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1974-05-21 第72回国会 参議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十一日(火曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————    委員異動  五月十七日     選任          林  ゆう君     辞任         補欠選任      棚辺 四郎君     橋本 繁蔵君      吉武 恵市君     山下 春江君      長田 裕二君     大松 博文君      西村 尚治君     平井 卓志君      小笠原貞子君     沓脱タケ子君  五月二十一日     辞任         補欠選任      鹿島 俊雄君     長屋  茂君      小川 半次君     寺下 岩蔵君      大松 博文君     佐藤  隆君      内田 善利君     柏原 ヤス君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  昇君     理 事                 玉置 和郎君                 丸茂 重貞君                 須原 昭二君                 小平 芳平君     委 員                 川野辺 静君                 佐藤  隆君                 斎藤 十朗君                 寺下 岩蔵君                 長屋  茂君                 林  ゆう君                 田中寿美子君                 藤原 道子君                 柏原 ヤス君                 中沢伊登子君                 沓脱タケ子君    衆議院議員        社会労働委員長        代理理事     山口 敏夫君    国務大臣        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君    政府委員        厚生政務次官   石本  茂君        厚生大臣官房長  曽根田郁夫君        厚生大臣官房審        議官       三浦 英夫君        厚生省環境衛生        局長       石丸 隆治君        厚生省社会局長  高木  玄君        厚生省児童家庭        局長       翁 久次郎君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        社会保険庁年金        保険部長     出原 孝夫君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        大蔵省主計局主        計官       梅澤 節男君        厚生省社会局保        護課長      山崎  卓君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○児童手当法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○原子爆弾被爆者医療等に関する法律及び原子  爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十七日、林道君が委員選任されました。  また同日、棚辺四郎君、古武恵市君、長田裕二君、西村尚治君、小笠原貞子君が委員辞任され、その補欠として橋本繁蔵君、山下春江君、大松博文君、平井卓志君、沓脱タケ子君が選任されました。  また本日、内田善利君が委員辞任され、その補欠として柏原ヤス君が選任されました。     —————————————
  3. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 国民年金法等の一部を改正する法律案児童手当法等の一部を改正する法律案一以上両案を一括議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 須原昭二

    須原昭二君 私は、きょう、国民年金法等の一部を改正する法律案、これについては賛成でありますが、後日のために基本的な課題について、ひとつ政府の所見をただしておきたいと実は思うわけです。  国民福祉充実という問題は、今後におけるわが国の内政の最大課題であると私は思うわけです。特に昨年の急激な物価上昇考えれば、社会的に弱い立場にある人々にあたたかい手を差し伸べて安定した生活保障していくための社会保障制度、中でも所得保障中心としての年金制度の一そうの改善充実をはかっていく必要があると私は痛感をいたしておるわけでありますが、この点について厚生大臣の基本的な考え方をまず冒頭にお尋ねをいたしておきたいと思います。
  5. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 国民が健康にして文化的な生活を享受できるようにするということが社会福祉の基本的な考え方であるわけでございます。そういう考え方から医療保障所得保障ということになるわけでございますが、私どもは昨年来特に医療保障所得保障二つを並べて考えてみますと、所得保障の面がやはり諸外国に比較いたしまして非常におくれているということに着目いたしまして、皆さん方の御協力もいただきながらいわゆる五万円年金、しかも物価スライド制を背景に持ったという画期的な年金制度の確立に努力をしてこれが実現を見るに至ったわけでございます。この点につきましては、御審議いただきました皆さん方に私は深く敬意を表しておる次第でございます。  ところで、そういうわけで、まあ西欧先進諸国並み所得保障の体系というものができ上がり、そのレールが引かれたわけでございますが、特に昭和四十九年度におきましては、昨年来の物価動向、これを十分に考えなければならない、こういう考え方を基本といたしまして所得保障の面においてもそういう考え方のもとに弱者救済と申しますか、物価上昇に苦しんでおられる国民生活を守るためにできるだけの努力をしようと、こういうことに全力を注いでまいったわけでございます。そういうふうなことから拠出制年金にありましては物価動向に即したスライド制を本年度実施する。実施するにあたりましてもできるだけ早くこれを実施しなければならない、こういうふうなことで、これは予算の成立後でございましたが、衆議院におきましてスライド実施の時期を繰り上げていただくというふうなこともいたしたわけでございます。さらにまた、年金のうちで、まあ老後生活をささえるというところまでいっていない、いわゆる福祉年金につきましては、まあ額についてはいろいろ御意見もあったのでございますが、五〇%アップというふうなことを行ないまして、物価上昇に苦しんでおる国民生活を守らなければならない、そういう弱者救済的な考え方中心にして年金制度改善をはかる、こういうふうなことをいたしておるような次第でございまして、今後とも経済動向とにらみ合わせながら年金問題というものは考えていかなきゃならぬであろうと、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  6. 須原昭二

    須原昭二君 いま厚生大臣から、所得保障が非常におくれておる、こういうことを御報告になり、その上に立って所得保障中心とした年金制度を一そう改善充実をはかっていかなければならない、こういう基本的な考え方を明らかにされたわけですが、実は、福祉元年——昨年、福祉元年とよくいわれ、いわゆる五万円年金水準をきめられた、さらに物価スライド制を導入された、こういうことはよくわかるわけですが、社会保障長期計画懇談会の答申、昨年の秋、出ましたんですが、それを通覧をいたしますと、医療保障年金制度とを取り上げていないわけですね。この問題については、私は、非常に大きな問題点があると思うわけです。したがって、やはり、将来に対する計画というものが確立されなければならないし、そのときばったりの方針では私はならないと。したがって、その計画とその見通しについて、どのようなお考えになっているのか、簡単でいいですから、ひとつ……。
  7. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 昨年の五月ころでございましたか、社会保障制度長期計画懇談会というものを設立いたしたわけでございまして、この懇談会の審議する事項は、非常に各般にわたっておるわけでございます。医療供給体制整備社会福祉施設充実年金医療保険と、まあ大ざっぱに言えば四つの大きな柱になると思うんです。ところで、審議しておりましたところ、健保年金というものの成立がおくれておりましたために、——これはもう御承知のように九月末に成立したわけでございますので、健保年金がおくれてやりましたために、医療供給体制社会福祉施設計画的な整備に力を入れましょうと、まあ先にやりましょうと、こういうことにいたしまして、先般、本年度になりましてから、医療供給体制、これは看護婦養成マンパワー養成中心でございましたが、そういうふうな医療供給体制整備社会福祉施設整備について、まず一応の具体的な案を示していただいたわけでございます。  そこで、年金医療保険、これが昭和四十九年度におけるこの懇談会最大の使命になってくると思うのでございます。これの今後の、五十二年度までの具体的な構想というものが、本年度において、懇談会でひとつ一応の結論を出していただけることを期待いたしておるわけでございます。しかし、まあ私どもをして言わしむるならば、最近の経済状況というものは、非常に激動をきわめておるわけでございますので、年金医療がどういう形になっていくかということを非常に心配しておるわけですが、医療年金社会福祉その他のものをひっくるめて、昭和五十二年度という最終年度においては、いわゆる振替所得国民所得の中に占める比率が八・八、これはどんなことがあっても実現をしましようと、その五十二年度までに至る過程において、経済が、いろいろな変動はあるでしょうと、変動がかりにあっても、最終年度においては八・八という振替所得は完全に実現する、振替所得の八・八ということになりますと、社会保障給付費は大体一一%台になるわけでございまして、非常に、西欧先進諸国並みに近づいた社会保障給付実現するわけでございますから、振替所得、五十二年度八・八、これはどんなことがあっても動かさない、こういう前提のもとに、年金医療保険の長期的な計画、目標というものを、四十九年度中に、いま、きめたいということで、有沢会長にもその旨をお伝えし、目下そうした方向で、長期ビジョンにわたる年金の改革、そういうものをひとつ御審議いただくと、こういうことにいたしておるような次第でございます。
  8. 須原昭二

    須原昭二君 ひとつ、この問題は、四十九年度中にやられるというお話しでありますが、それを見守りたいと思います。ぜひともひとつ前向きの内容を御明示をいただきたいと思います。  そこで、わが国年金制度は、依然としてやはり保険主義を貫いておると言っても私は過言でないと思うんであります。加入期限中の保険事故に対して保険給付を行なって、それによって生活安定をはかるという、いわゆる保険主義なんですね。したがって、憲法二十五条の精神にのっとって、いま厚生大臣がおっしゃったように、生活の安定を国民連帯でもってはかり、そのために必要な給付を行なうという社会保障ビジョンを、やはり年金制度の根底に置くべきではないかと、私は従来から考えておるわけですが、この社会保障のやはり理念に基づくとき、老後はやはり年金だけで生活できるように考えていかなければならないと実は思うんですが、その点について、大臣はどのようにお考えになりますか。
  9. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) わが国社会保障制度保険式でございますが、しかし、それは保険式でありましても、私ども願いとするところは、健康にして文化的な生活を享受するというところに私はあると思うわけでございまして、年金については、まさしく、お述べになりましたように、老後生活はこれで何とかささえていけると、こういう年金にしていかなけりゃならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。したがって、昨年、実は御提案申し上げました五万円年金というのは、おじいさん、おばあさん、二人だけの生活ならば五万円の額で生活ができるではないかと、しかし、それは制定当時の五万円の額でございますから、そのあとの年度においては、先ほど来申し上げました、物価スライドによって減価を防いでいくというやり方でございます。しかし、将来の問題としては、経済情勢変化、あるいは賃金上昇変化、こういうふうなことを考えてみますれば、あの法律にもありますように、ある一定の、四年なり五年なりの期間を置いて、生活水準なり、あるいは物価なり、のみならず、賃金というものも頭に描いた政策的な検討、こういうものも私は必要になってくると思います。そういうことをやりながら、いずれにせよ、須原先生のお述べになりましたように、老後生活はこれでささえ得ると、こういう額の年金制度に持っていく、これが私どもの究極の考え方であり、願いとするところでございます。
  10. 須原昭二

    須原昭二君 その保険主義というのは、いわばグループ主義ですね、私がこれから申し上げたいのは、国民連帯でやはりしていかなければならない、そう考えますと、いまの公的年金制度実態を見ますると、厚生年金国民年金、これは政府がやっておる、これは大体九割占められておる。しかし、その他の船員保険だとか、国家公務員共済組合地方公務員共済組合私立学校教職員共済組合公共企業体職員等共済組合農林漁業団体職員共済組合、この六つの制度については、これは一割ですが、これはおのおの、その非常にわずかな人たちグループによってやられておるわけですね、しかも、そのわが国公的年金制度は、この八つが実はばらばらに運用されている。したがって、給付水準や、負担に不均衡があります。また、障害等級不一致等問題点もあるわけです。したがって、受給者保障に欠けるうらみが当然ここに出てくるわけですが、これらの各制度の間の相互調整をやはりやらなければならない、実は基本的に、根本的な問題として、早急にやらなければならない問題点が出てくるわけですが、その点はどのようにお考えになっておりますか。
  11. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) わが国公的年金制度は、御指摘のように八つに分かれておりまして、これまた、御指摘のように、内容も、必ずしもいわゆる斉合性を保った内容であるとは言い切れない面がございます。で、私どもも、そういった不合理な格差と申しますか、そういった点の調整につきましては、非常に大事な問題と考えておりまして、この調整については、今後とも十分の努力をいたしたいと考えております。  ただ、各制度が、御承知のように、それぞれ発足の動機と申しますか、そういったことを異にいたしておりますので、それぞれ年金対象になりますグループのいろいろな特殊な要求、そういったものを、できるだけ年金制度の面にこれを反映をするというふうなかっこうで発達いたしてきておりますので、そのことが、むしろ結果的には、各制度の不合理な格差を生む原因にもなっておるわけでございます。したがって、そういった各グループごとの具体的な必要と申しますか、ニードと申しますか、そういったものにも十分こたえながら、しかも、各制度間におきまして不合理な格差のない、斉合性のとれた年金制度をつくり上げるという点につきましては、私どもも御指摘のような趣旨を十分踏まえまして今後とも努力をいたしてまいりたいと考えております。
  12. 須原昭二

    須原昭二君 いま今後ともこれは努力していくというお話でありますが、やはりこれは基本的な問題点、その総合調整をまずやらなければ、やはり格差は依然として残っていくと言わなければなりません。とりわけ老齢年金には通算措置が講ぜられているのに、たとえば遺族障害年金については通算措置が講ぜられてない。すみやかにこれは行なわなきゃ、まずやらなければならない問題点だと思いますが、その点はどうでしょう。
  13. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) ただいま御指摘通算の問題でございますが、通算制度をつくりました際には、障害遺族のこの年金につきましては、非常に短期間年金権が発生をするというふうなことを考えまして、この二つ制度につきましては通算措置を講じてなかったわけでございます。  ただ、具体的には、そうはいいましても、たとえば一年で年金権の発生する人が十カ月で事故が起こったというふうな、そういった例もたくさんあるわけでございますので、この二つ年金通算制度の問題につきましては、これは私どもも各制度共通の問題でございますので、なかなか遺族範囲の問題でございますとか、あるいは障害等級範囲の問題でございますとか、各制度によって異なっておりますので、技術的には非常にむずかしい問題を含んでおりますけれども、ぜひこの通算制度実施につきましては、早急に実現するような方向で取り組んでまいりたいと思います。
  14. 須原昭二

    須原昭二君 やはりこういう基本的な問題をまず処理をしなければ、ものごとが合理的に進んでいかないと実は思います。やはり老後年金だけと、こういう理想を高く掲げて厚生大臣もやられるというお話でございますが、そういたしますと、各制度によってばらばらになっている今日の段階を考えますと、まず、各制度共通最低水準を定める、最低年金制といいますか、そういうものをやはり設定をしなければならないと思いますが、そういう問題はどうお考えになっておられますか。
  15. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 各制度を通じましての最低保障年金というふうになりますと、これはなかなかむずかしい問題だろうと思うんでございます。と申しますのは、対象者の業態でございますとか、あるいは給与の実態、そういったものによってだいぶ差がございますので、年金の面についてだけそれらの点を全く一律と申しますか、そういった最低保障をするということは非常にむずかしい問題だとは思います。しかし、御趣旨はおそらく、この年金についてもできるだけ年金最低生活を営めるような、そういった水準にすべきであるという御趣旨だと思いますので、こういった点につきましては、前回御改正いただきました五万円年金、それからスライド制の導入、これだけにとどまることなしに、さらにこの年金というものが国民生活、特に老後生活のささえとしてどのような実態を持たなければならないかという点を構想しながら、十分この必要な水準の確保につとめてまいりたいと思います。
  16. 須原昭二

    須原昭二君 やはりこの問題はきちんと位置づけないと、あくまでも保険主義に堕していってしまうと思うんです。やはり国民連帯でいくというならば、やはり最低水準だけはきちんと位置づけておいて、その後の起きた問題点はこれを総合的に処理をする、こういう基本的な姿勢でなければ問題の解決にならないと思います。  きょうはいろいろ問題点指摘をいたしたいですから意見だけ申し上げておきますが、特に遺族年金給付水準は、老齢年金の五割というあまりにも低い水準にあるわけですが、はたしてこの五割というのは何を根拠に置いて五割と設定をされておりますか。
  17. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) この遺族年金給付率が五割であるという点につきましては、率直にそのいきさつを申しますと、当時一番先行いたしておりました官吏の恩給につきまして五割であったということを基準にいたしまして、その後できました年金制度はすべてこれにならったと、こういうふうないきさつでございます。それで、私どももこの五割という遺族年金水準の高さかげんがどういうものであろうかという点につきましては、実は率直に申しますと、それは低過ぎると考えております。  ただ、問題は、この低い五割の水準をどのように引き上げるかという問題になってまいりますと、御承知のように、厚生年金国民年金を通ずる問題といたしまして、サラリーマンの妻は国民年金のほうに任意加入ができるようになっております。この任意加入制をつくります際に、いろいろ妻の年金の問題で一番大事なのは遺族年金でありますので、この水準をどうするか、あるいはいっそのこと、その水準はそのままにいたして国民年金強制加入をさせたらいいのではないかとか、いろいろな問題があったわけです。したがって、こういった問題とのからみを十分に解決をしなければならないと、こういう必要が一つございます。  それからもう一つは、遺族年金を受給する資格要件の問題がございます。別に私ども外国の例がそうであるからといってどうというふうに考えておるわけではございませんけれども外国遺族年金の場合には、これを受給する妻の年齢につきまして年齢的な要件を課しておる。あまり若い妻に対しては遺族年金を出さない。それからまた子供がある、なしによりまして、この遺族年金を出す、出さないをきめておると、こういうようなことがございます。しかし、支給割合そのものにつきましては、外国では五割という低い水準遺族年金はないようでございます。したがいまして、そういった受給資格の問題でございますとか、国民年金についてのサラリーマンの妻の任意加入の問題というものとの関連もございますけれども、それらの点も十分考慮いたしながら、遺族年金水準引き上げという点については十分の検討をいたすつもりでございます。
  18. 須原昭二

    須原昭二君 いまもお話がございましたように、諸外国においては非常に高いわけですね。五〇%というような国はないわけですよ。その点はお認めになりました。したがって、やっぱりわが国もやはり福祉国家としていく場合には、いろいろの理由はあるけれども、やはり諸外国並みに持っていく、少なくとも八割ぐらいまで持っていくというような積極的な姿勢を出していかなければ私はならないと思うのですが、そうでなければ遺族生活というのは安定できないのじゃないか。これはもう言うまでもないことですが、その点は今後どのように処せられていきますか。
  19. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 先ほど申し上げましたように、受給年齢の問題、それから子供のあるなし、国民年金任意加入制をどう取り扱うかという問題との関連はございます。関連はございますが、この遺族年金支給率引き上げということにつきましては、できるだけこれを引き上げ方向で具体的に検討を進めてまいります。
  20. 須原昭二

    須原昭二君 非常に抽象的でございますが、やはり決意だけであってはいけないわけで、やっぱり実行していただかなければなりません。ひとつ今後を見守っていきたいと思います。  そこで、福祉年金性格、今後将来の方針なんですが、福祉年金に関しては、昨年十二月十三日の国民年金審議会において「福祉年金改善について」の意見が出されております。その中で福祉年金性格について将来どのような改善をしようとされておるのか、まずお尋ねをいたしておきたいと思います。
  21. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) この福祉年金性格につきましては、先生もすでに御承知のように、当初はいわゆる敬老的な年金として月額千円で発足いたしたものでございます。その後相当期間の間、百円とか、二百円とか、そういったわずかな引き上げで今日に至ったわけでございますが、御承知のように一昨年は千円、さらにまた次の年は千七百円、そうして今回は二千五百円というふうな、そういった大幅な引き上げをして七千五百円水準引き上げると、こういうふうなことをいたしておるわけでございます。  で、考え方といたしましては、敬老的な年金から、できるだけ社会保障的な所得保障的な年金への引き上げということを考えて、その路線をたどっておるわけでございますが、ただ一言申し上げますと、そんなら福祉年金によって老後生活を全くささえるというふうな性格のものにまでするかどうかと、こういう点になってまいりますと、そのほかの公的扶助の問題でございますとか、あるいはその他の社会福祉の政策との関連がございます。したがって、福祉年金だけによって老後生活を一〇〇%ささえるというふうな意味合いでの所得保障年金にすることは非常にむずかしい問題だとは思います。しかし、いろいろなほかの制度と手をつないでと申しますか、そういったいろいろな制度関連をしながら老後生活を十分にささえるような、そういった所得保障的な年金引き上げてまいる、言い直しますと、年金によってささえる生活水準というものは、これは拠出制年金といわず、福祉年金といわず、年金によってささえられるその生活水準の高さというものは、私は、最低生活より高いそういった水準だと思います。ただ問題は、年金のみによってそういった最低生活よりも高い生活水準をささえるということはきわめて困難である、そこには現役の勤労者時代に、いろいろ将来のことをくふうなさって、みずからたくわえられる部分というものも重なって老後生活をささえると、こういうことになるわけでございますので、年金によってささえられる生活水準は相当高い水準を想定いたしますけれども、それは必ずしも年金のみによってささえられるものではない。しかし、現在のような社会情勢、経済情勢考えますと、この年金によってささえられる部分というものが、より何と申しますか、大きいものである必要があるという観点から、所得保障的な年金にできるだけ早い時期に近づけるような努力をいたしてまいるわけでございます。
  22. 須原昭二

    須原昭二君 非常に長いお話なんですが、この敬老的からやはり社会保障へと、こういう方向で進んでいくというその方向だけはわかったわけですけれども、そこですね、その審議会の意見でも、福祉年金については、「生活保障的色彩」、「的色彩」というふうに表現がなされておるわけですが、しかし、それを一応認めるにいたしましても、老齢福祉年金の月額七千五百円では、これは最低生活保障を実はずっと下回ると思うんですね。とりわけ狂乱物価といわれる今日の経済情勢から考えました場合、七千五百円の問題点でも、予算編成のとき五千円から七千五百円にしたわけですね。その後ずっと物価が上がってきておる、目減りというのはたいへんなことで、昨年の一年間の消費者物価でも一六・一%上がったという、こういう狂乱物価の状態では、この予算編成の段階の七千五百円といまの段階とは私は違うと思うんですね。当然私は、月額一万円ぐらいには上げるべきじゃないか、そういう意見を持つものですが、その点厚生大臣、どうお考えになりますか。
  23. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 去年の五千円を七千五百円にする、まあ一万円にしたらどうだという御意見があることは私も十分承知をいたしております。しかしながら、これなかなかたいへんでございまして、二千五百円と申しますが、これを上げますと、やっぱり障害福祉年金、母子年金とこうやりますと、本年度だけで四百億かかるんです、二千五百円で。それを平年度に直しますと、一千五、六百億金がかかる、こういうわけでございます。金のことを言えば大蔵省みたいになって私もいやなんですが、相当巨大な国費もかかることでもありますし、しかし二千五百円と申しましても、これは五〇%ということですから、五〇%というその比率をお考えいただければ、これは私は理解していただけるんじゃないかと思うんです。二千五百円と、それだけ言うと、何かえらい少なそうですが、七千五百円、前年度より五〇%増、それでそれが本年度は四百億、平年度にすると一千五百億、それだけの金を国が出すのだということでどうか御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  24. 須原昭二

    須原昭二君 それは厚生大臣ね、五〇%上がったと言うと非常に高いようには感ずるのですよ。あまりにもその基礎が低いものですから、ですから、もう一挙にやらなければならないという要請に迫られるわけです。ただ五〇%だけを評価していただいてはいけない、基本が、基礎が非常に脆弱であったということですね、こういう点をひとつ御認識をいただいて、なるほど五〇%の数字については私は評価しますけれども、この加算をすべき一番基礎になった条件が非常に安かった、この点をひとつ留意をしていただかなければならないと思います。  さらに、福祉年金生活保障的な性格を強めていくと、生活保護の老齢加算について、当然これは早急に再検討しなければならない段階に来ていると思います。その点はどうでしょう。
  25. 山崎卓

    説明員山崎卓君) 福祉年金生活保護との関係につきましては、従来でございますると、制度のたてまえ上、福祉年金については収入認定をするという扱いをしてまいりましたけれども、他方におきまして、それに見合いまするところの老齢加算制度を設けまして、福祉年金の受給のメリットが被保護者に及ぶというような扱いをしてまいったわけでございますけれども先生指摘のとおり、この福祉年金の額が相当に急ピッチで上がってまいってきております。こういうようなことから、現在この問題につきましては、中央社会福祉審議会の生活保護分科会におきまして、生活保護制度全般の加算制度のあり方という見地から御審議願っているところでございます。
  26. 須原昭二

    須原昭二君 これはひとつ早急にやっていただかなければならない問題点だと思いますので、指摘だけはひとつしておきたいと思います。  さらに、先ほども福祉年金が五割アップしたのだ、こう実はおっしゃいました。なるほど一番基礎になる数字が少なかったということを私は指摘をしておいたのですが、五割アップにいたしましても、七千五百円、こういうことです。しかしながら、老齢特別給付金については、五千五百円、すなわち三七%アップですね、アップ率においてもやはりおのおのによって違っておるわけです。やはり均衡を失しておると私は思うのですが、そういう点は是正する気持ちはございませんか。
  27. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 特別給付金につきましては、この前の法律改正の際に、いわゆる谷間年金というふうな別名で呼ばれたそういった年金でございまして、実は去年のその法律改正ができ上がりますまでは、御承知のように七十歳になるまで皆さん方福祉年金を手にされなかったわけでございます。しかし昨年大改正をいたしました際に、先生先ほどおっしゃった福祉元年あるいは年金の年というようなことで、七十歳になる以前の方でも、いずれ七十歳になれば老齢福祉年金を受給できる方について特別給付金を出すべきだと、そういった衆議院での修正が行なわれまして、それがこの参議院でさらに三千五百円を四千円に引き上げる、そういった修正が再び行なわれたわけです。それで実はその際私どもも、三千五百円という衆議院で修正されましたその金額というものは、大臣も答弁の際に明らかにしておられますけれども福祉年金を受給されるまで従来お待ちになっておられた方との均衡等の問題もございまして、大体福祉年金の七割見当というようなことで、この三千五百円の特別給付金の新しい制定というものが衆議院段階で行なわれたわけです。ただ、参議院においてそれが四千円に修正されました際に、私どもの理解といたしましては、三千五百円という金額が低過ぎるから、したがってそれを四千円というふうに修正をしていただいた、こういうふうに理解いたしておるものでございまして、したがって、福祉年金とのつり合いから、七割という金額、そのこと自体については思想の変化はなかったというふうに実は私ども理解をいたしておるわけでございます。したがって、今回御提案申し上げておりますこの金額は、七千五百円の七割を計算上多少上回るそういった水準の金額というふうにきめまして御提案申し上げておるわけでございまして、今回のこの御提案につきましては、実はこの金額が妥当なものであるというふうに考えておる次第でございます。
  28. 須原昭二

    須原昭二君 これもまたひとつ均衡を保つようにしていただかなければならないと思います。これまた要望しておきたいと思います。  さらに、特に私感ずるわけですが、福祉年金の所得制限についてですが、まあ扶養義務者の所得制限の緩和は六人世帯の場合、年収六百万から今度は六百八十八万五千円に緩和をされる、それと同時に本人所得制限の問題点については、老齢障害福祉年金については、夫婦の場合、年収七十八万から九十万、ほんとうに若干上がっただけですね。さらに六人世帯の場合、母子・準母子福祉年金の場合は、年収二百三十四万五千円、これが二百七十五万五千円、こういう数字を見ますると、特に本人の所得の場合がきびしくなっていますね。これについてはやはり今回の改正では、私は不十分だと思うわけです。老齢者や障害者が苦労して働いてもわずかな収入があれば福祉年金支給されない現状をどうしても私は打開しなければならないと思います。大幅なやはり緩和をはかるべきだと思いますが、その点は基本的にどうお考えになっておりますか。所見だけ承っておきたいと思います。
  29. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) この所得制限の問題は、御指摘のように扶養義務者と本人と二つございまして、扶養義務者につきましては事実上撤廃に近いような、そういった所得制限の緩和がすでになされておるわけでございます。これは申し上げるまでもなく、事柄のよしあしは別といたしまして、核家族化しておるそういった現状というものを前提にいたしますと、そういったことをやる必要があるとこういう考え方でございます。本人の所得制限の問題につきましては、非常に冷たい理屈を申しますと、全額税金でまかなわれる年金であるから、したがって税金を納めるような方についてはこれを支給することは理届の上ではむずかしいと、こういうふうな基本的な考え方で今日まで至っておるわけでございますが、今回の九十万円までの引き上げというのは、実はこの非課税ラインを多少越えた水準になっております。それでどういう考えかと申しますと、非課税ラインだけでいったのでは前年度同じような所得を得ておられた方がいろいろなベースアップ等によって所得が上がりました際に、今年度から福祉年金をもらえなくなる、いわゆる支給停止になる方がよけい出るわけでございますので、この九十万円というこの水準は、前年度もらっておられた方が今年度福祉年金の受給対象からはずれることのないようにと、こういうふうな水準が今回の九十万でございます。まあ額の上では必ずしも非常に高い所得制限であるというふうなことは申せませんけれども、税金を納めておる方には一切福祉年金は出ないのだと、そういうふうな考え方考え方の上で破ったという点においてはある程度の御評価をいただきたいと思っております。  それで、ただ、この福祉年金は他面から考えますと、拠出制年金がなかったために入れなかった方なんだというふうな、そういった考え方も十分に成り立ち得るわけでございますので、この本人の所得制限の緩和につきましては、今回多少考え方の上で、いま申しましたように、多少の飛躍をしたつもりでございますが、今後ともやはり相当にこれは飛躍させて考えるべきものだと考えております。
  30. 須原昭二

    須原昭二君 局長はいま飛躍的にこれは上げなきゃならないというお話があったんですが、厚生大臣どうですか。
  31. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まあ、所得制限の緩和なり撤廃なりの問題でございまして、まあ、いろいろ議論はあると思いますが、私はやっぱり大幅に緩和するのが筋だと思ってんです。扶養義務者のほうは相当緩和いたしましたけれども、本人の場合ですね、これはやっぱり相当大幅に緩和する必要があるんじゃないか、こういうように私は率直に言って考えております。したがって、来年度の予算編成にあたりましては、所得制限の緩和は本人の所得制限について特に全力を尽くして、なるほどよくやったなあと言われるような緩和をするように努力をいたす考えでございます。
  32. 須原昭二

    須原昭二君 どのぐらいということはきょうは聞きませんが、ですから、これだけはっきり言われたことですから、私たちも期待をいたしたいと思います。  もう一つは併給制限の緩和の問題点です。福祉年金と他の公的年金との併給制限の問題については、いろいろこれは裁判まであったわけでありまして、わずかな年金をもらっていても、その福祉年金をもらえないことでは、やはり国民的な感情も納得できない今日の世論だと実は思います。やはり昭和四十九年度の恩給等との併給制限というのは普通、扶助料との併給が限度額十万円から限度額十六万円に緩和されたと言っておりますけれども、まだまだ私はこれはもっともっと緩和すべきでないか、さらに私は極端な話ですが、撤廃してもいいんじゃないか、こんな感じを持っておるわけですが、その点はひとつどうなんでしょう。
  33. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) この福祉年金の他制度との併給の問題でございますが、実は福祉年金制度をつくります際に、国民全体に対する基礎的な年金として福祉年金を位置づけるべきであると、こういう意見も非常に強くあったわけでございますが、まあ現在実施されております福祉年金法律的な性格はそのような考え方をとらなかったわけでございます。まあ端的に申しますと、どのような年金であれ、とにかく公的年金の受給対象者はすべて福祉年金対象にはしない、こういう考え方をとっておるわけでございます。で、ただ問題は、戦争公務による扶助料を受けておられる方、これはまあ他の公的年金と申しましてもいろいろ性格的に相違する点があるというので、この点についての併給は認めましょう、それから恩給につきましては、恩給制度が共済制度に変わってしまいましたので、恩給自体の引き上げというものは共済と恩給を含めての財源計算ができなくなりました。したがって、恩給の引き上げは恩給の引き上げとしてすべて一般会計負担でもって処理をされる、そういう体系になりましたので、それで、恩給については普通恩給は必ずしも十分に引き上がるということが期待できない面もあるというようなことから、この恩給、普通恩給につきましてもある程度の併給は認めましょう、要するに基本的な性格は他の公的年金支給される限りにおいては一切支給しないという年金制度でありながら、この二つについてだけこの例外を認めると、こういうふうな考え方できておるわけでございます。したがって、普通恩給のほうにつきましては、現在はまだ五年年金程度の、国民年金の五年年金程度の金額、つまり十万円までは併給を認めましょうということなんでありますが、今回普通恩給の最低保障額十六万円という制度が創設されるに際しまして、その程度までは併給をしてもそれほど福祉年金法律的な性格からいってはずれるものではないだろうというようなことでここまで引き上げを認めたわけでございます。で、これ以上どうするこうするという問題になってまいりますと、この福祉年金自体を国民全体に対するいただき年金と申しますか、基礎年金と申しますか、そういった性格に切りかえるというふうなことでも考えない限りは、実際問題としてなかなか制度論としてはむずかしいという感じがいたしております。
  34. 須原昭二

    須原昭二君 いま制度上問題があるという感じだけで、何かそこら辺で、審議会なんかで検討されてる趣きはありますか。できないというだけのことですか。研究しておりますか。
  35. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) この福祉年金を、これから先どういうふうな性格に持っていくかという点につきましては、国民年金審議会においても引き続き検討をいたしておるところでございます。
  36. 須原昭二

    須原昭二君 この併給制限の緩和の問題についてもやはり審議会でもう少し練っていただくように、ひとつお願いをしておきたいと思います。  いま一つは、スライド制問題点でありますが、衆議院の修正によって年金額の自動スライド制について実施時期を早められたことになったわけですが、ただこれは四十九年度限りの特別措置であると私は思います。したがって、やはり毎年同時期に自動的に改定をするような、一時的な特例措置ではなくして恒久的なやはり措置にすべきだと私は思うんですが、その点大臣どうでしょうか。
  37. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 実は、この繰り上げの問題を考えましたときに、事務的にやれるかという問題が一番大きな問題だったんです、ほんとう申しますと。御承知のように、拠出制年金三百数十万人にのぼっておる方々でございます。それが物価がはっきりわかったときからこれは電子計算機でこうやっていくわけですから、これは一人一人、それが大ざっぱに一〇%とか二〇%ならいいんですけれども、やはり物価というのは正確に一六・一と、こういうふうに出ますね。それをやっていくための方式がこれはなかなかたいへんなんです。で、実はこれは三カ月繰り上げたんですが、はたして事務的にできるであろうかということを非常に研究をいたしまして、これがぎりぎりだと、もうしかもことし限りにしてもらいたいと、事務的にもそういう意見なんです、これは。私はもう制度的にできればもっと早く上げることを制度にしておきたかったのでございますが、どうも事務的にできないことをおっかぶせるというのもこれはどうであろうかということで、一応ことし限りということにしておきまして、もう少し将来事務的に簡素にやれる方法があるのかないのか、そういう問題もひとつ考えてみなけりゃなるまいと、こういう考え方でございます。これは、私はこういうことにはひとつもこだわっていないんです。これはほんとうに事務的にやれるなら私はもうこれをりっぱな将来の制度にしてもいいと思うんです。ところが事務的にこれたいへんなことだというんです。これ、私直接やるわけじゃございませんから、三百数十万の人、それが来年になればもっとふえていきましょう。そういう人について一人一人やっていくというのはたいへんなことだというので、まあ、ひとっことしだけはこういうふうな物価動向の際であるから事務的にも苦しいであろうが、しんぼうしてやってくださいと、これはもうお願いをしてぎりぎりことしだけにじゃあしてくださいと、こんなふうなこともありましたので、そうしたわけでございます。しかし、将来簡易な方法が解明されるようなことになりますれば、またあらためて法の改正をお願いする、こういうふうにしたいと、こういうふうに考えております。
  38. 須原昭二

    須原昭二君 やはり事務的に非常にむずかしいということはよくわかるんです。しかしながら、これによって社会的弱者といわれる受給者の立場に立ちますと、このような狂乱物価の世の中で、鎮静をする鎮静をするといっても物価はなかなか鎮静をしない。そういう状態から見れば、やはり自動的にスライドをさせよと、そういう国民の世論というのは大きいわけでありますから、事務的にできないからだめだというようなそういう側面だけではなくして、やはりやらなければならないというような気持ちになってやっていただかなければならない。特にことしだけというような特別措置ではなくして、やはり恒久的なものにするためにも、来年はどうされるのか、その問題がすぐ来ると思うんですが、この点はどうでしょうか。
  39. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ことしは御承知のように狂乱物価でございますから、前年に比較いたしまして昭和四十八年度は一六・一%というふうに出ました。来年はどうなるかと。ことしは私は、下期においては物価はもう鎮静するということのために全力を尽くして政府はやっているわけでございますから、物価があまり上がらなければ受給者の方もそう気にはなさらぬだろうと思うんです、これは。去年からことしにかけて物価がものすごく上がったから早くくれと、こう言う。物価が上がらないようなことになれば一カ月や二カ月のことはいいわと、こうなるわけでございますから、ことしのもう少し物価動向を見ながら、そしてまた、同時に簡易な方法があるのかないか、そういうことも十分ひとつ研究してまいりたいと、かように考えております。
  40. 須原昭二

    須原昭二君 きょうは、大臣から来年のことについて即答が出なかったわけですが、やっぱり町の意見は、参議院選挙が終わるとまた軒並みに物価が上がるということでみんな戦々恐々としているわけですよ。物価は鎮静する、鎮静する。田中総理ですらこれは数回この一、二年言っているわけですからね。したがって、来年のことはやはりいまから対応しなきゃならないと思うわけで、きょう御答弁がなくても、直ちにやはりこの研究は続けていただいて、来年もやはりこの問題点をなるべく早い機会にスライドさしていく、そういう方向を出していただきたいと思います。その点の決意だけ伺っておきたいと思います。
  41. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 物価が相当上がれば一日も早くその利益を享受せしめるということはもう一番大事なことでございますから、私どもも来年度どういうふうな物価動向になるかわかりませんが、そういうこと等もにらみ合わせながら簡易な方法でやる方法がないのかということをもう少し十分研究は続けてまいりたいと考えております。
  42. 須原昭二

    須原昭二君 いずれにしても非常に目まぐるしいインフレの状態ですね。悪性インフレとまでいわれている今日の情勢から見て、一番気になるのは年金の積み立て金の問題です。庶民が預金をしておりましても実は目減りをしていくということなんですから、この膨大な年金積み立て金の今後、昨今の急激な物価上昇のもとでは当然年金積み立て金の実質的価値が減少する一方だと実は思うんです。その点はどうお考えになっておりますか。
  43. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 年金の積み立て金が実質的に目減りをしておると、現在は確かにそのとおりでございます。それで、私どもも非常に困ったことだと考えておるわけです。そんなら、そういうことであれば積み立て金というのをやめてしまったほうがいい、こういう問題になりますと、積み立て金の必要性というものは、年金制度を設計いたします際にぜひにも必要だ、こういうふうな考え方は、現在私ども、どのような観点から年度制度を設計いたすにいたしましてもどうしてもそういう結論になるわけでございます。したがって、年金制度を運用いたします際にどうしても必要な積み立て金でございますので、これができるだけ目減りしないように、そしてまた、現に積み立てられておるそのお金の利用というものをできるだけ被保険者なり、受給者福祉に還元できるような方向で使うと、こういうふうなことに可能な限りの知恵を出す以外にはないと考えております。
  44. 須原昭二

    須原昭二君 知恵を出すとおっしゃいますけれども、積み立て年金制度というものはインフレに最も弱い立場にあるわけなんですね。したがって、やはりわれわれ従来から言っておりますように、年金額の財政方式というのは、やはり積み立て方式から賦課方式に移行すべきだという、これは従来からわれわれは強調しておりますが、この物価狂乱の世の中、インフレの段階においては特にこれ痛切に感ずる問題です。知恵を出すとおっしゃいますけれども、なかなか知恵が出ないとおっしゃいますけれども大臣これは非常に重要な問題点だと思うんですよ。この点、ほんとうに賦課方式に変える意思はないんですか。
  45. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この問題は昨年来もうたびたび議論をした問題でございますが、老齢人口が急激にふえてくる日本の現状においては、非常にこれは私むずかしいと思うんです。国民のコンセンサスを得ることは私は非常に困難だと思うんです。特にこの最近のような物価動向になってこれが老齢化社会にこのままずっといったときに、これはもう積み立て方式をやめて賦課方式ということにしたら、これはたいへんなことだと思うんです、実際これは。積み立て方式だからこそ、ある程度うまくやれるんであって、賦課方式になったときに、今日あるような狂乱物価のインフレというものにぶつかったら、これは納めるほうの被保険者は逆にたいへんなことになる、こういうふうに思うわけでございます。二十年、三十年、やっぱり長期にながめて、インフレといっても、そうこのような状況が五年も十年も続けられたらこれはたまったもんじゃありませんし、そんなことはまたすべきものでもありません。長い目で見ればやはり積み立て方式のほうがよかたなというふうに私は理解していただけるとむしろ思うんです。しかし私は国民のコンセンサスを得るならば、将来高齢化社会になったときに、私どもは六十五歳以上の老人は現代の被保険者が全部金を出し合って救いましょうと、そういうふうになることが私は望ましいと思います。それにはやはり老齢人口というものは一定の条件に、一定の数に定常化さしてくるということがやっぱり第一に前提だと思うんです。いまのように老齢人口がいま八・八%でございますね、総人口の中で六十五歳以上の人口は。それが今後五年、十年たつと一二、三%にこう急激に上がっていく。このときにはやっぱりちょっと切りかえるのは無理ではないか、こういうふうに私は考えております。しかしながら、三十年たったら老齢人口が定常化する、だからそれまでだめだなんてなことを私は考えていません。やはり三十年というのはなるべく早く短い機会にいまの被保険者がいまの老人をかかえましょうというふうな国民のコンセンサスを得られるように努力することは、これは政治の力、努力でなけりゃならぬと思います。そういうわけで早めることについては異存はございませんが、インフレであるからむしろ賦課方式にしたがいいということは、短期の時点を見れば、かえって複雑めんどうなものになりゃせぬか、私はさように考えておるものでございます。
  46. 須原昭二

    須原昭二君 私はね、政府国民年金制度の財政の見通しについてどのような考え方を持っておられるかということはまず一ぺん聞きたいと思うんです。昨年の国民年金法の改正に伴って国民年金制度の将来見通しが実は公表されていますね。これによりますと、まぼろしの五万円年金、これを受けるために毎年保険料だけは引き上げることにしているわけですね、これ。たとえば国庫負担と保険料との割合は現行どおりとして、保険料は昭和四十九年から毎年二百円ずつ、さらに昭和五十三年には千円に引き上げることに実はなっているわけです。昭和五十年における平準の保険料は二千七百五十円ぐらいといわれておりますね。それにかかわらず、昭和五十年からの保険料は千百円で半額以下になっている。したがって、その差額だけ穴があくということになるわけですね。このまま推移すれば、いろいろおっしゃいますけれども、好むと好まざるとにかかわらず賦課方式に傾斜せざるを得ないんじゃないか、こういう感じを私は強くするわけなんですが、大臣どうでしょう。
  47. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 昨年の法律改正の際にお示しいたしました将来計画は御指摘のとおりの数字でございます。結局問題は、平準保険料に対して現在賦課しております保険料率というものが大体どれぐらいの割合になるかと、こういう問題だろうと思います。それで、現在の九百円というのは平準保険料に対して申しますと大体三四%、それから改正後の千百円で申しますと四一・三%、こういうことでございます。したがって、平準保険料に対する現実に徴収をする保険料の修正率と申しますか、それが非常に大き過ぎるではないかと、こういう大きい修正をするんなら、それは賦課方式に近いのではないかと、こういうお説でございますが、修正の度合いが大きければいずれはこれを回復するというふうなことを考えまして、可能な限り世代間の負担の不公平をならすような努力をいたすわけでございまして、最初から現在必要とする保険料率だけをとるという、そういった賦課方式の保険料率とは基本的に考え方が違うわけです。修正度合いの大きさかげんをいつの時期においてどの程度のリカバーするか、こういうふうな将来の財政設計の問題でございます。
  48. 須原昭二

    須原昭二君 どうも私は国民の、いまのお話しを聞いておっても、われわれの後輩たち、後代の過重負担にならざるを得ないと実は思うんですね。これに対して国庫負担のほうは制度発足当時より実は保険料の二分の一としているわけですね。依然として変わっておらない。この際やっぱり国庫負担は保険料と同額にすべきじゃないのか、こういうものの考え方が当然出てくると思うんです。ただ保険料だけ負担を多くしていくということは私はおかしいんじゃないか、こういう論がありますが、その点はどうでしょう。
  49. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 保険に対する国庫負担の注ぎ込み方の問題でございますが、御承知のように国民年金につきましては国庫負担の入れ方が一番大きいわけでございます。保険料の二分の一でございますから、全体として必要とする財源の三分の一は国庫負担だと、こういうことでございます。それで、厚生年金は御承知のように二割ということでございますので一番大きいわけです。それから現在国民年金は十年年金支給されておるわけでございまして、いずれ近く五年年金給付も始まる。そういった短期でもってつく年金につきましては、昨年の改正によりまして国庫負担のかさ上げをしていただいております。五年年金について申しますと、国庫負担の割合は約四二%、十年年金につきましては約三九%、こういうふうな高率の国庫負担にいたしておるわけでございますので、国庫負担の割合から申しますと、他の年金と比べてやはり自営業者、農家というものの経済的な負担力というものを考慮して相当高い率の国庫負担をしておるというふうに考えておりますので、したがって、この国庫負担率の引き上げについてはいまのところ考えておらないわけでございます。
  50. 須原昭二

    須原昭二君 いまのところ考えておらない、しかし昨年からひとつ考えて切りかえてもらわなきゃいけない。というのは福祉元年政府が言った以上はやはりこの際、国民連帯意識の上に立たなければ私はならぬと思うわけで、やはり保険主義を払拭していくためには徐々ではあるけれども国庫負担というものはやはり上げていかなければならない。いつまでも制度発足当時から保険料の二分の一を固執をされるというところに一つ問題点があるんじゃないか。この点はひとつ大臣要望しておきましょう、ぜひひとつ。うなづいておられますが、うなづくだけではいけませんから、どうぞひとつお願いをいたします。  それから年金の積み立て金の管理運用の問題点でありますが、年金積み立て金というのは俗に第二の国家予算とまでいわれておりますが、昭和四十九年度末の見込みとしてどれくらいになりますか。——こちらのほうに資料がありますから、こちらから申し上げておきましょう。この「年金積立金累積状況等推移」と、これで出ておりますが、四十九年度末見込み十一兆四千五百八十二億と、こういうことになっております。これは間違いありませんか。
  51. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) そのとおりでございます。
  52. 須原昭二

    須原昭二君 現在の預託金利率というのは何%になってますか。
  53. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 七分五厘でございます。
  54. 須原昭二

    須原昭二君 七・五%ですね。
  55. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) はい。
  56. 須原昭二

    須原昭二君 そういたしますと、昭和四十八年度の全国消費者物価上昇率一六・一%でありますが、一方積み立て金の利率が七・五%、このように積み立て金の利子と物価上昇率とのギャップが大きい現在では将来のやはり年金支給のための積み立て金として用をなさなくなっちゃう。これは一時的だとおっしゃるかもわかりません。しかし一時的であるといえどもことしはたいへんなことになっているわけですよ。そういう積み立金の利子と物価上昇率とのギャップ、これは私は国がやはり国庫負担で穴埋めしていくべきであると実は思うわけですが、その点これは基本的な問題点ですから、これは大臣からひとつ御答弁をいただきたいと思います。いかがですか。
  57. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この預託金利は大体七年できめていくわけでございますから、なるほどそういうふうに物価が上がるときもありますし、下がるときもありますし、(「下がるときはない」と呼ぶ者あり)物価がやっぱり下がるときもあると思うんです。そうならなくちゃいけないのでございまして、それからこの金利というのは一般の関係もありますので、そう物価と同じだけの金利にしなければならぬということもこれはむずかしい問題であることは御承知のとおりでございます。したがって、これを国が埋めるという考え方ではなしに、長期的にながめれば安定確実な金利であると、こういうふうになるんじゃないかと思います。
  58. 須原昭二

    須原昭二君 どうも大臣ですら認識がないと思うんですがね。日本の歴史上、近来物価が下がったためしないんですよ。それがまた近年あるというような感じになられることは私はどうかと思うわけです。やはり国の経済政策の失敗だと思うんです、これは、物価が上がっていくということは。やはり国の責任だと思う。ですから、そういう物価上昇率と積み立て金の利子、こういうもののギャップというものはやはり当然国庫負担で埋めていくという基本的な姿勢がなければ、物価は上がっても痛くもかゆくもないというのは政府だけで、国民だけが困っちゃう、こういう形になると思うんですね。やはり施策に対し私は責任を持つべきである、そういう立場から、やはり政府が基本的にこの問題はきびしくとられて、やはり責任を負っていくという姿勢に私はならなければ、責任政治、田中内閣がいつも言う責任政治というのは全うできないんじゃないか、こういう感じがするんですが、もう一度御答弁をいただきたい。
  59. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) こういう問題はやっぱり長期的に私は判断をすべきではないかと思うんです。私どもは七分五厘のいま金利で二月以降そうしておるわけでございますが、これは一度きめますと、その金利は七年継続と、こういう約束できているわけでございますから、景気の変動によって今度は金利を下げるというときがあっても、七分五厘で約束したものは七分五厘でいくわけでございますから、やっぱり長期的に御判断をいただくきりないんじゃないでしょうかと私は申し上げたいのでございます。しかし、そうは言いましても、物価がこのように上がる状況が非常に続くということであればまたいろいろ考えなければならぬものも私は出てくると思いますが、長期的に判断をしていただければ、まあまあいいところに落ち着くんではないか、こう私は考えておるわけでございます。
  60. 須原昭二

    須原昭二君 どうもこの点は平行線のようですね。これは、長期的とおっしゃいますけれども、下がる見込みがあれば私たちは一応一歩下がってもいいと思う。しかし、いまの見通しでは下がるきらい全くないと、こう言っても過言ではありません。というのは、なぜならば、戦後におけるところの歴代の自民党政府という立場からいっても、これは物価が下がったことはないんですよ。そういう点から見れば、長期的、長期的とおっしゃってもどうも納得がいきません。しかしこれは、厚生省は大蔵省と話しをしなきゃこれは明確な答えが出てこぬと思いますから、大蔵省とそこら辺は将来の計画もこれあり、やはり慎重に討議をしていかなければならない問題点じゃないか、この点はひとつ前向きで、長期、長期とおっしゃいますと七年先のことになってしまいますから、そうじゃなくして、来年、再来年の問題としてでも早急に一ぺん考えていただかなければならない問題点だと、こう思います。  そこで、今度は、いわゆる年金の積み立て金というのは、被保険者から強制的に徴収された保険料の集まり、集積だと実は思うんですね。したがって、年金の積み立て金の管理運用については当然被保険者の意向を十分反映させる必要があると私思います。そういう点についてどうでしょう。
  61. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 年金積み立て金の管理運用につきまして、被保険者なり事業主の意見というものが相当反映されるべきである、これは全くお説のとおりだと思います。現在もそういったことで資金運用審議会等には私どもも専門委員として出ておりますし、それからまたそういった審議会の場のみならず、大蔵省、厚生省との間のいろいろな話し合い、あるいはまた、話し合いをいたします際に、国民年金審議会あるいは社会保険審議会のそういった御意向を十分にこの運用の面に反映をするように私ども努力はいたしております。ただ、この点につきまして、さらによりよく労使双方の意見を反映させるためのくふうはないだろうかということでいろいろ検討いたしておったわけでございますが、大臣からも強い御指示がございましたので、近い将来に労使双方の代表者を含めました年金資金懇談会を厚生省の中につくりまして、さらにその点につきましての徹底を期したいと考えております。
  62. 須原昭二

    須原昭二君 その被保険者の意向を十分反映させることは当然なことだと、こう実はおっしゃいましたのですが、じゃあ、その年金資金何とか懇談会というような、設置をされるというお話ですが、いずれにしても十一兆四千五百八十二億円というような膨大なこれお金なんですね。四十九年度末見込みでありますが、このやはり管理運用については、十分認識がされておりますという被保険者の意向反映、これをどう、どのような措置を講じているのか、これは、これからの問題点と言われるならば後日に延ばしますが、現実にはどういうことをやっておられるのか、この点を確かめておきたいと思います。
  63. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 現実には毎年毎年予算を組みます際に、財投の予算というものがあるわけでございます。で、財投の予算はもちろん大蔵省の責任においてこれをお組みになるわけでございますが、その際に私どもも、言うなれば大口の預金者でございますので、この福祉還元の問題につきましては十分私どものほうの意見も考慮に入れてもらって、そしてこういう財投予算を組んでおるわけでございます。その中で特に当該年度において増加、増額いたしました積み立て金の金額の一部分を、いわゆる還元融資というようなことで事実上自主運用に近いようなそういった運用をいたしておるわけでございます。それで今後は、さらにこの先ほど申しました年金資金懇談会で、具体的ないろいろな御意見を承って、財投予算の中で年金の積み立て金の管理運用をどうするかという点につきましては、さらに強く私ども意見も反映するような努力をいたす、こういう考えでございます。
  64. 須原昭二

    須原昭二君 やはり、いま反映をされているというようなお話ですが、年金積み立て金というのは一元的に資金運用部資金の中に繰り込まれてしまって、被保険者の意向反映というのはできない実はシステムになっていると思うのですね。実はここに「昭和四十九年度年金積立金還元融資資金計画」、これを見ましても実は思うのですが、被保険者に何にも関係のない、たとえば一般廃棄物処理八百六億円、それから簡易水道百九十億円、屠畜場四十三億円、産業廃棄物処理十億円、同和対策三百二十五億円、下水道五百十六億円、上水道五百億円、二千三百九十億円というのは、何ら関係のないところにどんどん出ておるわけですね。やはりこういう点を考えますと、この際他の政府資金と切り離してやはり管理運用すべきだ、こういうものの考え方が成り立ってくるわけでありますが、その点はいかがですか。
  65. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 管理を一元化しておる現在のやり方でやるか、あるいは多元化するか、この問題につきましては、私どもは先ほど御指摘のございましたように、現在でも十一兆円近い、そういった金額の資金の管理運用でございますので、この管理運用のやり方いかんによりましては、国民経済に対する影響の度合いというものも非常に大きいわけでございますので、国家資金の運用というふうな観点から申しました場合に、運用につきまして、多元的な運用をするという、そういう考え方は私どもはとり得ないと考えております。ですから、管理運用の一元的なやり方の現在の姿を改めるというふうな点につきましては、私ども非常に疑問に思っておりますが、その運用の内容そのものにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、現在までもずいぶんといろいろ意見を申し述べまして、それを反映してもらっておりますし、これから先はさらに年金資金懇談会の、より具体的な、より広範な御意見をいただいて、さらにそういった面の努力をいたしたいと考えております。
  66. 須原昭二

    須原昭二君 この問題はわれわれが言っているだけではなくして、昭和三十五年、いまから十数年前、十月十二日の社会保障制度審議会における「公的年金積立金の運用についての要望」、昭和三十五年九月十六日並びに昭和三十五年十二月二十二日の「国民年金積立金の運用について」の答申、さらに昭和三十六年一月二十四日は、厚生大臣、大蔵大臣に「公的年金積立金の特別勘定設定に関する要望書」、そういうものがどんどん出てきているわけです。当然審議会の中でも、これは他のあまたの問題点指摘をされて、年金は特別勘定にすべきであると、こういう見解が十数年前からもう提起をされているわけです。よく私はこういういろいろな問題点政府当局に質疑しますと、それは審議会で一ぺん検討します、これは懇談会検討します、こう言われます。しかし、審議会であるいはまた懇談会できめられて、答申が出てきても、十数年前の意見が、要望が、いまなお実はできておらない。これはひとつ皆さんのほうが非常に積極的にやらない姿勢、非常に怠慢であると、こうぼくは指摘をせざるを得ないんです。やはり年金特別勘定にすべきである。これは従来各機関で、審議会や懇談会でいわれていることであって、当然もう十数年たっておりますからやるべきだと思うんですが、その点はいかがですか。
  67. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 実はこの資金の運用につきまして、昭和四十八年度は私どもにとりまして相当画期的な前進を見た年だと考えております。  先ほどちょっと申し上げましたが、還元融資の面につきまして、従来は四分の一でございましたものを、三分の一まで融資額の幅を引き上げるというようなこと、それからまた、個々の融資の対象といたしまして、従来、厚生年金につきましては、個々の被保険者に対する貸し付けというものを一切やっておらなかったわけでございますが、個人住宅の融資等、個人に対する融資の道を開いたというようなこと、それからまた、いろいろ御意見はございますが、非常に老後生活を豊かに楽しく送るための施設といたしましての大規模年金保養基地を設置するとか、いろいろ画期的な前進を見たわけでございます。それは、いま先生引例なさいました審議会のいろいろな御意見、そういったものが背景となりまして、ここまできたというふうに私ども考えておるわけでございまして、ただ遺憾ながら、この一元的な運用を多元化するという点につきましては、審議会の意見では、御指摘のような内容になっておりますけれども、私ども先ほど申しましたような理由で、なかなかこれをとることは困難であるというふうに考えておりますが、ただ、しかしそれなりのいろいろな効果がございまして、還元融資の面その他につきましても、相当の前進を見たということを御報告いたしておきます。
  68. 須原昭二

    須原昭二君 やはりこれは一元的に資金運用部の資金の中へ繰り込まれて、われわれには何にもわからないわけですよ。ですから、たとえば被保険者の意向が十分反映をされているのか反映されていないのか、それもまたわからない。したがって国民年金厚生年金の積み立て金の還元融資による回収がどうなっているかということもわからない。田中議員からも再三この問題点指摘をされておる問題点で、やはりこの点は正常にやっぱりしなければ、被保険者の意向というのはほんとうに、最終的に意向が反映をされているかどうかということも判定できないわけです。これは抜本的にやっぱり考え直さなければならない時点ではないかと思うんですが、厚生大臣どうでしょう。
  69. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 積み立て金の管理運用につきましては、いまの制度を改めて、厚生省が独立に自主的に管理をしたらいいじゃないかといったふうな意見、さらにまた、その資金運用部の中で、特別勘定を設けてやるようにしたらどうだという意見、まあ、いろいろ意見のあることは私も十分承知をいたしております。  そこで問題は、現在の制度において、被保険者なり使用者側の意見が反映されないかされておるかというところが、一番の問題だと私は思うんです。そこでこれにつきましては、御承知のように、予算をつくるときには使途別分類というものをつくりまして、預金部の資金は、これだけは国民生活関連に使いましょう、これだけは福祉施設に使いましょうと、こういうふうに使途別の分類をはっきりつくって、それを国民の前に明示をするというやり方もしておりますし、さらにまた還元融資につきましては、御承知のように、いろんな社会福祉施設あるいは国民生活関連に使っているということも明らかにしておるわけでございますし、それから、いま局長が申されましたように、年金資金の懇談会というものを、労使に入っていただいた懇談会をつくって、その意向も十分反映させようと、現に反映もしておると私は理解をしておるわけでございますので、いまの段階でいまの制度を改めるという必要は、私はないんじゃないかと思います。しかし、須原委員が御心配になつておるように、労使の意見があまり反映されないという事態になれば、これは私は厚生省としても考えなけりゃならぬ問題だと思います。  そこで、当面としては、私ども意見というよりも、労使の意見が反映されるように運用方について改善を求め、それに努力をし、そうして、それがどうしてもいまのようなやっぱり制度じゃだめだということなら、お述べになりましたような自主管理の問題あるいは特別勘定を設ける、こういうことになるんじゃないかと思います。そこ女さしあたりとしては、私どもは労使の意見を反映させるということに、いま全力を尽くしておるわけでございます。しかし、お述べになりましたような気持ちは、私は十分理解しておるんです。これはまあ、いまのようなことで、はたして労使の意見が反映されないということであるならば、これはやっぱり根本的に改める必要がある。そのときは自主管理なりあるいは別勘定を設けるといったふうなことになるのではないかと思いますが、いまのところ、さしあたりの問題としては、運用の改善に力をいたすという段階であるというふうに御理解いただきたいと思います。しかし、将来の問題としては、十分私も理解をいたしておりますから、労使の意見が反映されないということであるならば、これはやっぱり大蔵省のいまのやり方というものを改めてもらう、こういうふうに話をすべきものである、かように考えております。
  70. 須原昭二

    須原昭二君 それは四十九年度ですね、還元融資額を見ましても六千百三十億円、その中で三分の一になんなんとする還元融資が、一般廃棄物処理だとか、簡易水道だとか、上下水道だとかあるいは同和対策費だとか、それは関係ないとは私は言いませんけど、あまりにも拡大解釈をされて、被保険者のためには直接なっていないわけですね。そういう還元融資のあり方については、やはり是正してもらわなければならぬ。したがって、もう一つ還元融資による回収は、どうなっているかということをお尋ねしたいんですが、時間がもうわずかでございますから、これはどういう実態になっているのかも、何か文書がありましたら、ひとつ御提出を願いたいと思います。お願いしておきます。  それから最後ですが、現在年金福祉事業団が設置運用されようとしております大規模年金保養基地、これはどういうものなのか、これが一つです。  時間がありませんから、総括してお話を聞きたいと思うんですが、昨年の七十一国会における国民年金法の改正で、年金福祉事業団は大規模年金保養基地の設置運営を行なうことといたしましたが、今回のその改正案では、事業団みずから運営を行なわずに、さらに他の法人に委託運営させることになっております。この他の法人とはどんな団体をさすのか、他の法人に委託運営させる理由はどこにあるのか、簡単にひとつ明快に御答弁をいただきたい。
  71. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 大規模年金保養基地の趣旨につきましては、一言で申しますと年金生活に入った方の老後生活を、ただ単に余生を送るというだけではなくて、心豊かに生きがいのある生活をし得るための場を提供する、一口で申しますと、そういうことでございます。  それで設置計画は大体全国十カ所でございまして、一カ所当たり土地にいたしまして百万坪、その上にいろいろな総合的な施設をつくって、現在のところ一カ所当たり二百億円を予定いたしております。  それから、この運営の問題でございますが、何せ、この施設というものは、世界的にも、たとえばソ連のソチ、ヤルタ、あるいはコーカサス、そういったところで前例がございますけれども、日本でつくりますこの施設は、おそらくこれらのいわゆる世界的施設をさらに上回るような非常に整った施設でございます。したがって、それだけ投資をいたしまして、老後生活を心豊かに生きがいのある生活を送っていただくための場として提供いたしましても、それがいわゆる役人流の経営がなされまして、かんこ鳥が鳴くようなことになっては非常に困るというようなことがございます。したがって、施設のすみからすみまで年金福祉事業団が、事実上みずから、あるいはみずからの手足を使って管理運営するということについては非常な問題があるということが考えられますので、そういった運営の面についてはその趣旨を十二分に生かしていただくためにむしろしっかりした民間団体にお手伝いをいただくということが必要であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。  ただ、つくりました施設のどの部分をどの程度民間の団体にお引き受けいただいて、この施設の活用をはかるかという点につきましては、現在この施設につきましてマスタープランを作成中の段階でございますので、まだ最終的にその点をどの程度の幅でどの施設をどう委託するかという点についてはまだ未定でございます。
  72. 須原昭二

    須原昭二君 他の法人はどういう……
  73. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 他の法人は、一つには昨年末に認可いたしました年金保養協会も一つの有力な団体でございます。ただしかし、全国十カ所につくるわけでございますので、その地域地域でその運営をまかせるような的確な団体というものがございます場合には、そういった団体もいずれはピックアップいたすことになろうかと思います。
  74. 須原昭二

    須原昭二君 他の法人団体の中で、いまちょうど年金保養協会の名前が出ました。この年金保養協会は鈴木善幸さんが会長だということを漏れ承っておりますが、十億円の資本金を集めるために企業に対して一口百万円、大体一から九口加入できるということになって、寄付金を要請をしておりますね。実は「大規模年金保養基地の施設別分類系統図」というやつがここにあるわけですが、これを見るとゴルフ場まで実は書いてあるわけですね。いま、こうした還元融資でつくられる施設の中で、老人ホームだのいろいろありますけれども、いろいろ施設というのは、お年寄りじゃなくて、若い人たちが入って利用しておるという傾向が事実あるのです。したがって、どういう方々がこれを使うかということがこれからの問題点でありますが、たとえば年金保養協会が企業に百万円あるいは一口−九口以内こういうことで募金をすれば、当然そのゴルフ場の利用も、まあ、よくいわれるゴルフ会員権になるのではないかというような感じすら私は持たざるを得ないんですが、このようなことまでして、こういう協会までして委託をする必要があるのかどうか、私はここに一つ問題点がある。したがって、なぜその事業団みずから行なうことができないのか。  それからもう一つは、年金事業団とその他の法人との関係はどのように考えられているのか、あるいはその責任の所在はどうなるのか、どこにあるのか、こういう問題がやはり派生的に出てくるわけでありますが、これはひとつ今後の問題点でございますが、どういうお感じを持っておられるのか、明確にお答えをいただきたいと思います。
  75. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 法律的な責任はすべて年金福祉事業団でございます。ただ、問題は、こういう施設が先ほど申しましたように、国際的にも非常に珍しい施設でございますし、これの将来の運営というものについてはだれもしたがって経験がないわけでございます。したがいまして、こういった施設をどのようなものにつくり上げるか、こういうプランのつくり方、これが一番問題でございますが、現在それをやっておる。ただでき上がりました際に、こういうものの趣旨を十分に徹底をする必要がございます。端的に申しましてPRの必要がございます。  それからもう一つは、やはりこれだけの施設が全国に十カ所できてまいりますと、まあ一つには、国際的な日本を代表する一つの顔になってまいります。したがって、諸外国においてのこれに類する施設とのいろいろな人的、物的な交流の問題も出てまいります。そういったものもすべて国の予算でもって処理できればよろしいのですけれども、これは実際問題としてはなかなか国の予算になじみづらい問題もございますので、したがって、年金保養協会が中心になりまして、まあ民間の企業なりいろいろなところに趣旨の理解を求め、そこから善意のお金をちょうだいをいたしておる、こういうふうなことでございます。  今後にわたって、この施設ができまして設置運営されます場合の法律的な責任は、最初に申し上げましたように、あげてもって年金福祉事業団にございます。それを監督するのが厚生省でございます。
  76. 須原昭二

    須原昭二君 いや、実はこの大規模年金養基地設置懇談会の構成メンバーを見ても、たとえば三菱地所株式会社の取締役会長が入っておったり、日立木材地所株式会社と、やはり不動産屋がちゃんと入っているわけですね。こういう形になると、将来、私はたいへん運営というのは設置する段階でいろいろ問題が出てくるのじゃないかというような憶測を、心配を持たざるを得ないわけです。ましてや各企業から百万円、一口から九口以内ということで集めますと、たとえば一つの例としてゴルフ場を言いましたけれども、何かそのゴルフ場の利用というのは、そういう被保険者が使うのではなくして、やはり企業のゴルフ会員権のような形になってしまうおそれがあるのではないか、こういう感じを実は抱くわけです。  したがって、これからの問題点でありますが、警鐘を乱打しておきましょう。  そこで、責任は事業団、年金福祉事業団がこれを持つ、そしてそれを厚生省が監督をすると言われるんですが、これは往々にして、そういう法人ができてきますと、一人立ちして勝手なことをやるという傾向が非常に強い。ましてやまあ議員仲間の先輩を言ってはいけませんが、やはり政治家が長になるということについては非常に疑問を私は持たざるを得ないと実は言わざるを得ないわけです。まあ鈴木善幸さんが人がいいか悪いかということは言っているわけじゃないのですが、往々にして政治家が介入するということはよくない。この点は明確に指摘をしておかなければならないと思います。  それからもう一つ、もう時間が来てしまって……。たとえば他の法人との関係、責任は年金福祉事業団が持つんだと、こうおっしゃいますけれども法律ではいま財団法人の厚生団、これありますね。これにおける福祉施設は、なぜこの福祉事業団に全部移管しないのか。これはもう法律によれば、たとえば厚生年金保険法第七十九条の第二項、国民年金法第八十四条第二項、船員保険法第五十七条二の第二項、この条項によりますと、この年金福祉事業団で行なうこととして義務づけられているわけですね。それをまあ古いからというかもしれませんけれども、この財団法人厚生団が依然として福祉施設を管理運営をしている。やはり責任を持つというならば、これは集中をして年金福祉事業団で統括をする、こういう基本的なものの考え方に立たなければ、そのつど何か団体を入れてばらばらに運営されていくということになってしまうのではないか。そういう点を非常に私はおそれますが、その点はひとつ今後の運営のあり方、方針として、最後に厚生大臣の所見だけ承っておきたいと思います。
  77. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 年金福祉事業団が、今回法律に基づきまして年金保養基地を設置管理するということにいたしたわけでございますが、局長からもるる御説明申し上げましたように、この基地は年金受給者あるいは年金の被保険者の方々の保養のためにつくる、しかも非常に幅の広い事業を行なう基地としてつくっていこうと、こういうことにいたしたわけでございます。そういうことになりますと、年金福祉事業団の方々というのは、まあ、やっぱりある程度役所的な感覚でもございますし、それからまたそれだけのこれを管理していくだけの人数もなかなかそろうわけにはいかない。いろいろマスタープランをたくさんつくっていくにしてもなかなかたいへんだ。そこでやはり専門専門の創意くふうを吸収していくということが必要ではないかという考え方から、その年金保養基地の中で設立される施設のうちの一部については年金保養基地協会というもの、あるいはそのほかの団体も私は出てくると思います。そういうものに委託をして行なわしめるということが効率的ではないか、こういう考え方にいたしたわけでございます。  それからその協会の運営についてはもとより年金福祉事業団のある程度の仕事の委託を受けるわけですから、厳正、公平なものにしていかなければならない、こういう考え方からこの基地協会の理事の中には労使の方々も入っていただく、こういうことにしたわけでございます。そこで、たまたま会長に鈴木善幸さんをお願いしたんですが、これは政治家ということではなしに、実はこの年金保養基地……
  78. 須原昭二

    須原昭二君 政治家だよ、あれは。
  79. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 政治家ではありますが、現在政治家ではありますが、この大規模保養基地というものをやらにゃならぬということを提唱した実は初めての人であったんです、実は。であり、しかも、まあ厚生大臣としてはいままで一番長く厚生大臣を長期間にわたってつとめられたという学識経験のある方でございますので、自民党総務会長としての資格ではございません、鈴木善幸個人として、厚生大臣をもかつてされた、しかも年金保養基地協会の設立を提案をした、そういう学識経験ということで、鈴木善幸さんに会長になっていただくと、こういうことにしたわけでございまして、政治家としてまたは自民党総務会長としてお願いしたものでは全然ないということだけはどうか御理解をいただきたいと思います。しかし、誤解があってはいけませんから、十分これは年金福祉事業団も監督いたしますし、それから私も厚生大臣として、この団体については十分なる監督をいたし、世間からごうまつも批判を受けないように今後やってまいる所存でございますから、御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  80. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 両案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三分休憩      —————・—————    午後一時十六分開会
  81. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国民年金法等の一部を改正する法律案児童手当法等の一部を改正する法律案、以上両案を一括議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  82. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は児童手当法についての質問をしたいと思いますが、まず最初にお伺いしたいのは、二十世紀は児童の時代であるとエレン・ケイ女史が言われた、そのことばのとおり、世界各国の児童福祉は競うように著しい発展を見せてまいりました。ひるがえってわが国の児童福祉を見ると、戦後著しい発展を遂げ、児童福祉法はじめ母子保険法あるいは児童扶養手当、特別児童扶養手当等一応の法体系は整備されてまいりました。  しかし、児童の置かれている環境は、公害をはじめ乳幼児の捨て子あるいは交通災害などによって児童福祉が非常に阻害されておりますが、そのいろいろな問題が多いが、これに対して厚生省としては今後どのような対策を立てておいでになりますか。
  83. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) ただいま御指摘のございましたわが国の児童を取り巻く環境でございますが、三つに分けて考えられると思います。  まず、自然と申しますか、児童を取り巻いている自然の環境、交通公害あるいは環境公害、大気公害というような自然の環境と、それからもう一つは児童の置かれている家庭の環境、それから、それともう一つ考えられますのは親子の環境と申しますか、関係というもの、いずれにいたしましても、激しい時代の移り行きの中で、まず自然の置かれている環境を考えますと、非常に最近、特に戦後はそうでございますけれども、乳幼児の交通事故あるいは水による溺死等の事故、こういったものが多くなっております。それは一つには、やはり自然環境がきわめて都市化をしまして、児童を取り巻いている自然の遊び場であるとか、そういったものが非常に変化をしつつあるというように思うのでございます。   〔委員長退席、理事須原昭二君着席〕 それからもう一つは、やはりこの児童の家庭の環境も非常に変わってまいりまして、特におかあさんが職場に出られる、いわゆる母親の就労というものを中心とした児童の環境というものが戦前とは比較にならず変わってきております。  こういったことに対しまして、やはりそれぞれに対応すべきであるというように私どもは思うわけでございまして、まず第一の児童を取り巻いている自然の環境という点から申し上げますならば、できるだけ児童に自然の遊び場、それでないならば児童公園あるいは児童館というような施策を進めてまいる必要がある。また、その線に沿って従来また将来とも進めていかなければならないと思っているわけでございます。  それからもう一点の、児童のこの家庭における環境、これをよりよく児童福祉のたてまえから進めていくためには、御承知のとおり児童のための保育所の増設、それから学校から帰ってきたあとの児童を取り巻いている環境の改善、こういったものを進めていく必要があると、そういった意味で、厚生省といたしましては、厚生省だけでできることばかりではございませんけれども、われわれの児童の福祉ということを中心に進めていく行政といたしましては、いま申し上げました児童館、児童遊園あるいはちびっ子広場であるというような、そういった自然の環境づくりと、それから児童を取り巻くよりよい人間関係の環境と、そういった意味での保育所、あるいは児童の病気の予防というようなことを進めていくことが、今後の厚生行政の大きな柱であると、かように考えておるわけでございます。
  84. 藤原道子

    ○藤原道子君 いまの御答弁でございますけれども、私はこの保育所であるとか、あるいは学校から帰った子供たちの保護であるとか、あらゆる問題はずいぶん取り上げてきているんですよね。そのたんびにあなたのいま言うような答弁をしていらっしゃる。だけれども、あまりにもいま保育所その他少なさ過ぎると思うんです。それから保育所の時間が非常に働く女性にとっては足りないんですね。勤務が五時までといっても帰る時間がちょっとあれになると、残業なんというと子供の処置に非常に困っているんです。だからいろいろな施設の保育所ですか、そういうものと二カ所に預けるような金のかかることをしているから、児童福祉をお考えいただくならばその点は真剣に考えていただきたいことを強く要望いたしておきます。  そこで、今度の児童手当法の問題について、基本的な事項についてまずお伺いをしたいと思います。  まず第一に、児童の健全育成対策、それから児童の健全育成対策については、昭和四十九年度児童家庭局予算に占める割合は児童手当を含めてもわずかに一八・七%なんですね。それから児童手当を除けば〇・四%の低率なんです。今後どのように充実強化しようとするのか、具体的な対策をまずお伺いをしたいと思います。
  85. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 児童家庭局の予算の中におきます健全育成、いわゆる児童の健全育成の占める予算上の比率、これはお示しのとおりでございます。ただ、御承知のとおり、先ほども申し上げましたように、保育所あるいは重症心身障害児施設、それから精神薄弱児施設等に対する措置費、こういったいわゆるこの非常に多額の経費を要する面の伸びというものも片方にございまして、ただいま御指摘のありました健全育成の面につきましては、四十九年度は昨年度より額にして二億の増額になっております。ただ全体の比率から申し上げますと、いまお示しのあったように昨年も〇・四%、ことしも全体の中のその分については〇・四%でございます。ただ、いまこれからの問題として私ども考えておりますのは、やはり中心になります児童館の、健全育成対策を進めていくという意味におきまして、ことしは百二十カ所の増設、約千八百カ所を全国に設置をいたしましてこれの運営補助を行なってまいると。それから児童遊園、あるいは民間指導者の養成と、民間指導者の養成と申しますのは全国すべてではございませんけれども、モデル地区を選びまして、そこにおけるいわゆる民間のボランティア、こういう方々に対して研修を行ないまして、その地域における児童の健全育成の一助にしていこうということが、この仕事の中身でございます。なお、私ども現在、来年度を踏まえて考えておりますのは、全国の民生委員・児童委員、こういった方々の数は御承知のとおり非常に多うございます。こういった方々を中心としたやはりボランティア活動を推進していくということも、今後の大きな課題であろうというふうに思っているわけでございます。そのほか、母親クラブであるとか、地域の健全育成のための民間の善意と申しますか、積極的な熱意をさらに活用していくための施策を、健全育成の柱の中に取り入れて進めてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  86. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はいろいろ調べますけれどもね、児童家庭局の予算が総額少ないですね、これはもっとふやすように努力していかなきゃならないということを、今度こうした計画を見てしみじみ考えましたので、とにかく児童対策に対してもっと真剣に考えていただきたいということを強く要求いたします。  そこで、母子保健対策でございますが、重症心身障害児の発生予防が最も重要であると思いますが、これに対してどのような対策を考えておいでになるか。  それから地方公共団体においては妊産婦、乳幼児の医療の無料化が相当多数の市町村で実施されているようでございますが、その現状はどのようになっておるのか。と同時に、これに対して国はどのような方針で進む考えであるかということについてお伺いをいたします。
  87. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) まず第一点の心身障害児の対策でございますが、おっしゃるとおり、心身障害児につきましては、まず、発生することを予防することが最大の先決問題であろうと思います。次に、お気の毒にもそういう心身障害児が現にある場合に、これを早めに発見する、早期発見が第二の要諦であろうと思われます。それから、第三の問題が早期の治療、少しでも早いうちになおし、なおせないまでも生活できるような方向に持っていくということがこの三つの柱になろうと思います。早期発生予防につきましては、妊婦の時代における健康診査、それを行ないますことが何よりも必要でございます。そのためには四十八年から妊産婦、乳幼児については全部健康診査の対象にしておりまして、特に乳幼児につきましては、従来、年に一回の病院、診療所における健康診査を年二回にするということにいたしております。  それから三歳児健診というものもこれを強化してまいる。  なお、妊婦につきましては、従来の検査項目からさらに必要な検査項目をふやしまして、早い時期に胎内における赤ちゃんが健康であるかどうかということもわかり得るようにしていくという方法で、健康診査を進めておるわけでございます。で、そういったことを進めると同時に、万一乳幼児の段階で、いわゆる難病、慢性疾患にかかった児童に対しましては、未熟児の養育医療であるとか、あるいは育成医療というものを通じてまず治療し、治療が根治、むずかしい者につきましては、社会生活ができるように対応していくという育成医療を進めているわけでございます。こういったような施策をいたしますこの母子保健の体系の中で、最近、先ほど第二の御質問でございましたように、市町村あるいは都道府県で妊産婦、乳幼児の医療の無料化ということがあることも承知しておるわけでございます。で、私どもの現在わかっております調査の段階では、妊婦の医療無料化につきましては、全国で六県と承知しております。  それから乳幼児の健康、医療の無料化につきましては、たしか四十二の府県で実施しているようでございます。ただ、この乳幼児の医療の無料化につきましては、地方公共団体の事情によりましてたとえば零歳児まで、これが二十九県、それから一歳児までが四県、二歳児までが四県というようなぐあいに内容も区々でございます。それから、入院に対して無料化するとか、あるいは通院までは見ないというようなことになっているわけでございます。  で、こういった傾向に対して国としてどうだと、こういう御質問でございますが、国といたしましては、先ほど申し上げました、まず、早期に発見し早期に治療することによってできるだけ障害児の発生を予防するということと、未然に防止するということを主眼にして進めているわけでございまして、御承知の母子保健法等によりますいわゆる小児の慢性疾患、従来はガンとか非常に重い病気について、長くかかる病気について公費負担の制度をとってまいりました。本年からはさらにその対象をふやしまして、いわゆる慢性の心の疾患——心臓の疾患、それから内分泌疾患、それから先天性の代謝異常あるいは血友病、それから糖尿病、膠原病、こういったものにつきましては、四十七年に調査しました結果に基づきまして本年度から全額公費の負担に切りかえるというようにしているわけでございます。そのことによりまして、時間のかかるいわゆる小児の慢性難病につきましては公費負担の制度をとることにいたしました。できるだけこういう重いものをまずなくし、治療していくことに主眼を置きまして、全部の乳幼児の医療の無料化につきましては、現在のわが国医療の受け入れ体制あるいは他の社会保障給付等の関連もございますので、この点についてはもうしばらく検討してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  88. 藤原道子

    ○藤原道子君 重症の子供はそうなっても、それが軽く見えてもだんだんひどくなるのがたくさんあるんですよ。だから、軽いときから見せる。それから、貧しい家庭ではそういうことはあまりよくわからないんです。どうせしかたがないというようなあきらめにしていて、それがひどい身障児になる例がたくさんございますからね、もう少し、重い者だけというのでなしに、故障があると思われる者は全部診断ができるように、そういうふうな方向へ進めてほしいと思いますが、どうですか。
  89. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) おっしゃる御趣旨はよくわかるわけでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、乳幼児の時代における健康診査、それから精密検診、こういうものを全階層に向かって行なう。それから、保健所あるいは母子健康センター等を中心といたしますいわゆる保健指導というものを徹底して行なうということによって、少しでも早くこの病気の実態がわかるような行政施策を進めていく。さらにそれが先ほど申し上げた慢性疾患ということがわかった者について公費負担の制度をしていくということが国としてはいまとり得る道ではあるまいか、こういうふうに考えているわけでございまして、これを全部、病気にかかったら全部無料にするということにつきましては一まだわれわれとしては将来の検討事項である、かように考えているわけでございます。
  90. 藤原道子

    ○藤原道子君 そういう方針があるなら、絶対に大切な仕事でございますから実行してほしいですよ。それを、どうも言ってもだめらしいとか、やれ何だとか言って強く打ち出していかないところに問題があると思いますから、この点は私は心からお願いしておきます。そういうことで泣いている人がたくさんあるんです。あさっても私のところへ何だか相談に来たいという人もございますからね、ずいぶんそういう階級があるということをお考えになって、これが実現できるように努力をしてほしいということを強く要望いたしておきます。  それから、母子保健法ですが、制定されてからまだ一度も改正されていないんですね。内容充実強化するための改正をするお考えはないんでしょうか、この点をお伺いいたします。
  91. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 母子保健法は、おっしゃるとおり、制定されましてまだ法律改正ということは行なっておりません。  ただ、母子保健法の趣旨に基づきまして、先ほど申し上げましたような、いわゆる小児の慢性疾患の公費負担であるとか、あるいは未熟児養育医療の普及拡大であるとか、こういったことについては、従来から予算的あるいは行政的に行なってきているわけでございます。  母子保健法自体の改正問題につきましては、なるほど法律の運営上、若干問題がないわけではございません。たとえば児童福祉法からこれは分かれて出てきたわけでございます。で、児童福祉法のほうにまだ取り残されておりますのが先ほども申し上げました育成医療でございます。で、母子保健法のほうの中心になっておりますのはいわゆる母子の健康診査、それから栄養補給、それから健康相談、さらに未熟児の養育医療、こういうことになっているわけです。で、その中身の中で、仕事として現在都道府県が行なっております仕事を市町村がやったほうがいいのではないかという問題もないではございません。したがいまして、私どもといたしましては、現在の母子保健法の体系の中で先ほど来御指摘のありますような内容充実ということをどしどし推し進めていくと同時に、やはり法律的なたてまえの上で児童福祉法との関係、あるいは母子保健法自体が持っている問題についてもうしばらく検討を進めてまいりまして、必要があります段階におきましてこの改正を行なうことが必要ではないだろうか、こういうふうに考えておりまして、全く改正をしないというつもりではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  92. 藤原道子

    ○藤原道子君 この点、私は問題があるけれども、きょうは時間の制限がありますので、とにかくこの点については、私はもう改正する点が二、三あると思いますので、検討していただいて、実行してほしいんです。母子保健法が完全に生かされてくればいろんな問題も解決してくるんでございますから、これを強く要求しておきます。  そこで、児童手当制度と児童扶養手当制度の比較でございますが、同じ厚生省の児童家庭局の所管でありますけれども、この目的も児童福祉の増進をうたいながら児童手当制度と児童扶養手当制度とでは著しい格差があるのはどういうわけでしょうか。これをちょっと伺います。
  93. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) ただいまお示しのございました児童手当制度と児童扶養手当制度でございますが、児童手当制度は、法律の第一条にもございますように、児童を養育する親の、いわゆる多くの児童を養育される親御さんのたてまえから申します、いわゆる費用が非常にかかるという点の所得保障、同時に、児童の健全育成、先ほどもお話のございました健全育成という、この二つの目的をもって制度が発足したわけでございます。したがいまして、児童手当制度は、児童を持っております親の生活の安定と同時に、児童の健全育成、この二つの柱を中心にしてできているのが児童手当制度でございます。で、児童扶養手当制度は、これも御承知と思いますけれども、原則として生別、——父親に死に別れたおかあさんが児童を扶養しているという場合、まれには福祉家庭でございましても、おとうさんが病気等でなくなってそれを扶養しているおじいさん・おばあさんがいるという場合も想定されますわけでございますけれども、主として生別母子の家庭に対しまして、そのおかあさんというのは大体父親がなくなったあとの所得、稼得能力が低くなるということで、この児童扶養手当制度につきましては、所得保障と申しますか、できるだけ所得を失った母子家庭に対してその所得を補うという意味でできているのが児童扶養手当制度でございます。そういった法律二つ制度のたてまえが制度発足の当時から異なっておりますので、したがいまして、この二つ制度につきましては、それぞれ、別の法律体系で出発して今日に至っていると、こういうわけでございます。   〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕
  94. 藤原道子

    ○藤原道子君 じゃ、児童手当の問題ですけれども、四十六年度には三千円で出発したんですね、四十六年。それから四十七年も三千円、四十八年も三千円、それで今度千円上がるんですね。ところが四十六年には児童扶養手当は、二千九百円、それから特別児童扶養手当も二千九百円、それが四十七年にはこれが四千三百円に両方ともなっている。それから四十八年には六千五百円に両方ともそうなっておりますね。それが今度の改正で、児童手当は四千円になるんですね。ところが児童扶養手当は九千八百円、それから特別児童扶養手当は一万一千三百円、それに、特別福祉手当というんですか、それが三千円つくわけですね。私はこの特別児童扶養手当とか、あるいは児童扶養手当がこれで十分だとは言わない、もっと上がるべきだと思う。と同時に、児童手当はどういう精神でおやりになったのか。これだけ物価がどんどん上がってきているにもかかわらず、四年目になってたった千円上がった。これはどういう計算でおやりになったのか。
  95. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 児童手当と児童扶養手当あるいは特別児童扶養手当、それぞれの制度につきましては、先ほども一部お答え申し上げましたように、制度本来の趣旨が、児童手当につきましては、多子家庭の生活の安定と児童の健全育成、それから児童扶養手当につきましては、主として生別母子の家庭に対する所得保障、それから特別児童扶養手当につきましては、これも御承知と思いますけれども、重度の障害を持っているお子さんに対する家庭の介護手当と、こういう趣旨で制定されているわけでございます。  いまお示しにありましたように、それぞれの制度が発足した当時の金額、その後における改善の経過、それを見ますと、児童手当につきましては三年間据え置きと、児童扶養手当は年々改善をされておる。この点はどうだと、こういう御質問だと思いますが、先ほども申し上げましたように、制度それぞれに本来の目的が違っているということが一つございますのと、児童手当につきましては、四十六年の二月に審議会の答申がございまして、本来もっと充実すべきものではあるけれども、とにかく四十七年一月からこの制度を発足させる、そして四十八、四十九、三年かかっていわゆる最初は五歳まで、次に十歳まで、第三子の五歳、十歳、そして本年、四十九年度におきましては、義務教育終了までというように、三年間をかけて段階的な実施をするということが、まず一方のたてまえになっておるわけでございます。  もう一つは金額の問題でございますけれども、四十二年に児童の養育費調査というものをいたしました結果の額、これが正確には記憶いたしておりませんが、約六千五百円ぐらいだったと思いますが、それの半額三千円というもので出発をする。したがいまして、児童の多子家庭における養育費全部を見るのではないという趣旨で発足したわけでございます。しかし、その後、これも御承知のように、国民生活水準の中で、特に消費者物価あるいは家計の支出が増大いたしまして、三千円で四十七年発足しました当時から比べますと、大体三割近く少なくとも消費水準あるいは物価水準が上がっておるというようなことを一方で踏まえまして、基本的には四十九年の段階実施が終わったあとにおいて、額について検討することといたしながらも、三千円の額というものについては、これはあくまでも不十分ではないかということで、今回改正をお願いするような千円の増額ということにきめたわけでございまして、それぞれの制度のあり方が制度発足以来異なっておりますのが一つと、それから児童手当につきましては、いわゆる三年間かかって段階実施を進めていくという経過があったこと。それから今回の一千円の改定と申しますのは、その後における制度を制定いたしました当時の事情から見まして、消費生活水準その他が著しく変化していると、これにとりあえず対応する必要があるというこの三つの理由によって今回改正を行ないたい、このようにお願いしているわけでございます。
  96. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はこの特別児童扶養手当とか、児童扶養手当がこれで十分といっているんじゃないんですよ。これは何かの機会にもっと徹底しなければ、こんなことで特別児童扶養手当が完全にやれるとは思わない。たった三千円で特別福祉手当ですか、監護を。こんなことを考えるところに私は承知ができないくらい少な過ぎると思うんです。けれども、同時に児童手当も四年も前の計算が六千五百円ですか、その半分ということで三千円にした、ところが四年もたってこれだけ物価は上がるし、いろんな社会政策が変わってきていますからね。たった千円ということは、私には納得がいかないから、もう少し児童の立場を考えて改正すべきじゃないか。これに対して昭和四十六年の二月の十日の社会保障制度審議会において、「児童手当法の制定について」という答申が出ていますね。それについても「内容の貧弱さは一応別としても、なお数多くの問題点を内蔵している。」という諸点を指摘しておるわけです。さらに「本制度は、将来飛躍的に発展させなければ本来の目的を達成できない。」、こういうあれがありますね。私はこれを見てもお考えいただかなきゃならないと思うんですよ。今回の改正案を諮問した際も、本年一月の二十八日の同審議会の意見として「さきに指摘したように、その飛躍的な発展をはかることが、この際必要である。」と、同様の内容を再度いわれておるはずです。そうですね。児童手当法が制定されてから、すでに三年を経過している余日に至るも、政府は飛躍的な発展をはかろうとしなかった理由を聞きたいんです。こうした審議会は何のためにあるのか、この審議会のいうことを取り上げないでやるならば、こんな審議会要らないんじゃないですか。この答申については、どういう解釈をしていらっしゃるか。
  97. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) ただいまお示しのありました四十六年二月の社会保障制度審議会の答申、これは先ほどもお示しがありましたように、将来飛躍的に発展させなければ本来の目的を達成できないというのが、この答申の趣旨になっております。  それからこの四十九年の今回の改正にあたりましては、やはりいまお示しのあったような趣旨の答申がなされております。先ほども申し上げましたように、児童手当につきましては、第一の趣旨がとにかく世界各国が行なっております児童手当制度が他のいろいろな児童福祉上の諸制度が完備したわが国におきまして、児童手当だけがいままでなかったと、そこで四十六年を最初に、四十七年一月から、とにもかくにもこの児童手当制度を発足させるということで、政府としては踏み切り、同時にその際に三年間の間に中身のいわゆる段階的実施を行なうということで、法律の規定をしたわけでございます。したがいまして、四十九年、今年度でございますけれども、四十九年度に十八歳未満の子供さんを持っておられる家庭の第三子が、義務教育終了まで児童全部について児童手当の対象とするということで、この制度の段階実施が一応充足するわけでございます。したがいまして、残る問題といたしましては、今後この児童手当制度全般につきまして、手当額なりあるいは対象等について、やはり基本的にこの審議会の答申にある線に沿って改善をはかっていくための検討をするということが残された問題であるというように考えておりまして、そういった意味合いにおいて段階実施の経過の中におきましては金額の改定、三千円から四千円にするということで終わっているような次第でございます。
  98. 藤原道子

    ○藤原道子君 四十六年にこういう答申が出ていて、それでまたことしも出ているのに、私は厚生省のやり方はどうも児童手当に対してそう強い意思を持っていないんじゃないかと思うんです。そこで、世界各国の児童手当制度支給対象を見ますと、六十四カ国中に第一子に支給しておりますのは五十三カ国で、八二%です。それから第二子が七カ国、第三子は南アフリカ連邦、それから北ベトナム、マウリティウスの三カ国で、いずれも後進国だと思う。であるにもかかわらず、わが国が第三子からとした理由を伺いたい。
  99. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) この児童手当制度を発足いたします際にいろいろ議論がありましたことは事実でございますが、結論といたしまして三子以降にした大きな理由は、この日本の家庭におきまして、最初に児童手当の目的でも申し上げましたように、多子家庭、特に三子以上の子供さんを持っておられる家庭の養育費の負担が他よりきわめて大きいということが最大の理由でございます。なお、もう一つ申し上げられますことは、当時、児童手当以外のいろいろな社会保障との制度関連におきまして、とりあえずこの制度を発足させる段階におきましては、最初に申し上げましたような多子家庭における養育費負担の軽減、それが法律の目的にありますような生活の安定に結びつくわけでございますけれども、そういったことがこの三子以降を児童手当の対象にしたという理由と申しますか、根拠と、こういうように考えるわけでございます。
  100. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、どうしても納得がいかないんです。最近の日本人口の動向を見ますと、純再生産率は、——一人の女子が一生に産む平均女子の数ですね。これはほぼ一%なんです、女子を産むのは。ところが、わが国の人口が将来増加も減少もしない静止人口となる可能性がある。ということになると、現在、一家族における子供は平均二人、——一・九人といわれておる——まあ、二人といたしましょう。そうすれば、第三子とするのは、将来の人口の推移から見ても、支給対象はきわめて少ないことになる。大体、聞くと、子供は二人ですという人が圧倒的に多いんです。ところが、日本の児童手当は三子からなんです。それはどう考えているのか。女の子は一%というと、その人が二人しか産まないとなると、将来児童手当は要らなくなりますよ。しかも世界では、八二%が一子から出している。三子から出しているのは、先ほど言いましたように、何といいますか、非常に低い国ですよ。結局、南アフリカとか北ベトナムとか、こういう国は三子からですが、八二%は一子から出している。二子から出しているのが七カ国ある。大多数は一子から出しているんじゃないですか。それだのに日本が三子からしか出せないという理由はない。だったら、児童手当法は要らないじゃないですか。そういう点に対してはどう思いますか、あなた方は。
  101. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) わが国の将来における人口の動態と申しますか、推測につきましては、ただいま人口問題研究所等が示す資料によって藤原委員指摘のとおりの数字が出ていると私ども承知しております。ただこれは御承知のようにあくまでも平均の数字でございまして、日本の家庭全部が二人以下ということになるわけではないわけでございまして、おそらく将来人口としては大体一・九、一つの家庭の子供の数がそのくらいに平均としてなるであろう、こういうことでございますので、三子以降の家庭が全くなくなるというわけではないと承知するわけでございます。現在のこの児童手当制度が三子以降を手当の対象にしておりますのは、先ほども申し上げましたように、いわゆる多子家庭における家庭生活の安定ということが一つの柱になっておるわけでございます。将来、これが、日本の静止人口が全部どうなるか、平均は一応二人を割るということになりましても、全く三子以上の家庭がなくなるということではないというように承知するわけでございます。しかし、この第三子以降の児童を持っている家庭に対する手当制度というものは、この制度発足の当初にとられた制度でございまして、今後これをどうするかということについては、なお課題としてはわれわれは意識しておるわけでございます。ただ、二子あるいは一子ということになりますと、それに必要な額というものは非常に膨大な額になることもこれは御承知のとおりでございます。それともう一つは、現在のわが国社会保障給付全体との関連でどうするかということもその一方の検討課題になるだろうと思います。五十年以降における児童手当制度全般との関係におきまして、ただいまお示しのありました三子以降でいいのかどうかということにつきましては、もちろん私どもとしては検討しなければならない課題である、かようには考えておるわけでございます。
  102. 藤原道子

    ○藤原道子君 日本は児童手当がずいぶんおくれていたんです。それでやっと始めたけれども、やり方が、日本は後進国ですか。これだけ世界的な立場にある日本がたった三カ国と同じように最低の三子からやっておるということが私には恥ずかしいと思うし、承知ができないわけです。それはなるほどいま第三子以降の児童推計数は約三百万人といわれておりますね。ところが、これに対して私たちが主張しているのは十八歳まで児童手当を出せと言っている。十八歳未満の児童数は約三千万人ということになると十分の一にも満たない子供が児童手当を受けている。しかも、たった今度上がっても四千円、諸外国に対しても恥ずかしいと思う。同時に第三子から児童手当を支給しようとしたことは対象者がほとんどいないところに児童手当を支給しようとするものであって、児童手当の目的を達成をするような効果があがらないんじゃないかと私は思う。児童手当の精神、効果、私は世界の資料も持っておりますが、時間の関係で省略しますけれども、あなた方も外国の様子はよく勉強していらっしゃるはずです。それで三人以上の子供を持っている家庭だけが云々じゃない、二人の子供を育てる家庭だってほんとうに何とかしてほしいと私は思う。ことに第三子からでも上の子供が十八歳をちょっとこしてももうだめになってしまう。ところが、いまはずいぶん高等学校に進む子が非常に多くなっておるんです。私は児童手当が第三子から手当額が支給されることになっておるけれども、いろいろ支給要件があるけれども、四十九年に完全実施となっても、第一子が十八歳未満でなければ第三子はだめ、支給対象とならない。と同時に高校進学率の非常に高い現在では、児童手当等の児童の年齢要件は十八歳に引き上げるべきじゃないか。世界的に考えたってそうです。というようなことで、どうも今度の児童手当の改正について私は納得がいかないんです。この点に対してどのように考えておいでになるか。
  103. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) ただいまおっしゃられたような御意見がありますことは十分承知しているわけでございます。先ほどから繰り返し申し上げて恐縮でありますけれども、この児童手当制度が四十七年一月に発足いたしました当時のいきさつ、それからその後における段階実施の状況ということで四十九年度一応この段階実施というものが時期に来るわけでございます。したがいまして、ただいま御意見としていろいろお述べになりました中身は今後われわれが検討する場合に、十分われわれも意識しておりますけれども、問題意識として持っておりますけれども、多子家庭からだんだん少産少子家庭になっていくわが国の人口構造、それからまた、おっしゃるように確かに義務教育と申しましてもいま中学から高校にいく進学率が非常に高うございます。ただ制度といたしましては、一応十八歳未満の子供を持っている義務教育終了までの児童を対象にしている現在の制度、こういったものを今後どのように検討していくかということは、先ほど来お示しになったその一つ一つについてわれわれも十分今後の検討課題として検討していかなければならないというように考えている問題ばかりでございます。御意見としては十分われわれとしても承知をし、またその御意見に対して他の社会保障給付との関係においてわが国の児童手当をどうあるべきかということで真剣に考えてまいりたいと思うわけでございます。
  104. 藤原道子

    ○藤原道子君 ほんとうに真剣に考えてもらわなきゃ困ります。  で、昭和四十四年から四十七年までの消費支出の推移、三六%の上昇を見ております。狂乱物価の高騰について昭和四十八年及び四十九年の上昇率は見ていないのじゃないかと思う。これに対してどう考えているかと、まあ、いろいろ考えておると、——真剣に努力してほしいことを強く要望いたします。  そこで、児童手当法第六条の二項には政策スライドが規定されているが、この規定は厚生年金法や国民年金法と軌を一にしている。しかるに昨年厚生年金法等の一部を改正する法律案厚生年金や用民年金に自動スライド制が導入されたが、この改正のように児童手当法もなぜ自動スライド制を導入しなかったのか、その点をお伺いしたいと思います。
  105. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 児童手当法の第六条はただいまお示しのように、「国民生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならない。」とあることは御承知のとおりでございます。この児童手当制度の目的が最初申し上げましたように、児童を養育している者に児童手当を支給することによって家庭における生活の安定それから児童の健全育成、この二つの目的があることは先ほど来申し上げているとおりでございまして、そういった意味におきまして、児童手当の制度は本来手当額あるいは支給対象というものが制度ができ上がっておりますならば、よほどの変動が、事情の変化がない限り、その額あるいは対象で進むことが望ましい制度であると考えておるわけでございます。しかしながら、この六条の二項にございますように、国民生活水準が急激に変化するというような場合には、その額について検討して改めるべきであるというのが六条二項の趣旨でございまして、若干、国民年金等のスライド制とはその意味するところが異なっているのではないかというように考えるのでございます。先ほどお示しのありました過去における消費支出、これは四十五年、六年、七年という点の三年間におけるものが三六%、ただ一方では国民の消費生活水準がまた四十七年から四十八、九と、これは推測値でございますけれども、やはり三二、三%ということになっておりますので、この制度発足当時の三千円では不十分であるということで、今回この大体三千円の三割相当分の実勢を上積みして改定したということにいたしているわけでございまして、国民年金法等のスライド、自動スライドと若干児童手当法における六条二項とは制度趣旨から申しましてニュアンスが違うのではないか、かように考えておるわけでございます。
  106. 藤原道子

    ○藤原道子君 それじゃ、こういうふうに物価が急騰してもそれはたいして問題にしない、ちょっぴり申しわけ的な値上げをすればそれで済む、児童手当というものに対しての基本的な考え方が私は日本と外国は違うと思うのよ。それはどうなんでしょうね。児童手当をどう考えているのだろう。何としても私には納得のいかない御答弁なんです。第一、五十三カ国では一子から出している、日本はわずかに三国がやっている第三子からやる、しかも年齢の制限がぐっと下になっている、上の子が十八歳以上になればもう第三子はもらえない、私どもが最初に質問したときには、だんだん改めまして十八歳までにすることに努力をいたします、こういうふうに答弁があったのです。それで何年たつかというのですね、それで一向にその考えが納得がいかないし、第三子から二子に、そして一子にもだんだん改めていくというようなお考えだったと私は記憶しておる。いつまでも日本は第三子でいくんですか、そしていまの物価値上げがあっても、あなた方のかってなわずかな値上げで済ましていくのですか、やはり年齢は十八歳以上に一子がなった場合にはだめだというこの方針もこのままやっておいでになるのでしょうか。その点はどうなんでしょう。
  107. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 児童手当制度が児童福祉のもろもろの社会保障給付の中の一つの制度であることは申し上げるまでもないわけでございまして、その中で、四十七年一月から発足して、四十九年の一応段階実施の終わる段階におきまして、今後の課題としてただいま御指摘のあったような問題はすべてこれは検討課題になるものでございます。したがって、これを将来その額、その対象あるいはその他につきまして、全く固定して変えないものであるということにはわれわれは考えていないわけでございます。ただ、他の社会保障給付との関連なり、あるいは手当額なり対象をどうあるべきかということについては、いまここで、こういたしますというところまで申し上げる段階に至っていない、現在は三千円を四千円にするということを四十九年度の一応段階実施の最終段階における手当額の変更ということで、御審議をお願いしている、こういうように申し上げているわけでございます。
  108. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは日本で大体平均して二人以下の出産になるのですね、いまの三子からのを二子に引き上げるような考えはありませんか。
  109. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) そういう御意見がございますことは私ども十分承知しております。
  110. 藤原道子

    ○藤原道子君 それだけ……。それで答弁……。
  111. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) ただこれを制度としてどうするかということにつきましては、いろいろなやり方の方法がございます。またそれを一挙にやるか、段階的にやるかということもございます。そういった意味におきまして、そういういろいろな二子拡大についての方法も含めた御意見があり、それをわれわれとしても十分検討対象にしていかなければならないということで、御意見があることを承知していますということを申し上げたわけでございます。
  112. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、だんだん世の中がそういう方向へ変わっているのだから、第三子をきめるときにわれわれ反対している。将来考えますという答弁だった。それから、ここまで出産率が二人——一・九人くらいに平均がなってきた今日、二子まで繰り上げていく方法を検討してほしい、当然検討すべきだということを強く要望しておきます。  そこで所得制限の問題。児童手当法案が提出されたときの児童手当審議会の答申では、その児童手当大綱に所得制限は課さないことになっていたが、政府はその審議会の答申を無視して、そして所得制限を入れて今日の児童手当法となっている。また、その費用負担についても、被用者の場合は事業主の拠出が十分の七で大半であり、国庫負担が十分の二、都道府県、市町村の負担は十分の一となっているが、この程度の公費負担の場合、従来の社会保険においては所得制限を課さないのが通例であった。さらに、さきの昭和四十八年十一月十七日の中央児童福祉審議会の中間答申においても、「児童手当の本質にかんがみ、支給制限の撤廃について検討する必要がある。」と述べておる。以上のような観点から所得制限は撤廃すべきではないかと思うが、どうですか。あらゆる審議会の答申も少しも厚生省は入れていないんですよ。これについてのお考え……。
  113. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 児童手当当制度の目的が、先ほど申し上げましたように、児童の健全育成と、それから生活の安定という二つの柱になっておるわけでございまして、児童の健全育成というたてまえから申しますと、所得制限というものはなくてもいいのではないかということは当然考えられるわけでございます。ただ、片方に、生活の安定ということから申しますと、多額の収入のある家庭に必ずしも手当を差し上げなくてもいいのではないかという意見も出てくるわけでございます。現在の所得制限のあり方がこれで十分だとは私ども考えておりません。全く撤廃するということについては、他の社会保障給付の所得制限との関連もございますので、一がいにそう踏み切ることはむずかしいと思いますけれども、大幅な改善というものは今後ぜひ実現をしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  114. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、当然これは、所得制限は撤廃すべきだと思いますが、どうしてもすぐ全部できないというならば、相当やりますと言うのだから、ずっと値上げしてやってほしい。私、外国へ行ってみますと、いろんな——老人扶養手当なんかでも、どんな金持ちにも出している。ところが、金持ちは受け取らないで、それを全部社会施設に寄付しておりますよね。同じ人間でございますから、すべての人に支給する。そういうことが諸外国では多いようです。ところが、日本では非常に所得制限があらゆるときに利用されている。ことに児童は将来どうなるかということを考えれば、児童に制限を加えないで、やはり所得の制限を撤廃して、すべての児童に児童手当を出すという方向の御検討を私は願いたいと思います。  そこで、衆議院の修正では、児童扶養手当及び特別児童扶養手当は繰り上げ支給が行なわれることにしておりますが、この修正内容に児童手当を含めなかった理由はどんなこのですか。それから、弱者救済という観点から見れば、同じ児童福祉を目的としているものであり、かつ支給対象者には所得制限もあるので適用すべきではないかと、こう思うんですけど、これ、どうですか。
  115. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) この問題につきましては、院のほうの御修正でございますので、私、こうだという的確な御返事を申し上げることはいかがかと思いますけれども、多分に推測を交えて申し上げますならば、児童手当の制度は、先ほども申し上げましたように、いわゆる児童の健全育成と、それから生活の安定と、この二つの柱になっているわけでございます。それで、福祉年金あるいは児童扶養手当のほうは、いわゆる母子家庭に対する所得保障という点が主たる目的でございますので、おそらくそれが今回の院で、衆議院で御修正になった際の御配慮ではなかっただろうかと、かように思うわけでございます。
  116. 藤原道子

    ○藤原道子君 時間がないから、特別児童扶養手当の関係についてちょっとお伺いしたい。  改正案では、特別児童扶養手当は月額一万一千三百円、重症心身障害児を監護している父母に対して新たに特別福祉手当として月額三千円を支給することになったんですね。ところが、在宅の重症心身障害児の両手当の合算額が月額一万四千三百円、一方収容施設にいる同じ重症心身障害児の一人当たりの運営費は月額十八万円かかるわけなんですね。これと比較してあまりに低いんじゃないかと思う。施設の現状から見て人手不足のために家庭に帰すやり方がこのごろふえてきている。入所している子供に要する費用は十八万円、家庭へ帰った子供にたった三千円の監護手当のようなものを出して、それで完全だとお考えでしょうか。私は、いまの心身障害児童の施設を訪問しますと、非常に見ていられない、泣けるような問題ばっかり多い。あそこの、びわこ第二学園にしても島田療育園にしても、それはたいへんなことなんです。結局やむを得ず最近は韓国から保母、看護婦を入れようとしておる。私は、それに対して反対しておる。結局、人手が足りないから家庭へ帰す。家庭に帰された重症心身障害児をどうして親は見るのか。そうすると、入院すれば十八万円かかるならば、その半分くらいを家庭へかけて、母親が働かなくってもそれで子供の世話ができるというような方法を考えるべきではないかと私は思うんですけれども、これに対しての——たった三千円ということに対して私は納得がいかない。それで、特別福祉手当の性格が介護料ということであれば、一日の付き添い看護料にも三千円じゃならないと思う。これを大幅に引き上げる必要があるんじゃないか。  それから、特別児童扶養手当の支給対象児童には、障害福祉年金とのバランスから見て二級障害までは拡大すべきではないかと、こう思いますけれども、これに対してのお考えを伺いたい。真剣に児童の立場に立って考えてほしい。
  117. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) ただいまの第一点は、特別児童扶養手当の額並びに特別福祉手当の額を合算して一万四千三百円、これと重症心身障害児施設における月一人当たりの児童に換算すると十八万に近い額とのアンバランスという御指摘承知いたしました。確かにそういったとらえ方は、よく御意見としてわかるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、従来特別児童扶養手当は、いわゆる児童扶養手当と同じ額の六千五百円であったわけでございます。それを今回の改正によりまして障害の重さに応じて一万一千三百円に引き上げる、さらに重複障害の児童を持っておられる家庭に三千円の介護手当を差し上げるということに、いわば一歩前進をしたつもりでおります。ただ、その額につきましてこれでいいかということについては、われわれは、どしどしこの内容改善していくべきであるという点についてはただいまの御意見と全く同感でございます。ただ申し上げられますことは、在宅の重症心身障害児に対する国としての考え方、これはやはり単に手当を差し上げるだけでなくて、あらゆる面からやはり援助の手を差し伸べるべきであるということで、金額ではございませんけれども、週に一回は家庭奉仕員を差し向けて、そして介護のお手伝いをすると、それから療育に必要な日用品、たとえば便器であるとかあるいは浴槽であるとか——浴槽というのはおふろの……。それからまた、社会適応性を持たせるための訓練いすであるとか、こういったものを日用品費として支給できるような対象をこの四十九年度はふやしております。さらにこれは全国ではございませんけれども、児童相談所にバスを配置いたしまして、そして巡回して御相談に応ずるということもいたしているわけでございます。ただ、手当額そのものから申しますと、重症、心身障害児施設における児童一人当たりにかかる額と介護料を含めた定額手当額との間になお開差があることは御指摘のとおりでありまして、重症心身障害児施設に対する人手不足等について国がもっと前向きに進めなきゃならないと同時に、やはり在宅の重症の障害児をかかえておられる家庭に対する手当額も先ほど申し上げましたように、いろいろな制度と相兼ねまして、さらにこの改善につとめていかなければならないと思うわけでございます。  それから、第二の特別児童扶養手当の障害の程度をいわゆる二級障害まで拡大すべきではないかと、こういう御意見でございます。この点につきましては、実は特別児童扶養手当は御承知のように特に重症の、重度の精神薄弱あるいは重度の肢体不自由を持った子供さんに対する介護ということで制度は発足したわけでございます。今回の児童扶養手当等における改正は、生別母子世帯に対する所得保障として従来の一級障害をさらに二級障害まで拡大するということで、特別児童扶養手当制度の持っております当初の目的と、それから児童扶養手当制度の持っている制度の目的が若干違うことは御承知おきいただきたいのでございます。ただ、そういった御意見も踏まえて、将来特別児童扶養手当における額あるいは対象児をどうするかということについては今後の課題としてわれわれはただいま慎重に検討しているということを申し上げてお答えとさしていただきたいと思います。
  118. 藤原道子

    ○藤原道子君 時間が参りましたので、まだ納得いかないことがあるんですけれども、質問はこれで終わりますけれども、強く要望しておきたい。  いまあなたがおっしゃったように、入所している子供の手当とそれから家庭におけるものとは違う。それは違うでしょうけれども、帰された子供を十分に看病していくには、家庭へ帰された子供をより一そう努力していかなければ入院している子供に比べてかわいそうだと思う。そして、いまいろんな機械を送るとか、あるいは医者が診察するとかと言ったってね、それは機械を送られたらそれはすべてが済むんでしょうか。重症の子供には付きっきりでなければだめなんですよ。入院している子だってそうです。で、無理をするから、あれだけの費用がかかってもなおかつ腰痛で働けない人がふえてきている。それで結局家庭へ返すような傾向になっている。ということになったら家庭のおかあさんはその子一人の世話をするだけでもたいへんな努力が要るし、費用も要るわけです。それで金があれば、あなた方が考えても、まあ、かりに特別養護老人ホームという、法律では医者を置かなければならぬとなっている。ところが全国の特別養護老人ホームで医者が常駐しているところはほとんどない。開業医を嘱託で一週間に一度か二度来てもらう。病人は、いつ年寄りは、病気になるかもわからない、そういう状態が国がつくった施設なんですよ。それを充実してもらうために私たちは一生懸命お願いしている。だから、重症心身障害児の施設ももっと拡充することによって腰痛だの何だのということのないようにしてもらいたいと同時に、家庭で人所できない人がたくさんいるんですよ。われわれもしょっちゅう陳情を受けているけれども、どうにもしてやりようがない。そういう立場から、特別身障児の手当をもっとふやす必要があるんじゃないか。入院して十八万円もかかるならば、半分出せとは言いません。けれども一万四千円くらいではとても家庭で十分なお世話はできないんです。この点を検討してもらいたい。  大臣がおいでになりましたが、児童手当にいたしましても、結局三人というのは全世界で三カ国しかない。日本が入って四カ国なんです。第一子、一人の子供から出している国が八二%なんです。三子から手当を出している国というのは三カ国しかない。後進国ばかりなんです。それだのに、これができるときにも政府は将来二子になり一子になるように努力いたしますとおっしゃった。ところが、ちょっとも努力しないじゃないですか、今度の改正でも。たった千円の費用の引き上げなんです。しかも三子でも上の子が十八歳になればもうもらえない。こういうやり方をするならば、児童手当ということはあなた方はろくに考えてないんじゃないか。もっと児童手当を——最初に申し上げましたように、第一子から出している国が八二%です。三子から出しているのはたった三カ国で、いずれも、先ほど申し上げましたが、北ベトナムであるとかというような国なんです。日本はそうした後進国と同じことをして恥ずかしくないんでしょうか。私は、大臣がこのくらいのことがわからないでこんな改正案出したかと思うと、おかしいと思う。もっと児童がしあわせに育つような、施設をするにしても、児童手当について根本的に変えてほしいということが一つ。  いま一つは、いま言っていたような、重症心身障害児が施設から追い出されるのがふえているんですよ。そういう場合に、たった一万四千円くらいでおかあさんがその子の世話ができるでしょうか。付きっきりでなければだめなんですよ、重度の子供は。特別児童扶養手当ですか、これについていまの金額では納得ができない。もっと真剣に未来をになう子供たちの立場を厚生省では考えてもらいたいということを、大臣から御答弁を願いたい。いま言ったことを話して、御答弁を重ねてお願いしたい。私、時間が来ちゃうから……。
  119. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まことにごもっともな御意見を交えての御質問でございまして、まことに感激をいたしておるわけでございます。  まず、重症のほうから申しますと、実は私どもはこの重複の重症心身障害児につきましては、全員国の施設に収容するという方針で施設の整備をはかってまいっておるわけでございまして、大体昭和五十年度までに全員収容ということで計画を実は進めておるわけでございます。ところが、実際にこれをやってみますと、まあ、いろいろな私反省をさせられたのであります。そういう者も持っている御家庭の方々は施設に入れていただくのもありがたいと。それは、いまお述べになりましたように、十何万円も国が金を出すわけですから、ありがたいと。しかし、どんなに重症の者であっても手元に置きたいんだという父兄のあることを、私どもはたくさん例として知ったのであります。  そこで、施設にだけ入れればいい人だというのではいけないと、やはりこの辺に福祉施設に収容する問題について反省をしなければならぬ。そこで、ことし初めて在宅の方々に何かしらの道を開こうではないかということを、実は考えたわけでございます。ある意味からいうと、この現代でもやっておりまする特別児童扶養手当というのは、まあ、ほんとを言うと、これまた介護料的な性格のものでありますので、その介護料的なものにまた上のせをするのはどうであろうかといったふうな法律論的な意見もありました。しかしそんな法律論的なへ理屈はどうでもいいんだと。要するにそばに置きたいという親の気持ちを考えた在宅的な手当を考える必要があるんだということで、それに上積みするという制度を新しく創設をしたわけでございます。したがって、この創設ということについては藤原先生に評価していただけると私は思っているんです、ほんと言うと、いままでこういうことをやっていなかったんですから。しかし、これだけの額で十分かというと私は十分でないと思うんです。今後の社会福祉施設というものへの入所ということと、入所する社会福祉施設の拡充という問題と、在宅の問題というものをあわせ考えていかなければ日本の社会福祉というものの行政は伸びないんだと私はそう思うんです。そういうわけでございますので、来年度から十八万円の半分というわけにはいきますまいと思いますが、私はやはり過去のやってきた福祉施設の運営ということの反省の上に立って今後これを拡充していくと、私は全力を尽くす考えでございます。御希望のとおりの額になるかどうかは別として、私はこういう方向をやらなければ日本の社会福祉施設の運営というものはりっぱにいかないと思っているんです。何でも施設に入れればいいんだというものじゃないんです。やはり親御さんにとってみれば、どんな重複した身体障害者でもそばに置きたいという方がおるんですよ。そういうことの反省が、そう言っちゃ何ですが、過去の厚生省に足りなかったと私は率直に思っておるんです。でございますから、国民の要望というのは多様でございますが、やはり在宅者の援護ということにはもう少し力を入れなけりゃならぬ、かように考えておりますので、来年度の予算においてできるだけの増額を努力いたすことをお約束申し上げておきたいと思います。  それからもう一つの児童手当の問題でございますが、これはほんとうにおしかりに値する問題だと思うんですが、私のほうから言わしますと、この三年段階実施ということがじゃまになっているんですね、ほんと言うと。三年段階実施、いままで去年、おととしとやったじゃないかと、その人たちとの均衡をどうするというようなふうな、まあ、へ理屈言うのがおるんですよ、政府の中では。というわけで、今日までおくれてきておりますが、いよいよ本年度において曲がりなりにも日本の児童手当がここで定着するわけでございます。お述べになりましたように第三子からやるなんていう国は少ないことは私も十分承知をしております。せめて二子からというのは私の願いでございます、さしあたりの。というわけでございまして、全額の大幅な引き上げと適応範囲の拡大、この問題についてはいよいよ実施を完了する来年度以降において真剣に取り組んでまいりたいと思います。日本の社会保障で一番おくれておるのは児童手当だと、私も十分承知しております。御指摘をまつまでもなく、日本は第三子であり、金額はわずかに四千円、とても話にならぬです。世間にも、先進諸国に対してもお恥ずかしい次第でございますので、明年後以降実施完了のあとにおいては範囲の拡大、せめて第二子までくらいは持っていくというくらいの努力をしなければ児童手当制度を日本が持っているなんということをあまり大きな声では言えないんではないかと、こう考えておりますので、お述べになりましたこと二つともまことに私は同感でございます。力の足らざることを憂えて、来年以降の努力をお誓いいたしまして答弁にかえる次第でございます。
  120. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はね、第二子というよりも大臣はおそらく第一子に引き上げますと言われると思ったのです。第一子が八二%、第二子はたった七カ国なんですよ。第三子は南アフリカ連邦と北ベトナム、それからマウリティウスですかの三カ国、それに日本が加わっておる。いずれも後進国でしょう。日本は後進国ですか。日本は世界に対して恥ずかしいと思うですよ。一子から出しているのは八二%ですよ。これで私は先ほどから反対して質問してきた。あなたはたった七カ国の二子へ何とか持っていきますなんて、あなたから言われるとがっかりしちゃう。いいですか、それが一つ。  それからいま一つは、あなたは重度心身障害児を入所させようと思っても、家庭に置きたいという親がある、それも若干はあります。けれども、いま施設から、島田療育園にしても、びわこ第二学園にしても、もう従業員が足りない、看護婦さんが腰痛で働けなくなった、こういうことからどんどん家庭へ帰す傾向が強くなっている。だから、そうして無理に家庭に帰されるというので親たちが陳情しまして、何とか施設を充実して子供を安心して入れておいていただきたいと、家に帰ったのではほかの子供の世話も、家庭の仕事もできませんと、こうして泣いて訴える親があるんですよ。それだのに、今度あなたは入れたいけれども入りたくないという親がいるということだけを考えられたんでは困る。もうこの間はびわこ学園からも、島田療育園からも陳情が来ている。そして看護婦が足りないから韓国から養成員として人を入れたいと言われたので、私はこの前看護婦問題で反対したと同じように、ことばが十分通じない。戦前は重労働で、低賃金で、朝鮮の方をこき使った日本、それが待遇が悪いから看護婦が足りないんでしょう。それだのにまた韓国から入れてきてやることに反対していたんです。そうしたらこの間そこの何とか病院の院長が私を尋ねてきて、私のほうは養成するだけでございます、使うわけではございません。韓国へ施設をつくるというから養成するんですと、こういう話なんです。ところがそれに対して、この前の准看護婦の手当が一万九千円なんてけしからぬと言ったら、四万円私のほうは手当を出しますと言うんですよ、その院長さんは。何にも働かないで養成する人にこちらから四万円出すなんということでわれわれが安心できるでしょうか。もう少し待遇をよくすることが一つ。いま一つは重度心身障害児の対策をもっと真剣に考えてもらいたい。それから児童手当がたった第三子から、世界の三カ国と同等の日本の現状を変えてもらいたいということを大臣から御答弁を願いたい。
  121. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 重度心身障害児の処遇の問題については先ほど来申し述べましたようなことを中心として真剣に取り組んでまいりたいと思います。  それから児童手当についてはせめて日本も第二子くらいはというところで、そのぐらいよく答弁したなと言われるかと思っておったら、案外そうでなかったのでがっかりしたわけでございますが、しかしやっぱりこれ第二子とすると五千億かかるのですよ。第一子にすると一兆五千億かかるんです。たいへんな金なんですということもやっぱりお互いこれ考えなければならぬ問題でございますが、しかしせっかくの御熱心な御意見でございますから、十分検討をいたします。
  122. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、国民年金改正関係について質問をいたします。  昨年の国会で国民年金の改正を審議していたころの状況から見まして、その後経済が急激に物価高騰が進んできた。で、去年の特に秋以来厚生省は再三にわたって生活扶助基準の引き上げ等の手を打ってこられましたが、四十八年十月一日以後の厚生省がそうした物価高騰に対する対応策としてとってこられた措置についてまずお述べいただきたい。
  123. 高木玄

    政府委員(高木玄君) 昨年の十月一日から生活保護基準を五%引き上げますと同時に、社会福祉施設における一般生活費につきましても同時に五%の引き上げを行ないました。それから、昨年末におきまして、生活保護世帯に対しまして、一級地におきまして一人二千円、したがいまして、四人世帯の場合には八千円の特別一時金を支給いたしますとともに、社会福祉施設に対しましては、入所者一人当たり千円の特別一時金を支出した次第でございます。さらに、本年に入りまして、本年三月におきまして、生活安定のための一連の緊急特別措置実施いたしました。その内容は、まず生活保護の被保護世帯に対しましては、先ほど申しましたと、年末に行ないましたと同じように、一級地におきまして一人当たり二千円、四人世帯の場合には八千円でございますが、この特別一時金を支出いたしました。さらに、三月におきましては、社会福祉施設に対しましては、施設の内容によりまして区分けいたしまして特別一時金を支出いたしました。その区分けは、特別養護老人ホームとか、あるいは重症心身障害児と施設といったような非常に手のかかる重い方々を収容した施設につきましては一人当たり二千円、それから、その他の一般収容施設は一人当たり千五百円、それから通所、通園施設につきましては一人当たり千円、保育所につきましては一人当たり五百円、この四つに分けまして、社会福祉施設入所者の処遇改善のための特別一時金を支出した次第でございます。さらに、緊急生活資金給付金といたしまして、老人、心身障害者、母子世帯に対しまして、福祉年金を受けておられる方、児童扶養手当を受けておられる方、それから特別児童扶養手当を受けておられる方、こういった方々に対しまして一人当たり二千五百円の緊急生活資金給付金を支出した次第でございます。なお、この三月に実施いたしました一連の措置におきまして、生活保護世帯の対象者は約百十四万人、施設入所者は約百五十七万人、それから緊急生活資金給付金を支給いたしましたのは約四百十四万人、合計いたしまして全部で六百八十五万人に対しまして支給したわけでございまして、所要額総額は百二十七億円でございました。
  124. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうして、四十九年度予算では生活保護基準は二〇%引き上げると、これは四十八年度当初予算に対する引き上げ率が四十九年度は二〇%、こういうことでよろしゅうございますか。
  125. 高木玄

    政府委員(高木玄君) 四十八年度当初の生活扶助基準に対しまして二〇%引き上げた次第でございます。
  126. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、年金局長に伺いますが、衆議院の修正により、八月一日から厚生年金、九月一日から国民年金をそれぞれ引き上げるということになろうかと思いますが、これは何と何を基準にして何%引き上げることになりますか。
  127. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 厚生年金につきましては八月から、国民年金については九月からでございまして、引き上げいたしますその率は四十八年度の全国消費者物価指数の上昇率を使うことにい・たしております。それは御承知かとも思いますが、一六.一%ということでございますので、その率だけ引き上げをいたすことにいたしております。
  128. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、四十七年度の消費者物価指数と四十八年度の消費者物価指数を対比して全国平均で一六・一%引き上げよう、こういう趣旨でよろしいですか。それはどういうふうに実施なさるんですか、どういうふうに。年金を受けている人が、いろんなケースがあるわけですが、同率にすべて一六・一%引き上げるのかどうか。
  129. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 具体的な実施のやり方につきましては、社会保険審議会の厚生年金部会に御相談をいたしまして、じき最近その御相談の結果が出てまいったわけでございます。それで、議論の経過におきましてはいろんなやり方が議論されたわけでありますけれども年金額全体についてその率ができるだけ反映するような、そういう方法の結論になっております。ただ問題は、これをただ単純に年金額に一六・一%を掛け合わせますといろいろな矛盾が出る面もございますので、それらをどのように調整するかという点につきましては、もし御必要がございましたら詳しく御説明を申し上げますけれども、多少技術的な操作が加えられるような、そういった内容になっております。
  130. 小平芳平

    ○小平芳平君 まず、この年金の方は、この一六・一%ということは、生活の保護の基準は二〇%引き上げようというのにどうして年金は一六・一%になるんですか。
  131. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 端的に申しますと、昨年つくっていただきました法律で自動的に物価スライドをさせると、こういうふうになっておりますので、したがって、その法律内容のとおりのスライドを実施するわけでございます。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、社会保険審議会のスライド実施に対する御意見も私は見ました。で、そのとおりやるとなりますと、定額部分と報酬比例部分というものを分けて考えている、そしていろいろ意見を述べた上で、結果としては、四十八年四月一日以前の報酬比例部分の入る人はスライドするけれども、それ以後の報酬比例部分についてはスライドしないと、そういう具体的なケースは障害年金であろうというふうに聞きましたが、そういうことですか。
  133. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) おおむねおっしゃったような趣旨でございます。
  134. 小平芳平

    ○小平芳平君 この国会でスライド制の論議をしているときには、定額部分と報酬比例部分を分けて考えようというような議論は私は聞かなかったんですが、また厚生省もそういう説明はしなかったように思いますが、いかがですか。
  135. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 法律は、御承知のように消費者物価指数の上昇率を基準としてスライドをすると、こういうふうな趣旨になっております。それで、ただ具体的な実施内容については政令で定めると、それでこの政令ので定めると、それでこの政令の問題につきましては、実は前回御提出いたしました法律を社会保険審議会で御審議の際に、スライドの実施は、日本の厚生年金制度については初めてのことなので、したがって、この政令内容をきめる際には厚生年金部会の意見を聞いてきめるようにと、こういうふうなくだりがこの答申の中に入っておりまして、それで、その趣旨に従って御意見を聞いた結果、このような結果になったわけでございます。それで、したがって法律論的にはスライドのやり方自体は消費者物価指数を基準とはいたしますけれども、政令でこれを定めるというふうになっておりますので、政令内容について社会保険審議会厚生年金部会の御意見のとおりにこれを実施いたしたいと考えておるわけでございます。
  136. 小平芳平

    ○小平芳平君 経過はそういうことでしょう、経過は。じゃ、その定額部分と報酬比例部分を分けて考え実施しようとなさる政府の定額部分と報酬比例部分の理論的根拠を御説明してください。
  137. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 報酬比例部分につきまして四十八年四月以降の分にはスライドをしないと申しますのは、四十八年度の報酬比例なるものはすでに四十八年度物価指数のみならず、賃金上昇、そういったものを反映しているんだから、したがって、これにさらに物価指数を掛けますと二重にスライドアップすることになる、そのような不合理を避けましょうと、こういうのが大体の基本的な趣旨でございます。
  138. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、そうではなくて、定額部分と報酬比例部分というものが構成されるに至ったその経緯といいますか、一体どういうところから、この定額部分と報酬比例部分というのはだれがいつきめたんですか。
  139. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) これはたしか昭和二十九年の改正の際にこうなったと思いますが、定額部分と報酬比例部分に分けておりますのは、厚生年金給付水準のあり方というものが、全く現役時代の報酬そのものの高い低いによって定まっていいかどうかと、こういう問題があったわけでございます。で、これをきめました際の考え方といたしましては、まあ年金額の半分ぐらいは現役時代の報酬の高低によってきまってもよろしいが、あとの半分はいわゆるフラット制ということで、現役時代の報酬の高い低いに関係なくこれを年金額の水準としょう、そういうふうな考え方で定まっておるものでございます。したがって、報酬比例の要素が大体半分、それからフラット制の要素が大体半分、そういった構成でもって厚生年金給付水準というものはきめましょうと、それで、そういうことを実は昨年改正の際にもいろいろ大幅な改正でございましたので、この辺あたりもどうしようかということも相当議論があったわけでございますけれども、昨年改正の際の答申も五割五割を報酬比例、定額に分けて年金水準設定すると、この方針は踏襲しようと、こういうふうなことになっておりましたので、したがって、昨年も五割五割の報酬比例、定額の何と申しますか、基本構造はこれを変更しなかったわけであります。
  140. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうように、まあ大体五割ぐらいはという、そのまあ大体をもとにして片方はスライドする、片方はスライドしないというような行き方は問題が起きやしないかと思ってちょっと尋ねているわけです。  それから来年度はスライドをしないというような答弁が先ほどあったですが、これは一回だけ物価五%のスライドをするという、それからあとは手続的に困難で無理だということが厚生大臣から繰り返し述べられておりましたが、今年度の消費者物価の見通しは政府見通しでも九・六%ですか、上昇の見通しが。そういうことで年金は固定していかれますか、第一。
  141. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 大臣が御答弁になりましたのは、今年御承知のようにスライドの実施時期を繰り上げたわけです。その繰り上げの問題につきまして、来年度はどうするかまだ未定である、こういうことでございまして、法律にはっきり書いてございますように、当該年度の消費者物価指数が前年度に比べまして五%をこえて上昇いたしました場合には必ずスライドをしなければならない、こういうふうな法律になっておりますので、もし五%をこえるようなことがございましたら、来年も当然自動物価スライド制は発動するわけでございます。
  142. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、繰り上げを固定しておいたのでは、来年やらなければますます長期間になってしまう。ことしは繰り上げをして来年繰り上げをしないとなればますます期間が長くなる、政府見通し九・六%がはたしておさまるかどうかもわからない。にもかかわらず、そういうことでいくのですかと聞いたのです。
  143. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) この辺は議論にわたるかもしれませんが、今回何カ月か繰り上げました。その結果によって繰り上げない場合よりは繰り上げた部分がプラスされておるわけでございます。したがって、来年もし実施時期の繰り上げをいたしませんと、その間の期間の長さは長くなりますけれども、手にされる年金につきましては本年繰り上げた分だけは当初の法律内容とは異なってその分だけプラスして受給されたわけでございますので、その点は私どもも来年はまたどういうことになるか、これは物価上昇の状況等によって総合的に判断されるわけでございますので、どのようになるか予想はできませんが、ただ、法制といたしましては、来年度は今回のような繰り上げをしないような法律になっておりますので、したがって、御指摘のような事態は生じますけれども、それはいたしかたのないことだと考えております。
  144. 小平芳平

    ○小平芳平君 いたしかたのないことだと言って、そのとおりやれというだけなら国会で何も審議する必要ないじゃないですか。
  145. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 御審議いただきましたスライド制導入の法律自体が御承知のように、厚生年金につきましては十一月分から、国民年金につきましては翌年の一月分からと、こういうふうになっておったわけです。それで、ただ今年の問題といたしましては、けさほども大臣からお答えがございましたように、物価上昇のしぐあいが非常に異常でございましたので、したがって、今年度の異常物価を前提といたしまして本年度の特例といたしましてこの繰り上げをいたしたと、こういうことになっておりますので、私はそういった趣旨で繰り上げられたものと理解いたしておりますので、結果的に来年はまたどのような法律の修正が行なわれるかはこれはなかなか私どもでは予想はつきませんけれども、ただ現行法の体系としては本年度の特例として繰り上げをしたものであって、本年はまた本則に戻ると、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。
  146. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣は、一年で計算するということ自体きわめて、物価の高騰の激しい時期には一年間待っているということ自体きわめて不合理だという現象が起きているということは御存じですね。
  147. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 最近の物価上昇が異常なものであることは十分承知をいたしておりますし、一年待てということを言うのも非常にむずかしい問題であることも承知いたしております。
  148. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、むしろことしのように八月一日、九月一日を待たないで検討すべき時期が来るかもしれない。ことしは八月と九月に繰り上げましたが、八月と九月から出発しましてまたもとに戻して十一月と一月ですか、そういうほうに延ばしてしまうというよりも、八月、九月をもっと縮めなくちゃいけないというような事態も来ないとは予想できないのが現在の経済情勢ではないか、むしろそうならないことをわれわれは願いもし、努力もしなくてはなりませんが、いかがですか。
  149. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) おっしゃるとおりでございまして、好ましいことではありませんが、八月よりももっと繰り上げなければたいへんだぞというときが将来来ないという保証は私はないと思うわけでございます。私はそういうことを好みません、好みませんが、八月をもう少し六月くらいに繰り上げたらどうだと、こういったふうな異常な物価が続いたり何かいたしますれば、そういうことを考えなければならぬときがあるいは来るかもしれません。私は率直にそう思います。しかし、いまの段階ではいろいろ技術的に、この計算をし直すとかなんとかということはたいへんな仕事でございましたので、ことしはさしあたり三カ月ということを繰り上げたわけでございますが、来年度において異常物価が続くならば、やはりそういう問題、昭和四十九年と同じように三カ月繰り上げろ、あるいはもっと繰り上げろという議論があるいは来年出ないとも限らないと思います。で、そういうこともありますので、先ほどもちょっと申し上げたように、技術的に非常に一人一人の年金額を改定するのはこれはたいへんなことでございますので、来年までに何とかもっと簡易な方法が解明されないかどうか、そういうこともあわせて考えておかなければならぬであろうということを先ほど実は須原委員の答弁でお答えをしたわけでございます。したがって、もう来年は繰り上げは絶対にしないんだと、法律的にはそうなりますね。法律的にはそうなりますが、そのとおりにしてしまうという、そんなにかたい決意を私は持っているわけではありません。それは来年度経済状況とにらみ合わせて考えなければならぬ問題であろう、こういうふうに考えております。
  150. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、今度は定額年金について厚生省はどういう基本的な考えを持っておられるか伺いたいのです。  現在の改正案がかりに成立したといたしますと、国民年金福祉年金は定額で七千五百円ですね、それから障害年金の二級が七千五百円ですね、ここが一番低いです。国民年金福祉年金が七千五百円、それから障害福祉の二級が七千五百円、ここが一番低い。その次に低いのは国民年金の母子福祉年金が九千八百円、それから国民年金の五年年金が約として九千二百八十円、それからその次に低いのが障害年金の一級で一万一千三百円。改正がそのまま成立したとすればこういうような金額になりますが、これは私ほかでいただいた資料ですが、その辺の関連はどういうふうに考えて  おられますか。
  151. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 従来のいきさつから申しますと、障害年金、これは従来は一級しかなかったわけでございますが、老齢福祉年金の一・五倍、母子及び準母子年金につきましては一・三倍、そういうやり方を今回も踏襲いたしておるわけでございます。それで、二級につきましては、厚生年金その他の例から申しまして、厚生年金の場合は御承知のように退職老齢年金と同額ということでございますので、国民年金福祉年金につきまして老齢福祉年金がそれに当たるというようなことから、二級障害については七千五百円、こういうふうなことにいたしたわけでございます。したがって、障害福祉年金の一級、二級のその開きと申しますか、それはほかの厚生年金の場合等に比べますと、一級は退職老齢年金の一・二五倍でございますから、したがって一級のほうが一・五倍で多少高過ぎるというきらいがございますが、しかし、この辺につきましては従来からそういうふうなやり方で、老齢福祉年金と一‥五倍というそのたてまえをくずしてこれを引き下げる必要もあるまいというようなことでこの一・五倍を据え置いた結果、一級、二級との差が他の年金制度における差よりは大きくなったと、こういうことでございます。
  152. 小平芳平

    ○小平芳平君 その辺の理論的根拠については、ちょっと時間もありませんので、また別の機会にお尋ねしたいと思いますが、いま述べますように、この年金時代、五万円年金という時代でありながら、この最低部分というものは七千五百円、九千八百円、一万一千円という辺に集中しているということを指摘して、厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  153. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) そういう問題もあるわけでございますので、私ども福祉年金につきましては、できるだけ増額をはかっていくということにいたしてまいりたいと考えておるような次第でございます。
  154. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、これも午前中答弁しておられたことですが、保険料を引き上げていくということですね。保険料を引き上げていって、昭和八十五年、いわゆる年金の成熟期には厚生年金だけでも積み立て金が四百兆円になるであろうということを年金局長は発言しておられます。同じように、厚生年金の四百兆以外に積み立て金が幾らになりますか。
  155. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 厚生年金は、先生指摘のように、昭和八十五年度で単年度給付がおおむね百四十兆、それから積み立て金が四百兆ということで二年数カ月分の積み立て、こういうことでございます。実は、この国民年金につきましては定額制の年金なものでございますから、給付費そのものあるいは保険料そのものにつきまして厚生年金と全く同じような計算のベースをとることが非常に困難でございますので、多少計算のとり方が違っております。前回改正法を御提出いたしました際にお出しいたしましたその資料でございますが、十カ年程度の見通ししかいたしておりません、国民年金の具体的な計算は。したがって、同じようなベースでの八十五年という数字はございませんが、十年目の五十八年度について申しますと、単年度の支出が一兆五千五百億円、その時点におきましての積み立て金が四兆一千七百億円、こういうことでございます。で、この定額制の年金の場合には、八十五年までの見通し自体について厚生年金と同じようなペースでの計算が非常に困難なものでございますから、もし必要がございましたら、相当時間をいただきましたならばこれは計算をいたしたいと思います。
  156. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、そういう数字は、私は求めているわけではありませんが、四百兆とか、六百兆になるか、国民年金を加えて。ほかの各種年金を加えて一千兆円になるか、そういう積み立て金をうなるほど積み立てていくということ。そうすると、先ほど盛んに須原委員指摘しておられた管理運用がますます大事になってくるわけじゃないですか。どういうことを想定しているんですか、いろいろな経済情勢とか、国家予算の上から見て。厚生年金だけで四百兆円、このほか何百兆円、一千兆円というような、そういう積み立て金を持ったという、そういう経済的な強力なものができ上がった場合に、どうなるんですか、日本の国は。
  157. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) ただ、四百兆とか百四十兆とか申しましても、現在時点での実質価値に置き直しますと、それはそんなに大きなものではないわけです。で、大体想定いたしておりますのは、この間の改正の際に改正いたしましたような年金水準引き上げというものが五年に一回行なわれる、それからその五年ごとに行なわれるそういった大幅な引き上げのほかに、その間の四年間分は自動物価スライド制実施される、そういうふうな想定をいたした場合に、当然受給者数もどんどんふえてまいりますから、そうすればどれくらいの給付額になるか、単年度給付額の二年から三年程度の積み立て金というものは、これはそうなりますと、はたして積み立て金というのか、あるいは支払い準備金というのか、その辺の性格はいろいろ議論が分かれてくると思いますけれども、相当規模の大きい年金財政でございますので、したがって二年なり三年なりの積み立て金というものは当然持っていなければ、場合によっては突如として不景気が訪れましたような場合に、保険料を賦課方式で取るといっても、保険料も実際問題としては取れないかもしれません。そうなりますと年金の支払い不能というふうな問題が起こってまいりますと、年金生活者は、申すまでもないことでございますが、非常に受け身でございます。したがって、そういう事能になって非常にたくさん、多数の年金受給者年金の受給も受けられな  いということを避けるためには、やはり二年なり三年なりの支払い準備金と申しますか、積み立て金を持たなければならない。そういうことを一応定常化いたしました際の成熟段階の日本の厚生年金制度の一つのプロポーションといたしまして設定して、それから逆算をして各年次の保険料をどれくらいに定めるかということを計算いたしたわけでございます。国民年金につきましても、御承知のように前回の改正におきましては、いわゆる本来的な年金と申しますか、二十五年加入の場合の年金というものを厚生年金の模準的な年金水準にリンクさせるというふうな考え方をとっておりますので、大体同じような考え方に立っております。  ただ、さっき申しましたように、八十五年までの財政の移り変わりというものを厚生年金ぺ−スでやったと同じような計算方法は非常に困難なものでございますから、したがって、御提出した資料としては五十八年度まで、つまり十年間だけの資料を御提出した、こういうことでございます。
  158. 小平芳平

    ○小平芳平君 局長は支払い準備金だなんて言っておりませんよ。ちゃんとそれは積み立て金として運用し、利子が何%だと幾ら保険料助かると言っているじゃないですか。そこで、そういう利子が何%で運用しょうという、その何百兆円というお金は、じゃあ、大まかに言って国家予算に対比してどのくらいになるつもりですか。
  159. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 実は、その辺、八十五年になった場合の国家予算なり、あるいは国民所得というものはどれくらいであるかと、いろいろ経済企画庁等とも相談をいたしたんですが、その辺についての的確な数字はございませんので、したがって御質問の点についてはっきりしたお答えはいたしかねるわけでございます。
  160. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう点は、はっきりしたお答えができないようなことで保険料上げていくということは問題だと思うのです。ここで、平準保険料は、国民年金ですね、四十九年一月現在で二千六百六十一円であると。ところが実際の保険料は二百円上げても一千百円であると、こういうことになっておりますね。そうすると、この積み立て方式といいながら完全に積み立てになってないわけでしょう、現実に。どうですか。
  161. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 厚生年金国民年金通じてそうなのでございますが、完全積み立てでまいりますと、御指摘のように二千六百円程度取らなければならないわけです。ただ、国民年金につきましてもスライド制を導入いたしました関係上、平準保険料が相当高く出てまいります。したがって、当初の保険料の設定につきましてそれなりの高さで令険料を設定いたしますと、きわめてラフな計算をいたしましたならば、現行の保険料の政策改正が、昨年の場合は大体給付水準について二・五倍ですから、二・五倍にしなければならない、こういうふうな問題が出てくるわけです。そういった保険料は現実に引き上げをいたしましてもなかなか困難でございますので、まあ最初のステップは可能な限りスムーズにその保険料額に移行し得るようなものにいたしまして、その辺は一〇〇%を取るのを完全積み立てといえば修正をしてその四割程度とこういうふうになるわけですが、修正をしてかじった分は、そのあとの各世代間にそれほど不公平のないようにならしてこれをリカバーしていきたい、こういうことでございます。したがって、何しろ給付水準引き上げ自体が非常に大幅でありましたし、それからまた 初めての物価スライド制の導入でございますので、平準保険料が非常に高く出る関係上、厚生年金につきましても修正率は大体七割、国民年金につきましては、特に賃金労働者と違いまして、毎年毎年いわゆるベースアップというものもない関係上、定額制の保険料になっておりますので、したがって当初の保険料については厚生年金以上に修正率が深まっておると、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  162. 小平芳平

    ○小平芳平君 六割かじっている、何割までかじったら後代の不均衡というのですか。
  163. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 厚生年金につきましては、最初の保険料率があるべき平準保険料の大体七割でございます。  それから国民年金については、先ほど御指摘のありましたように大体三四%でございます。今回二百円上げていただきますと、四一・三%になります。
  164. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、そこで六割はすでに足りない分を積み立てていると、欠損六割で積み立てが進んでいるというわけでしょう。ですから、財政方式について、横田年金局長は不毛の議論をやっているということを言っているでしょう。そういう年金方式で、国会では不毛の議論ばかり繰り返しているみたいに言っているけれども、どうですか。
  165. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 私、どこでどういうふうに申し上げた事例なのか、いますぐ思い出せないのでございますが、私が常に申しておりますことは、保険料の取り方につきまして、当該年度に必要な分だけを保険料として徴収するような、そういうやり方では年金財政はななかむずかしい。で、しかも日本の年金制度は、現在の時期はいわゆる未成熟の状態でございまして、厚生年金について申しますと、十人の被保険者でもって、大体〇・四人くらいの受給者の、——そういった年金でございます。それが何年かたって、いわゆる成熟化段階になりますと、まあ十人の被保険者に対しまして、おおむね二・七人の受給真をかかえる。それ以降はおおむねそういう水準で横ばいになる、こういうことでございますので、やはり日本の年金はいまの時点では非常に受給者が少なくて、そうして被保険者が多いということだから……。
  166. 小平芳平

    ○小平芳平君 それはわかっている、わかっている。
  167. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 賦課方式をいますぐとるということは無意味であると、こういうふうなことは申しております。
  168. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣もお聞きいただきたいんですが、完全に積み立てて、びた一文欠けずに積み立てているかというとそうじゃない。欠けるどころか、六割欠けたものを積み立てているという。したがって、そういう意味で賦課方式か、積み立て方式かといって、じゃあ、厳密にどっからどこまでが賦課方式で、どっからどこまでが積み立て方式かと一結局、この賦課方式に現在の年金そのものが立ち向かっている、入り込んでいると、片足突っ込んでいるということすら言って言えないことがないんじゃないですか。それはいかがですか。
  169. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 賦課方式か積み立て方式かという、そういった観点からものを申します場合には、平準保険料を下回って保険料を現在は取っておるわけです。それは必ずその平準保険料よりも上回った保険料をいずれかの時期においては取りまして、取り足らない部分は平準保険料を上回った保険料をいずれかの時期から取ることによって埋め合わせをする、こういうことでございます。  で、賦課方式と申しますのは、当該年度において必要とする給付費の総額に見合うものだけを保険料なりあるいは国庫負担でもって埋ずめると、こういうふうな考え方でございますから、取り不足があるからといって賦課方式というふうなことではないというふうに理解を、いたしております。
  170. 小平芳平

    ○小平芳平君 だからといって、完全に積み立て方式でもないというんでしょう。
  171. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) ことば自体が適正かどうかは別といたしまして、なればこそ私どもは修正積み立て方式というふうなことばを使用いたしております。
  172. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃあ、修正賦課方式ってどういうことですか。
  173. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 修正賦課方式というのは、私ども採用いたしておりませんので、またどういうふうな概念かよくわかりませんが、完全積み立て方式を修正いたしていくのが修正積み立て方式というふうに考えておりますので、賦課方式の場合はおそらく修正賦課方式ということが成り立つかどうですか、単年度年度に照会するか、あるいは数年をくくりまして、その数年の期間でもって収支のバランスをとるようなかっこうにいたしますので、あんまり修正の問題というのは出てこないんではないかと思います。
  174. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、私のいただいた資料には、賦課方式は単年度に限るとはなっておりませんが。いずれにしても年金局長ね、不毛の議論をやっているみたいな、「財政方式で不毛の議論」、それでさっき説明したようなことをされておりますが、こういうのはよくないじゃないですか。
  175. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) もしそういったことを先生が受けられた印象のような表現でもって表現をいたしておるといたしましたならば、それはたいへん申しわけないことだと思います。
  176. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、これはちゃんと——これどごで出したんですか、社会保険協会連合会で出ておる、これ見ておいてください。  それから次に、またこれもこまかい問題といえばこまかいですが、五年年金の加入を四十九年三月三十一日で打ち切った。法律がそうなったから打ち切ったんだとまたおっしゃるでしょうが、理由はどういうことですか。
  177. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 五年年金の加入の再開につきましては、その加入なさった日から給付を受けるまでの間に少なくとも二年程度の現実に保険料を納付する期間があるべきであると、こういう考え方でございます。
  178. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、五年年金に該当なさる方は明治三十九年四月二日から明治四十四年四月一日までに生まれた方でしょう。これらの方は六十七歳、六十八歳、六十九歳のいわゆる老齢特別給付金にも当てはまらない。まさしく年金からはみ出した人です、いま現時点において。たとえば、私がこれは前の国会でも一つの例として申しました、働いていて現在厚生年金に入っていると五年年金に加入の申し込みができない。その五年年金に加入の申し込みのできない人が、すでにこの四十九年三月三十一日で打ち切られてしまったから、こうなると、——よろしいですか、私がいま申し上げるようなことでよろしいかどうか。通算老齢の十年ですか、通算老齢の十年を満たせばこの方は年金受給者となれるかどうか、それが一つ。それからその通算老齢の場合には第四種、任意加入制度が適用になりますかなりませんか。その二点について。
  179. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 第一点は、通算老齢年金受給資格が発生いたします。それから第四種、いわゆる任意加入につきましては、十年以上の被保険者期間のあった方についてでございますので、十年未満の従前加入期間の方については、これは適用を受けることはできないわけでございます。
  180. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは了解いたしました。それから区役所とか市役所で盛んに国民年金に入りなさいという、国民年金のPRをしてくれるわけですが、そういうPRをしてくれること自体はけっこうですが、これも私が再三当委員会で問題提起しているように、脱退手当を受けた、厚生年金にかつて入っていて脱退手当を受けた方あるいは保険料を掛け捨てにしてしまった方、そういう方の救済の道がないわけですよ。したがって、ただ年金に入れ入れというだけではなくて、こういう人は入っても老齢給付は受けられませんということも教えてあげるべきじゃありませんか。
  181. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 国民年金のPRにつきましては、私どものほうから都道府県あるいは市町村にお願いをいたしまして、加入をおすすめするという場合が非常に多いわけでございます。御指摘のような問題につきましては、私どものほうも御加入をおすすめするということを、特にまだ制度が相当普及いたしましたけれども、なお御認識の浅い方がございますので、お入りになっていただくということを中心にしておったわけでございますが、今後そういったきめのこまかい面での市町村なり都道府県の指導をお願いするというような形に私どものほうも十分気をつけてまいりたいと思います。
  182. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこまではいいんですよ。国民年金が普及したけれども、なおかつ漏れている人のために啓蒙しますか、宣伝しますということはいいんです。けっこうですが、脱退手当を受けた方、あるいは保険料を掛け捨てにして転々と職場を変わった方、そういう方の中にはいまから国民年金に入っても昭和五年四月二日以後に生まれた方ですから、完全に老齢年金つかないわけでしょう。要するに二十四年十一カ月保険料だけ払って最後一カ月足りないからといって、もう老齢年金は一銭ももらえない、こういう人が起きるわけでしょう。いかがですか。
  183. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 御指摘のようなケースも出る問題があるかと思いますので、私どものほうでPRをいたします際に、そういった今後入っても問題があるというようなケースについてのPR等につきましても、今後私ども指摘いただきました点につきまして十分反省をいたしました上で、きめのこまかい事前のPRができるようにいたしてまいりたいということでございます。
  184. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣ね、これはむしろ窓口のPRの問題というよりも制度自体ですね。大臣はいつも検討しますと、通算の問題として検討しますというふうに答弁されますが、二十四年何カ月という間、ただ完全に政府にだまされたっていうような形になるわけですよ。満六十歳までに満二十五年保険料を払わない人は、ほかに通算できる何らかの期間があればいいんですが、ほかに通算できる何らの期間もないとなれば、もう二十四年、満二十五年に一カ月足りなくたってだめでしょう、これ。法律がそうなっているからって、絶えず年金局長の得意のところじゃないですか。そういう人が一生涯、——一生涯って二十五年もただ保険料だけ払って、最後どたんばへ来て、一カ月か一年か足りないから老齢年金はゼロだと、どうですか。
  185. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 私ども、現場で実施の業務に当たっているほうのことでございますので、制度にわたって申し上げるのは差し控えるべき筋かもしれないと思いますけれども、実際の問題としてやってまいりますと、実は厚生年金の場合でございますと、おつとめになっておって一定の年齢以上に達してもさらに被保険者期間がふえていくということがございます。国民年金のほうは御指摘のように年齢的にきちっと縛られておりますので、通算の場合等を考えますと、厚生年金のほうで若干よけいおつとめになりますと通算できるのに、おやめになったのがちょっと早かったので最後に無になったというようなケースも出かねない問題もございます。こういう面につきましての事前のPRというものは、実は非常にむずかしい面があるわけでございまして、御指摘のような、制度面についてまた御考慮をいただくというような問題もあるかと思いますので、その点につきましては現業庁としての私どもと、制度の立案に当たります年金局と十分連絡をとるようにいたしたいと、こう思います。
  186. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣どうですか。
  187. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 法律の規定でそうなっておりますので、運用でやるというわけにはこれはまいりませんね。でございますから、やっぱり、私は、こういう問題がもしあるならば、一つ一つきめのこまかい制度の改正をやれるかどうか、率直に言うていますぐ結論は私は持っておりませんが、何かやっぱり考えにゃならぬかなあという感触を受けて実は承っておったのです。いまにわかにそれをどういうふうに制度的に改革していくか、案もありませんが、ひとつ十分研究してみます。この次、来年度あたりにまた改正をお願いしなくちゃならぬでしょうから、そのころまでにそういう問題を——何か救済する方法があるのかないのか、十分ひとつ検討いたしてみます。
  188. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ、大臣は突然聞いたと言われますが、年金局長は突然じゃないでしょう。何回これ言っているかしれないですよ。あるいは国会法による質問主意書も出したんですがね。結局、脱退手当を受けた、あるいは何らかの事情があって結局国民年金にまるまる二十五年、満六十歳までにまるまる二十五年保険料を納める期間がなかったと、それが一カ月足りなくても二カ月足りなくても、法律の条文がそうだからといって、全くどうにも現行法では救いようがないということでしょう。それはいろいろ考え方があると思うのです。たとえば満六十歳を一年とか二年とか延ばして払い込むとか、あるいは脱退手当を受けた人は、受けた脱退手当を割り増しして返して通算してもらうとか、あるいは二十五年まるまるの年金でなくても、かりに二十年の年金は出るとか、何かそこに方法が——法律法律といったって、これは人間がつくったものですから、年金というこの法律は。そんなに絶対動かしがたいという前提があるわけじゃないんですから。しかも、私何回も言うようで恐縮ですけれども、二十五年間国家へ納めている、政府へ保険料を出したと思っているわけですよ、本人は。一カ月足りないからといって、どたんばへきてあなたはゼロだと言われて、納得できましょうか。したがって、これは突然の問題提起でもありませんし、ぜひ研究をしていただきたい。
  189. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 何回か先生から御意見を承りながら、なかなか実現できないということでございますが、それだけに年金制度にとりまして非常に基本的にむずかしい問題であるということでございます。しかし、また重ねての御意見でございますので、十分に検討をいたしてまいりたいと思います。
  190. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、これも先ほど出ていた問題ですが、所得制限額ですね。所得制限額は、政府は政令だから資料としてはお出しにならないわけですね。で、さっき五十万円というふうに言っておられたんですが、これはどこに当てはまるのですか。
  191. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 所得制限は、御承知のように扶養義務者の所得制限の問題と、年金を受けられる本人の所得制限の問題とあるわけでございます。扶養義務者の問題につきましては、昨年御承知のように六百万円ということで事実上撤廃にひとしい措置をとっておりまして、昨年そういった六百万円にいたしました際の支給停止率がおおむね〇・六%でございますので、今年も同じような支給停止率を維持するためには六百八十八万五千円と、こういうふうになるわけでございます。  問題は、先ほど御質問があってお答えをしておりましたのは、本人の所得制限の問題が主でございまして、本人の所得制限につきましては、御承知のように福祉年金自体が全額税金を財源といたしておりますので、従来から税金を納めるような方には福祉年金は差し上げないのだ、こういうふうなたてまえになっております。それで、今回ささやかではございますけれども、税金云々という点を離れまして、七十八万円を九十万円に引き上げることによって、従来は課税の非課税ラインでもって処理をいたしておりましたので、毎年多少支給停止率が多くなってまいりましたが、今回は支給停止率を維持するという観点から、九十万円という金額を設定いたしたわけであります。ただしかしこれでも必ずしも十分ではございませんので、先ほど大臣からもお答えがございましたように、私どもは本人の所得制限につきましても、今後相当飛躍的に改善をいたしてまいる所存でございます。
  192. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっと時間がもう参りましたので、また別の機会にお尋ねしたいと思いますが、所得制限の場合も、福祉年金の老齢と障害の場合の所得制限額、それから母子・準母子の所得制限の額、それから児童扶養手当、特別児童扶養手当の所得制限の額、それぞれ違いますね。まあ、いろいろ理論的根拠があるのでしょうけれども、簡単にぱっと理由を説明できますか。
  193. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 老齢、障害につきましては、本人でございますので、全く本人の所得制限ということで一本でございます。母子・準母子、児童扶養手当等になりますと、年金なり手当を受けられる方が、予供さんに対する関係では扶養義務者、実質的に扶養義務者みたいな形になりますので、したがって扶養義務者の所得制限に近いような考え方をとっておる。一言で申しますと、そういうことでございます。
  194. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 児童福祉の問題についていろいろお聞きしたがったのですが、きょうは、せんだっての児童手当についてお伺いをしました点で、ここでもう一度はっきりしておきたい点だけを取り上げてお聞きいたしたいと思います。  そこで大臣が、——この間、私が社会保障制度審議会の答申の中にある「将来飛躍的に発展させなければならない」というところを御質問いたしました、そのときに、大臣は、こうして段階実施を完了したのが飛躍的だと、こういうふうに御答弁なさいましたが、私は段階実施法律できめられたことですから、それを完了したからといって、それが飛躍的だなどというのではない、それは当然なことである。そういう点、非常に大臣の御答弁に疑問を感じたわけです。審議会の答申は、こういう法律事項でない部分について飛躍的な発展を求めたものだと、こういうふうに思いますが、せんだっての大臣の御答弁いかがでしょうか。
  195. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いや、まあ、ちょっと飛躍的ということばを二つにかけて私申し上げたわけなんで、社会保障制度審議会の答申は、将来内容を飛躍的にということでございます。まあ私は三年段階であっても、日本に初めて児童手当というものが定着したと、これはやっぱり制度の発展の歴史の上においてはそれはやっぱりたいしたものという認識は私は持っているんです、これは。しかし社会保障制度審議会の答申のいうのは、今後範囲の拡大とか内容改善とかそういう方面について飛躍的にやれと、こういう意味であることは私も十分理解をいたしております。
  196. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 と、いまおっしゃった段階的実施もやっぱり飛躍的だというふうにおっしゃったということですね。二つの意味があるとおっしゃった、その一つの意味はやはり段階的実施が飛躍的だと、こういうふうに御説明あったわけですね。そういうふうに承ってよろしゅうございますね。
  197. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いや、児童手当制度というものが段階実施であるにしても、三年目ですからここで制度が定着しますね、制度として。日本は、まあ、よかれあしかれ内容は別として、日本にも児童手当制度ができましたよと、初めてできましたよということを言い得ることは、これは日本の社会保障制度の上では相当すばらしいものでありませんかということを申し上げているんです、これは。要するにいままで日本になかったんですから。それが段階実施であるにしても、ここで日本は本年度間違いなくできましたということを言い得るようになったということはりっぱなものではございませんかと、しかし、制度ができただけじゃだめなんで、中身をよくすることが今後の問題でございますと、特に社会保障制度審議会がやかましくいうておりますのは、範囲の拡大あるいは額の拡大、こういうことでありましょうと、そういうことについて大いに飛躍的にやってくださいと、こういうことの答申だと、かように理解をいたしております。
  198. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 問答の繰り返しですが、やはり私、大臣がこの段階的であっても完全に完了したと、完了したということがやっぱり飛躍的であるとかすばらしいことであると、いままでなかった児童手当ができたことがもう飛躍的だというふうなお考えだと思うんですね。そこが私、非常に次元が低いと思うんですね。しかもこの児童手当は非常に不満足で、社会保障制度の中では全くおくれて、しかも改良すべき点を数々含んで、それを段階的に三年もかかってやってると、三年もかかったということはやっとということですね。そういうことをすばらしいとか飛躍的だというふうに最も力を入れていただかなければならない大臣がおっしゃっているということについて、私は、そうであっては今後の児童手当の内容充実が非常に心配であるから申し上げるわけでございます。そこで、その点も大臣おわかりいただけると思うんですね。
  199. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ええ。
  200. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 それから審議会の答申のことについて飛躍的とは何をさすかということについて先ほどちょっと大臣お答えくださいましたけれども、私はこの飛躍的な発展というのは第一子からであると、しかも所得の制限なしに支給することだと、こういうふうに解釈いたしますが、これは正しいのか間違っているのかお答えいただきたいと思います。
  201. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) まあ、審議会の答申の中に飛躍的な制度改善ということがうたわれておりますことは御指摘のとおりでございます。ただ、その中身といたしまして第一子からしなければならないということが飛躍的と、イコール飛躍的というようには直ちには私ども解しておらないのでございまして、先般来るる御説明申し上げたように、四十九年度をもって一応段階実施が終わった後において、その支給の額、支給対象あるいは所得制限等全般にわたって再検討を加え、それによって制度が飛躍的に発展するということを審議会は期待しているという意味に私どもは解しているわけでございます。
  202. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 それでは、私がこれは第一子だと、それから所得制限をなくするのだという、こういうとり方は違っているということですか。違っているのか、間違っているのですかと伺っているわけです。
  203. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) そういう御意見について、間違いであるとは私ども考えておりません。
  204. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 と、厚生省はそういうふうにとってないということですね。
  205. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 厚生省といたしましては、いま御質問で問題になりますのは、第一子か第二子か、あるいは現状どおり第三子で内容改善かということになろうかと思います。しかし、少なくとも対象を拡大するという場合には、第三子以上に広げることに意味があるというように考えるものでございまして、ただそれは即第一子からというように厚生省は考えておりませんということを申し上げたわけでございます。
  206. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 次に、この第三子の問題で大臣にまたお伺いいたしました。第一子からは六十五カ国のうち五十三カ国、あとわずか七カ国が第二子で、三子からは日本を入れてたった四カ国であると、こういう点で第一子かち支給している外国の状況を申し上げましたらば、大臣は、大半は第二子からだと、世界の児童手当を実施している状況は。第一子から支給している国は少ないと、こういうふうに御答弁になりました。私、大臣は認識不足じゃないかと思います。そうして、そのときに、わが国は第二子から支給はあり得ても第一子から支給はあり得ないと、これは私の考えであるというつけ足しがございましたけれども、たいへん重大な御発言をなさっているわけです。第一子からはあり得ないと。非常に私は失望するわけですね。この点、議事録ができていればよろしいんですけれども、議事録がございません。まあ、なくても、御答弁になった大臣がいらっしゃるんですから、わが国において第一子はあり得ないというような、そういうお考えがおありであるかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  207. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 事務的な点について私から申し上げます。  おそらく大臣が第二子からの国々について申し上げた中では、実は第二子以降の児童を対象としておりますのが、フランスであるとか、西ドイツであるとか、イギリスであるとか、まあ比較的西欧先進国に多いわけでございます。ただ、第一子からを対象としております国は、オーストラリアであるとか、あるいはイタリア、オランダ、スウェーデン、デンマークというような、数においてはたいへん多いわけでございます。したがいまして、大臣がお答え申し上げましたのは、わが国がもって範とするフランス、西ドイツ、イギリス等の社会保障が比較的進んでいる国を考えた場合に、第二子からということを申し上げたということが、第一点でございます。  それから第二点の第一子からの場合に非常にむずかしいということを申し上げましたのは、御承知のとおり、かりに第一子から現在の額四千円、改正になります額四千円ということでいたしますと。給付の総額にいたしまして約一兆三千億から四千億。現在の財政状況あるいは他の社会保障給付との関連から申し上げますと、たいへんに困難な点が多々あるということを意識として大臣がおありになったために、さようなことを申し上げたのではなかろうかと、——まあ大臣ここにおられますので、そのように私思うわけでございます。
  208. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いや。私はこの資料を見ましてね、西欧先進諸国の中で二子というのが一番多いんです、数がね。ということを申し上げたので、全世界の百カ国の数を調べて申し上げたのではありませんでしたので、その点はあるいは不十分でありましたから、それはひとつ訂正さしていただくというふうにしたいと思います。  それから、第一子はあり得ないと私は言った覚えはないような記憶をしているんです。第一子までするのは非常にむずかしいと、せめて第二子くらいからはしていかなければなるまいと、こういうのが私の率直な気持ちなんです。でございますから、速記録を見ないとわかりませんが、あり得ないと言うつもりは私は持ってないことは明らかにしておきたいと思います。しかし、二子にしましても四、五倍の金がかかり、第一子ということになるとたいへんな金がかかるということもありますので、第一子からというのは非常にむずかしい問題でございます。こういう認識はいまでも持っておるわけでございます。
  209. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 そこで、いま日本の現状から第一子ということは非常に困難なことと思います。しかし、世界の大勢というものはもう第一子から支給されているわけです。そういう中で、非常に先進国の中に力を発揮している日本でありながら第三子というのは児童福祉の面ではまだ後進国だと、こういうふうに言わざるを得ないわけなんです。そういう点で、第一子というのが世界の大勢であるということをお考えの上で、そこまで大臣のお力で持っていけるようなそうした機運といいますか、そういう一歩をつくっていっていただきたいと、こう思うわけなんです。そういう点から大臣の御苦労もたいへんだと思いますけれども、がんばっていただきたいという点を申し上げて、もう一度大臣にお答えいただきたいと思います。
  210. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私は児童手当制度は諸外国に比べて日本は非常に劣っておるわけでございますから、これを飛躍的に発展させなければならない、私はさように考えておるわけでございます。  そこで、先ほど藤原委員にもお答えいたしましたが、せめて第二子くらいまではまず早く持っていかなければなるまいと、こう申し上げたわけでございますが、まあ世界の大勢は第一子からだということでございますので、そういう点も十分検討いたしますということも先ほど藤原委員にもお答えしたわけでございますので、この問題については財政の問題もございますが、慎重にひとつ検討を続けてまいるというふうにいたしたいと思います。
  211. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 そこで、第三子の問題について、先ほど藤原議員が理由についてただされておりました。そのお答えを聞いておりますと、多子家庭の養育費が非常に大きいと、だから第三子に児童手当を支給しているんだと、こういうお答えでしたね。それともう一つ、他の社会保障とのつり合いもあるというようなことも理由の中にございましたけれども、多子家庭というものに児童手当を出しているんだという御説明でした。そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  212. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 先ほどお答え申し上げました中にも申し上げたわけでありますけれども、児童手当の目的は、先生承知のとおり、児童を養育している家庭の生活の安定と、それから一方では児童の健全なる育成のための児童福祉と、この二つの目的があるわけでございます。それで第三子からの現状の制度対象といたしておりますのは、三人以上のお子さんを持っておられる家庭における生活の安定ということを一方では考え、そして、それをやはり児童福祉にも役立てるという趣旨のもとに当初四十七年一月から発足した現在の制度は第三子を対象として始めておりますと、こういうことでございます。なお、他の社会保障給付ということもございますが、これはわが社会保障全体の中における児童手当をどうするかということも含まれて考えておると、こういうことでございます。
  213. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 多子家庭の養育費が非常に大きいということが第三子を対象にしているという理由ならばですね、第一子からやるほうがもっと効果があるんじゃないかと、そういう点で第三子ということに対する理由が何となくごまかしているんだというふうに私とれるわけなんです。
  214. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 児童手当の制度というものを児童の福祉ということに力点を置いて考えますならば、少なくとも児童を持っている家庭に対して児童手当を支給するということは望ましいことだと思います。そのことは当然にしたがってまた所得制限についても大幅な緩和ないしは撤廃ということにつながっていくものであろうと思います。ただ、私が申し上げておりますのは、現在の制度といたしまして第三子以降に支給している理由というならば先ほど申し上げたことではないだろうか、ということで申し上げておるわけでございます。
  215. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 それから、やはり藤原議員が人口問題を取り上げて、将来は平均出産児数の上から人口は静止の状態になると、そして極端に言えば、将来は支給対象の児童がなくなっていくと、こういうお話がございました。そのときに局長さんの御答弁は平均だと、そのとき出生児の数を示されましたね、藤原議員が、一・九二だと。それは平均ですよと、そういうお答えでしたでしょう。平均であって、第三子の子供のいる家庭が全くなくなるんじゃない、あると、そういうようなお話でしたね。私、それはもちろん、そちらで第三子の家庭がなくなるわけじゃないと、あるんだからそこに児童手当は支給できるんだというふうに言わんばかりの御答弁でしたけれども、それはあるということはそちらで御説明いただかなくてもわかっているわけですね。その存在する第三子以降の家庭というものは非常に少なくなっちゃうわけでしょう。そういう少ない家庭に児童手当でございますというふうに支給しているのはむしろナンセンスじゃないかと、少なくたってそこに支給していればそれはわが国の児童手当なんだというふうになるわけですね。しかし、児童手当の目的のところを見ますと所得保障ということと、もう一つ健全育成ということがうたわれているわけです。むしろ健全育成というほうに力をさらに入れていかなければならないと思うんですね。所得保障という点がだんだん充実してきたならば、将来の理想的な児童手当というものは健全育成という立場に立ってなされていかなければよい児童手当ではないと思うんです。まあ、そういう点から、私は厚生省の児童手当に対する姿勢というものが年じゅうゆれていると、あるときには保障制度の面から弁解をし、あるときには児童の健全育成で弁解をし、非常に御答弁のそのおっしゃっていることはごもっとものことですけれども、その心の奥底に何となく弱腰な児童手当制度を軽視している、そういうものがうかがわれるわけで、くどいようですけれども申し上げているわけです。その点いかがでしょう。
  216. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 初めに数字で申し上げますと、現在四十九年の十月で第三子以降の数が二百九十九万、約三百万でございます。五十年の十月で三百十四万になるわけでございます。この数が大体定着するのではないだろうかと想像されるわけでございます。先ほど来、いろいろとその場その場によって考え方が片方のことを申し上げているように受け取られるとすればはなはだ申しわけないわけでございますけれども、要するに、児童手当の趣旨がいわゆる児童を養育している家庭における生活の安定ということと、健全育成と、児童の福祉という両面を持って制度が発足しているわけでございますので、いま御指摘のように児童の健全育成、児童福祉というたてまえからいうならば、少しでも多くの児童が児童手当の恩典に浴するような仕組みは私どもも望ましいというように考えておるわけでございます。したがって、その限りにおいては所得制限ということもさらに検討すべき問題であろうと、したがいまして、そういったものを踏まえながら、また他の社会保障給付全体とのバランスということも考えながらこの制度改善、前進ということに取り組んでまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  217. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 ですから、将来の見通しは、第二子というのは非常に少なくなると、だから第二子、——いや、第二子ところじゃない、第一子をやるのが児童手当の本来の目的なんだということをこういう委員会のところで言うことを何かおそれているみたいな、うっかり言って、あとでそこを追及されたら困るというようなふうに、私、変な憶測かもしれませんけれども、とるわけですね。しかし、いいと思うんですね。そして、私たちがそれを実現しなさい実現しなさいと大いに言うことが結局児童手当を理想的なものに持っていく非常に私力強いやり方だと思うんです。そういう点で申し上げるわけです。  そこで、第三子から実施していると、しかも先ほど大臣は段階的でも第三子を完全実施したのはりっぱであるとか飛躍的であるとかおっしゃていますけれども、この第三子という問題も、第三子といっても全部じゃないんですね、これ。第三子でももらえない者が非常に多いわけです。だから、第三子なんといったって、私はいばって言える第三子じゃないと思うんですね。だから専門家は、第三子から実施というのでは全く児童手当というものはなきにひとしいものだと、そう言ってる人もあるわけです。そういう点で、先ほどの大臣の御答弁、また局長さんのお答えに私は熱意というものがもっとほしい。  どうしてこういうふうに申し上げるかというと、来年は完全実施が終わって、さらに飛躍的な発展をさせなければならないときにいまあるから申し上げるのであって、徹底した児童の完全育成のために第一子からやる必要があるということを強く申し上げて、もう一度大臣にお答えいただきたいと思います。
  218. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 非常に御熱心な御意見承りました。  私どもは、児童手当というものは西欧先進諸国に比べて日本は劣っているということは十分承知しているんです。しかし、なかなか一挙にそう理想的なものを——理想的というか、先進諸国並みのものをつくるということも困難だということから、御承知のようにいまのような段階実施という制度をやったわけでございますが、段階実施であっても曲がりなりにこれで十分にできたわけでございます。  そこで、やっぱり今後はこの制度内容充実に全力を尽くす、こういうわけでございます。私は不熱心でなんか全然ありません。大いに熱意を持ってこの内容改善に当たっていきたい、こういうわけでございますから、だいぶ御不満の表明ございましたが、私の心の中ではこの児童手当の内容の拡充、充実のためには全力を尽くす、こういう熱意に燃えておるわけでございますから、その点はそうおっしゃらぬで、ひとつ御理解をしていただきたいと思います。
  219. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 ひとつよろしくお願いいたします。  次に、児童扶養手当についてお伺いいたしますが、この間、障害のない子供は十五歳で打ち切られているわけですが、これはせめて十八歳まで引き上げていただきたいという御質問を申し上げましたときに、大臣は、そのようにしていく方向だと答弁されましたが、それはそのとおりに確認してよろしいのでしょうか。  また、八月には予算要求が行なわれると思いますが、その要求の中にこれは取り上げられるものであるかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  220. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 先日の御質問の際にお答え申し上げましたのは、児童扶養手当において障害を持っていない児童の場合には義務教育終了前まで児童扶養手当の対象となる、それ以後につきましては、制度のたてまえといたしまして、いわゆる義務教育を終了した児童の場合には家督能力が想定されるということで制度が発足して今日に至っている。それからもう一点は、母子福祉年金との、他の制度との関連もあることを申し上げたわけでございます。  なお、最近の状況といたしまして、必ずしも義務教育を終了した児童がそのまま就職をしないで、いわゆる高等学校に進学する率が高くなっておることも十分承知しております。そういった意味におきまして、この点については検討もし、また他の制度との関連もかね合わせながらわれわれの検討課題といたしたい、こういうように申し上げてお答えにいたしたいと思います。
  221. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 そこで、ぜひこれは御検討の上、取り上げていただきたい。  これは特別児童扶養手当と考え合わせてみても、特別児童扶養手当は非常にあたたかくこれは充実さしていこうという方向に厚生省がしていらっしゃるということはわかるわけです。また、もっともっとこれはあたたかくやっていただきたい手当でございますが、この特別児童扶養手当と比べると児童扶養手当は冷たいんじゃないかと、こう思うわけなんですね。そういう点でぜひこれは取り上げていただきたい。厚生省の方向がその方向検討という、言いわけの検討じゃなくて、ほんとうに検討してくださる検討というふうに解釈いたしまして、やはりこれは大蔵省との関係もあると思うわけです。それで、大蔵省としてこの厚生省の意向を受け入れて努力していただけるかどうか、この意思を一言お聞きしておきたいと思います。
  222. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) 児童扶養手当の問題につきましては、先ほど厚生省の翁局長から現在の制度の仕組みにつきまして考え方をお述べになったとおりでございますが、ただ、他の社会保障、特に拠出制年金と違いまして福祉年金との関連がございますし、福祉年金にいたしましても児童扶養手当にいたしましても、全額一般租税財源で従来はまかなっておるわけでございます。したがいまして、五十年度以降この種の問題をどういう角度で取り上げるかということは、大蔵省といたしましても事務的には年金全般のあり方等も含めまして勉強は続けておりますけれども、五十年度以降どういう具体的な姿になるかということにつきましては、種々の問題を含んでおると、現時点ではそれ以上のことはちょっと申し上げかねると思います。
  223. 柏原ヤス

    柏原ヤス君 ひとつよろしくお願いいたします。
  224. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは初めに、いま柏原先生、それから藤原先生がずいぶん御熱心に児童手当のことを質問しておられましたが、私も児童手当で一言だけ伺いたいんですが、それはお二方が質問をされたニュアンスとはずいぶん違っているんです。  といいますのは、児童手当は第一子から出すのが当然だとする意見がございますね。私もそれはそのとおりなんですけれども、現在の問題としては、最近の激しい物価高やインフレの中で、児童手当の目的の一つに生活の安定ということを先ほど局長は盛んにおっしゃられました。生活の安定ということが一つの目的であるならば、この激しいインフレの中では第一子から出すのが当然だと思うんです。これが私の考え方の一つです。これは皆さんと同じような考え方もあると思います。世界各国でも第一子から出しているのが相当の国、たくさんございますね。これで第一子から出すのが当然だと私も思うんです。  しかし、近い将来の問題として人類にとって今後の最大の問題は人口問題ですね。その人口問題の観点から考えるときには、子供はできるだけ二人までとして人口の制止を目ざしたいとしていますね。そうなってくれば第一子、第二子から手当を出して、もう第三子からは手当をはずすと、こういう方向検討すべきではないかと、むしろ私はそう考えるんです。ところがいま柏原先生がおっしゃったように、たくさん子どものいる家庭ではさっそくこれを適用することはこれはたいへん不適当です。だから、これいま言っている私の第二番目の考え方は、近い将来に何らかそういう手を打つ必要があるんではないか、そういう点で私は、これは私の私見も交えているわけですけれども、児童手当の問題はそういう点からも将来は考え直すべきときがきているんではないか、こう考えますが、どうですか。
  225. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) たいへんむずかしい御質問で率直にお答え申し上げることがはたしてできますかどうか疑問でございますけれども、まず第一点の生活の安定という趣旨からいくならばむしろ第一子からではないだろうかという点につきましては、これは確かにいま中沢委員の御指摘のような考え方もあろうかと思います。ただ、私ども児童手当については必ずしもそう考えておらないということを先ほど来申し上げておるわけでございまして、一般の給与所得者につきましては、御承知のとおり第一子は多額に、それから第二子以降に若干減らすというような、家族給付的な観点から申しますと、給与の面においてはそういう考え方がとられておることは御指摘のとおりでございます。ただ、児童手当の制度発足にあたりまして考えられました点は、確かに所得保障的な生活の安定ということもございますけれども、同時にいわゆる児童の健全育成ということも含めていろいろ議論があったように承知しております。その結果といたしまして、やはり一人より二人、二人より三人というように、児童を養育している家庭の生活の安定ということを考えるならば、三子からという一つの結論に到達したというように承知しておるわけでございます。ただ、この点につきましては今後二子あるいは一子拡大についての検討課題の中で、やはり御主張になったような御意見ももちろんあるわけでございまして、その点は今後われわれとしても事務的にもいろいろ詰めていきたいと思っておるところでございます。  第二点の第二子拡大についての基本的な御意見、確かに将来の人口構造ということを踏まえた上で、二人以上はまあ望ましくないという御意見もあるように承知しております。日本の場合には、わが国の場合には必ずしも人口政策云々ということではなくて、非常に知識水準が高い民族なもんですから、この人口の構造が結果的には三子より二子というぐあいに変わってきております。で、先ほどもお答え申し上げた中で、将来の人口構造が平均して二を割るという予想もできておる状況でございまして、そういった場合にむしろ人口政策的な意味を組み込んで二子あるいは一子という考え方もあり得るではないかと、確かに御意見そのとおりだと思います。ただ、現在の制度を将来かりに二子に拡大し、あるいは一子にまで及ぼした場合にどういうような基本的な考え方をとるかということは、私がいまここでお答えをするにはあまりにも大きな問題を含んでおります。ただ、大勢、趨勢として児童手当制度改善する場合に考えられるのは、まず二子から、その次にさらに一子からという段階的な考え方ではなかろうか。その場合に、日本の、あるいは世界の人口構造を踏まえた上でそれを二子とするか一子とするかということについては、まだ確とした基本的な姿勢というまでには至らないのではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  226. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 たいへんウーマンリブや何かから反論がありましてね、優生保護法というものがいま衆議院のほうで審議をされつつありますが、たいへんウーマンリブなんかはこれをいやがっておりますね。そして反対意見が非常に多いんですけれども、もしも参議院のほうにそれが回ってくるようなことになれば、私はいま言いました私の意見を交えて児童手当の問題にも触れていろいろお尋ねをしたいことがございます。しかし、それはいまやるべきときでありませんから、またいずれやるときがあると思いますが、児童手当の問題は柏原先生やあるいは藤原先生がずいぶん微に入り細にわたって御質問をしましたんで、ただ、将来の問題としてやっぱり人口の静止を考えたときにこの児童手当というものもその中に入れて当然考えるべきことでございますから、私はきょうは児童手当の問題についてはこの一点だけちょっと顔を出しておいたと、こういうことで児童手当の問題は質問を終わらせていただきます。  そこで、国民年金の問題に入る前に、私は過去二回実はAF2の問題について質問をいたしました。特に先ごろのこの委員会では食品衛生調査会の問題に触れて質問をいたしました。   〔委員長退席、理事須原昭二君着席〕 その後、数日前に食品衛生調査会のメンバーが任命されましたので、この機会をかりて国民年金の質問に先んじて、一、二御質問を申し上げたいと思います。  その第一は、今回任命された食品衛生調査会のメンバーを見ますときに七十歳をこえ、かつ十回前後も継続して任命されている委員が二名もございます。学問の進歩がたいへん著しい今日、しかもさまざまな食品行政に関する新しい問題が派生をしている今日、若手を任命するべきではないかと考えますが、厚生省はどのように考えられますか。
  227. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 食品衛生調査会の委員の選定につきましてはただいま先生指摘のような若返りを考えまして、十分考慮いたしまして今回その任命を行なったわけでございます。特に今回の任命にあたりましては、六十歳未満の人をできるだけ多くというようなことで、八割以上を六十歳未満の委員で占めるよう配慮した次第でございます。しかしながら、この委員の中には余人をもってかえがたいと申し上げましょうか、従来からいろいろな非常に学識経験を持ってわれわれに御意見をちょうだいしておられる先生もおるわけでございまして、その点、ただいま先生指摘のように七十歳をこえた委員が今回二名指名されたわけでございますが、一人はこれは御承知だと思いますが、従来から会長をお願いしている先生でございまして、今回もその会長の人選をめぐりましていろいろわれわれも若返りを考えたわけでございますが、現段階において会長を従来の先生にとりあえずお願いしておきたいということで七十歳以上の先生が任命されたわけでございます。
  228. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 AF2は昭和四十年に食品衛生調査会の下部機関である毒性部会及び添加物部会の合同部会で審議をされましたね。そして許可されたと聞いております。当時反対意見はなかったんですか。
  229. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) AF2の指定に関しましてはただいま先生指摘のような経過をたどって指定をいたしておるわけでございますが、   〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕 この四十年に調査会の結論が出まして指定するまでの間、昭和三十七年にこの審議を開始いたしておるわけでございますが、その審議の過程におきましては先生指摘のようにいろいろな意見が出されたわけでございまして、そういった御意見に基づきまして、また新たないろいろな資料等も要求いたしまして、この四カ年間にわたって慎重御審議を願ったわけでございまして、最終の段階におきましては、その毒性部会及び添加物部会の一致の御意見を得たわけでございます。
  230. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 この間も私はだいぶんきわどいところまで質問を申し上げたと思いますが、そのときにもう一つ突っ込みたいと思ったんですが、まだそのときは私の資料が十分ではございませんでしたし、こういう機会にあんまり資料が十分でもないのに突っ込み過ぎて、どっかに御迷惑をかけることも私はおもんばかりまして、一点差し控えた問題があるわけですが、きょうはその問題にも触れて質問をさしていただきたいと思います。  それはいまおっしゃったように、昭和四十七年の食品衛生法の一部改正によって食品衛生調査会は学識経験者のみをもって構成されるようになったようですね。ですから、その前にはもう少し違った人たちがこの食品衛生調査会のメンバーになっていたはずでございます。それはつまりAF2を審議した当時は、学識経験者と行政当局及び食品関係の営業者による構成であったわけですね。そこまで私わかっていたんですが、はたしてそれがAF2を審議したときに何らかおかしいことがあったんではないかという疑いは持っておりましたけれども、実はそれが十分証拠をつかみ得ませんでしたから、私はその質問を差し控えたわけでありますが、そのためにいま申し上げたようなそういう構成であったために、行政当局と企業との癒着があったのではないかと、そのときに実はたいへん私は疑問に思っておりましたが、時間が過ぎましたからきょうはその問題についてお答えをいただきたいと、このように思います。
  231. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) AF2の指定をめぐりまして審議を行ないました当時におきますこの食品衛生調査会の委員の構成は、ただいま先生指摘のように学識経験者のほかに行政機関の職員及び食品加工等に携わっている業界の代表者もこれに加わっておったわけでございまして、当時の編成を申し上げますと、行政機関の職員が二名これに加わっておるわけでございます。さらに、業界関係が六名これに加わっております。その内訳を申し上げますと、行政機関の職員といたしましては東京都の衛生局——これは地方の衛生部局を代表する人といたしまして東京都衛生局から一名、それと技術的な問題を御審議願うという立場から科学技術庁資源課の職員一名、この二名が行政機関の職員を代表いたしましてこの審議会に加わっております。  さらに、関係団体のほうを申し上げますと、乳機器協会専務理事、それと牛乳協会の代表、それから食品衛生協会の代表、それから添加物協会の会長、それから畜産振興事業団、——これは業界と申せるかどうか、半公的な機関でございますが、畜産振興事業団の代表、これがこの委員会の委員として加わっておりました。
  232. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そうすると、そこでいろいろ審議をした結果、それは一体だれが厚生大臣にお答えをするんでしょうか。報告をするんでしょうか。
  233. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 本来なら、これは食品衛生調査会の会長名をもって答えられるべき問題だと思いますが、当時の取り扱いはこの部会長、すなわちこの際は毒性部会長と添加物部会長の連名をもってこの答申がなされております。
  234. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それではいまの行政官ですね。二名の方を伺いましたが、ほんとうにここでは行政当局と企業との癒着はなかったと、こういうことをはっきり言ってよろしゅうございますね。
  235. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) われわれは当時そういった事実はなかったものと理解いたしております。
  236. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは、その次に、つい最近このAF2の問題がまた新聞紙上をにぎわしておりますが、農林省でおとうふ製造業者に対してAF2を使用しないように指導していることが報道されておりますが、このようなことは事実なのでしょうか。厚生省を飛び越えて農林省が先んじるのはおかしいと私は思いますけれども、一体どういうことなんですか。
  237. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) この問題につきまして、ただいま先生指摘のような点をわれわれも感じたものでございますので、農林省のほうに照会いたしましたところ、この問題につきましては地域食品の認証制度というものが農林省にあるわけでございます。これは農林物資規格法に基づいておるものでございまして、一般的には地域JASということばを使っておるようでございますが、この制度に基づきまして昨年七月二十三日と二十六日にこの農林省のほうで委員会を開きまして検討いたし、昨年の八月にとうふについての認証基準の準則を作成いたしたわけでございまして、これを各県に通知いたしまして、現在山形、新潟、静岡の三県におきましてこの制度が運営されているやに聞いておるところでございますが、このとうふについて申し上げますと、この三県におきまして当日売りのとうふに限りましてAF2の使用をとめていると、かように聞いておるわけでございまして、農林省のほうでの御意見を本日も聞いたわけでございますが、一般的な立場に立っていえばAF2のとうふへの使用ということは現段階においてはまだ必要であると、かような返答を得ておるわけでございますが、やはりこういったものはできるだけ使わないという立場が必要でございまして、当日売りのとうふにつきましては必ずしもこういった防腐剤が必要と認められませんので、われわれといたしましてもそういった使わぬで済むものはできるだけ使わないような方向で今後も行政を進めてまいりたいと思っております。
  238. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いま、はからずも地域JASという問題が出てまいりましたけれども、このJASマークをつけるのに農林省がこれを扱うということに対して非常に私どもは反対をしたんです。当時ですね、おそらくここにいらっしゃる田中寿美子委員もこの問題に対してはあくまでも抵抗をしておられたことを私はよく承知をいたしております。  いまになって、——いまになってというよりも、カネミオイルのとき、カネミ事件ですね、あのとき以来、やっぱりこのJASを厚生省が所管をしなかった。これは農林省が取り上げた。こういうところの問題がこういうふうないろいろな形になってあらわれてきている。これはやっぱりいま考えますと、ほんとうにこれは残念だったと思います。当時ですね、このJASを農林省が自分のものにするかしないかで、経済企画庁とそれから公取と、もう三つか四つかが一緒になってどろ仕合いをしたことをまた思い出します。あの当時、田中委員は本会議で可決をするときに退場をされました。私はそれをじいっと見ておったわけですけれども、私どもは激しくこれに抵抗しながら、結局は農林省がこれを取ったということが、まだ尾を引いてこんなところにもあらわれてくる。たいへんこれは問題だと思います。しかし、いまその問題を論ずるときではありませんから、またいずれその問題は何かの機会でやりたいと思います。  そこで第二番目に今度消費者代表とこれはいまマスコミにたいへん乗っておりますが竹内直一さんという消費者連盟の会長、その消費者代表と高橋暁正講師が政務次官にAF2の使用中止を申し入れた際、これもたぶん五月の十七日か何かだったと思いますが、環境衛生局長が高橋講師が指摘した宮地教授の論文の誤りについてそれを認めるがごとき発言をしたということが報道されておりますが、これは事実なんですか。
  239. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま先生の御指摘になりました五月十六日に消費者代表と高橋講師が参りまして、政務次官に陳情をいたしたわけでございますが、その際私の発言のごく一部が新聞に出まして、そういった印象を与えたことを非常に残念に思っておるわけでございますが、高橋講師の指摘した点はこの数字上の問題でございまして、この宮地論文の数字の問題について私のほうの意見をただしたのに対し、計算上の間違いはないというふうに、この高橋講師の計算に間違いがないということを申し上げただけでございまして、宮地論文そのものの毒性いかんという判断につきましては、これは数字の問題として論議すべき問題ではなく、病理学的な問題としてこれを論議すべきものであるというふうに申したわけでございますが、その数字の計算に誤りがないということがそういうふうに伝わったわけでございまして、非常に残念に思っておる次第でございます。
  240. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう一点だけ伺っておきますが、去る五月十六日の食品衛生学会で国立予防衛生研究所の食品衛生部よりガン細胞の一種であるヒーラー細胞ですね、これを用いてAF2が肝臓ホモジェネートに接触させた場合、毒性が増加すると発表して、当日の学会出席者から実験方法、特に使用した細胞について疑問であるとの質問があったと聞いておりますが、この点について厚生省はどう考えておりますか。
  241. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま先生指摘の食品衛生学会に発表されました国立予防衛生研究所の実験結果につきましては、この問題、データ等を取り寄せましてなお詳しく調べると同時に、食品衛生調査会に御験討を願う予定にいたしておりますので、この内容についての批判はただいまの段階では避けたいと思いますが、事実関係だけを述べさせていただきますと、先生ただいま御指摘のように、実験そのものに使いましたヒーラー細胞というものがはたしてこういつた判断をする実験に適当な細胞であるかどうかというような疑問、それと同時にもう一つは、肝蔵ホモジェネートを作用させたという場合に、その実験のコントロールといたしましてその肝臓ホモジェネートの細胞に対する影響が調べてないという、そういったことがこの学会の討論の場において問題になったことは事実でございまして、そういった点今後さらに検討してまいりたいと思っております。
  242. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いずれにしても最近ずいぶん大きな問題になってきておりますから、この安全性については早急に再調査をして、新しい今度できた調査会で十分審議をしていただくように、そして安全性の結果が出るまでは使用を中止してはどうかと思いますが、いま委員長のほうから、これはきょうの議題ではないからできるだけきょうの議題について質問するようにと、こういう御注意があったんです。ところが、これはこの前の私の質問で、食品衛生調査会のメンバーが三カ月もきまっていないということを申し上げておって、それに対してはあなたも、そして厚生大臣も、これは私の責任でございますと、こういう御発言があったものですから、調査会のメンバーがきまった時点でちょうどタイミングがいいからと思って、きょうの時間をいささかさいてこの問題を質問をさせていただいたわけですけれども、とにかく、毎日のようにAF2のことが新聞に出ておりますし、国民の健康を守る役所でございますから、その点は十分手抜かりなくやっていただきたい。特に厚生大臣はその当時、これはあくまでも私の責任ですと、こう言っておられましたので、新しいメンバーがきまられた時点においてひとつ厚生大臣のお考えをいただきたいと思います。
  243. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これはこの前もお答え申し上げたと思いますが、食品衛生調査会の委員の人選も全部済みまして、ここで発足するわけでございます。そこで、宮地論文とこれに対する反対のいろいろな意見が出ておりますかち、それを調査会のテーブルの上にのせまして化学的に十分検討をしていただく、なるべく早く結論を出していただくようにお願いをいたしたい、そしてお願いも現にいたしておるわけでございます。その決着を待って必要な措置を講ずる、こういうことになるわけでございます。
  244. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは、本題の国民年金の質問をさせていただきますが、私ちょっとちろちろ出ておりましたので、質問をされたのと重複しているかもしれませんが、簡単に御質問したいと思います。  来年度年金の再計算を繰り上げ実施すべきであると思いますが、その意思がありますか。それはことしの春闘で大幅賃上げがあったり、激しいインフレのさなかでございますから、これは当然繰り上げ実施をすべきだと思いますが、いかがですか。
  245. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 年金の財政再計算期につきましては、御承知のように、法律では少なくとも五年ごとにこれを行なうと、こうなっております。ただ、実際問題といたしまして、昨年法律改正をお願いいたしました際には、厚生年金については一年繰り上げまして四年、それから国民年金につきましては二年繰り上げまして三年でいたしておるわけでございます。したがって、いまの時点で来年どうするこうするという問題は非常にお答えしづらいわけでございますが、これから先の物価上昇でございますとかいろいろな客観的な情勢を総合勘案いたしまして、五年というこの財政再計算の期間の長さというものはしかるべく短縮さるべきものとは思いますけれども、具体的に来年やるかどうかという点については、おそらくなかなかむずかしい問題だろうと思います。と申しますのは、財政再計算をいたします際には、多少専門的なことを申しますと、たとえば死亡率の問題でございますとか、年金本来のいろいろな基礎計数を十分に検討いたしまして再計算をいたすわけでございます。で、物価賃金も再計算の際の一つの要素ではございますけれども、いざいたすとなりますと、大体、本格的に再計算の作業に着手いたしましてから少なくともまるまる一年くらいはありませんとなかなか計算の結果が出づらいということがございますので、おそらく来年これをいたすということは困難だろうとは思いますが、客観情勢の推移によりまして五年という期間をしかるべく短縮することはあるいはあり得ることかと思います。
  246. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 物価スライドだけでは年金生活者の実質価値を維持することができない。そこで恩給や共済年金では、実質的に賃金スライド制を導入しておりますね。厚生年金国民年金でも賃金スライド制実施すべきではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  247. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 厚生年金国民年金で採用をいたしました物価スライドはいわゆる自動物価スライドでございます。当該年度の消費者物価指数が五%をこえて上がりました場合には上がった分だけその年度年金額に反映をさせる。したがって、諸外国におけるスライドのやり方等も比べました際に、消費者物価の上がりぐあいを具体的に年金額に反映させる。その反映のさせ方としては、いわゆるタイムラグというのは非常に短い部類に入っております。で、問題は自動スライドをやります際にそういったことでできるだけタイムラグを短くして物価上昇率を使うということでございまして、自動物価スライドは毎年やるんですけれども、何年かに一回、つまり再計算の時期においては、いろいろ賃金の問題でございますとか、あるいは所得水準の問題でございますとか、いろいろなことを総合勘案してスライドをいたすわけでございます。ですから、年金につきまして物価スライドだけでは不十分であるということではございませんで、毎年実施いたします自動スライドで使う指標は物価で、相当賃金上昇等によって年金生活者の実質的な生活水準がめり込みを生ずるというような場合には、当然先ほどの御質問にもございましたように、再計算の時期にいろいろな角度から総合勘案いたしましてこの年金生活者の生活水準をあるべき水準まで回復させるということをやるわけでございますので、あくまでも物価スライドというものは自動スライドの指標として物価であるというふうな点も御理解いただきたいと思います。
  248. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 現在、福祉年金同士、つまり、老齢福祉年金とか障害福祉年金の併給は認められておりませんね。そのためにいろいろの問題が生じております。そうして、それが裁判にまでなっておりますね。たとえば堀木裁判とか、あるいは老齢福祉年金と恩給の併給の問題とか、あるいはまた昭和四十四年ごろの牧野訴訟とか、いろいろなこういったような問題が生じておりますが、政府は先手を打ってこの併給を認める意思はございませんか、どうですか。
  249. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) いま御指摘の問題はいろいろな種類がございますようです。まず、福祉年金同士の併給の問題、それから福祉年金と他の手当との併給の問題、それから福祉年金と他の公的年金との併給の問題、大まかに言いますと、この三つの問題があるわけでございます。  まず、その中で一番むずかしい問題と申しますのは、この年金同士の併給の問題でございます。たとえば老齢福祉年金障害福祉年金でございますが、先ほども御質問ございましたように、一級障害につきましては老齢福祉年金の一・五倍、こういうふうなことになっておりますが、それは、つまり、ただ単なる老齢者よりも障害者のほうが、何と申しますか、所得能力の喪失の度合いが大きいというようなことでそのような格差をつけておるわけでございます。したがって、一つの支給事由によって失われる所得能力というものと、二つのものによって失われる所得能力というものが、必ずしも後者が前者の二倍であるということではなくて、その辺の格差のつけ方として一・五倍にいたしておるわけでございますから、年金同士の併給の問題というのはなかなか制度のつくり方としてはむずかしい問題だろうと思うわけです。それで、年金と手当の問題につきましては、先ほど例を引かれました訴訟の問題にも関連をいたしますが、これは昨年の法律改正の際に片がついております。  それから第三番目の公的年金との併給の問題でございますが、けさほどもお答え申し上げましたように、福祉年金性格づけと申しますものがやはり基本になっておりまして、現行の福祉年金は御承知のように何らの公的年金制度の適用も受けておらない方に対する年金制度としてこの制度が仕組んでございます。したがいまして、金額の高い低いの問題は実際問題としてございますけれども、何らかの公的年金給付を受けておられる方に対しては福祉年金という制度そのものが働かないようなしかけになっておるわけでございます。ただ、そうは申しましても、戦争公務の扶助料を受けておられる方とか、それから非常に短期間の恩給年限しか持たれない方の受けられる年金が相当に低いとか、特に戦争公務の場合には戦争公務の扶助料の性格問題もからみまして、まあ並みの公的年金というふうに割り切ってしまうこともいかがかというようなことで、戦争公務についてと、それから非常に短期間で低い普通恩給扶助料を受けておられる方についてだけは、例外をある程度認めても福祉年金制度自体の性格に相反することはないというふうなことで、二つだけ福祉年金性格を変えない範囲内で支給し得る年金というふうに、こう扱っておるわけでございます。ただ、御指摘のような問題を本格的に解決いたします際には福祉年金制度自体をつくりました際の議論にもからむわけでございますが、いっそのこと国民全体に対する基礎年金として福祉年金性格づけてしまえば、いま御指摘のような問題の解決も非常に楽になるわけでございます。それで、そんな点も含めまして、国民年金審議会では福祉年金のあり方、その性格論というものをいろいろ御論議いただいておりますので、あるいは場合によっては福祉年金のあり方、性格論というものを現行の性格から相当大幅に変更をするということもあり得ることだと思います。で、それらの基本的な問題ともからめまして十分御趣旨を生かすように今後の制度論の検討をいたしてまいりたいと思います。
  250. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは次に、今度女性と年金の立場から二、三お伺いをして私の質問を終わりますけれども、まず第一点は、遺族年金は夫をなくした妻の生活をささえるものですね。それにもかかわらず、現在老齢年金の五〇%にとどまっていますね。これは諸外国に比べてきわめて低水準であります。早急に八〇%程度まで引き上げるべきではないかと思いますが、それはどうですか。
  251. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 遺族年金支給割合が老齢退職年金の二分の一であると、この点だけをとらえてみますと、私ども先生と同じように低過ぎるということでございます。そう考えております。ただ問題はこの制度の仕組み方でございますが、当初の二分の一にいたしましたのは、恩給法の例にならいまして、それからあとつくりました制度はすべて二分の一になっておると、こういうことなんであります。で、ただ諸外国の例等を見ましても、二分の一という例はほとんどございません。ただ問題は、わが国年金制度の場合には、御承知のように非常に若い未亡人の場合でも夫が半年厚生年金の被保険者期間を持っておれば、非常に若い未亡人の場合でもすぐさま遺族年金がつくというふうなことになっております。諸外国では遺族年金受給資格といたしまして、妻に高齢であることという一つの給付資格と申しますか、を仕組んでおりましたり、あるいは子供のあるなしということで受給資格の有無を云々するようなしかけになっておるとか、そういったいろいろのからみ合いを考えますと、この二分の一という給付水準が低いからいま直ちにその部分だけを引き上げるということになるかどうか多少の疑問はございます。  それからもう一つは、国民年金に対する加入の問題でございますが、サラリーマンの妻につきましては、夫の厚生年金から発生してまいります遺族年金と、それから任意加入国民年金に入れますので、そちらのほうから御自分がお入りになっておられた結果支給を受けられる年金と重なるようになっておりますので、まあ、そういった観点から考えました場合に、ただ単にこの二分の一を引き上げるべきかどうかという点については多少の疑念はございますけれども、しかし、基本的に遺族年金の二分の一という支給割合は低過ぎるという認識を持っておりますので、ただいまいろいろ申し上げましたいろいろな問題とのからみも十分にこなしながら支給率引き上げというものは早急に実現すべき方向で私ども検討してまいりたいと思います。
  252. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 ぜひそれは検討してみてくださいね。  それでは第二点、これも須原委員が質問されたかもしれませんが、通算年金、この通算年金老齢年金だけに限定されておりますが、このために夫が通算年金であった場合は遺族年金が受けられませんね。そういったような受けられない妻がたくさんいるわけです。したがって通算年金でも遺族年金等を給付すべきではないかと思いますが、その点はどう考えられますか。
  253. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 方向といたしましては私ども先生の御意見と一緒でございます。ただ問題は、年金通算の問題につきましては、八つ制度にわたりましていろいろな問題がございます。遺族範囲の問題でございますとか、そのほかの受給資格要件がそれぞれの制度で変わっておりますので、なかなか現在のじゅずつなぎ式の方式の通算というものがすぐに適用できるかどうか、これは年金制度技術上のいろいろな問題もからんでまいるわけでございますが、方向といたしましては、御指摘の問題は先生の御意見のような方向解決すべきものと考えております。
  254. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 では最後に、厚生年金では妻の給付額が二千四百円の加給金ですね。これも昨年の改正で千円からやっと二千四百円に上がったわけですけれども、この算出基礎は何ですか。今後どのような基準で引き上げていく方針でございますか、その点を伺いたいと思います。
  255. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 妻の加給のきめ方でございますが、実は従来から国家公務員の扶養手当の額、そういうものを勘案いたしましてきめております。したがって、この加給金の額自体については非常に金額が少ないではないかという御指摘だろうと思いますが、従来から国家公務員の扶養手当の額が上がりました場合にはそれにつれてこれを上げるというふうなやり方をしておりますので、まあ、いまのところ加給年金の額についてはそういうやり方を変えるつもりはございません。
  256. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 これは変えてもらいたいんです、変えるつもりはございませんとおっしゃってもですね。奥さんの給付額がたった二千四百円、あんまり奥さんの地位が低過ぎると思います。  それから、いままで三つの点についても伺いましたけれども、どうも残った妻、奥さん、こういった者に対する年金がどうも低過ぎる。ですから、この点はもう一ぺん私は考え直してほしいと思います。まあ去年が千円だったのが二千四百円ということですけれどもね。家族手当でもそうですね。普通の会社の家族手当でもあまり、最近は男女同権と言いながら妻の地位が低過ぎる、こういうことを思いますので、ひとついま御質問申し上げた三点についても、十分これから検討をしていただきたいと、このように要望をして、私の質問を終わります。
  257. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、たいへん限られた時間でございますので、最初に年金からお伺いをしたいと思います。  昨年の国会は、年金国会といわれるほど、年金制度改善について国民がたいへん大きな関心を示しました。ことしの春も、たいへん激しい狂乱物価、インフレに苦しむ多くの労働者や、あるいはお年寄り、母子世帯、年金生活者なとがインフレに対応した年金水準改善をしてほしいと、生活のできる年金にしてほしいという要求を強く打ち出してまいっております。これはまあ当然のことでございます。衆議院では、すでにスライド実施月を、厚生年金については三カ月、国民年金については四カ月、四十九年度は特例的に早めることが決定をされたようです。物価が現状から下がることは、先ほどの大臣お話しにもありましたけれども、実際上は考えられないと。そういたしますと、国民全体がインフレの犠牲を受けるわけになりますが、年金受給者も当然その被害をもろに受けることになります。したがって、実質年金水準の低下を防ぐために、これはどうしても大臣の御努力というのは要請されるというのが、先ほどからの審議の過程でも、各委員からいろいろな角度で言われているわけです。今後、年金水準の低下を防ぎ、年金制度改善を進めていく基本的な立場、どういうふうに進められるのかという点について、簡単にお伺いをしておきたいと思います。
  258. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 年金水準のあり方につきましては、昨年おきめいただきました法律で、十分にその趣旨がはっきりいたしておると思っております。で、簡単に申し上げますと、現役の勤労者のボーナス抜きの給与水準のおおむね六割、それを年金水準考えるということでございます。で、そういった、一たびきめましたその年金水準というものが、実質的に価値が低下することのないように、それで、毎年消費者物価指数が五%をこえて上昇いたしました場合には、こえた分を基準といたしまして、年金額を自動的にスライドアップしていく。それからいろいろ賃金上昇でございますとか、あるいは生活水準上昇でございますとか、そういった客観的な経済、社会の諸情勢の変動がございました場合には、少なくとも五年に一回は、昨年実施いたしましたと同じような、いわゆる政策改定を行なっていくと、こういうことでございます。
  259. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そういう基本的な方針というもの上に立ってですが、御承知のように昨年来、二波、三波にわたる狂乱物価の大波、これにさらされておる、こういう激しい狂乱物価とインフレの中では、年金積み立て金の減価、これはもうたいへん激しいことは当然でございます。四十八年度物価上昇率が二八・一%だといわれている。運用利息は、けさの論議でも言われておりましたように、七・五%、その差が八・六%というふうに、積み立て金の減価というのは、どんどん下がっていっいる。四十九年度も、物価上昇というのは当然続きますし、また、公共料金の引き上げ等が迫っております。そういうふうになってまいりますと、年金受給者は、スライドの適用まで、毎年あと追いの改正で、実質水準はますます低下するという結果にならざるを得ないと思います。これらを防ぐ方法というのは、どういうふうに考えていくか、ここがきわめて重要だと思うわけでございますけれども、この激しい水準低下を防ぐことのできる方法を、政府としてはどういうふうに考えておりますか。
  260. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 水準の低下の問題でございますが、先生指摘水準の低下の問題は、二つあるわけでございます。一つは、年金水準の低下の問題、もう一つは、年金の将来の支払い財源でございます積み立て金の相対的な価値の目減りの問題、この二つだろうと思います。  それで前者の水準の低下の問題に対しましては、先ほど来申し上げておりますように、消費者物価指数の上がりぐあいを年金水準に反映をさせる、こういうことでございます。それで年金財政の面から申しますと、実はこの消費者物価が非常に上がってまいりました場合には、年金財政上は非常に大きな打撃を受けます。しかし、個人個人の受給者の方にとりましては、消費者物価指数が上がった分だけスライドアップいたしますから、その意味での目減りはないわけでございます。ただ、やり方があと追いであるという御意見でございますが、これは年金制度の運用といたしましては、どんな知恵を出しましても、こういったあと追いの方法以外にはございません。それで、ただ問題は、あと追いをいたします際に、できるだけタイムラグを縮めるというふうなくふうはいたしますが、しかし、やり方として、あと追い以外の方法は、世界各国どこでもあり得ないわけでございます。  それから第二番目の積み立て金の目減りの問題でございますが、積み立て金の利息は、御承知かと思いますが、大体その時期においての金利水準というものにリンクいたしております。したがって、ことしの二月からは七・五%ということで、まあ、いろいろ預託金の利率は差があるわけでございますが、年金の積み立てにつきましては、預託金の金利の中では、最高の七・五%というものの適用をすべて受けるような、そういった考え方にいたしております。  それで問題は、金利水準と消費者物価の上がりぐあい、その格差の問題ということになると思いますが、これは国の財政運営、経済運営全般の問題でございまして、一年金制度の積み立て金の利息をどうするこうするという問題とは、また、異なった問題があろうかと思います。それで、ただ、積み立て金は御指摘のように、これは将来の大事な給付財源でございますから、これが相対的に目減りすることは、たとえ短期間であっても、年金制度を運用する側といたしましては、非常に遺憾なことだと思っております。しかし、できるだけ現行の制度の中で目減りを防ぐような努力を従来もいたしておりますし、今後もいたしてまいりたいと、かように考えております。
  261. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いまも御説明がありましたね、財政再計算期、これは三年−五年というふうに、三年−四年というふうにいわれているわけですけれどもね、通常の情勢ではないわけですね、おそらくこんな激しい狂乱的な物価上昇、あるいは激しいインフレというふうな、こう異常な事態の中で、諸外国の例の中でも、あと追いしか方法がないんだというふうに言われましても、いまの日本の置かれている情勢のもとで、あと追い行政になることが、直ちに政治問題化するというほどのひどさなんですね。こういった点を解決していくめどというものを、やはり当然考えなければならないのではないかというふうに思うわけです。そういう点で、政策スライド、政策改定というふうなものを、あらかじめ設定をしておいて適用するというふうな、制度上の改善を含めて、当面、この異常な事態の中での解決をして、激しい水準低下を防ぐというふうなやり方、こういう点については、御検討のお考えがあるかどうか、これについてお伺いをしておきたいと思います。
  262. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 年金の実質価値の維持の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、まず、毎年物価指数を基準にいたしまして自動スライドをする、これが一つでございます。  それからもう一つは、相当賃金水準なり、あるいは生活水準の向上というものがありました場合には、そういったことも重要な判断の要素の一つといたしまして、総合勘案して政策スライドをする、こういうことでございます  それで政策スライドのやり方は一体具体的にどうやるかという点でございますが、これは政策スライドをやるその時期におきましてのいろいろな状況によりまして政策スライドの内容は異なってしかるべきものだと思います。それで前回改正の際の政策スライドは、御承知のように、過去の標準報酬が低過ぎたことによって年金額が不当に安いという点を是正することに重点を置いて、いわゆる従前所得の再評価というふうな手法をとったわけでございます。これはあの時点における政策スライドのやり方として最も適正なものという観点からあの手法をとったわけでございます。それで、今後の政策スライドのやり方といたしましていかなる手法を選択するかということは、その政策スライドをやるときめましたその時点におけるもろもろの条件の総合勘案の上できめるべきものだと思っておりますので、政策スライドをあわせ行なうことによりまして年金の価値の下落というものを防止するという基本政策ははっきりいたしておりますが、どのようなやり方の政策スライドをやるかという点につきましては、十分検討をしその時期において適正な手段、方法を選択すべきものだと考えております。
  263. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これであんまり時間をとりたくないんですけれども年金受給者からいたしますと、結局、たとえば老齢年金の場合ですと、死後の保障というようなものを要求してないわけですよ。現状が生活できる年金を要求しておるという点がやはり中心になるので、政策改定というふうな、政策スライドをやるというふうなことであるというならば、現状の情勢から見れば、先ほど中沢委員も御質問の中で言っておられたけれども、たとえばそれじゃあ来年は見直すとか、いっそういうことをやるのかということになってくるわけですね。で、来年はやるかもしれませんと、これはどうなるかわかりませんというふうなお話であったけれども、そういった点が、たいへんいま年金問題が国民の重大な関心の的になっておる点がそこだと思うんです。その点について、それではそういった政策改定、政策スライドというのを来年見直しをおやりになるかどうか、これをあわせてお聞きをしておきたいと思う。
  264. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) これはこれから先のいろいろな社会経済情勢変動がどうなるかということに一にかかってくる問題だと思いますので、いまの時点でいつ政策改定をやるということは申し上げられないと思います。それで、ただ、先ほど中沢委員の御質問の際にもお答え申し上げましたように、財政再計算と申しますものはやるとなればすぐにもやれるというものではないのでございます。いろいろ将来にわたっての長期の見通しに立ちまして、死亡率の訂正の問題でございますとか、いろいろ年金制度技術上の問題がありますので、通常常識で申しますと、再計算の作業に取りかかってから純粋に事務的な作業の結論が出ますまでまるまる一年はどうしてもかかるということがございます。それで、したがって、これから先の経済社会情勢の変動を見ながら再計算ということになりますと、いま申し上げましたようなことから御判断いただきますと、来年度これを実施するということは私どもは非常に困難ではないかと思います。ただしかし、それは社会経済情勢変動がやはりおもな判断の要素になりますから、それによってきめらるべき問題でありますが、いまここで来年やるかどうかという問題につきましての率直なお答えといたしましては、来年実施することはきわめて困難であろうということだろうと思います。
  265. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 この点については、これはもっとお尋ねしたいんですけれども、限られた時間の中ですので具体的な問題についてお伺いをしていきたい。  その点は障害年金にしぼってひとつお伺いをしたいわけです。  まず、最初にお伺いをしたいと思いますのは、国民年金昭和三十六年四月から発足をいたしましたけれども国民年金給付内容老齢年金障害年金、母子年金、準母子年金、この四つなんですね。その場合に加入と掛け金、それから年金支給額、そういったものは、こういった点の予算というのは、四つの年金が全部含まれて、要件によっては給付することが前提になってつくられているというふうに考えていいわけですか。
  266. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 給付と保険料率の関係でございますが、たとえば医療保険などのように単年度で収支のバランスをとるような制度につきましては非常に簡単でございます。それで、国民年金のように本来的な年金は二十五年、それから短期年金につきましても十年年金、五年年金というふうなものにつきましては、保険料率の計算が非常にむずかしい。この計算のやり方といたしましては、平準保険料率の計算方式というものをとっておりまして、平準保険料率が幾らであるか、それをきめます。ただ、先ほど小平委員の御質問にもお答えいたしました際に申し上げましたが、当初から平準保険料率をまるまる徴収するということについての非常なむずかしさがございます。特に国民年金は申すまでもないことでございますが、農家、自営業者、そういった方の年金でございますので、端的に申しますと所得水準につきましても非常に高い方から非常に低い方まであります。それで、国民年金でございますので、どなたでも無理なく入っていただくということが前提になりますので、厚生年金以上に平準保険料率を当初から徴収することは非常に困難だという面がございます。したがって、当初はできるだけ実行可能な、どなたでも納めていただけるような保険料額に、国民年金でございますから、保険料額にしておきまして、それで平準保険料率よりは低い部分は何年かの間にそれを回復するような、そういったなだらかな保険料額の引き上げ計画というものを立てるわけでございます。したがいまして、たとえば五年年金が二千五百円から八千円になったから、したがって、保険料の面についても同じように三・三倍にするとか、そういう単純なやり方ではなくて、あくまでも平準保険料率の計算という非常に技術的に困難な手法を用いまして、給付とそれから保険料との長期にわたってのバランスをとるような財政設計をいたしております。
  267. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いまのお話で、国民年金であるから強制加入ですね、保険料はいろいろな条件があっても一律に同額だということになっているわけですが、加入者は先ほど申し上げた四つの年金受給資格が得られるということが前提になっているわけですね。そこで、ちょっと前提としてお伺いしたいなと思いますのは、国民年金事業開始時の昭和三十六年四月一日、この制度が開始した以後は、そういう段取りからいきますと二十歳以上の人は全員加入をしておると、特別の方以外はね。というふうに見なければならないわけですね。加入をしておるという、まあ強制加入だから年金を掛けておるという人たちから見れば、先ほど申し上げた四つの年金は全部受給資格があるというふうに見なければならないんじゃないかと思いますけれども国民はそう思って入っておるわけだけれども、そういうことなんですね。
  268. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 拠出制年金でございますから、それぞれの年金につきましてはそれぞれの年金の受給要件というのがございます。したがって、法律で定めております受給要件に適合する限りにおいては年金の受給権が発生すると、こういうことでございます。それぞれの年金によって受給要件が異なっております。
  269. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 たとえばこういう例はどうですか。これは具体例なんですがね、三十歳の女の人です。石橋みつ子さんという方です。これは心臓弁膜症、リューマチ熱による心臓弁膜症です。で、障害等級が一級に該当する方です。昭和四十八年の十二月二十三日に障害年金の申請をした。この人は二十歳から十年間国民年金を掛けておりますから、当然障害年金を受けられると考えられるわけですが、御見解どうですか。十年掛けているんですよ。
  270. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) いまの御質問につきましては、国民年金制度上から申し上げますと、心臓弁膜症の病気の発病された時期が問題になるかと思います。心臓弁膜症が国民年金の被保険者になられる以前から病気をお持ちであるという場合に、該当をしないというケースが出てまいるかと思います。
  271. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 実情はどうかといいますと、昨年の十二月二十三日に障害年金の受給を申請した。ところがことしの三月末に加入前の発病だということで障害年金には該当しない、障害福祉年金を申請せよというふうに県から指導されているわけです。それは何かというと、この人は二十から、現在三十歳ですから十年間国民年金の掛け金掛けているわけですね。ところが発病が、リューマチ熱の初診というのが十五歳のときだった。だから国民年金に加入資格を持つ五年前に発病したということが初診日だったということで障害年金は該当しませんということになっているわけです。そうなるとどういう結果になるかといいますと、障害年金一級だったら今度二万五千円になるんですね、二万五千円。障害福祉年金に申請をしなさいと言われて障害福祉年金をもらったら七千五百円なんですね。そうすると、これは十年間の掛け金というのはどないなりますか、掛け捨てですか。その点はどうです。
  272. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 先ほど年金部長からお答え申し上げましたように、拠出制年金は被保険者期間内に障害が発生をしたと、そういう障害対象にしておるわけでございます。したがって、国民年金加入前に障害の発生した方については、拠出制年金はその給付対象にはしておらない。そういった方を救うために障害福祉年金制度というのがあるわけです。そこで問題は、そういった方がこれからあと保険料を掛けられることのメリットいかんという問題だろうと思いますが、御承知のように老齢年金につきましては、二十五年加入しておられますと当然老齢年金の受給権が発生するわけでございますし、それからまた、これからあとの被保険者期間内において何らかの障害が不幸にして起こったという場合には、その事故に対しては当然障害年金給付というものが考えられるわけでございますので、制度加入前の障害についての障害年金給付がないから、したがって、今後保険料を掛けることは全く掛け捨てであるということではないと思います。
  273. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 国民年金を掛けておれば四つの受給資格があると思って入っているわけですよ。これは強制加入だからいやだといっても入らないかぬのだけれども、入っている以上はそうだというふうに思っているわけですね。障害認定、廃疾認定をされた時期の疾病がその加入前か後かというようなことは、それはもう厳密に調べなかったらわからないわけですね、本人にしたら、実際は。当然もらえるものと思って十年掛け金をしておったけれども、本来なら障害年金で二万五千円もらえる人が七千五百円しかもらえない、そういう事態というのはこれは特殊例じゃないんで、たまたま私具体例を出したんで、たとえば結核の場合でも、じん臓疾患の場合でも、心臓病でもあるいはじん炎、ネフローゼ関係を含むじん臓疾患の場合でも、あるいは再生不良性の貧血症の場合でも難病の方々ですとこれはずいぶんたくさんあるんじゃないかと思うのです。結核患者には私どもが知っておるのはたくさんいます。といいますのは、年金制度というのが三十六年四月に発足をしておるわけですから、それ以前に発病した患者さんで現在廃疾認定を受けてもこれは障害福祉年金しかもらえない、そうしたら制度発足以後今日までの掛け金というのは全く掛け捨てになるじゃないかと、これは当然その方々は言っておりますよ。これは当然だと思う。局長がおっしゃったように、十年掛けておれば十年年金ということで老齢年金は受けられるから掛け捨てにはなりませんとおっしゃるけどね。こういう人たち老齢年金もらうまで生きられる人のほうが少ないと思う。そうしたら完全に掛け捨てになるというふうに思うわけですけれども、こういう点はこの加入前障害の、特にいま内部障害にそういった点が多かろうと思うのですけれども、内部障害中心にして加入前の障害について解決をするというふうなお考えはないですか。
  274. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 承りますといろいろ気の毒なケースもあるわけでございますが、ただいま御指摘のような問題を年金制度のワク内で解決をするということは困難だろうと思います。それから掛け金を掛けることのメリット云々につきましても、ぜひひとつ先ほどお答え申しましたような趣旨で御理解をいただくように御説得をいただきたいと思います。
  275. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、それじゃね、加入後に障害が起こって廃疾認定を受ける場合にはどれだけ掛け金をしておれば資格はあるんですか。
  276. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 国民年金の場合は被保険者期間が一年でございます。
  277. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 だから非常にアンバランスだと思うのですよね。加入前に発病しておるという場合には十年掛けておっても十五年掛けておってもこれは加入前障害だということで二万五千円もらえるやつが七千五百円になると、ところが加入後一年掛け金をしておれば加入後の障害の場合には障害年金がまるまるもらえるという制度になっている。これはやはり非常に御理解をいただきたいと言ったって私も理解しにくいけれども、掛け金をしている国民が理解しにくいですよ。だからそういう点では特にもう一つの障害が出てきますのは、障害福祉年金——それを救うために障害福祉年金があるんだとおっしゃるけれども障害福祉年金はそれじゃ無条件に出すかと言ったらそうじゃないでしょう。所得制限があって、掛け金掛けておるけれども障害年金ももらえない、障害福祉年金ももらえないと、びた一銭もらえないという人たちも出てきているわけです。こんな制度を、これ御理解をいただきたいと言ってもちょっと理解しにくいんですがね。私は特に時間をとりたくないので、意見を申し上げて見解を伺いたいと思いますのは、これはあれだと思うのですよ、まあ昭和三十六年に事業を開始されて、それらもろもろの諸矛盾というのが幾つか出てきて、経過措置として解決をしていくという一定の期間ならよろしかろうと思います。しかし昭和三十六年から見て、いまもうまるまる十三年過ぎてるわけですよ。こういった問題に該当する人が、これは一万や二万じゃないんですよね。何十万ぐらいおりますか、わかっていたら数字も伺っておきたい。こういう状態をそのままにしておくということはこれはよくないと思う。これについては何らかの、制度上の欠陥ですから、何らかの制度上対拠するというお考えがなければ、これは国民納得できませんよ。
  278. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) そういう問題に対処するために、過般の法律改正の際には障害福祉年金についても二級障害という制度をつくりまして、それで広く障害福祉年金対象者を広げたということが一つ。それからもう一つは、福祉年金系統の所得制限の問題につきまして、先ほど来何回かお答えいたしておりますが、できるだけこの所得制限の緩和という点についてつとめる。この二つよって対処すべきだと考えております。   それで、拠出制年金につきまして、被保険者期間外の障害対象にして障害年金支給する、これは、やはり拠出制年金制度設計の問題としては不可能であると思っております。
  279. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうとすると、年金制度としてこれは解決することは困難であるということであれば、これはあまりにも金額の差がひど過ぎると思うんですよ。前段で申し上げたように、平穏無事な時代と違うんですね。狂乱物価、インフレで、ただでさえ、まともに働いていてさえ生活がきわめて苦しい状況の中で、そういった年金が唯一のたよりだというふうな生活の条件に置かれている人たちにとっては、二万五千円と七千五百円ということになりますと、これはもう大問題です。それじゃ、たとえば、障害福祉年金の金額を上げるというふうなことで解決をするというふうなお考えはないんですか。
  280. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 障害福祉年金につきましては、従来から老齢福祉年金の一倍半ということで金額をきめておるわけです。本来の拠出制年金のほうの障害年金になりますと、一級障害、御承知のように一・二五倍でございますから、老齢福祉年金をベースに考えますと、一級の障害福祉年金は他の拠出制年金におきまする一級障害年金よりは二割五分だけ割り高になっておるということもございます。ただ問題は、福祉年金全体が低いではないかと、こういう点の御意見だろうと思いますが、この点につきましては、全額税金でもってまかなう年金であるということからする制約がございますが、可能な限り、先ほど来申し上げておりますように、福祉年金系統の年金生活保障的な色彩を強めていくというふうなことで、毎年その金額をできるだけ大きく引き上げる措置をいたしておりますので、今後は、そういった点についても、完全に御満足のいくような金額にすぐなることはないにいたしましても、そういった路線でもってできるだけ引き上げをはかっていくという考えでおります。
  281. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間をとられるので簡単に切り上げたいわけですけれども、これは、福祉年金全体の水準が低いというのはそのとおりです。いま私が申し上げているのは、この拠出制年金に入っている人がその福祉年金にしか該当させられておらないという条件の問題を言っているわけですよ。これは無拠出の福祉年金全体の問題であると同時に、せっかく拠出しながら該当さしてもらえないという点については、これは考えなきゃならないんじゃないかということを申し上げているんですが、やる気がないということらしいですけれども年金審議会でも、また国会でもたびたびこの問題出ていますね。そこで、いま局長の御答弁の中で言われた点ですね、障害該当者のワクを広げていくということと、それから障害福祉年金の所得制限をゆるめていくということをおっしゃいましたけれども、それでは障害福祉年金をもらえない人がないというふうになりますか、廃疾認定を受けた人で、障害認定を受けた人で。いま言われたような所得制限で全く掛け金は掛け捨てで、どこからもびた一銭もらえないということがなくなるというふうな状況になりますか。その点だけ伺っておきます。
  282. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) それは所得制限の引き上げをできるだけ大幅にやるつもりではおりますが、所得制限の制度があります以上、やはり支給停止になる方がゼロになるということはございません。
  283. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、どこまでそれじゃお上げになりますか、所得制限のランクを。
  284. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) ものの考え方でございますが、従来は非課税限度までの方、こういうことだったんですけれども、今回は、四十八年度に受給していた方が四十九年度になって支給停止になることがないようにというようなことで七十八万円を九十万円に引き上げております。したがって、税金を財源にする年金だから税金を払っている方には差し上げないという、その基本的な哲学は一応破れたわけであります。したがって、今後は御意見のような趣旨も十分に勘案いたし、それを前提にいたしまして、可能な限り本人の所得制限の緩和については努力をいたします。ただ、いまの時点でどの限度までということは申し上げる時期ではないわけでございます。
  285. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 どうも納得しがたいんですが、時間がありませんから次に参りまして、障害認定の時期の問題ですね。これは昭和二十八年にきめられてから二十年間、初診から三年目ということにきめられて全然変わっていないんですね。これについては、これは二十年も変わってないというのはずいぶん医学医療の進歩の中ではちょっと私も驚いたわけですけれども、実情を知りまして。これはどういうふうにお考えになっておりますか。これはこのまま押し通すわけですか。たとえば疾病によっては、三年も重症で当然廃疾認定をされるような障害者が三年間待たなきゃならぬというのは、これもまた実に不合理なんですがね、これはどうですか。
  286. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) その点に関しましては、医学的に何年ぐらいがよろしいかというふうな結論が出ましたら私どもは柔軟に対処いたしてまいります。
  287. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは結核については出ておるんじゃなかったですか。結核研究所の島尾所長さんを先頭とする御調査では、大体結核の場合は二年ぐらい、二年前後が廃疾認定をするのに適当な時期じゃないかというふうな研究が出ていますね。こういうようなの出たら、すぐお取り上げになりますか。
  288. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) この三年の問題についてどういう疾病についてはどれぐらいと、それから診断をいたします際のメルクマールがどういうことであるかということについては、はっきりした医学的な結論を得ていないわけでございます。それで、先生がいま例を引かれましたのは、おそらく島尾先生を研究者のチーフとするチームに「障害年金制度、技術上の諸問題の研究」ということで厚生科学研究補助金をお出しいたしまして研究していただいたそのリポートだと思うのですが、これも内容をごらんになればおわかりのように、百例の疾例について一応調査しました、その一応の結論ということでございまして、これでもって三年を二年に直すというふうなことをいま直ちにやり得ることではないと考えております。  それからもう一つは、よくこの三年の問題を御質問いただきます際に、絶対に三年でなければいけないのかというふうな印象の御質問が多いわけでございますが、法律では三年以内でございましても、疾状が固定いたしております場合には、固定しておるという、そういう診断結果が出ますと、そこでもって障害年金受給資格が発生するということもございますので、実際問題としましては、三年以内で障害年金の受給権発生の方も相当いらっしゃるはずでございます。
  289. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは、認定の時期の三年が適当かどうかという問題については、二十年もほってあるわけだから、当然再検討の必要に迫られていると思うのですけれども、これは審議会でも専門家の意見を聞けということになっていますよね。そういう体制は進めておられるのですか。
  290. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) その体制は十分に進めております。したがって、この問題については早急の期間内に何とか結論を得たいと思っております。それまでの間は、ただいま申しましたように、三年以内でも症状が固定をしておれば受給権が発生をする、その扱いをできるだけ広く認めるというふうな方角で処理をいたしたいと思います。
  291. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そのことと関連をいたしまして、三年というのがまた長過ぎるという点と、これが固定されているのがたいへん障害者にとっては都合が悪いという点と、両方あるのですね。というのは、疾病によっては、初診から三年目の時分にはこの障害認定を受けるほどひどくなくて、一定の警戒をしている、で、そのときの認定日にはこれは障害一級、二級というふうなところには該当しない、しかし、一年か一年半したらまさに障害一級というふうな状況になる、増悪をするというふうな方がおられるわけですね。こういう場合に、これは国民年金はいわゆる爾後重症という形で救い上げておられますけれども厚生年金はやっておられないのですね。これは当然、国民年金でおやりになっておるように、厚生年金でもおやりになるべきだというふうに思うのですが、これについてはどうですか。
  292. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 実は、国民年金でそういったことをやって厚生年金でやらなかったという点につきましては、厚生年金は御承知のように一級から三級までということで、障害年金対象が非常に広いわけでございます。国民年金は御承知のように一、二級まででございまして、対象範囲が狭い。狭い分の補いをどうやってつけるかというようなことから爾後重症の認定という、そういった制度を仕組んでおるわけでございますので、その点につきましては、なるほどおっしゃられてみますと具体的には多少の不つり合いがございますが、いま申しましたような障害等級の幅の広さかげんが違うということでそうなっておるわけでございます。
  293. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは障害等級の幅の広さの問題じゃないんですね。現実に、三年目に廃疾認定を受ける日にはだいぶよくなっておったと、ところが、一年か二年してたいへん悪くなって、——これはもうざらにあります。結核の場合でも、じん疾患の場合でも、心臓疾患の場合でもざらにあるのですね。ところが、三年目に廃疾認定を受ける日に障害認定が受けられなかったら、あとで悪くなってももう一切おかまいなしだと、これはせっかく長い間掛け金をして当然受給資格を持っている人にずいぶん不合理だと思うのですがね。これについては、国民年金ではやっているんだから、厚生年金でも同様に取り扱いをできるように制度を改めるべきだと思いますが、どうですか。
  294. 横田陽吉

    政府委員横田陽吉君) 先ほど申しましたような理由でございますので、いま直ちに制度を改めるということについては御返答申しかねるわけでございますが、大事な問題の一つとして、十分検討対象にはいたしたいと思います。
  295. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 検討するとおっしゃるから検討してもらえるのだと思いますけれども、現実にはそういう人たちはたくさんいるということです。私ども具体的に承知をしているのでも、結核の方、心臓疾患の方、あるいはじん臓疾患の方々、これはずいぶんいますよ、そういう方々が。そういう人たちに、せっかくの年金制度を確立をしながら、しかも国民年金といいながら、その恩恵に浴せないという隘路というのは、これは人為的なもので取り除けばすぐに片がつくという問題なんですよ。真剣に解決のための検討を進めてもらいたいと思います。  それでたいへん限られた時間ですから、あんまりかゆいところに手の届くようなところまでお聞きできないのがきわめて残念なのですけれども、これはまた別の機会にでもまとめてお伺いをしていきたいと思いますので、あと時間がないそうですから、児童手当の関係について若干質問しておきます。  この件については、何人もの委員の皆さんからすでに質疑が出ておりますから、私は重複を避けたいと思っているのですけれども、先ほど柏原委員もおっしゃっておられた児童扶養手当ですね。これは児童扶養手当制度というのは、年金給付対象外という形で母子世帯に支給されているものなんですね。ですから当然拠出制の母子年金などと同じように、十八歳——子供か十八歳までは支給をするというふうに、どうして制度を統一されないのかなというふうに思うのですよ。その辺がどうしても理解がしにくいので、先ほどのお話も、もう一つ何か中途はんぱなことをおっしゃっておられましたけれども、児童福祉法というのは、いわゆる義務教育終了年齢までということになっておるなら、これはあまりそういうことを申し上げようとは思わないのですけれども、児童福祉法では満十八歳未満の子供が該当するわけでしょう。で、法律があれこれある中で、児童福祉法がそうなっておる。それから拠出制の母子年金は十八歳までめんどうを見る、先ほどお話が出ておりました児童手当についても十八歳までと、どうして、——もっとも先ほどの御説明では、経済的な補完措置としてという要素がきわめて強いといわれている児童扶養手当については、児童福祉法の範囲ぎりぎり一ぱいまで、十八歳までめんどうを見ないのか、これは当然そろえるべきではないかというふうに思うのですが、先ほどからだいぶお話を伺っておりますから、簡潔にお伺いをしておきたい。
  296. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 児童福祉法で申しております十八歳、これは定義の中に、乳児、幼児、少年、それぞれに年齢があって、その対象の児童に対する福祉を規定しているわけでございます。児童扶養手当の対象になります児童が義務教育終了前になっております制度趣旨は、先ほど御説明申し上げましたように、一応義務教育を終了したあとにおける稼得能力というものを前提にして、児童扶養手当そのものが母子家庭に対する所得保障という意味からそういう制度になっているということが一つと、もう一つは、これは母子福祉年金との補完的な制度でございますから、この母子福祉年金におけるやはり対象児童との関係ということで、義務教育終了前ということになっておるわけでございます。なお、児童手当につきましても、大体そういう趣旨で、十八歳未満の子供さんが三人以上あって、そして第三子が義務教育終了前という者に対する児童手当ということで対象になっておるわけでございますけれども、これも先ほど申し上げたように、この点については、最近の高校進学率の内容等を勘案して考えます場合に、さらに前進すべき問題ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
  297. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは四十八年、四十九年度でしたか、概算要求をしておられたのと違うたのですか。これは私の勉強不足だったのかどうかしりませんが、それはどうですか。
  298. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 私が着任したときは、昨年の七月でございますけれども、そういう記憶はないんでございますけれども……。
  299. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでね、これは生活経済的援助という側面が非常に強いわけですし、先ほどの御説明の中にもありましたように、高校教育というのは義務教育化されつつあるような状況の中では、特に母子世帯の中で高校進学というふうなことが起こってくれば、一そうこれが必要だという客観的な条件もあるわけです。そういう点では、ぜひこれは前向きに来年度からでも実施できるようにやってもらいたいというふうに思うわけです。これはまとめてもう時間がないですから要請をしておきたいんですがね。しかも、児童扶養手当というのは、全国的にいわゆる母子家庭、母子世帯という、全体の三十五万ぐらいの母子世帯があるそうですけれども、その中での受給者というのが非常に数が少ないんですね。これは相当落ちこぼれがあるのではないかというふうに思うわけです。で、一例を一つとって申し上げてみますと、東京都の目黒区、これで見ますと、やっぱり周知徹底方が非常に悪いんじゃないかという実例なんですけれども、こういうことなんですね。四十八年度、十一月に目黒区では千九百八十世帯に郵送した、こういう手当を御存じですかということでね。そうすると、申請状況は、四十八年度中全体で百六十件の中で、十一月に郵送したその月には、そのあとでは五十三件が一ぺんに申し込みがあった。ところが、その他の月の平均というのは一カ月に八件しかないというふうな状況だというわけです。そういう点で行政指導の面でも、これはせっかくの制度ですからね。一人九千八百円になるんでしょう、今度はね。それが母子世帯の中でもらえるかもらえないかというのは、生活を維持していく上で非常に大きな要素になるわけで、そういった点も含めて、これは行政指導を通じてぜひ周知徹底方を、これは不十分であってもいい制度なんだから、少なくともこれは周知徹底方について一そうの指導の強化、これについて要請をしたいと思うんですけれども、そのことを含めて御意見を伺っておきたいと思います。
  300. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) ただいまの御意見まことにごもっともでございますので、私ども現在児童扶養手当の対象家庭は十八万何がしと記憶しておりますけれども、さらにこれを周知徹底して、より以上に支給できる方をふやすように努力していきたいと思います。     —————————————
  301. 山崎昇

    委員長山崎昇君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、鹿島俊雄君、小川半次君が委員辞任され、その補欠として長屋茂君、寺下岩蔵君が選任されました。     —————————————
  302. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  303. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより両案の討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  それでは、まず、国民年金法等の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  304. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  305. 須原昭二

    須原昭二君 私は、ただいま可決されました国民年金法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党の五派共同提案による附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたします。    国民年金法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一、厚生年金保険、国民年金、各種共済組合について、相互間の均衡をはかり、各制度充実するよう基本的に検討を加えること。  二、年金の財政方式、特に賦課方式への移行については、将来にわたる人口老齢化の動向を勘案しつつ、積極的に検討を進めること。  三、今後における厚生年金及び拠出制国民年金年金額の水準については、社会経済情勢の推移に対応して財政再計算期を早め、賃金生活水準動向に応じた改善を図ること。  四、各福祉年金について、年金額の大幅引き上げ及び支給対象範囲の拡大を図るとともに、本人の所得制限の緩和及び他の公的年金との併給制限について改善を図ること。  五、国民年金の保険料免除者に対する年金給付について、さらに増額をはかること。  六、遺族給付及び障害給付に係る通算措置実現に努めること。  七、五人未満事業所の従業員に対する厚生年金の適用の問題について、具体的方策の樹立に努めること。  八、掛け捨て及び脱退手当金受給者年金受給権の方策を検討すること。  九、積立金の管理運用については、被保険者の福祉を最優先とし、拠出者の意向が十分反映するよう民主的な運用に努めること。   右決議する。  以上でございます。
  306. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいま須原君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  307. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、須原君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、齋藤厚生大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。齋藤厚生大臣
  308. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたす所存でございます。     —————————————
  309. 山崎昇

    委員長山崎昇君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、大松博文君が委員辞任され、その補欠として佐藤隆君が選任されました。     —————————————
  310. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 次に、児童手当法等の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  311. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  312. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 私は、ただいま可決されました児童手当法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党の五派共同提案による附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたします。    児童手当法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項の実現努力すべきである。  一、児童手当制度の立ち遅れの現状にかんがみ、今後一層拡充強化すること。  二、児童扶養手当、特別児童扶養手当及び特別福祉手当の支給額を一層増額すること。  三、特別児童扶養手当の支給対象児童については、障害福祉年金との均衡からみて、二級障害まで拡大することを検討すること。   右決議する。  以上でございます。
  313. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいま玉置君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  314. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、玉置君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、齋藤厚生大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。齋藤厚生大臣
  315. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたす所存でございます。
  316. 山崎昇

    委員長山崎昇君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  317. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  318. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 次に、原子爆弾被爆者医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。齋藤厚生大臣
  319. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ただいま議題となりました原子爆弾被爆者医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。  昭和二十年八月広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者につきましては、原子爆弾被爆者医療等に関する法律により、健康診断及び医療給付を行なうほか、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律により、特別手当、健康管理手当その他の手当等の支給を行ない、被爆者の健康の保持向上によりその生活の安定をはかってまいったところであります。  今回の改正案の第一は、原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部改正についてでありますが、その内容について申し上げます。  まず、従来の一般被爆者及び特別被爆者の区分を廃止し、被爆者健康手帳の一本化をはかり、従来の特別被爆者以外の被爆者にも一般疾病医療費の支給を行なうことができるようにするとともに、新たに、健康診断を受けることができる者を定めることとしております。  そのほか、医療に関する給付にかかわる診療報酬の審査及び支払いに関する事務を、新たに、国民健康保険団体連合会等にも委託することができるようにし、診療報酬請求事務の簡素化をはかることとしております。  次に、改正案の第二の原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部改正について申し上げます。  まず、原子爆弾被爆者医療等に関する法律に基づき、いわゆる原爆症であるとして厚生大臣が認定した被爆者に対して支給されている特別手当について、その支給額を現行の月額一万一千円から一万五千円に引き上げるとともに、新たに、当該認定にかかわる負傷または疾病の状態に該当しなくなった者に対しても特別手当を支給することとし、その額を月額七千五百円とするものであります。  次に、原子爆弾の放射能の影響を受け、造血機能障害等の一定の疾病状態にある被爆者に対して支給されている健康管理手当について、その支給要件年齢を五十歳以上から四十五歳以上とし、支給対象を拡大するとともに、その支給額を現行の月額五千円から七千五百円に引き上げるものであります。  これらの改正を通じまして、被爆者の福祉を一そう増進しようとするものであります。  以上が、この法律案を提出する理由でありますが、何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  320. 山崎昇

    委員長山崎昇君) この際、本案の衆議院における修正部分について、衆議院社会労働委員長代理理事山口敏夫君から説明を聴取いたします。衆議院議員山口敏夫君。
  321. 山口敏夫

    衆議院議員(山口敏夫君) 原子爆弾被爆者医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する衆議院の修正部分について、私からその内容を御説明申し上げます。  その要旨は、特別手当及び健康管理手当の支給範囲の拡大並びに手当額の引き上げにかかる実施時期を昭和四十九年十月一日から同年九月一日に繰り上げることであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  322. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 以上で説明聴取を終わりました。  これより質疑に入ります。別に御発言もないようですから、直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  323. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認めます。  それでは、原子爆弾被爆者医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  324. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  325. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、ただいま可決されました原子爆弾被爆者医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党の五派共同提案による附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたします。   原子爆弾被爆者医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について実現に努めること。 一、原爆被爆が人道的にも、国際法的にも、医学的にもきわめて特異のものである点にかんがみ、被爆者の療養と生活保障をさらに一段と充実するための援護体制を検討すること。 二、各種手当の額を更に引き上げるとともに、所得制限、健康管理手当の年齢制限の撤廃等の適用範囲の拡大を図り、もつて被爆者に必要な施策の充実に努めること。 三、被爆者の医療費については、全額公費負担とするよう検討することとし、差し当たり、国民健康保険の特別調整交付金の増額については、十分配慮すること。 四、昭和五十年の国勢調査を目標として被爆者の実態調査を行うこと。併せて復元調査を更に整備充実し、被爆による被害の実態を明らかにするよう努めること。 五、被爆者の子及び孫に対する放射能の影響についての調査研究及びその対策について十分配慮すること。 六、沖繩在住の原子爆弾被爆者が本土なみに治療が受けられるよう専門病院等の整備に努めるとともに、沖縄の地理的歴史的条件を考慮すること。 七、葬祭料の金額を大幅に増額するとともに、過去の死亡者にも遡及して支給することを検討すること。 八、特別手当については、生活保護の収入認定からはずすよう検討すること。   右決議する。  以上でございます。
  326. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいま小平君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  327. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、小平君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、齋藤厚生大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。齋藤厚生大臣
  328. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、今後とも一そう努力をいたしたいと存じます。
  329. 山崎昇

    委員長山崎昇君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  330. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会      —————・—————