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1974-05-14 第72回国会 参議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十四日(火曜日)    午前十時二十分開会     —————————————    委員の移動  五月十三日     辞任         補欠選任      小谷  守君     田中寿美子君  五月十四日     辞任         補欠選任      平井 卓志君     佐藤  隆君      橋本 繁蔵君     河本嘉久蔵君      塩見 俊二君     堀本 宜実君      山下 春江君     高橋 邦雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  昇君     理 事                 玉置 和郎君                 須原 昭二君                 小平 芳平君     委 員                 小川 半次君                 鹿島 俊雄君                 河本嘉久蔵君                 佐藤  隆君                 斎藤 十朗君                 高橋 邦雄君                 堀本 宜実君                 田中寿美子君                 藤原 道子君                 柏原 ヤス君                 中沢伊登子君                 沓脱タケ子君    衆議院議員        修正案提出者   橋本龍太郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君    政府委員        厚生大臣官房審        議官       三浦 英夫君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局長  高木  玄君        厚生省児童家庭        局長       翁 久次郎君        厚生省保険局長  北川 力夫君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        厚生省援護局長  八木 哲夫君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        大蔵省主計局共        済課長      鈴木 吉之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○結核予防法等の一部を改正する法律案内閣提  出) ○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○児童手当法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  昨十三日、小谷守君が委員辞任され、その補欠として田中寿美子君が選任されました。  また、本日、平井卓志君が委員辞任され、その補欠として佐藤隆君が選任されました。     —————————————
  3. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 結核予防法等の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、以上両案を一括議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 藤原道子

    藤原道子君 私は、先日質問いたしましたけれども、時間の関係で抜けたところがたくさんございますので、それを補充して質問さしていただきます。  そこで、結核現状から見まして、将来、結核対策全般についての展望をまずお聞きしたいと思います。
  5. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 結核につきましては、この前御説明しましたとおり、たとえば死亡率に一例をとりますと、昭和四十七年の死亡率人口十万対十一・九人、十万人のうち十一人が死亡されるというのが最近現状になっております。ちなみにこれを昭和二十五年と比べますと、昭和二十五年当時は人口十万に対しまして百四十六人の死亡率となっております。二十数年間の間に死亡率の一例をとりましても約十分の一になってきております。また、入院患者について見ますと、ピークでありました昭和三十一年における入院患者の総数が二十一万八千人でございます。それに対しまして、昭和四十八年の三月には半分の十万四千人となっております。かように、結核につきまして、かつては国民病といわれておりました結核につきましても、その後の医学の進歩、あるいは薬剤の進歩、さらには国民生活向上等によりまして、一応結核につきましては、これまでの国民病といわれた見地からは、かなり改善を見せてきているような次第でございます。そういうような観点から、今回の改正につきましては、特に健康診断予防接種につきまして、それも特に年齢の低い層、小中学生あるいは幼児等につきましての改善案を今回の改正によってなそうとしているわけでございますが、こういたします理由につきましては、たとえば小中学校健康診断について見ますと、一万人の中で健康診断をいたしまして、結核発見率が二名ということになっております。一方、現在の結核むしろ中心とされますのは、そういう小中学校のような学童ではなくて、たとえば中小企業者であるとか、あるいは農山漁村であるとか、あるいは年齢の高い層に結核がまだかなり多く出ているような現状でございます。こういうような現状にかんがみまして、小中学校健康診断、あるいは予防接種のほうを従来よりも合理化をして、その力をこれからは中小企業とか、あるいは高年齢層とかいう方々に対して結核対策重点を移していこうということでございます。  特にこれに加えまして申し上げますのは、小中学校等の場合につきましては、最近エックス線による被曝影響等が云々されております。もちろん結核エックス線健診による被曝というものは、それ自体が被曝にどうこうということはございませんが、不必要なやはりエックス線照射等はできるだけ少なくしていくことが、これからの国民の健康、特に小中学生のような小さい、若い年齢の層に対しましては、エックス線の不必要な被曝はできるだけ少なくしていくということが必要だということになってくるわけであります。こういうような総合観点から、今回の法改正につきましては、小中学校等予防接種とか健康診断というものを合理化いたしまして、その力をこれから、いま申し上げたほうへ振り向けていこうということでございます。  問題は、先生指摘のこれからの展望ということでございますが、わが国結核の現在の位置がどういうことかということでございますが、なかなかこれを諸外国と比較するのはむずかしい点がございますが、一応先ほど申し上げました結核死亡率という観点から比較をいたしますと、先ほど申し上げましたとおり、わが国結核死亡率は、昭和四十七年で人口十万に対しまして十一・九人ということでございますが、これをさらに先進国比較をいたしますと、たとえばアメリカに例をとりますと、現在は人口十万に対しまして一・四人になっております。西ドイツが人口十万に対しまして八・三人となっております。かような状況からいたしますと、わが国結核先進国に比べますと、まだこれからもさらに努力を続けていく必要があることは十分に認められるところでございます。したがいまして、これからの結核対策中心といたしましては、結核比較的層の多い、先ほど申し上げました中小企業であるとか、あるいは農山漁村であるとか、あるいは高年齢層、こういう方々に対しまして結核対策重点を移していく、必要により健康診断強化であるとか、あるいはそういう家庭患者管理強化であるとかいうような対策をもっと推し進めていって、私はそういたしますと、ここ数年を出ずして、十年程度以内には先進国の域に達するであろうと、こういうような見通しを持っておるような次第でございます。
  6. 藤原道子

    藤原道子君 私は、口だけではなくて、真剣にやってもらわなければ困ると思うのです。  昭和四十八年十一月に結核予防審議会から「結核健康診断及び予防接種実施方法について」という答申が出ておりますが、その中の施策の実施にあたり留意すべき事項については、今後どのようなお考えをお持ちですか。
  7. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 今回の法案を提出するにあたりまして、結核予防審議会という厚生大臣諮問機関がございますが、そこに結核関係わが国専門方々委員として入っておられます。その結核予防審議会諮問をいたしまして、その意見に基づきまして法改正の御審議をお願いしておるわけでございますが、その際、先生指摘のとおり、結核予防審議会のほうから、今後留意すべき事項として四点ほど指摘を受けております。  具体的に申しますと、第一点は、受診漏れをもっと解消しなさいと、こういうことがいわれております。現在の健康診断受診につきましては、小中学校とか、あるいは事業所というように一団の、一つの職場なりあるいは学校なりというようなグループで集まっているところにつきましては、比較受診漏れが少ないわけでございますが、先ほどから申し上げましたような中小企業の方とか、あるいは農山漁村の方、また高年齢層というような方々につきましては、確かに受診率がそういう方々に比べて四〇%とか四五%というような低い率になっております。そういう方々受診漏れ解消につきまして、一段と努力をせよと、こういう御指摘が第一点でございますが、まさに御指摘のとおりでございまして、私どもとしましては、今後幸いにして小中学校に対する受診の回数が減ってくる、この力をこういう方面に、都道府県その他を指導いたしまして、受診漏れ解消に一段と努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。これが第一点でございます。  それから第二点の御指摘は、定期外健康診断強化ということをいっております。定期健康診断というのは、御承知のとおり、年一回時期を定めて集団健診をやって、健診をする方法でございますが、それ以外に、たとえば患者家族に特別に定期以外の健康診断をするとか、あるいは小中学校なり幼稚園のたとえば教職員の方が、もし結核におかかりになったような場合には、そこの学校の学生、生徒さん、あるいは児童等につきまして特別に健康診断をする仕組みが現在の法体系でとられております。これがいわゆる定期外健康診断と称しているものでございます。これにつきましてもっと強化をしなさい、こういう御指摘でございます。したがいまして、私どももその線に沿いまして、四十九年度の予算におきましてはこの定期外健康診断を充実すべく、予算額におきましても昨年度に比べまして三〇%ぐらいの予算の増をはかっているわけでございますが、これによりまして必要に応じ、時宜に適した健康診断を、先ほど申し上げましたように、患者がおられるところの家族に対する定期外健康診断とか、あるいは学校教職員先生方がもしも結核におかかりになったような場合にはそこの児童生徒に対する健康診断とかいうようなものをもっと強化をして、時宜に適した措置をとってまいりたいと思っているような次第でございます。これが第二点の御指摘でございます。  第三点の御指摘は、問題は、その健康診断なりあるいはBCG予防接種につきまして精度をもっと高めよということでございます。まさにこれは御指摘のとおりでございます。  たとえば、せっかく健康診断エックス線フィルムなどをかけてみても病気発見等に間違いがあったり、あるいはせっかくのBCG予防接種につきましても精度が低ければ、せっかくの結核対策というのも効果が不十分になってくるわけでございまして、この点につきましては御指摘の線に沿いまして、こういう関係の職員の方々技術研修につきましては四十九年度以降一段と強化をしてまいりたい、かような決心でおる次第でございます。  それから第四点の御指摘は、結核の常時の監視体制をもっと確立をしなさい、こういう御指摘でございます。いつどこで結核患者が発生したとか、どういう家庭結核患者さんがおられるとかいうような状況を常に行政の段階において十分把握をし、また情報連絡をもって時宜に即した措置をとれ、こういう御指摘でございますが、これにつきましても、この法律改正が御審議の結果、成立した暁には、さらに都道府県に対しまして、医療機関とかあるいは小中学校等関係機関に常時のそういう必要連絡会議とかあるいは情報相互連絡会議というような組織を行政運用でつくってまいりまして、監視体制につきまして万遺憾なきを期したいと思っている次第でございます。
  8. 藤原道子

    藤原道子君 私は、そこで伺いますが、中小企業とかそうした人たち医療ですけれども公費負担医療国民健康保険との調整についてはどういうふうに考えていますか。  結局、公費負担医療国民健康保険医療給付費調整については、現在三割の自己負担がありますが、他の社会保険の場合と同様に無料となるように改善すべきではないかと思いますが、この点はいかがですか。  国民健康保険仕組み健康保険における保険給付と同一にするか、または老人医療における公費負担のように国民健康保険を優先し、保険給付の及ばないというところを公費負担とすべきではないかと思いますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。  結核のような伝染病に対しては、社会防衛見地に立つならばすべて公費負担としてやるべきだと、かように考えますが、お伺いいたします。
  9. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 藤原先生指摘のとおり、現在国民健康保険加入をしていらっしゃる方が結核のいわゆる公費負担対象者になりますと、まず公費負担がその方に対して適用されます。全額無料の方の場合には問題がございませんけれども所得程度に応じまして、かりに一部の負担を御本人から払っていただくということになりますと——全体の額のかりに一部負担か一割だという仮定をいたしますと、その一割のうちの七割は国民健康保険がまかなってくれて、一割のうちの残りの〇・三分だけが自己負担として自分の経済の中からお支払いになられる、確かにこういうたてまえになっていることは先生指摘のとおりでございます。  ただ、これに対しまして、先生指摘の、たとえば健康保険共済組合被用者保険に入っておられる家族の方の場合には公費負担残りで、もしも公費負担残りの分が七割に満たない場合には、その七割に満たない部分につきましていわゆる家族療養費として自己負担分が、被用者保険につきましてはカバーされる仕組みになっていることもまさに御指摘のとおりでございます。したがいまして、その結果といたしまして、国民健康保険加入をされている方が公費負担医療適用を受けますと常に三割という若干ではございますが自己負担が生じてくる可能性が非常に多いということはまさに事実のとおりでございます。これがおそらく先生のお話では矛盾じゃないか、こういう御指摘だろうと思いますが、実はこれにつきましては、公費負担医療制度の立て方としてこういう仕組みになって、たとえば結核予防法におきますと国民健康保険その他の調整規定という条文が挿入されてそういうことになっているわけでございますが、この点について何か改善せよ、こういう御指摘かと思います。  たとえば一例を老人医療にとりますと、先生指摘のとおり、老人医療の場合にはまず医療保険適用になって医療保険の民己負担分老人医療費でカバーする、こういう仕組みになっておりますから、結果として老人医療の方は医療費が窓口ではお支払いにならないで無料になる、確かにこういう仕組みがございます。したがいまして、先生のいまの御指摘は、まず保険適用して、しかる後に結核なり何かの公費負担を、残りをカバーするように制度改正されたらどうか、こういうような御意見かと思いますが、これにつきましては、ただ結核というのは制度の発足当初から社会防衛であるというような見地から、やはり保険でカバーするよりは、まず公費として国家で負担をすべし、こういうたてまえ、観念から制度ができ上がっておりますので、いまにわかにその制度老人医療なりあるいは他のそういう保険のあとから公費でカバーするような仕組み改正するということはいささか困難ではないかと思う次第でございます。  ただ、この公費負担の問題につきましては、一つは現在厚生省の中で、先生がこの前の御質問のときにも御指摘いただきましたけれども公費負担あり方につきまして、省内でいわゆるプロジェクトチームと申しますか、省内各局各課の立場にこだわらないで、公費負担あり方についての検討会が現在設けられておりますので、その検討をもっと早く進める、そうして公費負担あり方全体についてすみやかに結論を出して、その線に沿って結核予防法につきましての公費負担あり方につきましても検討を加えていきたい、こういう方向で考えてみたいということが第一点と、それから第二点といたしまして、この前も申し上げましたけれども現在自己負担につきましても、本年の五月から自己負担所得階層に応じた緩和策につきましても措置を講じたような次第でございますが、さらに状来にわたってもこの緩和策を、さらに所得制限緩和を進めていくことによって、事実上国民健康保険方々もかなりまた改善をされてくるんじゃないか。こういう二つのほうから検討を進めていきたいと思っておるような次第でございまして、いま直ちに制度の立て方を直すということにつきましては困難じゃないかと思う次第でございます。  それからもう一つの御指摘は、結核医療というようなものは社会防衛じゃないか、したがって、自己負担を徴収するということがそもそも不適当で、むしろ社会防衛見地から全額国庫負担というか、公費負担にすべきではないかという御意見が第三点の御質問であったかと思う次第でございます。ただ、この問題につきましては、実は国民病である結核病を撲滅したいと、こういう観点から、昭和三十五、六年当時から、この結核予防法の現在の制度の中にあります従業禁止命令入所によるいわゆる公費負担、この制度活用をして、結核予防対策を推進をしていきたいと、こういう観点から昭和三十五、六年当時からこの制度活用をはかってきたわけでございますが、ちなみに、昭和三十五年のいわゆる従業禁止命令入所によって公費負担医療を受けておられた方が五千九百人であったわけでございます。それが昭和四十年には九万七千になっております。つまり、昭和三十五、六年ごろからひとつこの制度活用いたしまして結核撲滅対策をやりましょうという観点から取り上げて、五千九百人がこの五年間の間に九万七千人に累増をしたわけでございます。  ちなみに、昭和四十七年には六万二千人にこれが減っておりますが、と申しますことは、社会防衛ではございますけれども、この制度活用したいという観点が入ってまいりまして、社会防衛であると同時にやはり一つ社会保障の政策の一環として当時取り上げてこられたような関係にございます。そういう社会保障という関係から取り上げたということになりますと、社会保障という考え方で申しますと、——先生に申し上げるのは釈迦に説法でございますけれども、やはり応分の御費用の負担はあってしかるべきだと、所得のある階層の方は御負担をしていただいてしかるべきだと、こういう観点が一方において入ってまいりますので、所得制限緩和につきましては今後とも努力をしてまいりたいと思いますが、これを撤廃をいたしまして、全額公費負担でまかなえということにつきましでは、現在のそういう考え方からまいりまして、おことばを返すようでございますが、非常に困難なことかと思っておる次第でございます。
  10. 藤原道子

    藤原道子君 公費負担が困難だというのが理解ができないんです。いまこんなに物価は上がるし病気は長いし、自己負担があるために中途で退院する人が多いですね、この間の質問でも申し上げましたけれども。ですから、いま入院している患者の中の四割は再発患者ですよ。こういう点を考えれば、この点はあくまでも結核の問題は、この健康保険国民健康保険の相違、あるいはは保険給付の足りない点を何とか公費で行なうように努力してもらわなきゃ私は困ると思う、結核対策をほんとうに考えるならば。これを強く要望しておきます。  そこで私は続いて——、時間がないので答弁もう少しはっきりしてよ、もうこんなにたっちゃって、私は質問が困っちまう。  そこで、沖繩県における結核対策、これについて伺いたいんです。結核対策沖繩における現状はどうですか。結核蔓延率患者状況健康診断及び予防接種状況医療機関における療養状況等についてはどのようになっているか、これを伺いたい。
  11. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 総括的に申し上げますと、沖繩県結核状況全国平均に比べて比較的良好な状態にございます。これを若干数字で申し上げますと、現在の沖繩県結核患者数は約六千四百人、そのうちで活動性結核患者数が約三分の二、四千人くらいな程度でございます。  なお、これを有病率とかあるいは罹病率等に比べますと、沖繩県の場合の有病率人口十万に対しまして四一五・七、全国平均が五三七・〇でございますから、比較有病率沖繩県では全国平均より低いようでございます。あるいは死亡率をとりましても、人口十万に対しまして沖繩県が六・九、全国平均が先ほど申し上げましたように一一・九でございますから、低いようでございます。さらに、健康診断受診率等につきまして、実施率というもので見てまいりますと、沖繩県が全人口に対しまして五一・二%の実施率になっております。全国平均が四一%でございますから、これにつきましても沖繩県結核につきまして非常に御協力をいただいている、かような現状のようでございます。
  12. 藤原道子

    藤原道子君 沖繩医療機関、これはあとあわせて聞きますよ、それが本土に復帰当時は結核対策については保健所中心として結核患者治療を行なっていたが、あれから二年を経過した今日においてはどのようになっておるか。医療機関医師等が著しく不足している現状では、結核対策について万全の措置がとれるのかどうか、お伺いしたい。  きょうの新聞を見ると、沖繩人たちが日本へ復帰したことを喜んでいる人が半分以下になっているですね。こういう点から、医療問題等についても特にお伺いしていきたい。
  13. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 沖繩県におきます保健所結核治療関係でございますが、確かに先生指摘いただきましたとおり、沖繩県保健所本土保健所と違いまして、いわゆる結核治療に当たっております。保健所沖繩県に七つございますが、そのうちの一番中心となる那覇保健所の例でとってみますと、外来結核患者さんのうちの九五%は那覇保健所外来治療を行なっておられます。したがいまして、那覇よりもさらに僻地の他の保健所におきましてはこの九五%の数字はもっと高くなるかと思いますが、よって来たる原因といたしましては、沖繩県におきましては結核関係医療機関が不足をしているとか、あるいは医師の数が足りないとかというのが原因できているわけでございまして、二年前の状況と今日とではさして変わっていないようでございます。基本的には保健所治療から予防へと移行するのが適当なことでございますが、ただ沖繩県事情等もありますので、今後医療機関の整備あるいは医師充足等と相まちまして、保健所予防活動への移行へということの行政指導をしてまいりたいと思っておる次第でございます。  なお、沖繩県につきましては、特に沖繩県方々本土の病院で御治療を希望される方につきましては、国の予算本土への渡航費を計上いたしまして、それで本土の適当な医療機関のほうに入っていただくことのごあっせんをやっておりますが、その方々がたとえば数字で申しますと現在六十人ほどに達しております。そういう、単に沖繩県だけの医療機関の整備でなくて本土の御希望する場所での治療ということもしていただきまして、万全を期したいと思っておる次第でございます。
  14. 藤原道子

    藤原道子君 沖繩結核現状を見ると、結核患者は六千四百四十二人とおっしゃいましたね。活動性結核患者数が四千二十八人ということになっていますね。ところが、これに対して結核病床の数は七百七十五ということになっていますね。活動性結核患者が四千二十八人いて、それで結核病床は七百七十五と、そういうことになると、入院を要する結核患者としては収容施設がないんじゃないか、足りないじゃないですか。これはどうお考えですか。
  15. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 活動性患者さんがすべて入院を要するわけでございませんで、現在入院をされておる患者は、ベッドの七百七十五に対しまして七百二十程度の方が入院をされておりまして、若干ベッドのゆとりはあるような次第でございます。
  16. 藤原道子

    藤原道子君 私はね、四千二十八人が全部入院なんと言っているんじゃないんです。入院したくもできないということばを私に言ってきている人があるんですよ。入院したいけれどもできない、何とかできないでしょうかという声があるんですよ。だから、その扱い方に問題がある。これを私は非常に心配しているわけなんです。沖繩県においては医療機関が不足していることはほんとうに私は明らかだと思う。かかる実態では結核予防対策に万全を期することはできないんじゃないかと思う。医療機関医師が少ないために、公衆衛生の向上をはかる保健所結核治療に追われているのも変則な状態であるといわなければならない。はたして公衆衛生活動は十分機能を発揮できるでしょうか。   〔委員長退席、理事須原昭二君着席〕  それから、沖繩県における医師の数は、人口十万対四十一・八なんです。全国平均の百十六・七でいうと三分の一ですね。それから宮崎県と比較すると、八十九・四ですから、二分の一以下になっているんですね。これらに対して、医師及び看護婦等の養成確保はどのように行なっておいでになるか。  また、沖繩県は約七十の離島があり、有人島は四十五で無医地区も多いが、その対策はどのように行なっていらっしゃるか。
  17. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 沖繩医師、看護婦の数につきましては、先生指摘のように、確かに約三分の一という実態でございます。で、当面の課題といたしましては、後段に御質問のございましたように、本土から沖繩に僻地の医療等を含めまして医師の派遣をいたしておりますし、それから県立病院等に対しても約四千万の予算をもちまして医師の派遣をいたしております。しかしながら、基本的には沖繩医師の確保は、ただいま文部省で検討いたしております琉球大学医学部設置の問題が実現しませんと、やはり画期的な充足対策は困難であろうと思っております。現状では、沖繩の高校卒業生を国費、国の費用をもちまして本土の医学部に入学させておりまして、これが従来、いままでに六百八十人ほどの該当者が本土に来ておりますが、実際帰還して沖繩医療に従事する方が七〇%程度でございまして、この制度は医学部が設置されれば、その時期を見ては廃止されると思いますので、現状では、こちらからの派遣、それから向こうから医学部への受け入れ、こういうことで医師の養成をいたしております。  で、琉球大学医学部の設置問題は、現在あそこに琉球大学の保健学部というのがございます。これは医師でなくて、看護婦あるいは衛生検査技師等の養成をいたしておるわけでございますが、これとあわせて医学部設置が実現しますと、医学部医学科、保健学科という形で、わが国の大学としては新しい形のものが検討されておるようでございます。  看護婦につきましては、非常に養成施設が少のうございまして、四十八年から九年、ことしの新入学で約二百名程度が一学年定員で増しただけでございまして、この点につきましては、当面われわれの対策といたしましては、精神と結核療養所を復帰の際に国立に移管いたしました。これが金武という村にございます。この金武にございます結核療養所を宜野湾市に移しまして、国立の療養所として整備いたします。三百五十床をそのまま三百五十床移す予定でおります。そこに一般病床約二百五十床を加えまして、約六百床の国立療養所でありますが、一般病院的機能を兼ねたものを、ただいま予算九億で入札も済みまして着工の運びになっております。これにどうしても看護婦養成施設を設置いたしたい、こういうことで国直接の看護婦養成はらい療養所に准看一ヵ所ございますが、看護婦の養成につきましては新たに設置する国立の療養所に設置いたしたい。  その他、県立病院等につきましても、中部病院あるいは那覇病院というようなものに県と相談しながら看護婦養成の施設の設置を推進いたしたい、こういうふうに考えております。
  18. 藤原道子

    藤原道子君 そこで、私、沖繩へ行ったときに、離島ですか、そういうところに病人が出た場合には非常に苦労していらっしゃる。看護婦さんたちが行くとか、医者をさがすとか、たいへんな状態でございましたが、その点についての考え方はどうなっているのか。
  19. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 失礼いたしました。  僻地と申しますか、離島、無医地区対策でございますが、これにつきましては、先ほどちょっと触れましたように、県立の診療所が十五、市町村立が八、それから医介輔という特殊な制度がございまして、これがおられます診療所が十四ございます。で、この県立十五等に本土から医師を四分の三の補助率をもって援助いたしておりまして、僻地診療所に勤務していただいておるわけでございます。  それから、沖繩県ではヘリコプターの使用が非常に重要でございますので、予算をすでにつけまして用意してございますが、これが運営が非常に困難でございますので、県直接の運営でなく委託いたしておるようでございますが、これも本土における自衛隊等のヘリコプターの輸送と同様、離島からの特殊な重症患者の輸送につきましては那覇の中央病院、中部病院等、その他にヘリコプター輸送をやっておるわけでございます。そのほか、県立の宮古病院あるいは名護病院、こういう県立病院というもののやはり親元病院としての機能を充実する必要がございますので、これも法に基づきまして補助率四分の三という本土と違う高率の補助をもちまして援助いたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、基本的に、医師、看護婦、まあ離島では特に保健婦の駐在活動が非常に住民に一つの期待を与えておるわけでございますが、しかし、保健婦でございますので、仕事の限界がございますけれども、いずれにいたしましても、県立、市町村立等をもちまして、できるだけこの離島における診療の確保ということ、それから、それへの本土医師の派遣ということで、ぎりぎりのところ医療の確保につとめているというのが現状でございます。
  20. 藤原道子

    藤原道子君 この点については非常に心配な点がございますので、真剣に対策を立てていただきたい。もっと追及したいのですが、それは時間がございませんので。——本土と同様、沖繩に対しての医療対策、それから看護婦の養成、離島に対しての対策等は非常に真剣に実施していただきたいということを強く要望しておきます。  そこで、結核がたいへんよくなったとかなんとか言っているけれども、先日も、四月二十三日ですか、の新聞で滝野川の私立幼稚園で肺に空洞のできていた重症の先生が発熱してから五カ月も園児たちに接触していたということが大きく取り上げられておりましたが、地元の滝野川保健所が過去一年間にこの先生と接触のあった園児百二十人のうち百十六人の検査をしたところが、強い反応を含めて九〇%に当たる百五人が陽性であることがわかった。普通、小学校新入生の場合、陽性は五〇%から六〇%といわれておりますが、この数字は異常に高いといわれて、園児の母親たちが大きなショックを受けております。  同様の事件が昭和四十五年の六月、沖繩高江洲というんですか、の小学校二年生が担任の先生からうつされた集団発生事件がある。また、最近伝えられるところでは、大阪の某私立高校において四十八年に集団発生事件が認められております。私は、この種事件は今後防止できるかどうかといえば、残念ながらその期待がきわめて薄い。なぜなら、この滝野川保健所管内だけを見ても、幼稚園、保育所は、公立八、私立十五カ所あるが、公立以外はほとんど健康診断実施されていないというんです。  結核予防法及び労働基準法と新たに制定された労働安全衛生法、学校保健法等により零細企業、学校などにはその従事者の健康診断が義務づけられているけれども、必ずしも実施されていない。なぜでしょう。問題は費用の問題なんです。東京都では、昭和四十年度から零細企業の使用者に呼びかけて、都費で三十人以下の事業所を対象として健診を実施し、四十七年度は三十九保健所で、受診者数二万八千百二十人、患者発見率は〇・一三%で、この発見率は使用者の行なう定期健康診断の約四・三倍であったといわれております。この健診の重要性をどうお考えになりますか。この点について伺いたい。結局費用の関係でそういうところの健診が行なわれていない。これに対して東京都では、こういう費用を出してやらしておるが、国のほうでは何もしてないでしょう。これは一体どうなんですか。
  21. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 健康診断の単価が低いという御指摘だと思います。確かにそういう面がございましたので、四十九年度におきましては、たとえばツベルクリンの反応検査の検査料につきましては七〇%、X線の間接撮影につきましては五〇%、BCGの接種につきましては三〇%と、かなり単価は引き上げさせてもらったつもりでございます。もちろんこれでは十分とは申しませんが、さらに来年度以降もこの単価の引き上げにつきましては一そう努力をして、都道府県等が健康診断等を実施しやすいようなことにさらに努力をしたいと思っておる次第でございます。
  22. 藤原道子

    藤原道子君 今度の幼稚園だけではなくて、いま申し上げましたように各地で起こっているんですね、沖繩でも起こっているし大阪でも起こっていると。こういうことに対して真剣の対策をしてもらわなきゃ国民は安心していられないじゃないですか。この結核予防法及び労働基準法と新たに制定された労働安全衛生法、学校保健法等によって零細企業、学校などにはその従事者の健康診断が義務づけられているけれども、必ずしも実施されていないので、これが結核患者が偏在する大きな要因となっているのじゃないか。  そこで、結核予防法第十一条では、健康診断実施者に、保健所長を経由して都道府県知事に通報または報告することを義務づけているけれども、集健料金が低いために、実際には零細企業や私立の幼稚園等は健康診断実施したくてもやってもらえない状況にある。  結論として、今回の予防法一部改正案で定期健康診断等、地域、職場の結核管理を強化する措置を行なわないまま若年層の健診を間引くことは、さらに滝野川幼稚園事件のごとき問題の危険性を増大させるものであると私たちは考える。したがって、この健康診断、貧しいところ、零細なところ、これらに対しては国がもっと責任を持って健診してもらわなければ安心できないじゃないですか。国の方針はどういうふうに考えていらっしゃるか。
  23. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 先生指摘の点につきましては、今後小中学校のX線被曝等の影響からきます、できるだけそういう健診の数を減らされたその余力を、先生指摘のとおり、いまの結核対策重点中小企業であるとか高年齢層であるとかいう点でございますので、私ども、国、都道府県、市町村、保健所、力を合わせて、今後強力な対策の手を進めてまいりたいと思っている次第でございます。
  24. 藤原道子

    藤原道子君 表面だけのことを言わないで、実際にやってもらわなきゃ困るんです。今後もそれを強く要望しておきます。  そこで、先日質問いたしましたけれども結核専門の病院が老朽化したとか、他の疾患や他の事業——中にはマンションを営業をしているものもある——への行き過ぎた転換、廃止を指摘したことについて、滝沢局長は、結核医療の実態から見て、そのまま放置してはまずいので、国立、日赤、済生会等を含め計画的に結核病床を残していく、公衆衛生局と相談する、と言いましたが、具体的にはその点は進んでおりますか。
  25. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) この点につきましては、公私立、——私立の結核療養所というものの維持が非常に困難であるというのが実態になってまいっておりますし、入院患者結核医療の進展に伴いまして地域的には入院すべき人が家庭の事情その他で入院しないというような実態もありますけれども、これを長期的に考えますと、わが国結核対策上、経営が困難であるという理由だけで結核病床が自由に他の、まあ率直に申して、自由に他の医療機能に変わってまいるということをこのままにしておきますと、私は結核対策というものは最終的にはやはり隔離の原則と、いわゆる伝染性疾患としての感染患者と隔離ということのための医療の機関というものはある一定期間は、開放性でなくなるまでの間は、どうしても入院医療というものの必要性がございます。そういう観点から国立結核療養所ももちろんその主要なる役割りを果たすべきでございますけれども、先般も申し上げましたように、必ずしもこれは国が計画的に配置して建てたものではございませんで、傷痍軍人療養所その他を引き継いだものでございますから、そこに配置上計画性が必ずしもございません。そういう意味で県立のもの、国立のもの、それから公的である日赤、済生会等のものを総合的に私の医務局長という医療供給の立場からは、そういう観点から、経営ということの問題にとらわれずに、やはり国の対策上、結核病床の最終拠点を確保する必要があるんじゃないか、こういう観点に立ちますので、この点については五十年度予算以降の問題といたしまして公衆衛性局と十分相談しながら国立の役割り、県立の役割、公的の役割り、中には私立でその使命を果たしてくださるところもあろうかと思いますので、そういうものに総合して各県ごとの地域的なやはり結核最終拠点的な病床の確保という問題を考える必要があるという意味でございますので、今後に向かって具体的に検討してまいりたいと思っております。
  26. 藤原道子

    藤原道子君 老人、重症者をスムーズに受け入れさせるために助成をつける考えがありますか。それから結核ではやっていけぬというような拒否の態勢がないように指導していかなきゃならない。現実に病床が一ぱいだとか、あるいはまた看護婦が足りないとかといって入院患者が拒否されておる、こういうことを調べておいでになるか。もし、それがあるならば、それがスムーズに入院できるような対策をこの際はっきり言明してほしい。  それで、この間滝沢局長が、医労協、患者同盟との会見の際に、五十年度から結核患者の入院拠点づくりをし、助成をつける、と言明されたといいますけれども、これは確信を持っておやりになっているかどうか。  それから結核予防法六十条による非営利法人への補助は、前回審議官によれば、病床確保のためとして、昭和三十五、六年で二十六万床確保ができたから、この法律による補助は無理と言った。しかし、滝沢局長の答弁でも、結核病床の確保の必要を認めて大臣も結核病床の老朽化を指摘されたが、それでもなおこの法律による助成ができない理由は何であるか。  この条文は運営費の補助も規定しているが、結核療養所を開設する営利を目的としない法人に対して、——赤字で困って身売りをしたり転換したりしているのだから、——運営費の二分の一以内を補助する考えはないのでしょうか。なぜこの条文を死文とするのかについて伺いたい。  結核いちずでやってきて、いま経営困難におちいり、病院を縮小し、一部を他疾患に転換を迫られ、土地を切り売りしている財団法人結核予防会に対し、予防法六十条を適用できないのでしょうか。三〇%近い赤字をいかにして埋めるか、助成はいかなる方法によってもできないのか。医療法三十一条による公的医療機関として認可して、日赤等のように助成できないのか、その点を伺いたいと思うのです。  結核予防会も結核から手を洗い、転換するなり、会そのものを解体してよいというのか、非常に問題は切迫しておる。十二億からの赤字がある。国立療養所へ入院できない人もここが引き受けている、こういうことで、十二億の赤字を一体真剣にどのように考えておいでになるかを、私はこの際聞きたいと思います。この間の答弁だけじゃだめなんです。
  27. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 前段の問題につきまして、かなり明確な御質問でございましたけれども、私はそれほど自信を持った、あるいは予算の獲得という将来のことについてそんな明確なお答えはしていないはずでございますが、私の判断は先ほど申し上げましたように、運営ということにこだわったために結核対策に事欠くような、わが国の病床の確保ができないような実態にならないように考えてまいりたいというふうな考え方を申し上げたわけでございます。
  28. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 結核予防法の六十条の関係につきましては、この前申し上げましたとおり、二十六万床を確保する対策であったわけでございます。  現在は、御承知のとおり、結核のベッド数は約十五万床、それでも利用率は六四%と、かなり空床がございます。むしろ私どもとしては、医務局と相談をいたして、やはり最終的には結核は国立療養所を中心にして結核対策を進める以外にないのじゃないか。六十条の助成というのは、今日の段階ではいささか困難かと思う次第でございます。  なお、御指摘結核予防会の問題でございますが、この点につきましては、結核予防会が非常に結核対策に今日まで尽くされてきた功績につきましては、十分認識しております。ベッドの助成というよりはむしろ結核研究所の助成をもっと来年度以降ふやすとか、そういう方向も含めて、結核予防会の対策につきましては十分検討してまいりたいと思っておる次第でございます。
  29. 藤原道子

    藤原道子君 十分検討するすると言うけれども、一向進まないので、真剣に検討してください。あれはつぶれるかわかりませんよ。  私は、この間も赤坂御苑で秩父宮妃殿下がずっとあいさつに回られまして、私の前においでになって、結核で苦労しておりますが、この間まことにありがとうございました。妃殿下からそういうあいさつ、今後ともよろしくお願いいたします。こう言われたので、私は胸がぐっといたしました。いままであれだけ苦労してきた予防会を何とかするように真剣に考えていただきたい、十二億からの赤字があるのですから。それでも、御自分で街頭に立って資金集めをしておいでになる。御自分の御主人、殿下が結核でなくなったのです。だからこそ、結核に死にもの狂いで努力しておいでになる。その人からごあいさつを受けて、あの程度のことがもうお耳に入っているのかなと私は思いました。非常に期待しているようですから、この点はぜひお願いしたいと思うのです。  そこで最後に、結核予防審議会の答申によると、今回の法改正に関して何点かの留意すべき事項をあげております。たとえば常時監視体制の確立——これは着手されていない。地域、職場における結核管理の強化——予算措置かされていない。定期外健診の強化——不十分である。健診と接種の精度の向上——具体的措置かなされていない。その他答申の精神が十分に盛られていないというようなことなのでございますので、こういう点も十分お考えになって、ひとつ真剣に結核対策をやっていただきたい。  私は、この間ちょっと申し上げましたけれども、東京都とそれから国立とのあれですね、食費が九十円違うのですね。これがどうしても私は納得がいかないのです。そこで、きょう局長はカロリーも十分であるというようなこと言っていらっしゃるけれども、ちょっとこれを見てちょうだい。実物提示これが朝の御飯、卵がきょうはついている。これが一日おきなんです。東京都では毎日ついている。これがきょうの朝。それからきのうのこれはお昼のパンと牛乳です。それからこれが(ナツミカン提示)いままでは毎日一個ついていた。これが一日おきにこういうふうに半分しかつかない、何にもないのですよ。このパンと、それからこれが毎日ついておったのが半分で一日おきなんです。それで牛乳、これがお昼なんです。それからこれが晩の御飯ですね。おこうこですよ、これはおつゆですね、それからこれが、見てちょうだい、とうふかこれだけ。それで御飯が——前にはこれ肉が入っていた。肉がなくなって、肉でない、何というかな、普通のよくたべるソーセージ、それがちょびっと入っている、これが夕飯なんです。これが結核患者に対して十分でしょうか。私は、七百五十円でしたっけか、そのうち、国立のほうは三百五十二円、東京都はこれより九十円高いのです、同じ結核患者であって。お互い健康な者でもちょっとこれじゃさびしいですね。卵なんて、毎日あったのが一日おきになってしまった。くだものもそうなんです。したがって、あなたはカロリーは十分だ、こうおっしゃるけれども、食べられないようなもの、肉がこれ変更してきたり、あるいはジャガイモにうんと油を使って、それでカロリーだけは上がるけれども患者は食べたくない。こういうやり方では、私は納得ができないのですよ。患者がかわいそうなんです。同じ予算で東京都がこれよりも九十円毎日高ければ、卵も毎日だそうです。こういうふうな点で、国が理屈だけはおっしゃる、学問的なことはおっしゃる。けれども、実際においての扱い方が私には納得できませんので、食費の点についてこの間申し上げましたが、残飯ですか、残飯を毎年、まあ去年ですか、七十五万円残飯を売っている。残飯なんてのはそんな高くは買いませんよ。それでも七十五万円。それで、それを売って、しかも自分はこれでは満足できない。お昼、これじゃ満足できないから金をかけて食餌をつくっているのです。そういうことで、どれだけ困っているかということを思うと、私は泣きたくなるくらいかわいそうになります。この点も加えまして、今後結核対策を真剣に考えてほしいことを強く要求して、大臣の結核対策に対してのお考え方をこの際真剣にお伺いをしたいと思うのです。
  30. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) 前回に引き続きまして、本日もまた非常に御熱心な御質疑を続けていただきましたことを、深く私は敬意を表するわけでございます。  結核問題はほんとうに戦争前は国民病ということで青少年の諸君が身心ともにいためつけられたのでございますが、戦後の栄養の改善、医学薬学の進歩によりまして、この国民病という汚名だけはぬぐい去ることが私はできたと思います。しかしながら、これで私は安心していいという段階ではないと思うのです。国民病の名前はなるほど消すことができましたけれども、まだまだやはり油断はできない、こういうふうに考えておるわけでございまして、特に結核病床の計画的な配置計画をつくるとか、古い病床の整備をするとか、いろんな問題があるわけでございます。さらにまた入所をいたしておりまする患者につきましては、やはり食事というのは結核患者にとっては一番大事なものでございます。実は、私も昔結核をやったことがあるのです。でございますから、医学薬学だけでなしに、やはり栄養というものは非常に結核患者にとっては大事な要素でございます。そういう点について真剣に努力をしていかなけなければならぬだろうと、かように考えております。  それと同時に、実は結核予防会のお話が出ました。私も実はこの問題は真剣に考えているわけです。結核研究所の非常に赤字を持っているということも十分承知しております。これは年次計画によって立て直そうという計画を実は立てておるわけでございまして、これは私、口はばったい言い方をしては恐縮かもしれませんが、この赤字だけは何とかしなければならないというので、この予算折衝の際には私はもう絶対折れないといっているのですよ。たしか、ことしは一億五千万円ですね。去年は一億のはずです。これは私が一番強く言うているのです、実は。これでも多少足りないと私は思いますが、年次計画でこれは建て直すということで私も非常に固い決意を持っておりますので、結核予防会がつぶれるなどというようなことは絶対させない、私は強い決意で臨んでまいりたいと思います。今日までほんとうに結核予防会が結核撲滅の上に果たした役割りというものは非常に大きいものでございます。その功績も私は高く評価をいたしております。この問題につきましては、事務当局を督励いたしまして、どんなことがあっても結核予防会をつぶすというようなことは絶対ないように、特に結核研究所の赤字問題の解決には全力を尽くすことをこの機会に、はっきりとお約束申し上げておく次第でございます。
  31. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣に伺います。  初めに結核問題に入る前に、診療報酬緊急是正について簡単に結論だけ御答弁いただきたいと思います。  昨日第一生命ホールで、全国公私病院連名大会が緊急是正の大会を持たれました。この公私病院連名の調査によりますと、四十九年四月から五十年三月までは一ヵ月当たり三二%の赤字が発生するであろう。これは過去の赤字、医学の進歩、そういうものを入れないで、いままでどおりいったとしても三二%の赤字が出るであろうという実態調査の報告がありました。この病院連名大会では齋藤厚生大臣が、年度内に診療報酬の改定をする方針だという発言を伝えられておりますが、一体ほんとうに厚生省はそういう考えなのか、それとも大臣が世論操作的な発言をしたものなのか。国会では一体どうなのだということが問題提起されました。したがって、厚生大臣はどういう趣旨でそういう発言をされたかお伺いしたい。
  32. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) 診療報酬はすでに御承知のように本年の二月、物価、人件費等の変動を勘案いたしまして、実質一七・五、名目一九%の診療報酬の改定をいたしたわけでございます。  そこで、この改定は昨年末、特に十一月末までの経済状況の変動というものを頭に描いて行なわれたものでございます。その後御承知のように消費者物価も異常な値上がりを依然として続けているわけでございます。さらにまた本年の四月上旬に行なわれました春闘によりまして相当の賃金のアップを見ているわけでございます。そういうふうなこともありまして、私は最近の経済状況から見て診療報酬の再改定というものは年度内に一度はやらにゃあならぬものであろうという考えを前々から実は持っておったわけでございますが、昨年の十一月以降の消費者物価の上昇、四月の上旬の春闘における賃金上昇の姿、そういうものを見、さらに看護婦の給与に関する人事院の再勧告が行なわれまして、これはまあ国立の看護婦を対象とした勧告でございますが、四月一日にこれをさかのぼってやるようにという、看護婦の給与の是正の勧告が出ました。そういうふうなこともありますので、年度内改定をやるとしても、こういう状況を見ればやはり少し早まるような形において解決をしなければならぬであろう、こういうことで年度内の再改定は少し早まるのではないか、こういうことで発言をしたわけでございます。したがって、私はこれは世論調査とかそんなようなことはもう全然考えておりません。まじめな意味において十一月以降の経済状況の推移というものを見て、まじめにこれは考えて上げなければならぬであろう、私は率直にいまでもそう考えているわけでございます。で、その要素は、先ほども申し上げましたように、十一月以降の消費者物価の動向、四月の春季闘争の賃上げの動向、看護婦に対する四月一日からの給与の引き上げの再勧告、そこでおそらく公務員の給与の勧告が行なわれるわけでございます。七月から八月にかけて行なわれるだろうと思いますが、おそらくこれも私は相当早まってくるのではないかと思うのです。これは私の想像です。人事院は独立の権限を行使するわけでございますから、私のほうで何とも申し上げることはできませんが、早まってくると思います。  そこで、そういうふうなものを見合って、やはり年度内の改定というものを早めて行なっていく必要があるのではないか、かように私はいま考えているわけでございます。したがって、お尋ねでございますが、具体的にいつどういうふうにということはまだ答え得る段階ではございません。これは答えることはできませんが、私は人事院の勧告等が出たその辺から徐々に動いていくのではないであろうか、こういうふうに感触として持っている次第でございます。
  33. 小平芳平

    ○小平芳平君 まず第一に、自治省から診療報酬緊急是正の要望が四月三十日に保険局長あてにあったということが伝えられておりますが、そういうことがあったかどうか。それから次に、政管健保の財政の見通しは現段階でどうか。それから次に、全日本病院協会からは厚生大臣の責任で診療報酬緊急引き上げを実施してほしいという要望があったと伝えられておりますが、この点についてはどうか。以上三点について。
  34. 北川力夫

    政府委員(北川力夫君) 自治省からございました診療報酬の適正化についてというふうな要望は事実でございます。これは四月の三十日にございました。御参考までに申し上げておきますと、こういう例は今回初めてではございませんで、従来からも診療報酬改定の必要性を自治省のサイドでいろいろ検討されました場合に、担当局長のほうから私のほうに、こういう申し出があった例もございます。今回もそういう趣旨で、あるいはまた先ほど大臣から申し上げました、今回の改定前後におけるいろんな特殊事情、あるいはまた改定後におけるいろいろな事情というふうなものを考えまして、そういう点で今後の地方自治体におけるいろいろな病院事業の経営状況というふうなものを見通しまして、そういった面も加味をいたしまして、今回このような申し出をしてきたわけでございます。内容につきましては、先生も御承知かと存じますので、この点は省略をさしていただきます。  それから、政府管掌健康保険の財政収支でございますが、これは四十九年度の予算を編成いたします際に、二月改定における診療報酬の改定というふうなものを盛り込みまして、そして、年間を通じた収支を見込んだわけでございます。その結果、現在までのところでは、大体十月ごろに保険料を若干程度上げまして、なおかつ、たしか六百億余りの赤字が残っていくというような状況でございますけれども、全般的な考え方といたしましては、四十九年度と五十年度とをならして、この政管健保の収支を考えましたので、その限りにおいてはかなり健全化するのではないかというような状況でございます。ただ、いま問題になりました今後における診療報酬の改定というようなものが、どういう時期に、どういう形で行なわれるかというようなことになりますと、そういう面は、私どもはいまの段階では容易に予測はできませんので、そういう事柄は歳入面における春闘の結果がどのように標準報酬の政治決定に反映をするかという問題とともに、今後の実績を検討いたしました上で、正確な予測をするなり、またそれに見合った措置をしてまいりたいと考えております。   〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕  それから、第三点の全日病からの要求でございますけれども、全日病からは六点について、大臣の責任において緊急引き上げを実行されたいと、こういうような要望でございました。で、診療報酬の改定は最終的にこれを諮問をして審議をいたしますのは、現行の法制上中医協でございまするから、ただいま大臣からお話がありましたような、いろいろなファクターというふうなものを十分に事務当局といたしましては検討いたしますと同時に、何ぶんにも現在二月改定の実績がまだつかめておりませんので、どういうような形で、どういう部門に、どういうような効果としてきいているかというふうな面は事務当局として十分に検討しなきゃならぬ点でございます。でございますから、そういう実績を見て、かつまた、各方面のと申しますか、いろいろな要求なり要望なり、事情の推移というようなものを見た上で、どういう改定をするかということを十分に考慮をし、検討していきたいと、このようなことになろうかと思います。
  35. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、厚生大臣厚生大臣厚生大臣の責任で診療報酬緊急引き上げを実施してほしいという要請に対して、どうお考えになっていらっしゃるかどうか。  それから人事院の勧告が出された辺からが、ということは、人事院の勧告が出た辺からそういう手続が始まろうということになるのか、それとももっと急いで結論を出そうという動きになるのか。これは全くの見通しの問題ですが、ある論説によりますと、九月ころ、早くても九月ころではないかというようなことが報道されておりますが、その辺についてのお考えはいかがですか。
  36. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) 非常に答えにくい御質問でございますが、診療報酬改定ということを年度内にやるとすれば、やっぱりそれぞれの経済状況の変動がはっきりした数字に出てこなければならぬと思うんです。物価の動向、賃金の動向、これがやっぱり一番大きな要素でございます。そういうふうなことで、人事院の勧告があるいは少し早まって出るかもしれませんが、一応そういうものが出てまいりますれば、そこで春闘の民間の賃金の状況、公務員給与の状況、ここで一つそろうわけでございます。さらにまた、物価の動向というのがまたそこではっきりその時点で、これは毎月毎月発表しておるわけですから、そこでそろう。そういうふうなことでございますから、その人事院の勧告が出たころに診療報酬の改定をどの程度やったがいいであろうかという材料、判断をする材料が出そろってくる。でございますから、その辺から動き出すのではないだろうか。動き出すという意味もまたいろいろこれはございましょう。手続的にどうするとかなんとかいうことはありましょうが、これはもうちょっと様子を見て、私が適正に判断をしたいと思いますので、もうちょっと材料がそろうまでお待ちいただくようにお願いを申し上げたいと、かように考えておるわけでございます。  それから職権においてというお話でございますが、いやしくもやはり中医協というようなものがある以上、中医協を無視して独断でやる、そういうことはもう全然、やるべきでもありませんし、そういうことは考えておりません。中医協のほうもスライド制の諮問をいたしておるわけでございますが、まだ審議が遅々として進んでいないということは私はまことに遺憾だと思っております。しかし、中医協は厚生大臣諮問機関として諮問を受けた以上は、当然その問題を審議するのは当然だと私は考えておりますから、間もなく今月中からにでも、まあ先月一度やったということも聞いておりますが、そのうち審議も始まってまいりましょうし、中医協が存在する限り中医協の意見は聞く、これはもう当然だと思います。まあ従来のような建議方式でやるとか、諮問方式でやるとか、いろいろありますけれども、独断でやるということは絶対ない。これはもうあってはならぬことでございます。むしろ、そういうことをやれば、国会できまった法律を無視するわけですから、そんなことは私はできるものでもありません。中医協と十分相談をして、再改定をやるとするならば再改定をやる。これはもう当然ではないかと、かように考えておる次第でございます。
  37. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、これはまたおりを見てお尋ねをするとしまして、結核につきまして御質問をいたします。  結核のいろんな問題点は、藤原委員からもうずっと指摘され、また問題提起されてこられましたので繰り返しませんが、簡単に言って、結核患者が減ったのはどういう原因で減ったと見ておられますか。
  38. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 確かに国民病といわれた結核が、死亡率第一位から十位に減ったといわれておりますが、減りました原因につきましては、一つ健康診断とかあるいはBCG予防接種というものの普及、あるいはまた一方化学療法、外科療法というような医学の発達、さらには国民生活の向上、これに伴う栄養の向上と、こういうことが相まって今日、こういう段階になったんだろうと思う次第でございます。
  39. 小平芳平

    ○小平芳平君 そのBCGの接種による被害者も少ないことは少ないが出て発生しているという答弁が藤原委員に対してありましたが、どのくらい発生しておりますか。またそれに対する救済はどうなっておりますか、具体的に金額で答弁していただきたい。
  40. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 年間五百八十万の昨年は実施いたしたうち、一人の被害がBCGについて出ております。BCGの被害救済につきましては、かねて藤原先生にも御答弁申し上げましたとおり、四十五年に閣議決定を見ました予防接種に対する事故のお見舞い金とか弔慰金とか、そういう制度にのせまして救済さしてもらっておるような次第でございます。
  41. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、そこまではわかっておりますので、金額が、四十何年の閣議決定ですか、それをもう引き上げなければ実情に合わないんじゃないですか。
  42. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 現在、この金額につきましては、賃金スライドで引き上げをやっております。ちなみに、四十八年は死亡事故に対しましては四百二十万円でございましたのを四百九十万円に引き上げを行なっております。こういうように労働賃金指数にならってスライドしておるような状況でございます。
  43. 小平芳平

    ○小平芳平君 それにしても低いですね、死亡事故が四百九十万ではね。  それから、次に、ストマイによる健康被害について、これは再三私はこの委員会で問題提起したことがあるんですが、その後厚生省としてはストマイによる健康被害者の実態調査を行なったかどうか、行なったとしたら各年別にどのくらいの被害者が発生してきたか、御答弁いただきたい。
  44. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) なかなかストマイによる事故の被害調査と申しましても、それぞれの臨床家がいろんな判断からやっておりますので、実態調査というのは非常に因難な状況でございます。ただ、四十八年に結核療法研究協議会の報告というものを把握しておりますが、それによりますと、入院した患者さん三百三十三名中、何らかの形で、たとえば食欲減退であるとかあるいは目まいであるとかいうような軽い副作用まで含めまして副作用を起こした者が三十二人、九・六%というような数字が出ております。さらに問題はストマイの場合には特に聴力障害が問題になってまいりますので、やはりその結核療法研究協議会で、これは若干古くなりますが、昭和四十年に調査したところによりますと、ストマイの使用された二千九百十七名のうちに、日常生活に支障を来たされるような強い聴力障害になった方は四例、〇・一四%という数字が出ておるような次第でございます。
  45. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうして、救済をしようという考えがあるならば、もう少しやる気になって実態調査はできないんですか。
  46. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) なかなか、副作用につきましても、一時的な目まいとか、食欲減退というような副作用から聴力障害というふうなことになりまして、一がいに実態調査というのはむずかしいわけでございますが、先生指摘もありますので、一度検討してみたいと思っております。
  47. 小平芳平

    ○小平芳平君 一度検討って、どういうことですか。
  48. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 全国的な実態調査というわけにはなかなかまいりませんので、もう一ぺんこういう学会その他とも協議いたしまして、臨床例その他を公正に把握する方法で、なおあらためてまた把握検討してみたいと思っている次第でございます。
  49. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、次に、国がさっぱり救済しようとしないし、また製薬会社もその他救済の方法がない、制度がないというところから、訴訟を起こす以外もう道がなくなったということで各地に訴訟が提起されております。その中ですでに判決のあったものもあります。その代表的なものを御答弁いただきたい。
  50. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) ストマイ注射によります聴力障害について医師の過失が認められたとした事例、札幌高裁判決四十七年一月二十八日、この例におきましては、副作用についての注意義務といたしまして、治療のため適切な医療行為を行なうにあたっても、本来の治療目的に即して避けることのできない場合以外は、副作用、ことに重篤、治療不可能な障害におちいる危険を防止するために高度の注意義務が必要であるということでございまして、この札幌高裁の判決が、われわれ承知している範囲では、ストマイ注射の聴力障害に関する判決の一例であるというふうに承知いたしております。
  51. 小平芳平

    ○小平芳平君 あとはないですか。
  52. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) そのほかにも係争中のものがあるように承っておりますが、数はただいま明確に把握いたしておりません。
  53. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの副作用についてですが、私はきのう厚生省からこの副作用についてのどういう注意書きが出されているかということをお尋ねしたところ、資料持ってきてくださった。で、この副作用に対する注意書きというものは、昭和二十五、六年の段階の注意書きと、それから昭和四十七年六月からの注意書きと、がらっと変わっている感じですがいかがですか。
  54. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) このストレプトマイシンの副作用によります聴覚、あるいはいわゆる第八脳神経の障害ということは、これはかなり古くから知られておりまして、したがってごらんいただいておりますストレプトマイシンの通称能書と申しております使用上の注意につきましても、そういった点における記載はずっと一貫して変わっていないわけでございますが、ただ、四十三年十二月にストレプトマイシン製剤につきましての使用上の注意事項を、私ども都道府県知事を通じましてメーカーにさらに明確にするように注意をした事実はございます。その後さらに新たな副作用情報等を、これはいつも申し上げておりますようないろいろなルートを通じて副作用を収集しておりますが、それを中央薬事審議会において検討いたしまして、四十七年の三月、さらに使用上の注意事項について改定をするような通知をいたしております。それに基づいてメーカーといたしましても、それ以後の使用上の注意につきましては、さらに詳細な事項を追加しておる、このような状態になっております。
  55. 小平芳平

    ○小平芳平君 これは厚生省からいただいたのですよ。一番古い、二十七年ころのものというものには、「ストレプトマイシンの毒性は比較的少なく普通見られる副作用は一過性であるが時には治療を中止せねばならぬ時もある。」、こういうことでしょう、注意事項が。ところが四十七年三月以降の分については、高齢者に対しては慎重に投与することが要求されるとか、妊婦に投与すると新生児に第八脳神経障害があらわれるおそれがあるとか、本人またはその血族がストレプトマイシン難聴またはその他の難聴者である場合には本剤の投与を避けることが望ましいと、こういう違いがあるのはどういうことですか。
  56. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 先ほども御答弁申し上げましたように、医薬品の副作用につきましては非常に重要な問題でございますので、国内の副作用モニター病院、二百六十余りの病院でございますが、あるいはWHOの副作用情報システムに加入しての国際的な情報、そういったいろいろなルートを通じまして医薬品の副作用につきましては私どもとして常にできるだけ最新の情報を収集いたしまして、その情報に基づいて中央薬事審議会の御意見を伺いまして、必要なものについて注意事項を改定するという措置をとっておるわけでございます。その結果、いま申し上げました昭和四十七年三月に使用上の注意事項についての改定を指示いたしましたのは、第一が、第八脳神経障害の特異性を明記する、それから次に、肝障害に対する注意を記載する、それから三番目に、高齢者に対する注意を記載する、四番目に血液代用剤との併用について注意を記載する、それから過敏症の既往歴のある患者への注意を記載する、それから妊婦への投与について注意を記載する、それから、いま御指摘のように本人または血族が難聴である場合の注意を記載する、それからクラーレ様作用についての注意を記載する、そういったことを詳細に指示をしたわけでございます。  で、難聴につきましては、これは先生ごらんいただきましたように、当初から明らかになっておることでございます。  それから、過敏症の者に対する注意につきましても当初から記載されておったことでございますけれども、こういった副作用の注意につきましてはいかに注意しても注意し過ぎることはない性質のものでございますので、こういった従来知られておった事項につきましてもさらに明瞭な記載をさせるということと同時に、新しい知見に基づきましての、たとえば新生児に対する作用、高齢者に対する作用、家族集積性、そういったものに対する注意も明記させた、そのような経過でございます。
  57. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは経過の説明であって、私がいまお尋ねしていることは、四十七年三月以降の注意書きは非常に詳しい。高齢者、妊婦、それから血族関係ということが具体的に示されておる。ということは、昭和二十五年から四十七年二月まで、四十七年までの二十一年間というものは注意すべきことが注意されてなかったということじゃないんですか。
  58. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 現在の知見に基づきまして、さかのぼって考えればそのような御指摘もあり得ると思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、こういった医薬品の効能、効果あるいは副作用の判定の方法、あるいはその発見に至りますまでのルート、そういうものにつきましては学問的にも非常に日進月歩でございまして、長年の使用により、あるいはさらに詳細な化学的分折を加えまして初めてそういった副作用があるということが明らかになる点もあるわけでございます。私どもといたしましても、そういった点を、先ほど申し上げましたようないろいろなルートを通じての情報収集によりまして、常に最新の知見をこの使用上の注意に反映させ、副作用の防止につとめるということに努力しておる次第でございまして、先ほど御指摘の二十六、七年時点におきます医学上の知見といたしましては、残念ながらまだ二十年後の四十七年時点におきますような詳細な医学上の知見が十分でなくて、ただ過敏症に対する副作用あるいは若干の聴覚障害を惹起するおそれがあるという程度の知見にとどまっておった。そのために当時の時点といたしましては注意事項の記載はその程度にならざるを得なかったのではないか、さように考えておる次第でございます。
  59. 小平芳平

    ○小平芳平君 私が言っているとおりならそのとおりでけっこうです。要するに、二十六、七年時点から四十七年二月時点までの記載は——四十七年二月ですが、記載にはいまから見ると足りない点があったということでしょう。ところがそれを認めるかどうか、それが一つと。もう一つは、四十七年まで待たなくても、この高齢者、妊婦、血族の問題はもう専門家から指摘されてきたことでしょう。それはいつから指摘されてきていますか。
  60. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) こういった医学上のあるいは薬学上の新しい知見は、いろいろな専門家の御研究によりまして学会で発表される、あるいは論文として公表されるというような段階、あるいは具体的には私どもに対する副作用報告としてモニター病院等から集まってくるというような段階を経まして、先ほど申し上げました中央薬事審議会あるいはその下部機関である安全性特別部会、あるいは副作用調査会というような権威ある専門家の集まりによりましてその各情報の評価あるいは分折をお願いいたしまして、そういった情報が学問的に確かなものであり、注意をしなければならないというような段階に至りました時点て注意を促すというような形をとっておるわけでございます。  いまどのような論文がいつあったかはちょっと手元に資料がないので明らかでございませんが、いま担当者に聞きましたところでは、御指摘のような高齢者等に関する知見は四十五年ないし六年ごろから学問的にも御意見が出てきておるということのようでございます。
  61. 小平芳平

    ○小平芳平君 私はもっと前からあったと聞いておりますがね、四十五、六年よりももっと以前から。  それで、薬務局長は、以前私がこの問題を質問したときに、厚生省が県知事を通じて医師に注意するように三十八年六月ですか、に通知を出した、それ以後はストマイ被害者は減ってきているという答弁をしたことがありますか。
  62. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 私ども調べました限りでは、ストレプトマイシン製剤につきまして注意事項を定めて通知いたしますのは最初は四十三年の十二月のようでございまして、いま御指摘の三十八年という先生のお話がありましたのは、公衆衛生局のほうで所管しておられます結核治療指針の中の記載事項のことではないかと存じますが、その点は御指摘のように三十八年の五月に実施されておりまして、これは結核予防法の規定に基づきます公費医療にあたっての治療の指針という形で医師に対する指導がなされておるわけでございます。
  63. 小平芳平

    ○小平芳平君 被害者が減ってきているかどうか。
  64. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 小平先生指摘の三十八年に出しましたのは、結核治療指針、結核医療基準というのを三十八年に改正をいたしまして、厚生省の告示で定めて副作用の防止等についての告示を行なってきております。それ以降、実態調査の正確な数字は持ち合わしておりませんけれども、被害者の数は逐次減ってきておるようでございます。
  65. 小平芳平

    ○小平芳平君 それが、その実態調査もしないで逐次減ってきているということはどういうことですか。
  66. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 結核予防審議会とか、あるいは都道府県段階に各保健所単位に特に結核につきましては結核医療協議会等が設けられております。そういうルートを通じての臨床家の意見の報告を求めておる次第でございますが、ただ正確な数字が幾らが幾らになったというような集計はとっておりませんが、臨床家からの連絡によりまして、ずっと減ってきておるということでございます。
  67. 小平芳平

    ○小平芳平君 ただいま川崎の青山さん、この川崎の青山さんは訴訟を起こされている方ですが、この方は四十年から四十二年、そのころ治療を受けて耳が聞こえなくなったという。したがって、三十八年から逐次減ってきているからだいじょうぶだみたいなことを言ったって、現に四十年代になっても発生し、訴訟に踏み切らざるを得ない人も発生しているじゃないですか、どうですか。
  68. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 私どもは、三十八年のそういった治療指針あるいはそれを援用いたします医療保険の基準等によりまして、それ以前よりはストレプトマイシンを結核に使用いたします場合の医師の注意義務ということが詳細に指導されたと、そういうことによりまして、ストレプトマイシンは何と申しましても結核医療上はやはり相当の威力を発揮する薬でございますので、要はその使用にあたって、できるだけそういった障害が起こらないように注意をしながら使用しなければならぬ、そういう性質のものでございますので、そういったオーディオメーターの治療等に関します医師に対する注意事項をはっきりさせるということによって、同じストレプトマイシンを使用いたしましてもそういった障害がたぶん少なくなるのであろう。あるいは少なくとも障害の発生が軽度にとどまり得るであろうということを期待していたわけでございますが、もちろん先生いつも御指摘のように、こういった注意事項につきましては、いつどういうことをしたからそれでいいということではなくて、やはり理想としては絶無を期さなければならない。そういった意味におきましては、それ以後におきましてストレプトマイシンが特に有効な薬であった結核に対しましても、その他の非常に有効な化学療法剤が開発されて、そういったものの併合的な使用によりまして、副作用を少なくしながら結核の効果が上がるというような点もございます。また、ストレプトマイシン自身の障害、副作用の防止につきましても、先ほど御指摘のように、私どもといたしましても常に新しい情報を収集いたしまして、できるだけ詳細な注意を喚起し、使用にあたっての副作用の減少を期するということにつとめておるわけでございまして、三十八年のそういった基準によりまして、決して私どもそれでいいんだと、それでもうストレプトマイシンの副作用の防止は十分であるというような意味で申し上げたわけでは決してございません。
  69. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほど指摘した点は、四十七年二月までの注意書きがいまから見ると落ちている点が数あったという点、これはどこの責任になるんですか、それが一つです。  それから医師に対して注意を厚生省が出したというのが三十八年六月と四十五年五月ということになりますか、結論としては、国として見た場合ですね。その段階でなぜこの製薬会社のつくったラベルの注意書きも変えなかったんですか、いかがですか。
  70. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 第一の御質問につきましては、そういった医薬品の使用にあたっての注意事項というのは、お医者さんの治療に当たられる場合の一般的な医学的な知見と申しますか、医師として当然御存じである事項を基盤といたしまして、特に当該医薬品の使用にあたって必要な注意事項をその時点における医学薬学の水準に基づいてできるだけ詳細に指示するというのが医薬品の使用上の注意の性格であろうと存じます。したがいまして、二十六、七年の時点におきまして、なお医学的にいま詳細に指示しておりますような知見が十分でなかったと申しますか、そういうことが知られていなかった時点におきまして記載されていなかったということは、これは一応いま御質問の責任というような問題につきましては、だれの責任と申すことは困難であろうと存じます。  それから、この医療基準あるいは治療指針の改定に伴いましてのこの注意事項の変更でございますが、この治療指針あるいは医療基準は、先生御案内のように、医師が実際に医療を行ないます場合の具体的な内容についての注意事項でございます。で、医薬品について使用上の注意として要求されます事項は、その医薬品によってどういうような副作用が起こり得るか、その副作用の発生機序なり、それを防止するための一般的な薬学上の注意事項というにとどまるわけでございまして、具体的な医療を行ないます場合の内容につきまして一々薬事法に基づく使用上の注意という中に記載すべき性格のものではないと承知をいたしております。したがって、そういったことは、それぞれお使いになりますお医者さんが、その注意書きによりましてのどういうような副作用があり得るかというようなことを前提といたしまして、実際の使用にあたりましては治療指針あるいは医療基準というようなものをごらんになりながら具体的に配慮されるべきものであると、そのように考えます。
  71. 小平芳平

    ○小平芳平君 何かむずかしいことを言われますけれども、もう少ししろうとにわかるように言っていただきたいんですが、第一に、具体的に申しますと、ある県のストマイの被害者と私は知事を訪ねたことがあります。ところが、その県の県庁の幹部の人の家庭が実に二人の子供さんがストマイでつんぼ同然になっちゃったと、こう言っておられたんです。ですから、血族関係を注意しろということがわかっていれば、一人の子供さんがなった段階で二人目の人がなるわけないじゃないですか。そういうことをどういうふうに厚生省は防止しようとしているのか、それが一つです。  それからもう一つは、実際被害者の方で結核の重症患者が確かにこのストマイによって命を取りとめたというならともなく、ほんの軽い患者さんはそういうストマイに対する知識もない。そこでストマイを使用されているうちにこれはおかしいな、おかしいな、だいじょうぶかなというにもかかわらず、かまわず打ち続けてとうとうつんぼ同然になってしまったという方があきらめ切れないわけです。薬務局長が非常にむずかしい答弁をされますけれども、そういう答弁を聞いてもあきらめ切れないです。いかがですか。
  72. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 先生から、ストマイを適用された二人の子供の問題と、体質と申しますか血族関係で発生しやすい場合、これに対する厚生省の注意が足りなかったんではないかという御指摘でございますが、この点につきましては、私は注意書き等の問題であるかどうかということも、もちろん学問的に解明できておったりすれば注意書きの点に触れる必要もあろうかと思いますが、御質問からとる私の判断といたしましては、このような特殊な血族関係あるいは体質という問題に対しては、やはり医師が十分の注意をするということが望ましいのでございまして、その結果、発生しやすい体質であったという結論に結果的になります場合につきましては、やはり医師の判断の問題が多少議論されるのではなかろうか。ただ、北海道の例につきましても、ややその体質的な問題も一部あったようでございますが詳細の判決内容を手元にしておるわけでございませんので、私のお答えが間違いになるかもしれませんが、間違えましたら訂正いたしますが、裁判上はあまりその点は大きな注意を怠った視点との指摘比較的軽く見られているようでございますけれども、やはり体質の問題も北海道の例にはあったようでございます。したがいまして、医師がやはり血族関係、体質という問題については、この薬一般の副作用について、これは医学の基本的な常識として注意をする必要があるというふうに私は思います。
  73. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一つ、軽い……
  74. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) これは軽症のものにつきまして、つまり御質問の御趣旨は、ストレプトマイシンに副作用があることはすでに知られておることであり、したがって軽症の結核についてはストレプトマイシンを使用しないことが適当であるるものを使用しなくても治療し得たものではないかという趣旨の御質問かと存じますが、そういった点につきましては、これはまさに私どももそれを治療に当たられますお医者さんの専門的な御判断によらなければならないものではないかと思います。その診断を受けられた時点におきましての症状がたとえ軽微でありましても、相当進行のおそれのある結核であるかどうか、あるいは、私も医学的なことはよく存じませんが、その適用といたしまして、いろいろな治療法の中でストレプトマイシンが一番適当であるというふうにお医者さんが判断されるかどうかというようなことによりまして変わってくる要素でございまして、医薬品の一般論といたしまして、軽症のものについてはストレプトマイシンを使用ないことが適当であるというようなことを言うのがいいのかどうか、この辺はかなりむずかしいところではないか。やはり医師医療行為にあたりましてどの医薬品を使うか、あるいはどの医療方法によるかというようなことにつきましては、これはやはりお医者さんが全責任を持って判断されるべきものであるというふうに考えております。ただ、例外的にはと申しますか、特殊な例といたしましては、医薬品の使用にあたりまして、いわゆる配合の禁忌であるとか、あるいはこういうものを使ってだめな場合にこういうものを使うというような注意事項を書く場合はあろうかと存じますけれども、いま御指摘の場合がそれに当たるかどうかということば、私もちょっといま御答弁をいたしかねますので、一般論といたしましてはやはり医師の御判断が先行すべきものである、さように考えております。
  75. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、両局長の答弁は、一般論としてそれは医師の問題だということのようです。厚生省の責任よりも実際に使用する医師の問題だということのように受け取りますが、それでよろしいですか。  それで最後に、その点についてのお答えと、もう一つは救済についてどういたしますか。救済について。  この二点について。
  76. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 先ほど来例に引かれましたような比較的軽症の場合、これは函館の例の場合は函館の例の場合は軽症ではございません、入院患者でございますが。当時、医師が注意をすれば、自分のところにオーディオメーターがなくも他の医療機関でそれを検査できたであろうというようなことも含めまして、特に先生が引かれましたような一般的に軽症患者で漫然とストマイを使用しておったという事例があるとするならば、諸般の、注意書き、あるいは結核予防法、あるいは保健医療機関に対する結核治療指針、そういうものが明示されている段階において、具体的にそのような例が発生した場合には、結論的には私は医師の責任が明確になるものというふうに思っております。
  77. 松下廉蔵

    政府委員(松下廉蔵君) 私がいま申し上げましたのは、先生から具体的に御質問がございました軽症の患者に対するストレプトマイシンの使用についてどういうふうに考えるかということにつきまして、医師の御判断にまかせるべき性質のものではないかという趣旨を御答弁申し上げただけでございまして、一般的にストレプトマイシンの副作用の発現が全部医師の責任になるべきものであるという趣旨で申し上げたのでは決してございません。それは、やはり副作用の防止というようなことは、医療上非常に大事なことでございます。したがいまして、やはり医薬品関係者、メーカーも販売サイドも含めましての関係者、それから医師、私ども厚生省各局の所管を通じまして、全体でこういった防止の措置というようなことは考えていかなければならないことは当然でございまして、その意味におきましては、先ほど各局から御答弁申し上げておりますように、それぞれの所管事項に基づいてできるだけ注意を喚起し、副作用の少なきを期するというような措置をとってまいったわけでございますが、なお、先生指摘のように、あるいはいまから考えまして新しい学問的知見を反映させるのが不十分であった、あるいは医師や現場に対する周知徹底が十分でなかったというようなうらみはある点もあろうかと思います。そういった点につきましては、私どもといたしましても何回も御答弁申し上げておりますようないろいろな措置をとっておりますと同時に、今年度におきましては、さらに厚生省といたしましても、必要な副作用情報につきましては、いままで、新しい副作用情報については都道府県知事を通じ、あるいはメーカーから直接医療機関に対していわゆるドクターデータを出させるというような措置をとってきたわけでございますけれども、本年度からは、さらに必要に応じて厚生省から医療機関に対しまして直接そういった副作用情報を流し、さらに注意を喚起するというようなことも予定をいたしております。そういったいろいろな方法によりまして、さらに副作用の早期の発見、この防止には十全の努力を傾けてまいりたいというふうに考えております。  それから、もう一点の御質問の、救済制度の問題でございます。この救済制度につきましては、これは、先生から何回も御指摘あるいは御叱正がございまして、私どもといたしましても、前々申し上げておりますように、研究会も発足、あるいはいろいろな資料の収集をいたしまして、できるだけ早く全体的な救済制度の発足ということに対して努力をいたしておるわけでございますが、なかなかいろいろと制度化いたしますための困難な点がございまして、なお提案するに至りませんことはまことに残念なことでございますが、この点は、いろいろと今後御指導をいただきながら、できるだけ早い機会にこれを制度化いたしたい、このように考えておる次第でございます。
  78. 小平芳平

    ○小平芳平君 最後に厚生大臣、いまお聞きのようなストマイの被害者が全国に多数発生していらっしゃる。しかし、その人数すらつかんでおらない、わからない。実際上わかっていない。それから、ただ何となく被害者は減っているらしいということしかわからない。それから、まあ、しかし、必要な薬だから許可をされたんでしょうけれども、許可をする必要があるでしょう。その許可するにあたっても、先ほど来申しますように、四十七年三月からは詳しくなったけれども、それまでの二十年余りの間は、何かこれでいいのかわからなかったからしかたがないんだというようにしかこっちは受け取れませんが、そういう点、許可をする厚生省あるいは製薬メーカーとしての何らかの反省なり、そういうものがないのかどうか。  それから、医師の責任だと言われたら訴訟を起こす以外にないんですよ、実際上。ですから、実際にはもうほとんど泣き寝入り同然、なかなか訴訟に踏み切るということは容易なことではありません。そういう点を踏まえて、ひとつ厚生大臣から御見解を承りたい。
  79. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) ストマイの被害を受けられた方々の実態がつかんでないという点につきましては、私どもも、これは考えなけりゃならぬ問題でございますから、どういう方法か、私もいますぐ知恵はありませんけれども、やはりその実態を明らかにするように調査を進めてまいるようにいたしたいと思います。  それから、まあ、ストマイばかりではありませんが、一般的に薬についての副作用の情報というものはやはりできるだけ徹底さす必要が私はあると思います。二十余年間これ以上の副作用はなかったということになっておるのかどうか私もわかりませんが、やはり国民の健康を守るということから申しますれば、副作用情報というものはできるだけ正確に、もちろんそれは医学、薬学の進歩に伴って新しい材料が出てくるとは思いますけれども情報医療担当者に伝えるように努力をしていかなければならない。真剣なこれは私は努力をしていかなけりゃならぬと思います。それは当然国の責任でもあり、製薬業者の私は責任でもあると思います。それだけの、国民の健康に重大な影響のある薬をつくっておる生産会社、さらにまたそれを許可しておる国家としても当然それはなすべきつとめであるわけでございまして、そういう点については、国も製薬業者も反省すべきものは虚心たんかい反省をして、そして、医学薬学の進歩に伴っていろいろな材料が出れば、その材料をできるだけ的確に伝えていく、普及を徹底さしていくということが必要でございましょうし、さらにまた、製薬者も、製薬会社もこれ以上の副作用というものは出ないであろうかという研究を私はやっぱり常時やっていく必要があると思います。そういう意味において、今後、薬務行政をやるにあたって、いままでのいろいろな反省の上に立って指導を厳格にやっていくというふうにいたしたいと、かように考えておる次第でございます。  なお、救済の問題については、実は、昨年来、この調査会をつくって、何か一つ制度的な案をつくれないであろうか、私は非常に意欲的に指示をしておるわけでございますが、先ほど来お話のありましたような医師の事故、医療事故というものとの関連においてやはりいろいろむずかしい問題があるようでございます。しかし、私は、やっぱり、訴訟は訴訟としてでも、何とかこういう被害を受けられた方々の救済だけは行政的な面において何かやっぱりやっていく必要があるんじゃないかというふうなことを考えておりますので、まだ結論は得ておりませんが、できるだけ結論を早くいただけるように調査会にもお願いをして、勉強をしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  80. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 両案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分から再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      —————・—————    午後一時四十一分開会
  81. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、橋本繁蔵君、塩見俊二君及び山下春江君が委員辞任され、その補欠として河本嘉久蔵君、堀本宜実君及び高橋邦雄君が選任されました。     —————————————
  82. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 休憩前に引き続き、結核予防法等の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、以上両案を一括議題とし質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  83. 須原昭二

    ○須原昭二君 私は、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、これについて御質問を申し上げたいわけでありますが、きわめて時間が制限をされておりますので要約をして一、二、三点について御質問いたしたいと思います。  ただ今度の改正案は支給金額の引き上げ、支給範囲の拡大等があげられておりますが、わが党はこの問題については一応賛成をいたしております。そういう立場ではございますが、特に支給範囲の拡大に関連をしてきょうは御質問いたしたい。  実は、本論に入りたいんですが、午前中私たちの先輩藤原道子議員から病院におけるところの食費の問題についてきわめて適切な指摘がございました。特に朝昼晩の献立の一覧を現品を提示をされましたわけですが、この食費は七百五十円、こういうふうに決定をされております。そういたしますと、東京都と比較して国立が実は九十円も安いわけであります。したがって、こういう点から考えますと、患者のみならず栄養士の皆さんの苦労というのはたいへんなことでありまして、私は改正増額する考えが当然出てこなければならない、そういう考え方が出てこなければせっかくあのようなりっぱな御質問があっても効果がない、かように存じますが、改正増額の意思があるのかどうか、この点だけはひとつ補足をして御質問を申し上げておきたいと思います。いかがですか。
  84. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) 食事は、特に結核患者方々にとりましては栄養、食事というのが一番大事なことだと私は考えております。医療もさることながら、やっぱり食事というものの栄養、これは非常に大事な問題でございまして、こういうことを考えてみますと、確かに先ほど午前中の委員会におい七藤原委員が御指摘になりましたように、同じ結核患者でありながら東京の病院と国立の療養所で違いがある、これはどうもやっぱり私も多少理解しにくいものがあります。したがいまして、この点については何とかまあ、やりくりをしまして、年度の初めのことでもありますから、将来また診療報酬の改定ということも年度内に予想されるわけでもありますので、十分皆さま方の御意見を体しまして食事の改善努力をいたします。この点ははっきりとお約束申し上げておきたいと思います。
  85. 須原昭二

    ○須原昭二君 一応年度初めであるからやりくりをすると、私はひとつ早急に、早くその結論というものを出していただくように要望して本論に入りたいと思います。  特にこの戦傷病者戦没者遺族等援護法の問題についてこの改正点が二つあったわけですが、支給額の引き上げ、支給範囲の拡大、したがって、この支給範囲の拡大に関連をしてでありますが、今度は旧防空法の規定による防空事業に従事して障害もしくは死亡した者の遺族に年金、遺族給与金を新たに支給することになったことでありますが、この点については私たちも賛成です。しかし過去援護法の経過を見ますると、二十七年にこの援護法が制定されて以来三十四年には学徒動員、三十八年には内地勤務の軍属、四十四年には防空監視隊員、このたびは防空の業務の従事者、こういうふうに新たに順次拡大をなされてまいりました。しかし二十七年当時の援護法の制定の際に政府が考えていたこの法の精神というものはあくまでも今日なお残っております。政府が旧憲法下の国家との身分関係に執着をして軍人軍属等にとどめてきたこの法の精神があるわけです。いま戦後は終わったという評価はございまするけれども、軍人軍属の問題については、一応その支給額等の問題については、多くの問題がございますけれども、その他一般民間戦災者については全然考慮されておらないわけでありまして、もうおそまきながらでもやはりこれは援護の手を差し延べなければならない、こういう段階にきておると思います。したがって、この問題については、昨年も援護法の一部改正が出た際にも私は御要望を申し上げておいたわけでありますが、大臣は民間戦争犠牲者を軍人軍属と見なして何らかの方途を考えなければならぬ、あるいは身体障害者福祉法の中でもこれをやっていくんだ、こういうようなお話もいろいろあったわけでありますが、もうこの段階で従来差別をしてきたものを何とか軍人軍属と同じように対処すべきではないかと思うわけですが、あらためて大臣の御意向を承っておきたいと思います。
  86. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) 遺族援護法は私どもは国と何らかの身分関係、特に特別な権力関係にあったものを対象として行なうというこの精神は私は貫いていきたいと考えております。ただ、できるだけこれに近いものをその特別な権力関係の中にできるだけ吸収していくという努力を続けておるわけでございまして、今度の改正ども国会における御審議の経過を見まして旧防空法のようなものを、それから学徒動員にかかったようなものを、まあ、できるだけ特別な身分関係にあるものへと範囲を広げていくという努力は私はしていきたい、今後ともしていきたいと考えておりますが、やはり基本であるところの国家賠償という考えはやはり国と特別な権力関係にあったもの、これはやっぱり対象としていくということは私は貫いていくべきではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし、そういうわけでございますので、一般戦災者を全部国家賠償的な考え方で援護法をつくるということにはいまにわかに私は賛成いたしかねます。しかし、これは須原委員であったと思いますが、昨年の春の国会においても、まあ、それは一般戦災者はわかったが、そのうちの戦災によって障害を受けた人だけはせめて何とかならぬか、こういうふうな御要望、御意見がございましたので、これはすでに御承知のように戦災による障害者につきましては、その実態をまず把握することが先でしょうというふうなことでサンプル調査をやろうではないかということにいたしたわけでございます。したがって、私は須原委員のお気持ちもよくわかります。すべての国民が戦争の犠牲になったわけでございますから、特別権力関係にない一般の統治権下にある一般国民の戦災者についても援護すべきではないかというお気持ちはわかりますけれども、いままでの精神と申しますか、立法の趣旨をいまにわかに変えまして、一般戦災者についても援護法を制定するということは、どうもいまにわかに賛成することはできない、こういうふうにお答えせざるを得ないと思うのでございます。
  87. 須原昭二

    ○須原昭二君 実は、昨年もこの援護法の一部改正が出た際に、衆参両院でも附帯決議がなされておりますが、これは昭和三十九年の衆参両院の決議もあるわけで、あらためて昨年の七月の附帯決議を読み上げますが、「一般戦災者に対し、戦時災害による負傷、疾病、障害及び死亡に関する援護の検討を目途として、その実態調査を実施すること。」、こういうことに実は附帯決議もなされ、実はその問題については大臣も十分尊重して努力すると、こうこの席上を通じて意思表明があったわけでありますが、いまお話を聞きますと、この間の答弁もそうでありますが、国家的な、国家との間の身分関係、こう言われますけれども、私はその点については意見を異にするわけです。というのは、これはあくまでも旧憲法の身分関係であって、新憲法の中ではこれは通用しないんだと、こういうことを特にいままで強調してきた問題点です。しかし、これは援護法の中で包含をするか、あるいは身体障害者福祉法という現行法でいくか、それでは私は不備でありますから、民間戦災者のいわゆる単独立法でいくか、いろいろな方法はあろうと思いますけれども、何としてもこの国会の決議の精神をやはり受けて努力をしていただかなければならないのではないか、こういうふうに実は痛感をいたします。  そこで、実態調査がわからなければこれは対応できないことですから、何といっても、やるかやらないかの前にこの実態調査がどうしても必要です。そういう点について、実はいまもサンプル的にとか、あるいはまたモデル地域を設定をして、実態調査をまず一地域に限定してでもいいからやると、こういう点は一つの前進だと私は評価してまいりました。しかしながら、すでに一年に近い期間が経過をいたしておりまするが、今年度の予算を見ましても実はこの実態調査の経費というのは計上されておりません。したがって、約束の実態調査はどうなったのか、この点が一つの疑義であります。その点についてひとつ局長から、この実態調査の調査費が計上されておらないけれどもどうなっておるのか、この点について御報告をいただきたい。
  88. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) お話ございました戦災によります障害者の実態調査の問題でございますが、昨年、四十八年度におきましては名古屋市のほうで自主的な調査を実施していただきまして、名古屋市在住の身体障害者手帳所持者全員を対象にいたしましての身体障害者の実態調査が行なわれまして、この中で特に戦災の障害者数というものも把握できたわけでございます。  なお、本年度におきましては、私ども昨年の国会で先生からのお話もございましたし、幸い愛知県におきましてこの問題につきまして取り上げたいということでございますので、愛知県のほうとも十分御相談いたしまして、愛知県におきましてことし県費を計上してございますので、愛知県におきます身体障害者の抽出調査を行ないまして、この中で名古屋市で行ないましたのと同様な意味におきます戦災によります障害者の実態というものを十分把握いたしたいということで、たまたま実施主体は愛知県でお願いするわけでございますが、調査の内容等につきましては十分私どもと相談いたしましてこの調査を実施いたしたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、全国的な問題につきまして厚生省関係のいろいろな一般的な調査もございますので、こういうような面におきましても全国的な数がある程度把握できるような方向につきまして検討いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  89. 須原昭二

    ○須原昭二君 まあ、愛知県の問題は、私の地元ですけれども、われわれも県当局に対して働きかけました。したがって、今年度の予算で県費百八十万円を計上して、今年度中に実態調査をすることになっております。いま御報告を受けますと、国は愛知県と一ぺん相談をしてと申されますが、予算に実態調査費も計上されておらない。したがって、愛知県の独自の調査だけにまかしていく、こういうような姿勢であってはならぬと思うわけです。東京都においてもこの実態調査をやろうという動きがいま顕著になってきておりますし、その他、市町村におきましても、この問題は非常に熱が上がってきておるわけで、ただ市町村だけにやらしていくということではなくして、調査のやり方についても、たとえば身体障害者手帳を持っておる人、これだけでは私はほんとうに実態はつかみ得ないと思います。後ほど指摘を申し上げますが、したがって地方自治体だけにまかしていく、こういう姿勢であってはならぬと思うのですが、その点はいかがですか。
  90. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先ほど御説明申し上げましたように、やはり、前国会におきましても大臣から御答弁申し上げましたように、まず、サンプル的な調査で、それぞれの地域におきます特に戦災都市等の一つの代表の例としまして名古屋市なりあるいは愛知県というものがあるわけでございますので、この辺と十分調査の内容につきましては御相談してやるということで、私どもも愛知県のほうとこれから具体的にいろいろな内容等について御相談するということでございますので、実施主体は県でございますけれども、内容等につきましては十分御相談して実施いたしたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、先ほども補足的に御説明申し上げましたように、全国的な数字がどの程度かという問題につきましても、これは、一般の調査費がございますので、その中である程度数字が把握できるようなかっこうで統計調査部等とも連絡をとってやってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  91. 須原昭二

    ○須原昭二君 私は、愛知県で百八十万計上したことについては、非常にこれはよくやったと思うのです。しかし、実態をよく聞いてみますと、百八十万では実際完全な調査はできません。したがって、できるだけひとつ国からも応援をして、全国のモデルになるのですから、ぜひとも先ほどの食費の話じゃないですけれども、まだ初年度始まって、予算に入ってまだ間があることですから、やりくりまだ幾らでもできますから、その点をひとつ考えてやられるんではないかと思いますが、その点はどうですか。
  92. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 愛知県のほうで具体的にどういう調査をするかという点につきましては、これから私どものほうと十分相談するわけでございますので、その際に、ただいまのお話の問題等につきましても、県当局と具体的な内容につきまして十分協議した上で考えてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  93. 須原昭二

    ○須原昭二君 ぜひとも、その実務だけじゃなくて、費用負担の問題についても、やはり地方自治体を助けていく、そして完全なものができるような調査をぜひ要望しておきたいと思います。  そこで大臣にひとつ聞いていただきたいんですが、国家との身分関係によって軍人軍属なんだ。したがって、一般民間の戦災者については、従来と大臣の御心境がまだ変わっておらないことを、いま初めて、また知ったわけです。というのは、一般社会保障、すなわちいまの身体障害者福祉法の中でこれは救済をしていくというこの間の答弁がありましたが、そのお気持ちがまだ変わっていない、こういう点をいまあらためて認識を深めました。したがって、私は、一般民間の戦災者が身体障害者福祉法によって援助されているのだろうか、この点がひとつ大きな問題になってくるわけです。したがって、参考までにひとつ認識を改めていただきたいと思うんですが、現在の身体障害者福祉法によりますと、ここに施行規則を持っておりますが、障害程度の等級表による一級とは、「両眼の視力の和が〇・〇一以下のもの」、あるいは「両上肢の機能を全廃したもの」、「両上肢を手関節以上で欠くもの」等々、列記をされておりますが、四十九年からは年金支給額が八万四千円ですね、この一級は。しかし、今日、いま審議がなされておりまするところの戦傷病者戦没者遺族等援護法によると、同じ障害で軍人軍属の場合は現行百二十八万三千円、今度の改正案によりますと、これがさらに上回って百五十八万八千円、月額にして十三万二千三百三十三円。軍人軍属であるからおまえは百五十八万八千円、民間であるからおまえは八万四千円。なるほど援護の手はささやかなりといえども八万四千円でありますけれども、八万四千円と百五十八万八千円とは、あまりにも身分の関係の違いで大きな差があるということをひとつ御認識をいただきたいということです。  さらに、身体障害者福祉法によると、二級とは両眼の視力の和が〇・〇四以下のものは年金六万円です。同じ二級でも実は上肢が片方だけ欠けるものは二級の三種になってしまって年金は全く支給されておりません。しかし、援護法では、同じ片手を欠いた、なくなった軍人なら第三項症ですか、その年金額は八十三万四千円です。ゼロと八十三万四千円。あまりにも身分の差によって差が激しいということをひとつ知っておっていただきたいと思うわけです。特にまた、この援護法によりますと、一つの耳の聴力が尋常の話し声を〇・五メートル以上にて解せざるもの、一つの指を欠くるもの、これも同じく第五款症で十六万七千円の年金が支給されております。これが一般戦災障害者になると、身体障害者福祉法のワクには入れないでいるのです。身障害としても認められていないんです。このように、やはり一般民間戦災者は身体障害者で援護の手を差し伸べていけばいいんだという大臣の考え方ということば、全く現実には沿わないものだと。該当してないんですよ。ここに、この現実をきびしくひとつ会得をしていただいて、このような差別があるということについては何らかの機会に是正をする、こういう気持ちであっていただきたいと思うんですが、その点はどうでしょうね。
  94. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) ただいま御指摘のございました問題につきまして、一つは障害等級のあり方につきまして援護法の障害の立て方と、それから身体障害者福祉法なりあるいは福祉年金等の障害の範囲等の問題につきまして必ずしも一致していない点があるわけでございますが、これは、考え方といたしましては、援護法の場合にはむしろ軍人軍属あるいは準軍属も含めてでございますけれども、従来の恩給法の障害等級というものを基礎にしておる。したがいまして、その後の社会保障あるいは社会保険等におきます、あるいは社会福祉面におきます身体障害者福祉法と障害等級のあり方というものが若干食い違っているという問題がございますのと、それからもう一つは、現在の援護法がむしろ恩給法の傷病恩給、傷病年金、こういうものに合わしているというような考え方から、どちらかと申しますと国家補償的な考え方、ある意味では使用者としての国の補償というような考え方から、単なる生活保障という面以上に出ているというような問題もございますので、生活保障的な年金、あるいは福祉年金の場合にはこれは年金局の問題でございますけれども、やはりその性格という面からまいりますと、おのずから差はあるというのはある程度はやむを得ないものではないかというふうに考えておる次第でございます。
  95. 須原昭二

    ○須原昭二君 やはり私は身分関係というのは戦前のことであって、旧憲法下の身分関係です。そういう点からいうならば、新しい福祉国家としてわれわれが施策を講じていく以上は、そういう差別があってはならない。やはりもっと前進をさせなければならないと思うわけです。そういう点は昨年のこの席上におけるやりとりの中で明らかになっているわけでありまして、そういう矛盾点は一刻も、少しでも日時の経過とともに穴埋めをしていくというような積極的な姿勢を特に私は強調しておきたいと思うわけです。  さらに名古屋市で身体障害者の手帳を受けておるいわゆる戦災障害者という調査をしました。いわゆる身体障害者のワク内で戦災障害者の調査がなされているわけですが、この際、あらためて御理解をいただくために申し上げておきますが、二百七十三名該当者がいるわけです。しかし一級は十四名です。たった十四名です。二級は二十九名、三級が七十五名、四級が九十三名、五級が三十二名、六級が三十名、こういう数字になっておるわけです。一級と若干わずかの、二級の中のわずかな数がいわゆる身体障害者福祉法によってささやかな援助を受けておる。あとは全然何にも考慮されておらないという現実です。さらに、前に申し上げました片一方の耳が全く聞こえない者とか、あるいは片目が失明しておりましても片一方の視力が一・〇以上あればわれわれ健康人と同じようにみなされて六級以下のために身体障害者の手帳も交付されておらないという現実があるわけです。そういう点から見ますると、ただ身体障害者の階層だけの実態を調べれば、その中の戦災障害者だけ調べれば全部を掌握できるものではないわけです。そういう点に実態調査のむずかしさというものが私はあると思いますが、したがって、愛知県が百八十万円ぐらいの費用ではできない、こういう点を私はかねがね痛感をいたしているわけです。したがって、調査のあり方についても、ただ自治体だけにまかして形式的な調査をするのではなくして、国が責任を持って、そして調査をしていただく。名古屋、愛知県だけではなくして、大阪、東京等というような大空襲を受けた地域はもちろんのこと、それに相応する地域をある程度、愛知県だけではなくして五、六カ所ぐらい設定をして総合的な調査をやはりしていただきたいと思うわけです。とりわけ該当者を見ますると、片目が失明しておるけれども、片一方が一・〇あれば身体障害者の手帳も受けておらないわけです。これは戦争によって片一方の目がなくなった、こういう人でも、この片一方の目がないだけに就職の問題、あるいは進学の問題、女性の皆さんでは非常に大きな問題であります結婚というようないろいろな障害、影響というものが大きいわけでありまして、普通健康人に比べて非常に苦労が山積をしておる。こういう実態を見るならば、当然その単独立法なり、たとえその援護法で包含をしていかなくても、単独立法というような形で民間戦災者の援護法というものを制定していくというような積極的な姿勢を持つことがやはり福祉時代、福祉国家としての当然の政府の責任であると私は思います。  したがって、時間の制約がございますから結論に入りますが、私は昨年六月二十六日、当委員会において、公明、民社の皆さんの御協力をいただいて戦時災害援護法案を実は提案をいたしました。しかし、私は政府がもっとよい案を提案されるというならばこれに固執はいたしません。少なくとも今日、単独で民間戦災者の援護法を出すのもよいでしょう。あるいはまた、いまはまだそんな考え方はないと大臣はおっしゃいましたけれども、現行の戦傷病者戦没者遺族等援護法の中にさらに民間の戦災者に順次支給範囲を拡大をしていくという方途も一つあるでありましょう。いずれにしても、このような問題は早急にやはり一応の路線を、政策を発表し、ルールに乗せていくというのが私は必要ではないかと思います。  あらためて申し上げますが、戦争というものは軍人軍属だけが犠牲者ではありません。やはり全国民が犠牲者でありますから、これは旧憲法によるところの身分関係によって差別するのではなくして、全般的にこれを行なっていくことこそ私は福祉国家として、福祉を表題とする自民党政府だったら当然のことだと思いますが、この基本的なものの考え方に立ってさらに鋭意検討していただき、とりあえずこの実態調査を国家的な行事として行なっていただきますようひとつ要望いたしますが、その点はいかがでしょう。最後です。
  96. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) 昨年愛知県をモデルとしてひとつ調査をしようということで、名古屋市において昨年調査をいたしました。その結果を見ますと、一万五千四百四十三人、戦災によるもの二百七十三人、そこで二百七十三人のうち大体一級が十四人、二級、三級で大体百人近い、合計百人近い方々が一級、二級、三級と、こうなっておるわけでございます。これは身体障害者福祉法による等級でございます。そこで御承知のように、昨年の年金法の改正によりまして国民年金が一級のほかに二級を修正によって救っていただくということになったわけでございますので、まあ、この一級、二級、三級の一部が二級国民年金まで入ってきているんではないかと思うんです。そういう意味においてはこの範囲が広がってきているというふうにも感ぜられるわけでございます。しかしそれだけで問題は解決いたしません。そこで、ことしは県が非常な力を入れて、厚生省と相談してやりましょうと、こういうことになりましたし、それから私どものほうも、厚生省の統計調査部において身体障害者を対象とした調査を行なっておりますので、その中で身体障害者の中で戦争による障害を受けた者はどのくらいおるであろうかということの推定できるような抽出調査を本年度中に行なうことにいたしてございます。それでいま計画を進めておるわけでございますが、そういうふうな計画に基づきまして実態の把握ができますれば、それに基づいて身体障害者福祉法のほうで援護ができないか、あるいはまた、二級国民年金の範囲をどの程度までやっぱり拡大していったらいいか、こういう問題になってくると思うんです。で、それが将来単独立法のような形でいくのか、年金法の範囲の拡大ということでそちらのほうでいくのか、将来の方向としてはいろいろ問題はあると思いますが、まず実態をそういうわけで全国的に一応ことし調査をいたしまして、何かしら一般社会保障という考え方でやるにしても、もう少し援護の範囲の拡大、そういう方面に今後努力をいたしてまいりたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。したがって私は、昨年の援護法の際に附帯決議がありましたことを全然無視しているようなつもりはございません。拳拳服膺して、その趣旨に沿わんことを期して努力をいたしておることは十分御理解を賜わりたいと、かように考えておる次第でございます。
  97. 須原昭二

    ○須原昭二君 まあ、拳拳服膺してと、服膺だけしていただいても何ともなりませんから、やっぱり現実に施策の芽が出てこなければ私はならぬと思います。  そこで、最後でありますが、一般戦傷者に対して戦時災害による負傷、疾病、障害、死亡に関する援護の検討を目途として、そして実態調査をはかれと、こういう附帯決議が昨年なされました。一年たってもまだ芽が出てきませんから、もっと強いことを言わなきゃいけないと思って、この、これらの障害者に対する援護の検討というんじゃなくて、援護を目的として実態調査をはかれと、今度決議案をつくろうと思ったら、援護の検討を入れてくれと、こういうこの厚生省の姿勢というのはきわめて私は消極的であると、こういうふうに断定せざるを得ないわけです。したがって、そういう印象を加えないように、やはり積極的にやるという姿勢をこの際出してくるのが私は当然ではないかと思います。とりわけ昭和三十八年以来十年間ものが言い続けられてきた問題点ですから、ぜひとも実態調査というものを早急にやって、そういう方向に邁進していただくように心から要望申し上げまして、質問終わりたいと思います。
  98. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 相模海軍工廠化学実験部第二課に勤務しておりました元海軍軍属の小川仁衛さん、この方から障害年金の請求が出ていると思います。私も本人に会ってよく内容を聞いて調べてみました。とのことについて簡単に申し上げますと、相模海軍工廠化学実験部第二課に、昭和十七年十一月に豊川海軍工廠より転用して配属され、その仕事はイペリット、ルイサイト、ホスゲンの合成実験、毒ガスの海中における鉄板塗装の強度実験、これは真鶴湾でやっておりました。毒ガス解毒の研究実験、こういうような仕事をやっておりました。それで昭和十七年十一月より、この化学兵器の製造実験作業に従事していたわけでございます。その中で生体実験もしばしば行なったということで、その日の夕方になると目は充血し、鼻水が出、悪寒、発熱して全身がだるく、ちょうどかぜを引いたような症状であったということを言っております。終戦によって郷里に帰りましたが、郷里に帰ってもかぜを引きやすく、頭が痛く、昭和二十二年の一月ごろから病状が非常に悪くなって、山武郡の旧鳴浜村の浜田医院というところに通うようになって、医者からは気管支炎と診断され、それ以来気候の変わり目や雨の降る前日などになると、非常に頭痛に悩まされ、そして、せきや多量のたんが出ると、まあ、ぜんそくのようなぐあいで、そういう発作が起きますと二十日ぐらいはもう夜となく昼となく苦しんでいた。奥さんは結婚してからこんななまけ者というのでけんかばかりしてずっときたと、こういう状態の繰り返しをしたために、そこの家は非常に土地もあり裕福な農家だったんですが、非常に生活に困窮して、一町五反も持っていた土地もほとんど売り払ってしまった。それで、昭和四十五年の十月ごろ集団健診で胸中に異常があるということを発見され、昭和四十七年の三月二十九日に千葉大学で診察を受けたところ、左のほうに肺ガンの疑いがあるという診察を受けた。そこで、昭和四十七年四月二十七日に入院し、精密検査をし、肺腫瘍の疑い、慢性気管支炎という診断を受け、これは職業病ですよと、つまり毒ガスの影響によるものと思うということを言われ、本人も、もしや毒ガスで自分のからだがこのようになっているのではないかという不安もあったけれども、千葉医大でそれを確信させられる診断もあったので申請する手続をとった。それで昭和四十八年、去年の七月に申請を出したわけでございます。これがお手元に提出されてあると思うんです。  そこで、海軍における毒ガス障害者ということについて二、三お聞きしたいと思うんです。  まず第一に、この審査のきめ手は海軍工廠の化学実験部で毒ガスの実験研究をやっていたかどうかということだと思いますが、いかがでしょうか。
  99. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 私ども先生からお話ございましたケースの問題につきましては、請求が来ておりますので、内容を調査している段階でございますが、いま御質問ございました相模原の海軍工廠に化学実験部というものがあって、そこで毒ガス等の問題についての研究をやっておったかということでございますけれども、私ども調べました範囲では確かに相模海軍工廠に化学実験部というのがございまして、ここでイペリットあるいは催涙剤、くしゃみ剤等の問題につきましての研究をやっておったということは間違いないと思います。
  100. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その間違いないということはいろいろお調べになったのですか。
  101. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 私どものほうで昔の軍の関係の実態につきましてのある程度の書類等を持っておりますので、その書類等の面から申しますと、化学実験部というのがございまして、こういうような問題についての研究をやっておるということは、はっきりしておるわけでございます。私どものほうの調査でそれははっきりしております。
  102. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それで援護局のほうでお調べになったのでしたならば、どういうふうに調べて、どういう状態であったかということを御報告いただきたいと思うのです。また、それはどういう方法で御報告をしていただけるんでしょうか。
  103. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 私どものほうで調査したのは、書類面等からの調査でございますので、大要わかっておりますのはただいま申し上げた程度のことでございますので、もう少し具体的には当時の関係者等をできるだけさがしましてどういうようなことをやっておったかという問題につきましてはまだそこまでいっていないわけでございますけれども、できるだけ関係者等をさがしましてこの調査をやりたいというふうに考えております。
  104. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 できるだけとか、やりますとおっしゃっても、なかなかこれは困難なことでございますので、私はそう簡単にできないんじゃないか。これは、この小川さんのことについてだけじゃなくて、昭和四十三年の十月二十一日の朝日新聞にも出ております。ちょうど同じケースなんですね。「戦時中、海軍工廠で毒ガスを取扱わされたため、後遺症に悩まされている」と、こう訴えているわけです。この方は、国家公務員共済組合連合会の旧令年金部まで行っているわけなんですね。ところがこの人は気の毒だけれど、ほかに届け出がなくて、あなた一人だけだから、いまのところ手の打ちようがないという返事で帰されているわけです。この旧令年金部に行ったんですから、当然厚生省にも行っていると思うのですね。ところが一人であったから自分が海軍工廠で毒ガスを取り扱っていたんだということの証拠づけというか、人証を一人でやらなきゃならなくなって、そして毒ガスの後遺症であるということの認定もしてもらえないで苦しんでいる。「「私のように苦しんでいる人が他にもきっといるはずだ」と、かっての同僚を捜し求めている。」という記事でございますが、これは四十三年のことなんですね。昭和四十三年ですからもう六年もたっている。偶然私が発見したこの小川さんとも非常にケースが似ているわけです。ですけど結局この海軍工廠で毒ガスが取り扱われたんだということを証拠づけるというか、厚生省でそれをお認めにならなければ認定も一歩も進まない、そういうことも考え合わせますと、調べますという御返事で、ずいぶん手回しよくお調べになったんだなあと思ってもう一回念を押しますと、ただばく然たる調査であって、それを否定はしないという程度のお認めのように思うのですね。そうじゃなくて、調査というのですから、そこにどういう人がいたか、これは厚生省では名簿をおつくりになっているようですから、その名簿をチェックして、そして、その人たちがいまどんな状態になっているかというところまで調査していただかないと、調査にならないと思うのですね。そういう点、私どもも証人に出てもけっこうです。国会でもどこへでも出て申し上げますという人もおりますので、その点ひとつ私どもが納得するような、こういう人たちが認定に認められていけるような、そういう調査の結果を出していただいて、一番大事なきめ手である問題の解決をまずしていただきたいと思うわけです。その点いかがでしょうか。
  105. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) お話ございましたように、私ども書面の上で申しますと、相模原の海軍工廠の平塚にございました化学実験部におきまして毒ガスの研究をやっておったという事実はわかっているわけでございまして、さらにある程度の資料もございますので、当時どういう方がおられたかという問題につきまして、お話がございましたように、ある程度の方が出てきておりますので、できるだけそういう方に当たりまして、当時どういうような仕事をやっておったかという問題につきまして調査を進めてまいりたいというふうに考えている次第でございますが、ただ何ぶんにも古いことでございますのと、それからやはり扱っているものが毒ガスというようなことでございますので、当時におきましてもいろいろな取り扱いの面におきましては十分注意はしてやっておったのではないかというふうに思われますので、はたして現在の症状が当時の仕事の問題に当然結びつく問題かどうかという問題につきましては、若干の調査の結果を待たなければならないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  106. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 これは大臣にもぜひ、こうした問題が切実な問題として起きている、いま申しましたように、にもかかわらず責任担当者の厚生省はその調査を積極的にやっていない、こういう事実を局長さんもお認めになったわけでございますが、非常に重大な問題だと思いますので、大臣もこれに対して責任ある御答弁をお聞かせいただきたいと思います。
  107. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) だいぶ以前のことでございますから、なかなか調査も困難かと思いますが、私どもはそういう困っている方々がいるとするならば、誠意をもって調査に当たるようにいたしたい、かように考えている次第でございます。
  108. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 疑うようですが、報告もぜひお聞かせいただきたいという点について、大臣も責任をとっていただけますね。
  109. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) 調査の上、わかりましたならば全部御報告申し上げるようにいたしたいと思います。
  110. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、この小川さんの救済についてあらかじめ本人にも会いましたので、こまかいことを八木局長さんに御報告、お聞きいただいたりして、時間をこうした委員会で長くとらないようにしたわけでございますが、これをいろいろ御説明したときに局長さんが、この人はガス障害であるならば援護法より旧令共済による救済が優先すると思う、こういうふうにおっしゃいました。私は旧令共済による救済は忠海製造所の組合員である人に限られていると、こう思いますが、どういうわけでそういうふうにおっしゃったのですか。
  111. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 旧令共済関係の、本来当然、元の海軍工廠の軍属でございまして、その軍属の方が公務によりまして障害になったということになりますれば、公務による病気は当然旧令共済で措置されるということでございますので、旧令共済で、もし公務ということが、当時発病しているということがはっきりしておりますれば、これは旧令共済の問題ではないかというふうに考えられるわけでございますが、お話が出ております、この小川さんの問題につきましては、御本人のほうから請求がございましたのがつい最近であるわけでございます。すでに援護法ができましてから二十年以上も経過しているわけでございます。さらに退職された終戦のときから考えますと三十年近くになっている。したがいまして、最近こういうようなお話が出てきたということになりますと、特に結核というようなお話になってまいりますと、結核の問題でございますと、これは毒ガスのたとえ研究に従事しておられたという場合でも、直接の結核との困果関係というのは、これは公務の面では考えられないんじゃないかというようなことで、むしろ気管支炎というようなことが考えられるんではないかということもあるわけでございますが、この辺の問題につきましても、当時海軍工廠時代にお医者さんに見てもらったとかいうような記録等もないわけでございますし、その後いろいろな相当な期間も経過している。したがいまして、その間の医学的な面でこの辺の問題をもう少し検討しなければいけないんじゃないかということで、具体的な個別ケースの問題でございますので、もう少し具体的な個々の内容につきまして、実際にどういうような勤務をされておられたのか、それから退職後どんなような健康状態であったか、あるいはお医者さんにどういうような治療を受けておられたかというような問題につきまして、いま少し中身を検討さしていただきませんと、現段階ではまだ何とも申し上げられませんというようなことで申し上げた次第でございます。
  112. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いま私がお聞きしているのは、局長が、この人はガス障害なんだから援護法よりも旧令共済による救済が優先すると、それは旧令共済のほうですよと、こういうふうにおっしゃいましたね。で、私は、それや旧令共済のどれで救おうというのか、どれがそれに当てはまるのかと、こうふしぎに思ったわけなんですね。ですから、いま公務員云々とおっしゃいましたけれども、軍が解散して、同時に共済組合も解散した。その後旧令共済というものが再び取り上げられる。そのときに救済されたのは年金の問題であって、それにも当てはまらないんじゃないか。また、ガス障害者というふうに、もうはっきりしているんですから、まあ大蔵省で行政措置をされたあの要綱、ガス障害者救済のための特別措置要綱、これで救おうというのか。それにしても忠海製造所の組合員に限ってこれは行なわれたものなんだからおかしいなと、こう思ってお聞きしたわけなんです。
  113. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 旧令共済の海軍軍属の正規の身分の方でございますれば、公務の障害ということになりますと、当然当時の旧令共済組合法によります措置というものが対象になっておったはずでございますので、その意味からも、はたして公務によりますガス障害あるいは気管支炎ということが、当時の時点におきまして、はっきりしておるということになっておりますれば、当時旧令共済組合において措置されておったんではないかというふうに考えられますので、その意味で公務であったかどうかと、むしろ勤務に関連した問題じゃないかというようなことで、旧令共済あるいは援護法、両方の問題にからむわけでございますけれども、まあ二十何年、そろそろ三十年近くたっている問題でございますので、当時ガス障害でほんとうに生活が、生活機能の面、いろんな面で、お医者さんにかかり、どうにもならないという状態であったとすれば、旧令共済で措置されたというようなこともあり得たんではないかというようなお話を申し上げた次第でございます。
  114. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 まあ、まだ納得しませんけれども、いずれにしても話をもう少し進めたいと思います。  きょうは大蔵省の方はお見えになっておりますか。——大蔵省にお聞きしたいんですが、確かに二十九年当時は忠海製造所だけの問題でございましたから、そこだけに限ってこうした特別措置要綱で行政指導がされたものと私は思います。しかし、新たなケースとして海軍でも毒ガスを使っていたと、こうはっきりした場合には、本人の身分は旧令共済の組合員なのですから、海軍の場合にも適用して救済すべきではないか、できるのではないかと、こういうふうに思います。いかがですか。
  115. 鈴木吉之

    説明員(鈴木吉之君) お答え申し上げます。  旧令共済の関係で私どものほうでただいま先生からお話がございましたように、特別な措置をとっておりますのは、戦時中に広島県にございます大久野島というところで陸軍の忠海兵器製造所というところに勤務しておりました旧陸軍の共済組合の組合員であった方々で、ガスに関する特別な救済措置をとっておるわけでございますが、そこで毒ガスの製造が行なわれておりまして、その製造に直接従事をしておったという現実の状況をつかまえまして、かつて旧共済組合員であった方についての特別な措置をとっておるわけでございまして、私ども承知しております限りにおきましては、製造か行なわれておった事実があるのはここだけであるというふうに承知しておるわけでございます。
  116. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ですから、そのためにこのガス障害救済のための特別措置要綱でもって行政指導したわけですね。これは海軍じゃないわけです。けれども、海軍の場合でもこれを適用して救済すべきではないかと、この点、いかがですか。
  117. 鈴木吉之

    説明員(鈴木吉之君) ただいま厚生省の援護局長のほうからもお答えございましたとおり、当時、お話がございました相模における海軍工廠の状況がどのような状況であったかということについて十分調査してみなければわかりませんわけでございますが、その結果を待たなければ同様の措置をとるかどうかということについての判断はいたしかねるというふうに考えるわけでございます。
  118. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 で、このガス障害者救済のための特別措置要綱というのは、ガス障害者を救済するのが目的でございますね。で、同じ旧令共済の組合員が同じガス障害を受けていた場合に、陸軍は旧令共済で、海軍は援護法でと、こういうような救済に差別するのはおかしいと思うんです。大臣もお聞きくださっておりますので、どうお考えでしょうか。私は、海軍の場合にも旧令共済のほうで救済する方向で大蔵大臣とも御相談していただけるようにしていきたいと思いますが、いかがでしょう。
  119. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 陸軍、海軍というような問題ではございませんで、当時現実にその方がやっておりました仕事の内容、それからその後発病しました病気、これが公務であるか、あるいは勤務に関連するかというような面で、具体的な勤務の内容なりあるいはその後の障害の程度という問題によりまして、処遇ができるかどうかという問題でございますので、陸軍でございますとか海軍とかという問題ではございませんし、公務なりあるいは勤務に関連するという問題でございますれば、旧令共済あるいは援護法、どちらかの問題にいたしましても考えられるということで、問題は、まあ、この方がやっておりましたお仕事の内容なり、あるいはその後発病しました病気状況、そういうような問題がきめ手になるんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  120. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 陸軍、海軍じゃないと、こういうふうにおっしゃったので、まあ、それを今後大事な局長さんのおことばとして受けとめておきたいと思いますが、この「ガス障害救済措置の概要」というのを大蔵省からいただきましたんですが、こと中には、ガス障害救済のための特別措置は旧陸軍造兵廠忠海製造所従業員で旧陸軍共済組合の組合員であった者に対して適用されていると、いきなりこういう人だというふうに出ているわけなんですね。それで事実、これはそういう組合員に限っていろいろと手帳が交付されたり、特別手当ですか、そういうものが出たりしているわけですね。それで、これで適用しないからこそ、学徒の問題や挺身隊員の問題が非常に窓口もなく冷たく取り扱われているということが問題になっているわけで、陸軍でもない、海軍でもないと、ガス障害者、特に毒ガスがいま現実に問題になっているのですから、それじゃこういう措置が同じようにされるんだと、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  121. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先ほど来申し上げておりますように、この方が戦後非常に長期間にわたりまして、最近になってお話が出てきたというようなことでございますので、かなりまあ、古い時代のことになりますので、その意味で調査は非常にむずかしい問題があると思いますが、やはり当時この方がどんなような勤務の内容をやっておられたかと。したがいまして、その後発病しました病気というものが、その方の勤務の内容と直接関連性がある、相当因果関係があるのかどうかというような問題が中心になろうと思いますので、そういう点につきましての十分な調査をいたしまして、勤務の内容から見まして、その後の発病というものが当然結びつけられ、あるいはその障害の程度におきましても援護法等の対象になります程度の障害であるということになりますれば、援護法なりの対象になるということでございますので、現段階におきましては、もう少しこの方の勤務の内容なり、あるいはその後の状況なり、あるいは当時のいろんな関係者のお話なり、あるいは病状なり、因果関係等につきましての内容の研究をさしていただきたいと思いますので、しばらく時間をかしていただきたいというふうに思う次第でございます。
  122. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 どうも話が何か、私、局長さんのお話がすなおに受け取れないんですけれども、私がお聞きしているのは、もう一度申しますと、援護法で救われるんだと思っていたところが、局長さんが旧令法で救うほうが優先だと、こういうふうにおっしゃったことから話が始まったわけですね。ところがこの人が旧令法で救えるかどうかと、まあ私思うわけなんです。はっきり言えばね、いまの旧令法で救えないんじゃないですか。そこで、しかし私は、局長さんが旧令法、旧令法ということを非常におっしゃっている意味もわかるわけなんですね。この方は確かに海軍の軍属であり、旧令共済組合の組合員なんだから、その立場を非常に尊重していてくださるということを力強く思うわけなんですね。しかし、旧令共済の組合員であるというだけでは、このガス障害救済のための特別措置要綱ではどうにもできないわけですね。ですから忠海製造所の従業員に対してという、そういう行政措置を、あのときは陸軍の問題として陸軍で毒ガスを使っていたというんだから、その範囲にとどめて行政措置をしたと私思うんですね。いやほかにもあったら、ほかのほうも同じように救いますよなんて言えば、まだほかにも毒ガスを扱っているところがあるかのような感じを与えることになるんですから、そういうことは私はもちろん言うはずもありませんし、忠海製造所では確かに毒ガスを使っていたということが明らかになったので、そこにいる従業員を対象にした行政措置であるということば当然だと。しかし新しい事実が生まれてきた場合には、この行政措置——非常にこの内容が、私はまあ考えている内容だと思うんですね、ですから、適用させていったらいいんじゃないかと。適用させられれば非常に本人は喜ぶと思うんですね。むしろ援護法でやるよりもこのガス障害者救済のための特別措置要綱の行政指導を受けたほうが本人は早く救われるんじゃないだろうか、こういうふうに思いますので、陸軍とか海軍とかという差別を取り除いて、そして海軍の場合にも旧令共済ができるように、大蔵大臣がこれは責任でいらっしゃるんだから、厚生大臣のほうからも働きかけをしていただけないものかと、こういうふうに申し上げているわけなんです。
  123. 鈴木吉之

    説明員(鈴木吉之君) 忠海に限ってという先生のお話がございましたので、私からお答えさせていただきますが、忠海の兵器製造所につきまして、そこの従業員でありました旧陸軍の共済組合の組合員について特別な措置をとっておりますのは、先ほども申し上げましたとおり、忠海の製造所において戦時中毒ガスの製造が行なわれておったと。その製造に直接従事しておった方々、そういう人に対する特別な措置であるということでございますので、したがいまして、ただいま御指摘のございました事例については、これに類するものであるのかどうかという点、あるいはその公務の関係等につきましては、援護局長からお答え申し上げましたとおり、今後の調査を待った上でいろいろと仕事が進められるということになるのではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。
  124. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ひとつその点よろしくお願いしたいと思います。  次に、県や市町村の窓口業務のあり方ですが、千葉県でこういう連絡をしているわけなんですね。この内容は、相模海軍工廠化学実験部の名簿を厚生省から受け取りましたと、これで人証を取りなさいという、そういう意味の連絡なんですね。私これを読んでみて、こういう業務に携わっている方はおわかりになるかもしれないけれども、一般の、特に農業の婦人なんかは、ちょっとこういう書き方というか、言い方じゃあほんとうにわからないんじゃないかと、もっと親切にできないものか。とにかく長い間苦しんでやっと厚生省にすがりつくような気持ちで申請しているわけですね。それに対して県からこういう、まるでメモみたいな一片の紙きれが封筒の中に入って渡された。ほんとうにわかんないですよ、これ。だれをどうしてどうしなさいというのか。紙がないから小さい紙で書いたのかもしれませんけれども。もう少しタイプで打つとか、また町役場もあるわけですから、県から町役場に連絡し、役場の人がそこの家へたずねて行って、これはこういうことなんですよというふうにやっていただきたいと思うんです。そこでその点いかがでしょうか。
  125. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 私どもの担当しております行政の対象の方は遺族の方でございますとか、あるいは戦傷病者の方というようなことでございますので、私ども機会あるごとに取り扱いの問題につきましては十分御本人の立場になりましてものごとを処理するということで、できるだけそういうような面で指導等もやっているわけでございます。  先生からただいまお話ございました点につきましてやや事務的な連絡に流れ過ぎているというような感じもございますし、特に市町村あるいは県等におきましても平素十分注意いたしまして、遺族なりあるいは戦傷病者の立場に立ってものごとを処理するということで進んでいるわけでございますけれども、御指摘のような点につきまして今後十分注意いたしますとともに、さらに機会があるごとにそういう問題につきましては県なりあるいは市町村につきましての指導の万全を期してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  126. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 やや事務的——事務的だということを言ってるんじゃなくて、不親切ということですね。私は事務的は事務的でいいと思うんですけれども、もっとあたたかくやっていただきたい、特にあたたかくやっていただきたいということをお願いいたします。  次に、申請書類が出されて審査が進められるわけですが、厚生省から、こういう点の書類が不備だからこれをそろえるように、こういうふうに本人にああしなさい、こうしなさいという指示が来ているわけなんですね。  これを読みましてちょっとお聞きしておきたいんですが、「人証が一人もない。障害の申し立てがないので本人のみでは体質の関係ではないか」と、こういうことが一項目出ているわけです。あんただけが申請しているんだと、だから自分のからだがそういう年をとったからそうなったんでしょうと言わぬばかりの項目ですね、これ。本人が人証をとらなきゃならない、しかもこれは三名か四名ですと、こういうふうに県からのには来ているわけです。そういうなかなかたいへんな人証を三名、四名、農家の主婦が貧乏な中でさがし歩くということはたいへんなことじゃないかと。聞いてみますと、ごく限られた範囲の中でも、同じ職場で働いていた福島さんという人は女性ですがすでに死んでいる。また、門馬さんとか宿谷さん、石井さんという方々もなくなっている。みんなその方よりも若い年齢の方なんですね。で、この人以外に障害の申し立てがないだけに、私は実際は障害があると、こういうふうに思います。そして、なくなっている方も相当多いんじゃないか。そういう中で、主人の病気を看病しながら家政婦をしたり出かせぎをしたりして生活の苦労をしている人に三人も四人も人証をそろえなさいというんじゃなくて、厚生省でこの死因の調査はやれないんでしょうか。
  127. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 最初に、何人かの証言につきましての文書のお話がございましたが、それは、私どものほうが県のほうに対しましてこういう問題を考える必要があるんじゃないかということでございまして、法律に基づく仕事でございますので、本人の申し立てのみでやるということはやはりむずかしいと思いますので、そういう意味から少しでも補強しようということで、なかなか古いことでございますので確実な証拠書類というものがないということも十分考えられますので、そういう場合には当時一緒に働いでおられた方々の証言ということが一つの大きな参考の資料になるわけでございますので、そういう意味でおそらく御本人が現在おられるわけでございますから、当時こういうような関係の同僚なりあるいは一緒の職場で働いてきた人がいるんじゃないかというようなことが得られるんじゃないかというようなことで、そういう面を県のほうに対しまして本人のほうからさがしていただいたらどうかというような連絡がただいまの文書だったと思います。  なお、御指摘ございましたように、私どものほうにおきましても、できるだけ御本人の申し立てあるいは御本人にすべてさがしていただくということではございませんで、私どものほうでもいろいろな資料等を調査いたしまして、当時の関係者等もございますれば、私どものほうにおきましてもいろいろ調査をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  128. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それから、この協議の結果といって五項目指摘されているその三番目に入院のときの治療状況として、「特に二十年ごろからの申し立ての記事がない」と、こういうふうに示されて、それを出しなさい、こういうことでございますが、終戦によって帰ってき、故郷へ帰ってからちょうど二十二年の一月ごろ病気が非常に悪くなって、浜田病院という村の病院にずっと通っていたんですね。しかしそのお医者さんはもうすでになくなっている。また同時に廃業している。ですからカルテなどの資料はどうしようもないわけです。先ほど局長さんも古いことである古いことであるとたいへん御理解くださっているわけで、こういう当時のものを何とか資料として集めて申し立ての記事にするということは非常にむずかしいことだと思うんですね。その点いかがでしょうか。
  129. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 援護法ができましたのが昭和二十七年でございますが、当時におきましても終戦後七年ぐらいでございますが、最近、特に先生からお話ございました今回のケースにつきましては、戦後すでに三十年近くもなるということでございますので、やはり当時の勤務と、それからその後の気管支炎等との関連性というものが公務であるかあるいは戦後の発病かというような点におきまして、一つの発病の時期なりあるいは戦後におきます病気状況というものがやはり大きなきめ手になるわけでございますので、そういう意味におきまして、当時御本人のほうからお医者さんにかかっておったというようなお話が出ておりますので、その間の資料というものがございますればやはりそれが一つの一番有力な参考資料になるわけでございますから、そういう意味で、そういうような資料をぜひほしいということを申し上げているわけでございます。  なお、私ども扱っております多くのケースございますけれども、確かになかなか古いことでございますけれども、ケースによりましては当時の資料というものがかなり整備されておる、非常に古いことではございますけれども当時のお医者さんのカルテ等があるケース等も相当あるわけでございますので、そういうような面から一つの公務であるかどうか、あるいは症状の程度というものを判定するという意味におきましてのその間の資料があったらということを私どものほうからはお願いしているというような次第でございます。
  130. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう一点お聞きしたいですが、「勤務中に多少気管支炎のり病があれば起因の関係があるが、全くそのり病がない」と、こういうふうに示されております。それがないと毒ガスとの因果関係がないということになるのか、この一点お聞きしておきたいと思います。  それから広島大学の報告を見ますと、製造をやめてから十年も過ぎるころからガンが発生してくると、こういうふうに報告されております。ですから、勤務中に羅病がなくともあとで発病するということだって十分考えられるわけですね。しかも勤務中にこの人はからだのぐあいがおかしくなって一時薬品課というところに回ったという事実もあるわけです。で、医学的に本人の現在の病状から毒ガスによるものと思われるということであれば、過去三十年前の資料が完全にそろわなくっても、現実には事実そろえることが因難なのですから、もう少しそういう点緩和していく必要があると、こう思います。いかがでしょう。
  131. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 非常にむずかしい問題でございまして、医学的な判断等につきましては専門のお医者さん等の御意見を伺わなければならないと思うわけでございますが、いずれにいたしましても勤務中に、特に在職中に何らかのそういうような病状があったということになりますと、その勤務との関連の因果関係というのがかなり有力になるということになるわけでございまして、退職後相当期間たってから発病したということになりますと、勤務との関連性よりは、むしろ新しいその後の状況による発病ということではたして勤務との因果関係があるかどうかということが医学的に非常にむずかしい問題になろうかと思われるわけでございますが、いずれにいたしましても非常にむずかしい問題でございますので、専門のお医者さん等の御意見を伺わなければならない問題であるというふうに理解しております。
  132. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、本人があれだけの書類をそろえるということはたいへんなことだと私思いまして、厚生省に伺いましたときに、一体こういう書類は本人だけでそろえているんですかとお聞きしたらば、相談員というのがありますと、それで相談員にいろいろと相談しながらやっているんだと、それじゃこの小川さんの相談員はどなたですかとお聞きしまして教えていただいたわけなんですね。それで小川さんのところへ行って、とにかくたいへんでしょうけれども、相談員もいらっしゃるのだからそういう方にもいろいろ相談して、これからそろえる資料その他もたいへんむずかしくなるからしっかりおやんなさいと言ったら、相談員ということも知らないんですね。それで、そんな人は来ませんと言うんですよ、知らないと言うんですね。だからそれはそうかもしれないと、その人を何も責める必要もありませんが、とにかくあなたもうそういう人がいるということを知って、こういうところにいるこういう人ですよ、電話かけておきなさいと、こう言って連絡とるように言ったわけなんですが、私、ここにもまたこういう不幸な、気の毒な人をほんとうにあたたかく励ましながら救っていかなきゃならないのに、その最先端の相談員がいるということも知らないと、その相談員の方も一ぺんも来てないと、これじゃほんとうにたいへんだなあと、こう思って一体相談員というのはどういう人がなるのかしらといろいろ考えてみましたら、この相談員の方のことに非常に大きな問題があるわけですね。で、昭和四十九年度から七百円にしたと、幾ら篤志家で金額には関係がないといっても、こういう援護行政の大事な役割りを果たす人に対して七百円というのは一体何を考えているのかなあと、これじゃお願いしますよとも言いにも行けやしないと、こう思ったわけなんです。どうですか、この点は。
  133. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) おしかりをいただきましたが、私ども先ほどもお話し申し上げましたように、援護の対象になります方々は、遺族でございますとかあるいは戦傷病者の方々でございますので、できるだけあたたかい気持ちでその方々のお立場に立って仕事をしていかなければいけないんじゃないかというようなことで、現実に恩給にいたしましても援護法の問題にいたしましても、書類の作成等なかなかむずかしい問題もあるわけでございますので、市町村の役場の職員なりあるいは相談員の方々がそういうような方々のお立場に立って現実にはかなりお手伝いしてお仕事をやっていただいているというようなことでございますけれども、現在の戦傷病者相談員なりあるいは遺族相談員の問題につきましては、民間の方々にお願いしているというようなことで、むしろ謝金というような額の多寡ということではなしに、ある意味では民間の篤志家の方々に御協力を賜わっているということで、戦傷病者なりあるいは遺族の相談に応ずるというような方々にでございますが、いずれにいたしましても、私ども援護行政におきまして民間のいろいろな意味で御協力を賜わっている方々でございますので、その謝金等につきまして最近の物価情勢等も考えまして額が非常に少ないというおしかりはいただいたわけでございますが、本年度予算におきましては従来より四割程度アップしているというような実情でございまして、今後とも戦傷病者相談員なりあるいは遺族相談員の処遇の改善につきましては努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  134. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ここでこの七百円ということについてもうちょっとお聞きしておきたいんですが、婦人相談員とか母子相談員、これは非常勤の職員、しかも三万六千円、同じような立場にある方だと思うんですが、こちらのほうは非常に月額が多いと、援護法関係の相談員は七百円、あまり違い過ぎると思いますが、この点、そういうものと比較してそのレベルまで上げようとしてお考えになっているのかどうかですね。それから戦没者遺族相談員の月額七百円、これは一体どういう計算で七百円というものを積算したのか。それから今度聞くところによると、要求を千円要求したとか伺いましたんですが、千円の要求なんというのはあまりにも低過ぎるんじゃないか、こういうふうに思います。この点いかがでしょうか。
  135. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 母子相談員あるいは婦人相談員のお話が出ましたけれども、やはりそれぞれのできました相談員の制度なり歴史なりあるいは沿革なり、あるいはやっておられますお仕事の内容なり、そういう面でいろいろ差がございますので、必ずしも同じような考え方比較するということにはいかないんじゃないかというふうにも思われますし、さらに母子相談員、婦人相談員等につきましては地方公務員であるというようなことで事務所に出てお仕事をされるというようなお仕事の内容の性格等もあるわけでございますので、そういうような面から申しますと一律に比較することはむずかしいというふうに思われるわけでございます。  なお、従来五百円でございました根拠というお話でございますけれども、この戦傷病者相談員あるいは遺族相談員の制度ができましたのは比較的新しい時期でございまして、戦傷病者相談員につきましてはたしか昭和四十年だったと思いますし、遺族相談員につきましては四十五年というようなことで、この相談員の制度ができました趣旨も、こういうような非常に援護行政に協力して民間の立場でやられておられる御熱心な方々があるというようなことで、何とか相談員という名称を考える必要があるんじゃないかというようなことからできました制度でございます。したがいまして、民間の方々の御協力に主として仰いでいるわけでございますけれども、その際におきましてもある程度の電話代等の実費も必要ではないかというようなことから当初五百円でスタートしたわけでございますが、先ほど御説明申し上げましたように、最近のいろんな事情等を考慮いたしまして、本年度から四割アップしたというふうな状況でございます。
  136. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いままでいろいろ議論をしてまいりましたが、大臣にずっと聞いていただいていたわけでございます。この小川さんの件は身分は海軍のもと軍属であり、毒ガスの実験研究をしていた。現在その後遺症と思われる病状に苦しんでいるわけで、これは行ってみてほんとうに深刻な問題であるということを痛切に感じてまいりました。私も一日も早く救済の手を差し伸べるべきだと思います。そういう点で毒ガスを取り扱っていたということを早く実態調査し、これを認めていただいて、先ほど申し上げましたように、旧令共済の適用をして、医療手帳の交付、医療費の支給、健康管理手当の支給、こういう一般障害者に対する救済措置だけでも早急にすべきである。これを大臣に強く要求いたして、さらに第二段階の認定の検討に移れるように進めていただきたいと、こう思うわけでございます。
  137. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) この具体的な小川さんの件につきましてはだいぶ以前のことでございますので、なかなか資料を集めるのもたいへんなことだと思います。それから本人が途中病気になりましてお医者さんにかかっておった。ところがお医者さんがやめてしまったとか、そういうふうないろんな特殊な事情があるようでございますが、せっかく本人がそう思って申請をするわけでございますから、私のほうもできるだけ親切な取り扱いをいたしまして、厚生省においてもいろんな調査をいたしまして判断をしてまいりたいと思います。いまどういうことになるのか、結論については私も何とも言えませんが、できるだけの資料を集めまして、実態の把握の上、必要があるならばそういう措置を講ずる、こういうことにいたしたいと考えておるわけでございまして、十分調査をいたしまして、その結果等につきましては援護局のほうから先生のほうに御連絡をさせると、こういうふうにいたしたいと思います。
  138. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 最後にもう一つお願いしたいことがございます。これは新潟県の三条市上田島の高野マツさんという方から遺族年金の請求がずっと前から出ておりましたが、その審査の経過、これを簡単にどういう結論になるのかお聞かせいただきたいと思います。
  139. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先生からお話ございましたのは立川飛行機の下請会社の高亀製作所の職員のお話ではないかと思いますけれども、現在の援護法のたてまえといたしましては、軍人軍属のような直接軍の構成員であった方、あるいは直接軍の構成員ではございませんでも、もとの国家総動員法等によります徴用工でございますとか、あるいは動員学徒のように直接身分はございませんでも国の相当な強制力が及んでおったというようなことで、軍人軍属と同じように考えるべきじゃないかというようなことで準軍属の方を対象にしているわけでございます。いわゆる赤紙、白紙というような方々でございますけれども先生からのお話ございましたケースの方につきましては私どもは調べましたところが、これは当時のいわゆる総動員法に基づきます徴用というような方ではございませんで、たまたま当時の軍需工場でございましたので、戦争協力という面から申しますと、仕事の内容におきましては軍需工場でございますので、徴用工がやっておったのと同じような仕事をやっておったわけでございますけれども、国なりあるいは軍の強制力という面から申しますと、御自分で営業をやられ、お仕事をやられておったというような方でございますので、現在の援護法のたてまえから申しますと、そういうような方々につきましてまで援護法の範囲を拡大するというわけには現在のたてまえではむずかしいのではないかということでございます。せっかく先生の御指摘ではございますけれども、現在の援護法のたてまえから申しますとなかなかむずかしい問題ではないかというふうに考える次第でございます。
  140. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この高野マツさんの御主人であった高野菊次さんというのは、軍需工場である立川飛行機の下請の高亀製作所で仕事をしていて、この立川飛行機で空襲のために死んだ。その際に天皇陛下からも祭祀料として三十円をもらったと、このマツさんはそれを押しいただいて、主人が名誉の戦死ぐらいに思っているわけです。またこの工場は、皇国第四八九二工場カという管理工場と思われる工場に指定されておるわけです。ただ、この高野菊次さんが白紙をもらっていない。そういうだけで自分の点がだめなんですね。しかし一般戦死者と非常に違うと思うんですね。何とかこの高野マツさんの心情からこれは認定できないのかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  141. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先生のせっかくのお話でございますけれども、この方につきましては総動員法によります徴用というような国の強制力に基づきます関係ではございませんで、御自分の経営されておりますお仕事をやっておられた際にたまたま空襲によってなくなられたということでございますので、むしろ一般の市民の方と同じようなお立場にあるのではないかというふうに考えられますので、先ほど来お話が出ておりますように、現在の援護法におきましては、やはり直接国の何らかの身分関係がある方あるいは身分関係がなくても同じように考えられる方々に対しまして、国が国家補償の立場で援護を行なうという現在の援護法のたてまえから申しますと、非常にむずかしい問題ではないかというふうに考えられる次第でございます。
  142. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは結核予防法等の一部を改正する法律案に関連をいたしまして厚生省の見解をただしたいと思っております。  戦前戦後にたいへんしょうけつをきわめましたわが国結核患者は、抗結核剤の開発やあるいは社会的、文化的な水準の向上等から、昭和二十二年に人口十万対比で一四六・四人が昭和四十五年には一五・四人に、十分の一に減少しております。確かに大きな減少ぶりであります。ところが、一方いまだに三十万の患者が野放しにされているというふうに関係者の間からはきびしく指摘をされております。昭和四十八年の六月に日本結核療養所協会の医療研究会が行ないました民間療養所における結核入院患者の実態調査によりますと、入院患者の中で高齢者が激増しておって、五十歳以上が全入院患者の二分の一を占めておるわけです。四十歳代を含めますと、四十以上の入院患者というのが三分の二を占めているんです。  二つ目には、肺結核の病型からいいますと、空洞型——空洞のできている重症型ですが、それが六二・二%で漸次増加傾向をたどっている。  三つ目には、昭和四十三年度の調査に比較をいたしまして、再入院が増加をしてきている。  四番目には、治療目的達成困難な者がその中で二四・二%に達しておる。  五番目には、非結核性の合併症を有する者、これが四三・九%だというふうな実態を示しています。で、こういった観点から昨年厚生省結核予防課の廃止ということについてもたいへん関係者から強い反対があったと、むしろ結核対策強化が叫ばれておったわけでございます。  で、そこで最初にお伺いをしたいのですけれども厚生省の実態について、日本の結核現状の実態についてどういうふうに把握しておられるのか、その御見解をまず最初に簡単にお聞きをしたいわけです。で、何から何までというと長くなりますので、若干最初に聞きたいのは、外国との対比ではどうなのかという問題、それから患者の実態は、いま調査資料の一部を申し上げましたけれども、そういった結核患者の実態、それから日本の結核ベッドと患者との対比、あるいは国民全体の層での結核患者の集中して蔓延している、偏在しておるといわれているんですけれども、そういった実態はどうなっているか、それらの点につきまして簡単でけっこうでございますから、実態についての御報告を最初に伺いたい。
  143. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) あるいは先生の御質問に対して二、三落とす点があるかもわかりませんけれども、あらかじめ御了解いただければと思います。  まず、外国との比較でございます。外国との比較につきましては、死亡率比較しかございませんが、現在のところ日本の死亡率人口十万に対して一一・九になっております。これに対しまして先進国の例をあげますと、たとえばオランダが一・二、アメリカ合衆国が二・七、あるいは西ドイツが八・三というように日本よりも死亡率の低い国が先進国にはまだございます。一方かなりの、たとえばフィリピンをあげますと、人口十万対八十というように、わが国に比べましてかなり結核対策におくれておられるような感じのするところもございますが、いわば日本国は中進国の上というあたりに位置するんじゃないかというような感じでございます。  それから第二点の結核の現在患者でございますけれども患者をなかなか把握する法はございませんが、結核予防法では結核患者の登録制度というものがございます。現在昭和四十八年で結核患者として登録されております総数は九十二万三千人になっております。それに対しまして、そのうちにいわば活動性といいますか、まだ結核がいわば完全になおっていない、現在疾病中と思われる活動性と称される方がそのうちの五十七万人を占めております。さらにその中に感染症と感染性のおそれが強い方が十一万四千人ございます。一方入院の関係で見ますと、昭和四十八年の三月の末の入院患者数が十万四千人になっております。これに対しまして、現在結核ベッドとして把握しておりますのが十五万五千床でございますから、結核のベッドの利用率は六四%程度になっているような現状でございます。  以上概括的に申し上げました。   〔委員長退席、理事須原昭二君着席〕
  144. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そこで、いま実態についての御見解を伺ったわけですけれども、まあ結核斜陽論というのが盛んに横行いたしまして、結核対策の軽視の風潮というのはやはりたいへん強くなってきているわけですが、実態はいまお聞きしましたように、欧米諸国と比べましても、私の調査をいたしました統計によりますと、これはいまの一一・何人かの死亡率、これはほぼ欧米諸国、オランダやデンマーク、アメリカ、そういったところと比べると約二十年前の水準なんですね。ですから、先進欧米諸国と比べたら二十年おくれていると。いまの日本の水準というのは、大体そのデータで見ますとポルトガルだとか中南米諸国程度だという実態だという点がやはり明確にされなきゃならぬと思うんです。したがって、決して結核対策を軽視しちゃならぬという点を、こういった数字的なデータからも言えるのではないかというふうに思いますし、結核はそしてまたそんなに簡単に片がついていないんだと、むしろ逆に社会の底辺に深く潜行していっているというふうなのが実態ではないかと思うわけでございます。これは時間がありましたら少し申し上げていきたいと思ったんですけれども、そういった点で、決して結核対策を軽視してはならないという点のまあ集中的、典型的な実情を一つ申し上げて、具体例を出してお尋ねをしていきたいというふうに思うわけです。  具体例と申しますのは、大阪市西成区、ここは大阪市内でも格別の罹病率、発生率の高い地域です。中でもその中で集中的に問題になっておりますのは西成区の愛隣地区というところの結核対策でございます。これをちょっと簡単に実情を紹介申し上げてみたいと思うわけですけれども、幸いに大阪市の西成保健所の学会報告をたいへん簡単にまとめた資料がありますので、これを要点だけ紹介をしたいと思います。  愛隣地区というのは西成区の東北端に位置しまして、面積〇・六二平方キロ、人口約四・六万人、四万六千人です。そのうち約二万人が単身労働者、全国各地より集まった者が大半を占めている。全国的に見て結核患者は減少しつつあるが、愛隣地区におきましては横ばい状態が続いており、罹患率、有病率は他都市と比較して異常な高値を示している。どの程度の異常さかという、これはグラフが出て、数値が出ておりますので、一、二申し上げてみたいと思いますけれども、これは名古屋の例をとりますと、名古屋の罹患率が一八〇、これに対して西成の罹患率が八八三、その西成の中の問題になっておる地区の愛隣地区では罹患率は二一三三です。それから有病率を見ますと、同じく名古屋は六二〇、西成の有病率というのは二一五二、中でも愛隣地区は三七〇〇、これはけた違いに異常な値を示しております。ここで感染源対策の一環として、住民の要求もあって、毎年一回であった住民健診を毎月一回定めてその実施結果を出しております。これは昭和四十八年度の分でございますけれども、これによりますと受診者千百八人の中で要精検者、精密検査を要する者ですね、要精検者が百五十七名、一四・二%という状況なんです。しかもその百五十七名のうち四十五名は登録済みの人です。すでに以前に登録をした人、全く治療中絶患者であるという状況になっております。これがまあ実態になっておるわけでございます。  そこで問題になってまいりますのは、愛隣地区の単身労働者の結核相談、これはもう保健所で一般的にやっていて間に合わないということで、その愛隣地区の集中的な対策として、私立更生——大阪市立ですね。大阪市立更生相談所及び保健所の分室、これが協力してやっておる。ところが、病床数の減少によって「収容が非常な困難を来しており、事故退院等により再入院する場合は相当期間待機せざるをえない状況のため、その在野期間中が感染源対策上の問題点である。当所では、」これはまあ、まとめた内容を全部一応紹介しますね。「当所」というのは大阪市立更生相談所ですが、私立更生相談所は、大阪市の環境保健局、それから私立更生相談所と西成保健所とが協力をして、「昭和四十七年九月から四十八年五月まで三回に分けて近畿一円の国公立病院十一カ所、私立病院五カ所を訪問し、その実状を訴え収容を依頼したが、愛隣地区患者は即日入院を要するため難色を示された。」それから大阪市消防局の資料によりますと、昭和四十八年二月から十二月までの発生件数、——消防局はこれは救急患者の搬送ですね。これの「発生件数は百二十四件で、収容したもの六十件、一時収容したもの三十二件、診療後帰したもの二十四件、その他八件」、そのまあ件数もさることながら、「その所要時間は一件あたり」——これは救急車ですよ。「五十分から十五時間を要している。」こういう状況になっておるわけでございます。こういうふうにまとめられた内容をもう少しリアルに申し上げてみますと、たとえばこの地域では一人の入院患者を発見しますと、要入院患者を発見するとベッドさがしにどのくらいの苦労を要しているかと、これは保健所——西成の保健所と大阪市立更生相談所の職員の意見です。一人の患者を入院させるためにベッドさがしにまず平均二十五ないし二十六ヵ所ぐらいに電話をしてやっとさがすことができる。多い場合には一人の患者さんのために、五十ヵ所以上に電話をしなければならない。こういうふうな状況になっておるということがいわれています。それから、大阪市の消防局結核患者収容状況の資料というのを見ますと、これはもう実にたいへんなんです。先ほど平均五十分から十五時間を要しておる——平均じゃなくてそのぐらい要しているというふうにいわれておりましたが、これはたまたま大阪市の消防局の資料によりますと、昭和四十八年度中の結核患者収容状況というので、これは西成の愛隣地区管内のデータですが、搬送人員が二百七十七人、一件あたり五十分から十五時間だというふうに書かれておりますが、これによりますと、具体例——非常にリアルに消防局ですから報告をしているわけですね。その報告をそのままちょっと参考のために申し上げてみますと、どのくらいかかっているかというと、「八月十一日西成区松田町二−二十七幸陽荘十七時四十四分に覚知し、大和中央病院に選択搬送したが満床のため同病院前で三時間十六分待機したのち、救急指令台の指示により岸和田市民病院へ搬送(到着二十一時十分)同日二十三時帰署、本件所要時間計五時間十六分。」   〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕  また、次の例は「九月四日二十時に覚知し、大和中央病院に選択搬送したが満床のため救急車内で同病院医師の診断を受けたところ続流性結核と判明し入院の必要があるので、救急指令台に連絡し、収容可能な病院選定を依頼  大和中央病院到着(二十時二十三分)後同院前にて、観察待機し、翌前二時から五時までの間港救急隊の応援観察を受けた。  同四時五十五分海道救急隊が再度出場し、港救急隊と交代し、引き続き観察し、同九時十五分いったん出張所に引き返し、二部から一部へと仕事を引き継ぎ、同十時四十五分、救急指令台の指示により暁明館病院に収容  本件所要時間十四時間四十五分」、こういうふうな状況になっているわけでございます。こういう状況でございますから、これはここでは何としても入院患者をすぐに入院させられるベッドがほしい。保健所のまとめのところではこういうふうにいわれております。「1。愛隣地区結核患者の収容については、現在の労働者の社会環境から即刻収容しうる施設が望まれるので、国公立をはじめ、民間医療機関患者受入れの協力を要請する。  2。併発症に関しては、精神病の併用病床を、国公立病院に設けてほしい。」こういう二点が書かれているわけでございます。  ちなみにこれはどういう状況になっているかといいますと、いまこの愛隣地区の扱っている患者の入院取り扱い状況というのは昭和四十七年度で八百三十八人、昭和四十八年度は八百六十一人です。ところがこの中で保留をされて即日入院できなかった者は四十八年度は八百六十一人中百三十人、それから結核病床は大阪府関係だけでもこの二年間、四十七年三月末から四十九年三月末までの間で千八百五十九床、約二割近く、二割程度二〇%近く病床が減っております。  それから収容状況の行き先きはどういうふうになっているかということですが、これを見ますと、これは西成保健所管内でございますから、愛隣地区と一般地域とに分けてあるのですがね。昭和四十八年度を見ますと愛隣地区が六百八十六人、一般地域が百八人、計七百九十四人になっております。それが収容状況は国立が二十七人、公立が六十一人、私立が七百六人というふうな状況になっているわけでございます。そういう状況でございますから、これは一番問題になっているのは、ベッドがないという問題が一番大きな問題になっている。  最初にお伺いをしたいのは、こういう具体的な集中的な状況というのが出ているわけなんで、そこで保健所関係者が切に願っている国公立の病院にまず収容をしてもらえないものだろうか——先ほど申し上げた国立、公立というのは一般患者なんですね。一般患者のうちの一部なんで、愛隣地区からは国公立病院は一切収容がされていない。これを何とかして受け入れてもらえないだろうか、というのは開放性の患者がたいへん多いわけです。これもちょっと申し上げたほうがいいんですけれども、そういう点で、国公立病院でのベッド数がこの十年の間に十万から減っておるわけですけれども、十年じゃないですね、昭和三十三年から見ますと、二十六万ベッドあったのが結核病床十五万に減っているわけだから十一万ぐらい減っている。しかも充足率が六割余りということになっておるわけですから、これはたいへんなことで、感染性の患者さんが十七万ですか、ですから十万ぐらい入っておったら七万ぐらいは排菌をしながら感染性の患者さんが一般地域で野放しにされておるという状況になっておるわけですね。で、集中的に出てきておるのは、たとえば愛隣地区だと、こういうかっこうになって出てきておるのですけれども、国公立病院が収容するという立場をなぜおとりにならないのか、これは一ぺんどうしてもはっきりしていただきたいというふうに思うわけなんですが、いかがですか。
  145. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 愛隣地区の具体的な事例につきまして先生から御質問と御説明があったわけでございますが、われわれの資料には愛隣地区からの命令入所患者、四十七年末でございますが、国立が十二、公立が五、私的医療機関が五百五十六という数字がございまして、ゼロではございませんが、非常に私的に多く入所しているという実態はいなめないと思うのでございます。実は大阪府の医師会長からも昨年来何度も電話その他具体的にお会いしてお話がございまして、この愛隣地区の結核患者の収容について話し合いたいということで、私のほうでは近畿の地方医務局というのがございますので、そこも参画いたしまして、大阪府衛生部、労働部、あるいは市の環境保健局、民生局、消防局、それから西成保健所、大阪府の医師会、西成地区の医師会、国公立の病院長のおもなる方々、こういう方々で協議会をつくるということで御相談ございましたので、当然のことながら積極的に参加していろいろ対策を協議していただきたいということでお願いしたわけでございます。その後、協議の経過等も、概要もございますが、非常にむずかしい問題をかかえておるようでございます。先生のおっしゃるように、実態は私立に多く入っておりますが、愛隣地区の結核患者が喀血、その他病気を持ちながら労働しておる、病気が急変する、したがって救急患者的な収容体制を考えなきゃならぬ、こういうことになりますと、国公立ももちろん収容を積極的にすべきでございますが、一面また愛隣地区と関係の深い近隣の私的病院等も含めましてその際収容するという実態もございましょうし、また大阪市の福祉関係あるいは厚生関係等の御配慮等もございまして、実態はいままでの収容の数字は私的に多いという形になっておるのもまた実態であろうと思うのでございます。われわれとしてはこの協議会のこまかい経過は詳細には存じませんけれども、やはりこの愛隣地区だけで急に患者が発生した場合、これは本来は望ましくないのでございまして、健康管理あるいは健康診断等がもっと徹底して、悪化しない状態のときに結核治療ができるのが望ましいんでございますけれども、この点につきましては特殊な条件の地区でございますし、現実には医療としてそれに対応しなきゃならぬというふうに思うわけでございますので、最近入りました愛隣地区の対策の一環として、第一次の収容施設を愛隣地区に小規模ベッドでつくろうというようなお話し合いがこの協議会によってなされて、予算的にもこれが具体化がはかられるように聞いておりますので、当面の救急的な収容については、そのようなものができますればたいへん対策として前進するのではなかろうか。その後の第二次的な収容について十分この協議会等を通じまして、国公立ももちろんのこと、私的も含めまして、お互いに協力し合うというようなことになろうかというふうに、直接参加しておりませんので、いろいろの報告をもとにしてお答えしたわけでございます。
  146. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、私は特に大阪府医師会から要望もあったということ、あるいは大阪市会からも、これは議会で議決をして、二年ぐらい前に厚生省にお願いをしたということも記憶しておりますが、たいへんな大問題になっている。結核斜陽論が論じられて、片方では対策が軽視をされてきているんだけれども、先ほども申し上げたように、低所得者から国民の底辺に深く潜行してきているという実態が集中的にこういった地域にあらわれている。したがって、住民健診をやっても一五%も精密検診を要するパーセントが出てくるというような状況では、これは一般の地域から言うたら五倍強ですね。そういう状況になっておるということは、感染源が放置されているということになると思うんです。その率で見ますと、愛隣地区四万六千人の住民の中で二万人が単身労働者、で、その人たちにその数字適用いたしますと、精密検診を要する患者、これは三千人になるわけですね。精密検診を要するというケースも、これは保健所の担当しておる先生方からの御意見も直接伺いましたけれども、一般の職場や地域での精密検診を要するというふうな内容とは違う。内容は、ほとんど空洞を持っておる、あるいは片肺の半分以上が浸潤におかされている、結核におかされているというふうな、たいへんなしろものの精密検診を要する内容になっているというふうな状況でございますから、これはいま協議会で計画をしているそうだから、それができればたいへんけっこうだというふうにおっしゃるわけだけれども、実態はどうなっているかといいますと、大体結核で発病しておっても、動ける間、ぶっ倒れるまで働くというのが労働の実態でしょう。それからたいへん疲れるからたいがい酒を飲む、栄養失調、栄養不良というふうな状況が常について回っておるという状況です。それから宿泊場所というのは、いわゆる野宿あるいはドヤ街ですね、そういうところですから、これは毎晩毎晩消毒するというのはできませんからね、常に感染にさらされているという状況の中で起こっているわけです。ですから、患者を発見した場合に、一ヵ月先だったら入院引き受けますというて連絡をしてもらっても、その患者どこへ置いておくか、ドヤへ置いておくわけにいかぬわけですね。ドヤに置いておったら、周囲の人に感染しますよ。そういう状況になっておって、しかも一人の患者が発生したら、平均二十五、六カ所病院をプッシュしなかったら収容ができない。救急車は患者を乗せたままうろうろしているというふうな状況というのが、いまの日本の、結核斜陽論が論ぜられておる中で、こういう状況が起こっているんだということをひとつ認識をされて、結核ベッドが絶対量としては確かに足らないけれども、あいてるわけですからね、そうでしょう、六四%しか充足してないんだから、少なくともそういった点はすみやかに収容できるというふうな体制を、これは結核行政として厚生省がそのかまえをおとりになるかどうか、そのことば基本的に大事です。これは、私立病院での結核ベッドの問題というのはいろいろ問題あります。時間がありませんからきょうは触れませんけれども、そういう点について厚生省として、関係者が協議会で取り組んでくれているようだから安心ですというような話じゃなくて、集中的にこういう事態が起こっているということを認識した上で対策をどうするかと、行政上のかまえをどうするかという点をはっきりしてもらいたいと思う。
  147. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 先生指摘の愛隣地区の問題あるいは東京、名古屋その他のいわゆる低所得と申しますか、ああいう地区の方々のところに結核の感染源が集中しておると、この問題について十分認識しております。先ほど先生指摘の愛隣地区の要精密検診のパーセンテージのことにつきましても、私ども勉強しておるような次第でございます。実は今度の改正をお願いしましたのは、結核をそういう軽んずるという意味で改正をお願いしているんじゃなくて、むしろ小中学校健康診断とかあるいは予防接種等につきましては……
  148. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そんなものはわかってるがな。
  149. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) むしろその手を抜いたところを今度はそういう方々中心対策を、各保健所を動員いたしまして、積極的な対策をとっていきたいと思っておる次第でございます。
  150. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは、私が集中的な蔓延地域の問題をなぜ出しているかというのは、対策も確かに手がぬけている、関係者にまかしていますという形では話にならぬということを言っている。これは国公立、先ほど数値を局長お述べになりましたけれども、どこまで行って入院をさしていると思いますか。三重県や岡山あたりまで連絡をして入院をさしているんですよ、実際には。そういう状況で、一人の患者をつかまえて二十五、六回平均電話せぬと行き先が見つからぬという状況というのは、こんなものはまともな医療体制じゃないですよ。知っておって何もしなかったら、これはたいへんなことです。集健の結果もよく存じておりますって、知っててほっといたらたいへんなんです。そのことが問題だというので、少なくともこれは協議会で対策を立てたとしても、あしたからの間に合わないんです。少なくとも国公立病院を中心に国公立が引き受けるという立場にお立ちにならないと、私立病院がそれは断わられてもしようがないですよ。しかし圧倒的多数は私立病院が現に収容しておるという状況なんですからね、その点ははっきりしてもらいたいと思う、姿勢を。  それからもう一つあわせて申し上げておきたいのは、こういった地域で一番困っておるのは精神病との併発患者です。精神病との併発患者は行き先がない。取ってもらえるところがないんです。それに対してはどういうふうに措置をされるか。これは結核菌をまきながら精神病患者をああいう地域にほうり出しておくということは、どういう状況になるかというのは申し上げなくてもおわかりだと思うので、これに対しての対処のしかたをとういうふうにお考えになっておるか。
  151. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 精神と結核の特に併発されている患者さんの問題、私ども非常に苦労しているところでございます。これからの特に精神ベッドにつきましては、そういうアルコール中毒であるとか、あるいは一般的な精神異常者の方で結核を併発されているような特殊な精神病患者さんのベッドにつきまして、国としては特段の助成をしていって、そういう精神ベッドを育成していくと、こういうような方向で臨むつもりでしている次第でございます。
  152. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、私立の病院に助成をして、そうして精神病院に結核患者の受け入れベッドを持たせるということですか、どっちですか、結核療養所に精神病棟をつくらせるということですか。どっちにつくる……。
  153. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) もちろん国立として、医務局長がおられますが、国立ももちろん受け持っていただくし、あるいは民間病院の方でも特にそういう患者さんを受け取っていただけるようなところには助成をして、国公私立相まってそういう特殊な患者さんのベッドを、なおこれから精神対策として伸ばしていきたいと、こういう考えでございます。
  154. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 医務局長おられますからと言うておられますけれども、医務局、どないですか。国立ですぐ併発患者対策おとりになりますか。
  155. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 実は、先ほども申し上げましたように、国立は、当初軍人の精神関係療養所というのは全国に、当時国立に引き継いだときに四つほどしかございません。その後、結核療養所の運営と地域の結核患者の収容状況、あるいは地域の精神病床の不足収況、そういうものを勘案しながら、その後約二十近い施設を結核療養所から精神療養所に転換いたしまして、約現在二十ほど持っておりますけれども、これが地域的に非常にバランスが、特別の使命を持って設置していないものですから、——特に大阪地区には国立の精神療養所が、奈良の松籟荘というのが一番距離的に近いところではございます。そういうところでただいま結核と精神の合併症の問題をできるだけ対応するように指導してまいりまして、現在全入院患者の八%ぐらいが肺結核を持っておる患者を収容いたしております。この点につきましては、公衆衛生局からも答えましたように、かなり地域性で、県の衛生行政の一環として結核と精神の合併症が発生した場合どこで収容していくかということは衛生部長のやはり十分考慮しておかなきゃならぬ問題でございますので、われわれも国立としてはこれに御協力すると同時に、行政的には結核と精神の合併症をともにこれから老人病的な要素も強くなりますし、そういう意味で、それぞれの地域においてそういうベッドの確保というような問題を検討していただいて、精神病床の設置が必要ならばこれに助成していく、こういうような形をとるべきだと、国立は当然その一環としてすでに転換して、精神療養所としての機能あるものはその地区で、もともと結核から転換したものが大部分ございますので、結核との合併症を担当する、こういうふうにしていきたいと、こう考えております。
  156. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 今後やるんですな、それ。いまどういう状況になっておるかというたら、この地域の精神病との併発患者の最近の行き先をちょっと調べてみた。そうしますと、これは原山高原サナトリウムに四人、それから三重県の小山病院に三人、岡山の万成病院に二人、これ全部国立ですか。違うでしょう。国立はそういう役割りを果たしてないですよ。で、大阪市内で発生した患者はもう何十ヵ所いうてさがして、三重県だとか、岡山あたりまで手を伸ばして収容しなきゃならぬという実態になっている。これは府県の衛生部長が腹をきめてやらにゃならぬと同時に、厚生省行政として、医療行政としてこういう患者さんの扱いについてどうするかという基本的な行政上の基本をお立てにならないと、これは府県でかってにやれいいうたって、大阪市のどまん中で起こったことを大阪府下で片がつかずに、奈良県にも聞き、京都にも聞き、三重県にも聞き、岡山にも手を伸ばしてやっと一人の患者に対処しているという実態なんです。こういう実態というものはまともな医療行政じゃない。まともな医療行政になるようにするためには厚生省がどうするかというやっぱりかまえですよ。基本的なかまえが大事だと思うので、医務局長おっしゃったように、結核療養所が精神に変わっているからそこらがやりやすい言うておられるのだから、局長が思っておるだけではこれはならぬですよ。それが併発患者を収容できるような体制をこれは至急におやりになりますか。
  157. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) 先ほども申し上げましたとおり、精神と結核の合併症の患者の問題につきましては私ども非常に頭を悩ましております。現在こういう合併症のベッドが、精神ベッドが二十六万床のうち現在四千三百床しかないのが現状でございます。今後特に精神対策につきましては、こういうベッド数を国公私立合わせて、相ともどもに地域の実情によって充足をはかっていくように行政指導していくつもりでおる次第でございます。
  158. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはまあ、お手上げでございますという御答弁なんですけどね、お手上げでございますではとにかく困るわけですよ。感染源をまきちらす開放性の結核患者で精神病患者が野放しにされたんじゃこれは話にならぬ。早急にやはり合併症の患者を扱える国立の医療機関でそういう施設を急速に整備するという形で対処をしていただかなければ、これは絶対量がたいへん足らぬのでもう苦慮しておりますでは話にならぬと思うんですよ。その辺はっきりしといてください。急速にその対策を対処するかどうか。
  159. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 先ほど来御説明いたしてますように、わが国の国立病院、療養所は陸海軍当時の傷痍軍人療養所、病院を引き継いだのでございまして、これを計画的に整備したものではございません。したがって、今後新たにそういう国立の精神療養所をそういう目的のためにつくれということであれば、今後のこれはきわめて重要な課題になるわけでございますが、現状ではわが国の精神ベッドは私立が大体八五%を占めて、一五%が国立、公立等でございます。そういう実態を踏まえまして、私立病院といえどもかなり規模の大きい機能のいいものもございますので、私は何も特殊な目的のものであるからといって国立ですべてやらなきゃいかぬというのじゃなく、わが国の精神医療の実態から申しますと、公私を問わず、その地域にその必要性があればやはり助成してその整備をしていくと、あるいは運営についても配慮をしていくと、こういうような考え方に立ちませんと現実的ではないというふうに思いますので、今後結核の推移によっては一部精神療養所に転換する施設もなしとしないのでございますが、やはり結核の重要性が本命でございますので、結核療養所としての運営の見通しの立った上でございませんと積極的な精神療養所の転換は困難でございます。ただ一つ両方をあわせ持って運営することの可能性は私は検討する必要があろうと思っております。結核療養所の中に特定な地域によっては精神ベッドというものを持つということによる合併症の対策というものもこれは不可能ではないと思います。その点については十分検討する必要があろうと、こういうふうに考えております。
  160. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、あれですよ、国公立だけでやれと言ってるんじゃないんですよ。しかしね、新しい事態ですよね、集中的にそういう形で出てきているのは。そういう集中的に出てきておる新しい事態に対応するためには、少なくとも国立でそういう受け入れ体制というものをつくりながら全体の医療体制の整備をはかっていくというふうなことが必要ではないかと思って、少なくとも国立ではさしあたってというふうに申し上げているわけです。結核療養所が旧陸軍傷痍軍人療養所を引き継いだものでと何べんもおっしゃいますけれども、そんなことをいつまで言うてたら話にならぬですわ。もう三十年になりますがな、間もなく。一体三十年何しとったんやいうことになりますよ、そんなこといつまで言うてたら。三十年の間に、それじゃ結核対策医療行政ね、傷痍軍人療養所のままで不十分でございまして、ございましてばっかり三十年言うてきたんかと。そんなばかなことを局長が何べんも言わぬほうがよろしいですよ。実際。それはしようがないですわ、現状がそうなんだから。しかし、私が申し上げたのは、少なくともそういった必要度があればと局長おっしゃってますけどね、必要な実態というものを明確にして御要望申し上げているんですよ。さしあたって、少なくとも国立の一ヵ所にどっかでもそういうものをおつくりになると、一ヵ所といっても、これはどこでも一ヵ所じゃ困りますけれどね。そうして民間も含めて医療体制を整えていくというふうなかまえがあるのかないのかということでも大違いですからね。そのことで特にお聞きをしておるわけですよ。これはもう一つやるという気があるのかないのか、さっきの話聞いているとわからぬですけれども、最終的にこれだけ重大問題に集中的な典型的問題になっているところを具体例として出しているわけですからね、少なくともほっておいてよろしいということにならぬと思うんですね。大臣どうですか、これはいまお聞きいただいておりましたのですけれども、一ぺんにどんぴしゃりと出ないのかもわかりませんけれども、ほってはおけないという事態だけは明らかだと思う。どういうふうに早急に対処されるおつもりなのか、決意なり御計画なりをお伺いしたいと思います。
  161. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) 結核問題は先般の御審議を通じましてずっと長いこと御審議をいただいているわけですが、全国的に見ますと、なるほど非常によくなってきておることは事実でございましょう。しかしながら、いまお述べになりましたような地域的に集中的に結核患者が発生している。特に所得の低い方々の層の中に出ておるということは私もよく承知をいたしております。さらにまた全国的に見ますれば老人階層のほうに非常に多くなってきている。そういうふうないろいろな問題、実は承知をいたしております。  そこで、さしあたりいまの集中的に発生しておる地域についてどうするかということでございますが、これはもう国も県も民間も一緒になってやはりこの問題に取り組むということは私は絶対必要な問題だと思います。そこでこういう問題については大阪ばかりではありません、東京もありますし、名古屋もあります。そこで、そういう当該府県の知事がまずどういう体制で臨むかということをまず計画的にきめてもらう。それに対して国はできるだけの援助をする、こういうたてまえで臨みたいと思います。したがいまして大阪府では衛生部が、大阪府の知事がどういう考えを持っているかということから始まりまして、早急にこういう問題を解決するための計画を具体的に大阪なら大阪、名古屋なら名古屋、具体的にその計画を立てさすようにいたします。これはどうか私のほうにおまかせいただきたいと思います。しかし、その場合に何でもかんでも国だ、国公立だというわけにはまいりません。これは実際、もう先生自身そうおっしゃっているんですから、民間の医療機関にも御協力をいただきながら、それにまたいま申し上げましたような精神病と結核についての合併病棟の建設の問題とかいろいろあります。そういう問題については大阪府のほうと相談をいたしまして具体的な計画を立てます。そして必要があれば国の療養所の中に一棟ぐらい建てるとかいろいろなことをやっぱりやっていかにやあなりませんから、こういうふうなことを具体的にきめるようにいたしたいと思います。
  162. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 この法案と直接関連をいたしまして少しお聞きをしておきたいのですけれども、特に私は医学医療進歩の中で、たとえば定期健診を今度の改正案のように小学生一回、中学生一回の定期健診にするということについて特別それがよくないというふうなことを考えているわけではありません。BCGの効果というのは十年程度の効果を持つというふうなことがすでに学問的に確認をされているという実態でございますから、それはそれとしていいと思うんです。ところが、そういうふうに定期健診が少なくなるということが引き続き結核対策の軽視につながるということになってはならない。そこが非常に大切だと思います。  そこで、特にお聞きをしたいのは、たとえば高濃度汚染地域ですね、いま申し上げたような。集中的蔓延地域、つまり罹病率、発生率の高い地域、そういうところの対策、それから先ほどもちょっと申し上げましたけれども、これは数値をあげて言いたいと思いましたけれども、中小零細企業の労働者の中にたいへん罹病率あるいは感染患者の発生率というのが大企業と比べますと半分ないしときによったら四分の一ぐらいの違いが出ているわけですね。そういう点で、低所得者を含めての中小零細企業の労働者、低所得者層に対する健診ですね、健診の度合い、こういったものについてどうするかという点を、その辺が学童生徒の減った分がどうなるんだという内容については、これはどういうふうにお考えになっているかお聞きをしたい。
  163. 三浦英夫

    政府委員三浦英夫君) これからの結核対策につきましては、先生指摘のとおり、そういう高濃度の地帯とかあるいは中小企業と、そういう面に総力をあげていく必要があることはまさに同感でございます。そういう関係から、私ども一としては、たとえば高濃度地域に対して毎年集団健診として定期にやっている定期健診のほかに、定期外健康診断という措置もやっております。これにつきまして、たとえば予算措置等につきましても、四十九年度は四十八年度に比べて三割増の予算措置をしておりますので、それだけより濃度を濃くして定期外健康診断等をそういう高濃度地帯に対してやり得るものと思っております。なお、それから中小企業の方あるいは高年齢層の方、いままで定期健診で受診率の悪かった方はこういう方々が悪かったわけでございます。学童が九〇何%の受診率に対しまして、こういう方々は五〇%程度でございました。幸い私ども都道府県あるいは結核予防会等に、たとえばレントゲン自動車にいたしましても、全国で六百五十台を保有しております。そういうものを学童健診から、そういう、これからの結核対策の必要なところへ集中的に対策を持っていく、あるいは保健所の保健婦等の家庭訪問等につきましてもそういうところに集中していく、こういうことの対策をやっていきたいと思っております。
  164. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう一つ結核に関連してお聞きをしたいんですが、これはもうずばり聞きますけれども、先ほどからの質疑の中でも明らかなように、結核療養所における患者入院患者が、年齢的に五十歳以上の老齢者が半分になっているという実情なんですね。そこで、最近問題になっておりますのは、結核療養所に長期療養をしておる老人対策ですね、老人福祉対策について、これは一般の国民に対する老人福祉対策と同じような施策をしてもらいたいという御意見が非常に強く出ております。で、もう時間がありませんから簡単に要点だけ申し上げますが、老齢人口が非常にふえておるという中身を見ますと、たとえば東京の国立中野病院では六十歳以上の患者さん百五十人ですか、それから大阪の貝塚千石荘病院では六十歳以上は百七十人というふうな状況になっているわけです。ところが、いまの厚生省社会局の制度では、老人クラブの運営助成というのは地域別にしておられるんですね。病院の療養中の者にはやってはならぬという通達が出ているんですね。そういう状況になっておるようですけれども、これ、長期療養をしておる年寄りが、たとえば中野地域、中野病院のその地域の老人クラブへ出ていけるかと言ったら、これはまあ出ていけと言ったら出ていくかもわからぬけれども、そう簡単に出せないだろうし、出ていったら地域の人たちはあんまり歓迎しないというふうな関係も出てくるので、当然老人の生きがい対策として、せっかく老人クラブに対する運営助成をやっておられるわけですから、病院療養患者老人に対する老人福祉対策、これは同じようにおやりになる必要があるんじゃないかというふうに思うんです。現に、これは東京でも京都でも——中野の療養所では中野区が認定をして正式に助成をしておるようです。大阪府でも、これは、結核療養者については、十人以上の六十歳以上の人たちがつくるということであれば助成の対象にしようということで検討しておるようです。それから京都でもすでに認定をして助成をしているというふうなことが出ておりますけれども厚生省としてはこういった点については、長期療養患者の特に老人福祉対策について、老人クラブの助成も含めてどういうふうにお考えになっておるかお尋ねをしたい。
  165. 高木玄

    政府委員(高木玄君) 現在、老人福祉対策として老人クラブに対して助成をいたしておりますが、ただいま先生申されましたように、老人クラブと私どもが申しておりますのは、地域の老人が自主的に組織いたしまして、教養の向上なり健康の増進なり、レクリエーション等の活動を行なうものをいうのでありまして、現在考えておりますのは、地域の在宅老人の福祉対策としての老人クラブの助成を考えているのでございまして、結核療養所等の施設に入所している老人についてこの助成を及ぼすことは現在考えておりません。これ、やはり施設内の老人の問題は、施設内部の老人方々の処遇あるいは生活指導の問題であろうと思いまして、いま私ども考えている地域の在宅老人福祉対策としての老人クラブ、これとはだいぶ違う、かように考えております。
  166. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 従来のあなた方のとっておる方針というのは、私十分に存じ上げておるわけです。しかし、一カ月や二カ月病院に入院して、そこで老人福祉対策をやりなさいと言っているのじゃないのです。先ほども申し上げたように、入院患者の中で二四%、約四分の一は治療効果の見込みの立たないというふうな人たちも含めて、しかも五十歳以上の入院患者というのは過半数に至っておるという状況の中で、長期療養患者は、長期療養患者だということで、国の老人福祉対策適用されないというのは、これまたおかしな話なんですよね。これは局長、おかしいとお考えにならぬですか。いま入院している年寄りは、老人福祉対策はやらなくてよろしいということですか。
  167. 高木玄

    政府委員(高木玄君) 私どもの現在行なっておりまする老人クラブ福祉事業は、性格は地域の在宅老人の福祉対策だということを申し上げたわけであります。施設の中での老人の問題でございますが、これはもう申すまでもなく、たとえば老人が最もたくさんいる施設は老人ホームでございます。老人ホームには老人クラブというものはないわけでございます。この老人ホームに入っておられる方々老人の健康増進なり、レクリエーションというようなものは、その施設において、施設の長の責任においていろいろと処遇をいたしておるわけでございます。そういった施設内部の老人の処遇の問題、あるいは生活の指導の問題こういった問題と、地域の在宅老人対策、これはおのずから別のものであろう、かように考えます。
  168. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは老人ホームでは老人対策老人クラブをつくってないというのは、老人ホームそのものが老人福祉対策事業でしょう。結核療養所というのは老人福祉対策の施設じゃありませんよ。少なくとも長期入院をしておるということで、在宅というけれども地域へ帰れないでしょうが。だから、いままではやっていないけれども、そういう人たち——年寄りの生きがい対策なんでしょう。生きがい対策なら、長期療養患者さんのお年寄りにも、老人福祉対策考えてみるという必要はないかと言っているのです。現に必要があると認めて地方団体ではやり始めているという実例を私は先ほど申し上げたんです。えらいかたくなですな。(笑声)
  169. 高木玄

    政府委員(高木玄君) 私の申し上げておるのは、いま私どもがやっておりますものとは性格が違うということでございまして、施設の中にいる老人について、その方々の問題について、老人クラブが目ざしているようなものが不必要だと申しているのではございません。しかし結核療養所等に入っておられる患者としての老人方々は、第一義的には疾病の療養に専念するという目的のために入っておるので、一般的な老人福祉対策観点とは違う、その施設の中で、医療と並行してどのような生活指導がしかるべきかという問題にもなってくるわけでございまして、これはそれぞれの施設の長が適切な措置を講ずべき問題であろうと、かように考えておるわけであります。
  170. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、たとえばハンセン氏の患者さんも同じですか。結核療養所の所長というのはあれですか、老人福祉対策も義務づけられているのですか、いまの話だったら。そんなことないと思うのだ、やっぱり実際上、現状は地域対策だけれども、実際には、あなたのところのあれでしょうがな、規則でも、五十人以上まとまったら老人福祉クラブつくるといって、それ助成するいうてちゃんと書いてあるんやないか。現に中野療養所では、百五十人か、それから千石荘では百七十人寄って、月に一ぺんぐらい寄って、茶話会開いたり、演芸会開いたりしているわけですがな、実際には。だからいままではおやりになっておらないけれども考えて助成をしていくというふうにお考えになるべきではないか、結核療養所だとかハンセン氏病だとかいうふうな療養所で長期に、しかもお年寄り、老齢者の患者さんがたくさんまとまっておられるところ、これは絶対安静で寝てる患者さん引っ張り起こして老人クラブに参加せいとは言っておらぬですよ。病床が病状だから言っているわけで、必要性から出ておる要求なんで、大臣どうですか。どうも局長えらいかたくなにおっしゃいますけれども、新たにそういったことを御検討にたる方向をお持ちかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  171. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) 結核患者あるいはハンセン氏病みんな同じだと思いますが、そういう施設に、病院に入っておられる方々が、懇親のためにいろんなクラブをつくる、それはけっこうでございましょう。ただ国が補助をしておるのは、そういうのには出しておりませんと、こういうことを申し上げておるわけでございまして、そういうふうに御理解いただきたいと思います。病院に入っている方々療養に専念しておるわけでございますけれども、その合い間にクラブをつくったり、懇親会をつくったり、それは何々クラブをおつくりになる、それは私はそういうことを悪いなんということを言っているんじゃない。それはけっこうなことでございます。しかし、私どもの国の助成をしておるのは、そういうものにはいたしておりませんと、こう申し上げておるわけです。
  172. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 沓脱君、時間がだいぶ過ぎておりますから……。
  173. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、いたしておられないということは……
  174. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 沓脱君、時間が、——お時間です。
  175. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ええ、施策としてやっておられないということは、もう十分存じ上げておるのです。しかし、長期療養しておるお年寄りは、それでは老人福祉対策に該当させないのかということを聞いているんですよ。つくるのはかってでございますということを、それは自由ですよ、集会、結社、全く自由ですよ。しかしそうではない。老人福祉対策の生きがい対策としておやりになっておるささやかな施策、これは長期療養老人対策にも適用をさせられないのかということを申し上げておるんです。そのことの御見解を、いまはやっておられないことはもう百も承知しておりますから聞いているんで、今後御検討になる御意思がありますかどうですかということをお伺いしたいわけですよ。
  176. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) ですから、そういうクラブをおつくりになるのはけっこうでございますけれども、私どもはそこまで手を伸ばす考えはいまのところ持っておりません。
  177. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより両案の討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。  なお、修正意見のある方は討論中にお述べ願います。玉置君。
  179. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 両法律案は、適切な措置と思いますので賛成いたします。  なお、結核予防法等の一部を改正する法律案は、昭和四十九年四月一日から施行するということになっておりますので、これを公布の日から施行するというような、こういう修正案を提出いたします。
  180. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより結核予防法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、玉置和郎君提出の修正案を問題に供します。玉置君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  182. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 多数と認めます。よって玉置君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。  修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  183. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 多数と認めます。よって修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
  184. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 私は、ただいま可決されました結核予防法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党の五派共同提案による附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたします。    結核予防法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について格段の努力を払うべきである。  一、各地域における一般住民の定期検診の受診率の向上をはかり、あわせて患者家族等の定期外検診を強化すること。  一、結核情報の収集活用を十分に実施することにより結核の常時監視体制を確立すること。  一、幼少年層の結核発生予防にさらに一段と意を用いるとともに高年齢層については、他の成人病を含めて健康管理を積極的に進めること。  一、再発、再入院を防止するため、退院者の追跡健康管理、後保護等の措置に万全をつくすこと。  一、公衆衛生の重要性にかんがみ、その実施機関である保健所の機能を一層充実強化し、勤務職員の待遇改善に特別の配慮をすること。  一、公費負担医療国民健康保険医療給付との調整にあたつては、患者の一部負担を軽減するよう努力すること。  一、予防接種の事故に対する恒久の救済制度を早急に樹立すること。   右決議する。  以上でございます。
  185. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいま玉置君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  186. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、玉置君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、齋藤厚生大臣から発言を求められております。この際、これを許します。齋藤厚生大臣
  187. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたす所存でございます。     —————————————
  188. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  189. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  190. 須原昭二

    ○須原昭二君 私は、ただいま議決されました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対して、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党の五派共同提案による附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたします。    戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項につき、格段の努力を払うべきである。  一、一般戦災者に対し、戦時災害によつて、身体に障害を受けた者及び死亡した者の援護の検討を目途として実態調査を行ない、当時の救済状況を明らかにすること。  一、警防団員に対する援護法上の取扱いについては、戦後相当期間経過していることにかんがみ、その認定方法等について弾力的に運用するよう配慮すること。  一、最近の急激な物価の上昇及び国民の生活水準の著しい向上にみあつて、さらに年金額等の水準を引き上げ、公平な援護措置が行なわれるよう努めること。    なお、戦没者遺族等の老齢化の現状にかんがみ、一層の優遇措置を講ずること。  一、戦傷病者に対する障害年金等における内科的疾患の認定基準については更にその改善に努めること。  一、戦後三十年近くも経過した今日、なお残されている未処遇者について早急に具体的な解決策を講ずること。  一、生存未帰還者の調査については、更に関係方面との連絡を密にし、調査及び救出に万全を期すること。  一、戦没者等の遺骨の収集については、更に積極的に推進すること。  一、戦傷病者相談員及び戦没者遺族相談員の処遇の改善をはかること。   右決議する。  以上でございます。
  191. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいま須原君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  192. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、須原君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、齋藤厚生大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。齋藤厚生大臣
  193. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重にいたしまして、努力をいたす所存でございます。
  194. 山崎昇

    委員長山崎昇君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  195. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  196. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 国民年金法等の一部を改正する法律案児童手当法等の一部を改正する法律案、以上両案を一括議題とし、趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明を順次聴取いたします。齋藤厚生大臣
  197. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案について、提案の理由を御説明申し上げます。  国民年金制度については、老後保障のささえとなる年金制度に寄せる国民各層の期待にこたえて、昨年、厚生年金保険制度とともに年金給付水準の大幅引き上げと年金額のスライド制の導入を柱とした画期的な改善充実を行なったところであります。今後さらに本制度が老後生活のささえとしてその効果を発輝していくためには、受給者の最も多い福祉年金についてその内容を一段と充実させるとともに、拠出制年金について将来にわたり適正な給付水準を確保するため年金財政の健全な運営をはかっていく必要があります。  今回の改正法案は、このような趣旨にかんがみ、福祉年金の額を大幅に引き上げるとともに、拠出制国民年金の保険料の適正な改定等を行ない、国民年金制度改善充実をはかろうとするものであります。また、本法案は、昨年の改正により厚生年金保険等の年金の受給権を担保とする金融の道が開かれたことに伴い、その具体化のための所要の改正を行なうこととしております。  以下、改正法案の内容について、概略を御説明申し上げます。  第一に、福祉年金の額につきましては、五〇パーセント引き上げ、老齢福祉年金の額は月額五千円から七千五百円に、障害福祉年金の額は一級障害について月額七千五百円から一万一千三百円に、二級障害について月額五千円から七千五百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金の額は月額六千五百円から九千八百円に、それぞれ引き上がることといたしております。  第二に、昨年の改正により新たに設けられました老齢特別給付金につきまして、月額四千円から五千五百円に引き上げることといたしております。  第三に、母子福祉年金及び準母子福祉年金の支給要件等につきまして、これらの年金の支給の対象となる子等の障害の程度を一級から二級まで広げることとしております。  第四に、拠出制国民年金の保険料につきましてその額を現行の月額九百円から二百円引き上げ、千百円とすることといたしております。  第五に、年金受給権を担保とする金融につきましては、年金福祉事業団にこれを行なわせることとしております。  なお、年金額の引き上げ、母子・準母子福祉年金の支給要件等の緩和は本年十月から、保険料の額の改定は昭和五十年一月から、年金受給権を担保とする金融は政令で定める日から、それぞれ実施することといたしております。  以上がこの法律案を提出する理由でありますが、何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  198. 山崎昇

  199. 橋本龍太郎

    衆議院議員橋本龍太郎君) 国民年金法等の一部を改正する法律案に対する衆議院の修正部分につきまして私からその内容を御説明申し上げます。  その要旨は、第一に、厚生年金保険、船員保険及び国民年金の年金額のスライドの実施時期を、昭和四十九年度における特例措置として、厚生年金保険及び船員保険にあっては三ヵ月繰り上げ八月、国民年金にあっては四ヵ月繰り上げ九月とすること。  第二に、各福祉年金及び老齢特別給付金の額の引き上げ並びに母子福祉年金及び準母子福祉年金の支給の対象となる子等の障害の範囲の拡大の実施時期を昭和四十九年十月から同年九月に繰り上げること。  第三に、各福祉年金及び老齢特別給付金について、昭和四十九年度における特別措置として、昭和四十九年九月の支払い期において同月分までを支払うものとすること。  第四に、厚生年金基金の加入員にかかる厚生年金保険保険料率を、昭和四十九年十一月から千分の二引き下げることであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  200. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 齋藤厚生大臣
  201. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) 次に、児童手当法等の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。  児童手当制度については、昭和四十七年一月の発足以来その円滑かつ的確な実施をはかり、制度の確立につとめているところであり、児童扶養手当及び特別児童扶養手当制度については、母子家庭及び心身障害児に対する手当制度として、逐年その改善につとめてきたところでありますが、福祉の充実が課題となっている今日、児童に対する福祉施策の向上をはかる必要性は一段と高まっております。  今回の改正法案は、このような趣旨にかんがみ、手当額を引き上げ、児童扶養手当の支給要件を緩和するとともに、新たに特別福祉手当を支給することにより、これらの制度の充実をはかろうとするものであります。  以下、改正案のおもな内容について御説明申し上げます。  第一に、児童手当の月額を三千円から四千円に、児童扶養手当の月額を六千五百円から九千八百円に、特別児童扶養手当の月額を六千五百円から一万一千三百円に、それぞれ昭和四十九年十月から引き上げることといたしております。  第二に、国民年金法別表二級に相当する程度の障害を有する児童を、新たに児童扶養手当の支給対象児童とすることといたしております。  第三に、重度の精神薄弱及び重度の身体障害が重複している者を監護する父母等に対して、新たに特別福祉手当として月額三千円を支給することといたしております。  以上がこの法律案を提出する理由でありますが、何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  202. 山崎昇

  203. 橋本龍太郎

    衆議院議員橋本龍太郎君) 児童手当法等の一部を改正する法律案に対する衆議院の修正部分について私からその内容を御説明申し上げます。  その要旨は、第一に、児童扶養手当及び特別児童扶養手当の額の引き上げ、児童扶養手当の支給対象児童の要件の緩和並びに特別福祉手当の支給を昭和四十九年十月から同年九月に繰り上げること。  第二に、児童扶養手当、特別児童扶養手当及び特別福祉手当について、昭和四十九年度における特例措置として、昭和四十九年九月分を同月に支払うことができるものとすること。  第三に、特別福祉手当の認定の請求の手続を昭和四十九年九月一日前においてもとることができるものとすることであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  204. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 以上で両案の説明聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十七分散会