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1974-02-26 第72回国会 参議院 決算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十六日(火曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田中寿美子君     理 事                 温水 三郎君                 橋本 繁蔵君                 松岡 克由君                 小谷  守君                 中尾 辰義君                 加藤  進君     委 員                 河本嘉久蔵君                 中村 登美君                 長屋  茂君                 工藤 良平君                 佐々木静子君                 須原 昭二君                 鈴木  力君                 春日 正一君                 野末 和彦君    国務大臣        文 部 大 臣  奥野 誠亮君    政府委員        人事院事務総局        給与局長     茨木  広君        文部大臣官房長  井内慶次郎君        文部大臣官房審        議官       奥田 真丈君        文部大臣官房会        計課長      三角 哲生君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省体育局長  澁谷 敬三君        文部省管理局長  安嶋  彌君        文化庁長官    安達 健二君        厚生省医務局長  滝沢  正君        自治省財政局長  松浦  功君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        大蔵省主税局税        制第一課長    伊藤田敏雄君        会計検査院事務        総局第二局長   柴崎 敏郎君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十六年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十六年度特別会計歳入歳出決算昭和四十六年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十六  年度政府関係機関決算書(第七十一回国会内閣  提出)(継続案件) ○昭和四十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十一回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十一回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和四十六年度決算外二件を議題といたします。  本日は、文部省決算について審査を行ないます。  この際おはかりいたします。  議事の都合により、文部省決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれも口頭報告を省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) それでは、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 鈴木力

    鈴木力君 私は、きょう一つ学校給食の問題でお伺いいたしたいと、こう思います。時間もあまりありませんから、先に私のほうからちょっと御質問申し上げる要点を申し上げておきます。  一つは、ちょうど昭和四十六年の決算の審議なんですけれども文部省学校給食に対する施策につきましては、昭和四十六年という年は行政監察監察を受けた勧告を受けて、それに対するさまざまな具体的な処置等苦労なさっていらっしゃる。それから文部省自体も、昭和四十六年、たとえば物資の流通問題にいたしましても、新たな補助金の制度というようなものもつくってやっていらっしゃる。そういうことにもかかわらず、学校給食という問題はほとんど——ほとんどというとしかられるかもしれませんけれども、問題を残しておる。特に最近になりまして、これは学校給食だけの問題じゃありませんが、物価値上がりが非常に激しくなった。この物価値上がりに伴って、各学校学校給食それ自体が計画どおり実施できないというところにいまきているわけでありますから、そういう問題につきまして、いままでの文部省学校給食についての考え方施策、そしてそれが今日のような非常事態になった場合には対処できない、そうすると、いままでの施策の中に何か抜けているものがありはしないか、あるいはこれからでも新しく考え直すべきものがありはしないか、こういうようなことをひとつ伺いながら、新しい考え方等を、私の考え方なんかも若干申し上げて御批判もちょうだいしたいと、こう思うわけです。  そこで、まず最初にそこへいくためにお伺いいたしたいのは、いま物価が非常に高くなり、そこで各学校学校給食についていろいろな手だてといいますか、便宜的にいろいろな処置をなさっておるわけでありますけれども、そうした状況に対して文部省自体として、特に昨年の十月あたりからでけっこうでありますけれども、何かなさっていらっしゃいますかどうか、ひとつ伺いたいと思います。
  6. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 学校給食をやりますにつきまして主たるいまお尋ねの点は、一つパンの問題、一つはミルクの問題、それからもう一つがいわゆるおかずのための食材料の問題がございます。  パンにつきましては、昨年の秋に政府原麦売り渡し価格の引き上げ問題が起きたわけでございますが、一般市販用につきましては昨年十二月から三五%の値上げが行なわれたところでございます。農林省、大蔵省にもお願いいたしまして、学校給食用につきましては年度内は据え置くということになりました。それがさらに、四十九年度予算編成あたりまして、本年九月までは給食用政府売り渡し原麦価格は据え置くという措置をとっていただいたわけであります。それからこの政府売り渡し原麦学校給食用小麦粉製粉をするための製粉の問題があるわけでございますが、これにつきましても製粉業界の協力を得まして、この二年間据え置いていただいております。新年度からの製粉価格につきまして、目下日本学校給食会製粉業界交渉中でございますが、これもできるだけ政府売り渡し原麦が九月まで据え置かれておりますので、それまでは据え置くようないま交渉をいたしておるわけでございます。それからパン加工賃でございますが、パン加工賃につきましても、最近の燃料あるいは人件費あるいは包装費等値上げの問題がございまして値上げ要求があるわけでございますが、これも年度内につきましては、業界の了承を得まして据え置いていただいております。新年度からの問題につきましても、できる限り適正な価格お願いをしたいということで、各県でそろそろ交渉を始める段階になっております。  次に牛乳でございますが、これも昨年の十二月十六日に、一般市販用牛乳全国的平均で三十二円から八円の値上がりをいたしまして、四十円に値上がりいたしたわけであります。給食用牛乳は、全国平均現在十九円九十五銭になっております。そのうち、国庫補助金が五円八十銭となっておりますが、これにつきましても、この一般市販用八円の値上げに対応いたしまして、給食用牛乳につきまして五円十八銭程度の値上げをしてもらいたいという要望が起きておるところでございますが、牛乳は各県によって非常に事情が違いますので、県知事が県の教育委員会と協議してきめることになっておりますが、少なくとも年度内は据え置くように文部省としては強力に指導をいたしておるところでございます。  一般物資おかずのための一般物資でございますが、特に砂糖類あるいは油類それから野菜、それからマカロニ、スパゲッティ等小麦粉の製品あるいはジャム、マーガリン等添加物化学調味料あるいはしょうゆ、合成洗剤、こういったものの欠乏なり、かなり値上がりが出ておるわけでございますが、特に砂糖油等日本学校給食会でも扱っておりまして、かなり市販のものより安く供給いたしておるわけでございますが、野菜につきましても、昨年度、一昨年度から価格安定基金というものを県の給食会あるいは日本学校給食会に補助いたしまして、できるだけ安く安定して供給するような措置をとっておるわけでございますが、さらにこれらの物資につきましては、日本学校給食会なり都道府県学校給食会が一括して扱うのに適しておる物資でございますので、実は本日、各業界代表にお集まりいただきまして、文部省日本学校給食会、各都道府県学校給食会全国連合会の主催で、これらの業界代表懇談をいたしまして、できる限り安定して供給していただくお願いをいたすことにいたしております。以上概略でございますが……。
  7. 鈴木力

    鈴木力君 いまの仕組みにつきましては、概略は私もわかっておるのです。そこで私が伺いたいのは、にもかかわらず何かいまの体育局長の御答弁を伺うと、万全の手を施してあるので学校給食心配がありませんという御答弁に聞こえる。しかし、現実はそんな心配がありませんといえるような状態じゃないでしょう。いま説明なさったようないろいろな手だてはやっておる、しかもこれは私はいまあわててやったということよりも、これは文部省を一部分はほめてもいいと思うのは、だいぶ前からこういうことの物資の流通問題なんかにも手をつけて研究もしておるわけですわね。だからその面については私はその手だてをやっておったということは評価できると思うのです。しかしいま、にもかかわらず、学校給食は瀕死の状態にきておるということですよ。つまり、新聞等にもいろいろと報道されておりますし、具体的なことを一々申し上げなくてもいいと思いますけれども、たとえば東京なんかでもそうでしょう。どういうことをやっていらっしゃるか、もちろん局長はおわかりだと思いますが、どんなケースがありますか、現在の学校給食のやり方のケースとしては。
  8. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 学校給食費は大体多くの学校市町村におきまして、学年当初にきめまして、月あたり給食費をきめまして、学年当初に若干の物価上昇を見込みました給食費をきめて、それで一年間の給食をまかなう、特にやむを得ない事情がある場合に……。
  9. 鈴木力

    鈴木力君 御答弁の途中ですが、文部省側でどういうことをやったということは一応承知しておりますから、それでなしに、私がいま聞いておりますのは、そういうことをやったにもかかわらず、学校現場は、学校給食がもう危機に瀕しておる。いまもう給食をやめなきゃならぬような状態学校が置かれておる、そういう状態を知っておるかということを私は聞いたんですけれども、実はきょうあまり時間がありませんから、ずっといままでのものを全部御説明いただくとそれだけで時間が終わりですから、その点はいいですから、今度私のほうからちょっと申し上げますが、たとえば東京ですとこういう問題があるでしょう。  一つは、どうにもならないので栄養士さんがいろいろ献立をつくってみても、少なくともいま局長説明をされたようなこれに乗ったのでは、とてもじゃないが献立をつくることができない状態なんです。何が高いとかどうかということは一応きょうは省略しますが、そのためにやむを得ないから、一週間に何日かは間引きをするということが出ているでしょう。それは局長さん御存じでしょう、間引きをする。それから、地方に行きますと、主食のほうは除いて——主食は家から持ってこらして、そして菜といいますか、おかずのほうだけを学校で何とか間に合わしているというところもある。それから違ったケースでは、従来どおりの献立をずっとやらしておいて、そうして父母給食費値上げを何とかがまんしてやってくれといって要請しているケースがある。それから地方自治団体がその値上げ分をカバーして補助しているケースがある。だが、私がいま申し上げたようないろいろなケースがありますけれども文部省が意図したような正常な学校給食運営ができているケースというのはいまどれだけありますか。
  10. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 先ほどもちょっと申しかけたように、年度当初に年間の給食費をきめてやっておりまして、特に年度の途中で、しかも三学期ごろに値上げするということは、実際問題として好ましくないということもございまして、ところが一方、昨年の秋ごろからさっき申し上げましたような一般物資につきまして、かなりの、物によりましては野菜等異常な値上がり問題が起きてまいりました。したがいまして、学校におきましては栄養士の方々も文部省の示しましたこの栄養基準を保つのに、正直のところ四苦八苦いたしているわけでございますが、ただ一部に、いま先生のおっしゃいましたような、回数間引きする、あるいはそういう事態が起きておりますが、私どもの調べた範囲では何とかたいへんなやりくりをして、四苦八苦はいたしておりますが、何とか大勢においてはいましのいでいるわけでございますが、現実にそういう事態が一部に起きていることも事実でございます。それで二学期の半ばから三学期給食費値上げはむずかしい。何とか年度内は従来の給食費でしのいでいきたい。それに対しましていろいろ現場苦心苦労をしていただいていることは事実でございまして、ひどいところは一部に週一回間引きするといったようなところが起きていることも事実でございます。
  11. 鈴木力

    鈴木力君 これは、私が給食の問題をきょうお伺いしたいというのは、いまの局長さんのような御答弁と私の質問の意図とに、これほど大きなズレがあるのですね。このことが一番問題だと思って、実はきょう質問を申し上げるのです。文部省認識は、現在の学校給食が大部分は正常に行なわれておって、いま私が指摘したような例はほんの一部の例だという認識なんです。そこをはっきりした上で少しいろいろものをこれからお伺いしていきたいと思います。
  12. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) その給食の、いま御指摘のような問題についての調査をいたしているわけでございますが、約三十八都道府県、二千六百四十九市町村小学校一万八千校、中学校五千七百校について調査をいたしておりますが、最終集計ではございませんが、いままで調べましたところ、週一回ないし二回給食回数をこの一月、二月になって減じたというところは、小学校におきまして対象学校の一・七%、対象中学校におきまして二・三%というような数字が出ております。ただ、いろいろな、たとえば牛肉をいままで使っておったところを豆にかえるとか、そういった非常な苦心をいたしまして、栄養士さんが何とか栄養は保っていきながらいまの給食費でやっていくと、たいへんな苦心苦労をされていることは事実でございますし、ひどいところはいま申し上げましたような間引きをしざるを得ないという事態が一部に起きておることも事実でございます。
  13. 鈴木力

    鈴木力君 まあその調査はいつ現在の調査かわかりませんけれどもね。どうも文部省のいままでのいろんな調査というものの中にも、いまのような答弁が出てくる材料の調査が多いんですね。たとえば間引きをしたということを私が指摘をすると、間引きをしたのは一・何%だと、それでさらにもう少しお伺いをしていくと、牛肉が豆になったと、こういうことが出てくるでしょう。牛肉が豆になった、これは栄養価とかカロリーとかいろんな計算をすれば、あるいはちょうど計算上は合うかもしれませんですね。ところが、そういう問題が出てきてから、今度は学校現場では、また食べ残しがぐんとふえてきておる。それはいままでの献立より質が落ちたということで食べ残しが多くできていると、こういうことになる。私は前にもいつかそういうことを学校給食で言ったことがありますけれども、それでは、帳面の上で計算をするとカロリーはちゃんとできておりますと言っても、実際の生徒に対してはそのカロリーがいっていないのですよ。私はこれは大臣にも聞いていただきたいのは、いまこの問題を私が取り上げているのは、この学校給食についてはそんな帳簿の上でそろばんの帳じりが合ったからなどと言っている事態ではないじゃないのか、まずそういう認識文部省が持つことから、学校給食をどうするというところにもっと真剣に取り組むべきではないのかという気持ちで実は申し上げているのです。そのことについてはまあもう少しあとになってまた申し上げたいと思います。  そこで、若干具体的に伺いますと、たとえば、いま間引きをした、これは一・何%だと言いますけれども、少なくとも牛乳が豆にかわったことが正常だという認識ではないんでしょうね、局長さん。みんなそういう形にかわっていくのですからね、衆議院の文教委員会では、シチューがみそ汁になったということもいわれているのです。いろいろそういうかわったということは、私はこれは正常なことじゃないんだ、そういう認識学校給食を見ないといけないということなんですけれどもね。  そういうものにいく前にもう少し、たとえばいま御答弁いただきました牛乳値上げにしても、小麦粉にしても、あるいは砂糖やその他の物資にいたしましても、いま業界懇談をしている、交渉している、あるいは強力な指導ということばも使われますけれどもことばはどっちでもいい。九月までは何とかということを言っておるけれども、そのあとどうするということについては、具体的な方策というものはまだ立っていないでしょう。そうすると来学期から値上げするのかしないのかという問題が出てくる。それから牛乳につきましては、五円八十銭の値上げというのは、牛乳業界からも強い要求が出ておりますね。一部の県ではこれを受け入れた。これは受け入れざるを得ないわけですよ、いまの酪農のことを考えると。それを学校給食であるから犠牲にして、そして納入しろと、いかに文部省さまといえどもそれほどまでに強制力はないわけだから、そうすると、これはいまのところは一部でありますけれども府県はこれを受け入れた。そうして自治団体がその分を補給をしたり、それから父母のほうに転嫁をしたりと、こういうケースになってきておりますね。そうすると、いま簡単に、この牛乳の将来の見通しを文部省はどう考えておるのか。小麦粉についてはこれは政府の食管で相当原麦のほうは使えますからある程度はもつかもしれないけれども野菜やその他の諸物資に対してはどういう手だてを考えておられるのか、簡単にひとつ御説明してください。
  14. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 牛乳につきましては、各県によって酪農関係事情が違いますので、一律に申し上げることはできませんが、業界からは五円十八銭の値上げ要望が出ておるわけであります。私どもとしては、とにかく年度内は据え置いていただきたい、新しい学年からの問題にしてもらいたい。といいますのは、先ほど申し上げましたように、給食費学年当初にきめるのが通常でございますので、牛乳につきましては新学年からの問題にしてもらいたい、こういうことをお願いし、強力に指導いたしておるわけでございますが、いまお話しのように、特に酪農、その分はメーカーの分と酪農家の分でございますが、酪農家につきましてはえさ代値上げ等がございますので、これをいつまでも据え置いていただくということはきわめて困難な問題だと思います。新しい学年からにつきましては、各県ごとに県内の事情は違いますが、適正な価格できめていただくということになると思いまして、これも県によりましてある程度の値上げはやむを得ない、こう考えております。  パンにつきましては政府売り渡し原麦が九月まで据え置かれておりまして、製粉代につきましてもおそらく九月までは据え置きに近いことができると思っておるわけでございますが、パン加工賃をずっと据え置いていただいておりますので、新学年からはパンにつきましても、人件費燃料費包装代等の問題がありますので、適正な価格で新しい学年からきめてもらいたいと思っておりますが、これも若干の値上げはやむを得ないものと考えております。  あと一般物資でございますが、一般物資につきましては、特に国の補助金とか、そういう直接のあれはございませんわけでございますが、さっき申し上げましたように、日本学校給食会、あるいは都道府県学校給食会、そういった機能のより大きな整備拡充といいますか、さらに従来以上に物資の取り扱いの拡充についての努力といいますか、そういうことをできるだけやっていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  15. 鈴木力

    鈴木力君 大体、文部大臣文部省方針がいま局長さんの御答弁方針なんですか。文部大臣もいまの局長の御答弁と同じ気持ち学校給食に当たられるのですか。
  16. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 学校給食は、物価かなり高騰してまいってきておりますので、その影響を多分に受けて、私たちとしてもたいへん心配をしておるわけでございます。しかし共同的な施設につきましては公費で負担するし、また生活困難な方の費用につきましても公費で負担するけれども、その他のものにつきましては個人負担を原則にせざるを得ないのじゃないか、かように考えておるわけでございます。その中で小麦粉等については特別に配慮する、あるいはまた価格安定のための調整基金等を通じてそれぞれの府県段階でくふうをしてもらおうというようなことでございまして、年度がかわりますとある程度学校給食費引き上げということが一般的に行なわれても、これはやむを得ないことではなかろうか、こういう気持ちでおるわけでございます。
  17. 鈴木力

    鈴木力君 大体文部省気持ちはわかった。わかったという意味は、理解したという意味ではありません。これはたいへんなことだと思いますよ。全く、それならば文部省というのは気楽な商売だ、ね、そうでしょう。牛乳パンと、その他の副食物と、これを三つの柱にして学校給食ということでずうっといろいろなことを言ってきた。まあ学校給食法にも非常にりっぱなことが書いてある。それで今度はいよいよ具体的にいま危機に瀕して地方自治団体が四苦八苦しておる、学校現場栄養士を含めて全部が四苦八苦しておる。父母もたいへん目の色を変えておる。しかし文部省はこれに対してどんなことが考えられておるかというと、まあ三月まではやむを得ないけれども、四月からは適正な価格値上げをしなきゃできないだろうと思っておりますと。そうすると、それは適正な価格父母負担も増大していくこともやむを得ませんと、こういうことでしまう。一体国施策というものは学校給食についてはあるのかないのかということを私はこうなると申し上げたい 新学期というと四月でしょう、もう二月の末だ、中一カ月しかありませんよ。いよいよ新学期早々に、学校が始まるのに、適正な価格に若干上がることはやむを得ないでしょうといま言っているような状態では、はたしてこれは生きている子供たちを扱う教育行政なのかどうかということが私は疑わしいと思うんですね。念のために伺いますけれども局長さんに伺いますが、適正な価格というのは幾らのことを言っているのか。
  18. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) それは県ごと事情が違うと思いますので……。
  19. 鈴木力

    鈴木力君 わかった、もうあと言わぬでもいいです。東京の場合は適正な価格幾らですか。
  20. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) それは給食費についてでございますか。
  21. 鈴木力

    鈴木力君 給食用学校牛乳の適正な価格を、あなた、値上げをしなきゃいけないと言っている。適正な価格とは県ごとに違うというから、東京幾らかと言った。
  22. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) それは東京都の知事が東京都の教育委員会と協議して定める問題でございますから、文部省幾らが適正かというのはちょっといかがかと思います。
  23. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、これはもう都道府県まかせで、文部省は、わしは知りませんと、こういうことですね。そうですか、ほんとうに。いまの御答弁は本気で言ったのですか。
  24. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) それはこの文部、農林両次官の取り扱い要綱がございまして……。
  25. 鈴木力

    鈴木力君 それはわかっている。
  26. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) それに基づきまして、牛乳価格につきましては、原則として年間を通じてきめる、都道府県知事が都道府県教育委員会と協議をしてきめる。現実に、北海道、九州、東京、同じ関東ブロックでも県ごと酪農家事情、乳業界事情は違うわけであります。加工乳を主としている県、飲用を主としている県、非常に違うわけでございますので、これは一律にはまいらない面があるわけでございます。そういう面で価格につきましては県ごとにおきめいただくと、こういう仕組みにいたしておるわけであります。
  27. 鈴木力

    鈴木力君 よけいなことを言わぬでもよろしいんですよ。県ごとに違うということはさっきからわかっているから、東京とこう言った、そして仕組みはわかっているんですよ。そういう仕組みであるならば、文部省地方自治体の権限であることに口をきくことがありませんか、ありますか。たとえば学校給食につきましても、さまざまなことを文部省でやっておるでしょう。学校給食の手引き、それからあるいは講習会の招集、いろいろ文部省がやっているでしょう。この中には地方自治体の権限であるべきことも、文部省の意見としてこうすべきだ、ああすべきだという指導をしているでしょう。私はそれを悪いと言っているんじゃないですよ。大事なことは、やっぱり指導すべきだ、それが文部省としての役目だ。ところが事牛乳価格になっては仕組みがそうだから、それには指導がないということになるんですか。
  28. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 年度内は据え置くようにという……
  29. 鈴木力

    鈴木力君 それはわかったと言うんです。
  30. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) ……ことは指導はいたしました。
  31. 鈴木力

    鈴木力君 それはわかったが、これからの値上げの適正な価格というのをどう把握しているかということを聞いている。
  32. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 学校給食の運営なり教育委員会の行政なりの上から、年度内に、しかも、あと、三学期というときに値上げをされるのは非常に困りますので、その据え置きについては指導をいたしましたが、金額につきましては幾らが適正であるとか、そういうことはいたしておりませんし、それは県ごとの問題と考えております。
  33. 鈴木力

    鈴木力君 それなら適正な価格にきめるなんてよけいな口をここできくべきじゃないです、文部省は。適正であるか適正でないかは地方自治体が判断をすることなんです。そうでしょう。それから若干の値上げはやむを得ないと見ている。ただ見ているだけなら指導じゃない、行政じゃありません。  まあ、これ以上は、私はもう時間もありませんから、聞かなくても大体文部省の姿勢というのはわかったと思いますがね。大体、文部大臣、私がいまいろいろやりとりをいたしました。どう見ても文部省の行政の中に、学校給食という問題は非常に片隅に追いやられているんじゃありませんか。だからこういう答弁が飛び出してくるんじゃないんですか。いまの学校という一つのものを想定をして、学校の中にいろいろな諸活動が行なわれている。この学校の中の諸活動の中に、一体学校給食という位置づけを文部大臣はどう考えていますか。
  34. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 学校給食の問題は、教育活動の中で相当な部分を占める大切なものだ、またそういうかっこうで今後も努力をしていきたい、かように考えているわけでございます。
  35. 鈴木力

    鈴木力君 どうも、相当な努力をして、諸活動の中で重要だという大臣の御答弁と、それから担当の局長のわしゃ知らぬという答弁とではだいぶズレがありますよね。私はここのところを直していかなきゃいけないと思うのです。非常に私は学校給食というものを行政の抱負として片隅に置き過ぎているという例に、どうしてもわからぬことの中に、これは直接学校給食とは関係がありませんけれども、しかし関係がある。たとえば学校給食の中毒防止とか、さまざまな衛生管理のほうの役割りを持つ一つ学校薬剤師というのがありますね。これももう時間がありませんから、御質問申し上げると答弁が長くなっていけませんから私のほうから申し上げますけれども、一体学校薬剤師なんかについてですね、文部省はどんなふうな扱いをしておるのか、どうしても私はわからぬ。いま、あれでしょう。学校薬剤師というのが学校保健法できっちりこうきめられておるわけですがね。その学校薬剤師というのは、一体実態があるのかないのか。試みに局長さんに伺ってみますけれども、十分に学校薬剤師というのはその任務を果たすために機能的にできていると思っていますか、どうですか。
  36. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 現在学校薬剤師は公立の小学校におきまして八六・四%、中学校におきまして八七・六%が配置されておるわけでございます。それから僻地の場合などは学校薬剤師の派遣といいますか、そういう国庫補助をいたしておるわけでございますが、率直に申し上げまして、その実態、活動の状況は、市町村学校によりましてかなりまちまちであると思っております。非常に学校薬剤師の職務が生かされまして非常に活躍していただいておるところと、必ずしも十分でないところと、その状況はいまのところ率直に申し上げましてかなりまちまちであると思っておりますが、学校薬剤師会その他非常に御熱心にいろいろ研究、勉強をいただいておりまして、年々改善の方向にはあると思っております。
  37. 鈴木力

    鈴木力君 だから、この程度のことを必ずしも満足すべきじゃないというような表現で言うから、私は文部省が本気じゃないというふうに言いたいんですよ。この学校薬剤師について、私は昭和四十四年だったと記憶しておるのですけれども文教委員会指摘をしたことがあるのですね。学校保健法では昭和三十六年までは猶予期間があるけれどもあとはすべての学校に「学校薬剤師を置くものとする。」と、こう書いてある。この法律の解釈について、文部省は、置かなければならないと書いてないから必ずしも置かなくてもいいんだということを言っておる。それなら三十六年までの猶予機関をどう見るかというと、考え方とすれば、置かなければならないものでございますという趣旨の答弁が坂田文部大臣からされておる。それから四年です。もう昭和四十九年ですから五年にならんとしておる。その間に文部省がどれだけの指導をして、どれだけの成果があったのか。ほとんどないと言ってもいいじゃないですか。たとえばいま学校薬剤師が八十何%かいると言った。それは昭和四十四年のころとほとんどパーセンテージは同じです。幾らもふえていない。それから、その人たちの活動はいまの局長さんの御答弁によると、学校薬剤師の皆さんが研修をなさったりいろいろしていまだんだんに向上しておると、そのとおりなんです。非常に学校薬剤師はそれでも苦労をしておる。しかし、行政のほうは何らそれに対する手がない。たとえば、いま学校薬剤師がどれだけ学校でどんな仕事をしているのか。これは文部省調査ですけれども、一年間にですね、一日から十日間出て仕事をしておるのが、小学校が九〇%、いいですか、中学校が九二%、高等学校が八三%。一年間に十日以内出勤をして、しかもそれも半日かどうかわかりませんですけれども、それが九〇%以上です。十一日から二十日間勤務をしておるのが、小学校が九%、中学校が五%、高等学校は一四%。高等学校のほうはわりにいいんですけれどもね。二十一日以上というのは、小学校が一%、中学校が三%です。高校も三%。これだけ見ても学校薬剤師というのを文部省は必要な職種だと思ってるのか、必要でない職種と思っておるのかどっちなんです。まずそれを伺いましょう。
  38. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 学校保健法によりまして、学校薬剤師を必置制にいたしたわけでございますが、私自身学校保健法の立案の事務に関係いたしたものでございます。学校薬剤師の職務はきわめて重要であると、そう考えておるわけでございます。いま先生御指摘の勤務日数は、これは私ども調査でございますが、まだ必ずしも法律のねらったところまでの御活躍をいただいておらないという実態がかなりあることは承知いたしておりますが、これはやはり学校側の受け入れといいますか、そういう学校側の理解、その他年々その徹底をはかっておるところでございますが、さらに私どものそういう努力が必要であると考えております。
  39. 鈴木力

    鈴木力君 大臣、これね、さっきも言いましたように、私は昭和四十四年に指摘を申し上げている。なぜこういう状況になっているのかというと、全くおざなりですよ。手当についても昭和四十四年については、平均で年間一万二千円だと。月千円の手当ですよ。それが今度は少しは、あのときに私がつまらぬことを言ったからというわけでもないだろうけれども昭和四十八年度地方交付税の積算の基礎として、一人四万円になっている。一人四万円が積算の基礎になっているわけですから、手当はこのとおりいっているとは思いませんよ。しかし、少なくとも文部省はこれだけの手当は出せとは言えると思うんですがね。しかし、いまね、薬剤師の資格を持っている人に、学校に出てそれぞれの学校保健法に規定しているような仕事をやれと、学校給食についても定期的に検査をやれと、行管の勧告を受けて文部省もそういう指導をしているのです。月三千円の手当で、そんなに仕事をやれと言うことができますか、どだいまず第一にですね。こういう状況ですから実際学校に行きましても薬剤師さんはここでは何しているのだというと、そんな人いるかというような、校長さんさえ知らないような学校幾らもある。しかも学校薬剤師には非常に重要な任務を与えておりますから、執務日誌を書けということまでちゃんと規則につくってあるでしょう。その執務日誌がどの程度に書かれているかというような追跡調査なんかをされたという話聞いたことがない。  昭和四十四年に私が指摘をしたけれども、依然としてこういう状態。すべて学校給食に関することが、これは学校給食だけじゃありませんよ。学校薬剤師は学校給食のために置いたんじゃないのです。しかし、いずれにしても児童生徒の衛生管理なり発達なり、そういう面については全くこの行政は片すみに置かれておる。私はいまの特に局長の御答弁を伺いまして、学校給食現場ではもう非常事態だと、給食危機に瀕している、そう言っておる。ある市町村では値上げ分を自治体負担で持って、何とかその負担を、値上げをさせないようにしていこうと苦労しておる。ある自治体では牛乳値上げはやむを得ないと受け入れている。しかしそれは半分は県費で持とうとか全部県費で持とうとか、そういう苦労をずっとされておる。それなのに当の文部省は、学校給食法をつくった文部省は、まあ府県知事の権限ですから府県知事が値上げをするでしょうと涼しい顔。これでは学校給食は改善されるはずはないと私は思うのです。  そこで、もうこういうやりとりを幾らしてもあまり効果はないと思いますけども、私は大臣に、この際やっぱりこういう状態になったからこそ学校給食というものを見直すべきではないのか。抜本的に、いままでの行政の片すみに置いたようなそんなことではなしに、教育活動と、それから学校給食一つの活動として大きくもっと重要な施策として位置づけたらどうか、そういうことをひとつ提案をしたいのです。たとえば文部省の構想の中にそういう構想があったでしょう、前から。そういう構想がありながら依然としてそれが前に進んでいない。たとえばですね、またこれも小さい——小さいといいますか、一つの具体的な例で申し上げますと、学校で一番じんあい度の高いのは教室だということは木田前の体育局長がもう認められておる。私の質問にそう答えられておる。一番じんあい度の高い教室で食事をさしておる学校給食というのはこれは望ましい姿じゃないということは文部省としては認められておったはずだ。そうして、昭和四十三年ですか四年ですかから食堂をモデル的にやらしてみる、そういうことに踏み切ったはずですよ。非常にいいところに踏み切ったと思っておったら、それが今日までに幅が広がっていったという実績はどうも私には見当たらない。逆に言ったら、そんなことを、無理なことをというような話がむしろあるじゃありませんか。少なくとも私はそういうところに重点を置いて学校給食というものを学校の中の大きな一つの活動として位置づけるならですね、いまの食堂という発想は新しく学校を建てる場合の基準には入れるべきだと思う。そうしてそれには補助という、補助の対象にするのだとね、それくらいの積極性があって初めて学校給食の問題は解決するのじゃないですか。それぐらいのことを文部大臣考えられないのですか。  あるいはいまのこの牛乳、小麦、まあいろいろ申し上げましたね、まあ一つ一つは、それはそうは言っても、文部省に直接幾らにしろという、言ったってこれはどうにもならぬ問題、確かに局長のおっしゃるとおりの仕組みはあります。仕組みはあるけれども全国的にこの辺が適正だというようなものを持っていくとかですね。ただし、そうやるためには私は学校給食というものをどうしてもこの給食法にいう児童生徒負担の原則というやつを切りかえるべきだと思うのです、この際。それは一ぺんに切りかえるだけの予算が取れるかどうかということになりますと、これは非常にむずかしい問題があるでしょう。むずかしい問題があるけれども、たとえば青森県の十和田町がやっていますように、今度の値上げ分は全額町費で持ちますといって予算を組む。地方自治体はもうそこまでいまやっているんですから。それもまあ局長に聞くと、ごく一部ですとお答えになるでしょうから聞かないほうがいいと思うんですけれども、自治体はそういう苦労をいましているんですよ。国がやっぱりそういうところにもう少し積極的に自分が出ていって、公費負担の原則を打ち立てるべきだ。そうして学校給食というのが、あるべき給食法に示されておるいろんな目的を果たすためには、たとえば食堂なら食堂という問題、こういう問題ももっともっと積極的にやっていく。だから、たとえば私は、まあ一つのこれは思いつきみたいなんだけれども、さっきも言いました、これから学校を新しく建築する場合には、給食調理室はもちろんだけれども、と同じように食堂というものも一つの補助対象にする基準の中に入れるんだと、古い学校に直接全部入れろということは、これはたいへんな金がかかるにしても、しかし逐次そういう形に切りかえるという方針ぐらいは打ち出してもいいのじゃないか。  そういう点について私はきょうはひとつ文部大臣に進言をしたい——と言うと少しなまいきな言い方になりますけれども、そういうことでもやらないと——局長は一部だと言うけれども、私は一部じゃないと思う。正常にいま給食の運営がやられているこの正常の解釈が違うから一部だと言う。牛肉を豆にかえたのは正常だという見方をしておったんでは、これはもう給食の行政にはならぬわけです。そうじゃなしに、ほんとうのいままでのあるがままの姿に戻すためには、公費の制度というものを直ちに取り入れるということはできないにしても、相当積極的にそちらのほうを指向していかないと解決をしないのではないか。  もう一つ私は申し上げたいのは、これはもう文部大臣というよりも政府全体の話なんですけれども物資の問題は農林省や通産省やさまざまなものが関係をするわけでありますが、政府全体としても取り組めるような、そこまで文部大臣の政治力で持っていかないと学校給食の基本的な解決にはならないのじゃないか、こう思うのですけれども、いかがですか。
  40. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 給食に関しまする負担区分の問題につきましては、私が先ほど申し上げたような考え方に立っておるわけであります。全面的に公費負担にすべきだというような鈴木さんのような御意見をおっしゃる方もほかにもいらっしゃるわけでございますけれども、いますぐにそういう方向にいくことには困難があるという判断をいたしておるわけでございます。同時にまた、今日のような経済事情物価事情から、市町村なり府県なりにおきまして特別な配慮をしてくれているところがいろいろございます。私は、それは自治活動の一つとしていろんな配慮があってしかるべきじゃないだろうかと、かように考えているわけでございます。国としては、ナショナルミニマムを確保するという見地に立って、どこまでやるかということになってまいりますと、先ほど申し上げたようなところではなかろうかと、こう言わざるを得ない。国としてもまた、物価対策、物資対策がございますので、小麦粉牛乳につきまして若干の配慮はしているわけでございまして、これを強化するというような問題は、これはあり得るだろうと思います。しかし、それ以外に、現実に材料が上がってきた、給食をどうするかということにつきまして、自治体が別な配慮を加えていくということ、これはそれなりに望ましいことではないかと、こう思っておるところでございます。  なお、食堂を別途つくっていくという問題、私もそういう姿が望ましいと、こう思っておるわけでございます。ただ、これも、全国一律的にそれがいけるように制度化しようということになってまいりますと、今日の段階ではまだ無理があるんじゃないだろうか。やっぱり奨励的に補助金を出していくという、助長していくような政策をだんだん強めていくというようなことではなかろうかと、こう思っているところでございます。  小中学校の校舎につきましては、四十八年度から御承知のように補助基準を二割引き上げさしていただいたわけでございます。この程度の引き上げでは、食堂を補助基準の中に入れていくことはとてもできない、まだもっと引き上げていきたいと、こう考えているわけでございますけれども、すぐに食堂にまではいかない。したがって、いまの助長策をなお一そう強めていくという方向で努力をさせていただきたい、かように考えているところでございます。
  41. 鈴木力

    鈴木力君 どうも私は納得できないんですよね。それは、たとえばそういう制度を始めてから相当の年限がたっておってもほとんど前進がないということから、私は、そこにもう少し文部省本気に目をつけなければいけないのじゃないですか。たとえば食堂なら食堂にしても、一体、学校で一番じんあい度の高い教室で、そこで昼めしを食べさしていることを二十何年間やっているんですよ、もう。そうしたら、やっぱりじんあい度の少ないところに移すというようなことがもっともっと積極的に考えられていい。ただし、大臣に私が申し上げたいのは、聞き違えてもらっちゃ困りますけれども、あしたから全部変えろなんて私は乱暴なことを言ったつもりは全然ありませんよ。いままでモデル的にやってきたものをもっと太くするために、何倍かに財源をふやして広げていくという努力をすべきだ。それから、たとえば試みだけれども、今後新しく新築するところにはそうした食堂を入れるという、基準を引き上げるというようなことは——もう来年度の予算きまってしまったあといま何言うんだとおっしゃるかもしらぬ。しかしこれは、来年度からということにならないにしても、そういう方向に積極的に文部省が指向していくべきじゃないのか。それもやらぬで、二割ではとてもとてもと引っ込んでおった限りにおいては、いつまでたってもよくはならない。  それからもう一つは、地方自治団体が非常に苦労している。それはそれなりに評価すると大臣おっしゃるけれども、自治省出身の大臣としてはきわめて冷たいことをおっしゃると私は伺った。国の施策のないものを自治体が非常に苦労しているわけですよ。そういう苦労をしている姿というものに国がバックアップをしてやるというか、呼応してやるということがあって、こうした政策というのは生きてくる。だから私は、何もあしたから全部、全額国庫負担にしろなんて言っていやしない。将来公費負担という方向を目ざしていろいろな具体的なことを指向しながら検討していくそういう時期にもうきているのじゃないか。  いずれにしても、学校給食のあり方というもの、いままでやってきたものを、マンネリでずうっとやってきてここまで現場がいま火をふいておるのに、文部省がその感覚のズレから、それはもういままでの方向で何とかつじつまを合わせますという形では、私は学校給食は破綻すると、こう思います。時間がありませんからこれだけ申し上げておきます。  しかし私は、さっきの局長の御答弁文部大臣の御答弁、あなたまかせ、そちらまかせ、上がった分は要保護児童、保護児童についてはこれは制度によって負担するからあと父母が持つんですと、こういうあなたまかせということは私は学校給食の行政としては適切でない、こういう気持ちを持っております。いつかまた別の機会にもっと詳しく時間をおかりして学校給食の問題については申し上げてまいりたいと思いますけれども、時間がありませんから学校給食についてはこれだけにしてとどめておきます。  あと文部省指導行政についてちょっとお伺いいたしたいと思いますが、まず先に一つ伺っておきますのは、昭和四十四年度に会計検査院のほうから、指導主事の、教職員給与費等で宮城県、群馬県、島根県に不当支出があったという指摘があったのですね。これは、前もって私のほうから資料を準備しておくようにということを申し上げていないから御存じなかった、あるいは資料ないかもしれません。ちょうど昭和四十五年度決算の検査報告で、宮城県で昭和四十四年度にあったことですけれども、教職員の給与費の義務教育費国庫負担金、これは実は指導主事なんですが、指導主事で充て指導主事を各県に文部省で割り当てておるでしょう。ところが、これは指摘された県は抽出された県で、ほとんど全国でやっておったと思いますけれども、その割り当てられた以上に指導主事を何人かずつ各県が置いておいて、それに国庫負担金が出ておったということが指摘された。これは、大臣局長さんもこの当時はいなかったのですから御記憶ないかもしれないが、そういうことが過去においてあったのです。それで、私はそのあとに、おそらく国庫負担金のほうは文部省のほうでも善処をされたと思うのですけれども、この指導主事の配置のしかたに最近こういうケースが出ておる。充て指導主事を各県に何人かずつ置いてありますけれども、ところがそれぞれの県では最近、文部省指導がよかったのか悪かったのか、市町村ごとに指導主事を置こうということがどうもはやってきているみたいですね、いい悪いはあとで申し上げますけれども。ところが、それがどういう形になってくるかというと、国庫負担金のほうはさっきの会計検査院の指摘によって、これはそのままほおかぶりができなくなった。そうすると、県のほうはどうするかというと、半額は県費負担にして、あとの半額は市町村に負担をしろということを言い出した。それがずっとここ三年くらい続いてきている。ところが、市町村のほうは財政の負担に耐え切れなくなって、これを返上というあれが出てきている。いま教育委員会市町村とがこういう問題で陳情されたり、却下したりということを繰り返している。局長、こういう事情というものを把握されていますか。
  42. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 岩手県におきましていわゆる充て指導主事を市町村のほうに配置する場合に、半年はこれは県費のほうで給与を負担すると、しかし、あとの半年は市町村のほうでいわゆる派遣職員として給与を負担してもらっておる、そういう実態があるということは承知をいたしておりますけれども、私どもが県の教育委員会のほうの御意見を承っておりますと、従来人数の関係もございまして、半年間市町村のほうにそういった職員を派遣しておった。ところが、やはり市町村のほうでは一年間配置をするなら置きたいというふうな希望がございまして、そこで半年は県費負担、半年は市町村で御負担願うというふうな形をとったのだというふうなことを伺っております。ただ、ただいま先生が御指摘になりましたように、市町村が負担に耐えかねてそれを返上するとか、そういうことは私のほうではまだ耳にしていないというのが実情でございます。
  43. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、私は指導行政としてそういうやり方が適切なのかどうかということを、これは私はやはり文部省、検討してみる必要があると思うのですよね。一体指導主事というのは何のために置いてあるかなんというようなことをいまさらここで申し上げることもないと思うのですけれども指導主事というのは、学校の教育職員の教育活動を指導援助することが任務ですよ。ところが、いまの形で置かれておる指導主事というのは、そういう指導主事の任務というものを果たせるのかどうかということになってくると、私はきわめて疑問が多いと思う。現場指導を受ける側の先生たちの声を聞いてみると、これはきわめて評判が悪いです、正直に言いまして。それから、今度その指導主事にしても、いま局長は半年県で、半年市町村と、こうおっしゃいましたが、その半年の市町村がまたたらい回ししているのです、例として。半年のうち半分はAという村で、残りの半分はBという村で転々と何といいますか回り歩いている。こういうことがどうかということは私は非常にきわめて疑問が多いと思うのです。しかし岩手県の教育委員会でも、よそにはあるかないかわかりませんけれども、広域指導行政などということばを使って、籍はどこにあろうともずいぶん広く飛び回っておる。こういう形の指導主事というものははたして必要なのかどうかということも私は検討する段階にきているのではないかとこう思いますけれども、こういう例は岩手県以外によそにあるのですか。
  44. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) これは非常に特異な例でございまして、岩手県以外に私どもはそういう例があるということは聞いていないわけでございますが、これは私どものほうの調査が十分でないためかもしれません。しかしかりにあるといたしましても、これは全国的にやられておるというふうなことではございません。
  45. 鈴木力

    鈴木力君 そうしますと、これは地方的な問題ということになりますけれども、しかし充て指導主事というのは教員身分を確保している指導主事ですから、そういう意味で私は非常に問題が多い。一つはさっき申し上げたように、指導主事というのが一体指導主事としての任務を果たすのに適切な場所にいないということが一つです。それから最近指導行政ということが非常にやかましくなったことは私はいいことだと思いますけれども指導主事の守備範囲を乗り越えての言動というのが非常に多くなっている。これは局長はそうしたこまかいことまで一々お知りにならないと思うけれども、しかし原則としては管理行政と指導行政というものを二つに分けたという、この基本原則を行政側が乗り越えるということにいまの教育現場を混乱させているいろいろな問題が起こってくると思うのです。だからそういう意味ではいま指導主事がなぜきらわれるのかといいますと、結局こまかに市町村ごとにおったりいたしますね。それが教育の相談なり指導なりの任務を逸脱をしまして、教師を評価するようなことになってきている、教師一人一人を。そういう評価をするようなことになってきている。そして評価したことが管理行政のほうに直結をしているわけです。そういう形のものを半年ぐらい置くということになってくると、これは指導主事に対して現場は警戒こそすれ、安心して指導を受けるということにはならない。だから私は少なくともいまのような正規の充て指導主事というのは、これはいい悪いはいろいろ議論はありますけれども、そこを抜きにいたしますと、制度上ある充て指導主事をそれぞれに配置をしておるというところはまあまあそれにしても、それ以上逸脱した分についてはこれは整理をすべきではないのか、そういう指導文部省がするべきではないのかということが一つ。少なくとも教員身分を持っておって、実質的には国庫負担から離れて派遣なんとかいうような法律にはどこにもないようなことばで回されておる。それ自身もあまりいいことではないし、それから現場のほうの受け入れ側にしてもあまりほめられていない。私はそう思うのですけれども、少なくとも文部省としても当局としては、このいまの岩手県にあったケースについては検討をまずお願いしたいと思いますが、どうですか。
  46. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) ただいま仰せになりましたことはたいへんごもっともなことだと思います。私も県の指導課長をいたしておりましたけれども指導主事というのは現場の先生方がたとえ管理職に言えないことでもいろいろざっくばらんに相談をするとか、あるいは事情を話すということができるところに非常に大きな意味があるというふうに私ども思っておりまして、そこが指導主事の基本の点でございますけれども、ただいまお話にございましたような配置の問題等につきましても、これは法律上許されておるということでございましても、私ども客観的に見ましてたいへん不自然なものである、またしかも指導主事を置いたというふうな効果というものは若干疑問があるというふうな点で、ただいま御指摘ございましたように、これは十分に検討してみる必要があるというふうに考えます。
  47. 鈴木力

    鈴木力君 ついでに申し上げますが、その効果をあげるために指導主事のいる場所を管理主事と机を並べて置くのを直さしたほうがいいと、私はそう思いますよ。ほんと言うなら、どこか中心学校にでも指導主事がおって、そして欠員の出た教室があったらそこへ補欠授業ぐらいするような、常時現場の先生方と暮らしているところに指導主事の任務が果たせるのであって、それが教育委員会の事務室に管理主事と並んでおって、どうもあの教員は少し組合運動をやり過ぎるみたいだな、何とか飛ばせとか、あるいは外国行きはあいつはだめだぞ、組合に入っているからなんというようなことを、そんなことばかりやっているから指導主事がきらわれるのであって、そういう面は直ちにとは言いませんけれども、参考のために申し上げておきますが、指導主事の勤務というものを特に、まあ本庁の場合はこれは別だと思います。それから、各郡市の中心の事務所にいる指導主事というのは、また別の任務があると思いますから、これはまあ役所におることもやむを得ない。その他の充て指導主事なんというのは、私はそういう立場のものに切りかえるべきだと、こういうことをもうひとつ検討してみていただきたいと思いますが、いずれにしてもさっき申し上げました身分的にも、まあいろいろ苦労してやっておるから、直ちに法律違反とかにはならないとはいうものの、どうもすっきりしない。これは一応整備して再検討する、そういうことを重ねてひとつ御要望として申し上げておきたいと思います。  もう一つ、私はこの指導行政の中に入ると思いますけれども、研究指定校の問題。これも実は坂田文部大臣のときに私が文教委員会で申し上げたことがあるのです。もう時間がありませんから質問という形にはしませんが、いまこの、文部省の直接の研究指定校が八百五十八校あるのです。まあ必ずしもその数が多いとか少ないとかということにはならないだろうと思いますけれども、私は多少実態を知っておるのですけれども、この研究指定校を指定をしておいて予算はさっぱりつけていないということなんです。たとえば小学校で教育課程の研究指定校が四十七校あります。これの予算は六百六十八万八千円です。そうすると、一校当たり幾らになるのですか。非常に少ないものになりはしませんか。少なくとも、いまこの研究指定校というのは相当な大規模の学校で大型の研究をやっておるわけでしょう。ところが、この予算ではどうにもこうにもやり切れないわけですよ、実際は。大体五十校で六百万とすると幾らになりますか。
  48. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 十万円ちょっとでございます。
  49. 鈴木力

    鈴木力君 十万円で何か研究できると思いますか、大臣。これはどうしてこういうことになったのか、私はわかりませんけれども、坂田文部大臣のときに私がこういうことを言ったことがあるのです。私は、ほんとうは研究指定校なんかこんなにたくさん要らないという考え方なんですけれども、まあしかし文部省文部省として必要だと思うから、直接やめろとは申し上げません。少なくとも、しかし文部省が直轄の研究指定校でテーマを与えて研究をさせるなら、正規の授業活動のほかにこの研究という負担を教員に与えておるだけでもたいへんなのに、十万円や——正確に計算をすると十万ちょっとこえておる、これは私が坂田文部大臣のときに指摘したものの約倍になっておりますから、二倍にしましたと言っていばるかもしらぬけれども、自慢するかもしらぬけれども、紙代にも本代にもなりはしません。したがって、これのしわ寄せは、該当の教育委員会の翌年の経常費にはぽっかり大きな穴があいておる。ただ幸いにして、まだ文部省というのが、非常に地方から見るとえらく見えるものですから、PTAはうちの学校文部省の指定になった、名誉なことだといって、それでPTAの寄付がそこへ集まってきて、何とかかんとかやっておる。望ましい姿じゃないと思うのです。だから私はこれをおやりになるなら、少なくとも十分の一に私は減らすべきだ。予算がとれなかったらですよ。そうすると一校に対して百万円は出るでしょう。これは私の知っている教師の学校でも道徳教育の研究指定を受けて去年公開をやりました。一年間にどれぐらいかかったかというといま二百万ぐらいかかっていますね。公開用の印刷物だけでもたいへん。これからまた紙や印刷費が上がったら、どうなるかわからぬです。それをこんな予算で、文部省という権威があるから、返上すると、おまえ組合の何かというような、そんな形で押しつけて、これをマンネリでずっとやっているということは、私はやっぱり直すべきじゃないか、こう思うのです。したがって、私はもう一つ、なぜこうなったのかということを、私なりに勘ぐると、文部省の中に専門家がたくさんおります。これは貴重な研究をなさっていらっしゃると思う。その専門家の皆さんが、自分の専門の研究が大事なものだから、これも指定したい、これも指定したい、この意欲にこたえるなら、予算を十倍にふやすべきだと私は思う。どちらかをとらなければいけない、これは大臣いかがですか。
  50. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) ちょっと前に事情を御説明申し上げますと、鈴木先生から確かに御指摘がございまして、私どもも昨年から研究指定校の単価の引き上げということに取り組んでまいりました。いま年次計画で一応二十万ぐらいまで引き上げていくような方策をとっているわけでございます。ただこれは先生の御指摘がございましてやったわけでございますが、ただいまの御指摘のように、非常に最近、いろいろな費用がかさむということでまだまだ先生の目からごらんになりますと不十分だということでございますけれども、いまそういうことに、先生の御注意によりまして着手したということだけ御報告申し上げます。
  51. 鈴木力

    鈴木力君 もう時間ありませんけれども、しつこいみたいですけれども、たとえば学校薬剤師にしても、研究指定校にしても、あるいは学校給食の根本的なあり方にしても、私はきょう初めて申し上げるわけじゃない。一つは四年も五年も前からそういうことを申し上げておる。何とかもっともな意見だからという御答弁をいただいて、しばらくたってみると御意見というか、御答弁だけであって、中身はさっぱりどうにもならない。こういうことを繰り返しておるのでは私はどうにもならぬと思いますから、きょう申し上げたことをひとつ文部大臣もお聞きいただいたと思います。まあ何も私の言うことがりっぱだというつもりで申し上げておりませんけれども、少なくとも私はひまがあるたびに学校を回るのが、やっぱり古巣を回るのが趣味でありますから、好きで回る。しゃべると私のほうが評判がいいのですよ、文部大臣より。こういうことを言うとですね。まるでうそばっかり言っているとも思わない。もう一つやっぱり文部大臣現場的な、現場苦労しているというものを、もっとすなおにやっぱり大臣もひとつ目を向けてもらいたい。そうすると、さっきの学校給食にお答えいただいたような、ああいう答弁は少しは変わってくると、私は信じますよ。それからこの研究指定校にしても指導主事のあり方にしても、せっかくつくったこの趣旨なり制度なりというものが、ほんとうに生かされるように、下も動いている実態と合わした中での検討ということを、ぜひひとつお願いしたいと、こう思います。これは御要望申し上げて、きょう質問終わります。
  52. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 文部大臣一言。
  53. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 御指摘のありました諸点ごもっともだと思いますので、それぞれに努力していきたいと思います。  研究指定校にしておきながら、助成の額がいまのようでは、私も恐縮な話でございますけれども、少な過ぎると思いまして増額に努力していきたいと思います。学校薬剤師の問題も法の定めるところと食い違っている点、まさに問題でございますので、できる限り法の趣旨に合うように整備していかなきゃならない、かように存じておるわけでございます。学校給食の問題につきましても、今回は栄養士を県費負担職員に変えさしていただきました。これも学校給食の仕事が整備する一つの問題だろうと思います。  いずれにいたしましても、学校現場がはつらつとした姿になるようにしていかなきゃなりませんので、現場の声も耳を傾けながら充実に努力を続けていくつもりでございます。
  54. 松岡克由

    ○松岡克由君 よろしいですか。その前にちょっと余談ですけれども……。
  55. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  56. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 速記をつけて。
  57. 松岡克由

    ○松岡克由君 質問に先立ちまして、二点ばかりちょっと約束してほしいということはですね、私は教育問題に対してしろうとでございます。決算でも初めての質問でございますし、まあしろうととか、くろうととかいうことでなく、教育というものはもう国民全般にいやがおうでもかかわり合う問題でございます。それだけにひとつすなおな質問をしますので、ひとつこれは、かりに聞いた国民の皆さんまたは父母父兄、そしてできることならば中学生、高校生あたりにまでわかるような、私はむずかしいことを言うのは何も決して頭がいいと思っておりませんし……。
  58. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  59. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) では速記を起こして。
  60. 松岡克由

    ○松岡克由君 ひとつ、そういう観点からわかりやすく簡単に答弁を、またできるような問題を仕組んでありますから、していただきたいということがこれが一つです。  それから、決算という一つの委員会のチェック機関という性格にもあるんでしょうけれども、わりとお役人連中の答弁を聞いていると、じょうずにはぐらかすとか、またはのらりくらりと答えることが優秀な答弁であると、ひがみか、そういった面が見られますので、そういうことのないように、わからなかったらわからぬと、困ることはそれは困ると言ってけっこうです。何も別にこっちは痛いところをついておのれを売り出そうなんていうけちな量見はございませんから、やはりよくしようという観点で物事を始めようというわけでございますので、ひとつ優等生の答弁でなく、時間の空費ということは現代における私は罪悪と言ってもいいくらいでございますから、どうぞその二点をひとつ約束してほしいと思います。まあ、これははいと言っていただけばけっこうでございますから。よろしいですね。
  61. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) わかりました。
  62. 松岡克由

    ○松岡克由君 先生方の待遇問題について伺います。  最近、御承知のとおり小中学校では女子教員、女の先生がたいへんにふえております。小学校においては大部分ということばを使っていいくらいふえております。この傾向をどう受けとめていらっしゃるか。好ましいと思うか、はたまた好ましくないと思うか。それともしかたがないと思うか。ちょっと文部大臣に伺います。
  63. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 男の先生方が相当な比重を持ち続けていただくことを期待しておりますけれども、傾向としてはやむを得ないのじゃないだろうかという判断をいたしております。
  64. 松岡克由

    ○松岡克由君 一がいに悪いとも私は言えぬと思うし、外国の例なぞそれなりに見たり聞いたりしてますと、幼児教育というものは、小学校を幼児といっていいか悪いか、女性の先生のほうが向いているという例も確かに出ておりますし、またそれなりのものを持っていると私は思っております。ただ、これなぜふえたかということですね。私は子弟の教育をやりたいからふえたということであってほしいと思うのですが、実際には待遇面からふえている。つまりなぜふえたかというと、あの小学校中学校教員というものは男女差がわりとないですわな、御承知のとおり。したがって、ほかの職業に比べて相対的に、相対性としてつまり待遇がいいということであって、私はおまけに生理休暇だとかそういった出産休暇を認められておりますし、ほかの職業に比べていい。そして、続けていく気なら一生続けていくことも可能であるということですね。私の妹も、義理の妹ですけど、現在高校ですか中学ですか教師をしております。共かせぎでやっているんですけどね、私はそういう方面からふえてきているという傾向があるというのをどう受けとめていらっしゃるか、お願いします。
  65. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 男子に比べますと女子が働く活動分野というものは限られているように思います。女子にとっては教育の活動分野というものは最適の活動分野に属するんじゃないだろうかというふうに思います。大学の入学試験等につきましては、女子が非常に優秀な方々が来られる。男子の職場は広い。また必ずしも男子にとって最適の場でなかったかもしれません。最適の場にしていきたいものだと考えております。そういうこともございまして、女子の方のほうが数多く入学試験に合格され、そして教師の資格を取って教育の現地に進んでこられたということが、一番大きな原因ではなかろうかと、こう判断をいたしております。
  66. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうあってほしいと思うんでございますがね、要するに女子がふえるということはワクがありますから男子が減っているわけですよね。その減っているということは、いわゆる男に言わせれば魅力がない。魅力がないから減ってくるのだ。女の先生にとっては魅力があるからふえたんではなくて、他にこれだけの優遇をしてくれるといいますか、現在において、絶対的ではあれ、相対的にいいからそこに来ているのであって、もう一歩突っ込んでいくと、もっといい条件のものが出てくればそちらに流れてしまうということも当然考えられる。言うなればやっぱり教育といいますか、教師という職業の沈下現象といいますかね、そういった状態にあるということを頭に考えられませんか。心配しませんか。どうぞ。
  67. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) いまおっしゃいましたような沈下現象になってはいけないので、いろいろな施策をさせていただいているところでございます。
  68. 松岡克由

    ○松岡克由君 たいへん短いのはけっこうなんですが、あんまり短いとそっけないという感じがするし、この辺がむずかしい問題。(笑声)  そこで、この間の人材確保、人確法案ですか、人材確保法案が審議され、本院を通過したわけなんでございますけども、私は給与面において改善されたということはたいへんけっこうだと思います。これは実際に具体的にどのくらい上がったのか、ちょっと説明してもらえませんか。他の職業といいますか、に比べてざっと。
  69. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 現在は上級職の乙と比べまして、初任給では小・中学校の先生は九%ぐらい高いわけでございます。ところが十八年目から逆転してまいります。これが現状でございます。これに対しまして、今度の法律によりまして教員の給与は一般の公務員に比較して優遇されなければならない、これを踏まえて人事院は勧告してください、こういう態度をとっているわけでございますから、今後人事院がどういう態度をとっていかれるかということに最終的にはかっているわけでございます。政府といたしましては、四十八年度、四十九年度、それぞれ、一〇%ずつでございますので、合わせまして——一般の公務員について引き上げ措置が講ぜられる、教員も当然これに準じた扱いを受けます。そのほかに二〇%引き上げてくださいよ、と。どのような引き上げ方をするかは、これは人事院勧告にゆだねている。初任給にどれだけ持っていく、あるいは上のほうにどれだけ持っていく、どういうやり方をするかということは人事院におまかせをするという態度をとっておるわけでございます。
  70. 松岡克由

    ○松岡克由君 人事院、おりますか。
  71. 茨木広

    政府委員(茨木広君) 先般いわゆる人材確保法が公布されまして、私のほうに現在仕事がまいっておるわけでございますが、それでただいまも院議の席から来たわけでございますが、鋭意勧告を早急に出したいということで検討を続けておるところでございます。  で、審議の過程でいろいろな論議が出ましたし、それから小・中学校、高等学校等各種の側からいろいろな要望が直接出されてきております。そのようなものをいろいろ参酌いたしまして早急に成案を得たいというふうにやっておるわけでございます。   〔委員長退席、理事小谷守君着席〕  で、ただいま大臣のほうからお話がございましたが、一応現在考えておりますのは、昨年度の夏の人事院勧告によりまして大幅なベース改定が一応予算的にはあったわけでございます。そこで、現在計上していただいております——どもの総裁に言わせますと、特配ガソリンがあったんだと、こういうふうに言われるわけでございますが、百三十六億ほどの財源がございます。これを使いましてやりますというと大体九%程度になってまいりますが、それを全部使い切るような感じでそれぞれ要望がございます内容に盛りつけるというように考えておる次第でございます。
  72. 松岡克由

    ○松岡克由君 大体もっとわかりやすく、初任給どのくらい変化しますか。
  73. 茨木広

    政府委員(茨木広君) まあ確定的なことをまだ申し上げかねますけれども、大体先ほど大臣のお話にもございましたように、特に中ごろからの折れ曲がりと申しますか、これを改善せよという要望がたいへん強うございましたので、初任給のところは、先ほどお話にもございましたように、現在でも相当高くなっております。それで、やはり五%前後のところから始まるんでなかろうかというふうに考えております。あとは上のほうがやはりどうしても多く盛りつけませんというと、先ほどのお話にもございましたような御要望にこたえられないということになるわけでございますので、そんなふうにしたいと思います。
  74. 松岡克由

    ○松岡克由君 まあ義務教育に携わる先生方の給料は上がっていく、これはけっこうで、高校のほうはどういうことになっておりますか。見通しやら何やらをちょっと聞かしてください。   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
  75. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 法律的に申し上げますと、義務教育教員の給与は一般の公務員に比較して優遇されなければならないと、こう書いてあるわけでございますけれども、そのことを通じて、学校教育——高等学校も含みました学校教育全体の水準の維持向上に資するんだと、こううたってあるわけでございます。したがいまして、人事院のほうで勧告いただきます場合には、義務教育だけじゃなしに、それとの均衡において高等学校の先生方の給与の勧告も引き上げ方いただけるものだと、かように期待をいたしておるところでございます。
  76. 松岡克由

    ○松岡克由君 けっこうでございます。  現在、小学校中学校、高校の先生になるのには教育年限はどれくらいですか。手短にすぱっと説明してください。
  77. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 大学卒業でございますから、六・三・三・四、合計十六年ということになります。十六年で教員の資格が取れまして、勤続年限は平均いたしますと三十六年でございます。
  78. 松岡克由

    ○松岡克由君 昔ですと小学校は師範学校でございましたね。それから旧制中学ですと高等師範、いまの教育大学、この間話題になったいまの筑波大学と、こういうことになるんですけれども、師範学校というのは学芸大学ですか、これですと四年ですね。教育大学、まあ筑波大学、あれも四年だ、と。そうすると、高校の先生になる資格と小・中学校とたいしてというか、ほとんど差がないということで、おまけに高校のほうは普通の大学ですわね、明治、早稲田、やれ、そういった大学の教職課程というものを取る、それも単科でたしかいいと記憶しております。間違いございませんね……。  続けましょう。それで、なる。それほど——くどいことはともかくいいですわ。要するに、それほど差がないということを言いたいわけなんで、小学校はむしろ八教科目ですか、全部修めなくてはならないし、やっぱり非常に密度の濃いものを自分に修業しなければいけないという事実がありますですよね。ですから、私はずばっと一言に言うと、この年数だとか、または内容的なものを見て、プラスアルファをいろいろ考えてみると、この差があること自体に何かたいへんな不合理な感じがしてならないですが、その辺をどう受けとめているか、聞かしてください。
  79. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) いま御指摘になりましたように、学歴の差はございません。ただ、どういう課程を選んだかということでございます。しかし、現在のところ、これは議員立法でございますが、給与の改定の法律が成立をいたしまして、いわゆる三本立てというふうな給与の体系になっております。つまり、小・中学校とそれから高等学校と大学は別になっているわけでございます。その理由といたしましては、この法律が制定されました当時、先生からもいまお話しがございましたように、高等学校のほうはいわゆる高等師範の卒業生が非常に多く、それから小・中学校のほうは師範学校の卒業生が多かったということで、そこには学歴の差があるわけでございます。そういう点と、もう一つは、小・中学校のほうは校長先生あるいは教頭先生になる率が非常に高い。まあ男子の教員の方でございますと、ほとんどの方がそういう地位につかれる。ところが、高等学校のほうは、校長先生になる率というのが小・中学校に比べますと極端な場合には十分の一というふうなことでございます。そういたしますと、一生の間、高等学校につとめておられた先生がお受け取りになる金額と小・中学校におつとめになった先生がお受け取りになる金額は、もし校長先生になる率が少なければ、しかもその給与が同じであれば、高等学校のほうが少なくなる。したがって、退職金も、年金も、高等学校の先生のほうが不利になるというふうなこともあるわけでございます。  まあどういうふうな観点から小・中学校の先生と高等学校の先生の給与をきめるかというふうなことにはいろんな見方があると思います。しかし、ただいま申し上げましたような考え方というものも一つ考え方であると思います。あるいは、きのう総理がテレビで申されておりましたように、義務教育の先生は非常に大事なんだ、大学の先生よりもよくして、裁判官と同じぐらいにすべきだという御意見もございます。まあいろいろな判断があると思いますけれども、ただいまのところは小・中学校の先生と高等学校の先生が法律によりまして差がついているというのが現状でございます。
  80. 松岡克由

    ○松岡克由君 ということは、暗にいまのことばの中にもありましたように、まあ田中総理が言ったことはともかくとしても、でき得ることならば魅力がなくなりつつあるというこの小・中学、最も大事なこの教育に力を入れ、また差のないようにするというような姿勢が十分にあると、こう受け取って、文部大臣、よろしゅうございますか。
  81. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 大体そういう方向だと思います。
  82. 松岡克由

    ○松岡克由君 妙なたとえを言うようですけれども、これは私はだめ押しするようですけれども、こんな話がありましてね。カーネギーという鋼鉄王が、あるやつに金をやったら、もらったやつが喜ぶかと思ったら、おこったと。なぜおこったといったら、ほかのやつにもっとくれたじゃないかと、おれにこれだけしかくれぬと言っておこったという有名な話があるんですがね。だから金をやるということは一つの評価ではあるんですけれども、その評価のしかたというものがたいへんに私はやっぱりむずかしいと思います。ですからやっぱり究極的には、人材確保法というものは、私は、義務教育をする先生方にやっぱり誇りを持たせるということに、要するに職業に対する誇り、プライドを持たせるということが目的であると、それを私は一つの金銭という形で評価をしていくものだとすなおに受け取っておりますんで、どうぞひとついまの姿勢で取り組んでいってほしいと、その成果のあがることを心から私はお願いしておきます。  さて、次に必要経費の問題なんですけれども、教育公務員特例法第十九条に、「教育公務員は、その職務を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」ということが書いてあります。「努めなければならない。」ということは、せにゃならぬということですから義務ですわね。私は確かに義務づけられて——間違ってないと思います、勉強せいと言っているんですからね。しなくちゃいかぬと。ところが、年間にいわゆるどれだけ勉強なんかに、研究に金がかかっているかというと、御承知だと思いますが、一応読み上げます。小学校で五万八千幾ら中学校で五万四千何がし、高校で五万一千、これは平均ですから、実際にその上下というより、もっとたくさんかかっている方が幾らもいることは想像できます。私は先生から税金を取るなというわけにもいかぬと思いますがね、でも必要経費——これはサラリーマンも問題になっております。けど、今回の場合は教員にしぼってですけれども、私は必要経費としてそういったものを認める度量があってもいいと思いますがね。いろいろと問題もあるんでしょうけれども、一口に言って認めてやりたいぐらいの姿勢、また何とかならぬかということを文部大臣——大蔵省がからみますか。御両省の意見を……。
  83. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 文部省の立場から考えますと、より一そう教職員については研修に励んでもらいたい気持ちもございまして、大蔵省に対しましてそのような制度をとりたいというお願いをいたしたわけでございますが、税制全体の観点から実現に至らなかったということでございます。
  84. 伊藤田敏雄

    説明員伊藤田敏雄君) ただいま文部大臣が申し上げましたとおりのことでございまして、ふえんさしていただきますと、ただいまサラリーマンも問題になっているというお話がございましたが、実はそのとおりでございまして、確かに教員の場合には研修の費用が必要かとも思いますが、同時にサラリーマンあるいは私のような国家公務員につきましても、やはり同じように勉強と資料は必要なんでございまして、そういう面を考えまして、御承知のとおり、給与所得者につきましては給与所得控除というものがございますが、本年度国会にただいま提案さしていただいております所得税法の改正におきまして、その給与所得控除をきわめて大幅に引き上げることといたしております。たとえば引き上げ後の金額を申しますと、平年度で給与収入二百万につきまして控除が七十五万円、三百万円につきましては百五万円になっております。そういう意味で、その中でまかなっていただくことといたしませんと他に波及するところが非常に多く、サラリーマンにつきまして、その職業の内容によって経費の見方あるいは控除の見方を変えるということになりますと、税制上とうてい措置し得ない問題でございますので、その点について御了解願いたいと考えております。
  85. 松岡克由

    ○松岡克由君 御了解はするんですが、そのところをやはり、世の中の仕組みはいろいろ複雑でございましょうが、ひとつトップを切って、ものはためしに、もめるもめないは後の話で、トップを切って一つ話題にするくらいの発言があっても私はよろしいんではないかと思います。だめでもともとと言うとたいへん恐縮ですけれども、それをひとつやってみるくらいの度量をほしいと私は思います。  次に、職業教育の問題なんですけれども、この間私、決算で小・中学をかい間見たと言いますか、一応、はだで感じたほうがいいだろうと、いろいろと見聞き話をしてきたんですけれども中学校の、これは蔵前中学という下町の中学校でございましたけれども、最も先生方の関心事というものは、要するに進学問題であると。御承知だろうと思いますけれども、中学卒業して、ほとんどが一応都立の普通高校を志望するという、私立のほうはいろいろ金がかかるとか、特定高でむずかしいとか、いろいろな問題がからんできます。これは別にしまして、残されました連中、入り切れないのはどうするかと。まあ、私に言われなくもわかっているだろうと思いますが、あえて言うならば、みな職業学校へ、要するに工業、商業、そういったところへ行っていると。つまり、普通科へ入る、普通の高等学校へ入るだけの頭はないと、いま流に言わしてもらいますと。そして、私立に行くほど金はなしと、しようがないから職業高校へ行っているというこの現状を、文部大臣、いかがでございますか。
  86. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) お話のように、高校の職業課程の問題であるといたしますと、普通科の課程が六割、職業科の課程が四割という現状でございます。反面、大学への進学率がぐんぐん伸びてまいってきておりますので、大学へ進むのには普通科の課程を選んだほうが入りやすいというようなことから普通科に集中をし始めてまいりまして、そういうようなことから職業課程をみずから選んで入ったということじゃなしに、普通科に入れなかったから職業課程に入ったという方もかなりいらっしゃるようでございます。これはいろいろな面から改革をしていかなきゃならないと思っております。一つは、大学の入学試験のあり方につきまして、職業課程を選んだ方についてもそれなりに入学試験を受験しやすいような職業課程向きの試験科目を出すということも考えるべきだと。これは一つの研究課題だと思っております。同時に、職業課程と普通課程のいまのあり方がそのままでいいのかどうか。ある意味においては、普通課程におきましても昔の文科と理科というような区分があってしかるべきじゃないかというようなものの判断もできますし、また、職業課程につきましても、すぐ役に立つということよりも、社会に出てからいろいろな変化に耐える力を学校時代においてつちかうのが本来なんだから、あまりこまかく職業課程を分けるのもいかがだろうかということもあるわけでございまして、そういうようなことで、総合的にいまの高等学校の教育課程——普通科と職業科のあり方を検討をしてみたいということで研究を続けておるところでございます。
  87. 松岡克由

    ○松岡克由君 しゃべっている中にたいへん矛盾していることを私はずいぶん感じるんですけれども、とにかく、いまの現状ですね、普通科をふやすの、やれいろんなことを言っていますけれども、現に、商業、工業へ流れている、しかたがなく行っているという現状、これはもちろん是正することはあたりまえの話なんですけれども、何とかいいほうへ持っていくということは。でも、この状態をいいほうへ持っていかなくちゃいけないということは、何とかしなきゃならないということは決していいことじゃないということですわね。私は、いつですか、文部大臣の談話が出ておりまして、これは当代の文部大臣、あなたでいらっしゃいますよね。普通科の六対四の職業科の比率を、普通科をふやそうとか、または「職業学校の多様化を改め」と言っていますな。「基礎教育の充実」と。これは、「改める」ということは、それほど改めなくても私はいいと思うんです。つまり、職業の多極化と言いますか、細胞化されていますので——聞いていますか。聞いているのと聞こえているのとずいぶん違いますからね、ひとつ——いろいろと出てくるのは、いま現に、代々木あたりを歩きますといろいろな学校がふえています。オーバーに言えば落語学校までできるんじゃないかというくらいふえていますよね。ということは、やっぱり、そこに殺到しているということは、それだけの、必要だと思うからこそそこへ行っているのであって、ところが——私は、それ自身は誤りじゃないと思うんですよ。文部省は誤りだと、そう思ったらしいんですけれども、問題は、その学校を卒業して——その学校というのはまちまちにあるんじゃなくて、職業高校——通用するかということなんです。たとえば、四十五年度の学習指導要領の中に秘書科というのがあるんですな、いろいろ、職業科の中に、工業、商業の中に——デザイン科も、いろいろあるでしょう。じゃ、この秘書科を卒業したからといって秘書で通用するかという問題です、一事が万事で。たとえば国会議員の先生方の中で、この秘書科を卒業したからうちの秘書に雇おうという方もおそらくいらっしゃらないでしょう。いないということは、雇えないということなんですわ。また、雇うためにそこに話も持っていっていないということです。役に立たないということなんです。ということは、現在は、その仕事だけをやっているプロフェッショナルというのはだめなんですわ。全体的な視野を持った上でのプロフェッショナル。昔は、大工はかんな削ってうちを建てりゃよかった。落語家はしゃべっていりゃよかった。百姓は耕していりゃよかった。そういう露骨な言い方もできた。いま、それじゃもたない。全体的な視野を持っていないともたないんです。だから要するに、プロフェッショナルといいますか、オンリーというやつは、要望がたいへんに少ない。したがって、これをどんどん敬遠していくということになるんです。現に、データに出ていますけれども、工業あたりですと七五%ぐらいありますが、農業、商業に至ると、その学校出ても就職率——また、自分の意思かもしれませんですが、就職しないという例が出ていますね、これは、資料によって。ですから、その辺はどう受けとめていますか。ちょっとそちらのほうの考え方なぞを聞かしてください。
  88. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 高等学校の職業科も社会の変化に対応していろいろの改革をしていかなきゃならないと思います。そういう問題は農業課程などに特に多いんじゃないかと考えておるわけであります。同時にまた、いまおっしゃったような趣旨で、私先ほど申し上げたわけでございます。学校教育というものは、すぐに間に合うということよりも、いろいろな社会の変化に対応できる力をつちかっていくところなんだと。だから、職業課程をあまりこまかく分けちまって、すぐ役に立つという方向で教育をすることが必ずしも適切でないものがあるんじゃないだろうか。だから、もう一ぺん編成をし直したらいかがなものだろうか。分け方にもよるわけでございますけれども、高等学校の職業課程——八十幾つかの分類になっているようでございますけれども、そんなにこまかく分類をしないでも、もう少し総合的な力をつちかうんだということで考えていくなら改革のしようがあるんじゃないだろうか、こうも思っているところでございます。
  89. 松岡克由

    ○松岡克由君 その辺がちょっと私と食い違うんです。もちろん、イコールになるとは考えておりませんですがね。職業教育とか普通教育といっておりますけれども、私はやっぱり教育というのは、ある意味において職業教育のことじゃないかと思っておるんです。ということは、小・中学から始まって、いわゆるりっぱな社会人にすると、りっぱな社会人にするということは、とりもなおさずりっぱな職業人にするということである。ということは、普通科を卒業したからといって何にもしないで済むというわけじゃないですね。どんな仕事も持たなきゃいいというものじゃないです。私はそうだと思うので、それをむしろ分けていくところに根本的に間違いがあったんではないかというような気がするんです。で、いまのを見ていると、あんまり多極化してはいかぬからしぼってくるといいますが、しぼった結果はどういうことになるかというと、結局、大学進学のための要するに基礎知識といいますか、悪く言や予備校といいますか、そんな感じになってしまっているわけです。下請機関になっていると、下請機関でもいいんだと、もっと完成は上にあるんだからと。大臣の意見からいきますと、職業教育というものをある程度一般教育のほうに近づけていくと、比率を変えていくと、下請がふえるだけみたいな気もちょっぴりするんです、皮肉な言い方ですけれども。これ、心配しておるんです。その辺、危惧はありませんか。
  90. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 基本的には今後ふやす場合には普通科の課程に重点を置いたほうがいいだろう、これは一つでございます。もう一つは、職業課程につきまして何も自分はそういう科目を選ばなかったんだ、普通科に行けなかったからその課程に入っちゃったのだと、たいへん不満を持って職業科の高等学校を終えられた方もあるわけでございます。そういうことを考えてまいりますと、職業科の高等学校ももう少し幅広く受け入れるような教育内容があってしかるべきではないだろうか。さらにこまかくする場合には、それぞれの学生の選択によって三年の場合にはこまかい科目を幾つもつくって自由に選ばせるという方法だってあるのじゃなかろうか、こう考えるわけでございます。いまの姿を見ておりますと、あまりにこまかく分かれておる結果が入学者の希望に合わない学校に入らせてしまったという結果もあらわれている。本来、学校はどうあるべきかということを考えますと、すぐ間に合う人間を養成するということよりも、より以上に先ほども申し上げましたように、社会のいろんな変化に対応していけるような力を学校教育の間につちかってあげるということが大切ではないだろうか。そうすると、基礎的なことをかなり幅広く教えていかなければならない。もちろん、専門的なことをやることを私は反対しているわけではございませんで、それはそれなりにいろんな科目を三年なり二年なりの間に設けて自由に選ばせる方法を講じたらできることじゃなかろうか、こうも思っておるということでございます。
  91. 松岡克由

    ○松岡克由君 すぐ間に合わなければしようがない部分が出てきていると思います。私は、高校卒で仕事を頼む場合、やっぱり間に合わなければしようがないでしょう。長い目で見てやるとか、大学卒業まで学費を持ってやるというばかなことはできないし、やっぱり高卒でほしい、場合によっては中卒でもすぐ間に合うのがほしいということなんです。だから私、職業学校をどうするということよりも、職業教育をどうするかということに私は当然変えていかなければならないし、いまの現状を見ておりますと、普通科がある、こっちに職業科があるとしますね、こっちの普通科のほうをふやしていくと——ところが、普通科は大学に行くだけであって、職業科を強化するというのもあるだろうけれども、強化してみたところで結局はだめだった。なぜならば就職を頼みにこないという現実が待っていたというわけで失敗だと認めて、要するに普通科のほうをふやすと、大事にすると、こういったのですけれども、これは頼むほうから、使うほうから見てみますと、私は前から学校歴と学歴というものは分けたほうがいいのではないかということをよく言っていたんですけれども、たとえば天才を妙な例に持ってきて申しわけないんですが、長島選手という野球の選手がおりますが、彼は立教大学か何か出ております、法科だか商科だか知らぬけれども。立教を出たというのはあれは学校歴であって、彼の学歴は私は野球学だと、こう思っておる、そういうことなんです。したがって、私はなぜ学校歴と学歴を、使うほうがめちゃくちゃになっておるかというと、使うほうにとっては全くわからぬのです。どれがいいのかわからない。とりあえず大学のほうは一応しにせという、理工科関係なら要するに早稲田の理工科なり東大の理工科を、それを使っていく。したがって、そこは就職率がいいからそこに入っていくということであって、ほんとうに自分の好きなものが——就職のために入ってくるので、好きなものを養成してくれるようなところがないという、だからもっと飛躍した考え方をするというと、好きでもないところにただ就職率がいいとか、男の勝負だとかいうところでもっても、学科を突破したはいいけれども、変なところに引っ張ってくると、それこそアラブあたりでもってゲリラ戦を演ずるという——わかりやすく言えば私は好きなことをやっておればそんなことをしているひまはないのじゃないかという、ごく素朴な意見も出るくらいのことを思っているわけです。  だからその点は私は根本的にもう一ぺん考えていかないと、普通科をふやそうのと、意見をいろいろ言っておりますけれども、私は根本的な解決にならないと思いますね。やっぱり毎度言っておるとおり、小・中学校から高校、大学に至るまで、一つのものを全体の中の一である、一でもって全体を把握しておるという、そういうものを養成するのにはやっぱり普通一般科の中に職業科がもぐりこむ、それくらいの私は覚悟、気持ちでもっていかないと、これは永久に基礎教育が大事だ、基礎教育が大事だ、大きくなってからいろいろなことを詰め込まなければいけないといっているうちに社会のほうで受け入れなくなってしまうという現状です。よほどわかっているならいいんですよ、よほど天才ならともかく、この点が私は非常によろしくないと、こう思うんです。要するに、学校というのは職業人を育てるところである、小、中、高、大学に至るまでそうだと、私はこう思っております。考え方に間違いがあったら是正してほしいし、意見を聞かせてください。
  92. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私が申し上げておりますことは、職業課程の高等学校に入学いたしましたときから非常にこまかく科目が分かれておりまして、そうして入学定員もきまっているわけであります。それはそこまでこまかい配分をしないで、それは二年なり三年なり進むことによっていろいろな学問を選択的に選ばせたら、いや、こんなところ考えていなかった、にもかかわらずこんな学校に来てしまったというような不満が相当省けてくるのじゃなかろうか、こう考えておるわけでございます。また、そのことを通じて基礎的な力を一そうつちかうこともできる。この辺になりますと、若干意見の食い違いがあるようでございますけれども、いろんな職業課程を学校時代に学ばせる、そのことを否定しているわけじゃないわけでございまして、ただ、入学したときから非常にこまかい行き先まで限定して入学定員がきめられちまっている。その結果不満を誘発している。これはもう現実であります。これはやっぱり現実の問題は解決をしなけりゃならないじゃないかと。おっしゃられていること、私は全然わからないわけじゃないんです。わからないわけじゃないんですけれども、職業科の学校へ入った、しかし全く希望とは反してしまったというようなことで意欲を燃やさない姿、これはやっぱり解決をしなけりゃならない。それを私がいま申し上げましたような方向で解決をはかるべきじゃないかというようなことが審議会などで議論されている方向ですと、こう申し上げているわけでございます。
  93. 松岡克由

    ○松岡克由君 いや、そうじゃないんだな。要するに、私が言っているのは、職業科なんというものを、職業教育をどうするかなんという、職業学校をどうするかなんというものじゃなくて、もうこの問題は一般のところへほうり込んでもいいですよ。ほうり込んでもいいですからね、そこでもって私はもっともっと職業科というものを目ざめさせるようなことを、それは若いうちからきめられちゃ迷惑だとか何とかって言いますけどね、きめなきゃならぬという現実が目の前に迫まっているんですからね、そうそう甘ったるいことも言っておれぬのです、世の中、そんな。そういうことを考えながら私は普通科につまり職業教育ということを非常に盛り込んでいかなければいけないんじゃないかと。これがやはりこういった意見を入れながら解決していかないともたないのではないかということを言いたいと、それだけでございますので、ひとつこれを頭の片すみでもけっこうでございますから、ちょっぴり入れておいていただければ幸いだと、こう思っております。非常に謙虚な言い方になっております。(笑声)  さて、八日に琉球大学の事件というのが私新聞で、比嘉照邦君という学生さんですね、これが授業中に鉄パイプ、バールでもってなぐられて死亡してしまったという事件が出ています。これ新聞によりますと、これ間違ってやられたと書いてありますわな。その後どうなっていますか、手短に経過を。どちらがよろしゅうございますか。
  94. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 御指摘がございましたように、二月八日に比嘉照邦という琉大の学生が殺害されました。場所は物理の講義を受けておりました教養部の教室で、午後一時五十分ごろ七、八人の者が入ってまいりまして、自治会委員長をしておった安室というのを捜しに来て……
  95. 松岡克由

    ○松岡克由君 その後どうなっていますか。
  96. 木田宏

    政府委員(木田宏君) その後、大学のほうではとりあえず学内の警備の体制その他を教職員あげて実施することになりまして、教職員によります構内の巡視、それから大学周辺のパトロールを警察のほうで実施してもらうこと、そうした取りきめをいたしまして、翌日から実施に入っております。また学長の声明を出しまして、学内の関係者にこうしたことの再発を防ぐためのいろいろな注意を喚起する措置をとった次第でございます。また沖繩大学は首里城の城址の中にある関係もございまして、出入りにいろんな場所が使えるのでございますが、とりあえずしばらくの間、この出入り口を必要な個所に限定をするという措置をとりますとともに、また学内に非常ベルとか拡声機を取りつけまして、非常事態に対して学内の通報が迅速にできるようにするというような方途をいま講じておるところでございます。また夜間の学内居残り、課外活動の制限等をしばらくの間事態の推移を見守るために制限を加えておると……
  97. 松岡克由

    ○松岡克由君 はいわかりました。
  98. 木田宏

    政府委員(木田宏君) こうした措置を講じておるところでございます。
  99. 松岡克由

    ○松岡克由君 一言で答えてほしいのです。学園内の動揺はだいぶあるでしょう。
  100. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 現在のところ、学生がそう動揺しておるというふうには聞いておりません。
  101. 松岡克由

    ○松岡克由君 これが翌日の新聞の切り抜きなんですけれどね、要するにこれしか出ていないのですよ、この日の、私の記憶によりますと、なんかクウェートのほうの例の大使館の乗っ取りのほうがたいへんでかく出ておりましてね、こんなもんですね。しばらくしてその後の新聞見たら、そのときの殺人事件の、飛行機を運転、操縦した機長が帰ってきてぼたもちを食ったという記事がこんなでかく出ているのですね。新聞の取り扱いを別にがたがた言うわけでも何でもないのです。問題は何だというと、殺されているのね、学校の中でね、これしか出ないというこの新聞の感覚、新聞というよりもあたりまえになっちゃってるのですわ。大学で人が殺されて、こんなもので、機長が大福食うと、こんな大きく出ちゃうという。私はこれが平気で何の抵抗もなくきているということに対する、私はこわいと思います。文部大臣、いかがでしょう。
  102. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 全く同感でございまして、そういう意味で私も心配をしているわけでございます。大学当局が学内におきまして中核だ、革マルだ、反帝学評だと、いろいろな派閥に分かれて対立抗争している。それに対しまして無関心になり過ぎているのじゃないか、これが一番こわい。同時にまたそのことによって学問の自由が侵されているのじゃないか。大学の自治というものは自治のために自治を認めているのじゃないのだ、学問の自由を保障するためにそのような方法をとっているにかかわらず、学問の自由が侵されていることについて、たいへん何といいましょうか、無責任になってきている、こんな感じを持っているわけでございまして、どのような方法を講じて新しく関心を深めていくかということについて苦慮、苦心をしているところでございます。全くその点につきましては同じような心配をいたしておるわけでございます。
  103. 松岡克由

    ○松岡克由君 学校でももう要するに人のうわさも七十五日、あすは浮き名の立ちじまいという都都逸がありますが、いま、七十五日ごろじゃなくて、もう動揺しなくなっちゃったのですね。これね、私は都々逸が出るとは思わなかったけれどもね、たとえばアメリカのウオーターゲート事件だとか、金大中事件、韓国の、それからまたはそういったもろもろのソルジェニーツィン事件といって——、われわれ見て、ずいぶん変なことをするとか、またはよくないとかいろいろな思いをめぐらしますわね、ああいうことがあるのかなとね。私は外国で大学の殺人事件があったかないかあまり詳しくはないのですが、やはりこんなものがあったらおかしいなとすなおに思うだろうし、まあ小・中学校にこんなものがあったら、もっと話題にはなるかもしれません。たとえて言うなら、ここのところへばーんと入って来て、質問をしているのをぼーんとやるのと同じことですからね。私はこれ何かひがみかもしれませんが、やじ馬根性かもしれませんがね、やじ馬の意見もたいへん大切なんで、私は過激派同士でやってるのだからうっちゃっておけ、つまり適当にやらせておけと、私はそれが大学当局またはそれを指導する文部省のほうにありはせぬかということです。まあまあそれはかりに百歩譲ったとしても、彼らは自分の主義に殉じて死んでいったのだ、やりたいだけやって、お互い同士やって死んでいったのだから、それはこれでいいじゃないかと。ところが殺されたのはこれ間違いなんですな。私は場合によっちゃ、大学、それこそこんなことをしたらきりがないというかもしれないけれども、封鎖し、文部大臣の私は辞職問題にまで発展しなければならないぐらいの社会問題だと思うのです、問題の大きさから言えばですよ。奥野さんが無能だとかなんとかいうことでなくてね。私はそのくらい大事な事件ではないかと思うのです。こんなことをいうと感情的に不愉快かもしれませんけれどもね。これがやっぱり私も遺憾でございますとか、よくないですとかと言っている、私はまたよくこの父兄が告訴しないと思ってるのです、しないのが不思議だと思っているのですよ。この辺の感覚というのは一言で言えば、さっきの答えでもって私も同感であると、おかしいと思う、そんなこっちゃいけないと思うけれど、思うのはだれだって思うので、こんなことを言ったって、小学生だってそう言いますよ、おそらくいまの文部大臣と同じ答えをすると思う。ぼくもそう思います、中学生も同じ、私も文部大臣と同じです、談志さんと同じ意見です——松岡議員と同じ意見ですと、私はこうなってくると思うので、もちろん腹の中には数百語がたぎっておるのかもしれません、それをあえてその一言で言ってるのだろうと私はこう解釈しますが、これ、どうにかならぬですか。そのうちに大臣のいすがどこかにいっちまえば、それきりみたいになると困るのでね、おかしいと思いませんか。もう一回聞かしてくれませんか。
  104. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 四十三年、四十四年には大学に大紛争が続きました。今日そのような大紛争はございませんけれども、私は、実態が深く、なお広がっているという心配をいたしております。同時に、あの大事件を境に大学当局が管理能力を失ったという感じを持っているわけでございます。したがいまして、大学の中で暴力がふるわれましても処分能力を持っておりません。ある大学で学生に先生がなぐられた。前歯を折った。その学生が証人に立ちますと、今度は大学へ行っておったものが登校できない。学校の試験を受けられない。したがってまた、証人に立てない。これはもう現実の姿でございまして、また、私立の大学でございますけれども、学生側が、大学を紛争に際してロックアウトを主張したその先生の講義は聞かないというようなことで騒いだりするものだから、教授会がロックアウトを主張された七人でございますか、教授の退職を決議したりしている。まさに、こうなりますと、学問の自由が失われていると私は申し上げたいのでございまして、大学の自治能力を失ったんじゃなくて、学問の自由を保障するために、大学教授陣に対しまして、研究、教育についての自治を認めているわけでありますけれども、ところが、一部の人たちから反対されると、教授会自身が退職を決議したりしてしまう。  これはまあ極端な例でございましょうけれども、私がさきにあげました例は相当多数の大学で見られている姿でございます。でございますだけに、臨時大学運営措置法が八月十七日でございましょうか、一応それまでの間に廃止するものとすると書いてあるわけでございますけれども、やっぱりそのままにほうっておけないのじゃないだろうか、何か手当てを必要とするんじゃないだろうか、こういう心配をしているわけでございます。しかし、こういう心配をするに際しまして、また一部からはとんでもないことだというような強い反発が起こったりしているのでございまして、私は、大学の実態というものは、学問の自由を保障するためにいかにあるべきかという見地から、国民の皆さん方にぜひお考えをいただき、御協力を得たいものだな、必要な立法措置もぜひとらしていただきたいものだな、こう念願をしているところでございます。
  105. 松岡克由

    ○松岡克由君 私は、全部という、全部に承諾せいということは——特に資本主義社会というのは不満政治でございますから、こう一方をおさめりゃ、一方から不満が出るという現実が見えています。とにかく不満を言うということにおいてその日を送っているといった言い方もできるくらいの不満政治ですから、ある程度いいとなったら、十分に審議をして私はそういう方向へ持っていってほしいと思うのです。  さて、その話を続けますが、その後、神奈川大学——これ、いつの新聞でございますか、三日後の新聞になっておりますんですが、自治会の前委員長が内ゲバで二人を殺害した、それを自供したという記事が出ております。そのときの自己批判書でこう言っているのですね。「神奈川大自治会委員長として重大な責任があったことを反省し、二人の死者に対し、心からめい福を祈るとともに二人の遺族におわび申し上げる」と、こう言っておりますのですね、この前委員長がです。この意見を、このおわびするという——やったことと、おわびするということを、これ聞いてて、一つの事件として——大臣でなくてもいいです、一社会人としてどういう受け取り方をするか。大臣が答えにくかったら、どなたでもけっこうです。ちょっと答えてくれませんか。どういう受け取り方します。短目にやってよ。ちょっとね、ちょっとだけ。
  106. 木田宏

    政府委員(木田宏君) そういうことばだけで済むことではないという感じがいたします。
  107. 松岡克由

    ○松岡克由君 それは済むことじゃないと思いますよ。私は、この学生というのは前自治会の委員長をしていた、委員長をやっていたというんですから、頭が悪くないと思うんです。そんなことをして反省する、悪かったと言っているんですからね。悪かったと言っても帰ってきやしませんがね。よくそういうこと、つまり、やっちゃってみたあとになって考えたらよくなかったと言っているんですね、これ額面どおり受け取ると。ということは、あんまり深くものを考えないでやっちゃう、冷静になって考えてみればばかばかしいことだった、殺すほどのことはなかった、あとになって悪かった。これ、何か小学生でも近ごろこんなこと言わないのじゃないかと思うくらい、私は、こういった、ものの——単細胞ということばがありますが、短絡現象といいますか、短くつなげてしまうのを。これ、私、大学教育の破産だと言ってもいいくらい、こういう大学生を生むというのは。いろいろ特殊条件はあったのかもしれませんが、とりもなおさず、これ、一応自治会の前委員長といいますから、それほどばかじゃないんでしょう。ここまでこういうふうになってしまっているこの例を、これに対してどう思うか、ちょっと思っていることを聞かしてください。よくないということはわかります。よくないだけじゃ困るわな。
  108. 木田宏

    政府委員(木田宏君) ああいう派閥運動その他に狂奔する人たちの心理というのは、何かイデオロギーその他につかれた異常な状態になりやすいということを最近の幾つかの事例を通じて感じておるところでございます。
  109. 松岡克由

    ○松岡克由君 なりやすいというのでね、なっちゃったらしょうがない、それじゃどうしようもないので……。  私は、そういう問題というものを、いままでは治安問題として考えていた傾向があるのではないかというような気がするんです。本来、これ、やっぱり教育問題のカテゴリーとしてとらえるものであって、だから、あとは警察にしりぬぐいをさしてしまえば、また、それしか手がないのかもしれないが、それで済むみたいな、警察こそいいつらの皮だと思いますよ。私は、それを教育問題として受けとめてこないと、やるやつは過激派だからやるんだ、こいつは警察にまかしておけ、これ、永久に解決しやしませんです。へたすればますますふえるという傾向があるんではないか。まあ前みたいな大きな騒動はなかったと私もそう思いますし、現実がそうなんですけれども、だからといって、なくなるということは絶対私は保障もできない。もちろん殺人事件というのはどこにもあるんだから別に驚かないと言えばそれっきりだろうけれども、私は、その根本にあるものが非常にごく単純な、非常にくだらないところから人を殺して——私は昔の悪人みたいに殺す理由があって殺したのだ、おれは。この人を殺すことによって自分の職業に栄達があるとか、この女を殺すことによって自分が楽になるとかという、金がもうかるとか、いい悪いは別として、これは理由がつくんです。だから堂々と彼らは罪を受けて死んでいったです。いい悪いじゃないですよ。ところが、いま、そうじゃない。殺しておいて、しまった、悪かった、涙の一つもぽろっとこぼすと、あいつは悔恨の情があるといって減刑になるみたいな、全く甘ったれている部分があるんです。甘ったれならまだいいです。甘ったれの前に幼過ぎるんじゃないかという、この辺をひとつ考慮していただきたい。これを考えてやっぱりいかないと、私は単細胞になってきたことがこわいと言っているんです。おわかりになりますか。  事のついでに言いますが、妙な問題ですけれども、この間週刊誌を読んだら、「全国女子学生ヌード特集」というのをやっているんですね。みんな裸になっているんだね、早稲田だとか、やれだとかがね。これは当人が裸になりたいと言うものだからしょうがないけれどもね。私は、どういうメリットがあるのか、全く単細胞ということにおいては同じじゃないかという気がするんですね。それはファッションモデルだとか、または映画スターだとか、トルコぶろというなら、私の裸見に来てちょうだいというのはわかるけれども、それなら大学へ行くことはないので、別に。裸で勝負すればいいので。これは、こういう例が出ているのは全く同じような気がするんです。  大学生お断わりという下宿屋がふえているの知っていますか。大学生はお断わりという下宿屋がふえているのを知っていますか。
  110. 木田宏

    政府委員(木田宏君) そういう話を聞いております。
  111. 松岡克由

    ○松岡克由君 全くそのとおりなんです。なぜ、いやだという理由もわかりますか。
  112. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 全く通常でない、いろんなトラブルが起こるからだと考えます。
  113. 松岡克由

    ○松岡克由君 そのとおりなんですよ。具体的に言えば、夜おそくまでギターはかきならす、歌は歌う、女は引っぱり込む、女は男を引っぱり込む、マージャンでガラッポンやる、文句言えば、理屈だけ先になっているから逆に家主がねじ込まれちゃうんです。だから、これ、同じことを言っているんですが、そういうことばを整理されていくと、たいした悪いことをしていないようだけれども、ぼくみたいに露骨に言うと非常に悪いことに——それが事実なんですからね。私は、こういう、いまの琉球大学の間違ってやっちゃったこともそうです。間違ってやった。幾らかっと——ありゃまあ、殺人というのはかっとしてやるのかもしれないけれども、間違ってやった、またはあとでもって反省するわ、裸になっちまうわ、こういう現状。非常に単細胞になっているこの現状を——いろいろと機関はあると思います。あると思いますけれども、もう一度そういったものを、根本の対策機関というものをつくって、根本からひとつ、つなげているものは同じですから、根本からその辺に対するいろんな処置、あるときは強く、あるときは魅力のあるように——先ほどいろいろと職業のことも聞いてきましたが、魅力のあるように持っていかないと、もたないのではないかということを憂うる一人なので、ひとつその辺を十分に対策を練っていただきたい。一つの例ですけれども、ばかばかしいですよ。あんた、そう思うでしょう。自分の娘さんが大学へ行って裸になっちゃったらどうする。喜んでいられないでしょう。よくやったなんて言ってられないと思うよ、おそらく。もちろん自分の娘でもそうですけれどもね。だから、私はこれは他人ごとじゃないと思うわ。その生徒だけ特別だって言ってしまえばきりがないけれども、特別とも言ってられないね、全国学生なんことになってくると、こうふえてくると。どうぞひとつ、そういった社会現象、一つの非常に好奇心を呼ぶようなごく小さな社会現象の中に、意外に真理というか、意外に世の中の流れというものがあるのです。われわれはそれをつっつきながらいろいろと話をしてきている。そういうものを持った職業の人間だけによけいわかるのです。たとえて言うなら、物価が上がっている、上がっている、実際に上がっているということがはたしてどういうことなのか。ただわあわあ騒いでいるけれども、根底にあるものはどういうものなのかということ。意外に庶民は、はだで感じて非常に憤っている部分がありますし、庶民がわからなければ代表で談志が憤っているという事実があるわけですから、どうぞその辺をひとつ——まあ調査機関はあるでしょうが、審議会とかが、いろんなものを考えて、非常に単純になってしまっているところをもう一ぺん——もう一ぺんじゃない、頭の中にあるでしょうけれども、つけ加えてやっていただきたい。一言でけっこうですから、大臣……
  114. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 原因は多方面にわたっていると思うのでございますけれども、やっぱり小・中・高等学校からして教育現場がもっともっと潤いのあるものになってこなければならないと思いますし、大学の環境そのものを学問の自由を追求する非常に重要な場所であるものに育て上げていかなければならないと考えているわけでございます。そういう問題につきましては、特に文部省の責任は重大である、かように存じまして、努力をしている次第でございます。
  115. 松岡克由

    ○松岡克由君 まあけっこうです。  この際、ちょっと自慢さしてもらうと、私の弟子なんかは非常に——まあ弟子と子弟だからあたりまえと言えばそれっきりかもしれませんけれども、ぼくを師匠に持って誇りに思っている。向こうがばかだと言えばそれっきりかもしれませんが、思っているということを——これはまあ、芸を通じて、私は芸人の立場として、彼らは誇りに思っているでしょう、ぼくが師匠になったことを。そういったことがやっぱり人間関係——マスプロになってしまうと無理かもしれませんが、個々につくっていかなければもたないと思うし、そういうやっぱり最終的には人間の問題。よく、伝統芸能がなくなっていくだとか、やれ、これを継ぎ手がないなんていうのがよく新聞だとか雑誌に出ていますが、根本をただせば、魅力がないのです。魅力がないから継ぎ手がないという残酷な言い方もできるのです。それを同じ裏を返して言えば、やっぱり魅力のある学校、魅力のある私は教師だと思うんです。根本的には魅力のある教師がいれば、私はある程度解決できる問題ではないかと思います。  さて、文化庁に来ていただいておりますですか。——芸術祭のことをちょっと伺いたいのでございます。  文部省が秋に芸術祭というのをやっておりますけれども、国民文化の向上をはかるという趣旨はけっこうなんですけれども、あれはどういう審査方法をしているのか、時間もございませんので、大衆演芸部門なんかどういう審査方法をしておるのですか。二分ぐらいで答えられませんか。られなければいいですけれども、られますでしょうか。
  116. 安達健二

    政府委員(安達健二君) まず、芸術祭は大きく分けまして主催公演と協賛公演、参加公演、それからもう一つ移動芸術祭と、こういう四本立てになっておるわけでございます。主催公演と申しますのは、文化庁の芸術祭執行委員会が企画して、一種の創作的な面を打ち出していくということでございまして、大衆芸能でございますと、四十八年十月の十日でございますが、国立劇場の小劇場で寄席忠臣蔵ということで、芸術祭受賞者の方々によりまして忠臣蔵を段に従いましていろんなものでこれを表現していく、こういうことをやったわけでございます。それからもう一つ、大衆芸能の参加公演といたしましては、これが二部に分かれておりまして、一つはミュージカルとかそういうようなもの、もう一つは寄席の問題、この二つでございます。
  117. 松岡克由

    ○松岡克由君 その第二部のほうですか、われわれのほうは。どんな人が——名前だけばっばっばっとあげてくれませんか。どんな人が選んでいるのか、審査員。
  118. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 大衆芸能部門で参加公演の委員でございますが、寄席芸能の関係で申しますと、小菅一夫さん、高橋博さん、永井啓夫さん、旗一兵さん、穂積純太郎さん、それから三隅治雄さん、こういうような方がなっておられるわけでございます。
  119. 松岡克由

    ○松岡克由君 全く、大衆演芸といいますか、われわれのほうに縁のない方々が選んでいるという事実ですね。私ね、実際は辞退している委員が出ているんです。で、辞退した委員の名前あげてもいいんですけれどもあげません、私の友人でもあるのでね。それで、なぜあなたやめたのかと言ったら、プロがばかにしているような賞を出したくないと言うんです。それはプロのひがみじゃないんですよ。つまりその人に賞を与えたことが、ばかだなこの審査委員たちはということですね。何が、こんなものならばもらいたくないと、よくあるケースですけれどもね、それは決して、ぼくはプロだから言うんですけれどもね、ひがみでなく、それがひがみでない証拠に、ぼくらが言っているだけではなくて、それを言われたか、回り回って耳に入ったか、その審査員が、与えたらプロが軽べつするような賞を出すようじゃみっともなくて私はいられないと言って辞退している事実があるのです。どう思いますか、長官。
  120. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 私どもといたしましては、一応われわれが信頼のおける委員に選考をお願いしておりまして、委員の方々も実際に公演をよく見、議論をし、そうして審査をされているわけでございますので、私どもといたしましては、その芸術祭に参加したものの中で、いいものに芸術祭の賞が与えられているものと考えております。
  121. 松岡克由

    ○松岡克由君 それは当然だと思うのです。ところが、参加しないものにはいいものがあってもしようがないという言い方になるかもしれませんです。けどね、参加する気にならぬということがあるのです。いまわれわれの落語界だけの、また大衆演芸の部門だけで言いますと、賞を取ることにメリットを感じるやつだけが出る。それはあたりまえですけれどもね、そうなんです。なぜメリットを感じるかというと、へたな芸人に賞をくれるんです。賞をもらうと、へたな芸人が安心するのです、おれも賞をもらったと言って。それはプロは認めやしませんよ、そんなもの。認めないけれども、こういう事実があるわけですね。仲間からいつもばかにされて育っていた連中が、何か一つ賞をもらうことによって、幾らか、その当人のためには喜んでやってもいいんですけれども、これが現状なんですよ。わかっていないでしょう。
  122. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 参加公演というものは、いまのお話がございましたように、希望の作品といいますか——があるわけです。その中での審査でございますから、したがって、参加をされない方に賞を差し上げるということにはなっていないわけでございますが、ただ芸術祭というものと、もうひとつ芸術選奨・文部大臣賞というのがございます。芸術選奨・文部大臣賞というのは、芸術祭等も含めまして、年間のいろいろな業績に対して与えるということをやっておりますので、この分でそういう参加されない方々の御活躍は評価すると、こういうことになっておりますので、芸術祭だけをごらんになって、いろいろの御批判もあろうかと思いますけれども、全体をひとつごらんいただきたいと思います。
  123. 松岡克由

    ○松岡克由君 私は芸術祭のことを問題にしているのであって、もちろんそんなことは、全体のことなんてあることは百も承知です、そんなもの。その芸術祭におけるマイナス面が出ているから私は言っているのでですね。踊りの会なんかは車賃を出さないと来てくれないという事実が数年前にあったんです。あったんです。ないことを祈ります。うんと言いたくなけりゃ言わなくていいですよ、知らねえって言ったっていいんですよ。もちろん居眠りをしている例、まあ居眠りはこの委員会でもありますから、居眠りはともかくとしても。私は文部省という権威がそこにある以上、私は権威を持つということはいいと思います。ほんとうに権威のあるものがいいものにいいものをやるということは、ぼくはやはりある意味においてそれは芸を守っていく、または芸能を保存していくことに対するあれだと思うのです。だから私はNHKのときにも質問したのですがね。ところが権威のあるものが変にそれを使われると、えらい目に会うと。それならむしろあんなものはやめちまえと。大体あれ発想をしたことは、当時はいろいろと戦後であったし、心がみんな国民が荒廃しておりましたから、ああいったものを中心にして、文化の向上をやるといったことですがね。  いい例が、私は今度は国会議員を離れて、一芸人の立場からかりにもし言わしてもらったとすると、そういうところでもって大衆演芸だとか、芸術だとかどうのこうの言っているのに限って見ておらぬのです。全く見てないんです。私はその物理的な時間を説明してもいいですけどね、私は何々、大体この時間はとにかく大衆と舞台の上でもって会う。舞台に出ている人間はだれがどこへ来ているかすぐにわかるんです、ああ来てるなと。知らない人はわからぬですがね。まずわかるんです。いま名前をあげた連中知っています。まず来たためしはない。そういう連中が選んでいるということね。まあ、それはそういう連中が選ぶものなんだから特殊なものだと言うならいいけど、やっぱり文化庁なり文部省が一本かんでいるうちは私はそうは言わせないと思う。だから変に、私のことを——私だけに言わせるといじくらないでほしいと思います。やめてほしい、これが率直なる希望です。また例をあげると、いま仲間の悪口になっちゃ困るので言わないんですがね、貞鳳さんなんかを先頭に、国立の劇場をつくってくれといってる事実がありますわね。国立——何か聞くと寄席をつくってくれというので、私あきれ返っているんですけどね、大衆芸能を国で保護するようじゃもうおしまいだと、私はそう思っている。その話をたまたま大石長官にしたら、私もそのとおりだと、当時の大石武一さんに話したら。ただし資料館をつくってくれというから私は予算を許可したと、これはもちろんそのとおりだと思います。それは散ってしまったいろいろと大衆演芸、またもろもろの資料を集めてくる、一つに集めるということは、これは大事だと思うし、私もそれに参加したいと思うんですけどね。そういうことに対して金を出すことが、それは自民党のひとつのきげんとりならいいですよ、これはきげんとりなんだと、芸人も喜ばせなきゃ票がふえないからきげんとりだというならいいけどね、そうでなくて根本から私は大衆芸能のためにもし劇場をつくるなんということを思っていたら、これは貞鳳君と全く意見が対立してしまいますけどね、彼は彼のあれでやっているんでしょうけどね、私は税金のむだ使いじゃないかと逆に思うぐらい、そのぐらい私は自分の芸に自信がありますし、自分の持っている立場がありますし、またわかりますので、あえて強く申し上げるんですがね、そういうふうに、一事が万事、お役人たちが芸をいじるとろくなことがないということが出ているんです。そう思われないように、ひとつ芸の——まあ、できることにはけっこうです。できること、できてくれるならいいです。いいですけども、根底は私は大衆演芸を国で保護するようになっちゃ、これはむしろほかの芸人に言うべきことなんだろうけども、ただそんなことをいいと思って一緒になってやっていられると困るので、やるのは、やってもいいですよ、やってくれる頭のどこかの片隅にそういうものを置いといてやってほしいと、こう思ってこの意見をぶつけた次第ですが、この意見を聞いて乱暴だと思いますか、松岡先生の御意見ごもっともと思いますか。
  124. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 寄席芸能のような大衆芸能に対して国がどのような態度をとるべきかにつきましては、これは十分ひとつ慎重に考えなければならないところであろうと思うわけでございまして、現在はその寄席芸能のための基礎的な資料を収集する、あるいはまあ今後そこのところでいろんな後継者の養成の問題とか、そういうことがいろいろ出てくるだろうと思うわけでございます。現在は、この国立の演芸資料館の構想の前に、いわゆる大衆芸能、寄席芸能に対して国はどういうふうに考えていくべきか、またそれ自体としてどういう面に力を入れていくべきかをまず検討していただいて、その基盤の上に立って資料館の問題をひとつ検討していこうと、こういうことで先日調査会を発足さしていただいたような次第でございます。
  125. 松岡克由

    ○松岡克由君 大体いま聞いてまいりました。採用するしない、まあいろいろとあるでしょう。まあ私の意見をぶっつけながら向こうの意見を伺った、まあ何といいますかな、小手調べみたいなあれでございましたけれども、私まとめますと、最初に教職員の待遇の問題、それからいま言ったとおり大学の非常にこれ考え方があさはかになっているというこの現状、これ魅力を持つ教師を育てるところへやっぱり根底がつながっていくと思います。そしていまの芸術祭の問題なんですけれども、意外にこれは私でなければわからない意見だと思って、大事に聞いてやってほしいと思います。これはたいへん露骨なようで、私だけしかわからないと言うとまたおこるかもしれませんが、これはやっぱりそこに携わっている人間の意見だと思って、私は聞いてやってほしいと、こう思っております。  といったところで、五分間時間を残して私の質問をやめることにいたします。どうぞひとつこれから委員の方々もあんまりひとつ——熱心のあまりはけっこうなんですが、あまり時間をオーバーしないように、談志を範としてひとつ進めていただきたい。どうも大臣、長官、御苦労さまでした。これでとどめます。
  126. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) それでは、午後一時三十分に再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      —————・—————    午後一時三十一分開会
  127. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和四十六年度決算外二件を議題とし、文部省決算について審査を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  128. 須原昭二

    ○須原昭二君 きょうは、医師不足の充足に関連をして、特にとりわけ、いま試験シーズンでありますが、医科大学並びに歯科大学、この問題について文部省当局を中心にお伺いいたしたいんですが、その前段として厚生省にお尋ねをいたしておきたいと思います。  御案内のとおり、近年急増いたしましたさまざまな医療需要に対して、どのぐらいの医師を養成すれば医師不足は解消するのか、まず厚生省当局の御見解を承りたいと思います。
  129. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) この問題につきましては、過去四十二年と四十五年に厚生省医務局長より文部省局長に申し入れまして、医師の養成の拡大をお願いいたしたわけでございますが、その後、逐次医科大学の設置、医学部の設置等が行なわれまして、現在のわれわれの予測では、昭和四十八年末で、人口十万対百二十九、十三万九千人というのが届け出を予測する数字でございますが、当時申し入れました数字といたしましては、昭和六十年をめどに人口十万対百五十というものを確保することを申し入れておるわけでございますが、ただいままでの設置されました医科大学の定員数で推移いたしますと、昭和六十年には百五十六程度の——死亡その他も推計いたしまして、百五十六程度が予測されるわけでございます。  先生お尋ねの医師の確保はどの程度が適正であるかという問題につきましては、実はこの方面の文献というものもきわめて少ないのでございまして、各方面に、国内、国外ともに若干研究的な予測等もございますけれども、いずれの国も、ただいまわれわれが入手しています情報では、人口十万というものを大体中心にいたしましてその養成の拡大をはかると。たとえばアメリカにおきましては、現在五万人の医師が不足しているということでございまして、入学定員の現在一万八百という数字を一この現在というのは一九七〇年ぐらいの数字でございますけれども、一九七八年には一万六千四百ということで計画を立てるべきであるというふうな委員会の報告に基づいて考えておるようでございます。イギリスにおきましても、人口十万対必要の医師数というものを一九九五年で百八十というものを考えておりまして、先ほど人口十万対百五十に達成する目標が百五十六程度までいくだろうと申し上げましたが、この予測でいきますと、イギリスのいま申し上げた一九九五年という数字に該当するわが国のそのころになりますと、ほぼ百八十というイギリスの数字を若干上回る程度に達成するのではなかろうかと考えられるのでございます。フランスにおきましても、一九七〇年において約七万人の医師がおりますが、これをやはり倍増するという、非常に大ざっぱな表現でございますけれども、倍増するという計画を立てておるわけでございまして、以上申し上げましたように、医師の必要数の予測、計画というものはきわめて困難でございますが、これは、ただいま計画されております無医大県の解消ということで、かりに医科大学がさらに増設されていきますというと、この養成の数はまた変動するわけでございまして、おそらくどこの国におきましてもどの程度が適切かということは困難でございますが、将来の段階では、あるいはその統合あるいは定員の縮小等をもって調節するような段階もこないとは限らぬというふうに考えておる次第でございます。
  130. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまお話もございましたように、四十五年九月十四日、いわゆる厚生省の医務局長から文部省の大学学術局長に、人口十万人に対して百五十人程度の医師を確保する必要があると、こういう要請に基づいて各般の施策文部省ではとっておられると思います。  ところで、いまお話がございましたが、いま四十八年で大体十万人に対して百二十九人ぐらいが予定できるというお話がございましたが、確かなデータはまだ四十七年度末の調査しか実は入手いたしておりません。これを見ますると、医師が人口十万に対して全国平均が百十七だったと思いますが、東京が百四十四名、埼玉が六十七、茨城七十七、千葉八十七と、実はこういう数字等を見まして、なるほど医師は確かに不足をしております。しかし、東京に比べて、この東京近辺の埼玉にしろ茨城、千葉にいたしましても、東京の半分程度です。一方、全国では、医務局長御案内のとおり、無医村が、無医地区がいまだに二千四百七十三カ所ですか、四十六年の一月現在であるわけであります。医師不足とともに、こうした地域的なバランスもやはり同時に考えていかなければならないと私は思うんですけれども、その点に対してどう思っておられるのか。ただ医師だけをむぞうさに——という表現が適当かどうかわかりませんが、これから申し上げる点はそういうことなんですが、このむぞうさに数だけ多く養成していくというのがどうかという、その点は医務局長としてどういうふうにお考えになりますか。
  131. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 確かに医師の偏在という問題がございます。先生おっしゃった数字は、各県、東京近辺の首都圏の医師の数が、分母を人口にとるものですから、この急増する人口に対応して医師の確保の数字としてはこのようなかっこうになります。したがいまして、われわれといたしましては、医師の偏在の問題はやはり具体的な対策を講ずる必要がある。したがって、いま例に引かれた僻地などにつきましては、相当思い切った優遇策あるいは修学資金の貸与というようなことを四十九年度から開始いたしますけれども、これらの施策を講じ、なお、診療科によっては非常に不足しているというような問題は、今後研修制度あるいはレジデント制度等で資金を投入することを考慮いたしませんと、この問題の解消は、いまのままで放置しては非常に困難な問題であるというふうに思っております。
  132. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまお話を聞いておるように、こういう計画が非常に重要だと思うんです。たとえば医師の養成が非常に進んでおりますけれども、四十六年と五年前を比較してまいりますと、こういうデータが出てくるわけです。全国平均四十六年のとき十万人に対して百十七名、しかし、五年前の四十一年を見ると百十一・八人になっているわけです。若干ふえておりますけれども、七大都市を見ますと、四十六年の場合は百六十六・七人、五年前から見ますと、五年前は百五十四人、十二・七人の増加になっています。しかし、その他の市を平均をいたしますと、四十六年が百二十六・八人、四十一年、五年前は百二十三・七人、こういう数字ですね。町村平均に至っては、四十六年が六十五・四人、そして五年前が六十五・九人と、実は逆に医者は数がふえておるにもかかわらず、町村段階においては〇・五人減っておるわけです。五年間に七大都市が十二・七人ふえておるにもかかわらず、実は町村の段階においては〇・五人減っているんですね。また、都市もきわめてアンバランスだ。たとえば四十七年度末で、東京都の区の段階で言いますと百五十八・八人、京都市を見ますと二百二十七人、大阪では二百八・七人、神戸では百九十二・七人、福岡では二百二十八・九人、名古屋は百六十八・二人ということなんです。十万人に百五十人という比率から言うならば、これは非常に過密の状態になっている。やはり医師の数をふやすことだけが大切ではない、計画的に配置をさせることが私は重要だと思う。両面を考えていかなければならないと思うんですが、この具体的な策については、いま重要だとおっしゃるだけで、私も社労の理事をやっておりますからよくわかっておりますが、具体的に計画がまだ出てきておりません。この点は、きょうは厚生省の段階ではございませんから、この具体的な計画を早くつくってもらうようにきょうは要望して、ちょっとお待ちをいただいて、文部省のほうへまいりたいと思いますから、しばらくそのまま聞いておってください。  そこで、文部省へまいりますが、ただいま入学のシーズンです。親も子供も血眼ですよ。このころになると、毎年あちらこちらで耳にすることは、特に私立の医科、歯科系の大学の入学納付金、これが高いということです。入学納付金と申しましても、入学金、授業料、施設費、実習費等とありまして、これは寄付金だとか学債を含んでおりません。これだけでも高いんです。この入学納付金の最も高いものと最も低いものと一ぺんあげていただきたいと思うんです。——あとで一括してやっていただきます。時間の関係で先に進みます。  いま申し上げたのは、実は表向きの入学納付金です、天下晴れて取れるやつ。私がいまから言わんとするのは、天下に公表でき得ないいわゆる裏口入学金、この裏口入学金はあとを絶たず、さらに膨大な数に今日のぼっております。しかも、この高低が、この裏口入学金の高い、低いが今日入学の条件になっておる、定着しておる、厳然たる事実です。これはコマーシャルではございませんが、これは日本の常識です。全く遺憾にたえません。ある有名な予備校の先生の言によれば、在校中の成績どおり合格する私立医科大学、私立歯科大学はごくまれだと、四十五年以降文部省が認可いたしました新設の私立の歯科系の大学では、合格する者は、在学中の成績や模擬試験の得点などはほとんど無関係だ。実際に入学する者よりもはるかに優秀な学生がどんどん落ちておるということを堂々と発表しておるわけです。これは学力以外の要素が合否を決定しているという証拠であり、本来任意であるべきはずの寄付金が実は入学の条件になっているということは全く遺憾です。この点について文部大臣はこの事実をはっきり認識されますか、そんなことは知らぬとおっしゃいますか、どちらですか。
  133. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 文部省が医科大学、歯科大学を認可するにあたりましては、入学を条件とする寄付金を徴収するようなことがあってはならないということにいたしておりますし、そのとおりにいたしますと、こう答えられて始まっているのでございますけれども、認可してしまいますと認可の条件と違った事態かなり起きているようでございます。学校当局がどう言われましょうと、実質的には入学を条件とするような寄付金が徴収されている向きがかなりあるということで心配をいたしておるわけでございます。
  134. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 先ほど御質問がございました学生納付金、これは正規の納付金でございますが、これの最高と最低というお話でございますが、医学部について申しますと、最低が東京慈恵会医科大学でございまして、授業料が十五万円、入学金が四十万円、計五十五万円でございます。それから最高が愛知医科大学でございまして、授業料が七十万円、入学金が五十万円、施設拡充費が九十万円、計二百十万円でございます。それから、なお歯学部でございますが、最低が日本大学の歯学部でございまして、授業料が二十五万円、入学金が六万円、施設拡充費が三十六万円、計六十七万円でございます。それから最高が福岡歯科大学でございまして、授業料が五十五万円、それから入学金が二十万円、施設拡充費が百万円、計百七十五万円ということになっております。
  135. 須原昭二

    ○須原昭二君 正規の入学金ですら最高二百十万だとか百七十五万という。これから私が申し上げる裏口入学金というのはもっと膨大なんです。これ合算をしたらたいへんな数字になる。文部省が言ういわゆる任意の寄付金、私が言うならば、これは裏口入学寄付金というんですけれども文部省が四十六年度調査をされたときに、医学だけですが、医系の私立大学入学者数と寄付者との数の比率が出ておりますが、六五%。寄付者一人の平均が六百万円、寄付者の分布、百万円から二百万円が三・九%、二百万から三百万が七・三%、三百万円から六百万円が三七・三%、六百万円から八百万円までが三二・九%、八百万から一千万が一一・七%、何と驚くなかれ、一千万円以上が六・九%という数字、これは実は新聞にも報道されたことで御記憶にあると思いますが、ところで、昨年六月の一日、当委員会において、わが党の決算委員会の理事をやっておられます、お見えになります小谷議員の質問に対して、文部省は、この四十八年の入学、いわゆる入学寄付金ですね、この数値は現在調査中である、こう答えられております。調査したことは認めている。しかし、その結果が公表されておりません。もう結果は、四十九年の試験が始まっているんですから、当然出てきておると私は思うんですが、この際これは天下に公表すべきです。最近ではずいぶんばく大な裏口入学金が取られておりまするが、この四十八年度の入試における先ほど申しました入学者と寄付者との比率は何%ですか。
  136. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 昨年の当委員会で、調査中というふうにお答えいたしたわけでございますが、その結果といたしまして、四十八年度の私立の医学部の入学金につきましては、学部の総数が二十六学部でございまして、入学者の総数が三千二百六十九名でございます。そのうち、寄付金を出しました者が千九百八十一名でございまして、六一%の者が寄付金を出しております。寄付金の総額は百六十九億円でございまして、寄付者一人当たりの平均額は八百五十四万円ということになっております。寄付金を出していない者もございますので、そうした者を全部含めて平均をいたしますと、入学者一人当たりにつきましては五百十七万円という平均額が出ております。
  137. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま一人当たりの寄付した者の平均額八百五十四万円、それをもっと分布的に御説明願いたい。百万から二百万、二百万から三百万、三百万から六百万、おのおの出していただいて、千万から二千万、二千万から三千万、三千万以上、この比率を出していただきたいと思います。
  138. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 百万円未満が〇・二%でございます。百万円以上二百万円未満が二・五%でございます。二百万円以上三百万円未満が一・七%でございます。三百万円以上六百万円未満が二六・八%でございます。六百万円以上八百万円未満が一六%でございます。八百万円以上一千万円未満が一三%でございます。一千万円以上千五百万円未満が二八・一%でございます。千五百万円以上二千万円未満が八・七%でございます。二千万円以上三千万円未満が二・八%でございます。三千万円以上が〇・二%ということに相なっております。
  139. 須原昭二

    ○須原昭二君 おそるべき数字じゃありませんか、この事実は。われわれ庶民には全く雲の上の話のような感じがしてなりません。なるほど、お医者さんの中でわが子を医師にしようと思う方は、自分の金でなくて、借金をしてこの入学裏金をつくるのに奔走されていることも聞いております。しかし、個々の問題は別として、いやしくも教育の行政をとっておられるところの文部省が、このような事実をつかんでおられるにもかかわらず、どのような対策をされているかということについては、いまからお話を聞いてまいりますが、私は、医科大学だけではなくして、歯科大学、私立の薬科大学、特にこの数字をこの際公表していただきたい。あとでけっこうでありますから、これはぜひともお願いをいたしたいと思います。  昨年、私たちの記憶に新たなるものがございますが、昨年の入試にからんで、日本大学の医学部では補欠入学に対して多額の寄付金を取った。正規の合格者からも寄付金を取ったということが明るみに出ました。文部省が改善勧告を出したということになっておりますが、日大の加藤修顧問ですか、この方が補欠入学金の寄付金を一部私用に流用したという、そういうことで発覚したのでありますが、他の私立の医科、歯科のほとんどが公然といま行なっておるわけです。しかも、昨年と比べて、このように飛躍的に倍増というような姿に実はなっておるわけで、この点を見ますると、合格点に点数が足らなければ、点数の不足について何百万円、何千万円という裏金を積まなければ絶対入学できない。全く試験の点数が金で売買をされているといっても私は過言でないと思う。一方、受験者父兄の弱みにつけ込んで、寄付金を無理やりに取ろうとする傾向があるわけです。たとえば第一次の合格の発表があります。第二次の試験はどういう形でやっておりますか、父兄同伴でやっていらっしゃる。あなたはどれだけ寄付金が出せますか、どれだけ出さなければなりませんか、いや出せとは言いません、かくかくしかじかのケースがございます、どれでもけっこうですから、おとりくださいと、こういう調子です。これを聞けば、父兄の皆さんは、どうしても入れたいというなら一千万円、二千万円、三千万円と出してくるでしょう。まさに寄付金を点数の不足で払ったり、一次補欠は幾らとか、二次補欠は幾らだとか、三次補欠は幾らだとか、この卑劣な、卑屈なやり方は私はやめるべきだと思う。こうした入試の方法がとられている限り、よほど優秀な、りっぱな生徒でない限り、私立の医科大学や歯科大学の正門から堂々と入ることはできない。実は四十六年だったと思いますが、私も、ある薬科大学の経営の任に当たっている首脳部に会いまして、そのとき、こう言いました。四十六年の段階ですよ。八・六・二だと、八・六・二って何だと聞いたら、医科大学が八——八百万、歯科大学が六百万、薬科大学は二百万だと、これは、このぐらいの寄付金を取っても、まあ文部省は黙認しておるということを私は聞きました。いま聞きますと、いま実態を見ますると、実は医科大学が千五百万が大体基準で、そして歯科大学が九百万円か八百万円、薬科大学というところは医薬分業はできておりませんから、二百万円ぐらい、これがいまの常道の値段です。こういう実態を文部省は黙認しているんですか、一言だけでいいです。
  140. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 四十五年以来、かなり多くの私立の医科大学、歯科大学を認可してきたわけでございます。認可にあたっては、こういう事態は予測していない。また、約束もそういう事態にならないことで約束されているわけでございます。しかし、現実にこういう問題が起こっておりますので、根本的には医科大学、歯科大学の運営には金がかかりますので、国公立中心に建設を進めていくべきだと、半面、私立の医科大学、歯科大学につきましては、特に厳正な態度をとりたいということで、ほんとうに寄付金を求めないでもやっていけるということが従来よりもはるかに明確でなければ認可しない。したがいまして、またなかなかそういうことでは申請がしにくくなってきていると、こう思うわけでございます。認可しないとは言い切れませんけれども、強く厳正な態度をとっていきたい、こう考えているわけでございます。半面、国公立の大学をどんどんつくってまいりましたことは御理解いただいていると思います。
  141. 須原昭二

    ○須原昭二君 厳重な態度で臨みたいとおっしゃいますけれども、これまた後ほど指摘をいたしておきましょう。こんな状態ではないんです。医科系、歯科系の大学の建設については私もよくわかりますよ。一校当たり百億円ぐらいかかるということは私もわかっている。公立の大学を見れば、国から、あるいは地方自治体から相当の金が出ている。こういう点の関係は私もわかります。しかるに、文部省は、四十五年度以降、私立医科大学ブームといいますか、二十三校の私立の医科、歯科の建設、新設を与えてきたわけです。ですから、現在の高額の寄付金を取ることに対して、文部省には、まあラッシュだからしょうがないのだという感じがあるのじゃないか。厳正な態度だとは私は思えないわけです。教育の理念からいうならば、こんなインチキな私立医科大学、私立歯科大学の本質を知りながらどんどん許可を与えてきた文部省だから、そういう考え方があるのじゃないかというような感じがしてなりません、放任しているのじゃないか。  そこで、私はお尋ねをいたしたいのですが、文部省に。厳正な態度で臨む、そういう対策を講じておると、こう大臣はおっしゃいますけれども、昨年の予算委員会で、わが党の安永委員が質問に立っております。文部大臣は、入学金、寄付金の限度額をきめます、いわゆる法定規制をする、こういう立法措置を講じたい、こう答弁をされておる。何ら今日までそういう法案が出てきたというお話も聞きませんし、この点についてはどうなっているか。あるいはまた、私立大学において一校百億円もかかるのですから、この百億円を裏金で、裏口入学金で補てんをしようという傾向にあるのですから、こうしたものに対して特別な助成をする、そういう対策を並列的に行なわなければならないと実は思うわけです。四十八年度段階ですが、四十八年度段階で学生一人当たりの必要経費が約二百万円かかるそうです。授業料が大体四十三万円、あの当時平均一人当たり。私学振興財団から八十万円ぐらいの助成がある。差し引きいたしますと、七十万円ぐらいはどうしても一人に対して不足だと、だからこの問題を裏口入学金で補てんしようという傾向が実は私立大学にあるわけです。したがって、この問題に関連をして私はお尋ねをしなければならない問題は、文部省は、四十五年以降設立された私立医科大学、歯科大学について追跡調査を、あと追い調査をされていますね。イエスかノーか。
  142. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) はい。
  143. 須原昭二

    ○須原昭二君 そのあと追い調査の資料は、実は私ここに資料をいただきましたけれども、この認可申請当時文部省提出されたところの資金計画、現在の資金計画との対比、そして、四十七年度末の財務諸表と公認会計士の監査意見ですか、あれを添付したものであったと思いますけれども、この基礎は。間違いありませんね。
  144. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) はい。
  145. 須原昭二

    ○須原昭二君 これらの資料に基づいてやられたということでありますが、この追跡調査について、昨年、この予算委員会で文部大臣——昨年の予算委員会ですから、当大臣でしたかな、間違いなくおたくですね。この委員会でこういうことをおっしゃっておられますよ。調査の途中だという前置きですけれども、新しい発見は、設立されたときの金額よりも、学校によっては所要の経費が二倍も三倍にもなっているところがある、用意された自己資金がほんとうに完全に寄付金等で用意されたか、若干疑問を持っている。また、入学にあたって寄付金を求め、その金で埋めようとした学校があったのではないかと疑問を持ち始めていると、実は大臣はおっしゃっておられるのです。おたくが言われたのですから間違いないことでございまして、議事録にもそう載っておりますから、もう完全に調査が終わっている段階です。はたして資金計画、公認会計士の監査した財務諸表を見て、大臣答弁したこの疑問はどう解明されましたか。
  146. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) いろいろなお尋ねがございましたが、現在の姿につきましてまことに残念なことだと思っております。  そのために、まず第一点は、先ほど申し上げましたように、今後は国公立中心に医科大学、歯科大学の増設をはかっていくということでございます。したがいまして、反面、私立については、認可申請がありましても、きわめて厳正な態度をとっていきたいということでございます。  第二は、すでに認可された私立大学の運営をどう改善していくかということでございます。これまで経常費助成は、医科大学、歯科大学でありますと、設立後七年目から経常費助成が行なわれたわけでございます。言いかえれば、大学が完全に完成をする、その段階で経常費助成の可否を検討して助成をするということでございました。しかし、医科大学、歯科大学はばく大な金がかかりますので、四十九年度からは、初年度から経常費助成を始めさしていただきます。そうすることによって国としては助成にも努力をするので、できる限り特別な寄付金等は徴しないでやってもらいたいという気持ちでございます。同時に、どうしてもよけいな金が要る場合にも、あとう限り表に出してください、はっきりした入学金、授業料として徴収してくださいよという気持ちでございまして、それが可能になりますように、四十九年度からは、個々の大学がみずから奨学制度をおとりになる場合には、その奨学制度に必要な資金を国のほうで心配しましょう、また、その奨学制度運用に要する事務員も補助しましょうという態度をとらせていただきました。同時に、医科大学、歯科大学の場合には、この授業料等が大きな額にのぼるかもしれない。したがって、こういう学校については、たとえば年間百万円奨学金を渡すんだということであれば、それに見合った奨学資金を供給していくようにしたい。そしてできる限り表に出してもらいたい、こういう態度をとっていきたい、かように考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、ちょっとお触れになりましたが、認可申請をされましたときと、現実に認可をもらってからの姿とが若干の学校において食い違ったところがあるわけであります。たとえば学校の施設はこれでやっていきますと言いながらも、認可がおりますと、とたんにもっとぼう大な施設を計画され、その財源は寄付金に求めていくのだというようなところがあるわけでございまして、これらは局長のほうからあと追い調査をした結果について御報告さしていただきたい、かように考えておるわけであります。  なお、立法措置の問題につきましては、国会側におきましても、衆議院でいろいろ御検討もいただいておりますし、私たちも引き続いて考えていきたいと、こう思っておるところでございます。
  147. 須原昭二

    ○須原昭二君 そのあと追い調査をやった後に、四十八年十月四日付で文部省は各大学に対して勧告をなされております。この内容についてはすでに資料としていただきましたから、これに基づいて一度お尋ねをいたしておきたい。  いま大臣は、今後の認可の問題は厳正にする、現状の改善は徹底的にやっていく、きびしくやっていく、こういうお話でございますが、どうも勧告の内容から見ると、そんな姿勢がうかがわれない。一覧表になっておりますけれども、勧告の項目の中に、資金面の問題については一言も触れてない。どういう大学にどういう事例があったのか、これは出ていない、これがまず一点。  勧告の内容は、一応現在の定員を基準に出されたものだと私は思うのですけれども、たとえば校地の拡張をはかれとか、図書館を増強せよとかということが出ておりますが、これが許可申請書どおりになっていない、こういう指摘があります。しからば、あとから申し上げますが、水増しの定員にした学校について、もっともっと足りないのがあるのではないか、こういう点はどういうふうに考えておるのか。定員超過についての勧告は本年度から是正すると、本年度から是正しなさい、こういうのがあれば、ただ単なる是正をはかれとか、まさか在校生を退学させるというわけにはまいらないでしょう。来年度からやれというならともかく、現状でどう是正するのですか。  次に、帝京大学、埼玉医科大学、独協医科大学、松本歯科大学、福岡歯科大学の五校には一これは私は一ぺんお尋ねしたいのですが、何と書いてありますか。「大学の運営は、学長以下教学組織の意見を尊重し全学をあげて教育研究を推進するよう努めること」と書いてある。こんなことは教育機関の当然のことじゃないですか。あえて言わなければならない事実が何かあったのですか。これが第三番。  四番目は、資金の問題、先ほど触れましたが、資金の問題について一切触れておりませんが、どうも、私は解釈をするんですが、すべての大学が許可の当初の資金計画どおりに進んでいない。これを明らかにすると、逆に裏口入学金に一そう拍車をかけるということになるのではないだろうか。何か文部省は、はれものにさわらないで、そっとしておこうという意向がこの勧告書の中に私は見受けられると思うんですが、以上四つの問題点。  さらに、いま一つは教員の不足が多く指摘されております。こうなることは初めからわかり切っていることなんです。現在基礎医学系統の教員が不足をしていることは、もう天下の周知の事実です。こんなにたくさんの医科大学を一挙に許可すれば教授が足らないのはあたりまえのことですよ。そういう点について審議会はどう考えて検討し許可を与えたのか。  以上の五つの問題点について、あまり時間がございませんから、回りくどいお話をせずに、ひとつ簡明率直に御答弁願いたいと思います。
  148. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 先生お手元にお持ちでございます四十八年十月四日のアフターケアに基づく勧告は、これは大学学術局長から各大学に発せられたものでございまして、この内容は、御承知のとおり、教学面に限られておるわけでございます。法人面あるいは経営面につきましては、別途管理局長名をもちまして、各種の改善勧告を行なっておるわけでございます。この内容につきましては、教学面につきましては、大学設置審議会のアフターケアに関する調査結果に基づいてこうした勧告を行なっておるわけでございますし、また、法人面、運営面につきましては、私立大学審議会の審議によりまして勧告内容が決定され、それが管理局長名で出されておるということでございます。  内容につきましての若干のお尋ねがあったわけでございますが、たとえば大学の運営については学長以下の教学組織の意見を尊重し云々ということは当然ではないかというお話でございますが、これはまことに、お話のように、当然のことかと思いますが、しかし、特にこうした意見が付せられております背景には、そうした意見がつけられました大学においては、大学の運営がやや経営的な観点に走り過ぎているんではないかというような、そういう傾向ないし心配があるものでございますから、特にそうした意見を付しておるということでございます。これは個々の大学の事情を見ながらこうした意見を実態に即して申し述べておるわけでございます。  それから定員の問題につきましては、定員超過の実際を是正するということでございますが、これまた御指摘のとおり、現にいる者を退学させるといったようなことは、これはもちろんできないことでございますから、将来にわたってそういう点にぜひ留意をしてもらいたいという趣旨から、そうした留意点を付しておるわけでございます。  それから、教員の不足の問題でございますが、確かに御指摘のような問題がございまして、私どももたいへん苦慮いたしておるわけでございますが、設置認可申請が出ました段階におきましては、すべて適格者として判定が行なわれ、かつ、その就任が予定されている方々につきましても、設置が認可されれば必ずそこの学校に就職をするという確約書を取っておるわけでございますが、その後、各種の事情によりまして、欠員を生ずるという事態が起こっておるわけでございます。そうした点は、私どもとしては、はなはだ遺憾なことでございまして、したがいまして、そうした事態がないようにということをやかましく指導をいたしておるような次第でございます。
  149. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまの一つ一つ、五つの問題点をお話を聞きましたけれども、実はその御答弁は了承はできません。あとで松本の歯科大学あるいはまた福岡の歯科大学について具体的に事例をあげてひとつお尋ねをいたします。  その前に、ただ一つだけこの際申し上げておきますが、学校の先生、教官が足らないということは、これだけ一挙に年々歳々二十何校もばっとふやしたんですから、先生が足らないことはわかり切っているんですよ。それを考えないで許可されたのではないかというおそれ十二分にあります。  そこで、済んだことを知ったってしようがないんですから、これから前向きの話なんですが、たとえば東大の医学部でも基礎医学を専攻する学生あるいは基礎医学の教室に残って学究の徒となっておるような学生はほとんどゼロにひとしいといわれております。政府も開業医ばっかりに私は目を向けておるような感じがしてなりません。病理、薬理あるいは精神医学というようなじみちな基礎医学に取り組む学者、教官の待遇をよくすることが一番いま基本だと思います、教育の面からいって。この点はまず最初に文部大臣の所見だけ承っておきたいと思う。どうですか。
  150. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 今日、医科大学もつくっておるわけでございますし、医科大学の場合には、それに対応した先生を大学設置基準でよく審査した上で認可をしているということでございます。各大学の大学院の充実もあわせて行なっておるわけでございまして、この四十九年度予算におきましても、大学の大学院の充実につきましても若干触れさしていただいているわけでございます。
  151. 須原昭二

    ○須原昭二君 若干ではいけませんよね。そういうことばじりをつかまえるわけではございませんが、ほんとうにこの点を真剣に考えねばならない段階に来ていると思うんです。  ところで、そのお打ち合わせの間にほかのことを聞きましょう。  開業医の非常に多くがかなり高額な裏口入学金を使っても、現在自分が投資をしている病院なり医療施設に対して、どうしてもやはり家業というものを自分のむすこに、あるいは娘にやっぱり継がせたいというのは親の心理だと思います。しかし、それは親のエゴでもあると言わなければなりません。この子弟を私立医科歯科系の大学に送り込んでいるということが回り回っては実は医療そのものの荒廃にもつながっている一つの要素ではないか、こういう点も私感じます。文部省調査したものにおいて、私立医科大学に学ぶ学生のうち六五%が医師の子弟であるということは、何か私は記事で読んだことがあるわけでありますが、これは四十五年の調査でしたね、文部省で間違いありませんか。イエスかノーか。
  152. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) そのとおりでございます。
  153. 須原昭二

    ○須原昭二君 文部省の正式な調査の結果ですね。  しからば、四十五年といえば、いまから数えて四年も前の数値です。その後の調査はやっておりますか。特に四十五年以降は二十三校も私立の医科大学あるいは歯科大学がつくられています。しかも、先ほど指摘をいたしましたように、相当の学校が一斉に定員の水増し増加をやっておるわけでありますから、そういうでたらめな大学が多いんですから、四十八年度調査の結果は——当然文部省の業務からいうならば、やっておると思います。現在調査をしていないというならば、これは怠慢きわまりないと言わなければなりませんが、四十八年度調査はやっておるのかどうか、やった数値をこの際明らかにしていただきたい。
  154. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) まことに申しわけございませんが、その調査はやっておりません。しかし、大体の傾向といたしましては、六割から七割の間というふうに理解をいたしております。
  155. 須原昭二

    ○須原昭二君 そんな数字は概数であって、六割か七割くらいだというような答弁で事足れりと思ってはだめですよ。四年も前ですよ。特に、現在四十五年から二十三校も私立の医科大学、歯科大学ふえている。おそらく、六五%どころじゃない、六〇%から七〇%というような概数じゃない、さらにもっと上の数字が出てきているはずです。しかも調査をしておらないというようなことは、まさに怠慢限りない。文部省が四十六年度の裏口入学金の実態調査をしたときに、先ほどお話のように、入学者の六五%が何らかの入学裏金を使っておった。いま四十五年の在校生の医師の子弟が六五%、偶然にも数値が一致いたしております。深い関係があると私が感ずるのは何のという表現がございますけれども、私だけではあるまいと実は思うわけです。早急にやりなさいよ。四十八年度できるかできないか、四十九年度は、あなたが調査する段階においてはもう試験は終わっているはずです。歯科、医科、これを調べる気持ちありませんか。
  156. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 実は、その関係は管理局の所管ということではないわけでございますので、私も多少お答えしにくかったわけでございますが、御指摘の事項は調査をいたします。
  157. 須原昭二

    ○須原昭二君 いろいろの勧告の内容について具体的にこれから一つ一つお尋ねをいたしたいと思います。何と言っても、私たちの記憶の中に新たなるものは、あの忌まわしい松本歯科大学が開校されたときに、学校の定数が、政府が認めた、文部省が認めた定員を上回ること六二%のものが水増しになっておった。その後、十二月ですね。文部省はこの定員厳守を含むところの勧告通知を行なっておるわけですが、ところがその後、昨年ですよ、今度はまたそれ以上に上回る六五%の、六二じゃない、六五へ上回って水増しを行なっている。勧告が何になるんですか、これ。ただ出しておけばいいというものですか。勧告の通知を出すけれども、それは何も拘束力は持たない、一体法的な拘束力を持たない勧告通知というものは何にもならないということをここに立証しております。文部省は、この法的拘束力を持たない一片の通知で済まされて、ほおかぶりしている。許可した責任、本気でよくしようという熱意がないと私は理解をせざるを得ない。やる気であるならば、こんなでたらめな大学の許可を取り消すべきだ。また、それができなければ、大臣の御答弁がさきにあったように、規制する法的措置の方法をしかるべくとるべきだ、こう思いますけれども、どうですか。
  158. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 文部省の勧告が実際上尊重されない、あるいはそれが守られないということは、まことに遺憾なことでございますが、ただ、私立学校文部省の関係につきましては、法令の規定に基づきまして、各種の勧告を行ない、指導助言をするということになっておるわけでございますが、私学に対しましては、その自主性を尊重をするというたてまえから、文部省の権限は法律上きわめてわずかなものに限定されておるわけでございます。ただいま御指摘の定員超過の問題にいたしましても、これは学校教育法の第十四条の変更命令の規定に該当するかとも思いますけれども、この規定は私立学校には特に適用しないという明文がございます。したがいまして、行政処分という形で勧告を守らせるということはできないわけでございます。最終的に……
  159. 須原昭二

    ○須原昭二君 法的規制をするかしないか、その決意を聞いているんだよ。
  160. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 私立学校に対しましては、閉鎖命令あるいは法人の解散命令ということしかないわけでございますが、直ちにそこにいくのもいかがかということで、もっぱら指導助言という形で大学を指導しているわけでございます。  ただいまの法的規制をどうするかというお話につきましては、現在、文部省に私立学校振興方策懇談会というものを設けまして、私立学校に関する行政の共通的な、あるいは基本的な問題を御審議いただいております。ただいま先生が御指摘のような問題につきまして、これをどう扱うか、ただいま学識経験者等の御参加をいただいて鋭意検討をいたしておるということでございます。
  161. 須原昭二

    ○須原昭二君 現在の法規の段階ではできないと、これからは鋭意やると、端的に言えばそういうことですが、どうも文部省はやる気がない、私たちから見ていると。ちょうど子供を産んで、産みっぱなしで責任を感じてない捨て子の親という感じがするんです。どうですか。福岡歯科大学に対して、大臣の諮問機関である大学設置審議会は、来年度の学生募集を中止することを含めた勧告を出しました、御存じでしょう。これに基づいて大学学術局長は去る十月の四日に大学に通知した、そうですね、イエスですね。この通知に対して学長等は何と言っているんですか、記者会見で。学生募集はする、水増しもし得る、水増しもあり得る、募集は大学の権限でやるので文部省が介入すべきでない、こう言っています。こんなでたらめなことを言っている大学が大学の自治の侵害などと言う、全く盗人たけだけしいというのはこのことですよ。ところがそれから一カ月ちょっとたったら、文部省は、新聞記事にも書いてありますが、百人をめどにしたら募集を認めると大学に通知している。どうなっているんですか。しかも、文書の形式ではあとに残るから今度は電話で通知をしたということです。こんなことなら募集をやめろと最初から言わないほうがいいんじゃないですか。審議会を設置するときには審議会に珍しく筋を通したことをやっておきながら、大臣がこれを取り消す。この定員の問題については今度は取り消していく、審議会が勧告したら今度は大臣が逆に取り消しをしていく。これこそ審議会そのものを愚弄しておる、こう言っても過言でありません。全く朝令暮改です。大学の認可を与えるときには、御案内のとおり、二つの審議会の議を経て、大臣がこれに基づいて許可を最終的に与えます。許可するときばかり審議会を尊重して、おかしな大学をたくさん認めてきた。それを何で文部大臣が審議会がきめた勧告を取り消すんですか、逆に。よほど大きな圧力がかかったのではないですか。あとから私は——時間がございませんから、先を続けて一括して質問していきますが、よほど大きな圧力がかかっている。贈収賄でとらわっているよりももっと大きな何かがかかっているような感じがしてなりません。たいへん疑惑を持っております。たった一カ月の間に、言えば、あなたたちは、施設が改善をされたとか、何らか改善の意図が出てきたとか、こう言って経過を言われるでしょう。たった一カ月の間でその大学はどんな改善がなされたのですか。大学はもう水増しをしない。せめて大学側はもう水増しはしない、今度は。口だけかもわかりませんが。せめて半分でもいい、三分の一でもいいから学生を採りたいと折れてきたのをわざわざそれ以上に、百名以上、百名めどならいい、百名前後ならいいというような大幅な譲歩をいたしておる。何か圧力があったんですか。本年度水増ししなくても昨年二百七十一名というような二・三倍も学生を採っておいて、その学生を修学させる教育環境というのはどうなるんですか。もうこうなると、私立大学なんか、私立の医科大学、歯科大学なんかもう定員もあったもないも等しいと言っても過言ではありません。大臣、こういうような状態で学生の教育環境というものはどう守られるんですか、どうしようというんですか。大臣、元気をふるって答弁してください。
  162. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 福岡歯科大学の経過についてはつまびらかでございませんので、局長のほうからお答えをさせていただきます。いずれにいたしましても、圧力がかかってどうのこうのということではないと考えておるわけでございます。  大学審議会の中で定員問題が議論されている話を報告を受けましたときに、たいへんいい傾向で御論議いただいているなと、こう考えておったわけでございまして、その後の経過は存じておりませんので、局長のほうからお答えをさせていただきたいと思います。
  163. 須原昭二

    ○須原昭二君 いや、大臣が命令したんじゃないですか。大臣が百名ならいいと言ったんじゃないですか。
  164. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) いま申し上げますように、百名ならいいとか悪いとか、その辺のことはみな局長のほうでやっていただいておりますので、お答えいただきまして、また違っておりましたら私からお答えをさせていただきます。
  165. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま御指摘にもございましたように、福岡歯科大学は昨年度でございますから、昨年の四月の入学者につきまして、非常にたくさんの入学をさせましたために、その後の教育の実態あるいは教官の補充、その他の実情等を指導しながら、できることならば抑制するのが望ましいというふうにきびしい反省を求めたのでございます。その後、大学の再建その他につきまして、役員の起訴、その他のこともございまして、学校法人の役員の態勢の立て直しと、それから学生の教学の立て直し等をはかった次第でございまするが、やはりある年に採り過ぎたということの非は重々認めながら、ゼロにしてしまうということについては、大学を、少なくとも正常に運営するためにかえって非常な無理が起こるので、その結果、貸し借りをするために、ことしも何がしかの募集を認めてもらいたいという強い要請がございました。これは、別に強いと申しましても、外からの圧力があるとか何とかということではございません。当事者からその大学の再建についての真摯な訴えがございまして、そこで昨年のたくさん入れたことに対します教員の充足、あるいは施設の整備、その他のことも勘案しながら、本年度は、百名以下でひとつ健全な運営に近づける努力を見守りたいというふうに指導をしたところでございます。  定員の問題につきましては、御指摘のように、設置審査の際の申請の定員に対して、その後それが必ずしも守られないという実態に対しましては、法令の規定をもってこの変更を命ずるというようなことが、残念ながら現在の法制度のもとではできませんので、私どもとしては、その学生の指導の実態を見ながら現実に注意を喚起し、運営の指導をする、こういうことでつとめてきておる次第でございます。
  166. 須原昭二

    ○須原昭二君 きわめて抽象的で、答弁になっていないんですよ。それでいいと思っているんですか、あんた。全くでたらめですよ。時間がありませんから、ほんとうにもっと時間を委員長にもらいたいのですけれども、時間の先を急ぐあまり、指摘をしたいんですけれども……。ほんとうにでたらめですよ。こんなことで私立医科大学、歯科大学の運営ができますか。学校に支障を来たすから——何の支障ですか。経営的にまいっちゃうからだ。端的に言えばそういうことじゃないですか。先行投資した金が入ってこぬということじゃないですか。そこで、私はさらに進んでお尋ねしましょう。  松本歯科大学、福岡歯科大学など、新設学校に明るみに出てこない問題がある。いま商社は大きな買い占め、投機で、衆議院の段階でいろいろ議論が集中しておりますが、これは新設の学校の背景にも大きな働きをしているわけです。商社は、単なる商品の買い占めだけではあきたらず、とうとう生命をあずかるべき医学の殿堂まで手を伸ばしているんです。福岡歯科大学は、医療器械を売り込む大手の総合商社が、この設立許可になる前から、医療器械の購入を条件に三億数千万円にもなんなんとするお金を融資し、付属病院はもちろん、学生の実習用器具の販売まで独占をしている。福岡歯科大学の帳簿では借り入れ金となっているけれども、寄付金と明細されている。見せかけの金の工作を一役買っている。こういうことは、昨年十二月の東京地検で松本歯科大学が摘発されたときに、この問題も浮き彫りされている。知らないと言うんですか。知らないですか。知っているでしょう。  もちろん商社はもうけるものです。商売だから寄付などするはずがない。融資の形をとっている。そして医療器械の独占販売の機会をねらっているわけなんです。実際は融資された金でないのに、これをだれかの個人か、あるいは会社の名前で大学に融資した形をとっている。こういう方法でいくならば、幾らでも自己資金がやはりできるはずです。そしてろくに金もない学校ができてくる。できてしまえば、今度は水増しした学生に応じて、一人平均何百万、何千万の裏口入学金をつくって、これで融資された金を返す、そういう算段で仕組まれているわけです。  大手商社だけではないんです。学校の校舎を見てごらんなさい。大学許可に不可欠の要件は校舎、付属病院です。この建設に目をつけたのがいわゆる建設業界。私立医科大学、私立歯科大学の新しく設置をされ、認可をされたこの役員の名簿をもらいました。ずっと克明に調べました。理事、監事の名簿を資料として提出していただいた。それについては敬意を払いましょう。しかし、職業が何も書いてないものですから、全国紳士録をずっとひもといてもらって調べてもらいました。何と驚くなかれ、まず、元文部大臣をはじめとする国会議員の政治家は二十三名から二十四名、私の見ただけでも入っている。高級官僚が入っている、文部次官をはじめとする高級官僚。そして建設会社の役員、銀行の役員、これが名を連ねているのです。  たとえば端的な例を言いましょうか。いまの福岡歯科大学には熊谷組の重役が入っている。松本歯科大学には大成建設の相談役が入っている。地元のことを言って申しわけありませんが、愛知医科大学には鹿島建設の副社長の名前が連なっている。これは昨年まで入っていたが、いまでは入っていないということです。もう用がなくなったのだ、金が返ってきたから、こういうことでしょう。なぜ建設会社の役員が理事に、あるいは監事に入っているのか。結局は表向きは寄付の形をとったとか、あるいは融資の形をとって、そして建設会社はその校舎を建設する、あるいは付属病院の建設を請け負う。融資もしくは建設費の未払いを、債権確保のために役員として入っておるといっても私は過言でありません。  中には、建設会社のほうが建設代金をもらっていないのに領収証を発行したというところもある。どういうことなんです。大学審議会ににせの領収証を示して、これだけの自己資金を用意して、これだけの分は建設費にすでに回しましたという証拠をつくるためにそういう画策がなされている。ほんとうは借金だから返済を求められますよ。そのために、学生募集のときにはたいへんな水増しになる。一方においては、いま三千万円にもなんなんとする裏口入学金が多額になってくるということは、これはもう論より証拠です。こうすれば自己資金がゼロでも、いや借金だけでも大学はできますよ。大学の役員の中に銀行関係者も多い。川崎医大は中国銀行の頭取、聖マリアンナ医大は富士銀行の頭取、岐阜歯科大学は第一銀行取締役、愛知医科大学は勧業銀行、そして埼玉医科大学は埼玉銀行頭取、福岡歯科大学、例の福岡歯科大学は西日本相互銀行の社長、何かきのう、文部省から、この人がなくなりましたなくなりましたといってしつこく私のほうへ連絡があったんですが、死亡されたそうです。死亡されたといっても、ちゃんと専務がまだ入っていますよ、この中に。何でしつこく言ってくるのですか。  この際、私は委員長を通じてお願いをいたします。四十五年度より設立認可された私立の医科大学、歯科大学、この役員名簿がここにきておりますが、この役員の当時の職責、役職名、それから文部省に申請をするときに付属書類として提出をされておるところの学校建設、いわゆる校舎等主体施設の施工主契約会社名、そしていま一つは取引銀行、これを一覧表にしてひとつ資料提出をしていただきたいとお願いをいたしておきたいと思います。
  167. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) いかがですか、管理局長
  168. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 役員につきましては、ただいまお話の資料、提出をいたしたいと思いますが、ただ取引銀行等ということになりますと、的確に文部省としてそれがつかみ得るかどうか、つかみ得る範囲で提出さしていただきたいと思います。
  169. 須原昭二

    ○須原昭二君 その資料が出てから、さらに追跡質問をいたします。  そこで、このように実はでたらめな認可がどんどん二十三校も出てきたわけです。全部が全部とは私は言いません。しかし、多くの疑惑を持たれた大学が多いということです。こんな大学から出てきた子弟が、りっぱな医師が養成できますか。そういう点から、文部省の大学計画について私はお尋ねを進めてまいりたいと思うんですが、四十四年までいわゆる医科大学、歯科大学の新設を押えてきた。そのために社会的に医師が不足し、問題化してきた、あわてて許可する方針に切りかえて、いわゆる私立医科大学、歯科大学のラッシュが出てきたわけです。その後、四十五年に国立で秋田大学に医学部を設置しただけで、四十五年には私立三校、四十六年には私立二校、四十七年には私立を一挙に七校、私立医大にまかせっぱなしであったところにこのような問題が出てきたといっても過言でありません。したがって、その点については政府も考えたのでありましょう。最近になってようやく国は、医師の養成は国立もしくは公立でなくてはならない、こういう点に気がついて、四十八年に三校、来年度から四校新しく開校の予定でございますが、ただ医大や医学部を設置するだけでよいのかどうか。私は、長期的な展望にかけて大学のあり方とは何か、とりわけ日本の国民の生命を将来預かる医大のあり方はどうすべきか、ほんとうに医師は不足しているのか。先ほども冒頭に申し上げましたように、大都市に偏在しておるのではないか、そのためにはどうしたらいいのか。さらに、こういう大学を設立するためにどうしても充足しなければならない基礎医学の教官の問題や、解剖用の献体の不足というものがあります。こうしたものをどうしたらいいのか、長期的な計画、長期的な構想に基づいた計画を直ちにつくらなければならないと私は思います。  昨年、高等教育懇談会なるものから、今後の大学の拡充についての一応の方針が出たように私は聞いていますが、内容はともかくとして、長期的な展望が一応一つの区切りとしてこの懇談会から出たことについては、私は歓迎をいたします。ところが、この作文の内容を見ましても、医学教育については何ら触れておらないのであります。早急に医学教育についての基本計画、これを策定する必要が私はあると思うんですが、文部大臣どうお考えになりますか。
  170. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 大学教育全体に問題がたくさんあると思います。医学教育の問題につきましては、昨年の法改正によりまして、六年一貫教育をやれるようにさせていただいたところでございます。大学につきましても、医学教育だけに限らず、全般的な改革を五十年度から実施したいということで、現在検討を進めておるわけでございまして、若干の考え方は公表もさせていただいておるところでございます。  同時に、医師の問題につきましては、総数が足りない問題のほかに、偏在しておるということもございますので、国立の医科大学は無医大県に全部つくっていくというような方針をとらしていただいているわけでございまして、医師の将来の配置を頭に置いて行なっていることでございます。同時にまた、地域につきまして、大学は地域医療のセンターのような役割りもすべきじゃないか、こう考えるわけでございます。そういうくふうを各大学にやってもらわなければならない、こう考えるわけでございます。そういう意味においては、たとえば沖繩で医学部を設ける、そういう場合には、沖繩の人たちが多数入るようにならなきゃなりませんし、また、そこを出た人は沖縄の各離島にも働いてもらわなきゃならぬわけでございますので、そういう配慮を知事や学長のほうに求めているところでございます。積極的にそういうような態度で努力をしていきたいものと考えております。
  171. 須原昭二

    ○須原昭二君 大臣、おことばを返すようですが、非常に抽象的なんですよ。いつまでに基本計画をつくりますとか、やっぱり具体的に出てこなければこれは行き違いなんですよ。決算委員会を開く必要がなくなりますよ。やはりかくかくしかじかにやります、いつまでには御回答します、こういう区切りをしてもらわなければ困りますよ。ただ前向きで積極的に善処いたしますというだけではこれはだめなんで、この問題点は、私立医科大学、歯科大学のでたらめな内容の現実から、そこから出てくる将来の医師のあり方からいって、私はほんとうに基本的に重大な問題だと思います。これ以上私は申し上げましても、同じような答弁しか返ってこないと予想しますから、どうぞひとつ資料が出てまいりましたら、あらためて機会をいただいて、私は総括のときにもう一度この問題はいたしたいと思いますから、文部省の問題はこの程度にして……。ぜひともひとつ文部大臣、この医師の養成、いわゆる歯科大学、医科大学というのは、将来日本一億国民の命と健康を預かる重大な職責である、そういう人たちが出てくる学校であるということに目を向けていただいて、大学の医科大学、歯科大学のあり方については厳密にきびしく対処されるよう、特に要望しておきます。お願いしますよ。  そこで、今度はひとつ厚生省のほうへまいりす。  こうして出てきた学生の諸君に対して、じゃ、政府はどのように対応するかということが今後の問題点。六年先になりますと学校を出てくる。日本の大学というところは、入るときは非常にむずかしいけれども、入ってしまえばエスカレーターに乗ってどんどん卒業していくというのが日本の通例ですよ。ここで一つ問題になってくることは、医師の国家試験のあり方の問題が出てくる。多少できの悪い子弟でも、先ほどもお話のように、二千万、三千万の金を使えば入学ができる。医師になるには、卒業後、医師の国家試験に合格をしなければならない一つの関門があるはずです。国民の命と健康に重大なる関連のあるところの医師の国家試験は、実にきびしいものでなければならないと考えるのでありますが、医師の国家試験の過去の実績をずっと調べてまいりますと、実に私は背筋が寒くなることを感ずるわけです。  四十三年から四十八年までいわゆる医師、歯科医師の国家試験の合格率を比較をいたしますと、平均で実は医師は九二・七%、歯科医師が八九・六%、薬剤師が七六・四一%、医師の合格率が一番高いわけです。特にこれは平均値でありまして、四十六年の段階までは九七・六%、九六・〇%、九七・九%、九六・六%ともう大体九八%前後が合格、ほとんど合格をしておるわけです。まあ四十六年までは大体医師が九六から九八の高率なんですよ。歯科医師の場合は、大体九〇%と高い合格率なんです。しかし、ちょっと数字がかくんと落ちてきております。かくんと一そんなにたくさん落ちておりませんけれども、四十七年の四月の試験では九三・八%、四十八年の四月は八八・九%、歯科医師は、四十八年の四月の試験は八一・四%と少しだけですが下がってきております。医師の国家試験がやさし過ぎるという批判があるために、試験の方法を改めたと私は聞いておりますけれども、いままで、従来は主観式といいますか、論文形式であったものを、今度は客観式の択一方式といいますか、そういうほうに切りかえて、コンピューターにかけるという話でありますけれども、受験者の質が低下したから合格率が少し下がったというのか、あるいは試験の方法を改めたから少し下がったというのか、どちらですか。
  172. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 先生おっしゃるこの問題につきましては、結論を申しますというと、どちらが明確に原因であるかは、これは非常に議論があるところでありまして、明確に申し上げられません。
  173. 須原昭二

    ○須原昭二君 それはそうでしょう、わかりました。そこで、国家試験の高率であるというところに一つ問題点があるわけであります。これほど入学が、金によって入ってきた者が、すっと国家試験九〇%−一〇〇%に近い数でみんな合格してしまったら、たいへんなお医者さんばかりになってくると私は思うわけです。そこで、国家試験というものは本来きびしいものであるべきです。医師の増員がただ必要だという点で国家試験の水準を落とされては、国民はたまったものではありません。国民は、自分の生命を預かる医師は、きびしい国家試験によって資格を与えられたという認識で信頼をしておるわけです、逆に言えば。アメリカで行なっているところの海外向けの医師の資格試験がありますね。ECFMGの試験があります。日本の医師の合格率はどの程度ですか、全体の合格率。私の数字を申し上げますから、間違っておったら指摘をしてください。六八年の合格率は三〇・二%、六九年の合格率が三〇・五%、七〇年が三二・四%、こんなに低いんじゃないですか。どうですか、低いでしょう。
  174. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 数字は間違っておりませんが、全般の合格率に比べると、約六ないし七%日本人のほうが低くなっております。
  175. 須原昭二

    ○須原昭二君 そんなこと言ったって答弁になりませんよ。なるほど全体の合格率、日本は後進国だと思ったらそれでいいですよ。七〇年の合格率は六九年に比べて六%から七%、ややよくなっておりますけれども、世界八十五カ国の中で残念ながら四十九番目なんです。わが日本は、少なくともGNP世界第二番目と政府はいばっているでしょう。後進国並みならいいですよ。もちろん語学のハンディキャップがあるでしょう。四十九位というのは、まさに日本の教育、医学の教育の水準が高いという証左ではないと思う。いかがですか、文部大臣
  176. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま御指摘になりました試験の性格は、厚生省のほうから御説明があろうかと思いますが、必ずしも日本の学生の全体がその同じスケールで受けておるものということではなかろうかと思うのでございます。受験しております者の層、その他の点を考えてみなければ、一がいに全体の中でその何番目というふうなわけにはいかぬと思いますが、しかし、そこに出ておりますデータもまた否定できない事実でございまするから、その受験した層の限りにおきまして、必ずしもいい数字になっていないということは、いろいろな意味で反省されなければならぬと考えております。
  177. 須原昭二

    ○須原昭二君 時間があと五分ぐらいですから、もう結論に入りたいと思いますが、ケニアという国の医師の国家試験の記事が実はここにあるわけですけれども、ケニアの医学生は、世界に通用するこのECFMGの試験に合格しても、自分の国の試験に落第することが非常に多いということをいっております。ケニアでは、国家試験の水準が非常にきびしく維持されている。日本のように医師不足であるけれども、国家試験の水準は非常にきびしくしている。日本よりはるかに医師が不足しているのですよ。日本のように、ただ量をふやせばよいというならば、これでは私は将来に大きな問題が残るわけでありまして、医師は、直接私たち国民の命をあずかる重大な社会的責任を負う以上、医師などの国家試験のあり方、この合否の判定の基準、これは当然きびしくなくてはなりません。  医科大学のない県については、医大を設置する、無医大県を解消する、こういうことを発表されておりますが、それはそれなりに意味がありますけれども、あまり医師の量的増加を一時的に急ぐがあまり、質の低下を招いては私はならぬと思います。本日は特に私は短い時間で質問をいたしてまいりましたけれども政府は四十五年以来、いわゆる何度も言いますけれども、私立医科大学ブームといわれるほどの、一挙にせきを切ったように、私立医科大学や、私立医学部や、歯科大学の新設を許可いたしてまいりました。その結果、昨年十月の文部省の改善勧告に見られるように、教員の不足だとか、施設の不備だとか、設備のおくれだとか、これに加えておびただしい学生の定員の水増しが目に余るように顕著に出てきておるわけでありまして、これは医者の質的低下を来たすということは何人も疑う余地はありません。  したがって、国家試験というものは、厳重にしていくべきである。多額の金を積んで入学しても、国家試験をきびしくすれば、金の力だけでは無理だということが認識されるはずです。コンマ以下の医学部受験生をあきらめさせるということにもつながると私は思うわけです。厚生省の見解並びにきょう一日、一時間半にわたりましたけれども、非常に短い時間で要を得た答弁を得ておりませんけれども、最後に厚生省の見解と加えて、とりわけ私立医科大学、私立歯科大学の認可から今日に及ぶまでさまざまの問題点が出ておりますけれども、あらためて文部大臣のきびしい所見を、前向きといいますか、積極的ということばじゃなくて、ほんとうに心の底から一ぺん、一言言ってください。どうもぴんときておらないような感じがしてなりません。ただ、資料が出てまいりましたら、あらためて御質問することを保留をいたしまして、最後の質問をいたしたいと思います。お願いいたします。
  178. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 医師の国家試験を重要なものとして考えることは、先生御指摘のとおりでございまして、われわれといたしましても、先ほど、先生御存じのように、試験の方法等も改善に努力をいたしてきておるわけでございます。  問題は、医師の国家試験が単なるきびしくということよりも、本来は、必要な学校教育がまず基本に充実されるべきでございまして、それに対応して国家試験というものに対する適正な運営がなされる、そして、しかも、きわめて科学的な判定が下せるような方式を採用する一歩として先ほどコンピューターの利用等を行ない、逐次改善に向かって努力いたしておるわけでございまして、そういう点からは今後医師の国家試験を一つの中軸に考えまして、新しい判定法あるいは正確な問題であるかどうかのチェック、こういうものが十分可能になりますれば、他の国家試験にも同様に及ぼすということで、国家試験全体の姿勢をきちんといたしたいというふうに考えております。
  179. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 重複してお答えをすることになって恐縮でありますが、四十五年以後の私立医科大学、歯科大学の状況にかんがみまして、事務当局に対しましては、昨年、今後の認可にあたっては慎重にすべきだという指図をいたしました。反面、無医大県の解消ということで、国立医科大学あるいは私立医科大学の増設を積極的に進めてまいってきております。これが第一であります。  第二には、現状の私立の医科大学、歯科大学の改善をはかっていきたいために、四十九年度からは、初年度から経常費助成をいたしたいということを申し上げました。同時にまた、なるたけ裏金を取ったりしないで、必要な場合には表に出せるように、今後の大学が奨学制度をつくる場合には必要な資金を供給します、十分に補助しますという仕組みをとらせていただきますということも申し上げたわけでございます。  第三には、経常費助成をしている学校につきましての監督規定、いまは眠らせているわけでございますけれども、できますならば、四十九年度からはこれを発効させたいというように考えておるわけでございまして、それ以上の法的規制につきましても、なお積極的な御相談をさせていただきたいと、こう思っております。
  180. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、日本育英会等の奨学制度につきまして若干お伺いをいたします。  今日のような社会の複雑、高度化に伴いまして、その健全な発展をはかる基盤として、より高い教育、より高い知識や技術を身につけることは必然的に要求をされておるわけでありまして、このことが国民の進学意欲を年々著しく高めてまいりまして、その結果は、高等学校の進学率は約九〇%に達しております。まあ、いわば高等学校の教育も準義務教育の段階に進んでおるのが現状でありますが、高等教育の就学率は約三〇%に達し、大学の大衆化というものが非常に目ざましくなっておるわけであります。このような情勢のもとで私は、このわが国の奨学制度ということがどうあるべきかということにつきまして、先進国、諸外国の制度等とあわせてお伺いをしたいと思います。  御承知のとおりに、この奨学制度は戦時中に制定をされた法律でありまして、いわばエリート育成の古い考え方がなお残っておるようであります。それで、著しく変化をした今日の大学等の実態に十分に適合してない、そういう点も考えるわけでありますので、今後の奨学制度のあり方としては、少数のエリートを選んで奨励すると、まあそういうことではなく、幅広い学生層に対しまして十分な経済援助を行なって、できるだけ多くの者に高等教育を受けさせ、そして教育の機会均等と人材の養成をはかるべきじゃないか、まあこういうふうにも思うわけですが、高等教育への進学率の高い今日、奨学事業がどのような地位を占め、また今後どのようにあるべきか、そういう点から、基本的な問題から最初お伺いします。
  181. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) お話のように、大学のあり方、社会における役割り、そういったようなものがかなり変わってきていると思います。日本育英会法が制定された当時におきましては、大学というものは国家枢要の人材を養成するエリート養成機関であったかと思います。今日は、大学はすでに大衆化されているわけでございまして、国民の中核的人材を育て上げていく、国民の資質を引き上げていくというような広い役割りをになっているんじゃないか、かように考えておるわけでございます。そうでありますれば、できる限り経済的な理由で進学がはばまれるというようなことのないように、広く奨学の道を講じていかなければならない、かように考えておるところであります。
  182. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そこで、奨学制度は、世界的にも非常にまあ先進国は進んでおるわけです。最近はまた、世界的にも教育の時代だともいわれておるわけですが、具体的には学制の改革、修学年限の延長、あるいは教育内容や教育施設等の拡充整備に取り組んできておるわけですが、ここで注目されるのは、教育の改善、充実の一環として奨学制度の拡充を取り上げておる国がきわめて多いということですね。特に、この高等教育振興計画には、必ずそのささえとして奨学制度の充実が伴っておるといわれておるわけです。欧米先進諸国の奨学事業の状況かなり進んでおるようでありますが、この辺はどうなっておるのか。大体のことは承知いたしておりますが、わが国のこの奨学事業の状況と欧米先進諸国の奨学事業を比べてみて、日本は一体どの程度の水準であるのか、まずその辺をひとつお伺いをしましょう。
  183. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 一般的に比較いたしまして、日本の奨学制度が欧米よりもすぐれて高いというふうな言い方はできない状態にあると考えております。ただ、政府資金をもっていたします奨学生の率の点から申しますと、西ドイツ、フランスの奨学制度と日本の奨学制度とはやや類似しておるというふうに考えますけれども、イギリス、アメリカにはそれぞれの国柄もございまして、かなり多彩な奨学事業が展開されておりますので、学生数に対する奨学生の割合その他におきましては、英米に比べましてかなり低いというふうに申し上げられるかと思います。
  184. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、何も追及をしようとか、そんなこと考えていないんだから、参考になるように、大体比較的非常に制度が進んでおるようなところを事例をあげて説明してもらわぬと、聞いていてさっぱりわからないでしょう、これは。そういうことで、もう一ぺんひとつ先進国の事例もあげて、こういう国がこういう制度で進んでおると、こういう答弁をしてもらわなきゃ……。
  185. 奥田真丈

    政府委員(奥田真丈君) 高等教育間の在学生に対する奨学事業につきまして、英、米、独、仏、ソ等の現状について申し上げたいと思います。  アメリカでございますが、アメリカの奨学事業にはおおむね四つの類型がございまして、一つは、大学の基金によるもの、二つ目は、連邦政府の資金によるもの、三つ目には、州政府の資金によるもの、四つは、その他各種団体等の資金によるものと四つに大別されます。で、これらの奨学資金の総額は一九六〇年代でございますが、年間約十億ドルをこえております。そして奨学生の数は学生総数の約四〇%といわれております。この中で連邦政府が資金を出しましてやっております奨学事業につきまして、一九七〇年−七一会計年度について見ますと、主として大学の全日制課程の学生で学資支弁が困難な者に対しまして、一つは国家防衛教育法貸付金という国家防衛教育法に基づく貸し付け金がございまして、それが奨学生数約四十万、年間予算額は一億六千二百万ドルとなっております。そして連邦政府がその九割を出し、大学当局が一〇%を出すという計画でございます。  それから二つ目のものには、教育機会給与金、これは教育機会法に基づく教育機会給与金というものがございまして、奨学生数は三十万人、年間予算額は一億七千五百万ドルでございまして、連邦政府がまるまる一〇〇%支出しております。  それから三番目には、大学勤労修学計画という計画による奨学金がございますが、これは学生に計画的に労務を与えまして、その賃金を受けて学資を支弁するという制度でございます。学生数は三十七万で、年間予算約一億五千四百万ドルを出しております。連邦政府は八割、大学が二割、こういう比率で出されております。  それから、もう一つそのほかに、主として全日制の課程の学生で修学状況が良好な者に対しまして、政府保証による学資銀行貸付金と申しますか、銀行貸付金がございます。これは、この金を借りておる学生は約九十二万人です。年間予算額、これは利子補給をやっておる額でございますが、一億一千百万ドル出しております。そしてこれらのいわゆる連邦政府の奨学事業の対象学生というものは約二百万人、学生総数の三〇%、こういうようにいわれております。  以上がアメリカでございます。  次はイギリスでございます。イギリスの場合には、総合大学の約九〇%が何らかの形の経済援助を受けているといわれております。その奨学事業といたしましては、公費奨学金、それからその他の大学独自にやるもの、あるいは民間団体などの奨学金、まあ、こういうものが相当多数あるわけでございますが、一九六七年−六八会計年度公費奨学金について見ますと、学部学生の奨学金といたしましては、奨学生は三十六万七千人で、年間予算約一億二千百万ポンドを使っております。これは国費が六六%、地方費が三四%の割合になっております。それから大学院の奨学金——大学院学生に対する奨学金がございますが、奨学生は一万八千人で、年間予算額は九百万ポンド、これは国が直接運営いたしておりまして、いずれも給費制度でございます。  三番目には西ドイツでございますが、西ドイツの奨学制度は、連邦、州、市町村等の公共団体によるものと、教会等の宗教団体によるものと、民間団体によるものとに大別されます。そして、これらの奨学制度の対象学生は約四〇%と言われております。市町村とか教会、民間団体等による奨学制度はおおむね小規模のものが多いと言われております。西ドイツ連邦全体にわたって行なわれております奨学制度の代表的なものを一九六六年−六七会計年度について見ますと、一つはドイツ学生援助組合の実施するホネフ計画というのがございます。奨学生は、成績良好であって経済援助を必要とする者が、学生総数の約一五%に当たる五万人がこの奨学金を受けております。奨学金の大部分は給費で、最後の学期の一部は貸与、こういうふうになっております。それの年間予算額は一億一千万マルクで、資金源は、給費分については連邦とか州が半々負担いたしております。  それからもう一つ、ドイツ国民奨学財団の実施する奨学事業がございます。これは、大学入学者のうちで特に成績優秀な者について十分な援助を与えるために、約二千人を対象としてやっております給費制度でございます。その年間予算額は七百万マルクで、資金源は連邦、州、市町村公費で二分の一を、財界等の寄付で二分の一支弁しております。  フランスでございますが、フランスの奨学事業のおもなものとしましては、国費による給費生の高等教育奨学金というものがございます。これの一九六五年−六六年会計年度について見ますと、奨学生数は学生総数の約二〇%、六万五千人でございます。家計困難で、バカロレア試験合格者を対象とし、年間予算額は二億五千万フランでございます。
  186. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 大体わかりましたが、ただいまおっしゃったように、非常に諸外国、先進国の奨学制度は進んでおるわけです。わが国にはお金を貸与する、貸すということはあるが給費生はない。また援助の額にしても、あるいはまた数にいたしましても、まだまだおくれておる感じであります。  そこで、具体的にお伺いをしたいと思いますが、日本育英会の奨学生の数ですね、学生の総数のうち奨学生の占める比率が、大学院学生や特別貸与奨学生の場合を除いてだんだんこれは減っておる。たとえば大学の場合は、昭和四十年度には一四・四五%であったものが、四十七年度にはこれは下がってまいりまして一〇・六%。短大の場合は六・七%が四・四%、こういうふうに低下をいたしておるわけです。このように奨学生の数が増加しなかったのは、パーセンテージが落ちておるその理由はどういうわけなのか。この辺が勘ぐれば、少数のエリートの奨励で足りるというような古い考えが依然としてあるのではないか。もちろん、これは予算の面もありましょうけれども、その辺は文部省のやはり力の入れぐあいによってきまるのであって、その点まずお伺いしましょう。  それから、今後学校種別ごとに、全学生数の中で奨学生が占める割合はどの程度が理想と考えておるのか、その辺のところを伺いましょう。
  187. 木田宏

    政府委員(木田宏君) なぜ比率が下がったかということでございますが、これは私どもの努力も足りなくて、奨学生の学生数を予算の上で拡大していくということがあまり十分に行なわれなかったからでございます。それは、エリートだけで少なくていいから手を抜いたのではないかという御疑問もあろうかと思うのでございますが、わが国の奨学制度につきまして、数年来、この現状ではいけないので、何とか新たな方向を考えなければならないという議論がございまして、どのような方向を打ち出すかということにつきましていろいろと検討を重ねておるのでございますけれども、まだ十分な論議が固まっていないために、これまでとってまいりました方策をそのまま拡大するという考え方が少し鈍ったということが御説明になろうかと思います。  将来、これをどの程度に考えていったらいいかということでございますが、これは一がいには言いにくい点がありますけれども、現在、国民の家計が潤沢になってまいりまして、大学進学率が伸びているということを考えながら、なお低所得階層の大学進学者のことを考えますと、せめて二割あるいは三割というようなところまで在学者との関係では考えてみていいのではないかというふうに試算をしたりいたしております。しかし、これらも今後関係者の論議を待ちたいというふうに考えておるところでございます。
  188. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 時間がありませんので、次々にお伺いしますすが、そこで貸与の額の問題ですね。これも先ほど説明がありましたように、外国のほうは非常にこれはまあ相当な額が、アメリカ合衆国におきましても、これは最高は年額九十万円から三十六万。ところが、わが国の大学の昼間部の場合は、自宅の学生が三十二万三千円、下宿学生が四十七万九千円、これが文部省の学生生活調査によるところの学生の生活費。これ、あなたのところから出しておる。これだけ、まあ一応統計調査には学生生活の費用が出ておるわけですが、最近のようにどんどんインフレになってきた、非常に学生のほうも親のほうも教育費に困っておる。あなた先ほどおっしゃったように、大学の入学率もふえた、その背景には国民の所得の上がった点もあろうというふうな、そういうように受け取られぬこともないようですけれども、実際、実態は相当これは親が苦労しておるところもあるわけですよ。  一例を言いますと、ある、目が見えないでつつましやかにマッサージをやってる人が一生懸命働いて、そして東京のむすこに仕送りをしておる。ところが、近ごろはとってもやっていけないというのですね。あるいはほかにも、大学に入りたい希望の者はあるけれども、家庭が貧しい、ところが非常に成績はよろしい、そういうのもあるわけですよ。ですからお伺いするわけですけれども、現在の日本育英会の貸与金額、これは大学の場合、一カ月に六千円から一万七千円、こうなっておるわけですが、この辺のところはいま少しこれは増額にならないのか。それから、先ほどの話では給費制度が外国にあるわけですね。日本では給費制度というのはどうなっておるのか、あまり聞いたこともないので、そういう点は全然文部省は考えておらないのか、また給費制を導入する意図があるのか、その辺をお伺いしましょう。
  189. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 貸与額の単価につきましては、御指摘のように、大学で六千円から一万七千円まで、また、大学院におきましては修士課程二万三千円、博士課程三万円までございまして、四十九年度におきましては、大学院の単価をわずかではございましたけれども二万五千五百円、三万三千円というふうに一割方アップをお願いを申し上げておるところであります。この六千円あるいは八千円といった単価が、今日の学生の生活実態から見て十分な額であるとは考えておりません。しかしながら、これは長い従来の経緯がございまして、こうした奨学金の単価の意味意味あらしめるためにどのような考え方をとるべきかということについて、たいへん申しわけないのですけれども、十分な考え方がまとまらなかったために今日までこういう状態で、とりあえず四十七年度でございましたか、現行単価に改定をさしていただいた次第でございます。  で、日本では給費制度のことを育英会の上では取り上げておりませんけれども、しかしその反面、実質的な給費制度と言えるような返還免除の制度がとられておりまして、大学で育英資金を借りた者が将来教員として所定の期間勤務をした場合に、返還が免除になる、あるいは大学院で借りた人たちが研究職につきました場合には、返還が免除になるという返還免除の制度によりまして、給費の制度と実質的に同じ考え方を取り入れておるわけでございます。また、特別貸与の育英資金にありましては、一般貸与との差額分だけは返還免除になるというたてまえになっておりまして、その部分につきましては実質的な給費である、こういうことも言えようかと思います。しかし、これらも今後の育英制度のあり方全体の中でなお考え直してみなければならない問題点であろうかと思っております。
  190. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 では、大体わかりましたが、お話を聞くと、それは学校の先生だけということに聞こえますが、教員あるいは大学院等に残る人ということもありますが、この辺またひとつ検討してください。  時間がないので、次に、国公立と私立の奨学金の配分、その根拠、そういったところをお伺いしますが、大学の場合、私立大学の学生が全大学生の約七六%を占めておるわけですが、この日本育英会の奨学生の採用状況は国公立が厚く、私学にきわめて薄くなっておるわけです。たとえば大学の場合は、昭和四十七年度においては奨学生の採用状況は、私立大学は一万九千九百五十六人、国公立の大学のほうは二万一千三百四人と、学生の数がはるかに少ない国公立大学のほうが奨学生が多いという現状になっておるわけですが、   〔委員長退席、理事小谷守君着席〕 この点はどういうように配分をお考えになっていらっしゃるのか、その根拠をひとつお伺いをしたい。なお今後、この学生数に応じて私立学校関係の奨学生を増加するのかどうか、今後の方針も承っておきます。
  191. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 御指摘のように、学生数に比して私立の大学の奨学生数が少ないというのは、数字の上で出ておるところでございます。しかし一般的に学生の生活実態を考えてみますと、私立大学の学生には総じて家計の豊かな層が多いわけでございまして、育英会の奨学制度を一定の家計水準と、それから一定の学業成績ということで考えながら基準をとりました場合に、そう極端な差異があるというわけではございません。しかし、これは予算できめておる関係上、実態に合わないというずれが起こってきておることも事実でございまして、四十九年度の予算におきまして、特別貸与の奨学生を私立につきまして千四百名増加さしていただきたいという予算のお願いを申し上げておるところでございますが、これらは特別貸与の奨学生の基準を、国立私立と同じに考えましてとってみました場合に、私立大学のワクが狭過ぎるということから、同じ水準に持っていくために私立大学の特別貸与の増をはかっていきたいという施策でございます。
  192. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 国立大学よりか私立のほうが金が要るということは、もう御承知のとおりでありますが、これはあなたのほうの調査でしょうが、大学の入学時に要する経費、これを比べてみますと、国立大学の場合が四万八千円、私立大学が二十八万六千円。また文部省昭和四十七年度の学生生活費、これの調査によると、大学の昼間部の場合は国立は三十万四千円、私立は四十三万五千円、こういうふうになっているのですね。これで日本育英会の貸与金が、月額において国立私立の場合の差額というものが一般貸与の場合が二千円、特別貸与の場合が三千円から五千円と、ここにも差が出ておるわけです。  それで私立関係をもう少し上げられないものか、その辺と、さらに先ほども質問がありました医科歯科系統や理科あるいは工科、こういう系統は文科方面より当然これは経費が要る。特に医科歯科関係は相当な金が要るわけですね。あえて私が言うまでもないことですけれども、これじゃあ将来は医者とか歯医者とか、そういう人はもう金持ちのむすこしか入れぬというようなことになりますと、もうたいへんなことになりますよ。先ほど質問があったように、いろんな問題をかもしている現状でありますので、この貸与額も大学一律に幾ら幾らというふうにやらないで、こういったような医科歯科、工科等は若干配慮する気持ちはないのかどうか、その辺いかがですか。
  193. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 学費のかかり方その他に、国公立と私立との間に御指摘のような差のあることは事実でございまするから、今日の育英奨学制度の単価につきましても、その差額を念頭に置いた国公私立の単価の差を一応はつけさしていただいております。これがどこまで適切であるかというのは、なお今後の課題でありますけれども、しかし私どもは、御指摘になりました学生生活調査の実態等から考えてみて、今日の段階までは、この差額をこの生活実態に合わせた差額というふうに維持してきたつもりでございます。  なお医学、歯学につきましては、御意見のとおり非常に多額の経費がかかる次第でございます。そこで四十九年度の新たな試みの一つといたしまして、従来の日本育英会の奨学制度のほかに、私立大学の特別な措置といたしまして、また試みではございますが、大学を設置する学校法人で、その大学の学生を対象として貸与制の奨学事業を行なおうとするところに、日本私学振興財団が奨学金の原資を融資するといった新しい奨学事業をやってみたいと、こう考えておるところでございます。この奨学制度におきましては、実際に学生にかかります納付金の差等に対応した奨学事業がとられるということを予定いたしまして、医学、歯学の多額の納付金を要するものについては、それに即応した措置がとれる、こういう奨学事業を進めてみたい。このように考えておるところでございます。
  194. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 医学、歯学には即応した措置をしたいという、そこのところをもう少し具体的に詳しく答弁してください。
  195. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 四十九年度の試みの内容でございますが、現在大蔵省等とその具体的中身についての相談は、まだ進めておる段階でございますけれども、私どもの心づもりといたしましては、ある私立の大学が、その自分の大学の学生に対して、大学として育英事業を起こす。しかも、それを貸与の奨学事業として起こすという場合に、その奨学金の原資を融資しようというわけでございます。  で、その際に医学、歯学の大学でありますならば、当然医学、歯学の学生納付金を考えた奨学事業を起こすであろう。それに必要な原資を出していこう。こういう考え方でございます。したがいまして、医学、歯学の学生納付金が百万円であれば、百万円というような金額を考えていくということが起こり得る。一般の学部でありますならば、それに即した学生納付金との見合いで融資額をその学校がお考えになるであろう、それに即応するようなうしろだてをとることにしたい、こういう考え方で大学当局のお考えをバックしていく、こういう育英制度を考えてみたい、このように思っておるわけでございます。
  196. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ではもうちょっとこまかく聞きますが、日本私学財団から歯科大学に融資をする、そしてその融資額を私学財団で各医科大学等に配分をして、その医科大学は大学生の希望者に幾らか貸与する、こういう形になるわけですか。現在あなた方が要求をしていらっしゃる——私はまだその辺詳しく調べてないんだが、四十九年度予算でそれが出ておるのか、出ておればその金額は幾らなのか、それが現実に各大学に配分になった場合、一校当たりどの程度になるのか、その点ひとつ。こまかい質問になりますけれども
  197. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま申し上げましたのは、試みとしてというふうに冒頭にも御説明さしていただきましたが、四十九年度の予算を編成いたすにつきまして、私学関係者とも、先ほど御説明したような新しい奨学事業を学校法人自体の責任において興すというようなお考えのあるところに対して何らかの措置を講じたいというふうに御相談をかけていったわけでございますが、予算が最終まとまるときまでに、必ずしも大きな御希望の数としてまとまったわけではございません。  そこで、とりあえずの措置といたしまして、私学振興財団の私立大学に対する融資ワクの中に二億ほど予定をさしていただいたのでございます。そしてこれから、試みでございますから、全部幅広くいろいろな私学に呼びかけることにも必ずしもなるまいかと思いますが、場合によりまして、積極的に試みを始めようという幾つかの私立大学と御相談をしながら新しい事業を一ぺんやってみる、こういう段階でございます。したがって、決して一般的なものとして予定をいたしておるわけではございません。
  198. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 了解しました。私学財団もいろいろ問題をかもしておりますし、いろいろ言いたいこともありますが、時間がありませんで……。  それで今度は、高等学校の場合ですね。これは大学の場合は、特別貸与につきましては、自宅外と、それと自宅から通学する者と、こういうふうに分かれておるわけですが、高等学校の場合は、特別貸与については一律四千円、自宅あるいは下宿をして通っている人も同じというんですがね、この辺はどうですか。大学ほど高校生の場合は下宿というふうなことは数は少ないでしょうけれども、やはり離島あたりにまいりますと、どうしても、ある高校に行くために、一々島から行くというわけにいかないし、下宿等もしなきゃならぬと、そういう場合もあり得るわけですが、これは全然考慮しないのか、その辺いかがですか。
  199. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 冒頭に御指摘がございましたように、高等学校は義務教育に準ずるぐらいの普及度が出てまいりました。したがって今日の段階で、下宿を予定する学生の制度を育英会の中で設けるということはいかがなものであろうかというふうに考えておるのでございます。しかし、この高等学校の育英制度も含めまして、日本育英会が処理をする事業の範囲等よく考えてみる際に、高等学校の扱いもそれ自体検討し直してみる必要があろうかと考えておるところでございます。
  200. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これは高校生の場合は公立は安いですが私立はもう大学並みでしょう、私立高校の月謝はね。必ずしもそうばかりいかないと思いますな。へたしますと大学より高いところがありますよ、高校でね。その点もひとつ考慮してやっていただきたいと思います。  それから日本育英会の奨学生の採用の手続、それからどういうような方法で採用をされていくのか、その方法と各大学の採用のワクというものはどのように決定をされていくのか、その点。
  201. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 大学に対しましては、その大学の従来からの実績を勘案いたしまして、その申請者とそれから配分数とに対応しながら翌年の配分ワクをきめて、そして大学にあるワク取りをお示しをするということにいたしております。  それが一般貸与の場合の措置でございまして、特別貸与につきましては、二通りの方法があるわけでございます。これは予約採用をいたします場合は、高等学校の在籍者から高等学校側の推薦を経て、育英会に大学に進学をした場合の予約申し込みがまいります。それを受けて、あらかじめ選考をして予約の採否を決定して通知しておく、そして大学に入った場合に特別貸与の金額を出すというやり方が一つと、もうひとつは、特別貸与にありましても、在学採用という方式をとっているものがございまして、これは入学いたしました学生に対して、特に一定の、たとえば高等学校の成績でありますならば三・五以上の成績あるいは二年生以上のものであれば大学における上位三分の一以内といった成績を判断いたしながら、各大学の申し出によって育英会で判断する、こういう手順を踏んでおる次第でございます。
  202. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 大体わかりました。それで高校の場合は、これは各県には育英会の支部というのですか、何かあろうかと思いますがね。それは本部から県に割り振りがあるわけですか。そしてまあ県の支部は県内の高校に、そこのところは割り振りするわけですか。それとも申し込みを受け付けて、それで支部で何人か採用するのか、その辺少し具体的に説明してください。
  203. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 各県に対する配分ワクを育英会は各県支部に示しまして、そのワクの扱いにつきましては支部ごとに、ことによりますと違った事情があるのかもしれません、その県の教育委員会指導のもとに、各高等学校から申請をとるというやり方になっておると思いますので、各学校にまで個別に割り振っておることはなかろうと思いますが、ちょっとその点——失礼いたしました、支部全体のワクで、県内から集まってまいります申し込みに対しての採否をきめておるようでございます。
  204. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから奨学金の返還の状況ですね。これはいま貸与金の残額はどの程度あるのか、何人ぐらいあるのか、それから回収の状況等はどうなっておるのか。なお滞納者等に対してはどういうような措置をおやりになっていらっしゃるのか、その辺ひとつ説明してください。
  205. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 今日までに返還時期の到来しております貸与金の総額が累計で四百二十三億四千万でございます。それに対して回収済みの金額は三百九十九億七千六百万でございまして、その返還率は九四・四%ということに相なっております。
  206. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから長期の滞納者等に対してはどういう措置をとっていらっしゃるわけですか。
  207. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 毎年ある程度の滞納分がずっと滞留しておることもございまして、この十年前後——前にはかなり返還の回収率が低うございましたので、育英資金を受けた者を採用した企業その他の協力を得ながら積極的な回収策につとめてまいりました。その結果、先ほど申し上げましたように、総合的に見ますとかなり返還率も高まってきたわけでございますが、毎年、年一回整理をして滞納者に対する督促をする、それがさらにたび重なってまいりました者につきまして、最終的には民事訴訟まで起こしまして、この回収につとめるというような努力を払っておるのでございます。
  208. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 民事訴訟まで起こしてとおっしゃったですが、そういう件数が一体どのくらいあるのですか。
  209. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 四十七年の実態でございますが、強制執行いたしたものが八十二件ございます。なお四十七年度に返還の督促をいたしました件数は三十八万四千件にのぼっておるところでございます。
  210. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、そういうような、何といいますか奨学生としてどうも不適当な学生、そういう人に対しても、またなかなか金を返さない人に対する補導ということをやっていらっしゃるように聞いていますが、この補導というのはどういうことをやっていらっしゃるのですか。  それから成績の不振の者に対しては何らかの処理をするというようなことも聞いておりますが、どういう手続でどのような処置をなさるのか。またそういうのはどのくらい件数があるのか、その辺もひとつ。
  211. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 育英会の関係者は、大学の学生担当の当事者と緊密な連絡をとっておりまして、学業成績が不振であるとか、あるいは人物、性行不良等であります者につきましては育英資金の貸し付けを廃止するとか停止するとか、あるいはいろいろと警告を発するとか、あるいはもう少し勉強したらどうかといったような激励の措置を講ずるとか、いろいろな試みをしておるところでございます。たとえば四十七年度の実情を申し上げますと、学業成績不振によって四十七年度育英資金の貸与を廃止いたしました者が千四百十八人、人物、性行不良によって廃止いたしました者が十八人ございます。また同じ四十七年に学業成績不振によって、一時育英資金の貸与を停止した者が三千七百六十一人ございます。また学業成績不振で警告を発した者が同じく三千三百名ほどにのぼっておりまするし、また激励をして、もっとしっかりやってくれというような措置を講じました者が一万二千人おりまして、四十七年度約二万人の学生に対しまして、大学当局の協力を得ながら、育英会としても必要な指導、警告を発しておる次第でございます。
  212. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 大体わかりましたが、この奨学事業で、日本育英会のほかに民間においても各種の奨学事業があるように聞いておりますが、その状況はどうなっていますか。
  213. 木田宏

    政府委員(木田宏君) わが国の現在の育英事業をやっております団体等は概括いたしまして約二千五百団体ほどございます。公益法人として行なっておりますのが五百ほどでございますし、地方公共団体自体が行なっておりますのが一千件ほどございます。そのほか学校その他のところで行なっておりますのが九百件ほどあるわけでございます。  で、これらの育英事業全体を通じて、奨学生の数が約四十五万八千人にのぼっております。貸与金額にいたしまして、これは四十六年度でございますが二百七十億というふうになっております。日本育英会は、この奨学生の数の中では約七割、三十一万六千人が育英会の担当しておる部分でございまするし、金額におきましては約七割五分、二百三億というのが育英会の奨学事業の大きさになっております。
  214. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは最後に文部大臣に締めくくりでひとつお伺いしますが、いま話がありました民間におけるこの奨学事業の拡充、これも望ましいことでありますけれども、やはり本筋といたしましては、奨学事業というものは国が責任をもってやらなきゃならない。それがただいまの話のように、日本もGNPも世界第二位だとかいっておりますけれども、まだまだ非常におくれている。しかも給費制度というようなものも諸外国はあるけれども日本はない。額の面におきましてもまだまだ学生が希望をもって勉強に取っ組むというところまでいってないような状態であるわけでありますから、まあ今後、さらに奨学事業ということにつきましては、やはり根本的に検討して、日本育英会等の充実を講ずべきじゃないかと、こういうふうに思っておるわけですが、最後に大臣の所見を伺いまして終わります。
  215. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 日本育英会の奨学事業の内容の拡充強化に今後も積極的に努力を払っていきたいと思います。同時に、四十九年度から初めて開始するわけでございますけれども、個々の私立大学に奨学制度を持ってもらう、それに対して資金事務費を供給していく。この制度もぜひ普及させたい。そして個々の大学において、大学当局と学生との間に心の通い合うような学園の姿をつくりだしてもらいたい、かように念願をいたしておるところでございます。
  216. 加藤進

    ○加藤進君 私は、国立医科歯科大学の創設に関連しまして、文部省の見解をお尋ねしたいと思います。  最初に、参考までにお尋ねしますけれども、戦後今日まで国立医科、歯科大学がどのように新設されてきておるのか、その点を年次別に、学校の数だけでけっこうでございますがお知らせ願いたいと思います。
  217. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 国立医大の新設は四十五年度に一校でございます。そして四十年までは格別大きな変化はございません。四十五年度に一校、秋田大学の医学部が新設されました。それから四十七年度に一校でございますが、これは県立大学の移管でございます。四十八年度に三校でございます。
  218. 加藤進

    ○加藤進君 戦後四十四年までは格別変化はないと、こう御答弁でございますけれども、もう少しはっきり言えば、政府昭和二十一年から昭和四十四年までは国立の医科、歯科大学は一校も建てていない、これは明らかですね。そして昭和四十五年にやっと一つの国立医学部を創設された。昭和四十六年、七年は国立医科、歯科大学の創設はない、そして昭和四十八年度に至って三校の創設、そして昭和四十九年度において三校の新たなる新設が行なわれると、これが実際上の数字じゃないでしょうか。その点まず御確認さしていただきたいと思います。
  219. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 戦後から昭和四十年までに国立の校数といたしましては五校ふえております。しかし、これは県立医大の国立移管という形をとったものと考えております。  それから昭和四十五年以降は、先ほど申し上げたとおりでございますが、歯のほうにつきましては最近計画的な拡充を進めてまいりました。昭和四十年に三校歯学部の創設を見、四十二年に二校の創設を見て五校歯学部が設置されておる次第でございます。昭和四十五年まで国立の医科大学が新設を見なかった理由は、これは……
  220. 加藤進

    ○加藤進君 いや理由まではけっこうです。まず参考に数字をお聞きしますから。
  221. 木田宏

    政府委員(木田宏君) それじゃ先ほどのお答えで……。
  222. 加藤進

    ○加藤進君 これまでの設立経過から見ましてもこれで日本の医師が十分に養成できるなどとはおよそ言いがたい現状だと思います。これからいよいよどうしていったらいいのかという問題になりますけれども、いままだ国立の医科、歯科大学の一校も存在しないような県が八つあると私、数えておりますけれども、そのとおりでしょうか。
  223. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 四十九年度に設置を予定しておりますところを除きまして九つと考えております。
  224. 加藤進

    ○加藤進君 私の計算よりも一校ふえたわけで、九つということで確認いたします。  そこで文部省は、この九つの県、国立の医科、歯科大学のない県に対して、当然のことながら設立計画を持っておられると思いますけれども、これはどのようなものでしょうか。
  225. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 四十九年度にはその九つのうち五県につきまして創設準備の仕事を進めてみたいというふうに考えております。残りの四つにつきましてもまた順を追って創設準備の仕事を進めていくようにしたいという心づもりでございます。
  226. 加藤進

    ○加藤進君 そうしますと、昭和四十八年度には三つの学校、また昭和四十九年度にも三校、そして今後の設置計画もいまのおっしゃったように、予定されておるということでございますから、そこでお尋ねしたいんでございますけれども昭和四十八年度に三校、昭和四十九年度に三校、すなわち六つの県に医科、歯科大学が創設されたわけでございますけれども、この六つの県というのは、昭和四十七年現在におきましては医科、歯科大学のない県は十五だと思いますけれども、そういう県の中で、あえて六つの県を昭和四十八年、そして昭和四十九年に選ばれたその文部省の創設基準というのは一体どういうものなんでしょうか。
  227. 木田宏

    政府委員(木田宏君) まず設置する地元の準備の状況等をかなり重視して勘案いたしております。医科大学の設置予定の敷地の状況でありますとか、あるいは設置をするに必要な関連の関係病院のあり方とか看護婦の養成の見通しだとか、それらの状況を勘案しながら四十八年度、四十九年度の創設を進めてきた次第でございます。   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
  228. 加藤進

    ○加藤進君 そうしますと、医科大学を創設するにあたって、それぞれの県で、どのように地元に、あるいは学校用地の問題だとか、あるいはそれに関連する施設だとか等々について、どれだけの準備があり、またどれだけの熱意があるかということが国立医科、歯科大学を創設するための前提だ、こういうふうに文部省は考えておられるのでしょうか。
  229. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 国立の医科大学をそこに設置したいという地元の強い御要請が一方にあるわけでございまして、また医科大学をつくってまいりますには、そうした地域のこれを受け入れていただく御協力がなければ、医科大学だけが急にできるものでもございませんから、そうした御希望のある県の受け入れの準備の状態というものを勘案しながら、私どもとしては仕事を進めておる次第でございます。
  230. 加藤進

    ○加藤進君 昭和四十六年十二月に、医科大学設置調査会の報告というものが出ておりますね。この報告には、私立の医科大学はその創設を慎重に行なう等々がありますけれども、国立医大の新設場所について次のような点が指摘されておるわけであります。いろいろありますけれども、その第一に、いま全然局長から指摘がなかった問題があります。医科大学が存在せず、人口に比し医師数が少ない地域であることというのがあります。すなわち医学的な要請に基づいて、いわば現在の医療制度の貧困の状況に基づいて、直ちにこれに対応しなくてはならぬという事情があるためにそこに大学を置く、これが私は医科大学設置調査会報告の第一の意見だと思いますけれども、その点について、文部省側の御見解はいかがでしょうか。
  231. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 御指摘のように、四十六年の調査会の報告には、第一にいま御指摘のことをあげてございます。この時点におきましては、文部省がすべての無医大県を解消するという政府方針を得るにまだ至っておりません。少なくとも数校——二、三校といった程度でとりあえずの設置に着手するということが当時の課題でございました。そういう関係から、当該地域の医師数というものもかなり重視すべきものというふうな御意見があった次第でございます。今日すでに無医大県解消という政府の政策のもとに、残り九県すべてに国公立の医科大学を設けていこうという政策をとっております関係上、先ほどの御説明でそのことを触れなかった次第でございます。
  232. 加藤進

    ○加藤進君 そうしますと、昭和四十五年度に秋田に秋田大学の医学部が一校だけ新設されました。翌年もその翌年も新設はされなかった、それ以前にも国立医科大学の新設はなかった、こういう状況でございますが、あえて秋田に秋田大学医学部を創設されたというのにはそれ相当の理由があったと思いますけれども、その点についてはどういうふうなことなんでしょうか。
  233. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 当時、地元秋田県に非常に強い医科大学の設置、誘致の御要請があったものと考えております。
  234. 加藤進

    ○加藤進君 地元に非常に強い要請がある、お互いに各県は大学をぜひつくってほしいということで競争する、こういう熱意を見計らって秋田にはそのような大学の創設が行なわれた、こう見ていいんでしょうか。
  235. 木田宏

    政府委員(木田宏君) この昭和四十五年までは、ほとんど医科大学の設置という機運は全国的には高まっておりませんでした。しかし医師不足がだんだんと顕在化してきているという事情はあったかと思います。秋田には戦後、医専等のことがございまして、そういう関係から、昭和四十年の初めごろだったかと思いますけれども、県議会等においても県立の医科大学をつくったらどうだといったような御意見が出たり、医科大学の設置あるいは医学部の設置について、他の府県とは異なって強い御要請があったものというふうに考えております。
  236. 加藤進

    ○加藤進君 そうしますと、秋田には特別の事情があった、その事情の最も主たるものは地元の熱意であった、この熱意に動かされて文部省はここに医学部を創設した、こういうことになるわけでございますね。  そこで、私は少し具体的にお聞きしたいと思います。それは昨年の十一月二十八日付のある新聞に、次のような記事が出ておるわけであります。ある新聞と申しましても、きわめて有力な新聞であることを私は申し上げておきます。そこにこういう記事があります。「秋田大医学部は、地元秋田県の三年越しの誘致運動が実り、戦後初の国立医学部として四十五年五月に創設が認められた。しかし、文部省側は医学部設置の条件として、医学部敷地の提供と基礎校舎、医学部図書館、体育館、学生ホール、ボイラー施設の地元負担を要求、秋田県側もこれに応じた。」、「その後、秋田県と医学部設置協力会は秋田大学側と永久無償貸与の契約を結び」と、こういうのがありますけれども、このこまかい内容は別として、このような記事の大筋においては間違いないのでしょうか。
  237. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 大筋におきまして、そのような流れのことであったかと考えます。
  238. 加藤進

    ○加藤進君 そうしますと、創設される秋田大学医学部の敷地やその他の施設については、永久無償貸与という契約を秋田県側と結んで今日まで来ておられる、こういうふうに確認してもよろしゅうございますね。
  239. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 秋田県当局との間に、国がそれを取得するまでの間、無償で提供するというお約束をいたしておるところでございます。
  240. 加藤進

    ○加藤進君 永久無償貸与ということばはきわめて形式的でありますけれども、言ってみれば、貸し料もただ、そして永久にお借りするというんですから、まさにこれは寄付していただいたと同じ実質を持っておると私は考えるんでございますけれども文部省はそうは考えておらないんでしょうか。
  241. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 秋田県の知事ともお話をしておるわけでございますけれども、適当なときを見て買い取らしていただきたい、こう考えておるわけでございまして、いずれ大蔵当局との間にもそういう話を持ち出したい、かように考えておるわけでございます。ただ、現在、無医大県解消ということで、かなり急ピッチで国立大学の設置を急いでおりますし、また急いでおるところにつきましては、とりあえずは若干の借料をお支払いするということで用地の取得を地元の県でやっていただいておりますので、いますぐというわけにまいりませんけれども、時期を見て大蔵当局との間に話をつけまして、お借りしておる用地は全部国に買い取らしていただきたいな、かように考え、またそんな話を各県知事との間でもいたしておるところでございます。
  242. 加藤進

    ○加藤進君 そのことはそのこととしてお聞きしておきましょう。  同時に、こういう医科大学を創設するという場合に、事もあろうに、地方自治体に対して永久無償貸与などという契約でいわば設置が進められるということは、これは、国、とりわけ、文部省方針として、これ、いいんでしょうか。私はそのたてまえをお聞きしたい。こういうことでいいのか悪いのか。このことは正しくないから、今日の方針として、今後これを早く買い取る、こういうふうに改められたのか、その点の文部大臣の御意向を承りたいと思います。
  243. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 国と地方団体とがお互いに協力をし合うということは、決して非難すべきことではないと思います。また四十五年の時点におきましては、秋田県が非常な熱意を示されたことも、いまのお話の間に明瞭になっていると思うのでございます。今度のように、無医大県解消ということで積極的に国立医科大学を設置していきます場合には、そういう関係に持っていくべきではなしに、やはり責任を明らかにして、国が用地の取得もすべきだと、その取得するにあたっては、できる限り、なかなかむずかしい交渉問題でございますので、地元の協力に待たなければならない。しかし財政負担は明らかにしていきたいものだと、かように考えているわけでございます。
  244. 加藤進

    ○加藤進君 私は、この問題については相当深刻な文部省の反省があってしかるべきだと、こういう点で申し上げておるわけであります。このことは、今日この委員会において初めて問題にされたわけではありませんね。これはたとえば一つの資料といたしまして、ここに自治省の財政局指導課の大塚さんの見解というのが「地方財政」四十八年十月号に載っています。これにこう書いてあります。「医科大学用地として地方公共団体の所有地を大学が使用する場合は、当該用地を国が買上げ又は交換により取得するか、適正な料金により借上げる措置をとる必要がある。用地を地方公共団体が無償で国に貸すことは、地方財政再建促進法の禁止するところである。」。禁止されたことをあえて行なわれておるという反省があるかどうか、私はその点をお聞きしたいのでありますが、その前に自治省の御見解を承りたいと思います。
  245. 松浦功

    政府委員(松浦功君) ただいまお読みいただきましたとおりの見解を自治省としては持っておるわけでございます。
  246. 木田宏

    政府委員(木田宏君) やはり個々の事情がそれぞれにあるものと私は考えております。秋田県におきましては、昭和三十八年に県議会において県立医科大学設置の要望がなされておるのでございます。医科大学をその地域につくるということは決して国のためだけにつくっておるのではございません。地域との関係の非常に深いものでございます。そして県立でつくるか国立でつくるか、それはそのときの考え方がございましょう。しかし、やはり地域の医科大学として、地域の医療制度にかみ合ったものとしてそれが育っていくためには、県の当局と一緒になってつくっていくという姿勢が私は必要だと思うのでございます。ですから秋田県が最初に全国に先がけて、こうした県内の世論を受けながら、何とか医科大学を画期的にものにしたいという御熱意があった場合、その御協力のもとに国も一はだ脱いでいくということは、決して非難さるべきことではないというふうに考えております。
  247. 加藤進

    ○加藤進君 地元の熱意、協力によって初めて国立の医科歯科大学も確実に創設される、こういう御意見は御意見としてもっともなことだと思います。しかし、それにしても相手は地方自治体です。地方自治法があります。地方財政法があります。こういう法律の趣旨、精神にもとるような形でも、なおかつ地元の熱意があるからといって永久な無償貸与などというようなやり方で、地方自治あるいは地方自治体自体の財政を圧迫する結果におちいるというような措置を、私は国や文部省はとるべきではないと、こう考えますけれども、いまの局長の御発言によりますと、そういうことは全く頭にないようでございますけれども、その点はどうでしょうか。
  248. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 私は、先ほど御指摘になりました地方財政法の趣旨は、国の一方的な都合によって自治体に負担を押しつけるということは禁止さるべきであるという趣旨のものだと思うのでございます。秋田に医科大学をつくりたいということは国の一方的な都合で秋田に押しつけたという性質のものではございません。でございますから、今日の時点におきまして、国の政策としてそれぞれ考えていくという場合に、いろいろと考え直さなければならない点はあろうかと思いまするけれども、もともと県立でもつくろうかというような御意図のところへ国も一緒になってつくっていく、そういう大学のつくり方というのがあっていいではなかろうかというふうにさえ考える次第でございます。
  249. 加藤進

    ○加藤進君 先ほども自治省からの御見解が出されました。これは、もしこのようなことを行なわれるなら地財法違反であるという自治省の見解であります。しかもこのような見解が、当然のことながら政府においても文部省においてもわかっておられるはずなのに、あえて、なおかつ秋田大学の事態が示しておるように、永久の無償貸与などというような無理なやり方が押しつけられる、こういう点について、私は自治省自身が行政指導の面についても警告を再三発せられておるということを私知っております。  たとえば昭和四十七年七月十五日付で、自治省事務次官の名前で各省庁事務次官あてに出されています。これは昭和四十八年度地方財政措置についてという文書であります。さらに同じ日付で、自治省財政局指導課長の名前で各都道府県総務部長あてに文書が出されています。これは私はあえて時間の都合上読みませんけれども、との文書の中には秋田ということは名ざしておりません。しかし明らかにそれは秋田のような事態を起こしてはならぬという警告であるということは、はっきり私は読み取り得ると思いますけれども、その点自治省の御見解はいかがでしょうか。
  250. 松浦功

    政府委員(松浦功君) 一般論として具体的な事例をあげずに、この種の行為が行なわれることは地方財政再建促進法の二十四条に抵触することになる、したがって、そういう行為をとらないようにということを関係省庁並びに都道府県に御指導申し上げたと私どもは考えております。
  251. 加藤進

    ○加藤進君 ですから、文部省もおわかりのように、自治省としては一般的な形でこのことを警告しておるけれども、具体的に言ったら、それぞれ進めておられる省庁において、ああこの問題はこの趣旨にさわるんではなかろうかと反省されるのはこれは当然でしょう。この指示は、ちょうど秋田の契約が行なわれたのが昭和四十六年十一月、そうですね——。この通達が出されたのは翌年昭和四十七年七月です。ですからこれは秋田においてこのような永久無償貸与というようなことが行なわれたそのあとにおいて、このような指示が出されておるという点では、これは文部大臣もお認めになるでしょう。このような指示が文部省としてどう受け取られたのか。どういうふうにこの問題について検討されたのか。私は担当者からお聞きしたいと思います。
  252. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 一般的に言いまして、国が国の施設をつくるために自治体に負担を押しつけてはならない、いま財政局長から御説明のあったとおりだと心得ております。しかし先ほど来繰り返し申し上げておりますように、秋田県がここに何とかして医科大学をつくりたいという御熱意はかなり前からのことでございました。そうした県と国とが一緒になって医科大学をつくるというつくり方を考えてみてもいいのではないか。それはお互いに持ち寄る、提供するということがあっていいであろう。そうしたことまでも、頭からだめだということではないというふうに思うのでございます。でございますから、永久に無償というふうにおっしゃいまするけれども、秋田の知事、当局とは、国の所有に移りますまでの間——本来国立大学をつくるなら国の所有というふうに帰すべきものが筋道かと思いまするけれども、しかし一緒になってつくるという趣旨から見て、国の所有に移りますまでの間、この土地は秋田県が提供する、条例の定めに従ってそういう御措置をおとりになったということが、私どもは無理を秋田県にしいたという考え方にはならないというふうに思っております。
  253. 加藤進

    ○加藤進君 文部省のそういう考え方を押し進めますと、あなたの県は大学をつくってやりたいけれども用地も十分に確保しない、あるいは大学の付属病院についても十分な手当てをする熱意も見られない。それじゃあなたのところはだめだ、出直しなさいと、これが文部省の態度でしょう、結論的に言えば。そう受け取っていますよ、みんな。したがって秋田だけが恩典を受けたんです。秋田は身銭を切って自分たちの県有地を確保して、それを無償で差し上げます、無償でお貸ししますから国立の医科大学をつくってください——よろしいというんでしょう。こういうことが常例のようにやられるなら、それは地方自治を圧迫し、地方財政法の違反になりますよということを、再三にわたって自治省は警告しているんじゃないですか。この警告を無視しますか。  もう一つ申し上げましょう。国会でもこの問題はすでに再三問題になっている点ですよ。昭和四十五年——まだ秋田大学が創設されない以前です。これはわが党の山原委員が文教委員会質疑でこの点を文部省にただしました。文部省は、秋田大学の医学部の用地の取得方法については、国有財産との交換方式も含めて県と話し合うと答弁しています。これならわかるんですよ、国有財産との交換方式だというんです、県と話し合うと言っているんです。おそらく、この点について、あなたがお答えになるなら、話し合った結果はただでいただくということになりましたから、ちょうだいいたしますということになるでしょう。こんな虫のいいことを国がやっていて、そして大学ができた、できたといっておっていいのかという問題だと思うんです。  当時の坂田文部大臣はどう答えておりますか。今後、地方の財政を不当に圧迫したり、あるいは地財法の法令違反を招くようなことがあっては申しわけないと言っているんですよ。あなたよりしっかりしていますよ、答弁は。そういうことのないようにいたしますと答弁しています。これ守っていますか、坂田文部大臣のこの答弁を生かしていますか、どうですか。
  254. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 先ほども大臣がお答えになりましたように、その後、秋田大学医学部が一つのきっかけになりまして、各地に無医大県解消というような大きな政策課題として医学部設置のことが進んでまいりました。そういう段階におきまして、国の政策として、それぞれの県に進めていくということでありますならば、それと合わせて秋田の取り扱いについても、是正のことを考えていくという時期にきておると思うのでございます。  無償でもらったわけではございませんので、先ほどもお答え申し上げておりますように、その当時から、国会の御論議にもありましたように、秋田大学医学部を秋田県と文部省とで協力をしてつくる、その際に、土地の問題その他については、国が取得するまでの間、無償で借りる、こういうお約束をいたした次第でございます。
  255. 加藤進

    ○加藤進君 それは言いのがれです。明らかに秋田県と文部省との間には永久無償貸与ということが出ています、これは文部省からもらった資料の中に出ているんですから。いまはそういう気持ちはないとおっしゃいましょうけれども、その契約を結ばれたときには永久無償貸与ですよ。  これは、大臣、あなたも自治省畑をずっと歩いておられますから、よく御存じのはずです。こんなことを自治省の立場、いわば政府の立場からいって許されますか。こんなことを許しておいたら、いい条件のあるところは条件のあるところで大学はできる。泣きの涙で、大学はほしいけれども、歯を食いしばって忍ばなくちゃならぬという地域が今後も続くと思うんですよ。こんなことが国の方針として続けられるのはたいへんなことだ。こういう点で、文部大臣文部大臣の立場を離れて、国政を担当されるという立場でひとつ御答弁いただきたいと思います。
  256. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 先ほど申し上げましたように、秋田大学医学部の用地につきましては、小畑知事に私から適当な時期を見て会見をしてもらいたい、こう申しておりますので、御了解を願いたいと思います。  私は、各府県の立場から、ぜひこういうような施策を行なってもらいたいという問題がございましょうし、また各省の立場から、積極的にそういうことをやりたいという考え方もあるのでございます。財政当局としては、地方財政のことを心配する自治省、国の財政のことを心配する大蔵省があったりしまして、なかなかその間にいろいろと話の行き詰まる場合もあったりするわけでございます。  医科大学のことに例をとりますと、ずいぶんたくさんな県立医科大学が国立に移管になっております。土地の提供どころじゃないのでございまして、ちゃんと設備までいたしまして、それがそのまま国の所有になっているわけでございます。加藤さんの論法をもってしますと、みんなこれを返してしまえ、こういうことになるかもしれません。しかし国としては移管を受けましてから、経常的な経費などやはり相当な額をかかえ込んできていると思うのでございます。問題は、私は国がその施策を行なうために、地方団体の弱みにつけ込んで負担を無理じいする、これはぜひ避けなければならない、こういうことだと思うのでございまして、施策を行なうために相互に協力し合う、これは好ましいことじゃないだろうか、こう考えているわけでございます。  しかし、お互いに協力し合うという名のもとに、無理じいをする面が非常に多かったものですから、地方財政再建促進特別措置法がつくられましたときに、一般的に寄付を禁止してしまったわけであります。一般的に寄付を禁止することがはたしていいのかどうか、私はこれはやっぱり検討を要する課題だと、あくまでも国と地方団体とはお互いに協力し合う性格のものだ。ただ弱みにつけ込んで、負担を各省が自分の施策を行ないたいばっかりに押しつけてしまう、これは避けていかなければならないことだ、かように考えているわけでございます。  ちょうど医科大学の問題につきましては、無医大県解消という大きな政策をとりだしたわけでございまして、これらにつきましては国が責任を負って用地の確保もしていかなければなりませんので、おのずから秋田の問題も解決できるようになった、かように考えているわけでございまして、今後ともいま申し上げますような考え方で努力をしていきたいと思っております。
  257. 加藤進

    ○加藤進君 私は何も地元からぜひ受け取ってほしいといって、好意をもって寄付をされるのに対して、それもお断わりしますなどということを言っておるわけじゃないんです。  具体的にもう少し聞きますけれども、この秋田大学医学部の設置にあたって、秋田県が負担したのはどういう事項なのか、またその負担にあたっての金額は一体どれくらいに当たるのか、これはもう大学学術局も御存じだと思いますから、ちょっと御報告願いたい。
  258. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 秋田大学を設置するにつきまして、秋田県が地元としていろいろと用意をしてくだすったものは土地あるいは施設、設備等ございます。また県が国に病院を移管されております。そうしたものを勘案いたしまして、秋田県のほうで負担されました金額は一応二十三億ぐらいかと考えております。
  259. 加藤進

    ○加藤進君 大体、その数字は妥当のように私も計算しています。  文部省のほうからいただいた資料によりますと用地十六万平米、この平米を取得するにあたっての県からの支出は六億円、それから整備費として一億四千万円、基礎校舎九千平米、これは協力会が提供するという形になっておりますけれども、その支出は八億四千八百万円、さらに県立の病院を整備して、これを医科大学の付属病院につくりかえる、整備し直すということのために七億五千万円の費用を要するわけであります。こういう負担をあえて覚悟しなければ、国立医科大学は誘致できない、こういうことになりますと、事柄はきわめて重大だということを私はこの秋田大学の問題を通じて警告しておるわけでありまして、自治省もまた、そういうことを行なわれるのは地財法違反であるという断定までしておられるわけでありますから、この問題の重要さをぜひしっかり認識していただきたい、こういう点を申し上げておるわけであります。  私は、その点について大臣、やはりこういう永久無償貸与などというような契約を地方自治体と結ぶということ、また地方自治体がそれを通じて非常に大きな負担を負わされるということ、そういう意味において、このようなことは地財法違反のおそれがあるから、今後は絶対に文部省としてはいたしません、こういうようなことは文部大臣の言明として聞かしていただけるわけでしょうか。
  260. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 手元に秋田県との間の契約文書がございまして、それを読みますと、その契約書の第四条は「無償貸付期間は、昭和四十六年十一月十八日から乙の所有となる日までとする。」、こう書いてあるわけでございまして、国が買い取らせてもらえる日までだということでございます。永久ということじゃなしに、なるたけ早い機会にそのような措置をとらせていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  261. 加藤進

    ○加藤進君 ですから、そういう点を早く改めようというならいまからでもおそくないですよ。無償でなくて、とりあえず有償にして適正な価格でとにかく貸借関係を結び直す、こういうことは私は当然やるべきことであるし、やり得ると思うんです。自治省いかがでしょうか、その点は。
  262. 松浦功

    政府委員(松浦功君) 土地を、この問題についてであれば、国にお買い取りをいただくか、そうでなければ等価交換という形で国有地と御交換を願うか、あるいは通常の良識的な価格で賃貸をしていただくか、三つの方法のうち一つをおとりいただければ、地方財政法二十四条の問題は解決するかと考えられます。
  263. 加藤進

    ○加藤進君 それでは適当な時期に買い取るつもりだと、これはけっこうです。  しかし適当な時期ということで私はあいまいにさるべき問題じゃない、即刻いまのような永久無償貸与というような貸与形式はやめて、とにかくまず有償に踏み切るということは私はすぐにやっていただく必要があるし、そうしつつこれを国有地として買い上げる、この措置をしっかりとっていただくことができるかどうか、その点確かめておきたいと思います。
  264. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 事務当局に聞きますと、土地は四十九年度から有償という予算措置をしているんだそうです。  ただ私はそうぎこちなく考えなくても早く買い取ればそれでいいんじゃないかという気持ちは抜け切れません。四十八年度に、史跡の買い取りにつきまして国費買い上げの分も、あるいは八割負担で地方団体に買い取ってもらう面も、場合によっては地方団体に全部地方債で買い取ってもらいまして、後年度で元利を払っていく方法も講じたわけでございます。おくれればおくれるだけ、それだけ利子負担分をかさ上げしていくことは当然のことでございまして、これはやはり国、地方それぞれ便宜な方法を考えていけばいいんじゃないだろうか。国と地方の間を私はもう少し協力的にお互いにし合っていくという姿勢が根本的に大切だなという感じを持っておるわけでございます。  秋田県と文部省との間も双方が困らないように努力し合っていきたい、協力し合っていきたい、こう考えるわけでございます。決して今後地元の弱みにつけ込む、あるいは国の負担すべきものを転嫁する、そういうような態度はとらないようにしたいと思います。根本はそうだと思うのでございまして、そういう姿勢で臨んでいきたい、かように考えております。
  265. 加藤進

    ○加藤進君 もうくだくだ申し上げる必要はないと思いますけれども、とにかく文部省も永久無償貸与などというようなことを今後とも続けるつもりはない、昭和四十九年度には有償に切りかえる、そして遠くない時期に国有地として買い上げる、こういうことですね。  そこで最後的に確認したいのは、医科大学用地として地方公共団体の所有地を大学が使用する場合は、当該用地を国が買い上げる、または交換による取得をするか、適正な料金により借り上げするというような措置が必要である、この点を自治省が強調しておられるわけでございますけれども、この自治省見解については、全面的にその自治省の見解を認めて今後善処される、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  266. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 一般論といたしまして、自治省の見解は十分承知をいたしております。
  267. 加藤進

    ○加藤進君 一般論ですか。私が言いたいのは、いよいよ昭和四十九年度三つの大学の医学部あるいは医科大学が創設されるわけでしょう、もう予定の大学がちゃんと各県でありますね。その各県が今日どのような苦労をしておられるかということをもっともっと文部省や国は考えていただきたいということなんです。こういう秋田大学のようなことが事例になって、既成事実になって、こういう方式を文部省がとられるのだから、そのためにおれたちは歯を食いしばってでもこれに対応しなくてはならぬというふうに、いわば行政指導を誘導されてはならぬということであります。  その点について、これはいままでの事柄だけではない、今日の問題であるし今後の問題なんだから、今後ともこのような無償で地方公共団体の用地を借りるとか、あるいはその用地のいわば取得や整備を地方自治体に要求するとかというようなことはしないと、その点につきましてはぜひともでき得べくんば国有地として買い上げる、できない場合にはそれに続く次善の措置を必ずとるということを、今後の問題とし今日の問題としてはっきり御答弁いただけるかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  268. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 用地の取得につきましては、やはり地方団体の御協力をいただきませんと、国が直接やるのはなかなかむずかしいと思います。経済的な負担の問題につきましては、有償で借り受けるか、なるたけ早い機会に買い取らせていただくかというようなことで、負担の転嫁をするようなことはいたしません。
  269. 加藤進

    ○加藤進君 こういうことで地方自治体の苦しみを十分に理解されて、地方自治体の協力が前提であるというような大学設置の考え方を改められて、大学は国の立場からして必要なところに置く、そのためには金を出す程度のことについては全力をあげて国が努力する、こういう方式を私は絶対にとっていただかなくてはならぬ、こういうふうに考えますし、またいよいよ国立大学の設置法の改正法案が上程される段階になっておるわけでございまして、この審議におきましても、以上申し上げたような問題は現在的な問題としてまた論議されなくてはならぬ問題だと思いますので、その点文部省として十分に秋田大学の事例を踏んまえながら、今後、このようなことで国会で再三にわたる論議を呼び起こすなどというようなことのないように、ひとつ行政的にもしっかりとした適正な措置をとっていただきたいということを最後に希望いたしまして、私の質疑を終わります。
  270. 野末和彦

    ○野末和彦君 大学の入学試験の最中でありまして、入試のあり方とか受験制度の問題、それから大学の自治というようなことまで幅を広げますと、限られた三十分の時間ではとても議論が尽くせませんので、私は入学試験ということに限りまして、この狭い中で質問をしたいと思います。  現在のところ、大臣も御承知だと思うんですけれども、大学の入学試験はありますが、大学当局はこの答えは教えないのが常識ですね。で数カ月たちまして問題集などが市販されて、でまあ一般にもどんな問題が出たかということはわかります。しかしそこに出てくる答えというのは、これは大学の正式発表じゃありませんから、中には怪しげな答えもあるかもしれません。ただ受験生にとってみますと、試験を受けた、ところができたかどうかもさっぱりわからないで、試験が終わったらただ結果だけ待てという、非常に一方的で不親切な話じゃないかと思うわけですね。  そこで、まず文部当局にお聞きしたいのですが、大学はなぜこの入学試験の問題、それと同時に答えですね、これを発表しないことになっているのか、ちょっとそれをまず聞かせていただきたい。
  271. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 長い間のそうした慣行のようでございまして、その理由をというお尋ねに対してどうも的確にお答えできるとも思えません。  ただ試験問題によりましては、事柄のきわめてはっきりしたもので選択肢のうち一つだけが正解というようなものにつきましては、確かに答えも明確に示すことができるかもしれません。しかし問題によりましては、その答案の書かれる思考過程でありますとか、そうしたこと自体意味を持つものもある。あるいは幾通りかの考え方があって、それに対してそれぞれ評価があるというような試験問題もおのずからあろうかと思います。ですから全部について正解を出すということ自体が非常に無理を生ずるということも予想できるのではないかというふうに思っております。
  272. 野末和彦

    ○野末和彦君 実際そのとおりですね。記述式の問題については非常に主観が入りますので、模範回答というものも、あるいはこれが正解だというものも非常に出しにくいと思います。学術局長のおっしゃるとおりですね。マル・バツ式のようなものは客観的にはっきりわかります。ですから私の言うのは、できるものだけでもまず答えを出すのが受験生に対して当然のやり方じゃないかなと、こう思っているわけなんです。  御存じかもしれませんが、入学試験が終わりますと、すぐ正解表というか、配られるわけですよ、ガリ版で。これは在学生なり先輩のアルバイトなんですけれども、そういうときに受験生はこれはもう自分ができたかできないか知りたいですから、争って正解を知りたがって買いますね、高い金出して。そうすると一方で大学当局はこれは大学とは関係がないんだと、あの答えは責任持てないというようなことをまたビラをまくというか、ビラを配るところもあるわけです。ということは受験生は非常に正解が知りたい、しかし大学のほうが全然教えてくれない。そこでアルバイトも成り立つわけですけれども、これを考えまして、私こう考えるんです。  自分でも受験をやりましてそのとき感じたことですけれども、やはり正解を知りたい。知りたいというだけでなくて、それを知ってもう一度自分の学力を見直したいという気持ちも当然あるわけですね。ですから試験が終わったその晩には、やはりせめて問題などを持ち帰って、あるいは後日、大学はどれを正解にしたのかということを受験生が検討するぐらいのことはできるのがあたりまえであると。ですから受験生心理というものを考えますと、やはり出題した大学というのは、これが正解であるあるいは模範解答であると、できる範囲で公表するのが受験生に対する責任のようなものじゃないか。サービスというよりも、もう責任じゃないかというふうに私は考えるわけです。  いかがでしょうか、文部大臣、受験生心理を考えた場合、正解を知りたいという気持ちはこれはもう御理解いただけると思うんですがね。それに対して大学は何もしない、結果だけ発表して、どこができて、どこが間違ったか全然わからぬといういまのあり方は、私はちょっと何か受験生に対して片手落ちのような気がしますが、文部大臣の御意見はいかがでしょうか。
  273. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 野末さんのような意見が新聞の投書欄にも数多く散見されるように思っております。受験生の心理から考えますと、当然だなと、こう思うわけでございます。したがいまして適当な機会に私は大学当局に問題を投げつけたいと思っております。答えが必ずしも一つでない場合もあるでしょう。だから解答例としてこう思うけれども、なお若干それには幅があって考えてもいいんだという注釈をつけてもいいじゃありませんかということで、ひとつ公表することに踏み切ったらどうですかと、こういう検討を求めたい。  文部省が入学試験問題の改善につきまして、大学の先生方をわずらわしまして入試問題改善協議会というものをつくっているわけでございますので、そこでひとつ検討してもらおう、こういう考えを持っておるところでございます。
  274. 野末和彦

    ○野末和彦君 それは実にいいですね、受験生は当然大歓迎すると思います。やはりいままでの大学の一方的なやり方ではなくて、受験生の気持ちというものがいまや大切だと思うんです。  そこで、大臣、私いま改善協議会の話が出ましたけれども、ただ心情的に受験生のために公表したほうがいいんじゃないかというだけではなくて、私はいろいろ感じていること、あるいは受験生などから聞きまして、調べて、なるほどもっともだという点で、ひとつここでもって文部当局の意見、大臣の意見を聞きたいんですが、大学入試問題にいわゆる欠陥問題があるんですね。欠陥というのは最近のはやりことばで受験生が言っているわけで、私は失格問題、入学試験にふさわしい資格を備えていないような問題だというふうに考えているわけですが、いずれにしても欠陥問題、失格問題というのがありまして、これはもちろん具体的に例をあげなければなりませんが、学術局長のお話に出ました選択式でいきますと非常に簡単なんですね。次の五つなり六つのうちから正解を選べと。そういう場合にどれが正解だか、どうも常識的に考えてもさっぱり判断がつかない。受験参考書をあとで数カ月後に見ればみんな違うんですね。で大学当局に正解はどれだと聞いても教えてくれないという問題が事実毎年あるんですよ。  そこで、いまお手元にお渡しした問題について、一例ですから、非常にわかりいいですから、ちょっと御意見を聞かせていただきたいんですが、別にテストするわけじゃありませんで、私もいろいろ考えたけれども、さっぱり正解がわからないんです。これがはたして入学試験としてふさわしいかどうかの御意見を伺いたいんですが、英語の問題なんです。もちろんこれは専門家に訳してもらいましたが、英文があるわけです。その英文の趣旨に合致した項目を次の五つの中から選べというのがお手元の資料です。  参考までに読ましてもらいますと、これは日本文でやりますが、レーニンに関する問題です。「このようにして、レーニンは近代世界における最大の革命の天才となり、また古今を通じて最大のそれのひとりとなった。」——「それ」というのは「革命の天才」ですね。「彼は政治的現実と実際的な政務に対する鋭い感覚でもって、著しい知的分析力と自らの下した結論の正統性に対する狂信的な信念とを結びつけた。彼は、この非凡なる能力の類いまれなる結合を用いることによって自らの党を統一し、革命のための強力な武器にまでしたてあげた。それによって彼はロシアの発展の全体をねじ曲げて新らしい回路へ導き出し、そのためロシアはヨーロッパの他の諸国とは次第に異ってゆくことになった。彼は、まさに文字通り世界史の進路を変えたのだ。」というのが英文ですね。  で、この問題文の趣旨に合致している答えを次の五つから選べというんですが、この五つがどれを見ても合致するんですよ。Aは「レーニンは古今を通じて最も偉大な人間のひとりであった。」というんです。Bは「彼が結びつけたのは、分析力と強力な信念であった。」、Cは「彼は、いってみれば世界史の進路を変えた。」、Dは「彼は、党を統一するために自らの能力を用いた。」というんですよ。Eが——これはちょっと除外でしょうけれども、「ロシアは、人々が予期していた通り発展した。」、これはもう明らかに違うと思います。  いずれにしても、これは去年の問題ですが、最初にお断わりしておきますけれども、私もよく考えまして、どれもみんな合致しているように思いますんで、去年の問題集——四社の問題集を取り寄せて調べましたら全部答えが違っているんです。受験生が迷うのはあたりまえですね。そこで大学当局に聞きましたら、教えてくれない。こういうことなんですが、大臣でしたら、これどれだとお思いですか。  これは何ともあれなんですが、迷うという点で、受験生がいかにこれでいらいらして、あとで不愉快な思いをしているか。入学試験の公正というような立場から考えて、こんな問題がどんどん出てきて採点の対象になるということは、ぼくは実に不明朗だと思っているんですが、参考までにどれだとお思いですか。
  275. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) これはやはり答えが一つに限らないという例だろうと思うんでございます。大学当局も答えが一つに限られるというつもりで出したのか、答えが幾つでもそれぞれを適当な答えと採点をするという例と考えているのかも知れません。そういうことで公表をはばかってきたんだろうと思うんでございますけれども、私としては、正解をある程度限定的でもよろしいから出すような方向に検討をまとめてみたい、こう思っております。
  276. 野末和彦

    ○野末和彦君 まあどれも正解だということは現実にはあり得ないわけで、きっと大学のほうでは、このうちのどれかが正解だったと思うんです。やはりそうなると、どれが正解だということを発表して——いろいろ問題が起きる以前に、どれが正解かわからないんだから、この正解を知らす責任が出題者としてはあると受験生が考えるのはあたりまえだと思うんですね。  そこで、さっきの改善協議会のお話を聞きたいと思うんですが、文部当局のほうも毎年各大学の入学試験というものを検討していらっしゃると思うんですね。大臣の結論が出たような感じで、これから公表はどうかという姿勢を大臣がおとりになるというんで、私のほうからはもう言うこともないようですが、とりあえず、いままでの経過からいって、この改善協議会に入試問題がいろいろ出てきて検討する。この場合に、この種のいわゆるどうも入学試験で採点の対象にするのは不適当ではないかというような問題ですね、いわば不適当問題のようなこの存在はやはり改善協議会でも話題になっているわけですか。
  277. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 毎年度文部省では、入学者選抜方法の改善に関する会議の協力を得て、各大学で実施された入試問題の検討をしていただいておるわけでございます。そして必要な参考資料をつくりまして国公私立の大学並びに都道府県教育委員会に配付をいたしておりまして、あまりにも不適切と考えられるもの、ふぐあいなもの等については反省を求める、またいろいろな改善の参考に役立てていただく、こういうことをやっておるところでございます。
  278. 野末和彦

    ○野末和彦君 そうすると、不適切な問題というふうにその改善協議会が認めたものは大体どのような傾向のものでしょう。もちろん具体的にお聞きできないんですけれども、大ざっぱに言ってどんなものか、参考までにお聞かせください。
  279. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 大学の入学試験問題が高等学校の学習指導要領との関係で適切であるかどうかというようなことが一番基本になるのでございまして、高等学校で通常履修している範囲を逸脱しているかどうか、あまりにも難解過ぎはしないか、そういった点を各教科別にいろいろと例示をしておるわけでございます。  これは(資料を示す)数学につきましての大学入学者選抜試験問題作成の参考資料というものをつくって具体的な反省の中から関係大学に考えてもらう。これは(資料を示す)社会科につきましての参考資料でございまして、教科別にそれぞれこうした資料をつくりまして配付をしておるところでございます。
  280. 野末和彦

    ○野末和彦君 そういう場合、まあ不適切であるという指摘でいろいろ反省を求めた場合、学校のいわゆる反応といいますか、態度はいかがでしょうか。その後、それぞれ改善はされているんではないかと思いますがね、いまだに私らの考える失格問題、欠陥問題がなくなりませんので念のためお聞きしますが、率直に認めますか、それともそれぞれ大学なり学校の自主性に文部省がいろいろ介入してはいかぬというような反論があるのか、その辺の各学校の反応などを、わかる範囲でひとつお答えください。
  281. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 個々の事案について、それぞれの大学がどのように改善をしてくれたかというのは翌年の試験問題にあらわれてくるわけでございまして、過去のものにつきまして一々あれはあやまるというような反応をもらっておるわけではございません。でございますから、的確にはいまのお尋ねにお答えすることができないわけでございますが、こうして(資料を示す)例をたくさんあげておるわけでございますが、例七十三などとして範囲を越える次のような試験問題の例をあげておるわけでございます。そこには必ずしも学校の名前がそのままあがっておるわけじゃございませんけれども、問題ごとに例を不適当なものとして書きまして、こういう試験問題は考え直してもらいたいという指導をいたしておりますから、これらは翌年の試験問題を作成いたします場合に教科別の担当者がやはり十分活用してくれておる、このように考えておる次第でございます。
  282. 野末和彦

    ○野末和彦君 それは大学ですね。
  283. 木田宏

    政府委員(木田宏君) そうでございます。
  284. 野末和彦

    ○野末和彦君 あまり内容についてチェックするというような感じになりますと、やはり大学の自主性の問題とかいろいろその辺に差しさわりが出てくるのじゃないかと思いますから、学校側の反応というものをお聞きしたかったわけです。  ただ不適切と一言で言いますが、いま教科の範囲を越えているという問題が出ましたね、それから難解過ぎるというようなこともありましたね。そのほかに私のほうでメモをとってみますとね、特に歴史関係、古代史の関係になりますと、学界に定説がないのがずいぶんありますね。その学界で定説がないのに、ある一つの学説を選ばせる。そして、それを正解にするというような古代史の問題もあるわけです。  それから最近特に多くなってきたのが、ことしもう出ているのですがね、これは私立ですけれども、有名私立で英語の問題ですが、この英語で特に多いのが外人が見てもわからないという英語の問題です。どうもこれは何とも信じられないようなことですけれども、わからないというよりも、こういう英語は使わないと。だから外人が首をかしげちゃって、変な問題だと。正解を出せといわれても困るというような、こういう問題があるんです。二、三年前まではアクセントの問題なんかで、米語と英語の違いをごっちゃにして、英国式が正解で米国式がだめというようなところも極端にいえばあったんですが、最近それはなくなりましたが、やはり外人が見ても首をかしげる変な問題がある。  それから、さっきのお手元で見ていただいております、正解がどうもあいまいで、どれも正解なようなんで、どれを選んでいいのか冷静に常識で考えてもどうも迷うという選択式ですね、こういう問題を感じるんですが、このような問題もやはり不適切な問題として改善協議会では何かチェックしているわけですか。
  285. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いまおあげになりました、外国人が読んでもわからないような英語の試験問題、こうしたものは当然関係者の指摘にあがってくるわけでございます。  先ほどお配りいただきましたこれが不適切であるかどうか、私はちょっと自分で判断する能力ございません。多少性格判断に似たようなクエスチョンで、これをどういうふうに活用するかという大学側の考え方と見合ってこれ自体は考えてみなければいけないんじゃないかと思ったりいたしております。
  286. 野末和彦

    ○野末和彦君 受験生は、文部省も一応そういう点で不適切な問題があることを承知しているということを聞いただけでも、幾らか安心すると思うんですよ。  しかし、大臣、いまお聞きのとおり、大学の入試問題には意外とずさんなものが、中にはですよ、全体からいえばもちろん少ないんです、少ないけれども、そういうちょっと怪しげな問題にぶつかった受験生にとってはこれはたいへんなことですから、こういう欠陥問題というか、不適切問題がすごく多いんですよね。これはぼくは大問題だと思うんですね、こういうことで受験制度あるいは入試が公正に行なわれているかというようなことを考えます場合に。ですから、もう大臣は最初にお答えになりましたが、いままでの答えを教えない、問題も公表しないという秘密主義ですね、まあ秘密主義というとことばは悪いですけれども、そういう慣行、これを何とかして破って、出題者の責任において模範解答をできる範囲で公表するというふうに持っていってほしい、こう思っているわけです。  そこで大臣にお聞きしますが、文部省からそういうことを国公立の大学に言った場合、どうなるんでしょう、それはすぐ実行されるものですか。ことし、まだ国公立は始まっていませんからね、試験が。ですから、ことしからでもできれば非常にありがたいと、こういうふうに思っていますが、大臣、どうでしょう、おことばだけじゃなくて、実現性の問題ですが。
  287. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 入学試験のあり方というものは、それまでの課程の、学校教育の内容を左右する非常に大きな問題でございます。国立学校の入学試験問題につきましては、文部省としては五十一年度からできれば統一学部テストができないものかなということで相談を持ちかけているところでございます。かりにそれができる、そして改善協議会でも公表すべきだという結論になりますと、国立大学に関しまする限りは、そういうことで解決できるのじゃないだろうかというふうに思うわけでございます。  いずれにいたしましても、そういうところでどういう結論を出してもらうか、その結論が出ますと、各大学が大体それにならってくれるんじゃないだろうかなという気もするわけでございます。強制じゃなしに、個々の大学がそういう意見を尊重するという形である程度普及するんじゃないだろうかな、こう考えておるわけでございます。  四十九年度のことについて、いますぐというのは私はやはり無理じゃないかと思いまして、入試の改善協議会で結論をいただいて、五十年度の試験についてそういう方向がとられるかどうかということになるんじゃなかろうかなと、もうすでに試験が始まっておりますので、いまではそれだけの時間的余裕はない、こう思います。
  288. 野末和彦

    ○野末和彦君 それでは、大臣の基本姿勢としては、やはり大学が入試問題の答えを公表するという方向が望ましい、こういうふうに考えていいわけですね。
  289. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私はしろうと考えにそう思うものですから、そういう方向でひとつ検討を改善協議会、改善会議にはからしでいただきたい、こう思うわけであります。
  290. 野末和彦

    ○野末和彦君 技術的にいろいろ問題もあるようなんですが、私なんぞの考えでは、やはり答えを学校の各学部の掲示板に張り出すことでもいいですし、あるいは希望者に別に実費を取って学校が正解表ですか正解答案を送ってもいいでしょうし、技術的な問題はできると思うんです。ですから当然そうすべきだと、これが受験生の立場からいっても望ましいし、それから入試の公正ということを考えた場合にもこれが望ましいという基本姿勢さえはっきりすれば、大学はそのとおりやってくれると思うんで、ひとつ、ことしは無理というお話ですが、来年からぜひこの程度のことは実現させてほしい、こうお願いしておきます。  あと残りの時間で、私は、今度は入学試験でなくて、先ほどから問題になっております大学生の数が多過ぎるという問題についてもちょっと質問したいんです。お答えはまあ大体先ほども出て予想されておりますが、医大——医科、歯科、そういうことですけれども、それでなくて、ぼくは一般大学についてもお聞きしたいんです。  いま学校には総定員というのがあるわけですね。全国の、これは四年制の大学だけでけっこうですから、四年制大学の学校数と国立、公立、私立全部を含めます総定員が何人で、実際に在籍している者が何人かというその数をひとつ……
  291. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 大学につきまして国立、公立、私立の別にちょっと申し上げます。  国立の総定員は二十八万六千人——端数はちょっと切り捨てますが、公立は三万九千人、私立は六十五万一千人、合わせて九十七万七千人でございます。それに対して在籍をしております数は、国立におきまして二十九万二千人、公立で四万四千人、私立で百十八万五千人、合わせて百五十二万三千人でございまして、国立、公立はほぼ総定員と在籍者が見合っておりますが、私立は一・八倍ほどになっております。
  292. 野末和彦

    ○野末和彦君 そこなんですね、この総定員というものがきまっておりながら、もう一・八倍近い、八割増の大学生がいる、これでは満足な教育ができるわけがないんですね。にもかかわらず毎年毎年合格者発表が水増しなんですね。  学校側に聞いてみますと、事実、いわゆる正式に手続をしない、落ちこぼれていく分がありますから、その分を見て水増しを発表しているんだと言っておりますし、今度もある大学のように初めから水増しで合格者を発表するといったところもあるんですが、それにしても現在、特に私立の場合八割オーバーの学生数をかかえて毎年毎年水増しをやっていくということになりますと、この調子でいきますと、これに何らかのある時期に歯どめをかけませんと、総定員の二倍以上の、学校によっては——一々その大学名を出せませんが、二倍、三倍、四倍、五倍の在学者をかかえている大学もあるわけですよね、東京で。六大学でも——六大学と言っても野球のほうですけれども、六大学でもやはり五割、六割なんというところがあるわけですね。  これはどうでしょう、大臣、法的規制力がないというお話を聞いているんですが、何らかの点でこの水ぶくれというか水増し入学を規制していかないと、総定員をきめて、大学の施設あるいは設備、それから教授数ですね、そういうものをきめたのが何にもならないで、二倍以上の大学生があふれている、いわばてんぷら学生ですね、本人たちには悪いけれども。それは結局日本の教育のレベルを低下させるだけですから、規制することが無理だと言うだけでなくて、もっと前進した考え方をここで示さなきゃならないんじゃないか、野放しはもう限界にきたと私考えるんですが、いかがでしょうか。
  293. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 大学設置の認可を受けたそのすぐから定員をオーバーして入学を許可している学校もあったりするわけでございますが、これが批判されるようになりましてから、その後、ことしの大学からの定員増加の申請を見ておりますと、施設を整備して、そうして現状に定員を合わせるための定員増加の申請もかなりあったようでございます。大学当局が自粛をし始めてくれた傾向だというふうに私は受け取っているわけでございます。  同時にまた、現状では、文部当局は設立を認可する場合と解散を命ずること以外には権限を持っていないわけでありますが、四十五年に経常費助成を始めましたときに、一応助成を受けている学校につきましては、文部省が規定に反したことをやっています場合に変更を求める権能を持つことにしたわけであります。したわけでありますが、それが国会のお考えもございまして、一応眠らされているわけでございます。私は四十九年度からぜひこの規定を働かせてもらいたい、こんな希望を持っているわけでございまして、そういう方向で進めさしていただきたい、かように考えているわけでございます。そうしますと助成を受けている学校につきましては、文部省として、この監督規定を働かして、これを根拠にして変更を求めていくことができるということになっていくわけでございます。いままででありますと単なる意見でございますが、それが働きますと、法に基づく勧告ということになってくるんじゃなかろうか、かように思うわけでございます。
  294. 野末和彦

    ○野末和彦君 その問題になりますと少し時間が足りませんので、このくらいにきょうはしておきますけれども、くれぐれもひとつ入学試験の答えは公表するということ、それから水増し入学というものはもう限界にきているから、これについて何らかの対策を考えていただきたいということ、この二点を強調して質問を終わります。
  295. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ほかに御発言もないようですから、文部省決算につきましては、この程度といたします。  なお次回の委員会は、明二十七日午前十時から、法務省、自治省及び総理府のうち警察庁、北海道開発庁、それに関係する公営企業金融公庫並びに北海道東北開発公庫関係を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十八分散会      —————・—————