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1974-04-04 第72回国会 参議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月四日(木曜日)    午前十時十三分開会     —————————————    委員異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      川野辺 静君     山崎 五郎君      橘  直治君     高橋文五郎君      西村 関一君     小谷  守君  三月三十日     辞任         補欠選任      山崎 五郎君     川野辺 静君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  昇君     理 事                 玉置 和郎君                 須原 昭二君                 小平 芳平君     委 員                 川野辺 静君                 高橋文五郎君                 平井 卓志君                 小谷  守君                 藤原 道子君                 柏原 ヤス君                 中沢伊登子君                 沓脱タケ子君    国務大臣        労 働 大 臣  長谷川 峻君    政府委員        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省労働基準        局安全衛生部長  中西 正雄君    事務局側        記 録 部 長  西村 健一君        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        厚生省医務局国        立病院課長    山中  和君        労働省労働基準        局監督課長    岸  良明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (勤労者財産形成に関する件)  (職業病に関する件)  (社内預金制度に関する件)     —————————————
  2. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る三月二十九日、西村関一君及び橘直治君が委員辞任され、その補欠として小谷守君及び高橋文五郎君が選任されました。     —————————————
  3. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 小谷守

    小谷守君 労働大臣は、さきの本委員会におきまして、就任の所信表明の中で、勤労者福祉対策の一環として勤労者財産形成制度を拡充強化すると、こういうふうに言明されたわけであります。しかし、財形制度は発足してすでに二年を経過しておりますが、現行制度は百万円までの貯蓄に対する元本から生ずる利子、収益の分配に所得税を課さない程度のきわめて貧弱なものでございます。今後一体どのように制度を拡充する御方針でありますか。大臣所信表明の中に、四十九年度において財形貯蓄について利子等非課税限度額引き上げ住宅取得目的とする貯蓄に対する税額控除引き上げ事業主の拠出する財形基金制度の設置など制度の大幅な改善を行なうという抽象的な表現になっておりまするが、具体的にこの改善内容説明してもらいたい。ただ単に、財形貯蓄免税の範囲で取り上げて制度改善になるのかどうか、一度大臣のお考えを具体的にお伺いしたいと思います。
  5. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 御指摘のように、私は勤労者福祉というものを大事にしなきゃならぬと思っておりまして、ことに、この財産形成の問題につきましては懸命にやろうと努力しているところでございます。この国会にも財産形成についての法律案を上程いたしまして御審議を願うかっこうになっておりますが、いま先生指摘のような具体的な問題につきまして、利子非課税は従来百万円であったものを五百万円まで非課税にする、さらにまた、七年以上積み立てて住宅取得目的にした貯蓄に対しましては、いま六%の税額控除でございますけれども、これを八%にしまして四万円まで税額控除ということが法案の内容になっております。そのほか先生お話しの問題については、具体的なものがほかにもありますけれども政府委員から答弁させたいと、こう思っております。
  6. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 大臣が申されました諸点のほかにございますものは、従来財形貯蓄につきましては、転職をいたしますと一ぺん切れてしまうことになっておりましたが、今回の改正案におきましては、一定の条件のもとに、転職しても従来の財形貯蓄契約を継続できるよう改善をいたしております。さらに、新しい制度といたしましては、使用主拠出金を出しまして、それによって財産形成基金というものをつくり、労使合同でそれを一定期間運用した後に、労働者がその元本並びに運用利益を受け取って財産一つ内容にするという財産形成基金制度、あるいは勤労者財形貯蓄をいたしました場合に事業主がそれに対して付加金を付します財産形成付加金制度等も新設をいたすことにいたしております。  それから、持ち家促進の問題につきましては、先ほど大臣が申されました七年間の住宅取得目的財形貯蓄をやった人に対しましては、その期間満了後、住宅金融公庫から通常の住宅資金貸し付けのほかに、当該労働者財形貯蓄額倍額融資を行なう制度を新たに設けまして、それによって労働者の方が希望される場合には住宅取得を容易にする、こういった制度も今回の改正案内容に盛り込んでおるところでございます。
  7. 小谷守

    小谷守君 勤労者財産形成審議会は、政府案に対して痛烈な批判を加えております。つまり、政府案インフレによって貯蓄目減りに悩む勤労者の立場を忘れたものであると、——中間答申を昨年十一月二日に出しておるわけでありますが、つまり政府案免税中心ではなく、西独並み財形貯蓄に対して金融機関利子のほかに、国が利子に対して二〇%程度プレミアムを支給すべきだと答申をいたしております。この審議会意見政府案として採用されないのはどういう原因でございますか。審議会意見大綱はどういうものか、また、これを採用しない政府のお考え大綱っていうものはどういうことなのか、こういう点を明らかにしていただきたいと思います。
  8. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 審議会の御意見、私もよく了承しております。そしてまた、非常に尊重すべき意見だと思って傾聴し、そういう会合に出席して私もお話しをお伺いしているわけであります。いまの答申は、実は私が大臣に就任する前でございましてね、私も西ドイツ制度を研究して、あるいはまたレクチュアも、あるいは本も読ましてもらいました。西ドイツ財産形成が始まって十二年、そして、それが住宅を持っているがゆえに非常に勤労者の精神の安定と福祉の向上というものにつながるっていうことは、私もドイツへ行った場合にそういう現場を見ておりましたから、この御答申趣旨というものが非常に理解できたような感じでございました。そこで、一般持ち家だけにあらずして、ほかの財産形成に対してもプレミアムをつけるという趣旨は私もよくわかりましたので、予算編成の時期に、わが党の中の諸君が同様な意見を持ちまして非常に支援してくれましてね。当時、新聞にも報ぜられましたけれども、非常に総需要抑制のきびしい予算の査定でございましたが、二回ほど大蔵大臣と折衝を続けまして、結局するところ、まだ日本にはなじまないということと、それから農村とか中小企業の均衡がどうとかいうふうなことで、一般プレミアムというものはこのたび実現しなかったという、私も残念に思っておりまして、まあ、理想主義は一日にしてならずと、しかしながら、先ほど御報告申し上げましたように、これだけ困る時代に、五百万までの利子非課税とか、あるいはいま局長が御答弁いたしましたように、七年もかけますと、それの原資のほかの二倍以上のいろいろな融資を受けられるという制度などがようやく獲得できましたので、このプレミアムの問題については、私は一生懸命いまから先もやりたい。と申しますことは、いま物価が異常に上がることによって目減りという問題が出ております中にも、日本勤労者というのは、私はたいへんすばらしいと思っておるのです、これは心から。なぜかなれば、財形預金というものは強制貯蓄でも何でもなくして話し合いでやられているわけですね。発足してわずか二年の間に、この四十九年二月現在で、すでに契約を結ばれた勤労者諸君が約二百八十万です。そして、その契約高が千七百五十億です。千七百五十億、これは強制でも何でもありません。みんな契約に基づくのですね。しかも大企業の場合には、社内預金などがありながら、アルバイトした、そういう方々が、財形の中に、四%の税額控除魅力というものか、あるいは利子非課税というふうな魅力でございましょうか、そういうことをやっているときでありますから、私は、将来の、私たち皆さん一緒物価抑制もやっておりますが、それによって目減りを防ぎつつ、一方においてはプレミアムなどをつけることによって、こういう勤労者財産に対する保障と、それからまた形成する意欲というものが、それが実績にあらわれるようにぜひひとつがんばりたいと思っておりますので、こういうところでの御議論などが対社会的に、あるいはまた日本のそういう政策の上に反映されるということを私は心から御期待申し上げております。
  9. 小谷守

    小谷守君 現在の悪性インフレによる勤労者のささいな貯金が毎日毎日目減りしております問題は、これはあとで触れるといたしまして、昭和四十六年に財形制度が発足してから今日までの勤労者財産形成貯蓄貯蓄残高制度への加入状況、これを局長さんのほうからひとつ御説明願います。
  10. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 四十九年二月末の現在の数字でございますが、四十六年に本法が施行になりまして、実際に財形貯蓄が実施されましたのが四十七年一月からでございます。したがいまして、約まる二年でございますが、その間に財産形成貯蓄制度を実施いたしました事業所が約十七万二千事業所、それから、これに加入をいたしまして、財産形成貯蓄契約を結んでおります勤労者が二百八十四万人。で、その財産形成貯蓄残高は千七百四十三億三千万円と、かような状況に相なっております。
  11. 小谷守

    小谷守君 ただいまの財形制度は、先刻も触れましたように、預金元本利子に対する免税といった非常に貧弱な制度にもかかわらず、政府調査では、制度発足以来、契約者数及び貯蓄残高が伸びておる。しかも消費者物価は、本年二月の場合を見ましても、対前年同月比で二四%も暴騰しておる。つまりたった一年間で一万円の貨幣価値が七千五百円の価値に低下する、こうした中で、なぜ貯蓄が伸びるのか、その原因は何か、これは基準局長、どういうふうにお考えになっておりますか。
  12. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) まあ、前々から日本勤労者は非常に貯蓄性向が高いことは、先生も御高承のとおりでございまして、そういう日ごろからの貯蓄性向の高い日本勤労者のこういう勤倹な傾向が、今日の状況においてもなお持続されておるということが基本であると思うのでございますが、勤労者は当然自分の汗水たらしました勤労の中から貯蓄をいたすわけでございますので、少しでも有利なものをその際に指向いたしますことは当然のことと存ずるわけでございまして、確かに利子非課税といったような、非常に優遇措置が薄いもんでございますけれども、やはりそれでも少しでも有利なものということで、財形貯蓄を選ぶ方が多いということが一点。それからもう一つは、これは賃金からの天引きの貯蓄であるということで、労働者の方にとっては比較的、始めるという決心さえつきますと、手間がかからない、やりやすい制度であるということ。それからさらには、財形貯蓄に入っておりますと、雇用促進事業団を通ずる財形持ち合い融資を受けることも可能になるといったこと。これも財形貯蓄に入る勤労者が多い一つの理由であると思うのでございまして、それらのいろいろな要因が相重なりまして、先ほど申しましたような加入状況に至っておるものと考えておるわけでございます。
  13. 小谷守

    小谷守君 現在の財産形成制度は大きく分けて二つの柱から成り立っています。一つ貯蓄促進によって勤労者のストックを増加させること、二つ目はこの貯蓄を通じて勤労者マイホーム建設をする、しかも、財産形成制度を設立しようとした当初は、庭つきマイホームというふうなことを労働省はずいぶん宣伝されたように記憶をしております。そこでお尋ねするわけでありますが、本年一月末現在の貯蓄残高契約者数で割りますと、この二年間で一人当たり五万九千八百五十九円の貯蓄高計算に相なっております。もちろん住宅融資の仕組みは市中金融機関から事業主が一度融資を受けてそれを雇用する勤労者に貸し付けるのでありますが、この程度勤労者個人貯蓄額土地建設資材の暴騰の中で一体マイホームが建設できる可能性があるのかどうか、さらに、事業主から膨大な借金を背負わされた労働者は身動きもできずに企業への足どめ策に利用される危険性もあるわけであります。私はこの制度が今日の経済情勢から見てマイホームをえさにした銀行と企業のための資金集めとしか思えない。労働大臣の熱心な御提唱に対して水をかけるようでたいへん恐縮でありますけれども表現が悪いかもわかりませんが、私はどうもそういう気持ちがしてならぬのであります。この点をひとつ解明していただきたい。
  14. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先ほど大臣も申し上げましたように、財産形成制度というのは必ずしも持ち家政策のみを目的とするものであるわけではございませんで、勤労者資産一般を持つことを促進しよう、こういうことでございまして、持ち家というものもその資産一つとして私ども考えておるわけでございます。事実、今日財産形成貯蓄に入っておられる方は二百八十万人にも及ばれますが、私どもも全員の方が必ずしも持ち家取得目的として入っておられるとは限らない、貯蓄一般をこれによってふやして将来の自分資産の基礎にしようという考えもあられると思うわけでございまして、私ども財産形成貯蓄制度全部を持ち家に結びつけて考えておるわけではございません。しかしながら、この財産形成財蓄の中には確かに持ち家目的とする方もおられるわけでございまして、そういう持ち家を持ちたいと思っておられる方には、国と事業主援助して、できる限り、その希望が達成できるようにして差し上げるということも財産形成制度一つの大きなねらいでもございます。そこで今回国会に提案いたしております財形制度改善の中におきましては、特に住宅取得目的とされる方は一般財形貯蓄の中の特別なものといたしまして、住宅取得目的貯蓄ということにいたしまして、そういう住宅取得目的貯蓄を七年以上にわたって行なわれます場合には、毎年預入いたしました貯蓄額の最高八%、四万円まで税額控除して差し上げる、こういう制度も入れておるわけでございます。もし税額控除されましたものをそのまままた貯蓄に振り込まれますと一般預金利子のほかに、——でありますから八%の追加の利子も加わる形に相なるわけでございまして、一般の預貯金よりはかなり有利な貯蓄に相なると存じます。それからさらに、先ほども申しましたように、そういう住宅取得目的貯蓄をなさいました方には、現行法によります雇用促進事業団を通じた持ち家促進融資会社を通じて借りるという道もございますし、それから新たに今回の改正案の中では、住宅金融公庫から個人融資を普通よりも有利な条件で受ける道も講じられておりまして、その内容一般の人が住宅金融公庫から受ける融資額にプラスいたしまして、その七年間の住宅取得目的貯蓄の額の倍額まで融資をしようと、こういう住金法改正も今回の改正案の中には含まれておるわけでございまして、それらを総合的に活用していただくならば住宅を取得されるにかなり有力なお手伝いになるんではなかろうかと、かように考えるわけでございます。しかしながら、実際にそれがそのとおりいくかどうかという点につきましては、要するにこれからの物価動向、特に土地やあるいは建築費——勤労者のほうもベースアップ等一般賃金水準は上がるでございましょうが、それに比較してそれらの、住宅取得のための物価動向がどうなるかと、これが非常に大きな問題ということはもうおっしゃるとおりだと思うわけでございまして、その点につきましては政府全体としても何とかして地価や建築費上昇を抑制したいということであらゆる努力をしておるところでございます。
  15. 小谷守

    小谷守君 政府の長年の生産第一主義によって現在の国内経済環境悪性インフレになっておる。本年二月の消費者物価が対前年同月比で二四%も上昇しておる。一方、貯蓄で最も有利といわれておる信託貯蓄への予想配当率でも五年もので八・五二%である。これでは貯蓄すればするほど勤労者に損を与える、財形貯蓄はこういう勤労者に損を与えるものであってはならぬ。むしろ低金利、長期返済借金で物を買わせるほうが、そのことのほらが率直な財産形成になるのではなかろうか。私は大臣の熱心な御提言でありますけれども、現在の悪性インフレの中で勤労者財形貯蓄をすすめることはみすみす労働者に対して損害を与えることになるんじゃないか、そういう気持ちがしてなりませんが、大臣、いかがでしょうか。
  16. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) その点を私たちも心配しているわけであります。でありますから、何はともあれ熱心な国会の御審議を通じましても、時には企業のあり方についての鋭い御批判、そういうものの中から物価抑制の実をあげつつあり、また政府国民全体がこの際に物価抑制ということでやっているわけであります。そういう中においても、強制にあらずして話し合いによって、労使話し合いによって貯金をされるというその自由意思、そういう方々目減りしないようにさらにやっていき、ある場合にはそれに保護なり援助を与えることによって向上させていくというところに私たち労働省のあるいは政府の使命があるんじゃなかろうかと思っているわけです。これは個人としましても、かりにここに二万円、三万円の余分な金があった場合に、これを普通のおかみさんがこれを一体株に回していいのか、何かいいことというて頭を使ってみても、時に株はぐっと下がります。その時間と、その勉強の心配ということを見ますというと、やはり私はこういう恩典のあるようなところに貯金をしながら、それを政府がカバーしていろいろ援助の手を差し伸べるというところに勤労者皆さん方知恵を働かしてお選びくださる、それをさらに私のほうは御援助申し上げる方法を考えていくというところが一番常識的な線じゃなかろうか。でありますから、一方においては目減りするぞするぞという警告を受けながら、さらに私のほうが御推進申し上げていくというところに大体の見当がつくのでありまして、まあ、目減りするから皆さん貯金をみなおして、おろした場合にそいつは一体どこへ使われるか。ある場合には不要不急な、要らざるものに使うところによって物の値段が上がっていくということも考えますと、これはやはり一生のお互いの生活でございますから、堅実な日本人の持っている特性、そして将来に夢を持たせる、その夢を実現するように推進していくというところに私たち考えなければならぬと思っているわけであります。
  17. 小谷守

    小谷守君 四十八年度の経済白書によりますと、インフレによって貯金が減価していることを政府機関がみずから認めておる。すなわち、四十七年度上半期に見た個人預金損失は、全体で二兆五千億円にも達しておると報告されております。これによってもわかりますように、債務者利潤債権者損失ギャップが発生して、これが現在でも問題になり、しかもウナギ登りの物価上昇でそのギャップは拡大しつつある。したがって、個人預金損失が今後も明確に見込まれる中で、財形貯蓄で半ば強制的に貯金させようとする政府政策的な意図は一体何であるのか、だれのための財産形成なのか、こういう疑問がわいてくるわけであります。今日まで政府説明によりますと、インフレの大きな原因は旺盛な個人消費にあるといわれておる。その結果、インフレを終息させるために総需要を抑制させ、それを実行しておる。これを議論のすりかえでありまして、インフレ最大原因は、放漫な、しかも大企業有利の財政金融政策にあったのである。そこで、現在のインフレを総需要抑制によって終息させるために国民に対して盛んに貯蓄を慫慂することは、これは間違いではないか。大臣は先ほど来、日本労働者はだれからも強制されずに余裕があれば貯金をしておる、こういうことを賛美される御発言がございました。しかし、いま、この狂乱物価の中で一体どうするのか。労働者が乏しい中から貯金をするということは、いわば長年の悲しいさがである。大臣はりっぱなもんだというふうにおほめになっておりますけれども、一体、そういうことであろうかどうか。私は、いま触れましたように、こういう中で、いまお述べになりましたような内容財産形成制度ということであるならば、私はことばが悪いかもわかりません、表現がきたないかもわかりませんけれども、何か労働省労働者に対する収奪の側に回ったんではないかという批判を受けることに結果的に相なるのではなかろうか、そういう点を心配いたしますが、毎日毎日目減りする貯金を責任をもっておすすめになってよろしいかどうか、私はたいへん疑義を感じますので、しつこいようでありますが、大臣の御見解を承りたいと思います。
  18. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 目減りしないようにしようというところにまず私たち努力する最大目的があろうと思います。これは、もういま、どなたもそうだろうと思います。そのために、国会でも御審議いただき、また、それが時には会社臨特法案のような法律になったりしている、私はこう思うのです。それと同時に、貯金することが悲しいさがと御表現もありますが、私は、先日、予算委員会におきまして、やはり地方で労働組合方々と懇談された席上において、目減りする預金であるからおろそうと思うという話があったときに、それは、そういう気持ちもあるだろうけれども、やはり貯金というものはすべきじゃなかろうかと自分座談会で話をしてこられたというその御質問、御意見に対して、深く実は感激したものであります。やっぱり、こういうときに自分を守る姿というものが貯金にあらわれている。そうして、これは、私たち労働省は、労働者皆さん方の相手であり、そしてこれを何とか向上するために、ない知恵とない力を一生懸命に振りしぼりながら、激励されつつやっている姿でございまして、こういうときにこそ、国民連帯感でやって、中に自分たちの将来の理想のために毎日働いて、それが貯金に、あるいはそれが自分が子供の教育のために貯金するとか、あるいは家を建てるために、ある場合には結婚の衣装をつくるためにという一つ一つの人間の、それこそかすかなる欲望というか、そういうもののために私は毎日努力している、そういうことでございまして、そう私は理解しているもんですから、この財形は守って差し上げて、向上するように、いろいろな手当てをいたしますけれども、まあ、ぜひひとつ、自由意思でこういうものがますます発展するというところに私たちは期待をし、それを裏切らないような努力をしていくというところが私たち気持ちであるということを御理解いただき、それがすぐ御理解できないかもしれませんが、そういう気持ちでやっているもんだということをひとつ御理解、御了解いただくならばしあわせだと思います。
  19. 小谷守

    小谷守君 昨年十一月二十九日に貯蓄優遇策として貯蓄非課税限度額現行の五百万円を千二百万円に引き上げることとされたのでありますが、しかし、幾らインフレ経済とはいえ、勤労者の中で千二百万円も預金ができて、この制度に該当するのは一体どのような階層であろうか。これらの階層は資産の運用によってインフレに強い階層ではないか。貯蓄中央増強委員会調べでは、現在、一所帯当たりの貯金は二百十万円程度と、こういうふうに伝えられておりますが、こういう点については基準局長、どうですか。貯蓄優遇策の対象というものは、政府の施策ではいま申し上げたようなことになっている。ほんとに弱いところに対してその手当てがうといのではないか、こういう感じがいたします。
  20. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) いま先生がおあげになりました非課税額の数字と申しますのは、これは一般の少額貯蓄に対する非課税限度額が昨年引き上げられましたほかに、勤労者財産形成貯蓄非課税限度額引き上げあるいは郵便貯蓄非課税限度額引き上げ、あるいは国債を購入した場合の非課税限度額引き上げ、それを全部足しますとそういった額になってまいるわけでございます。これはしかし、たとえば、一般国民の方で少額貯蓄は、これはほとんど皆さん適用の対象になると思いますけれども、あるいは、財形等は入っておられない方は、財形貯蓄としての非課税限度額優遇措置の対象にはなりませんし、あるいは郵便貯蓄に対する非課税限度額等も、郵便貯蓄をあまりやっておられない、そのほかの貯蓄の手段をとっておられる方は適用対象にならないわけでございますから、全部が全部その非課税限度額の千何百万という貯蓄をされておるということを前提にしておるわけではない、いろいろな形の貯蓄がございますので、それぞれに対しまして、そういう一定限度までの方に対しては非課税の限度の優遇措置をしようと、こういうことだと思うわけでございまして、決して、それを合計したものが高くなったから高額の所得を主たるねらいにしておるということではない、かように考えるわけでございます。
  21. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は職業病についていろいろいろいろといいますか、限られた時間内で質問をいたしたいと思います。  で、具体的に、職業病については当委員会でも再三問題になっておりますので、労働省のほらでもいろいろ調査をし、また対策もとっておられると思います。  で、最初、第一点は、病院、診療所、それから社会福祉施設における監督署の監督、指導の結果について御説明をいただきたい。  また、ほかの産業に比べて特にどういう点に特徴があるか、そういう点についても御説明いただきたい。
  22. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先生がただいま御指摘になりました病院や社会福祉施設、これらの労働者方々の労働条件につきましては、従来からやはりいろいろ社会的にも問題のあるところであると考えまして、私ども、監督、指導の重点といたしまして努力をいたしてまいったところでございます。で、率直に申しまして、毎年これらを重点的に監督、指導をしておるところによりますと、それら、病院、社会福祉施設等につきましては、その他の一般の業種におきまするよりも基準法の違反率等が高くなっておるわけでございまして、特に違反が多い項目といたしましては、労働時間、休日、あるいは割り増し賃金の支払い等々の点におきまして違反が多く見られる状況にあるわけでございます。私どもといたしましては、まことに遺憾なことと存じまして、引き続き、これらにつきましては監督、指導の最重点といたしまして強力な監督と指導を行ないまして、それらの違反等がなくなるようにいたしたいということで努力をいたしておるところでございます。
  23. 小平芳平

    ○小平芳平君 労働大臣から厚生省にひとつ厳重な申し入れをしていただきたい、注意を喚起していただきたいと思います。そのもとになる資料をいま局長からきわめて抽象的な答弁でしたが、もう少し具体的に労働省として、これは当委員会で取り上げられること、もう再三にわたる問題です、テーマですから、労働省としてもっと病院、診療所、社会福祉施設等の労働基準法違反ですね、これは法律に反すれば罰せられるわけですから、スピード違反だって罰せられるわけですから。それが、そうした社会福祉施設等で基準法違反がある。しかも、労働時間、休日等の違反があるということはどこに原因があるか、もう一つ具体的な数字をあげて説明されたいのと。それから、もしいまここで不十分ならば、労働省としてもっと正確な分析をしまして、したがって、社会福祉施設はこれこれしかじかの人員充当をはからなければ、基準法違反は、しかも労働時間や休日や割り増し賃金の違反なんてもってのほかでしょう、実際。民間の企業でそういうことをやったらたいへんでしょう。まあ、どこでもたいへんですけれども……。ですから、そういう点をもう少し具体的に御答弁いただきたい。
  24. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) おもな違反につきまして申し上げますと、病院、診療所につきましては四十七年度の数字をいま持っておるわけでございますが、男子についての労働時間の違反が三二・四%、女子についての違反が五三・二%、休日につきましては男子が一一・六%、女子が二三・四%、それから割り増し賃金違反につきましては、これは男女合わせてでございますが、三一・一%という状況に相なっております。  それから社会福祉施設につきましては、これは労働時間につきましては、四十七年度同じく男子の違反率が二五・三%、女子が三五・五%、休日は男子四・八%、女子が六・五%、割り増し賃金につきましては一五・二%、かような状況に相なっておるわけでございます。  で、これらの是正のためには、先生も御指摘のように、確かに関係省庁の御協力も得なければならないところでございまして、私ども、これまで私の名前、あるいは私と婦人少年局長、女子の労働者の違反が多いと思うのでございまして、この連名等で厚生省の担当局長に文書による申し入れ等も何回かいたしておるわけでございまして、やはり予算上のいろいろ補助その他の配慮等も進めていただくことがこれらの病院や社会福祉施設におきます労働条件改善に密接な関係がある、かように考えまして、それらの点についての配慮を厚生省にもお願いをいたしております。それらの結果、四十九年度予算等につきましても、ある程度の配慮は、人員やいろいろな補助費等の額についてされておるようでございますが、さらにそれとあわせまして、やはりこれらの施設で従業員の方の労務管理、こういうものに対する関心あるいは御研究、御配慮、これが不十分な点も確かにあると思うわけでございまして、それらの点につきましては、監督官庁である厚生省と密接な連携をとりまして、いやしくも基準法違反というようなことをなくするように、指導に協力してつとめる、こういうように一段と努力をしておるところでございます。
  25. 小平芳平

    ○小平芳平君 そして、その基準法違反と、それからこの職業病とはどのような関連があると考えられますか。
  26. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 基準法違反それ自身が好ましくないことは申し上げるまでもないことでございまして、職業病と申しましても、いろいろあるわけでございますが、それらの中には確かにいろいろそういう労働条件がよくないために、過重になっておる、そのことがいろいろ疲労の回復等を労働者に十分にする余裕等を少なくいたしまして、そういうことが体力全般なぞにも関連し、直接の原因かどうかは別といたしまして、そういう問題の観点からも非常にこれは一日も早く解消しなければならない問題と、かように考えておるわけでございます。
  27. 小平芳平

    ○小平芳平君 そう局長むずかしく言わなくて、簡単に言えば人手不足ということがあるわけですね。そういう人手不足のこうした社会福祉施設、重度障害施設あるいは老人ホーム等で人手不足がある、前提としまして。そうすると、とにかく障害児にしましても、老人ホームにしましても、二十四時間勤務は続けられていかなくてはならない。そこで、労働過重になり、一方では基準法違反があり、労働時間とか休日の違反というものは、大体はやむにやまれず、人手不足の結果、そういう違反が起きている場合も多いんじゃないか。それから一方、他方では腰痛等のそういう病気で倒れる人がきわめて多く発生し、もうそれこそ預かっている重症児をお宅へ帰さなければならない、そのくらいまで現実は追い込まれているということでしょう。そういうことでよろしいですか。
  28. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) そういう現象が所によって見られることは御指摘のとおりでございます。
  29. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、労働大臣も、労働者を守るという立場から、そういう社会福祉施設あるいは病院、診療所等でそういうことが起きているということはどこに原因があるか。それこそ厚生省にまかしておいたのではよくなってこないわけですから、ますますそういう状態が悪化していると、悪化こそすれ、よくなってくるという見通しがない。ですから、労働大臣として、ひとつ強い姿勢をとっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  30. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私たち自分の地方でよくこういう施設などを見学あるいは相談にあずかって見ることがあるのです。そういう場合に、老人ホームなどにおいてほんとうにお年寄りの方々、足腰の立たない寝たきりの方々を、こうした人をよく看護して、身内でない人をほんとうによくやっている姿を見ますと、たいへんなことだと思います。それが労働基準法のほらから見ますというと、先ほど局長が御説明申し上げましたとおり、労働条件の問題あるいはまた休日の問題、そういうことが出ておりますので、まさに私はこういう社会福祉の時代においては気のついたところから一生懸命推進申し上げまして、担当役所と総合的な行政をやる必要がますますあるんじゃなかろうか。役所としては局長同士の話し合いやら警告など、事案が起こったたんびに話はしておりますけれども、気のついたところをもっともっと推進していくことがさらに必要であると思います。先日も国会で御審議いただきました教員の給与の改善の話が出ましたときに、私は思わず、一体看護婦さんのほうはどうなっているんだという発言などをそういう大事な会合でいたしましたところが、看護婦さんはこれに見合ってやりますということで、また国会に御審議いただいている。やはり気のついたところ、刺激いただいたところ、それを自分たちの胸の中に入れて、時に発言もし、それを行動して前進さしていくというところに私たちの責任があると思いますので、こういう機会に御指摘いただいたことをさらにに肝に銘じまして、厚生省その他にさらに強力に推進してまいりたい、こう思っております。
  31. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣から、局長同士の話し合いだとよくなってきてないわけですから、そういう点、これを機会に、——これを機会ということ、機会はいつでもあるわけなんですが、とにかくよくなってきていないので改善をしていただきたい。ぜひとも改善をしていただきたい。  それから腰痛症の場合、認定についてはまた後ほど詳しく答弁を求めますが、特に腰痛症の場合など認定がきわめておそいんではないか。私がきのう具体的に、東京老人ホーム「フジホーム」というところで寮母二十二人のうち七人が腰痛症ということでありますが、職業病と認定されましたか、されておりませんか、そういう点、具体的な問題テーマとしてお調べいただきたいと申しておきましたが、その点わかりましたか。
  32. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先生指摘の東京老人ホームの「フジホーム」の例であると思うわけでございますが、さっそく調べてみましたところ、そこに勤務しております労働者から、ことしの三月二十五日に一件の労災補償の給付請求が出ております。これにつきましては、現在取り急ぎ監督署において調査をいたしておるところでございます。  なお、その施設におきましては、現在私どもの聞いておるところでは、腰痛を訴えておる者がそのほかに二人おられるということでございますが、それについてはまだ請求が出ておりませんので、請求が出ましたならば、早急にこれも調査をいたしまして処置をいたしたいと、かように考えておるところでございます。  なお、東京老人ホームの「フジホーム」、これがいま申しました点でございますが、そのほかに、同じ社会福祉法人恩賜財団東京都同胞援護会という団体が経営いたしております。これは沼津の児童福祉施設「松風荘」というところにおきましては、そのほかに、これは腰痛ではございませんが、頸肩腕といたしまして一件申請があり、これは業務上の認定をしておる。それからもう一件は、三月の十人目に申請がなされて現在検討中であるという事実がございます。で、これは、まあ東京ではございませんが、同じ団体の経営する福祉施設ということで、あわせて調べてみたわけでございます。
  33. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ、局長のところへ来る段階ではそういうことになるかもしれませんが、たとえば「フジホーム」の場合で言えび、局長は請求のあったのは一人と、そのほかに二人痛みを訴えているということですが、労災の休暇を取った人が三人で、そのほかときどき腰痛を訴える人が四人いると、こういう報告があるわけですがね。それで、まあ、その請求と認定につきましては、たとえばこういう点はわかりますか、こうした職業病のそういう被害者といいますか、被災労働者といいますか、職業上の被災労働者方々の集会があったときに具体的に名前をあげましてね、私はある金融機関につとめております、ここで頸肩腕障害を訴える人が相当いるけれども、ほとんど認定にならない。あるもう一人の方は、私は電電公社におりますが、やはり頸肩腕障害を訴える人が相当いるけれども、ほとんど認定にならないということを訴えておられましたので、そうした銀行等の金融機関、それから電電公社、こうした具体的に請求が出た数と、認定された数がわかりますか。
  34. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 労災保険で頸肩腕症候群等で業務上の補償をしておるものはかなりの数にのぼるわけでございますが、その銀行の例もございます。しかし、そういう業種別まではとっておりませんので、銀行で何件とかいうふうにはわかりませんが、私どもいまわかっておりますところでは、昭和四十七年度におきまして頸肩腕症候群として新しく労災保険の認定をいたしましたもの、しかもこれは通院等まではちょっとただいま数字わかりませんが、休業四日以上ということで把握いたしました数字は二百十七件と、かように相なっております。  それから電電公社は、これは先生御承知のように労災保険ではございませんで、労使の協約に基づきまして、基準法を上回る大体労災並みの補償を業務上の負傷、疾病に対してやっているわけでございますが、その状況は電電公社から報告を受けましたところによりますと、頸肩腕症候群と診断を受けている者は二千七十六人である。そのうち業務上災害の申請をいたして、現在地方通信局にそれが出ている者、それは四百三十八名である。それから業務上、業務外の認定が済んでいる者は二十人で、うち十六人は業務上と認定し、四人が業務外と認定されているというふうに電電公社からは報告を受けておるわけでございます。
  35. 小平芳平

    ○小平芳平君 局長、管轄外の電電公社のほうはばかに詳しく言ってくれたけれども自分の管轄のほうはもっとそういう詳しいことはわからないですか。要するに、この電電公社の例で見ましても、二千七十六件ですか、これは最終的には十六人になったと、こういういまの御答弁でしょう。そうすると、ほかの銀行という項目がないにしましてもね、どういう、それじゃ集計は出るんですか、労働省としては。
  36. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) いま私どもがとっておりますのは、業務上の頸肩腕症候群等ととして認定された者で休業四日以上の補償を新しく行なった者、これは数字をとっております。しかし、申請が出ました者等は、これは全国の基準監督署に出てまいりまして、基準監督署でそれが処理されまして業務上として決定をされますと、これは支給の手続をいたします。それが石神井にございます業務室のコンピューターのほらへ来ますので、それはわかるわけでございますが、申請が何件あったかということまではちょっと私ども全国の状況をいま把握をいたしておらないわけでございます。
  37. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうふうに申請を、——私がいまここで発言しているようなことが必要だと思いますか、思いませんか。私がいま言っていることは、請求をすると、申請をするし、しかし、なかなか認定にならないということを言っているわけです。ですから、そこで時間がかかることも一つの難点。それから、この先ほどの二千人のうち十六人というようなぐあいに、きわめて業務上の疾病と認定される者が少ないということでいいものかどうか。しかも、職場によっては頸肩腕障害というようなこととはおそらく関係がなかろうと思われるような職場もあるでしょうし、あるいは職場によってはこういう職場では頸肩腕障害が起こる可能性が強いということも長年の経験で労働省はわかっているでしょう。そういうところで、まあ、産業別になりますか、職種別になりますか、いずれにしても、この現状どうかということを労働省が把握すべきではないかと、こう申し上げているんですが、いかがですか。
  38. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 確かに私どももできるだけ現状をつかむようにいたしたいと、かように考えるわけでございます。ただ、最近は、御承知のように、いろんな職業病が多種多様ございまして、まあ、頸肩腕症候群も確かに大きな問題ではございますが、そのほかにいろいろ出ております。したがいまして、それの申請、あるいはそれを業種別等にまで調べるということ、まあ、年間に労災の新規の給付件数が百四十万件にものぼっております。できるだけこれを私どもは給付が長くかからないように急いでやりたいということで急がしております関係もございまして、疾病別の個々のこまかい調査、申請あるいは業種別といったようなところまでは、なかなかいま手が回りかねておるわけでございますが、いまとっておりますのが休業四日以上の者だけを疾病別にとっておりますので、それ以下の休業の方、あるいは通院で療養をしておられる方もございますので、それら通院までも含めて全部の疾病別の補償件数、それだけでも何とかつかむようにできないかということで、いまいろいろコンピューターのほうのプログラムなどを検討させておる段階でございまして、詳細な点まで完全に把握いたしますにつきましては、なかなか人手の点もございまして容易ではなかろうと考えております。しかし、必要がある場合には、全部の調査ができないまでも、何か抽出的な、全体を推定する一つの材料となるような部分的な調査等も検討してみたいと考えます。
  39. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣局長はそういうように答弁されますが、先ほど来申しますように、要するに、私は職業上の疾病だと、本人はそう思っているわけです。それで、労災の給付の請求をする。しかし、実際上、そういう業務上と認定される人はきわめて少ないわけです、職種にもよると思うんですがね。かりに手足が切断されたような場合ははっきりしておりますが、頸肩腕症候群とかあるいは腰痛とか、そういう点、もう一つ労働省が実態を正確に、的確に把握しなければならないわけです。そういう点はいかがですか。
  40. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 最近のように非常に業種が変化してまいりますというと、いまおっしゃったように、頸肩腕症候群というふうな新しい業務上の問題が出てくることは理解ができます。私たちとしますというと、やっぱり認定基準というものをきめておりまして、それに当てはまると申しますか、業務に起因するものであるということがはっきりいたしますというと、業務上の疾病として労災の補償にいままでもやってきた、それはいまから先も続けてまいりたい。  問題は、なるべくかからないようにすることがまず第一じゃなかろうか。そういう意味で、作業管理基準とか、あるいはまた指導要綱、そういうものによりまして、作業時間の規制とか、あるいは作業環境の改善とか、健康診断の実施等々をやって予防を徹底的に進めて、まずかからないようにすること、そして、業務に起因するものであった場合には、それをまた私たちのほうが補償の対象にしていく、こういう姿勢をとってまいりたい、こう思っております。
  41. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、そういう実態を把握することがきわめて大事だということを前提といたしまして、労働省のほうから、名古屋の北労基署では事務職場で頸肩腕障害を職業病と認定したという、これは私は新聞報道で見た範囲ですが、その点どうなっているか。そうした事務職場で頸肩腕障害が発生するということになりますと、それに対応した、また労働省としては行政指導が、企業としてはこれに職場に対する配慮が必要になろうと思いますが、その点について。  それから、一番私たちの身近な速記者の方々が、衆議院ではたいへん多くの速記者の方が倒れたということがこれは衆議院の予算委員会分科会で問題になったということが報道されておりますが、参議院の場合はどのような状態にあるかは記録部長からお答えいただきたい。
  42. 西村健一

    ○参事(西村健一君) お答え申し上げます。  幸い、参議院の記録部におきましては、目下のところ衆議院のような事態は発生しておりませんが、今後もそのようなことがないように、衆議院の実情も調べまして種々対策を講じております。  速記の業務は、御承知のように、精神の集中と筋肉の活動が著しいので、会議がふくそうしてまいりますと疲労が激しくなりまして、それが会議録の作成に直接影響を与えることになるのでございます。したがいまして、記録部におきましてはつとめて職員の健康管理を重視いたしまして、特にこれを担当する幹部を指名して、これが中心となって対策を講ずるような体制をとっております。  各管理職もそれぞれ所属職員の健康状態に常々注意いたしまして、もし異常を認めたような場合は遠慮なく休めるようにするなど適切な処置をとるとともに、これをただいま申しました担当幹部のほうに連絡いたしまして、部内全体としての必要な対策を立てております。  それから、執務環境の改善についても絶えず注意いたしまして、部内の職員の希望や意見を聞きまして極力これを具体化するようにし、たとえば室内の照明等についても、明るさや角度など最も仕事がやりやすいように配慮いたしております。  また、執務体制についても、過労を防ぐために必要に応じて交代制をとるとか、繁忙時には原稿作成の期間に多少の弾力性を持たせるとか、臨機の措置を講ずるようにいたしております。  以上のような点について、担当幹部は平素から医師その他専門家の意見も聞いていろいろ対策を研究し、その結果を随時管理職の会議等にはかりまして必要な措置をとっております。  以上でございます。
  43. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 頸肩腕症候群につきましては、従来はやはり主として手指を非常に多く使いますキーパンチャー、あるいはスーパーマーケットのチェッカーなどに数多く発生をいたしましたので、それらにつきまして作業管理基準や指導要領をつくりまして、先ほど大臣から御答弁がありましたような予防の措置を講じておるところでございますが、最近それ以外のいろいろな面にも頸肩腕症候群が発生をいたしております。たとえば電電公社などがまた一、二年前から非常に問題になっています。  私どもは、昨年来そういう意味で電電公社とも密接な連携をとりまして、電電公社の中にそういう問題の認定及び予防等のための専門家の委員会をおつくりいただきまして、そして、ことしに入りまして、それから一定の御答申が得られ、それによって電電公社が認定や予防措置の促進をはかっておられます。  こういうように、多数発生する職種、業種があります場合には、それらの実態に応じまして予防等の措置につとめておるところでございまして、先生指摘一般の事務職などにもそういう例が出ておることは私ども承知いたしております。そういう発生の状況などを見ながら、今後とも、多数発生するような業種、職種につきましてはそれに応じた予防のための措置を強力に進めてまいりたい、かように考えております。  なお、そういう従来のようなキーパンチャーやチェッカーなどでないいろいろな職種にそういうものの発生が見られるということから、従来からきめております認定基準、これにつきましても再検討をもっと広い角度からいたしたいと考えまして、昨年、頸肩腕症候群につきましての認定基準を再検討するための専門家の委員会を発足させまして、現在見直しの検討をしていただいておるところでございます。
  44. 小平芳平

    ○小平芳平君 記録部長からは、参議院では衆議院のような事態が発生してないということでございますので、かといって安心していいかどらかということもちょっと私はわかりかねますけれども、先ほど述べられたような体制でそうした被害者を未然に防ぐように強く希望いたします。また、そういう体制でおやりになっていらっしゃるということでありますので、さらに推進していただきたいことを要望いたします。  けっこうです。  次に、労働省では、PCBによる職業病、それから放射能の被害者という、そうした認定が出ておりますかどうか。
  45. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 御指摘の放射線障害、PCB等についての業務上疾病としての認定の件数につきましては、最近の事例ではいずれも二件ずつございます。放射線のほらにつきましては、これはX線によるものが広島と京都に一件ずつございます。それからPCBの中毒関係につきましては、東洋紡の敦賀の工場で一件と、それから滋賀の日本コンデンサー工場で一件と、二件認定をいたしました事例が最近ございます。
  46. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう点、先ほど来私は、申請と認定について、請求を出してもなかなか認定されないということについて再三発言をしてきたわけですが、特にこうしたPCBあるいは放射能による健康被害というような場合は非常にわからない面が多いと思うんですね。特にPCBによる健康被害などということは全くわからない面が多いのが現状だと思います。したがいまして、先ほどの頸肩腕症候群、腰痛等も含めて、本人から、私は、業務上の被害を受けたと、本人がそう言う場合には、企業が反証のない限り業務上と認める、企業のほうで、いやあなたは職業上ではありませんということが証明されない限り認定するというととは、各方面から強い意見が出ておりますが、これについてはいかがですか。
  47. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 労災保険はやはり業務上の疾病に対して補償をいたすものでございまして、そういう意味におきまして、業務と疾病との間に相当因果関係が明らかに認められる場合に、業務上の疾病として所要の補償を行なうことに相なっておるわけでございます。しかしながら、確かに先生指摘のように、職業性疾病の中にはその認定が困難な疾病がいろいろございますので、私ども、これらにつきましては、たとえば頸肩腕症候群あるいは腰痛、あるいは電離放射線障害、あるいは鉛等々、そういうものがかなり多数発生する場合につきましては、その方面の専門家の先生方によります御研究に従いまして認定基準というものを作成いたしまして、それに従いまして、個々の事案の場合には迅速的確に認定をすると、こういうようにつとめておるわけでございます。  なお、PCBのごとく非常に事例がまれにしか生じないものにつきましては、これは基準をつくるまでの数もございませんので、これは、そういうような場合、あるいは認定基準があっても、特殊な事例で判断が困難なような場合には、それぞれそのつど専門家の御意見を聞きまして、業務上・外の判断をいたしましてその適正化をはかっておる次第でございます。
  48. 小平芳平

    ○小平芳平君 その専門家の御意見が合わない場合もあるわけですよ。   〔委員長退席、理事須原昭二君着席〕 専門家とは一体どこどこの人が専門家であって、どこどこの人がしろうとかという、両方とも確かに専門家だ、しかし意見が合わないということもあるわけです。ですから、やはりこの専門家の意見を聞くことはもちろん大事ですが、使用者がはっきり業務上に関係ないということが証明つけばともかく、同じような職場で働いていて、一方の人が頸肩腕症候群と認められ、次の人は認められない、あるいは同じような職場でPCBを扱っていたような場合ですね。要するに、労働省のやり方はしぼることに主眼があるように、業務上ということはつまりきわめて限定していくことということになりますと、   〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕 実際の被害者も救済から落ちこぼれるということを私は感じておりますので、こういうふうに言っているわけです。それから、この点についてはどうも意見が合いそうもないので、次に行きます。  次に、現在の補償はきわめて少ない給付ですね。現在の給付がきわめて少ない、低水準であるということについて、労働省は、労災法一部改正を提案しようとしております。しかし、提案しておりますが、たとえば賃金の二〇%上昇した場合にスライド制をとるとか、そういう肝心なところは触れずに、あるいは賃金の六〇%の給付ということにも大いに不満があるにもかかわらず、そういう肝心なところには触れずに改正案をつくったということですね。実際はその法案審議のときに譲ることはもちろんでありますが、ますます狂乱物価といわれるこういう社会の現状にあって、いまどのように感じておられますか。
  49. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 労災保険の給付水準につきましては、従来からその引き上げにつとめてきたところでございます。現在ではILOの百二十一号条約の水準に達していると私たちは確信しているところでありますが、しかしながら、御指摘のように、障害補償給付をはじめとする労災保険の給付については多くの要望もございますので、政府といたしましては、昨年の十二月の労災保険審議会答申を尊重いたしまして、障害補償等の給付改善等を内容とする、お話しのように労災保険法の改正を今国会に実は提出しているところであります。  スライド制の改善につきましては、審議会答申を尊重いたしまして、今回の改正案では障害補償一時金に新たにスライド制を適用することといたしました。なお御指摘のスライド幅の問題につきましては、審議会で今後引き続き検討を続けられることになっておりますので、労働省といたしましては、この検討の結果を待ちまして措置したいと考えているところでございます。
  50. 小平芳平

    ○小平芳平君 審議会の検討待ちということで、スライド制について、あるいは賃金の六〇%給付というようなことについて大きな欠陥がある、具体的なことはこの法案審議のときに譲りますが、しかもこういうふうに悪性インフレといわれる時期でありますので、大きな問題があることだけ指摘をいたしておきます。  それから厚生省ですね、むずかしい表現は私よくわかりませんが、むち打ち症、それからいまの頸肩腕症候群は完全な治療方法があるのですか、ないのですか。あるいはその見通しはどうなんでしょうか。
  51. 山中和

    説明員(山中和君) むち打ち症並びに頸肩腕症候群ですが、これは症候群といわれるように、いろいろな症状を呈するわけでございます。しかし、臨床学的には相当この本体もだんだんわかっておりまして、まあ、少し専門的になるかもしれませんが、大部分は頸部の脊椎症あるいは椎間板のヘルニア、一部にはここの鎖骨下の神経の圧迫によって起こると、そういうふうに考えられております。  この治療法といいますのは、大部分は保存療法と申しまして、固定をして牽引をするという方法でございます。現在一般的には七〇%ぐらいがこれで治療に至るといわれておりますが、やはり、おおよそあとの三割ぐらいはいろいろな療法な必要とします。それは疼痛も起こりますし、そういうものの薬物療法が必要でございますし、それから、そういう神経圧迫のために筋肉も弛緩してまいりますので、そういう対症的な弛緩防止の薬物を使います。そのほか、向精神性のビタミンという薬物療法もございます。最後の手術療法というのもございますが、これは非常に適用の少ないもので、圧迫している場合にその圧迫を除去するということで、現在の治療法としましては、大体外科、整形外科、神経科、こういうところで共同して行なう治療でございまして、最も行なわれておるのが保存療法だと、そう考えておりますが、やはり非常になおりにくいのから、非常になおるのまで、——すべての病気そうでございますけれども、そういうことで一部非常になおりにくいという状態がございます。
  52. 小平芳平

    ○小平芳平君 非常になおりにくいので、その治療方法をもっとよく研究していただきたい。よろしいですね、それは。  それから最後に、被災労働者の職場復帰について労働省としてどのようにやっておりますか。
  53. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先生指摘のように、むち打ち症あるいは頸肩腕症候群、疾病としても中にはなおりにくい方がいま厚生省の方も言われましたように非常に多うございますし、そういうことで、またなおられたという、症状が固定された方につきましてもどうもすっきりしないというようなこともございまして、なかなか職場復帰がむずかしい場合が多いわけでございます。そこで、私どもこれらの方々の社会復帰を促進するという見地から、昨年四月にそれらの問題の専門家により頭頸部外傷症候群等の被災者の職場復帰等に関する専門家会議というものを設けまして御検討をお願いし、その結論に基づまして昨年十一月に通牒を出しまして、これらの方の社会復帰促進につきましての特別対策を実施するようにいたしておるところでございます。  その内容といたしましては、そういう疾病にかかられました方の中で職場復帰が困難な事情にある方につきまして、社会復帰指導員——これは各労災病院に置いておりますが、そういう方、あるいは労災保険指導員などの人にそれらの被災者の相談に当たっていただく、あるいは会社との連絡に当たっていただく、必要な場合には、それらの方に、職能回復訓練を受けられる場合にその援護費を支給する、あるいはそれらの方の職場復帰につきまして会社と十分話し合いをいたしまして、短時間の就労などから段階的に就労をするようにするとか、あるいは訓練的な就労というようなことで職場にスムーズに戻れるようにするとかいったような御指導などもすることにいたしまして、そういう方々の職場復帰の促進をはかっておるところでございます。
  54. 小平芳平

    ○小平芳平君 その昨年十一月に通牒を出したということですが、それに必要な経費、必要な予算はどのくらいですか。
  55. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) いま申しました職能回復訓練に対する援護費は最高限度月三万五千円まででございますが、ちょっと、いま手元に総額の数字を持っておりませんので、至急調べまして後刻先生に御報告申し上げます。
  56. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、短時間いただきましてお伺いをしたいと思います。  まずお伺いをいたしたいのは、使用者が労働者社内預金を要請する際に、会社が金額を一律何パーセントとするとか、あるいは社内預金に協力をしない者は報告せよとか、そういう一方的あるいは強制的と思えるようなことをきめられるかどうか、一般的に御意見をまずお伺いをしたいと思います。
  57. 岸良明

    説明員(岸良明君) 御承知のとおり、労働基準法におきましては、強制的な預金はこれは許されないわけでございます。ただ、委託を受けまして使用者のほらで一定の手続を踏んだ上で預金を管理するという、こういう制度は、現在、法制上認めておるわけでございます。しかし、あくまでも、その預貯金は自由が原則でございます。入れることも自由でありますし、また出すことも自由、額についても強制はできない、これがたてまえでございます。
  58. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、会社が金額を一律何パーセントというふうなことをきめるということは、これは、いまおっしゃった金額の自由についても反しますね。
  59. 岸良明

    説明員(岸良明君) そのきめ方の問題といいますか、たとえば、一定のパーセンテージを提示をいたしまして、そういうようなことについて慫慂をするということが、はたして違反になるかどうかということは問題がございます。しかしながら、あくまでも自由のたてまえという原則から考えますと、まあ、なるべく、そういうような形にすることは好ましくないということは言えようかと思います。
  60. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、具体的にお聞きをしたいんですけれども、住友海上火災保険では、昭和四十九年三月五日付で、本社の人事部長名で——同文のものをお手元へお渡ししているかと思いますけれども、同文のものを各部各店それから写しを各課各所へ出されているわけです。これにはどういうふうに書いてあるかといいますと、「年度末慰労金の社内預金口座振込支給について」——これは人事部長名で出ている文書ですが、「昭和四十八年度年度末慰労金の支給に当り、労働組合の合意も得て、」それから、「総需要抑制の見地と社員各位の財産形成の一助として、」と、こういう前文があって、「その五〇%を社内預金口座に振込み支給するとともに、これに対し、特別付加金を支給する」云々、というふうな前文をつけて文書が出されているわけです。これについて一つずつお伺いをしていきたいわけでございますが、そのまず第一に、こう書いてある。1.「社内預金口座への振込み方法」について、——「払込方法」です。それから、これの(1)「振込支給対象者の範囲」と書いて、「原則として支給対象者全員とする。ただし、四月末日までの退職予定者、他社出向者、海外駐在員、休職者、嘱託およびその他特別の事情がある者を除く。」と書いて、特別の事情については注書きがあって、「特別の事情あるものとは、病気、罹災等により異常な出費を急に余儀なくされた場合等、事情真に止むを得ない者に限定する。」というふうに記載をされております。このように「原則として支給対象者全員とする。」というふうに範囲を会社が一方的にきめてよいのかどうか、その点はどうですか。
  61. 岸良明

    説明員(岸良明君) いま御指摘になりました文書は、実を言いますとけさ拝見をいたしたわけでございまして、必ずしもこれの法律に即しました解釈ということは、これは的確にはできにくいわけでございますが、先ほど申し上げましたとおりに、やはり社内預金は自由がたてまえであるということになりますと、当然強制的なニュアンスのあるようなこの表現ということは、これは好ましくないわけでございます。  ただ、私ども実態は詳細にはまだわかりませんけれども、早急に事情を調べましたところによりますと、これは強制をする趣旨ではないというふうに会社側は言っておるようであります。現にまたこの社内預金をしておらない人たちも多数おるようでございますので、そういう面では、この中身、これは詳細に検討しなければ何とも言えませんけれども、一がいにこれは強制だというふうに直ちには言えないという感じがいたします。
  62. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは一つずつ聞いていきますので、御見解を一つずつ伺ったらいいわけですが、これは労働組合との団体協約で、三月六日にやられた協約の交渉の経過の中でも、労働組合はこう言っているんですね。「社内預金はあくまで個人の希望によって行うのが筋で、各人の口座に自動的に振込むのは問題がある。希望額をつのって社内預金をする訳にはいかないのか。」というふうに、やっぱり会社側と論議がかわされている。それで、会社はどんな答えをしているかと言いますと、「五〇%というのは今回の三臨が当初予定されたものより相当上回る金額になったことならびに三臨の性格上、すぐに全部が生活費に使われることはないだろうとの考えで決めたものである。」というふうな全く会社側の見解で、いまの狂乱物価の中での労働者の生活、あるいは生活費の需要状況というのが前提じゃなくて、三月臨給だからすぐにみな使わぬだろうというふうなことが前提で五〇%をきめたというふうなことを言っている。それに対して労働組合は、「社内預金を受け入れる前提が二点ある。第一点は預金はあくまで自由であり義務づけないこと、第二点は引きおろしは自由とすることである。」というふうに二つの問題点が出されて交渉がなされているわけです。こういう文書が出されておる。  それから、その次に3、の「事務処理」のところで、(1)「振込対象者の確認」という項で、こういうふうに書かれている。「四月までの退職予定者、他社出向者、海外駐在員、休職者、嘱託およびその他特別の事情がある者などで振込みを希望しない者は、三月十一日(月)正午までに人事担当課を通じて人事部まで社員番号、氏名を通知願いたい。」、それから(注)として、「支給事務の都合上、期日までに申出がない分については、社内預金口座振込者として取扱う。」というふうにいわれているんですけれども、これはまあ、大体社内預金五〇形協力をしないと言うたら、——人事部まで通知をせよと言われたら、職場では少々いやだと思っても、にらまれるのはかなわぬから、やっぱりいやいやでも協力しようかということにならざるを得ない。非常に強制的な要因というのは強いと思うんですけれども、御見解どうですか。
  63. 岸良明

    説明員(岸良明君) ただいま先生がお読みになりました事項、私も拝見をしておりまして、確かにこれはこういうがちがちした手続をやりますと、これは心理的には相当な強制になると思います。ただ、そうだからといって、これをもって強制的に預金をせしめたという形の判断ができるかというと、ちょっとこれは問題がございますが、まあ、そういうような心証はございます。
  64. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 当然文書だけではそういうふうになると思うのです。  ところが、職場ではどういう状況が起こっているかというと、これはそれぞれ労働者の家庭の事情が違うわけで、当然金が要るから預金には協力できないという方があって、職場で断わられますと、直属の上司の方から説得をされるだけではなしに、——直接の上司の方から、まあ、そう言わないで、会社の方針だから何とか協力せよと言われた。いや、それでもうちは困るのだということで断わったら、さらにもう一段上の幹部からわざわざ協力を要請されて、断わり切れなくて協力をさせられたという人、これはあるんですよ。  あるいは、もっとひどいのは、断わった人は職場でも説得をされる。ところが、お断わりを申し上げた。そうすると自宅まで、直属の上司ではなしに、もう一段上の部長級から電話で協力を要請されたというふうな状況が出てきているわけなんです。  文書ではこういうふうになってて、この文書だけでは、強制のにおいはあるけれども強制だとは思えないというふうな御見解ではありますけれども、実情として職場ではそういう事態が起こっている。これは事実です。  で、これは当然住友海上火災では十億円余りの三月臨給を支給したそうですから、五〇%社内預金というのは、五億円が社内預金になるので、それは確かに会社としては資金運用上たいへん役に立つと思うのですよ。しかし、労働者に支給した金を強制的なにおいをもって、しかも職制を通じて、本来任意であるべきものにこういうやり方をしている。こういう点については、いまおっしゃった、先ほどからおっしゃっておる御見解の、本来自由であるべき、あるいはは自主的であるべき問題とは非常に趣を異にしているというふうに思うのですが、もう一ぺん御見解を伺っておきたい。
  65. 岸良明

    説明員(岸良明君) この社内預金につきまして、住友海上の場合には、これを設定する際に、監督署のほらに所定の手続を踏んでおりまして、これは社内預金制度としては正規の制度でございます。  ただ、いま御指摘のような事情、私ども詳細にまた事実に即して調べていませんので、何とも申し上げられませんけれども、やはり運用面について若干御指摘のような問題があるだろうという感じはいたします。
  66. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 住友海上の社内預金の協定というのは、労働組合との交渉できめられておる。それはしかし、一口が千円で十口までと、毎月ね。臨給の場合には三倍までと。その三倍までというふうなことが労働組合とではきまっておる。そんな五〇%なんというようなことはきまっていない、これは。これは特殊事例です。  さらに理解をしがたいのは、いま申し上げたようなことが、冒頭で申し上げたように、三月五日付で文書が出ている、人事部長名で。ところが、この三月臨給の妥結をしたのは三月の七日なんです。妥結以前にそんな文書を各所属へ全部配っているわけですよ。で、労働組合と交渉しておるのは三月六日です。先ほど私は労働組合の交渉文書を読みましたね。これは三月六日の議事録。その前の日にちゃんと出してしまっている、五〇%全員対象で一律だと。それで協力せぬのは人事部長まで所属を通じて報告せい、こういうことになっているわけです。こういうやり方というのは、労働基準法十八条の強制貯金の禁止の少なくとも精神に反するのじゃないかというふうに思うのですけれども大臣の御見解どうですか。
  67. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 前後の事情がよくわかりませんので、先生が御希望のような答弁になるかどうかわかりませんけれども、組合と銀行との話し合いの中のいろんないきさつだと私は思いますが、原則は強制貯蓄じゃないと、その間のやりとりの問題、そしてまた、かりに五〇%という話があっても、お話を聞きますというと、貯金していない人もいるというふうなところも勘案されまして、話し合いの中に円満にやっぱり誤解の生じないようにおやりいただくというところにいまから先の注意すべきところがあるんじゃないか、こう思う次第でございます。
  68. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 事情よくわからぬとおっしゃるけれども、だから事情を詳しく申し上げておるんです。  労働組合と協約が結ばれて協定ができたあとでも、これは本来社内預金というのは自主的なものなんだということは冒頭におっしゃっている。そのとおりですよね。そのとおりでしょう。ところが、私が申し上げたように、まず三月臨給の労働組合との妥結が三月七日なんですよ。ところが、五日付で会社がこういう文書を出している。で、断わった人は何人かあると、確かにあるですよ。断わろう思うたら、職場で断わったらさんざん上司からは協力せい言われると、それでもうちは困るんやと断わったら、家まで部長から電話がかかってくる、断わろう思うたらもうものすごい勇気が要るという状況になっておる。こういう状況というのは、これは労働基準法にきめられておる十八条の精神、これには大きく違反するんではないか。法律に直ちに違反だというふうに言えないかもわからぬ。しかし、少なくとも定められている精神には大きく違反するのではないかというふうに思うのですよ。その点、大臣おわかりになるでしょう。
  69. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 預金の保護の保全措置の強化とか、あるいは管理状況報告の提出義務づけ、さらにまた行政指導による高利率の排除、社内預金制度の健全というものは私たち、はかっているところでありまして、これについて労働基準法の違反があれば、その是正方についてはすみやかに役所としては厳正な指導措置を講ずるほか、労働基準法の精神に沿うてずっといますから先も指導してまいりたい、こう思っております。
  70. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは一ぺん調査をしていただいて、——この労働基準法十八条の精神に反するということの内容について、私は一つずつ申し上げたわけだけれども、そういうことであれば、少なくともこれは一ぺん白紙に撤回をさせるべきだと思う。そうして当然この組合との協約に基づいて、自主的な立場に基づいて、労働省が希望者にやらしていくというふうな御指導をなさいますか。
  71. 岸良明

    説明員(岸良明君) ただいま大臣がお答えになりましたように、結局この問題は運用面の問題だろうと思います。で、私どもも事実をまだ正確につかんでいない面もございますので、もちろん事実の把握のために調査をいたしたいと思います。それから、いずれにいたしましても、この事実の内容を把握した上での判断でございますけれども、やはり基準法の精神に沿うような運用がされるように、私ども、もしもそういう事実があれば、十分に指導してまいりたい、かように思います。
  72. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 基準法の精神に反するような部分があれば、それに沿うように指導するというふうにおっしゃっているのだけれども、その内容ですよ。これはやっぱり一ぺんはっきり、——少なくともその組合と話のきまっていない間に、人事部長名で、各部、各課へ出しているというやり方については、やっぱり撤回をさせるべきだと思う。そらして、やはり組合との協約で話のついた段階で、新たに自主的な立場で、労働者に協力を要請するということをやり直させるべきだと思うのです、少なくとも。その精神に沿うて指導するというなら。そういう点を含めての御見解を再度お伺いをして終わりたいと思うのですけれども、その辺はっきりしておいてください。
  73. 岸良明

    説明員(岸良明君) 労働基準法の上からいいまして、もちろん預貯金の管理契約をする際には、当然過半数の労働者あるいは労働組合と協定を結んで、そういう制度を創設をする、また所定の手続を経ていかなくちゃならぬということは当然でございます。ただ、運用上におきましてどういうふうに運用していくか。これは会社と使用者、労働者との間でそれぞれ話し合いをする、あるいは包括的に労働者話し合いの上で、運用方法までも当初からきめておくということで運用をされていくわけであります。したがいまして、この問題について、どういうような労使間の話し合いになっておるか、運用上そこが問題でございますけれども、私どもも、いまお話を伺ったように、話がきまらぬうちに指令が出ているとか、いろいろ事実にそごする点もございますので、その点も十分注意深く私ども調査をいたしまして必要な措置をとりたいと、かように思います。
  74. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 本調査に関する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時七分散会      —————・—————