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国務大臣(
中曽根康弘君)
特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を
改正する
法律案につきまして、その
提案理由及び
要旨を御
説明申し上げます。
繊維工業につきましては、これまで
特定繊維工業構造改善臨時措置法に基づきまして、紡績業及び織布業につきましては
昭和四十二年度から、メリヤス製造業及び染色整理業につきましては、
昭和四十四年度から、設備の近代化と過剰設備の処理、生産または経営の
規模の適正化等を
目的とする構造改善事業を実施してまいりました。この間、これらの業種における構造改善は、設備の近代化、過剰設備の処理等の面においてはかなりの成果をあげてまいりましたが、繊維工業全体を見ますと、なお、
企業数の過多及び企業
規模の過小の事態が依然として、解消していないこと、また、紡績から縫製等の最終製品の製造加工に至るまでの製造加工工程が長く、かつ、それらの各工程が別々の業種によってになわれているため、消費者情報が各製造加工工程の商品生産に十分反映されず、消費者のニーズに即応した商品を
供給するための体制が
整備されていないという構造上の問題点を内包しております。
加えて、最近の
わが国の繊維工業をめぐる
内外の環境は、まことにきびしいものがあります。すなわち、国際的には、東南アジア諸国を中心とする
発展途上国の繊維工業の急速な成長により、
わが国繊維工業の
国際競争力は急速に低下しております。また、
国内におきましては、労働力需給の逼迫による労働力不足、賃金の急
上昇等によるコストの
上昇等の諸問題に直面しているとともに、繊維製品に対する
需要動向の変化に対する迅速な対応を求められております。
繊維工業のかかる事態に対処して、繊維工業について、その内包している構造上の問題点を早急に解消するとともに、合理的な国際分業を
推進し得る十分な競争力を持った
発展性のある
産業として育成することは、国民
経済的な要請であると
考えますが、そのためには、従来のような紡績、織布等の業種別の構造改善を
推進するのみでは、必ずしも十分とは申せません。したがいまして、
政府といたしましては、昨年十一月の繊維工業
審議会及び
産業構造
審議会の答申の
趣旨を尊重して、
昭和四十九年度から
昭和五十三年度までの間、従来の同業種間の連携に加え、紡績、織布、染色整理、縫製等の異業種に属する企業間の有機的連携による新商品または、新技術の
開発の促進等を内容とする新しい構造改善事業を
推進することとし、これにより、付加価値の高い商品の生産を増大し、繊維工業の知識集約化をはかることといたしました。
この新しい構造改善対策は、
昭和四十九年度から
昭和五十三年度までの間行なうこととしており、その実施に必要な制度を
整備するため、このたび、この
法律案を提案いたした次第であります。
次に、この
法律案の
要旨を御
説明申し上げます。
第一は、法律の対象とする業種を従来の特定紡績業、特定織布業、メリヤス製造業、特定染色業の四業種から繊維工業全体に拡大することであります。なお、これに伴い、法律の題名を繊維工業構造改善臨時措置法に改めることとしております。
第二は、
通商産業大臣が、繊維工業の構造改善をはかるための繊維事業者に対する基本指針を定めるとともに、従来の特定繊維工業の構造改善に関する規定を改め、繊緩工業に属する事業を行なう者が、紡績、織布、染色整理、縫製等の各業種のうち他の業種に属する事業を行う者と連携して、または二以上の業種に属する事業を行なう組合が単独で、新商品または新技術の
開発、設備の近代化、生産または経営の
規模、または方式の適正化等の構造改善に関する事業を行なおうとするときは、構造改善事業計画を作成し、
通商産業大臣の承認を受けることができるものとしたことであります。
第三は、構造改善事業の
推進に必要な助成措置を設けたことであります。つまり、構造改善事業計画に従って構造改善事業を行なう者に対しては金融税制上の助成措置を講ずるほか、
通商産業大臣が繊維事業者等に対し必要に応じ指導及び助言を行なうこととしております。また、これらの
施策を講ずるにあたっては、小
規模繊維事業者に対して、特別の配慮をすることとしております。
第四は、
経済的事情の変化により事業活動に支障を生じている繊維事業者から事業の転換の申し出があったときは、
通商産業大臣が必要な指導及び援助を行なうこととしたことであります。
第五は、繊維工業構造改善事業
協会の
業務について、新しい構造改善事業の対象業種が繊維工業の全業種に拡大されたことに伴い、債務の保証の対象を繊維工業に属する事業にかかる構造改善事業に拡大するとともに、繊維事業者に対する技術指導に関する
業務及び繊維製品に関する情報の収集、処理、提供の
業務を
追加し、設備の処理に関する
業務を削ることであります。
第六は、新しい構造改善対策の実施期間に合わせて、法律の廃止期限を
昭和五十四年六月三十日までに五年間延長することであります。
以上が、この
法律案の
提案理由及びその
要旨であります。
何とぞ慎重に御
審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。