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1974-02-19 第72回国会 参議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十九日(火曜日)    午前十時九分開会     —————————————    委員異動  二月八日     辞任         補欠選任      鍋島 直紹君    久次米健太郎君      中村 登美君     亀井 善彰君      斎藤 十朗君     河口 陽一君      岩本 政一君     棚辺 四郎君      中村 波男君     杉原 一雄君  二月十三日     辞任         補欠選任      塚田 大願君     渡辺  武君  二月十八日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     塚田 大願君  二月十九日     辞任         補欠選任      佐藤  隆君     鈴木 省吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         初村滝一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高橋雄之助君                 足鹿  覺君                 鶴園 哲夫君     委 員                 佐藤  隆君                 田口長治郎君                 棚辺 四郎君                 温水 三郎君                 堀本 宜実君                 神沢  浄君                 沢田  実君                 塚田 大願君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   山本茂一郎君       農林大臣官房長  大河原太一郎君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省畜産局長  澤邊  守君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        食糧庁長官    三善 信二君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (昭和四十九年度農林省関係施策及び予算に  関する件)     —————————————
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る八日、鍋島直紹君中村登美君、斎藤十朗君、岩本政一君及び中村波男君が委員辞任され、その補欠として久次米健太郎君、亀井善彰君、河口陽一君、棚辺四郎君及び杉原一雄君がそれぞれ委員に選任されました。     —————————————
  3. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 昭和四十九年度農林省関係施策及び予算に関する件を議題といたします。  本件につきましては、前回すでに説明を聴取いたしておりますので、これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣所信表明につきまして、それから同時に行なわれました農林関係予算農林大臣説明、この二つにつきまして三点ほどお伺いをいたしたいと思っております。  第一は大臣所信表明でありますが、この所信表明を読みましても、昨年の一月に行なわれた大臣所信表明とたいへん異なっておりまして、大臣がかわったからという、非常な変わった説明になっております。これは当然だと思うんですけれども、昨年は、第一番目に、農政推進基本という形でありきたりの話でありまして、ただこれを国土総合開発とからめて農政推進基本説明をされている。その次の二番目には、高能率の農業を展開するんだと、こういうのが二番目にきまして、三番目は、米の生産調整中心にして農業生産の再編成だと、こういう形になっておりましてですね、私どもたいへん——それから比べますと、今度のは、まず初めに食糧政策基本というのが出てきまして、その次に国内自給維持向上、三番目に輸入食糧安定確保、こういうまあ形になっておりまして、これたいへん変わったという印象を受けるわけです。しかし、これどうもこの三つが農政基本を示しておるようですが、実際、私はもっと突っ込んでお伺いをしなきゃならない。このように考えておるわけですが、昨年から御承知のように、農業高度経済成長にたいへん痛めつけられて、私は、下敷きになってきたと思うんです。そういう下敷きになった中で日本農業農家農村というものは非常にくずれかかったと、くずれているという状態にきておったと思うんです。そこへもってきて昨年来の国際的な食糧関係食糧の暴騰というようなものもあって、そういう中でこういうような考え方が出てきたもんだと思うんですけれども。  そこでまずお伺いをいたしたいのは、自給率維持向上するという点であります。私は、やはり農政基本というのはこれが一つと、もう一つは、いまこの十数年にわたって急速にくずれてきた農業農村農家というものをどのように立て直していくのかという点、この二つだと思うんです。この一つについては、大臣がまっ先に述べられておりますので、自給率維持向上するというこの点についてお伺いをしたいと思うのです。  これは、もう御承知のように、農業白書によりましても、自給率はこの数十年の間にたいへんな落ち込みをやっているわけでして、三十五年の八九%というふうに白書に出ましてから四十六年の七四%という、十一年間に一五%下がる。食糧自給を実勢で計算いたしますというと、九〇から七二と一八%落ちる、一八%落ちてくるというような異常な状況になっておりますし、さらに生産者ベースでいいますと、よく言われますように、オリジナルカロリーベースで計算をいたしますというと、これも常識でありますけれども、三十五年の七四%から四十六年の三七%、二分の一に落ちるという異常な自給率低下であります。低下の一途をたどっておるわけですけれども、しかも異常な急速な低下を伴っておるわけであります。こういうことが資本主義諸国にないことは御承知のとおりであります。その中で自給率維持向上しようとおっしゃるのですけれども、いま申し上げましたこういう自給率低下について、これを何か変えていこうというお考えなのかどうなのか、これをどのようにしようというふうにお考えになっていらっしゃるのか、その点をまず伺いたいと思います。
  5. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 食糧自給率はできる限り高めていくことが必要なことだと存じております。農林省はそういう目標のもとにすべての施策を進めておるわけでありますが、御存じのように、農林省は、五十七年を目当てに一応の将来の見通しを立て、それの試案について農政審議会等においても御検討願っておる次第でありますが、米につきましては、これはまあ御存じのようでありますが、他のものにつきましても、たとえば御存じのように、最近、国民食生活がだんだん変わってまいりまして、米の需要がここのところやや横ばいのようでありますけれども、大体逐年低減をいたしておる。それに反して野菜、果実、肉類、そういうものの選好が非常に多くなってきております。したがってそういうことに対処するに必要なものの供給を増加していかなければなりません。そこで野菜につきましては御存じのようなやり方をいたして、特に指定産地制等を設けまして、その増産と価格の安定をはかっておるわけでありますが、肉類等生産のために必要なものであるにもかかわらず、国内生産が思うようにいっておりませんたとえば大豆小麦飼料作物等につきましては、これはやはり安定的な輸入量を確保してまいらなければならない。同時に、それと並行して、やはり多角的に供給できるように諸般の施策を講じておるところでありますが、四十九年度予算で、いま申し上げました麦、大豆飼料作物等につきましては、特段の措置を講じて、御審議を願う予算案に計上してあることは御存じのとおりでありますが、そのようにいたしまして、私どもといたしましては、国民の必要欠くべからざる食生活の原料を安定的に供給することに最善の努力をいたしたい、こういうわけであります。
  6. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 すると、大臣のこの所信表明の中のは、国内生産で可能なものについて極力国内でまかなうと、こういう大臣説明なんですけれども、その「可能なもの」というのは、いまおっしゃった野菜とか、肉類とか、麦とか、大豆とかという例でお話しになったわけであります。  そこで、もう少し中身に入って伺いたいのですけれども、この可能なものについては極力国内でまかなうと。で、そのまっ先に出てまいりますのが麦と大豆という形になっておりますね。その麦と大豆について一定期間長期的目標に即して生産振興をはかる、こういう説明なんです。で、一定期間長期目標に即して——この一定期間ということ、それから長期目標に即して、この二つについてですね。と申しますのは、これはなかなか信用しがたいわけです。これは、あとで申し上げますですけれども、大臣もいま自給率維持向上するとお話になりました。それは毎年農林大臣がそういう説明をしておられるわけです。所信表明の中で自給率を下げていくというふうにおっしゃった大臣はいないわけであります。口を開けば自給率維持向上させていくというふうに毎年所信表明でおっしゃっている。で、今度違っておりますのは、麦、大豆等について積極的な生産考え方を出されたということなんです。それも、いま申し上げたように、一定期間長期目標に即して生産奨励していく、こういうのです。これはたいへん必要なことだと思う。長期目標がなければとても農家はやれるものではない。ですから、この点についての説明をいただきたいと思います。
  7. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 麦につきましては、御存じのように、いままで一番の輸出国でありましたアメリカの麦は三万円そこそこで輸入ができましたが、昨今は七万以上、八万円近いところに上昇いたしております。わが国で今度助成いたそうといたします政策では、一俵当たり二千円を支出しようというわけでございますが、それを入れますと、ややアメリカよりはやはり幾らか高くはなりますけれども、あんまり違わない価格になる。  御承知のように、安い小麦食管輸入いたしまして、その差益はいままでかなりございまして、食管赤字を補てんするような形に会計上なっておりましたが、四十九年度予算におきましては、そういう勘定で大体六百億円ほどの赤字を計算せざるを得ないような状態になってきておる次第でございますので、われわれといたしましてはあとう限りの努力をしていただいて、国内生産できるものはまかなうことが大事なことではないかと。で、ことしは大体十八万ヘクタールぐらいを想定いたしまして、いま申し上げましたような助成をいたそう。それからまた草地につきましては、永年作物としてやってくださるものについては、これから新しく拡大いたしてまいるものには七千五百円の助成を出そうというようなことをいたしまして、現に北海道方面などでは、麦につきましてもかなり御協力を願う傾向にあるようであります。で、そのようにいたしまして、わが国自体ができるだけそういうものを適地に拡大していきたい、こういうことを考えているわけであります。
  8. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 一番大切なことは大臣がおっしゃってるように、一定期間長期目標に即して積極的に生産奨励をする、一定長期目標に即してと、これが一番大切なことだと思うんです。ですから、これは一体どういうことなのか、これは農家にとってはたいへん重要な問題であります。ことし限りで終わってもしようがないし、来年限りで終わってもしょうがない。一体目標をどこに置いてらっしゃるのか。長期目標に即してと言うんなら、その長期目標というのは一体何なのか、一定期間というのは一体何なのか。それがはっきりしませんとこれは農家としてはついていけない。せっかくの積極的なお考えですけれども、それでは画竜点睛を欠くもはなはだしいと言わなきゃならぬと思う。そうおっしゃってるんだから、その点を明らかにしていただきたい。
  9. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) これはしばらく続けなければだめだと思っております。その需給動向を見て、その助成その他のことについてはいろいろさらに伸縮もございましょうけれども、この考え方というものはしばらく継続することでなければ成果はあがらないと、このように見ておるわけであります。
  10. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは大臣でなくて局長でもいいんですけれども、その一定期間長期目標に即してと、これはたいへん大切なことだと思うんです。それなくしてはこれは意味ない、私はそう思っております。ですから、局長ことばでいいですが、どういうふうに考えていらっしゃるのか。
  11. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) まず、長期目標でございますが、これにつきましては四十七年に農産物の需要生産目標というのを策定してございまして、その中で麦、大豆につきましても五十七年におきまする生産目標試案が策定されてるわけでございます。したがいまして、それを達成し得るように施策を進めていくということでございまして、したがいまして、そのためには、従来からも麦につきましても、大豆につきましても各般施策を講じてまいったわけでございますが、それだけではなかなかそういった目標を達成しづらいということで、さらに四十九年度は従来と違いまして新しい生産振興奨励補助金というものを打ち出したわけでございまして、したがいまして、これにつきまして、もちろん単年限りということはございませんが、いまの目標達成に必要なことを考えまして、今後、いまの麦、大豆生産状況とかあるいは需給動向生産増加度合い、こういうものを考えまして必要な期間をやってまいりたい。ただ、その場合、どの程度必要か、具体的な時期はまた今後のそういった状況できめてまいりたい、こういう考え方でございます。
  12. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは局長、まあ四十七年の十月に出しました生産目標長期見通しですね、これはまあ当時農林省がおっかなびっくりで出したといってたいへん評判が悪かった面もあったし、また、よう出したといった面もあった。しかし、それは試案だと、農林省試案だという形で出ておるわけです。それを何か長期目標のごとく解していいのかどうかという問題が一つ。それから、やっぱり大切なことは、一定期間ということについては、これをはっきりしないというと、農家立場に立ってみますとこれは容易じゃない。麦は徹底的に痛めつけられてるわけですから、怒濤のように日本列島から追い出されてるわけですからね。もうそれこそ日本列島はなくなってるというぐらいまで追い込められてるわけです。それを積極的に生産しようという、あるいは奨励金を出して、一俵に対して二千円という金出して奨励しようというんですから、これはそこの点を明らかにしないと、もう画竜点睛を欠くもはなはだしい。その点があいまいであるということであれば、これはいまいう自給率をどうだ、こうだということについては、まず第一これは信用ならないというふうに解釈できるのじゃないでしょうか、農民立場に立てばですよ。何のことかわけがわからない。米の生産調整が休耕に対して奨励をした。三年間で終わったわけですが、三年なのか、五年なのか、何年なのかわからない。米ではお出しになったけれども、麦とか大豆とか、そういうものについては出せないというんでは、これはもうどだい決意が非常にあいまいだというふうに言わなきゃならぬですよ。農林省としての考え方はあると思うんですよ。ですから、試案のごときもので、長期目標であるとか、即してとか、あるいは何かそれを達成するあれだとか、あいまいな言い方では、これはとてもじゃないです。せっかくいいことば自給率維持、向上する、国内生産体制を強化するということで、まっ正面にお打ち出しになったけれども、たいへんあいまいだ、非常にあいまいだというふうに言わなければならぬじゃないでしょうか。もちろん財政当局との関係もあると思います。しかしそういうものがあろうとも、その中ではっきりしたものを出しておかれないと、これはもう信用できないですね。ですから、実際、農民が聞いて信用できるというふうにお話を願わないと、あとほどで申し上げますけれども、過去十数年の例があるものですからしつこく申し上げる。これは当然だと思うんです。
  13. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) 重ねてのお答えになるわけでございますが、確かに形式的には試案でございますが、当時あれは関係者で十分いろいろ打ち合わせいたしまして、一つめどとして打ち出しているわけでございます。したがいまして、当面あれをめどにいたしまして進めてまいりたい。その場合、期間が何年ときまっていないじゃないかということでございますが、形式上現段階におきまして何年というようにきめるよりも、むしろこの施策効果等も見まして、そういった試案に示されました目標を達成し得るように検討してまいりたい。したがいまして、現段階形式上何年ときめるよりも、むしろ施策効果と申しますか、今後の生産状況度合いと申しますか、そういうことを考えて具体的な時期は今後考えたほうがむしろ実際ではなかろうかと、こういう考え方でございます。
  14. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 さらにもう少し具体的にお伺いをしたいんですが、私は、四十七年、一昨年の十月ですか、いま局長のおっしゃった農林省試案として出したものをこれはすみやかに、いわゆる農業基本法の八条に基づきますものとして閣議決定をして、そして農民国民に公表する必要があると。これがおくれておるというふうに思います。昨年の三月から検討に入ったという話なんでありますけれども、これはいまの時代に、最もいま必要なときにそれが間に合わない、しかも農民に公表できない。国民に公表できないというのはこれは私は問題だと思うんですね。それはあとほどまた申し上げたいと思います。  具体的にここで申し上げたいのは、麦の中で一番徹底的にいじめられたのは、これは小麦であります。その小麦について若干伺いたいわけです。  いま、農基法に基づきまして三十七年の五月に長期目標閣議決定して、国民農家に対して公表いたしました。さらに四十三年の十一月に同じく農業基本法の八条に基づきまして長期の十カ年計画、十カ年の目標を公表したわけなんです。三十七年のやつですね、それによりますというと、当時六十万ヘクタール小麦があった、それを、十年ですから四十六年に六十三万ヘクタール、少しこうふやす、こういう目標を立てられたわけです。ところが、その目標に達しないうちに、もうすぐ四十三年の十一月には、今度は昭和五十二年に二十六万ヘクタールに大幅に減らすという目標を出しておられるのです。六十三万ヘクタールにふやしていくんだというふうにおっしゃったかと思うと、もうすぐその五、六年あとには今度は二十六万ヘクタール、半分以下に落とすというような長期目標農民に示しておられるわけです。そして、いま局長もおっしゃった四十七年の十月の試案によりますと、これは五十七年に十五万ヘクタールにするというんです。また減らすというんです。そういう目標を示しておられるわけです。  実際それじゃ、いま小麦作付面積が幾らあるか。七万ヘクタールを切っているんです。ことしは若干ふえているという話です。七万ヘクタール切っている。ですから、もうまるでくずれるという段階じゃないですよ。非常な勢いで日本列島から海に追い落とされるわけです。その麦について積極的にやられるというんですけれども、一体これはどうなさるおつもりですか。いま局長のおっしゃった一昨年の試案によりますと、五十七年に十五万ヘクタールにするとおっしゃる。実際はいま七万、八万切っているじゃないですか。七万ヘクタール程度です。もうなくなったと言ってもいいくらいでしょう。これはどうなさるおつもりなんですか。そこの点を伺いたいと思います。
  15. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) 御指摘のように、麦の生産は従来年々大幅に減ってまいったわけでございます。たしか昭和二十五年が戦後のピークでございまして、それ以後年々減ってまいった。特に、三十年に入り、さらに近年に近づくに従って減ってきたことはこれは事実でございます。  そこで、私たちとしますと、なぜ麦がこういうふうに減ったんだろうかということも十分考えなければならない。そうしますと、麦の減った原因、これはいろいろ考えられるのでございますが、何と申しましても、わが国麦作というのは、非常に規模が零細でございまして、したがいまして、収量の不安定なものもございますし、したがって収益性が低いということがございます。さらにかたがた、麦の中の特に水田裏作麦というのは、冬場労働機会というのがございまして、冬場労働機会がふえるに応じまして裏作麦をやめてそっちへ向かっていく、こういうことがまた大きな原因でございますし、さらにまた米との関係がございまして、作期関係、いわば米の作期が早まりまして麦と重複する、こういうこともあります。  そういうふうに麦の減少原因はいろいろあるのでございますが、そこで従来この減少原因というものを十分考えまして、そこで結局いわば生産性の高い麦作を進めていく。そのためには団地的にまとまることが必要であるということで、生産性の高い団地にまとまった、いわば米麦一貫機械体系というものを中心にして麦作振興をはかるということで各般施策を講じてまいったわけでございますが、そうでございますが、従来なかなか現実的にはいま申しました原因がございまして、実際は減っている。しかもそれが加速度しておる。  そういうことを反映いたしまして、過去の生産状況におきましても、いわば結果的には目標を下げるという結果になったわけでございますが、そこでそういった施策のほかに、さらにもっと新しいと申しますか、もっと抜本的な施策を講じなければならぬということで、四十九年におきましては、従来にない手法といたしまして生産奨励補助金という手法を打ち出しまして、それに従いまして、五十七年におきまして小麦の場合は現在の約倍近い十五万ヘクタールということをめどにいたしまして生産を伸ばしていこう、こういった考え方でございます。
  16. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 麦につきましては、いま局長おっしゃったように、もう没落寸前というよりも、なくなる。観光植物みたいな形まできているんじゃないですか、七万ヘクタール、八万ヘクタール台になっておるんですから。それを一昨年の試案によりますと十五万ヘクタール近いということなんですね。そうしますと、これは四十六年の状態に戻そうという、一年、ちょこっと前に戻そうという、そういうことじゃないですか。目標そのものが、十年後の目標そのものが一年前に戻そうということにすぎない。それで私は、積極的に自給体制維持するとか生産を向上さしていくとかいうことに一体なるんだろうか。まあたいへんな大きな過程の中で、ここ十数年にわたったなだれのような崩壊ですから、それを一年前に戻そうと、それもしかもこれから十年かかるんですよ。そういうことで一体大臣国内生産可能なものは極力国内でまかなうという、そういう考え方にどの程度即応しているものか私はたいへん疑問に思うわけなんです。大臣はどうお考えになりますか。
  17. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 麦につきましては、いま政府委員からお答えいたしましたような過程をたどっておるわけでありますが、先ほどちょっと申し上げましたように、外麦が非常に安くて、その圧力を受けた時代と今日ではだいぶ状況も変わってきております。それにわが国農政が米に重点を置いたという傾向もございますし、それから米作の農家よりも一戸当たりの耕地面積というのは、非常に麦作においては少ない。かたがた、一方においては、日本の経済の成長に伴って、そういうそろばんの比較的とれないようなものが逐次他に転向したという傾向もございましょう。そういうことを受けて、私どもといたしましては、いまなるほど計画は、ようやく四十九年度予算で一俵二千円の助成をいたす、その他めんどう見るもろもろのことをいたすにいたしましても、急激にそういうわけにはまいりませんので、逐次拡大をいたしてまいる、こういう考えに立っておるわけであります。しかも、いままた政府委員からもちょっと申し上げましたが、ただいま農林省におきましては、稲と麦とのいろいろ作付の時期が競合いたしておりました、そういうことも麦の減退を来たした一つの大きな原因でもありますので、種についてまた、稲について研究をいたしておりまして、これは交互にやれるようなものをできるだけ早く試作をするようにと、こういうようなこともいたしておりまして、やはり農産物でありますので時間はかかるわけでありますけれども、私が所信の表明でも申し上げておりますように、麦、大豆、飼料作物については、長期的な見地に立ってぜひ増産をしてまいりたい、こういう考えで遂行していくということでございます。
  18. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大豆についてちょっと伺いたいんですけれども、大豆も麦と同じように、三十七年の長期目標で、これは三十四万トンあったものを三分の一減らす、これは四十六年に三分の一減らすというふうになっておりまして、さらに四十三年の十一月に公表したもの、それによりますと、さらにそれを半分にする、八万トンにする、これできているわけです。それで今度四十七年の、一昨年の試案によりますというと、これを今度は突然、十年後には二十四万トンにしたいと、こういうことになっているわけです。  それは、麦の場合でも、それから大豆の場合でもそうなんですけれども、十年後の目標をこう立てていらっしゃる。それ以上に目標を達しているわけですよ。これはたいへんな達し方ですよ、二〇〇%もどんどん減っていくわけですから。あとのものはなかなかいかないんですけれどもね、これは輸入関係でしょうがね。それで大豆長期目標に即して一定期間増産なさるというんですけれども、これは容易じゃないですからね。これはどうですか局長長期目標に即してというのは、やっぱり四十七年に出したのは——現在は六万トンぐらいになっていますね、六万トンぐらいになっているでしょう、生産量が。それを四倍になさるというわけですか、五十七年に。そういうことで施策を進めていきたいということですか。
  19. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) 御指摘のように、従来におきましては、大豆も先ほどの麦と同様に年々非常に減退をしたわけでございます。これもその原因考えてまいりますと、基本的には何と申しましても、零細性ということが一番基本にございまして、先ほどの麦の場合でございますと全国平均で約二十アールないし三十アールということでございますが、大豆の場合には、北海道等を別にいたしますと規模はさらに一けた小さくて、二ないし三アール程度のものでございます。御案内のように、大豆というのは労働時間が少のうございまして、したがいまして、逆に申しますと広い面積を要する作物というのが本来の性質でございますもんでございますから、なかなかそういった零細規模では生産が伸びないということであるわけでございます。まあ、それでも従来は、そういった規模の中で、畑の場合には畑作のローテーションの一環ということで入っておりましたし、さらにまた自給用もございましたもんですから、かなりの生産があったわけでございますが、全体の農業をめぐる情勢の変貌の中でだんだん減ってまいったと。何と申しましても、規模は零細でその結果収量も低うございますから収益が低い。それから自給用も減ってまいる。まあこういうこともございまして、現に減ってまいったわけでございます。  そうでございますが、そこで従来は、何としましても、これもやはり団地としてのまとまりをもってそこで生産性を上げていかなければならぬ、反収も上げていかなければならぬということで施策を講じてまいったわけでございますが、なかなか思うにまかせず、結果的にはあのように減少してまいった。そこで、先々の目標考えますと、御案内のように、大豆需要はいわば食用としての需要とそれから油原料としての需要がございまして、量的には油脂原料の需要量がずっと多いわけでございますが、国産大豆というのは食用には向いている。たとえばとうふ、納豆あるいは煮豆、こういった食用にはたん白の面から向いている。油用には必ずしも向かないということで、全体の大豆の中でそういった国産大豆の向いている食用大豆、これを八割程度は自給いたそうということで、一昨年の試案におきまして目標を策定したわけでございますが、これを達成するためには、面積をふやすこと、反収を上げること、両方が必要でございますが、特に反収の場合は従来二俵ちょっとで非常に反収が低いわけでございまして、これを反収をもっと上げることは可能性はある。反収を上げること、かたがた面積をふやしてまいると9従来やっておったところもあるわけでございますから、もう一度面積の増加をはかる。両々相まって、いま申しました国産大豆のほうが品質的に向いているたん白用としての大豆、その八割程度を自給いたしたいということで、目標を策定いたしまして、それを達成いたしますためには従来の手法だけではなかなかむずかしゅうございますから、これも麦と同様に生産奨励補助金という新しい手法を打ち出しましてこの目標達成努力してまいる、こういうふうにいたしているわけでございます。
  20. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 畜産の問題について同じように伺いたいんですが、畜産の中で一番問題はやはり肉牛と乳牛、この大家畜だと思うのですね。これはもう御承知のとおりですが、この大家畜について、まあ肉牛ですけれどもね、これはもうどだい話にならない状態にきているわけですね。前々から、肉牛についても乳牛につきましても、もう三十六年、三十七、八年ごろから、二百万頭に達するというのは夢の夢だというふうにいわれておったわけですね。これはもう手も足も出ないと。実際畜産関係の人たちは、二百万頭、いまの政策の中で二百万頭をこすなんというのは夢のまた夢だというふうに言われてきたのですね。酪農も、御承知のように乳牛についても百八十万頭——四十六年をピークにして百八十万頭からだんだん減ってきているんですね。いままた昨今さらに減りつつあるんじゃないか。肉牛についてもこれはかってはこれは二百三十万頭、二百四十万頭あったんです。しかし、これも減ってまいりまして、いまやこれはもう百八十万頭を割っているという状態ですね。しかも肉牛はこの五年間動いてないです。しかも減ってきているんですね。百八十万頭をピーターにして、五年間、同じように百八十万頭。そしてそれは減ってきている、こういう実情ですね。それは今後は長期目標に即してということになるのでしょうけれども、その長期目標によりますと、これがまた二倍にふくらまそうというのですよ。大家畜をですよ。いまの状況の中で、いまの予算の構成から見まして、そういう一体証拠がどこにあるのか、私はどう見てもこれは合点がいかないです。この試案によりますといま百八十万頭、それを三百三十五万頭にしたいと、ちょっと二倍近いです。——二百万頭をこすのは夢のまた夢だと言われてきているのです。何のことですか、これ。二百万頭どうしても取るというが、突破できない。百八十万頭が突破できない。この二つについてもほんとうにそう考えていらっしゃるのか。長期目標に即してこれは二倍近くする。乳牛につきましてもこれは三百八万頭にするという、したいという長期目標ですね。これはちょっと伺いたいですね。夢のまた夢だとみんな言っているので、よっぽど何かしなきゃですね、これ伺いたいですね。
  21. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 大家畜につきまして乳用牛——乳牛並びに肉用牛につきまして、最近生産の飼養頭数の伸びが停滞しておるという点は御指摘のとおりでございますが、その意味では五十七年度先生の御指摘がございましたような生産目標を達成するためには、相当な努力を要するというようにわれわれは考えております。  ただ、肉用牛について申し上げますと、世界的にも肉用牛資源があまり伸びないにもかかわらず、畜産物の中で先進国はもちろんのことでございますが、いわゆる中進国なりあるいは発展途上国につきましても、今後所得の向上とともに一番需要の伸びる畜産物であるというように一般に言われておるわけでございまして、わが国の場合におきましても、今後、牛肉の消費が畜産物の中でも非常に高いというふうにわれわれも考えておるわけでございまして、そうなりますと、国際的にもかなり需給はタイトで推移する。しかも世界的に、特にわが国の場合の牛肉消費の伸びが大きいということでありますれば、何としても海外に依存するばかりじゃなくして、国内におきましても肉用牛資源を維持、培養し、さらに発展させるということのために非常にいろいろ問題がございますけれども、極力努力をしたいというふうに考えておるわけでございます。その際、肉用牛、いわゆる和牛という専用種のほかに、最近は乳用牛の雄牛を育成肥育をいたしまして、肉用として利用するという技術が最近急速に伸びてまいっておりますので、これの利用率、肥育牛としての利用率を高めることによりまして、牛肉の供給源として拡大をしていきたいということ、さらに乳牛の飼養頭数もふやす努力をいたしておりますので、それに伴いまして廃牛を肥育いたしまして、肉用牛として活用するというようなことも、あわせて牛肉全体の生産をふやしたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。  ただ、これまでの経過を見まして、御指摘のように従来のような零細規模で頭数をふやすということは、特に専用種の場合いろいろ困難な事情があるわけでございますが、肉用牛の主産地を形成をいたしまして、繁殖牛と、肥育牛の地域一貫経営を進める。その場合、てきるだけ草資源——野草を含めた草資源を活用していくというようなことによりまして、ぜひ目的を達成したいというように考えておるわけでございます。まあ国際的にも価格が非常に上がっておりますし、今後も急速に下がるというよりは、むしろタイトで上向きで推移するというように考えられますので、もちろん輸入に依存しなければならない部面もかなりあると思いますけれども、国内資源をできるだけ活用して生産をふやしていきたい。こういうように考えておるわけでございます。
  22. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この肉牛につきましては、すでに農林省も発表いたしておりますように、まあ繁殖について不可欠な二歳以上の雌牛ですね、これがうんと減ってきているでしょう。これが雌牛をつぶしてきているから、農林省発表しておるように、四十五年に七十九万頭おった、それが、四十八年には五十八万頭に減っている。これはもう雌牛を殺しているからですよ。だから、百八十万台というものが五年動いてない、減ってきている。雌牛まで殺しているというところに、これが百八十万台からどう脱却するかというのが最大の目標でしょう。何年かかるとお考えですか。それを二倍近くふくらますと言ったって、これはだれも信用しないですよ。  またそれは別にいたしまして、私はもう一つこれは局長に言っておきたいんですけれども、肉類自給率というのは農林省で八八%というように発表しておりますね。しかし、これは実際は三〇%だと皆言っているですよ。だから、これはそういう意味で、もっと正確なほんとうの数字も出してもらいたいと思うのですね。八八%というのも一つのこれは数字では数字ですよ。しかし、この濃厚飼料の観点から言って、輸入飼料の観点から言ってですね、三〇%だということも農林省でも言っているでしょう。自給率三〇%だとこう言っている。濃厚飼料はだから四〇%自給率だと、こう言うけれども、実際農林省では、いや、それはその輸入した小麦からのふすま、あるいは大豆輸入した大豆かす、これは国内生産というふうに見ているから、そんなものを含めれば一五%だということを言っているのですよ。非常な事態ですよ。そういう点を明らかにして、積極的にだから肉牛はやらにゃいかぬのだと、あるいは乳牛もやらにやいかぬのだという、そういう国民の合意を得にやいかぬですよ。八八%自給率だと、あるいは濃厚飼料が四〇%ぐらい自給率だとかいうような話では、これは国民の合意なんか得っこないですよ。まあそれは別にします。  それだけ申し上げてですね、次に私は、どうもいま申し上げたように、自給率維持向上させる、それから国内においてまかなえるものについては一定期間長期目標に即して自給率を高めるために一生懸命やるのだと言うが、どうもその証拠が上がってこない。まあ言うなら、麦と大豆について飼料作物について二千円、二千五百円、七千五百円という金が出ておりますから、一つの証拠にはなります。一つの証拠にはなりますが、どうもこの自給率が非常に私は、国内のものを増産しようという考え方については非常に弱いものだというように思うのですね。で、まあこの十数年にわたって、高度経済成長の中で日本農政といいますか、日本農業といいますか、がさんざん踏みつけられてきたし、いいかげんばかにされてきた。さんざんばかにされてきたと私は思うのです。また、こういうことを言う人がいるんですけどもね、私は当たっているように思うんです。まあ農政というんですか、あるいは農林省というんですか、とにかくこの十数年けたぐられてきたと。石ガメみたいなもので、とにかく手も足も首も引っ込めてじっとしておった。昨年からもう国際情勢や何やかやといって、少しその首を出した。首を出したが、一体その首を出して何を見ているんだと、そう言うんです。そして、首を出したが、動くのか。まあ手もちょっと前足は少し出したような感じがするといいますけれども、私も、そういう状況にいま農政というのはあるんじゃないかと思うんです。じゃあ何を見ているんだと。それはもう農産物の価格の問題もありましょうし、あるいは世界の穀物の状況もありましょうし、これは何よりも高度経済成長の中における農業の地位というものをじっと見ているんですよ。しかし、いま私は首を出して歩かなければならぬときだと思うんですけれども、どうも歩きそうにない。首を出しただけだという感じがしてしようがない。  そこで大臣にお尋ねしたいんですが、大臣は、先ほど私が申し上げましたように、国民食糧安定確保だと、まずこれが第一だと。その次には、国内自給体制生産体制を強化していくんだと。その次には、輸入農産物の安定確保だと、この三つ。これはもうそのとおりだと思うんです。いま食糧を安定供給するというのが、最大のこれは国民の願いだと思うんです。農政のまた最大の課題だと思うんです。その三つおあげになっていらっしゃるこの中の中心は、国内生産をどうするかということと、輸入食糧の問題だと思うんです。ところが、国内生産については、私は、先ほど来申し上げておるように、たいへんあいまいで、食糧輸入確保については非常に積極的だと私は思いますね。そうしますと、これは食糧の安定供給、そのためには国内自給あるいは生産体制を強化していく、さらに輸入食糧安定確保するとおっしゃるけれども、この後者のほうに、輸入食糧という方向に非常に大きなウエートがかかっている。これまたたいへん安易な道であります。それはいままでそれでやってきたわけですから、輸入食糧一本にたよってきたわけですから、といっても過言ではないでしょう。ですから、輸入確保の中に、大臣は、食糧安定確保の問題を非常に重点を置いていらっしゃるんじゃないか。自給体制とか、あるいはその維持向上していくというような問題については、まあ国民のたいへんな願いがありますから、それに対して数字をお並べになったという程度の印象しか私は受けないんですが、その点について、大臣考えはどうなのか、伺いたいと思います。
  23. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 輸入につきましては、これはいろいろいままでの世界全体の情勢の中で、われわれが生存していくために、もちろん需要、供給の関係で、ある部分は輸入にたよらざるを得ない。しかし、いままで私どもが、いま鶴園さんのおっしゃいましたように、安易にそういう道を選んで、自給度向上のためにあまり力を入れなかったというお話でありますが、これは御存じのように、大体いままでは、中心を米に置きましたので、ややそういうふうに見える面もあるかもしれませんが、今日の情勢では、私どもはやっぱり米は稲作転換対策をなお引き続いてやってまいるような状態でありますが、今年から休耕奨励金はなくなりました。したがって、そういう方面に向かって必要な作物の増産をやってもらいたいと、こういう考えで、先ほど来お話しのありましたような飼料作物等についての助成策を講じまして、それらの方面の生産を増大していくことに全力をあげておる。  やっぱり日本の経済全体から考えてみますというと、いままで、一面において経済成長が行なわれた。農村からもかなり労働力が出ておりますが、それにもかかわらず、わが国全体の経済がこうやって安定して伸びてまいりましたことによりまして、私どもといたしましては、いままではバランスのとれた生活ができました。しかし、全体から考えてみますというと、世界的に見てやっぱり食糧については、政府においては慎重に考慮し、その対策を慎重にやっていかなければならない時局であることは、御存じのとおりであります。そういう情勢の中に立って、われわれは農政をどう展開すべきであるかということで、私ども農林省の責任を痛感いたしておるわけであります。  したがって、そういういまのような世界情勢の中に立って、わが国の一億の国民の必要欠くべからざる食糧を提供するために、諸般の計画をいたしておると、こういうわけでありますが、五十七年をめどにいたしました一応の試案につきましても、着々そういうこまかなデータの上に立って、一応の目標を立案いたしまして、それに向かって進んでまいるということでありますので、輸入に重点を置くということではありませんで、できるだけ国内でできるものは国内生産を増大してまいりたい。なおかつ、それでも必要な面が、輸入に待たなければならないものがありますので、その多角的な輸入先を確保してまいりたい、こういうような考え方でやっておるわけでありまして、必要であっても国内でできるもの、これはひとつできるだけ自給度を高めたい。ことに冒頭にも申し上げましたように、いま輸入飼料作物といいましても、これはもう価格においてとんとんになってまいっておりますので、われわれはかなりの助成策を講じましても、これを増強してまいるということが、安定的供給に非常に価値があることではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  24. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は農基法というのができましてから、同時に大豆やなたね等が自由化される、麦類については事実上自由化と同じような形、さらに畜産関係については輸入穀物の上に加工場みたいにつくろうという形、それが日本高度経済成長政策にとって必要であった。重化学工業中心の高度成長政策にとっては必要であったというふうに思うんですよ。しかし、そのためにこれは奔流のように日本国内には穀類が輸入されてきました。そうして最後には怒濤のように日本列島の中に入ってきた。その渦巻きの中で農政というのはもがいたと思うんです。もがいてきたのが農政じゃないかと思う。農基法というのが所得均衡だという目標を掲げました。農政目標はそこにあるんだ、所得均衡だと。しかし、実際はこれはもう表に掲げている看板であって、実際は十年たってみれば、輸入政策というのがこれは農政の本流であったというふうに言わなければならぬのじゃないでしょうか。そのことが日本高度経済成長との裏返しの形で、これは存在し得たと私は思っております。ですから、その輸入政策というのは、農政の主流であって中心であったんだ。いままでは、農政の中に、輸入安定確保なんというのは、ちょっびっとしか出ていないでしょう、ちょびっとしか。実際は農業という目で見た場合には、これは圧倒的な大きな力を、厚みを加えているわけです。いまそういう中で外国の食糧が高くなった ——金があってもなかなか買えない、しかも、たいへん高くなっちゃって、国内の農産物と変わらなくなった。そして何となくここで高度経済成長も安定成長というような形のものが言われるような雰囲気も出てきたという中でありますから、私はこれは自給体制を確立していくんだというそれをもっと積極的に出すべきだというふうに思うんですけれども、どうもそのように見えない。  たとえば、私は先ほど申し上げましたですけれども、せっかくここで転換しようという、その首を出したところなんですが、カメさんが、首を出したんだけれども、長期目標というものは、これははっきりしていない、まだ試案であると。これはまあしょうがないと思うんです、これ。  そこで、この四十七年の十月に出た、農林省試案として出た長期目標、これは昨年の春から農政審議会で検討されておるそうです。で、ことしの三月末までに、若干おくれるかもしれぬけれども、ひとつ発揮させたいと、きめたいということだと思うんですけれども、これは農業基本法の八条による、農民に対し国民に対して公表するものとしてお出しになる考えなのか。もう一つは、これは一体どういうような諮問案を出していらっしゃるのか。先ほど言った四十七年の十月の試案というのが諮問案になっているのか、そこらについてちょっとお伺いいたします。
  25. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 試案という出し方でも、やはり先ほど来申し上げておりますように、農林省目標でございますが、いろいろその中について、ただいまお話しのような御意見もありますので、やはり農政審議会に御審議を願って、十分にそこで検討していただいて、決定する案が出ますならば、それをわれわれの決定いたしました目標として一般にお示しをいたしたいと、このように考えております。
  26. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃ、農業基本法に基づく公表という形になさるんですか、それは。
  27. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) そのように取り計らうつもりでございます。
  28. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ですが、これは私が先ほど申し上げましたように、三十七年にも第一回のものが出ている、四十三年にも第二回目のが出ている。今回は第三回目になるわけです。第一回、第二回のものがいかに妙ちくりんなものであったかということを、私、さっき例をとって申し上げた。全然これは信用ならないものです。これはとんでもないものだと。今度はとんでもないものじゃなくて、信頼の置けるものにしようとおっしゃるけれども、これはなかなか信頼しないと思うんですよ、いままでの経緯がありますから。私は、法制的に考える必要があるんじゃないかと、構成を法律的に明らかにする必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども。いま、これからの問題を考えてみて、食糧を安定供給するということは、これは最大の課題なんだから、だから所得均衡だというような話もいいです、けっこうです。ですが、法律を改正をして——これは食糧安定供給なんだと、自立体制というものを固めていくんだというように、法律を改正するという態勢までおつくりにならないと信用しにくいですね、それでも若干信用しにくいです、これは。所得均衡なんというのは、うわのそらの話になっちゃったんですから。輸入政策でごたごたになっちゃった。できないですけれども、少なくとも法律を改正する、そして自給体制というものを、食糧の安定供給を出すということをお考えにならないと、どうにもこれは話にならないと私は思います。  たとえば、まあ、農業というのは一生懸命やるんだというお話しですけれども、自給体制をどうだこうだとおっしゃるけれども、それじゃ生産性を高める最も必要な生産基盤の問題について、一般公共事業とはこんなに違うのだと、農業についてはやるんだというような姿勢でもあれば、まだ信頼できる面もある。そこは一般公共事業と同じだと、これもゼロだと、伸び率ゼロだというような話では、これは、一体、生産体制をつくろうというような感じは受け取れないんです。証拠はないと、ただ二千円だけだと、しかもその二千円を出して、それも期間はどれだけだかわからないんですよ。それだけで麦が栄えていくのかと。全然これは信用できないんですよ。そこら辺についての大臣のお考えはどうですか、伺っておきたいと思います。
  29. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私どもは先ほど来申し上げておりますように、国民食糧安定確保のためには、一番力を入れておりますのは基盤整備でございます。いま、基盤整備のお話しございましたけれども、目標を立てました、その目標に基づいての、基盤整備をはじめその他の施策を講じてまいるわけでありますが、そういうことで、農政審議会でも、鋭意、いろいろ検討していていただくようでありますが、その結論が出まするならば、いま申し上げましたように、政府の方針として決定をいたして、進めてまいりたいと。しかし、法律でございますが、農業基本法はいまから十三年ぐらい前になりますか、これはまあ私ども国会においてもだいぶ長い間審議をいたしまして通過せしめた法律でございます。法律というようなものは、やっぱり時世の変化に従って、ときどきギャップがある場合もあるかもしれませんが、私ども農業基本法を通読いたしてみまして、これはたいへんうまくできている法律だと思っております。ことに文章が非常にいい。いつも私は農業基本法の前文を読むと、なかなかうまいことを言っておられるなと思うんでありますが、いま、私どもがねらっております生産性の向上をして、そうして農産物の生産増大をはかるということをまず法律はうたっております。これはいまの時世に即しまして少しも違っておりません。生産性を向上して、生産の増大をはかると、こういう目標に従って私どもは農政を進めてまいっておるわけでありまして、ただいまのところ、基本法について、特にこれを改正するというふうな意思は政府側にはございません。
  30. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、農業基本法中心眼目というのは所得均衡政策にあったわけですよ。その中に生産政策生産性というものが出てくる、あるいは価格政策というものが出くる。中心は、これは言うまでもなく所得均衡にあった。十三年たってみて、これからの農政の最大の課題というものは、これは、これはもう言うまでもなく、大臣がおっしゃるように、これは食糧安定確保ですよ、国民もそう思っている。農政もしかるべきです、あたりまえの話です。その中で輸入の確保の問題もあります。国内における自給体制の問題もある。そういう自給体制というか、そういうものをはっきり法律にうたうという決意がなくて、大臣所信表明で、これでこれをやるんだというのじゃ、これはどうも信用ならぬということになるし、基盤整備の問題にいたしましても、重要視しているとおっしゃるけれども、これは別だと。農業は今度は自給体制を何とかしてやりたいと思っている、それには三割増しだと、その程度の証拠があるなら、これは信頼もしますよ。一般並みだと、何事も変わったものはない。言うなら小麦と麦、あれに出たけれども、これもただ休閑をやめたから、その金を少し持ってきただけの話です。何にも私はないと思うんです。法律も改正しない、所信表明でと言うのじゃ、これはあくまでも、いままできた輸入政策の上に乗っかっておるたけの話であって、全然これは私は——全然と言っては語弊があるかもしれませんが、どうも大臣のおっしゃる所信表明というのは信頼できにくいというふうに言わなきゃならぬのじゃないですか。そこのところは、それぐらいの決意したらいいじゃないですか。いまね、そういう状況があるんですよ、カメさえ、石ガメさえ首出したんですから——首出したんですよ。だから、もっとこの際はっきりすべきじゃないですか。どうも大臣あいまいですよ。せっかく倉石さん四度目の大臣だと言うのだけれども、これではどうも話にならぬ。この際やるべきですよ。どうですか。
  31. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) たいへん農政を激励していただいて、私ども一同感謝にたえない次第でございますけれども、四十九年度予算で基盤整備費の伸びが少ないという、そういう点の御指摘と思いますが、御存じのようにただいま客観的情勢は、やはり物価を安定し、インフレムードを抑制して、国民経済を安定させるということに、四十九年度予算編成の最大眼目を置きましたので、公共につきましては極度に押えております。このことは御理解いただけることだと思うんでありますが、基盤整備のような公共——御存じのように、四十八年を初年度として十カ年長期計画で十三兆円計上しているわけでありますが、これを実施いたしてまいりますには、その時々の情勢に応じて若干の伸び縮みはあると思います。弾力的に施行してまいらなければなりませんが、したがって、長期の計画はぜひ完成していきたい、こう思っているわけでありますが、しかもなお昨年度の予算に比べて——本年の予算面に計上してあります金額はたしか四十億円ぐらいは増加されておると思いますが、食管の繰り入れの五千八百五十億円といまの基盤整備の公共事業を、全体の農林省予算一兆八千億ほどの中から差し引きましたすべての農政費を前年対比で調べてみますと、三二・一%増であります。今日のような抑制型の予算を編成して、各省で新規事業を極力押えておるような次第であるにもかかわらず、前年対比農政費は三二%増ということは、いかに政府に非常な重点を置いておるかということを御理解いただけると思うんであります。したがって、私どもといたしましては、この際、政府の考えもそうであり、一般国民大衆に憂えなからしめる、安心をしていただきたいという食糧生産については、計画的に着々進めてまいる自信を持ってこの予算を運営していこうと、こういう次第でございます。
  32. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、この高度経済成長の中で最も痛めつけられたのはやっぱり社会保障関係農業だと思うんです。それともう一つは生活環境だと思う。だから、その社会保障が三〇何%伸びた、農業の基盤整備、これは農業生産力を高める基盤、これが三〇何%ふえた、あるいは公共事業の中の生活関係の公共事業は伸びている、二割、三割伸びている。その程度のものがあるならば、これはまだ信用しますけれども、これはとても公共事業は一般並みだと、やれ総需要抑制だと、それだと農業はここでまた同じようにいじめつけられている。そういう意味では、私は非常に不満な、全然信頼できにくいお話だと思っております。  さらにもう一つ、私は、もう一つの問題は、試験研究機関だと思うんです。一体ほんとうにおやりになるつもりなら、これはいまの米中心生産試験研究機関というものをぐっとやっぱり変えなきゃいけないし、それから予算関係についても考えなきゃならぬと思う。そういう点についての配慮が非常に不十分なんですね。  これも一昨年、国際化に対応した農業問題懇談会が田中総理に対しまして提言をしております。で、あの中に、日本農業試験研究機関というのは、他産業に比べて、あるいは民間の企業に比べて、あるいはその他の産業の研究機関に比べて驚くほど低いと、こう言っております、驚くほど低い。だから、これはあとで、きょうは別にいたしまして、もっと具体的に数字をあげてこの点をはっきりさしていきたいと思う。これじゃどうにもならない。前は輸入政策に頼っておったものですから、細々とやってきたんだと思うんですけれども、これではどうにもいけないという感じを私は持っております。これだけにとどめておきます。  それからもう一つ。これは私はきょうはちょっと事前に連絡を申し上げてなかったんですけれども、三十万町歩の田中さんの問題ですね。これはあらためて大臣の見解もお聞きしたいと思うんですけれども、ただもう一つは、ことしの一月、この間発表いたしましたあれ——これは調査いたしましたのは昨年の十月ですね。十月に調査いたしまして、それでことしに発表いたしました四十九年度の水田利用の農家意識調査というのがありますですね。で、これが田中さんの三十万ヘクタールにたいへん関係があるというふうに世論は見ておるわけです、世評はそう見ておるわけです。  で、これを見ますと、確かに休耕は四十八年度で打ち切る。約二十八万ヘクタール程度の休耕があったわけですが、したがってこれが三十万ヘクタールと非常に関係があるというふうに見られておったわけですね。これについて結論が、あの調査を見ますと、二万ヘクタール程度転用しようというのがある。元に戻そうというのが五割ちょっとこす。つまり水田にしようというのが五割ちょっとこす。それから転作をしようというものが一割ぐらい。まあ三割程度がそのままになっている。しかし、近い将来にこれをまたたんぼとして復活したいという数字も出ておりまして、最後に転用したいというふうに考えているのが二万ヘクタールぐらいだという数字が出ています。ですから、二十八万ヘクタール程度あった休耕をここで補助金を打ち切ったが、その休耕というのは一体どうなるんだろう。三十万町歩と関係が非常にあるのじゃないかというふうに見られておったわけですけれども、そういうふうな数字が出ている。この点について若干伺おうと思ったのですけれども、連絡をしてありませんで、この点は省略をいたします。  ただ、ここで伺っておきたいのは、市街化区域と調整区域と、それ以外とで、一体農地を買い占められたというのはどの程度数字があるのか、農林省としては握っておられるかどうか。かってはこんなものはがっちり握っておったものですけれども、いまそういうものはないのじゃないかな、農林省は。どれだけ買い占められているのかという点についての数字があるのかどうか伺いたいと思います。
  33. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げます。  本件につきましては、政府全体でも投機的な土地取得その他についての全面的な調査を早急に現在進めておるわけでございますが、私どものほうといたしましても、仮登記その他の形の取得でございますので、実態、マクロとしての数字を公式の場で申し上げることがなかなか困難な状態にあるわけでございます。で、局地的な一農政局単位等の数字等については、かってやった例がございまして、必要でございますれば、お手元に資料を差し上げなければならないわけでございますが、われわれの現在国全体として農地がいかにという点については、資料をまだ確定のものとしてお出しできる段階にないのは残念でございます。
  34. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは農地については、農業委員会があって、そして町村ごとにまた農業委員会があって、きちっと握っておるはずだと思う。それができないというなら、これはもうお話にならぬわけです。最も重要な土地についてどういう状況になっているか、仮登記であれ何であれ、その程度のものははっきりつかめるはずだと思うのです。ですから、そういう数字があるなら——どうもないような感じがしてしょうがないのですが、あるならそれを土台にして論議をしたいと思います。ですが、なければ、大臣、これは調査なさる必要があると思うのですけれどもね。農業の土地の状況がどうなっているかわからぬというのじゃ話になりませんですからね。農業委員会というのがありまして、きちっと握っておるはずだ。全部ここは許可しているのです。仮登記であれ何だろうが、そんなものは全部わかっているはずです。  いや、それはひとつそれにいたしまして、あと価格の問題について伺いたいのです。時間もだんだん迫ってまいりましたので簡単にお伺いをしたいのですけれども、いま非常に大きな問題になっておりますのは、戦後最悪の危機だ、最悪の事態だというふうにいわれる酪農、畜産関係ですね。この点について、えさがこの一年の間に九〇%近くかかる、さらに四月はもう一回上げなければならない、こういう状況はすでに見通されている。そういう中で一体どうなさるおつもりなのか。私は、いましわが全部畜産農家にきていると思う。農家はこれは製造工業と違って、原料が上がったからということで価格を上積みすることはできない。全部そのしわがそこへ寄っている——それてまあ少なくとも農産物だけでも安くという国民のまた期待がある。そういう非常にしわが寄っているのですよ。一身にその犠性を受けていると思うんです。幸いにして農産物の中の七割は農林省価格について取り扱っていらっしゃるということになっているわけです。で、三月の末には豚肉の問題について、加工原料乳の問題について政府が価格をおきめになるという状況なんですけれども、これはすみやかに私はこの農家の犠性を取り払う、畜産農家は安心して経営ができるということにしないと、直ちにこれは消費者にはね返ってくる問題なんですね。どういうふうに考えていらっしゃるのか。しかも私は一年に一回という、このたいへんな激動期に一年に一回三月末だというようなことで、えさが上がっていることは昨年から御承知、二月に上がることももう昨年からはっきりしておった。それを三月末だということでのんびりしていらっしゃるのはどうも私は理解つかないですね。どういうふうに考えていらっしゃるのかお伺いをしたいと思うんです。それだけまずお伺いいたします。
  35. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 今回の二月からの配合飼料価格の値上がりにつきましては、各メーカーごとに畜種別の生産割合等が違いますので、また種類、銘柄も非常に多様でございますので、画一的には申し上げられないわけでございますが、平均的に申し上げれば、 トン当り工場出し値で約一万一千円から約一万二千円、ものによっては一万二千円以上のものもございますが、平均的に見ますとおおむねその範囲内の値上げが行なわれたというように見ております。今回の配合飼料価格の値上げは、主として海上運賃の値上がりの問題、それから石油危機等によります、そういうこともございました。昨年末以来の円安という問題、それらに関連いたしまして国内の輸送費、包装資材費というようなものが主要な原因でございまして、いわば他の商品、他の物資と共通します国際的と申しますか、あるいは一般的な要因に基づく値上げであったというように見ております。われわれといたしましては極力値上げ幅を圧縮すると同時に、実施の時期を延期するように指導いたしたわけでございますが、ただいま申し上げましたような要因もございますので、今回の値上げはやむを得なかったものではないかというように考えております。これが農家の経営に相当大きな影響を与えますことは御承知のとおりでございます。これの影響をどのように緩和していくかということは、生産対策あるいは流通対策とあわせて、特に価格対策によって対処しなければならないというように考えておりますが、御指摘のございましたように三月末には、例年のことでございますが、加工原料乳につきましての保証価格を決定し、また豚肉についての安定価格を決定することになっております。これらの価格の決定に際しましては、ただいま申し上げましたような配合飼料の値上がり等によります生産費の動向というものは適正に反映されるべきものであるという考えで現在作業を進めておるところでございます。なお、そのような行政価格といいますか政策価格の対象になっておらないもの、これは自主的な価格安定措置を生産者団体等が講じ、それに対して国が援助するという子牛の価格あるいは鶏卵の価格等もございますが、これらにつきましても、現在御審議をわずらわしております来年度予算におきまして、機能強化あるいは価格水準の引き上げ、保証価格水準の、引き上げ等に必要な所要の予算を提出しておりますので、御可決いただければそれに基づいて早急に対処をしてまいりたいと考えております。  しかしながら、そのようなことのほかに、自由市場においてその日その日形成されるものが多いわけでございますが、これらにつきましては、えさの値上がりその他生産費の上昇要因は市場価格に適正に反映さしていくということが、長期的に見れば、どうしても必要ではないかということで、生産者団体等の生産出荷の調整等につきまして現在具体的なやり方について協議を進めており、早急に実施をしてまいりたいというように考えております。
  36. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは去年からわかっておった話であって、二月に上がるということもわかっているし、さらにそれ以上また上がっていくだろうということはだれしも推定できるわけですね。そういう中で一日一日養豚農家赤字になってくる——昨年の六月、七月にだいぶ黒字を積んでおるはずだから、この程度はいいんだとかというような話もあったりするんですけれども、聞いたりしますけれども、現実に一日一日赤字になってくると、そしてもう新聞等で報道されたように、養豚を大がかりにやっている若い者が自殺をしたとか、たいへんないま状態になってきておるわけでしょう。そういう中で何か三月末でなければどうだこうだという話はどうかなあと私は思うのですよ。もっとこれ臨機応変できないもんですかね。企業はどんどんやるじゃないですか。ちゃかちゃかちゃかちゃか値段を上げちゃう。さっさっさっさっと上がってくるでしょう。農業だけがそんな昨年から見殺しにしているわけです。なかなか私はこういう点は考えなければいけないと思うんですけれどもね。三月末に出さなければいけないでしょう、これ。法律できまっておるのですか。
  37. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 例年三月の末に決定をすることになっておりますが、もちろん年度内におきましても、経済事情の変動が非常に大きい場合等でございまして、特に必要がある場合には年度内に改定できるという規定はございます。ただいまお尋ねがございました豚肉の問題でございますが、最近の豚肉価格は、現在きめております、昨年の四月以来きめております安定価格の上限をかなり上回っておりますし、もちろん配合飼料の値上げによります生産費の上昇という点からすれば、現在の価格でもなお不十分であるという経緯ももちろんございます。しかしながら、えさの値上がりによる効果といいますのは、御承知のように、徐々に経営に影響してくるということでございますし、また、先ほどもお話ございました現在の制度で一年間を単位として安定価格をきめておるということは、一年間を通じてどのように経営を安定するために価格を安定するかというような観点できめられておると思うわけでございますが、そういう点から見ますと、ことし前半九月、二月、二回配合飼料が値上げする以前ごろまではかなり高値が続いておりました。そういう点では特に後半になってえさの値上げで悪化しておるという面はございますが、年間を通じて見ますれば、三月末例年の時期に適正な価格形成を行なうならば、必ずしも対処できないわけではないではないかというように考え、またきわめて事務的なことを申し上げますれば、豚肉価格の安定価格をきめます場合に、四十八年度の生産費調査というものを基礎にいたして算定の要素に使っておりますので、これが近く公表されますれば、それを用いて適正な価格を算定をしたいというようなこともございまして、先ほど申しました生産出荷の自主的な調整ということもあわせ実施をしながら、三月末に決定をすることで対処したいというように考えております。
  38. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この問題については、いま局長がおっしゃるように、たいへん事情が変わった場合は、年度内にやることができるというお話なんですが、文字どおり私は、今日ほど情勢が変わったことはないと思うんですよ。円安の問題もそうでしょうし、あるいはえさの穀類の非常な暴騰というのもそうでしょうし、運賃の値上がりだってそうでしょうし、それを全部配合飼料という形で、たいへんな形でおおいかぶさっているわけですね、たいへんな危機だと思うんですよ。そういう異常な状態にかかわらず、農林省のほうは、例年のとおり三月末だというような話じゃ、一体その肉類自給を向上さしていこうとかいうような話とは全然ちぐはぐな話じゃないでしょうか、全然ちぐはぐだと思うんですよ。たとえば、小麦の問題について、大豆の問題について——昨年作付の前に麦について奨励金をという農林省はアドバルーンを上げた、二千円出すということをおっしゃった。その程度やっぱり出さなきゃできぬと思うんです。麦はそのようにやられたでしょう、昨年の十月だったですか。そのときは、もうすでに二千円というのを出しているんです。だから、作付の前にすでに出しておられる。その程度のことはやっぱり出していかなければ、畜産について、いやどうだ、こうだと言っても、畜産は、これから先ほど申し上げましたように、たいへんな増産をすることになっているんです、二倍近くも。それがなければ、その姿勢が出てこないんだな、こういうものに対して。しかも、最も重要な価格政策です。  そこで、話はまたかわりまして、小麦について、麦類でもいいですが、一俵二千円奨励金を出すということになりますと、これはどの程度の実質的な値上がりになりますか、政府売り渡し一俵について二千円上げるということになりますと、大豆二千五百円上げるということになりますと。これは奨励金ですから、価格にはね返らぬわけだけれども、農家にとってはこれは価格が上がったと同じことだ。どの程度の上がりになるのか。
  39. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) 数字のお答えでございますから、まず大豆から申し上げますが、まず考えるといたしますと、これは生産奨励補助金でございまして、その考え方の基礎は、いわば収量を上げますとか、作付規模を拡大するということをしていただこう。そのためには、いろいろかかり増し経費がかかるわけでございます。したがって、そのかかり増し経費をカバーするように生産奨励補助金を出そうと。その結果によりまして、農家の方が努力をしていただきまして、収量を上げるとかいう効果を生ずる、これが所得にいわば反映してくる。こういう考え方でございまして、直に価格そのものではないわけでございますが、いまのようなプロセスを経まして、その結果がいわば所得にプラスになってくるというふうに前提を置いて、数字的に見てまいりますと、大豆の場合は六十キロ当たり四十八年産の交付金の基準価格、これが六千七百五十円でございますから、それに対して二千五百円——一部二千三百円もございますが、原則として二千五百円でございますから、約三割と四割の間ぐらいの数字に、正確の数字は計算して申し上げますが、約三割から四割ぐらいの間の数字になるわけでございます。  それから、麦の場合は——ちょっとおそれ入ります、申しわけございませんが、ただいま調べてお答え申し上げます。
  40. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 麦についてはほぼ四割近い、大豆についてもほぼ四割近い価格になるわけです。私はそういうところにどうも、奨励金だとおっしゃるが、これは価格政策一つにやっぱり繰り込まれてくるわけですから、そこら辺が基礎だと思うのですけれども、麦について四割近く、あるいは大豆について四割近い。昨年のちょうど石油危機のさなかに、十一月の下旬だったと思いますが、サトウキビの値段が奨励金を含めて四四%引き上がったわけです。今回麦と大豆について四割近いことになるわけです。さらに麦については六月か五月には政府の価格をきめなければならない、続いて米もきめなければならないという状況になっているわけですね。私がいま申し上げたような傾向からいって、国内における生産を高めていく、あるいは自給率維持しそして向上さしていくんだというなら、まず何よりも手っとり早いのは、この価格政策。で、この価格政策について、何か少し足がかりができつつあるように思うのです。ですから、まずこの価格政策について、政府がはっきりとした考え方を出していくというのが国内における生産を増高するということの大前提じゃないでしょうか。その点について大臣ひとつ。これがごたごたするようじゃ話にならないです。
  41. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 価格政策が大切なことは申すまでもございませんで、農産物の大体七割あるいは八割近くに行政介入をいたして、価格についてやっておりますけれども、やっぱり農業団体等といろいろお話し合いをいたしてみましても、価格もさることながら、やっぱり構造改善をやってもらうとか、基盤整備をやってもらうとかというほうにたいへん農家全体としての要望が多いわけでございまして、やはり施策の面で助成をいたしまして、そして結果において生産性が向上されて所得がふえていくということは農政にとって大事な問題であると思っておりますので、そういうことに力を入れておるわけでございます。
  42. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣が冒頭に、食糧政策、そして国内におけるところの生産可能なものについては、長期目標に即して一定期間極力生産を高めるのだというお話がありまして、私はどうもその点はあぶなっかしい、首を出した程度だというふうな印象を持っているものですから、いろいろな意味からお尋ねをいたしました。これからの政府の証拠としては価格だと思うのです。これからおきめになるわけですから。だから、これからこの価格の問題について思い切ったはっきりした政策考えてお出しになるということが、国内生産体制を高めるということを政府も決意したということを明らかにするものじゃないかと思うのです。その意味で、大臣努力を、また農林省の幹部の方々の努力を強く要請をいたしておきたいと思っております。  あともう一点、これはちょっと簡単にお伺いをして、そして次にまた機会を見ましてさらに詳細にお尋ねをいたしたいと思っておりますが、それは、いま農業を見直そうという空気あるいは国内における生産を高めていこうという空気が出ていることは確かです。農林省の中にも出てきたわけですし、農林省大臣のお考えの中にも出てきました。国民の中に一そうそれが強いのです。そういう中でも一つ考えなければならぬのは、農林省の機構というのが、定員ですね、これがいままで農業と同じように踏んだりけったりになっているわけです、痛めつけられてきておるわけなんです。ここで私は、そういう証拠を若干あげながら、大臣の今後の御努力を願いたいと思っております。  御承知のように、池田内閣から約三年間にわたりまして、欠員不補充という制度がとられました。さらに佐藤内閣になりましてから、三年間に五%削減するという政策がとられました。第一次、三年間に五%定員を削減すると、続いて第二次の三年間に五%定員を削減するという政策がとられまして、この四十九年度で終わることになっております。第一次が終わり、第二次がこの四十九年度に終わることになっております。その中で農林省はいつも横綱になっておるわけなんです。第一次でいいますと、三%をこしているのは三つの省庁があります。それから第二次の五%削減というんですが、農林省は八%。八%をこしておるところは二つです。で、この六年にわたって二度とも横綱になっておるのは、これは農林省だけだ。いかに農林省が踏んだりけったりになっているかと、農政が踏んだりけったりと同じように、これは定員でも踏んだりけったりになっているわけです。そこでいま現地へ行ってみますというと、年齢構成が非常に変わってきております、新規採用ができませんから。ほとんど新規採用ができない。この十年にわたって新規採用が非常にむずかしい。やめればやめっぱなしで、非常にむずかしい。そこで、よくいま公務員の年齢構成がちょうちん型になっている。ピラミッド型になっておらなきゃならぬものがちょうちん型になっているという話がありますけれども、実際行ってみますというとちょうちん型じゃない。私はこま型だと言うんです。回すこま——あのこま型になっている。二十歳から三十歳というところはまず心棒ですよ。もう貴重な存在ですね、非常に大切に扱われている。心棒みたいになっちゃっている。そういう状態になっていますね。特にそのしわが食糧の出張所、支所、それから統計の出張所にしわが寄っている。まあ心棒もいいところですね。心棒がないところすらある。そしてあと三、四年たちますと、これはもうやめるところがずらっとそろっているところがある。やめちまったあと採用できない。一体どうなるんだろうという、非常に不安感があるですね。そういう実情について農林省はどういうふうにお考えになって把握をしていらっしゃるのかという点が一つです。  それからもう一つは、そういうことで新規採用が非常にむずかしくなってきたというところから、どうも農林省は、定員の外に、三カ月雇用なり六カ月雇用という方々がたいへんたくさん働いていらっしゃるんじゃないですか。そして補っているんじゃないかという状況だと思うんですね。そういう状況について農林省としては把握していらっしゃるのかどうか。たとえば牧場、試験場、国営の農地の事業所、本省の統計情報部、この統計情報部には集計者がしょっちゅう来ております。統計協会から派遣して、あそこの中で仕事をやっている。それから統計の県に行くと、本所、ここにも婦人が出て仕事をしている。そういう状況についてどういうふうな見方をしていらっしゃるのか。この二つについてお伺いをします。おわかりにならなければあとで調査の上でもけっこうでございます。
  43. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 御指摘のとおり、先生のこま型と申しますか、逆ピラミッド型と申しますか、ちょうちん型と申しますか、年齢構成につきましては、平均年齢が高くなっておりますし、ことに四十歳代の職員が多いということでございます。これについては各省やや共通的な状況も呈しておるわけでございますが、特に農林省におきましてはこの傾向が顕著でございます。これは機構なりあるいは行政事務の将来の維持にとっての一番大事な人なり、人の数なり質の確保という点については、今後大いに配慮をしていかなければならない点であるというふうには考えておるわけでございますが、さしあたりましては、制約された中におきましても、できるだけ優秀な人材の確保ということについてつとめてまいることは当然でございます。さらにそれぞれ行政需要——それぞれ大事でございますけれども、特にその時期なりにおいて強い行政需要のあるところについて重点的に人を配置していくとか、あるいは行政事務の簡素化、これは組織の、何と申しますか、合理的な再編整備を含めましてこれを行なうとか、たとえば、先生のほうが実情御案内でございますが、食糧事務所におきます三段階制、本省、支所、出張所ですが、これを二段階制に統合していくなり、あるいは統計事務所におきます出張所の大型化というようなことによりまして、能率的な事務処理という点についてはかっていくという点について現在努力中でございますし、さらに基本的な問題といたしましては、公務能率の向上なりあるいは行政コストの増大を抑制するという大きな一つの目的もございますが、その中におきましても農林省におきます将来の定員構成というものを十分頭に置きました新卒の確保というような点については、今後格段の努力をしていかなければならないというのが私どもの心がまえでございます。  なお、第二点といたしまして、先生は、アルバイトとか、パートとかという問題についての御指摘がございました。これにつきましては、いわゆる非常勤職員につきましては、それぞれ農林省各機関の長の任命になっておりますので、私どもといたしましては、毎年ある時点においての把握につとめておるわけでございますが、かつていろいろ問題になりました常勤職員に準じた勤務態様で勤務いたしました日が——こまかくなりますが、月二十二日以上勤務した者が引き続き六か月以上続くという常勤的非常勤、これはないものというふうに判断しておりますが、アルバイトの非常勤職員あるいはパートの非常勤職員等についても、たとえばアルバイトの非常勤職員でございますと、四十八年では二千四百十九人——七月十五日現在でございますが、それからいわゆるパートにつきましては千八百五十九名。パートと申しますのは、申すまでもなく、常勤職員の勤務時間の四分の三というような勤務でございますが、これにつきましては削減等で定員不補充が進んだために特にこの傾向が出ておるというふうには、過去第二次が始まりました三年間の人員の推移を見ましても必ずしもふえておるというふうにはわれわれ思っておりません。まあ集計業務とかあるいは試験研究機関でございますれば、データの整理の時期とか、それぞれ業務の時期がございますので、学生なりあるいは主婦の方というような方々に、非常に季節等によって仕事の繁閑の多い場合に、これをお願いしているというふうにわれわれ考えておるわけでございます。
  44. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この問題は、農業政策全体の斜陽化といいますか、そういう中で起きている問題だと私は思っているのです。何がゆえに農林省だけに八%と、平均五%というのに、農林省だけに八%という高い率を押しつけているとかいう点を検討いたしますと明らかなんです。農林省斜陽産業だということは明らかです。弱腰です。だから私は、そういう意味で、この問題はいまおっしゃいましたが、いずれ行政管理庁とそれから総理府のほうからもおいでいただいてもう少し具体的に論議をいたしたいと思っています。  以上をもって終わります。
  45. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 暫時休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時十二分開会
  46. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
  47. 神沢浄

    ○神沢浄君 私も大臣所信表明に関して若干の質問をしたいと、こう思うのですが、私もこの農水委員会では全くの一年生でございまして、したがって、たいへん幼稚な初歩的な質問になりますが、まあそうはいいましても、いまの情勢に際会しておそらく一般の農民国民という立場からいたしますと、そういう私がこれからお尋ねするような初歩的な素朴な問題というようなものをおそらくみんな重要に考えているのじゃないかと、こう思いますので、ひとつ親切にお答えをいただきたいと思うのです。  昨年秋以来の例の石油騒ぎに際会をいたしまして、私などがすぐ考えさせられましたのは、これは石油の問題もさることながら、自給度の極端に落ちてきておりますいまの日本農業の現状、食糧需要の現況というようなものからして、もしこれが石油でなくて問題が食糧にでも置きかえられた場合にはどういうことになるんだろう。こういうような点について私ならずとも大方の国民の皆さんはたいへんに心配をされたところだと、こう思うわけです。そういう際に、大臣所信表明をこの前伺ったのでありますが、自給度の維持向上という柱が一本まず立てられておったのでありまして、まあ私はさもありなんと、こう考えました。この際いわば日本農業の再建というか、まさにもうぎりぎりのその時期に際会をしておるように思うわけでありますから、まあそういう考え方というものを持ったのでありますが、きょう実は午前中の鶴園質問での応酬というのを拝聴いたして、率直の感じが、私は国がいわゆる自給度の維持向上とうたってはおりますものの、ほんとうにどの程度考え方を固められておるのかどうかという点が、これはもう端的に言ってどうも納得するに困難なような点が多かったわけであります。したがいまして、どうも午前中の質問とダブるような個所もあるかもしれませんですけれども、私どもはそういう点に中心を置きまして、言うなれば、国の農政に対する基本の姿勢の問題とでも申しましょうか、そういうふうな点をひとつ明らかにしていただきたいということでもってお尋ねをしていきたいと、こう存じます。  これは私だけでなしに、おそらく大かたの国民の方たちがひとしく考えておられるところだろうと思うのでありますけれども、農業の問題というのは、ただ単に農民の生活とかいうようなことでなしに、私は、冒頭申し上げましたように、石油問題になぞらえるのじゃありませんけれども、私は食糧自給ということはこれは日本が独立国家として存立をしていく上については、もう不可避、必須な要件であるというふうに考えているわけであります。したがって、そういう基本的な理念の上に立って、この日本農業というものの政策は樹立をされていかなきゃならない。私は今回の大臣所信表明の中にあらわれておる自給度の維持向上というあの柱は、私なりの考え方からすると、いよいよこの事態に際会をして、国が、国民が待望しておったように、いわゆる国家独立の要件としての食糧自給の問題をここから始めるのだというような、こういう私は姿勢に立っておるものというふうに実は受けとめていたわけでありますが、どうも午前中の質疑の中でもって、そこまで私には理解ができかねる点がありましただけに、まずその点について私は大臣の所見をお伺いをして、以後の質問に進んでいきたいと、こう思うわけであります。
  48. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私どもにとりましてたいへん大事な問題を御指摘いただいたわけでありますが、御存じのように、昨今は世界的にも食糧の問題をいずれも重視いたしておる傾向でございます。それからまた、開発途上国といわれる国々も逐次生活が向上してまいるにつれて、食糧の選好につきましてもたいへん多くの食糧を必要とするようになってきております。そこへ加えて人口の問題もございましょう。したがって、私どもといたしましては、そういう広い見地に立ちまして、わが国における国民全体の最も大切であります食糧につきましては、全力をあげて国民に安心してやっていただくようにと。このことはやはり国家の安全保障にもつながる問題だと考えておる次第でございます。  午前中の私どもの説明があまりじょうずでございませんので、私どもの意図するところを十分におくみ取り願えなかったかもしれませんけれども、いま申し上げますような考え方基本になりまして自給度を高めてまいりたい、こう思っておるわけでございます。  で、食糧の安定的な確保をはかってまいるという重要な任務をわれわれが背負うておるわけでありますが、これはしばしば申し上げておりますように、米をはじめとしてその他の食糧については計画的に増産対策を講じてまいる。そのことは、予算面にもあらわれております基盤整備その他の私どもの計画いたしております計画に反映をいたしておるつもりでございます。そこで、私どものこういう狭隘な土地で、しかも、いままでのわが国の経済発展に伴って、ともすればその生産性が低いため立ちおくれぎみでありましたようなものについても、全力をあげて、その増産対策を計画いたしておるということは、麦、大豆飼料作物等についての御説明を午前中も申し上げたわけであります。そのようにいたしましても、やはり国民食糧のために必要な物資の中でにわかに間に合わないものは、やはり広い範囲でその需給を安定的に供給してもらえるような制度を並行して考えていきたい。こういうことは、やがて御審議を願います海外経済協力事業団等の構想に出てきておるわけでありますが、ともかくも計画的にわが国で必要なもので十分になっておりません飼料穀物等については、全力をあげてその自給度を高めてまいると、こういう方針でございますので、われわれの意のあるところをひとつ十分おくみ取りいただきたいとこのように考えておる次第であります。
  49. 神沢浄

    ○神沢浄君 だめ押しのようでもってたいへん恐縮ではございますが、そういたしますと、申し上げましたとおり、わが国が国家としての独立の要件としての食糧自給という、この理念の上に立って大臣所信表明に言われる自給度の維持向上という文章はつながってきておると、こういうふうに受けとめてよろしいわけでございますね。
  50. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) そういうつもりで計画を立てておるわけであります。
  51. 神沢浄

    ○神沢浄君 そこで、いま、大臣のお答えいただいた中に、にわかになかなか自給度の向上が困難なものもあると、こう言われておるわけでありますが——先ほどあとからの質問の関係もございますから、また、一年生ですから、ひとつ親切にお願いをしたい意味もあって申し上げたのですが、現代のいわゆる基幹的な食糧ですね、米はいいですけれども、大麦、小麦あるいはまあ大豆、あるいは肉類などについて現代の国内需要に対する自給率というのを、これは大臣じゃなくてけっこうですから、御説明願いたいと思います。
  52. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 四十六年度の数字について申し上げますが、しばしば申し上げておりますように、総合自給率は七四%でございます。米はその年の作況にもよりますが、これは一〇〇%で見ていただく。それから、野菜が四十六年度では九九%、果実が八一%、鶏卵が九八%、肉類が八三%、牛乳・乳製品が八八%、砂糖が二〇%、小麦が八%、大・はだかが二九%、大豆四%というのが御指摘の主要な作物についての自給率でございます。
  53. 神沢浄

    ○神沢浄君 全体ではどうなります。
  54. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 先ほど申し上げましたように、いわゆる総合自給率は七四%ということに相なっております。
  55. 神沢浄

    ○神沢浄君 そこで、私など非常にこう不信の点があるわけですけれども、いま御説明がありました、いわゆる肉類については、これはもう午前中の審議でもかなり詰められておったんですが、それは国内生産はもちろんされてはおるのですけれども、その飼料関係というのはどうなりますか、濃厚飼料は。
  56. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 御指摘の飼料の、濃厚飼料の自給率は四〇%でございます。
  57. 神沢浄

    ○神沢浄君 そうしますと、あれですか、七四%という数字は、まあ私が極端な言い方をすると、なるほど肉類国内生産はされてはいるものの、言うなれば飼料としてまあトウモロコシ、コウリャンにしましても、外国から輸入されたものが形が変わったものだということにもこれはなるわけでありまして、そういうふうな点が修正をされて七四%ということになるのですか。
  58. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げますが、これは計算上の問題でございますが、自給率、すなわち国内で消費に仕向けられます農産物なり畜産物、これについては輸入物もございますし、国産もございますが、これについて中間生産物でございますえさは引かれております、輸入なり国産の飼料は。分子につきましても、これは国内生産の農産物なり畜産物でございますが、中間生産物のえさ類は、これは計算上当然引かれてございます。
  59. 神沢浄

    ○神沢浄君 ちょっとしろうとだからその点がわかりにくいので、まあ外国から飼料が入ってきまして、そうして肉になりましたりあるいは卵になったりしているわけですね。そうすると、国内でもって生産されたものは何%ということになるかもしれないけれども、まあ中身は、入ってみると、それは外国から入ってきたえさが形が変わったものだということにまあなるわけですね。そういうような点が、まあ計算の方法というようなものは、私どもしろうとでうまくわかりませんけれども、修正をされたものが国内自給率が七四%になっておるのかどうなのか。何かそこら辺が、私なんかの手元でもって計算をしたものだと、なかなかそういう勘定になってこないようですが、どうなんでしょう。
  60. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げますが、総合自給率は、御案内のとおり価格というものさしを使って、それぞれのものにつきましては数量で端的に自給率が出るわけですが、農産物全体の自給率はどうだという場合には、価格というものを、ものさしにいたしまして計算するわけでございますが、その場合におきましても、繰り返すようでございますが、国内消費仕向け額としての農産物、これは国産と輸入がございます。その中にはえさもございます。それからそれに畜産物が国内で消費される。その畜産物にも国内産と輸入がございますが、その中から飼料仕向け額、すなわち国内産の濃厚飼料と輸入飼料、これを差し引いたものが分母になっております。われわれの言う七四%。で、しからば分子の国内食用農産物生産額はどうかと申しますと、これは当然でございますが、農産物——国内産の農産物、畜産物でございますが、その場合に、その国産の畜産物は、国内産濃厚飼料と輸入飼料にプラス付加価値が加わっておりますが、これも中間物でございます飼料仕向け額は、国内産濃厚飼料と輸入飼料を合わせて差し引いておりまして、ネットで出しておりますので——計算方式その他についてはなお御疑念ございますれば、それらの算式については後刻資料をもって詳細に御説明申し上げますが、その点で別途の観点、しばしば言われるほかのものさしを使った場合の自給率の高い低いという問題は別でございます。
  61. 神沢浄

    ○神沢浄君 価格率における計算ということで、そこでおくことにいたしますけれども……。  それからこの備蓄の状況についてちょっとお尋ねしておきたいと思うんですけれども、いまやはり基幹的な食糧別に大要のものだけでけっこうですからお答えを願います。
  62. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 各作目別にわたりますので便宜全体を申し上げますと、四十九年度予算中心といたしました施策考え方について申し上げますと、米につきましては五十年十月末までに約三か月分百五十万トン。主食用小麦につきましては二・三カ月、飼料用麦につきましても同じく二・三カ月、それにさらに政策努力を特に加えまして、大麦十五万トンの長期備蓄を予定すると。それから飼料穀物につきましては、現在、これはトウモロコシ、マイロ等でございますが、先生御案内のとおり一月分のランニングストックがございますが、さらにそれを一定期間かかりまして、さらに一カ月分をふやしたいということで予算措置その他を講じておるわけでございます。  なお大豆につきましては、食品用大豆の一カ月分を、これもランニングストックが大体一月分ございますが、通常のランニングストック、さらに一カ月分の食品用大豆の備蓄を行なうというような考え方に立って進めておるわけでございます。
  63. 神沢浄

    ○神沢浄君 大臣が衆議院の本会議の関係でもってちょっと抜けられたようでありますから、その間に、私の予定をいたしました質問の進行はちょっとそこで変わるわけでありますけれども、次の二、三点についてお伺いをしておくことにいたしたいと思います。  種鶏増殖センターの問題についてお尋ねをしておきたいと思うのですが、わが国におけるブロイラー飼育というのは歴史が浅くて種鶏はいままでは全部外国に依存をしてきたようであります。こういう状況に対して国は牧場を設置して採卵鶏とブロイラーの国産種鶏の改良をはかってきたと聞いておるわけなんですが、その結果、ブロイラー種鶏農林五百一号というのが外国産に負けないものとして発表をされまして、山梨、茨城、宮城というような県に、国産種鶏増殖センター、名前はこれはあるいは別であるかもしれませんけれども、設置をいたしまして、事業主体は農協の経済連がこれに当たりまして、国と県とが補助金の支出をしてその設置をさした。補助金は約五〇%だと、こう聞いたわけであります。  そこで私は山梨の例をあげるわけなんですが、山梨の場合も増殖センターを設置をしまして、昭和四十七年の十月ごろに種鶏四千五百羽を受け入れて種鶏生産を始めて、各種鶏家にこれを供給をして試験飼育をさせているわけであります。ところが、それによって農家がブロイラーを出荷したところ、従来のブロイラーについては一羽七十円というのが、この農林五百一号は四十五円にしかならなかったということでもって、これはもう採算が合いませんから、農家は直ちに飼育を中止した、こういうような事態があったようであります。  それで私が指摘をいたしますのは、これはまあ試行錯誤ということはどこにだってあることでありまして、そのことを追及しようとするわけではありませんが、その事態のあと始末がされていない、この点であります。まず農家は損失をしたわけであります。おそらく農協の経済連もあるいは被害者かもしれません。したがいまして、結局は国の方針がその是非の問題は別にいたしましても、結果的には農民に損害を与えていることになるわけでありますから、ですから、農民立場からいたしますと、どうもそのままに捨ておかれるということについては、何としても納得がいかないという問題がありまして、私の手元なりへも資料が送付をされたのでありますけれども。  そこで私は二点についてお尋ねをしておきたいと思うのですが、一つは、いわゆるあと始末の問題であります。農家は現実に被害者であったわけですから、それをそのまま放置しておいてはならないと思うのですけれども、どんなような考え方をされているのか。それからまたもう一つは、かなり国としてもおそらく、試験研究の結果、ある自信は持たれた上でもってなされたことだろうと思うのですが、それがそういうような結果になってしまったというような点がちょっとまあ納得し得ないようなところもあるもんですから、その辺をひとつお尋ねをしておきたいと思うのですが。
  64. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) ただいまお尋ねがございましたブロイラーの国産種鶏の問題でございますが、御承知のように、戦後アメリカはじめ外国鶏の優良品種が日本に急速に入りまして普及をしたわけでございますが、わが国に適応した国産の優良種鶏、外国鶏に負けないものをつくり出しまして、これを普及をはかっていくということが重要であるということで、国の種畜牧場を中心にいたしまして、県の協力も得まして、能力の高い国産種鶏の育成をしてまいったわけでございますが、お尋ねございました肉用鶏の農林五百一号は四十六年ごろから各県にございます肉用鶏の増殖センターに種鶏用のひなとして牧場から配付をいたしたわけでございます。国産種鶏増殖センターは四十五年から各地で施設の助成もいたしまして開始をしたわけでございますが、増殖センターは必ずしも国がつくりました国産種鶏だけではなくして、民間でもやっておりますので、民間のものでもどちらでもいいからと。ただ、外国鶏にのみ依存するということでは負担の問題からもいろいろ問題がございますので、日本に適したものを、民間でつくったもの、あるいは国の牧場でつくったもの、いずれでもいいから、それを増殖して普及をするという役目を持たせまして四十五年から始めておるわけでございまして、お尋ねがございました山梨県につきましては、四十六年に経済連がセンターを設置いたしまして、この場合は主として国の作出いたしました種鶏を導入をいたしたわけでございます。  もちろん牧場から各センターに配付いたします場合は、その前に農家におきます実験もいたしまして、これはだいじょうぶであろうということで出したわけでございますが、五百一号の特色といたしまして、産卵能力は非常に高いと、しかも実用ひなを、比較的外国鶏に比べれば安く供給できるということで、そういう特質があるわけでございますが、センターから農家へ実用鶏として行きます際に出荷時の体重がやや足らない——承知のように、外国鶏を中心にいたしましてブロイラーは非常に大型になっておりますが、やや外国鶏と比較いたしますと、体重が小さいというようなことがございまして、当初計画いたしましたとおりの収益をあげ得なかったということでございます。  そこで、お尋ねの二点でございますが、第一点の、しからば、そういう農家が予定どおり、計画どおりの収益をあげ得なかったと、損が生じたという場合どのようにあと始末するかということでございますが、これは、私どもとしては、その実態につきまして、個々の農家について、まあ県の協力も得まして、詳しく調査をしてみたいと思いますが、かりに農家の責任ではない、やはり品種において十分でなかった面があるということでございますれば、これは経済連の増殖センターから直接農家に売っておるわけでございますので、その間で直接何らかの解決策をしていただくとして、ただ、もとが、これ国の種鶏でございますので、国と経済連の間におきまして、今後も、いろいろ種鶏その他で援助をいたしておりますので、現実的な解決をはかってまいりたいというように考えております。増殖センターにつきましては、施設に対しまして当初援助いたしておりますほか、国の牧場から種鶏を、まあ原種鶏でございますが、これを増殖センターに配付する場合、一般の市価よりはかなり安く配付をしております。今後もそのようにしてやりたいと思いますので、そのようなことも考えながら、現実的な解決を調査の上していきたいと、こういうように考えております。  それから、第二点の、どうしてそのようになったかという点は、いろいろ原因があるかと思いますが、われわれといたしましては、早急に要望のある出荷体重の大きいものをつくり出すということが先決であるという見地から、大型の種鶏の導入も行ないまして一新しい組み合わせをして、現在、牧場を中心にいたしまして、出荷体重の大きい実用候補鶏を見出しておる段階でございますので、これらの優良鶏の普及によりまして、増殖センターを中心にして国産種鶏の普及をはかって、それによりまして、農家の養鶏経営に資したいという考えで研究を続けておるところでございます。
  65. 神沢浄

    ○神沢浄君 その前段のいわゆるあと始末の問題につきましては、いまの御説明によりますと、これは農家は直接的には農協の経済連との関係ですから、そこで、その農家の損失のないような対処をさせることにしまして、経済連に対しては国がいずれかの方途をもってその被害の手当てをすると、こういうことに受け取れるのであります。が、ただ、いまの御説明によりますと、種鶏などを経済連に対しては安く出しておるので、そういうような面で経済連での問題は解決していけるではないかというような意味のことにとれますが、それだけの考え方のみで、した場合には経済連がはたして農家との間の問題の解決をしようとするかどうか、その辺がちょっと疑問になりますね。その辺まで国がやっぱり指導されますか。
  66. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) ただいまお答えしましたとおり、まず実態をよく調査をさしていただきたいと思っております、どの程度の損害が出たのかどうかという点も。私どももそのような話はかねて伺っておりましたけれども、詳しくまだ把握しておりませんので、その調査結果を待って、先ほど申し上げましたような直接的に国が——かりに損害があったという場合、しかもそれが養鶏農家の責めに帰すべからざる、やっぱり種鶏が十分でなかったということでございますれば、その場合、直接的には国が損害を補償するとかいうようなことはなかなか困難ではないかと思いますが。センターと経済連でございますが、センターと農家の間の問題として処理をしていただくと同時に、国と県の増殖センターとの関係はこれからいろいろ長く関連がございまするし、これから、いま新しくつくり出そうとしております原種鶏も、今後御希望によってはセンターで増殖をしていただくということも考えられますので、その辺どの程度の実態であるかということも検討した上で——先ほど申し上げましたのは、いま一つの方法としてそういうことも考えられるということでございますので、必ずしもそれに限ったことではないかとも思いますので、調査をした上で実際的な解決の方法を見出していきたいというように思っておるわけです。
  67. 神沢浄

    ○神沢浄君 ちょっとくどいようにもなるかもしれませんが、それは調査をされて、その事実を把握された上のことでもってされるのは、もとよりいいわけですけれども、農家立場に立って代弁をさしていただきますと、やはりこれは国が、増殖センターというか経済連に対して国の考え方を示して指導をされませんと、これは農家のほうでは安心できないですね。その点は、どうですか、国がやっぱりその際には指導されますね。
  68. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 実態を調査した上、適切に指導してまいりたいと思います。
  69. 神沢浄

    ○神沢浄君 次に、もう一つ、こまかいようなことで恐縮ですが、石油危機以来いわゆる狂乱物価といわれているような情勢でございまして、農家にとりましても、営農の資材などが非常に値上がりを見て計画の樹立がきわめて困難というような実情があります。ここに一例ですけれども、身辺のやはり山梨の例でありますが、御承知のとおり山梨はハウス栽培というようなものが非常に盛んです。このハウス栽培農家が、昨年塩ビだとか、あるいは段ボールだとか、必要な資材の手当てをいたしまして、その際業者との間におおむねその見通しとして一〇%ないし一五%程度の値上がりはまあやむを得ないという一つの範囲を定めて取引をしておったようでありますが、それが最近業者のほうからツケが参りまして、その請求書の中身を見ますと、大体もう三倍くらいにみんななっておるようなんです。これは地元紙の報道されたもので、私いま持ってきたわけですが、そこでもって農家のほうでは大あわてになってしまいまして、いま問題をほかに持ち込むところがないもんですから、県の農務関係へ持ち込んでいる。そういう記事内容なんですけれども、この一つの事例から考えてみましても、確かに類似のような例はきっとかなり各所に出てくるんじゃないかというような気がしてならないんですけれども。こういうような事態は、ただ単に農家とそれから業者との間の押し問答などでは、これは解決しないと思われます。やはりまあ行政の指導というか、ある種の介入というようなものがなければやっぱりそういう農家の事情を解決してやるわけにはまいらぬのじゃないかというふうに考えるんですけれども、そんな点について、国の立場などで、何かお考えが示されましたらお聞きしておきたいと思うんです。
  70. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) ただいまビニールの例で御質問がございましたが、確かに石油不足を契機といたしまして、農業用の資材がかなり上がっている実態にございます。これはまあ役所といたしますと、もちろん適正価格になるように、便乗値上げがいやしくもないようにということで強い指導をいたしておりますが、御指摘の、これはビニールとポリと両方あるのかも存じませんが、ビニールにつきましては昨年の七月以降三回にわたり、それからポリにつきましては二回にわたり標準的な価格でございまする全農と各メーカーとの間の契約がいわば公開されたわけでございます。大体ビニール、ポリの場合でございますと、これはそれに限りませず、一般に農業資材全般にそうでございますが、標準になりますのは全国農業協同組合連合会、いわゆる全農と、それら各メーカーと契約をいたしまして、それがいわば基準になっておるわけでございますので、それ以外、全農以外にも商人系統はございますが、価格は大体それが標準になっている。ただし、全農の把握力が肥料のように非常に強いものとか、それから御指摘のビニール、ポリのように把握力がわりと小さいもの——商人の強いものとがございますが、一応は標準になっているわけでございます。そこで全農に対しまして、価格改定にあたりましては、これはもちろん全農は農家立場に立っておりますから、極力合理的な価格にするようにしているわけでございますが、何ぶんただいま問題になりましたビニール、ポリにつきましては、昨年来非常に原料は高騰いたしております。もともと原料がいわゆる石油製品のナフサでございますもんでございますから、非常に上がっておりまして、その結果原料からの上昇はやむを得ないということで、ビニールは石油値上がり前に比べまして約三割、前年同期に比べますと七割近く上がっているポリエチレンは石油騒動以前に比べまして約七割、それから前年同期に比べまして二倍ぐらい上がっております。御指摘の三倍というのは、ものによって若干相違があるかもしれませんが、大体全農のいわば標準価格がそういうふうになっているわけでございますが、それにしてもかなりの引き上げでございます。  これにつきましても、われわれも事情をいろいろ聞いたわけでございますが、原則的には原料ナフサが何ぶん異常に上がっているのが一番基本でございまして、あえてまたビニールやポリは、農業用に限りませず、一般の雑ポリも同様の傾向を示しております。あえて農業用ビニールだけでございませんで、雑ポリを含めまして全般的に上がっていると、こういう実態があるわけで、したがいまして、全農といたしましてもやむを得ずそういう価格改定をいたしたわけでございます。  したがいまして、御指摘の事案は、そういった価格改定に伴ってトラブルが生じてくるというような問題が出るわけでございます。私たち基本的にはやはりもとの原料が上がりました以上これはやむを得ないところであるというふうに思うわけでございますが、問題は、その間、農家と販売店の間のいわば契約関係はどうなっているかということによろうかと思うわけでございます。全農の場合でございますと、おろらくきちっと行なわれるわけでございましょうが、商人系統の場合には契約関係が多少あいまいな点があるのかも存じませんが、したがいまして、既契約でいった場合でもぴしっときまっておるのか、先ほどのお話は一五なり二〇%ぐらいのお話がございましたが、何ぶん一年前でございますと、このような事情が大きく変動するということはだれも予想できなかったわけでございますから、いわば一種の事情変更にもなろうかと思うわけでございます。そこで、事情変更につきまして、販売店側で農家と十分お話し合いをすることがまず第一に必要であろう。もちろん農家にしますと安ければ安いにこしたことはないかも存じませんが、何ぶんもとの価格がそう上がっておりますと、これは販売店だけにしわ寄せすることもなかなかいきかねる面もございますし、さらに販売店、もとのいわば卸、さらにもとのメーカー、これまでさかのぼって考えなければならぬ問題でございます。ただ、その場合に、いわば一方的に値段を通告するやり方、これは非常に不親切でございまして、やはりこういう事情はやむを得ないという事態を十分話し合いをして、必要に応じまして、県その他が間に立ちましてお互いに納得づくで解決していくというのが一番基本だろうと存じますが、何ぶんいまの事態は、特に全農と違いまして商人系統の場合には契約とか取引系統が非常に複雑でございますので、ただいまの事案につきましては、私たちもあちこち情報を収集いたしておりますが、御指摘のケースにつきましては調査をいたしまして、その上で具体的なおさめ方はどうかということにつきまして十分指導をしてまいりたいと思っております。
  71. 神沢浄

    ○神沢浄君 もう一つ、これはやっぱり農家のほうが非常に現状を苦にしている問題ですからお尋ねをしておきたいと思うのですが、こういうような情勢に立ち至ってきまして、農家にもいままでたとえばパイロット事業であるとか、あるいは施設、構造の改善、近代化、ことに果樹関係等施設園芸などの部面については相当に農家は借金を背負っています。この借金がどんどん返せるような事態のときには問題にもならなかったでしょうけれども、こういう状態になるとやっぱりこれは相当農家としては不安の種になってきておるようでありまして、この間も私農家の皆さんからそういう問題の提起を受けたんですけれども、御承知のとおり、勝沼などというところは有名なブドウ郷ですが、あの勝沼などでは、ほとんど大体これはパイロット事業などが主のようでありますけれども、農家一戸について五十万から百万ぐらいの借金はおしなべて背負っているようです。それから野菜のハウス栽培が非常に盛んな峡中の地帯などにつきましては、これは大きな借財は一農家でもって八百万ぐらいのものを背負っているというようなことを言っておりました。ですから、個々の問題がどうということでなしに、いま農家ではそういう長期的なもういわゆる負債の固定化した状況が非常にこれは不安の種になっておるようなんでして、そういうふうな状況に対して、こんな事態になりましたから、したがって、国の考え方というようなものをひとつ伺いたいというような要望がしきりにあります。この機会にひとつ伺っておきたいと私も思うのです。
  72. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 御指摘のように、果樹とか酪農専業の農家におきましては、経営の規模を拡大する場合、または体質改善を行なう場合におきまして、多額の借り入れ金を行なっている例が多いわけでございます。農家一戸当たりの平均ということになりますと、四十七年度におきましては五十一万円ぐらいが農家の借り入れ金ということでございますけれども、特定の農家には相当多額の負債があるということも当然考えられます。そういうような農家につきましては、経営が順調にいっている間は当然その投資に見合いまして収益が上げられるわけでございますので、問題はないと思っておりますけれども、たとえば、災害とか、働き手に疾病等の問題が起きる場合には、一時的には、借り入れ金の返済が非常に困難になるということが十分考えられるわけでございます。そういうような場合におきましては、従来から私どもは農家個々の個別的な経営の実情に即応いたしまして、たとえば自作農維持資金、これを活用いたしまして、借りかえをしてもらうとか、また、すでに貸し付けられました資金につきましては延納等の措置を必要に応じまして関係機関に指導するということをやってきておるわけでございます。今後もやはりそういう実情に応じまして必要な措置をとりたいと思っておりますけれども、来年度におきましては、自作農維持資金、これを四十八年度百二十九億のワクを二百二億というふうにふやしておりますし、また、来年度からは貸し付けの限度額を個人におきましては三十万円から六十万円、それから災害の場合には、個人の五十万円を百万円というように限度を上げております。したがいまして、ケース・バイ・ケースではございますけれども、それぞれ御相談に応じまして対処してまいる、かように考えております。
  73. 神沢浄

    ○神沢浄君 大臣がいらっしゃらない間に少し雑件をお伺いをしておったわけでありますけれども、なかなかまた帰られないようですから——大臣がおいでになるとき伺うことのほうがいいと思うんですけれども、事務的なような面について先にお尋ねしておきたいと思うんですけれども、所信表明の中に今後のいわゆる海外に依存をするところの食糧の供給の安定を目途にしまして、国際協力事業団の構想というものが示されているわけでありますけれども、これは予算は外務省に一括して計上をされるのだと、こうなっております。これはなぜ外務省に計上になるんでしょうか。農業関係の明らかな事業であれば農林省で当然のことのように思われますけれども、その間のひとつ御説明をまず伺いたいと思います。
  74. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) いま御指摘の国際協力事業団の構想でございますけれども、これは昨年来、私どもはやはり海外農林業の開発につきましては、農林省サイドにおきまして独特の機関、たとえば海外農林業開発公団というものの設立が必要であろうと考えまして、いろいろと検討いたしておったのでございますけれども、昨年末に至りまして、ほかの省の同じような構想等がございまして、それとあわさって、従来からやっておりました海外技術協力事業団と、それから海外の移住の事業団というものとあわせまして、海外農林業の開発部門並びに海外鉱工業開発部門が合同して一つの事業団をつくるということになったわけでございます。そういたしますと、やはり私ども海外農林業の開発につきましては、外務省と私ども共管で仕事を進めるわけでございますけれども、それ以外に各種の部門をあわせて、この事業団が所掌するわけでございまして、その一般的な所管大臣というのは外務大臣ということになっております。したがって、予算の計上も一応移住の面、それから技術協力の面とあわせまして、農林業開発、鉱工業開発の面につきましても一括、一応外務省に計上いたしてございますが、その使用にあたりましては、当然農林業開発部門につきましては共管でございますので、現在、五十億という金が計上してございますけれども、その内訳をつくることから、その資金の使用方法等につきましても相談をいたしまして、十分対処していきたいというふうに実は考えておるわけでございます。
  75. 神沢浄

    ○神沢浄君 そこでお尋ねしたいのですけれども、これは、事業の具体的内容というようなものはどんなことなんでしょうか。それがこの目的とするいわゆる農林産物の安定的確保にどうつながってくるのか。この辺をちょっと御説明受けたいと思うのですけれども。
  76. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) それでは開発輸入という御質問でございますので、その部面につきまして申し上げますと、国際協力事業団の中に、たとえば農林業開発につきましては、農林業開発部門という一つの特定の部門ができます。この部門で所掌する事柄として考えておりますのは、まず海外におきましても、農林業を開発しようとする場合、それは発想としまして、相手国政府がいろいろプロジェクトを考えたり、それから日本政府が相手国政府の要請によりましていろいろやる場合がございますけれども、まず基本的な調査があります。それからその調査に従いまして、技術指導をするという段階がございます。その事業を実施する場合に資金を要しますから、政府ベースなりまた民間ベースなりで資金を供給する部門というふうに大別してございます。私どもの農林業開発部門におきましては、まず相手国政府等々と連絡をとりまして、大型プロジェクトにつきましては、調査、技術指導、資金供給というように一貫をして、この農林業開発部門で扱いたいというふうに考えておりまして、事業の内容も調査、それから技術指導並びに民間が海外農林業開発事業を行なう場合の資金融通、それから、それに対して必要な債務の保証というような業務をいたそうと思っております。  さらにそれの関連事業といたしましては、農林業開発事業を行なう場合の周辺に必要な整備、インフラといっておりますけれども、   〔委員長退席、理事高橋雄之助君着席〕  たとえば農道に関連します道路とか、それから簡易な橋梁の建設とか、穀物を輸出する場合の桟橋の建設というようなことがございますが、それもあわせてこの農林業開発部門で行なう。これは大体無利子の資金を企業に貸し付けまして事業を実施するというような考えでございます。  それから、さらには相手国の政府または関係機関等が農林業の開発事業を行なう場合に、金は一応確保できたけれども、事業の実施が相手国ではできないというような場合に、具体的な事業につきましては、この事業団が受託をいたしまして事業を実施する。たとえばかんがい排水事業を行なうとか、農道の建設を行なう。それから林業につきましては伐採、造林等の事業を請け負うというようなことで、受託事業もこの事業団で行ない得るというような能力を規定いたしておりまして、そういう能力を備えました事業団を私どもは発足させるわけですけれども、事業団の仕事の進行にあたりましては、まずやはり相手国政府の要望、また相手国の住民の要望等を十分勘案いたしまして、まず相手国の食糧につきましては、需給の確保というものに協力をする。あわせてわが国に、その余剰分等につきましては輸入をさしてもらう。その場合には、やはり相手国政府との関係等によりまして、長期、安定的な輸入が確保できるように、そういうような約束を取りつけて仕事をするということもこの事業団では考えておるわけでございます。私どもはやはりそういう観点から、今後わが国においてどうしても自給できないような食糧等につきましては、相手国と相談の上ではございますけれども、相手国の需要を満たした上、わが国の必要分を確保できるようにこの事業を運営してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  77. 神沢浄

    ○神沢浄君 対象国の範囲は、相手国ですか、どんなような構想になっておりますか。
  78. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 従来の海外技術協力事業団の技術援助の相手国は、開発途上国というふうに限定をされております。今回、事業団の農林業開発事業の相手国足り得る国は開発途上国のみならず、中進国並びに先進国、たとえばブラジル、オーストラリア等も対象とし得るように法律の上では措置をいたしておる、かように考えております。
  79. 神沢浄

    ○神沢浄君 私などが率直に感ずる点は、国際協力関係というのはそれはたいへん大切なものではありますけれども、金も出す、人も出す、そういう関係でもって事業の所産として生産されたものについては、いまの御説明では、まず当該国の事業を第一にして、余剰があれば、特恵的にわが国への供給を約束をしてもらう。こういう仕組みのように思えるんですが、そこで、そのことが、これは大臣がいらっしゃらぬけれども、いわば従来の海外協力などの一つのベースの上に乗っていって、   〔理事高橋雄之助君退席、委員長着席〕肝心のわが国自体の問題になっております食糧自給政策というものに、逆に影響をするような面が起こりはしないかという——やっぱりそれはおそらく範囲を広げたといいましても、主たる対象国の範囲というのは、言われておるところの開発途上国というようなことだろうと思われます。労賃も安いでしょうしするものですから、あるいは日本国内での生産に比べますと、価格の面などでもってかなりの格差というものが生じてきやしないか。こういうことになりますと、いままでのパターンと同じように何かこの事業そのものが実は国自体の食糧自給政策というものに逆な影響を及ぼしてくるというような点が生じやしないかと、こういうふうなことをこれは感じさせられるんですけれども、そういう点についてはどうなんでしょう。
  80. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 御指摘のとおり、先ほどから自給率等のお話で御答弁申し上げておりますように、日本といたしましては、国内でできるだけの努力をいたしまして自給率を上げましても、たとえば飼料穀物とか、大豆とか、それからまた食糧以外では木材等につきましては、どうしても自給ができかねるというのがあるわけであります。それらにつきまして、現在世界的に先を見通しましても、需給関係は逼迫をする見通しでございますので、安定的な供給確保をすることが政府の責任でございますので、やはり開発輸入というものも当然考えるという発想で今回の事業団ができたわけでございます。問題は御指摘のとおり今後の運営ではなかろうかというように考えております。私どもも、これが海外農林業の開発というものが無秩序に行なわれれば、そういうおそれなしとしないということも十分考えられますけれども、私どもやはりこういう国際協力事業団という準政府機関といいますか、政府関係機関を設立いたしまして、政府の十分な監督のもとに仕事を行なうというつもりでございますので、私どもは国内自給を第一とし、それに足りないものを海外から仰ぐという基本姿勢は、今後の協力事業団の仕事の運営においても十分貫きたいと思いますし、そのことを覚悟していくというつもりでもございます。ですから、従来より以上に秩序立った海外農林業開発ができるように、そういう趣旨で新しい事業団をつくったというふうに御了解いただきたいと思います。
  81. 神沢浄

    ○神沢浄君 これも大臣にお伺いしたいと思っていましたんですけれどもね、時間の関係もありますから技官にお伺いをしたいと思うんです。  所信表明の中にこううたわれております。国民食糧需給動向に対応しながら農業生産振興をはかるという文章です。私は、あの文章を拝見をしてちょっと感じさせられたのですけれども、国民食糧需給動向に対応をしながら農業生産振興をはかると、こういうことになりますと、私の頭の中にすぐ浮かんだのは米の問題でしてね。米の需要が減るから、まあそういう減るという動向に対応して政策考える、私はこの点はわが国食糧問題、農業政策の見地からすると問題があるんじゃないかという感がしてならないわけであります。私から申し上げるまでもないことですけれども、わが国にとって米というのは、これはもうわが国の国土的条件が、今日までの長い歴史の上でもって到達をしてまいりました最もわが国に合ったというか、労働生産性の上から言ってもこれは相当高い、自給可能でありかつ備蓄の可能性を非常に高く持った農産物なんですね。ですから、むしろ逆に言えば、需要動向を、自給の体制を目的とするならば、変えていくくらいの政策的意図というものを持ってもいいのじゃないか、もっと国民に米をたくさん食べてもらうような、そういう方向へ行くことのほうが食糧需給政策という見地からすると必要なんじゃないか。だんだん嗜好が変わって米が減るからしたがって米をつくるのは減らして、つくっても勘定の合わないようなものは、ほかのものに変えていこうという、これは私は間違いじゃなかろうかということを実は感じさせられているわけなんです。  日本にとっては、まあ繰り返すようですけれども、とにかくそれはもう長い歴史の中でもって生み出された最も有利な食糧だろうと思うのです。そういう米をだんだん減らして、そして何か需要動向が変わるからそれに対応していくというだけのことでは私は、ほんとうに日本食糧自給というものを考える場合には、ちょっと考え方というものが安易に過ぎるんじゃないかというような気がしてならないのですけれども、そういう点についてはどうでしょうかね、国の考え方といたしましては。
  82. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 大臣がお答え申し上げるのが筋かと思いますけれども、われわれ事務当局も基本的な問題でございますので、思想は統一してあるわけでございますので、その考えについて申し述べさしていただきたいと思います。  で、御案内のとおり、国民基本食糧国内生産し得る農産物で極力まかなうということは当然でございまして、各国ともに基本食糧につきましては国内生産し得る農産物に依存しておるというわけでございます。わが国におきましても、所得水準の上昇なり消費の高級化、多様化というような西欧型の食生活のパターンができまして、畜産物なり等のたん白質食糧、あるいは果実、野菜等のビタミン食糧というようなもののウェートは高くなってまいりましたけれども、やはり基幹は米食を中心といたしました、これを基幹といたしました各種の食物の組み合わせというようなことに今後も進んでいくという点については変わりはないと思っておるわけでございます。そういう意味では、基本的には先生のお考えとは同様かと思うわけでございます。  で、先生の御指摘の点で、米を政策的に減らしていくのは何事かというようなおしかりかと思うわけでございますが、われわれといたしましては、最近の四十五年までに経験したあの過剰、大事な米が過剰な状況に置かれることは今後は許されない。消費に合わせた生産をもってこれに対応していくというようなことでございまして、五十七年の生産目標もこれに合わしておるわけでございます。ただ、食生活は正直に申しまして、栄養指導面なりその他いろいろ保健衛生面なりいろいろな多角的な議論がございまして、消費者の皆さんの選好に利益する部分もたいへんに多いわけでございまして、そういう意味で、政策の指導の努力を十分に果たせと申しましても、実はやや限界がある点ではないかと思うわけでございますが、しかし今後におきましても、わが国の基幹的食糧である米を中心として新しい型の食生活のパターンをつくりあげるという点については、各般努力をすべきであるというふうに思っておるわけでございます。
  83. 神沢浄

    ○神沢浄君 お答えはわかるんですけれどもね。私が言いたいと思いましたのは、この需要動向という文言がちょっと引っかかったものですから申し上げておるんですけれども、米の需要に変化が起こってきておる。これにはそれはいま御説明があったように、カロリー云々の問題からそれはあるんでしょう。しかし、そればかりではないと思うんです。これは戦後のいわば私ども自分流に言うと、ゆがめられた農政の時期に起こった一つの現象でもあるんじゃないか。子供が学校へ行って給食だというとこれはやっぱり小麦製品ですよ、パン食だというようなことで。そうすると、ああいう嗜好の形成時期においてこれはかなり大きな作用をしておるだろうと思われます。米を食べたがらない国民がふえてきているわけです。  一方、いま問題になっております食糧自給ということを基本考えてみた場合には、わが国にとっては、米がきわめて有利な基幹的な食糧であるということ、これは言われるまでもありません。ですから、米を食べることをあまり好まないような国民がふえていくようなこういう動向を、これは、修正ということばが当たるかどうかしりませんけれども、そういうこと自体をも矯正していくようなことをあわして考えることがやっぱり食糧需給政策上必要ではなかろうか。ただ、どうも米をあまり好まない人たちがふえてきたから、ふえてきたという動向に基づいて、そして米を減らしてほかのものにかえていこうというようなことだけをやっていたんじゃ、これはほんとうの意味の需給政策の確立と言うには少し安易に過ぎるのじゃないかという、こういう点を指摘してみたかったわけでありまして、さらに御意見があったら承っておきたいと思います。
  84. 三善信二

    政府委員(三善信二君) いま御意見がございました米の消費についてでございますが、御承知のように、最近、米の消費、一人当たり消費というのが、まあ御承知のように、戦前は百五十キロぐらい一年に食べておった、最近は九十キロぐらいと。だいぶ動向としては減ってきている。ごく最近二、三年を見ますと、その減り方もだんだん横ばいになってきているというような状況でございます。それからもう一つは、米に対する一つの消費動向需要動向と申しますか、だんだん国民の方がいい、おいしい米を食いたいという、そういう動向が、消費傾向が非常に強くなってきている。したがいまして、そういうことで食糧庁としましても、やはり自主流通米制度を開いていく、あるいはそういういい米については奨励金等をつけて増産していく、そういういろいろな手を食糧の消費あるいは需要動向に即しながらやっているわけでございます。  ただ現在、従来は麦、小麦といいますか、麦は一つ米食に対する従属的な立場のように考えられておったわけですが、終戦後今日に至りますと、やはり米と麦というのは一体として主食として考えていかなければならないような現在の食生活状況になっているわけでございますから、そういう意味で、米は御承知のように一〇〇%国内で十分自給しております。ただ、四十八年から四十九年——ことしにかけましてはやはりキャリーオー八——備蓄と申しますか、そういうキャリーオーバーももう少し持ちたいということで、実はことしの十月末百十万トンぐらいのキャリーオーバーを持つように計画をして生産をしているわけです。四十九年産米も入れますと来年の十月末にはさらにこれを百五十万トンのキャリーオーバーを持ちたい、持ち越し量を持ちたい。といいますと、大体三カ月分と申しますか、そのくらい余裕を持って米の生産をしていきたいと思っているわけです。  それから麦につきましては、これも御承知のように、国内生産奨励、四十九年度は生産奨励措置をしましてやることにしているわけでございますが、やはり五百五十万トン、食用として四百十数万トン——二十万トンくらい、これはちょっと輸入にたよらざるを得ないということで、そのためには安定的にその輸入を確保していくということが先決でございます。そういうことで食糧庁としては、米、麦一体となって主食の確保に万全を尽くしているような次第でございます。  ただ御指摘のように、もっと米のほうを食うようにPRでもしたらいいじゃないかというような御趣旨はよくわかります。最近一部学校給食等でもごく一部やっているところもあるようでございますが、そういうことも今後ある程度奨励をしていきたい。そのためにはやはりおいしい米、国民の嗜好に最も向く米、そういう米をやはりつくっていくということが大事じゃなかろうかと思っております。
  85. 神沢浄

    ○神沢浄君 大臣がお帰りになったようですから——大臣がお留守だったものでとうも質問が散発的になっちゃってまとまりがつかぬようになっていますけれども、お帰りになりましたから質問をもとに戻しまして、いわゆる自給度の維持向上の問題ですけれども、午前の質疑の中で伺いましてもそうですが、大臣の御説明になりました点からいたしますと、そのためには、まず生産基盤の整備であるとか、それからこの所信表明の中から拾ってみますと、農業団地の形成であるとか、集団的生産組織の育成であるとか、このようにあげられておるわけであります。しかし、私は率直に言いまして、これはいわば従来の施策から引き継がれてきた言うならば、たいへん失礼な言い方をするかもしれませんですけれども、その日暮らしみたいな施策の羅列でございまして、先ほどお答えをいただいた、ほんとうにわが国の国家としての独立の要件としての自給の体制というものを、ひとつ思い切ってここで確立をしていこうという政策といたしましては、まあいささか食い足らないと思うわけであります。  大体もう時間がありませんから、私は自分の意見を申し上げて端的に御所見を承りたいと思うのですが、日本農業が午前中の質疑の中でも言われておりましたように、まあ今日のような姿になってきたというこの点につきましては、これはやはり工業、重工業などを中心にいたしました、言われておるところの高度経済成長のその政策の結果であることも、これはいなめない事実であろうかとも思うわけであります。私は、しろうとなりに考えさせられておるのですが、なぜ日本農業というのが、こんな現状のような姿に落ち込んできてしまったのか。これはまず第一に、農村から土地も人も流れ出してしまった。現実にそういう事態があるわけであります。ですから、ここで逆流を起こさなければ私は自給向上のためのほんとうに農業の再建というのはできはしないのではないか。生産基盤の整備、農業団地の形成、あるいはこの集団的生産組織の育成、まあいずれも大切でありますが、しかし、もっと根本的なものとして、いままで流れ出したものを、今度は逆に流れ込んでくるような抜本的な政策というものがここでもって確立をしなければ、私はほんとうにその日本農業の再建などということはおぼつかないじゃないかという考え方を持って言うわけなんであります。まあ何をつくってみましても、あまりその勘定が合わない。百姓をしておるよりか、この道路工事であろうとも、日当取りに出かけたほうがずっと計算上はいい。こういうことになれば、それはおのずから離農していくのはあたりまえでありまして、したがって、若い人たちなどはみんなやっぱり工場に吸収されたし、都市へ集中をしてしまった。そういうことの繰り返しが今日まできているわけであります。人も土地も流れ出してしまっておる。だから、ほんとうに日本農業の再建をはかろうとするには、まず土地の確保、これはもう一義的な要件だろうと思います。それから労働力の確保、これがやっぱり同様にこれは基本的な要件だろうと思うわけです。さらには価格政策の問題だとこう思うわけです。  そこでお尋ねをしたいんですけれども、農用地の拡大ということについてはどの程度の考え方をされておるのか。まあちなみにここ十年間の農用地の減り方というものを一緒に説明をしていただきながら、今後のその農用地拡大についての構想というようなものをお聞きをいたしたいとこう思います。  それからまあ労働力の問題ですけれども、これはもう自給度の向上、農業再建を幾ら叫んでみましても、またきれいな文章を掲げてみましても、人が集まってこないようなその現状においては、農村に人が集まってこないどころじゃない、人をとどめておけないような現状のもとでは、これは口頭禅に終わってしまうことは、これはもう避けられぬだろうと思います。ですから、労働力の回復というものについてどういうようなその構想を持っておられるのか。いま農村は、私が申し上げるまでもありませんけれども、ひとしきり三ちゃん農業などということが言われていたごとく、これはもう老人化、女性化してきておることは事実であります。それをそのままに放置しておいて、局地的にいずれかの事業くらいをもくろんでみましても、私は農業の再建なんかにはとうていつながらない。  まず基本の問題の一、二として農用地問題をどうするか、労働力の逆流をどう起こすか。これは経済と水というのは逆の関係で、水は高いところから低いところへどんどん流れていくけれども、経済の場合には、低いほうから高いほうへどんどん流れていってしまいます。いままでは農村という低いところからやっぱり都市という高いところへどんどん流れ出していっちゃったんですから、今度はその逆流を起こして、そして農村へ人を集めるという、このことがもう必須の条件だろうと思うのです。しかも、老齢化、女性化したような現状から考えると、何てたって働き手の青年を農村農業にどう吸収していくかというこれが一番肝心な点であって、その問題に対するひとつ所見を、大臣並びにそれぞれ関係の部局から伺いたい、こう思います。
  86. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 大臣のお答えに先立ちまして、数字にわたる部分についてはお答えを申し上げます。  農地の転用面積についてのお尋ねでございますが、これにつきましては最近四十三年から四十七年までの数字を申し上げますと、四十三年で田畑合わせまして四万八百二十ヘクタール、四十四年が五万三千三百四十三、四十五年が五万七千百三十四、四十六年が六万四百六十八、四十七年が六万三千八百十三というので、最近の三カ年等では、ほぼ六万ヘクタールという農地の転用があるわけでございます。  しからば、一方、就業人口の減少の問題でございますが、これはややロングランに見ますと、三十五年から四十七年までの年率の減少率は四・六%、約五%という数字に相なっております。  それから農用地の造成につきましては、今朝来、いろいろ御議論になっております生産目標におきましては、その農林省のただいま考えております生産目標を裏表あるいは畜産の草地というようなものを含みました点で造成する面積につきましては、基準年次が四十五年でございますので、四十五年を五百八十万ヘクタールと。この後、公共用地なり宅地、その他の需要で九十万ヘクタールぐらいは多目的の需要があるだろう。したがって、四百九十万ヘクタールぐらいにそのままになれば減るだろう。ただし、いま申し上げましたように、五百二十万ヘクタールの耕地はどうしても要るということから、三十万ヘクタールの農用地の造成を新土地改良長期計画では予定しております。一方では大家畜その他の増加等を見まして、現在の二十四万ヘクタールの草地を六十四万ヘクタールに、約四十万ヘクタールの草地を造成する。合わせて七十万ヘクタールの農用地造成を、生産目標の五十七年度に合わせました新土地改良長期計画では予定しておるという数字の関係になっております。
  87. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いま農用地のお答えを申し上げましたが、私どもは確かに農業の問題もむずかしいわけでありますが、農業それから農村、こういうことを、ときには同一に考えながらやっていかなきゃなりませんし、ときには別に考えなければならないと思っておるわけであります。そこで農業それ自体が、他産業に比較して劣らない産業として成り立つためには、どうしても規模を拡大していくということが必要だと、こういう考え方で、御存じのように、農地の流動性を持たせるように各般施策を講じておるわけであります。合理化法人なども協力することによって規模を拡大してまいる。  御存じのように、いずれの国も先進国がそうでありますけれども、やはり規模は拡大してまいって、全体の就業人口の中に占める農業者の割合というのは、たいへん減ってきております。この間の、世界の四地方に派遣をいたしていろいろ研究しました者たちの報告を見ましても、アメリカが、まあああいう大きな面積の国とは違いますけれども、大体農家一戸当たり百六十五ヘクタール、そして全農業者の人口の中に占める農業者の割合は四%、大体イギリスなどもそういう状況でありますが、生産額においては減少しておりません。私どもは、一方において、規模を拡大して産業として成り立つようなりっぱな農業をつくるということになりますと、小さな零細な土地しかお持ちにならない方で、従来農業をやっていらした方、そういう経営単位ではやっぱり大きなものと競争はできません。そこでそういう方々にやっぱり農地を経済的に使うことを考えていただいて、それがしやすくする施策を講じていかなければならないと思っております。  そこで、そういう方は労働力として余るわけでありますから、それをなるべく地方に分散した産業で、その余った労働力を活用して、現金所得を取っていただくということがいいことではないか。ヨーロッパなんかでも昔からそういう方向でやっている国がございますが、なるべく産業を地方に分散して、地方人口を大都会に集中されるようなことを防ごうという考え方、あるいは国防的な考え方もあるでありましょうけれども、地方にできるだけ産業を分散して、地方の人口もそこに土着するようにつとめ、そして、所得のなるべく配分の平均化と申しますか、そういうことが大事ではないか。  そこで、先年政府でも、国会で御承認を得ました、地方に工場を誘導してまいることの助成をする法律を通過していただきましたが、こういうものも、なるべく公害を伴わないようなものは地方に分散して、そしてそこで余った労働力を集中しないで、そういう地方で能率をあげて所得をあげていただくということがいいのではないか。御存じのように、開発途上国は別といたしまして、やっぱり先進国を見ますというと、やはり兼業というものがかなり出てきております。ことにわが国は、もう御存じのとおりの状態でありまして、この兼業が悪いんだというお話になりますというと……。これはわが国のような経済状態で、しかも戦後三十年の間にこれだけ伸びてまいりましたこの経済社会で、兼業についてはやはり現実に兼業がああいう状態になっております。しかも、第二種兼業農家のほうが多い。こういう方々が、やはりほうっておけば、どうしても都市集中型になりますので、できるだけ地方に産業を分散して、そしてまあ美しい田園を保持しながら、工業もまたそこで地方の発展のために維持できれば、農村の形態をそこなわないで、人口が比較的過疎になるようなことが防げるのではないか。またやはり都会地の工場地帯に集まって、そうしてこの空気の悪いところで、将来の日本をになって立つ若者たちが、非常に混雑したところで暮らされるようになるよりは、やはり空気のいい田園を自分たちの力で保持しながら、しかも生活環境をよくしていくと、こういう政策というものがわが国においても必要ではないか。御存じのように、学者によりましては、日本農業というものは兼業農家というものを中核にすべきであるということをおっしゃる方もありますが、私どもは中核というと、どうかと思うのでありまして、やはり規模の大きな農業を育成してまいって、そうしてそれならば産業として成り立つということになれば、後継者もしたがって喜んでそれを継承していただけるのではないか。でありますからして、やっぱり日本の国としては私どもが期待するのは、そういうふうに地方の農村の風景を害さないで、緑を守りながら、産業として成り立つような農業を育成することにつとめるべきではないか。でありますから頭数、数字の上で農家人口が減ったとか、農業就業者が減ったとかいうことは、私はそういう意味から申せば意味のない話し合いだと思うのでありまして、やはり他産業に比べてりっぱに維持できるような産業として農業を育成したい、こういう眼目で考えておるわけでございます。
  88. 神沢浄

    ○神沢浄君 もう時間がなくなっているようでございますから、最後の質問に移りたいと思うんですけれども、いまの土地の問題あるいは労働力の問題というのは、もう少し私は論議を深めたいところなんです。いずれまた機会を得たいとこう思っておるんです。  いま農村へいって青年に何が一番困るんだ、何が一番皆さまは求めたいんだというようなことを聞いてごらんになりますと、おそらく全国いずれの農村へまいりましても、若い人たちが口をそろえて言うのは、とにかく嫁さんが喜んできてくれるような農村にしてもらいたいと、こういうことです。現状でもって青年を農村にとどめようと思っても、このままでは全く無理です。私は何かスローガンめいた言い方になりますが、少なくとも若い娘さんたちが喜んでとついでいくようなやっぱり農村をつくらないと、日本農業再建なんと言ったって、こんなものは全くそれこそ文字どおり画餅そのものだと思うんです。そういうような点で土地の問題それから労働力の問題、まあ青年を農村にとどめるためには社会環境の問題、それはいろいろあると思うんですけれども、それらのほんとうに基本になっておるものは、午前中も出た意見のとおり、やっぱりこれは価格政策だと思います。いま、それ何価安定法というような幾つかの制度があることは、私も承知をいたしているわけでありますがしかし、米を除いて現在のそのいずれの安定法にいたしましても、それは、まあいわば自由主義的な経済の論理の上に立って、経済至上制とでも言いますか、そういうものの上に立脚して行き過ぎたときの歯どめをする。私はよく言うんですけれども、あれはちょうど電気のヒューズみたいな制度であって、ある限度へいくとヒューズが飛んでしまう。しかしやっぱり飛んだあとは、これは停電ですから、暗い間に冷えてしまうですよ、農村は。  現に、いまたとえば飼料の問題が非常に重大化してきております。べらぼうに上がったというわけです。一年間に一万円の上も上がって、また三月には値上げをするんだというような状況です。私の知る限りにおいても、とても先き行きも不安でしょうがないからといって、かなり大きくやっておった養豚をやめちゃった知り合いもおります。あるいは養鶏などにおいても同様であります。ここに資料を届けてもらって持っておりますけれども、時間がないから御披露しておれませんが、五千羽までくらいの規模ならば、今度あがったこの現状におけるところの飼料をもとにすると、まあ鶏卵であれば、一キロ当たりどうしても九十銭くらいが吹っ飛んでしまう、あるいは豚の場合は五十四円くらいはどうしても吹っ飛んでしまう。これははっきりそういう数字が出てきております。これでは全く自給度の維持向上といったってまことに何といいますか、当てにならない話になってくるわけであります。私はやっぱり価格の点でもって農家が腰を据えて営農の計画が安心して立てられるようなやっぱり価格の補償というものをしてやらなきゃ、事が始まらぬのじゃないかと考えているところであります。  時間がありませんから端的に自分の意見を申し上げて御所見を承りたいと思うのですが、やはり生産費を補償してそして生活がしていける所得を補償する、これは当然のことだと思うんですよ。みんな苦労して仕事をするのに、生活のもとになる所得がないなどということで、苦労して仕事をする者はおそらく国民のうちには、どこを尋ねたってありっこないですから。農業といえどもやっぱりかかった金と暮らしていけるだけの所得というものは補償されるのは、こんなことは私は常識的なことだと思うんですが、またきわめて簡単なことというか、単純な理屈だと思うんですけれども、そのことがいま実現をしていないのが農産物の価格の現状じゃないでしょうか。私は、午前中の質問でもって鶴園委員からも、特にその点が強調されておったようですけれども全く同感であります。私はこの際、ほんとうに自給度の維持向上をうたわれるならば、農家が安心して農業に携われるような、やっぱり価格政策というものを打ち出すところから始まらなければならぬのじゃないかと。そうでなければ、まあどんな——大臣は何か農業基本法を実にきれいな文章だと、文章まで感心をさせられておりましたが、大臣所信表明もその意味においてはたいへん整った文章であります。作文としては、私はたいへん点数高いんじゃないかと、こう思うんですけれども、しかし、どんなりっぱな作文であろうとも、農家はとてもあれでもって安心をしようとは思われません。というのは一いま申し上げましたようなまず価格政策の問題から始まりまして、それはもう社会環境の問題から、あるいは申し上げてまいりましたように、農村がだんだん落ち込んでいった。今度はその逆の道をほんとうに国としては推し進めるという、こういう姿勢をはっきりとここでもって示されなければ、全くこれは画餅に帰してしまうのじゃないかということを非常に懸念をいたすのあまりまあ申し上げたのでありますけれども、最後ひとつ大臣の所見をお伺いをしましてやめたいと思います。
  89. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 一つの御意見だと思います。  そこで大体いま米を除きましてほかの農産物でも政府が行政的に価格を指導し、またそれに助成をいたしておるものは大体七割余りあるわけでありますが、全部その価格を補償するということになりますと、これはたいへんな財政負担、おわかりのとおりでございます。その財政負担に欠けるところがあれば、物価の問題で国民生活全体にとってばく大な影響が出てまいります。そこで私どもといたしましては、いまありますこういう現状の経済社会でどのようにして農業が立ち行くようにするかということは、やはり生産流通、そういう面に対して政府はできるだけの助成をいたしまして、そうして農業がやっていけるような状態をつくり上げると、こういう施策がいま申し上げましたような欠陥を除いて考えればそういうことだろうと思っております。したがって具体的にたとえば畜産関係についてその畜産物を飼育してまいりますために、えさが非常に高い。こういうようなことはやはり私どもとしては国民全体の経済の中で考え立場から、これについてはやはりできるだけの配慮は、飼料等についてもいたしますけれども、さらにまた、そのえさの値上がりの部分というものは、当然これは何らかの形で生産費の上で考慮しなければならない問題でございます。全部を所得補償の方式でかりにきめるといたしましても、これはやっぱり同じような手数をかけなければならないわけでありまして、私はただいまの御意見は一つの御意見だと思いますけれども、現状におきましてはやっぱりいまやっておりますような施策助成し、なおかつ生産者が自分の発明くふうによって大いに生産性をあげていただくための助成をすることのほうがよけい合理的ではないかと、こう考えております。
  90. 沢田実

    ○沢田実君 お二人の方が基本的な問題について御質問なさいましたので、重複する部分は省略をいたしまして、二、三の問題について質問をいたしたいと思います。で、私の手持ちの時間が百分になっておりますが、残った分は次回にまた塩出委員が質問をするということで御了承を願って質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、昨年でございましたが、総理大臣が三十万ヘクタールのたんぼをつぶすような話をなさいました。そのことについては、当時の農林大臣も了解しているようなふうに新聞等で見ているわけでございますが、倉石農林大臣はどのようにお考えなのか。また、それは農林省としてどういう考えか。あるいは各省の間、いわゆる政府の意見として一つの結論が出ているのかどうか。三十万ヘクタールの問題からお尋ねをしたいと思います。
  91. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 田中総理がこの三十万ヘクタールの宅地等をつくるために協力してもらいたいというお話があったということが、いろいろに誤解を招いているようでありますが、まあ私どもが考えましても、このごろ土地価格が非常に高騰しております。ことに宅地がそういうことでありますので、宅地はかなり造成できるんだということを一般に知らしめることは、土地価格を冷やすことにもなるんだという考え方、これはだれしも持たれる考え方でありますが、そういうような意味のことをお話になったことが、だいぶいろいろな判断で伝わっておる模様でありますけれども、私どもといたしましても、先ほど土地のことで政府委員から神沢さんにお答えいたしました中にも申し上げておりますが、平均ここのところ、一年に六万四千ヘクタールぐらい壊廃が行なわれておりますので、四、五年たてばそういうことをほうっておいても三十万ヘクタールにはなるわけでありますが、そこで大体公用地のようなものはほんとうにいま足りませんので、そういうものをどうやって造成し得るかということに関しまして、関係省庁の者が集まりまして協議をいたしました。まだ結論は何も出てまいりませんが、そのようにいたしまして、私どもだけでなくて、関係省庁集まってそういうことが可能であるかどうかというふうなこと、また希望はどういうふうであるかというようなことを協議をいたしておるところでありますが、その前提条件として農林省が言っておりますのは、優良農地は絶対に確保するんだと、そういう前提のもとに可能なりやいなやということについて研究をしておる。こういうことでございまして、この問題について衆参両院の予算委員会等においても御質疑がございました。田中総理の答弁を承っておりましても、私がただいまお話し申し上げましたようなことを簡略に説明いたしておるわけでありまして、いま関係省庁でそのことについて相談をいたしておるという次第であります。
  92. 沢田実

    ○沢田実君 五年間で三十万ぐらいにはなるんだというふうなことでしたら、これは通常のことですから変わりないわけでございますが、何かの方法で急速にそれだけ農地をつぶすということが問題なんだろうと思います。  それで、大臣、いまの御答弁で大体の方向はわかりましたが、市街化区域内あるいは調整区域内あるいはいまおっしゃる農振法による線引きの区域内等々があるわけですが、いまのお話ですと、農振法で指定された農業として将来大事な地区は守っていこうと。市街化区域等で特に公用地が必要だというような何かの他の省との話があれば、これはやっぱり農林省もある程度譲歩せざるを得ない考えなのか、その辺はいかがですか。
  93. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 市街化区域内においてはもう御存じのとおりでございます。農転特に必要としないと。その他の地域にかかわる話によりましては、私ども農転の基準をちゃんと定めておりますが、それに照らして対処いたしてまいる、その方針でございます。
  94. 沢田実

    ○沢田実君 農振の地域と、それから調整区域等については心配する必要がないんだというような、簡単に言えば、御趣旨のようでございますので、次にまいりますが、最近、新聞、雑誌等の情報によりますと、また一部の商品でございますが、相当在庫があるということで値下げが始まっておる商品もあるというようなことが報道されております。その中で、農林省関係の分で輸入した牛肉が実は一つ問題になっているわけでございますが、若干値下げを期待しているようです。ところが雑誌の報道によりますと、その輸入した食用肉の値下げを一番いやがっているのは農林省だと、そういうようなことを報道しているわけですが、これは農政を預かる立場と物価問題の立場とありますので、一がいには言えないと思いますが、両方を預かっている局長さん、きょう来ていらっしゃるようですから、両方の局長から話していただいて、それから農林省としてどうか、大臣に最後に話していただきたいと思います。——大臣、最後でけっこうです。(笑声)
  95. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 両方とも私と一緒に働いておるもんでありますので……。  いま沢田さん、おっしゃいましたように、率直に申し上げて農林省立場というのは非常に微妙でございまして、先ほど来お話のように自給度を高めるというふうな問題、これはもう価格の問題ではないか、そういうことも非常に重要でございます。しかし、流通についても一般消費者の家計安定のためにこれを出すことをいたす義務もわれわれのほうにあるわけでございますので、輸入等弾力的に活用いたしましてやるわけでありますが、お話のございました牛肉のことでありますが、ワクは下期去年九万トン出しておりますけれども、最近の状況を見ますというと、どうも生産者に心理的打撃を与えておるような模様でございますので、とりあえず四万トンというものは出さないで押えておる。で、政府部内でも私に、ああいう政策はいかがなものかということを言われた閣僚もおります。そこがなかなかデリケートなところでございまして、いま申し上げますように、えさは高いわ、肉は安いわということでは、自給維持なんて言ったって協力していただけるものでないものでありますから、その辺の調整を考えながら対処いたしておると、こういう次第でございます。
  96. 沢田実

    ○沢田実君 肉の値下げが、輸入肉あるいは国産肉、ともに値下げをしているというのじゃないそうです。国産の肉は相変わらずだ、ところが輸入肉が若干値下げをしている。ですから、私は輸入の肉は値が下がったほうが消費者の立場で非常にようございますので、大臣がいま心配なさることは、国産のいわゆる肉牛に影響する、国産の肉の値段が下がるということが、いま大臣の心配なんで、その点、いわゆる物価を担当する局長と畜産を奨励するほうの局長との問題があると思いますので、その辺のお考えを分けてひとつ答弁していただきたいと思います。
  97. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 先ほど大臣からお答えがございましたように、四十八年度下期九万トンの輸入を当時決定をいたしたわけでございます。主として国内の牛肉価格が高かったということのために、物価安定という趣旨から従来にないかなり大幅の割り当て増を計画したわけでございます。その後の価格の動きを見てまいりますと、特にまあ牛肉といいましてもいろいろ種類、銘柄がございます、きわめて多様でございますので、われわれ従来肉専用種、いわゆる和牛という牛でございますが、これの卸売り価格で見ますと、去勢の上というものを一応の標準規格にとっておりますが、この価格は比較的安定しておる。生産者から見ましても、いいところをずっと最近もキログラム当たり千五百円から六百円というかなりの水準にきております。問題になりますのは、最近特に牛肉生産として伸びてまいっております乳牛の雄牛を肥育した乳雄牛の中というのを一応標準のものとして価格の指標としてとっておりますけれども、これの価格が最近やや下がってまいりまして、昨年の秋はキログラム当たりで、数字を申し上げますと、千百円をこえておりましたのが、現在はキロ当たりで八百五、六十円というところで低迷をしておるということでございます。これはなぜそういうことになったかということをいろいろ分析をしてみますと、最近の牛肉の輸入は主としてオーストラリアから入っておりますが、昔と違いまして、冷凍のもの、これは品質がやや悪い加工用が主でございますが、最近入っておりますのは冷蔵用のチルドビーフ——冷蔵牛肉というのが多量に入っているわけでございます。これが、品質的に見まして、先ほど申し上げました国内でできます乳牛の雄を肥育をいたしました牛肉に一番近い品質を持っておりまして、これが先ほど申し上げましたような、上期七万トン下期九万トンという輸入契約に従いまして相当多量に入ってきておりまして、これが、国内の乳雄牛の肥育した中という標準ものの価格の低迷に対して影響を与えている、こういうように判断をいたしております。  したがいまして、今後のわが国の牛肉生産——けさほども鶴園先生から御質問ございましたけれども、世界的にも不足でございますし、国内で、肉専用種とあわせて、乳牛の廃牛の肥育とあわせまして、雄牛を、従来ほとんど肥育に使っておらなかったものを、最近伸びておりますものを、できるだけ伸ばしていくということが必要でございますので、——最近のチルドビーフの輸入増大に伴いまして、価格が低迷しているということをさらに続けるということは、せっかく芽を出しました乳雄牛の肥育というものに対して支障になるという判断をいたしまして、九万トンの下期輸入分の一部につきまして、たな上げといいますか、凍結といいますか、若干見合わせたわけでございます。  半面、小売り価格について見ますと、これもいろいろ種々雑多でございますけれども、一応統計上とっております中という規格のものでございますが、これを見ますと、昨年の当初からずっと上がりっぱなしてまいりまして、最近一月では、百グラム当たりでございますが、二百四十六円というような統計上の数字になっております。年初には、百七十一円ぐらいであったというところから見ますと、これは大体、そのものずばりではございませんけれども、先ほど申し上げました卸売り価格でいえば、乳雄牛あるいは乳廃牛の肉が、主としてこの中に小売り価格の場合にはおおむね該当するんではないかという判断をしておりますが、先ほど言いましたように、乳雄牛の卸売り価格が下がっておるにかかわらず、小売り価格はそれに相当すると見られるものについては、年初以来上がりっぱなしになっているということは、やっぱり消費を伸ばす意味でいろいろ問題があるということで、卸売り価格の動きに応じて下げるべきである、こういうように判断をいたしまして、小売り業者の団体あるいはスーパー等の団体に対しまして値下げの指導を一月末にいたしたわけでございます。それによりまして、現在おおむね百グラム当たり二十円ないし三十円、場所によりましては四十円程度下げております。これによりまして、小売り価格を下げて、それに伴いまして需要が伸びますれば、乳雄牛の卸売り価格にもこの最近低迷しておるものをささえる、上向きにさせるという意味では効果があるのではないかと、こういうことでございまして——若干説明不十分な点があるかと思いますけれども、乳雄牛の卸売り価格生産者が経営を継続できるようにささえ、あるいは若干回復させるということと、それにおおむね該当すると見られる小売り価格を卸売り価格の下がったのに即応しながら下げさせるということは矛盾をしないのではないか。で、小売りを安くし、それによって需要を喚起すれば、それに伴って卸売り価格は回復するということで、長期的に見ましても、乳用雄を中心といたします乳牛の肉利用を促進するという長期の方向にも沿うものではないかと、こういうような判断でやっておるわけでございます。
  98. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 畜産物につきましては、生産から流通まで一応畜産局が一貫して所管をしておりますので、私のほうから特に申し上げることはございませんが、いま畜産局長から申し上げましたように、全体としての問題点は、むしろ流通段階にあって、特に卸売り段階価格が変動いたしますと、当然それは正直に小売り段階に反映いたします。すると、消費が増進することになりますが、どうも従来の様子を見てまいりますと、畜肉の価格というのは、下方硬直と申しますか、一度上がりますというと、なかなか下がらない。それは一つはやはり、小売り段階において簡単な加工過程——枝肉で買ってまいりましたのを、枝離しをしてスライスをして包み込んで売るという日本の古来の一つの販売形態がございます。そういうふうな加工形態を通じておるものですから、一種の末端のストックポイントとしての役割りを末端の肉屋さん自身が持っておる。そのことがどうも小売り価格と卸売り価格との間の相関を密にすることを非常にじゃましておるのではないか、こういう考え方がございます。それがやはり下方硬直という形で、上がるとき比較的スムーズに追随いたしますけれども、下がるときにはなかなか下がらないのだという消費者の批判はございますけれども、業界のほうから言わせますというと、上がるときもなかなか追随をしにくい、下がるときも追随をしにくい、非常に硬直的なんだと、こういう説明にいまなってはね返ってきております。しかし、いま畜産局長から申し上げましたように、平均して申しますと、どうも下がるときの下方硬直が強いということは一般的に言えそうでございます。  そういう意味で、流通問題といたしましては、やはりこの際、末端における小売り及びスーパーの競争形態というものをやはり維持させながら、卸売り価格が小売り価格にすなおに反映できるようなそういう仕組みというものをやはり今後やっていくといくことが大事だろう。それから、あわせまして生活協同組合等のサイドからのやはり刺激というふうなものや、さらに場合によりましては、現在の卸売り市場がほぼ二割程度しか実は全体の肉流通量の中で利用されておりませんが、これは野菜とか魚に比べますと著しく中央市場の利用率が低いわけでございますので、やはり生産者が中央卸売り市場に委託をしてそしてそこで受ける卸売り価格のはね返り利益を直に受け取れるような形にもっと持っていく、つまり卸売り市場の利用率を上げていくというふうな形もやはり今後指導していかなければならぬ面の一つであろうというふうに考えておる次第でございます。
  99. 沢田実

    ○沢田実君 流通局長にお聞きしたいのは、大臣がいま凍結したというお話がございましたが、あなたの立場でもやっぱり凍結すべきだという結論になるのかということなんです。ということは、さっき二百四、五十円から二十円ほど下がったというお話ですが、一番新しい話によりますと、二百円を割ったという話なんですよ、非常に喜んでいるわけだ。これは農水の委員会だからこんなもので終わるけれども、これが物価委員会ならそんなものではみんな承知しません。それで、凍結することが、いわゆる物価を担当する流通局長立場でもこれはやむを得ないのだ、物特の委員会に行っても、あなたが堂々と説明できるのだという事情があるんなら、私はそれを了解する。もう一度。
  100. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 非常に手きびしいお話でございますが、従来からの肉の供給と価格の形態を見ておりますと、やはり下がりますというと極端にそれが産地の生産に響いて、そのあと非常に高い時期がやってくるという繰り返しがあるわけでございます。その意味からいたしますと、やはり供給力が安定した形であることが望ましい。それは流通面と申しますか、消費サイドから見ますというと、輸入肉でありましょうと、それから国産肉でございましょうと、どちらでありましょうと、大衆的な肉というものが安定的に供給されることが望ましい、これが基本原則であろうと思います。ところが現実には、輸入肉というのは大部分がチルドビーフの比較的大衆肉をたくさんいまは輸入しております。しかもその大部分というものは、いわゆるパッカー、食肉加工業者が非常に大きな量を扱うという形で輸入されているのが実態でございます。それに、いま国産がどういう形で自給率を上げていくかと申せば、やはり当面は黒毛和種といったようなものではなくて、むしろ乳用雄牛の子供の肉というものの活用が当然中心になってくるだろうと思いますので、したがってここの供給力というものを安定させるということは、これは消費の面から見ましても絶対に欠くことのできない問題であろうと思います。それが最近のように——かつてべらぼうに一頭五万円くらいまで上がりましたのが、最近では五千円を割るといったような激しい騰落でございますので、したがいまして私どもといたしましては、やはりぎりぎりの線で、高くなることは困るんでありますけれども、しかしながら、同時に、やはりいま非常に安過ぎることが次の高騰につながるということがわかっております場合には、これはやっぱり安定を先にとる。すなわち畜肉については、そういうことだろうと思います。  ただ問題は、はたして輸入肉というものの価格水準と現在の乳用雄子牛の価格水準というものが全般的に見て、一体長期国民の消費水準なり所得水準から見て望ましき状態であるかどうかと言えば、これは他のいろんな生鮮食料品から見て、やややはり高目だろう。長期で見ればやはりこれはもう少し価格水準としては下げていく努力はしてもらわなきゃいかぬ。その意味でやはり生産面に対する私どもの要望としては、もう少し経営の合理化、飼養の合理化、もう少し飼養規模の拡大といったようなものを積極的にお進め願って、そして落ち着いた価格で、もう少し低い水準で長期的には安定供給ができるようにしていただきたい。そういう形で自給率が上がっていくことが一番望ましい。こう言わざるを得ないわけでございます。
  101. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、物特の委員会にあなたが出れば、やっぱり凍結しないほうがいいというような答弁になるんじゃないかと思うんだね。そこへ畜産局長が出てくるとどうなります。
  102. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 先ほど申し上げたことと同じことになるかと思いますけれども、大衆肉として今後わが国の牛肉供給の相当部分をになうべき乳用牡犢の生産、肥育というものを伸ばしていくためには、あんまり経営が破壊されるような低価格ということは好ましくない。したがいまして、九万トンの輸入肉につきましても一時調整するだけでございまして、これは少し適正な水準に回復してまいれば、すぐその分を解除いたしまして、早急に輸入をするということでございますので、何も九万トン全部やめたという趣旨ではございませんので、その価格の動きを見ながら弾力的に事業団の売買のかげんを通じて調整をしてまいりたいというふうに考えます。
  103. 沢田実

    ○沢田実君 それはまた物特なんかで議論になるでしょうからこのぐらいにしておきます。  次に、大臣所信表明の中の休耕奨励金が四十八年度から打ち切りということになっておりますが、この休耕奨励金を打ち切った場合、いままでいわゆる休耕田であったたんぼが一体どうなるんだろうということでございますが、稲作転換等で努力はなさるんでしょうけれども、あるいはまた農林省農家の意識調査、こういうのを見ますと、再びたんぼにするのはたいへんだからやらないというのが、数がよけいあるように書いてあるようでございますが、私は農家でいま一番いいのは米だと思います。ですから、調査の時点で、農家の人がどれだけ休耕奨励補助金がなくなるというような、休耕のいままでの補助金がなくなるということが十分わかった上でこの答弁をしたかどうか、私にはわかりませんけれども、ほんとうに農家の人たちの気持ちとしては、やっぱり最後になれば、私はその何年か休んだたんぼで——たんぼにするにはたいへんな土地でしょうけれども、私は開墾をして農家では米づくりするんではないか。日本のたんぼはたいへんな土地を開墾をしてたんぼにした過去の歴史を考えれば、あるいは現在の価格制度を考えればおそらく私は米をつくるんだろうと思います。で、その場合に米のいわゆる生産目標は何ぼになっているのか、それから農林省としての買い上げはどれだけやるのか。要するに、休耕奨励金はなくなりましたよと、補助金は。したがって、農家の方がみんなたんぼを米つくってしまいましたという場合には、余る米ができるんだろうと思いますが、それについては全部農林省が買うから心配ないということであるのか。あるいは一定の量しか買わないということなら、まだその休耕の奨励は続けなくちゃならないということになると思うのですが、その点の基本的な考え方でけっこうですから大臣お願いします。
  104. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いまお話しの予約限度制でございますが、稲作転換との関係や、それから米穀管理の適正な運営を確保いたしまするために予約限度制というものを設けておるわけであります。で、この限度内のものと、それからいまのお話のような米とは区別して取り扱うのが筋ではないかと思っております。しかしながら、四十九年度におきましては予約限度数量自体を、昨年の八百十五万トンから今度は八百六十万トンにふやしております。そういう次第でございますので、出来秋の買い入れ限度数量の調整の措置を講ずることといたしておるわけであるますが、こういうことの運用にあたりまして、稲作転換に協力いたしてくれました農家に対しましては、優先的に調整配分が行なわれるようにいたしてまいりたいと思っております。
  105. 沢田実

    ○沢田実君 担当の局長からもう少し説明してください。
  106. 三善信二

    政府委員(三善信二君) ただいま先生から御質問がありました、どのくらい政府が買い入れるかということに関連いたしまして、四十九年度の全体の米の需給について御説明をいたします。  総需要量を私どもは千百五十五万トンと考えております。それで農家の消費量等が三百五十五万トン、差し引きまして八百万トン、この八百万トンは政府が買い入れるのが五百六十万トン、それから自主流通米で流通するのが二百四十万トン、この両方を含めて八百万トンでございますが、この政府が買い入れます場合に、五百六十万トンに備蓄分といいますか、持ち越し量といいますか、それを大体六十万トン四十九年度は考えておりますので、五百六十万トンプラス六十万トンで六百二十万トンを政府は買い入れる計画をつくっております。それに先ほど申し上げました自主流通米二百四十万トンプラスいたしまして八百六十万トン、大臣申されました八百六十万トンを予約限度数量として配分をすることにいたしたわけでございます。
  107. 沢田実

    ○沢田実君 そうなりますと、八百六十万トン以上に生産されますと、これはもう農家で、自分で処分しなくちゃならないということになってしまうわけですが、大臣、私が申し上げたいのは、この稲作転換の、このとおりにいくかどうかわかりません。それからこのぐらいの数量は、おそらく休耕してあるのが、そのままになるかどうかなるだろうという、農林省で立てている見通しが、そのとおりになるかどうかわからないと思っているわけです。ですから、実際に農家に生まれ農家に育った私どもの感覚からいえば、おそらくやっぱり米をつくるんだろう、その場合には一体農林省はどうするんだということなんです。この目標よりもよけいできた場合に、おまえらよけいつくったらもう買わないぞと言うのか、もう休耕しなくたっていいと言ったんだからできたものは全部買ってやるのか、どちらでしょう。
  108. 三善信二

    政府委員(三善信二君) その、いわゆる先生おっしゃいますのは、通称余り米とこう言っているものの処理をどうするのかということであろうと思います。先ほど大臣も申されましたように、四十九年度はこの予約限度数量というものを昨年の八百十五万トンから八百六十万トンに実はふやしているわけでございます。で、これ配分いたしまして、現実に出来秋にまた調整をいたすことにしております。特に県間の調整で、実は昨年からそういうことを、四十八年度産米から始めたわけでございます。その県間調整の場合に、稲作転換に協力された農家等につきましては優先的にその調整の際に調整をやってまいりたい、配慮してまいりたいということで、さっき大臣御答弁していただきましたが、実態的にそういうことで対処をいたしていきたいと思っております。
  109. 沢田実

    ○沢田実君 備蓄を四十五万トンふやします、それはわかりました。だけれども、あなた方そういう計算をして、稲作転換はこれだけあるだろう、これだけはおそらくつくらないだろう。そういう農林省の計算の上にいまの数字が出ているんですよ。そうでない結果になったらどうしますか。もしそうでない結果が出る見通しもあるんでしたら、私は、休耕奨励補助金を全廃するという、それが間違いなんだから、できた米は全部農林省で買うべきじゃないか、こう思っているんです。ですから、あなたのおっしゃるのは、大体こんなふうになるであろうと、それで四十五万トンもふやしたし、大体この辺でおさまるであろうと。そこはわかります、おっしゃることは。そのとおりにならない場合にどうするか。余り米とおっしゃるけれども、休耕奨励補助金をやめたのですから、だから、国の政策としては休耕はしなくたってよろしい、農家は自分のたんぼをみんな稲つくってよろしいというわけでしょう。その中でも皆さんはつくらないであろうというたんぼの数量を計算しているんですよ、大臣。それ全部たんぼつくっちゃって、米つくっちゃって、よけいできたらどうしますか。
  110. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) それでは、買い入れの前提になりまする本年の稲作転換と休耕田の関連について御説明申し上げておきますが、御指摘のとおり、稲作の転換目標数というものは、ほっとけばできるであろういわば生産量、それから需要量を見込みまして、それからさらに、先ほど食糧庁長官が答弁いたしましたいわゆる在庫の積み増し量というものをきめまして、その結果要調整数量、これは稲作転換と土地改良通年施行、両者で対応するわけでございますが、それは要調整数量は昨年が二百五万トンでございましたが、それに対して本年は百三十五万トンということでございまして、百三十五万トンを転作と通年施行で対応してまいる、こういうふうにいたしておるわけでございます。そういたしまして、百三十五万トンの内訳でございますが、そのうち百十八万トン相当が稲作転換、それから十七万トン相当が土地改良通年施行と、こうなっておるわけでございますが、この百十八万相当というのは、結果といたしますと、昨年の転作の実績数量とほぼ同じでございます。したがいまして、大体その程度はいけるだろう。もちろん休耕田を現在いたしておりますものから米に復帰するものがございます。私たちがアンケートで調べました結果によりましても、半分強は米に復帰する意向を持っております。しかし他に転作しようという意向もございますし、それとあわせまして全体の要調整数量は七十万トン減少いたしました理由を見合わせまして、——休耕田の中で半分以上が復帰するということを見合わせまして、この程度はおおむね達成するというふうに見込んでいる次第でございます。
  111. 沢田実

    ○沢田実君 おっしゃることは、この数字が出たもとだからわかるんですよ。大臣、こうでない結果になった場合を、いまそういうことを発表することがまずい理由があるんならお聞きはしません。要するに、農家立場に立って、ぼくは確認しておきたいのです。だけども、いまそういうことを農林省が発表するとまずいのだという何かあるんなら特別お聞きはしませんが、要するに、ここのところで大きな政府は政策の転換をしたのですから、米が余るから農家の諸君、これだけはやめてくれと、そのかわりこれだけ補助金を出しますよと、それをやりますよと。だけども、できるだけ転換はしてくださいよと。そのとおりいかなかった場合はできた分買うということでなければ、ぼくはならないと思うんですが、どうでしょうか。
  112. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 最初に生産調整をやりますときも、全中の会長との間にそういうことについていろんな話し合いがありましたが、先ほどお答えいたしましたように、米の管理の適正な運営ということを考えますというと、生産調整をやっておる最中でありますから、それの余剰の米につきまして同じ取り扱いをいたすということはたいへんむずかしいことだと思います。そのことはよく御理解いただけると思うんでありますが、当初生産調整を始めまして今日までの間に、いわゆる余り米で問題になった例もございませんし、しかも地域によりましては一〇〇%以上の御協力を願っておりますので、私どもといたしましては、今回の措置というのは計算的に見ましてたいへん無理のないところの計画をいたしておりますので、そういう問題は生じないのではないかと、こういうふうに考えております。
  113. 沢田実

    ○沢田実君 それでもう一つお尋ねをしたいのですが、いまの件は、大臣が心配するな、心配ないという結論のようでございますので、それくらいにしておきます。  それからもう一つの問題は、麦、大豆、飼料作物生産振興対策ということで、これだけの予算をとられて麦作振興地区というものを指定して二千円出すと、こういうようになっているわけでございますが、この麦作振興地区というものの指定は終わったわけですか、それともいつ終わるわけですか。
  114. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) 稲作振興地区として、手続として確定いたしますのは、これは予算が通ります時点でございますが、その前提といたしまして、昨年から、いわば予備的に指導調査をいたしたわけでございまして、いずれ麦作振興地区に切りかえる予定といたしまして、麦作振興の予定調査地区というのを現在調査をいたしておるのでございます。現在は調査地区のさらに前提になります予定調査地区の候補地を調べる段階でございまして、したがいまして、本年じゅうに予定調査地区の実態を洗いまして、それで大体要件に合致するというものを麦作振興調査地区に指定をいたしまして、そうして予算が通りましたら、正式に麦作振興地区に指定をする、こういう手続になるわけでございます。
  115. 沢田実

    ○沢田実君 そうすると、現在の予定地はおわかりなわけですが、その予定地で計算をしますと、農林省目標とはどんな状況ですか。
  116. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) 現在の予定調査地区でございますが、この数量を昨年ほぼ把握いたしまして、それを予算の数字に計上いたしたわけでございますが、現在さらにその中を精密に洗っておりまして、若干の変動もございますものですから、計数としてどの程度かということは正確には申し上げかねるわけでございますが、おおむね麦作振興予定調査地区内におきまして、前年度よりも二割か三割の間ぐらいの増加分になるものと、こういうように見込んでおります。
  117. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、その予定地は、百二十四億何がしの予算で大体間に合う範囲内、あるいは予算が不足なら追加ができるのかどうか。
  118. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) 現在、調査した中身を洗っておりますが、その結果は予算の範囲内でおさまるという見通しでございます。
  119. 沢田実

    ○沢田実君 それで一俵当たり二千円というものをおきめになった算定の基礎ですが、若干御説明をいただきたいと思います。
  120. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) この麦作生産振興奨励補助金二千円、一部地区が千八百円でございますが、これの基本的な考え方は、麦作振興する、いわば麦作振興地区内で反収をあげる、あるいはまた、麦の作付分をふやしていく。そのためにはいろいろなかかり増し経費が要るわけでございます。そのかわり増し経費これはいろいろな形態がございますが、それを積み上げまして約二千円というような積算をいたしたわけでございます。
  121. 沢田実

    ○沢田実君 そのときに麦を生産所得補償方式でやるとどのくらいになるというような計算をなさいましたか。先ほど大臣が、それでやったのでは、たいへん膨大な予算になるんだというお話がございましたので、農林省としては、麦をこの方式で計算すれば一俵何ぼになるという計算が出ていると思うのですが、幾らになりますか。
  122. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) 価格のほうは別途説明があると存じますが、若干先ほどと同じ御説明になって恐縮でございますが、この生産振興奨励補助金というのは、私たちは単なる価格の上積みとは考えていないわけでございます。これはあくまでも麦作振興すると、その場合にいろいろ反収をふやすためには、かかり増し経費がかかりますと、それを積み上げますと、こういう数字になりますと、もちろんその結果といたしまして、予定どおり農家の方々が反収増加あるいは作付増加に努力していただきまして、その結果所得としてはね返るということは当然でございますが、直接的に価格に結びつけて算定をいたしたわけではございません。
  123. 沢田実

    ○沢田実君 御質問は参考までにこういう計算もしてみませんかということです。おやりになった計算があるんなら教えてくださいということです。
  124. 三善信二

    政府委員(三善信二君) 御承知のように、麦価の場合には、これはパリティでやっておりますので、生産費所得補償方式で計算したことはございません。
  125. 沢田実

    ○沢田実君 いま大臣が、所得補償方式でやったらたいへんに金かかるとおっしゃったから、その大体を——そんなこまかいことは申しません。大体一俵このぐらいになるんだというもの、見通しぐらいあるでしょう。あなた方は、何百円違ったからといって文句言うわけじゃありませんので、その方式でやれば麦はこのぐらいになるんだと、しかし、それはいま大臣が言うように財政面でとてもできないんだと、ただいろんなことを積み重ねて二千円で農家の皆さんにはたくさんつくってもらおうと思うんだ、こういうことになるんじゃないんですか。二千円出そうと言ったら、大体こっちの目標だけ農家がつくるようにしたからそれでいいんだというお話ではなしに、二千円をきめるのにいろいろな立場の見方があったろう、その一つとして所得補償方式で計算をすれば麦の値段は何ぼになるんだと。いまできなければ後日計算して出していただければありがたいんですが、できますか。
  126. 三善信二

    政府委員(三善信二君) 直接計算はいたしておりませんが、先生御承知のように、小麦についてこれは四十七年度産の生産費でございますが、これは六十キログラム当たり五千八十一円に生産費はなっております。それに対しまして、これは比較論で恐縮でございますが、四十八年産の小麦でございますが、政府の買い入れ価格が四千三百四十五円でございますんで、それに生産奨励金というのをつけております。二百円つけておりますので、大体いまの買い入れ価格生産費に対して七八・九%、約八〇%ぐらいのカバー率になっているということで、これは一つの比較でございまして、先生おっしゃるように、直接これで計算はいたしておりません。
  127. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、二千円をプラスして大体所得補償方式で計算をすればこんな金額になるであろうというものの八割ぐらいになるんじゃなかろうかと、こういうふうに理解していいんですか、いまのお話は。
  128. 三善信二

    政府委員(三善信二君) 一俵当たり二千円というのは、先ほど農蚕園芸局長が御説明しましたように、これは価格ということではなくて、やはりいろいろの生産するためのかかり増しの経費で、それの生産奨励ということでございますので、直接生産費というようなこととの関係は、価格との関係はないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  129. 沢田実

    ○沢田実君 そういうことをお聞きしているんじゃないんですよ。あなた方にあとから何だかんだ文句言わないから、もっと安心してものを言っていただきたいんです、あとでこう言ったじゃないかなんて決して言いませんから。要するに、二千円をプラスして——なぜ私がこんなことを申し上げているかと言いますと、大臣の表明の中でいままでの農業とは変わった行き方をするんだという、去年の農産物の価格の問題やら、あるいはまた石油の問題やら、安いものを外国から買えばいいという考えじゃいけないと、ただ日本でできるものはこれは生産しようじゃないかと、特に食糧関係するものは国内でつくろうと、こういう基本的な考え方に変えているわけでしょう。それには、この二千円をプラスするにはいろんなことが、おそらく農林省で私は議論されたと思う。いまおっしゃったような考え方で二千円はプラスする、それはわかりました、二へんも三べんも言っていただかなくても。だけれども、私は立場を変えて所得補償方式という方式でやれば、大臣は先ほどとても財政で負担できないんだと、こうおっしゃったから、それならそれを計算すれば何ぼになるんですかとあなた方局長に聞いているんだよ。だから、実際そういう計算はいろいろな計算の方法もあるだろうからはっきりしないけれども、若干の違いは文句言わないから、米に準じたようなことをすれば大体これくらいになりますと、そうして、差額が何ぼくらいありますという、そういう一俵当たりの差額を知りたいんだよ、ぼくは。そうすればあなた、大臣がもうちょっとがんばって何とかできるということもあるのだし、これは基本法ですね——これがいわゆる資本主義経済のぎりぎりはどこか。もう資本主義経済を相当乗り越えてやっているのですから、いまは。そこに政治があり行政があるのだから。ただ経済の自由にまかしておいたんじゃいま国民がたいへんなのでいろいろなことをやっているわけですから、だからこの二千円プラスについても、そういう切りかえをするにはこれだけの金が実際かかるんだと、だから日本の現財政では無理なんだということが私ははっきりわかればそれ以上言いませんよ。ですからあなた方が計算してこういうものだということが農林省ではおそらく出ているんだから、そんな隠さずに言ってください。大臣、こんなこと隠さなくたっていいでしょう。
  130. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私が申し上げましたことは麦だけのことじゃありませんで、先ほどのお話は農産物はすべて価格補償をしなけりゃ増産できないじゃないかというお話でございますので、そういうことはたいへんなことでありますということを申し上げたわけで、その一つに麦も入るかもしれませんが、その点だけは誤解のないようにお願いしたいと思います。
  131. 沢田実

    ○沢田実君 麦が一番その中に入るわけですよ。輸入したほうがいいものはそんなこと言いません、ぼくも。日本でぜひつくろうと、これだけはもっと自給率を上げようというものが幾つかあるはずです。それが農林省でも麦であり大豆であると、あるいは飼料作物も何ぼかはしたいと、こう言ってこの政策を出したんですから、百何十億の予算も出したんですから。ですから、この二千円を計算するには相当いろんな議論があったでしょうと、だからこういうことの立場では、あなたがおっしゃったようなことでは二千円だと、だけれども、所得補償方式でいくと三千円になるのか五千円になるのか、プラスする金額が何ぼになるのか、わからなかったらいまでなくてもけっこうだからあとで教えていただければやめますから。
  132. 三善信二

    政府委員(三善信二君) ちょっと先生、こういうことを言わしていただいて恐縮かもしれませんけれど、実は麦に、小麦につきましては御承知のように、大体主食用として四百十万トンないし二十万トン輸入しているわけでございます。国内で麦、小麦その他大麦等も含めまして生産奨励対策をやっておりますのは、何もこれを全体の輸入量をカバーするという意味ではございませんので、その辺のところはひとつ御理解を願いたいというのが一つでございます。  それからもう一つ比較として申し上げてみたいと思いますのは、現在の御承知のように小麦輸入価格というのは、国際需給の逼迫というようなことも昨年来ございまして、非常に高くはなっております。大体トン当たり八万円ぐらいになっておりますが、まだ国内の買い入れ価格あるいは奨励金、そういうのをつけますと相当、十万円以上になっているというような、一つの比較としてこれは御参考のために申し上げておきたいと思いますが、この麦につきまして御承知のようにパリティ方式でいま麦の生産価格をきめているわけですが、これに、麦につきまして生産費所得補償方式というようなことをやること自体がなかなかむずかしい問題がある。それは非常に麦の生産は少なくなってきておりますし、あるいは麦の全体の農産物の中に占める国内生産のシェアと申しますか、非常に激減をしているというようなこと、あるいは麦作の経営につきましてもこれは統計調査部で生産費調査を一応はやっておりますが、そのサンプルというのは全国的に非常にばらつきが多いわけでございまして、そういういろんな問題もございまして麦は従来からパリティ方式で買い入れ価格をはじいているというわけでございます。そういうことで、私どもとしましては、麦につきまして生産費所得補償方式で今後この買い入れ価格をきめようという問題は考えておりませんが、先生御指摘のように大体でもいいから計算したらどうなるかということでございますれば、それは多少時間はかかりますけれども、私ども大胆にそういう計算をして、資料ができましたら先生にお見せいたしたい、こう思います。
  133. 沢田実

    ○沢田実君 大臣ね、繰り返すようですが、局長の答弁というのは現在の体制内における自分たちの考えでものを言っていますので、そうじゃなしに私は発想の転換という、総理も言ったように、いままでと同じ考えではなしに、大臣もこれだけのことをおっしゃったのだから、そのためにはいままでの方法じゃなしにもっと考えることができないか。だから、せめて米だけじゃない、麦も米と同じにできないのかということを大臣にお尋ねしているわけですよ。大臣が、米もそんな麦も一緒にやろうというんなら、農家は絶対それはつくります、安いからつくらないんだから。あんた地域の全国のバラつきがある、そんなこと米だって同じことだよ。麦だけの話じゃないよ。いまつくらなくなったというのは安いからつくらないんだよ。それをどこまで上げればいいか。午前中来価格の問題だと言っておりますが、そこでいまの政府の考えは、要するに海外に安いものがあれば買ってこようと、こういう考えでしょう。しかし、米は海外に安いものがあってもこれはもう買ってこないで、輸入はしないでも国内でつくろうという考えでしょう。米はそう踏み切っているじゃないですか。だから、せめて麦ぐらいそこまでいけないのかというのがぼくの考えなんだ。大臣は、ただこう言っただけで、それはいままでと変わりないぞと、二千円出してちょっとつくってくれりゃいいんだと、こういう程度のお考えなのか、麦もそこまで入れてもう一歩前進しようというお考えなのか、いかがですか。
  134. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) たいへん大事なことだと思いますが、生産奨励金を二千円という計算を出すことに対してかなり農家の方々でも共鳴していただいておる向きがございます。現にもう植えつけが済んでおるわけであります。大体予定の面積は植えつけが済んでおるようであります。そういうことでございますので、私どもといたしましては、研究は、続けて研究はいろいろいたしますが、当面パリティ計算でいままで麦価を計算いたしておりますが、御存じのように、何しろ麦につきましては、いまは非常に零細でありまして、たぶん二十三アールちょっとぐらい平均ではないかと思っております。したがって、これをどのように増産していくかということについては、なお研究問題でありますが、当面はいままでの計算方式でやってまいるつもりでおります。
  135. 沢田実

    ○沢田実君 それからこの県別の予想面積、これはございますか。あとでいただけますか。というのは、二千円、今度こういうのもらえるぞということが、農林省でおっしゃったことが農家のすみずみまで伝わったのかどうかということと、それから東北あたりのところでわずかばかりつくる人たちにもこれが適用されるのかどうか。どの辺の地域まで地域として指定されるのかということを聞きたいもんで、できれば県別の予定地域等も教えていただければと思います。
  136. 松元威雄

    政府委員松元威雄君) 先ほども申し上げましたが、実はこの麦作生産振興奨励補助金は四十九年度からでございますが、麦はその前に植えるものでございますから、事前に指導調査をいたしたわけでございまして、そこで御案内のとおり十一月ごろになりますと、ある程度めどがつくもんでございますから、めどを立てたんでございますが、その後、当時予定調査地区として県から報告のあがってきたものを現在ずっと詰めておりますもんでございますから、荒っぽいものはございますけれども、中身によりましてかなりいわば抜けると申しますか、ものもございます。と申しますことは、その麦作振興地区というのは、いやしくも麦をつくっておるばかりではございませんで、一定のある農協の区域帯に一定の面積という点もございますし、それからまた意欲なり今後の増産見込みというものもございますものですから、その辺を吟味いたしますと、最初にとった調査が若干狂ってくる事情もございますものですから、もう少し詰めた段階で御説明申し上げたいと思います。
  137. 沢田実

    ○沢田実君 午前中来の質問で大臣がよくおっしゃいましたのは、基盤整備等、あるいは構造改善等、そういうことが非常に大事なんだという答弁がだいぶございました。そこで、土地改良といいますか、農村の基盤整備というものは国でもたいへんな金をかけてやっておりますし、これを受けたほうの農家一つの、終戦後できた農地法ができたときの革命にも次ぐような一種の革命じゃないかというほどの私は感じを受けております。で、私も東北の一山村に生まれて育ったわけでございますが、いま土地改良が行なわれて、昔魚釣りをした小川もなくなってしまっておりますし、全く土地が変わってしまっております。ところが、農村の人たちは、もと自分たちがつくっておったところをまたつくりたい、こういう希望がありまして、どこでも基盤整備したあとの土地の何といいますか、おれがこっちだ、あれがこっちだといって、また上になった人たちが適当にやるというようなことで争いが起きたり、いろいろなことをやっているのはこれは御承知のとおりです。そこで私は、これはこれなりにやはり一つの大きな農村にとってはほんとうに革命、という表現が適当かどうかわかりませんけれども、たいへんな土地に対する考え方の変わりようなんですから、前もって農民に対する意識革命の教育といいますか、そういうことが非常に必要じゃないかということを農村に行ってみてしみじみ思うわけです。  それで、いくら基盤を整備しても、三反歩ぐらいの一枚のたんぼにしても、一ヘクタールずつ持っている農家の人たちがみんな自分で同じように機械を買って、みな同じことをやっておるわけです。そうして一カ所にしないで、あっちに少し、こっちに少し持ってやっているわけです。何のための基盤整備かわからぬようなことをやっております。だから私は、せっかく金をかけてやるなら、もう少し意識革命ができるような指導も行ないつつやる方法がないのか。  私の生まれた村落は十六戸でございますが、十六ヘクタール。十六ヘクタールで十六戸ですから、二人か三人で十分にできるんです。大型機械を持ってそれをやれば、あとの人たちは全部手がすくんです。まあ手をすかしても行って働くところがありませんから、そう簡単にはまいりませんが、それはまた別問題として、そういうような方向で共同耕作ができれば、これはもっともっと合理化できます。それが幾ら農家の青年にも話してみても、やはり昔からの自分のたんぼということにこだわっております。若い人たちがそのつもりになっても年寄りはなかなかそれに従えないというような問題があります。それで私は、先ほど来大臣がおっしゃっている基盤整備が大事なんだ、形の上のたんぼをきちっとする、それは必要でありますが、農家の人たちの考え方ももう少し一緒に指導して、それで大型の機械でせっかく基盤整備のできたところは共同耕作ができるような、あるいは二人や三人でそのぐらいのものはできるような、それで農村の余った力をもっと活用できるような方向への指導が必要ではないか。こんなふうにしみじみ思っているんですが、そんなことについて大臣の所見を伺って、私の質問を終わります。
  138. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほど規模拡大のお話を申し上げましたが、ただいま沢田さんのおっしゃること全く御同感でございまして、そういう方向、ことに意識の転換といいますか、そういうことの指導はたいへん大事なことだと思っております。で、規模を大きくすることによって生産の選択的拡大、それから生産性の向上、そういうことを期待いたすわけでありますが、いまお話のございましたような地方の農村の若者たちが喜んでこの生産のにない手になってもらうようにいたすためには、やはり技術経営の農家の育成と、それからこれを中核といたします兼業農家も含めた集団的な生産組織の育成をはかっていくことが必要だと思いますが、ただいまお話しのようなことにつきましては、これは私ども将来の農業考えましていろいろなことをやっておるわけでありますが、いまお話しのように、持っております十六軒の人たちが十六ヘクタール。こういうようなことにつきまして、どちらでもそうでございますが、地方の方々は先祖代々の土地に愛着をお持ちだと、そういうことをどうして意識を新たにして協力していただくかということのためには、まあ一つ農業委員会による農地移動の適正化をはかる仕事がございます。  それから先ほどお話し申し上げましたような農地保有合理化法人による農用地、それから開発用地の買い入れ、売り渡し、そういうようなことも必要でありましょうし、それから借り受け契約、そういうことの事業を拡充してまいることが必要ではないかと思っております。  それからまた、農業者年金基金からの貸しつけ等も考えられるわけでありますが、そこでさらに今度新しく私ども第二次の農地構造改善事業、それから農業団地育成事業というものを考えておりますが、この農業生産性の向上をはかりますとともに、これらの施策をあわせて自立経営を指向する農家を中核といたしまして、集団的生産組織の育成のため必要な助成を行なっておるわけでありますが、農地の売買それからまたは貸借による経営規模の拡大が進んでおらない状況でございますので、規模拡大と農地の有効利用をはかるために当然この更新することとならない利用権、こういうものの計画的な設定の道を開いてまいることが必要ではないかと思っておるわけでありますが、そういうような観点から、農振法の改正も実は考慮いたしておるというような次第でございまして、やはりいずれどちらでもそうでありますが、先祖から伝わってまいりました農地に執着を持っておられる方々の農地をどのようにして意識転換をしていただいて、合理的にこれを規模拡大して、産業として成り立つようなものにするかということについては、施策もさることながら、やっぱりそういうことの意識についての啓蒙と申しますか、そういうこともあわせてやってまいる必要があるのではないかとこう思っております。
  139. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  次回は明後二十一日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三分散会      —————・—————