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1974-05-16 第72回国会 参議院 逓信委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十六日(木曜日)    午後一時十一分開会     —————————————    委員の異動  五月十五日     辞任         補欠選任      稲嶺 一郎君     西村 尚治君  五月十六日     辞任         補欠選任      小笠原貞子君     沓脱タケ子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         川村 清一君     理 事                 今泉 正二君                 植竹 春彦君                 古池 信三君                 横川 正市君     委 員                 長田 裕二君                 新谷寅三郎君                 西村 尚治君                 松岡 克由君                 松本 賢一君                 森  勝治君                 山田 徹一君                 木島 則夫君                 沓脱タケ子君                 青島 幸男君    国務大臣        郵 政 大 臣  原田  憲君    政府委員        郵政大臣官房長  神山 文男君        郵政省簡易保険        局長       野田誠二郎君        郵政省電波監理        局長       齋藤 義郎君    事務局側        常任委員会専門        員        竹森 秋夫君    説明員        会計検査院事務        総局第二局長   柴崎 敏郎君    参考人        日本放送協会会        長        小野 吉郎君        日本放送協会副        会長       藤根井和夫君        日本放送協会専        務理事      藤島 克己君        日本放送協会専        務理事      松浦 隼雄君        日本放送協会専        務理事      野村 忠夫君        日本放送協会専        務理事      坂本 朝一君        日本放送協会専        務理事      斎藤  清君        日本放送協会理        事        山本  博君        日本放送協会理        事        川原 正人君        日本放送協会経        理局長      堀場 仁徳君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本放送協会昭和四十六年度財産目録貸借対  照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書  (第七十一回国会提出) ○簡易生命保険及び郵便年金積立金の運用に関  する法律の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 川村清一

    委員長川村清一君) ただいまから逓信委員会を開会いたします。  日本放送協会昭和四十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書を議題といたします。  前回に引き続き、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 山田徹一

    山田徹一君 NHKは、従来はかなり余裕のある経営がなされていましたけれども、四十七年度以降は実質赤字予算編成していることも私よく承知しておりますけれどもカラー料金の設定された四十三年度以降の収支決算状況についてどうなっているか、御説明をお願いします。
  4. 山本博

    参考人山本博君) 四十三年度以降の収支決算数字を、いろいろな取り方がございますけれども特別収入を除いた経常事業収入経常事業支出で申し上げますと、四十三年度経常事業収支差金はこの年においては黒字になっております。これはカラー料金を設定いたしますと同時に料金のいろいろの改定をいたしましたので、この年におきましては経常事業収支差金決算額で十八億の黒字になっております。それから四十四年度は十六億の収支差金、それから四十五年度が十五億、四十六年度収支差金といたしまして三億九千二百万、これがピークでございまして、四十七年度以降におきましては、ただいま御指摘がありましたように、これが赤字になりまして、経常事業収支差金で四十七年度は五億六千六百万の赤字ということになっております。  これを年度別予算額決算額との間でなぜこういう傾向が出てきたかという特に顕著なのが受信料収入でございますので、その点だけふえんをいたしておきますと、四十三年度におきましては予算決算との間の増収額が四億三千五百万、四十四年度が九億九百万、四十五年度が十億、四十六年度が四百万、これを境といたしまして、四十七年度は十億の減収、こういう傾向になっております。  ちなみに、この面を件数で見ますと、契約総数は四十四年度が最もピークになっております。これは契約総数がいわばテレビをお持ちになる方が非常にふえたということでございますが、それ以降は白黒からカラーに転化する数字が非常にふえてまいります。四十六年度がそのピークでございます。白黒からカラーにかわるピーク。これ以降、普通契約からカラー契約に転換する数字が逐年落ちてまいりますと同時に、ただいま申し上げました四十四年度契約総数の純増のピークでございます。それ以降はカラーをお持ちになる方の数が逐年頭打ちになるという傾向がただいま申し上げた経常事業収支差金の結果にあらわれるというのが大体の傾向でございます。
  5. 山田徹一

    山田徹一君 先ほど説明がございました中で、予算とそれから決算との事業収入の関係を見ますと、四十四年度予算見込みから決算では十億四千九百万円の増になっておる、四十五年度には十億八千万円の増ですね。それから四十六年度は前年の十五分の一に落ちて七百万円の増、四十七年度はそれが六億のマイナスになっている、こういうことですが、なぜこのようにダウンをしたのか、いわば事業収入予算編成決算とのこの開き、ここに予算のときの事業収入編成に何か甘さがあったのではないだろうか、見込み違いがあったのじゃないか、こういう点どうでしょうか。どういうふうな予算編成のときの考え方がなされているのでしょうか。
  6. 山本博

    参考人山本博君) 概括的に申し上げますと、その年度ごと予算決算というのは完全にぴったりいくということは、これはなかなかむずかしいことでございます。特にテレビの購入の傾向が非常に顕著な時代、あるいはそれが頭打ちになった時代、そういういろいろな傾向をその年々の予算編成のときには十分いろいろなデータを使って考慮いたしますけれども、その一年間の間にやはりこちらの予想いたしました数字だけが同じ傾向で伸びるというようなことが完全にそのとおりまいるというわけにはまいりませんので、勢い、決算を見ますと、予算のときよりもあるいは増収になりましたり、あるいは四十七年度から減収になるという差がございますので、そういう差をできるだけ少なくするために、予算編成のときにはいろいろなデータを使いますけれども、四十三年度以来のテレビを購入される方、あるいは白黒からカラーに転換される方、また、かたがたそういう傾向のほかに、社会的に不在世帯が非常に多くなってきたとか、あるいは移転の率が非常に高くなってきたという他の要件もございまして、全体の把握が決算の際と予算の際とはぴったり一致するという、誤差を少なくするよう努力はいたしましたのですけれども、やはりこういうような結果といたしまして毎年プラス、マイナスということが出たわけでございます。  予算編成時点におきましては、それなりのいろいろなデータを使って予算編成をいたすわけでございますけれども、結果としてこうなりましたということは残念でございますけれども、できるだけこういうことを少なくしたいと反省としては思っております。
  7. 山田徹一

    山田徹一君 それは了といたしまして、次の問題は差益金の問題でございますが、四十五年度収支差益が十五億円、四十六年度差益金が三億九千万円、前年に比べて四分の一に落ちた。四十七年からは実質的な赤字である。これには物価の問題あるいは人件費の高騰あるいは未収金回収不能、こういうような問題が当然大きな原因であろう。さまざまな理由はあることも十分わかっておりますが、いずれにいたしましてもNHK受信料が唯一の経営財源であるとする以上、今後も経済環境からいいまして決してNHKは楽観はできない、こう思うんです。  だからといって、その受信料値上げというわけにもいかない。まず値上げを考える前には何が必要か。やはり受信契約普及とか、こういうことに積極的な努力が十分なされなければならぬだろうと思うわけですが、この受信契約増減状況というものを資料によって見ますると、四十六年度予算ではカラー契約が四百二十万の増を見込んでおりますが、そのうち白黒テレビからの移動が三百八十八万件、新規に三十二万、それから白黒契約新規が三十六万、こういうふうになっているわけですが、今日では、その普及状況がどういうふうに変わっていっているのか。さらに具体的にこの普及開拓という問題に対してどのような努力をなさっているのか、そういう点を説明していただきたいと思います。
  8. 川原正人

    参考人川原正人君) いまの御指摘のとおり、テレビ、特に最近のカラーテレビ増加状況は四十六年度がいわばピークと申しますか、年間増加としては一番高かった年でございます。その後カラーテレビジョンの一般の普及かなり数字に達しまして、まだ決して飽和点とは申しませんが、相当なところまで普及いたしましたもので、その後はもうカラーテレビジョン増加状況もやや下がりぎみになってきております。  数字で申し上げますと、いま御指摘のとおり、四十六年度目標は四百二十万という目標を私ども計画として持ったわけでございますが、実際としては四百十三万の契約増加でございます。前年度は三百六十六万、さらにそのもう一年前の四十四年度は二百三十万ぐらいの増加でございました。これが二百三十万から三百六十六万、四百十三万と四十六年度ピークに達したわけでございます。その後、四十七年度はこのカラーテレビジョン増加は三百八十二万、年間増加というふうになっております。四十八年度につきましては、いま最終的な数字を詰めているところでございますが、これはやはり三百万以下にならざるを得ない、二百七十万ぐらいになるんではないかといま推定をしております。  この傾向はいま申し上げましたような事情に基づきますが、ただテレビをお持ちの受信者の中での、全体の契約の中でのカラーテレビジョンの比率はもちろん逐年増加をしておりまして、ちょうどこの四十六年度というのが年間増加数でも先ほど言いましたようにここ数年のピークでございますから、この年にNHK有料契約の中でのカラーテレビジョンの率が五〇%をこした事でございます。その後、四十七年度に大体六五%近く、それから四十八年度ではおそらく七四、五%までカラーテレビがいくであろうというように見ております。
  9. 山田徹一

    山田徹一君 何となくその伸び率あるいは増加率から悲観的な感じを受けるわけでありますが、NHK電波を放送するあるいは撮影所においてかかる経費というものは受信者が多いから少ないからによって原価は変わらない。とにかくふえてくれることがいいわけなんでして、したがって、いまのお話ですと、大体普及率が約八〇%ぐらいになるのじゃなかろうか、こう思いますが、しかしこれは私の単純な計算ですけれども、もっと悲観的にならずに積極的な普及活動というものを考えたらどうだろうか。  で、ちょっと私の計算でやったんですけれどもNHKでは四十五年の国勢調査基準にして普及率というものを見ておられるようであります。四十六年には八四・四%、それから四十八年では八八%、こういうふうに聞いておるのですけれども、四十五年が二千八百二十五万世帯ございます。それの八四%としますと、四十六年度二千三百五十二万件の受信者がある。四十八年には八八%に伸びております。基準を四十五年度に置きますから八八になりますが、そうすると二千四百八十六万ということであります。そこで今日厚生省の人口問題研究所推定によりますと四十八年度日本世帯数が三千八十万世帯。八八%がざっと八〇%ぐらいに当たるわけです。  それからもう一つ、辺地の難聴難視ですね。その地域の人口が大体百十七万世帯と聞いております。まあ十万やそこら増加によって解消しているところもあると思いますが。さらに四十六年度以降の世帯増を六、七、八と三年間のトータルを見ますと、これが約三百万世帯ふえております。こうなると百十七万世帯とそれからいまのふえた分と加えるとざっと四百万世帯ということになるわけです。さらに四十五年度の二千八百二十五万世帯に対して普及してない率があるわけです、八八ですから一二%ある。その一二%を掛けると三百万世帯。そうしますと両方加えると約七百万世帯というものがまだ残っているということなんですね。  さらに単純な計算で、四十八年度世帯が三千八十万世帯で八〇%の契約率ですから、残りの二〇%といいますと六百十八万世帯になります。それに一年間のいままでの核家族ができる増加率を加えてみると、これも七百万世帯ぐらいになる。結局、まだまだ七百万世帯、四十八年度世帯に比較すれば二四%の世帯がまだテレビを買ってない、見てないということに、計算上ですが、なります。四分の一のかっこうになるわけですから、まだまだそんな悲観的な気分でなしに積極的なもっともっと普及活動をやるべきだと私は思うのですけれども、いかがでしょう。
  10. 川原正人

    参考人川原正人君) 数字の問題、後ほどまた御必要あれば御説明するといたしまして、確かに御指摘のとおり、私どもとしてはもはや一〇〇%終わったというふうには思っておりません。まだまだ努力の余地はあるものというふうに思っております。  ただ、いろいろ努力はやっているのでございますけれども、残念ながら全体の傾向としましてはやはりテレビジョン普及、特にここ数年来最大の私ども財政収入増加のもとといいますか、あれでありましたカラーテレビジョンというものもかなり普及の度が進んでまいりまして、残ってまいりましたところは、いま申し上げました——確かにいま全国の全世帯と私ども契約からまいりますと六百万ぐらいの統計上の開きはございます。ただ、この間、経済企画庁等統計によりましても、まだカラーテレビジョンそのものをお持ちでないという、特にこれは国勢調査の中に独身世帯も全部入っておるわけでございますけれどもそういうところではまだテレビジョンをお持ちでないというところも経済企画庁等の推計によりましても半分くらいございまして、この辺にテレビジョンがもう少し普及し、かつまたその普及したテレビを私どもがどこまで掌握できるかというその努力にかかっていると思います。  それからもう一つは、これはこの委員会前回も御説明申し上げましたけれども、最近の全国世帯の中におきます移動といいますか引っ越しが非常に都市化現象に伴いまして大きくなってきた。それから同じ都市内でもひんぱんに特に若い世帯独身世帯移動率がたいへん高くなってまいりました。この方たちを協会がどこまで契約としてフォローできるか、ここにかかってきていると思います。  若干数字を申し上げますと、四十八年度、九年度等におきまして、九年度はまだ計画でございますが、私ども年間に新しく契約していただく世帯は実は三百万前後あるわけです。ところが一方で二百数十万の世帯引っ越し等を中心としまして移動されまして、結局、契約からはずれるといいますか、そういうことを繰り返しやっております。そのことが統計的にある時点を切りますと、いま言ったような数字の差になって出てくるかと思います。私どもとしてはその辺を一番いま対策を要する問題といたしまして、特にこの移動といいますか、あるいはおたずねいたしましてもなかなか若い世帯の場合昼間おたくに御家族の方がいらっしゃらない、その辺をどういうふうにして受信者接触するか、その辺が一番の問題だろうと思いまして、その点に現在契約活動の一番の重点を置いて考えておるわけでございます。
  11. 山田徹一

    山田徹一君 続きまして、財源の確保ということが一番問題になるわけでありますので、当然、受信契約普及とあわせて問題になるのは受信料収納という問題だと思うんです。これはきわめて重要な問題だと私は考えます。  四十六年度報告書によりますと受信料未収金が十九億五千万ですね。そこで四十三年度以降の決算におきまして、未収受信料未収欠損引当金額、それと未収受信料欠損額、こういうものをひとつ教えていただきたいと思うんです。
  12. 山本博

    参考人山本博君) 四十三年度以降の予算におきます欠損償却額欠損償却率並びにそれの決算時の状況と比較して申し上げます。  四十三年度におきましては、予算では償却率は〇・六%と計算いたしましたが、決算時におきましては〇・七二%、したがいましてこの差として必要になりました金額が三千二百万。四十四年度予算で〇・六%と計算をいたしましたが、決算時に〇・八八%、最終的に二年後に確定したときには一・〇五%、これに要しました引当金不足額、これが一億三千五百万。四十五年度償却率〇・六%と計算をいたしまして最終的に一・一九%、これに要しました金額が二億九千四百万。四十六年度予算〇・六%計上いたしまして最終的な欠損率一・一%で、これに要しました額が五千万、四十七年度予算はこのとき一・一%計上いたしまして最終的に一・三%、約一千六百万ぐらいの不足で償うということになっております。
  13. 山田徹一

    山田徹一君 四十六年度決算表を見ますと関連経費二十六億八千万計上しているわけですが、この当初予算としては先ほど〇・六%を未収欠損引当金として考えた、こういうお話であったわけです。ところが実際はどんどん、ときには四十五年度一・一九%に実質的にはなった、倍ですね、引当金予算決算との開きというものがあるわけなんです。  この引当金のとり方にも予算のときに問題があるんじゃないかとも思いますし、この欠損引当金についてはどういうふうなお考えでしょうか。頭からもうこれは回収不能になるんだというような弱気のことなのか、頭から見込んでいくということですけれども、この辺をちょっと説明してください。
  14. 川原正人

    参考人川原正人君) 頭から回収不能とは毛頭考えてございません。私ども特に営業として収納集金に当たるものとしましては、かりにその年度収入に至らなくても必ず翌年度、さらに翌々年度と、いただかなきゃならぬものは私どもの義務といたしましてもこの回収努力する、こういう姿勢でおります。  たとえば四十六年度先ほど指摘ありました最初の未収金十九億にいたしましても、実は、翌年度にさらに回収につとめまして、このうちの九億は次年度の四十七年度回収いたしました。その結果、最終的にこれは私ども会計上の処理といたしますと、一応、会計上は翌年度をもって欠損償却として落としております。そのときの金額が残った約十億でございます。ただし私ども営業のほうの実際の仕事としましては、財政的にはその二年度目で一応欠損償却といたしましても、これはやはりいただかなきゃならぬ債権でございますし、負担の公平ということもありますので、さらにその翌年度年度というふうに、お支払いいただかなかった受信者のところへお伺いしてあくまでも回収につとめる、こういう姿勢でおります。
  15. 山田徹一

    山田徹一君 毎年、これからはおそらく十億以上の引当金が出てくる、四十七年度になってくると先ほどの仰せでは一・一%、これこすでしょうおそらくね。その次の年はと、こうまたなってくるとどんどん重なってくる。トータルすると三年間でこの四十六年を基準にして考えても三十五億ぐらいの累積、切り捨てをしておるわけですよね。実際はこの集金はやっておるということですが、その効果がなかなか出てこない。これはわかるわけなんです、その中身は。  しかしながら、この引当金の問題についても、銀行等でいえば貸し倒れ金に当たるわけですけど銀行ではいま政府で認めているのが一・二%ですね、四十九年度からは一%しか認めぬことになっています。アメリカあたりでは大体銀行に対して、銀行なんてのは金を貸す側ですから、ないところへ貸すんですから、どうしてもそれを企業上考えざるを得ないというところで認められたもんであろうと思います。だから企業で当然この引当金経営上考えるべきでありましょうが、しかしこれがぐんぐん上がるということは許されない。それだけ怠慢ということにもなる。そこでアメリカあたり金融界では大体期限をきめて五年なら五年、三年なら三年という期限をきめて、その間の引当金が最高一・八ぐらいになっているらしいですが、そのかわりそれでもうあとはさせない、切ったその次からの年度には引当金をとらさないというほどにやっているところもあるわけですね。  で〇・六という数字で一応予算では組んで、実質にはこうだと、そこらの辺にもう少し考える点がありはしないかと思いますし、回収努力というものに対してそういう上からも全魂を傾けていく、これは当然と思いますが、具体的な施策としてどういうふうな方法を考えていらっしゃるのか、努力されているのか、その点をお尋ねします。
  16. 川原正人

    参考人川原正人君) 御指摘のとおり、私どもとしては、あくまでも法律で定められた受信料でございますので、これはお払いいただけない聴視者に対してはどこまでもお払いいただかなけりゃならぬし、その努力を続けておるわけでございます。  もちろん、いろいろな方が受信者の中にございますので、中には立場の違いとか意見の違いとかでどうしても払わないと言われる方に、どこまでこちらがその要求——要求はするわけでございます、できるかという問題はありますけれども、実際問題としては、先ほど一番未収金の大もとになっている点を申しましたけれども未収金になるものの最大のものは徴収に伺いましてもお宅にいらっしゃらない。比較的独身あるいは若い御夫婦で共働き、こういう家庭が最近非常にふえております。そういうところでなかなかその回収がお会いできないわけですから意のままにならぬというのが最大の問題でございます。  私どもとしては、これに対する対策としていま一番力を入れておりますのは、一つ口座によるお支払い、つまり金融機関銀行等の預金から自動的にお払いいただく、こういうことであれば昼間は御不在であっても、私どもが行き違いになりましても、お払いいただける。それからもう一つは、前納ということばで申しておりますけれども、要するに一括払い——半年分なり一年分なり一括払いしていただく、こういうことであれば毎月お目にかかれなくても年に一回ないし二回接触があればまとまったお金はいただけるわけです。そういう点にいま一番力を入れております。  それから、もしそれでもなおかつそういう処置がなかなかとっていただけない、あるいは接触が不可能なところには文書による督促といいますか、これに力を入れておりまして、予算的にもこの辺はかなり力を入れて、できるだけ郵便振替等でもって御送金いただく、こういうこともやっております。
  17. 山田徹一

    山田徹一君 その結果、どうですか、効果が出ておりますか。
  18. 川原正人

    参考人川原正人君) いま打ちました個々の対策については、私どもとしては、それなり効果が出ているというふうに思っております。  たとえば先ほど申しました口座のお支払いのやり方でございますけれども、これもひところ、三十七年から始めたわけでございますけれども全国で毎年六十万ないし八十万、一番多いときはもう少しふえましたけれども、最近でも年間に八十万ぐらいこの口座支払いがふえておりまして、全体の約二九%、三分の一ぐらい、都市部においては最近では四〇%ぐらいの方をこの口座支払いにさしていただいております。これはこれなりに相当効果をあげたと思っております。また一括払いの分につきましても、すでに全国的に見ますと二千五百万弱、二千四百数十万の受信者のうち約一千万をこしてまいりました。これも相当の効果になっております。  ただ、残念ながら、それじゃ全体としてどうかといいますと、先ほど指摘のとおり未収金がわずかながらですが、ちょっとふえる傾向にあるので、いま一段このほうに力を入れていきたい、かように思っておるわけでございます。
  19. 山田徹一

    山田徹一君 いま聞いておりますと、相当効果があがっているように聞こえるわけですけれども最後におっしゃったように結果的に見たらあまり効果があがっておるほうでなくて、むしろ欠損金として落としていく額は上がっていっている、こういうかっこうになっているんですよね。  この欠損金として落とすほうの問題として、引当金の問題を先に言いますと、この引当金予算面では現在ではどの程度見込んでいるんですか、〇・六でやっぱりやっているんですか。
  20. 山本博

    参考人山本博君) 先ほど申し上げましたように、四十七年度は一・一%として予算を組んでおります。
  21. 山田徹一

    山田徹一君 一・一%といえば四十六年度でも一・〇五ですよね、おたくのデータから見ると。そうすると、一・一というと、頭からもう大きく組んでいっている。努力してみようという予算編成の立場からもっともっと縮めようというような——これじゃちょっと見込みが多過ぎるんじゃないか。銀行ですら一%に下げたんです、一・二を四十九年度は一%に下げているんです、いろいろそれは異論ありましょうけれどもね。だから努力面において予算を組む上からすでにもうそこで弱気になっている、予算編成のときに弱気になっているというような感じを受けるんですがな、そうじゃないでしょうが、そういうふうに受けますよ、これでは。一ぺん一考を今後要する問題だと思います。それから未収金回収にあたってもっともっと方法を考えにゃいかぬ、このように思うんですがな。それについては前納それからいまの口座、これの積極的な啓蒙と普及に当たらなければならない、こう思うわけです。  それで、この前納と振替制度をつくられた現在のその割引料といいますか割引率といいますか、それはいまどうなっておりますか。
  22. 川原正人

    参考人川原正人君) 一括払いをしていただく場合には、一年分まとめてお払いのときには受信料の一カ月分を割り引く、それから半年分お払いいただく場合には大体その二分の一、ちょっと端数が出ますけれども二分の一、これは利率にいたしますと大体八・三%ぐらいになろうかと思います。これを割り引くようにいたしております。
  23. 山田徹一

    山田徹一君 一年で一カ月分、半年で半月分ということですね。  何か勘定はいいようですけれども、払うほうにしてみたら、一年の人も半年の人もサービスは一緒や、それじゃ半年ずつやったほうがいいじゃないかと。銀行の預金の利息でも半年の預金利息は六・二五、一年になると七・二五%、郵政省の定額貯金でも半年と一年あるいは二年、三年と変えていっているんですな。そうしてみると、この一年と半年の分の率が同じ率だということは啓蒙する上についちゃまずいんじゃないか、変えるべきだ、こう考えるんです。  いまのように御夫婦共かせぎでいらっしゃらない、そういうところこそ前払いをしやすくし、喜んで進んで前払いをできるようにしてあげることが未収を減していくことにもなるし、またテレビ契約した、ところが半年の間に転居をした、こういうふうな家族もだいぶある、先ほど二百万ぐらいがわからぬようになるという話ですが、そういう方々も一年間の前払いでやっておけば、どこで見ても盗んでやっておるような感じは持たぬわけですよ。そういうところに対してもやはり大きく手が打てる、その努力に対してもっと考えるべきじゃなかろうかと思うのですね、率を。この点会長さんどうですか。
  24. 小野吉郎

    参考人(小野吉郎君) 御指摘の筋は理論的にはそのとおりだと思います。  ただ、いろんな端数がつくもんですから、あれを創設いたしました三十七年当時には、類似のそれで、そういう例をとっておられるのは簡易保険の保険料の前納でございます。これは一年分払えば一カ月分、半年分なら半月分の割引をすると、長い伝統でやっておられます。それを前例ととって、三十七年度にこういった受信料の前納制度についても取り入れたのでございますけれども、よくよく考えてみますと、御指摘のとおりのようなそれは素朴にいって当然だろうと思います。  ただ、普通長期の預金の金利と同様には考えられないと思いますけれども、何かやはり一年分前納と半年分前納では、長期の一年の前納のほうが有利だというものがなければ、これはやはり魅力がないと思いますので、将来の大きな課題問題であろう、かように考えております。
  25. 山田徹一

    山田徹一君 おそらくこういうことは、私はこの委員会に初めてなにしたわけですけれども、前にも話はあったんじゃないかと思いますが、でおそらくそのときも、いまの会長さんのおっしゃったような答弁があったかと思うんです。  だから、ここでそういうお話を約束されたら何らかの手を早く打つ、こういうふうにお願いできますか。
  26. 小野吉郎

    参考人(小野吉郎君) 将来いろいろ検討を加えまして——もっともこの面ばかりではございませんけれども、現在の財政の現状にかんがみ、またいま非常に御心配をいただいておりますテレビ普及がやや限界に近くなった、またそのテレビの中でも白黒からカラーテレビヘの転換が、もうカラーの全盛時代を迎えまして、おそらく今年度予算を執行いたしますと全契約の中でカラー契約の占める割合は八二・五%ぐらいになります、相当にもう天井に近くなっておるのではないかと思います。  そういうようないろいろな困難な問題をかかえたさなかにおきまして、契約の獲得に対する十分な遺憾のない努力収納の万全を期してまいりますことは当然のことでございますので、そういった面について、現在でも集金にあたっております職員、また集金にあたっておる職員だけで片づかない問題については幹部も出向きましていろいろな努力をいたしておりますけれども、これにもやはり限界がございます。そこにはお支払いやすいような、そういうような理解を持っていただけるような制度も考えなきゃならぬと思いますので、そういうことと一括いたしまして検討を加えてまいりたいと思います。
  27. 山田徹一

    山田徹一君 それから一年と半年の前納に対しての開きというものに加えて、今度は、率の値上げですね。  やはり魅力というのは安いというところに魅力を持って前納に踏み切るわけです。してみると、おかしな話に例をとるかもしれませんが、映画の前売り券でも二割以上安くするんですから、そこまではせぬでいいですが、せめて一割ぐらいはやったらどうか。公定歩合が九ですし、それにさらに債券、社債等でも九・二ぐらいのあれは長期でありますけれども、そのくらいのことはしておるわけですからね。またそれをすることによって人件費も労務費も相当節約もできるし、あらゆる面で相当以上のものが経理上プラスするんじゃなかろうかと思いますので、いまの手紙を出すとか、こういうふうに書いてくれとかいうようなことだけでなしに、やはり小まめにそういう前納を推進していくという方向にやったほうがほんとうに得するのじゃないか、こう思われるわけです。テレビ電波というものは、受信するほうは電波を金出して見るのとただで見れるのと両方ある、そんなところにも単純な考え方でありましょうけれども、おれはNHKなんか見ぬのだと言われることも考えにゃならぬ。都市難視の問題、いろいろ辺地の問題もありましょうが、なんかを考えても、やはりこの前納ということに全力を入れるという方向で進めていただいたら、もっともっとこの引当金にしても正当な見方が出てきやしないか、こう思います。  さらに、やはり公平な立場から見て、正直者が払っただけ損だ、言い張って文句を言っておるほうが得だ、こういうふうになっても困るわけです。それに対してはどういう処置をとるのか。  また、いまNHKがすべて辺地あるいは難視のところに持っていってテレビの特殊な局をつくったりいろいろな経費を使っているわけです。民放にはそれが——やっているところもありますけれどもNHKが全部やっているようなかっこうになっております。そういう経費等も考えて、ここにもう一つ何らかの方法を講じて、しかも政府がそれに介入して云々というようなことのないような、そういうものをこしらえてやっていかなきゃならぬということもお考えのようでありますが、具体的にいまどういうようなことがそういう点について考えられておるか、ちょっと教えていただいたらいいと思うんです。
  28. 川原正人

    参考人川原正人君) なかなかむずかしい問題でございまして、私どもとして、いまこうすればこうなるというきめ手といいますか、確定的なものは率直のところまだ持ち合わせていない状況でございます。  ただ、いま御指摘の点等も十分勘案いたしまして、なお一そういろいろな多角的な面から検討いたしまして可能なものはまた御説明の機会もあろうかと思います。現行といたしましては、先ほど申し上げましたような手だてを全部総合いたしまして、私どもの持てる力を全部フルに動員して、一そうの契約の獲得あるいは先ほど来御指摘未収金回収もとことんまで努力を続けていきたいかように思っておるわけでございます。
  29. 山田徹一

    山田徹一君 私も、この問題についてはいまいろいろと本を読んでみたりして勉強をしておりますが、もっともっと議論もしてみたい、このように思っておりますが、きょうは時間もありませんから、その点はまた今後に譲りまして、ひとつしっかりやっていただきたいと思います。  以上で終わります。
  30. 川村清一

    委員長川村清一君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  31. 川村清一

    委員長川村清一君) 速記を起こしてください  他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 川村清一

    委員長川村清一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 川村清一

    委員長川村清一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  日本放送協会昭和四十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書につきましては、これを是認すべきものと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  34. 川村清一

    委員長川村清一君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって是認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 川村清一

    委員長川村清一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  36. 川村清一

    委員長川村清一君) 速記を起こして。     —————————————
  37. 川村清一

    委員長川村清一君) 簡易生命保険及び郵便年金積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は去る四月二十五日に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  38. 森勝治

    ○森勝治君 簡易保険の問題について若干質問をしたいと思います。  きょうは簡易保険の資金運用の範囲拡大の問題と、それからもう一つは余裕金の運用問題について、二点に重点をしぼって質問をしたいと思います。  簡易生命保険が制定されましてからもう長きにわたりますが、この生命保険という制度がインフレに対して全く弱い性格であるということは、終戦後のインフレ時代にも生命保険事業が崩壊に瀕したという過去の苦い経験をいまさら思い起こすまでもないところでありまして、したがって最近におけるいわゆる物価狂乱のもとにおきましては、生命保険の制度は戦後のそれよりも増して重大な危機に直面しておるのではなかろうか、こう思われるわけであります。  こうした情勢の中で、民間生命保険におきましては、大蔵省の指導のもとに、インフレによる保険の目減り、そういうものを少しでも補てんしようとする努力がなされておりまして、臨時配当、特別配当などによって、たとえば四十八年度の配当は前年度に比べて実質的に二七%、金額にして約一千百億円の増配となるように措置がとられている模様でありますが、簡易保険の場合には、インフレのいわゆる目減り対策というものはどういう措置がとられているのか、この点ひとつお聞かせを願いたい。
  39. 原田憲

    ○国務大臣(原田憲君) 簡易保険といたしましては、本年の四月から前年度に引き続き配当金を増額いたしまして、正味保険料の引き下げを行なったところでございます。これに基づく増配分が七百三十億円で、これに加入時に約束されている確定配当額の分を加えますと一千四百円になります。これは前年度に比べ二二%の増加でございますがしかしながら現在のところ簡易保険におきましては資金運用面の制約がいろいろとございますので加入者の資産の目減り対策といたしましては御指摘のように十分とは言えません。したがいまして今後、積立金の運用範囲の拡大など運用上の改善をはかり、積立金をできるだけ有利に運用いたしまして、物価騰貴による目減りに対処したいと考えているところでございます。  また表定保険料の引き下げあるいは物価騰貴にある程度対処し得る新種保険の開発等について、現在、検討しておるところでございます。
  40. 森勝治

    ○森勝治君 いまのお話によりますと、四月一日から配当金の増額が実施された模様でありますがその中で何か一千四百円というふうに聞いたんですが、それは何か私の聞き違いでしょうか。
  41. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 大臣が御答弁されましたのは、増配額が七百三十億円でございまして、簡易保険は確定配当でございますから契約のときすでに約束をされておるわけでありますが、増配額の七百三十億とそれから確定配当分を加えますと千四百億円になるわけです。
  42. 森勝治

    ○森勝治君 千四百億ですか。
  43. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) はい。
  44. 森勝治

    ○森勝治君 いまのお話をお伺いしても、いわゆる狂乱物価による目減りの補てんということから考えますと、物価上昇のパーセンテージからいっても、いわゆる目減りの補てんというのには間違いありませんけれども、バランスからいうと、失敬でありますが、微々たる額ではないか、こう言わざるを得ないのであります。  したがって簡保と民保の正味の保険料というものがますます差が広がっていくような気がするわけでありますが、生命保険がインフレに弱いと先ほど指摘いたしましたが、その生命保険の中で簡易保険が特にインフレに弱い体質を持っているというこの原因はどこからきておるものか、この点ひとつお聞かせをいただきたい。
  45. 原田憲

    ○国務大臣(原田憲君) 簡易保険におきましてもこのところ、毎年配当の増額を行ないまして正味保険料の引き下げに努力をしているところではございますけれども、御指摘のとおり正味保険料は民保に比較して簡易保険のほうがやや高目でございます。  このような格差が生じる原因といたしましては簡易保険におきましては積立金の運用上種々の制約がございまして、民保に比べ運用範囲が相違するところに一つの大きな原因があるものと考えます。すなわち民保におきましては利回りの高い財務貸し付けあるいは不動産、株式等含み資産の多いものへの運用を行なっておるのに対しまして、簡易保険は地方公共団体をはじめ公共性の高い分野への運用が中心となっているところでございます。
  46. 森勝治

    ○森勝治君 いまのお答えのその前のお答えの中で、積立金を有利に運用するというお話の問題に触れられて、何か新種保険を考えておられるというような御発言があったと思うのでありますが、いまお考えになっている新種保険というものはどういうものがおありなのか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  47. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 近々、実施の日程に上がっております新しい保険としましては、低廉な保険料で多額の保障が得られる、こういう種類の、いま民間で非常にはやっております定期保険がついております養老保険、このうちで現在簡易保険が発売をいたしておりますのは死亡の場合倍額と死亡の場合三倍になります特別養老保険を発売いたしておりますが、今回、最高制限額の引き上げを期といたしまして、死亡時には五倍までの保険金の支払われる特別の養老保険をできるだけ近い機会に発売いたしたい。そういう形で、ことしの一月から売り出しました定期保険のほかに、そういう五倍型の特別養老保険。  さらに、これは最高限度額が五百万で成立しますかどうかまだ検討を進めておる最中でございますが、配当金をもちまして定期保険を自動的に買い増ししていく保険金の増額保険というようなものを現在検討いたしておる最中でございます。
  48. 森勝治

    ○森勝治君 民間保険と簡易保険の格差というものが増大される最大の原因というものは、何といっても資金の運用対象というものの相違、郵政の場合には対象が非常に狭いということからそういうことになるんではないかと思うのでありますが、この簡易保険と民間保険との資金運用の実態ですね、いわばその相違点はどういうところなのか。それから最近数年間の民間保険と簡保との運用の利回りの格差、この移り変わりというものをひとつできればお聞かせを願いたい。
  49. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 簡易保険の運用対象につきましては、運用法の第三条に各号列挙せられておりますが、御承知のとおり国、政府関係機関、公団等、それから地方公共団体、非常に公共性の強いそういう機関が運用の対象に限定をせられております。これに対しまして民間保険におきましては、保険業法の施行規則第十八条によってそれぞれ運用の範囲が定められておるわけでありますが、民間のほうがはるかに範囲が広いわけでございまして、民間保険の場合に、これは四十七年度末の計数でございますが、株式に一九・八%、不動産へ七・五%、こういう貸し付けが行なわれております。このほかに有価証券担保貸し付け、銀行保証貸し付け、こういう非常に有利なものが五七・七%というふうな比率を占めておりまして、実に民間生命保険の資金総量の八五%までが簡易保険の運用対象外のいわゆる有利な運用ということになっておるわけでございまして、以上のような理由から簡・民保の運用利回りの格差というものはずっと簡易保険の創業以来続いておるわけでございます。  終戦後、特に最近の四十年代に入りましてからの傾向を申し上げますと、四十二年度には、四十年度当初からの金利の一般的な低下傾向を反映いたしまして、初めてその差が一%以内に縮小いたしました。しかし四十三年度以降、景気の回復に伴いましてまた市中金利が上昇いたしました。したがって四十五年度ではそれがまた一・四二%という差まで広がったわけであります。ところが、その後の金融緩和等の経済情勢のために四十七年度では簡易保険が六・四〇%、民間保険が七・五九%という運用利回りとなりまして、その間一・一九%の利回りの格差というふうに縮まってきております。なお過去十年間の平均をとってみますと一・五%という数字を示しておるのでありまして、われわれ常にこの格差の是正には十分意を注いでいかなければならぬところでございますが、現実はそのようになっております。  四十八年度の利回りにつきましては、現在まだ決算が終わっておりませんので正確には申し上げられませんけれども、少なくも四十七年度よりさらに——四十七年度と申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり一・一九%の格差でございますが、これがさらに幾分か広がっていくだろう、このように判断せられます。
  50. 森勝治

    ○森勝治君 資本の自由化というものを契機として保険業界の競争は一段と激しさを加えてきましたのは御承知のとおりでありまして、最近におきましては消費者運動の高まりなどという激しい環境の中で、簡易保険事業というものを存続し、かつこれを発展させるためには運用利回りの向上によりまして民間保険との格差の是正をはかっていくことが先決ではないかとわれわれはしばしば当委員会において指摘をしてきたところであります。したがって今回の運用範囲拡大の提案というものをそういう意味におきましては歓迎をするところでありますが、今回の改正によってどの程度の運用利回りの向上を期待することができるのか、この点ひとつ見通しをお聞かせ願いたい。
  51. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 今回お願いをいたしております運用法の改正によってもたらされますところの運用利回りの向上の効果でございますが、これは電力債以外の利回りの高い社債にまで運用範囲が広げられたことにあるのは当然でございますが、それにも増しまして大きな効果をもたらすと予想されますのは、金融債、社債の保有ワクがそれぞれ現在の百分の十、百分の五とありますのを、金融債につきましては百分の二十、社債につきましては百分の十と広げられることによる部分が非常に大きい、このように判断をいたすのでありまして、この金融債、社債の運用をこの法律改正そのもののとおり百分の三十まで行ないました場合には、金融情勢はいろいろ変わるわけでございますけれども、これらの変動要因を一応除外いたしますと、約〇・四%程度運用利回りが向上する、このように考えられます。  ただ四十九年度の運用計画におきましては、長期運用として金融債、社債に運用できます額は一応五百億円ということでございまして、当面さしあたって短期の目で見ますと利回りのパーセンテージに具体的な数字があらわれてくるというほどの程度までには至っていないわけでございます。今後、この財投ワク外の運用ワクというものをどんどんふやすことによりまして、先ほど申し上げました〇・四%程度までの運用利回りの向上が期待できる、このように考えます。
  52. 森勝治

    ○森勝治君 私は、かねてから、大蔵省対郵政省の力関係の問題についてしばしば指摘したところであります。すなわち大蔵省に対して郵政省は弱腰ではないか、いつもやられっぱなしではないかと私は強く指摘をしてきたところでありますが、いま質問を展開いたしております簡易保険のこの資金の運用問題につきましては、ここ一、二年、従来よりも一歩前進した形で進んでまいってきておりまして、この点は担当の皆さん方の労を多とするところであるわけです。  たとえば四十八年度は従来の全面的な財投協力という姿を破って、四十八年度には四百億円、四十九年度には五百億円という財投のワク外運用が認められたこと、いわばこれは郵政の努力で獲得したところだろうと思うんでありますが、さて、このワク外運用の四十八年度の四百億円というのがどういうように運用されたのか、さらにまた四十九年度のこの五百億の運用を認められた点についてはどう運用されるのか、この点ひとつお聞かせを願います。
  53. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) まず昨年度財投ワク外として認められました四百億円について申し上げますと、発行量それから利回り等を勘案いたしまして、金融債に二百五十億円、電力債に百五十億円を運用いたしました。  四十九年度につきましては、五百億円を財投ワク外として運用計画に計上いたしましたわけでございますが、金融債、社債の発行がそのときどきの発行会社の資金需要なりあるいは市中の消化能力等金融情勢によって動きますし、また民間金融機関で構成します起債会でこれらの発行総量等が毎月きめられることになっておりますので、あらかじめこの五百億につきまして金融債、社債への具体的な運用額をきめるということを現在まだいたしておりません。したがいまして、いま申し上げましたような諸般の情勢を見きわめまして、五百億円の範囲内で運用額をきめていきたい、かように考えておりますが、大体、昨年の四百億につきましては金融債に二百五十億、電力債に百五十億、こういう運用をいたしましたけれども、そう変わらない形で運用をしていこうかと、一応、腹づもりとしてはそういう程度の腹づもりをいたしております。
  54. 森勝治

    ○森勝治君 運用の範囲が拡大されるということは、その点はけっこうなんでありますが、しかし、この法改正というものの精神を十分生かすような運営が実行できるかどうかによって、改正の趣旨が生かされるか減殺されるかということになってくるわけです。従来のこのいきさつを見ますと、せっかく法改正をいたしておりながら、その法律を十分に生かすような運用がなされてきておらない、いわば運用の妙を発揮することができなかったと指摘せざるを得ないことを私は残念に思うわけです。  すなわち昭和三十六年の法改正におきまして金融債が、そしてまた三十八年の法改正で電力債がそれぞれ運用範囲に加わって、金融債には積立金総額の一〇%まで、電力債には同じく五%まで運用されるようになっているのでありますが、今日まで、金融債、電力債はどの程度運用されてきたのか、その運用された実績でけっこうですから、実績だけひとつ説明をしていただきたい。
  55. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 御指摘のとおりでございますが、金融債につきましては近年五%前後で推移をしてきておりまして、四十八年度から運用計画上に原資を確保しまして金融債に対する運用を開始することができましたために、四十九年三月末では六・九%、二千五百五十五億円に達しております。  一方、電力債につきましては、三十八年に法律改正をお認めいただいて運用が始まったわけでございますけど、諸般の情勢から四十七年度末までは短期運用の対象ということで長期運用をいたしておりませんでした。そのために既発社債の購入難から四十七年度末では五億四千万円という非常に微量でございました。しかし、これまた昨年から長期で運用することができることになりましたために、四十九年三月末では百七十三億円、パーセンテージでいいますとまだ〇・四六%と低いわけでございますけれども、五億四千万円から百七十三億円までに上がっております。今後、急速にふやしていきたい、このように考えております。
  56. 森勝治

    ○森勝治君 過去の実績を見ますと、金融債の運用はともかくとして、一番有利と思われる電力債に対する運用については法律というものが有名無実の存在に置かれてきたと申し上げてもよかろうと思うのです。すなわち法律を活用してこなかった、活用はしたんだろうけれども、十分活用してこなかったわけでありますから、これではせっかく法律というものを改正しても何にもならないのではないかと思うのです。  なぜかと指摘いたしますと、郵政省と大蔵省間の覚え書きなるものが存在をしておって、がんじがらめに縛られておったわけですから、法を改正しても何もできない。ですからこの大蔵省・郵政省間のこの覚え書きというもの、いわばこれは悪名高き覚え書きとわれわれは指摘をしたところでありますが、今度、この覚え書きが廃止され、さらに財投のワク外の運用も道が開かれたということでありますから、従来の轍を踏むようなことが万が一あってはならぬと思うのであります。したがって今回のこの運用範囲拡大をどのように生かされようとしておるのか、その運用の見通し等についてひとつ承りたい。
  57. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 今回の法律改正によりまして、最も有利な運用対象であります事業社債の範囲が広がりましたこと、さらにその保有制限ワクの拡大ということと相まちまして、利回りの高い債券を大量に保有できる可能性が増大することとなったわけであります。  四十九年度におきましては、先ほど来申し上げておりますように、これら新しい社債に運用いたします金額は、従来の金融債、電力債も含めまして、本年度は財投ワク外で五百億円を予定しておりますけれども、今回の法律改正にあたりましては、御指摘のような、たとえば大蔵当局との間におきます覚え書きというようなことによります制約は全然ございませんので、全き形で法律の規定のとおりの運用ができる、このように考えておるわけでありますので、今後、さらにこれらのワク外の額を増加することによって有利な債券の保有比率を向上させていきたい、このように考えております。
  58. 森勝治

    ○森勝治君 四十八年度決算はまだでしょうから、四十九年度積立金の総額がどのくらいの金額になるか、これは当然概算ということになりますが、概算でよいですから、ひとつお聞かせを願いたい。
  59. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 一応概算でございますけれども、四十九年度積立金の総額は四兆五千七百二十億円になりまして、四十八年度と比較いたしますと金額で八千四百六十億円、割合で二三%の増加になっております。
  60. 森勝治

    ○森勝治君 いまのお話によりますと、四十九年度積立金総額は約四兆五千億が見込まれるということであります。したがって今回の法改正が実現されるということになるならば、金融債はその二〇%まで運用できるわけでありますから、すなわち九十億円、社債は一〇%までですから四千五百億円、合わせて一兆三千五百億円というのが法律上認められた金融債等への運用限度ということになるでありましょう。しかしながら四十九年度の運用計画を見ますと、金融債等に運用のできる財投ワク外運用にはわずか五百億円しか計上されていないのであります。これをもっていたしましては、せっかく法律を改正しても、その法律を十分に生かし切らないうらみがあるわけです。こうなりますと、うまくやるやるとおっしゃっておっても百年河清を待つがごときではないかと私は指摘せざるを得ないのであります。  したがいまして法律というものを改正し、その運用のワクを拡大するというからには、その心が十分生かされるようにしていかなければならぬわけであります。財投ワク外運用の大幅な拡大という政策の裏づけが伴わなければ、法改正の意味が全然なくなってくると思うのであります。この点についてひとつ大臣のお考えをお聞かせ願いたい。
  61. 原田憲

    ○国務大臣(原田憲君) 簡保資金の有利運営という立場からいたしますと、財投ワク外である金融債、社債への運用額は多いほど好ましいわけでございまして、できるだけすみやかにこの運用額を今回の改正限度額である積立金総額の三割にまで拡大したいと考えております。  しかしながら財投計画に対する原資協力の要請もまだなかなか強いものがございますので、四十九年度におきましては五百億円といたしましたが五十年度以降の運用計画におきまして、毎年、計画額の相当部分を金融債、社債に充てまして、なるべく近い将来積立金総額の三割まで保有することにより法改正の趣旨を十分に生かしたいと考えておる次第でございます。
  62. 森勝治

    ○森勝治君 次に、余裕金の運用問題について五六点伺ってみたいと思うのです。  去る四十年の郵政審議会の簡保年金運用近代化答申の中でも、簡保会計の余裕金というものは他の会計の余裕金と本質的にその性格を異にするものである。すなわち積立金と同性質のものであるから、積立金と同様に郵政省が直接運用すべきものであると指摘されております。  また、去る四十一年に出されました行政管理庁の勧告においても同趣旨のものが指摘されておるところであります。  さらには昨年の八月郵政省が発表いたしましたいわゆる簡保五カ年計画におきましても余裕金運用制度の改善ということが強く打ち出されておりますにもかかわらず、今回の法改正におきまして、なぜ余裕金の運用問題に触れておられなかったのか、そのわけをひとつお聞かせ願いたい。
  63. 原田憲

    ○国務大臣(原田憲君) 簡保年金特別会計法におきまして、当年度に発生しました収支の差額は余裕金として経理されまして、決算終了後に積立金となることになっておりまして、この積立金は運用法に基づきまして郵政大臣が管理運用しておりますが、余裕金は資金運用部への預託のほか運用することができないこととなっておるのでございます。  こうしたところから、郵政審議会、行政管理庁の勧告等を受けたところであり、また当局といたしましても、余裕金も積立金と同性質のものであり、事業経営主体たる郵政大臣が加入者の利益をはかるために運用すべきであると考えまして関係方面と折衝を重ねたのでございますが、結論を得るに至りませんで、運用法の改正は今回の提案のような内容になったわけでございまして、この余裕金の問題については今後ともひとつ力を尽くしてまいりたいと存じております。
  64. 森勝治

    ○森勝治君 担当局長、いまのを補足してくれませんか。
  65. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 郵政省といたしまして、この余裕金の直接運用には長年の執念を燃やしておりまして、毎年の予算の概計要求につきましては、この余裕金が簡易保険事業特別会計の中で運用できるような形での予算の概計要求をいたしておりますが、十二月末の予算決着の段階におきまして、いつも力不足といいますか、いろんな関係からこの宿願が達せられない、こういうことになっております。  おもな理由といたしまして、郵政省としましては、簡易保険の余裕金は積立金と同じ性質のものであるので、当然これは郵政大臣が積立金同様に運用すべきである、こういう主張をいたしておるのでございますが、当面のこの余裕金の主管庁であります大蔵省では、簡易保険の余裕金も他の特別会計の余裕金と同様に当該年度においてはあくまでやはり余裕金である、こういう態度をとっておりまして、簡保事業の特殊性を考慮し、一年以上預託のものについては特別の利子を付するというような配慮までいたしておる、こういう主張をいたしておりますほかに、簡易保険の余裕金の直接運用を認めました場合には、特別会計の中でもたとえば厚生年金保険、国民年金保険資金その他保険の特別会計があるわけでございますが、これの余裕金さらには積立金等につきましても自主運用という要求といいますか要請、あるいはそういう議論を誘発するということで、結論的には資金運用部資金といいますか資金運用部の解体というようなことまでも予想されるというところから非常に強い反対を示しておる、こういうことからなかなか結論を得るに至らない、こういう状況になっております。
  66. 森勝治

    ○森勝治君 資金運用部に預託されております余裕金や預託金の総額は現在どのくらいになるか、ひとつ御説明をいただきたい。
  67. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 四十八年度の余裕金、これは八千四百六十四億円でございましたが、四月末日現在では一応ほとんど全部が積立金ということに振りかわっておりまして、現在の資金運用部に預託されております余裕金は四月末現在で六十七億円でございます。
  68. 森勝治

    ○森勝治君 それらの余裕金の預託条件はどんな形で預託されておるのか、そしてその預託されたものに対するいわゆる利回りというものはどのくらいになっておりますか、それをお聞かせ願いたい。
  69. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 資金運用部預託金につきましては、御承知のとおり資金運用部資金法第四条によって、預託期間に応じて年二%から四.五%までの利子がつけられることになっております。余裕金はおおむね期間一年の預託をしておりますので年四・五%の利子がつけられましてそのほかに一年以上の預託金が前年度の預託金を上回る場合におきましては資金運用部資金法附則第六項によりまして一・五%の利子がつけられますので、合わせて六%の利子がつくことになっております。しかし、この余裕金の利回りにつきましては、資金繰り等の関係から一部短期預託をするもの、あるいは預託しないでおくもの等々がございますので、平均いたしますと約五・五%になっております。  先ほど八千四百六十四億と申し上げましたが、計数の関係で八千六百六十三億のうち、四十八年度分でございますが、利率六%の分が五千六百二億円で六六・三%。預託期間三カ月、これは利率が三・五でございますが、これが一千百十二億円、割合が一三・一%。それから非常に短い一カ月もの、これが八百九十九億、利率は二%でございまして占率は一〇・五%でございます。そのほか、これは見込みでございますが、預託をしない、したがって無利子だ、こういうものが一〇%程度ございます。
  70. 森勝治

    ○森勝治君 御承知のように、最近、政府の金融政策というものはインフレを抑制する、こういう立場からいわゆる高金利政策というものをとりつつあるわけです。したがって郵便貯金などの預金金利などというものにつきましても、私どもから見ればまだまだもっと上げてよろしいものだと考えておりますけれども、ある程度引き上げがされているわけです。したがって郵便貯金の資金運用部への預託利率も七・五%に引き上げられてきたわけでありますが、簡保の余裕金の預託金利だけは従来のまま低利に据え置かれておるということは一体どういうことなのか、この間の状況説明していただきたい。
  71. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 御指摘のとおり、郵便貯金等の預託金におきましては七年以上の預託ということが原則になっておりますので、これにつきましては大蔵省令によりまして特利がつけられる、こういうことになっております。  これに対しまして簡易保険の資金運用部への預託は一年というのが一番長い期間になっているわけでございます。したがって、これら長期のものに比べまして金利が幾ぶん低いということはやむを得ないことかと、このように考えるわけでありますが、御指摘のように、昨今の高金利時代の現在の時点をとらえて申し上げますと、この法定されました利率は確かに現状にそぐわない点もあろうかと思います。したがいまして、今後、余裕金の運用制度全般の問題といたしまして、郵政大臣の所管に移してもらう、あるいは高金利を要求する、どちらかの形での改善に努力してまいりたい、このように考えております。
  72. 森勝治

    ○森勝治君 いまのお話から推察いたしましてもわかりますように、簡保の余裕金というものも年々増大をしてきておりますし、お話にもありましたように、八千億にも達しようという、こういうことでありますから、おそらく四十九年度におきましては一兆円をこすであろう、こう考えられるわけです。  この狂乱物価のもとで、簡保と民保の保険料格差が増大をしておるということは先ほど指摘したとおりでありますが、このばく大な簡保加入者の財産というものが不当に低利な運用をしいられているということ、これは何といっても簡易保険法第一条の精神に反することはもちろんでありますし、簡易保険加入者に対する政府の重大な背信行為ではないかと指摘せざるを得ないのであります。  したがって、この問題につきましては郵政省は弱腰だ弱腰だと言うわけにもまいりませんけれども、どうもこの辺がわれわれの懸念の生ずるところでありますが、いま申し上げた点についてどういう折衝を重ねてこられたのか、ひとつこの点をお聞かせ願いたい。
  73. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 昭和四十九年度の運用計画に関連する法律改正事項といたしまして、われわれ実はいろんな要望をいたしまして直接大蔵省と折衝をする、あるいは資金運用審議会に働きかける等々、各般の努力はいたしました。  改正事項として私どもが要求をいたしましたのは、今回法律改正でお願いをいたしております政令で定める社債への運用範囲の拡大。金融債、社債の保有制限ワクの拡大。このほかにただいま先生御指摘の余裕金の直接運用。さらに現在地方に地方住宅供給公社、地方道路公社、土地開発公社といういわゆる地方三公社というものがございますが、これらに地方公共団体を通じないで直接簡易保険特別会計から資金を貸し付けるという地方三公社への運用。さらに加入者に対する直接融資としての住宅融資というような項目を掲げまして、運用計画決定に至ります昨年の十二月二十九日までいろいろ努力を続けたのでございますが、いま申し上げました余裕金の直接運用以下の課題につきましては、時間切れあるいは力不足等によりましてついに合意を見るに至らなかったわけでございますが、いま申し上げましたような項目につきましては、今後、あらゆる努力を重ねていきたい、このように考えております。
  74. 森勝治

    ○森勝治君 これは何といいましても、もう昭和四十年に郵政審議会で満場一致決定し、皆さん方にその改善方、実施方を強く要望し、かつまた指摘されたところでありますから、いま担当局長から力不足だと言われてしまうと私は次なることばの用意すらできない始末でありますけれども、これはひとつ耳痛いことばになるかと思うのでありますが、力不足などということでなくして、これはいまの政治の背景というものが郵政省と大蔵省と置かれている立場の相違だけでありまして、皆さんが根強くこの問題については大蔵官僚の啓発につとめていただければ、この審議会が答申した所期の目的に到達できるし、これなくしては国民の期待にこたえる簡保の運用にはなりませんから、この点ひとつさらに意を強くしてがんばっていただかなきゃならぬと思うのです。この点ひとつお約束願えますね。
  75. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 御趣旨に沿うように、こん身の努力を続けていきたいと思います。
  76. 森勝治

    ○森勝治君 余裕金の直接運用の即時実現ということには問題があるにいたしましても、これは昭和四十年にやはり簡保事業近代化答申の中にも指摘されているところでありますけれども、少なくとも簡易保険の余裕金に対する特利の決定というものを資金運用部資金法からはずして、一般の金利体系に連動して引き上げられるような措置を直ちに実施するようにしなければならぬと思うのです。  これはもちろん、やはり前と同様に、この問題につきましてはいま私はむしろ担当局長を激励した発言をしたのでありますが、所管の長として大臣もこの点ひとつかたい決意を持って臨んでいただかなきゃなりません。したがって大臣のひとつ決意のほどを、これからどうされようとするのか、このことについてひとつこの際お聞かせを願っておきたいと思います。
  77. 原田憲

    ○国務大臣(原田憲君) いま御指摘のように、資金運用部に一年以上預託する簡保の余裕金の特利につきましては、高金利時代の現状にそぐわない面があると考えております。しかしながら、この特利の改善よりも余裕金の直接運用のほうが運用制度の改善としては第一義的な問題と考えられますので、先ほど局長も申し上げましたが、当省も従来から余裕金の直接運用ということを第一に主張しておるところでございます。  とは申しますものの、余裕金の直接運用は国家制度の根幹に触れるというような議論で、今日その目的を現在達成することができておらないのでございますが、実現が至難の場合には、いま御指摘のように次善の策として特利の是正も考えていきたい、お話のような趣旨に対しまして私も全力を注ぎたい、このように考えます。
  78. 森勝治

    ○森勝治君 近く二十兆達成の祝賀を催されるように承っておりますが、二十兆という膨大な契約をされました関係の皆さん方の努力があずかって力があることはもちろんでありますけれども、ただ、この中で、従来も指摘いたしましたように、熱心さのあまり民保との競合のあおりを受けてややもすれば過剰募集に走る気配もあったこと、これはもう是正をされた模様でありますけれども、今日のように金に対する価値観というものが著しく変動し、さらにまたインフレという狂乱物価の中では、これからの募集等について国民の期待に十分こたえるということはなかなかむずかしくなったような気がするのです。したがって、この仕事に携わっておられる皆さんのこの二十兆達成にあたりまして、さらに一大決意を私は促しておきたいと思うのです。  何といたしましても国営事業として国民の信頼が最も厚い保険事業の中でも名だたる簡易保険でございますから、どうぞひとつ国民の期待を裏切ることのないように、所期の目的達成のために今後も大いにひとつ御努力をしていただきたいと思うのです。このことを最後に要望としてつけ加えておきます。  このことについて、もし大臣の所感があらばお伺いするし、その所感は二十兆達成記念祝賀の席上で発表するというならそれでもよし、私はこれで質問を終わります。
  79. 原田憲

    ○国務大臣(原田憲君) まことにありがたいおことばをちょうだいいたしまして感激をいたしております。  二十兆達成のために努力をいたしております職員は、いまいわゆる民間生保が世界一だというようなことがいわれておりますが、私どもは国営の簡易保険業務というものの目的達成のために努力をいたしまして、間違いのないように精励をいたす覚悟でございますので、今後ともひとつ御指導御鞭撻をお願い申し上げたいと存じます。
  80. 横川正市

    ○横川正市君 あんまり締めくくりのいい質問なので、次の質問がどうも続かないんですが、私、一、二点、いまの森委員の質問と関連して、一つ努力の方向を、これはやっておられると思うのですけれども一つの課題として取り上げてくれるかどうか申し上げてみたいと思うんです。  私は、保険に入ることも入らないことも個人の自由ですから、その自由を持っている人に保険に入ってくれといって慫慂に歩く人の苦労というのはたいへんだと思うのです。しかし保険に入る人が選択として民保を選ぶか簡保を選ぶかという場合に、実は個人の利益だけを考えて、利回りがいいとかあるいは制度的にこれが得だとかということで選ばれるとすれば、先ほど大臣の言われておりますように、運用そのものに大きな開きがあるわけです。そういう開きがあるが、簡保がいかに公共性の強い事業に大幅な資金を回しているかということを考えて、それは非常にたびの下からかくようなことかもわからないけれども、運用そのものが個人の利益につながっているんだということを理解してもらう、こういうことが日常のやはりPR活動の中にあっていいんじゃないかと思うんです。  それにこたえるのに、いまちょっとここで計算してみたんですが、たとえば従来保険の税の控除額二万五千円、五万円までは二分の一、大体三万七千五百円。これが今度改正されて二万五千円の基礎はそのまま、五万円までが二分の一、五万円から十万円までは四分の一、大体平均五万円、こういう控除額、これは民保も簡保も同じなわけですね。今度、最高契約高は五百万円。おやじが三十歳、女房も大体三十歳加入として、平均家族であると子供扶養家族二人、これの月額は全部最高額に入りますと七万三千五百円、年額八十八万二千円。改正でも八十八万二千円のうち五万円の控除額、こうなるわけですね。その控除の面では民保と簡保とでは一向変わらない。運用では非常に大きな利回りの差を承知して運用しなきゃいけない。  そこで、大臣、私はこの簡保の契約については、どうですかな、全額控除額に加算してもらいたいという意思表示をするんですが、それが無理であれば、ある程度これに有利な控除額をきめるべきではないか、これは当然だと思うのですね、運用そのものの差があるわけなんですから。この点、どうでしょうか、努力していただけますか。
  81. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 御指摘の点につきまして、社会保険の保険料につきましては全額課税の対象外にされております。簡易保険の保険料、郵便年金の掛け金につきまして、われわれの主張といたしましては全額所得控除の対象にしてほしいということを、それこそ長年にわたりまして毎年要求をいたしておりますが、遺憾ながら簡易保険が任意保険であるという観点から、民間保険との間に特別の税法上の差別を設けるに足るだけの理由というものにつきまして、われわれの主張と税当局の考え方というものに非常な差がございまして、まだ実現を見るに至っておりませんけれども、毎年の要求といたしましては、簡易保険の、先生御指摘のような、運用上の制約、その他いろいろ理由をあげまして主張いたしておりますが、まだ実現を見るに至っていないのが現状でございます。
  82. 横川正市

    ○横川正市君 ぜひこれは努力をしていただきたい。  私は元郵政職員で保険の実際の募集の担務をやったものですからね、私が政権をとっている政党の一員であれば、これは即刻実現をするだろうと思うのです。だから、きょうは、大臣経験者、事務次官経験者がずっと並んでいるわけですから私ももういよいよこれが最後の質問ぐらいになっちゃうんで、このぐらいなことは郵政のめしを食った者はひとつやろうじゃないかぐらいのことを、ぜひこれは大臣督励してやっていただきたいと思うのですが、どうですか。
  83. 原田憲

    ○国務大臣(原田憲君) たいへん貴重な御意見をちょうだいいたしておるのでございまして、このことについて従来から折衝を重ねておるけれども実現を見ないということでございますが、私も一ぺん——横川さんはきょうは最後のことだとおっしゃっていますが、全力をひとつ傾けてみたいと思います。
  84. 横川正市

    ○横川正市君 実現方をひとつよろしくお願いいたします。  きょうは、私は、やはり簡易保険の存続する理由といいますか、これはいま森委員の質問したように、インフレの中で非常に困難を来たしているんだが、やはりくふうをすればまだ生き抜いていくいろいろな方法というのはあるのじゃないかと思うので、その点についてぜひ御検討いただいて御返事いただきたいと思うのです。  その前に、たとえば民保の全会社表、生命表と簡保の生命表と比べますと、この差というのがあることはもう歴然としているわけですが、それに対して修正する意思というのがあるかどうか。この秋ごろから生命表局十三表を使うということですが、十三表を使った場合の民保の全会社表との差というのはどこまで縮まるのか、この点どうでしょうか。
  85. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) われわれが採用を予定しております第十三回生命表は現在のところまだ厚生省から発表されておりませんので、この死亡率で民間が一番新しく採用いたしました新経験表とどの程度相違しておるかについて現実には不明でございます。したがって保険料につきましてもどの程度違うかということは現時点では申し上げかねるわけであります。  ただ両生命表につきまして申し上げますと、第十三回の生命表は観察期間が昭和四十五年でございます。民間の新経験表は昭和四十年から四十四年と大体ほぼ相似通った時期のものをとっているということ。さらに十三回生命表は国民全体の死亡状況をあらわすことになるのに対しまして、民間の新経験表は、御指摘のように、契約締結の際に医的診査によって弱体者の混入を一応排除した結果の経験表でございますので、十三回生命表を採用いたしましたとしましても、ある程度の差、やはり国民死亡表といいますか、この第十三回生命表のほうが多少死亡率が高い。多少の度合いが大体われわれの推測では一〇%程度というようなことを考えております。
  86. 横川正市

    ○横川正市君 簡易保険加入者の年齢構成で、実は、青年から老齢までの加入者が数の上では多数を占めて、若年者の加入がややこれに見劣っているというような図線の構造が一つあろうと思うのです。こういう構造の中で簡易生命保険として生き抜いていくのには、私は、加入者の健康管理、ことに成人病予防等についてやはりある程度の対応策というものを持っていく必要があるんではないか。  この面は、厚生省の所管とかあるいは医師会の反対とか、何か簡易保険の側がこれに対応するような処置をいたそうとすると、もちはもち屋にまかしておけというのか、あるいは収益に関係するから生計上から反対だというのか、まあ出てくるわけで、非常に残念なんですが、やはり私は生命保険の一つの仕事の分野の中には、長く生きてもらって掛けてもらう、そして掛けてもらった資金を運用するという基本の問題があると思うので、そういう点からすると、成人病予防に対して当然対応策を出すべきだと思いますが、その点はどうでしょうか。
  87. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 簡易保険としまして、御指摘のように加入者の成人病予防対策で各般の手を打っておりますが、現在、これらの具体的な施策は簡易保険郵便年金福祉事業団をして実施をさせております。  現在、御承知のとおり、全国で二十九カ所の診療所がございますけれども、この二十九の診療所におきまして、いわゆる一日人間ドック方式という特別健康診断を逐次実施をいたしておりまして、四十八年度では二十九カ所中二十七カ所でこれが実施をされておるわけであります。さらに簡易保険の健康福祉施設で独特なものとして巡回診療を行なっておりますけれども、これらの各診療所に、四十年以降、胃の検診のためにマーゲン車を整備いたしておりまして成人病予防につとめておるわけでございます。四十八年度におきまして、この巡回診療、マーゲン車によって胃のレントゲン診査等を受けた検診人員が約四万人近くになっております。  以上申し上げましたように、今後、この成人病予防対策を最重点とした健康診断を積極的に行なうことが肝要である、このように考えまして、コンピューター等の導入をはかって総合的な成人病健康診断を実施するという方針のもとに各般の具体策を現在検討中でございます。
  88. 横川正市

    ○横川正市君 簡易保険が厚生省に移管をされるというようなことやら、これの郵政省への返還あるいは運用拡大はもう一貫して郵政省の立場に立ってずうっと続けてきたわけなんで、そういう点では、私どもは、これからの簡易保険の生命線というのは地方公共団体とかあるいは福祉関係のそれぞれの機関、公益法人または私人の経営する施設という問題も含めていただければ、それはそれにこしたことはないわけですが、老人福祉、こういったところに積極的に簡易保険の資金を融資する、こういう方法を考えられないかと思うんですけれども、その点はどうお考えでしょうか。
  89. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 御承知のとおり、現在の運用法の第三条で簡保資金の運用範囲が定められておるのでございますが、これを改正いたしまして、いま御指摘の公益法人あるいはプライベートな私人の経営する医療施設あるいは老人福祉施設に簡易保険の資金が進出できないか、こういうお尋ねでございますが、医療施設だけについて問題点を申し上げたいと思います。  公益法人なり私人の医療施設の整備資金には、現在、年金福祉事業団、社会福祉事業振興会、医療金融公庫等によります融資制度がすでに確立をせられておるわけでありまして、これ以外に簡易保険資金によります直接融資の方式をとるということはなかなか承認されにくいことではなかろうか、このように考えます。  第二点といたしまして、現在、簡易保険におきまして、やはり何といいましても加入者利益の増進ということが一番強く要請され、その具体的な直接の方法としましては利回り向上ということにわれわれ最大努力を払わなければならない、このように考えるわけでございまして、いま御指摘の老人福祉施設あるいは民間でやっております医療施設等に融資しますことは、この利回り向上に最大努力を払うという方向に一応逆行することになるのではないか、このように考えます。  第三に、いま申し上げました第一、第二の点が乗り越えられたとしましても、これらの施設に簡保資金が直接出ていくという場合に、債権保全の安全性ということが非常に重要な問題になってくるかと思いますし、これらにはやはり、特に医療機関であります場合には、特殊専門的な知識、能力というようなものが必要になるのではないか。  このような観点から、私どもが直接乗り出すのは、先ほど申し上げましたような各種の問題をかかえておるという点から、なかなか実現は得策ではないのではないか、このように一応考えております。
  90. 横川正市

    ○横川正市君 たとえば募集担務者の立場の人たちが募集業務に携わるときに、簡保というものの運用されている実態というものを生活にそのまま還元されてきている場合と回って還元されている場合とを説明しながら、一件の契約をするのにも二日かかり三日かかりという、そういう努力をして契約をするわけなんですね。  だから高利回りを確保するということは、これは一つの保険経営のたてまえとして加入者サービスにもなりますが、ある部分についてはそういう公的な面に非常に強い簡保の姿勢というもの、これをやはり一つの理由につけて募集をする。同時に、機関、たとえば地方自治体とかあるいは他の団体とかが協力をしてくれる場合の保険の募集というのは非常に容易になるということはこれはもう事実で、これは担務者から聞いていただければよくわかることですが、そんな点に行き届いた配慮をしてやることが実は保険の新規募集の一つの大きな手だてになるんだ、こう思っていますからいま非常に問題点がありましたけれども、なおその点については検討していただきたい。  同時に、医療金融公庫を通じて簡保の融資を行なう、こういう点ではこれはある意味では可能なんですが、なおいま申し上げましたような部分については実現不可能な面があるわけですけれどもこの医療金融公庫を対象としての金融については保険局としてはどういう姿勢をとっておられるでしょうか。
  91. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 医療金融公庫は現行の積立金運用法第三条第一項第五号に該当しまして、法律上は簡易保険資金の融通が可能でございます。  しかしながら御承知のとおり、従来からこの医療金融公庫の貸し付けの原資は資金運用部資金が全額充てられております。中でもその半分が厚生年金、国民年金資金、厚生省が主管をいたしております社会保険関係の資金のいわゆる還元融資ということによって占められております。したがって、この中に簡易保険資金が割り込むといいますか、入りまして融資する必要性というものはそれほど大きくないのではないか、このように考えておるわけであります。  なお先生御指摘の、確かに老人病対策のいろんな施設、人間ドック等々に対しまして、これは募集の話法なりあるいは一つの誘因として大きな機能を果たす、このように思いますけれども、われわれの考え方といたしまして、この医療金融公庫を通じた融資ということにつきましては、いま申し上げました厚生省主管の社会保険の資金から非常に潤沢なといいますか資金が出ておるというところから、先生がこれを期待されておりますほどのPR効果というようなものもそう期待できないのではないか、このように一応考えておりますので、医療金融公庫に対する融資というものを現時点では特に考えておりません。
  92. 横川正市

    ○横川正市君 別な資金の運用の関係ですが、簡易保険の中の団体貸し付け制度というのがあるわけですけれども、これは団体とは一体どういうような構成のものをいうのか、それからまた貸し付け制度が実際に運用されている様態というのはどういうふうになっているでしょうか。
  93. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 簡易保険の団体貸し付けでございますが、これは簡易保険約款の第百二十四条の二に規定をせられておりまして、保険契約者が保健衛生施設、厚生施設その他被保険者の共同の利益をはかるための施設を営むために十五人以上が一団となって受ける貸し付け、これを団体貸し付けということにいたしております。貸し付け金額は基本保険料の三十倍まで、貸し付け期間は貸し付け金を交付した日の翌月から五年、貸し付け利率は年六%ということになっております。  なお団体貸し付けの実態につきまして、四十八年度貸し付けをいたしました件数は百五十三件で、貸し付け金額は三億三千二百万でございます。四十九年三月末の貸し付け現在高を申し上げますと、件数で六百十八件、貸し付け金額が八億二千四百万、こういうことになっております。
  94. 横川正市

    ○横川正市君 これは私は簡易保険の維持、拡大の一つの施策として、いま平均寿命がどんどん延びていって、なるほど平均寿命が延びていくことは保健衛生上あるいは生活環境上著しい変化が認められたということになろうと思うのですけれども、実は、日本の医薬品に依存をする度合いとか、それから病院を利用する度合いとかいうのを先進国と比べてみますと、問題にならないくらい日本の場合には多いわけなんですね。だから平均寿命が延びるということは必ずしも健康でぴんぴんして延びているのか、それとも死なない程度に延ばしているのか——これは少し言い過ぎかもわかりませんけれども、毎日頭が痛い、けつが痛いというような状態で八十まで生きたなんということになっても、平均寿命のうちには八十歳というものが入ってくるわけですから、やっぱり健康ではつらつとして生活ができるということで平均寿命が延びていくということが私どもやっぱり好ましいことだと思うのですね。  そのためにも、成人病という病気が非常に数の上でどんどん増大してくるという傾向がありますから、そのことは私はやはり何らかの形でこの人たちに診療の機会とか、あるいは治療の低廉な提供とか、そういったことが当然与えられていいと思うのですけれども、まずもって自分は一体健康状態としてはどういう状態なのだということを承知する機会を私はできるだけ多くの人たちが安易に受けられる、そういうことをやっておくことが必要なんじゃないか、その面では簡保の貢献する度合いというものはあるのではないかというように思うわけなんです。  そういう点で、たとえば私どもよく具体的な実施状況を承知いたしておりませんで、あとから世田谷に成人病センターの土地を購入したというのを聞きまして、ああそうか、それはもういずれ成人病センターが世田谷に開設されるのだなと思っておったのですね。そうしたらいつの間にか敷地はグラウンドか何かに変わってしまいまして、病院はどこかへ消えてなくなっちゃったという、こういうことにぶつかって、目的と結果がだいぶ違うので、非常に残念だと思っておるわけなんです。  しかし、そういう結果にならない方向をとりながら、成人病に対するセンターを、これを施設として一カ所でも二カ所でもつくり上げていく、これは多くを望むことはなかなかできないと思うのですね、資金上の問題もありますから。そういうことをやりながら保険の趣旨というものが普及される。保険は、保険に加入するのがどうだこうだというので、まず一番問題としては保険加入の思想を普及することで一生懸命やりまして、いまはもう保険に加入するということについてはあまりトラブルはないと思うのですね。しかし、その保険に入ったことによって非常にこういう利益があったというふうに転換されることは、保険事業を維持するために非常に大切な仕事の一面だと思うので、これを厚生省の所管だとかなんとか、全部を簡易保険がカバーすることはできませんが、しかし簡易保険設立の趣旨にも従って、簡易保険に依存する加入者保護、こういう意味も含めて成人病センターを設立する、こういうことは施策として当然取り入れるべきだと思うのですが、この点についての考え方はどうか。  それから、もしこれをつくるとすれば、団体貸し付けのような貸し付け制度が生かされて、団体貸し付けを受けられるような条件の整ったところにはこの貸し付けを行ない、成人病センターを構成する。と同時に、簡易保険の資金がこの設立に大きな貢献をしているということの表示は当然PRするということで、この種の事業に金を貸すことはできないか。同時に、看板を非常に重く見るのではなしに、日常保険業務に携わっている外務員が顔色を見ながら無診査保険でございますよと言って入らせるというようなことよりか、あなたは一度診療してみたらどうですか、簡易保険に入ればこういうところで診療していただけますよというようなことの委託をできる、安易に提携のできるような状態をつくっていくことが必要なのじゃないか、その両々相まった施策を考える必要があるのじゃないかと思いますが、これは保険局としては私どもの考え方に対してどう対処されますか、お考えを聞かしていただきたいと思います
  95. 野田誠二郎

    政府委員野田誠二郎君) 先生御指摘の成人病予防の施策につきましては、簡易保険の加入者福祉事業としてこれは非常に重要な問題でございますし、また戦前から、かつては三百五十カ所に及ぶほどの簡易保険の健康相談所を設置しまして、非常に結核対策その他に貢献があったと思うのでございますが、戦後におきましても、社会保険の整備拡充、医療制度の整備というようなことから簡易保険が行なっておりましたいわゆる軽費診療というものの機能が逐次低下をしてきた、十分機能が発揮できなくなった、こういうことはまた一方では事実だと思うのでありますが、簡易保険の福祉事業を拡充する構想を立てました際に、御指摘のように東京に土地を用意いたしまして老人病の予防センターの非常に大きな構想を持っておりましたが、これはやはり医師会の反対によりまして、その構想は実らないで、御指摘のような青少年のレクリエーションセンターというものになっております。  しかし現在でもやはり簡易保険といたしましては二十九カ所全国に非常に小規模でありますが診療所を持っておりまして、加入者の医療の要望にこたえておるわけでありますが、あるいは医師その他関係技術者の獲得難とか、あるいは一般加入者の医療費あるいは診断に対する要望の高度化というようなことがございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように経費の節減その他をはかりましてコンピューター利用によって的確、迅速な診断ができるように簡易な方法を現在検討中であります。たしか東京なり大阪なり全国二カ所ぐらいはそういう診断のコンピューターセンターのようなものをつくって全国のカバーができればいいなと、こういう構想のもとに現在簡易保険の事業団に委員会を設けて検討を続けておる最中であります。  なお、これらの施設等につきまして、簡易保険としては、たとえば人間ドック等について先ほど申し上げました団体貸し付けというような形での助成といいますか、こういうことにつきましてはまさに簡易保険の事業の目的にまさしく沿うわけでありますので、可能な限り、できるだけそういう方法で加入者の要望にもこたえていく、あるいは成人病対策にも貢献をしていく、こういう方向でいきたい、このように考えております。     —————————————
  96. 川村清一

    委員長川村清一君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、小笠原貞子君が委員辞任され、その補欠として沓脱タケ子君が選任されました。     —————————————
  97. 横川正市

    ○横川正市君 大体、私はいまの保険局長の答弁で満足をするわけですが、ただ具体的に競合する団体と団体との中にはさまって簡保が自由に活動することができない、しかも経営については非常な困難さが伴っておる、こういうことで実際上簡易保険に携わっている者の日常というものは、これは地獄の苦しみをやっているところがあるわけですね。私どもも実際に実務をやっているときには、赤い自転車を見ると三十八度にも九度にも熱が出るというくらいに募集業務というものには困難をした時期があるわけですから、そういうことを何らかの形で解消してやるということは、私は施策として一番大切なことじゃないか、こう思っておりますので、一つの問題を提起いたしましたが、これにとらわれることなしに、なおかつその面の解決のために当局で努力をしていただきたいかように思います。  これは局長の答弁で私はいいんですけれども、大臣から最後にひとつ御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  98. 原田憲

    ○国務大臣(原田憲君) お話しのように、先ほども二十兆簡易保険の達成について激励のことばをいただきましてお礼を申し上げたんでございますが、そのために一生懸命働いておる職員の人がみずからの職務に誇りを持って、こういうことでございますよと言って、大体いま先のことをお誘いするのでございますから、なかなかむずかしい仕事をやり遂げるための苦労をいたしておるのでございますので、それのために横川議員が御指摘のような問題につきまして、できるならば——というよりも、できる方向へ向けて努力をしてまいりたい、このように考える次第でございます。
  99. 川村清一

    委員長川村清一君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  100. 川村清一

    委員長川村清一君) 速記を起こして。  他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 川村清一

    委員長川村清一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 川村清一

    委員長川村清一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  簡易生命保険及び郵便年金積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  103. 川村清一

    委員長川村清一君) 多数と認めます。よって本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  横川君から発言を求められておりますので、これを許します。横川君。
  104. 横川正市

    ○横川正市君 私は、この際、簡易生命保険及び郵便年金積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案に関し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、第二院クラブの共同提案にかかわる次の附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    簡易生命保険及び郵便年金積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行にあたり、次の各項の実施につとめるべきである。  一、積立金の運用にあたつては、改正法を十分に活用して運用利回りの向上をはかり、制度改正の実効を確保すること。  一、余裕金は、積立金と同様、加入者の信託財産である性格にかんがみ、積極的にこれが運用制度の改善を推進すること。   右決議する。  以上であります。  本案は、当委員会における審議の経過を踏んまえて取りまとめたものでありまして、その内容につきましては、各委員はすでに十分御承知のことと存じますので、趣旨の説明はこの際省略させていただきます。  何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。
  105. 川村清一

    委員長川村清一君) ただいま横川君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  106. 川村清一

    委員長川村清一君) 全会一致と認めます。よって、横川君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの附帯決議に対し、原田郵政大臣から発言を求められておりますので、これを許します。原田郵政大臣。
  107. 原田憲

    ○国務大臣(原田憲君) 簡易生命保険及び郵便年金積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、慎重なる御審議の上、ただいま御可決いただきましたことを厚くお礼を申し上げます。  ただいまの附帯決議につきましては、政府といたしましても、今後、簡易生命保険事業を進めていく上におきまして、その趣旨を十分尊重してまいりたいと存じます。まことにありがとうございました。
  108. 川村清一

    委員長川村清一君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 川村清一

    委員長川村清一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時三十五分散会