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1974-05-15 第72回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十五日(水曜日)    午後二時十九分開会     —————————————    委員異動  五月十五日     辞任         補欠選任      斎藤 寿夫君     高橋 邦雄君      鶴園 哲夫君     沢田 政治君      加藤シヅエ君     村田 秀三君      杉原 一雄君     川村 清一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         森中 守義君     理 事                 田口長治郎君                 原 文兵衛君                 矢山 有作君     委 員                 金井 元彦君                 高橋 邦雄君                 寺本 広作君                 中村 登美君                 川村 清一君                 沢田 政治君                 村田 秀三君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君                 沓脱タケ子君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       小坂徳三郎君    政府委員        公害等調整委員        会委員長     小澤 文雄君        公害等調整委員        会事務局長    宮崎 隆夫君        環境庁長官官房        長        信澤  清君        環境庁大気保全        局長       春日  斉君        通商産業大臣官        房審議官     江口 裕通君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        環境庁大気保全        局企画課長    山崎  圭君        環境庁大気保全        局自動車公害課        長        小林 育夫君        資源エネルギー        庁石油部精製流        通課長      松村 克之君        資源エネルギー        庁石油部開発課        長        豊島  格君        運輸省自動車局        整備部長     田付 健次君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害紛争処理法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○大気汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出)     —————————————
  2. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、斎藤寿夫君が委員を辞任され、その補欠として高橋邦雄君が選任されました。     —————————————
  3. 森中守義

    委員長森中守義君) 公害紛争処理法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず政府から趣旨説明を聴取いたします。総理府総務長官小坂徳三郎君。
  4. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいま議題となりました公害紛争処理法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  公害紛争処理法は、公害紛争を迅速、簡易かつ適正に解決することを目的として制定されたものであり、この目的を達成するために現在では和解仲介調停仲裁及び裁定制度が設けられ、いずれも紛争当事者申請に基づいて、中央においては公害等調整委員会地方においては都道府県公害審査会等がその処理に当たっておりますことは、御承知のとおりであります。本法が施行されましてから昨年末まで約三年の間において、公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等に係属した事件は、百二十件であり、そのうちすでに解決されたものは六十三件、その解決に要した期間は平均十カ月となっておりまして、おおむね所期の目的は達せられていると考えられるのであります。  しかしながら、最近における公害紛争の実態を見ますと、その規模が一そう拡大するとともに、当事者間の対立が激化し、かつ紛争長期化する様相が顕著にうかがえるのでありまして、これを放置するときは、緊急を要する被害者の救済が遅延する等の社会的に重大な影響が生ずることが憂えられるのであります。このような事態に対処するためには、紛争当事者申請を待って紛争処理機関解決に乗り出す現行の諸制度のみで十分であるとはとうてい言えないのでありまして、当事者からの申請を待つことなくできるだけ早い機会に紛争処理機関あっせんに乗り出し紛争解決に力をかすことができる制度を設ける必要があると考えられるのであります。これが本法改正する理由の第一点であります。  次に、今日までの本法の運用の経験等にかんがみますと、本法に定められている公害紛争解決のための主要な手段であります調停仲裁または裁定手続中に紛争処理機関紛争解決のために機に応じて当事者に必要な事項の勧告を行うことができる制度を設ける等、これらの手続について制度整備充実をはかるため規定整備を行う必要が痛感されるのであります。これが本法改正する理由の第二点であります。  さらに、住民から申し出される公害苦情につきましては、地方公共団体に置かれております公害苦情相談員中心となってその処理に当たっておりますが、当該業務重要性にかんがみ、その活動の一そうの活発化に資するため、公害苦情相談員職務を一段と明確にする等の措置を講じて苦情処理体制整備をはかる必要があるのであります。これが本法改正する理由の第三点であります。  以下、改正概要について御説明申し上げます。  改正点の第一は、申請を待たずに行なうあっせん制度を設けることでございます。公害にかかわる被害程度が著しく、かつ、その範囲が広い紛争が生じ、当事者間の交渉も円滑には進行しておらず、これを放置するときは、多数の被害者生活の困窮等社会的に重大な影響があると認められる場合には、当事者からの申請を待たずに、公害等調整委員会または都道府県公害審査会は、当事者意見を聞いて紛争あっせんを行なうことができることといたしますとともに、あっせん手続に入った後で、あっせんでの紛争解決は困難であるが調停なら解決の見込みがある等の場合には、当事者意見を聞いて調停に移行することができる道も開くことといたしております。  なお、これに関連いたしまして、現行和解仲介制度あっせん制度に吸収することとし、現行では和解仲介を行なっていなかった公害等調整委員会におきましても申請にかかわるあっせんを行なうことができることといたしております。  改正点の第二は、現行調停仲裁及び裁定制度について、その整備充実をはかったことであります。  その一は、調停委員会仲裁委員会または裁定委員会は、それぞれ、調停仲裁または裁定手続中において、仮の措置として、当事者に対し、調停仲裁または裁定のために必要と認める措置をとることを勧告することができることといたしております。  その二は、現行制度におきましては、調停委員会は相当と認めるときは当事者に対し調停案受諾勧告することができることになっておりますが、今回、この受諾勧告を行なった場合に必要があるときは、その調停案を公表することができることといたしております。  その三は、義務履行確保のための措置でございますが、公害等調整委員会または都道府県公害審査会等は、権利者の申し出に基づき、義務者に対し、調停仲裁または責任裁定で定められた義務履行に関し、必要な勧告を行なうことができることとし、確実かつ円滑な義務履行確保することといたしております。  なお、右のほか、事件処理円滑化迅速化をはかるため、調停事件の引き継ぎに関する規定整備を行なうことといたしております。  改正点の第三は、公害に関する苦情処理体制整備するための措置を講じたことでございます。住民から申し出される公害に関する苦情処理するため全国の都道府県及び多くの市町村には、公害苦情相談員が置かれておりますが、その苦情処理活動活発化に資するため、苦情相談員職務を明確にいたしますとともに、地方公共団体における公害に関する苦情処理状況を常時適確に把握しておくため、公害等調整委員会地方公共団体の長に対し、都道府県知事市町村長に対し、これらについての報告を求めることができることといたしております。  なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  5. 森中守義

    委員長森中守義君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  6. 森中守義

    委員長森中守義君) 次に、大気汚染防止法の一部を改正する法律案議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 矢山有作

    矢山有作君 大気汚染防止法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。  まず最初にお伺いしたいと思いますのは、産業構造転換に関する問題であります。これは通産省もお見えになっておると思いますが、ひとつ副総理という立場から三木長官にお答えをいただいたらと思います。  地球は有限でありますし、自然資源には制約があります。つまり現在では、空気、水といった資源についても、その量が有限であるという認識に立って産業活動を行なう必要があると思います。われわれを取り巻く環境汚染に有効に対処するためには、これまでの重化学工業化政策を見直す必要があると考えるわけでありますが、化学鉄鋼一般機械輸送機械などの重化学工業生産性が高く、貿易面でも大きな役割りを果たしておることはわれわれも認めるところでありますが、他方におきまして、汚染因子発生度資源使用の面から見ますというと、パルプや紙、鉄鋼非鉄金属などにおいて平均よりもずっと大きくなっております。つまり、われわれの産業活動の重要な基盤となるべき素材産業は、生産性貿易活動などの面では平均を上回っておる反面、環境汚染の面では今後抜本的に改善しなければならないのであります。政府は、国民経済環境汚染防止観点から、今後の産業構造あるいは産業のあり方をどういうふうに考えておいでになりますか。  昨年の二月に閣議決定をされました経済社会基本計画の中では、「わが国産業構造は、長期にわたって環境汚染せず資源再利用可能な産業活動と創造的な自主技術に支えられた知識集約型に次第に転換していくことが期待される。」と述べられておるわけでありますが、政府のこの産業構造転換の問題に対する具体策をお伺いいたしたいのであります。
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いままでもそういうことはたびたび言われたのでありますが、とにかく身につまされる思いをしなかったために、演説文句になっておるような面もあったわけですが、今日のような資源の問題、いま矢山委員の御指摘のように、これは有限なものであるという意識が全人類に行き渡ってきております。資源保有国も、これを大事にしようという、資源ナショナリズムという意識は非常に強くなってきておるわけです。したがって、これからはやはり資源の高価格時代がくる。  石油でも、これは昨年に比べたら三倍も四倍もになるわけですから、これが急に——私がちょうどロンドン滞在中にヤマニ石油相と偶然にキャラバン外相のところで出会って、夜ゆっくり話そうということで彼と話してみたわけです。そうしたら、いま一バーレル当たり十ドルですね、これは高過ぎるから下げようということを、彼は盛んにサウジアラビアとしてはそういう方針であって努力をすると言っていましたが、だからいまの十ドルが下がるようなことがあっても、それは大きく昔のような時代には返らない。したがって、石油というものは高価格時代がくるんだということを前提にして考えなければならぬわけで、それは国際収支の面からも、去年使っておるような石油をいまの価格輸入したら百十億ドル、日本外貨支払いがふえるというのですから、いま外貨保有が百二十億ドルぐらいしかないのに百十億ドル追加的な外貨支払いがふえるというのですから、そういう面からも、いわゆる資源というものが金さえ出したら入ってくるという時代は終わったんだという認識を持たなければならぬことが一つ。  それと、環境というものは、先般イギリス政府の招待で行ってみますと、やはり一つのスペースといいますか、空間が問題なんで、向こうは日本と違って平地面積も多いですから、工場があっても日本のように一ところに密集しておるような工場地帯ではないですから、環境の密度というものに非常な違いがあるわけで、日本がこれ以上高度経済成長だということで至るところにコンビナートを建設してやるということになれば、それは統計の上でGNPは上がっても、そういうふうになってくると人間が生きておるか生きておらぬか、疑問になる。  そういうことですから、高度経済成長政策資源環境の面から制約がくるわけで、いままでは演説のときに知識集約型とか言っておったのが、現実実物教育を受けてないわけですが、これからはもう現実のものとなってきたのでありますから、今後はやはり日本人の頭脳とか技術、こういうものを使って、なるべく資源消費しない。国民生活の面でもそうだと思いますね、こういう大量使い捨て時代、このことからごみの処理都市行政中心題目になるということについても、いろいろともっと簡素な国民生活というものが再評価されなければならぬし、そういうことを考えてみると、いやおうなしにいま矢山委員の御指摘のような、日本産業構造は大転換をしなければいかぬ。国民生活もそうです。こういうことで、これは政府はいままでのようなただ演説ではだめだ、実際に具体的に、年限がかかりますからね、すぐに一ぺんにはできないので、多少の長期的な計画を立てなければならぬことは当然でありますが、そういうことをやらなければ、これはもう環境資源の面から日本経済というものは非常な困難にぶつかる。御指摘のようなことをこれからは大きな産業政策方針にせなければならぬ、こういうことを政府は強く感じておる次第でございます。
  9. 矢山有作

    矢山有作君 確かにいままで、おっしゃるとおりに産業構造転換というのは演説文句になっておったと思うのです。さっぱりその具体的な方針が出てこないといううらみがあったのではないかと思いますが、長官もおっしゃいましたように、資源なり環境からの制約で、演説文句で終わらすことはできなくなったわけでありますが、そうなると、たとえば「創造的な自主技術開発」云々というようなことを経済社会基本計画の中でもうたっておりますけれども、実際見てみると、国内で創造的に開発された自主技術を使って日本高度成長が達成されたというよりも、戦後他国で開発された技術をどんどん取り入れることによって高度成長を達成したというのが、いままでの日本の姿ではなかったかと思います。  そういう点で、直接こういった問題にタッチしていくのは通産省だろうと思うのですが、通産省はこの産業構造転換という問題、これはたびたび中曾根大臣演説あたりでも私どもは聞いているところですからね、その演説に終わらせないためには、やはり事務当局がそういった具体策について積極的に取り組むか取り組まぬかという問題なんです。通産省事務当局がお見えのようでありますから、ひとついまの状況と、いまの考え方というものをできるだけ具体的に、あるなら聞かせていただきたい。   〔委員長退席小平芳平着席
  10. 江口裕通

    政府委員江口裕通君) ただいま三木長官がおっしゃいましたことの補足になるわけでございますが、具体的に申しますと、一応通産省関係といたしましては、昭和四十六年でございますけれども、産業構造審議会中間答申というものをいただいておるわけでございます。その際におきましても、環境保全でございますとか、あるいは省エネルギー問題等はすでに萌芽としてございましたわけでございますが、その後、先ほど御指摘長期経済計画等を経まして、それからさらに最近、昨年来の例の石油危機の問題に関連いたしまして、ますますその必要が強まってまいっております。  現在、具体的に申しますと、通商産業省関係といたしましては、そういう昨年の秋以来の情勢を盛り込みまして、例の中間答申をもう少し具体的に焼き直すような作業をいたしております。近くその作業を進めまして御答申をいただきたいというふうに考えておりますが、その際おそらく骨格になります点をごくかいつまんで申し上げますと、第一点といたしましては、たとえば石油化学でございますとか、あるいは鉄鋼でございますとか、こういった産業の場合にはエネルギーがいわゆる多消費でございます。具体的に申しますと、鉄の場合、あるいは石油化学の場合、それからさらに電力、それからセメントというようなものは、いわゆるエネルギーをたくさん食う産業でございますし、こういったものにつきましては、たとえば電力等をいますぐ海外に持っていくというわけにはまいりませんけれども、鉄鋼でございますとか石油化学等のいわゆる資源消費型産業等につきましては、これから新たな立地計画等が起きます場合には、海外立地ということも極力考えていったらいかがであろう。この際これは基幹産業でございますので、国内にどれだけ置いておくか、あるいは海外にどれだけ分けるかというような問題がございますが、そういうバランスを考慮しながら、海外立地観点を相当大きく取り入れていく必要があるのではないか。これが第一点でございます。  それから第二点といたしましては、いわゆる知識集約型産業でございます。高度の組み立て産業、あるいはコンピューター産業等々がよく例示されておりますけれども、こういったものの育成をはかります。当然この際、いわゆる技術的にも日本としての一つ独自技術を進めていきたい。特に公害等につきましても、いわゆる各種研究機関等を動員いたしまして、日本独自の技術を進めてまいるということを考えております。   〔委員長代理小平芳平退席委員長着席〕  それから、なべて申しますと、さらに第三点といたしまして、特に環境保全との関係も考慮する必要がございまして、極力クローズドシステムというものを各産業に取り入れてまいるようにいたしたい。やや具体的でございますが、そういうようなことも考えております。例の隔膜法にありますようなそういった問題、あるいは水銀のクローズドシステムといったような問題にございますような、そういう形で公害の発生しないようなものを持っていきたいというようなことを、ごく大ざっぱに考えておるわけでございます。  その他全般的な省資源省エネルギー、あるいは環境保全というようなことで進めてまいりたいというのが現状でございます。
  11. 矢山有作

    矢山有作君 いろいろお聞かせいただきましたが、いま産業構造転換の中で企業海外立地の問題が出てまいったわけでありますけれども、これは私は、国内でこれだけ水を土地を空気汚染した状態の中で、これ以上汚染したらいかぬからというので、その汚染のもとになっておるそういう産業海外に持っていくんだという発想では困るので、そういうことになると、その持ってこられたほうの立場に立てば、公害産業を持ってこられたらたいへんなことになるわけですから、こういう点は公害の輸出にならぬように十分配慮されませんと、やはり海外からのきびしい指弾を受けるということになりますので、特にこの点は、海外立地という問題を積極的に進められようとすればするほど十分注意をしていただきたいと思います。  それから次に質問を移しますが、低硫黄原油確保見通しについてお伺いしたいわけです。  昭和四十七年度にわが国輸入した原油平均硫黄含有率は一・四九%になっておるようです。四十年度の二・〇四%に比べて低下はしておりますが、同時に、原油輸入量も四十年度の八千五百十二万キロリットルから四十七年度で二億二千七百三十一万キロリットルへと約二・六倍に増加しておりますので、硫黄酸化物総量も百七十四万トンから三百三十九万トンへと増加しております。したがって、硫黄酸化物について総量規制々導入しようとすれば、まず低硫黄原油など硫黄分の少ない燃料が確保されなければならぬわけであります。  そこで低硫黄原油埋蔵地域を見てみますと、これは世界的に見て著しく片寄っておるようです。おもに北アメリカアフリカ大陸中東地域の一部、東南アジアなどに限られておるというのが実情のようでありまして、しかも埋蔵量は全石油埋蔵量の三〇%程度にすぎないといわれております。このために先進諸国公害対策などから需給が逼迫いたしまして、価格も上昇しております。たとえばわが国輸入しておる低硫黄原油の約半分を占めておるインドネシアミナス原油は、公示価格で四十七年四月に二ドル九十六セントであったのが、最近では十一ドル七十セントと約五倍にも値上がりをしております。こうした状況を考えますと、わが国が低硫黄原油を十分確保するということはきわめてむずかしいと思われる情勢にありますが、通産省は低硫黄原油の今後の輸入についてどういう見通しを持っておいでになりますか。
  12. 松村克之

    説明員松村克之君) 低硫黄原油の入手につきましては、先生いま御指摘のとおり、過去数年にわたりまして輸入原油S分は着実に低下してきたわけでございますけれども、たとえば四十八年度で申しますと、現在精製用でもって一・四一%程度になろうかと思いますが、この中で低硫黄原油という観点からいたしまして一番大きなものは、御承知のとおり、ミナス原油でございますが、これの日本に対する輸入というものは、たとえば四十八年度で申しますと二千七百五十七万一千キロリッター、大体全輸入量の九%ちょっとでございます。これが、ミナス原油についてはほぼ限度にきておりまして、四十年から四十四年までを見ますと、ミナス原油構成比は、全体の輸入量に占める比率は二%ないし三%であったわけでございますが、四十五年以降は九%ないし一〇%ということで、ほぼ頭打ちになっております。そういったこともございまして、今後とも低硫黄原油輸入ということについては最大限の努力をするといたしましても、やはり原油の中のS分というものは一・四とか一・三とか、その程度になるであろうというふうに考えるわけでございます。
  13. 矢山有作

    矢山有作君 いまのお話を聞いておっても、低硫黄原油確保というのは、これはなかなか容易ではないだろうと思うのです。それだけに脱硫の問題を今後真剣に考えていかなければならぬと思いますが、その問題はあとで触れるといたしまして、そこで次にお伺いしたいのは、わが国輸入原油の八〇%以上は硫黄分の高い中東原油に依存しておるというのが実情のようでありますが、硫黄酸化物総量規制をしようとすれば、今後の石油開発政策というものを低硫黄原油確保する方向に向けていかなければならぬというのは、もうこれは私が言うまでもないところであります。  ところで、わが国企業による海外石油開発の現況を見てみますと、これも私の手元にありますのは四十七年度の通産省の資料でありますが、四十七年度で二千九十七万キロリットルを輸入しておりますが、そのうちで硫黄分一%以下のいわゆる低硫黄原油は、北スマトラ石油株式会社の四十万キロリットル、インドネシア石油資源開発株式会社の三十三万キロリットル、ジャパン・ローサルファオイルの百三十万キロリットルで、合計いたしまして二百万キロリットルちょっとというところであります。自主開発原油輸入量の約一〇%にすぎぬような状態でありますが、低硫黄原油を安定的に確保しようと思えば、今後わが国の自主的な開発ということをやはり考えていく必要があるのではないか。そこで、この低硫黄原油の自主開発による輸入比率を高めていくということについて、具体的な対策がおありならお考えを聞かせていただきたい。
  14. 豊島格

    説明員(豊島格君) いまの先生の御指摘になりました低硫黄原油の自主開発の問題でございますが、実はその後、石油公団を中心とする自主開発ということを進めておりまして、ほとんどのプロジェクトというものが、大体東南アジア、それから中東の一部の低硫黄原油、アブダビとか、それからアフリカ、それから最近では中南米にもアプローチしておりますが、こういうことで、四十八年になりますと、アブダビのBP、CFPの持っておりますADMAというプロジェクトに参加いたしまして、七億八千万ドルの参加料を払って参加したのですが、その油というものが大体八百万キロリッターとか、それからインドネシア石油が増産される。さらにアブダビで、これはみずから鉱区を取ってやったのですが、そういう油というものも出てきております。そういうことで、公団の探鉱投融資の対象というのは、従来からやはり低硫黄原油確保ということに力点を置いて運営されておるわけです。  さらに、日本周辺の大陸だなというものにつきましても国が基礎調査をしておったわけですが、これも最近では開発段階に入っておりますが、この大陸だなの原油は非常に超ローサルファでございまして、政治的にもナショナルセキュリティの観点から非常に重要であるということで、公団の投融資につきましては七割という高率な投融資を行ないまして、この開発につとめておるということでございます。さらにいわゆる狭い意味の自主開発ではございませんが、たとえばインドネシアに対しまして、昨年三月きまったわけですが、十年間に五千八百万キロリッターの油を確保する、こういう意味で従来のソースと別に油の確保ということを、これに関して借款を二億ドルぐらい出すとか、さらにシベリアのチュメニ油田、いろいろむずかしい問題ございますが、やはり低硫黄原油でございますので、そういう単に自分で開発するだけでなくて、そういう金を出して見返りとして油を獲得する、こういう点も非常に多角的な戦略を展開して低硫黄原油確保ということをはかっておるわけでございまして、今後もその方向で進むべくつとめてまいる次第であります。
  15. 矢山有作

    矢山有作君 次は脱硫装置の問題についてお伺いしたいのですが、脱硫技術には、重油の中から硫黄分を取り除く重油脱硫や、それから重油を燃やした煙の中から硫黄分を取り除く、いわゆる排煙脱硫などがあるわけでありますが、重油脱硫は石油精製業などで設置されておりますが、そのうち直接脱硫装置は四十七年度末で十九万七百六十バーレル、それから間接脱硫が五十六万四千五百バーレルで、常圧蒸溜で生産される重油の約三分の一が直接脱硫という方法で脱硫をされております。直接脱硫の場合、硫黄分は一・〇%まで低下させることができますが、触媒の制約からこれが限度だといわれておりますし、また間接脱硫の場合は、減圧軽油と残留アスファルトをまぜるために、硫黄分は一・六%と直接脱硫によった場合よりも高い。いずれにいたしましても、脱硫に限界があるとされております。したがって、重油脱硫の場合は、低硫黄重油の輸入量をふやして、これと重油脱硫後の油とをまぜる形にしないというと効果は薄いことになる。  一方、排煙脱硫には乾式法と湿式法とがあって、電力業界では、乾式法が中部電力四日市火力三号機で十一万キロワット相当、東京電力鹿島火力三号機で十五万キロワット相当、関西電力堺港火力八号機で六万二千五百キロワット相当の装置が設置されております。しかし最近では、湿式法のほうが技術的に安定しているとの見方が強くて、関西電力尼崎東火力二号機で三万五千キロワット相当の装置が建設されておりますが、それぞれ長期運転における安定性などの問題が残されておるといわれております。排煙脱硫装置の設置状況について昨年通産省が調査したところによりますと、電力鉄鋼石油化学など九業種が昨年三月までに設置した稼働または稼働予定の装置が百三十八基に及んでおります。  ところで、総量規制の考え方からすれば、硫黄分を除去する場合に、多量の排煙から微量の硫黄分を除くよりも、硫黄分が濃縮されておる段階で除去するほうが効果があるように思われるわけであります。排煙脱硫装置でも九〇%以上の脱硫が可能であるといわれておりますが、脱硫前の亜硫酸濃度が高ければあまり意味がないと思うのです。したがって、低硫黄化対策の重点を排煙脱硫装置の設置促進に置くのではなくて、重油脱硫装置のほうに置いて、硫黄分が濃縮された状態の原油を脱硫して低硫黄重油とまぜ、硫黄分一%以下の低硫黄原油にしてから使用し、さらにそれに対して排煙脱硫装置を設置していく、こういう形をとったほうがより大きな効果が得られるのではないか。もちろん金のかかる問題ではありますが、いまの公害状況から見るなら、そうするのが当然だと私どもは思うわけでありますが、これに対する通産省の御所見はどうでしょう。
  16. 江口裕通

    政府委員江口裕通君) いま御指摘のありましたことをごくかいつまんで要約させていただきますと、従来やっておりました重油脱硫、直接間接を問わず、それにつきましては、従来方式ではやはりS分を取るのに限界がある。具体的に申しますと、直接脱硫の場合は一・〇以下にはならない、あるいは間接脱硫の場合には一・六以下にたらないというような御指摘でございました。それから一方、排煙脱硫というものがもう一つあるもけで、煙になったときから取るというのがございます。それにつきましてはやや技術的に不安定たファクターがあるかと思います。もちろん御趣旨の中には、土地が少ないとかあるいは資金がたくさん要るとかというようなことがございまして、そういう制約があるのかということの御指摘だったように思うわけでございますが、したがって、そういうことからもう一度元に返って、重油の脱硫で取れるものを思い切って取るような抜本的な方法はないかというように拝察しておるわけでございます。  現在、お答えになるかどうか、それに該当いたしますものといたしましては、間接脱硫をいたしまして一・三ないし一・五%までもっていきまして、そのあとさらにアスファルトとかいろいろなものが残っておりますので、それの重質油分解をやります。いわゆる重質油分解といっておりますが、それでさらに〇・三ぐらいまで落としていくというような技術もいま鋭意検討しております。それからもっと別の方法といたしましては、ガス化脱硫というようなこともあわせてやっております。これによりますと、いわゆる温度を高圧高温でやりますとか、あるいは低圧低温でやりますとか、やり方はいろいろあると思いますけれども、そういうことを検討いたしておりまして、これにつきましては、現在私ども通産省関係の工業技術院傘下のところで、重要機械関係に対します補助金等を出しまして、鋭意そういうことの検討をいたしておるわけでございます。それからさらにそういうことを行ないます場合には、実用化されるような場合には、日本開発銀行の公害防止融資ワクで非常に低利の金を出していくというような措置で、極力そういったものも進めてまいりたいと考えております。
  17. 矢山有作

    矢山有作君 私はやっぱり重油脱硫を中心に考えたほうがいいだろうと、こういう趣旨で、まあそういう御答弁だったようですが、まだ重油脱硫をやってもなおこれで硫黄分が完全に除去できるわけじゃありませんから、少々金がかかっても、それは排煙脱硫までもそれに組み合わせていって、そうして現在の大気汚染の状態というものを大きく改善していく、そういうふうに考えるべきじゃないか、こういう意味です。したがって、そういう方向で通産省には指導をしてもらいたい。それは企業としては負担はふえるだろうけれども、少少負担がふえたったって、人間の健康上の問題にかかわる問題だから、負担がふえるからそれをやらぬというわけにはいかぬと思うのです。  それから総量規制が実施されました場合、その対象になる企業は、排出量の許容限度内でそれぞれ低硫黄燃料やあるいは排煙脱硫装置の設置などの対策をとるだろうと思うのです。しかしながら、排煙脱硫装置の設置には多額の経費がかかりますので、採算を考えた場合に、資本力のある大企業でも低硫黄重油の確保に走るということが予想されます。その場合、中小企業は十分な低硫黄化対策をとることができなくなるおそれもあるわけであります。したがって、低硫黄重油を優先的に中小企業に回して、資本力のある大企業は重油脱硫装置なり排煙脱硫装置を主力としていく、こういった対応策をとるべきではないかと思うのであります。  そのためには、大企業について脱硫装置の設置を法的に義務づけることは考えられないのかどうか。たとえば東京都では、四月十六日に打ち出しました「都民を公害から防衛する計画−七四年版」、この中で硫黄酸化物については、五十二年度における都内のSO2推定総排出量八万三千トンを四万三千トンに削減するために、重油使用量一日三キロリットル以上の工場に排煙脱硫装置の設置を義務づけるという対策をとるのだという方針を示しておりますが、こういうようなのと同じような対策を国としてもとっていくという考え方はないのかどうか、こういうことであります。
  18. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 御指摘の点でございますが、硫黄酸化物の排出量を削減させるための対策としては、実は排煙脱硫装置を設置するということのほかに、使用燃料を低硫黄燃料、たとえばローサルファのみならず、LNGにかえるというようなこともございますし、また工場の操業時間の短縮とか、あるいは一部施設の使用停止というような最終的には問題、こういったものも考えられるわけでございます。しかし、総量規制基準が順守されるならば大気の汚染が改善されてくるわけでございますから、その方法がどのようなものであっても、いわば差しつかえないと思われるわけでございます。したがいまして、排煙脱硫装置の設置を義務づけることは、むしろ企業公害防止の対応策を狭めると申しますか、限定するという一面の問題点も出てくるわけでございまして、総量規制の実効を上げる上では、必ずしも排煙脱硫装置の義務づけだけに限るべきではなかろうかと考えるわけでございます。  もちろん、排煙脱硫装置の設置が有力な対策であることはもちろんでございまして、総量規制基準の順守を企業義務づけることによりまして、実際上その排煙脱硫装置の設置の普及促進がはかられることに当然なっていくものと考えておるわけでございます。
  19. 矢山有作

    矢山有作君 ちょっと、ぼくの趣旨を取り違えているのじゃないですかね。公害規制がきびしくなっていくと、公害対策としてできるだけ低硫黄重油というものを使おうとしますね。それは当然です。大企業が低硫黄重油をどんどん使うようになると、中小企業は相当私は入手しにくくなるだろうと思うのです。したがって、大企業にはいわゆる重油脱硫装置なり排煙脱硫装置といったような、金はかかるだろうけれども、それをどんどん設置をさせる。そしてできるだけ中小企業のほうにそういう低硫黄重油を確保するようにしてやらぬと、中小企業はそんな脱硫装置をつけるような余力は持っていませんから、そういう意味で大企業に脱硫装置の設置を義務づけたらどうか、こういう意味なんです。
  20. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 御趣旨はよくわかります。私ども総量規制を順守するためには、硫黄酸化物のその地域におきます排出のシェアが非常に大きい大企業、大工場におきましては、必然的に排煙脱硫装置はつけざるを得ない基準でございますので、これは先生御指摘のように、どんなことがあってもつけてまいることになるはずでございます。それから中小企業におきましては、御指摘のとおり入手できなくなる可能性もないわけではございませんので、これはローサルファの供給計画というものはできる限り厳重に、あるいは重油脱硫の普及等によりまして行なってまいりたい、かように考えております。先生の御趣旨につきましては、まことにそのとおりだと思っております。
  21. 矢山有作

    矢山有作君 通産省のほうで、中小企業等に対する低硫黄重油をできるだけ確保してやるということ、これはあなたのところの担当でしょうからね、それは何か考え方がありますか。
  22. 松村克之

    説明員松村克之君) 先ほど先生からお話のございましたとおり、四十七年の直接脱硫の設備が十九万バーレル、間接脱硫の施設が五十六万バーレルということでございますが、これを四十八年、四十九年、今後ともこの設備を増加してまいりまして、今後低硫黄原油の入手の努力、それから先生からもお話がありました低硫黄の重油の入手努力というものと並行いたしまして、重油脱硫施設の増強につとめてまいる所存でございます。  ただ、やはり先生お話しございましたように、重油脱硫についても、現在までのところはなかなか技術開発が進んでおりませんで、脱硫率と申しますか、おのずから限度がございます。それで現在、新しい方法の開発、あるいは重質油分解といったようなところまで進めて研究中でございますけれども、やはり大規模のプラント、ユーザーのほうでいいますと大規模のパワープラントといいますか、火力発電等についてはやはり排煙脱硫でもってひとつ脱硫の努力をしていただく、石油の側から見るとそういったことを考えているわけでございます。
  23. 矢山有作

    矢山有作君 だから、その低硫黄重油が入手しにくいのは、中小企業がしにくくなると思うのですよ。大企業は大きいだけに、公害規制がきびしくなれば低硫黄重油をできるだけ入手するように努力するでしょうから、その場合、中小企業は低硫黄重油がなかなか入手しにくい、しかも脱硫装置はたいへんな金がかかって自分では設置しにくい、こういう問題に直面するわけですよ。そこで、中小企業に対して低硫黄重油を何とか確保するということを考えてやらぬといかぬじゃないか、ということで言っているわけです。  だから、たとえばこういう方法もあると思うのです。原油輸入した石油会社でぜひ重油脱硫をやらして、低硫黄化したものの石油でないと売らせない、こういうふうにやってしまえば、それは低硫黄重油が市中に出回るわけだから、中小企業のほうもそんなに心配しなくて済むと思うのです。ところが、いま石油会社は、みずから重油脱硫装置をつけて低硫黄化して出すなんということを規制を受けていないわけだから、したがって、いま言ったように中小企業は低硫黄重油が入りにくくなりはしないか、手に入れにくくなりはしないか。だから、それに対して低硫黄重油を中小企業に使わせる、できるだけ使わせてやるようにしてやらぬと、これはたいへんなんじゃないかという意味で聞いているわけです。わかりますか。
  24. 松村克之

    説明員松村克之君) 先生御指摘のとおりでございまして、今後とも重油脱硫施設の増強を計画的に進めていきたいと思っているわけでありますが、ちなみに、内需向けに出荷されております国産の重油、この中に含まれておりますS分は逐年低下をいたしてきておりまして、たとえば四十一年でございますと二・六%、四十二年が二・五%程度でございますが、四十七年の計算では一・五%程度になっております。これを四十八年、四十九年とさらに低下させていくということで、計画的に重油脱硫施設の設置には行政指導と申しますか、指導を重ねているわけでございます。  したがいまして、現在のところでは大企業は、たとえば電力会社等は排煙脱硫をする、あるいはナフサをたく、あるいは原油なまだきをする、あるいはLNGを使うといったような方向で努力しておられるところもあるわけでございます。ただ中小企業につきましてはそういった燃料源を、たとえば原油なまだきであるとかナフサだきといったようなことはできないわけでございますので、先生のおっしゃるように低硫黄重油というものの供給が中小企業のほうにいくようにという、その程度のバランスをとれるような努力を続けておるところであります。
  25. 矢山有作

    矢山有作君 回りぐどい説明はいいので、低硫黄重油を中小企業確保させるようにしなさい、そうせぬと中小企業は規模が小さいのだから、脱硫装置がみずから持てない。だから低硫黄重油を中小企業確保するようにしてやりなさい、端的に言ってしまえばそういうことなんですよ。それに対して具体的な考え方がありますかと、こう言っているのです。
  26. 松村克之

    説明員松村克之君) 毎年、私どものほうではその年の低硫黄化目標というものをつくるわけでございますが、たとえば四十八年につきましては、内需用の重油の平均S分を一・一八%というふうにやっているわけですが、大体その程度でございますれば、その中小企業の必要とする低硫黄重油というものの確保は可能になるのではないかと、こういうふうに考えております。
  27. 矢山有作

    矢山有作君 おかしいね、私の聞いていることがわからぬかな。つまり硫黄分一%以下の低硫黄重油というのは、公害規制がきびしくなればなるほどこれは需要が増大するわけですよ。そうすると、そういうものは大企業は大きな資本力にものを言わせて手に入りやすい。ところが、中小企業はなかなか手に入りにくい。したがって中小企業のほうは硫黄分の高い油を使うようになる。ところが、中小企業は脱硫装置をしようといっても、なかなかするだけの力を持っていない。そういうことだから、その一%以下というような低硫黄重油を中小企業にできるだけ回してやるように努力はできませんかと、こう言っているわけですよ。その具体策はないのか、あるのか。いまやっているのが一・五%になったとか一・六%になったという話じゃない。
  28. 江口裕通

    政府委員江口裕通君) 要するにこれは、S分を低くしますということは、全体のLSバランスから見ますと、ベストミックスをとるということだと思います。大企業、中小企業、そのどれどれのどの分にどういうことをとったらいいかということだとまず考えるわけでございます。したがって、先ほどから長々と申し上げましたように、全体の需給バランスがまずそういうふうにならないような需給バランスをとってまいりたい、これが第一点でございます。  それから第二点といたしまして、しかしながらそうは申しますけれども、やはり地域的な問題あるいは業種間の問題というのが出てくると思います。その場合にどうするかということでございますが、われわれのほうとしては、そういうことのないように、まず全体をそういうふうに持っていくし、それから中小企業にあまりしわが寄らないように排脱の分を極力大企業に、そういうふうに指導していくということでございます。  どうしてもだめだといわれるときは、これは何かやはり考えなければいかぬと思っておりますけれども、具体的にしからばどうしたらいいかということは、地域の実情でございますとか、今後の総量規制の運用の状況等を見まして検討をするということになろうかと考えております。
  29. 矢山有作

    矢山有作君 大体わかりました。要するに一番手っとり早いのは、一%以下の低硫黄にしてしまって、それを売らせるようにすればいいんですよ。だから石油会社に重油脱硫を徹底的にやらせて、そして全部一%以下にして流していけば、中小企業は低硫黄重油が入手しにくくなるとか、しにくくならぬという問題は起こらぬ。それはそのとおりなんですよ。ところが、現状はそうじゃないからね、そうじゃないから、中小企業が低硫黄重油を使いにくくなって、しかも中小企業は脱硫装置をつけようといったってつける力がないから、ここのところが問題だという意味で言っているわけですから。まあこれ以上もう言いませんがね、言いおるところはわかると思うのですよ。だからそういう対策をひとつ十分考えていただきたい。  それから電力鉄鋼化学業界などで従来、大型ボイラーの燃料用として硫黄分の高いC重油がもっぱら使用されておりました。ところで、その価格を見てみますと、これは最近の価格、C重油が、きょう聞いたところによりますと二万円前後だということですね。それから工業用の灯油が二万七千円ぐらいだという話を聞きました。それから家庭用の灯油が一万三千円ぐらいだと、こういうふうに話を聞いたのでありますが、灯油需要の約七〇%は家庭用が占めておると、こういうふうに聞いておるのです。そうすると、硫黄酸化物の排出規制の強化に伴って、家庭用の灯油が産業用に流されるおそれがあるのではないか。その結果は灯油価格の値上がりという事態を引き起こすので、それによって被害を受けるのは一般国民であります。したがって、こういうような事態にならないように、各産業が使用しておる燃料に対して監督を強化するとともに、基本的には、先ほど言いましたような脱硫装置の設置を義務づけるなり、あるいは低硫黄原油を積極的に確保していく、こういうことだろうと思うのですがね。この点どうなんでしょう。  ちょうどこの問題について通産省のほうから電話がかかってきまして、それはもう家庭用の灯油は家庭用の灯油に売るんだということを確認してやっているから、そんなような心配はありませんとこう言うのですが、それは机の上で理屈で考えれば、これは家庭用だといっておろしたのだから家庭用以外にはいかぬはずだと、こうなるけれども、実際はそう理屈どおりでいかないので、それはこれまでの通産行政の中でもたびたび、理屈どおりにいかなくて国会できびしい批判を受けたこともあるわけですから、そういう点はどうなんですか。
  30. 松村克之

    説明員松村克之君) いま御指摘いただいた点について御説明いたしますと、現在の灯油の価格につきましては、家庭用が、お話のように一万三千円程度でございます。それから工業用が二万七千円程度でございます。非常に格差が大きくなっているわけでございますが、したがって家庭用の灯油に対する先生御指摘のような需要というものは、経済的に見れば非常に大きく強くなるのは当然でございますけれども、ただ、家庭用灯油といいますのは、御承知のとおり石油かんに詰めて販売するような種類のものでございますので、大企業が家庭用灯油を入手するという、しかも非常に安い価格で入手するということは、現在のところではむずかしいのではないかと思うわけでございます。  ただ、その他灯油、工業用灯油は二万七千円でございますけれども、この工業用灯油の需要というものは、やはり先生のおっしゃるように、これは価格の問題というよりはむしろ公害問題ということから、工業用灯油の需要というものは最近ふえてきているのは事実でございます。そうすると、工業用灯油がふえると、つまり原油からの灯油のとれる比率はほぼきまっているわけでございますから、家庭用灯油の量が不足するのではないかと、こういうお話でございますが、これにつきましては、現在のところではまだそこまでの需給バランスにはきておりませんわけでございまして、夏場の今後さらに備蓄を行なうことによって、ことしの冬の家庭用灯油の供給の確保ということははかれるのではないか、またそういうふうにいたす所存でいるわけでございます。
  31. 矢山有作

    矢山有作君 その大企業云々はどうでもいいんですよ。要するに、C重油がいま二万円前後でしょう。工業灯油は二万七千円ですね。家庭用灯油は一万三千円でしょう。したがってこの価格関係から見ても、家庭用灯油は非常に安いわけだから、これが工業用に流されるという可能性は出てくるわけですよ。たとえば一万三千円で押えられている家庭用の灯油を、やみで流して工業用に持っていけば二万円になるというのなら、これは流れるでしょう。工業用灯油がいま二万七千円でしょう。重油が二万円ですからね。公害対策上そういうふうなことが起こるのじゃないかと、こういう意味なんですよ。それを、きょう通産省からどなただったかの電話では、いやそういうことにはならぬ、家庭用は家庭用だといって流しているからそんなことにはならぬのだというのだけれども、ならぬという保証はないでしょう。家庭用一万三千円というのが、工業用に回してくれるなら一万九千円ぐらいで買ってやろう、こういうことになると流れていかぬいう保証ないわけですよ。そのことを言っている。どうなんですか、それは可能性あるでしょう。
  32. 松村克之

    説明員松村克之君) 確かに可能性としてはあるわけでございます。  それで、実際の流通としてどういうふうになっているかと申しますと、家庭用と工業用の仕切りをいたします場合に、石油会社から特約店、あるいは特約店から小売り店に仕切る場合に、その店での家庭用灯油の需要あるいは工業用灯油の需要というものを大体において把握いたしまして仕切っているわけでございますので、それほど大きな量の横流れというものはないと思うわけでございますけれども、若干の量がいわゆる家庭用以外の需要に流れるという可能性はあるわけでございます。ただ統計的に見ますと、四月、五月の灯油の生産、販売を見ますと、例年の傾向とほぼ同様であるということにはなっておるわけでございます。
  33. 矢山有作

    矢山有作君 まあ流れる可能性だけは認めたわけだから。その辺は、えらいそっちに流れて国民が迷惑せぬように、そこはやってもらわぬといかぬです。なかなか、その流される可能性があるいうことだって、何べんも何べんも言わぬとあなた方言わぬのだからね。  次に、現行環境基準の定め方の問題でお伺いしたいのですが、大気汚染物質の環境基準については、すでに硫黄酸化物、窒素酸化物、一酸化炭素などについて設定をされております。硫黄酸化物については、当初定められた環境基準の適合地域におきましても大気汚染による公害病が発生をいたしまして、その後環境基準を改定をされて現行に至っておるようであります。  環境基準は、人体に対する生理的な影響、健康被害が生じないような基準といわれておりますが、問題は、各汚染物質の基準の設定にあたって、他の汚染物質との複合作用あるいは相乗作用を検討した上で健康被害が生じないように計算されたものなのかどうかということにあると思うのです。単一の物質だけで汚染されるということはないのでありまして、多くの地域は数種類、数十種類の物質によって汚染されるのが実態であり、人体に及ぼす影響については何が決定的因子になっておるのかさえも判明しないという場合があります。したがって、環境基準の設定については、少なくとも数種類の主要汚染物質の環境及び人体に及ぼす複合作用なり相乗作用というものを十分検討して、基準を強化していくという方向で考えなければならぬのではないかと思うのでありますが、御所見を伺いたいのであります。
  34. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 御質問の御趣旨はまことにごもっともでございまして、環境庁といたしましても、大気汚染物質の複合的な影響に注目いたしておりまして、総合的な指標を作成すべく、ここ数年研究を重ねてまいっておるわけでございます。ただ、汚染物質の相加作用あるいは相乗作用と申しますものにつきましては未解明な点がかなり多いわけでございまして、総合的指標を確立するまでには至っていないわけでございます。ただ、現在におきましても、硫黄酸化物あるいは窒素酸化物、浮遊粒子状物質、こういったものにかかわります環境基準を設定いたすにつきましては、いずれも大気中にこれらの汚染物質が共存しているということを前提にいたしまして、共存による影響の強まりを考慮し、十分安全を見込んできびしい水準に設定しているのが現状でございます。しかしながら、先生が御指摘のような総合的な指標というのにはまだまだほど遠いわけでございますから、今後ともさらに精力的に研究を進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  35. 矢山有作

    矢山有作君 精力的に研究をされまして、それを環境基準の設定に大いに反映していただくように要望しておきます。  次は、今回の改正案によりますと、総量規制の対象物質としては、当面硫黄酸化物を取り上げておるようであります。窒素酸化物は、その身体に対する影響を見ると、肺の奥のほうにまで達して、肺胞をおかし、肺気腫、肺ガンの原因となることが、労働災害の症例や大阪府の衛生研究所のネズミの実験などで証明されております。また、全国の六地域で行なわれた主婦に対する調査によりましても、窒素酸化物の汚染濃度の高い地域では有症率が高くて、この調査をもととして環境基準〇・〇二PPMが定められております。東京、大阪のような過密都市においては、窒素酸化物の現在の汚染度は環境基準の四−五倍に達しておると言われております。このように重大な汚染因子の窒素酸化物について、今回総量規制の対象として取り上げることのできない理由はどこにあるのでしょうか、お伺いいたします。
  36. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 今回の総量規制は、工場等が集合いたしておりまして、現行の排出規制方式によりましては環境基準を確保していくことが困難な場合に導入されるものでございますので、多種類の発生源が多数集合しておるようなばい煙に適用されるべきものでございます。かかる見地から、指定ばい煙には直ちに政令で硫黄酸化物を指定する予定でございます。そして次の段階として、できるだけ早く窒素酸化物を追加指定したいと考えておるわけでございます。さらには、ばいじんについても順次指定していくようにいたしたいのでございます。  ただ窒素酸化物につきましては、自動車を含む多種多様な発生源から排出されますために、削減目標総量の算定に必要な汚染予測手法が確立されていないということが一つでございます。また公害防止技術開発中でございまして、実用されるまでにはかなりの日時を必要とするので、現時点では発生総量を大幅に削減するということがむずかしいという点がございます。こういった技術的な問題点が残されておりまして、今後これらの問題点の解明につとめつつ、可及的すみやかに総量規制を実施すべく努力してまいりたいと思っております。
  37. 矢山有作

    矢山有作君 この窒素酸化物を総量規制の対象として取り上げない理由、いまいろいろおっしゃったのでありますが、私ども聞いておりますところによりますと、一つは、先ほどもおっしゃっておったと思いますが、技術的な問題もあるようです。しかし燃焼技術の研究では、関西石油では液体燃料の燃焼による事例として、それから関西電力の姫路ではミナス原油燃焼によって、それから東京電力の磯子ではボイラー改善によって、幾つかの技術改善が実用化に近づいておるんだと、こういうふうな話を聞いておるわけです。  これは燃焼技術の改善の例でありますけれども、このほかにもメーカーサイドにおける研究としては、小規模ボイラーの改善について、もう十種以上のメーカーが技術をPRしておるともいわれております。それから排煙脱硝技術についても、四十九年度に技術改善を急がないと立ちおくれる情勢だというので、企業は早期実用化を促進中であるというふうに聞いております。またボイラー、加熱炉の改善につきましても、ガス燃料使用のものはほぼ完成に近づきつつあるというふうに聞いておるわけです。実用化の比較的困難な業種、ばい煙発生施設としては、鉄鋼の焼結炉なり溶鉱炉あるいは転炉、窯業のセメント、ガラス等の製造施設があるといたしましても、実用化の可能なものから逐次現実総量規制の対象としていくのが当然ではないかと思うわけでありまして、私どもは一日も早くこの総量規制の対象に窒素酸化物などを入れることによって、技術開発を法的に誘導していくということも考えなければならぬのではないか、こう思うわけです。  この早く指定をして技術開発をむしろ誘導しろという話は、この間参考人として呼ばれておいでになった四日市の吉田参考人もそういうことを言っているわけですから、そういう意味では私は窒素酸化物など早急に指定をして、総量規制の対象として指定をしていただく、こういうことをぜひともやっていただきたい、こういうふうに思うのでありますが、この点について環境庁長官のほうから再度、どうするのか、明確な御答弁を願っておきたいのであります。
  38. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御指摘のように、総量規制硫黄酸化物だけということでは、全体としての環境を問題にするのですから、当然に窒素酸化物であるとかばいじんも問題にしなければならぬわけでありますが、いま政府委員のほうから御答弁申し上げたように、技術的にもう少し解明せんならぬ面があるわけであります。しかし、矢山委員の言われたように、政治的な目標を設定して、そのことがまた技術開発を促進するという面が確かにあると思う。たとえば五十年度からのいわゆるマスキー法の実施というものは、なかなかあれは抵抗があったんですよ。そうだけれども、日産にしてもあるいはトヨタにしても、私はもう絶対変えないということで技術開発を促進した面もありますから、それをにらみ合わせまして、しかしある程度の解明はして、これなら一応やはり皆が努力すればいけるという目標の設定でないと混乱も起こりますので、それはそれをにらみ合わせて、できるだけ早く窒素酸化物も総量規制の中に組み入れるようにしたいと思うのであります。  これは通産省からも見えておるようでありますが、通産省のほうでも、脱硝技術というものは工業技術院なんかでやはり大いにやる必要がある。私は通産大臣の当時に、脱硫装置というのは、いままでのような小さなまんべんなく予算をつけるのでなくして、大きなプロジェクトをきめて、そして研究開発をやれといって予算を脱硫装置というものに、大きな一つの研究のプロジェクトとして取り上げたのでありますが、そういう形も一つの参考にしながら、民間の技術開発もいま御指摘のようにだんだん進んでおるようですが、もっと政府も工業技術院などで脱硝技術というものに対しては取り上げてもらいたい。これは私からも通産省に強く要請をしておく次第でございます。
  39. 矢山有作

    矢山有作君 ちょうど幸い通産省おいでになるわけですから、脱硝技術開発研究というのはいまどういう現状にあるのか、ひとつお聞かせ願って、今後これについてどういうふうに促進していくか、それもあわせてお聞かせいただきたい。
  40. 江口裕通

    政府委員江口裕通君) 脱硝と申しますか、窒素酸化物につきまして、いわゆる脱硫のようなかなり効果のあることをとるということは、実はなかなかむずかしいことは御指摘のとおりでございます。私は実は技術屋ではございませんけれども、硫黄と違いまして、単体として存在しない化合物体系であるということが一つ燃料対策としてはあると思います。同時に燃焼の問題がございまして、結局とろとろとやるということが一番いいわけでございます。それからさらに、さっき御指摘のありましたいわゆる排煙の段階で脱硝をするという、大きく申しますとそういうことになろうかと思うわけでございます。  現在通産省のほうでやっておりますことといたしましては、傘下の国立試験研究機関等に対しまして、公害防止試験研究のうちで特にNOx対策研究に必要な経費というものを特掲いたしてございます。これが四十八年度は約一億五千万円程度でございましたが、四十九年度におきましては三億一千万円と倍増しておるわけでございます。さらに四十九年度からの新規項目といたしまして、先ほど三木長官からもちょっとお触れいただきましたけれども、脱硫にならいまして、重要技術研究開発費補助金のうちから特ワクを設けまして、窒素酸化物対策技術研究開発費補助金、これに六億円計上しております。こういったものを中核といたしまして、特にこの補助金等につきましては、たとえば鉄鋼業界等におきましてもそういったものを研究するための一つの組合を設置しておられますので、そこへ補助金を交付いたしまして研究を促進いたしますとか、そういったようなことをつとめてまいりまして推進してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  41. 矢山有作

    矢山有作君 先ほど言いましたように、窒素酸化物による健康に対する被害というのは非常に大きいわけですから、これはぜひとも長官もお話しになりましたように、脱硝技術等の開発研究は精力的に進めていただいて、すみやかに窒素酸化物などを総量規制の対象に加えていただきたい。強く要望しておきたいと思います。  それから、ばいじんの問題については現在どういうふうにお考えになっておられますか。
  42. 春日斉

    政府委員(春日斉君) ばいじんの問題につきましても、現在種々の問題点がございますが、鋭意検討中でございまして、できる限り早く総量規制の線に乗せるべく努力いたしていくつもりでございます。
  43. 矢山有作

    矢山有作君 いずれにいたしましても、日本における大気汚染というのは諸外国に比べて飛び抜けて高いわけですから、それによる健康被害というのは重大な問題でありますから、今回取り上げられた硫黄酸化物に加えて、先ほど来論議しております窒素酸化物、ばいじん等についても総量規制の対象としてすみやかに取り上げるように重ねて強く要望しておきまして、次に移っていきます。  これは環境庁に聞きたいのですが、窒素酸化物の環境基準の達成期間につきまして、環境庁は「原則として五年をこえない期間内において、できるだけ早期に達成できるようにする。ただし、過度の人口集中地域または大規模工業立地地域にあっては八年をこえない期間内において達成するようつとめるものとする」と、こういうようにしておられるわけですが、前にもちょっと触れましたように、最近の脱硝技術なり燃焼技術なり、これはどんどん研究もされておるわけでありますから、そういう状況から、五年以内なりあるいは八年以内という許容年限をもっと短縮するということはできないのかどうか。さらに人口集中地域、大規模工業立地地域におきます中間目標、これをきめられておりますが、これももっと改善できる見通しはないのかどうか。この辺はどうでございましょう。
  44. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 実は窒素酸化物の環境基準の達成と申しますものは、硫黄酸化物環境基準の達成に比べましてかなりむずかしい問題がございます。一つは、窒素酸化物の場合は工場等の窒素酸化物の排出規制だけで足りるわけではございませんで、自動車の問題があるわけでございます。地域によりましては、自動車の排出する窒素酸化物の割合のほうがはるかに高いところもないわけではございませんので、工場等のみの窒素酸化物の規制ではなかなかうまくいかないという点もあるわけでございます。したがいまして、五年あるいは地域によっては八年という一つの達成目標と申しますのは、非常にきびしい目標であろうと考えております。もちろん飛躍的に脱硝技術が先生の御指摘のように進みつつある現状ではございますが、これをいま直ちに五年、八年の目標をたとえば三年、五年というふうに短くする、あるいは中間目標値をさらにきびしいものにするということは、現段階においては直ちに行なえるとは考えられないわけでございまして、ここ一、二年の間に技術を革新と申しますか、促進をさせることによりまして先生の御指摘の方向に持っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  45. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、次に自動車の排出ガス問題でちょっとお聞きしたいのですが、自動車の排出ガスの規制を強化するいわゆる日本版マスキー法の基準が、先般一月二十一日に環境庁から告示されましたが、それによりますと、一酸化炭素、炭化水素については現在より約九〇%、それから窒素酸化物については四五%削減というものであります。これに関連して数点御質問を申し上げたいのでありますが、この規制が実施された後の汚染は、どの程度大体削減されるというふうに試算をしておられるのですか。
  46. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 五十年度規制が実施されました場合、自動車排出ガス排出総量の低減傾向を東京湾沿岸地域、これは東京都と神奈川県、千葉県、埼玉県の一部でございますが、これにつきまして私どもいろいろな調査をしてまいりましたので、その資料からとりあえず試算してみますると、一酸化炭素の総排出量につきましては、昭和五十二年度におきまして四十一年度時点での排出レベル、ここまで下がってまいります。それから炭化水素の総排出量につきましては、昭和五十年度におきまして、昭和四十年度時点での排出レベルとほぼ同程度になるものと予想されます。窒素酸化物の総排出量につきましては、規制実施後は増加は抑制される、どんどんこれから増加するというような事態はなくなる、抑制されるものと予想されるわけでございます。
  47. 矢山有作

    矢山有作君 それで、今度の規制でどの程度網をかぶせることができるわけですか。つまり規制対象車というのはどのくらいになりますか。
  48. 春日斉

    政府委員(春日斉君) まず規制対象車でございますが、昭和五十年度四月以降新たにつくられる新車について規制されるわけでございますので、新車の率と申しますものが、実は四月に発売されるものあるいは十月に発売されるというふうに分かれておりますが、詳しい数字につきましてちょっとここではっきり申し上げかねますが、これは直ちに調べて御報告いたします。
  49. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃ次に進めましょう。使用過程車ですね、いわゆる中古車、この規制でありますが、今後型式指定なり型式認定の車は、五十年規制で使用前に一応チェックされる仕組みになっておりますから、規制値を守れるような構造になろうと思うのです。ところが、現在使用されておる中古車、それから一たん新しい型式によって車がつくられても、それは使っているうちにいわゆる中古車になってくる。そうなるとやっぱり性能も悪くなってくるのじゃないかと思うので、そういう関係から、これらに対するチェックをしていくということをどう考えておるのか。今度は中古車は全然のけられていますが、そういう点で、新型式のものが出てもこれまた中古車になっていくわけですから、中古車になった場合、つくったときは性能はよくても、性能が落ちるというようなことになるかもしれない。それらに対してどういうふうに処置するのか。
  50. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 使用過程車の規制でございますが、測定法や測定器の開発、あるいは国の検査体制の整備、こういったものが必要でございまして、実は現在は一酸化炭素についてのみ、中古車と申しますか使用過程車の規制は行なわれているわけでございます。しかし、炭化水素につきましても近く規制を行なう方針でございます。それから窒素酸化物につきましても、ただいま私申し上げましたような体制の整備を待って実施してまいるつもりでございます。  また、排出ガスの減少装置の耐久性の問題について御指摘になったわけでございますが、運輸省におかれましては、型式の指定の際に三万キロ走行車もあわせて審査の対象として、三万キロを走ったものについても審査の対象として確認を行なうこととされておるわけでございまして、耐久性の確認というものも行なわれておるわけでございます。
  51. 矢山有作

    矢山有作君 ちょっと順序が前後するのですが、いまの問題が出ましたから、規制を実施された後の検査測定体制、これが非常に私は問題があるんじゃないかと思うのです。というのは、運輸省が型式指定をやるといたしましても、完成検査のときに測定を行なって、その結果を公表するのはメーカー自身ですね。これは運輸省に大量の車の合格、不合格を監視していくという体制があるのかないのか。その体制がなければ、メーカーが言ってきたときに検査して発表するだけの話ですからね。そういう点で私は、新しい型式の車についてもはたしてこの規制が効果を及ぼすような体制ができておるのかどうかというのが、一つは問題だと思うのです。  それからもう一つ、一たん合格認定の車が市販された後の測定の問題も、これはたいへんだと思うのです。先ほどお話になったように、車検時にチェックするというふうな考え方だろうと思うのですが、その測定機器は、まずわずかに一酸化炭素がはかれる程度のものでしょう、車検場に置かれておるのはね。おそらく炭化水素や窒素酸化物についてこれを測定できるような器械というようなものは、車検場は持っておらぬと思うんですよ。そうなると、規制をやっても、その後に一体その規制が守っていける、そういう体制がきわめてあいまいなのじゃないか。それは検査測定の体制が十分でないことになる、こう思うのですが、その点運輸省はどうですか。
  52. 田付健次

    説明員(田付健次君) まず新車の点の御指摘でございますが、先生お話しの型式指定制度を、現在までに相当長い歴史を持ってやっております。したがいまして、五十年規制のスタートのときまでに、メーカーの完成検査ラインにそのチェックに必要なテスターその他必要なものを全部設置させまして、その検査を通らなければいわゆる型式指定車にならないということで、製作者にはその完成検査ラインの設備の新設をさせるということになります。もちろん私どもとしましては、それで完成検査が終わりますと検査は省略になりますので、そういう設備をちゃんとつくっているかどうか、またそれを適正に運用しているかどうかということにつきましては監査をいたしまして、従来もやっておりますが、チェックいたしてまいります。  それからなお、使用者に渡りましたあとの問題につきまして、いろいろございますが、実はこのたびの五十年規制のときは、新車の規制が一応たてまえになっております。しかし、一応出ましたあとで急速に性能が劣化するということでは意味がありませんので、私どもの型式指定をやりますときに、通常町で使っておりますような状況を再現させました三万キロ実際走行車、これをメーカーに提出させます。大体三万キロ走るということは、通常の自家用車の場合ですと、約二年ないし三年間使っているというような実績にほぼ近いわけでございますが、そういう実際に三万キロ走行させた車も審査をいたしまして、それも適合しなければいけないという基準にいたすわけでございます。  したがいまして、メーカーとしては、三万キロたたない前の段階ではかなり高い基準で完成させませんと、三万キロ走る間に多少性能が劣化いたしますので、その逆算しまして高いレベルで性能値を出したものを出してくるということを期待をいたしておるわけでございます。従来は型式指定をいたしましても、単純に審査の場合には新車だけ見ておりましたが、今回は特にそういう点も考慮いたしまして、自家用車ですと約二年か三年ぐらい使うまでの間でも、この五十年規制の基準を割らないということを保証させよう、保証というとちょっと語弊がありますが、その程度の性能基準を持たせようということで、特にそういう三万キロ走ったものについての審査も加えることにいたしたわけです。  ただ、それだけでも確実に十分であるかどうかということになると、まだ問題がありますので、使用者に渡りました後には定期点検をしていただく。これは現在もその制度が運用されておりまして、一カ月あるいは六カ月ごとに整備工場で所要の点検をするという制度もございますので、その点検制度を励行してもらって、所要の性能は劣化しないように維持していただくということを考えております。  それから先ほど車検のお話が出ました。今度は完全に中古過程車になってしまった場合、御指摘のように現在の車検場の検査の段階では、メーカーのようなあまり大量の時間をかけて大量の施設を投入してということは、とても実用に供し得ませんので、ごく簡単なやり方でチェックをするという、そういう方法しかとれないという現状であります。その方法をとることにはなりますが、いずれにいたしましても、現在一酸化炭素をやっておりますが、間もなく炭化水素も始めますし、逐次その辺のテスターを整備して、車検場における検査も始めていくということで万全を期したいと、このように思っております。  以上です。
  53. 矢山有作

    矢山有作君 三万キロ走ったときに審査をやるというのは、これはメーカーにやらせるのですか。  それからもう一つ定期点検、これもどこでやるのですか。というのは、車検場なんかでやったって、これはいま言ったような炭化水素や窒素酸化物について測定できるような機器はないわけでしょう。そこでこれは一体、どこでいま言ったようなことをやらせるのか。
  54. 田付健次

    説明員(田付健次君) 先ほどお話ししました三万キロ走行車の審査と簡単に申しましたが、審査の責任者は運輸省でございますが、実際にやります場所は、私どもの研究所がございまして、交通安全公害研究所というのがございます。そこの審査部で三万キロ走行させた現車を持ってこさせまして、そこでガス検査をやるわけです。そうしますと、一定の基準に適合した状態で以後大量生産が行なわれるということになります。  それから整備工場の問題は、使用過程車になりました段階では非常に高度なテスターを使うわけにこれはまいりませんので、先ほど御説明したような検査場でやりますような、簡易ではありますけれども、一応チェックするシステムを同様にとらせるということになろうかと思います。
  55. 矢山有作

    矢山有作君 しかし、これはいま日本は車は非常に多いのですが、相当大量の新型式のものが出ると思わなければならぬでしょうが、それを一々持ってこさせて検査するというと、どの程度できるのかな。まさに海辺の砂浜から一粒こう拾い上げるようなぐらいな検査しかできないのじゃないですか。  それともう一つは中古車になった場合の、簡易な検査だと言われるのだけれども、炭化水素だとか窒素酸化物については、測定機器自体がそういう民間車検場に設置されるような簡便なものが開発されていないでしょう。そうすると、一酸化炭素だけはやれても、炭化水素や窒素酸化物というのはまるで抜けてしまう。特に自動車の場合、問題になるのは窒素酸化物ですからね。そういった点どうなんですかね。
  56. 田付健次

    説明員(田付健次君) ちょっと説明が不十分だったかと思いますが、先ほど申し上げました交通安全公害研究所の審査部の審査は、メーカーが生産ラインを放すそのつど全部持ってくるわけではもちろんございませんで、サンプルとして車を提出させるわけでございます。その車について審査をいたしまして、もちろんそのほかの検査も全部やるわけですが、サンプルカーで検査いたしました結果、判断をするということになっております。  それから整備工場等におきますテスターは、確かに先生御指摘のような高度なものはなかなかつけられませんので、現在のところはCOメーターを持たせておりますが、間もなくHCにつきましても、先ほどお話ししたように使用過程車の規制を始めますので、それがチェックできるようなテスターを備えていく。現在のところ問題なのは、NOxがまだ相当むずかしい点がございますので、この点につきましてはこれから開発をしていきたい。ただし、メーカー段階で行ないますテスターはできておりますが、これは相当時間をかけて高度なテストをやるという意味の試験機はできておりますが、整備工場とか車検場等で使いますものにつきましてはまだ少し開発をする余地が残っておりまして、現在検討しておるというのが状況でございます。
  57. 矢山有作

    矢山有作君 日本版マスキー法だといって、たいへんもてはやされるような規制をやりましても、問題は検査測定体制がしり抜けになっておったのでは、これは話にならぬわけですからね。その点は運輸省が直接責任のある問題でしょうから、精力的にそういった検査測定体制を整備するということでやっていただかなければいかぬし、それから環境庁のほうも、規制のしっぱなしじゃ効果がないわけですから、その点は十分今後必要な技術開発は促進をして、万全の検査測定体制を早急に整備するということで努力をしていただきたいと思います。  それからこれはちょっとややこしい話ですから、ここまでずっと見ておられるかどうか、多少気にはかかるのですが、現在及び今後における新型車と使用過程車の割合がどういうふうに変化していくのか。それから新型車と使用過程車がそれぞれ排出する汚染物質の割合なり、それが大気汚染へ寄与する寄与率、こういう点はどういうふうに見られておるのか。それから五十年規制はこういった問題をずっと考えながらやられたものなのかどうか。その辺はどうですか。
  58. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 確かに非常にむずかしい問題でございますが、新車に更新されます率と申しますか、これは大体平均で五年に一回、年間二〇%が新車に更新されていくというような数字も出ております。したがいまして、新車だけつかまえてまいりますと、五年間で大体例外を除きまして新車に入れかわってしまう。もちろん中には十年もお使いになる方もありましょうからあれでございますが、平均としてはそういうことでございます。こまかい点につきましては自動車公害課長が参っておりますので、ちょっとお答えさせます。
  59. 小林育夫

    説明員(小林育夫君) いま先生の御質問の、将来の車の代替まで考えて五十年規制をやったかという御質問でございますけれども、もちろんこれには非常に大きな仮定がございます。先生も御承知のように、最近は非常に車の新車の売れ行きというのが落ちておりまして、私どもが試算したものとは異なっておりますけれども、私どもが試算いたしました内容は、大体年率一〇%で車がふえる。それからそのときの新車率と申しますか、全体の車に対する新車の割合、これを二〇%ということでこの試算をやっております。その試算をやりました結果が、先ほど局長が御説明したものでございます。この新車率の二〇%というのは、地方都市ではこれほど早くはございませんけれども、東京とか大阪とか名古屋とか、そういう大都市におきましては大体このような新車率でございます。  したがいまして、そういう前提のもとに排出量を試算いたしました結果が、先ほど申し上げましたような数字になるわけでございまして、そういう意味におきましては想定をしているということが言えるわけでございますけれども、ただ、非常に要素として変わる可能性がありますのは、私どもが試算したとき以降、石油危機というようなものがやかましくなりまして、今度の公害規制をいたしますと、燃料消費がどうしても一〇%程度ふえてまいります。そうすると、それが車の代替に影響を及ぼす、あるいは重量税等の影響も出てくるということで、必ずしも私どもの試算どおりにはまいらないかとも思いますけれども、私どもが試算した時点におきましては、いま申し上げたような過去の統計に基づいた資料を使って試算したものでございます。
  60. 矢山有作

    矢山有作君 だから、いまあなたが御指摘になったような問題があるから、はたして五十年規制値で出されたものが、それでいいと言えるのかどうだろうかという疑問が一つあったわけですよ。それでいまのお尋ねをしたので、そういう点から言うと、やっぱりこうしたものの規制というのは、状況の変化を見ながら現実に対応するように、きびしくする方向で考えていただきたいと思います。そういうふうにひとつぜひ努力をしていただきたい。  それから軽量バス、軽量トラックの排気ガスの削減率については、乗用車の排気ガス削減率に比べまして非常に低くなっておりますね。つまり乗用車についてはCOが八九%、HCが九一%、NOxが四五%であるのに、軽量バスなりトラックについてはCOが二九%、HCが二八%、NOxが一七%となっておりますが、こういうふうに軽量バス、軽量トラックについて軽くしてあるのは、どういう理由なんでしょうか。
  61. 小林育夫

    説明員(小林育夫君) お答え申し上げます。  私どもが中公審から御答申をいただきました内容は、乗用車についての規制を答申を受けたわけでございます。したがいまして、その答申につきましても一応中間報告ということになっておりまして、まだ俗にいうマスキー並みの規制が及んでおるのは乗用車だけだということでございまして、ディーゼルとか大型ガソリン等についてはないわけでございます。  今回、五十年の乗用車規制と同時に、ガソリンのトラック、バスにつきましても規制の強化をやっておりますが、との考え方は、現在の技術で対応できる最大限の規制だということで処理しております。したがいまして、今後はこれらのものにつきましても中公審の御答申を得て、いわゆるマスキー法並みの規制をやっていく、そういうことになろうかと考えております。
  62. 矢山有作

    矢山有作君 マスキー法並みの規制になるべく早く持っていくことが、同時にそういった技術開発を促進することにもなるだろうと思うのです。だからそうした点は、そういった点に着目しながらひとつやっていただきたいと思います。  それから、過密都市におきます窒素酸化物の発生に対する寄与率を、東京都が調査しておるので見ますというと、固定発生源が三一%、自動車が六九%となっておりまして、自動車による汚染寄与率が非常に高いわけです。光化学スモッグの原因物質についてはいろいろの物質が原因として取り上げられておりますが、いずれにいたしましても、窒素酸化物が重要な要因となっておることはわかっているのでありますから、人体への被害が生ずるような事態が発生した場合には、これは交通規制等も発動すべきではないかと思います。  そこで、大気汚染防止法による規制の発動要件について、国ではどういうふうに考えておられるのか。これは公安委員会とも関連があるのですが、もしおわかりになれば。
  63. 小林育夫

    説明員(小林育夫君) 大気汚染防止法の二十三条に「緊急時の措置」といたしまして、政令で定める濃度以上に環境の濃度が高くなった場合には規制をすることができるわけでございます。ただ、ただいまその政令できめられております値というものが、現実にはこれをして交通規制を全面的にするというような現状にはなっておりません。したがいまして、実際に発動されておりますのは、第二十一条の一項にございますところの都道府県知事による「要請」というところが現在の汚染状況でございますので、実際にこの二十三条を発動されて、そういう交通規制がかけられたという事態はないわけでございます。  それからまた実際問題といたしまして、こういう要請をしなければならない事態を招くということは非常にたいへんなことでございまして、また実際問題として、それではその場で発動できるか、たとえば非常に光化学スモッグ等でオキシダントの濃度が〇・五以上になったというような事態に、交通規制をその時点でやって間に合うかというと、おそらくこれは間に合わないであろうと思います。したがいまして、こういう事態が発生する以前に発動しなければならぬということで、実は光化学スモッグ対策推進会議というのがございますが、これは各省庁でつくっております。そこにおきましても、警察庁においても、そういう事態を未然に防ぐように研究をしていただきたいということを御相談申し上げている次第でございます。
  64. 矢山有作

    矢山有作君 この交通規制の問題についても、やはり私は具体的に検討を進められて、いまの汚染状況から見まして、どういう状態のときに発動するのかというものはちゃんと準備をしておく必要があるのではないか、そういうように思いますので、せっかく研究されておるのでしたら、その結果を早く得るようにしていただきたいと思います。  いずれにしても、私はこの自動車の問題というのは、これは総合交通体系の中で考えて、公害防止ということを念頭に置きながらやらなければならぬのだろうと思うのですが、公害防止という観点から考えて、どういうふうな総合的な交通体系というものを持っておられるのですか。ここまでは全然まだ考えておらぬわけですか。
  65. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 自動車交通におきます光化学対策と申しますものは、まず道路の新設にあたりては、環境アセスメントということはもうもちろん今後最重要になることは申すまでもないわけでございますが、すでにできてしまった道路におきましては、やはりその道路におきます自動車の交通総量とでも申すべきものを今後は設定いたしまして、それによってしかるべく交通規制もやっていくという方向に向かわないと、これはなかなかできないものではないかと考えております。ただし、これは単に交通規制を、ことに直接規制を行なうということは、言うはやすく行なうはかたいわけでございまして、あらゆる問題に波及いたしますし、場合によると社会混乱にまで波及するわけでございます。これは十分関係省庁と検討を、現在も行なっておりますが、さらに検討を加えていく所存でございます。
  66. 矢山有作

    矢山有作君 たびたび総合交通体系ということでわれわれは話を聞くわけです。だから、自動車による公害防止ということを考える場合、そういった総合交通体系というものをどうされるのかということの中で、やはりある程度関連をさせながら問題を処理するという姿勢が必要なのじゃないかと思いますから、これはぜひそういう総合交通体系を考える過程の中で、これを取り入れるように考えていただきたいと思うのです。  それから炭化水素の環境基準の問題なんですが、政府は昨年の四月に中央公害対策審議会に諮問をしておられるようですが、この環境基準の設定の見込みはどうですか。いつごろ設定できるような見込みでしょうか。  それからまた五十年規制、今度発表されましたね。これによる炭化水素の削減率というのが先ほど言いましたように示されておるわけですが、これは環境基準の達成というものとリンクをされて考えられたのかどうか、その辺はどうですか。
  67. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 炭化水素にかかわります環境基準の設定でございますが、御指摘のように、現在中公審の大気部会の炭化水素環境基準専門委員会で審議を精力的にお願いしておるわけでございます。ただ、現在問題になっておりますものは測定法、なかなか問題点が多うございます。それからいろいろなまだ環境基準をつくるにあたってのデータの不足ということが指摘されております。したがいまして、早急にそういった資料を収集し、かつまた測定法についての成案を得次第基準を設定する予定で作業を進めておるわけでございます。早急に行なう予定でございます。
  68. 矢山有作

    矢山有作君 大体いつごろの見込みですか。
  69. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 本年度末をめどといたしております。
  70. 矢山有作

    矢山有作君 私ちょっとうっかりしていましたが、今度示された五十年規制との関連はどうなっていますか。
  71. 小林育夫

    説明員(小林育夫君) ただいまも局長が御答弁申し上げましたように、まだ環境基準というものができておりません。したがってこれとリンクはございません。それから窒素酸化物につきましてもリンクは当然ございません。  先ほどお話にもございましたように、この五十年の規制をやるというのは、規制をかけることによって技術開発させる、そういうねらいが非常に大きいわけでございまして、本来ならばその環境濃度なり人間に対する影響というものが確定された事態で、どの程度下げるのか、それと、それの固定発生源と移動発生源の割合をどうするか、そういうものがすべて解明がなされた後にそれぞれの削減率というものをきめるのが妥当なのかもしれませんけれども、このまま放置するということが非常に重大な問題であるということで、新しく技術開発させるのだという意図のもとにされたのが五十年規制でございますので、そうした意味におきまして、それらとのリンクは現在のところは考えておりません。ただ将来の問題としては、そういうものとリンクして考えなければいけない、そういうふうに考えます。
  72. 矢山有作

    矢山有作君 五十一年規制は大体いつごろやられるようなお気持ちですか。
  73. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 五十一年度規制の問題でございますが、五十一年度規制は、御承知のとおりいわゆる五十年度規制のうち窒素酸化物の減少について格段に行なうというものでございます。すでにこの方針は示してあるわけでございますが、この目標達成のためには、いろいろ排出ガスの防止技術開発が必要でございまして、今後さらに自動車メーカーのそういった技術開発を促進させる考えでございます。環境庁におきましては、五十一年規制に対します自動車メーカーの防止技術開発状況を確実に把握するために、六月の六日からヒヤリングを行なう予定にいたしております。
  74. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、五十一年規制は、先ほどおっしゃったように窒素酸化物について現在の九〇%カットするという内容でありますが、これは米国ではGMやフォードなどの大手メーカーの圧力で、五十年規制も五十一年規制も延期されましたね。環境庁としては、いまお話しのように今後メーカーとの間でヒヤリングなどを開いて、五十一年規制に向かって進むのでありましょうが、五十年規制も私ども容易でなかったという話を聞いたわけですが、五十一年規制について、これはメーカー側から相当、規制値を緩和したり実施時期を延ばすような働きかけがあるんじゃないかと思うのですよね。この圧力に負けたのじゃこれはたいへんなんで、その辺を私は十分考えて、メーカーの圧力で規制値がゆるめられたり、あるいは実施時期がずらされたりすることのないように対処していただきたい。これは副総理がおられるわけですから、おそらくそんなへたげな圧力にお負けになるようなことはないと思いますが、ひとつ御見解を承っておきたいのです。
  75. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 正直に申しますと、この問題というのは非常に私も頭の痛い問題であります。と申しますのは窒素酸化物の場合は、本田とか東洋工業などが無公害車を開発したわけです。したがって、大きなメーカーが延期を希望しましても、実例があったわけですね。今度はどこもないのですよ。五十一年規制というものは、いまだこの規制をパスする無公害車といわれる車体を製造したメーカーがない。したがって、ここで矢山委員から問い詰められましても、できるだけメーカーの技術開発を促進するように努力をする、そのためのヒヤリングを開いて、それは単なるヒヤリングだけでなしに、大いに技術開発促進の機会たらしめようとしておるのですが、方針はむろん変更しておるわけではないので、極力これが実施できますように技術開発を促進をいたしますと、ここでやっぱり答弁はごかんべんを願いたいと思うのでございます。
  76. 矢山有作

    矢山有作君 窒素酸化物について、本田技研、それから東洋工業ですか、二業者が非常に技術開発進んでおったから、確かに私はあの問題については、大手の日産もトヨタもどうもならなかったと思うのですね、幾ら圧力かけても。また、事実そういうところがやっておるのに、日産やトヨタの圧力で負けて、ゆるめられたとか延期されたといったのじゃ、これは政府のメンツもないでしょうから。ところが、今度はそれがないだけにわれわれは心配なわけですよ。だからやはり政府の、五十一年規制をやるんだ、答申を尊重しながらやるんだという強い姿勢があるということが、これはやむにやまれずメーカーのほうも、一生懸命何とかしなければならぬというので技術開発に取り組むわけですから、ここのところをゆるめてしまうと、メーカーというのはなるべくもうけようもうけようとして、そういうところに金を出したがりませんから、かえって開発をおくらす結果になると思うのです。したがって、この点は私が申し上げるまでもなしに、皆さんのほうが先刻御承知でありますから、政府としてはきびしい姿勢でもって臨んでいただきたい、このことをまず申し上げておきます。  それから、この問題についての最後でありますが、窒素酸化物は、一酸化炭素を減らそうとするとその副産物として発生するというふうに聞いております。その窒素酸化物の減量のために金属触媒を使う。そうすると今度は、金属微粒子による二次公害の発生の危険がある。また一方ガソリンについても、大気の鉛汚染を防ぐために無鉛化をはかるというと、車はエンストを起こして、それを避けるために今度はトルエンなどの芳香族炭化水素を混入する。そうするというと、光化学反応で硝酸メチルができる。この硝酸メチルは、筋肉硬直だとか、目まい、吐きけなど重症の光化学スモッグ禍の元凶物質であるという有力な証拠が、横浜国立大学の環境科学センターで見つかっておる。また、ガソリンや排気ガスから強力な発ガン物質が検出されたという報告も内外にあるようであります。  こう見ますと、これらの危険物質を抜本的に減らすということから見ても、いまではもう車そのものにきびしい総量規制をかけなければだめなのじゃないか。つまり車そのものを規制していくという強い姿勢が出てこぬと、もう対症療法的なやり方だけではどうにもならぬのじゃないかというところにきているような気がするのですが、これはたいへんむつかしい問題ではありますが、ちょっと参考までに、お考えがあるならば承っておきたいと思います。
  77. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 非常にむずかしい問題でございまして、自動車の有用性と申しますものはわれわれ決して否定するものではございませんが、その一面、有害性というものにつきましても先生が御指摘になったとおりでございまして、あちら押えればこちら立たずというような問題がぎしぎしと、排出ガスの規制を行なってまいりますと目立ってまいることは事実でございます。したがいまして、私どもはこれを、一つには技術革新によってどちらも成立するような方法をとってまいる、かように考えるわけでございます。  もちろん、自動車の問題は決して排出ガスの問題のみならず、いわゆる交通公害一つとして事故の問題もございますし、そのような観点からいたしますると、自動車が現在二千六百万台登録されておりますが、はたしてそれが日本の道路面積からしていいかどうか。これはもう十分検討をし、総合的に先生のおっしゃるような量そのものの規制というものも考えていかなければならない段階である、かように考えております。ただし、それをどういう方法で、いつから、どこが中心になってやるかというようなことにつきましては、私お答え申し上げられないというわけでございます。
  78. 矢山有作

    矢山有作君 車の問題はたいへんむつかしい問題であると思います。しかし率直に見てみまして、いまの日本の車の状況というのは、これは全く私は、常識外と言ったらしかられるかもしれぬが、あまりにも過度になり過ぎておると思うのです。だから、こういう問題を念頭に置きながら今後の交通問題全体を考えていかぬと、これは公害が出たからその対症療法的に規制をするんだということだけはもう追っつかぬようになるのじゃないか。しかも、どんな技術開発をやったって公害が全然出ないということにはならぬですからね。その辺はきょうすぐ御答弁になれるような問題でもないということは私もわかりますから、しかし、そうは言いながら、人の健康に関連をしてくるなら、重大な問題として考えておくことは考えておかにゃならぬ問題ですから、今後の検討に待ちたいと思います。  それからこの間、四月の一日だったと思いますが、硫黄酸化物の排出基準について、これまでよりも平均で大体三一%ぐらいきびしい基準値がきめられて告示されたようであります。それによりますと、全国を汚染の度合いに応じて七ランクに分けた上で、最低基準値を二二・二から一七・五に引き締めるなど、全国的に基準値を強化しております。規制地域の数についても、二十九地域をナショナルミニマム地域から新たに汚染地域へ組み入れているほか、工場を新設する場合に特にきびしい規制がかけられる特別排出規制地域に十地域を加えておりますが、今回の基準強化は、いわゆる石油危機等の関係からとりあえず四十九年度を目標としたK値となっておりまして、硫黄酸化物の新環境基準の達成目標は五十二年度末になると伝えられておりますが、政府は五十年度以降、どのように段階的にK値の強化をはかる予定であるのか。また、五十二年度末の目標というものを早めるということはできないのか。以上の点でお伺いいたします。     —————————————
  79. 森中守義

    委員長森中守義君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、加藤シヅエ君、鶴園哲夫君、及び杉原一雄君が委員を辞任され、その補欠として村田秀三君、沢田政治君及び川村清一君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  80. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 先般のK値の規制の強化は、今後K値規制を段階的に強化いたしまして、昭和五十二年度末までに、昨年五月に改定強化されました二酸化硫黄の環境基準を達成するためでございます。そしてその第一段として、昭和四十九年度の改善目標を設定して強化したものでございます。本年度中と申しますか、本年度末には、さらに昭和五十年度以降を目標としたK値規制の強化を行なわなければならないものと考えております。  今後の強化の方針といたしましては、五十二年度末までに環境基準の達成をはかるため、段階的に排出基準の強化をはかっていくこととしておるわけでございます。したがいまして、これは段階を追って強化していくわけでございますので、なかなか五十二年を五十一年までにというふうには、全国的に見ればむずかしいと思います。ただ、地域によってはその目標をもっと早期に達成し得るところも、これは出てくるはずであろうと見ております。
  81. 矢山有作

    矢山有作君 大気汚染防止法の第十六条では、「ばい煙排出者は、総理府令で定めるところにより、当該ばい煙発生施設に係るばい煙量又はばい煙濃度を測定し、その結果を記録しておかなければならない。」と規定をしておりまして、さらにその測定方法については、規則第十五条でその具体的な方法を定め、ばい煙排出者みずからの測定義務を課しております。そして排出基準がほんとうに守られているかどうかを確かめる手段としては、監視、監督の任にある知事による立ち入り検査、報告の聴取等があります。しかし、公害監視の行政能力から見て、すべてのばい煙発生施設を常時監視するということは至難なことと言えると思うのであります。したがって、行政による監視機能を補完する意味におきましても、発生源者自身による常時測定体制を強化しなければならぬと思います。規則第十五条によれば、「硫黄酸化物にかかるばい煙について見れば、毎時十立方メートル以上のばい煙発生施設」については、二月をこえない作業期間ごとに一回以上測定を行なうことと規定しております。つまり年六回測定をすればよいということになるわけです。こういうようなゆるやかな測定義務規定で、はたして発生源の排出基準違反を取り締まることができるのかどうか、疑問であります。地方公共団体によりましては、大規模発生源の連続自動測定器と公共団体の設置する大気汚染監視センターとをテレメーターシステムで連結をし、常時監視の実効をあげているところもありますが、この措置はあくまでも行政指導と、これに対する企業側の協力で実施しておるのに過ぎないのでありまして、法の規定による裏づけはないのであります。  したがって、今回の総量規制方式の採用を契機として、せめて指定地域の特定工場等についてだけでも連続自動測定機器の設置を義務づけるべきではないかと思います。また、規則第十五条の一号、三号、四号で定めておる硫黄酸化物、ばいじん、有害物質の測定回数については、二カ月に一回ということでなしに、測定回数をもっと大幅にふやす必要があるのではないか。以上の点について御見解を伺います。
  82. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 御指摘のように、現在大気汚染防止法の第十六条の規定によりますと、ばい煙の排出者は定期的にばい煙量またはばい煙濃度を測定し、その結果を記録することが義務づけられておりまするが、これはその結果によりまして排出基準違反等摘出することを目的とするわけではございませんで、排出基準等の実質的な履行確保することを期待しようと、こういう目的でございます。確かに現行の測定記録の回数は、二カ月をこえない作業期間ごとに一回と定められておりまして、対象企業に小規模の零細企業群も含まれているということを考えますと、工場等の規模に応じた適切な測定記録回数については、実態を把握しながら今後十分検討いたしたいと思います。  ただ、非常にひんぱんな測定記録の回数を一律に義務づけますると、小規模零細企業の問題が出てまいるわけでございます。もちろん、これも先生の御指摘にありましたとおりに、大規模な工場等におきましては、煙道中の排ガス量や燃料使用量等を連続測定する測定器をみずからの負担で設置いたしまして、都道府県公害監視センターとテレメーターで結ぶ常時監視のシステムが非常に普及しつつございます。これの整備促進をはかることによりまして総量規制の実効をあげてまいりたいわけでございますが、確かに法律で規制はいたしておりませんが、これに対しまして都道府県がテレメーターで結ぶ問題につきましては、すでに予算補助をいたしておりまして、これは特定工場の主たるものにつきましては、ほぼこのテレメーターシステムで結ぶことになるはずでございます。
  83. 矢山有作

    矢山有作君 だから一つの重点を、今度総量規制方式を採用するわけですから、その指定地域の特定工場等についてだけでも、いま言った連続自動測定機器を設置させるという義務づけをやったらどうですか。
  84. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 検討いたしたいと思います。
  85. 矢山有作

    矢山有作君 こういう特定工場等は、あなたが先ほどおっしゃったように非常なたくさんの排出をやるわけですから、これはやっぱり私は常時測定できる態勢というものを整備しておく必要があると思うのですよ。任意にやるとかという形だけでは十分私は効果をあげることができぬと思うので、これはぜひ義務づけを考えてもらいたいと思いますが、どうでしょう、長官
  86. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 義務づけをするように努力をいたします。たいてい義務づけたほうが言われるとおりいいと思いますから、これは義務づけるように努力をいたします。
  87. 矢山有作

    矢山有作君 それから局長、測定回数を二カ月に一ぺんというのをふやす、これも一律にはいきにくい場合があるだろうと思うのです、あなたのおっしゃるように非常に小規模の企業に対してまではね。しかし、ある一定のものは私はやれると思うのです。二カ月に一ぺんでなくても、たとえば一カ月に一ぺんやらせるようにするとか、そういう点はやはりあわせて検討されたらどうですかね、実現の方向に。
  88. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 先ほどもお答え申し上げましたが、十分検討いたしたいと思います。
  89. 矢山有作

    矢山有作君 総量規制基準違反の問題についてお伺いしたいのですが、法案によりますと第九条の二では、知事は「特定工場等に設置されるすべてのばい煙発生施設に係る当該指定ばい煙の合計量が総量規制基準に適合しないと認めるときは」「指定ばい煙の処理の方法の改善、使用燃料の変更その他必要な措置を採るべきことを命ずることができる。」とありますし、同第十四条の第三項では、「知事は、総量規制基準に適合しない指定ばい煙が継続して排出されるおそれがある場合」「人の健康又は生活環境に係る被害を生ずると認めるときは」特定工場等の設置者に対して「指定ばい煙の処理の方法の改善、使用燃料の変更その他必要な措置を採るべきことを命ずることができる。」とあります。さらに法案の第十五条の二第一項、第二項では、「知事は、いおう酸化物に係る指定地域において、特定工場等以外の工場又は事業場における燃料の使用が燃料使用基準に適合しないと認めるときは、」当該工場等の設置者に対し「燃料使用基準に従うべきことを勧告することができる。」、「その勧告に従わなかったときは」「当該燃料使用基準に従うべきことを命ずることができる。」と、それぞれ規定しております。そして知事の命令に違反した者に対しては、罰則の改正によって、それぞれ懲役または罰金刑に処するということになっておるわけです。  その仕組みは、総量規制に違反するばい煙を排出するような施設を設置しようとしたり、操業中の施設が総量規制に違反する排出行為を継続している場合は、一たん計画変更命令、改善命令を出して、その命令が守られなかったときに初めて罰せられる、こういうことになっているわけです。つまり、総量規制の基準違反については直罰方式は採用してないわけです。  旧ばい煙規制法は、間接処罰方法、こういう呼び方が適当かどうかわかりませんが、間接処罰方法をとっておりましたが、それでは手ぬるいとの批判がありまして、現行法では間接処罰の方法も採用しながらも、一方においては、法第十三条に定める排出基準に適合しない場合は、法第三十三条の二によって直ちに罰することができる、いわゆる直罰方式をも採用したわけであります。なぜ総量規制方式を導入することになったか、その公害状況の背景を考えるなら、総量規制に対する企業の責任を自覚させて、基準を順守させる強い効果を法律に付与するために、総量規制基準違反に対する直罰方式を採用すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  90. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 今回の改正法案におきましては、以下の理由によりまして総量規制基準違反に対しまして直罰は科さないことといたしたのでございます。  まず第一に、総量規制基準は排出基準と異なりまして、適用を受ける特定工場等の数が限定される結果、行政上の指導監督を十分行ない得るものと考えられるばかりではございませんで、今回の改正による改善命令等の措置及びその命令違反に対する罰則規定によりまして、特定工場等に総量規制基準を十分順守させ得るものと思われるわけでございます。  それから第二番目は、総量規制基準は、特定工場等に対しまして現行の排出基準に付加して適用されるものでございますから、特定工場等についても、その個々のばい煙発生施設について現行の排出基準の違反があったときは、当然直罰が科されるものでございます。
  91. 矢山有作

    矢山有作君 これは先ほども言いましたように、総量規制基準まで導入しなければならなくなった公害の現状を考えたとき、ぜひとも私どもは基準に違反した場合の罰則規定を設けるべきだと考えておりますので、この点についてはそういう方向で私は理事会なりででもぜひ検討していただきたい、こういうふうにお願いをしておきたいと思います。
  92. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいまの矢山君の要望につきましては、後刻理事会で十二分に検討することにいたします。
  93. 矢山有作

    矢山有作君 公害監視測定器材の整備費に対する国庫補助の引き上げについて申し上げてみたいのでありますが、公害諸法の規制の強化、規制権限の地方公共団体への委譲に伴いまして、地方公共団体の監視取り締まり体制をすみやかに整備する必要があります。  四十九年度予算を見ますと、地方大気汚染監視等設備整備費補助として七億八千万円余、地方公害研究所等設備整備費補助として二億六千万円余、その他水質汚濁についても予算化されておるようであります。このほか技術職員の増員等につきましては、地方交付税で財政的助成措置がなされておりますが、必ずしもこれで十分とはいえない状況であります。  今後、国としては環境監視網等をはじめ監視機能の整備及び技術職員の増員、養成並びに施設運営等、地方公共団体の財政的負担を軽減するために大幅な援助をはかる必要があると思いますが、今後の姿勢と具体的な方策を伺いたいと思います。
  94. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 地方公共団体の監視測定体制の整備は、有効かつ適切な大気汚染防止対策の実施にとって緊急欠くべからざるものでございまして、国といたしましても、従来から積極的にその整備を推進してまいった点でございます。昭和四十九年度におきましても、大気汚染等監視設備整備費補助金等はかなりの増額を見ることができたのでございますが、今後ともこの問題につきましては、引き続きその拡充につとめてまいります。地方公共団体の負担も軽減すべく努力をしてまいりたいと考えております。
  95. 矢山有作

    矢山有作君 最後にこの際、法案の中の具体的な問題についてお伺いしておきたいと思います。  第五条の二によりますと、「政令で定める地域にあっては」云々ということになっておりますが、この「政令で定める地域」という地域指定の要件は、どういうふうにお考えになっておりますか。その政令の中身についてお伺いしたいと思います。
  96. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) お尋ねの第五条の二の第一項におきます「政令で定める地域」の要件は、この第五条の二、法律のみが要件だと私ども考えておりまして、それは繰り返すようでございますが、工場または事業場が集合している地域で、そして現行の規制方式によっては大気の環境基準の確保が困難であると、かように認められる地域として考えていくというのが基本的な要件である、かように考えております。そして、この地域について政令では具体的に、たとえば何県何市何町というような個別的な地域名が指定される、こういうふうに予定しておるところでございます。
  97. 矢山有作

    矢山有作君 次に同じく五条の二ですが、「当該指定地域において当該指定ばい煙を排出する工場又は事業場で総理府令で定める基準に従い都道府県知事が定める規模以上のもの」という規定がありますが、この「総理府令で定める基準」というのは、具体的にはどういう基準をお定めになるわけでありますか、それが一つ。それと、「都道府県知事が定める規模以上のもの」とあるわけでありますが、都道府県知事が定める規模との関連性はどうなりますか。
  98. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) お尋ねの前段の「総理府令で定める基準」の中身につきましては、現在のところ、こういう実態がございますので、かように考えておるわけでございます。たとえばのことで恐縮でございますが、いわゆる水島地域を例にとりますると、あそこの水島地域におきます対象工場が全体で百六十六工場あると承知しておりますが、そのうち上位二十六工場をとりますると、SOxについて言いますと、その排出量は全体地域における排出量の九五%をこえるというような実態を持っておるわけであります。このような実態は、四日市におきましても同じような傾向を示しておりますし、東京、大阪はややその比率は鈍化いたしますが、まあ似たような傾向を持つということが一般的に言えるわけでございます。  そういう意味におきまして、基本的に私どもは特定工場としていわゆる総量規制基準の対象にいたしますのは、そういう大規模の大口の工場を直接に相手にしたいと考えておるわけでございます。それが全体の汚染物質の排出量の八割とか九割を占める。それを押え込めば全体のマクロの目的を達成することが可能である。こういう基本的な考え方に立っておるわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、この特定工場を定める、その定め方の「総理府令で定める基準」というのは、ただいま申し上げましたような意味合いにおきまして、その汚染物質の排出総量のたとえば八割以上をシェアとして持つようなものを包含するような工場、こういうような基準をいまのところ予定しておるところでございます。  したがいまして、その基準ができますと、都道府県知事はその基準に従いまして、八割以上の工場を押えられるような、地域特性を考えましてそういうものを知事が定めてまいりますので、知事さんといたしましてはおそらくは、これも仮定の問題でございますが、一日の排出SO2の量が一定以上のもの、たとえばでございますが、そういうものとして大きな工場をきめていく、こういう考え方でございます。それが原則でございます。
  99. 矢山有作

    矢山有作君 具体的にはいま何%ぐらいを考えておられますか。
  100. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) おおよそのめどとして八割以上ぐらいのシェアを考えておりますが、これはなお、ただいま部内的な研究グループを持っておりまして、外部の先生方にも参加していただいておりますし、また地方公共団体の方にも参加していただいておりますので、それらの方々の御意見も十分参考にしてきめていきたい、かように考えておるわけでございます。
  101. 矢山有作

    矢山有作君 最終的にはまだきまっておらぬようですが、できるだけ総量規制の効果があがるように、網をかけるパーセンテージを高めるような方向で処理していただきたいと思うのです。いいですね。
  102. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) 御趣旨承りました。
  103. 矢山有作

    矢山有作君 それから同じく第五条の二でありますが、「指定ばい煙総量削減計画を作成し、これに基づき、総理府令で定めるところにより、総量規制基準を定めなければならない。」となっておるわけでありますが、この「総理府令で定めるところ」という、その内容は何でしょうか。
  104. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) 削減計画に基づきまして総量規制基準が定められるわけでございますが、その定める準則といたしまして、よるべき基準といたしまして、府令の内容といたしましては基本的に、各工場に適用が及ぶところの規制基準でございますから、その規制基準が、何と申しますか、計算尺的にしっかり内外ともにわかるようなものさし、こういうものを考えなければならない、こういう基本原則に基づきまして、現在のところ、これも予定でございまするけれども、その各工場において使用される燃料あるいは原料、幸いにSO2について言うならばそういう個体の物質から出るS分が問題でございますので、そういう燃料なり原料の使用量、これをベースにものさしをつくりたいと、かように考えておるわけでございまして、それが総理府令の具体的な中身になる予定にしております。  そのほかに、前の委員会にも御議論をちょうだいいたしましたが、いわゆる新増設に対する留保分というようなものもこの総理府令で、どの程度とるか、こういうものについても定められる範囲内で定めてまいりたいと、かように考えておるのが中心的な内容でございます。
  105. 矢山有作

    矢山有作君 新増設に備えて余裕を持っておくという、そこらにも私どもはやっぱり規制の上で不安を感ずる点があるわけです。だから、できるだけそういう見方というのは縮めていっていただきたいというのが、一つの考え方であります。  それから総量規制基準を定める場合、この間も参考人の人が言っておられましたが、実態でみんなが納得するような定め方をしてもらわぬと、これは問題が出てくるところでありますから、この点についても十分御留意を願いながらやっていただきたいと思います。
  106. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) 先生御指摘の点を十分注意しながらやってまいりたいと思います。
  107. 矢山有作

    矢山有作君 次は同じく第五条の二でありますが、「当該指定地域を二以上の区域に区分し」というふうにいっておられますが、具体的にはどういうような地域がこれに該当するのでしょうか。
  108. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) これは五条の三にも出てまいりますが、「指定地域を二以上の区域に区分する」という基本的な考え方につきましては、一口に指定地域と申しましても、汚染源の立地の状況なり、あるいはそのあり方、あるいは気象、地形というものに左右されまして、指定地域と一口に申しましても、その地域の中でいろいろと様相が違う分野、部門があるわけでございます。工場中心にした地区でございますとか、中小企業が団地のように形成されている地域でございますとか、あるいはビル街、商店街というような一般都市的な姿を見せておりますところがございますとか、こういうような区域を含んでおるわけでございますので、それぞれの区域によりまして、悪い汚染物質の発生源の性格も変わってまいります。したがいまして、汚染濃度の分布も違うわけでございます。そういうようなこと、社会的なあるいは自然的な条件を考慮に入れまして、そういう意味で地域を区分いたしまして、よりきめのこまかい施策を計画の上で樹立することが必要である、かように考えたわけでございます。  そういうことで、具体的に現在どこの指定地域における、たとえばこういう区域が二つに分かれる、三つに分かれるということを現在のところはっきり申し上げられませんが、たとえば大阪で申しますと、東大阪、南、それから北というように分けて、いろいろな環境管理計画などにおきましても区分して問題を考えておりますし、また東京におきましても、南部、中部、東部だったと思いますが、三区分いたしまして、いろいろな大気汚染行政を進めている、こういうような実態もございますので、この辺が私ども今後の作業にあたりまして参考になる点であろうと考えておるわけでございます。  なお具体的にどういうことだと申しますと、そのためには冒頭申しました基礎的な考え方に立ちまして、基礎的な調査が必要になりますので、現在ただいまではお答えできませんが、基本的な考え方はさような考え方でございます。
  109. 矢山有作

    矢山有作君 次に第五条の二の三項でありますが、「特別の総量規制基準を定める」ことになっておりますが、このときも総理府令で基準を定める、こういうことになっておりますね。その総理府令の内容としては何を考えておられるのか。
  110. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) 先ほどお答え申しました一般的な総量規制基準よりきびしい基準を前提としたことでございますので、そもそもこの規定の趣旨が、新増設工場の抑制につながるようにという配慮からわざわざ設けた規定でございますので、そういう基本的な思想に立ちまして、たとえば一般排出基準の二分の一あるいは三分の一程度のきびしいものを考えているというのが、現在の考え方でございます。
  111. 矢山有作

    矢山有作君 次に第五条の三でありますが、第五条の三の第一項の中で「政令で定めるところにより、第四号及び第五号に掲げる事項を定める。」と、こうなっておりますね。その政令の内容というのは、これはどうなりますか。
  112. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) この第五条の三は、削減計画を定める直接的な規定でございますが、削減計画の直接的な内容といたしましては、ただいま先生お尋ねのとおり四号と五号の事項でございまして、四号は削減目標量でございますし、五号は計画達成の期間であり方途であるわけでございます。それが計画中心的な中身で、これが直接的な内容であるわけでございます。したがいまして、削減目標量と目標に達成する期間とその手段、こういうものが計画内容になるわけで、それらをどういうふうに定めるかということが、政令で定める手続なり、あるいは政令でどういうやり方で定めるか、こういうものをきめるわけでございます。  そこで、現在私どもが考えておりまするのは、この法律にもあがっておりまするけれども、たとえばこの四号、五号の事項を定めるについては、これこれこういうものを勘案しなければならないという勘案事項がございますが、つまり全体の総量の中における特定工場の割合と申しますか、シェアと申しますか、そういうものとか、工場、事業場の大小の規模の格差、こういったものを勘案する、あるいは工場、事業場の将来の使用原料、燃料の見通しというようなものも勘案するというようなことがございます。そういうものをどういうふうに合理的に勘案していくかという勘案のしかたでございますとか、それからさらに基本的には、削減目標量の定め方になるわけでございまするけれども、特に計画の達成期間などにつきましては、環境基準で定められております計画達成期間との整合性を見るとか、そういう事柄が私ども現在予定している点でございます。
  113. 矢山有作

    矢山有作君 ちょっとあとへ返りますが、第五条の二の第五項に、「都道府県知事は、第一項の政令で定める地域の要件に該当すると認められる一定の地域があるときは、同項の地域を定める政令の立案について、内閣総理大臣に対し、その旨の申出をすることができる。」となっていますね。この都道府県知事内閣総理大臣に地域の申し出をした場合に、一体それはどう取り扱われるのだろうかというのが一つあると思うんです。申し出をしても、内閣総理大臣のほうで取り上げてくれないというような事態が間々起こるということになると、これは問題なので、その点はどうなりますか。
  114. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) この第五条の二第五項の申し出の制度をつくったことでございますが、これは先ほどのお尋ねにもございましたように、地域指定の要件というのは法案できめておるわけでございまして、基本的に工場、事業場密集地域で現行規制方式では環境基準達成がなかなか困難であると認められる地域、こういうことでございます。そうして、そういう事柄につきまして政令で定める。そういうものが現行のK値規制あるいは排出基準の規制ではむずかしいという認定は、第一義的には私ども政府立場で行なうべきであると、かようなことを原則としつつ、なお地域の実情というものをさらによく詳しく御存じのはずの都道府県知事から、こういう地域もそういうものが確保が困難であると、こういうお申し出ができる道を開いた。これが第五項の規定の趣旨でございます。  したがいまして、私どもこの運用にあたりましては、都道府県知事が地域要件に該当するぞというお話がございますれば、十分その実態、内容を精査して勉強させていただく、こういう運用になることでございます。
  115. 矢山有作

    矢山有作君 その精査した結果、知事は指定すべきだと言うのに、指定できないんだということが起こってくると問題になるので、その場合に、知事からの申し出というものを極力尊重して地域指定をやるようにするのかどうか、その点ですね。
  116. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 十分知事の御意見を尊重いたしまして処置してまいるつもりでございます。
  117. 矢山有作

    矢山有作君 それから五条の三の第一項の第三号ですが、「当該指定地域における事業活動その他の人の活動に伴って発生し、大気中に排出される当該指定ばい煙について、大気環境基準に照らし総理府令で定めるところにより算定される総量」、こうあるわけでありますが、これの中身についてもお伺いしておきたいと思います。
  118. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 地域全体が環境基準を満足するために許容される汚染物質の排出総量を、科学的かつ合理的な方法によって算定する必要があるわけでございますが、その算定の基本的な方法について定めることといたしておるわけでございます。すなわち地形や気象条件、発生源分布、そういったことから発生源と環境汚染度との関連を明らかにした上で、目標年次における汚染度を予測して、これを環境基準レベルに削減した場合の排出総量を算定することといたしておるわけでございます。  それから削減計画の定め方につきましては省略いたします。これにつきましては、すでに山崎課長から御答弁したとおりでございます。
  119. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、なぜこの政令、府令の問題をこういうふうにずっと中身を聞いてまいったかといいますと、私どもはできるだけこういう公害防止の仕事というのは、地域の実態をよく知っておる都道府県知事等の地方自治体にまかせたほうが、より効果があがるのではないかという考え方が根底にあるわけです。したがって政令等できめるよりも、自治体の首長にそういったことをまかすというのがいいのじゃないかと思うのが一つ。それからもう一つは、現に総量規制をやっておるところがありますね、そのやっておるところに対して、逆に政令等でその基準をゆるめてしまうというようなことが起こっては困る。そういう点もなきにしもあらずということで、政令でいろいろ中身をおきめになることについて危惧の念を持つわけです。というのは、これまで政府がやってこられたことで、必ずしも人の健康、生命を尊重する立場から公害防止のためにきびしく取り組んできたという姿勢ばかりは見受けられない場合もあったので、そういうところからこの政令問題について全部にわたってお聞きしたわけなんですが、その点についての政府側のお考えを承っておきたいのです。
  120. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 地方公共団体が実施いたしております総量規制も、環境基準の確保目的としておるわけでございまするので、同一の目的を持つこの法案による規制と、きびしさにおいてほぼ同じ程度のものとなるはずでございます。また、この法案にあります総量規制におきましては、具体的な規制基準の設定は、地域の実情を的確に、先生も御指摘になっておりましたが、把握している都道府県知事にゆだねられておるわけでございます。したがいまして、国の制度の導入によって地方公共団体が現在実施している規制が弱められることはございませんし、また、そういったような方向に持っていくつもりは全くございません。
  121. 矢山有作

    矢山有作君 それでは次は第九条の二と、それから次の十四条の第三項とに関連する問題ですが、第九条の二に「当該特定工場等における指定ばい煙の処理の方法の改善、使用燃料の変更その他必要な措置」という表現があるわけですが、「その他必要な措置」というのはどういうものをお考えになっておるか。第十四条の三項には、それに似たような規定で「当該特定工場等における指定ばい煙の処理の方法の改善、使用燃料の変更その他必要な措置」と、同じく「その他必要な措置」というのは一体どういうものをお考えになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  122. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 「その他必要な措置」と申しますものは、特定工場等から排出されます指定ばい煙が総量規制基準に適合するようにさせるための各種の措置のうち、法文上明記されております、まず「指定ばい煙の処理の方法の改善」、これは排煙脱硫装置の設置等でございますが、これが  一つ、それから第二に「使用燃料の変更」、たとえば低硫黄燃料への転換、こういったもの以外の措置でございます。具体的に申しますと、特定工場等に設置されているばい煙発生施設の構造の変更、これはバーナーの改善等を含めるわけでございます。それから使用の方法の変更、これは運転時間の短縮といったことが考えられます。あるいはばい煙発生施設の一時使用停止、こういったこともあろうかと思います。また事前の措置命令に関しては、これらのほか届け出のあったばい煙発生施設の計画についてその変更または廃止の措置も含まれるわけでございます。
  123. 矢山有作

    矢山有作君 これで最後にいたしますが、第三十一条の二項に、「前項の政令で定める市の長は、この法律の施行に必要な事項で総理府令で定めるものを都道府県知事に通知しなければならない。」この府令で定める事項というのは一体どういうものでしょう。
  124. 山崎圭

    説明員(山崎圭君) 総理府令では、大気汚染状況、それからばい煙発生施設にかかる届け出の内容といったような、排出状況が把握できるような事項につきまして一定の様式で通知させるようにしたいと思っております。と申しますのも、現在政令市の長がございますが、これに大気汚染の監視なりばい煙発生施設の取り締まりを行なっていただいておるわけでございます。今度知事が総量の規制基準をつくりましたり、あるいは削減計画をつくります場合には、そういうデータが手元にございませんので、政令市の長からそれを報告してもらう、こういう考え方でございます。
  125. 矢山有作

    矢山有作君 今度、大気汚染防止法の一部改正によって総量規制が取り入れられるわけでありますが、法の運用に適正を期して、環境基準が十分守り得るようにひとつ運用していただくことをお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  126. 森中守義

    委員長森中守義君) 関連質問のおありの方は、ごく短い時間で御発言をお願いします。
  127. 小平芳平

    小平芳平君 関連いたしまして、簡単に二問だけ質問いたします。  第一問は、先ほど春日局長は、硫黄酸化物はさしあたって政令指定します、引き続き窒素酸化物とばいじんを追加するように検討しますというふうに答弁しておられましたが、窒素酸化物については、るる質疑応答のあった技術開発ということが焦点になると思います。が、ばいじんの場合は、かつてすごいばいじん発生施設があったが、しかし電気集じん機等で非常にばいじんが減ってきた、こういうことが可能だと思うのです。したがって、総量規制に入れる入れないは別としても、固定発生施設のばいじんはきびしく現行法でも規制できると思いますし、また規制していただきたい。また環境に与える、地域住民の降下するばいじんによる迷惑というものははかりしれないものがあります。この点について明らかにしていただきたい。  それから第二には三木長官に。当委員会で先日、すでに総量規制をやっておられる三地域の方から参考人として御意見を伺いました。大体参考人の方は、法律改正としては大筋はよかろうと思うと。ただ問題は、従来総量規制をやってきた地方団体の経験を生かしてほしいということ、あるいはある時期に空白期間ができるとか、あるいは従来地方団体がせっかくやってきた規制基準がゆるめられるようなことがないように、従来積み重ねてきた地方団体の規制基準が、政府法律改正によって汚染がひどくなるというようなことが絶対ないようにしてほしいという二点を、私特に印象に残っておりますので、これについてお尋ねしたい。
  128. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 小平さんも矢山さんも、まあそういう考え方からだろうと思うのですが、私も環境問題についてはできるだけ地方の自治体に権限を委譲すべきである。それはやはり実情を知っておるものは地方の自治体ですから、大きく環境基準などは中央できめることはよろしい、しかし、これをどういうふうに現地の模様に適応していくかということは、自治体が一番知っておるわけです。だから、実際に排出基準なんかは地方で上乗せもできるようになっていますしね。そうはなっていますが、今後ともやはり環境保全については自治体の権限を強化していきたいという基本的な方針です。そのことが実情に合う。  また総量規制は最初の試みで、諸外国を回ってもそこまでいっていないわけです。日本としては一つの新しいこれは先駆的な試みですが、したがってその目的は、いままでやっておるようなことをなおそれをゆるめるようなことでは意味はございませんから、そういう点は十分に注意をいたすことにいたします。
  129. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 小平先生御指摘のばいじんの問題でございますが、確かに電気集じん機が非常に発達してまいりまして、個別業種にはかなり高性能な防除技術開発されてまいったわけでございます。ただ実際に、ある地域におきます汚染というものはどういうかっこうでくるかと申しますと、浮遊粒子状物質というようなかっこうで問題になってくるわけでございますが、これは主たるものは確かに工場の排出口からばいじんとして排出されるものが中心でございます。また先生の御指摘もそれであろうと思うわけですが、そのほかに貯炭場の粉じんとして発生するものも、かなりところによってはございます。あるいは自動車の排気ガスの中の、すすというかっこうで出るものもございます。あるいは自然現象というかっこうでばいじんが出てまいりますものも、これは御承知のとおりでございまして、いわばその地域におきます容量を算定するという方法が、非常にそういったことを考えますと技術的にむずかしい問題があるわけでございます。それを申しておるわけでございますが、かような発生源を全体としてとらえ、具体的な排出量規制を行なうという方向に、やがてはもっていかなければならない。むずかしい点はあるけれども、やがてはもっていかなければならない。山積している問題をわれわれは早急に検討したいということでございます。  もちろん御指摘のように、人体に及ぼす影響というものは看過すべき問題ではございませんで、技術的な問題を十分検討を進めてまいりまして、すみやかに総量規制のラインに乗っけてまいりたい、かような覚悟でございます。
  130. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは簡単にお伺いをしたいと思います。  五月十日の、総量規制をされておる地域の三参考人の御意見をお伺いをいたしまして、私も今度の総量規制が、いわゆる地方団体が先取りをしてきておるというふうな段階で、やはりこの法律実施の段階での問題点が一番心配されるところだというふうに思うわけです。  その一つは、これは吉田参考人の御意見だったのですけれども、たとえば窒素酸化物の人体被害というのはいま十分にまだ解明は尽くされていないけれども、硫黄酸化物とほぼ同程度被害があると見て差しつかえないのではないかというふうな御意見が出されております。今回の法案は、法律指定の物質としては硫黄酸化物だけで、あとは政令事項ということになりますと、そういう場合に、たとえば三重県では条例で窒素酸化物の総量規制も始めている。条例化されているんですね。ことしの四月一日付でやられているようなんですね、私資料を拝見してそういうふうに思うのですが。そういうことと、川崎で具体的に御心配になっておられたのは、これは長官もおっしゃっておられるように、地方団体の業績というようなものは、できるだけ事実も知っているのだから尊重してやっていきたいというふうにおっしゃっておられるので、大きく矛盾はなかろうとは思うのですけれども、具体的な点で言っておられたのは、たとえば削減計画の数値のきめ方だとか、あるいはすでに実施しておる実施基準との関係で、法律実施がなされてくる場合にズレが起こるということがあり得るだろう、そういう点について運用上十分に過去の実績等を尊重してほしいというふうな意見があったわけですけれども、そういった点を含めて御見解を承っておきたいというふうに思うわけです。
  131. 春日斉

    政府委員(春日斉君) 今後、この法律案に基づきます総量規制の具体的な内容を定め、実施に移していくにあたりましては、先生の御指摘のように、すでに地方公共団体で行なっております総量規制内容を最大限に尊重するように配慮する考えでございます。
  132. 森中守義

    委員長森中守義君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 森中守義

    委員長森中守義君) 御異議ないと認めます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  134. 森中守義

    委員長森中守義君) 速記を起こして。  暫時休憩いたします。    午後五時十二分休憩      —————・—————    午後六時十二分開会
  135. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいまから公害対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、大気汚染防止法の一部を改正する法律案議題といたします。  矢山君及び沓脱君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容は、お手元に配付のとおりでございます。  この際、修正案を議題とし、順次趣旨説明を願います。矢山君。
  136. 矢山有作

    矢山有作君 私は、大気汚染防止法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党各派共同提案による修正案を提出いたします。  以下その趣旨について御説明申し上げます。修正案はお手元に配付してありますので、案文の朗読はこの際省略させていただき、その要旨について御説明いたします。  総量規制を導入することに改正される今回の改正案におきましては、この総量規制の順守を担保する義務づけと罰則が、現行排出基準、いわゆる濃度規制の場合よりゆるやかになっているのであります。すなわち、濃度規制の基準については、これを越えて汚染物質を「排出してはならない。」と定め、その違反に対して罰則が付せられているのに反し、総量規制基準については、単にこれを「遵守しなければならない。」と定めているのみで、その基準に違反して汚染物質を排出した場合において直ちに罰則を科することなく、なお引き続き総量規制基準が守られずに人の健康を害するおそれを生じた場合に改善命令を出すこととし、その改善命令に従わなかったときに至って初めて罰則をもって担保することになっているのであります。これでは、濃度規制だけでは足らないということで、せっかく総量規制に踏み切った趣旨が貫徹されません。  そこで、濃度規制における順守の担保方法にあわせて、総量規制についても、特定工場等の設置者は「総量規制基準に適合しない」汚染物質たる「指定ばい煙を排出してはならない。」という義務づけを明確にするとともに、その義務に違反して汚染物質が排出された場合にも、濃度規制の違反の場合と同じ罰則を科することに改めるのが修正の趣旨であります。  以上が修正案を提出した趣旨と内容であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  137. 森中守義

    委員長森中守義君) 沓脱君。
  138. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、大気汚染防止法の一部を改正する法律案に対するわが党の修正案提案理由と、その概要を説明いたします。  わが党は、現行大気汚染防止法によるいわゆる高煙突拡散方式では、国民の健康と生活を守ることは不可能であり、汚染物質の総排出量をきびしく規制することがどうしても必要であると早くから主張してまいりました。同時に、現行公害対策本法をはじめとする公害関係諸法は不徹底、不十分なものであり、これを抜本的に改正するよう要求してまいりました。すでに衆議院におきまして、日本共産党・革新共同が提案している公害対策本法案、大気汚染防止法の一部を改正する法律案などは、このような考え方に立つものであり、真に国民の健康と生活を守るためには、どうしてもこれらの抜本的改正を実現する必要があると確信しております。  事実、すでに多くの積極的な地方自治体におきましても、住民のいのちとくらしを守るために国の法改正を待つことなく、法を乗り越えて総量規制に踏み切っているのであります。  今回政府提案した本改正案は、わが党が提起しているような抜本的改正案ではなく、現行大気汚染防止法の体系の中での部分的改正案ではありますが、総量規制方式の導入をはかるという点では、おくればせながらも一歩前進であると思います。  しかし、本改正案では、総量規制方式の重要な点がほとんど政令、総理府令にゆだねられていますので、それをどう定めるかによって規制の実効性に重大な影響を与えるのであります。  そこでわが党は、地方自治体が住民の要求に従って、政令、総理府令に制約されず、自主的、積極的に総量規制を推進できるようにここに本修正案を提出した次第であります。  以下、わが党の修正案の概要を説明いたします。一、総量規制を行なう汚染物質、対象地域は、政  令で定めるとありますが、汚染物質について  は、硫黄酸化物、窒素酸化物及びばいじんを法  律で定め、対象地域については都道府県が条例  で定めることにいたしました。二、対象工場等の規模、地域の許容総量及び総量  規制基準は総理府令で定めるところにより定め  るとありますが、総理府令の制約をはずし、都  道府県知事が定めることができるように改めま  した。三、工場等による使用原料または燃料の見通し  を、ばい煙総量削減計画作成時の勘案要件から  除きました。また、同計画は政令で定めるとこ  ろにより定めるとなっていますが、これも政令  の制約をはずし、都道府県知事が定めることが  できるように改めました。四、ばい煙総量削減目標は大気環境基準に照らし  算定するとありますが、これを大気環境基準が  維持されるために十分なものであるよう算定す  ると改めました。五、環境庁長官は、ばい煙総量削減計画の作成に  関し必要な助言、勧告をすることができるとあ  りますが、これを大気汚染の防止のために必要  な場合に限って、助言、勧告ができると改めま  した。六、新増設されるばい煙発生施設に対しては特別  の総量規制基準を定めることができるとありま  すが、これを新増設に対する総量規制基準は大  気環境基準が維持されるのに十分なものでなけ  ればならないと改め、環境基準未達成地域にお  ける規制の対象となる大工場の新増設はできな  いように明確にしました。七、総量規制基準に違反した場合、違反者には罰  則を科するように新しく規定しました。八、総量規制基準に適合しないばい煙が継続して  排出されるおそれがあり、それにより被害を生  ずると認めるときは改善命令を出すことができ  るとありますが、これを総量規制基準に適合し  ないばい煙が排出されるおそれがあると認める  ときは改善命令を出すことができるように改め  ました。九、規制対象事業者には、自動連続測定記録の義  務づけを新たに規定しました。  以上が修正案の概要でありますが、本委員会におかれましては、慎重に御審議の上、すみやかに可決されるようお願いいたしまして、私の提案理由の説明を終わります。
  139. 森中守義

    委員長森中守義君) 以上で趣旨説明は終わりました。  別に御発言もないようですから、これより原呼並びに修正案について討論に入ります。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより大気汚染防止法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、沓脱君提出の修正案を問題に供します。沓脱君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  140. 森中守義

    委員長森中守義君) 少数と認めます。よって、沓脱君提出の修正案は否決されました。  次に矢山提出の修正案を問題に供します。矢山提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  141. 森中守義

    委員長森中守義君) 全会一致と認めます。よって、矢山提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  142. 森中守義

    委員長森中守義君) 全会一致と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
  143. 小平芳平

    小平芳平君 私は、ただいま可決されました大気汚染防止法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党、以上五党共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    大気汚染防止法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   公害防止施策の実施にあたつては、発生源における汚染物質の防除技術の可能性を論ずるばかりでなく、汚染に対する規制方針の確立が技術の発達をもたらすという基本認識に立ち、大気汚染防止行政を一層強く推進するために、政府は、以下の各項について努力すべきである。  一、大気汚染に係る環境基準については、未だ基準の設定されていない炭化水素等についても、早急に設定すること。  二、総量規制については、   (1) いおう酸化物のみならず窒素酸化物を早急に規制の対象とするとともに、ばいじんその他の大気汚染物質に対する規制を検討すること。   (2) この法律による総量規制の実施にあたつては、地方自治体の積極的姿勢を抑制することのないよう運用に留意すること。   (3) 特定工場等の規模、地域の指定ばい煙排出総量の算定及び総量規制基準に関する総理府令の制定にあたつては、指定地域の特性を十分に反映しうるよう配慮すること。   (4) 総量規制の実施地域における工場等の新増設については、規制基準を厳格にすることによつて、立地規制の効果をあげること。   (5) 総量規制基準の設定にあたつては、特定工場等の規模の差による対応力の差を考慮すること。   (6) 指定地域は、都道府県実情を十分に勘案しつつ、必要な地域をもれなく指定すること。  三、自動車排出ガス規制については、いわゆる五一年規制の精神を体した規制によるほか、公共輸送機関の整備等交通体系を早期に樹立することによつて、汚染防止の徹底を期すること。  四、光化学スモッグ対策については、発生機序の究明、原因物質の規制、緊急時の措置等を含む総合的対策の一層の推進に努めること。  五、特定工場等に対する自動連続測定装置及び排煙脱硫装置の設置を促進するとともに、テレメーターシステム等監視測定体制の整備について地方自治体に対する助成に努めること。  六、今後の工業開発、公共事業等の実施にあたつては徹底的に事前予測調査を行うことによつて、環境汚染を未然に防止すること。  右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同のほど、よろしくお願いいたします。
  144. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいま小平君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  145. 森中守義

    委員長森中守義君) 全会一致と認めます。よって、小平提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、三木環境庁長官から発言を求められております。この際、これを許します。三木長官
  146. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ただいまの御決議に対しましては、十分にその趣旨を体して努力をいたす決意であることを申し述べておきたいと思います。
  147. 森中守義

    委員長森中守義君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 森中守義

    委員長森中守義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十五分散会      —————・—————