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1974-05-09 第72回国会 参議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月九日(木曜日)    午前十時十分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十五日     辞任         補欠選任      稲嶺 一郎君     源田  実君      星野  力君     岩間 正男君  四月二十六日     辞任         補欠選任      源田  実君     稲嶺 一郎君     茜ヶ久保重光君     加藤シヅエ君      岩間 正男君     星野  力君  五月八日     辞任         補欠選任      萩原幽香子君     栗林 卓司君  五月九日     辞任         補欠選任      長谷川 仁君     桧垣徳太郎君      増原 恵吉君     藤田 正明君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         伊藤 五郎君     理 事                 木内 四郎君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君     委 員                 杉原 荒太君                 桧垣徳太郎君                 藤田 正明君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 栗林 卓司君                 星野  力君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君        外 務 大 臣  大平 正芳君        運 輸 大 臣  徳永 正利君    政府委員        内閣官房副長官  大村 襄治君        法務省刑事局長  安原 美穂君        外務大臣官房長  鹿取 泰衛君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        運輸省航空局長  寺井 久美君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○民間航空の安全に対する不法な行為防止に関  する条約締結について承認を求めるの件(内  閣提出、衆議院送付) ○業務災害の場合における給付に関する条約(第  百二十一号)の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○連合審査会に関する件 ○日本国中華人民共和国との問の航空運送協定  の締結について承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) ただいまから外務委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月二十六日茜ケ久保重光君が委員辞任され、その補欠として加藤シヅエ君が選任されました。  また、昨八日萩原幽香子君が委員辞任され、その補欠として栗林卓司君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 民間航空の安全に対する不法な行為防止に関する条約締結について承認を求めるの件  業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上両件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。大平外務大臣
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました民間航空の安全に対する不法な行為防止に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、国際民間航空機関の主催のもとに一九七一年九月モントリオールで作成されたものであります。その内容は、航空機破壊行為等犯罪と定め、これらの犯罪行為につき重い刑罰を科し得るようにすることを約束し、犯罪行為が行なわれた国、航空機登録国犯人の所在国等関係国による裁判権設定義務について規定するとともに、各締約国は、犯人関係国に引き渡すか、または自国の権限のある当局に事件を付託すべきこと等について規定するものであります。  この条約締結することは、民間航空の安全を確保する見地から有意義と認められますとともに、この分野における国際協力を推進する見地からもきわめて望ましいことと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)の締結について承認を求める件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九六四年に国際労働機関の第四十八回総会で採択されたものであります。その内容は、労働にかかる事故及び職業病の場合に支給される給付について、保護対象者範囲給付の事由並びに給付の種類、内容、水準及び支給期間等のほか、給付関連するスライド制支給停止及び不服の申し立て等について規定したものであります。  わが国におきましては、主として労働者災害補償保険法及びこれに基づく政省令により、条約趣旨は充足されているところでありますが、この条約締結することは、わが国における労働者に対する災害補償の確保をはかる上からも、また、労働問題の分野における国際協力を推進する上からも、有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上、二件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 本件に対する質疑は、後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  6. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 連合審査会に関する件についておはかりいたします。  日本国中華人民共和国との問の航空運送協定締結について承認を求める件について、運輸委員会から連合審査会開会の申し出がある場合には、これを受諾することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  9. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 次に、日本国中華人民共和国との間の航空運送協定締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。大平外務大臣
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました日本国中華人民共和国との問の航空運送協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国は、昭和四十七年九月の日中国交正常化以後、日中両国間の各種実務協定締結のための準備を進めてまいりました。そのうち、航空に関する協定につきましては、昭和四十八年三月以来、中華人民共和国政府との問で協定締結のための交渉を行なってきましたところ、本年四月に至り、案文について最終的に合意を見ましたので、昭和四十九年四月二十日に北京協定署名を行ないました。  この協定は、両国指定航空企業特定路線において航空業務を運営する権利の相互許与、業務の開始及び運営についての手続及び条件並びに航空機の使用する燃料等に関する関税の免除、事故の際の救援措置証明書相互承認等技術的事項を取りきめるとともに、両国指定航空企業がそれぞれの業務を行なうことができる路線を定めるものであります。この協定は、日中共同声明具体化として日中友好関係の強化に資するのみならず、ここ数年来顕著な増大を見せている日中問の人的及び物的交流の一そうの増進に役立つものと考えられ、また、この協定によって日中問航空路が開設されることは世界の航空網に一つの大きな幹線を与えることになり、その国際的意義も少なくないと考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  11. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 引き続き補足説明を聴取いたします。伊達条約局参事官
  12. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 簡単に補足説明さしていただきます。  協定内容につきましては、ただいま大臣より説明がありましたとおりでございますが、路線につきましてさらに申し上げれば、この協定附属書によって、わがほうは、わが国内の地点から出発して、上海及び(または)北京に至り、さらにインドまたはパキスタン、中近東及びヨーロッパの諸地点に至る以遠路線を得ております。他方、中国に対しましては、中国内の地点から出発して、大阪及び(または)東京に至り、さらに、北米及び中南米の諸地点に至る以遠路線を与えております。  従来わが国各国と結んでおります航空協定と比較いたしますと、中国国際民間航空条約に現在までのところ入っておりませんために、シカゴ条約のこの加盟国である諸外国と結びました航空協定よりも技術的規定が若干多い等の相違はございますけれども、全体の内容としては、本質的な相違はないというふうにお考えいただいてけっこうだと思います。
  13. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 外務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。大平外務大臣
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日中航空協定締結をめぐって、日台路線の取り扱いの問題がありました。政府としては、日台航空路線を維持することが肝要と考え、このため、中華人民共和国理解を求めることに努力してまいりました。しかしながら、日台航空路線維持のための日本政府の努力と誠意に対し、台湾当局理解が得られず、日台航空路線停止されるに立ち至ったことは、日台双方にとって不幸なことと考えております。日本政府としては、事態の推移を見きわめつつ、日中国交正常化というワク組みの中で、日台航空路線を再び開かれるよう、今後ともできる限り努力する所存であります。
  15. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  16. 西村関一

    西村関一君 日中航空協定締結は、ややおそきに過ぎた感じがありますが、国交正常化後の当然の帰結でありまして、われわれはこの協定締結を歓迎するものであります。  これにつきましては、政治的にも最も重要な意義を持っております台湾問題をめぐるところの内外の障害を乗り越えて署名にこぎつけ、国会の審議運びになりましたことにつきまして、私は大臣の労を多とし、敬意を表しながら、若干のことを質問いたしたいと思います。  まず、提案理由説明によりますと、昨年三月以来交渉を行なってきたと書かれてありますが、一般的な印象といたしましては、本年の一月の外相訪中によって、にわかに交渉が軌道に乗ってきたように思われます。  交渉経緯につきまして承りたいんであります。また、外相訪中され、帰国せられてから、それまで論じられていなかったところの六項目ワンパッケージなる案が出てまいりました。これは外相訪中せられた際に、北京了解を与えてきたものと理解してよろしいでしょうか。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国交正常化のときに発せられました共同声明によりますと、航空を含めまして、日中問実務協定締結交渉について合意をいたしましたことは、共同声明に明らかにうたわれてございます。私どもといたしましては、その準備正常化後、直ちに始めまして、去年の春から航空協定につきまして中国政府との間に予備交渉を始めたわけでございます。で、航空協定自体には、いま御提起になりました日台路線の問題はうたわれていないわけでございます。しかし、この航空協定を結ぶにあたりまして、日台路線正常化ワク組みの中でどういう態様において維持されるかということにつきまして、中国側は強い関心を持っておりました。一方、台湾側は、正常化後といえども、従来のままの態様日本に乗り入れを継続してまいったわけでございまするし、台湾といたしましては、そのままの姿において今後も維持することを望んでおられたことは無理もないことと思います。台湾側のそういった希望と、中国側正常化後の日台路線のあり方についての考え方というものの双方は、容易に妥協点を見出し得るようなものでないと判断いたしまして、何かその中に打開の道がないものかと、去年の春以来、政府としてもいろいろ苦心をしてまいったわけでございます。航空協定締結がこのようにおそくなりましたゆえんのものも、この問題に結末をつけておくために要した時間が非常に多くかかったということでございます。しかし、北京と台北の双方考え方というものは、双方政治的立場を反映いたしまして、先ほど申しましたように、簡単に通約ができる性質のものでございませんけれども、しかし、それかといって、いつまでもそのまま放置するわけにもまいらぬわけでございまするし、航空協定自体締結をいつまでも延ばすわけにもまいらない、そういう事情がございましたので、ことしの一月早々、私が訪中をいたしまして、この問題について中国首脳との問で意見の交換をいたしたわけでございます。で、その間に得られました基本的な理解というものを基礎にいたしまして、それを念頭において政府で、いわゆる外務運輸両省案というものを作案いたしたのが、あなたの言われるいわゆる六項目と称する外務運輸両省案でございます。問題は、その後、党の審議にゆだねられまして以来、いろいろ問題になったことでございまして、その後の経緯西村先生の御承知のとおりでございます。ただ、この六項目という問題は、日台路線日本政府責任におきまして正常化ワク組みの中で日台路線を安定的に維持してまいる上におきましては、こういう方法によるよりほかに道はなかろうというぎりぎりの判断を示したものでございまして、あくまでも日本政府責任において考えてまいりました案であることを御承知願いたいと思います。     ―――――――――――――
  18. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、長谷川仁君及び増原恵吉君が委員辞任され、その補欠として、桧垣徳太郎君及び藤田正明君が選任されました。     ―――――――――――――
  19. 西村関一

    西村関一君 外相がいまもお述べになりましたように、台湾問題が非常なきびしさを持っているということを内外国内、特に自民党の党内内部におきまして、また、相手の中華人民共和国の側におきましても、非常なきびしさがあるということを身をもって体験せられたのは、外務大臣御自身だと思うのでございます。で、この点につきまして、あらためて聞く必要はないと思うのでございますが、今後の日中関係を発展させてまいりまする上で、日中共同声明に表明されております中国側態度、すなわち、台湾中華人民共和国領土の不可分の一部であるということにつきまして、日本政府はますますその認識を深めて対処していかなければならないと思うのでございますが、この点、あらためて大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 台湾の帰属につきましては、共同声明の第三項にうたわれておりますとおり、中国側はこれは不可分の領土の一部であるということの態度を鮮明にいたしておるわけでございます。第二項で日本側態度を明らかにいたしておるわけでございます。この共同声明にうたわれた双方態度というものは、今後日中問題を取り上げていく場合に踏みはずしてはならない立場であると考え、これを堅持して、あらゆる台湾にからむ問題について対処していきたいと思っております。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連をしてお尋ねいたしますが、この日中の国交が樹立されて、さきの貿易協定に続いて今回さらに航空協定締結運びとなって、さらにその他の実務関係も進展しておるこの現実から見て、日米共同声明の中の台湾条項はその必要性がなくなったんではないかと、これは何らかの形で処置すべきものと思いますが、いかがでございますか。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国米国との間におきましては、日米安保条約並びに関連諸取りきめはこれを堅持してまいるという態度で今日まで終始してきましたし、今後もそういう態度を貫いていきたいと考えております。言いかえれば、安保条約並びに関連取りきめ全体をそのまま堅持してまいるということでございますので、羽生先生が言われておりますように、この一部について改定をするという考え政府は持っておりません。しかし、一方、御指摘のように、日中間実務協定が結ばれ、漸次結ばれてまいり、日中関係も濃密の度をだんだん加えてまいることは御指摘のとおりでございます。中国側――日中両国とも、しかしながら、この日米安保条約はそのまま堅持されておるという状態に対して実務協定締結し、あるいはさらに進んで両国関係緊密化してまいる上におきまして、安保条約の、並びにその関連取りきめの改定を取り上げなくても、それが可能であるという態度で、いま両国とも対処いたしておるわけでございまして、支障なく日中関係緊密化はこの体制で進め得ると私は確信をしております。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 私、安保条約全体をいっているわけではないんで、それはまた他日機会があればまたそういう問題についてお尋ねしたいと思いますが、たとえば、この共同声明の中における台湾の問題を考える場合に、この台湾日本との関係は、いまとなってはそれは国家問関係とは言えぬのではないかと思います。これは中国問題を処理するための便法としてということが残されておるだけで、国家問関係として日米共同声明の中に残るということは、私はこれは非常に不自然だと思うのです。したがって、そういう問題は中国が不問に付するとかなんとかそういうことではなしに、実際の問題としてこういう不自然さは解消すべきものであると、これはおかしいと思う、どうしても。だから、日米安保条約はお互いに堅持するんだから、また中国も、日中問関係もそれによってたいして差しつかえないからということで、残していいか悪いかというんではなしに、日台間に国家問関係がないのに共同声明の中にその問題をうたうというのは、それを残しておくのはおかしいと、こういうことを私は申し上げているわけです。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日中国交正常化の結果、日台問国家間の関係は一切なくなったわけでございます。ただし、いま指摘されておる問題は日米安保条約との問題でございまして、日米安保条約におきましては、台湾並び澎湖島地域が、安保条約がカバーする範囲に含まれているということでございまして、潔癖に考えれば、それをどうするかという問題は御指摘のとおりあるわけでございましょうけれども日中両国とも、そういう問題を承知しておりながら、特にその改定を求めるということをしない姿においても、日中問の緊密な関係増進ということは可能であるという態度で終始いたしておりまするし、私はそれで差しつかえないと考えております。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 もうこれ以上お尋ねしませんが、両国――日中両国間、あるいは日米安保条約等関連で、この問題が特別に支障がないと、そういう支障があるかないかということで私お尋ねしておるんじゃないんで、この種のこの共同声明の中に、すでに国家問関係を持たない国との関係をうたうのはおかしいということを申し上げておるので、今後は十分御研究をいただきたいと思います。
  26. 西村関一

    西村関一君 日中航空協定締結につきましては、各国がその成り行きに注目しているのであります。三月末日でありましたか、ソ連外交貿易次官アルキモフ氏が一カ月も滞在されましたが、この協定成り行きを観察するのに無関係ではなかったと思うんであります。また、アメリカは、この協定締結につきまして何らのコメントを発表しておりません。本協定の成立がソ連米国に与える影響について、外務大臣はどのように判断をしておられますか、まずお伺いしたいと思います。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日中航空協定の調印、また、その後発表されました日台航空路線停止について、いま御指摘のように、米ソ両国とも表立った反応は示しておりません。その他の各国反応も、事実の記述以上に出ていないものが多くて、目立った論調は少ないようでございます。これを米ソ両国がどのように受けとめるかという問題はそれぞれ米ソ両国の問題でございますが、私ども日本といたしましては、なすべきことはなすべきときにやらなければならぬということでございまして、日本の今度やりました措置について、日本立場からすれば、それは当然なすべきことであったのではないかという理解が得られておるのではないかと判断しておる次第でございます。
  28. 西村関一

    西村関一君 その点につきましては同感なんです。ただ、外交責任者であります外務大臣として、諸外国の動静につきまして十分に把握し、判断をしておられる必要があることは申すまでもないと思うんであります。特に、東南アジアの諸国に及ぼす政治的影響、これは非常に大きいものがあると思うんでございます。この点につきましてどのようにお考えになっておられますか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  29. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 日本といたしましては、この日中航空協定締結というのは、いま大臣からお話のありましたとおり、いわゆる実務協定の一環といたしまして、当然のことを当然のものとして締結したというだけの話でございますけれども東南アジアに対しますいわゆる政治的な影響という観点から申しますと、日中関係というものがここにだんだんと定着してくると、その日中関係の、東南アジア全体の政治経済関係に及ぼす影響という観点からとらえられているのではないかというふうに思います。  またもう一点は、この日台路線停止ということが、この日中航空協定締結の結果として起こりましたけれども、その影響がどうなるであろうかという点についてのいろいろ懸念、危惧ということはあろうかと思います。私どもそういう二つの観点から今回の航空協定締結東南アジア全体に及ぼす政治的影響というものを考えております。
  30. 西村関一

    西村関一君 次に、いまの問題にも関係をいたしますが、以遠権の問題についてお伺いをいたします。  この以遠権の問題につきましては、わがほうとしては、満足すべき了解及びその解決ができてないというふうに私ども考えるんであります。特にパキスタンイスラマバードからヨーロッパを結ぶ以遠権獲得をわがほうは主張をされたんでありますが、これがそうなっていない。その問のいきさつについてお伺いをいたしたいと思います。
  31. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 先生指摘のように、いわゆるイスラマバードルートと申しますか、パキスタンを経由する短い路線というものを日本側としては希望いたしたわけでございますが、この路線につきましては、中国側事情から、特に現在パキスタンへ飛んでおりますこのルートは、印パ紛争の時点でパキスタン航空中国へ飛ぶ方法がないということで認められたルートでございまして、航行援助施設等も完備しておらず、航空路としてまだ十分でない、したがって、中国民航も現在運航いたしておりませんけれども、こういう事情もあり、現段階ではコミットできない。しかし、日本側の非常に強い希望はよく理解するので、将来の問題として検討するということで、今回はこの附表に書くことができなかったわけでございます。しかしながら、これは将来の可能性として、わが国としてはこの路線獲得をやはり努力していかなければならないと考えております。  またこの以遠権がバランスしているかどうかという点について、これはいろいろこの価値判断によって御意見があろうかと考えておりますが、現在の段階でこの路線権の交換というものはぎりぎりのところ行なわれたものでございまして、政府としては、一応何とか満足のできる交換であったというふうに考えております。
  32. 西村関一

    西村関一君 最短距離を最短時間に飛ぶということが国際航空業務の最大の課題であるということは、申すまでもありません。ヨーロッパを現に結んでいるところの南回りよりは、イスラマバード経由のほうが最短距離であるということは申すまでもありません。これができなかった。で、今後に残されておる、今後に期待を持つこともできるという局長の答弁でありますが、この点につきまして、今後も中国側交渉を継続していくべきであると思いますが、その点どうお考えになりますか。
  33. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 先生指摘のように、日本ヨーロッパの最短路線可能性というものについては、今後ともわれわれは努力をして、関係国の問でそういう権利が交換できますようにつとめなければいけない、このように考えております。
  34. 西村関一

    西村関一君 この点につきまして、外務省は、なぜこれができなかったか、パキスタン中国側協定を結んで、いわゆるヒマラヤの山峰を通ってヨーロッパに行くという協定を結んでいるのでありますが、なぜ今回の日中航空協定の中でそれが結ぶことができなかったのか、その点外務省はどういうふうに考えておられますか。
  35. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 私、専門家ではございませんので、一般的なお話として申し上げますけれどもパキスタンには全く例外的に、インド上空を通過できなかったことに起因いたしまして、例外的に中国が与えた路線であるというふうに理解しております。また他方、技術的には、ただいま寺井局長からお話ございましたとおり、やはり現在かなり無理な航路でございまして、これを国際航空路として開放するには、まだこれからの技術的な検討を要するという段階であるというように私ども承知しております。こういう二つの観点から申しまして、現在中国自身がまだ飛んでおらない、そういう路線でございますので、やはり現状において直ちに日本にこの路線を開放するというわけにはいかないということでございまして、主として理由は技術的な観点からであろうというふうに考えております。
  36. 西村関一

    西村関一君 ちょっと聞き取れなかったのですが、なぜ中国側はヒマラヤ上空を飛ぶことを、つまりカラコルム越えというこの日本希望した路線を拒否したか、なぜ同意しなかったかということについて、どのように外務省は受け取っておられるかということを私は伺っておるわけです。
  37. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) ただいまお話しいたしましたとおり、現状で直ちにこの路線を国際航空路に開放するということが技術的にできないという事情にあるというように理解しております。
  38. 西村関一

    西村関一君 今回の協定につきましては、双方路線の経済的等価値という点から日本側は譲り過ぎたという批判もありますが、この点についてはどうお考えになりますか。
  39. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 路線の経済価値という点で、通常われわれは路線権の交換をやっておりますけれども、この経済価値というものに対するいろいろな見方がございますし、相手国企業の現状の力、まあいろいろな点がございます。したがいまして見方によりましていろいろ御批判があることは十分承知いたしておりますし、これが、現在交換された路線権というものが必ずしも満足すべきものでないという点につきましても、私どもそういう向きがあるというふうに考えておりますけれども、現在行なわれましたこの交換というものが、決定的に日本側に不利であったというふうには考えておりません。いろいろ御批判がございますし、また十分でなかった点も承知いたしておりますけれども、まあ現在の客観情勢の中でなし得る最大限の努力をいたしまして到達できた線でございまして、その点は、そういう意味で御了解をいただきたいと思っております。
  40. 西村関一

    西村関一君 以遠権関連いたしましては、現在米側の以遠権は東京、大阪、沖繩以遠につきましては無制限、無数であります。これに反しましてわがほうは、ニューヨークからヨーロッパ向けの以遠権獲得いたしました代償として、サンフランシスコ、ロスアンゼルスから中南米向けの以遠権を実質的に失っております。これこそ不平等もいいところだと言わなければならぬと思うのであります。中南米には日系人が何十万、七十万もいるという点からも、これを失っておるということは、きわめて不平等だと言わなければならないと思うのでございます。この日米路線に対するところの政府の見解及び今後これを改正しようという意図があるかないかどうか、そのことも伺っておきたいと思います。
  41. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 日米間の航空協定におきます現在の路線の交換、これはいろいろ歴史的な背景もございまして、必ずしもわれわれ満足すべきものとは考えておりませんし、これが均衡するように逐次努力を続けておるわけでございまして、先生指摘のように、ニューヨーク以遠ヨーロッパ、これはある意味でニューヨークから先は無制限でございますが、これを獲得した際に、中南米路線についてある種の制限を受けておるということは事実でございます。こういう点につきましても、今後、やはり米国との問ではこの路線権がバランスするように努力を続けていかなければならないというように思います。
  42. 西村関一

    西村関一君 次にFIR、つまり飛行情報区の問題についてお伺いいたします。  四月二十一日の日台航空路線停止に伴って、台湾日本機の台湾FIR及びADIZ、防空識別圏、この通過を拒否してまいりましたが、このようなことは国際法上許しがたい措置であると考えられます。政府は、かかる措置に対しましてこれまでのところ何らの抗議もしていないようでありますが、どのような措置をとるつもりでありますか。
  43. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) この外交上の問題について、外務省からお答えいただくほうがよろしいかとも思いますが、このFIRの問題につきまして、台湾側が声明の中で申し述べておりますのは、自分のほうの航空機日本のFIRに入らないから、日本のほうもレシプロシティーの原則に基づいて遠慮してほしいと、こういう趣旨であるというふうに解しておりまして、入ってくるなというふうな直接的な表現のしかたではないというふうにわれわれ理解しております。
  44. 西村関一

    西村関一君 表現はどうであれ、台湾の申し入れによりまして、日航機の南回りの国際線は迂回飛行を余儀なくせざるを得なくなった。また、わが国国内線であるところの沖繩の南西航空の沖繩本島と与那国島を飛行する路線も、与那国島空域が台湾のFIR圏内にあることから、きわめて不安定な状態に置かれている。もっとも、いまのところは従来どおりの飛行が確保されているけれども、これは現在沖繩FIRと台湾FIR問の航空管制業務は、沖繩の米軍嘉手納管制センターと台湾管制センターの問で行なわれているためであるとも考えられますが、しかし、来たる五月十五日には沖繩の管制業務は米軍からわが国に移管されることになっておる。それ以後は、日台問で直接に話し合わなければならないことになると思います。その場合も、与那国線の運航は十分確保されると考えてよろしいでしょうか。
  45. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 先生指摘のように、与那国島は台湾のFIRの区域の中に入っております。そして、現在何ら支障なく運航されておりますし、五月十五日、日本側が沖繩の管制を行なうようになりました後におきましても、この与那国と沖繩本土間のこういう路線につきましては、現状どおり問題なく行なわれるものと考えております。
  46. 西村関一

    西村関一君 そもそもわが国の領域、与那国島が外国のFIR圏内にあるということ自体がおかしいと言わなければなりません。このような状態をまず解消すべきであります。今後、わが国は、与那国島空域を沖繩FIRに組み入れ、わが国で管制業務などを実施できるように修正する、この措置をとるべきであると考えますが、そういう意思をお持ちですか。
  47. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 先生指摘のように、わが国領土が他国のFIRの中にあるというのが不自然であるというのは、感情的にはごもっともだと思います。ただ、このFIRと申しますものは、航空交通の安全のために航空交通の流れその他を勘案いたしましてきめておりますものでございまして、いわゆるICAOの附属書第十一というものに基づいてきめておりますが、これは必ずしも領土と密接に結びついておらないものでございまして、ただいま申し上げましたように、航空交通の安全、情報提供が最も合理的にできるというたてまえからなっております。そして、ICAOの仕組みの中でこれがきめられております。私どもといたしましては、御指摘のように、これがやはり今度できます那覇FIRの中に含まれるほうが自然であるというふうに考えておりますが、現在のところこれを直しますには、やはりICAOの仕組みの中でこれを改定していかなければなりませんので、すぐにはそういうことが実現いたしかねると思いますけれども、やはりそういう方向でわれわれは努力をするべきであるというふうに考えております。
  48. 西村関一

    西村関一君 次に――その問題もまだ十分じゃないのですけれども、時間の関係上、そのくらいにいたしておきますが、次に韓国のFIR通過の問題であります。日航が北京へ行くのにどのような経路を通っていくのか、韓国のFIRを通ることになると考えてよろしいのか。韓国としては、日本航空機北京へ行くために韓国のFIRを通過することは差しつかえないといったという報道が一部ございますが、そのとおり理解してよろしいですか。
  49. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) まず、日中問航空路を設定いたします場合に、韓国のFIRを通るかどうかという点につきましては、現在御審議いただいておりますこの条約の批准が行なわれました後におきまして、日中問でどういうルートを設定するかを協議決定することになると思います。  で、東京-北京を最短距離で結ぼうといたしますと、あるいは東京-上海でもそうでございますが、やはり韓国のFIRを通るのが一つの短いルートでございますけれども、こういうルートの設定につきましては、やはり先ほど申し上げましたICAOの地域委員会で討議されまして、一つのルートが韓国のFIRを通って中国に引かれておりますもので、これは一つの提案として地域会議でなされましたけれども、その際、韓国側は特に異議を申し立てなかったという事実がございますけれども、新聞に報道されておりますように、そういう日本航空機が飛ぶことについて、問題はないというような意味のことを、韓国側が積極的に発表したという事実はございません。
  50. 西村関一

    西村関一君 元来、国際法から言うならば、ある国の領空以外は自由であって、これは国際民間航空機関、ICAOできめて、FIRの制度も国際航空の安全をはかるものであるということは、いま局長の言われたとおりであります。公海の自由の原則に制限を加えてもよいという趣旨のものではないと思います。したがって、外国航空機がある国のFIRを通りたいといった場合に、その国としては、指定の航空路を通ってくれという条件をつけることができましても、拒否はできないと思うのであります。そう理解してよろしいですか。
  51. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
  52. 西村関一

    西村関一君 要するに、日中航空路の開設にあたって、韓国のFIRが障害となって迂回するようなことがあってはならない、最短距離で飛ぶべきであるというふうに考えてよろしいんですか。
  53. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) その点につきましては、実はその韓国のFIRの中を通るルートというものが、まだ確立いたしておりません。先ほど申し上げましたように、ICAOの地域委員会でもって、そういうルート提案が将来の問題として行なわれておりますけれども、このルートがまだ設定されたわけではございません。それが第一点。  それから、第二点といたしまして、中国との間に実際に航空機を飛ばせます場合に、FIR問相互に通信設備が設定されなければなりません。この通信設備の設定が、いわゆる大邱FIRと中国の間にまだできておりませんし、どういう関係になりますか、われわれも現在のところよくわかっておりません。当面、私どもがこの日中問航空路を設定いたすとするならば、日中間で協議をいたしまして、そういう通信設備が確実にできる方法をとらざるを得ないと思います。したがいまして、当面は、やはり日本のFIRから直接中国の――FIRというものは中国にはございませんけれども、そういう情報提供区域範囲に結びつける、こういうルートの設定が最も現実的であろうかと思います。
  54. 西村関一

    西村関一君 この機会に外務大臣にお伺いいたしますが、FIRの問題の質問をいたしておるんでございますが、韓国の最近の情勢についてお伺いをいたしたいと思います。  実は、私はこの連休中に五日間韓国に行ってまいりました。その私の印象及び経験をもとにいたしましてお伺いしたいと思うんでございます。  一つは、韓国での日本人二学生の逮捕事件、早川、太刀川の両君が逮捕されて、裁判にかけられようとしている。この点につきまして、現地の大使館は、大使をはじめ関係官が鋭意円満な解決のために努力をしておられる。また、逮捕された者の家族の保護についても、公私ともきわめて適切な、また丁寧な保護をやっていなさるということは、私も見届けてまいりましたが、しかし、まだこの問題の解決の糸口はついていない。私も実は、金国務総理に直接会って、この問題の解決を迫ったんでありますが、満足する返答を得られなかったんであります。この点につきまして、外務大臣、どうお考えになっておられますか。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この事件が起きまして、政府としては外交保護権の行使に遺憾があってはならぬと存じまして、まず、二人の日本人に対する人道的な処理に遺憾のないように要請をしてまいりました。と同時に、韓国内におきまして、この両名がどういうことをいつ行なって、そしてそれが韓国の法令にどういう姿において抵触しておるのか、そういうことにつきましての解明を求めてまいったわけでございます。  で、前段のほうにつきましては、いま先生指摘のとおり、韓国当局におかれて、行き届いた配慮がいたされておると聞いておるわけでございます。後段のほうにつきまして、こちらから解明を求めておることにつきまして、まだ回答を得ていないわけでございまして、私どもできるだけ早くその回答を得まして、両名が不当に取り扱われることのないように、この事件が早期に収束を見るようにはかってまいりたいと存じまして、いま鋭意努力をいたしておるところでございます。
  56. 西村関一

    西村関一君 私は、この機会に、未決勾留中であります金鉄佑及び金喆佑両兄弟、これは御承知のように日本で勉強し、兄は学位を得、将来を嘱目されているところの韓国人であります。その弟の金喆佑氏を私はソウルの拘置所にたずねました。また徐勝、徐俊植という二人の兄弟、兄の徐勝君は大邱教導所におります、弟の徐俊植君は光州の教導所におります。弟の徐俊植君につきましては、一年以上も面会が許されていないというので、私は何としてもこの機会に徐俊植君に会うということを決意いたしまして、出先の大使館を通じて申し入れをし、ようやくその目的を達して、光州教導所におきまして徐俊植君に面接したのであります。  いまここで私は詳しいその模様を話すことの時間がございませんが、とにかく非常なきびしい情勢の中に置かれておる。端的に言うならば、きつい拷問を受けておる。これは所長室で、所長及び刑務所の幹部の諸君立ち会いの上で私は徐俊植君に会ったのであります。彼はきわめてきつい決意をもって、自分の受けておる実態について話をしたんです。私は、今日の民主主義の国の憲法下において、こういう拷問が行なわれるといったようなことは信じられないと思うのでありますが、現にそのことを私は光州教導所において徐俊植君から聞いたのであります。その具体的な拷問の内容等につきましては、いま触れる時間がございませんが、こういうことにつきましては、これは韓国の国内の問題でありますから、政府としてはどうすることもできないということをおっしゃるかもわかりません。しかし、日本国内におきましても、この金兄弟あるいは徐兄弟を助けようという動きがきわめて顕著にあらわれてきておるということから考えましても、日本政府が常に言われます日韓の真の友好ということが大いに阻害されるということも考えられるのでありますが、この点につきまして、政府はどういうふうに措置をなさろうとしておられますか、伺っておきたいと思います。
  57. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) ただいま先生指摘のような、日本におられた韓国人が韓国において逮捕され、かつ、刑に処せられるという例があるということはよく承知しております。ただ、日本政府といたしまして、要するに日本人の韓国における待遇の問題とは違いまして、韓国人の韓国における取り扱いの問題でございますので、われわれのなし得ることには非常な限界があると思います。ただしかし、日本におられた、また、日本におられる韓国人の処遇の問題でございますので、その点については、政府のそういう行動の限界のワクの中で、できる限りのことはしていきたいというふうに思っております。
  58. 西村関一

    西村関一君 きょうは日中航空協定審議であり、質問でありますから、私は言いたいことが一ぱいありますけれども、あまりこれ以上多く申さないつもりであります。  ただ、この際どうしても韓国問題について聞いておかなければならないと思いますことは、金大中事件の問題であります。私は、このたび金大中氏に四時間にわたって面接をいたしました。四時間も余人を交えずに話し合いをいたしました。これは、われわれが前から心配しているところでございますが、この事件の解決はできたというふうにはだれも考えていない。おそらく大平外務大臣もそう思っていらっしゃると思うんです。金鍾泌国務総理が日本に来て遺憾の意を表せられたということもありましたが、これで万事解決ということにはなってない。私は、金大中氏が私に対して、真の韓日友好を訴えられて、日本の正義のために、あのような事件の解決をするためには、どうしても、もとの八月八日の原状に返さなければ日本の正義は通らない、これは日本政府責任じゃないでしょうかと言われて困ったんであります。私は、金大中氏にけしをかけるようなことは言いたくはないんでありますが、しかし、事実日本の正義のために、日本国政府責任じゃないでしょうかと言われたんであります。この点、簡単でけっこうでございますから、日本政府としては、金大中事件に対して今後どのように対処していこうとお考えになっていらっしゃいますか、お伺いをいたしたいと思います。
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり、私も金大中事件が片づいたとは考えておりません。なるほど去年の秋、外交的な決着は一応つけたわけでございますけれども、そのことが直ちに、刑事事件としての金大中事件がこれで終止符が打たれたというようには考えていないわけでございます。また、外交的決着をつける際にも、問題の核心ははずしていないつもりでおります。すなわち、金大中氏のことにつきましては、出国も含めて本人の自由が保障されるという約束を韓国政府から得ておるわけでございまして、この約束は政府政府との問のお約束でございますので、私は必ずこれは韓国政府において履行していただけるものと考えております。  ただ問題は、そのために、約束の履行を執拗に迫るか、静かに待つか、これはそれぞれの考え方が私はあると思うのでございますけれども、一たん約束をいたしました以上は、相手国の誠意を信頼いたしまして、これをウォッチしていくという態度が私は正しいのではないかと考えて、今日までそういう態度に終始いたしておるわけでございます。しかし、この問題は、いつまでもこういう姿のままでいいとは考えていないわけでございまして、できるだけ早い収束が望ましいことは申すまでもないわけでございますので、今後の状況に応じまして、なすべきことがあれば政府としてなすことに私はちゅうちょしないつもりであります。
  60. 西村関一

    西村関一君 次に、本協定の批准にあたりまして、日本の対中国政策、これは歴史を顧みますると、日清戦争以来失敗の連続である、誤りの連続であったと私は考えております。これからの対中国政策に、同じような誤りはやっぱり許されないと思うのであります。外務大臣は、二度の訪中によって、現在の中国の政治経済事情をどのように評価しておいでになりますか、あらためて承っておきたいと思います。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、中国問題、日中関係は、わが国外交にとりましてかなめ石でございまして、これを誤るということはたいへんなことだろうと思っております。したがって、政府としては日中間に不動の理解と信頼の基盤を固めてまいりまして、今後末長く友好のきずなを強めて、互恵の関係を築き上げていきたいと念願をいたしております。  いま、中国の政治経済の現状をどう評価するかということの御質問でございます。この御質問には、私がお答えするのは適格でないのでありまして、私は外務大臣でございますので、他国の政治状況というようなものを論評することはあまり適切じゃないと思いますので、それはまあかんべんさしていただきたいと思います。
  62. 羽生三七

    羽生三七君 いまの質問に関連をして一つお伺いしたいんですが、衆議院の外務委員会でも先日質問があったようでありますけれども日中問の平和条約の問題です。  それで、まあさきに日中貿易協定、続いていま日中航空協定締結されようとしておるわけで、さらに、漁業協定等も問題の対象になっていきますが、まあそういうことから、いわゆる実務的なものがすべて処理されていく次の段階は平和条約だろうと思います。この平和条約は、もちろん日中とも推進することに基本的には一致しておるだろうと思いますが、その場合、これ外相問で何かまた適当な機会に話し合いをされるのか、あるいは日本に駐在をしておる駐日大使と外務省の問、あるいは北京に駐在しておる日本大使と中国外務当局との間で話し合われるのか、外務大臣相互間で何らかのお話し合いでもされるのか、その辺はどういうようにお考えになっておりましょうか、お伺いをいたします。
  63. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 共同声明第八項で、平和友好条約でございますが、日中問に平和友好条約締結交渉をすることに合意をいたしております。これは実務協定より先にするかあとにするか、一緒にやるかというようなことをきめておるわけじゃございませんが、当面、いま日中間でやっておりますことは、まず実務協定をやろうじゃないかということで取り組んでおるわけでございます。しかしこれ、実務協定全部終わらなければ平和友好条約に取りかからないという約束もないわけでございます。  私ども共同声明日中間の暗い過去は清算できたわけでございます。この平和友好条約というのは、今後これから長き未来にわたりまして日中両国が友好、親善、互恵の関係を進めていく上においての基本的な原則というようなものを構想したいと考えておるわけでございます。大筋において中国側も同じお考えではないかと思うんでございますが、まだ双方にドラフトができまして、お互いに交換するというような段階にまで至っていないわけでございます。一月に私が訪中いたしました際に、担当局長の間で、基本的な考え方の一般的な交換は手始めにいたしたわけでございますけれども、今後これを東京でやるか北京でやるか、どういうレベルでやるとかいうところまで、まだ考えがきまっておりませんで、中国もそうでございましょうし、日本政府においても、この問題についてどういう中身を盛り込んでいくかというようなことについて、少し構想を、ぼつぼつ固めていかなければならぬのではないかという気持ちをいま持っているだけでございまして、手順というようなところまでまだ話が進んでおりません。しかし、いずれにいたしましても、共同声明にうたわれて合意いたしていることでもございまするし、きわめて重要なことでございますので、私どもで鋭意検討をして進めてみたいと思っております。
  64. 羽生三七

    羽生三七君 これに関連してもう一つお尋ねしたいことは、これはいささかお尋ねするには時期が早い問題かと思いますが、たとえば日中平和友好条約ができる場合に、日中相互不可侵というような問題を織り込む場合に、これは別個の条約として相互不可侵といいますか、不侵略といいますか、その表現はいずれにしても、そういう趣旨のものを別個におつくりになろうとお考えになるのか、あるいは、平和条約の中にそういう精神を盛り込もうとなされるのか。お尋ねする時期としては早いかもしれませんが、心づもりとして、外務大臣個人としては、たとえばどういうようなことが考えられるかということを、もしお考えがあったら、この機会に承らしていただきたいと思います。
  65. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御承知のように、共同声明の中にすでに相互不可侵という原則はうたわれているわけでございます。今度平和友好条約という形で、しっかりとした条約という姿においてこの種の原則を確認し合っていこうということでございますので、私は、別にこれは深く考えたわけじゃございませんけれども、まず、平和友好条約で十分足りるんじゃないか。別に不可侵条約というようなものを構想する必要はないのじゃないかと考えております。
  66. 西村関一

    西村関一君 中国は原則を重んずる国柄であるということは、共同声明のときも、共同声明によって国交正常化されましたときも、今度の貿易協定航空協定締結につきましても同様でありましたことは、政府は痛切に感じられていることだと思うんであります。  このような国柄であります中国との外交を展開してまいります場合に、政府がよく言われますケース・バイ・ケースの外交、悪く言えば場当たり主義の外交、そういうことはとうてい通用できない、こう思うんでありますが、そういう意味合いから、私は、過去の中国に対する外交は失敗であったと思うのであります。今後は、どういう基本的な原則に立って中国外交を進めていくお考えでございますか、非常に大事な点だと思うんでございます。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は、外交というものは基本にやっぱりかたい信頼と理解がなければできぬと思うのであります。これは、お互いが約束すれば必ず果たすんだというかたい信頼がないと、幾ら原則を並べてみたって、これは実効があがらぬと思うのでございまして、基本はやっぱり不抜の信頼を打ち立てるということでなければならぬと思います。  それから第二に、しかし、ケース・バイ・ケース、場当たりでいいとは決して思わないのであります。非常に国際情勢が流動的でございますし、複雑でございますし、政府の一々のやり口を見ておりますと、あるいはケース・バイ・ケースと評価される場合がなきにしもあらずと思う場合がないとは私思いませんけれども、その基本には、やっぱりあなたの言われる原則が貫かれていなければならぬと思うのでございます。すでにこの原則は共同声明に明らかにうたわれておるわけでございまして、これを深めてまいり、これを条約の姿に固めてまいる、あるいはそれを実現していく努力、そういうことで中国外交というものは進めてまいらなければいかぬのじゃないかと思っております。  一昨年九月にでき上がりました共同声明は、そういう意味においてやっぱりこれをベースといたしまして、これからの手がたい展開をはかってまいりたいと思います。
  68. 西村関一

    西村関一君 外務大臣日中共同声明の精神を深め、かためていこう、それが日中外交の基本姿勢である。向こうに原則があればこちらにも原則がある。それがかみ合うところが日中共同声明である。これを深め、かためていこう、こういうところに日中外交の基本姿勢を打ち立てていこうと。その間には、相互の理解と信頼を積み重ねていくことが大事だと。私はいまの外務大臣の御答弁を全面的に支持いたします。  私が最初から申し上げているのは、決して中国一辺倒、中国側に傾斜するという意味じゃなくて、いまの大臣のおことばによって、私はこのことが日本外交の基本姿勢として貫かれ、実行されることを期待するものでございます。  ところが、日中航空協定締結は屈辱外交の所産である、不平等条約であるという一部の意見がある。私は、これはまことに遺憾だと思うのであります。街頭に、大平外務大臣の名前をあげて、でかでかとビラが張られておる。私は、これは苦々しいことだと思っているんであります。もし、このような意見が、屈辱外交である、不平等条約であるというような意見がまかり通るようになりますならば、これはまさに歴史の流れに逆行するところの動きであると思うのでございます。これは対中国政策を再び誤りにおちいらしめるところのものである。私は、外務大臣が、き然としてこの外務委員会において私の質問にお答えになりましたその姿勢を貫き通していただきたい。世論に迷わず、断固としてその所信を貫いていただきたいということを希望し、期待するものであります。その点、もう一度大臣の御所見を承りたいと思います。
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) もうこの外交をやっておりまして、私も二回目、これは外務大臣やらしていただいておるのですけれども、たとえば対米交渉をずいぶんやりましたけれども、苦心して、日本の国益を守ったつもりでおりましても、対米追随だというレッテル張られちゃうんです。これは張って悪いという、とめる手はないんでございます。ただ、あなたがせっかく御激励をしていただきましたように、私はじめ外務当局といたしましては、誠心誠意日本立場、力量を踏まえて、これはどうして日本の国益を守るかということに身を粉にしてやらにゃいかぬと思うんでございます。世評におもねるつもりは毛頭ございません。何ぼあしざまに言われても差しつかえないわけでございます。私といたしましては、仰せのとおり、日本外交というものを、真剣に、任にある限りは続けていきたいと考えております。
  70. 西村関一

    西村関一君 先般の当委員会におきまして、田委員からも、本協定三条の問題について質問がありました。両国とも一または二の指定航空企業に運航の権利を与えるというように書かれておる。わが国におきましても、日本航空のほかにもう一社が北京乗り入れを計画して、盛んに運動したように聞いております。ところが、北京路線は利益があんまり期待できないので、次は台湾への乗り入れを策しておるということも聞きます。このような、民間企業が陰でいろいろ暗躍していることは感心できないと思うのでありますが、これにつきまして、政府はこのような動きに対してどのような手を打っておいでになりますか、打とうとしておいでになりますか、伺っておきたいと思います。
  71. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 三条の関連での御質問でございますけれども、この一または二以上というきめ方、これは航空協定締結いたします際に従来から一社に限定せず、二以上の航空企業が就航できる可能性というものをとるために、原則的にこういう表現といいますか、こういう複数の可能性を持たせるような協定締結を従来やってきております。もちろん二、三の例外はございますが、こういうたてまえになっております。  それと、国際線に現在の日本航空以外の他社を出すか出さないかという問題は、一応別の問題でございます。で、今後、台湾関係路線との関係もございますけれども、どのような形で国際線を整理していくかということは、航空政策上の問題でございまして、これにつきましては、運輸省内部におきましていろいろ検討を進め、かつまた、運輸政策審議会等の御意見も伺った上で、政府としてこの方針を具体的にきめていく、こういう段取りを考えております。
  72. 西村関一

    西村関一君 本協定が批准され、効力が発効するに至りました後に、平和友好条約等の問題が起こってくるということは、羽生委員からの質問にもございましたが、私は、その他の実務協定につきましてお伺いをいたしておきたいと思います。  現行の漁業に関する民間協定は、来たる六月二十二日で期限が切れますので、来週から北京政府間の日中漁業協定締結のための本交渉を行なう予定と言われておりますが、日本側はどのような態度でこの会議に臨もうとしておられますか、お伺いをいたしたいと思います。
  73. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) ただいま先生指摘のとおり、この民間取りきめは、六月の二十二日に失効するたてまえになっておりまして、わがほうといたしましては、中国政府とも協議の上、その失効を前に政府協定締結したいということで、今月中旬にわがほうの代表団を北京に派遣いたしまして、北京において交渉を進めるということに段取りを進めております。  どういう構想でというお話でございまするけれども、まだ現在外務省、水産庁等と協議中でございまして、しかも協定交渉の前でございますので、その内容あるいは構想につきましては、お話しし得る段階にございません。
  74. 西村関一

    西村関一君 すでに貿易協定ができ、また、今回の航空協定もできたことによりまして、日中問実務関係は一そう安定した基礎の上に行なわれることとなりますが、この漁業協定、次には海運協定の早期妥結が望ましいと思うんであります。その他どのような実務協定が予定されておりますか。また、交渉はどのように進展しておりますか、お伺いをいたしたいと思います。
  75. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) ただいま申しました漁業協定交渉を別といたしまして、いま当面、日中共同声明に言及している実務取りきめといたしまして残っておりますのは、いま先生の御披露されました海運協定でございます。これにつきましては、すでに日中双方問でそれぞれの草案を交換いたしておりまして、その内容につきましても、いろいろ照会等のことを行なっております。したがいまして、このほうの交渉も、漁業協定の進展とも相まちまして、できるだけ早い機会に協定交渉に入りたいと思っております。これ以外に、共同声明には特に言及いたしておりませんが、日中貿易協定との関連におきまして、商標権の取り扱いにつきまして、現在日中問で話し合いを進めております。それ以外には、まだいまのところ具体的に実務の取りきめについての構想はございません。
  76. 西村関一

    西村関一君 先ほど羽生委員関連質問でお触れになりましたが、また、私もいまちょっと申しましたように、これらの実務協定と並行して、平和友好条約などについて、並行して話し合いを進めていくべきだと思いますが、その点、先ほどもちょっと御答弁がございましたけれども、なおもう一度はっきり伺っておきたいと思います。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり、平和友好条約につきましては、具体的な構想につきまして固まっておるわけじゃございませんので、日本政府として、どういう内容を、どういう形で盛り込んでまいるかというようなことにつきまして、検討をぼつぼつ始めておるということでございます。しかし、中国政府との接触をどこで、どのレベルで、いつ持つかというようなところまでは、まだ段取りをきめておるわけではございませんが、これも、ゆうちょうにかまえるつもりはございませんで、鋭意用意は進めてまいるつもりでおります。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 関連。  その場合、いつごろをめどに取りまとめをしようかというようなお心づもりはおありでしょうか。
  79. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだそこまで、御返事を申し上げることができるまで固まっておりません。
  80. 黒柳明

    ○黒柳明君 日中航空協定が、国会終了も間もなくでありますが、外務大臣のこれまでの努力に対しまして、私も非常に努力を多としたいと思います。むしろ政府・与党ということじゃなくて、大平外務大臣のここまでの御尽力に対して、私も全面的なやっぱり努力を評価したいと思いますし、反対に、一年五カ月の時間をかけたということについてのまた反省も、大臣この際あわせてしていただかなきゃならない、こう思います。  先ほど外務大臣が国際情勢は流動的で複雑だと、こうおっしゃったんですけれども、言うに及ばず、ニクソン政権が大きくゆれておりますし、イギリス政権がかわりましたし、ブラント首相も辞任しましたし、トルドー内閣も不信任を突きつけられたし、あるいはフランスの選挙の結果によって、まあミッテランになるかジスカールデスタンになるか、ともかく指導者もかわりますし、しかも、こういう国がわが国と朋友国であることは、これ間違いありませんし、こういう中にありまして、こういう民主主義あるいは自由先進国が非常に不安定な政局である、少なくとも指導者はかわっているわけです。そういう各国国内政治情勢の変革、これをどう認識するか、なかんずく、日本に対する影響というものに対してどう認識しているか。  それともう一つは、出先の大使にまかせないで、この際、外務大臣みずからが、国会でも終わりましたら、ぜひともこの各国の新しい指導者とひざ交えあわせて、やっぱりまず話すことから、今後の国際社会における日本のより堅固な立場というものをやっぱり築いていく必要があるんではなかろうかと思うんですが、まあキッシンジャー国務長官みたいに、あれほど精力的にやれとは申しませんけれども、せめて大平外務大臣の御人格をあらわす程度の、スロペースでもけっこうですけれども、せめて英仏独カナダ、まあカナダは総理行かれるということですけれども、フランスであれ、英国であれ、ドイツであれ、みんな指導者がかわるわけですから、この際、ぜひとも国会でも閉会になりましたら、おひまをみて、まずその新しい指導者と話し合う、こういう積極外交もぜひともしていただきたいし、そういうお考えはお持ちになられているかどうか、いかがでございましょうか。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ第一の点でございますが、これは戦後の冷戦的な対立状況から、東西両陣営ともいろいろな分流が出てまいりまして、いわば非常に、よくいえばカラフルな世界、それから悪くいえば非常にまとまりにくい世界になってきておるわけでございまするし、国内、それぞれの国におきましても、言うところの価値観が多彩に分かれまして、コンセンサスを求めにくい状況になっておりますことが、今日先進諸国にみられておる政治的な指導力というものが、必ずしも安定しない様相を呈しておる原因じゃないかと私は思います。殷鑑遠からず、日本も私はその例外ではないと思っておるわけです。  まあこういう戦争でない事態、時代であることは間違いないわけですけれども、取りとめもないこの戦争でない事態という、平和という状態で、なかなかまとまりにくい事態でございますので、内政も外交も非常にやりにくいことでございまして、これは各国とも共通の悩みであろうと思っております。  しかし、こういうことは、一体こういう世界情勢はわが国にどういう影響があるかということでございますが、これは解明していくことはたいへんむずかしゅうございますけれども、端的に申しまして、先進諸国の政権の交代というようなことが、私は、直ちにわが国に決定的な影響を及ぼすものとは考えていないわけでございます。ただ、あなたが御指摘のように、これに対応するやり方といたしましては、従来よりずっと周到な、手間がかかる外交になりますけれども、たんねんに対応していかなければなりませんし、そうしてまいりますと、そんなに私は、わが国のこういう問に処して国益を守れないというような事態にはならぬのじゃないかと考えております。  それから第二点といたしまして、もう少し、スローモーでなくて、積極的に行動で各国との接触と理解を対話を通じて深めたらどうだということでございます。それは仰せのとおりでございまして、去年も田中総理をわずらわして各地に歴訪していただいたわけでございます。ことしも、国会が終わりまして、御相談を申し上げて、まず総理に出盧をわずらわすということは、私は望ましいと考えております。それから外務大臣といたしましても、いま黒柳先生おっしゃるようなラインで、できるだけ精力的に対話の輪を広めていくように努力をいたしたいと思います。
  82. 黒柳明

    ○黒柳明君 一昨日の衆議院の本会議で本協定が通過したわけですが、自民党の先生方がいわゆる反対の意思表示をした、こう報道されている人が五十数人にのぼったと、これは何も今回初めての例じゃありませんけれども、中に政務次官が四人いらっしゃる。しかもこれは、大蔵、通産、建設、農林、いずれも――政務次官、大臣、どこが閑職でどこが要職ということはありませんけれども、いずれも要職であり、しかも、単なる国会議員がこれに反対して欠席ということじゃなくして、当然、政務次官ですから、政府の重要な職務にある人です。しかも、日中航空協定あるいは対中国との本格的な交流が始まりますと重要なポストにいられる大蔵、通産、そういう方がまっこうから、みずから辞任をするぐらいの決意です。そんなときは、やめなさいと、むしろこのくらいのある意味で強気でもいいんじゃないんですか。外務大臣、一番やりにくいんじゃないですか、やっぱり対外的な交渉の窓口として。まあ、個人のことですから、やめるやめないは、これは自由です。しかしながら、今度は、個人のこととしてではなくて、政府として、あるいは対外交渉の窓口、いまのこの協定を批准に持っていく一番努力もし、責任もとられる大臣として、むしろ、そういう政府の要職にありながら、政務次官というと大臣とすべて同格です、いろんな営利企業の兼務についても、あるいは国会答弁についても、全部同格です。そういう政府の要職にある、いわゆる田中内閣の要職にある人が、こうもまっこうから反対するなんということは、非常にやっぱり外務大臣立場としてはやりにくい、まとめられてきた努力、これからもたいへんかと思うんですけれども、どうですか。むしろこんなのは、外務大臣として、もうやめてもらったほうがいいんじゃないですか、外務大臣から、主体的に。向こうからやめてくれる、あれがどうなっちゃったんだかわかりません、これは個人の事情があるんでしょうけれども政府の中でこんな反対で、これから日中間というものが、こういう方がまた要職にあること自体が、これは中国のほうは非常にやっぱり、公電の粗漏問題、あるいはこういう動きについては寛大ですよね。私たちが思う以上に非常に中国側の姿勢というのは、これこそ両国の平和友好、こういうようなことを重んじているような、国際平和というものを重んじているような気がします。であるならばあるほど、やっぱりこちらの姿勢として、外務大臣の姿勢としては厳格に臨んでいく姿勢があるべきではないですか。その点の外務大臣の御苦労、これを私たち踏まえた上、知っているからこそ、外務大臣もなかなか言いにくいとは思うんですが、どうですか、こういう政府の要職にある人たちがまっこうから反対するということについては、外務大臣としてやりにくいんじゃないですか。どういう御心境ですか。
  83. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たいへん困った質問でございます。  私自身は、今度の問題を手がけさせていただいて感じますことは、私自身の努力と力量の不足をまず反省いたしておるわけでございます。こんなことがないように、皆さんの心からなる支持を得られるようにもっていくことができなかったことを、たいへん反省をいたしておる次第でございます。  外交は、内政、外交一体でございまして、内政――内部が十分整わないと外交上いろいろ不都合が出てまいるわけでございますので、これを契機にいたしまして、外交案件の処理につきまして、より周到でより精力的に手がたくコンセンサスをまとめていく、与党、野党を問わず、そういう方向で努力をすべきものと、そういう心境が第一でございます。  それから第二は、各国会議員の方々、あるいは政府の職務についておる方々、それはそれぞれのお立場、御信念でやられたことでございますので、それに対してとやかくコメントすることは私は差し控えたいと思います。ただただ私の努力と力量の不足をいま反省しておるということだけ申し上げて、御答弁にさせていただきたいと思います。
  84. 黒柳明

    ○黒柳明君 非常に謙虚な発言で、むしろこっちが歯がゆくなるくらいに思うわけですけれども、それはそれとして、きのう法務大臣が閣議後の記者会見いたしましたね。協定の国会を通過したあとに、外務、法務、運輸、内閣官房で公電漏れの問題について処置しなければならない、呼びかけられた、外務大臣に。  それからもう一つは、要するに運輸大臣が――大臣ここにいらっしゃらないが、運輸省においては粗漏はなかった、しかし、何か政調か何かに漏らしたのを、政調のだれかが漏らしたのではなかろうか。しかし、漏らしたことについて、これが国家公務員法に対してどう抵触するかしないかについては今後の問題だ、検討事項だ、こんなふうなことを閣議後の記者会見で言われておりましたが、どうですか。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕  外務大臣は、結局この協定をまず国会を通過させてから、それからこの公電の脱漏問題については何とかけりをつけたいと、こういうことなんでしょうか。というのは、先般の委員会でも外務大臣はまだ調査中、衆議院でも調査中ということで、あれからまだ二日しかたっておりませんから、まだ調査中という答弁が返ってくることは期待できるわけですけれども、この法務大臣などに呼びかけられた趣旨、あるいはその後の調べた内容なんというのは、どの程度調べられたんでしょうか。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外務省から、それぞれ所定の部数を所定のところに御配付申し上げてございまして、それははっきりいたしております。そうして外務省、運輸省、内閣官房についてそれぞれお調べいただきましたところ、その公電をリプリントしまして渡したようなことはない、あるいはこれを開示して見せたというようなこともないという報告には接しておるわけでございます。一方、自民党内の御審議の段階におきまして、公電の一部の内容が漏らされたという事実はあるわけでございますが、問題は、それと、政府部内のいままでの調査いたしましたところとの問の連関が明らかでないわけでございますので、そういった点につきましては、全体としてこの全貌をつかんでいないというのが、いま不明な状態にあるということを申し上げておるわけでございます。  第二点といたしまして、しかし、公電の内容とおぼしきものが漏らされたという事実があるわけでございますので、これに対しまして、何らか国民が納得がいく措置をやっぱり政府としてとる必要は私はあると思っておりまして、この問題につきまして、このままうやむやのうちに済ましてしまおうなどという、そういうふらちな考えは持っていないわけでございまして、関係閣僚の問で、なるべく早く都合つけて、みんなで相談をいたしたいと考えております。
  86. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ金大中事件も、そういう外務大臣のことばにわれわれだまかされて、いまもって何にも解決しないできちゃったわけですからね。まあ協定が問もなく国会を通過して、国会も閉会して参議院選に入るわけです。また、国会審議は当分行なわれないので、私はこの問題、いまの外務大臣の、今度こそはということについては信頼せざるを得ないし、信頼するわけですけれどもね。そうすると、運輸省のほうは運輸大臣が再三再四もう粗漏はなかったと言うのですけれども、やっぱり運輸省から漏れたということがちょっと明らかになってきたということでしょうかね、いまの状態では。運輸省の方だれかいませんか。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま私が黒柳先生に御答弁申し上げましたとおり、外務省のほうに承っておる調査のこれまでの御報告では、外務省から配付された電報は、こういう経路でこういう関係者に見せて、あとは金庫に入れてある、それでこれをリプリントしたり、これを開示して見せるというようなことの事実はないという報告を受けております。
  88. 黒柳明

    ○黒柳明君 ですから、報告は受けているんですけれどもね、やっぱり政調に話したことが政調から漏れたんだろうという法務大臣のお話ですからね、そうすると、運輸省のほうのやっぱり万全を期したはずなのが、水が漏れたということにいまのところはなるんではなかろうかなと、私たちの知っている限りの情報では。運輸省の方どなたかいないのかな。
  89. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 私、運輸省内部の本件に関する調査に直接タッチいたしておりませんので、その結果をお伝え申し上げるにとどまるわけでございますが、ただいま外務大臣がお答えいただきましたように、運輸省内部におきまして、この受け取りました電報の取り扱い等に遺漏はなかったと、またこれをコピーをとったり開示をしたりして話をした事実はございません。ただ、こういう非常に政策的な問題でございますので、交渉の概要につきまして、党のほうに御理解いただくために御説明をしたという事実はございます。しかしながら、端的にその内容その他を具体的に示したということはないというふうに聞いております。
  90. 黒柳明

    ○黒柳明君 だってあれでしょう、官房のほうじゃ絶対そんなことはないと、こういうわけでしょう、副官房長官は、官房のほうじゃそんなことは絶対ないということでしょう。
  91. 大村襄治

    政府委員(大村襄治君) 内閣官房は、二部ほど受け取っておるわけですけれども、これはそれぞれの秘書官から官房長官、総理大臣に報告して、あとは厳重に管理しております。関係者以外全然関知しない状態であったことは間違いないと思います。
  92. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、外務省のほうは機密はもう当事者ですからね、絶対そんなことはないと。残るはやっぱり運輸省なんですよ。それしかないわけですよ。法務省だれか来ていらっしゃいますか。どうですか、きのうの法務大臣の記者会見の……。
  93. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 昨日の一部新聞に報道されておりますように、法務大臣がそのようなことを申されたという報道がございますが、事務当局といたしましては、先ほど外務大臣もおっしゃいましたように、まだ調査中でございまして、だれからだれにどういう経緯でどういうことがあったかということは、事務当局としては承知いたしておらない状態でございますので、事務当局としては運輸省から漏れたということの判断には至っておりません。
  94. 黒柳明

    ○黒柳明君 何だ、じゃ、事務当局じゃなかったら法務大臣出てこいと言ったじゃないか。そんな答弁あるか。そんな答弁あるか。じゃ、大臣出てくるまで待ちましょう。要求したんだから、待ちましょう。事務当局じゃ話にならぬ。
  95. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 先ほど外務大臣申されましたように、本件の事実の真相ということは、関係当局において御調査をなさるのが筋でございますので、法務省が、先ほど外務大臣おっしゃるように、まだ調査中であるというのを乗り越えて、法務省が法務省として事実の認定をする立場にもないわけでございますから、大臣が申されたとすれば、単なる観測を申されたということにすぎないので、事務当局としては、運輸省から漏れたという判断に至っていないということを申し上げたわけであります。
  96. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから大臣を要求したんです。待ちましょう、大臣来るまで。じゃ、運輸法務来るまで待ちましょう。
  97. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  98. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 速記をつけて。  暫時休憩します。    午後零時八分休憩      ―――――・―――――    午後零時三十四分開会   〔理事平島敏夫君委員長席に着く〕
  99. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。
  100. 黒柳明

    ○黒柳明君 すみません、大臣。ほんとうにお忙しいところ、国会なんかお出かけいただきましてすみません。ほんとうに恐縮でございます。  本委員会がもう協定の最後の委員会になりますのでね。脱漏問題もたびたび取り上げられておりますけれども外務省のほうはもうきちっとしておると、まあこれは当事者ですから。内閣官房のほうも大村副長官が、もううちのほうは絶対ないと、これも再三再四。運輸省のほうも粗漏はないと。ただ政策的なことなんで、いまも局長さん答弁あったんですけど、政策的なことなんで政調のほうと話はしたと。まあそこらあたりから漏れる可能性がなければ、ほかにはいまの時点は――これからまた外務大臣も法務大臣やなんかお集まりいただいて検討しなきゃならないということですから、まだ調査がこれで完了した、結論が出たという段階じゃないと思うんですけれども、そこらあたりからやっぱり漏れる可能性があるとすれば、いまの時点においてはほかには考えられないと、こういうこともきのうの大臣のあの会見ではお話しになったんではなかろうかと、こう思うんですけれども、きのうのお話の根拠みたいなもの何かありましたらひとつ。
  101. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) それじゃお答えしますが、きのう閣議後の記者会見では、新聞記者ずっと各社おりまして、どなたであったか覚えありませんが、その中からこういう質問が出たんです。何でも運輸省に渡したものは書き込みがあったそうだと。その書き込みのあったものが漏れたということだそうだが、そうすりゃもう運輸省に間違いないと思うんだが大臣どう思うかと、こういうことでしたから、さあそれはぼくはよく事実のほどはわからないので、事実がなきゃ仮定の上に立った議論になるけれども、かりに運輸省でそれじゃ漏れたとしても、いまの議院内閣制からいえば、政府と党は一体になって外交問題など処理する責任があるんで、党の責任者である幹事長とか政調会長とか、あるいは外交部会長とかいう人に見せたとかいうのならば違法性が阻却されるのじゃないのかねと。どうなるかよくわからぬけれども、具体的な事実でなきゃ話はできないが、違法性が阻却されるんじゃないかとぼくは思うという話をしたら、さらに質問が出まして、それじゃその党の責任者が知った場合に、漏らした党の責任者はどうなるんだと、こういう話が出ました。さあそれは公務員に対する機密保持の規定だから国会議員には適用ないんじゃないかと、道義上の問題はもちろん出ると思うんだけれども、国会議員であればどうしようもないんじゃないのかと。しかし、そういうことがほんとうにそうなのか、そうでないのか、まだ基本的事実がないんだからはっきりしたことは言えませんねという話をしただけなんです。それが、きょう私も読売新聞の記事を見まして、まあ私が言ったようにも書いてある節もあるけれども、また見方によっては、私がいかにも運輸省が漏らしたと言ったようにとられるような記事もありまして、そこが少しあいまいではありますが、私は事実の実態を知りませんからよくわからないんですが、そういうことなんです。それがああいう記事になって出ておるわけで、私が運輸省が漏らしたとか漏らさぬとか言う筋合いでもないし、事実も知りませんし、質問が出まして、それに対する、仮定の質問に対する仮定の答えしたみたいなことだったわけです。
  102. 黒柳明

    ○黒柳明君 別に私も、記事読んで事実を歪曲して判断しようという気もありませんし、わかんないからお聞きしたいということであって。  局長さん、さっき政策的なことだから党の政調の方にお話ししたと、こういうことをおっしゃったですけれども、何人ぐらいですか、複数ですか、御相談した方は。
  103. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 結果的には複数になるかと思いますが、主として単数と御理解願いたい。
  104. 黒柳明

    ○黒柳明君 ちょっとすみません、主として単数……、そこら聞こえなかった。
  105. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) これは、わがほうといたしましては交通部会に御説明するというたてまえになっております。したがいまして、窓口は原則的に一つでございます。
  106. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、窓口ということじゃなくて、部会じゃなくて私は人数の面で。そうすると、交通部会ですから相当の多くということになるわけですね。
  107. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) 交通部会の内部的な取り扱いについて私ども存じ上げません。しかし交通部会に御説明をするというたてまえになっておりますので、大筋について御説明をしておる、特に私どもが御説明申し上げますのは路線権問題、当然のことでございますが、路線権問題を中心として御説明申し上げるわけでございます。
  108. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も仮定のことですから、私たち別に調査権もありませんし、別にそんな忙しいときそんな調べようなんて殊勝な気持ちもありません。それは外務大臣は一生懸命なんでね。どうなんですか、もし外務省も漏らさない、官房も漏らさない、運輸省もと言いましたけれども、運輸省はいま言ったように交通部会には話すことはもう義務づけられているんですよと。そうすると、党の責任者とか何とかいうことじゃなくて、相当の交通部会というところは多人数の人に言うわけですね。そっくり公電見せる可能性――まあ見したかどうか私わかりませんよ。可能性だって十二分にあるわけですよ。そんな抽象的なことを云々したったって、私たち野党だって資料よこせ、正確な文書をと言うんですから、自民党と運輸省の間ですから、まあ見たとか、見せたか見せないか、これはここまではもう質疑したって答えは返ってこないでしょう。こういうあり方も、今後は検討されるべきじゃないんですか。こういう外交上の機密が入っている、含まれている、しかも外務大臣先ほどから今後はもうほんとに慎重に対処しなければならない、私の力不足だと、こうおっしゃったんですけれども、力不足じゃなくて、そういう外交機密を含んでいる公電に対して、まだ全然まとまりもしない、まだ交渉過程にあって、対外的なもう信用問題にもなるようなものを、党の、与党の部会に流すという、こういうことを義務づけられているということについても、抜本的に考えなきゃならないんじゃないですか。まして、こういう協定について、もう初めから反対派がいて、何とかこれを料理してやろうなんていう意図が見えたわけですよ、もう。どうですかね、こういう点。
  109. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど法務大臣も言及されたように、政党内閣のもとにおきまして、政府・与党というのは一体で内政外交を運営せにゃならぬと、したがいまして、十分な協力を得るためには、政府も与党と十分連絡をとるということは、一つの定着した慣行になっておるわけでございます。問題は、あなたがおっしゃるように、それがどういう態様において行なわれていくのが筋道かということだと思うんでございますが、こういうことはこういう筋道をたどって、こういう程度、こういう形でやれ、やるべきであるというようなきまったルールが別にあるわけじゃございません。したがって、このケースの場合どのように判断したらいいのか、私ども事情を十分聞いた上で、自分たちでもできるだけ勉強してみたいと思いますけれども、現在明らかになっておることは、そこまでのことしか明らかになっていない。その態様がどうであったかというようなこと、それから公電の一部が、公電と同じ内容の一部が外部に出ておるという事実との間の連関が不明であるということなんでございますと、それがいまの段階でございますということを御説明申し上げたにすぎないわけでございまして、今後なお調査を進めなければならぬと思っております。
  110. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣の言うこともわかるんですけれども、もうすでにはっきりしていることは、外交機密が盛られている公電を見したか見せないか、私はわからないけれども、それを政策的に交通部会で相談をしたということは、これはもうはっきりしていますね。これどうですか、外務大臣。これははっきりしているわけでしょう。そうすると、外務省だって官房だって運輸省だってしっかりしていると、いま現在はっきりしているのは、そこはもうはっきりしているわけですよ、その点は。だから万が一ほかにルートがあったとしても、あるいはいま現在においては、そこにおいて話して相談したということははっきりしているんですから、そういう外交機密が盛られた公電なんかは、もっともっと慎重に取り扱うべきじゃなかろうか、今回の苦い体験を踏まえて、という私は質問なんです。いまがどうなったのか、どういうふうに流れたのか、こんなこと言っているんじゃないんですよ。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、外交機密の取り扱いにつきましては、周到な注意が必要だと思います。
  112. 黒柳明

    ○黒柳明君 だからそれは周到な事実というのは、内政外交を一緒といっても、外交のしかも最高機密文書ですから、そういうものについては、党の部会にはかるというたてまえになっていますということについても、これはもういまの御答弁の中に、範疇に入る分野じゃないんですか、慎重にこれからもう考慮しなけばならない分野に。どうでしょう。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それはひとつ判断の問題だと思います。それから公電自体なのか、公電に盛られた内容が口頭で伝わったのか、そのあたりもはっきりしないわけなんでございます。おっしゃるように、どの程度までどういう形で政府・与党の問の意思の疎通がはかられてしかるべきかという問題は、やはり政治的な判断にかかってくると思います。
  114. 黒柳明

    ○黒柳明君 すみません、法務大臣お忙しいんで一言だけ。まだはっきりしないんで法務大臣も感触を答えたということで、私はわかったんですけれども、もしそういう交通部会に政策的なことは話すことはたてまえになっているんだと、こういう別に悪意じゃない、善意な上にやった場合に、それが公務員法に抵触するかしないか、まあ判断のするところだといま大臣おっしゃいましたけれども外務大臣から呼びかけあって、法務大臣を特にその中にお入れいただくと、呼びかけあったということは、当然そういうことを中心に検討するということが問題になってくるんでしょうか。どうなんでしょうか。ちょっと法務大臣がその中に呼ばれるなんていうことは、私はもう常識的に、いまの問題があるから、そうなるとこれがはっきりした場合に、あるいはそれしかルートがないと、こうなった場合に、それじゃこれはいままでこういうことをやられたんだけれども、こういうことについて法務大臣はどういう見解持つかということを聞かれるということじゃないと、私は法務大臣がこの中に入るということも何かおかしいというような気がする、どうでしょうか。
  115. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御同感でございます。私もそう思うんですが、私たちが相談に巻き込まれるということは、事実がはっきりして、こういう事実がありますと、ついては法務省としてこれに対してどういう見解をお持ちかということを聞かれるならわかるんですが、まだ事実関係がどうなっておるんだかわからないんですね。事実関係がわからない段階で呼ばれても、お答えのしようないというのが私どもの気持ちでございます。
  116. 黒柳明

    ○黒柳明君 ただ、うすらげながらはっきりしているのは、何回も繰り返すように、交通部会では政策的に相談したということです。運輸大臣たいへんですよ、火の粉がかかりそうですよ。それだけがうすらながらでもはっきりしているということだけですね。だから私はそこらあたり感触を聞くのかなと、またそれが事実としてはっきり浮かび上がったときには、それに対してどういう断定をするか、あらかじめ聞くのかなと、こういうふうに私は思うのですけれども、まあ法務大臣いまの答弁、すみません、法務大臣お忙しいところ申しわけありません。  運輸大臣、結局きのう法務大臣の、時間もありませんので、一言ですけれども、各ところも絶対粗漏はない、こういうことなんです。ただ、もうこれで四回目なんですけれども、あるとするならば、いまの段階では交通部会に政策的に相談した、これは事務当局としても義務づけられているからやったんだと、だけどそれについては何も公電見せたか見せないか云々なんていうことは私聞きもしないし、そこについては私はわかりません、聞いたって答えもしないでしょうけれども、だけれどもそういうことについて、最高の機密、外交機密が盛られたものをそういうルートでいままでやっていたから今後もいいなんていうことは、当然考慮しなきゃなんないだろうと、外務大臣はそのとおりだと。そうすると、いまおぼろげながらでも、わからないわからないと言いながら出てきたのは、交通部会でははっきり政策的に相談をされている、そこで漏れる可能性がもしあるとすればですよ、わかりませんが、あるんではなかろうかということなんですよ。それに対して法務大臣も、いま言われたように、おれが呼ばれるのはおかしいけれども、そんなところの見解あたり聞かれるんじゃないかなんて、運輸大臣どうですか。それでもなおかつおれは絶対そんなことはないと、こう思いますか。
  117. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) これは、分けて申し上げますが……。
  118. 黒柳明

    ○黒柳明君 おすわりいただいてけっこうです。
  119. 徳永正利

    国務大臣(徳永正利君) ちょっと立ちませんと気分が出ませんから、あれでございますが、(笑声)まあ公電を一部、写しを運輸省がもらっていることはこれは事実でございます。そして、その取り扱いは、国際課長が金庫に入れておきまして、そして審議官、それから航空局の次長、それから航空局長、さらに両次官、それから私と、これにそれを自分が持って、そして見せておることも事実でございます。そして、それが終わりますと金庫にかぎをかけて入れる、そのことも事実でございます。  それから交通部会に対しましてその経過の概要を、これはもう新聞にも相当詳しく出ておりますから、新聞以上の経過の概要なんというようなことはなかなか話してはおりませんけれども、大体そういうような経過ですね。出たり入ったり程度の経過の概要というものは、これは毎日報告するわけじゃもちろんございません。交通部会が開かれて説明せいというときには概要を説明している。これはもうどういう問題でも、省でもやっておられることだと私は思います。そのときに、あるいはまた、その他の機会に、公電の写しを、またそれを刷って渡したり、あるいは公電を持って見せましたりということはないわけでございまして、私どもは、いろいろこの点についてはうわさも私は耳にしております。耳にしておりますが、この藤尾さんの、藤尾君の発言とどういう関連にそれがあるかということについて、その関連はどう調べてみてもいま出てこないわけでございまして、これは今後調査を政府としてもすると、こういうことでございます。
  120. 黒柳明

    ○黒柳明君 すみません、もう最後です、時間がありません。――ということを運輸大臣は報告を受けていると、こういうことだと思うんですよ。――ということを報告を受けていると、こういうことだと思うんですよ、ぼくは。当然、運輸大臣がそれを国際課長と一緒に回ったわけじゃないんですから。そういうことをやっているから運輸省は粗漏はありませんよと報告を受けていると、こういうことだと思うんです。これは間違いないと思うんです。ですから、その過程においてどうなったのかということがわからなければ、藤尾発言との結びつきは当然つきません。だけどそれは、もし写したか、あるいは筆記したか、それはいずれにせよ、その過程において何かあったのかなかったのか、ここらあたりが問題ですけれども、それはありたとしたって、やりましたなんてもういまさら言えませんな、やった人があるとするならば。ですから、そうなればそれは結局運輸大臣に対する報告、これだけですよと、ほかには見せませんよと。だからぼくは、何回も言ったように、交通部会に見せたか見せないのかと、ここのとこなんか聞いたってしょうがないし、見せたったって見せないと言うだろうから、そんなことはもう論じたってしょうがないと。だけども、いま可能性があるのは、大臣が報告を受けたけれども、それ以上のことをやっぱり可能性を追求するとすれば、そこが一番はっきり浮かび上がってきているわけです、ここにおいて。   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕  ですから、疑わしきは罰せざるですけれども、しかし、そういうところにおいて大臣は報告をうのみにして、だからということは、これは決してやっぱり前向きな姿勢じゃないと思いますよ。私は、外務省だって、官房だって、これですべて決着ついているとは思わないんです。ですけれども、運輸大臣の場合には、それがほんとにやっぱり文書が見せられたのか、写されたのか、コピーであるいは出したのかというところをほんとうにやっぱり前向きで検討して、それでやっぱり自己反省なり、あるいは党あるいは政府・与党との間のこの問題というものを今後反省の材料にしませんと、これはもう私は絶対表に出てこないと思います、もうこうなったからには。それで、あとはもう運輸大臣判断しかないわけですからね。いまのところじゃ、もうそういうことになっているんです。ですから、私は運輸大臣のおっしゃったそういう報告を受けたということについて、だからもう粗漏はないということは絶対考えられない。どう見たって運輸大臣がいま一番不ぐあいな立場にいるんですから、それに対してひとつ前向きに検討されることを期待いたしまして、私もう答弁もらっていると、時間がたちましたので……。申しわけありません。お忙しいところ、ありがとうございました。
  121. 栗林卓司

    栗林卓司君 日中航空協定の問題と日台路線関係を中心にしながら、御見解を伺いたいと思うんす。時間がたいへん限られておりますので、なるべく簡潔な御答弁をお願いしたいと思います。  問題は、一つの中国という主張なんですけれども、これは中華人民共和国政府も、そして台湾も、それぞれに主張している事実はございます。そこで、この一つの中国論というのはどちらかというと大義名分に類する、たてまえとしての主張ではあるまいか。で、私もよく中国の人たちのものの考え方を知っているわけではありませんけれども、大義名分に立って身を処すということを非常に大切にしているんだ、そういう人たちなんだといわれます。これは私もそういう感じがいたします。  そこで、日中航空協定が結ばれるということは、この大義名分という立場からすると、台湾は当然のこととして路線は断絶するであろう、これが一番予想される線ではあるまいかとかねがね思っていたわけですけれども、その点について大臣はどういう感じをお持ちでございましたか。日中航空協定を結べば当然日台路線は断絶をされる、一つの中国というのはそれだけの重みを持った大義名分の主張なんだというようにお考えではなかったんでしょうか、伺いたいと思います。
  122. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中国政府台湾それぞれ大義名分を持っておるわけでございまして、これを、両方の主張を生かすような解決方法はないと思います。わが国といたしまして、日台路線正常化後といえども維持していくということでは、十分中国側にも理解を求めにゃいかぬし、台湾側にも理解を求めまして、ぎりぎりの日本政府考え方を示して理解を求めていく。その誠意を尽くしてまいりますならば御理解がいただけるのではないかということで、最後の瞬間まで私は努力したつもりでございます。大義名分論だから切られるにきまっているというような安易な想定でやったわけではございません。
  123. 栗林卓司

    栗林卓司君 大義名分だから切られるという安易な想定という意味ではなくて、その一つの中国の主張をどの程度中国の人たちが大切にしているかということだと思うんです。これは、ほかの問題は別として、航空協定になりますと、国としての一つの行為ということになる。そうなるとこれは明らかに大義名分に触れてくる。しかし、日本政府としてはこの際こういうことをするんだから御理解ください、これは当然だと思う。御理解くださいということと、その大義名分に触れるので、日台路線はほぼ当然の結論として断絶されるだろうという想定は、またそれはそれでしておか・なければいけないんじゃないか。理解を求めるということと、だから日台路線は存続してくれということは少し次元が違うんじゃないか。これまで伺っておりますと、日中航空協定締結をするんだ。片方では何とか日本政府立場理解して日台路線を存続してくれという主張は、大義名分論からするとたいへん身がってな主張に先方はとりはすまいか、そういう気がしてならないんですけれども、重ねて伺いますが、どういうことでしょうか。
  124. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 身がってな主張かもしれませんけれども、これは現実に航空需要があるわけでございますし、これを何とか維持していきたいという国民の願いもあるわけでございますので、両方の御理解が得られるぎりぎりのことを考えてまいるということは当然われわれの任務でありまして、そのように努力をいたしたわけでございますが、台湾側理解が得られなかったというのはたいへん残念なことだと思っております。
  125. 栗林卓司

    栗林卓司君 お伺いしている意味をもう少し申し上げますと、近年、まあ大正、昭和を含めてですけれども日中両国の不幸な関係というものを振り返ってみますと、いろんな原因がありますけれども、大きな原因の幾つかとして考えられるのは、一つは中国の中で複数の政権が存在していた。二番目が何かというと、複数の政権の存在をめぐって西欧なり、あるいはソ米という国際的な影響が複雑にからみ合ってきた。三番目が何かといいますと、この中国大陸に存在している複数の政権とどう関係を結ぶかという問題をめぐって、日本国内に非常に鋭い対立が起きてきた。これは日中関係の不幸をもたらした大きな環境ではなかったんだろうか。それほど日中関係の結び方というのはむずかしいんだ。今日もまた、これと状況はいささかも変わっているわけではありません。  こういう中で、どういう基本的な姿勢として日中関係を開いておいでになるのか。事実上複数の政権があるんだから、あるじゃないかという形でいくのか。向こうはやっぱり、政権は違いながら、中国民族が組成している国家ですから、大義名分という考え方もあり、あるいはメンツという考え方もある。そういったことを見ながら、国としてのつき合い方というのはどうしてもこういうぐあいに割り切っていかざるを得ない。いろいろあると思うんですけれども、どういう形で外交関係を開いていかれるのか、基本的な考え方伺いたいと思います。
  126. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 基本的には、わが国は、中国は一つである、一つの国には一つの政府を認めていくということでございまして、中華人民共和国政府を正統唯一の合法政府として認めたわけでございます。この基本ラインはくずしてはいけない。で、それと、その原則をこわさない範囲内において台湾との実務関係は維持していくということにつとめておるわけでございますし、今後も変わりはございません。
  127. 栗林卓司

    栗林卓司君 そうすると、一言で言うと、複数の政権が事実上存在しているという姿を見ながら、明らかにそのいずれかを日本政府としては選択をしましたということだと思うんです。  そこで、選択されなかった台湾政権ということを考えますと、日台路線というと、日本から飛行機を向こうに持っていきたいんで何とかという話になるわけですけれども、これは双務関係なんで、台湾の飛行機が日本に来るか来ないかということがもう一つ重要な側面じゃないか。そこで、何とか日本政府立場を御理解といいながら、日本政府は明らかに中華人民共和国を唯一の正統政府として認める選択を行なったわけです。これに対して台湾には台湾の主張がある。ですから、日中で共同声明を出したときには、その時点で大義名分に触れる部分は台湾はしりぞいて、したがって、こちらの代表部は引き揚げている。で、航空協定になるとまたその大義名分と触れる部分が拡大する。これで日中平和条約ということになると、さらにまた台湾をより――ことばはいいかどうかわかりませんけれども日本からすると、追い込んでいく形になるわけです。そういった中で、その日台路線の存続ということがよくいわれますけれども台湾側から見て、あの青天白日旗をつけた飛行機をほんとうに持ってくるんだろうか、お願いすれば持ってこれるんだとほんとうにお考えになっているんだろうか。その点はどうでしょう。
  128. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本政府考えました正常化のワク内におきまして、日台路線を維持していく仕組みといたしまして、これは民間協定の形でやってまいるということ、そして、中華航空という会社がいまのままの姿で乗り入れていただく上におきまして、また、日本側航空企業が台湾に乗り入れを認めていただくにつきまして、相互にこういう配慮をするということについて、外務、運輸両省で考えた案を提示したわけです。それ以外に分別はないので、何とか御理解が願えないかということが終始変わらないわれわれの願いであったわけで、努力であったわけでございます。それが今日こういう不幸な事態を招来いたしたわけでございますけれども、しかし、ほかにそれじゃ分別があったかと言いますと、私にはございませんでした。
  129. 栗林卓司

    栗林卓司君 台湾の側から見て考えた場合に、日本とのつき合い方の面で、台湾が掲げている大義名分論について日本側理解を示すことがほんとうは正しい行き方じゃないかという気がするのです。なるほど、あなたのほうはそう言っているかもしらぬけれども、事実上これだけ実務関係があるのだから、それはそれ、これはこれでわかってくれというのは、先方が必死の思いで掲げている大義名分に対して、あたかもそれはもうどうでもいいようなことだと言わんばかりになるのじゃないか。いま分別はないとおっしゃったのですけれども実務関係を維持するということと、日本台湾航空機の相互乗り入れをどうするかということは、必ずしもイコールじゃないと思う。実務関係を維持したいということは、第三国の好意と理解にすがってもできるのです。それでも人は動けるし、交流はできるわけです。向こうの大義名分ということを、それはごもっともなんで、わかるということになったら、日台路線についてごちゃごちゃ言うよりも、事実上の実務関係を、台湾の大義名分が通る形でやるためには、われわれはどういう先方に依頼をしていったらいいのか、場合によっては第三国の理解と協力を求めながら、そちらのほうを主たるパイプにしていくほうがいいのか。そこのところで、何かお願いすると日台路線が何かできそうなんだという、いわれなき幻影が私はいまあるような気がしてならない。ほんとうにそれができるんならいいんですけれども中国の人たちというのはほんとうにそういう考え方をするのだとか、名よりも実をとれという、われわれ日本人の発想とはいささか違うんじゃないかという気がしてならないもんですから、これ以上の分別はありませんでしたとおっしゃるのですけれども、分別ないのはあたりまえなんで、日台路線はとてもじゃないけれどもだめなんだ、したがって、今後はこういう交流パイプでいきますということをはっきりおっしゃったほうが、かえって台湾立場を認めたことになり、今後の日台関係について前向きの効果をもたらすのじゃないか。そうはお考えになりませんですか。
  130. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) だから一年余り苦労したわけですよ、ワク内でどうして可能にするかという道をですね。だから、それは一方北京との問では国家間の協定にしよう、一方は民間の協定でいこうということで考えたわけでございます。  そして、そのことの基本的な考え方につきましては、台湾側に別に異論は私はあったように思わないわけでございますが、その他の項目につきまして異論があったというように思います。しかし、一方正常化をやりまして日台路線を維持していく上におきましては、北京側がしっかりした実は理解をしておいていてもらわぬと、これはやれません。だから、台湾側立場をどのように生かすかに過去一年余り苦労に苦労を重ねたわけでございまして、われわれは、台湾に無理解であるとか、ほかに分別がないからこれでいくんだといって簡単にやるんなら、それは正常化のあと簡単にやれますよ。一年半なんでこんなに苦労したかというと、こういうワク内において台湾政府との関係を維持するにはどうしたらいいかということで苦労したわけでございますので、その点につきましては、私は台湾側の御理解を得たいと思って努力したわけでございます。あなたの言う大義名分を十分了解するということでございましたならば、日中正常化はやめなければいかぬわけでございまするし、日中平和条約をもとに戻さなければいかぬわけでございますから、それは日本としてはできないことでございますので、民間の協定という姿において維持していくよりほかに私は分別がないと申し上げているわけです。
  131. 栗林卓司

    栗林卓司君 御苦労は理解できる気がするんです。これは何もいま始まった苦労じゃなくて、過去数十年間いわば苦労し抜いてきたといっても間違いではないと思う。ですからそれはよくわかるんですけれども、まあここで日中航空協定締結をされ批准をされる、一方では日台路線は早急に回復されることを政府は期待しているという趣旨のことをたびたび言われていると思うんですけれども、この早急に回復したいというのは、その見通しを持って、ことばどおりに早急にとお考えになっていると理解してよろしいですか。
  132. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 台湾当局がどうされるかにつきまして私どもが予断をするわけにはまいりません。われわれができることは、日本としてやるべきことを最大限いたすことだと思うのでございます。そしてそのことについて台湾当局がどのように評価し理解を示されるかという問題だと思うのでございまして、今度の、これからの再開の問題にいたしましても、私はそれ以上のことはできぬと思っております。ちゃんとした、いつごろまでにこれはこうなるに違いないなんというようなことは、私にはわかりません。
  133. 栗林卓司

    栗林卓司君 外務省はもちろんですが、政府外務大臣として、日中航空協定に続く大きな作業として日中の平和条約問題があると思う。これはまた前向きに取り組んでいかなければいかぬ、こういうことだと思う。これを台湾側から見ますと、さらにことこまかく日中関係が規定されてくるということになると、先ほど大義名分と私が申し上げた意味合いでは、日台関係というのは、より民間のほうに持っていかないと形がとれないということになりそうな気がするんです。そこで、日台路線というのは、日本の飛行機が向こうに行く、反面では、台湾の青天白日旗をつけた飛行機が日本に来るということなんです。それを、これは一つの中国を代表する国旗であると主張されているわけです、大義名分かざす限りは。はたして来るであろうか。来る日本というのは、これからさらに日中平和条約に向かってより進んだ中華人民共和国政府との関係にいくし、その前提というのは、先ほど大臣おっしゃったように中国はあくまでも一つである、それを代表する正統政府は一つであるというたてまえでいくわけですから、そうなると、日本の気持ちはよくわかりますよ、わかりますけれども、だからとにかく青天白日旗くっつけてやってきてくれと頼むのが筋道なのか、よくそれはわかった、わかるから今後の外交関係は民間ルートでいきましょうと、で飛行機をどうするかといったら、第三国の理解と協力に求める道だってあるではないかという幅を用意しながら台湾と話し合いをされるというほうが普通のやり方じゃないかという気がするんですが、いかがですか。
  134. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きわめて普通にやっているわけです。民間協定でいきましょうということでございまするし、それから台湾のお立場というものも考えて、社名とか旗について日本がその変改を求めないという態度で、ただ日本政府として正常化のたてまえ上、認識を私の談話の姿で表明するにとどめたわけで、それがぎりぎりの線だったわけでございます。私どもは、いま栗林さん言われる点につきまして、過去一年半、ほんとうに骨身を削る苦労をしてきたつもりでございますし、そういうことで御理解をいただければ正常化後といえども日台路線は安定した維持が可能であるということで御理解を求めてまいったわけでございます。この態度は将来も変わりません。
  135. 栗林卓司

    栗林卓司君 くどくお伺いするようで恐縮ですけれども大臣談話で、公式と非公式の中間ぐらいの色合いで台湾機の取り扱いについて声明する、これがぎりぎりの努力であった、このぎりぎりの努力で、結局結果としては日台路線は切れたわけですね。さらにこれから先方の理解を求めながらと言いながら、ぎりぎりの努力にさらにプラスする何かが日本側で可能でなければ、今日の状況というのは変わらないんじゃないでしょうか。私が心配するのは、ほんとうにぎりぎりだとおっしゃるなら、私もそうだと思いますよ、だから日中関係というものはほんとうに組み立てがむずかしいのだと思うんです。そうすると、いわれなき日台路線復活という幻想を振りまいて、この問題が国内対立にさらに持ち込まれることは避けるべきじゃないか。問題は、事実上の関係が確保されれば、ある意味では実害がない。どの飛行機に乗ったっていいわけです、どの船に乗ってもかまわぬ。そのかわり、交流の窓口は、かつてとは立場がまさに裏返しですけれども、交流協会を強化する、何の実害があるのかとおっしゃったほうが……。かつて、日中関係をかくも複雑にしたのは、一つは先ほど申し上げましたように、残念ながら複数の政権が存在していた。そのまわりには国際的な影響がからみ合っていた。しかも、これが国内対立に鋭く反映されてきた。この最後のところだけは何とかしていただかないと困ると思いますし、その意味でも、御努力はわかるのですけれども、いまもなお日台路線は早急に復活可能なんだとおっしゃることが、はたして日本の政治として正しいのか、たいへんな危惧の念を持つのですけれども、いかがでしょうか。
  136. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は、日台路線が早急に復活可能であるなんて一言も言っておりません。われわれ日本政府としては、その再開にできる限り努力をしたい、正常化のワク内で努力をしたいということを言っているわけでございます。幻想は少しも持っておりません。
  137. 栗林卓司

    栗林卓司君 わかりました。  そこで、時間ですから最後に二問だけ。一問は運輸省にお伺いしますけれども、一つだけお伺いしますけれども、幻想を捨てながら、といって希望を捨てるという意味ではありません。今後の日台関係考えていくときに、現在は日台問の交流窓口が交流協会という民間組織だと理解しておりますけれども、これをさらに強化を期待する方向で考えておいでになりますか。機能的に強化をするということを期待しながら日台関係考えておいでになりますかどうか、これだけ大臣にお伺いしておきます。
  138. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは実務関係の連絡機関でございまして、その機能は十分果たせるように考えていきたいと思っております。
  139. 栗林卓司

    栗林卓司君 時間ですから簡単に運輸省の方に伺いますけれども日中航空協定が発効したあと一番機が飛んでいくわけですけれども、その便数の見通しというのはどうなっておりますか。伺うのは、おそらく日本から一便行くと向こうからも一便という、こういう平等互恵ということばがそこで文字どおりに適用された航空関係になると思うのですけれども、そこでどのような見通しをされておりますか。聞くところによると、週一便ぐらい、とりあえずというような話も聞いたりするのですけれども、ひとつ見通しだけ伺って質問を終わりたいと思います。
  140. 寺井久美

    政府委員寺井久美君) この何便飛ばせるかといいますことは、両国間及び以遠を考えまして、どの程度の輸送力が適当であるかということから出発するわけでございまして、この辺は、今後双方政府で話をしまして便数を決定するわけでございます。御指摘のように、当面それほど多い便数が必要だということは常識的に考えられませんので、一便とか二便とかということが相互に考えられるということであろうかと思います。ただ、同じ一便と申しましても、機材によって容量が違いますので、やはり同じ程度の機材を使って同じ程度の便数と、こういうかっこうになろうかと思います。
  141. 星野力

    星野力君 日中航空協定関連しまして、日中関係の基本的な問題についての大臣の認識、また日中航空協定問題をめぐるこれまでの事態についての大臣の気持ちといいますか、感懐といいますか、そういうものを主としてお聞きしたいと思います。  まず、日本政府中国政府というもの、台湾政権というものをどのように認識しておられるのか、一国内における正統政府と反乱政権との関係というふうに見ておられるのかどうか、その点どうですか。
  142. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本政府は、一般的な態度といたしまして、ワンネーション、ワンガバメントという国際法、普通のやり方で外交を展開してきておるわけでございまして、中国は一つであるし、したがって、中国における一つの政権を合法政府として取り組んでいくという態度に終始いたしておるわけでございます。現在、北京政府をわれわれは承認いたしておるわけでございますが、台湾に別な政権があることは、事実関係として承知いたしておりますが、この政権がどういう性格のものであるかというような点につきましては、私から御答弁を差し控えさせていただきます。
  143. 星野力

    星野力君 日本政府としては、台湾に一つの政権が存在することは事実として認識するが、これを政府として相手にするものではないということだろうと思いますが、そうですか。
  144. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さようです。
  145. 星野力

    星野力君 そうしますと、台湾をめぐって、中国政府北京政府台湾政権との間にどのような事態が発生しても、それは日本の関与する問題ではないということになると思いますが、どうですか。北京台湾との間に、中国の中ですね、どういう事態が発生しても、日本がそれに関与する関係にはないと……。
  146. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 具体的にどういう場合を想定されているんでしょうか。
  147. 星野力

    星野力君 たとえば戦争、交戦というような事態、台湾海峡の風雲が急になるというような事態ですね、そういうことが発生した場合においても、日本政府としては、これは中国国内問題であり、日本として何らこれに関与するものではないと、こういう立場だろうと思うんですが。
  148. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう事態は予想いたしておりません。
  149. 星野力

    星野力君 いま何て言われましたか。予想しておらないというんですか。私は、そういう事態が発生するということを言っておるんじゃない、そういう事態、これは発生しないかもしれませんが、発生するかもしれないんですよね。前にもそういうことありましたでしょう。馬祖の戦争とか、台湾海峡でありました。だから、それは大臣がそういう事態を予想しないというのはかってでありますけれども可能性はある問題なんですよ。そういう問題が起きた場合に、可能性が現実になった場合に、日本政府としては、しかしそれに何ら関与する立場にはないと、こういうことじゃないかと思います。
  150. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは仰せのとおり、基本的には、これは中国国内問題であると思います。しかし、わが国としては、そういう紛争というようなことが起こらぬことを希望しておりますし、かりにそういうことが万が一起こりましても、平和的に解決されて、武力紛争というようなことに発展しないことをこいねがっております。
  151. 星野力

    星野力君 大臣の期待や希望はそれは別問題でありますが、私、確かめたい問題は、例の有名なる日米共同声明、「総理大臣は、台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素であると述べた。」と、ああいう一節のありますところの一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明のいわゆ台湾条項というものは、今日では何ら実質的な意味を持たない、少なくともこの部分は空文化したものと、こう解釈すべきであると思いますが、そう解釈してよろしいかどうかということですよ。
  152. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 専門家に……。
  153. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 御指摘がございました日米共同声明の第四項に、ただいま御指摘になられました文面があるわけでございますが、これはその当時の両国首脳の台湾地域の情勢についての認識を表明したものでございますが、その後、情勢は非常に大きく変化をしておりますし、この地域をめぐって、すなわち、台湾地域をめぐって武力紛争が現実に発生するというような可能性はすでになくなっていると考えられますので、こういう情勢の変化というものに照らしまして、この共同声明に掲げてあります認識そのものも変化しているというふうに考えるべきだろうと思います。
  154. 星野力

    星野力君 政府の情勢認識は別問題として、要するに、あの条項というものの意味は、今日では変わってしまっておるということは言えると、こういうことですか。
  155. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 認識が変化しているわけでございますから、それの持ちます意味合いが、現在の時点においてはやはり異なってきているということは言えると思います。
  156. 星野力

    星野力君 もう一度言ってくれませんか。認識が変化しておるから何が変化したのですか。もう一度言ってください。
  157. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 私が申し上げますのは、この共同声明が発せられましたときに両国首脳が持っておりました認識、それが表明されているわけでございます。その後、この台湾海峡をめぐっての情勢というものは、現実にはかなり大きく変化してきていると思います。したがいまして、そういう情勢の変化というものに照らしまして、ここに述べられている認識自体が変化してきているというふうに考えるべきだろうと思います。
  158. 星野力

    星野力君 どうもよくわからないんですがね。情勢が変わったから認識が変化したということは、「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素である」と、こういう認識ではもう今日の日本政府はないと、こう考えてよろしゅうございますね、大臣
  159. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 台湾地域における情勢の認識については、そのとおりだろうと思います。
  160. 星野力

    星野力君 それじゃ先へ進みますが、今度の協定につきまして、大臣は先ほど来、みずからの努力、力量の不足を反省するということを言われております。私、大臣はずいぶん努力されたはずだと思いますし、存分に苦労もされたはずだと思うのです。これ以上努力、苦労の余地があったかどうかとさえ思っておるわけでありますが、日中航空路日台航空路を両立させたいと望んでも、もともとそれは虫がよすぎたとも言えるんではないかと思います。相手のあることであり、相手の台湾日台航路を切ってきたら、それまでのことではないかと思います。日本国民の多数が日中国交の正常化が進むことを願っております。そういう情勢であるからこそ、田中内閣は日中の外交関係を回復し、また、今回の航空協定を結んだんだと思いますが、政府の方針として、この協定を結びながら、台湾側がそれに反応して日台路線を切ってきたら、日本のほうが何か台湾に対して悪いことをしたかのような態度になっておられるのではないかと思う。いまさら何ということかという感じがするわけであります。政府は、いかにもして台湾側の翻意を促して、日台航空路を再開してもらおうという態度のようでありますが、日台路線の再開に成算があるのかどうか、また、これからどういう努力をしようと考えておられるのかどうか、お聞かせ願いたいのです。
  161. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、これは相手のある仕事でございまして、確たる成算があるかと言われますと、それはございますなんというほど私自信がございません。ただ、日台問には、御案内のように旺盛な航空需要があるわけでございまして、これを、日台双方航空機企業がこれに見合ったサービスを提供することがきわめて自然なことだと思うのでありまして、引き続き今後努力いたしまして、日中正常化のワク内におきまして、この路線が維持できることをこいねがっておりまするし、そういうことにつきまして、日台双方理解が進むことのために、私どももできる限りの努力をしてみたいと考えております。
  162. 星野力

    星野力君 努力、努力と仰せになるのですが、具体的にどういう方向で努力なさろうとお考えになっておられるのですか。
  163. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一つの点は、これは民間の協定という姿でやってまいりたいと考えておるわけでございまして、そういう形におきまして、正常化ワク組みの中で支障のない方式を、お互いの理解の上でつくり上げていくということでございます。具体的には、そういうラインに沿って今後望ましい時期に、効果的な手段が案出されて、再開の方向に行くことを願っておるというのがいまの心境でございます。
  164. 星野力

    星野力君 この点については、これ以上お聞きすることはやめます。  日中航空協定の問題をめぐって反共右派分子や、右翼団体などの動きが非常に活発になっております。日中、日台問題をめぐって、各種さまざまの右派勢力が日中友好関係の推進に反対して一斉に動き出しておる。これをちみもうりょうのうごめきというふうに軽視するわけにもいかないのではないかと思います。きょうはここまでは聞こえませんけれども、連日ここの国会の周辺を「田中、大平は腹を切れ」と、こう大書した宣伝カーでがなり立てておる団体もあります。これらの動きを大臣としてどういうふうに考えておられるか。さっき感懐をお聞きしたいと言ったのはそういうような問題ですが。だいぶわき立っておりますが。
  165. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の力量と努力の不足をただただ反省いたしております。
  166. 星野力

    星野力君 先ほども同じことばを言っておられましたが、そういうのは決して反省でも謙虚でもないんですよ。もっとはっきり事態に対してこうだというふうにお考えを述べていただきたいと思うんです。言われぬでしょうから。  ここに「中華週報」という刊行物がございます。たしか「中華週報」という、これは日本語の定期刊行物でありますが、これはもともと在日国府大使館の広報新聞であって、それが大使館が廃止された後も、題号もそのまま、号数も引き続いて発行されておる。だから、事実上の台湾政府の対日宣伝用の刊行物であるわけであります。その四月一日号に、賀陽恒憲氏の台湾での言動が報道されております。賀陽氏ら一行四人が三月十一日から五日間台湾を訪問した記事であります。「旧宮家の訪華は戦後初めてのことで、賀陽氏は要旨次のように語っている。」として、その談話の内容を、「日本の皇族を代表して、中華民国に対する謝罪、蒋総統に対する最高の謝意を表明するために訪華した。また、戦時中の日本軍部首脳の資格で忠烈祠にも参拝し、抗戦のために殉じた中華民国軍将兵の英霊に敬礼する。反共戦士の一員として、日華両国の民間交流増進両国国交の早期回復に尽力をつづける――。」こういうふうに報道し、写真も掲載されております。こういう事実についてどういう感想を持たれますか。
  167. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 私どもも、この先生いま御指摘の「中華週報」によってそのような事実を承知いたしておりますけれども、これは全く政府とは無関係の、一民間人としての賀陽氏の訪問でございまして、ここに掲げてあるような内容については、政府として全く同意できませんけれども、この訪問自体は、政府とは全く関係のない事実でございます。
  168. 星野力

    星野力君 私、政府関係あるなどと一言も言っておらないのですが、おそらく関係ないと、こんなばかなことは政府はやりはしないと思いますけれども、こういうことが、いまいろいろな反対運動の騒ぎの中で、こういう事実も起きておる、これについて大臣はどういう感懐を持たれるか、こういうことをお聞きしたのです、大臣
  169. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中国問題はわが国にとりまして非常にむずかしい問題でありましたし、今日も依然としてむずかしい問題であるし、将来もこれは大きな課題であることに間違いないわけでございます。この問題について、非常にこなれたコンセンサスをわが国内において確立してまいるということが大切だと思うのでありまして、いろいろな現象が見られますけれども、われわれとしては、しんぼう強く努力をしてまいりまして、中国問題について誤りないコンセンサスを確立するように努力をしてまいりたいというのが、私の心境でございます。
  170. 星野力

    星野力君 賀陽恒憲氏は、いまは一市民であります。一市民が個人としてどういう思想を持とうが、また述べようが、これは自由であるといえばそれまでのことであります。しかし、皇族であった人物が日本の皇族を代表してと称して、言いかえれば、天皇を背中に負うて日中航空協定どころか、日中国交回復それ自体に反対する立場で行動し、ものを言っておる。日本の皇族を代表して日本台湾国交早期回復に尽力を続ける、こう言っておるのでありますから、これは軽々しい問題ではない、穏やかな問題ではないと思うのであります。その点について、もう一度大臣のお考え聞きたいんですが、元皇族というのは、法律上はともあれ、実際的には特殊の身分であります。そういう身分の人物が、右翼団体と同じ立場で、多数国民の願望に挑戦するかのように日中国交回復に反対して騒動しておる、すこぶる穏やかでない問題だと思うんですが、その点についてもう少し具体的に大臣のお考えを聞きたいということであります。
  171. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さきの御答弁を繰り返すようになりますけれども、正しい中国問題に対する理解というものが浸透、徹底してまいるようにつとめてまいって、内外に誤解を招くような節がないようにつとめていかなけりゃならぬと思います。
  172. 星野力

    星野力君 私は、いま例をあげましたのは賀陽恒憲という特定の人、元皇族であった人物の言動に関して大臣のお考えをお聞きしたのでありますが、大臣はまともにそこに触れてお答えにならぬのであります。おそらく大臣も、相手が元皇族ということで、遠慮しておられるんじゃないかと思うんでありますが、そうだとしますと、それを見てもわかりますように、元皇族というような身分の人物、何といっても背後に皇室があり天皇がありますからね、まだまだ国民の間に影響力を持っておるんですよ、相当な。そういう人物が先ほど来申しましたような行動をしておるということは、まことにこれは穏やかでないと、だから取り締まれとか何とか言ったって、これは別の問題ですから、できることでないかもしれませんけれども、もっと、要するに利用しておるんですね、利用するものがあり、利用されておる。こういう事態はなくしなければいけないんだろうと、いけないという立場で私申し上げておるんで、もう時間もないですから、お答えになりたくないならお答えにならぬでよろしゅうございますが、それだけは申しておきます。
  173. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 本件に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後一時四十三分散会      ―――――・―――――