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1974-03-13 第72回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十三日(水曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員異動  三月九日     辞任         補欠選任      寺下 岩蔵君     渡辺一太郎君      梶木 又三君     安井  謙君      世耕 政隆君     斎藤 寿夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         森中 守義君     理 事                 田口長治郎君                 原 文兵衛君                 矢山 有作君     委 員                 金井 元彦君                 寺本 広作君                 鶴園 哲夫君                 小平 芳平君                 高山 恒雄君                 沓脱タケ子君    政府委員        環境庁長官官房        長        信澤  清君        環境庁長官官房        審議官      橋本 道夫君        環境庁企画調整        局長       城戸 謙次君        環境庁大気保全        局長       春日  斉君        環境庁水質保全        局長       森  整治君        通商産業大臣官        房審議官     江口 裕通君        通商産業省立地        公害局長     林 信太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        法務省刑事局刑        事課長      根岸 重治君        厚生省公衆衛生        局地域保健課長  山本 宣正君        厚生省公衆衛生        局保健情報課長  浅野 一雄君        通商産業省立地        公害局鉱山課長  石川  丘君        通商産業省福岡        鉱山保安監督局        長        小川 利男君    参考人        東邦亜鉛株式会        社社長      小西 康孝君        東邦亜鉛株式会        社取締役(総務        人事環境管理担        当)       宮崎 孝人君        財団法人日本公        衆衛生協会理事        長        若松 栄一君        財団法人日本公        衆衛生協会元カ        ドミウム研究班        班長       重松 逸造君        長崎保健部環        境保全局長    佐藤 達夫君        長崎保健部環        境保全局公害規        制課長      寺田 精介君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (東邦亜鉛株式会社対州鉱業所におけるカドミ  ウム汚染に関する件)  (公害及び環境保全対策樹立に関する件)     —————————————
  2. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る三月九日、世耕政隆君、梶木又三君及び寺下岩蔵君が委員を辞任され、その補欠として斎藤寿夫君、安井謙君及び渡辺一太郎君が選任されました。     —————————————
  3. 森中守義

    委員長森中守義君) 参考人出席要求につきましておはかりいたします。  東邦亜鉛株式会社対州鉱業所におけるカドミウム汚染に関する件の調査のため、本日、本委員会東邦亜鉛株式会社社長小西康孝君、同社取締役宮崎孝人君、財団法人日本公衆衛生協会理事長若松栄一君、同協会カドミウム研究班班長重松逸造君、長崎保健部環境保全局長佐藤達夫君、同公害規制課長寺田精介君の六名を参考人として出席要求したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森中守義

    委員長森中守義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 森中守義

    委員長森中守義君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査のうち、東邦亜鉛株式会社対州鉱業所におけるカドミウム汚染に関する件を議題といたします。  本件調査のため、先ほど決定いたしましたとおり六人の参考人方々に御出席をお願いいたしております。  なお、本日、説明員として通商産業省福岡鉱山保安監督局長小川利男君にも御出席を願っております。  この際、参考人の各位に一言ごあいさつをいたします。  皆さまには多忙中のところ、本委員会のため御出席をいただき、まことにありがとうございます。  本日の議事の進め方についてでございますが、時間の都合上、各委員からの御質疑に対しお答えを願うようにいたしたいと存じますので、その点をあらかじめお含みおき願いたいと存じます。  それでは、参考人及び説明員に対し質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 矢山有作

    矢山有作君 最初に、先ほど委員長のお話のあった事情もありますので、重松参考人にお伺いしたいのでありますが、「昭和四十三年度厚生省公害調査研究委託費による財団法人日本公衆衛生協会カドミウム研究班報告」として「カドミウム等微量重金属による環境汚染に関する研究」が発表されております。私その中を読ませていただきまして、ちょっと私の頭の中では理解しかねるような点が一、二ありますので、その点についてお伺いしたいと思います。  その第一は、川水についての分析の結果でありますが、この研究報告の中にも「川水については、この流域一帯の十一地点から十一試料を採取し、分析した。その成績は、cd〇・〇〇二〜〇・〇四二PPM」で「高い濃度を示している。しかし、川水の」カドミウム濃度がとくに高い地点はいずれも現在の鉱業活動関係のない上流地点であることが特徴であった。」というふうに概括的に述べられておるわけでありますが、私も分析成績を見ましたところ、なるほど日見川上流で〇・〇二六PPMカドミウムが検出されておる、それから久野恵川上流、ここで〇・〇二四PPM検出されておる、佐須川上流で〇・〇四二PPM検出されておる、椎根川上流で〇・〇四一PPM検出されておるということで、それらの下流におけるカドミウムの検出されたのに比べると、大体十倍ぐらい、上流でたくさんのカドミウムが検出されているわけであります。私たちの常識から言いますと、ちょっと不自然だなという感じがするのでありますが、この点の御見解、いかがでしょうか。
  7. 重松逸造

    参考人重松逸造君) ただいまの御指摘の点にお答えを申し上げます。  おっしゃるとおりに、通常、もし汚染源があれば、それから下流のほうが高くなるのが常識でございますが、実際の自然環境カドミウム汚染調査しております場合には、まあこういう成績が出ることもございます。たとえば神通川流域調査しました場合にも、鉱山排水の付近は確かに高濃度でございますが、上流も高い。それから下流のほうにいくほど上流よりもうんと低くなっている場所もあるという、これは下流ほど水で薄められるということでございましょうが、こんな例もございますので、いま御指摘の点はごもっともなる御疑問でございますが、この時点での研究班検討は、一応もしこの成績を正しいとすればこういう解釈であるということで、この理由としましては、たとえばその上流には古い鉱山のあとなどがあって、そのための影響もあるのではないかということで、ここには「古い時代から採掘が行なわれていたことなども考える必要があろう。」と、こういう表現になったわけであります。  なお、この時点での研究班としての検討は、研究班のメンバーをごらんいただけばわかりますように、この当時としては、カドミウム関係汚染に関する、一応日本での第一人者の方が慎重に検討した結果の結論であるということも申し添えさせていただきます。
  8. 矢山有作

    矢山有作君 なるほどお聞きしておりますと、ごもっとものように聞こえるわけです。しかしながら、ここの地理的な条件からして、実際に鉱業活動が行なわれておる地点で、それに関係のない上流と比べて十分の一ぐらいなカドミウムしか検出されなかったということになりますと、これは普通なら、ちょっと分析結果が問題になるのじゃないかということを疑ってみるのが、私は常識だと思うのです。しかも、これはバックグラウンドとしてのその地域自然状態が一体どういうふうにあるのか、自然に含有されておるというカドミウムが一体どうなのかということまで調べなければそれはわからぬのだとおっしゃるならば、それも一理屈だと思うのです。しかしながら、少なくとも現在鉱業活動が行なわれておる地域におけるカドミウムの検出が、その関係のない上流、たとえば廃抗があったといたしましても、関係鉱業活動が現実に行なわれていないその地域の十分の一ぐらいしか検出されないんだと、こうなれば、私は科学者常識として、これは何かおかしい点があるのじゃないかというふうにお考えになるのが常識的ではないかと思うのです。  なるほど専門家の方はたくさんの事例を手がけておられるから、先ほどおっしゃったような、神通川のようなこともあったというふうにおっしゃるのかもしれませんが、しかしながら、あまりにも専門家になり過ぎた点が、そこの一つの欠陥として、こういう不自然な問題に対してひとつも疑いをはさまないという態度になって出てきたのじゃないでしょうかね。どうなんでしょうか。
  9. 重松逸造

    参考人重松逸造君) われわれがここの環境汚染状態を判定いたしますのは、川水だけではございませんで、この報告書全部をごらんいただきますとわかりますように、川泥あるいは水田、畑の土壌、農作物などまで全部総合いたしまして、ここには相当な汚染があるという結論を下しております。したがいまして、この川水だけの、ここの部分だけについては御指摘のような疑問はごもっともだと思いますし、もちろん、そのいまの点はもう十分に研究班でも討議されたことでございます。ただ、水につきましては、先ほどのようなことがございますので、研究班としては、この部分についてはこういう表現にしようという結論になったわけでございます。
  10. 矢山有作

    矢山有作君 いろいろなほかの条件を見てとおっしゃるのですが、私は、こういう問題に対する判断というのは、一つ一つ検体に対する分析が的確、正確に行なわれて、その総合の上に初めて確度の高いものが得られるし、その上に立って初めて、分析をせられた方々も私は自信を持ったことが言えるのじゃないかと思うのです。一つでもやはり常識的に首肯されない点があるということになれば、その点に対して私は科学者としてもっと精密な調査がほしかったということを、この際強く申し上げておきたいと思うのです。今後、あなたもいろいろな場合にいろいろな分析調査にタッチされるでしょうが、私はやはり一つ一つについて万人を納得せしめるような、根拠のあるような分析結果に基づいて判断を下していただかないといけないというふうに思います。  それから次にもう一つ伺いたいのですが、安中製錬所の水の分析についても問題点があったようですね。安中製錬所の排水口の水の分析結果を見ますというと、分析担当者のほうの分析結果では、カドミウム排水口のところで〇・〇三PPM検出されたと。ところが、それに対してクロスチェックをやった方の分析によりますというと、〇・三二PPMが検出されたといわれております。これに対してどういう取り扱いをなさったのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  11. 重松逸造

    参考人重松逸造君) いまの点の前におっしゃった点でございますが、科学者としての判断はどうかと。これは私はこの研究班員の、私は分析専門家ではございませんが、総括責任者としましては、この時点での研究班員の科学的な判断力並びに良心は十二分に信頼いたしております。したがいまして、先ほど先生のおっしゃったような意味の粗漏は、少なくともこの時点では毛頭なかったと信じております。  それからいまのお尋ねの安中の点でございますが、きょうは私、安中に関しては資料は持っておりませんが、この研究班として従来、対馬の場合を含め、神通川の場合ももちろんでございますが、常にいま御指摘のようにクロスチェックというのをやっております。そうしまして、全く無関係に二カ所で同じ試料分析した結果を突き合わせまして、これを検討して、できるだけ妥当な数字をとる、これがいままでの研究班やり方でございますので、おそらくいまの、私よく記憶はしておりませんが、いまの御指摘の点につきましても、それぞれの分析を担当された方々の間で十分にディスカッションをしていただいて、妥当なほうをとられていると信じております。
  12. 矢山有作

    矢山有作君 私は、一つ検体について分析した結果が正しかったとか正しくなかったとかということを言っておるんじゃないのですよ、重松参考人分析結果が出た、その分析結果についてきわめて不自然なところがあるじゃないか。鉱業活動をやっている地帯に比べて、それに関係のない上流地帯のほうが十倍もそれ以上もカドミウムが検出されておる。そういう事態に対して、その検体に対する分析は正しかったとしても、そういう結果が出たことに対して何らかの不自然さを感じて、たとえば試料それ自体検体自体に問題があるのではないかというふうに考えていくのが、班の責任者として問題を処理していく場合のとるべき態度ではないかということを私は言っているのです。その疑いすら持ってないというようなことが、そういうずさんさといいますか、そういう甘さというものが今回の問題を起こしておる。このことを私は指摘したかったわけです。したがいまして、検体に対して分析された結果が正しかったとか正しくなかったとか、そういう議論をしておるのじゃないということを十分含んでおいていただきたいと思います。  それから、先ほど言いました安中の製錬所の工場排水口における調査結果については、あなた自体が、四十四年の四月九日に参議院の当委員会においていろいろ論争になっているでしょう。そのときのクロスチェックを担当したのは小林という方です。その小林という方がクロスチェックしたところが、工場排水口で〇・三二PPMが出たんだと。ところが、それを最初分析した方の結果によると、これは東京工大の方だそうですが、〇・ ○三PPMしか検出されなかったんだと、こういう結果が出ておるわけです。ところが、研究報告の中には〇・〇三PPMというほうが取り上げられておる。これはおかしいじゃありませんかということが、この四月九日の中で問題にされておるでしょう。そこのところを私は聞いたわけです。  そういうふうに、これにしても〇・三二PPMと〇・〇三PPMということになると、同じ検体について十倍からの相違が出ておるじゃありませんか。そういう十倍からの、クロスチェックしたものと最初分析したものとの間に相違が出ておるのに、一体その取り扱いはどうだったんだということを言っているわけです。こういう取り扱いが粗漏であったということも、私は一つ問題だと思う。あなたは四月九日に、この問題については内輪の問題だから、これ以上の論議はしないというふうなことを言っておられますね。こういう点にも私は非常に問題があるのではないか。あなた方の活動の中に問題があったのではないか。活動それ自体を言っているのじゃないですよ。活動する、検体なり試料を収集したその過程でいろいろ問題があったのではないかということを言っているわけです。だからその点についても、あなた、これだけの十倍からの開き安中で出たということについても、一体どうなんだろうかということにならぬですか。
  13. 重松逸造

    参考人重松逸造君) 御趣旨はよくわかりました。  ただ、たとえば前の対馬調査の場合は、実は川の水は御指摘のとおりのデータであり、確かにおかしい。それから特におかしい最大の原因は、実はこの時点で測定した工場排水はもともと、二試料を取っておりますが、その濃度が非常に低い。これはもうおかしいということも事実でございます。それからいま先生指摘のように、下流のほうで低いというのは、これは研究班としては十二分の疑いを持ってやっております。したがいまして、たとえば工場排水に関しましては、これは今後継続的にぜひチェックしておく必要があるという指摘もしております。  それからいまの安中の場合でございますが、たとえば十倍の差というものは、同じ試料分析しておってそうめったに出る差ではないのでございますが、しかし分析方法によりましては、そのくらいの誤差だってあり得る場合もございますので、いまのたとえば安中の場合につきましても、分析担当者の間で十分に御検討いただいた結果が調査報告に出ていると思います。その辺に関しましては、これは研究班のいままでのルールといたしまして、御指摘のように、疑わしい点は十分に疑いながら妥当なほうをとっているということでございまして、何もたとえば私が班長だから、私がこちらというようなそんなきめ方は、いままで一度もしておりません。
  14. 矢山有作

    矢山有作君 十倍の開きが出るとおっしゃるけれども、私ども科学的な知識はあまりありませんが、常識的に承知しておるところでも、一つ試料について誤差が出るとしても一〇%から一五%というのが、一つ誤差として許容されておる範囲だと聞いておりますよ。十倍の誤差が出て、それが間々あることだということで済まされるのですか。ここになると、まさに私は科学者としての良心の問題だと思いますよ。
  15. 重松逸造

    参考人重松逸造君) 科学者としての良心などということを言われたのでは、私どもとしては困ります。これはもちろん皆さん良心に基づいて、担当者同志が、専門家同志が十分に検討していただいているということを申し上げているのでございます。したがいまして、いま先生の御指摘の十倍の差があっておかしいということは、これはもう専門家の方が十分に検討した結果、測定方法についての食い違いとかその辺をお互いにディスカッションをして、それが報告書にあらわれているわけでございます。
  16. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃ、そのときの小林参考人発言を読んでみましょう。  「先ほどから問題になっております東邦亜鉛工場北側マンホール東邦亜鉛排水口カドミウムは「〇・三二」となっておるのであります。ですから、さっき言われたように、クロスチェックとして採用なさっているわけですが、このように」——クロスチェックとして採用なさっているというのは、〇・〇三のほうを採用しているという意味ですよ、ここには出ていませんが——「このように結果が二人の間で非常に大幅に違った場合に、どうして違ったかということをやはり重松先生のほうでもう一度チェックなさって、どちらか正しいほうを御採用なさるべきであったと思うのです。全然一方的にきめるのはどうか。私のほうはクロスチェックのほうである。ですから、主任のほうがやったことがいつも正しいかどうかということはそれは問題でありまして、いろいろの数字をかみ合わせ考えますと、私は〇・三二のほうが正しいのじゃないか。」云々、こう言っているわけです。  これで見ると、なるほど分析者の間で討議をして、その結果〇・〇三PPMのほうを研究報告に載せたのだというふうにおっしゃりたいのでしょうけれども、このときにクロスチェックを担当した小林参考人、このときの参考人は、クロスチェックの結果は全然この問題については相談を受けていない、一方的に〇・〇三PPMというものが研究報告の中に載ったのだということを言っているわけです。そうすると、担当者同士の間で、これだけの十倍からの開きが出たものについて、その処理について真剣な討議がなされて整理をされておるということにはならぬのじゃないですか。
  17. 重松逸造

    参考人重松逸造君) 私はそうは思いません。いまの小林先生の御発言は私よく知りませんが、いままでの研究班はそういうやり方をやってきていただいております。
  18. 矢山有作

    矢山有作君 知らないことはないでしょう。四十四年の四月九日にあなたも参考人として出られ、小林さんも参考人として出られ、その間にやり取りをやっておられるのですよ。それであなたは最終的には、内輪の話だからこの問題にはもう言いたくない、この問題はやめにしたいと言って、しゃべっていないわけです。  だから、この四月九日の経過を見ると、安中の問題については、分析をしたその結果が〇・〇三PPMと〇・三二PPMという結果が出た。十倍以上の開きが出たのに、これをどう扱うかということについては分析担当者の間で全然討議がなされず、〇・〇三PPMというものが採用されているということがはっきりしているわけです。あなたはそのときの研究班長なんだ。そうすると、そういう研究報告についてはやっぱり責任を持たなければならぬでしょう。そうじゃないですか。
  19. 重松逸造

    参考人重松逸造君) もちろん研究報告に関しましては、私はじめ全班員責任を持っております。  それから繰り返しますが、私ども研究班員、もちろんクロスチェックの方も含めてのディスカッションに基づいた結果を出しております。
  20. 矢山有作

    矢山有作君 ところが、あなたはそうおっしゃるけれども討議、討論していないじゃないですか。一方的な報告になっておる。それを言っているのです。それが問題だと言っているのです。この四月の九日には、結局、そういう大きな相違が出ておるのに十分な討議ばなされないままで研究報告が書かれたということを裏づけるような形になっているじゃないですか。そういうずさんなことじゃ困るというのです。  それからもう一つ、あらためて聞いておきますが、あなたは同一試料について分析をした場合に、十倍ぐらいな開きが出てもやむを得ぬのだというふうな意味のことをおっしゃったと思うのです、出る場合があるのだというふうな。そういう十倍からの開きが出て、それが正しいということで大体全部採用されてきたのですか、いままで。私は少なくとも、先ほど言ったように誤差というものは一〇%ないし一五%、こういうふうな立場で処理するのだ、こういうふうに聞いておりますがね。
  21. 重松逸造

    参考人重松逸造君) 私の表現が悪かったのかもしれませんが、そんな場合もあり得るということを申し上げたわけでございまして、これは同一試料云々といいましても、いろんな分析のしかたによりまして、特に試料処理のしかたによりましてはそんなこともあり得るということを申し上げたのです。したがいまして、そのあり得るという意味は、しょっちゅうあるということじゃございません。もちろん、そんなことはめったにありませんし、それからこれはもう初めから一貫しておりますが、クロスチェックというのはそもそも食い違いを見つけるためにやっておるのでございますから、食い違いが出てくればそれを検討する、そのためにやっておるのでございます。
  22. 矢山有作

    矢山有作君 食い違いが出て、これは間違っちゃおらぬかということを発見するためにやっておるのなら、十倍も開きが出たら、これはたいへんなことでしょうが。たいへんなことでしょう。あなたは一体何を言っているのですか。われわれがしろうとだからといって、ごまかそうというのじゃ承知しませんよ。クロスチェックをやるのは、分析結果に間違いがないかどうか、それを確かめるためにやるんだ、なるほどそのとおりですよ。それだったら、十倍からの開きが出たら、これは何たることだということになるのじゃないですか。そこでもう一ぺん試料採取をし直して、双方が十分担当同士討議をし合って、もう一ぺん分析してみる、正確な結果を出そうじゃないかということになるのじゃないですか。そのことを言っているんですよ。
  23. 重松逸造

    参考人重松逸造君) おっしゃるとおりでございます。そしてまた、そのためにやはりそういうやり方をやってきたということを、先ほど来から繰り返して申し上げているわけでございます。
  24. 矢山有作

    矢山有作君 そういうやり方をやってないということが、四月九日のこの委員会ではっきりしているじゃありませんか。それだけの十倍の相違が出たのに、担当者同士でその点について討議をしないで、一方的に〇・〇三PPMという低いほうを研究報告に採用しているということが明らかになっているじゃありませんか。それを言っているのです。
  25. 重松逸造

    参考人重松逸造君) 繰り返しますが、研究班としてはその辺の討議は十分やっております。担当者同士にもお話し合いを願い、私はそのときの報告書のことはよくいま覚えてはおりませんが、おそらく小林先生も十分御了解になっているはずです。そんな、いままで研究班としましては、御協力願っている先生方に抜き打ちで何か出すというようなことは、いまだかつて一度もやっておりません。
  26. 矢山有作

    矢山有作君 あなたね、四十四年の四月九日の日にこの委員会で、あなたも小林さんも出席した中でやっているじゃありませんか。それによって明らかになっているんですよ。それはあなたのおっしゃるのが常識なんですよ、相違が出たらその扱いについて十分討議をしてどうするか、了解に達して発表する、それがあたりまえですよ。それをやってないから、四月九日にあなたと小林さんとやり合っているのでしょう。その事実すら認めないのですか、あなたは。参考人でだめだというのだったら、証人でなければだめなんですよ、そんないいかげんな答弁じゃ。あなたは参考人だから、気が軽いからそんないいかげんな答弁しているのじゃないですか。この四月九日の日は一体どうなるんだ、これは。なぜこのときに事態を明らかにしなかった。小林さんとあなたはなぜ論争しなかったのだ。小林さんは、私は知らぬと言っておる。私は知らぬというのに対して、あなたはこの問題では論議したくないと言っている。どういうことなんですか。
  27. 重松逸造

    参考人重松逸造君) そのとき論議したくないといったという記録が出ているそうでございますが、おそらく、研究班でそういう結果を出すに至った十分の理由があったのだろうと思います。いまの、小林先生が知らぬうちにこのデータをネグレクトされたとおっしゃったことが記録にあるそうでございますが、先ほど来から申し上げているように、われわれとしてはそういうやり方をしたことは、した覚えは少なくともございません。
  28. 矢山有作

    矢山有作君 これはあなたもなかなか非をお認めにならぬのだから、これ以上やり合ってもしかたがないでしょう。しかし、これはやはり今後の重要な問題ですから、分析の結果がどう扱われて、そうしてそれが公害行政にどう生かされていくかということになると、これは単なる分析の問題として、分析したらそれなりでもう終わりというのと違いまして、これが公害行政の根本になって動いていくわけですから、したがって、この分析の結果というのはきわめて重要なものです。その分析の結果があなたがおっしゃることでは、私との間ではわからぬ、一体どういうふうに扱いをされたのか。これは小林さんとあなたのやりとりを見ると、はっきり小林さんは一方的にやられたと言っているのだから。したがって、この問題については解明は後日に残したいと思います。これ以上あなたと議論したところで話のらちがあかぬから。  ただ、私が最後に申し上げたいのは、少なくとも、私はあなたに科学者良心がないというのじゃないんですよ、科学者良心をお持ちでしょう。お持ちでしょうから、常識的に考えてこれはおかしいと思うようなことが出てきた場合には、やはり班の責任者としてその立場に立つなら、もう一ぺんあらためて試料を採取して慎重な分析をやってみる、こういう態度が私はほしいということを最後につけ加えておきます。  あなたに対する私の質疑はこれで終わります。
  29. 小平芳平

    ○小平芳平君 重松先生はカドミウム研究班班長としまして長年経験を積んでこられていらっしゃる。私たちはしろうとで、よくそういう重金属の関係はわかりかねる点が多い。ただしかし、いまお話が出ているように、十倍の違いがあるという場合はやり直すのが、このほうが常識じゃないですか。いまは排出基準があって、排出基準をオーバーしたら企業は操業停止になってしまうわけでしょう。そういう大事な分析数値が十倍の違いがあって、それがうやむやのうちに決着がついていたということ自体、おかしいと思われませんか。  それが一つと、それからもう一つ先生対馬へ行かれたことがございますか、どうですか。その二点。
  30. 重松逸造

    参考人重松逸造君) 第一点は、先ほど矢山先生から十分御指摘いただいた点でございまして、繰り返しますように、先生方御指摘の点は、われわれは研究班としても十分に検討したいということを申し上げたわけです。そうして、もちろんこの排水、川の水、あるいはその地点でおかしいものにつきましては繰り返してやっております。それから特に川の水あるいは工場排水については、いま御指摘のようなことでその後継続的に実施されております。その点は研究班としても十分注文は出してございます。ただ、御存じのように、こういう研究班というのは毎年、単年度限りの研究班でございまして、その意味では、研究班としての活動はこの一年だけであったという意味でございまして、実際の調査あるいは分析は、その後もこういう少しでもおかしな点に基づいて実施されているということを申し上げておきます。  それから第二点は、この対馬の場合も含めまして、それぞれの研究班員が分担しておりまして、私個人に関しましては対馬には一度も行ったことはございません。
  31. 小平芳平

    ○小平芳平君 小林純教授は、当時企業とかあるいは地域の非常な圧迫を受けながら現地を視察し、あるいは採取して分析をしてこられた。したがって、この小林教授の意見というものは、研究班としてもきわめて貴重な意見として検討すべき意見であったと、こういうふうに思われませんか。
  32. 重松逸造

    参考人重松逸造君) おっしゃるとおりでございます。もともとこの対馬調査が開始されましたのは、小林先生あるいは萩野先生神通川の問題がちょうど調査の最中に御指摘になり、それに基づいて昭和四十年から調査を開始したわけでございます。そうして四十一年度、それからいまの四十三年度の調査班は、特に分析に関する部分小林先生、人体影響に関する部分は萩野先生班員として参加していただき、御一緒に検討した結果でございます。
  33. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、現地をよく承知している、あるいは直接小林先生の場合でしたら神通川分析から、萩野先生でしたら健康調査の面から、世界でも例のないイタイイタイ病という、あるいはカドミウム汚染という、そういうものを取り上げていく上においては、これは重松先生としては班長として、そうした経験を生かし、そうした経験者の意見を十分尊重すべきだったと。もちろん尊重し打ち合せをしたと先ほどからおっしゃるわけですが、かはり今後継続していかれる場合には、そうした意見をもう一つよく聞き、尊重すべきであると、先ほど当委員会のことは忘れてしまったとおっしゃっていらっしゃるから、もうそれ以上言ってもしかたありませんが、そういう姿勢がきわめて大事だということは、いかがですか。
  34. 重松逸造

    参考人重松逸造君) おっしゃるとおりでございます。特に、先ほどから問題になっております四十三年の調査研究班は、小林先生がむしろ中心になっていただき、四十三年度の報告書は、小林先生のような専門家に十分御検討いただいた結果がここに出ているわけでございます。したがいまして、私は先ほど来から、私は分析専門家でも何でもないのでございますが、自信のあるような言い方をしましたのは、そういう先生方の十分の御検討を経ているという自信があったからでございます。
  35. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 同じことを繰り返して重松さん申しわけないと思うのだが、どうもさっきから矢山委員なり小平委員との話を聞いていますと、あなたが班長でやられましたこのカドミウム汚染の結果は、やっぱり正しかったのだとしか聞こえないのですよ、いままでの説明を聞いておりますと。ところが重松さん、問題は会社自体が悪らつなやり方をやって、しかもカムフラージュしたと。その姿勢が大きく今日クローズアップされているわけですね。あなたのいまの答弁は、依然として調査そのものは正しかったと、こうおっしゃっているのですが、しかし、いまわれわれ質問者は、上流排水口の差が十倍も違った、それに疑義をどうしてはさまなかったのかという点について、疑義をはさまないで、それがあくまでも正しいんだと、こう主張されると、今日の事態が起こっておるこの事実を、あなたはそれもうそだと、こういうふうにとってもいいのですか。あなたの見解をお聞きしたいと思うのです。
  36. 重松逸造

    参考人重松逸造君) どうも私の発言がだいぶ誤解を招くような言い方だったかもしれませんが、私どもはこの研究班調査がどこまでも正しいなんて、そんなことは決して思っておりません。そのためにも常に皆さん方から御批判をいただくというのが、これはもう当然われわれ研究者としての態度でございます。したがいまして、いま御指摘の十倍も違った点についての疑義云々でございますが、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、このおかしな数字、特に、実はわれわれ一番おかしいと思ったのは工場排水なんでございますけれども、これらの数字についてのチェックはあとで繰り返し行なわれているということを申し上げているわけでございます。  それから、今日になってわれわれも初めて知ったことでございますが、この試料が実際に差しかえられておったといいますか、薄められておったという事実がわかったわけでございまして、今日の時点になりますと、この十倍の差というものは非常に簡単に説明できるようになったということで、この辺は調査班としても十分、当時の調査報告をもう一ぺん再検討して正しい報告書につくりかえる必要があるということは、私責任を十分痛感いたしております。
  37. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 責任を痛感されるということはよくわかりましたが、問題は、その調査の結果ももう一辺再調査を綿密にやる必要があったんだと。こういう点は依然として、権威者の検討であるからその当時はもうこれは正しかったんだ、疑義ははさまなかったんだと、こういう主張を依然として続けておられる。現実は再検討する必要があったのではないかと、だれが見てもその点はやっぱり疑義をはさむところですね。その点はお認めになりますか。もう一ぺん再調査をすべきであった、ほんとうに自分たちがもう一つ注意が足らなかったと、こういう点はあなた、班長としての責任を負われますか。この点をはっきりしておいてください。
  38. 重松逸造

    参考人重松逸造君) いまの御指摘の点でございますが、研究班としてのここの環境汚染に関する判断は、この一時点だけの調査成績ではございませんで、先ほどもちょっと触れましたように、昭和四十年、四十一年、特に四十一年度は環境調査もやっております。そうしまして、この地区については神通川流域以上の汚染があるということをすでに報告いたしておりますが、この四十三年の結果につきましても、いまにして思えば、先ほどの試料の差しかえ云々部分は明らかにこれは違った数字でございますので、この点についてはもう一ぺん検討する、あるいはいまから調査をしましてもこの当時の状況は正しくはわからないと思いますが、やる価値は十分あると思います。ただ、ほかの試料につきましては、これはかなり広範な調査をやっておりまして、そしてまた、いずれもカドミウム汚染がここでは非常に濃厚であるということが結論されておりますので、その点については、このときの再調査という意味では私は必要はないと思います。  ただ、もちろんこれはどこの汚染地区もそうでございますが、何も一回だけの調査ではなしに、その後の継続調査というのは、これはどの地区に関しても重要なことでございますので、そういう意味では全般的な調査を繰り返す。特に、汚染がどう推移するかという経過を見る必要性は十分あると思います。その意味調査をやることにつきましては、われわれも異論はございません。
  39. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 あなたの答弁を聞いておると、その後もいろいろの検討をやったと、こうおっしゃっていますけれども、問題の焦点をずらしてもらっては困ると思うんですよ。排水口を中心として取った試料と、一方上流関係調査と、十倍も相違があった。先ほどの矢山委員の質問に対しては、往々にしてそういうこともあり得ますということをあなた言っておられるんですよ、十倍も違うようなことがあり得ますと。あってもいいでしょう、それは。私はないとは信じません。あるでしょう。けれども、そういう十倍も違ったときには再検討をする必要があったのではないかという追及をみんながしておるわけです。議員はみんながそれを追及しておるわけです。  その追及をしておるにもかかわらず、あれはあれとして正しいとあなたがおっしゃるものだから問題があるのであって、そうじゃなくて、あれをもう一歩追及してみずからやっていけば、あるいは発見したかもしれないじゃないかということを私たちは言っているわけですね。その点はやっぱり非であったというお認めなされてはどうですかと私は言っておるのですが、どうですか。いろんな何はいいですから、それはそうですということではっきりしてください、その点は。それをあなたがお認めにならないと問題は残りますよ。
  40. 重松逸造

    参考人重松逸造君) いまの御指摘の点は、私個人的には、おっしゃるようにこの時点で、もう一ぺんこの十倍の差云々検討しておけばよかったという気はいたしております。  ただし、先ほどから繰り返して申し上げますように、この結論につきましては研究班員の、特にこの方面の専門の研究班員方々の御意見に基づいてまとめた報告書でございますので、いまの、研究班として十倍の差をこの時点でなぜチェックしなかったということに関しましては、私はこの席ではお答えはいたしかねます。一度、当時の研究班員方々の御意見をもう一ぺん伺った上で、これがほんとうに研究班としての検討が足りなかったのか、あるいはこういう今日の事態のわからない時点では、この時点の解釈としてはこれで妥当であったかということは、もう一度研究班員方々に御意見を伺ってみる必要があると考えております。
  41. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしたら、こういうふうに解釈してもいいですか。権威ある先生方の検出の結果が出ておるのだから、私はそれを非だと言うことはできませんけれども、しかしもう一歩進んでやっておけばよかったなという感じは、個人としては持っておると、こういう解釈をしてもいいですか。
  42. 重松逸造

    参考人重松逸造君) これも私個人の感想でございますが、いま申し上げましたように、研究班としては、これらの方々に、ほんとうにこの時点ではこれでも十分理解ができたのか、あるいはこの時点でも、専門的に見ても確かにおかしかったのかということは、もう一度確認したいと思います。
  43. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 重松参考人に、いまの問題に関連してごく端的にお伺いをしたいと思います。  いま問題になっております川の水の問題ですけれども、これは川の水についての、研究報告書では十三地点のサンプルをとっておるわけですね。鉱業活動関係のあるなしという問題で、十倍以上の差が出ているという問題が非常に大きく問題になっているわけですが、この十三地点の中で、いわゆる直接鉱業活動関係のない地点は、どれとどれなんですか。その点をちょっとお教えをいただきたいと思います。
  44. 重松逸造

    参考人重松逸造君) いまの御質問の点でございますが、この報告書に実は地点番号1、3、7、と書いてございますが、私も地図をちょっと見ないと何とも申しかねますが、もし報告書をお持ちでございますればこれを見ていただけるとありがたいと思うのです。これの二五ページに1、3、7というのが上のほうに三地点ございますので、おそらくこの地点のことをさしていると思います。
  45. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、鉱業活動関係ない地点は、先ほどから上流下流との関係で、関係のないところが十倍ぐらい濃度が高くて、関係のあるところが十倍ぐらい薄いということで問題になっているわけです。関係のない地点が、これはいまお聞きしましたけれども、時間がかかるから私が申し上げますが、直接関係ない地点が全部高い。直接関係のある、たとえば鉱業所の排水あるいは下流ですね、それは全部総じて低い。一つぐらいの違いじゃないのです。全部がそろいもそろって、十三地点のうち関係のないところが四地点ですか、これが全部高い。  1が〇・〇二六です。それから3が〇・〇四二、それから7が〇・〇四一、それから6が〇・〇二四です。これは全部鉱業活動関係のない地点。ところが、鉱業活動と直接関係のある、特に鉱業所排水については〇・〇〇四、〇・〇〇五です。あるいは直接問題になっておるような地点でも〇・ ○一、〇・〇一三というふうに、非常にそろって鉱業活動の影響のあると思われる地点が全部低い。  こういうふうな結果が出てきた場合、これは現在ですと事業所による擬装されたサンプルなんですから、いかに厳密な化学検査、分析検査をおやりになっても、その結果としてこういうふうにそろって出てきた場合には、少なくとも研究班としては、これは何かありはしないかということをお感じになって当然ではなかったのだろうかというふうに、私初めてこの資料を拝見しまして、実は痛切に感じたわけです。  私も分析については全くのしろうとですけれども一つか二つのばらつきだというのだったら、いまおっしゃったような御意見、これはそうかもしれないというふうに理解はできます。そういう場合もあったかもしれないというふうに理解はできますけれども、全部が一致してそうなっておるという点で、これは少なくとも原点に返って、サンプルの採取についての規定を研究班としてはおきめになっておられるわけですから。その原点にさかのぼって、結果がどうしても判断のできないという場合には、原点に返ってやり直しをするというのが基本ではなかったのだろうかというふうに思うのですけれども、その点についての御見解はどうですか。
  46. 重松逸造

    参考人重松逸造君) むしろ、いま先生言われましたように、下流のほうがデータが、それも低くそろっているものだから、こういう解釈をこの時点でせざすを得なかったのだと思います。どこかむしろ食い違っていてくれれば、おかしいということが研究班としても気がついたと思うのでございますが。
  47. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはたいへん重松先生班長さんに対して失礼でございますけれども、少なくともばらつきがあったなら、これはいろいろの関係があったのではないかという推測、あるいは考慮というものができると思うのです。全部無関係上流が非常に高くて、全部関係のある下流が非常に低いというふうなことになれば、これは検査の結果をまとめるにあたって、結論の持ちようのない結果が出ていると私は思うのですよ。その場合には、当然おそらくこの研究班で問題になったと思いますし、先ほど高山委員質疑でも、もう一ぺん相談をしてみたいとおっしゃておられますけれども、当時の御検討の議事録があったら、ひとつ御提出をいただきたい。  これは私自身医者の端くれですから少しはわかるのですけれども、こんな判断の全然つかぬ結果が出て、これを何とか結論としてまとめ上げるというふうなことは、これは少なくとも科学の携わっている人たちがやる態度ではないですよ、原則として。科学者研究者に対して、こういう結果でそういうことになったんだということをあなたがおっしゃったら、科学者を冒涜するものです。その点はもっと態度を明確にしてもらいたいと思う。当時の議事録がありましたら御提出をいただきたい。
  48. 重松逸造

    参考人重松逸造君) 議事録的なものは、おそらくないと思います。御存じだと思いますが、われわれの研究班は、好きほうだいなフリーディスカッションが中心でございまして、議事録的なそういうやり方はいままでやっておりませんので、メモ程度のものがあるいはあるかもしれませんが、ちょっといま記憶がございません。  それから先ほど来の御指摘がございますが、実は私自身は、決して班長としての責任は回避するわけではございませんが、分析に関しまして、特に水の中のこういうカドミウムといいますか、徴量重金属の動態に関しましてはしろうとでございますが、先ほどから申し上げております、これだけのエキスパートの先生方の御意見を総括してこういう表現にしたいということでございますので、その意味では、そのそれぞれの先生方が科学者良心に基づいて御判断をいただいたのをまとめたという点で御了解いただきたいと思います。
  49. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、メモでもありましたら、ぜひその当時の研究班先生方の御見解というものをお伺いしたいと思うのであります。  といいますのは、いま明らかになっているような、東邦亜鉛のやり口のような反社会的なやり方というものがやられていて、純然たる化学の分析の中でこういうことがどうして見破れなかったのだろうかというのが、これは委員会としても非常に残念だと思っているゆえんなんですよ。もっと厳密な態度を堅持していただければ、これは再検査、あるいは見破れたのではなかっただろうかというふうに思うわけです。  そういう点でたいへん残念だと思いますが、依然として重松参考人がそのことを、当時は絶対正しかったんだというふうにおっしゃいますと、やはり化学が企業活動に従属させられたんだというふうな結論が出たのでは、たいへんなこれは公害行政に対して国民に不安を与える結果になる。そういう点で非常に明確を要すると思いますので、そういった点について当時もっと厳密に、少なくとも厳密な科学の立場に立って再調査をやるべきであったと思うのか思われないのか、その点を明確にしていただきたいと思うのであります。やり直してみる必要があるということは、先ほど高山委員お答えになっておられますので、その当時は、いま考えてどうなのかという点を明らかにしていただきたい。
  50. 重松逸造

    参考人重松逸造君) このときの時点では、調査班が担当いたしましたのはここだけではございませんで、神通川流域、それに宮城県、あとでまた群馬県の安中という四カ所の調査をやっております。それから、このそれぞれの地区につきましては、川の水だけではなしに、先ほど申し上げたようないろんな検体を調べておりまして、総合判断としては、これも先ほど申し上げたように、特にこの地区は実はもう前年度、前の報告で人体影響でも一番あやしい場所である、それから環境汚染神通川流域以上に汚染されているという結論も出されております。したがいまして、一番御指摘の、一体このデータを通じて試料のインチキ性が見破れなかったのかどうかということでございます。この辺は私としては何とも申し上げかねますけれども、ともかくこの時点での考え方はそんなことであったということで御了解いただけたらと思います。  もちろん、いまの時点から見れば、確かに分析方法も進んでまいりましたし、いろんな点で違ってきていると思いますが、この当時の分析方法というのは、まだ方法自身がスタンダーダイズされておりません。御存じのように、日本カドミウムがきちっと分析できる方というのは、実はこの班員先生方だけでございまして、そんな時代のデータでございますので、何とかこの時点ではここに書いてあるような書き方でも理解のできるようなデータになっておったということで、結論を下さざるを得なかったと思います。  それから、これも繰り返し申し上げていますように、おかしな点については、四十四年度以降も引き続き継続して調査をされているということでございます。それで全体の判断は、これも何回も申し上げますように、ほかの試料はすべて濃厚汚染を示しているということが、この報告でも出ているということでございます。
  51. 矢山有作

    矢山有作君 小川説明員にちょっと聞きますが、四十三年当時のこの鉱山の排水関係の水質検査の責任官庁というのは、通産省だったはずですね。どうなんですか。
  52. 小川利男

    説明員小川利男君) おっしゃるとおりでございます。
  53. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、重松参考人一つだけお伺いしておきたいのですが、その当時の水質検査の責任官庁であった通産省は、四十三年八月二十六日から三十日にかけて、この東邦亜鉛対州鉱業所における排出水の分析調査をやっております。厚生省がやったのが四十三年八月二十七日、二十八日であります。通産省がやったのが四十三年八月二十六日から三十日であります。  そこで、責任官庁である通産省が分析をしたその結果、第一ダムの排水口の辺で東側で〇・〇三三PPM、それから第一ダムの排水口の西のほう、ここで〇・〇七〇PPMカドミウムが検出されておるということなんであります。この点については、重松さんのほうでは全然この情報提供を受けることができなかったのですか。どうなんですか。
  54. 重松逸造

    参考人重松逸造君) 全然知りませんでした。  なお、私の時間が迫ってまいりましたので、これに関連して一言だけ、ちょっとよろしゅうございましょうか。——実はいまお話しございましたように、特に鉱山関係調査は、通産省の鉱山保安監督局でございますか、そこの御協力を得てやっているわけでございます。これは実は神通川調査のとき、私自身何回も行っておりますが、特に神岡鉱山に関連した調査のときは、監督局からもおいでをいただいて御一緒にサンプルを取る。これもはっきり申し上げますと、われわれが取りましたサンプルを、私がみずからやっている場合はそのまま同じサンプルを分けて差し上げている。それからわれわれの調査の結果は、御存じのように常にこうして報告書として出し、オープンで公表しておりますので、通産省のほうのお手元にも行っていると思いますが、その逆の場合は、一度もいただいた覚えがございません。  それから特にいまの神通川の流域、あるいは四十三年のときにいまお話しのように通産省側の御調査ではそれが十倍も違っておった——これは実は私今度の事件で、この間テレビを見て初めて知ったわけでございます。これも先ほどの話になるのでございますが、繰り返しますが、この当時の分析方法のむずかしさというような問題がございますので、おそらくこういうデータをお出しいただく場合、あるいはその前に、まずやはり分析のいろんな方法論的な点をよくわれわれとも打ち合わせしていただき、あるいはわれわれにも教えていただいて、そしてほんとうに比較できるデータかどうかという意味でお互いに検討をしたかったわけでございます。いずれにしても、そういうわれわれのほうの希望はございますが、ともかくこれは神通川以来、通産省側の資料というかデータについては、われわれ全くノーインフォメーションです。  それからいまの、これは私実はまだ実際にこのときの現地担当者には伺ってないのでございますが、通産省の日にちと厚生省のわれわれの研究班の日にちとは、実際には一緒の日でございますから、おそらくわれわれのいま申し上げたようなやり方に従って、厚生省の研究班が取った試料をそのまま分けていただいているのではないかと思うのでございますが、これはちょっと私まだ確かめておりません。
  55. 矢山有作

    矢山有作君 重松さん、こういうことなんですよ、通産省から私はその当時の報告書を出してもらったのです。そうしたら、いま言いましたように四十三年の八月二十六日から三十日にかけて、ですから厚生省がやった調査と重なりますね。そのときに通産省が分析したところが、第一ダムの東側の排水口で〇・〇三三PPMカドミウムが出た、こういうのです。ところが、厚生省、あなたがおやりになったほうでは、そこでは〇・〇〇四PPM出た、こうなっておるわけですね。それから第一ダムの西側排水口、ここでは通産省がやったところが〇・〇七〇PPM出た。ところがあなたのほうでおやりになったら〇・〇〇五PPMだったと。たいへんな相違なんですね。同じ日に取水をして検査をやってこれだけの相違が出ておる。しかもそれを、その水質検査の責任官庁であった通産省が厚生省の調査に対して何ら協力をしておらない、こういう事実が明らかになっておるわけです。ここのところはあなたに答弁を求めるというのではなしに、こういうことであったんだと。  そこで、あなたのほうもいろいろな状況があったと思いますが、私は最後にお願いしたいのは、ぜひともこういう常識で考えておかしいと思うことがあったら、ひとつ慎重に取り組んでいただきたいということをお願いをいたしまして、私のあなたに対しての質問を終わらせていただきます。  次に移ります。  東邦亜鉛の方にお伺いしたいのでありますが、私たち伝え聞くところによりますと、四十三年の八月九日に長崎県の公害担当者が鉱業所に行かれて、前所長の神出さんとともに採水地あるいは採泥地点をきめたと、こういうふうに言われておるのでありますが、この点はどうなんでございましょう。長崎県の公害担当者と、どこの水を取る、どこの泥を取るということを相談をされておきめになって、そこらの水や泥を取って分析されたと、こういうことなんでしょうか。
  56. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  厚生省調査に関し、長崎県があらかじめ神出所長と打ち合わせ、試料採取地点を決定したことについては、ございません。ただ、場所等の地理不案内でありますので案内をしたと無出元所長が申しております。
  57. 矢山有作

    矢山有作君 これは長崎県側からも聞きたいのですが、今度例の問題になっておる「鉱害始末記」ですか、それによりますと、はっきり書いた人は言っておるし、それからまた、その人が現地でしゃべっておられることを見ましても、長崎県の公害担当者が出かけて行って、いま言いました採水地点だとか採泥地点というのを鉱業所当局と相談してきめたというふうになっていますが、あなたのほうではどういうふうに認識しておられますか。
  58. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) 申し上げます。  昭和四十三年八月の十日、十一日の両日にわたりまして、現地状況を調査のために現地へ行っております。その際、当時の鉱業所長さんに御案内をいただいております。一緒に参りましたのは、町役場の人も一緒に行っておりますが、御案内をいただいたと、こういうことでございます。そこで相談をして場所をきめたということではなしに、非常に山の中でありますし、私ども地理不案内でございますので御案内をいただいたと、こういうことでございます。
  59. 矢山有作

    矢山有作君 まあそうでしょうね。御案内をいただいたときに、ついでに、どこで水を取ろう、どこで泥を取ろうということをおそらく御相談になったのでしょうね。私どもはそういうふうに考える以外には、今度の分析の結果、報告等を関連をさせて考えて、不思議でしょうがない。それはそれでよろしい。あなた方のほうで相談をしてやりましたとはなかなか言えないことでありましょうから。別途、相談してやったかやらぬかということは究明をする手段はありますから、そのときに譲らせていただきます。  ところで、鉱業所のほうでは事前に、厚生省の調査の事前に、どこの水、どこの泥というふうにわかってやったのか、まあこの辺だろうという想像でやったのか、知りませんが、いずれにしても事前に水や泥を取ってきて分析調査をやったというふうに言われておりますが、この点はどうなんでしょう。
  60. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  水、泥等の分析は継続的にやっておりますので、事前であったかどうかは別としまして、そういう場合もあったかと思います。
  61. 矢山有作

    矢山有作君 そうしますと、継続的に水や泥の中にカドミウムその他が何ぼ含まれておるかということは分析調査をしておるということで、たまたまその分析調査をしてみたところが、水はたいへんカドミウムがたくさん入っておるし、泥はたくさん入っておる、こういうことがわかったと、こういうことなんだろうと思うのですね。ところで、そういうふうに水や泥の中にたくさんのカドミウムが入っておるということがわかって、そして伝えられるような事前工作もいろいろおやりになったわけですね。
  62. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  そうだろうと思います。
  63. 矢山有作

    矢山有作君 そうだろうと思いますって、あなた、おたくの会社のこの問題というのはきわめて世人注視の的であり、たいへんな問題になっているんですよ。だから、私も新聞報道によりますと、あなた方のほうで現地に人をやって詳しい実態を調べたということを承っておりますが、そうなると、そうだったろうということでなしに、そういう事実があったのかどうか、はっきりしていると思うのですがね。
  64. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) 先ほどの御質問ではそういうことでございますが、調べたところはそういう事実がありました。
  65. 矢山有作

    矢山有作君 そこで次にお聞きしたいのは、会社のほうで、通産省の調査に対しては具体的にどういう手を打たれたのですか。通産省が水を採取して調査をやる場合に、その水の中にカドミウムの含まれていない水を何回にもわたって注水して、そしてごまかそうとしたんだと、こういうふうに言われておるんですがね。
  66. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) そのとおりでございます。
  67. 矢山有作

    矢山有作君 大体、その注水によってごまかすという作業は、いつからいつごろまでやっておったのですか。
  68. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  おおむね、調査したところでは四十三年の八月以降から四十五年の末か四十六年の初めというふうになっております。
  69. 矢山有作

    矢山有作君 大体そのようですね。四十三年の八月ごろから四十六年の終わりごろまでやっておられますね。だいぶの回数になるようです。  そこで通産省に聞きたいのですが、通産省はこのごまかしに気づかなかったですか。といいますのは、四十三年の八月二十六日から三十日までに第一ダムの東西において取水分析をやったところが、そのときに第一ダムの東側排出口付近では〇・〇三三PPMカドミウムが出、西側では〇・〇七〇PPMカドミウムが検出された。ところが、それ以後四十三年の十一月から後、同じ個所の水を取って分析をしたところが、これはきわめて低い率でしかカドミウムが含まれていない。大体十分の一以下。たとえばゼロのこともある。カドミウムが一切含まれていない。それから一番含まれておるときが〇・〇〇五、こういう結果が出ておるわけですね。同じところの場所の水を取って、四十三年の八月に〇・〇三三PPMと〇・〇七〇PPMが検出されておる。それが十一月以降のずっと調査をしたところによると全部、最高でも〇・〇〇五PPMしか検出されていない。ときによればカドミウムの検出はゼロである、こうなっている。この実績で、通産省はこれはおかしいと気がつかなかったですか。
  70. 小川利男

    説明員小川利男君) お答えいたします。  四十三年八月以前に、四十二年の十一月に一応いまおっしゃられた地点についてはサンプリングしております。四十三年の八月に、厚生省のほうがおやりになった時期に一緒にサンプリングいたしまして、おっしゃられましたような非常に濃度の高いものがあったわけでございます。で、さっそくその分析をいたしまして、分析結果がわかりましたのが四十三年の十月でございます。従来と数値が違いますので、さっそく十一月に行きまして、もう一回チェックのサンプリングをしたわけでございます。その結果が〇・〇〇二でございます。従来の数値とそれからチェックした数値とがそうあまり違いませんので、いいのじゃないかということで、うちのほうはやったわけでございます。さらに、四十四年の三月に厚生省のお調べになりました数値が発表になって、その数値とわれわれの数値とを比較をしまして、あまりチェックした数値が変わらないものでございますから、一応いいのではないかと、こういうように考えたわけでございます。
  71. 矢山有作

    矢山有作君 通産省もなかなかずるいね。これだけ十倍以上のカドミウムの含有量の相違が出てきているんですよ。四十三年の八月の調査と、それから十一月からもうやりかけたというんですね、そのときに、こんなひどい違いが出たときに、四十三年の八月に何かあったのじゃないだろうかということは気がつかぬかね。あるいは逆に、四十三年の十一月以降何かあったのではないかと気がつかなかったのかね。これをまともに信じていたのかね。
  72. 小川利男

    説明員小川利男君) お答えいたします。  その当時われわれの者から聞きましたところでは、試料を薄められるということは常識的に考えておりませんでしたので、数値分析の結果であらわれてきたもののおかしさだけを追及したと、こういうことでございます。
  73. 矢山有作

    矢山有作君 まあこういう例をもって見ても、役所をごまかすのはいかにごまかしやすいかということが証明されたわけですよね。今後ひとつ気をつけてください、こういうつまらぬごまかしをされぬように。  それからもう一つお伺いしたいのですが、その前に一つ申し上げておきます。東邦亜鉛の宮崎参考人、あなたのほうで数値をごまかしたのは、四十三年の十一月から四十六年の十二月になっていますね。あなたは四十三年の八月ごろからと言われておったようですが、四十三年の十一月から四十六年の十二月ごろまで注水をやっておられるようですね。  それからもう一つ会社にお聞きしたいのですが、いま会社は沈でん池をつくっておられますね。一番初めの沈でん池ができたのが三十四年ごろですか、沈でん池をつくっておられますが、伝えられるところによると、その三十四年当時につくった沈でん池は、容量が少ないために役に立たぬ。そこでまたもう一つ翌年沈でん池をつくった。沈でん池に入れずに流しておったと、こういうふうな昼間は流さぬけれども、夜は坑内水をそのまま沈でん池に入れずに流しておったと、こういうふうなことを言われておりますが、これは事実なんですか。
  74. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  それぞれ坑口がございますが、日見坑ではそういう事実がありました。ほかではございません。
  75. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、沈でん池に入らないで坑内水を夜流しておったということをお認めになるわけですね。
  76. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) 日見坑は認めます。   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
  77. 矢山有作

    矢山有作君 資料をごまかしたり、それから夜、人の目につかぬときに坑内水をそのまま川に流したり、たいへんこれはあくどいと言おうか何と言おうが、良識も良心もないきわめて遺憾なやり方であります。  そこで、そういう会社のやり方の中で水がよごされ、土地がよごされ、農産物が汚染をし、そしてイタイイタイ病で死んだといわれる人たちが出ておる。さらにいま、イタイイタイ病の疑いをもって要観察とされておる人たちが出ておる。こういう実態に対して、一体、会社当局はどういうふうにお感じになっておられますか。
  78. 小西康孝

    参考人小西康孝君) お答えいたします。  ただいま御指摘になりました試料に注水をするとか、あるいは容量が一時足りなくなって一部流したとか、こういうようなことにつきましては、全く社会的に許されないことでございまして、何とおわびしてもおわびのしようがない。心からおわびいたします。  次に、会社の責任をどうするかという御質問でございますが、これは東邦亜鉛という会社が現在そういう歴史を背負っておるわけです。私どもとしては、私は社長就任以来、東邦亜鉛の社風を変えまして、企業の社会的な認識、責任を徹底的に社員に自覚をさせまして、現在、真剣に切りかえをやってりっぱな会社にしようと努力しておるのでございます。しかしながら、過去に犯したそういうもろもろのことにつきましての償いは、当然われわれの責任でございますので、それぞれ今後よく関係当局その他の御指導、あるいは会社自身の調査検討等によりまして、やるべきことはやっていきたい、こういう決意でございます。   〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕
  79. 矢山有作

    矢山有作君 要するに、十分責任を感じられ、反省をされ、そして会社によって害を与えられた者に対しては、全力をあげてその被害の救済につとめるということで理解していいのですね。
  80. 小西康孝

    参考人小西康孝君) そのとおりでございます。
  81. 矢山有作

    矢山有作君 このおたくの会社のやり方というのは、私は対州だけに限られないという疑いを非常に強くしました。それは、たまたまきのうの衆議院の特別委員会で、安中でもやはりそういう公害隠しをやっておったのではないかということが言われておりますが、そのときには、あなた方もそれは大体お認めになったようです。私はそういう疑いをやっぱり持っておる。  なぜかというと、一つは、先ほど来問題にしました安中鉱業所排水口で、重松研究班分析をしたカドミウム分析値を申しましたね。そこで重松研究班報告書に出ておるのは、〇・〇三PPMしかなかったというのです。ところが、その分析担当者がやったその値に対して、クロスチェックを担当した小林教授の分析によると、〇・三二PPMが検出された、こういう結果になっております。これを見ても、私はやはりその水に何らかの工作が施されられたであろうと、こういうふうに思っておったわけです。ところが、きのうの衆議院でやっぱりそれが裏づけられたというような気がいたします。そうなってくると、あなたの会社の関係のところは、全部これはもう疑いの目をもって見なければならぬというのが一つ。  それからもう一つは、対州鉱業所における問題は、対州鉱業所の前所長神出さん、この人の考えでやったことだと、こういうふうに言われておりますが、どうも対州の問題、安中のただいま申し上げましたような問題をつないで考えてくると、私は東邦亜鉛の会社御自身がそういうような公害に対するいろんな工作をやっておられたのではないか、こういうふうに疑わざるを得ないのです。その点どうなんですか。
  82. 小西康孝

    参考人小西康孝君) まず、きのう衆議院で認めました安中の問題につきまして、多少誤解されて新聞でも報道されておりますので、正確なお答えを申し上げます。  これは安中の工場の排水は、排水処理をいたしまして、延長放流で高崎のほうに流しておる。それからもう一つは冷却水、これは全然汚染されていない水でございますが、この冷却水を安中の周辺にあります河川、柳瀬川に放流しております。あのとき清掃いたしましたのは、その柳瀬川にいきます排水溝、これを清掃したということでございまして、河川をどぶざらいしたとか、底を洗ったとか、そういう事実はございません。  しかし、先ほど御指摘ございました東邦亜鉛会社の過去の体質、あるいは考え方、やり方ということにつきましては、昨日も申し上げましたけれども、まあ私が自分でこういうことを申し上げるのは非常に心苦しいのでございますけれども、ここで私自身の率直な心境を告白して御理解をいただいたほうがいいと思いますので申し上げますが、企業の社会的な認識、社会的な責任、また公害問題に対する認識、そういう点におきましては確かに足りない点があった、古い一つからを持っておったということを申し上げたいと思います。しかし、それは四十四、五年まででございまして、その後は会社の経営陣も一新いたしまして、また経営理念も変えまして、現在各事業所とも誠心誠意、企業の社会的責任を自覚し、また公害問題についても、これだけの問題をかかえて、これだけに批判された会社でございますから、徹底的に万全を期するようにということで現在努力中でございます。  以上でございます。
  83. 矢山有作

    矢山有作君 安中問題は、そうすると小西参考人は、公害隠しのいろいろな工作はやっていないというふうに御否定になるのですか。それとも、その点はきのうのとおり御否定なさらぬのですか。どっちなんでしょうか。ちょっとあいまいになったと思います。
  84. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 私が赴任する前の事情は十分承知しておりませんが、赴任後やりましたことにつきましては、当時所長しておりましたが、いまの排水構の清掃をした。これは弁解じゃございませんが、私は、まず工場内の発生源対策を徹底的にられということを言っておりました。たまたまその時期が、検査の前の時期に排水溝を掃除をした。これはもう外部から見て非常に疑われる、非常に残念なことであるということでございます。率直にその点は認めます。しかし、検査をごまかしてやろうとか、うまくやってやろうというような、検体をごまかそうとか、そういう考えではございませんでしたので、御了承いただきたいと思います。
  85. 矢山有作

    矢山有作君 ひとつ委員長にお願いしたいのですが、この研究報告をめぐって重松参考人といろいろ論議をいたしましたが、どうもすっきりしない問題が残るわけです。  特に安中等の問題については、同じ検体で検査をしながら、一方は〇・〇三PPMしか検出されない。一方は〇・三二PPM、多量に検出された。ところが、そこのところが十分討議されて研究報告に〇・〇三PPMと記載されたのかどうか、その辺がまさにあいまいもことしているわけです。ですから、重松参考人がおっしゃったように、全体としては影響はないんだというふうなおっしゃり方をなさるといたしましても、私どもはやっぱり全体は部分から成り立っていると思いますので、その部分部分に対する分析の結果があやふやであったり、ごまかされておったり、不確実なものであったり、間違っておったりしたら、やはり全体としての結論にも何がしかの影響はあるし、そしてそれに基づいて公害行政が進められていくわけでありますから、大きな問題だと思うのです。  したがって、時期を見て重松参考人なり、さらに岡大の小林教授を呼んでいただいて、十分この点は明らかにしておく、そのことが今後のこうした公害行政を進める上に重要だと思いますので、御考慮をいただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  86. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいまの矢山君の御発言につきましては、事実、真相究明に不可欠の要求と思いますので、小林岡山大学教授の招致を後刻理事会を開いて決定いたします。さよう御了承願います。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほど宮崎参考人から、検体を薄めたのは四十三年から四十六年ころというふうな御発言がありましたが、もう少し具体的に、これはもう過去のことなんですから、いま現在やっておるということじゃないのですから、過去のことで明らかになった日を全部お話していただきたいのです。要するに、四十三年八月には川をさらったわけですか、四十三年八月二十四、二十五、二十六と。あるいは十二月には水を薄めたと。そういう点どのように把握しておられますか。
  88. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  ただいまの御質問で、どういう調査結果が出たかについて申し上げます。  私が現地に参りまして、神出元所長の供述しました裏づけをするために参りましたが、国会に呼ばれておりますので日数が非常に短うございます。九日に行って、十日にトンボ返ったので、その時点では非常にあやふやでございまして、私が調べた当人も、四回ないし五回やったという記憶だと言っておりましたが、その後、昨日夕方電話をいたしまして調べました結果、実際現在資料があるのは四つだということでございます。四十四年十二月のもの、四十五年八月のもの、四十五年十月のもの、四十六年二月のもの、これらのものがあるというふうにわかりましたので、直ちにその資料をそろえ、前後のいわゆるごまかしていない、事実しょっちゅうやっておりますので、その資料を添えて確保しておくようにと、私は団長で参りましたが、そういうわけで帰ってまいりまして、団員を残しておりますので、その者にもそういうふうに命じてありますので、はっきりした数字はわかると思います。
  89. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省とそれから長崎県は、どういうふうに調査をした結果、どういう結論ですか。両者から御報告いただきたい。簡単でいいです。
  90. 小川利男

    説明員小川利男君) お答えいたします。  事件が三月の八日に新聞でわかりまして、うちの監督官三名を翌日すぐ現地に派遣いたしました。目的は、そういう事実の確認と、それから地元の方の御要望と、それから資料のチェック、水質のチェックです。この三点をすぐ調べるということで派遣いたしました。  調べているうちに、いま会社のほうからお話のありましたような事実があがってまいりましたので、日にちを延長いたしまして、現在証拠固めをやっております。  それから地元の方のいろいろな御要望でございますが、被害者の組合の方からいろいろな事実のお話がございましたので、組合長の方にお願いしまして、よく知っている方を御推薦していただきまして、うちのほうで事情聴取をいたしまして、現場検証をいまやっております。  水質の件につきましては、排水口を中心にいたしまして十四カ所、一応サンプリングを終わっております。  以上でございます。
  91. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) ただいま保安監督局のほうからお話がございましたが、大体似ております。  私も翌日すぐ現地へすっ飛んでまいりまして、町役場に着いて事情をただし、町長さんなどと一緒に、ちょうど福岡鉱山保安監督局の方も一緒になりましたけれども鉱山のほうに参りました。非常に鉱山のほうではてんやわんやでございまして、何をどうやっていいかわからないという、周章ろうばいの形でありました。私どもとしては、早く会社の中に調査の窓口というか、係をぴしっときめてやれ、おろおろしておって何にもしてないじゃないかということで、そういうふうな指示をしてまいりました。  その日の夕方に、地元の公民館で被害者の組合の方々を主として、その中にはもとの鉱山につとめておられた方もいろいろございますけれども、御職業はいろいろありますけれども、五、六十人御参集を願いました。そして、そこのところでいろいろお話を伺ったわけですけれども、そのときに私どもが非常に痛感いたしましたのは、私どももさきのようにいわゆる証拠固めというふうなことをねらいで行ったのでありますけれども、地元の方々から非常に私ども県の姿勢ということの糾弾の会議に終わってしまいまして、そのところでは、いろいろ証拠を集めるというふうなことの段階には至りませんでした。なお、職員を残置いたしまして、いまお話しのようなことで調査を進めておる、こういうことでございます。
  92. 小平芳平

    ○小平芳平君 この四十四年十二月九日のものは、水を薄めた。あるものは原水三分の二、注水三分の一、あるものは原水三分の一、注水三分の二というふうに、取ってきた水を薄めたということ。それは四十四年十二月九日。それからいまおっしゃったのは四十五年八月とおっしゃったですか、四十五年八月、四十五年十月、四十六年二月というこの四種類のものは、どの程度水を薄めたかということがはっきりしている。そういう資料が残っている。けれども、四回だけじゃないでしょう。ずっと四十三、四十四、四十五、四十六と、この期間にわたってこれこれ何回こういうふうにやったということが、告発をした本人のものには出てくるわけですね。三回や四回じゃないです。  ですから、そういう告発をした本人の書いたものは皆さんはごらんになったのか、ならないのか。それは十数回にわたっておりますが、それは検討しているのかどうか。いかがですか。
  93. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  御質問の告発された内容は、残念ながら入手ができませんので、しておりません。したがいまして、その内容は全然わかりません。  私の調査いたしましたのは、当時保安企画室と申しまして、現在環境管理室に名前を変えておりますが、そこの技師をしておりました者にただした結果が、これだけの資料が現在ある、ほかはない、こういうふうに言っておったわけでございます。したがいまして、告発された内容とどういうふうに違うかということは、残念ながら現段階では比較はできません。
  94. 小川利男

    説明員小川利男君) お答えいたします。  われわれの調査の結果、先生がおっしゃられたいまの数字もわれわれで確態しております。それ以外のものについては現在調査を続行中でございます。
  95. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) 事実私どもも「始末記」というものの原本は持ってもおりません。われわれが知ったのは新聞によります。たとえば十日の日でしたかの毎日新聞に載っておった程度の情報でございます。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 小川説明員は何を確認したのですか。それから何を調査中ですか。もう少し具体的に御発言していただきたいのです。
  97. 小川利男

    説明員小川利男君) いまの説明が不十分でございますので、もう少しこまかく御説明いたします。  新聞のもとになった資料は入手しておりません。これは会社に強く要求しまして、至急提出するように言うておりますが、現にいままでにまだ提出がありませんです。  それから、先生が先ほどおっしゃられました数字のもとになる資料でございますが、これはうちのほうに持っております。いま先生が薄め方についていろいろおっしゃられましたもとになる資料でございます。これは、うちでもいま先生がおっしゃられたものについては持っております。会社のほうが先ほど申されましたそれ以外のものでございます、これはいま至急調べるようにさせております。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 いずれ告発した者が出てくれば、私もいま持っているわけじゃないですが、およその概要を聞いただけですが、しかし、いずれ出てくれば明らかになることであって、現時点でわからない点はわからないでやむを得ませんが、従業員の方あるいは元従業員の方から聞いただけでもわかるはずでしょう。ある程度わかるはずでしょう。ですから、会社のほうでは告発のもとは持ってないけれども、従業員から聞いた範囲では、私の勘定では十五、六回になりますけれども、そういうことがあったか。あるいは、とにかく四回よりも多いのか。そういう点、およそはわかりませんか。
  99. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  資料が出てくればもちろん全部お出しするつもりでおりますが、ちょっと経緯を申さないとおわかりにならないと思いますけれども、神出元所長のやり方と申しますか、個々人に指示を与えておるというやり方をやっておるわけでございます、調査の結果。したがいまして、当時これらのいわゆる工作に従事させたと思われる者は、当時の保安企画室長とその下におります技師、この二人であったというふうに、現在残っております技師がそういうふうに申しておりました。したがいまして、その技師が命を受けてやったのは現在申し上げた四点、そのほか、現在室長は四十七年の二月に退職しまして居所不明でありますので、まだその人から聞きただすことはできません。もちろん最初に申し上げましたように、その後資料が出ますればはっきりさせるつもりでございます。現在は残念ながら、その四点がわかっておるということでございます。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 告発の記録を書いた人はわかっておりますか。
  101. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) その人の名前でございましょうか。
  102. 小平芳平

    ○小平芳平君 名前は言わなくてもいいですが、わかっているかどうか。
  103. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) わかっております。
  104. 小平芳平

    ○小平芳平君 その方は元従業員である時期に会社をやめさせられた人ですか。
  105. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) 現在の調査では、やめさせたのではなくて、やめたということでございます。
  106. 小平芳平

    ○小平芳平君 私の聞いている話では、ただ何となくやめたというだけじゃなくて、もっと事情があるように聞いておりますが、それらの事情はわかっておりませんか。やめた時期はいつですか。
  107. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  やめた時期は四十七年の、たしか二月ごろだったと思います。  このことは、私のほうの会社が安中公害をきっかけといたしまして経営状態がきわめて悪化いたしまして、いろいろ人員過剰その他、きわめてピンチに追い込まれましたので、そのときに何人かの人間を異動させたり、あるいは他社に出向させる形で人事を行なったのでございますけれども、そのやめた人はそのとき、ちょっと会社の名前は忘れましたが千葉県の会社に出向をしてもらう形になっておったのです。事実本人がその会社に赴任しましたが、どういうわけか、その会社がいやだといって帰ってきて、やめたというふうなことがわかっております。
  108. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは通産省と県に伺いますが、試料を取りまして、それを分析機関へ送り届けるか持っていくわけですが、どういうやり方をしておりましたか。
  109. 小川利男

    説明員小川利男君) ちょっと今度の事件が起きる前からの関連で申し上げますと、うちの検査は排出口が基準でございますので、検体は四か五ぐらいでございますので、現地でサンプリングをいたしましてリュックで持ち帰る、こういうことをしていたわけでございます。  四十三年の八月以降は厚生省のほうで広域の、広い範囲の調査をおやりになるということで、排出口以外のところまでの検体も協力してもらいたい、こういうことでございますので、四十三年の八月は二十九検体を採取しているわけでございます。したがいまして、四十三年以降は検体の数が非常に多くなりましたので、うちのほうは一時事務所の会議室に保管をしていただきまして、その後送る、こういうことでございます。  その当時のうちの監督の人員でございますが、ちょうどそのころは、先生方も御存じだと思いますが、三池の大災害とか、あるいは石炭の災害が続きまして、石炭のほうに力がいっていたわけでございます。したがいまして金属は、大体金属鉱山は二百ぐらいございますが、それを十名の監督官で災害の防止と鉱害防止と両方やっていたわけでございます。一言で申し上げますと非常に……。
  110. 小平芳平

    ○小平芳平君 簡単でけっこうです。
  111. 小川利男

    説明員小川利男君) そういう経過で、その後は鉱害関係の課をつくりまして、人員も約三倍にいたしました。それから車も一応買いました。したがいましてそれ以降につきましては、われわれが車を持っていって、そして現場でサンプリングいたしますと、それを車に積んで持って帰る、こういうようなことに一応変っておるわけでございます。
  112. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) 県のほうを申し上げます。  ただいまでは現地も道路も舗装されましたし、小一時間で行けるようになりました。当時はまだ道も狭く、交通もなかなか不便でございました。その当時のことを申し上げますと、採取をいたしますそのサンプル及び資材がございます。たとえばスコップ、メートル尺、漏斗、それからふるいでございます。そういうバケツ、それからポリエチレンのびんに入りましたサンプル、それからポリ袋に入りました泥、そういうものを全部車に積み切れません。保健所の車は小さい車でございまして積み切れませんので、一部を一時鉱山の事務所のところに置かせていただいて、そしてまた取りにくるというふうなことをやっております。それを取ってさましたら保健所で全部集めまして、そこで梱包をして船便で長崎へ発送する、こういう手順をいたしました。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 その辺も、いま通産局と県から説明がありましたが、告発の中身にはきわめて詳しく出ているわけです。こんなやり方をしていたのかというようなことが多い。いまは便利になったとか、人手がふえたとか、車がというふうにおっしゃるのですが、まず、それは公害がまだ初期だったとは言いながら、梱包を会社に頼んだり、あるいはどこかの部屋へ置いたまま外出してしまったりということが具体的に指摘されておりますが、そういう点にやはり、まあ会社がそういうことをやるとは想像もつかなかったでしょうけれども、大体検体を取りに行く、あるいは公害調査をするという、そういう任務の自覚があまりにもなさ過ぎたのじゃないか。これは通産省と県はどう思いますか。
  114. 小川利男

    説明員小川利男君) お答えいたします。  先生がおっしゃられたような当時は事実でございます。したがいまして、そこまでわれわれが十分気をつけなかったということにつきましては、おわびいたしたいと思います。  それで、われわれといたしましては、今度の事件を反省しておりまして、さっそくサンプリングの仕方から保管の仕方、輸送の仕方、細目をいまきめております。一例をあげますと、サンプリングをしたあとはすぐ封印をしてしまうというようなことも含めて、二重、三重の安全性ということをうちのほうの監督官に指示をする、こういうことでいまやっております。
  115. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) そういうふうにすりかえられるすきを与えたということは、まことにわれわれも申しわけないと思い、これは深く反省をしております。いまにして思いますと、任務の遂行ということについてもう少し深く自覚をしていくべきであった、そういうことを反省をいたしております。
  116. 小平芳平

    ○小平芳平君 最後にもう一問で終わりますが、会社としまして、告発をした本人を今後どのようになさるお考えか。もうすでにやめてしまった人ですから、関係ないと言えば関係ないわけですが、元従業員でこれだけの不満を、不満と言いますか、要するに今回の発端となった方ですから、ですから会社としては、その告発した本人を尊重なさるのか、あるいはきわめてけしからぬやつだという態度で臨まれるのか、それが一つ。  それからもう一点は、東邦亜鉛という企業が各地に事業所も持ち、また多くの従業員とその家族をかかえた東邦亜鉛という会社が、こいしたことで、私は率直に言いまして、まじめな従業員に非常に与える影響が大きいと思うのです。東邦亜鉛につとめているからといって、本人にしても家族にしても全部が全部自分が公害を出しているわけじゃないのだけれども、自分が公害隠しをやっているわけじゃないのだけれども、そうした善良な従業員、家族も含めた従業員に対し、会社の幹部あるいは社長さんとしてどういう考えで今後臨んでいかれるか。  以上二点についてお尋ねします。
  117. 小西康孝

    参考人小西康孝君) まず第一点の、告発した元幹部従業員の方でございますが、私どもは真相をやはり会社の手ではっきりして、できるならば明確にして、それぞれ報告すべきことは報告すべきであるという考え方で、実は本人をさがしておるわけでございます。まず、できましたら本人にお会いして真相を聞きない。と申しますのは、先ほど宮崎から話がございましたように、公害問題についてきわめて重要な職責にあったといま推定される、そして上も知らない、下も知らない、本人でやっていることもある。それらの関係がどうなっているのか。全貌を明らかにするためには、どうしても本人に会いたいということが一つでございます。  それから、やめた事情、経緯につきまして、私どもとしてはいろんなことが考えられますが、ただ、最後までフォローアップできたかどうか。突然行くえがわからなくなって、それに対してのめんどうの見方なり何なりが十分だったのかどうか。この事情もいろいろ伺いまして、その上でほんとうに本人の将来を考えながらいきたい。現在残されておる対州の従業員の零囲気は、きわめて本人に対してきびしい考え方を持っておりますが、私どもとしてはあまりそういうことにとらわれないで、動機はどうであろうとも、本人の将来は別途に、事情をよく聞いた上で考えていきたい。でき得るならば私は、正しい動機でもって重要な職責にあるときにこの問題を会社に提起する、あるいはやめた後会社に反省を求める、そういうふうにしていただきたかったのでございますけれども、残念ながらそういうことにならなかった。それは会社にも責任があるというふうに考えております。まず本人に会って事情を確めて、そして本人の家庭の状況その他、多少不幸な状態にもあるようなことも仄聞しておりますが、全然現在のところ社との通信がございませんので、八方手を尽くしてさがしておるような状況でございます。  なお、ただいま御指摘のございましたように、東邦亜鉛の社員は、決してこういった間違った不心得な考え方を持っている社員ばかりではございません。大半の社員はまじめに真剣に、一生懸命に働いておるのでございますが、その社員が、今回のことによって全部同じように疑われるということはまことに忍びない。これは会社の責任であるということで、先ほど申し上げましたように姿勢を変えて、近代的なりっぱな企業としてやっていこうということで現在努力中でございますけれども、さらにその考え方を幹部にも徹底いたしまして、この汚名を注ぐように、あるいはこの犯した罪の償いをできるように一生懸命にやっていきたいと、こういう覚悟でございます。
  118. 小平芳平

    ○小平芳平君 小西参考人のお話と宮崎参考人のお話と、ちょっと食い違っているように聞こえますが、要するに告発した本人はわかっている。しかし行く先がつかめないわけですか。行く先のつかめないその人がやったんだということが、わかるわけですか。あるいはその方の家族で、会社をやめてからなくなった人がいらっしゃるかどうか、そういうような点はわかっておりませんか、宮崎参考人
  119. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  先ほど申しましたのは、私が現地でそれぞれ調べた結果、推定でございます。なぜならば、新聞に出ておりますところのいろんな記事がきわめて正確であるところから、当時これに従事する者以外はわからないわけでございまして、しかも当時、神出所長から指示を受けた者は二人しかおらない。そうなりますと、そうではなかろうかという推定でございます。また、御承知のように昨年九月に閉山いたしましたので、大半の人間が退職するなりあるいは他場所に転出しておりまして、鉱業所には三十人ぐらいしか残っておりません。そういううちの限られた人間と、それから現在残っております当時の技師と、それらに聞いた範囲で推定をしているわけでございます。断定ではございません。  それから、これはそのときのあくまでも推定でありますから、断定ではございませんので、その点は御了承願いたいわけでございますが、本人は個人的に恨みがあったのじゃなかろうか、こういうような推論を、残っている従業員はいたしておりました。  それから家族の不幸というのは、これもそのときに聞いた話でございますが、男の子供が二人いたということでございますけれども、二男がなくなられた、こういうことは聞いてまいりました。
  120. 小平芳平

    ○小平芳平君 自殺ですか。
  121. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) 何かそういうような話でございます。大学生だということでございました。その理由とか、そういうことは全然わかりませんでございます。
  122. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 私が申し上げたのも、いま宮崎が言いましたいろんな情報から、この人ではなかろうかということでございまして、間違ったらたいへんなことになりますので、重ねて申し上げておきます。
  123. 小平芳平

    ○小平芳平君 終わります。
  124. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 財団法人日本公衆衛生協会理事長の若松さんにお聞きしたいのですが、財団法人として公衆衛生協会はいつごろ発足をしておるのか。公衆衛生というと非常に広いのですが、したがって、先ほどの重松参考人報告から受けますところによると、まあ国会でも問題になってきたのはそう古い歴史ではないことはわれわれも承知いたしておりますが、したがって、過去においてなければ、このカドミウムあるいは鉛、砒素、総水銀とかいうようなものの調査は、いつごろから委託を受けて、いつごろからそういう体制と姿勢というものを確立しておられるのかという点を、詳しくひとつ報告願いたいと思います。
  125. 若松栄一

    参考人若松栄一君) 日本衆衛生協会というのは、実は昨年、九十周年の創立記念をやりました。したがって本年、九十一年目になるわけでございますが、名前は実は三回変わっております。変わっておりますが、最初のころから九十一年目ということで、最初は明治十六年に大日本私立衛生会という名前で発足しております。  明治十六年でございますから、わが国がまだいわゆる発展途上国みたいな状態にあった時代、そのころに医学の先覚者が、欧米等に比べて日本の医療事情は非常に悪いということで、民間においてもこれを大いに改善する必要があるということで私立の衛生会、つまり民間団体として公衆衛生の仕事、いまで言えば公衆衛生の仕事をやっていこうというのが出発でございます。したがってその当時は、そういう古い時代でございますから、官民の最高の権威者が集まって実際には組織しております。したがって会長は当時は佐野常民先生、つまり大蔵卿をやられ参議をやられた方が会長、そして副会長には長与専斎先生というような形で、官民の総力結集という形で発足しております。したがってその当時の目的は、現在でいう公衆衛生、あるいは産業衛生、学校衛生、軍人衛生まで含めまして、あらゆる衛生問題をやっていこうという姿勢でございました。  それが出発でございますが、その後、昭和六年に財団法人日本衛生会というものに衣がえをいたしております。これは時代の変遷で、公益法人としてやっていくということで法人に衣がえをしております。しかし性格的には大きな変化はしておりません。主としてこのころは伝染病予防という問題に主力を注いでおったようであります。それが昭和二十六年までで、終戦後でございます。  それで昭和二十六年に、財団法人日本公衆衛生協会という近代的な名前に衣がえしたわけです。しかし実質は、明治十六年以来ずっと事務所その他も続いておるわけです。  そういう関係で、保健衛生関係のあらゆるものを担当する民間団体でございましたけれども、世の中がだんだん進歩してまいりますと、たとえば伝染病予防の問題の中でも、結核に関しては結核予防会ができる。らいに関してはらい予防協会ができる。あるいは性病に関しては性病予防会ができる。最近は成人病等については成人病予防協会とか、あるいはガン予防協会というものができまして、個別の予防事業がどんどんそれぞれ分家して独立していくという形になりまして、現実に現在の公衆衛生協会というものは、独立していった分家の残りをやっている。ということは、結局は個別の縦割りの事業はそれぞれの団体ができましたので、横割り的なことをやっているというのが実情でございます。したがって、横割り的のものといいますと、衛生教育であるとか、あらゆる分野に関する衛生教育であるとか、あるいは広報活動であるとか、あるいはもう一つ一番大事なことば、衛生関係方々のコミュニケーションの中心であり、いろんな衛生関係の団体の連絡調整、世話をやるというようなことになります。  したがって現実の問題といたしましては、たとえば衛生部長会というものがございます。各都道府県の衛生部長の集まりがございまして、衛生部長が自主的にいろいろなことを討議検討していく場合に、事務所がないと困りますので、われわれがその事務所を引き受けております。  また、公衆衛生学会というものはあらゆる部面の公衆衛生の仕事、学問をやっておりますけれども、この世話をするものがおりませんので、私ども日本公衆衛生学会の世話をいたしております。しかも日本公衆衛生学会というものは、昭和二十六年の財団法人に改正になって以来、日本衆衛生協会になって以来、私どもの公衆衛生協会一つの事業として公衆衛生学会をやってまいり、法人の一事業としてやってまいりました。しかも、これも二年前に独立いたしまして、日本公衆衛生学会というものが独立いたしまして、私どもは現在その協力的な立場に立って、公衆衛生学会の事務局はやっております。しかし学会は独立した。そういうような関係で、私どもの団体が現実には衛生関係の、都道府県の衛生行政に従事している方たちの中心になり、また公衆衛生学会を長年主催してまいりました関係上、公衆衛生関係の学者の方々の集まりの中心あるいはコミュニケーションの中心というようなことになってまいっております。  そういう意味で、私どもの現在の一番大きな特徴といいますのは、そういう衛生関係のあらゆる現場の行政官あるいは学者という方々と非常に昔からの連絡連携があって、そういう意味で、たとえば今度のような神通川あるいは各鉱業所等の調査研究などをいたします場合に、私どもが呼びかけますと県当局も率直に協力していただけますし、また学者の先生方も長年のつき合いでいろいろ顔見知りもある。したがって、どういう方がどういうところにどういう仕事をしているというふうなことがよくわかっておりますし、お互いの気持ちも通じておりますので、私どもが主催をしてお世話をすると、学者の先生方あるいは県の方々との協力関係も非常にスムーズにいくというようなことで、こういうような研究をお引き受けして世話をするということになってまいったわけであります。  そして第二番目の、一体いままでにどんなふうにやってきたかということでございますが、公害問題の研究は非常に新しうございますので、公害関係では四十年度から実施しております。四十年度に鉱山廃液中の微量重金属が人体に及ぼす影響というようなことと、大気中の汚染物質の人体に及ぼす影響というようなことから委託研究を始めております。それから四十一年には一件だけ委託研究をやりました。四十二年から五件の委託研究、その中にはイタイイタイ病の研究がございます。そういうことで重金属関係あるいは大気汚染、さらに振動というような公害関係研究を順次委託を受け、それが最近の事情と並行いたしまして、だんだん数が多くなってきているというのが実情でございます。
  126. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 えらい経過を長くお答えしてもらいましたが、問題は、五件ほどの委託を受けておられますが、四十年度から公害関係する問題を中心にやってきた、こういうことですが、そういう人材も少ないということを重松さんは先ほどおっしゃいました。したがって、今度のこの東邦亜鉛の調査委託を受けてから構成された人員の中で、むろん重松さんが班長としての立場をとっておられますけれども日本衆衛生協会としての責任は一体どうお考えになっておるのか。それはもう全然、委託を受けたら私のほうには責任はないんだ、したがって班長という責任を持つ重松参考人のほうに責任があるのであって、協会には何の責任もないんだと、こうお考えになっておるのか。その点をお聞かせ願いたいと思います。
  127. 森中守義

    委員長森中守義君) 若松参考人、簡潔に。
  128. 若松栄一

    参考人若松栄一君) もちろん、私ども協会が委託研究の受託者となっておりますので、研究責任者協会でございます。したがって、具体的な科学的な内容については各専門の班にとっていただきますが、総括的にはやはり私ども責任を負うべきであると考えております。
  129. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私はあなたの履歴を調べたわけでもないから、変な質問をするかもしれませんけれども、そうしますと、その構成の責任で、そうした疑義の点について、たとえば隠蔽があったという事実が今日明らかになって、もっと突っ込んだ調査が足らなかったという場合は、そうした学者グループの方ですから、理事会としてはそれに発言権を持って、おかしいではないかと言うようなこともできるのか、できないのか。ただ責任だけを感じてもらっちゃ困りますね。やっぱり協会としては十分その資料をみておられると思うのです。先ほど御質問があったように、下流がほとんどもう一本の姿で出ておるというような資料に基づいてみても、これは理事会としても十分検討されたと思うのですが、そういう点はどうお考えになるのですか。
  130. 若松栄一

    参考人若松栄一君) 私どもの会の理事構成から申しましても、衛生関係の行政官の出身者並びに公衆衛生学会の学者でございますから、具体的な内容を討議すればある程度そういう意見も出たかもしれませんが、多数の研究班をそれぞれ班長におまかせしてやっておりますので、現実に私どもの理事会が事前に内容を検討するというようなことは、いままでやっておりません。
  131. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 事前を私聞いておるわけじゃないですよ。理事会にも報告があるわけでしょう。ただ構成された班の先生方だけにおまかせして、理事会そのものとしては何ら責任を負うべきものじゃないんだ、出たものをオーケーとしてしまうんだと、こういう解釈でいいのですか。それじゃ責任は全うできないのじゃないですか。その点はどうなっておるのですか。そこが聞きたいのですよ。
  132. 若松栄一

    参考人若松栄一君) 現実に私どもの会の理事者も研究には直接タッチいたしておりませんし、また、研究班の会議に出ていくというようなこともいたしておりません。それぞれ研究班班長におまかせし、研究班員におまかせしております。したがって、具体的な研究内容について直接的な責任を持つことはとうていできないわけです。ただ、できるだけそういう研究が円滑公正に行なわれるように、また事務的にもスムーズに、委託官庁との間の事務その他がスムーズに行なわれるようにという点に配慮をいたしておるわけであります。したがって、科学的内容等について私どもが直接的に責任を持つということは、なかなか困難であります。
  133. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 間接の責任はあっても直接の責任はない、こういう見方をしていいわけですね。わかりました。  それでは長崎局長と課長にお尋ねいたしますが、四十四年ですか、厚生省としては公害指定地域としての調査をやった結果、それを決定しておるわけですね。したがって、四十四年産米からいわゆる土壌の変更をやり、あるいは作付の転換をやり、いろいろなことを厚生省としては実施しておるわけです。しかも、そういうことをやっておるということは、長崎県としては、県のやっぱり独自の立場における公害としての処置をとったと、私はこう考えるのです。ところが、実際問題として東邦の公害であるということを信じてそうやったのか、いやそれは調査の結果それだけの公害はないんだと、こう思って、厚生省の調査の結果の指定地域としてされた問題をどういうふうに考えて、その間おられたのか。一方、厚生省としてはそういう指定地域として進めておる。一方では公害がないという考え方の調査の結果が出ておる。したがって、長崎県としてこれを進める場合には、一体どういう状態にあったのか。その点をひとつお聞きしたい。
  134. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) お話しになりました昭和四十三年の調査で、一番先に問題になりました四十三年八月二十七、二十八、これは水あるいは泥、こういうふうな環境のほうから入っております。そして四十三年の十月には、今度は玄米、それから畑の作物、そういうものの調査ということにだんだん入ってきておるわけです。そうして最後には、いわゆる国民栄養調査という調査数字をそれにかけまして、いわゆる汚染地域の指定ということに相なるわけです。  それで、ちょっと御質問の趣旨がよくわからなかったのですけれども、私どもは、このカドミウム汚染というのは東邦亜鉛株式会社関係がないとは言っておりません。関係があるというふうに考えております。ただ、この鉱山は非常に古い鉱山でございます。であるから、すべてが東邦亜鉛の会社の責任であるとも言い切れません。一部分が東邦亜鉛会社の責任である、こういうふうな考え方をいたしておりました。  以上でございます。
  135. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、われわれは新聞を見てのことですけれども、その地域には工場はこれが一つという地域で、これを実際に隠蔽をした当人、神出福吉という人はこういうことを言っておるのです。この地域には工場という工場はこれ一つしかなかったんだ、したがって、もし公害というようなことが公になってくれば、働く従業員にも地域住民にも重大なる影響を及ぼす、だから隠蔽的な処置をとらざるを得なかった、私個人でやったのですと、こういうことを明らかにしておるわけですね。ところが、一つしかない工場で、ほかにそういうカドミウムだとかなんとかあるので東邦だけの問題ではないということが、言い切れますか。その点は長崎県はどうお考えになっていますか。
  136. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) 申し上げましたのは、鉱山に起因をするいわゆる人為的な汚染である、これはまあ言えると思います。しかし、その鉱山というのが東邦亜鉛という鉱山だけのあれであるか、歴史的に見て、あるいは幕府の銀山の時代、あるいはもっと古くまでさかのぼってからあったということであれば、そういう昔のものまですべて現在の東邦亜鉛の責任にするということには無理があろうと、こういうふうに解釈をしております。
  137. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 しかし、数人の患者も出ておることは事実なんでしょう、数人の患者が出ておるという。過去においてそういう患者があったかないかということは、さかのぼっての調査長崎県としてはやったのか、やらぬのか。
  138. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) われわれが直接、昭和四十三年でございますけれども、住民の健診を始めたときには、いわゆるお話になった方々はすでに故人となっておられましたので、そのことについてはちょっとどうにもいまできません。ただ、これは東邦亜鉛があったからすぐに患者ということには、私は結びつかないと思います。
  139. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 しからば、そういう五人ぐらいの少数の人であっても出ておるということは事実だと思うのですが、それが出ておるというのが事実であれば、これは古い鉱山ですから、長い歴史の中にはそういうものがあったのじゃないかという私は疑いを持つわけです。そういう面をさかのぼって調べるというのは非常にむずかしいでしょうけれども、イタイイタイ病といえば大体これは有名な症状のある患者ですから、どういうふうで死んだということはおおよそ想像がつくのじゃないかと思うのですが、そういう点の調査をやったことはないのですか、どうですか。
  140. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) いわゆる要観察地域として、椎根川、佐須川二つの川がございますが、その流域全部の住民を対象といたしまして、毎年健康の診断をいたしております。
  141. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 時間がありませんから、宮崎参考人にお聞きしたいのですが、先ほどの宮崎参考人の意見をお聞きいたしますと、こういう隠蔽措置をとるということは、やっぱり社長の命令でやったと、こういう解釈をしてもいいのかどうか。現在の小西社長は当時社長ではなかったのでしょうから、私はそれを追及することは無理かと思いますが、会社の方針がそうであった、したがって東邦亜鉛としてやった行動は、これは社長命令で会社の方針であった、こういう解釈をしてもいいのか、悪いのか。この点はどうですか。宮崎さんはどうお考えになっていますか。
  142. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  会社の方針ではなかったと思います。それから私は直接神出元所長にただしましたけれども、社長の命令でなく、自分で独断でやったと、こういうふうに言っております。
  143. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 しかし、これは先ほどからの社長なりあなたの答弁をお聞きしますと、少なくともそういうあやまちを犯しておるという事実の中では、公害に対しては会社の責任ということも痛感しておる、と。当時の社長の基本的な考え方も、公害防止の施設をつくるということじゃなくて、たとえば溶解する槽が小さければ拡大をしていくとか、あるいはまた二回なり三回の回転水洗をやるとか、こういうことの設備を急速に進めるということでなくて、隠蔽的なやり方で事を済まそうという会社の方針であったのじゃないかと私は疑うわけなんです。そういう方針であれば、矢山委員も質問されたように、この長崎だけに限らず、他もやっぱりそういうことでやってこられたのではないか、こういうふうに疑わざるを得ないのです。そういう点では、会社の方針じゃない、この神出福吉元所長、との人が独自でやったんだ、こういうことであれば、これは全く重大な問題だと思うのです。その点はどうですか。会社は全然知らないで、個人でそういうことをやったのですか、三回も四回も続けて。この点明らかにしてください。
  144. 小西康孝

    参考人小西康孝君) まず、会社が公害問題に対して認識が足りなかったという点でございますが、特にこのカドミ公害ということにつきまして認識が不十分であった。これは、その当時の会社の状況がそういう状況にあったということが一つございます。それからもう一つは、やはり環境優先、住民優先というところまで、公害問題についてそこまで進んだ考え方があったかといいますと、その点に足りなかった点があった。そういう雰囲気の中で神出所長が、これは非常に当時の社長にも信頼を得ていまして、いわゆるこんなにりっぱな結果が出ましたということをおそらく本人は表現したかったのだろうと私は思いますが、会社としては、水をごまかせとか、何をごまかせとか、そういう考え方、そういう方針はございません、ごまかしていけという考え方は。特に、四無作業という看板を掲げまして、そして四つの悪をなくするんだ、悪水とか、悪臭とか、それから悪い空気とか、あるいは悪いものを出さないということをモットーにしてやれと、むしろそういう方針でありましたが、ただ問題は、認識が甘かったということでございまして、これはもう会社が指示した、社長の指示でしたということではございません。  しかし、やった行為の結果につきましては、これは一神出がやったとか、一所長がやったとかということで会社は知らぬというわけにはまいりません。当然その償いは、あとを継ぐ者としてやっていかなければいかぬ、こういうことでございます。しかし、その行為自体については直接の指示命令もなかったし、事前の了解もなかったということでございます。
  145. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それは、その認識が足らなかったということを基本に考えていきますと、企業として十何人の残業をさせて、深夜を通しての放水作業で隠蔽しようというようなやり方をやっておるのを、少なくとも社長が知らないでそんなことはできるものじゃありませんよ。だから基本的に私は、口実をいま御説明されたのだろうと思うのです。それでなければ、大きな問題が出ますのは、それに対して十人ぐらいの深夜作業までやって隠蔽を履行したわけですね、それを会社の首脳は全然知らないで、それで従来の公害に対する認識がそれだけ慎重ではなかったということから、しからば調査自体をなぜもっと繰り返し、みずからも調査を依頼してやるということでもあるならば私は命令とは察しませんが、何にも会社はやっていないのですよ。隠蔽をいいことにしておるわけですよ。  そういう点から考えてみると、これはいま小西社長を私責めるわけじゃないけれども、もっとすなおな姿で、会社も知っておったのだと、こういう点を明らかに私はすべきじゃないかと思うのですよ。個人だけでこういうこと行為が私はできるものではないと、こういうふうに思いますが、その点どうですか。
  146. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 実は当時の関係役員その他、所長等は全部退任しておりますので、一応私は念のためにこういう事件についてどうだったのかということを一通り聞きました。いや実は新聞で驚いたのだ、そんなことまでやっているとは思わなかった、こういうことでございましたので、また一方、神出所長の意見も、遠慮のないことを言ってくれ、ほんとうのことを言ってくれと聞きましたところが、私は信頼にこたえていい結果を出そうという一心と、それからそのときの爆発的なカドミ問題の状況にうろたえてやっちまいました、全くそのとおりでございますと、こういうことを言っております。しかし、社会的な責任といいますか、結果に対する責任といいますか、これは決して神出所長の責任であるから私は知らないという形じゃなくて、私どもはそれを背負って果たしていきたい、こういうことでございます。
  147. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは時間がだいぶ迫っておりますから、端的にお伺いをしたいと思いますが、まず小西参考人にお伺いをしたいと思います。   〔委員長退席、理事矢山有作君着席〕  その一つは、昭和四十三年当時、いま問題になっている当時、現社長の小西参考人は、その当時の会社の役職担当はどういうお立場でございましたでしょうか。
  148. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 総務部長、人事部長でございました。
  149. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 総務部長、人事部長ですか。
  150. 小西康孝

    参考人小西康孝君) はい。
  151. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 おたくの会社では、公害関係はどこの部が担当しておるのですか。
  152. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 当時技術部がございまして、技術部が担当しておりまして、鉱山関係は技術部の鉱山課が担当いたしておりました。
  153. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 きょう御出席宮崎参考人は、総務、人事、環境管理担当というふうになっておりますね。当時は総務部では、環境関係公害関係はお扱いになっていなかったのですか。
  154. 小西康孝

    参考人小西康孝君) そのとおりでございます。
  155. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは間違いないですね。
  156. 小西康孝

    参考人小西康孝君) ございません。
  157. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それではちょっとお伺いをしたいのですが、先ほどの質疑の中に出ておりましたが、告発文書の本人というのはわかっておりますというお答えでしたが、神出所長が二人に指示したというふうにおっしゃっておりますね。二人に指示したというのは、どなたとどなたに指示なさったのですか。
  158. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 当時の環境管理室長の——これ、名前を言わないといけませんか。
  159. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 言うたらよくないのですか。
  160. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 本人の人権といいますか……。
  161. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 役職名ですから、だれとだれに言うたのかということですから。
  162. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 役職名だけ言わせていただきます。環境管理室長——当時は保安企画室といっておりましたが、保安企画室長。それからこれははっきり本人が言っておりますので、その当時の技師でございます。これは対州鉱山の保安企画室長でございます。
  163. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 保安企画室長というのが役職で、それがどなたかということ、名前を言うたらよくないのですか。命令を出した方が二人だというふうにおっしゃっているので、その二人というのはどなたとどなたですかと伺っているのですから、関係ないじゃないですか。
  164. 小西康孝

    参考人小西康孝君) それでは申し上げます。  保安企画室長は久松忠、それから技師は今井新造でございます。   〔理事矢山有作君退席、委員長着席〕
  165. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 今井新造さんという方は、いまどこにおられますか。
  166. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) 対州鉱業所の、閉山いたしましたので管理事務所になっておりますが、そこの現在は環境管理室と申しまして、公害関係を扱っておりますけれども、そこの室長をやっております。
  167. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは時間の関係がありますから、大体先ほどからの御質疑の中で、いろいろと新聞報道等で言われておる反社会的なやり方というのはお認めになっておられますので、そのことについてあまり詳しく私は言おうと思っておりません。  そこでお伺いしたいのですけれども、先ほど高山委員質疑がありましたが、対州鉱業所の前所長が独断でやったのだということを言っておられますけれども、その点についてはっきりさせておかなければならないと思うのでもう一ぺん念のためにお伺いしたいのですが、どうですか、その点は。
  168. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 私がいま申し上げましたように、神出所長、それから当時の関係役員、それから事業所等、宮崎が現地で調査いたしましたので、その結果、現在独断でやったというふうに考えられます。
  169. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 先ほどの質疑でも言われましたけれども、昨日衆議院で小西参考人がお認めになったのは、四十四年の例のおたくの無断増設問題で通産省が調査に入る前のいわゆる隠蔽工作、この問題が写真入りで実は指摘をされて、お認めになったということですね。それでもう一つお伺いしたいのですが、この四十四年三月に日本衆衛生協会から発表されておりますときに、同時に安中でも調査がやられておって報告が出ておるわけですけれども安中では、対州鉱業所のような隠蔽工作はおやりにならなかったのですか。
  170. 小西康孝

    参考人小西康孝君) ちょっと、四十何年でございますか。
  171. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 対州鉱業所と同じように、四十三年の調査ですね、四十四年三月に報告をされているときに、このカドミウム汚染研究報告書の中では、おたくの関係では対州鉱業所安中と両方なんですね。
  172. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 四十三年には、そういうことをやったということは聞いておりません。  それからちょっと補充しますけれども、隠蔽工作と申しますのは、先ほど申し上げたように溝を清掃したということでございまして、極端に、すりかえたとかごまかしたとか、そういうことじゃございませんので御理解いただきたいと思います。
  173. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、事前工作という意味です。隠蔽工作という対州のようにサンプルに水を入れたか入れぬか、これは証拠がないからわからないですよ。しかし、川ざらいをやったり、マンホールのふたを掃除して新しくしたり、あるいは排水口の改修をやったり、花壇をつくったり、竹ぼうきで川の底をはいたりということをやったという、これは証拠写真もみなあるわけですから、きのうお認めになっておるから、もうその問題はいいです。  むしろ、四十三年に対州と時期は若干違いますが、調査のときに何もなかったというふうにおっしゃっておられるのですが、これはたまたま安中の裁判で弁護士さんのほうに寄せられている資料なんですけれども、これも実はおたくの東邦亜鉛一社員という形で、生活権に関係するので名前は言いたくないということで、特に一社員ということで出ているのですけれども、これもこういうふうに述べられている。  四十四年三月に「厚生省から公表された安中関係の科学試験の結果は主として県庁の衛生研究所で集めて送った材料が使われたものだそうです。昨年一〇月」——昨年というのは四十三年ですが、「一〇月から本年にかけて同所で集めたというその材料は私達の会社から届けさせたり、又は材料集めに安中に来る日を予め電話で会社の古川さんに知らせてよこしたりしておりました。このような材料ではどんな偉い学者が調べても正しい結果は出ないと思います。」というふうに陳述をされています。  また、幾つかの問題が出ているのですけれども、直接関係のあるところだけ申し上げますと、「四月二二日県庁で開かれた安中カドミウム公害検討会に県庁の衛生研究所の試験成績として出された煤煙と風の試験結果は私達の会社の研究室の調査結果を少し手なおししたものだそうです。」というふうに言われておったり、あるいは日にちも明確なんですけれども、「六月一日に児玉副所外一名、又六月一一日には清水係長がそれぞれ」県の「課長さんを訪問し、県庁で行う抜き打ち検査の日どりを教えていただいたもようです。」というふうなことで、やはり実態調査をすなおに受けるという姿勢は見られないということ、これはおたくのほうの一社員から弁護士にあててこられているものなんです。  そういうふうなことになりますと、これは同じ検査をするときに、対州ではああいうことが内部告発で担当者から実に詳しく具体的に出されている。安中でもそういうふうなやられ方をしておる。現社長の小西参考人安中では所長時代に、通産省の検査の直前に川ざらいその他事前工作を行なっておるとか、一連の問題というのがずっとあるわけです。そういうことになってまいりますと、対州の問題が、神出前所長の個人的な見解で個人的責任でやったんだというふうに言われましても、これは基本的には会社の方針であったのではないかというふうに思わざるを得ない。その点についてはどうですか。現社長の小西さんは当時、人、総務の担当の部長で本社の取締役でございましたですね。その点についてはどうですか。
  174. 小西康孝

    参考人小西康孝君) その点につきまして、先ほど率直に申し上げましたように、認識が足りなかった。しかし、公害問題については真剣に取り組めということは一つの方針としてありましたが、その内容につきまして認識が十分でなかった。  なお、私につきまして、だいぶ川ざらいをほうきでやったとかいろんなお話でございますけれども、これは重ねて申し上げますが、公共用水をいじくったりなんかは、私のときはいたしておりません。柳瀬川に通ずる溝を清掃した。それから、いろいろ環境美化とかいろんなことをやることが非常に誤解を受ける。またごまかしをやっているのじゃないだろうかというような指摘がきのうもございました。まあ一度悪いことがございますと、何でもかんでも全部悪いことをやっているのじゃないかというふうに見られますので、私どもは特別、今後とも人以上に普通以上な注意を払ってやっていきたい、こういうふうに考えております。
  175. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 公害に対する認識が足りなかったというふうなことではなくて、むしろ検査をされてチェックを受け、あるいは企業に一定の影響の及ぶようなことのないように対策をとれというふうに、会社が指示をしたとしか考えられないという点なんですよ。むしろ私は、現小西参考人自身が安中所長の時代にさえそういうことをおやりになっておったということであれば、冒頭小西参考人がおっしゃるように、社風を刷新するように努力しているだとか、あるいは人事の刷新をやって努力中だとかいうふうにおっしゃっておられても、これはあなた自身がそういうことをおやりになっていった張本人であれば、ほんとうにできるのだろうか。その点の責任についてはもっと痛感をしていただかなければならないのじゃないかという点ですよ。明確にしていただきたい。
  176. 小西康孝

    参考人小西康孝君) 私自身は、昨日の委員会でも申し上げましたが、安中製錬所長当時十分であったかどうかということにつきまして、反省をしております。現在はなお一そうきびしい自己反省を加えながらやっていきたい、こう考えております。
  177. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは長崎県の佐藤参考人にお伺いしたいと思いますが、簡単にお伺いしますと、こういう環境汚染を捏造したり、あるいはサンプルの水割りをしたりという具体的な事実は、サンプルの水割りまではわからなかったでしょうけれども、川ざらいだとか、あるいは汚染源上流へ持っていくだとかいうふうな操作などがやられていたということを御承知なかったのか、あったのか。どうですか。
  178. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) お答えいたします。  私のほうの議会でも一度、会社のほうが川ざらいをしておるというふうなことでの御質問はございました。
  179. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それに対して県はどう対処されたのですか。
  180. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) この川ざらいが環境の改変であるというふうなこととは解しませんで、鉱山側にも事情を聞きましたが、日見川という川の土砂がたまって水が流れにくくなるので、川底をならすためにときどきブルドーザーを入れたんだと、こういうふうなことで、そのことを正直に信用をしておりました。
  181. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そのいまおっしゃったのはいつごろですか、県議会で問題になったというのは。
  182. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) 昭和四十四年の暮れであった、そういうふうな御質問が十二月の県議会であったと思います。
  183. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それ以前はありませんか。それ一回だけですか。以前も以後もありませんか。
  184. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) ただいま私が知っておりますのは、県議会ではこれ一つでございます。
  185. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、県議会で四十四年に問題になったとき以外は知らなかったということですね。  ではもう少し申し上げますが、これは知っておりますか。四十三年六月二十九日の厳原町の町議会でこれが問題になった、質問が出たということを御存じないですか。  それからもう一つは、四十六年には鉱害被害者組合から県庁にわざわざ行っている。そうして公害対策室長の、「広水」と書くのですが、何と読むか知りませんが、広水課長に会って、検査の前になると川ざらいをするけれども、何とかしてくれといって住民が言いに行っている。御承知ないですか。
  186. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) 町議会で御質問があったということを最近になって聞きました。  それから、いまの広水課長というところはちょっとよくわかりませんけれども……。県のほうでございましょうか、町役場のほうでございましょうかというところが、ちょっと私いまわかりませんでしたが。
  187. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃもう一ぺん申し上げますが、県の公害対策室長です、四十六年当時の。私の調査では広水と書くのです、広水課長。そのことを住民が訴えに行っている。
  188. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) まことに寡聞でございますが、聞いておりません。
  189. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで県にお聞きしたいのは、県議会でも四十四年の十二月に問題になっている、四十三年六月には町議会で問題になっている、それから住民も意見を述べておるというふうな状態で、その問題を取り上げておるという状態で、県は会社の意見を聞いてそれ以後何もやらなかった。そういった点について疑問を少しもお持ちにならなかった。——どうなんですか。
  190. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) 申し上げましたように、私どもは四十四年の十二月の県議会でございますけれども、川がきたなくなった、だから会社のほうがそれを掃除をした、別に環境の改変とか、つくり変えとかいうことじゃなしに、きたなくなったから掃除をしたと、非常にあさはかといえばあさはかだったかもしれませんけれども、そういうふうに受けとっておりました。
  191. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、それについては何の疑いも持たなかった。それから県下の町議会等での問題等についてもあまり平素から御調査なさらないのですか。今度初めてわかったというのは、だいぶのんびりしていると思うのですけれどもね。自分の県下に起こっている問題というのは調査なさらないのですか。
  192. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) 町議会でのそういう質問があったということを、積極的にどういう質問があったかということをその当時問いただしてはおりませんでした。
  193. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 だから、ゆめゆめそういう今度告発されたようなことは想像もしなかったということでございますね。
  194. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) そうでございます。
  195. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、今度の事態が発生をいたしまして、会社側としても全面的に被害の補償等について行ないたいというふうに本席でもお述べになっておられますけれども、県としてはどうなさいますか、具体的に。たとえばいま買い上げを進めておられる汚染田の問題等の会社の負担率等、こういった点も含めて県としてはどういうふうに検討をしていくかということ、あるいは健康被害等の調査についてどういうふうに進めていこうというふうに考えておられるか。その点について。
  196. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) 今度のサンプルの擬装工作ということでございますが、汚染田の問題これは会社の操作し得る余地はございませんし、また健康診断、これも会社の介入する余地はございませんので、それはそれとしていきたいと思います。ただ、カドミウム等の公衆衛生協会の中の数字をわれわれの参考といたしております。その参考とした部分について検討を加えていきたいと思います。
  197. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がないですからもう詳しくはお尋ねできませんけれども、もう一点だけ最後にお聞きをいたしますが、サンプルをとりにいく場合に、告発によりますと、調査員が会社の宿舎に泊めてもらったり、会社で食事をごちそうになったりするというふうに言われておりますが、そういう事実はあったのですか。
  198. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) その当時は、まだ道路も狭うございますし、非常な山の中で時間もかかります。そういうことで、先ほど申し上げましたように、運搬にいたしましても何回かに分けて試料を運搬するということで、その間会社の事務所に置かせていただいたという事実はございます。
  199. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは先ほどの御報告で伺っております。調査員が会社の宿舎に泊めていただいたり、あるいは会社でごちそうになったりというふうなことがあったのですかということを聞いている。あったか、なかったかだけ言うてください。
  200. 佐藤達夫

    参考人佐藤達夫君) まわりには旅館も何もございませんので、朝早くあるいは夜おそくというときには、会社の療に泊めていただいたことはございます。
  201. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ最後に公衆衛生協会にお伺いをしたいのですが、先ほど高山委員の御質問に対して、間接の責任はあるが、直接の責任はないのだというふうにお答えをいただいておるわけです。で、ちょっとお伺いをいたしますけれども、時間がありませんから私申し上げますが、問題の昭和四十四年当時のおたくの理事者の中には、いただいた資料によりますと、当時の厚生省公衆衛生局長、それから厚生省医務局長、厚生省環境衛生局長、厚生省保健所課長、厚生省防疫課長、神奈川県衛生部長というふうな方々がお入りになっていたのかどうか。
  202. 若松栄一

    参考人若松栄一君) 御指摘のとおりであります。
  203. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、これは厚生省から委託をされた仕事で——これはちょっと具体的に伺いたいと思いますが、この四十四年四月に報告をされました報告書によりますと、厚生省の担当官から研究班が委託の趣旨について説明を聞くという研究の進め方をしたというふうに記載されておりますが、厚生省の担当官というのはどこですか。
  204. 若松栄一

    参考人若松栄一君) 当時、私まだ理事長やっておりませんので正確なことは存じませんが、当然その当時は厚生省の公害課であると思います。
  205. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、厚生省の公害課から委託をされて、そうして厚生省の局長級が皆さんお入りになっておる公衆衛生協会調査をされたという結果になっておるわけですが、先ほどの責任問題なんですけれども、これはたいへん重要な内容を持っておると思うのです。おたくが責任を持った研究調査報告によって、その地域汚染状態、住民に対する被害の状態、あるいは企業の企業活動に対する影響、これが決定的影響を持つものなんですけれども、いまのような事態が起こった場合には、これらに対して非常に大きく責任があることは、もうあなたがおっしゃったとおりです。これに対してはどういうふうに対処されようとするのか、その点を聞きたい。
  206. 若松栄一

    参考人若松栄一君) 先ほど申し上げましたように、私ども研究班のお世話をしておりますけれども、技術的な内容には立ち入らないということでございますので、技術的な内容についてまで責任を持てと言われましても、なかなかこれは困難でございます。しかし、最終的にやはり私どもの名前で発表いたしておりまして、社会的影響というものもございますので、当然その責任を感じております。したがって、将来このような委託研究等を引き受けて今後ともやっていきますにあたりましては、そのような点に十分配慮してまいりたいと思っております。
  207. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 責任を感じるというふうにおっしゃるだけでは、これは及ぼす影響の大きさ、社会的影響から見まして、それだけでは済まないと思いますし、第一、損害を受けたほうはうんと損害を受けている、利益を受けるほうは利益を受けるというふうな状況になってあらわれてくるわけですね、この結果からいきますと。この結果いかんによってそういう事態というのは起こってくるわけです。そういう点で、今後の課題にも非常に重要だと思うのですけれども、この以前の問題について再検討をするというふうなお考えはないですか。
  208. 若松栄一

    参考人若松栄一君) 現在この研究報告の結果をどうするかといいましても、どうにもいまさらならぬことでございますが、こういう報告書というものは将来とも学術的な文献として残っていくものでございますので、こういうものが将来長い間間違ったままでいるということは適当でないと思いますので、研究班とも御相談いたしまして、こういう報告書を将来残すような形の場合に、これにはこういうミスがあってこういうことがあった、したがってこの判断が誤りがあったというようなことを、適切に是正していくような方法を考えたいと思っております。
  209. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、先ほど宮崎参考人がお述べになりましたが、四十四年、四十五年八月、十月、四十六年の二月ですか、資料が残っているというのは、これはどういう資料ですか。おたくのほうが捏造する以前の検査資料ですか。それはどうなんですか。
  210. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  その資料は、私のほうで採取しましたものを、役所でおやりになったと同じ方法で注水したものの分析表でございます。その前後の資料はございます。電話の報告では、前後の資料があると言っております。それはあたりまえの事実の資料でございます。
  211. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、その資料は御提出いただけますか。
  212. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  もちろん提出すべきものは全部提出いたします。
  213. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いまのに関連して。  いまの質問の中の資料があるということですが、当然あることだと私は思いますが、会社自体として、排水がいまどういう濃度になっておるのか、どういう公害的なものがあるのかという研究はずっとおられたのですか、どうですか。これは当然あると思いますが。
  214. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) お答えいたします。  やっております。
  215. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いま出そうとされる資料はそれですね。
  216. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) ちょっと御質問の趣旨がわかりませんが、前の資料でございます。その資料を、会社がいわゆる役所の検査と同じように水を注入した形で分析したものと、その前後に全部そういう資料がありますので、比較をしなければなりませんので、そういう資料もまとめてあるということでございます。
  217. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 資料を確認してください。
  218. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいま沓脱、高山両委員からの資料の提出はよろしゅうございますか、宮崎参考人
  219. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) よろしゅうございます。
  220. 矢山有作

    矢山有作君 ちょっと一つだけ聞いておきたいのですが、検体に対する注水その他の操作は、通産省の検査に対してもやったわけですね。
  221. 宮崎孝人

    参考人宮崎孝人君) やっております。
  222. 矢山有作

    矢山有作君 もう一つ小西参考人は非常に責任を痛感しておるということを強調なさるわけですが、しかし責任を痛感する以上は、この問題については具体的な責任処理のしかたがあると思うのです。そこで私は、この地域の住民というのは非常に大きな被害を受けておるのだし、また、あなたのところの従業員にいたしましてもたいへんな被害を受けておると私は思うのです、汚染田の問題等含めて。そういう点で、そうした人々に対する具体的な責任を果たすという意味でおっしゃっておるわけですね。
  223. 小西康孝

    参考人小西康孝君) さようでございます。
  224. 森中守義

    委員長森中守義君) 参考人各位には、長時間にわたりまして本委員会調査に御協力いただいて、たいへんありがとうございました。  なお、小川説明員は午後も出席されるように委員長から申し上げておきます。  本件に対する本日の質疑はこの程度とし、午後二時三十五分まで休憩いたします。    午後一時二十五分休憩      —————・—————    午後二時五十一分開会
  225. 森中守義

    委員長森中守義君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する件を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  226. 矢山有作

    矢山有作君 まず最初にお伺いしたいのでありますが、「昭和四十三年度厚生省公害調査研究委託費による財団法人日本公衆衛生協会カドミウム研究班報告」ということで、カドミウム等微量重金属による環境汚染に関する研究報告がなされたわけでありますが、この研究報告を受けて、厚生省は具体的にどういう取り扱いをなさっておるのか、伺いたいと思います。これは四十三年、四十四年当時、この委託調査をやったのは厚生省でしょう。厚生省がその報告を受けたわけだから、だから、その取り扱いを具体的にどうやったか。
  227. 浅野一雄

    説明員(浅野一雄君) 保健情報課長でございますが、当時は厚生省の環境衛生局の公害課でやっておりまして、それがそのまま環境庁に移っておりますので、環境汚染関係のことに関しましては環境庁からお答えいただいたほうが適当かと思います。
  228. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御質問のありました「カドミウム等微量重金属による環境汚染に関する研究」というのを受けて、厚生省といたしましては、四十四年三月二十七日に「カドミウムによる環境汚染に関する厚生省の見解と今後の対策」というのをまとめまして、調査の結果の概要と、それに基づいて暫定対策といたしましてカドミウムに対する対策の暫定的な進め方を明らかにし、具体的な各論といたしましては「環境汚染対策」と「保健対策」と「発生源対策」というぐあいに分けまして、当時の厚生省といたしましては、自後の問題は、厚生省所管として環境汚染と保健対策、発生源対策のほうは通産省のほうの鉱山保安法の規制によるというぐあいに、この報告の中でも出ておるわけでございます。
  229. 矢山有作

    矢山有作君 そこで午前中参考人の方に来ていただいていろいろと話を聞いたわけでありますけれども、私どもがどうしても納得のいかない点が二、三ありますので、その点をお聞きしておきたいと思います。  第一は、この研究報告を受けて、厚生省はその研究報告の内容について検討されたのかされないのか、これが第一です。その前提に基づいて、私がどうしてもわからないのは、川水についての分析結果を見ますと、現在の鉱業活動関係のない上流地点カドミウム濃度が、現在鉱業活動の行なわれている地域のそれよりも十倍以上高いという結果が出ておる。しかるに、これに対して研究委託をした厚生省は、この報告を受けて一体何も感じなかったのか、不自然さを感じなかったのかどうか。  それから第二点は、第一ダムの東西排水口川水も、そのカドミウム濃度は〇・〇〇四から〇・〇〇五PPMであります。そして鉱業活動関係のない地点カドミ濃度よりも、これまた十分の一近い低さであります。こういう不自然さについても何ら意を用いられなかったのかどうか。  その次は、四十四年の四月九日に当委員会で、厚生省、通産省も出席されておる中で、東邦亜鉛安中鉱業所排水口カドミ濃度が、分析担当者分析では〇・〇三PPMであった。クロスチェックをした小林岡大教授の分析では〇・三二PPMであったのに、一方的に〇・〇三PPMのほうを採用して研究報告に載せたということで、重松研究班長小林教授の間で激しい論争が行なわれました。重松班長は、この問題についての徹底した論議をやって、なぜ一方的に小林教授のクロスチェックした〇・三二PPMを採用しなかったのかということについては、明確にしようとされなかったのであります。  そういうような経過を踏まえて考えますというと、厚生省がこの研究報告を受け取られて、そのまま何の疑念もはさまずに、これを公害行政を進める根拠として採用された、その点か私は理解をいたしかねる。理解をいたしかねるというか、あまりにも厚生省の無責任態度というものが感ぜられるのでありますが、どうでしょう。
  230. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま四つの御質問がございまして、その御質問にお答えする前提の当時の条件を若干お話を申し上げてから、この御質問にお答え申し上げたほうがより御理解願えるのではないかと思いますので、それをお許し願いたいと思います。  まず最初に、厚生省といたしましてこのような鉱山調査をするということは、当時厚生省は健康を守るという設置法、あるいは公害行政として環境汚染対策を進めていく、あるいはばい煙規制法による権限を持っているということはございましたが、水質保全法の権限は持っておりませんでした。工場排水規制法の権限を持っておりませんでした。鉱山保安法の権限を持っておりませんでした。  ただ、まずこの対馬の問題につきましては、御案内のように昭和四十年と四十一年に、厚生省の公害調査研究委託費でカドミウム汚染の問題を調査をいたしたわけであります。これを調査いたしました理由は、小林先生と萩野先生が、三十八年、三十九年の両年にわたって御自身で調査された経緯がございました。四十年度に厚生省が初めて二千万の研究費をとりまして、そして金沢大学のイタイイタイ病に関する研究班から、イタイイタイ病の発生にはカドミウムが主因としてかんでおるという報告を四十年度に初めて知りましたので、そこでこのカドミウム問題に取り組むべく、神通川に対する対応と、一方対馬のケースに対する対応とを並行して始めたわけでございます。  そういうわけで、厚生省として取り組みましたときに、これは鉱山に対して何ら権限を持っておらないということでございますが、健康の観点からは捨てておくことができないということでございます。きよう午前もお話ございました萩野先生が、この研究班の中で、対馬の自分たちの見たものが問題があるからそこも一緒に調べようということになりまして、その当時対馬を対象としたということでございます。そういうわけで、厚生省が鉱山調査するといいますことは、これは当時の情勢としては、現在では想像のできないような非常な抵抗があったということをまず申し上げておきたいと思います。厚生省は一体何の権限で鉱山調査をするのかということは、これは激しく問いかけられたということでございます。端的に申しますならば、東邦亜鉛の場合には最初には入れないということまでいわれた、あるいは神岡の場合でも調査に入れないということの問題すらあったわけでございまして、厚生省は権限なしにやるわけでございますから、相手の同意を得なければ絶対はいれない状態であったということだけは、ひとつ御承知おきお願いいたしたいと思います。  そこで、御質問の第一点の川水分析でございますが、先生の御指摘のあった点は確かに一つ問題点でございます。その点につきましては、午前中に重松研究班長からのお話もありましたように、その当時におきまして、ここにございます東京工業大学の岩崎教授あるいは岡山大学の小林教授という方々は、これはカドミウムの第一人者の方でございました。この方々が、確かにこれは問題があるがということでいろいろ検討された結果、このような報告にまとまったということでございまして、私どもといたしましては、カドミウムについての知識というものがまだ当時不足しておりました。率直に申し上げまして不足しておりました。国際的にもそういう知見は不足しておりました。そういうことで、当時の第一人者の方々の御意見ということでこの研究調査報告をいただいて、それによって厚生省としての方針をきめたわけでございます。議論があったということは承知をいたしております。私もその議論のあったときも聞いておりましたが、議論をした結果、このようなこともあるという、先生の御指摘のような文面の最終的な報告になったのでございます。  ですから、何も感じなかったのかという御指摘でございますが、これはデータを見たときに、そのような議論があって、そしてそれがこの研究班の会議で議論をされたということはよく承知もしておりますし、また、その先生方がこのような結論に達せられたということも承知をしておりましたので、この調査報告をいただきましたときにおきましては、特にそれに対して疑念をはさむということはございませんでした。  それからもう一つは、対馬調査で、第一ダムと第二ダムのところの濃度が十分の一も通産省のやった調査と違うじゃないか……。
  231. 矢山有作

    矢山有作君 第一ダムと第二ダムじゃないですよ。第一ダムの場所とそれ以外のところ、鉱業活動をやってないところの比較。
  232. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いまの御質問でございますが、ここの濃度が低いではないかという御指摘でございますが、これは確かに低いという問題はございますが、この点におきましては、先ほど午前中に重松参考人お答えになって、非常にこれは御批判の多かったところでございますが、川の流れとして上のほうがわりに高く、下のほうが低い、と。川の流れだけとしては確かにそれで説明がつくということでございました。川の水につきましては、クロスチェック数字ともあまり相違を来たしておらないということで、この数字を採用したということでございます。  ただ、その後、どう調査をするかという問題につきましては、重松参考人の午前中のお話にもありましたように、研究班では一回の調査だけではわからないから、今後何度も継続をして調査をするようにということを強く行政のほうに要望されたことを私は明らかに覚えております。そういう意味で、研究班先生御自身がまたあとの調査をしなかったということの問題というよりは、むしろ行政としてあとの調査をどうするかというところにほんとの問題があるのではないかということと思いますが、鉱山自身の問題は当然に、厚生省の出しましたカドミウムに対する「厚生省の見解」とありますように、明らかにここで問題があるので、その地域カドミウム汚染も非常にひどい、またいろいろ疑いも持つということで、発生源の問題は次には鉱山保安行政によって通産省にやってもらうということで、私どもはこの報告をすべて通産省に提供もいたしておりますし、この文面の中にも明白にこれをうたっておりますから、私どもの本来の仕事の環境汚染と影響調査に邁進をするということをいたしたわけでございます。  これは当時予算が非常に乏しゅうございました。人員も乏しく、予算も乏しく、また非常な重荷のある中でやっておりまして、それまでのものをすべてやることができれば私は理想的であっただろうと思いますが、とうていその当時においては不可能であったということが現状でございます。  それから第三番目の東邦亜鉛の件でございますが、東邦亜鉛につきましては、この本の中でクロスチェック数字を明白に出しております。私はそれはひとつ評価をしていただきたいと思います。クロスチェック数字を隠して、そしてこちら側の数字のみをもっていった場合には、これは非常に批判を受けることだろうと思います。しかし、このレポートの中の三五ページの「表−10」の中にあるクロスチェックの「地点番号3」といいますのは、これは小林教授のクロスチェックをされたカドミウムの〇・三二PPMという数字であります。この地点につきましては、主として分析された方は東京工業大学の岩崎教授であります。この方はその道の専門家でございます。私どもがもうとやかく言う必要のない高度の専門家の方であります。片一方に小林教授という農業関係専門家が、カドミウム専門家がおられた。ですから、主査としておやりになった方と、副としてクロスチェックをおやりになった方のデータが違った。両方とも高度の専門家方々です。  このようなクロスチェックの問題につきましては、研究班の会合で私どもは明らかに耳に覚えておりますが、重松先生はいつもその点につきましては、よくお互い両方で相談をしてどちらをとるかきめてくださいよということを議論しておられて、それについて全然何の話もなしに片一方だけがとられるということは、絶対にございません。そのような状態というのはございません。そういう意味におきまして、この主と副の両者の方でお話をなされたものだというぐあいに解しております。  主と副の間で意見の食い違ったときにどうなるのかという御議論でございましょうが、その議論について、研究班の席上におきまして重松委員長の裁断に待つという議論をされたかどうかは、私は、少なくとも私の記憶においてはそのような議論はなかったと思います。また、このような報告を出す前には必ず、私どもの通例のやり方といたしましては先生方の目に全部通っておるということでございまして、小林先生としては御不満がお気持ちの上ではあったのかも存じません。これを委員会の中でおっしゃったのかもしれません。しかしながら、手続として一方的に片一方をだまって切って載せるということは一切なかったというぐあいに、私は確信をもって申し上げたいと思います。  以上が大体厚生省としましていたしましたことでございます。
  233. 矢山有作

    矢山有作君 いろいろ前後の事情を御説明をいただきました。  そこで私のほうからあえて申し上げたいのは、なるほど一つの大きな原因は、鉱山関係の問題について厚生省は当時権限がなかった、したがってこれ以上やれなかったということが一つの大きな理由だったと思います。その点については、しかしこれだけの問題が提起された以上は、鉱山関係の問題について権限がないとするならば、権限のある官庁と積極的に連絡をとって問題を解明しようとすることはしなかったのか、どうか。これが一つです。  また、予算のワクも言われましたけれども、私は、予算のワク等の問題でこういう重要な公害行政の基本をなすデータが不十分なままに置かれておるということには、これは承服できません。しかし、それはそれとして、まず第一点のいわゆる権限の問題については、厚生省当局にそれだけの周到な手だてと、またそれだけの熱意がほしかったと思うわけです。
  234. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いまの先生の御指摘の、厚生省は積極的に通産省に働きかけなかったかという御疑念でございますが、厚生省は通産省に対しましてたえず連絡をいたしておりまして、私先ほど申し上げましたように、入るときには、権限がないものですから必ず通産省に事前に通告をいたしております。別に企業に直接いたしません。それで通産省御自身も必ずお立ち会いになる。どんなところで厚生省がサンプルを取って何を言うかもわからぬというような御議論も、その研究班先生の顔振れを見てそういうことをおっしゃる方も当時ございました。  そういうことで必ず一緒に立ち会われて、そして取られるということでございまして、私ども分析した結果につきましては、このような本と、あとにまとめました「見解」につきましては、通産省に直接持参をいたしまして、その中に鉱山保安法の関係でこれは規制されるべきものであるということを明白に書いて、お願いをいたして渡しております。こちらのほうから何度も足を運んだということも事実でございます。向こうからも足を運ばれたこともございますが、データにつきましては、私どもはどうですかとお伺いしたときに、まあまあですねということがすべてでございまして、データをいただいたことはございません。そういう意味で厚生省としては積極的に働いたということは明白に申し上げられます。  第二番目の、予算がなくて十分できないのはおかしいという御指摘は、私はもっともなことであろうと思いますが、当時の状態の実情を申し上げたまででありまして、本質的な説明にはならないと思います。
  235. 矢山有作

    矢山有作君 そこで、いまの橋本審議官の御答弁を前提にして通産省に伺いますが、通産省は、厚生省が調査をした同じ日にやはりこの対州鉱業所調査をやっておりますね。それは四十三年八月二十六日から三十日までの間やったということになっております。ちょうど厚生省の調査が八月の二十七日、二十八日でありますから、これは一緒にやったことになっているわけですね。そのときに通産省が検出をしたのは、第一ダムの東側の排水口で〇・〇三PPMを検出し、西側の排水口で〇・〇七〇PPMを検出しておるわけであります。そうすると、これは厚生省がやった調査とは非常な大きな相違があるのですが、通産省のほうは、この検出をしたものを全然厚生省に知らせないで、ほおかぶりをしておったのかどうかということです。
  236. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 当時におきます、こういった問題に関係しております各省の中におきます通産省の立場と申しますか、姿勢につきまして、恐縮でございますが、一言お断わり申し上げたいと思います。
  237. 矢山有作

    矢山有作君 立場や姿勢はいいですよ。立場や姿勢には関係ないでしょう。
  238. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) それでは、ただいまの第一ダムの〇・〇三三という高い数値、これは八月末の試料分析の結果が出ましたのが、十月の中旬でございます。高い数値でございますので、環境の利水点におきます指導基準が〇・〇一、これは排水でございますけれども、それに比しましても高いということで、すぐ十一月の初めに再検査にまいっております。その結果の数値が〇・〇〇二になっております。自後大体こういうオーダーの数値になっております。  それから厚生省のほうの公衆衛生協会のレポートが、四十四年の三月に発表されて、私どもいただいております。そのときの数値がただいまの御案内のように〇・〇〇四、似たような数値でございますので、そういう形になっております。  それから両省の協力関係につきましては、私どものほうは一般にと申しますか、企業サイドだというふうな色目で見られるような空気が非常に強うございまして、こういった調査の場合にはむしろ入れないという、そういう空気のようでございました。ただ、私ども事務方としては、当然、ただいま橋本審議官の説明がございましたように、それぞれ分担をしてやっておるわけでございますから、お互いによく連絡しておりました。
  239. 矢山有作

    矢山有作君 あなたのおっしゃった、四十三年の八月に調査してみたら異常に高かった、そこで四十三年の十一月から再検査をした、そうしたところが、結果的に見ると厚生省が調べたのと同じような結果があらわれた、こういうふうなことだと思うのです、一口にいえば。ところが、四十三年十一月からの通産省のやった水質検査には水をみな入れておったということを、これはもうすでに午前中に明らかになっているわけです。ですから、あなた方がこれを分析するのだといって集めた試料である水については、会社側が皆さんのすきを見て、みんなきれいな水を入れて薄めておった。それをあなた方は四十三年の十一月から、驚くなかれ四十六年の十二月までほんとうだと思って一生懸命調査しておった。ほんとうだと思っておったのか、まあまあこれで企業のぼろが出なくて助かったと思ったか、それはわかりませんが、そういうこと。  それで私の言いたいのは、同じときに厚生省と通産省が調査に行っているわけでしょう。通産省はこれだけのカドミウムが検出されたならば、一緒に行っておって、うちのほうが検出した結果はこうだということをなぜ厚生省に言ってやらないのですか。水質検査の権限を持っているのは通産省でしょう。権限を持っておる官庁が一緒について行っておる。先ほどの橋本審議官のことばを借りれば、たいてい通産省が一緒に行くらしい。一緒に行って、しかも自分たちで調査したらこんなに高い値が出た。どうしてこれを厚生省に知らせてやらない。厚生省に知らせてやれば、おそらくあの時点で厚生省がきれいさっぱりとだまされるようなことはなかったはずです。企業がやった前代未聞の公害隠しというような陰謀もあばけたはずだ。どうしてそれを通産省はしなかったのですか。
  240. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。  当時の担当者の話を聴取してみますと、通産省というのは企業寄りで、どちらかといいますと厚生省等他省庁では、そういったものを信憑できないのではなかろうかという気分があったやに聞いております。したがいまして、私どものほうから積極的にそういった数値を出す措置までとっておりません。本来からいえば、ただいま矢山先生指摘のように、そういうことを離れてフランクに資料交換をやるべきだったと反省しております。  それからもう一点、この試料分析を行ないましたのは、工業技術院九州工業試験所でやっております。当時、カドミにつきましての分析の機器及び測定方法等、かなりいまと比べますとなお不十分であったようでございます。特に九州の工業試験所は、そういうごく初期であった。それから当時におきますカドミ分析の御専門の方々が非常に少数で、そういった方の協力も得られなかったというふうな事情も、当時の担当者は考えたようでございます。むしろ、そういう意味で遠慮をし、みずからもう一ぺん当たってみるという再検査の方法を選んだわけでございます。
  241. 矢山有作

    矢山有作君 あなたの言ったことは少し矛盾しているのですよ。他省庁が通産省は企業寄りだといって、えらいひがみを持っているのですね。そんなにひがまなくてもいいですよ。また、それだけのひがみがあるのなら、自分が調査した結果こんなに高い数値が出ているのだが、ひとつ厚生省でも一緒に来ているのだからやってみてくれぬかということにはならぬですか。そういうことだから企業寄りだといわれるのですよ。企業に都合の悪い数値が出たら、一緒に行って調査をしておっても知らぬ顔の半兵衛をきめ込んでいるから、それだから企業寄りだといわれるのです。これはまさに企業に不利な数値が出ているのです。そうしたら、企業寄りだといわれたくないのなら、むしろ積極的に厚生省に知らしてやるべきじゃないですか。あなたの言うのは、被害妄想か何か知らぬが、ちょっと矛盾していますよ。
  242. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 当時のことでございますので、当時の担当者等がどういうほんとうの判断をしたか、つまびらかにしておりませんが、一つは、分析の技術方法について積極的に他省庁に情報連絡をするほどの自信もなくて、もう一ぺん念には念を入れてやってみようという道を選んだように聞いております。
  243. 矢山有作

    矢山有作君 橋本審議官にお伺いしますが、先ほどあなたもいわれたように、排水口でのカドミ濃度というのは異常に低いということを、その当時も思われておったと思うのです。そうすると私は、分析に行った人たちがやはりそういう感じを抱いたと思うのですよ、その当時。したがって、通産省の連中が一緒に来て分析をやっているわけですから、そこで、その当時通産省のほうに、一体どうなっているのだろうということを聞いたのでしょうかね。どうでしょうね、この辺は。あなたも、かわっているからわからぬと言うかもしれぬが。
  244. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) データを交流いたしまして、低いということを特にコメントをして聞いたかどうかという点については、私は明確な記憶はございません。
  245. 矢山有作

    矢山有作君 いずれにしても、各官庁のなわ張り根性はかくのごとし、そして通産省の企業べったりもかくのごとしという、私はこの一事をもってしても結論が出るだろうと思う。  これだけで時間をとるわけにもまいりませんから、その次にまいりますが、厚生省にもう一つだけお伺いしたいのは、午前中に、これは公衆衛生協会分析調査を委託されたわけですが、公衆衛生協会は、この研究調査が事務的にスムーズに行なわれるようにするだけであって研究内容には責任が持てない、こういうふうなことを言っているわけです。したがって、研究班を編成して研究報告を得た、しかしながらその結果については一切責任を持てぬのだ、こう言っているのですが、そのとおりに理解してようございますか。
  246. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 午前中の御質問で公衆衛生協会の理事長のほうから答弁をされたところでございますが、このようないろんな分野の方々が参加されて、しかもいろんな分野の技術があって、大学も国の研究機関もあるいは各省の研究機関すらもからむというような問題の研究のマネージメントをどうするかというのは、いまも非常にむずかしい問題でございます。一体どこがそれを中心にめんどう見るのか、通知をし、連絡をし、会議を開き、またデータをまとめ、経理上の問題をちゃんとまとめるかということでございまして、そのような問題になりますと、やはり日本衆衛生協会という場所が当時、現在におきましても、得られる最善の場所であったということを申し上げたと思います。  その次に協会責任ということでございますが、この研究班の学問的な内容そのものということになりますと、これは研究班の専門委員会方々の全体の合意でまとめられたものでございますから、学問的な内容はその方々がおやりになるということです。で、理事会はどうしているかということでございますが、理事会のような機構が学問的な内容のところまで関与すること自体が、これは私は非常にまずいことであるというように考えておりまして、やはり学問的な研究をする人は自由な立場で自由な論議をするということでございまして、このカドミウム研究班は、ほかの研究班に比べまして、非常に立場の違う、しかも衝突し合う方々も全部中に入れながらやってきた研究班でございます。重松先生の御苦労というのは、これは並みたいていならぬものでございます。  そのような形でやってまいりましたものでございまして、理事会そのものがこの結果そのものに責任を持つというポイントがどこかという議論になりますと、先ほど理事長のお話にありましたように、このうちの一部が全然科学的な根拠を失ったという場合には、このレポートはその部分について文献的な価値を失うので、その部分を削除もしくは全然新たにつくり直すということが、公衆衛生協会としての責任の取り方であります。また経理上の、事務上の手続ということにつきましては、公衆衛生協会責任を持つというようなぐあいに解しておるわけでございます。
  247. 矢山有作

    矢山有作君 民間の一財団法人である公衆衛生協会でも、いろいろな専門分野の人、あるいは立場は違うかもしれないがそういう人を集めて研究調査がやれる。そういうことであるなら、私は厚生省がやれぬことはないと思うのです。厚生省はまさに国家権力を背景にした国の機関ですからね。だから、いわばこれはまさにトンネル機関ですよね、研究委託費を出して、それで人集めをやって研究する、その結果についてはいまおっしゃったようなことで直接的な責任は持たぬ、こういうようなことであるなら、そんな何というのか、無責任ということばを使うとあるいはそれは言い過ぎだということをおっしゃるかもしれませんが、まさに無責任とも言えるような協会に委託しなくても、私は厚生省自身がやったらいいじゃないかと思うのです。  私は公衆衛生協会の、午前中沓脱さんも言っておりましたが、四十八年度の事業計画書なり四十八年度の収支予算書を見ましたが、役員がおりますね、会長、理事長、それから理事が十六人、会長、理事長を含めて十八人ですね。これで、たった一人をのけては大半は厚生省の方々が占めておられる。そうして、しかもその事業予算を見ると、四十八年度の予算で財団収入が総額九千百九十二万三千円、そのうちの委託研究費が五千四百万円。何も厚生省だけのじゃありますまいが、こうなると、予算の中の収入額の六〇%ぐらいを委託研究費でまかなっておる。しかもこういう状態ですから、まさにこれは研究委託を受けて食っているようなものですな、この財団法人は。しかも調査結果については直接的に責任は負えない。  私はむしろ重要な委託調査をやる場合には、こういう公衆衛生協会などにやらせないで、政府でみずからやるようにしていただいたらどうかと思うのですがね。
  248. 山本宣正

    説明員(山本宣正君) 現在、私のほうで公衆衛生協会につきましては監督をしておるわけでございます。四十八年度におきまして委託研究費の総額はたいへん多くなっておりますが、公害の問題が起きまして、四十年からこういったような委託研究を始めたわけであります。次第に公害問題が広がるとともに、特に健康問題についての研究につきましては、現在、橋本審議官が御説明申し上げましたような事由で、また午前中理事長が御説明したような事由で、公衆衛生協会が委託を受けているわけでございますが、公衆衛生協会自身といたしましては、その中の事務的な費用をわずかに使用いたしまして、あとはすべて検査あるいは会議、そのほか調査研究のための費用に投じておるという形になっておるわけでございます。
  249. 矢山有作

    矢山有作君 そこで次に質問を移しますが、事後処理の問題を含めてひとつお尋ねしたいのですが、その問題に触れる前に、現在の概況というのを私の承知しておる範囲で先に述べてみたいと思います。  東邦亜鉛が佐須川に流した四千四百万トンの坑内水によって、二千八百六十キログラムのカドミウムが河川と流域の水田を汚染した。これは告発で言われていることであります。対州鉱山の影響を受けた佐須川流域の樫根、下原、小茂田部落と椎根川流域の椎根部落、四地区の水田面積が約六十一ヘクタールであります。このうちで半数以上の三十二ヘクタールが、カドミウム汚染田として県による買い上げが決定しておると聞いております。それから選鉱かすの貯蔵池であった水面約一万坪あまりの億富ダムには、三十センチの覆土をした上で、この上に芝生を植えるとかなんとか、そういうようなことをやるつもりのようです。  それから汚染田買い上げに要する費用は、大体三億と員われております。そのうち東邦亜鉛が負担する分は三分の一の一億円、こういうふうに伝えられておる。あと五五%を県、一五%は厳原町が負担するということになっております。この東邦亜鉛の負担率の算出の根拠は何かといいますと、四十八年の三月に九大農学部の青峰教授の調査によって、水田土壌の汚染に対する寄与率が、この東邦亜鉛の対州鉱業所ですね、この分、つまり新鉱山と称しておるようでありますが、これが二六・六ないし三二・一四%、それから東邦亜鉛の前の旧鉱山のそれが六七・九から七三・四%という報告がなされた。これに根拠を置きまして、東邦亜鉛の負担を三分の一と、こういうふうにしたということであります。反当たり買い上げ価格は八十万円、こういうことになっておるようであります。  そこで、それを前提にしながらひとつお聞きしたいのは、この東邦亜鉛の負担分というもの、これが私はあまりにも低いのではないか。鉱業法のたてまえから見ても、これはもっともっと東邦亜鉛に対する事業者負担というものを考えていいのではないかと思うのですが、その点いかがでしょう。
  250. 森整治

    政府委員(森整治君) 御指摘のように青峰報告書、厳密に言いますと、「長崎県厳原町佐須川・椎根川流域におけるカドミウム等重金属による環境汚染の原因調査報告書」というのが、四十八年の三月に県の委託で報告書がまとめられております。これに基づきまして、県の公害審議会の議を経まして、企業負担が三〇%ということで、町による三十二ヘクタールの買収計画の対策がきめられたということでございます。  そこで、ただいまの青峰報告書の言っております考え方を申し上げますと、結局これは、土壊に蓄積されておるカドミウムの原因を追及しながら、それが東邦亜鉛の寄与する分はでれくらいだろうかという計算をしたわけであります。その結果を申し上げますと、従来の旧鉱山の分もあるだろう。それから新鉱山の分もあるだろう。そういうことで、新しい鉱山活動に伴って汚染された部分は二六・六から三二・一%の幅の中にあると、こう推定されるという結論でございます。簡単に申しますと。その三二%を受けまして、県のほうでは二六・六から三二・一%を受けまして、その一番高い三二%という数字をとりまして、それから負担法の考え方によりまして三〇%という——明治二十三年から昭和二十二年までの東邦亜鉛の責任分八%を足しまして四〇%でございますが、その四〇%の四分の三ということで三〇%という額をきめまして、それで三割企業が負担すべきものと、こういう判断をしたわけでございます。
  251. 矢山有作

    矢山有作君 私は、これは通産省の御意見も伺いたいのですが、鉱業法の百九条に賠償義務の規定がありますが、それの第三項によって考えていく必要があるのではないか。そうすれば、これは企業側の負担の割合というのはこんなに低いことでは済まないのではないかと思うのですが、通産省のお考えはどうでしょうか。
  252. 江口裕通

    政府委員(江口裕通君) 御指摘の第百九条の三項でございますが、損害の発生の後に鉱業権の譲渡がありましたときは、損害の発生のときの鉱業権者及びその後の鉱業権者が賠償の責めを負うということでございます。ただしかし、本件は、私どもの承りますところによりますと、一応東邦亜鉛の事業活動によりまして、特に、昭和三十年ごろとかいうことでございますいわゆる洪水のありましたとき以降の問題でございますが、それ以降発生した損害というものが主として原因損害というふうに考えられておるように伺っております。その辺の因果関係、つまり、稼行と損害発生との因果関係をどういうふうに確定するかということが問題であろうかと、むしろ考えております。もしそういうことがはっきりいたしました場合には、たとえば東邦亜鉛が鉱業権者になりますときに発生した損害、あるいは東邦亜鉛が稼行しなかったものでございましても、引き継いで東邦亜鉛の持っております鉱業権から生ずる損害については会社が責任負うというたてまえになっておることは、この法律の規定するとおりでございます。
  253. 矢山有作

    矢山有作君 昭和何年と言われましたか。
  254. 江口裕通

    政府委員(江口裕通君) 昭和三十六年以降。
  255. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、東邦亜鉛の責任昭和三十六年以降に限って見る、こういうことなんですか。
  256. 江口裕通

    政府委員(江口裕通君) お答えが悪かったのでございますが、ダムの決壊いたしましたのが三十六年でございます。そういったようなものも主たる原因となって損害が発生しておるわけでございます。ダムの決壊等も主たる原因となりまして損害が発生しておるというふうに考えられておるように私どもは伺っておる、こういうことでございます。
  257. 矢山有作

    矢山有作君 そうなると、私はまたちょっとわからなくなってくるのです。たとえが川水調査をやったときには、川の上流のほうがカドミの含有量が非常に多かった、下流よりも。下流というのは、現に鉱業活動をやっている地域カドミウムよりも非常に多かった。この点を問題にしたら、それはその地域の状況、つまり長い間昔から鉱山があって、そこで掘っておった、だから上流のほうにも廃坑があるし、廃石があるし、それで上流のほうが非常に高くなって、鉱業活動を現にやっておる下流のほうが低くなっているんだと、こういう御説明も午前中いただいたのです。  そうすると、企業の公害責任を追及して問題が起こったときには、そういうような昔の鉱山活動カドミ汚染の原因なんだという言い方をし、損害賠償の問題になってくると、一定の時点から後に限って、そうして企業の責任を極度に縮めていこうというのが通産省のお考えですか。
  258. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。  若干私どもの説明が不十分でございましたが、現在の鉱業法の規定によりまして、百九条、御案内のように無過失賠償責任規定になっております。そういう法規に照らして、当然費用負担を検討されるときにおやりになったものというふうに考えております。ただし、先ほど水質保全局長から御説明のございました費用負担のああいったプロセス等々については、私どもは参画いたしておりません。
  259. 矢山有作

    矢山有作君 だから、現実の事業者の負担をきめたそのプロセスには参加しておられないとしても、そういうようかきめ方が、事業者負担の立場から、鉱業法に照らして正しいとお考えになっているのかどうかというのです。昔からの廃坑があった、鉱山が経営されておった。聞くところによると、七百年前とか、千何百年前とかいうんです。私はそんな遠くのほうを言おうとは思わないけれども、明治以降鉱業法の体系が整備された後以降だって、少なくともそれだけだって最小限対象にすべきではないか。それを言っているんですよ。鉱業法が体系づけられた後に、どういうふうな鉱業権の移転があったかということはつかめるはずなんです。鉱業権が継承されておるなら、その継承をした現在の鉱業権者は過去のものに対しても責任があるでしょう。それを言っておるのです。
  260. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 矢山先生のおっしゃるとおりでございます。そういう形で運営されるべきものだと考えております。
  261. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、通産省がそういうことになりますと、森局長、あなたのほうの企業に対する見方は、あまりにも甘過ぎるのじゃないですか、これは。
  262. 森整治

    政府委員(森整治君) 本件につきましては、実は土壌汚染防止法の対策地域としての指定は行ないましたけれども、その地域の対策計画、法律に基づく対策計画にのっとってやっておりません。と申しますのは、農用地を改良するという考え方でないわけです。そこで、それから先は結局民法上といいますか、話し合いで県が対策をきめたと、こういうふうに理解をしているわけでございます。したがいまして、基本は、この報告書に基づきまして県がどういう対策を考え、その負担部分を——この報告書でも実は一番最後に、このことは「昭和二十三年以降の状況に限って算定したものであり、鉱業法にもとずく現企業の汚染に対する責任の範囲までも言及したものでないことを付記しおく」ということで、一番最後に結んでいるわけです。ですから、県がどういう態度をとられるかということは県がおきめになったことでございまして、今後の参考として、われわれも指導上の問題として今後いろいろ検討してまいるということにいたしたいと、こういうふうに考えておるわけです。
  263. 矢山有作

    矢山有作君 そうしますと、私は県がとっておる対策に問題があるのではないかと思うのです。私はまだ詳しいことはこれからお聞きしなければわかりませんが、県は具体的にどういう対策をとっているのかということが一つありますが、もし汚染田の買収だけで事足れりというようなことでいっておるとするならば、それをそのままあなた方はお認めになるのかどうか。  現在あそこでは、先ほど御紹介しましたように、あの対馬の農用地面積というのは全面積の約四%です。しかも水田は、先ほど申しました四部落六十一ヘクタールというのは、その大きな比重を占めておる。それの大半が汚染田になって、汚染田だということで買収を受けてつぶされてしまう。  そうなると、もう一つそれにからんで問題になるのは、昨年この東邦亜鉛の対州鉱業所は閉鎖をしたわけであります。そこで、そこに働いておる労働者というのはほうり出されてしまう。しかも、従業員で現在残っておるのが約三百名、そのうちで配置転換等でいける可能性がある者が八十名、あとの二百二十名は全く会社からほうり出される。しかも、それらの持っておるたんぼというのはカドミ汚染されて使いものにならない。そして汚染田として県の買収計画に乗っておる。こういうことになると、一体この従業員の生活はどうなるかという問題が出てくるわけです。  そういう問題をもあわせて考えるなら、いま県がやっておる対策で事足れりとして政府はおっていいのかどうか。そういうことです。
  264. 森整治

    政府委員(森整治君) 農用地の改良等の問題につきましては農林省になりますけれども、ここで何省だ何省だということはややこしゅうございますから、私から御答弁を申し上げますけれども先生指摘の点につきまして、若干私ども持っておる数字と違っておる点がございます。それは十アール当たり九十五万九千円というふうに、平均としましてはそういう数字で厳原町が買い上げる。経費については、約三十二ヘクタールでございますから三億一千万円。その九十五万九千円の内訳が、地価相当分が四十四万五千円、見舞い金として五十一万四千円という、中身がそういうふうになっているというふうに理解をしております。したがいまして補償的な要素がここに入っておりまして、地価に足されてそういう措置がとられておる。  もう一つその前にお答え関係上、きょうの参考人の御意見にあったかどうか、客土する土地が非常にないということが問題になったわけです、ここの対策を講ずる場合に。それと転換作物に問題が多い。それから所得補償をどういうふうにするかというような問題がありまして、町でそれを買い上げて農協の敷地にするとか、そういうことを一応県としては対策を打ち出したようでございます。  そこで、今回の事件を契機にいたしまして、現地におきます声が非常に県の調査によりましても、不信はともかくといたしまして、買い上げの問題に対する非常に反発が強いというふうにわれわれも理解をいたしておるわけでございまして、したがいまして、結論を申し上げますと、青峰報告書につきまして、実は先ほどの四十三年の報告を引用した部分がございます。それが、それ以外に擬装工作が行なわれた点があるのではないか、そういうデータを使っていはせぬかということを至急調査するように県に連絡をしております。そこで、そういうものに基づきまして調査報告書そのものの数値が変わってくることはないか、変わってきたあとで県の対策をもう一回再検討していただくというふうに実は指示をしたところでございます。
  265. 矢山有作

    矢山有作君 そこで私お聞きしたかったのは、先ほど東邦亜鉛の負担分の問題について触れましたね、鉱業法に関連をしながら。そのことは午前中参考人である小西社長のほうからも、この地域の被害の住民、さらに従業員、従業員のたんぼも汚染されて汚染田としての買収対象になって生活の場に困ってくるわけだから、そういう住民や従業員について十分責任を感じて対処するという意味かと言ったら、そうだと言うのです。ですから私は、こういう公害企業において大きな被害をこうむっておるあの地帯全体の住民の立場を考えて、事業者等の間でどういうふうな対策を打とうとお考えになるか、それも聞きたいわけです。これはどこの省庁の管轄ということでなしに、現在の対馬のあの地区の住民の問題を、対州鉱業所は閉鎖になる、しかも残されたのは汚染田と、さらに今後何十年何百年続くかわからないカドミその他の重金属による汚染を残されたのです。それをどう今後救済しようとするのか、その考え方があるなら聞きたいのです。
  266. 森整治

    政府委員(森整治君) 細部につきまして県なり通産省ともまだ具体的に検討はいたしておりませんが、私ども現在考えておることは、買収を強行するのはよくない。求められておるのは、やはり先祖伝来の土地でお米、飯米は確保したい、こういうお気持ちが強いようでございますから、そういう線に沿って農林省にも土地改良を何とかできないかと相談している最中でございます。それからもう一つ、開田に対する要求もございます。そういうことを含めて、企業負担の点につきまして再検討をすることはもちろんですが、そういうようなことをいま私ども考えておる次第でございます。
  267. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) ただいま森局長からお話がございましたが、私どものほうの関係する分として補足して御説明申し上げます。  閉山をいたしておりますので、閉山後におきます鉱害防除措置を万全にするために、鉱害防除工事を鉱山保安法によりまして的確に指示をする準備を進めております。すでに計画は会社側から出ておりますが、それを現地で厳重に周到に点検を続けております。  それから第二番目に、法律上企業責任でない部分もかなりございまして、これは県当局に対しまして私どものほうから三分の二の補助金を用意しておりまして、その補助金の運用につきましても、先国会の当委員会で各先生方から改善するようにという強い御指摘がございまして、今度の予算でかなり改善いたしております。そういう条件のもとで、県当局に対しまして、残存しておりますこの廃止部分の鉱害防除工事を早急にやってもらうべく現在進めております。  それからもっと広範囲に金属鉱山におきます蓄積鉱害問題がございますので、これも今年度の予算措置といたしまして金属鉱業蓄積鉱害対策会議費用を、三千五百万円程度でございますけれども、要求してない分を大蔵のほうから認めてもらっておりまして、これを使いまして、早急に関係各省庁との協力を得ながら対策を進めてまいりたい。  なお、先ほど矢山先生から御指摘がございました百九条によります無過失賠償責任でございますが、先ほどの森局長の説明の中に、明治からの部分を明治にさかのぼって算定され、その費用の四分の三云々という説明がございましたが、当然、鉱業権を継承しましたときについております鉱害部分は継承者の責任でございますので、そういう扱われ方にするのが当然でございます。  それから、けさ小西参考人が当委員会で説明しております住民及び地域方々に対して可能な限り責任をもって協力あるいはおわびをしたいということを言っておりますので、この点の実行の確認につきまして、私ども強力に指導していく所存でございます。
  268. 矢山有作

    矢山有作君 森局長、ちょっと十分聞き取れなかったのですが、汚染田としての買収の強行はしない、これはわかりました。そうすると、あとの汚染田をどういうふうに具体的に地域の住民との関連で考えていくか、ここのところちょっと聞き取れなかったので、もう一ぺん御説明ください。
  269. 森整治

    政府委員(森整治君) もちろん、転用を御希望になる向きもあるやに承っております。そういうのは除きまして、基本的には、非常に狭い土地で、やはり先祖伝来の飯米のお米をつくっておるというところがどうも基本のようでございます。それにこたえる措置、すなわち客土なり何なりを、遠くても費用はかかってもそういうことをしてあげられないのか。あるいは開田という話もあるようでございます。それらも含めまして農林省とよく相談をして善処したいと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  270. 矢山有作

    矢山有作君 通産省にもう一ぺんお聞きするのですが、鉱害防止事業を計画し、これをやらせるつもりだと、こういうことでございますね。閉鎖後の鉱害防止のために鉱害防止の事業を計画してそれをやらせる、こうおっしゃったと思うのですが、それについてだと思うのですが、その鉱害防止事業をやる場合に企業責任でない部分もあるとおっしゃいましたね。その企業責任でない部分というのは、たとえばどういうことを想定されておるわけですか。
  271. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 昭和十二年に東邦亜鉛の前身の会社が鉱業権を取得しております。そのときに鉱業権を取得してない部分におきます抗口とかあるいはボタ山とか、こういうものでございます。これは現在全国の各休廃止鉱山にそういうものがたくさんございまして、府県がその鉱害防除の工事主体になっていただきまして、補助金という制度で、先ほど御説明申し上げましたように私どものほうから協力をする。なお技術的な点に問題があれば、金属鉱業事業団がその指導に当たるという体制になっております。
  272. 矢山有作

    矢山有作君 次に法務省見えていますね。法務省に一つ聞きたいのですが、午前中参考人の方に来ていただいていろいろと意見を聞きました。そのときに明らかになりましたのは、通産省がやった排出水の分析についても、その検体の中に注水等いろいろな手段を弄してこれを操作をしてごまかした、こういうことをはっきりお認めになったわけですが、そうなりますというと、これは法務省としては鉱山保安法との関係でそのままには済まない部分が出てくるのではないかと思うのですが、法務省の見解を伺いたいと思います。
  273. 根岸重治

    説明員(根岸重治君) まだ確定的な事実を承知しておりませんので、具体的事実につきましてどのような犯罪が成立するかを申し上げることは適当でないとは思われますけれども、一応一般的な理論的な問題としてお答え申し上げたいと思います。  いろいろな条件が重なると思うのでございますが、鉱山保安法の違反の罪が成立しないかというお尋ねでございますが、そのまず前提としまして、ただいま御指摘のような事実が、鉱山保安法の三十五条によりますいわゆる立ち入り検査として行なわれたものかどうかということが問題になるかと思うのでございます。もし三十五条によります立ち入り検査として行なわれた際にいま申されたような工作が行なわれたのではないとしますと、これは鉱山保安法がカバーする問題ではもはやないというふうに私は考えます。言いかえますと、鉱山保安法の五十七条の五号の罪は、立ち入り検査の際に行なわれたものでなければならないというふうに考えるので、第一の問題は、それが立ち入り検査の際に取った検体につきまして水を薄める、あるいはその他の工作をするということになりますれば、これは鉱山保安法の五十七条五号の罰則に該当するということが言い得るかと思います。
  274. 矢山有作

    矢山有作君 犯罪の構成要件上は、おっしゃるとおりに今後詳細な調査が要ると思います。しかしながら、少なくとも今回の事案というのは、あなたがごらんになったようにきわめて悪質きわまるものなんで、この点については、やはり鉱害問題がこれほど重要なときですから、十分の企業側の責任を追及し、これを明らかにしておく必要があると思いますので、その点については法務省当局のきびしい態度を私としては望んでおきたいと思います。  それから、これで終わりますが、この問題の事後処理というのは、これは非常に重大だと思うのです。特に地域の住民にとりましては、鉱山が閉鎖された後に、ほとんど大半の従業員は職がなくてほうり出されてしまう。しかもその退職金も、十四、五年つとめておってわずか百十万程度の退職金でほうり出されてくる。しかも、たんぼといえばほとんど汚染されておってどうにもならない、こういう状態なんです。そしてまた地域の住民にとっては、たんぼが汚染されておる、つくる農産物も汚染されておる、こういう状態で、その生活というのは私は今後たいへんなものがあると思う。しかも、残された鉱山からどんな被害が出ないという保証もない。そういう点を考えると、これは地域の住民にとってはたいへんな問題であります。したがって、この善後対策というものについては十分に企業の責任を追及する中で対処していただきたい、このことを特に強く申し上げておきたいと思うのです。  それからもう一つは、今度のこの調査を通じて言えますことは、何といたしましても、もとの試料自体がいろいろとごまかされておったという重大な問題ですから、それを分析することによって一定のものを出し、それに基づいて公害行政がいま推進されておるということです。したがって全体としては、参考人も言っておりましたが、大きなことはないんだと、全体としてはたいした狂いはないのでやっておりますと、こう言っておりますけれども、少なくとも公害行政を推進していく基礎の資料としてこれがつくられたものですから、その根底がゆるがされるような不正な事実がたくさん出てきた以上は、これは私は、やはりあらためてその地域について全面的に調査のし直しをする必要があると思います。ただ、その場合に、鉱山はすでに閉鎖された、したがって抗内水にしても排出水にしても、いろいろと条件は変わってきておる。実態がつかみにくいというような問題も出てくるかもしれません。実態というのは、その当時の実態と合わせてぴったり合うというような状態ではないわけですから、その当時の実態はつかみにくいという問題は出てくるかもしれませんが、しかし、いずれにしても私は全面的な調査をやる必要があると思う。  それともう一つは、東邦亜鉛の同じ安中製錬所につきましても、これまたいろいろの問題が提起されておることは御存じのとおりであります。したがって、この安中製錬所についても再調査をする必要があるであろうし、また安中製錬所の公害隠しの実態なり、あるいは対州鉱業所公害隠しの実態等を結合して考えるならば、東邦亜鉛それ自体が会社としてこういう公害隠しというようなふらちなことをやっておるのじゃないかと私は思うので、東邦亜鉛の全鉱業所、事業所について徹底的に再調査の必要があると思いますが、この点はどうでしょうか。  それからもう一つ、さらにこういう事実が暴露されたことによって、鉱山関係の鉱害問題というのは再び見直しをして、全面的な調査をやってみる必要があると思います。この点いかがでしょうか、最後にお尋ねしておきたいと思います。
  275. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。  まず試料の点でございますが、矢山先生指摘のとおりでございます。したがいまして、取りました試料管理につきまして、現在のやり方を早急に改めて、こういうすりかえ、水増し等々の事態が絶対に起こらないような措置を目下考究中でございます。早急に具体的な改善措置をとることにいたしております。  それから対州鉱業所の実態につきまして、当時及び現時点における一斉点検をしろという御趣意でございますが、私どもすでにそういう決意で調査計画を福岡の監督局が中心になって練っておりまして、安中、契島、小名浜等、他の鉱業所につきましても同様でございます。なお、この問題が起こりました直後に、全事業所に対しまして、とりあえずこういった種類の事実が他の鉱業所においても行なわれておるのではなかろうかという想定のもとに、現在係官を出しております。水につきましては、今月の二十日ぐらいには分析結果が出る予定になっております。  それから鉱山関係一般でございますけれども、とりあえずのところは、こういった取りました試料のすりかえ、水増し等の事態が起こらないように、すぐ強い指示をいたしております。  なお、休廃止鉱山を含めまして全鉱山の一斉点検の問題でございますが、すりかえの問題は実は稼行鉱山でございます。休廃止してしまった工場にはもう人がおりませんので、稼行鉱山を重点に、御趣意のような趣旨で早急に点検をすべく準備を進めております。
  276. 矢山有作

    矢山有作君 最後の最後ということで、もう一つ落としておりましたので伺っておきたいのですが、健康調査をずっとやっておられるようですが、その健康調査の結果、最近の状態はどうなっておるのか。そしてまた、この東邦亜鉛の公害隠しの問題と関連をして、今後における住民の健康補償の問題特に私の聞き及ぶところでは、イタイイタイ病だと断定はできないようでありますが、そういう気配があるということで観察中の人が幾人かあるそうでありますが、これら患者の方の生活補償なり医療補償の問題等々についてどういう考え方でおられるか、伺っておきたいと思います。
  277. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 長崎のいまの場合でございますが、四十年度から、四十二年度を除きまして毎年健康調査をやっております。それで、問題のある者につきましては、中央にあります鑑別診断班に持ってまいりまして、延べ七十二人、実人員四十五人につきまして現在まで鑑別診断が行なわれておりまして、いま経過観察を要する者としましては一名残っております。なおこの点、毎年健康調査をやっておりますので、来年度におきましてもできるだけ早期に、しかも幅広く住民の協力を得てやってまいりたいと、こう思っております。  ただいま御指摘がございました三人の問題につきましては、橋本審議官からお答え申し上げます。
  278. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 御質問のございました三人の方でございますが、三人の方につきましては、私どもがその三人の人の存在を知りましたのは四十三年四月でございます。そのときには不幸にして全部なくなっておられまして、最初のケースの方がなくなられているのが二十九年三月、二番目の方が三十八年五月、三番目の方が四十二年の十二月になくなっておられます。この三人の方の中で、この三人の方は萩野先生小林教授が指摘されたものでございますが、実際患者さんを直接みられたのは、このうちの一人の、四十二年の十二月になくなった方でございます。  その方の問題が四十三年四月に問題になり、さらに四十三年の十月に金沢大学の石崎教授もこの問題を指摘されまして、私どもは非常に重要視いたしました。特に、先ほど重松班長も話をされましたが、神岡に次ぐ、神通川にまさるとも劣らないぐらいの汚染であるということと、非常に井戸水が高度のカドミウムが入っておる。あるいは食品の中にも大豆等に、あそこは非常によくとれますが、非常に大豆等にも入っているということで、私どもはこの萩野先生のお話、これは医師としての先生のお話でございますから非常にこれは重要な問題である。それから小林先生は医師としてではございませんが、いままでいろいろごらんになった観点からそのようなお気持ちを持っておられたということもありますので、その三人の方について非常に疑いを持ちまして、そしてそのケースにつきまして私どもまず県に公文で出しまして、三人の方の死亡届けがどうなっておるかということを調べましたところ、死因は、一人の方は胃炎、あとの方は慢性リューマチと、リューマチからまた心蔵という形の死因になっております。そういうような状態でございました。  それからもう一つは、萩野先生にこれまた公害課長名で手紙を出しまして、先生の御意見が非常に重要であると思われるので、先生のお持ちの所見をいただきたいということでお手紙を差し上げましたところ、実はカルテはない、自分の手帳に簡単なメモがあるだけである、それからレントゲンの写真を持っておるというお話で、あとはいろいろ見たことあるいは聞いたこと、その心証として自分はイタイイタイ病の患者であると思うというお手紙のお返事を得ました。ただ医学的にはなかなかそれだけで断定するわけにもいかず、先生のほうも、臨床検査のほうでは非常に不備であるということは先生御自身も認めておられることであります。  その二つの問題がございましたので、さらに私は疑いを抱きまして、現地に参りまして、現地の、これは九人ばかりの要観察の方がおられましたから、それらの方々のお家を回るときに、それらの方々の家を回りました。恐縮でございますが、三人の人の全部の家族に会えたかどうかは、私はそのときよく覚えておりません。お家を回りまして、この井戸だということも聞きました。が、家族の方々は、非常に触れられたくないというお気持ちをお持ちであった。それから地域の住民の方と集会所でお話し合いをしました。地域の住民の方は、一つはイタイイタイ病なんていうのはどうもないんだというお気持ちが非常に強いということと、触れられたくないというお気持ちと、しかし不安があるからそれに対してちゃんとしてほしいというような御意見でございました。そのような形になりましたので、それ以上先にカルテを調べるわけにもまいりません。病院といたしましては、その主治医となっておられた協立病院にも参りましたが、カルテまで調べるということはとうていできませんでした。病院の先生も代がわりになっておるということでございます。  現在までのところ大体そのような経緯でございまして、そこでとまっておりますが、今回のこのような問題で地元の方の空気も非常に変わってきておるということを聞いております。で、これをどうするかということは、行政的、医学的にはもう非常にむずかしい、まず手がないと思われるような問題ではございますが、ただこれらの、それだけの疑いがあって、しかもお家の方々のお気持ちが違うお気持ちを持っておられるということであるならば、何あかの力添えをすることができるかどうかということで、県の方にも一度その三人の方の御家族がいまどんなお気持ちかということを聞いてほしいということを、一昨日県の方々にお願いしたというところでございます。  以上でございます。
  279. 矢山有作

    矢山有作君 いまの三人のイタイイタイ病だというふうに見られておる方の問題でありますが、萩野さんは御存じのように長い間この問題の研究に取り組んでこられた方でありますし、私がずっとこの間からの当委員会等における会議録を読んでみましても、二人については確信をもってイタイイタイ病であったと言えると、こういうふうに断定をしておるようでありまするし、また一人の人については、死亡されておりますので死亡後いろいろ生前の状況を聞いたが、どうもイタイイタイ病のようだ、こう言っておられますので、これはやはり私は何らかの救済措置をとるべきであると、そういう権威者のことばをある程度信頼してですね。そういうふうに思いますので、この点についてはこの犠牲者の補償に対してぜひ全力をあげていただきたいと思います。  それから、今後いろいろなこうした健康被害を受ける方が出ると思うのです、こういう地域ですから。それについての対策もあわせてお聞きしたわけです。
  280. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) この三人の方につきましては、萩野先生の御意見は承っておりますが、主治医の先生の診断は別になっております。そういうことが一つと、研究班の中で非常にいろいろな議論がございまして、そのような議論ということも頭に置くということも必要でございますので、そういう意味で鑑別診断研究班でいろいろ御議論を願っておるところでございます。  それから今後の問題としまして、この地域でこのような問題が起こったわけでございますが、私どもといたしましては、健康調査は今後も継続的にやってまいります。また非常に心を一新してと申しますか、新しい気持ちできびしくこの問題に対応していくというような考えで臨んでいきたいと思います。要観察地域が全国にいまきめられておりますが、いずれの地域におきましても、従来からきめております手法で第一次健診、第二次健診をやり、また精密診断をやりまして、それを問題があれば鑑別診断にかけるということで不明の点を明らかにしていきたい、ぜひとも予防的な角度で取り組んでいくという角度でいたしたいと思います。救済の点につきましては、行政上も非常に至難なことであるということだけは申し上げておきたいと思います。
  281. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほども発言がありましたし、また午前中もそういう発言があったのですが、分析をすべき試料自体がすりかえられていた、水で薄められていたということになると、この報告書自体が間違ったものになるんだと。これは破棄するか修正するか、あるいは注釈を入れるか、何とかしなければならないと、こういう発言がありました。通産省も、あるいは県つまり厚生省のほうも、合同で調査をした場合、あるいは福岡監督局が独自であるいは保健所が独自で調査した場合も、何回となく水で薄めたということが告発によって明らかにされております。そうしますと、通産省自体も、厚生省あるいは現在の環境庁自体も、この報告処理をどうされるおつもりですか。
  282. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。  通産省で独自でやっております検査は鉱山保安法に基づく検査でございまして、これは排出基準を的確に守らせるための検査でございます。したがいまして、過去の排水の検査につきましては、ただいま先生が御指摘のように試料の水増しがございましたので、残念ながら事態を改善する方法がございませんが、現時点におきます排出の状況がどうなっておるかということは一刻も早く点検する必要がございますので、現在、対州鉱業所のみならず東邦亜鉛傘下の全事業所に対しまして、九日早朝から監督官をそれぞれ数名出している段階でございます。その結果は、大体水につきまして、この二十日ごろ分析の結果が出る予定になっております。
  283. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 当時の研究報告書の件でございますが、この報告書の一二ページの水に関しますところの、川水鉱業所排水という部分につきましては、これはもう科学的根拠を失っておるというぐあいに私どもは考えております。   〔委員長退席、理事矢山有作君着席〕  ただ、研究班報告書として出されておるわけでございますので、この点につきましては研究班重松委員長はじめほかの方にも中で御相談していただいて、そのものは私どもは当然これは削除する、あるいはこれは意味がなくなったということを明らかにすべきだろうと思いますので、そのようなことをいかにして進めるかということを検討していきたいと思いますが、本件は厚生省とも関係がございますので、厚生省とも相談いたしまして、公衆衛生協会のほうに適切な処置をお願いしたいというぐあいに考えております。
  284. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省に尋ねている点もそういう点ですが、この報告が出ておりますが、科学的根拠が失われている。つまり自然水で薄めてしまったのですから、こういう分析結果自体が何の意味もない。それをどうなさる考えですか。
  285. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) ただいま申し上げましたように、私ども鉱山監督局の鉱山保安法に基づきます検査としてやっております点は、鉱害防除を適法に守らせるという目的でやっております。これはそれぞれの時点においてそうあらねばならぬわけでございますが、適去の点につきましては、注水ということによりまして改善のしようがない事態になっております。問題は、現時点におきまして排水がどういう状況になっておるかということはきわめて重要な問題でございます。それにつきましてはただいま申し上げましたとおりでございます。  なお鉱山監督局といたしましては、これまでに四十五年に県と共同調査をやっておりますし、それからその後経済企画庁あるいは厚生省等と共同で同時に調査をいたしております。これがお互い、事務連絡によってこの情報交換等も当然しておるわけでございますので、そういった分につきましては、ただいま橋本審議官の御指摘のような形で処置すべきだと考えておりますし、それから県当局が中心になりましてまとめております青峰報告につきましても、私どものほうの資料が使われておる部分につきましては当然間違いということになりますので、所要の修正あるいは再調査は必要かと考えております。
  286. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省に対しましても現時点あるいは将来の問題はまた別に質問いたしますから、私がいま質問している点は、橋本審議官が答えられたように、このときの水で薄められたものをどうしますかと、こういう質問なんです。それに対しては通産省も同じ考えだということですが、修正といったって修正のしようがないですね、もう過去のことですから。しかし科学的根拠を失ったということも事実ですから、そうなると、これだけの分析をしあるいは採取をし、そして報告書をつくった。まるまる税金のむだづかいに終わっちゃったわけですよ、その部分だけについて考えますと。それに対して通産省、環境庁はどう考えますか。そういうまるまる税金のむだづかいに終わったということに対して何らかの責任なり処置なりを考えますか、考えませんか。
  287. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。  本事件はきわめて重大と申しますか、信義にもとる許すべからざる行為でございますので、私どものほうといたしましても、刑事局、法制局などと当初から緊密に連絡をとりまして、諸法規に基づきます厳正なかっ周到な調査と申しますよりは、捜査をすべきだと判断いたしまして、そういう姿勢でまず実態の究明を徹底的に進めてまいっております。その結果、事実が刻々明らかになってまいっております。そういう事実は克明に刑事局、法制局とも連絡をとっております。それに応じて法律の適用、解釈、あるいはこれから先の調査等につきましてのやり方等について打ち合わせをして、なお事態の究明の徹底をはかり、かつ法律に基づきます措置を厳正的確にやってまいりたいというふうに考えております。  なお、せっかく行ないました検査という国の行為を無にするような、スポイルするような事実につきまして、その費用を弁済させるかどうかという問題でございますが、これは他省庁とも同様の問題でございますので、関係省庁の連絡会がございますので、その席で早急に検討すべき性質の問題だと考えております。
  288. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 実はこれは厚生省時代のものでございまして、私ども引き継いだ側としまして、過去のものをどうせいということはできないわけでございますが、今後の行き方としまして、もし一般の誤解がなしにそれがいけるとすれば、たとえば鑑別診断に先生方に行ってもらいます場合の先生方の旅費を一部会社側に持たすとか、むしろ先のほうで支出を会社に負担させるということ以外に手はないのじゃなかろうか。ただ、これもいろいろ検討を要する点ございますので、少し検討させていただきたいと、こう思っております。
  289. 小平芳平

    ○小平芳平君 林局長、着々と事実が明らかになってきつつあるというふうにいま述べられましたが、一体何回そういうすりかえがあったか。これは先ほど申しますように、福監と県の合同、あるいは福監だけ、あるいは県だけ、あるいは企画庁というふうに、何回となく水の入れかえが行なわれていた。何回これはやったというふうに承知しくおられますか。
  290. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) ただいままでの状況では、四十三年八月から実は監督局の調査が現在までに十六回行なわれてございます。十六回のうちで、現地調査を通じまして、あるいは神出元所長からの供述あるいは会社の責任者側からの供述等々総合いたしますと、四十六年二月十五日から始まっておりますこの調査まで注水をやったということでございます。そういたしますと、これまで私どものほうは九回になるわけでございます。  会社側の説明では、けさほどここで説明がございましたように、四、五回とかあるいは五、六回とかというふうな言い方をしておりますが、私どものほうとしては、少なくとも私どものほうがこの検査に官用車をもって行ないます、これが四十六年の六月からの検査で官用車にかわったわけでございますが、それ以前に行なわれました九回分につきましては、まず間違いなくそういう操作が行なわれているはずだという想定のもとに徹底的に検討しております。なお、自動車を使いましても、取ったサンプルをトランクの中に入れて自動車にしまうわけでございますけれども、旅館の前に夜置いている間にどういうことになろうかもわかりませんので、その後の分につきましても検討すべく、関係者に極力当たりまして供述書、あるいは住民の方々等に当たりまして参考人として意見を聞いておる状況でございます。
  291. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生省はどうですか。厚生省は何回ごまかされたか。
  292. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 厚生省は四十三年八月の末に行ないました調査を、水につきましてごまかされたというぐあいに考えております。
  293. 小平芳平

    ○小平芳平君 一回だけ——、じゃないです。午前中の参考人の方も全貌はつかんでないというふうに述べておられましたが、要は、私が尋ねたいことはこの告発の内容です。告発の内容が正確と認められるかどうかということですね。告発の内容からいきますと、十数回にわたっている。厚生省も一ぺんだけじゃないです。この内容がわからないまま、厚生省は一回だけだなんて言うのはだめでしょう。どうですか。
  294. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま申し上げましたのは、四十四年以降やっておりますのは、鉱業所に全然関係のないところの井戸水と簡易水道の水を取ったという形のものが水としてはある。あとは食物でございまして、それについてのすりかえということはないということは県がはっきり申しておりますので、私はいま申し上げたようにお答え申し上げたのでございます。
  295. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省はそういうように試料のすりかえをされたということに対して、さっきは、企業に対してどういう責任をとらせるかということは関係省庁と相談の上でということでしたが、通産省自体はどう考えますか。
  296. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 通産省といたしましては、行政指導べースでの対応措置と、それから鉱山保安法に基づきます処置と二通りあるわけでございます。  前者につきましては、事柄の性質のみならず、事実が数量的にもどの程度の規模のものであるかということをつかみ切りませんと、どの程度のきつい処置をとるかという判断ができかねるかと思います。もともとこういったすりかえというのはきわめて悪質でございますから、道義的に許すべきものでないことは当然でございますけれども、たとえばけさほど諸先生方から御指摘がございましたように、本社の責任者が知っておったのかどうか、あるいは本社の責任者が指令をしたのかどうかというふうな点がまた一つの大きな判断上の、私どもが事後措置を検討する場合の重要な点になるわけでございます。したがいまして、これは事件の概況、状況を態様及び量的に明らかにいたしまして、その上で判断いたしてまいりたいというふうに考えております。  それから第二番目の法的な処置の点でございますが、先ほど刑事課長から説明がございましたが、私どものほうとしましては、できるだけ本件の悪質性にかんがみまして、法の適用ができるようにということで、法制局、刑事局と相談しておるわけでございます。で、鉱山保安法の三十五条の立ち入り検査及び五十七条によります、検査を妨げてはならない、妨げた場合には云々という罰則の規定がございます。そういう条文の適用が、いままでわかっております事態を前提にして可能かどうかというふうな詰めを目下法制局、それから刑事局でやっておる段階でございます。
  297. 小平芳平

    ○小平芳平君 といいますことは、鉱山保安法による立ち入り検査であると、こういうことですか。
  298. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) そのとおりでございます。
  299. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうも橋本審議官の先ほどの答弁と私の言わんとすることと食い違っておりますが、それはとにかく一切全部が明らかになった段階でいたしましょう。  それで、告発をした本人に対しては企業としてはこう考えているというお話が午前中ありましたが、これはむしろ通産大臣なり労働大臣なりのお考えをお聞きしたいところなんですが、きょうはこの席におられませんので、告発した本人については企業はどう対処すべきだと思いますか。大体この人がということもわかっているというふうに午前中も話しておられましたが、通産省の林局長としてはどういうふうに考えますか。
  300. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。  告発をされました、あの「始末記」を書かれた御本人であるかどうかはわかりませんが、こういった水増し等々の措置がとられました現地での、あるいは神出元所長からの供述を総合いたしますと、神出所長と、それからもう一人、現在この管理事務所で働いておられますIという方、この方の供述をとっておりますが、その間に保安企画室長という方がおられるわけです。この方は四十七年の二月に退社しておられます。  したがいまして事柄の実態を明らかにするためには、どうしてもこの保安企画室長からも事情を聞く必要がございます。したがいまして、私どものほうではその方の追跡をいたしております。すでに日曜日に本人の所在を確かめておりまして、いろいろ事情を聞きたいというふうに申し上げたわけでございますけれども、かぜで休んでおられまして、そのときはお話が伺えなかったわけでございます。からだがよくなられたら連絡してほしいという形で、とりあえず参りました監督官は帰っております。ただ、けさほど小平委員からも御指摘がございましたように、その方の御家庭の事情も私どもも承知いたしておりますので、調査にあたりましてはきわめて慎重に扱わなければならないという配慮も十分承知いたしております。
  301. 小平芳平

    ○小平芳平君 慎重にすべきだということはそれでけっこうですが、会社としてこうすべきだというようなことを通産省として考えますか、ということをお尋ねしたわけです。
  302. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。  いやしくも会社が職員として、あるいは相当重要な幹部として働いていた方でございます。したがいまして、その退職にあたりましての就職のあっせん、あるいは退職後におきます通常の意味におきますアフターケアと申しますか、そういったことについてもっとあたたかい目でいろいろ接触を持つべきではなかったかと考えております。会社側にその当時の保安企画室長の動静を伺いますと、けさほどお話がありました程度でございまして、そういうことでは会社側としては温情のある措置とはいえないのではないかというような話もいたしております。それに対しまして、そのとおりでございますというふうな会社側の答えでございます。したがいまして私どもといたしましては、企業に働いた方方の退職の際、あるいは退職後といえども、もっとあたたかい形で扱うべきだという判断をしておるところでございます。
  303. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは次に鉱山保安関係、先ほど来通産省あるいは厚生省、あるいはいまは環境庁というふうに、きわめて鉱山に対する鉱害対策がややこしいわけですね。ですから、もう少し環境庁として、従来のような行き方だけでいいのかどうか、環境庁として鉱山の鉱害対策に対する強い姿勢を持てないのかどうか。これはいかがですか。
  304. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 鉱山の扱いにつきましては、大気汚染防止法では全くはずしておる、それから水質汚濁防止法では、施設としては入って排水基準はかかるわけでございますが、監督は通産省のほうに全部一任している、こういう形になっておるわけでございます。この扱いをどうするかということは従来から御議論のあるところでございますが、きのうあたり衆議院の御議論を聞いておりますと、むしろ鉱山保安法系統で監督を厳にすべきじゃないかという御議論も一部出ているわけでございます。私ども、都道府県の持っていますいろんな監督上の能力、こういうことも考えあわせまして今後検討を進めたい、こう思っております。
  305. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、森局長が先ほど土壌汚染の問題について矢山委員に答弁をしておられました。また、通産省も昭和三十六年の洪水以来ということを答弁しておられましたが、森局長はこういうふうに考えるということを先ほど述べておられましたので、繰り返しになりますから簡単でけっこうですけれども、浄化装置をつくったが、夜はそのまま流せということを指示して流していたということも午前中出ておりましたでしょう。そういうことに対する責任を考えた場合、昭和三十六年の洪水どころじゃなくて、他の鉱業所に見られないような、要するに装置をつくったけれども使わないで夜はそのまま流していたというようなことは、もっともっと強い責任をとるべきじゃないですか。いかがですか。
  306. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 排水を排出基準以下に的確に守らせるというために、各坑内水をパイプで大きな沈澱池に集合して、それで沈澱処理をさせて的確な排出基準以下の汚染量にして排出させる、こういう措置をしております。沈澱槽そのものは鉱山保安法によります認可事項でございます。各事業所におきます排水量全体を計算いたしまして、それに浄化能力が十分適合するような規模のものにして認可してございます。  問題は、ただいま先生あるいはけさ方他の委員から御指摘のように、夜間放流するということでございます。これは許すべからざることでございますし、それが損害を起こしておれば、当然諸法規に照らして制裁を受けるべき行為であることに間違いございません。ただいまおっしゃいましたような放流の事実につきましては、過去のことでございますけれども、近く実施を予定しております一斉点検の際に、可能な限り事実の有無を追及いたしたいというふうに考えております。
  307. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、土壌汚染、たんぼの汚染を考える場合も、そういうことが前提になって考えられるのが当然でしょう。いかがですか。
  308. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 現在の鉱業法の百九条の規定、あるいはPPP原則、費用負担法等々の体系からいたしましても、まさに先生がただいま御指摘のとおりだと考えております。
  309. 森整治

    政府委員(森整治君) 私はこういうふうに思うのです。いままでうまくおさまっていたと申しましょうか、そういうことではあったけれども、この事件を契機といたしまして、被害者側の意識というものが非常に変わっていると思います。したがいまして、いままでとられた措置というものがはたしてそのままいけるかどうかということも、おそらくそうはいかないのではないか。その場合に、いま先生が御指摘のような問題は、土壌の汚染がどうであったかということとは別の、やはり損害を与えた、そういうものに対して会社側がどうこたえるべきかというふうに私は判断をいたしたいと思います。
  310. 小平芳平

    ○小平芳平君 そのとおりですよ。私もそういう意味で申し上げているわけです。ですから、従来の計画ではうまくいかないだろう、ここで新しく話が始まるだろうということで私も了解いたします。  それから先ほどの健康被害のことですね。健康被害のことも何回も当委員会で問題になったことでありますので、ただ一つはっきりしていることは、萩野先生は残されたレントゲン写真を見て、この脱灰状況からしてイタイイタイ病に違いないと、こういうふうに発言しておられるわけでしょう。
  311. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま御指摘のように、萩野先生はレントゲン写真を見て、それからまた御本人の家族が、どのようなぐあいの状態で長い間痛いと言っておられたかというようなことも参考にして言っておられるということでございまして、直接ごらんになった方はお一人でございます。
  312. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、これも橋本さんが公害課長時代から、長年にわたって鑑別診断班のことについては各委員会で論議の的になってきたわけです。したがいまして、きょう午前中の参考人の意見からいたしましても、イタイイタイ病の観察といいますか、研究といいますか、これについてはどうも従来の姿勢が問われなくてはいけない。従来の姿勢でいいかどうか。この研究班が厚生省時代からいろんな面で問題になってきている。それは萩野先生の御意見に対しても、班の中から別な意見が出るんだ、それを聞くのが大事だというふうに審議官は先ほど言っておられたように聞きましたが、しかし、今回のことを契機として、私はあり方についてもう一つ検討すべきだと思います。いかがですか。
  313. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘のございました問題でございますが、この鑑別診断を始めましたときの表題が、イタイイタイ病及びカドミウム中毒症の鑑別診断に関する研究といたしておりまして、イタイイタイ病という病状だけですべてのものをつかまえようということだけでこの研究班は始まっておりません。なるべく早い時期にカドミウム中毒症をじん障害という時点で押えられないかということも、イタイイタイ病の問題とともに一つの問題としてあるわけでございます。現在までのところ、四十四年からこの研究班が始まりまして四十九年までなりますと五年間ということでございまして、この五年間の間にどこまで詰まったか、どの部分がわかってどの部分がわからないか、あるいは国際的な知見がどのようになっているかということを考え合わせましてまた判断すべき問題ではないかというぐあいに考えております。  いま先生の御指摘のように、対馬のケースにおきましてこのような不祥事があったということも一つの大きな問題点でございまして、私どもは気持ちを新たにして、この研究班の進め方と同時に、またその研究班の成果を行政でいかに判断するかということを気持ちを新たにして取り組みたいと、このように思っております。
  314. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 石川鉱山課長に質問したいのですが、私はこういう前提に立って質問いたしますから御答弁願いたいと思うのですが、大体鉱山の排水基準ですね、これは連絡をとって行かれるのだろうと思うのです。したがって先ほどからの、過去にさかのぼれば大体昭和三十八年ごろからずっと調査やっておった、そして現地企業家のほうでも、十分政府が指導してやられるような方法で調査も継続してきた、こういうふうに言っておられる。そうしますと、十年間もだまされておったのかいなという気がするんです、私は。実態としてはどういう調査をやっておられるのか。いわゆる課長の指示に基づいて現地でやるのでしょうけれども調査をする場合は、私は排水だけの調査じゃないと思うのです。日常の日誌もあろうと思います。またその調査もやっておったと言うのですから、企業家が調査した結果もちゃんと記録として残っておると思うんですよ。そういう対照まで実際にやっておられたのか、やってなかったのか。そういう点を明らかにしてもらいたいと思うのです。  これは、いわゆる厚生省が問題になっておりますのは昭和四十三年からです。それ以前からやっておられるのは鉱山です。その辺をもっと明らかにしなければ、なれ合いの調査か、なれ合いでなかったのかということが明らかにならないと思うんですね。その点はどうですか。どういう調査を一体やっておられるのですか。御答弁願います。
  315. 石川丘

    説明員(石川丘君) お答えいたします。  鉱山保安法に基づきます監督検査は抜き打ち検査でございます。したがいまして、事前に企業に通告をするというようなことはございません。また、鉱山の検査の内容でございますが、二種類ございます。元来鉱山の保安監督と申しますのは危害の防止というのから出発しておるわけでございます。鉱害の問題が重要視されるようになりましてから鉱害問題が鉱山保安につけ加えられまして、鉱害問題も含めて監督をするということになったわけでございます。  問題のカドミウムの監督検査につきましては、昭和四十三年六月から、鉱山課長名で各監督部に通知をいたしまして、環境基準が〇・〇一PPMになるようにということで排出を監督するということでございます。これは鉱山は非常にいろいろな条件にございまして、鉱山排水イコール環境水という場合もあり得ますので、環境水を当時重視したわけでございます。  以上でございます。
  316. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いやそれは、調査はそういうやり方をされていることは私はわかっておるのです。きょうの企業家の話を聞きますと、皆さんの御指導に基づいて会社は会社の立場に立って調査をしておったと、こう言うのですよ。その資料を出すと言いますがね。したがって、日常会社が会社の立場でやっておる資料というものは、少なくとも鉱山課としては、日誌はどうだ、結果はどうだと質問し、その日誌そのものを調査された結果を十分入れながら、対照的にやっぱり見るべきだと私は思うのですよ。これは私も工場におった経験がありますから申し上げるのですが、どんな調査にきたって、その日誌と対照しない調査員というのはおりませんよ。その点がどうなっておるのかということを申し上げておるのです。
  317. 石川丘

    説明員(石川丘君) 企業側からは一カ月一度ずつ報告を出すことに、きまりでなっております。また必要がございますれば、と申しますのは、私どもの監督検査によりまして、たとえばカドミウムの基準をオーバーするような事態がございましたら、帳簿等、作業日誌等も点検いたしまして必要な指示を鉱山側に与えるというようなことをいたしておるわけでございます。
  318. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 したがって報告は、皆さん方はその報告を信頼しておるということですな。私が聞きたいのは、そういうことでやっておられたらそれでまあいいといたしますが、実際問題として現地における日誌その他の調査の結果というものがあるじゃありませんか、それをどうして対照的に比較をしなかったのですかと、こう言っておるのですよ。それは当然やるべきですよ。したがって、その報告を信頼し、かつまた皆さん方が調査に行けば、調査行ったときは水増しをして、そうして公害がないようにしておる。この事実の発見のできないのは通産省じゃありませんか。そうですよ。そういう点をどういうふうな経過でいままでやっておられたか。報告だけを信頼しておったのかどうか。そうしたら、通産省はだまされたと、こういう認定をしてもいいですか。
  319. 石川丘

    説明員(石川丘君) お答えいたします。  保安規則第二十二条に、鉱山保安係員を各鉱山に置くということになっておりますが、この係員は、保安日誌を毎日つけまして、保安の管理者、大体の場合は鉱山の所長と思いますが、保安の管理者に報告をするということになっております。われわれはこの保安日誌を毎回、検査のたびに検査をするわけでございます。しかし、今回の注水事件に伴う保安日誌については、これは福岡の監督局で現在調査をいたしておりますが、たぶん保安日誌もつくりかえられてあったのではないかと思われます。
  320. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、やったということですからそれ以上のことは私も指摘はいたしませんけれども、保安日誌をやっておる現地の保安関係の方がそれを見出すことができなかったということになろうかと思うんですよ、そうでしょう。したがって、その長期にわたる実際の調査というものが、数年間も同一のものが出るということはだれが考えたってちょっと信頼できないですね。そうするとなれ合いかと、こういう調査の結果じゃないかということが言えるのですが、その点はどうですか。もっとはっきりしておいてください。これは大事なところですよ。
  321. 石川丘

    説明員(石川丘君) 作為に基づきます保安日誌が作成されておりますれば、担当監督官がそれを見出せなかったというのはまことに遺憾であったと思いますが、それがなれ合いであるかどうかということにはならないかと思います。
  322. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私はなれ合いということは、あなたの答弁の内容から考えてみて、数年間も同一のものが出てくるというようなことはあり得ないのじゃないか。たとえば廃水原液、それから浄化槽を通過した廃水ですね、一カ所やるわけじゃないでしょう。それは原廃液と浄化した廃液を何カ所かやるんでしょう。そういうものがすべて一致したような検査の結果が出ることはふしぎに思いませんか、あなたは課長として。われわれしろうとが考えても、そんなことはあり得ないと思うんですよ。たとえば精錬をやります質の問題から考えてみて、同一質のものはないでしょう。公害の原因となる非常に濃度なものもあるでしょう。あるいは軽度なものもあるでしょう。そういうものがあるのに、何カ所かの試験をやっておって、その結果が五年間も六年間も同じような試料が出たというようなことをまじめに受けとれますか。あなた、課長としてどうですか。
  323. 石川丘

    説明員(石川丘君) ただいま先生の御指摘でございますが、必ずしも同じような数字が出ているわけではございません。数字にばらつきはございます。また鉱山からの排水は完全に中和処理をされておりまして、カドミの含有量は非常に低くされておるわけでございます。したがいまして、ごまかされておりますれば、それはなかなか発見ができない、数字の上からは発見できにくいということは申し上げられると思います。
  324. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 もう一つ聞きますがね。しからば、定量のつまり水を受けておったとしますか、いわゆる浄化装置の中に適当な水を加えておった。したがって、原廃液が濃度の高い場合も同じような水量を入れておったのでは、同じようなものは出ませんね。これは非常に高いものが出るでしょう。したがってその点は、相当のむらがなければいかないと私は想像するのです。必ず出ると。それがすべて基準の〇・〇一PPM以下であった、こういうことはあり得ないのじゃないかという感じがするんですよ。したがって報告そのものが、作成されたそのままを信頼して出てきたのではないかと、こういう疑いを私は持つわけです。そういう点は全然なかったとあなたは信じますか。
  325. 石川丘

    説明員(石川丘君) お答え申し上げます。  資料だけから判断いたします限りは、たとえば昭和四十四年八月には〇・〇二でございます。四十五年七月には〇・〇〇五でございます。これは第一ダムの排出水でございますけれども。また昭和四十七年七月には〇・〇〇七、四十八年は〇・〇一〇というふうにばらつきがあるわけでございます。したがいまして、なかなか数字の上からこういうものを判断いたしますのはむずかしいかと思います。
  326. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それじゃ厚生省に聞きますが、橋本さんはそのとき課長であったようですから、先ほどから詳しい報告を聞いて私はある程度うなずけるのですが、厚生省が指定地域として認定されて、それは農地、水質、いろんな問題を調査された結果そういうふうになったのですが、そのときの連絡その他についても先ほどあなた説明されたから、その点はもうお聞きしませんが、厚生省としてはそのときに通産省にも連絡をとったと言われますけれども、異常の事態で指定地域にしなくちゃならぬという点を強く主張され、その主張された結果に基づいて通産省はどういう態度をとったのですか。その点をお聞きしたいのです。
  327. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御質問のありました点は、実は厚生省の報告書の中にも入っておりますが、「発生源対策」の中で「鉱業所および製錬所に関しては、通産省の鉱山保安行政によって規制されているが、厚生省は、下記の点について発生源対策を強化する必要がある」と、こういたしておりまして、その中でこの厳原のケースにつきましては「排水処理について、一層適切な維持管理を行なう必要がある。」ということを述べております。  当時の議論としまして、指定地域と申しましても何ら法律がございません。何ら法律のないところで、一体どういう根拠でこのような暫定対策要綱で要観察地域とするかというような議論が非常にございました。私ども行政官としまして、法律にも何にもない、しかも非常に影響の及ぶことをやるということについて、たいへん議論が各方面からあったわけでございますが、しかしながら、このイタイイタイ病の悲惨なケースを見まして、将来こんなことを絶対起こしてはならぬということから、やはりすべてを書いて明らかにして、もしもあとで批判するところがあれば、いつでもだれでも批判できるような形にしまして、資料を出してこれをやったということでございます。  そういうことで、通産省に対してはいまのようなことばでお願いをしておるということでございまして、それ以上にもっともっときびしく言うべきだという御批判があろうかと思いますが、私どもは資料を全部提供し、このあとは鉱山保安行政できっちりやってくれということをいたし、われわれとしてはあと、鑑別診断とかあるいはカドミウム摂取云々であるとか、そのようなことでさらに厚生省本来のところに専念し出したというのが実状でございます。
  328. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 もう一つ厚生省にお聞きしますが、この地域住民は、水資源はこの地域として使用してないのですか。  それともう一つは、その川には魚介類というようなものはないんだということを私は聞いておりますが、そういう点はどうなっておるんですか。
  329. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 第一点の水の問題でございますが、当時私ども調査し始めましたときには、すでに簡易水道に移行いたしております。それで、非常に高い濃度の出た井戸というのを私も行って見ましたが、飲み水とか飲用には一切使っていない。また、飲んでみても口が非常にまずくなるような水であるということで、私ども調査を始めた当時はもうすでに簡易水道に移行しておったというのが実情でございます。  私ども調査では、先生の二番目に御質問の魚等はどうであったかということにつきましては、私どもはその点につきましてまで調査をいたしておりません。
  330. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そういう点は富山のイタイイタイ病の患者の続出した点と異なっておる点ではないかと、われわれしろうと考えで想像できるのです。したがって、これがもし富山のような条件であれば、魚なんかを日常とって食生活の副食の主体をなしたということになれば、これは富山のイタイイタイ病ともうほとんど同じような情勢が起こったのではないかということすら想像ができるわけでありますが、したがって、その点がこの実情と違うところです。それで厚生省が調査されたけれども、患者としては、先ほどから報告されておるように三名の中で二名は確実にそういうことである。なお疑わしい者は数名あるということも報道されておりますが、そういう点から考えてみますと、これは厚生省自体としてももっと私は、あなた自身もそう言っておられますが、強く通産省に対してこれは遠慮なしに行政上責任を、法律にあろうとなかろうと、人命尊重の立場からも主張すべきであったと思いますが、それは大臣には全部報告されて、大臣もそれ以上のことはしかたがあるまいと、こういう見解に終わっておるのかどうか。その点を明らかにしておいてください。
  331. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いまの先生の御質問の中に三つのポイントがございますが、一つは富山との違いということでございますが、この点につきましては、富山と非常に違いますのは、非常に高濃度汚染している井戸水をこの地区の住民は簡易水道ができるまで飲んでおったのだろうというところでは、富山より水から入るものがはるかに高かったのではないか、このように思います。  それからもう一点は、大豆に高いということでございまして、その大豆からの入る分。それから米につきましてはこれは高うございますが、これは富山に比べて著しい云々という問題とはちょっと違うのではないかというぐあいに考えます。  魚の点でございますが、むしろ海辺の部落でございまして、川の魚を食べるというような風習は私どもあまり存じませんでした。私どもも家を回ってみますと、海の魚、あるいは海のウニをとって、それをなまウニにして食べるというようなことでございまして、直接私はその川の魚云々という点では、特に調査もいたしませんでしたからはっきりしたことは申し上げられませんが、それからの問題点というのがあるとは私どもあまり考えておらなかったという事情でございます。この点につきましては萩野先生も、海の魚をずいぶん食べるところなのでカルシウムの補給が富山の場合よりもよいということもあって、自分の見た範囲では、どうもみんなの様子は富山の場合より軽そうだということを萩野先生の著書の中にも書いておられるというような実情もあるわけでございます。  それから次の問題点でございますが、厚生省として一体どういうぐあいにこの問題を、その当時の実情を、不詳事を考えてどういうぐあいに反省をしているかということでございますが、私としてはその当時としましてはずいぶん強く要請したつもりでございました。いろいろむずかしい問題がございましたが、非常に要請したつもりでございますが、まだまだやり方が足らなかったのではないかというような御指摘の点は、確かにもう一つ強くやって公文書でも出して、それに返事がないというような形でもとっておけばよかったというような気持ちは持っております。また検査のときに、従来だまされるという予定を一つ中に入れておらなかったということは、これは今後はだまされるという前提を前に置いて企業に対してはやらなければならないというところは、これをもちまして非常にきびしい反省をしたわけであります。  それから大臣に対しましては、ここにございます今後の対策ということを詳細に御説明をいたしまして、大臣もその方針でやれということでありまして、通産省とのこまかないきさつを大臣に御説明いたしておるわけではございませんが、発生源につきましては通産省のほうで処理をしていただくということは明白に申し上げております。
  332. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 橋本さん、あなたはその当時厚生省の課長であったのですから、あなたにお聞きしておるのです。もう過去のことですから、実際言いますと。したがってあなたにそういうことを私は質問したわけですが、いま厚生省として、山本さんにお聞きしたいのですが、こうした問題の公害は短時日でなくなるものではないですね、これからがまた問題ではないかという、問題があとに尾を引いておるわけです。したがって現段階においてはこの地域、いわゆる長崎の現地においては、きょうの参考人の答弁からお聞きすると、どうもカドミウムに対する重大関心と申しますか、地方行政の中であまり重要視して取り上げてなかったのではないかという感じすらするわけです。その点ではどういう指導をしておられるのか、手を打っておられるのか、お聞きしておきたいと思います。
  333. 山本宣正

    説明員(山本宣正君) 環境庁に公害の行政、特に厚生省で受け持っておりました環境汚染による健康問題が移りました後、厚生省としてどのように対処していくかということにつきましてお答えしたいと思います。  御承知のように一般環境の汚染の問題につきましては環境庁に移りましたが、環境と申しますと、食品、水道あるいは薬品というようなものまで入るわけでございます。これらにつきましては、現在でも環境衛生局、薬務局等で所管をしております。一つ想定される問題といたしましては、ある地域に不明の疾病が起こった場合、これをどちらの省で所管するかということが、絶えず起こる問題でございます。事件の原因が究明されるまでの段階におきましては、あるいはこれが公害によるものか、あるいははたまたほかの伝染病等によるものか、わかりません。こういう点につきましては、現在厚生省におきまして、保健情報課におきまして環境庁との連絡、あるいは地方におきましてそのような不明の事例が起きましたときに対する調査の問題につきまして、情報の収集及び調査につきまして地方の指導通達を出しておる、このようなことで対処してまいるわけでございます。
  334. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 時間がありませんから通産省にもう一つ聞いておきますが、四十四年の厚生省のそうした地域環境の汚染が発見されておるという事実から考えてみて、当時通産省としては、企業の汚染のために重大な公害地域住民に与えておるという感じをお持ちになったのかどうか。どうも資料に基づく、資料の点だけで主張されておりますから、あまり反省がないのじゃないかという私は気がするわけです。そういう点は、四十四年に厚生省が公害指定地域としてあらゆる調査をした、そのときに通産省にも強く要請もしたと。それを一大事と考えなかったのか。考えて、どういう処置をとったのか。いまだに工場の公害ではないというお考えが、つまり調査結果の資料に基づいて、資料を重要視して、実際出ておるその事実には否定的な態度でおられるのか。  この点は重要だと思うのです。どうも答弁をさっきから聞いていますと、資料に非常に重点が置かれておる。実際起こっておる公害そのものについてはあまり反省がない、こういうふうに皆さんの説明その他がわれわれにはとれるわけです。これはもう重大な問題であって、地域住民はたいへんだと思うのですが、その点はどうお考えになっておるのか、お聞きしておきたいと思います。
  335. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) ただいま高山先生から御指摘を受けました点でございますが、私どもも同様に、イタイタイ病問題、カドミ汚染問題というのはきわめて重要な問題だという姿勢で当時からすでに取り組んでおりまして、具体的に申し上げますと鉱山の抗排水でございますが、鉱山保安法に基づきましてずっと前から監督、指導はしてまいっておりましたが、昭和四十三年五月にイタイイタイ病はカドミウムの慢牲中毒による骨軟化症であるという厚生省の見解が出まして、これを契機にいたしましてカドミウムに関します規制が行なわれることになったわけでございます。  私どもといたしましては、鉱山保安法によりまして、同じ年の六月二十一日に本省の鉱山監督局鉱山課長通達を出しておりまして、利水地点において〇・〇一PPMとなるように規制をする、こういった指導通達をとりあえず出したわけでございます。もちろん、これに従いまして全監督局が検査をする、こういうことになるわけでございます。さらに四十三年十二月三日、鉱山保安局長通達を出して同様の内容のものを確定いたしております。それから四十五年六月十日には金属鉱山等保安規則の改正をやりまして、利水点の基準、これは一般の排出基準と同様でございますが、〇・一PPMという規則をきめております。さらにこれと相前後しまして、一般の水質汚濁防止法に基づきます総理府令によります水質基準が、同様の内容で出ております。さらに私どものほうは、この対州鉱山につきまして、特に環境基準を守るために上乗せをやっております。排出基準の上乗せ基準を四十七年六月にきめて、厳重な指導をやるという措置をとっております。
  336. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私、ちょっと全般の資料をまだ検討をいたしておりませんから質問するのですが、もしあればいいのですが、四十三年からそういう対策をとって、通産省自体としては現地の報告そのものというものは、統計的なものがいまもあるわけですね。現地から報告してきたその統計のものはあるんですね。いま報告はされておりませんね、ここに。
  337. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 福岡の鉱山監督局が行ないました検査の記録は監督局で持っておりますし、その集計した数値は本省にも申達してまいっております。
  338. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 先ほど石川鉱山課長が、現地の報告あるいは日誌その他も対照的に調べたと言っておられるのですから、そういうものを含めた、また現地から報告があったその資料に基づいて、資料を出していただくことを要望します。
  339. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 後刻、どういう種類の資料が必要かという御指示をいただければ、私どもの持っております資料は御提出いたします。
  340. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 どういう資料と申しますのは、報告を受けておられる資料、それから現地で実際調査をされた、あるいは日誌その他において工場がやった資料と、それからこっちの鉱山課のほうでやった資料と、どういう結果が出ておるのか、報告とほんとうにマッチするのか、それを含めて資料を出してもらいたい、こういうことです。
  341. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 承知いたしました。
  342. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それではだいぶ時間もおそくなってきましたが、特にいま審議されております東邦亜鉛の問題については、林局長が御自分でおっしゃったように、通産省が企業寄りだというふうに心配をしておられますけれども、国民もそういう疑惑を持っていると思うんですね。特に感じられますのは、今回の事件というのが、行政が上から下までだまされたのか、なれ合ってだまされているのかというふうな疑いというのは、非常に重要な課題になっていると思うわけです。現地の厳原町長も、これは東邦亜鉛の元総務課長が町長だというふうなことでございますし、そういう点は今後別の機会にまとめてまたお伺いをしていきたいというふうに考えているわけです。  関連いたしまして、ごく簡単に二、三点お伺いをしておきたいのですが、きょう午前中にお伺いできませんでしたので、小川監督局長にお伺いをしたいのですけれども、これは現地での調査の中で、抗内水の中和というのはどういうふうになっているかということです。
  343. 小川利男

    説明員小川利男君) お答えいたします。  抗内から抗日に行きましたものは、パイプで一カ所に集めまして、そこの沈でん池で石灰を注入いたします。石灰を注入いたします目的は、カドミウムを水酸化物にいたしまして沈でんさせる目的でやるわけでございます。   〔理事矢山有作君退席、委員長着席〕 したがいまして、そこで沈でんをいたしまして、その上澄みが川に流れるわけです。それで、われわれの一応調べているのは、その水の上澄みの出るところでございます。
  344. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは現地で東邦亜鉛がやった反社会的な、まさに犯罪的と言えるようないろいろな手口がやられているわけです。そういうことを調査をしておられると言うから特にお聞きをしたのですけれども、私ども調査では、九日の晩におたくの立花監督官が現地の集会で確認をしておられる内容なんですけれども、坑内水の中和はろくにやってなかった。坑内水の中和というのは、当然二十四時間常時やらなければならぬということになっているわけでしょう。ところが向こうでは、現にやっているときでも朝の八時から四時か五時ぐらいの程度だと。ある係長、これは名前を秘さなくてもいいのですけれども、当時の係長は、自分がその部署で仕事をしているときには中和剤をまいたという事実はなかったということを、あなたのほうの監督官に申し立てをしておる。こういう事実、確認していますか。
  345. 小川利男

    説明員小川利男君) 御説明いたします。  朝方、現地の一般的なお話はいたしましたが、いま先生がおっしゃいますように、被害者の組合の方々からいろいろな問題が上がったわけでございます。したがいまして、うちからは指示をいたしまして、組合長さんにお願いをして、その事実をよく知っている方を御推薦願いまして、それでうちのほうで一応調べました。したがいまして、先生がおっしゃられました事実はつかんでおります。つかんでおりますが、これについては確証をわれわれはつかまなければなりませんので、いま確証をつかむようにやっているわけでございます。
  346. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 徹底的に調査を進めていただくということで、これは私一例を申し上げたわけです。  関連いたしまして、現地で調査をお進めになっておるについて、これはけさの参考人発言の中にもありましたように、特に東邦亜鉛の対州鉱業所では、ちゃんと分析能力を持った機関を持っているわけですね。ですから、当然現地ではずっと、小細工を弄さないなまの原状というものは、おそらく会社は調査分析をした資料を持っていたであろうということは、これは明らかです。だからこそ捏造の事前工作をあの手この手を使ってやったわけですからね。そういう点で、現地へ調査にお入りになって、会社でのそのなまの分析資料というふうな帳薄ですね、そういうものを押えられたかどうか。それについて。
  347. 小川利男

    説明員小川利男君) お答えいたします。  現地では、これは電話でございますので正確ではございませんが、百枚程度の厚い資料があると。したがいまして、それのコピーを全部とりまして、そして、現地では時間がございませんので、うちの監督局に持って帰りまして逐一チェックをしよう、こういうようなことをいま考えております。そのもとの資料が捏造されていたら、これはなかなかチェックできないのでございまして、その点が一番むずかしいと思います。
  348. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 押えておられるということであれば、これはけっこうです。といいますのは、ちょっと心配をしたのは、朝、四十四年、四十五年八月と十月、それから四十六年の資料は残っておるから提出すると参考人は言いましたね。だから、それ以外の資料はないのかどうか。これはもう時間がなくて確かめなかったのだけれども、おたくのほうは徹底的に調査をするという立場で当然押えておられると思うので、これは参考人の立場から提出をしていただくと同時に、それらの資料についても私どもにも御提出をいただきたいと思うのですが、ひとつ委員長、おはからいをいただきたいと思います。
  349. 森中守義

    委員長森中守義君) 資料の提出、よろしゅうございますか。
  350. 小川利男

    説明員小川利男君) ちょっと誤解があるといけませんので申し上げますが、けさ方いろいろ先生方からお話のありましたのは、一枚の紙に捏造したもとの記録があるのが、きょう言われていたわけでございます。一枚の紙です。一枚の紙に、どこの試料をどれだけ薄めたというのは一枚の紙でございます。この一枚の紙は四枚あるということを会社がおっしゃっております。それで、すぐ手を打って、それを全部押えるように指示してあります。  それから先ほどの百枚というのは、それとは別でございます。
  351. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そのことはよくわかっておりますので、両方ともいただきたいと思います。  それから先ほど林局長調査について、昔のいわゆる原状はなかなか把握しにくいけれども、現在の現状についてできるだけ追及をしなければならないというふうな御発言があったのですけれども、私は会社のなまの分析結果をほんとうにつかむことができれば、その時点での汚染状態というのはどういうものであったのかということは、つかめるのではないかというふうに思うわけです。これもまた捏造されていたら、これは話は別でございますけれども、その点についてぜひ徹底的な追及を進めてもらいたい。  といいますのは、特にあとの対策との関係があるわけです。特に汚染田の問題についての対策等先ほどからるる御説明をいただきましたけれども、この中で非常に気になる点があるわけです。というのは、汚染の度合いの問題が再調査されなければならぬであろうというふうに私ども思います。というのは、これは現地でも言われているそうですけれども昭和四十五年、六年の県でやられました二カ年計画による試験田をつくったときにおいてさえ、夜陰に乗じて会社側は適当な処置をしたというふうなことまで言われているわけですからね。土壌の調査だって、これはまただまされているかわからないというふうな内容を含んでいる。そういう点で、これはぜひ再調査をやらなければならないし、少なくともあらゆる可能な限りの努力をして、汚染寄与率というものを正確につかむ努力というのを本気でおやりになっていただくということによって、企業寄りだと言われておる通産省の名誉を挽回するということにもなると思うんですよ。その点をはっきりひとつやっていっていただきたいというふうに思うわけです。  そこで、それに関連をしてお聞きをしておかなければならないと思いますことは、県がやっておる青峰報告による企業の寄与率として、三〇%の経費負担の問題ですね。これは先ほども通産省のデータ、あるいは厚生省のデータが引用されている点については訂正を求める等の発言がありました。しかし、それだけではやはりよくないのではないか。むしろ県を行政指導して、再調査の上に立って、企業の犯してきた責任を十分に果たさせるという立場をとるべきではないか。けさの県の局長の御見解では、なかなか現状ではそういう立場にはお立ちになっておるようには受け取れませんでしたから、その点を特に要請をしておきたい。  そして、このことがたいへん大事だと思いますことは、関連をしてお聞きをしたいのは、先ほどの御説明の中に、汚染田の対策について、現地が土地を売ることについてうまくいかないという問題が出され、御説明がありましたけれども、これは当然なんですね。利用計画というのが明確にされないで、安い金で買い上げるというふうなことでは、これは生活についての先行き不安というのは当然住民が持つわけです。そういう点では利用計画を明確にしていくということがなければ、これは机上プランになって、住民がほんとうに喜ぶ対策にはならないであろうということをたいへん心配をするわけです。  そこで、その利用計画を進めていく上で、先ほどの御説明で気になりますのは、蓄積鉱害対策事業団の問題をお出しになられましたね。新年度は三千五百万円の予算もございますので、それも使いましてというふうな御説明があったと思いますけれども、蓄積鉱害対策事業団の問題というのは、これはちょっと問題で、これを適用していくということになりますと、企業責任を果たさせていくという立場とは離れてくる。その点について、これは大臣がおられたら一番いいのですけれども、環境庁の御見解はどうなんですか。PPPの原則とはずれてくると思うのですがね。
  352. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 若干、私の先ほど申し上げました説明が不十分でございますので、あらためてお答えを申し上げたいと思います。  まず、三点先生から御指摘がございました。第一点の、なまの分析の実態を明らかにすることについて最善を尽くせという御指示は、おっしゃるとおりでございます。そういうことで本省及び現地監督局あげて努力をいたしております。  第二点の、青峰報告に関連いたしまして、企業責任を過去の時点においても明らかにするようにベストを尽くせという点につきましても、全く同意見でございます。  第三点の、蓄積鉱害対策事業団というおことばがいまございましたが、実は本年度予算で金属鉱山蓄積鉱害対策会議に必要な経費というので、会議費をもらっております。それからもう一つは、これは先般の当委員会で小平先生から非常に強く御指摘がございました、休廃止鉱山が依然として酸性の高い水を出し続けますので、その処理が自治体でたいへんでございます。当然これは国が持つべきだという御指摘をいただいております。その対策を、技術的に非常にこれはむつかしいのでございますけれども、究明いたす必要がございますので、その費用を含めまして三千五百万円、こういうことでございます。したがいまして、企業責任を国が肩がわりするような意味でこういった対策を考えておるのでは毛頭ございません。
  353. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ東邦亜鉛の問題はまたあらためてお伺いすることにいたしまして、あとわずかな時間でございますけれども、お聞きをしておきたいと思います。  お聞きをいたしたいのは、実は分析化学研の問題に関する公害関係のことなんですが、衆議院でこの分析化学研の問題が提起されましてから、国民の中には公害に対する基礎資料について重大な疑問が提起されているわけです。特に、今日問題になっておりますような東邦亜鉛の検体の捏造というふうなものまで出てまいりますと、しかも各級の行政がだまされた、あるいはなれ合ってだまされているのではないかというふうな疑いが起こってまいりますと、これは全体といたしまして、国民の立場から言いますと、政府の行政についての信頼というのが非常に大きく動揺してまいります。これは事実でございます。そういう点でございますから、特に両方とも深く関係のある問題なんで、それぞれの汚染物質の基準をきめて安全性の目安としてやっておる環境行政、その中で数値の信頼性があるのかないのかというのが基本的な問題で、まさに公害行政の根幹をゆさぶるという重大な課題だと思うわけです。  そういう点で若干お聞きをしておきたいというふうに思っておりますのは、その一つは二月の十二日に当委員会におきまして、この分析化学研の問題が発生して以来、環境庁では検討委員会をつくって検討して、問題のあるものは再調査をするということを森局長が御報告をなさいました。そこで、その点についてお聞きをしたいわけですけれども、環境庁の取り組み、これは現在どうなっているのか、その基本的な姿勢はどういうふうになっておるのかということを、できるだけ簡略に、わかるように御説明をいただきたい。
  354. 森整治

    政府委員(森整治君) ただいま、明日検討委員会を開くことになっておりまして、九水域分についての全検体調査、それからその一割につきましてその計算過程を全部私どもで計算をいたしまして、再計算をいたしまして、その結果が合っているかどうかというチェックをいたしております。その作業は完了いたしました。明日検討委員会を開いてそれを御説明することにしておりますが、もう一つ分析研全体としてはたしてそれだけの能力があったのかどうかという一応の疑問がやはりございます。それにつきまして分析研全体の、民間から委託された、それから関係各省からもいろいろ委託されておる、県からも委託されている、そういう問題全部につきましての総検体数を洗っておりまして、それについての、はたして分析研がそこまで分析をできたかどうかというチェックをただいまいたしておるわけでございます。  明日もその模様につきまして検討委員会報告し、おそらく検討委員会先生の現地調査が行なわれるというふうに、私どもは必要だろうというふうに考えております。その結果によりまして、なるべく九水域分については公表いたしたい。農薬についても大体同じような方向で、手順で進んでおるわけでございます。
  355. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、九水域分については大体進んでおる。農薬分その他についてはいつごろ結果が報告が出されそうですか。
  356. 森整治

    政府委員(森整治君) 農薬と九水域分については一緒に公表いたしたいと、こういうふうに考えております。
  357. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それに関連をいたしましてお聞きをしたいのですけれども、これは具体的にお聞きしたいと思っておりましたけれども時間がありませんから、私いただいた資料に基づいてお尋ねをしたいと思っておりますが、この検討委員会は、検討委員会調査班をお持ちになるということです。調査班の点検する事項というのが定められておりますが、これによりますと、一つは結果報告の内容、それから二つが試験分析の実施状況、三つが試験分析体制、四つがその他検討委員会が定める事項というふうに、四つが規定をされておりますが、このそれぞれのこまかい内容も明記されておりますが、これらの必要資料は全部整ったのですか。
  358. 森整治

    政府委員(森整治君) そこに書いてあります、要するに九水域分に関しますそこに書いてある指針はそのとおりにやりまして、そのデータの整理を、明日の委員会のために整理を終わったというふうに聞いております。そういうことで完了しております。
  359. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 何年度分から整いましたですか。
  360. 森整治

    政府委員(森整治君) それは九水域分でございますから、四十八年度でございます。九水域分の水銀等の汚染調査でございますから。それから農薬につきましては四十六年、四十七年でございます。
  361. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 四十六年、四十七年の資料が整っておりますか。
  362. 森整治

    政府委員(森整治君) その中で農薬につきましては、チャートにつきまして約一割が、その写しが当時から環境庁で保管されておる。その残部につきましてはございません。四十六年、四十七年とも。
  363. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると一割程度が環境庁で保管をしておって、チャート等は、約九割は四十六年度も四十七年度もないということですか。
  364. 森整治

    政府委員(森整治君) これは分析研の資料が、どうもそういうことで例の事件の関係があったわけかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、すでに全部ないという、全部といいますか、私が申し上げた資料がないということでございます。ただ、農薬につきましては野帳が残っております。野帳と申しますのは、要するに分析をいたしまして、自分で計算をしましたメモというようなものでございますが、そういうものは残っておりますので、それらとも照らし合わせをしながら検討を進めておる、こういうことでございます。
  365. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 先ほど申し上げた四つの資料が全部そろったとおっしゃっておるのですが、警察が調査に入りましたね、その警察の調査との関係で、警察が持っていっておっておたくのほうに手に入らないというふうな資料はないですか。
  366. 森整治

    政府委員(森整治君) 私どもの調べた限りでは、経理関係の資料はございません。したがいまして、私ども関係で、たとえばアルバイトをどの程度動員したかというようなことが非常につかみにくいというのが現状でございます。
  367. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、出勤簿あるいは超過勤務時間等の明細等は全部あるわけですか。
  368. 森整治

    政府委員(森整治君) これが、創立以来出勤簿がないということを発見をいたしました。  それからもう一つ、ただいまの超過勤務手当でございますけれども、あそこの分析化研の、何というのですか、分析の同好者の集まりであるという、そういう感じを非常に受ける執務体制といいますか、そういう形をとっておりまして、特に超過勤務手当というものを出しておらない。非常に繁忙期に別途支給をしているというふうに報告を受けております。
  369. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、これは検討委員会が全部持ってきておる資料というのは、一体何々ですか。どのくらいの量がありますか。
  370. 森整治

    政府委員(森整治君) 別に現場に参りまして、受付簿からどのくらい検体を受け付けて、それから前処理をしてガスクロのチャートで計算値を出して報告をされており、その各段階をチェックをしておるわけでございます。  特にチャートにつきましては、水銀につきましては、要するにダイスで任意抽出をいたしまして、一割のものにつきまして抜き出しをし、そのチャートをもう一回見ながらわれわれが再計算をするというやり方でやりまして、その結果を持っておるわけで、全部資料を持ってきていろいろやっているということではございません。
  371. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、分析化研へ調査班がお出向きになって、そうして抽出検査をおやりになっておるということですか。
  372. 森整治

    政府委員(森整治君) 調査班が参りまして、計算につきましては抽出、それから受け付けからその報告値との関係のチェックにつきましては全検体数、ないものはこれは野帳から点検をするというようなことで、ある資料でそういうチェックをいたしておる、こういうことでございます。
  373. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、環境庁が委託をしている件数、それから地方自治体等を通じて特に環境庁の委託事業で分析化研に委託をしている全件数といったら、どれくらいあるのですか。これは実は二月十四日の委員会の翌日に資料をお願いしたのですが、いまだに実は伺えない。全体の数がどれくらいあるかということがわかりませんと、作業が一体どれくらいかかったら済むのやら済まぬのやら、私どもにしてもちょっと理解しにくいのですね。
  374. 森整治

    政府委員(森整治君) ちょっと私きょう資料を持っておりませんので、正確な数字は申し上げられないのですが、ともかく相当数にわたっております。
  375. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ局長は資料をお持ちなら、その資料をいただいたらいいですね。もう二月の十五日にお願いしているのですよ。きょう三月の十三日、一カ月になるんですね。十四日のときに局長が御説明くださいましたのは、各年度の金額であったわけです。金額ではわからないから、ひとつ検体数は幾らなのかということをお示し願いたいということで、翌日資料をお願いしたんですよ。いまだに届かない、その分だけは。これは簡単だと思うのです。数字を写してさえいただければよろしいわけですから、簡単なんです。それがいただけないということになりますと、これは何かあるのじゃないかというふうに、いらざる勘ぐりをしたくなる。国民の前でフェアに検討委員会をやってお進めになっておられるのですから、少なくとも数字ぐらいはお示しをいただきたいのですけれども、どうですか。
  376. 森中守義

    委員長森中守義君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  377. 森中守義

    委員長森中守義君) 速記を起こして。
  378. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは検討委員会があるからもう報告してよろしいというのは、それじゃいままでは報告ができなかったのですか。  非常に私は政府機関はふらちだと思うのです。国政調査のために必要な資料をお願いして、大体くださるのが非常におそいですよ。私長い間地方議会にいましたけれども、地方議会じゃもっと敏速です。一週間も十日もかかって、持ってくるのは頼んだだけのものを全部持ってこない。都合の悪いのは黙ってほうっておくというふうな、こういうやり方というのは改めていただきたいと思うのです。委員長からもひとつきびしくおっしゃっていただきたい。
  379. 森中守義

    委員長森中守義君) これは非公式な要求の場合でも、可能な限り要求者の希望にこたえられるように、関係の当局も提出されるように特に御注意申し上げます。よろしゅうございますね。
  380. 森整治

    政府委員(森整治君) はい、承知いたしました。
  381. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 本題に入りますけれども、先ほどのお話では出勤簿が当初からないということでございますが、給料支払い台帳はありますか。
  382. 森整治

    政府委員(森整治君) 給料支払い台帳がどうなっておりましたか、ちょっと私正確には覚えておりませんが、先ほど申しましたように経理関係がつかめないということで、給料の支払い台帳はどうか、ちょっと覚えておりません。
  383. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ警察が持っていったのは何と何なんですか。
  384. 森整治

    政府委員(森整治君) 私ども調査なりをいたします場合に、分析研というのは科学技術庁が主務大臣で監督をしている機関でございます。警察にどのくらい資料が押収されておるかとかいうことはともかくといたしまして、むしろわれわれの調査で必要な限りのデータをそろえて、それで判断をするというたてまえをとっております。その場合に、先ほど申し上げましたように、どの程度のたとえばアルバイトが入っておるかというような証拠をつかもうと思った場合にそういうものがなかったとか、そういうことで、警察のほうでどのくらいデータを持っていったかということにつきましては、われわれ承知をしておらないわけであります。
  385. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 科学技術庁が担当の所管だということぐらい私も知っているのですけれども、出勤簿がないということを言われると、それじゃ給料台帳はどうなっているのかと、こうなりますわね。給料台帳があれば、正規の職員が何人で、アルバイトには何月には何人払うたというのが一ぺんにわかるんです。それはあるのかないのかといったら、よくわからぬとおっしゃるから、そしてアルバイトが何人おるのかわからぬというふうにおっしゃるから、いよいよそれじゃ給料台帳はどうなっているのかと、こうなるわけですよ。だから、おたくのほうでど必要な資料は全部整えられたとおっしゃるのですから、これはあるのですか。
  386. 森整治

    政府委員(森整治君) その点につきましては、むしろ聞き取りで一応実態を調査したつもりでございます。
  387. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでお尋ねをしたいのは、先ほどもちょっと言うたのですけれども、チャートは四十六年、四十七年の一割分と、四十八年は全部あるんですね。それから業務記録その他一切はあるわけですね。大体量にしたらどのくらいありますか。
  388. 森整治

    政府委員(森整治君) 農薬の分につきましては、四十八年は解約をいたしましてほかのところにやりましたので、結局四十六年、四十七年の分はたしか——いずれにせよ検体数にいたしましても二千以下でございます、全部合わせまして。むしろ問題は、おそらく先生の考えておられると思われる問題は、水銀等の汚染調査の県から再委託された分と、そのときにほかのいろいろ作業が入っておってそれがどういうふうに的確にこなされておるかどうかということを、私どもも念頭に置きながら調査をいたしておるわけでございますが、たしか私が記憶している限りではおおむね二千三百あ御報告申し上げたと思うのですけれども、二千三百検体といいますか項目——検体と項目と違いますので、その項目数の分析を行なっておる。それを短期間になってもらったというふうに記憶しております。
  389. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、これは局長御想像のとおり、地方からの検体、検査項目数ですね、これは報道によると四万といわれているのです。環境庁と科学技術庁の分だけが分析化研で扱われているというのであれば、二千三百でいいと思うのです。だから地方自治体等から委託をされているすべての公害関係検体数あるいは検査項目数、これが一体何ぼあったのかということが、非常に信憑性を明らかにしていく一つのかぎになる。それでお願いをして申し上げているわけなんで、理解をいただいたらそういうふうに資料はお願いをしたい。  それで、一ぺんどんなことになっているのか、見せてもらいたいのですが、よろしいですか。分析化研に御案内いただけますか。
  390. 森整治

    政府委員(森整治君) われわれがつかんでいる限りのことは御連絡申し上げたいと思います。
  391. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 案内してくださるのですね。分析化研に一ぺん案内をしていただきたいのです。
  392. 森整治

    政府委員(森整治君) けっこうでございます。
  393. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんので、もう一つお聞きをしておきたいのは、分析化研のその後の体制ですね、これはあの当時報道によりますと、分析化研の理事は一新したというふうに報道されていたのですけれども、人事はどうなっているのか。それから職員の動向、動態ですね、その後の。だいぶん日にちがたってきておりますから落ちついているのじゃないかと思いますけれども、どういうふうになっているかということをお聞かせいただきたい。
  394. 森整治

    政府委員(森整治君) 理事長と専務が、理事長がやめられまして、副理事長もやめられまして、専務が平にかわりまして、千葉さんという方が副理事長、理事長代理——ちょっと正確なことはいま記憶しておりませんが、そういうことで執行体制を変えたというふうに聞いております。  それから勤務状況でございますが、私ども受けた印象を率直に申し上げますと、前専務の考え方で、非常に分析そのものに徹した、まさに夜まで、チャートで見ますと時間に残ってやっておるというふうに、はっきり出てはまいります。そういうやり方で、それから分業に徹し、かつ忙しいときには集中的に業務を行なうということでやってきたようでございますが、最近の事情を私も現場に参りましていろいろつぶさに見てまいりましたけれども、確かに各所からの委託が減っておって、非常にひまといいますか、いままでの残りの整理、残りの仕事の完結のための作業をやっておる。それから御案内のように放射能に関して引き揚げが行なわれるというようなことで、科学技術庁の方が詰め切りでいろいろ作業をされておるというような状態でございますが、残って仕事をしておられる職員、それからいろいろ整理でわれわれと話をされる職員、非常にしっかりした方でございまして、そういう際に起こりがちな不祥事ということは起こらないのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  395. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは検討委員会の結果を待ってまた問題になると思うのですけれども、今後の課題ですね、分析化研の。特に放射能のほうは解約をされたから話は別として、公害はでうするのか。今後の課題としてどういうふうにやっていくのか。これはもう冒頭に申し上げたように、数値が公害行政の一番根幹をなしているわけですから、そういう点についての御見解をお聞きをしておきたい。
  396. 森整治

    政府委員(森整治君) 率直に申し上げまして、公的機関で分析を行なうということは現状では非常にむずかしいと思います。ただ、国が行なうべき性格のもの、それから県が行なうべき性格のもの、そういうものはおのずからあると思います。そういうものを、今後の公害分析に関する需要は非常にますます多くなってくるその中で、どういうふうな位置づけをしていくかということが早急に検討さるべき問題だというふうにわれわれは判断しております。
  397. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは大臣がおられたらあと幾つかお聞きをしたいと思っていたのですけれども、きょうは大臣もおられませんし、所定の時間がまいりましたので、一応きょうはこれで終わっておきたいと思いわけですが、これはあらためてまた別の機会に、検討委員会の結果も公表されるそうでございますし、機会を見てあらためてお伺いをしていきたいというふうに思います。
  398. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 通産省、簡単に伺っておきたいのですが、私はけさからずっと話を聞いていまして、それから新聞の記事を見ていまして、通産省がだまされる、厚生省がだまされる、日本衆衛生協会がだまされる、県がだまされる。これは一体どういうことか。それが三年近い間だまされる。一体どういうことなのか、これは。一人の人間みたいじゃないですか。想像できないですよね、これは。だれが見てもわからそうなことなんだけれども、長い間にわたって三省とも、県までだまされているのですから、どうにもならぬ。こういう事態、私はこれはほんとうに反省してみる必要があると思うのです。各省もそうですし、県もそうでしょうし。この点については私もっと言いたい点があるのですが、時間の点もありますからこれだけにしておきたいと思います。  そこで、先ほどちょっと出ましたですが、鉱山保安法違反になった場合、五十七条で処罰は「五万円以下の罰金」とある。とにかくこういう検査の妨害というのか、虚偽の届け出というのか、何というのか、とにかくこういうことをやってたいへんな重大な社会的な被害を及ぼしておるのに、五万円以下の罰金というんだな、これ。ですから、これはもっと罰金を引き上げる必要もありましょうし、懲役刑のごときを考える必要があるのじゃないかと思う。これは今後これからも非常に重大な問題が出ますよ、こういう問題は。鉱山保安法というのは五万円の罰金だという、この辺に初めから私は大きな問題があると思うのですが、これを検討なさるお考えはないかどうか。これは罰金の均衡の問題もありましょうけれども、いずれにいたしましても五万円以下の罰金というのじゃ、とても処置なしというのが一つです。  それからもう一つは、これは環境庁になるんですかね、とにかく今度のような、結果的にはこれは行政的にミスですよ、こういう行政的なミスによって認定がおくれた公害患者、これについて、さかのぼって公害健康被害補償法を適用していくという特例の措置を検討する必要があるのじゃないかというふうに思うのですけれども、そこのところほおかぶりということになりますか。私はこれは特別措置を考える必要がある。重大なこれは行政的なミスです。この二つです。答弁を願いたい。
  399. 林信太郎

    政府委員(林信太郎君) 第一の点は、御指摘のとおりほんとうに真剣に反省しなければならない点だというふうに自覚いたしております。  それから根拠法規の点でございますが、御指摘のとおり五万円以下の罪金という形になっております。これは現在の、たとえば大気汚染防止法の三十五条の場合も五万円以下の罰金に処するという形になっておりまして、ただいま先生からも御指摘のように均衡の問題もあるけれども、ということでございますが、こういった現象が起こってみますと、東邦亜鉛のような体質の会社の場合には当然予想しなければならないと同時に、こういったことは他の企業の場合にもやはり起こり得るという前提で考えなければならない性質の問題かと考えております。といたしますと、私どものほうの鉱山保安法のみならず、公害関係諸法規共通の問題として私ども検討すべき問題でなかろうかと考えております。その辺は環境庁を中心に関係省庁と相談をいたしまして、御指摘のような、現在の観念からいたしますとあまりにも罪状と申しますか、やった悪質なことと量刑の間に差があるかと考えております。ただし、この量刑の問題は、単に一省庁の事務方のみでは判断できない問題でございますので、御趣旨を体しまして関係各省庁と共同して検討いたしてまいりたいと思っております。  なお、鉱山保安法のほかに、刑法にいいます偽計を用いて他人の業務を妨害するというふうな形にならないだろうかという検討も、実は内々法制局、刑事局等々と相談をいたしております。もしこれが適用になるとなりますと、たぶん三年以下の徴役かと覚えております。  以上でございます。
  400. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 本調査が四十二年の厚生省が行ないました時点におきまして、工場排水と川の水という点にサンプルに対しての作為が加えられまして、そのものが非常に科学的に価値のないものであったということにつきましては、これは深く反省いたしております。特に今後公害行政を進める上におきまして、相手から何をされるかわからないということの前提のもとに、すべての執行体制をもう一度たがを締め直すということをぜひともやりたいと思います。  第二点の先生指摘の患者の問題でございますが、この問題につきましては、三名の患者さんは、これは特別救済法以前でございまして、現在の行政そのものとしては何とも具体的な手の打ちようがないわけでございますが、鉱山側が、もしも問題があれば誠意をもって応ずるということを社長が申しております。そういう点におきまして、この問題につきましては、まだ疑いを持っているという段階でそれ以上前に出ないわけでございますが、従来得られた情報というのは限られております。もしも家族の気持として、何か私どもか今後調査をしていくということについて御要望があれば、それに応じて私どもはきびしい姿勢で対処したい。また、そのことがもし事実患者であるということになった場合に、家族と企業という問題でこれは処理されるべき問題だと思います。  指定地域の問題でございますが、御承知のように健康被害の特別救済法は四十四年末にできまして、四十五年から指定地域に入りました。この地域におきましては、要観察地域に四十四年春から指定をいたしまして、そして患者が出ればいつでも救済法の指定地域で対応するという決意のもとに現在までやってまいりまして、先ほど申し上げげましたように廷べ数七十二人、実数四十五人の、鑑別診断班でいろいろ患者さんの議論を専門家によってやっていただいたわけでございますが、まだ健康被害として認定する疾病に至らないということが現在までの段階でございます。先ほどもいろいろ御議論がありましたように、四十四年から研究を始め、イタイイタイ病及びカドミウム中毒症の鑑別ということで研究を始めて、いままで五年たっております。学問的にはまだ完全でないところもございますが、私どもはこの問題につきまして、気持ちを新たにいたしまして対処いたしたいというぐあいに思っておりますので、もしこれは指定疾病としてやるだけのものがあるということになれば、いつでもそれに対応して指定地域としていくという考え方でございます。
  401. 森中守義

    委員長森中守義君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  402. 森中守義

    委員長森中守義君) 速記を起こして。  本件に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後六時九分散会      —————・—————