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1974-02-21 第72回国会 参議院 運輸委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十一日(木曜日)    午前十時十九分開会     —————————————    委員異動  二月二十日     辞任         補欠選任      重宗 雄三君     木村 睦男君      山崎 竜男君     竹内 藤男君      岩本 政一君     古賀雷四郎君      渡辺一太郎君     柴立 芳文君      前田佳都男君     金井 元彦君      竹田 四郎君     小柳  勇君  二月二十一日     辞任         補欠選任      柴立 芳文君     河本嘉久蔵君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         宮崎 正雄君     理 事                 黒住 忠行君                 菅野 儀作君                 杉山善太郎君     委 員                 江藤  智君                 金井 元彦君                 河本嘉久蔵君                 木村 睦男君                 古賀雷四郎君                 柴立 芳文君                 竹内 藤男君                 橘  直治君                 松平 勇雄君                 瀬谷 英行君                 森中 守義君                 阿部 憲一君                 村尾 重雄君    国務大臣        運 輸 大 臣  徳永 正利君    政府委員        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        運輸政務次官   増岡 博之君        運輸大臣官房審        議官       原田昇左右君        運輸省海運局長  薗村 泰彦君        運輸省船舶局長  内田  守君        運輸省船員局長  住田 俊一君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        海上保安庁長官  佐原  亨君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局安全衛生部長  中西 正雄君    事務局側        常任委員会専門        員        池部 幸雄君    説明員        外務大臣官房審        議官       杉原 真一君        水産庁漁政部企        画課長      新井 昭一君        運輸省船舶局首        席船舶検査官   謝敷 宗登君        運輸省船員局船        舶職員課長    星  忠行君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○運輸事情等に関する調査  (運輸行政基本方針に関する件) ○船舶職員法の一部を改正する法律案(第七十一  回国会内閣提出、第七十二回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  山崎竜男君、岩本政一君、竹田四郎君、渡辺一太郎君、前田佳都男君が委員辞任され、竹内藤男君、古賀雷四郎君、小柳勇君、柴立芳文君、金井元彦君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) 運輸事情等に関する調査議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 森中守義

    森中守義君 きょうは大臣、あれだそうですね、総理及び関係閣僚労働団体会見をする。趣旨はどういう内容ですか。
  5. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 趣旨は、関係閣僚関係団体の幹部の皆さま方と、現状のいわゆるいろんな経済情勢を正確にひとつ認識をして、国民生活にどういうふうにわれわれがこれからそれぞれの立場で対処していくか、こういうことについて忌憚のない意見を交換しようと、こういうことであると思います。
  6. 森中守義

    森中守義君 そこで、いま大臣が言われますように、関係閣僚がそれぞれの立場でと、こういうお説でございますけれども、大臣の所管としては、さしずめ春の一番大きなうねりは、何と言っても国鉄労使双方の問題だろうと思います。これは何もことしに限ったことではなくて、おおむね例年のように非常に大きな紛争に発展をし、ひいては社会問題に発展をする。そこで、ことしは異常なパニック現象を背景にしたそういう問題ですが、いままで私どもがこの委員会経過を見てきておりますと、問題が発展をして、抜き差しならぬところにいって何か対策が立てられる、こういうパターンがいままで繰り返されているわけですね。しかし、労使問題というものは、あくまでも信頼というものが基調になるべきでしょうけれども、大臣として、国鉄労使関係に対し何か改善の方法、しかも前段的なものとして、いま申し上げるように非常に経済波動の高い中での取り扱いですから、政府としてはこういう措置考えるとか、検討するというようなことを、事前に何か表現できるようなことはお考えになりませんか。
  7. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 実は、きょうの会合が総理中心にしまして初めての話し合いになると思います。で、私は、いま抽象的なお答えをいたしましたけれども、やはり目前に迫っておる春闘という問題が議題にも、話題にも——議題というよりもむしろ話題に私は出てくるんじゃないかと思うのでございます。その中で、私の関係しております海員の問題もございます。それから大きな問題としては、国鉄のいま御指摘のような問題もございます。したがいまして、その他いろんな団体がございますが、そういう問題について個々の話はきょう出るか出ぬかわかりませんけれども、実は明日それらの方々代表——団体だそうでございます。いま団体の名前を私ちょっと全部覚えておりませんけれども、私の関係する七団体代表方々とお目にかかることになっております。おそらく、突っ込んだこまかい話にまでいけるかどうかは疑問でございます、時間の制約もございますから。  その中でやはり賃金の問題、あるいはまたそのほかスト権の問題とか、なかなか政治的な問題も含まれておるようでございますが、まあ、きょうじゅうには大体のお話内容を、事務的と申しますか、内容等についても、ひとつ自分のほうはこういうふうなものの考えだということを私の手元まで届けようというようなお話でございますから、それを見た上で、それぞれの項目について明日どの程度お答えができるか、検討してみようと思っておるところでございます。しかし政治的な大きな問題になりますと、私一人でものの考えを軽々に言うわけにもまいらぬと思いまするし、主としてそれぞれの担当の閣僚がおりますから、それを中心に御相談をして、その上でできるだけの善処、対処というものをやっていきたいと、かように考えております。
  8. 森中守義

    森中守義君 確かに、言われますように、きょうの四団体との会見というものは、いわば一発勝負という意味ではもちろんないと思います。言ってみれば、双方の感触の探り合い。しかし具体的にいろんな要求ですとか、そういうものが出ることはこれは間違いない。ですから私は申し上げたいのは、現在における国鉄だけを限定して考えた場合、少なくとも財政再建方向に向かったといいながら、すでに先般は約二千三百億ですか、それから今回の九月一ぱい凍結によりましておおむね一千億、まあ、もちろんこれは財投で充当する、金利は見ようということのようですが、いまの運賃収入料金収入状態等からいきますと非常に国鉄財政が困る。そこで、いよいよ具体的な金額が提示される。ゼロ回答なのか、有額回答かという、またこの辺で非常に大きな波が立つんですね。しかしながら、結果的にゼロ回答で逃げ切るということは常識的に考えてもできない。で、その際の財源措置はどうするんですか。もちろん、これは財政当局との関係もありましょうが、この辺のことを、むろん先々は、やれ調停だ、裁定だという一つのコースはありましょうけれども、しかし裁定段階等でかくかくの金額を出すべきだという、こういう答えが出たような場合、おそらく私は今日の趨勢から出ると思う。そういう場合に、財政上の問題については大臣はどういうお考えをお持ちでしょうか。
  9. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) これはお説のように、ゼロ回答で逃げられるなんというようなそうなものでないことは、これはもう当然なことだと思います。  さらにまた昨年の暮れに、〇・三%のいわば三月支給のものを、年度末支給のものを繰り上げ支給もやっております。そういう問題等々につきまして、実は、これをどういうふうな形にくみ上げるかということにつきまして、まだ具体的には私は話はどことも進めておりませんが、これは運輸当局ばかりではなくって、郵政当局もございますし、あるいはその他いろいろ直接関連した問題をかかえているところがございますから、そういうような各省とも相談いたしまして、財政当局十分話をこれから詰めていきたい。これから詰めてまいりますためには、予算上の措置、いまの予算との関連とか、いろんなものが出てこようと思います。そういうようなことも間違いのないような措置をとっていきたい。またお説のように、固まるまでにはいろんな段階があるだろうと思います。その手続を経て国民皆さん方に迷惑のかからぬような、なるたけ早い時期にそういうような円満な秩序ある解決をはかってまいりたい。私のほうもそういうような心がまえでおりますし、また、組合側におきましても、そういう秩序ある解決を早期に何とかまとめてもらうような努力を続けさせていきたい、かように考えております。
  10. 森中守義

    森中守義君 何も、この際詰めておこうという考えでございません。いま私が申し上げたゼロ回答では逃げられまい。裏返して言うならば有額回答、このことと、どの程度の額であるかは別として、とにかく有額回答出さざるを得ないということと、そうした場合に、いま大臣の言われるように、財政措置というのが非常に問題になってくると思うんですね。そのことは大臣として各般の内容検討の結果、手当てをする、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  11. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) そういうことに相なると思います。
  12. 森中守義

    森中守義君 そこまでお答えいただいておきますと、非当に先々の展望も出てこようかと思いますから、たいへんけっこうなことだと思います。  いま一つ承っておきますのは、しばらくの間運輸省関係におつき合いをさしてもらっておりますが、現在の省内機構ですね。これを大臣はどういうようにごらんになりますか。具体的に言いますと、陸上、海上航空、大別すれば三つの部門に分かれます。しかし機構の問題といきますと、海上関係は非常に充実されている。まず海上保安庁船員局船舶局海運局港湾局というように四つか五つの局がある。他面鉄道も、これはいいでしょうが、自動車関係がいまや二千四百万台になんなんとする今日、膨大な許認可事務等を扱っていて、しかも不特定多数に近いようなたくさんの事業者をかかえている。こういうような状態で、かなり私は運輸省行政機能に何かこの際、検討を加える必要があるんじゃないかということをしばしば考えている。むろん、これは中枢部地方機関も含めまして、大臣に就任されてその辺のことについては何か感じるものはございませんか。
  13. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 私も、実は国会に参りましてから運輸関係は実は初めてでございまして、いわば全くのしろうとで、かり出されて運輸関係にすわったことも実は一ぺんもないという、そういうところに今度はこっち側にすわらされるような形になりまして、運輸省に行ってみまして、いろいろな関係のいわゆる守備範囲の広いのに戸惑って、まだほんとうのことを言うと専門用語もなかなか頭に入らぬような状況で、まことに申しわけないと思って勉強している最中でございますが、お説のように、いままでに運輸行政には終戦以来いろいろな歴史があるようでございます。終戦によって各省の解体されたものを集めたり、あるいは横のと申しますか、そういう組み立ての上にできておるようでございまして、いろいろ複雑な要素は持っておることは事実でございます。  自動車一つをとってみましても、これは終戦後急速な進歩を遂げて、毎年この人間の、職員増員をお願いしているのは自動車関係と実は航空管制、飛行機と自動車というのは目まぐるしい発展をしてきているわけでございます。聞くところによると、私は運輸省に参りましてずっと部屋を回ってみまして、航空局部屋がなかなかりっぱな部屋がずっと並んでいるわけなんです。どうして航空局長部屋だけこんなりっぱかと思いましたら、実は航空庁にしようというような一時計画があったそうでございます。そういうようなことで、建物のほうはもう庁の計画ができているけれども、実際の中身はいまだに航空局だ、こういうような歴史終戦後あるようでございます。  自動車におきましても、先ほど来御指摘がございましたように、異常な、非常な進歩と申しますか、増車、それに伴う人間増員認許可の問題等々が重なり合いまして、地方も含めて御指摘のような複雑な事情になっておることは事実でございます。  さて、私は、ここでどういうふうにこいつを一体組み立てて運輸省なるものを判別していくか、非常に理想的に言えば、航空部門とか、あるいは海運部門とか、あるいは自動車部門国鉄部門と、こういうふうにぱんぱんと分けて、それぞれの方向に持っていけばあるいは理想的かもわからぬと思いますけれども、さしあたって、いまここでそれに手をつけるとか、どうしようというような具体的な実は知恵もございませんし、いま検討するところまでいってないわけでございまして、これから先のいろいろな事情等考えますと、この運輸省機構そのものにもあるいはいろいろな面から御批判をいただき、御相談もいたしましていろいろ考えていかなきゃいかぬ問題があるんじゃないかと思いますが、いま具体的にこうという構想は実は持っておらないわけでございます。
  14. 森中守義

    森中守義君 もちろん、私も具体的に——いま単に自動車の例を、二千四百万台持っているじゃないか。それを一局で行政需要に対応できるかという一つの例にすぎないのですけれども、いままで二国会に一回ぐらい平均で設置法改正というものが出てくる。ところが、出されてくる設置法改正というのは、いわばほんとうのごく限定された小部分のものであって、運輸行政をどうやっていくかという、そういう根幹に触れたものはないんですよ。ですから、いま大臣がはしなくも言われるように、確かに航空庁昇格というものは、高圧産業と言われた航空産業が非常な成長を遂げた、あるいは無限に近いような可能性がある。で、それに対してはやはり外局に——航空庁ですね、したほうがいいんじゃないかという意見があったことも聞いております。そういったように経過の中に幾つもあるのですけれども、しかし歴代の大臣の中で、それならばひとつ今日の重要な経済官庁であり、しかも、きわめて高度な社会性を持っている運輸省機能をどうこれから進めていくかという、俗に言われる抜本的な改革、検討ということに手を加えられた大臣はあまりおいでにならないように思う。  しかし、これからどういったように時代が変化していくのか、容易に予測もできませんけれども、少なくとも現状をとらえた限りにおいても、かなりパンク寸前のような行政需要になっているんじゃないか。で、そういうことになりますと、現在の機構がいい、悪いという、そういう批判じゃありません。けれども、新しい時代に対応できるような、運輸省をもう一回見直してみたらどうなのかというように考えるのですけれども。ですから、いま大臣のお述べになったことと、私の見解はそう大きな開きはないと思います。しかし問題は、具体的にじゃどうするかということになりますと、内部の何かそういうことを少し吟味を加えるような方法をお考えになりませんか。
  15. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 先ほどお答え申し上げましたように、確かに複雑多岐守備範囲は広大になり、しかも広大になりつつ繁忙をきわめておるということも事実でございまして、いろいろそういう点におきましては、私の目の届かぬところもあろうと思います。ただ、いま先生から指摘を受けまして、また、私もかねがねそういうことは考えぬでもございませんけれども、いま唐突にここで、それじゃ、ひとつ一ぺんこの機構そのものに手を入れて考えてみますというところまでは、実は私自身余裕と申しますか、ないわけでございまして、私が事実そういうようなものを考えるとなると、私自身一つ構想というものをやっぱり固めなきゃならぬと思うんです。その線に沿ってそれぞれの部門に対し、あるいはそれぞれの機関に対し、たたき台を出すべきだと思うわけでございますが、これから先もう少し余裕ができましたら、私自身もこの運輸省という膨大な機構をどういうふうにして完全な行政というものが目の届く、しかも行き届いた行政というものができるかというような点については、ひとつ研究してみたいと思っております。
  16. 森中守義

    森中守義君 これはいま答えを得ようというわけでもありませんが、実際やり出すと、たとえば行管の五%人員削減という一つの問題がある。あるいは内閣一体としての行政簡素化という原則がある。なかなか簡単にいくものとは、これはもちろん思いません。けれども、これはやっぱりかなり用心深く見直していきませんと、何しろ人を扱っているということなんですね。  これも一つの例であり、しかも毎回に近いようですね、一国会の中で議論してきているのですが、たとえば航空管制官。ちょこちょこニアミスが発生をするとか、あるいは現場に一度行ったことがありますが、たいへんな業務量なんですね。こういうことなどを考えますと、いますぐどれなのかというようなのは、やっぱり私は出てくると思うんですね。なるほど大臣がみずからペーパーポジョンを持ちたい、そのお気持ちは十分わかります。しかし、官房系統あたりで少しそういう大きな問題点をチェックしてみて、可能なところからやっていくというのも一つ方法でしょうし、あるいは全体の大ワクをとらえてやるというのも一つ方法でしょうが、いずれかを大臣、ひとつこの際促進をされるように、具体化ができるようなことをお考えになるのはどうなのかと、こう思いますが、重ねての質問で恐縮ですが、どうお考えになりますか。
  17. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 御指摘の点は、確かに一つ研究課題だと思います。それでは私がいまここでそれをお約束して、すぐ官房にでもこれを命じてそういうことをやれる段階かどうかと申しますと、実は私、昨年の十一月二十五日に拝命いたしましてから、ほんとうにもう日曜というものが一日もない、今日まで続けているわけでございます。ほんとうにものごとを考え余裕すらないような状況が連日でございまして、先生がいま御指摘のような点につきましても、あるいはゆっくり——ゆっくりと言っては恐縮でございますけれども、思いを練るというような余裕が出てこないわけでございますが、御指摘の点については、確かに私は一つの忠言であるというふうに受けとめたいと思います。
  18. 森中守義

    森中守義君 こういう具体的なものに入って、ちょっと大臣質問の通告もしておりませんので、どうかと思いますが、自動車関係ですけれども、おおむね各県単位陸運事務所というのが配置されている。これの所長以下身分の問題が非常に問題なんですね。  これは各県段階は、何もかにもこっちのほうによこせという主張がある。また他面そうでない、いや、委任事項委任事項なんだが、予算人事権等はおおむね運輸省が持っておるならば、実質的な内容においては変わりないので、全部運輸省の直轄にしたらどうなのかと、こういうことなどは長年議論中心になっているのですがね。こういうことについてはどうお考えになりますか。
  19. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 私、この実態はまだ正確には把握しておりませんけれども、御指摘のような点があると思います。この間も実は熊本県知事がやってまいりまして、沢田君がやってまいりまして、わしに判こだけ押さしておいて、人事権もなければ予算権もない、こういうようなことはおかしいじゃないかと、まあ雑談の中でございますけれども、そういう話が出て、ああそういうような実態がこの自動車関係にも地方陸運事務所にもあるということも、そういうようなところからいろいろ話題になり、私も承知をしたわけでございます。これは運輸省ばかりではなくって、厚生省にも御存じのように各省あるわけでございます。人事権予算は本省が持っておって、このいろいろな権限は知事が判こを持っているというようなことが各省にもあって、これがいろいろ問題と申しますか、議題と申しますか、議論の対象になっておることも承知しております。これ、なかなか私いまここで、それではどういうふうにこれを始末したらいいかということについては、なかなか言い切れない事情にあるわけでございまして、この間も職員組合の人々と会ったときにはこう言ったんです。  私は、速記がついておりますからほんとうのことを申しますと、おれは元来これはもう全部地方に委任すべきだと思うのだと、野にあったときにおれはそう思っておった、その推進派だったのだと。しかし、こうして中に入って諸君のそういうような話を聞くと、もう職員組合の連中の話は、こいつはもう絶対に引いてくれと、この場で約束しろというわけなんです。まあ、ここで約束しろといっても、すぐどうこうというわけにはいかぬけれども、しかし、諸君の言うこともよくわからぬこともない、よくわかると。まあこれは労働省一省の問題ではないのだから、各省ともよく相談して、この問題については慎重に取り扱わにゃいかぬと。しかし私は、野にあったと言ってはおかしいですけれども、議員であったときには、これはもう地方にきちっとして整理したらいいじゃないかというような、私個人の意見は実は持っておったわけなんです。そういうことを言ったこともかつてあるわけでございます。あるわけではございますけれども、内部に入りますと、また逆の強い意見があることも事実でございます。そういうようなものとも調和し、また、実際実務上そういうものをどういうふうに動いていかせるべきか。また、移管した場合にどうなるのかというような等々も考え合わせ、調整し合って、これは私は今後とも検討するに価する事項だと、こういうふうにいまでも考えております。
  20. 森中守義

    森中守義君 まあ、これは検討する事項だということでけっこうですが、確かに実務的な内容等からいきましてもね、やはり割り切っておく必要があるように思います。ただし、大臣お話のように、いろいろな沿革もあるようですから、そういう沿革を全く黙殺しまして一刀両断というのもやや困難な面もあるかと思いますが、しかしこれらの問題は、さしずめ早く解決せにゃならぬ問題の一つだと思いますから、早急に御検討いただくようにお願いしておきたいと思います。  それからいま一つは、ちょうど昨年でしたか、運輸物特等との連合審査の際に、時間がなかったために十二分にお尋ねする機会がなかった。それで、あのときに大蔵大臣と私はちょっと問答をいたしましたが、運賃の九月一ぱい凍結、その決定されたことは国会できめることですから、いずれ法案も出てまいりましょうから、その際に議論すればよろしいと思うんですが、問題は、政府決定に至る経過についていささか委員会、特に参議院としましては異論がある。大臣が与党の幹事長で、法案の審議の中でもずいぶん心痛されたことも知っております。何しろ一回法案がつぶれた、あらためて出し直した、その間に河野議長がたいへんな心配をしたといういろんないきさつがある。しかしてやっと、多数でやったとはいいながら決着は見た。そういう重要な法案の扱い、その結末が経過の中にあったのに、肝心な所管大臣及び当事者である国鉄総裁が全くあずかり知らない場所でものごとの決定が行なわれた、これは一体どういうことなんだというような、まことに私どもその当時法案を手にかけた関係委員といたしましては、釈然としないんですよ。  本来私は、そういう決定等の際には、幾ら与党であろうと政府であろうと、責任ある当事者が参加をしないで、しかも院に関係のあるこういう問題の扱いとしては、たとえ今日の物価事情を鎮静をさせる最大の手の一つである——まあ、福田さんはいますぐ何をするか、それは物価という火事を消すことだ、このためには手段も方法もという、まあいわば言わんばかりの言い方を大蔵大臣しておりましたがね。しかし、やっぱりものには順序がありますね。私は、運輸大臣に就任をされて幾ばくもたたないときのことですけれども、これは非常に委員会としては遺憾に思っておる。本来は、両当事者が参加をし、しかも決定をしたことにつきましては、河野議長政府与党は一言ぐらいあいさつがあってもいいんじゃないか。そこで、議長がそういう政府決定を受けたならば、少なくとも各党の責任者に、あれほど参議院で大騒動やった問題を政府・与党はかくかくの経緯のもとでこうしたということなんだが、了承してくれというぐらいのことが各党の責任者に一言あっていいんじゃなかったか。もちろん、私は、河野議長にじかにそのことを問いただしたわけじゃございませんが、仄聞すれば、河野議長もそのことについては全然あずかり知らないというようなことのようですがね。これは何も責めるわけじゃございませんが、所管大臣としてどういうお考えですか。
  21. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 実は、この経過はいろいろなことがあったようでございます。以前のことは別といたしまして、私も就任早々の間でございましたし、石油事情というものが突然こつ然として出てまいりまして、まあ焦燥と不安のこの経済情勢を目の前にしてどうするかということは、当時から議論があったのは御承知のとおりでございます。そこで、党の自由民主党の幹部と一それから大蔵大臣その他経済企画庁長官とか、どういう方が参加されましたか、私はつまびらかにしませんけれども、その間で、ひとつこの危機を乗り切るためにはどういった思い切った対策を立てなければならぬか、対処しなければならぬかということで、実は公共料金を厳に抑制していこう、それがためには、まず政府の姿勢として国鉄運賃と米価の決定をさらに六カ月延ばそう、そこで延ばすという決定を見たわけではないということでございます。そういうようなことを含めた一つ予算編成方針というものをひとつ考えてみたらどうかという、一つの方針のたたき台を出したということでございまして、その後、私のところに経済企画庁長官から、こういうような方針である、いずれ、しかるべき機関にはかって決定されることと思うけれども、きょうの会合においてこういうような方針を、政策的な方針と申しますか、予算編成の方針と申しますか、ことであったがということを聞き知ったわけでございます。  経過はそういうことでございますが、いまおっしゃいますように、しからば、この間に非常にこの運輸委員会をわずらわしていろいろな御苦労を重ねていただいた重要な法案でございますから、その点のいろんな配慮というものが足りないじゃないかという御指摘もよくわかります。ただ、議長をわずらわすかどうかということにつきましては、これはやはり立法機関の長でございますから、必ずしもいま、私は突然のことで、先生の提案にすぐそれはやはり議長を中心にしまして各党に呼びかけたがいいというふうに同感を表明するには、ちょっともう少し頭の中を整理しなければいかぬと思いますが、いずれにしましても、こういう重要な問題は、やはり手順を踏んだ間違いのない組み立て方をすべきであるというふうに思うわけでございます。
  22. 森中守義

    森中守義君 大臣ね、ちょっと私が舌足らずだったかもわかりませんが、このことに議長が介入すべきだということじゃないですよ。院を代表する議長だから、あれほど大騒動をした経緯があるので、しかも議長みずからが一度ならず二度までも裁定案を用意した、こういう経緯もありますから、そういう決定を政府のほうがしたならば、議長に対しまして、たいへんお騒がせをした運賃及び再建法の一件についてはこうこういうふうな扱いをしたいというような、俗な言い方をするとあいさつくらいあっていいんじゃないか、それを議長が受けたならば、大騒動をやったあれなんだが、こういうふうなことを政府が決定したそうだという程度の各党への話をする程度のことがあってもよかったのじゃないか、そういう意味でしてね。何も取り扱いにこれは議長が介入すべきもので私もないと思う。介入せよというのじゃない。そのくらい院が大騒動になった経緯があればあるほど、立法府と行政府との関係はある種のパイプがついてもよかったんじゃないか、そういう意味なので、そこはひとつ誤解のないようにしてください。  しかし、いずれにしましても、これは私どももちろん当事者でございませんし、こうこういう経緯であったといえばわからぬこともございません。措置としてはいいか悪いかというのは、これは法案が出たときの議論にまかせることといたしますが、どっちにしても大臣あるいは国鉄総裁が参加をしない場所できめたという事実、そのことを企画庁長官が、いま大臣の説明からいけば大臣に連絡をしてきた、少なくとも意思決定の場に大臣は参加しなかった、国鉄総裁は参加していない、このことは非常に遺憾であるというように思うんです。これ以上大臣に答弁求めてもしょうがございませんけれども、これは委員会の意思というよりも、これは私は、しょっぱなから最後まで運賃再建法に関係をしてきた者の一人として率直にそういう気がしてなりませんので、この際、遺憾の意を表明しておきたいと思うんです。ですから、これから先のことなどは、この前ちょっと問題に供しましたたとえばタクシーの暫定運賃の問題これなどもどうもやっぱり四閣僚か何役かできめられたものを運輸省に押しつけてきたという、形の上では。実際、運輸省で作業したのかもわかりませんが、そういう物価問題閣僚協議会、このあたりできめてきたというこれなども、形の上で実際おかしいのですね。ですから、よほど運輸大臣、そういう点では大臣立場、むずかしくいえば権能ということをこれは確立してもらいたい、そう思いますが、いかがですか。
  23. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) いろいろ御鞭撻をいただきまして恐縮に存じております。私も、いまおっしゃるような点等につきましていろいろそれぞれに理由はありますが、運輸省の自主性というものを堅持いたしまして、これからも実はまだここで言うていいかどうかわかりませんけれども、いろんな航空協定やら何やらあるだろうと思います。そういうような点につきましても、運輸省の自主性というものを十分堅持してまいりたいと思う。私の決意のほどを申し述べまして、御鞭撻に対して感謝の意を表したいと思います。
  24. 森中守義

    森中守義君 それから、きょうのこの法案に非常に深い関係を持つ問題が二、三ありますので——外務省来ておりますか、水産庁来ておりますか、ちょっと前に出てください。  四十五年の二月に、科学技術庁の研究調整局が「マラッカ・シンガポール海峡に関する調査研究報告書」、こういうものを公にしておる。そこで、この内容からまいりますと、「四十三年度の特別研究促進調整費を運輸省海上保安庁水路部、同港湾技術研究所に配分し、同海峡に関する基礎的調査研究を行なった。」、こういうように言っておりますが、運輸省の場合にはこの調整費の配分を受けて両方の部門が海峡の調査に乗り出したのはいつですか。
  25. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 海峡の調査に乗り出しましたのは、まず予備調査をやっております。で、準備段階としまして、一九六九年一月から三月にかけて四カ国、つまり沿岸のマレーシア、シンガポール、インドネシア三国とわが国とが共同いたしまして、水路調査を実施するとの方針を固めて、その準備作業を一九六九年一月から三月にかけまして、四カ国の人員からなります共同調査団によって予備調査を実施したわけでございます。
  26. 森中守義

    森中守義君 いまのお話ですと、六九年の一月から三月まで関係四カ国の共同調査、これで調査は終了したのですか。
  27. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 予備調査の結果は一九六九年八月に発表されましたが、この性格上、比較的目の荒い作業、つまり測量でございましたので、さらに、この結果に基づいてできる限り早い機会に本格的な調査に着手するということにいたしまして、一九六九年の九月から沿岸三国との折衝をいたしまして、一九七〇年七月に至って、ようやくこの沿岸三国との間で本格的な共同調査を実施するための領海覚え書きの調印が行なわれたわけでございます。そして、その結果といたしまして、一九七〇年十月四日かち同年十二月十九日までの七十七日間、まず本格的調査が実施され、続いて七一年一月二十五日から三月二十日までの五十五日間、東京におきまして四カ国技術者による共同作業としての資料処理が行なわれております。
  28. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、いまの御説明では、七一年の一月二十五日から三月の二十日まで、一通り本格調査もこれで終了した、全部海峡に関する、たとえばこの中にも出ておりますね、サンドウエーブだとか、それから非常に潮流の激しいところとか、それから浅瀬だとか、こういうものもほとんど把握できたというような言い方をしておりますが、ただし、これはいま言われたのとちょっと——当初調査のようですね。たから完ぺきではもちろんないでしょうが、いま原田さんの言われる七一年の一月二十五日から三月の二十日までの最終作業で一切がっさい調査完了した、こういったような認識に立っていいですか。
  29. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 説明が不足で恐縮でございますが、ただいま御説明申し上げましたのは第一次の調査、俗称第一次の調査といわれるものでございまして、これは続いて第二次、第三次という調査がございます。これは先ほど申し上げました第一次の調査の海域をさらに追加いたしまして、それだけでは十分でないということがだんだんわかってまいりましたので、第二次調査は一九七二年、昭和四十七年の二月から六月、それは二つの区に分かれておりまして、もう一つの区は四十七年の二月から三月というように行なわれております。それからさらに第三次調査といたしまして、昭和四十九年、一九七四年に実施されたものがございます。
  30. 森中守義

    森中守義君 第三次はいまからやるのじゃないですか。四十九年のいつからですか。
  31. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 正確に申し上げますと、第三次はやはり二つ区が分かれておりまして、四十九年三月から五月までのものと、四十八年十一月から四十九年一月ないし二月というものがございます。
  32. 森中守義

    森中守義君 この調査のテンポでいって、完ぺきに近いその調査完了はいつごろを予定しているのですか、調査計画
  33. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 次の技術者会議をやってきめることになっておりますが、大体昭和五十年に終了する予定となっております。
  34. 森中守義

    森中守義君 五十年が完了の年度ですね。
  35. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) はい。
  36. 森中守義

    森中守義君 そこで、いままで説明を承った中で、インドネシア、マレーシア及びシンガポール、沿岸三カ国とわが国との合意というものは、調査に対する合意ですか、それとも、当初これは私などが承っていたのでは、もともと日本政府がIMCOに相談を持ちかけて、どうしてもその海峡のしゅんせつもしくは拡幅等々いわば海峡の構造改善の実施計画、その必要があるからIMCOに相談をして、IMCOは沿岸三カ国と相談をしてくれと、その必要性は認めるというようなことですべりだしたように聞いておる。したがって、調査研究の成果というものは、結果的にどうなるのか。潮流の状態だとかあるいは非常に浅いところとか、そういう海域あるいは水質の調査等の単なる調査に終わるものか、調査研究の成果をどう措置しようとするのか、その辺はどういうことになりますか。もともと調査に乗り出すという意味合いは、いま申し上げたようにIMCOに対してどうしても海峡の構造改善をやらなければならぬ。当時、たしか予算が五十億ぐらいの予算でその作業をやるんだというふうに聞いておったんですがね、まあ経緯はともかくとして、結果を、どういうことにするのですか。
  37. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) もともと本調査は、マラッカ海峡の航行の安全ということが非常に関係方面で指摘されまして、これに対して、その正確な海図がないということから、海図を確認し、正確な海図をつくるために水深をはかるということが一番の主目的であったということでございます。  そこで四カ国で共同で行なわれますこのメモランダム・アンダスタンディング——了解覚え書きには、四カ国が共同でこの調査をするということがうたわれておりまして、調査の結果は四カ国で作業をして公表しようということになっております。それによって船舶が航行する場合に正確な水深が示されるということが、結果としての効果ということになろうかと思います。
  38. 森中守義

    森中守義君 ちょっとわからないね。こういうことですか。四カ国が合意に達した内容というものは共同調査をやるということ、調査結果を海図につくり上げて航行の安全に資する、それだけのことですか、調査目的というのは。  そこで、これはずいぶん以前の話なんだけれども、私が聞いた内容では、もともとこれは構造改善をやらなきゃいかぬ、そのためにIMCOに話を持ちかけて、IMCOはその必要性を認めた、しかし、沿岸三カ国に日本政府がよく相談をしなさいと、そういったようにIMCO側の了解を取りつけたと、こういうように聞いているのですよ。だから、その調査研究の結果というものは、海図をつくるということで四カ国が合意しているものか、あるいは構造改善という特殊な海洋の工事に手を出していくというところまで合意に達しているのか、その辺がちょっとはっきりわからないね。
  39. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 調査を始める予備段階におきましては、いま先生の御指摘のあった構造改善といいますか、たとえば灯台を適所に設置するとか、あるいは沈船があれば撤去するとか、いろいろなことも考えるべきではないかということもございましたのですが、この了解覚え書きにおいては単に、英語で恐縮でございますが、データ・ウイル・ビー・プロセスド・ジョイントリーと、こう書いてございまして、プロセスということばになっております。つまり、データは共同で処理されるということだけが書いてございまして、それは水深の測量調査をやるわけでございますから、これが海図といったような形で、水深表示という形で処理されるというようにわれわれは了解しております。
  40. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、最初日本政府がこの問題を提起したその目的と、いまの了解覚え書きの内容はだいぶ違うね、これは。相当の国費を投入して、最終的には海図をつくる、それだけのことなのか。また、それだけのことで日本としては満足なのか。海図をつくるだけじゃない、いま審議官が言われるように、たとえばその工事に灯台をつくることも一つ方法でしょうが、そういうところまでやりたいというのか、その辺どっちなのか。この了解覚え書きがもう最終的なものですか。
  41. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) この了解覚え書きは、その航路調査に関することだけに限定した了解覚え書きでございまして、航行安全を確保するためには、インドネシア側にほとんど灯台がない、あるいは、あっても灯がともっていないという状況でございましたので、これには日本政府が灯台とか、あるいは灯浮標、こういったものを別途インドネシア政府に援助してこれを整備してもらうということをお願いしまして、これについてインドネシア政府が目下整備を進めておるという状況でございます。それからなお、マレーシア政府にも、あるいはシンガポール政府にもそういった話はいたしておりまして、ただ、マレーシア、シンガポール側はかなり灯台等の航路標識は整備されておりますので、インドネシアほどではございませんが、そういうことをお互いに話し合いをして、沿岸国の主権においてやっていただくということに相なっておるわけでございまして、四カ国共同でやらなきゃならぬ面は測量という、海峡の水深調査ということに限定いたしたわけでございます。
  42. 森中守義

    森中守義君 大体わかりました。そうしますと、第三次に至る調査ということは、この領海覚え書きに尽きる、そういうことだね。  そこで問題は、じゃ、日本政府としては、海図をつくるという程度のものでは、これは満足すべき状態にないと思う。それで、将来のマラッカ海峡の構想としてはどうあるべきか、固めておりますか。いまお話を聞けば、それぞれの主権国に対していろんな見解を伝えて、同意を求めようとしているという内容のようですが、どういうことを目的にするのか、どういう構想を描いているのか。それは固まったものかどうかわかりませんけれども、少なくともこの話をわが国が率先をして提起したということは、これはやっぱり中近東からの油の問題でしょう。そういうことなどを考えると、航行の安全という一つの原則がある。じゃ、具体的にどうするか。私は海図をつくるだけじゃ満足すべきものではないと思う。将来構想としてどういうことを考えておりますか、各国と話がつく、つかないは別の問題だ。
  43. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) これは、先ほど先生の御指摘のあったIMCOに関連いたします。で、IMCOでは、トリー・キャニヨン号事件が起こった直後、IMCOの会議におきまして、船舶のふくそう海域については航行分離帯を設けて、つまりセパレーションスキームといいますか、往航と復航を分離するということが非常に望ましい、そういう海峡の一つとして、マラッカ海峡も往航と復航を分離する分離航路帯をつくるべきではないかという提案がございました。それについてわれわれとしても、もしマラッカ海峡にそういう分離航路帯ができれば非常に望ましいんではないかというふうに考えております。そうして、その前提としては、航路標識なり——船舶の位置を標示する航路標識が正確にできておる、あるいは浅いところの危険なところには危険信号の航路標識が立つというようなことをはっきり、まず航路が整備されるということ、それから海図が正確で大型タンカーが水深がはっきりわかるということにする必要が、まず前提としてございます。その上でその航路分離帯を設定して、これを関係国がそれに従って、関係国の船舶が従っていく、運航されるということでありますれば、マラッカ海峡の航行安全機能というものは非常に向上するであろう、こういうふうに私どもは考えております。  ただし、これをやります場合に、沿岸諸国は最近、インドネシアもマレーシアも十二海里が領海であるという説を主張しておりまして、沿岸国が何としてもその主導権を持って、こういう航行分離帯をやろうではないかということをIMCOと話し合ってもらいませんと、私どもがかってにその分離航路を設定してやるわけにもまいりませんので、その辺については目下の調査が五十年に完了いたしますれば、マラッカ海峡の航行安全計画について沿岸国と十分協議をし、またIMCOとも十分協議をしてこの点について万全を期したい、こう考えておる次第でございます。
  44. 森中守義

    森中守義君 外務省、これは出先の三国の大使が非常に骨を折ったというような話もあるんですね。つまりIMCOに日本が話を持ち出していよいよ三国交渉に入った際に、共同で調印はできない。それは二次大戦における日本のネイビーが非常にひどいことをしておるから、また海峡に日本の軍事力が伸びてくるのではないかという過去のイメージがある。しかるに覚え書き、了解事項に達したということは、そういうものは消えたと私は認識しておる。ところがどうなんですか、これはいま原田審議官がはしなくも言われた領海の問題これはわが国は、マラッカ海峡というものは三国の領海という立場に立ってものを見ているのか、あるいは国際管理権のもとにあるという認識のもとに立っているのか。少なくとも三国、ことにインドネシアの場合には二十万トン以上のタンカーは通さない、こういう強い主張をしておる、あくまでも領海権は三国にあるという主張のようなんですね。しかも、中国はこれを支持しておる。ソビエトは、いやそうじゃない、これは自由に航行できる、国際管理権のもとにあるのだというそういう主張で、非常に複雑な国際性を帯びてきておるようですが、日本政府としてはどの説をとるのか。三国に領海権があるという立場に立つのか、あるいは国際管理権のもとにあるという立場に立つのか、どっちなんですか。
  45. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) わが国は、領海の幅員につきましては、現在の国際法でございます一九五八年の領海条約において領海の幅員がきまっていないという現状を踏まえまして、十七世紀以来の三海里が領海の幅であるという基本的な立場に立っております。したがって、マラッカ海峡の場合には一番幅の狭いところで約八海里ないし十海里、したがって、いずれからはかりましても公海部分が残る、したがって、他の海洋諸国と同じようにマラッカ海峡は国際的に自由な通航ができる海峡の一つであると考えております。
  46. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、いまの御説では、いずれの国も三海里以外のところは公海だから、ここは自由に航行できるのだ、こういうことですね。そういう認識に立って海峡の話し合いも進めておるし、交渉をやっておるということですか。
  47. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 実は御案内のとおり、現在の国際条約、一九五八年の領海条約その他四条約が領海の幅をきめなかったということが、現在、領海問題あるいは漁業管轄権問題その他沿岸国が一方的に自国の領海あるいは管轄権の及ぶ範囲をきめて、そのためにたいへん混乱が起こっておる。それを正すために、これまた御承知のとおり、ことしの六月から海洋法会議を開くわけであります。したがって、一方的に各国がやっておりますものと、それからこれから新しい国際法としてつくっていこうとするもの、それから、従来これが国際法であると信じてきたわれわれ先進海洋国家と、これの現実的な利害が実は実際問題としてぶつかる場合が多々あるわけなんでございまして、現行法の解釈としては、もちろん一方的な領海の拡張あるいは管轄権の拡張は認めないという立場をとりつつも、実際問題の処理にあたりましては、相手国の立場も考慮して将来の海洋法の会議における対処ぶりを考えながら現実を処理しているというのが実際の姿かと考えます。
  48. 森中守義

    森中守義君 そうすると、インドネシア、マレーシア、シンガポールのそれぞれの領海は何海里だと関係国は言っているんですか。きめているんですか。
  49. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) シンガポールは三海里説、三海里を自国の領海といたしております。インドネシア及びマレーシアは十二海里を領海としております。
  50. 森中守義

    森中守義君 専管水域はついてないの、専管水域は。三海里、十二海里の先のほうの専管水域つけていないの。
  51. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 実はインドネシアの場合には、御承知と思いますが、群島理論という特殊の主張をいたしておりまして、領海の幅とは関係なしに、何百とございますインドネシアのすべての島の一番外側にある島を結んだ線の中は全部自分の内水であると。そして自国の管轄権が及ぶのだという特殊の主張をいたしております。もちろん、法的にわれわれはそれを認める立場にないことは申すまでもございませんですが、ただし、インドネシア及びフィリピンがこれを強硬に主張いたしておりまして、また、他の後進国がそれを支持する態勢にだんだん向かっております。そういう意味で、漁業管轄権あるいは海底の資源管轄権ということになってまいりますと、また違った実は主張がございますということを申し上げておるわけでございます。
  52. 森中守義

    森中守義君 いまの御説明ですと、インドネシア、マレーシア、いずれも十二海里、シンガポールは三海里、ことにインドネシアの場合には特殊の主張があるということであれば、ほとんどこれは公海というものはないんじゃないですか。全部領海じゃないですか。こまかな地図の上での測定ができないけれども、大体こういう領海をそれぞれの国が持っているということになると、公海というのはないんじゃないですか。あってもごく小幅のものじゃないですか、どうですか。
  53. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) その最も極端な例が、実はラ米にございます二百海里を自分の領海だと一方的に宣言して、それを実施している国の例でございます。ところが、日本その他先進海洋国は、われわれは既存の国際法に基づいて三海里以上は認めないのだという立場をとっておるわけです。ところが、法的にはそのような立場なのでございます。実際問題といたしまして、中南米のごとき場合、二百海里に及んで日本の船が漁業に参りますと、それをつかまえるという事態が起こっております。そういう意味で、法的立場は法的立場として、また、現実には現実のむずかしい問題があり、その対処に苦慮しているというのが、先ほど私申し上げました、法律論と実際の問題とのかみ合わせが非常にむずかしい状況になって、それを解消するために新しい海洋会議が企図されているんだという状況でございます。
  54. 森中守義

    森中守義君 そういう一般論を聞いているのじゃないのだ。具体的にインドネシアとマレーシアは十二海里、シンガポール三海里と、こういう説明があった。そこで、こういうインドネシア、マレーシア二国が十二海里、シンガポール三海里ということになると、しかもインドネシアが特殊な内水の主張をするということになれば、マラッカ海峡は公海というところはないじゃないか、全部三国の領海になるのじゃないか、こう聞いているわけなんで、ちょっとそれを答えなさいよ。いまの一般論、聞いたってしょうがない。
  55. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 実は海峡の制度問題というのは、十二海里を主張するものがたくさんおり、あと二百海里を主張するものがたくさんおり、かつ伝統的に三海里を守っておる国もかなりある。そうなりますと、十二海里を主張するものにとってみれば、二十四海里幅よりも狭い海峡は全部自分の領域だという主張になるわけなんでございます。ところが海洋国家側から見れば、それはそうじゃない、まん中に公海が残っておって、従来どおり公海自由の原則が適用になるのだといっておるわけなんであります。そういう相対立する主張を解きほぐすための海洋法会議において、いま海峡問題については、ですから海峡国側とそれから先進海洋国側が全く相対立する主張をいたしております。前者は、海峡は領海の制度に服するのだ、それから後者は、国際的に海運のために使われる海峡は、従来どおり公海と同様の自由通過の権利が認められるべきであるのだという主張をいたしておりまして、その二つの立法論が相対立して、現在この問題は、へたをすれば第三次海洋法会議の成否を決するほどの重要な問題になっておるという状況で、現在それではどういう解決策があるのかと申し上げますと、現在、法的にはそれぞれの対立する主張があるのですが、現実にはそれは全く実際的問題として処理していくより方法がない。航行自身は、われわれは公海がある部分については、もちろん公海自由の原則に基づいて航行をするという立場は全くくずしておりません。
  56. 森中守義

    森中守義君 確かにそれは五八年あるいはその前、今度の六月のサンチアゴの会議、いずれもがその領域について非常に話がまとまらない、それは知っておりますよ。その話はあとにしますが、しかし、条約として採択できない、国際的に統一したものができない、だから経過的なものとしまして主権国家が領海宣言をする、宣言をされた領海については、いかなる国もその国の領海というのは認めているのじゃないですか、それが私は実際上の処理だと思っている。たとえば領海侵犯の問題等も、ある主権国家は領海宣言をやっておる、そこに入っていった場合には領海を侵犯したというわけで処理される、これがいわば一つの国際慣習法というのが慣行になっているのじゃないですか。その国が宣言した海域というものは尊重さるべきである、これが一般原則だと私は自認しているのだけれども。だから、私のそういう主張に立つならば、当然この三国の十二海里及び三海里、これからいくなら、マラッカ海峡というような公海は三国の主張に立つ限りあり得ないのじゃないか、こういうことを私はさっきからくどいようだけれども、聞いているのですが、そういう一般原則の認識はどうなんですか、外務省の場合。
  57. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 確かに十二海里を領海として採用している国が、世界百五十カ国あります国の中で三分の一、約五十カ国余りがそれをいたしております。そのような国際的な趨勢というものにかんがみまして、わが国も現在は法的には三海里であるという立場を堅持しつつも、十二海里未満の領海の一方的な宣言に対しては、これを事実上黙認するという姿勢を示しております。法的にはもちろんそのような基本的な三海里の立場は捨てておりませんが、こういう問題は、すべてこの次の海洋法会議において法と秩序が確立されることによって解消するのだ、そのように努力しなければならないという立場をとっております。
  58. 森中守義

    森中守義君 どうもすっきりしないけれども、それじゃ、ちょっと話をこの問題に関連して進めてみますが、サンチアゴで開かれる第三回の海洋法会議、これに対してわが国は、領海はどういう考えで臨むのですか。これは昨年かあるいは一昨年の予算委員会、いやもっと前かな、三木さんが外務大臣のころ、もはや三海里ということは国際的に通用しなくなった、よって、わが国も十二海里に軌道修正をしていくんだというような意見を述べて注目を引いたことがある。  もともと三海里という根拠は何なのか、これも実に不明確なんですね。いろんな説があるし、ある文献では、普仏戦争のときに、陸地から海上に向けて大砲のたまをぶち込んだ、三海里に着弾をした。その中に入ってぐるとぶっ放すぞということが三海里の起源になっているように聞いている。いま、だんだん国際漁業の問題等から、わが国も三海里で非常に縮める。だからよその国も縮めてくれ、つまり、その漁場の確保の問題でこういうように三海里をわが国は強く主張してきたのがいままでの傾向だと私は聞いております。しかし、三木外相の時代には、もはや国際関係の趨勢からしては、とうてい三海里では済まなくなってきている。中には二百海里、さらにその外側に経済水域、専管水域をつけているという国などもあって、いわば海洋分割の方式をいま国際的にとられているとすれば、非常にこれは問題だと思います。  だから、第三回のサンチアゴ会議あたりでは、もうわが国も三なのか十二なのか、大体この辺だと思いますよ。一般的にその権威者等の説を承っても。どういう姿勢でわが国は臨むのですか。三ですか、十二ですか。三木さんはそういうことを国会で答弁をして非常に注目を浴びた。当然外務省事務当局としても、当時の外務大臣国会で宣言したわけだから、私は十二海里をとるべきだと思う。政府もそういう方向に固まってきたなと。ただ、そのことが閣議の決定等に立ち至っているものなのかどうなのか。運輸省あるいは水産庁あたりの、そういう関係各省庁間の話が詰められているかどうかまでは聞いていない。しかし、そろそろ外務省では、もう六月といえばすぐ来ますよ。運輸省も水産庁も出席するでしょう。各省庁間でその話、まとまる段階ではないですか。どういう状況になっていますか。
  59. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 事、領海に限って申し上げますれば、三木大臣国会において御答弁になりましたと同様に、国際会議と申しますと海洋法会議の準備を過去六年間やっておりますが、その場ですでに公式に、国際的合意が得られるならば、十二海里にわが国も同意するということを表明いたしております。
  60. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、わが国は、国際的な合意が得られるならば十二海里でよろしいということは、公式に国際機関で言明しているのですか。
  61. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) さようでございます。
  62. 森中守義

    森中守義君 そこで、サンチアゴ会議に臨む各国の状態というものは、趨勢としてどうあるのですか。しかも一歩進んで、わが国は、国際間の合意が得られるならばというきわめて消極的な立場から、十二海里に軌道修正すべきである、統一すべきであるという、そういう率先をした意見は持ちませんか。
  63. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 先生が先ほどからサンチアゴ会議と申しておられますが、実はサンチアゴではございませんで、ことしの六月二十日から八月二十八日までベネズエラのカラカスで第三次海洋法会議の第二会期が開始されるわけでございますが、十二海里が国際的合意を得られるならばわが国も支持する用意がある、そのために努力するということを内外に表明いたしておりますことは、先ほどお答え申し上げたとおりでございますが、実は問題は、開発途上国の側には十二海里は当然のことで、それにプラス百八十八海里でございます。合計二百海里に及ぶ漁業及び海底資源に対する管轄権を要求するという声がとうとうとして強くなっているわけなんであります。したがって、そういうものと一括してでなければ十二海里をのまないというのが現在の開発途上国の立場でございます。日本代表団が十二海里について国際的合意ができるならばと申し上げておりますのは、二百海里というふうな膨大な沿岸国の資源管轄権が認められるということに対しては、もちろん反対の立場でございますから、そういうものについて沿岸国の側と、それから先進海洋国と申しますか、先進海洋国側との利害が十分調整された上で、十二海里という領海の幅がきめられるものであれば、わが国もそれを支持するという含みがあるわけでございます。
  64. 森中守義

    森中守義君 これはそういう経過を踏まえていけば、簡単に固まらないね。確かに私、サンチアゴだと思ったが、カラカスにきまっておればカラカス会議ということになりましょうが、感触として、あと何回くらいやれば領海の統一された条約になりますか。とても今回これはまとまらないと思う。同時にその合意が得られるならばというまあいわば条件つき、そこまでいけばこれは問題はないのだね。その前に、わが国は三海里から十二海里に領海変更ということはしませんか、わが国独自の立場では。
  65. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 先ほどの領海の幅と申しますのは、実は今度の海洋法会議の中のきわめて重要な問題の一つであるということを、海峡の自由——失礼いたしました、海峡の通過の問題でございます。これは海洋法会議が扱います領海の幅の問題、それから沿岸国の資源管轄権の問題、それから海洋汚染の問題、それから深海底の資源の問題、それから大陸だなの問題等々の中でもきわめて重要な位置を占めている問題なんでございまして、そういうものが、非常にたくさんある重要な問題が、おそらく最終的には一括してきまるという形態のものになってくるだろうと予想されるわけであります。それが今度のカラカス会議できまるとはほとんどの人が思っておりませんです。と申しますのは、六年間準備会議をやっておりまして、まだ条約案すらできておらない状況でございます。六年間かんかんがくがく話を続けまして、一本の条約案すらできていない状況で、これは一年の間に百五十カ国が集まって、急激に意思統一ができるとはだれも思っておらないわけでございます。  ただ、一つ危険性としては、百カ国をこえる開発途上国がもし一致団結して取るものは取るんだという態度に出た場合には、そういう一挙に数できまってしまうという可能性は全く排除できないかとは思いますが、一般的にいわれておりますのは、おそらくこの次にもうすでに名のり出ておりますオーストリアのウィーンでの会議、この会期でできれば条約の採択にまで持っていきたい、それでできなければさらに先に延ばさざるを得ないかもしれないというふうな悲観説もございます。一番多くの人が考えておりますのは、おそらく来年のウイーンの会議では一応の結末がつくのであろうか、みんなが完全には満足できませんですが、お互いの利害調整をはかった上で何らかの解決が得られるんじゃなかろうかというふうに考えられております。  それから、わが国が海洋法の会議の結論を待たないで一方的に十二海里を採用するということは、これは国の政策の問題でございまして、私のお答え申し上げる立場ではございませんが、そのような考え方は、現在政府としてお持ちになっていられないというふうに伺っております。
  66. 森中守義

    森中守義君 そこで、せんだって発表された運輸省の「日本海運の現況」、この中で非常に深刻な問題として受けとめている問題がある。それは、カラカス会議における主要な国際間の問題点は、いままで議論した領海問題とそれから海洋汚染防止、それに海運自由と無害通航の三点だと、こう言っているのですね。  そこで、いま国際間で、特に油船、油送船ですね、これに対して、汚染防止という立場から、関係の各国に対しまして事前に通航の通知をするとか、あるいは承認をとるという問題等が、その沿岸国の関係国の海洋汚染を防止するという立場からどうしても規制をする必要があるという意見が非常に強いと、こう言っている。そこで、マラッカ海峡の場合には、その領海の問題は一応おくとしましても、かなりこれは大きな問題になってくる可能性がある、こういうように見るのですね。まあいろいろ制限を受けるだろう特にインドネシア、さっき申し上げたように、二十万トン以上のタンカーはマラッカ海峡を通さないというようなことを閣議決定をしたという、こういう話が去年出ている。こういうような一連の問題を考えると、何かこうマラッカ海峡というのは、いま大きな問題になっている油問題の一つの背景としてこれから非常に重大な問題に発展をする可能性がある。  そしていま一つは、はなはだ物騒な話なんだけれども、ペンタゴンあたりでは、どうも日本の海上自衛隊が油送船団護衛のためにマラッカ海峡まで出ざるを得ないであろう、そういうことまでもちょろちょろ記者会見等で出ているようなんですね。レアード国防長官あたりは、去年そういうことを言明しておるというような話などもあるようなんです。よって、マラッカ海峡の構造改善と国際海洋法会議の進展、現状、そしてまた規制を強化するという、こういう問題等から考えた場合に、よほどわが国はマラッカ海峡に用心深く対策を立てていかないとたいへんなことになるんじゃないかというように私は懸念をするのですが、まあいずれもが、政府の答弁もきちんと固まった答弁もできませんけれども、非常に私は大きな問題だと思う。よって、これは現状は外交ルートを通じ、また国内におきましては、関係閣僚もよほどこういう問題を早急に何かの答えを出してもらいたい。  たとえば、領海制限を国際会議にまかせておったのでは間に合わないから、日本は三を十二にするとか、あるいはカラカス会議に出されようとする通報制度、あるいは承認制度、こういうことなどに対しましても、あらかじめ外交ルートを通じて何かの方法を打っておく必要があるんじゃないですか。このことをひとつそれぞれからお答えを願っておきたい。
  67. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) ただいま御指摘の領海内における無害通航権の問題が一つあろうかと思います。無害通航権に関しまして、一般商船についてはもちろん無害通航と認められておるわけでございますが、御指摘のございましたように、一部の国からタンカーについては無害通航と認めないというような議論が出されておることは事実でございます。しかしながら、私どもとしては、この問題はもちろん最終的には海洋法会議で結論を出すべき問題とは思いますけれども、汚染の危険を理由としまして、タンカーが無害航行でないということに対しましては、私どもは、船舶の構造上の問題、あるいはこれについてはタンクサイズの規制とか、その他、先般一九七三年の海洋汚染防止条約会議がロンドンのIMCOの主催で行なわれまして、これで相当船舶の構造の規制あるいは油の排出の規制についての国際的な合意を得ておりますので、こういった対策を完ぺきに各国が順守するという方向にいくということ。さらに被害が起きた場合の救済に関する制度といったものも、国際間で合意されておる条約がございますし、また民事責任につきましてもかなり……。
  68. 森中守義

    森中守義君 批准していないじゃないか。
  69. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) まだもちろん批准はいたしておりませんが、民事責任についても新しい条約が提案されております。ただ、批准しておりませんけれども、批准していない間は、実際上民間ベースでCRISTALあるいはTOVALOPといったような保険機構を通しましてこれをカバーするという制度もできておりますし、こういったタンカーの汚染防止、あるいはもし万一事故が起こった場合の被害の救済措置といったものを制度として完ぺきに確立するということによりまして、沿岸国の了解を求め、理解をいただいて、この無害通航についてはわれわれとしては問題がないということで対処してまいりたいと考えます。
  70. 森中守義

    森中守義君 私のこのお尋ねというのは、事実上法案の審議に入っているつもりです。  そこで、ちょっと外務省が出席の間に問うておきます。いま原田審議官から条約の問題が出ましたが、海上関係の条約がたくさん採択されているのに批准されたものが非常に少ない。総計三十四条約が採択されていて、批准されたものが八件、それから自動的に消滅したものが六件、未批准のものが二十件、こういうようになっているのですね。  そこで今回の船舶職員法改正に伴って必要な条約もある。トン数測度に関する条約、これなどはもうこの船舶職員法が今回のように一部手直しをされるという時点をにらんだならば、当然、この国会に批准の手続を私はとるべきだと思う。非常に日本の条約の批准は遅々として進まない。何年か前も航空事故の際にヘーグ条約か何かを、事故が発生をして追っかけるようにして条約の批准をした、こういうようなことが多いんですね。一体、どういうことで採択された条約というものが手続がとられないのか、これはどういうことなんです。
  71. 内田守

    政府委員(内田守君) ただいま例にあがりましたトン数測度に関する国際条約につきましてのみでございますけれども、御説明いたします。  御承知のように、この条約は一九六九年に署名採択されました条約でございますが、当時署名国が三十八カ国ございました。現在の進捗状況は英国、ノルウェー、ソ連等十五カ国が批准しておりますが、先ほどのお話のように、私どものほうとしても批准するという前提で関係法令の改正の準備を前からやっておるわけでございます。トン数そのものはそういうことでございますけれども、それに関連する法令の数が非常に多うございますので、なお若干の期間が必要だと思います。  なお、この条約そのものの発効要件からいたしましては、おおむねいまのところ昭和五十二年度ぐらいには発効するんではないかということでございますし、私どものほうも当然それ以内に批准その他の手続を少しでも早く進めたい、かように考えております。
  72. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) ただいま森中先生から海上国際労働条約の問題について御質問がございました。ただいま先生指摘のとおり、現在海上労働に関する条約といたしまして三十四ございまして、そのうち、わが国として批准いたしましたのは八条約でございます。船員局といたしましては次のように考えておりまするが、ただいま船舶局長からトン数の条約の問題についてお話がございましたが、私のほうからさらに補足的に御説明さしていただきます。  もともとこのILO条約の批准と申しますのは、国内法を整備した後に行なう、こういう政府の方針が昭和二十八年の十二月三日の閣議決定でなされておることは先生御承知のとおりだと思います。そこで運輸省といたしましても、これらのILO条約の内容に関しまする実態調査をいままで進めてまいりました。そしてさらに国内の法令の整備を行なうべくいろいろと研究してまいったのでございますが、特に船員局関係といたしましては、ILOの六十九号条約と申しまして船舶料理人の証明に関する条約でございます。これは先生御承知のとおり船内におきまする船舶料理人の資格だとか、あるいはそういった知識の向上といいますか、そういった面でいろいろときめた条約でございますが、これにつきましては現在できるだけ早く批准するため検討作業を進めております。また外務省当局もいろいろとその問題について検討しておる、こういうことを御報告申し上げたいと思います。
  73. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度といたします。     —————————————
  74. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) 船舶職員法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  75. 森中守義

    森中守義君 行管来ていますか——  四十七年の九月に、大臣もよく聞いていてください、一連のカーフェリーの大事故で貴重な人命が失われた。こういうことを契機にして行管がその監察の結果を運輸大臣に勧告している。で、この勧告の内容に非常に重要な個所があるんですよ。かかるカーフェリーの事故発生、ひいては海上の安全がそこなわれた一因として現行法令に欠陥がある。まあ欠陥という表現は使っていないけれども、大体一連の表現を、実態的に検討の結果、かかる不幸なできごとを完全に消滅させるために関係法令の改正検討したらどうだ、こういう勧告が出ておる。これは一体具体的に何をさしたのかということと、それからこれに対する運輸省回答はこういっておるんですね。さっき問題に供しました一九六九年の「「船舶のトン数測度に関する国際条約」が採択され、わが国においても現在受諾について検討し、関係国内法の改正を準備中である。」こういう内容回答が行なわれている。  これには、いま船員局長の答弁のように、いろんな手頃もありましょう。けれども行管が勧告したのはもうちょうど二年前、まる二年たっていないけれどもね、相当の期間がたっている。その後、同種の事故が発生はしておりませんけれども、しかし、いろんな態様の海上の事故というものは絶えず頻発状況にある。特に漁船の遭難事故などはもう非常に目に余る。ですから、こういったようなことが漁船と直接かかわりあるないは別としましても、行管指摘をした関係法令の検討、すなわち欠陥があるじゃないかというね。こういうことを受けた運輸省は一年有半もたっていまだその批准の手続をとらない、そのために国内法の整備ができないということになると、少々ことばは酷かわかりませんが、行政の怠慢というように国会としては見ざるを得ない。  ですから、行管指摘をした法改正の必要があるということ、その内容はどういうものであるのか。それと運輸省の場合には、いま少しく詳細に、条約の批准の手続をとるにはどういう手頃、どういう繁雑な行政事務が伴ってくるのか、そういうことを実務的に御説明願いたい。行管からひとつ。
  76. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) いま御指摘の勧告につきましては、最近、旅客のカーフェリーが非常に増加しております。しかも御存じのように、カーフェリーは車と多数の乗客を載せまして、交通のふくそうする水域を航行するというような特殊業務でありまして、しかもカーフェリーにつきましては、自動車の積みおろしということに伴いまして船尾づけという非常に技術的なことが要求されております。それから喫水が非常に浅くて風圧を受けやすいという問題がございます。したがいまして航行する上の技術というものはその安全性にとりましてきわめて重要な問題であるというふうに感じております。  ところで現在の船舶の積量測度法では、上甲板にあります貨物船の積量というものを総トン数に入れないという問題がございます。そこで実際問題としまして旅客カーフェリーでは上甲板に多数の自動車が搭載されております。しかもこれが積量に入らないために一般船舶に比較しまして総トン数が小さく算出されるという結果になります。ところで船舶職員の資格というものは総トン数に応じて定められているのが現状でございます。そこで一般の船舶よりも低く算出される結果、結局そこに乗船される技術者の船員というものは、一般の船舶に比較しまして、若干下位の船員が乗船されるという結果になります。したがいまして現在の船舶積量測度法というものを、旅客カーフェリーの現状に合わせまして、改正する必要があるということを勧告したわけでございます。
  77. 内田守

    政府委員(内田守君) 行管からいただきました船舶積量測度法の改正についての御指摘はいま御説明のあったとおりです。  船舶積量測度法と申しますのは、御承知のように船の総トン数あるいは純トン数をはかるきめ方を定めておる法律でございます。その法律自体は、たとえばこの船は一万トンであるとか千五百トンであるとか一定のはかり方によってはかるそのはかり方をきめておる法律でございます。その法律できまりました総トン数を、いまお話のありました船舶職員法であるとか船舶安全法であるとかあるいは税金の関係の問題であるとかあるいは漁業調整法であるとか、いろいろな法律が引用いたしまして、それぞれの法目的に利用する尺度として総トン数というものが利用されているのは御承知のとおりであります。したがいまして、もとになる船舶積量測度法の総トン数というもの自身につきましては、ある意味では無目的と申しますか、一つのはかり方を示しておる法律でございます。  御指摘のありましたことを具体的に申しますと、車両甲板の車両搭載場所が総トン数に算入されないことから、船の見かけ上の大きさよりも何となく一般の船よりも総トン数が小さく出るということだと思います。  しかしこの問題自身は、測度法につきましては、国際的にたとえば漁船にしろどういう船にしろ、はかり方というのは本来統一された一つのはかり方になっております。  少し技術的な問題になりますけれども、上甲板の上は、かつては蔽囲されたところは全部総トン数の中に入っておった。ところが御承知のように減トン開口という穴をあけまして、そして閉鎖されておりませんから、そこはトン数に入らなくなるわけでございます、穴があいておりますと。これは万国どこでも共通の一つの測度のはかり方であった。ところが、それがかえって安全上トン数を少なくするために穴をあけるというような逆の問題が国際的にいろいろ起こりまして、IMCOで逆に上甲板の上の貨物を搭載するような場所は、たとえ閉鎖しても、穴をあけてあっても総トン数には入れないのだという勧告が採択されまして、それを各国が実施するように勧告された。それに従いまして、私どものほうも数年前でございましたか、測度法の改正をお願いいたしまして、そういう場所を総トン数に入れない、国際的な勧告に従いましてそういう措置をとったわけでございます。  さて一九六九年のトン数測度条約はもう少しはかり方が変わりまして、まあいろいろ変わったとこもございますけれども、結果的には一たんIMCOで採択したそういうトン数に入れない場所も、新しく採択された条約では逆にトン数に入るということに、また条約としては変わったわけです。で、その一九六九年の条約は、先ほど申しましたように発効要件がございまして、具体的に申しますと、批准した国が二十五カ国以上で、かつその保有船腹が世界全体の六五%に達したときから二年を経た後に発効するということになっております。したがいまして、すでに十五カ国が先ほど申しましたように批准いたしましたけれども、もちろんこの十五カ国も実施しているわけではございません。いま申しましたように、二十五カ国が批准したときに一斉に条約として発効して世界共通に進めていくということになるわけでございます。  その関係が、先ほど申しましたようにわが国の加入の受諾の方向も含めまして、いまのところ予想されるのは昭和五十二年度ごろであろう。で、なお私どものほうももちろん早急にそういう条約の受諾についての国内手続を進めるわけでございますけれども、単に先ほどから申し上げております測度法を改正するだけではございませんで、測度法を改正しますと、いままで百トンだったものが百二十トンになったりあるいは八十トンになったり、いろいろはかり方が変わってくるわけでございますから、その総トン数を引用しております国内法令は約六十ばかりおそらくあると思います、関係の法令が。で、そういうところの関係法令とそれの影響とかそういうようなことを従来から進めておるわけでございますけれども、先ほど申しましたようにセットするまでにはなお若干の時間を要する。しかし当初申しておりますように昭和五十二年度中に発効がおよそ見込まれますので、それよりも早くと申しますか、当然条約が発効するように、この改正作業を急いでおるというのが実情でございます。
  78. 森中守義

    森中守義君 ゆえなく怠っていたということではない、それはよくわかりました。  ただ、いまの説明からまいりますと、二十五カ国が批准をしたときに条約が発効する、こういうことのようなので五十二年を目標にしている、こう言われるのだが、行管指摘しておりますように、その間のギャップが非常に問題なんですね。行管はまさに適切な指摘だと思うんだな。その船舶の構造上どうしても本来ならばより上級の職員を配乗すべきであるにもかかわらず、カーフェリーにはある意味で技量が不十分な下級職員が操縦しているところに問題があるんだ、こういっているわけなんですね。要はそういうことですね。  そうなると、今回の船舶職員法改正には当然こういうものも含まれてしかるべきではなかったのか。  つまり条約として発効していなくっても、すでにもう十五カ国批准している。わが国はそのらち外にあるということであれば、条約の発効ということは五十二年であるにしても、批准をすれば既存船の相当な改造になるでしょうね、あるいは新造船については条約どおりの構造にしなくてはならぬでしょう。五十二年まで待てませんね、いつ何どきこういう事故が再発するかわからない、そのギャップをどう埋めていくのか。その辺に私はせっかく船舶職員法改正案として出されたにかかわらず、こういう重大な問題が実はこの中に入っていない。ここに一つの法体系に不備がある、こういうことを私は指摘をしているわけですが、大臣、どう思われますか。
  79. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 行管が勧告したのが四十七年の九月で、それから運輸省がいろんなことを言うているようでございますが、これが去年の二月にこういうこともやります、ああいうこともやりたいというようなことを回答いたしているわけです。  その中で、御指摘の法律問題を二つ運輸省がものを言っているのがあるんです。それは先ほどの御指摘のように船舶のトン数測度に関する国際条約の批准の問題が一つございます。もう一つは港湾施設について一定の基準によることを義務づけるようにするために港湾法の改正をやりますということを言っているわけなんですが、港湾法の改正皆さま方の御協力によりましてできて、今年の七月からいよいよ発効する。これにはいろいろなまた基準とかこれに付随したものが出てくるようでございますが、問題は国際条約の批准というものが、いま局長が説明しましたように、六十何本の法律の改正が必要だからもう一年半くらいはかかるだろうという、それじゃその一年半のギャップをどういうふうに安全対策上埋めるかというのが御質問の御趣旨だったと思います。  ごもっともなお話でございまして、それぞれの立場から、たとえば船員の問題につきましても、ただ船員法をそのまま適用して、これで見のがしておるというだけではなく、いろいろいままでの、たとえば資格を持っておってもある一定の経験を持っておる者でなければいけないとか、あるいは長距離のカーフェリーに対してはいわゆるクルーの交代要員を乗せなきゃならぬとかいうようないろんなことをやっているようでございますが、なおその詳細につきましては政府委員から答弁させますけれども、御心配の点は確かにあると思います。  今後もこういう点をどういう形で埋めていくか、船舶法の改正をここでどうしてやらなかったかという御指摘は確かにその一点もあろうかと思いますが、それはそれとしまして、そういう危険のないための対策というものは当然怠ってはならないことだ、かように考えております。
  80. 森中守義

    森中守義君 いまのともう一つ非常に重大な問題があるんですよ。  それはいまの保安庁長官だな、佐原船員局時代、正確に言えば四十五年六月四日、員基第二〇六号、こういう公文書で日本船長協会以下関係十六団体に対しまして、これは主として船員法を中心にしておりますが、船員法を変えたい、抜本的に改正検討を加える、そのために十六団体に対して意見はないか、こういうことで相談を持ちかけて回答を求めている。この内容は非常に重要なんです。  「三七年の全面検討後八年を経過した今日、こうした情況にかんがみ、当省としては、船員法上の諸制度全般にわたり、再検討を行なっていく必要があるものと考えます。」こういっておるわけですね。それで大体期間において二カ月以内に船長協会はじめ十六団体全部が回答をよこした。  この回答はしさいに検討すればするほど非常に重要なものが多い。ことに船舶職員法あるいは条約、こういう一連の海上関係諸法の制度改正の提言を行なっていますよ。これは船員法だけにとどまるものではないんですね。ところが、これがさて一体どういうような結果的な取り扱いになったのか、その後、全然、この問題等を内容に織り込んだような検討の結果が見られないし、しかも法改正の提案が行なわれたことがない。  ところが今回の船舶職員法改正にあたって、船舶職員法第十五条の規定で海上安全船員教育審議会佐々木周一という会長あてに前大臣が諾問をしている。この諮問の内容というのは今回のモーターボート、ヨットあるいは小型漁船、こういう限定した諮問しかしていないんですね。しかるに、さっき例示として申し上げたカーフェリーの行管の勧告、そのギャップの問題は船員局長も十分知っていたと思うんだな。だから本来ならば審議会等に、条約の採択はまだ批准は行なっていないけれども、行管の勧告を受けた、回答を示している、こういう一連の扱いはどうするかとか、あるいは十六団体意見を求めたことなどをやはり諮問の中に当然入れて、意見を私は求むべきだったと思う。  そういう意味では、全く今回の船舶職員法のきわめて限定された内容改正ということは体系上きわめて不満であるし、体をなしていない、こういうように私は思う。それはいかがですか。
  81. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) ただいまの先生の御質問に対してお答え申し上げます。  まず問題は分けまして二つあると思います。一つは、ただいま先生からおっしゃいました十六団体からの答えと、それから先ほど船舶局長からお答えしたわけでございますが、それに対してさらに私の立場から補足さしていただきます。  まず第一点の問題でございますが、ただいま先生から御指摘ございましたように、昭和四十五年の九月に船員法改正に関する御意見が十六団体から出たことは事実でございます。これはここにいらっしゃいます前船員局長の佐原さんからも十分受け継いでおりまして、私ども事務当局としてもこの内容につきましては鋭意検討しておったわけでございます。  もともとこの船員法の改正につきましては、私どもも最近におきまする技術革新の進展あるいは船内労働に従事される方の質あるいは量的な変化といったこと、あるいは労働環境の変化に伴いまして何らかの意味におきまして船員法の改正というものを検討しなくてはいけないということは、かねがね御意見を待つまでもなく検討しておったわけでございます。  そこで昭和四十五年に、船員中央労働委員会というのがございまして、この船員中央労働委員会に船員法の改正につきまして諮問をした次第でございます。で、その後船員中央労働委員会におきましては、鋭意、労使あるいは中立委員の方が検討されまして、前後二十数回にわたりまして審議を行なったわけでございます。ところが残念ながらこの船員法につきましては、いろいろと問題がございまして、労使の間におきまして議論はされたんでございまするが、完全に意見の一致を見ていないというのが現状でございまして、そういうことからまだ私どもにその答申が出ていないというのが現状でございます。  しかし私どもといたしましては、そういったことでは困りますので、極力労使の方にもお願いいたしまして、そしてまた会長の方にもお願いしまして、ぜひとも早くひとつ御答申をいただきたいということをいろいろとお願いしておるわけでございまして、決してそれを怠っておるというわけではないんでございます。そういう点を第一に御説明さしていただきます。  さて次に、では一体、船員局としてはそういった船員法の問題を、出ないからといって何もしていないのか、こういう御指摘を受けるかもしれませんが、これについては決して私どもとしては全然怠っておるわけではございませんで、法律の許す範囲におきまして、たとえば次のような施策を講じてきた次第でございます。  たとえば船員の労働安全衛生規則の改正なり、あるいは先般制定いたしましたけれど、救命艇手規則の改正なり、あるいは船員の電離放射線障害防止規則の制定、こういったことを従来施策としてとってきた次第でございますし、また今後、現実の面に即しまして法律の許す範囲におきまして、省令その他を通しまして、極力、船員の労働環境の整備あるいは事故防止あるいは量質ともに変化したことに伴う時代の趨勢に応じた措置というものを強力に進めていきたい、かように考えておる次第でございます。それが第二点でございます。それから第三点といたしまして、先ほど行管の局長さんからカーフェリーの問題について御指摘を受けたことは事実でございまして、これにつきまして船舶局長からトン数条約の問題について御説明されたわけでございますが、船員局立場としまして、このカーフェリーについてと、それから職員法の関係について御説明をいたさせていただきます。  まず私ども、このカーフェリーの事故防止につきましては、官房と従来極力検討してきたわけでございまするが、特にこのカーフェリーの問題につきまして、船員局としては、二つの点について従来関係機関検討いたしました結果、次のような二つの点の結論に達しておるのでございます。  と申しますのは、もちろん先生指摘のように、こういった法律の改正をカーフェリーに関連いたしまして検討するということもいろいろとやってみたのでございますが、むしろ次の二つの点、つまりカーフェリーの事故防止につきましては、当該航路におきまする交通事情あるいは海象、気象、こういった当該海上交通事情に精通した方を乗っけるということと、それからさらに実習訓練によりましてこれを十分にトレーニングした方を乗っける、こういったことのほうがよりベターではないかということをいろいろな専門の方その他に相談した結果得たのが一つ。  それからもう一つは、この船舶職員の配乗に関しまして、航海時間なりあるいは航海の態様によって、それに見合った数の船舶職員を乗り組ませる、こういうようなことにかんがみまして、去る昭和四十六年の十二月七日に船員局長名で各海運局長にそういった通達を出した次第でございます。そういうことによりまして、極力、こういったカーフェリーの事故防止につきまして万全の措置を講じていきたい、かように考えておる次第でございます。
  82. 森中守義

    森中守義君 問題がずいぶんほかにもありますので、ここでちょっと……。
  83. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) 本案に対する午前中の質疑はこの程度とし、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      —————・—————    午後二時三十七分開会
  84. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  午前に引き続き、船舶職員法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。
  85. 森中守義

    森中守義君 船員局長、先ほどの体系上の問題は数点にわたって指摘をしましたけれども、これはこれから先の法律改正、きわめて緊急を要する事案も決して少なくないんで、さっそく作業に取りかかって、できるだけ早い機会に国会に出してもらいたい、強く要望しておきます。  そこで、いま一つの問題は、モーターボートあるいはヨットの操縦者が、船員法上の「船員」としての定義、こういうものに入るだろうか。いわんや船舶職員法に定むる「船舶職員」というもの——これはやっぱり対価を得て雇用関係を生ずる者だというように私は理解をする。ヨット船員ということになると、対価を求めた雇用関係というものは存在しないということであれば、どうもこれは非常に書生の法律論みたいでどうかと思うけれども、「船員」の定義の中にはこれは入らないな、そういうふうに私は解釈する。  船員法の第一条では「船長及び海員並びに予備船員」を「船員」として定義しておるわけだね。船舶職員法はこういう人たちに対する所定の資格を付与することを定めたもの。だからヨット、モーターボートの操縦者がこういう範疇の中に入るかどうか、この点どうお考えですか。
  86. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) ただいまの先生の御質問お答え申し上げます。  先生お話のごとく、船員法の第一条におきまして「この法律で船員とは、日本船舶又は日本船舶以外の命令の定める船舶に乗り組む船長及び海員並びに予備船員をいう。」こういうふうに規定されておるのでございます。ところが船舶職員法におきましては、先生御承知のように二条の「(定義)」の中で「船舶職員」ということばを使っておりまして、船員ということばは使っていないのでございます。で「船舶職員」とは二条の二項に書いてございますように「船長、一等航海士、二等航海士、三等航海士、機関長、一等機関士、二等機関士、三等機関士、通信長、」等の「職務を行う者」こうなっておりまして、そのあとの第四条で「船舶職員になろうとする者は、海技従事者の免許を受けなければならない。」こういうふうに書いてございます。  したがいまして先生指摘のレクリエーションボートとかそういうようなモーターボートに携わっている方、これは第四条の免許を受けますると、この船舶職員法に申しまする「船舶職員」ということになるわけでございまして、したがいまして船員法上の「船員」であるなしにかかわりませず、たとえモーターボートに従事する方がいまの免許をお取りになりますると、船舶職員法によります「船舶職員」こういうふうになるわけでございます。こういうことで御了解願いたいと思います。
  87. 森中守義

    森中守義君 どうもすっきりしないけれども、これは一つの解釈上の問題でもあるしね、私は、元来、こういうものはやはり船員法ないしは船舶職員法というよりも、何か別ワクの特例法で定めたほうが法の体系としてはよりすっきりするのじゃないかというような見解を持つ。法制局いないので、その辺の体系上の問題はこれ以上問いませんが、またその語義からすれば、どうもやっぱりヨット、モーターボートの操縦士は船舶職員法のワクの中には入らない、こういう見解を持つんですよ。  これは法制局と立法技術でいろいろ検討されたものと思いますが、法制局と詰める段階でそういう意見は出なかったですか。
  88. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 先生のおっしゃる点はもちろん出ましたですが、いま私がお話ししましたように、この船舶職員のたてまえは海技免状を持った方は船舶職員法にいう船舶職員となる、こういうことで整理したわけでございます。
  89. 森中守義

    森中守義君 それからちょっとこまかな議論になるけれども、二十三条の二の特定試験事務の指定試験機関の問題ですが、在来、船舶職員法で定める船長以下各種の職員の大体一年間に受ける受験者の総数は何名ぐらいですか。
  90. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 約十四万人でございます。
  91. 森中守義

    森中守義君 十四万人ね。  これは運輸大臣の専決事項であり、試験官を配置して試験をやっているわけですけれども、それなのになぜこの場合に限って特別な試験機関というものを設置しなければならないのか。あわせてまた、いま考えている試験機関構想——もちろんその図表も見ております。その図表からいけば実技を試験機関がやる、筆記試験と身体検査は海運局がやる、こういう並立をしたやり方をするわけだね。  私は、どちらかというならば、わざわざこういうことのために別個の機関をつくってやらなくとも、たとえば地方に海員学校等もたくさんあるし、そういう教育機関等に委任をしてもいいんじゃないか、こういうように考えるんですが、大体描いている機関構想はどういうものですか。
  92. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。  今度私どもが考えておりまするこの指定試験機関と申しますのは、小型船舶操縦士試験で、身体検査、学科試験それから実技試験、こういう三つからなっておるわけでございます。  そこで先生指摘のように、なぜ国でやらないのか、これはもっともなことだと思います。これは私どもも審議の過程において実は十分ディスカッスしたわけでございまして、特にこういつた免許の取得の希望者が非常に多くなる、こういうことにかんがみまして何とか国でこういう指定機関を実施する方法はないだろうか、こういうことでいろいろ検討したんでございます。  その第一点といたしまして、国がやるとすればまず膨大な費用が要る。概算いたしまして私どもの計算では約九億円ぐらいかかるのじゃないかという点が第一点。それから先生御承知のように、  こういった試験をいたしますると国家公務員、こういうことになります。そうしまするといろいろと行政管理庁の関係とか財政当局関係もございます、こういうようなこと。それから特にこういった試験は非常にシーズンオフというのがございます。また北、南その他によって地域的に試験の需要のアンバランスといいますか、こういったことも出てきます。そういうことであれやこれやいろいろと検討したんでございまするが、むしろそういう国でやることもさりながら、国の厳重なる監督と指導のもとにおきまして、従来からこのような小型船舶操縦士の養成に実績のある公益法人を使ったほうがむしろ適当ではないかというふうに考えたのでございます。  そういうことでいろいろと検討したのでございますが、なお、しからばこういった公益法人といってもいろいろとあるわけでございまして、先生御承知のように社団法人もございますあるいは財団法人もございますが、それをさらに分析いたしまして三つの条件があるのじゃないか。  つまりこういったような国家的な仕事をやる以上は、第一点といたしまして非営利性だということ、営業性がないということですね。それから第二点が公正で中立性であること、非常にフェアでニュートラルでなくちゃいかぬ。それから第三点が非常にコンティニュイティ、継続性がある。こういう三つの点をいろいろと検討したわけでございます。そこで社団法人でございますると、やはりメンバーが変わるとか、あるいは担保力に乏しいとか、そういうようなことから財団法人が適当じゃないか、こういうことでまず財団法人にしぼったわけでございます。つまり財団法人でございますると、いま言いました非営利性それから公正中立性、継続性が担保できる、しかも国がこれを指導監督する、こういうことで財団法人にしぼったのがいきさつでございます。  では、しからば一体これにふさわしい財団法人は幾つあるのかと申しますると、五つ現在ございます。一つは日本船舶職員養成協会、二つが日本モーターボート協会、第三番目には尾道海技学院、第四が関門海技協会、第五が中国船舶職員養成協会、こういう五つがございます。そこで私どもといたしましては、いまお話しいたしましたようにこういった五つの財団法人がございますので、このうち一つをしぼりまして国の指定機関にする。そしてそれ以外につきましては、こういった協会あるいは別途それぞれ教習所がございます。その教習所におきましていまお話ししました実技だとか、あるいは学科試験も受けさせる、こういう構想を持っておるわけでございます。  以上でございます。
  93. 森中守義

    森中守義君 ちょっとおかしいね、いまのは財団法人に実技試験のみならず筆記試験もやらせるということ。これは運輸省から出された免許取得方法、図表があるわけだ。これからいけば、いまの法人で扱う仕事というのは実技試験だけになっておる、筆記試験は海運局でやるようになっておる、図表じゃそういう説明をしている。
  94. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 学科も実技も両方やるたてまえになっております。
  95. 森中守義

    森中守義君 これは図表が間違っているわけですか。
  96. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 途中でそういうふうに変わったわけでございます。初めはできなかったんでございますが、その後、実技と学科試験の両方できる、こういうふうになったわけでございます。
  97. 森中守義

    森中守義君 そうなると、実務的なものなんだけれども、これはちょっとあれだね、法人で実技と学科試験をやる、海運局では身体検査だけということですか。
  98. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) じゃ説明員から説明させます。
  99. 星忠行

    説明員(星忠行君) 指定試験機関におきまして学科試験及び実技試験を行なうことになっております。  それで前に私どものほうでつくりました資料におきましては、実技試験のみを行なうような資料を差し上げてというか、先生のほうではそういうふうに御理解いただいておると思いますが、これは予算上の関係がございまして、実は先ほど経過措置というふうにお答えいたしましたけれども、第一年度目は経過的に実技試験のみを指定試験機関がやる、学科試験は海運局においてやる。しかし二年目以降、平年度になりました場合には、学科試験も実技試験も指定試験機関でやるというふうになっております。  そこで、この法案の成立が、実は、もう四十八年度押し詰まってまいりましたので、四十八年度は実技試験のみをやるわけでございますけれども、もう四十九年度になりますと、さっそく学科試験も指定試験機関で行なうようになるので、事実上、四十九年四月以降は学科試験及び実技試験ともに指定試験機関で行なうことになるわけでございます。  資料をつくりました時点では、もう少し早く法律案が成立いたしまして、そうして四十八年度にもう指定試験機関が試験を開始する、その時点では実技試験だけだ、それを想定いたしましたので、そういう資料になっている次第でございます。
  100. 森中守義

    森中守義君 なるほど、これからいけば、この資料を印刷したのが四十八年の二月二十日、その限りではだいぶ古い。しかしこれは今度の委員会で配られたものだから、古い資料を引っぱり出してやっているわけじゃない、運輸省が配ったものでやっているわけだ。  それで行管、最近、非常にこういうような傾向が行政府に多いんですよ。  いま船員局長からずっと話があったように、何か新しい法律改正をして行政業務を拡張する際に、なかなか人がとれない。むろん、これは財政当局関係もあるでしょう。元来五%削減というのはいつまで続くのか、そういうものがかなり大きなワクになっている。本来ならば行政機関みずからがやるべきものがいまのように財団法人等に全部逃げ込んでしまう、最近こういう傾向がかなり目立っておりますね。こういう点で、行管としては、定員の問題と現在の各省行政能力の問題、このままでいいですか。  従前は、各審議会とかそういうものの取捨選択をしなければならぬ、こういうわけで委員会でだいぶ問題になりまして、やっとつくったものが翌年つぶされたという例もあります。たとえば農林省の蚕糸事業団、これなどは法律改正をしてつくって一年目か二年目に全部アウト、こういう例もありますよ。ところが最近の傾向は、あまり行管に対してそういう注文を国会がつけないせいもありましょうけれども、どうも目こぼしが多いというように私は見る。筋道からすれば、これは法律による国の仕事ですから国がやるべきですよ。方向は全然変わった方向にいっている。  今回のこの問題と同様に、いま一つ運輸省で最近つくったものがあるんですね。小型船舶の検査機構、これは何という正式な呼び方か知りませんが、日本小型船舶検査機構、こういっているね、こういうものができ上がっている。こういったようにどんどん新しいものができていくということは、ある意味では行政の本流を少し横道にそらしていくという、こういう感じがしないでもない。行管としては、こういうことに対してどうお考えですか。
  101. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) ただいまの御指摘の問題は、実は行制管理局の所管でございまして、監察局長お答えするのが適当であるかどうかちょっとわかりませんけれども、一般論として申し上げますと、一方には行政簡素化という問題がきびしく響いております。これは否定できないと思いますけれども、たとえば試験検定機関というもののやり方につきましては、いろいろなやり方がございます。内容によりまして国や地方公共団体が直接実施するもの、あるいは法令そのもので特定機関を定める方法、それから当該法令の委任によりまして主務大臣が指定するもの、いろいろなやり方があろうかと思います。  そこで、それをどういう形でやるかは、その業務の内容によっていろいろ違うとは思いますけれども、考え方といたしましては、その業務が国の業務でありましても、国の機関によって十分監督が担保できるもの、あるいはその内容が非常に技術的であり、民間にやらせることが適当である場合、あるいはそのほか受験者の便宜の問題、そういういろいろな問題があろうかと思います。そこで一般に、そういう場合には、その職務を行なう当該職員は公務に従事するというふうにみなされまして、一般の罰則もございます。そういうことで業務の執行の能力があり事務処理能力もあり、それから監督も十分できるという場合には、民間に委託しても差しつかえないのじゃないだろうかというお考え方があろうかと思います。
  102. 森中守義

    森中守義君 それは一般論としてはわかりますが、ずいぶん以前の話だけれども、千葉信さんという大先輩がおられた。この人は行政組織法の大家で、ずいぶんこの人の時代には、内閣がこういうものをつくるには徹底的に究明をして、極力抑制をしてきたものですよ。最近、私も内閣委員会にちょっと縁が薄いので経過がよくわかりませんが、しかしながら行管委員会がつくられて、こういう問題に目をつけて、かなり大なたをふるったことがありますね。最近はまたいつの間にやら復元してしまった。  そこで問題なのは、ちょうど手持ちに行政組織法ないけれども、これは一体国家行政組織法の今日の趨勢というものは許容するワクの中にあるのかどうか、私は非常に問題だと思うんだな。だから行管のほうでも一般論でものごとを処理するということになると、私は行管行政姿勢について非常に問題があると思う。むしろこういうものには抑制の方向で向かうべきじゃないですか。反面また定員の増員を要請する、その際に増員を抑制する、そういううらはらの関係がある。しかしながら、それは内閣の方針として五%削減を一応掲げているわけですからね。  ほんとうに、これはもう絶対に他に法人組織等をつくってやらせねばならない性質のものなのかどうなのか、こういう吟味が私は十分行なわれているかどうか。しかも今回のような場合、運輸大臣の認可事項として認可されても、これは事前にやっぱり行管あたりと相談があるべきものだと思う。その辺の実務関係はどうなのか。相談を受けて行管がよろしいということでいったのか、あるいは大臣の認可事項だから大臣が専決をしたということなのか、どっちでしょうか。
  103. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。  ただいま行管との連絡のことに先生お話ございましたけれども、これにつきましては、十分に事前に行管とも連絡をとりました。
  104. 森中守義

    森中守義君 行管は審査の結果、いいと思ったのかどうなのか、思ったから返事をしたんだろうけれどもね。
  105. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 先ほど申し上げましたとおり、所管が管理局でございますので、私は聞いてはおりません。  ただ管理局の所管いたしますのは機構、定員、特殊法人という問題でございます。したがいまして認可法人その他の場合には、直接はタッチはしていないと思います。
  106. 森中守義

    森中守義君 あまりこの辺にひっかかっていては先へいきませんが、これは船員局長、かなりの基金を入れるんだね、どのくらい入れるんですか。
  107. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) この試験機関の試験艇の購入費といたしまして三千二百万円の予算が国からついております。その試験艇の購入の補助金でございます。これが三千二百万円からついております。
  108. 森中守義

    森中守義君 いや、それは三分の二補助の補助金でしょう。私が言っているのは、こういう法人をつくる場合に、当初から多少国の予算が入るのじゃないのか。毎年、予算上、補助金あるいは助成金等を出すのか、あるいは基金を十億なり二十億なり最初から入れておくのか。十隻の試験艇を買い取るための三分の二の補助金が三千二百万でしょう。そのほかに基金としてはどうなのか。
  109. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 先ほどお話し申し上げましたように、この指定機関につきましては、今度の法律の二十三条の二の「指定」のところで大臣が指定するわけでございますが、この指定は、先ほどお話ししました財団法人がいろいろとございますが、その中から慎重に審議いたしましてその一つを指定する、こういうふうになるわけでございます。  したがいまして既存の財団法人を指定するわけでございますから、いま国としての予算は直接要らないわけでございます。そうして国としての予算と申しますのは、いまお話しいたしました試験艇購入費の三千二百万、こういうふうになっております。
  110. 森中守義

    森中守義君 ちょっといまのところよく解しかねたな。  既存の法人で申請した場合に許可するということ、新しくつくるということ、そこがよくわからない。
  111. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) いまお話ししましたように、既存のものがございます。すなわち従来から小型船舶操縦士の養成に実績のある公益法人、先ほどお話ししました五つほどあるわけでございますが、その一つを国が指定する、こういうふうになるわけでございます。  したがいまして、そういった既存の公益法人を使うわけでございますから、直接そういった、たとえば先生おっしゃるような事務費の経費あるいは人件費の予算とか、こういうものはないわけでございます、それは既存の財団法人を使いますから。その財団法人を指定して、それで一番大事な試験艇でございますね、これは国が補助してあげよう、こういうことで三千二百万の予算がついた、こういうわけでございます。
  112. 森中守義

    森中守義君 そうすると、具体的に既存の機関はどういうものがあるのか、ちょっとあげてみてください。
  113. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 先ほどお話しいたしましたように、既存の養成協会といたしまして五つございます。すなわち日本船舶職員養成協会、日本モーターボート協会、尾道海技学院、関門海技協会、中国船舶職員養成協会、こういうのがございますが、私どもとしてはどの財団法人を指定機関にするかにつきましては、この法律の附則に「公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。」、こうなっておりまして、一カ月以内に指定機関のいろんな実績なり、あるいは現在のスタッフ、あるいは能力、そういったものを慎重に審議いたしまして、そのうちどれかを一つ指定したいと、かように考えておる次第でございます。
  114. 森中守義

    森中守義君 そうなると、五つあるというんだが、複数ですか単数ですか、指定するのは。
  115. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 一つでございます。単数でございます。
  116. 森中守義

    森中守義君 単数だということになると、五つのものが競願する場合があるが、そういう場合にどういう措置をするんですか、五つのものがこぞってどれもこれも申請してきた場合。
  117. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。  先生のお手持ちの改正案の二十三条の三「指定の基準」というのがございます。すなわち運輸大臣は、指定をしようとするときは、左の各号に適合するかどうかを審査すると、こうなっておりまして、第一が「職員、設備、特定試験事務の実施の方法その他の事項についての特定試験事務の実施に関する計画が特定試験事務の適正且つ確実な実施に適合したものであること。」ということが第一点と、それから第二に、「経理的及び技術的な基礎が特定試験事務の実施に関する計画の適正且つ確実な実施に足るものであること。」こういうふうな基準がございますので、私どもといたしましては、その基準に照らしまして慎重に指定したいと、かように考えておる次第でございます。
  118. 森中守義

    森中守義君 今月一ぱい程度でないと、その三千二百万がこういう場合には繰り越し明許もできないだろうし、そうなると、非常に短期間の間に選択をせにゃならぬ。別段そういうものを聞いてどうということでもないんだけれども、いま並べられた五つの中でどれが一番これに該当するようなふうに思いますか。
  119. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) この点につきましては、いまお話しいたしましたように、この法律の指定の基準の精神を十分に慎重審議検討いたしましてきめたいと思っておりまして、まだこれだというような具体的な決定する段階に至っておりません。
  120. 森中守義

    森中守義君 それから出された資料の事故関係ですが、「総トン数二十トン未満船舶の海難」ということで、四十四、四十五、四十六年、この三年間の統計がとられている。この中でどれが一番海難事故が多いかということになると、いずれも「機関故障」というのが最高を占めている。おおむね漸増の傾向ですね。四十四年、五トン未満で百九十四件、二十トン未満で百七件、四十五年が五トン未満百九十七件、二十トン未満が八十件、四十六年は五トン未満二百三十六件、二十トン未満が九十一件ということになって、「衝突」「乗揚げ」「転覆」「その他」に比べて機関部の故障が一番高い。それできのう、おとといもだいぶ竹田君から問題にされたように、丙種機関士をおろすという問題ですね、こんなに機関部の故障が統計的にも高率を示しているのに、おろさねばならないという理由は、いささかこの事故の問題にかかわりを持つ見方からしてもおかしいんじゃないか、どうですか。
  121. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 先生指摘のように、確かに最近の事故の統計を見ますると、機関故障の多いことは事実でございます。これを分析いたしますると、いろいろございまするが特に噴射弁あるいは排気弁の故障が非常に多い、こういう報告が出ております。そのほかいろんな燃料面だとか、そういった故障の報告が出ておりますが、ところで、これらのこういったような潤滑油系統あるいは冷却水系統ですね、こういったエンジントラブルというのは、技術的な専門家の御意見その他によりますると、事前のチェック、仕業点検におきまして十分なチェックをすれば事故の防止が十分に期待できる、こういう報告が出ているのみならず、そもそもこの法案自体の提案のとき御説明いたしましたように、最近のこういったエンジンの機器の発達というものは非常に著しいものがございます。特に先生御承知のように、最近は昔の焼き玉エンジンからかわりましてディーゼルエンジンになっておる。しかもこの材質、たとえば耐熱——材質が非常にすばらしくいいとか、あるいはエンジンオイルというものが非常に添加剤なんか入っておりましていろんな硫黄分なんかをとっておる。こういうようなことで、まあ専門的なことにつきましてはまた船舶局長からも御説明あると思いますが、こういうことで非常にエンジンの信頼性が高まっておるということが第二点。それから今回の改正によりまして、この免状をとる場合に甲機両用、つまりデッキとエンジンと両方マスターする。つまりエンジンの知識を十分に吸収した方が免状を取る、こういうたてまえをとっておりますので、そういうことをいろいろと勘案した結果、機関士をおろしてもだいじょうぶである、こういうことになったのでございます。  もとよりこれにつきましては、この法案策定の当初からいろいろと専門の方にも御審議をいただいたのでございます。特に技術関係の専門の方にも御意見を聞いたところが、こういったエンジンについては非常に信頼性がある、こういうことから丙種機関士をおろしてもいい、こういう意見が出たことの答申に基づいてこの案を考えた次第でございます。しかしながら、私どももこれでは十分とは考えておりませんで、特に今後こういった事故防止ということを十分に考えた場合におきまして、極力丙種機関士を乗せるように、これはまた後ほど御説明いたしまするが、そういうような方を当分の間乗せる、こういうような行政指導もはかりまして、そうして事故防止に万全を期していきたい、かように考えておる次第でございます。
  122. 森中守義

    森中守義君 さっきちょっと触れた小型船の検査機構、これが技術上こういう事故を未然に防止するというものとつながる筋のものですか。
  123. 内田守

    政府委員(内田守君) 小型船舶検査機構は十二メーター以下の船を検査する機構でございますけれども、モーターボートとかその種のレジャーボート等を中心にして検査するわけでございますが、これは現在国でやっております大きい船の一年ごととか二年ごととか、定期的に工場に入って修繕したり整備したりの検査を行なうと同様な検査を、定期的にそういう小さい船について三年ないし六年——現在三年ごとの予定ございいますけれども、三年ごとに行なうという機構でございます。
  124. 森中守義

    森中守義君 結果的に、こういうようにエンジントラブルが非常に多い。したがって自動車と同じように、いわば定期検査的なものを機構にやらせるという意味ですね。
  125. 内田守

    政府委員(内田守君) いま申しましたように定期的な検査をやらせる機構でございますが、先ほどからございましたように、日常の整備点検とか、あるいは出航前の点検とか、そういうようなものは、もちろん操縦者のメンテナンスと申しますか、補修になるわけでございます。
  126. 森中守義

    森中守義君 ここの検査機構というのは新聞で初めて私も知ったんだけれども、これは法的根拠も何も持たないで、認可法人としてできるものですか。
  127. 内田守

    政府委員(内田守君) これは前回の国会におきまして、船舶安全法の改正をしていただきましたわけでございますが、その際に、その趣旨と申しますのは、従来検査やっておりませんでした原則的には五トン以下のエンジンのついている船を全部検査対象に入れるわけでございますが、それに対しまして、法律で小型船舶検査機構というものを明記いたしまして、その法律に基づいて設立された認可法人でございます。
  128. 森中守義

    森中守義君 たいへん不勉強で申しわけございません。よくわかりました。この委員会にそれはかかっていなかったからね、船舶安全法は交特だったかな。  それで事故の場合の人身事故は、この中で大体何件ぐらい、死亡したとか、あるいは負傷したというその件数は。
  129. 佐原亨

    政府委員(佐原亨君) ちょっと手元の資料で、死亡と行くえ不明と分けたのがございません。一本になっておりますけれども、昭和四十五年が五百三十三名、四十六年が四百五十二名、四十七年が五百七十七名、ただしこれは二十トン以下とかそういう限定ではございません、全船舶でございます。
  130. 森中守義

    森中守義君 これはちょっと質問趣旨には沿いませんね。いまでなくてもいいから、できるだけ海上の人命の損失、込みじゃちょっとわかりにくいんで、小型関係内容がどのくらいか、わかれば……。
  131. 佐原亨

    政府委員(佐原亨君) 調べれば出るそうでございますので、後ほどお届けいたします。
  132. 森中守義

    森中守義君 それから、これから先の大体小型船舶の状況ですが、出された資料では、四十七年の十月末で五トン未満及び五トン以上のものを合わせて、事業用、非事業用合わせて十二万三千八百、こうなっておりますね。  そこでモーターボート及びヨットの場合、今後の生産見込みというわけで、四十八年、四十九年、五十年合わせて十九万五千というのが出ております。ところが漁船と雑種船については生産の見込みが出ていない。モーターボートとヨットだけが生産の見込みが、こういうように数字がある程度正確に出されているというのはどういう意味なのか。つまりヨット、モーターボートのメーカーの生産計画等がこれにあらわれてきているとこう思うんですが、ヨット、モーターボートのメーカーはどういうのがありますか。
  133. 内田守

    政府委員(内田守君) 船員局からお出しいたしました前の資料でございますけれども、モーターボート及びヨットに生産見込みが書いてございますのは、その中身はこういう小型船舶あるいは機関を製造するメーカーを会員とする社団法人日本舟艇工業会が昭和四十七年一月に行なった予測の数字であると思います。  それから漁船につきましては、これはわれわれのほうの五トン未満の漁船と二十トン未満の漁船につきましては検査対象でございませんし、運輸省では正確な生産の把握はきわめて困難でございます。  それからその他の雑種船の生産見込みでございますが、これも五トン未満の雑種船につきましては、実際問題として把握しておりません。ただ五トン以上の従来の検査対象としております同様の船から推定しますと、おそらく保有隻数の年間一〇%程度の、これは代替建造も含めまして、ぐらいは行なわれるんじゃないかという予測はできます。
  134. 森中守義

    森中守義君 水産庁、漁船の生産見込みはわかりますか。
  135. 新井昭一

    説明員(新井昭一君) お答えいたします。  現在漁船の生産見込みはちょっと数字がございません。ただ私の手元にございます五トン未満の毎年の隻数の推移の状況から見ますと、大体最近二、三年は一万隻ぐらい毎年動力船の隻数がふえているという状況でございます。
  136. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、これはこれだけの膨大な隻数が近海を動き回るということになりますね。ざっと計算して約六十万隻だな。こういったような状態考えていけば、これはもうほんとうに一体、おとといもお話があったように、既存の大きな港あたりはどうなるのか。その辺のことは保安庁のほうでは、こういうように生産の見込みがおそらくそう大きな狂いはないと思いますが、かなりのラッシュになるんじゃないか。ただ燃料関係でいただいた資料では、ヨット一隻の稼働日数は年間十日間ぐらいだと、こういう見当つけておるようですがね、おおむね平均すればそういうものかわからぬけれども、どうも一隻のヨットが一年間に十日間ぐらいしか動かないという計算がどっから出てくるのか、どうもその辺が疑問です。ですから船舶安全法あたりをわざわざつくらねばならなかった、これは海上におけるいわば交通整理という意味であり、陸上の道路交通法にやや似たものだと思うんですがね。これは保安庁のほうではおおむね捕捉できる隻数が六十万隻、こういうような状態から判断した場合に正確に船舶安全法というのがほんとうに守られますか。
  137. 内田守

    政府委員(内田守君) ちょっと生産見込みについて御説明さしていただきたいんでございますが、特にモーターボート、ヨットの例でございますが、先ほどこの資料がここ三年間に約十九万隻ぐらい新たに加わるような資料になっておるわけでございますけれども、これは予測としてはそうでございますけれども、実際の生産実績というものを見ますと、たとえば四十七年では、この資料は当時四万隻ぐらいだったのが、実際の実績は二万隻ぐらいであったわけです。さらに最近の四十八年に至りまして、御承知の石油危機の問題等ありまして、よくても横ばい程度ではないか、現在の時点で推定いたしますと。したがいまして、この数字そのものはそういう数字になっておりますけれども、実際に起こってくるいまの時点でのこれからの二、三年間の予測というのは相当落ち込むのではないかというふうに推定しております。
  138. 森中守義

    森中守義君 いまの予測は工業会が発表した数字だ、こう言われるけれども、具体的にエンジンメーカーとボディメーカーはどういうのがありますか。
  139. 内田守

    政府委員(内田守君) まずボディのメーカーは、順序不同で申し上げますが、IHIクラフト——これは石川島播磨重工の子会社でございます。それからヤマハ発動機、永大産業、日本飛行機、日新ペースメーカー、協和製作所、日本アルミニウム工業、鈴木自動車工業、瀬戸内工業等でございます。  それからエンジンのメーカーといたしましては、いわゆるディーゼルエンジンはヤンマー、三菱重工、久保田鉄工、東京ボート、いすずマリーン、日産ディーゼル、その他輸入関係のたとえばゼネラルモーターズとかキャタピラー、カミンズ等ございます。  それから船外機メーカーといたしましては、ヤマハ発動機、東京発動機、本田技研工業、鈴木自動車工業等、あと輸入メーカーがございます。
  140. 森中守義

    森中守義君 別段メーカーの戸籍調べをするわけでないが、いままでの出されたメーカーで、どこが一番多いか、エンジンとボディの場合ね、二つ三つあげてください。
  141. 内田守

    政府委員(内田守君) モーターボートのほうを申しますと、一番多いのはヤマハ発動機であります。それが飛び抜けておるわけでございますけれども、あと永大産業、それからIHIクラフト、日本飛行機、日新ペースメーカーといったところでございます。  それから国内のエンジンメーカーといたしましては、大きい順番に言いますとヤマハ発動機それから東京発動機、鈴木自動車工業、本田技研等でございます。
  142. 森中守義

    森中守義君 これは単なる杞憂であればいいのですがね、この法案に関連して千葉のある漁連の代表がこういうことをちょっと言ったという話があるのです。この法案は何としても通すのだ、で、それにはヤマハと、エンジンはいすずがタイアップする、しかも講習等もきわめて簡便にやろうではないかというような話が、まあ運輸省の役人が入っているかどうか知りませんが、どうもそういうような何かしら一種の商行為、営業行為的なものが背景にまつわっているんじゃないかという疑惑があるのですよ。あるのかないのか。これはまあ別段探査をしたわけじゃございませんが、何とはなしにこの法案の背景にいま申し上げるようなことがちらちら耳に入ってくる。もし事実関係がわかっておれば、わかっておる範囲でけっこうですから教えていただきたい。
  143. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) いま先生がおっしゃったような事実は、私らは全然聞いておりませんです。
  144. 森中守義

    森中守義君 まあひとつ、運輸省にさようなことがあってはならないし、そういう話が出ること自体、私どもあまり愉快な気はいたしません。そういう意味で一そう省内における自粛を要望しておきたい。  それからこの前、杉山君の質問の中でもちょっと出ましたが、省令、政令の問題。衆議院の修正案の問題ですよ。これは大体まあ法案国会に出されてくる場合、政令もしくは省令等が委任を受けるような場合には、政省令の原案というものも法案にセットされるのが大体慣例になっております。今度はそれありませんね。どうしてそれがついていないのですか。
  145. 星忠行

    説明員(星忠行君) この法律には政令がついてございません。ただこれからこの法律が公布されてから施行されるまで、試験機関につきましては一カ月間を置くことになっております。その間に省令を準備するいとまがございます。
  146. 森中守義

    森中守義君 その省令に委任しようという問題ですが、この一定距離以遠に出漁する漁船については云々という問題ですね、この一定距離というのはいろいろ説がある。社会党では二十、それから自民党では百、民社党では五十というように段階が幾つかに分かれているのですが、運輸省考える一定距離とは何ほどのことを一番妥当なものと考えておりますか。
  147. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。  この一定距離の問題につきましては、先生指摘のように、この審議の過程におきましていろいろと議論されたことは事実でございます。ちなみに百海里説あるいは五十海里説あるいは二十海里説、いろいろございました。政府といたしましては、先ほど申し上げましたように最近の機器の発達あるいはそれに伴って仕業点検の厳重な施行と、こういったこと、あるいは甲機両用の免状を取らせる、こういうことにかんがみまして、あるいは関係機関のいろいろな御意見を尊重いたしまして、少なくとも外洋小型船につきましては機関長の乗り組みは不要なものである、必要ないというふうに考えたのが政府原案でございます。しかしながら、御指摘の修正案が衆議院で可決された経緯にかんがみまして、政府としては、このいかなる区域を航行する外洋小型船に機関長を乗り組ませるかどうか、これにつきましてはただいま鋭意検討を進めておる段階でございます。
  148. 森中守義

    森中守義君 いまの局長の説明では、当初は機関長のあれは不要なものであると思ったのだが、いろいろ変化をしてきた。要するに考え方は当初から変わったと、こういうふうに理解していいですか。
  149. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 政府原案といたしましては、あくまでも外洋小型船につきましては機関長を乗せる必要はないというふうに考えておるのでございます。
  150. 森中守義

    森中守義君 いやいや、鋭意検討ということになると、当初の考え方と現在は、少なくともいまの答弁からすれば大きなカーブを描き始めているというように私は思うのだけれども、それはどうなんです。
  151. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 御指摘の点は省令に落とす問題でございまして答えにくい面もあろうと思いますが、当初原案に考えておったことは、いま御説明申し上げたとおりでございますが、国会の審議を通じまして、委員各位の御意見も十分拝聴いたしまして、今後の省令決定にあたりましても、委員長はじめ委員皆さま方の御意見というものを十分尊重して、この省令につきましては決定いたしたいと、かように考えておる次第でござ  います。
  152. 森中守義

    森中守義君 海上安全船員教育審議会の佐々木会長の答申、この「記」の中で配乗別表の改正がいわれているんですが、これは答申を受けたときにどういう説明を受けたんですか。つまり配乗別表の(2)の中で、「一定距離以遠に出漁するものについては機関長を乗り組ませるべきである。との意見があった。」——この「意見があった。」というのは少数意見なのか何なのかよくわかりませんが、この辺の答申を受け取るときには佐々木会長からどういう説明を受けたんですか。
  153. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。  ただいま先生おっしゃいまするように、昭和四十八年の二月十七日に海上安全船員教育審議会長の佐々木先生から新谷運輸大臣に、モーターボート等小型船舶に乗り組む者に対する免許及び国家試験のあり方についての答申がありましたことは事実でございます。その中で先生の御指摘のように、「一定距離以遠に出漁するものについては機関長を乗り組ませるべきである。」と、こういう御意見があったことも事実でございます。しかしながら、審議の過程におきましては、先ほどちょっと触れましたように、こういうような意見が出ております。すなわち、近年における機器の著しい発達及び機器の信頼性向上等の現状を勘案して、船舶職員の乗り組みについても時代の趨勢に応じ合理化すべきである、こういう意見が圧倒的多数を占めたと、こういうように出ております。そういうわけで先ほど申しました運輸省原案について支持を得たわけでございまして、運輸省といたしましては、その少数意見をもちろん検討はしたわけでございますが、こういった多数の意見考え運輸省といたしましては、先ほどお話ししましたように、機関長の乗り組みを必要としないと、こういうことに結論を得た次第でございます。
  154. 森中守義

    森中守義君 先ほどの大臣お答えで、非常に慎重な意味合いはわかりますが、どうなんでしょう。これが実はこの法案の最大の目玉になっている、端的な言い方をしますと。したがって衆議院の審議の経過及びその修正案並びに附帯決議、こういう経過などを考えたり、また参議院でも、本来であれば、もう少し時間をかけてやりたい。けれども、そうもこの場合は運賃法とちょっと質も違いますから、そうむちゃなことも申しませんが、やっぱりこの問題は軽々に扱うべきでない、私はそう思う。  そこで各党もそれぞれ見解を異にしているわけですね。衆議院から送ってきた経過も一通りはのみ込んでおりますよ。けれども、いよいよこれを省令に織り込もうという場合にどうするのか。私は午前中もちょっと出しましたように、十六団体に対して法律改正意見を求めた、そういういきさつもあります。そこで十六団体全部とは言いませんけれども、こういうことに非常に関係が深い団体に、やはり運輸省としては協議をなさる必要がある。これは具体的なものとしてお約束願えるかどうか。諸般の情勢を検討して慎重に決定するということだけでは、どうもあとあとに尾を引くような気がする。そこで日本船長協会——ちょっと記録してください。それから全日本海員組合、日本船舶機関士協会それから船舶部員協会、日本海難防止協会、日本内航海運組合総連合会、日本港運協会、この七つの団体に早急に大臣はお会いになり、船員局中心になってもらいまして、十二分にこの七団体意見の交換をする、そういうようなことで取りきめていただかないと、法案が成立をした、あと省令は大臣におまかせをしたということでは、経過経過ですから大臣もおわかりとは思いますけれども、やはりあとあとに問題を残すようなことではぐあいが悪い。ですから、いま私があげました七つの団体とできるだけ早急な機会にこの問題で協議を開始してもらいたい、こう私は思うんですが、お約束できますか。
  155. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 法律を御審議いただきまして、そして衆議院からもいろいろ御提案があり、最後に修正案が可決されまして、その中に外洋小型船については丙種機関士の問題が含まれているわけでございます。したがいまして、これをどういうふうにこの中に省令を落とし込むかということにつきましては、これは、国会の審議というものが一番優先し、皆さま方の御意見というものが、委員皆さん方の御意見というものが一番中心になって、私どもは法案の修正をちょうだいしたわけでございますから、この意見が一番中心になるべきだと考えております。  なお御指摘の点については十分検討させていただきまして、御相談もさしていただきたいと思っております。
  156. 森中守義

    森中守義君 ちょっと大臣、その法案について協議してくれというんじゃない。それは、国会は最高のものですから、そういうようなことは私は言っているんじゃない。ただ問題は、百か五十か二十かという、この辺のことがきちんと確定をしないまま省令に実は持ち込まざるを得ない。ところが、いま私があげた七つの団体というものはそれぞれ一つの見解を持っておりますよ。特に、きのうは委員長あるいは理事諸君によって現地の視察もやっている。しかも、この現場での認識というものは、たとえばリモートコントロールの問題等も、竹田君が指摘したような状態であるということが現実に理解をされた。そういうように私は私どもの理事から連絡を受けている。そこで問題は百か五十か二十か、あるいは他に何らかの合意点があり得るのかということは、やっぱり現場を扱っている各団体のそういう皆さんの意見を聞くのが一番穏当だ。  残念ながら、私はいま、社会党が二十だからこれは二十にこだわりますよ。けれども、五十がいいのか百がいいのか二十がいいかということは、残念ながら実務の経験がございませんから、どれが一番妥当だということが、党の決定は決定として言えましても、実際問題として私はよくわからない、正直に申し上げまして。だから、そういう意味では、一番現場を扱っている各団体皆さん方意見を徴することが数字を固めるには一番妥当であろう、まあそういう意味で会って、ひとつよく話をまとめて確定をしてほしいと、こういうわけですよ。この法律の運用ですとか、あるいはこの法律はどうなのかという意見を聞いてくれというんじゃない、それはここできめるからいいんですよ。要するに一定距離の問題に限定をしまして代表大臣、会われたらどうですか。早急に協議を開始する——このくらいの御返事をいただけるんじゃないですか。
  157. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) おっしゃることはよくわかります。おっしゃることはよくわかりますし、ざっくばらんにここでばらばらといろいろのお話を申し上げることもどうかと思いますが、おっしゃることはよくわかります。私が直接会うかどうかは別といたしまして、必ずそういう方々と御相談をいたしましてきめたいと思っております。  ただ、申し上げましたのは、この修正案が出てきますまでにはいろいろ理事者間において、各党間においていろいろ議論が詰められておるものですから、そういうようなものを、やはり委員皆さん方意見というものを第一に尊重すると。また先生の御指摘のそういう団体方々とも御相談することをお約束いたしたいと思います。
  158. 森中守義

    森中守義君 だいぶ時間をいただき過ぎたようですので、まだあと港湾関係とか、あるいは響灘の問題とかたくさんあるのですけれども、これは後日に譲ることにいたしまして、どうも不十分な質問ですが、船舶職員法内容につきましては、後日またいろいろ注文をつけたりお尋ねする機会もありましょうから、これで終わります。
  159. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まず、現在海運界で大きな問題になっておりまする船員雇用、それから船員費の高騰というものについてお尋ねしたいと思います。  現在、船員費の高騰に伴いまして海運界ではチャーターバック船、それから仕組み船というものがたいへん最近ふえておりまするけれども、この状態について、簡単でよろしゅうございますからちょっと御説明願いたいと思います、御当局に。
  160. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 仕組み船並びにチャーターバック船については、専門的ないろいろなむずかしい問題がございますので、政府委員から答弁させていただきたいと思います。
  161. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) まずチャーターバック船について御説明を申し上げたいと思います。私どものほうにさしあたってございます資料は、海運業のうちの六中核体の資料でございますので、それに基づいて先生に御説明をさせていただきたいと思います。まずチャーターバック船ということの前には、海外に船が売られるという、いわゆる海外売船ということが根本にあるということでございますので、まず海外売船の実績について御説明申し上げます。四十五年に海外売船は三十七隻、二十七万九千トン、それから四十六年に三十八隻、三十三万五千トン、四十七年に六十五隻、八十八万一千トンでございます。隻数は合計で百四十隻になると思います。それから、その海外に売られました海外売船のうちで、いわゆるチャーターバックということで再び日本に再用船のかっこうで帰ってきている状況を申し上げたいと思います。これは四十八年の十二月の時点でのチャーターバック船の現状を同じく六中核体の数字で申し上げたいと思います。チャーターバック船は六十九隻、百四万トンでございます。以上が海外売船とそれに基づきますチャーターバック船の現状でございます。  それから仕組み船のことを申し上げます。仕組み船と申しますと、いろいろ定義はございますけれども、私どものほうでは日本の船主が用船をする目的で日本の船台を外国の船主にあっせんをして、日本の造船所でつくった船が日本の船主に長期用船のかっこうで雇われているということで仕組み船の定義を考えておりますが、その状況を申し上げますと、四十八年十二月の数字で六社が持っております仕組み船は四十八隻で、百三十二万六千トンでございます。
  162. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いま海運局長から数を承りましたけれども、現在のこれは六中核体だけの数字でございますけれども、これ以外のものはわかりませんか。
  163. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 海外売船の実績は、六中核体でなくて全部の数字をただいまから申し上げます。それ以外のチャーターバック船と仕組み船の現状につきましては六中核体のほうだけしか現在私どもの手ではわかっておりません。また主として行なわれている現状が、それが多いと思うわけでございます。海外売船の実績は日本船社の全体で申し上げますと、四十六年度に百十一万トン、それから四十七年に二百三十四万トン、四十八年に百五十五万トンでございます。
  164. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 大体これはわかりましたけれども、この原因は、先ほど私指摘しましたように、日本の場合、やはり船員費の高騰と思いますが、その辺のところの御見解はいかがですか。
  165. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 海外売船の中身は大体二万トンから三万トン程度、それ以下の船舶あるいは船齢が古い船舶が主としてその対象となっております。これはやはり船員費の上昇を中心とした船舶の運航費の上昇の結果、運航費の比較的高い小型の船舶あるいは合理化ができない老齢船が、国際競争力がなくなって国際的な運賃市場の運賃では赤字運航を余儀なくされる実情から、こういった事態が生じてきていると思われるのでございます。
  166. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 今後このような傾向が依然として続いていくのかどうかということについて運輸当局のお考えを承りたいのですが、同時に、いまの売船なんかでも、四十七年度をピークとして四十八年度、昨年はだいぶ減ったように見えますが、これらの原因と申しましょうか、それもあわせて御見解を承りたいと思います。
  167. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 原因につきまして、実は船員費の上昇を中心として諸経費が高騰してということを申し上げましたけれども、一つにはやはり為替の影響があろうと思うのでございます。実は一ドルで、御承知のとおり三百六十円の運賃をかせいでおりました日本船が、為替相場の結果、一番円高になりましたときには二百六十円台の運賃しかかせげなかったということがございまして、国際競争力が相対的に非常に不利になったという点がございますが、御承知のとおり現在ではまたその円高の傾向がやや変わりまして、三百円程度ということになっております。そういった点で、こういった傾向がそのままどんどんと続くということも考えられないのでございます。また私ども、実は話が少しそれるんでございますけれども、海外売船につきまして、むやみに海外売船を行なわれまして、日本の船員の皆さんの職場に影響があるようなことではいけませんので、私どもは海外売船を許可いたしますときに、船を売られる船主の方からその船員対策についての御説明を伺うということになっておりまして、そういった点で、労使の間でいろんなお話し合いが行なわれていると聞いておりますが、その結果、まだお話し合いがなかなかつかないというような傾向が最近見られますので、そういった影響もあって、海外売船の実績が多少減ってきておるというふうにも受け取られるのでございます。
  168. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いまも局長のお話ありましたように、やはりこの船員の雇用関係に非常に大きな影響を与えているのがこのチャーターバックあるいはまた仕組み船だと思いますが、そしてあくまでもこのチャーターバックとか仕組み船というのは、私は、船員雇用関係から見ましても、日本海運の現状から見ましても、むしろ平常なもんじゃないと、このように思います。むしろ、でき得れば、やはり日本の船に対しては日本の船員が乗ると、このような姿が一番正常じゃないかと思っております。  したがって、当局におかれましても、いま組合等の希望もあったりということでございましたが、それにもかかわらず、やはり当局としてこのような正常化というものを推し進めていくべきじゃないかと、このように思いますけれども、いまの、幸か不幸かしりませんが、円価も少し下がってきましたので、その点では、いまお話しのように、この傾向に多少足踏みをさせているようでございまするけれども、しかし、そういった円価の為替相場の変動だけというんでなくて、やはり本来の姿に戻していくことが私は正しい海運政策だと思いまするし、また同時に、いまこの原因になっておりまする日本の船員雇用というものを円満に推進していくためにも有効なことじゃないかと、こう思えるわけでございますが、大臣はどのようにお考えになりますか。
  169. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 私、いまのチャーターバック船あるいは仕組み船というものが、どういうものであるかというのは、実は一週間ぐらい前から一生懸命勉強したわけでございます。それで大体頭の中に出てきたわけでございますけれども、なかなかこれはむずかしい仕組み、いわゆる仕組み船の仕組みになっているようでございます。しかし、それはともかくといたしまして、いま先生が御指摘になりましたように、チャーターバック船でございますとか、そういうような面において、雇用関係等もあわせて、日本の船に私は日本の船員が乗り組んで、国際競争力にたえ得るような海運の行政と申しますか、そういう力をつけていくというのがやはり基本でなければならないと思います。  今後もいろんなむずかしさはあろうと思いますけれども、そういう点について努力をしてまいりたいと、かように考えております。ただ法律的にいろいろこの売船等につきましても、歯どめのないというようなこともありそうでございまして、むずかしい点もあろうかと思いますが、それはそれとしまして、私は原則的には先生のいまの御指摘が正しい議論であり、私どももそういう立場に立って行政を進めてまいりたいと、かように考えておるわけであります。
  170. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 このチャーターバックに関連した問題ですが、外国人船員ですね、外国人船員を日本の国内船に乗船させるという問題が前に起こりましたけれども、現在はどんなような状況でございますか。ありますか、それとももうなくなってしまったかどうか、実情をお伺いしたいと思います。
  171. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 外国人船員を乗っけているかどうかということにつきまして、私どものほうには、まだ詳しい資料は来ておりませんですが、ただ、ただいま先生がおっしゃいましたように、日本船舶による日本船員、これは非常に私どもも、大臣もおっしゃったように、基本的な姿勢としてごもっともなことだと思います。ただ私どもで、いま外人船員がどのぐらい乗っているかという資料は、まだこちらへ来ておりません。
  172. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 資料がないということになりますと何ですけれども、やはり当局としても、一時は相当の問題になったはずでございまするので、現状は、いま問題になっていないからいいんだというのでなくて、現在もこのようなことが行なわれているかどうかということについては、やはり行政上知っておく問題じゃないかと思います。そんなことで、御存じなければしかたありませんが、御所見としてどんなふうに思いますか、もう全然そういうことがなくなったとお思いになりますのか、それとも調査すれば案外あるんじゃないかというようなお考えなのかどうか、その辺、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  173. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) こういった点につきましては、なお極力関係機関を通しまして調べていきたいと、かように考えております。ただ私どもの考えといたしまして、いまお話ししましたように、こういった、日本の海運業者が運航する日本船に外国人船員を乗り込ませるということは、船員の需給状況から見て、あるいは先ほど来問題になっております雇用安定、そういったことから考えまして、好ましいことじゃないと、かように考えておる次第でございます。
  174. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いま現在、船員費の高騰に対しての、一番当面している国は、日本のほかにもアメリカがございますし、またヨーロッパの国々もございますけれども、アメリカでは、この高騰に対して船員費の補助の措置をやっておりますですね、やはりこれなんかに対して、当局では、アメリカ式というわけじゃございませんけれども、アメリカと同じようにこの補助を行なって、わが国の船員の安定雇用をはかるというようなことを考えられたことありますか、それともこのようなことを今後御検討されるかどうか、お伺いしたいと思います。
  175. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 外国の助成は、先生からいまお話ございましたように、いろいろ形態がございます。例としておあげになりましたアメリカに、私どもも運航差額補助ということで、外国の、船員の賃金あるいは保険料等、アメリカ船の差額を補助しているんだというようなことがいわれている、運航差額補助というものがあるということを承知しておりますが、実はその中身がどういうものであるかというのは、実は外国の助成というのは、それぞれの特性がございまして、中身がほんとうにいろいろわからぬ点がございます。特に、こういった運航差額補助については、国際的に見てやはり自由な競争をするんだという、海運自体の世界的な傾向からして、必ずしも、そのアメリカのこういった運航差額補助というものが世界的に認められていないという点も実はありますので、私ども日本船の国際競争力を強化するために、どういうかっこうでやったらいいかということは、いままでも海運造船合理化審議会で、皆さんお集まりのところでよく御相談をしてまいりましたし、現に私どもも海運造船合理化審議会に大臣から諮問を出してお願いをしているところでございますので、その辺はよく御相談をさせていただきたいと思っております。
  176. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) ただいま薗村海運局長からおおむねについてお答えいたしましたけれども、私からも船員局立場から補足させていただきます。  今後の海運政策の一環といたしまして、人件費の補助あるいは先生御承知のように利子補給の問題、いろいろあると思いますが、この問題をどうするかにつきましては、いま海運局と共同作業いたしまして、近く海運造船合理化審議会がございますので、そこの場において慎重審議したい、かように考えておりますのが一つと、それから船員局といたしましては先ほど来、先生がおっしゃられまするように、こういった船員の雇用安定ということが一番船員行政のポイントでございまして、その一環といたしまして特に船員の再訓練施設の強化あるいはそれに伴いまして、船員の職業安定所の充実強化、こういった点について従来非常に力を入れておりました。幸い今年度の予算におきましても先生各位の御協力によりまして、再訓練の予算につきまして海技大学において大幅な予算をいただきました。また船員の職業安定所の予算につきましても相当な予算をいただきました。なおそういうことを今後中心に、雇用安定あるいは船員の再訓練を進めていきたい。さらに具体的な雇用安定策につきまして、関係機関あるいは組合の方とも慎重に検討いたしましてその具体策をはかっていきたいと、かように考えておる次第でございます。
  177. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いま議題になっています船舶職員法改正案につきましての御質問も二、三したいと思ったんですが、だいぶ各委員からのこまかい質疑もありましたので、私はまたあらためてお尋ねする必要もないような気もいたします。そこでほんの一、二だけ、重複するかもしれませんが、ひとつお尋ねしますので御返事をいただきたいと思います。  この法案改正案の主たる目的と申しましょうか、それはここにも書いてありまするように、政府側の御説明にもありまするように、最近モーターボートが非常にふえてきた、あるいはまた遊覧船——遊覧漁船と申しましょうか、それが非常にふえてきた。これが結局海難事故を急激に増加さしている。そういうような事情でございまするので、それをこの乗り組む人たちの生命あるいはまた逆に船以外の人たちに対する生命とか健康というものを守るためにも、やはり何らかの措置をすることは当然でございます。で、いま当局のお考えになっておるこの案に盛られておるような乗り組み員に基礎的な知識とか、あるいはまた技能というものを授けるそのための免許制度をつくろう、こういうことでございますので、私は非常に時宜を得た案であり賛成でございます。  しかし、賛成ではございまするけれども、私は安全のため、海難事故を減らすためという見解から言いますると、にわかに賛成だと言いにくい点が多々あるわけでございます。先ほども問題になりましたように丙種機関士の切り捨てが今度の改正で行なわれようとしているということでございますね。これはちょっと矛盾しているように思いますので、その辺のところを、ひとつもう少しわかりやすく、矛盾じゃないんだと、おまえの考え違いなんだと、こういうふうに理解できれば非常にありがたいと思うんですが、現に全日本海員組合の村上組合長からもわれわれのほうに書面が来ておりますが、これを読みますと、「改正案によれば、総トン数5トン以上20トン未満の船舶について機関長定員が削減されるが、通船・曳船などの港湾船を含めて、これは海難防止と海上安全に逆行する。」というふうな反対を申し入れております。現に私も、単にレジャーボートといわれる遊覧船、モーターボートというようなことに対するだけの乗り組み員の規制とか、あるいは資格授与ということならば、先ほど申し上げたように大賛成でございますけれども、一般の引き船とか、いわゆる作業的に使われているような船までに対して、むしろ安全性を強化するということならばいいんですけれども、逆にせっかくいままで法律できまっていた資格者を乗せるということさえもゆるめるというのは、ちょっと私、逆行するような感じがいたしますので、あえてお伺いする次第です。
  178. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘の点につきましては、確かに一番重要な点でございまして、この点につきましては、私ども運輸省といたしましても一番重点的に審議を重ねたのでございます。先ほども申し上げましたように、そもそもこの改正案につきましては、関係有識者集まった審議会にかけまして、そうしていろいろと検討したのでございまして、そしてその第一点といたしまして、先ほどもお話ししましたように、最近非常に焼き玉エンジンからディーゼル化されておる、ほとんどがですね。そういうような現状にかんがみまして、機器の発達が非常に著しい、また信頼性の向上が著しい、こういったことから、関係有識者の大多数は、丙種機関士をおろしてもいいのじゃないか、こういう意見が出、またいま先生から御指摘のように、全日本海員組合からは併記答申といたしまして、それはおろすべきでないと、こういったような少数意見が出たことも事実でございます。そういうことで、いろいろと私どもも慎重に検討したわけでございますが、いまお話ししましたように、そういった機器の発達以外に、十分に事前に行政通達等によりまして事前点検あるいは始業点検といいますか、こういった点を十分に励行していただく、こういうことで、そういった安全性を確保したい、かように考えておる次第でございます。  なおまた、ただいま先生から港湾関係の引き船等の船舶に対してどうかと、こういう御意見もございました。これにつきましては、昨年も、ここに組合の方もいらっしゃいますが、黒住先生あるいは杉山先生、私ら一緒に現地も見てまいりました。そういうことで、私ども事務局の考えといたしましては、まだ一部にこの港湾の引き船等におきまして、新しい機器の購入されていない船舶のあることは事実でございます。そういう船舶につきましては、行政通達によりまして、従来どおり極力機関長を乗り組ませるように行政指導の徹底をはかっていきたい、かように考えておるわけでございます。ともあれ、こういうようなことの措置によりまして、先生の御指摘の点がないように、今後行政指導の面その他におきまして、関係機関とも密接な関係をもちまして、その期待に沿うように努力したい、かように考えておる次第でございます。
  179. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いまの御説明で一応わかりましたけれども、とかくいまの世の中というのは人命を非常に軽視する傾向がございます。火事があればすぐ何人かの犠性者が出る。実に私ども以前のような状態とは大いに違っているというようなことから、これは海上においても同じことでございまして、やはりボートに乗っている人たち、またその周囲で泳いでいる人たち、いろいろまた釣りをしている人、いろいろあると思いますが、その方々のやっぱり安全ということを考えなければならぬと思いますので、この船の海難事故が起こらないように善処していただきたいと思います。  まあ若干私も、局長がえらい確信をもって言われたんだけれども、だいじょうぶかなというような気持ちも多々あります。したがって、この法律がいよいよ行なわれる、実施されるという段階におきまして、やっぱり私は、それみたことかと私をして言わせないように、ひとつ格段の配慮をいただきたい、こう思います。  それからもう一つだけ承りたいのですが、今度免許制度にするという点につきましては、免許を受けるために試験なり技能の検査の機関が要るわけでございますね。しかも何といいましょうか、いま小型船舶、いまあげたような五トン以下なんというのも、ずいぶん先ほども数字があがったようですけれども、たくさんあって、日本に津々浦々あるようでございますが、この検査機関というのをどのようになさるおつもりか。  それから先ほどの御質問の中で、私もここで聞いておりましたんだけど、何かあまりはっきりしないような、理解できないような点もあったように思いますので、もう一回それについて御説明願いたいと思います。
  180. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) いま先生が御指摘になりました試験機関の問題でございます。これについて御説明申し上げます。  まず法律的に申し上げますると、本法の今度改正の二十三条の二でございます。二十三条の二で、「運輸大臣は、申請により指定する者に、小型船舶操縦士の資格についての試験の実施に関する事務を行なわせる。」、こういうたてまえになっておりまして、さて、この指定機関はどういう基準できめますかと申しますと、その経理あるいは技術的な経験あるいはそういった計画が継続的であるかどうか、確実にしているかどうかと、こういうことの基準が二十三条の三に書いてございます。これに基づきまして、まず指定機関を指定する、こういうことに相なるわけでございます。  さて、この指定機関は、ではどういうことをするかと申し上げますると、身体検査、それから学科試験、それから実技試験、この三つをやる、こういうたてまえになっております。いま私が申し上げましたこの指定機関は、先ほど森中先生からも御質問ございましたように、なぜ国でやらないかと、こういう御質問がございました。ごもっともな点でございまするが、いろいろと予算関係その他の関係におきまして、従来からこういった小型船舶操縦士の養成に実績のある財団法人にやらしたらどうかと、こういうことで事務的に進めておるわけでございます。で、どの団体にするかにつきましては、これから一カ月ございますので、慎重にきめたい、かように考えておるわけでございます。それが一つ。  それから、それ以外に、この試験機関の事務所をどこに何カ所ぐらい予定しているかと申し上げますると、大体私どもとしては次のように考えております。おおむねこの試験機関地方事務所は地方海運局の所在地ごとに事務所を置きたい。すなわち小樽、塩釜、新潟、横浜、名古屋、大阪、神戸、広島、高松、北九州、那覇と、この十一カ所を予定しておるわけでございます。そうしてこの試験機関でいま申し上げました試験をやりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  181. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いまのその指定機関はわかりましたけれども、その機関に所属するといいましょうか、試験官ですか、これはどういう人がなるんですか。
  182. 星忠行

    説明員(星忠行君) お答えいたします。  指定試験機関職員が、試験官として国にかわりまして試験の実施に関することを行ないます。
  183. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 そうすると、いまの財団法人ですか、その職員てすね。——そうすると、その人はあくまでも財団法人に属した人であって、いわゆる公務員とか、そういうものじゃないわけでございますね。どうなんですか、資格は。
  184. 星忠行

    説明員(星忠行君) 公務員ではございませんけれども、こういう国が指定しました試験機関職員は、小型船舶操縦士試験員というふうに規定されておりまして、必要な義務につきましては公務員と同様の義務を法律により課せられております。
  185. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 そういうようなことであれば、待遇といいましょうか、試験するときは公務員だというんでしょうけれども、しかし私ども考えてみて、公務員だからいいとか、正しいとかなんとかとは、一がいには言えないと思いますけれども、しかし、このような大切な指定機関に当たる人としては、要するに公的な人格を備えた人がなさるべきじゃないかと思います。たとえばいま自動車でもそうですね、自動車のドライバーなんかでも、もちろんたくさん学校があります。しかし最後の実技試験に当たるのは警察官でしょう。ですから何といいましょうか、一応は厳正な試験を受けて初めてドライバーになるということでございます。それでもいろいろ問題のあることは御承知のとおりであります。交通事故も依然としてあとを断ちませんから。  この海上におきまするこのような、いわゆるエンジンを動かす機関としまして、そのような衝に当たる人、ドライバーですね、このドライバーの資格を与える人が、財団法人か何かしらぬけれども、その職員だということは非常に軽いような気がいたします。先ほど予算が云々と言いましたけれども、私はそんなに膨大な予算がかかるとは思いません。しかも海運局があるところといえば数はしれております。毎日毎日何千、何百という人が受けるわけではございません。おそらくそんなにたくさんの人が毎日毎日押しかけるとは思いません、当座はいざ知らず。一応、平常化したときにはそんなに数は要らないと思います。そんなに膨大な予算が要るから、予算のためにこのような試験をおろそかにするということは、どうも納得いきかねるのですけれども、その辺のお考えいかがですか。
  186. 星忠行

    説明員(星忠行君) まず試験が公正、厳正に行なわれなければならないということは当然のことでございまして、小型船舶操縦士試験員は、たとえばこの法律またはこの法律に基づく命令もしくは処分一そういったものに違反する行為をしたとき、またはその試験事務に関しまして著しく不適当な行為をしましたときは、国が指定試験機関に対して、その試験員の解任を命ずるというようになっております。また、たとえば二十三条の九には、「指定試験機関の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、特定試験事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。」こういったような規定がございます。以上は一例でございますけれども、国の厳重な監督のもとに試験の実施に関する事務を行なわせることにしております。  それから次に、数でございますけれども、この小型の船舶というのは実際非常な数にのぼっております。たとえば実績で申しますと、昭和四十七年におきまする受験者数は、これはまだ現行法でございますから国家試験でございますけれども、一年間に十四万人という受験者数にのぼっております。これを国みずからが実施しますときは、先ほど御説明申しましたように、それなりの人員と予算を要することになるわけでございます。
  187. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) どうも何か金がかかって、よその団体に罰則をつけてやらせればそれで事が足りるのではないかというような意味の説明をしておりますけれども、私も原則的にはやはりさっきの森中委員からの御指摘もございましたように、これは国の機関によってやるのがいいことだと思います。ただ初年度の出発にあたりましては、いま五トン以下の人に対してはこういうような試験はないわけでございますから、無資格でやっておるわけでございますから、人数にしましても六十数万人というものが実はある、それで経過規定やら、あるいは免許を免除される人もございますが、初年度やはり三十数万人、はっきりした数字はどこかあったと思いますけれども、大体三十数万人の方々を対象にしなければならぬ、そういうような問題もあろうかと思います。しかし原則論に立ち返ってものを申しますと、お説のとおりだと私は思います。金が九億ぐらいとかなんとかいうような、そういうことで逃げられる問題ではないと思います。  しかしながら、こういうことで新しい法律によってやることでございますから、試験機能を持つだけの団体であれば、それにいろいろな監督と権限を与えて万遺憾のないような処置をとっていきたいというのがこの出発の趣旨でございますが、今後におきましては、どのくらいの一体試験人数が出てくるものか、受験人数が出てくるものか、そういうところも考え合わせまして原則的なその線は追っていかなければならないものだというふうに考えております。
  188. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まあ大臣のお考えも承りましたし、私も現実にはそれは非常にいろんな公的機関でもって公務員なら公務員がやるということのむずかしさもお察ししないわけじゃございません。しかし、むずかしいあるいは予算がないからといって、やはりこのような重大な海難事故を起こすかもしれないような運転者といいましょうか、海技者の試験というものはやっぱり重視すべきものだというふうに思います。したがって、初年度三十数万人も受けると、考えたとおり非常に多数の人でございますから、一々正規の公務員ということも実は問題だと思いますので、あえてそれをぜひということではございませんけれども、やはりこれからの方向としては、少なくとも陸上の自動車並みにもやれるはずだと思いますし、またそのほうが本来の正しい行き方じゃないかと思います。それがためにも、このようないまの海技従事者というものを正式に制度を設けて認めた目的にもかなうと、このように思うわけでございまして、当局の御善処といいましょうか、この問題についての取り扱いをさらに厳格にし、そしてこの制度そのものが実りある、要するに海難事故防止のために大いに役立ったというふうに言われるよう、ひとつ努力していただきたいと思います。  以上申し上げまして私の質問を終わります。     —————————————
  189. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) この際、委員異動について御報告いたします。  柴立芳文君が委員辞任され、その補欠として河本嘉久蔵君が選任されました。     —————————————
  190. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 一昨日、十九日の当委員会での終日の審議を私伺わしていただきました。もしこの法案が成立するようなことになり、施行された暁には、私は関係者といいますか、私が憂慮した以上に、非常に重要な問題があるということを痛切に感じさせられました。なお、いま一つ港内に対する運輸行政というものがより複雑に、いろいろ問題がなお起こってくるということを感じさせられまして、これは質問者は横浜港と浦賀水道に限ってのお話でございましたが、国際港というよりも山口組で代表されている神戸港、大阪港、また瀬戸内海、下関、函館、まあこれらを含んでも、わが国全港湾での港内における今後の運輸行政というものは、私は一そう複雑な困難な問題が惹起されると思うんです。そういう点、そう理解しますときに、まあ率直に大臣にこの改正案はひとつ検討し直したらどうだと言いたいんです。これはしかし御遠慮します。ただ各委員質問を聞いておりまして、私はできるだけ重複を避けたいんですが、あえて重複承知で私なりにどうしても確認したいと思います点について、ごく簡潔にひとつお尋ねしていきたいと、こう思うんです。  今回の改正の目的はレジャー船舶の取り締まり強化であったのが、実際には小型漁船、港湾船、通船、引き船、作業船も対象になっている。私の知るところというか聞くところでは、レジャー船舶規制で手をつけられたのだが、単なる法技術上の関連で漁船を対象にしたようだが、それは事実か、この間の事情についてまずお尋ねしたいと思います。
  191. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。ただいま先生からお話ございましたこの法律の目的とするところがレジャー船舶だけかどうか、こういうことと、それから小型漁船あるいは港湾関係の作業船、通船、そういったものを含むかどうかと、こういうお話でございますが、私どもとしては次のように考えておるわけでございまして、基本的には総トン数二十トン未満の小型船舶を対象といたしまして、これらの総合的な安全対策としてこの改正検討したわけでございます。したがいまして、これがレジャーボートであるとか、あるいはその他の船であるからといって差を設けたということはないし、また法律技術から言いましても、あるいは基本的な考え方としても、同一の共通した海事常識あるいは海事技術といいますか、こういったものを二十トン未満の方に十分に浸透させる、こういう見地に立ってこの改正考えたわけでございます。したがいまして、どの業種を取り出してこれを規制する、あるいは規制すべきということではなくして、総合的にこういった二十トン未満の船を対象といたしまして、その措置考えたい。こういうことから、いわば総合的に航行の安全をはかる、こういう目的でこの改正案を検討したというわけでございまして、決して一つのものだけに限ってやる、あるいはそれに差異を設ける、こういう意思ではございませんです。
  192. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 きょう各委員からレジャー船舶の問題についてもいろいろ御質問がございましたが、私はレジャー船舶の安全航行に対して、いままでどのような行政指導をやっておられたか、それが今度は法規制に変えられた限界について、どういう点が限界なのか、この点伺いたいと思うのです。小さな私の経験ですが、琵琶湖においてモーターボートによる人身事故を目の前で見ました。また夏になると、海水浴場におけるいろいろお話もございましたが、モーターボート、ヨットにおける人身事故、またレジャー船舶の海難事故が年じゅう、またこれらのレジャー船舶の運航が他の一般業務用、旅客用の船舶の運航に非常に差しつかえを与えている、また事故発生の原因になっていることがしばしば新聞テレビ等においても報道されている、こういうような点も承知いたすのであります。そういう点で、いままでこれらのレジャー船舶に対して行政指導を私は強く推し進めてこられたことだと思うのです。どういう指導を講じてこられたのか、それが今日では限界に来たということなら、それがどういう限界に来たのかということの見解をひとつ聞きたいのであります。
  193. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) いままでこういったレジャー船舶の運航に対しましてどういった行政指導をしたか、こういう御質問でございますが、お答え申し上げたいと思います。  運輸省といたしましては、この法律の策定前に、決してこういう行政指導をしていなかったということはないのでございまして、すでに昭和四十六年の八月に通達を出しました。これは五トン未満の船舶でございますが、従来、先生御承知のように、旅客運送の用に供するものを除きまして、免許受有者の乗り組みが義務づけられていなかったわけでございます。そこで旅客の解釈というものを「最小運航要員以外の者」と、こういうふうに行政通達で明らかにいたしました。そういうことで、実際上免許受有者の乗り組みを必要とするように行政指導をはかってきたところでございます。ところが、やはり依然として、先生御承知のように琵琶湖をはじめ昨年は、一昨年警察からもお話がございましたように、鎌倉の由比ケ浜でも大きな事件がございました。こういうことで、特に夏のレジャーシーズンになりますと、非常にこういったレジャーボートの事故が激発しております。そういうことで、こういった従来私どもがとっておりましたところの行政指導では限度がある、こういうふうに感じたわけでございます。そこで、いまお話をいたしましたように、根本的に船舶職員法改正いたしまして、そしてこういった甲機両用を備えた免許を与える。こういうことが実際に適当でないかというふうな意味でこの改正案に踏み切ったと、こういう次第でございます。
  194. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 立法措置以外に安全航行の確保ができないとするならば、本法の改正のほかに別途法案による規制が試みられた、検討されたことがあるかどうか私は聞きたい。  というのは、森中委員からも御質問あったように、またそれに対する答弁によりますと、たとえばヨットなんですが、私は運輸省の資料によっても、小型船舶の現状——これはもうここで申し述べません。驚くべき数字であります。ヨット一万六千そうを除いて十万七千八百そうだとか、また先ほどからの審議を伺っておりますと、今後の生産見込みについても、いろいろ四十八年、四十九年、五十年という見込みについて、十九万五千そうの生産が見込まれるとか、まあだいぶん老朽船になっての目減りもありますが、こういう新しく生産される見通し等についてのお話がございました。これは石油事情に応じて少し目減りもあるだろうというようなお話もございましたが、ここ数年、百貨店一つのぞきましても、自動車メーカーのショーウインドをのぞきましても、また楽器店のウインドをのぞきましても、モーターボートの売り出しの新種の陳列というものは、もうはんらんしております、至るところに。それほどモーターボートの激増ということは予想されますし、またこれがだんだん大型化され、機械化されてまいりますし、またわが国の置かれた事情からいって、海上レジャーの激増ということ、これは決してはばむべきものでもないと、こう思うんです。こういう点では、私はあまり専門語を知りませんが、一つの海域をきめるとか、やはり健全な海上レジャーの指導を私は行なうべきだと、こう思う。こういうような点から、本案の改正とは別個に、ひとつ別な法規制というものが考えられて私はしかるべきだと思うんです。私の質問の要点はここなんです。その点ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  195. 佐原亨

    政府委員(佐原亨君) 先生の御心配、まことにごもっともでございますが、本来ならば官房お答えすべきことかもしれませんが、レジャー船舶の安全運航に関しましては、運輸省といたしましても、官房中心にしていろんな案を検討したわけでございます。最終的には現に御審議願っております船舶職員法改正と、前国会で成立いたしました船舶安全法の一部改正という程度でよかろうと、こういう結論に達したわけでございます。  残る分野は何があるかと申しますと、レジャー船舶の航法とか、航行区域の規制とか、こういった問題が問題としては残るわけでございますが、その点につきましては、レジャー船舶といえども、海上衝突予防法あるいは港則法、海上交通安全法、こういった法律が適用されますことによりまして、一応の担保はできるんではあるまいか。また夏場、海水浴場等におきましては、一昨日警察庁も説明しておりましたように、迷惑防止条例、水上安全条例というような条例による規制を普及させることによりまして、警察庁と海上保安庁相協力いたしまして、パトロールその他によりまして指導、取り締まりをやっております。ものすごい勢いでモーターボートが伸びてまいりますということを考えますと、これではたして十分であろうかという疑念が残りますけれども、石油危機その他で若干の足踏みが予想される現在、とりあえずそれでやってみる。いままでは非常に野放しであった面で、物的の面で安全法、人的の面で職員法ということで、一応の基礎的な知識、技術を求めるということによってとにもかくにもやってみる。将来の問題といたしまして、ほんとうにものすごい勢いでまたモーターボートが伸びてまいりまして、ただいま申しましたような衝突予防法あるいは港則法等の規制では手にかからないというような事態が現出いたしますと、それはそれを受けまして、また立法措置その他を講ずる余地はあろうかと思いますが、現時点では、ただいま申しましたような立法措置の範囲で何とかやっていける、こういう判断をしたわけでございます。
  196. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 いろいろ御答弁いただきましたが、私が率直に申し上げておるのは、レジャー船舶の健全な発展をひとつ指導するために、この法案と別途な法案による規制があってしかるべきだという私の考え方をひとつ強く、要望というのか、いままで検討あったと聞いたのですが、もちろん検討あったと思うのですが、この点を申し述べまして、次に移りたいと思います。  確かに、この法案のように、レジャー船舶について法改正による船舶職員の義務づけを行なうことは、安全上からいきましても、私はいいことだと考えます。しかし、こうした船員の義務づけに反して、五トン以上二十トン未満の船舶について、いろいろ先ほどからも議論がありましたが、機関長を削減した根拠というものには私は非常に疑問を持つのです。これについての根拠を伺いたいと思います。
  197. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) この問題につきましては、先ほどいろいろと御説明いたしましたのでございまするが、まず第一には、何と申しましても、総トン数二十トン未満の小型船舶におきまするエンジンでございますか、その機種の発達は非常に著しいということが第一点。それから今回の免許の資格というものが、甲板部とそれから機関部の職務を分担して行なう必要がなくなってきた。こういうことで、一人の海技従事者に対して甲機両用の職務を行なうことができる。したがってエンジンの知識も十分に持っておる、あるいは技術を持っておる、こういうことによりまして、船舶職員としてその機能を果たし得る、こういうふうに判断したのが第二点。第三点は、今後こういった事故に対しまして、絶体起きない、こういう行政指導をはかるべく、特にエンジンの仕業点検、こういったものについては十分な配慮を行なっていきたい。こういうことで機関長を省略する、こういうことに相なった次第でございます。
  198. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 この問題については、先ほどから当委員会でも意見が出ておりますように、海上安全船員教育審議会では、特に漁船について「一名とする」、船長だけで機関長は不要だというふうに、また「一定距離以遠に出漁するものについては機関長を乗り組ませるべきである」という併用答申を行なっております。しかし政府原案では、一名とする改正案なんですが、私はいまのと少し同じようになると思いまするが、このたびの一名とした改正案について、事重大ですから、根拠をひとつお尋ねしたいのです。
  199. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) ただいま先生が御指摘ございましたように、この海上安全船員教育審議会の過程におきまして、船長以外に機関長も要るという案も出たということ、あるいは逆に機関長は要らないと、こういうような議論が出ましたけれども、結局いろいろと審議の過程で、先ほどもちょっと触れましたけれど、大多数の委員の御意見は、こういった機器の発達あるいは時代の趨勢に応じた合理化をすべきである、こういうような意見が大多数を占めたわけでございます。そういうことで運輸省といたしましては、機関長を必要としないと、こういうような認識に立ちまして今回の一部改正案を提出したと、こういう次第でございます。
  200. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 私はいまのお答えに対して、なお少し御意見を聞きたい点があるんですが、ひとつ進みまして、海難事故の現状を見ますと、機関故障が主原因となっております。こうした事実からして、機関長を削除して安全がほんとうに確保できるんでしょうか。特に二十トン未満の遠洋漁船が現状どうだということをおっしゃっていただきたいんです。
  201. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、最近の海上保安庁におきまする統計によりますると、確かに機関故障が多いことは事実でございます。それを分析いたしますると、特に機関の取り扱いによるもの、ハンドリングが不良であるということ、あるいは機関の整備が、メンテナンスが非常によくないというようなこと、あるいは材質が悪い、あるいは不可抗力、いろいろと原因ございますが、なかんずくエンジンのハンドリングが不良であるということ、それから機関の整備が不備であると、こういうことが統計上出ております。で、このようなエンジントラブルの問題につきましては、最近の機器の発達の状況から申し上げますると、先ほど申し上げましたように定期点検なり、あるいは仕業点検というものを事前に十分に行なっておれば、かかるエンジントラブルは少ないんじゃないかと、かように考えておるわけでございます。と同時に、先ほど申しましたように、今回の試験によりまして免状を取る方は十分にこういった機関の知識を持ってもらうべく試験を受けるわけでございますので、そういった点については私どもといたしましては、こういった事前の仕業点検、それから試験を通るということによって、そういう面が担保できると、かように感じておる次第でございます。
  202. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 私はしばしば、この運輸省から出された、また他の調査室から出された資料によって御質問することを、いまさらということで遠慮申し上げておったのですが、いまの御答弁を聞いておりまして、実際に海難事故というものの原因が機関の故障による、これは正直にそのことが主因だということがもう明らかなんです。これと、たとえば現在丙種にしろ何にしろ機関長をおろすということが、どんなに当事者にとって重要なことかということ、私は雇用上の問題から言っているんじゃないです、いま。たとえば海難事故の現状から見て甚大ではないかと、こう思うのです。特にこの二十トン未満の遠洋漁船の実情というものは、私はしろうとですからいろいろお伺いしましたが、ここで私は率直にそれをば訴えることのできる表現力を持っておりません。また十九日の竹田委員の御質問で引き船の横浜の現状の話をされ、それについてのあなたの答弁を伺っておって、実は私も不満足に思っておったものです。  あのような現状から考えて、やはりこの際、機関関係の者をばおろすということが、どんなに当事者にとり、また海難事故防止にとっても重要なことかということを、私は考慮されたかどうか。私は非常にいままでの答弁では不満足ですので、たってひとつ、二十トン未満の遠洋漁船の実態、これはだれかほかの方になるのですか、そうじゃないのでしょう。——一体引き船等において今度機関長をおろされたことについての考え方をひとつお伺いしたいのです。
  203. 謝敷宗登

    説明員(謝敷宗登君) 先生のお尋ねの一部についてでございますが、お答えをいたします。  前国会改正をいただきました船舶安全法におきまして、五トン以上二十トン未満の漁船で特に一定海域以上の水域を漁労場といたしますものにつきまして、船舶安全法の一部改正によって検査の対象といたします。それは、したがいまして五トンから二十トンのうちで、特に遠洋に出て行きます漁船のエンジンも当然検査の対象になりますわけで、先ほど私どもの局長から御説明申し上げましたように、従来検査の対象からはずれていたものですが、今後はこれらのものについて三年に一回ずつ定期検査をしながら、エンジンの安全を期していきたい、こういうふうに考えております。
  204. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 御指摘の点は、今日まで各委員から、深刻にいろいろな角度から御指摘のあったところでございます。私もこの法案の御審議を願う前に一番心配したのが、安全であるかと、それから雇用関係はどうなるのだということ、実はこの二点は一番心配していろいろな角度から私なりに検討をいたしたのでございます。御承知のように、機関が非常に進歩したとか、いろいろなことが原因となり、またそういうようなことを審議会におはかりし、そして船長に総指揮者としてのいろいろな技能もさらに研修してもらって、ひとつ最低限度の安全基準を定めたということに私はすぎないと思います。しかも大多数の小型船舶につきましては当てはまるといたしましても、多種多様な小型船舶の中には遠方に出漁する船も御指摘のようにございます、また特殊な作業に従事する船もあるわけでございます。また業界の労使関係の実情いかんによっては、私は先ほど心配した一点について、法改正を理由に雇用問題を惹起するおそれということも、これはなきにしもあらずだと思うのでございます。  したがって、これまでの審議で、委員皆さま方からこういう点について、ことばは違いますけれども、いろいろな角度から私は御指摘があったと受けとめておるわけでございます。遠距離に出漁する漁船、旅客を運送する通船、はしけ等を曳航するいわゆる引き船等については、その航行の実態に応じまして、機関長または補助者を必ず乗り込ませる、リモートコントロールのきかないいままでの船等につきましては必ずこれを乗り込ませるという強力な行政指導と申しますか、一片の通達に終わることのないような、責任のある措置をとってまいらなければならぬと思うわけでございます。  たとえば港内の引き船につきましては、船員当局のみならず、私は港湾運送事業を所官する港湾当局や、あるいはまた港湾労働を所管する労働省当局とも協調をはかりまして、それぞれの地方機関においても協力を求めて、いま御指摘のございましたような心配がないよう、ひとつ処置をとってまいりたいと思いますし、また附帯決議等において、いろいろ御指摘をちょうだいいたした点も、先生が御心配になっているような安全の面から、そういうような御指摘がなされたものと心得まして、今後間違いのないような処置を進めてまいりたい、かように考える次第でございます。
  205. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 それでは答申に示されました一定距離以遠について、具体的に検討されたかどうかを聞きたい。というのは、機関士をやはり乗船さすべきだ、配乗すべきだという、一つのこれについて重要な関係ですから、お伺いしたいんです。
  206. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) 先生の御質問は、運輸省令で定める区域を航行する外洋小型船舶については丙種機関士の乗り組みを義務づける、このことについての区域をどういったところにきめるかと、こういう御質問でございますが、この点は先ほど森中先生からも御質問を受け、またこの法律の審議においても関係の皆さまからいろいろ御意見も出たのでございまして、私ども政府といたしましては、この政府原案といたしましては、前回申し上げましたように、最近の機器の発達等によりまして外洋小型船舶につきましては機関士の乗り組みは不要であると、こういう趣旨政府原案を提案したわけでございまするが、しかしながら、衆議院で可決された経緯にかんがみまして、政府といたしましてもどのような区域を航行する小型船舶に対して機関長を乗り組ませるかどうか、その点につきましては現在鋭意検討を進めておると、こういう状況でございます。
  207. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 これは先ほど森中委員からも相当突っ込んだお話があったんですから、私は一定距離以遠云々にこだわってお尋ねしているわけじゃないんです。  これについて丙種機関士の乗船を義務づけられているという点ですが、衆議院でも機関長の乗船を義務づけているし、また運輸省令で定める区域を航行する外洋小型船に限っておられるが、この区域についても相当関心を持っておられる人たちが多いんですから、具体的にひとつ、運輸省でどの程度ということぐらい早急におきめいただきたい。この法案が成立を非常にせかれている節もありますが、私はこういうことについては率直にやはりきめられるべきだと、こう思います。  そこで、私は先ほど申したようにずぶのしろうとなんです。私は、生まれは別なんですが同じ姓を名のっている人たちが隠岐島に多いんです。百人ぐらいの一つの群がございます。そういうような関係からよくそこを訪れ、それから遠洋に出られる船に便乗する機会が多いんですが、安全度といえばどの程度かというと、これは先ほど民社党がどうだ、社会党がどういう考えだ、自民党が何マイルだというようなお話がございましたが、私はそういうことでなしに、やはり安全航行から考えた場合、また現在日帰りの海上における最大の危険度の高いのは、起こっている区域というのは、やはり五十海里以遠の漁船の遭難だと、こう信じています。こういう点から考えまして、やはり出ていった漁船が日帰りできるその範囲内をお考えいただくことが妥当だと思います。その点ではわれわれ五十海里、まあ五十マイルとそう違いませんが、百八十キロと踏んでいるんですが、やはり日帰りできる程度の区域内以遠というものが非常に私は重要なところでないかと、こう思うんです。もう私から申し上げなくても、海上からようやく陸地の山が見えるというのが大体五十マイルで、五十マイルを離れた場合においては、もう全然山も陸地も見えないんです。それどころか、この二十トン未満、四十馬力以上ですか、いま問題になっている、一番遠洋で働いている小型漁船というものは、それ以上の遠いところへ出て働いておられる実情だということをたびたび聞かされております。こういう点から、ひとつ日帰りできる距離という点から五十マイル程度を御検討いただきたいと思うんですが、御答弁いただけますか。
  208. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。この点につきましては先ほど森中先生からも御質問がございました。これに対しまして大臣からも関係機関あるいは関係団体の方とも十分に御相談してきめたい、こういう御発言がございました。私ども事務当局といたしましても、その趣旨に沿いまして慎重に検討させていただきたい、かように思う次第でございます。
  209. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 ところで今度は、整理に遭遇する機関長の問題についてお尋ねしたいのですが、まあ二十トン未満漁船にいろいろ資料がございます。かなり当委員会でもたくさんな数字が出ていますが、私は、確かにこの数を踏んでいいんだと思う数によりますと、約八千名の機関長が現在乗船していると思うのです。今回の法改正によって機関長は雇用の不安にさらされることになるんですが、これに対して具体的な対策というものが樹立されているかどうかということを聞きたい。というのは、いま一つの私の資料では、現在三万三千二百二名丙種機関——これは四十七年度末の資料なんですが、今回の改正で乗船義務がはずされる者——決して仕事を失職するというんじゃないんですが、失職の不安を持つ、乗船義務がはずされる人たちが漁船で六千五百人、その他の引き船、帆船等合わせて五千四百人、合計一万一千九百人という人がこの法案改正によって乗船義務がはずされるという結果になるんですが、これらの人に対する雇用の不安をなくするためにどういう対策を具体的に持っておられるか、伺いたいのです。
  210. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、こういった機関長が下船することによりまして雇用の不安を生ずるということは確かに事実でございます。そういった点につきまして、私ども政府といたしましても十分なる関心を持ち、また万全の措置を講じていきたい、かように考えるわけでございまするが、まずその一環として第一に次のことが言えるんじゃないかと思います。なるほど数字的に申し上げますと、確かに先生の御指摘のような数字が出るわけでございますが、まず漁船について見ますると、現在の運航実績あるいは作業の実態から見ますると、この機関長さんは大部分が漁労に従事しておるわけでございます。したがいまして、直ちにこれによって現在の職場を離れるということはまずないんではないかということが第一点でございます。  それから第二点といたしまして、丙種機関士の乗り組みを必要とする船舶は非常に多うございます。たとえばいまの五トン以上二十トン未満の船舶以外に五百トン未満の沿海区域の船も約一万三千隻ございます。こういうことで、丙種機関士は非常に不足しておりますので、そういった部面に十分に吸収できるんじゃないか、そういう職場に吸収できるんじゃないか、こういう感じがいたします。しかし、それでもなお不安な点もありますので、私どもといたしましては、先ほど運輸大臣からも御説明ございましたように、行政指導によりまして当分の間極力業界を指導いたしまして、こういった機関長さんがおりないように、そういうふうに行政指導の万全をはかっていきたい、かように感じておる次第でございます。
  211. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 局長、私その御答弁二度か三度伺ったように思うのですが、そういう御答弁でいいんでしょうか。これは丙種機関士をはずしたことによって、これから起こる事態について、相当私は責任ある立場におられるのだと、こう思うんです。私はそういう御答弁でいいのかと思うんです。というのは、実は当委員会でいろいろと竹田委員なり杉山委員の御質問に対して御答弁なすったものをば十九日の日に伺っておりました。しかしそれは聞いただけで私は筆記しなかったものですから、御答弁の内容というものを責任持ちません。しかし何だか御答弁にちょっとふに落ちない点があるのでということで、いままでのあなたの御答弁を、またあなた以外の方の答弁もあったと思いますが調べてみました。  たとえば外洋小型船の二人乗り組みを小型船舶操縦士一人乗り組みとした理由についての質問に対しましてお答えなすっている要点は、従来焼き玉エンジンが主であったために二人乗り組みを要したが、ディーゼルエンジンへの切りかえ、リモートコントロール化が進んできている今日において、このために一人で間に合うことになり、一級小型船舶操縦士を設けるに際して新たにエンジン知識を——いまおっしゃったことだと思いますが、知識を教育して機関士の分をカバーすると、こうしばしばお答えになっている。また、十トン以上二十トン未満の四十馬力以上の船舶七千六百そうに乗船している丙種機関士が今回の改正により失職するようなことがないかということに対して、あなたはまた、港内を航行する場合は、すでに船舶職員法二十条により軽減処置が講ぜられており、実際に乗船していない、また漁船についてもこれらの人たちは漁労に従事しているために直ちに失業する懸念はない、しかし新しい機関の知識を吸収して一級小型船舶操縦士の免許を取得し継続乗船することにすれば早急に失業者が発生することになるとは考えられないという、こういう御答弁なんです。  非常にいろいろと御配慮いただいた上での御答弁だと思うんですが、たしか竹田委員の、引き船の、またはしけの乗り組み員の人たちの今後の失職に対して、また航行上の安全上の立場からの質疑に対しても、私はいろいろと御答弁を伺っておったのですが、納得できなかった点が多々あった。これは私一人の取り方だといえばそれで済むことかもしれませんが、私はそうでないと思うんです。現在引き船でも相当責任持った航行をせなければ、はしけ二百トンから三百トン、まあこういう事情には大臣も詳しいそうですが、五百トンというような大型化し、エンジンまでそういうものができてきたという今日、それを曳航する技術というものは非常に重要なんです。そういうようなことを考えてまいります場合に、この機関士を一人おろすということは、相当今後の航行安全の上においても重大な結果をもたらし、また現実の港内の認識について少し欠けているのではないかという質問があり、私もそうだという感じをしたんですが、こういう点について、なお確信ある答弁があればいただきたいと思います。
  212. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。  ただいま先生のおっしゃった点、まことにごもっともな点でございまして、私どももこういった点についてはこの法律の作成の段階において非常に頭を痛め、またいろいろと検討を重ねてきたわけでございます。また、この港湾の先生の御指摘の作業船の問題につきましては、先ほども触れましたように、昨日先生方と現地を見てきたわけでございますが、確かにこういった機関長をおろすということによって、先生指摘のように雇用の不安が生ずるということ、それから安全の点において十分かどうかと、こういった点については、ごもっともな点でございまして、また私どもとしてもいろいろと検討しておるわけでございますが、私どもとしましては、先ほど申したこと以外に、次のような指導通達というものを事務的に考えておるのでございます。  たとえば、これはまだ検討段階でございまするが、少なくとも港湾の作業船におきまして、こういった遠隔操縦装置を有する場合であっても、またなくても、当分引き続き極力機関長を乗り組ませるように強力な行政指導をしたい。それから通船等こういった旅客を運送する船舶につきましても補助者を乗り組ませるように行政指導したい。また外洋の小型船につきましても、当分の間できる限り機関長を乗り組ましたい。あるいはそれ以外に、業界に強力に指導いたしまして、現在乗り組んでいる機関長を下船さしたり、あるいはこれらの者に不当な労働条件を課するということがないように、いろいろと指導をはかっていきたい。それ以外に、また業界に対しまして、先ほども触れました機関整備の点検マニュアルをつくるというようなこと。あるいはその通達の順守状況につきまして強力にその報告を求める。こういうようなことで、いろいろといまその通達案を練っている段階でございます。  先生の御指摘の点ごもっともでございますので、十分にその意向をこの通達の面に反映すると同時に、先ほどお話しいたしましたように、それだけでは十分でないのでございまして、大臣からお話ございましたように、関係行政機関、すなわち労働省あるいは海上保安庁その他関係機関とも密接な連絡をとりまして、その万全を期していきたい、かように考えておる次第でございます。
  213. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 熱意ある御答弁をいただいているのですが、御承知のように非常に大ぜいの人が、この法改正において雇用に不安を感じるということは事実なんです一そういうことはあり得ないとおっしゃるのですが、現在乗船を義務づけられている機関士というのは、この法規に基づいて乗船しているのです。あなたのお話を伺っていますと、やれ機関が非常によくなったとか、技術が進歩したために、そういう人たちは乗船せずして航行しているというような表現が多々あったと思うのです。私はそういうことは許されないことだと思うのです。  もしそういうことがいままであったとするなら、それは監督不行き届きになるんです。やはり義務づけられたものには現在乗船しているのですから、その乗船しているものが乗船しなくてもいいということになるんですから、この人たちが雇用の不安を感じることはもう明らかなんです。漁船においては漁労をやっていると、こうおっしゃるのですが、漁労をやろうと、やはり丙種機関士というものは乗っているのですから、もし乗っていないとするなら、これはやみなんです。これは許さるべきことじゃないです。それをぼくは、御存じだと思うのですが、これは水産庁の方がおいでかどうかわかりませんが、遠洋漁業から帰ってまいります。その帰ってきた者に対する給与といいますか、それは出来高払いなんです。すなわち水揚げによって払われるんです。しかもそのときには歩合といいますか、船長に幾ら、丙種機関士に幾ら、補助員には幾らと、なお乗り組み員には幾らというぐあいにして、かなりな歩合といいますか、特殊なものが渡される。これは丙種機関士は要らないということになったら、丙種機関士に手渡される分というものがみな雇い主の収入になってしまう、払わなくてもいいことになる。  こういうような点等もいろいろ憂慮されている人たちは非常に多いし、また得をするものは船主だということになるという意見等もたびたび聞かされる。こんな話は、ひとつ私が申し上げるだけでとめていただいてけっこうです。ただ私は、こうした雇用上の不安を持たれる人々、義務がはずされる人々、これらの人に対して十分な対策というものを大臣、ひとつお考えあるべきだと思うのですが、あなたの所見をひとつ伺いたいと思います。
  214. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 御指摘のように、この法律を御審議いただきまして、御可決いただきましたならば、その後も現在どおり乗り組んでおる機関長を下船させ、またこれらの者の労働条件を低下させないということを厳重に監督指導してまいりたいと思いますし、またその方法等につきましては、先ほど来申し上げているように、関係機関を通じて、また一片の通達で終わることのないような措置をとってまいりたいと、かように考えている次第でございます。
  215. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 私もずぶのしろうとですから、これ以上的確な資料と事実を申し上げて御意見を聞くことはできませんが、ただ港湾は組関係、また漁船にも漁船のいろいろの複雑な、われわれとうていはかり知れないような事情等も存在していることをお考えいただいて、今後、これら乗船義務がはずされる運命にある人たちのことについての御配慮を要請しておきたいと思います。  最後にお聞きしたいのは、もう時間もございませんが、海上保安庁の方がおられるんでしたら、今回の法改正によって海難事故というのが、絶滅と言いたいのですが、つまり少なくすることができるかどうか、お伺いしたいと思います。特に漁船についてお聞きします。
  216. 佐原亨

    政府委員(佐原亨君) 丙種機関士を安全だけの問題にしぼりまして、乗っておったほうがいいか、おろしたほうがいいかとおっしゃられれば、それは乗っておったほうがいいと思います。おろすのは好ましくない。私の立場からはそう言わざるを得ない。ただ、それを代替する何か新しい教育とか新しい構造設備とか、そういったものでそれを補うというのが原局の考え方であろうというふうに推察するわけであります。いつかも申し上げましたように、総合的な安全度で最終的な判断をなさるべきであろうというふうに考えます。  今度の法改正で海難が絶滅するかという御質問に対しましては、私は絶滅するとここで申し上げるわけにはまいりません。船舶職員法がいかにりっぱなものになりましても、物的面、いわゆる安全法関係でなお足らざるところもあるでしょうし、あるいはかりに海上法令が完ぺきでありまして、法令どおりやっておりましても、なお不可抗力、自然の海象、気象、そういったものがあって海難というものは起こるものでございますから、いろんな要素が積み重なった結果の海難でございます。船舶所有者が非常に無理をしているという面もあろうかと思います。それから乗り組み員の自覚と申しますか、そこにやはり無理をしないというような自覚、いろんな面で、法令と相まって注意を重ねることによって海難を少なくしていく必要があろうかと思います。海上保安庁といたしましては、そういった面から、法令の励行をはじめといたしまして、乗り組み員あるいは船主さん、その他にいろいろ働きかけをいたしまして、海難の防止に万全を期したいというふうに考えております。
  217. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 いま海難事故防止についての御意見がございましたので、ついでというのはおかしいですが、お伺いを大臣一つしたいのですがね。昭和四十八年度の運輸省予算の中に、港湾運送事業の構造改善として五トン以上、二十万トン未満のはしけを買い上げるための三億五千万円が計上されたと聞いております。これは私、テレビで見て感じたのですが、テレビではしけの解体作業をやっている。まあはかどらぬということですが、解体作業をしている。朝のニュースで解体作業の状態を見たのです。  そこで私がお尋ねしたいのは、これに類して、雇用対策としての予算はなかったのです。はしけに対してはお話竹田君からあったように、二人ないし四人乗船しているのです。そのはしけがコンテナの関係なのか知りませんが、不要になったので、これが運送事業の構造改善ということではしけを買い上げるために、予算が四十八年度三億五千万円ですか計上されているが、しかしそのはしけに乗る二人ないし四人の人たちに対しての、何らか雇用上の対策というものはなかったのです。それと同じようにこの法案が施行されますと、これに関連して相当数にのぼる機関長が雇用上の不安に、まあだいじょうぶだとおっしゃるのですが立たされるわけなんです。  これらの機関長に、いまお話がありましたように船長としての役割りをほんとうに果たせるような親切な教育方針というものがありゃいなやということ、一つは職場保障をどのようにするかということ、やはり給与の問題もございますが。それといま一つは、これと裏返しの問題として、船長に機関長の役割りを果たせるような、なかなかこれは技術上の問題はむずかしいと思うのですが、教育方針というものを持っておられるやいなやを具体的にお伺いいたしまして、なければ今後どのように考えておられるか、大臣のひとつ所信を伺って私の質問を終わりたいと思います。何かはかからあればけっこうです。技術的なお話があるそうですから。具体的に。
  218. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) はしけの買い上げにつきまして、私のほうから先にお答えさしていただきます。  先生おっしゃいましたように、四十八年度におきまして三億五千六百四十三万三千円という予算を計上いたしました。これで現在進めておりますのは約四十万トン、二千隻程度の過剰のはしけを買い上げていく。それから引き船につきましても三万馬力、約三百隻程度の引き船を買い上げていく補助にしたい、こういうふうに考えております。  そこで、先生のいま御心配になりましたような離職者が当然出てまいりますが、現在約三千人程度は出てくるのではないか。そこでこれは、私ども労働省と一緒になってやっているわけでございますが、労働省におきまして、この離職者対策を十分お考えになっていただいておりまして、四十八年度におきましては三カ年の初年度といたしまして、一億百三十五万四千円、これを四十八年度予算といたしております。これの項目といたしましては、離職者に対する就職促進手当の支給、それから職業訓練の実施及び訓練諸手当の支給、それから職業転換給付金の支給。その中身を申し上げますと、移転資金であるとか、労働者住宅確保奨励金、自営支度金、再就職の奨励金、雇用奨励金等でございます。このような形で離職者に対する特別の対策を労働省のほうでお考えになって実施すると、こういうことになっております。
  219. 星忠行

    説明員(星忠行君) ただいまの御質問に、船員局としてはどう考えておるかということ、いままでいろいろ、絶対そういう方々が下船するような事態が起きないように極力監督、指導するというふうに申し上げておりますので、そういう方々が下船させられた場合ということは、まあ想定と申しますか、そういうことのないようにまずすべきなんですけれども、かりに御質問が、もし丙種機関士が職場を失うというような、現に乗っておる船からとにかく離れた場合というときに、どういうふうな保障があるんだろうかと考えますと、さきにも局長から御答弁申し上げましたけれども、まず現状が、丙種機関士を要求する職場というのが非常に多いということを申し上げておきます。今回の法改正は二十トン未満の船舶を対象としておるわけでございまするけれども、丙種機関士がその丙種機関士として乗り組める資格というのは二十トン未満に限らず、もっと大きな船にたくさん職場が待ち受けております。  そういうことで、たとえば船員職業安定所の最近の求人、求職状況などを見ましても、丙種機関士というのは非常に引く手あまたであるというふうに考えております。しかし、そういう大きな船に、いままで、たとえば港内で働いておられた方に大きな船に乗れと、転職しろというのも一つの道でございますけれども、やはり港内の小さな船で今度は船長としてお乗りになるといった場合のことを考えればどうなるかという点もございます。その点につきましては、丙種機関士の方が今度新しい改正によりまして新しい資格の小型船舶操縦士をお取りになる、そういう場合には、もうすでに機関士として、機関長としてりっぱな知識、技能を持っていらっしゃるわけでございます。それからまた、現実に船に乗っていらっしゃって船に関する知識も十分ございます。したがって全く新規の人が免許を取るのとは違いまして、そういう十分ないままでの知識、経験を勘案いたしまして、学科試験におきましては、不必要な部分は、たとえば機関に関する知識というようなものは試験の一部を免除するということで、極力船長として小型の新しい資格をお取りになる道を開く、それからまた、そういうことに対する養成所といいますか、教習所といいますか、そういうようなものも、もし御要望がございましたら、臨時の教習所でも、講座でも御便宜をおはかりいたしまして、非常に簡単に小型船の船長の資格が取れる道も開いておくと、こういうことをいろいろ考えております。
  220. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 終わります。
  221. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私たちは、一昨日の本委員会の同意を得まして、言うならば百聞は一見にしかずという春秋の論理に基づきまして、黒住理事、不肖杉山理事と、横浜を拠点としております竹田四郎委員と同道いたしまして横浜に行ってまいったわけでありまして、これは要するに六大港の一つ実態を知ることができたと思うんです。  そういう点で、一昨日大体質問いたしましたけれども、補完の意味で、ごく短時間に、重複を避けまして、村尾さんの心配事や質問で大体いいと思いますが、そういう春秋の論理に基づきまして、この点は、いまいみじくも海上保安庁の長官は長官の立場で、海上交通安全の守りの神として、しいて意見を言えというならば二名のほうがよいというふうに答弁をしておられます。これはニュアンスと思いまして、きわめて良心的な、海上交通安全の最高の長官として、これははっきり言ってむらってたいへんありがたいことだ、良心的だというふうにそれなりに評価しております。  ところで港湾運送に従事する二十トン未満の小型船舶に乗り組む労働者は労働基準法の適用を受けるんだと、また受けるべきが常識だと考えております。それから漁船は三十トン未満までが労働基準法の適用であるというふうに考えるわけでありますが、そこで今回の職員法の改正によって漁船は二十トン未満までは一名の定員でよいということになるわけであります。ところが海難別に見るというと、先ほど村尾委員の言ったとおりで、何と言っても機関の故障が統計上一番多いと、ことに漁船は最高であるというふうに出ているわけであります。  そこで、基準局の安全部長来ておられますね。そういう面で、私どもの常識的な考え方からいって、また海上保安庁の長官のニュアンスが良心的だという評価をいたしておりますが、基準法上、基準局の安全部長はどういうふうに、ずばりで、歯にきぬ着せず、安全なら安全と、その点をひとつ簡潔にお答えいただきたい。
  222. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 今回の船舶職員法改正が直ちに引き船等の乗り組み員の数の減少になるというふうには考えがたいのでございますが、しかし先生指摘のように引き船等の操作員の数が減少するという懸念はございますので、そのために引き船の航行の安全等に支障の及ぼすことのないように、労働省としましては運輸省と連絡をとりまして必要な行政指導等をいたしてまいりたいと考えております。
  223. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 保安庁長官、帰られてもいいんですけれども、別にあなたからこれ以上の答弁を引き出して、それを言質にとるというような、そういうことを考えておりませんから、お急ぎでありましたならば、ひとつお帰りいただいてもいいと思います。  ところで、さらに基準局の安全部長にお尋ねいたしますが、あなたたちはもちはもち屋で、専門家でいらっしゃるから聞くわけでありますが、労働基準法は労働条件の最低を定めるもので、法はそれ以上のことを期待していないわけでありますが、行政立場もこの精神に基づかねばならない、ましてや海上、港湾の今日の状況の中での労働であるので、言うならば幾ら機関や材質の性能が向上したからといって、定員減——言うなら人減らしに結びつけてならないと思うがどうか。たとえば定員は労働条件でないんだというふうにお考えになるか、さらに一歩飛躍して、定員即労働条件は航行の安全とは関係ないんだというふうに思いますか。私は定員と労働条件は航行の安全に関しては不可分だというふうに理解をしておるのでありますが、私どもの考え方は間違っておるかどうか。あなたはそれはだいじょうぶだ、心配ないんだというふうに言い切ることができるかどうか、そういう点ひとつずばりお答えいただきたい、こう思うわけです。
  224. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 定員が安全に影響する場合もございますので、そういうことのないように十分運輸省と連絡をとりまして行政指導その他を進めたいというふうに考えております。
  225. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 きわめて簡潔でありますけれども、これは村尾先生が大体やっておられますので、私の持ち時間も大体終着を六時にめどを置いておりますし、大臣が終始一貫きょうは良心的に顔を出しておってもらいますので、私も協力しなければならぬという論理で急ぎますのでありますが、今度は港湾局長にお尋ねいたします。  先ほど申し上げたように、私どもは昨日横浜港の視察で、いわゆるリモコンといいますか、自動化船であっても機関長が必要であることが、船員局長も同行してくれておりましたので、わかってくれたと思うんですが、しかし受けとめ方については、どうもわれわれの受けとめ方と——幾らリモコンであっても、やっぱり海と陸との関係から、海上労働の特殊性は港湾にしても漁船にしても五十歩百歩だ、そういう意味では、やっぱりリモコンがあるからこれらの機械に信頼をして機関長はいなくてもいいということは言い切れないな、必要だというふうに言ってきたわけであります。  それはそれとして、はしけは非常に大型化してきておるようですね。はしけが大型化したのもわかったのでありますが、しかし業者は大型化に対処して安全航行の立場から見て必要な乗員をふやそうとはしていないようであります。言うならばコンテナであるとか、あるいはそういうような荷物の移動が激しくなって、はしけもいろいろ大型になってきて木はしけよりも鉄はしけというようなことになってきておるわけであります。  そこで、私どもは、これは重要なことでありますので、港湾労働者の福祉に直接間接に関係することでもありまするから、港運料金の基礎となっておるものを、乗り組み員の数であるとか引き船あるいははしけ別に示してほしいと思うのでありますが、船長幾ら、機関長幾ら、デッキ幾らとなっておるはずでありますが、店頭料金の基準となる資料がいまありますか。なければ、またあとで出していただくといたしまして、港湾を通じて働く人々の福祉厚生のためにこのことを参考としてぜひ知っておきたい、こう思うのでありますが、見解を伺っておきたいというふうに思います。
  226. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) いま手元にある資料でお答え申し上げます。  昨年の四月二十三日付で料金の認可をいたしましたけれども、その際の原価計算によりますと、次のようになっております。  その前に、その考え方でございますけれども、二はいの引き船で二十一ぱいのはしけを回転しているという考え方でございます。  その内容を申し上げますと、はしけは二十一ぱいでございますけれども、そのうち鋼船を十一隻、木船を十隻、このように考えまして、その鋼船は大体二百五十トン程度である、隻数はいま申し上げましたように十一隻、船長は十一人、補助員が五人。それから木船は隻数が十隻、船長が十人、補助員がゼロ、このような計算でございます。  それから引き船につきましては、二はいございますが、鋼船が二百馬力程度のもので、船長が一人、機関長が一人、甲板が二人ということになっております。それから木船は九十馬力のものでございまして、船長が一人、機関長が一人、甲板が一人。これを一グループとして計算いたしております。
  227. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 いまのところ、これは深く追及してもしかたがないが、今後、私どもが最も気になりますのは、御承知のように港運料金の基礎になっている乗員はわかりましたけれども、店頭料金の基礎となっている資料というものは出ませんか、あとでもいいんですが。たとえばそういうものを付加してやはり港運協会というものが港に出て、船員も港湾労働者も含めて基礎になっていると思うのですが、その点についてはいま答えられる程度でいいんですから、もうこれであなたへの質問は終わりますが……。
  228. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) いま申し上げましたのは一隻一航海で、雑貨の例を見ますと、一隻一航海で百九十三・五トンの取り扱い量になります。これに要する労務費等を全部計算いたしますと、諸経費入れまして九万九千六十六円となりまして、このあれを百九十三・五トンで割っていきます、そういたしますと現行のトン当たり料金が五百四十三円、このような数字になるわけでございます。これがいわゆる第一類港でございまして、大きな港湾十二港ございますが、その一類港の料金の根拠でございます。  それから、そのほか二類、三類港という一つ下がった港がございますが、二類港におきましては一類港料金を基礎といたしまして九割、それから三類港におきましては七割六分という形で、それぞれ四百七十四円並びに四百円という料金としている次第でございます。
  229. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 次に進みます。  労政局長おられますか。これは実はきのう出会ったならばきょう質問しなくてもよかったのですけれども、あらためて政府委員でかなめでありますから、これも簡潔にしゃべっておきますから、ひとつずばりでお答えください。  昨日の視察で、先ほど申し上げましたとおり横浜港を中心として、横浜港の引き船労働者の組織率は全体として三分の一程度だというのが実態のように、大づかみにいって——たくさんあるが、全港湾にしても全日海にいたしても、全体おしなべて総数からいくというと三分の一程度というふうに聞いてきたと思うわけであります。  そこで労働協約を締結したり、労働条件の向上をはかることを指導するのが代々労政のあり方であり、任務であり、本旨でなければならぬというふうに考えておるわけであります。代表的な労使の協約を基準としてすべての行政を行なわなければならぬと思うのです。法律をつくるときもそれを土台にしなければならぬと思うのでありますが、それはきわめて通念であり、社会的な常識であろうと思うのです。  労政局の立場あるいは労政局長の立場から、協約以下の職員法の改正、私どもはそういう側面もとらえているわけでありますが、こういう問題についてやはりひとつ、いよいよきょうこれでこの委員会を終わりますれば、法律としてこの改正法がひとり歩きをするわけでありまするから、そういうことも読み取りながら、船舶職員法の一部改正がひとり歩きすることを想定に置きながら、今日ただいまの横浜港でさえ組織率の程度は三分の一程度たというふうな一面——蛇足ではありまするけれども、陸の状態と違って港湾の関係においては倍の努力をしても組織の率がこんなに低いという背景は、ずばりで申し上げまして、大体何々組であるとかいうような手配師等もひもつきで来ておって非常に困難性がありまするけれども、そういう面から可能性を追求して十分配慮してもらいたいという願望からこういう質問をするわけであります。これもずばりで深入りは時間がありませんから避けますが、そういうことを思い合わせてひとつ見解なり、あなたの考え方をずばりとお述べいただきたい、こう思うのです。
  230. 道正邦彦

    政府委員(道正邦彦君) わが国全体の組合の組織率は三分の一でございますが、どういたしましても大企業のほうの組織率が高く、中小企業のほうが低いということでございまして、港湾の場合も高くないのは先生の御指摘のとおりでございます。  したがいまして理想的な形といたしましては、労働者の組織化が進みまして、労使が団体交渉を通じ労働協約で労働条件をきめていくというのが望ましいわけでございますが、アウトサイダーの皆さんにつきましても、労働条件改善のために事業主の方々の指導あるいは御援助を申し上げまして、労働条件の改善に側面から努力をする、これが当然のことだと思います。今後とも努力をしてまいりたいと思います。
  231. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 労政局長は、ついこの間までは、過般の港湾労働法の改正の時限では職業安定局長と、そういう立場におって何もかも実感としてとらえられておるはずでありますから、この職員法の一部改正という問題とあわせ、十分ひとつ口で言うだけてなく、しっかりと——公正な労使関係で労働協約が相互に持たれれば、漸次、港湾における弊害というもの、つまり手配師や暴力団というものが背後におっていろいろとやりにくい面というものはおのずから解消していくものだというふうに信じておりますから、困難ではありまするけれども、ついこの間まで職業安定局長もしておられたという関係もありますし、今度は労政局長になられたわけですから、二つの視点と側面を持っておられるはずでありますから、十分注文をつけておきますから、これであなたの答弁はいいと思います。  今度は大臣——ほんとうにきょうは四団体総理の初めての会談で、運輸行政の面でなかなか国鉄、動力車等々を含めて、ただ労働大臣だけでいいという筋合いのものではなかったはずでありますが、しかしなおかつお越しをいただいたので、ずばりで申し上げます。  船員局長も昨日横浜に朝早くから行って勉強もせられたであろうし、それなりの大臣への報告も、なまであったか次官を通じてであったかは別として、しておられると思いますが、前置きとして、船員局長、あなたは実際われわれと一緒に視察をされたわけでありまするし、先に行ってあとにも残られたわけでありまして、何もかも腹固めができておりまして、大臣にあらかじめ報告されたと思いますけれども、改正案で十分やっていけるというならば、そういうふうに自信を持っておられますか。  本来、この法案の取り扱いを重視するならば、やっぱりどうしても問題のポイントは省令で、とにかく先ほど船舶職員課長でしたか言ったように、この法律ができれば、一カ月ぐらい期間はかかるけれども、やはり省令なら省令ができるというふうな期間が一カ月ぐらいあると思いますが、その辺でどういうふうに考えておられるかどうか。  そのあとで大臣の……。
  232. 住田俊一

    政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。  昨日、杉山先生指摘のように京浜港に参りまして、特に引き船の実態につきましていろいろと見学さしていただいたわけでございます。  私どもといたしましては、先ほども触れましたように、この二十トン未満の小型船舶の免許資格の問題、あるいはこれに関連いたしまして事故防止については今後万全を期していくわけでございますが、同時に、それに関連いたしまして、先ほど申し上げましたように、この法律の励行と相関連いたしまして、大臣からも御説明ございましたように、強力な行政指導通達によりまして、この運営の万全を期していきたい、かように考えておるものでございます。  その一環といたしまして、先ほども触れましたように、特に港湾のはしけを曳航する引き船等につきましては、完全な遠隔操縦装置を有する場合であっても、またかりに有しない小型船舶につきましても、極力、引き続き機関長を乗り組ませる、こういうことを行政指導していきたい。また同時に通船につきましても補助者を乗り組ませるということ、あるいは大臣からも特に御指摘ございましたように、現在乗り組んでおりまする機関長を下船さしたり、あるいは不当な労働条件を課する、こういったことがないように、十分に関係機関と密接な連絡をとりまして、この運営の万全を期していきたい、かように感じておる次第でございます。
  233. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 最後に、大臣にこれははっきりお答えをいただきたいと思います。  省令あり、それから通達があると思うんでありますけれども、言うなれば一片の通達を出したからいいということでは——大臣の責任においてまた省令というものがいずれできるでありましょうけれども、しかし今日ただいまでは、結局、この法律がひとり歩きをすれば通達ということになると思うのです、一つ措置としては。でありますが、具体的にたとえば一片の通達だけでは問題にならない、通達は重視しなきゃなりませんけれども。  しかし省令の面については、大臣が詰めの段階でいまいろいろと論議されておりまするが、これについて大臣の通達は通達としてさらに省令も十分胸に置いてという、その辺のところの詰めをひとつ大臣の所信というような形で——従来、通達というものに対する受けとめるほうの側とそして実際の行為の実証というものに対して、そういうものが出ても、そういう通達は確かに出した原点も受けるほうの側でわかるけれども、実証の上で、その対象となる船員にしても漁船にしても乗り組み員にしてもその効果と価値観においてあまり期待ができなかったという不信感から、この段階ではこの職員法の改正について通達が出るが、一片の通達に終わったというあと味のないように、ひとつ省令でやるが、いろいろと大臣が実感として、大臣も私もともに荒波の上でめしを食ってきた経過もありますので、その辺を思い、今日では大臣というかみしもを着ておられるわけでありますが、その省令という問題、通達ということについて、十分あわせ兼ねた所信と見解を込みで申していただきたい、こう思うわけです。
  234. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) いままで各委員方々からいろいろこまかい、あるいはあらゆる角度から御指摘をちょうだいいたした次第でございますが、繰り返し申し上げるまでもなく、私はまず海上の問題は安全でなければならないと思います。  この安全には、港湾の中もございましょう、あるいは外洋もございましょう、いろんなことでそれぞれのまた問題はありますけれども、それが一つ。それからもう一つは、この法律がひとり歩きをしましたときに、雇用の不安あるいはまた条件の低下というようなものがこの法案が歩きだした時点で行なわれることのないようにしなければならない。この二つが大体私はポイントであろうと思います。  そのほか、いろいろ御指摘の点はございますが、それらの点につきましては、そのつどお答え申し上げておりますけれども、この法律はいわば必要最小限度のものを定めたものでございまして、これがために雇用関係にいたしましても、この業界が労使関係の実情いかんによっては法改正を理由に雇用の不安を惹起するというようなこともないとは考えられぬと思います。そういう点にも十分私は決意をもって臨まなければならぬ。また、皆さま方の御指摘のそのほかの点についても、一片の通達で終わることのないように、各機関、港湾関係あるいはまた海上保安庁あるいはまた労働省関係機関と十分密接な連絡をとって、きめこまかい、先ほど申し上げました二点について間違いのない指導と申しますか、をつくり上げて進んでまいらなければならないと思います。  なお省令につきましては、衆議院における修正、御決議もございますし、先ほど来また森中委員の御指摘もございますし、そういう点につきまして十分慎重な配慮をもって決定いたしたいと思いますが、その他の問題につきましても、法律を受けて、省令の中に書き込むと同じぐらいの重大な決意とともに、何といいますか位置づけをもって、そういう意味合いで今後指導の万全を期してまいりたいと思います。先生も、まあ大先輩を前に置いて恐縮でございますが、私どもも荒海の上で長い間めしを食ってきたわけでございますけれども、そういう方々に不安のないような今後対策を責任をもってひとつやってまいりたい、かように考える次第でございます。
  235. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 ぜひひとつ初心忘るべからずで、私も大臣を信頼しますから、これで終わります。
  236. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  237. 森中守義

    森中守義君 私は、日本社会党を代表して、本法案に対し反対の意見を申し上げます。  反対の第一の理由は、審議の過程を通じまして明らかになったとおり、レジャーボートの無謀運転を防止するためと称しながら、その実は、数万人に及ぶ港湾労働者、漁業労働者の既得権を奪う法案であるという点であります。  すなわち港湾運送などの船舶の自動化の実態、労働の実際を視察しました結果から見ても、漁船の機関故障が最高の率を示しながら年々増加していく現状を見ましても、資格制度の面から操縦士一人でよいという結論はどこからも出てまいりません。  科学技術が進歩し、船舶の安全性が向上するならば、港湾労働であれ漁労に従事する労働者であれ、その労働は軽減され、いわゆる労働時間の短縮、豊かな社会生活、家庭生活がそのことによって保障されていくというのが人々の希望であり、社会進歩の道であります。  しかし政府の原案並びに修正案は、合理化によってますます労働者を超過労働に追い込み、船舶航行の安全確保を困難にするという法律案であります。  反対の第二の理由は、この改正案は、レジャーボートの資格制度に重点を置くために、船舶職員法という、本来、経済活動に従事する船舶及び乗り組み員の安全を目的とする法体系をゆがめようとする点にあるということであります。  すなわちレジャーボートの規制、あるいは健全なスポーツとしてモーターボート、ヨットの育成をはかろうとするのであれば、職員法の体系の中に組み入れるのではなく、別の立法で定めることが政府提案の趣旨に沿うものであります。レジャーボートはスピードを楽しみ、海上を自由に航行するところにその目的があります。船舶職員法は経済活動、流通の円滑をはかり、もって国民生活に寄与するため安全航行を目的とするものであります。そのことを混同して、資格制度を同一の法体系の中に入れようとするため、必要以上に、現行法で利益を受けている人々に悪影響を与えているのであります。  反対の第三の理由は、この改正は、船舶資本、レジャー産業資本の利益追求に加担した法律案であります。  自動化船の普及は年々増加しておりますが、科学技術の発展に伴い今後も増加するのは当然でありますが、船舶の安全な航行、労働の軽減、定員の問題を考えてみた場合は、職員法の目的に沿うものは何一つなく、ただモーターボートの売り込み、安易な資格取得のための養成機関、試験機関など、資本を喜ばすほかには何一つ得るものはないということであります。  私は、この法律案が成立することになれば、海難事故は減少することなく、免許取得制度を十六歳に引き下げるために、前途有為の少年がとうとい生命を失うことをおそれるものであります。  つまるところ、この法案は、人命尊重、安全の法改正ではなく、産業優先、人間無視の法改正であることを強く指摘し、かつ省令の決定にあたっては、関係団体と十分協議の上、一定距離に対する合意を得るよう希望を付し、反対の意見を終わります。
  238. 黒住忠行

    ○黒住忠行君 私は、自由民主党を代表いたしまして、本案に賛成の意を表するものであります。  本法案は、小型船舶の航行の安全を期するために、船舶職員法の適用範囲の拡大、小型船舶操縦士の資格の合理化、その試験実施を指定試験機関に行なわせること等を内容とするものでありまして、現下の情勢にかんがみ、きわめて緊要なことであります。  また、この法案は、さきに成立を見ました船舶安全法の改正法とともに小型船舶航行安全対策の両輪をなすものでありまして、多数の小型船舶を対象とするものでありますから、両法の円滑な実施につきましては格段の努力を要するところでありまして、安全の確保は至上命題であるから政府がその運用の万全を期することを強く要望し、賛成するものであります。
  239. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 私は一民社党を代表して、ただいま審議されました船舶職員法の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行なうものであります。  レジャー用のモーターボート、ヨットの人身事故の頻発にかんがみ、これらのものに船舶職員の配乗を義務づけることは安全上望ましいことであり、かつ、これが健全なレジャーとして発展することを望むものであります。また五トン未満の小型船舶の海難状況から見ても、船舶職員の配乗を義務づけることは望ましいことと考えるものであります。むしろ、これらの措置はおそきに失した感が強いと言わざるを得ません。  しかるに私が本法に反対する理由は、五トン以上二十トン未満で機関が四十馬力以上の漁船に対し、機関長の乗船を義務規定から削減したことであります。これではいかに船長に機関取り扱いの教育と試験を課するとはいえ、安全性が大きく低下することは明らかであります。  何ゆえならば今日でさえ漁船の海難事故のうち、機関故障によるものが毎年二五%強を占め、いかに海上における不慮の機関故障が多いかを示しているからであります。しかも機関故障による海難事故は四十三年の二五・三三%、四十五年二七・〇四%、四十六年二八・二二%、四十七年二七・六九%と増加の一途をたどっているのであります。これをトン数別に見ますと、四十七年度では三百三十六隻のうち、五トン未満が百十二隻、五トンから二十トン未満が五十七隻であり、二十トン未満が全体の五〇・三%を占めております。  こうした事実からも明らかなように、機関長の乗船義務の削除は直ちに安全性の低下をもたらし、海難事故の一そうの増加に拍車を加えることは必至と言わざるを得ません。とりわけ危険度の高い距岸五十マイル以遠に出漁する漁船については機関長の乗船を義務づけるべきであります。こうした措置を強力に講じてこそ漁船の安全が確保できるのでありますが、いまだに十分な改正がなされていないことに強く反発するものであります。  加えて、私は、機関長の乗船義務の削除に伴い、約八千名の機関長が、多年にわたり漁船の安全航行を行なうために死を賭して職務に専念してきたのに、本法施行後は雇用の不安に遭遇せざるを得なくなるにもかかわらず、何ら救済措置を講じようとしない運輸行政に反対するものであります。  以上、今回の改正案が国民の重要なたん白源をになっている漁民の人たちの安全出漁に全く逆行し、加えて多くの人たちが雇用の不安を余儀なくされる改悪であること、また一方、国民の健全なレジャーに資するモーターボート、ヨットの安全を確保するため、別途の法案の提出を要求しつつ、私の反対討論といたします。
  240. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  船舶職員法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  241. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  242. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私は、ただいま可決されました船舶職員法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、各党の御賛同を得まして、各会派を代表し附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    船舶職員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法の施行にあたり、船舶航行の安全確保に資するため、左記事項の実現を図ること。 一 港内を航行する通船等、旅客を運送する船舶については、補助者を乗り組ませる等安全に支障のないよう適切な指導をすること。 二 特に港湾運送事業等に従事する船舶については、海上労働の特殊性に鑑み、丙種機関士の資格を有するものを配乗させるよう特段の処置を講ずること。 三 漁船の海難事故の現況に対処するため、外洋小型船に丙種機関士を配乗させるよう区域の設定にあたつては特段の配慮をすること。 四 なお、本法の施行にあたり、雇用上の不安を生ぜしめないよう配慮すること。   右決議する。  以上であります。
  243. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) ただいま杉山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  244. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) 全会一致と認めます。よって、杉山君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、徳永運輸大臣から発言を求められております。徳永運輸大臣
  245. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) ただいま慎重御審議の結果御可決いただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。小型船舶の航行の安全には、なお一そうの努力をいたしたいと存じます。  なお決議されました附帯決議の内容につきましては、その趣旨を十分尊重し、誠意をもって実施に当たる所存でございます。
  246. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 宮崎正雄

    委員長宮崎正雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十八分散会