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政府委員(
渡部正郎君) 初めに
交通事故の概況について申し上げたいと思いますが、
警察におきましては、一昨年の暮れに
長官通達をもちまして、昨年の
交通事故による
死者を一万五千以下に押えたいという目標を立てまして、
警察の
全力をあげて多角的に取り組んでまいったわけでございますけれども、
関係機関の御
協力、
国民各位の御
協力によりまして、最初はほとんど不可能と見られましたこの目標を大幅に上回りまして
死者が
減少いたしまして、先ほども話が出ておりましたように、
減少数が千三百四十四人でございまして、これは
昭和三十七年に次ぐ史上二番番目の
減少でございます。なお、三年連続の
減少でございまして、三年の中では一番大幅な
減少になったわけでございます。ただ、
昭和三十七年におきましては、
死者は大幅に減りましたけれども、
負傷者は逆にふえております。その点、昨年は、
負傷者が十万人近く
減少したわけでございます。また、
事故の件数も大幅に
減少いたしまして、
事故件数、
負傷者ともに
減少率、
減少数とも史上最高の記録を残したわけでございます。昨年は後半
減少のペースを著しく速めてまいったのでございますが、ことに十二月におきましては、昨年同期比四百二十六人の
減少でございまして、これはいままでに例のないことでございます。これは
石油不足による結果ではないかという見方もあるわけでございますけれども、昨年、月別に見まして
死者が一番多かったのは八月でございます。ところが、四十七
都道府県別に十二月の
死者の
状況を見ますと、昨年最も
死者の多かった八月よりも十二月のほうが
死者が多かった県が十七ございます。この一事をもって見ましても、
石油が非常に減ったために
交通量が減って
死者が減ったということは言えないというふうに思っているわけでございます。十月に入りましてから
死者の
減少数は二百人台にのせまして、そのペースは今日まで続いております。そのような
状況から見ましても、やはり諸対策が定着して効果をあらわしているということが言えるのではないかと思っているわけでございます。なお、ことしに入りましてからも一月中三百四十一人、昨年の一月に比較して
死者が減っておりますし、二月十三日現在で
減少数は四百七十人になっておりまして、二月に入りましてからも一月を、わずかですけれども、上回るペースで
死者が減っております。ことに二月の十一日には全国の
死者が十二名という、これは三十八年以来の記録でございますが、非常に大幅な
減少を示しているわけでございます。昨年の
交通事故の
死者は、以上申し上げたように、たいへん
減少したわけでございますけれども、しさいに検討いたしますと、なお解決すべき問題が非常に多いわけでございます。
まず、現象的な面から申し上げますと、
死者全体が大幅に減った中で、小学生だけがわずかでございますが、一・三%の
死者の増加を見せております。それから
老人の死亡
事故が平均の
減少率を相当に下回った。従来から問題にされております子供、
老人の
事故死につきましては平均だけの成果も見られなかったということは私どもの重大な反省点でございます。ことしに入りましてから一昨日現在までの
状況を見ますと、小学生の
死者、
老人の
死者ともに平均
減少率とほぼひとしい
減少を示しておりまして、その点、昨年の一つの反省がことしは成果となってあらわれているということは言えるわけでございますけれども、やはり
老人、子供の問題というのは今後とも必死の取り組みをしなければならない問題であるというふうに考えているわけでございます。
なお、お
手元に三つ
資料が配付してございますけれども、その中に「人口一〇万人以上
都市の
交通事故死者数」というのがございますので、それを見ていただきたいと思います。こまかい数字で見にくい表で恐縮でございますが、これは初めて人口十万人以上の
都市につきまして人口十万人当たりの
死者の数を統計にあらわしたものでございます。
この表を見ていろんなことが考えられるわけでございますが、一つは、最も十万人当たり
死者が出ましたのが小山市でございまして、これが三十四・三人なくなっております。一番少なかったのは三鷹市でございまして、これは十万人当たり〇・六人でございます。その差は実に五十七倍でございます。しかも、三鷹市と小山市では人口の規模はそれほど違っておりません。この表の市の名前の下に書いてある数字が千人単位で人口をあらわしたものでございますけれども、それを見ていただきますとおわかりになりますように、人口・規模がそれほど違わないのに五十七倍の
死者率の差が出ているということでございます。このような差があるということは、同じ日本の
都市でありながら非常に遺憾なことだと思われるわけでございまして、
人命尊重の
立場から見ましても、あるいは表現が適切ではないかと思いますが、法の前の平等という見地に立って見ましても、全体の
死者を減らさなければならないことはもちろんでございますけれども、
都市別の格差というものを解消しなければならないというふうに私ども考えているわけでございます。
今年度の対策につきましては、お
手元に配付してございます文章になっております
資料の中にまとめて書いてございますが、一々読み上げるのもなにでございますので、
重点を置いている点について二、三御
説明したいと思います。
日本の現在における
交通事故の
死者の数は、私どもが計算したところによりますと、
自動車の走行台キロ当たりを分毎にいたしまして、いまだに欧米諸国よりは相当に
死者が多いと見ているわけでございます。ことにアメリカ、イギリスなどと比べますと相当に
死者が多いというふうに考えているわけでございます。日本が
死者の多い理由はいろいろあるとは思いますけれども、まとめて申し上げますと、やはりこれは日本の特有な
都市構造、
道路システムあるいは輸送
構造に根ざす面が少なくないと考えられるわけでございまして、一例をとりますと、貨物用の
自動車というのは非常に
事故率の高い車でございますけれども、登録
自動車総台数の中で貨物
自動車の占める比率が日本ほど高い国は他の主要国には見当たりません。
自動車は相当普及してまいりましたけれども貨物
自動車が非常に多いわけでございまして、そういう点に問題があるということも言えるわけでございます。ことに、先ほど申し上げました
都市の問題につきまして、人口十万人当たりの
死者の数の多い
都市をいろいろと検討してみますと、その原因というものは必ずしも単純ではございませんけれども、総じて言えますことは、
都市の持っております
交通の容量をオーバーして
交通量がふえてしまった場合、あるいは
都市の地域
交通に対して
都市を基準にした場合の通過
交通の量が非常に多く、しかも、それが
都市の地域
交通ともろに混在しているような場合には非常に
死者率が高くなっております。こういうようなことにかんがみまして、私ども、ことしは「
都市総合
交通規制」ということばに要約いたしておるのでございますけれども、
都市の
交通の流れそのものを全体として管理し、
交通の量と質との両面を最適化するような総合的な規制というものを
都市にかぶせて、それで思い切って
事故を減らしたい。で、
事故のみならず、いろんな
交通公害というものをそれで押え込んでいきまして、その押え込んだ中で
交通というものを最も円滑に能率的に流していこうという、そういう
都市の
交通の流れの管理をねらいにした総合的な規制を中心に多角的な対策を立ててまいりたいというふうに思っているわけでございます。
それに関連いたしまして、どうしても私ども強く要望しておりますのは、やはり日本の通勤というものの特殊性、それから先ほども申し上げましたが、貨物輸送というものの特殊性、これが
事故の背景になっていることは否定できないのでございまして、通勤につきましてはやはり公共輸送の
強化がどうしても必要ではなかろうか、ことにバスサービスの拡大、
強化ということが非常に必要である。それを前提にしながら思い切ってバス・レーンを敷いて、少なくもマイカーによる通勤を減らすことによって
交通量を減らしていきたい。貨物の輸送につきましても、私どもいろいろ検討いたしますと、
国民一人当たり貨物用
自動車が動き回っている距離は日本は非常に高いのに、貨物
自動車一台当たりの年間の輸送量が非常に低いという、そういう特色を持っております。そこにやはり一つの問題があるわけでございまして、貨物輸送につきましても何らかの方法でこれを共同化する、協業化するということによって貨物の
自動車の
交通量も減らしていく。そういうことで量を押え込みながら、なお残された
交通については、先ほど申し上げましたような最適化をはかっていくというようなことを考えているわけでございます。
たいへん簡単でございましたけれども、以上をもって
説明を終わらしていただきます。