を食用として消費しております。これは四十七年の数字でございます。今後、国民所得が伸びていくということもございまして、さらに消費は、いまの傾向が続くとすれば、十年後の五十七年には約九百三十万トンの食用の魚介類が必要になるのではないかという数字が出ております。  そこで、それではそれをどこでとっていくのか。現在、先生から御指摘がございましたように、国際漁場というものはいろいろな制約を受けている一方、沿岸漁業というものは停滞的ではないか。漁場はかなり荒廃している、公害問題は深刻になっている、確かに御指摘のとおりでございます。しかし、私どもといたしましては、この九百三十万トンの需要というものを確保していかなければならぬということになるわけでございまして、第一にやらなければならないことは沿岸漁業の振興でございます。これにつきましては、先ほどからお話がございましたように、今日、漁場がかなり荒れているというような問題もございますので、その復興をはかると同時に、新しい漁場も造成していかなければならぬというのが、ただいま御提案申し上げております法律の一つのねらいでございます。と同時に、そういった魚の育ちやすい環境をつくっていかなければならぬ。これは漁礁を入れる。私どもの今日までの調査では、漁礁というものは非常に効果があるというような資料が出ております。したがいまして、いままでよりも大きな漁礁——いままでの漁礁は大体天然の天然礁を多少補足するというような形で漁礁を入れているわけでございますが、場合によっては大きな漁礁を、五十メートルなり六十メートルの海底につくるというようなこともやらなければならない、ということで漁場整備ということ、さらに浅海増殖等のことも大いにやるということをやりまして、漁場整備をやると同時に、最近養殖技術が非常に発達してきておりますので、人工ふ化をいたしましてこれを放流するということ、養殖もやるというようなことで資源をふやしていくということをやらなければならぬ。そういうことで沿岸漁業の生産を上げたい。  これは漁業のことでございますから、農業よりもなお予測が立てにくいわけでございます。と申しますのは、沿岸の場合には比較的立てやすいわけでございますが、しかし、沿岸だけでこの九百三十万トンが確保できるわけではございませんから、沖合いあるいは遠洋漁業というものを拡充していかなければならぬ。沖合いになりますと海況の制約だとか、いろんな問題がございますので的確なる見通しは立てがたいわけでございますけれども、先ほど申しましたような遠洋漁業の特に国際漁場につきましては、申し上げましたような措置をとりながら漁場を確保していって、何とかこの九百三十万トンの需要に合うような供給をはからなければならぬというふうに考えているわけでございます。沿岸漁業については積極的に資源の増殖をはかり、沖合い・遠洋漁業については資源保護をはかりながら、関係国とも協調をとって生産をふやしていくというようなことをやりたい、これが今後の十年ぐらいの水産物の供給についてのわれわれが描いている青写真の概要でございます。
  55. 神沢浄

    ○神沢浄君 そこで、そのために沿岸漁場整備開発法と、こういうことになるわけでしょうが。  それでは、この法案に入ってちょっとお尋ねをしておきたいんですが、漁業関係の書いたものなどを見ますと、いままで国のやり方というのは、漁業については、どうも体制的に府県まかせで、国自体の主体的な立場というものをとっておることが乏しい、こういうようなことが指摘をされているようであります。この法案を一べつしてみましても、確かに私など、しろうとの感じとして、そういう点で、国の責任規定というものが、どうも明確さを欠いておるような感じが非常にしてならないわけであります。したがって、この際国とすれば、国の主体的な責任というものをもっと積極的に、具体的に明確にしていかなければいけないんじゃないかというようなことを感じてなりません。たとえば、この法案の第五条に、沿岸漁場整備開発計画について「必要な措置」云々と、こう条文には出ておりますね。われわれが読んだのでは、この「必要な措置」ということだけでは、きわめてあいまいであって、その内容が何だかわからないですね。「必要な措置」というものは、内容的にどういうことなのかというようなことを、これははっきりお聞きしたいと、こう思うんです。
  56. 内村良英

    政府委員内村良英君) ただいま御指摘がございました法第五条の規定の趣旨といたしましては、沿岸漁場整備開発計画は、沿岸漁場整備開発に関する国の方針を、高度に政策的な重要性があるものとして、国民に明らかにするために、国みずからが作成するものであり、他の類似の法律と同様、国は、国自身が作成いたしました計画の達成をはかる行政上の責任があるという観点を明確にすべく「その実施につき必要な措置を講じなければならない。」というふうに明定したものでございます。  そこでこの「実施につき必要な措置」というのは、それじゃ具体的に何だと、こういう御質問だと思いますけれども、沿岸漁場開発計画の実施上必要な実施者、これは県あるいは漁協、場合によっては大きな事業については国というようなものが入ってくるわけでございます。国の場合は別にいたしまして、そういった実施者に対する技術的な助言、指導はもとより、行政上及び財政上必要な措置を含むものであるというふうに私どもは解しております。  したがいまして、これらの点につきましては、今後計画ができまして、それを実際上推進するときに具体的な問題として出てくる。すなわち、何であるかということは、これができましてから実施する場合に、問題になってくるわけでございますけれども、抽象的に申し上げますと、実施者に対するいろいろな技術的な助言、指導、さらに行政上の、あるいは財政上必要な措置ということを含んでいるというふうに解釈しているわけでございます。
  57. 神沢浄

    ○神沢浄君 やはり抽象的な表現以上には出ていないように思うんです。実施計画が組まれなければということですから、これはそこにおくことにいたしましても、いまの財政的な措置、結局、端的な言い方をすれば、どんな計画を持とうとも、やっぱり国が金を出すことですね。それだけの用意、腹がまえというものがきちんときまっていなければ、どんなりっぱな、きれいな表現をしましても、これは画餅同様のようなことにもなりかねないのでありまして……。  そこで、一事例としてお尋ねをしておいてみたいと思うんですけれども、漁連などの言っておることを聞きますと、日本列島周辺が二万七千キロくらいあると、この際その約五分の一の五千キロくらいの大規模な漁礁帯の造成というようなものを目ざすことが必要ではないか。これをやるには大体一千億くらいを目途にいたしまして、少なくとも一年間百億くらいの金は国が出していくくらいの用意を持たなければ、法律ばかりつくったっても、これは生きはしないじゃないかというような意見があります。私どもしろうとが聞いても全くごもっともだと思うわけでございまして、そういうふうなことについての国の見解はどうなんでしょうかね、お尋ねをしておきたいんです。
  58. 内村良英

    政府委員内村良英君) 私どもといたしましても、ただいま先生から御指摘がございましたように、いかに法律をつくって、りっぱな計画をつくってみても、その事業の実施の裏づけがなければ意味がない、御指摘のとおりだと思います。したがいまして、今後計画をつくりまして、その計画の実施については、財政上の裏づけにつきましても、最善の努力をしなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  59. 神沢浄

    ○神沢浄君 さっき申し上げたくらいの金は出せるんですか。
  60. 内村良英

    政府委員内村良英君) 漁連がグリーンペーパーで、そういうことを言っていることは私どももよく承知しております。しかし、今後この事業の実施につきましては、一年間の調査の結果できた計画でやるわけでございまして、その計画によって将来の方向がきまってくるということで、ただいまこの席上あれぐらいということはなかなか申し上げにくい問題でございます。
  61. 神沢浄

    ○神沢浄君 この場でもって即答を求めても、それは無理かもしれませんですけれども、確かにそのくらいの腹がまえを持たなければ、私は、いままでの論議の中で明らかにされてきておるような、国際、国内の漁業の周囲を取り巻く諸情勢の上から考えてみましても、ほんとうに日本漁業というものを、防衛かつ確立していくというようなことには全くなりかねないのではないかと思います。これはもう決意のほどを慫慂して、それ以上の無理なお尋ねは控えておきたいと、こう思います。  法案の中に、さらにこれは、特定の水産物の育成事業にかかわる条項ですが、第十五条で「その他の援助」というような表現がありますね。これもはなはだ具体的ではないわけでありまして、この「その他の援助」というのはどういうことなのか。  それからまた、栽培漁業にかかわる条項につきましても、これは十六条ですね、「栽培漁業の振興に努めなければならない。」、これは「ならない。」のは、あたりまえのことですけれども、やっぱり内容的には何か、というようなことが、私ども読んだだけでは、さっぱり見当がつかないですね。この辺も、中身は何なのかというような点を伺っておきたいと思うんです。十五条、十六条ですね。
  62. 内村良英

    政府委員内村良英君) 十五条の「特定水産動物育成事業の実施に関し必要な助言、指導その他の援助を行うように努めなければならない。」、この「その他の援助」というのは何であるかという御質問でございますが、「助言、指導、その他の援助」と、かなり広いことになってまいりまして、これには行政上あるいは財政上の措置も伴うというふうに考えております。  それから十六条でございますが、十六条の規定は、今後の沿岸漁業の振興上、最も重要な施策の一つといたしまして、栽培漁業の振興をはかるためには、国及び都道府県は、干がたやモ場の造成や保育漁礁の設置等の沿岸漁場整備開発事業及び特定水産動物育成事業の実施と、それから県営栽培センターの設置等、水産動植物の種苗の生産施設の整備運営等、一そう推進しなければならないというようなことを規定したものでございます。
  63. 神沢浄

    ○神沢浄君 次へまいりましょう。  漁業災害補償法についてですが、まず第一に、第一点として伺いたいと思いますのは、これは三十九年に法制化をされてすでに十年を経過をしている。政府の説明にはこう書いてありますね。年々事業規模が拡大し、漁業の経営安定に寄与してまいりました、こうあるんですけれども。四十五年、四十六年、四十七年の三カ年間の推定加入率を見ると、さっきの御説明にもあったんですが、養殖共済で二〇から三〇%台、漁獲共済、漁具共済などについては大体一〇%くらいですね、一〇%から一一%。この趨勢では、どうも年々事業規模が拡大して、漁業の経営安定に寄与してきたと言うには少しく十分ではないような感じがしてならないわけです。また、共済事業そのものの目的が達成されているとは、これは残念ながら言えないのじゃないかと思うんですが、  そこで、まずその原因の分析からお聞きをしてまいりたいと思うんですよ。そういうものの上に立って改正案が出ているだろうと、こう思います。が、しかし、この原因の把握いかんによっては、この改正案でもって、はたして事足れるかどうかということも問題になる点だろうと思いますから、まず第一点として、その原因の分析からお尋ねをいたします。
  64. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先生からただいま御指摘がございましたように、今日までの漁業災害補償制度は、どうも加入が低いじゃないか、そこで災害に対して十分な漁業者を保護してないという御質問だと思います。その原因は何であるかということでございますが、これは今度の改正で、実はなるべくそういった点を是正するために、過去二、三年関係者が集まりまして、一生懸命研究したものでございますが、その改正点を申し上げれば、大体これまでの欠陥が出てくるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  改正点の第一点としましては、まず漁獲共済でございますが、てん補内容の改善をはかっております。従来の共済限度額の算定方式でございますと、最近の漁価の上昇傾向や、漁業経営の実態に十分即応してないというような不満がございましたので、今度の改正で、その点を改正しているわけでございますけれども、従来の不満といたしまして、てん補内容が十分でないということがあったわけでございます。  それから、第二の問題といたしまして、加入したいと思いましてもなかなか加入できないと。すなわち自分一人では加入できないというようなものが第一号漁業、第二号漁業等にあるわけでございます。そういう点につきましては、今度義務加入制をとりまして、入りやすくしているわけでございますが、そういった問題がございます。  それから、養殖共済につきましては、小損害がてん補されないというような不満がございました。その点につきましても今般改正をしているわけでございます。  それから人災か自然災害か非常に問題がある。最近、養殖に非常に損害を与えております赤潮が免責になって、なかなかこれが対象にならないというようなことも不満の原因かと思います。そういう点についても、今般は改正をしたわけでございます。  それから共済契約の締結の制限の緩和、すなわちカキ、真珠、真珠母貝及び帆立貝養殖業の契約締結にあたっては、現在加入区というものが、これは漁業漁場でございますが、内で、共済の対象となる養殖水産動植物及び養殖施設のすべてを契約する場合に限り、契約が締結できるということになっていたわけでございまして、だんだん養殖技術が発達いたしますと、もう施設のほうはいいから養殖対象のものだけやりたいということになっても、なかなかできなかった。そういう点も加入が少なかった原因でございますが、そういった点も今度改めております。  それから、ノリ等につきましては物的保険になっておりまして、これが値段の問題その他が入ってこない。漁獲共済の場合には一応収獲保険になっているわけでございますけれども、ノリは物的保険だということで、漁獲共済と同じようなことにならないかというようなことは、かねていろいろ言われていたわけでございますが、それについても今度、これは実験という形でございますけれども、取り入れてやってみるというようなことで、従来漁業者方々からいろいろな不満として出ていた点について大体の手当てはしていると。さらに国庫負担も若干ふやしているというようなこともございまして、これによって加入の促進を大いにはかれるのじゃないかというふうに見ておるわけでございます。ただ、それで完ぺきかと言われますと、なお今後においてもいろいろ努力をしなければならない点はございますけれども、とりあえずの改正として、これは非常に加入促進には大いに役立つ改正ではないかというふうに考えております。
  65. 神沢浄

    ○神沢浄君 いまの御説明は一応わかるのですがね。農業災害などにおいても同じような状況があると思いますけれども、とにかく共済制度というのが非常に難解過ぎて、そのてん補率やら修正やら限度額率とか、掛け金率とか、これは専門家でなければちょっと無理で——大体漁家の側からすると、自分が受け取るその共済金がどういうように計算をされて、そうして受け取る金額になるのかすらも、なかなかこれは、よほど漁連などのデスクの専門の人ならこれは別ですけれども漁民という立場からしますと、おそらくわからぬのじゃないかと、こう思うのですけれども。  それからもう一つは、そういう難解なことに加えて、やはり共済金それ自体が、ほんとうに災害を受けたときの補償に、いまの経済情勢の中にあって、実際、災害の際の補償に足り得るようなものになっておるのかどうなのか。端的な言い方をしますと、掛け金をかけておりましても、災害を受けたときに、これっぽっちのものではあまり役にも立たないというようなことであるとすれば、これは制度なんかばっかり、幾ら仕組みをりっぱに変えていってもなかなか——これは漁民の側からいたしますと、ほんとうに率直な利害上の感覚からいって、受け入れられないようなものがあるとすれば、それは法律ばかり幾ら変えたってもなかなか、加入率をふやすなどということには、なっていかないんじゃないかと、こう私は思うんです。  そこで一例として、年間水揚げ高、百万円の漁家が、百万円の契約をしたとしますね、そして事故によって、収穫が半分になっちゃった——五十万になっちゃった。こういうような場合に、いわゆる限度額の問題とか、てん補率の問題とか、その制度上きめられておるようなものについて、大体一般例として計算をしてみますと、受け取り共済金というのは、どのくらいになるのかということを、私も知りたいと思うんですがね。これは、ちょっとすぐには無理ですか。
  66. 内村良英

    政府委員内村良英君) これは第一号漁業及び第二号漁業、第三号漁業によっていろいろ違うと思いますし、個別のケースについてはいろいろ数字が違うと思います。したがいまして、正確には、計算してみなきゃわかりませんので、なるべく早く例を設定いたしまして、資料として提出いたしたいと思います。  ただ、私どもが、ちょっと頭で考えたところでは、大体共済金は三十万ぐらいじゃないか。それによって経営費は——大体経営費を補償するたてまえになっておりますから、経営費は大体カバーされるのではないかというふうに思っております。
  67. 神沢浄

    ○神沢浄君 私の率直な感じとすれば、なかなか、加入推進がはかどらないという一番大きな因子になっておるのは、やはり漁家の側が、それこそほんとうに率直な感覚として、掛け金をかけて、共済に加入をしていても、災害があったとき、あまり役に立たない。こういうような感じというものが、いままで強かったんじゃないかというような気がするわけなんです。それですと、これはなかなか容易じゃないわけなんで、今度のこの改正によって、それがどういうふうに改善されるか。これは資料を、現行とそれから改正後のものと比較対照できるようなものをひとつ出していただきたいと、こう思うんです。これは、もし私がいま指摘をしておるような実情があるとすれば、さらにこれは考えていっていただく点ではないかというふうに思います。  そこで、私は、この改正案を見てみまして、私なりの判断としてひとつこういう点を感ずるんです。漁業といいましても、今度は何か選択制などをとっているようでありますが、遠洋等のいわば大きな企業的漁業と、それから沿海漁業のいわば零細な漁民的な漁業と、これは全く構造上は異質なものが一緒になってしまっておる。ですから、どちらも包括してやろうということになると、最大公約数的な制度にならざるを得ないのであって、どちらに向いても、中途はんぱというか、不徹底なものになってしまうんじゃないか。これは私の私見として申し上げるんですが、やはり企業的な大きな規模の漁業については、それはもう保険のたてまえでもって成り立つだろうと思います。しかし、現状の日本の経済的な情勢などの上からまいりまして、同時に、この日本漁業のいままで論議をされてまいっておりますような、将来に向けての漁業防衛的というような点から考えてみますと、やっぱり中小かつ零細な規模の漁民漁業に対しましては、もっとずっと徹底した補償的な共済の制度になっていかなければ、ほんとうにその目的を達成していくということは困難なのではないか。いまのところどちらも一緒に取り込んでしまってそうして扱っていこうとしておるところに、保険と補償との問題がどちらも徹底し切れなくてあいまい、中途はんぱみたような制度にならざるを得ない。こういうような点が私としては感じたところなんですが、こういう点についての見解はどうでしょうかね。ちょっとお尋ねをしてみたいと思います。   〔理事高橋雄之助君退席、委員長着席〕
  68. 内村良英

    政府委員内村良英君) 確かに、先生から御指摘がございましたように、わが国漁業というものは、農業と違いまして非常に景況のバラエティーが大きいわけでございます。すなわち、農業にはないような大資本漁業というものもございます。そこで、こういった漁業災害補償制度というのは、国の補償制度は、より零細なものを中心にして、もっと補償的な性格を強めていくべきではないかという御質問かと思いますけれども、私どもといたしましてもいわゆる零細漁業でございます漁済の第一号漁業及び第二号漁業につきましては、その経営的な基盤が脆弱であるということもございまして、今度の改正におきましても、第一号漁業にあっては国庫補助率を六〇%から六五%に、それから国庫補助限度率も六〇から六五に引き上げております。また、第二号漁業、これは十トン未満の漁船漁業でございますが、につきましても国庫補助率を五五%から六〇%に、国庫補助限度率を六〇%から六五%に引き上げるような措置をとりまして、小さいほうの国庫負担を優遇するという措置をとっているわけでございます。そこで大きいものについて一例を申しますと、たとえば五十トンから百トンの漁船漁業につきましては、全口加入の場合であって国庫補助率が三〇%、半数以下加入の場合には一五%というようなことで、零細なものを優遇しているということはございます。しかし今後、漁業経営は非常にいろいろむずかしい問題に直面していくと思いますので、私どもといたしましては、零細なもののこういった共済の国庫補助率のさらに引き上げというようなことには大いに努力しなきゃならぬと思っておりますけれども、逐次その方向に向かっているわけでございます。
  69. 神沢浄

    ○神沢浄君 私は、いただきました資料を拝見しまして、そして感じた点は、端的な言い方をすると、大企業的漁業は、こんな制度はあんまり当てにしていない、むしろ問題にしていない。また、それで実際いいわけですよ。むしろこの制度が救済をしていかなきゃならないのは、零細ないわゆる漁民漁業でなきゃならぬわけですから。そうであるとするならば、むしろこの共済制度というのは、そこへぴったりと焦点を当てて、大きな企業的漁業などはもう除いたっても私は、いいんじゃないかと。そういうような制度に整とんをしていくことのほうが、これは根本的に必要なんじゃないかという感じを受けたわけなんです。いま、この法案から受け取る感じというのは、やっぱり同じ漁業というからには、企業的なものをもやっぱり一緒に包括をしているから、これはどうも漁民対象にしての制度を充実していこうと思っても、ある程度、一方の企業的漁業をしょっておるだけに、そこでもって制約が生じてしまってこの制度の整備がほんとうに十分に行なえぬじゃないかというような感じを受けたのでありまして、この辺はひとつ検討課題として御研究をいただくことが必要じゃないか、こういうふうに思うんです。  てん補方式の選択ということを言ってはおりますが、しかし、それだけでは——本来、大企業的なものと漁民的なものは、これはもう構造上異質のものですから、ただ、てん補方式の選択というふうな手段だけでやり切れぬのじゃないかという感じがいたします。その点についてはどうでしょうかね。
  70. 内村良英

    政府委員内村良英君) ただいまの先生の御指摘の点でございますが、私どもといたしましても、この漁業災害補償制度というものは、やはり零細漁民災害対策ということを主眼に考えておるのでございます。そこで、第三号漁業に百トン以上の漁船が入っておるわけでございますが、こういったものに対しましては国庫補助もしておりません。したがいまして、あくまで零細漁業中心ということで今後も制度の拡充をしていくということを考えておるわけでございます。
  71. 神沢浄

    ○神沢浄君 私は、むしろ希望的な見解として申し上げておきたいと思うんですが、今度義務加入制を採用されておりますね。私は、いまのお答えになっておるように、零細漁民を対象とした制度として完備していこうというのであれば、当然加入にこれは踏み切って、そして反面、それを裏づけするところの一つの補償措置というものをやってこそ、この制度というものはほんとうに生きてくるのじゃないか。いまのところじゃあどうもやっぱりそこまで踏み切りもむずかしいし、義務加入程度のところでもって、とどめておかなきゃならぬというようなところに、私は何か一つの問題があるような気がしてならないから、こういうお尋ねをしておるのですが、ちょっとくどいようですけれども、その点についての見解をもう一度お聞きしておきたいと思います。
  72. 内村良英

    政府委員内村良英君) 共済制度の場合におきまして、保険のプールと申しますか、加入者がたくさんあったほうが制度としては充実するわけでございます。したがいまして、しかもこういった零細な漁業者災害救済措置であるということを考えますと、ますます保険のプールが大きいということは、私どもは、非常に強くそれを望んでいるところでございます。  そこで、当然加入と申しますか、強制加入と申しますか、こういった制度については強制加入をとったらどうかということも考えないわけではございません。しかし、農業災害補償制度の場合につきまして、米については強制加入になっておりますが、あれはやはり食管制度という特に戦争中のああいう管理制度、それの裏づけとしてできておるというようなこともございまして、新憲法のもとではなかなか強制加入というのはやはり問題があるというような法律上の問題もございます。  そこで、義務加入——罰則もない、手ぬるいじゃないかという御批判があるかもしれませんけれどもわが国の法制の現在の体系で見れば、義務加入ぐらいのところが一ぱいだろう。要するに、そういうものの運用によって、先生方から御指摘がございましたように、もっとプールを大きくしていくということは、これはもう絶対必要でございますので、今度の制度改正を大いに周知徹底させまして——確かに先生から御指摘がございますように、制度がいまだに非常にむずかしいという面はございます。ございますが、なるべくわかりいいようなパンフレット等をつくりまして、制度の周知徹底をはかってプールを大きくしていく。同時に、義務加入の普及促進をやってもらいたいというふうに考えているわけでございます。
  73. 神沢浄

    ○神沢浄君 そこで、いま食管制度の話が出ましたが、私は、この漁業災害補償法というのを見まして、非常に特徴的なものの一つとして、漁獲共済につきましては、やっぱりその魚価の市場低落をまで救済を、まあ一面できるような内容にこれはなるわけですね。農業災害補償制度ではそういうことはないようですが、これだと、自然災害ということでなしに、いわゆる経済変動によるところの魚価の変動に及んでまで、まあ一面的には救済がしていけるような制度になっている。言い方を変えると、その魚価の安定制度というものについての一翼も、この補償制度がになっておるというような性格に見えるんですが、その点はどうなんでしょうかね。
  74. 内村良英

    政府委員内村良英君) その魚価の補償になっているかどうかという点は、これは大いに議論のあるところだと思いますけれども、物的な損害だけ見ている、いままでの農業共済とかあるいは漁業共済はそうだったんです。が、漁獲共済の場合には、ある程度所得の補償ということばを使っていいかどうかわかりませんけれども、そういった面がないわけではない。しかし、魚価安定という問題は、やっぱり別な問題として考えなければならぬ問題ではないかと思っております。
  75. 神沢浄

    ○神沢浄君 そこで、私も、魚価安定というものは当然これは別の問題でなければいけないとこう思うのですが、この際お尋ねするんですけれども、魚価安定の問題についてはいま制度上どうなっているんでしょうか。
  76. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先生御案内のように、農産物、畜産物につきましては、ただいまお話のございました食管制度をはじめかなり手厚い価格政策があるわけであります。そこで、水産物についても同様なことをやるべきである。農業であれだけの金を、価格支持に使っているならば、水産物の魚価安定にも、それだけの金を使って、価格安定をはからなければ、今後の水産物の安定供給を確保し得ないんだという議論がございます。この点につきましては、過去十数年間非常に研究された事項でございますけれども、御案内のように、水産物の場合には、非常にこれはむずかしいわけでございます。と申しますのは、魚の種類がものすごくある。それから同じ三キロなら三キロのマグロをとってみましても、その鮮度その他によって非常に価値が違うというような問題もございまして、農業で適用されているような、いわゆる価格支持政策あるいは価格安定政策というものはなかなかとりにくいという現状でございます。  そこで、私ども考えておりますのは、最近、冷蔵冷凍技術の非常な発達によりまして——いままでは出荷調整すらできなかったわけでございます。したがって、市場にたくさん一時に水揚げされて値段が下がる、あるいは非常にとれなくてそのかわり値段は一方的に上がったというのが魚価の歴史でございますけれども、ものによりましては、最近、非常に冷凍技術の発達によりまして、非常にとれたときには、水揚げが多いときには、ある程度しまっておくというようなこともできるようになってきたわけでございます。そういった流通の革新というものをてこにいたしまして、将来におきましては、やはり出荷調整、特に生産者サイドによる出荷調整ということをやっていかなければならないのではないかということで、現在、生産地の冷蔵庫には非常に補助をしておりますけれども、もっとそういった面の施設を拡充し、さらに系統——漁連でございますけれども、漁連の販売事業等にも援助をいたしまして、出荷調整ということをやっていく。それ以外には、直接、米だとか、あるいはその他の農産物でやっているような価格政策は、いまの段階では、適用できないのではないかというように考えている次第でございます。
  77. 神沢浄

    ○神沢浄君 しかし、それをやらなければ、ほんとうに漁業の安定を将来に向けてはかっていこうとしても、困難ですね。私は、そういう感じがしてならないんです。この法案をちょっと見てみまして、なるほど何か魚価の値下がりまでも一部救済できるような制度になっておりますけれども、まあ先ほどお答えの中にもありましたように、たとえば、これは推定としても五十万の被害に対して補償三十万というようなことであるとすれば、それではたして魚価が再生産のために十分にまかなっていけるかどうかという点については、はなはだ疑問なものが残されると思うんです。ですから、この制度をほんとうに生かしていこうというについては、やっぱりむずかしいでしょうけれども、一面的には、魚価の安定制度というものを確立をすると同時に、補償制度は、あくまでも、漁獲それ自体の保険補償を考えていくというような、そういうような制度上の整とんが行なわれていきませんと、実際、漁業を守っていこうということは、やっぱり中途はんぱなものにならざるを得ないんじゃないかというようなことを実は感じたものですから、そういう点を自分の見解として申し述べてみたわけなんですが、将来のひとつ御検討あってしかるべき点ではないかと思います。  それから、例の赤潮特約、これはかなりの前進だと思うんです。ただ、ここで私などが感ずる点は、この制度上はこれでいいんですが、これは、おそらく産業公害みたいなものが主因だろうと思うんです。そうすると、そちらのほうの、いわゆる原因者責任というこれは、この制度の中の問題じゃないとしても、大きく関連をすることですから、そういうふうな点はどういうふうな考え方、どういうふうになっておるのか、その点ちょっとお尋ねしたいと思います。
  78. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先生御案内のように、わが国の公害対策としての補償の問題は原因者負担、PPPの原則と言っているようでございますけれども、原因者負担で対処するというのが、基本的な方式でございます。そこで、赤潮の場合におきましては、自然災害的な面と人災的な面と二つ混在しているというふうなこともございまして、やや特殊的な面があるわけでございますけれども、人災、たとえば工場汚水によって起きた赤潮であるということがはっきり立証でき、向こうも、加害者もそれを認めているというようなものにつきましては、あくまで加害者に支払わせるということでやらなければならない。したがいまして、赤潮特約ができました後におきましても、加害者の責任が明確なものについては、徹底的に加害者に追求するということをやらなきゃならぬと思っております。
  79. 神沢浄

    ○神沢浄君 時間もありませんから、もう二点ばかりお尋ねして終わりますが、基準魚価の算定の問題ですね。これは経済的にある程度動向が安定をしておるときは、それほどの問題にはならないのでしょうけれども、狂乱物価といわれているような状況の中におきましては、これは前三カ年の加重平均をとる。こういいましても、それは必ずしも、それで、当面のはたして基準として妥当性を持つかどうか、ぼくは非常に疑問に感じたわけなんです。たとえば四十八年と四十九年では、これはもうべらぼうな相違があるわけですね。そうすると、六、七、八の平均をとってみても、それが四十九年に対しては、はたして妥当性を持つのかどうなのか。こういうような点を、たいへん私は疑問に思いましたが、そういう点についてはどうでしょうか。
  80. 内村良英

    政府委員内村良英君) 今般の改正におきまして、先生御案内のように、過去三年の単純平均の漁獲金額金額修正係数を乗ずることにしたわけでございます。そこでこの金額修正係数につきましては、漁業の実態に即応して定められるべきものでございますから、私どもといたしましては、今後、漁業の実態の推移を見ながら、必要に応じてこれを改定していくということをやっていかなければならないと思っております。これによってある程度現実に調整するということを考えております。  なお、基準漁獲金額の決定にあたりましては、各漁業共済組合で地域漁業実態等に即応するようその額を勘案して定めることができるということになっておりますので、これで全部異常事態が救われるとは私も思いませんけれども、通常の場合には、これによって対処できるのではないかというふうに考えております。
  81. 神沢浄

    ○神沢浄君 そこで、いわゆる修正係数、その修正係数の定め方が問題になってくるだろうと思うのですけれども、これは何かやっぱり算定というか、定め方の基準というようなものをお持ちなんですか。
  82. 内村良英

    政府委員内村良英君) やや技術的なことでございますので、課長に答弁させてよろしゅうございますか。——
  83. 山内静夫

    説明員(山内静夫君) 金額修正係数の算出の方法でございますが、これから適用します金額修正係数でございますが、昭和三十九年から四十五年度におきまして契約者の実績、こういうものから、過去におきましてその人たちの平均漁獲金額がどうであったかと、こういうことから、その年度の漁獲金額と対比いたしまして、それをずっと積み上げまして、その平均をもちまして金額修正係数をつくっていこう、こういう状況でございます。ただこの場合に、過去の契約件数が比較的多い件数の場合はよろしゅうございますが、小さい場合に、非常な数字のズレがあった場合には、大体一・二ぐらいにおさめるようなかっこうで大体定めたいと、こう思っております。
  84. 神沢浄

    ○神沢浄君 そういう技術的な問題につきましては、私などにも、なかなかわかりにくいんですけれども、ただ、私どもが非常に疑問に思うのは、さっきも申し上げるように、狂乱的異常動向というふうなときには、実際には、過去三カ年の平均値というものに、いま御説明があったような、いわば理論上の係数値を出してみても、これは実際には当てはまらぬような気がする。異常な、狂乱と言われるような場合は、これはやっぱり別に考えなければ、やっぱり妥当性を欠いてしまうんじゃないか、というような点が一つ非常に不安に思われますので、これはひとつ御検討をいただきたい点であります。別にまあここでもってどうこう求めようということではありませんから。  それから最後に、こういうことについて、私が感じますのに、それほどの加入状況になっているわけでもないようですし、いただきました資料からいたしますと、ずっと漁獲共済などを除く加入率の高い養殖共済などについては、ほとんど赤字が続いているようですね、その共済団体の側からすると。しかも国の保険にも何率というのですか、要するに、限度があるわけでしょうから、そういたしますと、いままでのところ、この事業をやっている組合ですね、あるいは組合連合会等はかなり赤字団体化しておるのではないかという点が予想されるのですが、そういう点はいかがでしょう。と同時に、そうであるとするならば、それに対して、国とすれば、どういう対策を講じていってやろうとするのか。この点を伺って終わりたいと思いますが……。
  85. 内村良英

    政府委員内村良英君) 漁業共済組合の事業の収支状態がどうであるか、それからその対策がどうかというような御質問かと思います。
  86. 神沢浄

    ○神沢浄君 はい。
  87. 内村良英

    政府委員内村良英君) これはやや数字にわたる問題でございますが、漁業共済組合の収支状況は不安定でございます。全国三十九組合がございますが、昭和四十五年度——ちょっと数字が古くなりますが、四十五年度においては三十組合、四十六年度においては二十一組合、四十七年度においては二十七組合が黒字を計上しておりまして、その他が赤字ということで、黒字のほうが多いわけでございます。  なお、累積の収支は、四十五年度末十六組合、四十六年度末十九組合、四十七年度末十八組合が黒字を計上しておりますが、その他赤字になっているということで、累積で見ますと、黒字のほうが少ないと、こういうことになっております。  赤字組合は、共済事故の大きい、たとえば宮城、山口、徳島、高知でございますけれども——四組合のほかは、共済加入率の低い組合でございまして、今後、制度改正によりまして、加入率が増加すれば、かなり収支がよくなってくるのではないかと、こう思っております。  そこで赤字補てんについては、昭和四十五年度に漁済連に対しまして三億円の補助金を交付いたしましたし、さらに、漁業共済基金という、農業共済基金と同じようなものがございますが、これから二億円の無利子貸し付けを行なわせたわけでございます。その場合の原資といたしましては、政府、地方公共団体及び共済団体が、二億円を漁業共済組合に対して増資をしたわけでございます。  基本的には、先ほどから申しましたけれども、この漁業共済組合の収支という点から考えましても、やはりプールを大きくすると申しますか、加入率を高めていかなきゃならぬ。こういうことが基本的な対策と思っておりますし、その意味で今度の制度改正というのは、相当貢献するところがあるのではないかというふうに、私どもは強く期待しておるところでございます。
  88. 神沢浄

    ○神沢浄君 終わります。
  89. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 三案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  90. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  三案審査のため、参考人の出席を求めることとし、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十三分散会      —————・—————