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1974-04-23 第72回国会 参議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十三日(火曜日)    午後一時十八分開会     —————————————    委員異動  四月十七日     辞任         補欠選任      鈴木美枝子君     安永 英雄君  四月二十二日     辞任         補欠選任      藤井 恒男君     高山 恒雄君  四月二十三日     辞任         補欠選任      安永 英雄君     宮之原貞光君      高山 恒雄君     藤井 恒男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         剱木 亨弘君     理 事                 佐田 一郎君                 竹内 藤男君                 大矢  正君     委 員                 小笠 公韶君                 大谷藤之助君                 細川 護煕君                 安田 隆明君                 竹田 現照君                 林  虎雄君                 宮之原貞光君                 中尾 辰義君                 高山 恒雄君                 須藤 五郎君    衆議院議員        発  議  者  左藤  恵君        発  議  者  板川 正吾君    政府委員        公正取引委員会        事務局取引部長  後藤 英輔君        通商産業政務次        官        楠  正俊君        通商産業省産業        政策局長     小松勇五郎君        通商産業省基礎        産業局長     飯塚 史郎君        通商産業省生活        産業局長     橋本 利一君        資源エネルギー        庁公益事業部長  岸田 文武君        中小企業庁長官  外山  弘君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        大蔵省関税局企        画課長      海原 公輝君        大蔵省関税局輸        入課長      大槻 章雄君        通商産業省生活        産業局総務課長  佐藤 兼二君        特許庁審査第一        部商標課長    石川 義雄君        自治省行政局地        域整備課長    広田 常雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小企業信用保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○伝統的工芸品産業の振興に関する法律案(衆議  院提出)     —————————————
  2. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十七日、鈴木美枝子君が委員辞任され、その補欠として安永英雄が選任されました。  また、昨二十二日、藤井恒男君が委員辞任され、その補欠として高山恒雄が選任されました。  また、本日、安永英雄君が委員辞任され、その補欠として宮之原貞光君が選任されました。     —————————————
  3. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続きこれより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 中尾辰義

    中尾辰義君 最初に、中小企業問題でお伺いします。  この前の委員会でもありましたとおりに、中小企業倒産が最近非常にふえる方向にありますし、すでにもう一千件を突破した、こういうことであります。非常に憂慮されておる問題でありますが、政府方針としては、今後も総需要抑制金融引き締めを堅持する、こういうような方向でありますけれども業界としては金融緩和の声も強いわけですけれども中小企業庁倒産防止対策について何かお考えになっていらっしゃるのか、その辺まずお伺いします。
  5. 外山弘

    政府委員外山弘君) 金融引き締めがだんだんと浸透してまいりまして、中小企業への影響もその懸念度合いを深めてくるというふうな感じがしておるわけでございます。  ただいま御指摘もございましたように、昨年の後半から倒産状況も漸次増大してまいりました。ことしに入りまして、三月にはついに一千件をこすというふうな、四十三年以来の状態数字上はなってるわけでございます。今後、後半にそういった影響が出てくる。で、現在、繊維業建設業等を中心に深刻の度合いが強いというふうな判断をしておりますが、もう少し後半に影響が出てこやしないだろうかというふうな懸念を持ってるわけでございまして、先般も、そういった状況を反映いたしまして、三月の初めに政府系機関に五百億の追加ワクを設定いたしまして、一応の対応策をとったわけでございます。そして四月以降、新年度に入りまして既存の政府系機関に対するワクを若干ふやしますと同時に、さらにそれに追加する必要がありはしないかというふうな問題意識を持ちまして、現在、諸般の状況を精査しているところでございます。その状況いかんによりまして適時適切な中小企業金融対策を打ち出したい、こう考えている次第でございまして、目下、その状況についての判断を検討しているところでございます。
  6. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと、四月から六月までのこの融資計画等はどうなっているのか、その辺を具体的に承りたいと思います。
  7. 外山弘

    政府委員外山弘君) 年間の政府系機関ワクといたしまして、御承認いただきました二兆数千億の金がございます。それを四半期に分けて通常のベースの政府系機関貸し出しが始まるわけでございまして、四−六につきましては、若干二五%より多目の五千五百億程度の配分をいたしております。で、これが通常ワクでございますが、これで四−六の金融事情に十分対処できるかどうかということがいま申し上げた点でございまして、私といたしましては、事情いかんにもよりますが、適切な時期に、この通常ワクに加えて融資ワクの増加ということを検討せざるを得ないのではないだろうか、こういうふうに考えている次第でございます。
  8. 中尾辰義

    中尾辰義君 大蔵大臣が二十二日、大阪で記者会見をいたしまして、金融緩和方向の示唆と、こういうふうに新聞には報道されておりますが、この内容を見てみますと、今年度は、第一四半期分として中小企業向けに三公庫で五千五百億、民間金融機関で三千二百億円の非常事態資金を用意していると、それでも足らなければ公庫融資ワクをさらに広げると、こういうふうに大蔵大臣の発言が出ておるようですが、いま非常に業界としては建設とか、繊維とか、機械、相当苦しいようではありますし、また、通産省としても繊維等に対してはいろいろ検討されておるようですが、もう少し具体的に、こういうようなものをいま検討していると、そういうお答えができればお伺いしたいと思います。
  9. 外山弘

    政府委員外山弘君) 現在といたしましては、先ほど申し上げたことに尽きるわけでございますが、私といたしましては、三月の初めに追加ワクを設定いたしましたときが、ちょうど一月として五百億を考えてやったわけでございます。で、その状況判断も大事でございますが、さらにこの四月の状態、あるいは五月、六月を迎えての判断というものが非常に大切でございまして、それに対応して、先ほど申しました五千五百億の通常ワクがどの程度足りないだろうかというふうなことの判断によりまして追加ワク数字を出したいと、こう考えているわけでございます。目下のところは事情の精査をしているところでございまして、まだ具体的な数字まで煮詰めておりません。しかし、早急にその辺の検討をいたしまして関係当局と御相談したいと、こう考えている次第でございます。
  10. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、先般二月でしたか、大蔵省銀行局長通達を出しておるようですが、通達内容は私もよくわかりませんけれども選別融資をさらに強めていくと、その中身は、今回はいままで貸した分をさらに洗い直して、融資を効率的に行なうというようなこともあるようですし、なお、土地なんかを放出させるというような意向も含まれておるし、さらに、今回は中小企業選別融資対象になっているというようなことも聞いておりますが、これは政府系機関にも当てはまるのですか。その辺はいかがですか。
  11. 外山弘

    政府委員外山弘君) 二月の時点で、たしか末だったかと思いますが、大蔵省通達を出しましたときの問題意識は、まだ金融引き締め浸透度が弱いと、市中銀行に対してもう少し引き締め強化と申しますか、過剰流動性の排除と申しますか、そういった点に気をつけるようにと、半面、健全な中小企業影響を受けることのないように配慮すべきであるというふうなことを通達したように記憶しております。したがいまして、むしろ主たるねらいは、引き締め強化をさらに確認するような、そういった意味通達であったかと思います。私どもは、それとほとんど時を同じういたしまして、健全な中小企業金融影響を受けてはいかぬというふなことから、三月の初めに、五百億の追加政府系機関にいたしたわけでございまして、これは全体の引き締めとは関係ない——関係ないと申しますか、別ワクでございます。したがいまして、その通達範囲の実施の問題としてその数字が計上されておるわけではなくて、中小企業金融として別途に政府系機関に五百億の追加ワクをいたしたわけでございます。
  12. 中尾辰義

    中尾辰義君 これはきょうの朝日の記事にちょっと出ていますが、「通産省は二十二日、四−六月期に政府系中小企業金融機関から約二千億円の追加緊急融資をする方針を固め、今週中にも大蔵省と折衝に入ることにした。」と、この融資、これは大体繊維緊急融資というようなふうに書いてあるようですが、この辺どうなっているんですか。
  13. 外山弘

    政府委員外山弘君) まず第一点、新聞報道でございますが、いまの今週中とか、二千億とかという数字はまだ報道段階でございまして、私自身、私どものほうできまった線ではございません。したがいまして、必ずしもそのとおりであるというふうなことではございません。  それからもう一点、かりにやり出す場合、繊維重点を置くというふうな御指摘だと思いますが、先般の三月のときにもそうでございましたが、やはり政府系機関貸し出しワクの決定にあたりまして、その全部を業種別に割り振るというほど細かく割り当てをするわけではございません。しかし、やはりそのときの重点窓口金融指導の中で生かされるようにというふうな配慮も加えまして、こういう業種が特に問題が多いと、で、そういう問題を頭に置いて融資指導に当たられたいというふうな意味の、つまり、重点の指向というふうなことは通達でいたしております。今後もこの四−六について、先ほど来申し上げておりますように、やります場合には、やはり重点をどこかに置いて指導するというふうなことが大切ではないか、こう考える次第でございます。
  14. 中尾辰義

    中尾辰義君 陳情がありましたので、ちょっと私のほうからお伺いします。  これは京都の丹後織物工業組合でありますけれども、非常に不況が深刻化して白生地織物を二十八日から約一カ月間の予定で一斉に休機すると、こういうことで、何とかこれの打開策をお願いできぬかということで、現地からもいろいろな要望が来ております。それで一つは、金融措置としていままで借りておる公庫の分だけでも元金償還猶予を願えぬか。もちろん、当然これは利子だけは払うわけですが、それが一つと、さらに労働対策といたしまして、女工さんの一時帰休制を制度化してもらえないだろうかと。その場合に、失業保険みたいなものを十割補償する、その場合に、六割が企業で四割が政府で持ってもらえないだろうか。それから三番目は、韓国から生糸等輸入があるわけですけれども、この面の規制は何とかならないだろうか。それから、できましたならば、一万台の織機買い上げをお願いしたい。こういうような要旨ですが、この点についてどうですか。
  15. 外山弘

    政府委員外山弘君) 四点の御質問でございますので、最初の二点だけ私のほうからお答えしまして、あとの二点は、生活産業局長のほうからお答えがあろうかと存じます。  まず第一の、債務償還猶予でございますが、これはすでに三月のときにもそういうことを申しておりますが、私は、ケース・バイ・ケース政府系機関が相手の実情に応じてやってほしいというふうなことを指導しております。丹後ちりめんがたしか三、四十億の融資残高があったかと思いますが、それについての債務償還猶予につきましては、具体的なケースごと窓口判断でそれが実行できるように、私どもとしては実情に応じた配慮ができるように指導してまいりたいと、こう思います。  それから第二点の、レイオフの問題でございますが、中小企業が一時帰休を実施する場合、労働者が必ずしももとの企業に復帰してこないというふうなおそれがかなりございます。したがいまして、大企業が実施しているようないわゆるレイオフ、それをそのままの形で中小企業が行ないますと、なかなかまだ問題が多い、中小企業にとって必ずしも有利にならないというふうな点が少なくなくあるようでございます。現在の労働基準法では、企業事業主の責めに帰すべき理由で労働者を休業させる場合には、御指摘のように、平均賃金の六〇%以上の休業補償をしなきゃならないということになっているわけでございまして、これがレイオフを実施する場合の障害の一つとなっているわけでございます。現在、労働省から現行失業保険法改正法案でありまする雇用保険法案というのが提出されているわけでございまして、これが成立いたしますと、レイオフを実施し、休業手当を支払った企業には交付金を支給するというふうなことが規定上ございます。これが成立いたしますと、先ほどのような問題点が解消するかと存じますが、しかし、半面中小企業がどれだけこれが利用できるだろうかという問題点は、依然としてあろうかと存じます。いずれにしましても、中小企業レイオフ対策の進め方という点は、なかなかむずかしい問題でございますが、労働省とも密接に連絡をとりながら、やはり中小企業経営の安定ということを頭に置いた、そういったことに寄与するという立場から検討していかなければいけないと、こう考える次第でございまして、なお勉強しなければならない余地が多い問題ではないかと、こう考えておる次第でございます。
  16. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) ちりめん輸入問題でございますが、ちりめんを含みます、いわゆる紋織り絹織物韓国からの輸入額は、一九七二年におきまして十八万二千平米、それから七三年には六十万九千平米、前年の三倍強という輸入量になっておりますが、この中には、ちりめんのほかに西陣、あるいはジャカード、ドビー織機等で織った品物も含まれておるわけでございまして、どれだけがちりめんであるかということは、統計的に明確に申し上げづらい段階にあるわけでございますが、ただ、この六十万九千平米なるものをすべてちりめんと仮定いたしましても、四十八年におけるわが国のちりめん生産量は七千四百万平米となっております。したがいまして、全体をちりめんとみなしましても、国内生産に対して〇・八%程度ということでございまして、輸入量そのものが強い影響を与えておるというふうにはまず考えておらないわけでございます。むしろ総需要抑制と申しますか、金融引き締め反射的影響といたしまして、中間流通段階における需要、あるいは最終段階における買い控え、こういったものが原因となりまして、御指摘のような不況を来たしておるのではなかろうか、かように考えておるわけでございまして、先ほど来お話が出ております金融対策を手厚く講ずることによって、当面の問題を克服していきたいと、特に丹後ちりめんは、全国生産量の六割を占めておる非常に重要な産地でございますので、さような面から手を打っていきたい、かように考えておるわけでございます。  ただ、輸入につきましても全く影響がない、あるいは関係がないということではございませんので、インボイス統計を整備する等、実態の把握にさらにつとめてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから、織機一万台の買い上げについてでございますが、これもただいま申し上げましたように、金融引き締め、あるいは総需要抑制影響として、繊維産業を含む一般中小企業の問題でもございます。さような点から、いまの段階におきまして、設備買い上げ織機について行なうという特段の措置は考えておりません。ただ、先生御承知の織機の登録の特例等に関する法律に基づきまして、織機減少に関する事業計画というものを業界で策定いたしまして、今後五年間において自主的に設備買い上げていくという事業計画もございますので、必要とあらば、この線に乗って過剰な織機を処理していくということが一つの方法であるかと考えております。
  17. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは法案に入りまして、倒産関連保証につきましてお伺いします。  倒産関連保証の場合、その要件を認定するのはどこがやるのか、信用保証協会窓口になるのか、その場合、どういうような証明書が要るのか、その辺をお伺いします。
  18. 外山弘

    政府委員外山弘君) 認定を行ないますのは市町村長になると思います。これは現在の倒産関連保証がそうでございますが、この認定基準を示しまして、そして市町村長認定してもらうということになると思います。認定を受けた範囲で、その中小企業者保証協会窓口で倍額の保証が受けられる、こういうことになっております。
  19. 中尾辰義

    中尾辰義君 次に、倒産関連保証指定業種認定事項として、「事業に係る取引数量減少」があがっておるわけですが、「取引数量減少」というのは、どの程度減少があれば認められるのか、その辺はどうなっていますか。減少でもいろいろあるわけですな、幅が。どのくらいの減少ならば保証がもらえるのか、その辺……。
  20. 外山弘

    政府委員外山弘君) 経済の変動の中で取引数量が動くということは常にあることでございます。したがいまして、変動でも、通常程度であるならば、これはわざわざそれを対策対象にする必要はないと存じます。したがいまして、法文でも「著しい」というふうなことばを加えているわけでございますが、そういった面で見ますと、やはり業種業態によって過去の経緯とか、いろんな点を考えてみなければならないと思いますが、まあ通常の場合、一割以上というのが一つ判断のものさしになるのではないだろうか、こう考える次第でございます。
  21. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、その他通産大臣が定める事由と、これもあるわけですが、「その他」というのはどういうことになりますか。
  22. 外山弘

    政府委員外山弘君) 「その他」と申しますと、たとえば供給量が著しく減少するとか、需要が非常に不足するとか、こういったようなことも入ると思います。
  23. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは保証協会のことにつきまして、保証協会保証がありまして、それを金融機関に持っていって断わられた例もあるわけですね。保証協会保証を持っていけば、これは金融機関は必ず貸してくれるのか。それとも、そこの辺はその銀行の、あるいは信用金庫等判断によるのか。これが一つと、それから、国民金融公庫なんかいわゆる政府系金融機関保証協会保証が要るのかどうか。国金等におきまして保証協会保証をもらってきてくれと、こういうふうなこともたまに聞いておるわけです。民間銀行なら当然でしょうけれどもね。ですから、政府系機関保証協会保証が要るということはどういうわけなのか、その辺お伺いしましょう。
  24. 外山弘

    政府委員外山弘君) まず第一の御質問でございますが、保証を受けられれば、そのままそれが信用の面では融資を受ける資格があるし、また、そのまま普通の融資でしたらば可能であるというふうに私ども思います。そのために平素から信用保証協会銀行に預託をしておりますし、銀行もそういった意味保証協会との関係を従来からつけていると思います。したがいまして、保証協会保証があれば大体融資も受けられるというのが通例だと思いますが、ただ、金融には金融のまた情勢判断があるわけでございまして、保証のほうの判断金融判断というのが、たとえば今回のような金融引き締めというふうなことがこれだけ出てまいりますと、普通だったら貸すのだけれども、どうも今回はそのまま貸せないというふうな場合もあるかもしれない。そういったことも考えますと、必ずしも保証が自動的に融資に結びつくということにはならないと思います。しかし、なるべく保証がやはり融資に結びつかなければ意味がないわけでございますから、そういったことの指導を十分していく必要があるだろう。こう考えるわけでございまして、原則として私は、保証を受けたものが融資を断わられるということがないように、そういうことは避けるような運用が平素は特に必要であろうと考えるわけでございます。  それからもう一点、それならば、政府系機関のほうが保証を要求するのはおかしいのではないかという御指摘ございまして、確かに一般論としてみますと、政府系機関がわざわざ保証を要求して融資をするというのは、原則としては行なうべきではないと思います。ただ、政府系機関といえども、やはり健全性ということが個別の問題については大事な場合がありますし、また、特に政策融資をお願いする場合には、普通の健全性よりは逸脱した範囲融資をしなければならないという場合も多々あると思います。これは一般市中銀行よりもむしろ多いかもしれない。そういったことを考えますと、あながち保証を要求することはすべていかぬということも、必ずしも言えないかと存じます。現にそういうことも配慮いたしまして保険公庫の政令にも、金融機関としては政府系機関も加えているわけでございまして、そういったことは必ずしも全面的に排除すべきことではないだろう、こう考えておる次第でございます。
  25. 中尾辰義

    中尾辰義君 その辺がちょっと私も、もう一つ理解がはっきりしないのですがね。保証協会保証をもらって、かりに国民公庫から融資を受ける、それが焦げついた場合に保証協会が払う、この保証協会保険公庫から保険金をもらう、こういうふうになっているわけですね。政府機関に、その焦げついたやつに政府機関保険公庫保険料で金を払うというのもどういうことかなあと思ったりするのですが、その辺もう一ぺんわかりやすく説明してくださいよ。
  26. 外山弘

    政府委員外山弘君) 確かに、公益性の高い機関同士がお互いに立場立場で自分を主張するということが、結果において二重使用というふうな感じを受けるわけでございまして、御指摘のような問題点は確かにあると思います。したがいまして、原則として、政府系機関保証を要求するということはほとんどないわけでございますけれども、やはり保証つきでなければ貸し出しができないようなケースというのがあるのも事実だろうと思います。たとえば、災害時の特例というふうなことが一つあると思いますし、また、先般のドル・ショックのときのああいった緊急融資というふうな場合にも、そういうケースがある程度あるというふうなことは、これはケースとしては、金融機関窓口としてはやむを得ないのじゃないかと思います。ケースとしては非常に少ないと思いますけれども、全面的にそれはいかぬというふうなことでは必ずしもないのではないか、ある程度やむを得ない事情にあるのではないか、こういうふうに考えております。
  27. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ一番最後に、保険てん補率ということについてお伺いしますけれども、今度の改正案で、てん補率につきましてはいじってないわけですけれども現行普通保険、近代化保険これが七〇%、それから無担保、特別小口、公害防止保険が八〇%、こうなっているわけですが、これで適当とお考えになっているのか、さらに信用保証充実という点からこれを引き上げる考えはないか、その辺いかがですか。
  28. 外山弘

    政府委員外山弘君) 御案内のとおりに、現在でも政策的な保険対象につきましてはてん補率を特に高めまして、八〇%というふうな高率のてん補率にもしておるわけでございまして、やはり全然リスクもないようなかっこうにはすべきではないだろうし、また、てん補率自身も、なるべくいままでは何とか保証業務の充実のために機会を見て引き上げてまいったわけでございます。いま直ちにこれを引き上げようという考えはございませんけれども、もしもそのてん補率の引き上げ自体が、今後の保証業務の発展のために重要であるというふうな判断がある場合には、やはりケースによっては考えなければいけないという問題も従来もございましたけれども、今後もあるかと存じますが、いずれにしましても、現在ではてん補率がかなりもう高目になっているというふうに私どもは考えている次第でございます。
  29. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まず、最初にお伺いしますが、この法律案の提案理由によりますと、最近における中小企業を取り巻く環境は急速に変化し、かつ、きびしさを増しつつあると、こういうふうに現状を述べておられますが、改正案作成の時点といまではかなり状況が違ってきておると私は考えますが、この点の通産省の認識についてまずお伺いしておきたいと思います。
  30. 外山弘

    政府委員外山弘君) 確かにここ最近、非常にきびしさの度合いが変わっているということは、私どももそう感じます。ただ、今回の改正案も、やはり今後の中小企業金融需要というものを頭に入れまして、借り入れ資金の大口化ということ、それを頭に置いて、一応の算定をしながら数字をはじいたわけでございます。そういった意味では現時、環境がきびしくなっているとは思いますが、同時に、今回の改正でかなり保険の限度についての適切な範囲が示されるだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。もう一つ倒産関連保証のほうは、そのきびしい環境の中で、これは私どもが心配していたような事態がだんだん起こりそうになってきている。そういう意味では、むしろこれは見通しの上ではやはりこれをやっておいてよかった、改正案の中に倒産関連保証を加えておいてよかった、こういうふうな感じがしているところでございます。
  31. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この法案で環境の変化ですね、大きな変化が起こっている。それが十分手当てできるというふうには通産省も考えていないのですか、これで十分やっていけるというお考えなのか、そこをもう一ぺんあらためて伺います。
  32. 外山弘

    政府委員外山弘君) もちろん、信用補完制度は、中小企業金融一つの面を担当している、一つの面の機能をお願いしている制度でございます。したがいまして、これだけで決して十分というわけではございませんで、たとえば、政府系機関ワクの増加というふうなことも非常に大切でございましょう。あるいは、そういったような貸し付け条件ということも時代に合わせなければいけないという点もございましょう。それらが全部合わさって中小企業金融が充実していくというふうに考えるわけでございまして、その一部をになう信用補完制度としましては、これでかなりの成果があげられるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  33. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私たちも、この法案がないよりはあるほうがよい、一歩は前進だというふうには見るわけですけれども、非常な環境の変化が最近きびしいですね、激しい。それで、この法案で十分とは言いがたいと私は考えるのです。だから、もっともっと十分なことをすべきでないかというのが私たちの考え方なんです。そこで多少、通産省の考え方と私たちの考え方には違いがあるように思うわけなんです。  そういう私たちの考えをもとにして、少し質問をしたいと思うのですが、この法案が提出されまして以降、石油製品価格の大幅な再引き上げがあり、また、先日の九電力会社の電気料金の大幅値上げ申請と、中小企業を取り巻く環境はなお一そうきびしいものになってくると思います。当然、当初の保険限度額では実態に見合わなくなってきていると思いますが、この点は一体どういうふうに見ておられるのか、伺っておきたいと思います。
  34. 外山弘

    政府委員外山弘君) 確かにいろいろな面できびしさが加わっているという点は先ほども申し上げましたし、いま先生が御指摘のとおりだと思います。今回の保険限度の引き上げにつきましては、やはりそれぞれの従来の傾向というものをつぶさに見ましても、中小企業の借り入れている資金の限度がどんなような推移を示しているかということを、ある程度将来にわたって想定をいたしまして、そして、当面としてはこの程度の改善が適切であるというふうに判断したわけでございます。もちろん、これは限度を上げれば上げるほど中小企業者にとってはけっこうかもしれません。しかし、同時に、信用補完制度というのはやはり財政を使い、地域の実情の中で適切な運営をするという意味で自治体もこれに応援を加える、いろいろな意味で、やはり全体の負担というものの中でその中小企業信用補完制度の充実が期待されているわけでございます。したがいまして、限度が高ければ高いほどいいということには必ずしもならぬわけでございまして、やはりそのときの資金需要に適切に応ずるものであり、かつ、それが財政負担の上でも適切さの度合いを越えないということも大事な考慮要素だと思います。したがいまして、そういったことを両方考えまして、資金需要の動向なり、財政負担の現状なり、そういったことを考えまして、適切な限度をそれぞれに設けたというのが今回の改正案であるというふうに御理解願いたいと存じます。
  35. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この法案が、中小企業だけの利益を云々ということをいま局長おっしゃいましたけれども、この法案の頭に書いてあるのは、中小企業信用保険法の一部改正でしょう。この法案自体は、中小企業の利益を守るための法案だということははっきりしておるわけですね。だから、この法案を考える場合、やはり中小企業の利益というものを中心に置いて法案作成に当たっていただきたいと思うのです。それで、この法案がないよりはあるほうがいいと私は申しました。それは、この法案で多少は中小企業が助かる面が出てくるわけですけれども、今日のこの経済変動の激しいときには、私はこの法案があとを追っかけていく感じがするわけです。だから、この法案ができるときにはもっと先のほうへ、不安といいますか、中小企業の困難というものが先にいってしまうわけですね。だから、この法案では私は不十分ではないかと、この法案をつくられるときには、そういう時点ではなかったかもわからぬけれども、今日のこういうきびしい時点ならば、もっと積極的に政府として考えていくべきではないか、こう私は考えますが、政府はそういうふうにお考えにならないんですか。これでまた何年かやっていけるんだというふうなものの考え方なのかどうか、そこをもう一ぺん答えておいていただきたい。
  36. 外山弘

    政府委員外山弘君) 先生御案内のように、中小企業信用保険の限度につきましては、やはりそのときどきの事情の適切な判断ということを常に念頭に入れておるわけでありまして、今回の普通保険の限度、あるいは特別小口の限度、これは昨年も実は引き上げたわけでございまして、ことしまた引き上げたわけでございます。つまり、昨年見通しが少し悪かったのじゃないかというふうな御指摘もあったかもしれませんが、実は事情の変化の中で、やはり最も妥当な限度はどうであるかということで、その妥当性を判断するごとに、これを煩をいとわず改善をしてきているというのが従来の経緯だったかと思います。  無担保保険は、確かにここ数年いじらなかったわけでございまして、今回の改正が三百万から五百万ということで、かなりの大幅な改正をしておりますが、これはしばらくいじらなかった点もございます。しかし、ともかくも事情の変化の中で最も適切な限度は何であるか、中小企業者のために、できるだけ現在の需要の中で判断をするとすれば、どの程度が適切であるかということを常に判断しながら改正をしてきているということでございまして、もしも今後、事情の変化の中で、中小企業の借り入れ需要というものがもっと大口化するというふうなことがはっきりしてまいりました場合には、またこれを改正するということの必要な事態が起こるのではないだろうか、こう考えるわけでございますし、また、そういう事態のときには、すみやかに私どもとしての考え方をまとめなければいけない、こう考えるわけでございます。
  37. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この前この法案ができるときにも、私はそういう意見を述べたと思うのですよ。こういう限度額では、とてもいまの中、小企業の困難は救えませんよ、もっとなぜ金額をふやさないのですかということは、私はそのときも述べたと思うのですが、特に今回のような経済界の変動の激しいときですから、これくらいの金額ではとうてい中小企業は救われまいと、そういう気持ちがするんですよ。だから、そういうことを考えて、この法案のいわゆる再改定といいますか、をやはり政府はできる限り早く考えていくべきだと、こういうふうに私は思っているんですが、政府にもそういう心がまえがあるのかないのか、ちょっと伺っておきたい。
  38. 外山弘

    政府委員外山弘君) 従来、私どもがたどってまいりました考え方の筋道から申しますと、今後も事情の変化があれば、さらにこの限度の引き上げにはできるだけの努力をしてまいりたい、こう考えるわけでございます。
  39. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 将来事情の変化があったということじゃないんです。今日事情の変化が起こっているというこの段階で私は質問申し上げているんで、将来起こるとか、そんなことじゃないんで、もうこの法案をつくるときから今日は変わってきているということなんです。だから一刻を争って、今日、この法案を修正できるならばこの法案を修正してやるべきだと、こういうふうにすら私は考えます。将来変化が起こりましたらあらためて考えますというのでは、少しゆうちょう過ぎるのではないかと思うのですが、どうですか、そこらの考え方をはっきり述べておいてください。
  40. 外山弘

    政府委員外山弘君) これは普通保険、無担保保険、特別小口保険のそれぞれの限度を上げるにあたりまして、それぞれの保険を利用しておりまする中小企業者の借り入れ状況というのをつぶさに調べたわけでございます。  で、その状況から見ますと、たとえば普通保険につきましては、三千五百万から五千万円まで上げれば、もう現在の借り入れの平均が、大体四千万弱というふうなところに多くの借り入れがあるようでございまして、まあまあこれで十分いけるんではないか。無担保保険にいたしましても、この対象の取り方もございますが、大体三百万をだいぶこえたところで、つまり三百四、五十万のところに一つの平均がございまして、まあ五百万まで上げておけばまずまず需要が満たされるんじゃないか。それから特別小口にしましても、百三、四十万円というのがたとえば国民金融公庫の小規模事業者に対する貸し付けの平均でございます。そんなことを考えますと、この辺で大体いいところをいっているんではないだろうか。一方、先ほど申しましたように、多目に多目にしておけばそれだけ中小企業者にとっては有利でございましょう。しかし、それだけまた財政支出もふえるわけでございます。したがいまして、両々考えまして、中小企業のためにできるだけの配慮をして考えるということにいたしますと、今回のような改正が現状の判断の中では最も適切であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  41. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、特別小口保険にはもっと問題があるように思うんです。いま申しましたような問題があると思いますが、昨年のいわゆる石油危機による原料価格の高騰と品不足、さらに、ことしに入っての石油製品の大幅価格再引き上げ、中小企業倒産は増加してきておるということは、皆さんもお認めになっておる点だと思いますが、そういうふうに資金繰りがますます苦しくなってきておるわけなんですね。このような状況に見合って保険限度額のさらに大幅な引き上げが私は必要であると、こういうふうに考えます。通産省の見解は、そういうふうに保険限度額の引き上げは必要がないとおっしゃるんですか、あるという御見解ですか。
  42. 外山弘

    政府委員外山弘君) 保険限度額の引き上げというのは、先ほども申しましたように、やはり、借り入れ需要というものの平均の中で適切な判断をしていくのが妥当であろうと私は思っております。ただ、いま先生が御指摘のような石油の高騰、あるいは電力料金の引き上げ、こういった原材料の事情が急速に変わってくるというふうなことに対応して、たとえば原材料の供給状況が著しく違ってくる、そのために中小企業者にとってはたいへんな影響が急に出てくる、あるいは逆に、今度は総需要引き締めというふうなことが反面出てくるために、需要の減退というふうなことから、また突如著しい影響が出てくると、こういったような場合には、倍額の保険ができるというふうな制度を今回は加えておるわけでございます。したがいまして、いま須藤先生が御指摘のような、特殊な事態に対応して中小企業信用保険の限度を引き上げるという点については、今回の改正案はそれなりの配慮をしたというふうに私どもは思っておるわけでございます。
  43. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 保険限度額の引き上げとともに、中小企業、特に小零細企業の切実な要求といたしまして、一日も早く貸してほしいという、こういう問題があるわけなんですね。私が聞くところによりますと、小零細業者の場合には、自分で申請書を書くにもなかなかむずかしいと、申請を出しても審査で時間がかかり、なかなか借りられないという声がかなりあるわけです。この点で改善する用意があるかどうか、伺っておきたいと思います。
  44. 外山弘

    政府委員外山弘君) 一般的に見まして、金融機関窓口に来る中小企業者需要に対して、できるだけすみやかに応ずるということが大事でございまして、御指摘のように、たとえば審査日数が非常に長くなるとか、手続が非常に煩瑣になるとかいうことはなるべく避けていかなければいけない、こう考えるわけでございます。  従来、そういった点で、中小企業金融公庫の審査日数は長過ぎるんじゃないかという御指摘をよくいただいたことがあるかと存じます。これは御承知のように、平素から預金を扱っておる銀行ではございませんし、それから同時に、やはり設備資金の大型のものがわりあいに多いし、それから、新しく窓口に来る方が非常に多い。四割から五割ぐらいの人が新しいお客さまであるというふうなこともございまして、とかく審査に時間がかかりがちなわけでございます。しかし、それでもずいぶん改善はしてきているようでございまして、私どもの承知している限りでは、人間の事務能率をあげるということを中心にいたしまして、年々件数の増加はございますけれども、平均処理日数はだんだんと短くなってきているというふうに報告を聞いているわけでございます。事務処理能率の向上をはかるということ、処理期間の短縮に努力するということ、こういった点については、今後も私どもとしてはできるだけの指導をしてまいりたいと思います。
  45. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 局長さん、特別小口保険、無担保険はもともと金額が小さいいわばかけ込み融資的な性格が非常に強いと思いますよ。特別小口保険は、限度額が従来百万円のものを今回改正されて百五十万円となったわけでございますけどれも、しかし、百五十万円しかなっていないとも言えるわけなんですね。少なくとも特別小口保険と無担保保険については申し込みを簡素化にすべきである、こういうふうに私は思います。金額を上げると同時に、申し込みの手続を簡素化する必要があると、こういうふうに考えます。  たとえましたら、これは東京信用保証協会の例でございますが、金融機関経由で申し込みをする際に、普通保険の大口の場合も特別小口の場合にも、同様の書式が使われておるわけなんです。ここに私、書式を持っておりますが、非常に複雑です。零細業者は、これを書くのにこれは苦労をするわけですね。なかなか私もちょっとわからぬぐらいの複雑さです。これを見ますると、損益計算、貸借対照表、売掛金、買掛金、主要先の受取手形、支払手形など、非常に複雑な書式があるわけですね。そういう問題があるわけです。あっせん融資の場合になりますと、特別小口の場合に幾らか簡素化されておるということが言えると思いますが、やはり特別小口などの場合には、性格からも簡素化することが必要であると思いますが、どうでございますか。  また、これは国民金融公庫の例ですが、国民金融公庫の場合は民間金融機関と違い、申し込み用紙を全部業者に書かせておるわけなんです。手続がめんどうなために不満の声が非常に多いということを私は聞いております。再度検討する用意があるかどうか、伺っておきたいと思います。
  46. 外山弘

    政府委員外山弘君) 特別小口のような少額の保証手続問題、あるいは国民金融公庫につきましても、非常に零細な金融需要が多うございます。したがいまして、こういった方々のためにやはり保証手続がなるべく簡素化されているということは、非常に大事な点だと思います。今後も努力をしたいと思います。
  47. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 局長はこの書式御存じなんでしょう。ここに私は持っておりますが、これを見ますととても複雑なんです。いま私がことばで述べたようなことがこの書式になっておるわけなんですが、これじゃ零細業者はとてもたまったものじゃないと思うんですね。だから、これをやはり簡素化の方針でひとつ検討をしていただきたい、こういうことでございます。検討してくれますね。
  48. 外山弘

    政府委員外山弘君) 検討いたします。
  49. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 今回の改正で、倒産関連中小企業範囲が拡大されようとしておりますが、いま中小零細の下請機械加工業者は、親企業の発注がめっきり減少して深刻な状態にあります。たとえましたら、これは東京の大田区のある自動車部品のプレス業者でございますが、毎日六万個からの部品発注があったのに、いまは三分の一である。仲間の中には、日に三十万個の発注があったのに、とまったところさえあると、こういうふうに言っておりますが、今回の改正案では、指定業種がきわめて限定されるような表現になっております。このような限定は取りはずして、石油危機により打撃を受けている中小業者はすべて対象にすべきであると思いますが、この点、通産省はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  50. 外山弘

    政府委員外山弘君) いろいろな事情をつぶさに見ませんと決定的なことは申せませんが、しかし、せっかく倒産関連保証の拡大をいたします以上、やはり適切な運用が大事でございます。そういった意味におきまして、業種、業態に即した事情判断、もう一つは弾力的な運用と、こういうことに十分配慮してまいりたいと思います。したがいまして、あまりにもうはっきりしているもの以外は一切やらぬとか、こういう五つの業種の基準を全部に当てはめるとか、こういう機械的なことでなく、適切な基準を設けまして、具体的に弾力的な判断をしてこの運用をはかってまいりたい、こう考えるわけでございます。
  51. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これはどういうふうに理解したらいいんですか。あなたのほうから出された法律案提案理由補足説明のおしまいのほうに、「原材料等の供給の減少とか、製品の需要減少とかいった要因により、その業種に属する中小企業者の相当部分の経営が不安定になっていると認められる場合も、業種を指定して、」と、こうなっているわけですね。この「業種を指定して、」ということはどういうふうにわれわれは受け取ったらいいのか。業種政府が指定するとなると、非常に範囲が限定されていくというふうにわれわれは理解するわけですね。こういうことをなくして、もうほんとうに困っている人はむずかしいことを言わぬと、政府業種の指定までやるというわけじゃなしに、もっと幅を広げてやったらどうだと、こういうふうに私は考えるんですが、ここはどういうふうに説明なさるのですか。
  52. 外山弘

    政府委員外山弘君) 今般の改正は、従来ございましたような取引先の事情だけではなくて、いま御指摘のように、「原材料等の供給の減少とか、製品の需要減少とか」、こういった要因によりまして、その業種に属する中小企業者の相当部分の経営が不安定になっている、こういうふうに認められる場合にもその業種を指定する、そういうことによりまして特例対象にしようということでございます。したがいまして、こういった事情のある業種であるというふうな指定が大事でございます。しかし、先ほど申しましたように、その指定にあたりまして、その業種がこの対象としてはまるかどうかということにつきましては、できるだけ弾力的に判断してまいりたい、こう考えているわけでございます。
  53. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま通産省が考えておる業種というものは、どういうものを具体的に考えていらっしゃるのですか。
  54. 外山弘

    政府委員外山弘君) 先ほども申しましたように、こういった書き方を具体的な事例にどう即するかということでございますから、いま直ちに決定的なことは申し上げられませんが、たとえば、先般来、公共投資の縮減というふうなことからたいへんな需要減少影響を受けておりまする建設業、こういったものは、この条項にきわめて当てはまりやすい業種一つではないだろうか、こう考えているわけでございます。たとえば、現在問題がかなり深刻になるというふうに判断できまする繊維とか、あるいは、今後やはり機械関連にこういったような事情が起こりはしないかというふうな懸念を私どもは持っているわけでございますが、そういった場合には、機械工業の相当部分の業種とか、そういったものが十分検討の対象になるのではないだろうか、こう考えているわけでございます。
  55. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、通産省としては、いまこれこれだということははっきり言うことはできないが、その時点でもっとワクを広げること、融通性のあるように柔軟な態度でそれをきめていくということであるわけですね。私は、今度の石油の問題で打撃を受けた業界は非常に多いと思うんです。広範囲だと思うんですね。それにそういうワクをはめないで、やはりこういう石油の高騰から打撃を受けた業種はできるだけ広範囲ワクを広げて、そしてこの法案対象として考えていくと、こういう姿勢でいってもらいたいと私は思うんですが、どうでしょうか、次官、それがこの法案のほんとうの姿勢じゃないでしょうか。私はそういうふうに考えるんですよ。
  56. 楠正俊

    政府委員(楠正俊君) ただいま先生の言われました御意見につきましては、十分尊重いたしまして対処していきたいと思っております。
  57. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ほんとうにみな困っているんですからね。だからあんまりワクをはめないで、業種はこれこれに限るんだというふうな狭い範囲に考えないで、できるだけワクを広げて、困っている人はみな助けていこうと、こういう姿勢で私いってもらいたいと思うんです。政務次官の答弁は、そういうふうな意味の答弁だと理解していいんですか。
  58. 楠正俊

    政府委員(楠正俊君) そういうように御理解いただいてけっこうでございます。
  59. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この金融面と同時に、もう一つ私は問題があると思うんですが、中小下請業者にとりましてさらに深刻なのは、仕事がないということなんですね。金は借りられても仕事がないのではどうしようもないと、こういう声があがっておるわけなんです。通産省は、このような仕事を求めている中小業者にどのような対策で臨もうとしていらっしゃるのか、その点を伺っておきたいと思います。
  60. 外山弘

    政府委員外山弘君) 総需要抑制の際でございますから、御指摘のような事情がだんだんいろんなところに出てくることは十分予想されるわけでございます。今後、機械工業の面が需要の減退ということになってまいりますと、御指摘のような事態はいろいろな面で問題を起こすのではないかというふうに懸念されるわけでございます。私どもは、御承知のように、前からそういったことにどの程度の対応ができるかにつきましてはまだ問題の余地、検討の余地が多いと思いますが、下請振興協会といったようなものを充実いたしまして、できるだけ発注の需要先と、それから発注を受ける先と両方のあっせんをいろいろやっておるわけでございまして、振興協会の充実ということに常に従来も努力をしてきているわけでございます。それからまた、そういったところにおきまする指導員の充実ということにも予算上の対策をいままでもとってきておるわけでございまして、そういったことが、こういった事態の中で少しでも中小下請業者のために貢献できるということを期待もしているわけでございます。  一方、やはり全体として、そういう事態だからどんどん注文を減らしていいということを親事業者が安易に考えたのでは、下請業者のほうはそれだけよけい大きな影響を受けるわけでございます。したがいまして、やはり親事業者に対しても、こういう際であるから、特にそういった点についての配慮をするようにということをたびたび通達を出したり、あるいは団体向け、上場会社向けそれぞれ分けまして、何度もそういった意味配慮をするように、そうして、こういう際には特に下請振興基準というものを守って、安定した関係がこういう際でも続けられるようにというふうな指導をしておるわけでございます。  なお、こういった点がどの程度守られているかという点についても、常時私どもとしても今後も調べていきたい、そして、できるだけ不当なことが行なわれないように努力をしていきたい、こう考えているわけでございます。
  61. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 失業状態にある業界に、仕事を通産省が世話するということですね。直接やるということはなかなかむずかしいことだと私も思っておりますが、何かの形で仕事がなくて困っておるという中小零細業者に仕事をつくるということですね。それは何か方法はないですか。また、そういう機関政府が設けるというようなことは考えていませんか、どうですか。
  62. 外山弘

    政府委員外山弘君) まあ全体として、先ほど申しましたように総需要抑制をしているわけでございますから、そういう人たちのために特に公共事業をふやすとか、そういったことが行なわれない限り、そういった配慮をするようなことはなかなかむずかしいし、ことに中小企業行政の面でそういう需要の造出ということをやっても、なかなかこれはむずかしい問題だと思います。もしも、御指摘のような点が広範にわたって大きな問題になるということになれば、これはやはり政策の転換という時期が来るということになるのかもしれません。いずれにしましても、私どもから見ればそういったことの前に、できるだけ先ほど申しましたようなことであっせんに努力すると同時に、親事業者の正当な扱いを期待するし、さらにはこれを金融でつなぐとか、政府系機関がやはり下請事業者に対する金融上の配慮をできるだけするように、そして、少しでも需要がふえてくるまでつないでいけるようにというふうな努力も私どもはしてまいりたい、こう考えるわけでございます。
  63. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 総需要抑制でまともに一番被害を受けるのは、やっぱり大企業というよりもこの中小企業、下請産業です。こういう人たちというのは一番大きな犠牲を受けるわけなんですね。だから、いまの政府の、あなた方の答弁を聞いていると、どうも救いようがないというふうに受け取れるわけなんです。私はやはり救うべき道はあると、こう考えますよ。それで救わなきゃいかぬと思うのです。道があるなしにかかわらず、やはり政府というものは責任を持ってこういう人たちを救っていくというのが、これが私は政治だと、こういうふうに考えております。だから総需要抑制のもとでは救いようがないんだ、救う道がないんだというふうな否定的なことでは私は困ると思います。もう少し積極的な姿勢を述べてもらいたいと思うんです。  その受注の減少金融逼迫の中で、中小企業者のこのような状況を救済するためには、信用保険の改正だけでは不十分だ、こういうふうに私は考えます。もしも十分だとおっしゃるならば、その十分であるゆえんをひとつ説明していただきたいと思います。金融問題でも、無担保、無保証で——無利子とは私は申しませんよ。そこまで言うと、通産大臣は、私も商売人で、金を借りられることはけっこうなことだと、こういうことを前におっしゃったように思うんですが、無利子とは私は申しませんが、ごく低利の、長期の融資制度が緊急に必要になってきておると、こう考えるんです。この点での具体的な対策を要求したいと思いますが、これは通産大臣質問しようと思って、私は通産大臣の見解を伺いたいということになっておるんですが、通産大臣は見えていませんから、ひとつ政務次官、この点について政府の考えをはっきり述べておいていただきたいと思うんです。
  64. 楠正俊

    政府委員(楠正俊君) 中小零細企業の資金需要の実態を的確にこれから把握いたしまして、中小零細企業が資金確保の面で行き詰まることのないよう政府系金融機関貸し出しワクの確保、特に小企業経営改善資金の充実強化に力を入れていきたいということを考えておりますが、現在千二百億の無担保、無保証貸し出しワクを、四十九年度予算を要求いたしております。
  65. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 やはりこの際、思い切って貸し出し金額のワクを広げることと同時に、無担保、無保証、それから非常に低利な金利というものが私は問題になると思うんです、こういう困っておる人たちに。仕事がなくておる人ですから、利子をたくさん出すということはできませんから、低利の金を貸す、そういうことをひとつもっと積極的に私は政府として、対策として立てていってもらいたいと思うんです。おそらく通産省は、私のこの提案に対しまして異議ないと思うんですが、どうでしょう、そういう方向でひとつ大いに積極的に検討していってくれませんか。どうですか。
  66. 楠正俊

    政府委員(楠正俊君) 先生のおっしゃるとおり、私も零細企業、小規模企業に対しましては、今後より一そうの力を入れていかなければ、倒産件数から考えましてもあのような状態でございますので、特に力を入れていきたいと、先生御指摘内容と全く同様の気持ちでおる次第でございます。
  67. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 強くそういう方向政府が政策を進めていってくれることを、大きく私は期待していますよ。ですから、私たちの気持ちを裏切らないように、中小業者の期待を裏切らないように、ひとつ政府として努力してもらいたいということを申し述べて、私は質問を終わります。
  68. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 御異議ないと認めます。  本案の審査は、本日はこの程度にとどめます。  ちょっとしばらく速記をとめておいてください。   〔速記中止〕
  70. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 速記を始めてください。     —————————————
  71. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 次に、伝統的工芸品産業の振興に関する法律案を議題といたします。  まず、発議者から趣旨説明を聴取いたします。衆議院議員板川正吾君。
  72. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) 伝統的工芸品産業の振興に関する法律案につきまして、提案の理由及びその要旨を御説明申し上げます。  御承知のとおり、わが国においては、古来、数多くの伝統的工芸品の産業が存在し、民衆の生活の中ではぐくまれ、受け継がれてまいりました。しかし、近年、社会経済情勢の変化により、これらの伝統的工芸品の産業は、幾多の困難に直面し、後継者の確保難、原材料の入手難、さらには伝統的な技術または技法の消滅のおそれ等、その存立の基盤を喪失しかねない実情となっております。伝統的工芸品の産業は、関係者の努力、伝統的工芸品に対する情熱があってこそ、初めて維持、発展し得るものであり、一たび崩壊した場合、その再興はきわめて困難なものと申さなくてはなりません。  伝統的工芸品は、国民の消費生活を多様化し、豊かさと潤いを与えるものであり、最近は、国民各層に伝統的工芸品のよさがあらためて見直され、伝統的工芸品の産業に対する関心が急速に高まっているのでありまして、その維持、発展をはかることは、きわめて重要な政策課題となっているのであります。  従来、伝統的工芸品の産業に対しては、ごく一部、文化財保護施策の対象となるものを除き、一般的な中小企業施策の対象にはなっているものの、伝統的工芸品産業実情に即した特別の施策は皆無にひとしい状態で推移してまいりましたが、この際、伝統的工芸品に対する国民の関心の高まりを踏まえ、かつ、伝統的工芸品産業の特質と実情にかんがみその振興をはかるため、本案を提案した次第であります。  次に、本案のおもな内容について御説明申し上げます。  第一に、通商産業大臣は、伝統的工芸品産業審議会の意見を聞いて、主として日常生活の用に供され、その製造過程の主要部分が手工業的であり、伝統的技術または技法により、伝統的に使用されてきた原材料を主として用い、一定の地域において少なくない数の者によって製造される工芸品を、伝統的工芸品として指定するものとすることであります。  第二は、伝統的工芸品の製造事業者を構成員とする事業協同組合等は、伝統的工芸品産業に関する振興計画を作成し、これを都道府県知事または指定都市の長を経由して通商産業大臣に提出し、その振興計画が適当である旨の認定を受けることができることであります。  第三に、伝統的工芸品産業に関する振興計画には、従事者の後継者の確保、技術または技法の継承、原材料の確保、需要の開拓、作業環境の改善等、伝統的工芸品産業の振興をはかるため必要な事項について定めるものとすることであります。  第四は、国及び地方公共団体は、認定を受けた振興計画に基づく事業を実施する事業協同組合等に対し、その事業を実施するのに必要な経費の一部を補助することができるほか、必要な資金の確保またはその融通のあっせんにつとめ、税制上必要な措置を講ずるものとすることであります。  その他、伝統的工芸品として指定されている旨の表示、伝統的工芸品産業審議会の設置、伝統的工芸品産業振興協会の設立等について定め、この法律は昭和四十九年四月一日から施行することとしております。  以上が本案の提案理由及びその要旨であります。  よろしく御審議くださるようお願い申し上げます。
  73. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 以上で説明の聴取は終わりました。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  74. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まず、ただいま提案の趣旨については御説明があったわけでありますが、本法案を提出をするに至りましたところの動機に対しまして、簡単に御説明願いたいと思います。
  75. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) 御説明申し上げます。  数年前、京都や奄美大島の方々から、昔から伝承されてきたいわゆる伝統的工芸品産業が最近人手不足、後継者難、または類似品の進出によってその経営の維持や技法の伝承が不可能になってきつつある、この伝統的工芸品産業の振興は、その製造過程が主として手仕事であることが特徴であるため、近代化促進法を柱とする一般中小企業振興政策にはなじまないので、何とか国として特別の振興政策をとってほしい、こういう要請がございました。確かに戦後の物資欠乏時代には、大量生産、大量消費というパターンは、それなりに時代の要求に応じたものでありましたが、しかし、戦後は終わり、国民の生活水準が向上するにつれて大量生産、使い捨て的製品は単調であじけもなく、使って愛着もわかないという不満が民衆の間に根強く生じてまいりました。  それに反して、昔から民衆の生活の中で愛用されてまいりました伝統的工芸品は、使えば使うほど味わいが出て愛着が増し、所有することが誇りとなり、民衆の生活の中に潤いと豊かさを与えてまいったのであります。そのため、近年、伝統的工芸品に対する国民の評価が高まり、その需要が急速に増大しつつあるのであります。また、伝統的工芸品産業は地場産業であり、公害発生も少なく、資源の浪費をしない産業であり、付加価値が高く、技能集約的産業でありますので、これを振興することは、国民経済の伸展上意義あるものと考えたのであります。本法案の発想の動機は、そうした社会的要望にこたえ、伝統的工芸品産業を国の施策として振興し、伝統的工芸品産業を洗い直し、みがき直して次の世代に伝承さしていくべきであると、こういう趣旨が発想の動機であります。
  76. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 伝統的工芸品産業、なかなかむずかしい名前なんですが、この伝統的工芸品産業とは一体どういうことなのか、その意義ですか、定義ですか、その点について皆さんのほうでまとまったものがあればお聞かせ願いたいと思う。
  77. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) 伝統的工芸品産業は、定義はいかんということでありますが、これは第一条にもその趣旨が盛られており、第二条の指定の要件の中で、伝統的工芸品産業というものはこの一から五までの間に規定をいたしておるとおりでございます。これは法律一条、二条にそういう意味では書いてありますが、ただ、一般論といたしまして、伝統的工芸品産業とはどんなものかということになりますと、実ははっきりした定義が今日まで一般論としてはございません。ただ、学者の説によりますと、大体次のようなことが共通した形態として見られております。  第一は、明治維新以前から存在しておったもの。第二は、生産は手工業技術が基礎となっていること。第三は、製品は生産地域的な特色を強く持っていること。第四は、日本文化や地域生活に密着した消費財として生産されていること。第五は、労働集約的な家内工業の生産形態を続けておること。第六は、保守的なといいますか、保守的な取引、経営形態を持続し、中小零細経営で、近代化に順応しない経営形態をとっておること。七として、地縁性が非常に強く、全国に散在しておる。八として、それぞれ産地を形成し、閉鎖的であるとともに、内部では分業組織が発達し、専門化と産地内総合化が見られる。第九として、独自の流通組織、流通業界がある。このように学者の説がございますが、こういったものがこの定義をきめる上に一つの参考になることであろうと、そう思います。
  78. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 定義についていろいろお聞かせを願ったわけでありますが、私も伝統的工芸品産業と指定をされるであろうこの商品の持つ歴史、さらには、ただいま手工業的云々という表現があったわけでありますが、やはりそう言うからにはは、工芸品的な価値ということが、相当やはりウエートが置かれなきゃならないと、こう思っておるわけでありますが、同時に、伝統的と言うからには地縁性、この地縁性というものがきわめて重要不可欠な要件だと、このように考えておるわけでございますが、この点の地縁性という問題のウエートの置き方については、この法案はどういうものの考え方になっておるのでしょうか。
  79. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) 伝統的工芸品産業は、いわばお国自慢の産業でありまして、御指摘のように、地縁性を強く持っておる産業であります。すぐれた技能と原材料に恵まれて、また、伝統的工芸品を愛用し、これをはぐくんで育てていこうと、こういう地域の民衆の精神的風土というものなどと密接に関連しているのであります。しかし、現在の伝統的工芸品産地といわれるものも、実は、かつては他の地域から工人が移住して定着をして、新たな産地として発展したということがかなりあるのであります。たとえば南部鉄びんは、京都から実は南部に移入されたのでありますし、また益子焼というのは、笠間から実は益子に移ったということがありますように、地縁性といってもそこに絶対的なものではない、そういう多少産地として移動性もあるのであります。そのような趣旨で、法案では地縁性に特に触れておりません。しかし、異なる手法によって類似の工芸品を製造する者が、あたかも本場もののような、誤認しやすいような表示をするということであれば、これは別個な法体系の中から取り締まっていくべきじゃないかと、こう思います。  結論として申し上げますと、地縁性というのは要件でありますが、絶対的ではないというので、この法案の中に特に地縁性について触れておりません。おりませんが、しかし、地縁性によっていろいろ弊害が出れば、本場もののように誤認しやすい表示をするというようなことがあれば、これは不正競争防止法、あるいは不当表示防止法によって取り締まることができるということもありまして、法律の中では特に明示をいたしておりません。
  80. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この地縁性なるものが絶対的なものではないけれども、南部鉄といえば大体南部を思い出すし、益子焼というと栃木の益子を思い出すというように、いわゆる本場ものというものは、少なくともこの法案の中では最大限尊重されなければならないと、こういう趣旨がこの法案を一貫して流れておるのだと、このように理解してよろしゅうございましょうか、いかがでございましょうか。
  81. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) けっこうでございます。
  82. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 次にお聞きいたしたい点は、この第一条にもありますように、本法案の目的が、伝統的工芸品産業を継承発展をさせて、地域経済の発展に寄与する、こういう第一条の目的からいたしまして、いわゆるこのような伝統的工芸品産業の振興を妨げる、あるいはその地域経済に打撃を与えるような事態がいろいろなところで起きてきたという場合に対しては、当然、本法案の趣旨から申しますれば、そういうことに対しては対処をしなければならないという、やはりこの伝統産業を守るのだというのが本法案の趣旨だと思うのです。しからばその趣旨が、この法律案の中に、どの条項にこのことが明確に浮き彫りにされておるか、その点もあわせてひとつお答えを願いたいと思います。
  83. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) この法律は、伝統的工芸品産業の振興をはかろう、振興をはかるためには、まず指定をして、産地が、事業協同組合等が振興計画を作成をし、知事を通じて通産大臣認定を受ける、そうして通産大臣認定を受けた振興計画を実施する場合には、国がこの経費の補助、あるいは資金の融通、さらに税制上の措置、こういうものでこの伝統的工芸品産業に力を与えて、そうして振興をはかっていこうという趣旨の法律でございますから、振興をはかられることによって力がつくという意味法律の趣旨を御理解願いたいと思います。
  84. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ただいまの御説明のように、確かに本法案は、指定商品になった場合のその伝統工芸品産業をさらに振興させるような手だてというものは、だいぶできておるのです。その点では私は、それは高く評価をいたしておるわけでございますが、しかし、もう一つの角度から見たところの問題点は、いわゆる指定を受けたところのその品物はそういうような証があるけれども、それならば、この問題と関連して、模倣、模造の類似品から、どうやってこの指定品を守っていくかという面については、私はこの法案を拝読させてもらって、あまり守るという面については、十分な手だてがないように見えるわけでございますが、最低、模造品とか類似品に対しては、本法律の中には防止策の罰則規定ぐらいはあってもしかるべきじゃなかろうか、こう思っているわけでございますけれども、その点どのようにお考えでしょう。
  85. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) 実は、これは伝統的工芸品産業の振興でありまして、この振興しようという伝統的産業を、類似品が侵害をすると、こういうような場合には、この法律には罰則規定はございません。しかし、そういう場合には、別な法律で罰則があるのであります。それは、類似品の不正不当な表示によって指定工芸品産業が被害をこうむる場合には、不正競争防止法という法律がございます。不正競争防止法の第一条の四にはこう書いてあるのであります。「商品若ハ其ノ広告ニ若ハ公衆ノ知り得ベキ方法ヲ以テ取引上ノ書類若ハ通信ニ其ノ商品が産出、製造若ハ加工セラレタル地以外ノ地ニ於テ産出、製造若ハ加工セラレタル旨ノ誤認ヲ生ゼシムル表示ヲ為シ又ハ之ヲ表示シタル商品ヲ販売、拡布若ハ輸出スル行為」という規定がありまして、この場合には、被害を受けた者は、その行為を差しとめるべきことを請求することができると、これに従わなかった場合には三年以下の懲役、二十万円以下の罰金ということになっておるのであります。また、御承知のように、独禁法に関連した不当表示防止法という法律がございまして、これで取り締まることができます。そして、これまた不当な表示をして命令に反した場合には、三年以下の懲役あるいは三十万円以下の罰金という規定もございますから、類似品がこの工芸指定商品に非常な打撃を与えるような、誤認しやすい表示をして実害を与えるような場合には、こういう法律をもって防止することができると、こう思いますから、との法律の中には罰則規定は設けておらないのであります。
  86. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いわゆる伝統的産業工芸品を類似品から守るところの現行法律については、いま説明があったわけでございますが、なお関連してお聞きいたしたい点は、実は、この法案は、一貫して類似品からも工芸品を守るんだという点はよくわかりましたけれども、衆議院におきまするところの附帯決議の第八項を見ますと、こう書いてあるわけですね。「伝統的工芸品に類似した工芸品の産業については、その実態と必要性に応じ積極的振興を図ること。」と、こうなりますと、この文章だけを見ますと、類似品をまた積極的に振興するんだと、こういうふうにこれは客観的には受け取れるのです。そうすると、いま提案者からの御説明とはだいぶ違うような気もするんですがね。この第八項に書かれている意味は、客観的に見たら類似品の奨励だという趣旨のように見えますけれども、一体この本旨は、真意というものは何か、ここらあたりをきちんと説明しておいてもらわなければ、ただいまのあなたの説明とはだいぶそごしますから、その点のまず真意をお聞かせ願いたいと思います。
  87. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) 衆議院商工委員会で採決した際に、附帯決議がございまして、八の項目で、「伝統的工芸品に類似した工芸品の産業については、その実態と必要性に応じ積極的振興を図ること。」こういう附帯決議の項目がございます。で、この趣旨は、伝統的工芸品の模造品の産業の振興をはかれという意味では全くございません。表現が若干適切でない感じもありますが、真意は、工芸品の中には伝統的工芸品とそうでないもの、指定要件を備えていないものがあるわけであります。この伝統的工芸品でないものの中で地場産業、零細企業対策として振興をはかる必要があるならば、本法と別個に中小企業対策として振興策をとるべきであると、こういう意味でございまして、決してこの八の項目が、まがいものを奨励しようという意味ではございません。まがいものについては、ただいま申し上げましたように、二つの法律の中で厳重に取り締まっていくべきだという趣旨は毛頭も変わっていないのであります。
  88. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ただいまの説明でよくわかりました。ただこれだけを見ますと、これはもうそう解釈せざるを得ません。したがって、ここに書かれているところの趣旨は、いわゆる地場産業で、伝統的な工芸品というところの指定にまでいかないけれども、地場産業として奨励し、発展させるべきものは別途やはり方法を講じなさいと、こういうような意味であって、類似品を奨励するという意味とは全く逆なんだと、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  89. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) けっこうでございます。そういう趣旨でございます。
  90. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この点はよくわかりました。  続いてもう一つお尋ねをいたしたい点は、法律案のこの第二条第一項の五ですね。「一定の地域において少なくない数の者がその製造を行ない、又はその製造に従事しているものであること。」と、こういうのが伝統的工芸品の指定を受けておるところの条件の一つになっているわけであります。この問題と、指定を受けたところの商品の本場ものとの関連性についてちょっとお聞きしておきたいと思うのであります。  これは、衆議院の商工委員会におきますところの第一項の五の説明については、議事録で私も承知をいたしております。したがって、この中身の説明ではなくして、私がお聞きをする点は、本法案には、指定商品のいわゆる生産技術はもちろんのこと、原材料の搬出等について、他の地域にそれを持ち出すというようなことに対する防止措置はないわけでございますから、したがって、もし地場産業と全く同じものが他の地域で生産をされる、これは極端な例としてあげますけれども、たとえば大島つむぎの本場ものが手法、趣向、いろんなものがそのまま北海道のある一定の地域にいって、そこで全く同じものができたというようなことになるとすれば、この第二条一項のいわゆる一から五までの条件にかなっておるとするならば、北海道でできるところのものであろうとも、これは指定産業品として受かるということに法律上はなるわけなのですね。  そうなりますと、先ほど私がお尋ねしましたところの、いわゆるそのもともとのその指定商品の発祥の地であるところの本場ものは、これは非常な打撃を受けることは間違いない。その地域でまたぐっとたくさんのものができてくるとすれば、そうして見た場合に、その本場ものを一体それで保護することができるのだろうかどうだろうか、こういう一つの疑問点を持たざるを得ないのです。そこらあたりは、この法律を作成するところの過程の中でどういうお考えなのか、そこを少しお聞かせ願えればありがたいと思います。
  91. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) たとえば大島つむぎ、これがまあ関東で、足利なり桐生なりで、今度同じものを同じ手法で同じ原料を使ってつくろう、こういうことになる場合に、それが足利なり桐生なりのつむぎとして、産地が足利なり桐生なりとして表示されて売られることは、この法律で取り締まるとかなんとかということではございません。それはそれで一つの社会的な需要があって、必要があって生産されることでありますから、それを取り締まるというわけにまいりません。ただし、足利なり桐生なりの機地でできたものを、あたかも大島でできたつむぎのように表示して売るということは、不当表示にひっかかってまいります。こういうふうに理解いただければけっこうだと思います。
  92. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その点が、先ほど御説明願いましたところの不正競争防止法やら、あるいは公取も関係いたしましょうところの景品表示法の第四条三号のそういうものにきちんと抵触をし、そこで厳重な行政指導というものが今後やはり強められるのかどうかという、その点については、いまお答え願いましたような指導というものが今後きちんとなされるのかどうかという点を、これは提案者というよりも通産省の行政当局にお聞きしたほうがいいと思うのです。と私が申し上げるのは、いま提案者からありましたとおりならば、第八条のこの表示の問題でございますね、この表示は「伝統工業品として指定されているものであることの表示を附することができる。」と、こうですけれども、もしこの表示が、それぞれの産地表示をするということに義務づけられておるとするならば、いまおっしゃったところの心配は私は出てこないこと思います。  たとえば、足利なら足利が産地の大島つむぎというのならわかりますけれども、あたかも国内で、本場大島つむぎというような名目で足利なら足利でできるとするならば、この表示の付し方がそれぞれの産地まで明示するということであるならば、これは私は防止できると思うんです。しかしながら、この八条を見る限りでは、産地表示の問題が明確でないだけに、いまお答え願ったところの点は、先ほどの二つの法律の面で十分にその処置ができるものなのかどうか。それができるとするならば、これは私の心配は杞憂にすぎなかったということになるわけでございますが、その点、通産省指導関係者としてはどうでしょうか。
  93. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) ただいま御指摘のありました第八条の表示は、任意ベースでの表示と考えております。ただ、通産大臣が指定するにあたりましては、第二条第二項の規定によりまして、地域を定めて行なうということになっておりますので、任意ベースながらこの表示にあたっては、産地を記載する例が多いかと思います。  ただ、かように義務づけとしてではなく任意ベースにいたしておりますのは、先ほど板川先生からもお話ございましたように、歴史的に見まして、また、最近の立地条件等から見まして、伝統品の産地から技術者が他の地域に参りまして、同じ原材料、同じ技術を使って産品を製造するといったような場合がかなり例も多いわけでございます。こういったものにつきまして、産地表示を強制すると申しますか、義務づける場合には、一つには、そういった新しい産地の産品に対しまして差別的な取り扱いをするということにもなりまして、かたがた、立地上やむなく親産地におるところの製造業者が他地域へ移って発展生々を遂げていこうという場合にも、妨げになることも考えられる。さような点を考慮いたしまして、第八条につきましては、任意表示というたてまえでこの法案がつくられたものとわれわれのほうも解釈いたしておるわけでございます。ただ、おっしゃるように、不当不正な表示につきましては、現行法を十分に活用いたしまして、産地産業と申しますか、伝統品産業が十分に振興されるように指導してまいりたいと考えております。
  94. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いまの国内法の関係から言えば、私は、ある一定限度やむを得ない事情があるかと思いますけれども、いまあなたが説明されたように、いわゆるずうっと地縁性の深いところのものが、あるいはいろいろな関係からやむを得ない事情で他の地域に移る、あるいは隣の地域に移る。たとえば京都の西陣が亀岡なら亀岡でたくさんつくられる。それはそれぞれの地域のやむを得ないところの事情なんですけれども、いわゆる善意のところの、やむを得ないところの事情と違った形のやむを得ない事情というのもあるわけなんですからね。そうなった場合には、一体、一つの技法を盗んで——盗んでと言うことばが過ぎますけれども、とにかくそれは防止するものないんですから、法律は。それが他の地域に行ってやられた場合には、この条件が当てはまったならば、それも指定されざるを得ないという法律の解釈にならざるを得ないのですからね。そういう場合は、やっぱりきちんと現行法でも、先ほど板川先生からあげられたところの二つの方法をたてにとって指導ができるという、そのたてまえがなければ、私は、やはり角をためて牛を殺すみたいな結果になりかねないということを心配するあまり、このことを尋ねておるわけなんです。その点の指導は、通産省としてはやっぱりきちんとやっていただくものと、このように理解してよろしょうございましょうか、どうでしょうか。
  95. 板川正吾

    衆議院議員(板川正吾君) 私からもちょっと答弁申し上げますが、表示をしないために誤認をされるということの御心配のようです。で、表示をしないでどうして誤認をされるかというと、たとえば大島つむぎと、あるいは本場ものとか、そういう産地を表示しない、しかし、大島つむぎだと、大島本場もののように誤認をさせるようなねらいをもって産地を表示しないということに対しての御心配だと思うのです。それは、不当景品類及び不当表示防止法第四条三号ですか、この「一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの」と、こういう規定もございまして、産地を表示しないことによって本場もののように誤認させるような表示というものは、不当表示の防止の中で取り締まっていくことはできるだろう、こう思います。
  96. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) ただいまの点についてちょっとお答えいたしますと、第二条に掲げる要件に該当しなくちゃいけないことは必要最小限の条件になるかと思いますが、通産大臣が指定するにあたりましては、そういった要件に該当しているかどうかと、あわせて審議会の意見を聞いて定めることになっております。この審議会につきましては、一般消費者、学識経験者のほかにも、やはり関係事業者の意見を十分反映されるように審議会を運営してまいることによりまして、先生の御懸念になるようなケースにつきましても、ある程度の対処は可能かと考えております。
  97. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ただいまの提案者の説明、あるいは局長の、審議会の活用によってこの点はそういう心配のないように処置をしたいという点で、私ははなはだけっこうだと思うのですが、ただ、景品表示法四条三号の不当表示指定という問題と関連をして、先月の二十六日に、参議院の地方行政委員会でやはり大島つむぎの問題と関連して質問があったときに、景品表示指導課長——これは公取ですかね、は、業界の表示の適正ルールを指導している云々という御発言があったわけでございますが、これはいまの問題と関連をいたしますと、具体的にはどういうことになりましょうか、あわせてお聞かせ願いたいと思います。
  98. 後藤英輔

    政府委員(後藤英輔君) 先ほど来の御質問の点でございますけれども、先ほど板川先生から御説明になりましたように、地名を書かずにおいて本場大島つむぎと言って、大島でないところでできたような商品につきまして、これは私どものほうの解釈としても、先ほど先生がお答えになりましたように、そういう防止法の一応四条一号の違反になるおそれがある。つまり、いかにも品質が優良であるかのごとく、本場大島のつむぎであるかのごとく誤認を与えるおそれがあるというふうな解釈でいけるものであろう。その他のいろいろな関連がありまして、もしも問題があるような場合であれば、四条三号の指定という問題も考えられますし、できますことなれば、公正競争規約という業界の自主的につくられましたルール、それを公取が認定しまして、業界が自主的に守るルールが法的にできております。この公正競争規約の中でもって、それぞれの地域でつくったものについて、原産地としてその地名を書かせるということを義務づけるように指導することが公正競争規約でできますので、もしもそういう公正競争規約に載せることができました場合に、地名を書かせるということでまぎらわしいような表示が起きない措置が講ぜられる、こういう趣旨でもってお答えしております。
  99. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、ほかの、この指定を受けるであろう他の商品に対しての問題としてはあまりよく知っておりませんけれども、事大島つむぎの本場ものに関して申し上げますと、非常にこの法律案ができることを歓迎をしておる。歓迎をしながらも、いま私が端的にお聞きしたところの問題についてやはり不安があるのです。したがって、いまそれぞれの関係者から説明があったような形で今後行政指導の面でもきちんとしていただくならば、私はこの心配、不安がなくなるんじゃないだろうか、こういうことを考えるだけにいろいろお聞きしたわけでございますが、どうかひとつ通産省あるいは公取の立場からも、この問題についてはいまお答えになった点を忠実というか、敏速に行政の面で生かしていただきたいという点を、強く私のほうからは御要請申し上げておきたいと思います。  なお、引き続いてお尋ねする点は、いま私は、国内の類似品の問題についていろいろお尋ねをしたのですが、今度は外国産の類似品の諸問題について若干お聞きをいたしたいと思うのであります。これは、日本の特に繊維産業の場合は、やはり外国産といえば、ことばをかえて言えば、韓国産の日本の和装市場に対しますところの脅威というものは、現実の問題として非常に大きいわけなんです。その点、通産省としては、いわゆる韓国産の日本の和装市場商品ですね、着物類とかあるいは帯類とかそういうものですね、そういうものの韓国実情、あるいは日本のそれぞれの産業に対するところの脅威がどういう状況になっておるか、その点を通産省でお調べになった程度でまずお聞かせ願いたいと思います。
  100. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 韓国実情につきましては、私たちもいろいろと努力をいたしておるわけでございますが、どうも統計が整備されておらないといったような事情もございまして、絹織物自体これが全体どの程度生産されているかということも、必ずしも明確に把握できない段階にあるわけでございますが、いろいろの情報を集積いたしまして、昨年の生産実績を大体二千万平方メートルというふうに推定いたしておるわけでございまして、これは日本国内における生産の約一割程度になるかと、かように考えておるわけでございます。絹織物自体がさようなことでございますので、その内ワクである和装産業についてどうなっておるかということにつきましては、実は、残念ながら十分把握されておらないということでございますので、今後ともジェトロ等を使いまして実態を把握いたしたい、かように考えておるわけでございます。  ただ、つむぎ類につきましては、韓国での生産は大体六万反程度、この全量が日本国内に輸入されておるわけでございますが、ただいま御指摘の大島つむぎとの関連で申し上げますと、この六万反のうち二ないし三万反程度ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  101. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これはおいおい質問の中でまたただしてまいりたいと思いますが、実はいま局長が最後におっしゃったところの、本場もの大島つむぎは韓国産の非常なやはり脅威を受けておる、率直に申し上げて。きょうおいで願った前の通産課長——いま総務課長さんですか、ちょうど佐藤さんもお見えですし、奄美現地にもこの問題でわざわざ視察をいただいたわけでございまして、現地の皆さんとしても非常に感謝をしておるところなんですが、この機会に佐藤さんから、行かれた際の奄美のいわゆる本場大島つむぎと韓国産の脅威との関連性で、実際見ていただいてどのようにお感じになっておられるか、御感想でもいいですが、お聞かせ願いたいと思います。
  102. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 先月後半約三日間にわたりまして、奄美大島はもちろんのこと、鹿児島本土のほうにも参りまして、それで問題が問題ということでございますので、現地の通産局の担当商工部長の参加を求めまして、現地の現在置かれております状況、それから、今後どういうふうにお考えになっておられるかということを十分御意見の聴取をしたり、また相互の意見交換等も行なってまいりました。  問題は、確かに韓国から現に相当量というか、ある一定量のつむぎが入っておるということは事実なんでございますが、その前に、現在置かれている実態は何かと申しますと、もちろん御案内のように、戦前からの産業でございますが、戦後生産が始まったころは、われわれの了解しておる範囲内では、約三十五万反ほどの生産から戦後生産を開始しまして、それがごくもよりの土地にまいりまして、非常にその消費ブームがございまして、そのブームに乗ったこともありましょうか、生産は非常に順調に伸びまして、かつまた伴いますに、価格も非常に高値のかっこうで維持されてきておったわけでございます。それでその結果、一昨年、四十七年の大島つむぎの生産は大体八十四万反のレベルまでいったわけでございます。  ところが、御案内のような昨年後半の消費の転換、それから、一つにはやはり大島つむぎそのものの需要も一巡したのじゃないだろうかということもありますし、それから、加えまして、昨今の金融引き締めに基づきます需要の減退等々ありまして、昨年は、一昨年の八十四万反のレベルから八十二万反というかっこうで生産面の停滞を少し示してきた。これが従来の市況から申しますと、何か先行き不安というものが地元では強く認識されたわけでございます。  そのおりから地元では、どうも韓国から物が入ってきているらしいということを読み取られまして、四十七年、四十八年、二年間にわたりまして約四回ほど現地韓国の生産状況等を視察されたわけでございますが、その内容等から考えますと、どうも先行き相当大幅の輸入増ということが懸念される。そうしますと、大島つむぎの生産そのものに対しても、相当の脅威になるのではないだろうかというようなことが強く懸念されたというような状況にあるわけでございます。つまり、一般的な市況が、四十七年以降四十八年にかけて若干生産面のかげりを示したのに対して、輸入増という点が加えられまして、それが将来に対する懸念というかっこうで非常に強く意識されてきた、こういうのが現在置かれている状況だと思います。  それで、そういうような状況に関する相互の理解というものを深めただけじゃなくて、今後どうしていくかということも十分御意見を拝聴したり、また、われわれの考えている点も申し上げたのでございますが、まず、何はさておき、当面の問題としまして、やっぱりそれはそれなりの生産縮小的な気配があるものですから、それからまた金融面の詰まりというのがありますから、この時点でしかるべき金融措置ということを考えてもらう必要があるのじゃないだろうかという御提案等もありました。  それから、第二番目と申しますよりはむしろより基本的な問題だろうと思いますが、置かれているその種々の状況から申しますと、伝統的産業であるにしても、将来にわたってはより自分自身の基盤を強化する、それに沿うような体質強化ということをはかる必要があるのじゃないかということは、やはり地元でも強く認識されております。それで、そのために伝産法の適切な運用、それから繊維の構造改善の推進、それから、奄美の振興法の実施等々によりましてその体質改善を強く打ち出していく必要があるだろうというのが、やはり現地での強い御意向でもあるようでございます。  それから、将来にわたる問題ではあるにしても、現に輸入がぼつぼつ入ってきておるという状況を踏まえますと、それなりに現地では、輸入に対する対策は、つまり水ぎわでの手は何かないかというふうな強い御要請もありました。これにつきましては、現在置かれております国内の生産規模に対しまする輸入の量の対比から見ますと、まあ計算の方法もいろいろあるでしょうが、目の子で申しますと約二%程度状況にございます。で、この問題は、現在そのものがたいへんだというのじゃないので、将来に対して非常に心配を強く持っておられるということがその実態なわけですから、私たちといたしましても、今後その辺の事態の推移というものを見まして、しかるべき水ぎわの作戦ということもあわせて検討していくということが必要だろうと思っております。  それからなお、ややこまいことにわたりますが、韓国からの輸入、特に本場の大島つむぎが入ってくるということのもとは、日本からしかるべき糸が韓国のほうに渡りまして、それが製品化されて入ってくるというのが実は実態なんです。地元といたしましても、よってくるもとが、自分らの手からしかるべきルートを経て韓国のほうに糸が流れていくということがやはりより直接的な問題なので、当面の問題としては、地元では強くその点を自粛しようという意識が非常に強うございます。したがいまして、顧みまして関連するところ、商社等の活動の問題にも関連しますので、地元さえもこういう強い自己擁護の意識が強いので、やはり関係するところとしては、十分それに協力してほしいというようなしかるべき指導もわれわれはやっております。  それから、先ほど局長からも御説明申し上げたわけでございますが、われわれとしましても、韓国の置かれている生産体制ないし今後の推移の状況ということは、実は十分把握しているわけではございません。今後の問題として、やはりこの点をわれわれとしても十分調査し、ウォッチしていくということが必要だというふうに考えております。それから、しかるべきまた輸入面の実態把握という意味で、統計操作上の問題も整備拡充してまいりたい、そのように考えておるわけでございます。
  103. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 非常に適切なものの見方と今後の指導に対しては感謝を申し上げたいと思いますが、そこで、いま最後におっしゃった韓国状況通産省としても十分わかっておらないと、こういうお話でございますけれども韓国の商工部の韓国織物輸出第三次五カ年計画ですね、七二年から七六年のもの、これはすでに業界紙にも報道されておりましたし、また、先月の二十六日の参議院地方行政委員会でも、繊維製品課長ですか、田口さんはそれを見たんだ、見て承知をしておると、こういうお話があったわけなんです。私はこの計画表は、これは相当な意欲を持って、先ほど申し上げましたところの和装産業というか、和装製品というものを韓国はやはり政策的に馬力をかけて増産につとめておるということが、この計画表の中から看取されるわけですね。たとえばつむぎにいたしましても、一九七一年は百万ドルの生産を、七六年には四億五千万ドルまでこれを広げるんだと、あるいはしぼりの問題にいたしましても、七一年が三千四百万ドルを五億ドルまでやっぱり持っていくんだと、こういう一つの計画を立てておるようでございますし、なおまた、伝えられますところの、七二年来日したところの韓国大統領の秘書官が日本の商社と話したという、いわゆる中期計画によりますれば、七六年度の最終年度には第三次五カ年計画はこれはできるので、日本の和装市場の一〇%を、八十年には二〇%を占めるようなことで積極的に自分たちとしてはやりたいんだと、こういう意思表示をしたということが伝えられておるわけでございますが、これが事実だとすれば、私はやっぱり看過できない問題でございまして、いつまでも実態を調査します、調査しますで日を過ごされたんではこれは困ると思うので、その点あらためてこれらの情勢をどう握っておられるのか、あるいはこれは正確なものなのかどうか、今後どういう手だてをしていこうとお考えなのか、これはやはり局長さんのほうからお聞かせを願いたいと思います。
  104. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 当方で入手いたしております韓国商工部によりますところの絹織物の輸出五ヵ年計画、一九七二年から七六年にかけての計画でございますが、これによりますと、七三年の輸出額は九千三百万ドル、七六年には約三億ドルの輸出を目標としておると、かような数字と承知いたしております。昨年、一九七三年の一−十二月につきまして、本邦に対する韓国からの輸入実績は七千八百万ドル、韓国商工部が掲げております九千三百万ドルよりはやや下回っておる実績かと承知いたしております。幸いと申しますか、昨年は彼らの計画より下回ったわけでございますが、ただいま先生から御指摘もございましたように、非常な熱意を持って韓国政府は絹織物の輸出を促進しようといたしております。かたがた、労賃その他のコストの面におきましても非常に当方と懸隔がございます。さようなところから、当方といたしましては、十分に韓国の生産体制あるいは輸出の実態につきまして、今後とも、先ほども触れましたように、ジェトロ等を通じて把握いたしたいと考えておるわけでございます。  また一方、こういったものに対する本来的な対策といたしましては、やはり大島つむぎを生産される方々がその体質を強化されるということが本来的に必要かと思います。現在国会で御審議いただいております特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部改正、あるいはただいま御審議いただいております伝統的工芸品産業の振興に関する法律、あるいは奄美群島振興開発特別措置法、こういった関係のいろいろな法律を活用することによりまして、まず体質を十分鍛えていくということも必要かと思いますし、私たちといたしましても、その方向でできるだけの御協力は申し上げたい、かように考えておるわけでございます。
  105. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私はこの問題を、まず業界自体が体質を強化をせよということでは済まされぬと思うんですよ。それは、業界自体の体質を強化をする、改善ということも必要でしょう、みずから原料を送らないという。しかしながら、やはり韓国産に対して日本の伝統的なこういう繊維産業をどう守るかということは、私は、これは国の政策でなければならぬと思うんです。そういう面から見れば、率直に申し上げて、業界だけ体質を強化しなさいでは、責任を他に転ずるものだと言われたってしかたがないと思う。  もう少し私は具体的に申し上げましょう。たとえば、先ほども法案のところにもあったんですが、十年前からしぼりが進出をしておりますですね。今日では、あなたも御承知のように、全消費量の八割が韓国産でしょう、しぼりもので。ちりめんの問題にいたしましても、丹後とか長浜あるいは十日市、岐阜が主産地でございますけれども、現在はまだ日本の生産額は高いにいたしましても、この全般的な景気面の下降、総需要抑制という問題とも関連をして、日本のちりめん業者は非常にやっぱり中小企業だけに問題があるんです。それは先ほど質問があった点でもおわかりだと思いますけれども、そういうような問題を考えてみた場合に、これはおそかれ早かれ、もうすでに西陣もその脅威を受け始めておるでしょう。しかもつむぎに至っては、村山大島はほとんど潰滅状態と言ってもいいぐらいになってきておるというのが現実じゃないですか。どのように通産省はこの村山つむぎの韓国産の状況を握っておられるか。まず、その点をお聞かせ願いたいんです。
  106. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 村山つむぎの現状ということでございますが、四十五年と四十八年、この二年度を押さえまして、主産地は村山そのものの産地と、それから飯能産地と二つございます。それで、そのおのおのを合計してみますと、村山の企業数が四十五年度には七十六企業、それから、それの四十八年の企業数が七十三、飯能地区では、四十五年が二十で、四十八年また二十で変わりなし。それから、試みに織機台数等を比較してみます。村山産地のほうが二千九百三十台、それから四十八年には二千九百十一台というふうに、あまり変更はない。それから飯能産地につきましても千二百八台、それが四十八年には千百二十三台というかっこうで、設備能力の面でも変化はございません。これを生産ベースに引き直してみますと、村山産地につきましては四十五年度に十二万反、これは年間の生産反数でございます。それから四十八年度には十四万反、片や飯能地区で申しますと、四十五年が六万七千反、それから四十八年度には七万二千反ということで、むしろ増加の傾向にあるということでございまして、いわばこの数字から見ます私たちの解釈といたしましては、国内の需要の伸びというものに相応する部分が韓国から入っておるんじゃなかろうかというふうに見ておるわけでございます。
  107. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 すると、韓国から入ってきておるところの状況はどうですか、村山つむぎの。
  108. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 韓国のつむぎ全体の生産が村山つむぎ、それから何つむぎということじゃなしに、つむぎ全体というかっこうで、ジェトロのレポート等を見ますと、年間約六万反ベースということになっております。
  109. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは私の調査したものとだいぶ違うようなんですね。すでに韓国では十六万五千反前後の村山がつくられておると、しかも男ものの二〇%前後、日本での需要韓国産で占められておる、女ものは七五から八〇%が韓国ものだと、こう言われておる。もし、この数字はおたくと違うにしても、村山が相当この韓国産によって市場が脅威にさらされておるということは否定できないところの事実だと思うんですが、衆議院の商工委員会でもそれを指摘されて、あなたがたは肯定されておるんですけれども、いまの総務課長のお話だと、いや、たいした心配ありませんよと、こう言わぬばかりのお話なんですが、事実そうなんですか。
  110. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 私の申し上げています部分は、ジェトロのレポートというものによって申し上げておるわけであります。で、その後も、私たちとしてもそれなりの情報というものを集めまして調べておるわけでありますが、市場に出るところによって数字が非常にばらばらであるという状況なので、その辺も含めまして、先ほど申し上げましたように、ジェトロを通じましてさらに精査を加えていくという、いま準備をしているところでございます。
  111. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうも私は、国内におけるところの村山の業界韓国産からの脅威を受けているところの逼迫感というものについて、あまり通産省感じられておらないようでございますけれども、私は水かけ論争はやりませんけれども、少なくとも村山自体が非常に大きな脅威を受けて、この次は本場大島だと、こういうふうに言われておるということは、業界の常識になっておるんですがね。この点をジェトロを通じてと言わないで、私は、積極的にもう少しやっぱりこの問題を明確にしておいていただきたいと思うんです。  それで、時間がありませんから続けますけれども、なお、本場ものの大島の輸入状況でございますが、先ほどのお話によりますと二%程度だと、こういうお話でしたね。そうすると、八十四万反が四十七年できたとすると、二%、大体一万六千反から一万七、八千反ぐらいだと、こういうふうな御理解ですね。これは私、この関税局の輸入課からいただいたところの調査物を見ますと、本場大島つむぎの表示のあった貨物の輸入実績として、これは四十八年の四月から四十九年の三月までに数量で三万五千三百七十五反入っておるんです。金額にいたしまして五億九千八十六万七千円、後ほど触れますけれども、今度税関でひっかかったところのものが幾らというふうな数字が出ていますけれども、この通関の正規の手続を経てきたところのものだけでも、だいぶ通産当局のお調べにあったものと数字の開きがあるような気がしてならぬのですが、この点はどうなんですか。
  112. 佐藤兼二

    説明員(佐藤兼二君) 最前、私が申し上げました数字は、現地に参りましたときも、しかるべき実際に商売にタッチしておられる方々の感触等を含めまして伺って、まあ二万、非常にきつ目に見る方、それから多目に見られる方、区々でございますが、大体二万反ぐらいが本場大島つむぎというもの自体に関してはその程度じゃなかろうか。先ほど御指摘いただきました大蔵省で集計して云々という数字の問題は、私たち聞きますに、村山つむぎ等も入れての数字じゃないだろうかというふうに考えております。
  113. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これはやっぱり違いますよ。たとえばいわゆる本場大島つむぎとか、あるいはメード・イン・コーリアが明確になくて、いわゆるチェックされたものだけでも一年間で一万一千四百六十一反からあるんですよ。あなたの筆法でいえば、本場ものはみんなチェックされたということにならざるを得ないんです。だから、その点はいわゆる勘ではなくして、あるいは現地の報告じゃなくして、通関関係を通ってきたものでさえもこうなっておる。それだけにやはりこの問題は、現実の問題としては非常に大きな問題だという事態の握り方を、私は通産省としてやっていただかなきゃ困ると思う、その点は。現地からの報告によれば云々ということだけじゃなくて、現に通関事務として関税局を通ってきたものでも、先ほど申し上げたところの数字があがっておるわけでございますから、その点は私はもうここでとやかく申しませんけれども、それぐらいに、皆さんの予想以上に現実の問題として入ってきて、いろいろトラブルを起こし始めているわけですから、皆さんの打つところの対策というものも、早急に私は手だてを講じていただきたい、こういうことをこの機会に申し上げておきたいと思います。  なお、もう一つお尋ねしなければならないのは、先ほどお話のありましたところのジェトロの報告にいたしましても、ソウルの事務所の報告でも明らかなように、やはり大島つむぎはもちろん、これは村山も入るでしょうけれども、七三年の輸出実績は六万六千五百十八反で、金額にして八百八十二万五千三百二十五ドルというふうに出ておる、いわゆる含めたやつでも。そういうようなことを考えてみた場合、あるいはもうメーカーもすでに一貫生産が台頭しつつあるし、韓国では、この報告によりましても、一御承知のように、村山つむぎから本場大島つむぎへの製品へ輸出を移行させようというところの意欲がはっきりうかがえるわけなんです、韓国状況を見ましても。  しかも、大島つむぎの工程の一番ポイントでありますところの締め、染め、加工、それから織り、この中で染めと締めと加工の部門についても、専門者を招いて技術の習得をやるということで非常な積極的な意欲が見えている。したがって、韓国産のものは、確かに現状では原料を日本から入れて、一番最後の工程であるところの織りだけをやっているように見えますけれども、準備としてはすでに大事な工程であるところの染めとか、締めとか、加工というものを、そういう技術の熟練のためにいろんな人を呼んでやっているというこの事実から見れば、なるほど今日ではたいした被害がないかもしれぬけれども、このまま放置をするならば、これは取り返しのつかないような問題になってくる。ここの問題の重要性の認識を、通産省の皆さんはまだ認識されておらないところの面があるんじゃないか、現状はこうだからといって、若干たかをくくっておるところの面があるんじゃないかと思いますが、この点、早急に私はやはり体制を立て直していただきたいと思います。幸い、きょうは次官もおられるわけですから、そこらあたり、次官の、いま申し上げたところの諸点に対しますところのものの考え方ということも、通産省は今後こうしたいという考えがありましたら、はっきりお聞かせ願いたいと思う。
  114. 楠正俊

    政府委員(楠正俊君) いま宮之原先生の御指摘になられましたこの問題は、非常に将来、日本の産業を圧迫するということになるということを私もしみじみ感じておりまして、やはり商社あたりが無秩序に輸入をするというようなことに対しまして、もっと通産省が真剣に行政指導していくというようにいたしませんと、先ほどの宮之原先生御指摘の心配が現実になってくるということを感じておる次第でございます。今後一そうそういった意味におきまして、指導強化していきたいというように考えております。
  115. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 なお、韓国からの輸入されておるところの特質を見ますと、確かに現状では、原料を日本から輸入してそれを加工するという加工貿易の形態が大部分とられておりますね。しかも私の知る限りでは、何かやはり韓国内に一定の保税地域を設けて、保税工場で生産をされ、そこの加工品を再輸出をするという仕組みがあちこちでとられておるということを私は見ておるわけですけれども、こういうような保税加工貿易の形態というのはどういう利点があるのですか。これによって日本で再輸入されてくる場合に、税金の面でもこれは若干ゆる目に見ておられるのかどうか、ここらあたりはどういう仕組みになっているのでしょうか。どちらにお伺いすればよろしいのでしょうかね、関税局ですか、それとも通産省ですか。
  116. 海原公輝

    説明員(海原公輝君) お答えいたします。  わが国の関税制度上、そういったものをどういうふうに考えているかという御質問かと思いますが、加工あるいは組み立て等のため外国へ原材料等を輸出しまして、外国で加工あるいは組み立てた後に再輸入される物品につきましては、現在二つあるわけでございます。一つは、関税定率法第十一条に規定しますところの「加工又は修繕のため輸出された貨物の減税」制度、もう一つ関税暫定措置法の第七条の七というのがございまして、その中に、「加工又は組立てのため輸出された貨物を原材料とした製品の減税」制度というのがあるわけでございますが、これらの二つの制度につきまして、先生御関心の点についてだけ申し上げますと、定率法十一条のほうにつきましては、本法においてその加工が困難な場合というふうな限定が付してありますので、したがって、大島つむぎにつきましてはその適用はないかと思います。それからまた、暫定措置法のほうにおきましては、これは法律で物品を指定しております。物品が特定されているわけでございまして、現行法ではそういった繊維関係品目というものは含まれておりませんので、そういった特別のゆるめるというようなことはなっていないかと、かように考えておるわけでございます。
  117. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そういたしますと、保税加工貿易を行なったために、韓国からの大島つむぎならつむぎの問題について税制上、関税面で特典があるというふうに理解しないでよろしゅうございますね。
  118. 海原公輝

    説明員(海原公輝君) そのとおりだと思います。
  119. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それで、その関税の問題についてもう少しお聞きいたしたいのですが、実は私、先ほど来申し上げたように、韓国産の特に日本の和装産業に対するところの脅威というのは、刻々これは増してきておる。特に大島つむぎだけに例をあげてみますれば、先ほど来申し上げてきたような状況で、このまま放置するということは私は、日本の国内におけるところの伝統産業を守るという、せっかくこういういい法律をつくろうというときですから、非常にやはりこの韓国産の脅威に対してどう保護をしていくかということも大事だと思う。そういうような観点から、いわゆる特殊関税制度の中での国内産業保護を目的とするものなどで相殺関税なり、不当廉売関税なり、あるいは緊急関税等の問題がこの法律上はあるわけでございますが、それらの問題について若干お聞きしておきたいと思うのです。  最初に、関税定率法第八条の相殺関税の発動というものが、具体的に大島つむぎなら大島つむぎの問題でできないかどうかという問題です。先ほど私は、ジェトロの報告でも若干触れましたし、皆さんもジェトロの報告は持っておられるだろうと、こう思いますが、少なくともジェトロの報告の中に報告として出されておるものは、政府は、輸出産業支援施策の一環として、金融及び税制面でこの大島つむぎの奨励を韓国はやっておる。しかも、つむぎ加工が労働集約型的な特性があるので、政府では、セマウル運動としての農村所得増大源として強力に推進中であるセマウル工場に、つむぎ製品の機織り工場の建設を積極的に保護支援をしておるわけです。また業界でも、政府方針に基づき、セマウル工場としての直営工場または下請工場建設に関心が多く、現在、建設中または計画推進中にあるのがすでに四十カ所で、政府の資金援助の内容は、融資金額は総建設所要資金の三〇%、融資期間が三年据え置きで五年分割返還、利子は年八%、こういうふうに、日本に輸出をするために積極的に政府が、いわゆる大島つむぎの生産を大きくするために、直接間接の指導をし、援助をしているということは、ジェトロの報告書の中からも看取できると思うのです。そうなりますと、当然私は、相殺関税の発動ということは具体的に可能性があると、こう見ておるのですが、その点について関税局として御検討いただいたことがあるかどうか。あるいはまた事実だとすれば、どういうふうにお考えでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  120. 海原公輝

    説明員(海原公輝君) 相殺関税制度の要件といたしましては二つございまして、一つは、外国において奨励金または補助金が実際に出ているということが一つでございます。第二の要件といたしまして、国内の競合産業に損害を与えまたは与えるおそれがあることという、いわばこの二つの要件を満たす場合に、政令で国及び貨物をして奨励金ないしは補助金の効果を減殺するという制度でございます。いろいろ先生御披露いただきましたような情報はあるわけでございますが、先般来、衆議院あるいは参議院を通じまして、この点について御議論があることもございますので、あらためまして通産省とも協議の上、奨励金ないしは補助金というものが実際に出ているかどうかという、いわばファクトファインディングがまず第一に必要なわけでございますので、それにつきましていま調査しているというふうに伺っている次第でございます。
  121. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この議論が衆議院でされてから大体一月ぐらいになるのですが、そのときにも似たような御答弁でしたけれども、もう一月もたっているのですから、一月間の間にやったけれども、現状はこれの程度なんだという答えぐらいは、それははね返ってしかるべきだと、私は率直に申し上げて思うのです。その点はないんですか、いまからまたすべて調査ですか。
  122. 海原公輝

    説明員(海原公輝君) これは衆議院でございましたか、議論が出ましたときには、私たまたま出ておりませんでしたけれども、調査をする場合には、通産省あるいは大蔵省、かむところはいわばそういうところかと思いますけれども、これは両省間の協議で通産省のほうでやっていただくということで、大蔵省が独自にこれについて調査するという体制にはなっていないという点を御理解いただきたいと思います。
  123. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、おたくの責任だとは言わぬのですけれども、それならばもう一月もなるんだから、大蔵省通産省とどういうお話し合いをされて、いまどういうところまでいっておるかぐらいは、もし進行しておりましたならお知らせ願いたいと思うのです。少なくとも相殺関税の場合には、「直接又は間接」とこう書いてあるわけですから、間接的にこれはやっぱり資金、奨励金出したり、補助金出すことも入るわけなんですから、そういう実態は、日本政府韓国政府とだいぶ仲がいいんですから、それぐらいは早くも一月にもなるのですから、調べてしかるべきだと思うんですが、そこらはまだ調査中の段階しか出ておりませんか、どうですか。
  124. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 先ほど先生から御指摘がありましたジェトロの調査以外に、当方が別のルートから入取した事情によりますと、韓国では一部市場開拓準備金制度、あるいは重要機械の輸入免税制度を適用しておるやに聞いております。現在、これを確認するための手はずを整えつつあると、こういうことでございます。
  125. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 確認中でございますから、これ以上は申し上げませんけれども、急いでやはり調べていただきたいのです。それは皆さんはそう痛痒は感じないかもしれませんけれどもね。あるいはまた、関税上は報復の何か処置を受けなきゃならぬという、やっぱり政治的な問題もあるということもわかりますよ、いろんなむずかしい事情がね。しかしながら、今度は実際のこの業者にとってみれば、一体調べていただくということになったんだけれども、一月もたったんだからどうなっておるだろうかと、これはやっぱり不安があり、また、それを期待をするのは無理からぬことでしょう。しかも、政府の監督下で、年間四千名のつむぎ織り工場の養成をするところの特殊絹織物工場技術養成所も前はあったという報告等もジェトロにあるわけですからして、私は、やはりこの問題については早急に調査をしていただきたいということを御要請申し上げておきたいと思います。  なお、いま一つは、第九条の不当廉売関税の問題です。これは衆議院では議論されておらなかったようですね。それでお尋ねをいたしますけれども、これは新聞の切り抜きですが、二月二十一日の京都新聞の広告なんです。これは大丸のデパートで、本場大島つむぎの大赤札市と銘打って、本場ものと韓国ものを売るという広告なんですよ。この広告を見ますと、この新柄の本場大島ものが、いわゆる縦横のやつが入った上級品が、奄美の本物でありますと五十三万で売られるのです、五十三万が相場なんです。ところが、韓国ものは二十九万八千円という札がついておるのです。それから、これは若干中級以下の品物ですけれども、本場大島で縦横のものが、奄美の本場もので八万九千八百円で売られるのを、六万九千八百円で韓国ものを売っているんです。これは明らかに不当廉売だと、私はこの事実からいえば言えるんです。さらに、私はここに一つの見本を持ってきておるんですが、これは「本場奄美大島紬」とこう書いてあるんです。これはあとで先生方もぜひ見ていただきたいと思いますけれども、これを見ますと、確かに本場奄美大島と書いてありますけれども、メイド・イン・コーリアと、こうわからぬぐらいにちらっと書いてあるのです。製品はわりにこれはりっぱな製品なんです。ところが、日本の市場にきてこれは百五十ドルですね。そうすると、これは本場ものが九万八千円なんです。四万五千円と九万八千円でしょう、これは明らかに、私はこの二つの事例だけをおあげしますけれども、九条の第一項のこの不当廉売関税を発動するのに十分な根拠があると見ておるんです。したがって、この問題についても、これは大蔵省なり通産省は早急にやはり検討しいただかなけりゃならぬ。これは私が初めて出すわけですから、衆議院の一月前に出たところの問題でも、まだ調査中ということですから、いま御即答はもらえぬと思いますけれども、これは厳然たる事実でございますから、この点を調べていただいて、こういうふうに不当廉売された日には、日本の伝統産業というものは、これは守れないことはもう明白でございますだけに、ひとつこれらの問題については緊急な御検討をお願いをいたしたいと思いますが、その点いかがでしょう。
  126. 海原公輝

    説明員(海原公輝君) 不当廉売関税制度の発動の要件と申しますとか、それはダンピング価格での輸入が行なわれるということ、それから同じようなことでございますが、国内の競合産業に損害を与えまたは与えるおそれがあり、当該産業を保護する必要があることということになるわけでございます。  問題は、ダンピング価格というものをどう考えるかということでございます。これにつきましては、わが国も加盟しておりますガットの六条の規定がございまして、ダンピングの有無は、原則として輸出価格が輸出国の国内の消費向け価格と、それよりも低いかどうかということにかかってくるわけでございます。したがって、いま市販されております、先生いろいろ例をあげられましたものが国内の、つまり、韓国の中で売られている価格とどうなっているかという相関関係でございまして、本場の大島つむぎの価格と、それから、そういったものとの価格の差をもってダンピングがあるかないかというふうな判定のしかたにはなっておらないということを申し上げておきたいと思います。
  127. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 韓国で売られておる価格というのはどういう意味なんですか。韓国で大島つむぎは着ないでしょうが。あなたのおっしゃるのは、韓国で卸としてやっておるという値段のことですか。大島つむぎを韓国の人が着るんですか。ちょっとあなた、緊急関税の問題とごっちゃにしているんじゃないですか。
  128. 海原公輝

    説明員(海原公輝君) 緊急関税と混同しているわけではございませんで、国内にかりにそういったものがないという場合におきましての判断基準と申しますか、それにつきましては、同じくガットの六条におきまして、「第三国に輸出される同種の産品の通常の商取引における比較可能の最高価格」、あるいは原産国における産品の生産費に妥当な販売経費及び利潤を加えたもの、これとの比較になろうかと思います。
  129. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうしますと関税局、大蔵省自体としては、積極的にまだこの問題について調査するところの意思はないんですか、おありなんですか。それと同時に、それならばこの第二項に基づいて利害関係者から提訴があれば、政府は、直ちに第三項に基づいて通産省と協議をするところの意思がおありですか、どうですか。これはないというわけにはまいらないと思いますが、いかがでしょう。
  130. 海原公輝

    説明員(海原公輝君) 私、別に調査をする意思がないということを申し上げたつもりではございませんで、本日の先生の御発言その他を帰りまして上司に報告して、それでどうすべきかということをきめさせていただきたいと、かように考えるわけでございます。
  131. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私がお尋ねしておるのは、腰が重いということになれば、実際の業界としては一刻を争うところの問題なもんですから、それならばやっぱり提訴もして、しかるべき手続を踏んで皆さんに検討してもらわなきゃならないだけに、行政の姿勢のあり方としては、その前に積極的にひとつ調査をしてやろうと、こういう意欲を私は伺いたかったもんですから、いまもそう申し上げておるんですが、それはどうでしょうか。これは通産当局にもそのお気持ちをお聞きしたいと思いますが、いかがでしょう。
  132. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 要は、不当廉売であるかどうかのファクトファインディングの問題だと思います。したがいまして、当方といたしましても御指摘のような、あるいは現物、ただいま見せていただいたような品物につきまして、いわゆるダンピング関税の対象になり得るかどうか早急に調査いたしたいと考えます。その上で大蔵の関税当局とも協議いたしたいと考えております。
  133. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それはひとつ早急にやっていただきたいと思います、時間もありませんので先を急ぎますけれども。  それともう一つは、これは衆議院でも問題になりましたところの緊急関税の問題ですね。確かに私は、この条項の発動というのは、ガットとの関連できびしい条件もあり、かつまた、関税審議会の諮問を得なきゃならないとか、いろいろな条件があって、さっきの二つの条項よりは非常に手続的にも困難な条件があるということは承知をいたしておるわけでございますけれども、あわせて、この問題についても前向きのひとつ御検討をわずらわしておきたいということだけを要望として申し上げておきたいと思います。  それで、いま一つは、先ほど提案者の板川先生のほうからもお話があったわけでありますが、税関におけるところのチェックの問題ですね。いわゆる水ぎわ戦術の問題、これは私も関税法七十一条の関係について、この一年間、関税局のほうでいろいろ御努力をされてきたということはよく承って承知をしておりますし、非常にその点も感謝をしておるわけでございますが、この件について、これはもう公取との関係もありましょうけれども輸入課長さんのほうからでも、今日までとられてきたところの七十一条関係でどういう制限を設けながらいままでやってきて、今後はこうしたいという点があれば、一応お聞かせ願いたいと思います。
  134. 大槻章雄

    説明員(大槻章雄君) 関税法の七十一条の規定ということで先生からの御発言があったわけでございますが、七十一条の規定によりますと、「原産地について直接若しくは間接に偽った表示又は誤認を生じさせる表示がされている外国貨物については、輸入を許可」せず、そのような貨物の輸入申告があった場合には、税関長は、輸入申告者の選択によって「その表示を消させ、若しくは訂正させ、又は」「積みもどさせ」ることになっておるわけでございます。  従来、韓国から輸入されておりますつむぎにつきましては、大島つむぎとか、奄美大島つむぎとか、いろいろ十数個の表示がございましたわけでございます。それだけでは誤認をされるということで、私ども韓国産であるという表示をそれに加えてしなければならないという扱いでまいったわけでございますが、昨年の春ごろ、その表示をする場合に、反物の端のほうから見まして一番端に近いほうに韓国産、たとえばメード・イン・コーリアというような表示をしてきたわけでございますが、その通関後の実際を見ますと、その反物の一番端にありますメード・イン・コーリアというものを切ってしまって国内に流通するという実態がございましたので、これは単なる通関のための手段だということで、その場合には大島つむぎ等の表示の内側——内側と申しますのは、反物の端から見て内側でございますが、そこに韓国産あるいはメード・イン・コーリアという表示をするように規定をしてまいったわけでございます。  一応そういうことで推移を見たわけでございますが、奄美の業界の皆さん方等からの御要望もございまして、いろいろ検討したわけでございますが、本場奄美大島つむぎというような表示がございますと、それはあたかも奄美大島でつくられたつむぎであるというふうに誤解をされる点もございますので、本場とか、あるいは奄美大島、村山大島とか、そういう表示のあるものにつきましては、たとえその表示の内側に韓国産の表示がございましても、それは誤認を生ぜしめる表示であるということで認めないということにしたわけでございます。したがいまして、積み戻しをさせるとか、あるいはそれを消去させるというような手段を講じたわけでございますが、その後、さらに私どもまたその推移を見ておりますと、その表示につきまして、染料とかペイント等によりまして抹消する方法とか、あるいは真正な原産地を脱色によって白抜き表示をするというようなことをやりまして、結果的に通関が終わりますと、ペイント等でございますと、それをまたもみ消しちゃって復元するというようなことになって、誤認を生ぜしめる表示が残ることになりますので、昨年の十二月の規制に加えてさらに本年の四月から、そういうものは単に通関のための措置ということで認めないということで、さらに一段と規制を強化してまいったわけでございます。  また、これも四月からでございますが、本場大島つむぎ等の表示のところを切断したものを、輸入者のほうから返してもらいたいという御要望がある場合もあるわけでございますが、それを見ますと、また返しますと、反物の本体のほうに縫い合わせてまた流通するというような点もございますので、そういう切断片につきましては任意放棄をしていただくとか、あるいは滅却、積み戻し等の措置をとるということにいたしまして、また反物の本体のほうに縫い合わせられる、そういう危険のないように規制するというような措置をさらにとってきたわけでございます。また、韓国産の大島つむぎ等の日本文字によって表示がされておる場合におきましては、その真正な原産地の表示として、日本文字以外の文字による表示がされていることは、総合的に見てその原産地について一般的に誤認をされる貨物に該当するということで、メード・イン・コーリアという英文ではなくて、韓国産という日本文字による表示をさせるということで、このあたりも公正取引委員会のほうともいろいろ協議をいたしまして、この表示の問題については、本年の五月一日以降厳格に実施するというように、昨年の四月以降いろいろ規制を加えてきたわけでございますが、私どもといたしましては、通関の水ぎわ作戦の実態といたしまて、業界の皆さん方の要望等も十分踏まえ、また、公正取引委員会のほうとも可能な限りにおいて協議をいたしまして、その適正化を厳重に実施してまいったという経緯でございます。
  135. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 時間もありませんので、いままでの関税法の問題で輸入課でとってきた処置について、その労苦に感謝申し上げると同時に、今後もよりやはり適正をひとつ期していただくように御尽力を願いたいと思いますが、この間もお願いしましたように、切り取ったところの原品があれば、ちょっと先生方のところへ回して見せていただきたいと、こう思います。
  136. 大槻章雄

    説明員(大槻章雄君) 先生から御要望ございました、本場大島つむぎ等の切断片を持ってまいっておりますが、回覧してよろしゅうございますか。
  137. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうぞ。
  138. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 時間の節約上、二問を一括してやりたいと思います。一つは、保護育成のための資金上の問題です。第二の点は、税制上の問題です。  本法案の第六条の資金の確保または融通のあっせんの内容につきましては、衆議院におきますところの審議の議事録を拝見をいたしまして承知をいたしております。ただ、しかしながら、現実の問題といたしましては、いわゆる大島つむぎの現状は、先ほど佐藤総務課長からもお答えいただいたように、総需要抑制ということも響いて非常に停滞のぎみでございますが、それと同時に、もう一つは、日銀の指導の貸し付けのワクが縮小の傾向にあるということやら、大蔵省融資選別がなかなかきびしいために、零細なつむぎ業界、業者のところまで融資の面で及びかねるという状況が非常に多いのです。したがって、大島つむぎの場合には、業者と申しましても一人機と称するところの工場主がおるくらいですから、非常に零細な業者が多い。したがって、零細な業者にも金融上の融資策というものがきちんととられていくような具体的な手だてをやっていただきたいと思います。もちろん、これには四十億以外に年末融資資金もあるということを承知をいたしておりますけれども、現実にはなかなか条件がきびしいものですから、したがって、これが倒産に結びつくという危険性が多分にあるという、あるいは倒産者が出ておるという現状でございますので、その点を踏まえて、通産当局としてどういう融資対策というものをお考えになるか、お聞かせ願いたい。  いま一つは、税制上の優遇措置の問題でございますが、確かに七条にいろいろ規定をされております。また、議事録を拝見いたしますと、指定商品の振興準備金制度とか、あるいは共同施設に対するところの特別償却制度の創設ということを考えておられるようでございますが、なお、関係者は不況対策積み立て金ですか、もういま不況期ですから、その積み立て金とか、あるいは損失補てんの準備金等に対しても税制上の優遇措置をやってもらいたいという強い声があるんです。したがって、この点等についても私は積極的な措置をしてもらいたいと思うわけでございますが、それらの両面についてのお答えをお聞かせを願いたいと思います。
  139. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 本法施行にあたりましての財投資金四十億につきましては、先生のいまのお話で割愛させていただきたいと思いますが、特にいまこれを実行の場合にも、零細企業が多いということでございますので、国民金融公庫等を通ずる融資の円滑化をはかっていきたいと、かように考えております。  それから、いまのお話につきましては、一つは緊急対策資金をどうするかということかと思います。これにつきましては、政府機関はもとより、都市銀行あるいは地方銀行中小企業ワク、こういったものを活用いたしたいということで、現在、関係の部局と詰めを急いでおりまして、できるだけ早い機会に現実の融資が行なわれるように考えてみたいと思います。  それから、税制の問題でございますが、これも本法に基づきまして、準備金制度あるいは特別償却制度を考えておるわけでございますが、具体的な先生の御指摘不況対策積み立て金あるいは準備金につきましては、これはまあ不況のために金をたくわえておくということは非常にけっこうなことかと思うわけでございますが、ただ、不況対策準備金と申しましてもさまざまな態様があるようでございまして、具体的には個別のケースについて検討いたすと申しますか、判断し、かつは税務当局とも話し合わなくちゃいけないかと思うわけでございますが、ただ、一般的に申し上げますと、積み立て金あるいは準備金を拠出した企業がそれの請求権を持っておるというような場合には、税制上の恩典を与えられたケースがない、かようなこともございまして、そのある方によってはなかなかむずかしいかと思います。この本法のために準備いたしました準備金制度ではこれは請求権がないと、共同施設を購入するために一定の賦課金を納めたものについては、組合としてそれも具体的な設備の購入に充当するといったようなところから、経費算入が認められておるわけでございます。まあそういった一般的な事情もございますが、具体的な案がございましたら御提示をいただいて、それについて検討さしていただきたいと、かように考えております。
  140. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 じゃ、具体的に関係者からも参りますので、ひとついまお答えいただきましたように前向きに検討していただくということで、私、理解をして質問を終わりたいと思いますが、よろしゅうございますですね。
  141. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 前向きには検討いたしますが、なかなかむずかしい問題でもございますし、かたがた、税務当局との関係もございますので、いずれにせよ、その具体的な案をお示しいただきたいと考えております。
  142. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 私は、ただいま宮之原先生から、大体私がお聞きしたいと思っていたことを詳細に質問をされましたので、なるべく重複を避けまして御質問申し上げたいと思います。  一番最初に、伝統的工芸品の定義と申しますか、指定要件の問題でございますが、たとえば私、茨城県でございますが、まあいろんなものを県のほうで要望いたしておるようでございますが、この中で「工芸品」という定義と、それから「主として日常生活」にという定義がございます。これにつきまして、たとえば「工芸品」の中に江戸以来の名菓というようなお菓子とか、あるいは「主として日常生活」という中に、たとえば特殊な石材を使ってつくる墓石というようなものが含まれるのかどうか、これはどちらにお伺いしたらいいのかわかりませんが、ひとつ御答弁をいただきたい。
  143. 左藤恵

    衆議院議員左藤恵君) 「主として日常生活の用に供されるもの」という中には、いわゆる美術品的なものは含まれない、一般国民の日常の生活の用に供するものが含まれるということでございます。それから、菓子とか、みそとか、しょうゆとか、あるいはお酒とか、そういう飲食用品のものにつきましては、工芸品でないのでここでは含まれないということでございますが、そうしたものにつきまして、最終的にはこの法案で予定いたしております伝統的工芸品産業審議会の審議事項として決定していただく、こういう考えでございます。
  144. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 たとえば建築材料に使う石材とか、あるいはお墓に使う石とかいうようなものは、「主として日常生活」という中に入るのですか、入らないのですか。
  145. 左藤恵

    衆議院議員左藤恵君) 非常にその点は微妙な問題があろうと思います。日常生活の用に供するものでありましても、そういう器物でなくても、たとえば、衣料品とか装飾品とかいうふうなものはここに含まれておりますので、そうした材料につきましても伝統的工芸品に指定され得る範囲のものではないかと思いますが、最終的には先ほど申しました産業審議会で御審議をして決定していただくべきだと、このように考えます。
  146. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 先ほどお話ございましたように、要するに本場ものを育成、守っていこうということでございますので、できる限り、本場ものである限り、その定義に抵触するものはこれは困りますけれども、抵触しない範囲内でできるだけお取り上げをいただきたい、こういうふうに通産省のほうにお願い申し上げます。  それからその次は、模造品の問題でございますが、これも宮之原先生からだいぶ詳しく御質問がありましたが、たとえば不正競争防止法というのは、これはいわば民事手続なり刑事罰なりでございまして、これは裁判所のごやっかいにならなければいけないというものでございます。そこで、その不当景品類及び不当表示防止法の規定は、これは公取が——公取の方にお伺いしますが、公取が排除命令といいますか、それ以降のいろいろな手続がとれる、いわゆる行政措置でやれるということでございますが、先ほども質問がありましたが、四条一号というのでは何か読めるのか読めないのか。たとえば先ほどの大島つむぎの問題、読めるのか読めないのか、ちょっとはっきりしない点がございますので、たとえば四条三号の指定でございますね、これを大島つむぎにつきましてやると、指定をするというような意図はありますかどうか、御質問をしたい。
  147. 後藤英輔

    政府委員(後藤英輔君) 原産地を表示いたしまして、その表示された原産地のものであるということが商品の品質に優良だと、こういうふうな判断につながるような場合であって、それが違っておったという場合には、これは四条一号で違反ということでございますけれども、具体的に御指摘のような大島つむぎといったようなものにつきまして、これ定評化しているのじゃなかろうかという点なんかもございます。こういう大島つむぎの点につきましては、一度まあ一部の消費者の人たちからもアンケートをとって調べたことがございますけれども、そういうような場合につきましては、必ずしも直ちに品質優良というふうなことで、四条一号にはむずかしい場合もあろうかと思われるわけであります。こういう場合には、一応理論的には四条三号の指定というものも公取としてできるわけでございますけれども、それよりもやはりそういうような原産地としての品質表示についての信用を守りたいという場合には、できるだけその業界において公正競争規約をつくるように指導いたしまして、その公正競争規約の中で産地の定義とか、あるいは産地を表示するとか、もし産地を偽った場合には規約違反になるというようなルールをその中に盛り込ますような、そういう指導でもってやってまいりたいというふうに考えております。
  148. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 その公正競争規約とこの指定との関係がよくわからないのですが、こちらのほうで指定するための要件にはなかなか該当しないので、たとえば先ほどの大島つむぎの場合を例にとれば、こちらの公正競争規約のほうでやってくれ、こういう趣旨でございますか。
  149. 後藤英輔

    政府委員(後藤英輔君) 先ほどもお答えいたしましたように、もしも原産地表示の誤認が品質優良の誤認にすぐつながるという場合でありますれば、四条一号の問題になる。そこに至りませんけれども、やはり一般消費者の商品選択の場合に、自分はここでつくられた品物、これがいいんだと思っていたのに、その表示でほかのところの品物を買わされた、ただしその場合に、必ずしも品質優良というような、そういう程度に立っていないという場合であってもやはり問題があろう、こういうような場合には、不当表示防止法の十条の規定に基づいて、業界でもって公正競争規約というルールをつくる、それに対して公取が認定するということで、その内容として産地の表示の基準を入れることができるということでございます。
  150. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 これは通産省の方にお伺いしたいのですが、商標法というのがございます。その商標法の中で、たとえば伝統工芸品の商標につきまして協同組合等も登録できるようでございますが、その場合に、単に大島つむぎというような一般化された表示だけでは登録の対象にならないと思いますが、何らかのくふうをいたしまして商標として保護する、商標として登録をして、そして、それ以外の者がその商標を使わないような措置をとって、しかもその商標を、大島つむぎなら大島つむぎの商標でこれは売り出しているのだということを積極的にPRするというような方法をとれば、その大島つむぎの模造品の不当販売が防げるんじゃないかと思いますが、そういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  151. 石川義雄

    説明員(石川義雄君) 大島つむぎ自体を商標として登録するということは、現在のところでは、先ほどもお話がありましたように、それが普通名称になっているんじゃないかということと、もう一つ、かりにそれが普通名称でなくても、いわゆる奄美大島でつくられたという産地の表示であるということでございますと、商標法は、ある特定の業者の商品にくっつけるマーク、目じるしとして登録するわけでございますから、普通名称であるとか、あるいは産地をあらわす文字は登録しない、その特定の業者の取り扱いにかかる商品であるという目じるしにならないという意味で。それで、実際には大島つむぎに関しまして現在まで登録されている例を見ますと、当時の名称でございますから、いまもその名称であるかどうかちょっと確かめておりませんが、本場奄美大島紬協同組合という名前で、それで商標ラベルの中に「本場大島」という文字も、あるいは「大島紬」という文字も入っておって、それが地球の図形の中にそういう文字があるというもので登録されている例があります。それで、その場合に、どういう商品にこの商標を使いますということで、指定商品ということばを商標法でも使っておるのでございますが、その指定商品としての表示が大島つむぎということになっておりまして、これは昭和三十二年に登録されておるのでございますが、三十二年当時も、大島つむぎというのは普通名称であるという判断をして登録しておるようでございます。したがって、この登録されておる例を見ますと、地球のマークの中にそれを入れて、大島つむぎ自体が特定の業者の目じるしになるということではなくて、むしろ地球の図形で目じるしにしようという形で登録されてあるものだと思います。したがって、この本場奄美大島紬協同組合という名前で、いわゆる統一ブランドとして業者がこのマークを統一して使っておるということで、宣伝をして使っていくのであれば、これと同じようなマークを他府県の業者が使ったりすれば、もちろん、その商標権の侵害として差しとめもできますし、損害賠償もできるということになろうかと思います。
  152. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 そういう、いまのような方法で、特定の組合なら組合の商標として登録してあればということですか。いまのちょっと最後のところがよくわからなかったのですが。
  153. 石川義雄

    説明員(石川義雄君) 登録して使用されておれば、その同じマークを他府県の業者が使ったりすれば、商標権侵害だということで差しとめられるという意味で申し上げたわけでございます。
  154. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 それは組合なら組合単位でそういうのをつくらなきゃいかぬわけですか。組合単位で一つの、たとえば、大島つむぎばかり例にとりますが、これは私もよくわからないのですが、奄美大島でいろんな組合が大島つむぎについてあったとして、そういう場合に、組合単位にその商標をとってそれを登録するということは、これはできるのだろうと思うのですけれども、そういうことをしなければ商標権で保護できないと、こういうことでございますか。
  155. 石川義雄

    説明員(石川義雄君) それは、そのマークをどういう単位の組合で使っていくかということでございまして、たまたまちょうど同年ごろですが、三十三年に鹿児島県織物工業協同組合という名義で、やはりその商標の中に「大島紬」という文字が入っておりまして、これはそこを特徴にするというよりも、旗をこう交差したような図形を入れまして、そういう図形で登録を受けておりますが、そういったように奄美大島の業者全体が加入する組合というものがもしあるとすれば、その名前で登録し、それをその傘下の業者が統一的に使っていくということは可能でございます。
  156. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 そういう方法と、この法律にございます、たとえば振興計画の中に、第七項で品質の表示に関する事項というのがありますけれども、この品質の表示につきまして、産地表示を積極的に——これは任意事項だと思うのですけれども、積極的に産地表示をやらして、そして、その産地表示というものを積極的にPRするというような形でも一つのやり方としてできるのじゃないかと思うわけでございますが、この振興計画というのは、法律的に、あるいは法律以外の面におきましてどういうような効果を期待しておられるのですか。これは提案者にお聞きしたいと思うのです。
  157. 左藤恵

    衆議院議員左藤恵君) この振興計画の中でたくさんな事項がございます。そういったことについて内容がある中に、いまお話しの品質の表示に関する事項というのがございますが、こういったことが掲げてありますものは、これは国及び地方公共団体がこういった振興計画を認定した場合に対します補助金あるいは融資、あるいはまた税制上の措置と、そういったものをすることができる、そういうこと、それを期待しての振興計画の提出だということでございますので、あくまで振興計画は、いまお話しのように任意の規定であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  158. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 そこで、振興計画をもとにいたしましたいまの金融の問題でございますが、これも宮之原先生からもお伺いしているわけでございますが、奄美群島振興開発基金というのがございますね、自治省の方おられますか。これとこの今度新しく特別貸し付け制度を考えております中小企業金融公庫とか、国民金融公庫とかいうもの、これは、そちらの特別貸し付け制度は一応全国でございますし、奄美の振興基金は、奄美群島の伝統産業以外のサトウキビとか何かに関する振興資金も入っていると思いますが、その対象とする企業みたいなものが、国民とか中小と違うようになっているわけですか、そこら辺の仕組みをちょっと御説明願いたいと思います。
  159. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) 国民金融公庫とか中小公庫につきましては、奄美群島につきましても他の地域、全国と同じように適用されるものだということでございまして、奄美群島信用開発基金につきましては、それらの他の政府関係金融機関に救済されないような——救済されないと申しますか、対象にならないような基準のものをも拾い上げられるようなしかけで奄美群島のみに限って適用する基金という、そういう制度になっておるということでございます。
  160. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 通産省のほうにお伺いしたいんですが、伝統産業、伝統工芸品の融資制度と特別貸し付け制度と、それからいまの奄美群島の振興基金の中にも、昭和四十九年度一億三千万ですか、大島つむぎ振興事業というのが入っておりますが、いま都市銀行とか何とかいうお話もございましたけれども政府関係金融機関から貸し付けるやつで、これ以外にも貸し付けの制度があるわけでございますか。
  161. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 本法を施行するにあたりまして、特別貸し付け制度を考えておりますのは、国民金融公庫中小企業金融公庫の二つでございまして、ただいまの基金とは無関係と申しますか、併用してけっこうであるわけでございます。ただいま先生がおっしゃいました地方銀行、あるいは都市銀行という点につきまして、これはコマーシャルベースの問題は別といたしまして、先ほど私が申し上げましたのは、当面の不況対策資金として都市銀行あるいは地方銀行がそれぞれ二千億、一千億、合計いたしまして三千億の資金を準備してくれておるわけでございますが、これを緊急融資財源として活用いたしたいと、こういう趣旨でございまして、必ずしも本法の施行に直結した融資制度ではございません。
  162. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 そこで、これは振興開発基金と特別貸し付け制度は別立てで、それぞれで貸すと、こういうことだと思いますけれども、この振興開発基金のほうは金額も少のうございますし、また、先ほど宮之原先生言われましたように、大島つむぎ関係では零細企業が多いということもありますし、また、そういうこともございますので、特別貸し付けの分で相当カバーするというと変でございますが、相当貸してもらいたいという希望が地元にあるようでございます。そこで、この特別貸し付けにつきまして、たとえば奄美の分といいますか、大島つむぎの分という貸し付けワクを設定して、そして、国民金融公庫中小企業金融公庫は代理店がお貸しになるんだと思いますが、財源は財投資金でございますので、ワクをはっきりして、そして貸してもらいたいという地元の意向があるわけでございますが、これについてはどういうふうにお考えになりますか。
  163. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 実は、伝統的工芸品をつくっておる事業者というのは、非常に中小規模と申しますよりも、むしろ零細企業の方が多いというふうにわれわれ承知いたしておりますので、この特別貸し付け制度四十億のうち、むしろ国民金融公庫重点を置きまして、三十億をこれに予定いたしておるというのが現状でございます。  それから、大島つむぎ用にワクを設定してはどうかという点でございますが、これは御趣旨はよくわかるわけでございますが、一年間にこれだけのワクをとりあえず確保しておるわけでございますが、通産大臣によりまして随時指定されていく、その随時指定されていく過程におきまして、どの程度まで大島つむぎに割愛できるか、あるいはどの程度他の部門にリザーブしておかなくちゃいけないかということにつきまして、これは非常に技術的にむずかしい点もございます。したがいまして、われわれといたしましては、本法が成立しました際には、さらにどの程度本年度指定されるか、どの程度のものが事業計画、振興計画を具体化し、これを実行に移していけるかといったようなことも勘案いたしまして、できるだけ御指摘の趣旨に沿いたいと思いますが、あらかじめワクを設定するということは、むしろ実際問題としての困難さが残るかと思いますので、その点は御了承いただきたいと思います。
  164. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 指定がどういうふうになるかわかりませんけれども、指定が本年度どれぐらいというようなことが予測のついた場合に、やはり政策金融でございますので、単に銀行が貸し付け申し込みが多いからそういうところに余分に貸す、そういう割合で貸すんだということでなくて、政策的な御判断をひとつお願いしたいと思います。  それから、片一方の基金のほうでございますが、これは四十九年度は四十八年度よりもつむぎの分がふえているわけですけれども、今度の新しい法律ができる前に、これは予算を組まれているんだろうと思いますので、これのほうを、これはまあ転貸債ですから、なかなか増額ということもむずかしいと思いますけれども、今後の機会におきまして、零細企業のために新しい法律ができたということを頭に置いていただいて、ひとつ増額していただきたいと思うんでございますが、そういう点につきまして通産省と自治省と御答弁を願いたいと思う。
  165. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) 御趣旨に沿いまして関係当局はお話し合いを進めてまいりたいと思います。
  166. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 実態に応じまして自治省とも緊密に連絡をとって、できるものならば増額していきたいと考えております。
  167. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 それから、先ほどのことにちょっと関連をいたすわけでございますが、宮之原先生の御質問にもありましたように、技術や技法がほかの地域に行って、そこで類似品というのか、あるいは本物かもしれませんが、そういうものがつくられていくというところに問題がある。特に、韓国産の大島つむぎというようなことが問題になっておりますが、これにつきまして、産地から技術が外国に流出されるようなことがかってに行なわれることのないようにする措置というものが必要だと思います。これはなかなかむずかしい問題だと思いますが、この技術、技法の外国流出というものにつきまして、これを防ぐためにどういうふうに考え、また、どういうふうな措置をとろうとしているのか、通産省の方にお伺いいたします。
  168. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 伝統工芸品の技術が外国に流出するケースとしては、三通りほど考えられるかと思います。  一つは、外国の旅行者がこちらに参りまして、技術を覚えて帰って、外国でこれを教育する。二つ目は、外国の技術者を日本に招致いたしまして、そこで技術を教える場合。三つ目は、図面を送付して教える場合。こういった三通りの流出の形態があるかと思いますが、このいずれにつきましても、その代価支払いが標準決済になっておる場合には、すでに自由化されておるわけでございます。標準外決済の場合には十分チェックする余裕があるわけでございますが、自由化されておる段階では、法的にこれをチェックする措置というものはまず考えられないのではなかろうか、そういった意味合いからおきましても、そういった技術が外国に流出しないように、地元の業界におきまして一本となって自粛体制を固めていただくと、それを当方が御協力申し上げるといったようなことしかいまのところ手がないと、かように考えております。
  169. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 この問題につきましては、なかなかむずかしい問題もあろうかと思いますが、今後ともひとつ努力をしていただきたいと思います。  それから最後に、税金の問題でございますが、先ほど宮之原先生からも御指摘がございましたが、不況対策積み立て金とか損失補てん準備金、これが請求権があるものについては、なかなかその税制上の優遇措置に乗らないということでございましたが、対案があればひとつ示してくれというようなお話もございましたけれども、どういう要件があればこういうものが認められるのか、その点についてひとつ要件を教えていただきたいと思います。
  170. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 要件となりますと、具体的になかなか申し上げづらいわけでございますが、個別についていわゆる税務当局とお話し合いをするということになるわけでございますが、その場合に、先ほど申し上げましたように、金を出した方が請求権を持っているものについて、いままで一件も認められておらぬ。従来の例を見ますと、たとえば協同組合等におきまして一定の賦課金をお互いに拠出いたしまして、その金をもって共同施設をつくるといったような場合に、それぞれの拠出者は請求権を捨てておるわけでございます。そういった場合に、準備金制度として認められている場合が一般でございますので、少なくとも請求権が残っているような案であれば、事実上準備金制度として税法上の特別の措置を受けるということは困難かと考えております。ここで準備いたしております伝統的工芸品産業振興準備金制度、これは仮称でございますが、これにつきましても、ただいま申し上げましたように、金を出した人は請求権を放棄するということによって経費算入を認められる、かような措置になっておりますので、一番ポイントとしては、やはり請求権があるかないかというところがまず第一次関門ではなかろうかと思います。もちろん、そのあとは税法上の恩典を与えるだけの価値のある制度であるかどうか、あるいはどういう目的、使途を持っているものであるかということは当然のことでございますが、具体的にちょっと要件を羅列するというわけにまいらないかと思います。
  171. 竹内藤男

    ○竹内藤男君 なかなかむずかしい問題だと思いますが、案を出してこいというのではなくて、ひとつ通産省のほうでも何かお考えをいただきたいと思います。  私、質問しようと思ったことは大体宮之原先生が質問されましたので、補足的に質問いたしたわけでございますが、まあ伝統工芸品の産業振興の法律が出ました機会でございますので、模造品の防止、あるいは外国からの模造品の輸入の問題、あるいは金融、税制の問題につきまして、ひとつ通産省のほうでしっかりと力を入れてやっていただきたいということを御要望申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  172. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 他に御発言がなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会      —————・—————