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1974-05-07 第72回国会 参議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月七日(火曜日)    午前十時二十分開会     —————————————    委員異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      鈴木  強君     藤原 道子君  四月二十七日     辞任         補欠選任      田中 茂穂君     小川 半次君  五月七日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     嶋崎  均君      鹿島 俊雄君     藤田 正明君     —————————————   出席者は左のとおり。    委員長          山崎  昇君    理 事                 玉置 和郎君                 須原 昭二君                 小平 芳平君    委 員                 小川 半次君                 斎藤 十朗君                 嶋崎  均君                 藤田 正明君                 小谷  守君                 藤原 道子君                 矢山 有作君                 柏原 ヤス君                 中沢伊登子君                 沓脱タケ子君        発  議  者  藤原 道子君    衆議院議員        社会労働委員長        代理理事     山下 徳夫君    国務大臣        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君    政府委員        文部省社会教育        局長       今村 武俊君        厚生大臣官房審        議官       三浦 英夫君        厚生省環境衛生        局長       石丸 隆治君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省社会局長  高木  玄君        厚生省児童家庭        局長       翁 久次郎君        厚生省援護局長  八木 哲夫君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        大蔵省主計局主        計官       梅澤 節男君        文部省大学学術        局医学教育課長  齋藤 諦淳君        厚生大臣官房企        画室長      中野 徹雄君        労働省婦人少年        局婦人労働課長  赤松 良子君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○寄生虫病予防法の一部を改正する法律案(衆議  院提出) ○結核予防法等の一部を改正する法律案内閣提  出) ○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○保健師法案藤原道子君外一名発議) ○栄養士法案藤原道子君外一名発議) ○理学療法士及び作業療法士法の一部を改正する  法律案藤原道子君外一名発議) ○臨床検査技師衛生検査技師等に関する法律の  一部を改正する法律案藤原道子君外一名発  議) ○診療放射線技師及び診療エツクス線技師法の一  部を改正する法律案藤原道子君外一名発議) ○歯科技工法の一部を改正する法律案藤原道子  君外一名発議) ○社会保障制度等に関する調査  (厚生行政基本施策に関する件)     —————————————
  2. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月二十六日、鈴木強君が委員辞任され、その補欠として藤原道子君が選任されました。  また、四月二十七日、田中茂穂君が委員辞任され、その補欠として小川半次君が選任されました。  また、本日、鹿島俊雄君及び塩見俊二君が委員辞任され、その補欠として藤田正明君及び嶋崎均君が選任されました。     —————————————
  3. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 寄生虫病予防法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、提出者衆議院社会労働委員長代理理事山下徳夫君から趣旨説明を聴取いたします。山下君。
  4. 山下徳夫

    衆議院議員山下徳夫君) ただいま議題となりました寄生虫病予防法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  御承知のように日本住血吸虫病は、農耕その他地域住民日常生活に重大な障害を与えるものでありますが、山梨、佐賀、福岡、広島の各県においては、いまだ広く蔓延しております。この疾病の根絶をはかりますためには、病原虫中間宿主であるミヤイリガイを絶滅する必要があります。  このため、昭和三十二年度より十カ年の基本計画を立て、ミヤイリガイ生息地帯における溝渠コンクリート化が行なわれ、また、昭和四十年の法改正では新たに昭和四十年度以降七カ年の基本計画を立て、さらに昭和四十七年の法改正では昭和四十七年以降二カ年の基本計画を立て、溝渠コンクリート化が行なわれております。  このような施策等の結果、新しい患者発生が著しく減少する等相当の効果をおさめてはおりますが、日本住血吸虫病予防の徹底をはかるため、本案は、さらに昭和四十九年度以降五カ年にわたる内容基本計画を定めようとするものであります。  以上がこの法律案を提出いたしました理由でありますが、何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 以上で趣旨説明は終わりました。——別に御発言もないようですから、直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認めます。  それでは、寄生虫病予防法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  7. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     —————————————
  9. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 次に、結核予防法等の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案一括議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を順次聴取いたします。齋藤厚生大臣
  10. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ただいま議題となりました結核予防法等の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  近年、結核医療の進歩、結核対策進展等によって、結核患者は著しく減少し、健康診断による患者発見率も低下してまいりました。特に、年少者については、患者が激減し、健康診断による患者発見率もきわめて低いものになっております。この反面、危険度はきわめて少ないとはいえ、とりわけ年少者に対する健康診断の際のエックス線被曝による健康に対する影響については、十分に配慮する必要があります。このような状況等にかんがみ、年少者に対する定期健康診断及び予防接種について適切な措置をとろうとするものであります。  まず第一に、結核予防法による定期診断は、現在、毎年実施することとされておりますが、患者発生状況エックス線被曝による健康に対する影響等を総合的に考慮して、適切に実施することができるように、政令で定める定期において実施することに改めることとしております。  第二に、予防接種は、ツベルクリン反応検査反応陰性または疑陽性である者に対して行なうこととされておりますが、疑陽性である者については、そのほとんどがすでに結核に対する免疫を有しておりますので、陰性である者に対してのみ予防接種を行なうことに改めることとしております。  第三に、市町村長は、小学校就学始期に達しない者のうち、幼稚園や施設集団生活をしていない者に対して、毎年、ツベルクリン反応検査を行ない、かつ、その反応陰性または疑陽性である者に対して、定期予防接種を行なうこととされておりますが、予防接種による免疫効果はかなり長期間にわたって接続するものであることが明らかにされましたので、小学校就学始期に達しない者に対して、政令で定める定期において、ツベルクリン反応検査を行ない、かつ、その反応陰性である者に対して、定期予防接種を行ない、かつ、その反応陰性である者に対して、定期予防接種を行なうことに改めることとしております。  そのほか、結核予防法による医療に関する給付にかかわる診療報酬審査及び支払いに関する事務を、新たに、国民健康保険団体連合会等にも委託することができるようにし、診療報酬事務簡素化をはかることとしており、身体障害者福祉法及び児童福祉法についても同様の措置をとることとしております。  以上がこの法律案を提出する理由でありますが、何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  戦傷病者戦没者遺族等に対しましては、年金支給をはじめ各般にわたる援護措置が講ぜられてきたところでありますが、今回これの支給金額の引き上げ、支給範囲の拡大などを行なうことにより援護措置の一そうの改善をはかることとし、関係法律改正しようとするものであります。  以下この法律案内容概要について御説明申し上げます。  第一は、戦傷病者戦没者遺族援護法の一部改正であります。  改正の第一点は、障害年金遺族年金及び遺族給与金等の額を恩給法に準じて増額することといたしております。  改正の第二点は、準軍属支給する弔慰金及び遺族一時金の額を軍人軍属支給する弔慰金及び遺族一時金の額と同額に引き上げることといたしております。  改正の第三点は、旧防空法規定により防空業務従事中にかかった傷病により障害者となった者またはこれにより死亡した者の遺族に、障害年金遺族給与金等を新たに支給することといたしております。  第二は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正でありまして、留守家族手当月額を、遺族年金の増額に準じて引き上げることとするほか、葬祭料の額を引き上げることといたしております。  第三は、戦傷病者特別援護法の一部改正でありまして、旧防空法規定により防空業務従事中傷病にかかり現に第五款症以上の障害がある者及び旧軍人または準軍人公務傷病にかかり現に第三目症または第四目症障害がある者に対して戦傷病者手帳交付を行なうこととするほか、長期入院患者支給する療養手当月額及び葬祭費の額を増額すること等の所要の改正を行なうことといたしております。  第四は、戦没者の妻に対する特別給付金支給法戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法の一部改正であります。  改正の第一点は、満州事変以後日華事変前に公務上の傷病にかかり、これにより死亡した軍人の妻及び父母等に対し新たに特別給付金支給することといたしております。  改正の第二点は、昭和四十八年の関係法律改正により、遺族年金障害年金等を受けることとなった戦没者の妻及び父母等並びに戦傷病者等の妻に新たに特別給付金支給することといたしております。  以上がこの法律案を提出する理由、及び内容概要でありますが、この法律案については、衆議院において、葬祭料療養手当及び葬祭費の額の改正規定昭和四十九年四月一日から施行することとなっているものを、交付の日から施行し、昭和四十九年四月一日にさかのぼって適用することとする修正がなされております。  何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  11. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 以上で、両案の趣旨説明は終わりました。  両案に対する質疑は後刻に譲ります。     —————————————
  12. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 次に、保健師法案栄養士法案理学療法士及び作業療法士法の一部を改正する法律案臨床検査技師衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律案診療放射線技師及び診療エックス線技師法の一部を改正する法律案歯科技工法の一部を改正する法律案、以上各案を議題とし、発議者藤原道子君から趣旨説明を順次聴取いたします。藤原道子君。
  13. 藤原道子

    藤原道子君 私は、日本社会党を代表して保健師法案栄養士法の全部を改正する法律案理学療法士及び作業療法士法の一部を改正する法律案臨床検査技師衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律案診療放射線技師及び診療エックス線技師法の一部を改正する法律案、及び歯科技工法の一部を改正する法律案、以上六法案について、その提案理由を一括して御説明いたします。  最近、地域医療住民医療ということが強調されるようになりました。これは、患者各種医療担当者とが一体となって、言いかえると、医療現場を構成する住民一体となって、一人一人の患者に最も適した医療の創造を目ざす理念であると考えられます。この場合、これら医療を構成する人々相互の間に信頼関係が成立していることが、欠くことのできない条件でありましょう。これは、たとえば教育現場を構成する児童生徒、父兄及び教師の間に信頼関係がなければ、民主教育は前進しないことと同様であります。  しかし、今日の医療の荒廃は、医療を構成する人々の間に信頼関係を築くことがきわめて困難であることを示しています。その理由は、まず第一に、売楽医療とさえいわれる今日の状況では、医師患者との間に、営利的な動機が介在していることであります。すなわち、患者が薬を飲めば飲むほど医療機関製薬企業の収入がふえるようになっているばかりでなく、薬にたよらず治療する医療機関は経営が成り立たないということによるものであります。  信頼関係を成立しにくくさせている第二の理由は、各種医療担当者は、ともすると医師従属物であるかのように見られがちだということであります。これは各種医療担当者は、医師技術を部分的に補助する安上がりの労働力としか位置づけられていないためであります。  このように、医療担当者患者関係においても、また医療担当者相互関係においても、信頼関係をつくりにくい現状では、地域医療住民医療理念でしかないといっても決して言い過ぎではありません。したがって、いま必要なことは、一つには、薬剤依存営利医療を打ち破ることであり、二つには、医師が他の医療担当者に対して、円錐の頂点に君臨するのではなく、円の中心に位置するように改めることだといえましょう。このためには、薬剤による治療以外の各種医療、すなわち、看護保健指導食餌療法、リハビリテーションなどをレベル・アップさせ、それぞれの技術が、医学の一部門として自立して発展できるようにしなければなりません。単なる職業教育として行なわれている、高卒二年ないし三年の各種学校による養成制度を廃止して、四年制大学による養成に転換しなければならないのはこのためであります。  次に、六法案のおもな内容をその要点だけ御紹介いたしますと、まず、保健師法案においては、現行保健婦助産婦看護婦法を廃止して、新たに保健師法を制定することにより、保健婦助産婦看護婦業務を総合し、その全部を行なうことのできる保健師制度を創設しようとしております。この保健師養成を、四年制大学において行なうことは申すまでもありません。この改正に伴い、各種学校を前提とした准看護婦試験は、昭和六十一年三月末日をもって廃止し、同じく看護婦国家試験については、昭和六十五年三月末日までに現行法上の受験資格を取得した者、または旧免許を得た後六年以上(高卒者は三年以上)業務従事している准看護婦厚生大臣の指定した講習会課程を修了した者だけが受けられるようにすることとし、同じく保健婦国家試験及び助産婦国家試験は、昭和六十六年三月末日までに現行法上の受験資格を取得した者だけが受けられるようにすることといたしております。なお、これら旧免許を受けた者が保健師になることができる道を講じたことはいうまでもありません。  栄養士法の全部を改正する法律案においては、まず、栄養士は、医療担当者として栄養指導従事する者であることを明記するとともに、その養成は四年制大学(当分の間は短大も含む)によることとしました。これに伴って、現行管理栄養士制度を廃止すること、都道府県知事免許厚生大臣免許にすること、各種学校による養成は、事実上、昭和五十四年三月末をもって終わるようにすることなどを定めております。  理学療法士及び作業療法士法の一部を改正する法律案においては、その養成を、すべて四年制大学によるものとし、現行各種学校による養成は、事実上、昭和五十四年三月末をもって終わるようにしております。これに伴って、外国の免許取得者に対する無試験制度は、廃止する等の改正を行なっております。  臨床検査技師衛生検査技師等に関する法律の  一部を改正する法律案においては、現行臨床検査技師制度衛生検査技師制度とを統合して医療検査技師制度とし、したがって、法律題名医療検査技師等に関する法律に改めることにいたしました。  医療検査技師は、四年制大学において養成することとし、その業務は、現行臨床検査技師と同様といたしております。また、現行法規定によって臨床検査技師免許を受けた者は、新法の規定による医療検査技師免許を受けた者とみなすなど、必要な経過措置を定めております。なお、各種学校による養成は、他と同様に、昭和五十四年三月末をもって終わるようにいたしました。  診療放射線技師及び診療エックス線技師法の一部を改正する法律案においては、現行診療エックス線技師制度を廃止し、診療放射線技師制度に統合することとし、したがって、法律題名診療放射線技師法に改めております。診療放射線技師は、四年制大学において養成することといたしますが、その業務範囲は、現行のままであります。なお、各種学校による養成は、他と同様に昭和五十四年三月末で終わるようにいたしました。  歯科技工法の一部を改正する法律案においては、その養成を四年制大学によるものに改めるに伴い、歯科技工士となるには、歯科技工士国家試験に合格し、厚生大臣免許を受けなければならないものといたしました。また、四年制大学を経た歯科技工士、及び各種学校による者で、さらに厚生大臣が指定した講習会課程を修了した歯科技工士については、その業務範囲を拡大し、印象採得、咬合採得または試適を行なうことができることといたしました。なお、各種学校による養成は、他と同様、昭和五十四年三月末で終わるようにいたしました。このような改正に伴い、法律題名歯科技工士等に関する法律に改めることといたしました。  およそ、以上がこれら六法案要点でありますが、社会党はこのほか、これら各種医療担当者になろうとする者には、月々六万円までの修学資金を貸与する制度を創設するための医療担当者修学資金貸与法仮称)、あるいはまた、特に需要の大きい看護婦保母等について有給の育児休暇を保障するため看護婦保母等育児休暇等に関する法律案仮称)を準備し、近日中に提案する運びになることを申し添え、私の提案理由説明といたします。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに成立を期されんことをお願いいたします。
  14. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 以上で各案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  15. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 次に、社会保障制度等に関する調査議題とし、厚生行政基本施策について質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  16. 矢山有作

    矢山有作君 きょうは、先般の三月二十六日の予算委員会で質問さしていただく予定にしておりまして、そのときに十分触れることのできなかった社会福祉施設給食体制の問題についてお伺いしたいと思います。  そこで、まず第一にお伺いしたいのは、栄養士任務をどういうふうに理解されておるかということであります。
  17. 高木玄

    政府委員高木玄君) 社会福祉施設におきまする栄養士任務は献立の作成、それからカロリー計算、その他給食管理に関する仕事である、かように考えております。
  18. 矢山有作

    矢山有作君 栄養士任務については、具体的には栄養士法で「栄養指導従事することを業とする者」と、こういうふうに規定してありますね。そこで、その栄養士調理人として扱っておるとしか思えないような規定があるわけですね。それに対してどういう見解を持っておられるか。といいますのは、精薄児通園施設設備基準についてという児童局長通知の中に、その職責の項の第三に、「調理人は、栄養士資格を有することが望ましい」と、こういうふうにあるわけです。そうすると、これは栄養士というものの資格というものについて、どういうふうな御理解をなさっておるのか、ちょっと疑問があるあるのでお伺いしたい。
  19. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 御指摘のように、精薄児通園施設設備の運営の基準、この中に「調理人は、栄養士資格を有することが望ましい」とございますが、これは栄養士本来のあるべき資格あるいは内容規定するものではございませんので、むしろ調理人である人が栄養等について格段の配意ができる方であることが望ましい、むしろ調理人のほうからの要件をできるだけそういった栄養上の配慮のできる栄養士であることが望ましいという意味で規定されたものでございます。
  20. 矢山有作

    矢山有作君 それらの問題に関連しては、私どもの考え方はまた後ほど述べるといたしまして、栄養士専門職として法的に格づけをされておるんですか、どうなんですか。この辺はあやふやなままなんですか。
  21. 高木玄

    政府委員高木玄君) 専門職として格づけいたしております。
  22. 矢山有作

    矢山有作君 されておる。——そうするとね、社会福祉施設などでね、栄養士配置を義務づけておる場合にね、これはどういう取り扱いになってますか。
  23. 高木玄

    政府委員高木玄君) 処遇の問題でございましょうか。
  24. 矢山有作

    矢山有作君 ええ。
  25. 高木玄

    政府委員高木玄君) 栄養士の格づけでございますが、これは国家公務員医療職の四等級四号の格づけをいたしております。
  26. 矢山有作

    矢山有作君 それはね、その格づけはね、すべての社会福祉施設に置かれておる栄養士について一律に扱われておりますか。
  27. 高木玄

    政府委員高木玄君) これは一律とは申せませんで、ただいま申し上げましたのは平均的な格づけでございます。
  28. 矢山有作

    矢山有作君 専門職要件としてね、その専門職として定められた資格のない者がそれにとってかわることができない、少なくとも望ましくないということがいわれておると思うんですけれどもね、栄養士についても専門職として考えられておるなら同様に理解していいわけですか。
  29. 高木玄

    政府委員高木玄君) さようでございます。
  30. 矢山有作

    矢山有作君 そうなるとね、もう一つ私は疑問があるんですが、児童福祉施設最低基準の第九十二条の五、第四項に、虚弱児施設のうち五十人未満の施設では「栄養の理論及び実際に通じた保母又は看護婦をもって栄養士にかえることができる。」こういうふうに規定されておるんですけれどもね、これは栄養士専門的性格というものを無視しているような規定だと思われるんですが、この点いかがでしょう。この点は前に申し上げました児童局長通達にも関連する問題です。
  31. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 児童福祉施設におきましては、職員の配置基準が、従来特に栄養士に関しましては必ずしも十分ではございませんでした。したがいまして、たとえば今年から一般の収容施設についても、ある一定以上の収容をしている施設については栄養士配置をきめることにいたしましたけれども、従前こういった施設についても必ずしも栄養士の、必ず配置しなければならないということができなかったために、しかも一方では栄養的な配慮がきわめて必要であるということがございましたので、先ほどの虚弱児施設におきましてもそうでございますけれども、栄養士も、もってかえることができる、あるいは保母さんが栄養的な管理あるいは配慮ができる人を置くととが望ましいという努力的な規定を設けておったわけでございます。
  32. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、これらの規定というのは、栄養士のただいまおっしゃった専門的な職務という立場から見るなら、適当ではありませんね。
  33. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 御指摘のとおりでございます。
  34. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、次にお伺いしたいんですが、施設入所者の食事に関しまして、乳児院については詳しく所要栄養量が定められております、御案内のとおりです。カロリーは体重一キログラムにつき、六ヵ月未満が百二十カロリー以上、六カ月から一カ年未満が百十カロリー以上、一年から二年未満は百カロリー以上、たん白質は四グラム、脂肪は三・五グラムというようにきめられてある。で、その他の施設にあっては、これは年齢別、男女別に定められておる国民栄養所要量を確保するように配慮さるべきだと思いますが、しかし入所者の年齢や性別が区々である各施設ごとに正確な算定をすることが事務上困難でありましょうから、予算積算の便宜上、施設分類別に目標栄養量を推定をされておるようであります。その資料は、先般、私の手元にいただいております。三月十六日に御提出をいただいたわけです。また、その栄養量を確保するための食費として、養護老人ホームでは一人月七千七百八円、養護施設では  一人月九千七円が見込まれているという資料もいただきました。さらに、その食費のワクの中で目標栄養量を満たすためにはどういう献立になるかというサンプルも資料としてもらったところであります。  そこで、お伺いしたいのは、一体この食費のワク内で、しかも目標栄養量を確保する、もっと理想的に言うなら、年齢別、男女別の国民所要栄養量を確保する毎食の食事をつくるということが、しろうとの栄養士、しろうとの人間でできるのか。つまり、栄養士資格を持たない者でできることなのかどうか、これが一つは疑問なんです。
  35. 高木玄

    政府委員高木玄君) この社会福祉施設栄養士がすべて配置されておることが最も望ましいのでございますが、専任の栄養士配置されていない施設につきましては、非常勤の栄養士を設置いたしまして、月一回なり二回、栄養士に献立等の指導をしてもらうと、かような体制をとっておるわけでございまして、やはり何と申しましても、必要な栄養量を確保するためには栄養士がどうしても必要であろうと、かように考えます。
  36. 矢山有作

    矢山有作君 いまの御答弁で、栄養指導を月に一ぺんか二へんかやるということでは、その必要栄養量を確保するのには体制としては不十分であるということはお認めになったと思います。そういうふうに理解していいですね。
  37. 高木玄

    政府委員高木玄君) 専任の栄養士配置されない施設につきましては、非常勤の栄養士を置くようにいたしまして、週に一回か二回指導を受けるようにいたしております。
  38. 矢山有作

    矢山有作君 週に一回か二回。
  39. 高木玄

    政府委員高木玄君) はい。しかし、やはり方向としては、専任の栄養士がいることが最も望ましいであろうと、かように考えております。
  40. 矢山有作

    矢山有作君 週に一回か二回指導云々というお話がありましたが、これは週に一回や二回でとても指導できるような体制ではないということは、局長は御存じだろうと思うんです。さらに、そういうことで、そういうふうな指導が不十分であるということは、これはかつて四十八年の六月に、行管が「老齢者対策に関する行政観察結果報告書」を出しておるのにも、栄養士を置いてない施設に対する栄養指導が行なわれてないということも指摘してありますので、その点は、月に一回か二回は指導させるということになっておるとおっしゃるけれども、実態はそれとは大きく異なるということだけは御認識を願いたいと思うんです。よろしゅうございますね。
  41. 高木玄

    政府委員高木玄君) 不十分であろうかと思います。
  42. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、お伺いしたいのは、各種社会福祉施設に対する栄養士の設置は法規上どういうふうに定められておりますか、お伺いしたいんです。
  43. 高木玄

    政府委員高木玄君) 社会福祉施設に対する栄養士の設置の状況でございますが、これは社会福祉施設における給食業務の重要性から考えますと、すべての社会福祉施設に専任の栄養士を設置することは最も望ましいことは言うまでもございせんが、現在のところ、栄養改善法の第九条の二の規定におきまして、特定多数人に継続して一日二百五十食以上給食する施設には栄養士を置くようにつとめなければならないという規定がございます。その規定を受けまして、八十一人以上の収容者を持つ成人の収容施設につきましては栄養士を、すべて専任の栄養士を設置いたしてございます。それから、八十人以下でございましても、重度の身体障害者収容する施設、重度身体障害者更生援護施設、重度身体障害者収容援産施設あるいは身体障害者の療護施設、こういった重度の身体障害者収容する施設につきましては、定員が八十名以下でございましても専任の栄養士を設置してございます。それから食事について特に配慮を要します老人ホームにつきましては、特別養護老人ホーム及び養護老人ホームにつきましては、八十人以下の場合には非常勤の栄養士を設置するようにいたしております。原則として、八十一人以上は専任の栄養士、それから八十人以下でも、重度の身体障害者施設につきましては専任の栄養士、それから特別養護老人ホーム、養護老人ホームにつきましては、八十人以下の場合には非常勤の栄養士、かように相なっております。それから児童福祉施設につきましては、百一人以上の収容施設につきまして専任の栄養士を設置すると、かようなことになっております。
  44. 矢山有作

    矢山有作君 いま栄養改善法第九条の二の集団給食施設における栄養士の設置の問題で、社会福祉施設における栄養士の設置の点を御説明なさったんですが、これは私は全然趣旨が違うと思いますよ。というのは、この栄養改善法の第九条の二に定められておる栄養士の設置というのは、これは一般の給食施設において、経営上の配慮からこういう私は規定を設けたと思うんです。それを社会福祉施設にそのまま持ってきて当てはめるという考え方は、私は非常な間違いじゃないか。社会福祉施設は営利を目的とする経営ではないんですから、この点で私はその考え方というものは間違っておる、だから、栄養改善法第九条の二による栄養士配置でもって社会福祉施設栄養士の問題を論ずることは間違いだと、一口に言うなら私はそう理解するんですが、どうでしょう。
  45. 高木玄

    政府委員高木玄君) 確かに先生おっしゃるとおり、社会福祉施設の性格あるいは社会福祉施設における給食業務の重要性から考えまして、私はすべての社会福祉施設に専任の栄養士を置くことが望ましいと、そういう方向で努力すべきであると、かように考えておる次第でございます。
  46. 矢山有作

    矢山有作君 そうすれば、今後のものの考え方としてさ、栄養改善法を引っぱってきて栄養士の設置問題を論ずるということはやめていただきたいと思います。  そこで、ただいまおっしゃった各種社会福祉施設に対する栄養士の設置が法規上どうなっておるかということを、いま御説明いただいたわけですが、私のほうで一応整理いたしましたので、それで簡単に申し上げてみたいと思うんです。これは次のようになっておりますね。  施設の設置に関する最低基準を見ますというと、栄養士の設置が規模の大小を問わないですべてに義務づけられておるのがありますね。これは乳児院、それから重症心身障害施設虚弱児施設虚弱児施設には一部問題点もありますけれどもね。それから肢体不自由児施設だと思います。  それからもう一つは、一定規模以上のものにだけ設置が義務づけられておるものがあります。これは、先ほどの御説明になっておった、たとえば老人ホームは八十一人以上だとか、精薄者更生施設なり精薄者授産施設は七十人以上と、あるいは救護施設は八十一人以上、あるいは生活保護の更生施設では七十一人以上、その他ありますが、そういうふうなものが一つあります。  それから、もう一つは、なるべく栄養士を置くことが望ましいというふうにだけうたわれているものがあります。それは、身障者の更生援護施設はそういうふうになっているようであります。  それから第四番目に、その他の分類に入ると思いますが、それは養護施設、精薄児施設、盲ろう児施設、教護院、それから保育所、これについては、栄養士についての何らの規定がなされておらない、こういう状態になっております。そういうふうに整理をして質問をさしていただきたいと思うんでありますが、いま申し上げたことで間違いございませんね。
  47. 高木玄

    政府委員高木玄君) 間違いございません。
  48. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいま社会局長が答弁したとおりでございまして、児童福祉施設の中で百一人以上の収容施設につきましては、近く最低基準を改定いたしまして、栄養士の設置についての最低基準をつくりたい、かように考えております。従来、児童福祉施設収容施設については栄養士の設置が措置費上も算入されておりませんでしたので、この最低基準栄養士については欠いておったわけでございますが、これは改めてまいりたいと考えております。
  49. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、次に質問を移しますが、設置が義務づけられております施設について栄養士の設置率を見てみますと、厚生省からいただいた資料でありますが、四十七年の十月一日の調査であります。それで見ると、重症心身障害施設は一二八%、肢体不自由児施設は一四〇%で、この二つが一〇〇%をオーバーしております。しかし乳児院では八二%しか栄養士が満たされていない。虚弱児施設では八一%であります。栄養士は最近非常に数が多く供給されておるというんでありますが、それなのにどうしてこういうふうな現象が起こっておるのか、お伺いしたい。
  50. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 乳児院あるいは虚弱児の施設につきまして、御指摘のように配置基準を下回る栄養士しかいないということにつきまして、いま直ちにその明確な理由を申し上げるまで私、十分内容についての検討はしておらないのでございますけれども、栄養士は、乳児院については必ず一施設一人、それから虚弱児施設につきましては五十人以上について一人ずつ、こういう基準になっておるわけでございます。全体として御承知のとおり、乳児院あるいは虚弱児施設それぞれ措置費でこの予算が配付されております。施設のほうで保母さんあるいは看護婦さん、いずれも乳児院、虚弱児施設についてはそういった専門の職員が必要でございますが、そういった関連で、あるいは栄養士について必ずしもいままで十分ではなかった点があるのではないかと存じます。この点につきましては、なお詳細を調べまして、少なくとも一〇〇%にいくように指導してまいりたいと存じます。
  51. 矢山有作

    矢山有作君 私はそういう現象が起こるというのは先ほどの答弁の中でもうかがえたのですが、栄養士専門職だといわれながら、専門職としての扱いが社会福祉施設の中で一貫して行なわれてない、こういうところに一つは問題があるんじゃないか。たとえば医療職(二)として扱われておる施設もある。かと思えば医療職(二)としての格づけがなされてないで扱われておる施設もある。こういう状態に栄養士専門職といいながら、それの取り扱いがきちっと整理をされておらぬところが問題じゃないかと思うんですが、この辺はどうでしょうか。
  52. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 確かに御指摘の点はあろうかと思います。と申しますのは、こういった施設については、繰り返すようでございますけれども、全体として措置費のワクの中である程度機械的に管理者が人員の配置をしている点がございますので、必ずしも最低基準どおりにいっていない施設があるといたしますならば、栄養士を必ず置かなければならないにもかかわらず、そういった認識に欠くる点があって、結果としてそういうことになっているという点があるのではないかと思います。  若干問題を離れて恐縮でございますけれども、最近、施設についてもう一度栄養基準等を中心に調査をいたしました際にも、やはりこういった時代には栄養的な配慮が必要だということで、施設によっては、ぜひ栄養士配置が望ましいという施設の声を聞いてもおりますので、最近ではこういった認識について改めつつあるとも思います。したがって、その点について、ただいま御指摘の点も含めて指導を強化してまいりたいと存じます。
  53. 矢山有作

    矢山有作君 医療職(二)として格づけをして扱っておるのはどういう場合ですか。たとえば国公立の福祉施設栄養士配置した場合だけそうしておるのか、それとも民間の社会福祉施設に義務づけられておる場合も医療職(二)としての格づけによって措置費を算定しておるのか、そこら辺があいまいなので、医療職(二)として扱っている場合は、どういう施設配置した場合医療職(二)として扱っていると、あとはどういう扱いになっていると、ここのところ明確にしていただきたい。
  54. 高木玄

    政府委員高木玄君) 措置費の積算上、栄養士につきましては、専任の栄養士を置く場合には、医療職(二)の四等級四号の格づけをいたしまして、その予算を公立、民間を問わず配付している次第でございます。
  55. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、国公、私立を問わず栄養士配置が義務づけられておる施設については、医療職(二)として位置づけられていると、こういうことですね。
  56. 高木玄

    政府委員高木玄君) はい、さようでございます。
  57. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、それにもかかわらず栄養士が十分満たされてない、たとえば乳児院だとかというものについては、やはりこれは私はどこに問題があるのかということを早急に実態を把握して対処していただきたいと思います。  それから栄養士の設置が義務づけられてない社会福祉施設においては、医療職(二)として扱われてないで、どういうふうな扱いになっていますか。
  58. 高木玄

    政府委員高木玄君) たとえば八十人以下の養護老人ホーム、特別養護老人ホームには非常勤職員としての予算を配っておるわけでございます。
  59. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると全部任意ですね。栄養士の設置が任意であるという場合は全部非常勤職員の扱いですか。
  60. 高木玄

    政府委員高木玄君) 社会局関係で申しますと、特別養護老人ホームと養護老人ホームにつきましては、八十一人以上は専任の栄養士、それから八十人以下の場合には非常勤の栄養士というふうに予算上措置いたしまして、それを配付しておる次第でございます。
  61. 矢山有作

    矢山有作君 児童福祉施設はどうなんだ……。
  62. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 児童家庭局関係で申し上げますと、先ほど申し上げましたように、今年度から収容施設につきましては百一人以上について一人の配置をきめ、それ以外のたとえば母子寮、情緒障害児短期治療施設等につきましては何らの規定も設けていない、こういう現状でございます。
  63. 矢山有作

    矢山有作君 私は、やはり先ほどもそちらからおっしゃったように栄養の問題というのはきわめて重要ですから、栄養士配置しておるところにはそれが義務づけられておろうとおるまいと、むしろ専門職としての格づけをして、措置費の中で見ていくというのが栄養士配置現行の法規のワク内ででも促進することになると思います。そういう点で現行の法規それ自体にも問題がありますが、現行の法規のワク内においてでも栄養士をみずから配置しておる、それに対しては、それが任意配置であろうと、これを医療職(二)として格づけをして、措置費の中で見るというお気持ちはありませんか。
  64. 高木玄

    政府委員高木玄君) 将来は、やはり現在非常勤職員として措置しております栄養士につきましてはこれを常勤化していく、こういうような予算の措置が必要であろうかと思います。で、現在、成人の収容施設につきまして、八十一人以上は専任、八十人以下が非常勤と分かれておりますのは、やはり財政当局との折衝におきまして、先ほど申しました栄養改善法の第九条の二の規定一つのひっかかりになっておるということはいなめない事実だと思います。ただし先生おっしゃられたとおり、社会福祉施設についてはその特殊な性格がありますから、私どもとしては専任の栄養士をすべての社会福祉施設に設置できるような方向で今後努力してまいりたいと、かように考えます。
  65. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 児童家庭局におきましては、先ほど申し上げましたように、収容施設についての、百一人以上の施設について栄養士配置がなされておりますが、これはいわゆる措置費の単価の中に積算として入っておるわけであります。ただいま御質問のございました、配置を義務づけられていない施設であって現に栄養士配置しているものについての措置費上の取り扱い、この辺は、ただいまのところは全部一応収容児に割り戻した単価制をとっておりますので、この辺は必ずしも配置したから直ちにそれを医療職基準——給与単価をそのままはね返すことができるかどうか、ちょっとむずかしい問題があろうかと思います。この辺は少し研究をさせていただきたいと存じます。
  66. 矢山有作

    矢山有作君 厚生大臣ね、社会福祉施設に入っておる人たちというのは、これは自分の選択によって好きなものを食べるというわけにはいかぬわけですよね。そこでまあ大体一生生活をしなきゃならぬ。つまり社会福祉施設は生活の場として、しかも一番生きていく上に大切な食事というのは一方的に提供されるわけですから、したがって、それだけに私は健康保持あるいは発育を促進していく、そういうような立場から考えて、専門的な栄養士による栄養指導というのか、給食管理というのか、そういったものが当然あってしかるべきだと思うんですよ。そういう点で、いま両局長からのお話があったわけですけれども、これは私はいまの法制を前提として考えても、任意設置になっておる施設が、みずから栄養士配置して給食の完ぺきを期するという努力をしておるわけだから、——しているものについては、これは私は政府としてやっぱり栄養士医療職(二)として格づけをして措置費の中で見ていく、こういうことを打ち出すことが望ましいんじゃないかと思うんですが、この点、何といっても大臣が積極的に取り組んでもらわなきゃ話にならぬわけですからね、どうなんでしょう。
  67. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いや、実は私も先ほど来の質疑応答を承りまして、非常に教えられるところがあった——と言っては失礼かもしれませんが、そういう感じを持ったのでございます。  まず第一点の問題は、栄養改善法というものを引っぱり出して、集団給食をやる一ある程度の集団給食をやるときには栄養士を置くようにつとめなければならない、こんなふうな規定を援用して社会福祉施設栄養士の数の問題、設置の義務の問題、これを議論するというのはやっぱり私はちょっとまずいんじゃないかということをまず率直に感じたわけなんです。と申しますのは、栄養改善法というのは、私がこれは申し上げるまでもなく、一般国民を対象とした一般法なんですね。その一般法の中で、——と違った社会福祉施設というものには、やはりそれなりの特殊性のあるやり方を考えていかなければならない。しかもそれは法律というものがございませんから、まあ、ある意味からいえば、そういう福祉施設についても独立の法律をつくれという意見があってしかるべきものかもしれませんけれども、まあ、かりにそうでないにしても、措置費においてやはりそれだけをめんどうを見てあげなければならぬ、こういうふうにしなければならぬ問題であるということを痛感いたしました。それともう一つの問題は、ですから栄養改善法などを引っぱり合いに出して議論するということは社会福祉施設の場合にはあまり私は適当ではない、それよりもやっぱり上回ったものを常に考えておかなきゃならぬ、これが私、質疑応答を通じまして非常に感じ入った点の第一点でございます。  それから第二点の問題は、やっぱり私はこの社会福祉施設に入っておられる方々は、いまお述べになりましたように自分で食事の選択ができない、やはりそこで長いこと生活していかなきやならぬ、しかも栄養というのが——食事というのは一番大事なものでございます、施設の入所者にとっては。そういうことであってみれば、私はやっぱり全施設について栄養士というものは必ず置くようにしなけりゃならぬ、そういう方向に私は努力すべきではないかと思いました。したがって、私は今後ともできるだけ全施設栄養士は必ず置けるようにという方向で今後とも努力をいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから第三点には、そのまあ設置が義務づけられていない、措置費の支弁によって義務づけられていないもの——非常勤その他の問題についても、やはりそれぞれの措置費の配分にあたっては、医療職の(二)というんであるならばそれに見合った単価の措置費を支給すると、こういうふうなやり方をしていって、りっぱな栄養士がそこに就職できるように今後とも努力をしていかなければならぬと、こういうふうに感じた次第でございます。  いずれにいたしましても、施設に入所しておる方々にとっての給食というのは非常にこれは大事な問題でございますから、確かにいままで不十分の点はあるいはあったかもしれません、まあ年々努力はいたしておるわけでございますが、今後とも非常な重点を置きまして努力をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  68. 矢山有作

    矢山有作君 いま大臣の非常に改善を目ざす前進的なお話でありますから、私どもぜひそれが早急に実現できるように期待もし、さらにまた重ねて強く要望もいたしまして、次に問題を移してみたいと思うんですが、その問題というのは、現行栄養士配置のやり方というものがいかに問題をはらんでいるかという、そういう点を一、二指摘してみたいわけです。  一つは、御存じの児童憲章、これは昭和二十六年の五月の五日に出されたものでありますが、この児童憲章の第二項、第三項にはこういうことをいっておりますね。「すべての児童は、家庭で、正しい愛情と知識と技術をもつて育てられること」、「家庭に恵まれない児童には、これにかわる環境が与えられて、」、「適当な栄養が与えられるべきこと」、これを定めております。それから昭和三十四年十一月二十日の児童権利宣言の第四条を見ますと、ここには「児童は、健康に発育し、かつ、成長する権利を有すること」、そのためには「適当な栄養——を与えられる権利を有する。」、こういうふうに定められているわけですね。そうすると、家庭に恵まれない児童の養育をつかさどっておる養護施設栄養の専門家である栄養士の設置が義務づけられていないということ、このことは児童憲章や児童権利宣言の精神から見ても私は非常に矛盾があると。先ほど百人以上ですか、収容施設については今後これを配置するんだということでありますけれども、これは私は、百人以上というふうな限定をすることが、またあとから述べる問題とも関連して問題があると思うんですが、百人以上の施設に入っておるからそれには栄養士配置して、そこでは十分この児童憲章なり児童権利宣言に沿ったような給食をしてやるんだと、それ以下の施設に入ってる者はこれはそれをやらないんだということでは、これは私はやっぱり問題があると思うんですよ。だから、児童施設というのは特に発育盛りの子供を置いているわけですから、特にこの栄養という問題については注意をしなきやならぬ問題だ。したがって、児童福祉施設については、養護施設だけではありません、ほかにも御案内のようにあります、栄養士の設置が義務づけられてないところがありますから、これら全体についてやっぱり栄養士を設置させると、そういうふうに国みずからがやるというのが当然じゃないでしょうかね。
  69. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 確かに御指摘のように、こういう児童福祉施設栄養問題というのはわれわれ配慮しなければならない大きな課題であると思います。したがいまして、本年度から先ほど申し上げましたように百一人以上の収容施設について必置をするようにしたわけでございます。ただ、これで十分だとは少しも考えておりません。従来、御承知のように、福祉施設全体が、たびたび繰り返すようでございますけれども、措置費という一つの大きなワクの中で施設の運営がなされるように組み立てられているわけでございまして、栄養士配置してない段階におけるこういった児童の収容施設につきましては、設置運営しておりますところとそれから都道府県の衛生関係、これが十分連絡をとって、先ほども社会局長が申しましたように、ある程度献立表の御相談を受けたり、あるいは市によりましては週ごとの献立表を作成して施設にお配りして相談にあずかるというようなこともしております。ただ、これは最近私ども養護施設あるいは精薄施設二、三、特に栄養の点を中心に調べましたところでは、やはり栄養士的な配慮が常時必要であるという声を直に聞いております。したがいまして、この百一人以上の収容施設栄養士配置というものをさらに一つの努力といたしまして、将来おとなの施設に近づけ、あるいは乳児院、虚弱児施設とまではいかないまでも、栄養士配置できるような努力をしてまいるのが一つだろうと思います。  それからもう一点は、従来保健所等を中心といたしまして、栄養相談あるいは献立表の作成等の事務を行なわせておりますけれども、なかなか手が回らないようでございます。そういった実情も踏まえた上で栄養士配置してないところにおける栄養問題というものをもっと前向きに行なうようにしてまいりたい。  なお、毎年全国の栄養士、保健所の栄養関係の方を集めまして研修をしております。これが年々非常に数がふえているようでございます。こういった点から見ましても、栄養問題についての関心並びに必要度が高いということも見受けられますので、ただいま御指摘の点も含めて前向きに取り組んでまいりたいと考えております。
  70. 矢山有作

    矢山有作君 児童福祉施設は百一人以上ですね。百一人以上四十九年度から配置と、そういうことで前向きで進まれることはいいと思うんです。しかし、さっきの大臣の御答弁を聞いておられておわかりのようにね、やはりこの問題大臣自体も非常に前向きで考えているわけですから、特に児童福祉施設にあっては子供であるだけに、これは十分栄養管理という問題は考えてもらわなくちゃいかぬと思うんです。そうでなくとも養護施設に入る子供というのはね、平素養護に欠けている子供でしょう。養護に欠けている子供なんだから、その時点ですでに栄養等の問題においては私は一般の子供よりだいぶ見劣りがしておると思うんです。それが養護施設に入って、さらに十分な給食管理のもとにおける栄養の確保ができないとするなら、これは全くみじめな話なんで、それでは私は問題の解決にならぬと思うんです。したがって、四十九年度から百一人以上の施設栄養士配置するというのはよろしいが、それだけで事足れりとしてもらっちゃ困ると。だから、これは早急に子供の施設には全部栄養士配置できるように積極的な御努力が願いたいと思います。いま言いましたことは養護施設だけの問題じゃありませんよ。御案内のように、精薄児施設、盲ろう児施設、教護院、保育所等みんなあるわけですから、これは十分その点で考えてください。  それから次はね、これは私は憲法との関連で問題を考えてみたわけですが、憲法第十四条、御存じのとおりに、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない。」、こういう平等原則が掲げられているわけですね。これで見ると、先ほどおっしゃったような、たとえば児童福祉施設に入る子供が百一人以上の施設に入るなら栄養士配置のもとに十分な栄養量が確保できるような給食を受けることができる。あるいは老人ホームで言うならば八十一人以上の規模の老人ホームに入ったら栄養の専門家である栄養士のサービスを受けることができる。ところがそれ以下の施設に入っている者にはそれが全然受けられない、こういう形というのは、私はまさにこの平等原則から見ても問題があると思う。したがって、この点は先ほど大臣もお述べになったように、その社会福祉施設というのは営利を目的とする施設ではないのですから、人間がそこで相当長期あるいは一生生活の場として入るわけですから、それだけにこの栄養士配置というのはこれは人数によって制限して配置する施設配置しない施設、そんなことをやってはいけない、こういうふうに私は思います。重ねてあなた方の考え方を聞きたい。特に大臣が非常に前進的な考え方を持っておるんだから、実際に大臣を補佐してその政策を実現していかなきゃならぬ局長や課長の段階でへっぴり腰でおったんではこれはどうにもしかたがないので、これはそれぞれの担当局長に強い決意をもってこれは将来の予算折衝等に備えてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  71. 高木玄

    政府委員高木玄君) 先ほどの大臣御答弁の御趣旨に従いまして、私どもは社会福祉施設に専任の栄養士をすべて配置することが望ましいと考えておりますので、その方向で努力いたしたいと思います。
  72. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 児童福祉施設につきましては栄養士配置がおくれておりまして、ただし、本年から収容施設について先ほど申し上げたような配慮ができたわけでございます。少なくともおとなの施設との格差を解消し、さらに栄養の配慮が十分行き渡るような配慮のもとに今後の努力を進めていくということが必要であろうかと思います。  なお、先ほども申し上げましたように、都道府県あるいは政令市等における保健所の栄養士関係の部局を通じてこれらの収容施設の中で栄養士配置されていない施設についての指導につきましては、従来から母子衛生課を中心といたしまして指導を重ねておりますけれども、今後ともこの点については格段の配慮をいたしてまいりたいと考えております。
  73. 矢山有作

    矢山有作君 児童家庭局長ね、どうも保健所の指導なんかにえらい期待をしているような答弁が続くのですが、保健所の栄養指導なんというのは、いま私ども地元の保健所の執務状態よく知ってますがね、もう保健所の本来の仕事でとてもじゃないが外に出てそんな給食指導なんかできるような状態でないわけです。それはあなたがおっしゃっても、それはおっしゃるだけに終わるので、やはりこれは社会局長もおっしゃったように、大臣もおっしゃったように、やはり積極的に栄養士を必置のものとして配置する、こういう姿勢で取り組んでいただかぬといかぬと思うのです。特に先ほど言った子供の問題、発育盛りの子供の問題ですから、ここはあまり局長、うしろのほうを見ないで、常に前を向いて積極的に問題を考えていただきたい。どうもあなたはあまり慎重居士のようでね。  それからもう一つ指摘しておきますと、これは京都市の老人福祉研究会が四十七年に調査したのです。たとえば老人ホームで見ると、現実に八十人以下の規模であっても養護では三〇%それから特養では七〇%弱の施設がね、栄養士を私設の努力で設置しておるわけですね。これは入所者の福祉という立場に立てば、そういう努力をされている福祉施設というのは私は敬意を表するに値すると思うんです。そういう実情もひとつお考え願いたい。  それからまた老人ホームだけでなしに、たとえば養護施設についても二九%、精薄児施設について四六%、盲人施設で三四%、老人施設で四四%、教護院で四四%、保育所で一五%これくらいがみずからの努力で栄養士を設置しているわけですよ。したがって、こういう状態から見るなら、やはり設置基準に誤りがあると、これはやはりそれぞれの施設の経営者は、自分が実際にやってみてどうしても栄養士が要るんだという形で苦しい中を設置しておる。この現実を見たときに、私はやはり設置基準に問題があると思うのです。したがって、先ほども言いましたように、現在みずからの努力で栄養士を設置しておるところについては、くどいようでありますが、きちっとした格づけをして、つまり必置義務のある施設と同じような格づけをして措置費の中で早急に見てやってほしい、こう思うんですが、その現状について早急にそういう措置ができる余地があるかないか、その点いかがですか。
  74. 高木玄

    政府委員高木玄君) 施設がみずからの努力で栄養士を設置していると、私どもの調査におきましても、養護老人ホーム、特別養護老人ホームにつきましては、設置基準を上回る栄養士配置されております。これは裏返して言えば、この専任職員を置くことになっていない施設におきましても、施設の努力で専任の栄養士を置いているということは、それだけ栄養士の必要性を施設が感じておることであろうと思うんです。そういった意味合いにおきまして、先ほど申しましたように、この養護老人ホーム、特別養護老人ホームにつきましては、現在非常勤で置いておる者を常勤職員に切りかえていく、こういう方向で予算の努力をいたしたいと思います。
  75. 矢山有作

    矢山有作君 児童局長も同じように一生懸命やってもらえますね。
  76. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) そのようにいたしたいと思います。
  77. 矢山有作

    矢山有作君 厚生大臣ね、いま置いておるものについて、早急に見てやるという方法はありませんか。
  78. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 本年度の予算でそれを見るというのは私は無理だと思います、実際問題。ですから、五十年度以降の問題として私は必ずこの問題の解決のために最大の努力をいたします。これはもうお述べになりました点、私も実はほんとうに勉強不十分だったなあという感じをしみじみしているんです、実は承りながら。でございますから、私はやっぱりこの社会福祉施設に入所しておられる方々、ほんとうに相当長いことそこで生活をしていかなけりゃならぬ方々ばかり、しかもいまお述べになりましたように、働きざかりの子供が養護施設に入っておると、こういうことを考えてみれば、やっぱりもう少し栄養ということに重点を置いた施設の経営ということに本省としても努力してあげなきやならぬということを私はしみじみ感じておるわけでございますから、明年度以降の予算編成にあたりましては、いま述べましたように、社会福祉施設には栄養士というものを八十一人以上は置くとか、以下は置かぬでもいいんだといったふうなことでなしに、栄養の改善に一そうの努力をいたしたい、このことをはっきりお約束申し上げておきたいと思います。
  79. 矢山有作

    矢山有作君 この問題の最後でもう一つお伺いしたいんですが、四十七年度に全国の老人福祉施設調理実態調査というのを京都の老人福祉施設給食研究会というのがやりまして、調理員の労働実態がどういう状態にあるかということを発表しておるんです。これで見ると、調理員の定められた定員をオーバーして養護老人ホームなり特養老人ホームでかなりのところが調理員を配置しておるという問題が一つは指摘されておるわけです。養護老人ホームで二二%ぐらい、特別養護老人ホームでは三〇%ぐらいですね、そういうふうにいわれておりますね。それから調理員の労働時間が、実労働時間が八時間をこえる施設が二六%ぐらいあったと、それから拘束時間で十時間をこえるものが三三%ぐらいある、だから相当な労働過重になっておるということも指摘されております。それから調理員で休暇をとっている者についての充足がないままでやられておるのが五〇%、病欠で休んでおる者についてこれまた充足のないままでやっておるのが四〇%ぐらい、こういう状態で、調理員の絶対数が不足の上に欠員のままで仕事をやらされるということできわめて過酷な労働になっておると、こういうことが指摘されております。そうしてそういう人手不足は、これは一時しのぎに手数を省いた調理をしようということになってサービスが低下したり、栄養量の確保に問題が生ずる、あるいは食器や食品の取り扱いについても影響を及ぼして食中毒発生の原因にもなりかねない。こういうふうなことが指摘されております。そして、さらにまた、そういう人手不足の中でありますから、どうしてもその施設の食事時間もこれは職員の勤務時間にあわせて食事時間をきめるような形になる、だから夕食が五時までに済ませてしまわなければならぬと、こういうようなことになるので、それでまたいろいろ補食の問題、夜食の問題等まで問題が起こってくると、さらにまた、夕食をこういうふうにおそくしないとすれば、どうしても調理員の交代勤務だとか、あるいは時差勤務をしなければならぬと、こういうことで現状ではとてもその改善はできない、あるいは病人食の実施をやっておるのが養護老人ホームで五三%、特別養護老人ホームで七一%ぐらいでしか実施ができない、あるいは選択できる給食をやっておるというのはこれは皆無である、こういうふうに調理員の問題についても非常に不足が訴えられているわけであります。  たとえば、この調査で見てみますというと、——この調査といいますのが、これから申し上げるのは、社会福祉施設栄養士、調理員で四十七年の十月一日に厚生省からいただいた資料についていっているわけですが、これによりますと、調理員の数と入所者の比率を見てみると、各施設の間で非常に相違がある。それから一人の調理員がまかなうべき食数が、最も少ないところで乳児院が一日四十五食、多いところでいうと更生施設では一日百三十五食、こういうふうになっておるわけです。で、職場は御案内のように非常に湿気の多いところだし、非常に朝早く出なければならぬし、先ほど言ったように超過勤務手当もないと、こういうようなことで長時間労働させられておる、したがってやめていく者も非常に多いと、こういうふうなことになっておるわけで、したがって、給食の完ぺきを期しようと思うならば、ただ単に栄養士の問題だけでなしに、調理員の配置の問題についても考えなければならぬ問題になってきているわけです。だから、幾らたとえば金だけをふやしても、措置費だけをふやしても、調理員が人手不足であるならば、十分なその給食に対しての効果をあげることができないという問題も起こるわけです。したがって、調理員の問題についても、これは適正な配置基準というものを検討していただかなければならぬという問題が出てきておると思うんですが、この点いかがですか。
  80. 高木玄

    政府委員高木玄君) 調理員の配置基準につきましては、施設の種類、規模によって異なっておりますが、養護老人ホームの例で申しますと、定員五十名から九十名の施設には三名、九十一名から百四十名の施設には四名、百四十一名から二百名の施設には五名、二百一名から三百名の施設には六名、これが配置されることになっております。しかし、この施設における調理員の労働条件の改善という問題は私ども非常に大事な問題だと思いますので、四十八年度、四十九年度の両年度にわたりまして二千百四十七名の調理員の増員をはかってまいった次第でございますが、なお、現在の改置基準の数から見て十分な望ましい労働条件を確立しがたいというふうにも思われますので、今後とも必要な職員の増員を考える、あるいは調理員の方々が十分な休養をとれるための休憩室をつくる、あるいは調理用機械の導入によって給食業務の省力化をはかる、こういったような各般の問題につきまして極力努力をいたしまして労働条件の改善につとめてまいりたいと、かように思います。
  81. 矢山有作

    矢山有作君 それでは調理員の問題につきましても現状をよく把握されまして、十分な給食体制が整うように調理員の配置基準について御検討いただくということで、次に問題を移してまいりたいと思います。  次は、四十八年の十二月の十八日に当委員会において私のほうから資料要求をいたしました。それは施設に入っておる人が十分健康を維持し、増進していくのにどの程度の食事が必要かを示した一週間分のメニューと、それをつくるに要する経費を計算して提出してもらいたいという要求でありましたが、それに対して去る三月十六日に社会福祉施設給食についての献立事例をいただいたわけであります。私のほうでお伺いしたいのは、この献立事例はどういうふうにして作成されたのか。さらにこれを標準的な献立と考えていいのかどうか。その二点をお伺いします。
  82. 高木玄

    政府委員高木玄君) 実は、御提出申し上げました献立表は資料の御要求がありまして、都内の該当の施設につきまして、実際の献立を調査いたしました資料でございまして、これをもって直ちに標準的な献立表というわけではございません。実際に施設でつくって実施しておりました献立表を提出いたしたと、かような次第でございます。
  83. 矢山有作

    矢山有作君 そうしますと、これは大臣を含めてお聞きいただいておかにゃいかぬのですが、私ども資料要求いたします場合には、一定の意図をもってやっておるわけでありますので、その意図を十分にくんだひとつ資料の提出に応じていただきたいのです。私が申し上げましたのは、現在行なわれておる施設から参考的にどういう給食献立をやっているのか出してみいと、それを提出していただくというんでなしに、私のほうが要求しましたのは、その目標栄養量を確保するために一体どういう献立事例があるのか。そしてそれをやるとするならいま一体一人一日食費はどの程度かかるのか、それを知りたかったから言ったわけです。したがって、その金額を、現在措置費に含まれておる飲食物費の中でことさらに押えた献立もほしくないし、ということなんでしてね、その実際に施設に入っておる人たちの健康を考えて、この程度の食事をとらせなきゃいかぬ。それにはこれだけの金がかかるんだというものがほしいわけです。ですから、この点いまいただいております資料というのは私の要求したところには沿ってないわけでありますが、そこで、私はこの資料をいただきまして、自分ではなかなか分析はできませんので、これをそれぞれ専門の栄養士に分析をしてもらいました。養護老人ホームの分と身障者の更生援護施設の分と、それから養護施設の分、この三つについて分析してもらったんです。それでその結果、私のところへ戻ってきた結果を総括して言いますと、この献立では成長発育に特に必要だといわれるビタミン類などのいわゆる微量栄養素、——いま、微量栄養素の摂取ということか健康保持、増進の上で非常に重視されているようでありますが、この微量栄養素に不足が著しいと、こういう指摘を受けたわけであります。したがって、私は、現在行なわれておるその給食には、そういう点があるだろうと思ったから、厚生省でこれこそ標準的な適正献立ですというものを例示的に示してほしかったわけです。こういうものが私どものところに資料としてこれで提出されてまいりますと、これは厚生省はこういうものを標準的なメニューとして考えておるんかというふうな理解になりまして、かえって私は所要栄養量確保の給食をやらせるのには非常に弊害が出てくると思うのです。この点いかがでしょうね。
  84. 高木玄

    政府委員高木玄君) 先ほど申し上げましたように、都内のそれぞれの該当施設の現実に実施しております献立表を提出いたした次第でございまして、私どものほうで標準的なものとして作成したものではないわけでございます。  施設のこの給食指導につきまして、現在、施設運営に関する最低基準におきまして基本方針を示してございますけれども、実は、その実細則につきましては特に明文を設けておりません。したがいまして、そういった点、私どもの指導におきまして非常に不十分な点であったと反省いたしております。私どもといたしましては御指摘もございますので、早急に施設給食の実施要領を策定いたしまして、目標栄養量あるいは基準食糧構成等の標準を明確にいたしますとともに、献立事例その他給食業務の細部の処理要領を定めまして、入所者に対する給食の適正に行なわれるようにいたしたいと、かように考えて、現在検討いたしておるところでございます。
  85. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 実は今年の二月と四月の一週間、それぞれ一週間分をとりまして、児童福祉施設の中でたとえば養護施設、精薄施設、これについて一週間分のある施設を例にとって、実際の献立並びにそのカロリー等について私のほうから人を出しまして調査をいたしまして、そういたしまして、この措置費等、二月については措置費、旧年四十八年の措置費でございます。それから四十九年の四月につきましては新しい四十九一年度の措置費でどのようになっているか。一週間でございますので、一日、一日の単価につきましては多少の出入りがございます。そこでわかりましたことを率直に申し上げますと、実際に栄養士配置されております施設については、その当時の物価等を勘案して発育する児童に必要な、いま御指摘のありましたビタミンをはじめとする摂取量等を、ある程度措置置費の範囲内でとり得るということがわかったのでございますけれども、しかし、実際に献立をつくって、そしてこれを給食するにあたりましては、先ほど社会局長が申し上げましたように、ただ観念的なカロリー計算ではなくて、もっと実際に即した栄養摂取あるいはビタミン等を中心とした児童の発育に必要な献立あるいは給食指導が必要であろう、必要であるということを痛感した次第でございまして、そういった意味におきまして、ただいま社会局長が申し上げたように、今後、こういったものをも一つと実際に即した指導ができ得るように、これを進めてまいりたいと、かように考えている次第でございます。
  86. 矢山有作

    矢山有作君 ひとつ、厚生省にこの際特に申し上げたいのは、現実に行なわれておる施設給食というのは、必ずしも十分所要栄養量を確保できるような状態ではないということの実態というのは、すでに行管からも指摘されたことがあるはずです、これは老人ホームの関係についてね。また、その他いろいろの場合に指摘されて、あなた方のお耳には入っておると思うのですよ。現実にあなたのほうから提出していただいた、いわゆる実際に行なっておる施設からとったものを見て、私が専門的な人に分析してもらっても、やっぱり微量栄養素の不足が著しいといわれておるわけですから、したがって、これはやはり率直に私はそういった批判を受け入れてもらって、それでそれを改善するという姿勢で取り組んでほしいんです。いやいまのところ何とか立っておりますとか、そういう議論ではない。やっぱり第三者がこれはまんざら私が依頼して、その専門家の人が無責任な分析をしてくるわけはない。しかも一人でやったわけでもありませんしね。その点は十分お考えいただきたい。しかも、どうも注意していろいろ聞いてみますと、案外ここへ出されておるのは、施設の中であまりよくない給食状態のところが出てきておるような気配も感ぜられるんです。これは気配でありますから。したがって、そういうものをひとつ標準にものをお考えにならぬようにしていただきたい。このことを重ねて申し上げておきます。  そこで、四十九年度の措置費に含まれておる飲食物費というのが、大体老人ホームについて見ますというと、一日、一人当たりで養護老人ホームが二百六十一円、特別養護老人ホームが三百十四円ですね。それから身障者の更生援護施設が三百二十五円、養護施設、これは子供の場合ですが三百三十六円、乳児院が三百四十円、こういうふうにいわれております。  そこで、これは率直な感じとしてお伺いしたいんですが、厚生大臣、これでいまの高物価の中で所要の栄養量の摂取が可能だというふうにお考えになりますか、どうですか。
  87. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これはなかなか非常にお答えにくいむずかしい問題でございますが、私どもはたびたび国会でお答えいたしておりますように、前年度に比較いたしまして本年度は二〇%程度の引き上げをやってきておるわけでございまして、私どもは栄養というものの栄養所要量というものをはじいていないわけでございます。そういうふうなことで、はたして栄養がこれで足りるのかと言われると何とも言いにくいものが私はあると思います。しかしながら、これは言いわけのようにもなるかもしれませんが、この金額というのはほんとうにこれは材料費だけの金でございまして、集団的に大量購入するということになりますればある程度の利便も得られるであろうとか、いろんなことを申し上げておるわけでございますが、確たる自信があるかと言われれば、前年度よりはこれだけ上がっておるんですからこの程度でごしんぼういただきたい、こういうこときり言えないんじゃないだろうか、こういうふうに考えております。私率直に答えているんです、率直に。前年度よりは二〇%程度上がっておるんですから、これでひとつごしんぼうをいただきたいんだと、こういうことを申し上げておるわけでございます。しかしながら、先ほど来お話しのありましたように、標準的な献立表を所要栄養量というものを頭に入れて考えなければならぬと、こういう問題もありますので、私どもももう少しそういう問題を医学的また栄養的な見地から十分ひとつ研究をしまして、世間の批判に答え得るようなものにしていきたい、こう考えておる次第でございます。
  88. 矢山有作

    矢山有作君 大臣、これは私はそういうふうにやって世間の批判に答えることはぜひやっていただきたいし、それから一体施設に入っている人、女の人、男の人、年齢別、いろいろ違いますが、大体これだけの栄養量が必要なんだということで、一応の目安というものをきちっと立てて、それを現在の物価情勢の中で摂取させるのに何ぼ要るのか、これは主観を交えないで純客観的にはじき出してみて、そしてたとえば五百円かかったとか、たとえば七百円かかったとか、そういう的確な資料をもって私は予算折衝にも臨まれないとなかなか大蔵省もうんと言わぬのじゃないかと思うんです。だからやはり私は先ほど来申し上げておりますように、食べるということは人間にとって第一のことですから、ましていわんや社会福祉施設に入っている人にとっては食事がもうほんとうに生活の大部分を占めるわけでしょう、だからその食事についてはことさらに気を配らなきゃならぬわけですから、ひとつ客観的に大体こういう層にはどれだけの栄養量が要ると、それを摂取するには現在の物価を率直に反映してどれだけかかるというものをはじき出してもらいたい。それでやっぱり大蔵省とも話し合いをしないといかぬのじゃないかと思うんです。いままでのようにつまみで考えてはいけない、こういうふうなことを私は痛感しますので、ぜひその点は先ほどおっしゃったように再検討していただきたいと思います。  そこで、私はこの間から一体どの程度に金がかかるんだろうかと思っていろいろと調べたんです。その例がありますのでひとつ申し上げてみますと、これは実際にいまの施設でやっておることでありますから、それで必ずしも十分な栄養が確保できておるということは言えませんよ。というのは、あなたのほうで御調査になって御提出されたその資料によって、これは現実に行なわれておる施設の資料をおとりになって、しかもそれで微量栄養素においては大いに欠けるという指摘が出ているんですから、だから、これがこれから申し上げるのが十分なものだという前提で申し上げるんではないんで、いま不足だといわれながら、不十分だといわれながら行なわれておるその中で一体どのくらい金がかかっておるか、そのことを調べてみましたので申し上げてみたい。東京都は二十四の施設調査いたしました。これは老人ホームで、養護と特養に分けていない調査なのでちょっとその点残念なんですが、それによりますと、二月の食費支出の実績が二百五十一円から三百七十八円、それから三月のその実績が二百五十円から三百七十円で、四月からの施設においての支出の予定額が二百六十円から三百七十円、これは老人ホームです。  それから神奈川県、これも同じく老人ホームで、これは養護と特養に分かれて調査をいたしました。養護老人ホーム十一施設について見ますと二月の食費の支出実績が二百八十一円から三百六十七円二十八銭、三月のそれは二百六十六円から三百三十九円、それから四月からの支出予定額が三百三十円から三百五十六円、いまのは養護老人ホームです。それから特別養護老人ホーム五施設、これについて見ますと、二月の実績が三百十四円から四百四十円四十七銭、三月のそれが三百二十八円から三百九十三円、四月からの支出予定額が三百四十円から四百四十二円。  それから京都市、これは養護老人ホーム九施設について調べました。その結果は、二月の支出実績が二百八十円から三百六円、三月のそれは三百円、これは大体全部九施設三百円なんです。それから四月からの施設での支出予定額が三百十五円から三百三十円となっております。  これに対して、先ほど申し上げましたように四十九年度の老人ホームにおける措置費に含まれている飲食物費は、養護老人ホームで二百六十一円、特別養護老人ホームで三百十四円であります。そうすると、その差が大体どういうふうになるかというと、東京都で大体最後のところをとってみて五十六円の差ができる。神奈川では、養護では六十九円から九十五円の差ができる。特養では二十六円から百二十八円の差ができる。京都市では養護で五十四円から六十九円の差ができる、こういうふうになるわけです。  それからさらに養護老人ホームにおける適正食費というのを今年の一月の物価を基準にして神奈川でのある施設に算出してもらいました。ところがそこで三百五十一円二十銭と出てきました。三月には一月に比して大体四・四%の消費者物価の上昇でありますから三月に換算すると三百六十六円六十五銭、こういうふうに数字が出たんです。神奈川に比べますと東京のほうが一割ぐらい高いといわれておりますから、大体四百円をこえる額になるだろう。いずれにしましても四十九年度予算で見ている飲食物費というのは現実とは大きく開いているわけです。この実態を大体どうお考えになりますか。
  89. 高木玄

    政府委員高木玄君) おそらく現在の物価動向、特に生鮮食料品の高騰の状況等から見ますと実態はそのようなものであろうかというふうにも思われます。
  90. 矢山有作

    矢山有作君 これは私は社会局長率直にお認めいただいたので、私も調査の実績というものからそういうふうに評価していただいたということはけっこうだと思います。  ただ、もし最近の物価の問題について、それほどにはならぬじゃないかというようなお考えが一部にあるとすれば厚生省ではこれは直していただきたい。たとえば、全社協が二月に全国的な物価動向を調査いたしまして、その結果、物価の高騰が激しいので赤字が出て困るということを申しておりますが、それらの物価の動向の調査の結論も私は念のために総理府の小売り物価統計で調べてみましたが、大体似たような結論が出ております。特にそれらはみな生活必需物資のことでありますから、したがって、これは率直に物価動向からしていまの予算措置では不十分であるということはお認めいただいて、今後これの是正についてぜひともお考えをいただきたいのでありますが、こうした状態の中で是正についての具体的な考え方というものが厚生省のほうにおありでしょうか、大臣からお伺いしたいと思います。
  91. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほど来の御質問に私の感じたことをまずお答え申し上げますが、やはり施設に対する、施設に入っておられる方々の処遇の問題として給食というのは非常に重要な問題でございます。しかも、それは栄養的な面において世間の批判にこたえ得るものでなければならぬ、こういうことだと思います。そこで従来とも、率直に申し上げますが、厚生省においてはそういう面の検討というものは今日まで十分なされておりませんでしたが、私はやっぱりこの際思い切って、国民というか、施設に入っておられる方々の性別、年齢別による栄養所要量というものを十分頭に描いて、しかもまた施設に入っておる子供の心身の状況等も十分頭に描いて、栄養学的に医学的にひとつ科学的に究明をするということが絶対必要だと思うんです。私がほんとうにいままで国会で、予算委員会などにおきましては二〇%上げたんですからこれでごしんぼういただきたいというようなことばかり言うてきたわけでございますが、ここは専門の社労ですから、私も率直に申し上げますが、私はやっぱり来年度の予算編成までにいま申し述べましたような科学的な検討をいたしたいと思います、これはほんとうに。そして、それに基づいて予算要求をするというんでなければ、ただ単に物価の動向に応じて物価が二〇%上がったから、じゃ二〇%上げましょうというふうなことじゃなしに、やっぱり多数の子供さんや御老人の方々をお預かりしておる厚生省としては、栄養的にこれでだいじょうぶなんですよ、まあ最小限度かもしれませんが、これでしんぼうしていただきますよというやっぱり科学的な基礎資料というものを整備するということが最も大事だと思いますから、来年度の予算編成までに必ず、栄養審議会等の専門委員会において、たとえば先ほどお述べになりましたような標準的なそういうふうな献立表をつくってそして研究する、それならば食費は何ぼ足りないんだということをはっきり出すような科学的な検討をいたしましてこの問題の解決に当たるというふうに努力をしてまいりたい、これをまずお約束を申し上げておきたいと思います。  第二の問題でございますが、来年、昭和四十九年度は、前年度に比較いたしましてこういう飲食物費等につきましては二〇%のアップをいたしたわけでございますが、最近の物価動向ににらみ合わせまして、私はある程度の改定が年度内に必要だと、こう考えております。したがって、いま申し述べましたような科学的な検討はまだされておりませんから、要するに物価上昇に見合って改定をする、必要があれば。こういうふうに考えております。  そこで、最近における三月それから四月、この辺の消費者物価の動向をにらみ合わせまして、その結果が出ますのは五月にはもうすっかりでき上がるわけですから、今月の末には出ますから、それと見合ってある程度の給食費の引き上げ改定をいたしたい、こんなふうに私は考えておるところでございます。
  92. 矢山有作

    矢山有作君 そこで先ほど述べました各施設の四月以降の食費の支出予定額は措置費の中の飲食物費を上回っておるわけでありますから、この超過分というのはおそらく地方自治体が上積みをしておるか、それがなければ施設のやりくりでまかなっておると思うんですね。そこで地方自治体が大体どの程度の上積みをやっておるのか、これは厚生省でお調べになったことがありますか。これは社会局関係、児童局関係両方。
  93. 高木玄

    政府委員高木玄君) 地方公共団体の上積み分は調査したものはございません。そこで予算上の飲食物費単価を現実の飲食物費が、原材料費の購入価格が上回っておるという面につきまして、いま施設の生活費につきましては内訳は飲食物費と日常生活諸費、この二本に分かれておりますが、飲食物費と日常生活諸費は彼此融通して経理していいことになっておりますので、この飲食物費の上回った分は、日常生活諸費が食われているといいますか、総体のやりくりでしのいでいる、かように考える次第でございます。
  94. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 児童家庭局の施設につきましてもただいま社会局長が答弁したとおりでございます。
  95. 矢山有作

    矢山有作君 これは自治体がどの程度負担しておるか、これはお調べになっていないということ一ですが、やはり私は自治体の負担というものを一応お調べになる必要があるのじゃないかと思うのです。というのは、必ずしも飲食物費に対する負担ということでなしに、社会福祉施設全体について自治体というのは相当な負担をしておるようですから、したがって、これはぜひ一ぺんどの程度の負担をやっておるのかという実態をお調べ願いたいと思いますが、いかがでしょう。
  96. 高木玄

    政府委員高木玄君) 調査するようにいたします。
  97. 矢山有作

    矢山有作君 それで、社会局長、まことにつらあつかましいことを申し上げますが、なかなか厚生省の調査は時間がかかりましてね、資料がなかなか二カ月も三カ月もせぬと出てこないので、なるべく早く調査をしてほしいと思うのですが、やれますか。
  98. 高木玄

    政府委員高木玄君) 施設の経理状況調査というものが本省に上がってくるのは八月だそうでございますので、それを待って調査いたしますとおくれますので、幾つかの点について具体的に調査してみたいと、かように考えます。
  99. 矢山有作

    矢山有作君 調査でさましたら、資料をひとつぜひわれわれにもお見せいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  100. 高木玄

    政府委員高木玄君) 調査でき次第お届け申し上げます。
  101. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、社会局長に申し上げたい、これは大臣にも申し上げたいのですが、一般生活費ということで飲食物費、日常生活諸費ということで出しておるから彼此やりくりして何とかなるのだと、こういうお話だったと思うのです。私はことばじりをとらえるわけじゃありませんけれども、とても彼此やりくりができるような一般生活費が出されておるわけではないということを申し上げてみたいのです。  というのは、御案内のように、たとえば特別養護老人ホームでは飲食物費が三百十四円、日常生活諸費が三百六十五円、合計で六百七十九円です、一人一日分がね。それから養護老人ホームでは飲食等費が二百六十一円ですが、それから日常生活諸費が二百七十二円ですか、合わせて五百三十三円、それから身障者更生援護施設で飲食物費が三百二十五円、日常生活諸費が二百一円、合計五百二十六円、まあそのほかありますが、こういう状況ですから、しかも日用品の値上がりもこれは非常に激しいわけです。しかもこういう施設入所者が調達する日用品というのはまさに、ぜいたく品はないのでしてね、まさに生活必需品なんです。その生活必需物資の値上がりが激しいのですからね。したがって彼此融通をしてやるというだけのゆとりはないわけです。だからこの点はひとつ頭に置いてものをお考え願いたいと思いますが……。
  102. 高木玄

    政府委員高木玄君) おっしゃるとおりの面が確かにあろうと思います。私どもこの消費者物価の動向を見てまいっておりますと、特に消費者物価の中で上昇が著しいのは食糧費でございますので、飲食物費の現実の価格が相当高いものになっておるだろうと、かように考えておるわけであります。この点につきましては私ども絶えず消費者物価の動向というのを見てまいりまして、先ほど大臣が申されましたように、さしあたりは四月の消費者物価の動向を見て、もし必要があれば措置をとりたい。かように考えます。
  103. 矢山有作

    矢山有作君 ぜひ早急に現状に即して措置費の引き上げをひとりお考えをいただきたいと思います。  そこで、まあ赤字分は、自治体が持つか、それでなかったら施設のやりくりになるわけですが、ところが自治体が持てばまだ何とかそれやれるわけですよね。ところが自治体が持たぬ場合はこれはたいへんなんですよ。私が調べた例は、これは自治体がある程度持っているんです。——ある程度どころじゃない、かなり持っている施設なんですが、それでもこういう結果になっているんですよ。四十八年の四月から十月まで、これは老人ホームです。一日一人当たりを三百四十七円から四百四十八円で食事をつくっておったというんです。ところがそうしたら十月末で二百五万円赤字が出た。これはたまらぬというので十一月からどっと切り下げたというんです。そうすると、どうしてもその食事の質量ともに落とさざるを得ない。それじゃどうにもならぬというので、多少元に戻してやっているけれども、どんなに切り詰めても三百四十円は一日一人かけざるを得ぬというんですね。一体、これじゃどうしてやったものだろうかという悩みがあるというんで、私行ったときにそのことを非常に困ったといって話しておりましたがね。要するに、赤字を出す覚悟でやれる施設はまだいいんですが、ほとんどがそんなことはできませんから、赤字を出すまいとするとどうしてもその質も量も落とさなければならぬと、こういうことになってしまうわけですね。それは私は最近の物価高の中で特にきびしいんじゃないかと思うんです。それは先ほども触れましたが、行管が四十六年の調査で、その結果を四十八年の六月に発表しておりますが、「老齢者対策に関する行政監察結果報告書」、これの中を見てもやはり給食の状態が不十分だということを指摘していますね。まして、いまの激しい物価高の中ではたいへんだと思うんですよ。だから、これは先ほどお話がありましたが、ひとつ積極的に解決するように御努力願いたいと思います。  そこで、措置費の負担区分というのは国が何ぼ、地方自治体が何ぼ、こうはいまなっていませんね、これは全然。
  104. 高木玄

    政府委員高木玄君) 措置費の負担割合は国が八割、地方公共団体が二割でございます。
  105. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると措置費の負担もやっぱり生活保護と同じように国八割、地方自治体が二割と、こうなっているわけですか。
  106. 高木玄

    政府委員高木玄君) さようでございます。
  107. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、私が先ほど地方自治体の負担状況をお調べ願いたいと言ったのは、やはり措置費の中で国が八割、地方自治体が二割持つ、その分と、それにさらに地方自治体が持っておる分と、これを分けてひとつ御調査を願いたいと思います。  そこで、先ほどこれはもうすでに申し上げたことでありますが、飲食物費だけが増額をされましても、いまのような栄養士なり調理員の配置状況では入所者の身体的状況や嗜好を考慮して必要な栄養量を確保されるということは困難だと思うんです。だから、食費の増額だけでなしに、栄養士、調理員の配置の充実等も一体として給食体制の完備をはかってもらいたい。そのためには、やっぱり、先ほどこれは大臣もそういう意味で申されたと思うんですが、措置費の算出のやり方というものを全面的に再検討してもらいたい。これはそういう意味で言われたかどうかわかりませんが、私は措置費の算出のやり方というのを全面的に再検討してもらいたいと思うんです。というのは、この間予算委員会の論議の中で明らかになったのでありますが、社会福祉施設措置費というのは三十八年の措置費を元の数字にして、消費者物価指数により改定をしてきたと。最近は主として生活扶助基準の改定に準拠して改定をしておると、こういう話なんです。これでは私は現実との乖離は避けられぬと思うんです。したがって、それだけに、健康で文化的な最低限度の生活を保障するという前提に立つなら、この措置費の算定のやり方というものを根本的に再検討をしてもらいたい。そういう意味で私は先ほど厚生大臣は御答弁をいただいたと思うんですが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  108. 高木玄

    政府委員高木玄君) 措置費は、大別いたしまして事業費と事務費に分かれております。で、この入所者の処遇費といいますか、施設に入っておられる方の生活費につきましては、先生がただいま申されましたように、三十八年度の価格を、毎年のように消費者物価なりあるいは生活保護のアップ率に準じて引き上げてきたと、こういう実情でございます。この点につきましても、先ほど先生がお話ございました、大臣から申されましたように、たとえば飲食物費につきましては、客観的な科学的な根拠のある献立表をつくり、そういったものを、積算をもとに予算要求をする、こういうような方向で措置してまいりたい、かように思います。
  109. 矢山有作

    矢山有作君 だから、措置費全体についての算出のしかたについては御検討になりませんか。これは、措置費全体の算出のしかたを再検討するということになると、あわせて、私は、いろいろな施設設備運営基準で定められている最低基準の問題にまで触れていかなきゃならぬ問題だと思うんですよ。しかし——なぜ私かこういうことを言うかというと、各種社会福祉施設設備運営の最低基準にいたしましても、その一つの典型になっておるのは児童福祉施設最低基準というんですか、これが一番古いし、いろいろな社会福祉施設の最低基準をきめる場合の典型的なものだと思うんですが、この児童社会福祉施設の最低基準にしても、昭和二十三年にできまして、その後、職員の配置基準等多少いらうということだけで、ほとんど、現在の情勢から見ての全面的な再検討はなされていないわけですね。ところが、これの全面的な再検討ということは、かつて、審議会等から言われたこともあったやに私は記憶しておるんです。そうすると、いまの自由世界第二位という経済成長を遂げて、経済的に見ても財政的に見ても福祉をことばだけの福祉に終わらせないで、十分に国民の期待にこたえる福祉を実現する、そういう力を持っておることは、私が言うだけでなしに、大蔵大臣も堂々とそれを言っているわけですから。そういう時期でありますから、私は、社会福祉施設の最低基準について設備運営全般を洗い直してみる必要があると、そういう中で措置費の算出のやり方も再検討してみる必要があると、こういうふうに考えておるわけです。そこで、その最低基準全体を洗い直すということになると、これは本格的な作業が要りましょうから、当面、措置費の問題だけでも、これはそんなにむずかしい問題ではありませんから、いまやっておるように、三十八年度の措置費をもとの数字にしてはじき出すというようなやり方でなしに、現在の経済社会の実態から、給食だけに限らず全体の措置費のあり方というものを再検討する、こういう考え方は出てこないだろうかと、こういう趣旨です。
  110. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まあ、措置費全般についての再検討というふうになるかならぬかは別といたしまして、昭和五十年の予算要求において考えらるべき問題から申し上げてみたいと思うんですが、これは先ほど局長から申し上げましたように事務費と事業費に分かれておりまして、事務費のほうは、先ほど来御質問のございましたような栄養士の設置基準の問題とかいろいろあるわけでございます、これは。事務費のほうはその問題があるわけです。したがって、事務費のほうで、私は、ちょっと頭に浮かべても考えられるべき問題は栄養士の問題をどうするかと、これは先ほど来お話のありました栄養士の問題をどうするか、これが一つございます。それからもう一つの問題は、先ほどもちょっと御質問がございましたが、御意見もございましたが、社会福祉施設において、最近、労働基準法の違反というようなことばっかりいわれているんですね。まことにもってこれはお恥しい話だと思います。そこで、この労働基準法違反ということがいわれないような職員の最低設置基準というものは、これは一年でできなければ二年でやるとか三年でやるとか、やっぱり計画的にこれは考えにゃならぬ問題だと思います。こういうふうな問題が事務費における検討の課題である、私はさように考えております。それから事業費のほうの問題は、主としてこれは飲食物その他の栄養量の問題が中心になるわけでございまして、私も、国会でいつまでもそんなことばっかり——二百六十五円のあれて食えるのかというようなことばっかり聞かれるのはもういやですよ、これは。ほんとうにいやです、これ。でございますから、これも先ほどお答えいたしましたように、その年齢別あるいは性別による栄養所要量というものを頭に描いて、そして科学的に医学的にその栄養を確保できるような献立表をかりにつくったとすれば、それは最低限度どのくらい、まあ最低限ということばを使っては悪いかもしれませんが、最低限どの程度の金がかかるのだと、やっぱりそういう基準でものを考えていくということが私は必要だと思うのです。従来のように物価動向に応じて二〇%上がったからまあ二〇%上げましょうかというようなふうじゃなしに、やっぱり国会の批判にこたえ得るような改定を来年度の予算要求に出していきたい、こう考えておるわけでございます。したがって、そういうふうなものがまあ再検討といえば再検討でございます。一年でできなければ二年で必ずやりますと、こういうふうなことをやっぱりしていきたい、またそれを厚生省はしなければならぬと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  111. 矢山有作

    矢山有作君 そういうふうにやっていけば措置費の算定というのは相当大幅に変わってくるだろうと思うのです。  そこで、私が最低基準の問題にまで触れましたのはなぜかといいますとね、これはその施設についての設備基準というものがきまっていますわね、建物が一人当たりどれだけの広さだというような調子で。この問題で実は私はいろいろな社会福祉施設を見て回りまして大きな矛盾を感じましたのは、いまの日本の社会福祉施設というのは、収容する建物だけを中心にものを考えておるのじゃないか。その空間というものが全然無視されておるわけですね。だから、建物はできた、そこの中に子供が閉じ込められた形でおるし、また、その身障者の諸君にしてもあるいは老人ホームの皆さんにしても、そういう形なんですね。私はやはりああいう社会福祉施設に入って、そこで長い期間生活をし、一生過ごすわけでありますから、そうすると、収容する建物だけ、入る建物だけがあったんではだめだと。これはやはりある程度のスペースを持った空間というものがどうしても要ると、こういうふうに痛感したわけです。特に重症児のところへなんか行きますとね、一口に言ってまさに入ったとたんに陰惨な感じを受けるわけです。どうしてあんなことになるかというと、これは全然空間がないわけですね。一つの部屋に何人かいて、日が照ろうが雨が降ろうがいつも部屋の中ですね。もしあれが部屋続きにかなりのスペースを持った土地でもあるなら、ひよりのいい日には子供を外へ出してやることもできるだろうと思う。年寄りにしても、あまり動けない年寄りが、ある程度のスペースを持った施設であるなら外に出て、天気のいい日にはそこら辺を散策してくるということもできるだろうと、こういうふうに思うのです。  そこで、私は、そういった点を痛感いたしましたので、いまの社会福祉施設はいわゆる建物中心である。これではいけない。やはり一定の広さを持った空間が要ると、そういうことで最低基準というものを再検討されて、まさに福祉の名にふさわしいような社会福祉施設を整備されていかれるという方向は出ないものだろうか、こういうことで、私は最低基準のことを申し上げたのです。その点、いかがでしょう。
  112. 高木玄

    政府委員高木玄君) 御指摘の御趣旨、よくわかります。私どもも最低基準につきましてはいろいろ改善をはかってまいっておりますけれども、やはり必要最小限というような頭が残っているかもしれません。どういうものが必要であるか、そういった点につきまして先生のいま申されました御趣旨を含んで見直してみたいと思います。
  113. 矢山有作

    矢山有作君 もう一つは、最近の新聞報道でいわれておることでありますが、これは御案内のように今年の三月末で精薄児施設のフジ学園が廃園になりましたね。それから島田療育園ここでは園長が辞任をされる。さらに、最終的にどうなったかまだ聞いておりませんが、副園長を含んだ三人の医者がもうやめると、こう言って辞表を出されたり辞意を表明されているという状態になっていることは御案内のとおりだと思うのです。特に島田の場合は看護体制が組めないほど人手不足が起こっておる。その人手不足の一つの大きな原因は腰痛症だと、こういうような問題で、非常に園の維持すらが、存続すらが危ぶまれておる状態なんですがね。これに対して、当面の手を打たないと私はいかぬのじゃないかと。フジ学園が廃園になった、そのままだと、こういうことはまさに残念な話でありますし、また島田がこのままの状態でおると子供を親元に返さなきゃならぬという実態になるんじゃないかという心配があるんです。これはこの前にもちょっと触れて、局長からいろいろお考えいただいたところなんですが、その後、御調査にもなっておるだろうと思うんで、フジ学園のあとの状況なり、島田の問題なり、それに対する処置なりをお聞かせ願いたいと思うんです。
  114. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) フジ学園につきましては、非常に遺憾なことでございますが、私立の法人として発足して、今日まで長い歴史、精薄、特に重度の精薄児の収容施設として福祉の世界に貢献をしてこられたわけでございます。この施設の最大の問題は、御承知のとおり、保母さんの不足ということが何よりの大きな問題、それから最近の物価と措置費との関連で園の経営が困難になった。私どもといたしましては、あくまでも主体的に、自発的におやめになることについて、遺憾でございますけれども、とりあえず収容されている子供さんにつきましては措置がえという措置をとることによって、少なくとも影響を最小限に食いとめたいということで、都道府県を通じてこの点は指導してまいっております。  島田につきましては、たびたび当委員会等でもお答え申し上げたわけでございますが、きわめて基本的な課題としてわれわれ取り組まなければいけないと思いますのは、重症児が重症者になってきている現実でございます。三十九年に重症児施設が発足しましたころにおきましては、いわば小さい重症児であったわけでございます。それが年齢が大きくなりますと同時に大きな重症児になる。こういう施設は、当初この世界で発足した島田あるいはびわこというような歴史のある施設において顕著でございます。最近の施設はまだ重症児でございますけれども、やがてこの重症児施設も重症者施設というものに変わっていくであろうと、したがいまして、私どもといたしましては重症児施設という考え方を、重症者を含めた新たな展望をもって対処していかなければ腰痛問題の根本的な解決はできないのではないか。で、これはまだ公式にこうするということをきめているわけではございませんけれども、要するに、おとなの、二十以上の「者」の重症心身障害人々、また、ことばをかえて申しますと、四十キロ以上にもなるからだの大きい重症心身障害者・児を処遇する方途というものを根本的に検討してまいりたいということが一つでございます。  片方におきましては、当面島田の措置でございますけれども、御承知かと思いますけれども、園長はおやめになりましたけれども、その他の職員はまだ具体的におやめになったというふうには伺っておりません。精力的にこの理事者と——あそこは協会でございますので、理事者と職員との間で話い合いが進められております。ただ、先日も御指摘がありました腰痛によって休まざるを得ない職員の代替問題につきましては、根本的な問題はさておきまして、とりあえず何らかの経費が必要でございます。その点につきましては、東京都はすでに東京都の重症心身障害児・者について相当の負担をしておられます。国としては、もう御承知と思いますけれども、今年度相当の予算的な措置をしておりますので、とりあえずはこの東京都以外の府県についても東京都並みの配慮ができないものかということで、とかく不足がちな職員の給与等を解決できるための方途を講じてまいりたいということで現在関係方面と折衝しているわけでございます。  なお、先ほども御指摘がございました施設の環境が、島田、びわこは代表的でございますけれども、非常に狭うございます。それから職員の休養室あるいは厚生施設というものが不足しております。こういったものを今年度の施設整備費の範囲内でできるだけ配慮をしたいということと、同時に、時期を見て、施設全体について改善をはかる必要がある。とりあえずは省力機器等をさらに導入することによって、少しでもその負担の軽減をはかってまいるということに今年度は集中してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  115. 矢山有作

    矢山有作君 大蔵省のほうからお見えいただいておったわけですが、ずっと論議を進めてまいりまして、最初からの論議をお聞きいただいておらぬ向きがあると思いますが、つづめて言うならば、大体、お聞きいただいた論議の中で御理解いただけるように、社会福祉施設の状態というのが、たとえば給食問題を一つ取り上げてみましても、給食というのは、人間の命を維持していく基本ですから、その問題を取り上げましても、非常に、体制の上でも、また中身の上でも、不十分な点があると、したがってその点について積極的な改善をしてもらいたいということを厚生省にお話しをしておったわけです。そこで、大蔵省としては、厚生省からも、また大蔵省からもたびたび言われるように、今年度、四十九年度は二〇%の措置費のアップをしていただいたわけでありますが、まだまだ、それでは、現状というのは追っつかない状態にあるということで、それを中心に話を進めてまいったわけです。厚生省のほうからも、この社会福祉施設施設なり、あるいは内容の改善について、積極的な話があるだろうと思うので、その場合、大蔵省としても、大蔵大臣自体も、いまの日本の経済力、財政力は、国民の要望に十分こたえ得る状態になっておると言われておりますし、まして福祉の問題は、これは国民的な一致をした要望でありますので、これは予算編成の際には、格段の配慮を願いたいと、こういうことを、ひとつせっかくおいでいただきましたので、お願いを申し上げておきたいと思います。
  116. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) 措置費の問題につきましては、施設に入っている方々の生活費の問題と、それから働いている方々の勤務条件の問題と、そういうとらまえ方をして考えるべき問題だと思います。  まず、その生活費の問題につきましては、先ほど来厚生大臣がお述べになっておりますように、四十九年度予算では二〇%の引き上げ、今後の物価の動向においては、まあ、どういう対応をするかという問題がありますけれども、財政当局といたしましては、特に四十九年度予算におきましては、厚生省の非常な御熱意もございまして、予算編成の段階においては、十分これで施設の生活費はまかなえるという前提で編成をいたしたつもりでございます。  それから、施設に働いていらっしゃる方々の勤務条件の問題でございますけれども、これは労働省の調査がございまして、まあ労基法違反の問題等々も、予算編成の段階で、私ども厚生省とよくお話し合いをいたしまして、四十九年度予算では、抜本的な改善という方向ではございませんけれども、たとえば、いま話題になりました重症施設等につきましては、マン・ツー・マンの介護ができると、もちろんこれは施設長の御判断によりまして、職員を御採用になるか、あるいは省力機械を導入なさるのか、いずれにしても、重症施設に働いていらっしゃる職員の方々の処遇改善に充当すべきものとしての予算措置も講じております。あるいは保育所につきましては、年次休暇が十分にとれないというような問題もございまして、本年度におきましては、労基法の最低限度でございますけれども、六日分の年次休暇がとれるような予算措置、あるいは一時間の非常勤の保母さんの予算措置等々を講じておるわけでございます。  五十年度以降、措置費をどういうふうに考えていくかという問題でございますけれども、現在の組み立て方を抜本的にやり直すということは、私は相当な大作業になるのではないかというふうな感じがいたしております。したがいまして、まず、生活費の問題につきましては、飲食物費それから日常諸費、これは彼此融通して使えるようなシステムに、ことしからそれをはっきりしたわけでございますけれども、これを今後、今年度のように生保のアップ率に準拠したようなやり方でやるのか、あるいはもう一度マーケットバスケットをやり直して組み立てるようなやり方があるのか、いろいろ考え方はあると思います。ただ、私どもが二〇%の生活費の予算編成をした時点、それから当時の物価動向から見まして検証をいたしますと、厚生省の言っておられる各施設の最低所要カロリーは十分まかなえるという一応の積算の根拠はございます。ございますけれども、先ほど厚生大臣もお述べになりましたように、物価の動向、予断を許さない面もございますし、御案内のように、四十八年度中におきましても、十月に改定し、十二月、それから三月、それぞれ臨時の措置をいたしております。  それから職員の勤務条件の問題につきましても、帰するところはまあ定数基準をどうするかという考え方になろうかと思います。なろうかと思いますが、これも私ども四十九年度に一応予定いたしておりますのは、保育所につきまして、厚生省と大蔵省で措置費の実態調査をするということを現在予定いたしております。  それから、他の福祉施設につきましては、厚生省御自身でいろいろ御調査を願うというための予算措置も講じております、四十九年度予算。そういう結果を踏まえまして、五十年度以降どうあるべきかということを検討してまいりたいと思います。
  117. 矢山有作

    矢山有作君 厚生省に特に申し上げておきたいんですが、厚生省は何といいましてもこの社会福祉問題については担当省でありますから、したがって、社会福祉施設の全体的なその実情の把握の上に立って、しかも、それを体系的に整備をしていく、そういう考え方はこれはぜひ持って進めていただきたい。それでないと、最低基準についての本格的な見直しというようなこともできないでしょうし、それが進まなければ、ほんとうに社会福祉施設というものを充実したものにさしていくことはできぬと思いますので、その点は、これはただ委員会でのやりとりということだけでなしに、私は現状を把握した上で、積極的に取り組んでもらいたい。このことだけは強い要望として申し上げておきます。その中で、当面は措置費の問題については、解決は早急にはかっていただく、また、その問題については、それをやっていただけるような点についての、まあ、大部分それを首肯されたような考え方を述べられましたから、ぜひそれを進めていただきたいと思います。  そこでもう一つだけ伺っておきたいんですが、これは、この前の予算委員会のときに、時間の都合で触れなかったところなんですけれども、社会福祉施設ですね、児童福祉施設の入所資格の条件に、「学校教育法に基く就学義務の猶予又は免除を受けた者に限る」という通知が出されておりますね。これがまだ生きておるのがあると思うんです。ところが、この通知をめぐっては、いままでいろいろ議論があったところで、むしろ積極的に、施設収容された児童についても教育をやるべきだと、それを、教育をやるための施設整備ができないからということで、就学の猶予であるとか、免除だという形で教育権を奪うのはけしからぬではないかという、こういう議論はたびたびあったと思うんですよ。その際に、こういう通知というのは、むしろもう撤廃をすべきじゃないかと、そうして厚生省自体としても、義務教育の保障ということについて、積極的に取り組んでいくべきじゃないかというお話がたびたびあったと思います。いまだに、調べてみますと残っておるようですがね、この点の御見解は、どうなんですか。
  118. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいま御指摘の点は、精神薄弱児の施設でございます。現に三十九年の局長通知で、義務教育の免除または猶予を条件としているものが残っておりますが、精薄児通園施設につきましては、この四月四日、局長、名をもって、この条項を取りはずすようにいたしました。近くこの収容施設についても取りはずして、義務教育の猶予または免除を条件とすることを撤廃いたしたいと、かように考えております。
  119. 矢山有作

    矢山有作君 肢体不自由児通園施設についてもありますね、これ……。
  120. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 同様に措置をいたします。
  121. 矢山有作

    矢山有作君 いろいろと社会福祉施設問題中心に論議をしてまいりましたが、ぜひとも私ども申し上げた趣旨をおくみ取りいただきまして、まさに福祉が最も重点としていわれておるときでもありますので、その福祉施設の充実をはかり、入っておる人、そして、そこで働いておる人、その人たちが人間らしい生活ができるように格段の御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
  122. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分から再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十一分休憩      —————・—————    午後一時四十四分開会
  123. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き社会保障制度等に関する調査議題とし、厚生行政基本施策について質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  124. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 今年度の厚生省所管の予算は、前年度に比べて三七%増と大幅な伸び率になっております。私は、これは急激な物価上昇に対処して社会保障を一歩でも前進させていこうとする厚生大臣の意気込みのあらわれであると評価するわけでございます。しかし、一方では、とどまることを知らないこのインフレの進行によって、各種給付金の実質価値は激しく目減りをしている現状でございます。したがって、こんな状態ではせっかく給付額を増額しても、あまりありがたみは感じられないのではないかと思います。まさしくこのインフレは社会保障の敵であると、こう思いますが、この日々に給付金の価値が下落していく現状、これを大臣はどうお考えになっていらっしゃるかお尋ねいたします。
  125. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 昨年来始まりましたこの物価高の状況、急激に物価が上り、しかもそういう状況が相当長い期間続いておるということは.まことに遺憾なことでございます。そういうふうな状況を踏まえて四十九年度の予算編成が行なわれたわけでございますので、何とかこの物価上昇にたえ得るようなものにしなければならないということを考えまして、すでに御承知のように、社会的に弱い方々の生活を守るために、扶助基準の二〇%引き上げ、あるいは午前中にも御質問のございました措置費の二〇%の増額、さらに各種年金につきまして、福祉年金につきましては、五〇%の引き上げと、こういうふうなことをいたしまして、この物価上昇にたえ得るような対策を各方面にわたってできるだけの努力をいたしたつもりでございます。しかし、ものによりましては、これだけの上げ幅では不十分ではないか、こういったふうないろいろな御意見がありました。予算委会においてもいろいろ御質問をいただいたわけでございますが、しかし、私といたしましては、総需要抑制の中にあって、少しでも貨幣価値の目減りを防ぐように最大の努力をいたしたつもりでございます。
  126. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 どの大臣よりも弱者の立場を守るという立場にいらっしゃる厚生大臣でいらっしゃいますので、このインフレまた物価高ということに対して、できるだけということではなく、いまいろいろとおあげになったことは、私どもも承知しておりますが、今後どういう施策をお考えになっているか、積極的なもう少し具体的なお考えがございましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  127. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) したがって、四十九年度の予算におきましては、物価の動向をにらみ合わして、しかも経済的、社会的に弱い方々の生活を守るために、それぞれの措置を講じてまいったつもりでございます。しかしながら、この編成し、また成立いたしました予算で昭和四十九年度一年一ぱい十分であろうかということになりますと、いまのところ予測はつきかねるわけでございます。しかしながら、やはりこの最近の物価上昇の傾向というものは、一、二カ月でおさまるかどうか、なかなかこれ、問題があるように感ぜられます。総需要抑制ということはほぼ成功しておるようにいわれておりまして、最近卸売り物価等についても多少鎮静の傾向は見えておりますけれども、消費者物価がすぐ鎮静の方向になるかどうか、いまのところまだ予想はつきかねるわけでございます。そこで私は、今後の四十九年度におきましても、物価の動向ということに最大の関心を払っていかなければならぬ、物価動向ににらみ合わせながら、最低の生活は守っていくという心がまえでいかなければならぬであろうと、こういうふうに考えるわけでございます。昭和四十九年度に入りましてまだ日がわずかでございまして、四月の消費者物価指数も全国的にはまだはっきりわかっておりませんから何とも言えないのでございますが、今後とも物価の動向には、どの程度物価が上がるかこれはわかりませんけれども、十分に関心を払いながら、それに見合って対応策を考えていかなければならぬであろうというふうに考えておるわけでございます。生活扶助一つ考えてみましても、最低生活の保障の生活扶助、これが一番基本の大事な問題でございますが、それがどういうふうに変わっていくかということは、いまのところ予断を許しません。四月の物価動向がどういうふうになるか、五月の物価動向がどうなるか、あるいはさらに——三月の物価動向は出ておりますけれども。したがって、四十九年の物価動向が具体的にどうなるか、これがまだはっきりしませんので、対応策も具体的には申し述べることはできない。しかし、私としては、必ず、そうした動向とにらみ合わせながら、対応策は講じていかなければなりませんし、それがまた、対応策を講ずるのが厚生省のつとめである、責任である、こういうふうな考え方で取り組んでまいりたいと、こう考えておる次第でございます。
  128. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、厚生省の仕事として今後もっともっと内容を充実していかなければならない児童手当がございます。これは私、非常に不満がございますし、また、大臣に御努力願いたいという点が数々ございますので、少しそれについてお尋ねしたいと思います。  まず、手当額が今回は三千円から四千円になったわけです。当初三千円にしたときと今回四千円にしたときとでは算出の根拠が違っております。なぜ今回養育費を基礎として出さなかったのか、これをお尋ねいたします。
  129. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 児童手当につきましては、四十七年から発足いたしました制度でございまして、その内容といたしましては、御承知のとおり一手当額、それから所得制限、それからまた児童の第三子の年齢、こういう三つの要素があるわけでございますが、四十七年、四十八年、四十九年と、各年.ことに制度内容につきまして、特に、当初は満五歳以下、それから四十八年は満十歳以下、四十九年におきまして義務教育終了前までの児童に拡大する、いわゆる段階的実施を行なってまいったのでございます。この手当額三千円が当初きめられました際には、御指摘のように、児童養育費調査に基づきまして、大体第三子以上の子供さんを持っておられる世帯の家計負担というものを考慮いたしまして、手当額が審議会等の答申もありまして三千円にきめられたわけでございます。今回これを一千円引き上げましたのは、御承知のとおり、消費者物価水準が国民生活全体の中で非常な変動と申しますか、物価高になってきておりますので、この段階実施の途中ではございますけれども、この額を三千円から四千円に手直しするということにいたしたのでございまして、なお四十八年におきまして、児童養育費について再度調査をいたしまして、五十年の制度——一応四十九年に終了いたします段階実施以後の手当額をどうするかということにつきましては、目下、四十八年に調査をいたしました児童養育費調査を基礎にしてひとつ前進をはかってまいりたい、かように考えている次第でございます。
  130. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それで、養育費を基礎にすべきこの児童手当の算出の方法を、家計調査の消費支出の伸び三六%を用いて計算したわけですね。これは私は非常に古い資料を使っていると思うのです。四十四年度から四十七年度の間の上昇率が三六%だという、これが根拠になっているわけです。しかし、現在昭和四十九年度でございまして、非常に物価が上昇しております。この差というのは格段の差がある。それから、四千円にすると言ったのは、去年の八月の予算の段階です。これを考えてみても、今回の増額というのが、非常に著しい経済変化をあまりにも無視しているのじゃないか、こういうふうに考えますが、その点いかがでしょうか。
  131. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいま御指摘のございました消費支出の伸びというのも一つの考え方でございますけれども、別途四十六年から四十七年までの消費者物価指数、それから四十七年から四十八年に至る消費者物価指数の伸び、さらに四十九年の見通しというものを考え合わせますと、この率も大体三割ちょっとになるわけでございます。必ずしもそれが根拠と申し上げるわけではございませんけれども、国民生活水準の著しい変動の一つの要素として、消費者物価指数というものも考えられるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、四十八年に実施いたしました児童養育費調査、この集計も近く出ると思いますので、そういったことも考えながら、今後の手当額に対処してまいりたいと、かように考えております。
  132. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それで、この三千円を千円プラスして四千円にしたということは、決して厚生省の努力が足りないと、こういうふうに言って責めているわけではございません。しかし、現在の経済変動から考えれば、千円プラスしても、四千円の金額の価値というものは非常に低いのだと、それは厚生省としても御認識だと思うのですね。それで、私がこの四千円というのにこだわる理由は、来年また予算を要求なさるときに、また四千円のこの額で要求なさったのでは、これは非常に消極的じゃないか。いまお伺いしますと家庭調査をやっていらっしゃると、そうして、その家庭調査からはじき出されたものを検討して、そうして、あらためて経済変動の激しい中で児童手当らしい児童手当の手当額というものをおきめになると、そういうふうに私いまの御答弁を受け取ってよろしゅうございますか。
  133. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) そのとおりでございます。
  134. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それでは、来年の児童手当は少なくとも四千円以上であると、家庭調査をしっかりとやって、しかもそれを答申を受けて、そうしておきめになる。最初児童手当を三千円とはじき出したときと同じ方式をやはりとってなさると、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  135. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 申し上げましたように、家庭養育費調査の集計結果等も考慮しながら、さらに法律によります児童手当の趣旨から申しまして、それが適当な額が幾らであるかということについて、五十年の児童手当額について新たに額を決定いたしたい、このように考えておるわけでございます。
  136. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、養育費の実態調査がなされているということなので、この養育費について大臣にちょっとお伺いしたいのですが、現在学校に行っている予供さん一人に、一ヵ月どのくらいのお金がかかるか、学校に払うお金とか、衣類とか、食事代、こういうものを平均してどのくらいだとお思いになっていらっしゃいますか。
  137. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 大臣は何かお考えがあろうかと思いますが、先ほども申し上げましたように、家庭養育費調査の結果によって、ある程度の数値がわかると思います。御承知のように四十二年の調査におきましては、大体六千五百円ですか、この程度の額であったように聞いております。ただ、養育費といわれるものの中に、ほんとうに児童の養育費として分析するのはいかがなものであろうか。極端な例で申し上げますと、たとえばピアノを習っている月謝とか、こういったものが一体養育費調査として入るべきかどうか。あるいは塾に補習として通っておりますものもどう考えるかというようないろいろの要素があろうかと思います。ただ、その後の物価の変動ということを考えますと、四十二年当時の養育費に比べて相当の高額になっているのではないだろうか、かように想像しているわけでございます。
  138. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私はこの間、これについて都内五十軒ぐらいの家庭を回って家計簿を実際に見せていただいて調べてみました。平均して二万五千円から三万円かかっております。この中にはピアノのけいことかあるいはぜいたく品を買ったとか、また塾に通っているとか家庭教師をつけたとかというようなものは費用に含まれておりません。純粋に絶対に必要だという金額、それが二万五千円から三万円程度になっております。まあ、こういうことから考えまして、ぜひとも昭和五十年度の支給額の増額のときにはこういう現実をよく踏まえて、児童を養育している人たちに、これならばと思われるような児童手当にふさわしい金額を支給すべきだと思いますが、この点いかがでしょうか。
  139. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 御指摘の点、十分配慮しながら新しい年度についての手当額について検討してまいりたいと考えております。
  140. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 これは、最後は大臣の熱意できまるものでございますので、今回千円というものは先ほどの御答弁ですと、まあ大体消費者物価指数の上昇率その他の点から考えてもまあまあという線だというような、私にとっては非常に不満な金額でございますけれども、それをはじき出していらっしゃる。こういう考え方では私はならないと思います。いま申し上げましたように、二万五千円、三万円かかっているそうした養育費、これを親が非常に苦労していまおりますので、大臣に大いにがんばって、ああこれならばという、大臣が相当努力したと言われるような金額をぜひ予算に組んでいただきたいと思いますので、大臣の御決意を承っておきたいと思います。
  141. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この児童手当の問題は、私は非常にこれ重視している問題の一つでございます。  そこで、実は四十九年度も、まあ、へ理屈みたいなことを申しますとね、これ四十七年度から三年の計画の段階実施なんですね。でございますから、四十七年、四十八年はこれは三千円できたわけですわね、二年間は。その間に物価も上がったんです。ところがまあ四十九年度もほんとうを言えば、へ理屈言えば三年実施の段階の途中ですからね、四十七年、四十八年、四十九年同じ額にするというのも私は一つの方法だと思うんです。そうしなければ四十八年の人に気の毒じゃないかと、均衡を失するじゃないかという議論もあるわけです。しかし、まあ、そういうへ理屈みたいなことを言わないで、最近の物価上昇をにらみ合わしてある程度の微調整はしなくちゃなるまいと、そこで、まあ、ここ二、三年の間の物価上昇が二四、五%から三〇%だというんならば、まあ三千円から四千円ということにして微調整をしようではないかということにしたわけでございます。そこで、まあ本格的な児童手当の額をどの程度にしたがいいかということは五十年度以降の問題になるわけです。そこで、五十年度、来年度において予算要求するときにどの程度の額が適当かということをきめるにあたりましては、私は慎重な態度で臨んでまいりたいと思うんです。局長から御答弁申し上げましたように、養育費の実態調査もことしはやるわけでございますし、その実態調査の実態というものを踏まえ、さらにまた国民の生活水準なり、あるいは消費者物価の動向、そういうものとにらに合わせて、まあ非常に満足いくかどうかわかりませんが、まあまあ厚生省もよくやってくれたなあという程度に喜んでいただける額にはこれ直していかなければなるまいというふうに考えておるわけでございます。  しかし、まだ四十九年度の始まったばかりでございますからね、これが一万円になるのか二万円になるのか、それはよくわかりませんが、いまのところは何とも申し上げることはできませんが、慎重な上に慎重な配慮を加えて、いまお述べになりましたような実態調査の姿、物価の動向、そういうものをにらみ合わして慎重に検討をして、来年度以降の児童手当の額をきめて、そして大蔵省と折衝すると、こういうふうにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  142. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 よろしくお願いしますと、こういうふうに申し上げたいんですが、ちょっと大臣の御答弁に気にかかる点がございますので、まあ、くどいようですが、この児童手当は重視してきましたと大臣はおっしゃっておりましたね、私は軽視してきたと、こういうふうに言いたいわけなんです。最初この児童手当制度が発足しましたときにも、もう国会の本会議において代表算問が各党からありましたけれども、そのときには全部が不満であるということで算問があったはずです。そのときに政府のことばは、とにかく制度として発足するんだと、そして五十年度、四十九年度に完全実施してから、それから充実させると、こういうふうにまあ逃げているといえば逃げていることば。私たちは、その四十九年度がやってきましたので、待ちに待っていまこそこの児童手当を、あまりにも軽視されているこの児童手当を重視してやっていただきたいと、まあ段階的に三年もかかって児童手当を実施しているなんていうことは、まあ予算の関係上やむを得ないとしても、非常に社会保障制度に対して熱意のない政府一つの私はあらわれであると、こう思っているわけでございます。ですから、齋藤大臣があの当時厚生大臣でいらしたわけじゃございませんが、今度ほんとうに期待された児童手当の内容がほんとうに充実されるように、まず金額の点からがんばっていただきたい、そういうふうに重ねてお願い申し上げるわけでございます。
  143. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いや、これ、軽視している——私は軽視は絶対していないです。これは重視しているんです。重視しておりますからこそ、三年計画の実施の段階であっても、四十七年、四十八年と均衡がとれないではないかというふうな批判もあえて押し切って、まあ、ひとつ微調整で千円上げましょうと、こうしたわけなんで、本格的な内容の充実は五十年度以降と、こういうわけでございます。大蔵省などもこれについては非常に理解を持っておると私は考えておりますから、ひとつ来年度以降大いに内容充実のために最大の努力をいたします。
  144. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 大いに期待して、再び私も大臣に向かって児童手当は軽視されているなどというこの恥ずべきことばは言いたくないと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。  そこで、次にスライドの問題でございますが、前に私、このスライドの問題をお聞きいたしました。まあ、スライドの規定のない児童扶養手当が、あのとき前回は二倍も増額されている。スライドの規定のあるこの児童手当のほうは当然増額さるべきだと、こういうふうに質問いたしましたところが、十分考えていきたいという政府の御答弁でございましたが、このスライド制の問題はその後十分お考えになったんでしょうか。お考えになったのだったらどの程度にお考えになったか、お聞かせいただきたいと思います。
  145. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 児童手当法のただいま御指摘がございましたように、六条の二項に「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならない。」、これは御指摘のいわゆるスライドの問題であろうと思います。で、児童扶養手当につきましては、この母子福祉年金と同じように、父親のない、いわゆる稼得能力のない家庭に対して、その所得の保障という意味でこの児童扶養手当の制度があるわけでございます。したがいまして、この額につきましては、その制度本来の趣旨に沿って、毎年額の改定を行なって所得保障を進めているというのが児童扶養手当の改定の理由でございます。児童手当につきましては、御承知のとおり、この子供さん、三人以上の子供さんを持っておられる家庭の、一つには生活の安定、それから一つには児童の健全育成、いわゆる福祉と、この二つの目的によって児童手当を支給することになっているわけでございます。いずれもすでに御承知のことばかりでございますけれども、したがいまして、児童手当につきましては、当初申し上げましたように、非常な物価高によって国民の生活水準が一々変動するという時点におきまして、それに対応をするために額の変動を行なうというのが、この児童手当の額の改定の理由でございます。したがいまして、児童扶養手当と児童手当、法律制度のそれぞれの目的によって額の改定を行なってきているわけでございまして、御指摘のように確かに三千円を四千円でいいかどうかという問題はあろうかと思いますけれども、この児童手当制度、それから他の社会保障給付全体のバランスから申し上げましてこういつた改定を行なってきている。それが四十九年度の三千円から四千円に改定した理由であると、こういうふうに申し上げているわけでございます。
  146. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この規定にあるスライド制というものをどう生かすかということの検討はなさってないわけですね。
  147. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 法律の趣旨に従いまして、全体的総合的に判断すべきものというふうに考えているわけでございます。
  148. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それでは、この規則にございますように、どういうときに、どういう状況のときにこの規定を生かすべきなのか、まあ、ばく然としているわけですね。で、このスライド制に対する姿勢というものが私ははっきりしないわけなんです。で、いままでスライド制というものは生かされたためしもございません。まあ千円プラスしたということが総合的なスライド制の考え方だということなんですね。
  149. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 確かに御指摘のように、この規定におきましては、たとえば何%云々というような規定ではないわけでございまして、総合的に国民の生活水準全体が著しく変動すると、これは主として物価の変動であろうかとわれわれ考えます。そういった意味合いにおきまして、先ほど大臣もお答え申し上げましたように、制度が発足——四十七年、四十八年、四十九年と制度のいわば段階実施の途中ではありますけれども、こういった総合的な判断をいたしました上で千円のアップをいたしましたということで御了承いただきたいと思うわけでございます。
  150. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、私はこのスライド制のやり方というものはもう少し明確に、そうしてはっきりと方程式、他の年金などにもきちんと示されているような内容にすべきだと思うのですね。で、幸いにも養育費の実態調査がされているということでございますから、これをひとつ土台にしてやっていくことが当然だと、そこで、私自分ながらに考えたことでございますが、五十年度からこの養育費の実態調査の結果、手当額というものがきまると思います。最初のときのようなやり方で考えますと、まあ三万円なら三万円の養育費の実態調査が出たとすると、その半分、一万五千円というふうにするとします。この一万五千円というものを基礎にしてその年度の物価の上昇率とかあるいは家計支出の伸び率、そういうものをプラスしたものを支給するというような方法をやっていったのではどうだろうかと、毎回毎回家庭調査の努力と言おうか、たいへんなことだと思うのですね。で、家庭調査、家庭調査と、そういうことをもっと合理的にやっていったらどうかと、こういうふうに思いますが、このスライド制のやり方についてはどんな御意見を持っていらっしゃるのでしょうか。
  151. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 先ほど大臣もお答え申し上げましたように、インフレあるいは物価高というのは福祉にとっての敵であります。したがいまして、こういった総合的な国民生活の異常物価というものはあってはならないしないように努力することがまず第一であろうかと思います。で、現在の児童手当の額がきまりましたいきさつにつきましては、先ほど来御指摘のとおりでございまして、その後の状況の変化、特に生活水準の変化によって四千円にいたしたわけでございますけれども、ただ先ほど一つの考え方としてお示しのありました児童養育費調査による数字を根拠としてそうして、その間の、その後の物価をスライドさせるというような考え方、そのことはむしろ児童手当としてはできるならば一定の額を一定の条件のものに支給するのが一番望ましい姿ではないだろうか。今回の養育調査はその後の物価の変動等が著しい点もございますので、それからまた四十九年に一応段階実施が終わりますので、その段階で実施をいたしたものでございまして、かりにそれによって額がきまりました上は、われわれとしてはそれを一つの根拠として、それをもととしてその制度を進めていくということが望ましい姿ではないだろうか。なお、その後において国民生活の水準が著しく変動した場合には、その際適時適切な措置をとるのが望ましいやり方ではなかろうかと、かように考えるわけでございます。
  152. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ちょっと、しつこいようですが、適当な方決をというのは、今回千円プラスしたようなそういう方法のことですか。
  153. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) お示しの点もその一つの方法になろうかと思います。
  154. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 時間がございませんので次に参ります。  対象の問題ですが、現在第三子から支給されているわけですが、私はもうすでにこの第三子から支給というのは不適当だと思っております。これは厚生省の調査を見せていただいたんですが、この四人以上の子供をかかえた世帯の全体世帯に対する構成割合は四十一年度には六・二%。それが年を経るごとにどんどん減って昭和四十六年度では二・二%になっております。で、同じことが第三子以上の子供を持っている世帯についても言えます。今度は逆に、子供が一人しかいない世帯を見ますと、四十一年度は三八・三%だったものがどんどんふえて四十六年度には四一%というふうになっております。一人しかいない世帯というのは数が非常にふえてきたわけです。四人あるいは三人以上の子供を持っている家庭というのは非常に少なくなってきた。これは一人の子供を持った世帯、二人の子供を持った世帯を合計しますと八五%、ですから残りの一五%が児童手当を支給されている世帯になるわけです。わずか一五%の世帯にだけ児童手当が支給されている。もう三人目からの支給というものは再検討しなければならないと、こう思います。そうしてまた第二子からということがもう常識の線ではないか、これをお聞きいたすわけでございますが、いかがでしょうか。
  155. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 確かに御指摘のように三子以上の家庭の比率が全体として減ってきていることは事実でございます。ただ児童手当制度につきましては、先ほども申し上げましたように家計負担の軽減と児童の健全育成という二つの目的を持っているわけでございます。で、その意味合いにおきまして多子家庭、いわゆる子供さんの多い家庭の養育費負担の大きいということは間違いないことでございまして、それを軽減するという意味合いにおきましては多子家庭に対する児童手当というものは意味があろうかと思います。  確かに、御指摘のように世界各国の例その他から申し上げまして、第三子以降の児童手当制度を第二子以降に拡大すべきではないかという御意見、あるいは考え方のあることも承知しているわけでございます。ただ、申し上げるまでもなく、二子までに拡大した場合の対象人数は、簡単に申しまして四倍近くなるわけです。したがいまして、額も大体それぐらいにふえるわけでございます。そういった点から考え合わせますときに、手当額の増あるいは二子までの拡大というものと財政負担、特に他の社会保障給付との関係というものを総合的に考えながらこの制度をきめていかなければなるまいと。ただいまのような御意見のあることも承知しておりますし、十分われわれとしても検討していることを申し上げましてお答えにさしていただきたいと思います。
  156. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう私がここで申し上げるまでもなく、この児童手当の目的からも、児童手当懇談会の報告にも、第一子から支給してこそはじめてその目的が達せられると、こういつております。また、外国の例から見ましても、児童手当を実施している六十五カ国のうち五十三カ国は第一子から支給しているわけでございます。そういう点でわが国には児童憲章も高らかにうたわれておりますし、児童福祉法というりっぱな法もあるわけですから、まあ予算予算ということを一つ理由にしてなかなかできないというような御答弁じゃなく、何とかするというふうにやっていただきたいのです。で、金額の点でいろいろ御苦労もおありだと思いますが、私は初めから第二子も第三子と同じように四千円というふうにするんじゃなくて、金額は差をつけてもいいと思うんですね。とにかくやるというふうにすれば、非常に児童手当に対する政府の努力というものがこの児童手当を支給されて非常に喜ぶ家庭にとっては実感に訴えて感じられるのじゃないかしらと。金額は少なくても、始めるということはそこからまた金額をふやしていくという前向きの努力ができると思うんですね。そういう点で金額に差をつけてもいいから第二子に支給すべきだ、こういうふうに思いますが、その点いかがでしょう。
  157. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいまの御意見、確かに貴重な御意見だと存じます。全体を一律に何々と言わずに、この児童手当制度が発足したいきさつから申しましてもそういう行き方があるではないかという御示唆でございまして、この点もわれわれ今後この制度をきめるにあたりまして十分貴重な御意見として配慮してまいりたいと考えております。
  158. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この点、大蔵省の管轄としてこの財源の問題があるわけですが、大蔵省にもぜひこれについてお願いしたいわけです。まあ第二子に広げた場合には財源は四倍になるということで厚生省としてはたいへんな問題だと思いますが、この児童の健全な育成をはかるための児童手当というものはさらに充実改善されなければならないと思いますので、大蔵省の前向きの御答弁を期待してお伺いするわけです。
  159. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) 児童手当の問題、非常にむずかしい問題でございます。私ども財政当局としてどういうふうに考えるかということでございますけれども、やはり日本の社会保障全体の中で、その体系の中で児童手当をどういうふうに位置づけるかということをやはり考えなければならないのではないだろうか。先生御指摘のように、たとえばヨーロッパ、西ドイツ、フランス、イギリス、これは大体第二子から支給いたしております。それから第一子から支給している国もあります。ソビエトのように第四子から支給している国もあるわけでございますけれども、きわめて概括的な御説明を申し上げますと、現在の四千円の手当額で第一子から全部支給した場合、一体幾ら国庫負担がかかるかということでございますが、これは五千億を優にこす金額になるわけでございます。この五千億という数字はたまたま今年度の老齢福祉年金等の年金額、来年度平年度化されますと、ちょうど五千億をこえるような数字になると思いますけれども、したがいまして、財源面から問題を見る場合に五千億かかるからその児童手当の範囲を拡大できないという議論ではなくて、かりにその五千億を使うとする場合に児童手当を優先するのか、あるいはそういう老齢者とか、身体障害者とか、そういうハンディキャップ層に重点を向けるべきなのかという、そういう限界効率と申しますか、優先判断の問題があると思います。それから諸外国よりおくれているという議論もなるほどあるわけでございますけれども、これもしさいに検討いたしますと、たとえばフランスとかドイツでは、なるほど第二子から児童手当を支給しているわけでございますけれども、たとえば医療保険なんかは、全額これは保険料でやっているわけですね、国庫負担はないと。日本の場合は医療保険と申しますか、医療保障に非常に重点を注いで財源の配分をやっているわけでございまして、日本は日本なりに社会保障体系というものをどう考えるべきかと、そういう背景で検討しなければならない問題ではないかと思います。私ども大蔵省のほうが児童手当について云々するというのは本末転倒でございまして、政策当局である厚生省がどういう長期的ビジョンにお立ちになって構想をお立てになるか、それを前提にいたしまして検討いたしたいとは思いますけれども、財源的にはそういう問題がある。それから、財源を配分すべき優先度の問題児童手当というのは日本の社会保障体系の中でどういうランキングをするのか、そういう問題もあるということを御了解願いたいと思います。
  160. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 大蔵省のお話伺ってなるほどと思う点もございますが、医療保障に力を入れている日本の国の社会保障制度だという、それは当然でございますが、そうであっても児童手当をやはり先ほどから申しておりますように、全世帯の一五%だけを対象にしているような児童手当、これは当然第二子にすべきだと、それに対してもう少し、大蔵省も厚生省のほうがそのように考えるのも一つの考えだと言っておりますのですから、努力していただきたいと思うんですね。医療制度のほうに力を入れているからということは私は理由にはならないと思うんです。いかがでしょう。
  161. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) 私、若干舌足らずで、医療保障に力を入れているから児童手当制度の拡大がむずかしいというふうに申し上げたわけじゃございませんので、一例として医療保障とか、あるいは日本の年金制度は未成熟でございまして、老齢福祉年金という全額国庫負担の年金制度、これも現在の政府の最高方針の姿勢として毎年上げていくというすでにビジョンも出しておられるわけでございまして、そういう各種の社会保障の需要、財政需要から見まして、児童手当についていま一挙にこれを範囲を拡大するとか、手当を大幅に拡大するということについては客観的に申しまして、財政上非常にむずかしい問題がある。よほど慎重に考えるべき問題ではないかというふうに申し上げたわけでございます。
  162. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 努力するという点はおっしゃらないんですか。むずかしいむずかしいというだけで、それだけのお答えをしていただくんだったら、ここへ来ていただくのも非常にむだなような気がして……。その点いかがですか。
  163. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) いずれ予算を伴う問題でございますので、五十年度以降厚生省の御構想なども伺いまして慎重に検討させていただきます。
  164. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 来年はさらに児童手当を拡大充実する五十年度を迎えるんですから、大蔵省もその点をひとつがんばっていただきたいんですよ。いかがですか、大蔵省。
  165. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) 答弁の繰り返しになるようでございますけれども、手当額の問題、範囲の拡大の問題につきましては、五十年度以降の予算の問題でございますので、その時点におきまして厚生省と十分協議し、慎重に検討いたしたいと思います。
  166. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 時間がございません、次へ参ります。  所得制限の問題でございますが、これは去る四十五年に児童手当審議会の調査団がイギリス、フランス等の児童手当の実施状況調査してまいりました。その報告を伺いますと、イギリス政府は所得制限を導入する考えはないし、また労働組合会議などでも所得制限には絶対反対だということでございます。それはなぜ反対するのかということについては非常に重要な理由をもって反対しているわけです。四つの理由があがっております。また児童手当審議会では、その調査の結果をもとに所得の制限は課さないと、こういうふうに答申を出しているわけです。私は、こういう背景があるのに、どうして所得制限をしているのか非常に不満に思っているわけです。なぜ答申どおりやらないのか、また、答申どおりにやれなかった何か理由があったのか、この点をお伺いいたします。
  167. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 児童手当制度は先ほども申し上げましたように、一つにはこの手当によって養育費を負担している家庭に対する家庭生活の安定に寄与する。それからもう一面は児童の福祉、健全育成というこの両面を法律制度として持っているわけでございます。この後者のいわゆる児童福祉、健全育成という立場で申し上げますと、所得制限というものは要らないんではないだろうかという主張もあろうかと思います。ただ、わが国のこの制度の本来の趣旨から申しまして、ある程度の所得制限というものはむしろ制度の総合的な判断としてあってしかるべきではないだろうか、毎年所得制限を改定しておりますのは、大体九〇%から九三%程度のこの三子以降の家庭について児童手当が支給されるようになっております。したがいまして、相当多額の所得を持っておられる家庭については、この所得制限というものはある程度あってもさして制度本来の趣旨からいって間違いではないのではないかと考えるわけでございます。なお、所得制限の問題につきましては、審議会等の意見も確かにただいま御指摘のようにあるわけでございまして、この点、今後の改善の一つの要素として考えてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  168. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 で、大いに改善していただきたいと思いますが、それまでやはり所得制限額というものが問題になると思うんですが、今回は約四十万円くらいアップされまして、私は、この程度の増額では、このたびの春闘などによる大幅賃上げですぐ近づいてしまうのではないかと、したがって、四十万円上げたところで、やっぱり依然としてきびしいブレーキがかかっていると、この点。また所得制限をしている今回のこの予定の水準が三百八万円、五人家族、このようになっておりますが、はたしてこの水準が高額所得といえるだろうか、これを疑問に思っております。したがって、この所得制限は撤廃すべきであると、それが急にできない場合には、もっと大幅に引き上げるべきではないかと考えますが、この点いかがでしょうか。
  169. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 御承知と思いますが、今年度所得、大体五人家族二百六十八万を三百八万にいたしましたのは、昨年における、前年度に比較した所得の伸びをとっているわけでございまして、ことしにおける所得の伸びは来年度に反映するということになるわけでございます。  それから第二の三百八万というのは高額所得であるかどうか、この点につきましては、給与所得を中心にして考えました場合、大体、私どもの身近な例で申し上げますと、本省の課長クラスの半ばぐらいまでは児童手当の支給対象になっておりまして、その点から見てある程度妥当な額の数字ではなかろうか。ただお示しのありましたように、改善については今後大いにわれわれとしても検討してまいりたいと、かように考えております。
  170. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 児童手当についての最後の質問になりますが、この物価高で日ましに苦しくなってまいりますこの状態、またお金の実質価値というものが非常に目減りをしていくときに、この手当額千円というのは、私、たいへん不満に思っているわけですが、繰り返して言っておりますが、また、この激しい経済変動のときでも、依然としてスライド制が発動されてないと、私の期待するようなスライド制じゃないわけです。また第三子という問題も依然として改められていかない。非常に不満がたくさんございます。しかし、今後、政府がこの児童手当の充実改善をどうしていくか、これに期待をかけるわけですが、この将来の展望、この児童手当は社会保障全般の中でどういう位置づけにあるのか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  171. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、四十九年で一応いわゆる段階実施が終わるわけでございます。私どもといたしましては五十年以降の児童手当というものをどう考えるか。まず第一には、他の社会保障給付との関連でどう位置づけをすべきかということを踏まえ、中身といたしましては先ほど来るる御指摘のありました手当額あるいは支給の対象、それからまた先ほどお示しのあった所得制限、こういった三つの要素をどのようにかみ合わせることによって、片や家庭生活の安定と、一方では児童の福祉、健全育成が守られるかということで総合的に判断をしながら、今後の青写真をつくってまいりたいと、このように考えておるわけでございます。
  172. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 先ほどから四十九年度の完全実施拡大終了後と、こういうふうにお答えになっていらっしゃいますが、いまがもう四十九年度でございますが、五十年度はすぐ目の前に来ている。この将来の方向性というものを、もうすでに今日の問題として取り上げてなければならないと思うんですが、五十年度のことは今後考えます考えますと言っていらっしゃるわけですが、そこで念を押しておきたいわけですが、四十六年度の社会保障制度審議会の答申の中にも、「将来飛躍的に発展させなければ本来の目的を達成できない。」とございます。飛躍的に発展させなければだめだと、この飛躍的に発展させるという、この内容を大臣はどういうふうに考えていらっしゃるのか。また四十八年の中央児童福祉審議会の中間答申が出ております。これにも「児童手当の本質にかんがみ、支給制限の撤廃について検討する必要がある。」というふうに出ております。これについて、青写真をつくらなければといういまおことばがございましたが、もうすでにできていなければならない青写真だと思うんですね。しかし、これから青写真をおつくりになるというようなお話ですが、大臣はどういうお考えを持っていらっしゃいますか。飛躍的な発展をさせなければならないという……。
  173. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 児童手当につきましては、そういう調査会において、飛躍的にというんでございましたか、そういうことばが使われていること、私も十分承知をいたしておるわけでございます。まあ一応四十九年度で、多年の問題であった児童手当が、まあ三年段階実施とはいいましても、これ完成するわけで、これはやっぱり飛躍的な発展であったと思います。  そこで、今度は、五十年度以降はその内容の充実、これに入っていくわけでございまして、内容の充実ということになりますと、一つの問題は、額をどの程度に改定していくか、これは一つの問題でございましょう。さらにもう一つの問題は、範囲の拡大をどうするか。まあ一子からやるということでございますが、これは諸外国でもやっている例は、やっている国もありますが、まあ少ない。これは当分日本ではむずかしい問題だろうと私は思います。そこで、まあ西欧先進諸国並みに、第二子くらいまで範囲を広げるというのが、やっぱり今後の大きな課題であろうと思います。ところがこれにつきましては、日本には日本独特の制度の組み方がありまして、御承知のように、被用者の子供についての児童手当は、事業主にもこれ負担をさしておるという中身を持っておるわけでございます。国の財政負担の増大ということばかりじゃなしに、事業主も一部負担をしておるわけ、——一部というより相当の部分負担しておるという問題があるわけでございます。でございますから、範囲の拡大については、そういう問題を十分頭に描いて考えなければならぬ問題がありましよう。  それから額の問題は、物価の問題なり養育費の問題なり、そういうものもにらみ合わしてやっていかなければならぬだろうと、こういうわけでございます。  したがって、私は五十年度以降の課題としては、範囲の拡大と額の適正なる改定、これが二つ大きな問題になるわけでございます。しかし、それには、いまも申し上げました財政負担、国の負担ばかりじゃなくて、事業主の膨大な負担ということもあるんですから、やっぱりそういうものも考えていかなければならぬということになりますと、経済全体の見通しがどうなるのかということも、これ考えなければなりません。  それからまた、額の改定ということになりますと、物価の問題のほかに、老齢福祉年金、その他の福祉年金という、これは全額国費で出しておる問題であります。そういうふうな国全体の社会保障の、所得保障の体系の中で、どの程度が適正であるかということも考えていかなければならぬ問題であるわけでございます。実は私は日夜どの程度が適当であろうか。経済がこうなったら、この程度かなといったふうなことで、ほんとうに私も真剣に考えておるんですが、これは私一人の考えできめていくべきものではございませんから、それぞれの専門家の御意見も十分承りながら、範囲の拡大、額の改定にしても、どっちを先にやったがいいかという問題もあります、これ。  そういうふうなことで、概算要求をことしの八月末に大蔵省に出すわけでございますから、それまでの間に、私も真剣に考えますが、専門家の方々の意見も十分承って、まあ飛躍的にということなんでございますが、飛躍的にということばに該当するように最大の努力をいたしたいというふうに、きょうのところは答弁をさしていただきたいと、こう考えておるわけでございます。
  174. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 来年の拡大充実に期待すればこそ申し上げるんですが、先ほど大臣が飛躍的というのは、三年間かかってやっと実施した、それが飛躍的だというふうなことをおっしゃいましたね。
  175. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いやいや、それもそうなんです。
  176. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 五歳までしかやらないで、それで今度十歳まで。それでやっと、それも第三子で所得制限でしぼって、そうしてやって、これを飛躍的な発展だなんて言っているようじゃ、私は来年に対する期待が何かくずれそうなんですよ。だから私は軽視じゃないとおっしゃるし、飛躍的だとおっしゃるけれども、私たちが考えているような飛躍的な充実をお願いしたいわけです。それには大臣お一人の御努力もたいへんでしょうし、また協力的に事業主も、また大蔵省もやらなきやならないと思いますが、いずれにしても、ほんとうに飛躍的な発展をしなければ、本来の目的を達成できないんだという、目的を達成するためのひとつがんばりをお願いしたいわけなんですね。  そこで、大臣が諮問をなさいますが、この諮問も具体的に諮問をしていただきたいと思うんですね。抽象的な諮問じゃなくて、やはり厚生大臣として、この児童手当に取り組む強い姿勢をお示しになって、手当額はこうしたいとか、支給制限はこういうふうにしたいとか、こういう具体的な諮問をお示しになってお聞きにならなければ、やはり具体的な積極的な答申も出てこないと思うんです。その点を強くお願いいたします。大臣いかがでしょう。
  177. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私、飛躍的にと申しましたのは、最初の飛躍的というのは、多年の国民の願望であった児童手当制度というものが、三年という段階的実施であったにしましても、いよいよ本年度実現するようになったということは、社会保障制度の前進の上から飛躍的であったと申し上げているだけでございます。  そこで、問題は、今度は内容の充実、それは来年度以降でございまして、その内容の充実につきましても、飛躍的な発展をするような方向で努力をいたしてまいりたいと、こう申し上げておるわけですから、ひとつ誤解をなさらぬようにお願いをしたいと思います。しかし、それには、非常にむずかしい問題がたくさん背景にあるんだと、これは十分御理解をいただきたいと考えておる次第でございます。  そこで、来年度以降の問題については、いろいろな専門家の方々の御意見もおかりしなければなりませんので、諮問いたしますときには、ある程度具体的なものをもって御諮問を申し上げ、そして専門家の御意見も承って、なるほどよくやったなといわれるような結論を出せるようにしたいものだと、こう念願をいたしておる次第でございます。
  178. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ひとつよろしくお願いいたします。  ちょっと時間がもうなくなったんですが、どうしてもお聞きしたいことが二つございますので、一つは児童扶養手当のことですが、児童扶養手当について、障害がなければ義務教育終了の十五歳で打ち切られてしまうわけですね。この母子家庭というのは、環境的に非常に苦しい立場にありますし、また十五歳という年齢は、人格形成の段階として非常に重要なときでもあり、またお金の一番かかる時期なんです。こういうときに、十五歳といって児童扶養手当を打ち切ってしまう、私は障害のない子供でも、もっと引き上げるべきだと思うんですね、年齢を。この点いかがでしょう。
  179. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 御指摘のとおり、児童扶養手当制度におきましては、障害のある児童を持っておられる母子家庭については、年齢が延長になっております。それ以外の一般の児童については、義務教育終了でこの手当の支給がとまるようになっております。これは先ほども申し上げましたけれども、児童扶養手当制度というのは、父親に恵まれてない母子家庭のおかあさんが、いわゆる稼得能力と申しますか、所得を得る能力が低下しておる、これを補完する、補うための制度でございまして、制度をつくりました段階において考えられておりますことは、いわゆる義務教育は終了した子供さんは、その後一般の社会に入って稼得能力といいますか、というものがつき得るであろうという前提で、そういう制度になっておるわけでございます。ただ、この問題につきましては、母子福祉年金との関連もございますので、との点については、今後母子福祉年金との関連を考慮しながら、ひとつ検討してまいりたいと、かように考えております。
  180. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 確かにあれですね、法律をつくったときには、義務教育を終わったらもう働けと、また、母子家庭の子供は高等学校なんか行かなくてもいいんだというような感じのする法律に、私、受け取るわけなんですね。しかし、児童扶養手当という、この児童という意味は、十八歳未満までが児童なんですから、児童扶養手当といっていながら、十五歳で義務教育終了までだというふうに考えるのは、もう改めてもいいんじゃないかと、少なくとも十八歳になるまで支給を続けるべきだと、こういうふうに思います。検討するとおっしゃるんだったら、十八歳までは打ち切らないでいただきたいと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  181. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 児童福祉法で、十八歳といっております児童は、御承知のとおり、生計の維持の有無にかかわらず、児童の福祉というものを十八歳という点で区切っているわけでございます。確かに、御指摘のように、最近の義務教育というものが、単にいわゆる中学でなくて、普通高校あるいは専門高校等に行く子供さんがふえております。そういった世相ももちろん十分考慮しながら、先ほども申し上げましたように、母子福祉年金との関連もございますので、そういった点を十分考えながら、今後、対処してまいりたいと、かように申し上げているわけでございます。
  182. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう一つだけお願いします。  この母子家庭を父子家庭にまで及ぼせないかと、この母子と父子という場合は、経済的なささえになるのは父親だから、父子と母子とは違うんだという点で区別されているんだと思いますけれども、非常にこの父子家庭の内容というものは悲惨であり、そして母親のいない家庭で、父親の働く経済力というものは非常に減退しておりますので、父子家庭にも及ぶようなそうしたお考えをしていただけないかということを、つけ加えてお聞きして、終わりにしたいと思います。
  183. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 母子家庭は、いわゆる父親のいないおかあさんの家庭、母親の家庭ということで、一般的に稼得能力が低下するということが前提になっておることは申し上げるまでもないわけでございます。片方、父子家庭、最近こういった家庭があって、再婚をしない父親がおられるということも承知しておりますけれども、一応、制度としてこれを見た場合に、やはり父子家庭の父親という立場の場合には、母子家庭とは違った、いわゆる稼得能力を持つという前提といいますか、推定が片方にあるわけでございます。したがいまして、法律なり制度といたしましては、母子家庭と同じような措置、処遇をするということはいかがであろうかと思います。ただ、御承知のとおり、保育所なり、あるいは養護施設なり、あるいはその他、乳児院というような収容施設、あるいは保育所等によって、父子家庭のお子さんのめんどうを見るという社会福祉の制度もございます。また同時に、この児童相談所なり、あるいは福祉事務所等の相談業務というものを、単に従来の児童福祉という狭い範囲から、広げていくことも必要ではないかと思います。  最近、父子家庭の皆さんが、父子寮というようなものをつくられまして、それぞれ持ち寄って、保母さん、あるいはお留守居さんを雇っていろいろめんどうを見ておられるように聞いておりますけれども、繰り返すようでございますけれども、これを法律なり制度の上で、母子家庭と同じようにするということについては、ただいまのところいかがであろうかというように考えておるわけでございます。
  184. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ありがとうございました。
  185. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私はきょうはまた、AF2に関係して、食品衛生調査会の問題について御質問を申し上げたいと思います。  この間から、予算委員会の第四分科会で、私がこれを質問をいたしました。そのすぐあと、社会党の上田哲委員が質問をされたり、そうしてまた、この間、つい最近でございますが、決算委員会でも、この問題が取り上げられたようでございますが、ちょっと整理をするために、AF2の由来について、初めにお聞きをしたいと思います。  私が調べた範囲では、昭和十九年に、ある外国の学者によって、ニトロフラン化合物に強い殺菌力のあることが明らかにされて、そしてその中の三種類が医療用に用いられてきた。しかし、間もなく、それはかなりの副作用のある薬であることがわかって、使用は制約されたものとなっていた。こういうことが書かれておりますけれども、そうですか。
  186. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ニトロフラン化合物には非常に多数の誘導体があるわけでございまして、ただいま先生御指摘のように、これらはいずれも強い殺菌力を持っておるわけでございます。このうち、医薬品として使用されました部分につきましては、あまり詳しくはないわけでございますが、これらの医薬品として使用されましたもののうち、外用薬として認可されたものが、その副作用の点で使用をとめられたと、こういうふうに理解をいたしておるわけでございますが、ある誘導体につきましては、現在でも医薬品として使用されている実態はございます。
  187. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 次に、昭和二十五年に、わが国では、ニトロアランがアイスクリームや、あん類に殺菌料として使用を認められていたが、これもそのとおりでございますか。
  188. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) アイスクリーム、あん類という御発言でございますが、当時、アイスクリームのみでなく、永菓という、——永の菓子、永菓子という表現を使って、あん類にこれが殺菌料として指定されております。
  189. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そのニトロフランを使用してもよろしいと、こういう許可になったのは、そのときにいろいろ審査をされて、許可をしたわけですか。
  190. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 食品衛生調査会に、この専門的な事項につきまして御検討を願って、その結果によって、これが使用を許可されております。
  191. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その次にでございますね、昭和二十九年に上野製薬が開発したニトロフリル・アクリル・アマイド、ありますね、これが、Zフランといわれますが、これが許可になり、ニトロフラゾンと並行して、ハム、ソーセージ類、かまぼこ、はんぺん等、魚肉練り製品、とうふ、あん等に使用することが認められたとなっていますが、そうですか。
  192. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 先生、御指摘のとおりでございます。
  193. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 このときも、おそらく食品衛生調査会で審査をして、その結果こういうことが許可になったんだと思いますが、そうですね。
  194. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) そのとおりでございます。
  195. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それから、つい最近の昭和四十年に、上野製薬がニトロフラン、ニトロフリル・アクリルアマイドにかわって開発したフリル・ニトロフリル・アクリルアマイド、つまりAF2ですね、これが許可されて、現在すべての魚肉ソーセージ、中級以下の食用ハム、ソーセージ、ほとんどすべてのかまぼこや、はんぺん類、中級以下のようかんや、あん類、大部分のマーケットとうふ、それから夏場の市中のとうふ等に広く用いられていると、こう書かれていますが、そうですか。
  196. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま先生の御指摘のとおりでございますが、ただ、この食用ハム、ソーセージにつきまして、実態は、先生御指摘のように、中級以下のものに使用されているものが実態でございますが、法律上は、すべてのハム、ソーセージに認可をされておるわけでございます。さらに、ようかん、あん類等につきましては、これは現在使用を禁止いたしております。
  197. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そこで、お尋ねをいたしますが、添加物が許可されるのは、どのような過程を経て、どの時点で許可、不許可がきまるのか、それは厚生大臣が許可するまでの過程を伺いたいと思います。
  198. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 食品添加物の、これは指定でございますが、指定をするにあたりましては、二つの道順があろうかと思うわけで、大きく分けまして二つの方法があるわけでございます。その一つは、外国等の文献等を見まして、外国で使用されている実態を検討いたしまして、厚生大臣が一方的にこれを指定する場合がございます。特にこれは外国から食品が輸入されるような場合に、わが国にその実態がなくても外国から輸入される食品に使用されている場合があるわけでございますので、こういった場合には、一方的に厚生大臣の指定になっております。  もう一つは、国内のような場合におきましては、新たに添加物を開発いたしました場合に、その開発した業界からこれが申請という形ではございませんけれども、実態は申請というような形を経てこれが出てまいりまして、これをいずれも食品衛生調査会で検討いたしまして、使用してしかるべきだという答申を得ました上で厚生大臣がこれを指定する、こういう方法をとっております。
  199. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 食品衛生調査会というのは、昭和何年から設置されましたか。
  200. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 食品衛生調査会は、食品衛生法に基づいて設置されている委員会でございまして、食品衛生法が昭和二十二年十二月に公布されまして二十三年一月からこれが施行されておるわけでございますが、その施行当時からこれが、調査会があるわけでございまして、ただその当時は食品専門委員会というような名称だったかと思いますが、昭和二十四年の法律改正によりましてこれが食品衛生調査会という名称に変わっております。
  201. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その初めから委員は四十名以内でしたか。
  202. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 設立されましてから昭和四十七年に食品衛生法が改正されるまでの間は、五十名以内という規定になっておりました。四十七年に法律改正が行なわれまして、それ以来四十名以内、かようになっております。
  203. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私の聞いたところでは、ほんとうはことしの二月の十五日に委員の任期が切れるわけですけれども、それまで、ことしの二月までは四十六名だったと聞いていますが、そうですか。
  204. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 先生御指摘のとおりでございまして、これはすでに任命いたしておりまして、その後法律改正になりましたので、過渡的な措置としてかように定員をオーバーいたしまして任命されておりました。
  205. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 食品衛生調査会は、幾つの部会に分かれていますか。
  206. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 部会と申しますのが六つございます。この六部会のほかに、それぞれの部会長並びに会長が構成いたします、これが総会にかわるべきものでございますが、常任委員会という名称をつけておりますが、この常任委員会を部会と勘定すれば、七つの部会に分かれるわけでございます。このほかに五つの特別部会を設置いたしております。これは、臨時的な専門的な問題を討議するために特別部会を設置いたしております。
  207. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そうすると、ニトロフランがアイスクリームや——永菓ですね、さっきのいわゆる永菓やあん類に使用を認められたのはどこで認めましたか。
  208. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 先生御質問は、どの部会ということでございますか。
  209. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そうです。
  210. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 当時と、いまとでは部会の分け方が違うわけでございますが、当時は添加物器具部会という部会でこれが審議をされております。
  211. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それではいまの上野製薬のニトロフリル・アクリルアマイド、これが許可になったのはどの部会ですか。
  212. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま申し上げました添加物器具部会でございます。
  213. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 永菓なんかと同じところですね。
  214. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 先生ただいま御指摘のは、ニトロフランとそれからニトロフリル・アクリルアマイド、これは同じところでございます。  それともう一つ、フリル・ニトロフリル・アクリルアマイド、これは新しく添加物部会並びに毒性部会と、こういう新しい組織で審議をいたしております。
  215. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そうすると、昭和四十年に今度AF2ですね、これが許可されたのはどの部会ですか。
  216. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 毒性部会及び添加物部会でございます。ただ、その審議の当初におきましては、先ほど御説明申し上げました添加物器具部会で当初は審議いたしておりまして、その審議の途中で組織が変わりまして、毒性部会及び添加物部会でこれが審議を行なっております。
  217. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは、なぜ途中であれ二つに分かれたのですか。
  218. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 学問の進歩に伴いまして、毒性問題が非常に厳密な判断を要するようになりましたものですから、特に添加物の中からこの毒性の部分を独立させまして専門的に御審議を願う、かような措置をとったわけでございます。
  219. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 この間、予算委員会の第四分科会で、私の質問のあとに上田委員がこういう質問をしておられますね。昨年の十一月からサッカリンを禁止しましたね。サッカリンを禁止したから、あんやようかんには砂糖が使われることになったから、AF2は、防腐剤は要らなくなった、こういうような質問をしておられますね。読みましょうか、少し。いまの石丸さんがお答えになったほうを読んだほうがいいかもわからない。「サッカリンを再指定いたしました場合にはなぜこのあんとようかんに対するAF2の使用を認めなかったのかということでございますが、これは一つは他の防腐剤といたしまして実態に合った方法といたしましてソルビン酸をこのあんに認めたという、こういうことでございましてあえてAF2を使う必要がないという点で再指定をいたしております。」と、こう答えておられるわけですね。だから、サッカリンというものが認められたかやめられたかと、こういうことによって、このあんやようかんにAF2が使用対象からはずされたのですね。こういうことがありましたね。これはいつの時点でしたか。
  220. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま十一月という御指摘でございましたが、十一月はサッカリンを再指定いたした時点でございまして、とめましたのがたしか四月の時点だったと思います。
  221. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 去年の四月——、去年の四月なんか一個も出てこない。
  222. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 失礼いたしました。告示が四月でございまして施行が十一月と、こういうことでございます。  このあんとようかんの問題につきましては、ただいま御指摘のような点もあったわけでございますが、それと同時に、多く使われているのがソルビン酸でございましたので、あえてサッカリンを認めるからということでこのAF2の使用をあんに認めるという対策は講じなかったわけでございます。
  223. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それはソルビン酸を認めているからということで、あれですか、もうやっぱりわれわれが考えると、もうAF2はちょっと危険だからAF2を使いなさいということはわざわざ言わなくてもいいのだ、こういうことのように私どもには思えてならないわけですが、その点は局長からはおそらくそうですということはおっしゃらないと思いますがね。これを追及するのはかえってやぼかもしれません。  そこで、食品添加物について、これは食品衛生法に基づいて厚生大臣が人の健康をそこなうおそれのないものと認めたものを一定の使用基準のもとに許可するものであるから、その製造販売は法律的に妥当性を保障されているものでありますね。ですから、食品添加物の使用が許可されると、これは業者にとってはにしきの御旗になるわけですね。実はこの間、あるところでこの問題について懇談会をいたしました。そのときに、私どもはおとうふ屋さんの組合の方をお呼びしたわけです。最近は消費者がこのAF2をなるべく使わないでほしい、こういう要望が非常に高いものですから、良心的なおとうふ屋さんはもうAF2を使わないようにしよう、こういうことでAF2を買わないそうです。そうしますと、上野製薬から圧力がかかって、なぜ厚生省から許可をされているのにAF2を使わないのだ、たいへん強い文句を言われるということをこの間おとうふ屋さんから実は聞いたわけでございます。ですから、私はにしきの御旗となるということになると、業者は非常に強い姿勢を持つということはこれでよくわかるわけでございますけれども、私はきょうあえて、この間、東京地検で起訴された、そして判決が下りましたね、郡司篤孝先生。この問題についてはきょうはそれほど触れる時間もないと思いますけれども、この事件があったということをちょっと頭の中に入れておいていただきたいと思います。  そこで、お尋ねを続けてまいりますけれども、AF2は昭和三十七年の二月に上野製薬から合成殺菌料としてニトロフラゾンにかわって指定するように食品衛生課に申請をされましたね。そうですね。どうですか。
  224. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま先生の御指摘のとおりでございます。
  225. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それから申請を受理されましてから八回にわたって食品衛生調査会の該当部会で審議をされたと、こう聞いておりますが、八回にわたって審議をされましたか。
  226. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 御指摘のように八回にわたって審議を行なっております。ちなみにその日にちを申し上げますと、三十七年五月三十一日に先ほども申し上げました食品衛生調査会の添加物器具部会にこの審議をお願いしております。それから、三十七年十二月五日にこの部会におきまして審議を行なって安全性について小委員会を設けて審議をするようにという意見が出されておりまして、その後三十八年一月十八日、三十八年三月十五日、三十九年九月十五日、ここから毒性部会で審議を行なっております。それから三十九年十月二十一日、四十年一月二十一日、それと四十年五月六日でございますか、この八回にわたって審議を実施いたしております。
  227. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そこで、四十年の七月にこれは許可になったわけですね。そうですね。
  228. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 四十年五月六日の審議において答申を得まして、七月五日に省令を改正いたしております。
  229. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 このときに、四十年の五月の六日に答申が出されたときに五項目の附帯事項までつけて許可をしましたね。これはなぜその五項目の附帯決議までつけなければならなかったか。その五項目の附帯決議をつけるんならば、なぜそれを確認してから許可をするというような慎重な態度がとられなかったのか、その点をお伺いしたいと思います。
  230. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 当時の記録を調査いたしますと、四十年五月六日に審議を終えておるわけでございますが、その際、この附帯決議をつけることにつきまして、ただこの附帯決議が満足されなければ決定できないものではないという、かような判断が下されたわけでございまして、その結果、今後そういった五項目についての調査をさらに厳密に行なうようと、こういう希望が述べられまして、食品衛生調査会で決定を見たわけでございます。
  231. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 じゃ、その附帯事項が厳密にされるようにと、こういうことで、その五項目の附帯事項がつけられたわけですけれども、これは普通の法律で附帯決議をするようなものじゃないんです。人間の生命にかかわる問題ですからね。それは満足できないものではないというふうにおっしゃったかもしれませんけれども、それならば、その後、その附帯事項が実際に行なわれたか、その結果がはたして調査会に報告されたかどうか、その辺はどうですか。
  232. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 五項目のうち四項目につきましては、先生御指摘のような手続をとっております。ただ、その一項目につきましては現在まだ実験を続行中のものがございます。
  233. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その一項目は何ですか。
  234. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) その一項目というのは、腸内細菌叢の変異と申し上げましょうか、変化、これに関する実験でございまして、まだこの実験方法等が必ずしも十分確立されていない、かように存じております。
  235. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは早急にやらなければならない問題でしょう。あなた四十年の七月にこれ公示をして、もうそれから何年たっているんです。もう大かた九年でしょう。その間にまだこの一項目がやれないなんて、これ怠慢のそしりを免れませんよ。その責任はどこにあるんですか。
  236. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) もちろんその実施はわれわれのほうでやるわけでございまして、できるだけ早くこれを行ないたいと思っております。
  237. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 できるだけ早くやりますといって九年だっているんです。そういうことだからAF2がいまごろ問題になって、いろいろもやもやしたものがたくさん出てきたでしょう。私はほんとうはことしの二月の十五日に食品衛生調査会のメンバーの交代の時期であるのにそれがいまだにきめられない。三カ月もほったらかしてあると。こういうことをもしもこういう席上で議員がこれを問題にするとなると、これはゆゆしい問題でしょう。ほんとうならばこんなことを取り上げたら厚生省のほうはこの調査会のメンバーの依頼ができなくなるでしょう。その辺を非常に私どもは案じているわけです。だからほんとうならばこういう質問は私したくありません。しかし、この食品衛生調査会の委員のことについては、私は実は四、五年前からあるところからこれを調査をしてほしいという依頼を受けておったんです。ところが、これは厚生省のことばをかりれば、日本に四人しかいないような貴重な学識経験者も入っております。そして普通のわれわれがそういうところに行ってもこの審議過程は全然われわれにはわからないことだと、実に専門的なことだ、だからおそらく女性の代表としては主婦連の方も一人入っておられるけれども、それはその人の分野としては一つの専門知識を持っておられるけれども、その他の問題についていろいろ議論がなされたときには、おそらく高田さんにもそういった違う問題はわからないだろうと、こういうような話もあったり、それで私がこの間からしばしばこの調査会のことについてお伺いをすれば、とってもじゃないわれわれの希望するような人を入れるわけにいきませんと、大体私どもが今度こういう人を入れてほしいと要望をすれば、その方の先生が入っているから弟子が入るわけにいきませんと、こういうようなお答えでしょう。それほどえらい先生ばっかりがこの調査会に入っておられるのに、こういう問題をこういう席で問題にしたら厚生省大迷惑でしょう。そして、あなた、今度まだきまらないのに、これからきめようとなさるらしいのに、おそらく私は、委員のほうがしり込みをされるような結果になるのではないかと、これをたいへん案じますから。実は、良識があると自分で信じておりますから、その辺は適当に、私は追及することをできることなら避けておきたいと思って避けていたわけですけれども、考えてみれば、ずいぶんうまいことを言って私はあなた方にはぐらかされてきたような感じがします。実はたいへん腹立たしいものですから、やむを得ずきょうはどうしても最後まで追及をしたい、こういうふうに考えて立ち上がったわけでございます。  そこで、任期は二年で、ことしの二月十五日が期限であったはずですね。そこら辺は私も何べんも伺っているわけですが、私もことしになってから三べんぐらい、あなたのほうに、その調査会の名簿をほしいとか、今後かわるから、かわったらすぐその時点で名簿はあげますとか、それで秘書に電話をさせれば、まだそのメンバーがきめられないとか、きまらないとか、どうしてもその厚生省の言うことがあいまいで秘書には理解ができない。だから私自身から厚生省に質問をするようにということを、実は秘書が二へんぐらい私に泣きついております。そして私もいろいろ伺ったのですが、先ほど申し上げたような、言を左右にして、なぜその調査会のメンバーがきまらないのかということは、私もたいていではいいかげんのことを言われてきたと思います。それで、つい最近は、なぜまだきまらないのかと、日数が過ぎているのになぜきまらないのかと言ったら、それは、森永ミルクの件がありましたからそれに手をとられておったんですと、こういう答弁だったでしょう。確かに、森永のドライミルクのあの事件も、これは、たくさんのお子さんがなくなったし、後遺症もあるし、重大な問題でございますから、それに手をとられたといえば、私はやっぱりそれも大事だと、こういうふうに思いますけれどもね。今度わかった問題で厚生省はだいぶ私はろうばいしていると思いますけれども、公正であるべき調査会のメンバーの一人が、事もあろうに、このAF2を上野製薬だけしかつくっていないでしょう、そこの上野製薬の監査役に就任をしていたと、ここまでわかってくると私ももう黙っていられないのです。その点はどうなんです。
  238. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま先生御指摘のとおり、本年二月十五日に前食品衛生調査会の委員の任期が切れておるわけでございまして、その後、現在に至るまでそのメンバーの発令を行なっていないという点につきましては、われわれも非常に申しわけないと思っておるわけでございますが、できるだけ早くこの決定をいたしたいと思っております。この森永事件に関連いたしましてこの発令がおくれたという点でございますが、それは理由に必ずしもなるものとは私も考えておりませんで、それはやはり一つの言いのがれと申し上げましょうか、そういう点があったのではないかと思っておりまして、まことに残念に思っております。ただ、この食品衛生調査会の委員は、先ほど先生御指摘のように、非常に専門の先生が多いわけでございまして、したがいまして任期も非常に回を重ねている先生が 常に多いわけでございます。したがいまして、この政務次官会議の決定等に従いましても、その制限回数を越えてなお任命をしている先生も多いわけでございまして、そういった先生方たちの特別承認を得るために時間をとったことも事実でございますが、これは言いわけになるわけでございますが、できるだけ早くこれを決定いたしたいと思っております。  さらに、先生御指摘の、ある委員が、これは任命後でございますが、昨年七月に上野製薬の監査役に就任していることがあとで判明いたしたわけでございます。
  239. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 早急にきめたいとか、いままできめられなくて残念だったとかという答弁は、どの委員が質問をしても、いろいろな問題が起こるたびに、皆質問をすると、われわれの質問の一時のがれみたいな答えですね。何かといえば前向きに検討しますとか、同じことなんです。たいへん残念でございました、これから何か早急にやりたいと思いますというのは、みんな一時のがれみたいな感じで、ちっとも心のこもった答弁じゃありませんよ、これは。それで先ほど聞いたように、食品衛生調査会というものは、食品衛生法に基づいて昭和二十三年の一月からもう発足しているんでしょう。きのうやきょうできた調査会じゃないでしょう。それが三ヵ月も空白になっていて、私はこれはそんなことで済む問題じゃないと思いますよ。一体この責任はだれが負うのですか、怠慢ですよ。だれが負うのですか、この責任は。
  240. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) どうも、これはわれわれ全部の責任でございますが、できるだけ早く処置いたしたいと思います。
  241. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 厚生大臣、これは一体だれの責任になるのでしょう。大臣お答えをいただきたいと思います。
  242. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) はなはだ遺憾なことでございまして、任期が切れているならば、すみやかに任命する、これは当然のことでございます。厚生大臣が任命すべき事項でございますから、私の責任と理解いたします。
  243. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 厚生大臣の責任であれば、任期が切れていたことを大臣御存じですか。
  244. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先般の実は委員会で質問を受けた際に初めて任期が二月に切れておったということを知ったわけでございます。うかつであったといえばうかつでございますが、知らなかったということも私の責任で、まことに遺憾なことでございます。
  245. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは少しおかしいんじゃないですか。そうしたら石丸局長はわれわれすべての責任ですとおっしゃるなら、あなたその任期が切れていることをなぜ厚生大臣におっしゃらないのですか。怠慢ですよ、それは。
  246. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) この任期切れということにつきましては、大臣に御報告していなかったわけでございますが、新しい委員につきましての御相談を内々いたしておったわけでございます。まだ、そういった点、あるいは私のほうの説明が不十分だったかと存じます。
  247. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは、大臣はもうそれは幅広い仕事をお持ちでございますから、調査会のメンバーの任期が二月の十五日で切れていたということまで、私は大臣は御存じないのは当然だと思いますけれども、しかし、これは大事なことでしょう。しかも、きょう私がこれを追及しようと思ったのは、その中の一人があなた、事もあろうに、日本ではたった一社でしょう、上野製薬だけでしょう、このAF2をつくっているのは。それでその会社の、AF2の問題は、見てください、こんなにあるんですよ、新聞の切り抜き。これだけ新聞に出たのです、AF2のことが。ずーっとこれ全部、去年の十二月ごろからの分だけですよ。そのもっと前から出ていますよ。これだけ新聞に取り上げられた問題が、AF2のことだけでも、それで、これが上野製薬一つしかつくっていないという、その上野製薬の監査役に行くなんていうことは、これはもうほんとうに許すべからざることですよ。それをしかも厚生省が知らなくて、つい最近聞いたわけでしょう。これは大臣ほんとうに重大な問題です。これは、私はほんとうは、学者というものも、ある点では非常に何というのですか、世間的の常識というものに欠けていることも私は十分に知っております。というのは、私の兄も学者でございますし、長男も学者でございますから、それは見ているとよくわかります。ほんとに、いわゆる常識が欠けているということはやむを得ないことだと思います。前しか見ていないんですから、自分の専門しかわからないですから、世間的の常識というものがよくわからないと思うのです。だから、私は、この委員が上野製薬の社長と友だちであったのかどうか知りません、それは。しかし、そういう時点で、上野製薬がこの調査会のメンバーを、その自分のところの会社に引っぱり込んだという、私は三の会社に疑問を持つのです。だから、監査役が一人欠員になったから、そこへ欠員の任期まで入ってくれと言われれば、どの程度いろいろのことを知っていて入られ、たのか、そこら辺は私御本人に会って聞いておりませんからよくわかりませんけれども、ある新聞に出たのを見れば、全くこれは私の不明でございますと、たいへん、この調査会の委員はお困りでございますよ。もうどう言われても私には申し開きができませんというふうなことをはっきりおっしゃっておられるんです。もうちゃんと新聞記者が行って聞いてきている。それくらい学者もこの委員さんもそう思っていらっしゃるけれども、そこで私はやっぱり疑いをかけざるを得ないわけですね。何かあまりAF2のことがこうやって新聞に出て国会でも追及されたりいろんなことになってきて、だんだんどうもおかしくなるものだから、そういうところの方をひとつ自分のところの監査役に持ってさておけば何とか一つの隠れみのになるんじゃないかと、こういうふうに思われたかもしれない。その辺が私は上野製薬に行ってみないからわかりませんけれどもね。しかしそれは私は会社が少し非常識過ぎると……。で、ことしの春ごろからいろいろな大企業が値段をつり上げたりいろいろな狂乱物価の仕掛け人としてやり玉に上がって国会でも集中審議を浴びました。そのときにやっぱり反社会的行動だと、こう言ってずいぶんだたかれたわけですけれどもね、これだけ議論沸騰しているさなかに、こういった人を自分のところの監査役に呼んできたということは、私はこの企業も反社会的行動だときめつけていいと思うんです。あるいはまたやっぱり悪徳商法だと、こういうふうに言わざるを得ないと思います。私はこういうことでこの越智さんというりっぱな獣医さんがどれだけおえらい方か私には知識がありませんけれども、こういったりっぱな学者を——肩書きから言えばずいぶんりっぱな学者、こういう方を傷つけてしまうということはほんととんでもないことじゃないんですか、どうなんですか、その辺は。
  248. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま個人の名前を御指摘になりましたので申し上げますが、越智先生がこの会社の監査役になられたということについてはわれわれもつい最近知ったわけでございます。で、まあ越智先生非常にりっぱな学者でございまして、ただその間、会社がどういう意図で越智先生を監査役に迎えたか、まあ、こういった点につきましてはわれわれのほうでもその理由等はわからないわけでございますが、その事実がわかりまして、越智先生のほうに御連絡をとりまして、この調査会の委員というものは公正な立場にあるべき委員であるから、ひとつ御遠慮願いたいということを申し上げたわけでございます。
  249. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 こういう人を調査会のメンバーからおろすことはたいへん私どももあるいは損失になるんではないかと、こう考えますとね、たいへん胸の痛い思いがするわけです。しかし、この越智先生は四月の二十二日に上野製薬の監査役を引退されておられるようですね。このことは御存じですか。
  250. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 引退されたかどうかは私もまだ確認いたしておりませんでしたが、先日この監査役になられたということを聞きまして、越智先生に御連絡をとりましたら、会社のほうもそれから調査会の委員もこれは両方辞退したいと、かように私は先生から聞いたわけでございます。ただ、現実に辞任されたかいなかにつきましては、確認をいたしておりません。
  251. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私がこの問題をこんなふうなかっこうで取り上げなければならなくなったもう一つの原因は、先ほどからAF2のことについて二、三お尋ねをしましたけれども、このAF2が上野製薬から申請が出ましたね、それからそのAF2の資料の中心となっているものですね。資料を出しましたね。その資料を中心となっていろいろやったのが大阪大学の医学部の宮地教授の実験でしょう。だから、厚生省のあなたのほうは、宮地論文に沿ってこれを許可していらっしゃるわけですね。ところが、その宮地教授の実験が、その実験材料となった動物の飼育管理、そしてそれは飼料のAF2の添加も含めて一切がっさいが、上野製薬の飼育管理だったわけですね。そうすると、これは宮地さん自身が自分の阪大の中でやったのではなくて、上野製薬のその飼育管理の手にゆだねられていた、こういうことがわかってまいりますと、ほんとうにこれは重大な問題——これはもう局長さんもお認めのようですから、私がいまこれはなぜそんなことがわかったかということを申し上げなくてもおわかりだと思いますが、どうもその辺、御存じですね、ほんとうに。そういう疑いを持っていらっしゃるんでしょう。
  252. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 裁判の過程の中でそういったことが議論されたことを存じております。
  253. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そういったようないわゆる産学協同の産物は、これは問題でしょう。だれが見ても聞いてもですね、権威ある試験研究機関において作成されたものとは認めがたいものではありませんか。そうでしょう。
  254. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) いろんな御意見があろうかと思うわけでございますが、当時この宮地教授の論文が学術雑誌に発表されておったわけでございまして、その学術雑誌の宮地論文をこの調査会において資料といたしまして議論を行なったことは事実でございます。
  255. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その後、いろいろな学者がこれに反論を加えておりますね。ですから、私どもは、このAF2の安全性についてはやっぱり学者におまかせするよりしようがないんです。私ども自身が研究をするわけにいきませんし、それはいろんな学術書なんかも読んではみますけれどもね、これはどっちが正しいかどうかというのは、われわれの知識ではとってもわからないわけです。ですから、学者におまかせをしなければならないのですけれども、その学者がそういうものをつくっている会社といいますかね、企業のほうからあるいはお金を一千万円ももらったり、あるいはそこで飼育しているそれによって研究調査をしたということであれば、私どもはうかつにそれを信用するわけにはいかない、こういうことになってまいりますから、これはほんとうにゆゆしい問題です。  そこで思い出すのが、先ごろの日本分析化研のあの問題です。あの問題も、ずいぶんこれは皆さんが驚いてしまった事件です。それは、結局は新しい組織がつくられたわけですけれども、また一方では、いろんな状態は違いますけれども、東邦亜鉛のあのうその報告です。ああいうことをやってみんなごまかされていたわけでしまう。それで、厚生省のほうにも全然問題がいままでなかったわけではありません。けさ、私どもは国会図書館のほうに秘書を派遣しまして、きちっとこうコピーでとってまいりましたけれども、これも公衆衛生局の保健所課長であった鈴木晃さん、この方が医薬品の製造承認をめぐる汚職事件に関連して、そして飛びおり自殺した一件を思い出さざるを得ないわけでございます。まあ、こういうようなことが次々ございますので、この産学協同の産物としてこういうようなものが食品衛生調査会で許可になった。しかも、五項目の附帯条項までつけられて、そしていまだにその一項目が九年間もたってなおまだこれがきちんとなっていない、こういうことになりますと、私はこのAF2の問題についても、そして食品衛生調査会の問題についても、もう重大な疑問と腹立たしさを覚えてならないわけです。ですから、私ははからずも日本分析化研の問題を思い出すと、この問題では私は厚生大臣の大きな責任問題にまで発展するんではないか、こういうようなことを思いましたから、きょうはどうしてもこの問題を質問をさしていただきたい、このように考えたわけですが、厚生大臣、いままでの話を聞いて大臣はどうお考えになられますか。
  256. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私が責任上任命をいたしておりまする食品衛生調査会の委員が私企業に関係をしておったということはまことに遺憾なことでございます。食品衛生調査会はあくまでも国民の健康を守らなければならない責任を持っており、しかも公正な判断をしなければならないものであると私は考えておるものでございます。そういうふうな考え方から、私もこういう事実を承知いたしました以上は、食品衛生調査会の委員の任期はすでに切れているということでございますから、この際できるだけすみやかに、これはすみやかにというのは、いいかげんで申し上げるわけじゃありません。すみやかに委員の人選を急ぎまして発足をさせるようにいたしたいと思いますが、それにはあくまでも法律に基づきまして、専門的な学識経験者のみをもって構成するようにいたしたいと、かように考えておる次第でございます。なお、それと同時に、私はAF2につきましては、いろいろ意見を述べておられる方がおることを承知いたしております。したがいまして、できるだけ早く調査会の人選をいたしまして成立させますが、成立いたしました暁は、直ちにどちらが正しいのか私もわかりません。判断の能力はありませんから、調査会ができましたならば、宮地論文並びにこれに反対する意見、そういうものも同時に調査会に提出して、そして新しく改組されました調査会において専門的に化学的に判断をしてもらう、こういうやり方をいたしたいと考えております。その機会に疑わしいものがあるならば使用禁止ということもあり得るでございましょうが、いま私はそういうことをやろうという知識がございませんし、それはいまできませんから、新しく改組された調査会において宮地論文並びにこれに反対の意見、そういうものもつけまして、そこで新たに検討し直していただく、こういうやり方をいたしたい、こういうふうにいま考えておるところでございまして、そのことは先般の決算委員会においてもそう私は率直に申し述べたつもりでございます。
  257. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それならそれがはっきりする時点までこれを禁止するわけにはいかないんでしょうか。
  258. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私はこの問題について禁止したがいいかどうかということについての化学的な判断をする能力は持ち合わせておりません。私は御承知のように大臣ではございますが、こういう化学的な知識は全然ありませんし、そういうことはむしろこういう調査会においてきめていただくというのが当然のことでありまして、私が、どうもこういう反対意見があるから禁止するということになったら厚生大臣独裁のそしりを今度は逆に私は受ける、こういうわけでございまして、専門的なことはその専門的な調査会で判断をしていただく、これが一番私は正しい道ではないかと、かように考えておる次第でございます。
  259. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは少し私ども大臣のお答えに反論をしなければならないわけですけれども、疑わしきは使用せずということをおっしゃいましたね。いろいろな学者がいまこれはおかしいじゃないかという、そして三島の遺伝研究所からですか、あそこの所長さんなんかは艦尾口を発しておくというような手紙を厚生省に出しておられるんでしょう。そしたら、そういう疑いがあるわけですよ。そしたらその疑いが解けるまでは私は当然これは禁止をすべきものではないかと思いますよ。それで、もしもいまわれわれがAF2を食べさせられていますね、はんぺんやらかまぼこの中に入っているんですから、それを食べております。そして私どもはもう毎日七十種類ぐらいの食品添加物がからだの中に入っているわけです。その上にそういうものをまた食べさせられて、そして、もしもこれがやっぱりあれはいけなかったんだと、こういうふうなことで将来禁止をされたとしますね。そうするとこれは二重のあやまちをおかすということになるんですよ。ですから、私はいまのうちにこれは正しい結論が出るまでは、いまこれはやめておいたほうがいいと、こういうことを私は要望したいと思います。しかも戦後化学が発達してから、化学的な合成品の食品添加物というものがどんどんふえてきて、いま三百五十何種類食べさせられているんでしょう。私はこういうものはやっぱりほんとうはよくないと思う。自然食が一番いいと思うんですよ。ところがこのごろは大量生産をやって日本の国の隔々までいろんなものを送り込む関係上、長もちをさせないといけないので、こういうものが使われるようになってきたわけでしょう。だけれど、ほんとうは自然のものが一番いいんで、化学技術が進歩したからというので、こんないろんな合成品みたいなものを食べさせられないほうがいいんじゃないですか。私も学者ではないから、最近ふえている奇型児の問題だの、いろいろ数えれば切りのない問題について非常に実は心配をしているわけです。この間も申し上げましたように、私なんかあと二十年も生きれば平均寿命をこえてしまいますから、もう私なんかはよろしゅうございますけれども、二代、三代あとのことまで考えると、これはほんとうにたいへんな問題になってきますよ。  それで、もう少しほんとうは時間があれば、次にじん炎の問題についても質問したかったんですけれども、与えられた時間一時間過ぎちゃいましたからなんですけれども、一言申し上げておきますと、じん炎の問題にしてもあるいはネフローゼの問題にしても、いろいろなこのごろの難病奇病、こういったような問題はいままでなかった問題でしょう。そういうものがどんどんふえてきている。そして、そういうものにどんどんお金をつぎ込む。たとえばこの前も申し上げたように、重度の心身障害児には一ヵ月一人に十八万円ものお金をつぎ込む、こういうふうなことをして、厚生省は大蔵省に対して相当弱いです。弱い中で、どんどんそういう返ってこないような金をつぎ込むことがさらにさらに大きくなるんでしょう。それだったらもっと初めに国民の健康を守る方向にお金をうんと使って、そんな国民の健康を害するようなことにならないほうがいいんじゃないですか。  それで一言お尋ねをしておきたいのは、この間たまたま全国腎臓病患者の連絡協議会というのがありまして、そこに参りましたら、たいぶん皆さんは御存じだと思いますけれども、日本大学の大島研三教授、この方が来賓に呼ばれて、じん臓病患者の全国大会ですから、じん臓病患者のほうに向かって祝辞を言わなければならないこの先生が、たまたま私と衆議院の河上民雄先生と、それから共産党の浦井洋先生と三人行ったもんですから、私は患者のほうを向いてきょうは祝辞を言いませんと、国会議員のほうを向いてお願いをしますということで、われわれ三人に向かってあいさつをされました。それはやっぱりじん炎一つとってみても、早期発見、早期治療、これをやらない限り、この間公明党の小平先生がじん臓病について質問をされたときに、いま日本では五千九百人の患者がいると、こう言われておりましたけれども、大島先生のお話によりますと、ことしの十月にはもう一万人になる。おそらく来年の暮れには二万人になるだろう、こういう人たちは人工透析をやれば一カ月四、五十万円のお金がかかる。こういうお金を今度高額医療で、三万円以上は保険でみるわけでしょう。そうなったらこれにつぎ込むお金はばく大なものになるでしょう。そういうことよりも、もっともっと早期発見、早期治療をやったほうがいいわけです。だから、そういうことにお金をもっとつぎ込んだらどうなんですか、健康保険で。もう少しみんなが簡単にやれるように。それでここで要望されておるのは、もう三歳児では検尿が実現した。ところが四、五歳児を含み、それから小学校、中学校まで全部これは無料で、これは学校保健法に関係してきますから文部省の問題でもあるわけですけれども、こういう問題で早期に無料検尿を実施して、じん臓病の患者さんを早くなくするようにやったらどうですか。  それからたまたまこれは私の孫がまだ三歳前の子供ですが、この間ちょうどこのじん炎で三週間入院をいたしました。小さい子供ですから、安静時間といったってなかなか安静にしておりません。そこで、やむを得ずにお医者さんはもう家に帰りなさいということで帰されたわけですけれども、いままだ一週間に一ぺん調べると、赤血球が二十も出たり、また三に下がったり、そんな子供がおとうさん早くぼくの赤血球なくしてよなんということを言っているんですよ。それで、それをお見舞いにいきますと、隣にいたお嬢ちゃんはちょうど去年の十一月から入院をしておられましたけれども、そのおかあさんのことばをちょっと引用してみますと、この子供は突然高熱におかされてそして吐いたり、あげたりしたわけですね。それでそのお子さんを近所の病院に連れていったら、「かぜでしょう」、こういうことで近所のお医者さんにかかっていたんだけれども、そのときにおしっこを見たらコーヒーのようなおしっこだったと、このおしっこが普通じゃないということを、親に知識があればさっそく子供の専門病院にそのおしっこを持って見てもらいに行ったら、私はこんなにこの子供を十一月から入院をさせる必要はなかったんじゃないか。ですから、お医者さんを訴えるよりも、お医者さんを訴えたいけれども、私は自分の知識がなかったことをたいへんこの子供にわびなければいけない。ですから、早期発見をするのと同時に、この大島先生が言われることは、何とかしてパンフレットを配って、家庭のおかあさんにじん臓病とか、じん炎とか、ネフローゼとか、こういう病気は実はこうこうこうなんですというふうなパンフレットをつくっておかあさんたちに配りたい。いまそれを計画しているけれども、それはどういう題だといいますと、ちょっとここではわからないですが——「腎不全を生きぬく」という、こういう題でパンフレットをつくって無料で配りたい。それには約一千万円かかりますと、学者は貧乏ですからこの一千万円のお金をどっから捻出しようか、こういうふうに言っておられました。ですから、こういうふうなものを皆さんに配る費用を、厚生省は少し負担するわけにはいかないんですか。そういう予算をとるわけにはいかないんですか。これだけ一生懸命にやっている学者もあるわけですからね。あとでどぶに捨てるようなお金を使うよりも、先に家庭の主婦に知識を与えておくとか、あるいはまた検尿を全部の子供にするとか——十歳までなら必ずなおりますと言っておられました。こういうことについて、厚生大臣のお考えを伺って私の質問を終わりたいと思います。
  260. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいま御指摘のございましたじん炎あるいはネフローゼ、この点につきましては、お示しのとおりの問題が多うございます。で、御承知のとおり、四十七年度から乳幼児の健診に検尿が加わりました。学校保健法によります検尿を四十九年度から文部省のほうでは幼稚園それから小学校、中学校、——小学校、中学校はそれぞれ一、三、五と奇数学年については義務的に予算的な裏づけをもって実施するようでございます。それから、もう一つのりっぱなパンフレットをつくったけれども、そういったものを周知徹底する方法、この点につきまして、後ほどまた先生と御連絡をいたしたいと思いますけれども、児童家庭局の所管では保健所なりあるいは母子保健のセンターがございます。こういったところで教材あるいはパンフレット等を活用する道もあるわけでございますので、そういうよりよいパンフレット等は役所のほうでも積極的に利用さしていただくという方向で考えてまいりたいと思います。ただいまの御指摘については、全くそのとおりだと思います。
  261. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 この名刺を差し上げますからね、あとでよくお話を伺ってください。この先生がしみじみと嘆かれたのは、こういうような問題で厚生省にもう七年間いろいろ要望をしてまいりました、だけれどもなかなか自分の言うことが聞いてもらえませんと、もう刀尽き、矢折れました、だからきょうは国会議員が三人も来ているからそっちを向いてお願いをするんだ、こういうふうに言っておられましたんで、ひとつその辺は十分考えて、いま申し上げたお子さんのおかあさんのような——もう最近はお医者さんを訴えるケースもたいへん多くなっておりますがね。お医者さんを訴えたいけれどもこれは私の知識がなかったために私はこの子供に対してほんとうにわびなくちゃいけないんだ、こういうふうに言っておられましたけれどもね。その辺を十分これから検討をしていただきたい、このように思います。
  262. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 厚生大臣、所見ありますか。
  263. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私もお話承りまして非常にごもっともなお話だと思います。早期発見、早期治療によってなおせるということならばこれはもう何としてもやらなければならない問題でございますから、その専門の先生の御意見も十分承りまして善処いたしたいと思います。
  264. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、大臣の所信表明をお伺いしたのがだいぶん以前になりますが、その所信表明の「第一に、社会福祉の充実であります。特に現下のきびしい経済情勢の中でその生活が脅かされている老人、身体障害者、母子、生活保護世帯等の生活の安定と福祉の向上をはかるための施策には最重点の配慮をいたしております。」ということで所信表明をお伺いをいたしたのでございます。  そこできょうは児童福祉関係に関連をいたしまして二点ほど問題をしぼってお尋ねをしたいと思っています。  まず最初は、学童保育対策についてお伺いをしたいと思っております。  御承知のように、最近は児童をめぐる環境というのはきわめて悪化しておるのは御承知のとおりでございます。で、新聞等にときどき報道されるのを見ましても胸の痛む事例というのはずいぶんたくさん起こっております。これは私、大阪の事例でございますが、昨年の暮れでございましたか、沖繩から御家族が引っ越してこられてということで、かぎっ子二人がアパートのあき室でプラモデルにすったマッチが引火して二人が焼け死んだというふうなことが出ております。この例などは、これは沖繩からおとうさんが大阪に働きに来ておられてやっと家族全体を呼ぶことができて家族一緒に生活をするようになって一ヵ月だ、やっと大阪の生活が軌道に乗ったと喜んでいたのにということでおかあさんは半狂乱になっている。小学校一年生のお子さんたち二人が、御近所のお子さんと二人でなくなっておる。あるいは、これはあげますと無数にあるんですけれども、昨年の十一月二十二日の新聞に報道されておりますのでは、病弱でかぎっ子の子供さんが自殺をしているんですね。両親に遺書を置いて自殺をしている。日ごろから病気がちで学校の授業にもついていけなかった上に両親もだれもいない家で一人寝ているうちに——遠足の日だったそうですが、遠足に行った友だちのことなどを思い、子供心にさびしくてたまらなくなって自殺したということなんですね。こういうふうに児童をめぐる環境というのはたいへん悪化しておりますから、痛ましい事件というのはずいぶんたくさん起こって胸の痛むことが多いわけでございます。そこで児童憲章——これは昭和三十四年の国連総会でやられた児童権利宣言はもちろんのことですが、児童憲章の理念、特に、「すべての児童は、よい遊び場と文化財を用意され、わるい環境からまもられる。」というふうに児童憲章の九条には規定をされておりますけれども、そういった点から見ましてずいぶんほど遠い現実だというふうに思うわけでございます。そこで若干そういう児童をめぐる環境というのをどのようにとらまえておられるかという点を厚生省の見解をまずお伺いをしたい。
  265. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいま御指摘のございました児童の環境の悪化と申しますか、環境の激変、この点につきましては、厚生省としても従来から、たしか四十四年でございますか、児童家庭に関する調査をいたしました。その中でたとえばかぎっ子であるとかあるいは母子家庭であるとか、あるいはその他児童の遊び場の問題、こういったものの調査を実施いたし、なお最近の変動する状況の中で、四十九年におきまして予算措置も講じて児童の家庭児童調査というものを実施することにいたしております。しかし、それはそれといたしまして、厚生省が児童の健全育成という立場で従来から行政の対象としておりますのは、先ほど御指摘がございましたように、たとえば児童公園であるとかあるいは児童遊園だとか、それから児童館という施設を通じての地域の健全育成というものでございます。  ただ、これでは最近のようないわば非常に核家族化、あるいは都市化、現にいままで大体家には庭があった家庭がほとんどもうアパート化してきているということに対応するための策というものが検討を迫られているものと考えております。ただ、優先順位から申し上げますと、従来の児童家庭局が何よりも中心になってやらなければならなかったものは、御承知の保育所の充実でございます。これはまだ学齢に至るまでの子供さんをかかえた家庭の保育を要する状況、これが毎年急激に増加してきております。市町村の負担等もございますけれども、最近では大体年に一千ヵ所ぐらいずつの保育所の需要並びに増加があるわけでございます。  厚生省はまず保育所、それから最近の大きな特徴といたしまして年齢の低い乳幼児の保育に対する要望、こういったものも非常に強うございまして、これを重点的に解消すべく五ヵ年計画も立てて実施してきておりますのが現状でございます。  ただ、先ほど御指摘のありましたいわゆる学童のかぎっ子と申しますか、この問題について決して従来の施策で十分であるというようには考えられない点がございますので、この点については法律等の趣旨からも見まして、積極的な対処をしなければならないと、かように考えているわけでございます。
  266. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは施策の面で局長お述べになったんですけどね、私は児童がいま置かれている社会環境がどのように悪化しているかという、悪化している状況というのはやはり厚生省がつかんでおられる実態というのが非常に大事だと思うんですがね。というのは、たとえば交通事故の死傷者の数、これは子供さんの数がどのように推移をしているかというふうな問題、あるいは痴漢に襲われた児童数がどういうふうに推移をしているか。これらは警察庁ではおそらく届け出のあったごく一部だと思いますけれども、そういった一部の数であってもその推移がどういうふうになっているか。あるいは非行年齢がどういうふうに経過してきているか。また公害病ですね、公害認定患者の中で子供たちがどういう位置におるか。これは私、西淀川におった経験では公害認定病患者の中で十二歳以下の子供が約六割です。そういうふうに大体社会的な被害、環境悪化によって社会的な被害を受けるのは低年齢児の、特に学童ですね、そういった子供たちが非常に多いというふうなのが、客観的な環境の悪化という形であらわれているというふうに思うんです。  一方、それじゃ親の状況、家庭の状況はどうかという問題なんですね。これにつきましては、これは厚生省、労働省でも御調査をなさっておりますけれども、ちょっと伺わしていただきたいと思うんですが、勤労婦人、労働婦人というのはふえる傾向にありますけれども、これは都会だけでなく農村でもふえてきておると思いますが既婚婦人の傾向。それから既婚婦人が全就労の婦人労働者の中での割合。それから既婚婦人の中での学齢児の子供を持っておる婦人労働者のパーセントですね。そういったものはどういうふうになってきているか。また、それらの人たちは、その親たちはどういう希望を持っているか。そういった点、これは御調査になっておられるようですので、御見解を最初にお伺いをさしていただきたい。
  267. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) お尋ねの点でございますが、先生の御指摘のとおり婦人の雇用者は年々増加いたしてまいっております。そして、昭和三十年、大体五百万人オーバーしておる程度でごさいましたが、四十五年には一千万人をこえまして、最近四十八年の数字が明らかになりましたが、これでは一千百八十六万人とたいへんな増加を示しております。  その中で、特に既婚婦人の増加が目立っておりまして、従来は未婚と既婚の割合では日本では未婚のほうがはるかに多いというのが常識とされておりましたが、最近はその比率が逆転をいたしまして既婚者のほうが多くなりました。昭和四十八年には大体全女子雇用者の約六割は既婚者で占められるようになったわけでございます。  それから、もう一つの子供を持って働いている婦人がどの程度いるかということに対する答えですが、これはやや調査が不十分でございまして、またあまり正確な数字とは申しかねますが、大体既婚婦人の労働者の中の約半数が子供を持っていると、私どもの調査では出ております。そして、その小学校の子供、小学生の子供を持つ者が既婚婦人労働者の二五・三%、学齢前の子供を持つ者が二〇・八%、このような調査が、幾分古い数字でございますが出ております。
  268. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 で、これらの子供を持つ既婚婦人労働者の人たちは、そういった子供の問題についてあなたのほうで御調査になった結果では、何らかの保育施設を望んでおるという人たちというのはどの程度ありますか。
  269. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 婦人がどういうことを望んでいるかという調査、まあ、いろいろございますので、一番新しいものについて申し上げますと、既婚婦人の就労に関する世論調査というのが四十六年の七月に実施されたものがございまして、これは対象が二十五歳以上の既婚の男女ということになっておりますが、その中で一般的に婦人が結婚後も働くためには、いろいろな施設制度を整備することが必要だと思いますが、ぜひやってほしいのはどれですかという問いに対しまして、保育施設などという答えはたいへん高うございまして、六〇%というような数字が出ております。
  270. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そこでですね、保育施設などを望む人たちが六〇%というふうに調査の結果が出ておるわけですが、大体その子供が保育所あるいは学齢児の低年齢児で早く学校から帰ってかぎっ子になっておる子供をかかえておる親というのは、大体どんな思いをして仕事をしているかということですよ。たとえばね、これは私どもよく聞かされるんですけれども、まあ極端に言うたらきのうまで保育所に行っていた子供が、あしたから小学校の一年生に入るわけです。で、保育所では朝の八時から六時まで保育をしていただいているわけですね。その子はあくる日から小学校の一年生に入った場合には、最初のときには十時半か十一時に下校するんですね。それから一ヵ月近くたって給食を受けられるようになったら、一時になれば帰るわけです。そうしますとね、家に帰って母親がおらない。保育をしてもらえないという状況になりますと、子供はどうするかというと、母親の職場へ電話をかけてくる。「さびしい、おかあさんさびしい、おかあさんこわい」と言って電話をかけてくる。ほんとうに胸を締めつけられるような思いをして仕事をしておるんだということを働いておるおかあさんたちから私どもたびたび訴えられるわけでございますが、そこでお伺いをしたいのは、保育所から小学校への就学児童というのは全国でどのくらいありますか。
  271. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 正確な数は把握しておりませんけれども、大体年間に二百万足らずの児童が出生するわけでございます。百八十万ぐらいの子供さんが入学をすると考えられております。そして、そのうちの約九分の一、二十万前後がいわゆる保育所から小学校に入学をする、このような数字ではなかろうかと、まあ正確な調査ではございませんので数字に変動があるかもしれませんが、私どもはそのような推定をいたしております。
  272. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そこで、いまおっしゃった推計数字の二十万程度の就学児童が保育所を上がって小学校へ就学する、そういう就学した子供たちの放課後対策というのは、これは厚生省、教育委員会、どちらも無関係じゃないと思うんですけれども、両方でどういうふうな対策をとっておられますか、現状は。
  273. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 厚生省のサイドで申し上げますと、先ほど申し上げました児童館、これが全国で千八百以上ございます。数は少のうございますが、これはいわば必ずしもかぎっ子のみを対象にするものではございませんけれども、地域の健全育成ということを兼ねましてそこで放課後の児童をお預かりする、で、指導員が遊びあるいは教科の学習相手をするという仕組みになっております。厚生省の分野では、具体的な問題としては児童館、こういうもので健全育成をやっているということでございます。
  274. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 文部省の社会教育局の関係では、少年期の遊びを奨励するという意味で、放課後の子供の遊び場を学校の校庭を開放することによって確保したいということで、昭和四十九年度は四千五百校の小学校の校庭開放をもくろんでおります。
  275. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 文部省にお伺いをしますが、校庭開放というのは昭和四十七年度からおやりになっておるんですね。四十六年度までは留守家庭児童会育成事業というのをやっておられましたね。あれは何でやめたんですか。
  276. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) お答えの前に事実を申し上げておきたいと思いますが、留守家庭児童会育成事業という仕事を昭和四十一年度から四十五年度まで行なっておりました。それから、少年活動促進事業という仕事を昭和四十三年度から四十五年度まで行なっておりました。そして、昭和四十六年度からその二つの事業、留守家庭児童会育成事業と少年活動促進事業とを統合いたしまして、校庭開放事業ということで運営をしてまいっております。これが事実でございます。  統合した理由は、この二つの事業ともに放課後において子供を学校の校庭で十分に遊ばせようという目的のものでございます。性質の似た種類の事業でございまして、そして単に留守家庭児童のみを分けて運動場で遊ばせるよりも、むしろ少年一般に遊び場を与える、あるいは交通事故から防ぐという意味では、二つを統合して予算を増額したほうがよろしいんじゃないかというような趣旨で、昭和四十六年度から統合して予算の増額をはかったわけでございます。
  277. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは私一年言い間違えた。もっと早うから、私が言ったより一年前からやめておった。  これは、校庭開放の問題についてとやかく言おうときょうは思っていないのですけれども、留守家庭児と、それから一般の子供を一緒に校庭を開放して伸び伸び遊ばしたらよろしいとおっしゃるのだけれども、雨の日もあれば風の日もある、雪の日もあるわけですよ。毎日開放していないんですよ、実際に。それなら、一般の、家庭にどなたかおられる子供さんは、雨の日はお家へお帰りになりますわ。かぎっ子の子供は雨にぬれて校庭で遊べというわけにもいかぬでしょう。これは、そういう対策にはなっておらぬ。  それからもう一つは、これは具体的に、全国的に聞くとわかりにくいから、私は大阪市における実情を、校庭開放の実情を調べてきたんです。そうしますと、これはぼつぼつふえておりますが、どういう状況になっておるかというと、学校別に、一番たくさん開放しているAランクの学校が四校ですわ。これは三百日以上。それからBランクは二百日以上開放なんですね。それから推進校、協力校というのがあるのですが、これ、圧倒的に多いですよ。それが協力校に至っては一年間に五十日開放なんです。まあ、そういう状況なんですね。で、小学校が二百七十のうち、実施されているのが百三十二校です。三百日以上開放している学校というのはその中で四校ですよ。二百日以上開放しているのが十六校。それでは、これは留守家庭の子供も一般の子供も伸び伸びととおっしゃっても、ある日は伸び伸びとできるかもわからぬけれども、まあ一年のうちの五十日か七十日、伸び伸びできるかもわからぬ。そのうち、雨が降ったら、五十日のうち何日になるかわからぬという状況なんですね。これは十分な成果をあげているとは考えられないと思うんです。これはまた別の機会に申し上げたいと思うんですがね。  そこで、お伺いをいたしたいのは、児童福祉法というのは大体生まれてから満一八歳までというのが法律範囲内ですね。で、私は、ずっと調べてみて、ふしぎに思ったんです。生まれたときから始まって各年齢別に、全部施策は、十分・不十分は別として、施策はあるんですよ。ところが、就学した子供の放課後対策というのは、これは行政ベースに何も乗っていない。全く児童福祉法の、法律のワクから欠落をした存在だなということに気がついたんですけれども、これについては厚生省はどうなんでしょう。どういうふうにお考えなんでしょうか。
  278. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 御指摘のように、児童福祉法は十八歳までの児童の福祉について規定しているわけでございます。そこで、いわゆる学校に就学した児童についての福祉、それは、まあ養護施設とか収容施設は全然別にいたしまして、一般の児童が学校から帰ってきて、そうして御両親がつとめているという場合の福祉の問題、これは、それのみをとらえてみますと、国の施策としての裏づけは健全育成という面だけでございます。健全育成の面は何かと申しますと、これは、厚生省で申しますと児童館の施策、文部省で申しますと先ほど局長の言われた校庭開放事業、それ以外の、それに該当しないでいわゆる両方から欠落している部分については、御指摘のとおり、児童福祉法上国が施策として取り上げているものはございません。むしろ地方自治体においてそれぞれの分野でやっておられるのを承知しているわけでございます。
  279. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、その分は児童福祉法範囲内から欠落をしておると、その補いとして地方自治体でそれぞれおやりになっておるということをお認めなんですね。  それでは地方自治体でたいへんいろいろな形で御苦労なさっておるようですけれども、いま全国で幾つの自治体でおやりになっておりますか。
  280. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 全体の数字は遺憾ながら把握しておりませんけれども、個々の、たとえば先ほど御指摘のあった大阪府・市あるいは埼玉県、あるいはその他の二、三の県における放課後におけるかぎっ子あるいは学童保育といわれるものを教育委員会なり民生部局でやっている事実はある程度承知しております。
  281. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 あんまり御承知ない証拠に、大阪市とおっしゃったでしょう。大阪市やってない。大阪府はやっておる、市はやってない。それでよう私知っているんですわ。
  282. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 私の理解があるいは行き届いていないかもしれませんが、学童保育事業、大阪市として児童家庭課で市の単独事業でやっておられるようでございます。
  283. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ほんのわずかの共同保育だとかあるいは私立の保育所でやっているのに対するごくわずかな補助金を出しているというやり方ですね。だから、いわゆる学童保育というのが制度としては確立してないんですよ、大阪市の場合は。大阪府の場合は自治体として確立をしているんです。その制度として確立しているかいないかという問題を含めてお伺いしたいですからね、大阪市は制度としては確立していないという点です。  そこでひとつ、私は地方自治体がたいへん苦労しているので、実態を調査をされる必要があるんじゃないかというふうに思うことが一つです。これについてはどうでしょう。
  284. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 私どももそういった点においての調査が必要であろうなと考えております。ただ、先ほど当初に申し上げましたように、四十九年におきまして児童全体の調査をいたします、それの集計結果を見た上で、これの問題点などを探りたいというようにただいま考えておりますけれども、御指摘のありましたこれにスポットを当てた調査というものも別途考慮したいと、このように考えております。
  285. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 幸いにして、この間四十九年三月の日付で「婦人に関する諸問題の総合調査報告書」というのができ上がっているんですね。この報告書の中に二八二ページに「学童保育」という欄が出ている。幸いにしてここには「問題点」、「課題」、こう明確に提起されているんです。これを見てもらいますと、これはすぐ——これは政府調査報告書ですよ。それによると、こういうふうに必要性は論じられているんですね。調査報告書ですからね。こういうふうに書かれているんです。「小学校に在学する学童を対象にしているのが学童保育である。最近では職業を継続している層が、保育所の延長として学童保育を必要とするのみでなく、中年女性の職場進出が増加しておりこの層にとっても学童保育の必要性は高い。実情調査からも中高年令層で、学童保育がないために子供が夏休みや冬休みになる度に退職し、職場を転々としている例が多くみられ、職業生活への影響は大きい。  ILO「家庭責任をもつ婦人の雇用に関する勧告」(一二三号)も児童保育の義務及び施設について実情調査を行い、適当な措置を講ずる必要を指摘している。」そこまでは必要性をいわれているんですけれども、「全国で何ヵ所あるかという全体的な数さえ明らかにされていない。」と、いかに実情が握られていないかというふうに調査の結果がいわれている。そうして、そこで、そこから幾つかの学童保育の関係者の意見聴取や実情調査の結果、施設の問題これは学童保育施設の不足は著しい。特に、パートタイマーが増加している地域あるいは農村地区でも学童保育の必要性が高まっている。それから「行政上の地位づけ」というのが二番目に書かれております。「学童保育は国によって制度化されておらず、行政上の位置づけは明確でない。」したがって、これは別表があるんですけれども、「別表に見られるように各自治体での所管は福祉事務所、教育委員会の学校教育課関係、社会教育課関係、民生、婦人児童課など多様である。このように行政上の地位づけが不統一であることは多様な問題を生み出している。」それから「設置場所」、設置場所についてもこれは問題がありますけれども、そのあと「保育料」、保育料では、これは「父母負担は運営形態によって非常に差がある。」、それは、当然、「学童保育の全国的な制度化が行われていない現在、地方自治体の補助額も一定せず、父母の運動いかんが補助額に大きく影響している。」それから「設備」の問題、それから「学校休日と開設期間」の問題、「指導員」の問題、「学校との関連」の問題、「児童の安全」の問題等々、問題点を全部指摘をして、課題も明確にされておるわけですが、こういう中で、これは政府としては、少なくとも、こういった婦人に関する諸問題という形で提起はされておりますけれども、児童福祉法を扱う厚生省としてはこれは独自に調査をし、この調査によっては直ちに、「学童保育の充実はさし迫った問題である。」と指摘をされているわけですからね。これを進めていくために、厚生省としては一定のかまえを持たなきゃならぬ段階にきていると思うんですけれども、これはどうでしょう。
  286. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) ただいまお読み上げになった調査は私も見ております。それから問題点についても指摘されていることも承知しております。ただ、一言申し上げておきたいのは、従来、当初も申し上げましたように、児童福祉の一番の大きな課題が、いろいろと不幸な子どもさんに対する収容、保育、あるいは学齢前の保育の需要の高まり、こういった非常に大きな流れに対処するということが国としてはとにもかくにも最優先の事業として考えてきております。同時に、将来においてもまだこれについての対策が迫られていることは御承知のとおりでございます。しかし、同時に、学齢に上がった子供さんの問題について若干の問題がございましたのは、いわゆる学齢児の所管と言ってはなんですが、学齢児の問題について文部省がかかわり合いをする面と厚生省が健全育成の面と、両方の分野でそれぞれ、先ほど私なり社会教育長が申し上げたような施策が行なわれてきております。しかしながら、非常は世相の激変の中でいわゆる学童のかぎっ子と申しますか、特に低学年の保育所を出た子供さんに対する扱いというものが非常にスポットを当てられてきて、また問題であるということをその調査結果も示しておりまして、私どもは、これに対して従来施策を進めてきた諸施策と同時に、この問題についても、当面、これに対処する必要があろう、こういうふうに考えておるわけでございます。なお、この問題につきましては、総理府の青少年対策協議会でございますか、事務局でございますか、ここで音頭をとっていただきまして、文部省、厚生省、さらに農林省、労働省、各省の関係官が集まりまして、従来、何回かこの点についての討議もいたしております。私どもは児童福祉という立場からは、繰り返すようでございますけれども、これに対して、いま、当面の課題として何らかの対処が必要であるという判断を持っていることだけは申し上げられると思います。
  287. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはあとで申し上げようと思ったんですけど、いま局長もおっしゃったように、学童だということで文部省とのかかわらり合いもある。それで、児童福祉という立場では厚生省とのかかわり合いもある。そういうことで両方にかかわり合いがあるということで、どこが責任をもってやるかという点が上から下まで、国を頂点として下まで明確でない。そのためにその年齢の保育に欠ける子供たちが放置されているという事態が起こっているわけです。この辺をはっきりさせなきやならぬと思うんですけど、大臣、どうですか。
  288. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) この点については、児童福祉法上の規定等から見て、保育という立場から見れば、厚生省が積極的にこの対処をすべきものというように考えております。
  289. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 児童福祉の立場から言ったら、当然、そうですね。私もその点は、やはり、厚生省としては明確に態度を鮮明にされるべきだというふうに思うんです。児童福祉法によると、これは私より皆さんのほうが専門家で法律はよく御承知なんですけれども、あらためて読んでみますと、児童福祉法の第二条には「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」、それから第三条には「前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない。」というふうにいわれておって、それから、同じく児童福祉法三十九条の保育所の項では二項に「保育所は、前項の規定にかかわらず、特に必要があるときは、日日保護者の委託を受けて、保育に欠けるその他の児童を保育することができる。」、それを受けて二十四条の「(保育所への入所の措置)」という項では「市町村長は、保護者の労働又は疾病等の事由により、その監護すべき乳児、幼児又は第三十九条第二項に規定する児童の保育に欠けるところがあると認めるときは、それらの児童を保育所に入所させて保育しなければならない。但し、附近に保育所がない等やむを得ない事由があるときは、その他の適切な保護を加えなければならない。」というふうな規定から見ましても、これは厚生省が責任をもっておやりにならなければならないであろうというふうに思います。そこで、総理府の青少年問題審議会ですか、協議会ですか、そこでまとめてもらってということなんですけど、そこでまとめてもらってということは、全体的な構想、あるいは調査を含めて全体的な構想とか将来計画、そういったものをお立てになろうというお考えでそういうことをおっしゃっておられるのですか。
  290. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 私が申し上げましたのは事実を申し上げたわけでございまして、従来、青少年問題事務局ですか、そこで各省が集まって何回か討議をしましたという事実を申し上げたわけでございます。厚生省といたしましては、私が考えておりますのは、文部省、厚生省、それぞれの所管で従来、やっておりました施策はそれなりに伸ばすべきであろう、しかしながら、いわゆるかぎっ子、学童としていずれの施策からもはずれておるものについて厚生省は児童福祉法のたてまえからこれに対処すべきであろう、しかし、それによって、従来各省がやっておられる施策をやめるとか、あるいは変更すべきものではない、こういうことで申し上げているわけでございます。
  291. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、それはやめよというて言うてないんです。で、児童館というのは、本来、児童館の使命がありますからね。学童保育にたまたま一部が使われておるということだけであって、児童館本来の任務がありますから、これは、いまは児童館の設置ということの範囲でしか施策がないということであって、これは全校区に一つずつ児童館ができれば、これは理想的ですよ。一ぺんにできませんわな、実際には。そこで、いま局長がおっしゃいましたけれども、文部省と御相談をなさってということなんですが、こういった、婦人に関する調査でも出てきておることですし、実際には早急に手をつけなければならない分野だというふうに思いますが、具体化について御見解はありませんか。
  292. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 具体的な問題としてまだ固まっているわけではございませんけれども、いわゆる利用すべき施設としては公民館なり児童館なりあるいは隣保館なり、その他公共施設は十分利用していく。それからまた従来保育所の一部で学童の留守家庭対策というものが学童保育という名で行なわれております。これも活用すべきものと考えております。それをどのような方法並びに内容でこれを国がかかわり合いを持つかということを早急にわれわれ事務当局として検討して答えを出したい、かように考えておるわけでございます。
  293. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 地方自治体は実施しておりますけれどもたいへん苦労しているんですね。それでこれは私たまたま大阪市の実情をよくわかっていてあれですが、十大都市の民生局長会議でも毎年これを要望しておりますね。これは四十七年七月にも「学童保育制度の確立」ということで厚生省に要望が出ている。一番問題になっているのはこう言っておりますよ。「近年、働く母親の増加、核家族化の進行等による要保育児童の増大は著しいものがあり、中でも乳幼児保育から移行したいわゆる学童保育については、住民から強くその対策を要請されているところであります。  地方公共団体においては、それぞれの実情に応じた方策を講じておりますが、当該事業については法制度上未整備であり、財政的な裏づけがないため事業の推進を著しく困難なものとしております。  よって政府におかれては児童の健全育成を図る上から、学童保育制度を確立されるとともに、財政措置についても格段の配慮をされるよう要望します。」これは毎年ほぼ似たようなものです。これに対して具体的にどうなさるかということです。
  294. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) お答えする前に、あるいは私、青少年対策協議会と、たいへん不明確なことを申し上げましたが、たしか青少年対策本部の間違いでございますので訂正させていただきます。  ただいまの要望書等に基づく具体的な措置でございますけれども、これはやはり国が行なう以上何らかの財政的な援助というものが中心になるものと考えます。ただ、当初にも申し上げましたように、保育の需要というものがいわゆる学齢前の保育の需要というものが非常に強く、また保育所設置の要望がきわめて深刻でございます。そういった各種の児童福祉上の施策の何と申しますか配列といいますと少しことばがおかしいんですが、優先順位というものを考えながらこういった当面問題になっておる学童保育の問題について具体的にどのようなものにするかということを考えてまいりたいと、こう申し上げておるわけでございます。
  295. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと主たる省が、厚生省が責任をもって進めるということ、先ほどおっしゃったとおりでいいんですな。
  296. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 繰り返すようでございますけれども、それぞれの施策を伸ばすと同時に厚生省がいわゆる学童保育というものについて対処すべきであろう、こういうように考えております。
  297. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ややっこしいな、話が。いまやっていることをやめなさいと言っていないんですよ。それは大いにやってもらったらよろしいんで、学童保育、冒頭に言ったのは、児童福祉法範囲の中でその部分が欠落しているということを認めたんでしょう、あなたのところ。早急に埋めなきゃならぬから、埋めるためには当然児童福祉法という法律のたてまえからいったら厚生省が責任を負うべきであろうと私も思いますよ。そういうふうに御返事をなさったというふうに理解してよろしいですな。
  298. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) けっこうです。そのとおりです。
  299. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 だから学童保育という施策は行政に乗る場合には厚生省が中心になってお進めになると、こういうことですね。
  300. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) そのとおり御理解いただいてけっこうです。
  301. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そこで制度化の問題ですね、これは十大都市からも毎年要求をしているように、制度化の問題をどうするかという点です。それからさしあたって地方自治体が現在いろいろやっておるやり方、これに対して——これは制度化いうて、いや実態調査をやって全国的にシェーマをつくって、こういうふうに何年計画でと、これもけっこうなんです。しかしそれでは間に合わないので、そのことも大事だとは思うけれども、さしあたって地方自治体で現状いろいろ苦労して実施しておる施策、政府として、制度として補助金あるいは補助をするなり何なりの制度化が必要ではないかと思うんですが、その点はどうでしょう。
  302. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 制度として認める以上、財政的な措置が必要であることは言うまでもございません。ただ、それをいつ、いかなる方向でやるかということについては五十年度予算の編成にあたってわれわれ具体的に検討し、この実現に向かって努力をいたしたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  303. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは地方自治体でたいへん苦労しているだけではなしに、まあ時間の都合があって全部問題点言いませんでしたけれども、実際に担当しておられる指導員の人たちも父母負担との関係でこの物価高でもベースアップも要求できないというふうな中でやはり子供たちがかわいくてめんどうを見ているというふうなことだとか、あるいは先ほどちょっと読み上げたところでありましたように、地方自治体でやっておっても夏休みとか冬休みとかの長期の休みにはやらないというふうなことで、そのためにおかあさんが職場をやめなきゃならぬというふうな事態だとか起こっているわけですよね。そういう点でたいへんな困難が幾つかある。しかも主管省がさっきりしたから私はけっこうだと思いますけれども、これは下へ通してもらう必要あるんです。なぜかといいますと、下ではどういうことが起こるかというと、地方自治体では民生担当局が、民生担当の行政が扱うという場合に学校のあき教室を使うといったら、これは教育委員会は学校の管理上都合が悪いとかなんとかいってなかなかうまくいかぬのですよ。そのために制度として国がはっきりなさらぬから、下ではできることもできないというふうな問題もある。金の問題もさることながらそこが最大の隘路。それからもう一つは、それについての金なんですよね。昔はまだ物価が安かったから父母負担が少々要っても何とかやれたのですけれども、このごろのように、父母負担を上げないと指導員の給料を上げられないというふうな実態もあるわけですね、あるいは共同保育もあるわけですよ。そういうところでは、いまのままでは、続けさせたいけれども、続けられないというところまできていると思う。だから、いついかなるやり方でやるかを検討しますいうて、のんびりゆうちょうに言うててもらえるような状況じゃないというふうに思うのです。少なくともこれはまあ四十九年度で何とか踏み切ってもらいたいと思っていましたけれども、四十九年度はさっぱりそのけもないということで、きわめて残念だと思うのですがね。少なくとも五十年度からは自治体が実施をしておるところ、あるいはおかあさんたちが自治体の補助をもらって苦労してやっているところ、そういうところには制度として政府がやっていくというふうに踏み切るべきだと思うのですけれども、大臣最後に一言。
  304. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この学童保育の重要性、私も十分理解をしております。最近の児童を取り巻く環境からいっても考えていかなければならぬ重要な問題だと思います。  そこで、この学童保育の問題については、いま局長が答弁いたしましたように、従来ともこれに対する施策がそこまで伸びなかった、これは私は率直に認めます。そこでこれを何とか制度として軌道に乗せたい、こう思うわけでございます。そこでまあ沓脱委員も仰せになりましたように、第一線における、学校とのやっぱり関連が非常に大事な問題でございますから、文部省の協力もいただきながら学童保育を制度的に軌道に乗せるように努力をいたしてまいりたいと思います。したがって、軌道に乗せるということになりますれば、予算的な措置、裏づけも必要でございます。したがって、まあ本年度はこれできませんが、五十年度において学童保育を制度的にどうやって確立していくかということでございますので、文部省とも相談し、そこからこちらの厚生省のほうの児童福祉審議会、そういう方面の専門家の意見も聞きながら、予算編成までに一つの道をつくるように最大の努力をいたしまして、来年度から実現できるように最大の努力をいたす考えでございます。
  305. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ学童保育はそれくらいにしまして、あとごくわずかな時間ですけれども、虫歯対策についてお伺いをしたいと思います。  特に子供の虫歯対策に限ってお伺いをしていきたいと思いますけれども、このごろではたいへん子供たちの虫歯の罹患率が高い。子供が夜中に歯が痛くなって泣いても、歯医者ではなかなか見てもらえない。まあもうちょっと大きくなるまで待ちなさい、あるいは行っても順番をちゃんとせにゃいかぬということで、二カ月くらい先でないと見てもらえないというふうなことで、国民の中では、おとなもさることながら子供の虫歯ではたいへん困惑をしております。  で、ちょっとお伺いをしたいのですけれども、最初に実情をお伺いしたいのですけれども、子供の虫歯というのはどういう状態になっているのか、これも厚生省と文部省と両方関係があると思いますが、両省の御見解をお伺いしたい。
  306. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 子供の虫歯の罹患率につきましては、三十二年からの統計がございますが、三歳児で当時八一%というようなことでございまして、四十四年で八七、それが小学生になりますというと、四十四年で九三、三十二年当時が八四ということでほとんどの学童に虫歯を持っておるというような実態になっております。
  307. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 子供の虫歯が多いというのは、虫歯の多い子供というのはこれは子供の成長に一定の影響があろうと思いますがね、公式の席上だからひとつ御説明をいただきたいと思いますがね。
  308. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 先生の御質問の趣旨に沿いまして、少し文献等を、やはり研究者の文献等をあさってみましたけれども、なかなかこの虫歯と全身状態の関連性という適切な論文はそうたくさんはございません。しかし一般的には虫歯が、——の程度にもよりますけれども、特に発育期の学童に対してはかなりの影響はあるものと思いますけれども、そのために特定な疾患、たとえば歯槽膿漏のようなものになりますと、まあ、いわゆる病巣感染という学説的なことでリューマチの原因になったりというようないろいろの学説はございますけれども、そういうことで、先生のお尋ねが全身的な影響ということになりますと、かなり突っ込んでまいりますというと、虫歯というもの、あるいはそれに周辺の歯槽膿漏のようなものはかなり全身的な健康状態に影響あるものと見るべきだと思います。
  309. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは時間がありましたら、私も幾つかの論文を拝見いたしましたので御紹介申し上げてもいいんですけれども、やっぱり虫歯の多い子供というのは、からだの成長に、体重、身長、胸囲等明らかに劣性が出ておるというふうな内容が報告されておりますね。そういう点で虫歯が多いということは子供の成長にたいへん影響が大きい。しかも先ほど局長がおっしゃった数字によりますと、七歳の子供では、いま、昭和四十四年の統計によりますと九七・九%が虫歯、しかも治療率は非常に低い。一例を申し上げますと、東京都の立川市立川第八小学校で、昭和四十九年度ですから、ことしですね。ことしの入学生百九十一名中虫歯のない子はたった一名、治療済みの者がわずか八名、百八十二名は放置したままになっている。外国の状態と比べてどういうふうになっているかということなんですが、これは簡単に外国の実情を——外国の子供たちの虫歯の状態との比較ですね、これはどうでしょう。
  310. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 外国の歯科のほうの具体的な数字というお尋ねもございましょうけれども、対策的な問題について数カ国の文献を調べてみますというと、非常に積極的な対策が行なわれております。特にドイツの対策が、非常に可能性と申しますか、わが国への適用の可能性も踏まえまして感ずるわけでございますが、たとえば保健所で健診し、そして乳歯の抜歯あるいは永久歯の充てん程度は保健所を中心に実施しておる。開業医の中から今度は学校医を嘱託いたしまして学校における健診を実施し、それをまた開業医と結びつけているというような例もございます。それから、法律的に学校歯科に関する法律がデンマークでは制定されておる。あるいはノルウェーでは国民の虫歯予防法の制定が行なわれておる。そのほかフィンランド等でも学童に重点を置いた法制化がなされて、予算措置その他サービスがなされておるというふうに出ております。具体的な数字につきましては、このような対策とからんで、ただいま手持ちには外国の罹患率についての正確な数字はございませんけれども、おそらく対策と考えますというと、わが国のような実態よりは改善されたものであろうと思っております。
  311. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 数字をお持ちじゃないそうですので、西ドイツの例が出ましたけれども、七歳の子供の虫歯の数はちょうど日本の七歳の子供の平均の虫歯の数の西ドイツでは半分です。で、そういう状況なんで、いまいみじくも局長、外国の対策の進んでいる状況をお述べになったのですが、こういう状況の中で、わが国ではどういうふうに対策をお進めになるおつもりか、ちょっとその点をお伺いしましょう。
  312. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 率直に申しまして、現在の歯科医療の実態は、おとなの医療を受けるにも非常な困難のある地域があり、また歯科医が相当多い都市でもこれに難渋しておるというような中で、小児の虫歯治療は、歯科医の先生方が非常にこれを取り扱うことの困難性も含めまして、敬遠されがちであるということは率直に言ってあるわけでございます。われわれといたしましては、現在二十六ヵ所くらい全国にできつつございます口腔衛生センターというようなものができておりますので、これも県庁所在地等にできればその利用範囲というものもおのずから限られてしまうということでございます。  それから、先ほどの保健所を中心にした対策、これが一つ考えられますが、歯科医師の公衆衛生への参加というものはほとんど数が少ないのでございまして、わずかな人が公衆衛生に参画してくださっておる。基本は歯科医師の不足の問題にもつながりますけれども、大体内科医の三分の一が世界各国の歯科医の数でございますが、昭和六十年、十万対百五十という内科医の養成計画と合わせますというと、歯科医師昭和六十年で十万対五十というのが目標でございますが、現在三十七程度でございます。しかし現状の歯科大学の養成計画ができますと、六十年に五十に達する見込みはどうやら立ちましたけれども、それではもちろん十分なものではなかろうというふうに考えるのでございます。  そのほか、具体的な例としては、神奈川、広島等で小児歯科の相談員制度を実施しておる。あるいはわれわれ行政的には歯科医師の研修会等に委託して小児歯科の問題の知識の普及と取り扱いの積極化をはかろうということでございますが、小児歯科学講座を設けている歯科大学は、国立で七校中わずか一校でございますし、私立十五校中十二校、国立のほうに小児歯科の講座の設置の要望が強くなってまいっておるわけでございます。  事情をそのまま申し上げますと以上のようなことでございまして、問題点が多いのにそれを受け入れる体制というものが基本的に不十分であるということでございます。もちろん子供の虫歯の予防の問題は、神奈川県で実施しているように乳幼児に甘いものをなるべくとらせないようにする運動というような、なかなかこの成果はむずかしいでしょうけれども、その統計の結果はまだ出ておりません。しかし運動としては、そのようなやはり予防措置的なことも必要でございましょう。いずれにいたしましても、子供の虫歯の問題は医療の、特に歯科医療の分野におけるこれからの重要な課題でございまして、行政的にやれる分野というものも、いま申し上げたように基本的な関係者の不足等を踏まえまして十分なことがすぐ実施できない点がございます。ただ問題は、歯科衛生士の活用という一点がございますけれども、これは法律的にもやはり歯科医師とペアの活動が基本になっておりまして、独立した活動という分野に持っていくためには法律を基本的に考え直さなければならない。そうなりますと、歯科衛生士というものの身分、資格の問題にもつながります。そういうような山積した問題をかかえているのが実態であるわけでございます。
  313. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、これは四月十六日に発表されました歯科保健問題懇談会報告書に提起されている点は、これは新しく新年度から具体化するという——何か問題かありますか、この提起されている問題で。
  314. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) いま申し上げましたように、基本的に歯科医師の不足等の問題もございますけれども、やはり地域によっては歯科医師会等がこの問題に参画して口腔衛生センターのようなものの設置を具体的にやり、地域的には県庁所在地等に限られますけれども、やはりそういう問題を推進しないよりはしたほうがいいということになりますので、今回の答申をいただいた中から五十年度予算で具体化のはかれるものは具体化をはかってまいりたいと、こういうような考え方に立っています。
  315. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ具体化をはかれるものははかりたいというお考えのようですから、具体的に当面、いまの歯科衛生、歯科保健問題で直面している中で、——しかし、お手あげでおれるという状況でもありませんので、子供たち九七・九%も虫歯を持っているということになったら、これはほっておくというわけにいかぬですよ、国民的課題ですから。そこで、必要な、いますぐできる施策ですね、いまの状況の中でできる施策というのをやはり手を打ってもらう必要があるんではないかというふうに思います。その一つは、三歳児健診の結果で、C型の虫歯、悪性のC型虫歯ですね、これが十数%もあって急増しているというのがデータに出ているようですけれども、これはなかなか一般の歯科医師ではできない。ですから、そういう点で、低年齢児や、幼児、あるいは障害児の重症の虫歯の治療というふうなものが、せめてやれる要因ですね、そういうものをやはりきちんとつくる必要があるのじゃないか。これは私、直接専門じゃないので、歯科の先生方の御意見を伺いますと、こういった重症の虫歯の治療ができる水準の病院というのは、大学の附属病院と、個人の病院で言うたら代々木病院の歯科ぐらいしかないんだそうです。——これは宣伝じゃないのですよ。  そこで、具体的に提起をしていきたいのは、国立小児病院ですね、国立小児病院に歯科を置くと、それから国公立病院に小児歯科あるいは歯科、これを配置するべきではないかというふうに思うのですけれども、これは、国立小児病院は子供の病院だから、歯科を置けば小児歯科ですね。だから、国公立病院に歯科ないし小児歯科、それから国立小児病院に歯科を設置するべきではないか。  まとめて言いますが、それから、先ほど局長がおっしゃった都道府県の段階で、歯科衛生センターを置くということなんですけれども、これは、現状でも、ある地域がありますよね。大阪でもございますわ。しかし、あれね、常駐の先生だとか常駐の医療従業員というのが置かれる状態になっていないのです。そういうことを制度化して、やはり予算化しなければならぬと思うのです。常駐の先生や、医療関係担当者が常駐できて、その医療センターとしての役割りを果たせるように充実をするということが必要だと思うのです。これは、その検討の用意があるかどうか。これは具体的な問題ですよ。  それともう一つは、中医協との関係があると思いますけれども、予防給付ですね、これは、虫歯の予防に弗素の塗布、あるいは硝酸銀の塗布、予防充てんというようなことがたいへん効果が大きいといわれているわけですが、これを小児歯科関係で健康保険でやれるような方法ができないものかどうか、これを検討する用意があるかどうかです。  それから、文部省にお伺いをしたいのは、国立大学に小児歯科の講座を設ける必要があると思うのですけれども、先ほどの御意見のように、要望は強いけれども、まだないでしょう。だからそれを設ける必要があると思いますが、文部省としてのお考えはどうなのか。それだけまとめてお伺いしておきます。
  316. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 小児医療センターのセンター化が検討されておりますので、この機会に、御提案の小児医療センターに、小児歯科の設置について検討いたします。  それから、国立病院等における歯科医療の中に、特段特徴を持った小児医療ができるようにしたらどうかということは、かなりブロック的になろうと思いますけれども、やはり一つの小児歯科医療に対する先駆的な役割りを果たすという意味では検討いたしたいというふうに思っております。それから、センターの予算の問題でございますが、これは、どのような——後段に出てくる予防給付の問題とも若干かかわり合いがあると思います。これはやはり、収入の問題等もからみまして、常駐といって特定な人が常にセンターだけをやってくださる人は確保が困難だろうと思いますが、歯科医師会等の団体が交代に勤務された場合の、その間の運営費的な問題について、公的な補助を必要とするかどうかを検討した上、考えたいというふうに思っております。  予防給付については、全般的に保険の基本的な問題でございますので、私の見解としては、歯科だけを優先して予防給付の実施は困難だろうと思うのでございます。したがって、予防給付的な小児の歯科のごく早期における治療処置等につきましては、やはり今後は公費で、児童局等の立場も含めまして検討する必要があろうというふうに思っております。
  317. 齋藤諦淳

    説明員齋藤諦淳君) 小児歯科は先生御指摘のように、きわめて緊急の問題でありますので、現在の基準をきめました際には、保存とか補綴とか、矯正とか、あるいは予防歯科とか、こういう縦割りの講座をつくりまして、そのために基準にはなっていない、基準ではないので、国立大学の場合には非常に機動性が悪くて、東京医科歯科大学に小児歯科講座があるだけで、ほかは講座が置かれていない。もちろん大阪大学にいたしましても、ほかにいたしましても、小児歯科は診療はいたしておりますけれども、現在大学設置審議会の基準分科会というところで、こういう緊急のものに、応用的なものにも十分協力なり、あるいは研究なり、あるいは診療の態勢が果たし得るように、弾力化するように、そういう点で御審議を願っております。できるだけ緊急にこの線に従いまして内容を充実するようにいたしたいと思います。
  318. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最後に大臣に。この医療行政の中で、これまたたいへん陥没しておる分野でございますので、この点について、これは歯科保健分野についての充実をぜひ、これは新年度、五十年度、具体化を急いでいただきたいというふうに思うのですが、最後に大臣の御見解を伺って終わりたいと思います。
  319. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先般歯科衛生の刷新につきまして、答申をいただきましたので、その答申につきまして慎重に検討いたしまして、できるものからやっていくということで、五十年度からできるものはやっていくと、こういうことで前向きで努力をいたします。
  320. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 以上で本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  321. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 結核予防法等の一部を改正する法律案、及び戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案を再び一括議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  322. 藤原道子

    藤原道子君 私は時間もございませんけれども、結核予防法等の一部を改正する法律案について、まず第一に基本的事項についてお伺いをいたします。  結核対策の基本方針はどうであるか、結核対策について行政は広範多岐に分かれているが、その実施状況についてお伺いしたいと思います。
  323. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 結核対策につきまして、先生御承知のとおり、医学の非常な進歩と、あるいは化学療法等の発達によりまして、最近とみに対策が進展しております。それはそれといたしまして、対策の基本といたしましては、やはり健康診断、それからBCGによる予防接種、これが全国民を対象としたものとして行なわれてきておりましたが、これが第一点でございます。  それから、患者さんにつきまして、保健所の保健婦等によりますところの患者管理、あるいはその家族に対する感染源に対する指導というようなことが第二点でございます。  さらに、やはり御案内のとおり伝染病でございますので、感染源を撲滅するということがかなめでございまして、こういう観点から、特に感染のおそれのある結核患者さんにつきましては、いわゆる結核予防法三十五条の命令入所という形をとりまして、公費負担によって医療を行なってきている、かような対策があげられるわけでございます。おかげをもちまして、こういう効率的な対策が進んでおりますおかげで、現在では結核でなくなる死亡率につきましては、人口十万対一一・九ということに、一九七二年の統計ではなっております。昭和二十五年当時は、人口十万に対しまして百五十人近くの死亡率になっておりますから、二十数年間によりまして約十分の一になってきたような次第でございます。  それから、現実に、具体的にどういう形で予防接種なりあるいは健康診断を行なわれているかということにつきまして、手元にあります昭和四十七年度の統計で申し上げますと、定期健康診断、これは実は市町村長とかあるいは学校長等が実施をいたしますが、この受診者が四千二百六十七万三千人になっております。この中から定期健康診断の結果、二万一千人、パーセンテージにいたしまして、〇・〇五%、一万人に五人の割合で患者が発見されておるわけでございます。それから、患者の家族、あるいは家庭で療養されております患者さん等につきましては、先ほど申し上げましたように、保健婦等の随時の家庭訪問指導が行なわれておりますが、これが昭和四十七年度の統計で七十八万五千軒の家庭訪問を行なっております。さらに特に患者の家族とか、あるいは場合によりまして、学校の先生が結核におかかりになるというような場合には、定期外の臨時の健康診断等を実施しておりますが、それが百五十八万四千人が行なわれておりまして、この中からは一般の、先ほど申し上げました患者発見率よりも高く、〇・三%、千人に三人の割合で患者さんが発見されておるような次第でございます。  それから、結核医療対策につきましては、一つはいわゆる適正医療の普及と申しまして、化学療法等の普及のための結核予防法第三十四条というのがございますが、それによります費用の負担件数といたしまして、四十八万六千四百件、国庫補助額にいたしまして、約三十四億円を計上しておりますが、そのほかに一番大きな感染源対策といたしまして、いわゆる命令入所によって、病院に入院していただく方が四十七年の数字で約六万八千、七万件、患者さんの数にいたしまして、六万二、三千人の方、国庫補助額にいたしまして、四百九十四億の計上をしてきたところでございます。  なお、結核のベッド数はかつては二十六万床ということがいわれておりましたが、昭和四十七年現在では全国で十七万床というような現状になっておる次第でございます。  なお、そのほかにいま児童家庭局長もお見えでございますが、特に子供の結核につきましては、いわゆる骨関節結核、その他療育医療としまして、特別な対策をやっておるような次第でございます。
  324. 藤原道子

    藤原道子君 私は今回の結核予防法の一部改正理由は、きょう提案理由の説明で聞きましたけれども、ほんとうの理由はもっと別にあるんじゃないかと、こういうふうに思うんです。私は結核予防会発行の「複十字」という雑誌を見たのですが、このナンバー一一六、ことしの三月号に厚生省の公衆衛生局の結核成人病課長さん、島田さんが寄稿していらっしゃる、「昭和四九年度結核対策関係予算案の概要とその解説」という題で載っております。こういう点を見まして、いろいろ考えさせられ、いまお話ございましたが「昭和二十六年以来、結核絶滅を目標にして進められてきた結核対策の成果は、ここ二十数年の間に著しいまん延の減少となって現われ、とくに若年層ではすばらしい成果をみたのである。その結果若年層に対する結核対策の軌道修正が行なわれることになった。」云々、「若年層のところで浮いた力をより問題の多い階層に転用、活用して」云々ということを言われていらっしゃる。この若年層で手を抜くのが理由ではありませんか、どういうことになるんですか。
  325. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 先生御承知のとおり、現在、現行結核予防法によりますと、ゼロ歳から小学校に入るまでの方は毎年予防接種、いわゆるBCGを、陰性の方に対しては接種いただくことに義務としてなっております。小学校に入りましてから後は毎年健康診断を行ないまして、ツベルクリン反応陰性の方はBCG、陽性の方はさらにエックス線等の所見によりまして、それによりまして患者発見その他を行なってきているところでございます。さらに学校を卒業いたしまして職場等に入りますと、かつては労働基準法、現在は労働安全衛生法によりまして、やはり職場等の健診が行なわれ、職場以外の方につきましては市町村長によるところの定期健康診断が行なわれておるところでございます。ところがこれにつきまして、一つは基本的に、おかげをもちまして結核対策の、死亡率の減少その他結核患者が非常に少なくなってきておる、これが第一点でございます。さらにこういう健康診断を通じまして患者さんの発見できる率が平均いたしまして一万人に五人、特に学校の、小学校、中学校の義務教育の方々につきましては一万人に二人の結核患者さんの発見率になっております。もちろん少ないといいましても、やはり患者さんを発見をいたしまして早期に治療、早期になおしていくことが非常に大事なことでございますが、これに対しまして、一つは御案内のとおり最近エックス線につきましての被曝の問題がとやかくいわれております。もちろんその間接撮影におきますところの被曝というのはきわめて微々たるものでございまして、これが被曝その他の問題に発展することはないわけでございますが、それにいたしましても、やはり不必要なエックス線の被曝は少しでも少なくしたほうがいいと、一方患者発見率が非常に少ない、さらに予防接種のBCGの効果が、かつては一年しか効果がないとされておりましたのが、最近の医学によりますと五年ないし十年の予防接種効果があると、こういうことを勘案いたしますと、やはり不必要な健康診断等はできるだけ少なくして、かつ結核対策の方全を期してきたいと、こういうところから、特に今回は幼児の予防接種につきまして、小学校に上がるまでには、四歳までには一回にする、それから小学校、中学校の間の健康診断につきましては、原則として小学校一年の入学時に一回と中学校の二年のときに一回と、こういたしまして、それによりまして、従来よりもいわゆるエックス線の被曝が少なくなりますし、かっこれで十分結核対策につきましてはやっていけるという、こういう学会その他の御意見によりまして、このたび改正をお願いしているような次第でございます。
  326. 藤原道子

    藤原道子君 私は、中学生の定期健康診断、なぜ中学校二学年において実施するのか、小中学生の定期健康診断の間隔を一挙にこれまであけても心配はないのですか。集団発生のおそれはありませんか。私はいろいろその前に伺う予定でしたが、あなたの答弁がいろいろ幅広くされるのでちょっとわからなくなってしまいました。それについてお伺いをいたします。
  327. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 確かに先生御指摘のとおり、従来は小学校、中学校、いずれも毎年健康診断をやっておったのは確かでございます。ただ毎年やりましても幸いにして患者さんの発見率は〇・二%である、こんなところから小学校一年に入学時に一度健康診断をさしていただきまして、それでツベルクリン反応陰性の方はBCGの接種をさしていただきます。そういたしますとBCGの予防接種効果が最近の学説では五年ないし十年は効果があるということになっておりますので、まず小学校の間は小学校一年のときに陰性の方はBCGの接種をしていただければ六年間ぐらいはまず感染の心配はないだろう、それから一方、もしも御不幸にというか、小学校一年のときの健康診断の結果、ツベルクリン反応陽性の方がありましたならば、その方につきましてはレントゲンその他の検査をやるわけでございますが、その結果、もしもかなりの異常があるというか、たとえばツベルクリン反応が非常に大きな反応が出たとかいう方につきましては、もう一度小学校四年のときに健康診断をやることにいたしております。こうして小学校のときには二回ぐらい実施をしておけば、まず現在の結核対策上は万全の措置が講ぜられると、こういう観点から、小学校につきましては原則として一回、必要によれば二回とさしてもらっているわけでございます。それから、ほんとうは、もう一つは、中学校卒業時にもう一ぺん、三年のときにもう一ぺんやって社会に送り出すというのも一つの考えでございますけれども、実は、中学校の二年生のときに第二回目の健康診断をさしてもらっている理由といいますのは、実はBCGの接種、——もし陰性の方につきましてはBCGの接種の結果、陰性の方につきましてはBCGの接種をいたします。そういたしますと、その年のBCGが効果があったかどうかということをもう一ぺん陰性の方につきましては翌年判定をしたいという気持ちを持っておるわけでございます。中学三年のときに陰性の方をBCGの予防接種をいたしますと、翌年はもう卒業してしまいますので、はたして翌年になりましてその方がBCGの接種の効果があったかどうか、効果があったかどうかと申しますのは、結局翌年のツベルクリン反応のときに陽性になって出てまいりますとBCGの接種の効果があったということになるわけでございますけれども、中学三年のときに実施をいたしますと、もう社会へ出られたり、あるいは高等学校に進学をされてしまいますので、そういう関係から、中学のときには、中学二年生のときに一度ツベルクリン反応、あるいはBCGをさしてもらって、そして翌年、陰性の方につきましてはもう一ぺんツベルクリン反応をしてもらって、陰性であるか陽性であるかの効果判定をさしてもらうと、こういう観点から、中学のときには中学二年をとらえてやらしていただこうということになっているような次第でございます。
  328. 藤原道子

    藤原道子君 中学一年にしたらどうかと思う。小学校でやって、で、六年でしょう、小学校は。それで中学は三年だのに、二年でやると、これをいまのあなたのおしやったようなことならば、小学校六年でやって、そうして中学二年でやるか、そうでなければ中学一年でやって、そうして卒業のときにもう一回見たらどうかと私は思うんですが、いかがですか。
  329. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) できるだけ効果的にかつ必要な最小限度に健康診断をとどめたいという観点でまいりますと、できるなら小学校一年のまず義務教育の入り口と、それから今度は中学三年の義務教育の出口に検査をいたしまして、そして高等学校に行くなり社会に送り出したいということが念願でございまして、もしも中学一年のときに、先生御指摘のような健康診断等を実施いたしますと、卒業まで二年ございますので、場合によればもう一回というようなことも起こってまいりますので、情要最小限度にとめたいということで、本来であれば、中学校三年のときにするのが適当なのを、先ほど申し上げましたように、BCGの効果判定をしたいというとこから中学の二年生にさしてもらったような次第でございます。なお、この点につきまして、文部省との関係におきまして、小学校から中学校へ参ります場合には、その児童生徒の健康状態等が小学校から中学校へ送られてくることになっておりますので、もし、そういう特別に警戒というか、観察を要するような児童生徒につきましては、また別途の対策を考えていこうと、かように思っておるような次第でございます。
  330. 藤原道子

    藤原道子君 私は、急にやられたことがどうも納得がいかないわけです。それで、まあ結核は減ったとおっしゃるけれども、これは入院その他は減っているけれども、実際はそうじゃない。これはあとでお伺いいたしますが、そこで、小学校一年から中学校二年、それで次にやると卒業になるから云々ということについてはもう少しお考えをいただいたほうがいいんじゃないかと、私はしろうとですからそう考えます。  そこで、十五歳以上の者に対する定期健康診断においては、ツベルクリン反応検査を省略してエックス線間接撮影のみをするのはなぜでしょうか。  それから、エックス線被曝影響としてどのようなものがあるのか。直接撮影と間接撮影とでは、エックス線の被曝量はどう違うかということについてお伺いをしたい。
  331. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) まず第一点の、十五歳以上の方々につきまして、従来はツベルクリン反応、それから予防接種、それから必要によってエックス線撮影というように行なわれておったことは、先生御指摘のとおりでございます。ただ、従来からの、この二十数年間の結核予防法の施行状況その他からまいりまして、特に現在ではすべての方々が一度BCGによる予防接種を行なってきております。そんな関係から、十五歳に達するまでの間には何らかの形で現実には必ず陽性にすでになってきております。そういう観点からいたしますと、あらためてBCGなりツベルクリン反応なりをするよりは、むしろ直接にエックス線による撮影をやったほうが合理的であり、かつ効果的と考えまして、かつこの問題につきましては、結核の専門の先生方で構成されておりますところの結核予防審議会の全部の委員の方からもそういう御意見でございましたので、そういう方法を採用させてもらったような次第でございます。  それから第二点のエックス線による被曝の諸般の影響でございますけど、もちろんこの結核の診断によるエックス線等の被曝というのはきわめて少量でございます。現在医学的にいわれておりますのは、年間〇・五レムぐらいのことがおそらく許容量だろうと、まあ、こういわれておりますが、現実に結核による間接撮影その他によるところの被曝量というのは、その〇・五の十分の一程度の被曝量ではございます。しかし、それはそれといたしまして、少しでも被曝の機会を少なくしたがいいという観点からやったわけでございますが、もしも先生御指摘のような被曝による影響が何かということにつきましてでございますが、いわゆる御承知のとおり、白血病であるとか、また場合によれば生殖腺に対する疾病等が、疾病というか異常等が、遺伝の問題等が考えられてくるわけでございます。  それから、もう一つの御指摘の直接撮影と間接撮影の問題でございますけど、確かに直接撮影のほうが被曝量が少ないようでございます。間接撮影に対しまして直接撮影の被曝量は五分の一から六分の一程度といわれておりますが、ただ、こういう集団健診という方法で行なわれます場合には、直接撮影というのは非常に合理的に行なわれないようなことがございますので、間接撮影ということはやむを得ないといたしましても、従来のようないわゆるレンズカメラによるところの間接撮影ではなくて、一度鏡に当てる、いわゆるミラーカメラというのが最近では発達してきております。したがいまして、今後は被曝量を少なくするために、間接撮影ではございますけれども、間接撮影の従来の被曝量の三分の一ぐらいとされておりますミラーカメラというのをできるだけ採用していって被曝量を少なくしていきたいと思っておるような次第でございます。
  332. 藤原道子

    藤原道子君 それでは、エックス線被曝の許容基準はどうなっているのか。エックス線検査にあたって、これの被曝による影響を防止するための対策はどういうふうになっておるんでしょうか。被曝が多いとおっしゃったんだから、それに対しての対策はどうなっているのか。
  333. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 現在、国際的な学会で行なわれておる、通用されております国際放射線医学会議というのがございます。そこで一応の放射線の障害を守るための許容量というものを年間、一年間を通じまして五百、ミリラド、いわゆる〇・五ラドというのを一応の許容基準とされておるようでございます。もちろんこれには自然の放射能が除かれております。何か自然の放射能が年間〇・一ラドぐらいあるようでございますし、あるいはそのほか医学的な特別な放射線照射等いまございますが、一般的には〇・五レムというか、〇・五ラドというのが大体許容量のようであります。ただ、先ほど申し上げましたように、現在結核対策で行なわれておりますエックス線撮影によりましても、現在のところせいぜい十分の一程度の放射線の影響しかないようでございますので、したがいまして、現在の結核対策によっておりますところの健康診断をやめましても、それほど大きな被曝量が減るとかどうとかいう問題ではないわけでございますが、それはそれとして、少しでも被曝量を少なくしたいと思ったからでございます。御質問の点につきましては、大体現在の結核対策による、健康診断による被曝量というのは国際的な許容量の十分の一程度といわれているような次第でございます。
  334. 藤原道子

    藤原道子君 次に予防接種について伺いたいと思いますが、予防接種の実施状況はどうなっているか。法改正後は定期予防接種はいつ実施することになりますか。定期予防接種は四歳になるまでに一回行なうとしているのですが、その具体的方法を伺いたいと思います。
  335. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 予防接種には、先生御指摘のように毎年というか、定期にきめた時期に行ないます予防接種と、それから臨時に行ないます予防接種との二種類がございます。現在の実施状況昭和四十七年度について見ますと、定期予防接種の接種状況が乳幼児が百七十三万人、小中学校の児童生徒が二百十八万人、その他が五十四万人となっております。そのほか、たとえば患者家族等で結核の感染のおそれがある場合等には定期外の臨時の予防接種を行なうとなっておりますが、昭和四十七年の実施人員は二万八千人となっておるわけでございます。なお、四歳未満ということを申し上げましたが、従来はこの予防接種につきましては、毎年乳幼児については行なうこととされておりましたのを、今度は四歳までの間に一回だけということにさしてもらいたいと思っておるような次第でございます。
  336. 藤原道子

    藤原道子君 現在は三カ月の乳児健診でやって、ちゃんときいているかどうかを十五ヵ月で調べて、さらに三歳児でまた調べる機会があるわけですね。聞くところによると、三歳児健診の際に、百人中三十五名がBCGをさらに接種する対象となっているそうです。こういう子供はどうなるのですか、接種漏れの子に対する対策は。  ところでBCGのワクチンですが、一年間の製造量及び使用量の状況と、BCGの効果についてお伺いをしたいと思います。
  337. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 先ほど申し上げましたとおり、予防接種のBCGにつきましての効果が非常に従来と違いまして、医学というか、科学の発達によりまして進歩してきております。従来は一年しか効力がないとされてきたものが、現在では五年ないし十年程度の効果が十分あるということが国際的にも証明されてきております。そんなことから、毎年実施するよりは、四歳に達するまでの間に一回接種することをもって十分免疫効果があるというようなことから、こうさしてもらってきておるわけであります。そうして、こういう余力の出た対策をほかの結核対策、たとえば患者家族の管理とかそういうところにもう少し保健活動その他の重点を向けていって結核対策の万全を期したいと、かように思ったからでございます。  なお、実はBCGの生産量につきましては、現在手元に数字がございませんので、後刻また御説明にあがらしていただきたいと思っております。
  338. 藤原道子

    藤原道子君 予防接種法の改正についてどのように考えていらっしゃるかと続けて聞きたいと思います。  予防接種事故に対する措置について昭和四十五年七月三十一日の閣議了解がありますが、恒久救済制度についての立法措置のお考えはありませんか。どうなんですか。
  339. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 予防接種の事故の救済制度、特に種痘あるいはBCG——種痘が非常に多いわけでございますけれども、こういうところから、昭和四十五年の八月に閣議決定で、予防接種の事故者に対しまして、必要なその後の補償費等の、あるいは医療費の支給をするというようなことで救済制度が閣議決定で発足しております。藤原先生御指摘のとおりでございますが、その後、実はこのときに閣議決定をいたしまして、いわゆる制度的な法的な措置がとられておりませんが、これにつきましては、実は予防接種の事故の中で一番多いのが種痘の事故のようでございます。この種痘につきまして、現在予防接種法という法律の中では御承知のとおり義務づけられております。予防接種を、種痘の予防接種をしない者に対しては五千円以下の罰金に科するというような、いわゆる刑罰を伴なった義務化をして全国民が種痘の予防接種をやっているところでございますが、この種痘等の予防接種につきまして、今後ともそういう義務づけをして行なう必要があるか、あるいは勧奨、さらには任意というような方向に変えていったものがいいかどうか、こういう基本問題が実は残っておるわけでございます。こういう観点から実は過般伝染病予防調査会というのが厚生大臣の諮問機関でございまして、まず予防接種の救済制度そのものの法的制度を確立するためには、その以前として、種痘等を今後ともそういう義務づけて行なう必要があるか、あるいは日本脳炎のような勧奨程度で済ませるかどうかということについて、まず医学的にその点を確固としたものに確立をしてもらうと、そういたしませんとその後の救済制度法律的な考え方にも非常な差異が出てまいりますので、現在のところこの伝染病予防調査会におきまして、その種痘等につきましての従来どおりの義務づけで行なうかどうか等につきましての結論をなるべく早く出していただくように諸先生方にお願いをしているような次第でございます。それが出ました暁におきまして、法的制度がとれるものかどうかということを前向きに検討してまいりたいと思っておる次第でございます。
  340. 藤原道子

    藤原道子君 それがまだ出ないというのはおかしいですね。  そこで、私、さらに伺いたいのは、保健所の諸問題について伺いたい。  保健所業務のあり方について、政府は種々検討を重ねてきているが、今後どのように充実改善をはかる考えですか。  医師の充足率が昭和四十四年から四十七年までの調査によれば、終始四二%でございますが、この原因及びその対策はどうなっておりますか。  また、他の職員においても必ずしも十分充足しているとはいえない。処遇改善についてどう考えておいでになるか。  さらに、保健所行政職(一)の職員に至っては、昭和四十三年以来、第一次削減及び第二次削減により、昭和四十九年二千二百二十八名の職員となり、一方、公害技術担当行政職(一)の職員が昭和四十四年以来毎年わずかに増加して、昭和四十九年までに二百九十二名となっております。ところが、その差し引き増減を見ると、千九百三十六名の大幅削減となっている現状であります。  こうした職員の定員削減は、公衆衛生の向上及び増進をはかる第一線保健所業務に重大な支障を生ずるのではないかと思いますが、いかがですか。
  341. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 保健所の業務が、先生御指摘のとおり、従来のいわゆる狭い疾病予防から最近は科学的な食品衛生行政あるいは公害対策行政と非常に多岐にわたって忙しくなっていることは事実のとおりでございます。また一方、保健所の職員が、医師の充足率がたとえば四二%であると、保健所の職員が思うように充足できないこともこれまた事実でございます。特に不足しております医師の問題につきましては、御承知のとおり、基本的には医師が全国的に不足をしておるということが基本でございますし、さらにあるいはこういう臨床方面に御希望を持つお医者さんが多くて、なかなか公衆衛生方面に入っていただけない、こういうようなことも原因かと思います。私どもとしては現在できるだけの方法を講じて、たとえば昭和四十九年度から医師になっていただくための修学資金等につきましても従来の六千円から一万二千円に育英資金の引き上げを行なうとか、その他あるいは保健所につとめていただく医師を外国に行っていただくようなことを考えるとか、また特別な研究手当を補助金で計上する等の方法を講じまして、あらゆる方法を講じて努力は続けておる次第でございまして、さらに今後ともこの面につきましては努力をしていきたいと思っている次第でございます。  なお、そのほかの保健婦さん、栄養士さん等種々の職員の方も決して十分とは言えない状況でございまして、職種によっては七〇%程度の充足率のようでございますけれども、所遇の改善等につきましてはさらに努力をして鋭意充実をはかっていきたいと思っております。  なお、御指摘のこの五年間にいわゆる行政節約によって二千数百人の人員が節約を受けて、一方公害職員等が百六十五人ふえた程度で差し引きかなりの数が減っているじゃないかと、こういう御指摘でございますが、これは実は政府全体の方針にもなっておりますので、何とか合理的なできるだけもう少し科学的な行政を行なう等の方法も講じてみたい。特に本年度は、たとえば従来は大学に入試をされる方につきまして保健所の健康診断を要求されておりましたのを本年度からは文部省と協議をいたしまして、今後そういう入学試験のための健康診断を保健所で行なうようなことはお互いにやめていきましょうというようなことをしまして、こういたしますと、不必要な保健所の業務の節約と申しますか、簡素化もはかれるというようなことにもなってまいりますので、充員と業務の不必要なと申しますか、比較的保健所でなくてもできるような業務につきましては簡素化をはかっているようなことをいたしまして、なおこれからの保健衛生の国民へのサービスに対しまして努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  342. 藤原道子

    藤原道子君 この大事な、結核対策だけじゃなくて、非常に重大な役割りをしている保健所、訪問してごらんなさい、ほんとうに医者にしても保健婦さんにしても、その他の職員にいたしましてもお気の毒で見ていられない。一生懸命やっていらっしゃるけれども、人が足りないので、その足りないのに毎年五%くらい減らす、それでこんなばく大な人数を減らしているんです。政府が全体の方針だというけれども、医療制度の人員の足りないことはもう世論になっている。にもかかわらずこれをなぜ特別扱いにしてくれないかということは、この前私は大臣にも質問をいたしております。保健所へ参りまして、その任務の重大さと人手の足りなさ、待遇の悪さ、これを見て、私は何とかしてこれの充足をはかってほしい、こう思っている。医者が四二%しかいない、保健婦だって少ないところは五五%しかいないところもあるのです。これで完全な仕事ができるとお考えでしょうか、その対策をもう少しはっきり伺いたい。
  343. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 私ども都道府県ともよく協議をいたしまして、できるだけ人員の充実等つとめてまいります。そらに保健所につきましては御承知のとおり国庫補助対策象の職員になっておりますので、明年度以降国庫補助の対象額を引き上げていくようなことも講じ、あるいは国庫補助の対象人員をふやしていくようなこともさらに努力をしてまいり亡いと思っている次第でございます。そうして充員をはかる一方先ほど申し上げましたように、たとえば、大学の入学試験のための健康診断を保健所で行なうというような、比較的大学自体でやっていただけばいいような業務につきましては簡素化をはかっていくと、両々相まって保健所の充実にさらにつとめてまいりたいと思っている次第でございます。
  344. 藤原道子

    藤原道子君 この問題については、またあらためてあれしますけれども、とにかく重大な状態ですから、そのことをはっきり考えて、何とかしてこれが充足をはかってほしいことを強く要望いたします。  そこで、結核医療について伺いますが、結核医療の現状はどうでしょう。多くの結核患者が存在して、新規登録患者があとを断たないのに結核病院、診療所の多くが老朽化して縮小し廃止の方向をたどっているのは、国の福祉政策の貧困を意味している。政府は経済援助を含めた対策を立てるべきではないかと思いますが、どうでしょう。  そして、現在医療施設には珍現象があらわれている。近代化する病棟と古びた木造の老朽病棟が同じ敷地の中にある。その廃屋のような病棟は結核病棟にきまっております。そして、多くの結核病院、療養所はなだれを打って他の疾患に転換したり閉鎖しているのです。  これは東京都の例ですけれども、最近小平の昭和病院、板橋の鈴木病院、豊島区の長汐病院、野村病院、敬愛病院、調布市の調布病院が閉鎖または廃止しております。現在調布市の北多摩病院が全面閉鎖をしてマンションを計画したいとかいうことでやめようとしております。患者さんが立てこもって抵抗しておるという、こういう傾向をどのように考えていらっしゃるか。結核を重要視していると言うけれども、結核病棟のその古さ、そしてどんどんやめていく病院が多い、これに対して一体どう考えておいでになるか、対策を伺いたいと思います。
  345. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 結核対策という観点から考えますと、過去にわが国の結核対策は感染者を隔離して入院治療する、先ほど来説明のように化学療法その他によって、かなり外来治療の可能性も出てまいりましたけれども、依然としてやはり地域的にもかなり、特に関西方面には相当入院を必要とする患者がある。東北はややそういう患者は関西ほどではないという地域差等もございまして、それぞれの医療機関がこれにどう対応していくかということは非常に重要な問題になってまいっております。特にこのわが国の結核対策のうちベッドの問題につきましては、国立療養所が国の対策の中心になりまして推進してまいった事実がございます。これも、現在は約五万床国立療養所がございますが、そのうち重症心身あるいは精神疾患その他一般地域需要に対応するところの一般患者、特にリハビリテーションの対応というようなことで、五万床のうち約二万五千床が結核患者の対策に振り向けられております。このような事実を申し上げますと、一番拠点になるべき、最終拠点になるべき国立療養所であっても、なおかつ五万のうち二万五千が結核で、その他はその他の目的に使っておる、こういうようなお答えをそのまま申し上げる、実態を申し上げるわけでございますが、先生のお尋ねのように、地域的に公私を問わず、結核で従来中心になってきた病院が閉鎖する、あるいは転向をする、こういうような実態というものは、私たちは結核医療を確保する上からは非常に実は対策を必要とするのではなかろうか、これをこのまま放置しておいてはまずいんじゃないか、こういう感じは医務局という医療の供給の体制の立場からは考えております。ただこの場合、公私の、特に私的な病院等について、その地域における医療の需要と経営の実態を考えながら、大きな結核療養所的なものも法人等でございますので、そういうものは別として、私立的な、やや規模の小さいものについては、これはその地域全体の結核対策のベッド確保を勘案しながら、ある程度その自由な判断のもとに転向していただくことを、なかなか阻止することはむずかしかろうと思いますが、少なくとも公的な性格のある自治体立あるいは国立、日赤、済生会等の担当している結核病床につきましては、私はやはり結核対策の地域性を考えて——この地域性というのはかなり広域的に考えざるを得ないと思うんです。相当結核患者でやはり開放性の患者が命令入所するような施設を受け入れるとなりますというと、それほどみんな国民の身近にいつも置くわけにはまいらぬかもしれません。そういう意味で、かなり広域的になりましょうが、計画的に結核病床の整備というものを残していく必要がある。これをやはりわが国の——これからまだ減少し、改善されていくであろうけれども、やはり結核患者収容施設として確保する必要がある、こういう考え方に立ちますし、またその必要性があろうと思っておりますので、この点は公衆衛生局とも協議しながらブロック別に、あるいは各県、地域ごとにその結核対策の最終拠点になるベッドをどのように確保するかということについては検討していかなければならないというふうに医療の供給の立場からは考えております。
  346. 藤原道子

    藤原道子君 私は、民間の病院がどんどん閉鎖すれば国が責任を持たなきゃならない。ところがいまのあなたがおっしゃったように全国的に結核病院、療養所が縮小、閉鎖する中で国立療養所こそが結核対策のにない手として、その責務を果たさなければならない、そのとおりなんです。ところが、結核を病む老人、重症者が手がかかるからと、空床かあるにもかかわらず——国立病院ですよ、ベッドが満床である、あるいは看護婦の手が足りないといって断わったり、あるいは患者をたらい回しにしているのは一体どういうことでしょう。結核撲滅の立場から老人、重症者なればこそなおのこと、国の施設がその治療を担当をすべきではないでしょうか。国立病院が重症や老人患者を断わっている。国立の施設で門前払いをされた患者を受け入れてくれるところは結核予防会の施設しかないんですよ。ところがこれがまた実に苦しい状態なんです。病床の老朽化はひどいものである。現状を御存じでしょうか。私は財団法人結核予防会は昭和十四年に皇后陸下令旨、閣議決定で設立されて以来、わが国の結核行政の一翼をになって今日まで活動してきました。その成果をあげてきたことは御承知のとおりだと思う。しかし、昭和四十四年以来赤字経営に転落してしまった。結核予防会の危機は結核一筋につとめてきたがための結果ではないでしょうか。だから、結核予防会が四十四年以来累積赤字は十二億円にもなっておるという。敷地を切り売りしたり、総裁の秩父宮妃殿下までが街頭に資金カンパに立っておられる。こうしてようやく保生園四百床中、百床の改築をしておるそうです。本部貸しビルも全額借り入れで改築中ですが、悪性インフレで資材高騰。ますます経営は難航しております。こういうことは御承知でしょうか。国立病院が重症患者や老人患者を断わっている。看護婦が足りない、満床である、こういうことで患者は追い出されるんですよ。こういうこと御承知でしょうか。五万床あるのが二万五千床はほかの施設にして、残ったぼろの二万五千床だけが国の国立療養所なんです。こういうことに対して結核対策として一体これでいいのでしょうか。この点についてのお考えを聞きたいんです。
  347. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 結核の療養所の先ほどの数字を申し上げましたように、必ずしも結核のみならず、以外の国の医療政策にも対応しているわけでございまして、特に結核療養所は当初から計画的にそれぞれ国が設置したものでなく、陸軍病院あるいは療養所という形であったものを引き継ぎました。で、その地域の医療需要として場合によっては一般病院として活動することがその地域に必要なところは一般病院にも従来転向してまいりました。それから積神医療の必要な地域には精神療養所としても転換して国民の医療にこたえるようにしております。それから、結核の療養所であっても救急医療その他将来の地域の発展のために対応してくれという地域の要望に、結核にも対応しながらそういう地域の医療の要望にもこたえるというような段階をいま踏んでおるわけでございます。先ほど来申し上げましたように、国立は必ずしも人口その他を考えて計画的に各県に設置したものでないために、国立だけで結核対策のベッドの確保をどうするかということを考えることは困難でございます。県立その他法人等の公的なものも含めまして検討する必要があると思います。  先生御指摘の、国立で患者を断わるということについては、事実があればたいへん残念なことでございますので、この点につきましては、ひとつ少なくとも私あるいは課長の段階では具体的に患者自体の病状に応じて、ほかに何か理由があったかどうかは別として、その先生の御指摘のような理由でお断わりした例は私は聞いておりませんので、今後もこのような具体的な例がございますれば、ひとつ御指摘をいただきたい。  なお、結核予防会のことは公衆衛生局のほうからお答えがあると思います。
  348. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 結核予防会が今日まで果たしてきました結核対策の役割りにつきましては、まさに先生御指摘のとおりだろうと思います。特に結核につきましては、国立の研究所にかわる結核研究所を結核予防会でお持ちになって、それが今日の結核対策の進展に非常な寄与をしてきたということもまたそのとおりでございます。現在結核予防会が非常にベッドの空床その他でお困りになっているということもよく承知をしております。私どもとしては、その結核予防会の再建策と申しますか、等につきましては種々協議をしておるところでございまして、たとえば結核研究所の助成につきましても、昭和四十九年度は一億四千五百万円の補助金を計上しております。ちなみに四十八年度が一億二千万円でございまして、二千五百万円の増額をはかったわけでございますが、もちろんこれだけで十分とは言えないと思いますし、今後とも結核予防会の問題につきましては、明年度以降さらに種々検討してまいりたいと思っている次第でございます。
  349. 藤原道子

    藤原道子君 国立病院、療養所が患者を断わっている例を知らないとおっしゃる。調査が足りないんです。断わられた患者結核予防会のほうへころがり込んでいる。そこで借金がふえて家が腐ってきて、それでいま大騒ぎをして、秩父宮妃殿下までが街頭に立って資金を集めていらっしゃる。これに対して結核予防法の六十条の規定に運営費、改築費の一部を助成するとあるが、これらについて現在は全く空文化されてしまっているように思いますが、その理由を聞かしてほしい。それから結核予防会の運営費の一部と老朽病棟の改築費の一部を国庫補助にすべきではないか。あわせて無利子または長期低利の融資を実施する考えはないか。財団法人結核予防会を医療法三十二条に基づく公的医療機関として認可して大幅な助成をすべきだと私は思いますが、お考えを聞きたい。結核予防法と社会保険各法の調整は一体どうなっておるのか、この点についてお聞かせを願いたい。
  350. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 結核予防法の第六十条には確かに結核病院等につきましてのベッド運営費の助成をすることができる旨の条文がございます。ただこの規定につきましては、実は昭和三十五、六年ごろ結核対策を非常に重点といたしましたときに、一方においてはいわゆる命令入所患者という制度を活用いたしまして入院患者をふやしていく、いわゆる開放性の患者さん方に病院に入っていただいて一日も早く治療をしてなおしていただく、こういう対策と並行いたしましてベッドをふやさなきやならぬというのが当時の要請であったわけでございます。当時二十六万床にしようというのが当時の結核対策のベッドの増床計画でございまして、その二十六万床にするための役割りとしてこの六十条というものが発動されてきたような次第でございます。今日、もともとはベッドの増床計画というもとに運用されてきた内容でございますので、いま経常的な結核ベッドに対するいわゆる運営費等の補助金をこの六十条で援用いたしまして予算計上するのはちょっと困難ではないかと思っているような次第でございます。  それから、社会保険と結核との公費負担の調整、これはまた別の問題かと思いますが、現在結核予防法の三十五条のいわゆる命令入所によって入所された方で自己負担のかかってくる方につきましては、必要によって社会保険のたとえば一部自己負担を社会保険でカバーできると、こういう仕組みがとられておりまして、結核予防法の中に社会保険でカバーできる旨の調整規定が挿入されているような次第でございます。
  351. 藤原道子

    藤原道子君 私は、結核対策を重要に考えておると言いながら、その内容に、そのやり方には問題があまりにも大き過ぎると思うんです。  そこで、続いて自己負担について伺いたい。厚生大臣が定めた従業禁止命令、入所患者の自己負担の基準についてです。多くの開放性患者が社会に放置されているのに、昭和三十九年に制定された経済基準結核予防法の命令入所の適用を妨害しているのはどういうことか。東京都の昭和四十七年末の結核実態調査では、その受療状況は活動性結核患者で入院は二一・六%、九千六百三十五人、在宅医療が七四・三%、治療放置が三%、不明が一・一%となっている。その前年よりやや増加している。しかも、今日でも新規登録結核患者は都内だけで毎年一万人をこえるという重大な動きが示しておられます。それにもかかわらず、結核予防法の命令入所の経済基準は三十八年以来変わっておりません。その後の著しい物価騰貴、給与の上昇にもかかわらず放置されている。そのため一家の所得税が六千六百円以上の世帯は一ヵ月の自己負担が二千百円、それ以降所得税がふえるごとに自己負担額がふえて、所得税七万四千五百二十円以上の世帯は月に九千五百円の自己負担、そうして所得税の総額が八万七千百二十円以上の世帯は結核予防法の命令入所制度から除外される。そのために多くの人たちが所得の変化に伴って入院生活を中途で断念している。退院する人があとを立たない。現在入院中の全結核患者の四割が再発患者なんです。厚生省でつかんでいるデータはどうですか。
  352. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 先生御指摘の結核予防法の三十五条によります従業禁止、命令入所につきましては、ある程度以上の所得のある方はそれに応じて自己負担をしていただく仕組みになっていることは御指摘のとおりでございます。かつ、昭和三十八年にきめられた内容につきましては、先生御指摘のとおりでございますが、実は、私ども先生に御説明にあがらなかったかもわかりませんが、五月一日からこの所得制限につきましてかなりの緩和措置をはかることにしております。従来の例でまいりますと、確かに先生御指摘のとおり八万一千百二十円未満の所得税額を納めている方、これを年間所得に直しますと二百六万円の所得の方でございますか、二百六万円以上の方は全額自己負担ということになっているのは御指摘のとおりでございますが、今度五月一日からこれを緩和をいたしまして、全額自己負担になる方は年間所得が五百九十三万六千円、所得税額にいたしまして年間九十二万九千四百円以上の所得税額を納めていただく方以上が全額自己負担をしていただくことになりまして、その面につきましてかなりの緩和措置をはからせていただいたような次第でございまして、後刻また通牒等を持ちまして御説明にあがりたいと思っておる次第でございます。
  353. 藤原道子

    藤原道子君 それでは、いまの資料を皆さんに出してください。  それからいま一つの命令入所制度から除外されるというのはどうなんですか。
  354. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 資料は後ほど提出させていただきます。  命令入所制度の除外と申しますのは、やっぱりこの命令入所というのが、命令入所という名前を活用いたしまして、いわゆる社会保障の医療保障対策を行なっているような関係でございますので、やはりある程度の所得以上の方はそれなりの自己負担を納めていただかなければならない。結局、命令入所から除外と申しますよりは、命令入所の制度を活用いたしましても公費負担の恩典が受けられないことになりますので、結果として命令入所からはずされる、こういうことになってくるかと思いますけれども、やはり社会保障制度と申しますか、ある程度以上の所得をお持ちの方は自己負担をしていただくというのがたてまえになっておりますので、できるだけの緩和措置ははからせていただいても、ある程度の所得以上の方はやはりそれなりの費用を納めていただくという仕組みから起こっているわけでございまして、この点につきましては御了解いただけるかと思う次第でございます。  それから、先ほど再発患者のことのお触れがございましたが、この点につきましては、私どものデータによりますと、再発する以前に結核の治療につきましては一定の目標点というのを定めております。で、その目標点と申しますのは、一つは菌が陰性化をすること、もう一つは空洞が閉鎖をすることと、さらにエックス線の所見も不変と、この三つの状態になることを目標点としておりまして、その目標点に達しないままで途中で化学療法等をお打ち切りになった方につきましては、一〇%から二〇%の再発というか悪化をするというようなデータが出ておりますが、一たん目標点にその三つの状態が医師の判断というか所見でなりまして、それから、その後一、二年程度のなお療養を続けた方につきましては再発というか悪化をしたパーセンテージというのは一%という数字が出ておりますので、いわゆる目標点に達してなお一、二年の療養生活を続けていただきますと、まずいわゆる再発というのはないような状態でございますが、悪化率がどれくらいあるかということの統計的な点につきましては、手元に統計がございませんのでちょっと申し上げられない状況でございます。
  355. 藤原道子

    藤原道子君 結核の問題を非常に真剣に考えていると言いながら、三十八年からの税対策をそのままにしてきたなんていうことはおかしいですよね。まあ今度改正されたならばそれを早く見たいと思います。  そこで、経済基準が世帯単位で計算されているのもおかしいし、せめて個人単位にはならないでしょうか。私は、この経済基準は本来ならば廃止すべきだと思いますけれども……。病状は開放性のみでなく、すべての結核患者結核予防法の命令入所制度を受ける資格を認めるべきだと思うのです。さもないと金の切れ目が縁の切れ目で、病気のからだで家庭に帰らなければならない、そうして感染するおそれの一番強いのは抵抗力のない子供です、その子供の健康診断が間引きされる、ほんとうに心配はないでしょうか。私は一こういう思いからもう少しこの点を考えてほしいと思いますが、いかがでございましょうか。
  356. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) まず、第一点のいわゆる自己負担額を課せられる方につきまして、その本人の所得に切りかえられないかということでございますが、やはりこれは生計を一にする同一世帯ということが、他の社会保障制度その他のすべての制度になっておりまして、これだけ本人の所得がなければどうだというのはちょっとどうかと思います。ただ、いずれにいたしましても、そう広い範囲でなくて、生計を同じくいたします同一帯だけで限られておりますので、現実問題として、今後の五百九十三万円の前年度の年間所得の方にということになりますと、かなりの高い所得層の方になってまいりますので、相当な方がカバーできるんじゃないかと思っている次第でございます。  それから、命令入所をもう少し活用というか、いわゆる開放性の方で患者さんでない方に広げられないかということでございますが、実はこの命令入所制度を活用ということにしておりまして、できるだけ従来からもいわゆる開放性と、いうか、空洞のあるような患者さん方につきましては、広くカバーする仕組みをとっておりますが、やはり一定の限度を越た方々につきましては、一般的な社会保険というか、医療保険でカバーしていただく以外にはちょっと困難ではないかと思っておる次第でございます。  なお、最後の健康診断のいわゆる簡素化の問題につきましては、むしろ重点的な健康診断を実施することによりまして、余力を、特に現在の結核予防対策のおくれておる中高年齢層とか、あるいは中小企業者とか、あるいは結核の多発しているような地域に保健所等の職員が患者家族の訪問とか、患者管理とかということを重点的にやることによって、むしろ私は結核対策というのはより充実をして向上してくるんじゃないかと思っておるような次第でございまして、よろしくお願いしたいと思う次第でございます。
  357. 藤原道子

    藤原道子君 よろしくお願いしますって、よろしくやってちょうだいよ。(笑声)  私は、結核患者に対してどうも国は冷た過ぎる。たとえば国立療養所の患者給食です。異常な物価高の中で、昨年六月の毎日新聞は、社説で大きく「入院患者給食費と生活保護基準の是正」の問題を取り上げました。その後、生活保護基準については、不十分ではあるが、昨年十月に五%の引き上げ是正があり、暮れには期末手当、本年三月には四月の基準額引き上げまでのつなぎとして二千円のインフレ手当の実施が具体化されました。ところが、国立療養所の入院患者給食費の引き上げについては、昨年十月厚生大臣が、近く医療費の引き上げ改定が行なわれるからといって見合わされてしまった。本年二月の医療費引き上げ改定でやっと一日の基準給食費が五百五十円から七百五十円に、一日二百円引き上げられたが、その際も、国立療養所の給食材料費は、国の予算に関係しているので、年度途中で改定はできないと、昨年四月の一日二百九十円のまま据え置かれております。むご過ぎるじゃないでしょうか。  本年二月から一日二百円引き上げられた分は一体何に使っているのですか。  都立の府中病院、これも結核病院ですが、ここはこの二月一日から給食材料費は、ちゃんとそれまでの三百二十五円から四百四十二円に引き上げられております。ところが、給食内容は見違えるように改善されている。それとは対照的なのが国立療養所です。二月から卵もくだものも出る回数がぐんと減った。雲泥の差がついていますが、これでいいんでしょうかね。
  358. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 先生御指摘のように、二百九十円で四十八年度の患者一人一日当たり、病院、療養所共通でございますが、その単価でやってまいりました。二月からは、診療報酬の改定がございまして、基準給食五百五十円が七百五十円というふうに上がったわけでございます。これと関連いたしまして、予算は十二月にきまったわけでございますが、一応二一%のアップの三百五十二円ということで四月一日から九月三十日まではセットしてございまして、十月から米価改定を見込んで三百五十七円、こういうことでございまして、二一%前後で最近のような食料の、主食を除く食料費の物価指数が前年同月比で二八というような数字が出てまいりますと、先生の御指摘のような問題が実は心配であるわけでございます。しかしながら、この診療報酬の七百五十円のうち幾らを給食費に回さなきゃならぬか、このようなものについては一つの決して基本的な限定されたものはございません。しかしながら、病院経営にとりましてはあらゆる収入、診療報酬のあらゆる角度から入ってくる収入が総合されて病院経営に配慮されているわけでございます。したがいまして、七百五十円が、この二百円の上がったのは材料費だけじゃなくて人件費だということも答えとしては言えるかもしれません。が、しかしながら、これは国立病院だからというんじゃなくて、一般の医療機関基準給食で五百五十円から七百五十円になったという中には、いろいろの総合された配慮として七百五十円という診療報酬が決定されていると思います。したがいまして、われわれが今回三百五十二円、二一%アップということは必ずしも十分でなく、特に東京都のような例を引かれますと、確かに比較的に見ますというと見劣りがすることは事実でございますが、従来国立病院、療養所がそれぞれの努力を払いまして給食の改善に努力してまいっておりまして、診療報酬の改定のカーブと必ずしも関係なしに内容改善等も予算上はやってまいっておりまして、そういう積み重ねの上に二一%を配慮したわけでございますので、当面はこれによりまして、それぞれ共同購入であるとか、あるいはたとえば肉なども枝肉で買って料理するようにして単価を安くすると、こういうような努力を調理の方々の御努力によってしていただいているわけでございますし、やはり集団給食というものは個人の家庭の、物価の値上がりと無縁ではございませんが、それぞれのくふうの余地は若干残されておりますので、この単価の中で努力し、できるだけ病状に合うような給食をいたしたい。ということは、最近栄養審議会等で主食の米が多過ぎてあるいはたん白質などの配分が少ない、それをただカロリーだけで合わせているというような御批判も出ておりまして、これは改定の答申が正式にございますれば、われわれとしてはその方向でこの給食内容そのものの改善も考えなければならないと思っております。かりにいまスライド制等が診療報酬で問題になっておりますけれども、このような問題がやはり具体的になりまして、この給食費等の問題にもかりに触れてまいりますれば、われわれとしてもそれに対応するところの単価の配慮はしなければならないというふうに私は私なりの判断をいたしておりますけれども、当面は与えられた予算で最善の努力をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  359. 藤原道子

    藤原道子君 ところがね、現在でも入院料の中での食費は都立も国立も同じなんですね。患者から一日七百五十円とっている。給食純材料費は国立が一日三百五十二円、都立が一日四百四十二円、一日にして九十円の格差がついている。しかも、都立府中病院の給食材料費は今後の物価の高騰に応じてスライドさせる方針が決定されている。——いまの物価の高騰を知っていますか、あなた。これに比べて国立は十月の米価改定分として、十月から一日五円の引き上げしか認めていない。どういうわけでしょう。  患者さんが陳情に行ったら、あなたは、国立療養所の給食内容はカロリー、脂肪、たん白などの栄養基準規定どおりだと言われたそうですね。ところが、カロリーなどはジャガイモを油であげればカロリーだけは幾らでも高くなる。知っていますか。カロリーやたん白など規定どおりだとしても、それが食べられない筋だらけの肉であったり低劣な給食献立では問題にならない。きょう、私は食餌を持ってきて皆さんに見せる予定だったけれども、きょうは質問ができそうもなかったから食餌を持ってくることはできなかった。ジャガイモでも何でもカロリーを上げようとすればうんと上がるのよ。ところが基準給食基準では病状と嗜好とに合致してカロリー二千四百カロリー以上、脂肪二十グラム以上、たん白八十グラム以上、したがって、患者は補食を必要としない給食内容規定しているんです。ところが、すべて患者に摂取されることが前提条件だけれども、最近患者が捨てる残食量が一段と多くなっている。食べられませんよ、この間持ってきたけれども。国立東京病院では年間七十五万円からの残飯が出ておる。残飯を売っているんですけれども、あの残飯が一年に七十五万円から売っているということはたいへんな数なんです。そこで全国的にはどうなっているかしら。現在の狂乱物価の中で国立病院、療養所の栄養士さんたちは泣いていますよ。現在の一日三百五十二円の給食純材料費ではとうてい良心的な患者給食を献立することはできない。ほんとうに栄養士さんは泣いています。そのために夜も寝られずノイローゼになりそうだと給食純材料費の低さを訴えております。現場の悲鳴か聞こえないですか。——この物価高に三百幾らですね、これでやっていけるはずがないと思う。どう思いますか。昨年暮れ一個二十五円だったうどんのゆで玉が七十円、ホーレン草一わ三十円が百円で、ニンジン二本三十円が百円、片栗粉二十円が六十円というふうに、物価は昨年と現在ではまさに三倍以上高くなっている。どう考えてもこういう物価高の現実に一体これで栄養になるか。だから、患者は食餌が食べられないから捨てて、ありもせぬ金で食費にしているのです。食餌を買っているのです。私はこういう面からすみやかに給食純材料費を引き上げていただきたいんです。前には奥さんでも買いものに千円持っていけばおつりがあった。いまは買いものに行くのに二千円、三千円必要なんです。しかも結核患者がこういう状態に置かれているというところは私は非常にたいへんだと思う。しかも七百五十円、その中から実際に出すのにこの東京都とは一日九十円違うんです。しかも東京都では物価が上がれば食費はそれに従って上げていこうと、こう言っている。しかも国立がそういう状態に放置していいかどうか、お伺いいたします。
  360. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 国立病院が実は全国に散在しておるということと地域差を設けていない、予算単価が同一でやっておるということ、要するに国立病院は全国に病院、療養所がございます。それから患者一人当たりの食料費の単価は予算上同一でやっておりまして、たとえば東京都のものと比較した議論が出ましても、それではわれわれが各府県の県立病院がどのくらいかという資料を見ますというと、三百五十二円の、われわれの数字と相前後して、決してわれわれの数字が極端に低いわけではございません。われわれのよりも低い県立病院もございますし、もちろん若干高いところもございます。そこがわれわれのある意味で悩みでございまして、この地域差的なことを例示として先生が御質問になられた、東京都と比較すると九十円差があるぞと言われますと、非常に私のつらいところでございます。この点は国立病院療養所全体の運営でございますので、特段地域差というようなものを現実で設けることは、非常に物価の変動の激しい時期で困難でございます。そういう意味で単価が同一であるということと各府県並みに考えたら決して低過ぎないという事実は統計的にも事実として持っております。先生に決してお答えのためにするお答えをするわけではございませんが、事実がそういうことであることを申し上げておきたいと思います。  それから、残食の問題につきましては、非常にごもっともな御指摘だと思います。ただ、この問題はわれわれも患者の食事の時間を夕方早過ぎるという問題とそれから残飯が残ると、この問題についてはかねがね慶応の病院とかあるいは都立の病院、日赤、こういうようなところの残食を調べてみましたら、大体一五から二〇ぐらいである。二〇%ぐらい残食率が出ております。国立の中野療養所の残飯の量は大体一〇から一五%ぐらい。それで先ほどは東京病院で七十万余という御指摘がございましたが、中野病院で調べてみますと、これは業者に残飯を契約して売ることになっております。それを月で平均で一万七千円くらい、業者から。年間の契約額が二十万というようなことが中野病院からの調査で入っております。これは職員食堂、調理場、病棟の患者の残飯全部を総合して一万七千円くらいで買い取って、養豚等のえさにする場合もあると思いますが、そのようなことで残飯を出さないようにするには、先ほど御指摘のような内容の改善ももちろんでございますが、たとえばひとつ虎の門病院が最も残飯率が低い。これは夕飯の時間が六時であるというたいへんな努力をしておられるということと、もう一つはやはり米の量等の配分、先ほど例に申し上げましたように主食と副食の配分を考慮しているというようなことでございますので、この点は私は今後の病院給食の量と質のかね合いをどのくらいに配分していくか、もちろん単価については御指摘のように決してこの改善の度合いがこれでいいとは思っておりません。今後とも先ほどお答えいたしましたように給食費の——診療報酬等がどういう取り扱いを受けるか、場合によってはスライド制等の中にこれが繰り込まれるようなことがあるとするならば、私はやはりそれに対応した材料費も考えたいというふうに思っている次第でございます。
  361. 藤原道子

    藤原道子君 東京だから三百五十二円では足りないけれども、地方へ行けば、というけれども、このごろ地方だって物価は高いのですよ。調べてごらんなさい。栄養をとらなければならない結核患者、しかも七百五十円ですか、出ているのに、その中でたった半分も出していないというのは私は納得がいかない。絶対にこの点は改革をしてほしい。それで東京都ではそれならかりにあなたが言うとおり、地方はもっと安いだろうというけれども、じゃあ高い東京の患者はそのまま放置していいのですか。私はその点がけしからぬと思う。その点はすみやかに給食材料費を引き上げていただきたい。とにかく七百五十円出ているのだから、現物の費用を原材料費をもっと上げて、そうして栄養士さんも泣くような状態で苦労しているのですよ。この間三木さんかな——のところへ患者のほうから陳情書を各大臣に出した。三木さんだけ一が返事をくれたというので陳情に行ったのです。私は一緒に行ってやったのです。そうしたら食餌を持ってきて見せている。三木さんはびっくりしていましたよ。こういう点をひとつお考えになっていただきたいと思うんです。  そこで、結核の推移から見て、専門医が減少しているといわれていますが、現状はどうですか。結核専門医の研修、確保対策はどうなっていますか。
  362. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) 結核の専門医ということ、なかなかつかめませんが、現在日本の結核病学会に入っておられるお医者さんは、やっぱり結核の御専門ということで志向されたものだろうと思います。その日本結核病学会の会員のお医者さんは、昭和三十四年がピークで四千三十人の方が入っておられました。四十八年にはそれが二千三百人になっておりますから、この間いわゆる結核に主として志向された医師の数が少なくなってきていることは確かでございます。もちろんこれには結核患者数の減少ということもあるだろうと思いますが、それはそれといたしまして、やはりまだ結核は完全に撲滅されているわけではございません。したがいまして、私どもとして今後とも結核のこういう治療に進んでいただくお医者さんにつきましての対策は進めていきたいと思っております。たとえば、先ほど先生がおっしゃいました結核予防会の結核研究所では結核専門のための研修等が行なわれております。そういうところへ研修に行っていただくことなり、あるいはまた末端の保健所には結核診査協議会というのが各保健所ごとに置かれております。そこの協議会の先生方は、比較的といいますか、結核御専門の先生方でございますので、こういう先生方を中心にいたしまして一般内科の先生方の指導ということ等も行なっていきたいと思っております。結核の志向されるお医者さんの対策につきましては、今後とも万全を期していきたいと思っている次第でございます。
  363. 藤原道子

    藤原道子君 私は、結核を真剣に考えていらっしゃるなら医者、看護婦あるいは栄養士その他の職員を十分充実するように努力してほしい。私は、自分が肺病やったことございますので、ときどき結核療養所を見に行っております。もう少しみんなが安心して治療が受けられるような療養所にしたいなといつも考えております。  そこで、次に、老人医療について伺いたい。結核患者の年齢階層別の年次推移及び老人病における結核患者状況をお聞かせください。結核患者は高年齢層が増加していく傾向にありますが、この対策はどうなっていますか。それから、老人の健康診査の年齢は六十五歳からであり、一方老人医療の公費負担のほうは、一部の寝たきり老人を除いて七十歳となっており、これを健康診査の年齢に合わせて六十五歳にすべきではないかと思います。各都道府県や市町村においては六十五歳ないし六十九歳の年齢で医療費の公費負担を行なっているところも相当多数ありますが、この実態をどのように把握していらっしゃいますか。
  364. 三浦英夫

    政府委員(三浦英夫君) まず、結核と老人、高年齢層の関係でございますけれども、確かに現在、結核の新しい罹患される患者さん方は年齢が高くなるにつれて多くなっております。特に四十歳以上の方をとりますと、たとえば四十歳以上の方の昭和四十七年における罹患率が、人口十万に対しまして四十歳から四十九歳までの方で一六八・四、一方それに対しまして、二十歳から二十九歳の方々は人口十万に対して罹患率が一〇五・九というようになっております。さらに、これが六十から六十九に移りますと罹患率が人口十万に対しまして三二七・一というように、確かに年齢が高くなるにつれて結核になる罹患率が高くなっております。したがいまして、私どものこれからの結核対策は、主としてこういう高年齢層の方々に健康診断等強化をと申しますか、対策の充実をはかって結核の撲滅に努力してまいりたいと思っている次第でございます。
  365. 高木玄

    政府委員高木玄君) 老人医療費の公費負担制度と申しますか、いわゆる老人医療費の無料化制度は、七十歳以上の老人を対象といたしまして、昨四十八年一月から実施に移されたわけでございますが、先生ただいま御質問の、この年齢を健康診査と同じように六十五歳まで引き下げたらどうかという問題でございますが、これにつきましては、きわめて大きな問題でございますので、この老人医療費無料化制度の実施状況、特に医療機関の受け入れ状況、あるいは医療保険制度給付改善の影響、こういったものを見ながら、今後慎重に検討してまいりたいと、かように考えております。
  366. 藤原道子

    藤原道子君 時間がなくて急ぎますので、最後に結核医療福祉について伺いたいと思います。  結核患者の推移にかんがみ、将来の国立療養所のあり方をどのように考えておいでになるか。身体障害者福祉法の内部障害者更生福祉の状況はどうであるか。内部疾患の障害等級についてですが、身体障害者等級では、結核患者である内部障害者は、やもやもすると低い等級に置かれているように思われますが、改善するお考えはないでしょうか。さらに、児童福祉法の療育医療の現状はどうであるか。まあ、抜いていきますけれども、医療費の公費負担についてですが、厚生省内にかねてからプロジェクトチームを編成して検討が行なわれてきていますが、その進歩状況はどうなっているか。  そうして、私は、この結核問題をもっと真剣に考えてほしいことを強く要望、質問いたしまして、私の質問をこれで終わりたいと思います。
  367. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 国立療養所の整備につきましては、四十三年以来第一次特別整備を八十四カ所やりました。ただ資金が不足のために、第二次計画に入りましたが、一部第一次のとり残しもございます、逐次完成して整備を進めていきたいというふうに思っております。  役割りにつきましては、先ほど来お答えしましたように、国立を中心にし、県立その他の公的機関等を含めたわが国の最終的な結核対策のベッドの確保というものをやはり十分検討する必要がある、それに合わせた整備をしていきたい、こういうふうに考えております。
  368. 高木玄

    政府委員高木玄君) この身体障害者の等級につきまして、内部障害者について非常に低い格づけが行なわれているという御指摘がございましたが、私どもらその点気がつきませんでしたが、そういった点がございましたならば、十分に検討いたしたいと思いますが、現在のところ、この結核に関しましては、呼吸機能障害をいたしまして、それぞれの程度に応じまして、一級または三級、四級この三段階に格づけいたす、かようなことになっておるわけであります。  なお、現在身体障害者の更生医療につきましては、この実施状況でございますが、これは現在経費的に見ますと、非常に大きな部分がいわゆる人工じん臓による透析医療が重点的に実施されている、こういうような状況でございます。
  369. 翁久次郎

    政府委員翁久次郎君) 児童で結核にかかっている人に対する療育医療でございますが、これは児童福祉法によって公費負担の制度がとられているわけでございます。現在三十四年から骨関節あるいはその他の結核につきまして、学用品それから日用品費の公費負担を行なっておるわけでございます。なお、その数はおおむね現在全国で一千名程度と、こういうように承知しておる次第でございます。
  370. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) 先ほど御質問の公費負担医療に関しましてのプロジェクトチームの検討状況でございますが、今日の段階ではまだ最終結論を得ておりませんが、ある程度の検討の積み重ねが進んでおりますので、その状況について一言御説明だけいたしておきたいと思います。  現状といたしまして、医療保険と公費負担医療関係は非常に複雑でございまして、しかも、数えますと、二十六も公費負担制度があるということでございます。これをもっと簡単な、国民にとっても理解しやすく、かつ医師患者にとっても便利な形に制度関係を組みかえたいということがございまして、どういう方向でこれを整理するかということを検討いたしておるわけでございますが、現在のところおぼろげな形で浮かんでまいっておりますのは、本来特別の公費負担によって負担すべきものは、むしろ根っこから公費負担医療をし、経済問題としての医療費補償という観点のものは、むしろ保険のほうに一緒にしてしまう、それによって医師にとっても患者にとっても制度的にもっと簡便な、便利な形を考えるほうが適当ではないかというふうな考え方が浮かんできておるわけでございますが、なおどの制度をどの仕組みに当てはめてどちらに一本化するかというようなことにつきましては、個別の制度の特殊な事情、あるいは特殊な患者管理、あるいは医療情報の収集の問題もございますので、なお検討を進めて適切な結論を得てまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  371. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほど来結核問題について非常に御熱心に御質疑をいただきましたこと、私衷心から深く敬意を表する次第でございます。  戦前の国民病といわれた結核が、戦後の医学、薬学の進歩、さらに栄養の改善等によりまして克服することができた段階に達しましたことは、ほんとうに私は喜ばしいことと存じておる次第でございます。しかしながら撲滅したかのごとく見えましても、これはなかなかたいへんなむずかしい問題でございます。結核をめぐりまして、先ほど来御意見の出ましたような患者さん方の経費負担の問題、給食費の問題、それから国立療養所におきましてほんとうに老朽した病棟に生活をしておられる方々の生活、そういうことを考えてみますれば、私どももっともっとなすべきことがたくさんあることと考えております。一度に全部改善することはなかなかできないと思いますが、私どもは、やはりかつては国民病であった結核ということを忘れてはならぬと思います。そういう意味におきまして、今後ともいろいろ御質疑等の中で御指摘をいただきました御意見等につきましては、十分尊重いたしまして、そうした問題の解決に努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  372. 藤原道子

    藤原道子君 終わりますが、ただ、きょうは時間がございませんので、若干抜いておりますので、この次に、ほかの方が質問してくださればそれでよし、もしあれだったら、若干の質問をさしていただきたいことをお願いいたしまして、質問を終わります。
  373. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 両案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十四分散会      —————・—————