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1974-03-26 第72回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十六日(火曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      稲嶺 一郎君     増田  盛君  三月二十三日     辞任         補欠選任      増田  盛君     稲嶺 一郎君  三月二十五日     辞任         補欠選任      萩原幽香子君     田渕 哲也君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊藤 五郎君     理 事                 木内 四郎君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 田  英夫君     委 員                 稲嶺 一郎君                 佐藤 一郎君                 杉原 荒太君                 増原 恵吉君                 山本 利壽君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務省アジア局        次長       中江 要介君        通商産業省生活        産業局通商課長  佐藤 兼二君        運輸省航空局審        議官       間   孝君        労働省労政局労        政課長      保谷 六郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその  生息環境保護に関する日本国政府とソヴィエ  ト社会主義共和国連邦政府との間の条約締結  について承認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその  環境保護に関する日本国政府とオーストラリ  ア政府との間の協定締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国ベルギー王国との間の文化協定締結  について承認を求めるの件(内閣提出) ○航空業務に関する日本国ギリシャ王国との間  の協定について承認を求めるの件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (ベトナム和平に関する件)  (日韓大陸棚協定に関する件)  (日中航空協定交渉に関する件)  (日本企業韓国進出に関する件)     —————————————
  2. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十五日、萩原幽香子君が委員辞任され、その補欠として田渕哲也君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその生息環境保護に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約締結について承認を求めるの件  渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境保護に関する日本国政府オーストラリア政府との間の協定締結について承認を求めるの件(いずれも一衆議院送付)  以上両件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。大平外務大臣
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその生息環境保護に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、ソ連との間に渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその生息環境保護に関する条約締結するため、かねてソ連側話し合いを進めてまいりました結果、昨年十月十日にモスコーにおきまして、日本側大臣ソ連側グロムイコ外務大臣との間でこの条約署名を行なった次第であります。  この条約は、前文本文九カ条及び附表からなっており、そのおもなる内容は、次のとおりであります。  まず、日ソ間の渡り鳥につきましては、その捕獲及びその卵の採取は、禁止されるものとしており、生死の別を問わず、不法捕獲されもしくは採取された渡り鳥もしくは渡り鳥の卵またはそれらの加工品等販売及び購入等禁止されることとなっております。もっとも、科学的目的等のためのまたは狩猟期間中の捕獲及び採取等一定の場合には、それぞれの国の法令により、捕獲及び採取禁止に対する例外が認められることとなっております。  次に、絶滅のおそれのある鳥類につきましては、その保存のために特別の保護措置が望ましいことに同意し、これらの鳥類及びその加工品輸出または輸入両国が規制することとしております。  以上のほか、両国は、渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類研究に関する資料及び刊行物を交換することとし、また、渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類環境を保全する等のため適当な措置をとるようにつとめることといたしております。  なお、この条約附表は、日ソ間の渡り鳥として二百八十七の鳥類の種を掲げております。  鳥類及びその生息環境保護に関する国際協力機運は、近年とみに高まりつつありますが、この条約締結は、日ソ両国における鳥類保護に対する関心を深めるのみならず、右の国際的協力機運をさらに高めることになるものと期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第でございます。  次に、渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境保護に関する日本国政府オーストラリア政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、豪州との間に渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境保護に関する協定締結するため、かねて豪側話し合いを進めてきました結果、本年二月六日に東京において、日本側大臣豪側ホーン臨時代理大使との間でこの協定署名を行なった次第であります。  この協定は、前文本文九カ条及び付表からなっており、さらに、パプア・ニューギニアへの適用に関する交換公文が付属しておりますが、そのおもなる内容は、次のとおりであります。  まず日豪間の渡り鳥につきましては、日豪政府がその捕獲及びその卵の採取禁止するものとしております。もっとも、科学的目的等のための、または狩猟期間中の捕獲及び採取等一定の場合には、それぞれの国の法令により、捕獲及び採取禁止に対する例外が認められることとなっております。また、各政府が、生死の別を問わず、不法捕獲されもしくは採取された渡り鳥もしくは渡り鳥の卵またはそれらの加工品等販売及び購入等禁止するものとしております。  次に、絶滅のおそれのある鳥類につきましては、各政府がその保存のため、適当な場合には、特別の保護措置をとることとし、これらの鳥類及びその加工品輸出または輸入を各政府が規制することとしております。  以上のほか、両政府は、渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類研究に関する資料及び刑行物を交換することとし、また、渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類環境を保全する等のため適当な措置をとることにつとめることとしております。  また、この協定附表は、日豪間の渡り鳥として六十六の鳥類の種を掲げております。  なお、附属する交換公文におきましては、この協定パプア・ニューギニアへの適用につきまして、この協定が効力を生じた後、パプア・ニューギニア政府の同意が得られた旨の豪州政府の通告を日本国政府が受領した日から、この協定パプア・ニューギニア適用されることといたしております。  鳥類及びその環境保護に関する国際的協力機運は、近年とみに高まりつつありますが、この協定締結は、日豪両国における鳥類保護に対する関心を深めるのみならず、右の国際的協力機運をさらに高めることになるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  以上、二件につきまして何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 引き続き、両件の補足説明を順次聴取いたします。伊達条約局参事官
  6. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) ただいま提案理由を御説明申し上げましたソビエト連邦との渡り鳥保護に関する条約及びオーストラリア政府との間の同種の協定につきまして、簡単に補足説明させていただきます。  一昨年、日米渡り鳥等保護条約締結につきまして、国会の御承認をいただきましたが、この日米渡り鳥等保護条約に加えまして、今回御審議をいただく日ソ渡り鳥保護条約及び日豪渡り鳥保護協定締結することによりまして、わが国に生息する渡り鳥及び絶滅のおそれのございます鳥類に対する保護がさらに効果的になるものと考えられます。  政府といたしましては、渡り鳥及び絶滅鳥保護に関する国際的機運の高まりに十分留意をいたしますとともに、この分野における国際的協力を今後とも一そう充実してまいりたいと存じております。
  7. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 以上両件に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  8. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 日本国ベルギー王国との間の文化協定締結について承認を求めるの件  航空業務に関する日本国ギリシャ王国との間の協定締結について承認を求めるの件(いずれも一本院先議)  以上両件を便宜一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は御発言を願います。
  9. 田英夫

    田英夫君 前回委員会で、ベルギーとの文化協定について伺いましたので、本日は、ギリシャとの航空協定の問題について主として伺いたいと思います。  最初に伺いたいのは、この協定が昨年の七十一国会に提出されましたけれども、実際には全く説明もないままに、形としては審議未了になったわけであります。この間の事情を、まず伺いたいと思います。
  10. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) お答え申し上げます。  御指摘のように、この協定は前国会におきまして審議未了となりましたが、この理由と申しましては、六月一日にギリシャ革命が起こりまして、ギリシャ王制が廃止され共和制に移行したと、パパドプロス政権という共和政権ができ上がったわけでございます。そのため、この協定表題でございます、ごらんくださればおわかりになりますように、「航空業務に関する日本国ギリシャ王国との間の協定」ということでございまして、「ギリシャ王国」という表題実態にそぐわないという関係がございましたので、国会には三月の十九日に衆議院外務委員会へ付託されておりましたのでございますが、そういう事情もございまして、審議未了ということになりました。当時衆議院のほうでも、このタイトルは、また再交渉と申しますか、そういうようなものをして、共和国に改めたらいかがであるかというような示唆もございまして、私どももそのように考えましたので、審査未了という形に終わったわけでございます。
  11. 田英夫

    田英夫君 向こう側政体が変わったということなわけですけれども王制から共和制に変わったというふうに伝えられ、また、一見それは、いわば近代的になったといいますか、民主的になったというふうに受け取られたわけでありますけれども、どうも、必ずしもその後の新しいギリシャ政権というものの実態は、そう理解していいかどうかが問題だと思うんですが新しいギリシャ政権について、これは外国の政体のことでありますから、なかなか批判はできませんけれども、どういうふうに認識しておられるのか、その辺の外務省の御見解を伺いたいと思います。
  12. 大和田渉

    政府委員大和田渉君) いま伊達参事官が御説明申し上げましたように、昨年の六月の一日に、いままでの王制を廃して共和制になる、当時のパパドプロス政権が宣言したわけでございます。ただ、軍事政権そのものの形としましては、王制という名前はございましたが、一九六七年以来続いてきておりました。それが昨年の六月一日に正式に共和制を宣言し、かつ、七月の下旬にこれを人民投票に付しまして、約八割の支持を得まして共和制になったと。ただ、いま御指摘のように、必ずしもそのままでは安定したことではなくて、さらにその後十一月に、同じ軍事政権でございますが、新しい革命が起き、これは無血革命でございましたけれども、十一月に起きております。その後の国内情勢あるいは各国の新政権に対する態度というものを見ておりますと、確かに軍事政権という名前からくる問題も一ありましょうし、また、本質的には独裁的な色彩を帯びるというような懸念もございして、必ずしも、最初段階では、全部の国があったかい態度をとるということではなかったのではないかと思います。ただ、新しい政権は、他国に対する内政不干渉、また平和愛好国との間のすべての国との国交回復ということをうたいあげております。一方、国内におきましては、経済もかなり順調に伸びつつあるということで、私どもといたしましては、安定した姿でその後続いてきている。また、当初やや批判がありました、たとえばNATOの中の幾つかの国の批判もいまは影をひそめまして、したがって、われわれとしてはいまの姿でずっと続いていくんではないか、国内的にはかなり安定を増しつつあるというふうに認識しております。
  13. 田英夫

    田英夫君 これは新聞の報道ですけれどもイギリス海軍親善訪問を中止したという、それは新しいギリシャ政権民主的政権でないからであると、こういう報道も今月三月半ばごろに伝えられておりますが、そういうことがありましたので、いま実はそういう御質問をしたわけであります。この点あらためて、イギリスギリシャ関係というのはたいへんに深いはずでありますから、いささか気になるわけです。あらためて、その辺の状況をお話しいただきたい。
  14. 大和田渉

    政府委員大和田渉君) イギリス艦隊親善訪問を取りやめたという情報を私どもも聞いております。ただ、いわゆる練習艦隊とか艦隊訪問というのは親善が第一の問題であると。先ほど私ちょっと触れましたNATO幾つかの国の一部に批判的なあれがあったということを申し上げましたけれども、その一国は実はイギリスが入っております。イギリスの国とギリシャ王国、いわゆる王様というものとのいろいろな関係もございまして、イギリス政治家の中にも、あるいは国民の中にも、やはり軍事政権革命によって王を追い出したという姿になっておりますので、批判的な要素はあったことは事実でございます。そういう国内的なことも考慮し、また、ギリシャに対する影響ということをも考慮して、イギリスとしてはあるいは親善訪問が間違ってとられやしないかというような考慮もあって取りやめたのではないかと、こう考えております。
  15. 田英夫

    田英夫君 次は技術的なことですけれども、現在日本の飛行機のギリシャ経由の便数ですね、これどの程度になっていますか。
  16. 間孝

    説明員間孝君) 週に二便でございます。
  17. 田英夫

    田英夫君 これは当然ヨーロッパへ抜けていくというコースになると思うんですけれども向こう側はやはり同じ数ですか。
  18. 間孝

    説明員間孝君) 現在は、ギリシャ側からはまだ日本に来る路線は開かれておりません。
  19. 田英夫

    田英夫君 いわゆるオリンピア航空だと思いますが、そうすると、この航空協定が新しくなっても、これは実際は従来と内容は変わらないわけですから、そうした状況変化はないというふうに理解していいですか。
  20. 間孝

    説明員間孝君) ただいまのところ、日本側が週二便運航いたしておりますのは、この協定が正式に締結される以前の状態におきまして、ギリシャ側行政許可の形において運航を認めておるわけでございます。したがいまして、今回これでこの協定が正式に発効いたしますと、日本側の行ないますところの運航協定に基づく運航という形になるわけでございますから、その場合に、今後ギリシャ側オリンピア航空日本側に乗り入れを行なうかどうかという点につきましては、ただいまのところではそういう意思表示は私どもは受けておりませんので、実態的に申しますと、この協定締結されましても、当面はその運航について変化はないというふうに考えております。
  21. 田英夫

    田英夫君 航空協定に関連をしての問題ですが、外務大臣に伺いたいんですが、現在最終的な詰めに入っている日中航空協定の問題ですが、その調印見通し等を伺いたい。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、日中航空協定自体の問題と、それからこれに関連いたしました日台路線をどういう姿で維持するかという問題と二つございまして、日中協定政府間の協定でやるということ、これは日中間に問題もございませんし、国内に問題もございません。日台間を民間協定の姿で実施しようということにつきましても、内外とも問題がないわけでござます。で、まず問題はその中身でございますが、台湾のほうとは、こちらの民間協定の構想を提示いたしまして、検討を求めておるわけでございます。先方も検討しようということになっておりますが、確たる反応はまだ得られておりません。  それから日中間の本協定のほうでございますが、先般政府外務、運輸、大蔵の係官を派遣いたしまして、協定詰めをお願いしようということで、話し合いに入っておるわけでございます。これが順調にまいりまして仕上げができますと、私としては今国会の御審議をお願いしたいという希望を持っておるわけでございますが、北京交渉がどういう速度でまいりますか、ただいまの段階で確たる展望をまだ持つに至っていないわけでございます。ただ私といたしましては、できるだけ早く仕上げて、今国会の会期中に早く御審議をいただきたいという希望は捨てておりません。
  23. 田英夫

    田英夫君 中国とのいわゆる本協定のほうは、技術的に、ことしの初めに大平外務大臣訪中されてのお話し合いの中で、全く問題はないんじゃないかというふうに考えられているわけですが、以遠権の問題、あるいは場所、空港の問題ですね、相互の。こういう問題も大きな差しさわりがあるとは思えませんので、いま調印といいますか、妥結のめどをまだしかとつかんでいないという意味のお答えがありましたけれども、何かほかにそういった支障があるのかどうか、その辺はいかがですか。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、本協定自体の問題はいわば技術的な問題、行政的な問題でございまして、越えがたい困難があるとは私は考えておりません。問題は、この本協定自体の問題と申しますよりは、正常化が行なわれた状況におきまして日台路線をどういう姿で維持するかという政治問題、この問題が、北京としても無関心でおられないところに問題があることは、もう申すまでもないことでございまして、したがって、本協定日台路線の維持の問題とあわせまして、日中双方で十分な理解をつくりあげていかなければいけないと思って、努力をいたしておるところでございます。
  25. 田英夫

    田英夫君 いまのお答えから考えますと、つまりもう技術的な支障日中間の問題としてはないけれども日台航路をどうするかという政治的な問題があると、こういうことになると思うんですが、そうなりますと、日台航空路をどうするかということについての、いわゆる民間での台湾との話し合い、これがつかないと本協定調印ができないというふうになるわけですか。その辺はいかがですか。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ論理的に申しまして、日台路線というものは協定上の問題じゃございませんわけですから、別個の問題であると言うこともできるわけでございまして、そしてそれがわれわれのなすべき第一の仕事であることは間違いないわけでございます。われわれとしては、それはそれとして進めてまいらなければならぬと考えていますが、正常化のあとにおきましても、日台間の航空往来というものは、いま暫定的な姿でやっておりますけれども、ちゃんとした民間協定というものができて、そのライン、その線を踏まえて運輸省が処理するという姿にしていくことが望ましいと考えておるわけでございます。  事実上、一方は政府間協定、一方は民間協定の姿で維持できるという状態を望ましいと考えて、そういう方向で努力をしておるというわけです。
  27. 田英夫

    田英夫君 どうも最後のところがはっきりしないんですけれども、いま交渉のために外務省運輸省など、関係者北京にまで行っておられる段階で、日台問題が民間話し合いがつかないとこの交渉調印できないのかどうかですね、そこのところをずばり、いわゆる見切り発車ということばがありますけれども日台問題は解決しなくても、これは協定とは関係のないことだといまおっしゃいましたが、その論理的な線からいえば、見切り発車というより、本来日台問題はこれは別のことなんだということでいくのがほんとうだと思いますが、そういうことで、本筋で通されるのか。やはり政治的に判断をして、日台問題が解決をしなければ本協定調印はあり得ないのか。ここのところを明確にお答えいただきたいと思います。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまのわれわれの任務は、日中航空協定締結いたしまして、日中間に正規の航空往来を確保していこうということでございまして、この仕事はもうすでにおそきに失しておるわけでございまして、一日も早くやりたいということで、全力をあげておるわけでございます。日台間は、そういう状況のもとにございましても、民間協定の姿で維持されることが望ましいということでございます。そのために努力をいたしておるわけでございまして、まあ、そういうことからひとつ御判断をいただきたいと思います。
  29. 田英夫

    田英夫君 外務大臣の御苦労はよくわかっているわけですけれども、本来、日中共同声明の精神からすれば、また大臣が論理的に考えてとおっしゃいましたその筋からいっても、これはもう当然、姫鵬飛外相東京に招いて調印という、しかもそれは今国会承認ということになれば、国会の日程からしても四月半ばまでには調印が行なわれなければならないというふうにわれわれ考えますけれども、重ねて、見切り発車をされるのかどうか、ずばりお答えいただきたいと思います。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ことばをかえて申しますと、日中航空協定は早く仕上げて、本国会で御承認を得るようにいたしたいというために全力をあげておるわけでございます。
  31. 田英夫

    田英夫君 質問終わります。
  32. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 両件に対する質疑は本日はこの程度といたします。     —————————————
  33. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 国際情勢等に関する調査議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  34. 西村関一

    西村関一君 外務大臣にお伺いいたします。  ベトナム和平協定締結されましてから、すでに一カ年を経過いたしました。その協定の実効がいまだあらわれてこないというところに、ベトナム人たちはもちろんのこと、われわれも非常に心を痛めているところでございます。   〔委員長退席理事平島敏夫君着席〕  そのやさきに、最近の報道によりますというと、ベトナム問題の解決につきまして、ハノイに駐在いたしております、本委員会においても、また、予算委員会等におきましても問題になりました、南ベトナム臨時革命政府ハノイ駐在特別代表団団長のグエン・バン・チェン氏が、ベトナムの問題の解決に関する六項目の提案をいたしております。これは大臣もうすでに御存じのところだと思うんでございますが、これに対して南のベトナム民共和国側が従来にないところの反応を示しておると。これはあまり積極的な提案ではないと言いながらも、このグエン・バン・チェン氏の提案に対して、これを検討しようという姿勢を示しておる。  で、この六項目の提案の中で注目すべきことは、従来臨時革命政府側がパリ協定の完全実施ということを言い続けてまいりましたが、その点については変わりはございませんけれども、具体的に両政府が停戦の時期をきめて双方停戦の命令を出す、その時点から三カ月以内に民族和解和合全国評議会を設立しようと。同時に、それから一カ年後に民主的な選挙を行なおう、こういう具体的なことを言っておるのでございます。この選挙につきましては、どちらかといえば、臨時革命政府側は、パリ協定のときにかなり不利な条件のもとにあの協定調印をいたしましたこともあって、選挙につきましてはかなり消極的な姿勢であったと思われるのでございます。今回はそれをやろうと、期限を切ってやろうということを言っておる。これはいままでにない提案の姿勢だと思うのでございます。こういうことに対しまして、このことは、各国の報道を見ましても見のがせないニュースとして取り扱っておるのでございまして、この点につきまして、外務大臣としてはどのようにお受け取りになっていらっしゃるか、まずその点からお伺いをいたしたいと思います。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまお話がございました六項目の御提案、その内容は、パリ協定並びにその付属議定書に明記しておることでございます。和平協定成立後、もうすでに一年以上経過している今日でございまして、和平協定の両当事者がこの提案を含めて——ほんとうの意味の停戦と和平をもたらすこの提案を真剣に検討されて、一日も早く政治問題を解決していただくことがたいへん望ましいと考えております。南越政府もこの提案を真剣に検討すると言うておるわけでございますので、私どもといたしましては、一日も早く真剣な検討が行なわれて、パリ協定が目ざしておる青写真が具体化することをこいねがっております。
  36. 西村関一

    西村関一君 いま大臣が言われました南越政府ベトナム共和国側は、従来から民族和解和合全国評議会の中の構成分子の第三勢力というものはいないということを言い続けておるのでございます。その点がやはりこだわりになっているかと思いますが、事実、いないと申しましても、それはきわめて事実に反するところの抗弁であるというふうに私は考えるのでございまして、やはりパリ協定においてきめられておるところのこの構成分子にようて全国評議会が構成されて、そうしてそこで民主的な統一選挙を行なうということに対する具体的な取りきめをやるという、パリ協定にきめられておる事柄に対して、そこのところにこだわっておるやに思われるのでございます。そういう点は一つ一つ問題を明らかにして解決に進ましめなければならないと思うのでございます。事は、ベトナムの問題でございますから、わが国のこれに介入すべき筋合いではないとおっしゃるかもわかりませんけれども、やはりアジアの外交を推進する日本政府といたしまして、特にベトナムの和平を願う日本といたしまして、問題——いわゆる双方の争点といいますか、問題のあるところを政府としても検討しておられると思うのでございます。こういう点につきましては、どういうふうにお受け取りになっておいでになりますか。
  37. 中江要介

    説明員(中江要介君) 今度のいわゆる六項目提案と申しますのは、先生も御承知のとおり、三月二十二日のハノイ放送でわれわれは承知したわけでございまして、その中身は、先ほど外務大臣が御答弁されましたように、パリ協定の線に沿った項目が並んでおるわけでございますけれども、これをどういうふうに実施していく段取りであるかというこまかい点については、必ずしもまだはっきりしておらないわけです。  他方、サイゴンに首都を置いておりますベトナム共和国のチャン・バン・ドン副首相は、真に和平をもたらすものならば真剣に検討したい、こういうふうに述べていると伝えられておりますので、そういう意味では何らかここから和平への手がかりが得られるのではなかろうかとは思うんですけれども、先ほど申し上げました段取りの点につきまして、いままでおもな対立点といいますか、意見が必ずしも一致しない点といたしまして、ベトナム共和国政府のほうでは、まず北越軍が撤退することが前提条件だし、そしてすみやかに総選挙に持っていきたい、こういうことを言っておりますのに対しまして、臨時革命政府のほうは、民主的自由の保障が先決だというふうなことで、今度の六項目にあがっております項目のどこから先に手をつけるかという点が、すでにパリ協定以来の意見不一致点でもあるわけでございますので、今回の六項目につきまして、臨時革命政府の考え方として、一応私どもが承知しておりますところでは、まず戦闘行為を停止して、それから全国和解国家評議会をつくって、それから総選挙に持っていく、こういう考えのように見ておるわけでございまして、そういう段取りについて、ベトナム共和国政府との間で早く了解に達してほしいと私どもは願うわけであります。  で、パリ協定は、日本政府は当事者でないわけですけれども、あの協定は当事国以外の国によっても尊重されることが期待されておるわけでございまして、日本政府としましては、いままでも機会あるごとにベトナム共和国政府に対しましてはパリ協定の線で早く和平が定着するようにという期待を述べております。したがって、今回のPRGの提案を契機といたしまして、段取りについてもいままでの行きがかりにこだわらずに、パリ協定の線で和平への歩みを進めていただきたい、こういう期待を持っている次第であります。
  38. 西村関一

    西村関一君 まあ、きわめて一般的な立場の見解を述べられたと思うのでございまして、私がさっきちょっと触れましたベトナム民共和国側は、第三勢力というものはいないということを従来から言っているのであります。北越の軍隊をまず撤退しろということを言う前に、第三勢力はいないという、事実を曲げた発言をし続けているというところに、これはどう考えてみてもこだわりが出てくると思うのでございます。私は、幾つかの国際会議に出まして、いわゆる第三勢力と称せられる人たちに会いました。サイゴンその他におることができないで、パリに居を移しておる人たちもございます。   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕  また、サイゴンにありましても、たとえばいわゆる政治囚という名のもとに多くの刑務所に収容されて過酷な拷問を受けているといわれる人たちもございます。これらの点につきまして、ベトナム共和国政府は世界各国のきわめて心ある人々を納得させるだけの資料を提出いたしておりません。こういう点につきましても、私はぜひ真相をつかみたい。はたして第三勢力がいないのかどうか、そういうものは存在もないのかどうかということにつきまして事実を知りたい、事実をつかみたいということで、去る一月に、私は、かなりむずかしい情勢でございましたが、サイゴンに参りまして、四日間滞在をいたしました。私はそのことにつきましても、なお再度サイゴンを訪問したいと考えているんでございます。こういう点につきまして、政府は、もちろんサイゴンにわがほうの大使館が設置されているんでございますから、いろんな情報をつかんでいらっしゃると思うんでございます。率直にそれらの点についてお述べをいただきたいと思うんでございます。
  39. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私も数年前にはサイゴンの大使館に在勤しておりまして、現地のいろいろの情報を勉強する機会を直接持っておったわけでございますけれども、いま先生のおっしゃっております第三グループといいますか、中立グループといいますか、第三勢力といいますか、そういうものがあるかないかということについてなかなか評価を下しにくい、非常に複雑な状況であるというふうに思ったわけですが、ベトナム共和国政府が第三勢力がないと言っていることが、どういう考慮から、何を根拠にして言っているかは、これは立ち入って批判することはできませんけれども、少なくとも客観的に見てこれがベトナム共和国政府と臨時革命政府と並んで全国評議会の一構成分子となる第三の勢力であるという、まとまったものというものは、どうもいまだはっきりとした姿をなすに至っていないんではないかと私どもは思うわけで、そういう第三の勢力ができた暁には、あるいはできる暁にはそれに参加するであろう人あるいはグループ、勢力、そういったものは各所に散在しておりますし、また、おっしゃいますように、外国にいてそういうことを憂え、心配している人たちもおられることは、私どもも承知しておるわけでございますけれども、ただいま申し上げましたように、いまの政府とそれから臨時革命政府と並んで全国評議会の第三番目の勢力として、グループとしてまとまった姿というものは、残念ながらいままでのところ浮き上がってきてないというふうに思っております。で、そういったものがやはり力を合わせて一つの姿としてまとまれば、三つのグループからなる全国評議会という、パリ協定が予想したものが生まれてくるんだろうと、それの一日も早いことを期待してはおるんですけれども、どうもざれは、西村先生も現地に行かれまして、いろいろ接触されて、御感触を得ておられると思いますけれども、その辺がまとまりにくい状況にあるというふうに私どもは思っております。
  40. 西村関一

    西村関一君 私は、去る一月にサイゴンに参りまして、野党の書記長でございますところのグエン・コク・フィー氏と二時間ばかり対談をいたしました。また、与党の上院外務委員長とも親しくお話し合いをいたしました。その結論といたしましては、私の疑問を解明してくれるところのものはほとんどありませんでした。たとえば、政治囚の実態について、ベトナム共和国側はきわめて簡単な薄っぺらなパンフレット一冊しか出してない。こんなもので世界の世論を納得させると言ったって無理だと、もう少し世界の疑問にこたえるところの資料を出しなさいということを私はこの両氏に話したんでございます。それはおっしゃるとおり、特にグェン・コク・フィー書記長は、——いずれももちろん国会議員でございますが、——おっしゃるとおり、その点はまことに不十分でございます。それはいわゆる第三勢力と言われる、たとえばカトリックの神父さんたち、現在サイゴンにおいてもそういうグループがございまして、たとえばファーザー・チャン・チン、私も彼に会いましたが、ファーザー・チャン・チンは、南ベトナムにおける政治囚釈放の委員会を教団の中につくっておりまして、相当分厚い資料を出しております。私は、その資料を全部もらって帰りましたけれども、アメリカはケネディ上院議員が委員長になりまして、やはりその調査をやっております。世界各国とも同様でございます。皆それぞれ資料を出しております。そういうものに対して疑問にこたえるところの資料を、南ベトナムベトナム共和国政府は出してないというのが現状でございます。  私はその後パリに参りまして、イギリスのグラナダ社というテレビ放送局が映写をし、これをイギリスにおいて全国に放送いたしました「南ベトナムにおける政治囚の実態、その拷問に対する疑問」というフィルムを手に入れました。それを見ましても、かなり控え目な描写をいたしておりますけれども、かなり目も当てられないような情勢が出てくる。イギリスの放送会社がこれをとってイギリスにおいて放送したというものでございます。私はそのフィルムを買ってまいりまして、衆議院の議員会館の控え室でこの映画を議員の皆さんに見せたんであります。皆一様に驚いておられました。これは各党の議員さんが見られたんであります。  それからまた、いま日本に来ておりますカナダのマッキール大学のアジア研究所の副所長でありますプロフェッサー・ニューモフという人がおります。この人は中国研究の専門家でございますが、アメリカ人であり、カナダの大学の助教授である。この人が北越の中国の国境から南の解放区にわたって三千キロにわたる地域を旅行いたしましてとりました八ミリのフィルムがございます。私はニューモフ教授に頼んでそのフィルムを複写いたしました。それもどの間国会議員の皆さんに見せたんであります。ニューモフさんはアメリカ人として初めて解放区に入った人であり、かなりこまかくわれわれが見たいと思って見られないところを見ております。非常にすぐれた、しろうとの写したフィルムでございますけれども、きわめてすぐれたフィルムでございます。これらの点から見まして、アメリカの学者はただにニューモフさんだけではございません、その他の有名な学者たちが解放区の問題を取り上げておる。それからまた、南ベトナム実態に対する報告書を出していると、おそらくそういうものは外務省では皆お調べになっておられると思うんでございます。私はそういうものに対して南のサイゴン政府ベトナム共和国政府側がこういう世界の疑問に対して、これを解明するだけの資料を出してないということを認めているんである。こういうことに対しても、私はあえてPRGの肩を持つという意味じゃなく、あるいは北越側の肩を持つという意味じゃなくって、人道的な立場から、ベトナム和平を求めるという立場から、疑問のあるところは一つ一つこれを解明していくという努力を、近隣の、アジア大国であります日本国会議員の一人としてぜひやらなければいけないということを願っておるのでございます。  私は、実は、この二十九、三十、三十一日とストックホルムにおいて開かれますところのベトナムアピール、パリ協定実施に関するところの国際会議というものが開かれます。これに世界各国からベトナム問題に心配をしている、心を寄せているところの政治家、学者、文化人、各団体の指導者、代表等々が集まることでございます。私は、この会議に参加をいたしまして、北のベトナム民共和国の代表ともひざを交えて話したい。また、南の臨時革命政府の代表ともよく話をいたしたい。ラオス、カンボジアの代表とも話したい。この会議は御承知だと思いますが、ストックホルム委員会において主催をするのでございますが、この会議にはやはり南のサイゴン政府ベトナム共和国側の代表も入れろという意見さえも出ておったのであります。しかし、今回はそれは実現いたしませんですけれども、そういう立場に立つ国際会議でございます。世界各国の人々が日本の——そう言っちゃ失礼でございますけれども外務省を飛び越えて、心を痛めながら何とかして解決への糸口をつかみたいということでストックホルムに集まるのでございます。私は、この会議を終えましてからビエンチャンに飛び、ビエンチャンにおきましては、いまラオスの両政権が連立政権をつくろうという動きを示しておるし、間もなくそれが実現するという状態になっておる。その情勢にも触れてまいりたいし、ビエンチャンから私は再度サイゴンに参りまして、サイゴンの、この一月に会いました政治家たち、サイゴン政府の指導者にも、心ある指導者にも会い、また第三勢力の人たちにも会い、宗教家の人たちにも会い、問題の解明に若干の努力をいたしたいと考えているのでございます。  私は、一月に参りましたときに、ドクター・フィー、野党の書記長に対して、私の疑問に答えるためには、まずコンソン島に私を入れるように努力をしてもらいたい。あのトラのおりといわれるところの、政治囚がとらまえられ、拷問をかけられおてるといわれる、そういうものはないとあなた方が言われるならば、実際心配しているところの私をコンソン島に入れなさい、大体軍の飛行機でなければ行けないような刑務所は世界じゅうどこにもない。まだ問題が解明されてないとはいえ、そういうことをそのままにしておいたのでは貴国のためにはなりませんということを私は言ったのであります。私は、このことに対しましても、ぜひそのような努力をいたしたい。今回参りました時点で、それが実現できるかどうかはわかりませんけれども、執拗に私はこれをやりたいと思っております。ケネディ上院議員とも連絡をとって、国際チームをつくってでも私はやりたいと考えておるんでございます。こういう情勢でございますので、たまたまグエン・バン・チェン氏のこの提案は、私は見のがすことができないと思うんでございます。いろいろ疑問を出せば出せると思いますけれども、しかし、どうせ、こういう非常にむずかしい状態に立ち至っているパリ協定の一年後の今日の情勢の中で解明しようというんでありますから、私は、これだけの提案をPRGの代表であるグエン・バン・チェン氏が言ったということは、相当前の発言と比べまして柔軟になっていると見るんであります。ぜひ、こういう点につきまして、私は、外務大臣としては十分に心を傾けて、ベトナムの和平の問題に対して日本政府としての取り組み方を願いたいと思うんでございます。外務大臣いかがでございましょうか。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 西村議員が、和平を希求される高次のお立場に立ちまして、国の内外にわたって御活躍をいただいておりますことは、たいへん多とする次第でございます。  日本政府といたしましても、先ほど来申し上げましたように、すでにベトナムの和平達成への青写真は、多くの国の支持のもので、パリ、協定という姿ででき上がっておるわけでございまして、そのことが着実に実行に移されて和平の招来が一日も早いことをこいねがっておるわけでございます。われわれのベトナム政策というものは、そこにベースを置きまして着実に進めてまいらなけりゃならぬと考えておるわけでございます。  それから、第三に、いま西村議員が提起されましたような個々の政治問題について御提示があったわけでございますが、私どもといたしましても、そういう問題につきまして、今後も和平への道を探求してまいる上から申しまして、必要なものにつきましては十分究明をし、関係国に対しましてそれをアピールしてまいるということは労を惜しむべきでないと考えておるわけでございます。御心配をいただいておりますことに対して、重ねて感謝いたします。
  42. 西村関一

    西村関一君 私がさっき申しましたプロフェッサー・ニューモフが、最近アジアレビューという季刊誌ですね、これに、「アメリカ人の見た解放区」という一文が載っております。これは、彼が足で歩いて集めてきた資料に基づく文章であります。私は、これをよく読みまして、非常にこれは貴重な資料だと考えるのでございます。大臣も、ぜひ、このアメリカ人である、しかも、どちらかといえば社会主義、共産主義に加担してない、公正な立場に立っているニューモフ教授——彼はストックホルム会議にもやはり出てまいりますので、私は再度彼とはストックホルムで会うことになっております。それからグエン・ジン・チイ神父、これは日本にも——私が主宰者になってお迎えしましたカトリックの神父さん、これはやはり第三勢力の代表の一人であります。これはパリにおります。そういう人たちもストックホルムに参りますから、私はぜひこれはあの人たちの意見も聞きたいと思いますが、ぜひ私はこういうものをごらんいただきたい。また、私が申しました先ほどのフィルムなど、ぜひ外務省の方々にも見てもらいたい。この間国会議員には見せましたけれども、ぜひ外務省の皆さんにも見てもらいたいと思うんであります。  そこで、いままでも問題になっておりますPRGの、つまり南ベトナム臨時革命政府の人を日本に入れるという点につきまして、いろんなジグザグの道行きがありましたが、現時点におきまして外務省ではどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。私は、一つ一つ問題を前向きに処理していくことによって日本政府の考え方も向こうにわからせることができると思うし、また、世界の心ある人々にも理解させることができると思うんであります。臨時革命政府承認している国が相当数ふえつつあるこの時点におきまして、現在におきましては、文化関係——政治関係はともかくとして文化関係、あるいは運動競技関係等におきまして、できるところから入国を認めていくというお考えに立っていただきたいと思うんでございます。その点、どういうふうに現在は方針をきめておられるか。
  43. 中江要介

    ○説名員(中江要介君) 南ベトナムの臨時革命政府関係者の、あるいは、その解放区に属しておられる南ベトナム人たち日本への入国問題について、日本政府として考慮をしなければならない点は、大きく言って二つあると思うんでございまして、第一点は、日本政府は南ベトナムという地域ではベトナム共和国政府を唯一の合法政府として承認し来たっておりますし、その立場には変更がないということが第一点でございます。第二点は、と同時に、パリ協定締結されましたときより以降は、南ベトナム臨時革命政府というものがパリ協定協定当事者であるという地位を持っている。そして、その協定のもとでのベトナム和平日本政府としては期待し、望んでいると、こういうことでございまして、南ベトナムの臨時革命政府の地位につきましては、パリ協定の当事者であるという地位を日本政府としては尊重していきたい。  この二つの問題を念頭に置きまして、その上で、いま先生がおっしゃいましたように、日本政府の基本的な立場と、それからそれが及ぼす外交上のやっかいな問題を招かないという範囲内で前向きで検討していきたいと、こういう姿勢で、先般のアジア卓球大会のメンバーにつきましても、基本的にはそういう態度で臨んでいると、これが現在の日本政府の基本的な入国問題についての考え方でございます。
  44. 西村関一

    西村関一君 私は、この問題についてももっと時間がほしいんですが、もう私の与えられている時間がありません。  最後に一点だけ伺っておきますが、それはさっきもちょっと触れましたラオス連合政府につきまして、ラオス連合政府樹立への条件が整って、双方の話し合いが具体的に進んでおるというふうに伝えられておるのであります。私は、ストックホルムからの帰り道にぜひともビエンチャンに寄るつもりでおりますが、この機会に現在のこのラオス連合政府状態について、今後の見通しについて政府の見解を伺いたいと思います。
  45. 中江要介

    説明員(中江要介君) インドシナ半島における国際的な紛争の中で、ベトナム、カンボジア、ラオスとあったわけでございますけれどもベトナムについてパリ協定ができました直後、ラオスについても和平協定ができましたわけで、その事実を踏まえまして、やはりこの三つのうちではラオスについて最も早く何らかの和解ができていくのではなかろうかという期待があったわけですが、それが、にもかかわらず、現在まで実を結ぶに至っておりませんけれども、昨年の九月に付属の議定書ができまして、また、十一月になりますと混合中央委員会というものも開かれまして、都市防衛軍の協定が本年の一月二十四日には締結されますし、また、混合警察に関する協定が二月の六日に締結されるというふうに、一歩一歩前進しているというそのあとが顕著なわけでございます。こういうことを踏まえまして、私どもといたしましても、新しい暫定連合政府ができる時期というものはそう遠くないのではないかというふうに期待を持って見ております。
  46. 西村関一

    西村関一君 最後に一点、外務大臣に伺いたいんですが、わが国はベトナム民共和国と国交樹立の調印をパリにおいてなさいました。いまだに大使館の双方設置、大使の交換ということが実現されてないということに対して、日本政府としてはどうお考えになっていらっしゃいますか。どうでございますか。
  47. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わがほうといたしましては、国交樹立後、手順を整えまして、すでに大使館員を発令いたしまして、二名の館員をビエンチャンで待機させておるわけでございます。で、先方との接触を持っておりますが、実館を設置するに至っていない理由は、先方の受け入れ態勢の問題であると私は承知いたしておるわけでございます。なるほど、臨時革命政府の問題でございますとか、その他若干の問題があるわけでございますけれども、これは国交樹立交渉からずっと一貫して外交関係を持ちまして、その間で双方話し合っていこうという姿勢をずっと貫いておるわけでございます。相互の理解は、私は漸次深まってきておると承知いたしておるわけでございまして、前途に大きな懸念を私は持っておりません。
  48. 西村関一

    西村関一君 そのベトナム民共和国とわが国との国交樹立への具体的なスケジュールが進捗してないという点につきまして、ただ受け入れ側の条件が整わないからという向こう側の考え方だけではなくって、やはり南ベトナム臨時革命政府に対する日本国政府の姿勢、そういうものがやはり問われておると思うのでございます。これは、あのときの条件には何らなっておりません。パリにおいて結ばれました双方の国交樹立の調印には、何ら具体的な条件には明文の上ではなっておりませんけれども、やはり諸般の情勢から見て、日本国政府の姿勢が問われておるというふうに私は考えるのでございます。中江参事官が言われましたように、南における唯一の合法政権ベトナム共和国だ、サイゴン政府だという立場に立っていなさるということもわかりますけれども、しかし、情勢がこのように複雑化し、また微妙化しておるときに、そして和平への道を深求しておるときに、いつまでたってもそういう姿勢を変えないということでは私はいかがなものであろうかと思うんでございます。そういう点に対しまして私は政府の猛省を促しまして、きょうの私の質問を終わりたいと思います。
  49. 田英夫

    田英夫君 私は、一月末にソウルで調印されました日韓大陸だな協定について伺いたいと思います。  すでに伝えられるところによりますと、政府の中で、この日韓大陸だな協定を今国会に提出をし、承認を求めるということについていろいろ御議論があるというふうに伺っているわけですけれども、今国会に提出されるのかどうか、このことをまず伺いたい。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御提出申し上げて御審議を願うべく、せっかく努力をいたしておるところです。
  51. 田英夫

    田英夫君 先日ソウルの後宮大使が、非常に確定的に、今国会に提出をして承認を求めるんだということを言われたわけでありますけれども、この線が、後宮さんの線が政府態度だと考えてよろしいんですか。
  52. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私ども政府当局といたしましては、国際約束を成規の手続で締結して署名調印されました以上は、すみやかに国会の御審議を仰ぐというのが、これが従来一貫してとってきております態度でございますし、日韓大陸だな協定に限ってその例外としなければならない理由を見出さないわけで、その国会の御審議の結果がどうなりますかは、これは国会の御審議の問題でございまして、政府といたしましては、あくまでも数年間にわたって鋭意交渉して妥結を見ました、そして正式に署名調印されました協定である以上は、すみやかに国会に提出して御審議を仰ぎたい、こういう一貫した方針が後宮大使の御発言にもなっている、こういうふうに思っております。
  53. 田英夫

    田英夫君 これは政府としては当然のことと思います。調印をされたんですから、それを現在国会が開かれているにもかかわらず提出を見送るというようなことになれば、これはむしろ重大な問題なので、ただ現実の事態はなかなか、与党である自民党の中にもいろいろ御意見があるようですし、問題だと、こういうふうに私ども理解しているわけです。  そこで伺いたいのは、非常に根本的な問題になりますが、いわゆる大陸だな条約というものに日本政府調印加入しておられないわけでありますが、この条約に対する政府のお考え、基本的なお考えを伺いたい。
  54. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 御指摘のごとく、大陸だな条約、ジュネーブで作成されました条約日本は加入いたしておりません。加入する考えも現在はないわけでございます。  なぜ加入しないかという問題でございますけれども、一つには、大陸だなの境界につきまして現在まだ国際法が確立されているという段階ではございませんで、大陸だなの存在そのものは国際慣習法としては確定的な概念になっていると考えますけれども、境界の画定についきましてはいろいろな主張、見解が現在存在しているわけでございます。大陸だな条約の中にも、境界の画定につきましての規定がございますけれども、必ずしもはっきりしているわけではないということと、もう一つ、海底資源につきまして、大陸だな条約に書いてあります資源の保護、大陸だな資源の対象になります資源の範囲につきまして問題があるということで、この条約には参加いたしていないわけでございます。
  55. 田英夫

    田英夫君 つまり、一つは第六条にある境界線の規定の問題だということと、もう一つは資源のことと言われましたが、それは主として漁業資源の問題ではないかと思います。つまり、海底の石油であるとか天然ガスであるとかいう資源の問題ではなくて、漁業資源の問題ではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  56. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) そのとおりでございます。
  57. 田英夫

    田英夫君 そうしますと、大陸だなの境界線の問題については、従来日本政府は、種々の国際会議での、たとえば海洋法会議の準備会議などでもそうですけれども、中間線をとるという、これは実は大陸だな条約の第六条の規定でありますけれども、その線に沿って主張しておられると思いますけれども、この点はいかがですか。
  58. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 私ども従来からとっております立場は、相対する沿岸を有する国の間にまたがっております大陸だなにつきましては、その中間線をもって境界とすべきであるという立場をとっているわけでございます。
  59. 田英夫

    田英夫君 そこで、この韓国との問題につきましては、すでに中江次長も先ほど言われましたように、かなり長い間問題になってきた経緯があると思います。その中で、いま条約局長が答えになりましたとおり、日本側はその中間線をとる、こういう主張を続け、韓国側はいわゆる延長線論をとってきた、こういうふうに理解をしているわけですけれども、これは間違いありませんか。
  60. 中江要介

    説明員(中江要介君) 日本側が主張いたしました考え方が、日韓両国の間にまたがっている、いま問題になっている大陸だなについて、現時点で国際法上の基準を求めるとすれば、これは中間線によるべきであるという考え方を主張し続けてきて、現在でもそう思っておるわけでございます。他方韓国側は、この大陸だなの北部については、つまり対馬の東西から多少北に延びておりますが、北部の境界線については日本と同じ立場をとっておる。したがって、今回の協定の二本立てになっております短いほうの協定では、北部境界線については中間線の議論で日韓の間に完全な意見の一致があり、その中間線を画定したわけでございますが、南部につきましては、これは韓国側の主張は日本の主張とは全く異なっておりまして、こういう大陸だなについて現時点で適用される国際法上の基準は自然の延長の議論である。つまり、中国大陸、朝鮮半島から南に延びてきます大陸だなが自然に延長されて、そして深く落ち込むところまでが沿岸国、この場合は大韓民国の権利として主張し得る大陸だなである、こういう立場をとって、現在でもその立場を堅持しているわけでございます。  この二つの法律的な立場の違いについて何らか了解に達することができないかということで、日韓両国の法律実務の会議を足かけ三年にわたって行なったわけでございます。その間、両者ともあらゆる国際法上の学説、判例その他諸条約を援用しながら自己の主張の正しさを論じたわけですけれども、ついにそこに妥協の了解に達することができなかったために、その点を法律的に最後まで追求して、時間と経費その他をかけることをやめて、むしろ、その地下にある資源を有効利用しようということで、実際的解決をはかったというのが南部の共同開発の協定である、こういうことでございます。
  61. 田英夫

    田英夫君 そこで、たいへんふしぎに思いますのは、それぞれに異なった主張があったということは、現在、大陸だなをめぐる境界線についての条約的、法的主張はさまざまあるわけですから、それはそれとして認めてもいいわけですけれども日本側はこの場合中間線論を主張していて、南部の場合ですね、韓国側は北部と南部で違った主張をしているということも一つ——実際の海底の事情があるにせよ、一つまずふしぎですね。そして、南部については自然延長論を主張していた。ところがこの協定——日韓大陸だな協定を見ると、結果的には、いま中江さん言われたとおり、全くそうした法的な差異をたな上げしてしまって、とにかくそこは目をつぶってしまっている。共同開発しようというところに一挙に飛んでいるという、そういうふうになった理由というは一体何なのか。いま、海底資源を早く開発することが目的だといわれましたけれども、ずばり言ってそれは石油だろうと思います。そう考えていいわけですか、石油を開発するために。しかも、ことしの夏に国際海洋法会議が開かれる、そこで当然この大陸だなについての条約論が出てくる、ある程度前進することは間違いない、そういうものを数カ月後に控えたことしの一月になぜあわてて、そんなに急ぐのか。すでに数年間この問題について論じ合ってきた中で、この半年間が待てなかったのかという気さえするわけですが、そんなに急いで調印をされた原因というのは一体何なのか、石油なのか、そこのところをずばり伺いたい。
  62. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいま、そんなに急いで、とおっしゃったわけですけれども、私どもが南部の大陸だなについて共同開発の構想で進めようということに決意いたしましたのは、一昨年のことでございまして、一昨年から本年の一月三十日までの間は、国際的にも先例のない詳細な共同開発の仕組みというものを綿密に両者の間で会議を重ねて、この、ある意味では膨大な、こまかい協定の案文に合意して署名調印したというのが一月のことでございまして、特にとの一月にあわててやったということでは全くございませんので、この点は、まず最初に御説明しておきたいと思います。  それからもう一つ、最初に先生のおっしゃいました、北では中間線で南では自然の延長線、そこはどういうことでそうなったかというお話でございますが、これは、先ほど条約局長も御説明いたしました大陸だな条約の第六条の規定でも、中間線というのはどんな場合でも中間線だけであるということではございませんで、かりに大陸だな条約の第六条によりましても、まず合意である、合意ができないときには、特別の事情がない限り中間線でやっていく。その特別の事情というのが、これは海底のことでございまして、どこも画一的な大陸だながあるわけでなくて、それぞれの海底に眠っている大陸だなの姿、そのあり方、またその中にある資源についての関心の持ち方、また沿岸国がいままでどういうふうにそれに対して既得権のようなものを持っているかというような問題だとか、いろいろの事情があって、そういう特別の事情がなければ中間線によるというのは、古典的といいますか、従来考えられていた大陸だなの中間線という主張の中でもそういう前提があったわけでございまして、韓国の主張によりますれば、日韓間に大陸だながすんなりと横たわっておれば、これはすんなりと中間線でいい。しかしそれは、北部ではそう言えるけれども、南部では、琉球列島に沿って海溝が入ってきて、あの海溝のあるところで大陸だなは終わっているという前提から見ますと、南部についてはやはり自然の延長という特別の事情があるのだから、それを考慮してやるべきだ、これには国際法上全く根拠がないわけでもないわけでございまして、これを大いに論争したわけです。その論争の結果、両方ともが国際法の理論上の問題として本件を争ったわけですので、こういった法律的な問題を最終的に解決する方法は、これは国際司法裁判所に持っていくのが一番いい、またそういう例も北海の大陸だなであったわけですから、公正な解決を求めようということで、日本政府は国際司法裁判所に提訴することを提案したわけでございます。ところが、韓国の場合は、すでに御高承のとおり、韓国は国際司法裁判所規定の当事国でないわけでございますので、当事国でない韓国と、当事国でるあ日本との間で国際司法裁判所に本件を持ち出すためには、そのための特別合意書というものをつくって、そこから始めなければいけない。そのためにはたいへんな時間と国際的な弁護士を雇ったり、学者の意見を徴したり、たいへんな経費がかかるわけでございまして、まず調停でまとまればよし、まとまらなければ国際司法裁判所に持っていこうという話に対して、韓国側は、いま申し上げましたような事情で、なかなかそれに応ずることもむずかしい。そうかといっていつまでもほうっておくということは、この大陸だなをはさんでいる日韓両国がとるべき立場であるかどうかということについて、高度の政治的な配慮をされて、そして一昨年の定期閣僚会議の機会に、韓国側からひとつ法律問題は法律問題として残して、実際的にこの資源を開発することを両方で考えようという提案がありまして、日本政府も一昨年の時点で、エネルギーの問題というのが重要であるという認識もありましたし、他方エカフェが行ないましたこの地方の予備的な調査の結果を見ましても、この辺の大陸だなは石油、天然ガス資源の観点から有望であるという報告もあることもございいますので、ひとつそれでは法律的な問題をたな上げにして共同開発というものが、ワーカブルなものができるかどうか、ひとつ専門家に詰めさせてみようというので、一昨年の秋から本年の初冬までかかってつくり上げたというのが、この南部の大陸だなの共同開発協定でございまして、そういう経緯から見まして、両方の法律的立場がどういうふうに最終的に処理されたかといいますと、この協定の二十八条に明記されておりますように、完全に法律的な国際法上の主権的権利の問題をこれによってコミットするものでもないし、また大陸だなの境界画定についてのそれぞれの主張をこれで曲げるものでもないということははっきりしておりますし、他方、先生の言及されました海洋法会議につきましては、これはもう数年前から国連で海底平和利用委員会の席上でいろいろな意見も出ていることも私どもも詳細に調査研究しておるわけでございまして、本年のカラカスの海洋法会議で結論が出ると思っている人はまずないだろうと思いますし、どういう形でまとまるかにつきましても、議論が百出とまでいきませんけれども、多くの議論が出ておりまして、それがまとまる姿がどんなものであるかということがなかなかいまのところでは見当がつかない。かりに何らかのコンセンサスができましても、それがどういう協定条約の形になるか、またそれの拘束力はどうなるか、またその中でおそらく言及されるであろう既得権の問題、つまり、その既得権の中には抽象的に自然延長論という議論というものも、すでに大陸だな条約六条であり得たじゃないかというような考え方、いろいろなものがまだきわめて複雑になっておりまして、その結論がいつ出るかもはっきりしない。出たところで日韓両国がそれに拘束される時点がいつであるかということもはっきりしない。で、裁判所に持っていっても数年以上かかるだろうし、海洋法会議の発展を待っても数年以上かかる。その間、この身辺にある海底資源というものをいつまでもほうっておくことがはたして賢明かどうかというようなことから、日本政府としては韓国側の考え方のもとで一度それじゃ共同開発というものを検討してみようというので、一年以上にわたって詳細に組み立てた協定が、南部の共同開発に関する協定と、こういう次第でございます。
  63. 田英夫

    田英夫君 中井さん、たいへんきれいごとで言われたんですけれども、実はこの協定の背後というのはそんなきれいごとではないし、また、条約論で始末がつかなかったところを、まことに政治的な、きたない背景の中で急いで結ばれたというふうに私どもほ解釈せざるを得ないんです。  問題点としては二つあるんですね。一つは、石油を目ざす資本の側の、金もうけをしようという連中の要求、それにしかも日韓政府がからんで結んだということ。もう一つは、そういう結果、国際的に、特にアジアの平和という立場から非常に重要な結果を招くことになってしまっているということ。つまり、経済的な問題と——これはもちろん政治がからみますが、もう一つは外交的な問題と、二つの側面からこの協定というのは非常に重大な意味を持っている、こう思うわけです。  そういう意味で一つお示ししたいのは、日本石油の社内報ですが、広報課で発行している「こうもり」という社内報があります。そのことしの一月号。実は、この文章については、衆議院の予算委員会で、石油問題で日本石油の社長、瀧口さんを参考人として呼んだときに、社会党の楢崎弥之助さんが別の問題で取り上げて、社長も、自分の言ったことはそのとおりだということを日本石油の社長が認められた、その文書であります。その楢崎さんが取り上げたとは別のくだりに、見出しは「「東シナ海、」なんとか六、七月頃にはメドをつけたい。」という見出しで、司会者の質問から読みあげますと、「ここのところ、いろいろむずかしい話ばかりで、かつまた明るい話がなかったですけれども、日石について「東シナ海」が明るいニュースといえば明るいニュースだと思うんですがその辺、いかがでしょう。」という質問に対して、日石の社長は、「例の金大中事件があったりして、ずうっと日韓閣僚会議が延びちゃってたんだが、もし延びないでいたら、その時に仮調印してたんだが。条約の草案はできてるんだからね。これから日韓閣僚会議で調印され、」——つまりこれは一月号ですから十二月の段階でおそらくこの人は対談をやっているんですね。「これから日韓閣僚会議で調印され、国会でも承認になれば、順調にいって六月か七月頃、試掘にとりかかれるというんだが……。」そうすると司会者が、「そうすると、あと一カ月ぐらいたてば様子がわかってくるということで、たいへん楽しみですね。」、社長「うちの鉱区以外に韓国のほうの大陸棚で、実際、ガルフとかテキサコとかシェルだとかが掘ってみたそうだけれど、どうもないらしいということだ。西日本石油開発も」、——これはだいぶ以前にできた開発会社ですね、ダッチシェルと組んでいる。その、「西日本石油開発もあまりないらしい。話をきいてみると、どうも南の方にあるらしいという。そうすると、われわれのもっている鉱区が一番良さそうで、人気絶頂ってとこなんだ(笑)。」と。で、司会者が「日石株ますます買いですね」、こういうくだりが出ております。これは何でもない社内報の文章ですけれども、この辺にまさに日韓大陸だな協定の背景がにじみ出ている、こう思います。こうした石油大企業の要求が政府を動かしているんじゃないだろうか、こう思われてもしかたがないし、現に過去に韓国側が独自に一九七〇年の一月に海底鉱物資源開発法というのを自分のほうだけでつくって、この大陸だなの石油開発をやろうとしたといういきさつ、しかも、その韓国はその年の九月にはその中の一部ですけれども、その鉱区の採掘権をアメリカの石油開発業者であるウェンデル・フィリップス社というのに与えてしまっている。  これが北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国側から、アメリカに民族の資源を売り渡したといって非難されている点だろうと思います。こういういきさつもあった。  こうしたいきさつをずうっと調べてきますと、まさに今度の背景というのは、しかも突然のごとく一月三十一日にですか、調印されたという背景には、昨年来の石油問題ということがクローズアップされた中で、チャンスとばかりに調印をされたというにおいがしてならないのでありますが、大平外務大臣いかがですか。
  64. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど政府委員からも申し上げましたように、この問題、ずいぶん長い経緯を持っておるわけでございまして、どろなわ式に急いで石油問題がクローズアップされてきましたのでやったものであるというような御理解でございなますらば、それは改めていただきたいとまず思うのであります。  これは政府は石油資本と御相談してやっているわけでも何でもありませんで、中江君も申し上げましたとおり、きれいな仕事をやっておるわけでございまして、政府の責任でやらなければならぬことを、やるべきときにやるべき方法で考えておるわけでございまして、私どもみじんもそういう利権的な動機からこの問題を取り上げているわけでは決してないのであります。もし大陸だな資源の問題につきましての国際的な合意が定着し、一つのゆるぎにい秩序ができてまいり、あなたがおっしゃるように、政治的にも外交的にも問題がないような事態が招来することをわれわれは望むわけでございますけれども、それがいつになることやらさっぱり見当がつかない状況でございますので、その間どうやっていくかということでございまして、われわれもいろんなインプリケーションを持った問題であることは十分承知しながらも、この問題を放置しておくことは、また一面、政府の責任を問われることになるのではないかという配慮から、非常に周到な配慮を条約面では加えて仕上げてまいったつもりでございます。しかし、提出前からいろいろな検討も行なわれておりまするし、御提出申し上げましたならばいろいろな角度から十分な御審議を願って御解明をいただきたいと思うのでございますが、政府態度は、急いでどろなわ式に石油の危機が云々されたから石油資本の思惑を考えながら取り上げたような、そういうぞんざいな取り上げ方は全然していないんだということは御理解をいただきたいと思います。
  65. 田英夫

    田英夫君 私はどろなわ式に急いでやられたというふうに言っているのではないんです。もう過去何年にもわたって条約論を論議されたことを私もよく知っておりますから、何も急にあわてて結んだというふうに言っているんじゃないんです。長い間努力をしてこられた。そういう中で、なぜこの時点で、いまのアジアの情勢、国際情勢ですよ、それから石油問題に対する国民の世論、特に石油会社に対する非難が集中をしている。そういうところでぬけぬけと石油会社の社長がこういうことを言っているという問題が、国民の皆さんにどういう印象を与えるかということも政治としては当然判断をされるだろうと思うんです。そういう中でこの時期に調印をされたということがどうしてもわからない。となると、やはりいやなことですけれども、石油資本の側のそうした要求があったんじゃないだろうかと、こう考えざるを得ないじゃないかということを申し上げているわけです。  もう一つ、この問題が国会に提出されるそうですから、提出されたらあらためていろいろ議論をしたいと思いますので、きょうは触れるだけにいたしますが、もう一つの重大な問題というのは、なぜこの時期を選んで調印をされたかということがわからない。どうしてもわからない重大な問題というのは外交的な問題ですね。それは過去にアメリカは一九七一年の四月に、国務省がわざわざアメリカ系の企業が中国と、主として中国と資源問題で争いを起こすような黄海や東シナ海の大陸だなの石油資源の開発に対して採掘を中止するようにという勧告を出しておりますね、アメリカ国務省が。つまりアメリカの外務省政府がわざわざアメリカの企業に対して一九七一年四月、三年前に出しているわけですよ。その時点というのは、つまりピンポン外交が始まって、米中の間に接近のきざしが出てきている時期、そういう中できわめて政治的な判断からそれをやって、アメリカ系企業も先ほどから名前が出ているような企業がみんなやっていたわけですけれども、手を引いているんですね。こういう配慮があるわけです、アメリカの側で。そういうことも考えてみると、今回の日本政府のやり方というのは全くわからない。それでたちまち中国と朝鮮民主主義人民共和国から抗議の声明があがっているわけですね。こんなことを予測されないはずはないと思うんです。しかも先ほど中江さんが言われた判例といいますか、国際司法裁判所の判例の中で、北海の場合に、かつて一九六六年ですか、デンマークとオランダの間で北海の大陸だな協定を結んだのに西ドイツが異議を申し立てたら結局これは協定が無効になって、話し合いをするようにということになってしまった。ですから今回の大陸だな協定はその判例に従えば中国、朝鮮民主主義人民共和国から異議の申し立てが出てくれば、国際司法裁判所に、先ほどは韓国が参加国じゃないからと言われたけれども、持ち込まれるということになれば、あるいは持ち込まれなくても、国際的な判例でこれは関係国が話し合わなくちゃいかぬということに当然なるわけじゃないですか。大陸だな条約日本は入っていないけれども、その第六条の精神からしても、中国も朝鮮民主主義人民共和国関係国だと主張すれば話し合いをせざるを得ないんじゃないですか。そういうことがわかっているにもかかわらず、日韓両国の間だけでこの問題たな上げしたところで、国際的に通用するとは思えないのです。そういうところに非常に問題があって、しかも日中航空協定を結ぶか結ばないかということで中国との問題が非常に微妙なときに、これは日中国交回復後初めて公式に中国から日本政府が抗議を受けたわけですね。こういう外交的な立場からいってきわめてまずい、時期的にもまずいし、内容的にもきわめてまずいと思うのですが、その辺をどうお考えになっているのか、外務大臣、いかがですか。
  66. 中江要介

    説明員(中江要介君) 高度の政治的な御判断は後刻あるいは外務大臣からなさるかもしれませんが、事務的に多少御説明しておきたいと思います点を申し上げますと、最初に田先生が御引用になりました日石の社内報の記事の中には、事実に基かないもの、また非常に軽卒に取り扱われている部分がありますので、それをそのまま信じてそうだと思われることは適当でないのじゃないかと思いますので申し上げますと、まずいまの時点で署名したけれども、本来は昨年にすでに協定案文ができていたとか云々ということがございますが、これは正式署名ができますまで、協定交渉内容というものは一般には周知されていないはずでございまして、私どもはその間も鋭意韓国側と仕上げの交渉をやっておったわけでございます。で、金大中事件に言及されておるようでございますけれども、金大中事件については、これは何回も国会の席上でも大臣が申しておられましたように、あの不幸な事件があったといっても、これは日韓関係の基本的な考え方、また日本の対韓基本姿勢には影響はない、変更はないということで、ただその不幸な事件のために雰囲気がよくないときには閣僚会議は開いても成果が上がらないだろうから延ばそうというような議論があったことからも推測していただけますように、基本的な日韓関係というものの基本政策には影響を及ぼさないということで、その問もずっと本件の交渉は続けていたと、こういうことでございます。  それからほかで掘ってみたけれども出ないので、いよいよここが有望だというのは、これは全くそのまあ何といいますか、あまり責任のある発言とは思いませんし、この地域ではまだ試掘というものは行なわれていないわけです、いかなる地域におきましても。これは洋上調査といいますか、海上から船で海底の地形構造を見ているという段階だけで、いよいよ試掘をするということは、これはもう協定が発効して、そしてそれぞれの大陸だな区分がはっきりした上で初めて行なわれることで、いまのところ、どこが有望でどこがだめだということは言えない。ただエカフェの報告によれば、この辺は有望な地域だと推定されているということにすぎないわけでございます。  それからもう一つ、この大陸だな協定締結交渉の全期間を通じまして、私ども事務当局としては、先生がおっしゃいますような大企業の圧力とか何とか、そういったものは全くないことは大臣がはっきり申されたとおりでございまして、全く誠心誠意本件について法律的な立場それから自然の有効利用という実際的観点から処理しておる、こういうふうに私どもは確信しているところでございます。  それから中国との関係につきましては、これは東シナ海大陸だな全部について、日本と韓国がかってな線を引くということならこれは問題でございますけれども、大きな大陸だなの中で、日本と韓国との間に横たわっている部分にきわめて注意深く限定いたしまして、その部分について日本と韓国が話をして境界の問題を実際的に解決したということでございまして、日本が中国と話し合わなければならないと日本政府が考えている部分については、これは全く白紙のままに残しておる、そういうふうに細心の注意をはらってやっているということは、これはもう当初から私ども意識してやっておったわけでございまして、それゆえこそ、本年一月に外務大臣が訪中されましたときに、署名に先立っておりましたけれども日本政府の意のあるところを中国側にも伝えていただいておりますし、署名の直前にも説明し、署名直後も今度はテキスト全文を示して詳細に地図を前にして北京東京説明したわけでございます。で、その際に、それにもかかわらず中国としてなお日本と何らか本件について話し合う必要があるというふうな御判断ならば、本日からでも即刻話し合う用意があるということは、中国側には何度も申し入れてある、こういう実情で、本件協定締結日中間の外交的な重要な問題になると、あるいは困難を与えるものというふうには私どもは思っておりませんで、理を尽して説明すれば中国側の御理解も得られるもの、こういうふうに確信しているわけであります。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまこの時期、外交的な配慮から申してもまずいじゃないかという御指摘でございましたけれども、もともと大陸だなの境界という問題につきましては、友好国の間におきましても見解の相違がある場合も珍しくないわけでございますし、見解の相違があるからといって友好関係がそこなわれるというように私どもは考えていないわけでございまして、したがって、見解の相違は相違として、お互いに十分インフォームし合っておくということ、つまり、一方の意見に対しまして、同意はできないが理解はできるという状態に置いておくことは、いつも私ども努力しなければいかぬことでございますので、そういうラインでいま対処いたしておるわけでございます。中国には中国のお立場がありますし、そういう立場を国際的に声明されたことはそれなりに理解できることでございますが、それだからといって、日中関係の友好関係をそこなうというようなものでないと私は考えております。
  68. 田英夫

    田英夫君 時間がなくなりましたが、この問題は、先ほど本国会に提出するというお話がありましたので、たっぷり時間をかけて、さっき中江さんが日石社長の問題に対して批判をされましたので、必要ならばこの委員会に日石社長を参考人として出席していただくということを要求するかもしれません。そういう中で真偽を明らかにすればいいと思いますし、また中国の問題についても、中国に関係のないところだけ日韓関係だけでと、こうおっしゃったけれども、中国側の抗議の内容は、東中国海における大陸だなをどう区分するかは当然中国の関係諸国との間で協議する。つまり、いわゆる東シナ海の区画をどうするかということを含めて言っているわけでして、日本のほうでかってに、ここは中国関係ないと、これは日韓だけだと言っていること自体にすでに抗議をしているわけですから、これはいささか、もし中国と話し合いをすでにされているということが事実としても、そうだとすれば、それは何の話し合いをしたのか、非常に理解に苦しむので、そんな外交の話し合いなんというものは全くナンセンスだ。ですから、そういうことも含めて、ひとつ、国会に提出されたら、あらためてまた御質疑をしたいと思います。  ありがとうございました。
  69. 黒柳明

    ○黒柳明君 日中航空協定の問題についてお尋ねいたしますが、当面は、現地で交渉が行なわれていますから、それを注目する、こういうことが中心かと思いますけれども、昨日、総理、外務大臣中心に、外務、運輸の両省の幹部がお話をし合ったと、こういうことが報道されておりますけれども、ここで相当やっぱり大詰めの話がされたのではなかろうかと、こう予測するのですけれども、いかがですか。日中政府協定日台民間協定、この関係、あるいは自民党内の当然意見の調整ないしは国会提出のめど、本国会中にこれが検討されるかどうかという時期的な問題等々についても話し合われたのではないかと、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだそういう段階に至っていないわけでございます。いままでの交渉の断面を御報告申し上げたに尽きるわけでございまして、また今後の段取りにつきましては、またあらためて相談しなければいかぬと考えております。
  71. 黒柳明

    ○黒柳明君 二回目の会談が行なわれたと、こういうことですが、中国側からは一回目の日本側の六項目に対してあまり芳しくない回答が返ってきたと、こういうことですか、その内容はどうでしょう。報告なんかあったわけでしょうか。
  72. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 報告を受けました。ただ、たいへん恐縮でございますが、いまやっている最中でございますので、交渉内容につきましては御遠慮さしていただきたいと思います。
  73. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ当然交渉については両国間のやはり信義の問題ですから、まだ進行中なものですから、具体的なことは当然避けるべきだと思いますが、全体的な感触としては、やっぱり中国側からの反応は、あんまり好ましくない反応がきたのではないかと、こういうふうなことですが、その感触だけはどうですか。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ重ねて恐縮でございますけれども交渉中のことでございますので、いましばらく時間をかしていただきたいと思います。
  75. 黒柳明

    ○黒柳明君 今国会中に何とかこれをというようなあれは、十一月——本会期が十二月始まったときの本会議の席上からずっと言い続けられているわけですけれども、どうなんですか。今月もあと数日であり、来月初旬をめどにしても、あと三週間ぐらいしか残っていないわけですね、本国会の会期は。来月月末に入るとまたゴールデンウィークが入るわけで、二十九日がすでにお休みと、こういうことですけれども、本会期中何とか国会に提出できるめど、その努力はしているかと思いますけれども、物理的にこれは相当むずかしくなりつつあるのじゃないでしょうか。   〔委員長退席理事木内四郎君着席〕
  76. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど田さんにもお答え申し上げましたように、本国会に御提出して御審議を願いたいという強い希望は変えておりません。
  77. 黒柳明

    ○黒柳明君 希望は変えてなくても、現実に今週中には無理でしょうね、どうも。来週に入って早早妥結されたとしても、もう三週間しかない。実質的衆参の審議というものは週二回定例日にやったとしても六回しか残っていないわけですね。その審議ではたして意が尽くされるか、非常に疑問だと思うのです。さらに問題がそこまで、いまの会談というものが妥結に至るか、それがまだ前提に、非常にまだむずかしい問題だと思うのです。これはもう何とも言えないと言えば、向う側、当事者国があることですから、相手があることですから何とも言えないということだとは思いますけれども、当然政府側としてはその会談の内容を逐次報告を受けているわけですし、昨日の向こう側の回答についても、当然大臣は、いいか悪いかは別にして、回答を受けておるわけですし、その上に立ってやっぱりめどをつけなければならないときが当然きているわけです。ですから、いままでの一カ月、二カ月前のときと同じ状態でいるわけではないわけですね。当然同じ返答では、あまりにも私たちも審議をするという、質問をするというたてまえからも、私たちも何かむなしさを感ずるわけですけれども、情勢というものは相当煮詰まってきていると思うのです。そういうものを踏まえて、あくまでも大臣としては努力はするけれども、当事者国があることですから、非常にやっぱり判断はむずかしいとは思いますけれども、いまの時点において、物理的に本国会で御審議を願う努力はすると、それが可能と思いますか、大臣としては。可能だと思いますか。いまも申しましたように、きのうは第一回の回答が向こうから来たわけですから、それも当然大臣は踏まえて、いまの時点でこれからの見通しというものを考えていらっしゃると思うのですけれども大臣があらゆるそういう、いままでただ単に本国会、本国会と、こういうことじゃなくて、相当進展し、大詰めを迎えている国会の会期から見ても、また交渉内容から見ても、向こうから返事がきた、こういうことを踏まえて、大臣として、同じように間違いなく今会期中に国会提出できるという自信を持っておりますが、それとも非常に何かこう不安な要素があるわけですか。ただ努力する、努力するというのじゃあ、あまりにも私は、情勢が変化している中での責任者のおことばとしては、何かこうおかしいのではないかと、こういうような気がするのですが、どうでしょうか。
  78. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど田さんの御質問にもお答え申し上げましたように、協定自体国会で御審議をいただき、御承認をお願いする協定自体は、越えがたい大きな難関があるというふうには判断しておりません。したがって、これが仕上げられまして、国会に御提出申し上げるというようにまず最善を尽くさなければいかぬと考えておるわけでございます。こういう、あなたが御指摘のとおり、相当時日が経過いたしておりまするし、国会も余すところ審議の日程がそんなに残されていないということも十分頭に置いて、なお、何とか今国会に御審議を願うような手はずにいたしたいということで、いませっかく努力いたしております。もっとも仰せのように、相手のあることでございまして、いついつまでにこれを仕上げるんだと私がきめましても、そのとおりまいらないケースも考えておかなければならぬわけでございますけれども、私としては最善を尽くしたいということです。   〔理事木内四郎君退席、委員長着席〕
  79. 黒柳明

    ○黒柳明君 努力しているし、最善を尽くすことは十分評価します、私も。ですけれども、現実としては、こういう進展をした中で、いま現在の外務大臣のお考えとしては可能であると、こういう確信を持てるか、あるいは確信を持つまでに至らないのか、そこらあたりどうでしょうかね。努力していることは評価します。
  80. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 何とか可能にしなければならぬといま考えております。
  81. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理大臣は、きのうの話の中では、ただ単に、いまの交渉経過というものを報告をして、総理がそれを聞いたと、これだけのものか、あるいは党内のやっぱり意見調整もしなければならないと、こんなことは総理は言ってないんですか。
  82. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いままでの交渉経過、現在の断面、そういうものを御報告申し上げたわけでございまして、聡明な田中総理のことでございますから、党の内外のことを十分御賢察のことと思います。
  83. 黒柳明

    ○黒柳明君 聡明な総理と同時に、一言も二言も余分な総理ですから、ですから総理もいろんな話をしたのじゃないかと、いながらにしてこの光景が頭の中で描かれるわけですけれども、総理みずからが何かやっぱり党内の意見調整に乗り出さざるを得ないというような発言もしたのか、私は相当やっぱり、いままでの報告だけと、相当やっぱり大詰めにきたわけですから、総理みずからも何らかの意思表示があったんじゃないかと思うんですけれども、あるいはいま言った党内の調整だけじゃなくて、先ほど田さんから言われたように、この際、日台民間協定については、まあ事情によってはやむを得ないのではなかろうかぐらいの発言ぐらいはしたのじゃないんですか、どうですか。あとは大平君にまかせるよなんてことを言ったのじゃないんですか。どうですか、その辺。
  84. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 官邸と外務省との間には何にも意見の相違はないということだけを御報告いたしておきます。
  85. 黒柳明

    ○黒柳明君 相違は全然ないですよね。別に私も相違があるとか、外務省が何をもたもたしているんだとか、そんなことを言っているんじゃなくして、全面的にやっぱりこれは与野党一日も早く何とか妥結、批准ということでこれは合意しているわけですから、ただやっぱり相手の国が二つあるわけですから、いまややこしくなっているわけであって、きのうの中で総理大臣、やっぱり第一回の報告、中国側の回答を受けて、何かやっぱり総理としても報告だけじゃなくて、もう意思表示をせざるを得ない段階にきているんじゃないか。だから内閣と外務と意見が違うなんということじゃなくて、もう当然一致なものであるとは思いますけれども、これは国会に対する上程の期間とともに、いま言ったそれだけじゃないわけですよ。党内問題なり、あるいは日台の問題なり残っているわけですから、そういう面について、もうそろそろある程度大上段にめどをつける時期がきているわけですから、そういうことについての話し合いも、もう行なわれたのではなかろうかと、行なわれるべきではなかろうか、こういう私の想定のもとから、そんなこともあって、総理大臣から何らかのやっぱり意思表示もされる時期的には時期がきているんではなかろうか、こういうふうにも想像するんですが、そんなことは一切ないですか、なかったですか。
  86. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう問題につきまして、いろいろ御進言申し上げるまでもなく、田中総理は、御案内のように、政治運営のベテランでございますから、そういうことまでは、われわれの間でお打ち合わせをお願いするほどのことはないと私は判断いたしております。総理自身が十分御賢察のことと私は考えております。
  87. 黒柳明

    ○黒柳明君 板垣さんが、交流協会の理事長が台湾側に六項目についていろいろ意思表示をして、台湾側から何かそれについての回答なり反応なりがあったわけですか。
  88. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 交流協会に対しまして、確たる御返答があったとは聞いておりません。
  89. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、相当時間がたっているわけですけれども、要するにこちらから正当な理由をつけて、正当な話をした。当然それに対して、やっぱり返事があるべきだと、こう思いますね。これはもう正式外交関係あるなしにかかわらず、やっぱりこれは信義の問題ですからね。それは返答がないということは、やっぱりこちらとしては、やることはもうやり尽くしたと、こういうふうに考えてもいいんじゃなかろうかと、相手の返答がないわけですから。相手の返答がイエスとかノーとか、あるいは賛否があれば、さらにそれに対して交渉するという、こちら側が反応を示す余地はあるかと思うのですけれども、片一方では政府間の交渉が進んでいる。片一方では民間レベルの交渉ですけれども、一応のこちらの誠意は示してきた、こうなると、やっぱり政府間の交渉のほうがどんどん進んでいけば、こちらの民間レベル、日台民間航空協定の話というものは、やっぱりどうしても同レベルでなくて、従的な存在になってしまうのではないでしょうかね、こちらのほうがやっぱりどんどん先行していけば。政府間のほうが妥結すれば自然的に、常識的に考えて、この日台の問題については返答がこないですから、そうすると政府間の交渉のほうが先行して妥結するとすれば、これはもう日台問題はその中に埋もれてしまう、こういう可能性があるんじゃないですか。
  90. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほども御答弁申し上げましたように、政府間協定としての日中航空協定というものが結ばれて、日中間航空往来が円滑に保障されるという姿をつくらなければならぬことは当然のことでございます。その時期はもうおそきに失しているわけでございまして、一日も早くそうしなければならぬことは当然の任務だと考えております。そういう姿の中におきまして、日台間の航空往来というものは民間協定の姿でこれに対応してまいるということでありたいと念願いたしておるわけでございまして、私がいま答えられることは、そういう状態をつくり上げなければならぬと考えておるという、きわめてあたりまえのことでございますけれども、その答弁でひとつ御賢察をいただきたいと思います。
  91. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も頭が悪いからなかなか賢察できないのですけれども、具体的に片一方の交渉が進んでいて、何とか本国会に提出したいという努力もしながら進んでいるわけ。片一方のほうは、こちらは意思表示したけれども、向こうから返答がこない、こういう二つの現象があるわけですよね。片一方のほうは最大の努力をして、早く政府間のこの妥結をみたいと、こうやっているわけですから、まあこちらが妥結するかどうかも、これは時期的には疑問があるにせよ、やっぱり両政府間——中国側も日本側も相当積極的にこれ話を現時点において進めているであろうと、これはもう想像にかたくないわけです。ですから、当然こちらのほうがいまの時点では何歩も先行しているわけですよ。ですから、あしたでもあさってでも妥結される可能性があるわけですね、そのため鋭意努力しているわけですから。そうすると、この日台のほうはいま話し合いがストップしている。そうすると、当然政府間の交渉というものが先行して妥結される可能性のほうがいまのところは強いわけじゃないですか、可能性としては。可能性としては強いわけじゃないですか。
  92. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一日も早く政府間の協定を中国との間に結ばなければならぬということでございまして、それはわれわれの当然の任務であると。そういう状況の中で日台間の航空往来民間協定の姿で維持いたしたいと、そういうことを実現させろということでございます。仰せのようにたいへんむずかしい局面でありまするが、そういう立場で鋭意苦労いたしておりまする外務省に対しまして、格段の御同情を願いたいと思います。
  93. 黒柳明

    ○黒柳明君 日中の間の交渉が妥結して、いまの日台民間航空協定話し合いが現状のままストップしていても、すぐそれを日中航空協定国会に対する審議を求めるつもりですね、当然。
  94. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) つまり問題は日中航空協定を仕上げて国会の御審議、御承認を求めるということはわれわれの任務、責任でございますので、一日も早くそういうものに持っていきたいと思っております。
  95. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、結論としては先ほど田さんが言ったように、日台民間航空協定のほうはやっぱり見切り発車されることがあるということですね。
  96. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日中間政府間協定は早く仕上げにやならぬ、日台間の民間路線は、民間協定に基づく運行は維持してまいる、そのことを何とか仕上げたいということでございます。
  97. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、要するにそうすると、日中航空協定がいま交渉が妥結する、そして国会に対してやっぱりそれ承認を求める、これはもう何としてもやらなければならない、その間において日台民間航空協定のほうがあとにおくれて、やっぱり話し合いが進むという可能性、これは当然あり得るわけですね。
  98. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) もう一度同じ答えになりますけれども政府間の協定は早く仕上げて国会の御審議、御承認を求めるようにいたすということ、あわせて、日台間の民間協定における航空往来は何とか維持するというようにいたしたいということで、一生懸命になっておるところでございます。
  99. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、当然私も、何も片方おくらして片方早くしろと言うほうでもないんですよ。あわせて同時ならこれはもうけっこうだと思うんですよ、そうなれば。だけれども、もういま物理的に客観情勢がそういう方向に進んでないわけであって、ですからあわせてという理想な状態じゃなくて、現実にやっぱり政府間協定のほうがもう相当進んでいる。ですからましてそれについて一日も早く国会承認を求めたい、最大の努力をして鋭意検討している、いまもって非常に大詰めに来てもその意思には変わりないと、こうおっしゃるわけですから、ですからそのあわせてということが、当然時間的に物理的にもうおくれざるを得ないと、こういう情勢のほうがいま現状もそうだし、これからの推移もそういう可能性が非常に強いと、だからあわせてということは非常にやっぱり同時期にということじゃなくて、いまあわせて一応やっている形ですけれども、現実にはあわせて行なわれてない現実ですからね。ですから、政府間の協定のほうが一歩も二歩も先に行く可能性のほうが非常に強いのじゃなかろうかと、こう思うのですけれども、それをただあわせてという、理想的にあわせてと、こうおっしゃるだけじゃなくて、私は現状を踏まえて物理的あるいは時期的、それから客観情勢がすべてあわせてというわけにはいかなくなっているんではなかろうか、こういうことをもって、いま私何回も同じような問いをしているわけですけれども、実情としてはあわせてということは非常にむずかしくなっているんじゃないですか。
  100. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ何回も同じ答弁になるわけでございますが、いまあなたの言われる、御心配の点は私も逐一よくわかるわけでございますが、しばらく政府におまかせをいただきたいと思います。
  101. 黒柳明

    ○黒柳明君 ではしばらくおまかせします。  どうも済みません。もうけっこうです。
  102. 星野力

    ○星野力君 私は、日本企業の海外進出に関連して質問いたします。  近年ますます日本企業の海外進出がはげしくなっておるんでありますが、まず大臣にこの海外進出の目的、その動機が、商品や資本の市場拡大、あるいは国内で余地の少なくなった工場立地を求めてなどいろいろございますが、東南アジア、東アジアの場合は現地の安い労働力による商品のコストダウンが最も大きなねらいだろうと思うんでありますが、そうお思いになりますか。
  103. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国の企業の海外進出という問題を、わが国の企業がどういうねらいで海外に進出するかという問題と、それから受け入れされる相手国におきましてこれをどう招致していくかという両面の問題があると思うのであります。そしていまあなたが言われる問題は、進出企業はどういう動機で海外進出をするか、その中には低賃金労働の活用という点が動機の有力な柱になっておるのではないかという御指摘でございますが、これは企業経営の上から申しまして、原材料にせよ労働力にせよ、進出企業がいろいろな面で考慮をされることと思うのでございまして、労働コストという問題も考慮の中にないと言い切れないと私は思います。
  104. 星野力

    ○星野力君 東南アジア、東アジアのどこでも同じような事情にあるわけでありますが、外務省のよく御存じの韓国の資料がここにございますから、そういうものに基づいてお聞きしようと思うんですが、大臣は低賃金ということも考慮の中に入るだろうという程度のお話でございますが、特に韓国の場合、ここに対韓投資調査団報告書というのがございます。一九七一年一月の日付になっておりますが、たしかいまカンボジヤ大使をやっておられる栗野さんが団長で行かれたこれは調査団であります。そのところにこういうことがあるんですね。「民間資本が海外直接投資を意図する場合、その目的として考える要因は大別すれば、1原料資源の確保 2販売市場の確保 3生産コストの低減等にあろう。対韓直投資をこの基準に従ってみるに、その目的は第三の要因に集約され、その生産コスト低減の中核を成すものは韓国における豊富かつ低廉な労働力の存在であることは自明の理である。従って労働事情は当報告において大きなウエイトを有してくる。」と、こういうふうに、大臣がおっしゃるのとはまた違った強さでもって、韓国の低賃金というものを非常に高く評価しておると思うんであります。ここに韓国労働庁が発表しましたところの資料がございますが、これを見ますと——これは昨年七月十三日付の韓国労働庁発表と、こうなっております。馬山、九老洞、亀尾等輸出工業団地内外資企業体二百六十九社、従業員五十人以上の企業体九万一千七百十三名を対象に実施した七十三年五月末現在の賃金実態調査と、韓国政府調査したものでありますね。これを見ますと日本企業の通常賃金、八時間労働の賃金が月に一万七千五百九十四ウォン、まあウォンは円の三分の二としてそれが正当なところだそうでありますが、円に直してみますと一カ月一万一千三百九十六円、これは同じくこの資料に載っておりますところの韓国労働者の製造業平均月二万……円で言いましょう、一万三千九百八十七円に比べてもかなり低いですし、また、日本の労働者の昨年の製造業平均の賃金、これが九万三千六百二十七円、これは労働省の調査によるものでありますが、こういうものに比べればこれはもう問題にならぬのですが、こういう安い賃金というものをどういうふうにお考えになりますか。
  105. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま星野さんのあげられました資料はわれわれも持っておるわけでございまして、二百六十九社のうち百八十九までが日本の進出企業になっておりまして、英国、西独等は非常に数が少ないわけでございます。この格差の原因でございますが、西独は医薬品、英国は石油関係、いわばまあ資本集約型の業種である。日本の場合はまあ小企業、労働集約的な業種が大部分でございまして、単純な労働者、婦女子、若年者を多く雇用しておるというようなところからこういう格差が出ておるのではないかとわれわれは判断いたしております。
  106. 星野力

    ○星野力君 私これからお聞きしようと思っておったんで、まだ韓国に進出しておる他の国の企業との比較は申し上げておらなかったんですが、大臣のほうから先に発言していただいたわけでございます。これで見ますと、日本が一万一千三百九十六円、アメリカがその次に低くて一万七千八百九十二円、イギリスが二万六千九百十三円、西ドイツが二万七千五百六十二円、パナマが三万九百六十三円というふうに、どこの国に比べても日太が格段に安い。その原因として、その進出しておる業種であるとか、日本の企業は主として労働集約的な業種であるということを大臣まあ先取りして御発言くださったわけでございますが、必ずしもそうは言えないんですね。最近の例なんか見ますと、たとえば電子工学産業なんかもかなりいっておりますし、こういうものを労働集約産業という中へ含めるわけにもいかないのではないかと思いますし、またこの表に基づいて私は企業の規模をはじき出してみますと、なるほどアメリカの企業が一企業体として三百六十八人の労働者を持っております。これが一番大きいのですが、続いては日本が三百四十一人と、かなりの規模のものがいっているわけであります。私、まあこういう低賃金を問題にしなければ、考えなければいけないということで申し上げておるんでありますが、それらの地域におきます労働組合の組織、それから労働争議の状況なんかについて資料をお持ちでございましたら、ひとつ御報告願いたいんです。
  107. 中江要介

    説明員(中江要介君) いま手元に労働組合についての詳細な資料をちょっと持っておりませんので、委員会の御要求がございましたら、あとで御提出いたします。
  108. 星野力

    ○星野力君 それらの地域は労働組合あるいは形だけの労働組合というのは若干はあるのかもしれませんですけれども、労働争議なんかはできない状況じゃないんでございますか。
  109. 中江要介

    説明員(中江要介君) 最近韓国で例の緊急措置令というものが出て、ますますそういう労働者の権利の保護が制限されているんではなかろうかという御批判は耳にするんでございますけれども、私どもの調べましたところでは、この緊急措置令によって労働者の権利の保護あるいは労働組合の活動について新たな制約が課せられたというふうには見ておらないんでございます。
  110. 星野力

    ○星野力君 これは実情はもちろん御存じだろうと思うんですが、ことに先ほど申し上げました外国企業の工業団地などにおきましていわゆる自由地域、こういうところにおいてはなおさらでありますけれども、争議などはできないんですね。労働組合っくることさえもほとんどできない、事実上できないという状況であります。トラブルは相当起きているそうです。日本人の幹部が女子工員に乱暴をやって追いかけられて警察が出動したなどという事例もありますが、そういうトラブルはありますけれども、労働組合運動、まして争議というふうなことは全く許されない。韓国の反動的な政権のもとで、いま緊急措置令のことを言われましたが、緊急措置令なんか出なくても、それ以前に外国人投資企業の労働組合及び労働争議調整に関する臨時特例法というのもありますし、また輸出自由地域設置法という中にも、この労働組合運動、労働争議のことについての特別のきびしい規定もあるんで、二重三重にしばり上げられておる。組合活動もやれなければ争議もできない。このことは低賃金維持のために現地の政府、それから進出した外国の企業の間に、その結託というとことばは悪いですが、両者の利益のために何がやられているかということを示しておると思うんです。低賃金を維持するために組合運動もやれない、争議も許されない、こういう状況ですよね。かつて中国の上海や青島あるいは旧満州における日本の資本家の植民地的な搾取と同じようなことがいま韓国で行なわれておる。外務大臣はよく日本企業の海外進出の問題に関連して、別に現地の法律に違反しておるんではないというような御発言をなすっておられますけれども、法律に違反しておらないからいいというようなこれは問題でないと思いますが、こういうようないわば植民地的な低賃金、それをいろいろ法律や強権でもって維持しておるという事態について、大臣のお考えをお聞きしたいんです。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ在外法人、それから在外私企業というものは、われわれとしてはその現地の国、社会におきまして、その国の秩序を守って健全な運営を続けていってもらいたいと思っておるわけでございます。したがって、法律に違反しないからいいと言っているわけじゃございませんで、現地国家の主権というものは尊重しなければならぬということを申し上げておるわけでございます。で、地域社会と溶け合って、そこに融和が保たれるという状況においてあることが望ましいと思うんでございます。したがって、いまあなたが御指摘されるようなケースにおいて、現地との摩擦が絶えないということは、それは悲しいことでございますし、その企業にとりましても決して望ましい姿ではないわけでございますので、私どもとしては、現地における地域社会に十分溶け込んで、その理解と祝福の中で企業が健全な運営をしていただくように望みまするし、われわれ在外公館もそういうところに視点を置いて、行政指導を怠ってはならないと考えております。
  112. 星野力

    ○星野力君 日本企業の雇用する労働者の低賃金という問題は、韓国だけでなしにタイでもインドネシアでも、いまあげた地域、東南アジア、東アジアのどこでもこれは問題になっておることでありますが、こういう極端な低賃金というものは、国際正義の問題でもありますが、同時にまあ国内問題でもあると。  私、委員長にお願いしておきますが、先ほど中江アジア局次長から言われたあの資料ですね、争議と労働組合、あれをひとつ出していただくように御配慮願います。
  113. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) はい。  資料を出してもらえますか。
  114. 中江要介

    説明員(中江要介君) はい。
  115. 星野力

    ○星野力君 で、こういう海外における日本企業の低賃金というものは、国内の労働者の労働条件にも直接間接にはね返ってくるという問題がありますが、時間ございませんから、この問題はきょうは申しませんが、今度日本政府がソウルにレーバーアタッシェを設けられるそうでありますが、このレーバーアタッシェの任務はどういうものになりますか。
  116. 保谷六郎

    説明員(保谷六郎君) このたび韓国にレーバーアタッシェを置くようになりましたが、このレーバーアタッシェというのは、在外公館に勤務いたしまして、大使を補佐して労働問題に関する情報の収集、広報、労働に関する必要な折衝等の事務を担当する外務公務員をさしております。  なお、来年度、明年度からソウルの日本大使館にレーバーアタッシェを一名派遣することになっておりますが、最近におけるわが国の企業進出の問題も十分踏まえまして、こういった労働の事情の収集その他に当たりたいというふうに考えております。
  117. 星野力

    ○星野力君 私、以前にこの問題、事務当局にお聞きしたときに、現地の日本企業の労務政策なんかについて指導をやるというような、指導というようなことばが出たんでありますが、いまの御発言の中にはそういうことはないわけでありますが、実際の問題として、この労務管理の指導なんかということがやられるんではないかということを心配するわけであります。どうせ一人か二人しか行かれないんですから、まんべんなく見るわけにはいかぬでしょうけれども、たとえ部分的にでも労務管理の指導なんということが行なわれますと、これはたいへんなことになる。そこから争議への介入であるとか争議弾圧とかトラブルの何か弾圧とかというような指導になりましたら、これは内政干渉にもなりますし、幾ら政府間の気心のわかった韓国であっても、こういう点は十分に慎まなければならぬ大事な問題だと思います。国内の労働条件にはね返ってくるだけではございませんし、それだけでなくて国内の中小企業などにもこれははね返ってくる。その事例はもうたくさん出ておるんでありますが、私、特に申し上げたいのは、日本の伝統工芸産業といいますか、たとえば織物なんかにはございますね、その他にもありますけれども……。私は大島つむぎの場合は奄美でも鹿児島市でもこの問題もう行くたびごとに訴えられるのでありますけれども、一部の業者が大島つむぎのあの独特のどろ染めした糸でございますか、あれを輸出して、向こうの安い機織りにかけて製品にしてそっくり輸入するという問題、これは伝統ある大島つむぎの今後にとって重大な脅威になっておるということについて陳情を受けるんであります。こんな状態が続いたら大島つむぎはつぶれる、こういうことを言っておるんでありますが、この問題についてどうお考えになるか。  また、もう時間がないからまとめてお聞きしますが、特に保護していかなきゃならぬような伝統工芸産業、何も織り物に限りませんけれども、そういうものは数を限定してもそれらの産業について、いまの大島つむぎのように原料を加工したまま、独特な加工を加えて輸出される、製品がそのまま輸入されておる。こういうような輸出輸入禁止してしまうということを私は要望したいんですが、そういうお考えはないかどうか。考えられないかどうか、合わして御答弁願いたいと思います。
  118. 佐藤兼二

    説明員佐藤兼二君) 大島つむぎの例に見られるような伝統工芸産業に対しては、しかるべき通商面での規制を加えられないかという御質問だと思いますが、事、大島つむぎに関しましては、現在地元でも大島つむぎと称して入ってくるものは、先生御指摘のとおり、鹿児島から原料として実は糸が出ておるということに原因があるということから、自分自身の足場をすくわれないように、その辺は自粛していこうというような機運が非常に高まっております。で、基本的にはそういう気持ちをそんたくしまして、片や、やはり産業それ自体の力をつけるということが基本的に大切だということがありますので、御案内のように、伝統工芸産業の振興法も今国会で御審議いただいておりますし、それから繊維産業それ自体としましても構造改善の法律改正もやっておりますし、それから奄美の振興対策も今後十年にわたって抜本的な措置を講じようということで御検討もいただいておりますので、これらによって国内の体質改善をするということをまず基本にしまして、片や通商面でも、先ほど申しましたような秩序ある、不適当でないような輸出ということも確保し、それから輸入面に対しましてもできるだけそういうような問題がないように、関係の業界等々にも協力要請もしていきたい、そういうふうに考えております。
  119. 星野力

    ○星野力君 輸出輸入禁止措置はどうですか。
  120. 佐藤兼二

    説明員佐藤兼二君) これは、やはり単に国内的な問題ということでもございませんので、やはりその辺は実態の推移というのをよく把握しまして、慎重に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  121. 星野力

    ○星野力君 終わります。
  122. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後零時四十九分散会      —————・—————