○塚田大願君 私もこの間のこの当
委員会の視察派遣で、新潟県の
豪雪を視察してまいりました。確かにことしはたいへんな
豪雪でありまして、私も新潟の生まれで新潟に育ちましたから、雪には別に驚かないほうでありますけれ
ども、さすがにことしはたいへんな
豪雪だという実感を持ちました。
そこで、私視察してまいりまして私なりの結論でありますけれ
ども、やはり一番中心問題というのは、個々の
対策も必要でありますけれ
ども、一番大切な
問題点何かと聞かれれば、私はこの雪害というものをどう見るかと、これがやはり根本問題ではないかと思うわけであります。と申しますのは、雪というのは毎年きまって降るんだと、何百年きまって降っておると、先祖代々雪の中で暮らしてきたんだ、これは宿命的なものであるという
考え方が
一つあるんです。で、確かにいままで新潟は私
ども含めまして、まあ雪がたくさん降るのはしかたないんだというふうに
考えてきましたけれ
ども、しかし、私は今度の視察の中で
現地の地元の
方々などの意見を聞きまして結論として得ましたのは、やはりこれを雪害——単なる宿命としてあきらめるべき性質のものではなくて、やはりこれは災害としてはっきり規定して、それに対する取り組みをやるべき性質のものではないか。こういう認識に私は到達したわけでありまして、この認識論がやはり私はこの根本問題だろうと思うのです。それでありませんと、やはり口では何とか言ったって、結局
対策が十分でない。先日からこの
委員会でもずいぶん論議いたしましたけれ
ども、結局どの
答弁も
質問者が満足するような
答弁は
一つもなかったと私は
考えております。そういう意味で、私はきょうは大臣がせっかく来ていただきまして、やはり大臣の所信を聞かなければならないと私は
考えておったわけでありまして、お忙しいところをあえて御注文申し上げたわけでございますが、いまも大臣の御
答弁を聞いておりますと、いろいろまあ地元の
対策は進めたいということはおっしゃっておられますけれ
ども、やはりその根本姿勢といいますか、これがやはりひとつ足りないのではないかと思うわけです。
そこで、博学の大臣にたいへん私恐縮なんですが、私ここに一冊の本を持ってまいりました。「北越雪譜」という本なんです。これは岩波版でございますが、たいへんな名著なんです。皆さんごらんになったことありますか。天保六年に発行されたんです。いまから百三十年前に越後の魚沼の住人が書いた本でございまして、全巻七冊の大部の本で、岩波文庫に縮冊すればこんなものでありますけれ
ども、これは天下の名著として知られておるものであります。百三十年前にこういうりっぱな本が出ておるんですが、たとえばこの一部をちょっと御紹介いたしますと、要するに雪というものはたいへんなものなんだと。つまり災害なんだということを、この百三十年前にこういう識者が書いておるわけです。
たとえば、こういうふうに書いてあるんですね。一部だけ御紹介いたしましょう。「萬事雪を禦ぐを專とし、財を費力を盡す事紙筆に記しがたし。」もうとにかく全力をあげて金も力も投げ尽くして戦っているんだということが書いてあるんですが、その他のところを見ましても、もう
一つだけ御紹介申しますと、たとえば「雪の飄々翩々たるを観て花に諭へ玉に比べ、勝望美景を愛し、酒食音律の樂を添へ、」つまり、まあたいへん雪が降って楽しいと、一ぱい雪見の酒でも飲もうと、こういうことを言っているわけでありますけれ
ども、そのほか「樂を添へ、畫に寫し詞につらねて稱翫するは和漢古今の通例なれ
ども、是雪の淺き國の樂みなり。我越後のごとく年毎に幾丈の雪を視ば何の樂き事かあらん。雪の為に力を盡し財を費し千辛万苦する事、下に説く所を視ておもひはかるべし。」と、こういうふうに書き出しに書いてございまして、あともうたいへん詳しく雪のことが書いてある。これはまあ雪のことに関しましてはおそらくその後もこれだけの著書は出ていないだろうと私は
考えます。それほどの名著でございますけれ
ども、とにかくこれをひとつ機会がありましたら大臣にも読んでいただきまして、雪というものの認識をひとつ改めていただく必要がある。
そこで、第一番にそのことをお聞きしながら具体的にひとつ申し上げますが、たとえば、私今度新潟に行きまして、県庁に最後に行きました。これだけの災害が生まれているんだけれ
ども、一体この災害救助法や天災融資法、あるいは激甚災指定、こういう現在いまある
法律を直ちに適用して、これに対する取り組みをしているのか、しようとしているのかと聞きましたら、いやまだそういうところまで行っておりませんという話なんですね。実はそこで私びっくりいたしました。これだけの災害があるのに、なぜこういう
法律が直ちに発動できないのか。たとえば、私も災害
対策委員を長くやっておりまして、おととし、さきおととしでありますか、九州や西日本に集中豪雨や台風がありました。もう何回か私、西日本、鹿児島−九州のほうへ行きました。行けば、すぐもう災害救助法はとっくに適用され、天災融資法はもちろんのこと、激甚災も指定されておる。そういうふうにして、とにかくあるものは全部発動して一応
対策が進められておりましたし、またそれは当然のことだったと思うんですけれ
ども、今度の場合にはそういう災害
対策関係諸法令が全く適用されておらない、発動してない。何のためにこういう
法律はあったんだろうと思うほどたいへんな立ちおくれがあったように私は
考えるわけです。それはやはり、
考えてみますと、その根本認識においてたいへん大きなズレがある、それを私は感じまして、いまあえてこういう本まで紹介をしたわけでありますけれ
ども、まずこの基本的な姿勢といいますか、これについて政府が雪害あるいは
豪雪というものに対しての、どのようにほんとうに取り組もうとしておられるか、その点をまず私は長官にお伺いしたいと思うわけであります。