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1974-04-12 第72回国会 参議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月十二日(金曜日)    午後零時四十八分開会     —————————————    委員の異動  四月六日     辞任         補欠選任      平泉  渉君    久次米健太郎君  四月十二日     辞任         補欠選任     久次米健太郎君     平泉  渉君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         初村滝一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高橋雄之助君                 足鹿  覺君                 鶴園 哲夫君     委 員                 河口 陽一君                 佐藤  隆君                 田口長治郎君                 棚辺 四郎君                 平泉  渉君                 堀本 宜実君                 神沢  浄君                 工藤 良平君                 沢田  実君                 塚田 大願君    衆議院議員        農林水産委員長        代理       湊  徹郎君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        農林政務次官   山本茂一郎君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省構造改善        局次長      杉田 栄司君        農林省畜産局長  澤邊  守君        林野庁長官    福田 省一君        水産庁長官    内村 良英君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  住田 正二君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        運輸省港湾局技        術参事官     大久保喜市君        建設省計画局宅        地部宅地開発課        長        吉田 公二君        建設省道路局企        画課長      浅井新一郎君        国土地理院地図        管理部長     尾崎 幸男君        自治省行政局振        興課長      田中 和夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農用地開発公団法案内閣提出衆議院送付) ○漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○沿岸漁場整備開発法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農用地開発公団法を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 五点ほど伺いたいわけです。  まず第一は、農用地開発の問題につきまして伺いたいと思います。この農用地開発について、どうも政府姿勢が長いこと、非常に消極的だというふうに一般に言われております。私もやはり消極的だと思ってきております。今回こういう新しい公団ができまして、この農用地開発について積極的な面が出てきたのかどうかという点を伺いたいわけなんです。  私はこの公団を見まして、戦後の緊急開拓の問題を想起しておるわけです。というのは、これから農用地開発するということになりますと、どうしても山に向かわざるを得ない。山に近いところは、御承知のように、約二十五万ヘクタールにわたって、この数年の間にゴルフ場その他のレジャー施設開発されておるわけです。でありますから、どうしても山に向かっていくということになりましょうし、さらに、これからの若干の遠い将来を見た場合に、ますます山に入らなければならないという感じを非常に強く持つものですから、かっての、長年にわたりましてやりました、戦後やりました緊急開拓というものを非常に思い出しておるわけです。緊急開拓は御承知のように、山に登ったわけですが、政府が未墾地等の売り払いをした面積が百三十何万ヘクタールという——開拓者が二十一万幾らという、もちろん増反者もありました。しかし、これが多くの面から言いまして、やはり失敗をしたという面が多いと思うのです。しかし、その緊急開拓政策の次に農基法ができましてから、御承知のような開拓パイロットのような形で、農用地造成の事業というものが行なわれてまいったわけです。  そこで、耕地面積ですけれども農林省の、いただいた資料を見ましても、三十六年が一番ピークでありまして、六百八万ヘクタールという、これが十年ぐらいの間に——四十七年の面積が出ておるわけですが、五百六十八万ヘクタールということで、四十万ヘクタール減少しておるわけであります。一六%ぐらいです。ちょうどその間に農家戸数も一六%ぐらい減っております。一六%狭くなったということになるわけでありますが、大体私どもの常識としましては、農用地というものは、耕地というものは六百万ヘクタール——壊滅もあるけれども造成もあるというところで、大体造成壊滅壊廃がプラス・マイナス・ゼロぐらいで六百万ヘクタールというのが明治以来といってもいいほど、ずっと続いたわけですけれども、この三十六年ごろから以降、たいへんな勢いで農地壊滅をしたということになるわけであります。  そこで、たいへん顕著な急速な壊滅をしているわけなんですが、四十一年の三月に、閣議決定土地改良長期計画、いまや旧というふうに使われておりますが、旧土地改良長期計画、十カ年計画というのがありまして、これが十年間に農用地を三十五万ヘクタール、草地を四十万ヘクタールということをやるというふうに閣議決定をして実行されてきたわけですが、いまやもう十年が過ぎようとしておる。過ぎたといってもいいわけですから、この実績ですね、農用地を三十五万ヘクタール、草地を四十万ヘクタール、それの実績をお伺いをしたいわけです。
  4. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先生御質問の旧土地改良長期計画、これは確かに四十年から四十九年ということで長期計画を立てたわけでございますけれども御存じのように、四十八年から第二次といいますか、新土地改良長期計画に移行しているわけでございます。過去におきます実績と申しますと、四十年、つまり旧土地改良長期計画初年度でありました四十年度から四十七年までの間におきまして、農地開発が十九万ヘクタール、草地開発が二十一万五千ヘクタール、合計いたしまして約四十万ヘクタールの造成をいたしたわけでございます。
  5. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ほぼ半分というところになるわけですね。農用地草地とも大体半分程度の実施が行なわれたということになるわけですが、そこで、いま局長のおっしゃったように、昨年の五月一日に一年繰り延べて——繰り下げたということになりますか、新土地改良十カ年計画というものが閣議決定になっておるわけです。それに基づいてやっていらっしゃるわけです。これからやろうというわけですが、やっているわけですが、これが農用地が三十万ヘクタールと草地が四十万ヘクタールという決定になっておるわけです。で、この数字といいますか計画が、その前の年、四十七年の十月に出しました、農林省試案として出した「農産物需給展望生産目標試案」これに基づいておるというふうにいわれておるわけですけれども、この試案によりますと、五十七年までに、四十七年の十月に試案を出したわけですが、十カ年計画昭和五十七年に——耕地面積が五百七十九万ヘクタールいまあるわけですが、これが実際は五百二十万ヘクタールになるだろうと。いまからもっと減るわけですね。一割ぐらい減るわけです。五百二十万ヘクタールになる。これは、草地は二十四万ヘクタールあるものが、四十万ヘクタール造成をして六十四万ヘクタールになる、こういうふうな形になるわけですね。  そこで耕地は、いま言いましたように五百二十万ヘクタールに減るわけですよ。もちろんその間に三十万ヘクタール造成はするのですけれども、五百二十万ヘクタールというふうに大幅に減るということになるわけですね。差し引き引いてみますというと、八十九万ヘクタールぐらい十年間の間に耕地が減るということになるわけですね。  ところで、問題は草地なんですが、草地は四十万ヘクタールつくって、それが六十四万ヘクタールになるというわけですね。ですから、耕地は相当大幅に減少するけれども草地は全然減らないという見通しなんですね。いまのヘクタールから四十万ヘクタール新しくつくって、それで五十七年には六十四万ヘクタールだと、こういう数字でしょう。耕地のほうは、いま私が言ったようにたいへんなつぶれ方をするわけだけれども草地のほうは全然つぶれないという想定じゃないのですか。
  6. 大山一生

    政府委員大山一生君) 私のほうから便宜申し上げますと、「農産物需給展望生産目標試案」、これによりまして、五十七年におきまして大体七十何%かの自給率を維持するためには農地が五百二十万ヘクタール、それから草地が六十四万ヘクタール、これは先生指摘のとおりでございます。そういう六十四万ヘクタールの草地を必要とするという背景の中におきまして、草地につきまして、現在、四十六年二十七万ヘクタールございますけれども、それにつきましても何がしかの壊廃があることを前提といたしまして、造成約四十万ヘクタールということを考えているわけでございます。したがいまして、農地草地合わして約七十万ヘクタール、こういうのは、沖繩を加えますともう少し数字が多くなるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、農地草地ともある程度傾向値に基づく壊廃ということを前提といたしまして、それをして、なおかつ造成すべきものが約四十万ヘクタール、こういうふうなことで、この土地改良長期計画前提をつくっているわけでございます。
  7. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、この長期計画と、それからいま五十七年を目標にした農林省試案との関係で見ますと、耕地のほうはつぶれる面積は八十九万ヘクタールつぶれる。しかし三十万ヘクタール造成するから、実際減るのは五十九万ぐらいのやつが減る。そして結論は五百二十万ヘクタールになるんだと。いまよりもっと一割ぐらい減ったものになるんだと、こういう見方。ところが私が聞いているのは草地についてはそういう考え方がないのではないですか。このできたときの基礎数字は二十四万ヘクタールになっている。そしてそれに四十万ヘクタール新しく造成をするから五十七年度には六十四万ヘクタール。そこで若干調べてみますというと、この十年の間にやっぱり草地も十万ヘクタールぐらい減っているんですね。今度はどうもそうじゃない。草地は減らないという考え方に立っていらっしゃるのではないかということを聞いておるわけです。局長はいやそうじゃないと、多少減るものは考えているんだというお話ですが、それは局長ほんとうですか、それ。
  8. 大山一生

    政府委員大山一生君) もう少し具体的に申し上げますと、四十六年におきます草地面積は二十七万ヘクタールでございます。そして壊廃される面積が四万と見まして、そして造成する面積四十一万、そして五十七年に六十四万、こういうのが土地改良長期計画をつくりましたときの農用地需給見通しでございます。
  9. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 あなた四十六年は二十七万ヘクタールと、そして四十一万ヘクタールつくると。そうすると、六十八ぐらいありますね、六十八万ですね。それで幾ら減るというんですか。
  10. 大山一生

    政府委員大山一生君) 改廃四万でございます。
  11. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 四万、それはいい数字だな。それはそういうふうに数字を出されるのはけっこうです。農地は、いま私が言ったように、八十九万減る、つまり耕地は八十九万ヘクタール十年の間に減るが、草地のほうは四、五万という数字、ぜひそういうふうにしてもらいたいもんだと思うんです。で、過去の例を見まして、どうもそういうふうにとれないわけなんですが、しかしこれは計画ですし、目標ですから、ぜひそういうお話ならそういうふうにしてもらいたい。私は基礎数字を四十六年にとったわけです。それで四十六年にとっておって二十四万ヘクタール、それに四十万ヘクタールたして六十四万だから、どうも全然ふえない、こういう見方をしておったわけです。そこの基準年次のとり方が一年違っているような感じがするから——まあいいですよ。要するに、結論耕地面積はべらぼうに減るが、草地面積は四、五万ヘクタール減ると見ている。そういう努力をぜひやってもらいたいと思う。あとほどこの問題についてはまた伺いますけれども、そういうふうに願いたいと思っております。そういうふうにしてもらいたい。  次に、そこでこの五十七年に五百二十万ヘクタールの耕地草地の六十四万ヘクタールと合わせまして、五百八十四万ヘクタールという農用地がある、五十七年には、ということになりますですね。そこで、四十四年の五月三十日に決定をいたしました新全総、これは昭和六十年をめどにしております。まあしかし五十七年と六十年ではそんな違いありませんからね。大体ここで数字を比較してみると、そうしますと新全総のほうは、昭和六十年に農用地面積として六百五十から七百万ヘクタールと、こう見ておるわけですね。たいへん数字が違うわけですね。まあ数字ばかりでちょっと申しわけないのですけれどもね。私数字が興味あるものだから、ちょっと申しわけないです。そしてあっちこっちまたがっておるものですから申しわけないのですが、これは私の言う数字間違いないから、その数字で答えればいいです、局長、簡単な話だ。数字を、間違いない数字を言ってるつもりだから。だからまあ私の言いたいのは、たいへん差があるということ、そこでこの理由は一体どういうことにあるのかということなんですよ。まあ私の推察するところによると、どうも農用地開発について、政府の態度がどうもあいまいなんじゃないかと、はなはだしくといってもいいぐらい動揺しているのではないかという結論なんですよ。さっきの例もそれを言おうと思ったのですけれどもね、局長答弁を了としまして言わなかったのですが、ここへきてどうもまたたいへんな差があるんじゃないか。五十七年と六十年、三年ぐらいの差ですからちょっとした差ですが、要するに、あまりにも大きな差があり過ぎるということですね、ちょっと百万ヘクタールぐらいの差があるわけですよね。もっと大きいところ、六百五十から七百万ヘクタールという推定ですから、そういう考え方だからあまり差があるのじゃないか。  そこで私がいま言ったように、農用地開発についての政府考え方が従来から消極的だといわれてきた、私もそう思っておる。まあ非常にこの動揺しているというのか、ふらふらしているというのか、何か消極的だというのか、そういう感じを持つわけなんですよ。そこでその一つとしてこれを出したわけです。そこの辺の説明を、残りの二年間で百万ヘクタールやるのだというならまあそれでもいいですが、どういうふうにお考えになっているのか。差があり過ぎると、——いやもうこの新全総なんというのは御破算になっているのだ、そんなものはかまわないのだというお答えなら、またそれでいいでしょうしね。
  12. 大山一生

    政府委員大山一生君) 新全総考えております農用地造成、これは実は飼料基盤強化という角度から問題をとらえているわけでございますが、私のほうからとりあえず御説明申し上げますと、新全総は、確かに四十年を基準といたしまして六十年を目標年次とするいわばきわめて長い期間の超長期計画と申しますか、こういうことでございまして、六十年において新たに百四十万程度草地を確保する、こういうことによって飼料基盤強化につとめることが必要であると、こういうきわめて意欲的なものといいますか、そしてまた大規模開発プロジェクトの構想について、たとえば天北でありますとか、根釧、それからまああとわれわれのほうでやりました北上・北岩手・阿武隈・八溝あるいは阿蘇・久住・飯田、こういったようなところの大規模畜産のための基地を整備する、こういうふうなことが新全総になっているわけでございます。  先ほど申し上げましたように、四十年から四十七年までの農用地造成という実績を申し上げますと、先ほど申し上げたようなことであり、そしてまた四十八年からは新土地改良長期計画、これは現在にいる家畜ということも当然意識いたしまして、その上において大家畜というものがそう急速にふえる筋のものでもない、こういった現実にあります家畜というものを前提といたしまして、そして新土地改良長期計画をつくり、それにおいて五十七年までに七十万ヘクタールを造成しよう、こういうふうなことにしているわけでございます。先生の言われました新全総と、それから新土地改良長期計画、こういうものを両方対比するというよりは、われわれといたしましては、新全総というかっこうによる、きわめて意欲的な超長期計画というものもあります。また、それも意識しながらも、やはりわれわれといたしましては、かつての土地改良長期計画、そしてまた四十八年からは新土地改良長期計画に基づいて草地農地合わして七十万ヘクタールの農用地を五十七年までに造成したい、こういうふうな姿勢でやっているような次第でございます。農用地開発ということにつきましては、土地改良長期計画におきましても相当の意欲を持って実施するというような姿勢で現在対処しているわけでございます。  さらに具体的な答弁が必要でございましたら、畜産局長のほうから御答弁いたします。
  13. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、いいです。  四十年を初年度とした四十一年の閣議決定の旧長期計画、これは御存じのように三十五万ヘクタールと四十万ヘクタール、耕地が三十五万、それから草地が四十万ヘクタール、こうなっているわけですね。で、その後四十八年の一月の新長期計画、これが十年、新長期計画では農用地が三十万ヘクタールで草地が四十万、まあ草地は変わりませんですが農用地が減っていますよね。だから、どうもこの数字が後退しているという印象を非常に強く受けるわけです。そうでしょう、旧の場合は十カ年計画で三十五万ヘクタール耕地をつくり草地は四十万ヘクタールだと。それで新しい今度昨年できたやつは農用地は五万ヘクタール減らして三十万、そうして草地はそのままで四十万ですね。数字そのものが後退している。  そこで、私はここで大臣にお伺いをしたいんですけれども、どうも農用地開発について、あるいは草地開発について、たいへん消極的な印象を強く受けておるわけです。昨年四十八年の一月に新しいものをつくったわけですが、具体的には四十八年決定したあと今日に至るまで、日本の農業をめぐる内外の情勢というのは、一変したような情勢にあると思うんです、農業をめぐる情勢というのは一変した形になっている。その場合に、こういったようなこれからの十年計画というものを再検討する必要があるのではないか。つまり、国内農業、国際的な農業関係の中で農業をひとつ積極的にやってもらいたい、穀類の問題にいたしましても、あるいは大家畜の問題にしても積極的にやってもらいたい、あるいは農用地の問題についても、積極的にやってもらいたいということについては、これは国民的な合意を得られているのではないかと思うんですね。そういたしますと、四十年にできたよりも、四十一年の閣議決定よりも、もっと後退したような四十八年一月の閣議決定というものをこれは是正をする検討をする必要があるのではないかと私は思うわけです。まあ農林省としましては四十七年の十月に出しました試案農産物長期需要生産目標のこの試案農政審議会にかけて審議の最中であるというふうに聞いております。ですから、ぜひとも、この際に、農用地開発という問題についてもっと積極的にやってもらう。それには、新土地改良の十カ年計画というものを修正検討する、修正のための検討をなさる必要があるのじゃないか、あるいはしていらっしゃるかと思うんですけれども考え方を聞きたいんです。
  14. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 新全総お話ございました。新全総につきましては、きわめて長期計画でもございますし、その間、計画の途中で御承知のように、経済情勢がだいぶ変化いたしてまいりまして、当初長期計画を立てましたときは、大体二兆六千億程度計画でありましたが、今度は四十八年を起点として十三兆円の十カ年計画と、こういうわけでありますが、そういう計画の中でも、いまお話のありました五十七年を目途とする農産物長期見通し、これを一応農林省は立てまして、その方針に基づいて着々いろいろな計画を進めておる間に、ただいま御指摘のございましたように、食糧事情等、国際的な状況が非常に変化してまいりました。そういうことに対処いたしまして、やはり私どもといたしましては、農政審議会需給部会で私どもが試みております長期見通しについても、専門家の諸氏に御検討を願っておることはいまお話のございましたとおりであります。  そういう最中でありますが、しばしば、他の委員会でもお話がございましたように、私どもは、やはり国内生産の可能なものについては、できるだけの自給度を高める、こういうことにつきましては、全く同感でございまして、これに大きな力を入れる。さらに、国民生活が安定し向上するに従って、何といいますか、食生活の高度化と申しますか、酪農品畜産品等需要が拡大してくるわけでございます。これが拡大いたしますれば、そういうものを育成していくために、必要な飼料自給度というのは逆に下がってくるわけであります。この状態を、逆に乖離してまいります自給度をできるだけ向上せしめなければならないという考え方から、麦その他飼料作物等について四十九年度予算では、特段の助成措置を講じておりますのも、いま申し上げたような趣旨からでございます。そこで大家畜をはじめ酪農等についての自給度も向上させるために、諸般の手段を講じておるわけでありますが、御指摘のございましたように、国際情勢の中で、食物に対する国際的逼迫状況を念頭に置きまして、われわれといたしましては、土地改良長期計画はもちろんのこと、自給度を高めるための施策を鋭意努力を進めておる、こういうことでございます。
  15. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣答弁がありましたですが、私の伺っているのは、そういうことももちろんでありますけれども、やはり農用地——あるいは草地にしても農用地にしても、積極的にこれはもっと、こういうことじゃなくて、もっと開発努力をすべきだという考え方を伺っているわけなんですよ。私は、いまどうせ五十七年の長期計画検討なさっていらっしゃるわけだから、いま大臣答弁のようなことでいけば、当然その前にできた、この四十八年の一月にできた新土地改良十カ年計画というのは数字を変えなければならぬのじゃないか。国際情勢がこんなに変わってきておりますから、国内において、また国民考え方も変わってきておるわけですから、積極的にやってもらいたい。それには修正検討する必要があるのではないかということなんですよ。この点についての大臣のお考え方伺いたいと思います。
  16. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いま御審議を願っております農用地開発公団の仕事の中にも、重点を置いて考えております一つには、やはり低位利用地、未利用地、こういうものの土地利用率をうんと高度にしてまいらなければならぬ、こういう考えが存在いたしておることば御存じのとおりであります。したがって、そういう、いま先ほど草地お話がございましたけれども、ただいま、先般まで乳価や豚価の決定までの間に非常に声を大きくしてお話が出ました、いわゆる畜産危機というようなものを考えてみましても、やはりそういう畜産、酪農についての飼料作物等についてのお話が一番の原動力でありまして、それは、それなりにそういうものを含めた考え方で、価格の決定を先月末行ないましたわけでありますが、そういうようなことを考えてまいりますというと、そういう必要なる飼料作物についての増産をはかるということと、農用地をできるだけ開発してまいるということとは並行して行なっていくべき大事な施策であると思います。  したがって、先ほど申しました審議会の需給部会等においても鋭意勉強してもらっておりますし、私ども自身のほうでも検討を続けておりますが、農用地開発して、これの利用度を高めるということにつきましては全く御同感でございまして、われわれもそういう趣旨で、いま御存じのように、他の農業をいたすにしてもそうでありますけれども、畜産等につきましても、やっぱり必要なのは、それに応じた基盤整備が必要であります。したがって、そういうことについては、いまの経済情勢では、四十九年度予算編成においてはやむを得なかったのでありますけれども、やはり土地改良長期計画の予算というものはできるだけ充実をして、そして、その実施の期間の間には、時に応じて伸縮はあるかもしれませんけれども、これをできるだけ拡大してまいるという、そういう考え方は御指摘のとおりでありまして、私どもも、そういう考え方土地改良と取り組んでまいりたいと、このように思っております。
  17. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 四十八年の一月に、先ほど申し上げましたように、新土地改良十カ年計画ができたわけですが、その後国内外の情勢をめぐる大きな変化があった。一変するほどの変化があった。したがって、四十九年度の予算の中にも、あるいはまた大臣の所信表明の中にも、先ほどお話しのような農業についての積極的な姿勢というものが出てきた。したがって、古い、四十八年の一月にできた新土地改良十カ年計画というのはやはり修正検討していく、そういう必要は生じているというふうに私は思っておりますし、重ねてこの点について大臣一つ要望をしておきたいと思います。  次に伺いたいのは、今度の新しくできます新公団と、それから従来やっております国営事業所との関係ですが、国営事業所も類似した事業をやっておるわけでして、この農用地開発公団と、それから従来からあります、今後もあります国営事業との関係、あるいは県がやっております造成、団体がやっておる造成も問題になりますけれども、ここで問題にいたしたいのは、農用地開発公団の仕事と、それから従来あります国営事業所との相互の関係についてお尋ねをしたいわけです。これは、一見てみまして、これは両々相まっていくことになるんだろうと私は思うんです。農用地開発機械公団も、新しい公団も着々としてやっぱり事業を拡大をしていかなければなりませんし、それから国営事業は国営事業としてやはりこれからもやっていかなければならぬ問題だと思うんです。その二つが十分その能力を発揮することによって、日本全体の農用地開発というものは目的を達成していくんだろう、前進をしていくんだろうと思うんですけれども、ただ、仕事のやり方に差があるものですから——公団と国営事業と差がある。前ありました農用地開発機械公団と国営事業所との間にはそう私は感じなかったんですけれども、新しいこの公団は違っておりますから、制度が一変しておりますから、どうもこれは並行していくのかどうか、あるいは相互にやり方なり、その他に差があるのかどうかということですね。開発公団のほうは、今度の新公団のほうは上物までやりますし、ですから非常に親切なやり方をやっていくわけですし、またその必要があると思うんです。山に入っているわけですから必要あると思いますが、若干国営事業よりも有利な感じがするものですから、そこら辺の農林省考え方ですね、両々相まっていくのかということ。たとえば、いま国営でやっております北海道の根室ですか、これは今度は新公団に引き継ぐことに——国営を新公団に引き継ぐ、これはいままでの経緯もあってそうなるんですが、そういうことで、やはり今後もそういう問題が起きないかどうか、両方が相まっていくのかどうか、そこら辺についてのひとつ考え方を聞きたいと思うんです。
  18. 大山一生

    政府委員大山一生君) 農用地開発公団、これは御存じのように未利用、低利用の未墾地等が相当広範囲にわたって所在するような特定の地域、こういう地域、逆に申しますと、ただに、単に基盤整備をしただけではいかぬので、その上に置きますいわば上物と申しますか、こういったようなものも一体的に急速に計画的に実施しなければ機能が発揮できぬというような地域に対しまして、この農用地開発公団は機能をしてまいる、こういう考え方でございます。それで、現行行なっております国営事業、特に国営の農用地開発事業等につきまして、あるいは県営農用地開発事業もございますけれども、いずれにいたしましても、いわば基盤整備だけを行なうならば、それによって十分に機能が果たせるようなところにおいて行なってまいると、基本的な考え方はそういう考え方でございます。  したがいまして、公団事業を行ないます地域と、それから現行の農用地開発事業で行なっていくところということが、全国的に見た場合には並行し、ともども促進するかっこうで進めてまいらねばならぬというふうに考えるわけでございます。ただ、根室中部でありますとか、あるいはことしから着工いたします中標津、これにつきましては、いわば公団事業の含みということで、いわば先発工区的なものとして出ております。それから畜産基地で申しますならば、麓山第一というのがそれに該当いたしますけれども、それを除きますと、今後の問題といたしましては、農用地開発公団事業になるべきところは農用地開発公団事業というかっこうで、精査地区、そして全計地区、そして着工というかっこうで進めてまいります。また一方、先ほど申しましたような、いわば地元増反的なといいますか、基盤整備をすれば、それだけで原則的には十二分に機能できるというところに対しましては、これは現在の国営なり県営の農用地開発事業を推進してまいる、こういうふうな考え方で進めておりますし、今後とも、そういうかっこうで進めてまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  19. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これからこの公団事業、新しい公団がこの十カ年計画の中のどの程度の事業をやるという考え方ですか。
  20. 大山一生

    政府委員大山一生君) 農用地開発公団事業として、今後五十七年までにどの程度のことが考えられるか、こういう御質問でございますけれども御存じのように、この事業というものは、地元の十分な合意がなくては進む問題ではございません。したがいまして、いままで広域につきましては、全国四カ所の調査事務所を置きまして、そして技術的な可能性から始めまして、だんだんとそれの可能性を追求する中で精査地区、そして全計地区、こういうふうなかっこうで上がってきて事業にするわけでございます。これらの地区におきましてこういうふうな意欲が相当出ておりますので、現在の地元調整といいますか、地元の意向、そういうことも加味いたしました場合に、五十七年までに広域におきまして六万五千、そして畜産基地で二万七千、合計いたしまして九万四千、約十万近いのがこの農用地開発公団によって造成、そして上物も含めて造成されるであろう、こういうふうに考えているわけでございまして、先ほど来申し上げました四十万ヘクタールという今度の新長期計画との比率で申しますならば二三%に該当する、こういうふうに考えているわけでございます。
  21. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま局長答弁を伺っていまして、若干まだ懸念する点もあります。ありますが、中身に入ってみても、ちょっと時間が足りませんからここでおきまして、新しくできる公団、そして従来からあります国営事業、それがそれぞれ前進をしていく、その能力を十分に発揮していくという形の中で、たとえば新土地改良十カ年計画が達成される、あるいはそれをまた弾力性を持って、ふえた数字もこなしていけるという方向にぜひひとつ運営をしてもらいたい、両々相まって発展していくように運営をしてもらいたいという点を申し上げて、この点については終わります。  次にお伺いをしたいのは、公団の事業の実施なんですが、これでいろいろ伺いたい点がありますが、時間の関係がありますので、二、三点伺います。  一つは、この公団法、新しい今度の法案の中の、二十八条の特別徴収金というのがあるのですが、この問題についてちょっと詰めて伺いたいと思っているわけです。  これは、予定した用途以外の用途に供するため、所有権等を転換した場合は、特別徴収金を取る、こういうことですね、そして八年と。そこで「用途以外の用途に」というわけですから、同じ用途であればこれは問題がない。たとえばあとで問題にしたいと思うんです。商社が入ってきて同じ用途に使う、あるいはインテグレーターが同じ用途に使うという場合には、これは問題がないのだ、こういうことなんですね。それをひとつお尋ねをします。——用途が同じならいいのだと。
  22. 大山一生

    政府委員大山一生君) この法律二十八条の特別徴収金という規定の本来的意味は、用途外使用といいますか、好ましからざる他用途に使われるような事態を防止するという趣旨の規定でございます。  ただ、いま先生の言われました、用途内ならば、企業がそういうふうなことになった場合にはどうなんだと、こういう御質問でございますが、考え方といたしましては、事業参加資格者というものにつきましては、これは、たとえば入り会い権地帯等で生産法人をつくって、これが事業に参加する。こういうふうは場合を除きましては、個人ということで、この問題のいわば特別受益者、事業参加者というものを限定する考え方でございますので、企業等が、こういうふうなことに参画するということについては、これはわれわれといたしましては、何としても阻止したい、こういうふうに考えるわけでございます。ただ、その阻止する際に、この特別徴収金をもってそれに対処するかどうかという点につきましては、今後検討さしていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  23. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この二十八条の条文から見ますと、事業計画があって、その計画の予定の使用というのがはっきりしているわけです。それと同じ、かりに酪農をやっておった、まあ酪農にもいろいろありますが、その酪農を引き続いてやる商社が出てきた場合は、商社が酪農に使う場合は、二十八条では論外だ、徴収金は取らないということになるでしょうか。私は、その点を心配しているもんですから——心配しているというのは、もっとあとで申し上げなければいけないのですが、心配しているものですから、だったら直ちに、もうすぐにでも——すぐというわけにはいきませんでしょうが、八年以内に——八年後なら問題がないでしょうが、八年の中で、八年たたないうちに出てくる、商社が、酪農をやるという場合は論外になるわけでしょう、二十八条では。
  24. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先ほど申し上げましたように、事業参加者というのを、原則として生産法人を除いては個人に限る、こういうふうなことで対処いたしたい。こういうふうなことを申し上げたわけでございますが、そういった目的を達成する趣旨から言って、特別徴収金を活用すべきではないか、こういう先生の御指摘でございます。しかしわれわれといたしましては、この公団事業のいわば手続段階におきまして、この県を通じまして、県からこれの実施方針につきましての申請がある段階には、この受益地区は、農振法によります農用地区域に同時に入れさせることを条件といたしまして、そしてあとの処理をしてまいる、こういうことにいたしておるわけでございます。したがいまして、この事業対象区域というものにつきましては、これは農振法にいう農用地区域の中に全部入れてまいる、こういうことで対処してまいるわけでございます。そこで、いま御指摘のございました、ここで造成されました草地、これは肥培管理をいたしますので、農地でございますので、農地法の適用によって、いわば企業が取得するというようなことは当然許されない。したがいまして、この特別徴収金によってどうこうするということではなくて、むしろそういった問題も含めて、むしろ農用地区域の中に入れる中で農地法の適用を厳正に行なうというかっこうで、いわば企業が乗っ取るというようなことのないように措置し、また、そういうふうな姿勢でわれわれはこの法律に臨んだわけでございます。
  25. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それはあぶないもんだな、たいへんあぶない感じですね。この問題は、あとのアフターケアの問題やら、あるいは借金の問題やらからめて論議しないとお答えできないと思いますけどもね。ただ、法律から見ると、同じ用途であれば、八年以内であろうとも、八年後でも問わないと、これは。八年後でも、問題ないというような感じを受けるわけなんですよ。ところが、局長答弁を聞いておりますと、農地法の適用をどうだこうだとおっしゃるけれども、実際いま至るところにインテグレーションがあるわけですからね。ブロイラーで言えば、いまや、ブロイラーをやっている農家の半分は、インテグレーションの支配下にあるわけです。生産量で言えば六割近いものが、ブロイラーの六割というものは、これは肥料会社、飼料会社、そういう会社のインテグレーション下にあるわけですよ。豚にいたしましてもそうですが、いまや直営まで始まっているわけですね、畜産の関係には。そういう点からいって、私は、いまみたいなお話ではちょっとばかり納得できないですね。ただ、運用上そういうことをしたいということはわかりますけれども、どうも危険性がある。それからもう一つは、八年後は、これはいいんですね。八年後はこれはもう徴収金取られないわけだ。
  26. 大山一生

    政府委員大山一生君) この二十八条の特別徴収金という制度、これはまあいわば土地改良法におきまして、国営干拓事業において同じような制度があり、そして国営土地改良事業全般に、先般の土地改良法の改正で広めたわけでございますけれども、要するに、これの思想ということは、農業上の目的達成のために多額の投資が行なわれている、したがって、それが転用されるようなかっこうで投資の意味が失われるようなことを防止するというようなことから、まあいわば国費等の投資額の回収を目的としていると、こういうことからできている規定でございます。八年とは何ぞや、とこういう問題になりますので、多々ますます弁ずということに相なるわけでございますけれども農地法の七十二条ですかでは、農地となるべき土地の開墾を終了すべき時期から三年を経過すると買い戻しが行なえない、こういうようなこと。そしてまあ、開墾を完了すべき時期というのは通常五年である。こういうことから八年ということになっておりまして、その八年というものが——干拓に、そして土地改良全般、国営土地改良全般の特別徴収金がそういうふうなことになっておりますこととの関連におきまして、この八年ということによる特別徴収金の徴収と、こういう規定を置いているわけでございます。したがいまして、権利の移動ということになりますと、これは特別徴収金だけで対応するということではなくて、むしろ農地法の問題であると、こういうふうに考えるわけでございます。
  27. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まあ、八年というのもたいへん短い年限だと思うんですね。借りた金は二十年で返すわけでしょう。八年というのはどうも——私、もうちょっと時間があるとここを少し詰めたいんだが、ただ、私が非常に心配している点がありますので、そういう点からもう一ぺん伺いたいと思うんです。  まあ先ほど私が冒頭に申し上げたように、これからどうしても山に向かって入っていかなきゃならない。そこで私は、かつての開拓行政というものを思い出すのですが、開拓行政の場合は、二十一万戸入ったが、どんどんどんどん抜けて結局九万というものが残った。まるで開拓行政というのは、悪口言う人は、開拓行政ではなくて、これは借金返済行政だ、と言われるぐらいの悪口もあったわけですよ。それぐらいにたいへんだったわけです。今度はこれは山に入っていくわけなんですが、これは、私あと伺いたいんです。また、濃密な生産団地をつくるというお話なんですが、一体どういうような濃密な指導というのが行なわれるのかということも伺いたいと思うんです。けれども、ただここで畜産の実情ですね。  私は、日本の畜産というのは、そういう資本が入ってきているというのが非常に特色だと思うんですよ。先ほどもちょっと申し上げましたように、ブロイラーでいえば、ブロイラーもたいへんな勢いで発展したんですが、そのブロイラーをやっている農家がインテグレーションの中に入っているのが実に五四%という、半分以上もインテグレーションの中に入っているわけですね。それで、生産高で言うともうたいへんなものですね、これ。半分はもうインテグレーションでやっているといってもいい、まあ私なんかこれをブロイラー小作というんですけれども。ですからこれは、いま特に畜産の問題を論議しているわけじゃないですから、その中に入ることは差し控えますけれども、採卵用の養鶏にいたしましても、鶏あたりにいたしましても六・八%という、採卵用をやっている農家の六・八%というのはいまインテグレーションの中に入っている。それから肥育豚にいたしましても——豚の肥育にいたしましても、四・一%という農家はすでにインテグレーションの中に入っている。でこれは、いまこれ以外に直営があるわけですよね、直接直営をしているものが。それで、いま酪農と肉牛に入りつつあるわけですね。これは資本はありますし、それから技術は、アメリカなりあるいは豪州なりニュージーランドというところで、管理技術というものは、これは資本としてつかまえられると思うんですよ。  ところが、農林省の場合は、そういう大きなものになりますと、技術が私は、非常に貧弱じゃないかと思う。資本ももちろん貧弱ですよ、けちけちして貸すわけですからね。けちけちして貸すというと悪口になりますが、たいへんきびしい条件で金を貸すわけです。ですから、私は、畜産のやっぱり一番特色は、こういうインテグレーションが入ってきている、あるいは資本の直接の経営というものが入ってきている。で、酪農と肉牛にいま入って私は、情勢を見ているところだと思うんですよ。そこで私は、非常に心配するのは、さあ山にのぼって行ったと、国が公団と一緒になってやったと、どうも手をすけて待っているような形になりはしないかという心配をするわけです。まあしかし、肉牛は育つかもしれませんし、酪農はいいかもしれない。酪農そのものは、乳は出るかもしれないし、肉も出るかもしれないが、そういうことにならないかと、私は、開拓行政との関係からいって、それからいまの畜産の情勢等からいって、そういう心配をしているわけなんです。  そこで、そういう点について、この畜産のインテグレーション、それから直営、資本の直営ですね、そういう点について局長、そういう心配はないというふうにお考えになるのか。時間がないから、端的にどういうように考えていらっしゃるのかという点をひとつ伺います、畜産局長にですね。
  28. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) ただいまお尋ねのございました畜産関係のインテグレーションと言われるもの、これはなかなか厳密にインテグレーションとは何だということになりますと、いろいろ必ずしも統一した見解もないようでございますが、まあ常識的にいいまして、二種類のタイプがあるわけでございまして、一つは契約関係によるものと、それからもう一つは直営農場というものでございまして、わが国で数年前あるいは十年ぐらい前から進んでまいりましたのが——十年ぐらい前から進んでまいりましたタイプは、契約飼養といいますか、企業が農家との間に生産物の価格なり数量なり規格なり、あるいは飼養の規模だとか、さらに飼料なり素畜の供給について契約を結んで、生産されたものを自社系列の販売組織を通じて販売をするというやり方でございます。場合によっては、農家に金を貸したりあるいは技術指導をするというようなところまで入り込んでいる例もあるわけでございます。  これの評価でございますが、事実現場で、末端で畜産経営の家畜の飼養をやっておるのは、これは農家でございます。で、まあ販売面、あるいは価格面において企業との関係から、安定が得られるというメリットももちろん評価できる面もあるわけでございますが、反面、経済力がやはり何といたしましても大きな差がございますので、その力関係のいかんによっては、不公正な取引関係がそこに発生するおそれがあるという点で、われわれといたしましては、その関係が飼養農家の立場から見て適正であり、公正であるというような安定した関係で結ばれるというようなことの指導をする必要があるというふうに思っております。  で、もう一つの直営農場につきましては、これはごく最近出ておるものでございまして、ある意味では相当なテンポで伸びておる分野がございます。酪農あるいは肉牛という分野はもちろんでございますが、養豚あるいは養鶏の分野につきましても、こういう形が最近伸びておるわけでございます。われわれといたしましても、現在、実態の調査をいたしておりますので、ごく最近の実態につきましては、いまのところ、まだ的確な資料を持ち合わしておりませんけれども、こういう形が今後伸びていくという可能性はあるわけでございます。で、われわれといたしましては、したがいまして、これらの実態に即して畜産の飼養農家が不当な、不利な、不利益をこうむらないようにしていく必要があるわけでございます。  たとえて申し上げれば、現在養鶏、特に採卵養鶏につきましては、生産がやや過剰ぎみであるというようなところへ、大企業が、大規模な経営で直営農場等の形で進出するということでございますと、全体の生産の計画化あるいは調整を必要とするときに、新しい企業が直営農場を新設するあるいは増設するというようなことになりますと、全体の需給計画を乱すという点がございますので、それらを全体の生産計画といいますか、需給調整計画の中に入れていくというような努力もしなければいけないというように考えておるわけでございます。インテグレーションの契約飼養の中でよく言われますように、商社あるいは飼料会社、ブロイラーの場合は処理業者等の系列が多いということが言われますけれども、われわれの調べたところによりますと、一番進んでおりますブロイラーの中でも、やはり処理業者、まあ都市におきます問屋さんでもあるわけですが、処理をして販売をする卸売り業者という系統が、系列が一番多いわけでございます。よく言われます総合商社系というのは、まだそれほどのシェアではないようでございます。なお、農協系列のインテグレーションというのも最近かなりございまして、ブロイラーの中では処理業者に次いで第二位というようなシェアを占めております。これらにつきましては、特に先ほど申し上げましたような問題はないのではないかというように考えております。
  29. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まあ、ブロイラーにいたしましても、先ほど私が申し上げたように、ブロイラーを飼育している農家の五四%というのがまあインテグレーションの支配下に入っている。それから、採卵の養鶏についても六・八%と——四十七年の数字になりますかね。それから肥育についても四・一%ぐらいという高い率を占めつつあるわけなんです。私は——商社系が農協の調査を非常にやっておるんですよね、それから、農民心理の調査をやっている。それは商社系がインテグレーションをやると、あるいは直営をやった場合に農協も乗り出すかもしれぬと、その場合に、農協はどの程度能力を持っているのか、あるいはどういう農民は心理を持っているのか、その農民の心理のつかみ方ですね。そういう上に立って、この総合商社なり直営なり、こういうものに乗り込んできているわけなんですよ。非常に慎重に乗り込んできていると思うのです。確かに農協も若干出てきました。太刀打ちできると、十分太刀打ちできるという考え方で乗り込んできているわけですから、相当慎重だと思うのですよ、私は。それでいま、先ほど申し上げた酪農と肉牛に入ってきている。これは私は、やっぱり同じような形になってくるだろうという心配をするわけなんです。畜産というのは、これは畜産局なんか要らなくなるじゃないかというような心配すら、これは十年たってみたらどうだということになっちゃう、というような、私は心配をするわけなんです。せっかく選択的拡大だということで農家も一生懸命になっている。農家もどんどんどんどん一生懸命やってきた。どうもしかし結果的に見ますと、どんどんどんどんそういう形になっちゃって、私は一種の小作みたいな形ですね、これは力関係非常に違いますから。私の鹿児島もたくさんきている。まるで殺到してますね、契約を見ますとね。いや、それは最初はいいですわ。ところが、これはやっぱり、ちょっと狂うと、どうしてもしわが寄っちゃうんですね、いろんな機会にしわ寄せられちゃう。うまいですね、それは。心理もまたうまくつかんでいる。確かに長年にかけて心理を研究し、農協の能力も調査してきただけあるなあ、というふうに思うですね。ですから、そういうことで、いま私の言いたいことは、そういうことに対して畜産局がどういう態度をとっておられるのかという点ですね。で、これはまあ営業の自由なんだから何をやろうと、かってだというお話かもしれない。その点が一つ。  それからもう一つは、いま言いましたように、これから山に入って、そういう酪農、肉牛の関係の仕事をやっていくということになりますと、そこが先ほど言った、私が言っているように、インテグレーションと商社の、これは本格的に入ってくる要素になりゃせぬかと。まあ八年間はいいけれどもあとはというようなお話もありますし、いや農地法でどうだこうだとおっしゃるけれども、現実に農村の実情というのは、農振法があろうと何があろうと——農地法があろうとどんどんどんどん入ってきておるわけです。これは大きな問題だと思うのですけれどもね。  ですから重ねてこれは畜産局長に聞きたい、そういう心配はないかどうかと。心配はしていらっしゃいません、全くそんなことはお笑いだというならまたそれでいいんです。心配はないというふうになるのか、そこら辺を伺いたいと思うんです。
  30. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 先ほどもお答えしましたように、インテグレーションの中で、特にこれまで進んでおりますのは契約飼育でございますが、これのわれわれの調査によりまして最近の開始時期別に増加の趨勢を見てみますと、四十一年から四十五年ごろまでの五カ年間が一番契約飼育タイプのインテグレーションが畜産分野で進んだのじゃないかと。その前の五カ年間もかなり進んだようでございますが、その後の経過を見ますと、四十六、四十七、四十八と、だんだん新しくインテグレーションを開始するという、インテグレーションによる系列に入った農家が畜産を経営を始めるという例は減ってまいっております。したがいまして、こういう形態のものに、むしろかわって直営農場的なものが一部について出てきておるのではないかというふうに推測される面もあるわけであります。  そこで、これに対して農林省でどのように考えるかという点でございますが、われわれといたしましては、契約飼養といいますか、飼育といいますか、これのメリットといいますか、利点という面も否定できない面がございますけれども、半面、力関係の差によりまして、先生おっしゃいましたように、当初は非常に条件はよろしいけれども、一たん結びつきが強化された後においていろいろ不利な条件が出されてくると、特に畜産がむつかしい、価格面なりあるいは流通面でむつかしい時期に際会をすると、しわ寄せがそこに寄るというようなことがあってはならないということで、まあいわば健全な形での公正な結合関係であるならば、半面のメリットというものもあるわけでございますから、これを特に押えるとか気にするという必要はないと思いますが、その間の公正な取引関係を維持するように指導していく必要があるというように思うわけであります。  直営農場につきましては、これまだ現在一部にそういう事業が始まったばかりでございまして、まあやったけれどもうまくいかないという事例もあるようでございますので、なお今後の動向を慎重に見守りながら、農林省としてこれにどのように対処するかをきめてまいりたいというふうに思います。  で、当公団の事業に関連をいたしました御質問につきましては、先ほど、構造改善局長からお答えしておりますように、特別徴収金という制度のみならず、一般の農振法、あるいは農地法等によりまして、いわゆるインテグレーターによる乗っ取りというような形にならぬように厳重に指導をしてまいりたいというふうに思います。公団事業にありますのは、そういう力のある資本が開発をやるということを援助するというような目的を持っておるわけではございませんので、一般の農家が、規模を拡大して専業的な畜産経営として伸びていくというのを助成をするというのがねらいでございますので、ただいま言いましたような、インテグレーターが入ってくるということにつきましては、厳重に監視をしてまいりたいというふうに思います。
  31. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 局長、いま答弁の中にありましたインテグレーションが昭和三十六年ごろからずっと入ってきて、まあ急速に入ってきて、四十六、四十七、四十八と若干停滞ぎみになっている、特に四十八年停滞しているというお話ですが、これは私はそう見てないんですけどね。というのは、商社なり何なり、企業なり、四十八年、特に七年、八年ごろから、これは土地投機なり、もの投機のほうにずっと入っていますからね。これは景気の関係もありまして、そこはちょっと落ちてるんだというふうに思うんですよ。決してこれはそういうもんじゃないじゃないかと私は思います。四十八年が特に落ちていますけれども、そうではない、やっぱりまだこれは条件というものがあるというふうに思いますね。そして大家畜についてはもっとある、これからあるんだという心配をするわけです。それで、八年経ったらどうでもいいということにもなっておりますし、また、八年以内でも用途が同じならというのは、どうもちょっと解せぬような感じがしますしですね。この点が非常に心配で、私は、畜産局はこれからそういう面の調停作業みたいなものが相当ふえてくるんじゃないかという気がするんです。昔、小作調停なんというのがありましたですが、そんな調停の行政というのが非常にふえてくるんじゃないかという心配すらするんです。まあいずれにしましても、先行投資みたいにならないように、これはひとつやってもらいたいと思うですね。何のことはない、インテグレーションなり商社の直営の先行投資になっちまったというんじゃ、これは私は農業、農家を考えているものからいってはなはだ不本意な話であって、困っちゃうわけですね。そうならないように、これはまたあらためて畜産の行政としても論議をしなきゃならない問題だと思いますけれども、そこのところでおきたいと思っております。  大臣、どうでしょうか、これ、そういう心配はありませんか。そういうことのないようにひとつやってもらいたいと思いますね。よろしゅうございますか。
  32. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) はい、よろしゅうございます。
  33. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃお願いします。  次にですね。それからもう一つお尋ねをしたいのは、この土地を取得するということ、これはたいへんだというふうに思うんですけどもね。それで、この土地の取得について特段の規定がないですね、この法律の中には。ですから、これはえらいと思うですがね。あとまた、全員の賛意を得たりなんかしなきゃならぬし、これは容易じゃないという気がするんです、土地の取得というのは。ですから、私は、県の段階に何かこの農用地開発委員会のようなものをつくって——これはたとえば二千町歩、三千町歩とやるところが出てくるといいますと、一カ町村変貌するというようなことにもなってくるし、あるいは数カ町村、北海道では数カ町村変貌するということになってくるし、周辺の農業に与える影響というのも非常に大きなものがある。そういう全体の中で、土地を指定していくという、あるいはそういう経営を、仕事をやっていくというには、私は、やはり町村の合意というものが要る、それから農家の合意というものが要る、進んでは、県民のやっぱりそういうものに対する賛意というものも要るんじゃないでしょうか。そういう全体の中で進めていかないというと、これは土地の取得をはじめとしまして、いろんな面にやはりたいへんじゃないかという気がするわけです。ですから、県の段階に、そういう県もそうですが、市町村もそうですが、農民の代表とか、学識経験者とか、そういう者の入ったものをつくって、そこで町村民の、あるいは農民の、あるいは県民の合意なり、賛意なり、そういうものを得ていくというような雰囲気をつくうていかないと、ムードをつくっていかないというと、農地の取得というのは容易じゃないんじゃないか、あるいはこれからの実際のやり方というのもたいへんじゃないかという気がするんですけれども、そういう点をお考えになっていらっしゃいませんですか。
  34. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先生指摘のように、事業用地の確保というのは、これはきわめてたいへんなことだというふうに、大事なことであるというふうに考えるわけでございますけれども、端的に申し上げまして、根室中部といいますか、根室がこの公団事業の先発工区として発足し、そして公団事業として、ことしからでも法律が通れば事業を行ないたいと、こう思っておりますゆえんのものに、合理化法人によりまして六千百ヘクタールですか、の先行取得が行なわれている、これが非常に大きく寄与したというふうに考えているわけでございます。  で、こういうふうな公団事業を行ないます場合におきましては、これは、先ほども申し上げましたように、精査地区になる前から地元と十二分な合意の中で、用地問題も含めてコンセンサスを得る中で、いわば精査地区をつくり全計をつくってまいる、まあこういうふうなかっこうで進めてまいるわけでございます。一方、この公団の事業用地につきましては、事業参加者みずからが調達するという場合のほかは、原則といたしまして、県の農地保有合理化法人が取得いたしまして、まあ場所によりましては借り入れて、そしてこの用地を提供してもらう、こういうふうな考え方をとっているわけでございます。そういうことを合理化法人にやってもらうために、本年度の、四十九年度予算におきまして、いわば無利子の特別事業資金というものを、いままでは国庫補助の二十億を過去二年間続けまして、またことし二十億つけたわけでございますが、そのほかに、多分中金になると思いますけれども、中金資金を活用いたしまして、それに無利子の利子補給をするという金をさらに二十億つけると。こういうふうなかっこうで、今後さらに合理化法人のそういうワクを広めることを行なうような中におきまして、いわば保有合理化法人によって先行取得がさらに容易になるようにしたいと、こういうふうに考えるようなわけでございます。  そこで、この事業を行ないます場合には、確かに市町村なりあるいは地元のそういった事業参加される方、こういう方々とのコンセンサスが必要になってまいります。で、農地保有合理化法人がそういうふうな機能をやってもらいますために、公団といたしましても、十二分に県の合理化法人と協議をしなければなりませんが、合理化法人が用地調達を行ないます場合には、関係市町村なり土地改良区なりあるいは公団の地元機関、こういうもので推進協議会をつくって、そしてこの問題に対処してまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。  ただ、一つ先生が御指摘になりましたように、そういう審議会を県段階につくる、こういうことについては、むしろ県の申し出によることではありますけれども、何といいましても、地元の意向ということがきわめて大事でございますので、むしろいま申し上げましたように、関係市町村なり土地改良区、こういったものでもって推進協議会をつくって、そこで用地の計画的な先行取得をはかってまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  35. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 小さいところはかまいませんけれども、県によっては非常に大きなところをやるところがたくさん出てくるでしょう。たとえば福島あたりでいいますと、おそらく合計としては数千町歩、一万町歩近くなるんじゃないでしょうか。それは関係町村にしてみますと、これは一変するような情勢になりますよ、その中がね。影響力が非常に大きいわけです。ですから、福島なら福島の例をとりますと、かりにこれから一万町歩ぐらいになってくると、さらにその後も仕事やるんでしょうから、非常に大きな仕事になってくる。そういう場合には、その県なら県に、そういうふうなものを置いた——ぼくはすべての県にどうだというんじゃなくて、そういう大規模にやるようなところについては、学識経験者なりあるいは農業会なり市町村長なり、そういうものが入ったものをつくると。さらにその現地なら現地で、市町村を中心にして改良普及所とかあるいは農民とかいうようなものが入った、そういうようなものをつくって、そしてその空気をつくっていかないと、これはなかなか土地を取得するのは容易じゃないし、それから事業を推進していくにも容易じゃない。また、あとの管理の問題についてもこれは容易じゃないという私は、気がするわけなんですよ。まあ全部というんじゃなくて、大規模に面積が非常に大きくなってくるようなところ、そういう県についてはお借りになったらどうかという考え方なんですよ。
  36. 大山一生

    政府委員大山一生君) 御提案の御趣旨まことにごもっともでございます。確かに場所場所によって条件が非常に違っておりますので、それぞれの事情に応じまして、たとえば阿蘇・久住・飯田の場合には、両県にまたがっての問題にもなりかねませんし、まあ阿武隈・八溝ということになりますと、これはそれぞれの県というようなことになるかもしれませんし、いろいろその地方地方によって事情は異なっておりますが、いずれにいたしましても、この事業というものが、県の申し出事業ということにおいてスタートさせる法形式になっているものの中で、いわばいままでと違った公団と県との密接な協力体制、これを法律上もまあ担保しているというようなことでございますので、御趣旨の点については十分検討して進めてまいりたいと、こう思うわけでございます。
  37. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 その土地の取得のやり方についても、もう少し聞きたい点もあるんですけれども、時間がないから一つだけ、簡単な事例を伺いたいんです。  調査計画区になっているところで、大隅町というところがありますよ、鹿児島に。これはその後四百ヘクタールぐらいじゃないかと思うんですが、その中の百二十ヘクタールというのを町村ことし買え、ということで、大隅町に百万の金が来たというんですね。こんなもので何ができるかということで町長青くなっちゃったのですね。どういうふうなやり方をなさっていらっしゃるのかしらぬが、これは合理化法人がそういうふうな金を、百万程度の金で百二十ヘクタールの土地を買えというようなことになっているのかなあ。これは畜産局ですか。——あわ食っちゃっているんですよ。
  38. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 大隅地区の畜産基地のお尋ねでございますが、これは四十九年度は、ちょっといまこの手持ちの数字ございませんけれども、土地の権利の調査をことしはやるということでございまして、まだ取得という段階の前段階でございまして、九州の農政局から地元のほうに百万前後の金が委託費という形で行っているのではないかと思います。したがいまして、本年やりますのは、土地関係の権利の状況を調査をするというのが本年度の内容になっております。
  39. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまのお話しのように、権利の調査だということであればわかります。それはそれだけにしまして、あと濃密な生産団地というのですが、これがよくわからぬわけですよ。これは中身を伺っていると時間がたちますが、この濃密な生産団地というのは、四十六年に国土総合開発審議会、その中で総合調整部会というのがあって、大規模畜産基地研究会というのが発表いたしました報告ですね、これ。この大規模畜産基地のシステム化というのでやったんですが、そういうようなことを想定していらっしゃるのかどうかへ濃密な畜産団地というのはですね、それが一つ。  それからもう一つは、できたこの濃密な畜産団地という「濃密」ですね、文字どおり私は、濃密な指導が要ると思うんです、援助が要すると思うんですね。ところがどうもこの中にはそういうものは出てこないんですが、これはどうなさるおつもりであるのか。濃密な畜産団地というのだから、文字どおりこれは濃密な指導と援助が要ると思うんですよ。その体制を一体どうおつくりになるのか。私はやはりこれももちろん県なり改良普及所なり市町村なりというところで、あるいは農協なりというところで、何らかのやはり推進協議会みたいのものをつくってやっていかないというと困るんじゃないかと思うんですね。借金はたいへん背負っておるわ、それからあとの濃密な指導、援助というようなものが欠けるというんでは、これは私はさっき言ったような、インテグレーターやら商社のえじきはなっちゃう。えじきということばは悪いですかな、まあえじきになっちゃうということになりゃせぬかと私は思んですけれどもね。ひとつ畜産局長答弁を願います。
  40. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 最初の点は、本事業はシステム農業という大規模畜産基地研究会の構想にのっとるものかという御趣旨の御質問かと思いますが、これにつきましては、大規模畜産基地研究会が、新全総の中の大規模畜産基地建設に関するプロジェクトの具体化について意欲的な検討を行なって、一つの提言をしておるわけでございますが、これは、参考になる点もちろんございますけれども、今回行ないます公団事業につきましては、各地域における土地条件、あるいは経営の状況、あるいは規模の拡大であるのか、あるいは新規の入植であるのか、その他条件がいろいろ違いますので、それに応じまして大規模な専業的な畜産経営を、先駆的なものを育成するという目標を目ざしながら、具体的な事情に応じて経営類型を考えながら調査計画を立てていくという考えでございますので、必ずしも畜産基地研究会の報告をそのまま参考にしてやるという考えではございません。  次に、営農指導体制の問題につきましては、この事業が特に低利用、未利用の遠隔地におきまして、これまで一般の地域においては見られないような大規模な畜産経営を育成をするわけでございますので、特に計画を立てる段階から、地元の町村なりあるいは農家はもちろん、町村あるいは県の意向を十分尊重してやると同時に、実施後の営農指導につきましては、特段の強力なる体制を整える必要があるというふうに考えております。畜産関係の試験場はもちろんのこと、普及所あるいは家畜保健衛生所等があげて町村当局とも協力をしながら、技術なり経営の指導につきましては万全を期するようにしたいと考えております。  各県におきましても、すでにそのような点でいろんな組織を検討いたしておりまして、たとえて申し上げれば、福島県におきましては——各県ことにそれぞれの専門機関の連絡協議会をつくるということを検討いたしております。県段階にそのような経営なり技術の指導体制を関係機関——県庁はもちろんのこと、関係の団体等、あるいは学識経験者等の参加も得た何らかのそういう指導体制を整備すると同時に、各地区ごとにも現場機関相互の密接な連絡体制を整える必要があるというふうに考えておりますので、事業の進捗に応じてそのような体制を早急に整備するように指導してまいりたいと考えております。
  41. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ぜひそれは県の段階——大きなところは県の段階にあっても、そういうものをつくってもらいたいと思いますし、それから、関係町村についてもそういうような体制をつくっていきませんというと、たいへん大規模なものだけに、さらに初めてといってもいいぐらいなものになるんでしょうから。そのあとの管理、経営、そういう面の訓練なり指導なりというものは不十分でありますと、借金は背負ってるわ、たいへんなことになってくる。八年後はどうでもいいというようなことになりますと、いよいよ資本のえじきになっちゃうという心配をするわけです。  それから、なお、先ほど出しました大規模畜産基地のシステム化という報告は出ておるわけですが、あの中には、三者が入ることになっておって、農家はもちろんでありますが、資本、企業というものが入ることになっていますね。ですから、資本の力も借りたい、これは商社とか、そういう大きな資本のことだろうと思うんですが、そういう力も借りたいという考え方があそこに出ているんじゃないかと思うんです。ですから、あるいはいま農林省としてもそういうことをお考えになっているんじゃないかという、そういう気もするものですから伺ったわけですけれども、そういうことじゃないわけですね。
  42. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 先ほど来お答えいたしておりますように、この事業自体が、そのような企業を対象にして実施をするものではございません。先ほど来のに、若干補足的な意味で、インテグレーションとも関連いたしまして大企業の畜産経営についてどのように考えるかということを、若干つけ加えてお答えをしたいと思いますのは、確かに新全総をつくりましたころの一部の考え方といたしましては、今後の畜産経営を飛躍的に発展させるためには、単にいわゆる従来の農民的な畜産経営だけではなくして、それとあわせて企業的な畜産経営を、いままで畜産をやったことのないような外部からも資本を導入することによって、斬新な技術と膨大な資金を、豊富な資金を活用して、思い切った畜産経営をやらせるのも一つの方法ではないかというような、こういう見解がございまして、そのような見解が一部大規模畜産基地研究会の中にも、いま仰せございましたように入っておるかと思います。  この問題につきましては、先ほど大規模農場、直営農場のところでもちょっとお話いたしましたように、最近にわかにそのような傾向が見られておりますけれども、まだその実態は必ずしも明確でございませんので、われわれといたしましては慎重に実態を見きわめながら、これに行政としてどのように対処するかを考えてまいりたいと思っております。ただ、いろいろ問題点として考えられますのは、たとえば養豚経営のような場合、その他も類似の点がございますけれども、畜産の場合、あまり規模が大きくなった場合には、逆にデメリットも出てくるという面がございます。これは養豚のような場合、規模が大きくなりましても、生産性の向上というのはそれほど進まなくなる、一定限度以上に達しますと、あまり進まなくなるという面と、半面、例の環境汚染問題、公害問題という点からいたしますと、あまり大規模な直営農場といいましても、一定の規模を越えますと、逆にコスト面で負担が大きくなる、立地条件にもよりましょうけれども。そういう面がございますので、畜産の場合、そう無制限に大規模化だけを目ざすというわけにもまいらない点があるように思いますので、そのような点からいたしますと、そのような畜産に外部からの資本が入ってくるという点につきましては、先ほど言いましたような技術革新がかなり進むとか、あるいは豊富な資金力で模範的な経営ができるという面はございますけれども、半面そういうデメリットも出てくるという点を考えまして、規模の限界というものが出てくるとなれば、いわゆる農民的な畜産経営をもってしても十分これに対抗できるのではないかというようなふうにも考えられるわけでございます。これはいずれにいたしましても、われわれといたしましては実態を慎重に見きわめまして、これに対する対策というものを考えていきたいというふうに考えております。
  43. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これはむずかしい問題だと思うな、ぼくはいま局長答弁を聞いておって。あぶないですな、これは。私が心配しているようなことになりやせぬかな、これは。困ったもんだと思うのですけどもね。ですから、これはやっぱりよほど酪農なり農民的な肉牛ということで発展するような努力を積極的にやってもらいたいと思いますですね。これは畜産の大きな問題だと思っています  もう一つ畜産について伺いたいのですが、これとの関連で伺いたいのは、畜産行政の中でやっぱり一番大きなもう一つの問題は、酪農と肉牛ですね、大家畜の問題だと思うのですよ。私は、いま酪農の飼養頭数というのは百七十七万頭ぐらいになっておるわけですよね。これ二百万頭をこすことが一体できるのだろうかと、それをやってくれないとどうにもならないじゃないかという気がするわけですよ。これは国民の側からいいましても、消費者の側からいっても、いまの需要状況からいってみても、何としてもこの肉牛と酪農については、どうしても積極的な政策をとっていかなければならぬところにきていますね。まあ、かつて三十七年ですけれども、古い話ですが、三十七年に乳牛が初めて百万台になったのですよね。三十七年に初めてちょうど百万になった。で、まあ畜産局もたいへんお喜びになった。喜ばれた状況を私は知っております。ところが、その同じ年の三十七年の三月に御承知農基法に基づいての長期見通しを発表したわけです。これは、昭和四十六年——それから十年後の昭和四十六年に乳牛を二百二十二万頭にするのだと。まあしかし、その当時は、畜産局の人たちは、私の知っている限りでは、いやあ、夢のまた夢じゃと、二百万頭こすことができるかという話であったですよ。夢のまた夢だという話だったですね。現実に、年は流れて十年たったわけ。そして、いまや四十八年、九年になった。四十六年に百七十七万頭、もう百八十万から百七十万のところをうろちょろうろちょろして五年、伸びないだけでなくて減る傾向すら見えている。一体二百万頭というのをこすことができるのか、これ。三十七年に夢のまた夢と言ったが、そういうことになるんじゃないか。これをどうしたら破れるのか、今度のようなことで、破ろうということで努力をしていらっしゃるのだろうと思うのですが。それにしても四十三年にはまたでっかい数字を出しましてね、またでっかい数字を出して二百何万頭ですか、二百九十万頭ですよ、五十二年には。五十二年て、もうすぐそこだ、五十二年といったら。いま百七十七万頭、あと二年後には二百九十万頭にするというようなべらぼうな計画が出るのですね。その意気やたいへんなもんだけれども、あんまりこんなに狂っちゃうと、これは行政と言えないぞ。まぼろしの行政だということになっちゃうですよ。どうもまずいような気がするですね。やっぱり畜産局に働いておる人の実感というのが、二百万頭をこすのは夢のまた夢だと言ったのは、これはほんとうだと思うのです。こえられないでしょう。百八十万頭をどうこしていくかということが、いま二百万頭をどう突破できるかというところじゃないでしょうか。  ところが、もうすぐまた閣議決定でたいへんなでっかい数字が出ちゃって、目を丸くしちゃうわけだ。大臣、これはもう私は畜産局には言えないけれども、畜産局の人たちはどういうふうに受け取っておるか知らぬが、これは腰抜かしておるんじゃないでしょうか。ぼう然としているんじゃないかと思いますよ。ぼう然としなきゃちょっとおかしいです、これ。計画立ってから年がたつんですからね、はっきりしてくるわけだから、あまりべらぼうな話で。ただ、一昨年の五十七年を目標にしたものは、そういう経緯もあってちょっぴりしかふやしていないですね、三百八万頭ぐらいに。ですから、二百九十万頭からちょっとふやしただけのところで押えていますけれども、それにしても閣議決定でこういうような数字を、五十二年には二百九十万頭にするんだという話ではどうにもいかぬ。畜産にはこういう数字が多過ぎる。それは、畜産局は非常に振興の意気に燃えて大いに出しているのはけっこうなんですけれども。  それから今度は肉牛ですが、大家畜一つの肉牛、これがまた二百五、六十万頭おったわけですよ。これが三十九年に、がたっと三十万頭減っちゃって、続いて四十年にまた、がたっと三十万頭減っちゃってそれから一向に、もとに戻れないわけです。これまた、ちょうど百七十七万頭、乳牛と同じ数字です。これまた、たいへんな数字が出ているんですよ。先ほど出ました新全総計画によりますと、昭和六十年には一千万頭の肉牛と乳牛が放牧をされて、ゆうゆうと草をはんでいるという話なんですけれども、夢物語もはなはだしいですね。——合わせまして三百五十万頭です。ほんとうに困っちゃう。  そこで、私はこういうふうに思うんです。三十三年当時あるいは三十五年をとってもいい。農基法が始まる前の三十五年当時とそしていまの四十八年と、十二年から十三年の差がありますが、三十五年当時の大家畜といまの大家畜と比べると、むしろいまのほうが数が少ないんですよ、大家畜は。当時は酪農は五十万から六十万です。そのかわり馬が相当おりました、七十万とか八十万頭おったんです。肉牛も二百三十万頭ぐらいおったんですよ。ちょっと調べさせてみましたら、たとえば三十五年をとりますと、肉牛は二百三十三万頭おるわけです。そして乳牛はうんと少ないんです、八十二万頭。そして馬が六十七万頭、合わせまして大家畜は三百八十二万頭です。いま四十八年は、ちょうど二つ合わせまして、乳牛と肉牛と合わせて三百五十六万頭、これ馬がちょっと加わりますと三百七十万頭、全く、中身は十数年前と全然変わっていない。十四、五年前より減っているという状況ですよ。だから、中身が変わっただけだと。馬が減った、肉牛もうんと減った、そして酪農はふえたと。大家畜は全然同じじゃないかと。一体これはどこに原因があるのか。私はやはり草地関係だろうと思うんですよ、根本的には、一つは。したがって、積極的な草地開発に乗り出されることについては大いに賛成をします。これどういうふうに考えていらっしゃるのか。それで、酪農は二百万頭をこすということはこれは容易でない。これはどうなさるおつもりなのか。いろんな価格政策や何やかんやいろいろあります。基本はやはり農用地の問題じゃないかというふうに私は思うんですけれども、そこら辺の点について局長のひとつ見解を聞いて、時間の関係もありますから次に移りたいと思います。
  44. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) わが国の畜産の場合、特に酪農、肉牛経営という大家畜についていろいろ問題が多いという点は御指摘のとおりでございまして、われわれは一応現在なお検討中でございますけれども、一昨年出しました試案によりますと、五十七年に乳用牛につきまして三百八万頭、肉用牛について約三百三十五万頭というのを目標においておるわけでございますが、これは確かにこれを達成するのには容易でないという目標だと思います。  ただわれわれこの問題を考えます場合に、国民生活の向上とともに畜産物の消費がふえるということは、一時よりはややテンポはスローダウンしましたけれども、なお他の食品に比べればはるかに高いスピードでふえていくということは今後も大いに期待できるわけでございます。他方世界的に見ましても、御存じのように、畜産物につきましては長期的に見て不足ぎみであるということが一般に言われておるわけでございまして、一時酪農などは過剰生産ということを言われておりましたけれども、最近の国際機関等の見通しによりますと、一九八〇年ごろには約二千万トンばかり世界全体で不足するというような見通しもございますし、食肉につきましても、牛肉につきましては百六十万トンでしたか、ぐらい世界全体で不足するというような見通しが出されております。もちろんこの数字につきましてはだいぶ先の話でございますし、国際的な見通しといいますのは、データ上のかなりの制約もありますので、個々の数字についてそう的確には判断しにくい面がございますけれども、傾向としてはやはり否定できないところであろうというふうに思いますので、われわれといたしましては、国内におきまして、でき得るものはできるだけ生産をふやしていくというような考えで、五十七年の目標も掲げておるわけでございます。  その意味では多分に意欲的だという御指摘、意欲的過ぎるという見方もあるいはあろうかと思いますが、われわれといたしましては何としてもこの目標を達成をしたいというように考えておるわけでございます。その場合、いままで、特に最近、停滞現象が出てきておる一番の大きな障害は、何であろうかという点は、まさに先生指摘ございましたようなやはり用地問題、飼料基盤が非常に脆弱であるという点が最大の難点、障害であろうというように思います。そういう意味からいたしまして、この公団事業によりまして、われわれとしては画期的な一つの政策を打ち出すことによりまして、他の一般事業と合わせまして、さらにまた草地だけではなしに、飼料作物を既耕地に入れていくということとあわせまして、自給飼料基盤の拡充強化をはかってまいりたいというように考えておるわけでございます。五十七年の、先ほど言いましたような大家畜の頭数に即して、現在の五〇%足らずの粗飼料の給与率を七〇%ぐらいまで引き上げるということを前提にいたしまして、先ほど来御説明しておりますような五十七年目標までに四十万ヘクタールの草地の増加、それから九十九万ヘクタールの飼料作物の作づけというものを考えておるわけでございます。  用地のほかに、もう一つ問題になりますのは、やはり労働力の問題かと思います。御承知のように、特に酪農、肉用牛もそうでございますが、毎日家畜の世話をしなければいけなくて、年間拘束される——一日中拘束をされるということのために、また、家畜の管理というのはなかなか骨の折れる、若い者が必ずしも喜ばないというような面もございますので、労働力が、最近に至るまでの高度成長のもとにおいて、都市周辺においては、特に外に流れ出たと。そのために、零細規模がどんどん脱落をしていき、それに変わるべき規模拡大はかなり進んではおりますけれども、そういう大規模層が零細層の脱落をカバーするだけ頭数をふやしていくというのが追っつかないというようなところからきておるわけでございます。そういう畜産労働の特殊性にかんがみた労働力対策というのも、今後、真剣に考えていかなければならないというふうに思うわけであります。  なお価格問題につきまして、国際的に見ましても先ほどのような情勢の変化がございますので、国際的な価格も一時ほど大きな開きはなくなりまして、最近はかなり接近をしてまいっております。なお、国内価格につきましては、酪農なり、肉用牛の収益性からいいまして、最近の実態に合わせて政策価格を適正に引き上げるということの必要性に基づきまして、先般、加工原料乳の価格、あるいは豚肉——これは中小家畜でございますが、の価格を従来にないほど大幅に引き上げたわけでございます。そういう価格、労働力、特に用地、草地飼料作物の増産ということを通じまして、先ほど言いましたような目標数量に少しでも近づくように最大の努力をしてまいりたいというように、かように考えております。
  45. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 局長のおっしゃるように、国内においても、国際的に見ましても、この大家畜——乳牛それから肉牛、これが非常に必要である。何としてもしなきゃならぬという点ははっきりわかる。そのとおりだと思うのです。そしてまた、なかなか思うように前進しない点についての理由も聞きました。そこで大臣ね、私はこの畜産局のここへ出てきておる数字というのが、まあ言っておきたいんですけれども、まぼろしの数字だと、夢のまた夢の数字だということを十分頭に置いておいてもらいたいと思います。ですから、大家畜畜産行政については大臣も片手を突っ込むぐらいの努力をしてもらいたいと思いますね。まぼろしですよ、これは。  それからもう一つ、私が申し上げたように、十五年前の大家畜数字というものといまの大家畜数字というものを比べてみると、いまのほうが少なくなっているじゃないか、さかのぼればさかのぼるほど少ないのです。三十五年当時三百八十二万頭です、大家畜が。いまは馬が九万頭になっておりますから、十万頭割りましたから、大家畜は二百六十五万頭です。もっと前になりますと、三十三年でいいますと、三百九十八万頭おった大家畜がいまは二百六十五万頭。前のほうが大家畜が多い。これは根本的に考えてもらいたい。その点を、大臣、片手突っ込んでやるぐらいの元気でやってください。要望しておきますよ。  それから次に、だんだん時間がなくなりましたですが、この事業の状況なんですけれども、広域農業開発事業、これが着工が一カ所ですね、それから全体実施計画は五カ所。それに畜産基地建設、これが着工が三カ所、それから全体実施計画が二ヵ所ですね。それで面積的にいいましても非常に大きなものになるわけです。これから山に向かっていくということになりますと——先ほど言いましたけれども、平地から山に近いところは大体もうゴルフ場になっちゃっていると言ってもいいですから。二十五万ヘクタールですから、しかもゴルフ場になっちゃっている。どうしても、その奥っちょのほうに行かなければないということになるわけですね。山に入ってしまう。ゴルフ場でも九割近くは林地だといわれておるのですね。これから山に登っていくというわけなんですが、これは一体いま私が申し上げた着工、それから実施計画——実施設計ですね、この中で一体国有地というもの、公有地というものはどの程度入っておるものですか。
  46. 大山一生

    政府委員大山一生君) 御質問の、着工しますところにおきます国有地は五%、約千ヘクタールでございます。それから、いま申し上げました全計地区におきまして約二千ヘクタール、一五%と、全体を合わせまして三千ヘクタール、約八%という比率になっております。
  47. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 着工で、根室が六万九千ヘクタールでしょう、それから葛巻ですか、これが二千九百ヘクタール、それから新山貞任ですか、これが二千五百、あと阿武隈の南部が二千、それから阿蘇の南部が二千七百、久住・飯田西部が千九百ヘクタール、それからあと畜産建設の中でも二千七百ヘクタールの一部という事業があるでしょう、あるいは三千ヘクタールの一部という事業があるでしょう。ですから大きな面積になっておるのだが、国有地はいま言ったように八%ですか。
  48. 大山一生

    政府委員大山一生君) 場所によりましてあれでございますが、いま申し上げましたように広域のほうで約二千ヘクタールでございます、事業地区とそれから全計地区で。それから畜産基地のほうで林間放牧地として五千ヘクタール、こういうことでございます。
  49. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これからますます国有林との関係が大きくなるんだろうと思うんですが、林間放牧は五千ヘクタールですか、でかいな……。  そこでこの問題について林野庁長官伺いたいんですけれども、こういう林間放牧は別にしましてね、——これはあと伺いますが。そういう国有地が入ってくるわけです。どうしても入らざるを得ない。これからもっと入ってくるでしょう。で、そういう場合に、これは畜産局、それから構造改善局、林野庁というのがやはり一体になってやっていきませんというと、まずいと思うんですよ。それでまあ三局の——二局一庁のしわ寄せが公団にきたなんていうとこれは話になりませんしね。まあ往々にしてそういうことがあるわけですね、しわ寄せが公団にきちまったと、公団は、にっちもさっちもいかないというようなことになりがちだと思うんですよ。  そこで、林野庁長官のこういう問題についての考え方ですね、協力していくんだと、——まあそういうことでしょうね、協力していくんだということだと思うんですが、たとえば調査も始まるでしょう、調査もしなきゃならない。国有林の中に入って直接調査もしなきゃならない、設計もつくらなきゃいかぬということになってくるというと、これはどうしても林野庁なり、これは二局一庁が緊密な連係をとってやっていかなきゃならぬと思うんですけれども、まあ林野庁長官としてこういうことについての、国有林が入ってくるんだが、積極的に協力をしていく、一緒になってやっていくと、あるいは調査についても積極的に一緒になって協力をしていくんだというお考えだと思うんですけれども、念のために伺っておきたいと思うんです。
  50. 福田省一

    政府委員(福田省一君) これに対する林野庁の考えはどうかという御質問でございますが、この事業推進につきましては農業、それから畜産部局とも十分協議しました上で、地域住民の福祉の向上、それから森林の保続培養及び森林生産力の増進、それから森林の持っています公益的機能の維持、こういった点に十分配慮をしまして、地域の自然条件あるいは社会経済条件などに応じましてこの林地の活用を行ない、この事業が円滑に推進するように協力してまいりたいと思ってます。で、いま申し上げましたことは林業基本法の四条、それから国有林の活用に関する法律の三条、これにも明らかにされておるところでございます。で、調査の場合におきましては営林局署と十分協調させるように指導してまいりたいと思っております。
  51. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは、大臣のところでおやりになるわけだから、ぜひ一庁二局間の連係というものが十分とれるようにひとつやっていただきたいと思うんですね。これは調査の問題もありますし、設計の問題もいろいろあって、たいへんだと思うんですよ、国有林の中に入ってやらなきやならないし、公有林の中に入ってやらなきやならないしするので。そういう中で、うまくいかぬのが、公団にみなしわ寄せになっちゃうということは非常に考えられますしね。役所というところは、往々にしてそうなんですよ。往々にしてあると言うと何か妙な話だけども、まあ実際あるんですけどね、これ。ですから、そういうことについては、大臣のほうもひとつ努力をしてもらいたいと思います。大臣、よろしゅうございますな。
  52. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) はい。
  53. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そこで、この林間放牧というのは五千ヘクタールあるというんですけれども、従来は、林野庁で十ぐらいの営林署で林間放牧をやっていますですね。で、これはこれからさらにこういうものがふえてくるんだろうと思うんですけれども、この点については畜産の面からいっても、それから林業の面からいっても、いいことなんですか。特にこの林業の面からいっていいことなのかどうなのかですね、この林間放牧というのが。まあ夏草がはえる間だけでしょうね、北海道でいえば。夏の間ということになるんでしょうが。まあそれ以外のところはしょっちゅう草はえていますから、南へ行けば、西日本のほうは年じゅうということになるんでしょうけれども。どうなんですか。これからこの面積ふえるんじゃないでしょうか。
  54. 福田省一

    政府委員(福田省一君) いま国有林の中におきまして、昭和四十二年から四十五年にかけまして実験牧場を十カ所つくりまして、ただいまその実験を継続しておるところでございます。で、その実験の目的を申し上げますと、造林をしましたあとにはえてくる草、いま先生指摘ございましたように、大体夏に刈らなきゃならぬわけでございます。そこに牛を放しまして、野草を牛に食べてもらうということでございます。しかし造林地の中に牛を放しますというと、木をつぶしたり、あるいはそこに寝ころがったりして、いろいろ被害が出るだろうと。ですから、手間が省ける分と被害を受ける分とどれくらい違うかと、まあこれが一つの造林の場合における実験でございます。それから、牛を放しますというと、たぶん野草だけを食わしておりますというと、やせてくるか太ってくるか——たぶんやせるでしょう。舎飼いにしたならば、そのあと骨格の形成がよくなるんで、肥育がいいんじゃなかろうか。これは畜産の側における実験の目的でございます。で、全体として、この事業は経営として成り立つかどうかということもあわせて、経済的な効果も調べようということでやってきたのであります。  もう一つつけ加えますというと、その造林した場所ばかりじゃなくて、天然林の中に牛を放しますと、特に、たとえて申しますと、ブナ林なんかはなかなかその天然更新がうまくいきません。これはササがじゃまするわけでございます。このササを牛に食べてもらったならば、天然更新のブナがよくはえてくるんじゃなかろうか。しかし、牛がそのブナをまたつぶすかもしれない。それから、その放牧した牛が尿を出したり、ふんを出したりする、これはある程度肥料になるかもしれぬ。いろいろそういった点の効果を試験してまいっております。大まかにいいまして、まだはっきりしたあれは出ませんけれども、手間の省ける分は約七割。つまり、牛が七割ぐらいは人にかわって仕事をやってくれるということはわかっております。それから、放している間は骨格はよく形成されるようでありますが、全体の目方は標準すれすれである。しかし舎飼いにすると非常に太るというような結果が出ております。  それから経済的な面ではどうかと、これは牛の値段で非常に違ってまいりますので、昭和四十七年度は大体十一万円ぐらい、一頭。それから昭和四十八年では二十万円ぐらいになったそうでありますが、四十七年度では大体十カ所のうち間接費を除きまして直接費だけで黒字が出たのは一カ所でございます。四十八年度は黒字の個所が四、五カ所にふえるであろうという見通しでございます。これは仔牛の値段が上がったからでございます。  概略、以上のようなことでございますけれども、まだ四、五年しかたっておりませんので、もう少しこの実験結果というものを見てまいりたい、こういうふうに考えております。
  55. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これはまあこの問題じゃないんですけれども、この次に、続いてお尋ねをいたしたいのは、まあ今度のこの法案は、農用地開発公団をつくるということと、それから農地開発機械公団を廃止するということになっておるわけですが、そこで、その問題について若干お伺いをしたいわけです。  この法律によりますというと、農地開発機械公団を解散する、そして現在この公団が持っておりますところの一切の権利義務、これは新しい公団が引き継ぐということになっておるわけですが、これは一体、この引き継ぐ上についてどういうようなことを考えていらっしゃるのかということを伺いたいわけです。工事の量とか、機構とか、人員の問題とか、どういうような配慮を行なっておられるのかという点についてお尋ねをしたいわけです。  そこで、現在公団に勤務する定員、準職員が新しい公団にそのまま引き継がれることは法律によって明確でありますから、ですから、これほど明確なことはないので、どうということはない、そのとおりだと思うのです。そこで、この準職員で.すね。百五十五名おりますこの準職員の問題について——私も長い間、この定員内外の問題を取り扱ってきましたので、この点については局長よりぼくのほうが専門家だと思っているんだけれども、そういう意味においてちょっと中へ入って聞きたい。それはね、この準職員というのは、聞いてみますというと、通年なんですね。通年職員であって、そして俸給表も定員と同じに四つの俸給表が使われております。甲(一)、甲(二)、甲(三)、甲(四)という四つの俸給表にそれぞれ適用されておるのですね。俸給表もそのまま使っておるし、それから労働条件その他についても全く定員の職員と変わらないという状況ですね。で、これはまあかつての国家公務員にありました定員内外とはたへん違うところです。まあ世の中は発達したから、発展してきておりますから、労使関係も発展してきていますから、そういうことになってきて、差はない、ほとんどもう、全然差はないと言っていいほどですね。ただまあ準職員という、いかにもその差別がましい名前がついておる。それから予算と定員との関係でたいへん不安な思いをしなければならぬ。不安定な感じを持たなければならぬという点等は大きな問題じゃないかと思うのですね。ですから、この問題が労使の間で長年にわたって定員にすべきであるという論議が行なわれてきたんだと思うのですよ。  そこで、これはまあ衆議院でも論議されておるわけですが、これは当分の間——まあ当分の間ということばが多いんですけれども、この法律にもこの当分の間ということばがあるものだから——当分の間、つまり三年をめどにしてこの準職員について事業量の拡大、新規事業を新しくつくるという努力をして事業量の拡大に見合って定員をふやしていくと、そしてこれを定員に入れるというふうに努力をしたいと、こういうまあ衆議院でも答弁があっておりますがね、そのとおりでいいですか。いいと思うんだけども念を押しておかないとですね。
  56. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先生の言われますように、まあ三年を目途といたしまして、当分の間、従来業務を継続する中で、まあ研修、訓練等によって職種の計画的転換をはかってまいるわけでございます。それからまあ本則といいますか、本来的な新規事業、いわば発注事業でございますが、この事業につきましては、これもまた全計地区なりあるいは精査地区といったようなものの事業化を進めまして、事業量の拡大につとめることは当然でございますが、それとともにまあ新規事業というものにつきましては、原則として正職員で対応するということを旨といたしまして、そうして事業量の増大に見合って新規事業に必要な定員数をふやしてまいる、こういうふうにつとめたいと、こういうように考えるわけでございます。こういうふうな過程におきまして、準職員で将来とも新事業に継続して従事することが見込まれる職員については、定員内職員にするようにつとめてまいる、こういうことでございます。
  57. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 局長、ここのところはちょっとこまかくなりますよ。見込まれるということはどういうことですか、いま局長のおっしゃった。
  58. 大山一生

    政府委員大山一生君) 見込まれるという意味は、本人の希望が、公団事業に——いわば原則的には、新公団事業になりました場合には、その仕事の内容が発注的な業務になるわけでございます。しかし、本人がどうしても従前のオペレーターというようなことでやっていきたいというようなことから、本人が別のことを考える人もあり得るでしょう。そういうふうな意味におきまして正確な表現として申し上げたわけでございます。
  59. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃ、百五十五名準職員がいるが、この問題については、希望する限り三年をめどにして当分の間に定員化していく、定員化する、それに努力をすると、こういうことですね。
  60. 大山一生

    政府委員大山一生君) そのとおりでございます。
  61. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 よけいなことですけれども、オペレーターのものが出ましたですが、オペレーターも、いま定員の中にりっぱに存在して、りっぱにやっているわけですからね。まあこれはよけいなことですけれども。  次に、職員の給与の格差の問題ですが、これは格差には二つあるわけで、一つ公団と他の公団との間の格差の問題、もう一つ公団の中につとめている人たち内部の格差問題と、二つあるわけですね。  それで、いまつとめている公団の内部の格差というのは、これは受注公団から発注公団に、三年後には完全に切りかわるわけですから、当然職務内容も違ってくる。職種も、これは訓練なり教育なりをなさって、そして職種も転換をしていかれるわけでしょうし、仕事の内容が受注から発注にかわるということによって俸給表も当然変わってくるでしょう。そういう中で、職員の間の格差というものはこれは解消できる、解決できると私は思うんです。これは解決できるというふうに考えていいと思うんです。若干いろいろ問題残りましょうけれども、解決できるというふうに言っていいんじゃないかと思うんですよ。  問題は前者の場合ですね。つまり、いまの機械開発公団と他の公団との格差の問題、これはこの間の委員会のときに工藤委員から質問がありまして、私聞いとったんですけれども、若干もう一ぺん聞いてみたいな、聞かなきゃならぬな——みたいじゃなくて、聞かなきゃならぬなという点がありまして私は聞くのですが、局長が、格差問題というのは、なかなかめんどうな問題だというような話、それからあるいは、公団が賃金が上がるときに各公団とも一律に上がる、こういう問題もあるというような話をされた。これは確かにそうだと思うが、公団が一律に上がる、どこの公団も賃金のアップは同じだというんじゃ、確かに基礎が低ければますます差が拡大するということはこれは言えますわね。ですから、三公社五現業だって仲裁裁定が出る場合には決して一律ではない。それぞれ率は違っている。これは当然だと思うんです。ですからそういう意味で政府努力をする、あるいは局長努力をなさる、大臣努力をなさるということ、これはわかる。  問題は他の公団との格差ですね。これは、農林省の所管といいますか、所管の八郎潟の事業団あるいは森林開発の事業団等々に比べてみてもこれは落ちるんですね。機械開発のほうが落ちる。従来長いこと労使の間では、水資源開発公団との均衡をとりたいという論議が行なわれ、また協定が結ばれてきているわけですね。  そこで、それじゃ水資源開発公団というのは高いところかといいますと、これは公団全体から見て決して高いものではない。中よりもちょっと落ちるぐらいでしょう。ですから、これから発注公団となって、そして理事長も置き副理事長も置いてがっちりとした体制をとって、新しい公団としては格も一段と上がるわけですね。そういう中でこの水資源開発公団——類似公団といったらこの水資源開発公団ですが、それとの関係の調整、均衡をとる。その期間はどうだといえば、それは発注公団に完全に切りかわる当分の間、三年をめどにやると、努力をするということだと思うんですよ。そこの点局長うまく答弁してもらわないと困るわけです、私のほうは。これは妙に答弁されるとこじれるんです、ぼくのほうは。これは大臣もまた、そういう問題についてはたいへんな専門家です、オーソリティーだから、権威者だから大臣にもあとで頼みたいと思いますけれども努力方を善処してもらいたいと思うんです。  そこで、公団が新しい公団に切りかわる、性格も完全に変わっちまうというときが、そういう他公団とのアンバランスを是正するいい機会だ。一昨年産炭地振興事業団というのがありまして、私も商工委員会へ出て、そのときの通産大臣は田中角榮通産大臣だったんですが、——この産炭地振興事業団が、工業再配置としてこの産炭地振興事業団という長い名前に改組したんですね。そのときに角榮通産大臣はこの格差について改善のため努力するという発言をしまして、事実この問題が解決を見ているわけです。ですから、せっかくここで大きく切りかわり、格も一段上がったような感じの、副理事長も置いたものですからね、しかもいまや日本の農用地を山に登ってやろうという、しかも肉牛とそれから酪農という国民的な期待を背負ってやるわけですから、何としても、この機会にやはりそういう努力をなさる必要があるんじゃないかというふうに思いますし、また努力をするということで衆議院でもたびたび局長のほうから丁寧しごくな答弁があるわけです。ですから、いま私が言いましたように類似の公団、つまり水資源開発公団のように、そして当分の間、三年の間にこの格差を是正をするということに努力をする、というような答弁になりますか。なると思うんだけど、念のためにちょっと伺っておきます。
  62. 大山一生

    政府委員大山一生君) あまりせんさくされることもないと思いますけれども、機械公団の場合に、いままでは発注公団でなかったということから、他の公団との間に比較しがたい面があったことはたしかと思います。機械公団が、愛知用水公団と同時に発足しているということから、常に愛知用水公団を横ににらんでいると、こういうふうなことになるのも、これまたしごく当然というふうに私は理解いたします。  で、まあ後段の、この前の衆議院のいろいろの話もありまして、そうして公団当局とそれから組合との間においてもいろいろとその辺の問題について交渉といいますか、が行なわれておりまして、その中におきましても、当分の間にその給与水準は他の類似公団と均衡するように改善につとめると、こういうふうな趣旨の覚え書きが出ております。この覚え書きにつきましても、われわれは、これは公団のほうからいただいておりまして、これはそのとおり受け取っておる次第です。
  63. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは、当分の間、三年をめどにして他の類似公団、その類似公団は水資源公団ですが、それとの均衡をとるように努力をする、ということでいいですね。——いいですな、局長
  64. 大山一生

    政府委員大山一生君) 水公団だけということを先生非常に強調されるわけでございますが、要するに、水公団もあればいろいろ類似公団もあるわけでございますから、類似公団と対比してとにかく改善につとめると、こういうことでございます。
  65. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、そうなるとね、ちょっとこだわるんだな、ぼくは。まあ、長い間、これは監督官庁として、労使の間は、どこを相手にして均衡をとるか、ということで努力をしてきたかといえば、もう御承知のとおり、局長の言うように、これは愛知用水公団から移った水資源開発公団との均衡で論議されてきているわけですよ。それで協約もできている——覚え書きも、協定もできているわけですよ。いまもまた、そういうことで農林省の監督や援助や指導を受けて、そういうような話が進められておるわけです。覚え書きになっているんですから。ですから、あの覚え書きにあるような形で農林省としても、指導監督をし、援助をし、努力をすると。そうすれば水資源開発公団というのはちゃんと出てくるんですよ。それでよろしいとね。——いいでしょう。
  66. 大山一生

    政府委員大山一生君) 前に機械公団が、他の類似公団との間の均衡をとるようつとめるという協定があって、それに基づく確認事項において、それは愛知用水公団であり、そして後は水資源公団であるという確認事項ができていることは私も了解しております。で、今度の覚え書きにおいても、類似公団という表現がなされております。で、確認事項というものが理事者側と組合との間に行なわれる問題でございますので、私のほうからは、先ほど来申し上げたような趣旨の答弁をしているわけでございます。しかし、その中におきましては、この問題の根っこが、機械公団当時から両者の間において進められてきたという経緯は十分に理解しておるところでございます。
  67. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 もう少しきちっとしたいという気もするけれども、まあしかし、そういうことで、私の要望として、経過は御存じのとおりで、私より詳しいと思うんです。ですから、その経過を踏まえて、類似公団、水資源開発公団との関係について均衡をとるように、当分の間に、三年の間にひとつやってもらう、努力をしてもらうように、重ねてひとつ言っておきます。——間違いないと思いますけれどもね。  それからもう一つ。時間が予定よりも十五分ほど過ぎましたけれども、まあめどにしてということでしたから少しばかり……。  もう少し聞きたいのは、新公団になりましたときに、これは、あと三カ月か後には新公団になるんでしょうが、新公団発足するんでしょうが、その新公団になったときに、その機構とか、組織とか、それから支所とか、そういうものは一体どういうような見積もりでいらっしゃるんでしょうか。
  68. 大山一生

    政府委員大山一生君) 当然のことながら、新公団は主たる事務所は東京都に置きますので、この事務所につきましては、後ほどまたいろいろ検討してまいりたいと思います。  そこで先生の御質問の件は、むしろ従たる事務所として置かれております札幌、盛岡あるいは東京、大阪、福岡、秋田、この六つに置かれております従たる事務所についてのお話になると思いますけれども、まあ、当分の間の問題としましては、当面といたしましては、むしろ旧業務というものが相当のウエートを占めております。四十九年の場合においては百億程度のことがそういう旧業務で行なわれると、こういうようなこともございますので、その従たる事務所を承継いたしまして、そしてその新業務はこれらの機構を活用するかっこうで対処してまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。  五十年以降につきましては、従来業務がだんだん縮小されてまいります一方、新規業務がふえてくる、こういうようなことの中で、逐次現有の事務所を廃止いたしまして、それでいい場所に、適当な場所に新事務所を設置してまいると、こういうふうなことで進めてまいりたいというふうに考えるわけでございます。  具体的に申しますならば、たとえば八郎潟事業団の関係をやっております秋田の事務所、こういう問題につきましては、少なくともこの二年間で請負業務はなくなるはずでございますので、こういう事務所はこれは廃止して、そして新規事業の関連で最も適当なところに移してまいる、こういうふうなかっこうで進めてまいりたいと、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、今度は具体的な新規事業の事務所でございますけれども、この点につきましては、最も事業をやるのに適当な場所、最もその事業に近いところといいますか、そういうような適当の場所に事務所をつくっていく考え方でございます。
  69. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まあこの問題はあんまりうるさく聞いてみても、先の話ですが……。  あともう一つありますのは、新公団が発足をする、その発足をする前日になるんですか、機械開発公団が解散するのは。前日に解散をして、それで翌日に新公団が発足をするということになるんでしょうね。で、その間が三カ月ぐらいあるということでしょう。そうしますと、いま、定員化の問題にしましても、いろんな問題がたくさんあるわけですが、そういう問題について、いまの機械開発公団の当事者側と、その労使の関係でこれはぎりぎり一ぱいやっぱり詰めていかなければならぬと思うんですね。それまでは、これは解散までは、いまの理事者側が協議の相手になって誠意をもってひとつ詰める努力をしていくと。それについて農林省も監督し指導し援助をしていくということになると思うんですね。——そうだと思うんですけれども、その点はそれでいいですね。
  70. 大山一生

    政府委員大山一生君) 新公団を設立した日に旧公団は解散するわけでございます、機械公団は。そこで、それまでの間においては機械公団というのがあるわけでございますので、その日までの間に、いわば従来の中において解決できるものと、それから新公団に申し送らなければできぬものとあると思いますので、現公団でできることは現公団において理事者側と組合との間で十分話してもらうと。それから、新公団に申し送る——公団の理事者側から新公団に申し送る事項というのはそれなりに整理してもらう。そういうふうな関係の中において労使間の信頼関係の維持につとめてまいりたい、こういうふうに考えます。  なお、農林省といたしましては、当然監督官庁でございますので、その間の経緯なり、必要があれば、——まああんまり干渉いたしますと不当労働行為になりますが、いずれにいたしましても、われわれ監督の立場にあるものとしての機能は果たしてまいりたい、こういうふうに考えるわけです。
  71. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 最後に、これは大臣にも御努力を願いたいと思っているんですけれども、先日工藤委員の質問に対して局長答弁なさった中にね、私ちょっと気になっておったんですが、それは、いまの機械開発公団が少なくとも百億円程度の事業がないというと食っていけないんだという話をなさったんですね。私、すぐ農林省からいただいた資料を見てみましたら、確かに四十九年で言えば、これはやっぱり百億程度の事業がないというとこれは食っていけないと、そのとおりだなと私は思ったのです。ずっと経緯書いてありますから、それ見ましてね。  そこで、確かにそうなんだが、それじゃ四十九年度の新公団の一体事業量はどうなっているのかというところで見てみましたら、これは半年分の経費なんだろうけれども、二十億ぐらいでしたかね、二十億。そして、あともう一つ、畜産の共同利用模範牧場ですか、これが、何か二十何億ちょっとありましたですね。それで、どれぐらいの事業量になるかはっきりわからぬのだけれども、畜産の事業団というのは。年間を通じての畜産の模範牧場というのは。畜産局には、長い名前があって困っちゃうですな。共同利用何とか模範牧場とか言ってですな、長ったらしくてしようがないのだけれども、建て売り牧場ですな。この建て売り牧場は、年間を通じての仕事じゃないかと思うんだけれども。そうしますと、この新しくできる公団の事業量というのは四十九年度はたいへん少ないという感じを受けたわけです。そして、受注公団から発注公団に変わりますから、相当事業量が多くないとこれはなかなかたいへんだろうと思うんですね、えらいだろうと思うんです。まあ局長はじめ、それぞれ大臣も御努力なさったと思うんですけれども、公共事業になるんでしょうが、公共事業になる関係があって、総需要抑制という全体の抑制の中で、この経費が少なくなったんだと思うんですけれども、どうも四十九年度の予算ではたいへんじゃないかという印象を非常に強く受けるわけですよ。で、ことし、そして来年——四十九年、五十年というのはたいへん苦しいんじゃないかと。  ですから、これはぜひ大臣に要望しておきたいことは、せっかく発足する公団が仕事の量はことし少ないということで、来年もなかなかということになりますと、発注公団としての生計を維持していくのにたいへん苦しいんじゃないかという気がします。ですから、ぜひとも来年は事業量がもっとふえるように大臣努力をお願いをしておきたいと思うんです。大臣答弁あとにいただくことにしまして、局長、どうですか。受注公団が発注公団になることによって、事業量そのものは相当何倍かふえないというと、これは食っていきにくいということになるんじゃないでしょうか。
  72. 大山一生

    政府委員大山一生君) 発注事業のほうは——要するに、まあ受注業務というのは、端的に言うと請負事業でございますから、幾らの事業を請け負って、幾らもうけて、それで食っていくか。ずばり言えばそういうことでございます。しかし、発注業務ということになりますれば、やはり一人当たり契約料幾ら、というようなことが、当然の一つの目の子算としてあるわけでございますので、それなりの事業量の増加ということ、いわば公団事業量の増加と、事業量としての確保といいますか、これは必要だと思っております。ことしの場合、二十数億というのは、年度途中から引き継ぐというようなことでございますので、新規事業としては二十数億ということでございますけれども、これの事業も、来年度は当然ふえてまいりますし、それから全計地区というものも後半には着工するとか、それからあるいは精査地区にも全計に上がってくると、こういうような中で、相当の事業量の増加を見込まねばならぬし、また見込めるものと、こういうふうに考えておるわけでございます。何といたしましても、公団事業のメリットというものは、急速に計画的に実施するということにあるわけでございますので、その趣旨に合うような事業量の確保ということを五十年度予算においても努力してまいりたい。当然のことでございますが、五十年度予算で確保したい、こういうふうに考えるわけです。
  73. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣答弁は最後にお願いしまして、まあ事業量を五十年は積極的にひとつ拡大をしていってもらいたい。そのことは、ここにありますように、大家畜のたいへんな問題をかかえているわけだし、大家畜の発展のためにぜひとも農用地開発というものは積極的に進めていかなければならぬということになるわけですし、たいへんいいことですし、発注公団になりますればこれは事業量としては受注公団よりもずっとふやすことができるわけですしね。ですから、その意味で食えるか食えぬかという問題もありますけれども、こういう農用地開発を積極的に行なっていくということにとっても、非常にいいことでありますから、そういうことで五十年はひとつ努力をしてもらう。その間、ことしもたいへん苦しいだろうと思うんですね、見ますと苦しいだろうと思うんですね。受注もやりますからまだまだでしょうが、なかなか苦しいんじゃないかというふうに思うんです。ですから、そのことについても大臣努力を願いたいと思うし、来年の問題についてもひとつ積極的に大臣の御努力を願いたいということを要望したいわけです。大臣答弁を願います。
  74. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) この事業団の仕事はたいへん大切な仕事でありますので、先ほど政府委員もお答えいたしましたように、今年は当初であります。来年はさらに拡大をいたしまして、この事業の国民に対する期待にそむかないようにひとつ全力をあげたいと、こう思っております。
  75. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃ、終わります。
  76. 塚田大願

    ○塚田大願君 実は私も三時間ぐらい質問したいと思っておったんですけれども、どうもそうはいかないらしいので、ごくしぼって質問申し上げますから、答弁も簡潔にお願いしたいと思うんです。  まず最初に、今度の法案の目的ですけれども、拝見いたしますと、未利用地開発をして、農畜産物の安定的供給と経営の合理化をはかる、こういうふうにうたってございます。   〔委員長退席、理事高橋雄之助君着席〕 書かれておる目的そのものは非常にけっこうだと思うのであります。まあこれは当然のことでございますけれども、ただ、私が心配いたしますのは、ほんとうにこういう公団によって農畜産物の安定的供給が実現するのかどうかという点に非常に大きな疑問を持つわけであります。具体的に申し上げますと、たとえば生乳の生産の問題でありますけれども、御承知のとおり、ここのところ停滞をしておりまして、ことしはとうとう前年度対比で絶対量が下回る、こういう状態であることは御承知のとおりです。それで畜産酪農の危機ということが叫ばれているわけであります。そこで、ほんとうにこういう酪農の危機というものが一体どこから生まれたのか、その原因は何か、そしてまたその解決策は何か。この辺をまず私は大臣にお聞きして、大臣のうんちくをひとつここで披瀝していただきたいと思うんですがどうでしょうか。
  77. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほど来、鶴園さんとの質疑応答にもございまして、結局この公団をつくりまして私はいろいろなメリットがあると思うんでありますが、その一つには、やっぱり土地利用の利用率を向上するということは、わが国は狭隘な国土の中では大事なことだと思います。  それからまた、いまちょっとお話の中にもありました、いわゆる畜産危機というふうなことを考えてみましても、ばらばらな小規模な経営をいたしておりましたら、やはり非能率な点もございますので、未利用地等を国の力で、公団のようなもので開発をいたしまして、そこで集約的な生産性の上がり得るものにするということが大事なことではないか。それは、集まってこられる個々の酪農畜産家のためにもなり、国全体の要望をいたしております生産性も上げ得ると、こういうことになるわけでありますので、今度の公団というのはそういう考え方のもとに発足いたしておるわけでございます。
  78. 塚田大願

    ○塚田大願君 いま大臣がおっしゃるように総合的にやらなければならない。それはそのとおりだと思うのですが、ただ、今日のようなこの深刻な事態を生んだ原因というものについて、やはりもっと科学的な深い分析がありませんと、いままでやってきたけれども、あまりうまくいかなかったから今度はこの手だ、あの手だと、手ばっかり先へ出るようなそういう農政では、現実にネコの目農政なんでいうような悪口まで言われているというのが実情ですから、そういう意味で私は、やはりその原因をほんとうに追求していくことだと思うのです。それがどうしても必要だ。  そこで、私は、結局、今日のこういう酪農危機というふうなものが生まれた原因というのは、やはり何といっても、一つは、価格の問題だと思うのです。乳価が非常に低い、採算が合わない、これが一番大きな原因だったんじゃないか。ところが、政府は、それは規模拡大をやればいいんだ。そうすれば生産性が高まって採算がとれる、こういうふうに言ってこられたわけですね。  この間、畜産局長が第九回畜産振興審議会に出て報告されておりますが、ここにも出ておりますし、先ほど局長もいみじくも鶴園さんの答弁の中で、やっぱり言っておられましたな。最近、兼業化の振興によって零細規模層の離脱が非常にひどくなった。規模の大きい階層の飼育頭数の増加によってもこれをカバーし切れなくなった。先ほども同じ趣旨のことをおっしゃった、実際こういう状態だと思うのですね。このこと自身、やはり私は非常に重要だと思うのは、零細な規模層が離脱をしていくということは、要するに採算が合わない。だから、やめざるを得ないと、こういうことだと思うのです。一方、大規模でやられた農家もこれ以上規模の拡大ができないんだ、頭打ちですね。ここにやはり私は主要な矛盾があるんじゃないかと思うわけです。  さらに北海道の、この間、道の農務部で、酪農振興対策プロジェクトチームというのがあるんですけれども、この酪農振興対策プロジェクトチームがやはり報告を出しました、二月十四日。この報告書を見ましても、やはり北海道の酪農が非常に深刻な状態にある。その原因は、やっぱり現在の低乳価の問題だと、この低乳価の問題を中心に指摘をしておるわけです。  ですから、いままで規模拡大すれば経営が楽になるんだ。いわばゴールなき規模拡大というふうな状態が続いてきましたけれども、結局その競争についていけない多くの酪農民が離農する、残った酪農民にしても、もうこれ以上大きな負債を払ってやってはいけない、ここの矛盾に逢着をしているのが現実の姿じゃないか。結局もうかったのはだれかといえば、雪印であるとか、何とかという乳業メーカー、それと機械メーカー、こういうものだけがもうかったと。酪農家は大きいもの、小さいものもおしなべて大きな犠牲を払っておる。ここに今日酪農危機の私は、根本的な原因があるのじゃないか。  したがって、結論的に申し上げますと、いまのこの危機を打開する方策というものは、一つは、いま申し上げました小規模の酪農家でも、採算のとれる乳価を保障するということが一つです。これをどうしてもやらなければもうどうにもならないと。それからもう一つは、その規模拡大で莫大な負債を背負っている。みんな一千万、二千万、三千万という負債が今日もう普通ですね、北海道あたり酪農家の経営というものは。ですから、負債の償還を延期するとか、あるいは利子の引き下げとか、そういう具体的な方策が必要なんじゃないか。こういう立場から——これがいわば根本的な方策だと思うのですけれども、こういう立場から、いまは大臣農林省が提案されております農用地の拡大ですね、これは私最初申しましたようにけっこうなことなんです。あるいは基盤整備、これはけっこうなことなんですが、もしこういうことをおやりになるならば、そのやり方ももっと現状に即したやり方をせなけりゃいかぬ、ただむやみやたらに集中投資をやって、一部に選別的な投資をやって、モデルをつくって、こういうことだけでは、もうらちがあかないと思うのです。モデルをつくる、日本国中四地域で、一地域百四、五十軒の酪農家をつくり上げる、こういうことではなくて、実際にいまの酪農民の現実の中で、酪農家の全体の水準を上げるということを私は考えるべきではないか。そのためには思い切った財政投資をやる、けちけち投資をするのでなくて、思い切った投資をする。そうしなければ、私は、いまの酪農の危機というものはとても打開できるようなそんななまやさしいものではないと。  先ほど局長需要もどんどんふえているので、これだけの目標を立てなければいかぬということをおっしゃったが、けっこうです。意欲的に高い目標をお立てになるのはけっこうだけれども、実際それは実現できるかどうか、そのためのもっときめのこまかい、科学的な方策というものを立てるべきだと考えるわけです。そういう意味では大臣、先ほど御答弁がありましたけれども、私がいま申しましたようなもっと現実を踏まえて、ひとつ思い切った酪農振興政策を打ち出す御意思があるかどうか、これをひとつあらためて見解をお伺いしたいと思うのです。
  79. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) お時間がないようでありますので、簡単に答えろというお話でありましたので簡単に申し上げたら、叱られたわけでありますが、国会の運営で、私は、残念だと思いますのは、提案者に対して質問をするという形だけで、これは、よその国の国会みたいに、政府と国会議員が論争するような形にできておれば、私はいまのお話に対しても、たとえばどんな小さな酪農家でも、それだけでペイするようなふうにしなければならぬ、というお話について、これはそういううまいお考えがありましたら、教えていただきたいと思うんです。もうことしのこの国会では、物価国会と言われるほどに、消費者サイドについて、消費者物価の安定、下落ということについて非常な要望がありました。われわれは、やっぱり政府の介入する農林物資については大体七割近く、あるいはそれ以上かもしれませんが、農林省が介入して物価をきめております。そういうものの中に、先月末の、いまお話しのありました乳価、豚価等もありますし、つい先日きめましたビートなどもそうであります。そういうものをやりまするときに、一番先に私どもの頭に浮かんでまいりますのは、生産者の、翌日への生産努力を阻害するような価格であってはならないと、しかも最近、国際事情によって、非常に飼料の値段が上がったが、こういう高いものを食べさせて育てる畜産物の価格というものは、当然それに反映されてくるのはやむを得ないことだと。しかし、それだけ考えておったら、数は消費者のほうが何倍か多いんでありますから、この消費者に対して、消費者物価の高騰について、私どもは無関心でいるわけにはいかないんでございまして、その間の調整が非常に私どもの苦労するところでございまして、したがって、あまり高いものを消費者に提供するようなことになれば、消費者大衆は、おそらく安い輸入品を求めるという声が圧倒的に多くなるでありましょう。そういうことになりましたら、わが国のせっかく選択的拡大という方向で努力をしてまいっております酪農畜産品等については、非常に前途暗たんたるものになります。  だからして、どうしても、これは国内の需給をまかなうという努力をしていかなければなりません。そのためには、やはり御存じのように、私どもといたしましては、生産性を上げてもらって、生産原価をできるだけ下げて、しかも経営が成り立つようにしてまいるという苦労が要るわけでございまして、そういうことのために、一方においては、価格形成について、価格政策をできるだけのことはいたすと同時に、その生産のコストダウンをするための諸施策を並行して講じなければなりませんので、四十九年度予算でも、私どもも小麦あるいはトウモロコシその他について、ことに飼料作物等については特段の配慮をいたしまして、その増産対策を講じておるというふうなことでございます。しかも、いまさっき私が申し上げましたこの事業団の構想の中に、できるだけ集約的に能率的な経営をやれるようにやってもらって、そして、その生産性を上げてコストダウンをしてこの経営がやっていかれるようにという限界を求めておるわけでございまして、そういうことのためにこの公団というようなものの仕事をひとつぜひ完成させたいと、こういうことで御審議をお願いいたしておるわけであります。
  80. 塚田大願

    ○塚田大願君 この政策問題で議論をしておれば、これでもう私、半日や一日かけなければならないと思うぐらい、非常に重要な問題だと思うんです。たとえばいま大臣が生産性を、国際的なこういう状態の中で国内の自給をはかっていかなければならないと。これはもう当然そうでなければなりませんが、その場合に、乳価一つ考えてみても、消費者のことも考えなければいけないと、それはそのとおりです。消費者の立場も重要な問題で、私どもは、そういう点を生産者と同時にこの消費者の立場も考えてこそ初めて、国の政策というものが必要になってくるんで、ただ、自由経済だから、生産費が上がったら、消費者はそれだけ支払えということでは、これは農政としての役割りをみずから返上することになるわけでありまして、食糧の自給という大きな至上命令、これを実行するために、こういう主要な農産物は米だけではなくて、やはり相当、国の価格保障というものが講ぜられなければそういった矛盾は解決できないんじゃないか。そのために、やはり相当大きなその費用を、投資をお考えになる必要があると、まあこういうふうに私ども考えております。  したがって、あの乳価の問題にしましても、まだまだいまの状態では必ずしも十分でないと私ども考えておりますけれども、それはそれといたしまして、とにかく若干考え方の相違といいますか、それはあることは明らかでありますが、ただ、きょうここで論議しております公団法の問題でいいますと、これはやっぱり具体的に問題を提起しないと詰まっていかないと思うので、私は、具体的にこの北海道の例をあげて質問をいたしますけれども、   〔理事高橋雄之助君退席、委員長着席〕 北海道の根室地域の広域農業総合開発事業というのがあります。これについてお尋ねをいたしますが、まずこの公団の事業として予定しておるのは、根室広域農業総合開発事業でありますけれども、そのうち根室中心、根室中部地区というものが対象になっているわけですね、根室中部地区。で、この点でいろいろ私のほうで調査をいたしましたけれども、どうもはっきりしないのが多いんです。よくわからないんです。  そこで、このことを少し突っ込んでお聞きいたしますけれども、北海道開発局で出されました「四十七年度の根室地域広域農業総合開発根室中部地区広域農業開発事業開発基本計画」というものがここにありますが、これによりますと、総事業費は千四十億となっております。で、この公団でおやりになる事業費というのは全体として幾らなのか。またあわせて、入植者が自己負担いたしますけれども、その自己負担が幾らぐらいになる予定なのか、それについてまずお伺いいたします。
  81. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先生がいま言われましたのは、四十四年から例の調査を、北海道開発局の中に、内地の三地区と同様に調査事務所をつくりまして、まあ地域の現状を把握するための基礎調査、それから開発構想を策定するまでの調査、それから地元の意向の取りまとめ、こういうふうな何段階にもステップを経まして、四十七年には根室地区全体にわたります基本的な方向を把握したわけでございまして、先生がいま御指摘になりましたのは、そのことを言っておられるのだろうと思います。そこで、根室中部といたしまして現行制度において取り上げておりますのは、その中の根室中部地区の農地開発事業、それから標津川水系を水源とする農用地の用水事業、これが国営の根室中部の土地改良事業であるわけでございます。それで、したがいまして先ほど申し上げました千四十億というのは、管理機構等も含めた、他事業も含めた全部の数字だろうというふうに考えします。公団事業といたしましては、現在のところ、一応国営事業といたしまして考えておりましたのは、たしか百九十五億ぐらいであったんじゃないか。あとでよく調査いたしますが、百九十五億だったと思います。で、公団事業といたしましては、このほかにことし着工することになっております中標津等を入れまして公団事業としてスタートしたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  82. 塚田大願

    ○塚田大願君 入植者の自己負担はどのくらいになりますか。
  83. 大山一生

    政府委員大山一生君) そこで、今度は収支でございますが、収支につきましては、これは御存じのように、先ほど申し上げましたようなことで、全体としてこの地区をいわば取り上げるにあたって、どういうふうな経営類型が好ましいであろうか。こういうふうな類型をいたしまして、その中でたとえば入植して酪農する場合、あるいは増反酪農する場合、あるいは入植して肉用牛をやる場合と、こういういろいろの場合がございますので、とりあえずそういう意味で入植の酪農について申し上げますならば、大体所得が六百万程度でございまして、それに対しまして負担金が約三百万程度、そして、したがって可処分所得として約三百万程度が可能であろう、こういうふうに考えるわけでございます。それから入植者につきましては百十三戸を予定しているわけでございます。
  84. 塚田大願

    ○塚田大願君 負担三百万とおっしゃったのですが、この間、衆議院でおやりになった質疑の中では、大山政府委員が、家畜導入、その他土地取得資金、こういうもの全部入れますと三千二百万円ということになるというふうに説明しておられるんですよ。
  85. 大山一生

    政府委員大山一生君) 私がいま申し上げました三百万というのは、年の償還額を申し上げたわけでございまして、農家の負担額といたしましては約三千二百万、こういうことでございます。
  86. 塚田大願

    ○塚田大願君 この農家の負担の問題なんですけれども、これもずいぶんずさんなんですね。私のほうで調べてみましたら、いま三千二百万と言われたんだが、この根室中部の開発地区を調査しました——どもがしましたのは二月末でしたけれども、その段階で入植予定者にいろいろ聞いてみましたら、この方々は一回だけそのアンケート調査があっただけで、大体そのときには、自己負担分というのは千八百万円から二千万円だと言われた、こういうふうにおっしゃっておるんですね、その地域のその入植予定者の方々は。ところが、この同じ時点で町当局に聞いてみましたら、二千四百万から二千七百万円の間におさめたいと、こう言っておるわけです。ところが政府は、いまの説明を聞くと三千二百万円と、こういうことなんですね。で、これはいずれも住宅や土地代も含めたものなんですけれども、こういうふうに負担がとにかくはっきりしない。もうくるくる変わっていくと、こういうのが実態なんですよ。これはもっと政府としてもよく調査をしていただかなければならない。もっとはっきり確定して見通しを立てないと、入植者に対してたいへんお気の毒なことになると思うんです、倍近くの差があるわけですから。  で、じゃあ、それはひとつ注文として、もっとその辺の計画をはっきりさしていただくことといたしまして、この根室地区の場合ですね。先ほどお話がありました国営農用地開発事業の農業用排水事業ですね、これは四十八年度から予算がついて着工されているわけですよ。この問題なんですが、これは四十八年の何月から着工されたのか。実績はどういうふうになっておるのでしょうか。
  87. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先生の言われました日にちというのは非常にむずかしいわけでございますが、国営根室中部の土地改良事業計画といたしまして概要を公告したのが七月でございます。それから事業の施行の申請がありましたのが八月、そして事業の計画の確定は十二月でございます。
  88. 塚田大願

    ○塚田大願君 概要が発表されたのは七月と。で、八月に着工されたということですね。そして十二月にこれは完了ですか、何ですか。
  89. 大山一生

    政府委員大山一生君) 土地改良法によりまして、国営事業を行ないます場合においては、計画決定いたしまして、それを公告いたしまして、縦覧をいたすわけです。その縦覧期間に異議の申し立てその他があり、なければ、ないということで計画としての確定が十二月二十八日と、こういうことでございます。
  90. 塚田大願

    ○塚田大願君 十二月に計画が確定したと。ところが、そうすると、土地改良法の八十七条によりますと、計画を公告し計画書の写しを縦覧させなければいけないということになっていますね。そしてその異議申し立てがなかった場合でも——とにかく縦覧して、その異議申し立てが、ある、ないということを確定するのには十五日ですか、十五日、期間を置かなければならないと、こういうふうになっておりますが、いまのお話は、その上で計画が確定して、工事がされると、こういうことになりますね。で、この土地改良法では、それを非常にきびしく言っているはずですな。これは八十七条の第八項です。「国又は都道府県は、第六項の異議申立てがないとき、又は異議申立てがあった場合においてそのすべてについて前項の規定による決定があったときでなければ、当該土地改良事業計画による工事に着手してはならない。」こういうことになっておるわけですね。ところが、先ほどお聞きしますと、八月に着工しておるということになりますと、これは土地改良法に違反をしておるということになるんじゃないですか。これはどういのことです。
  91. 大山一生

    政府委員大山一生君) 北海道のこの地区の場合の問題といたしまして、一つは従前からも行なっておりました明渠排水事業と漁業との関係、これにつきましては、個々にいろいろと協議するということをこの際一般的なルールにしようというような要求が、漁業者のほうからありまして、それのために協議が長引いてきたという一つの事情があるわけでございます。それで、この根室中部地区の土地改良法上の手続につきましては、いまありましたそういうふうな漁協との関係の問題がありまして、事務的に遅延したようなわけでございますけれども、事業参加者の同意というようなことにつきまして、たとえば農地開発なり農業用用水と両方通じまして、文字どおり一〇〇%の同意がとれていると、こういうようなこと。——それで北海道におきましては、気象条件の制約というようなことから、工期に制限を受けるというようなことがありまして、造成工事のこともございまして、農業用水路なりあるいは農用地造成の工事ということに着手したようなことでございまして……。  いま先生の御指摘のように、確かに土地改良法との関係では手続上のそごがあったということは、遺憾ながらわれわれも調査した結果、認めざるを得ないというふうに考えるわけでございます。したがいまして、今後この種のことがありませんように注意してまいりたいというふうに考えるわけでございます。それにいたしましても、中部、ここが文字どおり全員の同意をとった手続が行なわれていると、こういうようなこと。それから計画決定につきましての異議の申し立て期間に異議の申し立てもなくて、所定の手続もすべて終わっていると。こういうようなことがありました今日におきましては、過去の手続上のそごということについては、厳重にこれから注意してまいりたいというふうに思うわけでございます。
  92. 塚田大願

    ○塚田大願君 私は、ただこの問題をあらさがしをして落ち度があったと、法律上、手続き上の落ち度があると、これをあげつらってどうこう言おうと思っているわけではないのです。もちろんこういう法律違反は、これは許さるべきことではありません。これはやかましくうたっているのですから、絶対に工事に着手してはいけないと、わざわざ法律でいっていることを、これを違反して一いろいろ理屈はいま述べられました、漁協との関係あるいは全員の同意があるとか、気象条件があるとか、いろいろ弁解がましいことは言われましたけれども、そんなことを一々弁解したら、この法律を無視していいかと、そんなことは全然問題にならないのです、法律はそのためにあるのですから。したがって、こういうことは今後絶対にやめなければならないことだと思うのです。  私は、むしろそういう手続上の問題よりもいま全員の皆さんの同意も得ておるということを一つの理由にあげられましたけれども、しかしこれはここにむしろ私は、問題があると思うのです。確かに、計画の内容につきましては、地元の市町村や農協の幹部の段階では、たびたび協議もされ、説明がされておったようであります。ところが、地域の農民はあまり知らないのです、こんな計画があったということを。ですから工事もどんどんやられておる。別にこういう土地改良法なんかについて詳しくありませんから、工事がどうだ、異議申し立てがどうだなんというようなことは、農民の方々は知りません。だから、うっかり見過ごして工事がどんどん進んでおるということになったわけですけれども。そういう意味では地元の農民の皆さんには非常にこの内容が不徹底、いわば地元の農民不在の形でこういう工事が、事業が行なわれておるというところに、むしろ私は問題があると思うのです。  その一つの証拠に、ここに北海道の根室市長の業務経過報告書というのを拝見いたしました。この業務経過の報告書には、毎日の日誌が載っておりますけれども、この日誌を見ましても、農民との打ち合わせなんてやったことは一つも書いてありません。だれか農林省のえらい人が視察に来たとか、いろいろなこまかいことは書いてありますけれども、農民と打ち合わせたとか、農民にこういう説明をしたなんていうことは一回もやっていないのです。ですからいま局長、皆さんの同意も得たなんて言っておりますけれども、そうじゃない。いわばほんとうに農民をわきへ置いて、役所だけはどんどん、どんどん事業を進めた、これが実態なんです。  私は、こういうやり方が非常に非民主的で、ここにむしろ問題があると。先ほど大臣といろいろ問答をしましたけれども、要するに全体の農民の納得と支持がなければ、酪農の振興なんて、幾らどんなりっぱな計画を立てたって、私は、それは進まないと思うのです。何か一部の人たちだけに片寄ったようなやり方では、絶対に私は成功しない。そういう意味で私はこの問題を取り上げたわけであります。この点大臣どうでしょうか。あわせて、時間の関係もありますから、この今度の公団法の場合でも、計画の策定の段階でも、地域農民の意見を聞くというふうになっておらないですね。私は、これが一つのこの法案の欠陥だと思っているわけです。やはり個々の計画を、これだけの計画を作成するのですから、少なくともこういう計画について、地域農民の意見を聞くと、そうしてその支持を得るという、少なくともその程度のことはさるべきではないか、こういうふうに考えているわけですが、いまの問題と関連して、大臣の御意見を聞きたいと思うのですが、どうでしょう。
  93. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) これは政府とか、公団とかいうものだけが仕事をしようというわけじゃありませんで、それに協力して、その気持ちになって生産をあげていただくのはその地域の農民諸君でありますので、この人たちの理解と合意を得られるように、当初からつとめてまいることは当然のことだと思っております。
  94. 大山一生

    政府委員大山一生君) 公団事業といたしましては、われわれ考えておりますのは、国の直轄で基本調査なり、地区調査をやってまいるわけでございますが、この段階におきましても、極力地元の意向というものを把握せにゃならぬ。何ぶんにも先生の御指摘のように、地元の意向が盛り上がっている地区でなければ公団事業として取り上げても効果はないわけでございますので、そういうふうな方向をぜひとってまいりたい。こういうふうに考えているわけでございまして、そのために、県から申し出があります際にも、県が地元の意向というものを十分に把握していることを確認することを申し入れ書に要請するということにいたしております。さらに今度、実施方針が定まるわけでございますけれども、その段階におきましては、事業参加資格者の土地につきましては、全員の同意、それからまあ土地改良事業については土地改良法と同じように、三分の二以上の同意、こういうふうな同意を全員とるわけでございますので、そういう各種の法的な段階あるいは事実上の段階におきまして、地元農民といいますか、事業参加資格者というものの意向というものは十分にくみ入れて措置してまいる、こういうふうな方針で進めてまいりたい。こういうふうに考えるわけです。
  95. 塚田大願

    ○塚田大願君 ぜひ、そういう方向で——ほんとうに形式的に地元の意見を聞く、そしてとっとことっとこやってしまう、しかも、その場合に法律違反までしてやると。なぜこういう事件が起きたのか、なぜ、そういうことになったのか、この辺、私も、これからもう少し追及する必要があると思うんですね。何か、建築業者の意向がこういう形に反映したのかどうか。だとすれば、これはたいへんな問題でありますが、その辺もこれからやっぱりはっきりさしてもらわなければいけないと思っておりますが。いずれにしましても、地元の農民の皆さんの意見を大切にする、この民主主義が徹底しない限り、私は、どんな事業だって成功するはずがないんで、この点は今後ともひとつ十分留意をしていただきたいということであります。  次に、この根室地域の広域農業開発事業の計画の内容ですね、これについて。建て売り牧場に農家が入植するわけですけれども、どういう酪農経営をするのか、その営農プランですね、営農計画、これをひとつ、ごく簡潔でよろしゅうございますから——私も大体聞いて知っておりますから、ここで簡潔にひとつお答え願いたいと思います。
  96. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先生御存じのように、根室地区につきましては、現在やや過密状態の酪農経営が行なわれているわけでございます。平均いたしまして約三十頭ぐらいの規模になっているような中におきまして、それらの中の一部の方々を新しく創設されるところに移転入植をしてもらう、こういうのが基本的な考え方でございます。  そこで、移転入植します農家の経営設計につきましては、一つの標準タイプといたしまして、牧草地五十ヘクタール、成牛五十頭規模を設定しているような次第でございます。そこの経営につきましては、圃場の集団化ということは当然でございます。また、高能率な機械を効率的に利用できますような圃場条件にするように土地基盤整備をする。あるいは飼料管理面で申しますならば、搾乳関係の施設を整備しますとか、あるいはふん尿処理につきましてはスラニー方式をとると、こういったような省略化をはかりまして、家族労働力でおおむね可能であるというようなかっこうの営農類型を考え、またそれが酪振計画等を参考にしながら可能であろう、こういうふうに考えている次第でございます。
  97. 塚田大願

    ○塚田大願君 つまり、家族労働というのは夫婦二人ということでしょうか。で、その場合どのくらい年間の労働時間というふうに考えておりますか。
  98. 大山一生

    政府委員大山一生君) 家族労働といたしましては、二・五人ないし三人という労働人口のある農家というのを家族構成として考えております。  それで、所要労働時間といたしましては約五千時間、こういうふうに考えているわけでございます。
  99. 塚田大願

    ○塚田大願君 二・五人というのはどういう構成ですか、家族の。
  100. 大山一生

    政府委員大山一生君) 訂正さしていただきます。  二人ないし三人と、こういうように御了解いただきたいと思います。
  101. 塚田大願

    ○塚田大願君 私が見た計画書では一・八人の労働人員、三千百七十二時間、こういうふうになっていますが、これは違いますか。
  102. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先ほど申し上げましたようないろいろの方面の意見を聞き、また、農家の方々の意見もわれわれは聞いたつもりでございますが、そういうかっこうで営農類型をいろいろつくってまいるわけでございます。先生の言われました三千何時間というのも、その過程の一つとしてはあったかやに聞いております。
  103. 塚田大願

    ○塚田大願君 このいろいろな類型があるだろうと思うのですが、私地元でいろいろ聞いてみましたけれども、とにかくこの五十頭という規模の農家では必ず常雇いあるいは実習生というふうな場合もありますけれども、大体親と息子夫婦二人、こういうつまり四人ですね、これで大体どうやらこうやらやっておると。ところが、いまおっしゃったように二・五や一・八というふうなことではこれはとてもできることじゃない。もしできればそれはスーパーマンだ、こういうふうに言っておるのですね。ですから、どうも農林省計画というのは若干机上プランのきらいがあるんじゃないかと思うのですけれども。とにかく私ども計算してみましたら、少なくとも五十頭ということになりますと、一頭当たり百三十六・五時間ですね、この標準的の指標です。で、これで計算をいたしますと、五十頭なら六千八百時間必要になってくる、こういうことになってくるのです。そうしますと一・八や二・五ではとてもこれはもうたいへんな労働条件ということになるわけで、とにかくこれはもう非人間的なものになりかねないですね、この計算でいきますと。  で、私は、こういう資料を持っているのです。これは北海道大学の医学部の学生が調査をした統計なんです。これは別海町でやった統計です。この学生が、酪農家の労働時間や睡眠時間をもうストップウォッチを持って調べてみたのですね。ところが、あまりに労働が激しいので、そのストップウォッチを持って調べていた学生のほうがひっくり返ってしまったと、こういうものなんです、このあれを見ますと。それで一戸ずつの農家の方方の時間がもう詳細に出ておるのですけれども、大体睡眠時間というのは五時間ぐらいですね、五時間から六時間。就業時間というのが大体十時間以上で、中には十三時間半というふうなものもあります。とにかくみんな十時間以上、もうたいへんな労働なんですね、酪農家の労働というのは。で、これが実態ですから、今後五十頭で夫婦か、あるいは二・五、三人ぐらいで、息子さん一人ぐらい入れても、これはもうとても五十頭規模なんということは、ちょっと常識としては出てこない、こういう計画です。ですから、これは何も五十頭でなければだめなんだというのではなくて、希望によっては二十頭——二十頭は少し少な過ぎても三十頭なり四十頭なりでもよろしいと、もちろん五十頭やりたいという方々は五十頭おやりになるのもいい、六十頭やりたいという方は六十頭でもいいのですが、いわば画一主義で五十頭というふうにきめてかかるのは私、非常に危険ではないかと思うわけですが、この辺はもうちょっと柔軟にお考えなのかどうか、ちょっとその点をお聞きしたい。
  104. 大山一生

    政府委員大山一生君) われわれ、先ほど申し上げましたような約五千時間という所要労働時間を見ておるわけでございますけれども、これは北海道の酪農近代化計画の近代的酪農経営の指標等にも、その種の数字が大体同じような規模において出ているようでございます。それから、われわれこれをきめますにあたりましては、帯広大学でありますとか、そういった学者あるいは地元の方方の意見も聞いてこの時間をきめたような次第でございまして、まあまあというふうに実は考えておるような次第でございます。  そこで、今度入植する方々の規模の問題でございますけれども、入植する方々の規模につきましては、これは五十ヘクタールということで配分をするという計画で進めてまいりたいというふうに思っております。ただ、間引きされる地帯におきましてもあわせて交換分合等が行なわれるわけでございます。で、交換分合等が行なわれ、換地が行なわれ、そこにおきまするまた集団化というようなことも当然行なわれるわけでございますけれども、そちらのほうにおきましては、農家の方によっては、それは二十頭なり三十頭という規模のことでその交換分合に参加される方もあるでございましょうし、そこまで、残る方まで全部五十ヘクタールにしようという考え方はございません。
  105. 塚田大願

    ○塚田大願君 とにかく私は、これは先ほどから繰り返し原則的な問題として提起しておるんですが、やっぱり何といっても、その地域の農民の方方の意見あるいは今度の事業で入植されるような方々の意見というものをやはりまず大事にしてかかっていただく。そうでなくて、いわば上からの押し付け方式で、もうこういう計画だからこれに条件が合わなけりゃおまえは落第だと、こういうことでなくて、三十頭なら三十頭でやれるような施設、そういうものを少なくとも三種類ぐらい、三十頭からあるいは四十頭台、あるいは五十頭台、このぐらいの少なくとも具体的な計画でこういう事業をおやりになる必要があるんじゃないか。とにかく五十頭の画一主義というのは、これはもう大体経験者に言わせますと、これはもうとてもだめだと。  いまの条件ですと、私は、根釧パイロットファームに入られた篤農家の方からお聞きして——相馬さんという非常に篤農家で、あの辺では搾乳ではいつも、十年間トップを続けておられた非常に有名な方ですけれども、この方なんかの意見を聞きましても、とにかく五十頭じゃどうしても無理だ。というのは、配合飼料だけでは一頭当たりの乳量に限界がある、どうしても自給濃厚飼料、これをつくらなければいけない、そのほうが実際に全体の乳量はふえる、四十頭のほうが。ですから、もう五十頭はだめだと、この人はもう断固として、この篤農家の方は言っておられましたけれども、こういう方々の意見も十分聞いて、そしてほんとうに、さっき大臣が言われた生産性を高めるということが問題なんですから、形式が問題なんじゃないんですから、そういうことでやはりやっていただきたいと思うわけです。この点確認してよろしゅうございますか。つまり、三十頭でやるなら三十頭の分の施設規模でやってみろ——つまり、五十頭の施設を押しつけて、まあ三十頭でもいいけれども、施設だけは五十頭だ、五十ヘクタールだという押しつけ方式でなくて、もっとそういう具体的な計画ですね、こういうふうにやっていただけるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  106. 大山一生

    政府委員大山一生君) 根室の場合については、衆議院でも同じような御意見があったわけでございますけれども、根室のような比較的広い土地のとれるようなところにおきましては、いままでの各方面の研究の結果といたしましては、今度入植される方の農地といたしましては五十ヘクタールということで進めてまいりたいと思っております。ただ、間引きされるほうの従来のところにおきます換地でありますとか交換分合等の集団化、こういうふうな事業につきましては、これはそれぞれの規模というものに当然関係してまいりますし、そしてまあそういう全体の地域を通ずる将来の、何といいますか、生産団地といいますか、それの指導方針ということでございますならば、これはいろいろのケースに合う営農類型ということを当然つくらねばならぬだろう、こういうふうに思っております。その問題はちょっと話が別になりますけれども、内地におきましては特に地方地方によりまして、また立地条件も非常に異なっておりますので、それなりにいろいろの営農類型を内地においてはつくらねばならぬだろう、こういうふうに思っております。
  107. 塚田大願

    ○塚田大願君 時間もだいぶ迫ってきましたから、次に——いまの問題もっといろいろ具体的に詰めたいと思っておりますけれども、とにかく計画がまだいろいろ流動的な面もあるでしょうから、それは今後いろいろな形で反映させていただくといたしまして、次にお聞きしたいのは、用地の配分の問題です。  これは単に経営規模という面だけでなくて、開発された用地の配分ですね、ここにも何か選別政策が押し込まれる危険性というのがあるんじゃないかというふうに私は感ずるのですけれども、というのは、開発公社は、農地保有合理化法人でありますから、当然その売却、用地の売却の相手の選定基準というものがあるだろうと思うのですね。いわゆる中核的農家にしか売らない、こういうふうな心配はあるのですが、この点がどうなるのか。やはり私は、そういう大きな農家だけでなくて、先ほど最初に申しましたように、中小の農民のための規模拡大も積極的にやっていただかなければいけないんじゃないか。小さいのは切り捨てろ、大きいのだけ育成すればいいのだといったって、現実はもうそこまでそういうふうになっていない。こういうことから見まして、この用地の配分問題ですね、これをどういうふうにおやりになろうとしているのか、そこをまずお聞きしたいと思うのです。
  108. 大山一生

    政府委員大山一生君) この農用地開発公団が行ないます土地につきましては、事業参加者がみずから土地を調達している場合と、それからあと公共団体が土地を供出する場合、あるいは国有地を利用する場合、いろいろの場合があると思っております。そこで、先生の言われましたのは、合理化法人が先行取得した土地を公団事業として行ないましたあとの配分の問題であろうかというふうに思うわけでございますが、全国タイプといたしまして、いろいろのタイプがあるわけでございます。つまり根室で申し上げました入植者のような先ほど申し上げたようなタイプ、あるいは北上・岩手のように二十頭規模の成牛というのをスタンダードのものとする考え、あるいは阿武隈・八溝等においても同じ、あるいは阿蘇・久住・飯田の肉用牛は十頭程度の繁殖牛と、こういうふうないろいろのケースがありますけれども、むしろ内地の場合で申し上げるならば、むしろ公共共同利用経営といいますか、こういうふうな牧野、そしてそこで粗飼料を供給いたし、あるいは夏山冬里というかっこうで利用し、あるいは保育育成牧場として利用する、こういったようなケースがあるわけでございます。そこで、したがいましていずれにいたしましても、経営規模の拡大に寄与するという観点からいたしまして、経営規模を拡大するということに寄与するということでなければならぬというふうに考えるわけでございます。そこでその合理化法人の買っておる土地について、公団事業を行なった場合の配分でございますけれども、この点につきましては県当局あるいは地元と十分に相談してやってまいりたいというふうに思うわけでございます。しかしいずれにいたしましても、それが一つの濃密生産団地として十二分に機能するような姿勢ということがなければならぬものというふうに考えるわけでございます。
  109. 塚田大願

    ○塚田大願君 そうすると、単にこの売り渡し方式というだけではなくて、貸し付け方式というふうなものも当然弾力的に活用されるというふうに解釈してよろしゅうございますね。
  110. 大山一生

    政府委員大山一生君) 貸し付けというとあれでございますが、要するに、公共なり共同経営牧場というかっこうで、それに対しましてそれを農民が利用するというようなかっこうということは、当然一つの線として考えられることであり、また考えなければならぬと思っております。
  111. 塚田大願

    ○塚田大願君 ぜひそういう入植希望者にいろんな、まあもちろん買い取りたいという方もあるでしょうし、とても資金がないから貸し付けてもらいたいという方もあるでしょうから、やはりこういう制度というものは一律にしないで、農民自身の選択にまかせると、こういう方式が私は望ましいんではないかと思うわけです。  そこで、いろいろ論議をしてきたんですけれども、要するに、やはりこの法案の目的にうたっておりますように、農畜産物の安定的供給と、それから農業経営の合理化ということを実際に達成するためには、どうしても、この開発の原則ともいうべき、民主主義というものをあらゆる面において徹底させる、これが私はやはり最低の条件だと思うんですね。そうでなくて、お役人が頭の中で考えたいわば官僚的のプラン、これはいいんだ、ということで押しつける、この開発方式は最も危険なんで、いままでの例から見ましても私はその点がやはり一番重要な問題点ではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで最後に一つだけ。これはもう先ほどからいろいろ質問が出ましたので、ほんとうに一言だけにしておきたいと思うんですが、例の農地開発機械公団の問題です。これはもう先ほどから、また衆議院でも皆さんがみんなこの問題については質問されましたので、私は、一つだけしておきたいと思うんです。この賃金格差の問題であるとか、その準職員の問題は、これはもう先ほど答弁がございましたから、それは割愛しまして、この新公団に移行しました場合の労働条件ですね、これは労働組合と事前に協議されていくことになりますか、どうですか。その点をまず簡単にお願いしたいと思います。
  112. 大山一生

    政府委員大山一生君) 現在の公団の範囲におきます問題につきましては、先ほど申し上げましたように、理事者側と組合との間において協議がなされ、基準的なものについて協議がなされるということは当然であるわけでございます。ただ、新公団との関係において行なうべき部分ということになりますと、これは、新公団と一切の権利義務を承継するかっこうでまいります機械開発公団職員との間といいますか、あるいは組合との間において労働協約が結ばれる筋のものであろう、こういうふうに思うわけでございます。
  113. 塚田大願

    ○塚田大願君 では時間がまいりましたから、これで私とめますけれども、私のほうでは、この法案に対して修正意見も提出しておるわけでございまして、これはあとでまた審議をお願いするわけでありますけれども、とにかく私どもが一番心配しておりますのは、ほんとうに農民サイドで、農民の立場でこの開発公団考えていただく。これだと私ども考えておりますので、この点を最後に要望しまして私の質問を終わります。
  114. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 最後にお話のございましたことでございますが、事業参加資格者の御意見は十分尊重をいたし、御懇談をいたして進めてまいりたい、こう思っております。
  115. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、農用地開発公団法そのものの法律内容についての質疑は他の委員によって尽くされていると思いますので、その背景なりまた、非常に現在起きつつある事態を引用しながら、農林省、運輸省、経済企画庁、自治省、建設省に対しましてお尋ねをいたしたいと思います。  現在のように世界的に食糧の需給が逼迫いたしてまいりますと、これが契機となりまして、日本の食糧自給も後退の一途をたどってきておることは、本年の、この間、発表になりました農業白書に自給度の向上が大きく取り上げられておることによっても明らかです。で、われわれはここで食糧の自給体制を確立をする、そして日本農業の復興をはかっていかなければならぬ、そういう大事な時期に直面していると思います。もしこれに対する基本的な態度を誤まりますならば、日本農業は回復不能な状態に直面するであろうし、国民の食生活も長期展望に立ったときには、少なくとも十年内外で重大な事態に直面すると思います。こういう考え方に立っていま審議をされておる農用地開発公団そのものをつくることに対しては、私は別に異存を持つものではありません。問題は、この農地造成草地開発ということに対する手段を、農用地開発公団法に求めておるわけでありまして、その目的とするところには私どもも大いに、もっと大規模に、もっと徹底的にやってほしいと思っておるぐらいであります。  わが国の耕地面積の推移を見ておりますと、昭和三十六年の六百八万ヘクタールをピークにだんだんだんだん農耕地が減ってきまして、農用地開発による耕地面積、まあおおむね三十六万ヘクタールとしますと、これを差し引いてもなお四十万ヘクタール減少するということになる——三十六万ヘクタール造成したとしましても、なお四十万ヘクタールは面積が減る、こういうことになる。四十七年には五百六十八万ヘクタールとなっておるのでありますが、農地転用等の農地壊廃がこれはいかに大きいかということを私は立証しておると思うのであります。  それで、これは昭和四十年を基準年次にとりますと、農地の拡張が四十年から四十七年にかけて八年間に三十八万二千百九十七ヘクタール、壊廃が六十九万五千百三十七ヘクタール、差し引き三十一万二千八百三十八ヘクタールというものが減っておるんです。これは経済企画庁の新全総の総点検にあらわれておるデータである。しかも、その資料は農林省が出した資料を経済企画庁が作業してつくったものである。こういう状態でありまして、特にその壊廃のしかたについて見ますと、商社などや、その他の大手の企業が、土地の買い占めをやる、レジャー用地やゴルフ場の用地に取得して、国土の乱開発を進めておる。その結果は、地価が高騰して農地がどんどんつぶれていく、こういう現状なり、背景の中で、農用地開発公団が装いを新たにして発足するということは、そのことそれ自体私は好ましいことだと思います。しかし、いまの構想では、私は、とうていこの農地のつぶれ地が急速に進むことに対するこう薬ばりの対策であって、自給度の向上につながるような大きな施策だとは考えられない。  そこで、農林大臣にお伺いいたしたいのでありますが、農地法に基づく転用規制というものについてもっと強化されなければならぬのじゃないか。農用地をどんどん開発していきましても、かつては緊急開拓地がやっと定着したときにはすでに乱開発によってつぶれていく、これではさいの河原の石積みではないかと思う。その点、農林大臣は三度目の御就任でありまして、最近の傾向はとくと御存じだと思いますが、もっときびしい姿勢で転用規制に対処してもらいたいと私は思いますが、いかがですか。
  116. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) お説のとおりに、私ども日本の農業をよく見ますというと、農用地についての感触は、ただいまの御指摘と全く同じ感触であります。数年前に、私在任中、例の農振法をつくりましたときも、まあ俗なことばで申せば、農業の領土宣言といったようなつもりで、ああいう法律を国会でもきめていただきました。やはり私どもが、今日、多くの国民がやはり国際的な食糧事情の緊迫のような状況を迎えて、いまさらのごとくいろいろなことを感じておる方も多いようでありますが、やはり狭隘な国土しか持っておりませんわが国の農業にとりましては、農地は非常に大切なものである。それがいたずらに壊廃にまかせるということは、将来非常に危険が存在すると思いましたので、農振法というふうな考え方政府から提案をし、御審議の上、御賛成を得て法律になっておるわけであります。  その後の傾向を見ますというと、日本の経済の発展に伴って私どもの予期、期待いたしておりましたよりも、やはりいろんな面において転用が多くなってまいっておることは事実であります。私どもといたしましては、いまおそらく国民的合意を得られる自給度の増強、こういうことから考えまして、いまお話のございましたような農地法による農地の保存につきましては、これはお説のように、やはり厳格に守ってまいるということは現在もそのとおりであります。しかし、いまお話の中にありましたように、一部の農外者たちが大きな土地を、農地を購入いたしておるというような事実、しかしこれは農地法に照らしまして適正な手順並びに理由がなければ、最終的には農林省においてはこれを承認いたしませんからして、そういう角度におきましては、農地保存については最善の努力をいたしておるわけでありますが、一方において、そういうことを厳重にいたしますと同時に、やはり低位利用地、未利用地のようなところをできるだけ開発をいたしまして、それに土地改良考え方を加えて、基盤整備等を行なうことによって、今回御審議を願っているような新しい農用地開発をしてまいって、いわゆる自給度を高めてまいるということの努力をさらに倍加していきたいと、こういう考え方をとっておるわけであります。
  117. 足鹿覺

    足鹿覺君 土地利用の構想について、経企庁とそれから建設省にひとつ伺いたいんですが、新全総が再点検をされて現在新しく問題点が整理されつつあるわけであります。その詳細なものはきょうは論ずるいとまがありませんが、新全総による道路の道路敷というものは四十年に四十二万ヘクタールあったんですね、それが計画目標の六十年には九十万ないし百万ヘクタールを必要とすることになっております。なおまた、四十五年に基準とした国土建設長期構想案、これは建設省のものでありますが、これによりますと、宅地が九十万ヘクタールのものが六十年には百四十万から百五十万という急激な面積になるわけです。増加率になるわけです。  それから、ついでですから一つ申し上げますが、運輸省もおいでになっておるから申し上げますが、私の手元にある資料によりますと、いま問題の全国交通ネットワーク、いわゆる新幹線構想を一例にとりますと、現在着工中あるいはそれと同等の地位にありますものに山陽新幹線、上越新幹線、東北新幹線というのがあります。これのつぶれ地というものは山陽新幹線が四百五ヘクタール、上越新幹線が百十三・七ヘクタール、東北新幹線が三百十八ヘクタールとなっておりまして、新幹線建設法によっていつの日か達成されるであろう路線指定が終わっておりますから、これを全部トータルいたしましたときには、各路線名別にどの程度のつぶれ地を必要とするかということを明らかにしていただきたい。同時に、在来線を複線化することによってさらにまた農地がつぶれます。それに国道の、つまり高速道のバイパス建設計画が各地で進んでおりますが、それによりましても相当大量の農地がつぶれていきます。これをすべて公共用地と目ざしておるわけでありまして、私は、それ自体をとやかく言うわけではありませんが、つまり都市近郊の農業が宅地化によってつぶれ、新幹線や高速道や国鉄の在来線の複線化等によって、一番平たんで優良農地が縦断され横断されていくことは免れない。しかも、このほかに、先ほども申しましたように、四十年には三万六千四百八十三ヘクタールのつぶれ地であったものが、四十七年には五万九千五百八十ヘクタールと約倍近く伸びておる。——自然に使用転換がはかられるものが別にあるんです。そうしますと、いまのままで十年もたちますと、日本の一番平たんで生産性の高い農地、または市街地周辺における必需品である生鮮食料品の産地がつぶれ、中山間地帯における標高四百から五百程度の地帯が新しい国道の新設やその他によってつぶれていくということになりますと、これは農林省がいかに、大臣がいま御答弁なさったように、農地を守るんだとおっしゃいましても、いまのような産業構造体制、いわゆる拠点開発を行なってこれを鉄道あるいは情報等のネットワークで結んでいくという開発システムが進行する限り、農地壊廃は必至だと私は思うんです。これをどういうふうにして補っていかれるか、経済企画庁の御所見も承りたい。  たとえば草地造成については、農林省よりも経済企画庁の新全総のほうがはるかに大規模なことを構想しておられる。片っ方で建設省や運輸省はつぶしていきますが、少なくとも経済企画庁は、国土の総合的な均衡のとれた開発を担当する官庁でありますから、いま私が指摘したような状態を放任をすれば、食糧の国内自給度というものはどんどんどんどん低下していきます。おそらく、いまのような産業構造が進んでいきますならば、私は十年以後の日本の食糧事情というものは残念ながら、米についても、蔬菜についても、たいへんなことになりはせぬかと、そういうふうに思うのです。その点について経済企画庁は、総合官庁としてどのように建設、運輸、農林、関係省と連絡をとられて総合的な食糧の自給度向上につながる都市政策を推進されようとしておりますか、その点を伺いたい。下河辺さん、あなたのひとつ……。
  118. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) お尋ねの点でございますが、新全総をつくりましたときにもそのことは非常に大きな私どもの関心事でございました。特にわが国の場合、まだ当分人口増加が激しいときが来ておりまして、総人口もふえてまいりますし、特に都市化の勢いが非常に激しい情勢にありまして、農村におられた方が都市部へ移転してくるということから、いわば農村の中で、ある程度の自給自足で食糧を確保していた時代から、都市のほうへ食糧を輸送して、そして都市の人たちが食糧を確保しなきゃならぬという事態に立ち至っておるわけでございまして、その都市配置あるいは都市化のテンポというもの、あるいは人口の増加というものと食糧問題というものが、国土の利用、あるいは開発の面で非常に重大な時期に来ているというふうに考えております。  そこで、御指摘ございましたように、都市の開発であるとか、あるいは都市の開発に伴って必要になる交通幹線の用地に、かなり多くの田畑農地を転用しなければならないという事態がございますけれども、しかしそれが行き過ぎてしまいますと、都市の食糧不足ということを通じて市民の生活が不安定におちいることは明らかでありますから、御指摘のようにその相互間の総合調整というものはいま非常に重大であるということを考えております。  また、草地の御指摘がございましたが、私ども水産物、あるいは養鶏、養豚あるいは牛につきまして、いろいろと勉強させていただいておりますけれども、やはり動物性たん白質というものは相当不足になることが明らかであり、はたして輸入によってまかなえるかどうかということにもいろいろな問題があるわけでありますから、かなりの自給度のあるものとしたいということで、新全国総合開発計画を策定したつもりでおります。しかしその後の情勢を見ますると、なかなか新全総で言っておりますような形には、草地造成その他が進みかねているというのも実態でございまして、何らか農林省におかれて対策を強化していただきたいということは、私ども申し上げておるつもりでおります。  さらに、土地の利用に関しまする管理につきましては政府といたしましては、国土総合開発法の提案をさせていただいておりまして、目下衆議院で検討を続けていただいておりますが、やはり土地の取引に関してかなりきびしい規制をいたしませんと、計画がある程度の合理性を持ってできたにいたしましても、その確保を充実させることができませんので、土地の取引に関する規制ということについて制度化をはかりたいということを考えております。その背景にはやはり土地利用の計画を明らかにしなければならないと思いますので、土地利用計画を新たに立てるという用意をさしていただこうとしておりますが、その中では、やはり全国土の中で農林地として残すべき地域、あるいは森林地域として残すべき地域を、知事さんに明らかにしていただくということで、土地利用基本計画をつくりまして、その計画をべースにして土地の取引の規制をしたいということを考えておるわけでございますが、そういったようなことを通じて、いま御指摘いただいたようなことに対して努力を続けてまいりたいと考えておりま
  119. 足鹿覺

    足鹿覺君 一括してお尋ねしたんですが、建設省とそれから運輸省、私が質問したことに答えていただきたい。
  120. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 現在工事をいたしております東北、上越新幹線につきまして、先ほど農地がつぶれている数字をお示しいただいたわけでございますが、大体その程度数字になっているのではないかと思います。今後つくります新幹線といたしましては、すでに整備計画決定いたしております五つの新幹線全体で、千五百キロぐらいになると思います。それからすでに基本計画を進めております十二の新幹線がございます。これは総延長で三千五百キロぐらいになると思います。これらの新幹線がどういうところを通るかという点につきましてはまだきまっておりません。しかし今後騒音等の問題を考えますと、比較的山林といいますか、人のいないところを通っていく可能性が強くなると思いますので、どの程度農地がつぶれるか、現段階では予想できないわけでございます。しかし、山陽新幹線では騒音等を考えまして、できるだけトンネルをつくって工事を進めている現状でありますが、山陽新幹線の例で申し上げますと、山陽新幹線は約四百キロでございまして、一キロ当たり五千平方メートル程度農地がつぶれております。したがって今後つくります五千キロについて一キロ当たり五千平方メートル程度農地がつぶれるという仮定で計算いたしますと、今後つくります五千キロの新幹線によってつぶれる農地の量は約二千五百ヘクタールぐらいになろうかと思います。
  121. 足鹿覺

    足鹿覺君 在来線は。在来線の複線化は。
  122. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 在来線の複線化も、現在工事がきまっているわけではございませんが、在来線の複線化の場合には、比較的都市近辺について複線化をはかるケースが多いのではないかと思いますので、今後の計画がまだはっきりいたしておりませんが、新幹線に比較いたしますと、在来線のほうは少ないのではないかというように考えられます。
  123. 足鹿覺

    足鹿覺君 お聞きのような、きわめてざっぱくな答弁ですね。いやしくも食糧輸入は、国際的に依存することができない、国内で自給していかなければならないということは、これは農民側が言っておるのではなくして、国民のすべてが、消費者が、いまの状態では不安だと。だからそれに必要な農地、必要なすべての施策というものが、万難を排して進めていかなければならぬ。こういう段階がきておるときに、十年先の計画について、幾ら農用地がつぶれていくか、あるいは林地、雑地がつぶれていくかということは——これは路線の引き方もありましょうが、ある程度の試算をし、運輸省は運輸省で、建設省は建設省で、宅地あるいはその他の計画、これを計算をし、おのおのが、別々の計画をおのおのが持っておって、かってにやっておったのでは、この法律によって農用地開発公団法が発足いたしましても、私は九牛の一毛にすぎないと思うんです、つぶれていくほうが多いんですから。こういう総合性のない、展望のない政策では、私は国民は納得しないと思うんです。  いま御答弁になりました方、どなたか、よく名前がわかりませんでしたが——住田さん、あなたがおっしゃったようなことを、在来線の複線化、あるいは新線の建設、あるいは新幹線の最終目標に至るすべてのものを包括して、今後どの程度の、この十年間に農地その他が減っていくか、それを資料として私はいただきたいと思いますが、いまの御答弁では納得がまいりません、いただけますか。
  124. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 先ほども申し上げましたように、新幹線の通る場所というのは、まだきまってないわけでございます。したがって、いまの段階で予測いたしますと、従来の経験から、一キロ当たりどの程度農地がつぶれるかということを計算して、それから推定する程度数字しか出てこないのではないかと思います。  また、在来線につきましては、現在の段階で長期的な計画をきめておりません。具体的にどこの路線を複線化にするかということはきめておりませんので、具体的な農地のつぶれ方について計算することも、非常にむずかしいと思います。  ただ、先ほども申し上げましたように、従来の経験から推定する、おおよその推定程度であればお出しすることもできるかと思いますけれども、正確な数字ということの御要求であれば、非常にむずかしいのではないかと思います。
  125. 足鹿覺

    足鹿覺君 申し上げるまでもなく、私はそんな正確無比な、窮屈な意味で言っておるのでなくて、おおよその資料をいただけばいいと思います。  私はすでに計算してみておるものがあるんです、私なりに。これは私の選挙区の山陰新幹線ですが、大体起点を大阪とし、終点を下関とした場合に、延長五百五十キロメートルですね、概算工費総額を私は十キロメートル当たり二十億円と見て、一兆二百億、十メートル当たり約二百円と私はそう踏んでおる。これをさらに土地についてみますと、それは山林であろうが、優良農地であろうが、雑地であろうが、別としまして、通る場所によって違うんですから——平均幅員を十一・五十メーターと言われておりますね。そうしますと、大体百二十ヘクタールというものが、鳥取県の中を通るのが百十キロと見まして——大体そういう見当になると思います。一方、また、何でも地方の知事さん方は、新幹線をつくって、在来線を複線化をして、新線を建設してという、もうスピードオンリーの考え方なんです。何か新幹線がつくと、非常にその辺の文化が進んで生活が豊かになるような錯覚を持っておる。私は、そういう考え方自体が一つ問題だと思うんです。  まあそういう議論は別のこととしまして、この全部を計算してみますと相当な経費と面積がつぶれる。それを大体資料としていただくと同時に、建設省の道路網ですね、道路網の整備、それから高速道路の新設または拡張、あるいは国道のバイパス計画が各地で進んでおります。人道のない一車線をつくっちまったために、農民は、それを横断するときには、命がけで農民車を操縦しなければならぬ。至るところで農業車が事故を起こしております。命を失っております。そういうことから始まって、いまになって人道をつけておる。人間が使うための道路ではなくして、車のみを通すというような構想で道路が敷かれておる、建設されておる。いまになって、あちこちをバイパスでまたやっておるという、まさに行き当たりばったりというか、まあ非常に遺憾な状態が各地に見られますが、そういうものと今後の都市の膨張によって必要とする宅地ですね。さっき私が申しました、建設省の計画に基づく農用地の大体つぶれていく今後、十年間の見通しというものはどんなものですか。運輸省も資料をやるということですが、いただけますか。
  126. 浅井新一郎

    説明員浅井新一郎君) お答えいたします。  道路によるつぶれ地の資料につきましては、現在ここに用意しました数字は、当面やっております五カ年計画数字でございまして、これが五カ年計画で約八万八千ヘクタールの用地が必要というふうにはじいておりますが、いま先生おっしゃいました十カ年の数字は用意しておりませんので、推計の数字になりますが、また後ほど、高速国道あるいは国道に分類してお出ししたいと思います。
  127. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) それから住田部長さんは資料を出してください、いいですか。
  128. 住田正二

    政府委員(住田正二君) はい。
  129. 吉田公二

    説明員(吉田公二君) 先ほどの御質問の都市部におきます宅地の所要の状況でございますが、建設省の国土建設の長期構想の中では、御指摘のように、四十六年から六十年度までの十五カ年間に大体宅地といたしまして二十三万ヘクタール程度が新たに必要であろうという想定をいたしております。  ただ、この宅地につきましては、新しく事業化をしてというよりも、所要面積として合計この程度のものが必要だということでございますので、具体にそれがどういうところに立地するかということは別問題でございますので、農地をどれだけになるかというのは一応積算はむずかしいわけでございますが、従来のたとえば民間デベロッパーでございますとか、公的の宅地開発というようなものの実績から徴しますと、大体二〇%から三〇%前後ぐらいが宅地化される際に、農地が転用されるというのが過去のデータでございます。
  130. 足鹿覺

    足鹿覺君 先ほど経済企画庁にも伺ったんですが、いまの下河辺局長の御答弁について、これは大臣でなくてもけっこうですが、農林省の当局から伺いますが、去年の五月一日に閣議決定がされまして、新土地改良長期計画におきまして、昭和四十七年から五十七年までの間に四十万ヘクタールの草地造成するということになっているようでありますね。一方先ほども述べましたが、新全国総合開発計画では四十年から六十年までに百四十万ヘクタール程度草地を新たに確保する必要があるとしております。しかも非常に憂うべき現象ですけれども、乳用牛あるいは肉用牛がだんだん減っておりますが、まあ一千万頭を飼養するという目標のようです。それが実現することはまことに好ましいことであり、そのために必要な条件が満たされなければならぬと思う。昭和四十年当時の十四万ヘクタール程度の牧草地であったものが、四十七年で約四十万ヘクタールになり、四十八年で四十三万ヘクタールと、平均大体三万から四万ヘクタールぐらいしかふえていません。こういう点から見まして、新土地改良計画に基づいた計画が進められる場合におきましても、現状と同じ程度草地造成することになるわけですから、どうも私は、この間に重大な、いま飼料問題が国際的な状況のもとで大きな問題になっておるときに、新全総——当局の考えておる、起案をしておる経済企画庁の将来展望と、実施官庁である農林省との計画の間にあまりに大きなずれがあること。どういうことによってこのようなずれになるのか。私どもが新全総に寄せておる期待というものは、なかなかむずかしいけれども、やはり農林省と一体になって同じ国の草地造成計画をおつくりになるのが当然じゃないか、それがこういう差がつくということはどうしても理解しにくいんですね。  先ほども言いましたように、大家畜の飼養頭数は最近停滞をしまして三百六十万頭と言われております。その飼養基盤が確立されなければ、依然として当てにならない外国飼料を当てにせざるを得ない。その結果は飼料の暴騰になって、肉牛の飼育も困難となり、最近は乳牛の屠殺がどんどん進んでおりますね。そういう状態の中に、われわれはこの農用地開発公団審議をしておるのでありますから、私はもう少し両者の間に実現可能な最大の努力目標というものが少なくとも、十年とは言いません、四、五年の間にあっても考えられてしかるべきでないかと思う。どうも私は、官庁のセクショナリズムと言っては済まされない重大な段階が来ておるときであり、この公団法に基づいて新しく生まれるこの公団が機能を発揮していくためにも、やはり私は、もっと総合性のある御計画がほしいと思うんです。  農林大臣、先ほどから運輸当局なり。建設当局からも、公共用地としてつぶれていくであろうという農地の推定も御発表になりました、宅地の発表もありました。どうも、みんなばらばらのような感じを受けるんですが、私は、事、食糧に関する限りは、やはり農林省が中心でお進めになるとか、何かもっと集約した、そしてそれが直ちに実現できるような、短期に実現できるような施策を私は必要としておるのではないかと思うんですが、何かしかるべき御措置をお考えになる必要があると思いますけれども、いかがですか。
  131. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほども申し上げましたように、私ども農業生産のために農地、ことに優良農地の必要なこと、これはもう原則として前々から農林省はそういう考えのもとに計画を進めてまいりましたので、そういう目的を達成するために農振法というものをつくりまして、農地についてわれわれの計画が比較的安定して進められるように考えたわけでありますけれども、いま企画庁からも御説明がありましたように、あの新全総のつくられました当時、われわれもああいう考え方で、これはこういうような意欲を持ってやるべきであると、こう考えておりましたが、その後の日本の経済の動きによりまして、どうも私ども考えておりましたような運びにはまいりませんでした。その間において、今度は新しい都市計画法ができまして、市街化区域と線引きが行なわれて、御存じのような状況になってまいった。それで、いま私どもは、ただいまのような食糧事情の国際間における状況を、まのあたりにいたしまして、やはり私どもが以前考えておりました考え方というものは誤りでなかったということを痛感いたす次第でありますが、農用地確保のためには、関係省庁とも十分に打ち合わせまして、必要なる農用地確保のための施策をなおこれからも政府部内で統一した考え方をもって進めてまいるようにさらに努力をしたいと、このように現在は思っておる次第であります。
  132. 足鹿覺

    足鹿覺君 下河辺さん、いかがですか。経済企画庁どうですか。
  133. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 私ども昭和四十四年に新全国総合開発計画の作業をいたしました際に、いま御指摘がございましたように、日本の国土が三千七百万ヘクタールといって限られているわけでありますから、その中で農地なり、あるいは道路なり、あるいは宅地なり、どのようなバランスで土地を利用することが一番合理的であるかという作業をいたしたいと考えまして、新全総の中にその成果のごく一部を掲げてございますが、その後、この資料についてはなかなか統計的な制約もありまして、十分整備し尽くされておらないというきらいがございますけれども、私ども、この段階で四十四年計画を総点検しておりまして、その総点検の過程で、やはりこの土地利用のバランスというものについてもう一度作業をしたいというふうに考えております。その際に、きょう御指摘いただきましたように、交通用地、宅地用地、農地とのバランスというようなことについても、どのような形が一番最適であるかはひとつ作業をさせていただいて、作業の成果によってまた御報告申し上げるということが適当かと思いますけれども、経済企画庁としては、そういった作業を通じて関係省庁へ必要なことに関してお話を申し上げるように連絡をしてまいりたいと思います。
  134. 足鹿覺

    足鹿覺君 ぜひひとつ本気で、文章ばかりつくっておらないで、新しい情勢に対応していく能力は十分お持ちなんですから、実施官庁との間の調整をとっておやりにならなければ、私は、どのようなりっぱな御計画ができましても、非常に実効を期しがたいと思います。そういう点で、あなたの今日までの努力なり成果というものは、私は相当に評価しておりますがゆえに申し上げておるのでありまして、新しい段階を迎えた日本の農業問題、なかんずく食糧の自給度向上の問題に対しての具体的な新しい観点からする問題点を洗い出して、そして対応するようなりっぱな新全総にしていただきたい。  聞くところによれば、新国総法案は流れるそうですが、まあ流れたほうがいいと思いますが、私は。(発言する者あり)だいぶん自民党のほうには御異論があるようですけれども、そういうふうに進んでおるのですよ。したがって、これは新全総が脚光を浴びるのです。  もう一つ調整をとってもらいたいことは、さっき言ったように、建設省が持っておられる独自の長期計画というもの、これとの調整ということも私はあってしかるべきだと思う。国土の有効適切な利用ということについていままでも御配慮になっておるわけですけれども、私は、食糧事情なり、自給度向上なり、特に畜産の現状が憂うべき現状に達しておるという前提に立って申し上げておるということを十分御留意願いたいと思います。時間がありませんからあまりこの問題だけでは……。  実際問題として、農用地の確保という立場に立って、転用問題をひとつ私はこの際お尋ねもし、意見も述べておきたいと思うのです。  で、最初に中海干拓事業を一つ引用したいと思うのです。これはおととしの五月に土地改良法の改正案のときに、赤城農林大臣に御指摘を申し上げて、相当長時間やったわけですが、約二千八百ヘクタールに及ぶ農地——島根、鳥取両県にまたがる中海干拓というのが現在進行しておるわけなんです。中海を淡水化し、農業用地をうるおす、こういうたてまえになっておるのですけれども、社会情勢が急激に変わりましたために、重大な転用問題が起きております。それをめぐって鳥取、島根の県境問題が今日まで対立しております。で、付近には防衛庁の航空輸送団の飛行基地がありますので、県境問題が特にやかましくなっておるわけであります。  これらの問題についてちょっと伺っておきたいのでありますが、いま起きております事件というものを、農林省はどういうふうに受けとめておられるか知りませんが、大根島という島を——二つに分かれておりますが、その大きいほうの本島を本土につなぎ、これを江島というものにさらにつなぎまして、その江島と鳥取県側のところに水門をつくって——樋門をつくりまして、船舶を航行せしめると同時に、淡水化に役立てる、こういう構想であります。これに関連をしまして、先年、二千八百ヘクタールという中海干拓に、島根県側から、工業団地計画というものをもくろみまして、でき上がった計画そのものの変更を御要望になった。さすがに農林省はそれには同意をなされなかったようでありますが。そこで、今度中海干拓事業から島根の計画をはずして、そして工業団地と江島・森山新港という港をつくって、一万トン一バース、五千トン二バース、三千トン一バースの収容力を持つ岸壁というものをつくる、その背後に、三百七十ヘクタールですかの工業団地をつくっていくという、県費をつぎ込んで充てる。あわせて対岸の森山側に九十七・五ヘクタールの水面貯木場を新設する、こういう計画が中・四国農政局に打診をされたのか、申告をされたのかわかりませんが——今日の時点の状況は私にはわかりません。で、こういうふうに長年かかってやっと着工した中海干拓事業というものが、干拓営農計画すらまだ十二分にできていないときに、その二〇%にも達するような大きな面積計画からはずされようとしておる。農林省はこれにどのような対策をお持ちになっておるかということですが、あと農林省の御見解を承ります。  そういう事情の中で、運輸省にひとつ伺っておきますが、運輸省当局は、一万トン一バース、五千トン二バース、三千トン一バースというこの江島・森山新港に港湾法の指定を内諾をし、必要な予算等の措置も考えられておると伝えられておりますが、まだ農林省は、私は、計画許可もしておらないと思いますし、そういうものに対して同じ国家の機関である運輸省がいま述べたような取り扱いをされておるといたしますならば、農林省はなめられておる、全く。こういうばかばかしい話は、私どもは、あまりにもおかしな話だと思うんです。地方の者はそう思っております。で、参事官の権限でこういう大きな問題を御答弁できるかどうか知りませんが、——私は官房長を要求したんですけれども、官房長は何か忙しいということなんで、忙しければ参事官でもやむを得ぬと言いましたから御答弁願いたいんです。政府答弁としては、政府委員でしょう。説明員か。——じゃあ、政務次官の出席を要求します。  こんなね、十年もかかってやっと緒についた大事業が、簡単に、しかも大石前環境庁長官が来て、自然破壊もええところだ、と言って大波乱を起こしたところなんです。それは、まあ今度は言論を訂正されて事なきを得たようですが、とにかく風光明媚なところに、一番まん中に、四百ヘクタール近い岸壁と工場団地ができる。山を一つ向こうには鹿島原子力発電所がすでに操業を開始しておる。何を一体目途に、このような計画を行なわれておるかということは言うまでもないこと。一方では、営農計画すらまだ進んでおらない。やっと脚光を浴びる段階を迎えた農地造成事業の多年の懸案が、いまや竣工に向かって一路邁進するときに、何でこういうことになるのか、私どもにはわかりません。農林省は、運輸省や通産省の敷地をつくるために苦労なさっておるのではないと私は思うのです。どうもその多目的に利用するならするで、頭から計画をしてやってもらいたい。農用地としてスタートしたものならば、あくまでもそれを貫いてもらいたい。私はそういうふうに思いますが、運輸省の参事官いかがですか。これは大事な点ですよ。
  135. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) お答えいたします。  先生の御指摘の江島地区の計画でございますが、現在境港管理組合が管理いたしております境港の港湾区域は、先生の先ほど御説明のありました大根島から江島に至る築堤でございます。それから水門がございますが、この外側だけでございまして、その内側までは入っておりません。それで、現在のところでは、昭和四十三年の七月に港湾管理者の立てました港湾計画提出を求めまして、運輸大臣の諮問機関でありますところの港湾審議会に諮問いたしまして、現在の港湾区域の中の港湾計画が一応認められております。その計画がいま申し上げましたような築堤の外側でございまして、そこに九メーター岸壁一バース、それから七・五メーター岸壁一バース、それから九メーターの水深のところにブイが二バース計画されておりまして、それに関連いたしましての埠頭用地が七・八ヘクタール、それからそれに接続する工業用地が四十四・三ヘクタール計画されておる次第でございます。それで、この埠頭地区におきまして主として外貿輸入木材と、それから内貿の農水産品の取り扱い、そういうことを計画いたしておりまして、その整備を着々進めてまいって現在に至っております。それで四十九年度には、境水道の水深も九メーターにする予定でおりますので、また、岸壁のほうも四十九年度末をもって供用開始できるようになるものと見込まれておる次第でございます。
  136. 足鹿覺

    足鹿覺君 大山構造改善局長、いまお聞きのとおりだ。あなた方は変更をしてないと何べんも私に説明しておられるが、いまお聞きのようなことがどんどん進んでいるんですか、承知の上でなさっているんでしょうか。これはもう話がまるで違う、これじゃ。
  137. 大山一生

    政府委員大山一生君) いま、説明のありましたのは境港の話でございまして、それで江島から森山に通じます湾口の締め切りに関しまして、あるいは中浦水門に関しまして、当初計画を何ら変えておるわけではございません。
  138. 足鹿覺

    足鹿覺君 当初計画は変えてないということは、江島新港の計画も、後方の三百七十ヘクタールに及ぶ島根県側の工場団地計画も知らぬということですな。知らないうちに、片方では港湾計画を進めておると言っておる。こんなばかなことはないでしょう。
  139. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) 私の説明が十分でなかったので、誤解を招いたおそれがございますので、もう一度御説明申し上げますと、ただいまお話のように、干拓地の囲いを農林省のほうでおやりになっておられます。境港の港湾区域のほうは、その干拓堤防よりも海側でございます。それで、そういうところの、要するに干拓地をつぶしてということではなくて、海側のところに埋め立て地をつくっての計画が四十三年に計画されまして、それで境港の計画と、それからいま干拓地の水門の計画、そういうようなものを配慮いたしまして地元において計画された計画でございます。
  140. 足鹿覺

    足鹿覺君 あなたは現地を見ていますか、私は現地のそばに住んでいるんですよ、あなた。いま、あなたが言っているのは、鳥取県側が美保湾に沿って造成しようとしておる計画を言っておられるようだ、どうも。地図があれば一番いいんですけれども、私が聞いておるのは、そんなことを聞いておるのじゃない。いまの樋門のところの江島と、鳥取県側の樋門を越えて本土とつなぐ地点を江島、森山地区といっておる。それは明らかに中海干拓計画の一部ですよ。あなたが言っておるのは、中海干拓とは関係のないこと、鳥取県側のこと。そんなことをだれも聞いていやせね。
  141. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) 先生の御指摘の中海干拓の中の問題につきましては、これは私どもといたしましては、まだ、港湾管理者の計画と申しますか、港湾管理者が管理する区域でもございませんし、まだそこのところが新しい港湾区域になったわけでもございませんし、そういう意味合いで現在のところ、まだ計画は固まっていないというふうに承知いたしております。
  142. 足鹿覺

    足鹿覺君 これは、そんなことを言いますと、港湾局長から大臣にも御出席願ってやらにゃならなくなりますよ。明らかにL字型の堤防をつくって一万トン、五千トン、五千トン、三千トンとあなた方の指導でやっているのだ、岩壁から港湾計画。これは表向きであるかいなかは私は知りません。農林省は、中国、四国農政局管内でまだ要請がとどまっておるやに私は聞いております。しかし、あなた方のほうはすでに……。そういう計画をあなた方に相談なしに島根県がやりますか、そんなことはないですよ。そして、あなた自身が直接担当なさっておらないなら、わからないならわからないとおっしゃい。そんなことを強弁されると先ではお困りになる事態が起きますよ。
  143. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) 先生の御指摘のいま工事をやっておりますところは、港湾区域の中のほうでございまして、先生が再三御指摘になっておられます三百ヘクタールとかというようなお話の地域、これにつきましては、私承知いたしておりますのは、島根県側におきましてはいろいろと、あの地域をどういうふうに使いたいというような構想を一部ではいろいろ考えたこともあるようでございまして、そういうような構想が、あるいは現地の段階で、農政局のほうと意見の交換等がなされておるのかもしれませんが、ともかく現在の段階では、港湾法のたてまえが港湾管理者中心の行政でございます、地方中心の行政でございますので、そちらのほうが、まず港湾管理者が設けられる、それから港湾区域ができる、それで港湾計画が立てられるという段階になるわけでございまして、現在のところは、私どもといたしましては、その港湾の計画が、そういうところに立てられているというふうには承知いたしていない次第でございます。
  144. 足鹿覺

    足鹿覺君 どうもこの人じゃだめですから、別の機会に——私は、また農振法の審議の機会もありましょうし、別の機会にもっと追及質問をしたいと思います。  ただ、念のために申し上げておきますが、いま大久保さんがああいう御答弁になりましたが、岸壁計画や、それに係留する船のトン数、隻数まで収容力を持った江島新港の岸壁計画と背後地の利用方法というようなものを、農林省は御許可になったはずはないと思うのです、私は。それでいま言い直されましたからね、大山さん。私は、農林省が御許可になっておるとは思いませんが、どうですか。
  145. 大山一生

    政府委員大山一生君) 島根、鳥取両県間におきまして、この種の問題につきまして、いわば一種の合意といいますか、があったことは聞いております。そしてまた、ただ、先ほど来申し上げておりますように、そしていまの港湾局のお話も、その江島のいわば外港の内海といいますか、の中で、運輸省が造成している、前から造成している土地の外側にできる部分のことを説明しておったんではないだろうかと、こういうふうに思っております。いずれにいたしましても、この干拓に関連する限りにおきまして、われわれのほうにはまだ、そういう話がきているだけでございまして、わがほうとして、これについて了解したとかいうようなことはございません。いずれにいたしましても、この両県の導入計画に関連する問題につきましては、慎重に対処してまいりたいと、こういうふうに考えています。
  146. 足鹿覺

    足鹿覺君 運輸省が何か工事しているというのはどこですか。何をつくっているのですか、運輸省は。
  147. 大山一生

    政府委員大山一生君) 非常に地図の上で説明しにくいわけでございますが、中浦水門と江島とを結びます線の外側といいますか、北側といいますか、境水道の中に属する部分、これは従前からこういうふうなことであるようでございます。
  148. 足鹿覺

    足鹿覺君 どのようなもの……。
  149. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  150. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 速記起こして。
  151. 足鹿覺

    足鹿覺君 大久保さん、これはね、あなた方が昔やったところなんですよ。
  152. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) そうです。
  153. 足鹿覺

    足鹿覺君 だから今度の中海干拓計画とは関係ない。
  154. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) はい、そうです。
  155. 足鹿覺

    足鹿覺君 そいつをはっきり言えや、——それでいい。いま私が聞いておるのは、それを種にして、その延長したところに江島新港と岩壁をつくって背後地に四百ヘクタール近い計画を、虫のいいことを考える。国でやらせて、あとで埋め立てて、そして使用目的変更をねらっておったんです。それができなくなって、今度は中海干拓計画そのものからはずしてもらって、計画変更してもらって県でやろうというんです。あなた方がやったところとうまくくっつけて、L字型にくっつけてやろうとしておる。それを知らぬと言うんです、これね。私どもは、向こうの島根県議会で問題になっておるんですからね。あなた方知らぬなんてたって、それは少しね——そんなことを言い張るとね、あなたは知らぬなら知らぬと、言ったほうがよろしい。どこまでもあなた、それを言い張るなら、この次に証拠資料から一切出してやりますか。責任あなた負えますか。
  156. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) この件につきまして、先ほど、こういう御質問があるということでさっそく現地に問い合わせたわけでございますが、県のほうでは、そういうようなことをいろいろ検討していると。それで、農政局のほうにもお願いしている状況であるというような説明は聞きました。で、それ以上のことは、現在のところ私承知いたしておりません。
  157. 足鹿覺

    足鹿覺君 念のために大臣申し上げておきますが、この中海干拓計画というものはもめにもめ抜いたのです。当時の食糧事情なり農業情勢からいえば、着工が進んでおればもうすでに成果、もう入植が始まっておる段階なんです。それをいろいろな言辞をかまえて、これを妨害したものがあったわけですね。そのうちに、食糧事情が一転をして、そして過剰状況になった。で、こういうことになって、そしてこの工業団地構想というものはなるべく計画は狭いほうがいい。休耕田や転作を奨励する段階に、この面積を縮める方向が出てきたわけですね。それでやはり長い年月の間にはいろいろな変化がありますから、そのときに、き然たる態度を農林省はおとりになったようですが——今後はさらに二千八百ヘクタールの約二〇%近いものですから、これは最初は酪農を主とした営農計画を立てておったら、今度はまた米に変わってきておると言われておるんです。やはりこういうふうに農地造成といえば、開発、干拓になりますが、その転用の基準というものは、厳格に守っていただかなければ、この農地開発公団開発したものをどういう基準で他のものに転用をお認めになるかということとの関連も出てくると思うんです。つくったわ、それはまた別に転用だ、こういうことなら、農林省は、通産省や建設省の下請、土木の埋め立て屋になってしまう。あくまでも農林省のやる計画というものは、農用地造成である、これに徹していただかなければならない。言うまでもないことだと私は思います。したがって、土地改良法との関係におきましてもぜひひとつ大臣のき然たる態度を堅持していただきたいと思います。  最後に、大臣からこの御答弁をいただいておいて、もう一、二問だけ自治省と国土地理院に伺っておきたいと思います。  転用基準の問題についてですが、農用地開発公団がこれから建設する農用地というものは、どういう基準によってやるのか。転用基準によっては、農用地外のものに転用を認めるが、そうでないものには認めないというような、きびしい基準を設けていただかないと農地法が泣くと思う、その点いかがですか。この中海干拓の例にも見られるようにき然たる態度で……。
  158. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 中海干拓につきましては、数年前に、私がやはり農林省におりますときに、両県知事を呼んで、中へ、むしろ入りまして、おっしゃったように、たいへんもめておったのがまとまりました。そのころ私は、農林省におりましたので、事情をよく知っておりますし、現地も行って見ました。これに対する農林省の態度は、先ほど政府委員からお答えいたしましたとおりでありますが、本来的に農業干拓としてまいったわけでありますので、両県がどういうことをいま御相談なさっておるか、私どもまだ承っておりませんが、これは慎重に対処してまいりたいと、こう思っております。  それからただいまお話のございましたように、せっかく農用地開発事業を、公団をつくって、これから新しくやろうという問題もありますが、そういうものにつきましても、やはり他に転用願いを出される場合には、農地法では、足鹿さんよく御存じのように、転用を許可する基準が厳として定められておりますので、いつもそれに照らしまして農地法を守ってまいりますたてまえは堅持いたしておるわけであります。なお、この問題につきましては十分に慎重に対処いたしたいと思っております。
  159. 足鹿覺

    足鹿覺君 いま、大臣の強い御意思のようでありますから、これ以上申し上げませんが、事実、戦後の緊急開拓によっていま熟田となり、生産力が発揮できるようなところが、片っぱしから企業の仮契約書によって、どんどん買い進みが——鳥取県なんかひどいです。まあ全国的にある。したがって、これは民法七百八条等の検討も十分なさいまして、ひとつきびしい態度をとっていただきたいと思うのです。民法七百八条の問題については私は、おりを見て、今度農振法の審議の際にも申し上げてみたいと思っておりますから、きょうは申し上げません。いずれにいたしましても、農地法で定められておることが実際においては無視されて、企業の買い占めその他が行なわれておるわけでありますので、少なくとも新しく改組、出発しようという農用地開発公団造成したものに対する態度を機会に、一ぺん転用基準の適用等については、地方の知事、市町村長等にも農林省の具体的な姿勢なり方針というものを、あらためて徹底されると同時に、別途きびしい態度を私は御検討になってしかるべきだと思う。それでなければ、もう何のためにわれわれは法案の審議をしておるのかわからないような錯覚におちいると思いますので、その点は重ねてひとつ御配慮を願いたいと思います。  最後に、国土地理院に伺いますが、この中海干拓は、鳥取、島根両県にまたがる事業であったために、着工が非常におくれた。で、古い県境問題に対する資料がたくさんありますけれども、中海の県境について、鳥取、島根両県の県境について新しい動きがありますかどうか。先般、私が国土地理院の専門家を呼びまして聞いたんでありますが、地理院の地図なり海図は権威があるけれども、自分たちはこれを、紛争を解決する機関ではないと、こういう御解釈がありまして、そのとおりだと私思って、きょうは自治省にお越し願っておりますが、地理院のほうで新しい事実ができておるかどうかということが一点。  それから、自治省の行政局のほうで、この鳥取、島根両県における県境問題について、最近、従来からと異なった状況がありますかどうか、伺いたいと思います、
  160. 尾崎幸男

    説明員(尾崎幸男君) 国土地理院の尾崎でございます。先年先生のところにお伺いいたしまして御説明申し上げたのは実は私でございますが、その後、何も変わったことはございません。ごく一番最近の動きといたしましては、先生のところに御説明に参る前ですが、昭和四十八年の一月十三日に、島根県知事から国土地理院長あて境界問題について御質問がございまして、それにつきましては、昭和四十八年七月六日、これは、私が先生のところへ御説明にまいった以前だと思いますが、御返事を出しまして、それ以後何の動きも、何もございません。
  161. 足鹿覺

    足鹿覺君 いまのお話を、お読みになったものを、写しを一ついただきたいのです、あとでけっこうですが。よろしくお願いいたします。
  162. 田中和夫

    説明員(田中和夫君) いまお話の、県境に関係いたします、市町村の境界の争論のことにつきましては、私どものほうに話を聞いておりません。私どものほうに話が出てきておりません。
  163. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは、何も動きがないそうですから、県境問題については従来のとおりと、こういうふうに理解をしておきたいと思います。  最後に、農林省にいただきたいと思いますが、資料を。使用目的の変更をはかった干拓地あるいは緊急開拓関係の資料を、あまり小さなものは何ですが、いただきたいと思いますがいかがですか。
  164. 大山一生

    政府委員大山一生君) 干拓地につきましては、至急に資料を提供さしていただきたいと思います。  緊急開拓のほうはこれは非常にあれでございますので、若干御時間を猶予いただきたいと思いますし、可能な限りにおいて提出さしていただきたいと思います。
  165. 足鹿覺

    足鹿覺君 たいへん長い間失礼いたしました。  この問題は、緊急開拓をやったものが総くずれにならんとし、干拓地も一割程度は、聞くところによれば、使用目的が変更されておる。干拓が、なかなか使用目的が少ないということは、干し上げ干拓でありますからなかなかむずかしい。これを、埋め立て干拓になりますと、直ちにきょう日のことでありますからいろいろな手が伸びてくる、こういう事情があろうと思います。今度の江島新港にしましても、計画変更を受けておいて、その周辺を掘って埋めて、そうしてつくろうという計画で、県議会に予算も請求をしたということも、私も聞いてもおりますし、調べてもいますが、そういう状態であります。私どものところで、緊急開拓で成功いたしましたのは、ことし記念祭がありました、昨年朝日新聞社より優良開拓農協として朝日賞の表彰を受けられた香取開拓団というのがありまして、これはちゃんと大きな成果をあげまして、普通の、在来からの農家よりもずっと成功しておる。こういう事例もございます。  問題は、指導者と、それから農業によって自分たちは立地で営農を続けるのだ、こういうチームワークのとれたところはくずれておりませんが、そうでないところはほとんど総くずれの状態である。しかも、五、六年前ごろから進められたものは、反当三十万円、畑地で。林地で十八万円ぐらい。それをブローカーが転売をしまして、その転売を合法化するために、契約書に、転売をしても文句を言うなという一項を入れて、仮売買契約書で、ことがどんどんどんどん進んでいるのであります。紙幣価値が日に日に目減りをしていく今日にあっては、もう五、六年前にその金をもらった連中は途方に暮れておる。農地を失って山をおりた。しかし自分たちの生活の手段はない、勢い土方人夫にならざるを得ない。こういうあわれな状態が各地で続出しております。  新しく戦後開拓の実態というものを、農林省はもう少し本気でお調べになって、そして、これに対する適切な対策をおとりになるということは、先ほど来申しました草地の問題、いろいろな問題でも私は大きな意義があると思います。十分ひとつ御検討願いたい。  以上で終わります。
  166. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  なお、討論、採決は次回に行ないます。     —————————————
  167. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、漁業災害補償法の一部を改正する法律案漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案沿岸漁場整備開発法案、以上三案を一括して議題といたします。  まず、政府から三案の趣旨説明を聴取いたします。
  168. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 漁業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  昭和三十九年に漁業災害補償法が制定されて以来漁業災害補償制度は、年々その事業規模を拡大し、中小漁業者の漁業再生産の阻害の防止及び漁業経営の安定に寄与してまいりました。しかしながら、本制度につきましては、制度発足以来九年余を経過しておりますことから、この間の技術の進歩等による漁業経営事情の推移及び漁業を取り巻く環境条件の急激な変化に十分即応し得ない面が出てきている等種々の問題が生じてきておる次第であります。  政府におきましては、このような事情にかんがみまして、漁業及び漁業共済に関する学識経験者の意見をも徴して慎重に検討した上で、中小漁業者の共済需要の多様化に対応しつつ漁業災害補償制度をより一そう定着させることを旨として漁獲共済及び養殖共済の仕組み等について所要の改正を行なうこととし、この法律案提出することといたした次第であります。  次にこの法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。  第一に、漁獲共済の仕組みの改善であります。まず、共済契約の締結方式の改善でありまして、本制度がより一そう漁業経営の安定に資することとなるよう採貝・採そう業、小型漁船漁業及び定置漁業等について、いわゆる義務加入の道も開くことといたしております。  また、最近における漁業の経営事情等にかんがみ、てん補水準の引き上げ、てん補方式の選択制の導入等てん補内容の充実をはかることといたしております。  第二に、養殖共済の仕組みの改善であります。最近における漁業者の共済需要に即応して、共済契約の締結要件及び小損害不てん補要件を緩和するほか、異常な赤潮による損害をてん補するための特約を創設することといたしております。なお、この赤潮特約につきましてはその共済掛け金に対する国等の助成措置について定めることといたしております。  第三に、特定養殖共済の試験実施であります。中小漁業者の営む養殖業における経営事情その他の事情の推移に即応する漁業災害補償の制度の確立に資するため、特定の養殖業につき収穫保険方式による特定養殖共済を試験的に実施するのに必要な措置を定めることといたしております。  このほか、所要の規定の整備を行なうことといたしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  次に、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  漁業近代化資金制度は、昭和四十四年に制定された漁業近代化資金助成法に基づき、漁業者等に対する長期低利資金の融通を円滑にするため、漁業協同組合系統資金の活用をはかりつつ運用されておりますが、四十七年度末においてその融資残高はおおよそ七百三十億円にのぼっており、漁業者等の資本装備の高度化及び経営の近代化の推進に大きく寄与しているところであります。  一方、中小漁業融資保証保険制度は、古く昭和二十七年に中小漁業者等の資金の融通の円滑化をはかる制度として創設されたのでありますが、四十七年度末において漁業信用基金協会の債務保証残高の合計額はおおよそ七百八十億円にのぼっており、中小漁業の振興に大きな役割りを果たしてきているところであります。  これら両制度につきましては、制度創設以来、逐次改善をはかってきたところでありますが、最近における漁業者等の資金需要の大口化、多様化等の傾向に即応して漁業者等の資本装備の高度化及び経営の近代化を一そう推進し、あわせて中小漁業の振興をはかるため漁業近代化資金制度及び中小漁業融資保証保険制度について、所要の改善措置を講じて制度の運営に遺憾なきを期することとし、本法律案を提案した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず、漁業近代化資金制度の改善でありますが、これは漁業者等の資本装備の高度化及び経営の近代化を推進するために行なうものであります。  改正の第一点は、資金種類の拡大等の措置であります。すなわち、漁業近代化資金として、成育期間が通常一年以上である水産動植物の種苗の購入または育成に必要な資金を新たに加えることといたしております。また、貸し付けの最高限度額を現行の三倍に引き上げるとともに、貸し付け対象者のうち漁業及び水産加工業を営む法人の範囲を拡大することといたしております。  改正の第二点は、漁業信用基金協会への出資に対する助成措置であります。漁業近代化資金の融通の円滑化をはかるため、都道府県の基金協会への出資で漁業近代化資金にかかるものに対し国庫助成ができることといたしております。  次に、中小漁業融資保証保険制度の改善でありますが、これは、中小漁業の振興をはかるために行なうものであります。  改正の第一点は、漁業信用基金協会の行なう債務保証制度の改善であります。すなわち、基金協会の保証対象資金に生活資金を加える等基金協会の業務範囲を拡大するとともに、その会員資格の範囲を拡大することといたしております。また、基金協会の財務及び会計に関する所要の規定の整備を行なうことといたしております。  改正の第二点は、政府の行なう保障保険制度の改善であります。すなわち、保証保険の対象資金について、漁業経営等の改善に資する生活資金を加える等その範囲を拡大するとともに、借り入れ期間が政令で定める期間以上である借り入れ金については、借り入れ金元本のほか遅延利息以外の利息を含めた額を保険価額とすることといたしております。また、公害防止資金及び災害資金のうち主務大臣の指定するものにつきましては、保証保険にかかるてん補率を一割引き上げることとするほか、保険方式の改善等につき、所要の措置を講ずることといたしております。  改正の第三点は、中央漁業信用基金の設立等であります。改正の第一点及び第二点において申し述べましたように、中小漁業融資保証保険制度につきましては、種々の改善措置を講じ、その拡充強化をはかることといたしておりますが、これらの措置とあわせて同制度の健全かつ円滑な運営に資するため、農林中央金庫が行なう漁業近代化資金等の貸し付けについての融資保険及び漁業信用基金協会に対する資金の貸し付けの業務を行なう中央漁業信用基金の設立等について定めております。  以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  次に、沿岸漁場整備開発法案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  最近におけるわが国漁業を取り巻く環境には、沿岸海域にあっては漁場環境の悪化、沖合・遠洋海域にあっては国際的な規制の強化等きわめてきびしいものがあります。一方、水産物に対する国民需要は、生活水準の向上に伴い、高度化、多様化しつつ増大しており、これに即応した供給体制の確立をはかることがきわめて重要な課題となっております。  このような課題に対処するため、沿岸漁業につきましては、沿岸漁場としての生産力を増進させるための生産基盤の整備開発を推進するとともに、天然の資源のみに依存してきた従来の漁業に加えて、いわゆる栽培漁業を本格的に推進することが必要であると考えております。  このため、沿岸漁場の整備開発の事業を総合的かつ計画的に推進するための沿岸漁場整備開発計画制度を確立するとともに、漁業者みずからが栽培漁業等の推進のため行なう特定水産動物育成事業を推進することとした次第であります。  以上が、この法律案の提案の理由でありますが、次に、その主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、沿岸漁場整備開発計画制度の確立であります。  農林大臣は、魚礁の設置、消波施設の設置、しゅんせつ等の生産基盤の整備開発及び漁場の効用を回復するための堆積物の除去等の沿岸漁場整備開発事業の総合的かつ計画的な実施に資するため、これらの事業の実施の目標及び事業量を定める沿岸漁場整備開発計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないものといたしております。  第二に、特定水産動物育成事業であります。  漁業協同組合または漁業協同組合連合会は、増殖を推進することが適当な特定の水産動物につき都道府県知事の認可を受けて、育成水面の区域において当該水産動物を育成する事業を行なうことができることといたしております。  このほか、沿岸漁場整備開発計画を達成するため国の講ずべき措置、国及び都道府県の栽培漁業の振興の責務等につき所要の規定を設けております。  以上が、この法律案の提案理由及び主要な内容であります。  なにとぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようにお願い申し上げます。
  169. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) なお、三案のうち沿岸漁場整備開発法案は、衆議院において修正されておりますので、この際、衆議院における修正部分の説明を聴取いたします。湊衆議院農林水産委員長代理。
  170. 湊徹郎

    衆議院議員(湊徹郎君) 三案のうち、沿岸漁場整備開発法案に関する衆議院における修正の趣旨を説明いたしたいと思います。  修正は二点ございまして、第一点は第三条、これは農林大臣が「沿岸漁場整備開発計画」の案を作成することになっておりますが、その中に配慮条項がございます。その配慮条項につきまして、第十六条に実は「栽培漁業の振興」に関する規定がございますが、それとの関連を明確にいたしますために、三条の配慮条項の中に、水産動植物の種苗の生産施設の整備、生産技術の開発等、栽培漁業の振興をはかるための条件の整備の動向に配慮して定めるという旨を挿入した点が第一点であります。  第二点は、第六条でありますが、第四項を新たに追加いたしまして、沿岸漁場の整備開発計画は閣議できめることになっておりますが、ただいま農林大臣から説明がありましたように、特定水産動物育成に関して、知事が基本方針を定めることができることになっております。その両者の関連性に着目をいたしまして、国は、特定水産動物育成基本方針の作成に関して必要な助言、または指導を行なうことができることとしたわけであります。ただし、地方自治法との関連もございまして、「都道府県の求めに応じ、」ということを特に入れて修正を行なったわけであります。  以上、二点の修正は、衆議院農林水産委員会において全会一致で行なわれたものであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げたいと思います。
  171. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、三案の補足説明を順次聴取いたします。内村水産庁長官
  172. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 漁業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  第一に、漁獲共済の仕組みの改善であります。  まず、共済契約の締結方式の改善でありまして、現行法上漁獲共済への加入は任意とされているのでありますが、普遍的な加入をはかり本制度を漁業者に広く定着させることにより、本制度がより一そう漁業経営の安定に資することとなるよう、一定の手続に従い多数の同意があった場合には、関係漁業者が漁獲共済に加入する義務を負うこととする道も開くことといたしております。  次に、てん補内容の改善でありますが、共済限度額の算定方法につきまして、最近における生産費その他の漁業経営事情を反映し得るよう改正いたしますとともに、てん補方式につきまして、現行の浅い事故から深い事故まで事故の大きさに応じててん補する方式のほか、浅い事故または深い事故を重点的にてん補する特約を設け、漁業者がその漁業の実態に合致したてん補方式を選択できることといたしております。  第二に、養殖共済の仕組みの改善であります。  まず、共済契約の締結要件の緩和でありますが、現行法上は養殖水産動植物及び養殖施設を一体として共済目的としなければ共済契約を締結できないこととされておりますものを、養殖水産動植物のみを共済目的とする場合であっても共済契約を締結できるようにしようとするものであります。  次に、小損害不てん補要件の緩和でありますが、現行法上は、一定の養殖業につきましては、共済契約者の事故率が一定割合以上であり、かつ、当該漁場全体の事故率が一定割合以上である場合しか損害をてん補しないこととされておりますものを、漁場全体の事故率にかかわりなくてん補できるようにしようとするものであります。  また、異常な赤潮にかかわる特約の創設でありますが、最近頻発しております異常な赤潮につきましては、従来の赤潮とは異なり、かなり広域にわたって漁業者に甚大な被害をもたらしておりますことから、今回これによる損害につきましても、本制度において特約により積極的にてん補してまいろうとするものであります。この赤潮特約につきましてはその共済掛け金に対する国及び地方公共団体の助成措置について定めることといたしております。  第三に、特定養殖共済の試験実施であります。  まず、特定養殖共済の対象とする特定の養殖業は、政令で定めることといたしておりますが、政令ではノリ養殖業とすることを予定しております。  事業の実施につきましては、漁業共済組合及び漁業共済組合連合会が農林大臣の認可を受けて特定養殖共済にかかわる漁業共済事業及び漁業再共済事業を行ない、さらに政府がこれに対する漁業共済保険事業を行なうことといたしております。  次に、事業の内容でありますが、特定養殖共済は、特定の養殖業につき生産金額の減少に関して必要な給付を行なう事業とすることといたしております。  なお、このほか、所要の規定の整備を行なうことといたしております。  以上をもちまして漁業災害補償法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。  次に、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  まず、第一に、漁業近代化資金制度の改善措置について御説明申し上げます。  その一は、漁業近代化資金の資金種類の拡大であります。これは、水産物の安定的供給源として近年重要性を増しつつある養殖業の経営の近代化を推進するため、成育期間が通常一年以上である水産動植物の種苗の購入または育成に必要な資金を漁業近代化資金の対象とすることといたしたものであります。  その二は、貸し付け対象者について、近年の中小漁業における経営規模の拡大、資本装備の高度化の傾向等にかんがみその範囲を拡大することであります。すなわち、貸し付け対象者の資格は、漁業を営む法人につきましては、現行では、常時使用する従業者の数が三百人以下であり、かつ、その使用する漁船の合計総トン数が、原則として千トン以下であるものとなっておりますが、使用する漁船の合計総トン数につきまして、これを三千トン以下に引き上げることといたしております。また、水産加工業を営む法人につきましては、現行では、その常時使用する従業者の数が四十人以下であるものとなっておりますが、これを百人以下に引き上げることといたしております。  その三は、貸し付けの最高限度額の引き上げであります。貸し付け限度額は、制度の創設以来据え置かれておりますが、現行の貸し付け限度では最近の資金需要に十分対応できない場合が見られますので、現行の貸し付け限度額を三倍に引き上げることといたしております。  その四は、漁業近代化資金の融通の円滑化をはかるための漁業信用基金協会への出資に対する助成措置であります。漁業近代化資金の円滑な融通をはかるため、都道府県が漁業信用基金協会に対して漁業近代化資金の保証にかかわる債務の弁済に充てるための基金とすることを条件として出資するのに要する経費の一部を、新たに政府が助成することができることといたしております。  第二に、中小漁業融資保証保険制度の改善措置について御説明申し上げます。  その第一は、漁業信用基金協会の行なう債務保証制度の改善であります。  その一は、基金協会の業務範囲の拡大等であります。すなわち、中小漁業者等の生活に必要な資金を基金協会の保証対象資金に加えるとともに、手形の割り引きにかかわる債務についても基金協会の保証の対象とすることといたしております。  その二は、基金協会の会員資格の拡大であります。すなわち、漁業及び水産加工業を営む法人のうち今回新たに漁業近代化資金の貸し付け対象者とされるものに対しても基金協会の会員資格を与えることとしております。さらに、今回生活資金を基金協会の保証の対象とすることにかんがみ、漁業従事者に対しても基金協会の会員資格を与えることといたしております。  その三は、基金協会の財務及び会計についての改善であります。すなわち、基金協会にその負担する保証債務の弁済に充てるため、出資金、繰り入れ金等を財源とする基金を設けその管理方法を規制する等基金協会の財務及び会計に関する所要の措置を講ずることとしております。  その第二は、政府の行なう保証保険制度の改善であります。  その一は、保証保険の対象資金の拡大であります。すなわち、今回新たに基金協会の保証対象となる生活資金のうち漁業経営等の改善に資するものを保証保険の対象資金に加えることといたしております。また、手形の割り引きにかかわる基金協会の保証についても、保証保険の対象とすることといたしております。  その二は、保証保険にかかわる保険価額の範囲の拡大であります。すなわち、現在保証保険にかかわる保険価額は借り入れ金元本に限られておりますが、これを改め、借り入れ期間が政令で定める期間以上である借り入れ金については、借り入れ金元本のほか遅延利息以外の利息を含めた額とすることといたしております。  その三は、保証保険にかかわるてん補率に関する改善であります。公害防止に必要な資金及び主務大臣が指定する災害にかかわる事業の再建に必要な資金のうち、主務大臣の指定するものにつきましては、当該資金の融通の円滑化をはかるため、保証保険にかかわるてん補率を一割引き上げることといたしております。  その四は、政府と漁業信用基金協会との間の保険契約の方式の改正であります。基金協会の保証の対象となる借り入れ金等の額が政令で定める額未満の保証債務については、基金協会の選択により保険関係が成立する選択保険方式とし、それ以外の保証債務については、基金協会の保証により自動的に保険関係が成立する包括保険方式とすることといたしております。  その第三は、中央漁業信用基金の設立等であります。まず、中央基金の設立については、水産業及び金融について学識経験を有する者十五人以上が発起人となり、主務大臣の認可を受けて、中央基金を設立することができることといたしております。  この中央基金に対しては、政府及び漁業信用基金協会、農林中央金庫その他の政府以外の者がそれぞれ出資を行なうことを予定しておりますが、このうち政府出資につきましては、昭和四十九年度予算に七億九千七百万円を計上しております。その他、中央基金の運営に関する重要事項を審議する機関として評議員会を設置する等中央基金の組織、管理等につきまして所要の措置を講ずることといたしております。  次に、中央基金の業務でありますが、その一は、融資保険の業務であります。これは、農林中央金庫が二県以上にまたがる漁業協同組合連合会等に対して行なう大口の漁業近代化資金等の貸し付けについて保険を行なうものであります。  その二は、漁業信用基金協会に対する資金の貸し付けの業務であります。これは、基金協会の保証能力を拡充するとともに代位弁済を円滑に実施するため、所要資金を基金協会に貸し付けるものであります。  以上をもちまして、この法律案の提案理由の補足説明を終わります。  次に、沿岸漁場整備開発法案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  この法律案は、提案理由の説明にもありましたとおり、沿岸漁場整備開発事業を総合的かつ計画的に推進するための措置を講ずるとともに、水産動物の育成をはかり沿岸漁場としての生産力を増進するための事業を推進することにより、沿岸漁業の基盤たる沿岸漁場の整備及び開発をはかり、もって沿岸漁業の安定的な発展と水産物の供給の増大に寄与することを目的としているものであります。  以下その内容を御説明申し上げます。  第一に、沿岸漁場整備開発計画制度について御説明申し上げます。  農林大臣は、沿岸漁場整備開発事業の総合的かつ計画的な実施に資するため、沿岸漁業等振興審議会及び関係都道府県知事の意見を聞いて沿岸漁場整備開発計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないことといたしております。  この沿岸漁場整備開発事業とは、すぐれた沿岸漁場として形成されるべき相当規模の水面において水産動植物の増殖または養殖を推進するために行なう魚礁の設置、消波施設の設置、しゅんせつ等のいわゆる生産基盤の整備開発の事業と沿岸漁場としての効用の低下している水面においてその効用を回復するために行なう堆積物の除去等のいわゆる沿岸漁場の保全の事業であります、  なお、国は、この計画の達成をはかるため、その実施につき必要な措置を講じなければならないものといたしております。  第二に、特定水産動物育成事業について御説明申し上げます。  その一は、都道府県は、その区域に属する水面における沿岸漁場の生産力の増進に資するため、海区漁業調整委員会の意見を聞いて、増殖を推進することが適当な特定の水産動物の育成に関し基本方針を定めることができることといたしております。  その二は、漁業協同組合または漁業協同組合連合会は、都道府県知事の認可を受けて、特定の水産動物を育成する事業を実施できることといたしております。この認可を受けようとするときは、漁業協同組合等は、当該事業を効率的に実施するために必要とされる水面すなわち育成水面の区域及び当該水面の区域内において組合員が特定水産動物の採捕につき順守すべき事項等を定めた育成水面利用規則を定めて都道府県知事に提出しなければならないことといたしております。  このような手続により都道府県知事の認可を受けた漁業協同組合等は、特定水産動物育成事業を適切に実施するとともに、その組合員に対し必要な指導を行なわなければならないこととしているほか、都道府県知事は当該事業の実施が適切さを欠くに至ったと認めるときは、必要な措置をとるべきことを勧告することができることといたしております。  なお、国及び都道府県は、この特定水産動物育成事業の実施に関し必要な助言、指導その他の援助を行うようつとめなければならないことといたしております。  このほか、国及び都道府県は、これらの事業と水産動植物の種苗の生産施設の整備運営とをあわせて推進することにより、栽培漁業の振興につとめなければならないことといたしております。  なお、水産業協同組合法及び海洋水産資源開発促進法につき所要の改正を行うことといたしております。  以上をもちまして、本法律案についての補足説明を終わります。
  173. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 以上で、三案の趣旨説明及び補足説明の聴取は終わりました。  なお、三案に対する質疑は、後日行なうことにいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十分散会      —————・—————