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1974-05-14 第72回国会 参議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十四日(火曜日)    午前十時二十二分開会     —————————————    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      青木 一男君     大谷藤之助君  五月十一日     辞任         補欠選任      竹内 藤男君     鬼丸 勝之君  五月十四日     辞任         補欠選任      安田 隆明君     桧垣徳太郎君      鬼丸 勝之君     竹内 藤男君      矢野  登君     柴立 芳文君      竹田 現照君     辻  一彦君     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         剱木 亨弘君     理 事                 佐田 一郎君                 竹内 藤男君                 大矢  正君                 藤井 恒男君     委 員                 植木 光教君                 小笠 公韶君                 柴立 芳文君                 桧垣徳太郎君                 阿具根 登君                 小野  明君                 竹田 現照君                 辻  一彦君                 林  虎雄君                 中尾 辰義君    政府委員        通商産業省生活        産業局長     橋本 利一君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    参考人        日本紡績協会委        員長       松本 良諄君        日本綿スフ織物        工業組合連合会        会長       寺田 忠次君        日本衣料縫製品        協会会長     近藤駒太郎君        日本繊維産業労        働組合連合会中        央執行委員長   小口 賢三君        日本絹人繊織物        工業会会長   土田哲治良君        日本タオル工業        組合連合会専務        理事       伊東 壮晃君        日本染色協会会        長        高岡 定吉君        全国繊維産業労        働組合同盟副書        記長       井上  甫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付) ○理事補欠選任の件     —————————————
  2. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十日、青木一男君が委員辞任され、その補欠として大谷藤之助君が選任されました。  また、去る十一日、竹内藤男君が委員辞任され、その補欠として鬼丸勝之君が選任されました。  また、本日、安田隆明君が委員辞任され、その補欠として桧垣徳太郎君が選任されました。     —————————————
  3. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、本案について参考人方々から御意見を聴取することといたします。  参考人として、お手元の名簿のとおり、午前と午後にわたり八名の方々に御出席を願っておりますが、まず、午前の参考人として、日本紡績協会委員長松本良諄君日本綿スフ織物工業組合連合会会長寺田忠次君、日本衣料縫製品協会会長近藤駒太郎君、日本繊維産業労働組合連合会中央執行委員長小口賢三君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、皆さまには御多用中のところ、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本日は、ただいま議題といたしました法案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りますとともに、また、広く当面の繊維に関する諸問題につきましても、御意見、御希望があればあわせてお聞かせいただき、今後の本案の審査の参考にいたしたいと存じておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。  なお、参考人方々には、まず順次それぞれ二十分程度の陳述をお願いし、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず松本参考人からお願いいたします。
  4. 松本良諄

    参考人松本良諄君) 日本紡績協会松本でございます。  本日は、本商工委員会先生方に新構造改善法並びに繊維産業現状と今後の問題につきまして意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを、深くお礼申し上げます。  本日は、新構造改善法に関する委員会でございますが、新しい構造改善施策をすみやかにスタートさせていただくようお願いいたしますとともに、施策を円滑にスタートさせるための原動力を与えるという意味からも、繊維業界が当面しております不況対策をあわせ実施していただきますよう、諸先生方の御高配とお力添えをお願いいたしたいと存じます。  まず、新構造改善法運用にあたってお願いいたしたいと存じます。  第一は、中小企業大手企業の協調こそが重要であるとの基本的認識に対する御理解をいただきたいのであります。  今次の新構造改善法による助成策が、中小零細企業育成強化に重点が置かれておりますことは、それがわが国繊維産業のウイークポイントであることから、全く当を得たものと考えております。しかしながら、これを強調し過ぎますと、とかく中小企業大手企業とを対立的に取り上げ、弱者と強者といった認識をもって取り扱う世間一般の風潮を誤まった方向に拡大するおそれがございます。  繊維産業構造は、御承知のように、原糸段階から最終製品加工段階まで、各生産流通段階企業の大小を問わず相互に補完し合いながら成り立っているものであります。特に、これから推進されようとする繊維産業知識集約化は、具体的に消費者指向の行動であり、その中心的機能コンバーター機能でありますから、大手役割りを活用しつつ中堅中小を問わず相互に提携し、協力し合いながら、コンバーター機能中心多様化高級化しつつある消費者需要にこたえてゆく必要がございます。この意味におきましても、大手企業中小企業相互自主性を尊重し、協調し合ってこそ真の構造改善知識集約化が推進されることを十分御理解いただくようお願い申し上げたいと存じます。  第二は、新構造改善法運用にあたって、中堅企業育成にも眼目を置いていただきたいことであります。  新構造改善助成策一つのねらいが、中小零細企業育成強化に置かれておるわけでありますが、しかし、今後、新しい繊維工業構造改善を推進するにあたっては、紡績業界に多いいわゆる中堅企業こそが真に重要な役割りを果たすものであり、その育成いかんわが国繊維産業知識集約化方向を左右するものであります。幸い、現行構造改善施策臨時繊維産業特別対策等繊維対策におきましては、諸先生方や御当局の御理解を得まして、中堅企業対象に加えられており、深く感謝いたしております。新構造改善法におきましても、同様の御理解と御高配を賜わりますよう特にお願いする次第であります。  第三は、取引改善問題についてであります。  これは、ただいま申し上げました知識集約化連係方式やあり方にも関連することでありますが、取引改善問題は、知識集約グループ形成にあたって特に中小零細企業立場に留意し、その対等性自主性を高めようとの目的で取り上げられたものであり、具体的には派遣店員返品問題等改善であると承知いたしております。  しかし、昨今の論議なり現実の動きの中には、正常な取引関係までをこの中に包含しようとする別の考えがあるように感ぜられます。業界取引関係には、合理的な経済原則に即したルールと、非経済的な関係に根ざしたルールとがございます。前者のルールについては、目先の動きにとらわれず維持していくべきであると考えておりますし、後者については、長年の慣行によるものでありますが、中で現状に照らして不当なものは是正されるべきであると考えております。また、これからの知識集約グループ形成の過程において、相互自主性尊重取引提携関係からおのずから新たなルールが生まれてくるものと思います。この意味において、取引改善問題につきましては、実態に即した合理的な形において運用され、正常な取引秩序まで混乱せしめることのないよう、特段の御配慮をお願いいたしたいと存じます。  次に、当面の不況対策についてこの際お願い申し上げたいのであります。  日本経済は、政府日銀金融引き締めを主軸とする総需要抑制策が依然継続される趣でありますが、私どもとしては、できるだけ早期にタイミングよき政策転換を期待いたしております。ところで、繊維産業は、今日すでにいち早く急激な市況悪化に直面し、深刻な状況に立ち至っておりますことは、すでに御高承いただいているとおりでございます。このまま放置いたしますと、必要にして十分な国民衣料をはじめ多様な繊維品供給しておりますわが国繊維産業は、その重要な役割りを果たし得ない事態に立ち至ることは明らかでございます。また、新しい構造改善も、スタート時においてその推進力を失ってしまうことになりかねないのでございます。  今日の事態に立ち至ったおもな原因は、一つには、今次金融引き締めが強力かつ長期にわたっているため、たださえ信用基盤の弱い繊維業界の体質と相乗的に働きまして極端な市況沈滞をもたらしたこと、二つには、過度各種繊維品集中輸入によって、大きな在庫圧迫を惹起したことにあると思います。つきましては、金融問題と輸入問題の二点につき先生方の御理解と御高配、御支援をお願いいたしたいと存じます。  まず、金融問題でありますが、三点申し述べたいと思います。  第一点は、原綿引き取り資金調達であります。  紡績業の場合は、御高承のとおり、コストの五〇ないし六〇%は輸入原綿代で占められておりますが、その価格は、昨年来、国際的な資源不足を背景とした食糧農産物との競合による供給不足や、世界的なインフレ人気等によって異常高を示し、二倍から二倍半近くに高騰しております。このため、現在の金融引き締め下にあっては、原綿引き取り資金調達にさえ困難を来たしておるのであります。私どもといたしましては、このような海外要因による増加資金については特段の御配慮をお願いいたしたく、現在、日銀等関係方面に、その資金の円滑な調達について陳情中でございます。つきましては、先生方の御理解と御支援を賜わるようお願い申し上げる次第であります。  第二点は、中小企業向け救済融資対象中堅企業も含めていただきたいことであります。  仄聞するところによりますと、現在の不況に対処するため、政府では中小企業関係金融機関をおもなパイプとして救済融資を行なっていただくようでありますが、繊維業界の中でも特に紡績業界に多いいわゆる中堅企業は、その対象とされていないようであります。しかし、さきに述べましたように、中堅企業はきわめて重要なポジションにございますので、ただいま申しました救済融資にあたっても、これを対象とするよう特段の御配慮をお願いいたしたいと存じます。  金融問題につきまして、最後にもう一つ付け加えさしていただきたいことは、商社問屋機能に関することでございます。  現在の総需要抑制策にあたりましては、商社金融が非常にきびしく規制されております。このため、正常な商社活動流通機能が著しく制約され、荷動きが極端に停滞しております。そして、これが結果的にメーカーにしわ寄せされた形となってメーカー在庫の増大、資金繰り悪化、投げものの発生といった悪循環を引き起こしております。したがって、現在の事態を正常化するためには、少なくとも正常な問屋機能は働かすような配慮が必要ではないかと思うのでございます。  最後に、輸入問題についてであります。これは究極するところ秩序ある繊維品輸入が行なわれるような環境づくりをお願いいたしたいということでございます。  昨四十八年の綿製品輸入は、糸量換算で約百一万こうりで四十七年の二倍、四十八年の国内綿糸生産量の三三%に達しております。これは、対米綿製品協定や毛・化合繊協定問題を持ち出したときの米国の輸入比率がせいぜい六ないし七%であったことから見ますれば、いかに大きなものであるかということが御理解いただけると思います。このような過度輸入による最大の被害者は、私ども生産者グループでございます。もちろん輸入業界にも、その意図したところが違った結果を生んだことへの反省はあると思われますが、その原因は、個々の輸入業者の見通しなり判断の結果が、業界全体として見た場合にはきわめて膨大な輸入量となって、結果として不幸な事態を招来したものと考えられます。  したがって、まず当面、これらの在庫品国内流通段階より排除するため、たとえば海外にさばくなりするための有効な措置が望まれるのであります。また、基本的な問題として、今後このような事態の再発を防止し、わが国繊維産業の健全な発展を期するための方策を官民一体となって緊急に確立することがあげられると思います。そのためには、まず輸入成約進捗状況や、通関実績が的確かつ早期に把握できる体制を整備すること、並びに関係業界でこれらの問題について協議できる場を設けることが必要かと存じます。これによって、輸入業界はもちろんのこと、生産者側においても情報をすみやかに把握し、めくら輸入による混乱を事前に防止し得るシステムを確立することができるものと思うのであります。もちろん、われわれは輸入を忌避するものでも、また現在の輸入機能や機構を否定するものではありません。ただ、秩序ある輸入によって関連業界の安定した成長国民への良質、多品種の繊維品供給を念願するものであります。これは単にメーカーサイドのみならず、輸入業界にとっても同じであろうと信ずるのでございます。  以上、種々申し上げましたが、新構造改善法を一日も早く成立さしていただき、業界安定成長下にふさわしい新しい繊維産業成長する機会とバイタリティーを与えていただくようお願い申し上げる次第でございます。  御清聴ありがとうございました。
  5. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうもありがとうございました。  次に、寺田参考人にお願いいたします。
  6. 寺田忠次

    参考人寺田忠次君) 私は、日本綿スフ織物工業組合連合会会長寺田忠次でございます。  諸先生方には、綿スフ織物業の振興に関しまして平素格別な御高配をいただいておりまして、まことにありがとうございます。また、きょうはこのような席にお呼びくださいまして、意見を述べる機会を与えてくださいましたことにつきまして、心から厚くお礼を申し上げます。  さて、きょうは、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案について意見を述べるようにとのことでございますので、同改正法案につきまして私の考えを申し上げるとともに、業界現状を御報告申し上げて、業界窮状打開に関しまして適切な御配慮をお願いいたしたい、かように考えるわけであります。  まず、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案でございますが、これはぜひとも原案どおり一日も早く国会を通過させ、成立さしてくださいますようにお願い申し上げる次第であります。  御高尚のように、私ども綿スフ織布業界は、現行特繊法に基づきまして、昭和四十二年度から構造改善事業実施してまいりました。この間に設備ビルドは総額約六百五十五億円余でありますが、大体当初の目的を達成し得たと考えております。特に織機ビルドにつきましては、当初普通織機自動織機が大部分を占めるものと考えられておりましたが、構造改善事業実施とともにきわめて優秀な超自動織機が紹介されました結果、構革ビルド織機の七〇%の台数まで超自動織機が導入されまして、大きな効果をあげております。また、準備機、その他の設備につきましても、きわめて優秀なものが開発されまして、織物生産形態を一変させるようになってまいりました。このことは、私ども布業界に大きな効果を及ぼしたばかりでなく、わが国繊維機械メーカーにも大きな影響を与えまして、先進諸国に比べましても、決して劣らない機械開発が行なわれるようになったわけであります。これもまた見のがすことのできない構造改善の大きな効果である、かように考えるわけであります。  このようにして、構造改善実施した企業機能は世界の先進国のレベルに達しまして、優秀な従業員の能力と相まって労働生産性を向上させ、賃金、諸物価の上昇にもかかわらず、生産コスト上昇を最低限に押さえまして、国民良質で比較的安価な製品供給し得たものと喜んでいる次第であります。これはひとえに諸先生方の格別な御配慮によるものと、心から感謝申し上げている次第であります。しかしながら、従来の構造改善は、設備自動化高速化を通じて労働生産性を高め、省力化を推進して国際競争力を強化することが主要な目標とされておりました関係上、設備近代化を進めるとともに、規模のメリットを追求する方針がとられまして、商品開発であるとか技術開発等需要高級化多様化に対応する面においていささか欠けておった点がありはしないか、かように考えるわけであります。  また、従来は織機自動化高速化によりまして供給過剰になることを防止するために、織機ビルドにあたりましては、上のせ廃棄と申しまして、一対一の旧織機廃棄することのほかに、一定比率の旧織機を上のせして廃棄することが義務づけられておったわけであります。しかしながら、これが小規模零細企業者設備ビルドに大きな障害となっていたことは事実でございます。今回の改正法におきましては、知識集約化によりまして消費の動向を的確に把握いたしまして、消費者が希望する多種多様な高付加価値製品開発していくとともに、生産加工、販売各部門の有機的な結合をはかりまして、流通近代化をはかっていくという方針をとっております。このために、知識集約化グループの結成を前提といたしまして助成することになっておりますが、上のせ廃棄条件がなくなりましたので、小規模企業方々にも利用しやすくなったわけであります。また、零細企業に対しましては、第九条におきまして、「特別の配慮をする」旨の一条が設けられております。で、本年度は特別な融資技術指導が行なわれることになっておりますので、零細企業の多い織布業界としては、まことにありがたいことに存じているわけであります。  なお、改正法律案は、第三条におきまして、取引改善に関する事項基本方針として通商産業大臣が示すことにしております。また、第八条においては、「基本指針に定める事項について指導及び助言を行う」ことになっておりますが、われわれ織布業者は、御承知のように、紡績会社化繊会社商社等の大企業の中間にありまして、常に上下から押しつけられましてサンドイッチの形になっております。そのために、長い間きわめて不合理な取引条件をしいられておったのであります。今後、この法律の規定によりまして適切な指導助言を得て、合理的な取引関係が確立されることができ得ますならば、われわれの経営の安定に大きな効果が得られるものと期待している次第であります。  以上のような事情で、われわれ織布業者は、本法の成立に大きな期待をかけておりますので、一日も早く本法案成立させてくださいますようにお願いする次第であります。  次に、われわれ業界の最近の状況を御説明いたしますとともに、緊急対策についてお願いを申し上げたいと、かように考えます。御高尚のこととは存じますが、当業界は、現在未曽有不況に直面しております。すでに操業停止状態にある工場も出ております。今回の不況は、昨年来のばく大な綿布輸入によって異常滞貨をかかえた状態にあって、総需要抑制政策が進められたために生じたものでありまして、相場が大幅に下がりましたにもかかわらず、需要が出てまいりません。発注が全く途絶している状態であります。われわれの仕事の性質上、注文いただきますのは、納期の二、三ヵ月前にいただかないと製織準備等の段取りができないのであります。  現在、四−六月の受注状況は、大体五〇%程度しかないのであります。このような状況で織布業者の採算も極度に悪化いたしまして、織り工賃は、昨年秋ごろに比べまして半分というのはいいほうでありまして、一般の場合は三分の一くらいにまで低下して、織物を織るごとに赤字が増大するという状況でございます。このような状況で、各産地では大幅な操業短縮を余儀なくされております。われわれ織布業者資金繰り破綻寸前にあります。何とか至急に抜本的な特別融資措置を講じていただくとともに、既往の融資につきましても償還猶予等措置をお認めいただきたい、こう考えるものであります。  次に、現在の織布業界不況重大原因であります無秩序な綿布輸入についてであります。  昨年の綿布輸入数量は、約七億平方メートルに達しました。一昨年に比べまして二倍半にもなります。この数量は、わが国綿布の総生産高の約三〇%でございます。対米輸出規制問題が生じたときのアメリカ輸入量は、アメリカの総生産高の五、六%であったと聞いております。これと比較いたしましても、昨年のわが国輸入がたいへんな数量であったということが御理解いただけると、かように考えます。私どもは、無秩序な輸入がわれわれ織布業界に及ぼす影響重大性にかんがみまして、昨年来輸入業界に対して秩序ある輸入実施を呼びかけ、協力を要請してまいりました。われわれは、加工貿易国であるわが国の実情から見まして、輸入の禁止とか輸入制限はむずかしいということであることもよく承知しております。しかしながら、せめて秩序ある輸入を行なって国内市況混乱を来たさないような措置をとっていただきたい、かように考えるわけであります。  以上、私の意見並びに御要望を申し上げました次第でありますが、最後に、本日このような機会を与えてくださったことに対して重ねてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
  7. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうもありがとうございました。  次に、近藤参考人にお願いいたます。
  8. 近藤駒太郎

    参考人近藤駒太郎君) 日本衣料縫製品協会近藤でございます。  本日、特定繊維工業構造改善参考人としてこの席に呼んでいただきましたことを、つつしんで御礼申し上げます。  私は、日本衣料縫製品協会会長であり、かつまた、日本輸出縫製品工業組合理事長でもございまして、輸出問題と国内問題の両方をかねておるのでございますが、先ほど来より松本紡協委員長並び寺田綿スフ会長からもお話がありましたとおりに、ほとんど同様の意見でございまして、いささか私ども立場の違っておる点を申し述べまして、先生方の御理解を得たいと存ずる次第でございます。と申し上げますのは、過去におきましての構造改善におきまして、やらなかった者が悪かったのか、あるいはまたそういう組織ができていなかったというものか、これはその時点においての考え方がいろいございましょうけれども、私は現在、社団法人日本衣料縫製品協会を昨年十二月の二十日に認可を得まして、日本アパレル産業工連が合同いたしまして今日に至ったのでございますけれども輸出縫製品工業組合以外の方々はほとんど過去の日米繊維協定に基づく融資救済、あるいはまた過去における構造改善等の恩典には一切浴してなかった。そこで、今回の特定構造改善の問題に対しまして一番期待をいたしておる業界でもございます。  と申し上げますのは、先ほど来より松本委員長並びに寺田さんからもお話がありましたけれども日本の化繊協会、紡績協会並びに綿スフ等の方々がいかほどに売られても——日本の産業が発展し、偉大なる先進国となった。その中で、過去においては綿布をかつて家庭で縫った。しかし、現代ではすべて縫製品として、衣料品として市場に売り出しておるのでございます。だからこそ、私ども考えといたしましては、日本の国内ででき得る一次産品、すなわち、綿織物あるいはニット関係におきまては、最小限八〇%ないし七五%のものをわれわれの手でもって安定した生産で、常識ある価格で一億国民に広く供給いたしたい。さもなければ三年、五年、十年先には第二の石油問題になるであろう。  先ほど来よりいろいろのお話がありましたけれども、最近、輸入の増大でわれわれもたいへんな混乱状態におちいっておるのございますけれども、もしわれわれの業界がこのままで推移すれば、二年、三年先にはほとんどのものが倒産するであろうと思います。その暁においては、もはや日本では、アパレル産業すなわち衣料製品はできないというようなことになれば、おのずから輸入品も高くなるであろう、かように考えておる次第でございます。ゆえにこそ、今回の繊維構造改善法律に対しましては、業界あげて何としてでも法案を通していただきまして、業界みずからの盛り上がる力で、ほんとうに官民一体となった構造改善に取り組んでいきたい、かように考えておる次第でございます。何とぞこの点を御理解願いまして、一日も早くこの法案を通していただくようにお願いする次第でございます。  次に、輸入の問題でございますが、先ほど来よりお二方からもお話がありましたとおりに、いささか重複になりますけれども、私どもの衣料品に関しましては、昨年の二月から四月にかけまして異常なる物価の高騰を見ましたので、政府の要請に基づきまして、特にワイシャツ、縫い糸等の調査に当たりました結果、当時四十七年を一〇〇とすれば四十八年度は一二〇ある、だから消費者方々にも、買い急ぎはしていただかなくとも安定供給をいたしますということを再三再四お願いもし、そのことは御理解を得たつもりでございますが、その後、輸入がどんどんふえまして、まさに一二〇どころじゃない、もう各埠頭に山積いたしております。なおかつ、その製品の内容たるや全く粗悪品が多うございまして、三日着て洗ったならば、しわが寄って着られないというような、まことに不親切な品物が入ってきておる。  先ほど来より、秩序ある輸入ということを私どもも再三再四申し上げてきました。また、下部組織八十七組合の方々に対しましても、この点に対して、わが国が過去の日米繊維交渉におけるあの状況考えてみても、いま輸入規制をやるということは適当ではないということで、私は会長といたしまして各業界に、それよりもむしろ秩序ある輸入に切りかえていただくように要請をするとともに、われわれは多品種小ロットの生産に変えていく、このような指導をしてまいったんでございますけれども、私がここで強調いたしたいことは、もはや私どもは労働集約産業型で、多数の労働者に働いておっていただいております。各地方に分けて分散いたしておりまして、その中には半農半工があり、また、関連いたしております下請企業、すなわちボタンつけ、あるいはまた糸切り等にも働いていただいておる労働者、あるいは家族を合わしたならば膨大な方々がこの衣料産業に従事していただいておる。そこで私は、もはや現在において繊維に関する限りは、もう自由化だ、自由貿易だというようなことは通らない。ですから、衣料産業に関する限りは、このまま放置しておけば近い将来輸入制限をしてもらわなければならないのではなかろうかと、このような私は考えを持っておるのでございます。  この点に対しましても、一昨年から始まりましたジュネーブにおきまして繊維多国間協定のあの作業に、終始一貫、十一回私は業界代表といたしまして出席いたしておるのでございますが、各国、すなわち先進国、後進国ともに繊維に関しては口角あわを飛ばして、一年数カ月にわたりあの会議を開催中でございまして、世界の繊維不況のために、昨年十二月二十日に多国間協定の締結を見ました。わが国におきましても、最も日米交渉の反対の急先鋒たる私が、何ゆえにこれを賛成いたしたかと申し上げますのは、世界から袋だたきになって孤児になるよりも、むしろ積極的にこの協定に参加をしたほうがいいという判断のもとに、私は多国間協定に賛成をいたした一人でございます。  ですから、繊維に関しては、自由貿易はナンセンスであると、先進国アメリカがたった五%の輸入一つ目的として、十数年来、LTA、すなわち綿製品の協定を強要し、かつまた、一九七一年十月十五日は、御承知のとおりに、日米繊維協定というものが発足いたしたのでございます。ですから、現状のような状況わが国が無制限に、無秩序に輸入を放置しておけば、われわれの業界は、壊滅はもう寸前に来ておるんでございます。ゆえにこそ、このようなことを申し上げてはなはだ恐縮でございますけれども、秩序ある輸入、秩序ある輸出というようなことばは、もうすでに時代おくれであると、何らかの形において、輸入制限をせざることを得ないというような状況下にあるということを、御理解していただきたいと思います。  次に、緊急融資の問題でございますが、これは寺田さんからも、あるいは松本委員長からもお話がありましたとおりに、私どもの衣料に関しましては、もうすべての衣料品が山積みになっておるということ、加えて、需要家におきましては、家庭必需品に追われておりますものですから、なかなか買ってくれない。今日ただいま四−六、すなわち衣料品の最盛期でございますけれども、ほとんど受注がない。工賃も問題ではなくて、もう発注をしていただけないというのが現状でございます。ゆえにこそ、この法案を通していただきまして、そして構造改善に取り組むまでに、つなぎ融資は絶対にしていただきたいと、さもなければ、われわれ中小零細企業がもう倒産の寸前まできておるということ、この点を御理解願いまして、緊急融資をぜひともひとつお願いする次第でございます。  なお、緊急融資に関しましては、中小零細企業のみならず、中堅企業も含めて何らかの融資、救済等を御勘案願いましたならば、われわれといたしましても、中小企業あるいは零細企業だけの問題点を取り上げるんじゃなくて、中堅企業が困ることは、すなわち中小あるいは零細企業が困るということになりますので、この点も含めてお願いする次第でございます。  たいへん御清聴ありがとうございました。
  9. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうもありがとうございました。  次に、小口参考人にお願いいたします。
  10. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 総評、繊維労連の委員長小口でございます。  私たちは平生、中小企業繊維の労働者の問題を扱っておる立場で産業政策を取り上げているわけですが、これから発言します内容も、どうして中小企業の労働者に長期の雇用保障をすることができるか、また、製造業一般の賃金、労働時間を保障することができるか、こういうことの立場から、常に、企業を取り巻く経済環境、あるいは業界、あるいは国全体の金融、財政政策等のいろいろな問題を考えて、そういう立場で、従来、繊維労連としては産業政策に取り組んでまいりました。そういう立場で、以下、この法律案に関して若干意見を述べたいと思います。  最初に、中小企業の労働者を代表して、このような発言の機会を与えてくださったことについて感謝したいと思います。  要点をお手元に書面で提出しましたので、それを見ながら説明さしていただきたいと思います。  最初に、この法律案は、特定繊維工業構造改善臨時措置法という名前を、繊維工業構造改善臨時措置法というふうに名前がちょっと変わるだけのように見ますが、法律には、それぞれ負ってきておる歴史がございます。そういう意味で、この法律案が今国会に提案されています歴史的な意義といいますか、環境というものについて、繊維政策の上でこの法律はどのような意味合いを持っているのかということについて、私どもの見解を申し述べたいと思うんです。  第一に、現行法の特定繊維工業構造改善臨時措置法というのは、一九六六年から六八年段階の、高度経済成長政策の目標でありました国際競争力の強化というものを政策の基本にしてまいりました。したがって、政策手段も、省力化高速化等、機械設備投資が施策中心でした。これらの問題が議論されました背景は、一つには綿製品協定、俗にLTAと言っていますが、これらの問題を含めて新しく日本繊維産業を、体制的に、開発途上国との関係及び先進国関係を含めて、このように生産力自身の強化という点に中心があったろうかと思うんです。  この法律ができましたその後の環境は、第一に、一九七一年八月のニクソン・ショックがあり、続いて七二年十二月の為替レートの変更があり、さらに七三年二月の変動相場制があり、加えて、日米間の繊維貿易協定の覚え書きが調印されました。これが法律実施過程において、日本繊維産業を取り巻く国際的、国内的経済環境を根本的に変えました。したがって、本法律はこのような国際的、国内的な経済環境の変化に対応して、今後の日本繊維産業をどうするかという部分の立場から、いろいろな施策が講じられておるという点が、まず特徴でございます。  しかし、この期間中に、業界内部においても大きな変化がありまして、とりわけ外貨準備が百九十億ドルにも達したというのを機会に、東レ、帝人、東洋紡、鐘紡等の独占企業は、海外に対して資本輸出を一そう拡大してきましたし、また、極東三国を中心繊維製品輸入が急増してまいりました。また、国内の消費需要にささえられて、二次加工のニット化や既成服化が進行しました。したがって、経済を取り巻く環境と、繊維産業自身の内部における各企業の対応、また、消費市場の変化、こういうものを追認する形で、特定繊維工業を、繊維工業全般に広めた構造改善政策をこの法律はねらっておるという点で、歴史的な意義を持っておると思うんです。  で、同時に、趣旨説明ではあまり強調しておりませんけれども、従来、繊維産業は、日本の資本主義の発展とともに、典型的な輸出産業できましたけれども、この法案の基礎には、日米繊維協定影響もこれあり、客観的に、また日本の経済の重化学工業等もあって、日本繊維産業というのは、今後は内需消費者型に指向していく、そういう大きな政策転換というものも背景に踏んまえております。これらがこの法律の客観的な条件として私たちに与えられているわけです。  それでは、従来やってきた措置については、たいへんうまくいったのかと言いますと、先ほど業界方々の御意見もいろいろありましたけれども、私たち自身は、よくいった点もないわけではないけれども、かなり問題を含んでおるという点を持っております。  といいますのは、第一には、この法律現行法が省力化高速化というものを軸として出発した。また同時に、過剰設備廃棄というのが重要な施策中心であったんですけれども法律が議論されている段階と、法が制定された段階で経済環境が変わりまして、初期の段階では、高度成長によって国内消費需要が拡大したのと、輸出の増加が進んだために、むしろ過剰設備廃棄は遅々として進みませんで、かえってビルドのほうが非常に進んだために、合繊紡機、編み立て機、レース編み機、仮撚り機、これらの設備が進行しました。そして、スクラップ・アンド・ビルドというのが逆にビルド・アンド・ビルドに変わったことも事実でございます。  加えて、国際通貨の変動によって、有利な交易条件を得た極東三国、あるいはパキスタン等の繊維製品がどんどん日本の市場になだれ込んできて、総合商社もこれを利用したために、過剰投資と急激な繊維製品輸入が今日の過剰生産原因になりました。この点は、当初の政策目的と事志と違って、実態の上でこういう現状になったという点は、これは事実でございます。またこのことは、政策自体が現状に対して変化が激しかったこともありますけれども、むしろ現状追いかけ、追いかけというような部分もあったかと私たちは思っております。  二番目は、日米間繊維貿易覚え書き協定の調印とか、為替レートの変更が輸出環境を変えたわけですが、このことが、第一に述べましたようなムードを冷やすのに一定の作用がありました。しかし同時に、冷やす作用が急激であったために、それがまた同時に、国内の繊維産業における混乱を一そう拡大したという増幅作用もございました。  特に、競争力の強化を目ざしたスケールメリット政策も、実際には消費者自体に価格の低下というものとしてつながるんではなくて、結果的に国際的に原糸価格が値上がりして帳消しになったり、綿糸、綿製品輸入の増大となって、必ずしも生産性の向上、あるいは省力化が行なわれたことが、業界の体質の強化に十分なつながりにはなっておりません。かえって、スクラップ政策がやみ織機の増大となったりしました。  そして、国内の織物産地では、確かに寺田さんがお話しになりましたように、木機が機械織機に変わったり、準備機械の点で多くの変化がありましたことは事実です。しかし、これは融資でございますので、現在繊維を取り巻く経済環境の変化もあって、中小零細企業織物業者は、一台当たり三十万円から四十万円の借金が残って、その結果、景気の変動のために何かと政府救済融資を求めるということが、もう慢性化することになってまいりました。この点は国会で御審議いただきましたので、諸先生方御存じのように、為替レートの変更のときも、日米繊維協定のときも、何かについて繊維産業救済融資救済融資というようなことが加わっておるわけでございます。このことは、救済融資が悪いということを言うのではなくて、実は構造改善による体質の強化をねらいながら、施策が必ずしも万全でなかったことの結果として、このような問題が次から次と累積してきているということを私たちは見ておるわけでございます。  それでは、この法案の基礎になる考え方についてどうかという点について次に触れますと、最初に申し上げましたような歴史的な役割りとねらいを、政策構想をもって御審議いただいているこの法案でございますけれども、私どもは当初、中小零細の立場から、最初から実は原糸コストの切り下げにあまり力を入れることよりかは、付加価値生産性の向上と高級二次製品の輸出というものにむしろ基本を置くべきではないか。そういう意味では、あまりスケールメリットというようなことについて力を入れることは、それは業者自身の自主努力はとにかくとしましても、中心的にむしろ中小近代化に力を入れたらどうか。それから日本繊維産業の歴史的な発展を見ますと、二次加工段階、縫製企業段階についての近代化が非常におくれておりましたので、私たちは、むしろ現行法が制定される段階でも、すでにそこの部分にこそ、染色整理業、織布業、縫製業、メリヤス業に対してこそ体制金融措置を講じたらどうか。また、流通コストの切り下げについてのもっと抜本的な指導をすべきではないかということを繰り返してまいりました。  幸い、その後の状況変化に対して、特定紡績業と特定織布業のほかにメリヤス製造業、染色業等に適用拡大してまいりましたし、また、今回さらに縫製業、撚糸加工、サイジング、流通部門に適用拡大した。こういうことは一歩前進だと私たちも評価したいと思うわけです。  しかし、この法律の基礎になっております考え方は、通産省繊維工業審議会と産業構造審議会による答申「七〇年代の繊維産業政策のあり方」に具体的に述べられておりますけれども、その中心的なビジョンとして、国際分業の確立、知識集約産業化というのが触れられております。  しかしこれらのことが、私たちとして今回の法案、具体的な施策、予算化その他を拝見しますと、第一点は、先ほど申しましたような繊維産業の実態でありながら、第一には原料と繊維製品の無秩序な輸入が最も多くの混乱と滞貨の原因になっていながら、この輸入秩序の確立についての政策が明確でない。  それから二番目としては、知識集約型産業への転換ということばはありますが、具体的にそれは生産流通過程で何をどのように方向づけするのかという点についての内容が不明確だと思います。不明確だけではなくて、むしろまた私たちは、次のような危惧を持っておるものです。  というのは、後ほど述べますように、日本繊維産業は、原糸大手メーカーと総合商社という強大な集中力を持った力と、そのすそ野に繊維加工アパレル産業中小零細企業が結合しておるわけですが、現状のような力関係で、異業種間の協業とか、新商品の開発というのが進んだ場合、はたしてこのようなことが政策的に進められることは、従来でも問題があった系列支配論理というものを強めるのではないか。また、せっかく付加価値を高めても、はたしてその付加価値を高めたことによる所得の分配が、製品開発した実際の縫製業なり繊維加工業に適正に配分されるかどうかということの危惧を持っています。また、国と地方自治体による構造改善資金融資保証というのが、二・六%というような非常に安い金利でつくことになっておりまして、業者の方々から見れば、これはいいことには違いないと思いますけれども、また立場を変えて労働者や国民立場から考えてみますと、本来的には、これは原糸メーカーと総合商社自身が、自分の加工系列企業の育成のため当然払うべき資本負担の肩がわりを、国家の名においてやっておるのではないか、こういう疑問も持たざるを得ない感じがいたします。こういうような点を、私たちは政策の根本的な考え方の時点で実は持っておるのでございます。  それでは、この法律についてどういうふうに私たちは考えるかと言いますと、いずれにしましても、この法律について幾つかの批判を持ちながらこの法律は通過していただいて、今後の運営について、次のような点についてぜひ力を入れていただきたい。  第一点は、国際分業論の考え方の中にだんだん日本繊維産業は縮小していく、縮小再生産に持っていこうという配慮が一部にある気がいたします。これについては私たちは反対したいと思います。やはり、それぞれの国の衣服については民族性がありまして、また、それぞれの国で原料資源というものについても地域性がございます。したがって、歴史的に日本繊維産業が輸出に負っておった役割りは相対的に小さくはなったとはいっても、やはり政府は、一貫して繊維原料の安定供給消費者需要にこたえる繊維産業の振興、強化というものをはかる義務があろうかと思います。しかし、国がめんどうを見るからといって、資本主義体制下にあって企業責任をあいまいにする、また、国が基本方針を示すからといって、あまり自由企業に対する統制的な措置に流れるというようなことについても賛成しません。そういう原則的な立場に立って、以下四点について私たちは特に力を入れていただきたいということを希望いたします。  第一点は、加工賃の適正化と取引契約の近代化でございます。  私たちが労働問題で接します下請加工業者は異口同音に、繊維業界にあっては、製品の値段をきめる力のある者は原糸メーカーとデパート、大型スーパーだけだ、その間で適当に織り工賃、染色仕上げ加工賃、編み立て、縫製工賃が配分されるだけで、われわれにとっては加工原価などは全く問題にされてないと言っています。実際に繊維加工業とアパレル産業の下請企業商品開発やファッション性を高めても、実際はそれが自分たちの身につかないで、結果的にメーカーのラベルあるいはデパートのラベルで販売され、そこにおいて独占利潤がまかり通っておるわけです。こういう状態で、現状において下請加工業者の大半はまじめに仕事をやっても、自分たちは平均利潤を得られないばかりではなくて、とにかく仕事の割り当てをもらって、ぐるぐる自転車操業をやっているだけで、全然、自分たち自身が企業自主性というものを高めるというような力が加工賃の部分で許されていない、こういうのが実態でございます。  そこで私たちとしては、何とかこの部分を、加工賃の適正化と取引契約の近代化を進めるために、この法律によってできます取引改善委員会のもとで、加工賃の調査とその公開をぜひお願いしたい。また、不当な加工賃取引については、取引改善委員会が調査機能を持ってもらいたい。現在でも多少業界がある程度メーカー商社と話し合いをしていますけれども、これはどだい問題にならない程度の交渉機能でありまして、とうてい対等の交渉などというものには、月とスッポンほどの大きな開きがございます。私たちがこの点を主張します趣旨は、いずれにしましても、融資とか長期低利の金を貸すということが、必ずしも長期にわたって繊維産業中小企業を育成するということにならない、むしろ自分たちの、みずからの製品の取引の段階において不当を排除し、かつ、自分たちがまじめに努力したら、それが自分たちの力になるような取引機構というものをつくることが一番原則であるという考え方を持っています。  それから二番目は、最低賃金法、家内労働法の強化、改善により公正競争の基盤を整備するということでございます。  これは、大手のほうから加工賃の買いたたきにあいますと、私たち労働組合の立場から見ますと、繊維加工業やアパレル産業の事業主は、そのしわ寄せを外注分として再下請、再々下請企業と家内労働の生産の組織化による収奪部分でまかなっております。そして、この方法では、そこにおいてはまさに商品規格や品質の統一化はもとより、織物や染色、縫製技術の向上や新商品の開拓などはとうてい期待されない。悪貨が良貨を駆逐しておるわけです。また、こういう状態が放任されますと、せっかく中小企業のために構造改善施策をやりましても、まじめにやったところは合理化貧乏になる、そしてまた、こういう状態が放置されますと、買い入れた機械はほこりにしておいて、むしろ下請中小企業の組織下にやったほうが業者がもうかる、こういうような慣行に実際はなっています。これは排除しないといけないのではないか。そのために私たちは、一時間一ドルの法定最低賃金制と家内労働の法定最低工賃制と週休二日・週四十時間制、あるいは労働基準法の完全実施、こういうようなものがとりわけ中小零細企業対策を進める上では、それは労働対策であって労働省の仕事だというふうによけて通れない部分を、産業政策の面で持っておるという点を痛感しております。  それから三番目は、原料と製品の秩序ある輸入規制の問題でございます。  この点は、先ほど業界方々からもいろいろお話しになりましたので、文章にあります「GATT体制を守りながら、セーフガードの基準を設定する」、このことがやはり本法の基本指針の上で非常に中心課題であるということを痛感しておりますので、内容については業界方々がお述べいただいた実態と同じ立場から、この点を強調したいと思っております。  それから最後に、業種、産業転換の実施について国、自治体の協力、指導のもとで計画的かつ長期対策として実施してほしいということです。  私たちは、中小企業の運動に参加しておりますし、また、開発途上国との関係についてもいろいろ考慮しておる立場から見まして、現状日本繊維産業を全体としてこのままが、全部そのままみんながいいようにということにはむずかしい経済環境になっているというふうに思っております。それだけに私たちは、これを系列化によって特定の企業だけ育成して、あとの企業はかってに転換しなさいという方法ではいけないという立場をとっております。繊維加工業とアパレル産業は、御案内のように産地を形成しておりますので、産地自体の経済共同体機能というものを、系列支配によってだんだん分解していくということではいけないということを特に憂えているわけです。そういう意味で、将来、商品の代替性とか国際競争力、国内需要度などから見て、長期的には転換を必要とすると認められた産地については、積極的に国と地方自治体の責任において行政指導し、業種の選択、技術の再訓練、設備転換資金融資保証、休業または待期期間の労働者及び零細事業主の所得保障措置について計画的に対処をお願いしたい。当然のこととして、この場合に、責任を持つ産地労働組合については事前協議制をお願いしたいと思っておるわけです。  特に私たちが中小零細の労働問題にはまっておりますと、零細企業対策をとる場合に、産業政策としての零細企業対策と、事業主に対する所得保障政策との競合という問題についてもぜひお考えいただきたい。本来、年金制度でカバーすべき問題を、就業機会を与えるということで零細企業を育成しているというような部分も率直に言ってあります。そういう意味で、私たちは、とりわけ本法が今後とも日本の資本主義の恥部である中小零細企業にメスを入れるということから考えますと、産業政策と労働政策、長期的な所得保障というようなものを含めた総合的なものとしてセットされることを、特に強調したいと思います。  長くなりましたが、以上で私ども意見にかえます。
  11. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の陳述は終わりました。  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  12. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 速記を始めてください。  これから参考人方々に対する質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 大矢正

    ○大矢正君 いまお話がありましたとおり、四十分には両参考人お帰りのようでございますので、お二方にこの際お尋ねをしたいと思います。  私は、先ほど近藤さんからのお話を聞いておりまして、やはり世の中というものはずいぶん変わるものだなと考えざるを得なかったわけでありますが、何年前でしたか、宮澤通産大臣の時代でありましたが、例の日米繊維交渉をめぐりまして、神田の共立講堂に近藤さんはじめ皆さんがはち巻きをして集結をされて、私も行きまして、激励の演説を打ったこともありますが、まあ、あの当時のことを考えてみますると、まさに隔世の感があると申しましょうか、当時、それでは今日のような事態が全然予測できなかったかと言えば、必ずしもそうではなかった。  ただ、当時、日米繊維交渉というものは、あまりにもわが国の輸出に対する障害になり過ぎるという立場において、皆さんも私どもも反対をしたわけでありますが、立場が今度は逆転をして、いかにして安い繊維製品わが国に入ってくるのを防ぐかということに重点を置かなきゃならぬという事態になってきたのであります。私は長い間繊維を手がけてまいりましたし、ずいぶんこの委員会でも質問をしてまいりましたが、日本企業が、工賃が安いということ、大体それに尽きると思うんでありますが、そこにウエートを置いて海外に進出をしていって、それが一つには今日の輸入の増大にもつながっているという面が私はあるように思います。もちろん、そればかりだとは申しませんが、それもかなりの部分を占めているんじゃないかと、こう思います。  当面は、先ほど参考人四人ともおっしゃっておられましたが、どう乗り切るかということになれば、金融その他の措置を講じて、とりあえずこれ以上の倒産を防ぐということだけと思いますが、同時にまた、長期的展望に立って考えますれば、繊維産業というものの位置づけをどうするかということとあわせて、対外貿易面におけるわが国の態度がどうあるべきかという問題にもつながってくると思います。もちろん、繊維の用途の拡大等をヨーロッパ諸国、あるいはアメリカ等と比較して、わが国の場合には非常に範囲が狭い、全く衣料品という形でしか理解されていないという、そういう面もありますから、そういう用途の拡大等が必要だということはわかりますが、とりあえずの問題としては金融の問題、それからもう一つの問題としては、増大をしつつあります輸入の問題に対してどう対処するかという問題の二つだと思います。  そこで、金融の問題は、私どもは、政府と今後この委員会において積極的に議論を戦わしてまいりたいと存じますが、先ほど松本参考人また寺田参考人からは、秩序ある輸入ということばが使われております。近藤さんは、秩序ある輸入などというようななまぬるいことでは、とうてい今日この繊維産業のかかえるむずかしい問題を解決することはできないんだと、もっと、何といいますか、強い措置、すなわち、ある意味における制限措置を講ずべきである、単なることば上の問題ではなくて、実行上の問題を指して私は言われてるんじゃないかと思うんですが、これは国際的に非常に問題になることでもあろうと思いますが、お二方どのような御判断をこの面については具体的にお持ちになっておられるか。それから、秩序ある輸入というお話がございましたが、秩序ある輸入というのは具体的にはどういう内容のものなのか。それから、近藤さんが秩序ある輸入じゃだめだと、もっと踏み出さなきゃならぬとおっしゃっておられる趣旨は、制限的な措置であろうというように私なりに解釈しますが、だといたしますれば、それはどういう形での制限措置を講ずべきかというような点についてお答えをいただければ幸いだと思います。時間がありませんので、たいへん恐縮でございますが、お願いをいたします。
  14. 松本良諄

    参考人松本良諄君) 私どもが今日の時点で考えておりますのは、非常にこの日本は輸出体制が整っておりますので、輸出面につきましては統計その他、いわゆるシステム化といいますか、は整備しておるのでございますが、輸入に関しましては全く抜けておるというんですか、その辺十分でないと。したがいまして、まずその輸入契約の状況を逐次把握する、それから、それにまつわる情報を的確に掌握する、そういうことを政府の御理解、御協力も得ながら業界が主体になってやっていく、そうしますと、今日商社あたりがふたをあけてみてびっくりして、かえって自分らにも不利益をもたらしておるということはまず第一段階として防げるんではないか。そういうことで、まずそういう環境づくりと申しますか、業界で協議会等を呼びかけておる次第でございます。  その次には、現在でも通観をいたしますと、あとからの統計はできるわけでございますが、そういうものをどういうふうに活用するかということにつきましても、非常に関連業界が多うございますので、これもなかなかむずかしいかと思いますけれども、そういう点については、トライアルにだんだんとそういう機運の盛り上がりの中で改善を積み重ねていくと。輸出の体制に比べまして、輸入の問題は昨今のことでございますから、そうきわ立ってということにはならぬとは思いますが、みんながそういうマインドを盛り上げることによってこの問題をチェックをいたしたいと、かように考えるわけであります。
  15. 近藤駒太郎

    参考人近藤駒太郎君) ただいま先生の御指摘がありましたとおりに、日米繊維交渉当時は最も私は強硬論者で、反対をした一人でございます。遺憾ながら七一年十月の十五日にあのような形で協定ができました。しかし、私どもが一番心配いたしました当時の危機感というものは、諸先生方の絶大なる御支援のもとに融資救済を受けまして、今日まで大きな被害がなくって昨年の前半までまいったことでございました。ここで慎んで御礼を申し上げる次第でございます。  そこで、なぜ私が一転して繊維貿易に対して軟化したかと申し上げますと、その後ジュネーブにおきまして、御高承のとおりに、多国間協定のめどといたしましてファクトファインディングを開始いたしたのでございます。繊維問題に対しましては、農業政策に次ぐ、各国ともそれぞれ先進国、後進国あわせて発言をしておられた。しかも、一年数カ月にわたる大論議のもとにいろいろやった結果、昨年十二月の二十日に多国間協定の合意を見たということでございます。  そこで、わが国業界を振り返ってみましても、当時は、たった五%の輸入原因としてアメリカがあのような形で、しかも過酷な条件のもとに、政治にからんでわれわれに押しつけてきた、ここは大義名文立ったと思うんです。だからこそ先生方もわれわれに御支援をいただいたものと、私は確信いたしておるんでございますが、現状は、先ほど申し上げましたとおりに、その後両三年間に異常なる変わり方をいたしております。ですから、皆さんはいいかっこうして秩序ある輸入だと、私も秩序ある輸出をし、秩序ある輸入に切りかえましょうや、オーダリーにやりましょうと、こう申し上げてきました。また、業界もそういうことについて克明に御説明申し上げて、とにかくいましばらくしんぼうして、わが国が急速輸入制限というようなことは、過去の日米交渉を思い起こしても、そんななまやさしくはできるものじゃないんだから、しんぼうしてほしいと、こういうぐあいに言ってまいってきたんでございますが、昨今の状況を見ると、すでに名門の方が自殺しておる、そんなような状況までに追い込まれておるという、しかも各府県にある八十何組合の業界においては、もう声を大にして、そんななまやさしいことを会長、言ってもらったら困るんだ、見てくれ、このとおりだと、頼んで加工賃を半分にして、ようやく品物をもらっても、加工賃払わなければならぬから、それを引き取ってくれないというのが現状で、たいへんな困り方だと、だから私は秩序ある輸出、秩序ある輸入とかいうようなことはもうナンセンスであって、輸出に対しては好むと好まざるにかかわらず、アメリカのようなシビアではございませんけれども、各国ともに何らかの形において制限をしておるということは、これは事実でございます。  そこで、日米協定も九月に切れるんでございますが、これからバイラテラルの交渉に入るんですね。この交渉がどうなるかということ、もしかりにアメリカが過去のような強固な手段で出てくれば私は戦います。断固として戦わざるを得ないと思います。しかし、日米友好親善のためにわれわれの意のあるところも十分理解をされて、アメリカ側のほうとしましてもバイラテラルの交渉に応じてくれるのであれば、前向きに私は取り組んでいきたいと、個人の考えとしては、私の業界をあげて、そういうような会議を開きまして御相談をいたしておる次第でございます。だからこそ、出るほうは全部制限されておるんですね。入るほうはまた広げっぱなしで、おまえら慰謝料もらったんだから、強姦されて慰謝料もらったんだから、何ぼでも入ってくるんだったら、何ぼでもまた広げましたから、近隣諸国から入れてきなさい、どんどん入れてきなさいというてやっておるんと同じじゃないですかと、これじゃたまったものじゃない、しまいには梅毒になって鼻腐るよと、こんなことでは困るので、私は業界の下部組織から突き上げられるこの声を皆さま方にお伝えして、何らかの形で制限の処置をとってもらいたい。実情を私、よく知って申し上げておるので、もしこれは輸入制限処置がとれないとすれば、特恵関税なんかナンセンスですね。ですから、関税を上げるとか、何らかの方法はあると思うんです。国内の中小零細企業をかかえているわれわれのアパレル産業を壊滅にしてまでも輸入を増大さすのか、このまま手放しにするのかと、それではいかようなる諸施策を講じられてもあとの祭りで困るんだから、この際に何らかの形で将来のことを考えて、臨時的でもいいですから処置を講じていただきたいという、私のお願いをしておる次第でございます。  なお、重ねてちょっと、これは小口さんに悪いのですが、先ほど二・六の低利で金を政府からお借りして、これは大手の肩持ちをしておるんじゃないかというようなこともおっしゃっておりましたが、あえて反論するんではございませんけれども、二・六、二・七の金利で、私は過去の日米繊維協定においてもそう、現在のこの特定繊維工業改善の問題にしてもそう、低利長期の資金の、国民の血税でもってわれわれを助けてくれというようなことは一言も申し上げておりません。業者が目ざめて、盛り上がる力で、真に日本繊維産業のためにはかくあるべきだという人だけに限って私はこの法律を適用されて、弾力的に運用をしていただきたい。当時私、委員会にもそういうことを発言いたしておる一人でございます。  ですから、何も全部が助かろうとか、全部を助けてくださいとかいうようなことは申し上げておりません。業者がみずから目ざめて、どうしても繊維業界はかくあるべきだということに目ざめた人には格段の御配慮をいただきたいと、かように申し上げております。ですから、この低利長期資金をもって、たいへん失礼でございますけれども、しいたげられたる中小企業が、少なくとも、少しでも大手企業に対等といわなくとも、せめて四分六だけ、四〇%の力を与えていただいて、親企業商社大手企業に話のできる場をつくれるように力づけていただきたい。ですから私は、長期低利の資金ということをお願いしておる次第でございます。おんぶせい、だっこせい、乳飲ませというようなことは、決して私は申し上げておりません。そういうゆえんを御理解願いまして、今回の法律を一日も早く通していただくということをお願いするとともに、なお、先ほど申し上げました輸入制限問題に対しましては、われわれアパレル産業、すなわち繊維労働者に対しては過半数を占めておるこの中小零細、家内工業を含めて、血の叫びを本日のこの機会を通じまして、先生方にお聞き取りを願ったということは、私は非常にしあわせと思っておる次第でございます。よろしくお願いいたしたいと思います。
  16. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ちょっと速記をやめてください。   〔速記中止〕
  17. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 速記を始めてください。
  18. 大矢正

    ○大矢正君 小口さんにお尋ねをしますが、先ほど寺田さんのお話にもありましたが、最近のこの賃織りの工賃は、去年の秋に比べて半分ならまだいいほうで、ひどいのになると三分の一という状態、しかも値段だけの問題じゃなしに、受注がないという二重の問題点がある。私も全くそのとおりだと思います。先日もテレビ等を見ましても、かつて私が見てまいりました天竜の機屋さんの苦境等が述べられておりましたし、福井の絹機屋さんの方々の御意見なんかもテレビで出ておりましたが、まことに今日の機屋さんの現況はたいへんなものだと思いますし、これは機屋さんだけではなしに、やはり先ほどお話がありましたように、染色業にいたしましても、縫製加工にいたしましても、どちらかといいますと、やはり工賃をかせぐという、そういう立場における状態というものは非常に今日痛めつけられているというか、苦しめられているのが現状じゃなかろうかと思うのであります。  私は、ある程度はこの委員会におりまして、繊維産業を長年ながめてきておりますし、繊維産業の仕組み等を知っておりますから、まあ、うなずける面もなきにしもあらずでありますが、ただ、一般的に国民が見た場合に、たとえば構造改善等を長期にわたってやられる。ところが、構造改善は長期にわたって国の資金を使い、もちろん自分自身でもこれは自前でやられますが、近代化が行なわれておるのでありますが、繊維の最終需要者の段階にきたところでの価格というものは上がる一方で、一向に下がらない。一方においては、いま言ったように機屋さん、染色、あるいは縫製等ながめてみましても、非常に値切られた形で賃織りその他をやらされておりますね。一般国民が見た場合に、あれだけ金を使って構造改善しておるし、しかもそれで機屋さんなり、染色業なりが高い工賃をもらっているかといえばそうではなくて、低い工賃しかもらっていない、にもかかわらず、最終繊維製品は値段が一向に下がらない。下がるどころか上がっていくという、こういう矛盾をお持ちになっておられるようですね。小口さん、あなたは職場でいろいろと働く人々とお会いになって、お話をされておると思うんでありますが、この面に対してどういうようにお考えになっておられるのか、この際お答えをいただきたいと思います。  それから、もう一つの問題は、これは衆議院でも、私、速記録を読みましたんですが、議論の中心になっております問題は、今度この法律が通った場合に、なるほど従来のように紡績であるとか、織布であるとか、あるいは染色、メリヤスというふうにして、業種ごとに構造改善をするというよりも、繊維産業全体をとらえる、流通部門も含めた繊維産業を全体的にとらえる、そういう立場での構造改善をやろうということが骨格になっております。その中で、あなたの先ほどのお話にも多少出てまいりましたが、不安材料となるものは、いまでさえ、機屋さんにしても、あるいは染色業にしても、縫製加工業者にしてもかなりの人たちが系列に組み入れられている、そして、おまえさんはこれだけでもって、この工賃でもって織りなさい、これで染めなさい、それがいやならやめなさい、極論すればそういう状態なきにしもあらずでありまして、結局、今度は大手を振って大企業ないしは商社繊維業界に乗り込んできて、自分の企業の縦の系列でもって繊維業界を組み立てていこうとする方向というものが、出てこないかどうかという懸念が私にもこれはあるんですが、この点についてのひとつお答えをいただけたら幸いだと思います。  以上で終わります。
  19. 小口賢三

    参考人小口賢三君) それでは、最初に加工賃の状態について具体的な事実で述べたいと思うんですが、先ほど近藤参考人のほうから金利二・六%の問題について、私の発言について御意見があったんですが、私は、二・六%が特に安過ぎるとか、そういう金はいけないんだというのではなくて、何か従来、歴史的に施策によって金を貸す、長期の融資にすればいいということに流れておるけれども、私ども立場から見ると、特に繊維加工業者がみずからやっている営業努力が、正常な形で自分たちの付加価値加工賃となって転化されていかない、ここの仕組みのところに一番実は繊維中小企業の問題点があるんだ、こういう認識を持っておるわけです。したがって、取引構造改善の問題取引契約の近代化の問題を第一にあげる趣旨も、そこにあるわけです。  御案内のように、繊維産業は、原糸メーカーからそれを今度は紡績をして、あるいはそれを織って染める、また、生地を裁断して縫製する、いろいろな過程に分断されています。同時に、それが御承知のようにメーカー商社が中に入って、糸を買うのにも、それから自分たちの製品をつくるのにも賃系列の関係になっておるわけです。したがって、加工業者自身というのは自分で——中にはありますけれども、自分でかってに糸を仕入れ、自分でかってな製品をつくって直ちに消費市場に出すという機能に、繊維加工業及び縫製業は一般にそういう形になってないわけです。ですから、名前こそそれぞれの会社の社長さんであっても、実態は、そういう全体の生産流通の機構の中で、その部分を分担して加工賃かせぎをやっているというのにすぎない。そこに非常に極端な不等価交換が行なわれている。ここの点が繊維近代化をはばんでおる。また、そこが同時に加工業者自体も、低賃金の二重、三重構造を利用して何とかそこのところを商売としてやり抜いてきておる、こういう実態が前提としてあるわけです。ここのところが近代化しない限り、何ぼ金をつぎ込んでも、私は、それはぬかにくぎではないかという基礎的な認識を持っておりますので、先ほどそういうような表現を使ったわけです。  それでは、具体的に例を申し上げますと、織物の問題については、寺田参考人のほうから具体的にお示しいただきたいと思うんですけれども、例をあげて申しますと、これは染色について具体的に私たちが調査しました内容を申し上げますと、精練漂白品でT/Cの四十五インチ仕上げのワイシャツ地、樹脂加工つきのもので見ますと、去年の四十八年四月と四十九年の四月との対比で見ますと、製造原価がメートル当たり二十三円のものが、この四月で三十四円九十一銭に上がっております。それで、四十八年四月当時は、これが二十二円ないし二十三円で何とか原価水準程度のものは得られておりました。ところが、三十四円九十一銭の原価がかかる品物が三十円か三十二円になっております。  また、無地染め品について見ますと、分散染料で樹脂加工しました四十五インチ仕上げの製品でとってまいりますと、製造原価が四十八年四月に二十九円しておったものが、最近ではメートル当たり四十三円九十六銭の原価がかかっておりますのに対して、加工賃は最初は三十円から三十二円でありまして、幾分はこれ利益が出たんですが、最近に至りますと、これが四十二円から四十三円。  さらに綿ブロード地の捺染品について、四色から五色もののものをとって見ますと、製造原価が四十八年四月に五十六円八十銭のものが——当時の加工賃は五十八円から六十一円いたしました。ところが最近では、それが原価自体で重油や電力の値上がりによって八十二円五十三銭かかっておるものが、現状では五十円から六十五円という水準です。しかもこの製造原価の数字には、春闘による労務費の値上がりは全然見込んでおりません。これは原価と受注加工賃の状態でございますけれども、染色企業は外から見ますと、糸染めを除きますと、特に機械捺染についてはかなり資本構成も高くなっておりますし、資本装備率も高くなっていますけれども、いずれにしましても受注産業であるという宿命で、最近のようになりますと、織物段階から木機が入ってくる、すると木機でしばらく次に加工するまで待て、あるいは、中間で加工したものを次の縫製段階にする場合に待てというようなことで、染色整理業の段階では製品の在庫が非常に多い、そのために、景気のクッションとして染色整理業については集中的に影響を受けておるというのが実情でございます。しかも、現在のところ在庫の問題があって、次の過程に製品が流れないということのために、現在操業率は五〇%、これだけ加工原価を割った受注でもなおかつ五〇%くらいの操業しかないという状態です。  それからもう一つの例は、今度は縫製品の例で、小売り価格四万八千円の春、夏ものの紳士服の例について、この加工賃と流通マージンその他の関係を申し述べてみますと、四万八千円の紳士服の毛織物の毛織段階の出荷価格は、メートル五千円で、これが二・四メートルかかると換算しますと、生地代で一万二千円です。これに対して、生地問屋に品物が回りますと、生地問屋のマージンは約千二百円、生地の一割です。これを製造メーカー加工しています加工賃はどのくらいかといいますと九千円です。メーカーマージンが三千三百四十円。メーカーから中間卸の問屋に回っていくのですが、この問屋のマージンが五千五百円。卸問屋からデパート、小売り店に製品が回ってきますが、この間でデパート、小売り店のマージンが何と一万六千九百六十円となっております。だから、生地段階とそれから製造の加工賃と製造メーカーのマージンを入れまして、これが四万八千円のうち二万四千三百四十円、五〇・六%です。残りの二万三千六百六十円というのは全部流通段階のマージンになっています。  これは一つの例でございますけれども、外国の中でこういう各過程での加工賃の配分、あるいは流通マージンがどうなっているかについては、まだ私たちは明らかではありません。調査が不十分です。しかし、いずれにしましても、日本繊維加工業においては、こういう生産流通構造を通した資本力が非常に加工賃を不当にたたく。また、景気のしわ寄せを非常に寄せやすい。こういう仕組みというものが本質的にそれ自身として存在している。この部分については、結局業者は泣き寝入りになっているというのが実態でございます。  それから二番目に、先生の御質問の異種間結合のことですが、そういういま申し上げました本来の商売でも、原価を割っても受注せざるを得ない。工場で仕事を切らすわけにいかない。こういう状態で自転車操業をやっておるような状況のところに、異種間結合という今度は政策が入るのですが、この異種間結合の政策というのは、最初にこの法律の歴史的な意義について述べたときに、この法律自体が今後内需消費者指向型に日本繊維産業方向づけていくということを申し上げました。  御案内のように、日本繊維産業は、大企業が輸出を担当し、中小企業は内地市場を扱ってっおた。それがある時期に今度は製品輸出になって、近藤さんたちの縫製業までして製品輸出のようになってはまいりました。これが今度は日本政府間協定によって、アメリカ市場に対して締め出される、あるいは極東三国との競争関係が激しくなってくる。また東南アジアとの貿易収支の関係で、日本としてはその地方からはある程度繊維製品を買わなければいけない、こういう環境になってまいりますと、勢い国内市場を中心にしてこれは大企業中小企業も商売する、こういうふうなことにならざるを得なくなってくる。  そういう中で、先ほど松本さんが輸入統計のことで申し上げましたように、従来各工程間で分断しておった関係で、糸屋はその自分の製品が何の製品となって消費者につながっているかわからないという欠陥もあったことは事実です。そういう意味で、ある程度相互の過程において情報を交換して、できるだけ付加価値生産性の高いもので消費者に合ったような製品をつくるということは、一定の意味を持っていると思います。しかし、私たちはそういう面での生産流通において、一つのワイシャツをつくるのにどこの紡績の糸が一番いいのか、あるいはメリヤス製品をつくるのにどこのポリエステルがいいのか、アクリルがいいのかというようなことは、実際に御商売をやっている皆さん方が御存じだと思うわけです。したがって、私たちはおそれますのは、従来ともかなりメーカー商社中小企業を系列化しているという体制のところへ、さらにこれを異種間結合という形で強化したら、資本の論理がさらに完徹しはしないかということをおそれるのは当然だと思うのです。そういう意味で、私たちはそういうことのないようにという意見を持っておるわけです。  以上でございます。
  20. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ、まず寺田さんにお伺いします。  当面の緊急対策ということでいろいろお話がございましたが、御承知のとおりに、総需要の抑制、金融引き締め、これは政府の物価対策の一環として、かなり当分は続くだろう、こういうような見通しですが、その中で、おたくの業界のほうでいま金繰りで非常にお困りになっていらっしゃるのですが、金繰りの現状はどういうふうになっているのか、それから、どのぐらいの金があれば当面しのいでいけるのか。いま金融事情は、大体政府三機関で資力は五千五百億円ですか、市中銀行あたりでさらに三千三百億の緊急の融資も準備をしている、こういうようなことも大蔵大臣言っておるようです。  ですから、その中で、まあそれは繊維だけでありませんで、業界の金繰りの不況、それから、これからどの程度あれば何とかしのげるのか、その辺の御意見をひとつお伺いします。  それから小口さんに、私はしろうとでよくわかりませんが、いまおっしゃったような加工賃の問題ですね、それであなたのほうのこの要求のところに、加工賃決定の適正化措置と取引契約の近代化、そのために取引改善委員会、これをつくったらどうだと、こういう御意見でありますが、この取引改善委員会の具体的な内容ですね、それと、はたしてこういうものをつくって複雑な加工賃、いろいろな加工賃がありますが、それが適正化しても、これは非常にむずかしいのですけれども、うまくいくのかどうか。その辺のところをひとつ参考意見をお伺いします。
  21. 寺田忠次

    参考人寺田忠次君) ただいま御質問いただきました金融のことでございますが、他の組合のことはちょっとわかりませんが、綿工連といたしましては、せんだって調べました結果、とりあえずとして七百九十何億必要だというようなふうに言っておりまして、その中で政府関係の金融機関でお願いしたいというのは約四百億円、こういうことになっております。で、これを至急に何とかしていただきたいというのが現状でございます。
  22. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 取引改善委員会をつくってやっても、はたして適正化になるかどうかという御心配の先生の御質問ですが、従来私たちは、独禁法の問題とか、下請代金遅延防止法とか、幾つかのこの部分について多少そういうものをチェックする法律は実はあるわけですが、何といっても糸の割り当て、それから、市場に対して直接自分たちがタッチできないという弱さで、仕事をもらわなければいけないという弱みから、商売というのは、原価というものが全然通用しないという実態というのは、これは何としてもいけないんではないか。そういう意味で、この取引改善委員会加工費の調査とその公開をしてほしいという意味合いは、これは現在でも協会である程度話し合って、その関係商社メーカーと話し合いをやっていることは事実です。  しかし、もともと過当競争が非常に激しいというようなことから、業者内部においてそれを破るものもある、また、取引関係において力が全然対等でない、こういうものが本質的にあるわけです。したがって、その対等でない力関係について、この法律に基づく取引改善委員会が行政的に介入することによって、まず加工賃の調査をやってもらう、代表的な製品について。そのことによって第一の期待としては、せめて加工業者、アパレル産業自体においても、一応原価というものは主張する場所がある。また同時にそれは公表する。政府が公表することによってある程度市場件といいますか、公共性というものを持たせる、そのことによって業者の交渉力の弱さを補強する、こういう意味合いがあろうかと思うんです。  これは、私たちの関係でいきますと農産物の価格がございます。先生御承知だと思いますけれども、農林省では、たいへんな組織力を通して農産物の生産費調査をやっています。こういうものが農産物の需給者との取引関係の中で、かなり生産者自体の保護策になっていることも事実です。現在の通産省の統計なり調査からいきますと、単に物量統計だけで、生産関係に入ったそのような統計というものはほとんどないわけです。だから、そのことによってまず第一にカバーしたい。同時に、本来ならば協同組合法に基づいて団体交渉機能というようなものを持たせるとか、あるいは業者が、原価を割ってまで仕事をさせられるような弱い立場の者が、ある程度このくらいは上げてくれというようなことは談合しても、これは別に公取におしかりを受けるような筋合いのものでは、私は力関係からいってもないと思うんです。ですからそういう意味で、団体交渉機能によってそれを詰めるというようなことをもう少しゆるく、弾力的に考えていただく。そして、話し合いがあまりに、調査の結果実態が原価を著しく割っているというような場合については、行政の介入によって加工賃取引についても調整をしてもらうというようなことがあっていいんではないのか。これは農産物については、かなり現実に農林省が生産者と需給者の間にすでに行なっていることでありまして、いまの日本繊維産業繊維加工業、アパレル産業の実態から見れば、私どもはそれは決して不当な介入とは考えられないというふうに思っております。
  23. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 かなり時間がたっておりますので、寺田さんに一、二お伺いたしたいと思うんですが、あなたもおっしゃったように、現在の繊維不況、ことに綿工連などにおける現状は、やっぱり当面一番大きな問題は、私は在庫問題だと思うんです。昨年と比べて二・五倍、およそ七億ということだから、まさに国内生産の三十数%ぐらいの不当な驚くべき綿布輸入があるわけなんです。綿工連として、また寺田さん御自身として、これらの異常な輸入というものを中間段階で察知し得なかったかどうか、あるいはこれらについて通産省との間に何らかのアクションを起こされたかどうか、その辺のところをまずお伺いしたいと思います。
  24. 寺田忠次

    参考人寺田忠次君) お答えします。  ただいま、その途中におきまして、そういったことを察知できなかったかというお話がございましたが、だいぶん輸入はあるということは聞いておりましたが、それほどばく大な数量が入っているというようなことは察知できなかったわけでございます。なお、役所に行きましても、輸入問題はひとつ検討していただきたいということは申し上げましたが、なかなかそういうことは実情を把握はでき得なかった。そこで、これを要するに秩序ある輸入ということにするための方法は、いま松本参考人から申し上げたわけでありますが、私もあの問題は非常にあれでいいと思います。ところが、この間輸入されたのを、先ほどもちょっと申し上げましたが、輸入業者と話し合いました結果、ほんとうに輸入してそれを加工して輸出するとか、あるいはそのためにもうかるということであればよかったんです、比較的。  ところが、そうではないんですね。そういうことではなくて、御承知の為替レートがああいったことの変革を来たしました。ドルの暴落、それから円価の上がりというようなことがございまして、為替の変革による利潤を得るということが輸入業者の最も大きな目的であったというふうに聞いております。実はそういったようなことであれば、商社輸入業者だけがもうけたのであって、一般には非常に大きな被害を与えているということは言えるわけなんです。これはまともな、要するにわれわれが通常考えるような輸入によってもうけて、輸入によって加工して、日本の商品が高いから外国から輸入してやるということならばまだいい。ところが、そうではないわけなんです。そうではないということが多かったわけです。そういったようなことをひとつ今後是正、要するに、為替によっての不当な利潤を得るということについての御考慮をお願いするということを、先ほど松本参考人の申し上げたことに加えてそういったことをお願いできたらいいんじゃないか、こうも考えます。まあ輸入問題についてはそういうことを考えておりますので、ひとつよろしくお願いします。
  25. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 どこの商社かわからぬけど、投機の対象として綿布輸入する。ために、生産秩序を維持して営業活動を行なっておる人たちが不当な損害をこうむる。そのことがまた国民の衣生活に対してたいへんな損失を受ける。加えて、外国との貿易ですからスポットに輸入する、次は今度吐き出す、あるいは輸入をとめるということになれば、国内の思惑の在庫調整によって、外国自身も設備投資をしておるわけなんだから、それがオシャカになる、たいへんな国際間における不信行為であるというふうに私は思って、考えなければならない重要な問題だというふうに思うわけだけど、先ほど、現状がそういったことでせっぱ詰まったお考えかもわからぬけども近藤さんは思い切ってこの際もうやっちまえということをおっしゃった。それについて、たとえば輸入制限障壁というものを高くつくり上げるということを思い切ってやらなければ、手ぬるいことじゃだめなんだという近藤さんは御意見だけど、きわめてドラスチックな意見ですが、綿工連としてはそこまでお考えかどうか。これは明日以降、われわれの審議の中で大きな輸入問題についての秩序づくりということが議題になるし、四人の参考人こもごもおっしゃっておるので、まあ近藤さんだけが、それを一歩進んでこの際はっきりしろというお考えですが、ひとつ綿工連としてはどの程度までのことを考えておられるのか、ざっくばらんに聞かしてもらいたいと思います。
  26. 寺田忠次

    参考人寺田忠次君) 私どもとしては、輸入禁止あるいは輸入制限、ある程度までやむを得なければ制限するのもしかたがないだろうが、いま申し上げたようなことで輸入業者と私どもは話し合っております。それと、それからいま申し上げた秩序ある輸入ということは、つまり、為替関係にも及んでいるわけなんです。そういったことでいけば、とりあえず、輸入を禁止するとかというようなところまでいかなくてもいけるんじゃないだろうか、こう考えております。いま輸入禁止ということにつきましては、日本がすべての原材料を、あるいは食糧にいたしましても、よそから輸入している関係上、他国によって補われている関係上、それを直ちにやるべきだということは考えておりません。
  27. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 時間ですから、きょうはこれで……。
  28. 寺田忠次

    参考人寺田忠次君) ひとつちょっとお願いいたします。  たいへんありがとうございましたが、先ほどいろいろお話がございましたワイシャツ、要するに最終価格の関係でございます。最終の価格の関係、あるいは取引改善とも申しましょうか、そういったようなことで私どもは、実は紡績協会並びに総合商社等、あるいは糸商、そういったところに交渉を持ち込んでおりまして、いま解決をしようというさなかになっているわけです。そういったことにつきましては、実は話すとなかなか長くなりますが、そういうことで私ども、不合理な圧迫を受けておりますことにつきまして、これを改善してもらうためにいま申し込みをして話し中でございます。そこで、どうか取引改善というようなことにつきましては、私ども中小企業者が圧迫をこうむっているということについて、すべてを解決するための、大きな一つの国家における機関として取引改善を御検討いただくというようなことにお願いできたらたいへんけっこうじゃないかと、こう思うわけです。  それから、なお、そういったことに関連いたしまして、先ほど小口参考人からも申し上げたわけでございますが、紳士服の四万八千円の細部の採算状況が出ておりましたが、私どもはワイシャツを、かりにポプリンのワイシャツに例をとりますと、ポプリンの生地が大体一ヤード百二十円見当です。それからさらし賃が、いま小口さんから申し上げられましたように三十円としまして百五十円、これが二ヤード半でございますから、四百二十五円か幾らのものが原価なんですね。これに縫製賃をかりに六百円加えまして、一千円のちょっと余になる。それがデパート等で売られていますのは大体二千四、五百円から三千円見当。ひどいワイシャツになりますと、この間も通産省でワイシャツの何とか検討をする会がありまして、私、出たんですが、ひどいのになると六千円くらいのワイシャツがあるという。そうしたところが、いやいや、そんなことじゃないんだ、二万円のワイシャツもあるよというような話もございまして、先ほど大矢先生からも御指摘がございました、衣料費がべらぼうもなく高く、いつまでたっても下がらないがどうだというようなお話がございましたが、私ども生地のメーカーといたしましては、その辺でございまして、非常にまともなそろばんで出しているわけなんです。それが聞くところによると、卸商において六百円利潤を得ている。それから小売り商は八百円だというようなお話もございまして、こういった取引改善の問題につきましても、十分ひとつそういった衣料の小売り関係とか、衣料のことだけではなくて、先ほど申し上げた大商社と私ども、あるいは糸商と私どもというような関係につきましても、改善をするためのごしんしゃくをお願いいたしたい、国家機関としておつくりいただきたいということをお願いいたします。  それから、先ほど小口さんからお話がございましたが、最低工賃でございますが、最低工賃というのは非常にむずかしいということを私は申し上げます。先ほどお話がございましたが、いま天龍社におきまして、最低賃金法における最低工賃がきめられております、コールテンの、あるいは別珍の。ところが、景気のいいところはそれは守られている、いいときは。悪くなってきますとそれを下回る。裏からいって、おれのほうはこれだけ安くやるからやらしてもらいたいというようなことでやっております。だから、そこでいま非常な苦境に立っているのは、最低工賃が守られておればいいんだが、それが守られないというようなあわれな実情にありますので、そういったことにつきましても、いまの取引改善のための御審議を政府機関においてお願いするというようなことにできますればたいへんけっこうでございます。  それから、三品取引所の問題でございますが、この問題につきましても、非常な不当な高値を出したり、いろんなことがございますので、こういったことにつきましてもすべて非常な重要な問題でございますので、取引改善のための御審議をお願いする機関をおつくりいただければたいへんけっこうでございます。そういったことをお願いいたします。  ありがとうございました。
  29. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 他に御発言がなければ、午前の参考人方々に対する質疑はこれにて終了いたします。  参考人方々には、御多用中、長時間にわたり御出席をいただき、また、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。委員一同を代表しまして厚くお礼を申し上げます。  これにて、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  30. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、鬼丸勝之君及び矢野登君が委員辞任され、その補欠として竹内藤男君及び柴立芳文君が選任されました。
  31. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 去る十一日、竹内君の委員異動に伴い、現在、理事に一名の欠員を生じておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事竹内藤男君を指名いたします。
  33. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 午前に引き続き特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案議題とし、参考人方々から御意見を聴取することにいたします。  午後は、参考人として日本絹人繊織物工業会会長土田哲治良君、日本タオル工業組合連合会専務理事伊東壮晃君、日本染色協会会長高岡定吉君、全国繊維産業労働組合同盟副書記長井上甫君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、皆さまには御多用中のところ、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本日は、ただいま議題といたしました法案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りますとともに、また、広く当面の繊維に関する諸問題につきましても御意見、御希望があればあわせてお聞かせいただき、今後の本案の審査の参考にいたしたいと存じておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  なお、参考人方々には、まず順次それぞれ二十分程度の陳述をお願いし、その後、委員からの質問にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず土田参考人からお願いいたします。
  34. 土田哲治良

    参考人土田哲治良君) 私は、日本絹人繊織物工業会連合会の理事長の土田でございます。  午前に引き続きまして委員会をお開きいただいておりますので、諸先生方もたいへんお疲れだろうと思いますし、これから申し上げますことも、大体午前中に出ましたようなことを繰り返してといいますか、多少ダブったところがあるだろうというふうに思いますが、まげてお聞き取りをいただきたいと存じております。  平素は、諸先生方には当業界の振興につきまして格別の御高配をいただいておりまして、この機会をおかりして厚く御礼を申し上げます。また本日は、この席上において意見を述べさしていただきます機会をお与えいただきまして、まことにありがたく、重ねて御礼を申し上げる次第でございます。  では、これから特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案について意見を申し上げます。  まず最初に、本改正法案につきましては、一日も早く国会を通過し、成立さしていただきたいと衷心よりお願いを申し上げる次第でございます。  諸先生方の御支援で、当業界では過去七年間、現行特繊法による構造改善事業実施いたし、その目標とした国際競争力の強化については、所期の目的を果たし、その成果は高く評価されております。しかしながら、最近とみに諸般の情勢は流動的となり、かつ大きな変化を見せています。織布業界としましても、これらに対応した体制づくりの必要性を痛感いたすものでありまして、国際環境の変化であるとか、労務事情の変化であるとか、あるいはまた需要動向の変化であるとかの中にあって、業界として将来どのような生産体制をとるべきであるかの方向づけは、きわめて重要な問題でございます。したがいまして、今後は労働集約型ないしは機械集約型産業から、知識集約型産業へと脱皮していくことが必要であり、これによって消費動向の的確な把握とそれに基づく消費者指向多様化高級化製品開発と、さらにこれと生産加工、販売各部門の有機的な結合をはかるとともに、生産流通の合理化、近代化を進めねばならないと考えるものであります。  本改正法案は、まさに繊維業界のかかる要望にこたえるものでございまして、今後の業界は、これによる新構造改善事業実施によって新しい業界の基盤を確立いたしたいと念願するものでありまして、この事業の推進こそは、業界の長期的恒久対策としてまことに重要なものと考える次第でございます。  また、この改正法案によりますと、特に零細企業対策についての配慮がされており、法案の中にも零細対策の条項があり、また、以前の構革に比べて上のせ廃棄がなくなるなど、零細企業にも参加しやすい仕組みになっており、この点、特に織布業界として感謝しております。  さらに、織布業界は、原糸メーカーあるいは商社などの大企業の谷間に存在する中小企業業界でありまして、取引問題は長年の懸案でございます。将来この事業の推進によって、合理的な取引についての効果も期待され、織布業の経営の安定に大きく寄与するものと期待されます。  以上のように、われわれ織布業界においては、本改正法案成立に大きな期待を寄せておりますので、何とぞその成立につきまして、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。  次に、この機会に諸先生に業界現状を申し上げたいと存じます。  業界は、昨年のオイル・ショックや、インフレ対策としてとられた金融引き締めや、総需要抑制策などの浸透と、昨年における輸入の急増などによって未曽有の深刻な不況下にあります。かつての不況は、絹織物が悪くても合繊織物がよいとか、業界の一部に不況があっても、他の分野は悪くないとかいう状態でありましたが、今回はどの分野を見ても全般に不況であります。特に最近においては、織物生産してもなかなか売れず、そのために、各産地においては種々対策を講じてこれに対処しておりますけれども、市況の好転は全く望めないばかりか、ますます深刻な様相が深まっている状況であります。織物をつくっても売れないということは、業界にとっては致命的な打撃でありまして、このままでは企業の存立問題や労務者の離職問題にも波及するおそれがあり、現在、業界においてはその対策に必死になっている状態であります。私たちはかかる事態をおそれて、去る三月二十八日に、同様な状況にある綿工連と共同して織布業不況突破陳情業者大会を東京で開催いたしまして、関係産地御出身の国会議員諸先生多数御臨席のもとに六項目の陳情を行ない、その実現をお願い申し上げました。その六項目とは、  一、不況打開のための長期低利の緊急融資と償   還猶予。  二、織物製品の無秩序な輸入の防止。  三、織物輸出の振興  四、安定操業と公平な付加価値の確保。  五、緊急時の過剰生産防止体制の確立。  六、一時帰休者に対する失業保険の支給。 でございます。これらについては、諸先生方並びに御当局にいろいろ御心配をいただいているところで、感謝にたえないのでございますけれども現状から見て、この際、御要望申し上げたいことは、金融措置として長期低利の緊急融資と償還猶予、無秩序な輸入の防止あるいは一時帰休者に対する失業保険の支給などの緊急対策と、さらに、安定操業と公平な付加価値の確保、あるいは織物輸出の振興などの諸対策をもあわせてお願い申し上げる次第でございます。  私は、丹後織物工業組合の理事長をいたしておりますので、丹後産地の実情をあわせて御説明申し上げたいと思いますが、お許しいただけますでしょうか……。  丹後の状況を申し上げますと、これも諸先生方御存じの方もあると思いますけれども、非常に零細な企業の集団でございまして、企業戸数約一万一尺織機台数が四万三千台ほどで、雇用労働者が七千、それから家内労働者が一万七、八千でございまして、全体の率から見ますと、家内——六台未満の企業戸数が九四%を占めておりますような非常に零細な産地でございます。いま植木先生もお越しになりましたけれども、丹後のそういう特殊事情にありますこの零細産地につきまして、これはおそらく丹後のみでなしに、ほかの絹織物の産地は大体そのような状況だと思いますけれども、聞きますところによりますと、いま通産のほうでもいろいろとお考えをいただいておりますような長期資金につきましても、通利であるとか、いろいろ貸し出しの条件がかなりきびしいものになるんではないかということをお聞きいたしておりますけれども、何とか資金を出していただきますにしましても、零細業者が借りやすいような措置を、ぜひこの際、諸先生方並びに御当局におきましても御考慮をお願いを申し上げたいというふうに思います。  時間も限られておりますし、いろいろ申し上げたいと存じますけれども、また、御質問がございましたらそのときにお答え申し上げるといたしまして、以上、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案についての意見と、業界現状並びに要望につきまして申し上げましたが、最後に、このような機会を与えていただきましたことに対して、重ねてお礼を申し上げる次第でございます。  どうもありがとうございました。
  35. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうもありがとうございました。  次に、伊東参考人にお願いいたします。
  36. 伊東壮晃

    参考人(伊東壮晃君) 私は、日本タオル工業組合連合会専務理事の伊藤壮晃であります。  このたび、国会の場におきまして意見を述べる機会を与えていただきますことにつきまして、深く敬意と感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。  本日は、参考人として特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部改正案について意見を述べるようにということでございますので、私の考えを述べさせていただきますとともに、せっかくの機会でありますので、この場をおかりしまして業界の実情を御報告申し上げ、同時に、業界の苦衷に対しまして深い御理解をいただいて特別の御配慮をお願いしたい、かように考えるわけであります。  まず、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部改正に関する法律案でありますが、結論から先に申し上げますと、一日も早く原案を成立させていただいて、法律案成立することを希望しておるわけであります。  タオル業界は、中小企業近代化促進法に基づきまして、指定業種として昭和四十年から設備近代化を進めてまいったわけであります。当初織機自動化高速化という点に重点を置きまして近代化をはかってまいったのでありますが、その後、縦糸巻機あるいは横糸巻機という準備部門、これを織機自動化と並行してやらないと自動化の効力がない、効果がないということで、準備部門もあわせてやるようになってまいったわけでありますが、そういった総合的な設備近代化をはかってきました結果が、織機自動化は現在において約四〇%に達して、非常に生産性の向上、あるいはコストの引き下げという点について効果をあげてまいったわけであります。  その後、中小企業近代化促進法に基づく特定業種ということで指定を受けて、構造改善実施しようということで着々準備を進めておったわけでありますが、例のドル・ショックにあいまして、一時延期せざるを得なかったというようなことであります。今回の特定繊維工業臨時措置法の一部改正案によりますと、従来は四業種しか対象になかったわけでありますが、今回はこれを広く繊維工業全般に及ぼすということでありまして、われわれタオル業界につきましても、これによって総合的な構造改善を進めることができるのではないかというふうに期待をいたしております。  次に、従来の中小企業近代化促進法におきましては、当初は、全国の業者の半分以上が参加しなければだめだというふうに規定されておりましたが、その後、各産地ごとでもよろしいということでありますが、やはり産地業者の半数以上がこれに参加しなければいけないというようなことで、なかなかまとまりにくかったわけでありますが、今回の改正法におきましては、一応産地組合の中でも、協同組合単位でもいわゆる事業計画の作成の主体になれるというふうに改正されております。そういった点でも、非常に各組合ごとの努力によってこれが意欲を満たし得るというようなことで措置されておりますので、繊維業界の何といいますか、特性については配慮がなされておるということで、非常に適切な措置であろうかと考える次第であります。  また、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部改正案の第三条におきましては、通商産業大臣構造改善計画に関する基本計画を定めると、第八条においては、必要がある場合は、「基本指針に定める事項について指定及び助言を行う」というふうに規定されておりますが、タオル業界は、原料の購入面、それから製品の販売面、この両面において、従来、不合理といいますか、不的確といいますか、取引条件を押しつけておると。で、この改正規定によって適正な助言と御指導がいただければ、合理的な取引関係を確立することはできるのではなかろうか、こういうふうに期待しておりまして、これによって中小企業の経営に大きな効果をあげることができるのではなかろうか、かように期待しておるわけであります。  次に、タオル工業の現況を御説明申し上げたいと思いますが、タオルの製造業は現在——五月現在でありますが、全国で千四百五十七企業の業者が存在しております。それで、一企業当たりの平均設備規模というのは非常に小さくて十七台、地域によって多少の差はございますが、全国的に見ますと十七台という中小企業、むしろ中小企業というよりも零細企業に近いわけでありますが、そういった業者が非常に多い業界であります。  こういう小さい規模でありますが、経営の形態を見ますというと、糸買い、製品売りが大部分を占めておるわけであります。下請というのは比較的少ないというような状態であります。こういう中小——小さな零細企業の集まりでありますが、昨年来の総需要の抑制、それから同時に、これによって非常に需要が減退しております。さらに、金融引き締めが浸透しておりまして、この結果、流通段階が非常に萎縮しておるといいますか、仮需要が減ってきておる、このために生産者の在庫は、ことしに入りましてから急激に増加しておる、採算も非常に悪化してきておると、このために大幅な操業短縮を余儀なくされておるのが現状であります。  一方におきまして、タオルの輸入でありますが、タオルの輸入は、台湾、それから中共、アメリカ、まあこれが大体おもな比重を占めておりますが、世界三十一カ国から輸入されておるような現状であります。四十八年の輸入を通関統計によって見ますというと、四十七年の数量において約二・六倍、実数を申し上げますと六千二十六トンでありますが、金額においては約三・二倍に急激にふえております。これが市況撹乱の要因となっていることは明らかなことでありますが、このような業界現状からいたしまして、次の点において、先生方の特別の御配慮をお願いしたいと、かように考える次第でございます。  第一点は、資金繰りが非常に悪化しておる、これに対しまして緊急に特別融資をお願い申し上げたい。これは、いままでの参考人の方からしばしばお願いしていると思いますが、同じことを繰り返してお願いするわけでありますが、同時に、既往の融資の償還猶予の措置をあわせてお願いしたいと、かように考えます。  第二点は、タオルの輸入急増の対策でありますが、四十八年の輸入数量は、先ほども申しましたように六千二十六トンでありまして、四十七年の約二・六倍に急増しておりますが、この数字は、国内生産に対しましては一三%に該当するわけであります。  もちろん、この輸入の抑制という問題につきましては、午前中でも参考人からも御発言があったかと思いますが、私どもは、現在この貿易の自由化ということが言われて、政府としてもその施策はとられておるわけですが、そういった中で、あえて全面的に禁止してもらいたいということは考えておりませんし、また、タオルの場合は、アメリカという先進国からも入っていると、これは一つは、いい面ではむしろ製品高級化といいますか、そういった面で参考になる点もあるというふうにも考えます。しかしながら、これがなぜ入ってくるのかということも一考する必要があるんではなかろうかと思います。  で、なぜ入ってくるかということは、先ほど午前中の参考人の方も、寺田参考人からもお話があったようですが、いわゆる為替の問題、為替によって、差額によってもうけるという面もありますが、タオルの場合は、百貨店の一つの販売政策にこれがつながってるんではなかろうかというふうに考えるわけです。たとえば各百貨店を見ますと、外国品コーナーというのが設けてあります。タオルについても同じように外国品コーナーが設けてあります。日本人は御承知のように、どちらかと言いますと外国製品の崇拝——一方では国産奨励と言いながら、やはり依然として外国製品の名につられてやっておるというのが、売れるというのが実情ではなかろうかと思います。そういった心理的な面をとらえて、販売政策にこれがつながっておるという面も多々あるんじゃなかろうかと思います。  で、これを全面的に禁止するというふうに私ども考えておりませんが、無秩序な輸入——無秩序な輸入というのは、非常にことばではやさしいようですが、それじゃどういうんだと言われたときには困るんですが、一つの例をあげてみますというと、中共からの輸入は非常にタオルは多いわけです。で、中共から実はタオルを輸入して、その中共製品がいいかというと、必ずしも優秀なものではないんですが、私のところへ、ある中共から輸入した人が、こういうものを輸入したんですが、どっか売り先はありませんか、われわれくろうとのところへ持ってきてそういうことを言っておるわけです。それで私はそのときに聞いたことは、あなたは一体何が専門ですかということを聞いたわけです。そうしたら、いや、本職は漢方薬とカチグリを輸入するのがわれわれの本職であると、だから、どうしてタオル入れたんですかと聞いたときに、要するに、実績をかせがんがために何か入れなきゃ割り当てがもらえないんだ、だからタオルを入れたんだけど、どっか売り先ありませんか、こういうような話なんです。要するに、場違い筋と言っちゃおこられるかもしれませんが、そういうしろうと的な商売をやっている。タオルの採算もわからず、何にもわからずにやっといて、どっかでこう売り場をさがしているというような、しかも適品であるかどうかということは、そういった人はわからないわけですね。ただ何か入れりゃ売れるだろうというような考えしか持っていないんです。しかも、それがはたして安く消費者の手に渡るかというと、決してそうではない、いたずらに業界混乱させるだけのような状態であるというようなことです。  それから、もう一つ例をあげますというと、これはもう過去の、だいぶ前ですが、ある大商社が、たとえば機械輸入する、その見返りに何か取らなきゃいかぬということで、実はそのときはたまたまかもしれませんが、バスタオルを相当量入れたわけです。その結果がわれわれの業界混乱させたということで、実はそのときは、その大商社に向かって私のほうは抗議したわけです。少なくとも大商社たるものは、中小企業の分野を荒らすような商売のしかたをしちゃ困るんじゃないかということで、抗議したわけでありますが、そのときは一応、いや、悪意あってやったんではないが、今後は十分注意をするという返事をもらって、その後はそういうことはなくなりましたが、無秩序な輸入というそういった面も、いま例をあげたようなことにもつながるのではなかろうかというように考えますので、そういった対策をひとつお考え願いたい。  その対策の一つとして、入ってきてから云々じゃ何にもならないわけで、むしろ入る前に何か打つ手はなかろうか。たとえば、私はいまタオルが、相当量入ったというふうに申し上げたのですが、その内訳というのは全然わからないのです。たとえばバスタオルがどのくらい入ったとか、浴用タオルが幾らだとかというような内訳というものは全然わからずに、ただ、関税のあれから見ますと、トイレットリネン及びキッチンリネンというふうにしかなっていないわけです、分類自体が。したがって、われわれは最初、タオルの輸入ということを考えたときにさがしたけれども、タオルという文字は全然出てこなかったわけです。それで、その後大蔵省へ行っていろいろお話し申し上げて、タオルというふうにひとつ分類を設けてもらえないだろうかと言ったら、実はこれがそうなんですよということで、ひっくるめて何トン、何億というふうな分類のしかたしか出てなかったので、ひとつこれを改正していただけないだろうかといったのですが、それを改正するについては非常に時間と労力と、それから金がかかるのだ、すぐには簡単にはいきませんというようなことで、われわれもそのままになったわけですが、そういう輸入する前の段階で、申請の段階からかチェックしますと、大体どのくらいだということによって、自分でもある程度は、業界の内部でも調整がつくのではなかろうかというふうにもに考えているわけです。  同時に、それはちょっと輸入が多過ぎるのではないかということも言えるのじゃなかろうかと思いますが、ただ、いままで調べた結果は、どこのだれが、どのくらい、どこから輸入しているのかということが全然これもつかめないわけです。繊維製品輸入組合さんにお願いして、名簿だけをもらってきたのですが、向こうでももちろん、だれが、どんなものをどこから入れているということは全然わからないわけです。三十一カ国から入っているような状態ですから、これは無理もないと思いますが、そういったことで抑制をするというようなことで、何らかひとつ対策をお考え願えたら非常にありがたいと思うわけです。  非常に長くなったかもしれませんが、以上、二点について御要望申し上げると同時に、特繊法改正法につきましては、一日も早く通過、成立されるように期待して終わります。
  37. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうもありがとうございました。  次に、高岡参考人にお願いいたします。
  38. 高岡定吉

    参考人(高岡定吉君) 私は、社団法人日本染色協会の会長高岡定吉と申します。  本日は、平素から染色業界発展のために格別の御高配を賜わっております諸先生方に、直接業界の事情を御報告申し上げる機会を与えられましたことを、厚くお礼申し上げます。  さて、業界現状を申し上げる前に、染色工業というものについて若干、これはいささか蛇足かもしれませんが説明をさしていただきまして、そうして本論に入りたいと思うのであります。  いやしくも人類が必要とする衣料には、さらしとか無地染め、捺染等の形で染色加工が施されまして、それが人類の衣料になる。したがいまして、染色加工なくして繊維製品なしというほどのことばを使っても、決してこれは過言ではないと私は思います。すなわち、私は、それほど染色工業の重要性を強調いたしたいのでございます。  染色加工工業は、繊維工業にあってさように重要な工程のうちをつかさどっておるものでございまして、そうして、その仕事の性質について若干御披露いたしますと、まず綿、それから毛、その他のそれからできた糸を染めるところのいわゆる繊維染色と、それから織物とか編みもので布状になったものの生地を染める染色がありまして、その染色方法といたしましては、手工業である手染めがあり、あるいは手捺染というような手工業と、それから、機械力による機械染色とがあります。私は、私ども染色協会の会員が扱っているこのうちの一般織物とそれから編みもの、それについての現状をまず御報告申し上げたいと存ずるのであります。  日本染色協会の会員数は、全国にわたりまして百四十九、それから企業数では機械染色が四百三十四、それから手加工業者が約千ございまして、そうしてこれを規模別で見ますと、綿紡績の兼営しているものが九、それから染色の専業者といたしまして中堅——これは中小企業の範疇をこえるものであります。中堅企業が二十二、それ以外はすべて中小企業でございまして、機械染色だけを見ましても、九三%が中小企業の範疇に入ります。その経営形態、方式は、大紡績を除いては前述の中堅中小企業ともにほとんど全部が受託加工——請負でございまして、したがいまして、中堅企業さっきの二十二社といえども、その性格は中小企業と同一の立場にあるものと言えると思います。  以上のような業態にあることを前提としまして、今日のこの法律改正案につきましては、私はぜひとも一日も早くこれの成立を見て、そうして、新法によりましてわれわれの現在当面しているもろもろの難問題を解決するように、ひとつ御指導いただきたいということを強く念願いたしております。  いまの特定繊維工業、現行特定繊維工業の措置法につきまして若干振り返って回顧いたしてみますと、四十四年度からわれわれはその指定業種となりまして、これによって設備改善その他をやってまいりましたが、設備に投じた金額は約二百七十億円、その結果、設備は相当自動化し、連続化し、省力化されてまいりまして、染色技術も一段と向上いたしまして、わが国繊維産業の発展に貢献し得たものと確信しまして、また、国際競争力も十分に強化されたものと信じております。  これにつきまして、若干数字をもって実証いたしますと、一人当たりの物的生産性は、構造改善事業実施前の四十三年には九万二千メートルでございましたが、四十八年には十一万七千メートルにふえております。すなわち、二七%の上昇を見たのであります。また、付加価値生産性におきましては、一人当たり百十二万円から二百二十五万六千円と二倍強の増額を見ております。しかしながら、その間、対米繊維の輸出規制、円の大幅の切り上げ、発展途上国に対する特恵関税の供与、近くはアラブ諸国による原油の輸出削減等、日本を取り巻く環境が大きく変化いたしまして、国際競争力の強化を主目的とした従来の構造改善策のみをもってしては、大きく動いておる激動のこの現下の情勢には対処し切れぬ事態に立ち至っておると観察されます。  それが、今回の改正法案は、知識集約型産業として消費動向を的確に把握し、消費者の希望する高付加価値のファッション製品供給するために、異業種間にわたる生産、販売各部門の有機的な結合によるグループの結成を前提とした体質改善目的としておりまして、今後の繊維産業の進むべき方向を明確に指示しており、その内容も最も時宜に適したものと思量いたします。  それにつけ、製品の高付加価値化、ファッション化のための情報収集、技術の開拓等に当協会の負うべき責務のきわめて重大なることを痛感するものでありまして、われわれはその負託にこたえるべく、一そうの努力を傾ける覚悟でございます。  次に、取引条件改善の問題でありますが、受託加工工業である染色業は、発注者との間に力関係もあって、いまなお一方的な不合理な取引条件下に置かれている場合が多く、現行構造改善事業の一環としてその改善を要求し続けてまいりましたが、遺憾ながらいまだにその成果は得られないで今日に至っております。それが今回の改正法案によりまして、適切な指針が出され、改善の実があがることになれば、われわれ受託加工業者にとっては長年の宿願が達成されることになりますので、その早期の実現を切望してやみません。  次に私は、せっかくこの与えられた機会でございますので、わが業界の現下の緊急事態についてひとつ御報告申し上げたいのでございます。会の初めにあたりまして委員長からもおことばございましたごとく、そういうことを私がここに御報告申し上げて、御聴取願いたいと存ずるのでございます。  すでに先生方は十分御承知のことと思いますが、当業界は今日、未曽有不況に直面しており、最近、倒産企業も発生し、また多数の企業もその寸前にあると言っても間違いない。月々の決算はみんな赤字である、一社として黒字決算しているところはないということは、いつわらぬ事実でございます。  昨年度の繊維産業は、有史以来の高収益をあげた部門もあるやに承知いたしておりますが、そのときにおいてすら染色業界はその恩恵に浴するところがほとんどなく、重油、染料をはじめとする諸原材料並びに異常な人件費の高騰、公害防止設備の拡充等により、原価はいやが上にも上昇し、各発注者に対しまして加工料金の値上げを強く要望したのでありますが、結果は、その一部がわずかの値上げを認められたのみで、中には逆に引き下げられたものもある。現在でははなはだしい不採算におちいっております。  さらに総需要抑制のための金融引き締めが浸透し、支払い手形の期日は短縮され、受け取り手形は逆に長期化する、ために、運転資金は枯渇、逼迫しておりまして、緊急融資の希望には切実なるものがございます。  それにつけ、前年度末に中小企業に対して緊急融資措置がとられましたが、中堅企業——さき申しました中小企業よりかやや大きい中堅企業でございます。に対しましては、これがその対象からはずされております。新法案による知識集約化のためには、新製品開発能力と、ファッション産業化に最も貢献度の高い実行力あるところの中堅企業を度外視しては、とうていその目的は達しがたいのでございますから、したがいまして、その意味におきまして中堅企業に対しても、その目的のために対米政府間協定における救済融資の場合同様、中小企業並みの特別の御配慮をお願いいたしたいのであります。  また中小企業におきましても、資金需要量が大きいため、政府系の金融機関の貸し出し限度ワクを超えるものが多く、一般市中からの借り入れが通例となっておりますので、この機会中小企業向け金融機関の企業当たりの限度ワクの拡大あるいは担保条件の緩和とあわせて、一般市中からの借り入れについても何らかの御援助をいただきたいのであります。  最後に、現下の極度の不況を打開するため、業界といたしましては必死の努力をいたしますが、その経営はきわめて困窮いたしておりますので、従来御融資を受けました構造改善資金、対米救済融資並びに公害防止設備融資等につきましても、その返済を少なくとも一年間延期するということについての格別の御配慮をお願いいたしたいのでございます。  なお、現在、繊維製品輸入が問題になっておりますが、われわれ染色業界においては、現在、その加工されたものの輸入量は微々たるものでございますけれどもが、遠からぬ将来におきまして、これもだんだんと増加することを予想いたしますので、この点につきましても、綿工連等その他でいろいろ強く要望していることについて、私たちも同様の考えを持っているのでございますので、前の参考人の方がおっしゃられたごとく、すなわち、秩序ある輸入ということにつきましては、われわれといたしましても特に要望いたしたいんでございます。  私、考えますのに、日本が過去におきまして、繊維工業は非常に強い、国際競争力はもう抜群であるというような、いささか自己満足のために今日の発展途上国に対する特別の輸入とか、特恵とか、それは、あるいは関税率の問題とかいうものにおきましてやや甘きに過ぎていたのではないかと考えますので、これを今日の自由経済、自由貿易のもとにおいてさようなことを申すことはいささか当を得ないかもしれませんけれどもが、何らかのこれに対する措置考えていただかなければ、将来のわが国繊維産業の存立は危ぶまれるということを懸念するものでございます。  以上をもちまして、私の意見並びに報告を終わりまして、このような機会を与えられましたことに厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。
  39. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうもありがとうございました。  次に井上参考人にお願いいたします。
  40. 井上甫

    参考人(井上甫君) 私は、全繊同盟副書記長の井上でございます。  本日の委員会参考人として意見を述べる機会を与えられましたことは、私の最も光栄といたすところでございます。  この法案についての意見を申し上げる前に、現在吹き荒れている繊維不況について一言触れてみたいと思います。なぜかと申しますと、常に市況に左右され、そして、好不況の波の激しいわが国繊維産業の体質と、今次の構造改善の具体化とはきわめて密接な関連があるからでございます。  私どもの組織であります全繊同盟は、組合員数五十六万名、組合数にして千七百、事業所数で約四千を数え、傘下には化合繊、綿紡、羊毛、麻、生糸などの原料素材部門から、紡績段階、そして織布、撚糸、染色整理、縫製、メリヤス等の二次加工及び最終仕上げ工程までの労働者、並びに繊維流通を含む多数の労働者がおりまして、その中でも今次の繊維不況影響を最も強く受けております中小零細企業の労働者が数多くいるわけでございます。  御承知のように、今日の不況を招来した原因につきましては、昨年の好況時に際しましての需給関係を無視した過剰生産あるいは輸入の急増にありましたし、さらにまた、インフレ抑制のためにとられた金融引き締め政策によって仮需要が低下し、また、今日の狂乱物価から生活を守ろうとする消費者の買い控え傾向などから実需要が減退したことによるものであります。  また、基本的には、宿命的な繊維業界の過当競争と政府の金融政策の結果でありまして、特に過剰流動性の問題が引き金となって豊富な資金力を活用し、そして、過当輸入をあおったいわゆる総合商社の無秩序な行動にあることは言うまでもございません。  このため現在、繊維の各業種は軒並み操業短縮に追い込まれておりまして、特に中小零細企業は、受注の減少あるいは加工賃の低下、さらに金融引き締め影響によって在庫の増大等によりまして経営内容は悪化し、満足な賃金すら払えない企業もありますし、また同時に、深刻な雇用不安を生じているわけでございます。  そこで、私どもはたびたび政府当局に対しまして雇用の安定策、あるいはまた中小零細企業に対する特別金融措置などにつきまして要請してまいりました。この機会に再度私どもがいままで要請してきた点を申し上げてみたいと思うわけであります。  まず第一は、労働者に雇用不安を与えないよう万全の措置を講ずるということであります。  第二は、中小零細企業操業短縮を余儀なくされるような場合の資金的なてこ入れ、あるいは在庫投資の充実などについて緊急融資ワクを拡大すること。  第三は、これらの企業に対して政府関係金融機関からの借り入れ金の返済繰り延べを行なうこと。  第四は、取引条件、特に大企業中小企業間の取引条件悪化防止と改善のための行政指導を行なうことなどでありました。  もちろん、私どもこれらの対策を実施していく過程におきまして、繊維産業は、これで内在する問題の抜本的な解決になるとは考えませんし、このようなことが繰り返されないためにも、今次のこの法案というものに非常に私ども深い関心を払っておりますし、同時に、この早期実現を心から期待している次第でございます。  そこで私は、この法案の具体的な運用に際して、以下六項目について十分これに留意されまして、でき得れば附帯決議とされるよう諸先生方の御協力を切にお願いする次第でございます。  まず第一点といたしましては、繊維事業の改善を行なうに際しまして、これに籍口した労働者への犠牲しわ寄せは絶対に認められないということであります。特に、この法案にもございますけれども構造改善を推進する過程で、当該企業の中から転廃業者が出るような場合におきましては、労働者に雇用不安を与えないよう、さらにその救済策につきましても、きめのこまかい対策を立てるよう十分配慮すべきだと思います。さらにまた、繊維政策の基本というものは、単に構造改善だけやればそれで済むことでありませんし、また、単に企業の体質強化というだけでは不十分でございます。やはり基本的には、繊維労働者の生活が十分守られるということが特に重要な前提であることを強調したいと思う次第でございます。  それから第二点は、今次の構造改善に関連いたしまして、いわゆる付加価値の高い商品の生産、さらにまた、知識集約化をはかるということが明らかにされております。しかし、どうも現在の繊維中小零細企業の実態からいたしまして、その具体化はなかなか困難でございます。特に人材の育成、あるいは技術開発、情報収集、そしてまたその迅速な処理などにつきまして、非常に問題ありますけれども、その実効性のあがるような対策をぜひ心から期待するわけでございます。  しかし、われわれ繊維産業にも多くの問題点があることは、これは事実でございます。たとえて申し上げますと、現在、繊維企業の多くは、繊維品に関する消費者の選択行動というものを十分に把握しておりませんし、単に消費を刺激するだけのいわゆるファッションに振り回されまして、結果的に製品やライフサイクルを短くしてしまったり、そしてまた、多くの売り残りを生ずるというむだの繰り返しがあることも事実でございます。これでは、いわゆる日本が今後省資源の方向に進むことに逆行いたしますし、いたずらに消費者混乱させ、そして、自分で自分の首を締めてしまうというふうな結果の繰り返しもございます。このようなことは、基本的には中小企業の体質強化という問題にございますけれども、特にこの法案に関連して申し上げますならば、産地と主要都市との情報ネットのシステム化とか、あるいは消費動向の具体的な把握、さらに、そのアフターケアをできるような組織の確立が大切でございますし、特にそのためにも、いわゆる情報センターの設立について、もっとこれを促進するようにぜひお願いしたいと思います。  第三点は、取引条件改善という問題でございます。従前から、繊維品の取引の実例として見込み受注生産が多いところから、返品率が非常に高くて、また、季節的なダンピング、いわゆるバーゲンセールというものが繰り返されてきているのが事実であります。もちろん私ども良質にして安い品物が消費者の手に渡ることは、当然生産労働者としての喜びでありますけれども、しかし、われわれの汗の結晶である製品が、ちまたでいわゆる投げ売りされているという事実を見るにつけまして、大きな憤りすら覚えるわけでございます。特に中小零細企業の場合は、大企業や大商社の圧力によりまして、取引条件が非常に不利な立場に追いやられております。前の参考人の方も御指摘のように、たとえば、手形決済の期間の問題でありますとか、あるいは加工賃の問題でありますとか、いろいろの問題があるわけでございますので、ぜひこれの改善のための積極的な指導を進められることをお願いする次第でございます。  それから第四点は、いわゆる商品取引所のあり方という問題であります。現在、この取引所の問題につきましては、各方面から問題点が指摘されておりますし、また、多くの論議を呼んでまいりました。このほど定期市場小委員会でもって一応この取引所につきまして答申が出され、改革の方向が明らかにされておりますけれども、われわれといたしましては、まだ不満足の問題があるということを率直に指摘したいと思うわけであります。たとえば、今日の取引所のあり方を見ましても、高値に際しての規制はありましても、安値の場合にはどうするのか非常に不明確でありますし、ともしますと、これがいわゆる投機の対象とされまして、しかもそれが職場における生産性向上とは全く無関係な中で行なわれている。これではせっかくまじめな労働者の勤労意欲というものも喪失してしまいますし、また、いま一番問題になっておりますこの物価対策の面からいたしましても、決して好ましいことではないわけであります。  現在、諸外国の例を見ますと、天然繊維原料につきましては、これが定期市場に上場されておりますけれども繊維製品の上場されている例はきわめて少ないようでございます。ところがわが国の場合は、繊維製品がその取引の中心になっておりますし、このことは、日本繊維産業構造自体、あるいはまた市況産業としての位置づけというものの中から当然生み出されてきた政策上の欠陥に根ざすものではなかろうか、そういうふうに私ども考えておりますので、ぜひ今後とも取引所のあり方につきまして抜本的な検討を進めることを、これまた切にお願いする次第でございます。  それから第五点は、繊維工業の構造改善にあたりまして、これを単に繊維工業の問題だけに限定することでは不十分でございます。すなわち、生産から消費、いわゆる流通段階を含めました一貫した組織の問題までメスを入れなければ、幾らいい構造改善案を出しても、しり抜けになってしまうということを非常に危惧するわけであります。従来から私ども幾多の体験で構造改善が行なわれてきましたし、十分とは言えないまでも、特に生産段階における合理化、近代化というものは進んでいることは、これは率直に認めます。しかし、最終製品として消費者の手に渡るまでの流通経路につきましては、依然としてこれが放置されたままになっております。したがいまして、幾ら生産段階において労使が協力して生産性向上に励んだといたしましても、結局、消費者はいたずらに高い品物を買わされてしまう、こういうような矛盾というものについて、私どもこれをそのまま黙視することができないわけであります。したがいまして、どうぞこの構造改善の問題に関連いたしまして、引き続き取引所の問題でありますとか、あるいは流通機構改善の問題をぜひ並行的に取り上げられることを、心からお願いする次第でございます。  最後、第六点は、いわゆる企業海外進出の問題でありますが、わが国からの繊維企業海外進出は、ここ二、三年来急にふえております。しかし、これは言うまでもございませんけれども、いわゆる利潤追求、そしてまた、安い労働力を求めるというような形での無秩序な海外進出は、いたずらに進出先国におけるナショナリズムの総スカンを食うというのは、これはもう周知の事実でございます。そこで、私ども前から主張していることでございますが、企業海外進出に際しましては、ただ安い労働力を求めて進出するというような企業に対しては、これを厳重に規制する、そうして、それをチェックする具体的な方策をぜひ講じていただきたいと思いますし、特に進出先国における経済発展、そして福祉の増進ということを優先する経営姿勢の確立という問題について、ぜひ強い指導をされることを要請する次第でございます。  それと、たびたび問題になっております現在の輸出の急増の問題に関連いたしますけれども、このような海外進出企業の増大から逆に安い品物が入ってくるというようなこともこれから、現に起こっていることでもありますし、また、起こりつつある点でもございます。そのことが御存じのように今日の中小企業というものを圧迫する原因になっておりますし、私どもといたしましては、いわゆる無秩序な行動というものは、これは認められない。そして、いわゆるガットの原則というものに基づいた公正な貿易体制をつくっていくということに、ぜひ努力すべきであろうと思います。ただ、私ども労働組合の立場から、過般、日米繊維交渉をめぐりまして全繊同盟も強力な反対行動をとりました。しかし、私どもただいたずらに輸入制限措置を講ずるということには反対であります。基本的には国際分業の原則というものは、これは当然踏襲すべきだと思います。しかし、いかなる場合におきましても、いわゆる国際公正労働基準というものの確立が前提であります。したがいまして、当該国の労働者に深刻な雇用不安を生ずるとか、あるいは失業というものが増大しているというようなことを全然無視してまで輸入がされるということにつきましては、これは労働組合の立場からも反対の意思を表明せざるを得ないわけであります。  以上、六点について御要望申し上げる次第でございますけれども、なお、私ども去る九日に全繊同盟の中央委員会を開催いたしまして、ここで繊維中小企業の危機突破に関する決議を採択し、直ちに請願行動を起こしておる次第でございますが、ぜひこの趣旨も十分にしんしゃくされまして、今後とも適切な対策を講じていただくことを心からお願いいたしまして、はなはだ簡単でございますけれども、私の参考人としての意見にかえる次第でございます。  ありがとうございました。
  41. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の陳述は終わりました。     —————————————
  42. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、竹田現照君が委員辞任され、その補欠として辻一彦が選任されました。     —————————————
  43. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) これから参考人方々に対する質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  44. 辻一彦

    ○辻一彦君 ちょっと私、ほかの件であとに参ったものですから、途中になりまして申しわけないと思います。それで、お尋ねすることが、あるいは非常に具体的にお述べになったことであるかもわからないと思うんですが、衆議院等で各界代表の方がそれぞれ述べられていることも拝見しておりますので、それらをひとつ参考にさしていただいて伺いたいと思います。  日本絹人繊の土田さんにお伺いしたいのですけれども一つは、産地に構造改善というのがずっと、かなりな期間政府資金を投入してだいぶ進んでまいりました。そういう場合に私、幾つかの産地を大まかに見てみると、中規模以上のかなり大きなほうには、階層的にそういう資金が流れてかなり構革が進んでいる。しかし、なかなか小さいところに、零細、小というほうにはいろんな条件がそろわなくて、実質的には、せっかく産地へ構革資金が流れても活用できない、こういう姿が多かったように思いますが、これらの実態はお考えになってどういう感じを持っておられるか。私は、ここにも強くならないとなかなかいかないのじゃないかと思うんです。特繊法改正案はこの欠陥を埋めるために中身があると思うんですが、その点のひとつお考えを伺いたいと思います。  それからもう一つは、ジェットルームというか、高速の織機がはやっております。そうしますと、片方では福井あたりの産地でも、操短でもしなければいまどうもならぬと、こういっているんですが、ジェットルームがはやれば返済資金に追われるという点があろうと思うんです。それで三交代でやっているわけですね。そうなりますと、片方で高速の織機が三交代で動いている。片方では、小さいところでは操短を心配しているということは、どうもつり合いがとれないように思うんですが、ここらを全体としてどういうふうにお考えになるか、この点まず二点、ちょっとお伺いしたいと思います。
  45. 土田哲治良

    参考人土田哲治良君) 辻先生の御質問に対してお答えになるかどうか、わからぬですけれども、産地の構革の進みぐあいは、これはもう産地ごとに非常に模様が変わっておると思います。御指摘のように、零細業者に対して、はたしてそれが浸透しておるのかどうかという御心配をいただいておると思いますけれども、スクラップ・アンド・ビルドということが、非常に各産地ともこれが問題になりました、最初の第一次の構革につきましては。そのことで、まあ丹後のことを申し上げますとたいへん恐縮でございますけれども、丹後は、そのスクラップ・アンド・ビルドがひっかかったために、どうしても国の構革に乗れなかったという事情もございまして、その点につきましては、今度は、新法をいまお考えをいただいておりますにつきましては、それが上のせはないということになってまいりますので、これは当初に委員長のほうから御指名をいただきまして申し上げました中にも、それがなくなっておるので、非常に乗りやすいということが申し上げられると思います。  それからジェットルーム、何かいろいろこれは各業界、染色のほうもおっしゃいましたけれども、非常に性能が向上してまいりまして、おっしゃいましたようにジェットルームで、三交代でじゃんじゃんやって、いわゆる全繊のほうからも先ほど御指摘がありましたけれども、需給関係を無視した生産増加がきょうの不況の一因にもなっているんじゃないかということは確かだろうと思います。この辺につきましては、いまの労務事情で考えますならば、当然、産地には産地なりのそういう動きは今後も続くであろうというふうにわれわれ思っておりますし、人絹、化合繊の産地はそういうことだと思いますけれども、ちりめんを織ります産地は、ほとんどが小幅の織機が多数でございますので、そういうところでは、いわゆる三交代制なんということは思いも寄らぬわけでございます。それどころか、家労法にうたっておりますように、適用事業所並みの八時間操業で、土、日連休制をやって大幅な減産をやっても、なおかつ、市況が一向に回復しないというような状況でございます。  お答えになったかどうかわからぬですけれども、以上です。
  46. 辻一彦

    ○辻一彦君 もう一つお伺いしたいのですが、産地によってもいろいろ中身は違いますから、いまのはよくわかりました。  それから現在、原糸高で製品が安く荷が動かない。北陸の産地なんかは、農村の農協の倉庫にまで織った製品を詰めておるということで、滞貨というものが非常に大きいわけです。このことにお触れになったと思うのですが、滞貨の状況を脱さないと全体がなかなか動いていかないと思うのです。これは政策のほうで考えるべきことでありますが、滞貨をある程度動かしていくについての先ほど御提言があったならば、それを私聞かずにおったので、たいへん恐縮でありますが、まだお触れになっていないのであったら、ちょっとお伺いいたしたい。
  47. 土田哲治良

    参考人土田哲治良君) 御指摘のように、完全に糸高の製品安と申し上げていいと思います。しかし、糸高と申し上げましても、これは農林省のほうの管轄になりますけれども、生糸は大体一万円という、ほぼかんぬきが入っておりまして、それ以下には下がりもしないし、いまの生糸の需給状況から考えまして、一万円を大幅に飛び越して上がるというふうにも考えられません。絹織物につきましては、ちりめんで申し上げますならば、いま織っております織物、ちりめんでは大体九百グラムぐらいのものを織りますと、生糸代がキロ一万円と見まして九千円、その九千円にもならぬというような製品安の状態が起こっております。それでありますので、これが来月も、まだ六、七月このような状態が来るといたしますと、ほかの参考人の方もおっしゃいますけれども、当然倒産の連鎖が起こってくるという、非常に不安を持っておりますわけでございます。糸高といいますことにつきましての不安はございませんけれども製品の滞貨のほうから考えますと、これは滞貨しようにも資金がないということが現実だというふうに思います。ちりめんにたとえますと、ほとんど産地から織りましたものは、集散地である京都、東京、名古屋方面に出まして、そして染め、加工をして消費者の手に渡りますけれども、その流通過程におきます在庫もいまではそんなにたいしたものはないと思います。そのように考えております。
  48. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは絹人繊と言っても、合繊とはかなり状況が違いますので、またあとにいたしたいと思います。  それから、井上さんにちょっとお伺いしたいんですけれども、午前中も繊維製品輸入の問題についていろいろな論議があったわけですが、きょうも皆さんずっとお見えになったんですが、午前中かなり強力に輸入規制をせよという御意見もありましたし、ほとんどの方は大体秩序ある輸入をと、こういう表現であったと思うんですね。そこで、海外企業の進出にも触れられておりますが、わが国から資本が出て合併会社をつくって、現地の安い労力を使って製品をつくって、その逆輸入をして、それでみずから首を締めているという状況がかなり多いと思うんですが、これらについて、秩序ある輸入といえば何らかの意味輸入についての規制というか、何らかの手が考えられないと、なかなか秩序ある輸入というものもむずかしいとも思うんです。私も全面的な規制とか、そういうことは当然やるべきものではないとは思いますが、しかしそこらを、なかなかむずかしい問題ですが、どういうふうにお考えになっておるか、もう一度お伺いしたいと思います。
  49. 井上甫

    参考人(井上甫君) いまの先生の御質問でありますが、私ども、かつて、日米繊維交渉の際にいろいろ問題がありまして、労働組合の立場からいろいろ行動を起こしました。そのことを思い起こしてみますと、やはり労働者の立場でするならば、日本からの、いわば日本からすると輸出ですけれども、それがたとえばアメリカ全体の三%程度のものでしかなくて、そして失業の増大がどうして起こるのかということについてまず疑問を投げかけたわけであります。そういう点をいろいろ思い起こしてみますと、基本的には、その国の労働者に非常に大きな犠牲があるという場合については、これは労働組合の立場からしても、やはり、秩序ある制限措置というものも当然考えなきゃいかぬと思うわけです。  ただ、いま問題になっているのは、いわゆる発展途上の国々から入ってくる品物についての問題でありますけれども、これも基本的にはガットのセーフガード条項を適用するというような、いわばガットの原則というものを通じて、これをいろいろコントロールするという方法は一つ可能でありますけれども、ただ、いたずらに制限措置をとるということは、これは私どもとしても、そのままこれを認めるわけにいかぬわけであります。  そこで、労働組合の立場から特に強調しておりますのは、私は先ほど国際公正労働基準ということを申し上げたんですが、たとえば、各国にはいろいろ労働関係法がございますし、はたしてその労働者は労働運動の自由が認められているのかどうか、そういうことも全然度外視した中で、安い賃金で品物をつくってどんどん輸入してくるということについては、これはとてもわれわれとしては容認できない。あるいはまた、これも非常にむずかしいんですが、適正な労働条件であるのかどうか、あるいはILOの条約、あるいは勧告というものについてどういうような反応を政府、経営者が示しているのか。さらにまた、非常に重要な問題ですけれども、たとえば、最低賃金制というようなものがほんとうに実効ある措置として行なわれているのかどうか、むしろそういう点をわれわれとしては大いに強調する中で、適正なその競争条件というものをつくるべきじゃなかろうか。ですから、そのためには私ども労働組合間の国際連帯、国際的な話し合いの場を通じてぜひそういうことをアピールしていきたいと、このように考えているわけです。
  50. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ、土田さんにお伺いしましょう。  丹後のちりめんのことは新聞にもちょこちょこ出ておりまして、よく存じておりますが、非常に零細企業が多いということです。それで、いま最後に六項目の緊急の要求、要望事項がございましたので、これにつきましてちょっと質問します。  まず、休業補償のことですが、いまどの程度休業なさっていらっしゃるのか。新聞等には「一斉休業」なんて大きな見出し等も出ておるようですが、それでその休業の度合い、それからいままで休業補償につきましてはどうなさっていらっしゃるのか、政府に要望をしていらっしゃることはどういうことなのか、それが一つ。  それから、いまどこを歩いても、人に話をすると金を貸せというようなことばっかりで、私どもも非常に一面においては困った面もあるんですが、それは政府があまり出しておらぬものでね。それで、現在までどの程度近代化資金のいわゆる借り入れ金が残っておるのか。ドル・ショック後、何回か繊維業界にもいっておるはずですが、その返済の状況、それから、今後どの程度融資を要望されているのか。なお、融資となりますと、当然これは担保とかそういうものが要るわけで、そういうような担保力等がほんとうにどうなっているのか。もう担保もみな出してしもうて、ほんとう言ったらただで貸してくれぬかと、このような気持ちが多いようですから私はこまかいこと聞きますけれどもね。  さらに、輸入の制限ということですが、これはけさほどからありました二、三年前は輸出のほうを秩序よくやれと、今度は輸入のほうを秩序よく輸入せいということで立場が変わったんですが、まあ輸出の秩序ある輸出、これも非常にまたむずかしい問題でしたが、今度は輸入の秩序ある輸入ですか、これはけさ問題になって、これはことばの表現の上ではそういうふうになりますが、じゃ、具体的にどういうことをやるとなりますと、まだ固まっていらっしゃらないようだし、結局、いろいろの話し合いでむちゃくちゃな輸入はやめろということですけれども、これが具体的には非常にむずかしいと思うんです。それと、去年あたりかなり輸入がふえた、これも政府の外貨減らしという点もあって、それじゃ今後、去年みたいな大量の輸入があるだろうかということは、これは石油も買わなけりゃなりませんで、そういう外貨の面からもそうむちゃくちゃはできぬのじゃないかと思います。  それで、丹後ちりめんに一番影響のあるのは韓国のちりめんだというようなことも聞いております。これがあなたのほうの生産量のどの程度、何%ぐらいになっているのか、どの程度影響力があるのか。  それから、滞貨の問題がいま少し出ましたけれども、一体滞貨はどの程度ありますのか。新聞等をちょっと見てみますると、八万反ぐらいはストックされておると書いてありますけれども、その辺の実情をお知らせいただいたら、今後の国会のほうでまた審議もございますので、参考にさしていただきます。
  51. 土田哲治良

    参考人土田哲治良君) 休業補償につきましては、従来からずうっともう年中行事のように休機をやってまいりました。で、組合できめまして、大体一日紋の機で一台八百円、無地で六百円程度のものを、休機した場合には賃機に支払うというようなことがずうっと続いてまいりました。ところが、一斉封緘休機というようなことをやりますと、公取からすぐに横やりを入れられまして、一斉封緘、いわゆる強制休機というふうなことが、これがやりにくくなったということはもう諸先生方政府の御当局も十分御理解いただけると思います。だからやむを得ず、いま新聞のことについて先生からも御発言がありましたけれども、多少、一カ月間一斉休機をするというような打ち出し方をしておりますけれども、実質はあくまで自主休機ということでございます。そこで、とまっております機台は、率で申し上げますと、これはきょう来るまでには、まだ一日現在の休機台数よりわかっておりませんけれども、六五%、白の機で約二万八千台のうち六五%、一万八千台ぐらいでございますか、そのくらいがとまっております。七日以降につきましては、多少この率が、六五%が落ちてくるだろうというふうに思っております。その三五%稼動しております織機は、じや、はたして売れてやっておるのかどうかということになりますと、多少約定が先にできておるものもありますけれども、いわゆる自転車操業で、支払い手形を決済する上においてはどうしても休むに休めないというものがこの三五%の中にあるということ、これは事実でございます。  で、政府に対してどういう要望をしておるのかということはあとにいたしまして、現在政府系の金融機関から丹後が借りておりまするのが、この間調査をいたしますと、ドル・ショックのときの金も入れまして約三百六十億ほどだと思います。このものを何とかこの際一定期間を延ばしていただいて、返済の猶予、条件変更をお願いしたいということを、これは各党の先生方にも、地区選出の先生ではありますけれども、そういうことをいまお願いをしておりまするわけでございます。大体一カ月休みますと、生糸の決済資金が八十億ばかり要りますものですから、どうしてもそういうものでお助けをいただかぬと、機をとめるにもとめられないというような状況でございます。  融資の要望額につきましてもあれでございますけれども、あまり巨額のものをお願いをしても、とても出していただけないであろうというふうに覚悟もいたしておりますし、先生も御指摘いただきましたように、いわゆる担保余力がはたしてあるかどうかということが非常にわれわれといたしましても心痛の種でありまして、きのうも通産のほうから岐阜県のほうへお越しをいただきまして、全国の商品産地の代表を呼びましたその席で、いろいろ御説明を聞きますと、都市銀行なり地方銀行なりを通じてお出しいただくというような予定も多少ありますようでございますけれども、これはあくまで製品を担保でないと出さない。そして、それはいわゆる転貸融資であって、組合に貸して組合の役員が連判して、その上に担保を取らないと銀行は金を出さぬぞということを大体お聞かせをいただいておりまして、実にこれは銀行もずる賢いというふうにわれわれは受け取っております。で、何といたしましても、政府系の金融機関三金庫を通じて金を出していただいて、いわゆる担保の見直しということも当然お考えをいただきたいと思いますし、レートの問題もありますし、いろいろと今後この法案をお通しいただきましたあとで、時を移さずこういう問題につきまして、あらためてお助けいただくような陳情を続ける努力をする必要があるというふうに思っております。  で、中国、韓国からの輸入の制限についての、丹後も多少影響を受けておるだろうという御心配をいただいておりますけれども、確かに丹後が一番影響を受けますのは韓国の製品だと思います。中国から入ってきますものは、おそらく裏生地の、いわゆる表生地ではなしに、裏生地の羽二重とか裏絹とかそういう産地が直撃弾を受ける。しかし、そういう産地にしましても、表がかりによくなれば、裏から表へ転換をする産地もかなりありますわけで、そういうことで、相互の足の引っぱり合いみたいな事態が今後は起きるのではないかという心配をいたしております。  滞貨のことは、先ほどちょっと申し上げましたけれども、これは、そんなに御心配いただくような滞貨は産地にございませんし、先ほど先生もおっしゃいましたように、組合が担保融資をいたしております額が約十億程度のもので、反数で八万反と先生おっしゃいましたですけれども、八万から十万程度のものが出たり入ったりしておる程度だと思います。その程度でございますので、お答えになったかどうかわからぬですけれども
  52. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで休業補償のことで、いま衆議院の社会労働委員会で雇用保険法というのが審議をされて成立、修正で通っているのですがね、まだ参議院ではやっておりませんが。それがこれに適用されるということも聞いておるわけです。その内容は、この休業の場合、御存じでしょうけれども、雇用調整交付金というものが六割以上もらえる。その場合に、中小企業の場合、三分の二は政府が補助する。ただし、これは施行は五十年四月からですから、これに準じて現在の、現行法の福祉施設給付金、この中からそういうような率で出されることになったわけですけれども、なったって、参議院にはまだ来ておりませんが、これに対して御意見はどうなんですか。あなたの要望は、全部政府で出してくれとおっしゃるのか。全額でも多少その辺はむずかしいかもしれませんが、いかがですか、ちょっと参考に聞いておきます。
  53. 土田哲治良

    参考人土田哲治良君) 福祉施設給付金ということは、きょうこの席へ出さしていただきまして初めて耳にしましたことで、まだ日絹のほうでもそういうことは全然聞いていないということであります。こういうものを衆議院でお通しいただきまして、参議院で今後御審議いただくと、そういうわけでございますか。
  54. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうです。
  55. 土田哲治良

    参考人土田哲治良君) そういうものが通りましたら、いわゆる零細企業または業者に対する休機の際の補給金的なものが、こういうものでどういうふうに利用さしていただくかどうかということについて、通産のほうからもまだ何もお聞きいたしておりませんので、できることなら、こういうことはぜひお通しいただきまして、われわれも活用させていただきたいということだけをお願い申し上げておきます。
  56. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ、あとで勉強してください。
  57. 土田哲治良

    参考人土田哲治良君) はい。
  58. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 伊東さん、タオルのことについてですけど、現在のタオルの場合には、糸買い、製品売り、きわめてはっきりした形で荷動きがするわけだけど、製品価格といわゆる原価との関係が現在どうなっておるか……。
  59. 伊東壮晃

    参考人(伊東壮晃君) タオルの場合は大きく分けますと、あとざらしというのと先ざらしというのの二つに分かれます。そのほか説明いたさないとわかりにくいかとも思いますが、一応あとざらし、これは大阪が主産地でありますが、そのあとざらしについて御説明申し上げます。  まず、ことしの一−三月と、それから四十八年の一−三月を比較して申し上げたいと思いますが、四十八年の一月が、糸代が、これはコリ当たりに換算いたしますが、七万九千六百六十七円、それから加工賃が七万七千七百二十九円、これを合算しましと、これがまあ原価になりますが、原価が十五万七千三百九十六円というのが一コリ製品の価格であります。これに対しまして、販売価格は一体どのくらいで売られているかといいますと、十三万三千六百九十六円がざっとまあ製品価格で、実際の販売がなされていたわけです。ことしのほうを比べてみますと、ことしの一月が、これは糸代が二十番手でありますので御承知おき願いたいと思います。糸代が十四万一千三百三十三円、それから工賃がかかりまして十万七千五十五円、合計製品原価が二十四万八千三百八十八円、これに対しまして販売価格は二十二万八千九百七十六円、ことしでもって大体コリ二万円ぐらいの赤字が一月はあったわけです。  二月を申し上げますと、まあ去年よりもことしだけ申し上げますと、四十九年の二月は、糸代が十三万二千三百三十三円、それから加工賃は同じでありまして十万七千五十五円、原価が二十三万九千三百八十八円、これに対して二月の販売価格は二十二万三千二百九十六円、一万六千円の赤字であります。  それから三月は、糸代が十二万八千三百三十三円、それから工賃は同じでありますが、製造原価が二十三万五千三百八十八円で、販売価格は二十万五百二十八円、約三万五千円の赤字になっておるわけです。  それから四月が、糸代が十二万三千百六十七円、それから工賃は、四月以降上がりましたので十一万六千二百八十五円、原価が二十三万九千四百五十二円、これに対しまして販売価格は十八万二千四十一円ということで、五万七千円の赤字というふうになっております。  五月がまだやっておりませんが、大体タオルは盆暮れ、いわゆる中元需要、それから歳暮の需要ということで、ギフト商品が多いわけでありますが、ギフト関係は、大体この四月からメーカーの段階で動くはずなんでありますが、動きが鈍いということで、こういうような価格構成になっておるわけであります。
  60. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 手形サイトが非常に延びておるということを仄聞するわけだけど、実態としてこれも産地によっていろいろ差があろうかと思いますが、一括して概括的に大体どういうことになっていますか。
  61. 伊東壮晃

    参考人(伊東壮晃君) 手形サイトにつきましては、普通といいますか、通常であれば大体九十日ということがいわれておりますが、実際的には出荷してから十日なり十五日なりおいたあとで、九十日ないし百日というふうな手形の発行になりますので、実質的には百日以上の手形サイトが実質行なわれております。  以上であります。
  62. 土田哲治良

    参考人土田哲治良君) ちょっと委員長。  非常にいい御質問をいただきましたので、私のほうからも、これぜひお聞きいただきたいと思います。生糸の原料を仕入れます場合は、手形サイトは大体六十日から七十日、それに三銭五厘ぐらいの金利を払って買っているわけです。ところがそれを製品にいたしまして室町なり名古屋、東京に売ります場合は、短いところは大体百五十日、これはもうごくわずかです。非常に内容のいいところは、そういうことでありますけれども一般的には二百日から二百十日、いわゆる台風手形はざらに出ておるというわけであります。それにつきましては、一銭の金利ももちろんつかぬ。手形を受け取ります前に、すでに十日とか十五日、月二回払いくらいなことはもう通例になっております。今度のこの法案で、ぜひともこのこともひとつきびしく御検討いただきまして、お考えを願いたいと思います。
  63. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 上田さん、ここの丹後の場合、特に零細性に富んでおるわけですね。だから個々の企業ということになると、いろいろな親企業その他の関係があって、単独の動きがしにくいかわからぬけど、いまのような手形のむちゃくちゃな状況について、業界として何かアクションを起こしたかどうかですね。たとえば、法的に言うなら支払い遅延防止法というものも現にあるわけです。これは九十日ですね。だからそれ以上ということになると、これは不当に中小零細企業を圧迫しておるということで、世に指弾を受けてしかるべきなんです。いままで往々にして中小零細企業の場合、報復措置をおそれて泣き寝入りしているというのが現状なんだけど、ここまでいくと、これ背に腹かえられぬということになるわけで、そのためには業界というものがあるわけですから、何らかのアクションを起こすほうが私はいいというより必要だし、やらなければいけないと思うんだけど、そういった措置を講じたことがあるかどうかですね。
  64. 土田哲治良

    参考人土田哲治良君) そのことにつきましては日絹工業会はもちろん、われわれ各産地は機会あるごとにこれは集散地に向かっていろいろ言っておりますわけです。売れ行きのいいときは多少サイトも短くなりますけれども、いわゆる需給のバランスがくずれてまいりますと、どうしてもそれが長くなってくる。特に今回の金融引き締め影響は、これをもうもろに産地がかぶっておるのが実情であろうというふうに思います。特に今回はひどいというわけで、先生が御指摘のように、非常に産地は規模は小さいにしましても、製品を手形で売って、そうしてそれに金利ももらえないというような状態でありますけれども、やっぱり内容のいいところへは、どうしても集中して売りつけるということが起こってまいりますので、買い手の思うままになる。これもいわゆるどうこういって表ざたにしてぶつけてまいりますと、いや、そんな文句を言うのだったら、ほかから幾らでも入るから買わない、いわゆる報復措置をすぐ受けるということが実情でございますので、今後もこれは一丸となってやってまいりますけれども、やっぱり産地と室町との力関係というものがそこではっきり出ておるように見ております。
  65. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 手形サイトは、各業界とも全部問題をかかえておることだと思うし、当然、これからの審議の過程で十分掘り下げでいかなければいかぬと思います。  もう一つ、今度は高岡さんにお聞きするわけだけど、私も染色については、高岡さん自身おっしゃったように、ことに油の関係をもろに受けておるわけで、染料それ自体が原料が石油から、燃料それ自体そうだし、いいところなかったということですが、現在機械染め、手染め、いろいろな業種によって状況は異なると思うけど、概括的に大体原料代はどのぐらいになっておるか、ウエートが、工賃との関係について、しろうと見でぱっとわかるようなデータがあれば、教えていただきたいと思います。
  66. 高岡定吉

    参考人(高岡定吉君) いま先生からよく御理解のある御質問を受けましたのですが、染色業というのは、おそらく繊維工業の中で最も油の問題で痛手をこうむっており、それから、公害問題でまた痛手をこうむっておるという業種でございます。したがいまして、さっきも申し上げましたごとく、そういうものの負担が非常にコストにかかってきまして、全くもとは高いが売るほうというのは、これは大体ほとんど加工賃でございますから加工賃仕事でございますが、その加工賃はなかなか上がらないという状況でございます。  いまの御質問の、どのくらいの原価とどのくらいの加工賃かということの比較でございますが、特にことしに入りましての重油、御承知のごとく、仕事が非常に蒸気を多量に使います関係上、重油の消費が多うございます。また、電力の消費も多うございます。それから、原料といたしましての染料、薬品、そういうものがございます。それからまた、四月からのいわゆる春闘によりますところの三二%からの高率の原価上昇、こういうものを総合いたしまして、いろいろその各ファクターの構成比率も詳しくございますが、そういう詳しいことはちょっとここで申し上げても御理解願えないので、ごくかいつまんだところを申しますと、大きく分けましてわれわれの仕事には染め、いわゆる無地染めと、それから捺染、それから、そのほかにまたさらしもございますが、現在はときによって、市況によりまして、無地染めがいいときに捺染が悪い、捺染が比較的いいときに無地染めが悪い、そういうことがどうも繰り返されておるようでございますが、現況におきましては捺染が非常に悪いのでございます。  全部を総合的に言いますと、原価は少なくとも三〇ないし四〇%ぐらい上昇いたしました。それに対しまして、これに見合うだけの加工料金の引き上げを猛烈に運動いたしますが、市況がはなはだよくない。市況と申しますことは、数量がまず減りました。数量が約三〇%は少なくなってきております。そういたしますと、われわれは設備を持ち、人をかかえ、工場を動かす、操業をするということがもう最大の眼目でございまして、もしそれ三〇%がさらに四〇%、五〇%ぐらい減産になりますと、全く破産におちいらざるを得ないような状況でございますが、できるだけ仕事をやりたいという欲望がみな各工場とも強いのでございます。そこで、そうしますと仕事の取り合い競争が起こりまして、これに対しては自主的にもっと慎重にビヘービアをよくして、そうしてお互いが少ない仕事も分け合って仕事をやるなれば、そうした加工料金まで大きな競争が起こらないはずでございますが、情けないかな、そういうことのコントロールも、人為的にも、それからまた実際の道義的にもできませんので、そういう競争のためにはなはだしく不当なる加工料金がいま行なわれております。そうしてまず内輪に、ごく内輪に見ましても、これはいま三〇%ぐらい加工料金を上げなければもうどうにもならぬ、——引き合わないということでございますが、それがとても上がらない。  そうして、昨年来ずっとコストは上がってきましたが、さっき申しますごとく、一月以後、一月からの油代の上昇、それから最近二度目のさらに重ねての油代、それから四月からの労務費、そういうもののために、いかに加工料金の引き上げ努力をいたしましても、相手さんは要するに安いところへ仕事は出す、これは当然の競争でございますが、そうした苛酷な競争下に置かれてわれわれが仕事をかき集めておるという現状におきましては、非常な大きな採算割れでございます。したがいまして、特に現在悪いところの捺染におきましては、コストが、ここに一つの地区の例をとりますと八十二円というコスト、これは一メートルでございますが、それに対して加工料金は六十円から六十五円、こうした大きな採算割れになっております。しかし、それでもなお仕事をせざるを得ない。大きな赤字を覚悟の上でする。  と申しますことは、コストを分析いたしますると、固定費が約ざっと五〇%、それからいわゆる変動費と申しますものが五〇%、固定費は、その中に固定したるところの常用の人件費を含まっておりますからして、仕事をしなくても固定費はかかりますので、極端なことを申しますると、五〇%の変動費とそれにプラス何がしかがあれば、工場を閉鎖しておるよりもこのほうが有利だというところまで競争が起こるというような現象が起こってくるのでございます。そういうことにさらされておりまして、いかに採算が悪く赤字が出ましょうとも、お互いが仕事をやりたいというような、非常に情けない状況におちいっておりまして、このままでは、さっきの私の供述にも申し上げましたごとく、最近の四月以降、四百三十四社というわれわれの企業がございますが、このうち一社といえども黒字の月例決算をやっておるところはないということは、私、もう断言できると思うのです。したがいまして、どれだけ損をしておるか、一体これはこのままでいくなれば、今年の末までにどれだけの企業が持ちこたえ得るかというような状態におちいっておるということを申し上げておきます。
  67. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 もう時間がずいぶん来ていますから。
  68. 佐田一郎

    ○佐田一郎君 伊東参考人にお願いしますが、先ほど藤井さんにお話しになった、原価を割ってお売りになっておるという、これは卸段階ですか。どういう機関、つまり流通関係に関連がありますが、卸関係、それから最終的な小売り価格はどのくらいしておるのか。おおよそでけっこうですが。
  69. 伊東壮晃

    参考人(伊東壮晃君) ただいまの御質問ですが、これはメーカー段階、卸に対する価格であります。  なお、小売りのほうは、私のほうで非常にわかりにくいと思うのですが、仄聞いたしますところによりますと、たとえば、末端価格で千円で売られているものは、従来は大体メーカーのところで五百円で売っていた。したがって、倍だったのが最近は倍でなくなった。要するに千円で売っていたものが、末端で千円で売られたものは、メーカーのところは四百五十円から四百円に、だんだんメーカーのところへしわ寄せが来ているというのが聞いている話なんです。余談な話になりましたが、そういう状況です。
  70. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 他に御発言がなければ、参考人方々に対する質疑はこれにて終了いたします。  参考人方々には、御多用中、長時間にわたり御出席をいただき、また、貴重なる御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。委員一同を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十分散会