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1974-03-26 第72回国会 参議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十六日(火曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 河本嘉久蔵君                 藤田 正明君                 成瀬 幡治君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君    委 員                 青木 一男君                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 桧垣徳太郎君                茜ケ久保重光君                 田中寿美子君                 辻  一彦君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省関税局長  大蔵 公雄君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        通商産業省生活        産業局通商課長  佐藤 兼二君     ————————————— 本日の会議に付した案件 ○関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○所得税法及び災害被害者に対する租税減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。柳田政務次官
  3. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) ただいま議題となりました関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  最近における内外の経済情勢の変化に対応し、国民生活の安定、関税負担適正化等に資するため、関税率について所要の調整を行なうほか、関税制度について所要改正を行なう必要がありますので、この法律案提出することとした次第であります。  以下、この法律案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、関税率改正について申し上げます。  まず、国民生活安定等に資するため、灯油、液化石油ガス等国民生活関連の深い物資及びパルプ、いおう等最近需給の逼迫している原材料を中心に、九十六品目関税率引き下げを行なうことといたしております。  次に、シードラック等品目特恵関税適用品目に追加するとともに、集積回路等品目特恵税率引き下げを行なうことといたしております。  このほか、本年三月三十一日に期限の到来する七百七品目暫定税率につきまして、その適用期限を一年間延長することといたしております。  第二に、生活関連物資にかかる弾力関税制度の拡充について申し上げます。  今日、物価の安定ば政府の最優先課題となっておりますが、関税面におきましても、これに寄与するため、食料品衣料品、その他国民生活との関連性が高い物品についてその輸入価格が著しく騰貴した等の場合には、関税を一時的に減免することができるよう措置することといたしております。  第三に、各種の関税減免制度改正について申し上げます。  まず、重要機械類免税制度を改組し、公害防止労働災害防止等に直接寄与する機械類及び海洋開発等事業に用いられる物品についての免税制度とすることといたしております。  次に、アンモニア・石油化学製品製造用原油等免税還付制度につきまして、その軽減割合引き下げることといたしております。  さらに、最近における経済情勢にかんがみ、船舶建造修繕用貨物免税制度石油化学製品等製造用触媒等免税制度及び国産原油購入にかかる特別還付制度を廃止することといたしております。  このほか、加工再輸入減税制度対象品目の追加を行なうなど、所要改正を行なうことといたしております。  以上、この法律案につきまして、提案理由及びその概要を申し述べました。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 過般、石油がたくさん入るか入らないかというようなときに、まあ、通産省発表なり、あるいはまた、石油協会発表等何かちぐはぐなものがございまして、何か石油重油が非常に品不足でたいへんなことになるんじゃないか、あるいはLPガスもたいへんなことになるんじゃないかというので、ガソリンの配給等があった。ところが考えてみれば、LPは当時全然落ちていないということも片方じゃあるわけですけれども、そういうことがはっきりしておっても、なおかつ、ああいうLPの割り当てが少ないために、新しく個人タクシーの免許を受けられたお方が、LP配給がもらえないというので自殺をされるというような悲惨なことがあったわけです。  そこでお尋ねをしたいと申しますか、ああいうほうとうに緊急性のある問題について、日本重油がどのくらい入っておるか、あるいはLPガスがどのくらい入っておるかというようなことは、過般、衆議院予算委員会で、石橋書記長指摘しておりましたが、税関と、それから海上保安庁は、きょうは船がどのくらい入ったと、どのくらい陸揚げしたというようなことがわかるじゃないかと、しかし、入らないときもあるだろう、だから、日々報告というものと、あるいは十日間ぐらいまとめて、集約しての報告、いろんなやり方というものがあると思いますけれども、そういうような緊急的なああいう異常ムードの中で、思惑と申しましょうか、不安になっておるのを解消していくというようなのも、私は、少なくとも通関をしておればその数量把握できるわけですから、行政の一本化と申しましょうか、そういうようなことについて機敏な手というものは打てないものだろうか、そういうものが非常に大切じゃないだろうかということを痛感しておるわけですが、いかがなものでしょうか。
  6. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、昨年の十二月以降、石油の問題が非常に重要になってまいりました際に、私どもといたしましては、御指摘のように、毎月通関統計というものを作成をいたしまして、通関統計は、原則といたしまして、要するに輸入申告がありました時点において、税関におきましては一体石油幾ら日本に入ってきたかということは的確につかめているわけでございます。したがいまして、私どもは、全国の税関を通しまして、その通関輸入申告時点においてつかまえました石油輸入数量と申しますものを、要するに、本省のほうにコンピューターに自動的に入れまして、時々刻々の石油輸入をつかまえております関係上、私どもといたしましては、その通関統計が一番日本で正確な要するに数字であるという自信があるわけでございます。これに関しまして、私どもといたしましては、毎月幾ら入ってきておるかということは、関係通産省なり、あるいは資源エネルギー庁なりにも連絡をいたしておりますし、また全国民に対しましても、毎月、大体、その各月の通関実績と申しますものは、翌月の原則的には十四日に、石油一体前月に幾ら入ってきたかという数字発表をし得る体制になっておりますし、また現に発表をいたしておるわけでございます。ただ、当時、石油輸入が問題になっております際に、私どもは、月に一回最終的に発表をするということでは足りないということで、この集計を、各税関督励をいたしまして、大体私どもといたしましては、十日ごとには、一体、その前の旬に幾ら入ってきたかという数字を的確につかみ、これをやはり関係のところには連絡——教えてやらなくてはいけないということで、旬ごと統計把握をいたしたわけでございますが、ただこの際に、これを発表をいたさなかった理由と申しますのは、たとえば、最近におきましては、大体一ヵ月に二千一百万キロリッターから二千四百万キロリッターぐらいの石油が入ってきているわけでございますが、これは船が日本の港に到着をいたしますその回数と申しますものは、旬ごとに非常に違うわけでございます。したがいまして、たとえば一月の上旬に入ってまいりました数字は、一月の上旬と中旬と二旬を合わせましても、非常に数字が少なかったわけでございまして、これは、かりに三月——ところが、結果といたしましては下旬に相当多数の船が入ってまいりまして、一月全体といたしましては、大体二千三百万キロリッターぐらい入ってきたと思いますけれども、非常に誤解を、要するに皆さん方に与える可能性のある数字が出てまいりますもの——旬ごと発表をいたしますると、皆さん方に、あるいは一月は石油が二千万キロリッターは入って来ないのではないかというような誤解を与えるおそれのあるような可能性もございますので、そういう意味におきまして、私どもは、旬ごと発表をいたしますことは、かえって不安動揺を惹起をする可能性があるということで旬ごと発表は差し控えていたわけでございますが、私ども関係資源エネルギー庁等に対しましては、結果に対しては正確な数字を教える必要があるということで、関係省に関しましては十分にこれを連絡をすることを心がけておったわけでございます。通産がとっておりますところの統計と申しますものは、これは各事業所からの報告で、これはこれなりに私は意味があろうかと考えておりますけれども、私どもは、結果に対してはその正確な数字をつかむことはできますけれども、将来の予測ということになりますると、私どもにはその能力がないわけでございます。したがいまして、税関の役目といたしましては、入ってきた結果の数字に関して、正確な数字国民に知っていただくというのが私どもに与えられた責務であろうかと、かように考えておるわけでございまして、現在でも旬ごとに入ってきている数字はできるだけ早く各税関から報告をとりまして、その数字把握をすることには努力をし、かっこれを関係省には連絡をいたしておるわけでございますけれども旬ごと数字を一般に発表するということをいたしておりませんのは、ただいま申し上げたような理由によるものでございます。
  7. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 結果的には、前年同月を下回らない、大体確保が七%くらい、十二月末でいえば落ちた程度ぐらいで、LPは全然落ちていない。ところが、片方でないないといって、むちゃくちゃな値上がり、何かこう、ないというのが、通産省のほうも削減をされる発表は積極的にされたようです。業界のほうもそういうこと。だからみんなが買いだめに走らなくちゃならぬということになってしまったのですが、これがつくられた品不足のような、そういう結果になってしまって、ばかをみたのは、結局国民であったという結果になっちまった。そこで、できてしまったことはやむを得ないとして、今後こういうことが二度と繰り返されない、そういう措置ですね、たとえば配船——事前にも、これは運輸省関係になるかもしれませんけれども配船関係のこともわかると思います。なるほど一番初めのときに、半分ぐらいしか積んでこなかった油の船もあるようなんですね、品不足のときに。それはわずかしかないようですけれども、何か要らない無用な不安を与えないようなことが今後の行政上できないものであろうか、これは何もあなたのほうだけじゃなくて、通産省なり、あるいはほかの関係でいえば運輸省も、あるいはそういうところで関係するのかどうかよく私にはわかりませんけれども、何か行政一体化して、無用な混乱と申しますか、要らない不安というものをつくり出す必要と申しますか、そういうことを防ぐということが非常に大切じゃないかと思うものですから、そういうようなことについて、各省間における物価対策というような面からも、重視されて私は対策を講じられてしかるべきではないかと思いますから、もしそういうようなことがやられておるとするなら、承りたいと思います。
  8. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) ただいま先生の御指摘のような事態が現実に起こってまいったわけでございまして、当時の新聞に、いわゆる税関発表をいたす数字は、相当に石油が入ってきているではないかと、要するに通産省が言っていることと違うではないかという趣旨の記事がかなり新聞紙上等にも出たわけでございまして、当時、石油がないないということが世間的に一般に喧伝をされておりました際に、私どもどうも通関統計にあらわれている数字に関する限りにおきましては、そうひどく日本に入ってくる石油の量が減っているという数字実績としてあらわれてこないわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、一体これから先、当時ちょうど十二月ごろの話でございましたものですから、これから先だんだんだんだん減ってくるといわれているのであるから、減ってくるかもしれないけれども現実にはいまのところは減ってきていないのだと、したがって、それに対する便乗値上げ等が行なわれるということは非常に好ましくないということで、税関としては正しい数字国民に知っていただくという必要があると判断をいたしまして、これはもちろんその判断ばかりじゃなくて、毎月やっておったことでございますけれども日本現実には石油はこのぐらい入ってきておりますよという正確な数字国民に知っていただく義務があるということで、当時入ってくる量が減りますよということであったにもかかわらず、その実績を正確に発表をし、かつ月間では、先ほど申し上げましたように、月に一回数量把握することでは足りないということで、句ごと数字をも把握をして、これを関係省にすみやかに連絡をしなくてはならないということで、各税関督励をいたしたようなわけでございますが、御指摘のように、今後といえどもどもといたしましては、なかなか税関立場から申しますると、将来の予測ということをなすことは、税関は非常にむずかしいと思います。したがいまして、少なくとも正確な実績把握をいたしますれば、将来の予測をやる立場にある官庁の立場とすれぼ、それがやりやすいということにはなりますし、また、各事業所を通しての、いわゆる流体の石油在庫調査をやっておりますところの通産省立場としても、もし違った数字が各事業所から報告をされますならば、税関ではこれだけ入ってきているということで、相手に対しまして、おまえの数字が正しいのか、正しくないのかということの追跡ができることになるわけでございまして、したがいまして、そういう意味におきまして私どもは、正確な数字を、御指摘のように、関係資源庁その他の関係省に対しまして、正確な数字連絡をするという義務は私どもにもあると思います。したがいまして、その線に沿いまして対処をしているわけでございまして、私どもといたしましても、石油問題に関して、いわゆる窓口である税関において、的確に現状把握するという必要性は、いままでよりも以上にみんな気をつけてやっていると、こういう姿勢で臨んでおるわけでございます。
  9. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私も、税関立場で、予測は非常に困難だと、そういうことはわれわれの受け持ちじゃないけれどもと、こうおっしゃることもよくわかるんです。しかし、政府全体の中からながめれば、資料を持って、配船がどんなふうになっておるのか、もっと言えば、積み出しのところも、外務省関係を通してやれば、ある情報というものはとれると思います。ですから、いろんな情報資料というものを持ち寄って、情勢分析政府一体になってして——業界に踊らされて便乗値上げをされてしまう、あるいはマスコミにそういう問題がいろいろと、マスコミ関係でいえば、あるというのと、ないというのがあるが、やっぱりあるよりも、ないほうへ国民の目は移るわけなんですから、ですから、情勢判断というものをして、そして国民皆さんそう買いだめをせなくてもいいですよ、出てきますよというような安心感というものを私は与える必要があると思います。それが政府の仕事じゃないかと思う。行政というものは、ただ単に行政のためにあるのじゃなくて、国民のためにあるわけですから、そういう立場に立って、いま少しいろんなもので、横の連絡を密にして、政府のどこかで情勢判断をして、対策を立てて国民安心を与えるというような、そういうなわ張りをこえて、一体となってやれるような、そういうことが考えられてしかるべきじゃないかと思う。これは局長さんがやるというわけにはいかないかもしれませんけれども、少なくとも、政治的には、そういう内閣一体責任論としてやってしかるべきじゃないかと思いますから、過去のことはこうだ、しかし、これからは——私は、まだこれからも食糧の問題なり、あるいは非鉄金属等の問題で振り回されるときが来はしないかということを非常に心配しているわけです。ですから、そういうものに対しては、外務省としてはこういうことがなすべき役割りじゃないか、大蔵省としてはこういうことがある、通産省としてはこういうことがある、あるいは農林省としてはこういうようなことで対処していくのだよという、そういうことがすでになされておると申しますか、予測されて、そしてそれに対して、事前に手の打てる対策というものが講ぜられていいじゃないか、それにはよい反省というものがあったじゃないか、こう思っておりますから、少なくとも、そういう対策というものを今後予測される、あるいはまた重油もまだこれからもいろいろと振り回されるときが来るかもしれない、ですから、当然そういう対策というものが立てられておってしかるべきじゃないかと、こう思いますから、非常にくどいようでございますけれどもそのことについてお聞きしておるわけです。
  10. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) たいへん前向きのりっぱな御意見だと私も敬服し、そうしなければならないと思っております。ただ今回の石油の危機に直面をいたしましたのは、御承知のとおりにメジャーが九月輸出に対しまして二五%の減少をする、なお、月々輸出率は減らすというような予報を流してまいりましたために、この輸出削減予報ということが非常に強く国民並びに消費者皆さん方に大きな反響を与えましたが、事実におきましては、いま御指摘のようにあまり減らなかったのでありまして、その減らなかった理由は、つまびらかにすることはできませんけれどもタンカーが満タンせずして帰ってきた、帰港したということはきわめて少なくて、ほとんどタンカーは満タンして帰っておるのであります。それなれば、通関統計とそれから現地の積み出しの速報、その速報船会社船そのものと、要するに、輸入商社と、出先外交機関とが、何船はどれだけ油を積んで出たということを知らしてくれば、わが国には七十九日程度の備蓄があるわけでありますから、それに対して、いま船に乗っておるものはどれだけある、仕掛け品はどれだけあるということになれば、今日われわれが経験したようなああいう混乱はなかったと思います。それを総合的にまとめ上げていく機関がなかったために、より以上にあんな混乱を起こしたということは、まことに遺憾であると私は考えております。今後は、エネルギー庁も十分そのことを覚悟しておるようでありますし、大蔵省大蔵省立場で、通産関係運輸関係あるいはわれわれ大蔵、一緒になりまして、また、農林省関係食糧関係もあることでありますから、いま御示唆をいただきましたようなことで、今後ああいう混乱を再び起こさないように、各省間の連絡を十分とっていきたいと考えております。
  11. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 いまの成瀬委員からの質問に関連して。  税関でも輸入を掌握していますね、統計をとるわけですから。その場合に、当然輸入業者である商社の、商社別数量はその時点把握できるわけでしょう、商社別輸入量というものは。それがいわゆる去年石油がないないと言って、実はあったと、これはむしろ一昨年よりもふえているということが事実なんです。それがないないということでああいうようなことになったのだが、政府も、いわゆる、これは何かあわてたというか、そのいわゆる商社の諸君のないないに乗っちゃってしまったわけですが、それは私指摘しますのは、いわゆる税関で、商社別輸入量把握できるならば、いま言ったように、ないないという宣伝はあまりぴんとこなかったんじゃないか。おそらくその時点では、政府も各商社ごと輸入量対する確たる把握がなかったんだと思うんですね。そこで、いま局長がおっしゃった輸入量が、税関を通じて入ってくる、その総量はわかるけれども、そのいわゆる受け入れ先ごと数量がすばやくキャッチできれば、私は去年のようなことがなかったんじゃないかと思う。そこで、あなたの言っておられる毎月なり旬ごと輸入量商社別あるいは輸入業者別数量も即時わかるのかどうか。もしわからぬとすれぼ、これはやっぱりわかるようにしなくちやいかぬと思うが、いかがですか。
  12. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 原油に関する限りにおきましては、商社が扱っております数量というものはごく少ないわけでございまして、日本全体の輸入量の一〇%以下。商社が扱っている輸入と申しますものは、日本全体の輸入量の一〇%以下の数字商社が扱っているわけでございまして、石油会社が直接なり、あるいは電力会社なり、こういうようなものが輸入者になっておるものもあるわけでございますが、税関立場といたしますと、いろんなものが、申告件数が大体年間二百万件あるわけでございまして、この物資につきまして一々輸入者ごと数字、この輸入者一体何を幾ら輸入しているかという数字統計的に把握をすることは、これはほとんど、物理的には、確かに理論的には可能でございます。理論的にはそれは一々、たとえば丸紅なら丸紅というものが一体何をどのぐらい輸入したかということを一々申告書集計をしてまいりますれば、これができないわけではございませんけれども輸入者ごとの、何百万件とあるその輸入申告件数を、輸入者ごと把握をし、統計作成をしていくということは、実態的には膨大な人間を投入をいたしませんとなかなかこれはむずかしい問題でございまして、理論的には可能でございますけれども現実にはこれは不可能であると言ってもいいものではないかと考えております。  それで、石油に関しましては、商社はあまり先ほど申し上げましたように多くのものを扱っておらないわけでございまして、全体石油に関しましても、輸入者別に区分をいたしますると、相当多数の輸入者という結果に、申告を出してまいりますところの者は、相当多数のものになっているというのが現状でございます。
  13. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 私の言っているのは、こまかいものを含めてじゃなくて、まあ大どころ、これは石油業者にしても、商社と言った中には、そういった私の意図には石油業者も入ったということなんですが、まあ、あなたそれだけなんですが、商社とか石油業者とか、大どころのところだけだと思うんですよ。小さいものも入れる必要ないんで、だから、大体、日本石油を、業界を牛耳るぐらいのもの、これはそうはたくさんないと思うんですね。そういったものがわかれば、いわゆるあとのこまかなものはわからぬでも、これはたいして影響ないと思うんです、全体に対して。したがって、やはり日本石油というものを、支配するぐらいの量、これは輸入するというものはわかるんじゃないかと。またわかることのほうが望ましいし、いろんな場合に、いわゆる政府なり、またわれわれ国民もそれを知っていることは、これはやはり去年起こったような混乱を起こさない一つの大きな基盤になろうと思うんですが、その点いかがですか。
  14. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、たとえば十くらいのおもなものが一体幾ら輸入しているかということを把握をすることは、場合によりましては非常に重要であり、これが国民のためになるという場面もあるかと思います。しかしながら、私ども立場といたしましては、確かに官庁内部におきまして、全体の政策を立てる際に、大きなところが一体幾ら輸入しておるかということをつかむことは非常に重要であろうかと思いますけれども、これをたとえば三井物産なら三井物産、帝石なら帝石というものが、一体幾らの石油を幾らで輸入したかというようなことを、いわゆる職務上知り得た私どもが、申告書に書いてあるわけでございますから、職務上これは知り得るわけでございます。知り得た秘密を守らなくてはならないという、職務上知り得たものを守らなくてはならないという義務が公務員には課せられているわけでございまして、この点に関しましては、自主申告制度、たとえば税金の場合も非常にこれしばしば起こる問題でございますけれども、ある会社なり、あるいはある人間なりが、一体幾らの申告をしたかということは、これはもう守秘義務として、公務員は外部に知り得た秘密を発表してはならないという規定があるわけでございまして、この点との関連におきまして、私どもはこれをどういうふうに対処をするかということに関しましては、非常に微妙な問題がその間には含まれているかと思います。したがいまして、私どもは、日本全体として、一体石油が幾ら入ってくるかということは、これは当然の義務として発表をしなくてはならないかと思いますけれども一体どこの商社なり、あるいはどこの石油会社なりが、どのくらい石油輸入したかということを個別に発表することは、現段階におきましては、これはできないことではないかと思っております。その点、いろいろと各関係官庁とも、法制局なりなんなりの意見も十分に私ども打ち合わせをいたしておるわけでございまして、守秘義務に抵触をいたすものに関しましては、私どもは個別には、発表し得ない立場にあるということをひとつ御了承いただきたいと思います。
  15. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 いま局長の言うことはわからぬことはないのです。しかし、価格は別として、輸入量、これは私はそう秘密にする必要ないのじゃないかと思う。この点についてまた別途これは検討しなくちゃならぬのですが、原油価格なりその他に触れたりすれば、商売上のいろいろなことが起こりましょうが、数量だけは私はそうではないがと思いますが、私のいろいろとお聞きしているのは、あなたのほうで、そういった商社別なり、あるいは石油業者別の輸入量は、これはいま言ったようにお調べになるのだから、当然税金払うのですから一番数量も多い。的確だと思うのです。この間、資源エネルギー庁から去年一年の石油輸入実績報告を受けたのですが、それにやっぱり通関の量と対比すると幾らか差があるわけです。それはいろいろなことでやむを得ぬと思うのですが、やはり通関の量のほうが正確だと思うのですよ私どもは。それはそれとして、ですから、それが発表することがいいか悪いかはここでは問題にしませんけれども、別な時点でもちろんやりますが、もう一ぺん最後に聞きたいのは、いまあなたがおっしゃったように、そういった商社別あるいは業者別の輸入量は早い機会にあなたのほうでは把握できているということだけはこれは事実でしょうね。
  16. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) これは率直に申し上げまして、二百万件以上にのぼるような輸入申告件数を業者別に把握……。
  17. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 いや全部じゃなくて、さっき言ったように、ある程度大口の、これだけの者が、一つ日本石油の大体を握っているというのがあると思うのです。二百万件ある中には、とるに足らぬものがあると思うんですね。そんなものは別として、日本石油を掌握するくらいのものが何社かあると思うね、実際は。たとえば帝石とか、あるいはこれは電力会社も入っているでしょう、自家用ですけれども商社もあるでしょう。そういったものを、大どころだけのものでいいから、把握できているかということです。
  18. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 石油だけ、要するに、全体のものの中で、石油だけ取り上げますと、全然、私どもが、非常に問題になりましたときに、どこの会社がどのぐらい輸入したかという数字を、各申告書からピックアップをいたしまして、石油に関しましては個別に把握したことはございます。これは実態です。ただ、継続的に、毎月毎月、たとえば帝石なら帝石、日石なら日石というものが、会社別に、一体この会社は幾ら輸入したかということを、定期的にこれを作成をしていることはいたしておりません。ただ、これは、物理的につくろうと思えばつくれる資料であったことは間違いございません。
  19. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 なぜ私は、輸入量というものが非常に大切だとかいうことで、過般、肉の値上がりが非常にあったことがあるわけです。ところが、肉はどうなったかというと、当時、これは農林省関係の検査の問題が一つありまして、しかも、その検査は、冷蔵庫等のしっかりしたコンテナの中にぴっしりパッケージされないと、検査を受けることができないという、そういう問題がございまして、たくさん腐らしてしまったという例がある。ですから、買ったのはたくさん買ったわけですね。たくさん買った。で、輸入はあって、そして国内は品不足で値が上がったという、そういうことです。そういうことが、過去に石油ぽかりじゃなくて、あったということ。それから、毛がひとつぱあっと来まして、いまこうなっていますね。それで、もうどうかというと、みなこうやって、入ってきたことは入ってきたのだけれども、それが、追跡調査と申しますか、そういうものが総合的な、立体的な情勢判断情勢分析というものが行なわれていないから、業者で、業界で、ないないと言われると、国民買いだめへ、買いあさりへということになるわけです。ですから、せっかく今度のことでは、物価の問題なり、いろんな問題でひとつやろうじゃないかと、せっかくそういうことが内閣の大きな使命になっておるなら、私は、総需要抑制政策で事が達成されるわけじゃなくて、もっときめのこまかいことをやらなければいかぬ。もっと言えば、一つ一つフォローアップするぐらいの、きめのこまかい対策というものが必要なんじゃないか。したがって、これを何か、関税にからんで関税局長だけに議論するというのじゃおかしいと思います、ほんとうでいえば。おかしいと思いますけれども、少なくとも、しかし、数量が的確に把握できるのはここしかないじゃないか、だから、ここが柱になって、いろんな対策というものが立てられていいじゃないかと、こう思っておるから、全くおかしいじゃないかとおっしゃるなら、守備範囲を越えたオーバーな話で申しわけないと思いますけれども、しかし、それは経企庁の国民生活局だよと、こうおっしゃればそうかもしれませんけれども、せっかく税関でぴしっと押えた資料というものがあるわけなんです。それがもっと生かされてくることが、行政府の責務じゃないかと、そう思いますから申し上げておるわけでございます。
  20. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 非常にありがたいおことばでございまして、私ども今日まで税関は、通関——要するに輸入貨物に関しまして、通関を終わりさえすれば、そこで税関の責務は終わったのであるということで、通関がすでに終わってしまって、税金をいただくものは、税金を払っていただくものは払っていただいたあとのものに関しましては、正直に申しまして、あまり関心がなかったわけでございます。  しかしながら、御指摘のように、税関におきましては、一体外国からどのくらいの荷物が入ってきているのかということは、税関においては的確に把握をしておるわけでございますし、特に保税倉庫なり、保税工場なりに入っております荷物に関しましては、私どもは調査をすればこれはわかるものでございます。したがいまして、世間で物がないないというときに、保税倉庫なり保税工場なりというものに物があるという現状は、物がありますよということは、世間の方にも知っていただかなければならない義務があると、そういう判断のもとに、昨年の十一月から、いわゆる保税地域におきまするところの在庫量調査というものを税関において始めまして、これは今日まで税関におきましては、全く、通関したあとの荷物に関しましては、そういう種類の調査をやっておらなかったわけでございますので、なれておりませんので、この三ヵ月間ぐらい、税関の連中夜十一時ごろまでも連日なれない仕事であった関係上、ちょっと労働過重という問題で、私どもいかにこれに対処するか、頭を悩ましている面もあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、私ども義務として、いわゆる保税地域にございますところの荷物の量は、何が一体どれくらいあるのかということを的確に把握することは、税関義務であるという判断のもとに、在庫量調査を始めまして、この十一月以来、毎月末にこの在庫量を、一体何がどの程度ありますよということを国民に知っていただくために、在庫量調査の結果を毎月末現在の数字発表することにいたしておるわけでございます。したがいまして、この、しかも発表すると同時に、一体何がどのくらいあるかという数字は、経済企画庁なり、あるいは通産省なり、農林省なり、それぞれの物資担当省に対しまして、この数字連絡をいたしまして、私の感じでは、その調査を、これは大体三ヵ月やってきたわけでございますけれども、私の感じでは、物が倉庫の中にあること自体は、倉庫というものは物があることが当然でございますから、倉庫の中に物があること自体は非難されるべき事柄ではないと思います。特に穀物その他の場合、いわゆる端境期のために備蓄をしておくということはむしろ必要でございますし、物がありさえすれば、これは物価引き下げ要因に役立つという面もあるわけでございまして、ただ、その物が、一体何のためにあるのかということの内容の把握のほうがこれは重要であろうかと思いまして、各税関におきましては、相当きめこまかく、その関係輸入業者を呼びまして、一体、これが三カ月なら三ヵ月倉庫にあるのは、一体どういう理由によるのかという、その理由の調査も始めておるわけでございまして、こういうことで、私どものほうでできる限りのことをやりまして、わかった結果は、これに対する連絡を、各省庁に対する連絡をしなくては、これが生かされて使えないと、御指摘のように、正確に把握をしている官庁が、その統計を有効に活用してもらう方策を考えなくてはならないということで、関係各省庁にこの数字連絡をし、正常在庫と考えられる分を越えるものは、これは何らかの理由によって、買いだめ、あるいは売り惜しみであるかもしれないという疑いのもとに、これに対して早期に放出することを強力に行政指導をすると、こういうような手段が考えられるわけでございまして、そういったような、税関といたしまして、できる限りのことは物価対策という観点からやりたいと、またやるべきであるというような意欲のもとに考えておるわけでございます。
  21. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あげ足をとるわけじゃないのですけれどもね。一つの関税引き下げることも物価対策としては、まあインフレの中ですから、ちょうど映画の入場税を下げたら、あるいは酒税を下げて、税の下げた分だけひとつ値を下げると、そういうものを告示直なくちゃいかぬというようなことをやったこともございます。これが半年ぐらい続いたけれども、ためになった。全くフォローアップというものがされていないところに私は大きな欠陥があるんじゃないかと、全く打ち出しは非常に大義名分立ってりっぱ、そしてきまる。しかし、あとはすぐまたやるといって、新しいほうへ問題が目が向いていってしまう。やったことは知らぬよというのが大体実態だろうと思うんですよ。ですから、今度こそは、もうそういうことはないよと、今度の中でも、提案理由の中でも書いてありますけれども、生活必需品は下げますよということは、値段が、それだけなら、それだけほんとうなら下がらなければいかぬわけです。ところがなかなかそうはいかぬと思いますが、理屈どおりはなかなかいかぬかもしれませんけれども、フォローアップの態勢、そして総合的な事前対策というものをやっていただきたい。ですから、これは、まあ、このことばかりあまりやっていてもいけませんから、政務次官、私は、せっかく次官会議等がございますから、あなたの御答弁等を聞いても、ひとつやろうじゃないか、またやらなくちゃならぬと、こういうことは、私は全くどなたにも異論がある問題じゃない、これは政治的な問題でもないと思う。ですから、ぜひひとつ対策を立てていかないと、私は、次にくるべきものは食糧の問題、そしてその次にくるのは非鉄金属の問題、マクロに見れば、だれが何と言ったって、資源不足ということは、文化の発展と人口増から必至の問題だと思っております。なるほど人間の英知がありますから、それを克服することはあるだろうと思いますけれども、短い期間でいけば、そういう問題に絶えずぶつかってまいる。長期的には人間の英知や何かで解決していくだろうと思いますけれども、進歩で解決していくだろうと思いますけれども、そういう問題で振り回されては、全く国民が迷惑で、政治がないじゃないかと、こう言われると思います。もっといえば、行政もないじゃないかと言われる。ですから、この際、ぜひひとつ次官会議等で、みんなしていい知恵を出して、どこか担当の責任のところをきめて、そこへ情報等を持ち寄って、そして、なかなか情報の中にもとるべき情報と、誤った情報もあるだろうと思います。ですから、いろんな点をあらゆる角度から検討をして、行政の手落ちで、手おくれで、被害が国民に及ばぬように最善の私は方途を考えておいてもらいたい。いや、方途をやっていただくというふうに、ぜひひとつお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
  22. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) ただいまの御意見はまことにごもっともでございますので、次官会議にもはかりまして、その方法を確立いたしたい一思います。ただ一つ、石油の問題等で振り返って考えますときに、石油食糧は、これはわが国の一つは産業経済のエネルギーであり、一つは国民の主食の関係につながるものでありますから、きわめて大切でありますが、今回の石油は、政府商社筋も、なお世界各国も、次の月には輸入削減されるのではあるまいか、さらに削減された上に、値段もまた、いわゆる公示価格の引き上げが行なわれるのではあるまいかということを、ほんとうにそういうように確信しておったという面が、大きな消費者に対する不安となって、一方は、商社は売り控えをする。一方は買いだめをしたいという気持ちが私は起こったと思います。これは大きな資源外交の問題でございますから、御説のとおりに、広い意味におきまして、資源関係の問題をどうするかということを考えていただかなければなりませんが、当面入手し得るか、し得ないか、あるいは当面、在庫があるかないかというような、そのことは、これはもう各省の総力を結集すればわかることでございますので、十分に各省連絡を確保するような体制を次官会議でも申し合わせをいたして、御説のような進め方をいたしたいと思います。
  23. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 特恵関税のことですけれども、後進国家の中に中国は入るか入らないのか。中国は、そういうことを言うと、プライドを傷つけられるかどうかという問題があると思うのですが、どういうようにお考えになりますか。
  24. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 特恵税率の場合には、特恵税率の適用を受ける国が、要するに特恵税率の適用を申請してこなければ、これは特恵税率の適用はないわけでございまして、中国とは貿易協定、その他の関係で何回か折衝をいたしておりました過程におきまして、中国としては特恵税率の適用を受けるつもりはないと、こういう申し入れが中国の側からあるわけでございまして、特恵税率は、中国に対しましては適用されないと、こう御了解いただけばけっこうだと思います。
  25. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いまどのくらいございますか、特恵の適用国は。
  26. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 四十八年度におきまして、百八ヵ国でございます。
  27. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 輸入総額はどのくらいですか。
  28. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 特恵適用の輸入実績といたしましては、鉱工業産品に関しまして、四十八年度には千三百九十四億円でございまして、農水産物に関しましては四十八年度——四十八年度といってもまだ終了しておりませんから、これは四月から十一月までの実績でございますけれども、二百八十九億円でございます。それが同じ四十七年度、これは四月から十一月ということではございませんで、これは一年間でございます。四十七年度全体といたしまして、鉱工業産品の場合に九百三十二億円でございまして、農水産物が百二十三億円でございます。
  29. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これはだいぶ資源関係が多いと見ていいわけですか、鉱工業産品として。何があるのですか。
  30. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 鉱工業産品、資源関係と申しますと、資源、石油とかなんとかそういったようなものではなくて、鉱工業産品に関しましては、要するにシーリングワクを設けまして、それぞれの、毎月毎月の品目別の百人十九品目、いまシーリングワクを設けている品目があるわけでございまして、対象品目が百人十九でございますから、必ずしもその資源関係が主体であるということを言い切るわけにはまいらないかと思いますけれども、御質問の趣旨が、資源関係がおもなのかというのは、どういう御趣旨でございましょうか。
  31. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 完成品ではなくて、たとえば一次製品、半製品的なものが多いわけなのか、少たくとも後進国家ですね、そこの鉱工業品目と言われると何があるのか、ちょっとわかりかねますが。
  32. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 製品と半製品あるいは一次産品と比較いたしますると、やはり製品輸入のほうが、内容としては鉱工業産品の場合一製品のほうが多いわけでございます。
  33. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 たとえばどんな品物がございますか、品目で言うと。
  34. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 雑貨類がわりあいに多いわけでございまして、その主要資源に関しましては、大体税金が、もともと税金が日本の場合かかっていない、無税の場合が多いわけでございまして、要するに特恵税率が適用されますのは、先進国に対して、先進国からは比較的高い関税を払ってもらうというものがございまして、要するに、わりあいに雑貨類の範疇に属するような種類のものが比較的多いわけでございますが、これも百八十九品目ございますので、この中で特恵輸入の金額といたしまして比較的多いのは、木材及びその製品それから家具及び寝具、それから銀のかたまりでございますね。それから固定または可変式の蓄電器、アルミニウム製品、いおう、セメント、貴金属、まあそういったようなものがいまちょっと私この表を見まして金額が比較的多のものでございます。これらはいずれも非常に比較的多数輸入されまして、すでにシーリングワクに到達をいたしまして、その特恵適用がストップをされた品目でございます。
  35. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これで大体自由化がアメリカとの関係等いろいろございまして、政府としてはぎりぎりのところへきたというお考えですか。
  36. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御承知のように、昨年の七月にガットの新国際ラウンドのための大臣会議が東京で行なわれまして、その新国際ラウンドが、ことしから開始をされるということになっておるわけでございます。それで、ただ御承知のようにこの石油の問題であるとか、あるいは現在通貨の問題がフロートしておりまして、通貨の問題が安定をしないというような問題がございまして、率直に申し上げまして新国際ラウンドが、私どもが考えているようなペースで進行することは現実問題としてはむずかしいのではないかと考えております。私どもも、実は昨年の場合には、日本の国際収支が非常に大幅な黒字をあげているということで、要するに通貨のレートの問題との関連におきまして通商の問題も世界的に相当思い切った自由化を進めなくてはならないという判断があったわけでございますが、石油の問題以来、要するに、日本の国際収支の将来もかなり昨年あたりには考えられなかったようなむずかしい問題が生じてくる可能性があると考えまして、私ども立場といたしましても、今年度の関税改正あるいはその自由化の問題その他に関しましても、もう一回やはり日本の経済の将来に関しましてここで見直しをしなくてはならない時期に到達をしておるということで、もう少しやはりこれは勉強しなくてはならないということで、自由化の問題に関しましては、これは私個人の意見でございますけれども、一応この段階におきましては、これ以上自由化をさらに押し進めるべき段階ではない、一応御指摘のように、ここで一段落という感じで対処すべきではないかと、かように考えておるわけでございます。
  37. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私も、新しい、あなたがおっしゃるようにフロートしておるものがどこら辺に落ちつくかということ、それから資源関係、特に石油関係の値上がり等で各国の国際収支がどうなってくるかなかなか予測がつかない。日本でいえば、予測されることはむしろ、重油はほしいことはわかっておるが、ほしいだけ入れれば、国際収支のほうが赤になる、ということになれば、逆にいえば、関税を逆に使わなければならぬ、自由化どころじゃなくて。ほかのものの輸入を抑制しなくちゃならぬという方向に日本はあると思う。ところが、もう一歩前を考えれば、一つは、国際協調、自由化というのが原則であろうという原則論があると思います。ですから、どういう方向に出してくるかということは非常にむずかしい問題だと思いますが、逆に、アメリカなんぞで見ると、日本が非常に品物についてダンピングをやっているじゃないかと。アメリカも非常に日本に対して課徴金その他の問題から端を発しまして、何かいろんなことをやってこられてくると、日本は、それはなるほど自由化していない。そういう品目が非常に多い。それに対してアメリカが逆手に迫ってきておるんだが、逆に日本とアメリカと経済力を比べれば、構造的に違うわけなんですね。そういうのが何か襲いかかってくるというのに対して、非常にいやな感じが実はしておるわけです。アメリカのやり方というものは非常に身がってなように受け取られてしょうがないわけです。ですから、日本も国損があってはならないと思いますから、私は、友好関係を失ってはいけないけれども、今度特に私は石油の問題に関して、キッシンジャーの発言などを聞いておりますと、何か日本に対して経済的な圧力と申しましょうか、制裁というようなものを加えるぞという、どうかつ外交めいた手口が弄されておる。そういうものがこういうところにまた出てくるじゃないかという点を危惧しておりますから、局長の決意と申しましょうか、方向と申しましょうか、あなたは個人の意見とおっしゃいましたけれども、私は、軽々に拡大の方向に追いやられるということについては非常に危惧をしている。ですから、そういうことを申し上げたんですが、ひとついまのような御趣旨を、私はぜひ貫いていただきたいと思っております。
  38. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 先ほど申し上げましたように、新国際ラウンドが今年から始まるわけでございまして、日本といたしましては確かに、一番、このほんとうの意味におきまする自由な貿易の拡大ということで世界貿易が拡大いたしますことは、日本の国益には合致をする問題であろうかと考えまするが、事態がこういうことになってまいりますると、必ずしもその自由をこれ以上無差別に押し進めてしかるべきかどうかということは非常にむずかしい判断、国際協調と、これはまあ日本の将来にとりまして非常にむずかしい問題でございまして、新国際ラウンドに臨みます基本的な態度につきましても、やはり日本の国益というものを土台にして判断をいたすべきであるというふうに考えておるわけでございます。今後個別の問題に関しまして、いろいろな問題が生じてくるかと思いますけれども、やはり世界の自由な貿易の拡大という基本的な姿勢をくずすことは誤りではあろうかと思いますが、御指摘のようなことを体しまして、国益をそこなわないような姿勢で、外国との交渉には臨みたいと、かように考えておるわけでございます。
  39. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 全く、犯罪関係と言っちゃおかしいわけですが、これを見ると、密輸出、密輸入の表が四七ページと四八ページに出ておるわけですが、まあ価額でいえば、機械器具類が最高のもので、それに続いて薬品類と、こうなっておるわけですね、パーセンテージの高いものを見ますと。まあ機械器具は、ここに電器があるんですが、一体、薬品類がこんなに多いというのはちょっと、価額の面で多いからですが、どんなものが大体医薬品だというと密輸出されるわけですか。
  40. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) たとえば、薬品類であるとか、電気機械、光学機械、テレビ、時計、こういったようなものは比較的韓国向けが多いわけでございます。それで、相手が開発途上国の場合に、比較的そういう国々におきましてはこういったようなものの関税が非常に高いということがございまして、たとえば、船員あたりが、これを日本から持ち込みますと、先方の国におきましては非常に高く売れる。要するに関税を通脱をいたしまして向こうにもまた密輸入をいたすわけです——先方の国からすれば密輸入をいたすわけでございまして、こういったようなことから、その薬品だとか、あるいは電機、光学機械であるとかこういったようなものが多くなっていると、かように私ども考えておるわけでございます。
  41. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 その医薬品もやはり……。
  42. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 医薬品は、日本は比較的薬屋さんで簡単に買えるわけでございまして、医薬品は先方の国に持ち込みますと、非常にこれは需要が多く、高く売れるというような実態が背後にはあるようでございます。
  43. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 密輸入になりますと、食料品が圧倒的に多いわけですが、これは食料品というとどんなものをどうやって——船一ぱいで全部持ってくるというような割合になっちゃうんですよ。
  44. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) この食料品の中で圧倒的に多いのは酒でございます。要するに羽田の……。
  45. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 酒は酒類とあるんだよ、酒類は〇・一%。
  46. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 失礼しました。  御承知のように、昨年非常に国会でも問題になりました豚肉のあの違反を摘発をいたしまして、その中の非常に大きな部分は、豚肉の違反摘発が密輸入として掲示をされておるわけでございます。
  47. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 四十四年は〇・二ですね、そうすると、豚肉が。まあ豚肉だけに例をとると、豚肉が全部だとしますとね。四十六年が五・八%、四十七年が〇・二に減ってそれで八七・五と、こうなったから、なるほど四十八年は豚肉だということがわかりますが、四十六年のときの五・八というのも、三年間遡及していた、それで豚肉が出てきたのかな。
  48. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 四十六年はこの豚肉の事件とは全く関係ございませんで、四十六年が金額がなぜこう大きかったかということは後ほどちょっと調査をして御報告させていただきたいと思います。
  49. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これで最後にしますが、ハイジャックがいろんな意味で出てまいりました、ハイジャック防止については、いろいろと苦慮されておると思いますが、税関関係で、ハイジャックというものとは全然無関係な組織体になっておるのか、それとも税関関係がそういう問題について何らかの対策と申しますかをやっておみえになるのか、どうでしょう。
  50. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 税関が全くハイジャックに関して無関係なわけではございませんで、総理府に、現在、四十八年の八月でございましたか、ハイジャック等防止対策連絡会議が設けられまして、この構成メンバーとして税関もなっているわけでございます。税関がそのハイジャック防止のために特に協力をする部面といたしましては、要するに荷物が入ってまいりまして、税関の構内にやってくる前に、構造といたしまして、荷物の中に一体何が入っているかというようなものを、外側からレントゲン透視その他の装置でこれを見つけるような装置を、装備をいたしたり、いろんな空港の管理権それ自体は税関ではございませんですから、税関にはその権限はないわけでございまして、税関は、荷物をたとえば検査をするところの、検査場の中におきますることと、それから出国待合室がございます。あすこを税関吏が徘回と申しまするか、警備いたしまして、挙動不審のような人たちがいた場合に、荷物をあけて拝見をする。また、出るときに荷物を見るのは、これは、別の、税関の人間ではございませんですけれども税関といたしましては、あすこの出国待合室を徘回をしたり、あるいは入国の場合に、入国検査場におきまして警備を厳重にして、挙動不審な者を未然につかまえたりする、あるいは厳に税関の検査場に入ってくるところの、荷物の入ってくる通路と申しまするか、いまのそういったようなところに、この荷物の中身がわかるような透視施設のようなものを作成することをいたすとか、そういった面におきまして、税関関連をいたしておるわけでございまして、対策連絡会議の一員として税関等は構成メンバーでございますが、これは、主として運輸省が幹事と申しまするか、運輸省が主宰——総理府にございますけれども、運輸大臣がハイジャックの場合にその長になられるということになっておるわけでございます。
  51. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 日本通関は、どうも後進国並みだといっていやがられるほど、厳重だった、それは出るときも入るときも。あのぐらいいやなものはないと思うんです。しかし、片方では、あぶなくてしょうがないから、これもしっかりやってもらわなきゃならぬという、全く二律背反的な気持ちなんです。  そこで、何かそういう金属製のものがあれば、透視でそれが発見されるというような、いろんな、さわってみるとか、あけてみなくちゃわからないということじゃなくて、そういう方法のことでいろいろと対策を立ててもらうのが原則じゃないかと思うんです。ですから、私は、そういうようなことには相当金をかけてもいいじゃないかと思うんです。人でさがすんじゃなくて、機械で、知らずのうちにそれがわかるという、そういう対策には相当思い切って金をかけていただきたいんです。大蔵省の予算もそういうものについては惜しみなくひとつやっていただきたい。しかし、一人でも武器等のものを持ち込まれちゃ全くたいへんなんですからね、爆弾持ち込まれちゃたいへんなんですから、そういうものに対する万全の処置を今後の課題として——いまもいろんなことを私もテレビで承知しておるぐらいしか、あるいは現場で御説明願ったことぐらいしか知識はございませんけれども、もっともっと研究をすればいい対策がとれる。もっともっと金をかければ、いやな思いをさせずに対策というものが立てられるじゃないかというふうに考えておりますので、ぜひひとつ御努力を願うことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  52. 多田省吾

    ○多田省吾君 今回の法改正理由を見ますと、「最近における内外の経済情勢の変化に対応し、国民生活の安定、関税負担適正化等に資するため、」とございます。そして、内容は、一つには関税率改正、二つには生活関連物資にかかわる弾力関税制度の拡充、三つ目には、各種減免制度の改正等の所要改正を行なうと、このようにございます。この改正案の基本は、昨年五月に関税率審議会に諮問したものでございますけれども、十二月に答申されました。これに基づいて提案されたものだと思いますが、現実には非常に時間的なズレがあって、いわゆる法改正理由に述べてある内外の経済情勢の変化にほんとうに対応できるものかどうか、非常に疑問があると思うんです。これはあとで個々に述べますけれども、個々の物品についても、非常にこれは疑問があると思うんです。これはどのように考えておられますか。
  53. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、昨年の五月に関税率審議会に対しまして、最近における経済情勢に対応した関税率をいかにするべきかということの諮問をいたしたわけでございますが、五月に一応諮問をいたしまして、その後、十二月、答申をいただくまでの段階におきまして、昨年の場合、約二十回に近い間、何回かその関税率審議会の委員の先生方にお集まりを願いましていろいろと御勉強をいただきまして、その結果が、昨年の十二月二十六日の答申となってあらわれたわけでございまして、五月の経済情勢を踏まえて、十二月に案を作成したということではございませんで、その間約二十回ぐらい、非常に熱心に御討議をいただきまして、十二月の末に答申をいただいたと、いわゆる十二月の末の現在の段階の経済情勢に対応した関税のあり方というものに関する答申をいただいたということで、その意味におきましては、そのとき現在の経済情勢を反映をした考え方であると、こういうふうに、私ども、考えておるわけでございます。
  54. 多田省吾

    ○多田省吾君 十二月二十六日に答申があったわけでございますが、いまの局長の御答弁によりますと、二十回にわたるいわゆる審議会がございまして、そうして、特にその後半においては、十一月、十二月の経済情勢の変化に対応するような御勉強ですか、それから審議も行なわれた結果であると、このようにおっしゃっておりますけれども、それにしては非常に答申の内容が、私は、ずれているんじゃないかと、このように思わざるを得ません。  なぜならば、今回の関税率引き下げ品目数は、特恵関税率を除いて九十六品目でありますけれども、この中には灯油、LPG、燃料用ナフサ、こういった主要な品目が入っております。しかも、原油価格の大幅な値上げに伴う石油製品価格の再値上げが決定されるという今日において、今回改正される税率がはたして適当であるかどうか、これがまず第一点の疑問でございます。  また、提案理由の中にあるような、国民生活の安定や、国民生活関連物資に対する弾力関税制度の拡充にはたして現実に役立つのかどうか、これは大きな疑問がありますけれども、私は、今日のような現状を見通しての改正ではないのではないかと思いますが、これはいかがですか。
  55. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 一番最初に御指摘になりましたところの灯油、LPGその他のいわゆる石油製品におきまする関税引き下げ、この問題に関しましては、実は、昨年度関税率審議会の中で調査部会におきまして石油関税のあり方に関しまして約六、七回、先生方にお集まりを願いましていろいろと御議論を願ったわけでございます。関税率審議会の中の議論といたしまして、要するに、ほかの関税はいわゆる国産保護という観点からの関税であるけれども原油関税に関しては、これはいわゆる財政関税、石炭対策の財源を確保するための関税であるという、現在の日本におきまする関税の中では、原油関税は特異な性格を持っておるわけでございまして、特に、昨年の十一月以降原油関税ははずすべきではないかという議論が相当強く関税率審議会の中におきましても行なわれたわけでございます。  しかしながら、現実問題といたしまして、原油関税が石炭対策費としていわゆる石炭特会の財源としてイヤマークされておるわけでございますし、また、石油問題が昨年十二月の段階におきましては、一体どうなるのか、非常にわからないという実態が背後にございまして、この問題に関しましては、今年度、すなわち昭和四十九年度中に、日本におけるエネルギー政策の基本的なあり方というものを、エネルギー審議会その他において検討するとともに、その際、原油関税あるいは石炭対策のあり方に関しましてもあわせて検討する、したがって、今年度すなわち昭和四十九年度は、原油関税現状のまま据え置くことが適当である、こういう判断のもとに、原油関税におきましては据え置かれ、ただし、石油製品に関しましては、この石油製品関税の税率を設けましたときには、これは大体輸入に対して、これは定率に換算をいたしますと大体二〇%、原油は大体一〇%、製品は消費地精製主義ということの関係上二〇%の関税をかけるということを原則として現在までの関税率がきまっていたわけでございますが、これは二〇%ではなくて、原油が一〇%であれば、この二〇%の半分の一〇%にまでは、少なくとも製品に関しては引き下げるべきであるという御意見が強くございまして、原油関税の一〇%と平仄を合わせまして、その製品関税も基本税率の半分に引き下げることにいたしたわけでございます。現在、非常に石油製品並びに原油の価格そのものが高くなっておりますので、これは一〇%に相当する金額ではございませんで、輸入価格から見ますると、大体原油の場合におきましても、製品の場合におきましても、大体三%台に平灰が合いますような税率にまで引き下げるということでなっておるわけでございます。  また、その他の関税引き下げ対象品目になっておりますものにつきましても、需給が非常に逼迫をしておりましたようなパルプであるとか、いおうであるとか、こういったようなものを無税にいたすことによりまして輸入を促進する、こういうようなことが考えられておるわけでございますし、十二月現在におきまする経済事情のもとでは適切な改正であると、かように考えておるわけでございます。  さらに、御指摘のございました、制度面におきまするところの弾力関税制度の拡充により、国民生活の安定を確保しようという問題につきましては、御承知のように関税定率法の十二条におきまして、従来主要食糧品目並びに豚肉、砂糖、こういったようなものの弾力関税制度があったわけでございますが、そのほかに、今年の初めにできましたところの国民生活安定法案、あれの対象になりますような品目で、非常に一時的に高くなっているようなもの、こういったものに対して、緊急の場合に、一時的に関税を軽減をして、あるいは免税をして、関税面において物価引き下げに役立つように対処をする、こういうような、将来予測し得ないような物価問題に対処する手段といたしまして、この制度をお願いをしようということでございまして、これがございますと、ごく短期間の間に著しい経済情勢の変化に対応し得ることになるわけでございまして、必要な改正ではないかと思っております。  この、なかなか弾力関税制度を発動しても、それが物価に直接響かないではないか、こういうようなお考えもあろうかと思いますが、豚肉等の場合に、昭和四十三年度以来、ときどきこの豚肉に関しまして、関税減免措置を一時的にやっておるわけでございますが、それなりに、関税引き下げれば物価が下がってきたという経験値もあるわけでございまして、かなり私はこの制度は有効に働く、じょうずに使えば有効に働く制度ではないかと、かように考えているわけでございます。
  56. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまの御答弁の中で、原油重油関税に対しましては、いわゆる据え置きということがとられたわけでございますけれども、その理由としてお述べになっているのは、石炭勘定として、石炭対策とからんでいるから、原重油関税につきましては、据え置かれたんだと、関税率審議会でも、原油価格の高騰が国民生活に与える影響が非常に大きいということで、税率引き下げ論が非常に大勢を占めていたんだというようなお話でございました。しかし、私は、やはりこの経済情勢に対応するしかたがそういう理由だとすると、いわゆる審議会にあるよりも、政府の姿勢にあると思うのです。四十九年度予算がほぼ決定したからということで、石炭対策がどうしようもないというようなことで、やはり据え置かれたんだと思いますけれども、私は思い切って、これは予算であろうとも、経済情勢に対応して修正するとか、そういう英断があれば、私は、こういった問題も解決するのじゃないかと、このように思います。しかし、いま政府は、一たんきめた予算は絶対修正しないと、どんな理由があろうとも修正しないような態度が見受けられるわけでございます。その結果、こういったいろいろな矛盾が生じてくるんじゃないか。ですから、政府の姿勢いかんによっては、これはもう減税にも私はできたのじゃないか、このように思います。  それから、石油関税に関しては、従来加工貿易で生きるわが国としては、原材料に関税をかけない、こういうのが原則であったわけでございます。原油だけを例外にしているわけでございます。これはもちろん石炭対策ということもあったわけでございますが、諸外国でも、国内に石油産業を持つアメリカが保護関税をかけておるわけでございますが、そのほか原油輸入国で関税をかけている国はない。またOAPECでも、そういう石油産出国でも、消費国政府の取り分が多過ぎるという非難を非常に強くしておるわけであります。それをやはり原油価格引き上げの理由にもしているような状態でございます。これらの問題点が審議会でどのように審議されたのか。  それから、政府が先ほど申しましたように、もちろん石炭対策は大事でございます。ですから、予算の修正をしてこの際、原重油関税に関しては免税にするとか、大幅に減税するとか、そういうことができなかったのかどうか。  それからまた、来年度の改正には、福田大蔵大臣は、衆議院大蔵委員会でも、引き下げるように鋭意検討したいというようなお話でございます。これは私は非常にタイミングが悪い、非常におそきに失する、このように思いますけれども、それをどのようにお考えですか。
  57. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 確かに原重油に関する関税をかけるべきかどうかという問題は、これは一つの政策の問題でございまして、関税率審議会におきましても、日本で原重油に対して関税をかけるのはおかしいではないかというような議論が相当出たことは事実でございますし、また私どもも原重油関税をかけるべきであると考えているわけではございません。しかしながら、御承知のように、現実問題といたしまして、昭和五十一年度まで存続をいたしますところの石炭石油特会の財源にこの原重油関税というものはイヤマークされておりまして、現実は、大部分のものが石炭対策費に向けられておるという現実がございます。これは御指摘のように、この原油関税に依存しなくても、一般会計でこれを持てばいいではないかというお考え方ももちろんあろうかと思います。しかしながら、また一方、日本石油を消費をすることは、節約をしなくてはならないという事態があることもまた事実でございまして、ほかの国の西欧諸国の例をとりましても、要するに、関税こそかけておりませんけれども、西欧各国におきましてもかなり高率の消費税を取っているわけでございまして、消費税と関税とあわせて考えました場合、日本の場合には、大体一バーレル当たり三ドル程度の要するに税金を徴収をする。西欧諸国の場合になりますと、これが約一バーレル当たり十ドルくらいの税金を石油から徴収をするという計算になっておりまして、そのうち関税は、一キロリッター六百四十円という関税はこれが〇・三ドル、三ドルのうちのまた十分の一でございますところの〇・三ドルということでございまして、現在の石油輸入価格から換算をいたしますと、これが三%程度になってしまうということで、石炭対策費のために必要であるならば、この程度のものは取ってもいいではないかという意見も一方あったわけでございます。いろいろな御意見があったわけでございますが、結局当時、石油の問題に関しましては非常に将来一体どうなるかということを予測いたしますことが非常にむずかしいときでございまして、この観点から、どうせ政府は四十九年度においてはエネルギーの基本的なあり方に関しまして検討をしなくてはならないのであるから、その際、石油関税のあり方に関しましてもあわせ考え、と申しますのは、同時に、石炭対策をいかにするかということもあわせ考えて、これを考えるべきである。それに対しまして、大臣も四十九年度中には、原油関税のあり方に関しましても政府として必ず考えるからという御意見を述べられまして、その石油関税率審議会におきましても、本年度は一キロリッター六百四十円程度関税であるならば、これを据え置いてもしかるべしという御結論をいただいたわけでございまして、石炭石油特会の五十一年度まで待たずに、四十九年度中に再検討をするということで、今年度は据え置くことにいたしたわけで、その点御了解をいただきたいと思うわけでございます。  また、OPEC諸国が、消費税あるいは関税理由に値上げの口実にしているという面は、確かにこれは現実問題としてございます。しかしながら、日本の場合には、先ほど申し上げましたように、西欧諸国が大体十ドル程度のものを取っております際に、日本は消費税を合わせましても大体三ドル程度で、日本関税あるいは消費税を取り過ぎるということをOPECが申しているわけではございませんで、その点は、日本がこの程度のものを原油から税金を取っているということに関して、OPECが文句をいっているという面はないのではないかと、かように考えているわけでございます。
  58. 多田省吾

    ○多田省吾君 これは福田大蔵大臣は、審議会でも四十九年はこのままにして、四十九年度中に検討したいということをおっしゃったそうでございますけれども、この前の衆議院大蔵委員会では、五十年度からの改正でやっていきたいというような答弁が、検討するという答弁があったようでございます。そうしますとあれですか、局長のお考えとしては、なるべく早い機会に、また関税率審議会にその原重油関税についても早急に諮問して、なるべく早く四十九年度中に答申を得たいと、その結果を、五十年度から改正したいという、こういうお考えでございますか。
  59. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 大臣が衆議院大蔵委員会で申されておられましたのも、四十九年度中に検討をして、五十年度からこれを改正する方向で考えたいと、こういう御答弁をなさっておられるわけでございまして、大臣の御趣旨に沿いまして、今年度中に関税率審議会におきましても、これは検討をいたしまして、五十年度から改正ができるような方向で対処したいと、かように考えておるわけでございます。
  60. 多田省吾

    ○多田省吾君 で、私は、当然やはり諸外国の例にならってこういう原重油関税については撤廃すべきだと、このように思いますけれども、その方向に沿って大臣あるいは局長関税率審議会にも諮問し、またその線で改正をされていくお考えなのですか。
  61. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 軽減または撤廃をするという方向で対処すべき問題であろうかと、かように考えております。
  62. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、関税定率法第十二条関係の、いわゆる生活関連物資にかかわる関税制度の拡充についてでございますけれども、昨年及び一昨年の過剰外貨対策としての円対策七項目の中であげられていた項目の一つでもございます。また、輸入の促進と物価対策の上からも法律改正の時間的ロスを省略する意味でも、行政府の権限によって政令で定めて臨機に応変できる体制にしたいという意見が強かったわけでございます。しかし、租税法定主義に触れるということで実用には、この拡充は間に合わなかったわけでございますけれども、なぜ今回の改正の爼上にのぼってきたのか、また従来言われていた憲法で定める租税法定主義の論議はどうなったのか、その点をお伺いしたいと思います。
  63. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 確かに御指摘のように、昨年景気調整、物価安定あるいは国際収支の均衡をはかるためということで、関税面におきまする政策手段の一つとして、弾力関税制度の拡充が検討されたことはもう御指摘のとおりでございます。今回のその弾力関税制度の拡充は、昨年の場合とは若干違いまして、物価高騰の事態にかんがみて、特に、予期し得ないような物価問題が起こってくる可能性があることにかんがみまして、国民生活との関連の非常に高い物資に限りまして、緊急な場合に政令によって機動的に関税を動かすことができるということで、御審議をお願いをいたしておるわけでございます。確かに租税法定主義が昨年議論の対象になったわけでございますが、関税は、本来国内産業の保護という立場と、それから消費者の利益という、二つの異なった要因を調整をしなくてはならないと、こういう機能を持っておるわけでございます。その場合に、関税引き下げるということ、それ自体は、これは消費者にとってプラスに働く方向のものでございますし、関税を引き上げるということは、企業にとって、企業保護という観点にプラスになるという方向に働くわけで、消費者にとりましてはマイナスの方向に働く種類のものでございます。  一方、なぜ租税が法定されなければならないかと申しますと、租税は、公権力をもって国民に対して強制的に賦課徴収の権限を持つものでございまして、法律の形式によりまして、国会の御意思によりまして決定されるべきであるという原則が租税法定主義であるわけでございますが、その租税法定主義の中にも、次のような例外が認められておるわけでございまして、これは条約によって租税がきめられる場合あるいは地方公共団体の租税につきまして、法律の範囲内に地方の条例によってきめられることが許されている場合、さらに法律で定めますところの一方法として、法律で命令その他の法形式にこれを例外的に委任する場合、すなわち関税定率法の十二条に委任されておるような形で、例外的に認められることはあり得るわけでございまして、こういったような租税法定主義のこのような例外が認められておる中に、まあ今回の弾力関税の拡充は、関税引き下げだけの権限でございまして、これは先ほど申しましたように、関税引き下げる場合には消費者にとってはこれは有利に働くわけでございまして、関税がこれは引き下げだけに限られていること、あるいは法律上これを発動する場合には、三つの要件が充足されなくてはならないということで明定をされておるわけでございまして、これが満足される場合に限って発動されること、さらには、期間を定めて実施することでございまして、したがって、減免されますところの期間が、緊急事態が継続されている間だけに限られていることというようなことの理由によりまして、租税法定主義には抵触をしないと、かように考えておるわけでございます。
  64. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、なぜ昨年からそういうお考えで弾力関税制度の拡充をやらなかったのかということが問題になります。いままでは、いまおっしゃったように米、もみ、大麦、小麦、これは暫定税率で無税になっているわけで、実際発動しているのは、豚肉と砂糖だけでございますが、いままではこの六品目に限って輸入関税を行政府が自由に減免できるようになっていたわけでございますが、他の食料品全般あるいは衣料などの生活必需物資に対してそれらの権限を付与しなかった理由は、私はいまの御答弁によりますと、結局大蔵当局のお考えだけで、そういういわゆるセクショナリズムによって拡充しなかったと、このように言われてもやむを得ないんじゃないかと、このように思いますが、これはいかがですか。
  65. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 従来認められておりましたところの主要食糧品目並びに豚肉、砂糖、こういったようなものを弾力関税制度の対象にしてまいりましたのは、これが非常に国民生活関連の深い物資であると同時に、たとえば主要食糧に関しましては食管の対象になっております関係上、あまりこの関税という面に関しては問題がないこと、それから豚肉と砂糖に関しましてはそれぞれ個別の法律がございまして、価格安定帯がしっかりしているという面があったことで、自動的に、いわゆる客観的な基準によって関税減免したり、あるいは関税をかけたりすることが可能なものであったからでございます。  今回その弾力関税制度を拡充をいたしまして、普通の食料品であるとか、あるいは衣料品その他国民生活関連の高い物資を対象に加えましたことは、先般国民生活緊急安定措置法が成立をいたしまして、物価問題が非常に世間の関心を引いてまいって、将来こういうような緊要時に、その関税を機動的に減免することによって、物価の安定に資することができればしあわせであると、こういうことから、今回この法律改正をお願いしておるわけでございます。
  66. 多田省吾

    ○多田省吾君 今回の改正による減税額見通しと、それから昭和四十九年度のいわゆる関税総額の見通し、この二点を具体的数字でお教え願いたいと思います。
  67. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御質問は、今回の改正における減税の見通しでござい事か。——今回改正された品目は、今年度は大体百億。私どもの計算によりますと、税額にいたしまして百億程度減税されるという計算になっておるわけでございます。関税の四十九年度におきまする関税収入の見通しといたしましては、合計六千百八十三億円ということになっております。
  68. 多田省吾

    ○多田省吾君 去る二月十六日から関税定率法十二条の弾力条項を発動されて、砂糖の輸入関税減免する措置をとったわけでございますが、これは、実際的にはもう糖価安定法は破産したということを示しておられるのか。それからもう一つは、原糖の輸入価格値上がりに対応して、原糖の平均輸入価格と糖価安定法で定める安定価格の上限価格の差額に相当する分について、六ヵ月間輸入関税減免するということになっておりますけれども、この九月まで六ヵ月間と定めた理由は何か、それからさらに、砂糖の海外相場が一段と高騰しておりますけれども、六ヵ月で安定する気配は私はないと思いますけれども、その見通しはどうなのか。この三点をこの砂糖に関してお尋ねしたいと思います。
  69. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、この砂糖の場合、糖価安定法によりまして、糖価安定法に基づく安定上限価格というものがございまして、安定上限価格と、それから平均輸入価格の差額を糖価安定事業団から補給をしておって、糖価の安定に資するという制度ができ上がっておるわけでございますが、昨年の後半以降国際相場が非常に上がってまいりまして、糖価安定事業団から払い出しますところの資金が非常に急増をいたしまして、御指摘のように、糖価安定事業団の資金が、大体二月中にはなくなってしまうという程度にまでなくなったわけでございます。したがいまして、関税定率法の十二条に基づきまして、糖価安定事業団からのその差額の支給にかわりまして、関税を安定上限価格と平均輸入価格の差額を減免または免税をするという政令を発動いたしたわけでございます。御指摘のように、最近のロンドン相場と申しますものは、非常に急騰をしておりまして、現在、ことしの場合、現砂糖年度の場合に、安定上限価格が五万四千円、それから関税が四万一千五百円ということで、九万五千五百円までの砂糖が入ってまいりますれば、糖価安定事業団の交付金の場合と、関税減免する場合と全く同じ効果があるわけでございまするが、これをこえた価格で日本に砂糖が入ってまいります場合には、関税をかりにまるまる減免をいたしましても、その砂糖の価格は高くならざるを得ないと、こういうような実態があるわけでございます。この減免制度を一応六ヵ月を限って発動いたしましたのは、砂糖年度がこの九月に終わるわけでございまして、大体六ヵ月たって新しい砂糖年度が始まる場合には、ただいま申し上げましたところの、安定上限価格の改定もその際には行なわれるわけでございますし、その際にはやはり減免をする額が違ってまいることになるわけでございまして、一応それをめどといたしまして、六カ月関税減免政令を発動をしたと、かようなことでございます。  また、世界的に砂糖が非常に急騰をしている現状に関しましては、私どものところにも、農林省なり外務省なりからいろいろな情報も入ってまいるわけでございますが、まあ一致して考えられますことは、まあ現在、これはうそかほんとうか私わかりませんけれども、まあアラブ諸国が投機的に砂糖を買い付けているからこんなに高くなっているのであるとか、あるいはオーストラリアの災害のために砂糖ができが悪いとかというような情報はございますけれども、まあ全般的に申しますると、どうも砂糖の、要するに生産は、消費を上回って生産をされるということはほぼ確実ではないかということで、糖価が、ロンドン相場が、今日のような水準にとどまるということはないのではないかというのが、専門家の方々の御意見のようでございます。まあ、どの程度にこれがとどまるかということに関しましては全く見当がつきませんし、相当高いところにとどまる可能性というものはあるかと思いますが、まあ、その場合に、その関税減免政令を発動する、いかに、いつまで発動するかどうかということに関しましては、その時点におきまして判断する以外にはないのではないかと、かように考えておるわけでございます。
  70. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまの仰せによりますと、現行の原糖の輸入価格免税点はトン当たり九万五千五百円と、しかし、海外の相場が非常に高騰しておりますから、二月十五日のロンドン相場でもトン当たり二百二十五ポンドといういわゆるばか高値でございます。これが最高相場であったキューバ紛争時の九十九ポンドの二倍以上にもなっておるわけでございます。この相場でもし輸入しますと、トン当たり十六万円にもなってしまいますから、九万五千五百円を六割以上も上回る高値となります。これが四月ごろから相次いで輸入される見通しだと聞いておりますけれども、これでは関税を全面的に免除してもこれは焼石に水でございます。そして、わが国の、そうなりますと、関税収入の二〇彩以上を占める一千億円以上の砂糖輸入関税がゼロになるおそれもありますけれども、この見通しをどのように考えておられますか。
  71. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 砂糖が世界的に非常に高騰をいたしまして、ロンドン相場が高くなっているということは、昨年の十二月の段階においても私ども情報として知っておったわけでございます。したがいまして、この砂糖の減免政令を発動しなくてはならない事態がくることが予測されましたので、予算を編成をいたします際に、大体上期におきまして、三百五十億円程度、この政令を発動することにより、砂糖関税の収入が減少するであろうということで、上期において三百五十億円程度の減収を予測をいたしまして、御承知のように、四十八年度の予算におきましては、大体一千七十億円の砂糖関税を見積っておったわけでございますが、四十九年度におきましては、砂糖の関税は、六百五十億円の収入を見込んでおるわけでございまして、一応この政令が発動される可能性予測をして予算も組んでおるわけでございます。ただし、御指摘のようにもしこのロンドン相場が非常に高騰する状態が続きまして、またこの新しい砂糖年度におきまして、いわゆる国内におきまする砂糖の安定上限価格というものの改正が行なわれなかった場合には、その減免をしなくてはならない金額が非常に大きくなりまして、その結果といたしまして、その砂糖関税が、予算よりも少なくなるということは十分にあり得ることではないかと、かように考えておるわけでございます。
  72. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は予算よりも少なくなることがあり得るというよりも、こういう高値が続きますとむしろゼロになるおそれもあるのじゃないか、このように思うわけです。  それからもう一つは、弾力関税の発動というのは、結局、国民生活安定のためでございますけれども、こういう高値が続きますと、減免措置によってもささえ切れないで、安定というよりも、むしろ砂糖の値上がりの可能性が強まると思いますけれども、この点はどう考えておられますか。
  73. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、現在のような高値が続きますると、関税減免をいたしましても、要するに入ってくる平均輸入価格が非常に急騰をいたすことになるわけでございまして、この点に関しましては、関税面におきましては、もうもはや何ら打つ手はないわけでございます。したがいまして、関税以外の手段によりましていかに対策をするかということは、これはむしろ主管省たる農林省の所管の問題になるわけでございまして、私どもといたしましては、まあ最大限関税をゼロにして、できるだけ海外の高値の国内への波及が少なくなるということを考えるのが、私ども立場ではないかと、かように考えておるわけでございます。
  74. 多田省吾

    ○多田省吾君 この前は、石油ショックによりまして、石油をいわゆる武器にされましたけれども商社関係情報では、さらに資源や食糧までも、特に、砂糖では、ブラジルが、紅茶ではインドとスリランカで、こういう産品を武器とする動きが出始めていると言われております。こういう石油危機の次は食糧危機だという観測を裏づげるような、砂糖や紅茶の生産国がそれぞれの産品を国際取引の武器にするような傾向があらわれる。このために消費国の間では放置すれば国際慣習が乱れて、物本位制になる危険性があると言われておりますけれども、このようなバーター取引、あるいは国際市場を経ないで、直接販売取引に移行する戦略について政府の見解を伺っておきたいと思います。
  75. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 現実に砂糖や紅茶が、石油のようにいわゆるバーターということで、武器になるかどうかは若干問題があろうかと思います。しかしながら、一般論から申しまして、産油国の石油戦略と申しますか、これが成功いたしましたことによって、開発途上国の場合におきましても、一次産品についても、これを国際取引の武器にするというような動きが、現実問題として起こってくる可能性はこれはあろうかと思います。ただ、石油以外の紅茶であるとか、あるいは砂糖であるとかいうようなものの場合には、石油ほど需要の弾力性が低い物品ではございませんし、また代替品もあるわけでございますから、それはそれなりにいろいろと対策の立てようがあろうかと思います。いずれにしても、食糧や原材料に関しまして、輸出国側が一方的にカルテルを結ぶと申しますか、そういったようなことで、バーター形式をやったり、あるいは二国間取引を進めたりということは、世界経済の健全な発展のためには私ども好ましくないと考えておるわけでございまして、先ほども申し上げましたいわゆる今年度から始まるところのガットにおける新国際ラウンドあるいはUNCTAD、OHCD、そういったような国際的な会議の場におきまして、この各種の一次産品が円滑な取引の徐々に安定的な増大に向かうという方向で、やはり世界各国が協調をして、これに対処をすべきではないかということで、こういうような輸出国側の一方的なカルテルの結成というようなことは、きわめて好ましくない動きであろうと、かように考えておるわけでございます。
  76. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、現在開発途上国に対する特恵関税適用品目数は、農水産物関係で六十九品目、工業品関係が五十一品目となっておりますけれども、今回の改正で、シードラック、まあ南方産の樹脂と聞いておりますが、そういった三品目の追加。それからIC、集積回路、それから半製品の帽体等六品目について特恵関税率引き下げを行なうことになっておりますけれども、開発途上国に対するセーフガードの発動はあり得るのかどうか。またあり得るとすれば、どのような品目なのか。また、新国際ラウンドの成否は、発展途上国の立場から見れば輸入数量制限、いわゆるKR問題を解決できるかいなかにかかっておりますけれども、この対策としての相手国との合意ができているのかどうかお尋ねしたいと思います。
  77. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) この開発途上国の問題は、非常にむずかしい問題でございまして、御承知のように先般のケネディラウンドのときには、開発途上国は自分たちは何も得るところがなかったと、要するに先進国のための会議であったということで、この新国際ラウンドの場合には、自分たちの、要するに開発途上国のためのラウンドでなくてはならないということで、先般の東京の場合にも、開発途上国に対しては、先進諸国は特別の配慮をしなくてはならないということが、数項目にわたって宣言の中にも述べられているわけでございます。したがいまして、開発途上国の輸入に対しまして、具体的に現実問題といたして、先進国側がセーフガード条項を発動をするということは、なかなかこれは現実問題としてはむずかしいことではないかと思います。しかしながら、御承知のようにその鉱工業産品に関しましては、シーリングワクが設けられておるわけでございまして、国内産業に影響がありますような場合には、特恵税率の適用を停止をすることはできまするし、日本立場から申せば、要するに先進国は先進国なりに、国益を守るために、その対策をとることはできるわけでございますが、これは具体的な品目に関しましていわゆる開発途上国に対する協調という問題と、国内産業保護という問題の調整をいかにするかということで、一般的にセーフガード条項を理論的には確かにセーフガード条項を発動しようと思ってできないわけではございませんけれども現実にこれを開発途上国に対して発動することは非常に困難であると、かように申さざるを得ない問題ではないかと思います。
  78. 多田省吾

    ○多田省吾君 時間もございませんので最後に御質問したいことは、この前の衆議院予算委員会で、いわゆる保税倉庫に大量の飼料、大豆、木材などが値上がりを待って退蔵されているということが追及されて問題になったわけでございますけれども、これに対して商社側では、すでにこれは売約済みだ、あるいは売却済みの品物だと反論しているわけでございます。で、そのとき大蔵大臣は、物資の所管省庁と連絡を密にして対処すると答弁されておりますけれども税関関係ではこの問題はどのように理解されているのか。またこれを具体的に調査したのかどうかですね。それから調査したならば、その結果はどうなったのか、お答え願いたいと思います。このような実態が、放置、野放しされていることは非常によくないと思いますけれども、これはどのようにお考えですか。
  79. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 先ほどお答えいたしましたように、一般的に申しますれば、税関は、保税地域内に置かれておりますところの在庫調査をやっておりまするし、まあ特に、長期に置かれているもの、すなわち通関後三ヵ月をこえても出ていかないようなものに関しましては、特別の搬出指導をやっておるわけでございます。たとえば、東京税関におきまして、主要——要するにおもな商社六社を含む大口の、要するにインポーター二十六社を呼びまして、それぞれの荷物に関しまして一体いかなる理由によってこの荷物が置かれているのかというような調査を行ないまして、納得のいかないものは、早く持ち出すように強く行政指導をいたしておるわけでございます。  衆議院予算委員会におきまして、この問題になりましたところの横浜税関におきますところの飼料、大豆、木材につきまして、まあ本年一月末現在の税関が調査をいたしました結果について御報告を申し上げますと、輸入貨物の総在庫量は一千七百五十一万九千トンでございまして、このうち飼料などのトウモロコシ、コウリャン、これが二十二万トン、大豆が十五万九千トン、それから丸太製材が四十万三千立方メートルになっております。  そのうち、いわゆる三ヵ月をこえて、長期に蔵置されておりますところの数量は、トウモロコシ、コウリャンに関しましては約三%に相当するところの八千トン、それから大豆が一六%に相当するところの二万六千トン、それから木材が約三〇%弱に当たりますところの十一万八千立方メートルとなっておりまして、これが税関が指導いたしました結果、保税地域から比較的円滑に搬出をされているわけでございますが、中にはなかなか運送事情であるとか、あるいは大豆のような場合に、地方のおとうふ屋さんなり、みそ屋さんなりが買われたものは、信州の山奥に持って帰っても置く場合がないんだと、要するにこれをしばらく税関というか、保税倉庫の中に置いておいてもらって、自分が使うに応じてこれを持って帰らないと、なかなか一気にこれを信州の山奥に持って帰っても、一気にはなかなか使えないんですと、こういうようなやむを得ない事情の方もあるわけでございまして、そういう場合には、やはり私はある程度長期に蔵置をされることをやはり認めてあげなくてはならない場合もあるわけでございまして、こういったようないろいろな理由を、精密に税関といたしましては関心を持って調査をいたしまして、今後誤りのないように対処をしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  80. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩をいたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時六分開会
  81. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) これより大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入れます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  82. 大蔵公雄

  83. 土屋義彦

  84. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 先ほど成瀬委員からの御質問に対しまして、昭和四十六年の密輸入数字が多いではないかという御指摘がございましたが、その五千七百四十三万一千円のうち、大口の関税通税事件並びに無許可輸入が、牛肉、馬肉、マトン等に関しましてございまして、一件で三千四百万円の関税通脱が行なわれたケースがございまして、それが加わっておりますので、この昭和四十六年の食料品に関しまするところの金額が多額になっているわけでございます。
  85. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 若干の点について伺いたいと思うんですけれども、今回の改正の中で、国民生活関連の深い物資及び最近の需給の逼迫している原材料を中心に云々とあるわけですけれども、毎度悩みの種は、そうやって関税率引き下げたものが、消費者価格にどう具体的にはね返るんだという問題なんですけれども、その議論に入る前に、関税率引き下げる、したがって、コストとしては安くつくということと、価格のきまり方というのを考えてみると、どういう市場構造を前提に置いて考えるかで議論はまるっきり違ってしまうんじゃないか。そこで、どういう市場を想定しておいでになるのか。言った意味は、自由市場原理をたてまえにして考えていかれるのか、何がしかの統制的なものを前提にお考えになっていくのか、この点、まず伺いたいと思います。
  86. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、私どもといたしましても、非常に関税率引き下げるということは、結局、国内産業、同じものをつくっておられる方たちにとりましては、それだけ競争が激しくなるということを意味するわけでございまして、ある程度の犠牲を国内生産業者に対してはしいるということになるわけでございます。したがいまして、関税が持ちます役割りといたしましては、国内消費者立場と、国内生産者の立場を調整するという機能を持っているわけでございまして、せっかく国内生産者にある程度の犠牲をこうむっていただいて、関税引き下げ消費者立場を考えた以上は、これが消費者価格にはね返ってこなくてはならないということは一番痛感をいたすところでございます。しかしながら、ここ一両年、せっかく関税引き下げましても、それがなかなか消費者価格にははね返ってくれませんで、逆に価格が上がっていくという現象が起こってくることは事実でございまして、この点、私どもが一番悩みといたしておるわけでございますが、私ども価格形成の要因といたしましては、先生も御承知のように、凡百の、おそらくいろいろな種類の要因が相かたまって価格が形成されていくわけでございますが、その中で一番大きい要因と申しますものは、需給関係であろうかと思います。したがいまして、この需給関係が価格形成の一番大きな要因であるとするならば、関税引き下げれば、それだけ輸入が増加をいたしまして、需給関係——供給がふえることによりまして、価格の押し下げ要因になっていることは、これは間違いない事実ではないかと思います。ところが、あまりにもほかの価格押し上げ要因が多いために、なかなか関税引き下げ分が価格の中にこれだけ反映したのであるということを説明するような価格の引き下げが行なわれないということも、これまた事実ではないかと思います。しかしながら、もし関税引き下げなかったならば、さらに押し上げ要因が一つふえるというような、あるいは押し下げ要因が一つ減るというようなことになることは間違いない事実でございまして、現実の問題といたしまして、関税がかなり多くの、要するに供給増加要因をなしておると思われますのは、やはり先般の一律二〇%引き下げをやりました以降、確かに日本における輸入が急増をしていると、ところが輸入が急増したのは、何も私ども関税引き下げただけで輸入が急増したものとは考えませんけれども、少なくとも関税引き下げということも、一つのやっぱり輸入急増のその原因であったことは事実ではないかと考えておるわけでございます。これを計数的にどのぐらいはね返ったかということを計算いたすわけにはまいりませんけれども、そういう要因をなしたわけでございますが、私どもは、価格形成の一番大きな要因は需給であるということで、物価の形成のいろんな要因と申しますものは、ものによってまたこれ違ってくると思います。特に、石油がこういうようなことになってまいりますると、またいままでと違った価格形成がなされる可能性は十分にあり得ると、新価格体系がやはりでき上がってこなくてはならないと考えておりまするが、そういったような場合、一々の物資に関しまして、いままでよりも以上きめこまかく関税のあり方というものに対して私ども勉強をして、これに対して対処してまいらなくてはならないと、関税の特色は、何と申しましても、レートの上げ下げよりは、要するに、個別の品目に対して、個別の税率がかかっているというところに関税の特色があるわけでございまして、なおさらのこと、要するに今後新価格体系の育成の際には、現在の関税のあり方に関しまして、きめこまかく勉強をしてまいらなくてはならないと、かように考えておるわけでございます。
  87. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの御説明の中で、需給関係で価格がきまる、これは確かに二通り最近の議論があるようです。需給の関係できまるという議論と、コストプラス適正利潤という議論といろいろあって、それぞれ別個な市場構造を前提にするわけですけれども、たてまえは需給関係で価格がきまってくるというのは、御意見のとおりだと思います。それを短絡して言えば、コストの上がり下がりというものは、直接価格形成に関係がない。遠い原因としていろいろのことが言えたとしても、直接の要因としては、コストの増減と価格形成というのは関係がない、そういう仕組みだとまず割り切って考えざるを得ないんじゃないかと思いますけれども、どうですか。
  88. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 確かに私どもこの自由経済社会のもとにおきましては、需給関係が要するに一番大きな要因ではあると思いますけれども、かりにその需給で価格がきまるといたしましても、その場合の供給量というものは、やはりコストプラス利潤によって左右をされまして、コストがかりに低減をいたしますれば、それだけ供給が増大すると、理論的に増大すると認められますので、原材料関税引き下げられますると、原材料コストが低減をすると、そうすると、正常なその価格形式のパターンのもとにおきましては、製品価格の安定にその原材料のコストの低減というものが、製品価格の形成にはね返ってこないはずはないわけでございまして、その意味におきまして、必ずしもその需給できまる、あるいはコストプラス利潤で価格がきまるなどと、両方の割り切った考え方というのはなかなかむずかしいわけでございまして、コストプラス利潤の、いわゆるコストが下がれば、それが供給の増加につながるはずであるという判断のもとに、私、需給が主たる要因であるという御説明をいたしたわけでございまして、まあ実態なかなか最近の価格形成の過程を見ますると、私どもも非常に悩む面があるわけでございますが、基本的には、私ただいま御説明をいたしましたような考え方のもとに、関税もやはり考えていくべきであると、かように考えておるわけでございます。
  89. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの御説明もう少し私の理解に従って簡潔にしていきますと、確かに関税引き下げると輸入量がふえる、そういう影響を持つことは確かだと思います。そこで、価格が需給関係できまるというものを、国際的な需給関係と国内の需給関係と分けて考えると、実は関税というのは国際的な需給関係にかかわりがある問題である、国内的な需給関係に直接の影響を持つものでない、こう整理をしてあまり大きな間違いはないんじゃないかと思います。  そこで、話を国内の価格という問題に限ってみると、関税が下がる、あるいは下げる、これと国内の価格というものを、国内という国境の中で、連動的に見るというのはやはり間違いではないか。国際的な需給関係では、おっしゃるとおりであるということでしょう。
  90. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のような面もあるかと思いますけれども、私、必ずしもそういうふうに割り切ることは非常にむずかしいと思いますのは、まあたとえば、例を——これ例が適切であるかどうかちょっとわかりませんが、たとえばLPGに関しまして、まあ八百八十円の関税がかかっている、それから石油化学向けのLPGが二百五十円の関税がかかっているという場合に、要するに八百八十円かかっておりますところのLPGの輸入というものは非常に行なわれませんで、二百五十円のLPGの輸入は非常に多量に輸入をされるという現象があるわけでございます。と申しますのは、やはり国内におきましてコストプラス利潤ということでかりに形成されているLPGの国内生産価格と、それから海外の価格との比較におきまして、まあ関税がちょうどいわゆるボーダーラインの役割りを果たしておりまして、これがかりにLPGの関税がゼロであるとするならば、要するに、海外だけの需給要因で品物がよけい入ってくるというばかりではございませんで、価格という観点から、国内の需給関係にも非常に大きく、これは海外からよけい入ってくるから、全体の供給量がふえるという意味におきまして、国内の需給関係にもそれが関接的た大きく影響を及ぼしてくるという面があろうかと思います。  したがいまして、その関税の持ちます役割りは、確かに御指摘のように、対外関係のほうが大きいことは、これはもう事実であろうかと思いますが、間接的には、国内の需給関係にも大きく影響を及ぼさないわけはないはずでございまして、国内関係の需給は捨象して考えてもよろしいということにはならないのではないかと、かように私考えるわけでございますけれども
  91. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 もう少し私伺いたいのですけれども、いまLPガスの例を出された。で、LPガスは、国内の原油精製過程で出てくるものと、LPガスとして輸入しているものと両方ある、まあこれが混合されて実際の市販価格になってくる、まあこういう流通の仕組みだと思います。この最終市販価格について標準価格がきまっておるのは、御案内のとおりでございます。  そこで、国内の輸入原油から精製したものはこれは別としまして、関税がかかってませんから、完成品で入れるものは関税がかかっている。したがって、これを混合して最終消費者価格になる段階では、コストという面だけで考えると割り安につく。したがって、この関税率が変われば標準価格も下に修正する必要があるということになりましょうか。
  92. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 現実問題として、現在ある標準価格の設定の基準と申しますものが、これは実は私どもも内部におきましていろいろ議論をするわけでございますが、必ずしもその標準価格と申しますものがコストプラス利潤と申しますか、そのコスト計算がなされまして設定されたものではないような感じがいたします。この一応市場価格を前提として、それが一つのメルクマールと申しますか、そういうメルクマールになって、なおかつ、たとえば昨年の十一月あたりの市場価格が現実に基準になって、標準価格というものが設定されているのではないかと思います。その結果現在LPGは、御案内のように、十キログラム当たり千三百円というLPGの価格が形成されておりますが、これがかりに関税が現在提案をいたしておりますように、八百八十円が五百五十円に下がりますると、十キログラム当たりになりますと、三円三十銭低減をされると、千三百円の中に関税部分が三円三十銭安くならなくてはならないと、こういう理論構成になろうかと思います。したがいまして、理論的にはまさしくそのとおりで、もし標準価格と申しますものがそういったコスト計算がなされまして、理論形成された価格であるとするならば、まさしくそのとおりになると思いますが、現実問題といたしまして千三百円というものが設定をされました標準価格と申しますものが、そういう過程をもって計算をされているという私は自信はないわけでございます。したがいまして、少なくともこれが押し上げ要因にはならなくて、千三百円というものが、かりに原油の価格が全然今日までこれ以上上がらないと、それから同じ価格の原油が入ってくるという前提で考えますれば、関税引き下げれば三円三十銭分だけはLPGが下がってしかるべきであって、さもなければ、中間でそれを扱うところの業者の手取りがふえてくるというようなことになることは、これは否定できない事実ではないかと、かように考えておるわけでございますが、これを下げれば、少なくとも原油価格が高騰しているときに、千三百円を改定をして、さらに高い標準価格を設定をしなくてはならないようなときには、一つの押し下げ要因、標準価格を低くきめる要因として、関税引き下げというものが役に切ってくることも、直接私、役に立つと言い切る自信が実はない点、非常に遺憾でございますけれども、そういう要因を少なくともなすものであるということは、強く私は経済企画庁なり通産省なりには、私ども立場から強くそういう申し入れをいたすつもりにしておりまするし、そうまたなってくれなくては、せっかく関税引き下げたことの意味が、国民生活に直接反映をされることにはならないと、かように考えておるわけでございます。
  93. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 たいへんその辺歯切れが悪くなり、また事実そうだと思うんです。いまの標準価格をどうきめたかといっても、よく内容がわからない。ある時期の市場価格を見ながら、腰だめできめた数字であることは事実でしょうから、そういった中に、コスト積み上げ的な発想からきた三円三十銭を押し込むということはたいへん抵抗があるということはおっしゃるとおりだと思うんです。ただ、どっちにしても、標準価格というもので消費者価格のほうは動いていくわけです。こちらのほうは感覚的、観念的に何となくそういった要素が価格引き下げ要因であるんだというだけで、こちらとは関係がない。しかも、実際の関税率引き下げに伴うコスト低減分というのは、いまのお話ですと三円三十銭。千三百円ときめておいて、三円三十銭なんて、刻みのこまかい修正ができるかと、こういった話も出るんだ。  そうしますと、実際この関税引き下げがきく効果というのは、従来国庫収入に入っていたものが、石油の流通過程に振りかわる、こういう効果を持つだけじゃないでしょうか。その点が一番気になる。先ほど来の議論もたいへん高い関税率がかかっていまして、大幅にごそっと落とすということになると、これは末端消費者価格までいやでもきいてまいります。国際的な需給関係の物の流れについてずいぶん大きな変更が出るかもしれない。それほど高い関税をかけているわけではないし、下げてきた。それをまたさらに若干いじるというのは、国内の消費者価格にいい影響を与えるのだというたてまえはありますけれども、実際は、従来の国庫収入が流通過程の収入に振りかわる、こういう経済効果しか持ち得ないのではないか。絶対そんなことはないというなら、どういうことで千三百円きめたにしても、マイナス三円三十銭というきめ方はせざるを得ないのじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
  94. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のような問題私、正直に申し上げてあると思います。したがいまして、標準価格を一体どういうきめ方をするかということによって、かなり違ってくるかと思いますが、ことに私は、標準価格をきめる必要があるような物品に対する関税はいかにあるべきかを考える場合には、今後私は、やはりいま先生がおっしゃいましたような、消費者価格に、標準価格の設定にはね返るような考え方のもとに、やっぱり関税のあり方も考えていかなければならないというふうに考えます。確かに先般、先ほど来申し上げておりましたところの関税率審議会の中におきましても、せっかく関税引き下げても、要するに、中間マージンを増大することにつながるだけにとどまるならば、非常にばかくさいので、むしろ国が財政収入として税金をいただいて、それを有効に使うほうがはるかにプラスになると、何も原油関税引き下げるぽかりが能ではないという意見も御指摘のようにございました。しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、要するに関税引き下げるということは、供給の増加につながるという働きがないわけではございません。したがいまして、どの程度供給にはね返るかということは、これは問題はございますし、また先ほど来も御質問にございましたけれども、OPEC諸国の中でも、先進諸国の関税なり消費税が非常に高いではないかという意向もございました。そういったような意味におきまして、やはりある程度先進——石油の受け入れ国側の立場といたしましても、姿勢を示すという必要もございますし、さらには消費者価格をできるだけ押し下げる方向に働くような措置政府として講ずる。若干の関税収入を犠牲にいたしましても、押し下げる方向に働くような施策を講ずることも必要であると、こういう判断のもとに、原油関税は今年度据え置いたわけでございますけれども、製品関税に関しましては、一応原油関税と平氏を合わせる程度にまで原油関税引き下げることは少なくともやるべきではないかということで、今回の提案になったわけでございます。
  95. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 先ほど審議会の中で出たという御意見、中間マージンがふえるだけではないかと、実は私もどう考えてもそうとしか思えないものですから、先ほど来お伺いしているのですけれども、確かに国際的な流通関係、需給関係の中で、関税障壁というのはどれくらいがよろしいのか。資源小国日本とすると、輸入関税は基本的にゼロであってもよろしいなんという話もほんとうは出てもおかしくないわけですね。そういう国際的な流通関係の中でどうあるべきかという議論は、私は、関税についてすべきだと思う。それと国内の個別物価対策という関連で、関税を議論するというのは感覚的にはわかる。実際には、中間マージンに国庫収入が振りかわるだけになる。なぜなら、ここで想定されている市場というのは、統制経済市場ではない。標準価格であろうと行政指導価格であろうと、ある限定された期間を持った臨時緊急避難的処置です。たてまえはあくまで自由流通経済という話になると、おっしゃるように関税を下げて、輸入品がふえます。国内の需給関係が変わりますということは、ベースとして賛成します。しかし、それはあくまでもそれだけである。しかも、現在フロートしておる状況から見たら、関税の上げ下げが国際的な流通関係でどのくらいの影響を持ち得るかといったら、あると主張するほうはたいへんつらい、無理な議論になる。その意味で、何もあえてこの際下げることの意味があったのだろうかとさえ思うのです。  そこで、じゃ流通部門、中間マージンに移ってしまうのじゃないかということをこうやって申し上げている一つの理由として、これは御判断を伺いたいのですけれども、所轄外だったらけっこうです。現在、いま総需要抑制策で締めております。資金の偏在ということが言われている。説明省略しますけれども、偏在している重要な部分は流通部門だという印象が私は非常に強い。そこにもつてきて、従来国庫収入だったものが、中間マージンに振りかわっていく、これは的確ないまの時点にかなった物価対策であり、政策なんだ。この点はいかがお考えですか。
  96. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 確かに先生の御指摘のような問題はあろうかと思います。また、今日まで少なくとも石油問題に関する限り、流通部門に相当資金が偏在していたことも事実であろうと思います。ただし、石油に関する限りは、御承知のような原油価格の猛烈な値上がり、値上げ、先方の値上げによりまして、最近私どものところでとっておりまするところの通関統計によりましても、要するに一バーレル当たり十ドルをこえた石油が入ってきておるわけでございます。したがいまして、これは私どもが非常に客観的に理論的に勉強をいたしてみましても、現在のLPGの場合にも、現在の千三百円という価格で——石油の副産物としてのLPGを考えます場合、千三百円ではどうしても赤字になるであろうという計算は成り立つわけでございます。したがいまして、これは私どうなるかわかりません、私どもそういう衝にございませんのでわかりませんが、少なくともずうっとこの現在の原油価格がかりに維持されてます限りにおきまして、LPGが現在の標準価格でそのまま長くとどまるということはなかなかむずかしいのが正直なところではないかと思います。その際に、やはり関税、少なくとも——これは確かに非常に金額はわずかでございます、わずかでございますけれども、その関税を、政府といたしましても、要するに業界に長い間その千三百円というもののLPGの価格をできるだけ一日でも長くこの価格へ据え置くためには、政府もある程度の犠牲を払うと申しまするか、関税収入がかりに若干減りましても、要するに国民生活のためには犠牲を払わなくてはならないという面もこれはございますし、さらにOPEC諸国が原油の値上げをやります際にも、原油関税日本の場合、私、先ほど御説明いたしましたように、西欧諸国に比べましては、決して高いとは考えておりませんけれども、幾らかでも要するに、石油あるいは石油製品にかかわる関税引き下げることによりまして、やはりそういったようなものの値上がりをできるだけ押えていくという方向に政府が姿勢を示すということそれ自体は、私、重要なことではないかと考えるわけでございまして、これが中間マージンが、あり得べかりし利益がもっと減るはずのところが、減らなくて済むというあるいは効果かもしれません。ですけれども、私は、効果が全くないということには、やっぱり理論的に関税引き下げということが海外からの供給の増加ということにつながってまいります限りにおいて、意味が全くないということはないんで、むしろ相当の効果があろうかと、かように考えるわけでございます。
  97. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 その辺はあまり繰り返して議論はいたしませんけれども石油のことだけを申し上げているわけじゃないのです。たとえば脱脂綿、ガーゼ、薬用石けん、みんな同じでして、これ脱脂綿にしても、ガーゼ、薬用石けん、それぞれ上がっている。これは生産側、供給側の要因で上がっているものが多いのです。そのときに、小売りマージンというのは変わってきているだろうか。全部調べたわけじゃありませんけれども、小売りマージンというのは、あんまり動かないのです。そうすると、扱い値が上がって率が変わらぬということは、額で見ますと、相当もうかるのです。たとえば一つの例をあげますと、これは、直接これと関係ないかもしれませんけれども、去年だけで飼料は三回値上がりしました。二月五日にたしかトン当たりまた一万千円か二千円上がった。この過程で、扱っている小売りの荒利率というものは一三から一四%。ほとんど動かない。需給がタイトだということがまず前提にあります。なおかつ、大体そのぐらいの荒利というものは商慣習でもあるのでしょうね。そうすると、中間マージンここの中でどうなのかというけれども、絶対額で見たら、相当たまっていると思っても間違いない。それを全部標準価格で縛れるかといったら、そのときには、一番最初にお伺いしたように、どういう市場を今後想定されますかということにならざるを得ない。だから、関税率というのは、これは私の意見ですけれども、国際的な需給関係、品物の流れを見ながらどうすべきかということをまず議論すべきであって、国内価格との影響については、結果として波及することもあるであろう、中間マージンにいくこともあり得るであろう、しかしこれは、その他の税制で救済をするというところに正しく割り切って立たないと議論がおかしくなる。ですから、ほんとうは、超過利潤云々といっても、大体下でこう切っていくわけですけれども、これは論外の処置である、ほんとうは少ない所得までおろしながら、その面で救済していくということで初めて、自由経済市場に見合った税制になるんじゃないかという気がします。意見ですからこれでとめます。  で、石油の点があるものですから、一つだけお伺いしておきたいと思うんですけども、なぜかといいますと、とにかく政府として、この需給逼迫時における姿勢は見せなくてはいかぬとおっしゃるんですけれども、あとの弾力関税制度との関連も含めてですけれども、たとえば弾力関税制度を考えてみて、おっしゃっている要件に一番ぴたっとはまっているものは何かというと原油なんです。ですから、この原油関税取ってしまうというのが姿勢を明らかに示すとしたら一番正しい。わかりますよ、これは石炭石油特会の関係があるからいじれない……。しかし、ほんとうはこれは国内の予算編成上の技術問題です。ほんとうに関税を論ずるなら、私は、何をさておいても原重油関税は撤廃に近いととろまで持っていくべきである、それが今回この改正案を提案された趣旨に一番かなうんじゃないかといまでも思っておりますけれども、この点について御見解を伺っておきたいと思います。
  98. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 原油関税のあり方に関しましては、まあ先ほど来何回か御説明をいたしましたので省略をさせていただきますけれども、要するに、石炭石油特会というものの存在と、原油関税というものはこれは政府といたしまして今年度の場合切り離して考えるわけにはまいらなかったことは事実でございます。したがいまして、今年度は原油関税に関しましては一キロリッター六百四十円ということが、そのまま石炭石油特会に繰り入れられておるわけでございまして、財源になっておるわけでございまして、これを途中でその関税引き下げてこの収入を減らすということはできなかったわけでございますが、この問題に関しましては、先ほど来御説明いたしましておるように、四十九年度中にエネルギー全体のあり方と同時に、エネルギーに対する関税のあり方というものを議論をいたしまして、明年度までにはあり方を考えるということを大臣も、大蔵委員会においても答弁をいたしておるところでございますから抜きますが、弾力関税の問題に関しましては、確かに、もし原油関税がほかのものにかかっておる関税と同様にいわゆる国内、要するに国産保護と申しますか、国内産業保護のための関税であるとするならば、当然その原油が、もともとおそらく原油関税がかかっていなかっただろうと思います。したがいまして、この原油関税だけは、これは財政関税としての特別な関税でございまして、これはほかの関税と同一の場で議論をすることのできない種類のものではないかと思います。したがいまして、原油関税に関しましては、この弾力関税制度のワク内に入れることはできないかと思いますが、ここでお願いをいたしますところの弾力関税というものは、もう非常に緊急避難的な場合を想定いたしておるわけでございまして、いま一体それでは頭の中で何を考えているのかというかりに御質問があったと仮定をいたしましても、私、この場でこれですということを申し上げることは非常にむずかしいかと思います。と申しますのは、日常生活品その他に関しましてはかなり関税が非常に低税率の関税になっているかあるいは無税になっているかということで、この対象になりますのは相当かなりの関税がかかっていて、かつ国民生活に直接深い密接の関連があるものであって、さらにこの法律でお願いをしているような三つの要因を充足させなくてはならないということでございますから、かりにもし紙なら紙と申しますものが、まあある一定時期に非常に高くなったと、したがって、これは緊急に発動——国会も開かれていなければ緊急に発動しなくてはならないというような時期にはあるいは紙あたりはもちろん対象になろうかと思います。しかしながら、私どもが考えておりますのは、緊急避難的なものであるということが最も重要な要因でございまして、かりにこれが三ヵ月ごとに政令による引き下げを継続をしてまいりまして、その状態が一年以上にわたって続くと、こういう場合には、当然その次の国会において、その紙なら紙そのものの、関税引き下げそれ自身をお願いをするということになろうかと考えているわけでございまして、これは、緊急避難的な、一時的に引き下げることによって輸入を急増をさせて、国内の物価引き下げに役立たしめるという趣旨が、この法律をお願いしたほんとうの目的でございまして、そういった意味におきまして、私は、この規定を設けていただきますことは、国民生活にとりましてプラスの方向に働くと、こういうふうに考えるわけでございます。
  99. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま大島紬、村山紬、しぼり、それから西陣など、伝統的工芸品産業が、韓国産の模造品、模倣品の輸入によって大きな打撃を受けつつあります。  現在参議院の商工委員会に、衆議院から送付されて付託されております伝統的工芸品産業振興法案がありますが、これは、わが党も参加した五党の共同提案によるものでありまして、もちろんこの法案には私もとより賛成でありますけれども、残念ながらこの法案には、外国からの模造品の流入から、伝統的工芸品産業を保護する明確な規定が盛られておりません。しかし、衆議院の採択にあたっての附帯決議の第七項を見てみますと、次のようなことが書かれております。「伝統的工芸品類似の外国製品の輸入及び販売に対しては、伝統的工芸品産業の存立がおびやかされることのないよう十分対処すること。」、こういうふうにうたわれております。  でまあ、これは伺うまでもないことだと思いますけれども政府は、当然この法及び附帯決議の趣旨を尊重すべきだと思いますけれども、どうでし工うか。
  100. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のとおりであろうかと思います。
  101. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、これから伺うことについてその趣旨で御答弁いただきたいと思いますが、まず最初に伺いたいことは、韓国産の紬、それからまたいわゆる韓国産の本場大島紬ですね、これの輸入量はいまどのくらいになっておりますか。
  102. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 韓国産の大島紬は通関統計上は絹織物の分類に入っているわけでございます。統計品目番号で申しますと六五三−一一九、それから税表番号で申しますと五〇・〇九の二、これが絹織物の分類でございますが、この分類の中に入っているわけでございまして、その絹織物の分類の中には、大島紬のほかにめいせんであるとか、しゅすであるとか羽二重、こういったようなものが含まれておるわけでございまして、大島紬だけの輸入実績と申しますものは把握できないわけでございます。しかしながら、私ども、確かに、先生御指摘の韓国産の大島紬に関しましては、いろいろな問題が昨年来生じておることは承知をいたしておりますので、税関におきまして、大島紬あるいは本場大島紬というような表示のある韓国産の大島紬に関しましては、昨年の四月以降その輸入実績を、各税関で手集計をいたしまして集計をいたしておるわけでございまして、それによりますると、四十八年の四月から四十九年の二月すなわち約——ちょうど十ヵ月間でございますが、四十八年の四月から四十九年の二月までの輸入許可分は件数で二百二十一件、数量で十五万八千六百六十一平方メートル、金額で五億七千八百八十六万九千円でございます。
  103. 渡辺武

    ○渡辺武君 十五万八千六百六十一平米といいますと、反にしたら何反くらいのもんですか。
  104. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 三万四千七百九十四反でございます。
  105. 渡辺武

    ○渡辺武君 通産省のほうにもお願いして調べていただいてございますが、通産省のほうの推計ではどのくらいになっておりますか。
  106. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 私どものところでもチェックはしておりますが、いまだはっきりした数字は得ておりませんが、大体三万近い数字じゃないかと、反で申しますと、三万反に近い数字じゃないかと考えております。
  107. 渡辺武

    ○渡辺武君 私が調査していただいて、あなたのほうからいただいたこの資料によりますと、四十八年、紬全体五万反のうち、これは輸入状況ですが、大島紬の。本場大島紬は一万五千反程度と推定されるという資料をいただいているんですよ。いまおっしゃったその三万四千七百九十四反というのは何に該当しますか。
  108. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 私のほうといたしましては、チェックはしておりますが、先ほど申しましたように、確定的な数字じゃなくて、特に、先生がお手持ちになっておられます資料は、それは先週私が大島のほうに出向きました際、現地の直接その仕事に携わっている方々等の御意見を伺ったときの線でございます。
  109. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、いまの三万幾らというのは、本場大島紬と言われるものですか、それとも大島紬全体ですか。どっちですか。
  110. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 私が申しましたのは、三万反というのは大島紬全体と考えられる点まで広げて、確定的じゃありませんが、一応のめどとしてはそういうふうに考えておるわけでございます。
  111. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうもはっきりしませんねえ。それじゃ、韓国での紬の生産状況ですね、これはどんなことになっておりますか。これは通産省大蔵省ともに伺いたいと思いますけれども
  112. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 韓国の生産状況に関しましては、きわめて把握しがたい状況にあるわけでございますが、私どもが得ました情報によりますと、紬全体としまして大体六万七千反ベースの出産を向こうはやっておるんじゃないかというふうに推定しております。
  113. 渡辺武

    ○渡辺武君 生産の態様はどんなふうな形になっていますか。
  114. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) その点は、先ほど申し上げましたように、生産能力等々を含めまして、十分わかりかねる点があるわけでございますが、私たちが得ました情報等だけをベースにしますと、事、大島紬に関しましては、糸から織物まで一貫した生産体制をとっているものというものも全然ないわけではないらしいと。ただし大かたは、日本からの原料糸を輸入して、それをもとにして織り、これを日本向けに輸出しておるというのがその態様のようでございます。
  115. 渡辺武

    ○渡辺武君 大蔵省のほうでは、この点わかりますか。
  116. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) いや、韓国の紬の状況に関しては大蔵省では全くわかりません。
  117. 渡辺武

    ○渡辺武君 ここに奄美大島紬協同組合が、ジェトロに頼んで、韓国の紬産業を、「大島紬の生産及び輸出状況」という調査してもらった報告書があるんです。この報告書を見てみますと、いま通産省からお話のあった点よりもかなり詳細な調査がなされているわけですね。やはり私は今度、法も、まあこの参議院でおそらく成立するだろうと思いますしね。やはり伝統的工芸品産業の今後の振興はもとよりですけれども、保護をするという見地からしましても、もうすでに村山紬などには大きな打撃を与えてきているわけですから、よくやっぱり相手方の実情なども正確につかんで、これに対処するというふうにしていただきたいと思うのですね。  で、若干このジェトロのこの報告の中身について簡単にまとめて申しますと、こういうことになっているのですよ。一九七三年の実績ですけれども、メーカーが三十社、それからそれにさらに下請が約五十余社ということで相当数は多いですね。で、特にその中の主要十四社ですね。これの織機の台数塗二千九百四十五台で、この十四社だけで五万二千八百八十反の大島紬を生産しているという状況です。特に、その中で、三慶物産それから漢陽絹織それから中原商社、この三社が特にまあいわゆる本場大島紬の生産ではトップに立っているメーカーだそうでありまして、この三社で本場大島紬が一万五千三百反、それから村山紬が八千三百反、その他二百反という状況になっておりまして、この三社に関する限りは、いわゆる本場大島紬、これに生産を集中しつつあるという状況だそうであります。  なお、ついでに申し上げておきたいと思いますが、いまお話のあった原料の問題でありますけれども、村山紬については、もう韓国内の紬生産業者がほとんど原料から製品まで一貫生産体制をとっているという状況だそうであります。ただこのいわゆる本場大島紬ですね。これについては先ほで申しました三慶物産と漢陽絹織、この二社はもうすでに原料の生産もできるようになっている、いわゆる一貫体制をとって、急速にこの生産を拡張しようという方向をとっているようでありますが、その他のこの紬業者では、まだ原料の生産までいってないと、原料を日本から輸入して、これを購入しているというような状況。もうかなり、したがって、原料を除けば、向こうの技術体制と生産体制というのはかなり整ってきつつあるということが、このジェトロの報告を見ますと十分にうかがえるわけです。これは非常に私は重要な問題だと思うのです。そういう状況のもとで、韓国の賃金は非常に安いといわれておりますけれども、その辺の状況は御存じでしょうか。
  118. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) まあ業種なり、その置かれている場所、その周辺等によって賃金の格差は相当バラエティーがあるんだろうと思いますが、私が伺っている範囲内では、事、織物関係では、大体賃金が三分の一以下というのが普通言われていることじゃないかと思います。
  119. 渡辺武

    ○渡辺武君 この奄美大島の人たちが調べたところによりますと、二十歳前後の若い労働者が月一万二、三千円の賃金だと、日本の円に直して、また十二時間労働で働いてくれるというような状況でしてね、賃金が三分の一、もしくは四分の一程度で、しかも、労働期間が非常に長いというような状況でつくっているわけですね。これはもう十分に向こうは競争力を持っているという状況になっていると思うんですが、さて、その韓国のこの紬業者に原料を供給しているものですね。それからまた、向こうから製品を買って、こちらへ輸入をしている人たち、これにはかなり大きな商社が加わっていると、中心になっているというふうにいわれておりますが、その辺は調べておられましょうか。
  120. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) その点は現地でもそういう話は聞きましたが、現地でさえも、その専門家のお方々がチェックしてもわからないという状況で、残念ながら私どもも全く同様な状況にございます。
  121. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは非常に残念ですね。私は奄美大島で伺った話では、三井物産ですね、丸紅、伊藤忠、蝶理と、こういうようなところが韓国に技術、原料などを輸出して、そしてつくらしていると。もちろん、それが表面に立ってやっているというのじゃなくて、ダミーなどを使ってやっているという話でありましたが、ジェトロのこの報告の中にも、三井物産と丸紅、これが中心になってやっているんだと。韓国の中に従来からかなり広範な市場網を持っておって、そしてやっているんだというようなことをはっきりとこう書いておるわけですね。だから、もうぼく大な資金と、そして機構を持っている大商社が、意識的にこういうことをやっているというような状況でありまして、これは私は日本の伝統工芸品産業にとっては、非常に重大な問題だろうというふうに考えているわけです。  で、もう一つ伺いたいのは、韓国政府が、この韓国における紬の生産について援助などをやっている、あるいはまた将来の発展について計画を持っているという状況だそうでありますけれども、その点についてはどんなふうに把握しておられますか。
  122. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 現在のところ承知しておりません。
  123. 渡辺武

    ○渡辺武君 このジェトロの報告の一番最後のほうに、「政府では、輸出産業支援施策の一環として金融および税制面での支援をしているので、これはその他産業部門外と同一である。」というのが第一にうたってありますが、一番最後のほうにこういうことが書いてあるんですね。「政府の資金支援内容は次のとおり」としまして、「融資金額、総建設所要資金の三〇%」それから「融資期間、三年間据置、五年間分割償還」「利子、年八%」ということで、金融税制面の支援をしながら、この大島紬の生産をかなり急速に振興しようということをやっているという報告が出ております。  それから特に、いま韓国が、和製織物振興五ヵ年計画というのをきめているということは御存じですか。その内容などもわかったらおっしゃっていただきたいと思います。
  124. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 一九七一年から向こう五年間の、向こうの政府の商工部が絹織物等に関する輸出の見通しというものを公表しておるということは承知しております。
  125. 渡辺武

    ○渡辺武君 その内容はわかりますか、この紬について。
  126. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 見通しによりますと、一九七三年では六百万ドルという数字をあげております。それから最終的には、大体四千五百万ドルぐらいというような目標をあげておるという状況でございます。
  127. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうもまことにはっきりしない状況ですね。現地の人たちの書いたものの中に、こういうことが書かれております。「韓国政府通産省にあたる商工部が昨年六月「和製織物の輸出目標と実績」という計画を発表していますが、七二年の実績に対し、七六年の目標は、絞りの場合は横ばいで五千万ドル(一五〇億円)、白生地、染呉服は二億ドル(六〇〇億円)ですが、紬は七二年の五百万ドル(一五億円)を四千五百万ドル(一三五億円)と九倍にしようというのです。紬には村山大島をふくんでいますが、村山を本場大島に切り替えているといいますから、本場大島はこの倍率以上のテンポで増産されているということであり、昨年は早くもこの目標を達成したといわれています。」と、こういうことで、相当紬の生産に重点を置いて、従来のしぼりとか白生地とかいうものの生産から、この紬のほうに着々と転換をはかっていくと。しかも、その中でも本場大島紬ですね、これの生産の増強テンポを大幅に引き上げていくというのが韓国政府の五ヵ年計画の主たる内容だというふうに考えることができると思うんです。  それで、すでに村山紬、結城紬、しぼり、これらの産地が、韓国産の産品の進出によって大きな被害を受けているということについてはもう申し上げるまでもないと思うんですけれども、本場大島紬ですね、これにやはり韓国産の紬の今後予想される急速なこの流入というものが、大きな打撃を与えるのじゃないかというふうに思われますけれども、その辺はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  128. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 現地でも、大島紬と称して日本に韓国から物が入ってくるというもののよってきたる原因はどこかという反省が、非常にいまなされております。で詰めますと、一にかかって、よそからそういう技術を導入するということは韓国側としては不可能なわけでございますから、根はやはり鹿児島を一円としますところから、原料の糸が出ておるということがきっかけになるわけです。それが回り回って大島紬の韓国からの輸入ということに相なるわけでございますので、地元といたしましても、特に本年に入ってからは、自粛運動というものが急速に進展しておりまして、先週私が参りましたときも、全く共同一致して、自分の首を締めるようなことがないように、というような状況にありますので、今後は、その原料糸の輸出ということは、従来のような状況には推移しないんではないかというふうに考えております。
  129. 渡辺武

    ○渡辺武君 現地に調べに行かれたそうで非常にけっこうなことだと思うんですけれども通産省からいただいた調査の「本場大島紬産地概況」、これを見てみましても、大島群島全体の主要産業、カンショ産業は年産額三十五億円だが、大島紬の年産額は百二十億円だと。そして、大島紬の群島内の地位は、事業所数では七九%を占め、従業員数では七四%を占めるという数字がはっきりと載っているわけですね。私も現地へ行って聞いてみましたが、とにかく全群島で一万五千人の人が紬の生産に当たっておって、就業人口の五人に一人、名瀬市では八千人、働き手の実に三人に一人が、これが紬産業に従事しておるという状況なんです。こういう状況のところへ、韓国産の紬が入ってくる、今後急増するという可能性があるわけですから、これは私はたいへんなことだと思うんですね。  問題は、確かにいまおっしゃいましたように、原料が向こうへいっている、それを押えるという点も一つの大きな問題だと思うんです。しかし、私は、向こうから入ってくるという点を水ぎわで防ぐということも非常に重要な問題じゃないかと思うんですね。  これから先、その点について幾つか伺いたいと思うんですけれども、こういう点について、つまり大島紬産業を外国の模造品の進出から守るという点で、通産省としてはどういうような政策を考えていらっしゃいますか。
  130. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 原産地等のまぎらわしい表示をするものに対しまして大蔵省とも協議をしておりまして、そして的確な処置をしているという状況にございます。
  131. 渡辺武

    ○渡辺武君 それじゃ、まずさっきおっしゃった原糸の輸出ですね、この問題について、確かにいまおっしゃいましたように、現地の人たちは、これはもう地元のメーカー、それから働いている人たちもとよりのことですが、地方自治体も含めて、この問題、何とか自主規制しようということで、全力をあげているというのが実情ですし、それから私ここに持っておりますけれども、名瀬市では大島紬査察調査員の設置に関する条例というのを市条例としてつくろうとしておるんです。これは、この査察調査員というのを名瀬市の観光商工課に置いて、そしてこの大島紬の生産、流通、販売価格の状況に関して情報を収集する。場合によっては立ち入り検査もやる。そして原料の糸などを韓国に売っているというような業者があれば、これに対してはその中止を勧告する。勧告をもし聞かなかった場合には、その名前を公表するというような内容を主たる点にして、いま条例をつくろうとしているわけですけれども、しかし、これだけで、私は、今後の大島紬を守っていけるかどうか非常に疑問なんです。やはり国としても適切な手を打つ必要があるんじゃないかというふうに考えているわけですけれども、その点について何かあなた方のほうで適切なお考えがありますか。
  132. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 先ほど御説明いたしましたように、よってきたるところは、大きくはその原料輸出というところに依存して、それが回り回ってということなわけでございますが、やはり置かれている国際的な環境等々も考えあわせますと、より基本的には、国内の産業体制そのものを、体質の問題を特に重点を置きまして、これを強化改善するということがより基本的だと考えております。ために、先ほど先生御指摘になられましたように、伝統工芸産業の振興法、それから奄美の振興法、それから私ども提案させていただきますような繊維構造に関する法律改正というものをてこにしまして、その体質の強化ということをはかっていきたい。これが基本的な姿勢だと思います。ただし、御指摘のように、並行的に、いま申されたように、輸出あるいは輸入問題というラインで、それなりにやはり対策も考えていかなくちゃいかぬということは念頭には置いてあるわけです。ただし、現在の輸入の状況が国内の生産等の体制から、御参考までに申し上げますと、奄美大島紬の生産規模というものは、ここずっと順調に推移しておりましたが、昨年、国内市況の転換がありまして、それから需要も一巡したということを背景にしまして、やや停滞しておりますものの、年間生産規模八十万反のラインは確保されているわけでございます。それに対しまして輸入の規模が、先ほど大蔵省のほうからもお話がありましたような数字の状況にありますので、今後の推移もよく検討しながら、その対策も考えていく必要があるんだろうというふうに考えている状況にあります。
  133. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、相当急を要すると思うんです、これは。  それで、先ほど申しましたように、商社がやっぱり一枚かんでこういうことをやらしている疑いが非常に強い。ジェトロの報告の中にも出ておりますが、通産省としてもこの辺しっかり調べて、そしてとにかくいま国会でも商社の活動というのは大きな問題になっておりますけれども、とにかく金もうけということだけで、日本の伝統的な工芸品産業が、いまは、先ほど言いましたように、もう大島郡全体として見れば非常に重要な産業なわけですけれども、それへ壊滅的な打撃を与えるおそれのあるようなことを平気でやるというようなことを、監督官庁としては私は許しておくわけにいかぬだろうと思いますけれども、その点については何か考えありますか。
  134. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 地元それ自体が、非常な決意を持って、自粛運動をやっておりますので、地元だけの手ではいかぬわけですから、関係する業界等にも、私のほうからそういう趣旨を伝え、協力を要請したいと、こういうふうに思います。
  135. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは非常にけっこうなことだと思いますが、しかし、いまの商社の性格からしますと、なかなか行政指導していただいても、うまくいかぬということが当然予想されるわけですね。私、一つ提案があるんですけれども輸出貿易管理令の第一条の第一項及び六項——特に六項は、国民経済の健全な発展をはかるために、輸出の制限をすることができるというような趣旨のことが書かれているわけですけれども、これを活用して、そして原糸の輸出制限、これを検討する必要があるんじゃないかと思いますけれども、その点どうでしょう。
  136. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 事柄は原料の輸出を規制するということで、国際的にもなかなか問題のあることだと思います。そのことは、また他品目への波及の問題がありますし、それから、より具体的に考えてみましても、国際協調の問題もあると思います。その辺を総じて見て慎重に検討して対処するべきではないかというふうに考えます。
  137. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは、とにかくいまも申しましたように大島紬産業の存立にかかわる危険な事態だと思うんです。さっきも言いましたけれども、韓国の今後の生産目標というのは、これは紬は、日本の円に直せば百三十五億円というようなところでしょう。しかも、七六年までにそれやり遂げようと、こういうことでしょう。昨年の生産実績が大体本場大島紬で約百五十億円といわれているわけですから、ほぼそれに拮抗するぐらいのものをここ数年のうちにつくって、日本輸出しようというような状況ですから、いまのうちに私は手を打たなければ、非常に危険だと思うんですよ。ですから、この点については、特に、伝統的工芸品産業の振興法、こ、れも近くもう参議院でも採択されるでしょうし、成立は十分予想されるわけですわな。特に先ほど申しましたように、衆議院の商工委員会の附帯決議があって、そして、存立を危うくするようなことについては十分対処するというような趣旨のことになっているわけですから、あなた方としても、この点は特にやっぱり本気で考えていただきたいと思うんですが、どうですか。
  138. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) まさに御指摘の気持ちを受けて私も現地に飛んだ次第であります。まあその点はしっかりやってみたいと思っております。
  139. 渡辺武

    ○渡辺武君 次に、今度は製品の輸入の問題ですけれども、特にこれを水ぎわで押えるということ、私非常に重要だと思うんです。それで、先ほどおっしゃった不当表示の問題ですけれども、とにかくこれもやらないよりは私はやってけっこうだと思うんです。しかし、やっぱり表示が多少違って、これは韓国産だということがもしはっきりわかったとしても、消費者立場からすれば、これは安いほうが何といったって買いやすいわけですから、だから、こういう低賃金を基礎にして、しかも、政府の援助などを受けて、急激に日本輸出をふやしてくるというような製品について、私は、水ぎわでこれを防ぎとめなければ、これは大島紬の今後の存立という点で非常に深刻な問題になってくるんじゃないかというふうに思うんです。  そこで、私のほうから提案ですけれども、いま紬の関税率は八%の暫定税率となっていると思いますけれども、これは昭和四十七年十一月のいわゆる円対策としてとられた対外経済関係を調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律、これに基づいて入形ということになっているかと思いますが、これを、いま申しましたような状態でありますから、もとの一〇%に戻したらどうかというふうに思いますけれどもどうでしょう。
  140. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、現在大島紬、八%になっているわけでございます。大島紬の場合、他の絹織物と区別することは非常にむずかしいものでございまして、したがって絹織物全体としてこれは対処せざるを得ないものだと思います。ただ絹織物全体として考えます場合に、その輸入状況——確かにわが国、昨年まで非常に需要の伸びがございまして、輸入がふえていることは事実でございますが、その数字は、昨年の六月をピークといたしまして、現在のところ絹織物全体といたしましては、減少しているわけでございまして、輸入の伸びが減少している時点におきまして、一律二〇%のカットの措置を停止をいたしまして、さらにもとに戻す、一〇%に戻すということは、なかなかこれはむずかしい問題ではないかと思います。この中で大島紬だけを一律二〇%カットを停止をしてあれするということはむずかしいことでございまして、絹織物全体として、列国に対しましても、いわゆる協定税率の提示がしてございます関係上、どうも大島紬だけを停止をするということは現実問題としてはむずかしいのではないかと、かように考えるわけでございます。
  141. 渡辺武

    ○渡辺武君 この法律が成立したときに、第九条の二を読みかえて、そして、読みかえ規定によりますと、こういうことになっていましょう。「外国における価格の低落その他予想されなかった事情の変化により、特定の種類の貨物の輸入が増加し、当該貨物の輸入が、これと同種の貨物その他用途が直接競合する貨物の生産に関する本邦の産業に相当な損害を与え、又は与えるおそれがある場合において、当該産業を保護するため緊急に必要があると認められるときは、」ということで、もとへ戻してもいいと、そういうことになっているわけですね。提案理由の説明のときにもたしか、そういう説明があったと思うのです。ですから、まさに、韓国産の大島紬の流入によって、大島紬産業が、いま言ったように、「相当な損害を与え、又は与えるおそれがある場合」という時点にいままさに来ているわけですね。ですから、これは暫定措置ですから当然これは一〇%に戻すと、大島紬だけですよ。ほかの絹織物産業についてもそういう事態があればまた当然それに含めなきゃならぬですが、私はいま特に大島紬のことを問題にして申し上げているんで、大島紬についてやはりこの点を検討すべきじゃないかと思いますけれども、どうですか。
  142. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、一律二〇%の措置は、私、ただいま先生がお読みになりましたような条件に該当している場合にはこれは当然停止をしてしかるべきものだと考えます。ただ大島紬の場合、先ほどちょっと申し上げましたように、大島紬だけの関税——税目上から申しますと、大島紬という税目があるわけではございませんで、絹織物としてあるわけでございまして、大島紬だけを絹織物の中から取り出しまして、大島紬だけの特別な税目を設けるということは、これはなかなか現実問題としてはむずかしい、したがいまして、停止をするのであれば、絹織物全体をつまり一律二〇%カットの停止をしなくてはならない。その場合に、たとえば絹織物全体の輸入が急増をして国内産業に相当の損害を与えると、たとえば、日本の国内生産が非常に落ち込んできてしまっているというような事象であるとか、絹織物全体として非常に輸入が急増しているかと申しますと、全体といたしましては昨年の六月をピークといたしまして徐々に減少をしてきていると、こういう現象があるわけでございまして、こういう観点から申しますと、一律二〇%のカットの措置を停止をするということは、なかなかむずかしい問題ではないかと考えますし、それからかりにいまの大島紬——どもこの大島紬に関しましては問題があることは十分承知しておりますので、あれですけれども、要するに二%——かりに八%のところを一〇%にいたして問題が解決する問題ではないかと思います。これは大体市販——百貨店で売り上げられておりますのもほぼ倍、半分値段が違うわけでございまして、税率の問題ではございませんが、かりに日本が一律二〇%停止をすることによって、外国は正式には文句を言ってこれる種類のものではございませんけれども、かりに一つの品目でも、こういう停止の措置をとりますると、その際にはその理由なり何なりというものを、相当ガットその他の場においては説明をする必要があるというようなこともございまして、なかなかこれは、関税をもってこの大島紬問題を対処するということはなかなか——いわゆる労多くして効が少ないと申しまするか、そういう種類の問題ではないかと、かように考えてるわけでございます。
  143. 渡辺武

    ○渡辺武君 私も、八%を一〇%に上げたくらいで、とても防げるものじゃないということは承知しております。承知しているけれども、最低限の処置として、このくらいのことはやったらどうだという趣旨で言っているんですよ。その点について重ねて御答弁いただきたい。  それから、時間もないので、あとの問題も若干含めますけれども関税率でむずかしいとおっしゃいましたのですけれども、先ほど申しましたように、韓国の低賃金、これはものすごいものでして、この労働条件がやっぱり韓国の製品の安い価格での流入ということの重要な条件になっているわけですけれども、この点について、関税定率法の第九条の不当廉売関税、この問題を検討したらどうかと思いますけれども、その点どうでしょうか。  それからもう一つ、ついでに伺いますけれども、さっき申しましたように、ジェトロの報告の中でも、韓国産紬が、韓国政府の援助を受けているということはもう明らかなことですね。したがって、関税定率法第八条の相殺関税、これもやはり伝統工芸品産業の防衛と振興という見地から、これは検討すべきだと思いますけれども、その点どうでしょうか。
  144. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 相殺関税あるいは不当廉売関税等に関しましては、これは先進国の場合なかなか、具体的にこれを発動をするということは、現実問題としては非常にむずかしい問題でございまして、特に、大島紬を例にとりました場合に、大島紬の日本におきます生産が非常に減少をしているとか、そういう具体的に数字をもって例示、損害をこうむっているということの実証を、その数字をもって実証をなし得るとか、そういったことがございませんと、不当廉売関税であるとか、あるいは相殺関税の発動というようなことは、非常にこれは、私は、現実には発動が、特に、発展途上国を相手に、先進国ががそういう関税を発動をするということはむずかしい問題がかかってきていると思います。特に、絹織物の場合に、いわゆる協定税率でございまして、各国に対しまして、列国に対して一〇%ということで譲許をしているものでございます。したがいまして、この一〇%をかりに上げますとすれば、必ずそのほかのもので代償を提供しなくてはならないということがあるわけでございまして、その意味におきまして、先ほど先生がおっしゃいました一律二〇%カットの八%を一〇%に引き上げるということは、これは事態の推移によりまして検討しなくてはならないことかと思いますけれども、特別に高い税率をこれに対して、日本日本立場としてこれに対してかけるということは、非常にこれはむずかしい問題であろうかと、かように考えるわけでございます。
  145. 渡辺武

    ○渡辺武君 たとえば村山紬の場合ですと、もう韓国産品の競争によって、東村山市ではもう三十一軒ぐらいの機屋さんしか残っていない。しかも、原料の糸をつくるだけであって、ほとんどもう主力は韓国と、そうして東北地方の賃金の安いところに移っちゃったというような状況なんですよ。ところが、大島郡の場合でいいますと、これは東京近郊の東村山市と違うのです。あそこではよそに移すことはできませんよ。おばあさんたちが自分の家の中でもって、細々とやっておるわけですからね。それらはピラミッド型になって、深く住民の生活の中に入り込んでいる。これが今後村山紬と同じような状態になる可能性がある、これは十分予想されますよ。やろうと思えば私はできると思う。いまおっしゃったようなことは、私も知らないわけじゃない。しかし、政府がこの産業を守っていこうという見地で取り組みさえすれば、私は、解決困難な問題じゃないと思う。通産省のほうの意見もその点伺いたいと思うのです。
  146. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 先ほどの御指摘にもありましたように、今後の韓国からの輸出がどの程度ほうとうに伸びでいくのだろうかということに関しましては、向こう側サイドの生産体制の進みぐあい、その辺もつぶさに調査してみる必要もあろうし、それから当方から出します原料糸の動きということの動きぐあいもまた確かめてみる必要があろうと思います。その辺を十分見ながら、御指摘のような規制問題をあわせて検討すべきだとは思います。ただし、それにしても、やはりより基本的には、現地の声も現にそうですが、自分の足元を固めろということこそ、この事態において大切なことではないかというように認識しております。
  147. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 大島紬、そのほか、要するに絹織物その他に関しまして、政府としていかに対処すべきかということの基本的な考え方に関しましては、主管省であるところの通産省の意見を十分に参酌をいたしまして、それに対して通産省ともよく協議をして、いかに関税として対処をするかは検討してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  148. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がだいぶ過ぎましたから、あとは簡単に一問、二問で終わりますけれども。とにかくいろいろ私としては検討して提案しているわけですけれども、最後にもう一つ、二つぜひあなた方に検討していただきたい問題があるのです。それは紬のいまの暫定税率ですね。これを繊維品の最高税率、たとえば二〇%から三〇%程度のところまで引き上げることも検討すべきではないだろうかと思うのですね。たとえば、亜麻織物及びラミー織物、これは三〇%ですね、税率が。メリヤス編物及びクロセ編物、これは二四・五%、ししゅうした下着が二一%、亜麻製またはラミー製のハンカチ、これが三〇%等々となっているわけですね。ししゅうした下着が二一%の税率で、紬が八%というのも、いかにもこれは納得できない問題だと思うんですね。だから、やっぱりこういう伝統的な工芸品の産業を守るという見地から、やはり税率を最高税率のところまで引き上げるということも当然これは考えなければならぬと思いますですね。それが一点。この点を伺いたい。  もう一つは、最後の手段として、以上の措置でも効果がない場合には、これは自由化品目から、輸入制限品目にこの紬を変えたらどうかというふうに思いますが、この二点お答えをいただきたい。
  149. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、大島紬を含みますところの絹織物に関しましては、ケネディラウンドの際に、それまで二〇%であったものを一〇%にいたしまして、この譲許を約束して、これはいわゆるガット税率でございます。したがいまして、この絹織物に対する一〇%というガット税率を変えますためには、関係各国と譲許修正のための交渉が必要になるわけでございます。開発途上国との貿易拡大の要請、開発途上国からは、要するに先進国が輸入を増大をしろという要請が一般的に非常に強いわけでございますし、また、新しい国際ラウンドの開始であるとか、そういったような内外の諸情勢を考えますと、一回日本が一〇%のガット税率を譲許をして、各国に提案いたしたものを、その段階におきましてこれを引き上げるということは、現実問題として非常に困難なことではないかと思います。  さらに、絹織物につきましては、御承知のように、繊維製品の中では絹織物だけが特恵の例外品目になっておるわけでございまして、特恵税率を適用をしていないと、発展途上国側からは、盛んにこれの特恵適用の要請もあるわけでございますが、これはできないということで日本はがんばっているような事情でございまして、絹織物に関する税率を引き上げるということは、なかなかこれは現実問題としてはむずかしいと、かように考えるわけでございます。
  150. 渡辺武

    ○渡辺武君 最後に一問。あなた方ね、既存のワク内でもってあれこれ考えるから、なかなかむずかしい、むずかしいという結論出ると思うんだ。しかし、やっぱりね、先ほど通産省のほうのお答えもありましたけれども、やっぱりこの産業攻守っていかなきゃならぬ。先進国だというけれども、しかし、あなた大島紬が先進国の産業とは言いがたいですよね。当然これは十分に保護していかなきゃならぬ、そういうものだと思うんです。通産省のその点についての御見解を承りたいと思います。
  151. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 国内の産業政策を基本として対処していくという考え方は、先刻申し上げたとおりでございまして、なお追加するに、それでもなお水ぎわでの対策はどうかということでございますが、それはやはり先ほど申しましたように、事態の推移というものをとらえまして、それに対応するようなかっこうで慎重に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  152. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 本法案に対する本日の質疑はこの程度といたします。     —————————————
  153. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案。  以上三法案を便宜一括して議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。福田大蔵大臣。
  154. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) ただいま議題となりました所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  初めに、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、昭和四十九年度の税制改正の一環といたしまして、最近における国民負担の状況にかんがみ、給与所得者の負担を大幅に軽減することを中心として所得税負担の適正化をはかるため、人的控除及び給与所得控除の引き上げ並びに税率の緩和により、初年度一兆四千五百億円にのぼる所得税減税を行なうことといたしておりますが、この空前の規模の所得税減税等を実施するため、ここにこの法律案提出いたした次第であります。  以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。  第一に、中小所得者の所得税負担を軽減し、あわせて税制の簡明化をはかるため、人的控除を引き上げて一律同額とすることといたしております。  すなわち、基礎控除及び配偶者控除をそれぞれ現行の二十一万円から二十四万円に引き上げるとともに、扶養控除を現行の十六万円から二十四万円に引き上げることといたしております。  第二に、給与所得者の所得税負担を大幅に軽減するため、給与所得控除について、現行の二〇%ないし五%の控除率を四〇%ないし一〇%の控除率に引き上げるとともに、これによる控除額が五十万円に満たない場合には一律五十万円を控除するという新しい定額控除を導入し、あわせて、収入が一定額に達すると、収入が幾らふえても控除額は増加しないという、いわゆる頭打ちの制度を廃止することといたしております。この結果、給与所得者の課税最低限は、人的控除の引き上げと相まって、独身者の場合では現行の四十五万円から七十七万円に、夫婦と子供二人の場合では現行の百十五万円から百七十万円にそれぞれ引き上げられることになります。  第三に、税率の緩和を行なうことといたしております。  すなわち、所得税の累進構造を緩和するため、課税所得現行二千万円以下の税率の適用所得階級区分を約一・五倍に拡大することといたしております。この結果所得税の負担は全体としてバランスのとれたものになると考えております。  第四に、福祉政策等の見地から障害者控除等の特別な人的控除につきましても、一般的な控除にあわせて引き上げを行なうことといたしております。  すなわち、障害者控除、老年者控除、寡婦控除及び勤労学生控除をそれぞれ現行の十三万円から十六万円に、特別障害者控除を現行の十九万円から二十四万円に引き上げるとともに、老人扶養控除を十九万円から二十八万円に引き上げることといたしております。  第五に、白色申告者の専従者控除について現行の二十万円を三十万円に引き上げることといたしております。  第六に、退職所得の特別控除額を、勤続年数二十年までは一年につき二十万円、勤続年数二十年超については一年につき四十万円に引き上げることといたしております。この結果、勤続年数三十五年の場合の退職所得の特別控除額は、現行の八百万円から一千万円に引き上げられることになります。  第七に、貯蓄の奨励をはかる見地から、少額貯蓄非課税制度の非課税限度額を現行の百五十万円から三百万円に引き上げるとともに、生命保険料控除及び損害保険料控除につきましてもその控除対象限度額を現行の二倍に引き上げることといたしております。  第八に、寄付金控除のいわゆる足切り限度額の引き下げを行なうほか、実情に応じきめこまかな改正を行なうことといたしております。  すなわち、寄付金控除についてのいわゆる足切り限度額は、現在、所得の三%か十万円のいずれか低い金額となっておりますが、これを一万円に引き下げることといたしているほか、配偶者控除及び扶養控除の適用要件である配偶者及び扶養親族の給与所得等にかかわる所得限度額を現行の十五万円から二十万円に引き上げるとともに、寡婦控除の適用要件として特定の者について定められている所得限度額を現行の百五十万円から三百万円に引き上げるなど実情に即した種々の措置を講ずることといたしております。  第九に、災害被害者の負担を軽減するため、所得税の減免を受けることができる災害被害者の所得限度額を現行の二倍に引き上げることといたしております。     —————————————  次に、法人税法の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  第一に、法人税の基本税率につきましては、現在、三五%に租税特別措置法により一・七五%が加算され三六・七五%となっておりますが、法人の税負担の適正化をはかる見地からこれを四〇%に引き上げることとしております。  第二に、中小法人に対する軽減税率につきましては、中小企業の現状にかんがみ特にこれを据え置くこととするとともに、その適用所得の範囲を現行の三百万円から大幅に引き上げ年七百万円、ただし最初の一年間は六百万円にすることといたしております。  第三に、同族会社については、各事業年度の所得のうち留保した金額が一定の控除額をこえる場合には、留保所得について法人税を課税いたしておりますが、この場合の定額控除を現行の年五百万円から年一千万円に引き上げることといたしております。  そのほか、中小企業の納税手続を簡素化するため、中間申告書提出を要しない税額の限度を五万円から十万円に引き上げる等所要の規定の整備をはかることといたしております。     —————————————  最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  第一は、法人税の付加税率の廃止と配当軽課税率の引き上げであります。  すなわち、法人税法改正により法人税の基本税率を四〇%に引き上げることに伴い、現行の基本税率三五%に一・七五%を加算することといたしている特別措置は、適用期限の到来を待って廃止するとともに、配当等に充てた所得に対する法人税率を三〇%、ただし最初の一年間は二八%に引き上げることといたしております。  第二は、自動車関係諸税の税率の引き上げであります。  すなわち、資源の節約、消費の抑制、道路財源の充実等の観点から、二年間の暫定措置として、揮発油税につきましては、一キロリッターにつき、現行の二万四千三百円を二万九千二百円に、地方道路税につきましては、同じく四千四百円を五玉二百円に、また、自動車重量税につきましては、営業用自動車を除きその税率を原則として現行の二倍にそれぞれ引き上げることといたしております。  第三は、既存の特別措置の整理合理化であります。  すなわち、耐火建築物等の割増償却制度並びに特定合併をした場合の割増償却制度及び登録免許税の税率軽減措置を廃止するとともに、株式売買損失準備金制度について、当期の繰り入れ限度額を引き下げることといたしております。  また、交際費の損金不算入制度につきまして、損金算入限度額の計算における資本金基準を千分の二・五から千分の一に引き下げて課税の強化をはかるほか、試験研究費の額が増加した場合の税額控除制度について、五〇%の税額控除の適用基準である試験研究費の増加率を年一二%から年一五先に改めることといたしております。  第四は、貯蓄の奨励、勤労者財産形成及び住宅対策に資するための措置であります。  すなわち、所得税法改正による少額貯蓄の非課税限度額の引き上げとあわせて少額国債の非課税限度額及び勤労者財産形成貯蓄の非課税限度額を三百万円及び五百万円にそれぞれ引き上げるとともに、確定申告を要しない配当所得の限度額を、現行一銘柄年五万円から年十万円に引き上げることといたしております。また、持ち家取得を目的とする勤労者財産形成貯蓄のうち積み立て期間七年以上のものにつきましての住宅貯蓄控除額を現行の六名、三万円から八%、四万円に引き上げ、さらに、住宅取得控除につきましても、その控除限度額を現行の二万円から三万円に引き上げる等の措置を講ずることといたしております。  第五は、公害対策に資するための措置であります。  すなわち、廃棄物再生利用設備について初年度三分の一の特別償却制度を創設するとともに、金属鉱業等の特定施設の使用の終了後における鉱害の防止に要する費用の支出に備えるため、金属鉱業等鉱害防止準備金制度を創設することといたしております。  第六は、中小企業対策に資するための措置であります。  すなわち、中小企業者の機械の特別償却制度等本年三月末に期限の到来する措置について、その適用期限を延長する等の措置を講ずることといたしており、また、伝統的工芸品産業の振興に関する法律の制定に伴い、伝統的工芸品産業振興準備金制度を創設することといたしております。  第七は、農林漁業対策としての措置であります。  すなわち、肉用牛の免税対象に、特定の農業協同組合等を通じて販売した乳用雄子牛の販売所得を加えるほか、農業生産法人が農地保有合理化のために農地等を譲渡する場合について、二百五十万円の特別控除を設けることとし、また、森林施業計画に基づき山林経営を行なう個人が山林を現物出資して法人成りする場合の山林所得の課税について、納期限の特例を設ける等の措置を講ずることといたしております。  第八は、宅地対策に資するための措置であります。  すなわち、五百万円の特別控除の適用対象に、住宅の建設または宅地の造成を目的とする事業の用に供するため、または公有地の拡大の推進に関する法律による協議に基づき、土地等が地方公共団体等に買い取られる場合等を加えることといたしております。  以上のほか、労働災害防止設備の特別償却制度の対象設備に特定の消防設備を加える等所要措置を講ずることといたしております。  以上、所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、その提案理由と内容の大要を申し上げました。  何とぞ御審議の上すみやかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。
  155. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 三法案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。
  156. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 資料要求を少しお願いしたい。  いま、ここにもございましたけれども、住宅を取得した場合、あるいは貯蓄をした場合に、年度末に調整をするわけですね。で、これは申告になりますんです。所得税は、納めるときは源泉で取られる。ところが、これは申告課税ですから税務署に申告に行くと、三ヵ年間ききますから、私の知っておるある地方の、過般税務署に参りましたら、ずらっと来ておるわけですね。源泉徴収をみんなやっておる人ばかりなんです。申告納税はあまりやったことのないような人が税務署に押しかけていって、書き方がようわからぬわけですよ。そこでどうやるんだと、税務署員にみんな一人一人こうやっておる。税額控除ですと二万円か三万円のことなんですが、ちょっと見て何千件か一税務署であるようなんですね。ですから、この件数が一体どのくらいあって、年々ふえていったら、全く税務署は、もう人手不足でやり切れぬということになっておる。ですから、この件数が全国でどのぐらいあって、税務署のおよそ数で割ってみたときに、私は、ちょっとこれじゃまずいから、何かこれは国税庁の仕事で、主税局のほうじゃないと言うても、税立法としちや、何か対策を講じなくちゃいかぬと、こう思っておりますから、そういうものに対する一体どのくらいの件数があるか、平均どのくらいの控除額になるのか、その辺のところの資料をひとついただきたいと思います。  それからもう一つは、これ、ちょっと私の計算資料で間違いかもしれませんけれども、今度の所得税の改正でやってまいりますと、給与所得そのものだけでもいきますと、弾性値がどうも三千——刻み方によって違うと言われればそれまでかもしれませんけれども、三千万までぐらいくると逆累進になってくるわけです。ちょっと私も少しおかしいような気がするけれども、どうもそうなる。そこで一度あなたのほうも、私はそういうばかなはずはないと思うんですけれども、それがもし——負担率は税額ですから、税率がふえればふえていくわけですが、弾性値がどうもおかしくなりますから、一度計算をしてもらいたい。計算してどんなふうになるのか、一度資料をお願いしたいと思っております。  それからあなたが、「東洋経済」に、高木主税局長が談話を出しておられまして、過般、東京都がやったそういうものに対して、あれは資料が間違っておる、取り方が間違っておる、大いにひとつ論争しようじゃないかというような、たいへん前向きな発言があって私もいいことだと思いますし、ですから、法人の逆累進の問題について、あなたが、あそこに出しておられる資料はいただいております。しかし、それじゃ東京都がやったようなそういうこまかいようなふうに分類して資料がいただけるかといったら、なかなか容易な話じゃないと——あなたがお出しになったあの資料をつくるのに半年以上もかかったと、こう言われるわけだな。だから、せっかくいいことがあって、議論しようじゃないかと言いながら、あの資料をつくるのに半年かかった、それじゃ今度こういうのを少し小刻みにしたものをもう少し出してもらえぬかといったら、それはまた半年以上かかるといったら、いつ論争するやらわからぬ。それを論争するときがのうなっちゃうと思うわけです。ですから、あなたもそういうことをお考えになっており、せっかくああいう一つの提案と申しますか、指摘がされておるわけですから、それにふさわしいあなたが反論をして、同じ共通の土俵で議論をしようじゃないかという、その土俵を提供をするという意味で、できるだけひとつ早急に、これはあなたもう、あしたあさって、二十九日までぐらいの間に論争しなけりゃもうこれでおしまいになっちゃうんだ。その間にできるだけのひとつ資料を出していただきたいということなんです。  以上です。
  157. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) いずれもできるだけやってみます。  そのうちで、第一の住宅取得控除のことで、税務署の窓口が非常に、何といいますか、大ぜい人が、納税者の方に集まっていただかなきゃならぬ、税務署のほうも手間どるという問題は、私どものほうも気がついておりました。今回の法律改正の機会に、所要の手続を直しまして、家を建てた翌年度の一年目だけは、やはり従来どおり恐縮ですが税務署へ来ていただく、しかし、いままでの制度ですと二年目、三年目も税務署へ来ていただかなきゃならぬことになりますので、三年分の方が全部税務署のほうにたまると、こういうことになりますから、その制度を改めまして、初年度だけ取得の、つまり翌年の三月十五日だけ一回来ていただいて、そうすれば税務署でそれがその条項に該当するかどうかがはっきりいたしますから、それからあとは勤務先のほうで処理できるように制度を変えたいというふうに考えております。一回だけはやはり税務署のほうへお出まし願いませんと、その住宅取得控除にいろいろ要件がございますものですから、その要件に該当したかどうかを勤務先の経理係の方に判定をしていただくというのがちょっと困難ではなかろうか。生命保険料控除の制度とか、いろいろ証明書を経理係へ提出すれば年末調整の際に整理をするという制度がございますから、できれば住宅取得の税額控除についても、そういう制度にしたほうが簡素化という点から言えば望ましいのでございますけれども、たとえば家の面積の認定の問題であるとかそれから建築費の、標準建築費までということになっておりますので、そういう認定の問題とかいら問題がどうしても残りますので、最初の一年だけはやはり税務署のほうへ出ていただいてそこで審査をする。しかし、もう二年目、三年目は自動的に、もう一ぺんそれで合格になっておるわけですから、二年目、三年目は税務署から一種の証明書のようなものを出しまして、それを勤務先へ出していただけば、勤務先で処理がつくというふうにして、ことしの三月十五日のような大ぜいの方においでいただかなければならぬような始末にはならぬようにいたしたい、そういうふうに改めたいと思っております。しかし、その件数が幾らかというようなことについては、どの程度正確な資料かわかりませんが、大体のアウトラインは、この三月十五日の状態はわかりませんが、少なくとも昨年の三月の十五日の状態はわかりますから、それを御提出いたしたいと思います。自余の点は御趣旨に沿うようにやってみます。
  158. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十四分散会