運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-12-18 第72回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十八日(火曜日)    午後二時九分開会     —————————————    委員異動  十二月一日     辞任         補欠選任      浅井  亨君     黒柳  明君  十二月七日     辞任         補欠選任      今  春聴君     稲嶺 一郎君      岩動 道行君     増原 恵吉君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊藤 五郎君     理 事                 木内 四郎君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 田  英夫君     委 員                 稲嶺 一郎君                 杉原 荒太君                 山本 利壽君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省中近東ア        フリカ局長    田中 秀穂君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        経済企画庁調整        局経済協力第一        課長       谷村 昭一君        厚生省援護局庶        務課長      河野 共之君        通商産業省通商        政策局北アジア        課長       内田 禎夫君        資源エネルギー        庁石油部計画課        長        平林  勉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査  (日韓定期閣僚会議開催及び対韓経済協力に  関する件)  (ミクロネシア協定の実施及び遺骨収集に関す  る件)  (石油供給見通し及び対アラブ外交に関する  件)  (カンボジア為替支持基金に関する件)  (金大中事件に関する件)     —————————————
  2. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七日、今春聴君及び岩動道行君が委員辞任され、その補欠として、稲嶺一郎君及び増原恵吉君が委員選任されました。     —————————————
  3. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) おはかりいたします。  佐藤一郎君及び山本利壽君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼び者あり〕
  4. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、ただいま欠員を生じました理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 御異議ないと認めます。  それでは理事木内四郎君及び平島敏夫君を指名いたします。
  6. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大平外務大臣
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先般の内閣改造にあたりまして、引き続き外交仕事をやるよう任命を受けた次第でございます。これまでいろいろ御鞭撻、御指導をいただいておったわけでございますけれども、今後一そうの御叱正と御鞭撻をお願いする次第でございます。とりわけ、国際情勢たいへんきびしいむずかしい局面を迎えておりますので、全身全霊、全力を傾けてまいるつもりでございまするし、外務委員会との意思疎通におきましても十分気をつけてまいるつもりでございますけれども、何ぶんとも各位の格段の御庇護と御指導を賜わりますようお願いする次第でございます。
  8. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) それでは、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 田中寿美子

    田中寿美子君 たいへんな時期に大臣御苦労さまでございます。  きょう私は、日韓定期閣僚会議及び対韓経済協力並びに援助の問題についてお尋ねしたいと思います。時間が限られておりますので質問も簡単にいたしますけれども、どうぞ要領よくお答えいただきたいと思います。  まず第一番に大臣日韓閣僚会議見通しをお伺いしたいのですけれども、二十日ということは延期になったというふうに報道されておりますが、年内開催は強行なさいますでしょうか、どうでしょうか。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 年内には開催さしていただきたいと存じておりまして、国会のお仕事を見ながらきめたいと考えております。
  11. 田中寿美子

    田中寿美子君 今日まで延期されてきました理由ですね、普通はこれまで八月とか夏でございましたね。今日まで延期されてきた理由、それから年内にどうしても開催しなければならないとお考えになっていらっしゃいます理由を御説明いただきたいと存じます。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは御案内のように定期的な閣僚会議でございますので、年内には、ことしには一度開かしていただきたいと考えておるわけでございます。今日まで、押し詰まってまいるまで開催の運びに至りませんでしたのは、八月にちょうど不幸な事件が起こりまして、それの解決の目鼻もつかないという状況ではいけないと思いまして延期いたしておったわけでございますか、外交的——この事件そのあといたしましてはまだ解決に至っていないわけでございますが、外交問題を処理してまいる上におきまして一応必要最小限度措置先方においてもとられたわけでございますので、これ以上特にこれを延ばす理由はないと判断いたしまして、年内開催の方針は貫かしていただきたいと、そう考えております。
  13. 田中寿美子

    田中寿美子君 外交上の問題は完全に解決はしていないけれども、一応めどがついたというようなおことばであったと思いますのですけれども、私はいまの状況で開くべきではないということを申し上げたいと思うのです。これは自民党の中の宇都宮徳馬さんはじめ皆さん方も非常に強く主張していらしゃいますけれども、例の金大中事件はまだ解決しておりませんですね。外務大臣はあれか解決——一応韓国政府か緩和的な政策をとったり内閣改造をしたり、それから金首相が直接来て話をされたと、そういうようなことで、これで一応解決がついたというふうにお考えになっていらっしゃるとすれば、私は非常にそれは重大なことだろうと思うんです。外交的に解決ができていないということで私はまず開くべきではないと思うのですよ。第一、金大中氏はまだ自由の身になっておりませんですね。先日ライシャワー氏が行かれて、アメリカに、ハーバード大学に連れて行こうとしたのすら受け入れていない。身辺がほんとうの自由にはなっていない状況、私は再来日をさせなければいけない。たいへん不法な形で連れ去られておいて、そしてそれがそのままにしてあるということ自体外交上重大な問題を残していると思うんですが、重ねてその点はどうお考えになりますか。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 刑事事件としてこの問題は未解決でございます。相当これは長い間かかって解明していかなければならぬ問題であると私も考えておるわけでございます。だから金大中事件というのは解決したという立場をとっていないわけでございます。問題は、私ども外交的な立場から見て、日韓関係というものの外交関係をこの事件が完全に解決するまでどうするかという現実の問題があるわけでございます。したがって、しかしそれももうそろそろやってもいいじゃないかというぞんざいに考えてはいけないわけでございますので、この種の国際的な刑事事件というものは、一体どういうことまでまいりますと外交関係というものを正常に戻していいかという一応の目安があるわけでございます、この中に。そういう目安に照らしまして、先方がどこまで誠意を示していただけますか、八月以来、終始外交折衝を続けてきたわけでございますが、御承知のようにまず第一の、これが一体主権侵害したかどうかという一番根本の問題につきましては、先方はこれは公権力がかかわった問題ではないという立場をおとりになっておると、わがほうにもこれは背後関係を全部洗って確たる証拠があるからこれは主権侵害に該当するというところまでいっていないわけでございます。したがって、この解明は今後なお続けてまいっていくべき性質のものであると思っております。したがって、政府主権侵害があったとも断定できないが、ないとも断定していない立場に立っておるわけでございますが、ただ先方政府に対しましては、今後の解明におきまして新たな事実が出てまいりますならば、それを踏まえて問題を提起することがあり得ますよということは申し上げてあるわけでございます。それから、しかしすでにこの問題につきまして日本朝野にたいへん御迷惑をかけたということに対しまして先方政府から陳謝の意向が表明されて、総理大臣自体も訪日されてそういう意向の表明があったわけでございます。将来こういうことは万々起こさないという将来の保障についても処置がとられたわけでございます。それから責任者につきましては、今後の究明を待ちまして法に照らして処断をするということをいたしておりますし、監督責任の問題についても所要の措置は講じますという約束をいたしておりますし、金大中氏という被害者につきましても、別件逮捕訴追等はやりません、出国を含めて本人の自由は保障いたします、こういう一連措置がとられたわけでございまして、国際的な刑事事件外交的に処理する場合に、そういった措置がとられても、いやこれはまだだめなんだということも難きをしいることになるのではないか。外交的なつき合いはこのあたりで正常に戻して私はいいのではないかということで、外交的落着ということをとらしていただいたわけでございまして、この処置は私は第三国が見ましても決してふらちな措置ではないのでありまして、ほとんど主権侵害の場合に匹敵するぐらいの措置先方はとってきておるわけでございまして、その点については日本側におきましても先方誠意は相当私は評価してしかるべきことではないかと思っておるわけでございます。当初からこの問題は内外が納得のいく公正な解決をはからにゃいかぬということを本旨としてやっておりますし、いまもひとつもそういう精神に変わりはないわけでございまして、特にこれをうやむやにするとか、なれ合いでやるとか、そういうことは厳に慎まなければいかぬことだと心得てかかっておるわけでございますことを御了解いただきたいと思います。
  15. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまの外務大臣のおっしゃいますことは、いつもいまおっしゃったような趣旨で御返答があって、外交上の解決というのは私はできていない。それはもとに戻すことであって、金大中氏が日本にもう一度来られるようにするべきであるというふうに思いますけれども、このことを申し上げておっても平行線になりそうです。ただ私たちは、主権侵害の事実もあるし、それから金大中氏の人権の立場からも問題があるということを考えているわけで、刑事事件として解決しないけれども刑事事件に矮小化してしまうということはこれはいけないということだけ申し上げて、こういう時期に日韓閣僚会議を強行するということは非常に重大な間違いであるということを最初に申し上げたいと思います。  それから、開くべきでないと思う第二の理由は、、韓国の政情が非常にいま不安なんですね。で、朴政権に対して非常に反対学生文化人のデモが起こっている。そして彼らの言っていることは、経済援助による隷属日本に対する隷属ということに反対しているわけですね。たとえば名門校である梨花女子大なんというところが十一月二十八日にアピールを出しておりますけれども、その中には、現政権は対日隷属の反民族的関係を清算して、物ごい外交日韓定期閣僚会議をやめよということのアピールを出しているわけです。韓国国民、そしていま朴政権に対する反対運動が非常に起こっている。それも民主的な憲法を求めているという非常に当然のようなことをやっているわけなんです。それに対して非常に弾圧的な政策をずっととってきた。最近、日韓閣僚会議をどうしても開いてほしいという考え方から、一部内閣改造したり、それから逮捕していた学生を釈放したりというようなことを行なっておりますけれども、非常にその点ではまだ不安が残っております。ですから、そういう民衆反対のある朴政権に対して、日韓閣僚会議というのは、これは経済援助をきめるわけです。ですから非常にてこ入れすることになる。その梨花女子大学アピールの中には、日本資本がもうどんどんいま上陸してくる。これは歯どめのしようがないという、日本資本の上陸への反感も出ているわけなんですね。こういう点でも閣僚会議は開くべきではないと思うのですが、その点ではいかがですか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま韓国の国内に言論の自由、自由民主主義の確立あるいは対日隷属中止、あるいは情報政治中止、その他一連のスローガンのもと文化人宗教家学生、各界にわたりまして現政権に対する批判が出てまいっておりますことは私もよく承知いたしておるわけでございまして、その中であなたが御指摘の、対日隷属ということに対して強い叫びが出ておることもよく承知いたしております。元来、その国を立てる場合に、外国からの借款というようなものを受け入れてやるか、それとも自力更正でやるか、それはその国の選択の問題としてたいへん論議されておる問題で、わが国におきましてもありますし、その他の国国においても私は起こり得ることであって、韓国もその例外ではないと思うのであります。  それから第二に、対韓経済協力でございますが、したがってこれの評価も、これが韓国経済自立を達成する上において役立っておると評価しておる向きもあれば、いやこれは対日隷属を結果するものであるということで反対する向きもある。これも私はそれはあり得ることではないかと考えておるのでございますが、問題は、私ども経済協力が特定の政権を擁護し、それとのなれ合いの上で民衆を顧みないでやるというものでございますならば、確かにこれは批判に値することと思うのでございますけれども、私どもは、どの国に対してもそうでございますけれども、その国の民生の安定、経済自立の達成のために応分のお手伝いをする。しかもそれはその国の政権計画をできるだけ尊重いたして、それに対しまして応分の貢献を、お手伝いをするというたてまえをとっておるわけでございますので、そういう意味で御理解をいただきたいと思うのでございます。  それから日韓閣僚会議というのは、何かこう経済協力のパイプになるというような一般理解があるようでございますけれども、確かにいままでの日韓閣僚会議を見ておりますと、日米の間、あるいは日豪の間、あるいは日本とカナダとの間の定期閣僚会議とは趣を若干異にいたしまして、確かに御指摘のようにその会議でネゴシエーションをやるということがなかったとは言えないと思うのであります。しかし、これは閣僚会議やり方として私も決してこれ賢明でないと思うので、閣僚会議というのは本来二国間関係あるいは国際問題、両国の関心のある国際問題というものを高い立場からいろいろ論議して、十分の理解を深めてまいる、そしてルーチンの仕事が円滑にまいる素地になるという意味で役立つのでございまして、日豪日加日米の場合はそういうことで運営されているわけでございまして、私も日韓の場合もそういう姿に持っていきたいと考えておるわけでございます。したがって、これは運営の問題なんでございまして、何か経済協力をこれがなければとれないし、これがあるととれるというようなものではないわけなんで、そこは田中さんも御理解をいただきたいと私は考えておるんです。
  17. 田中寿美子

    田中寿美子君 あまりにこにこしておっしゃるから、いかにもほんとうのように聞こえますけれども日韓閣僚会議の歴史を見たら、まず最初日韓条約のあとの日韓経済協力があって、そして六七年から——最初閣僚懇談会だったんですね、それが閣僚会議に変わって、それも時間をとりますので言いませんけれども、第一回から第六回まで常に常にこれは経済援助約束会議なんですよね。今度も伝えられておりますところは、韓国側は三億ドルの援助を要求している、日本側は一億五千万ドルにするとか、一億ドルに削るとかというようなことが伝えられておりましてね。これはもう経済問題で韓国経済援助をどうするかということに焦点がしぼられている会議であるということも申すまでもないと思います。  それから一般に世論が、たいへんにいま反日感情韓国の中に起こっておるというのも、朴政権やり方自体が非常に非民主的で、軍国主義的であるというようなことに対する反感があるから、それにそれがもう過去においてずっとアメリカ日本が一番の株主でたくさん金を貸しているわけですから、物ごいに行くという気持で非常に反感を持っている。そこで、それが反日感情になってきているということ、それから政府が貸し付けるのは、ほんとうにその国の民生安定を願っているということは、それは当然のことでありますけれども、結果としては、私もう言う必要もないと思いますが、これは衆参両院決算委員会で、いかにこれまで経済協力あるいは経済援助が変な使われ方をしてきたか、向こう企業がいわゆる不実産業企業というのがたくさんできちゃって、そして出した金が国民の暮らしをよくするほうに向いていかないで、途中であるいは政府高官だとか、財界だとか、あるいは政界で吸収されてしまったり、お金が行くえ不明になってしまっていたりする。それから一方また日本の側はやっぱり商社が介在していて、相当の利益をその中でとっているというようなことが非常に問題になっているから、そういう意味で私はいま開くべきではないということを申し上げているわけなんです。  それから第三点には、いまの日本外貨事情、これは最近、ことしの初め百九十億ドルあったのが、日本銀行の調べですと十一月にもう百三十一億ドルに減ってきておる。これはずっと連続して減っておりますね。こういう事情の中で外貨の出ていくことについて大蔵省は非常に警告を出しているわけなんですけれども、こういうときに経済協力、特に近年韓国に対しては非常にふやしているわけなんですけれども、こういうときに非常に多額のものを出していいのかどうか、それはいかがでしょう。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘の点は私ども考えておる点でございまして、それはひとり韓国ばかりでなぐ、日本経済協力能力というようなものが今後どのように考えられていいかという点は非常に大問題だと思うております。現に石油問題から生産が縮小せざるを得ないというようなことが予想される段階でございまして、輸出契約が十分これはやれるかどうかさえも問題なときでございます。したがって、経済協力につきましてもいままでと変わった考え方をやってまいらなければならぬことは十分念頭において考えにゃいかぬ。で、それは韓国ばかりでなく、どの国に対しても十分気をつけなければならぬことと私は考えております。
  19. 田中寿美子

    田中寿美子君 私が四番目に言おうとしていたいわゆる石油危機の問題との関係ですね、私は外貨事情も非常に悪くなっていることが一つ、それからもう一つは、いま石油危機ということで政府も非常に苦労しているということを私たちにも報告されているわけなんです。石油供給次第で来年度の経済見通しもまだちゃんと確実に立てられないという状況なんですね。こういうときに多額海外経済援助を、協力をしていいかどうかということを非常に重大な問題だと思うんです。たとえば、先日私、参議院の決算委員会に提出されました四十七年度の韓国向け円借款を見ますと、商品援助というのが非常に多いんですよね。そうしてその商品援助の中には、各種機械、輸銀を通して七十五億四千七百万円の支出をしておりますが、その品目は各種機械発電機、車両、合成ゴム合成繊維化学工業製品、それから鉄関係が一番多いですよね。これは浦項製鉄所の建設と私は大いに関係していると思いますけれども、新日鉄が乗り出しているわけなんです。鉄が何か二十二億も出しているわけなんですよね。こういうふうにこれからの日本経済そのものにとっても来年度一体鉄鋼生産はどうなるのか。石油もとですべての産業生産規模だって見通しもつかないような状況で、商品援助をこれまでのように続けていくということばはたして可能なのかどうなのかということを思うわけなんです。いま、今度の日韓定期閣僚会議が開かれたら必ず問題になる浦項製鉄所、第二期工事が終わって第三期工事に入るということなんですね。そうしますと、石油も必要、鉄も資材も必要、それから石油化学商品援助、こういうことは一体間に合うものか、こういう点に関して大臣閣僚会議を開く以上は幾らか打ち合わせをもうなさっているのだと思うのですが、各省間で、経済協力に関しては外務省が窓口で、経済企画庁、通産省が所管の官庁でしょう。こういう問題に関して打ち合わせをなさっているのですか。つまり、いまのいわゆる石油危機の中で、韓国が要求してきているそういう商品援助、そういうことができるのかどうか、いかがです、まず大臣から。
  20. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 最後に御指摘になりました今度の閣僚会議先方がいろいろ要請を直接、間接に申しておりますので、それに対します対策を各省間で協議しているかどうかという点につきましては、事務的な協議を現在すでにやっております。それから、単に日本側関係各省だけとの間ではなくて、先方からの説明も聴取しております。ただ、その前に御指摘になりました商品援助につきましては、確かに御指摘のように、これまでに第一次の商品援助、それからさらに昨年の閣僚会議約束いたしました第二次の商品援助についてこれから正式のコミットをするかどうかという問題があるわけでございますが、その後はおそらくもう商品援助要請というのは出て来ないのではなかろうかというふうに観測いたしております。
  21. 田中寿美子

    田中寿美子君 経済企画庁はいかがですか、その見通しですね。
  22. 谷村昭一

    説明員谷村昭一君) いま外務省からお答えになったとおりでございますが、商品援助につきましては、外務省お答えのように、すでにコミットいたしましたもの以外は向こうからの要望がない段階だろうと思います。すでにコミットした分につきましては、いま御指摘のような点は確かにあるわけでございますし、約束したものにつきましてはいま実行している段階でございます。
  23. 田中寿美子

    田中寿美子君 あまりはっきりしないのです。コミットしているというのは、過去に韓国に対する経済援助並びに協力あるいは民間の信用供与、全体合わせて一体幾らになっておりますか。そしてそれらは、みんなコミットして、約束しているものなんですね。その実行額はもうおっしゃらなくても、時間がかかりますから、決算委員会でも聞きましたのでわかるんですけれども、その中には商品援助、非常に多いわけです。それみな今後果たしていくということなんですか。
  24. 谷村昭一

    説明員谷村昭一君) 過去に約束いたしましたものは有償資金と申しまして二億ドルございます。それから農業近代化、輸出産業育成、中小企業振興のため借款が百八十億円、それからソウルの地下鉄の借款が二百七十二億四千万円、それから商品援助が……。
  25. 田中寿美子

    田中寿美子君 こまかく言わなくていいです、総額で。
  26. 谷村昭一

    説明員谷村昭一君) 総額で申しますと六百七十億と二億ドルでございます。二億ドル入れまして円に直しますと、一千三百五十一億円でございます。
  27. 田中寿美子

    田中寿美子君 この前中曾根通産大臣が衆議院の決算委員会で約十六億ドルほど公私合わせて出しているということを答えていらっしゃいます。私もいままで出された対韓経済協力の実績というのを調べて出してもらってみたんですけれども、無償協力、有償協力、技術協力さらに輸銀から出しておるもの、それから経済協力基金から出しているもの、それから米穀援助ですね。それから民間の輸出信用、それから民間の直接投資、そういうものを合わせますと大体ずいぶんたくさん、五千四百八十二億ぐらい。つまり中曾根通産大臣が十六億とおっしゃったのに近い数字です。これはベースを一体ドルを幾らで計算するかによって違ってくると思いますけれども、初めのうちは三百六十円で、あと三百八円の換算で計算しますと、十七億八千何百万ドルという数が出てくるのです。これほどたくさんの約束をしているわけなんです。これを今後相当の部分を商品援助をやるというようなことが、いまの日本のこれからの経済状況の中では重大なことであるということを、これは外務大臣閣僚会議は、向こうはもうお金がほしくて、協力がほしくて、援助がほしくて、のどから手の出るほどの状況でせっつかれている。過去を見ますと、ほんとうにもうせっついて毎回毎回ふやしていって、贈与だの援助だの、閣僚会議が開かれるたびに協力、あるいは援助、あるいは贈与という形で与えてきているわけですね。ですから今度ももちろんお金の問題であることに間違いはないわけなんです。そういう状況の中で開くということ、非常に私は問題だという。なぜ年内にどうしても開かなければならないのかという問題、それはどうお思いになりますか。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、これは定期的な閣僚会議でございまして、ことし早く開かなければいけなかったのが、ああいう事情で延びておりましたので、年内に開かしてもらいたいと考えたわけです。  それから第二に開き方につきましては、いろいろ御批判もあるし、われわれ自身も改善せねばいかぬと考えている点もございますから、その点は十分配慮してまいりたいと考えております。  第三に、経済協力の問題につきまして、いまわが国の事情から申しましてもたいへんむずかしい局面になっていること並びに経済協力案件自体の吟味もきびしく考えまして、十分慎重に配慮していきたいと思って、いませっかく詰めておるところでございます。ただ御理解をいただいておきたいのは、経済協力にいたしましても、輸出にいたしましても、これはわが国の国内もこれたいへんなんでございますが、だからといって内需重点で外はかまっておれないぞという姿勢をとっておったのでは、また日本も将来困るわけでございまして、そういう点につきましては、バランスのとれた考え方をしてまいらなければいけないのじゃないかと思っておるわけでございまして、やり方については十分注意をしていきたいと考えております。
  29. 田中寿美子

    田中寿美子君 海外経済協力の問題については、この間通産省が七三年度版の海外経済協力白書を出したわけです。私はもらいたいと思って頼んだけれども概要もくださいませんでしたので、新聞でポイントが発表された点だけで承知しているわけなんです。これまどの海外経済協力のあり方を改めなくちゃいけない。それを書かれた時点というのは、石油ショックの前の私は原稿だろうと思うのですが、大幅に額も多くしなければいけない。それから質の問題もありますね。相手国の民生安定に資さなければいけないとか、そういう幾つかの反省点があげられております。そういうことからしますと、一般論はそれでけっこうですけれども韓国に関する限りは、そういうふうな援助のしかたではなかったということと、それから特にばく大な金がいっているわけですね、比率としては。ですから非常にそれが問題であるというごとなんです。で、なぜ年内にしなければいけないかということで、これは毎年やることになっているから、ことしのうちにはしなければならないというふうにおっしゃいますが、韓国の予算編成が、これは暦年編成ですね。で、私は外務省の人に暦年編成だから、もう年あけたら困ると、それでだろうといったら、いや十二月二日にもう韓国の予算は成立しました、だから無関係だみたいなことをおっしゃる。実はそうでないですね。予算というのは、あれは編成はできますよ、歳出に関する編成です。だけれども、歳入が問題ですからね。そしで韓国はもう日本に関してでも、六六年から経済協力協力基金なんか借りておりますね。これは七年間据え置きで三分五厘の利子で、そうして二十年間に償還するわけです。もう支払い期間がきているのですよ、金がね。だから非常に私は困っていると思う。だから歳入が必要なんですね。で、どうしても韓国側としてはこの際日本からの相当の金を出き出さなければならないという立場に立っていると思います。それについてお伺いしていると時間がたちますので、私はその点で韓国側からの強い要請があり、そして日本が相かわらず朴政権をテコ入れするような形で閣僚会議を開く。そして金大中事件はあのままで、外交上の問題の解決のないままこういうことをするということは、非常に韓国国民反日感情をあおるだろうということを申し上げて次に進まなきゃならないと思うんですが……。
  30. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連。  いまの、田中委員が次に移ろうとするときに発言された、金大中事件もとへ戻すということですが、外務大臣は先ほど外交上の配慮からほぼこの程度でということで日韓定期閣僚会議開催に踏み切ったという御発言でしたが、そもそも金大中事件を原点に戻すということ、日本におったときの状態に戻すことが達成されない限り、外交上のこの問題というものの解決にはならないんじゃないでしょうか。それがそもそもの一番の根本問題でして、あと中央情報部長がやめたとか、あるいは金東雲書記官を退任させたとか、そういうようなことは韓国内部の問題で、日本自身の立場からいえば、金大中氏を韓国に拉致する前の状態に戻すことが外交上の案件の最大の要諦になるわけです。それが解決されない限り、私は、外交上の問題がほぼ達成されたからこれで定期閣僚会議開催されて差しつかえないという判断には私はならないと思う。そこのところが根本的な問題ではないかと思うがいかがでしょうか。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 人権をとうとばなければならぬという点につきましては、私も羽生さんに同感なんでございますが、国際的な刑事事件主権侵害があるという断定がされた場合、これは権利として被害者について原状回復を要求する権利があるわけでございます、まあ冷ややかな法律論といたしまして。いま私が冒頭に申しましたように、この問題はまだ解明されていないわけで、断定していないわけでございます。それで、いま精一ぱいとり得る措置はとったわけでございまして、非常に大事な問題でございまするので、この人の取り扱いというのは非常に細心な配慮を加えて、ようやく韓国政府がああいう言明をするに至っておるわけなんでございます。  で、普通この国際刑事事件というのはむずかしくて、大体被害者というものは、ほかの事例にも御案内のように、原状回復がきちんと行なわれて外交的な処理がされるという筋道になかなかまいりませんで、消されてしまったり、行くえ不明になったりしたけれども、しかし結局は外交関係もとに返るというような筋道をたどっておる例が多いわけでございます。で私は、主権侵害とかそれから原状回復と申しましても、結局は相手側がそれを認めなければきめ手にならぬわけなんです。どうしても国際的な事件というのはそういう性格のものでございまして、こちらがいかにやきもきいたしましても先方がそれを認めない限りどうにもならぬ事件なんでございます。そこで精一ぱいのところ、世論にこたえて人権は尊重されなきゃならぬということで、被害者の人権というものを保障するというところまでたどりついたわけでございますので、私は本会議でも御答弁申し上げましたように、まあ不幸中の幸いであったんじゃなかろうかということを申し上げてだいぶおしかりを受けたわけでございますけれども、そこでそういう自由は保障すると、出国を含めて自由を保障するというんなら、なるべく早くそれを実行したらどうだという要請はたえずやっておるわけなんでございます。再三やっておるわけでございまして、それは向こうにはもう十分私はこちらの意向は通じておると思うんでございまして、いま向こうがそれをどう御処理されるかをウオッチしておるというのがいまの立場であると。羽生さんおっしゃるように、全部原状回復された状態になるというと完ぺきでけっこうなんでございますが、そういう姿になるまでそれじゃもう外交的なノーマルに返すということを全然やらないでいいかというと、私はそれはどうもせっかくの御意見ですが首肯しがたいところでございますから、国際的な、大体まあ第三国が見ても日本の処理は無理ないというところを見まして、ここまでくれば第三国の批判にもこたえられるであろうというところを目安にいたしまして鋭意努力いたしまして、まあここまでくると、もう外交としては、事件そのものの根本的解決には至っていないことは先ほど申し上げたとおりでございますけれども外交的な処理はここらあたりで落着をつけて差しつかえないんじゃないかという立場でおるというわけでございます。回りくどいことで恐縮でございますけれども
  32. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう一点だけその定期閣僚会議について私は疑問を投げかけておきたいと思うのですが、さっき大臣は、これは毎年開くことになっているから開くのだと、だから年内には開くのだというふうにおっしゃいました。しかし、この定期閣僚会議というものの始まりがちょっとあやふやなんですね、これは。六六年に佐藤さんが開かれたときは日韓経済閣僚懇談会だったわけです。そしてそれば何にも別にそのときに交換公文が出たわけでも何でもなくって、両国の総理同士が適当な機会にまたやりましょうという合意をしたという記事だけが残っております。その次に開かれたときに、丁国務総理からの提案で定期閣僚会議を持つことにしましょうと言って、六七年やその次ですか、毎回毎回、来年また開きましょうというような話し合いをしているわけですね。私は、こういう重大な会議をそういうふうに簡単に両国の総理同士の話し合いで今後あとは定期閣僚会議になるというようなことに発展させていっていいものかどうか、疑問を持っております。ですけれども、いまその問題をやっている時間がありませんので、また別の機会にしたいと思いますが。  そこで、海外経済協力のあり方について私は発想をもう大転換しなければいけないだろうと思います。これは経済協力白書、通産省の出されたものの中には、もう少し条件を緩和してもっとたくさん貸し付けろと、それからもっと援助せよと、あるいは質のいい援助をしろとか、あるいは技術援助をしろとか、それから政府開発援助を拡大しろとか、それから資源問題に関して消費者としての立場である自分の国中心の経済協力はいけないと、これはまあアラブ外交でさんざんもう痛い目しましたからそのとおりだと思うのですが、それから民間企業の投資を拡大せよということがあるんですね。これは外貨事情がこういう状況になりますと、民間が直接投資してくれて外貨をかせいでくれるのはいいというのが大蔵省の考えのようでございます。また韓国側でも、政府借款、円借款というのは、だんだん利子がつくし、そして償還期がくる、焦げついてくる。で、また借金を払うためにいわゆるリファイナンスをしなければならない。これはぜひ日本としてはそういうことをしないようにしてもらわなければならないと思うんですけれども、借金を返すためにまた貸してやるというようなことになるわけですね。そこで韓国側も民間の直接投資を歓迎しているんですね。ところがこの民間の直接投資が一番問題を起こしているんでしょう。それで、たとえばこういうふうにも言われているわけですよ。日本は国内の工場の立地条件が非常にむずかしくなった、公害問題で騒がしい、だから韓国へ持っていって大きな鉄鋼所を建てましょう、いわゆる公害企業を輸出しているじゃないかという非難があるわけです。それから韓国労働者は安い賃金、だからあすこにプラントを持っていって現地でつくれば安く労働力が使える、これは韓国人の収奪だということで、韓国国民側から非難を受ける。それから、あるいは技術援助にしましても、問題になったセマウル運動という新しい農村づくりですか、これもちっとも農民のほうにいかないで中間でだれかがさらっていったということで問題になっているわけですね。それから不実産業のこともたくさん出ました。韓国電気治金工業、これなんかもお金をつぎ込んだけれども操業を中止してしまいました。これは丸紅飯田という商社が中間に入っている。あるいは韓国アルミ、これも衆参の決算委員会もとっても問題になりました。日本の大商社とそれからアルミメーカーが協力してプラントをあそこへ持っていって、途中で非常にばく大なお金が消えているのですからね。どこへ行ったかわからないというような状況、これはもうよく知られていることですね。これは政府のほうもお認めになっている。そこで、韓国の新聞によるとどろぼう村に金が流れ込んでいる、日本がせっせと経済援助してくれたりなんかしても。どろぼう村というのは国会議員とか高級公務員とか将軍だとか財閥だとか——。一方、日本の商社のほうにもリベートが入ってきている。こういう形で経済協力が使われていくというようなことは重大だし、それから直接投資をする人たちはまるで日本の工業地帯のような気持ちで投資をする。こういうごとに対しても、私は根本的に発想を転換しないと、もうアラブ外交の二の舞いを踏むということになると思うんです。だからタイでもインドネシアでも反日感情がずいぶん起こっている。これだけ金を出してやっているのに反日感情が起こるじゃないかという問題は、これは私、経済協力のしかたが非常に問題だと思う。  それで、飛ばしますけれども、私は外務大臣が窓口になり通産とそれから経済企画庁がおもな所管となっている。そしてそのつど、農産物でしたら農林省、それからもちろん大蔵省も関係してくる、こういうふうなたくさんのそれぞれのところがばらばらに経済協力だとか援助だとかいう形の援助をやっている。こんなことをしていたら私は同じようなことがまた起こると思うんですね。これは何とかもうちょっと統一し、総合し、一貫性を持って、ほんとうに現地の民衆の役に立つような経済援助協力、これは私は東南アジアに対しては日本は責任があると思います、過去の戦争の責任もありますからね。だからそのやり方を根本的に発想転換しなくちゃいけないし、やり方も私はもっと一貫性を持たせる、ある意味では日本の中での強力な指導性が持てるような行政の一元化というか——一元化ということはなかなかむずかしいかもしれませんけれども、そういう方法はないかどうかということです。外務大臣は窓口だけれども経済外務省何も持っていないですね。それをどうお考えになりますか、何かいい方法はないですか。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたの言われること、気持ちは私よくわかるのですが、若干私から申し上げさしていただきたいのは、まず第一に、民間の経済交流と経済協力とを御一緒にしていま議論されておるようでございますが、まあ民間の方々が自分のリスクにおいて投資する、あるいは企業に参加する、韓国企業を興すということは、自分のお金でございますから、これ……。
  34. 田中寿美子

    田中寿美子君 でも輸銀を通じてやっているわけでしょう。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 輸銀もちゃんと担保があって、その担保能力を見ながら、その事業もよく吟味しながら金をお貸しになっておるのでございますから、私は、そうぞんざいにやってはいないと思いますが、そこにいろいろ、商社が介在したり、いろいろうわさがあることは私も承知いたしておりますが、それはつまり私どもの言う経済協力ではないのでありまして、それを規制しようと思えば、やっぱり新しく、このいまの法制全体を変えないといけないので、為替管理を強化する、あるいは投資の規制もやらにゃいかんという相当大がかりな仕事になるわけでございます。それで、いまそういう体制をとっておりませんので——ということを一つお断わりしておきたいと思います。それから、そういうことをやるかやらぬかの問題は、立法政策の問題として大きな問題がございますけれども。  それから行政官庁の問題でございますが、まあどこか一つできちんとやればいいじゃないかということ、その気持ちもわかりますし、またそういう議論も政府部内にないわけではないのでございますが、どうしても一つの省が、かりに経済協力省ができても、財政当局と相談せにゃいかんし、通産省とも相談せにゃいかんし、農林省とも相談せにいかんし、やっぱり各省との間の話し合いというのがどうしても行なわれるわけでございまして、一つの省に権限を集中してそれがまとまった姿で機能するということ、非常にいいようでなかなか実行は——あなたもお役所におられてよく御承知のとおりなんで、なかなかそれはむずかしいことであると思いますが、ただ、まあ外務省が総合調整をやらせていただいて、外務省は別にお金持っていませんわけでございますが、一応の取りまとめをやらせている姿でいままあやっておるわけでございまして、改善すべき点は今後考えてまいりたいと思います。  それから、先ほどセマウル運動のお金がどこかに消えたようだなんて……、セマウル運動なんかまだ金出していませんからね、どこか消えようもないのですよ。いま盛んに吟味しておるところでして、まだ銭が行ってないのにその金がどこかに消えたというはずはないと私は思うのでございまして、そういう点は私どもはそんなにぞんざいにやってないつもりでございますので、一々吟味していただいて、いろんな非違がございましたら御指摘をちょうだいいたしたいと思いますけれども政府は相当たんねんに調査いたしまして、それでちゃんと所定の手順を踏んで手がたくやっておるつもりでございます。その点はひとつ政府を御信頼をいただきたいと思います。
  36. 田中寿美子

    田中寿美子君 お金が消えたのは韓国アルミですよね、韓国アルミ。それで、これも輸銀が保証している部分があるわけですよ。だから経済協力で出しているもの、民間から円借款で出しているものもあるわけですがね。ですから、中へ入ってしまえばどういうふうな使い方になっておるかわからないけれども日本援助したもの、政府援助したもの、あるいは民間で援助したもの、両方含めて非常に問題があるということは、これは外務省調査団も報告していらっしゃいますよね。ですから、その点を言っているので、セマウル運動というのは、あれはプログラムの運動でこれからやるのですから、セマウル運動のお金が消えたというふうに言っているわけじゃないのです。  で問題は、ですから私は、少なくとも政府ベースで出しますところの協力とか援助資金ですね、こういうものに関していままであまりにばらばらだったということです。私はこの前、財政投融資資金を見ていて、これは経済協力基金ですけれども、こまかくばらばら一ぱい貸してあって、これははたしてどれだけの効果を生んでいるのかと思うような貸し付け方を、貸したりそれから援助をやっているわけですよ。私はやっぱり効果ある使い方、つまり向こうの現地の民衆にとって役に立つような使い方をしなきゃいけない。だけれども経済協力基金なんかは財政投融資資金が大部分ですよね。そうすると、あれは日本国民の貯金をたくさん使っております。それから、年金の積み立て金なんかも使うわけですね。ですから国民のものを、日本国民のものを使って、そして補助を受けるところの相手方の国民反感を持つような使われ方をしてはいけない。それには一貫した指導政府部内になくちゃならないのじゃないかということと、同時に、何かチェックするものがないと、これは国内の予算や決算に関しては会計検査院というものがあってちゃんとチェックするのですよ。海外に出ていく金に関しては何のチェックもないということも、これは外国が使っているものの中まで、外国の政府の中に立ち入るということはできない。だけれどもこっちから出した、たとえば輸銀を通じて出した、協力基金を通じて出したものの行くえぐらいは把握するぐらいのことをしなきゃいけない。そうするのには、私は何か中央部が、本国のほうがばらばら過ぎる。だからたとえば総理府なら総理府、総理大臣直轄のそういう機構を考え入れてみてはどうかなということを考えているわけです。でもお答えをしていただいていると時間がかかりますから、それは問題として提起しておきます。  それから民間の直接投資が向こうも好ましいと、向こう政府ですよ、朴政府ですね、好ましいという。それから日本の中からも民間の直接投資を望んでいると、こういう状況の中で民間の企業がまたたいへん問題を起こしているわけでしょう。特に私はこの間、婦人団体が一緒になって抗議を申し入れにいったんですけれども韓国に売春観光業者、全く日本の観光業者が男性の団体を組織してどんどん過去二年間のものすごい数のふえ方ですよ。これは老人クラブまで韓国へ行ったらキーセンパーティーのあとたいへん楽しいことができるという勧誘をして職場、中小企業の積み立て金で団体旅行を奨励します。これは向こうの側の外貨かせぎにもなるし、日本の側の観光業者の大きな利益にもなったわけです。その結果としてたいへん向こうの人心を刺激しているわけです。いま韓国のキリスト教の団体の人たち反対声明を一ぱい出しておりますよね。日本はエコノミックアニマルだけじゃなくてエロチックアニマル、あるいはセックスアニマルだと、それを団体で組織してそれでもうけていくという、こういうやり方は困るということを、この間国際観光協会に、各旅行業者の私たちはリーフレット、宣伝を集めてみたのです。そしたら、みんなキーセンパーティーがついていて、お望みの方はそのあとは自由だというようなこですねね。それでこういうようなことをしてはいけないと、それは女性の肉体を売らせる業者は、これは日本でも禁止している。向こうにも禁止の法律があるわけです。そんなことまでするということについて、この間指導してくださいということを国際観光協会に申し入れにいきましたら、いや幸か不幸か石油危機でことしからはあまり外貨も持ち出せなくなるし、円でいくのかもしれないけれども、規制は多少はできるだろうというような返事なんですね。ですから、これは政府レベルであろうと民間レベルであろうと、ある程度行政指導を私はするべきだ、それをてんでんばらばらにやりたいことをやっているということがあるものですから、そこを申し上げているわけなんです。もうお答えは大体想像できるんですけれども、いまの問題について、大臣、一言どうぞ。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 投資あるいは観光など、いま原則として自由な体制をとっておるわけでございます。そのことが弊害を生んでおる面が相当あることも御指摘のとおりだと思うんでございまして、それに対しまして行政指導で極力考えなけりゃならぬということはよくわかります。また、それをさらにもっと法的な規制というようなこともあるいは場合によっては考えなけりゃいかぬことかとも思いますが、御提示になしました問題につきましては、わが国の信用をそこなうことのないような意味で、十分検討しなけりゃならぬものだと思います。
  38. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、海外経済協力のあり方について、総額をもっとふやせということで概算要求はずいぶんまた出ているんですね。二千二百十億円出ていますね。これは私は財政投融資資金のことを一生懸命に調べていたものですから、財政投融資資金の中で、海外経済協力基金、ありますね、それにおもに資金運用部資金が入ってるんです。産投会計からも入ってますけれども、資金運用部資金から入っているわけです。資金運用部資金というのは、さっき申しました国民の貯金、それから年金の掛け金なんかを含めたものでございます。それが四十七年度から四十八年度に繰り越しを二百六十五億円しています。それで四十八年度の経済協力基金の額は予算が六百九十五億、だから六百九十五億プラス二百六十五億の繰り越しがあるわけですね。ところが現在までで調べてみましたら、まだ二百億しか経済協力としては使っていない、基金はね。だからたくさんお金がまだ残っているわけです。第四・四半期でどのくらいの程度消化するのかなと思っているわけです。そこへもってきて、また今度は予算要求、概算要求は一般会計からの出資千九十五億、運用部資金からの借り入れ千九十五億、合計して、それに自己資金を入れて二千二百十億円と、非常に大きな概算要求が出ているわけです。経済協力をふやすということは、政策的に日本が東南アジアに対して、あるいはこれからアフリカ、アラブ諸国なんかに対して必要な面もあると思うんですけれども、使い切れないような金だものですから、三つの省あるいは四つの省がてんでんばらばら早く割り当ててしまうという感なきにしもあらずなんです。だから私が言いますのは、何かちゃんと計画的な観点からこういうふうに使うんだという、ことにいまの石油危機の中で一体物資による援助はできるものかできないものか、そういったようなことも含めてやっぱり相当高度な計画指導が必要だと思うわけなんです。そこで、四十九年度の経済協力に関するやり方について、これは何か改めるお気持ちはないか。私はこのままではいけないと思うんです。おそらくいま日本経済見通しがつかないからちょっとどうしようもないような状況でこのまま、あるいは全体二〇%増ぐらしいの予算でつくかもしれないんですけれども、財投だって押えるということだけれども、一体海外経済協力に関してはどういう方針を持っていられるのか、四十九年度からは何かやり方を改める気がないのかどうか、それを最後にお伺いしたい。これはきょう責任者が、経企庁も、あれもあんまり責任者がいらっしゃらないと思いますけれども、最後に大臣、先に経企庁と通産と、どういう案をお持ちになっていらっしゃるのか。
  39. 谷村昭一

    説明員谷村昭一君) それでは数字のほうから先に御説明さしていただきたいと思いますが、ごく簡単に申し上げたいと思いますが、確かに財投の分が、現在使ってない額が相当数あることは事実でございますが、同時に、基金につきましては出資が行なわれておるわけでございます。出資のほうを先に使いまして、財投のほうを出資のほうがなくなった段階におきまして使うという方式を現在とっておるわけでございます。これはまあいまのような方式をとることによりまして、より条件を緩和する方策ができるわけでございますので、そういうために財投のほうの余りが現段階におきまして非常に大きいことは事実でございますが、今後、経済協力の進展に伴いまして財政資金を使っていくという方向になろうかと思います。  しかしながら、いままでの経過で申しますと、総予算の中で全額使ったことはございませんで、確かに最終年度末におきましても、予算の残額がございますが、この点につきましてはいわゆるディスバースのおくれという問題がございまして、いまそういうディスバースがおくれないような方策につきましていろいろ検討をして、できるだけ迅速にこの経済協力が実施できるような方向でいろんな対策を考えておる段階でございます。  以上、予算関係だけの問題としてお答えさしていただきたいと思います。
  40. 田中寿美子

    田中寿美子君 四十九年度の方針はあるんですか。
  41. 谷村昭一

    説明員谷村昭一君) 四十九年度の予算につきましては、確かに御指摘の数字で要求いたしておりますが、現段階で四十八年度の使い残しが出てまいりますれば、この四十九年度要求につきましては修正をしなきゃならないと思っております。その修正の額につきましては、いま予算の作業でございますので、それを目指して現在作業をいたしておる段階でございます。
  42. 内田禎夫

    説明員(内田禎夫君) ただいま、田中先生からいろいろ私どものほうの経済協力白書に書かれましたことなどを御引用いただきまして御質問あったわけでございますが、私どもは基本的にはやはり先生のお考え、よくわかるわけでございます。ただ、経済協力と申しますのは、御承知のように、日本といたしましては国際経済交流をやはり一番もとといたしまして国民経済の基盤をつくっていくということでございますので、確かに来年度わが国は非常に経済的に苦しい時期になるかと思いますけれども、基本的には日本は国際経済の中で生きるということで、やはり経済協力につきましては拡大をしていかなければいけないと思っております。で、まあその中で政府開発援助を特に拡大すべきだということは経済協力白書にも書いてあるわけでございますが、ただ、従来のやり方でそれでは十分かと申しますと、もちろん、御指摘のようにいろいろ問題もあるわけでございます。やはり経済協力自体、それぞれ相手国、発展途上国をもっと地域別、国別にとらえまして、それぞれの国の開発戦略等を十分からみ合わせまして、長期ビジョンを国別にも考えながら十分吟味をしてやっていくということでございませんと、こういう困難な時期に国民の皆さま方の御協力も得られないと思いますので、ひとつそういう観点から進めてまいりたいと思います。
  43. 田中寿美子

    田中寿美子君 大臣、来年の経済協力についての発想の転換というか、決意というか……。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま、通産省側からの御意見がありましたように、国際経済の中で生存を維持していかなけりゃならぬ日本といたしまして、貿易と同様、経済協力の問題も重要な問題だと思いますけれども、これは全体の政策とのバランスの中で位取りをやっぱり考えていかなけりゃならぬものでございまして、そういう点、十分勘案しながらやってまいりたいと思います。同時に、経済協力の問題につきましては、各国際機関におきましても取り上げられておるわけでございまして、とりわけ条件の改善につきましては難きところでございますけれども、漸次、改善の実をあげていくように配慮していきたいと考えております。
  45. 田英夫

    ○田英夫君 しばらく大臣に見解を伺う機会がありませんでしたので、しかもその間、石油問題について非常に重要な事態がいろいろ起こっておりますので、伺いたいことはたくさんありますけれども、きょうは問題を一つにしぼりまして、実は十一月初めに、私、ミクロネシアに行ってまいりましたので、この問題で大臣にお尋ねをしたいと思います。  ミクロネシアのことは、この委員会でも数回伺っておりますし、ミクロネシアから帰りましてから、アメリカ局長にはいろいろお話をし、御協力もいただいているわけで、きょうはひとつ大臣理解を深めていただきたいと、局長から報告は行っていると思いますが、大平外務大臣がこの問題に対してどこまで理解をしておられるのか、この機会に、ひとつ大臣教育をしたいというような気持ちで……。  これは非常に重要な問題だと思います。実は日本外交姿勢の中で、私の考えでは基本的に間違っている部分があると思います。その問題に触れてくることなので、たとえば経済問題にしても、金額はいまの韓国の問題に比べると何分の一、何百分の一という小さな額でしかありませんけれども、根底にある問題は、日本外交の基本姿勢に触れてくるという感じがいたしますので、あえてこのことを取り上げたいと思います。  最初に伺いたいのは、例のミクロネシア協定——一九六九年に、当時の佐藤内閣が結ばれましたミクロネシア協定によると、日米五百万ドルずつ、合計一千万ドルのいわゆる善意の見舞い金というものをミクロネシアに支払うということになっておりますが、このうちで、アメリカ側が支払う五百万ドルについての被害申請というものが十月十五日締め切りでミクロネシアの現地でまとめられまして、アメリカ政府に提出をされているわけであります。ウォー・クレーム・コミッションというところに出されているわけですが、これはもう膨大な数字にのぼっておる。五百万ドルのおそらく二十倍、三十倍を上回るだろうといわれておりますが、この点、大臣はどういうふうに理解をしておられるのか、どの程度まで御存じか、まず伺いたい。
  46. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ミクロネシア協定の運用の問題並びにそれとの関連におきます現地の島民、現地の住民の米国政府に対するクレームの提出という問題について、ただいま御指摘があったわけでございますが、米国政府としては、この十月の十五日に、ただいま御指摘のありましたような戦時補償についての請求を、受け付けを締め切りまして、現在、これの手続を始めている、こういう段階であるというふうに承知いたしております。  御指摘のとおりに、膨大な数の申請が出ておるようでございまして、これがどの程度すみやかにいかなる形の処理が行なわれるのかということにつきましては、かなりの大きな作業になるであろう、こういうふうな感じがいたしておりますけれども、いずれにせよ、日本側としましては、戦争中にこの地域の住民の方々に被害あるいは損害を及ぼしたというふうな実情にかんがみまして、今後補償問題がなるべくすみやかに円滑に処理されることを期待したい次第であります。
  47. 田英夫

    ○田英夫君 これは現地では非常に不満を持っています。それはこの前の委員会でも指摘いたしましたけれども日本アメリカ政府が現地のミクロネシァの人に何の相談もなく、これは現地ではミクロネシア議会の人たちにも会いましたけれども、そうした指導者も協定が結ばれたあとで初めて知らされたとはっきり言っております。その議員の名前を申し上げてもいいぐらいですが、あえてきょうは申し上げませんけれども、そういう状況の中で結ばれた協定でありますが、その結果、おそらく五百万ドルの何十倍という数字が出てきた場合にアメリカ政府はこれ処理し切れないでしょう。おそらく日本にもその一部を負担するように言ってくるに違いないと思うのですが、そうした処理がおそらく間もなく日本政府にふりかかってくるだろうということをこの際申し上げておいて、これはその点詳しく申し上げると時間がなくなりますから、いずれこれはまた局長から大臣に詳しくお伝えいただきたい。これは日本政府にとって重大な問題になってくると思います。しかも田中総理はこの前アメリカに行かれたときにアメリカ国内——日本アメリカのこの密接過ぎるぐらい密接な関係の中で、さらに日本の実情をアメリカに知ってもらうためにといって一千万ドルを手みやげのように置いてきたわけですね。置いてきたというか、実は今度の補正予算に入っているようですけれども、補正予算に入れてまで一千万ドルを、しかもアメリカに、日本のことは相当知られているはずのアメリカの大学に置いてきている。ミクロネシアに対しては、戦争中に何の関係もない人たち日本の戦争のために死んでいるわけですよ、たくさん。私はその現地を見てきました。そのために日本はわずか五百万ドルを、日米合わして一千万ドルを出している。こういうことが私は間違っているんじゃないかということを冒頭に申し上げたわけです。  そこで、きょうは厚生省の方においでいただいていると思いますので、遺骨収集の問題についての政府のお考えを、まず大臣に伺いたいんですが、毎年のように各地に遺骨収集団がいまだに出ておりますが、非常に抽象的な質問ですが、大臣はこの問題についてどういうふうに日本国務大臣としてお考えですか。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 非常にとうとい国民の企てとして敬意を表すると同時に、政府といたしましても可能な限りこれを支援してまいるべきものと思っております。
  49. 田英夫

    ○田英夫君 実は私も、私は戦中派ですから同じ仲間が大ぜい戦争で死んでおりますので、そうした人たちの遺骨を収集し、ねんごろに葬るということに関しては私もたいへんいいことだと思っておりましたし、現在もその点では変わりませんけれども、現地のミクロネシアに行きましたときに一番先に私のところを尋ねてきた五人の人がおりますが、これはパラオですが、五人の大体五十過ぎの人たちですが、全部日本語で話してくれましたので非常に意思の疎通が早かったわけですが、この人たちは皆日本の軍隊に強制的に徴用され、パラオ挺身隊という名前をつけられてニューギニアに連れていかれた。仲間の多くは現地で死んでいるわけであります。この人たちが口々に訴えましたのは、自分たちの仲間の遺骨はいまだにニューギニアにある。これに対して日本からは毎年のようにこの地域やニューギニアに遺骨収集団がおいでになる。このこと自体は、日本国民の皆さんの気持ちはよくわかっている。しかし日本遺骨収集団は、かつて強制的に日本軍に徴用されて連れていかれて死んでいったわれわれの仲間の遺骨は持って帰ってきてくれない。この付近の島々でも大ぜいのミクロネシアの人が死んでいるけれども、その人たちの慰霊碑はさっぱり建ててはくれないけれども、現に私が行きましたパラオ諸島のアンガウル島には、ことし建てたというまことにりっぱな慰霊碑が建っている、この慰霊碑をお建てになることはもちろんよくわかりますと現地の人は言うのです。しかし、そこで大ぜいの、全く戦争に関係なしに日本軍のために死んで行ったわれわれの仲間は一体どうなるんでしょうか、こういうことを言われて私は非常にがく然としたのです。こういうことを厚生省の当局は御存じなのか、どういうふうに理解しておられるのか、この点はいかがですか。
  50. 河野共之

    説明員(河野共之君) さきの大戦におきまする戦歿者の遺骨収集につきましては、国民的な要望もございまして、政府としては昭和二十八年から三十三年までの間に第一次を行ない、それから四十二年から四十七年まで第二次の遺骨収集を行なってまいりました。その後さらに、十分御遺骨を故国にお迎えできたというような状態にないので、四十八年度以降新しい計画をもちまして遺骨収集を推進したい、かように考えておるわけでございます。ただいま御質問のございましたミクロネシア島民で、旧日本軍に従軍しまして各戦域で戦覆された方々の御遺骨の問題でございますが、これにつきましては特に日本人と区別することなく、同様に収集を行なっておるということでございます。実際の問題といたしまして、当時の戦場の苛烈な状況、それから終戦後の事情、それから現在に至るまでの年月の経過というものがございまして、日本人とミクロネシア島民の御遺骨の区別もつかないし、その氏名が判別できる御遺骨も非常にわずかでございます。こういうような事情からいたしまして、現在までに政府遺骨収集団が集骨いたしました遺骨の中にもミクロネシア島民の遺骨がまじっておるのではないか、かように考えております。これらの御遺骨につきましては国立の千鳥ケ淵の墓苑にお納めいたしまして、毎年祭祀を行なっておるところでございます。
  51. 田英夫

    ○田英夫君 それは現地に毎年のように厚生省の方が遺骨収集団とともに行っておられるにしては非常にずさんだと思います、調査が。私が調べてきたほんの数日間の調査の結果でも、現にここに名前がわかっておりますが、この人たちの仲間の遺骨はニューギニアにあると、その場所までわかっていて、日本人の墓と一緒にあって、その墓にちゃんと名前まで書いてある、どこにあるかを知っているんです、この人たちは。しかしお金がないから収集に行けないということなんで、このくらいのことは——しかもびっくりしたんですが、なぜか自民党内閣はパラオ島の大酋長が亡くなったときに勲章まで贈っているんですね。これを遺骨収集団にことづけて勲章を贈っているんですよ。勲章を贈って悪いとは申し上げないけれども、そのくらいの配慮があるならば、ちょっと調べれば、現にこの五人の人が私に話している中でニューギニアの所在地まで言っているわけですから、これはお教えしてもいいですけれども、遺骨は集められるはずであります。  さらに、時間がありませんからこちらからだけ一方的に申し上げるけれども、トラック島というミクロネシァの中では最も開けている部分の一つ、トール島という島の酋長はアイザワススムさんという日本人とのハーフでありますが、この人がつい最近東京に来て私会いましたら、戦争中に日本軍が餓死寸前の日本兵を生き埋めにしたという事件がこの島で起こっていて、日本兵によって生き埋めにされた日本兵の埋まっている場所は現在まだわかっていて、しかも島民の中で十数人の人がその場所も知っていて、その遺骨はいまだに掘り出されていないということであります。東京に商用で始終来ている人ですよ。こういう人と連絡をとれば、これは日本人の遺骨でありますけれども、むざんにも同胞によって生き埋めにされた人の遺骨を掘り出すことができるのであります。それを厚生省のほうはその付近でお調べになった様子でありますけれども、肝心の直接知っている人に当たっていない、なぜか。そういうことの中で、そういう生き埋めの事実はなかったということになっているそうであります。必要ならば私は現地にもう一回調べき行こうと思っているくらいですけれども、厚生省のこの問題についての態度は非常に甘いと思うのです。同時に、そうしたことが先ほど申し上げたように全く私もいままでそう思っていた、非常に善意の日本人の戦死された方の遺骨を集めるというこのことが、もう一つ配慮が足りないために現地の人たちに逆に反感をつのらしているというこの辺に、政府外交全部にこれを発展さしては少しオーバーかもしれないけれども、私は外交姿勢がにじみ出ているのじゃないかという気がしてしかたがないのです。これはさっき田中さんが取り上げられました韓国に対する経済援助の問題にしろ、東南アジアに対するエコノミックアニマルというような非難にしろ、至るところでいま日本人が逢着している国際的な立場、指弾をされている原因にこんなものがあるのじゃないだろうか。これは私、自分のことも含めて、日本人として反省をしなくちゃいけないのじゃないかと思うのです。  時間がありませんからきょうはこの問題だけを提起をしておきますけれども、冒頭申し上げたように、大平外務大臣に、こんなミクロネシアの小さな問題かもしれませんけれども一つを見ても、日本外交の基本の姿が曲がっているためにほんとうに善意が善意にとられないという結果まで生じてしまっているのではないか、この点を申し上げて、私の質問を終わります。
  52. 黒柳明

    黒柳明君 私、三木特使の日程、まだ完ぺきに終わっておりませんけれども、きょうはエジプトのサダト大統領ですか、会談するというようなことになっておりまして、あと若干の日程を通して見ましても、そんなアラブ諸国からの反応は大同小異ではなかろうか、こう思うのですけれども、いままでのアラブ首長国連邦あるいはサウジアラビア、エジプト、もう山は見えたのじゃなかろうかと、こう思うのですけれども外務大臣としては今回の三木副総理の、三木特使の帯びていった使命、若干中間的ですけれども、成功だったと思うか、あるいはまだ非常にきびしい前途があるという感触か、中間的ですけれども、ひとつ外務大臣の所感をまず伺わしていただきたいと思います。
  53. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 三木特使の御使命は、わが国の中東政策につきまして関係各国の御理解をいただく、十分の御説明をするということ。それから訪問先の国々の御意見を十分拝聴し、その中でわが国がなし得ることを探求してまいるということ。第三には、わが国と訪問先の国々との間で経済技術協力その他の問題が討議される場合におきまして誠意をもってお話し合いをいただくということでございます。つまり当然なすべきことをなしておるわけでございまして、そのことによって、目に見えて大きな効果を期待してやっておるわけでは決してないのでありまして、そういうことを三木特使に求めることも酷であろうと思うのであります。この際日本としてなすべきことを、そういう姿においてなすことがわが国として当然の道行きではなかろうかということでおいでいただいておるわけでございます。  それから、ただいままでの訪問先の空気でございますが、前段のわが国の中東政策に対しましては、これは一応各国とも評価をしていただいておるようでございます。これについて具体的な御注文が別にあるわけではないと承知いたしております。  後段の経済技術協力の面につきましては、各国とも日本に期待するところは非常に大きいのだが、これまで日本側でいろいろ接触はあったけれども、そのフォローアップが必ずしも十分じゃないということの御不満があるようでございまして、今後、より一そう連絡を密にいたしまして、経済協力、技術協力等の面におきまして積極化を先方も希望し、こちらもできることば誠実に、しかも迅速に対応していくということを申しておられるようでございます。
  54. 黒柳明

    黒柳明君 多くを望むことは無理だということは、当面の石油危機の問題における打開については当然多くのことを望むことば問題で、確かに望めないと。いままで民間レベルでのアラブとの接触を今度は政府レベルでやり、積み重ねですから、外交は。積み重ねの第一歩になるか第二歩になるか、その意味では当然意義があるわけですけれども、ただ、いま外務大臣おっしゃったように、多くは望めないけれども、どれだけ結果が出るかわかりませんが、訪問の一つの大きな趣旨は、石油問題について何らかの打開の糸口を見出すということは当然一つのテーマ、使命の中に入っていることも間違いないと思いますけれども、それはもう間違いないのでしょう。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 三木特使も出発にあたりまして申されておりますとおり、この際は油をちょうだいすべく上がるものではない。中東政策説明をし、先方からも御意見を聞くということが主眼であるということでございまして、そういういまおっしゃるような積み重ねの中で、その結果として、当然なことでございますけれども、油の安定供給につきましても好転は期待したいというのは、それは申すまでもない衷情でございます。
  56. 黒柳明

    黒柳明君 当然いままでの積み重ねが積み重ねですからね、ストレートでよこせと言ったところで、これは客観的な情勢がそういうものがなかったわけですから、これは三木特使が行くにあたって、そういう問題よりもむしろ友好あるいはこちらからの経済援助なり協力なりをと、こういうことはこれは当然だし、これはあたりまえだと思うのです。その中において何かの打開策があればと、こういうことも外務大臣がおっしゃったように当然の使命の一つですけれども一つあることもあたりまえだと思いますがね。いま三カ国回った中では、経済協力あるいは技術援助を来春やろうと、サウジアラビアあたりではこういう話し合いもまとまった。あるいはエジプトではスエズの開発についての具体的な援助の協議までしたいと三木さん張り切っていますけれども、こういう経済援助なり技術協力なりが、はたして外交的な積み重ねとして石油の打開まで通ずるめどがあるのかないのか。いまのところは、やっぱりあるのかないのかというよりも、こちらの前向きな積極的な姿勢のほうが先行しているんだと、こういうこともわかりますよ。しかしながら、やっぱりうらはらのものだと思うんですよ、それは。全部それはそんなこと関係ないんだと、石油の危機については何も関係ないんだと、そんなことじゃなくて、やっぱりその裏にはそういうめどをつけたい、何とかなるならばという腹があることもいま外務大臣がおっしゃった。ところが向こうの反応は、やっぱり友好は友好、経済協力経済協力石油に対しての原則は曲げられないぞというような反応が非常に強いと、こういう報道がなされていますけれども外務大臣はどうでしょう。
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 石油を中東紛争解決の政治的武器として活用するということはアラブ関係国の一致した戦略でございまして、それはアラブ諸国の中の一国だけがなし得ることでなくて、全体でまとめて統一した戦略として実行されておると聞いておるわけでございまするから、個々の国から石油戦略について決定的なお答えがいただけるはずのものではないと思うのであります。問題は、やっぱりあなたが仰せのとおり、信頼と友好のきずなを強めていくということをたんねんにやってまいること、なすべきことをなすべきときにやってまいるということを積み重ねていくことがまず第一でございまして、その結果石油戦略がどのように展開してまいりますか、これは先方のことでございまして、こちらから憶測するわけにはまいらぬと思いまして、われわれといたしましては、ただいちずに友好親善のきずなを深めて、強めてまいりたいということに一生懸命になるべきであると考えております。  なお、わが国の石油事情、あるいはわが国が石油危機におちいった結果、これはアジアの各国をはじめその他の国々に与える影響等につきましても、るる特使から各国の首脳に対しては十分説明をいたしておるわけでございまして、そういう点の解明につきましては、各国ともこれを多とされておるように聞いております。
  58. 黒柳明

    黒柳明君 確かに外交がむずかしいことはわかりますけれども、やっぱり通産省をはじめ国内の各省庁はある程度守りなわけですよ。これは攻撃は外務省ですからね。その外務省がやっぱりこの石油危機に対処する場合には、それはいままでの過去のアラブに対する外交、これを踏まえた上で非常にお上品に、友好なんだ、あるいは石油なんか今回は関係ないんだと、こういう姿勢であることは当然だと思うんですけど、また反面、外交というのは国益を守るために踏まえてやるんですから、これはもうがめつくやらなきゃならない場合もあるんですね。それは三木特使だったっておっしゃっていますよ、窮状を訴えている。ですけれども、ともかく困っているんだから頼むんだということがむしろ前提に立って、それで、なにそれとギブ・アンド・テークで経済協力をするんだよと、そこまでがめつくいかなくてもいいと思うんですよ。経済協力するから、技術援助するから、だから石油をよこせと、ここまでがめつくいかないにしても、いまの石油危機を打開するのは当然もう攻め手は外務省ですからね。まあ当面は三木特使がその使命を帯びて行っているわけです。外務大臣が非常にこういった国内的危機にあたっても、やっぱり攻めじゃなくて、何かまあ謙虚であるのか、いままでの実績がないから謙虚にならざるを得ないのか。友好を積み重ねて——まあこういうことも理解はできますけれども、もうちょっとやっぱり強く私は外交というものを展開していかないと、もっと極端なことを言えば、援助はしたけれども何にも実はなかった、こういうこと、これは積み重ねだから、いつかは出てくる可能性があるでしょう。それ自体むだでもマイナスではないと思いますけれども、当面は要するに三木特使、今後の外務省の出方に相当ウエートがかかっているんじゃないですか、この危機の打開ということは。ともかく来なきゃどうしようもないですよ。国内でどういうふうな割り当てしたって、どういうふうな節約を呼びかけたところが、肝心の石油が来るんだか来ないんだか、かいもくわからない。二五%から三〇%であろうなんということじゃ——いまエネルギー庁が来ます。詳しいことも聞きたいと思うんですけれども、そういうある意味では攻撃して攻めに回る外交姿勢もここで展開するという根本的な腹がまえを持って、友好なんですよと、こういうテクニックもある面では必要じゃないか。  ですから、各国の大統領なり国王なりが、要するに、まあ外務大臣も御存じのように、今後の日本の動きを見守りたいと、アラブ首長国連邦のザイド大統領だったですか、何かやっぱり日本がやるだろうと、そうしなければ石油問題は解決しませんよと、それから何ですか、もっと何か言っていましたね。フセイン国王は、あらゆる努力はするけれども、やっぱり今後日本がどんな具体的なこの問題について態度を、行動をとるか、それを見守っている——もう明らかに三木特使が来て石油に対しての窮状を訴えて、それに対しての解決策というのは、日本がどう行動を起こすか、今後見守りますよと、具体的な行動を起こさなければ打開しませんよと、向こうはもうはっきり露骨にそういうことを言っているわけですよ、石油危機の打開に対して。そのあと今後、それじゃいま言ったザイド大統領の今後を見守ると、あるいはフセイン国王の具体的な行動は何なのかと、こういうものにやっぱりこたえるものがないと、この三木特使が行ったこと、積み重ねの一環としては何らかのプラスが将来中期的にあらわれるけれども、もう中期的とか将来の問題じゃないですわな。もう来年の、当面の問題ですよ。そういう問題に対して当然何らかの効果をあらわすための手段というものもあったわけでしょう。何をそれじゃ今後やるんだ、何を具体的な行動を起こせるのか。まあ三木特使と各国とのそういう接触の報道は、外務大臣は当然直接にもお知りになっているんでしょうから、今後どういうことが想定されますか。具体的な行動を要望していることに対して、どういうことが日本としては説得力のあるような返答として具体的行動が予想されますか。
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アラブ関係国が何を望んでいるか。第一は、やっぱり中東紛争の解決であろうと思うんです。その名誉ある解決、しかも長続きのする解決がもたらされることであろうと思うんでございます。この問題につきましては、十八日から開かれる予定が延びて、本月二十一日から開かれる予定と伺っておりますが、この和平会談の成り行きをまずわれわれは注目しなければならぬと考えております。  それから第二には、三木特使お帰りになりまして、まあ帰ったらそれで済むというわけでなくて、そのフォローアップもたんねんにやることが大事だと思うんでございまして、   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕 一わたり訪問を願ったあと、どのようにこれを仕上げていくか、それは私どもの任務であろうと考えております。
  60. 黒柳明

    黒柳明君 そのフォローアップ、当然でしょうね。ですから、そのフォローアップが要するに経済援助、技術援助等と、これから三木特使がいろんなところで、またいろんな約束する可能性ありますから、そういうものを行なうこと。いままで口ばっかりで何にもやらないじゃないかとエジプトあたりで言われているわけですからね。そういうことをやっぱり払拭することは当然ですけれども、さっきも言ったように、経済援助、友好と石油問題の原則的なものはこれは違うんだと、こういうことですから、フォローアップというのが、もしその経済的なことについてのフォローアップだけを考えると、向こう立場としては、やっぱり日本が今後、あるいは具体的というものについての答えにはならないんじゃないか。確かに中東紛争の解決なんというのはむずかしい問題です。国連の場にも出ていますし、またジュネーブの和平会談というものは間もなく行なわれる。それを日本一国でどうしようのものではないわけですけれども、ただ、どうしようも、どうもできないと、何にもできないということで手をこまねいているのか、経済援助問題でフォローアップすればそれでいいと思っているのか。向こうの反応は、少なくとも経済問題ではないんだということ、原則的な石油問題とは違うんだと、中東紛争解決のための何かのアクションをとれと、具体的にとれと。これは具体的に向こうもこうしろああしろなんて言っていませんからね。これはあくまでもこちらとして考えまして、こちらとして真剣にやっぱり熟慮して、そうして何か向こうの要望にこたえるべく具体的な行動がなければ、この石油問題というものは結局は解決しないということがいま予想されるんじゃないでしょうか。ですから、いまのフォローアップというのは経済問題だけに限っちゃいけないんじゃないか、向こうの希望しているのはそうじゃないんじゃないかと、私はこう受けとめるのですが、どうですか。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あとのフォローアップにつきまして、たんねんにやらなけりゃならぬということは当然のことでございまして、そのことは先方も大きく期待いたしておる具体的なことの一つであると私は思います。それから、あなたの言われる経済的なこと以外のいわば政治的なアクションということはどうだと、それについてのお尋ねのように感じるのでございますが、その点につきましては、冒頭に申しましたように、和平交渉というのは当事者が集まってこれから始まるわけでございますので、その成り行きをしばらくわれわれは注視さしていただきたいと思うのでございまして、その成り行きに応じましてタイムリーに私どもがなすべきこと、なしてはならぬこと、それは十分考えていかなければならぬことと思うのでございますが、いま具体的にそれじゃ何をいつやるかという腹案があるかと問われるならば、そういうものをいま私は持っているわけじゃございません。
  62. 黒柳明

    黒柳明君 ですから、そこら辺がちょっといまのこれだけの、いわゆる総理が言った戦後四半世紀最大の危機を迎える、しかも攻め手である外務省政策室じゃ何かこうあなた次第みたいな、強力な打解策を何か求めていこうというような熱意が私は欠けているような気がするんでね……。  それで、エネルギー庁が来たので、私、具体的にいまあれですか、日本石油の原油、製品の備蓄量というのは五十七日ですか。あと洋上がどのくらいあるんですか、洋上に来ているのが。
  63. 平林勉

    説明員(平林勉君) 十一月末現在の備蓄の推計によりますと、洋上も含めまして備蓄全体で五十六・六日分と計算されております。
  64. 黒柳明

    黒柳明君 洋上を含んで。
  65. 平林勉

    説明員(平林勉君) はい。
  66. 黒柳明

    黒柳明君 五十六・六日分。備蓄が五十六日で洋上がプラスアルファじゃないのですね。
  67. 平林勉

    説明員(平林勉君) 洋上にございます石油の量につきましては、正確に何日分と計算することは非常に困難でございまして、いろいろな計算基礎から推算いたしますと、現在約十六日分と想定されます。
  68. 黒柳明

    黒柳明君 洋上が十六日分。
  69. 平林勉

    説明員(平林勉君) そうでございます。
  70. 黒柳明

    黒柳明君 いま備蓄しているのはどのくらいあるんですか、こちらにあるのは。
  71. 平林勉

    説明員(平林勉君) 普通、備蓄は洋上と足していたしますが、先ほど申しましたように、備蓄は製品在庫と原油在庫と両方でございまして五十六・六日でございます。
  72. 黒柳明

    黒柳明君 だから、洋上が推測大体十六日ぐらいだろうと、そうすると洋上と備蓄されているので五十六・六日だと、洋上を引いた分は四十・六日ですか。
  73. 平林勉

    説明員(平林勉君) 失礼しました。五十六・六日プラス洋上十六日。
  74. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、五十六・六日プラス十六日、そうすると七十二・六日ですか。
  75. 平林勉

    説明員(平林勉君) さようでございます。
  76. 黒柳明

    黒柳明君 これはどうですか、十月、十一月あたりの——いま十一月末現在ですね。
  77. 平林勉

    説明員(平林勉君) そうでございます。
  78. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、いま十二月半ばですか、そうすると十月あたりと比べたらどうですか。
  79. 平林勉

    説明員(平林勉君) 備蓄の数字につきましては、十月末五十九日でございます。
  80. 黒柳明

    黒柳明君 五十九日。洋上でどのぐらいだったんですか。
  81. 平林勉

    説明員(平林勉君) 二十日ぐらいでございます。
  82. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると若干減っていると……。
  83. 平林勉

    説明員(平林勉君) はい。
  84. 黒柳明

    黒柳明君 一週間ぐらい減っているということですね。
  85. 平林勉

    説明員(平林勉君) そうでございます。
  86. 黒柳明

    黒柳明君 大体十月から十一月ぐらいまでで一週間、推定として洋上を含めての備蓄が減っていると。そうすると、この推定でいくと十二月もまた、まあわかりませんけれども、マイナスになる可能性はあると、こう見ていいんですか。
  87. 平林勉

    説明員(平林勉君) 十二月末残の備蓄につきましては、大体先ほど申しました数字から約四、五日減少するという見通しでございます。
  88. 黒柳明

    黒柳明君 まあ十月から十一月、七日ぐらい、十一月から十二月までまた四、五日ぐらいと、こういうこと。これは推測されていたことですけれども、それに伴っていま、外務大臣ですね、三日ぐらい前か、山下通産事務次官おっしゃった——もしかするとこれは国会の場じゃなかったですね、たしか経団連か何かだったですか、三年間、この石油問題で日本経済が回復するには三年ぐらいかかるだろう、最悪の場合には。それからこれも三日ぐらい前ですか、中曾根通産大臣ですか、もしかすると家庭の送電も強制的にとめる可能性もあると、確かに石油危機には違いないと思うんです。だけど物価高というのは、あんまり石油危機石油危機というこのムードにあおられて、要するに便乗値上げがあることはこれは間違いないんです。これはもう一〇〇%間違いないです。物はそんな不足してないということも間違いない。ですから、あっちこっちでこの経済危機を回復するには三年かかるだろう、あるいは家庭の送電までもとめる可能性があるだろうなんて、こう発言することについては、私は確かに危機なんだから政府はそれなりの対処をしなきゃならない。だけど、対処をするということは、節約しろ、それからこういう最悪の事態になるぞ、そういうことを言うことよりも、もっと科学的、具体的な、乏しきをお互いに公平に分けるという政府の姿勢、それとともに何とかしてもと石油を持ってくるというこういう姿勢、こういう姿勢が伴わなければ、私はこういう発言はいたずらに人心を動揺させ、あるいは便乗なり、かけ込みなりの値上げをあおる、こういう助長するものの何ものでもないと思うんですよ。まあこれ外務大臣の、物価の問題、守備範囲じゃありませんけれども、私はそういう発言が国会なり、   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕 あるいは権威ある人がこう言われるたびに物がどんどんどんどん上がると思う。その根本はやっぱり石油危機であることは間違いないんです。ですから、石油危機に対してそういう発言をするなとか、そういう憶測を言っちゃいけないと、こういうことじゃなくて、言うなら言う、しかし科学的なやっぱり攻撃の、守備の面でも科学的なやっぱり貧しきをお互いに耐え忍んでいくのだというものをつくると同時に、取ってくるんだという戦いもやっていく。そういうものが総合しなければ、ただ単にいま言うような発言やなんかは、人心を動揺させ物価をつり上げるだけ以外の何ものでもないと、こう思うんですよ。外務大臣、まあちょっと守備範囲がそれますけれども、ついでですから、いま言ったような内閣の閣僚、あるいはそういう政府の相当の関係者の発言、こういうものと外務大臣の——失礼ですけれども、三木特使を派遣して、やる気はあるんですけれども、何かあなたまかせで、なるようになるんだと、向こうの態度だからと、向こうの態度には違いないけれどもほんとうに真剣にとるという姿勢があまりにも何か薄いような感じの外務大臣のお考えと、そういうものをあわせて外務大臣としては、いまだんだん少なくなる、これは予測されたとおりです。取ってこなきゃだめでしょう。取ってくるのは通産大臣ができないじゃないですか、どうですか、外務大臣
  89. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま焦眉の急は、あなたがおっしゃるとおり一滴でもよけい確保することだと思うんです。それでその場合、それに焦点を合わせて何をやるべきか、何をやっちゃいけないか、どういうことを言ったらいいか、どういうことを言うちゃいけないかということをわれわれは考えてやっておるつもりなんでございまして、あなたと全く意見は同じなんです。
  90. 黒柳明

    黒柳明君 よかった。意見が同じでよかったですけれど、違っちゃ困っちゃうんであってね。  それで、エネルギー庁ですね、一番問題なのはこれは一般家庭、要するに私たちですね。まあいままで国会答弁あるいは政府の発表で、マイカーを自粛しろとか、あるいは観光用のバスを自粛しろとか、マイカーでのレジャーを自粛しろとか、あるいは室内の暖房の温度を下げろとか、それから業務用についてはエレベーター云々だとか、それから今度は家庭用の電気については、何ですか、電気掃除機もあり、テレビもあり、電気ストーブもあり、いろんなものがあると思うんですけれども、そういうものについて、こう外務大臣と私と考えは同じにしても、サウジアラビアの国王は考え方がちょっと違いますからね。そういう面から、当然国民に自粛を呼びかけていく。ところが、この自粛を呼びかけてどのくらい節約できるのか。はたして国民が真剣になって、まあこの際だから、いままでの田中さんの姿勢はともかく、何とか切り抜けようという姿勢があって、電気を消し、電気掃除機を使わないでほうきを持つ、テレビのコンセントを抜く、こういうようなことがあったとして、ほんとうにこの危機を乗り切れるのかどうか。何かますます少なくなって心細い。外務大臣も、意見は同じだけれども、どうも腕をこまねいていて、どうしてくれるのかわからない。そうなると、国民が前向きに節約しなければならない、節約してほんとうに効果があらわれるのか。その節約する面は、いま言ったように、私もそういう範囲のことはわかるのですけれども、もうエネルギー庁としては相当こまかく具体的な項目について試算していると思うのですけれども、それ、お教えいただけますか。ひとつ外務大臣にもこの緊急事態についてもうちょっと理解してもらいたいのですよ。いま発表しますから、エネルギー庁が、試算を。すみませんね、もし試算したものでもあればね、ひとつこまかく、それで、それをやればどのくらい、何万キロリットルぐらい石油が浮くのか、これを教えてくださいよ。
  91. 平林勉

    説明員(平林勉君) 現在考えられております需給、需要と供給関係でございますが、先ほどから御指摘のように、石油の備蓄が非常に減少傾向をたどっておりまして、現在、十一月二十日から行政指導ベースで各需要層の節減を呼びかけているわけでございます。その中にはもちろん各家庭の節電及び石油の消費節減についても呼びかけております。全体でざっとした感じを申し上げますと、現在の需給はかなりタイトぎみでございますが、大体いままでのところは原油の入荷及び消費はほほ順調にいっております。問題は、これから一月以降三月までの点でございまして、一−三月の油の、原油の供給と、それからそれに見合います需要というものの関係でございまして、現在このまままいりますと、全体で約一三・四%の原油消費が不足するという状況でございます。その一三・四%の原油消費を何とか節減で切り抜けるということで、一般・大口の需要家をはじめ、電力の節減、それから一般家庭の節減を呼びかけております。  一般家庭向けの節電につきましては、ここに「節約キャンペーンの期待効果試算」という資料がございますが、ここに一つ一つ、たとえば「一般キャンペーン」、石油関係で申しますと、マイカー通勤の自粛、マイカーレジャーの自粛、貸し切りバスを使ったレジャーの自粛、暖房の一度引き下げ等々、非常にこまかく、それぞれをいたしますと、どれだけ電力が節約され、またそれがどれだけ石油の節約に結びつくかという試算がございます。
  92. 黒柳明

    黒柳明君 家庭はどうですか、家庭の電力は。どんなものがあるか。
  93. 平林勉

    説明員(平林勉君) 定庭電力関係で申しますと、まずプレヒートテレビ、これはテレビに電気がいつも通っていて、スイッチを押せばすぐ画面が映るというこれでございますが、これは電力量三・二四億キロワットでございまして、全体の電力消費の比率は〇・二六%でございます。かりにこのプレヒートをやめますと、四十九年三月末までに節約できる原油量は九万三千キロリットルと計算されております。これは全体の原源の消費比率にいたしまして〇・〇八二%でございます。以下、電灯をつけっぱなしの対策、これが同様にして三・七万キロリットル、それからテレビのつけっぱなしがございまして、これを全部やめていただきますと九・九万キロリットル、それから電気ストーブの使用時間を短縮することによって一・六万キロリットル、電気掃除機の使用時間の短縮によりまして二・七万キロリットル、電気洗たく機の使用合理化によりまして三・四万キロリットル、電気こたつの出力調整によりまして九・四万キロリットル。以上でございます。
  94. 黒柳明

    黒柳明君 それはあれですか、もう国民にそういうことを具体的に呼びかけているんですか。あまりカラーテレビのスイッチを切れとか、電気掃除機を使うななんて聞いたことがないですな。
  95. 平林勉

    説明員(平林勉君) この国民に対する呼びかけにつきましては、内閣広報室とも御相談いたしまして、内閣広報室が持っておられますチャンネルを拝借して、これを早く国民に呼びかけるという趣旨でございます。
  96. 黒柳明

    黒柳明君 早く、これからやろうってんですね。これからやろうってんですね、それを、一般呼びかけを。そうでございますか。
  97. 平林勉

    説明員(平林勉君) この消費の節減につきましては、家庭用電力だけについて申しますと、これを全部節減いたしましても、全体の油の需給ないしは電力の需給には比較的率は少のうございまして、私ども現在エネルギー庁として実施しておりますのは、主として大口の電力の削減でございまして、これは現在行政指導ベースで一〇%の節減を強力に呼びかけておりますが、さらにこの措置を強化することを考えております。一般家庭向けにはやはりこういうことを呼びかけまして、主としてまあ精神的な協力を期待するというくらいな感じでございます。
  98. 黒柳明

    黒柳明君 いま精神的な呼びかけを期待していると言うが、政府はテレビで二十七、八億ぐらい使っているわけでしょう。その中で、奥さま、電気掃除機を使わないでください、奥さま、むだな電気を消してください、テレビのスイッチを切ってくださいと呼びかけようってんですよ。そういう深刻なときに、もうちょっとやっぱり取るほうの姿勢が、しかも三木特使がいま行っている最中ですよ。だからこそ情文局長のああいうコメント、アラブ寄りの声明も出したとば思いますけれどもね。これから相当深刻になって、こういうことを一般の家庭に呼びかけて一確かにいま言ったように〇・〇何%。だけれども、それだって積もれば、いまの一般用のあれだって〇・何%ぐらいにはなるんじゃないですか。一%にはならなくたって〇・四、五%に近づいてきますわな。一〇%節約しよう、それを家庭向けのほんとうにこわかいいまの七、八項目だって〇・四、五%に近づいてきますよ。そういう呼びかけをこれからしょうと。だから、いま言ったように、送電だって強制的にとまる可能性もあると、こういう非常に深刻、文字どおり深刻ですね。ですから、深刻なら深刻なりにやっぱり外務大臣も対処しなきゃならない。まあ同じことになります。  そこで、三木特使がこんなことを言っていらっしゃいましたよ、これ以上悪くならないだろうと。きのう、おといあたりの報道ですかね。どうですか、外務大臣。三木特使の感触としては、これ以上は悪くはならないだろうと。外務大臣、どうでしょう。まだ具体的なデータがおそろいじゃないと思いますけれども、これ以上悪くなるかどうか。悪くなったら三木特使、行った意味がないわけですね、どうですか。悪くさせない努力をしなけりゃならないことも当然ですけれどもね。
  99. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 何事をやる場合にも、よくしようという前に、これから悪くしないことをまず第一に考えなきゃいかぬわけです。
  100. 黒柳明

    黒柳明君 おっしゃるとおりです。
  101. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) で、私といたしましては、まずこれ以上悪くしないような手だっては講じなければならぬということは、いまあなたの御指摘を待つまでもなく、いたしておるわけでございます。そしてその次に、同時に若干でもふやすことを考えにゃいかぬわけでございまして、そういうことのために全精力をしぼっておるわけでございます。同時に、もう一つ黒柳さんにはもう釈迦に説法でございますけれども、これ、石油がいま問題になっておるわけでございますけれども日本石油ばかりが問題ではないので、ほかにもたくさん問題があるわけでございまして、大事な資源、ほとんど海外に仰いでおるわけでございますから、そういうものの確保も同時に考えてやらにゃいかぬわけでございますので、そういう配慮も及ばずながらいたしながら最善を尽くしておるわけでございます。
  102. 黒柳明

    黒柳明君 時間ありませんが、もう一問、最後に。  総理が間もなく、二十日ぐらいたちますと東南アジアに行って、外務大臣も当然お供すると思うのですけれども、いままでの外交姿勢というものが今回の石油危機を招いたと言ってもこれは過言じゃないと思うのです、私たち立場から見れば。東南アジアの外交姿勢というもの、経済援助にしましても、とにかくいままでやっぱり非難の的になる可能性があったわけです。また、現地の国民からしても、必ずしも日本の東南アジアに対する外交というものが好感を持って受け入れられてなかった面も多々あると思いますが、やっぱりこういうアラブ問題を一つの機会にしまして、東南アジア政策というものについても相当考え方を改めて対処しないと、そうすると、今度はどっかの国あたりで相当反対のデモでも、運動でもあおりを受ける可能性もあるんじゃないでしょうか。考えを改めることを前提に行くのかどうかもこれはわかりませんけれども、東南アジア政策というものについて根本的に、あるいは相当の部分反省あるいは転換ということの必要があるんではなかろうかと、こう思うんですが、外務大臣、どうでしょうか。いまのアラブ外交というものは東南アジア外交に対して何の反省にも、参考にもなっていませんでしょうか。
  103. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまの外交姿勢が石油危機を招いたというおしかりでございますが、そのまま受け取るわけにいかないんです、ぼくは。日本だけが石油危機の中であえいでいるわけじゃないんでございまして、これは御案内のような世界的な事態でございまして、日本だけが痛い目にあっておるのでございますならば、あなたの御指摘が正しいのでございますけれども、私はそういうものではないと、政府のために一言弁じておきますから。  それから東南アジア外交でございますが、これはわが国の外交姿勢といたしまして、先進国外交であろうと後進国外交であろうと、これは分けて考えるべきものではなくて一つなんでございまして、アジアの一国といたしまして、日本としてなすべきことをなさねばならぬわけでございまして、これを曲がりなりにやってきたわけでございまして、それなりの評価もあるし、それなりの批判もあるわけでございます。今後も私はおそらく評価も受け、あるいは批判も受けることに変わりはなかろうと思うのでございますが、いままでの批判の中でわれわれが考えなければならぬ点につきましては、これは十分の反省を加えていかなければいけないことは当然でございます。とりわけ、われわれもっと謙虚になり、相手側の気持ちになって真剣に御相談をしなければならぬと思うわけでございまして、その点につきましては、総理が行く行かぬという問題と離れて十分考えにゃいかぬことだと思っております。総理大臣の訪問はその他の国の訪問と同じでございまして、日本の首脳といたしまして当然各国の首脳と面識を持ち、対話を通じて理解を深めたいということでございまして、先方の言い分も十分聞かなけりゃいかぬし、日本考えも十分述べてもらわなければいかないし、そういう点についてごくフランクな意見交換を通じて理解を深めていただきたいと私は考えておるわけでございます。  今度しかし、この時点において特に問題として浮かび上がっておる問題を申し上げさしていただきますならば、石油危機がもたらした問題は日本経済にとりましてたいへん深刻な影響をもたらしておりますけれども、ところが、たいへん周辺の国々に日本を通じて非常に深刻な影響を与えておるわけでございまして、たとえば一つ肥料を例にとってみましても、来年の肥料を大部分日本に仰いでおるわけでございますが、日本のほうで肥料が減産になる、内需は確保しなければならぬということになりますと、肥料の輸出という点に制約が出てくることになるわけでございまして、これは食糧全体の問題からも、その輸入国の経済、民生の上からもゆゆしい問題であろうと思うのでございます。そういう一例を肥料にとったのでございますが、その他の品物につきましても無数に出てくる問題でございます。したがって、これは国内の経済政策と同様に、われわれの対外経済政策の問題といたしまして、外交の問題といたしましても非常に深刻な問題を投げておると思うのでございまして、こういうことに対しまして十分な理解も求めなければならぬし、同時にあたたかい協力もせなければならぬし、それに応じた内政の体制もつくらなければいかぬし、そういう段階において行なわれる旅行でございますので、平穏無事な場合と違いまして非常にしんどい旅行だどいう思いをいたしておるわけでございます。しかし、そういう時期に、困難なときに、困難も分かち合い、喜びも分かち合うということがほんとうの友好だろうと思うのでございまして、そういうことを通じて、さらに友情と理解を深めていただきたいものと念願いたしております。
  104. 星野力

    ○星野力君 私は、カンボジア問題韓国の問題、中東問題、二十分間でこれだけお聞きしたいと思うのでありますが、まずカンボジアの問題であります。  一九七〇年三月にシアヌーク元首追放のクーデターが起きましてから、日本政府はずっとクーデター政権を全面的に支持し援助してきました。経済援助について見ますと、各種の無償援助、技術協力、それに為替支持基金などを合わせて相当多額のものを供与してきております。今月の八日、九日、パリでカンボジアのための国際会議というのが開かれまして、五十三カ国から三百人ほど参加したのでありますが、カンボジア王国民族連合政府の側からも相当大きな代表団を送ってきました。団長はプラシットというカンプチア民族統一戦線の中央委員会政治局の書記長、それから王国民族連合政府の閣僚という高い地位の人物でありますが、この人たち日本政府について特に問題にしておったのは、日本政府のロン・ノル一派支持について問題にしておったわけでございますが、特に問題にしておりましたのは、今度の二十八回国連総会におけるカンボジア問題の討議に対する日本政府の態度、それからアメリカの戦略偵察機SR71が沖縄の嘉手納から飛び立ってカンボジアの偵察飛行をやって、これがロン・ノル軍の作戦に協力しておるという問題、それからリエール支持基金の供与の問題であります。で、端的にお聞きしますが、カンボジアのロン・ノル政権に対する為替支持基金は、七二年分が五百万ドル、七三年分が七百万ドル出ておりますが、明年分も出す方針かどうかです。
  105. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 明年度の為替支持基金に関しましては、十一月十五日パリで拠出国の会議が行なわれました。一部の国を除きまして各国ともまだ継続参加の意図表明も行なっておりませ、んが、わが国といたしましては、明年度の継続参加の方向で慎重に検討しておるという段階でございまして、現在のところ金額その他につきまして、いまだ各国の態度、あるいはカンボジアの情勢その他を検討しながら、ただいま申しましたとおり参加の方向で憤重に検討するというのが現状でございます。
  106. 星野力

    ○星野力君 これまでの二カ年間は、基金拠出国はカンボジアを含めて、カンボジア以外に七カ国でごさいますね。それから脱落するような——脱落というと悪いですが、今度は参加しないというような国が出るでしょうか。  ついでにお聞きしますが、いまのお話だと、七四年分の基金全体の規模というものもまだきまっておらないじゃないかと思いますが、アメリカはどうですか。アメリカはどのぐらい拠出すると、アメリカのほうはさまっておりますか。あわせてお聞きしたいんです。
  107. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) まだ現状ではいずれの国も幾らの金を出すというようなことにはなっておりません。  それから、いま先生のお尋ねのどの国が脱落するだろうかというお話でございまするけれども、この点につきましても、現状におきましてはっきりどの国が為替支持基金から脱落するということもまだつかみ得ておりません。
  108. 星野力

    ○星野力君 局長の御発言ですと、日本政府としては七四年分も出すと、こういう腹づもりでかかっておられるように見えるのですが、また実際七四年分として、今度はこれまでの五百万、七百万よりも多く一千万ドル準備しておると、一千万ドル出そうと考えておると、こういわれておるのですが、その辺どうですか。
  109. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 私のほうでいま具体的な数字をもって来年度カンボジアの為替支持基金に拠出するということをまだきめておるところまではいりておりませんので、これはこれからの予算のワク内できまるべき問題でございますし、現状におきまして、外務省として幾らというところまではまだ申し上げる段階にございません。
  110. 星野力

    ○星野力君 ロン・ノル政権の崩壊というのはこれはもう時間の問題であろうと思います。ロン・ノル一派のクーデター政権が早晩カンボジア王国民族連合政府によって打倒される情勢にある。これは客観的にそうであろうと思うのであります。王国民族連合政府はシアヌーク殿下のもとに、クーデター直後から一貫してカンボジアの正統政府としての継続性、正統性、それを宣言してきた政府でありますし、現に国土と国民の大部分を統治しておる政府であります。これは御存じのとおりだと思います。そのような事情を無視して日本政府があくまでロン・ノル政権を支持し援助する理由がどこにあるのか。反共政権であるということと、アメリカの支持する政権であるからということ以外にはちょっと考えられないですが、大臣いかがでございますか。なぜこの政権をあくまでも支持するのが、もうつぶれる政権ですよ。
  111. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先生の御意見もございまするけれども、わが政府といたしましては、カンボジアの現在の政府がカンボジアにおきまする現状においての唯一の合法政府であるという立場は、従来一貫した態度でございまして、先ほど申しました為替支持基金につきましても、ロン・ノル政府を支持するというための資金ではございませんで、やはり国民の生活必需品の輸入に必要な資金を供与するというたてまえから拠出された金でございまして、ロン・ノル政権支持のための資金というものではないという点を御了解いただきたいと思います。
  112. 星野力

    ○星野力君 なるほどこれまで為替支持基金の使用目的は、国民の生活必需品の輸入に必要な外貨資金手当て、こういうことになっておるわけでございますが、カンボジアの情勢というのは、もう国民に必要な物資を輸入することさえほとんど不可能な状態、金を出せばそれが軍事費に使われてしまうというようなそういう情勢の中でロン・ノル政権を支持していくなんて、全くこれは国益という点からしてもむだづかいであるだけでなしに、国民の抗議と憎悪の中で崩壊に瀕しつつある政権に手をかすことは、それだけカンボジアの戦闘と殺戮を長引かして、カンボジアの悲劇の終わりをおくらせるだけであると思うのであります。そのことは将来にわたってカンボジア国民日本に対する悪い感情や不信をつちかうことにもなると思うのです。これはたいへん重要な問題だと思うのです。カンボジアの政権といいますけれども、カンボジアの国民の大部分、国土の大部分というものはこれはもう統治できなくなっておる政権なんです。私はこの来年分の為替支持基金はやめるべきだと思いますが、この問題について、最後に大臣の意見を聞きたいのです。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いませっかくカンボジア情勢、それから各国の出方等を勘案しながら検討いたしておるわけでございます。
  114. 星野力

    ○星野力君 それだけですか……。  金大中事件については、十一月初めに日韓両国政府外交的決着をつけたということになっておりますが、それ以来もうかなりの時日が経過しておりますが、金大中事件そのものの真相はその後どこまで明らかにされたのでしょうか、簡単でよろしゅうございますからお答え願いたい。
  115. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓双方の捜査当局は捜査を続けておると承知いたしておりますが、そうして韓国側の捜査の結果は当方に通報をいただくことに相なっておりますが、ただいままだ受け取っておりません。
  116. 星野力

    ○星野力君 日本政府としては、このままで推移していいと思っておられるのですか。韓国側事件の真相の究明に一そう努力すると、いまあなたも言われたことでありますが、そうして日本側に報告することになっておるのですが、十一月二日以来もうずいぶん時日がたっておりますが、何の報告もないのでございますか。
  117. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいまの時点まではまだ報告に接しておりません。ただ、韓国の国会において政府も答弁いたしておりますように、捜査当局におきまして鋭意調査中であるということでございますから、これはわがほうに連絡方、通報があることを期待いたしております。
  118. 星野力

    ○星野力君 それなら、たとえば金東雲元一等書記官、あの人物が韓国でどのように処理されたか。十一月一日に当時の金溶植外交部長ですか、政府見解を発表された中でも、金東雲をすぐに解職し、これはやったと思うんですが、捜査を続けており、法により処理するということを言っておりますが、今日まで法による処理ということも報告は何もないわけでございますか。
  119. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだございません。
  120. 星野力

    ○星野力君 金大中氏の自由は回復されたと考えておられますか、自由回復です。原状回復とは別で、それ以前の問題でありますが、金大中氏の自由は回復されたと考えておられるのか。金大中氏の海外旅行の申請に対して頑強に政府は旅券の交付を拒否しておるようでありますが、それでも自由は回復されたと、こういうふうにお考えになっておられますか。
  121. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先方は出国も含めて自由を保障するということを申しておるわけでございまして、それを信頼し、そしてそのことが一日も早く実行されることを期待いたしております。
  122. 星野力

    ○星野力君 幾ら信頼されても、それはちっとも実行されておらぬ。約束はしたけれども実行はしておらぬということなら、その信頼するということについてもちょっと考えなきゃいけないんじゃないかと思います。金大中氏自身が十月二十六日に軟禁を解かれたあと、在日韓国人などに送ってきた手紙で、軟禁は解かれても自分に自由はないんだということ、またいまの政権が崩壊に直面した場合にはおそらく自分は殺されるであろうと、この自由は回復されず生命は危険にさらされているという実情を訴えてきております。金大中氏の自由回復ということは、外交的決着をつけるにあたっての一つの条件であったと思うんであります。官房長官談話もそのことを評価してああいう結論を出されたわけであります。先月でございましたか、ここの委員会で、金大中問題で私が日韓両国政府がそれぞれの国民を愚弄しておる、こう言ったのに対して、大臣が、一時国民を愚弄することはできても永久に愚弄できるはずはないと、こうリンカーンのようなことをおっしゃられましたが、いまのような経過ですと、日本政府日本国民を徹頭徹尾瞞着しておると言ってもいいと思うんであります。金大中氏の自由回復の問題にしても、自由回復されたんだからと、こういう評価、条件の上に立って外交的な決着をつけておる。本人もはっきり言っておるように、自由なんか回復されておらない。一体今後どういう方針でこの問題に対処していかれるお考えか。このまま放置するとは言われないでしょうけれども、何かじっと待っておるというように見えるのですが。
  123. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当面そういう出国も含めて自由を保障するということを韓国側がわがほうに申しておるわけでございまして、私どもはそのことが一日も早く実現されることを期待して、現実それをいまウオッチしておるのがいまのわれわれの立場でございます。いま私どもとして、金大中氏がおられる韓国政府がそう言うことを信頼するよりほかに道はないわけでございまするし、そして私どもにそういうお約束をされたわけでございますから、それは私は必ずや実行されるに違いないと確信をいたしております。
  124. 星野力

    ○星野力君 この対韓経済援助の問題ももちろんでありますが、私も日本政府のこの対外経済援助、このあり方をこの際やはり根本的に考え直してもらわなければいけないと思っておるのであります。御承知のように、韓国だけではございません。タイでも、インドネシアでも、東南アジアの各地で学生などを先頭にしまして日本経済援助日本経済進出に対して対日従属経済に抗議する声が急速に高まってきております。それについてどういうふうにお考えになるか。  先ほども述べられたことでありますから先へ進みますが、それに金大中氏の自由回復の問題もあります。きょう私、衆議院の外務委員会で聞いておりましたが、大臣は、金大中事件経済閣僚会議とは無関係だと、こういうことを言っておられたが、これは全くおかしいので、金大中氏の自由回復を評価して、いわばそれを条件として外交的処理をやり、その上にあらためて閣僚会議開催が合意されたと、こういうふうになってきておるわけでありますから、その開催の条件がくずれている、そういうこともありますし、私は日韓閣僚会議はこの際中止すべきであると思うのでありますが、重ねて御意見をお聞きします。
  125. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この事件が起こりました当初から一貫して政府は申し上げておるわけでございます、この事件はこの事件として処理しなければならぬと。で、対韓政策の基本をくずすつもりはないということもあわせて申し上げてまいったわけでございます。ただ、事柄をなす場合に、やはり国民理解協力を必要とすることば当然のことでございますし、金大中事件が起こって両国の国民がこの問題の処理につきましてたいへん世論がわいておった段階でございますので、とりあえず、適当な時期でないと思いまして、一時延期いたしたわけでございますが、先ほど御指摘のように、外交的な処理を一応いたしたわけでございますので、そういたしましたあとで、それでもなお閣僚会議を開かないというのがなおおかしいわけでございまして、閣僚会議は開かしていただきたいと思いますが、ただ、こういう対韓経済協力等につきましていろいろな批判もあることでございまするし、経済閣僚会議自体につきましても改善すべき箇所が、部面がないわけではないわけでございますので、そういった点は十分配慮しながらやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  126. 星野力

    ○星野力君 総理とあなた、一月早々ASEAN諸国を訪問されることになっておるようであります。私どもは賛成しないのですけれども、どうしても行くというならこれはいたしかたないことでありますが、行かれるなら、先ほども申されたように、各国首脳との面識を求めるだけでなしに、いまこのわき立っておるところのそれらの国の民衆の声もよく聞いてきていただきたいと思うのです。そしてそのあとで日韓閣僚会議のことも含めて対韓援助のあり方を、対外援助のあり方をとくとひとつ検討していただきたいと思うんです。いまの国内事情から見ましても、日韓閣僚会議をこの暮れのあわただしい中に開いて対外経済援助の相談をやるなんてそういう情勢じゃないと思うんであります。年内開催などはもってのほかだと思うんでありますが、どうしても断念しませんか、年内開催は。
  127. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 何とか御理解をいただきたいと思います。
  128. 星野力

    ○星野力君 もう一問。中東問題を実はお聞きしたがったんですが、先ごろの官房長官の談話、中東政策の転換のあの談話の中に、パレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利が承認され尊重されることということばがございますね。あれは主として民族自決権を意味しておると思うんでありますが、御承知のようにパレスチナ人というのは、何千年来の民族安住の地をイスラエルの建国で追われ、またイスラエルの軍事占領でさらに追われ、いわば全民族が難民化しておるわけであります。これが中東問題のいわば原点とも言うべき問題でありますが、このパレスチナ問題に対してこれまでどういう方針をとってこられたのか、難民救済のために資金を拠出したということはあったと思いますが、それ以外にどういう方針でこの問題に臨んでこられたか。それからパレスチナ人の民族国家建設に協力する用意をお持ちかどうか、その二点について大臣の意見をお聞きしたいのですが。
  129. 鈴木文彦

    政府委員(鈴木文彦君) パレスチナ人の問題は、これはいま御指摘のとおり、イスラエルが一九四八年に建国いたしましたときにその領域から追われて以来、一九六七年中東紛争でさらにその数がふえまして、現在約百五十万人のパレスチナ人が国連の特別に設けられました機構の協力もとに、その救済あるいは保健なり、教育なり、訓練という技術援助を提供されておるわけでございますが、これらのパレスチナ人をどういうふうに処遇するかということは、中東和平の解決について基本的な問題の一つであろうと思います。  このパレスチナ人が国連憲章に基づいて自決権を持つべきであるということは、数年来国連総会において決議のかっこうでこの権利の確認の希望が出ておりまして、特に一九七一年以降の毎年の国連総会におきまして、この決議に対して日本は積極的に賛成してきているわけでございます。ちなみに申し上げますが、この決議に対してアメリカはいつも反対しておりますし、西欧諸国はいつも棄権いたしております。  それから先ほど御指摘のありました、これらの難民に対する救済につきましては、日本も終始これに対して協力いたしておりまして、特にことしは御存じのとおり、従来の約五倍の五百万ドルという資金援助をUNRWAに対して提供することを約束いたしました。この額は、UNRWAの拠出総額、大体五千万ドルございますが、そのうちアメリカが約半分近く拠出しております。その二番目に位するぐらいの巨額の拠出国になったと、こういう意味日本はパレスチナ人民の自決権をこの面においても相当な協力をしておるということが申し上げられると思います。  それからパレスチナ人民国家建設の問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、これをどういうふうに扱うかということは中東和平解決の非常に基本的な問題の一つでございます。で、日本は終始この国連憲章に基づく正当な権利が承認され、尊重されるべきだということで、国連の場、それ以外にも常にその立場を明らかにしておるわけでございますが、この原則がどのように具体化されていくかということは、二十一日から開催予定の中東の和平会議で十分に話し合われるべき問題と考えております。で、当事者の間の話し合いの結果、パレスチナ人民の国家建設が現実のものとなって国際社会の祝福を受ける場合には、わが国としてもあらゆる面で協力していくつもりでございます。
  130. 星野力

    ○星野力君 続きは次にします。
  131. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時五十五分散会