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1974-05-29 第72回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十九日(水曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————    委員の異動  五月二十九日     辞任         補欠選任      渡辺一太郎君     高橋 邦雄君      斎藤 寿夫君     黒住 忠行君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鶴園 哲夫君     理 事                 田口長治郎君                 原 文兵衛君                 矢山 有作君     委 員                 黒住 忠行君                 高橋 邦雄君                 寺本 広作君                 中村 登美君                 工藤 良平君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君                 沓脱タケ子君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君    政府委員        環境政務次官   藤本 孝雄君        環境庁長官官房        長        信澤  清君        環境庁長官官房        審議官      橋本 道夫君        環境庁企画調整        局長       城戸 謙次君        環境庁大気保全        局長       春日  斉君        環境庁水質保全        局長       森  整治君        通商産業省立地        公害局長     林 信太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        厚生省環境衛生        局食品衛生課長  三浦 大助君        食糧庁業務部需        給課長      虎谷 秀夫君        水産庁研究開発        部漁場保全課長  前田  優君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 工藤良平

    工藤良平君 私は、ただいまの公害健康被害補償法の今回の改正につきまして若干御質問をしながら、さらに全体的な問題についても、この際御質問をいたしたいと思います。  最初に、今回出されました改正案の趣旨であります、被害者に対する補償給付費用につきましてその負担分移動発生源である自動車に課する、こういうようなことから、その賦課金法律でもって国が支出をするというような内容のようでありますが、その点について、まず最初に、この健康被害補償法の成立によりまして、従来問題でありましたPPP原則がある程度確立をされていくということについては、私どもの長い懸案でありましたので、この点については従来からいたしますと数歩前進したものであり、さらにその補償法内容についても、医療救済のみからさらに大きく改善をされた、このように一応理解をいたしているわけでありますが、ただ今回の改正案におきまして、移動発生源に対する賦課方式について、かなり長期にわたる議論が行なわれたようでありますが、その議論過程を通じて今回のこの改正案というものが考えられ、しかもそれは暫定的に二年間というような期限が区切られておるようでありますが、できればその間の経緯を若干御説明をしていただきたい、このように思います。
  4. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 移動発生源にかかわります費用負担につきましては、実は昨年の四月に中央公害対策審議会から答申を受けまして、私どももいろいろ検討いたしたわけでございますが、その段階では結論を得るに至らなかったわけでございます。したがいまして、法律表現におきましても、別に法律をもって定めるところにより徴収されるものを充てるという抽象的な表現になったわけでございますが、その後さらに中央公害対策審議会の中で、むしろ先生いま御指摘になりました費用負担の関係、汚染者負担原則精神から踏まえて、どういう考え方がいいかということを費用負担専門委員会検討をいただきましたわけでございます。  それで結論としましては、これは去年の十月の専門委員会検討結果の整理メモという形で出ておりますが、この専門委員会としましては、基本的にはこのPPPに関連しまして、その中心をなすものとして検討されておりますチャージの問題と関連して検討すべきである、チャージによりまして入ってくる財源の一部を被害者補償にも充てるというのが、一番適当な方法であるという考え方を示されたわけでございます。ただ、このチャージ制度は、まだ世界的に見ましても、これを完全に本質的にチャージという精神を持ったものとして実現しているという国はあまりないわけでございまして、今後、OECD中心としますその論議の進展及び諸外国におきますこういう制度の採用、こういうことと関連しまして、十分時間をかけて考えていかなければならぬ。一方、この移動発生源にかかります財源をどこに求めるかという問題は、非常に緊急を要する問題でございますから、したがいまして、ともかくも重量税引き当て方式をとるということが一番現在の段階で適当でなかろうか、こういう結論に達しまして、四十九年度予算編成段階でそういうことになったわけでございます。  なお、いま二年間の暫定措置ということでございますが、この点は、一方におきましては、私どもそういうような議論過程から出てくるものではございますが、また同時に、重量税を引き上げるにあたりまして、税制のほうからも、いろいろな諸条件が不確定な段階でやはり暫定的な措置として引き上げるということが打ち出されたわけでございまして、こういう点を踏まえまして、私どもとしましてはこの措置は二年間の暫定措置とする、こういうことで法律改正を提案したわけでございます。
  5. 工藤良平

    工藤良平君 そこで、この移動発生源に対する賦課方式でありますけれども、四十九、五十年度は、このたびこのような自動車重量税方式をとりあえず採用いたしまして、これを国が一括して補てんをするというような措置のようでありますけれども大気汚染物質排出量を考えてみる場合に、固定発生源移動発生源を同率に見ていいのかどうかという問題ですね、いわゆる加害者として。そういう点に対する解釈は、どのように私どもとして理解をしていったらいいのか。たとえば全体的に日本でこの発生源である原料を使用する場合に、その総量に対する移動発生源が幾らだとか、その割合がこれだからその賦課分負担をする、こういうようなことで一体いいのかどうかという点ですね。その点についての御見解をもう少しいただきたいと思います。
  6. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 移動発生源固定発生源同一に見てよいかということにつきましての御質問でございますが、これは燃料消費状態に対しまして排出係数というのがございまして、その排出係数固定発生源消費しております燃料——原料も含めます——計算をいたし、また移動発生源につきましても計算をいたしてみますと、硫黄酸化物の場合には全体の五・九%が移動発生源窒素酸化物の場合は三五・七%が排出貢献をなしておるということが、排出量のほうから出てまいります。ここで一つ仮定的に制度としてつくります場合に、両方平均したウエートをつけようといたしまして、全体の約二〇・八%が移動発生源貢献分である、こういうぐあいに制度として入れたわけでございます。  この場合に同一に見てよいかという御質問に対しまして、発生源の量的な全体量としての貢献度というところで、いずれがSO2を出そうが、いずれがNO2を出そうが、そのことにおいては排出としては同等に見たということは、一つ量的には申し上げられるかと思います。  それからもう一つ、これにつきましておそらく問題点の御指摘があろうかと思いますが、現に汚染を受けている場所ウエートを見てはどうかという議論になりますと、これは全体的な問題として大気汚染としてとらえておりますので、場所によって非常な相違があるということは事実でございまして、それをやる場合には、全部片っ端から調査しなければならぬ。それは技術的にまず不可能であるということでございます。一例を申し上げますと、東京都あたりで調べますと、非常に自動車貢献度が高いという数字が出てまいります。そこで、これは全国的な制度として運用いたします意味から、その汚染水準に対する貢献度という形では、本制度ではそういう観点から両方のウエートを分けるということはいたしませんでした。将来の問題としては一つ検討問題であろうかと思いますが、技術的にはこれはまず不可能なことであると思っております。  それからもう一点は、固定発生源のほうは、民事上の責任を問われ得る可能性はあるわけでございます。しかしながら、移動発生源自動車のほうは、民事上の責任を問われる可能性は、事故等の場合は別といたしまして、通常に走行している場合においては民事上の責任を問われる可能性は全くないということでございまして、やはり多数の自動車が走っておるということによって自動車群として貢献をしておるということで、社会的な責任を受け持つということの問題であろうかというぐあいに考えておるわけでございます。
  7. 工藤良平

    工藤良平君 いまの計数的な問題について、実は私も調査室の資料は、いま御説明内容についてはいただいているわけですけれども、詳細なデータというものが実はほしいわけなんで、もしありましたら、後ほどでもけっこうですが、提出をしていただきたいと思います。  そこで、いまお話がありましたように、たとえば移動発生源の場合にはいろいろな条件が私は加味されてくると思うのですね。確かに工場の密集している地域、あるいは交通のふくそうしている地域、さまざまな要素というものがからんで被害というものを起こすわけでありまして、今日まで要観察地域なりあるいは公害認定患者発生している地域というものを見ますと、ほとんどその大部分というものが、やはり固定発生源を主といたしまして、それに他の条件が付加することによって複合的にこのような被害が起こってくる、このような実情ではないだろうかと実は考えるわけであります。特に移動発生源の場合には、ただ単に車から出てまいります有毒ガスだけではなくて、もちろんそれをつくり出している、たとえば具体的に言いますと道路事情、そういうようなものが外的な要因としてやむを得ずこのような状態をつくり出している。必ずしも自動車そのもの責任ではないように私は思うのですけれども、そういう点について詳細な検討を加えなければならない。  したがって今回、やむを得ずこのような自動車重量税方式の中から一部国が負担をしていくという方法をとったのではないかというような気がするのでありますけれども、これは最初法律策定の場合にもなかなか結論が出し得なかった。今回の場合も暫定的な措置をとらざるを得ない。こういうようなことから考えてみますときに、これはやはりこのような問題点があるということを契機として、広く税負担の体系を含めて総合的に、環境汚染による社会的な費用負担あり方というものをもう少し見ていく必要があるのではないか、これで十分なのかどうなのかという点についても私は問題を提起せざるを得ないのではないか、このように思っているわけでありますが、その点についてもう少し御説明をいただけたらと思います。
  8. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) ただいま橋本審議官から御説明申し上げましたようなことで、現在の私どもの提案しています二年間の暫定措置という中には、先生指摘のように、いろいろ今後に検討すべき問題が残っておるという前提でそういうことをいたしているわけでございますから、この法律が通りましたあとにおきましても、十分根本的な問題についていろいろ検討してまいりたいと思っております。いまの物質の問題、あるいは排出をする諸条件の問題、特に固定発生源との関連の問題、あるいは逆に道路わき等で、むしろ移動発生源単独の問題、いろいろあるわけでございまして、こういう点を総合的に考えまして、かつまた汚染者負担原則精神から踏まえまして、どういうあり方がいいかという、そういう費用負担原則の問題の検討、それと並行しまして今後の公害規制をしていきたい、こう思っているわけでございます。
  9. 工藤良平

    工藤良平君 特にこれはすでに審議会等でも指摘をされておりますように、第一種と第二種の費用負担の違いというものの指摘が行なわれておりまして、どちらかといいますと、水質系被害原因というものは比較的追及しやすい。ところが、大気系原因というものは非常に複合的になってまいりまして、把握がしにくい。こういうようなことがいわれているわけでありまして、今回のこの全体的な賦課方式を見てみても、必ずしもそれが万全とはいえない。  したがって、心配になってまいりますことは、ややもいたしますと、一括プール方式をとってまいりますと、賦課金を出してあるからもういいんだというような考え方が非常に濃厚になってまいります。したがって、そういうような問題が出てまいりますと逆に、徴収をして救済措置はとったけれども、その原因の究明なり規制というものに対して、ややもすると手落ちが出てくるのではないか。うちは賦課金を出しているじゃないか、こういうことが一般的に非常に心配されるわけで、そういう点に対する対策、あるいは賦課方式に対する検討、こういうものの必要はないのか。その点をもうひとつお伺いしたいと思います。
  10. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) こういうような健康被害補償法をつくっていくという必要ができましたのも、これまでにおきますいろいろな対策自身に十分でない点があったということで、現在公害問題そのものが相当健康被害を生ずるというような深刻な事態にあるという前提に立っているわけでございます。したがって私どもは、当然今後は規制のほうをまず十分重点を置いてやってまいりまして、そういう事態が少なくともすみやかに改善されますように努力をしてまいりたいと思っているわけでございまして、たとえば先般御承認いただきました大気汚染防止法の一部改正によります総量規制、あるいは近く水につきましてもそういう考え方をもって法律改正をしていきたい、こういうことを考えておるわけでございますので、そういう規制を十分した上でやっていく。決して賦課金を納めていること自身免罪符になるというようなことのないように考えていきたいと思っております。  それからいま申し上げましたのは、日本でも諸外国でも中心をなしていますいわば公的な規制のことでございますが、そのほかに、先ほどから申し上げております費用負担専門委員会で述べておりますのは、チャージ制度でございます。これはむしろ、ある財源が必要だから賦課金を課すというのじゃなしに、そういう汚染を減らすために何らかのものをつかまえまして、これは燃料でもけっこうでございますし、そのほかのものでもけっこうでございますし、そういうものに一定の課徴金を課することによりまして、汚染排出を減らすインセンティブを与えていく、こういう方角づけをしておるわけでございます。こういうチャージの問題につきましては今後さらに検討してまいりたい。これは決して公害健康被害補償法財源を出すというのじゃなしに、汚染を減らすためにどうすればいいか、その一つの手段としてチャージを考えるということでございます。  これが現在OECDで考えられています、PPPを具体化していきます場合の公的規制チャージ二つの方角づけでございます。こういうことでございます。
  11. 工藤良平

    工藤良平君 いまの説明で大体わかるのですけれども、さっき審議官からお話がありました固定発生源移動発生源排出量の問題ですね、たとえば二〇%移動発生源についての計数が出ているわけでありますけれども、この二〇%の割合移動発生源に対する賦課金を課していく、こういう考え方なんですけれども、この点については、移動発生源というのは、さっきから議論がありますようになかなか判断がしにくいし、全く一般的なものですね。自動車二千万台といわれているわけでありますから、ほとんどもう各家庭に入っていないところはないというような事情でありますから、これは公害にかかる健康被害救済をある程度一般化してしまうという危険性もなきにしもあらずという気が実はするわけなんです。ですから本来言うと、やはりPPP原則発生した者から出させるということからいたしますと、この二〇%のいわゆる移動発生源、全国民的なものになっている移動発生源賦課金については漸次減らしていって、このウエートというものはおのずから固定発生源にいかざるを得ないのではないかという私は気がするのですけれども、この点について、そのような議論というものは極論になるのかどうか、どういうようにお考えになっているか、もう少しその点をお聞かせいただきたいと思います。
  12. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) いま先生の御指摘もございましたように、自動車につきましては確かにいろいろ問題があるわけでございますが、基本的には無公害自動車が出てくれば、このようなものはなくなるべきはずのものであるということでございます。現在、自動車重量税から取るというものはあくまでも暫定的なものでございまして、先ほど局長がお答えをいたしましたように、本格的なチャージではなく、この制度費用をまかなう上において、社会的費用負担としてやったという暫定的なものでございます。やはり本格的に無公害自動車をどうしてもつくらなければならないというような方向の押し込めば、法律規制で基準をきびしくしていくということと同時に、将来自動車チャージという問題も起こってまいります。それで、もしも無公害自動車が出てまいりますならば、そのようなものは消滅をしていく、別のものにまた交通機関がかわるというような形に私どもは考えております。
  13. 工藤良平

    工藤良平君 この問題はたいへんむずかしい問題だと、私もいろいろ調べているうちにそのように感じたわけですけれども、この問題は、公害救済というものが一般化してしまうということを私は非常におそれるわけで、やはり被害を出した者にあくまでも賦課金というものは課するものなんだという原則を貫いていかないと非常に問題がありますから、いま審議官お話しのように、特に移動発生源の問題については、その発生規制を非常にきびしくすることによってこれはやがてなくなっていくであろう、このような御説明でありまして、その点については私どもも期待をするわけなんですが、ただ、これは自動車業界との関係等非常に大きな問題があるのではないか、このように思いますし、そう簡単に、いわゆる四十九年、五十年と暫定的に行ないますけれども、その間にその達成ができるのかどうか、これまた私はたいへん大きな問題があるのではないか、このように思いますが、この点についてはひとつこれは三木長官からも、非常に重要な問題でありますから、今後の方向としてどのような御検討をなされるのか、基本的な姿勢についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  14. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 五十年度の規制は、予定どおり実行するということで準備を進めておるわけです。これは五十年度の規制の場合は、そういう無公害車といわれる自動車開発したメーカー二つもあったわけですね。したがって、ほかのメーカーがそれができないという理由は少ないわけです。ところが五十一年度の規制は、どこもまだ開発されていないわけです。そういう点で、われわれは方針は変えてはおりません。したがっていまは、自動車メーカーに対して五十一年度の規制が実施できるように技術開発を急いでもらいたい。現に六月にはヒアリングを開きまして、現状把握技術開発促進に対して業界に要請をすることになっております。そういうことが現状でございます。
  15. 工藤良平

    工藤良平君 これは私も、無公害車がたしか国会に入っておりまして、先般利用させていただいたことがあるのですが、そのときに運転手さんからお伺いいたしましたところが、かなり大量のガソリン消費するということを聞いているわけです。たとえば先般入っておりました国会の車では、リッター当たり四キロぐらいしか走らないというような話を聞きました。これは二千ccぐらいの車でしたけれども。そういうことになりますと、大体二・五倍から三倍の燃料消費するのではないかと、私はそのときに直感いたしたわけですけれども、それが事実とするならば、この技術開発についてはまだまだきわめて大きな問題を残すのではないかという気がいたします。  私は逆に、これはしろうとなりに考えてみると、無公害車だから燃料を少なくたくのではないか、したがって被害が少なくなる、こういうように考えておったのですけれども、そうじゃなくて、たいへん大量のガソリン消費をする。こういうことになりますと、これは全体的に現在のエネルギー資源問題等からいたしまして、その開発というものは逆に不可能になってくるのではないかという気がするのでありますけれども、その点について、国際的に、あるいは日本の国内の自動車産業等経緯からいたしまして、具体的にはどうなるのか、もしわかっておればちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  16. 春日斉

    政府委員春日斉君) ただいま御指摘になりました五十年度規制の無公害車燃料を非常にたくさん食うではないかという御指摘でございますが、確かにそういう傾向はございます。ことに渋滞時と申しますか、東京都内のように渋滞を繰り返すようなところでは、かなり従来の車に比べますと燃料消費が上がっているという事実はございます。ことにロータリー車の場合、その点が著明に見られるわけでございます。最近開発された新しいレシプロエンジンの無公害車は、燃料消費はそれほど多くならないというようなこともございます。これは今後、ロータリー車も含めて、技術開発によって無公害車であると同時に燃料消費の面でもかなり押えることができる、こういう見込みがつき始めております。  それから、五十年度規制の無公害車の大宗をなすものは、触媒使用による車であろうと思いますが、触媒を使いますとやはり一〇%——二〇%程度の燃料増加は一応あるようでございますけれども、これも今後の技術開発によって、それほど問題ではなくなるように私ども考えております。  ただ、五十一年度規制を同じような方法でやります場合には、確かに相当量燃料増加が、現状技術におきましてはあるようでございます。この点につきましては、私どもは各メーカーに対し技術促進を要請しているところでございます。ただ日本の場合は、何と申しましてもアメリカに比べますと自動車の型が小さいわけで、日本の場合は二千ccクラスあるいは千六百ccクラス、この辺が中心で、アメリカの場合は三千から四千ccというものが中心でございますので、何と申しましても自動車燃料増加というものは、アメリカに比べますと影響というものはかなり低くなってまいります。したがいまして、エネルギーを節約するという立場から見ますと、それほど、アメリカほど心配は少ないのではなかろうかと考えております。  具体的に申しますと、アメリカでは昨年度、自動車燃料といいますものは全石油の約五〇%を使用いたしております。その量はたしか三億八千万キロリットルくらい使っております。したがいまして、その一〇%——二〇%もし燃料増加するといたしますると、これはゆゆしき問題でございます。日本の場合は、昨年度二億七千万キロリットル程度が全石油の消費量でございます。これはアメリカ自動車ガソリン消費量よりはるかに少ないわけであります。しかも、そのうち自動車ガソリンに使いましたのは、二億七千万キロリットルのせいぜい一二%程度であろうといわれております。したがいまして、それが一〇%——二〇%燃料消費が上がったといたしましても、アメリカに比べますとインパクトはかなり少ない、こういう現状もございます。しかしながら、長期的に見ますと、公害車、無公害車と申しますものの燃料消費という立場は、やはり重要な問題として、てんびんにかけて考えなければいけない問題であろうと思っております。
  17. 工藤良平

    工藤良平君 この問題一つ取り上げてみましても、かなりたくさんの問題が私は提起できるのではないか、このように思いますし、あくまでもこの措置が二年間の暫定的な措置でありますから、できるだけ早くそれらの問題について十分なる御検討をしていただきまして、さらに広くは、すでに「費用負担専門委員会検討結果整理(メモ)」というこのメモを見ましても、この負担の問題についても根本的な検討を加える必要があるというような御指摘もなされておるようでありますから、移動発生源のみではなくて、固定発生源に対する負担問題等につきましてもさらに十分なる御検討をいただきたい、かように思うわけであります。  これらの問題は、なるべく被害を少なくして負担を少なくしていくということは、これは原則であろうと思います。そういうことからこれらのことが考えられておると思いますので、したがって私たちとしては、やはり公害というものはあくまでも事前にどのようにチェックをし、規制をしていくかということが原則であろうと考えているわけでありますから、これからその問題について若干、具体的な問題で触れていきたいと考えるわけであります。  そこで、本題からはちょっとは、ずれますけれども、瀬戸内海の汚染防止に対する臨時措置法ができまして、それに伴いまして先日、海水の汚濁に対する、特に瀬戸内海の一つの埋め立てに対する基準が示されたようでありますけれども、この問題について私は具体的にお聞きをいたしたいと考えます。  先日の発表によりますと、瀬戸内海を埋め立てる場合の禁止区域として六つの区域が指定をされ、さらに他の区域につきましてもかなりきびしい規制をやっていこう、このような考え方が示されたようでありますけれども、この点について、ごく概略でよろしゅうございますが、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  18. 森整治

    政府委員(森整治君) 御指摘の瀬戸内海環境保全臨時措置法の十三条一項に基づきます埋め立てにつきましての基本的な方針につきまして、去る五月九日に審議会から御答申をいただいたわけでございます。  その内容でございますが、ともかく一番最初に、いまの瀬戸内海というものが水質が相当悪化をしておる、そういうことから、埋め立ては厳に抑制すべきであると考えている、やむを得ない場合においても、こういう観点に立って埋め立てのいろいろ審査に当たってほしいということが冒頭に述べられておりまして、あとは一般的に、一つは海域環境保全の見地からいろいろ埋め立てがだいじょうぶかどうかということをチェックしなさい、それから自然環境保全上の見地からチェックしなさい、それから水産資源保全上の見地からもチェックしなさい、こういう三項目、大項目でございますが、そういうことにつきましてさらに具体的にチェック項目を並べておるわけでございます。これによりまして、埋め立てのアセスメントと申しますか、瀬戸内海の埋め立てにつきまして、特に普通の埋め立てより厳重にそういうアセスメントをしてほしいということが書いてあるわけでございます。  そのほかには、法律上埋め立てが、たとえば自然公園法の特別保護地区なり特別地域、そういうものは埋め立てについて知事なり環境庁長官の許可を必要としているわけでございますが、そういうものについてはなるたけ避けてほしいということが第二。  第三に、先生指摘のように、六水域につきまして具体的に、公害防止だとか環境保全だとか、そういうものに役立つようなもの以外はなるたけ避けてほしいというようなことを述べておるわけでございます。  この最後の点でございますが、海域を二つに分けまして、非常によごれておるというところと、そうでないところと、こうまん中で分けたものですから、何か上がよくて下がいけないのだ、こういうふうに解釈されがちでございますけれども、決してそういうふうに——よごれているところはなるべく注意しなければいけないわけですけれども、きれいなところについても同様な、最初に申し上げましたように埋め立てはなるたけ避けてほしい、埋め立てをする場合にいろいろ与える影響というものを十分チェックしてほしいということがかかってきておるわけでございます。全体から申しますと、そういう考え方の基本的な方針というふうにわれわれは理解をしておるわけでございます。
  19. 工藤良平

    工藤良平君 そうしますと、瀬戸内海の中ですでに指定をされました六海域については、いまお話しのように、特に公害防止のための施設を除いては、ほとんど埋め立てというものは今後皆無にひとしいような状態できびしく規制をする、このように理解をしてよろしいわけですね。
  20. 森整治

    政府委員(森整治君) これは最終的には知事さんの御判断ということがございます。ございますが、考え方といたしましては、公害防止、環境保全、あるいは水質汚濁防止法によります特定施設を設置しない、上物で問題になるような施設がない、それから汚濁負荷量が小さい、そういうようなもの以外のものはできるだけ避けるようにということが明文で書かれておるわけでございます。
  21. 工藤良平

    工藤良平君 そこで禁止区域とそうでない区域、もちろんそうでない区域についてもかなりきびしい、環境に及ぼす影響がきわめて軽微であることというような表現を使っていらっしゃるようでありますけれども、したがって、その尺度というものは私はきわめて微妙な問題があるように思います。もちろんこの六つの禁止区域と、さらにそれに非常に近いけれども六つの禁止区域に入らなかったという地帯があると思うのですが、そこで、これは資料をいただきましたが、海域別の状況によりまして、一定の基準を設定をしてそれ以上のものを六つの海域としたようでありますが、たとえば総合指数で三〇〇という指数を出しておるようでありますけれども、これに非常に近いけれども三〇〇には届いていない、そういう地域はおのずから埋め立てもまだ可能であるという解釈が出てくるわけでありますが、その三〇〇という、どこかで線を引かなきゃならぬでしょうから引いたわけでしょうけれども、その総合指数三〇〇というものの一体基準をどのように解釈をしたらいいのか。
  22. 森整治

    政府委員(森整治君) 三〇〇というのは、結局一つの要素としまして、その海域のCODの濃度を見たわけです。それからもう一つの要素といたしましては、潮の滞留度を見たわけであります。それからもう一つは、海岸延長当たりの汚濁負荷量の流入度というのを見たわけであります。それぞれ一〇〇点に置きまして三〇〇点満点と、こうしたわけでございます。  したがいまして、三〇〇点というのが平均点、指数をとりましたから一〇〇が中心でございまして、各濃度なり滞留度なりでそれぞれ百幾つ、それから九十幾つ、八十幾つと、こういうふうに分かれてくるわけでございます。平均三〇〇点以上のものは瀬戸内海全体の平均よりよごれておる。そういう観点でまん中から平均をとって基準を定めたということでございまして、平均でございますから、各海域、厳密にいいますと四十地域ぐらい都道府県別に分けますと分かれてきます。それらは全部順番をつけますと、点数をつけますと一番から四十番ぐらいまでずっと並ぶわけでございます。平均でございますから、平均のところにわりに集中をするというのは一般的な傾向だと思います。したがいまして、御指摘のような問題につきましては、むしろ瀬戸内海全体から見て、三〇〇より上だからいけないとか三〇〇より下だからどうだというふうな、その辺のことはそう厳密にわれわれは考えたくない。むしろ二百九十何点、二百八十何点ということは、そのこと自身が非常によごれておるほうに近いんだよということを審議会といたしましてはっきり数字で示した、こういうふうにむしろ御理解をいただいたほうが正しいのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  23. 工藤良平

    工藤良平君 これは詳細にいろいろ検討したいわけですけれども委員会ですからそういう時間がありませんが、たとえば滞留度指数のとり方、現在COD濃度が非常に高い、しかし滞留度指数やあるいはCODの汚濁流入度指数が比較的小さければ、総合指数はもちろん三〇〇に届かないというような実は計数が出てくるわけなんですが、そういたしますと、問題はやはり滞留度指数あるいはCODの汚濁流入度指数というのが非常に問題になるように私は思うのです。  たとえば、いま具体的に別府湾あたりをとってみましても、現在の濃度指数は一二八ということで、全国的に見るとかなりこの調査の中でも高いほうなんですね。しかしそれは、滞留度指数やあるいはCODの汚濁流入度指数において若干低いということからぎりぎりの線でとまっている、こういうことになってくるわけですね。そうすると、三〇〇に届いていなければまだ開発の余地はあるんだぞという印象を非常に強く与えるわけで、私は総合指数で二八九というものが出ているということは、三〇〇にきわめて近いもので、三〇〇にそれはほとんど匹敵するようなよごれなんだぞ、注意をしなければいけぬのだぞというように当然これは理解をすべきだと思いますけれども、解釈のしかたによっては、それはまだ余裕があるんだから開発してもよろしいんだという解釈も一方においては成り立つわけなんで、そういう意味からいって、たとえば滞留度指数の問題についても、調査の時期なりそういうものについてやはり問題はないのか。滞留度指数というのは一体どういう頻度でもって調査をし、その計数を出してこられたのか、その点もちょっと御説明いただきたいと思います。
  24. 森整治

    政府委員(森整治君) これは四十七年度に、瀬戸内海の全域にわたりまして環境庁が調査をした数字をもとにしております。それは春と秋と夏、冬と四季を通じまして、四回にわたりましてやった調査でございます。その調査をもとにいたしまして滞留度を、メッシュに切りまして、その潮の交換度を調査したということでございます。したがいまして、四十七年度の調査であるということからいたしまして、それは過去の数字で、今後新しくきれいになっていくからいいじゃないかという意見もございます。いろいろございます。いろいろございますが、ともかくCODの濃度にいたしましても、滞留度にいたしましても、それから海岸延長当たりの流入度にいたしましても、現実の数字というのは明らかに、たとえば御指摘の別府湾も平均がそうなっておるということでございまして、工業の立地している前面海域というのは非常によごれておる。それを別府湾全体でプールすればこうである、こういうことでございます。  したがいまして、この基本的な方針の、先生指摘の海域区分をしましたそこの下のところに、いまの六水域以外のところでももう少しこまかに見ればよごれているところがあるでしょう、そこはそういう取り扱いをしなさいよということが明文で書かれております。ということでございまして、御指摘の過去の数字でいろいろ今後見るのにどうかということはございますが、これはやむを得ないと思います。ともかく三年間の暫定措置でございますから、四十七年度の数字を、数字がそれしがなかったから使わざるを得なかった。しかしそれにしても、その大きな海域で区切った中の、部分的にきれいである、あるいはよごれておる、そういうのは十分見なさいよということがはっきりこれも明記されておるということを、われわれとしてもお答え申し上げておきたいと思います。
  25. 工藤良平

    工藤良平君 さらにもう一つ、このCODの汚濁流入度指数の算定の際に、それぞれ流出してまいります汚濁された廃液、その濃度と、さらに海岸線の長さによって計算をされているという話を私聞いているわけですけれども、たとえば別府湾のように、湾というのは出てくる前面というのは比較的狭いわけなんです。しかし、それでも海岸線というのを全体にとってみますと、ちょうどこのテーブルみたいなものですから、このような非常に湾曲したところでありますから、海岸線というのは長いわけですね。しかし、その入ってまいります海の面積というものは、外洋と比較をいたしまして、海岸線の関連で見ますとかなり問題が出てくるのではないか。そういう算出の方法によって出された計数というものは、かなりの弾力的な運用というものをやっていかないと、まだ十幾つ残っているからだいじょうぶだという印象になると、たいへん大きな問題が私は出てくるような気がいたします。  そこで私、海の汚染状態を統計的に県の調査に基づいて調べてみたわけですけれども、比較のしかたそのものについても非常に問題があるわけです。たとえば、四十七年にはCODの濃度が非常に高かった。現在は非常に少ない。それを比較をしてみますと、あるときは一番高い四十七年の三月というものをとり、一番低い、たとえば現在の四十九年の一月なんというのを比較をいたしますと、これは問題にならないぐらい低いわけです。そうすると、四十七年のそれじゃ一月はどうだったのかということで見てみると、一月という月は大体低いという数値が出てまいりますから、その比較のしかたにも私はよるのではないかと思います。  これはまた一般的にながめてみた場合に、表層よりも下層のほうが湾部の場合にはよごれがひどくなっているという統計が出ているわけです。ですから、見方によっては、表層と表層を比較した場合には若干少なくなっているようになるけれども、下層のほうの統計というのを見ると逆に高くなっている。平均してみるとそれは若干少ないかもわからないけれども、しかし下層のよごれというのはひどいということは、長い目で見てまいりますと、これは滞留度の問題とかそういうような問題からいたしますと、若干私は問題が今後に残るような気がするわけであります。  そういう意味合いから、今回のこのデータの一つの基準というもの、もちろんどこかで線は引かなければならぬけれども、それにはきわめて問題点があるんだ、したがって、この数値の扱いについては慎重に扱わないとたいへんな問題が起こるぞという感覚でこれをとらえていく、こういうことが必要ではないのかと思うのですが、その点については私のような解釈でよろしいかどうか。
  26. 森整治

    政府委員(森整治君) もちろんこの基本的な方針の論議の際にも、非常に抽象的なものであってはなかなか規制が困難であろう、そこで何らかの具体的な数値というものを入れたいというのが委員会の全員の御意見でございました。そこで、確かに大ざっぱな数字であろうということは私ども自覚をしておるわけでございます。しかし、ないよりはましである、ともかく一歩前進ではなかろうか、こういう観点から数値をとっておるわけでございます。もちろん具体的に今後埋め立てを行なう場合に、十分な環境の調査をされた上、それに対する先ほど申しましたチェックそのものは、より具体的に、よりこまかく、やはり環境保全という見地からの事前評価というものを十分やっていくということにつきましては、先生指摘のとおりでございます。
  27. 工藤良平

    工藤良平君 そこで、もう少し私お伺いしたいと思うのですが、これは別府湾のちょうど対岸になりますけれども、日出町漁協の赤潮発生状況というのを調べてみました。これはかつて私は三木長官議論をした際にも、そのデータを出したことがあるのですが、昨年であったと思いますけれども。その後の経緯について、赤潮の発生状況を見たわけであります。  それによりますと、ちょうど四十七年の六月から十二月にかけまして大体二十五回、それから四十八年の一月から四月まで十六回というような発生状況でありました。それが今回調べてみますと、四十九年の一月から四月まで三十回、それから五月に入りまして一日から十日までの間に十回、このような数字が実は出ているわけであります。非常に赤潮の発生状況がひんぱんになっております。その規模も、たとえば長さ三千メートル、幅千メートルとか、そういう非常に大きなものになってきているわけであります。もちろんこの赤潮の発生というもののメカニズムが、ただ単に廃液だけではなくて、他のいろいろな要素もからんでいるということも、私も十分承知をいたしておりますけれども、このような状態がひんぱんに、しかも従来よりもまして大きく出てきているということになりますと、これはかなり汚染状態というものは深刻な問題になっているのではないか、このように思っているわけであります。  この点について環境庁としては、具体的に汚染状態をどのように見ていらっしゃるか。さらにまた農林省も、先般地元の要請で現地を御視察なさったようでありますけれども、その間の経緯説明をしていただきたいと思います。
  28. 森整治

    政府委員(森整治君) 先生指摘の問題非常にむずかしい問題でございますが、一応われわれの考え方を申し上げますと、四十七年と四十八年、同時期を比べましてシミュレーションをやってまいりますと、平均としては、ごくわずかでございますけれども、若干よくなったような数値が出ております。ただ、この点につきまして、私ども決してそれでよくなったということを申し上げるつもりはございません。数字はそうであった。ただ四十八年という時期が、ただいま御指摘の赤潮問題につきまして非常に条件的によかったということは一つございます。したがいまして、四十九年度または春先にそういう現象が常に起こってくるということもまた、従来の知見からはっきりしておるわけでございます。  したがいまして、決して私どもよくなったと思いませんが、やはり基本的には、窒素、燐というものをどういうふうに押えてまいるかということを至急検討せねばならないということで、引き続き瀬戸内海、ほかの地域もそうでございますが、特に瀬戸内海につきまして調査をさらに続行をしてまいる。基本的には、やはり相当な瀬戸内海に蓄積がまずあると思います。それから工場排水を規制いたしましても、家庭雑排水から出てまいります汚濁というものは、これは無視できません。そういう問題全体をからめまして、赤潮の問題というのは常にわれわれの念頭に置いて浄化をはかってまいるというふうに考えておるわけでございます。
  29. 前田優

    説明員(前田優君) お答えいたします。  五月の中旬、先生指摘のように別府湾へ参りました。陸上並びに海上から十分現地の状況を調べさせていただいたわけでございます。  そこで、大分へ参りまして、当初県と打ち合わせをいたしましたあと、埋め立ての反対期成同盟の方々から、この埋め立ての影響等についてのお話を伺ったわけでございますけれども、そのあと船で、もうすでに埋め立てが完了いたしまして産業が立地しております沖の海域を船で回りました。県の試験場からのデータによりますと、大体三十三年ごろの透明度が十五メートルほどございましたが、現在の時点で、といいますのは四十八年度に調べましたところ、大体透明度が、その現在立地しております沖合いでは五メートル程度であるという報告を受けたわけでございます。私ども船で歩きました際に、実際に透明度板をおろして調べてみましたところ、大体その産業立地の沖合いでは五、六メートル程度の透明度しか得られなかったということは事実でございます。  それから続いて、産業が立地しておりますところの対岸のほう、先生先ほど御指摘の日出と申しますか、その方向まで参りまして、現地の漁業者の声も直接聞いてまいりました。現地の漁業者の意見といたしましては、赤潮が最近特にひんぱんに起きることは、そういう発言もございましたが、特に現地の方が強調しておられましたのは、十年ほど前までは要するにモ場が非常に広くて、舟をこぎます際にも海藻に櫓をとられてじゃまになるほどモがあったのですが、最近急激にモ場の減少を来たしまして、現在モをさがすのに骨が折れるような状態になってきたということで、いわゆるこの影響が直に埋め立ての上に立てられた産業の排水であるということは言い切れないかと思いますけれでも、しかし現象の問題といたしましては、そういう問題が出ているということを非常に熱心に話しておられました。  翌日陸上を佐賀関の組合のほうへ参りました。その途中、問題になっております神崎の組合にも立ち寄ったわけです。神崎の組合につきましては新聞等でもまたいろいろ御指摘もあるところでございますが、神崎の組合員の方々とお会いいたしました際に、神崎の組合におきましては、組合長さんはじめ皆さんがおっしゃいますのには、いわゆる佐賀関の組合に組合合併で入ったわけでございますけれども、佐賀関の組合自体はいわゆる釣りまたはなわ等が主体の組合である、神崎という組合は網が主体の組合である、そういう関係で、業態が違うということから組合内における発言権が無視される傾向が非常に多かった。神崎の組合としては、いわゆる漁業権を売るために許可をとったというようなことが巷間いわれておりますけれども、私どもは一切そういうつもりはございません、少なくとも組合が認可され漁業権が与えられたということで、現在も船並びに漁具を非常に整備いたしまして、未来永劫にわたって私どもは漁業を続けていきたいと考えているという意見の開陳がございました。  佐賀関に参りまして、かれこれ百名をこすような漁業者の方々の出迎えを受けたわけでございますが、そのあと組合の幹部の方といろいろお話しを申し上げました際に、佐賀関はいわゆる漁業オンリーの町のようなものでございます。漁業によってほとんどの方が専業で生計を立てている。ところが、順次埋め立てが間近のほうまで進んでまいりますと、結局私どものこれからの生計は一体どう考えていけばいいのだろうという切実な話があったわけです。そこで私どもとしては、漁業権というものはいわゆる安易に放棄するべきものではない、やはり漁業者が生業の場として子々孫々に伝えていかなければならないところでございます。したがって、この汚染の防止の問題についても、やはりよごれてきたかどうかということは、そこで魚をとっている漁業者が一番感覚的にはよくわかるわけです。そういう意味で、水産庁といたしましても、四十九年度からいわゆるこの防止体制を全国ネットワークで十分しいていくということになっておりますので、その点に対する漁業者の方々の協力も要請するとともに、一緒にそういう方向で努力していくということでお話を申し上げたわけでございます。  そのあと船で佐賀関の沖合いを回りまして、それから問題になっておりますところの、現在着工いたしております埋め立て地の周辺も歩いてきたわけでございますが、大体佐賀関の周辺でございますと、現在のところまだ透明度が十二、三メートル十分ございます。ちょうど赤潮が出てない日にぶつかってしまったという残念な点があったわけでございまするけれども、現在の環境状態をできるだけ、これ以上悪くならないように漁業のために維持していただくということが緊急のことではなかろうかというふうに感じ、また県のほうへもその旨十分申し上げて帰ってきたつもりでございます。  以上でございます。
  30. 工藤良平

    工藤良平君 環境庁にさらに私お尋ねいたしたいと思いますが、御承知のように別府湾というのは、大分の一期計画、さらにいま二期計画の六、七号地、これがすでに埋め立ての許可が出まして工事が進められているわけでありますが、これが全部完成いたしますと、この前面約二十キロの海岸が完全に工業化されるという状態になってまいります。もちろんこれは、モ場の問題からいたしましてもたいへん重要な影響が出てくるわけですね。さらに、さっきから私再三申し上げておりますように、赤潮の発生によりまして、大分の西大分から別府の浜脇にかけての海岸線、これまた非常に重要な問題がありますし、さらに、国道十号線の埋め立てというものも計画化されておる。別府湾の一番深部に入ります別府の市街の前面も、御承知のように国際観光港の移転、さらに埋め立てというようなことから、結局は別府湾の前面が、亀川までかけまして全部死の海といってもいいぐらいの海岸線がつぶされてしまっておる。残されているのは対岸の日出、大神から杵築にかけての海岸線になるわけですが、御承知のように空港も国東に移りまして、これもやはり二千四百メートル埋め立てが行なわれておる。  こういうことを考えてみますと、別府湾がいままさに死の寸前にあると言っても言い過ぎではないのではないか、このように思いますし、この大分の海水の汚濁の問題について、すでに今日まで水理の模型実験も行なわれておるようでありますが、四十二年に行なわれておるようでありますけれども、これは調査をしてみますと、ただ四十二年の調査というのは一期の計画の地先だけを水理の模型実験を行なっているということで、これはやはり湾全体の水理模型実験を行なって、その実情というものを調査をする必要があるのではないか。話によりますと、これは何か実施をしておるようでありますけれども、そういう十分な科学的なデータをそろえる中で、私はこの根本的な問題を検討してみる必要もあろうと思うし、当面いまの汚濁の状態というのは、一時野放しの状態からいたしますと、きびしい規制を行ないましたから若干は下がってきたけれども現状というのは横ばいの状態であるわけです。今度新しいCODの負荷量の規制でそれぞれ各企業に割り当てられていくと思いますけれども、企業によりましては、すでに最も新しい設備を使っての規制を行なっておりますから、いまの排出基準をそう大幅に削減ということもできないのではないか、こういうような気もいたします。おそらく横ばいの状態が続くのではないか。こう見てくると、いわゆるこの六水域の禁止をされた地域以外の水域につきましても、相当きびしい規制をやらなければたいへんな事態になるということはいまからも予測をされるのではないか、このように思うわけであります。  したがって、私ども別府湾の場合に問題になりますのは、先般のこの委員会でも三木長官も発言をはっきりいたしておりましたけれども、大分の場合に一番問題になりますのはやはり八号地の問題ですね。八号地の前面がさらに埋め立てられるということになりますと、いま水産庁のお話のように、ほとんどもう別府湾は豊後水道を除いては、これは豊後水道もちろん影響が出てまいりますけれども、漁業というものが成り立たない、こういうような状態が起こってくるのではないか、こういう心配も出てくるわけでありまして、そういう意味合いから、環境庁としてもこの別府湾の、特に海の汚濁の問題についてきびしい監視の体制、そういうものの県に対する指導というものが必要ではないか、こういうように思いますので、その点、現在の調査の実情等について環境庁で把握をしておればその点もお伺いをし、また後ほど長官にはこれに対する基本的な考え方を伺いたいと思いますけれども、まずその点を御説明いただきたいと思います。
  31. 森整治

    政府委員(森整治君) 先生指摘のように、二期埋め立て計画地域周辺の潮流模型実験というのは東海大学のほうで行なわれているようでございますが、確かに御指摘のように、数字的に申し上げまして、率直に申しまして別府湾がきれいであるということは私ども考えておりません。したがいまして、今後どうされるかということにつきまして、たとえば八号地問題につきまして、私どもは何も聞いておりません。そこで知事さんに直接私もお会いいたしました。知事さんのお話しを伺いましたけれども、知事さんも、いまどうこうするということは何も考えておりませんということを明言されております。  そうでございますが、私ども基本的に、別府湾に限らず考えておりますことは、いま埋め立てを急ぐということよりも、やはりいま与えられた負荷量の削減を三年間実際に実行して、そこできれいにしていく。そういう実績の上で、慎重なアセスメントをやりまして、こういう企業が立地する、あるいはこういう施設をつくる、こういう埋め立てをしてもだいじょうぶなんだということがよくわかる場合には、それは必要があってやられる場合に限るわけですけれども、むしろ基本的にはそういう考え方でやっていただきたいというふうに思っておるわけです。  大分県とも十分連絡をとりまして、その点、本日先生が御指摘になりました御意見、御発言の点は念頭に置きまして、十分大分県を指導してまいりたいと思います。
  32. 工藤良平

    工藤良平君 これは先日、水産庁長官にちょっと私申し上げたわけですが、その際長官も、特に別府湾の八号地の埋め立ての問題については、いま森局長がおっしゃったように、非常に慎重な態度であります。特に課長を調査に出しておりました関係上、別府湾における七号地までの埋め立てでできればとめて、その被害の影響というものがそれから豊後水道にかけて出てこないような措置がとれるかどうか、そういう点について模範的な地域として実は詳細な調査と対策を講じたい、このような御発言もなさったようでありますけれども、それらについても課長にも命じてこれから調査をやろう、こういうような御発言でありましたが、ぜひひとつそういう点についても、別府湾の環境保全、そして漁業を守るという意味合いから、ぜひこれは全国的な大きな一つの模範としても、これ以上よごれないような形で漁業をどう守れるか、そういう点について水産庁として今後の対策を進められる御意思があるかどうか。その点もひとつ伺っておきたいと思います。
  33. 前田優

    説明員(前田優君) お答えいたします。  現在、いま先生から御指摘がございました点につきましては、私長官から直接の指示をいただいておりまして、埋め立ては全国各地で行なわれているわけでございまして、別府湾を一つのモデル地域として、水産の立場から、どのような動きにあるのかということは十分把握してまいりたい、このように考えておるわけでございまして、環境庁とも十分御連絡をとりながら、水産庁といたしましても、いま申し上げましたように、漁業という立場からモデル地域として調査を行なうべく、現在検討中でございます。
  34. 工藤良平

    工藤良平君 水の問題についてはこの程度で終わりたいと思いますが、最後に三木長官、これは昨年も私ども議論をいたしました事項で、非常に前向きの御意見をいただいたわけですが、事態は進展をしてまいりまして、このたび瀬戸内海の環境保全の臨時措置法に基づく一つの基準というものが示されました。私はこのことに非常に期待を持っているわけでありますけれども、いまお話しのように、この八号地の問題が、この基準が出されたことによって、禁止区域になっていないということから、まだ開発ができるのではないかという考え方が一部にありました。そのことが非常にまた混乱を招くというような状態になっております。  いまお聞きのように、別府湾はかなり汚染度が進んでおりますし、一方、漁業を守らなければならないという観点からいたしまして、この際八号地の問題については一切白紙に戻していただいて、そして七号地までの問題についてもなお大きな問題が出ているわけでありますから、ぜひすっきりさせていただく中で、やはり一期計画、さらに二期の問題についても、私どもが真剣にそれらに取り組めるような、議論が進められるような状態というものをつくり出す必要があるのではないか、このように思いますので、この点について三木長官、従来からのいきさつも十分御承知でありますので、ぜひひとつ御見解を承っておきたいと思います。
  35. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 八号地の埋め立てにつきましては、先般も大分県知事が来て、いま何にも考えておらないということを環境庁へ来て言っておったわけです。水産庁も漁業のモデル的な地域としたいという意向もありまして、すでにいろいろ七号地の埋め立てでも問題のある地域でありますから、この問題については県も当然慎重な態度をとると思いますが、われわれもそうすべきものだと考えております。
  36. 工藤良平

    工藤良平君 それでは水の問題はこの程度にいたしまして、今度は大気汚染についてお聞きをいたしたいと思うのであります。  先日、五月の十八日に、大分地区で初めて光化学スモッグ予報が発令をされました。オキシダント濃度がかなり高いことが実は発表されたわけでありますが、この点について環境庁としては、大分の大気汚染が、かつて中央公害審議会の指摘にもありましたように、おそらく東京、川崎等に次いで四日市をしのぐ大気汚染地域になるであろう、このような指摘も実は受けたところでありますけれども、このような事態発生をいたしまして、私ども非常に憂慮いたしておるわけでありますが、この点についてどのように報告を受け、また理解をされていらっしゃるか、まずお聞きをいたしたいと思います。
  37. 春日斉

    政府委員春日斉君) 大分県で初めてオキシダントの予報が発令されましたことは、ただいま御指摘のとおりでございまして、私ども県からの電話連絡によって、その点は重々承知いたしておるわけでございます。  光化学の予報の問題でございますが、昨年は二十一都府県におきまして三百二十八回の注意報の発令がございまして、これらが地方公共団体におきましては緊急時の対策実施要綱、それぞれ県ごとにお定めになっておりますが、その要綱に従って発生源に対する燃料削減の要請等々の対策を実施しておられるわけでございます。  それと同様に大分県におきましても、本年の四月一日に、実は大分県大気汚染緊急時等対策実施要綱というものを定めまして、緊急時の発令基準、これは法で定めてございますのは注意報と重大緊急時報の二つでございますが、さらに県独自で予報及び警報というようなシステムを加えられまして、そのそれぞれの段階に応じて協力工場の、大分県の場合の協力工場というものは排ガス量が一時間に二万ノルマル立米以上の工場を、現在のところ十四工場でございますが、協力工場といたしまして、緊急時の場合は排ガス量の削減を行なうことをきめておられるわけでございます。これによりまして、オキシダントの要因物質である窒素酸化物排出量の削減効果があらわれてくるものと、実は期待しておるわけでございます。もちろん、こういった措置は大分県だけではございませんで、先ほども申しましたように、他の都道府県におきましてもほぼ同様でございます。  なお、国の場合に、関係十二省庁からなります光化学スモッグ対策推進会議の決定に従いまして、総合的な対策を推進しておるところでございます。ただ本年は、昨年に比べまして光化学の被害がかなり多くなっていることは事実でございまして、初めて大分県でこういった予報が、たしか五月十七日だと思いましたが、発令されたことは、私どもも重要な問題として考えておるわけでございます。なお、県の予報発令基準は、オキシダント濃度が〇・二二PPMを越え、かつ気象条件からオキシダント濃度が上がることが予想されることとなっておりまして、その基準によりまして発令されたわけでございます。  なお、この五月十七日と申しますのは、全国的にオキシダント濃度が上がりましたところでございます。ことに兵庫県では、十七日でたしか四千十数名の被害者が出たと伝えられる日でございます。全国的にこの日は、気象条件から申しましても光化学スモッグが非常に出た日である、こういうことが言えるかと存じます。
  38. 工藤良平

    工藤良平君 それと同時に、SO2の排出基準をオーバーをいたしまして、かなりその範囲が拡大をしているというデータも実は出ているように私は理解をしているわけでありますが、たとえばSO2の場合に、その基準をオーバーをいたしました地域が、当初大分市役所、県庁、東大分小学校、こういうようなところが非常に多かったのでありますけれども、それが近ごろでは滝尾小学校あるいは大分高専という、かなり郊外の地域までも拡大をしている、こういう状態がございます。それは申し上げるまでもなく、かなり大分の大気汚染というものが深刻な状態になりつつあるというように私は思うわけでありまして、こういう点についての御報告がなされているかどうか、その点も一つお伺いしておきたいと思います。
  39. 春日斉

    政府委員春日斉君) 確かに大分県は四十八年度から、第一期の計画を含めて、大分の新産都市の環境アセスメントを実施しておられるようでございますが、環境庁といたしましては、その結果が得られた段階で、環境上の条件の許す範囲内で立地行政及び規模を判断するように、大分県を実は指導しているところでございますが、しからば、大分新産都市の現状汚染、ことに硫黄酸化物の場合はどうかということでございますが、昭和四十七年度におきます硫黄酸化物の年平均値は、〇・〇一一から〇・〇二五PPMの範囲内でございまして、これを新環境基準で見ますると、十六測定局中十二測定局について環境基準に適合しておったわけでございます。ところが四十八年度では、まだ年間を通じての測定データがすべて得られておりませんが、確かに若干の地域では、四十七年度に比べまして増悪の傾向をたどっているところもなきにしもあらずでございまして、この点は資料の整い次第御報告申し上げますけれども、決して安心することはできない問題でございまして、今後とも十分な監視注目、指導が必要なところと考えておる次第でございます。
  40. 工藤良平

    工藤良平君 大気汚染によりまして、特に従来からありました、たとえば住友化学とかそういうところの大気汚染によりまして、特に三佐の家島地区につきましては従来から非常に問題が出てきたところでございまして、先般来から市の調査、さらに医師会による健康調査等が行なわれまして、ぜんそく等の有症率につきましても、かなり高い有症率が示されておるということがいわれているわけであります。この点については、すでに昨年の暮れの衆議院の委員会におきましても、これらの問題が指摘をされておりますし、昨年の医師会の調査につきまして、特に環境庁としては、ぜんそくの調査については四十歳以上の人を対象にできるだけやってほしいというような指導文書もなされておるようでありますけれども、残念ながら、医師会の調査が十五歳以上の青年について実施をしたということから、かなりそれが薄められた状態で発表されたというように私は理解をしているわけでありますが、これを四十歳以上に引き直してみますとかなり高い有症率だ、こういうことが指摘をされております。  このことについては、環境庁としても早急に四十九年度に実施をするというようなお約束を衆議院の委員会でもなさっておるようでありますけれども、非常に深刻な問題でありますし、それが四十九年度に具体的に実施されるのかどうか、実施されるとすれば、いつごろ実施の計画がおありなのか、その点もお示しをいただきたいと思います。
  41. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) いま御指摘になりました三佐校区内の住民の健康調査、これは一昨年の暮れから昨年初めにかけてのものでございまして、特にその中の第五区あたりで相当高い有症率が、四十歳以上の成人の場合にあるわけでございまして、私どもとしましては、この秋にもう一度健康調査をやるということで、県といま連絡をしている段階でございます。秋もできるだけ早い時期にやりまして、年末までかけてこれをまとめ上げていくということで現在考えておりますので、それによりまして、さらに詳細な健康状況が判明するものと考えているわけでございます。
  42. 工藤良平

    工藤良平君 したがって、この問題につきましては、先般来から住友化学の事故等が重なりまして、この地域の人たちは、三佐地区だけの問題ではなくて、小中島、徳島、あるいは下鶴崎というようにだんだん規模が拡大をいたしておりまして、深刻になってきているわけであります。ぜひこの問題は早急にやっていただきまして、住民の大気汚染に対する不安を取り除くと同時に、これからもこの抜本的な対策を講じていかなければならないと私ども考えておりますので、ぜひその点については早急に具体的に指示をしていただきたい、徹底的な調査をしていただきたい、このように思うわけであります。  さらに、その問題に関連をいたしまして、家島の移転の問題が実は県議会等でも決議をされて、プロジェクトチームをつくりまして検討がなされておるということでございますが、この家島地区の移転の問題については、ただ単に家島地区の三百戸が移転をするということだけではなくて、やはりその周辺地域の問題も出てまいりますから、特にその影響の大きい工場との関連において、今後根本的にこの問題を検討する必要があるのではないかと私どもは考えているわけですが、この点について環境庁としてはどのように御理解していらっしゃいますか。
  43. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 移転問題につきましてもいろいろ御相談があったということは聞いておりますが、何としましても、私どもとしましてこの地域におきます汚染の状況がどうなっているか、それからまた健康被害の影響の状況はどうだ、こういう点を的確に把握しませんと、この具体化が非常にむずかしいわけでございます。また、特に移転となりますと、住民の希望ということが当然第一になるわけでございまして、この点を含めまして、今後十分県と相談しながらやってまいりたいと思います。
  44. 工藤良平

    工藤良平君 この問題は全体的には、いわゆる一期計画の環境汚染とそれに対応する対策、さらには現在進められております二期の、特に六、七号地の埋め立てが進行しておりますから、その関連の中で、一体工場レイアウトの問題はどうなるのか、私どもには一つのやはり不安と、対策がきわめて重要になってまいりますので、それらについては環境庁としては現在どのように理解をし、県に対して要請をなさっていらっしゃるのか。さっきちょっと局長からのお話もありましたけれども、もう少しわかれば御説明していただきたいと思います。
  45. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 先ほど大気保全局長から御説明申し上げましたように、県のほうではいろいろな計画を立てまして、十分大気汚染に関連しましたアセスメントを実施していきたい、こういう考えを持って現にそれに着手しているわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、そういう環境の容量の範囲内でしか今後拡張が進められないということが第一の前提ではないかと思っているわけでございます。  なお、汚染の状況に関連いたしまして、ただいまの健康被害の問題でございますが、これはいろいろ問題点があると思います。特に、先ほど御指摘のありましたような地区につきましても、一般的にいいまして大気汚染の状況がそう非常に高いレベルではないというにかかわらず、先般の調査では相当な有症率がある、こういう点をどう解釈するかという点については、いまの健康調査の面もございますが、環境の監視測定、こういう面からもいろいろ問題点があろうかと思うわけでございますので、そういう点、十分県のほうと詰めてまいりたいと思っているわけでございます。
  46. 工藤良平

    工藤良平君 測定の機器その他について、現在の状態で十分なのかどうなのか、その点についてはどうですか。
  47. 春日斉

    政府委員春日斉君) まず測定局の問題でございますが、硫黄酸化物の測定局につきましては十数局ございますが、これは国で定めた測定方法、すなわち導電率法に従います測定機器が備えつけてございまして、その維持管理につきましても適当と考えられますので、その点についてはあまり問題はないと思います。  それから窒素酸化物の測定局は、実は昨年まで、移動測定局を除いては固定測定局がなかったのでございます。これが大分地域におきます大気汚染のアセスメントを行ないますときに一番大きな問題であったのでございます。急遽、昨年十局を設けました。これは最も新しい機器を整備いたしておりますので、これにつきましてもそれほど問題はないであろう。  ただ、いままでのところ、いかんせん、まだ年間を通してのデータが得られておる段階ではございませんので、機器そのものにつきましては問題はないと思いますが、なおかつこれからも測定の経験を積んでいきませんと若干問題があるであろう、こういうことでございます。
  48. 工藤良平

    工藤良平君 これは長官、具体的にやりますと際限がありませんので、私はこの程度で終わりたいと思いますが、先ほどから議論をいたしましたように、海の汚染もかなり進んでおりますし、特に大気の場合もだんだんとその汚染がひどくなり、範囲が拡大しているという実情であります。したがって、特にこの六、七号地の工場レイアウトの問題につきましても、ぜひ環境庁といたしましても、いかに現在の汚染を押えていくか、こういうことで新しい許可基準も示されておるようでありますので、それらにつきましても十分に監視の体制、そして指導の体制を強化をしていただきまして、これ以上汚染が広がらないような体制を指導していただかなければいけないのではないか、このように考えておりまして、その点についてひとつ環境庁長官の最後の決意のほどをお伺いいたしまして、私はこの程度で終わりたいと思います。
  49. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 工藤委員のいろいろ御心配、私もそう思っている問題がたくさんありますから、したがって八号地の埋め立てに対しては、これはきわめて慎重にするべきであるという態度をわれわれも持っておりますし、県もまた、ついこの間です、全然考えておりませんと言っておりましたから、これは慎重な態度と思いますが、今後、今後の推移等も十分に環境保全の立場からわれわれとしても関心を持って、よい環境の保全、これ以上よごさないということについて最大の注意を払うことにいたします。
  50. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時六分休憩      —————・—————    午後一時九分開会   〔理事原文兵衛君委員長席に着く〕
  51. 原文兵衛

    ○理事(原文兵衛君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  52. 小平芳平

    ○小平芳平君 健康被害補償法に対する質疑に入る前段階といたしまして、私は政府の公害に取り組む基本姿勢について若干質問をいたしたいと思います。  その具体的な例といたしまして、カドミウムに対する健康被害についてです。この点については、三木長官は、富山県で五月二十六日に、お米の基準について発言をしておられるようですが、そのことについてはまた後ほどお尋ねをいたします。  最初にお尋ねしたい点は、日本公衆衛生協会に厚生省が委託をして、四十五年三月三十日に発表しておりますところの「要観察地域におけるカドミウムの摂取と蓄積に関する研究」、このデータにつきまして質問をいたします。  この中で、特に群馬県の安中地区、この表で言いますと碓氷川、柳瀬川流域となっております。しかし、この安中地区は、碓氷川、柳瀬川流域というよりも、むしろ大気汚染地域としての研究がなされたようにこの報告書にはなっております。この大気汚染地域におけるお米のカドミウムの分析、この報告書で言いますと二九ページであります。このお米のカドミウムの分析結果によって、当時の厚生省は、要観察地域は安全であるというような宣言といいますか、見解を発表されたことは、橋本さん、城戸さん、当時のことを御承知と思います。  ところが、当時すでに岡山大学の小林教授、あるいは富山県の萩野博士等は、どうもこの安中地区がそれほど安全であるということは信用できないという強い主張をしておられました。しかし、私たちもそうは言われても、はたして県と厚生省が発表されたことに対してどの程度の疑問をもちかけたらいいか、あるいはどういうふうなところに疑問の解明するかぎがあるか、ちょっと戸惑っていたわけでございます。ところが、最近になって公害を隠すとか、あるいは官庁が公害のデータを故意に隠すとかいうようなことがしきりとわかってまいりまして、まさか私たちが想像もつかなかったような企業による公害隠し、県になるデータの隠蔽、そういうことが問題になってまいりましたので、まさかとは思いながら、この安中市の東邦亜鉛周辺の保有米につきまして、データは四十四年産米を県衛研で分析して発表しております。ここに安中市の町名番地まで入っておりますので、地元の人の御協力をいただいて、同じ人の保有米、といいますと四十八年産米になりますが、同じ保有米を分析をし直してみました。そうしますと、非常にかつて発表したものよりも分析数値が違っております。  まず厚生省あるいは環境庁、どちらで答弁していただけるか、このデータはいま私から差し上げたとおりでありますが、四十五年三月に発表された県衛研のデータは、対照地域の後閑地域が平均で〇・三〇PPM、ところが汚染地域として要観察地域としての板鼻地域は平均して〇・二七PPM、つまり、対照地域よりも要観察地域すなわち汚染地域のほうがカドミウムの量が低いということで発表になったわけでありますが、こういう点について疑問を持たれませんでしたか。いかがですか。
  53. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) この調査は、私が厚生省の公害課長をいたしておりましたときにやった調査だということで、この調査のことにつきまして私の範囲内でお答えをいたします。  この調査は、御承知のように、要観察地域の中でのカドミウムの摂取と、それからそれに伴う排せつ、それによって蓄積を知ろうという目的のためのものでございまして、特にこれによって地域指定について変更を加えるとか、あるいは安全宣言をするという趣旨のものではございませんでした。  御指摘の二九ページにございます資料でございますが、確かにこの板鼻地区の平均が〇・二七、一番高いもので〇・四八、一番低いもので〇・〇九という数字のばらつきがございまして、それと対照地区として選びました後閑地区、ここの地区が最高が〇・四一、最低が〇・一四で、平均〇・三〇という数字で、片方の汚染地区としてとったほうがどうも低いではないかという御指摘でございます。  この点につきましては、確かにここの調査の時点におきまして、保有米を抜いて調べたときには、その数字には間違いないということでございます。これは県の衛生研究所がいたしました。先ほど先生からお示しございました、四十九年に四十八年の産米調査をおやりになったのと比べるという問題は残るかと思いますが、ここの成績の範囲内におきましては、私ども議論のときに、低いなというような議論は出ましたが、一つこういう議論が出ました。対照地区のこの地区は、東邦亜鉛から西のほう約五キロのところにございまして、少し高い数字の起こったところは、ちょうど一番東邦亜鉛に近いほうのサイドでございました。しかし、ここで見られる〇・四一から〇・一四までの数字と申しますのは、これは一般のところにおいても〇・四までの数字がわりあい自然にあらわれる場合があるということは、その当時までの調査でございまして、普通のところよりも少しは高いが、別にこれをもって板鼻地区の調査が特に不正確あるいは間違い、あるいはとるのに非常に少ないものを選んだというようなぐあいな議論には、その当時ならなかったというふうに私は記憶いたしております。
  54. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは中宿の、この表で言いますと九番、十番です。この方の住んでおられる地域も、それから耕しているたんぼも、いわゆる要観察地域外の方だということは御存じですか。
  55. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 私どもの表の中に、四六ページでございますが、地図があがっておりまして、そこのところで九番、十番といいますのは、この川の向こう岸の側にあるという、中宿ではございますが、向こう岸のサイドで九番、十番というサンプリング・サイトがあるということは存じております。ただ、この線を引かれたところから見ますと対岸のサイドになっておるということで、要観察地域かどうか、ちょっとこの図だけではわかりませんが、はずれておるのではないかというようなぐあいにも、この地図のほうでは見られるようにも思います。
  56. 小平芳平

    ○小平芳平君 いま市役所にある地図によりまして詳しく調べてみますと、まさしく御答弁のように、はずれております。このはずれておられる九番、十番の方を除いて、そして単純平均をやり直しますと、要観察地域の平均が〇・三八となっておりますが、これは〇・四一になります。そうしますと、三木長官の富山の発言と関係してくるわけですが、〇・四一平均というようなデータが出たにもかかわらず、そのままにしておいてよかったのかどうか、それはいかがですか。
  57. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) その当時〇・四PPMという数字はどういう数字かと申しますと、自然のところにおいても、何ら人為的の汚染がないと思える場所で〇・四PPMまでの数字が出るということが、それまでの知見でわかっておりまして、〇・四をこえると、それよりも何か汚染が加わっているのではないかという判断条件として出したまででございまして、〇・四PPMが危険であるとかいうようなことは、一切その当時判断をいたしておらなかったということでございます。
  58. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、地域外のものを除くと〇・四をもう上回っているのです。これはおかしいと思いませんか。
  59. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 一つは、この調査の本来の目的について御説明申し上げたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、この調査の本来の目的は、要観察地域と対照地域の中で一体食物や水の中にどれだけカドミウムが入っておって、それを摂取しておって、そして一日の食事をいろいろ調べる、食品のカドミウム含有量を調べる、また次の日の一日中の尿を取りまして、その排せつ量を調べて、両方のバランスを見ていくというようなための調査でございまして、この調査をもって、特に特別の行政措置をとるというための調査ではございません。行政措置のほうにつきましては、要観察地域として、そして健康観察をずっと続けていくということをやるべき場所でございまして、それ以降に法律上、土壌汚染防止法が制定されまして、それによる対策がとられた、このような歴史的な経緯になっているわけでございます。
  60. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうことは承知しております。  それでは、今回私たちが小林研究室で分析を依頼し、きょう小林教授から、たったいま電話で受けた数値によりますと、その県の衛研の調査、お米の分析の調査に比較いたしまして、それは四十四年産米でしょうから、私たちは四十八年産米ですから、四年たった今日においてカドミウムの値がふえているものが、四番〇・七五、五番〇・四四、同じように九番、十番、十一番、十三、十四、十五、十八と、私たちのやった十六検体中九検体までが、この四年前のカドミウム蓄積と比較して上回っている。それから対照地域においては、四年前の分析数値に比べて、四年後今回分析をし直した結果、二十一、二十二、二十四と、三検体までが下回っている。こういう点はどう考えますか。
  61. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 御指摘のあったナンバーのサンプルにつきましては、機械的に、四十四年度に調査したものと四十九年に公明党のほうで小林研究室を通じてお調べになったものとを比べますと、そのような事実があるということは、私は事実として認めるわけでございます。
  62. 小平芳平

    ○小平芳平君 小林教授は当時から、この分析数値はおかしいおかしいと言っておられたわけです、疑問があると。今回やってみて、なるほどやっぱりそうかということなんです。どうしてそういうことになるのですか。
  63. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 今回やってみてなるほどそうだということは、科学的にはなかなかむずかしい議論ではないかというぐあいに存じております。
  64. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうしてですか。
  65. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) とったサンプルが違いまして、同じ家の保有米もあちこちをとりますと、かなり数値のばらつきが出るということがあるのは、私どもも非常にこの米のサンプルで困っておりまして、むしろその点につきましては農林省あるいは水質保全局長のほうからお答え願ったほうが適切かと思いますが、どういう場合に確かに上がったと言えるかということにつきましては、非常にむずかしい議論があるということを申し上げたまででございます。
  66. 小平芳平

    ○小平芳平君 私はそういうむずかしい議論をお尋ねするのではなくて、十六の分析検体のうち九つまでが今日上回るというのは、どういうわけですか。  それから今日保有米として食べておられる方の中にも、〇・九〇あるいは〇・七五、〇・六九、〇・六二という、いわゆる厚生省でいうところの一PPM、玄米一PPMすれすれのものを食べているということも明らかになったのですが、これはいかがですか。
  67. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 十六検体中九例につきましてそういう例があったということと、もう一つは十六検体中七例につきましては逆の状況があったということと、両方あるわけでございます。そういうことで、どういうぐあいに最終的に判断するかということにつきましては、私は非常にむずかしい問題があるというぐあいにお答えを申し上げましたわけでございます。  もう一点、現在食べておられる中に〇・六、〇・九という問題があるということでございますが、この点につきましては厚生省の食品衛生行政の問題でございますので、そちらのほうからお答えをしていただきたいと存じます。
  68. 三浦大助

    説明員(三浦大助君) 厚生省の見解といたしましては、〇・四PPMをこえ一PPM未満のお米は、食品衛生法には違反しないということで、食べても差しつかえないという見解をとっております。なお、一PPMという数字は、食品衛生法の七条の規格で定めておりまして、かなりの安全率を見て定めてある数字でございます。
  69. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、〇・九ならだいじょうぶだということですか。
  70. 三浦大助

    説明員(三浦大助君) 一PPM未満のお米なら、食品衛生法上問題がないという見解をとっております。
  71. 小平芳平

    ○小平芳平君 三木長官橋本審議官はそういうふうに答弁されますが、県衛研が分析をして発表した数値に比べまして二倍、三倍という、たとえば〇・三一のものが実は〇・九〇というふうに分析数値が変わってみたり、〇・一四のものが〇・六二というふうに変わったり、〇・一六のものが〇・五四というふうに変わったり、特に野殿地区というところの汚染が激しいということがこれで見られますが、私は科学的な論争はともかくとして、行政のやることにしては少し違い過ぎませんか。もう少し環境庁なり県が要観察地域と指定した、法律によって指定した地域についての米の分析は、洗い直す必要があるのではないか。いかがですか。
  72. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 同じ農家の米で、耕作地は違いますね、それにしてもどうしてそんなに違うのかなと、私自身もふしぎに思うのですが、これにはやっぱり栽培の方法、気象の条件、こういうものが影響するという、専門家はそういうふうに言うわけで、専門家としては一応のこの説明がつくわけでしょうが、これはやはりそういうことで不安を与えておるとするならば、そういうことを学問的にもっとよく解明し、そしてみんなに理解を求めるようなことが必要だと思いますね。
  73. 小平芳平

    ○小平芳平君 水質局長、学問的にそのくらいのばらつきがあるのは当然だというのですか。
  74. 森整治

    政府委員(森整治君) ちょっと数字がだいぶかけ離れたような点もございますようでございますけれども、先ほど大臣が申されましたように、同じ土地かどうかというのが、まず一つ大きな条件になると思います。同じ土地でそれくらいの違いがあるかどうかになりますと、いまの非常に違った数値から言いますと、ちょっとそんなにひどくかけ離れるものかどうかは私も多少疑問には思いますけれども、いずれにせよ、先生かねてから御指摘のように、この前もキレート剤等のお話もございましたように、そういう土壌改良資材を使いまして、およそカドミの汚染がある地帯については、大体みんなそういう意識を持っていろいろ栽培をされるというのがもはや常識化しておるということもございますし、それよりももう一つ、やはり気象条件で水の作用というのが非常に大きく響いてくるというふうに一般的に考えられます。  いま先生指摘の安中の具体的な土地について、その数値はいま初めて伺ったわけでございますが、もう少し詳細に調べてみませんと明確なお答えはできません。しかし、いずれにいたしましても、この地域につきましてはすでに対策地域として指定をして、土壌改良事業を行なうということですでに着手しかけておりまして、この事業、この地域につきましては、ちょっとことしになりますか来年になりますか、まだ着手はいたしておりませんけれども、いずれにいたしましても、この地域の土壌改良を行なうということについては、すでに決定をされておるという地域だというふうに理解をいたしております。
  75. 小平芳平

    ○小平芳平君 局長、私の尋ねていることは、局長はいま気象条件と水の関係だと言われますが、気象条件と水と関係はないのです。要するにたんぼをつくる場合に、大雨が降ろうと降るまいと、それとは関係なく、なるべく水をたくさん張って稲をつくるか、あるいは一般的に適度にかわかして稲をつくるかの違いでしょう。気象条件と関係ないことなんです。水をどのくらいたんぼへ張るかの問題です。そういうことで違いがあることはわかります。ところが、そういうことが常識化してきたならば、この保有米の中に検出されるカドミウムが減るはずじゃないですか。減るはずです。それが三倍にも四倍にもふえているのはおかしくありませんかと、これを尋ねているのです。
  76. 森整治

    政府委員(森整治君) 数字というか、どことどこの差かということになりますと、どういう影響かということになりますと、もう少し時間をいただきまして調べさせていただきませんと、明確なお答えができないわけでございますが、私申しましたのは、一般論としてそういうことが考えられるということを申し上げたわけでございまして、資料をいただきましたわけでございますから、さっそくよく調査をいたしまして、どうしてこういうことになっておるかということは、若干時間をいただきまして再調査をさせていただきたいと思います。
  77. 小平芳平

    ○小平芳平君 若干時間がかかることは当然だと思いますので、けっこうですが、三木長官、学問的とか専門的とかいいますけれども、たんぼへ水を張るか張らないか、これはそんな学問や専門の問題じゃなくて、私も農家ですから、そういう程度のことはわかるわけです。したがって、いま局長が答弁されましたように、要観察地域というものはそう全国全部でなくて限定されているわけですから、ひとつ安心できるように再調査するとか再検討するとか、そういうふうに大至急やっていただきたいと思います。いかがですか。
  78. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 要観察地域は、言われるように限られておる地域ですから、いま局長のほうからも、そのデータについては一ぺん詳しく調べてみようということですから、これに対しては絶えずいろんなデータなども踏まえて、一般の人に不安を与えないような監視を続けることにいたします。
  79. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、安中地区ではすでに土壌汚染防止法による客土といいますか、土壌の入れかえ作業が始まっておりますが、一PPM以内は安全だ、厚生省は食品衛生上安全だと、これ以上に何ら答えられないでしょうが、たとえば〇・九とか〇・七というようなお米が、これは先ほど来環境庁が御答弁なさっているように、保有米は〇・九〇という分析数値がいま出た、しかし今度やったら一PPMを越すかもしれなければ、〇・九〇より下がるかもしれないわけでしょう。したがって、一PPM以上の土地が土壌汚染防止法の対象地域であって、一以内は何ら差しつかえないということだけで通していくのも考えものじゃありませんか。その点はいかがですか。
  80. 森整治

    政府委員(森整治君) 私ども扱っておりますのは、一PPM出ました土地につきましては、そこはともかく改良していくということと、それからその周辺でやはりその土性等から見て、いまおっしゃいましたように一PPMいかなくても、おそれがある地域につきましても土壌改良を実施していく、こういう考え方で対応をしておるわけでございます。たまたま出た、それからまた低い数値が出たということは、確かにいろいろな条件からそういうこともあろうかと思いますが、一回だけのデータでなしに、いろいろ県も単独で再調査といいますか、そういう調査も進めておりますし、継続してそういう地域についての改良の可否等を慎重に検討してまいる。簡単に申しますと、継続して調査をしながら対策地域の確定をしていく、こういうふうに基本的に指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  81. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、そういう趣旨からいえば、橋本審議官は〇・四の意味をさっきから盛んに述べられますが、〇・四PPM以上の分析数値が出たような地域は、一応改良すべきかどうか、客土すべきかどうかということを検討していただきたい。自然汚染だけで〇・四を越すことはないということは、かねがね厚生省時代から述べておられることですので、〇・四PPMを越すという場合には人工汚染があると考えられるということでしょう。したがって、〇・四PPM以上の米のとれるたんぼは、一応客土すべきかどうかということを検討すべきだ。いかがですか。
  82. 森整治

    政府委員(森整治君) 程度の問題があろうかと思いますけれども、必ずしも一PPM未満でございましても、やはりその周辺等の事情からしまして、おそれのある地域につきましては引き続き継続して調査をし、場合によりましては細密調査を行なうということで、先生指摘の趣旨を生かしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  83. 小平芳平

    ○小平芳平君 一番米のカドミウム汚染についての論争点といいますか、この数年来の懸案は、〇・四から一PPM間の米ですね、これをどう判断するかということですが、いま全国に農林省ではどのぐらいの、最近の新聞では準汚染米となっていますが、準汚染米をどのくらいかかえていて、それが年度別に出ますか。そして、それはどのぐらいの費用がかかりますか。
  84. 虎谷秀夫

    説明員(虎谷秀夫君) お答えいたします。  四十七年産米までの、〇・四PPM以上で一PPM未満の米は、全体で約四万トンでございます。  それから年度別でございますが………。
  85. 小平芳平

    ○小平芳平君 年度別はけっこうですので、その四万トンをこれからどうされるおつもりですか。
  86. 虎谷秀夫

    説明員(虎谷秀夫君) 食糧庁といたしましては、厚生省から先ほど御答弁がありましたように、健康上有害な米は一PPM以上の米であるというふうに認識をいたしております。ただ、食糧庁といたしまして、〇・四PPM以上一PPM未満の米を配給に回さないように従来措置をしてまいりました理由は、健康とか安全とかいう問題ではなくて、実際問題として消費者感情上、配給の拒絶だとかそういったことが当時予想されましたので、そういった事態を防ぎまして、円滑な配給を確保するためにそういう措置を従来とってまいった次第でございます。したがいまして、食糧庁といたしましては一以上の米につきましては、これははっきり食用不適な米でございますので、食用じゃない接着のり、染色のりといったような工業用ののりに売却をするという方針で、手持ちのものにつきましてもそういうことを進めておりますが、一未満の米につきましては、凍結したままに現在なっております。  しかしながら最近、一未満の米を配給に回さない、凍結をしておくということ自体につきまして、健康上問題がない米をどうして配給に回わさないで凍結しておくのかということにつきまして、いろんな御意見がございますので、また、このほど環境庁長官の御発言、御連絡もございましたので、早急にその措置につきましても研究をいたしたいというように考えております。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 三木長官は、どういう御趣旨で連絡をなさったのですか。
  88. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御承知のように、国会でも質問があったのです。現地でも、一体厚生省はいま食品衛生課長が言っておるように、法律でもって食品衛生法の第七条で規格をきめたわけですね、一PPM以上の米は健康に被害があるおそれがあるということで、こうやって配給も買い上げもしないというわけですが、それ以下の米がもし健康に被害のおそれがあるというなら、一PPMというのはおかしいじゃないか、こういうことになるわけなんですね。基準を守っておるのなら、配給もしないで倉庫にだけ入れておかんならぬような米ならば、一PPMという食品衛生法における規格はおかしいではないか、こういう質問が富山県へ行ったときにありまして、これはやはり答える責任があったわけですから、私もそういうことに対しては、食糧庁に対して研究をしてみなさいと。  しかし、やれと言ったのじゃないんですよ。これはすぐに配給に回せと私は言ったのじゃない。こういう一つの疑問には答える責任がありますから、だから研究をしなさいと。しかし、事は一つの国民心理にも大きな影響がある問題だから、慎重を期さなければならぬ。しかし研究はしてもらいたいということを食糧庁長官に、帰ってきて月曜日に私のほうの局長を通じて申し入れをしたわけでございます。これはやはり十分検討を加えて、国民の疑問に答えるだけの答弁をできるようにする責任があると私は考えたから言ったわけでございます。
  89. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと三木長官は、白米で〇・九PPM、玄米で一PPMというふうに決定したときに、新聞の社説ですが、「手ぬるいカドミウム対策」、もう一方の社説は「カドミウム対策の手をゆるめるな」、こうした論調が巻き起こったということ、それからそのあくる日くらいに、四十五年七月九日になりますか、ここの参議院公害対策特別委員会に岡山大学の小林教授が出席をされて、そしてカドミウム汚染米は新基準で安心できるかどうか、小林教授は少なくとも倍に強めるべきだ、つまり〇・四に戻せということを主張しておられたのですが、そういうことを御承知の上でそういうことをおっしゃるのですか。
  90. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も、知っておることは昭和四十五年にこういう規格を出したということで、委員会でどういう質疑があったかということは私は知らないのですよ。ただ、そういういま私が申したような疑問が言われてみれば、答えなければならんですね。そういうことで、そういうカドミの規格をきめたときに、それは甘過ぎるのじゃないかとか、もっときびしくせよとか、いろんな議論委員会であったということは私は知りませんでした。そういうふうなことをいろいろ知って、踏まえての発言ではないのです。しかし、いまのような質問を受ければ、それはやっぱり研究をして、これに対して回答を食糧庁は与える責任がある、こういうことで答えたまででございます。
  91. 小平芳平

    ○小平芳平君 では長官は、そういう新聞の社説等でも、カドミウム対策の手をゆるめてはいけないとか、厚生省の発表は手ぬるいとかいうことは御承知なかったと言うのですが、じゃ研究すると言われますが、政府はどこで研究されるのですか。いつ結論を出されますか。
  92. 虎谷秀夫

    説明員(虎谷秀夫君) 一未満の米を現在配給に回さない措置をとっておりますが、それは先ほど申し上げましたように、安全とか健康の見地ではなくて、むしろ円滑な配給を確保するという見地でもってそういう措置をとっておるわけでございますので、どのようにやるかは、結局どういう形でその問題に回答を出すかは、主としては食糧庁のほうで結論を出さざるを得ないのではないかというふうに考えております。  私のほうとしましても、ただ健康とか安全とかには問題なくても、現実に消費者の方々に非常に不安があるとか、配給拒絶をされるとかいう実態がございますと、なかなか配給ということに支障があり、混乱を起こしますので、それは私どもとしても非常に職責を全うするゆえんではございませんので、その辺につきまして、どういった形でまた方法でそういった点を円滑に解決していけるかということを、できるだけ早く研究をしてまいりたいということでございます。
  93. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは、需給課長のそういう行き方では私は困ると思うのですがね。ということは、先ほど来述べますように、厚生省が玄米で一PPMときめたときに、それでほんとうにだいじょうぶなのかという学者の意見もあるし、また新聞その他の意見も先ほど来るる述べているとおりなんですから。ところが、食糧庁としては一未満の米は安全だ、要するに流通過程で混乱が起きさえしなければ食べさせてかまわないんだと、頭からそういうことで、いかにして一未満の米を消費者に食わせようかということだけに努力すればいいという問題じゃないと思いますが、いかがですか。
  94. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 小平さんに私からちょっとお答えしておいたほうが、御理解の上においてそのほうがベターだと思います。  厚生省で、いま専門家の中にも、小平さんの言われたようにちょっと甘過ぎるのじゃないかという意見もあって、そしてカドミの基準については検討を加えておるようです。そういうこともむろんにらみ合わせなければ、ただ米の需給関係ばかりだけでは、この問題の結論は出せない問題であるということをつけ加えておきます。
  95. 小平芳平

    ○小平芳平君 法律上は、制度上は食品安全の問題だ、あるいは米の配給の問題だということになりますと、環境庁は直接関係ないことになるでしょう、食品衛生法とかそういうことになりますと厚生省になりましょうが、ひとつ三木長官、長官がせっかく富山で発言されたことでもありますので、また、きょうの委員会で私が最初指摘しましたことは、ほとんど〇・四を越すところへ入るわけです。つまり、要観察地域といういわゆる汚染地域で十六検体私たちが分析を依頼した結果は、その十六検体の平均が〇・四一PPMとなって、いわゆる〇・四を越えるわけです。おそらくこの米が食糧庁へ入っていったとしたら、食糧庁はこれらの保有米は全部凍結ということになったかもしれないわけです。そういう深刻な事態にあることを踏まえて結論を出すようにしていただきたい。いかがですか。
  96. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、この問題は単に米の需給関係ばかりでなしに、いま言った人間の健康にも重大な関係ありますから、いろいろなそういうふうな材料を踏まえて決定をしなければならぬ問題だと考えております。
  97. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは安中の米の点はそれまでにしまして、通産省に伺いますが、東邦亜鉛という企業は公害処理が全く進んでいないということです。安中では確かに土壌改良が一部進められようとしておりますが、対馬では、御承知のように県が土地を買い上げようとしたが、とてもそんな汚染田全部を農家が手放すわけはない。一体この会社は、ほんとうに公害に対する被害救済を本気になってやるのかどうか。きょうは私は対馬等の具体的な問題については入りませんが、あまり健康被害補償法にはずれるから入りませんが、一言伺いたい点は、ほんとうにこの被害者救済を本気になってやるつもりなのかどうか。  聞くところによりますと、社長はかわって、またかわって、今度は何か商社関係の人が新しく就任するとかというふうなことも聞いておりますが、そういう公害被害救済についてどう考えているかということは、これは企業の問題ですが、通産省はどのように判断しておられるか、また指導していかれますか。
  98. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。  鉱山企業に限らず、企業は自分の原因に基づきます公害につきましては、事前防除あるいは操業中の防除、さらに事後におきます補償等につきまして万全の責任をとるべきものでございます。私ども鉱山保安法によりまして、そういう趣旨で従来とも万全の措置をとるべく強力に指導監督してまいっております。にもかかわりませず、御指摘の東邦亜鉛につきましては、昭和四十五年の無認可設備の使用というふうな問題を契機にいたしまして、さらに去る三月八日、問題が指摘されました対州鉱業所におきます問題等で、会社自体の体質に御指摘のような問題があるということが、あらためて大きくクローズアップされたわけでございます。私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような趣旨で、企業としましてはやはり自己の責任に属する部分につきましては、事前に、操業中に、あるいは事後におきまして積極的に万全の責任を果たしていくべきだという指導を強力に、当東邦亜鉛のケースにつきましても実施いたしてまいったわけでございます。  そういった指導と企業内部におきましての体質の改善、特に公害に対します認識の変化がかなり見られておりまして、すでに問題が起きました当時におきまして、社長は別といたしまして、二人の専務はそれぞれ外部からきた者でございます。さらに四月の十日に、任期を待たずして小西社長が突如責任をとって辞任する、そういうことによってこの東邦亜鉛が社会に対してお詫びし、かつこの体質の中に不十分なところが多々残っておりますところを、新しい陣容でやってもらいたいというような措置で、こういった社長突如の退任ということになったわけでございます。   〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕  さらに、ただいま先生から御指摘のように、そういうところは了解できるといたしましても、あと社長になる、責任者になる者のやはり資質あるいは公害に対する認識、責任観念が重大な問題だと考えております。五月の初めに会社のほうから私どものほうに内々話がございまして、ただいま御指摘の後任社長につきまして、大株主及び主要取引先が相談いたしまして、それで推薦された数名の中から、現幹部が相談の結果、肥谷英男さん(六十七歳)という方に社長をお引き受け願うということで内定いたしましたのでと、こういう届け出を事実上受けたわけでございます。経歴を調べてみますと、二十二年間伊藤忠におつとめでございました。その後、北洋水産のほうに十一年間おつとめでございました。  それで、私ども監督に万全を期する立場からいたしますと、伊藤忠という会社は、先般国会の物価問題等で御指摘のような経緯がございますので、われわれといたしましては、判断として、あまり好ましい人とは思えないというふうなことははっきり申し上げております。ただし、その後十一年間北洋水産の再建に当たって、業績が顕著だとも聞いております。本来社長人事に私どものほうが、ああだこうだと容喙するのは筋でございませんので、われわれとしては、そういった伊藤忠というところで二十二年間お働きになった人であるし、必ずしもそれをもって不適任という断定を私どもいたすのは、きわめて早計な、あるいは常識を越えた越権にもなろうかと思って、そこは差し控えておりますけれども、相当な危惧を持っておることも事実でございますので、東邦亜鉛の全事業所につきましての監督につきまして、従来以上に厳正に実行していく決意でおります。そういった趣旨は、現幹部に対しても十分伝えてございます。
  99. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省としても会社の人事に対しまして一々、この人は適任であるとかないとか言うことは筋違いでしょうし、また、こうした国会の場で私がそういうことを言うことはなおさら筋違いであって、私はそうした一企業の人事にどうこうという趣旨で述べておるのではないことは、先ほど来お断わりしておるとおりです。  私が申し上げたい趣旨は、要するに、確かに通産省へ東邦亜鉛の社長以下幹部が呼ばれて、特に局長からはきびしい注意を受けたということを聞きました。ところが、そのとき局長から注意を受けたその社長はくるっとやめてしまう。専務がまたやめてしまう。また今度、新しい人を呼んで通産省は注意を与えなくちゃいけない。という上に、伊藤忠についてはいまお話がございましたが、そうした商社が公害対策についてどういう考えを持っているか、被害者としましてはそれが知りたいわけなんです。  ですから、伊藤忠商事に二十二年間おられたということ、しかしその後何年もたっているということで、伊藤忠の体質がそのまま肥谷さんの体質ということではないでしょう。ないでしょうが、やはり資本のバックというものがあるのじゃないですか。そういう点から考えて、被害者としては、そんなに社長がすぐかわる、しかも今度は商社をバックにして乗り込んでくる、そこに不安があるわけですね。ですから局長としては、好ましい人事じゃない、しかしそれ以上どうしようもないということですが、公害はもうすでに何十年にわたって対馬にしろ安中にしろやってきたことですから、ひとつ厳重に収拾をつけるように、特に対馬の場合などはもう時間を争うような事態になることは目に見えているわけですから、していただきたい。いかがですか。
  100. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) ただいま小平先生の御指摘のとおりでございまして、商社に育てられた方の商社的な視角と公害問題にチャレンジする資質とが、かなり精神面で、あるいは行動基準として異質のものであるかと思います。したがいまして、こういった点に特に留意いたしまして、ただいまも述べましたように、一そうの厳格な監督指導とともに、あわせまして、ただいま御指摘になりましたこの補償問題等々につきまして、幹部がかわったから被害者等々関係の方々に、時期がおくれるとかあるいはよりトラブルになるというふうな支障を来たさないように、誠意を持って当たるように、そのためには特に対馬の際に現幹部と地元の方々との間で確認されておりますように、何よりも誠意を持って当たると同時に、社長の委任を受けた責任者がその折衝に当たる、それから、起こってくる将来の公害に対しても、万が一起こるような場合には同様に誠意を持って責任者が当たるというふうな趣旨につきましては、新幹部もそのまま一〇〇%継承して関係の方々と誠意のある交渉を続けていくよう、厳正に指導してまいる所存でございます。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 以上で東邦亜鉛は終わりまして、時間の関係上あと二、三点についてお尋ねをいたしたいと思います。  兵庫県の生野鉱山周辺、またその流域のイタイイタイ病患者が発見されたという萩野先生等の報告、これに対して環境庁は県に再調査をさせるという答弁で予算委員会は終わっておりましたが、その後どのように進展しておりますか。
  102. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 兵庫県の生野の問題につきましては、大臣が委員会において約束されましたことに基づきまして、去る四月二十二日から二十三日にかけまして私が大臣の命を受けて現地に参りまして、現地におきまして、いろいろ公害問題につきましての組織がございます、その組織の方々の御意見を承ったり、あるいは生野の町の公害対策委員長の方の御意見を聞いたりいたしました。また患者さんの一部の方の声も聞くことができました。それ以降、鉱山及び問題の地域、また問題とされた方々のお家に全部回るとともに、主治医の柴田医師のところにも参りましていろいろ説明も聞き、一部の資料もいただいてまいったわけでございます。  本ケースにつきましては、現在青田さんにつきまして解剖を進められておりまして、本来はもう少し早く結果が出るはずでございましたが、まだその結果が出ないということで、伝え聞くところによれば、六月の上旬には出るのではないかということを聞いておりますが、その解剖の結果に基づいて兵庫県が県の健康診査会を開いて検討をして、そして、その結果を今度は国の鑑別診断研究班のほうにあげていただくというような手順で現在進めております。県当局に対しましては、大臣の国会における御発言を十分説明いたしまして、本件につきましてはぜひ早急に県で検討をして、そしてその結果を国の鑑別診断にあげてくれるように、厳重にお願いをして帰ってまいったところでございます。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっとおくれてきていますね。もう少し早く進めるような予定だったようですが、ちょっとおくれておりますが、そういうように進んでいることは一応了承いたします。  これは、けさの朝日新聞に報道されております秋田県小坂鉱山周辺、ここでカドミウム患者が発見されたという東北大学の研究グループの結論、それからもう一つは、カドミウムと遺伝に対する研究は国立遺伝学研究所でかねがねやっておられたようですが、この二点について環境庁はどのように考えておられますか。
  104. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) まず最初の御質問の秋田のケースでございますが、秋田県につきましては、昭和四十五年度より鉱山の地域における健康調査を実施をいたしまして、四十八年までずっと健康調査を続けてきております。その最終の集計は、四十八年のがいずれまとまれば私どものほうにくるということで、県当局もつい先日環境庁のほうに参りまして、そのことの連絡がございました。まだ現在の段階では最終の成績が出ておりません。  本日新聞に載っておりましたケースにつきましては、県とは別に東北大学の医学部の第二内科の斎藤先生が研究をされたケースでございまして、本日のニュースにあった件につきましては、去る三月の十六日でございましたか、日本公衆衛生協会において行なわれましたカドミウム研究班で発表されたものにつきましての事実でございます。  斎藤先生が四十七年に第一回の検診を七十五人の人にやられ、次いでまた四十七年の——最初のは四十七年の一月でございます。第二回目は四十七年の十月に九十六人の方を検査をされまして、本日七人と書かれているのはどの数字があるのか、ちょっと私どもはっきりつかみかねますが、その当時の研究報告書から見れば、第一回の検診から四人の人について多発性近位尿細管障害を発見をした、第二回目のときに四人ということでございまして、人の重複があるかどうかはわかりません。  そういうようなケースでございまして、この東北大学の斎藤先生の研究は、カドミウム研究班の発表会の席上非常に高く評価された研究でございまして、私どもはこの秋田県のやっている研究結果もできるだけ早くまとめていただきたいと思いますし、また斎藤先生のこの研究結果と、従来のカドミウム研究班のじんに関しますいろいろ研究蓄積を重ねまして、今週にもカドミウムじん症ということで一体考えられるかどうかということにつきましての会議を持ちまして、そして今後どう進めるかということについて検討いたしたいということを考えておるところでございます。  二番目の点の広島大学の研究報告でございますが、この広島大学の研究報告は、私ども新聞で初めて見まして、詳細な資料は入手をいたしておりません。ただ、三月十六日の日本公衆衛生協会のカドミウム研究班の席上におきまして、研究班のほうから招待をいたしました金沢大学の医学部と国立遺伝学研究所の共同研究によりますイタイイタイ病患者の染色体についての研究発表というものがございまして、この問題もきわめて重要な問題であるということで、この広島大学の研究結果につきましても早急に私ども連絡をして入手いたし、今後のカドミウムの研究班におきまして慎重に検討してまいりたいというぐあいに思っております。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 最初からカドミウムの米の〇・四ないし一というようなこと、そういう点からして遺伝のところまで来たわけですが、それでまだいろいろ魚による実験等、私は問題提起したいことがございますが、それはまた別の機会といたします。  この健康被害補償法の政令、これは政令を国会委員会で問題にすること自体おかしいといえばおかしいですが、御承知のようないきさつで政令委任がたくさんあったわけです。やがて結論がもう出なくてはならない段階だと思いますが、いかがですか。
  106. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 法律を御審議いただきました場合に政令事項に譲りましたゆえんのものも、その当時結論的なものを法律に盛り込めない事情があったわけでございます。と申しますのは、各種の調査を四十八年度実施してまいったわけでございまして、その結果を見なければ政令ができないという特殊の事情がありまして、非常に多くの政令事項が法律の上で規定されたわけでございます。  私どもは四十八年度の調査、やっといま結果がまいりまして、その取りまとめをやっておる段階でございますので、この二十日に、中央公害対策審議会に環境保健部会が置かれましたものの第一回会合を開いたところでございまして、環境庁長官から関係事項の諮問も行なわれているわけでございます。したがいまして、この調査事項の取りまとめを待って、審議会で御審議をいただいた上で政令を具体的にきめてまいる、こういう段取りになっておるわけでございます。もちろん、中公審の審議と並行しまして、政令を法律的な面でどういうぐあいに書いていくかというようなことはできますが、中身の大部分のものは中公審の審議を経ました上できめなければならぬ、こういうものでございますので、もうしばらく時間がかかる、こういう状況でございます。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 たとえば、汚染負荷量賦課金自動車重量税引き当て分の配分比率というようなことも検討されていると思うのですが、今回もそういう点ははっきりしないまま一部改正しようという趣旨ですか。
  108. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 汚染負荷量賦課金自動車重量税配分の比率ということにつきましては政令で定めるということになっておりますが、この点につきましては、私ども四十八年時点におきます燃料消費を、固定発生源及び移動発生源消費実績に合わせまして排出係数等を掛けまして、算出をいたして出したものを基調にして一応予算要求はいたしておりますが、その問題につきましての資料等そろえまして、中央公害対策審議会で御審議を願って、最終的にきまるというような手順になったわけでございます。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 衆議院におきましてもいろいろ論議された経過を私も会議録で読んでみますと、どうして自動車重量税引き当て分にするか、ほかにもまだ考え方があるではないかという点をしきりと問題提起されておりましたが、やっぱりそうは言われても重量税が一番いいわけですか。
  110. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 私ども重量税が一番いい方法であるというぐあいに考えておるわけではございません。ただ基本的に、どういうもので移動発生源にかかるものを考えていくかという議論をいろいろやりまして、最終的には中央公害対策審議会の中の費用負担専門委員会費用負担という見地から議論していただきました場合におきまして、やはりその検討には、もっとOECD議論されておりますチャージの問題との関連を考えていくべきであるということでございまして、したがって当面どういう形で現実的な、しかも徴収等の効率性も考えた上で現実的な案を選ぶかということになりますと、四月の段階中央公害対策審議会から答申をいただきましたものの中にあります重量税の引き当てというのが一番現実的であるということで、二年間の暫定措置として今回改正案を提案している次第でございます。
  111. 小平芳平

    ○小平芳平君 二年間の暫定措置ということについてもいろいろ議論がなされておりますが、二年たったらどうするというところまでは、まだ全然見当がつきませんか。
  112. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) それは基本的な議論としまして、これから私ども議論してまいりたいと思っております。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから大気汚染について、光化学スモッグ対策ですが、先ほども工藤委員から問題が出されておりましたが、いろいろ自動車の排気ガスがおもな原因だというふうにも言われておりながら、ますます全国的に深刻化する一方ということなんですが、いかがですか、その点の究明、対策は。
  114. 春日斉

    政府委員春日斉君) 光化学スモッグの原因究明の研究はどういうふうに行なわれているかというお尋ねだと思うわけでございますが、私ども四十八年度、一番中心に行ないました調査は、東京地域と大阪湾地域で行ないました調査、これが代表だろうと思うのですが、その中で、まず大気調査でございますけれども、気流とかあるいは大気安定度、こういった気象条件と光化学スモッグに関連する大気汚染物質の遺留、拡散、こういったこと、あるいは化学的にどういうふうに変化するかという調査を私ども中心で行ないました。かなり膨大な調査がいままとまりつつあるわけでございます。  二番目には、やはりスモッグチャンバーの調査も行ないまして、スモッグチャンバーを東京湾並びに大阪湾に派遣いたしまして、チャンバーに現地の空気を取り入れて人工的にそれに紫外線を当てる、そして光化学反応を起こして化学的変化を測定するということをいたしております。  それから三番目が、健康影響調査と申しますか、光化学スモッグに関連する物質と住民の健康被害の関係を疫学的に調査しておるわけでございまして、こういった調査を通じまして、光化学オキシダントの発生がかなり広域的であるということ、それからその発生がその日の気象状況、窒素酸化物、炭化水素等の要因物質の濃度に非常に関連するということ、目の刺激といった粘膜の刺激症状というものが実は光化学オキシダント濃度と非常に関係が深いこと、従来から考えられておった以上に深いというようなことがだんだんわかりつつあるわけでございます。さらに四十九年度は、大阪湾地域でこれの究明をさらに引き続いて行なってまいるわけでございます。  さらに健康被害の問題は、ことし並びに昨年幸いにしてほとんど見られませんでしたけれども、いわゆる重症被害というものとの関連を、これは東京湾、大阪湾地域の中学校それぞれ二校を例にいたしまして、そのときの大気汚染物質を詳細に測定すると同時に、生徒の健康を常時監視する、そしてそういった重症被害の究明に当たりたい、かように考えております。なお同時に、植物影響調査というものを、東京湾、大阪湾地域に加えまして、コントロールとして長野県を選びまして、指標植物を通じての大気汚染の影響を観察いたしたいと思っておるわけでございます。  ただ、先生が御指摘のように、自動車の主犯説いかがかという御指摘でございますが、これは確かに自動車というものが非常に大きな影響を有していることは当然なことでございますが、この点につきましては、本年度も引き続きまして検討を重ねてまいりたいと思います。ただ、自動車から排出されます窒素酸化物あるいは炭化水素というものが、単にそのまま光化学オキシダントに排出量そのものが影響するかどうか、これは問題があるわけでございます。これは拡散の問題等々とも関連するわけで、慎重に結論を下さねばならぬと思いますが、決して罪軽からざるものがあるということは当然だろうと考えております。
  115. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは時間もまいりますので、簡単に最後にお尋ねして終わります。  橋本審議官から、以前に光化学スモッグの被害につきまして、重症の人は公害健康被害者として救済の対象にする、すべく研究中というようなお答えだったかと思いますが、今回の補償法の対象にすることができるかできないか、まだ研究中か、あるいはそれらの見通しについてお尋ねしたいのが一つ。  それから三木長官に。いろいろ春日局長説明を聞いているとしろうとにはちょっとむずかしいのですが、この前の土曜日に、都内あるいはその周辺にたくさんの被害者発生したという報道が行なわれましたが、私もあるところで見ていたのです。見ていたというか、偶然そこに出くわしたわけですが、芝生で遊んでいる子供が急にせきをする、目が痛い、家の中へ走り込んでいく。軽い人は、しばらく一眠りすればなおるという人もいるそうですが、現実にそういう姿を見て、これは何とかしなければならない、学問的にはそれはいろいろ原因究明、あるいは監視体制、あるいは自動車が主犯であるかないか、いろいろあるのでしょうが、そうした学問的にはまだわからないことが少々あっても、何とか減らす努力をすべきだ、去年より今年ふえたというのじゃなくて、今年は少し減った、来年もこれなら減りそうだというふうな体制づくりができないものかどうか、そういう努力がいまこそ最も必要だと痛感いたしました。この点についての長官の御見解を承りたい。
  116. 春日斉

    政府委員春日斉君) 長官の御答弁の前に、事務的にちょっとお答え申し上げます。  先生指摘のとおり、確かに昨年に比べまして光化学スモッグの被害がふえているということは事実でございまして、私ども原因物質一つである窒素酸化物につきましては、四十八年度に環境基準を設定して、固定発生源排出規制を実施したわけでございますが、その強化を現在検討中でございます。早急に行なうつもりでございます。  それからもう一つ原因物質である炭化水素の問題でございますが、年度内に環境基準を設定いたすつもりでございます。現在これは中公審に諮問しているところでございます。また、炭化水素の発生源対策として、石油タンク等における炭化水素の漏出防止の措置をとらせて行政指導で行なっておりますが、同時に、炭化水素類の発生源対策の調査を早急に実施することといたしております。  それから自動車の問題ですが、これは御承知のとおり、五十年度規制で炭化水素九〇%、窒素酸化物四五%低減させることを告示いたしておりますが、本年は九月から窒素酸化物の低減に重点を置いた、いわゆるディーゼル新車の規制を行なうことといたしております。それから来年の一月から、使用過程車の炭化水素の規制を実施することにいたしております。もちろん警察におきましても、駐車禁止区域の拡大とか歩行者道路の拡大、都市総合交通対策の推進、こういったことを推進して、いわゆる自動車交通総量を削減して自動車排ガスの減少をはかるというところまでいこうと、警察庁のほうでも検討をしておられるようでございます。
  117. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 大臣のお答えのあります前に事務的に、最初先生の御質問の光化学スモッグの重症例ということにつきましてお答え申し上げます。  前にお答えいたしましたように、私どもは一過性の目や鼻の刺激やあるいは苦しいということで、すぐあとなくなれば消えてしまうのは、これは対象とすることはできないというぐあいに考えておりますが、立正高校や石神井というようなところで見られたような非常に重篤な症状というものにつきましては、これは将来救済法としても問題にしなければならないという考えを持って私どもは取り組んでおります。  その場合に、どういうぐあいに光化学スモッグの問題とこの病気とを結びつけられるかということにつきましては、大気局の影響調査が学童やあるいは交通警官あるいは郵便関係の人ということにやられておりますのに並行いたしまして、いろいろの事件の事例調査というのがございますので、この事件の起こった場合の調査というものをもう少し明らかにしなければ、ちょっとこれは手がつかないという状態でございまして、正直なところ、ことしの夏から今度の制度からすぐさま踏み切れるとは、ちょっといま申し上げられません。ただ、非常に関心を持っておりまして、いまの法律の体系の中の認定とか、そういう問題としてどういうぐあいに扱えるかということ等も含めながら検討を進めてまいりたいということで現在しておりますので、御承知願いたいと思います。
  118. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も、夏が来ますと毎年光化学スモッグによる被害が繰り返される、しかも最近は地域が拡大する傾向がある。説明を聞きますと、その原因物質がNOXであるとか、HCとか、説明はわかるのですが、何とかならないものであろうか。毎年学童などが被害を受けるわけです。この間も日米の環境問題の閣僚会議があったときに、これは日米で、この問題は日本でも困っておるから、ひとつお互いに共同研究ということで、何か急速な対策というものができるように共同研究を進めようじゃないかと言ったわけですが、これはまことにわれわれとしても心を痛めておるわけです。  しかし、この問題というものは、原因物質に対してのいろいろな環境基準とか規制の強化とか、そういうものを全然無視して何とかならぬかといって解決できる問題でないわけでありますから、これはいよいよのときには操業の短縮とか交通規制とかいうようなこともあるわけですが、しかしそういう方法はずっと続けるわけにはいかぬですね、緊急事態だけですから。やはり平常時においてこの問題を解決するために、今後あらゆる努力を試みたいと思っておるわけでございます。こうやったらいいというお答えが出ないことをまことに残念だと思うのですが、われわれとしても非常に何かこう、もどかしく思っておる問題でございます。
  119. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 午前中から、またただいま小平委員の御質問でたいがい質問が出たのでありますが、いま局長が御答弁された四十八年から東京湾、大阪湾を中心に光化学スモッグの実態調査をやった。で、その発生の機構なり光化学との症状の関係について、ある程度実態が掌握できたのか、できないのか。進んではおるということですが、大気汚染の遺留、拡散との関係とかそういうものが、もう判定ができるまで成功しておるのかどうか。この点をひとつお聞きしたい。
  120. 春日斉

    政府委員春日斉君) どの程度まで光化学スモッグの実態究明に成功したかというお尋ねでございますが、四十九年度も大阪湾を中心といたしまして調査を継続中でございまして、あくまで中間的なものでございますが、資料といたしましては膨大な中間報告が寄せられておりまして、その分析中でございます。  一、二御報告申し上げますと、たとえば東京地域におきます夏の日中の気象条件と申しますものは、大規模な気圧配置に伴う気流に加えまして、東京湾から放射状に海の風が吹き込んでまいりまして、その海の風の境界が気圧配置や時間に応じて位置を変えてまいります。これが要因物質の遺留とオキシダントの発生に非常な関係があるということがわかってまいったのでございます。ところが、大阪湾では必ずしもそうではございませんで、海の風がいろいろな谷に沿って進入することが多いために、オキシダントの発生期がこの気流と対応して起こってくる、こういう特殊性がございます。  それからスモッグチャンバーの調査によりまして、窒素酸化物と炭化水素の初期濃度と、オキシダントの最高濃度との関係が非常に定量的に明らかになってまいったのでございます。それから炭化水素にいろいろな成分がございますが、成分ごとに光化学反応性が定性的に把握されたというようなことがございます。そのほかいろいろございます。たとえばエアトレーサーや風船によります拡散の調査と光化学スモッグの発生状況でございますとか、いろいろございますし、また健康影響調査でも、学童のみならず、警察官あるいは郵便配達の方々というような職業集団を対象としたいろいろな疫学調査を行ないまして、目下その解析中でございますが、非常に光化学オキシダントとその症状との関連もはっきりしてまいっております。したがいまして、私どもはこういった調査を四十九年度も続けることによりまして、かなりの問題が究明できると思います。  御承知のとおり光化学オキシダントの被害、ことに重症被害についてはいろいろな仮説が学者から発表されておりますが、と申しますことは、それだけにまだいろいろ問題が残っているということであろうと思います。ガンの原因につきましていろいろな諸説があると同様に、光化学の重症被害の問題につきましてもいろいろな仮説があるということは、同じような意味でむずかしい問題であることを示しておるわけでございまして、私どもは十分この研究を続けてまいりたい。そして一刻も早く光化学の被害防止に役立たせたい、かように考えておる次第でございます。
  121. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 このオキシダントの発生の模様からいって、いま研究してある程度効果が出てきた、こう言われておるのですが、したがって、調査の結果は地域指定の基本になるような、それと結びつかなければいけないのじゃないかと思うのですが、説明を聞きますと、その過程における原因はある程度わかったように御説明しておられますから、それはそれとして、ほんとうに健康の被害となる大きな原因ですね、したがってそれをある程度指定的なものをやっぱり求めていかなければいかぬのじゃないかと思うのです。いまの調査の結果で、それも被害の基準として地域を指定することができるような段階まで来ておるのかどうか。それはその日によって違うとおっしゃるかもしれませんけれども、ある程度の掌握ができるのかできないのか、この点はどうですか。
  122. 春日斉

    政府委員春日斉君) ただいまの御質問にストレートにお答えできるかどうか、危惧いたしますが、たとえば、朝の六時から九時の間におきます大気における炭化水素の濃度というものが一定以上になりますと、その日の十二時前後に、対応して光化学オキシダントが高濃度にあらわれるということがわかりつつございます。したがいまして、そうだといたしますると、六時から九時の炭化水素の濃度によってあらかじめ予報ができる、あるいはまた交通規制というようなことその他も可能になるのではないか、こういうことで進めておるわけでございますが、残念ながら光化学オキシダントは、なにも十二時前後に出るものばかりではなくて、夕方に出るものもかなりあるわけであります。そういたしますると、炭化水素濃度との関連も、やはり十二時前後の炭化水素の濃度も問題になるということで、これは非常にむずかしい問題を含めておりますが、私どもは前日予報が何とか可能にならないか、あるいは六時間、あるいは三時間ぐらい前でもいいから、短期的な予報が可能にならないかということで進めております。これはそう長い期間かからなくても、必ずや私は予報体制というものがとれるようになると信じておるわけでございます。
  123. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 大臣、三時から御予定があるようですから、途中ですけれども一つだけお聞きしておきたい。  これは三月ごろでしたか、ある新聞の記事で見たことなんですけれども、この公害救済の指定で環境庁と東京都の意見の食い違いが出ておるのではないかというふうに私は見たのですが、東京都の主張は、認定患者から見ても大気汚染というものは臨海地域だけではないんだ、いま局長が御答弁なさったのも午前中と午後から変わってくると言われるように、まさにこれはむずかしい問題だと思いますが、したがって都としては全域を指定すべきだ、こういう意見を持っておられるのではないかと思うのです。環境庁としては、調査対象が二十三区全域だからといってそれは無理だ、対象となるのは太田区を中心とした臨海地域だけにこの際はしぼるべきだ、こういう意見ではないかと私は察したのですが、したがって今度の法案で、いろいろ各都道府県にある程度の費用その他の分配からいっても、自治体の全域に該当するとか、あるいは環境庁は一部分のこういう地域だけだとかいう問題で今後、東京都だけじゃなくて、あらゆる点にそういう問題が起こってくるのではないかと思うのです。  特に私は、今度の法案において移動発生源自動車重量税というものを賦課した限りにおいては、これはかりに四十万都市、五十万都市になりますと、かなりのやっぱり被害があると見ざるを得ないのです。東京ほどはないにしても、私は岐阜に住まいを持っておりますが、もう最近の自動車交通というものはたいへんですからね。だから、調査をすれば調査するほど、そういう面が起こってくるのではないか。しかも、その補償財源自動車重量税に求めたという点は、いやがおうでもそういう指定をせざるを得ない情勢に追い込まれていくのではないか、また、やるべきだろうと私も思いますが、こういう意見の相違に対して、環境庁としては、むろん長官の最後の決断も必要かと思いますけれども、非常にこれは隘路になる問題ではないかと、いまの局長の報告を聞いてもそういうふうに私は感ずるわけですが、この点だけ長官にひとつお聞きしておきたいと思います。
  124. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) いろいろ問題を指摘されたわけでございますが、東京都と私どものほうの考え方でございますが、これは当初、確かに東京都のほうも二十三区全体を対象として調査すべきだという意見もあったわけでございますが、具体的にいろいろ双方で検討いたしますと、やはり保健所におきます調査能力、あるいはいろいろな測定機器の問題、あるいは人員の問題、いろいろございまして、やはり一度にはできないことでございます。したがいまして、私どもとしましては都といろいろ相談しまして、ほかのいままで指定された地域に比較的近い条件のところとして緊急に調査をすべき九区を選びまして、現在調査をしているわけでございます。  これにつきまして、実は東京都のほうが一番、七つの全国の地域の中で報告もおそく持ってまいったわけでございまして、十分検討いたしておりませんし、まだ補足的なデータももらわなければ判断できない問題がたくさん残っておりますが、その判断をいたしました上で、次にその他の地区についてどういうぐあいに扱っていくか、今後の調査の方針を検討してまいりたい、四十九年度以後の問題として検討してまいりたい、こう思っておるわけでございます。  それからいま御指摘のございましたように、地域を指定するということはいろいろ問題点がございます。ただ、このような非特異的な疾患につきまして、第一種地域を指定するという考え方の中には、一つの割り切りをどうしても私ども求めているわけでございまして、どこの地域でも指定するということはできないわけでございまして、やはりそのほかの地域に比べまして、非常に高いレベルに有症率があるとか、汚染のレベルが高いとか、そういう地域を求めて指定していくわけでございますから、その点、わずかでもほかの地域汚染なりあるいは有症率の有意の差があれば指定するというような第二種地域中心としました場合と、第一種地域とは非常に違うわけでございますから、今後その地域指定の基準あるいはその地域指定をするための調査の、いわばどういうところを調査対象に取り入れていくかというような、のっとるべき判断の条件、こういうものにつきまして、中央公害対策審議会の中で御検討いただきました上で進めていきたいと思っているわけでございます。  それから自動車重量税を取り入れたということにつきまして、それがほかの地域指定全般をすべきものになるのじゃないかということでございますが、実はこれは私どもとしまして、従来から、むしろ考えとしましては、固定発生源ということを中心に考えてまいりましたし、地域指定もしてまいったわけでございます。現行法の運用としましてはそうやってまいりました。ただ、これを補償制度として考えます場合、やはり自動車を集団として取り上げました場合、その汚染に対する寄与度というものは無視できない。したがってこれに何らかの費用負担を社会的責任として持たすべきじゃないか、こういう考え方に立っているわけでございますので、重量税で求めていく以上地域の差がございませんから、あるいはそういうようなお考えもあるかと思いますが、やはりそこは、重量税をここに入れたから地域すべてに広げていくのだ、こういう考えでございませんで、やはり従来の固定発生源からの汚染物質と、プラスして移動発生源分も寄与しているわけでございまして、その分の負担を求めるのだ、そういうことで私どもは割り切ってまいりたいと、こう思っているわけでございます。
  125. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 特異的な疾患については地域指定というのは絶対的な意味はないのですけれども、非特異的な疾患については、これは因果関係、いろいろ原因もあるわけですから、どうしてもやっぱり一種のこういう法律の適用ということになると、割り切りはある程度せざるを得ない。しかし、それをあんまり極端に狭めることは立法の精神にも反しますから、そういった地域指定はするにしても、できるだけ地域を拡大するというような方向でこの問題を処理してまいりたいと思います。
  126. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 非常にむずかしい問題で答弁もしにくいと思いますけれども、私はこの点が一番大事だと思うのですよ。やっぱりその財源をどこに求めたかということが、この主体性になるわけですね、補償ですから。したがって、これは午前中もそういう意見が出ましたが、この法律を見て、拡大的な要求が出ても決して間違ってはいないんだ、要求が次々に出てきて補償という裏づけが法律でなされたんだ、こういうことになりますと、さっき言われたように調査能力がないからということでは、これは政府は済みませんね。いまは私もそれはないだろうと思います。しかし、調査能力がないからということである程度割り切ってやるんだといっても、なかなか困難性があるのじゃないかという気が私はしておるのです。そういう意味から見て、この問題は固定発生源をやっぱり中心に政府としては考えるべきではなかったか。いろいろ中公審のメモ的な結論も出たようでありますけれども、これを入れるということは無理があるのではないか、こういうふうに思います。  特に私が指摘したいのは、この財源そのものというものは、重量税という立場からいえば全然これは異なったものですね。そういうものをここに持ってきた。そして政府は昭和五十年の四月までに公害自動車規制をしよう、しかもこれは世界一の規制だといわれておりますね。一方ではそういう規制をしておきながら、暫定としてこういう法律ができて、そうして重量税財源として求めるということになると、理論的にも、幾ら暫定であっても矛盾があるのではないか、こう考えておるのですが、その矛盾しておるそういう点もやむを得ず入れたという点はどこにあるのか、それをひとつお聞かせいただきたい。
  127. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 私ども自動車の分を負担を求めるということが暫定的だとは考えておりません。これは特に窒素酸化物等は自動車から非常にたくさん出るわけでございますから、それがほかの硫黄酸化物等と複合的な影響を健康にもたらしているということであれば、その分の負担自動車に求めるということは当然である、こう考えているわけでございます。ただ、その負担方式につきましてはいろいろ議論があるところでございまして、そのどういう方式が一番いいかということはさらに今後検討するとしまして、二年間は重量税から引き当てるということで、今回の法律案を提案しているというぐあいに御了承いただきたいと思います。
  128. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 おっしゃるように自動車から出る公害もあることなんですから、それは決して無理ではない、暫定ではないとおっしゃるけれども、それなら、私がさっき言ったように五十年の四月の規制ですね、この規制がかりに成功したとしますか、いまだに簡単に研究がなされて成功したとは私は思っておりませんけれども、政府はそういう世界一の規制をしようという通達をしておるわけです。それに、あくまでも自動車公害というものはなくしていこう、これが大原則でしょう。かりにそれが成功するとするならば、自動車大気汚染的な公害というものは発生してないじゃないかという結論になるのじゃないですか。それでもやっぱり自動車の移動発生的なものにも賦課していくという考え方は、私は正しいとは思いませんが、それでもやっぱり正しいのですか。その点はどうですか、それとの関連性は。
  129. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) マスキー並み規制の問題だと思うわけでございますが、これはいろいろ急に自動車からの汚染物質排出が減るということにはまいらないファクターがあるわけでございます。一つは、マスキー並み規制は御承知のようにガソリン車を対象としているわけでございまして、たとえば窒素酸化物につきましては、ガソリン車からの半分ぐらいは軽油を使っている自動車から出るわけでございます。そういうことが一つ。それから当然自動車規制をいたしましても、これは相当の期間まだ古い車が走るわけでございますから、そういう面でも汚染の寄与が自動車からあるわけでございます。  私どもはそういうものを、汚染物質がどういうぐあいに出ているかということを中心にしまして、配分比率ということでいつでも割り振ってまいるわけでございますから、自動車からの寄与分が減れば、それに応じて自動車に対しまして賦課される分が減ってまいるということでございますから、その辺の運用を通じまして合理的な運用をやってまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  130. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうなりますと、中公審の専門委員会でも、チャージ制度を導入するためには、OECDにおける汚染者の負担原則の適用問題について、さらに審議状況等も考慮して今後十分なる検討を加えていく必要がある、こういうふうに言っておるわけですね。したがって、複合公害ということになってきますと、あながちこの自動車重量税から取るということが適切とは私は言えない、こういうふうに思うのです。それならば、これはもっく広い解釈の上に立って掘り下げていく必要があるのではないか、こういうふうに考えます。  たとえば自動車だけじゃなくて、あるいは航空機もその一つでしょうし、さらに新幹線等の騒音ですね、こういう問題、なお生業、財産被害の補償、こういう問題も広くやっぱり掌握しなくちゃならぬということに、むろんこれは財源をどこに求めようとも、それはやらなくちゃいかぬことでありますけれども、これはもう速急に急ぐ必要があるのじゃないかという観点に立たざるを得ないと思うのですが、そういう点はどうお考えになりますか。
  131. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) いろいろの点御指摘になりましたが、たとえば騒音の問題でございますが、これにつきましては、この補償法を前に立案して国会に提案します段階におきましても、いろいろ審議会レベルで議論になったところでございます。ただ騒音の問題につきましては、現在では主として生活妨害あるいは財産被害という考え方対策も講ぜられているところでございますし、その発生源が、大気汚染の場合と違いまして非常に明確であるということもございますから、むしろ防止対策被害者救済を一元的に進めるという方向で考えていきたい。特に騒音につきましては、特定し得る疾病というものがまだ十分明らかになってない段階でもございますので、そういうことで割り切ったわけでございます。  それから生業被害一般についてでございますが、これは被害の態様が非常にいろいろございまして、因果関係につきましてもいろいろ今後の究明に待つところが多いということで、各事業所管官庁が中心となりまして対策を進めていこうという考え方をとっているわけでございます。先般の水銀等の汚染による漁業者被害という場合には、特別措置法によりますつなぎ融資を農林省なりあるいは通産省の所管ということで講じたところでございます。また赤潮の問題あるいは原因不明の油濁の問題、こういうものにつきましても農林省を中心対策を進めてまいっておりますし、予算にも一応組まれ、関係の法律も提案されて成立しているような状況でございますので、関係省庁と力を合わせまして、生業被害全般について対策が十分とられますようにしてまいりたいと思っております。
  132. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いや、私の質問が悪かったかもしれませんけれども、この補償に対して移動性を適用したということになれば、むろんあなたのお考えでは、健康を害しておる疾病者を対象にして、家庭生活という、環境というものから考えたのだと、こうおっしゃいますけれども、騒音といえども、これは八十五ホン以上の騒音で睡眠不足のためにノイローゼ的な病気になっている人はたくさんおりますよ、私が知った人でも。これやっぱり公害ですよ。だから私は、そういうものも速急にやらなくちゃいかぬ状態の補償になるのではありませんかと。そういう面は別個だとあなたはおっしゃるけれども、それでは済まぬのではありませんか。その点どうですか。
  133. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 騒音と健康被害の点は後ほどまた別個に御答弁申し上げますが、私どもは現在の段階では、これは一応健康被害に直接つながりまして疾病を伴っているという形ではなかなか把握困難であるということで、切り離しているわけでございます。したがって、それに対するもし補償の体系をつくるとすれば、むしろ生活妨害ということを取り込んだ広い補償ということでないとむずかしいのじゃないかというぐあいに考えておりますので、先般提案して成立しております健康被害補償法は、あくまで公害によります健康被害ということをとらえまして、それが疾病として特定し得る場合に補償していこうという考えでございますから、その対象の中には取り上げなかった。それと並行しまして、おっしゃるようないろいろな補償制度をつくり上げていく方角で早急に検討すべきことは、私ども全く同感でございます。
  134. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 実態はどうなっておりますか。
  135. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 局長からお答えしましたものに若干補足いたしまして、騒音の健康被害という問題でございますが、先生例をおあげになりました八十五ホン以上の音にずっとさらされておればということにつきましては、これは労働衛生のほうでも大きな問題になっておりまして、その問題が航空機騒音の場合に、断続的にその音にさらされた場合ということがはたして健康障害としてつかまえ得るかどうかというところに、現在の研究も注がれておるわけでございます。いろいろ実験的にはあるのですが、なかなか現地の状況においてそれを把握することができないというところに私どもも非常にもどかしいものを感じますが、やはり健康被害と補償ということになりますと、もう少しその辺をはっきりしなければ前に踏み込めないというところがございます。そういうことで、先ほど局長の申しましたような、健康被害としての疾病ということよりも、生活妨害としてつかまえるという角度で現在のところ臨んでいるところでございます。  具体的な問題といたしまして、たとえば国鉄の新幹線の沿線の騒音の問題で、いま国鉄の中に医学関係の委員会を設けまして、これは補償ということばを使ってはおらなかったと思いますが、私相談受けましたときに、この因果関係は補償ということになるとむずかしいかもしれないが、少なくともあれだけの音と、それから振動とでものすごい妨害をしておるので、病気にかかっている人がなかなか療養ができないこと、これだけはもう間違いがない、やはりそういう点は救済としてちゃんとやるべきではないかということをアドバイスしたことがございますが、国鉄におきましてもそのような考え方を基調として、医学の委員会を設けまして、そして個別の患者さんから出てきたケースを審査をして、それに対して救済措置をとるということを発足したというように私どもは承知をいたしております。これは一つの実例でございます。
  136. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 最後にもう一つ確認しておきますが、先ほど質問の中で私触れたように、五十年の四月の規制措置をとっておられるという点は、いま政府が掌握されておる問題については可能な現状にあるのか、これはとても無理だとお考えになっておるのか。これは通産省かもしれませんけれども、御答弁願いたい。  それと同時に、これがほんとうに成功した、こういうことになれば、再度これは局長のほうにお聞きしたいのですが、この暫定法案というものの考え方というものは変わってくるんだ、いやそれは、先ほどあなたが説明されたように財源の面においては暫定とは考えてないという考え方は変わらないのか、もう一ぺん確認しておきたいと思います。
  137. 春日斉

    政府委員春日斉君) 自動車の五十年度規制につきましては、すでに本年の一月に細目を告示いたしまして、それに応じて運輸省は道路運送車両法の保安基準を改正いたしまして、着々五十年の四月から実施すべく各メーカーを督励中でございます。現在私どもはこれが確実に実施されるものと信じ、また、不可能であるというような問題は聞いていないわけでございます。
  138. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) ただいまの点でございますが、自動車からの汚染というものは、かりにマスキー並み規制が実施されましても、すぐに全部減るわけでございません。したがって、その汚染のシェアに応じまして合理的なレベルで費用負担ができますように、この法律では四十九条の三項に固定発生源自動車分との配分比率というのがございます。したがって、自動車からの汚染が減れば減るに応じまして配分比率が、現在大体二割を予定しておりますが、一五%なり一〇%になるということで減ってまいるわけでございます。極端にいけばゼロになってもいいわけでございまして、そういうことで、結果的に規制の強化というものは十分負担に反映されるという形をとっているということでございます。
  139. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について質問を行ないたいと思います。  最初に、補償法の実施までにあといよいよ数カ月を残す時点になりました。そのことに関連をいたしまして若干お尋ねをしておきたいと思いますが、その一つは、補償法の適用地域、つまり指定地域でございますけれども、さきの国会の審議、それから休会中にも私お尋ねをいたしましたが、そういった点を繰り返すまでもなく、この指定地域がどのように指定されるか、あるいはされないかということが、最も重要な根幹をなすものだと思うわけです。  その点についてお伺いをしたいわけですが、補償法精神から言いまして、また、この補償法成立のときの当委員会の附帯決議におきましても「すべての公害病患者が救済されるような適正な指定」というふうな附帯決議を付しております。当然その観点からいたしますと、全患者のすみやかな救済措置となる運用でなければならないというふうに考えるわけでございます。そういう点で、いままでお尋ねをしてきた中で地域についてはいろいろ名前があげられておりますけれども、いよいよこの九月一日、予定どおり実施をするという時点では、どことどことを指定される予定か、これをひとつ簡明にまずお伺いをしたいと思います。
  140. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) これは前にもお答えしたところでございますが、現在、四十八年度で調査をしました全国七地域につきまして、調査結果の取りまとめをしているわけでございます。ただ、非常に急いで調査を進めました関係で、地域によりますと細目がまだ私どもにまいっていないというところもあるわけでございますので、それがまいりました上で、私どもとしましてはその結果を、評価委員会をつくった上で、専門家からなる検討をいただきました上で、さらに中公審の環境保健部会にはかって指定をしていきたい、こういうぐあいに考えているわけでございます。  それから、当然これは関係してくるわけでございますが、四十八年度の調査と、さらにそのあとに四十九年度調査、この二つを私ども当初から考えていたわけでございまして、四十九年度はいつやるかということが関連あるわけでございますが、私どもとしましては、四十九年度の調査についてはいろいろの地区から要望がまいっております。これを現在整理して、過去の汚染のデータを含めました汚染状況等で判断をしているわけでございまして、この中で取り急ぎ調査に入れるところと、あるいはややまだ十分その辺が判断できないところがございますので、その前者につきまして、できるだけ早く調査地区を確定して調査に入るようにしたい、こう思っているわけでございます。  したがって、九月の初めまでに指定ができますのは、現在の指定されています十二の地域と、それから七地域につきましてどういう結果が出るかわかりませんが、この七地域につきまして指定が適当であるという判断ができますし、これが九月一日の発足にあたりまして、指定できる地域になろうかと思うわけでございます。四十九年度調査にかかる地域につきましては、その調査の終わり次第、同じような手続を経て指定してまいる、こういうような形になろうと思います。
  141. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、当面九月一日実施時期には現行の指定地域の十二地域と、それから四十八年度調査対象地域である七地域、これは検討の結果わからないのですね、七地域は必ず入るかどうか、わからない。その辺、いまはっきりできませんか。
  142. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) これはちょっとできないわけでございます。私どもいろいろな過去のデータ等から、非常にその可能性が強いということで調査に踏み切ったのは事実でございますが、その調査の結果に従いまして判断をしなければなりませんので、線引き等の関係もございますし、いまその七地域は全部入るか、あるいはその中でどの地域が入るか、そういう線引きの問題、これはあとに若干譲っていただきませんと、いまここで明言するわけにはまいらないということでございます。
  143. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは現行の特別措置法に基づく指定地域の認定患者、それから現在各地方の自治体、公共団体で独自につなぎ措置をやっている地域における認定患者、これは患者数にしてどのくらいいまありますか。
  144. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 健康被害救済特別措置法によります認定患者でございますが、ことしの四月末現在で、これは当然今度一種、二種に分けなければいけませんので、分けて申し上げますが、非特異的疾患につきましては一万三千七百三十八名、特異的疾患が千二百九名、合わせまして一万四千九百四十七名でございます。  それから次の、地方公共団体独自の救済制度をやっているところでどのぐらい患者がいるかということでございますが、これは実は時点が若干ずれておりますが、去年の十一月末現在の数字で申し上げますと、地方公共団体で独自の救済制度を実施していますのが、東京都のほか十八市三町一村に及んでおりまして、このうち国の地域指定以外の地域も対象にしているのが十六地域でございます。この独自の制度によります認定患者数が幾らかということでございますが、これは、いま申し上げました二十三の中で独自の患者という形になっておりません地区を除きまして、二十の自治体につきまして一万四千七百七十二名でございます。前に先生のところに資料を差し上げたのと少し違っておりますが、一万四千七百七十二名でございます。
  145. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いま言われた数字なんですけれども、それと関連いたしまして、それでは、さしあたり九月一日施行にあたって、現在で予算上の推定患者数というのは一体どのくらい見積もっているか。これは調査室の資料等によりますと、四十九年度は四十億円予定をしておるというふうにいわれておりますけれども、環境庁としては、九月一日実施に踏み切る際には、予算上何万人の患者を想定しておるかという点をお伺いしておきたいと思います。
  146. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) これはあくまで予算上のものでございますが、積算根拠としましては、九月一日現在二万三千人、それから年度末の五十年三月末、三万七千人ということで計上してございます。
  147. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは大気関係だけですね。
  148. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) ただいま申し上げましたのは、大気関係だけでございます。
  149. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 九月一日の二万三千人の患者数というのは、九月一日発足時が二万三千人で、年度末には三万七千人というふうに漸次ふえるという見方なんですけれども、それでいきますと、大体いまの環境庁が捕捉しておられる被害者の、どの程度カバーできるかという点はどうでしょう。
  150. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) これは御承知のように非常にむずかしい問題でございまして、私ども今後、一応指定地域の指定の判断条件をはっきりしました上で、調査も進めていき、指定も進めるわけでございます。その指定されました場合、さらに、申請状況が非常に不確定な要素があるわけでございます。医療救済だけでありましたときに比べますと、補償給付をやりますと、おのずから申請の率も高くなってくると思います。そういうことでいろんな点がございますので、これで全部でないということははっきり申し上げられますが、どのぐらいまでいくかということにつきましては、現在のところでどうだといわれましても、なかなかこれは判断できない。しかし、私どもとしましては、できるだけ広く救済するようなことで地域の指定をやっていきたい、こう思っているわけでございます。
  151. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 全部は拾えないということなんだそうですけれども、ちょっと私たちも全部をなかなかつかめませんけれども、先ほど御答弁をいただきました現在の特別措置法に基づく一万四千九百四十七人ですか、約一万五千人、それから自治体関係で地方自治体がつなぎ措置としてやっておる一万四千七百何がしというのを合わせまして二万九千ですね。二万九千で、そうしていま御調査になっておられる七地域の中で、これはどれだけになるかわからないですけれども、おおむね推計のできる数字として考えられるのは、たとえば大阪市の八地域では約六千人内外になるであろうというふうにいわれておるというふうな数字、あるいは東京都が、これは十八歳未満でいま一万三千人ですか、そういうふうな数字だけを合計いたしましても、これは東京都の場合は十八歳未満ですから、全年齢にいたしますと約二万余りになるのじゃないかという推計が出てくるわけです。そういたしますと、これは五万を越す数字が、その数字だけでも出てくるのじゃないかというふうに思いますので、そういたしますと、九月一日発足時には二万三千ということになりますと、約半分しか拾い上げられないというふうにしか見られないのですけれども、その点はどうでしょう。
  152. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 先ほどお断わりしましたように、先ほど申し上げましたのは、九月一日現在で予算上実は八億円を一般会計経由で自動車重量税引き当て分を計上いたしておりますので、それの場合に見込みましたのがああいう数字であるということでございます。現実に調査をしまして地域を指定しました場合、これより上回るかどうか、これはわからないわけでございます。そのいまの数字には拘束されずに地域の指定なり何なりしてまいる、こういうことでございます。
  153. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは本法の審議の際にも、予算で制約をしてはいかぬという意見は出されておりましたし、そういうことはやらないというお考えのようでございましたから、当然そうだろうと思うのですが、被害者からいいますと、せっかく法律ができたのだから、法施行の段階から残りなく拾い上げてもらいたいというのは、これは切実な希望なんですね。当面九月一日から発足をするにあたって、いま申し上げた大ざっぱな推計概数から言いましても、ほぼ半分程度になるように思われるわけですけれども、それがその程度しかいかない、いまの段階での隘路というのは何でしょう。
  154. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) 現在の段階での隘路を率直に申し上げますと、やはり非常にこの調査関係に人手を要しまして、具体的には保健所の職員が参加するわけでございますが、日常業務を持っておる上にやるということで、超勤やいろいろのむずかしい労働条件の問題がからみまして、東京都においてすらもスムーズになかなかいくことはむずかしいという点が一点と、それから測定器具等ございまして、それをまた分析をして出していくということでございまして、これも非常にかっちりしなければならない。そうしますと、測定器具が常時置いてありますものは非常に荒く置いてございますから、非常にこまかく置いて、こまかくそれを分析していかなければならない。それを間違いなくやれる者の能力は、これがまた非常に限られてくるということでございますので、この二点が一番具体的なネックになっておるわけでございます。
  155. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、人の問題、それから測定の器具あるいは分析能力の問題というのが、発足時できるだけ広く拾い上げていくということに間に合わないという隘路だということなんですね。それは、そういう具体的な隘路があるのはよくわかるわけですけれども、そこで、やっぱり冒頭に申し上げたように、全患者の救済というのが本来の趣旨でございますし、そういう点から言いますと、大体そういう隘路を片をつけて、いつごろまでに大体全患者を拾い上げられるという見通しがあるかどうか。これがありませんと、被害者はたまったものじゃない。どの程度の御計画で、ここまでくれば大体全患者を拾い上げられたというふうな目安を持てるかという、その辺のめどはどうですか。
  156. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) これは非常にむずかしい御質問でございますが、私どもの希望としましては、もうできるだけ早く、全員といいますか、地域指定をした上で該当者全部に申請してもらってやっていくということが一番望ましいと思いますが、具体的には、いま橋本審議官から申し上げたような問題もございますし、それからまた患者さん自身の申請ということもあるわけでございますので、やはり数としましては年々上回っていくのじゃないかと思います。これは汚染の状況が同じだとしましても、ここ数年は相当年々上回っていくような形になるのじゃないかと思うわけでございます。
  157. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、私申し上げていますのは、年々汚染地域が発見をされて、新しい地域が次々にふえていくというふうなことでのふえ方というのは、これはやむを得ないと思うのですよ。いまおおむね推計されるところの被害者、それが拾い上げられる時点というのが少なくとも明確にならないと、将来の不幸な可能性というようなものを想定をして申し上げておるのじゃないのですよ。その辺を区別して御理解をいただいて、お答えをいただきたいと思います。
  158. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) これも非常にむずかしいことで、私の申し上げることがはたしてそのとおりできるかということにつきましては、私も確信がございませんが、最大の努力をいたしたといたしましても、地域指定が、現在問題になっているところを地域指定するのにまず三年はかかるのではないかという感じでございます。それから地域指定をいたしましてから、そこの方が次第に、最初から全部は大体おいでになりませんので、大体二、三年はずうっとそこのカーブが上がって、それからはあまり上がらないということになるのが普通でございます。ですから、地域指定そのものが大体三年程度で、患者さんが大体カバーされるのは、そしてピークになるのはほぼ五年ぐらいではなかろうかというような荒い推定でございます。
  159. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあ指定地域が拾い上げられるという点がやっぱり一つのめどになろうかと思うのですが、それが三年くらいかかる。これはやはりせっかく法律ができたのだから、できるだけ早く隘路を打開する方法をお考えになれませんか。これは先ほどの隘路の内容からいいまして環境庁だけではいかぬのだろうと思うのですがね、その辺はもっと積極的に打開する方法、方途等をお考えになって、スピードを上げるというふうなお考えはお持ちじゃないですか。
  160. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 当然そういうことで私どもやりたいと思います。隘路を打開しなければいかぬわけでございまして、当然そうやりたいと思います。
  161. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、それはオウム返しにそう言われたって……。具体的にどうなんですか。たとえば保健所の職員が手不足で、手一ぱいの仕事を持っている上に、その人たちの協力を得なければできない、あるいは機械みたいなものは、これは予算を取ってたくさん設置すればいけるというふうな、これはお金で片がつく問題だと思うのですよ。これは予算措置で片がつくと思うけれども、そのデータの分析能力とこうなってくると、そういった人材の養成についてもあわせてどういうふうに進めていかれるのか。そういう保証がなければ、これはいまのペースでいけば、せっかく法律はできたけれども、まるまる三年は待たなければならぬというふうなことになるわけですからね。その辺はやはり打開する道筋ぐらいは少なくとも明らかにされないと、せっかく法律を御提案になって、通過をしていよいよ実施段階を目の前に控えてということになりますと、国民の期待を非常に裏切ることになると思うので、その辺は少し具体的にお示しをいただきたいと思うのですがね。
  162. 橋本道夫

    政府委員橋本道夫君) これも非常にむずかしい問題でございますが、先ほど御指摘のあった保健所の問題は、これは厚生省自身に関係してきまして、いま、ただでさえ職員がかなりオーバー労働になっておるということもございますので、この点につきましてはすぐさま案というものは私は浮かびませんが、測定のほうにつきましての問題は、やはり試験検査体制というものをどういうぐあいに持っていかなければならないかということで、一つは、将来の試験検査の需要あるいはその質、正確性、特に昨年以来信頼の問題が非常に起こっておりまして、いいかげんにこれをやるわけにはいかないということもございますので、現在環境庁の中で地方のいままでの実情等もすべて調べながら、将来どういうぐあいに体系づけていくかということを検討いたしておる最中でございます。
  163. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはあまり追及をいたしましても、そう具体策というものは出てきにくいだろうと思いますから、特に要望しておきたいと思うのですけれども被害者の立場からいえば、法施行になればすぐにでもやってもらえるものだというふうに期待をしております。そういう期待を裏切らないように、いま三年ぐらい地域を全部拾い上げるのにかかるというふうに推定をされておられるのであれば、スピードをあげて、それを二年にするためにはどうなのか、一年にするためにはどうなのかという、やはり積極的な期待にこたえる立場というものを貫いていただきたい。これはぜひ強く要望しておきたいと思うのです。  時間の都合がありますから、次にお伺いをしておきたいと思いますのは、補償給付の水準の問題なんです。これも前国会以来、私再々申し上げてまいっておりますので、詳しい論議や質疑をしようとは思っていないのですけれども被害者や患者の立場に立ちますと、これもたいへん強い要求であるわけですね。そういう点で、結論だけをお伺いをしておきたいと思うのですけれども、最低いま地方公共団体等でやられておるつなぎ措置、これは決して十分な水準ではありませんけれども、こういう水準が下がるのではないかと、現在受けておる被害者たちが一番心配の種はそこなんですけれども、そういった点はどういうふうなことをお考えになっておるのか、端的に結論だけをお伺いしておきたいと思います。
  164. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) これは前も先生から御質問があったと思いますが、私ども一としましては、政令内容について現在、きめる前提としまして審議会で審議をやっと始めていただく段階まで来たわけでございます。その場合、当然地方でいろいろ独自の制度をとられておるということも一つ頭に置きまして、十分検討をしてもらって政令をきめていきたいと思っているわけでございますが、ただ、地方の制度自身も、非常にその市その市によりましてまちまちでございます。  特に、私ども障害補償費をきめます場合に、当然一定障害以上ということで、しかも障害のクラス分けということが前提にあるわけでございますが、地方の場合は入通院の日数等で一応の割り切りを暫定的な形でやっているところが多いわけでございまして、そういうことで、厳密に申し上げまして、全部、個々の方が現在受けておられるのと今度私ども補償法の体系で給付をもらうその分とが、全く同じ水準以上であるということになるか、ならないか、これは非常に個別的な事情が出ると思うわけでございます。  一がいに申し上げることはできませんが、気持ちとしましては、できるだけ給付のレベルそのものを高くきめるというふうに持っていくことによりまして、地方の制度を下回ることのないような形でやってまいりたい、こういう気持ちでおります。    〔委員長退席、理事矢山有作君着席〕
  165. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それに関連いたしまして、一番いま問題になっているのは、やはり児童手当の内容をどのように政府ではおきめになられるかという点なんですよ。これが一つは注目の的になっておるわけです。といいますのは、被害者というのは、被害者の中の年齢構成からいいまして、小学生以下の子供たちの被害者というのが半数以上の地域、大阪の私のおりました西淀川でも、十二歳以下の子供というのが約六〇%近くになっておるというふうな実例等から見まして、児童手当がどのように扱われるのかということが非常に注視の的になっております。そういう点で、これは従来からも私御意見をただしておるわけですけれども、形式的にごらんになるのではなくて、実態をはっきり把握したものにしてほしいという非常に強い御希望があります。そういう点についてのお考えを、この際、もういよいよ実施も間近になってきておりますし、明確にしておいていただきたいというふうに思います。
  166. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 児童の問題でございますが、これは中公審の審議の段階でも、当初は逸失利益の補償だけを重点に置きますという考え方でありまして、児童に関する給付はなかったわけでございますが、それが現在のような形で正式の答申の場合に入ってまいったわけでございます。私どもとしましては、もちろん児童の問題をめぐりまして、特に児童自身の問題、それからまたそれを介護されますまわりの方の御苦労、こういうことを考えまして、できるだけ手当のレベル、あるいはまた公害保健福祉事業、こういうものにつきまして配慮してまいりたいと思っておるわけでございますが、具体的にどういう金額になるかということはまだ固まっていないわけでございまして、今後審議会の審議を通じまして、このレベルをきめてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  167. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、まだ現在の段階では固まっておらないということでございますから、再度実態把握についての要望を申し上げておきたいと思います。  というのは、児童手当について、実態を把握して実態に基づくように考えてほしいという被害者の要求の内容というのは、こういうことなんですね。これは被害を受けている病人、子供の疾病だけではなくて、発育の状態、それから進学との関係、学業の関係、そういう点を考えますと、その子供の疾病というのは生涯に影響を及ぼすというふうな内容をもっているものだということ、しかもその家族というのは、介護にかかわる家族の収入減の問題ももちろんありますし、同時に、これは大気汚染公害の子供さんでよくわかるのですけれども、転地をすると非常に楽になるというふうなこともあって、転地に要する経費だとか、あるいはその転地のための実費補償というふうな問題というのは、これは各家庭それぞれ違いますけれども、そういう苦労をしているというふうな実態、それからそれに伴う家族の精神的な苦しみ、そういったものを含めた慰謝料的な要素、そういった点を実態として内容把握してもらいたい、そういう点が被害者の切なる要求であるわけです。  そういった点を含めて実態把握の上に立って、児童手当の問題についてお取り組みをいただけるかどうか、再度お伺いをしてこの問題については終わりたいと思っているわけですが。
  168. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) ただいま先生指摘のような、いろいろ児童をめぐります問題があるわけでございますが、私どもとしましては、そういう点も十分頭に置きまして今後きめてまいりたいと思っておりますし、それから審議会の審議を通じまして、そういう点が十分配慮されますように、部会長なり小委員会の長たる方にもお願いしてまいりたいと思っております。
  169. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 次にまいりますが、自動車の排ガス規制について一、二お伺いをしていきたいと思っております。  五十一年規制をめぐってメーカーとのやりとりがいろいろあるんだというふうな報道が新聞等でもなされております。これは大気保全局長にお伺いをしておきたいと思うのですけれども、二月の十九日の日経新聞の報道によりますと、「五十年規制基準の告示の時のようにカゲで揺さぶりをかけるようなことはしないで、メーカー側は本当に言い分があるのなら、国民の前で正々堂々と主張してもらいたいからだ」という局長のことばとして出ているわけです。こういう、かげでのゆさぶりとかメーカーの言い分というのは、何か具体的にあるのですか。あったらひとつお聞きかせいただきたいというふうに思うのです。
  170. 春日斉

    政府委員春日斉君) 新聞の記事には必ずしも私責任を持ちませんけれども、こういうことだろうと思うのですね、五十年度規制を告示する前後に、確かにいろいろのメーカーが正式の場でなくて——正式の場と申しますのは、私どもやはり五十年の規制について夏の段階においてヒヤリングを行ないました。そのときはいろいろ問題点が、私ども指摘いたしましたし、メーカー側からも指摘いたしましたが、結論としては技術的に可能である、いたしましょうというところで、まあむずかしいことはわかるけれども、やりましょうというところできまったわけでございます。にもかかわらず、いよいよ告示の段階になって、いや考えてみたら、メーカー技術屋重役はいいと言ったけれども、営業担当としてはなかなかむずかしいんだというような話もなきにしもあらずであった、そういったことを言っておるわけで、私どもは、自動車メーカーは何も技術屋だけの問題ではないのでございまして、これは技術プラスいろいろな量産をするについてのまた別個の問題もあろうかと思います。それを総合して私どもは五十年度規制、五十一年度規制を実施するメーカーの態度の決定ということになるのだろうと思います。そういう意味で、私は五十一年度規制のヒヤリングに際しましては、総合的にもっと問題を言うべきことがあったら言ってくださいよと、こういうことを私は考えておるわけでございます。
  171. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 五十一年度規制メーカーを呼んでヒヤリングをやる、公聴会をやるということだそうですけれども、これは一般公開をなさるのですか。
  172. 春日斉

    政府委員春日斉君) いわゆる一般公開ということばがどういうことか、私いろいろやり方はあろうかと思いますが、たしか三月の衆議院の公環特だったと思いますけれども、そのときも米原先生に私お答えしたことがございますが、五十年度の規制のヒヤリングを参考にしながら、できるだけパブリックに行ないたい、こういうふうに申し上げております。しかし、その公開というのはあくまでも、どなたでも気軽くおいでくださいというような公開はいたすつもりはございません。それはなぜかと申しますと、それぞれの各社にも企業秘密もございましょうし、それから何と申しますか、そういう公開の場にいたしますにはよほど大きな場所も必要でしょうし、私どもはもっと担当者同士の専門的なヒヤリングを行なうつもりでございます。したがいまして、マスコミ関係の方方も、終わりましてそれぞれの各社あるいは私どもとの記者会見をいたしましてヒヤリングの内容をお伝えする、それによっていわゆる公開の原則を確保していきたい、かように考えております。非常に専門的なものでございますので、そういうことでございます。
  173. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いわゆる一般公開ではないという御見解ですね。それで、これは新聞記事には責任は持ちませんがという御意見なんですが、「既定方針を貫きたいが、技術的に見込みがつかないと考えざるを得ない」と、これはまた書いてあるのですね。先ほどから御見解を伺っていると、不可能ではない、不可能だとは思っておりませんという御答弁を他の委員の方々の御答弁の中でしておられるのですけれども、その点はどうですか。これは明確にしておいていただいたほうがいいと思いますので、明らかにしていただきたいと思います。   〔理事矢山有作君退席、委員長着席〕
  174. 春日斉

    政府委員春日斉君) 先ほど高山先生の御質問にお答えいたしましたのは、高山先生は、五十年度規制を行なうについては不可能だと思うかというお話でございましたので、思いませんということを申し上げたので、先生がいま問題になすっているのは五十一年であろう、したがいまして、五十一年度につきましては、いろいろまだ可能か不可能か、その一つの見通しを立てるためにヒヤリングを行なうわけでございます。これは六月六日から行ないますので、この点につきましてはまだ明確にお答えできないと思います。したがいまして、新聞でいかにも私が不可能であると言わざるを得ないと言ったかのごとく出ておるとすれば、それは大きな間違いだと思います。
  175. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、局長がそんな頼りない御意見だったら、新聞記事のような技術的な見込みがないと考えざるを得ないなんというような頼りないお考えだったら、これはもう五十一年度規制はどうなるかということになりますので、あえてお伺いをしたのです。  東京都が調査をいたしました排ガス減少装置のテスト結果というのは御承知だと思いますけれども、これを見ますと、たとえばスモッグカットB型というのを見ますと、一酸化炭素が六三%、炭化水素が三一%、窒素酸化物、NOXが四六%の減少率となっております。これは補助空気をあたためて導入して点火時期制御するだけの装置だそうです。またプラグ改良と触媒式の併用装置を見ますと、減少率は一酸化炭素が八五%、炭化水素七五%、窒素酸化物五四%という数値が出ております。  私は、この結果をどうこう評価しようというふうに考えてるのではないのです。根本改良でなくて単なる排ガス減少装置、そういうものでも、現在できている機器でこれだけの効果があるという事実が出てきているというふうなことについて、環境庁は御承知だと思いますけれども、だから、先ほど頼りないことを言ってもらったら困るというふうに特に念を押しましたのは、そういった点もすでに技術開発の点では報道もされているわけですから、技術開発の問題云々ということでとても達成はおぼつかないというふうな頼りない態度は、もう環境庁はおとりになっていただいたら困る、理由にならぬというふうに考えるわけです。特にこのいま申し上げたのをあげつらおうと思っていないんですよ。東京都の調査のテスト結果がこういうふうなものさえ出てきている、と。  そこで、これは最後に長官にもお伺いしたいと思っていたのですけれども、特に、光化学スモッグの問題あるいは移動発生源大気汚染問題等の重大な問題が出てきているのだけれども原因負担だ、PPP原則だといいながら、公害対策がきわめて明快な形で解決ができないという、非常にもどかしさというものが感じられるわけです。そういう点で、大気汚染防止法の一部改正のときの附帯決議でもわざわざ本委員会で付しておりますけれども、「公害防止施策の実施にあたっては、発生源における汚染物質の防除技術可能性を論ずるばかりではなく、汚染に対する規制方針の確立が技術の発達をもたらす」と、こういう立場に立ってというふうにわざわざ附帯決議にもうたわれております。そういった点で、メーカーの言い分だけに左右されるのではなくて、五十一年度規制というのは推進を強く要望したいわけです。そういう点で決意のほどを実は長官にもお伺いしたいと思ったのですけれども、政務次官御出席をいただいておりますし、ひとつぜひ御見解を表明していただきたいというふうに思います。
  176. 春日斉

    政府委員春日斉君) ちょっと政務次官の前にお答え申し上げます。  東京都の調査の結果、これは私も概略は承知いたしておりますが、ただそういったことだけでたとえば五十年度規制がそのまま到達できるかと申しますと、実は五十年度規制は、何%削減をするというような簡単なものではございませんで、従来の10モードというような走行試験に加うるに、コールド・スタートと申しますか、11モードという、専門的な話になりまして恐縮ですが、そういう非常にむずかしい条件も加味してございますので、東京都の調査に合格したから五十年度規制も易々たるものではないか、根本的な技術改良やらなくたってと、そういうふうにはなかなかまいらないと思います。  しかし、それはともかくといたしまして、またそれを安定させた一つの量産のラインに乗せるということは、実験室内でできる、できないということと必ずしも一致しないというように、私どもは年間六百万台ですか、あるいは四百万台というようなオーダーで大量生産される一台一台の自動車についての安定性を目ざしての排出ガス規制でございますので、単に実験室内のデータだけではいけないという、まあ非常にむずかしい宿命を負っていることが一つでございます。しかしながら、メーカー側の意見にとらわれないで、ともかく規制基準を強め、それを明示するということがメーカー技術革新を促す一つのもとになるではないかという御意見については私どもは賛成で、そのつもりでいたしておるわけでございます。  しかし、そればかりでもなかなかまいらないので、しからば五十一年度規制技術がないのにもし、仮定でございますが、全くできなかったとしたらどうなるか。五十一年度四月からは新車が全然走らない。そうなった場合は中古車だけである。中古車だけが走る。そうなると、大気汚染の改善にはプラスになるどころか、かえってマイナスになる、そういうようなことも勘案しなければならないであろう。いろいろ行政的にやります場合に、五十一年度規制も元気がいいばかりではいけない問題が多々あろうかと思いますが、先生の御指摘になったような諸点は、もちろん私どもも十分に承知し、そのつもりで五十一年度規制を完遂できるように努力してまいりたい、かように考えております。
  177. 藤本孝雄

    政府委員(藤本孝雄君) 大臣も間もなく来られるようでございまして、大臣からまた御答弁を願うこととなると思いますが、いつもこの問題につきまして私どもの大臣がお答え申し上げております内容につきまして簡単に申し上げますと、五十一年度規制につきましてはやりたい、これははっきりいたしておるわけでございます。ただ、先生も御承知のように、この規制を行ないますためには、排出ガスの防止技術開発というものが必要な条件になるわけでございまして、その技術的な問題についてどのようないま状況にあるかということを知ることが、これは五十一年度規制を予定どおりやるために必要なわけでございまして、そういう意味でいろいろ考えた末、ヒヤリングを行なう、こういうことにいたしたわけでございまして、やりたいのだということにつきましては、私どもそのような考え方でいるわけでございます。
  178. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはまあ、決意を伺うというにとどめたいと思うのですがね。これは東京都の排ガステストがあるということを、何も振り回そうとしているのじゃないんですよ。企業のいろいろな言い分があろうけれども、少なくとも環境庁はひるまないように、ひとつ決意を新たにして実現をしてもらいたいという環境庁に対する激励的意見ですから、そういうふうに御理解をいただきたいと思うのです。  次に、時間がもうあまりありませんが、新聞報道等によりますと、公害対策費としてジェット機の利用者から一回に千円ないし三千円、新幹線利用者からは百円ないし二百円を料金値上げに組み入れるか特別徴収をするというふうな考え方があるやに、これは新聞報道でやられておりますが、政府部内でこういうことが論議をされているのかどうか、伺いたい。これは各省にわたる問題だから長官でないとぐあいが悪いかと思いますが、まず、こんなことを本気で考えておられるのかどうか、ちょっと私新聞報道を見まして奇異に感じたのですね。  長官、ちょうどおいでいただきましたから補足説明をいたしますけれども、報道によりますと、公害対策費としてジェット機の利用者から一回について千円ないし三千円、あるいは新幹線利用者からは百円ないし二百円を料金値上げに組み入れるか、あるいは特別徴収するというふうな考え方が政府部内にあるということが報道されているのですけれども、事実なのかどうか。これはちょっと驚きなので、御見解をお伺いしたいのです。
  179. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まだ政府部内で、具体的な問題としてそんなことは論じられたことはありません。
  180. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 こんなことがやられたらたいへんだと思うのですよね。PPP原則とはもう全然違ったお考えなので、これはたいへんなことだというふうに思って、驚いて実は御見解をお伺いしようと思ったのです。  と言いますのは、これはPPP原則からいえば、ジェット機の排ガス公害被害を与えているとすれば、当然航空会社が補償の負担をするべきものだと思うわけですし、新幹線公害被害を与えておれば当然国鉄が補償すればいいのであって、それをやるために乗客から千円から三千円、あるいは百円、二百円というようなことが問題になるというのは、もう発想自体が、これは特に補償法の中でも基本的な精神としてうたわれている基本精神とはずれるというふうに思うので、そういうことは論議をされていないということでございますから、少なくとも環境庁としてはそういうお考えを、出たとしてもお進めにならないという点は確認していただけますか。
  181. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま私、そういうことは考えておりません。
  182. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 次にお伺いをしたいのですが、自動車重量税から今度の補償費用を取って、これをユーザーから取るという、ユーザー負担となるのですけれども、先ほどからの御質疑の中でも御意見が出ましたが、自動車重量税から一部を負担して補償費の中にプールをするというふうなことは、PPP原則にのっとってどうなんでしょう。御見解を伺っておきたい。もう一ぺん言いましょうか。今度の法案に出されている、移動発生源からの負担自動車重量税から補償費用として一部を取るというやり方、そういうやり方というのは、当然ユーザーの負担になると思うのですけれども、これはPPP原則にのっとったやり方かどうか、私はきわめて疑問を感じますので、環境庁の基本的な御見解を伺っておきたい。
  183. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) 私ども自動車の場合汚染者はだれかという考え方、いろいろむずかしい点がございますが、費用負担専門委員会等で御議論いただきまして、ほぼ共通でありますのは、やはり直接の汚染者は自動車を使用している者であるということでございまして、その場合に、自動車を保有していることに注目しまして課徴金等を取るのか、あるいは燃料に注目するか、考え方はいろいろございますが、ともかく直接の汚染者としましては自動車の使用者を考えるというのが適当であろうということでございます。  したがって、私どもとしましては、今回はいろいろな議論がございましたあとで、私ども考え方としましては重量税を引き当てるということで法案を提出しているわけでございますが、将来はその辺全体を踏まえまして、もっと大きな観点から、汚染を減らすのに対してどういうような形で課徴金等を取っていくか、あるいは直接規制とどういうぐあいにかみ合わせていくか、こういう問題の一環として公害健康被害補償法財源問題を考えていこう、こう思っておるわけでございます。
  184. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、補償費の一部に充てるのに、たとえ二年間の臨時措置としてであっても、少なくとも輸入業者を含めて自動車メーカーから賦課金を徴収する。金額は、自動車の車種、車の種別ですね、それから総排気量、汚染物質排出等を勘案して、これは個々については政令で定めた額に出荷台数をかけて算定するというふうなやり方というのが当然ではないかというふうに思うのです。こうしますとおのずから、営利目的のために大体公害防止の不完全なままの車をユーザーに提供して、それによって道路公害がまき散らされて国民の健康が破壊されていっている、こういう事実からいえば、ほんとうの加害者原因者というのはメーカーだということになるのは明らかだと思うわけです。したがって、当然その責任を、加害責任というか、原因者に責めを果たしてもらうというふうにするべきではないかと考えます。  ところが、本法案を見ますと、ユーザーが負担をするということによってメーカー責任というものを免罪にするという結果になるのではないかということが一つです。それからさらに、現行の重量税からの交付税というふうなことになって、国庫負担になるわけですね。従量税平均して五千円ぐらい値上げをするうちの、四十円ぐらいを組み入れるというふうな中身になるということだそうですけれども、そうしますと、ユーザー負担ということでメーカー責任を免罪にするという内容と、それから国庫負担という形に、形の上でも重量税の一部を交付ということになりますと国庫負担というふうな形で、二重の誤りを重ねるというふうに考えるわけです。ですから、そういう期間が臨時的な措置でたとえ二年であっても、それが補償法精神の基本問題に触れるという点ではちょっと了解をしがたいわけです。そういう点で環境庁の御見解をお伺いしたいと思います。
  185. 城戸謙次

    政府委員城戸謙次君) ただいまの点でございますが、先ほども申し上げましたように、私ども自動車中心とします移動発生源からの汚染というものが、大気汚染によります健康被害を考えます場合、決して無視できないという前提に立ちまして、自動車という共同責任者にどういうぐあいに費用負担してもらうか、こういう問題として検討したわけでございまして、その場合に、直接の汚染者としましてはやはり自動車の使用者ということで、自動車の保有あるいは燃料ということを頭に置いてしかるべき金を取るということが適当であろうという結論になっているわけでございます。ただ、非常に大きな目で見まして、自動車からの汚染をどういうぐあいに減らしていくかという、別の意味でのチャージとしての考え方を持ち込みます場合には、当然その自動車の生産段階あるいは流通段階に、その製造される新車ということに注目しまして何らかの課徴金を課するということも、これは一つの考えとしてあり得るわけでございまして、将来の問題として、いろいろ燃料の問題もございますが、総合的に検討してまいりたい、こう思っておるわけでございます。  それから重量税を引き当てるということは、一般会計からこの金を持ってくるということで、いろいろ問題があるのじゃないかという御指摘でございますが、これは重量税を引き当てるという以上、重量税そのものが一般会計に入るものでございますから、形の上では御指摘のような形になるわけでございますが、しかしその辺は、重量税から引き当てられるものであるということの趣旨がわかりますように法律表現等もくふうしたつもりでございまして、私どもその辺、特に二年間の時限的なものでございますし、問題はないと思っているわけでございます。     —————————————
  186. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、渡辺一太郎君が委員を辞任され、その補欠として高橋邦雄君が選任されました。     —————————————
  187. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 二年間の暫定措置の間に、メーカーからも徴収をするということも含めて検討されるということだと思うのですけれども、ひとつはっきりしておいていただきたいのは、今後二年後にはメーカーからも取るという方針を貫いていただけるのかどうか、その点については、これは先ほども申し上げたように補償法の基本的な精神に触れる内容だというふうに考えますので、長官に最後に御見解を伺っておきたいと思います。
  188. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これからは重量税をやめてメーカーから取るんだという約束は、することはできません。これは全部ひっくるめて、そうして研究はいたしますけれども、いま端的に重量税メーカーからというお約束はいたしかねるわけでございます。
  189. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認めます。  沓脱君から、委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容は、お手元に配付のとおりでございます。  この際、修正案を議題といたします。沓脱君から修正案の趣旨説明を求めます。
  191. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対するわが党修正案の提案理由と、その概要の説明を行ないます。  原案は、補償費等の一部を、四十九、五十年度の臨時措置として自動車重量税の一部を引き当てるというものでありますが、もともと自動車重量税は、自動車所有者に賦課する大衆課税であります。これを公害の補償費に充てるということは、自動車公害の真の原因者であり、それによって巨大な利潤を得てきたメーカー責任を免罪するあやまちをおかすものであります。  そしてまた、自動車重量税の収入見込み額の一部を交付するということは、とりもなおさず、一般会計から支出される国費による補償費の負担であります。この国費負担は財界が強く要求しているところであり、補償法の本旨にもとるものであります。したがって、たとえその期間が二年間の臨時措置であるといたしましても、日本共産党といたしましては、とうてい認めることのできないものであります。  これらの問題点をただすために、日本共産党は、自動車メーカー責任を明確にした修正案を提出した次第であります。  以下、修正案の概要を説明いたします。  その第一は、補償費等の一部に充てるため、四十九、五十年度の臨時措置として、輸入業者を含む自動車メーカーから賦課金を徴収するようにいたしました。  その第二は、賦課金額は、自動車の種別、総排気量、汚染物質排出量等を勘案して政令で定める金額に出荷台数を乗じて算定するようにいたしました。  以上でありますが、本委員会におかれましては、慎重に御審議され、すみやかに可決されるようお願いいたしまして、私の提案理由の説明を終わります。
  192. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 以上で趣旨説明は終わりました。  それでは別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。——別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認めます。  これより公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、沓脱君提出の修正案を問題に供します。沓脱君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  194. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 少数と認めます。よって、沓脱君提出の修正案は否決されました。  次に、原案全部を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  195. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  矢山君から発言を求められておりますので、これを許します。
  196. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は、ただいま可決されました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案   政府は、汚染者負担原則に基づく公害被害補償及び公害防除の施策をさらに前進させるため、本法の施行にあたつては、次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。  一、汚染者が公害被害補償財源負担義務をはたしたことによつて公害についての免責意識をもつことなく、公害防除について、なお一層努力するよう規制、指導を強化すること。  二、公害健康被害補償制度財源あり方について、自動車製造業者から徴収する方法、石油に着目する方法等を含めて検討すること。  三、自動車排出ガスによる健康被害に対する影響の重大性にかんがみ、排出ガスのいわゆる昭和五十一年規制燃料の無鉛化計画の実施について十分努力すること。  四、窒素酸化物、炭化水素、オキシダント、光化学スモツグ等による健康被害についても被害の実態を調査し、補償の対象とすることについて専門技術的な検討を加えること。  五、休廃止鉱山による汚染、患者の発生の実態を徹底的に調査し、鉱業活動に起因する砒素中毒症等公害病の救済、予防に努めること。  六、公害病患者の迅速な救済をはかるため、各種医療機関、専門医師の協力を得て、患者認定審査体制を早急に強化、整備すること。  七、騒音、振動等による健康被害、財産、生業被害についても、その実態の把握に努め、補償制度を早急に確立するよう検討すること。   右決議する。  以上でございます。  委員各位の御賛同のほど、よろしくお願いいたします。
  197. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  198. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 速記を起こして。     —————————————
  199. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、斎藤寿夫君が委員を辞任され、その補欠として黒住忠行君が選任されました。     —————————————
  200. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 先ほど矢山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  201. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 全会一致と認めます。よって、矢山君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、三木環境庁長官から発言を求められております。この際、これを許します。三木環境庁長官
  202. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ただいまの御決議に対しましては、十分にその趣旨を体して努力をいたす決意でございます。
  203. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 鶴園哲夫

    委員長鶴園哲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十八分散会      —————・—————