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1973-12-20 第72回国会 参議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月二十日(木曜日)    午前十時二十四分開会     —————————————    委員異動  十二月十九日     辞任         補欠選任      矢野  登君     君  健男君      高山 恒雄君     萩原幽香子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大橋 和孝君     理 事                 玉置 和郎君                 須原 昭二君                 小平 芳平君     委 員                 上原 正吉君                 川野辺 静君                 斎藤 十朗君                 小谷  守君                 矢山 有作君                 柏原 ヤス君                 萩原幽香子君                 沓脱タケ子君    国務大臣        労 働 大 臣  長谷川 峻君    政府委員        文部省大学学術        局長       木田  宏君        労働政務次官   菅波  茂君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        厚生省環境衛生        局環境衛生課長  北村 和男君        厚生省児童家庭        局母子衛生課長  本田  正君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (社会福祉施設における腰痛症に関する件)  (国立高専学寮における労働問題に関する件)  (三菱樹脂判決に関する件)  (当面の石油危機に伴う雇用問題等に関する  件)  (婦人労働問題に関する件)     —————————————
  2. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  昨日、矢野登君、高山恒雄君が委員を辞任され、その補欠として君健男君、萩原幽香子君が選任されました。     —————————————
  3. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) この際、長谷川労働大臣菅波労働政務次官から発言を求められておりますので、これを順次許します。長谷川労働大臣
  4. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) このたび労働行政を担当することになりました長谷川峻であります。第七十二回通常国会にあたり、一言ごあいさつを申し上げ、各位の御理解と御協力を得たいと存じております。  私は今後の労働行政を進めるにあたりまして、国民福祉の優先を基本とし、すべての労働者がその能力を十分に発揮し、家族とともに安心して明るく豊かな生活を送れるようにすることを目標として、実効ある対策を勇断をもって推進したいと考えております。具体的には、国民の大多数を占める勤労者の将来にわたる生活の安定をはかるための勤労者財産形成政策拡充強化、ゆとりある生活のための週休二日制の普及促進定年延長促進等の高年齢者対策をはじめとする総合的雇用対策などを積極的に行なってまいる所存であります。また、施策の実現にあたりましては、労使自主的話し合いが円満に行なわれるよう、その環境づくりにもつとめてまいりたい考えでおります。  特に、当面のきびしい経済社会情勢のもとにおきまして、関係労使をはじめ、国民各位の一そうの御理解、御協力を得て、労使関係雇用面の安定など、勤労者のための各種対策をさらに積極的に講じていく必要があると存じておりますので、各位の御鞭撻と御協力をお顔いする次第であります。  以上、皆さま方の一そうのお力添えをお願い申し上げまして、私のごあいさつといたします。よろしくお願いいたします。
  5. 大橋和孝

  6. 菅波茂

    政府委員菅波茂君) このたび労働政務次官を命ぜられました菅波茂であります。今後ともよろしく御教導のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  7. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) それでは、労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 矢山有作

    矢山有作君 まず最初に、労働基準関係のことでお伺いしたいんですが、労働省では重症児施設労働条件実態についていろいろ調査をされ、その結果、労働基準法違反事件があるということで是正勧告を数多く出されておるようでありますが、その勧告を出した結果がどうなっておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  9. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 社会福祉施設、特に重症心身障害者福祉施設労働条件につきましてはいろいろ問題がございますので、私ども監督指導の重点として毎年力を入れて監督指導に当たっているところでありますが、労働時間関係あるいは安全衛生関係等々につきまして違反を数多く発見をいたしているわけでありまして、違反を見つけました場合には直ちにそれを是正させるべく勧告をいたしているわけでございますが、ほとんど全部の事業場におきまして、勧告をいたしますればそれによりまして是正をし、そういう場合には監督署でさらに結果について確認をするようにしておるわけでございます。
  10. 矢山有作

    矢山有作君 気楽な御答弁ですがね。勧告を出される、是正された。ほんとう是正されておるんですか。ほんとう是正されておるんなら、毎年毎年同じところで労働時間に対する違反だとか、その他の違反事件が続出してくるわけがないんです。御案内のように、ことしの春から後も重症児施設における労働条件の問題が非常に問題になったのはあなたも御存じのはずなんです。去年勧告なさった。やっぱりまた同じことが繰り返されておるんです。たとえば善意に解釈しても、勧告があったときに、一時的に勧告を受け入れて是正したが、しかしすぐまた違反を繰り返しておると、こういう実態じゃないですか。その辺はやっぱり正確に実情を把握してもらわぬと、是正勧告しました、回答が改善したと言ってくる、ああそうかと、それで済ましておるんじゃしょうがないと思う。またそのときに、なるほど改善されたかされぬかを見て、ああ改善されたと思っても、それが済んだらまた違反が出ておるんじゃこれは話にならぬわけですから、その点はどうなんですか。これ、正直に言ってくださいね。
  11. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 確かに先生おっしゃるとおり、見つけられると是正するけれども、また違反を繰り返すということではまことに遺憾なことであるわけでございます。で、私どももこの点については、基準法を完全に守らせる究極はやはり自主的な基準法についての順法意識、それぞれの事業主か他人を雇用して労働させる以上、基準法最低基準等を守らなければならないという意識徹底をいたしまして、常時違反しないようにみずから戒めて労務管理に当たっていただくことが絶対に必要であると、かように考えておるわけでございます。そういう観点に立ちまして、労働省といたしましては、監督指導を厳格にいたしますとともに、二、三年前から自主点検方式というのを始めまして、自主点検票を配り、毎年それぞれの事業主に各項目について、自分事業場基準法どおりやっておられるかどうかということを点検記入させる。それの提出を求めて、そうしてそれを監督指導の足がかりにする。同時に、事業主については、そういう機会を通じて、自分のところが基準法違反を知らずにやっているようなことがないかどうか、みずから反省、点検する機会を与えるというようなこともあわせて実行いたしまして、自主的な順守につとめておるところでございます。なお、監督指導をいたしまして是正をさせ、また再度そういうものを何回も繰り返すというようなところにつきましては、単なる勧告にとどまらず、さらに厳重な処置をとり、もし再再にわたってそういうようなことを繰り返す場合につきましては司法処分等もとっている例もあるのでございまして、それらのことによりまして、違反がないように、特に再三にわたって繰り返すことがないように厳重に監督指導につとめておるわけでございます。
  12. 矢山有作

    矢山有作君 いや、そのことだけで効果があがるんですか。たとえば順法意識徹底させる。なるほどそれは法律は守らにゃいかぬぞと言って教育をすることは可能でしょう。それはまあ一生懸命やっておられると思うんです。   〔委員長退席理事須原昭二君着席〕  それからまた、自主点検票をつくらして、労働基準法違反をやったかやらぬか点検票にみずから記入させる。まあよっぽど良心的な人なら、犯したら犯したということを記入するかもしれぬが、まず普通の常識人なら、私は、うちの事業場では基準法違反を犯しましたということを記入するのは、まあまあ普通の常識で言えばまれでしょうね、自分で記入するのは。そういうような措置だけで、その基準法違反を反復繰り返しておる状態是正できるんですか。それだけで是正できるんなら私はものごと解決はまだ早いと思うんです。それを反復して、幾ら言っても聞かない。それに対して文字どおりあなた方が厳格な罰則の適用をやっていくなら、それでものが解決つくとお考えなら、それはそれでそういう認識について私は疑問を持たざるを得ない。それだけでやれるんですか。それだけの勧告をしたり、罰則を適用したり、教育をするだけ、順法精神徹底をさせる教育をするだけではどうにもならぬのでしょう、実態は。それを解決するためには、一体労働省はその重症児施設等労働実態をどうとらえて、どうすべきだと思っておるんですか。これだけでこと足れりなんですか。
  13. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先生おっしゃいますように、われわれが監督指導に力を入れ、あるいは教育等に力を入れましても、やはりそういうものが繰り返される基礎には、こういう施設のいろいろな経営面等が非常に苦しい、まあ、そのためになかなか施設についても十分な改善ができない、あるいは職員定員等も十分でないといったような問題も見られるのでございます。これにつきましては、私ども毎年、これら社会福祉施設について監督指導いたしました結果につきまして、厚生省担当局長等にもそれを通報し、そして、そういう福祉施設職員等の適正な労働条件を確保するためには、やはり国及び地方公共団体において財政上の措置等についても十分配慮して、それらの施設労働条件改善もできるような処置をしていただくことが必要である、そういう面もあることは先生おっしゃるとおりだと、かように考えておりまして、私どもそういう観点から、昨年も私と婦人少年局長の連名で厚生省担当局長にもそういうような申し入れをいたしておるところでございまして、厚生省も、これら施設監督官庁におかれましても、適正な労働条件が実際にそれらの施設で守り得るようないろいろな財政その他の指導援助、こういうものを強化していただくようわれわれも側面からつとめておるところでございます。
  14. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、そういう措置をなさるのは当然だと思うのですね。そういうふうにやはり労働基準法違反事件を多発させないと思えば、その基準法違反事件というのは労働条件が劣悪であるというところから起こってくるわけでしょうから、それを改善させるための措置をその監督官庁に要求するというのは、それはあたりまえの話。ところが、それをやった結果、効果が出ておりますか。去年もやられ、ことしやられ、こうやってきて、効果が出ていますか。効果全然出ていないですね、これ。おそらく去年もやられたんだろうと思う。それでことしその効果が出てますか。ことし効果が出ておるようなら、この春から夏にかけてのような重症児施設における収容児を帰さなきゃならぬ、施設がもたないというような深刻な実態は起こらないはずなんです。勧告をし、あるいは監督官庁に対して善処を要望しても一向に効果が出ない。労働省はそういうような実態に対してどういうふうにお感じになりますか。私はまさに無力な話だと、こういう気がするんですがね。どうなんです。
  15. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 今年もこれら社会福祉施設につきまして一斉監督を実施いたしておりまして、その結果につきましては集計中でございまして、まだ結果が出ておりませんので、具体的に数字的に、まあ、どれだけの改善が前年から見たかということはちょっとまだ申し上げる材料はございませんけれども、私ども厚生省にいろいろお願いをいたしております結果、厚生省も非常に努力をされまして、まあ、前年等に比べて漸次いろいろなそういう財政上の措置等改善する方向措置されつつあると、かように考えておるわけでございます。もっともそれで決して私ども十分だと思っておりませんで、今後ともますます、もっともっとそういう面の充実もしていただかなければならぬと、こういうふうに思っておりますので、さらに今後も厚生省当局に対しましてそういう面でお願いをし、また、われわれも側面から一そう強力に御協力をしてまいりたい、かように考えております。
  16. 矢山有作

    矢山有作君 労働大臣にお伺いしたいんですが、労働基準行政を見ておりますと、いま言った重症児施設等においては、労働条件についていろいろ調査をされる、で、基準法違反事件があるというので勧告をされる、そして、その結果がどうなったかということについては、いまおっしゃるのを聞けばある程度把握しておられるわけでしょう。そしてまた、時によっては、先ほどの御答弁にありましたように、司法措置をとった例もあると、こうおっしゃっているんですが、そしてまた、一方においては、そういうような違法事犯が繰り返し繰り返し起こらないように労働条件改善しなければいかぬじゃないかということで厚生省にも言っておると言う。ところが、実態はあなたも御存じだと思うのですがね、この労働基準法違反事件というのはあとを断たない。そして幾ら勧告をしてもあるいは厚生省善処方を要望しても改善されてこない。したがって、去年もそれをやられたと思うのです、労働省は。ところが去年やっていまおっしゃったように厚生省はある程度漸次改善をされたと言われるが、そういう状態の中にあって、ことしはあれほどの大きな事件が起こった。第二びわこ学園にしても、島田療育園にしてもストライキをしなきゃならぬところまで追い込まれていく。そして、子供を帰さなきゃならぬところまで追い込まれていく。それは何も第二びわこ島田療育園に限った問題じゃありません。全国の民間の重症児施設においてはほとんど全部起こっておる。私どもの地元における学園でも、やはりそういう事態が起こって三分の一からの子供を二カ月も三カ月にもわたって親元に帰さなければ施設の運営ができないという実態なんです。そうすれば、労働省がいままでやってきたことは何ら効果をあげてないということになるのですよ、労働基準行政に関する限りはね。そういう実態をごらんになって、あなたは一体今後どうそれに対処されようとするのか。私は基準行政の中で監督をして、悪いところがあれば是正措置を促すと、厚生省にもこんなことを繰り返させぬように監督しろと言ったと、それだけでは私は済まぬと思う。それをやったら、それがどういう効果を生んだのか、効果を生まなければ効果を生ませるようにどうしなきゃならぬのかということを、私は労働省としても労働者保護という立場から積極的に考えなきゃならぬと思います。あなたのお考えをお聞きしたいのです。
  17. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 矢山委員局長の話をだんだん拝聴しております間に労働基準法違反の問題で、特にそうした厚生省施設などにおいて、一番人間の命を預かる大事なところに改善するところがまだまだ足りないと、私のほうでもせっかくやっておりますけれども、受ける側が御期待のとおりいってないという具体的事例がわかったわけでありますから、私個人といたしますれば、いまのような質疑応答の間の事情等々から勘案いたしまして、いまから先は勧告したそのあとで、どういうふうなものが生まれ、どういういい効果が生まれているかということをフォローアップして、一そう労働省がやっているものを推進していく覚悟をいまきめたわけでありますから、御理解をいただきたいと思います。
  18. 矢山有作

    矢山有作君 これは先ほども基準局長も言っておられたように、こういう労働基準法違反事件が反復続発するというのは、労働条件の劣悪だということにあるわけですから、たとえば一つの例は人手が極端に足らないとこういうようなところにあるわけですから、それを改善するために真剣に取り組んでいただきたい。その責任は労働省にあると私は思う。そういう意味では.厚生省に対して徹底的に要求してもらいたいと思うのです。厚生省は、おそらく四十九年度においては、ことしの経験を踏まえてこういう施設に対する改善措置というものを考えておると思う。しかし、いま厚生省考えておるだけで、この実態解決できるというようななまやさしい状況でもないと。したがって、その辺は労働省厚生省一体となって、実情を把握した上で問題の解決努力してほしいと思います。ただ口先だけで私ども言ってもらっても困りますので、やはり何カ月かたちあるいは一年たつうちには、その成果というものは出てくるわけですから、その成果をあらしめるような方向でひとつ御努力を願いたいと思います。  それから基準局長にお伺いしたいのですが、そういう労働条件調査をやっておる中で、いま一番問題になっておる腰痛症の多発という実態も、おそらく私はある程度把握しておられるんじゃないかと思います。そういう点についてどういうふうに見ておられますか。
  19. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 心身障害者福祉施設等におきまして、保母さん等に腰痛等が近時出てまいっておりますことを私ども非常に心配をいたしておるわけでございます。一方におきましては、それらの方々から業務上の疾病としての補償の請求が出ました場合には、でき得る限り迅速適正な補償を行なうよういたしておりまして、労災補償を行なっている方も数多く出ておるわけでございますが、要は、そういうような腰痛症等発生しないようにすることでございます。そういう見地に立ちまして、監督指導に参りました際には、作業方法等につきましても、たとえば一人の保母さんでかつがないで、できるだけ担架を用いるようにとか、その他作業方法についても、発生を予防する見地からの指導につとめておるわけでございます。
  20. 矢山有作

    矢山有作君 これはどの程度重症児施設腰痛症発生しておるかというような実態は、おそらく労働省もつかんでおられると思いますから、ここで直ちにその実情を御説明願おうとは思いません。ただ多発しておるということだけは認めておられるわけですから、一体、その現状はどうかということは、労働省がつかんでおられる実態の中で、ひとつ資料で提出を願いたいと思います。  それから腰痛病の多発しておるという、その原因というのは、一つは、先ほど来話が出ましたような作業方法等にもあるというふうに思われるし、そのことは、また一つ人手不足に関連をしてくるというふうにも思われるんですが、実際問題として、こういう施設で、聞くところによるとではなしに実態調査してみると、低いところでも七〇%、高いところは九〇%をこえておるというんですね、腰痛を訴えておる者が。そういう状態になるというのは、私はやはりまあ、いろいろな複雑な原因があると思いますが、何の原因かということを私は究明してみる必要があるのじゃないかと思うのです。そういうような発生原因究明ということについて、労働省どういうふうにお考えですか。たとえば労働科学研究所に委嘱をして徹底的なその原因究明をやってみるというふうなことはやっておいでにならぬのですか。
  21. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 腰痛症発生原因につきましては、私どもが伺っておるところによりますと、これはいろいろな原因がございまして、非常に多岐にわたっておって、医学的な鮮明もまだ十分でないというふうに聞いておるのでございます。そこで、私ども先生おっしゃるとおり、そういう原因究明の推進をはからなければならないと考えておるのでございまして、まあ、そういう見地から、従前より、もう何年も前からでございますが、専門家に毎年それらの点についての研究委託を、委託費を出しましてお願いをし、一日も早くそういう原因究明、それに対するどういう処置をとれば特に適切に予防できるかあるいは治療、そういう方面にわたって、どういう処置をとればいいかというようなことが鮮明されることを期待いたしておるところでございます。そういうことで、毎年、そういう関係の、腰痛関係研究委託費専門家に出しまして、研究お願いいたしております。
  22. 矢山有作

    矢山有作君 その発生原因治療方法等について研究委託費を出して、研究を依頼しておるということですが、毎年やっておるというのですから、これまでもたびたびやられたんだろうと思いますがね。その成果というのは、一体、どういうふうに報告されて出てきておるのですか。それほど毎年、研究委託をやって研究を続けておるのに、まだまだ見るべき成果が全然あがってないのかどうか、その辺はどうなんですか。
  23. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 医学的にもこれは非常にむずかしい問題のようでございまして、毎年研究委託し、それぞれについて研究をされました結果については報告をいただいておりますけれども、まだ的確な医学界全体としての、医学的に非常に明瞭になった成果というようなもの、あるいは治療方法といったようなもの、こういうものはまだ医学界として出るところまでいっていないと、こういうように聞いております。
  24. 矢山有作

    矢山有作君 どういうところへ研究委託をなさっているんですか。
  25. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) たとえば、労働衛生サービスセンター委託をいたしましたりあるいは労災病院等腰痛問題の専門家の方等々に委託をいたしておるところでございます。
  26. 矢山有作

    矢山有作君 毎年、そういうところに委託して研究してもらっているんなら、それでなおいろんな意見が出てまとまらぬというのであれば、もう少しその研究委託というものを組織化してみて、早く結論が出せるような方向というのは考えられぬのですかね。たとえば、個々にどこどこの労災病院委託した、衛生センター委託した、こういうようなばらばらな形でなしに、もうこれだけの差し迫った重要な問題になっているわけですから、少し組織的な原因究明研究をやるということはできぬのですかね。
  27. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) もちろんわれわれ、最終的な解明がなされませんでも、いままでいろいろな研究がなされたものに従いまして、予防のためのいろいろな、腰痛を予防するための作業方法等についての指導通達等をこれまで出しまして、できるだけ未然に防止するようにつとめておるわけでございますが、医学的な解明がまだ十分医学界として出されていない点について、さらにどういうような研究体制をとっていただいたらいいか等につきましては、災害医学会先生方とも十分に今後検討してみたいと、かように感じます。
  28. 矢山有作

    矢山有作君 それね、非常に差し迫った問題ですから、そういった原因究明を早急に組織的に進めていただくようにお願いしたいと思います。そして、いままで研究成果に基づいて、作業方法等について改善すべき点を指摘しながら、指導通達を出しておるということですが、その指導通達を一ぺん見せていただきたいのが一つ。  そして、それからその指導通達がそのまま実際に実行されておるかどうか、そういう点はどうですか。
  29. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) いままで出しました指導通達については、後ほど先生のほうにお届け申し上げます。  私どもこれは、指導通達いたしたものにつきましては、基準監督署におきまして、各事業場指導監督いたします際に、それによって指導をし、それをそれぞれの事業場で実施させるように極力つとめておるわけでございます。
  30. 矢山有作

    矢山有作君 そういうふうな指導通達を出されましても、それを守っておれないほど人手不足なんですね。それを実行できないわけです。それが一つは問題なんです。だから一つは、一体腰痛症がなぜ発生してくるのかという原因究明を急ぐということと、そして、それに基づいて対策をとらなければならぬわけですが、作業方法改善なんかを指導されても、いま言ったように人手不足というのが根底にあるわけですから、だから私は、原因解明されても、やっぱりそれとその人手不足の問題が解消されぬ限りは、動きがつかぬ状態であろうと思うんです。したがって、その問題について、これは先ほどもう言いましたから申し上げませんが、積極的に解決をされるように厚生省を全力をあげて督励してもらいたい。政府の責任において、これは対処していただきたいと思うんです。特に、そういう重症児を民間施設委託してやらせているのは、国でやるべき仕事を民間に委託してやらせているわけですから、少なくともその点については、私はそこで働く労働者の諸君について、皆さん方で責任を持って、そういう腰痛症の多発というようなことのないようにしてもらわなければならぬと思います。   〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕  それから一つは、かかった場合の治療の問題なんですが、これはこの間の委員会でも申し上げましたが、一つは、私は施設実態から見て、もういわゆる職業病として指定していいんじゃないか、明確に。これを一つ考えるわけです。しかし、これについては、おそらく検討しなければならぬという答えがはね返ってくるでしょう。そこで、指定ができないんなら指定ができないで、その前段として、私は認定基準を再検討して、もうどんどん迅速に、あまりむずかしいことを言わないで、そういう施設腰痛を訴える労働者については、やっぱり労災の認定をやるということを促進していかなければならぬと思うんです。ところが実態は非常にこの認定がおくれておるという実態があります。認定を申請しても、なかなか認定してもらえない、こういう実態なんだ。たとえば、東京都が労研に調査を依頼して四十八年の七月に七生福祉園と府中の療育センターについての実態を出しておりますが、腰痛を訴えておる者の中で、公務災害の認定を受けられない者が、たとえば府中の療育センターで言うなら、看護婦に六八・四%、保母に九一・六%だといわれておる。それから七生福祉園の幼児棟の保母で五三・八%、児童棟の保母で八三・八%、この人たちが公務災害の認定がないままに過ぎておると、こういう状態なんです。そうして一方、反対に公務災害の認定者はどうなっておるかというと、府中の療育センターで看護婦が五・二%、それから看護助手が一三・一%、それから七生福祉園では保母が四六・一%しか認定を受けていない、こういう状態なんです。したがって、職業病として指定をすることが迅速にやれないんであるなら、その前段として認定の基準について再検討して、どんどん認定ができるような努力をしてもらいたいと思うんですが、その点どうですか。
  31. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 腰痛症等基準法施行規則三十五条の職業病の列記の中に書いたらどうかという御意見でございます。確かにそういう問題があるわけではございますが、ただ先生も御承知のように、腰痛症というのは、業務上の重量物を取り扱った等々によって起きる場合も間々非常にございますけれども、同時にたとえば、中年になるとそういうことでなくても、腰痛になられるというようなこともございまして、いろいろな場合がございます。業務上による場合もございますし、業務上によらない腰痛というのもかなりあるわけでございまして、そういう意味において、規則の中に一括して書くということには問題があるわけでございます。そこで三十五条三十八号のいわゆる「業務に起因することの明らかな疾病」というところに該当するものは業務上とするということで、認定基準によりまして、業務によるものかいなかということを認定し、業務によるものについては補償する、こういうたてまえでいっておるわけでございます。そういう意味で、確かに認定基準の整備ということが必要なわけでございまして、私ども、古くは三十四年にその認定基準をつくりましたけれども、その後のいろいろな実情、それからさらに医学の進歩等々によりまして、四十三年にはそれを改正して新しい認定基準を設けたわけでございますけれども、さらにこれを先生おっしゃるように、適正な基準をつくって、迅速な認定ができるようにするために、この十二月にまた新しく専門家会議を設けまして、もう一度この認定基準を見直す、再検討するということにも取りかかっておるわけでございますので、できる限りすみやかに適正な認定基準を専門家の御意見を聞いてつくりまして、そうして迅速にしかも公正な認定ができるというようにいたしたいと、かように考えます。
  32. 矢山有作

    矢山有作君 それはなるほど中年になれば腰痛症を訴える人もある、こういうお話ですが、施設実態を見ると、二十キロから六十キロぐらいの子供、これ、動けないんですからね、全然。それをベッドからだいて食事さしたり、あるいはふろ場へ連れていったり向きを変えたりいろいろやって、これは調べによると一日に一人が四十一、二回ぐらいそういう重たい子供をだきかかえて仕事をやっておるというんですから、しかも発生実態がいま言ったように七、八割から九〇%をこえる、多いところでは。そういう実態ですから、私は職業病として指定するのにそんなにむずかしい問題ではないと思いますが、しかし、これはひとつ検討していただきたい。そうして認定の問題については、先ほどおっしゃったように、私は迅速に認定ができるように処置をしていただきたいということをお願いしておきます。  それからもう一つ聞きたいんですがね、労働安全衛生規則の六十一条に、「病者の就業禁止」の規定がありますね。その中で一号、二号、これは大体わかります。三号に「心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかった者」それから四号で「前各号に準ずる疾病で労働大臣が定めるものにかかった者」こうあるんですが、特に四号の「前各号に準ずる疾病で労働大臣が定めるものにかかった者」というのは、どういうものを予想しておられるのか伺いたい。
  33. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 腰痛に限らず、何の疾病でございましても、疾病に労働者がかかりまして、医者がその疾病の治癒のために就業が不適当だと、休ませる必要があるといったような診断がございました場合に、それを医師の診断に従って処置すべきは、これはもう事業主として当然のことであると考えるのでございます。で、ただ、腰痛の場合で申しますと、これはやっぱり腰痛といってもいろいろ、重い場合もありましょうし、軽い場合もありましょうし、就業を禁止したほうがいいという。医者が、診断であれば、それは休ませることになりますけれども、重いものをかつがない、重いものを持たない職場でなら働かしてもいいというような場合もあるわけでございます。施行規則の六十一条のほうは、先生御指摘のように、たとえば伝染病のように、他人に迷惑をかけるおそれがある、あるいは精神病のように自他を傷つけるおそれがある、それから三号は、これは「心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪する」云々、これは大体生命に直ちに危険があるといったようなものを掲げておりますわけでございまして、腰痛の場合には、先ほども申しましたように、直ちに生命に危険が云々という場合は通常ございませんし、また、病状も区々でございまして、全部が全部休ませなければならないものとも限りませんので、六十一条にこれを掲げることはいかがかと、かように考えるわけでございますが、そういう疾病にかかりました方の病状が悪化しないように、あるいはできるだけすみやかにおなおりいただくために、医師の指示に従いまして、作業の転換等々の、場合によればそういう必要な措置も講じながら、労務管理として事業主が適切な処置をとるように指導いたしておるわけでございます。
  34. 矢山有作

    矢山有作君 やあ、四号の中身についてちょっともう少し具体的に説明をしてくれませんか。つまり、四号は「前各号に準ずる疾病で労働大臣が定めるものにかかつた者」と、だから具体的に「労働大臣が定めるものにかかつた」というておるわけですから、労働大臣はどういうものを定めるという内容を持っておるのかということです。
  35. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 六十一条四号の「前各号に準ずる疾病で労働大臣が定めるものにかかつた者」というものにつきましては、現在までのところ、指定したものはございません、これは一号、二号、三号それぞれの趣旨は、先ほど申し上げましたようなわけでございますが、それではないが、それに準ずるような、新しい事態の疾病等ができました場合に、適切に対応できるための規定でございます。現在までのところ、これを発動して、規定を定めたものはございません。
  36. 矢山有作

    矢山有作君 いまの解釈聞いておりまして、なかなかきびしい御解釈のようですがね、生命の危険があるような場合と、こういうことばも使われたんですが、しかし、腰痛症だって、これはほっておきますと、どんどん、どんどん病勢が悪化していけば、私はそれがもとになって、いろいろな病気を惹起して、生命の危険にさらされることはあると思うんですよ。だから、重症児施設のようなところに働いておる労働者については、やはりぼくはある程度この六十一条の適用の問題というのを検討する余地があるんではないかと思って聞いた。それであなた自身も、衆議院での四月十七日の社会労働委員会で、この六十一号の適用について検討してみるとおっしゃっておるようですからね、検討して、実際に見込みがあるのかないのか、全然これの適用の見込みがないのに、その場を、検討してみますと言って逃げたんじゃ、これは話にならぬのでね、全然適用の見込みがないんならないと、しかし、ほんとうに検討した結果、これはやっぱり腰痛症も、ほっておけば病状が悪化する、それがもとでいろんな病気を起こす、生命の危険につながるおそれがある、したがって、検討の余地があると言うんなら、それは検討をしてみるでもいいと思うんです。その辺ははっきりさしておいてもらわぬと、検討検討で、いいかげんで逃げられちゃたまらぬのでね、どうなんですか、それは。
  37. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 私どもは、先ほど申しましたように腰痛につきましては、直ちに生命に危険があるというようなことはほとんどない。しかも病状も区々であって、一律に就業禁止をしなきゃならぬというものでないというふうに、その後専門家には聞いたわけでございますが、先生おっしゃったように、腰痛も特殊なものについては、それが余病等を併発して、生命の危険といったような問題もあり得るという御指摘がございましたので、どういう場合にそういうことがあり得るのか、そういうような要件を明確にすることができるかどうか、その点については、さらに検討をしてみたいと、かように存ずるわけでございます。  なお、法令上におきましても、安全衛生法の六十六条の六項に、「事業者は、——健康診断の結果、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、当該労働者実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮その他の適切な措置を講じなければならない。」という規定があるわけでございまして、就業禁止まではしなくてもいいというような方については、これらの安全衛生法の規定に沿いまして、私ども事業主にそれらの適切な措置をとるように指導をいたしておるわけでございます。
  38. 矢山有作

    矢山有作君 いま、あなたが指摘されたような、適切な措置をとるように指導いたしましても、それを守り切れぬような実態重症児施設職員は置かれておると、このことを頭に置きながら処置してもらわなきゃ困るんです。  それで、最後に申し上げますが、要するに、労働基準法違反徹底的に追及していけば、これは現在の民間重症児施設はほとんど成り立たないでしょう、おそらく。そこであなた方のほうは、労働基準法を守らせる、そういう責任がありながら、福祉施設実態が、それを徹底的に追及すれば成り立たぬ実態ですから、そこらに、その基準法違反事件基準法を守らせる姿勢にやっぱり問題が出てくるのじゃないかと、そうすると、この基準法を守らせるためには、守らせるような場をまずつくることを考えないといかぬ。そうすれば、どうしてもこれは民間重症児施設の現在の人手不足その他、労働条件改善が急務なんですから、これは重ねて強く指摘しておきますので、厚生省によく話をして、ぜひともこの問題の解決に対して努力してもらいたいと思います。  それから次に移りますが、先般のこの委員会で問題にいたしました国立の津山工業高等専門学校の問題でありますが、労働基準監督署のほうから調査をしていただきました結果、基準法違反があるということがわかって、数点にわたって是正勧告が出ました。そうして十二月の十日ごろまでにその処置報告しろというようになっておるようでありますけれども是正勧告がどういうふうに処理されたか、それをお伺いしたいと思います。
  39. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先般の当委員会でも申し上げましたように、津山高等専門学校の寄宿舎食堂の炊事婦の労働条件につきましては、時間外労働の点、あるいは休日労働などにつきまして、法違反がございました。また、時間外労働の割り増し賃金の算定方法に誤りがございましたので、津山の労働基準監督署は、十一月の十三日に文書で是正勧告をいたしたわけでございます。これに対しまして、相手方からは、その指摘された違法な時間外労働、それから休日労働につきましては、昨年から今年の初めにあった事実であって、現在はすでに行なっていないし、今後も行なわない旨の確約をしたという報告を受けております。  また、割り増し賃金の算定方法が適切でなかった点については、本来支払うべきであった額とすでに支払った額との差額を、二年前にさかのぼってこの十二月五日に支払ったという報告を受けております。
  40. 矢山有作

    矢山有作君 それから、最低賃金の問題についても勧告がなされておるようですが、これはどういう報告がありました、最低賃金に関係して勧告があったようですが。
  41. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 最低賃金違反の点につきましては、炊事婦の方に実際に支払った賃金が最低賃金に違反していたという事実はなかったので、ございます。ただ、定められております給与表の規程上にはその最賃違反の規程まで入っておった点があったわけでございますので、その給与表も最賃に違反しないように規程を直したという報告を受けております。
  42. 矢山有作

    矢山有作君 文部省にお伺いしたいのですが、この間承ったところによりますと、高専の学寮というのは、大学の寮と違って、単なる厚生施設ではない。これは、教育施設としての位置づけを持っておるのだというふうなお話がありました。  そこで、お伺いしたいのは、この学寮の食堂の運営の形態は大体どういうふうになっておりますか。
  43. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 高専すべてに学寮を持っておるわけでございまして、高専の学生が大学の学生よりは年齢的にも若い層から入っております関係上、その学寮の生活等を通じて、より教育的な配慮を加えていく必要があるというふうに考えておるところでございますが、この寮におきます食事のあり方、食堂のあり方等につきましては、多くの高専が大体大学の寮と似たような運営方式をとっておりまして、考え方といたしますと、食生活の面は、自分たちの負担と自分たちの配慮で処理をしていくという考え方の者が多うございます。高専、国立で五十二校ほどございますが、そのうち商船等のように全寮制をとっておりますところを別といたしまして、考え方としては、食生活の面は寮生の立場で処理をしていくという考え方をとっておる次第でございます。
  44. 矢山有作

    矢山有作君 抽象的な話ですが、じゃ、こちらのほうから具体的にもっと聞きましょう。  たとえば、学寮を設けておる以上は、これは食事の問題というのは抜きにできぬので、人間めしを食わずにおれば死ぬわけですから、したがって、学寮を教育施設の一環として位置づけてやっておる以上、この学生の食生活というものはその中できわめて重要な私は部分を占めてくると思う。だから、あなたが言っておるように簡単にものを処理するわけにいかぬので、そこで具体的に聞きますが、その学寮の食堂における炊事婦の雇用の形は、大体学寮ではどういう形をとっておるのですか。
  45. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 多くのところにおきましては、寮生のために教職員のしかるべき者あるいはその他寮生の利益を守り得る者が雇用者として炊婦を雇用する、こういう形態が一番多く見られるわけでございます。
  46. 矢山有作

    矢山有作君 もっと具体的に言ってください。
  47. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) 局長、具体的にと言っておられるのだから、きちっと質問に合うような答弁をしてもらわないといけません。
  48. 木田宏

    政府委員(木田宏君) たとえば、学校で行なっております炊婦の委嘱でございますけれども、学校の責任者が、かなりの場合は校長でございますが、校長が、寮生の利益のために寮生の私的な立場を代表して炊婦を委嘱する、こういう雇用の形をとっておるわけでございます。
  49. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、校長が炊事婦を雇用するという形をとっておるということですね。だから、形式的には、校長名で炊事婦を採用しておると、こういうことなんでしょうか。
  50. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 校長の名前で炊婦の採用を委嘱しておる、形式的にそういうところがかなりたくさんあるわけでございます。しかし、学校の中におきましては、矢山先生も御案内のように、すべてが公経済だけで回るという部分だけではございませんで、児童生徒のために、学校の責任者がその児童生徒の私的な経済関係を代表するという領域がかなりございます。たとえば、修学旅行の金を集めて旅費を払うとか、あるいは子供たちの食事代を集めまして食材料費を学校で調達をする。しかし、これは、現在の段階では、必ずしも公の会計で行なわれておるわけでございませんで、私的な活動として子供たちのためにそういうことをやっている、こういう形態がかなり一般的に見られる次第でございます。
  51. 矢山有作

    矢山有作君 そういう校長名で、まあ、あとの話はよろしい、私も大体文部省の言い分はわかっていますから。だから、校長名で炊事婦を雇用しておるのが何校くらいあるか。  それからもう一つあなたが指摘されたのに、校長でなしに父兄の利益を守り得る者が炊事婦を雇用するという形をとっているところもあるというのですから、それは具体的にはどういう形になってあらわれておるのか、で、そういうところは何校ぐらいあるのか、その点どうですか。
  52. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 校長の名義で委嘱をいたしておりますところが十三校ありますし、担当の部長の名義で委嘱をしておりますところが三校ございます。学生課長の名義で委嘱をしているところが一校ございまして、そういう意味では、そういう発令形式をとっておるところが十七校あるわけでございますが、ほかに後援会等が寮のまかないの委託を受けて運営しているというところも十五校ほどございます。
  53. 矢山有作

    矢山有作君 その場合、一つは、たとえば学校長あるいは学生課長あるいは人事部長、それが発令して採用した場合、それは大体——大体でなしに、全部職員を使っておりますね。たとえばこういうことになっているのではないですか。一つの例ですが、「人事異動通知書、氏名何のだれべえ、現官職、異動内容、八号俸を給する(昇給)、昭和四十何年何月何日、任命権者何々学校長何のたれべえ、何々学校長の印」と、こういうふうな形でやっておるわけですね、具体的に言うと。
  54. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま申し上げました個々のケースにつきましてすべていま御指摘のような発令形式をとっておるかどうか私、ちょっとつまびらかにいたしておりません。御指摘のような事例も場合によるとあろうかと思います。
  55. 矢山有作

    矢山有作君 それでは次にお伺いしますがね、その場合の、——その場合というのは、たとえば校長あるいは学生課長あるいは事務部長がその資格において発令をして雇用したる場合に、雇用関係はどうなっているんですか。雇用関係はだれとの間の雇用関係になっているんですか、その場合は。
  56. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 経理の実態等から勘案いたしまして、学生集団あるいは寮生集団の代表としての校長が雇用関係の担当者である、こういうふうに考えるわけでございます。
  57. 矢山有作

    矢山有作君 それでは次に伺います。「支出負担行為の事務」で「学寮における経費の負担区分について」という通達が昭和三十九年二月十八日に出されておりますね。それの中で、学寮経費の負担で学校の負担すべきものと、それから寮生の負担すべきものと、これに分けてありますね。そして寮生の負担すべきものはどういうものかということで具体的にイロハニホヘと列挙してあります。それは人件費であり電気料であり水道料であり燃料費であり食事材料費であり消耗品費です。そして、その寮生が負担すべきものという「イ」の「人件費」、 これについていわゆる具体的に何というんですかね、説明書きがしてあります。「イ 人件費」「寮生の炊事のための炊事人の手間代(ただし、学寮の給食形態の如何を問わず、炊事人は、学生・生徒の個人的使用人として扱うことは適当でなく、学校の営造物管理に服するものであることの趣旨を徹底すること。)」、こうなってます。このいわゆるカッコ書きのところはこれはどういうことをいっておるんですか。私は、これは法律的に解釈すればいろいろあると思うんですがね。どうも解釈が、両面の解釈ができそうな気がしてわからぬのですが、どういうふうに解釈したらいいんですか。
  58. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 当時の関係者に直接確かめることがまだできておらないんでございますけれども、私ども今日の段階におきましてこの負担区分の考え方は、従来の大学や高等専門学校でやっておりましたように、炊婦、まかないというのは寮生自身がそれぞれやることであるという感覚が一般の寮の中に流れておるものでございますから、そういう意味で寮生が経費を負担し、自分で炊事婦を雇い入れていくという実態が一般なんでございますが、その場合にも学校の寮というところで勤務することでありまするから、寮のたとえば自治会委員長が個人的に、というような考えでなくって、全体のことを考えて、学校の寮としての勤務ということを意識してもらうようにしろと、こういう趣旨に理解をしておるわけでございます。
  59. 矢山有作

    矢山有作君 これは私が先ほどいろいろに解釈できるなあということを言ったのは、これはよく聞いておっていただきたいのですがね、私も法律はしろうとですからね。一つはこういう解釈ができるんじゃないでしょうか。もう一ぺんくどいですが言いますが、「(ただし、学寮の給食形態の如何を問わず、炊事人は、学生・生徒の個人的使用人として扱うことは適当でなく、学校の営造物管理に服するものであることの趣旨を徹底すること。)」これを見て、一つ感ぜられるのはどういうことかというと、先ほど来あなたも言っておられるように、この炊事婦の人件費は寮生の負担で払っておるんだから、炊事婦が寮生の個人的使用人のように解釈されるけれども、しかしそうではないんだと、そうでばなくて、学校との間に雇用関係があると、こういうことを主張しておるようにも受けとれる。  それからもう一つは、逆にこういうふうにも受けとったんです。学校との間に雇用関係はありませんと、それは炊事婦の人件費は寮生負担なんだから、学校との間の雇用関係はありませんと、しかし、雇用関係はないけれども、学校の営造物管理に服せさせなきゃいかぬから、わざわざこの文句を挿入したんだ、つまり両面の解釈ができるんですね。私は一体どちらの解釈をとったらいいんだろうか。もし常識で言うなら、学校との間に雇用関係があるんであれば、この学校長の管理権限に服することはあたりまえの話なんだから、こんなカッコ書きは要らないわけです。そこで私は疑問提起をしたんです。そうすると、いまのあなたのお話でいくと、学校との雇用関係は否定されるわけですね。つまり寮生との雇用関係なんだと、寮生の代表としての校長が炊事婦との間に雇用関係を結んでいるんだ、こういうことになりますね。その場合、校長ということばを使うとまぎらわしいから、校長の資格においてではないんですね。校長の私人として、個人としての立場の雇用関係だ、こういう意味ですか。
  60. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 学寮のいろいろ長い間、今日までまいりました運営の実態から見て、いまお尋ねいただいたようなことであろうと考えておる次第でございます。
  61. 矢山有作

    矢山有作君 そうするとね、私は、これはいろんな問題を引き起こしてくるおそれがあると思うのですね。こういうふうに、私人としての校長が炊事婦を雇って、学寮の給食一般をやっているわけですね。そうなると純法律的に、まあ、私は何もことばの遊戯を弄するわけじゃないけれども考えたらこういうことになりませんか。つまり、その炊事婦は私人としての校長との間には雇用関係はあるわけですね。だから、私人としての校長の言うことは聞かなきゃならない、学校との関係は何もないんですからね。これは学校の校長という資格において炊事婦を指揮監督する権限は何もありませんよ。その辺はどうなるんですかね、こんなことでいいんですか。
  62. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま、御指摘になりましたような論理になろうかと思います。そこで、先ほど御指摘もございましたように、念のための注意書きを入れて、まあ、調和のことも考えるようにしてくれという意味でおそらく入れたものだというふうに考える次第なんでございます。
  63. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、調和のためにこういうことを入れてあっても、これはすなわち学校長としての炊事婦に対する指揮監督権限、管理権限の法的な裏づけにはならぬでしょう、これは。法的に言うなら、炊事婦は学校とは全然無関係なんですから、したがって、学校の管理権は及びませんよ、これは。そういう状態教育施設である学寮の食堂の運営をやっておって、もし、事故が起こった場合、この処置はどうなるんですか。これは、私は冗談じゃないと思いますよ、こんなあやふやな関係にしておいて。その点はどうなんですか。
  64. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 事故が起こりましたときの責任につきましては、その事故の具体のあり方によって、また考えなければならないことがあろうかと思います。学校の中にはいろいろな活動がいろんな形で入ってまいりますものですから、学校の中で行なわれておる活動がすべて公経済のもとですっきりした形で行なわれておるというわけでもございません。いま御指摘のように、寮生が自分で入れてまいりました炊婦でいわゆるうまい、まずいというようなまかない征伐等も繰り返してきたわけでございますけれども、そういう過程で事故が起こりました場合に、いま御指摘がありましたような論理でまいりますと、これは寮生自身の問題だということに一応第一義的にはなろうかと思います。しかし、そうしたことを学校の一部分として認めておると申しますか、また、そういう方向に運営さしておるという非常にこう、包括的な意味での学校の管理責任というのは、これは残るわけでございますから、そのような責任が具体のケースについてどの程度及んでくるかということは、発生いたしました個々の事例によって考えていくほかはなかろうかと思っております。
  65. 矢山有作

    矢山有作君 このことは学校長が私人として炊事婦との間に雇用関係があるということでものを考えておられることは、このことは後援会雇用の場合も同じですね。後援会の場合に、後援会長何のたれべえが炊事婦との間に雇用契約を結んでおる。こうなると、その後援会長とその炊事婦との間の雇用契約になってしまう。ところが、後援会なるものが一体どういう性格の団体なのか、法律的にいって。ここに問題が残ります。その議論はしばらく置いておくとしても、いわゆる私的な雇用関係になる。学校との関係は全然ないわけです。したがって、学校が炊事婦に対して、いうところのいわゆる指揮監督、管理の権限は及ばない。一般的な学校施設内の問題としてのそれは管理権はあるでしょう。たとえば、その炊事婦が授業に差しさわるような大声を出したり、不法行為によってガラスをこわしたり、戸だなをこわしたりする、そういう場合にはそれは及びます。しかし、炊事婦の炊事婦としてのやっておる仕事については、これは直接学校からの管理監督の権限は及ばない、あなたもうなずいておられるから。そういう状態にあるわけですよ。そうすると、そういうあやふやな状態にあって、責任の所在の不明確な状態にあって、しかも、あなたがおっしゃったように、学校の施設の中でいろいろな事件が起こればその態様によって責任の所在はきまるというような意味のことだったのでしょう、あなたが言われたのは。しかし、最終的に言われたのは、学校の責任というものは残るとおっしゃったわけだ。そうすると、そういうあやふやな雇用関係、つまり学校の指揮監督、管理の権限が及ばないような雇用関係を放置しておいて、学校が事件発生のときに責任を負うというようなあやふやなことは望ましくないじゃありませんか。むしろ学校が学寮の管理運営全体、ましていわんやその食堂の経営についても最終的には何らかの責任を負わなきゃならぬという状態であるなら、負わなきゃならぬということであるなら、それは雇用関係を明確にして、雇用の責任の所在を明確にして、その中で指揮監督、管理が直接できるようにしておいたほうが、これが正しいあり方なんじゃないですか。私はその点のことが聞きたい。
  66. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま矢山先生の御指摘になりました御見解は私も筋の通った一つのお考えだというふうに、わからないわけではございません。ただ一面におきまして、学園におきます学寮のあり方につきましては明治以来の長い行きがかりがあるわけでございますけれども、学校の、何といいますか、筋の通った管理権ということではなくて、学寮の管理について寮生の大幅な自治にゆだねるというような慣行が積み上がってきておるわけでございます。ですから、先ほどもまかない征伐等のことばも使いましたけれども自分で共同自炊をしてみたり、炊婦を入れてきたりという、長いいろんな個々の学校に、それぞれ違った慣行でございますけれども、その積み上げがございまして、その積み上げを学校としてはまた容認してきた。それも一つの意味があるものとして容認してきたという実態があるわけでございます。それが今日、学園の学寮を通じましていろいろとすっきりいかない問題になっておる。私どもも何とか、——この状態のままでいいというふうにも思いませんけれども、さらばといいまして、すべてがその学校の責任で全部やってしまうことがこの際いいかどうかという点につきましても、にわかに踏み切れない問題もあるものでございますし、またもう一つは、現実の、これは国の経理の問題とか、いろんなこともございましょうが、学校のそうした活動そのものを考えますときに、どうしても私の経済的な活動というものが学園の中に入ってこざるを得ない面がございます。先ほども例もあげましたけれども、修学旅行に行くとかいう場合の旅費の積み立て、これも半ば公でありながら公経済ではございません。そういうようなものが学園の中にあるものでございますから、いま御指摘のような御意見ですっきりとすべてを割り切ってしまうということができないで今日に至っておる次第でございます。
  67. 矢山有作

    矢山有作君 あなたのいまの説明を聞いておると、これは私は大学の自治寮のことを言っておられるんじゃないかと思うんですがね。これは、それなら国立高専の寮は大学の自治寮と同じ位置づけだと解釈していいんですか。あなたは先ほどは、学寮については、これは国立高専の学生は未成年なんだから云々ということばがあった。それで未成年だからおそらくあなた方は相当きびしいこれは規律を課してやっておられるのだろうと私は理解しておるんですよ。もし、あなたがおっしゃるような自治寮と言うんなら私は即刻やめてもらいたいんだな、こんなことは。「国立高等専門学校低学年全寮制の実施について」という、これは通達を出していますね。この中身を見ると、たいへんな規律、規制を課していますよ。これはあなた、「寮監」を置いたり、あるいは「当直教官(指導教官)」としてありますが、こういうものを置いて学生の生活指導をやるんだと、こういうようなことになっておる。そこらから見ると、あなたが言っておる大学の自治寮とこの国立高専の学寮との間に私は性格的に相当な大きな違いがあるんじゃないか。つまり大学の自治寮というのは成年に達した諸君が自治を主体として運営してきたという歴史的な伝統がある。そのとおりです。それはそれで私はいいと思うんですよ。ところが、あなたが先ほど国立高専は未成年者の集まりだとおっしゃった。だから未成年者が直接人を雇って云々ということはできぬ、だから校長を代表にして炊事婦も雇っておると、こういうことなんでしょう。そういう未成年者であるという認識があるから、こういうきびしい通達を出して、「当直教官」を置いて生活指導までやってきびしい教育をしていこうと、こういうしかけになっておるんでしょう。大学の自治寮と高専の学寮とだいぶ違うんじゃないですか、性格が。私は、もし国立高専の学寮もあなたがいまおっしゃったような考え方でいくんだとおっしゃるんなら、この通達はやめてもらいたいですね。ほんとうに自治寮として学生の自治に大幅にまかしてもらいたい。何のために「当直教官」を置いてこまごまとした生活指導までやって学生を締めていかなければならぬのか。それはあなた矛盾ですよ。
  68. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 昔の高等専門学校におきましても、学生のすべてが成人に達していたというわけではございません。そうして、この学寮の、今日の工業高等専門学校の学寮におきましてもその位置づけは各学校によって、その学校の教育方針によってそれぞれ違っておるかと考えております。と申しますのは、十八校ほどの、——全学年の全寮制は五校でございますし、低学年の全寮制を教育の方針としてとっておるところは十三校ほどございますが、その他の三十四校は必ずしも入寮を強要しておるわけではございません。したがいまして、先ほどの一、二年の低学年に対してすべての学生の入寮を求めて生活面の指導も含めて指導するという学校に対しましては、私どももその学校の方針に沿うようなかまえをして必要な措置をしなければならないというふうに逐次その措置をとってきておるわけでございます。まだ三十四校のその任意にこの生活の便を供し、また、あわせてそのことについての教育的な意味ももちろん否定されることはないわけでございますけれども、学校の方針として強要してない学寮につきましては、その大きな考え方が大学のいままで積み上げてまいりました一つ考え方と似た方向指導しておる。ただし、先ほど冒頭にも申し上げましたように、そこに入っておる学生の年齢層等のことを勘案いたしますと、十八歳をこえた大学生の場合とは指導上の注意、あるいはその他の配慮をやはり加えておく必要があるということは考えておる次第でございます。
  69. 矢山有作

    矢山有作君 そういうようなことばの先だけでごまかしてもらっちゃ困る。なるほど「国立高等専門学校低学年全寮制の実施について」ということによって全寮制を実施されておる学校はあなたのおっしゃったとおり、あとは任意寮制をとっております。ところが、全寮制の実施の学校については、先ほど指摘しましたような「当直教官(指導教官)」なるものを置いて、学寮に教官が宿泊して積極的な生活指導までやるんだと、それは学寮は単なる厚生施設ではない、教育施設なんだから、そうやるんだと、こういうことでやってきて、そういう通達が出ているわけでしょう。しかもその通達の備考の中には「学則には、第一学年、第二学年の学生は校長が特に認めた場合を除き、入寮を条件として在学が許可されることを明示すること。」、裏返すならば、退寮は退学を原則としておると、こういう実情だといわれております。私は現実に聞いておる。こういうようなきびしい制度を課しておいて、しかも任意寮制の学校に対してそのまままさに自治を認めておりますか。そうじゃないでしょう。現実には任意寮制をとっておるところの学校に対しても、学寮に関する限りはこの通達にのっとってやれということを強要しているじゃありませんか。あなたは首をかしげているけれども、任意寮制の学校はみなそう言ってますよ。全寮制を押しつけて、そして、わずかばかりの寮の運営に対して国庫補助を四十八年度からつけだした、それはそれでいい。しかしながら、任意寮制をとっておるところについて一片の国庫補助も考えない。炊事婦の身分はきわめて不安定なままに放置しておいて、低賃金で放置しておいて、そして、しかも学寮の経営に対してはこの規則を強要しているじゃありませんか。そういうようなごまかしでは困るんです。だから、はっきりと任意寮制については一切文部省は口出しをしませんと、完全な自治を認めるとおっしゃるのかどうか。それならそれで私どもはまたものの考えようがあります。しかし、そうでなくて、国立高専についてはあなた方は全寮制をやるんだと、ところが、一挙に全寮制はなかなか進まないから、現実には任意寮制をとっておるところにも全寮制に準じたことをやらしていくんだということになるなら話は別ですよ。そこらの見解をはっきりしてください。
  70. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 現実の姿といたしまして、先ほど申し上げましたように、低学年の全寮制をとっておる学校がありますが、そうでない学校もございます。文部省の方針としてすべてを全寮制にしなければならぬというふうにいま考えているわけでもございません。やはり、その学校の教職員教育の方針というものによって運営されてしかるべきかと思います。ただ、そうした任意寮の場合には、寮の運営はすべて寮生の自治でいいかという問題でございますが、その自治の範囲等につきましては、やはり学校の中の一つ生活施設ではありましても、学校の中の寮のあり方として無限定な自治があるというふうには考えておりません。おのずから入寮してまいります学生の発達段階に応じまして必要な指導が加えられるべきものと、このように考えております。
  71. 矢山有作

    矢山有作君 ことばの言い方はどうでもいいです。要するに任意寮制にするかどうかということについては、あなたがおっしゃったような当該学校の教育方針にまかせるならまかせる。まかせた以上はこの全寮制についての通達は強要しない、このことを明言できますか。それだったらそうしておいてください。そうせぬと、議論をしおる最中に学寮の位置づけをまさに根底からゆるがすような、大学の自治寮の例を引っぱってきてべらべらしゃべられたんでは議論がかみ合わぬです。
  72. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 学校の方針として全寮制を求めるところと、それから任意の入寮という考え方でいくところと、これは学校の方針にゆだねてけっこうなことだと考えております。
  73. 矢山有作

    矢山有作君 それは学校の任意寮制をとるかどうかは学校の方針にゆだねてけっこうです。それはそのとおり。もう一つ私は突っ込んで言っているのです。その任意寮制をとったところについて全寮制と同じ通達を強要しませんかと言っているのです。
  74. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 全寮制にまさに適用さるべき部分というのは全寮制の方針をとっておる学校に対する指導指針だと考えます。その中に書かれておることがすべて任意制度をとったときに適用がないと、こういうふうにお考えいただくこともいかがかと思いまするけれども、この通達は、全寮制の実施についてという通達は、全寮制の学校に対する指導指針であるというふうにお考えいただくのがよろしいかと思う次第でございます。
  75. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、もっと具体的に話を詰めていきます。たとえばこれを、通達を強要しないという結論でしょうから、そうすれば、たとえば「寮生活に関する日課を定める。」、これは私は幾ら未成年だといえども、中学校を卒業して国立高専に入ってくる諸君、しかもその中にはもう二十歳に達する者もおる。そうすればこういう日課の定め方などは、これは私はまさに寮生にまかせておいていい問題だと思う。その点はどうか。  それから「毎日体操等の団体訓練を行なう。」、こういうことをやるやらぬも、これは私は寮生の自治にまかしたらいいと思う。何も強要する必要はない。さらに、「定期的に次の行事を開く。」として、「夕食後における寮監および当直教官(指導教官)との懇談」、こんなことをやるかやらぬかはこれは寮生徒の自由でよろしい。「学内教官および学外講師による教養講座」、「寮生全体による文化および体育(スポーツ)行事」、こういうものは一々強要すべき問題ではない、こういう通達をきめて。だからそれはやらないと言えるかどうか。  それから、「学寮には教官が宿泊して指導に当るものとする。」、まあ、前のいわゆる「当直教官」との関連ですが、こんなことを何もやらせる必要はない。もちろん学寮の世話はせなければならぬでしょうから、寮母を置くとかあるいは寮監を置くとか、そういうことはそれはやはり一定の規律ある生活を年長者が見てやるという意味ではそれは考えられるでしょう。しかしながら、こういうようなことを強要する必要はない。何も「指導教官」をきめて、それに必ず泊まらせて、そうしてその人が必ずその夕食後に懇談会を学生と持たなければいかぬのだ、そうして生活指導をやるんだと、こんなことを強要する必要はありませんね。そこをはっきりさしておいてください。
  76. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 寮に入ることが任意でございましても、入った学生に対して生活の規律を指導するというのは、学校の立場として必要なことだろうと考えます。いま、御指摘になりましたようなことが寮生が寮に入ることが任意であるからといってすべて不必要になると、こうは考えません。やっぱりそのような指導の配慮があるということは寮の運営としても適切なことではなかろうかと考えます。
  77. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、あなた、結局強要じゃないか。文部省と国立高専の関係ですよ。強要じゃないか、それだったら。指導じゃない。そういうことをやるのが好ましい、これはそういう指導をすれば国立高専はそれやらにゃならぬものだと思う。現実にあんた方は任意寮制だ任意寮制だと言っておりながら、この通達を守れ言うて強要しているじゃないか、現実の問題としては。それは集団生活ですから、一定の規律が必要なことはあたりまえの話なんですよ、これは。それは私は何も否定しません。その場合に、年長者がその生活を助言し、見てやる、これもあっていいでしょう。しかし何も「当直教官」の制度を、いわゆる制度としてやらせにゃならぬことはないはずだ。あんた方これもやらしているわけでしょう、任意寮制において、現実には。だから今後任意寮制の場合には、たとえばあなたのことばをかりるなら、集団の生活には規律が必要なんだから、そういうものについての助言、それはある。それは私は認めます。しかし「当直指導教官」だというようなことはやめますか、もう。任意寮制に対して強要しませんね。任意寮制をとっている学校の自由にさしてくださいますな、これは。
  78. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 全寮制をとるか、学生を任意に受け入れるような学寮とするかという、この学寮のあり方の基本問題についても学校の選択にゆだねておるわけでございます。でございますから、この任意の方針をとった学寮につきまして校長がどのような指導をするかというのも、これは校長の方針であってよろしいかと考えるのでございます。私どもは学寮におきます秩序、規律ということの問題と、それからこの学生に対する世話という面から教職員の当直ということを考えることがあり得て当然ではなかろうか。これはやはり、そういうことの措置をいたしますことが校長の学寮に対する指導上の措置である、こう考える次第でございます。
  79. 矢山有作

    矢山有作君 局長、あんた何を言っとるんだ。そういうことを言うことは結局強要じゃないかと言っとるんですよ。そういう抽象論やめましょう、抽象論を。具体的に一つだけ話を聞きましょう、一つだけ。任意寮制を採用するかどうかは校長の自由。任意寮制を採用した以上は一定の規律の保持はあたりまえ。しかし「当直教官」の制度は、採用するかせぬかは校長の自由ですね。文部省はそれを強要しませんね。これだけはっきりさしてください。これ一つ。たとえば一つの例を。
  80. 木田宏

    政府委員(木田宏君) イエス、ノーだけで申しますと……
  81. 矢山有作

    矢山有作君 イエス、ノーだけ。
  82. 木田宏

    政府委員(木田宏君) まさにそのとおりでございます。
  83. 矢山有作

    矢山有作君 よろしい。
  84. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 校長のとるべき措置でございます。
  85. 矢山有作

    矢山有作君 それでもう一つ。その「当直・指導教官」という制度をつくれということを校長に文部省は強要しませんね。
  86. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 文部省は高専に対して強要する立場には立っておりませんが、こういうことが適切であるという指導をいたす立場には立っております。
  87. 矢山有作

    矢山有作君 それが官僚特有のごまかしだよ。指導して文部省が「当直教官」の制度を置いたほうがいいですよと言うたら、国立高専の校長は置きますよ、それは。もしそれを聞かなんだらあんた方必ず言うでしょう、校長の職務全うできぬよおまえはと。こうやるでしょう。それもやめなさいと言うんですよ、私は。校長が任意寮制をとるかどうかは校長の、その学校の自主性にまかされるんであるならば、この通達の実施は強要しない。強要しないということは抽象論でものを言うたんではあんた方はそれはだめだから、私は具体的にものを一つだけ出したんだ。「当直教官」の制度は強要しない。強要しないということはこの問題についてくちばしはさまぬということです。ということは、これが望ましいということも言わぬことです。これが望ましいと言えば、学校の校長は、文部省がこれ、望ましいと言うたら、これは強要されたととりますよ。それもしない。そこのところをはっきりしてくれませんか。
  88. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 文部省が学校に対する関与のしかたにはつつましやかでなければならぬという点はございまするけれども、しかし、文部省としては常に学校に対しまして指導、助言をするという立場には職責上立っておるわけでございます。でございますから、学寮の運営その他について、こういうことのほうが望ましいということは通達その他を通じて言うことが十分あり得る。また、国会の場で御指摘いただきましたことなどにつきましても、私どもはやっぱりそれを指導、助言の立場で指導してまいる、こういう職責にあることだけは御理解を賜わりたいと思います。
  89. 矢山有作

    矢山有作君 あなたはそれであるならね、大学自治寮に対してそういうことをやってますか。やれぬでしょう。大学は、あんたが先ほど私に、きわめて詳細、微に入り細にわたって御説明いただきましたが、あれは大学の自治寮について言っているわけです。その大学の自治寮にたとえば「指導・当直教官」を置かなければいけないという指導、助言をしてないでしょう。あんたは大学の自治寮を例に引いて、任意寮制の学寮について私は触れられたと思うんです。全寮制とは区別して考えておられるようだから。そうするなら、そういう任意寮制を学校の自主的な立場からとっておる校長に対して、指導、助言であろうともこういう  「当直教官」の制度を置けと言うこと、それ自体が強要じゃないですか。大学でやってますか、そんなこと。やってないでしょう。大学と同じように任意寮制の自治寮をあなたは位置づけて説明なさるぐらいならね、そんなことをやりなさんな。  あなた方は、いつも問題が具体的になってくると、——それをやらぬとは言えない、やらせたいんだから。やらせたいからやらぬとは言えないものだから、抽象論でごまかしてくるんだ。それを常に国会で繰り返してきておるんです、あなた方は。それで、そのときどきに国会をごまかしてきておるんだ。そして、現場に対してはきびしい締めつけをやっておるんじゃありませんか。まして、いわんや、こういう指導を通達を出してやったら、これは強要と何ら変わりやせぬじゃないか。私は、これははっきりさしてもらいたい。任意寮制に対してあんたが自治寮的なものの考え方をしておるのなら、こういう通達で、あるいは今後も通達でなしに電話であろうと、任意寮制をとっておるところに「当直教官」の制度を置けということは言うてもらっては困る。それはあんた越権行為だ。まさに介入ですよ、あなたが自治寮であるという考え方に立って任意寮制を見ておるのなら。
  90. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 任意寮制がイコール自治寮であるというふうに私は先ほど御説明を申し上げたつもりはございません。
  91. 矢山有作

    矢山有作君 局長、人をばかにするんじゃない、あんた。この学寮の問題を論議しておるときに、あんた方は学寮と大学の自治寮とがおのずから性格が異なるということを承知しておるんだろう。承知しておって、学寮の問題について話が詰められてくると、大学の自治寮を例に引いて逃げを打っておるわけだ。そういう姿勢がけしからぬと言うんですよ。追及されればことばの先でごまかしている。文部省ともあろうものがそういうことで、あんた行政指導できるのかな。  なぜ、それじゃ自治寮の例を引いてのんべんだらりと学寮の説明を私にしたんだ。なぜ、学寮は学寮と、大学の自治寮は自治寮と分けて私に説明をしない。学寮の問題で質問をしておるときに、あなたは大学の自治寮のことを私にのんべんだらりと説明したじゃないか。なぜそういうことをやる。そういう人をごまかすようなあんた説明のしかたをしておいて、話が詰められてくるとつべらこべら言う。なめるのもいいかげんにしてもらいたい。意見があるなら聞きます。
  92. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 先ほど「学寮における経費の負担区分について」という通達についての御指摘がございました。その通達の、寮生が負担すべきものという、こうした考え方が長い間日本の高等専門学校あるいは大学の学寮についての自主的な運営ということからからんだこの現実の上に立っておるものだという御説明を申し上げたつもりでございます。高等専門学校の学寮も、そうしたわが国の大学、高専が過去にとってまいりましたこの学寮のあり方とまるっきり違ったものだというふうには考えておりません。ただ、学生の年齢その他に応じまして、その自治の度合い、その指導のしかた、それが年齢に応じておのずから異なり得るであろう、こういうことは申し上げたのでございます。
  93. 矢山有作

    矢山有作君 また経費の負担区分の問題を引っぱり出してごまかそうとしておる。私はね、経費の負担は、たとえば学校が経費を負担しなくても、責任の所在を明確にすることは可能ですよ。たとえばです、たとえば学校と炊事婦との間に雇用関係が存在しておって、その人件費の負担は必ずしも国費でない場合がある。国費で支弁をしてないから、あんた方の言い分は、国費で炊事婦の人件費を支弁してないから、形式的に学長が任命しておっても、学校との間に雇用関係はないという論法できておる。それをごまかすために学寮と自治寮と混同するようないろんな説明をしてきたわけでしょう、ここに。そういうことをしなさんな。そういうことを言うんでなしに、経費の負担と責任の所在が常に一致しなければならぬということはありませんよ。炊事婦の仕事について学寮の位置づけをあんた方が重視するなら、その位置づけに従って学寮の食堂経営はやる。それに対して炊事婦に対しても十分な指導監督をして事故の起こらないようにする。雇用関係は、したがって学校と炊事婦との間に存在をさせる。つまり、国と炊事婦との間に雇用関係を存在させる。しかし、経費の負担は別個に考えてかまわない、私はこういうふうに整理をすべきだということです。可能であるならば、その経費も現在の経済情勢でいうなら、できるだけ軽減さしてやったほうがよろしい。ところが、あんた方はその経費の問題にかこつけて、いわゆる炊事婦の雇用という責任の所在をあいまいにして、学寮全体の運営に対してあいまいさを持ち込んで、しかも、国の責任に対して、さらにあいまいさを持ち込んでいるからいかぬと言うのです。その点、再検討しますか。どうですか。
  94. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 学寮の運営につきましては、いろいろと御指摘をいただいておりますようなあいまいな点がたくさんございまして、私どもも何とか再検討を急がなければならぬと考えておるところでございます。
  95. 矢山有作

    矢山有作君 私はいまのようなあいまいもことした形で、責任の帰属が不明確なような状態を維持したままでおる姿を、あんたが言われるように早急に改善してもらうことを強く要望しておきます。  次に、いままでの議論で大体どういう状況にあるかということはおわかりになっていただけたと思いますので、労働省にお聞きしたいのですが、たとえば一般的な例として聞きます。私がある人間を雇っておった。何人かの人間を雇った。その人は労働組合を結成しました。私が雇ったその労働者労働組合を結成した。そして賃上げの要求が出てきた。団交を何回か繰り返してやりました。しかしながら、どうにも解決がつかない。そこで私は巧妙な手を考えて逃げを打って、小谷さんに雇用人の名義を変えました。団交の申し入れを私は組合から受けた。いや、私はもうあんた方を雇ったんじゃない。あんた方の雇用主は小谷さんに変えたのだから、あっちで話をしてくれ、おれは知らぬと、これは一体どうなるんですか。
  96. 道正邦彦

    政府委員(道正邦彦君) 私も学生時代に旧制高校の寮の自治委員をやりまして、いまのような問題に当面した経験がございますので、非常に興味を持ってというとおしかりいただくかもわかりませんが、非常にむずかしい問題だということをあらためて痛感した次第でございますが、労働省の立場から申しますならば、だれとだれとの間に雇用関係があるかということが明確でなければ、これはもう何といいますか、労働法の適用その他、根本から狂ってくるわけでございます。その辺をはっきりしていただくということが大前提だと思います。ただいま先生御指摘のございました例で申し上げますならば、それが労働組合の正当な活動を理由とする不利益な取り扱いであるならば、これは不当労働行為になり得る場合があると思います。一般的に申しますと、企業をAからBに譲渡するという場合はございます。その場合に、通常の場合でございますならば、従業員その他も引き継ぐわけでございますが、間々その過程におきまして特定のものだけを引き継がないというようなケースもございますが、そういう場合には、その事案によりましては不当労働行為等に関係してくる場合があるというふうに思います。
  97. 矢山有作

    矢山有作君 ですから、ぼくは具体的にものを聞きますからね。今後のやはり処置をするのにはっきりさせていたほうがいいと思う。たとえばいま言ったように、私が十人の労働者を雇用したわけです。その十人の労働者の諸君は組合をつくった。私に対して賃上げの要求が来た。そうして何回か団交をやったわけです。ところがどうしても決着がつかぬから、そこで私は逃げた。組合のほうへは黙って何にも言わないで、一方的に。そして小谷さんを引っぱってきて、何とかひとつたのむ、わしはあの十人の労働者を雇ったんだが、めんどうくさいから、おれは雇い主の名前をあんたに譲るで、あんたやってくれ、ということで、そうして小谷さん、よろしゅうございます。と言って引き受けた。そうしてこの人が、今度は、わしが雇い主じゃ、こう言って十人の労働者の諸君に、その組合に通達したわけです。そうしたらその組合は、そんなばかなことがあるかと、それは団交拒否じゃねえかと、そんなことはわれわれは何ら合意したわけでもなし、相談を受けてるわけでもなし、あんたかってにやったのだ、そういうことを言うて逃げられるのは、要するに団交を拒否しておることじゃありませんかと、こう言っているわけです。これは団交拒否の不当労働行為ですよね。
  98. 道正邦彦

    政府委員(道正邦彦君) ただいまの設例の場合に、ほんとう自分が引き続き使用主として続けていくんだと、しかし、その交渉がうまくいかないから、何といいますか、一時、便宜的におれは手を引いて、この人だというふうにやるという、そういう場合でございますれば、これは不当労働行為になり得る場合があると思います。ただ、具体的な、当面問題になっております事案につきましては、もともとそうであったというようなことで、使用主の名義を変えたというような事情も当局のほうでは言っておるわけでございますので、その辺はあくまで事実関係はどうかということで判断せざるを得ないと思います。
  99. 矢山有作

    矢山有作君 だからね、あんた、いま私が問題にしようとしておる事案に関係なしに、私が言うた例で、それは不当労働行為なのかどうかということを言ってもらえばいいんです。だからいま、高専の起こっておる問題をあんた頭に置いてものを言ってもらっては困る。私がいま言った例に対して、労働省としては、それは不当労働行為と見られるのかどうか、その点だけでいいです。
  100. 道正邦彦

    政府委員(道正邦彦君) それは先ほどお答えいたしましたように、擬装的に一時使用者の名義を変えるというような場合であれば御指摘の事案になり得ると思いますが、ほんとうにもう自分として使用者の責任を全部あれして、やめてですね、使用主としての責任はあげてほかの人に譲るということであれば、これは一般論としては、企業の譲渡みたいな場合に間々あることでございますが、その場合には必ずしもそれが不当労働行為になるということにはならぬと思います。
  101. 矢山有作

    矢山有作君 そういうふうに言われると、民法六百二十五条御存じですね。これは御存じのように、使用者は労務者の承諾がなければ権利を第三者に譲渡することはできない。つまり雇用契約の継承は労働者側の合意がなければできぬわけですから、そうすると、労働者側の合意ができないままに、かってに雇用主が変わってしまって、あっちに譲ったと、こういう場合には、これはそういうことは民法の六百二十五条からいうなら、これは無効ですね。そうでしょう。
  102. 道正邦彦

    政府委員(道正邦彦君) もともとの雇用関係が確定しておりまして、かってにやったならば、それは六百二十五条の違反になると思います。   〔資料を手渡す〕
  103. 矢山有作

    矢山有作君 いま労政局長、お見せしたようになっているわけです。お見せしたように。これはやっぱり雇用関係が坂手なる津山高専校長の間に発生しておるんじゃありませんか、そう解釈すればいいんじゃないですか。
  104. 道正邦彦

    政府委員(道正邦彦君) 一般論から具体的な問題にお入りになりましたけれども、実体的に先ほど文部省のほうからお答えがございましたように、そもそもの契約が、形式がどうであるかも非常に大きな問題でございますけれども、そもそもだれとだれとの間の雇用関係であったのかという実体判断の問題と思います。で、わざわざお示しいただいたこの「人事異動通知書」の形をもってそういう関係を結ばれたとすれば、この形が適当であったかどうか。これも問題だと私は思いますけれども、要は、しかし実体的にそもそもの雇用関係がだれとだれとの間にあったかという問題であろうと思います。
  105. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、なかなか労働省も慎重で、その実体、実体ということで、実体論にすりかえておられるようですが、そうおっしゃるならね、私は労政局を通じて津山高専北辰寮における労使紛争についての調査を取っております。これはあなたのほうから県の労政課に言って、調査をさして、そして先方の学校側当事者から事情聴取した結果ということで報告になっておりますが、その中でこういっております。いろいろありますが、(六)に、「こうした中で使用者側は学校長が予算の裏づけのない食堂の運営に私人としての資格で参加、使用者として炊事婦を雇用しておる点に疑問を持ち、学校後援会に話を持ちかけ新たに寮利用者の父兄団体を結成することとし、三月二十四日北辰寮後援会を設立し、同会が四月以降北辰寮の食堂運営を引き受けることをきめた。」——したがって、こういう報告でいうなら、四月の初めに北辰寮が食堂経営に切りかわるまで、それまでは校長が私人としてではある。学校長という資格ではないということをいっておりますが、私人としての校長と炊事婦との間にみずから使用者としての関係を認めております、雇用関係を。認めた回答になっておるわけです。そうすれば、私は津山高専の場合に、私人として坂手という人が炊事婦を雇った。労働争議が起こった。団体交渉が繰り返された。問題が解決しない。そこで、自分が使用人としてこういう学校の食堂経営に携わっておることは都合が悪いからというので後援会に働きかけて、後援会総会を三月二十四日に招集をして、そしてその総会の決議で食堂経営を今後は後援会が引き受けますということで規則をつくって、それをやり始めたということです。これは私は校長なるものの資格が私人であろうが公人であろうがそんなことはどうでもよろしい、もうここでの議論になれば。つまり、組合との間の労働争議が解決しない最中に、自分が団交拒否を、団体交渉に応じないという手段としてこれ、逃げたんじゃありませんか。こういうようなことがはたして許されるのか。文部省は私人としての校長がやったと言うかもしれない。しかし、このような現在の労働常識に反するようなことを平気でやるような校長を文部省は任命しておるのか。これは文部省もそういうような不明な校長を任命したという責任は免がれぬ。それから、労働省もあまりことばの先の議論でなしに、こういう点を見られて、これはやっぱり労使間の正常化のために努力をする責任がある。ことばの遊戯ではないと思うんです。実体論云々を言われますけれども、炊事婦のほうは明らかにそういう任命辞令によって、校長から任命されたと思っておる。その校長の資格について、いわゆる校長という公人としての資格か私人としての資格かはいま論議がある。しかし、いずれにしても坂手なにがしという者から雇われたという認識を持っておるわけです。それを全然一方的に変えてしまって団交から逃げていくというこういう状態というのは、私はこれは明らかに不当労働行為であるし、こういうようなことについては私はその権限のあるなしの議論でなしに、労働省としてはそれ相応な処置をとるように文部省との間の話し合いを進めるとか、何らかの処置をせにゃいかぬのじゃないか。そんなことは実体論で、どうか調べてみなきゃわからぬから、なんていうのはね、それはここであなた方がわれわれの言いよることに全面的にそうだと言いたくない手段、方便で言いよるんだろうけれどもね、そういうことでなしに私は問題を考えてもらいたいと思うのです。何も私は労働省の欠陥を追及し、批判しているのじゃない。こういうようなでたらめな、二十世紀の今日の高度成長のときに、労使関係が近代化されたといっておるときにこのような非近代的な労使間のやり方というものが残っておりますよと、これを労働省にはしっかり認識をしてやはり労働関係の問題についてはそれ相応な自分たちのできることを考えてもらいたい、こういうことで私は持ち出した。決して労働省を批判しているわけでもなければ追及しておるわけでもない。そういう立場であなたもものを言っていただきたいし、大臣のお考えも聞きたいのです。
  106. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私は、労働大臣ですけれども、実は、ことしは国立高専十周年でしてね。当時、文部政務次官として国立高専の法案を皆さん方にお願いして実現した一人でございまして、高専校については非常に関心を持っておったのであります。ところが、こういう議論の場で、津山高専の具体的な名前が出まして、その中において労使の紛争と申しますか、それによって、あれは中学校卒業生の生徒諸君が五年間入って中級技術者として非常に評判のいいことは皆さん御承知おきのとおりです。そこがこの食堂経営のために子供たちの食事がいささかでも阻害されているというふうなことを聞きまして、実はびっくりしておるわけです。私もああいう高専校の食堂やら寄宿舎などをよく拝見する一人でございます。ほんとうに中学を卒業しただけの、自分子供のことを思えばすぐわかるのですが、中学校を卒業した者が寮に入って自分で炊事をしたり自分で洗たくしたり、そして夜おそくまで競争心があるためにしっかりこう勉強しておりまして、舎監といいますか、学寮長はいかにして早く寝せるかということにさえ苦心しておる。場所を与えると勉強するという日本の子供の姿を見て感心しておるものです。そういうところにおいて、このまかないの問題でこういう紛争があるということは非常に私は残念な気がいたしております。  まあ、いずれにいたしましても、だんだん問題の内容が御議論の間にわかりましたから、これは御指摘のとおり、労働省といたしますればやっぱり労使が非常に円満な話し合いを、何とか、教育の場の問題であるから、ほかの事件とまた違うという観点からも合理的な妥結が、解決ができて、安心してそういう子供たちがめしを食うことにおいて不安があってそれが勉学に影響を来たすということになりますというと、これはほんとうにたいへんなことだと思いますので、御指摘の点をよく私も理解いたしましたし、労政局長も御答弁されましたし、あるいはまた木田学術局長もこの場でだんだんの御説明などがありましたから、これをきっかけにして合理的な解決がはかられて、やるようにいたしたいと、こう私も時に文部省のほうにも私のほうからもお願いなどいたしまして、一日も早く解決できるように御推進申し上げたいと、この点をひとつ御理解いただきたいと思います。
  107. 矢山有作

    矢山有作君 やっぱりね、政治家は政治家として政治家らしい御答弁をいただきましてありがたいと思います。ぜひこの問題は解決していただきたい。  私はね、炊事婦が無理を言っておるとは思わぬです。朝六時過ぎから出てね、で、晩めしを食べさせて、あと始末をして帰ると七時過ぎちゃう。そういう状態ですから、それで人手不足なんです、これは依然としてね、低賃金ですから。だから、たとえばおそ出と早出とをきめておりましてもね、どうしても時間延長になる。そこで基準法違反事件が先ほど来言ったように出ておるわけです。しかも給与の水準というのはね、大体月に手取りが三万五千円くらいだ。それで、そういう労働をやらされておるわけです。しかも身分関係はどうだといったら、自分は国家公務員だと、学校長任命だからと、定員内、定員外は別にしてもですよ、そういう一つの国家公務員という誇りを持って一生懸命、まじめに仕事をしておったと、で、わずかばかりの賃上げを要求したら、団交は何回かやってくれたけれども、そのうちに、もうおまえらと会う必要ないと言い出した。そして、今度は一方的に学校長が雇ったんじゃないよと、それは後援会が雇ったんだ、こういうふうな形になる。これは私は炊事婦にとっちゃたいへんなショックだと思う。そのような身分関係が不安定な状態で放置しておくことは間違いです。これはやっぱり私は、先ほど来出ているように、学寮というものが未成年の国立高専の子供をかかえてのいわゆる教育施設の一環として位置づけるなら、これはその中で食生活という問題は人間の生活と健康に関する問題で、ゆるがせにできぬのですから、したがって国家公務員という身分を明確にして、そして安心して働けるように炊事婦にもしてやる、こういうことが必要なんで、それをせずにおいて、そういう欠陥を直さずにおいて、責任のがればっかりを考えて、校長の名前で雇用しているから問題が起こって、めんどうくさいんだから後援会に振りかけちまって、おれは逃げてればそれで終わりだと、このような何というのか不見識な近代感覚をはずれたやり方というのは私はないと思います。これはぜひとも労働大臣のほうで文部大臣と話をしていただいて処置していただきたい。これは、たまたま津山の国立高専で起こっている問題ですけれども、いま後援会に切りかえられたところではほとんどこの問題をかかえております。まして、いわんや、校長の名前で雇用しておるところも、後援会雇用のところも同じように身分関係は不安定なんですから、ただ、たまたまほかの国立高専で問題が表面化しないというのは、大体炊事婦の方の人数というものが非常に少ない。だから学校からがんとやられると大部分が泣き寝入りになっているわけです。泣き寝入りしたからその犠牲の上に立って、こういう学寮の経営をやっておいていいということには私はならぬと思う。まして子供教育考える、教育の責任を持つ文部省がこういうような状態では済まぬと思いますので、その点は、私は労働大臣の御発言に大きな期待をして、きようの質疑を終わらせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  108. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) では午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時半に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      —————・—————    午後一時四十分開会
  109. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  110. 小平芳平

    ○小平芳平君 最近の労働問題につきまして、二、三御質問をいたしたいと思います。  最初に、十二月十二日に最高裁で出された三菱樹脂訴訟に関する判決。で、これは最高裁の判決は判決としまして、労働基準法との関係において、労働省はどのようにこれを受けとめておられるか、経過並びにお考えを初めに簡単に御説明いただきたいと思います。
  111. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 今回の最高裁の三菱樹脂の判決につきましては、憲法関係の判断のところは別といたしまして、基準法関係について申し上げますと、今回の判決におきましては、労働基準法三条が信条等を理由とする差別取り扱いを禁止しておりますが、労働条件という中には雇い入れそのものは含まれない。しかしながら、それを解雇の理由とすることは含まれる、こういう判断を示しておるわけでございますが、これにつきましては、私ども基準法三条の解釈については従来そういう見解をとってまいっておりますので、われわれがいままでとってまいりました基準法の解釈と一致するというふうに考えております。  それから、なお今回の事例のように、労働者を雇い入れるにあたって、学生運動参加などの事由を秘匿したことが採用後、本採用までの解雇の件の保留づきの採用、それを行使して解雇することの正当な事由になるかどうか、こういう点につきましては、最高裁の判決におきましても、これはそれそれの事情によって合理的な理由と認めるかどうかを判断すべきだということで今回の問題につきましても、判断を下さずに最高裁においてさらに審理すべきだということで差し戻しをその点についてはいたしておるわけでございます。したがいまして、これからその問題は高裁でさらに審理をされますので、その点につきましては、私ども現段階において行政機関として見解を述べることは差し控えたいと、かように考えるわけでございます。
  112. 小平芳平

    ○小平芳平君 たいへん申しわけないのですが、最高裁の判決と労働省が従来とってきた解釈と変わりないという点をもう一ぺんお答えいただきたい。
  113. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 基準法の第三条で、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」、こういう規定があるわけでございますが、雇い入れのときに、もし、そういうことを理由として差別をした、たとえば信条を理由としてある者は雇い、ある者は雇い入れなかったということをした場合に、これが基準法三条に当たるかどうかという点が、一つ問題がございます。これについては、労働条件というのは雇い入れ後の条件であるから、雇い入れにしてもそれが妥当かどうかは別として、基準法三条の違反の問題ではないというわれわれは解釈をとっておったわけですが、これについては最高裁も雇い入れについて制限したものではない、こういう解釈をしておる点が第一点でございます。  それから、第二点は、それじゃ、そういう信条等を理由とする解雇、これが三条の労働条件についての差別取り扱いに当たるかどうか、これについては、私どもは解雇の条件、すなわちそれを理由として解雇したような場合には基準法三条に当たる、こういう解釈をいたしておったわけですが、その点につきましても、最高裁は同じ見解を示されておる。こういうふうに考えておるということでございます。
  114. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、企業側が思想、信条のいかんということを採用基準にすることが法律違反ではないと、つまり信条による差別待遇禁止は、雇い入れるときの差別は違法ではないと、よろしいでしょうか、——要するに、企業が採用する場合に、思想、信条によって差別することは差しつかえないということですか。
  115. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) その点につきまして、この三菱樹脂の最高裁判決はこのようにいっております。  「企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであって、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない」、かように申しまして、「また、労働基準法三条は、労働者の信条によって賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは、雇い入れ後における労働条件についての制限であって、雇い入れそのものを制約する規定ではない。」こういう法律解釈を述べておるわけでございます。
  116. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、そういう法律解釈がはたして労働行政上望ましいことであるかどうか。この基準法の第三条からいって、そういう採用する場合に、思想、信条によって差別する、そういうことが労働行政の上に望ましいことであるのか、ないのか、その点はいかがですか。
  117. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 積極的にそれが望ましいということはもちろん言えないわけでございますが、ただいま申しましたのは、現行法の法律解釈としては、いま申し上げたようなことであるということでございます。
  118. 小平芳平

    ○小平芳平君 望ましいことではないが、法律がそうなっているわけですか。そうすると、労働省は望ましくないことを法律どおりやらざるを得ないということですか。
  119. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 積極的に望ましくないかどうかについてまで申し上げておるわけではないのでございまして、この問題は今回の判決でも示しておりますように、憲法二十二条、二十九条が保障いたします営業の自由、財産権の保障、それの一環としての自己の営業のためにいかなる者を雇い入れるかについて原則的に自由な立場にあるということと、それから一方において被用者の思想、信条の自由を尊重しなければならないということと二つの面がございまして、その間の調整をいかにするかということは非常にむずかしい問題だということを判決でもいっておるわけでございます。で、現行の基準法はその間の調整について、新規雇い入れにつきましては、特に思想、信条による差別取り扱いを禁止していないというのも、解雇についてはそれは差別してはいけないということを規定にいたしておりますのは、まさにその憲法の二つの面からのむずかしい問題間の調整を、そういった趣旨で調整をはかった趣旨であると、かように考えられるのでございまして、最高裁もそういう趣旨で憲法及び基準法三条の解釈をいたしておるわけでございます。したがいまして、この問題はそういう二つの要請の非常にむずかしい面についての調整を立法でそのようにしておると、したがいまして、現行の憲法のもとにおきましては、一応憲法全体の調整の趣旨から妥当な規定ではないかと、かように考えるわけでございます。
  120. 小平芳平

    ○小平芳平君 それではね、とにかくその問題は調整がむずかしいということ、そしてまた、法律学者の意見も全く分かれているということは、私も新聞で承知いたしております。ですから私はいまここで尋ねている趣旨は、この労働行政の上からいって、第一に企業が思想、信条のいかんということを採用条件にすることが望ましいのか望ましくないのか、労働省はどう考えて行政を進めるか、それが第一点。  それから第二点は、この就職試験が一種の思想試験のようになる。企業は要するに、この労働者の思想を、就職試験がそういう思想試験に流れていくというようなことにもしなっていったら、それは望ましいことなのかどうか。以上二点です。
  121. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) まあ、労働行政観点というお尋ねでございますが、労働行政も、もちろん憲法全体のもとで行なわれておるわけでございますから、やっぱり憲法全体の精神ということを背景にして考えなければいけないと思うわけでございます。で、その点につきましては、最高裁の判決でも、一方において憲法は思想、信条の自由等保障いたしますと同時に、二十二条、二十九条等におきまして財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的な人権として保障している。そして、かような経済活動の一環としていわゆる契約締結の自由ということで、自己の営業のために労働者を雇用するにあたって、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、原則として自由にこれを決定することができると、こういう立場を憲法はとっておるわけでございます。まあ、それと、他方におきます労働者の思想、信条の自由ということとのかね合いになるわけでございますので、それら全般の関係考えますと、やはり労働行政の立場といたしましても、この現行の基準法三条の規定、まあ、ここが憲法の趣旨に立った両方の二つの権利の調整として妥当な線ではないかと、かように考えるわけでございます。  それから、まあ、雇い入れについて、一々そういう調査をすることが好ましいか好ましくないかというお尋ねでございますが、この点につきましても労働者の思想、信条の自由ということからいうと、そういうことが問題にされないことが望ましいわけではございます。しかし同時に最高裁の判決でも、企業が人を雇うときに、将来の企業の中におけるその人に対する信頼度というようなことを問題にすること、これも社会上、不当なこととは言えないと、かように申しておるわけでございまして、まあ、その両者の調整のことを考えますと、いま直ちにそういうことを聞くことが違法なこととは言えないと、最高裁もさように申しておるわけでございますので、行政官庁といたしましては、やはり最高裁の判例の考え方に従っていかざるを得ないと、かよう考えるわけでございます。
  122. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうふうにこう答弁されるとむずかしくて何かわからないですがね。要するに、この判決についていろんな二つの考え方があることは局長も前提としておりますね、憲法解釈についての。で、要するに、この「憲法の人権保障規定は、可能な限り、私人間にも尊重されることがのぞましいのではないだろうか。」という、これは新聞の社説の一節ですが、そういう意見のあることも御承知でしょう。そういう上に立って、やはり労働基準法第三条の規定にいうように、労働力の評価に関連しないことによって、労働者を差別してはならないという、そういう趣旨からして、この労働行政の上からいえば、そういう憲法解釈がどちらの解釈がいいか悪いかということを私が問題提起しているのではないのです。私は、この労働省労働行政を進めていく上において、企業のほうが何といっても力が強いわけです。試験を受けに来た労働者のほうが、個人のほうが力がこれは弱いです、一般的にですね。そういう立場が普通就職試験を受ける、雇用されるという場合の、そういう両者間の立場のもとにおいて、そうした思想、信条というものが採用基準になるとか、就職試験が思想試験のようになっていく。思想とか信条とか宗教とか、そういうことによって差別されるということは、労働行政の上からいっては好ましくないということじゃないですか。
  123. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 労働者の思想、信条の自由ということから申しますれば、先生のおっしゃるとおり、そういうことが問題にされないことが望ましいわけでございますが、やはり行政も憲法のもとで行なわれておるわけでございますから、憲法全体の考え方の中で行なわざるを得ない。そうなりますと、憲法全体の考え方につきましては、先ほども申しましたように、この判決では、企業がいわゆる「その雇傭する労働者が当該企業の中でその円滑な運営の妨げとなるような行動、態度に出るおそれのある者でないかどうかに重大な関心を抱いて、それを採用に先立って調査を行なうことは、企業活動としての合理性を欠くものということはできない。」と、はっきり判決でいっているわけでございますので、まあ、行政官庁というものはやっぱり憲法、それは解釈は最高裁の判例が出れば、それに従わざるを得ないわけでございますから、この最高裁の判断に従って行政運営をすることが妥当であると、かように考えるわけでございます。
  124. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) 局長ね、いま質問のやりとりを聞いていますとね、小平委員のほうからは判決はそうであろうけれども労働者のほうは弱いのだと、雇われる場合に。そういうときには頭から思想、信条でもってやるということは、やはりあとの判決をしたときには、思想、信条でやらない、これはもう違反するといっているわけで、前のときでも……。そういうことをやらないほうが労働省としてはいいのじゃないかと。それはどういうふうに考えているかということなんです。ただ判決ばっかりによらないで、労働行政の上から見たらどうするんだ。もう少し考え方をゆるめて考えなければならぬのじゃないかということをおっしゃっておられるのじゃないかと思うのですが、どうですか、その点は。
  125. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 企業において、そういうことを問題にしないで、雇い入れをするような状態が、そういう企業もあると思います。そういうことを問題にしないで雇い入れをするという態度であれば、それは一そう好ましいと、かように考えるわけでございますが、最高裁ではっきりそういうことを調査しても、合理性を欠くということはできないといっておりますので、行政官庁としては、それと違った見解は申し上げられないということでございます。
  126. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) ちょっともう一つ。  それはね、そういう場合は、やはり労働者というものを守る立場で労働省はあるわけでしょう。そうしてみると、労働省はそれをたてにして自由にやっておったんじゃ、それは弱い者が非常にハンディキャップを受けるのじゃないか。実際、入った人にそういうことをやればいかぬと、こういうわけだから、前からでも、そういうことはひとつやって、労働者を守るようにしていくべきじゃないかと私は思うんです。それをしなかったら、労働者を守るという意味じゃなくて、ぎりぎりの線があれば、それを乱用さすことを、乱用ということも言えないかもしれぬけれども、何かそういうことを推し進めていくという行政で、やはり労働者を守って完全に労働力を発揮せしめるような労働行政ではないようなことになりはせぬか、この点はどうですか。
  127. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) もちろん労働行政労働者を守るという立場で行なわれるべきものでございます。したがいまして、経営者がそういうことをやることが一がいにいけないと言えないといたしましても、乱用したりすることは好ましくないことでございまして、乱用したりすることがないように指導してまいりたいと存じます。
  128. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣からはあとで御見解を伺いますが、局長にもう二点伺います。  その一点は、この判決の中に、要旨ですが、労働者の基本的な自由を不当な侵害から守るために、これに対する立法措置によってその是正をはかることが可能であるという意味のところがありますね。これはまさしく弱い立場の労働者が、「その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、これに対する立法措置によってその是正を図ることが可能である。」という、立法措置ということを一つ提起していることが第一点です。それから第二点は、「また、場合によっては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で」云々というところがございますね。この二つの点、判決では立法措置云々ということを提起している点と、もう一つは、民法一条、九十条等の私的自治に対する一般的制限規定の適切な運用と、それによって不当な侵害が生じないようにするためというふうに提起しております。したがって、これこそ労働省としてはどういう法的、立法措置考えるのかどうか、それが第一点。  第二点は、民法一条、九十条のようなこうした具体例をあげて、それこそ行政指導すべきじゃないかということです。  その二点についてお答えいただきたい。
  129. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 第一点の立法措置の問題につきましては、この判決のほかの部分でも申しておりますし、先ほども申し上げましたように、一方において、憲法二十二条、二十九条で営業の自由、財産権の保障を規定し、それに伴って、自己の営業のためにいかなる者を雇い入れるかについて原則的に自由な立場というものを憲法はとっておるわけでございます。他方におきまして、被用労働者の思想、信条の自由ということを尊重しなければならないことも、憲法の趣旨から当然のことでございます。で、その間の調整をどうするかということが非常にむずかしいわけでございまして、それを立法でやれると、こういうふうに書いているわけでございます。私は、現行の基準法の三条というものはまさに両方を考えて、そして、それを立法の面で調整した規定である。すなわち、雇い入れについては特にそういう制限をしていないけれども、雇い入れたあとの解雇については信条を事由とする解雇を規制しておる。これがまさに基準法三条というのはそういう憲法の二つの考え方を調整した立法の処置であると、かように思うわけでございます。そういう観点からいたしまして、やはりこの最高裁の判決、両者の、憲法の二つの考え方の調整という考え方からいたしますと、基準法三条の現行の規定というのは妥当な線ではなかろうかと、かように考えておるわけでございます。  それから第二点の民法の権利乱用の問題、それから九十条の公序良俗の問題、これは、法運営の一般的な原則といたしましておっしゃるとおりでございまして、私どもも、先ほども申しましたように、使用者がそういうことをするのは違法でないとしても、それは乱用されてはならないということは当然であると、かように考えております。  それから、どの程度に至ったら公序良俗違反かということは、これは非常にむずかしい問題で、最高裁は今回の三菱樹脂ぐらいは公序良俗違反とは言えないということをいっておるわけでございますけれども、限度が過ぎまして、公序良俗に反すると思われるような程度に至りますれば、それが妥当でないことは当然のことでございます。私どもも、やはり民法一条あるいは九十条の公序良俗、そういう点も十分考えながら三条の運営指導に当たりたいと、かように考えるわけでございます。
  130. 小平芳平

    ○小平芳平君 第一点の立法措置云々ということは、すでに基準法第三条でこと足りるならば、わざわざ立法措置というふうなことが提起されないはずではないんですか。まあ私、法律はしろうとだから、ちょっと……。それが一つ。  それから、第二点については、通牒を出すとか、行政指導をするとかということは、まさしくいま次に質問したいと思っておりますことは、ここ数年続いた人手不足が逆に今度は人員過剰、人員整理、あるいは採用の中止、取りやめ、そういうようなふうになってきた場合、きわめて就職しようという人が弱い立場にあるということ、不利な立場にあるということ、そこで企業は契約の自由をまっこうから振りかざして、不当に労働者の自由を束縛してはならないということこそ、労働省の本来の任務ではないんですか。いかがですか。
  131. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 基準法三条があるのに立法措置ということをいっているのは基準法三条で足りないという趣旨ではないかという、こういう御質問でございますが、この判決の、そこの個所は、そういういい方ではございませんで、憲法十九条の保障する思想、信条の自由または十四条の信条による差別待遇の禁止の規定、これは本来は国などの公権力と私人間の関係を規定したものであって、私人相互の関係を規定したものでないと、これを前提にいっているわけでございます。したがって、それを類推して、私人相互間の問題にこの憲法十九条や十四条をあてはめることは妥当でないと、こういうことを前段としていいながら、しかし、もっとも私人間の関係においてもそういう力関係というものがあるから、もし、その「私的支配関係においては、個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、これに対する立法措置によってその是正を図ることが可能であるし、また、場合によっては、」云々と、かようにいっているわけでございます。したがって、原則論として憲法の十九条、十四条というのは、公権力と私人との関係で、私人対私人の関係ではないが、私人対私人の関係についても度が過ぎるおそれがあれば立法でやっていいんだぞと、こういうことをいっている。そういう意味で立法措置ということを述べられているわけでございます。まさに基準法の三条というのは、そういう私人対私人関係の採用、解雇のことを規定しているわけでございますから、それがここにいうところの現行法の上では立法措置に当たるんだと、こういうことを申し上げておるわけでございます。しかも現行の基準法三条は、憲法のそういう二つの要請というものを配慮した立法措置であると思うので、現行法は妥当ではないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 通牒、行政指導……。
  133. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 失礼いたしました。  第二点の公序良俗やあるいは権利乱用にわたらないようにということの指導でございます。  まあ、われわれ、先ほど申しましたように、そういう二つの観点を十分に考慮に入れて基準法三条の指導に当たっているわけでございますが、まあ、どの程度に至れば公序良俗に反するか、権利乱用にわたるかということは非常に微妙な問題でございまして、ケース・バイ・ケースでございます。  たとえば、今回の三菱樹脂の事件についても、最高裁は、具体的なこの問題について、御本人があの程度のことをされたことが諸般の事情から見て、留保条件づきの解雇権、それの正当な行使に当たるかどうか、もっと事情を調べてみなければわからないということで、高裁に差し戻しをしておられるような状態でございますので、なかなか一がいに、一つの基準をつくるということは非常にむずかしいことではないか。やはりケース・バイ・ケースでそれぞれの事情を詳しく調べて判断をするほかないのではないかと、かように考えるわけでございますが、今後とも、判例の動向その他を十分によくフォローいたしまして、何らかそういうものができるかどうか、今後とも検討してみたいと、かように存ずるわけでございます。
  134. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ大臣、そういうことだそうですが、判例の動向を見てと言っておりましても、差し迫って、非常にいま、この労働関係がむずかしくなろうとしている段階ですね。労働関係がむずかしくというよりも、むしろ個々の労働者にとっては、弱い立場がますます弱くなるような経済的環境になろうという、まあ石油危機その他によって。そういうときに、こうした判決が出たと、それとばかり、先ほど来委員長からも指摘されるように、企業のほうには契約の自由があると、大前提。それで、かといって、労働者がますます思想調査とか、そういうことによって差別扱いされるようなことが、各地で起きるようなことは望ましくない、これは当然じゃないでしょうか。いかがでしょう。
  135. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先ほどから私も小平委員の質問を拝聴しておったんですが、私自身も法律はしろうとでございますが、まあ一番やっぱり、私たちの役所としますれば、働く人の地位の向上、それから不安な状態を守って、豊かな生活に向かわせると、この姿勢は、いろんな場合にやっぱり取り続けていきたい、これが原則だと、これは御理解いただけると思うんです。  ただ、いまお話承っている間に、だんだんわかりますことは、局長からもお話のあったように、答弁のあったように、この第三条で「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と、こうございますが、その第一前提は、私たちはやはり、日本の憲法によって基本的人権がお互いにある。さらにまた、選択の自由がある、自由社会において。これがまず私たちの一番大事な基本的人権だろうと思うんです。  そして、それを受けて立ちまして、聞業安定法の第三条を見ますと、これはまあ、労働者を守る私たちの一つの具体的な法律でございますが、第三条、「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。」こういうふうに書いてあるわけです。これに基づいて、私たちは職業紹介を申し上げたり、そして、いいところに入るようにお願いをする。しかし今度は、受ける側からしますと、契約の自由がそこに生まれるわけですが、先ほどお話のあったように。今度は受けるほうの側から見ますと、何といいましても、だんだん御説明があったように、営業の自由もございましょうし、それからまた財産権の保障というものがまた憲法である。この間の調整といいますか、その壁をだれでもかれでも、どんなときでもというところをどうして破れるか。たとえば、外国人、私のほうは使いませんという組合と会社との契約があったところに、幾ら職業紹介してあげても、そういうところはお使いにならないでしょう。そういう問題があるということ、これをいまから先、どうそれじゃ法的壁を破って、何もかにもそういう協約があるところでも、どうしてもやってくれというところまでいけるかどうかという調整の問題がまあ悩みの種だと、こうひとつ御理解いただき、そうして原則論は、いまさっきおっしゃるとおり、石油危機等々で不安もある、そうした場合に、私たちとすれば、守るという、あるいはよき生活を与えるという原則に立ちますと、従来この委員会等々で御審議いただき、御可決いただいたようないろいろな諸法律がございまして、離職者が出た場合に、雇用安定の諸政策に基づいて、これの対策を立てて一人でもないようにしていこう、こういうふうな姿であることを御理解いただきたいと思います。
  136. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、こればっかりやっているわけにいきませんので、またあらためて、いつか機会を見て、もう少し政府の取り組む姿勢を尋ねたいと思います。  次に、けさの新聞によりますと、通産省は石油危機に対して「倒産・失業救済へ特別法」「助成資金を拡充」「レイオフに失保を給付」「賃金の八〇%程度」というようなことが通産大臣の発言として報道されております。それは通産省の分もありますが、労働省はどういう検討をしておりますか。
  137. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 昨日、私も当院の商工委員会に呼ばれまして、目下の石油危機に際しての雇用の見通し、対策ということでお尋ねを受けたわけでございます。その際、私どもも現在浸透しておりますような石油の供給削減、それに伴って総需要抑制政策という手順が浸透してまいりますと、当然に雇用面にいろいろな影響が出てくるかと考えております。昨今、ここ数日問いろいろな企業におきまして、一時帰休でございますとかあるいは採用の手控えとか、そういった報道がなされております。私どもも事態が非常に重大な問題でございますので、実はきょうも全国課長会議を招集いたしまして、最近におけるこういった企業の動きを的確に、正確な情報をつかむと同時に、今後十日おきに各地におきます。こういった雇用面の動向を正確に把握いたしまして、情報を収集するように指示をしてまいりましたところでございます。  ここ数日間出てまいりましたたいへん大きな動きは、たとえば日立製作所で一時帰休が行なわれるとか、あるいは日産自動車で臨時季節工の採用を中止したとか、こういった幾つかの報道がなされておりますが、こういった点につきまして、詳細に実態調査いたしましてその当否、正確な情報を私ども入手いたしておりますが、こういった問題につきまして、けさの新聞で一時帰休に対して失業保険適用というような記事がございましたが、さっそくけさ私、通産省と連絡をとりまして、その事実の有無を確かめたわけでございますが、通産省のほうは通産省なりに、特に中小企業について今後倒産とかあるいは失業の発生を予防するというようなための中小企業対策について検討を進めておるようでございますが、その際、雑談的に通産省の職員の中で失業保険にもいろいろと役割りを果たしてもらわなければならぬという話が出た程度でございますと、ああいう談話が発生された事実はないそうでございます。私のほうといたしましても、一昨年のドルショック、スミソニアン体制のときの雇用へのいろいろな影響が出てまいりましたが、そういった先例にもならいまして、今後、現在のところまだそういった動きは出ておりませんけれども、今後そういう一時帰休とかあるいは倒産、失業というような事態が十分起こり得ることも予想いたしまして、そういった事態にも対処できるような対策をいま鋭意検討中でございまして、過去のいろいろな事例に基づきまして、対策を講じてまいりましたその対策を一そう今後強化することを現在検討いたしまして、対処いたしたいと思っております。  と同時に、ただいま先生からお話ございました失業保険の問題でございますが、こういった一時帰休を企業が実施いたします際に、失業保険制度を適用いたしますということにつきましては、これは先生も御承知のとおり、失業保険はあくまでも離職をし、失業をした人に対して、その失業期間中に保険金を支給し、そしてなるべく早く再就職をはかっていく、こういう制度でございますので、いま直ちにこういった事態が起こりましたからと申しましても、失業保険制度をそのまま適用することはきわめてむずかしい問題でございます。しかしながら、さりとて、このまま私ども過去においていろいろと講じてまいりました対策だけでは必ずしも十分でないというような懸念もございますので、目下失業保険制度の抜本的改革の検討を進めておりまして、その中で先生のいま御指摘のようなこういった操短、一時帰休のような際に、失業保険制度的なものを適用していく、そして単に六〇%でなくて、もっと労働者の人たちが安心してそういった事態に対処できるような体制もとり得るような措置を現在検討しておるわけでございます。
  138. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、ひとつ局長簡単にお答えいただきたい。それはいろんな情勢があると思いますが、労働省で来年度の成長率がこれこれの場合は失業者が何十万人出るであろう、発生するであろうとか、あるいは石油危機で緊急労働対策、採用予定の解約・自粛、週休二日制さらに推進というような、そういう具体的な労働省作業を進めていらっしゃるかどうか。こうした新聞報道だけ見ますと、失業者二十七万人増というようなことを見ますと、相当強烈な印象を受けますが、その辺の実情はどうかということが第一点でございます。  それから第二点として、いま局長が最後に説明された、失業保険制度全般を検討しようということは、これもすでに発表になっている雇用保険制度ということだと思うんですが、その雇用保険制度というものがいま話題になっておりますが、これはなぜこの機会にそういうことが提起されてきたのか、この辺の経過を御説明いただきたい。簡単でけっこうです。
  139. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 第一点の経済見通しにつきましては、目下、経済企画庁を中心にいたしまして、私ども入りまして、関係省庁の間で今後の経済の見通し、その中で雇用の見通しもいま鋭意事務レベルで詰めておる段階でございます。ここ一両日中に最終的に成案が得られるのではないかと思っております。それをもとにいたしまして、今後の雇用対策を講じてまいりたいと、かように考えている次第でございます。  それから第二点の、こういった今後起こり得る失業に対処いたしまして、先生御指摘ございました雇用保険法案というものをいま検討いたしておりますが、これは、こういった石油危機といったような問題が起こったからこういう問題に手をつけようとしたわけでは実はございませんで、三年ほど前から失業保険の問題につきまして、関係審議会におきましていろいろと御検討が続けられております。本年に入りまして、ただ単にこの失業補償という機能をどうするこうするという問題に限定することなく、さらにこれをもう一歩推し進めまして、わが国の雇用政策をどう今後の情勢に対処して進めていくか。あるいは当委員会におきましてもしばしば御指摘ございました勤労者の、労働者の職業生活、生涯にわたってよりよい生活を、よりよい職場を確保していくための生涯訓練とか、そういった問題までもこの際、制度的に確立する必要がある、こういう御意見をしばしば承っておりますので、そういった問題を含めた大きな、もっと雇用政策全般にわたるような制度をどうやってつくるかという検討をいたしました結果、今回の雇用保険法案を提出するような運びで準備を、いま検討を進めておるわけでございます。たまたま、その検討の段階でこういう石油危機の問題が起こりまして、私ども、その中に盛り込もうと考えておりました雇用調整策なり、あるいはこういう突発的な危機、失業の危機に対処し得るような、そういう制度も合わせてこの中に実は検討いたしておりましたので、こういう制度を検討し、実現の運びに至らそうと私ども努力しておりますことが、幸か不幸か、それによって対処できればまことに幸いだと、かように考えておるわけでございます。
  140. 小平芳平

    ○小平芳平君 非常に機会を失った感じですね、局長。むしろ、通産省のほうが、先ほど申しますように、局長からもお話がありましたように、レイオフに対し失業保険を賃金の現行六〇%を八〇%に引き上げる、こういうことは、雑談程度だと言われますけれども、しかし、ほんとうに深刻な事態と受けとめれば、現在の体制でどこまで救済ができるかどうかですね。  それから、雇用保険法案と局長言われますが、この雇用保険法案が、雇用保険法案という新しい制度ならば、むしろ、こういう緊急事態のときに手をつけること自体がいいのか悪いのか、その辺はどう考えますか。
  141. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 今度の石油危機は、みんなやっぱり御心配しているところに、通産省も御自分なりに研究というか、話が出たことだろうと思います。私は就任早々でございますが、こういう時期でございますから、たとえば、皆さんお互いの御審議をお願い申し上げたんですけれども、三十六年、三十七年の不況、繊維の不況のとき、あるいはまた四十六年のドルショックのとき、これはたいへんなことでございました。そういう先例などがどうなっているか、私は、局長をはじめ全役所の諸君に御研究願って、あらためてそのときの対策をここで示してもらいたいと、それがどんな効果があったか、全部、いま持っておる制度、いまある法律、そういうものを適用しまして、これの対応策を練って、御案内のとおり、まあ、ほとんどそれを発動しないで、——何さま、いま需給関係が非常に逼迫しておりますから、求人が二・三倍ということでありますし、さらに、若年労働者になりますというと、一人について二十人ぐらいの求人があることは、それぞれの地方ではみんなおわかりのとおりでございます。ですから、当面は、いますぐにはないだろう、しかし、過去の先例で、そういう法律の手当てをしてちゃんとやっていこうじゃないかというかまえが一つ。それから、ありとあらゆる場合において、とにかく、失業保険、そういうものなどもあるから、これもフルに活用もしよう。一方、御案内のとおり、私たちがいままで見ておりました失業保険制度というものは、一般的に、受給者が失業して再就職するまで保険金を差し上げるんだが、現実、受給関係を見ますと再就職の希望も意思も何にもない若い女子労働者、こういう諸君が、中高年層で失業して一家をささえなきゃならぬ人々の保険金を受けるよりは、若い女の、そういう人たちのほうが多いんです。これはもう御案内のとおりです。そうすると、これは何とか改正しなきゃならぬということで御研究願っておったのが、失業保険研究会なんです。それが偶然のように、去る十一日に私のところに答申を持ってまいりましたので、それをよくよく見ますというと、それはもう非常にすばらしい案だと、こういうふうに私たちは感じまして、これを早い機会に御審議をお願いして、いままである制度の上にプラスアルファして、雇用の促進、あるいは失業者が訓練されて、いい就職口を見つけると、あるいはまた、高年齢層になれば、もうほとんど労使ともどもに掛け金が要らないようにするとか、あるいは一年間に三百日保険金を差し上げるとか、こういうところをやっているのが今日の雇用保険制度の、いま出ている案なのでございます。そういう近いもの、遠いものまでも入れまして、何とかこれはやっていきたい。さらにまた、役所といたしましても、この二十二日には、労働省の中に石油対策本部を設けまして、通産省の話もあるでしょう、経済企画庁の話もあるでしょう、そういうものを全部総合して、最後に、私たちのほうはとにかくお手伝いする実施機関ですから、ここが動かなければ話にならぬという覚悟でやっておりまして、その間、またいろいろ地方、地方のお話があれば伺いながら、地方の私たちの職業安定所のそういう現場の諸君に、こういううわさ話が新聞である、国会議員から話が出ているからというのは、直ちにオンラインで調査をさして、ずっといままで持ってきているということもひとつ御理解を願いたいと思うんです。  先日、私は、いまの時代は非常に不安な時代なものですから、せんだって、パリではニクソンが自殺したということで、金融市場が五日間もとまってみたとか、やれ、だれかが電車の中で、どこどこの信用金庫があぶないと言えば、そこへ取りつけさわぎが出るとかというふうなことなものですから、ほんとうに地方の職業安定所を動かしながら、実態をつかまえて、その対策に当たりたいという意思とその実行を、いま一生懸命やろうとしておりますから、格段のひとつ刺激と激励のほどをお願い申し上げておきます。
  142. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣の御熱意は、よくわかります。私は、事務当局が少しぼやぼやしていたんじゃなかったかということで……。  それから、あと二、三点、こまかい問題ですが、尋ねて終わりたいと思います。  まず局長、どちらの局長からか、終身雇用制度という——まあ、終身雇用制度というものは望ましいことかどうかですね、人によっては望ましいことでもあるし、かといってまたいろんな欠陥も指摘されているんですが、まあ、一番最近の動向としてどのように感じられますか。
  143. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) わが国の労働慣行は、もう先生御案内のとおり、終身雇用、年功序列型賃金というのが、これは一般的に長年行なわれてきております。先般のOECDの国別の審査におきましても、日本の経済発展の一つのかぎは、終身雇用、年功序列、企業内組合だと、こういったことがいわれておるように聞いております。終身雇用制度につきましては、確かにいろいろ非常な長所もございます。雇用が非常に安定するといった、その他、いろいろな長所もございますと同時に、また、逆に、欠陥もございます。最近の傾向といたしましては、日本の労働慣行の中から新しい芽ばえと申しますか、いわゆるアメリカ、西欧型の、非常に雇用が流動化する、いわゆる上向移動といいますか、若い人たちが学校を出て就職をして、一年、二年、三年のうちに転々として変わっていくと。新卒の例で申しますと、三年間に大体四割五分から五割ぐらいが転職をしているというような実績もございまして、大企業で、優秀な、安定した職場だから、そのまま終身雇用制度に乗っかって、一生そこで暮らすという傾向が必ずしもいままでのような形では続いていない、と同時に、そういった終身雇用制という労働慣行が、そういった意味で労働者の意思なり、まあ、いろいろな理由で転職が非常に容易になってきている、と同時にそういう転職の傾向が非常に強くなってきているということによりまして、終身雇用制度によってふさがれておりました中途採用、中途から就職をしたい、あるいは、先ほど大臣から御指摘がございました中高年齢者の職場の確保というような観点からは、逆に、その点が容易に道が開けつつあるというようなこともございまして、必ずしも終身雇用制がいいとか悪いという判断はいたしかねますけれども、アメリカ等におきましても、最近日本的な終身雇用、年功序列型の賃金も部分的に取り入れるような企業が出てきております。そういった意味におきましては、いろいろな型が総合的に運用されるのがより望ましいんではないかというようなふうに考えております。
  144. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは望ましい面と、欠陥と、両方指摘されるのが当然だと思います。  ここで私は大臣に、ひとつ厚生省に対して、現在の年金制度が悪いぞと、一言、言っていただきたいんです。それは、おとといの社労委員会でも厚生大臣に、私はもう何回となくそういうことを発言するんですが、あるいはまた、——局長いいです、大臣にはぼくが説明しますから。——何回となくそういうことを言い、また、国会法による質問趣意書も、つい最近出したんですが、その返事も来ましたが、相変わらずやる気がない。どうして、こういうことを私がいま言い出すかと申しますと、やはり労働市場が現状ですから中高年層にどうしてもしわ寄せが行く。かりに不況が来たとしますと、こうした最もしわ寄せを受ける中高年齢層の方々、それで、その方々が、たとえば五十何歳、六十歳でつとめておりますと、厚生年金にかかっているわけです。それが、厚生年金は、老齢年金もらうまでいればいいんですが、わずかの期間で退職してしまいますと、今度は国民年金に入らなくちゃいけない。そこでうまく通算して年金に結びつく人がいれば、まあそれでいいんですが、年金に結びつかない人が出るわけです、現実に。そういうような点、つまり中高年齢——中高というよりも、むしろ高年齢層の方は、早くつとめをやめて、国民年金に入っておかないと、一生老齢年金はもらえなくなるぞという制度になっているわけです。ですから、そういう点、まだ、もうちょっと詳しく説明しなきゃいけないかもしれませんが、時間がありませんので、要するに、総合的に労働者の福祉というものは、いま局長さん方のように官庁へ就職して、二十数年、三十年つとめられた方は、一本化しておりますから、年金も非常に安心なんですが、必ずしもそうでない人がふえつつあるという、安定局長の説明でもありますので、そういう年金制度の通算制度ということを研究し、検討し、——まあ、労働省が財形貯蓄を御検討くださるというように、先ほど、お考えを示されましたが、財形貯蓄とともに、こういう年金制度についても、御検討いただきたいと思います。その点、ひとつよろしく。
  145. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) たいへんりっぱな御指示をいただきまして、ありがとうございました。何といいましても日本の需給関係が逼迫しているといいましても、中高年齢層の場合はさほどでもございません。また、地域によっても違います。そこで、いまから先の労働対策は、こちらのほうに重点を置かなきゃいかぬと私は感じておりますし、また、最近雇用政策調査研究会から私に御報告がありまして、その中には、労働省としては、高年齢者雇用対策として、年金の支給制限の緩和と、賃金との併給の勧告、これを厚生大臣までやっております。そういうことで、やはりある法律、ある問題手段をつかまえて、これをやはり強力に推進していくのが私たちの仕事じゃないかと思っております。  さらに、財形の問題ですか、——財形の問題につきましては、私はほんとうに感心しますことは、これほど物価高といわれる世の中におきましても、そして、貯蓄の値打ちが下がるという不安の中におきましても、社会保障制度が発達していないという不安もございましょう。それにいたしましても、労使が話し合いの中で一年半前に発足したこの財形貯蓄が、何と二百三十万の勤労者が積み立ててくれているんです。しかも、その金額が千二百五十億になっています。でありますから、私としますれば、内閣全体の問題とし、国民全体の問題としてこの物価を押さえていく。これに国民的な課題としておやりいただくと同時に、このやはり値打ちの下がるものをそれによって押えつつ、一方においては財形貯蓄というものを拡大し、それには財政上の、税制上の優遇措置なりあるいはプレミアムなどをつけたりしまして、やはり夢というものを消さないでいくようにしなきゃいかぬということで、せっかくこの予算の時期に夜おそくまで、どこまで私もやれるかわかりませんが、そういう熱意で、各国会議員の御協力などを得ましていま動いている次第でございまして、そういうところにまただんだんの御協力と激励をいただくならば幸せだと思います。
  146. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次に、今度はまた別の問題ですが、労災保険につきまして労災保険の遺族補償年金と、それから長期傷病補償給付の年金と、これを資料として提出していただいたんですが、これは私が個人個人ほとんど当たって生活実態を尋ねましたのは、山形県にある日本ジークライトという会社がありまして、ここの工場はきわめて労働条件の悪い、労働環境の悪い職場でして、それでけい肺患者が多数発生している。大量に発生している職場です。それで、遺族補償年金をいただいている方七人、それから長期傷病補償給付たる年金ですが、長期年金を、長期給付をいただいている人、多くの方にお会いしまして生活実態をお聞きしたんですが、きわめて少ないんですね。遺族年金の方は御遺族ですから、もちろん働く主体はなくなったあとですし、また長期傷病の年金をいただいている方も、まず働ける可能性のない人で、しかもきわめて少ない。これ、労働省から出してくださったのは、遺族補償が二十五万円です、年間二十五万、月二万円ですか。それから長期補償の年金の方が平均で三十七万円ですから、月三万弱であります。これでは、いかに山間僻地とはいいながら、非常に生活がたいへんなんですがね。こういう点はよく実態労働省は把握していらっしゃるかどうか。それに対する検討はしていらっしゃるかどうか、その点についてお尋ねしたい。
  147. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 山形の日本ジークライトの関係の遺族補償年金、長期傷病者補償年金の給付額につきましては、先生いま述べられましたとおりでございます。で、遺族のほうは、これは先生も御承知のとおり、家族数によっても違うわけでございまして、奥さん——未亡人の方お一人である場合には、年齢によって違いますが、最低の場合には三〇%になっております。お二人になりますと、子供さん一人、それが加わりますと四五%、子供さんが二人になりますと五〇%、さらに子供さんがふえるにつれて五%ずつ上がりまして、最高が六〇ということでございますから、家族数によっても違うわけでございまして、その方方が高いか低いか、家族等にもよるわけでございます。それにいたしましても、確かにおっしゃるとおり低いわけでございまして、私ども四十八年、今年にこれまで新規に裁定いたしました遺族補償年金額を全国の平均で申しますと、遺族補償年金は五十一万一千六百九十七円になっております。それから長期傷病者補償年金は、新規に裁定いたしましたもの、五十九万二千七百八十八円になっておるわけでございまして、全国の平均から見ましても非常にジークライトの場合は低いわけでございます。これは当該企業の賃金にもよるわけでございますが、全体的に申しますと、日本の賃金はまだまだ地域間のいろいろな差がございまして、山形は非常に全国でも賃金の低い地域になっております。下から数えてあまりその下がないような地域的には順位になっております。四十六年の毎月勤労統計によって見ますと、全国の平均が月九万八千五百二十八円であったときに山形は六万八千六百六十八円といったように、地域的にも山形はもともと非常に低い、こういうことも原因ではないかと、かように考えておるわけでございます。しかしながら、全般的に申しまして、私ども、現在の労災のいろいろな給付が決して十分であるというふうに考えておりませんで、前の国会でも申し上げましたように、かねてから現行の労災保険につきまして給付の改善を含めまして全面的検討をいま鋭意いたしておるところでございまして、年が明けました国会には給付の改善を含みますところの労災保険法の改正案を提案いたしたい、かように考えておるわけでございまして、その中におきましては、御指摘になりましたようなこれらの点についても十分考えてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  148. 小平芳平

    ○小平芳平君 今国会に出すということですか、——そうすると大臣、ひとつ根本的な制度そのものの改善の、そういう案ができますれば、それが近くできるならば、ちょっと事情は違うかもしれませんが、御承知のように今年、昭和四十八年は厚生年金、国民年金その他大きな改正がありましたね、とともにまた異常な物価高ということを背景にして生活保護の五%引き上げその他もありましたわけですが、そういう年金や生活保護等、——むしろこの労災の場合は職業上による災害を受けた方なんですから、やはりこれはもっと先にこれらの人に対する制度改正なり、かさ上げなりが行なわれてしかるべきくらいに感じますが、いかがでしょうか。
  149. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) いろんな制度がありますけれども労災保険がいま小平委員がおっしゃったような意味を含めまして自動的にスライド制、これはたいへんに私はいい制度だと思うんです。いままで恩給その他でスライド制というものはなかなか実現しないときに、これは制度としてスライド制を認められて、そうして賃金水準の変動に応じて保険給付の額を変動させております。そういうことで実質的な価値というものの低下を防ぐように従来もしてきましたが、いま局長が申されたような、さらにそれを拡充するところの改正案というものを明けの国会にお願いしたい、こういう気持ちがありますから、その際には、また御審議に御協力のほどをお願いいたします。
  150. 小平芳平

    ○小平芳平君 それからもう一つ労災関係で、足尾ですね。栃木県足尾の元従業員で、職業上と思われる健康被害者が多数発生していると、私たちは問題提起しているのですが、必ずしも県なり環境庁は思うように動いてくれない。しかし、本来元従業員なら労働省の管轄でもありますので、労働省に対してその辺の調査を進めていただきたいということを問題提起しておきましたが、結果わかりましたですか。
  151. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 足尾銅山の元従業員の健康問題につきましては、鹿沼の保健所が実施いたしました地区住民の健康診断、この中にはもちろん元従業員が含まれているわけでございますが、一応その結果では特に異常は認められなかったというような発表がされております。そこで、私ども、しかし先生がおっしゃるような問題もございますので、栃木の基準局に対しまして、その結果等を十分に、さらに慎重に検討するように指示をいたしておるところでございます。
  152. 小平芳平

    ○小平芳平君 この鹿沼の保健所の健康調査ではだめだと言っているのです、私ははっきりと。その方は、ごらんのように鹿沼の保健所から来ました、通知が。ごらんのように日にちも入っていない、ただ「正常」と書いてあるだけ。ところが実際は、私たち側の調査では、煙ばい作業を何年もやっていた。精錬所の煙ばい作業と普通いっているようですけれども、煙に巻かれて作業をやっていたと同時に、また県の一次検査、二次検査、その結果は心不全とかあるいはたん白が三プラスというのですか、三プラスとか、あるいは足がはれているとか、心不全だから心臓に不順な音があるとか、ということがちゃんと出ているわけですよ、県の保健所の検診の結果にも。私たちが聞いた、本人から聞いた、しろうとが聞いた話でも、砒素中毒とか、ぜんそくとか、あるいは粉じん作業を長年やっていたとか、そういうことを本人は言っているわけですよね。ですから私は、元従業員に対するそういう追跡調査、これも基準局の仕事じゃないですか。基準局は、請求が出ない限り動かないですか。それが原則かもしれないですね。請求書を持ってきたらその上で検討するのが、本来の基準監督署の仕事かもしれませんが、そこのところをこうして具体的に私が指摘するわけですから、調査していただきたいと思うのです。まだこの足尾のことについては何時間もしゃべるくらいの物事を持っておるわけですけれども、そういうことを当委員会でそんなにやっておるのも不見識だと思いますので、一人だけ、指摘いたしますから。
  153. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先生があげられました例のお方を含めまして、一応鹿沼のあれがいたしましたわけでございますが、どういう検査をし、どういうことであったのか、さらによく現地で調べさせまして検討するようにいたしたいと存じます。
  154. 小平芳平

    ○小平芳平君 それも環境の調査としてならば環境庁、県、保健所ということになるわけですが、元従業員として独自にやっていただきたいですね。よろしいですか。
  155. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 保健所がすでに一回やっておるわけでございますから、どういうことをやったのか、その結果がどうであったのか、その点を十分調べまして、必要であるならばそういうことも含めて検討してみたい、かように存じます。
  156. 小平芳平

    ○小平芳平君 必要だから言っているのだよ。何回でもやりますから、また……。
  157. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 私は、先日、都内の病院につとめているある看護婦さんからこんなお手紙をいただきましたので、ちょっと聞いていただきたいと思います。   私は三人の子供をもつ看護婦です。学童保育所を作っていただきたくてこの手紙を書きました。   看護婦というのは、今でも「独身で、寄宿舎に住んでいる者」でないと仕事が続かないような労働条件が沢山残っています。三交代制・一ケ月の内半月近くもある夜勤日数、慢性的な看護婦不足による日々の労働強化は言葉に表せないほど、きびしいものです。まして、子持ちの看護婦にとっては一層きびしく、何もかもすててしまいたくなるような日も少くありません。それでも私達はお互いにはげまし、助け合って仕事を続けて、今では組合運営ではありますが、職場に産休あけからあずけられる保育所も出来ました。少し大きくなれば区立の保育所へ入れてもらうこともできます。ところが、どうしようもないことにぶつかってしまったのです。——子供が小学校一年生になり、学校へ出かけて一、二時間すればもう帰ってきます。私達のほとんどが地方出身で家もなく、もちろん姑もいない、核家族です。兄弟といえば、もっと幼い保育園へ行っている弟妹だけ。狭いアパート、外はちょっと走れば車にぶつかりそうな道路ばかり……この子は、両親が仕事から帰ってくるまでの長い時間を、いったいどこでどうして過せばいいのでしょう?——合鍵をつくり、子供の首にしっかりぶらさげて、室の壁一ぱいに約束事を書いた紙をはり、毎朝くどい程その日の注意を言いきかせ、午后は仕事もおちついて出来ず、何回も電話をして、無事でいることを確かめあう日々……親子ともども息がつまりそうなくらいに緊張して過ごす毎日……何とか無事にすごしてきたと思っていても、月末に家主へ家賃を納めに行くと、「子供さんが一人でいるんだそうですね。他の子供を大勢集めてうるさくてこまると近所の人が言うのでね……。」「火元は大丈夫でしょうね。ストーブはもちろんこたつも使わないで下さいね。子供は何をするかわかりませんから。」「考えてもらえなかったら、どこか良い所へ移ってもらうしかないですね」。私たちの苦しみを考えて下さい。——毎朝、ぐずる子供を叱りつけおだてたり、すかしたりしてバスにのせ職場へかけつけます。「一ケ月前まであんなに元気で、すなおだった我が子は一体どこへ行ってしまったのか。」——と、そして何ケ月もしない間に幾人かの看護婦が職場を去っていきました。  あとは省略いたしますが、大臣は、このおかあさん看護婦さんのお気持ちをどのように受けとめてくださるでしょうか。母親は子供のために職場を捨てなければならないことを御理解いただけると思うわけでございますが、いかがでございましょう。   〔委員長退席、理事小平芳平君着席〕
  158. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 萩原さんのおっしゃる気持ち、私は、私自身も自分の地方へ帰りますと、病院の看護婦さん大ぜい集まって座談会をしたり、あるいはまた昨年の暮れには、役所のほうが看護婦さんの手当が三百円というやつを三千円まで主張しましたが、千円まで夜勤の手当がなった、こういう方々に非常によく御交際を願っておりますから、そういう悩みを持つケースを私自身もよくわかっております。  何か具体的な問題等々については、係の役所の方から御答弁も願いますけれども、おっしゃった、お読み上げになったお気持ちというものは、私も日常間々見ることでございます。
  159. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そこで、まずお伺いをいたしますが、働く婦人千百八十一万のうちで、どれほどおかあさん勤労婦人がいらっしゃいますのか、承りたいと存じます。
  160. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 私からお答えさしていただきます。  働く婦人の中で既婚者が非常に増加してまいるというのが最近の傾向でございます。それらの既婚者の中には、もちろん小さな子供あるいは学童を持つ人がたくさんいるわけでございますが、その数字がどれほどであるかということにつきましては、これは全国的な実数の把握ということは非常にむずかしゅうございまして、また流動的でもございますので、実数として正確な数字は掌握できないのでございますが、いろいろな統計から総合的に推計いたしますと、中学生以下の子供を持っている者、   〔理事小平芳平君退席、委員長着席〕 それから小学生の子供を持つ者というように分けまして見ますと、既婚の女子労働者のうち、中学生以下の子供を持つ婦人が約半数あるようでございます。また、その中で小学生の子供を持っている人が二五%、中学生の子供を持つ者が一七・四%ということでございまして、これを大ざっぱに推計いたしますと、大体小学生の子供を持っている働く婦人が八十万、中学生の子供を持っている婦人が六十万程度というように推計されるわけでございます。
  161. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 二十万とおっしゃいましたわけでございますね。少し私は少な過ぎるということを考えるんです。それはまた後ほど申し上げます。  で、昭和二十二年に労働省は幼児保育に関する通達をお出しになりましたが、いわゆる学童保育についての通達をこれまでにお出しになったことがございますか、その点を承りたいんです。
  162. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 昭和二十二年に通達を出しておりますが、これは事業主に対しまして、その企業の中で乳児の保育についての施設を設ける旨を要請した通達でございます。これは労働基準法の第六十六条に「(育児時間)」の規定がございまして、その育児時間の実効をあげるために企業の中で授乳ができるような施設を設けることを要請したわけでございますが、学童保育につきましてはいささか趣も変わってまいりますので、従来から事業主に対してそのようなサービスといいますか、そのような制度を要請する旨の通達を出したことはございません。
  163. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 不在家庭の、それでは生活実態について調査をされたことがございますでしょうか。働く婦人のことを考える場合には、子供のことは一体としてその対策を立てるべきだと考えるわけでございますが、その点、大臣いかがでございますか。
  164. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) おっしゃるとおり、一体として考えてそういう施設をやっていくようにすべきたと思っております。
  165. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 私は、先般尼ケ崎市の講演に出かけました際に、あとの座談会で校長先生が、小学校の子供を持つ親は一応職場から家庭に帰ってほしい、こういうことを言われたわけでございます。そのときに一堂に居合わせた人々は、それは無理な話だということになったんでございますけれども、私はその校長先生にそれを言わせたものは一体何だろうかということが痛いほどわかったわけでございます。で、子供たちの悪い遊び、あるいは盗み、その他火を持って遊んだために火事をやったとか、そういったことを見るに忍びない子供生活をこの校長さんは見聞きをされていたと、こういうことだと考えるわけでございます。  そこで、去る十一月の決算委員会で勤労婦人センターの設置基準の中に学童保育の場を設け、それに国庫補助を出したという御答弁があったわけでございますが、それにつきまして本年度の状況を承りたいと存じます。
  166. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 御指摘のように、今年度から始めました勤労婦人センターという施設につきまして、本年度は国庫補助で五カ所の新設を行なっております。これは大体おおむね人口二十万以上の都市が設置運営主体となるものにつきまして、国として一千万の補助をするということでございまして、ただいまその五カ所の市で、その建設中でございまして、まだ開設の運びにはなっておらないわけでございます。
  167. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 二十万以上の都市ということになりますと、兵庫県なんかはかなりたくさんあるわけでございますがね、その中で兵庫県はどこか一カ所でもございますでしょうか。
  168. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 兵庫県におきましては尼ケ崎市がただいま建設中でございます。
  169. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それでは、来年度の概算要求はどれほどお出しになりましたのか、また本年度いろいろ公共事業費の抑制とかなんとかいわれておりますけれども、これは福祉に関係のあることだと思いますが、どれほどお出しになって、その見通しはいかがでございますか、承りたいと存じます。
  170. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 四十九年度の要求といたしましては、新たに十五カ所を増設するということと、それから補助単価を本年一千万円でありますのを、一千五百万円に増額する、この線で予算を要求いたしております。で、その実現に努力いたしているところでございます。
  171. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ぜひこの要求はもう削られないように、ひとつ大臣、がんばっていただきたいと思うわけでございますね。  それで学童保育をしなければならない児童の数、いま局長さんね、二十万とおっしゃいましたけれども、尼ケ崎だけでも昭和四十七年度で不在家庭児が在籍児の二三・六%、それからその中で、全くの一人ぼっち、あるいはまた小学生以下の兄弟しかいないというのが全児童の一二・〇四%ということになっておりますので、これは先ほど二十万は少な過ぎるんじゃないかと私が申し上げました根拠でございます。そういう中で予算措置は力一ぱい努力をしていただいたと思うのですけれども、私は少な過ぎるんではないかと、こう思います。しかも、この問題は、文部省、厚生省とも大いに関連のあることでございますから、両省への働きかけというものがまた必要であろうかと思います。そこで、文部省、厚生省へこの問題についてどのような働きかけをしていただけましたのか、その点を承りたいと存じます。
  172. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 初めに、ちょっと数字のことで御訂正申し上げます。  私、あるいは言い間違えたのかもしれませんが、先ほど申し上げました数字といたしましては、小学生の子供を持つ働く婦人は約八十万、それから中学生の子供を持つものは六十万でございまして、その前にパーセンテージを申し上げましたので、それとちょっと、あるいは言い間違えたかしれませんが、そのような数字でございます。これらの子供たち、すべてが委託以外に別に保育の施設を必要とするかどうかはこれはつまびらかではございませんのですが、いずれにいたしましても、学童の特に低学年の子供の保育ということは非常に大きな問題でございますので、労働省といたしましてもできる範囲の援助をいたしたいと思っておりますが、御指摘のように、これは働く婦人の問題でございますと同時に、子供の問題でもあるということから、文部省あるいは厚生省の立場としましても非常に関心の強い問題でございますので、私どもとしましては、それらの関係機関と緊密な連絡をとりながら施策を総合的に進めてまいる、このような努力をしているわけでございます。
  173. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 私がこういうことを申し上げますのは、前に学童保育の問題で文部省に私は質問をしたことがございます。そうしますと、大臣は、幼児保育の問題とお間違えになっての御答弁をちょうだいしたわけでございます。と申しますことは、労働省ほんとうに働く母親という立場でいろいろ御検討いただいておるとしますならば、必然的に学童保育の問題はもう御調査もあり、しかもお母さんが出たあと子供はどんな生活をしているかということについても御調査もいただけているものと私は了解をいたしております。ですから、そういうことで労働省のほうからあるいは文部省のほうへも、厚生省のほうへも、こういう問題で非常に問題があるということの御指摘があって、そういうことで協力を要請されていたとすれば、そういうことにはならなかったのではなかろうかと、こういうことを私は考えましたので、ぜひこの両省へお金の問題にいたしましても働きかけいただいて、それぞれ相寄り相助けながらやっていただきたいものだということを考えたわけでございます。日本の行政がまことにタコつぼ行政でございます。もっとささら形行政ならないと、末端の国民は非常にこれは迷惑をするわけでございますね。ですから、各省にまたがった問題というのは十分協力し合いながら所期の目的を達成すべきだと、そういうふうに考えるわけでございますけれども、大臣、こうした各省のいわゆる縦割り行政の中での御苦労といったようなものについてどのようにお考えになっていらっしゃいますか、そしてまた、大臣はこの点で、具体的にどういうふうになさろうとお考えでございましょうか、承りたいと存じます。
  174. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 日本の官僚機構が縦割りであるということは、私たち政治家が一番実は毎日のように憤慨しているところでございますね。そういうことからしますと、これは何かのときにやっぱり総合行政をやってもらわなければならぬという気持ちがいつもあるわけです。いわんや石油危機のこのようなときには、まさに私は総合行政のときじゃなかろうか、そういう点で閣内においても主張もしております。でありますから、いまお申し出のあった厚生省、文部省に対する申し入れは私のほうからもさっそくやりましょう。と同時に、これは今度は私のほうからお願いですが、こういう働く少年、婦人の家というふうな問題については、どうぞひとつ女性議員の皆さん方がちょっとひとつ大蔵省へ行ってまたお話しいただくならば、これは非常に役所のほうもやりやすいのじゃないか、実現するのに非常に効果があるのじゃなかろうかと思いますから、これはお願いしておきます。
  175. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 確かに大臣のおっしゃるとおりでございまして、去年私は予算委員会のときに行管長官であらせられました福田さんに、今度は大蔵大臣でございますから、この問題について私も十分お願いをしたいというふうに考えておるわけでございます。  そこで、この中高年の婦人の場合、完全雇用と臨時雇用の比率というものはどのようになっておりますか、承りたいと存じます。
  176. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 女子の雇用の形態ということでございます。一般的に申しますと、女子は男子と比較して申します場合には常用の者よりも臨時、日雇いの割合が高い傾向があるわけでございます。それで四十七年度の統計によりますと、女子のうち、いわゆる常用という形での、まあ比較的安定した雇用の中にある者は八五%強でございまして、その残りの者は臨時雇いあるいは日雇いといった身分で就労いたしております。男子と比べて常用の割合が一〇%近く低いというのが実態でございます。
  177. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 こういうように来年は不況が予想されるわけでございますけれども、不況になりますと婦人はますますパート的な雇用になりやすいということが考えられるわけでございますけれども、来年のその点についての見通しはいかがでございましょう。
  178. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) この問題は雇用全体の見通しとの関係になるかと思うのでございますが、雇用全体の見通しにつきましては、職業安定局のほうからお答えさせていただきますが、——どうも失礼いたしました、おられませんので……。  安定局のほうでただいま雇用の見通しについて鋭意御検討中でございまして、近いうちに雇用の見通しというものを立てて明らかにすると、そのような準備が進んでいるようでございます。そういう中で女子の問題ということは考えてまいることになるかと思います。
  179. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そういうことが考えられる、予想される、そういう場合に女性が女性であるために特に不当な不利益をこうむらないために、労働省としてはどのような対策をお考えでございましょうか承っておきたいと思います。
  180. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) やはり雇用の安定ということにつきまして、まずは事業主に対する指導を強化するということになろうかと思います。特に女子であることを理由にしわ寄せをこうむるということのないように啓発活動を行なうということが第一であろうかと思いますが、あわせましていろいろな女子特有の問題に対応しますための相談業務を活発に行なうとか、あるいは情報を迅速に集めるとかというような活動を通じまして事態に対処していく体制というものを整えつつ進んでまいりたいと思います。
  181. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 各府県ごとにどういう状況かといったような調査もしていただかなければなりませんでしょうし、また職種ごとにどういうような状態になっているかというようなことについても御検討をいただかなければならないのではないだろうかというふうに考えるわけでございます。私どもは、いつでも婦人であるための非常な不合理な、不利益なというようなことを見聞きをいたしております関係で、この際はぜひこの問題については十分お考えをいただきたいものだと思います。  次に、母性保護の立場から少しお伺いをするわけでございますが、日本の妊産婦の死亡率というのは、相も変わらずやはり高いということがいわれるわけでございます。そこで、国際比較をしてひとつ数字的なものを伺ってまいりたいと存じます。
  182. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 日本の妊産婦の死亡率、働く婦人、一般家庭婦人を含めた死亡率ということでございますが、いま申しわけございませんが、手元に国際比較をする資料がございませんが、私の記憶しておりますところでは、死亡率は非常に低下は示してまいっていると、しかし、やはりスウェーデンであるとか、あるいはイギリス等の国と比べてかなり隔たりがあると、そのように理解いたしております。
  183. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それじゃ、私のほうからちょっと申し上げておきましょうか。  人口十万単位の妊産婦の死亡率の国際比較を申しますと、これは七〇年でございますね、日本は五七・九、それからデンマークは八・五、フィンランドは一二・四、それからフランスが二八・一、ノルウェーが一〇・八、 オランダが二二・四、スウェーデンが一〇・〇、 スイスが二五・二、アメリカが二二・四、カナダが二〇・二、イングランドが一八・六と、こういうことでございますから、日本に次いで高いと思われるフランスの二八・一に比べましても倍だと、こういうことでございますから、これは非常にやはり高いんだということを御承知願いたいと思うわけでございます。  それでは、どのような病気で死ぬのだろうかということについてはお調べいただいておりますでしょうか。
  184. 本田正

    説明員(本田正君) ただいま御質疑ございましたように、妊産婦の死亡率につきましては、ただいま先生から御発表ございましたとおりでございます。諸外国に比べて非常に高うございます。この原因でございますが、最も多いのは妊娠中毒症でございます。これで昭和四十六年の統計で見てみますと、妊産婦の死亡実数が九百五名となっておりますが、そのうち妊娠中毒症が一番多うございまして三百十名、その次が出血でございます。この出血による死亡が二百二十六名ございます。その他子宮外妊娠とか、あるいは敗血症、あるいはその他の疾病が原因となって死亡するというケースがございます。  以上でございます。
  185. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 特に職場で働いている人たちの死亡率というものが一般家庭婦人よりもかなり高いパーセンテージを占めている、これは局長さん御存じでございましょうか。
  186. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 従来行なわれたいろいろな調査によりまして、いま御指摘のような傾向が出ていると理解いたしております。
  187. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 特に妊娠二カ月から三カ月の前半というときには、母親というよりも、むしろ流産の非常に多い時期ということになるわけでございますね。これはこの前に原労働大臣のときに、一番流産が多いときはいつでございましょうかと、私がこうお尋ねをいたしましたら、私は子供を産んだことがないのでわかりません、こういうふうにおっしゃいました。そこで、私は、これはいろいろな点から考えまして、きょうここに一番よく御存じ先生もいらっしゃるのですけれども、まあ、二カ月から三カ月の前半、いわゆるつわりといわれるときに非常に流産が多いということになるわけでございます。そこで、つわり休暇というものが必要でございますし、また、妊婦にとっては混雑の激しい中での出勤というものも流産、早産につながるということも十分御考慮をいただかなければならないと考えるわけでございます。  そこで、労働大臣にひとつ、ぜひこれはお願いをしでおきたいのですが、公務員は時差出勤が認められているわけでございます。ところが、一般の勤労婦人の場合はまだそれが認められておりませんので、ぜひこの際、公務員並みに時差出勤を認めるように労働省から企業に対して指導をしていただきたい、このように考えるわけでございますが、この点いかがでございましょうか。
  188. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) ただいま御指摘の国家公務員の時差出勤のことでございますが、これは御案内の勤労婦人福祉法が昨年制定されまして、その中で妊娠中の婦人に対して事業主がいろいろな配慮をするようにという努力義務が課せられておりますが、この福祉法の規定を受けまして、私ども労働省のほうが人事院に申し入れを行ないまして、その結果、この法施行後間もなく人事院の事務総長から通達が出まして、国家公務員の女子につきましては、妊娠中時差出勤を認める趣旨の規定が作成されたわけでございます。労働省といたしましては、もちろん民間の企業に対しましても同様趣旨の援護策というものがとられますように行政指導を行なっております。昨年、法施行以来説明会を開き、あるいは資料を作成する等の方法により、資料を配付するという方法によりまして、事業主理解を求めているところでございますし、また、労使の話し合いで、そのようなことが徐々に実現しつつあると、このように理解いたしております。
  189. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 やはり、何というのですか、国家公務員のほうがそういう点では非常に有利なようでございまして、一般の勤労婦人はまだ時差出勤の恩典に浴していないということが私たちの耳には非常にひんぴんと入ってくるわけでございますね。せっかく勤労婦人福祉法を出していただいて、一方ではそれをすなおに受け入れていただけたとしても、ほんとうに企業というのはなかなかそういうことを聞き入れてくれないところにあの福祉法というのは絵にかいたもちだといわれるようなところも出てくるのではないだろうかというふうに私も考えるわけでございます。  そこで、ことしあたりはぜひ一般勤労婦人もそういう恩典に浴しますように企業に対しての指導、助言をやっていただきますように重ねてお願いをしておきたいと存じます。
  190. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私も子供を持ちまして、三カ月ぐらいで流産をさせたことがありまして、私は女中なしで家庭を持って、いままでも女中なしなもんですから、わが家の労働力は非常に逼迫している。で、いま申されましたように、やっぱり母性を守ることが大事でございますから、お話のありました勤労婦人に対する時差出勤の問題については、公務員のほうはそういうふうにおすすめし、実行していることでございますから、それにならうように私のほうで努力することをここで申し添えておきます。
  191. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 さきに申しましたつわり休暇でございますね、これは原労働大臣のときにその問題を私は提起をいたしました。そうしましたら、大臣は、母性保護の立場で労基法が改正されるときには検討をいたしますと、こういう御答弁があったわけでございます。聞くところによりますと、いま基準法研究会で労基法の改正が検討されているということでございますけれども、この際、このつわり休暇はぜひ労基法の中に入れていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。大臣が母性保護の上でぜひ必要だというようにお考えでございましたら、この際、ひとつ御決意のほどを承っておきたいと存じます。
  192. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ただいまのお話、研究中ということでございますから、私もその研究の中に入って御期待に沿う方向で慎重に研究してみたいと、こう思っております。
  193. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 大臣、ぜひお願いをいたします。  仄聞いたすところでは、今度の基準法研究会で労基法改正の検討を始めたのは産業界からの要請もあったということを聞きますが、それは事実でございましょうか。
  194. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 決して産業界からの要請があって検討を始めたということではございませんで、基準法が制定されましたのは昭和二十二年でございます。自来約四分の一世紀たちまして、その間、産業事情も変わり、労働態様などもいろいろ変わってきておる、そういう中でいろいろな問題の指摘等、いろいろな御意見がございますので、基準法運用の実情と問題点を、やはりこの際、学識経験者の方に公正な立場から研究していただいて、その上で問題を考えることが妥当だと、こういうことで始めたわけでございまして、決して産業界からの要請で始めたわけではないわけでございます。
  195. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 たいへん安心をいたしました。私は、もし、そうだといたしますと、働く婦人を守る立場と逆に、改正ではなくてむしろ改悪される危険があるのではないかということで非常に心配をいたしました。ですから、労働省勤労者を守る立場からきびしくその意思を貫いていただきたいとお願いを申し上げるつもりでございましたけれども、そうでなければ非常に幸いでございます。ありがとうございました。  そこで、最近また、妊娠中絶ということが非常に多くなっております。これも大かた御存じのところでございます。その理由はいろいろあるようでございますけれども、その中に産みたくても産めないというのもあるわけなのでございます。つまり子供を預けるところがない、乳児院がたいへん不足している、あるいはまた育児休職はもらっても生活の保障がない、こういったようなこともあるようですし、また、それ以前に育児休職の制度がないといったようなこともあるようで、産みたくても産めないという若いおかあさんたちもいろいろあるようでございますから、その点についても十分お考えをいただきたいと考えるわけでございます。そこで、育児休職が認められてもいわゆる生活保障がないということなんですが、ILOの百三号では休業中は本人の所得の三分の二以上を支給するということになっているわけでございますが、そのILO百三号の批准をしないのはどういうわけなのか、その点を承りたいと存じます。
  196. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) ILO百三号自体につきましては、これはやはりほかの条約の場合も同様でございますが、国内法との間に若干のズレがございまして、批准ができないというのが現状でございます。で、特にILO百三号条約につきまして批准のできないその相違点といたしましては、ただいま先生御指摘の点もございますが、産前産後の休業中でございますね、ILO百三号も育児休職のほうはいっておりませんで、産前産後の休業中の所得の保障をうたっておりますが、これが標準賃金の三分の二といっているわけでございます。わが国の場合は、この産前産後の休業中の所得保障に関しましては、健康保険法におきまして、従来の賃金の六〇%を支給する、給付するという規定になっておりまして、三分の二と六〇%、実質的にはほとんど差がないのでございますが、形式的には差異があるというようなことも一つの理由でございまして、その他こまかな点で基準法とのつり合わせ問題もございますが、国内法との相違ということのために批准ができない、こういうことでございます。
  197. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 これはまあ、先生方の要求でございますけれども、これは育児休暇ということでいろいろ運動を進めているところでございますね。まあ、人材確保ということは、給与の面だけではございませんで、やはり安心して働けるということが非常に大きな要素になろうかと考えるわけでございますね。  そこで、やはり安心して働けるという、安心して休めるということで考えてみますと、やはり休んでいる間に生活ができないというようなことになったんは困りますので、そういう点でいろいろ国内法との関連もあろうかと思いますけれども、やはり働く婦人たちが、たとえば一年なら一年の育児休暇というものをとるといたしますならばそれに対しての生活保障ということを何らかの形でやはりきめておいてやっていただきたい、そういうことを考えるわけでございますが、その点はいかがでございましょう。
  198. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) ただいま御指摘の点は、やや長期にわたる育児のための休業という点についてのお尋ねであろうかと思います。この点につきましては、御案内のように、勤労婦人福祉法の中に育児休業制度というものを導入することを要請いたしているわけでございます。で、この休業期間中の所得につきましては、福祉法は何ら言及いたしておらないのでございますが、御指摘のように、約一年にわたる休業中の所得について何にも手当がないという場合には、働く婦人はそういう休みをとりたくてもとれないという問題が起きますので、その間の生活安定について特段の配慮が行なわれるべきだということで、労働省といたしましても、昨年から育児休業研究会という機関を設けまして、各界の専門家の方によりまして、育児休業の普及促進のためのいろいろな問題を御検討いただいておりますが、その中の大きな眼目といたしまして、休業中の生活安定の方策をどのように進めるかということでただいまも御審議をいただいていると、こういうところでございますので、しばらくまたお時間をちょうだいいたしまして、何か有効な方策というものを今後考えてまいりたいと思います。
  199. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 その研究会の、何と申しますか、方向、あるいは皆さんのお考えは、この問題に関して、どういうような方向をたどっておりますでございましょうか、いかがでございましょう。
  200. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) ただいま研究会のほうでは、御審議中でございますので、結論がまだ出るという段階ではございませんが、先般、中間報告というものをお出しになられまして、その中ではたしかこのように言っておられます。育児休業として休む期間中に、所得の保障のためにその個別の企業の使用者に給与として支払えということは、これは無理であろう、したがいまして、何か公的な側面からの援助を考えるべきではないかと、このような趣旨の御指摘がございまして、目下その方向で御検討を進めていらっしゃると、こういうことでございます。
  201. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうなりますと、これは労働省もよほど腹を据えてかかっていただきたい問題になってくるわけでございますね。  大臣、公的なということで、実はどういう方向があるということを研究会のほうへもいい大臣のほうからサゼスチョンができれば、おそらく研究会は打って一丸となってこの方向を打ち出してくださるんじゃないか。大臣のおなかの中にはどういうお考えがあるでしょうか、承りたいと存じます。
  202. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私の腹の中には子供がいるわけじゃございませんけれども、何といいましても、いまの時代に働く御婦人が千万以上もあり、そしてまた、ことに近代社会においては婦人がなかなかすばらしい仕事に従事していることは間違いございません。また、これがどんどん拡大されることでございましょう。そういう意味におきましては、先ほど先生から人材確保の法案の話などがありましたが、あの中においてもそれらが論議されておると私はいままで聞いておりますので、何か先生のおっしゃった方向に模索し、推進でもできるならば、婦人の味方というよりも、労働省としてやれるならこれはしあわせだと思っております。
  203. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 まあ、労働大臣は、優秀な局長さん方もいらっしゃるわけでございますから、ひとつ衆知を集めてその働く婦人のために、ほんとう労働大臣の時代にこういうことができたと、皆が喜べるような施策をぜひひとつ出していただきたいものだと思います。  最近、わが国の企業が東南アジア各国などへ進出しておりますことは十分御案内のとおりだと思います。ところが現地の労働者、特に女子労働者を低賃金で働かせているということを聞くわけでございますけれども労働省はそうした現地の実情について調査をなさったことがおありでございましょうか、承りたいと存じます。
  204. 道正邦彦

    政府委員(道正邦彦君) いわゆる多国籍企業の問題は、関係労働組合の皆さま、また日経連、その他経営者の皆さんも最近非常に関心を持っておられまして、それぞれ組織もおつくりになっております。それに呼応いたしまして、私ども関係各省が集まりまして協議機関を設けたところでございまして、関係労使との話し合いも始めております。一応、いままで在外公館なり、新聞、雑誌その他の情報をわれわれといたしましてはできる限り集めまして分析等もやっておりますが、残念ながら、約千五百の企業が東南アジアに進出いたしておりますが、その個々のケースにつきましては、必ずしも詳細を掌握いたしておりません。つきましては、関係労使の御要望もあり、私どももやらなきゃならぬというふうに考えておりますので、来年度の重点策の一つといたしまして、現在鋭意大蔵省その他関係省庁と折衝いたしております。
  205. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 これはぜひ調査をしていただきたいと思いますね。そして理不尽なやり方に対しては、やはり企業に対して指導をしていただくということが労働省としてもぜひやっていただかなければならないことではなかろうかというふうに考えるわけでございます。おやりいただくことにきまっておりますなればまことにけっこうでございますから、ぜひそれは実行していただきまして、私どもへもこういう指導をしたということ、そしてこういう実情だと、実情がこうだからこういう指導をした、こういうことをぜひひとつお聞かせいただきたいと考えるわけでございます。  で、韓国の女性は、一日十二時間働いて一カ月二万円で、生活ができないから、若い女性は一カ月に二回ぐらい売春をいたしまして一万二千円から一万三千円くらいをかせいで生活をしている、こういうことでございますけれども、これはまあ、あまりにも痛まし過ぎるお話しだと思います。  そこで、外国企業の賃金と日本の企業の出しております賃金について比較調査をされたようなことはございますでしょうか。これはぜひ承っておきたいと思うのですが。
  206. 道正邦彦

    政府委員(道正邦彦君) 海外に日本の企業が進出いたします場合には、当該国におきまする労働関係の法令、あるいは労務についての慣行を順守すべきは当然だと思います。したがいまして、日本の賃金と比較してどうこうということになりますと、これはもう日本のほうが圧倒的に高いわけでございますので、問題は進出企業が現地におきまして現地の一般の賃金以下で雇用しているかどうかという点がポイントではないかと存じます。一般的な比較といたしまして、少し古いわけでございまするけれども、韓国におきましては、御指摘のように、一九七〇年現在約一万円弱でございます。それを大幅に下回っているような給与を進出企業が払っているとすれば、これは、私は確かに問題だと思いますが、詳細につきましては、先ほどお答えいたしましたように調査が整っておりません。まことに申しわけなく存じておりますが、来年度以降、急ピッチにそういう点についての調査もいたし、指導、育成につとめてまいりたいというふうに思います。
  207. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 向こうの賃金体系ということもございましょうから、日本と同じということにはならないと思います。しかしながら、暮らせないために二回ぐらいは売春をするということは私はやはり考えていただかなければならないのではないだろうかと、そういう感じがするわけでございますね。日本では売春防止法というものがございますけれども、向こうに売春防止法がございませんから、韓国がいま日本の赤線地帯化しているなんというような話も聞くわけでございますがね、大臣、ひとつこの絵を見ていただきたい。   〔写真提示〕  これは写真でございましょうがね、これが日本の男性諸君の行状だということになりますと、これは私はちょっといただけないという感じがするわけでございます。しかも、こういう方たちのお金というものがずいぶん多くなっている。これは売春問題に取り組むところからいろいろ資料が出ているようでございますから十分御検討をいただかなければならないと思います。これはいわゆるキーセンパーティーの一こまだということでございます。大臣、これ、ごらんになってどういうふうにお考えでございましょうか。まず承りたいと存じます。
  208. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 非常に日本の男性の手痛いところ、やっているとすれば。先日も産労懇ですか、産労懇という会議がありましてね、これは学者、さらに企業の指導的な方々、それから労働界の大立て者の方々、お集まりのときにやはりその話が出ました。ですから、労使ともども非常に多国籍企業の進出の場合にみんなで考えなきゃならぬという話が出ておりましたし、また私たちが、日本がよくエコノミックアニマルといわれるゆえんのものなどがそういう低賃金のところに行っている場合に、日本の企業につとめておって日本の賃金よりも向こうのほうが安い、また一部の国では、非常によく、ほんとうにわき目も振らずに働いているというような話なども聞くわけです。そういうことですから、やはりエコノミックアニマルの汚名などを着ないような姿で日本の企業が進出し、ある場合には労働界の方々が行って指導される場合も日本の労働者のモラルで向こうの方々の御指導をいただくという形に持っていきたい、私はそう考えまして、いまから先も、海外に日本の企業、あるいは働く諸君が監督あるいは指導に行くという場合は非常に多かろうと思いますから、これは全体の問題としてよく啓蒙し、またいろんな方々にそんなことのないように、マスコミを通じてでもお願いしたいという気持ちは、私はほんとうにこれは腹一ぱい、私もよく東南アジアなどは歩きますからね、そういう実例に、キーセンパーティーに私は、まだ不幸にしてか、ぶつかったことはございませんが、私はほんとうに同様に心配しているものでございます。
  209. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 これでは、こういう状態が続きますと、日韓親善どころか、いわゆる心ある韓国の人々の怒りを買う、こういうことにもなろうかと思いますので、ぜひ大臣、そのいまのお気持ちで御指導をいただきたいもんだと思います。  最後に、トルコぶろに働く婦人についてお伺いを申し上げたいと存じます。  まずお尋ねしたいと思いますのは、トルコぶろというのは一体全国にいまどれぐらいの数ございますのか承りたいと存じます。
  210. 北村和男

    説明員(北村和男君) いわゆる特殊な浴場といたしまして、トルコぶろでございますが、これは厚生省所管の公衆浴場法の適用を受けております。公衆浴場が全部ひっくるめまして四十七年度末で二万五千四百余りございますが、いわゆるトルコぶろはそのうちの千二十九カ所でございます。
  211. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そのうちにトルコ嬢のために寄宿舎を持っているというのはどれぐらいございますか。
  212. 北村和男

    説明員(北村和男君) 私どもの統計では、これは施設に対しまして営業の許可を行なうたてまえになっておりまして、そこに従事しております従業員については詳細の統計を持っておりません。
  213. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 千葉の栄町のトルコぶろにやっぱり寄宿舎があるわけでございますね。これ御存じですか。それで、労基法の規定の適用を受けておりますでしょうか、どうでしょう。
  214. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) いわゆるトルコ嬢といわれる人、これが雇用主と使用・従属関係にある場合は、その従業員に対する寄宿舎は当然基準法の寄宿舎規則の適用があるわけでございます。
  215. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 労働省はこの千葉の栄町の寄宿舎の問題について把握をしていらっしゃるわけでございますね。
  216. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 御指摘のその千葉の栄町というものにつきまして、それぞれのこれは現地の基準局、監督署監督をするたてまえになっておりますが、その状況を現地の基準局が最近の段階において実際に指導監督をし、把握をしておりますかどうか、ただいま私、ちょっとこの場ではわかりませんので、よく調べまして、後刻御報告申し上げたいと思います。
  217. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 千葉というところは、いわゆる特殊、——トルコぶろが東京に次いで多いところなんでございますね。したがいまして、こういうことは、多い順番からいいますと、東京が一番多いのですが、それに次いで千葉が多いということを考えましても、一度これはぜひお調べになる必要があるところではなかろうかというふうに私も考えるわけでございます。ですから、それはぜひ見ていただいて監督をしていただかなければいけないのじゃないか、そういう感じでございます。  それからトルコ嬢の深夜労働についてどのような行政指導をされておりますのか、承りたいと存じます。
  218. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 深夜業につきましては、この種の業種につきましては、特に一般的には深夜業禁止の規定はかぶりませんけれども、年少者——十八歳未満等のトルコ嬢等がいる場合には、もちろん基準法の深夜業の規定をかぶるわけでございます。最近は、特にそういう面につきまして一斉の監督ということをしたことがございませんけれども、四十年に一度と四十二年に、トルコぶろ等に働く婦人労働者について、年少者の問題を中心に監督をしたことがございますが、そのときの調査によりますと、年少者の深夜業について四・八%の違反を発見をいたしております。
  219. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうしますと、現在いわゆるトルコ嬢といわれる人が何人ぐらいおりますでしょうか。
  220. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 現在、ちょっとそこまで数字を把握いたしておりません。
  221. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 これはやはり、何人ぐらいいて、その中に十八歳未満というようなのがどれぐらいいるかということをやはり労働省としてつかんでおいていただかなければいけないことではございませんでしょうか。特に、深夜業をやっているという実態があるわけでございますから。これは、いまは四・八%とおっしゃいましたけれど、私はもっともっと多いということを考えております。ですから、それは、十分実態調査をしていただきまして、適当な指導をしていただかないとたいへんなことになるんじゃないかという感じがいたします。そのトルコぶろの認可は厚生省がなさるわけでございますね。そのいろいろ問題のあるトルコぶろというものを認可されるその理由というものを承りたいと存じます。
  222. 北村和男

    説明員(北村和男君) 先生お話しのように、公衆浴場法の規定によって都道府県知事の許可を行なっておるわけでございます。ここで、公衆浴場と申しますのは、不特定多数人に対しまして入浴をさせる施設をいうと、そのように定義づけられておりまして、その大多数は、先ほど申し上げましたように普通のおふろ屋さんでございます。したがって、大きな浴槽がありまして、そこに着物を脱いで入るということでございますが、そのような営業形態だけではございませんで、最近、サウナでございますとか、いまお話しの、こういったような個室つきのものも同様に現行法からいたしますと公衆浴場としての定義にあてはまりますので、これが公衆浴場の許可にかからしているわけでございます。なお、公衆浴場法は、あくまでもこれは衛生施設の取り締まりの面のいわゆる衛生行政法でございまして、それと別に、バー、キャバレー等をそれらの面から規制をいたしますところの警察庁所管の風俗営業等取締法、この法律で二重に縛ってあるわけでございます。本来の風俗営業は、代表的なものが料理屋であるとか、キャバレーであるとか、カフェーであるとか、そういうものが代表的にあげられるわけでございますが、これらにつきましては、客に飲食を提供するという面で厚生省所管の食品衛生法で飲食店の許可をまず得るわけでございます。そのほかに、こういう風俗営業等取締法というかっこうで警察庁のほうで別にダブルで営業の許可を与えている。二枚の許可がなければお店が開けないということになるわけでございます。ですが、いま御質問のトルコぶろにつきましては、この本来の風俗営業には入っておりませんで、風俗営業法で特別に個室つきの浴場業の定義がございます。これは、まず、個室であること、そこで入浴をする、それからまた、異性の客に接触する役務を提供する営業だと、そういう規定になっております。それにつきましては、営業許可ではございませんで、場所の制限が、現在、風俗営業法の四条の四で規定がされております。そのような法律関係になっております。
  223. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 これは、おふろというものの持つ目的というものは一体何でございましょうか。
  224. 北村和男

    説明員(北村和男君) このおふろの持つ目的でございますが、通常の公衆浴場法の解釈からいたしますと、入浴をして人間のからだを清潔に保つということであろうかと、このように存じます。
  225. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ところがね、それは逆になっている場合があるということでございますね。それは、たとえばそこで異性間の越えてはならないといいますか、私のような年になりますと口にできることでございますけれども、何か不純行為といったようなものがあったときには、むしろからだを清浄にして、これから休むというのも休みやすくするとか、からだをじょうぶにするための保健の面とかいったようなこととは逆になっているという事実があるわけでございますね。そうしますと、私は、こういう個室を持つおふろというようなものはほんとうは必要ないんじゃないか。いわゆる公衆ぶろでだれもかれもが一緒に裸になって入れるところがあったらよろしいんじゃないかというふうに考えるんですけれども、特にその個室というものを持たなければならない理由というものは一体どこにあるんでしょうか。
  226. 北村和男

    説明員(北村和男君) 一般の実態でございますと、普通のおふろ屋さんですと先ほど申し上げましたように、大ぶろがあってみんなで入るということでございますが、必ずしもトルコぶろにだけでなくて、最近の一般の公衆浴場におきましても、あるいは身体障害者の両足のない人、それからお産間近で非常におなかの大きい人、家にふろがあればそれでよろしゅうございますけれども、そういう人の需要を満たすために一般の公衆浴場でも多角的に経営をいたしまして、そういう個室を設けている例もございます。  それから先ほど申し上げました、いわゆるサウナぶろ的なものはそもそも蒸しぶろでございますので、どうしても個室を設ける必要がある場合もございます。ですが、事売春まがいの行為になりますと、これはどういたしましても、施設面からの規制をいたすことは、やはり衛生立法としてはおのずから限界がございますし、売春防止法の主管官庁でございます警察庁のほうにも私ども常々連絡をいたしまして、いろいろ取り締まっていただいている現状でございます。
  227. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 やはり、その個室をつくるということにしましても、いまおっしゃるようなこともありますけれども、まあ、おなかの大きい方であったとしても、それは一般のおふろにお入りになっても別にどうということはないと思うんですね。まあ、私ども子供は産んだわけでございますけれども、そのつど個室に入っておふろに入るなんというようなことは一回もしたことはございませんし、身体障害者の方にしましても、特に、特別な浴室でなければならないということでもないんじゃないだろうかということも考えるわけでございます。ですから、私はむしろ個室をつくるなんということは、もうこの際ほんとうは排除すべきだというふうに考えます。で、個室をつくるにいたしましても、最低基準というようなものを設けていただかなければならないんじゃないか。公衆浴場に三助は必要でございますか。
  228. 北村和男

    説明員(北村和男君) 先ほどお答え申し上げましたように、公衆浴場法のサイドから申しますと、最小必要限度の従業員が要ることは当然でございますが、格別に基準を設けて、たとえば入浴者何人について一人とか、そういうような基準を設けてはおりませんし、今後とも設ける考えは目下のところございません。
  229. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 まあ、私はできるだけそういうことをもう少し考えていただかないと、こういうところでいろんな問題が起きているということを十分認識をしていただかなければならないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。  厚生省環境衛生局では、十一月の二十日付で「石油、電力等の使用節減について」という各都道府県あてへの文書をお出しになっておりますけれども、これはこれだけではどうも私はもう一つ徹底しないんじゃないかというふうに考えるわけでございますね。これは皆さんお持ちでないと思いますから、ちょっと読ませていただきますけれども、十一月の二十日付で「石油、電力等の使用節減について」「標記については、十一月十六日に別紙のとおり「石油緊急対策要綱」が閣議決定されたところであるので、これが趣旨に基づき、特に下記事項について、関係業界に対する指導等格段の配慮を御願いする。      記  映画館その他の興行場、特殊浴場等について、終業時間の繰上げ又は営業時間の短縮及びネオン灯の消灯その他の石油、電力等の使用節減に努めること。」と、こういうのをお出しになっていらっしゃるわけでございますけれども、これでは私はあまり効果があがらないんじゃないかという感じがいたします。もう少し具体的にこのことについての通達とか、そういうものをお出しになる必要があるんじゃないかと思うんですが、この点はいかがでございますか。
  230. 北村和男

    説明員(北村和男君) ただいま先生がお示しいただきました十一月二十日付の環境衛生局長通牒でございますが、これは当面、直面いたしております石油危機の一環といたしまして、厚生省環境衛生関係の中で、まあ節減すべきものの代表といたしまして、映画館、興行場、それから特殊浴場につきまして、ただいまお話のございましたような趣旨の通牒をいたしたわけでございます。十一月二十日の段階でございましたので、当面、関係の業界にこのような行政指導をいたしたわけでございまして、その結果、映画館その他の興行場につきましては、午前中の営業は自粛するということにいたしましたし、特殊浴場につきましては、公衆浴場法のサイドからいたしますと、別に終業時間の規定がございません。したがいまして、各県から衛生部を通じまして、業者のほうにできるだけ早く店をしまうようにということの行政指導をいたしたわけでございますが、その後さらに石油危機が深刻化してまいりましたので警察庁、それから総理府、あるいはボーリング場関係でございますので通産省、それらの各省庁で相談をいたしまして、風俗営業の終業時間が、伺いますと警察庁のほうでは午後十一時という条例を定めております県が大多数だそうでございますので、その時間に合わせるように、さらに近く各省庁連絡をいたしまして、行政指導の通知をいたす予定をいたしております。
  231. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 午後十一時まではやらせるということでございますか。この石油不足のときに、そういうところを十一時までもやらせる必要があるんでございましょうか。むしろそんな石油がございましたら、公衆浴場なんかのようなところへは十分回していただいて、一般大衆がほんとによかったというような形の指導が私は好ましい。ですから、こんなところ十一時までもあなたやらせる必要ないんじゃございませんかしらね、いかがでございます、これ。
  232. 北村和男

    説明員(北村和男君) 十一時まで営業をやらせるという趣旨ではございませんで、できるだけ早くやめなさい、どんなにおそくとも風俗営業の終業時間に合わせるという指導を行なったわけでございます。なお、一般の公衆浴場につきましては、これと別に当面最も問題になっております、主としてこれは重油でございますけれども、重油の確保につきまして、関係省——通産省等に特にお願いをいたしまして、現在鋭意その確保に努力しているところでございます。
  233. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 日本人はエコノミックアニマルでございますからね、やっぱり十一時までは、十一時までにと言えば、十一時までしなさいみたいな感じになるおそれだって多分にあると、ですから私はもう少し時間を早く切り上げるということが必要になるんではなかろうかというふうに考えるわけでございますね。こういう時期にこそ、私はこういうところをきびしく規制していくということが必要だと思います。厚生省も私たちはこういうことは何にも認可したくて認可したんではございませんよというような口ぶりでございますから、まあ、あんまり認可したくてしたんではないようなところは、もう少し営業が困難になるように行政指導をすると、こういうことが必要ではないだろうかと思うんでございますが、その点いかがでございましょう。
  234. 北村和男

    説明員(北村和男君) 先ほど来申し上げておりますように、当面、この石油危機等につきましてはこれらの業種に対しましては、積極的に石油の確保についてあっせんをするというようなことは一切いたしておりませんし、今後とも、——これは問題はやはり防犯とか、売春防止とかというサイドからの風俗取り締まりの面がやはり主体になろうかと思いますので、一そう警察庁との連絡を密にいたしまして所期の目的を達してまいりたいと、かように存じております。
  235. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 あんまりゆるやかになりませんように、せめて規制をしていただくのなら、その規制をしたということが国民のみんなになるほどと思われるような形で私はやっていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。よろしくどうぞ私への御協力お願いしたいと思います。  で、いろいろお尋ねをしてまいりましたんですが、婦人労働者はまだまだ守られているとは私は申されないと考えるわけでございます。しかし、労働大臣におかれましては、ぜひその勤労者を守るという立場で、これからは労働基準法考えていきましょうと、いろいろ御努力をなさってくださるようなお気持ちをちょうだいいたしましたので私は満足をしたわけでございます。しかし、勤労婦人福祉法のような努力法であっても、なかなか拘束力もございませんから、何かなしに絵にかいたもちのようなかっこうになるおそれも多分にあるわけでございます。そこで、はっきり母性の福祉を保障するために、いわゆる母性保障法といったようなものでもおつくりいただいて、ほんとうに女性が守られるというようにしていただきたい、こう考えるわけでございますが、最後に大臣の御決意のほどを承って質問を終わりたいと存じます。
  236. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先生の、社会のいろんなこまかいと申しますか、一番お互いが気をつけなければならぬ問題についての御指摘、私たちも傾聴したことでございます。いま一番日本で大事なことは、やはりみんなで石油危機でも協力すると、政府もやる、国民もやる。たとえばいまのトルコぶろ一つにいたしましても、十一時まで行く者がいなくなれば自然にこれはやめざるを得ないんです。そういうふうに自分たちでやる姿勢というものを、この国民的危機に連帯意識というものを持たせると、こういうものが私は非常に大事じゃないか。たとえばいまオランダが日本以上に石油で困っておるんでしょう。そして女王さんが自転車で走っているとか、あるいは婦人方が寒さにふるえているとか、北の国ですから、そういう記事が出ておりますね。ところがあの国は、何と天然ガスが一ぱい出るんですね。それでいてそういう規制をやる、そしてみんなでやるという気持ちなんですね。ですから、私は、いまのふろ一つの問題にしても、そういう連帯意識というものが一番大事じゃなかろうかと、こう考えるものであります。法律的規制ももちろん大事でありますが、こういう国民生活全体の問題、国民福祉の問題、母性保護の問題、こういう問題なども、法律もさることながら、男性全体、それから日本の企業者、企業家、働く諸君全体の私はやっぱり連帯意識というものでそういう風潮をしっかりつくっていかなければいかぬ。もちろん先生のおっしゃったようなものなども、いまからも私は研究していこうと思っております。何といたしましても、日本は女性のほうが人口の半分以上でございます。そして、その方々からすばらしき第二の国民が生まれることでございますから、そういう観点から、前向きにいろんな問題について研究もし、また御推進あずかった問題については一つ一つ手がけていきたい、こう思っておりますことを御理解いただきたいと思います。
  237. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ありがとうございました。終わります。
  238. 矢山有作

    矢山有作君 これは私のほうの思い過ごしで、おそらくそちらではきちっと整理をしてお聞き取りいただいておるとは思うのですが、先ほど問題にしました国立高専の学寮の食堂経営の問題ですが、御案内のように、先ほど学校長が食堂の炊事婦を雇用するときの辞令書を見ていただきましたが、あれによりますと、明らかに学校長の記名がしてあって、それに学校長の職印が押してあるという形で辞令書が出ておるわけでありますから、そうなりますと、これは私どもは普通、学校との間に雇用関係が生まれたと、つまり国と炊事婦との間に雇用関係が生まれたと、こういうふうに私は理解しておりますし、また、そういう理解に立って炊事婦のほうの皆さんもいまいろいろな要求を学校長に対してやっておるわけであります。そういう中で、学校長のほうが一方的に、組合のほう、炊事婦のほうには何らの同意を求めることも、相談もすることもしないで、一方的に自分が任命したんじゃないということで、後援会が任命したと、雇用したんだと、こういうことに切りかえておると、こういうことにあるわけですから、したがって、そういう立場に立つなら、これはまさに国が不当労働行為をおかしておるということになっておる。その点を私は一つは主張したわけでありますから、したがって組合のほうの要求もそういうような形で雇用主が変わったからという一方的な主張で学校長が団体交渉を拒否するのでなした、任命権者である学校長が国との雇用関係が生まれておるという前提に立って団交に応ずべきだと、こういう主張をしておる。この点を一つは御理解をいただいて処置に当たっていただきたいと、こういうことです。  また、それに対して文部省のほうの言い分は、御案内のように、形式は学校長の任命になっておるけれども、しかしながら、実際はそれは個人としての雇用なんだと、だから学校長と炊事婦との間の個人的な雇用関係なんだと、こういう主張をしておるわけであります。しかし、そういう主張をしたといたしましても、労働法上から見るならば、いま起こっておる事案は、個人の校長が使用したと称しながら、それを先ほど言ったように組合のほう、炊事婦のほうには一言の相談もなし、無断で一方的に雇用関係が変更になったということで団交を拒否しているわけです。ですから、その点から見ても、労働法上不当労働行為ということはやっぱり成り立つと、こういうことでいっております。したがって、私どもの立場、組合の主張は国家との間に雇用関係が生まれておるという前提に立って、それにもかからず一方的に団交を拒否するといういまの状態を不当だと、こう言っておるわけでありますから、その点を整理をしてひとつ対処していただきたい、このことをお願いしておきます。  十分御理解いただいておると思いますが、私のほうでちょっとその点で気がかりな点があるもんですから、一応整理して申し上げておきたいと思います。
  239. 道正邦彦

    政府委員(道正邦彦君) 先生のおっしゃることもよくわかります。また、組合の皆さんがそういうことを主張されるお気持ちもよくわかりますが、問題は、実態がどうであったかという当事者の意思の判断の問題になってくるわけでございますので、なお、われわれといたしましては、組合の皆さんがそういう気持ちを持つに至った事情は、先生からお示しのありましたようにあの辞令書はそういう意味であればまことに適当でないことも明らかと私は思います。いずれにいたしましても、そういうことを踏まえまして、要は労使円満に話し合いで事態を解決することが急務でございますので、そういう方向努力をしたいと思います。
  240. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) 本調査に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会