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1974-04-23 第72回国会 参議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十三日(火曜日)    午後一時十九分開会     —————————————    委員の異動  三月三十日     辞任         補欠選任      高橋 邦雄君     高田 浩運君      中西 一郎君     山崎 竜男君      岡本  悟君     玉置 猛夫君      古賀雷四郎君     桧垣徳太郎君      川野辺 静君     山崎 五郎君      寺下 岩蔵君     青木 一男君      中村 禎二君     船田  譲君      前川  旦君    茜ヶ久保重光君      星野  力君     渡辺  武君  四月一日     辞任         補欠選任      山崎 竜男君     中西 一郎君  四月二日     辞任         補欠選任      沢田  実君     鈴木 一弘君  四月二十三日     辞任         補欠選任      高田 浩運君     木村 睦男君      渡辺  武君     加藤  進君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 河本嘉久蔵君                 藤田 正明君                 成瀬 幡治君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 木村 睦男君                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 桧垣徳太郎君                茜ヶ久保重光君                 田中寿美子君                 辻  一彦君                 戸田 菊雄君                 加藤  進君                 野末 和彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        大蔵省国際金融        局長       松川 道哉君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        外務省経済協力        局外務参事官   石井  亨君     —————————————   本日の会議に付した案件国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。柳田大蔵政務次官
  3. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) ただいま議題となりました国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  国際開発協会は、昭和三十五年に設立され、開発途上国に対しきわめて緩和された条件での融資を行ない、その経済的、社会的開発の促進に大きな役割りを果たしております。わが国は、その原加盟国として当初出資を行なったほか、それ以後の三次にわたる増資の際にも応分の出資を行なってまいりました。  前回の第三次増資は、同協会昭和四十六年七月以降三カ年間の融資約束に充てる資金をまかなうものであり、予定どおり本年六月にはその金額融資約束済みとなる見通しであります。このような背景のもとに、去る昭和四十七年九月の総会において、同協会の第四次増資提案され、その後、関係国間で累次にわたり検討が行なわれました。この検討の結果に基づき、昨年十月の理事会において、本年七月以降三カ年間の融資約束に充てる資金をまかなうため、総額約四十五億ドルの出資及びその分担等に関する総務会決議案が採択され、直ちに総務会投票に付されました。この決議案に対し、わが国は、本年一月賛成投票を行ないました。また、各国投票も逐次行なわれ、本年一月三十一日に至り、所定の要件が満たされ、決議が成立いたしました。  ここにおいて、わが国といたしましては、同決議の定めるところに従い、同協会に対し新たに千三百十四億七千二百万円の出資を行なうため、所要の国内措置を講ずる必要が生じたものであります。したがいまして、この法律案により、新たな出資についての規定を設けることとし、この法律案の成立後、出資分担を引き受ける旨の正式通告を行ないたいと考えております。  さらに同決議によれば、今回の増資は、少なくとも先進十二ヵ国が出資を行なう旨の正式通告を行ない、かつ、通告を行なった国の出資額合計が三十五億ドル相当額以上となった日に発効することとされております。かりにその発効が本年七月以降におくれることとなった場合には、開発途上国の需要にこたえて国際開発協会が継続して活動し得るよう、増資が発効する前においても、関係国が同協会からの要請に基づいて出資を行ない、これを後日増資が発効した場合にはその出資とみなす措置がとられることも予想されます。  このような情勢となり、他の主要国がこれに応ずる場合には、わが国といたしましても、この法律案規定に基づき、必要な措置をとることも考慮しております。  なお、国際開発協会に対する出資は、国債で行なうことが認められておりますので、今回の出資前回と同様、国債で行なうことを予定いたしております。  以上がこの法律案提案理由であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 辻一彦

    辻一彦君 ただいま提案されました国際開発協会への加盟に伴う措置についての法律の改正について、これに関連しながら、開発途上国への経済協力援助等あり方などについて二、三点伺いたいと思います。  昨年の秋以来、三木総理中曾根通産大臣小坂特使が、アラブ中近東を歴訪されて、各国に対して経済援助協力のいろんな約束をされてきたわけですが、おもなその国と、その金額、主要なプロジェクト、これについてまず御報告をいただきたい。
  6. 石井亨

    説明員石井亨君) まず、総理アジア訪問の際の各国におきます援助約束されました額について申し上げますと、マレーシアに対しまして、わが国が従前から行なっております円借款供与の第三次分としまして三百六十億円供与するという約束をされました。その中身条件等は、今後両国政府の間で話し合うということで、目下まさにその交渉をやっておる最中でございます。  インドネシアに対しまして、一九七四年分の、これはIGGI援助と申しまして、インドネシアに対する主要援助国が参加しましたマルチの援助国協議の会合でございますけれども、それのワクの中の援助額といたしまして二億ドル。これは非食糧二国間援助の三分の一をわが国が負担するという趣旨で、二億ドルという額をコミットされました。  それから、LNGプロジェクト借款ということで五百六十億円。これは、本年三月十六日付で交換公文をすでに締結いたしました。  以上が、総理アジア訪問の際におきます約束額で、これが大体いまの二億ドルを円貨換算約三百円で換算いたしますと、約千五百億円ということでございます。  それから三木特使アラブ諸国訪問なさいましたときには、エジプトに対しまして、スエズ運河拡張計画に対しまして三百八十億円、金利は二%、償還期間は据置七年、二十五年。三木特使訪問の際は、具体的なコミットはそれだけでございました。  以後、小坂特使訪問の際に、アルジェリアにおきまして、テレコミ関係プロジェクト円借款百二十億円。それからヨルダンに対しまして、同じくテレコミプロジェクトを中心とする円借款としまして三十億円。それからスーダンに対しまして、これは一般的な円借款で、プロジェクト内容も確定いたしておりませんけれども三十億円。モロッコに対しまして同じく三十億円。  それから中曾根大臣アラブ諸国訪問なさいましたときに、イラクに対しまして民間借款及び政府借款合わせて十億ドルという一般的なお約束をされて帰られました。で、これの内容につきましては、イラク援助内容が今後どういう内訳になるかということは、全く今後のイラクわが国との関係、それからわが国政府民間援助の態様とか内容の詰めの問題でございます。したがいまして、金額的に現在イラクにつきましていかほどということを明らかにすることはでき得ませんが、中近東全体といたしまして、先ほど申し上げました三木特使小坂特使のお約束金額合計いたしますと六百六十億円ぐらいになるわけでございます。  したがいまして、それを全部合計いたしまして、いまの二億ドルのあれはございますけれども、約千五百億円とそれから先ほどの約六百六十億円ということで、約二千百億円程度ということに相なるわけでございます。
  7. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、田中総理のほうの分も報告いただいたので、それはけっこうですが、そうしますと、イラクのほうはこれはまだはっきりしないということですが、大体見通しとして、あるいはいまの話し合いの過程から、どういう見当がついていますか。
  8. 石井亨

    説明員石井亨君) これは現段階としましては、十億ドルの内訳はいかほどということは全くわからない段階でありまして、イラク側の具体的なプロジェクト自体の全貌がまだわかっておりません。ただ、条件といたしまして、民借とそれから政府借款と合わせまして、平均の金利が五・二五%という一般的な約束がございますので、その辺をある程度勘案してきめなければならないということでございます。ただ、具体的な数字は、先ほど申し上げましたような理由で、先方の持っておりますプロジェクト全部がまだはっきりしたわけではございませんし、全く今後の問題というふうにわれわれは考えております。
  9. 辻一彦

    辻一彦君 イラクの十億ドルというのは、いまの御説明である程度わかりますが、三百円に換算すれば三千億に当たるわけだし、総理と、それからこの三木小坂特使の分で全部合わして二千百億、それをはるかにオーバーする金額になるわけですね。そういう十億ドルが、何かばく然たる約束のような形でなされているということが、ちょっと理解しにくいのですが、その間のいきさつはどうなっているのですか。
  10. 石井亨

    説明員石井亨君) これは、対アラブ外交政策全般の問題がまずございまして、これは政治問題その他ございましたけれども、それの一環の問題としまして経済協力問題がございまして、   〔委員長退席理事河本嘉久蔵君着席〕 イラクそれからエジプト等は、中でもそういう外交政策の面からいいまして最重点国ということで、一般的に、政治的にも経済的にも重視しなければならないという点はございましたけれども、それからまた、一般的にわが国石油確保という問題ももちろんございますし、それからそれに関連いたしまして、わが国の関連の産業物資輸出ということにもつながるわけでございまして、一般的なそういうからみで、イラクとの話し合いというものを中曾根大臣がなさってこられたわけでございまして、特にイラクに幾らということにつきましては、どういう深い理由があるかということを御説明はできませんけれども、一般的に、いま申し上げたような一般的な政策の中でこういう結果になったということでございます。
  11. 辻一彦

    辻一彦君 また別の機会に、通産大臣外務大臣にお伺いすることにします。  そこで、大蔵当局にお伺いしますが、三木総理やいまの中曾根通産相小坂特使借款援助約束ですね、これは中近東アラブにおける石油資源確保という観点からなされていると思われるし、また総理東南アジアを歴訪しての借款援助約束というものは、わが国開発途上国経済協力あり方に対するいろんな反省の上に立って考えておると思うのですが、そういうように理解をしていいのかどうか、ちょっと念のために伺いたいと思います。
  12. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) ただいま辻先生から御指摘のございましたアラブ関係のいろいろの借款、そしてまた総理東南アジアを歴訪されましたときの借款、これらのものの相当部分は、ただいま御指摘のように、石油危機を迎えて、その資源の対策をどうするかという、非常に差し迫った国内資源確保体制整備要請背景にいたしまして行なわれたものでございます。先ほど石井参事官からの御説明では、新しいお約束のほうだけをずっと説明されましたが、たとえば総理タイ訪問されました際に、それまでタイにございました借款条件の一部を緩和する。これは、まだ使用しないで残っておりました借款につきまして、金利を〇・五%ないし一%、これは基金の分が〇・五%で、輸銀の分が一%でございますが、これを引き下げたという事実がございます。これはただいま先生が後段のほうで御指摘になられました日本援助の姿勢、援助条件、そういったものに対する反省を背中にしながら行なわれたものでございます。
  13. 辻一彦

    辻一彦君 そうすると、この二つ——二つというのは総理約束、それから各特使約束ですね、これはもうどうしても守らなくてはならないという中身になると思うのですね。そこで、国際収支基調というものが、現在かなり大きな赤字になっている。その中で、四十九年度の国際収支赤字というものがどういうふうに見通されるのか。  それからそれと並んで、全般的に赤字基調というものがかなり強くなる中で、かなり大きな金額になりますが、こういうものを約束の期限内にきちんと実現をさす、約束を果たす見通しがどうあるのか、この点についてお伺いをしたい。
  14. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 最近の国際収支基調が、いわゆる赤字基調の様相を呈しまして推移いたしておりますことは、御案内のとおりでございます。  しからば、どの程度赤字かということになりますと、私ども去る一月に予算を国会に提出いたします際に策定いたしました経済見通しの中に織り込まれておる国際収支の見込み、これが現段階でも、公的なものとしては、この見込みに立っているわけでございます。その内容は、経常収支において四億五千万ドルの赤字長期資本収支において四十四億ドルの赤字、したがって、合計基礎収支において四十八億五千万ドルの赤字と、かように相なっております。しかしながら、その後の推移を見ますと、輸出も当時見込んでおりましたよりは、値段の高騰などがございまして、金額的に伸びております。しかしながら、他方、輸入のほうは、輸出よりもさらに早い勢いで伸びております。したがって、現段階で、一月につくりました見通しを振り返ってみますと、輸出輸入とも控え目な数字ではなかったか、この赤字も、当時見込みました経常収支の四億五千万ドルの赤字というのが、これよりも若干大きくなるのではないか、このように考えております。  そこで御質問の第二段でございますが、このような赤字基調のときに、このように多額の対外援助約束が果たせるかという点でございます。これにつきましては、ひとつ御理解をいただきたいのでございますが、経済協力関係は、これが日本からの物の輸出でまかなわれます限りにおきましては、国際収支に対しては、長期的には中立的な関係になります。と申しますのは、日本から物が出ていく、それの見返りの代価がすぐに入らないという形でございます。先ほど、総理大臣三木総理以下いろいろの約束をしてお帰りになったことが説明ありましたが、このうち、インドネシアLNG借款につきましては、これに要する機材が、あるいは日本でできないこと、その他の事情がございまして、いわゆるひもつきにはなっておりません。しかしながらほかのもの、すなわちアラブ諸国に対しまして供与約束いたしましたものは、全部タイドローンでございます。これは金額が非常に張ること、それからまた、この受け入れ国が、日本からその品物と一緒に技術も受け入れて動かしたいという要望があったこと、その他の事情がございまして、これらのものは、日本から物が出ていく形で実行されることに相なります。したがって、国際収支基調赤字でございましても、この約束を果たす上には障害にならないというのが実情でございます。  なお、金額的に非常に張りますが、その大部分は、いわゆるプロジェクトローンでございまして、数年間にわたって支出されていくものでございます。そして現在の国際収支赤字基調、これは私どもできるだけ早く均衡に戻したいとは思っておりますが、あるいは二、三年の年月を要するかと存じます。しかしながら、このアラブ諸国に対する約束ごとは、それよりももう少し長い時間的な経過を要するんではないかと思います。それこれ考えあわせますと、現在の国際収支状況が、総理をはじめ各大臣のお約束になったことを実行する上に妨げになるようなものではないということを御理解いただきたいと思います。
  15. 辻一彦

    辻一彦君 ちょっといまタイイングの、ひもつきの問題が出ましたので、私あとにと思ったんですが、いま問題が出ておりますから、これについて若干お伺いしたいと思うんです。  対外援助計画といいますか、経済協力については、ひもつきをなるべく避けてやっていくという、こういう方向海外協力といいますか、経済協力方向として望ましいということは、これはまあ国連や、あるいはこの中のいろんな委員会においても十分論議をされている方向ですね。そういう方向を歩み出したわが国が、再び国際収支赤字という点から、ひもつきというほうに変えようとする。これはまあこの経済協力援助あり方といいますか、あるいはいろんな形で東南アジア等に過去における経済協力援助あり方からいろんな出ている問題点、こういうものを考えると、この方向というのは望ましくないと思いますが、これをどうお考えになっておるか、この点若干詳しくお伺いしたい。
  16. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) わが国が、経済協力を行なってまいります上において、いわゆるひもつきをやめてアンタイイング化していくという方針を立てておりますが、この基本方針は、現在でも変わっておりません。すなわち、わが国は、ただいま御審議いただいております第二世銀に対する出資もそうでございますが、各種の国際機関に対する出資や拠出につきましても、すでにすべてアンタイ化をいたしております。そしてまた、二国間の借款につきましても、できるだけひもつきでないものにしたいということで、すでに現在にアジア諸国に対しましては、私どもLDCアンタイと呼んでおりますが、開発途上国が、物の供与をするなどの場合には、その国からも買っていいということで、ひもつき廃止の第一歩をすでに踏み出しております。  そこで、ただいま辻先生が御指摘なさいましたような、われわれの基本方針が変わったのかという御懸念でございますが、これは三木総理アラブ諸国をお回りになってお帰りになったころから、私ども方針が変わったのではないかといううわさが流れ、またそのような誤解が生じました。これはただいま御説明のございましたアラビア諸国に関する種々のプロジェクトにつきましては、ひもつきにするということをきめたことが、その原因であったろうと思います。そこで、このひもつきにするということをきめました理由は、先ほども申し上げましたが、相手国わが国工業力技術力を活用した援助がほしいということを要望しておりましたこと。それからまた、金額が非常に大きくて、これをもしわが国からの調達ということにならないで、よその国からの調達ということになりますと、これはどうしてもわが国国際収支に対する影響が大きいということ。それからさらには、この種の案件資源開発と申しますか、資源確保と申しますか、そういった考え方に結びついておりまして、日本以外の国におきましても、そのような動機に基づいて、資源確保をする場合には、必ずしも従来のような考え方にとらわれないで、いろいろな取引をやっております。そういったことから見まして、このアラビア諸国に関する経済協力についてはひもつきでやっていっていいんではないか、またそれが受け入れ国のほうの要望にもかなうのではないか、こういったような考えから、この一連の案件につきましては、日本からの物の輸出と結びつけた条件にした次第でございます。  なおもう一つ国際機関におけるひもつき廃止議論でございますが、基本的にそういった考え方がございまして、累次会議が持たれております。まあその中で最も私どもが期待をし、また各国が精力的に動いておりますのは、OECDの中にございますDACというのがございまして、開発援助委員会でございますが、この中で、先進国間相互の間でも、ひもつきを廃止して、アンタイにしようではないかという考え方が起こりまして、特に昨年の秋から、そのような議論を進める手はずになっておりました。ところが、御案内のとおり、昨年の秋おそくなりましてから、いわゆる石油危機が起こってまいりまして、この影響は、ひとり日本のみならず、西欧諸国でも相当影響を受ける国がございます。そこで、この石油危機の動向、そのおさまり方、こういったものを見きわめないと、なかなかひもつき廃止という決定を、公的に確立することはむずかしいという国が出てまいりまして、そのDACアンタイイングのスキームをつくる作業というものは現在一時停止いたしております。これは今後の国際情勢全体の推移を見ながら、またそのような作業が復活されるのではないかと考えております。
  17. 辻一彦

    辻一彦君 部分的に一歩前進をしているということですが、開発途上国の製品も同じように買い入れるとした場合に、やっぱり国際入札になりますね。入札になれば、どうしても工業先進国わが国と、現地の開発途上国入札をすれば、なかなかその入札中身として応じられるというか、落札するということは非常に困難だ。そういう点で、部分的に一歩前進といっても、実質的に一体どのくらいそれが前進するのかということが一つですね。それについてまず伺いたい。
  18. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 現在すでにアンタイイングを実施いたしました案件は十一件ございます。そこで、ただいま御指摘のように、LDCアンタイをつけますとどういうことになるかという御指摘でございますが、たとえばセメントであるとか、そういった基礎資材、そのようなものにつきましては、近隣の開発途上国から入れるほうが安くつく、また供給が円滑に行なわれるという事情がございます。ただ、ある場合には、受け取り側開発途上国が、日本からのひもつきのほうがベターだという場合がございます。これは意外とお思いになるかもしれませんが、ひもつきを廃止いたしましてアンタイにいたしますと、国際競争入札をやらなければいけない。そういたしますと、その手間やひまが非常にかかる。自分のほうでは非常に急ぐから、全部日本からくれないかという要望が出てまいります場合もございます。私、これを申し上げますのは、必ずしも全部がそうだというわけではございませんが、そういう場合もございまして、全部一律にLDCアンタイならそのほうが受け入れ国が喜ぶであろうというのは、必ずしも当たらない場合があるということでございます。  さらにもう一点、御指摘LDCの国々が、先進工業国と競争すると必ず負けるという必配があるのではないかという点でございます。この点につきましては、LDCからの調達につきましては、若干高い場合でもそっちを優先してもいいではないかという考え方がございます。これを私ども各国と話しましたときには、プレファランスマージンと呼んでおりますが、そういうところに優先させてもいいマージンを設けようではないかということで、   〔理事河本嘉久蔵君退席、委員長着席〕 たとえば国際機関であるIDAなどの場合にはそのような考え方をとっております。ただこれも、全部一律にそうなっているという段階にはまだなっておりません。
  19. 辻一彦

    辻一彦君 いろんな特殊な事情があるでしょうから、ひもつきのほうがいいというところもあるでしょう。しかし、全般的にいうと、ひもつきというのは評判が悪いので、いま各国もなるべくこれを軽減するようにしている。たとえばアンタイイングですね。これで割合が最も高いのはスウェーデンの九六%、西ドイツの七九%、こういわれておりますね。わが国の場合は、ひもつきのほうが八九・八%で、DAC加盟国中の十四位である。加盟国は十六ヵ国ですが、これにECを加えて十七ヵ国になるわけですが、そういう意味においては、非常にこのひもつきが多いということになりますが、この数字について、最近もっと新しい数字がございますか。
  20. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) ただいま辻先生が御指摘になりましたのは、一九七二年の数字かと存じます。七三年につきましては現在作業中でございまして、年央ぐらいにならないとわからないのではないかと思います。
  21. 辻一彦

    辻一彦君 であれば、七二年が公には一番新しい数字と、こういうことになりますね。そうしますと、十四番目ということは、これはやっぱりあとから勘案したほうが——二、三番目ということですから、ずいぶんひもつきが多いということ。しかも、こういうことは、田中総理東南アジアの歴訪を通して、各国においていろんな形で批判が私ははっきりと出たと思うんですね。こういう数字を見て、各国に比べて非常に低いわけですが、これを高めるためには、部分的なのをさらに一歩進めて、もっと積極的にひもつきをなくしていくと、こういうことが大事だと思いますが、この点、見解いかがですか。
  22. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 先ほど、わが国の実例が十一あると申し上げましたが、そのうち四十七年、すなわち一九七二年以前のものはわずかに一件でございます。四十八年、すなわち一九七三年中に六件、アンタイ援助をやっておりまして、ことし、四十九年に入りましてから、現在四月でございますが、すでに四件出ておるというのが実際でございます。したがいまして、一九七三年以降になりますと、このアンタイの比率というのはだんだん上がってくるのではないか。そしてまた、先ほど説明をいたしました中近東関係の特殊なものを除いた一般の経済協力だけをとってみれば、このアンタイの比率は上げていく、そしてまたアンタイを進めていくというのが、私ども基本方針でございます。
  23. 辻一彦

    辻一彦君 それでは、西ドイツ並みぐらいなところまでこのアンタイイングを引き上げる、そういうめどは一体どのくらいに置いておられますか。
  24. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 私どもこのアンタイの問題、そしてまたほかの援助条件の問題、そういった点、すべてを含めまして、なるべく早い機会に西欧並みのところまで上げていきたいということを心から切望いたしております。しかしながら、私ども先進工業国の仲間入りをして、そしてまた開発途上国に対する援助を始めることになったその歴史が、西欧の諸国に比べてまだ非常に短い。そしてまた、わが国の経済成長が西欧諸国に対して比較的早うございましたために、その一%の援助をするという量的なほうの約束を果たすのに非常に急でございましたがために、なかなかその質的な面においては、西欧並みのところまでいっておらないというのが過去における実情でございます。  そこで、これから将来に向かってどうかということでございますが、私ども、なるべく西欧並みのところへ持っていきたいということを希望はいたしておりますが、現在のような石油の問題から派生いたしまして、種々国際収支上にも問題がございますし、さらにまた、わが国の財政全体から見ましても、産業指向型から福祉指向型へ変わっていくということで、その配分にもむずかしさが加わっております。それやこれや種々の事情がございますので、着実にそのほうへ向かって進んでいきたいということは申し上げることができ、また、それがかたいわれわれの方針であるということは申し上げられますが、しからばいつの時点になればということになりますと、なかなかはっきりした時点が申し上げられないというのが実情でございます。
  25. 辻一彦

    辻一彦君 大体説明はわかりましたが、次官にちょっとお伺いしますが、これは東南アジア等に対する経済援助あり方として、ずいぶん批判が出たところであると思うのですね。半歩、少しずつ進んでいるということはわかりますが、この速度を速める必要があると思うのです で、いまアラブ石油資源確保の点については、再びタイイソグというのが復活といいますか、強化をされていると、こういう点がありますと、やはり協力を受けるほうといいますか、相手国のほうは、いままでの批判がやはりまた強くなるのじゃないかと思われますが、具体的なおよその年次におけるめど等をつけて、こういう数字を急速に早く引き上げると、こういう努力は私は必要だと思うのですが、そういうようなことを検討される考えはないのですか。
  26. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) 援助の種類と性質によってタイドにするか、アンタイドにするかを考えて、やはりあくまでも援助を受ける国本位にこちらが考えて、そのときの判断をすべきものと思うのでありまして、一律に全部アンタイドがいいというふうには私は判断をいたしておりません。しかし、相手国からアンタイドにしてもらったほうがいいというようなものを、さらにそれをタイドに持っていくというようなことが行なわれますならば、従来どおりエコノミックアニマルというようなことをいわれる一つの原因をつくることでございますから、厳に慎むべきことであろうと思います。そういうことで、やはりわが国外交政策、経済政策、貿易政策の一環として、常にそういった、私がいま申し上げましたような配慮をしながら、この方針をきめていくべきであろう。全部アンタイドにしたほうがいいとは私は考えておりません。
  27. 辻一彦

    辻一彦君 私も、さっき局長のお話のように、ひもをつけたほうがいいという御希望のあるところもあるのですから、そういうところまで無理にひもつきなしにすることはないと思うのです。しかし、心理的に考えますと、やはり協力を受けるほうからすれば出すほうがひもつきにしたいというような、こういう考え方を持っている中で、いや、それをやめてくれということは、なかなかやっぱり言いにくい点も私はあり得ると思うのですよ。だからそういう点も十分考えて、拡大を着実に伸ばしていくように、ひとつ答弁のように努力を願いたいと、こう思うのです。  そこで第二の問題として、いまのところ、かなりなこういうタイイングというものが必要であるとしましても、資材が、そうすればほとんど日本から買うということになるわけですね。そうしますと、日本のインフレと物価高、資材の高騰というものは、ここしばらくの間にものすごい速度で進んでいる。そうしますと、国際入札でそのお金を、借款を自由に使えるということであれば、物価がそれほど上がっていない、あるいは生産資材がそれほど上がらないところから入れるということも可能ですが、ひもがついていれば、これは日本から入れる以外にないと、そうすれば非常に高くなった生産資材、こういうものを買わなくちゃいかない。そうすれば、予定された、あるいは約束された金額では、計画されたプロジェクトというものが完成できない、中途はんぱになる、あるいはプロジェクトを縮小せざるを得ないと、こういうことがおそらくこれから起こってくると思うのですが、これについて実態と、どうお考えになっているか、この点いかがですか。
  28. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) まず、指摘いたしたいところは、先ほども申し上げましたが、この種の非常に大型のプロジェクト援助になりますと、この現実の遂行には三年とか五年とか、あるいはそれ以上の年月を要するということになります。したがいまして、約束をした時点ではその総額が表へ出ますので、非常に大きい感じを受けるのでございますが、これが経済の実態に与えます影響は、ある程度分散されて日本経済の生産力の上にかぶってくるわけでございます。そこで現在のような状況、そしてまた特に最近のように、コストアップの要素がふえてきたのではないかと思われるような段階になってまいりますと、こういった経済協力をすることによって、さらに日本の物価を押し上げる要素になりはしないかという御懸念が出てくるのはまことにごもっとものことだと思います。  そこで、現在日本の経済全体がどういうふうであるか、そしてまたその中に、こういった追加的な需要というものはどのような影響を持つかという点は、十分検討されなければならない問題であろうと思います。  ただ、現在わが国が置かれております状況から申し上げますと、いわゆるGNPの規模におきましても、自由世界第二の大きさでございます。それやこれやを考え合わせますと、ただいま申し上げましたようなプロジェクト援助の総計が、数年間に分かれてこの上に追加されるようなことがございましても、このために特に日本の物価に悪い影響を及ぼすことはないのではないかと考えます。  また、ひとつ見方を変えまして、これはその原因でなくても、日本の物価が上がっていけばどうなるか。いたずらに援助受け取り国に高い援助を押しつけることにならないかという御懸念もあろうかと思います。その点につきましては、極端に日本のコストがアップして、対外競争力が弱くなりますような場合を頭に思い浮かべてみますと、そのような場合には、非常に大きいプラントの、ある部分は、また第三の国からの輸入したものによってそれを組み込んでいくとか、そのようないろいろな知恵が働いてまいりましょうし、また経済構造も、そのような形へ動いていくのではないかと思われます。ただ、現在われわれがやっております経済政策、これが順当に行なわれますならば、そのような事態を迎えることなく、日本のプラントが他国に比して格別に高いという非難を受け入れ国に与えることなく、円滑にこの経済協力が実施できるのではないかと考えております。
  29. 辻一彦

    辻一彦君 いや、私は、この海外援助日本の物価に与える影響云々と、こういう問題よりも、現実に日本の物価がどんどん上がっていくと。だから、生産資材というのは、日本国内の公共事業を見ても、二年ほど前にきめた事業費では、ほとんど五年後にはやり得ないという状況になっていますね。同様に、わが国だけしかその生産資材を向こうの国が受け入れることができないとすれば、高くなった生産資材を入れておったのでは、初めにきめた約束金額では、とうていそのプロジェクトを完成することができないのではないか。そうなれば、これはこのプロジェクトを縮小するか、あるいは中途はんぱにするか、あるいは援助額をふやすか、何らかを考えなくては約束したことが実現できない。それができなければ、また約束をして実際はできないと、こういうことで、せっかくの努力がこれは全部元も子もなくなる懸念がある。そういう点で、急速に上がるわが国の物価高の中で、生産資材が上がっていく、それに対してプロジェクトが完成できないとすれば、援助をふやすとかそういう——こういうことを考えておるのか、この点を伺いたいということです。
  30. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 基本的には、繰り返しになりますが、先ほど申し上げましたように、わが国の物価がそのような上がり方をせずに、約束した金額の中で、当初予定されたものができるように政策運営を持ってまいりたいと考えております。しかしながら、不幸にして、ただいま辻先生が御指摘になったような事態が起こりますれば、そのときは、安易に流れることは許されませんけれども、ケース・バイ・ケースで十分検討して、約束約束として守るという基本的な態度を持っていかなければならないと思います。現実の問題といたしましても、ビルマの石油の精製所の建設で、当初百十六億円という予定で借款供与約束いたしましたところ、その後の値上がりによりまして、追加借款供与した例がございます。  それからまた、国際機関におきましても、ある程度のルールはございますけれども、極端に物価が上がった等の場合には追加ローンをすることがございます。私どもも、したがいまして、極端な物価騰貴等でも絶対当初の金額でやるんだとか、まあそれに固執するあまり、かえって受け入れ国側の反感を買うようなことがございますれば、これは全く心外のことでございますので、そのようなことのないよう努力するとともに、万一不幸な事態が起これば、検討するということを考えていきたいと思っております。——ただいま、ビルマの例がすでに終わったかのように申し上げましたが、ただいま交渉中でございますので、その点訂正さしていただきたいと思います。
  31. 辻一彦

    辻一彦君 これはある新聞にも出ていましたけれども、小さな例ですが、スリランカに訓練用の漁船一隻を無償供与約束したと。これは九千五百万円。ところが、漁船の単価が上がってとてもどうもならぬ、こういうことで、この三月末に六千万円を追加したと、こう出ておるのですね。これは非常に小さい例ですから、こういうことも可能だと思うんですが、そのほか、各国におけるこういうプロジェクトに対する問題点がたくさん出ていると思うんですが、代表的なものをちょっと御報告をいただきたい、わかっておれば。
  32. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) ただいま御指摘になりました例は、外務省のほうで直接やっておりますケースでございますので、外務省のほうから御説明いただきたいと思います。
  33. 石井亨

    説明員石井亨君) ただいま辻先生のおっしゃいましたケースは、スリランカのケースでございますが、これは無償資金供与のケースでございます。で、一つ問題なのは、正式に約束したあとで、そういう事態が起きて、それを約束自体を修正するかという問題と、それから、予算を一応計上しましたけれども、それが相手国との約束をする前にそういうその修正が必要になって、どうしても必要だということで、相手国との約束自体を、われわれの最初の計画よりもふやして認めざるを得ないというようなケースと、二つあります。したがいまして、その約束をする前の場合ですと、これは辻先生のおっしゃいましたような、相手国のほんとうの要請、これを完成するという観点から政府部内で財政当局と十分調整の上、それを、どうしてもその規模を縮小するとか、しないとかということにひっかからないような、たとえば訓練船をやるという場合は、この目的のために何トンの船が要るという場合は、これを少しトン数を減らすというようなことも不可能なので、大体、何といいますか、見積もりが妥当であるということを確認して、それの当初の予算をふやして相手国要請に沿うというようなことをやっております。これが先ほどおっしゃいましたスリランカのケースでございます。  そういうケースは、あと、無償資金供与関係では、インドネシアに対して訓練用、沿海漁業訓練船、これの供与というケースがございますが、それについても起きておりますが、これもそういう方向検討しております。
  34. 辻一彦

    辻一彦君 たとえばインドの肥料工場、ビルマのさっきの製油所、バングラデシュの深井戸とか、幾つかの例がずっとあるわけですね。この漁船の話はたいへん小さいけれども、パーセントから見ますと、九千五百万の予定が、六千万追加ということは、六三%高くなったので追加したということですね。それぐらい追加しなければ、資材が上がる場合には、約束は果たせないということが私は起こってくると思うんです。そこで、外務省のほうではそれはケース・バイ・ケースで相談しながらやるといっても、財政当局でこういう約束をした中身は、何としても実現さすために、資材が上がればそれに応じたスライドをとるとか、こういうことによってプロジェクトが完成するように、約束を守るために十分な努力をするというのか、あるいはもうそれはしようがないから、プロジェクトを縮小して、規模を小さくして、前にきめた金額に大体合わすようにするというのか、この点は一体大蔵当局どう考えておりますか。私は、やはりこういう約束は、何としても追加をしても守らないことには、もっともっと悪い結果をかえってもたらすことになるんじゃないか、こういう懸念を持ちますが、その点いかがですか。
  35. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 私どもがいわゆる借款でローンを供与しております場合には、現実の問題といたしましては、金額をきめるケースのほうが多うございます。と申しますのは、これとこれとの仕事を必ず仕上げるための援助をする、そういうやり方に対しまして、あるいは何億ドル相当のものであるとか、あるいは何億円であるとか、そういった形で金額をきめることが多うございます。そこで、値上がりによって仕事ができなくなったという場合に、その金額できめられましたときに、これだけの金額であれば、かくかくしかじかの仕事ができるという腹づもりを受け入れ国がしておりました場合に、その目算が狂ってきてできなくなったというような場合が生じます。これが、第二次借款であるとか、追加借款であるとか、いろいろな形で、ある国に二次、三次にわたって借款が行なわれます場合には、そのような調整もなされておりますし、それからまた、それが全然足りなくなったから追加してくれということで、金額を一部ふやすこともなしとはいたしません。ただ原則として、金額でお約束した場合には、その金額の中でできることをやっていただくのがたてまえであるというのが、私どもの原則的な考え方でございます。しかし、ただいま先生が御指摘のございましたように、ある約束中身が、はっきりしたものでございますれば、その約束したことができるように、その約束の違反にならないようにいたすのが、これは私ども外務当局と全く変わりがなく、私どももそれは責任であると思っております。
  36. 辻一彦

    辻一彦君 アラブ諸国にかつて日本の有力な政治家が行って約束をして、それが実行されなかった。こういうことが非常に大きな不信感を買ってまいったと、こういうことも聞いておりますが、やはり約束したことをきちっとやるということが何としても大事じゃないか。その点で、金額だけきめたんだから、あとはこの金額に合わせて規模を縮小すればいいというんじゃなしに、金額をきめれば、きめる過程は、おそらくこういう工場をつくる、だからこれに要する経費というのは、計算すればこれだけかかるから、これだけの何億、何百億のお金が要ると、こういうことで計算されると思うんです。だから、物価が上がってなければそう問題はないけれども、いまのような速度で何割も上がっていくとすれば、非常に金額に合わしてやるならば小さいものに、規模縮小になってしまう、これではやはり約束が果たせないと思うんです。それでは日本の信用といいますか、対外協力に対する信用というものをやっぱり弱くしていく、こういう点で、無理をしても、私はスライドをして約束に合わすような、そういう決意を財政当局は持ってもらいたいと思うんですが、この点次官いかがですか。
  37. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) お説のとおりでありまして、一つプロジェクトを完成するということを前提として、経済援助をする場合には、途中で物価が値上がりすれば第二次、第三次というような追加が行なわれるのはこれは当然だと思うのであります。いままで幾らかその点について、次の交渉が長引いたというような例がないこともないわけであります。しかし、たとえばダムをつくろうというときに、ダムが三分の二できて三分の一だけ残る、ダムとして完成しないというようなものを、そのまま見送るようなことはいまだかってないわけでありまして、必ず完成させるというふうに努力をすべきものと思い、今後もそうしてやっていきたいと考えております。
  38. 辻一彦

    辻一彦君 まあ努力はしているということはわかりますが、ちょっとこのぐらいけたはずれに資材が上がりますと、なかなか約束したことが簡単にできなくなるというような懸念が十分にあるので、そういう生産資材の高騰に伴う問題については、スライド的にこれを十分考えて、約束を果たせるようにこれはぜひやってもらいたい、こういうように思います。  それから四十八年度における政府開発援助の実績ベースは、四十七年度は聞いていますが四十八年度は幾らになっているか。それからGNP比で何%になっているか。それから四十九年度予算ベースで幾らになっているか。この点いかがですか。
  39. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) ただいまの御質問は、いわゆるDACで統計を出しておりますそのお手元にお配りしてございます資料の数字が、四十八年ないし四十九年にどうなるかということであろうと思います。  まず御説明いたしておきたいことは、このDACの統計のとり方でございますが、協力関係の種類のものにつきましては、支出段階一つ押えておるということでございます。それからまた、ただいま御審議いただいております第二世銀の場合のように、現金にかえて国債を交付することができます場合には、この国債を交付したときに、その支出が行なわれるという整理がなされておることでございます。そしてまた第三には、政府の直接借款とか輸出信用とか、こういった項目におきましては、ネットの数字が取り上げられておるということでございます。  この三つの点を前置きにいたしまして、四十八暦年でございますが、暦年につきまして試算をいたしますと〇・二四%が政府開発援助の比率になるのではなかろうかと試算いたしております。これは四十七暦年の〇・二一%に比べまして若干の改良になっております。  次に四十九年度でございますが、これは暦年の数字も非常につかまえにくうございますし、またどの程度支出になるかというのも、私ども予算編成のときの見込みで出したものでございますし、また将来四十九年度の途中において、たとえば緊急にどこかの地区を援助しなければいけないとかいうようなことで、予備費がつけ加わったりすることもあり得ますが、これらのことを一切捨象しまして御参考のために数字を申し上げますと、当初予算を基礎にいたしまして試みにはじきますと、GNPに対する比率が年度で〇・二九六%程度になろうかと思います。そこでこの数字が、前の数字とのつながりが悪うございますので、これまた御参考までに四十八年度の当初予算で計算してみましたところ、四十八年度の当初予算は〇・二六二%でございました。四十八年度の〇・二六二%に対して、四十八暦年は実績で〇・二四%と若干減っております。これはGNPの伸びが当初より大きかったとか、その他いろいろの事情がございます。したがいまして、四十九年につきましても、ただいま申し上げました四十九年度の数字よりは若干異同が生ずるであろう、そういう意味で御参考までに申し上げます。
  40. 辻一彦

    辻一彦君 四十七年が〇・二一、それが〇・二四ですから、前年度よりちょっと上がった、こういうことになりますね。それから四十九年度が、当初予算を基礎にすればかなりの数字が見込まれている。しかし、この加盟国十七ヵ国のうち、いままでで、七二年度をもとにして〇・二一をいえば、これは十三位になっておりますですね。加盟国の平均が〇・三四%、これから見ればかなり下回っている。しかも、この国連の中では〇・七%をめどにして達成しよう、こういう努力がなされておるわけです。そこで、田中総理も、今後の海外経済協力援助は、政府主導型というところに力を入れなくちゃいけない、こう言っていますが、これは、当然、このパーセントが高くなるということを意味するわけですが、〇・七%、これを各国はいろんな形でその目標を受諾をし、これに到達する努力をしておると思いますが、わが国の場合に、これを目ざしてどういうように考えておられるか、この点はいかがですか。
  41. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 私どももできるだけ早くこの比率が西欧諸国並みに上がっていくことを願っておるものでございまして、ただいま御披露いたしました四十七年と四十八年の数字をごらんいただきましても、非常に歩みはおそいとの御批判はあろうかと存じますが、私どもの努力のあとはおくみ取りいただきたいと思います。そしてまた、先ほど、四十八年度の予算を基礎にして試算した場合と、四十九年度の予算を基礎にして試算した場合の二つ数字を申し上げましたが、これからも、私どもの歩みが絶えず続いておるものであることを御理解いただきたいと思います。
  42. 辻一彦

    辻一彦君 前に、外務省のほうでは、達成時期を〇・七%を目ざすのをいつにするかと、こういうことで論議がありたと思うんですが、なかなかこれが国際的に約束できなかった。そういう背景には、大蔵省が援助予算の増額に難色を示しておった、そういう点で約束ができなかった、こういうようにいわれておるということを聞きましたが、そういう事実があるのかどうか。この点いかがですか。
  43. 石井亨

    説明員石井亨君) 結果的に申しますと、援助が伸びないということは、援助の、政府資金の支払いでございますから、これは予算の問題になるわけですけれども、必ずしもそうではありませんで、一般予算から出るものは、まさにまっすぐ援助になるわけでございますが、その年ないしはその次の年の実績となってあらわれてくるわけでございますけれども、たとえば政府借款援助の場合は、これは厳格な意味で予算を幾ら、それをその年度に使うというような仕組みではございませんので、これは財政当局が難色を示して、その予算がないということで伸びなかったということには必ずしもならないわけでございます。むしろ、根本的な問題は、政府借款を出すべき適当なプロジェクトが各開発途上国にあったか、ないか、かりに、わが国援助といいますのは、一ぺんに急激に毎年五割ふやすというようなことはできないわけで、その次の年についてあるワクが想定されますけれども、そのワクの中で、ある国に対してどうということを考えるわけでございまして、たとえば適当な国の、適当なプロジェクトということを考えておりましても、それがその国との関係では適当でないから認められないというケースもございますし、結局、そういうプロジェクトとか、国別の援助の、何と申しますか、政策の調整の結果、政府借款というものは出されるわけでございますから。  それからもう一つは、援助約束をしまして、それが実際にどういうふうに支払いにまでつながるかということでちょっと円滑にいかない場合にはおくれて、それが実績に反映されて、成績が悪いというケースも出てくるわけでございますけれども、いま申し上げましたように、援助実績が思うように伸びないということは、援助の大部分といいますか、半分以上が政府借款でございますから、政府借款について申しますと、いま申し上げましたような話でございますから、必ずしも予算がないということで、そういう結果になっておるということではございません。ですから、一般予算につきまして、たとえば技術協力とか、国際金融機関への出資金とか無償資金供与とか、一般予算がすぐ必要であるというものについて伸び率が悪いということであれば、そういうことでございますけれども、それはことし、それから昨年度の援助予算を見ていただきますとすぐおわかりですけれども、ほとんど五割の伸び率でずっと伸びてきておるわけでございます。むしろ、原因は、予算的に、財政的な手当てができないから伸びないということではないというふうに私は理解をいたしております。
  44. 辻一彦

    辻一彦君 いや、実績というよりも、幾つかの国は、たとえば何年までに〇・七%に到達するように努力するという約束をしておるわけですね。わが国は努力はするが、その約束ができないという形になっておるでしょう。そういうことができない背景には、いまいったような財政当局の制約があってできなかったのか、そういうことは全然ないのか、これをひとつ大蔵当局からお伺いいたしたい。
  45. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 海外経済協力の全体の姿がどうなるかということにつきまして、私ども外務省と絶えず意見の交換をいたしております。そこで、私どもといたしましても、心の中では早く欧米の水準並みに上げていきたいという気持ちを持っております。しかしながら、御案内のとおり、わが国のGNPの伸び方が非常に早かった、したがって実際の額では、相当のものを伸ばしながら、率としてはなかなか反映されてこないという面が一方にございます。そうしてまた、他方その実際の額の内訳におきましても、ただいま外務省の参事官から御説明がございましたように、プロジェクトそのものになりますと、なかなかその消化能力といいますか、現実のプロジェクトがどうであるかということが問題になってまいりまして、援助借款をふやす必要があるものの、さりとて何に使ってもいいということでは、また私どもの、国民の貴重な税金を預かっております立場から申しますと、なかなかそうにもいかない。そうなりますと、そこほかの、たとえば外務省で扱っておられる海外技術協力の実施委託費は、これを四十八年度百十二億を百四十六億円に伸ばしておりますし、国連の開発計画拠出金であるとか、国連人口活動基本拠出金であるとか、そういった国際分担金の拠出金は、昨年度八十六億円を今年度は百七十億円に伸ばしておりますし、そういう適切なるプロジェクトがあり、適切なる業が行なわれる面におきましては、私どもとしてもできるだけそれに近づけるように最大の努力をいたす所存でございます。
  46. 辻一彦

    辻一彦君 すでに幾つかの国は〇・七%いつまでに達成する、こういう約束をするところまできておるわけですから、大蔵当局もこの状況を十分考えて、やはり早くそれらの国に追いつくように努力をぜひしてもらいたいと思います。  そこで、いまGNPの問題が出ておりましたが、このGNPの一%を目標に開発途上国援助を目標にしておりますが、いま〇・九ちょっとになっておりますね。これを一%に到達さすのにいつごろひとつ到達しようという、そういう考え方を持っておられるか。計画があるのか。この点いかがです。
  47. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) ただいま御指摘のように、一九七二年のわが国援助総額は、GNPに対する比率は〇・九三%でございます。これは、目標は一%でございますが、DAC諸国の平均は〇・七八%でございまして、わが国の〇・九三%はそれよりだいぶ上のほうへいっております。たとえば、ドイツは〇・六七%であるとか、米国は〇・六六%であるとか、こういった比率が出ておりますが、わが国の比率は、これらの率と比べまして遜色のない段階にいっております。私ども絶えずこの一%というものを頭に置きながらやっておりますが、DACの統計に出てまいりますものは、あとで振り返ってのことになりますので、なかなか一%のところまで届かないのが実情でございます。
  48. 辻一彦

    辻一彦君 なるほど、そういう数字ではほかの国よりも高いということはわかりますがね。しかし、直接の政府の投資であるとか、それから輸出の一年以上の繰り延べ、こういうものを各国は全部入れて計算していますか。その計算の方法によって私はかなり違うと思うのですが、その点はどうですか。
  49. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) ただいまの比率を計算いたします上に取り上げられます項目は、お手元にお配りしてございます資料の各項目に対応するものでございまして、この範囲は各国とも全く同じでございます。
  50. 田中寿美子

    田中寿美子君 関連。  いま私、辻議員と、それと政府の皆さんとの質疑を聞いておりまして、経済協力に関してはもう一つ別の問題があると思うのです。さっき外務省の方が、援助予算は伸びているんだけれどもというようなことをおっしゃった。必ずしも予算がないからじゃないんだというふうな、ちょっと苦しい答弁していらっしゃいますんですが、これは私、海外経済協力の予算全体が毎年完全に消化されているかどうかという問題が一つあると思います。で、私は、財投のほうから海外経済協力基金の問題をずいぶん追っているわけなんです。毎年これは不消化で残してしまっているわけですね。たとえば、四十八年度はたしか六百七十五億計上しております。だけれども、繰り越しが二百六十億でしたか、前年度からあるんですね。合計すると八百億をこすものが経済協力基金の中にはある。ところが、四十八年度末までには、六十億ぐらいしか消化していないという、たいへん不消化なんですね。私、一般会計の中に入っている海外経済協力の予算だって、あるいは不消化があるんじゃないかと思うのですね。それから不用額も残したりするわけなんですがね。  こういうことになる原因というのは、私は、経済協力一つは質の問題がある。それから相手方の、受け入れ方の問題もあると思うんですが、一体どうしてそうなるのか。幾ら金を積んでも協力ができない実態というようなことが一つあるということと、それから過去の状況を調べてみますと、海外経済協力基金のことに関する限りは、使い方はずいぶんばらばらでむちゃくちゃだったような気がいたします、しさいに見ますと。各省関係がもう個々ばらばらに貸し付けているわけなんで、かえってそのことが、相手国に反日感情を引き起こすようなことすらしているわけなんですね。ですから、海外経済協力白書というのが去年出されましたけれども経済協力中身の問題があるし、それをどうして消化できないかという問題について、それから経済協力予算の執行の状況がどうなのか、ちょっと説明していただきたいと思います。
  51. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 私のほうから、ただいま田中委員の御指摘のございました質問のうち、幾つかを答えさしていただきたいと思います。  まず、借款その他経済協力予算の不消化の問題でございますが、これは外国を相手にいたしておりますし、その上、開発途上国でございますので、わが国国内におきましていろいろな事業をやります場合とは異なった、さまざまな予期しない問題が起こることが比較的多うございます。たとえば当初いろいろの計画を相談して、プロジェクトを相談して、それをやろうということになりましても、途中で受け入れ国のほうから、事業の優先度が変わったからこちらへ振りかえてもらいたいというような要望が出ることもございます。また、ある場合には、そのプロジェクトにつきまして、事前の調査であるとか、そういったものが不十分で、受け入れ体制が必ずしも万全でない、そういったようなこともございます。  この援助予算の運用の初期におきましては、数年前までは、ただいま田中委員の御指摘のように、わが国内の事情もあるいはその原因でなかったかというような御批判がございました。ただいま御指摘のとおり、各省の間がうまく連絡がとれていないのではないかという御懸念でございます。この点につきましては、その後私どもも経験を重ね、そしてまた各省間の連絡も、従前と比べますれば、比較にならないほど密接に連絡をとりながら、そしてまた外国の場合には、日本国内の慣行であるとか、その他のものがそのまま適用されない場合があるということも十分頭に置きまして、その上で連絡をいたしてやっております。したがいまして、どちらかといいますと、最近でも依然として不消化のものが多いということは、受け入れ国の側にもう少し改善すべき点があるのではないかという疑問を持ちまして、たとえば技術協力の事業をあわせて行なうとか、あるいは事前の調査を従来よりももっとよく行なうとか、そういった形を通じまして、借款が円滑に流れ、そして当初期待いたしました事業効果が生まれるような努力を払っておる次第でございます。
  52. 石井亨

    説明員石井亨君) ただいま大蔵当局側からの御説明のとおりでございますけれども、この援助約束をして、それが実施されるまでに時間を要し過ぎるという問題はございまして、これは御承知のとおり、田中総理の非常に強い問題点指摘もございまして、毎月閣議におきまして援助予算、それから借款の進捗状況につきまして報告を出しております。それからそれの実施の状況が悪い場合には、どこに隘路があるのかという問題点につきまして、この数ヵ月相当精力的に研究もしてまいりました。その結果は、先ほどの大蔵省側の説明のとおりでございますが、一般的に申しますと、各国ともその大きなプロジェクトにつきましては、そういう問題点に遭遇しておりまして、相手国と一般的な約束をするけれども、いざ実施の段階になりますと、先方の希望が変わってさましたり、相手国が受け持たなければならない予算的な手当ても必要なわけですが、それが調達できなかったりする。それからもちろんわがほうにおきましても、実施機関の調査が不十分であるとか、人間の数が足りないとかという問題もございますけれども、そういう問題点は、わが国だけでなくて各国ともございまして、特にわが国各国と比べまして悪いということはあまりない、一般的に、多少悪いという点は認めざるを得ないと思いますけれども、特別に悪いということではなくて、それは借款案件の実施というものに内在する本質的な原因があるかとわれわれは思っております。しかし、これはわれわれの実施状況——実施を促進しようという改善の努力に別に弁解をするということじゃなくて、われわれとしてでき得ることは、今後一そう、たとえば実施機関の充実だとか、それからプロジェクトをきめるまでの調査を十分にやるとか、そういうことが非常に大切であるという認識も他方にございますので、大いにそのほうの努力もやっていこうということでございます。
  53. 田中寿美子

    田中寿美子君 ですから、GNP対経済協力費の比率を上げなければいけないから、予算はたくさん取らなければいけない。しかし、その予算を取ってみても、うまく使われないというたいへんな矛盾に苦しんでいらっしゃると私は思っているわけで、それはやっぱり海外経済協力あり方の質的な問題をうんとしっかりやらなければいけないんじゃないかということだけ、いま時間をあんまりとって悪いですから申し上げて、それでそのIDAに参加することによって、そういう面で特典、特典といったらあれですが、使い方が二国間の借款みたいにならないから、そういう点ではうまく作用するというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか、それだけ伺います。
  54. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 援助のやり方を二国間の協定の形でするか、あるいは多数国で構成いたしております国際的な金融機関を通じてやるかということは一つの大きな課題でございます。二国間でやります場合には、非常に機動性があると申しますか、場合によっては早くアレンジができる。そしてまた受け入れ国が非常にほしいところへすぐ援助がいくことができるということがございます。他方、ちょうど裏返しになりますが、若干の欠点がございまして、これがとりもなおさず国際的な開発金融機関を通ずる融資の長所にもなっておるわけでございますが、それは援助供与する国からの政治的な圧力を受けることが少ない。受け入れ国のほんとうに大事なところへ資金が回ることになる。それからまたあるいは援助供与国だけでは不足するかもしれない専門家を、国際的な開発金融機関はたくさんかかえておりますから、その意味で事業の遂行にあたっても、一番受け入れ国の国民に有効な形で資金を使うことができると、こういった点がございます。  そこでまあ、各国ともどちらにも極端に片寄らずにやっておりますが、大体の感じで申し上げますと、この政府の開発援助のうち、二割程度国際機関を通ずるものという形で推移いたしておりまして、わが国の場合でもその比率はほぼほかの国と同じでございます。私どもといたしましても、一方で受け入れ国のほんとうにほしがっておる、そしてまた、わが国とあるいは地理的、文化的その他の関係からいって関係の濃い開発途上国に対しまして、十分な資金が回りますように、二国間の借款も継続していきたいと思っておりますし、また他方、国際的な開発金融機関を通ずるものも、それなりの長所を十分に持っておるわけでございますから、この活動も年々拡充していかなければいけない、このように考えております。
  55. 辻一彦

    辻一彦君 これで終わりますが、最後に簡単に、第二世銀のこういう性格から推して、長期しかも、無利子に近い手数料、こういう開発援助あり方というのは非常に望ましいと思うんですが、これをさらに融資の額等が拡大をされるような、そういう方向わが国として今後イニシアチブをとっていく用意があるのかどうか、このことを一点伺って終わりといたします。
  56. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) このIDAのような金融方式が、ほんとうに貧しい開発途上国に対して非常に有効であるということは万人の認めるところでございます。そして私どもも、ほかとのバランスもとりながら——ほかとのと申しますのは、ほかの形式の借款ないし援助とのバランスもとりながら、このような長期、低利の援助をする機関に対しても十分これを支持し、その発展に力をかしたいと、このように考えております。  一つの例を申し上げますと、昨年六月にアフリカ開発基金というのができましたが、これはアフリカ地域におきます非常に貧しい国々に対しまして、低利の金融をする国際機関でございます。これに対しまして国会の御賛同を得まして、カナダと並んで日本は最大の拠出国となって、これを積極的に推進するようにいたしております。また他方、近くはアジア開発銀行の中に、低利で金融をつけます特別基金というのがございます。これに対しましては、昭和四十三年の三月に七十二億円を拠出いたしましてから、現在まで六次にわたりまして合計六百三十四億円という金額をこの特別基金に拠出いたしております。これはこの基金のほぼ三分の二ぐらいの金額でございます。  このようなことで、私どもといたしましても、国際金融機関において、通常の条件で行なわれる開発貸し付けと並んで、低利の、長期の、真に貧困に悩む国々にとって有益な金融も充実していかなければならないという考え方で臨んでおります。
  57. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、資料要求を委員長にお願いしたいんですが、ただきょうはたぶんその担当の方がお見えにならないと思いますので、政務次官に、ちょっとお聞きいただきたいのですが、公共事業費の予算に関係しまして三点の資料をお願いしたいんです。  社会党は、公共事業の圧縮の問題で、衆参両委員で絶えず、まあ政府は公共事業費を圧縮しているとおっしゃっているけれども、前年度からの繰り越しがあるから相当多額になるではないかというようなことを、いままで討議してきているわけです。それで具体的に、政府が公共事業費を繰り延べているというふうにいっていられるので、第一番に、具体的に昭和四十八年度の公共事業費予算の第四四半期の契約額、進捗率及び昭和四十九年度への繰り越し額を知りたい。その資料がいただきたいのです。で、たしか四十八年度の第三四半期の途中、十一月分までは出ておりますけれども、三月末まで、もし出ていなければ見込みでもいいんですが……。  それから第二点は、昭和四十九年度公共事業費予算、たとえば治山治水、道路整備等事業別の予算額と予算現額。  第三点は、昭和四十九年度第一四半期の公共事業費の使用方針、これは四月十日に参議院で予算が成立しました直後に閣議で決定なすった分です。これの具体的な計画の資料をいただきたい。  この三点なんですけれども委員長お願いします。
  58. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) 第一点は、四十八年度の公共事業費の第四四半期の契約高ですね。続いて四十九年度に繰り延べた事業費別総額。それから第二番目は、四十九年度の公共事業の費目別の予算額と予算現額。第三番目が、四十九年度の第一四半期の公共事業費の使用方針の具体案ですね。わかりました。これを出します。     —————————————
  59. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、高田浩運君が委員辞任され、その補欠として木村睦男君が選任されました。     —————————————
  60. 多田省吾

    ○多田省吾君 御答弁は簡明にお願いしておきます。  まず、本法案の提案理由の補足説明の最後に、アメリカで昨年十二月十四日に下院銀行通貨委員会で第四次増資のための法案が可決されたけれども、その後下院本会議において本年一月二十三日に同法案が否決されたということが出ているわけですが、これはどういう理由なのか。また、その後の見通し、またイギリスなんかも内閣がかわったわけですが、その他の国においてこういった問題がないのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  61. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) アメリカの下院におきます審議状況は、昨年の十二月十四日に銀行通貨委員会で一度この法案は可決されております。それが休み明けの一月二十三日に、下院の本会議にかかりましたときに、そこで否決されたということでございます。  そこで、その当時さっそくアメリカの大使館を通じ、またアメリカの財務省にその理由をただしましたところ、主たる原因として思い当たるのは、どうもアメリカの国内の政治的な原因があったのではないかということでございます。この裏づけといたしまして、下院におきます票は、賛成百五十五票に対して反対が二百二十一票でございましたが、この法案に対して野党は賛否相半ばいたしましたのに、共和党は三分の二以上が反対に回ったということでございます。  そこで、当時の財務長官でございますシュルッは、さっそく二月五日に大蔵大臣あてに手紙をよこしまして、自分はこの法律が議会の承認を取りつけることにコンフィデントである、確信を持っておるということを私どものほうに書簡をもって連絡いたしてきております。その後この法案は、確かめましたところ、上院の外交委員会で公聴会が開かれておりまして、三月二十一日にシュルツ長官が出席いたしまして意見を述べております。おそらくこの外交委員会における表決は、四月の中旬ないしは五月の上旬になるのではないか。そして五月の中旬ないしは下旬には上院の本会議をクリアすることが期待できるのではないか、そのような情報を得ております。
  62. 多田省吾

    ○多田省吾君 IDA協定の第六条第三項に投票権についての規定があります。その割合は、先進国の一部国の投票権の総数は全体の六二・三七%、これに対して発展途上国の二部国の投票権の総数は三七・六三%であると思いますが、今回の第四次増資によってどのように変更があるのか。また、一部国と二部国との投票権総数の割合は、増資の有無にかかわらず、当初の規定どおりに不変なのかどうか。
  63. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) こまかい数字になりますと若干の異同がございますが、大筋から申し上げますと、このIDAの投票権につきましては、一部国全体と二部国全体に対するシェアはほぼ同じに維持していこうではないかという考え方に基づきまして、今回の第四次増資にあたりましても、そのようになるような投票権の計算方法というのがつくられております。こまかい点で異同がありますがと申し上げましたのは、新たに開発途上国がIDAに加盟してまいりますと、この国が若干の投票権を持つわけでございます。数字的には非常に小さいものではございますが、こういうものが入りますために、二部国の投票権が全体のうちでは徐々にふえるような感じを持っております。ただ、さらに二部国の中から一部国へかわってまいりますものもございます。そういったところで、新しく二部国に入り、ないし一部国に入った、その辺の動きを調節しながら、その時点における一部国全体のシェア、そして二部国全体のシェア、こういったものは同じに維持できるような考え方投票権が計算されております。
  64. 多田省吾

    ○多田省吾君 それじゃ具体的に、今回のIDAの第四回の増資によってわが国は四億九千五百万ドル、千三百十五億円を分担するわけですが、これは増資総額四十五億ドルですかの一一%を占めるわけでございますけれども、この第四次増資によって、一部国相互間の投票権はどのように変化があるのか、またわが国は当初出資三千四百万ドル、シェアが四・五%。第一次増資で四千百万ドル、五・三%。第二次増資で六千六百万ドル、五・四%。第三次増資で一億四千四百万ドル、シェアが六・〇%。今回は四億九千五百万ドル、シェア一一%。出資額それからシェアともに最近特に急上昇しているわけでございますけれども、今後もこのような上昇を続ける見通しなのかどうか。
  65. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) この投票権につきましては、第一次の増資と第二次の増資の場合には、投票権とかかわりなく増資が行なわれました。第三次の増資以降につきまして投票権の調整が行なわれております。そして先ほど私が、一部国の投票権は全体としては動かさない方針であると申し上げましたが、この一部国の中におきますシェアは、拠出額に応じて変わってまいります。たとえば日本について申し上げますと、この第四次の増資に基づく調整をする前のシェアは、一部国の中だけで見ますと、五・四八%、全体で見ますと三・三八%でございますが、調整後は、一部国の中で七・六九%であり、全体で見れば四・七%というふうに増大いたします。このようにシェアが大きくなりますのは、たとえば西独のようなところも拠出が大きくなりますために、一部国の中におきますシェアが、調整前では八・九五%、これが調整後では九・八七%と、このように相なります。米国で申しますと、シェアが下がるものでございますから、一部国の中で調整前は三七・八五%、調整後は三五・四〇%と、このようになっております。  将来のシェアの問題でございますが、これは三年たちますとまた今回と同じようにその後の増資をどうするかという問題が起こってまいります。そのときにどういう形でどのような決定がなされるかは、いま断定的に申し上げることはむずかしいのでございますが、おそらく今回と同じようにGNPのシェアというのが一つのものさしとして使われることになるのではないかという感じを私は持っております。  そこで、これから数年間の間に、わが国が、他の西欧諸国ないしは他のIDA一部国と比べまして、GNPの伸び方の早い場合には、そのときのシェアも大きくなります。したがいまして、資金の拠出の一部国の中におけるシェアも上がってくるのではないか。そして今回と同じように投票権の調整というのが行なわれますれば、資金のシェアが上がれば、それに対応して投票権のシェアも上がるのではないか、このように考えております。しかしながら、これは、この次の増資にあたりまして、各国の代表が集まって、またいろいろと検討いたすべき種類のものでございますから、いまから断定的にそのようになるということは申し上げかねる次第でございます。
  66. 多田省吾

    ○多田省吾君 IDA加盟国は、一九七三年十二月末で第一部国が二十ヵ国、第二部国が九十二ヵ国で合わせて百十二ヵ国となっておりますけれども、その後、第一部国にニュージーランドが加盟したようになっておりますが、この中で、共産圏の加盟国というのは第二部国のユーゴスラビアしか見当たらないのでありますけれども、IDA及びわが国は、共産圏の加盟を呼びかけないのかどうか。また今後加盟予定の国はどういう国があるのか、ひとつお知らせいただきたい。
  67. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 御案内のとおりIDAのメンバーになる資格は、世銀のメンバーであることでございます。したがいまして、第二世銀は、世銀の加盟国にはオープンであるということに相なります。また世銀のメンバーはIMFのメンバーであることが前提でございますから、IMFのメンバーにはオープンでございます。したがいまして、IMFのメンバーになれば、どの国であっても世銀のメンバーになり、次にIDAのメンバーになることができるのでございますが、IMFのメンバーにみんながなっておるわけではございません。たとえば国連の加盟国ではございますけれども、IMFに加盟していない国がブータン、中国その他十四ヵ国ございます。それからまた、IMFの加盟国ではあるが、世銀にまだ加盟していない国が三ヵ国ございます。また世銀の加盟国ではあるが、IDAに加盟していない国が十一ヵ国あるということで、オープンにはなっておるのでございますが、東欧ブロックの国々は加盟していないというのが実情でございます。  それからまた、過去の経緯を御披露さしていただきますと、ポーランドとキューバは一度IMFのメンバーとなり、世銀の加盟国となりましたが、その後脱退いたしております。さらにチェコスロバキアはかって入っておりましたが、資格停止処分を受けて加盟国でなくなっております。そういった背景がございまして、現在御指摘のようにIMF、世銀に加盟しております東欧圏の国はユーゴスラビアとルーマニアの二ヵ国でございます。私どもといたしましては東欧圏の国々であっても、IMF、世銀そしてIDAのメンバーとなることを歓迎するものでございますが、まあそれぞれの国の事情があって、現在の段階ではメンバーになっておらないというのが実情でございます。  その次に、近々IDAの加盟国になる予定の国はあるかという御質問でございますが、私どもの得ております情報では、ニュージーランドとマルタと西サモアの三ヵ国が入りたいという希望を持っておるやに聞いております。その中で特にニュージーランドは、第四次増資にも関連いたしまして、これは入れば一部国になるのではなかろうかと考えております。
  68. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまの話で、IMFに加盟し、しかも、世銀に加盟していて、この第二世銀に入っていない国が十一ヵ国とおっしゃいましたが、その国をちょっとあげていただけませんか。
  69. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) バハマ、バハレーン、ジャマイカ、ニュージーランド、ポルトガル、カタール、ルーマニア、シンガポール、アラブ首長国連邦、ウルグァイ、それにベネズエラの十一ヵ国でございます。
  70. 多田省吾

    ○多田省吾君 IDAの協定の第二条二項では、その資金の払い込み方法として、第一部国は割り当て金額を金または交換可能の通貨により、また第二部国は一〇%を金または交換可能な通貨で、残りの九〇%は交換性のない自国通貨で払い込む、このように規定されてありますけれども、この考え方の基本の精神はどういうものか。また今回の第四次増資割り当て額のうち、米ドル相当額は一九七三年九月二十七日のニューヨーク市場における各国通貨レートで換算したものとされておりますけれども、この理由は何か。この二点をお尋ねいたします。
  71. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 御案内のとおり、IDAは特に貧しい開発途上国における生活水準の向上や経済的、社会的進歩を増進することを目的としてできておりまして、したがいまして、そのような国もなるべく多くこの加盟国になってほしいのでございます。それらの国々が、かりに出資の面でその加盟をためらうようなことがございますと、この大目的からいっても好ましくございませんので、出資する場合にその負担を軽減することができるよう、その国の通貨による払い込みを認めまして、そうしてそのような軽減された負担で払い込みし、なおかつこのIDAの中におきます発言権と申しますか、投票権は与えられるように、このような配慮から二部国につきましてただいま御指摘のような取りきめになっておる次第でございます。  第二の点につきましては、現在世界の金融情勢は御案内のとおり、各国通貨ともフロートしておる状態でございます。そこで、ある段階における幾らのものというのをかっちりきめてやりますると、これは自国通貨であれば問題ないのでございますが、かりに外国通貨であれば非常な不安を持って、この第四次増資に応募しない国があるかもしれない、またこれらの国が応募した結果、あとでその国の通貨がフロートダウンいたしました場合に、大きな負担をかけるようなことになっても好ましくないというような判断がございまして、今回の増資額をきめるにあたりましては、現在のような流動的な国際通貨情勢にマッチした自国通貨建てによる拠出額の表示というふうに踏み切ったのでございます。ただ、自国通貨建ての表示ではございますが、これを全体の姿を明らかにいたしますために、この第四次増資の最終的合意が得られました日の翌日のニューヨーク市場におけるレートを基準として、各国分担額を自国通貨に換算したものをもって分担額といたしております。
  72. 多田省吾

    ○多田省吾君 次にお尋ねしたいのは、この第二世銀といわれるIDAと世銀との関係でございますね。融資条件も世銀が期間三十年以内、金利七・二五%というコマーシャルベースでありますけれども、IDAのほうは期間五十年、金利ゼロ、手数料として年〇・七五%という非常に寛大な融資条件になっておりまして、IDAの目的としましても「世界の低開発地域で協会加盟国に含まれるものにおける重要な開発上の需要に応ずるため、特に、通常の貸付けの条件よりも弾力的なかつ国際収支に対する負担が軽い条件融資を行ない、もって」云々、このように目的にもあるわけでございますが、その関係は具体的にどうなっておるのか。  それから特にこの第二世銀の融資対象国は、第二部国の中でも、過半数以上がアジア地域、特にインド、パキスタン、インドネシア、バングラデシュの四ヵ国に集中融資されておるわけでございます。ほんとうならば、人口や食糧事情なんかから考えますと、西アフリカ諸国のほうが非常に深刻で、経済的な諸援助が急務であると思いますけれども、そういう国はあまりこの恩恵に浴していない。それからシェアを見ますと、ほとんどアジア地域に集中して、総額の六七・七%、第二位がずっと下がって東アフリカの一二・六%、第三位が西アフリカの六・六%、中南米は全体の四・一%にすぎない。そうすると、これがアジアのためのIDAというような感じが強くて、特にニクソンドクトリン等にからんで、今後アジアの先進工業国であるわが国が、IDA出資の負担の割合がますます一そう重くされるような傾向にあると、このように思いますけれども、それがないかどうか、あわせてお尋ねいたします。
  73. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 第一にIDAと世銀の具体的な関係でございます。IDAが設けられましたのは、この協定の一条にございますように、世銀の活動を補足するために設立されたものでございまして、いわば姉妹機関でございます。したがいまして、この補足することを実効あらしめるために、この両機関は非常に密接な連絡を保ちながらやる必要がございます。この上で、たとえば融資を選定するにあたりましても、十分な連絡が必要でございますし、その他、種々の面で連絡を密にする必要があると、そのような考え方が基本にございまして、人的な面では、たとえば世銀に対して総務として出ておる人または理事は、職権上IDAの総務または理事となる、さらに世銀の総裁以下のスタッフは、IDAの総裁以下のスタッフを兼務するということで、人的にも、その緊密な連絡が保てるような立場を貫きながら、そして融資関係におきましては、ただいま御指摘のように、世銀においては、経済効果、収益性、返済可能性等を考えたコマーシャルベースのローンができるように、IDAのほうでは、その受け入れ国の貧窮度であるとか、外資調達能力であるとか、そういったことを考えて、非常にゆるやかな条件の借り入れができるように、そういったふうな調整をいたしながら、緊密に協調してやっておる次第でございます。  次に、インド、パキスタンについての問題でございますが、一つ初めに指摘いたしたいのは、IDAの加盟国数は、最近では百十二ヵ国になっておりますが、たとえば六一年には五十六ヵ国であり、六六年には九十六ヵ国であり、七一年に百七ヵ国というように、特に六〇年代において急増してまいりました。ただいま先生の御指摘のございましたインド、パキスタンというのは、非常に古くからのメンバーでございます。アフリカ諸国は、どちらかというと新しいメンバーでございます。その上、インド、パキスタンは、御案内のとおり、人口の面でも極端に大きい国でございまして、IDAのいろいろな融資活動も、人口の一人頭にいたしますと、必ずしも、インド、パキスタンが極端に大きいわけではございませんで、一人頭で一番高いのは、ボツワナであり、その次はコンゴであるというように、たとえばアフリカのセネガルであるとか、そういった国も、一人頭で見ると非常に大きな援助を第二世銀から受け取っております。そういったことで、インドとか。パキスタンとかにIDAの融資が集中いたしますのは、ある程度歴史的にも避けられないところではございましたが、しかしながら、御指摘のように、ほぼ三分の二のものがアジア地域に集まり、特にインドとかパキスタンに集中するということに対する批判は、最近ございまして、そこで一九七二年、おととしの十一月のIDA一部国会議におきまして、この点が問題として議論されまして、七三年度、七四年度のIDAの資金の配分にあたっては、非常に大きい国であるインド、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、この四ヵ国に対してはシーリングを置こうではないか、そうして全体に対する比率が、ただいま申し上げました四ヵ国について、それぞれ四〇%、一一%、六%、五%、その範囲内でやるようにしようということで、現実の運営がなされております。その結果、七一年度におきまするこの四ヵ国に対します融資の比率は、全体の六六・三%でございましたが、七二年度には五六・八%、七三年度には五六・七%、このように、この四ヵ国に対するシェアは最近若干下がってきております。  なお、御指摘のように、このIDAのような機関が、さらに、より多くの国々に融資されるべきであるというお考えは全く同感でございます。  ちなみに、IDAの融資を受けておる国々を拾ってみますと、一九六七年の六月末には三十八ヵ国でございましたが、三年後の一九七〇年六月末には五十五ヵ国、さらに三年後の昨年の六月末には六十六カ国にのぼっておりまして、IDAの融資を受ける資格のあるような非常に貧しい国々の中では、たとえば国内の治安が維持できないとか、その他特別の事情のある国を除きましては、大体IDAからの融資を受けておる実情でございます。
  74. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 引き続いてお伺いしますけれども、先ほども御質問の中にあったんですが、日本出資比率がふえておるんです。これに対して米国、英国のそれぞれの増資に対する比率というのは、負担比率が減ってきました。これは傾向的に見ていくと、なるほど、立ち上がったときには米、英の負担比率が大きかった。そのうちに、だんだんと西ドイツ並びに日本の負担額がふえてきた。単純に見ますと、肩がわりをさせられてきた感じがあるんですけれども、ちょうど、そういう数字の変化があるころは、米国あるいは英国、それぞれが国際収支で悩むということがあったんですけれども、これまでの変化を顧みて、いわば肩がわりというような論議はあったんでしょうか。
  75. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) IDAの資金におきますシェアが、ただいま御指摘のような変化を見せておることは事実でございます。しかし、この変化は、意図的にある特定の国の負担を軽くしよう、そしてその分をほかの国に、になってもらおう、そういうところから出たものではございません。このシェアを検討いたします際には、各国のGNPのシェアをもとにしまして、いろいろな議論はなされておりますが、たとえばイギリスのシェアは、GNPのシェアで計算したものよりも多くなっておると思います。したがいまして、このGNPのシェアだけではなくて、他の要素も入っておりますが、しかし、その結果、ある特定の国の負担を軽くしようということで、他の国にその肩がわりをさせるというような発想に基づく議論というのは、行なわれなかったと記憶いたしております。
  76. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうすると、GNPを基準にしてきめるかどうかは別にして、たとえば今回の増資に対する負担割合が、日本の場合一一%ということになりますと、大体援助額に対する負担を考える場合に、これぐらいが常識的には目安になるということで、今後いろいろなところで議論をされていくことになるんでしょうか。  一つ例として申し上げますと、たとえばインドに対する各国援助状況を見ますと、これまではソ連、西ドイツ、英国というのは、大体同じような援助割合、それに対して、日本がソ連、西ドイツ、英国の半分ぐらい、いわば、ちょうど第二次増資なり、第三次増資のころのような数字の感じでこう見えるわけですけれども、今回の増資の負担割合を見ますと、英国あるいは西独と、見た目の負担割合は日本は大体同じようになってきている。したがって、今後、いろんな援助の負担を求められる場合に、西独並み、あるいはイギリス並みということが求められる、そういう影響力を持った数字なんでしょうか。
  77. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 御指摘の点を、二つに分解いたしまして、ある特定の国に対しまして国際的に協力をして援助をしていく場合の分担はどうなるかという点と、それからもう一つは、国際的な開発金融機関に同様な必要性が起こった場合に、いかがになるかという点に、分けて御説明さしていただきたいと思います。  前者につきましては、ただいま栗林先生は、インドの例をおあげになりましたが、もっとわが国に近いほうにございます国、たとえて申しますと、インドネシアのような場合には、世界各国が集まって、これだけの資金が必要ではないかと考えられますものの中から、国際機関援助、そしてまた食糧援助、この二つの要素を引きましたものの大体三分の一を、従来日本は負担いたしてきております。この比率は、ただいま御検討をいただいております第二世銀の負担比率の一一%とは、大きく違っておるものでございます。同じような事情が、援助を受け入れる国々の、各先進工業国に対する歴史的な関係であるとか、文化的な関係であるとか、そういった関係の濃淡がございますので、これは世界じゅうの開発途上国を通じて、一律の率で律するということは、非常にむずかしく、かえって実態に即したものを各国が負担してこそ初めて、受け入れ国の真に望む援助ができるのではないかと考えております。  次に、各種の国際的開発金融機関に対するシェアでございますが、これも、たとえば地域的なものといたしましては、アジア開発銀行、米州開発銀行、さらにアフリカ開発基金というのがございます。しかし、これらの三つの地域的な開発銀行におきましては、各先進工業国のかかわりの度合いが、これまた多少の濃淡がございます。現に日本は、米州開発銀行のメンバーにはまだなっておりません。また、アフリカ開発基金につきましては、先ほど申し上げましたように、最大の拠出国の一つとなっております。そのようなことで、この地域的な国際開発金融機関におけるシェアというのも、世界じゅうにおけるそれぞれの拠出国のGNPのシェアのままというわけにはまいらないと思います。そうしますと、残りは世界銀行ないしはこの第二世銀でございますが、これにつきましては、繰り返して申し上げますが、従来の増資にあたりましては、ある時点におけるGNPのシェアをスタートとして、それをもとにした上での議論によってシェアがきめられてきておる、こういうことでございます。
  78. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そのGNPのシェアを起点にして考えるというのは、確かにたいへん公平な感じがするのですけれども、被援助国に対する各国のかかわり合い方ということを考えてみると、たとえばIDAの場合は、先ほど来指摘がありますように、インド、パキスタン、インドネシアに対する融資割合が非常に高いわけです。それは近年スクリーンをかける議論がありましたといいましたけれども、なおかつ六割近いものが融資をされておる。そこで、それぞれの国に対する先進諸国のかかわり合い方ということを考えてみると、必ずしもGNPシェアという議論だけではないんじゃないか。なぜかと申しますと、たとえばインドの国際収支状況を見ますと、これは貿易収支あるいは外国援助に対する元利返済負担額の合計額を、何とか毎年の援助受け入れでまかなっていこうという惨たんたる姿になるわけですが、これをもたらした歴史的な原因者というのは、特定の国々にやはり寄せられるべきであると思います。また、同じようにパキスタンについて考えますと、日本は綿花を中心に唯一の日本から見て輸入超過国である、援助よりも貿易をという観点では、パキスタンと日本関係ではたいへん貢献をすでにしている貿易構造になっている。また、インドネシアはどうかということになりますと、これもまた木材を中心にして援助よりも貿易をということでありますし、なおかつなぜインドネシアの貿易が赤字かということになると、あそこに進出をしている外国石油会社の利潤送金がきわめて巨額にのぼっているのが、国際収支赤字にしている一番大きな原因である。それぞれ国のかかわり方を考えてみますと、基本的には開発途上諸国援助は当然すべきだという前提に立ちますけれども、ちょっと待て、GNPシェアだけでいわれては、日本としてはたいへん不公平であるという議論ができそうな気がするのですけれども、この辺いかがですか。
  79. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) ただいま御指摘になりましたインドであるとか、パキスタンであるとか、こういった具体的の国に即しまして御説明さしていただきますと、御指摘のように、先進工業国の中で、この援助を受ける国とのかかわり合いの濃淡というのは、インドに対する債権国会議、パキスタンに対する債権国会議の場におきまして、それぞれ各国がどのぐらい負担をするかというところで出てまいります。御案内のとおり、この地域と深いかかわり合いを持っておりました英国ないしはヨーロッパの国々は、わが国と比べましてGNPの割合からいきますと大きい負担をいたしております。そこで、しからばその中へ取り込まれておるIDAのこれらの国々に対する援助というのが大き過ぎるかということになりますと、一つの計数で申し上げますと、インドの場合には、IDAから一九七〇年に一人当たりの融資額は、一人頭四・五ドル、インドネシアは四・一ドル、パキスタン、バングラデシュはこの時点では一緒になっておりましたが、五・五ドルでございます。これに対しまして、先ほども若干のアフリカの国と申し上げましたが、ボツアナは一人当たり二十一ドル三十セント、コンゴは十八ドル三十セント、ジョルダンは十八ドル二十セント、モーリシャスは十五ドル九十セント、セネガルは十四ドル四十セント、ギアナが十三ドル六十セント、こういったように、そのものさしをどこにとるかという問題はございますが、一人頭で見る限り、決してインド、パキスタンに巨額なものが集まっているわけではないのであります。ただし、何と申しましても、人口の総体が大きいものでございますから、これに対して何か検討を加えなければいけないのではないかということで、先ほど申し上げましたような会合が、一九七二年に持たれまして、そうしてこれらの国に対する第二世銀の援助を若干シェアとしては、減らそうということで動いておるのでございます。
  80. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 もとはというと、特定国に片寄っているからこういう議論になるのでしょうけれども、今後改善していくということですから、それをさらに速度を早めて、せっかくできているIDAですから、公正な運用ができるようにしていかなければいけない、こういうことだと思います。  見方を変えてもう一つ伺いたいのですけれども、今回増資に対して日本として一一%の負担をしていくということになるわけですけれども、このIDAの事務局を構成している事務局員の人たちがいろいろいると思うのですけれども、これはもしわかればということで伺います。国籍別に見てどんな構成になっておりますでしょうか。わからなければけっこうです。
  81. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 先ほども申し上げまし、たが、IDAの職員は世銀の職員と兼ねておりますので、この合計数字で申し上げます。昨年の四月末現在におきます世銀の職員は、専門職が千六百四十四名、一般職千七百四十二名で、合計三千三百八十六名でございましたが、このうち日本人の職員は、専門職で二十九名、一般職で二十八名の合計五十七名でございます。そこでこの比率が非常に低いということで、私どもかねてから日本人の職員をふやしてほしいということを、世銀の事務局とも話し合っております。その後、専門職は、まだ適当な方が見つからないために、二十九名のままでございますが、一般職のほうは本年の二月末で十二名ふえまして四十名になりまして、現在世銀職員の中で日本人は六十九名でございます。  さらに特定の国の国籍の職員の数が御必要でございましたならば、資料がございますので御説明さしていただきたいと思います。
  82. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 けっこうです。  そうしますと、ふえて六十九名ということになると、全体の事務局員の人が三千三百八十六名ということになると、大体満足とは言えないまでも、そこそこの数字になっているような印象を受けます。実はこの点が気になったものですから伺おうと思ったんですけれども、伺うに至った理由一つを申し上げますと、これは大臣に伺いたいのでつなげて申しげます。同じ国際機関でILOという国際労働機構がございます。これはインターナショナル・レーバー・オーガニゼーションでILOなんですけれども、非常に悪口を言う人がいまして、これはインディアン・レーバー・オーガニゼーションというほど、インド系の職員が多いのです。よく向こうの専門の人が来るものですから、会ってみますと、やはり何とかかんとか言いながら、やはりインドから出ている人は、国際的なお金をインドに持ってくるというように働くのでたいへん困るのだということを、たまたま会う人はよく言うのです。それと、このIDAの融資割合を見ていて、それではここもやはり、ILOではないんですけれども、そういう事務局員の比率が特定国に片寄っているというよりも、日本としてなかなかそこに出られないのかという気がいたします。そこでいま六十九名になったということで、ほんとうはもっとこまかく中身を見ないといけないのかもしれませんけれども、この種、国際機関になるべく多くの人を送っていかなければいけないと思うんですけれども、質問がたいへん一般的で恐縮ですけども、まず考え方方向だけ伺っておきます。まあこれ、第二世銀でふえたんで、多少聞きづらくなっているわけですけれども、今後こういった方向日本のスタッフを国際金融機関に送り込んでいくという方向でお考えだと思いますけれども、ここのところで御意見をまず伺っておきたい。
  83. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 七三年末におきまして、専門職だけの統計が手元にございますが、一番専門職をたくさん出しておりますのは米国の四百五十七名、次ぎまして、英国の二百二十九名、第三がフランスの百二名、第四がドイツの九十三名、そして五番目がインドの九十名でございます。また、アジア開銀のほうでは、総員二百二十五名のうち、日本人は三十名、インドは二十一名ということで、ここは日本人のほうがよけいになっております。
  84. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 専門職の人の数を伺ったんですけれども、実際に事務局として仕事をしていく場合に、それぞれこれはどこの国に、どういうぐあいに融資をしていこうかという議論検討がされると思うんですけれども、そういう検討段階で、日本政府としての意向というのはどの程度反映されていくんでしょうか。
  85. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) この種の国際金融機関におきましては、どちらかと申しますと、わが国におきます仕事の運びよりは、西欧型のトップマネージメント型の運営が比較的よけいになされております。そこで、わが国を代表いたしますのは、御案内のとおり理事でございますが、この理事は常時、世銀ないしアジア開銀の場合には、アジア開銀のいわゆるシニアスタッフといろいろ意見を交換し、また日本から注文がある場合には、それらのしかるべき部局に対しまして、わが国の理事を通じて、日本はこういうことを考えておるということを連絡させております。そこで、スタッフの数から見ますと、確かに特定の国の人数が多いような印象も受けますが、しかしながら、このことがIDA自体の運営を、数多い職員を出しておる国の利益のためにゆがめるようなことにはなっておらないと、私ども思っております。
  86. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 IDAというのは国際機関ですから、当然そこで日本政府の意向がということが直接反映されるべきではありませんし、おっしゃるように、それぞれのトップマネージメントの中で検討はされるべきだと思います。ただ、融資を——どうも質問としてなかなかまとまりませんので、意見だけ申し上げて終わることにします。  いま私が申し上げたいのは、こういう国際機関ができてくる。そこで、貸し出し手の銀行の側の問題として、各国籍の人が構成するわけですから、それがどのように公正に運営され、判断をするかという面があります。ところが、各国が拠出をするわけですから、何とかいっても、やはりそこに国民の、あるいは国家の利益というものがにじんでくる。これは否定できないんだろうと思いますが、その意味で、拠出をするからには、人もたくさん出していけということをまず申し上げるつもりでしたが、これはすでに御努力ということですから、つけ加えて申し上げません。  あともう一つの面というのは、融資を受ける相手方のトップマネージメントはどういう組み立て方なんだ。これは私いま手元に材料がないもんですから、正確に質問できないんであきらめたんですけれども、それぞれいまわれわれがここで被援助国として議論しているインドなり、あるいはパキスタン、インドネシアというところの政府も含めた、実際にプランニングをしている人たちを見ますと、特定の国に行って教育を受けて帰って来た人たちがずいぶん多い。そうなると、当然のこととして、自分が教育を受けてきた国に人情が移ります。そこで、その人たちが援助を受け入れる計画を組む。援助に対して国際機関にもっていって相談をする。そこの中でやはり中心になっていく人たちも、やはり特定の、あるいは特定のグループの国々に結果として片寄っていくということになりますと、これからわれわれとして、開発途上諸国援助というのは、懸命に進めていかなければいけないと思いますけれども、それをせっかく貴重なお金を出していくものを、どう効果的にわが国の利益に結びつけていくかということになりますと、日本の側と援助を受ける相手側と、それぞれの人をどうやって育てていくのかということになるんではなかろうかと思いまして、そこまで伺いたかったんですけれども、後段について断片的な資料しか持ち合わせがありません。あとに譲りまして、質問を終わりたいと思います。
  87. 多田省吾

    ○多田省吾君 政府は、国民の要望にこたえて、昨年ごろまでは対外援助につきましてはひもなし援助だと、あるいはGNPの一%を目標にすると、あるいは政府開発援助を大いにふやしていくと、こういう方針でございましたが、いわゆる石油ショック、あるいは資源供給の問題、原油価格の大幅な引き上げ、それに伴う国際収支の悪化、こういう状態になってきまして、どうも中東援助なんかを見ますと、ひもなし援助からひもつき援助やむを得ないという姿にはっきりもうなっているようでございますし、また、いわゆる政府開発援助も、昭和四十七年度は〇・二一%でございましたが、昭和四十八年度は、松川国際金融局長のお話によりますと、〇・二九%から〇・三〇%ぐらいいくんじゃないか。しかし、四十九年度はまた非常に後退するようなことも考えられます。大蔵大臣としては、これからの昭和四十九年度における対外援助については基本的にどういうお考えでしょうか。
  88. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まあ対外援助につきましては、量と質の両面があると思うんです。で、量につきましては、いまお話しのように、かなり国際水準の目標に接近をしておるわけで、これからは、これはまあ主として質の面に重点を置いていきたい。質の面と申しますのは、一つ借款条件の問題でございます。期間だとか、あるいは利率でありますとか、あるいはタイド、アンタイドと、こういう問題でありますとか、あるいはもっと広い立場で、わが国の権益主義というか、そういうものでなくって、相手の国の立場、そういうものをより濃厚に考慮していかなきゃならぬ。そういうような借款の質の面に重点を置いていく。その結果まあODA——政府開発援助、これに対する比率、そういうものもこれは国際水準からいいますとたいへん低いわけでありますが、これを改善していきたい、そういうふうに考えております。
  89. 多田省吾

    ○多田省吾君 よくわからないんですが、そうしますと政府開発援助昭和四十七年度〇・二一%、四十八年度は〇・二九から〇・三〇とふえた。四十九年度は、この〇・三〇というのは減らさないで、政府開発援助は量的にもふやしていくと、こういうことでございますか。
  90. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) そういうことでございます。
  91. 多田省吾

    ○多田省吾君 それじゃ量的に拡大は無理だというのは、明確に言ってGNPに対するいわゆる昭和四十七年度の〇・九三%、これは一%にだんだん近づくということは、これはちょっと無理だと、こういうことですか。
  92. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まあそのときそのときのわが国の経済情勢もありますから、その時点で援助協力のできる額も動いてくるわけです。しかし最近におきましては、とにかくですね、DAC総会におきましてはGNPの一%と言っている。それに対しましてわが国は〇・九以上のパーセントになってきておる、こういうことでございますので、まあ大体DACの目標を到達しておると、こういうふうに考えられます。ですから、そのときの経済情勢がよければ、もっと一%に接近することもありましょうし、あるいは多少下がることもありましょうが、もうGNP全体に対する量的比率の問題、そういう問題につきましては、まずまずどこへ出しても恥ずかしくない、そういうふうに思っております。まあ私が質的と申し上げましたのは、ODAのほうですね、これに対しましてもGNPに対する比率を上げる。これは量の問題というよりは、対外経済援助の質を改善するその要目の一つである、こういうふうに考えております。
  93. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、まあ政府開発援助も、衆議院では、不急不要なものは極力抑制して資源開発投資も厳選するというお話でございますが、政府開発援助は質的によろしいほうなんですから、これは減らさないでいきたいというふうに私は伺っておりますが、シベリア開発問題なんかに対しては、大蔵大臣はどう考えますか。
  94. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) シベリア開発の問題、これはいわゆる発展途上国に対する援助協力の問題とは、これはまた異質の問題でございます。シベリアを開発することが日ソ双方の利益になる、こういうことでございます。そういう角度からソビエトロシアの好むところのシベリアの開発にわが日本としても協力をする、その結果わが国にも、わが国の期待する資源が提供される、こういうことになるんです。ちょっとこれはまた発展途上国問題とは違った角度の問題でございます。
  95. 多田省吾

    ○多田省吾君 本年初頭一連の石油外交で三木特使エジプトに対してスエズ運河の改修なんかに約一億四千万ドル、さらに商品援助プロジェクト援助と半々で合わせて二ヵ年間に一億ドルの政府借款、これは小坂特使はモロッコに対してプロジェクト援助三十億円、アルジェリアに対してはテレコミュニケーション関係プロジェクト百二十億円、ヨルダンにはコミュニケーション・プロジェクトなど三十億円、スーダンに対してはプロジェクト援助三十億円、さらに中曾根通産大臣イラクに対してまあいろいろ十億ドルの官民融資約束してきておりますが、こういう政府予算で実施する技術援助政府関係機関の経済協力基金あるいは輸銀等、合計しますとこれは膨大な金額になると思うのですが、このような二国間援助に対する財政支出の負担については、今後のわが国の経済事情も考慮して、閣議で十分検討されて、その上の決定なのか、それともそのときのどうしてもやむを得ない約束なのか、大蔵大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  96. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 三木、中曾根、小坂、この三特使中近東へ参りました。参りますにあたりましては、先立って関係閣僚の会議を開催いたしまして、そして行った場合に起こり得べき話についての応対ぶりを協議しております。大体その応対ぶりに従って特使は行動をいたしてきておるわけでありまして、政府全体として了承しての話であると。中に一つでしたか、金額が閣議で検討したよりふえたものもありまするけれども、これは特使が帰られてからこれを追認をすると、こういう措置をとっております。
  97. 多田省吾

    ○多田省吾君 田中総理は、三月十五日の参議院予算委員会で、わが党の鈴木一弘君に対して、対外援助の原則論ですね、三木特使小坂特使等が石油外交で約束したものはこれは当然実行するんだと。非常に大きな金額に見えるけれども、全部実行してもGNPに対して〇・七%に達するわけでもないなんて、非常に大ぶろしきを広げておられるような答弁をなさっているわけでございますけれども、先ほどの大蔵大臣の、量的には拡大できないけれども質的にやっていくんだと、こういう答弁とちょっとニュアンスが違うように思いますけれども、このように、総理大臣のおっしゃるように、こういう対外援助が十分やっていけるんだという状態なのかどうか、ひとつあらためてもう一回お尋ねいたします。
  98. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 今日わが国は、国際収支が非常に重大な局面に到達しておるわけです。つまり、昨年とにかく百億ドルという赤字を出す。一月はどうかというと、これは二十七億ドルの赤字、二月がまた十六億ドルの赤字、三月は十一億ドルの赤字と、こういうような傾向でいったら、とにかく日本国際収支というのは壁に突き当たります。そこで、いままで国際収支にいささかの不安もない、黒字基調国際収支の体勢の中では、かなり積極的な投資もでき、したがって、対外経済協力というものもできたんです。ところがそういう今日のような状態になりますと、対外投資、また対外経済協力、そういうものはかなり慎重にやっていかなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。しかし、慎重とは申しましても、いま石油問題は世界じゅうの経済を混乱させております。中でも、その影響をきびしく受けるのは発展途上国である、そういう国々に対するわが国の任務ということを考えてみますると、いまこそ対外経済協力が必要だという、その面もあるわけであります。ですから、苦しい中ではありまするけれども、この対外経済協力、特に発展途上国への協力につきましては、これはできる限りの配分をしなければならぬというので、いま精一ぱいの努力をしておる、こういう状況でございます。
  99. 多田省吾

    ○多田省吾君 それじゃ最後にひとつお伺いしたいんですが、きのう大蔵大臣は大阪で、会社臨時特別税法は一年後にも撤廃したいようなニュアンスのお話をなさっておられますけれども、もちろんこの法案には、異常事態が解消したときは一年で廃止することができると付記されておりますけれども、二年間の時限立法になっているわけです。それで、九月期に多少利潤が低下してもまた来年どうなるかわかりませんし、また石油価格の高騰がこれからあるかもしれないし、またいろいろな物価の、公共料金の値上げもたくさん予定されているような姿もございますので、私はやはり九月の決算どきではなしに、来年一ぱい様子を見たらいいんじゃないか、このように思いますが、大臣はどのようにお考えになっていますか。
  100. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 会社臨時特別税はこれは法律自体で二年の時限になっており、かつ状況に応じて途中でこれを廃止してもいい、そういうような仕組みになっておるんです。ですから、その法律のとおり考えていったらしかるべきだと、こういうふうに思いますが、とにかく三月期はすぐもう、五月ごろは会社の計算が明らかになりますから、それに対する税の適用の結果がどうなるかということもはっきりしてくるわけですが、かなりこれは税収はあるだろう、こういうふうに見ております。ただ、九月期になりますと、これはいまの経済情勢からいいますと、会社の収益状態は三月期と比べましてかなり落ち込むであろう、こういうふうに見ておるんです。そういう状態下においてこの税を適用した場合にどういうことになってくるか、その辺のこともよく見てみなければならぬかと思います。  いずれにいたしましても、三月期、九月期、これはどうしても法律の適用を免れることはできないわけですので、その後の様子を見まして、状況に応じましては、法律に定められてありまするとおり、この適用を停止するということもあり得る、こういうことをお答えしているわけです。
  101. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、私は、九月期の状況だけじゃなくて、また来年の三月の状況も見なければこれは改廃は考えられないんじゃないか、このように思いますが、どうですか。
  102. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 来年の三月の状況を見てということになりますと、これはもう来年の上半期だけでこの税をやめるわけにいきませんから、ですから、この法律の時限立法のその期間を全部を通じまして徴税をする、こういうことになるんです。ですから、来年になったら途中でやめるというわけにはこれはいかない、そういう性格のものでありますので、多田さんのおっしゃることはわかりますけれども、途中で停止するんだというようなことになれば、来年の初めからこれを停止しなければならない、こういうことになると思います。
  103. 辻一彦

    辻一彦君 先ほど一時間半ほど質問しましたので、大臣にぜひ聞きたいことがあって、その中で一応お尋ねはしましたが、重複する点があると思いますが、もう一度ぜひお伺いしたいと思います。  第一は、本案がアメリカの下院で、国際開発協会増資の問題が本会議で否決をされておりますが、その背景と、それからその見通し、そういうものをこちらからどう感じておられるか、これひとつお伺いしたい。
  104. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 背景は、先ほどと若干重複いたすかもしれませんが、最大の問題は、アメリカの国内的な政治関係の問題があったように聞いております。  それは、クリスマスから春休みにかけましての休みが終わったすぐあとの会議で、このようなことが行なわれまして、その間、各議員が、自分の選挙区へ帰って、選挙民からいろいろな話を聞いてきた。その結果、私どもは非常に理解がむずかしいのでございますが、かえって与党のほうが、与党議員が出しておる、与党政府をささえるべき法案に対して心理的な抵抗を感ずる面が多かった。したがいまして、先ほども申し上げましたが、与党の票のほうが三分の二以上が反対に回り、野党のほうは賛否相半ばするということで、結局は、この法案が銀行通貨委員会では通りながら本会議では否決されてしまったという実情でございます。  もちろんその間、議論の中には、あるいは石油危機があるのにこういったことはもう一回基本から考えなければいけないのではないかとか、あるいは拠出の総額はどうやってきめたのかとか、あるいはアメリカの国内でも金利が高くて困っておるのに、このような条件はソフトに過ぎるのではないかとか、あるいはアジアに援助が集中しておるではないかとか、そのような議論が行なわれたようでございます。しかしながら、これが直接票を左右したかということになりますと、やはりこの本会議の票自体はいろいろな政治的思惑が重なり合ってそのような結果になったように聞いております。  そこで当時の財務長官のシュルツさんは、この休会明け直後の本会議とはいえ、このような票の結果になったということに対して非常に驚愕され、直ちにわが国を含めた各国の大蔵大臣に、米国政府はすみやかにこの議会承認を取りつけるよういろいろな活動を開始しました。そして自分のほうはその議会承認を取りつけることについて確信を持っておりますという書簡を発送いたしております。  その後は今度は上院のほうに回りまして、上院の外交委員会で公聴会を開きまして、三月二十一日にシュルツ財務長官などを招いて公聴会を行ないました。この結果は今月下旬ないし来月上旬に外交委員会で表決に付せられるはずになっております。そしてさらにその後五月の中旬ないし下旬に上院の本会議で議決されることが期待できるという情報を得ております。その後、これは一度下院で否決いたしておりますので、あらためて下院のほうに回されることになると思いますが、おそらくそこから下院の手続をもう一度とるということになりますると、発効はことしの秋以降になるのではないかという見通しを持っております。
  105. 辻一彦

    辻一彦君 いま聞くと、アメリカの担当長官が各国の大蔵大臣に通知をして理解を求めているということですが、大臣、そういう文書が御存じのとおりありますが、これはアメリカの対外経済援助に何か基調的な変化とか、そういうものがあったということはないと思いますか。その点はいかがですか。
  106. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 私が報告を受けております限りにおきましては、対外経済協力政策につきましての基調的な変化ということではない。いまIDAへの拠出につきましては、これは私どもは自信を持っておりまするから、どうか御安心を願いたいという話をじきじき聞いております。
  107. 辻一彦

    辻一彦君 さっき、わが国のGNPの〇・九三%の開発途上国への援助額は、ほかに恥ずかしくないという御答弁であったですね。さっきも事務当局からその説明を伺いました。しかし問題は、やはり中身であると思うんですね。たとえばひもつきであるかどうかというアンタイイングの割合、それから政府開発援助はどのぐらいの割合である、それからグラントエレメント、いわゆる政府関係の贈与の比率はどのくらいであるか、この三つを並べてみると、どうもほかに恥ずかしくないような数字には私ならないと思うんですが、ちょっと事務当局のほうからこの数字ですね、アンタイイングわが国のパーセント、それから政府開発援助のパーセント、グラントエレメントのパーセント、七二年でけっこうですから簡単にちょっと伺いたい。
  108. 松川道哉

    政府委員松川道哉君) 贈与の比率は、七二年度DACの平均が六三・一%に対しまして、日本の場合三二・七%でございます。  次に、公的開発援助全体のグラントエレメントでございますが、DACの平均が八四・一%に対しまして日本の場合六一・一%でございます。その中で借款だけをとりましたグラントエレメントは、DACの平均が五六・九%に対しまして日本は四二・三%でございます。  この借款条件をさらに分解してみますと、金利DACの平均が二・八%に対しまして日本が四・〇%。償還期間、据え置き期間はDACの平均が二九・五年、うち七・八年据え置きに対しまして、日本の場合二一・二年、うち六・六年据え置きとなっております。  なお、アンタイの比率でございますが、これは七二年のはまだ私どもの手元にございませんで、七一年のでございますが、DACの平均が五一・五%アンタイ化されております中で、日本は七一年には一〇・五%でございます。この一〇・五%は、七二年に一四・三%まで上がっておりますが、DACの平均のほうは遺憾ながら私どもの手元にまだございません。
  109. 辻一彦

    辻一彦君 この三つの数字を並べてみると、なるほど〇・九三%、全体はかなり高い、言われるとおりです。しかし、中身を見ると、援助が受け入れにくいような条件、借りにくいような条件といいますか、中身に私は非常に問題があると思う。で、この中身を変えなければ、この〇・九三%はそう誇ることができないと思うんですが、この点についてどうお考えか、またどうされるか、お伺いいたしたい。
  110. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 先ほど私は、今後の対外経済協力はどうあるべきかというお尋ねに対しまして、量のほうはもう大体その水準に達してきておる、これからはその質を問題とするというふうにお答えしたんですが、まさにこれは辻さん御指摘のような諸点、そういう点において改善をする必要があると、こういうふうに考えまして、そっちのほうへ今度は力を入れてみたいと、かように考えております。
  111. 辻一彦

    辻一彦君 そこで、具体的に、主要国は、この国連の開発委員会等がきめた水準を、目標額を何年度ごろまでに受け入れるとか、何年に達成するとか、こういうことをいろいろいま考えていると思うんですね。で、わが国のほうも前進はしているということはわかりますが、たとえばこのアンタイのほうをどういう割合で高めていくと考えておられるのか、あるいはこのグラントエレメントの比率をいつごろまでにどの程度高めようとしているのか、こういうおおよその方向といいますか、めどについて掲げてしかるべきだと思いますが、この点いかがですか。
  112. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) そのめどを、質的改善のいわゆる個々の諸問題につきましてめどまでというわけにはまだなかなかいかないんです。特にいま御指摘タイド、アンタイドの問題ということになりますと、ただいまわが国国際収支、非常にこれは窮屈なまっ最中でございますので、こういう際に、そう支障のないことであれば、いままでアンタイドであったものをタイドに直すという、臨時的にではありまするが、そういうことまでもしなければ、どうも国際収支に対処できないのじゃないかとも考えるぐらいでありまして、いますぐに目標ということはなかなかむずかしゅうございますが、そういう問題はいままでの経済政策、特に一昨年までの一〇%をこえる高度成長をしてきたそのときの調子ではいかないんです。これからだだいまの非常に混乱した物価をどういうふうにおさめるか、それから石油がもたらした国際社会の経済変動がどういうふうにおさまるか、そういうものを総合的に見ましてわが国の今後の財政のスケールを展望しなけりゃならぬ、そういう展望がいま非常に立ちにくい時期であります。もう少し時間をおいていただきまして、いま辻さんの御指摘のような精細なことはできませんけれども、大づかみな方向、そういうものも考えてみなきゃならぬと、かように思います。
  113. 辻一彦

    辻一彦君 一部のニュース等を見ると、このアンタイのかなり進んだ方針を転換をしたんじゃないかと、こういうふうにいわれておりますが、先ほどから若干私は伺いましたが、アラブといろいろのつながりから、一時的にはそういう方向はあったとしても、基調としてはアンタイ強化を向上さしていくと、この基本は変わりはないし、拡大していこうということで間違いありませんか。
  114. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) そのとおりに考えております。
  115. 辻一彦

    辻一彦君 それからもう一つ政府開発援助ですね、これはこの数字によりますと、七二年——四十七年は〇・二一%、それから四十八年は〇・二四%と、若干上がってはおりますね。しかし、〇・七%を早急に実現しようというので、幾つかの国は、この目標を数年後に達成するという、その目標を受諾していると聞いていますが、わが国のほうはこれをまだ避けておるようでありますが、これについて幾つかの国がはっきりとめどをつけている、その中で、この数字について段階的にめどをつけられるような考え方はありませんか。
  116. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) その点は、〇・七%という国際会議一つ提案があった際に、わが国がどういうふうに応待するか、その辺ずいぶん議論をいたしまして、それでわが国の代表のその場における発言としては、あるいはさしあたり日本といたしましては〇・三五ぐらいを言うことにしようかとか、いろいろ議論があったわけでありますが、どうも〇・七%というのに直接飛びつけそうもないのであります。そこで、やはり中間段階の目標を設定いたしまして、それに向かって努力するというのが現実的な考え方じゃないかと、かように思いますが、そういたしたいと思います。
  117. 辻一彦

    辻一彦君 わが国経済援助が量では努力をしながら、やはり東南アジア等である意味においては大きな批判を受けた中身は、いま言ったこの三つの問題がやはりおくれている点があるんではないか、こう思われますね。そういう意味で、これをひとつぜひ努力をして引き上げてもらって、私、この東南アジア中近東のそういう方々の期待にぜひ早くこたえていただきたいと、こう思うんですが、その決意のほどをもう一度お伺いしたい。
  118. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 私どもが見ておる限りにおきましては、発展途上国でわが日本に期待をするというその最大のものはやはり量の問題です。条件はどうでもいいとは言いませんけれども、多少条件において希望どおりいかぬでも、とにかく量だけは確保せしめようというのが、先方の要望である、こういうふうに理解しております。それで量のほうはかなりのところまでとにかくそれでいったんです。ですから、量の問題よりは、それほど切実な問題というふうには考えませんけれども、やはり援助協力をする以上は、その質の面でもこれを改善する、これこそほんとうの経済協力であると、私はこういうふうに考えておりますので、その質の問題の改善につきましては、これから時間はかかりますけれども、鋭意努力をする、かように御理解いただきたいと思います。
  119. 辻一彦

    辻一彦君 さっき質疑の中で、ことし一月の田中総理、それから昨年秋の三木総理小坂特使中曾根通産大臣、これらが中近東なり東南アジアを歴訪されて約束されたのは、イラクの十億ドルを除いて二千百億円、それからもしイラクのそれを入れれば約五千億円にあがるというかなり大きな額になります。ところが、国際収支は、先ほどから論議しておりましたが、赤字方向にあるし、この基調はかなり強いんじゃないか、そうなりますと、そう簡単ではないと思いますが、こういう約束をした援助額協力額はぜひ実現する必要があると思いますが、財政当局としてこれをひとつ実現さす決意のほどがあるかどうか、この点をお伺いしたい。
  120. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 三特使が行かれる、また総理が行かれる、そしていろいろ約束をする、そして事前に相談して行ったんですが、大蔵当局としては、まあ全体の気分とするとずいぶん重い気持ちだったわけです。つまり国際収支の問題があるからであります。しかし、とにかく石油は非常に大事な問題である。特にあのときの環境、あのころの環境ですね、これは石油石油で、もう石油で夜も日もというような時期であったわけであります。そこで、いろいろの約束が行なわれた。しかし、約束をいたした以上、この約束を履行する、これは国の信用にかかわる問題でありますので、これは万難を排してこの約束は完全に履行する、そういう決意でございます。
  121. 辻一彦

    辻一彦君 ちょっと私、時間を五分ほど思い違いをしておりましたので、これで終わりますが、わが国のインフレと物価高で資材が非常に高くなってきている、そこで、援助協力約束しましても、実際として資材がどんどん上がると、予定したプロジェクトが実現できないということが起こり得ると思うんですね。  そこで、さっき例を引きましたが、たいへん小さな例でも、スリランカに漁船の九千五百万ドルを無償供与約束した。しかし、ことしの三月に六千万ドルこれをふやして、ようやく約束を果たしたというんですが、これは六三%余分に要るわけですね。おそらくこういうことがいろんなところに起こると思うんですが、約束した以上、この実現をはかるには、資材等が高騰すれば、それにスライドした援助額の増額等を考えないと約束を果たせないと思いますが、こういう道をとられるのか、あるいはプロジェクトの規模を縮小して、きめた金額で押えようとするのか、そこらはいろんな道があると思うんですが、どうお考えになっておられるか、これをお伺いしたい。
  122. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まあわが国国際収支の状態さえよければ、これはスライドというか、そういう考え方をとりたいところでございまするけれども、御承知のような状態でありまするので、まあ原則はどっちでいくかと、こう言われると、約束した金額だと、こういうことになろうかと思います。したがって、それだけ規模は縮小されるということになることもやむを得ない。ただ、それは原則でありますが、ケース・バイ・ケースです。スリランカの問題はこういう手当てをした、またどこそこの問題はああいう手当てをした、こういう問題も出てくるわけでありますが、そのケース・バイ・ケースによって妥当な措置も講ずることもある、こういうふうに御理解願います。
  123. 辻一彦

    辻一彦君 これで終わります。  それは、約束したプロジェクトの中途はんぱなことになり得る可能性が私非常に強いと思うのですが、これは、ケース・バイ・ケースでも、これを拡大して、約束したプロジェクトがぜひ実現するように方向をひとつ固めていただきたい、こう思います。  最後に、これで終わりますが、第二世銀のこういう長期、無利子、しかも手数料が非常に安い、こういうものはこれからとも拡大する必要が非常にあると思うのですが、わが国として、国際会議等で、今後、これの拡大へのイニシアチブをとらえる考えがあるかどうか。この一点を伺って終わりたいと思います。
  124. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) それは機関によりけりだと思うのです。たとえば一番わが国が重要な役割りを演じておりますアジア開発銀行、これなんかはまさにわが国がリードをとるべきである、こういうふうに考えますが、第二世銀あるいは第一世銀、そういうものになりますと、日本ばかりじゃありませんから、主要の国と相談して、そして主要国と相協力しながら進めるべきものは進める、また、抑制すべきものは抑制する、そういうことだろうと思います。アジア開銀につきましては、これは、わが日本、特別な立場でありますから、これはもう積極的な役割りを演じる、こういうふうにしたいと思います。  それから、委員長よろしゅうございましょうか、——あした出発いたしまして、ただいまの第七回アジア開発銀行の総会に出席してまいります。滞在三日でございます。たいへん、国会御多用中でございますが、大事な会議でありますので、ぜひお許しを願いたい、かように存じます。     —————————————
  125. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、渡辺武君が委員辞任され、その補欠として加藤進君が選任されました。     —————————————
  126. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  128. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会      —————・—————