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1974-03-07 第72回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月七日(木曜日)     午前十時二分開議  出席分科員    主査 藤井 勝志君       井原 岸高君    奥田 敬和君       田中 龍夫君    安宅 常彦君       土井たか子君    馬場  昇君       長谷川正三君    松浦 利尚君       村山 富市君    山中 吾郎君       瀬崎 博義君    平田 藤吉君       安里積千代君    兼務 阿部 昭吾君 兼務 楢崎弥之助君    兼務 湯山  勇君 兼務 栗田  翠君    兼務 山原健二郎君 兼務 近江巳記夫君    兼務 坂口  力君 兼務 瀬野栄次郎君    兼務 玉置 一徳君  出席国務大臣         文 部 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部大臣官房審         議官      奥田 真丈君         文部大臣官房会         計課長     三角 哲生君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省体育局長 澁谷 敬三君         文部省管理局長 安嶋  彌君         文化庁長官   安達 健二君         文化庁次長   清水 成之君         運輸省航空局技         術部長     中曽  敬君         自治大臣官房審         議官      森岡  敞君  分科員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         大蔵省理財局国         有財産第一課長 村上 哲朗君         文部大臣官房人         事課長     望月哲太郎君         文部大臣官房総         務課長     柳川 覺治君         建設省道路局高         速国道課長   山根  孟君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君    米内山義一郎君   赤松  勇君     和田 貞夫君   辻原 弘市君     村山 富市君   中川利三郎君     小林 政子君 同日  辞任         補欠選任   村山 富市君     馬場  昇君  米内山義一郎君     安宅 常彦君   和田 貞夫君     上原 康助君   小林 政子君     平田 藤吉君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     柴田 健治君   馬場  昇君     松浦 利尚君   平田 藤吉君     瀬崎 博義君 同日  辞任         補欠選任   柴田 健治君     山口 鶴男君   松浦 利尚君     土井たか子君   瀬崎 博義君     中川利三郎君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     長谷川正三君   山口 鶴男君     赤松  勇君 同日  辞任         補欠選任   長谷川正三君     山中 吾郎君 同日  辞任         補欠選任   山中 吾郎君     辻原 弘市君 同日  第一分科員楢崎弥之助君、山原健二郎君、第三  分科員栗田翠君、近江巳記夫君、坂口力君、瀬  野栄次郎君、第四分科員湯山勇君、玉置一徳君  及び第五分科員阿部昭吾君が本分科兼務となっ  た。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計予算文部省所管  昭和四十九年度特別会計予算文部省所管      ――――◇―――――
  2. 藤井勝志

    藤井主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算及び昭和四十九年度特別会計予算文部省所管を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 二十三日の一般質問におきまして、アメリカペンタゴンからの委託研究日本大学がやっているという問題について、資料を差し上げ、調査をお願いしておりましたが、調査結果が出ておれば御報告をいただきたいと思います。
  4. 木田宏

    木田政府委員 お手元にも届いておることかとも思うのでございますが、あのときの資料に基づきまして、わかり得る限りのところを関係先に連絡をいたしました。  千葉大学研究課題は、スキャニングを色で書かせる方法ということであり、群馬大学では、嗅覚の受容機構に関する神経生理学的研究ということでございます。また、大学によりましては、該当のないものもございましたし、年次別に追ってまいりますと、ある年度においては該当がないというようなことなどがございました。逐一申し上げたほうがよろしいかどうか……(楢崎分科員議事録に載せたいので、ちょっと……」と呼ぶ)そうでございますか……。広島大学につきましては、該当がございません。北海道大学につきましては、褐色脂肪組織生理活性というテーマでございます。ただし、一九六九年度は該当がございません。細菌化学研究所につきましては、該当ございません。日本熱帯医学協会につきましては、全額返還したということで、該当ございません。財団法人ガン研究会研究課題は、移植組織抗原特異性の相違についてということでございます。金沢大学は、摂食調節に関する神経活動研究ということでございます。慶応大学につきましては、該当がございません。財団法人北里研究所は、腸管局所抗体の性質とその作用機作、もう一つ病原腸炎ビブリオ鑑別方法とその特性ということでございます。神戸女子大学につきましては、過激な筋肉運動による赤血球の破壊の原因。熊本大学は、味覚神経機構基礎的研究。久留米大学は、アルボウイルスとミキソウイルス相互作用京都大学は、分子レベルにおけるウイルス宿主相互関係に関する研究神経組織のミクロゾームの物理化学的生化学的研究九州大学は、腸管平滑筋細胞生物物理学的研究、もう一つは、中南米の肺吸虫研究松下調査研究所というのは、どうも私ども手元ではわかりませんで、不明でございます。長崎大学は、哺乳動物と人のピルゼン酸及びアルファケトグルタール酸水素酵素群に関する研究。それから奈良県立医科大学は、電子顕微鏡による日本脳炎ビールスの発生の研究、そのほかもう二つあって、ヘモグロビン酵素平衡に関する研究、三番目が血清肝炎電子顕微鏡的研究国立がんセンターは、デング熱ショック症候群の場合の人体血清補体成分の測定。日本大学は、二つ項目がございまして、加熱線測風に関する国際会議、これは、それの出席旅費の支援だと思います。二番目がブロックデザイン理論的研究佐々木研究所同種移植における細胞変化研究。東邦大学肺循環に対する低酸素効果。東京大学大気汚染性物質動物免疫過程に及ぼす影響に関する研究でございますが、一九六八年については該当がございません。東京医科歯科大学高等動物における聴覚神経組織甲殻類動物聴覚神経節における歩調機能の分析、もう一つ知覚生理におけるガンマアミノ核酸山階鳥類研究所、渡り鳥の病理学的調査淀川キリスト病院肺疾患患者呼吸機能検査横浜市立大学は、日本脳炎西部馬脳炎種痘ウイルスに対する補体要求性中和抗体検査、もう一つフィラリア症診断用皮内反応研究でございます。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 いまお読みになったのは、何のことかさっぱりわからぬでしょう。
  6. 木田宏

    木田政府委員 わかりません。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 どういう人が研究したか、つかんでおられますか。
  8. 木田宏

    木田政府委員 担当の研究者も一応調べてございます。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 時間がありませんから、わかっておるところだけ私のほうから言います。そちらでわかっておれば、引き続いて資料として私にください。どういう人があれしてあるか、あとでいいですから。  それで、非常にむずかしいですね。ところが簡単なんです。たとえば慶応大学ですね。これはあるのです。人体に感染する脳病の寄生虫エンセファリトゾーン研究。それで、これは研究をされておる人を見れば、非常にわかりやすくなるのです。たとえば北里研究所、これは合田朗さんですね。細菌学、むずかしく書いてあるが、わかりやすく言えば、赤痢の免疫機構に関する研究ですよ。それから京都大学、これは京大のウイルス研究所植竹久雄さんと、それから医学部生理学教室井上章さん。それから九州大学、これは武谷健二教授細菌学です。それからもう一人、宮崎一郎教授、これは寄生虫学。こう書いてありますけれども、わかりやすくいえば、太平洋地域、特に東南アジアにおける肺吸虫の分類と生態に関する研究です。それから奈良県立医科大学、これは安澄権郎教授解剖学ですね。佐々木研究所、これは吉田富三所長ガン細胞を使った細胞遺伝学染色体研究。こんなふうに言ったほうがわかりやすいのです。それから東京医科歯科大学、これは加納六郎教授医動物学研究項目は、衛生上有害なハエ類研究。こう言ったほうがわかりやすいのです。それから横浜市立大学、これは医学部吉野亀三郎教授細菌学研究項目ウイルス病診断。これもこう言ったほうがわかりやすいのです。つまり、ここではっきりしておることは、ほとんどが細菌ウイルス寄生虫などの医学部関係研究ですね。  それで、時間がありませんから指摘だけしておきます。これは確実に細菌兵器化学兵器関連する研究なんです。個々ばらばらになっているけれどもペンタゴンのほうから、ちゃんと統一的にやっているのですね。ちゃんとそのことを、アメリカ文書指摘している。あるいはアメリカ下院歳出委員会でこの実態が明らかになっているのです、化学兵器細菌兵器関連があるということは。たとえば一九六七年一月の「サイエンス」、これはアメリカの代表的な科学専門誌でございますけれども、これに掲載された「生物化学兵器ベトナム戦争」という論文、これを読みますと、アメリカ生物化学兵器に関する広範かつ盛んな研究開発に努力しており、この計画は軍事、非軍事の諸機関、学界、産業界を巻き込み、一部主要団体の協力を得てきた、このために世界各地研究を委託しておる、こうなっているんですね。それから国立予防衛生研究所和気朗という細菌第四室長ですが、私も会ったことがありますけれども、この方は「生物化学兵器」という本を書かれておりますが、この中で、研究テーマだけを見れば、いかにも軍事目的はなくても、それがどう軍事に転用されるかという可能性をもっと考える必要がある、そう指摘されておるのです。それで、アメリカから援助を受けている学者、研究者軍事目的の増強を助けているのは事実である、こう指摘されております。また、元AP通信のアメリカペンタゴン詰めの記者でシーモア・M・ハーシュという人が、一九六八年に「化学細菌戦争」という本を書いております。これにもはっきり指摘しております。日本を含む諸外国は、米国防総省の要請で化学細菌戦委託研究を進め、特に日本では慶応大学佐々木研究所などが、二十七種の化学細菌戦研究に当たっておるという。それで、慶応大学ではこういうことと、ずっと紹介しているのです。ですから、これもはっきりしておるのです。  そこで、私は、最後一つだけ、念を押しておきたいのです。一応いまのところ、やまっておるかもしれません。しかし文部大臣も引き継がれておると思うのですが、四十二年六月二十四日の文部省国立大学協会で構成されております特別会計制度協議会、ここで結論が出されて、今後、この種のものは文部大臣の承認が要るということになっております。それで、これはアメリカのほうの文献ではっきりしておるのですから、もし今後、この種の委託研究大学になされる場合は、これは拒否すべきである、それが日本の憲法のたてまえからいっても、私は好ましいと思いますが、この点だけお伺いをしておきます。
  10. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御指摘のように、四十二年来、外国から援助を受けて研究をする場合には、国立大学に対しましては、文部大臣協議しなければならないということにしておるわけでございますが、今日まで協議は一件もないわけでございます。将来におきましても、軍事に関する研究と誤解を受けるようなことにつきまして、外国から研究費を受けるということは慎むべきだ、かように考えております。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 それでは、テーマを変えまして、日本の問題ですけれども、どうも高等学校あたりで採点のしかたについて、非常に疑惑があるケースがあるわけです。その点について村山委員から関連質問がありますので、私の時間の範囲内でお願いいたします。
  12. 藤井勝志

    藤井主査 この際、村山富市君の関連質問を許します。なお、楢崎君の持ち時間内で御了承願います。村山富市君。
  13. 村山富市

    村山(富)分科員 楢崎委員関連をしてお尋ねしたいのですが、ちょうどいま高校大学入学シーズンで、試験が行なわれております。ことしの受験率は、去年と比較をしてどういうふうな見通しですか。それをまずお尋ねします。
  14. 岩間英太郎

    岩間政府委員 年々大学を希望する者がふえてきておるというふうな状況でございますが、ことしにつきましては、まだ正確な数字は私どもでつかんでおりません。
  15. 村山富市

    村山(富)分科員 ことしも依然として受験戦争というようなことばが使われておりますように、たいへん激しい状況を呈しております。しかも、これはよく世間でいわれるように、やはりどうしても有名校に集中するわけですね。その有名校ということばが、よく使われるのですけれども大臣に聞きたいのですが、有名校という中身は、一体どういうものをさしていっているのか、あるいは有名校という学校を、大臣はどういうふうに評価されておるか、その点をお尋ねします。
  16. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 人によって使われていることばは、違うと思うのでございますけれども大学としての内容を十分備えてきている伝統のある大学、これが一般的に有名校というふうな表現でいわれてきたのじゃないだろうかという感じがいたします。国立大学でいいますと、旧帝国大学といったようなものが中心にいわれてきているのじゃないだろうか、かように考えているわけでございます。同時にまた、結果的には入学試験が比較的むずかしい大学、形式的にはそういうところに区分の目標が置かれてきているような感じがいたします。
  17. 村山富市

    村山(富)分科員 いま世間一般では、中学はもう高等学校予備校高等学校はもう大学予備校というふうにいわれておるわけですね。一応、大学は別にしますと、高等学校の場合に、やはりよくいわれる有名校というのがありますね。その有名校というのは、いま大臣からいろいろお話があったけれども世間一般からいわせますと、いま大臣評価したような国立大学に合格する合格率が高い学校有名校、こういうことになっておるわけですね。こういうことから学校現場では、いろいろな弊害が生まれてきているわけですよ。これは単なる教育ゆがみではなくて、いままさに教育現場は荒廃しているということまでいわれておるわけですね。  私は、もう時間もございませんから、荒廃している事実を具体的に指摘をして大臣見解を聞きたいのですが、たとえば文部省教育指導要領を出しますね。その指導要領基準にして学校長教育課程編成をするわけでしょう。たとえば社会科に例をとりますと、必修教科目倫理社会政治経済世界史日本史地理という五教科があるわけです。ところが、かりにその生徒文科系大学を志望するという場合に、大学に合格するに必要な教科だけに集中して教育をするんですよ。いいですか。そうしますと、たとえば一年次に学習する地理、二年次に履習する日本史科目授業をしぼって、その他の教科授業を受けないのです。授業をしていないにもかかわらず、卒業するときには、これは必須科目ですから、学籍簿もつけなければならぬし、評価もしなければならぬわけです。そこで、全然授業を受けていない教科について学校では点数をつけている、そして卒業基準に合わせて大学受験をさせる、こういう傾向が行なわれておるわけです。  これは、単に社会科だけではなくて、理科の場合においても、たとえば生物化学物理、地学、こういうのが必須科目になっています。ところが、実際には生物化学ぐらいに集中して、あとはほとんど教育をしない。そして卒業のときには同じように点数をつける。これは、いろいろな場合で言えるわけです。しかも社会科理科で削った時間を、国語、英語、数学の授業時間数を増して、水増しをして授業をしたその成績を基準にして、全然授業をしていない他の教科点数にする、こういう傾向が行なわれておるわけです。これは言うならば公文書偽造になるでしょう、学籍簿に、全然授業を受けておらない生徒点数をつけるのですから。そうじゃないですか。大学に合格させるということのあまりに、こういう弊害ゆがみと、現場先生公文書偽造まで強要しておる。現場先生はたいへん苦悩していますよ。こういう苦悩している現場実態に対して、一体、文部大臣は承知しているかどうか。そういう苦悩している、公文書偽造までさせられている先生にどういう指導をしますか。
  18. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま御指摘になりましたこと、詳細に承知しているわけじゃございませんけれども高等学校教育が、入学試験に合格する、このことを中心にしたような教育が行なわれているのじゃないか、学校教育は本来、社会変化に耐え得る力をつちかうところであるにもかかわらず、ただ合格しやすいようにものごとを覚え込ませるというようなことを中心に運営されているのじゃないかという批判は、聞いているところでございまして、たいへん心配をしているところでございます。  根本的には大学入学試験あり方も改めていかなければならないというようなことで、そういう問題を中心に、国立大学協会その他それぞれにおいて、研究を続けていっていただいておるわけでございます。大学入学試験あり方を変えることによって、高等学校教育もかなり是正ができるのではないか、こんな気持ちを持っておるわけでございます。本来的に高等学校で学ばなければならないこと、これは、かなりむずかしいことにもなっておるようでございますが、それをもっと精選して、そして、それさえしっかり勉強しておけば、ほかのことをやらなくても、十分入学試験には対応できるというような姿に立て直していきたい、このような考え方を持っておるところでございます。
  19. 村山富市

    村山(富)分科員 これは、長い目で見て何とかしたいというような問題ではなくて、もうこれは、毎年毎年行なわれておるわけでしょう。しかも言うならば、そういうインチキをして、公文書偽造までして、そして大学に合格する率が高まったという学校有名校になっておる。そうしますと、その有名校になることによって、校長評価も上がっていく、教育委員会評価も高くなるというので、実際には教育委員会やら校長らが、有名校にするために公文書偽造を強要しているわけですよ。いいですか。これは、もっと厳密にいいますと、大学に入っている学生は、全部高等学校で偽造された文書で入っている、こういうことになるわけでしょう。これは、もっときびしく考えてみる必要があると私は思うのです。もう一ぺん大臣見解を聞きます。
  20. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま、おっしゃっていますことが事実とすれば、早急に改めるようにしなければいけないことだ、こう考えておるわけでございます。ただ、有名校の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、入学試験あり方の問題もございますし、学歴偏重社会といわれておる社会あり方を変えていくという問題もございますし、あるいはまた、学校教育課程内容を考え直していくというような問題もございます。やはり総合的に手をつけていかなければならない、そういう気持ちで努力をしていきたいと考えておるところでございます。
  21. 村山富市

    村山(富)分科員 これは時間をかけて――もちろん、いろいろな要因がありますから、一挙にはなかなか受験競争というのはなくならぬと思います。しかし現実に、公文書偽造学校現場で行なわれて、そして大学生がつくられておる、こういう実態に対しては、私はもっと大臣に反省してもらう必要があると思うんですよ。  それからもう一つは、補習費の問題があります。これは各学校授業料以外に、進学対策費という名目で取っておるわけです。これは時間がありませんから、詳しく申し上げません、よく知っておると思いますから。しかし、そのことが学校の中では、たいへんな生徒に対する差別になっておるわけです。補習費を取るということは、地方公務員法の三十八条にも関係があると思いますけれども高等学校の中で、就職組私立大学に行く組と国立大学に行く組と学級編成を分けて教育がなされておる。こういう例もあります。たとえば、ある県で国体があった。国体マスゲームに出るのに、国立大学を受験する学生は除外して、それ以外の学生マスゲームに参加をさせるというようなことがありまして、生徒自体学校に抗議をして、ストライキをやるというような事態も起こったことがあるのです。  ですから、学校の中にたいへんな格差を持ち込んでおる。いわば差別を持ち込んでおる、生徒に対する教育に。こういうふうに、いま高等学校現場というものは、たいへんに荒廃しておる、こういう実態を全然無視して、そして何らの手もつけられておらぬ。これが私は、いまの文部省教育に対する行政ではないかと思うのですが、こういう点についてはどう考えますか。
  22. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 高等学校あり方として、いろいろな高等学校があってもいいんじゃないだろうか。普通科課程もあれば商業科課程もあり。普通科課程の中にもいろいろな特色がある。それはそれなりに評価をしていいのじゃないだろうか、こう私は考えるわけでございます。  ただ、高等学校の中に、いま御指摘になりましたように、ことさらに差別が持ち込まれているような感じになりまして、子供の性格をゆがめるようなことがあってはならない、大事なことだ、こういうふうに思っておるわけでございます。そういうことになっている根本は、やはり入学試験が一番大きいんじゃないだろうか、こう思っておるわけでありまして、やはり入学試験あり方を改めて、学校で伸び伸びとやっていけるようなくふうができないものだろうか。同時にまた、中学校から高等学校に行く場合には、個人の適性、能力に応じて進学指導されていくというような方法をとりたいなという希望を持っておるわけでございます。  そういう意味では、私の全くの個人的な考え方ですけれども大学入学試験も半分ぐらいは、推薦入学制度をとったほうがいいじゃないだろうか、そのかわり、あと個々の自由な試験によってきめたらいいじゃないだろうか、こんな考え方もあるわけでございます。今後、入学試験あり方の問題、これは一つの大きなウエートを占める問題ではなかろうか、こう考えておるところでございます。入学試験が難問、奇問を出すものですから、ことさらに受験中心の勉強に追いやられてしまうという傾向も多分にあるのじゃないだろうかというようなこともいわれてもおりますし、私は、それも重要な問題だなと考えておるところであります。
  23. 村山富市

    村山(富)分科員 いままで議事録を見ましても、毎回、同じような問題が提起をされて、同じような答弁をしておるのです。しかし一向に是正はされていないわけです。そんなことでなくて、大臣にそんな考えがあるなら、高等学校に対する入学競争をもっと緩和していく、あるいは大学に対する入学競争を緩和していくというふうな具体的な対策をどんどん打っていく、そして、もっと高校教育が伸び伸びとなされるような教育現場をつくっていく、こういう積極的な対策を立てていく必要があると思うのです。  最後に、お尋ねしたいのですけれども、冒頭に申し上げましたように、教育委員会指導要領を出して、その指導要領に基づいて各学校教育課程編成をする。その指導要領必須科目が、さっき申し上げましたように、現場では全然実行されておらない。これは、いろいろな要因があると思うけれども、やはり教育指導要領の中身にも問題があるのじゃないか。教科編成にも問題があるのじゃないか。社会の要請にこたえてだんだん高校教育は多様化する。その多様化にこたえて複雑になっておるという面もあると思いますが、私は、この際、そういう意味では、教育課程を改める必要があるのではないかということが一つと、もう時間がございませんからずっと申し上げますが、それに対する考え方と、もう一つは、いままで申し上げましたように、現場学校先生は、自分の良心に偽って公文書偽造をやっておる。しかも、いけないと思いながら、差別教育がもう現実に行なわれておる。  こういう実態を全然無視して、たとえば筑波大学法案を権力をもって通すとか、あるいは教頭法制化を通して学校の管理機構だけを強めて、上からの力で押えつけていこう、こういう教育あり方は、やはり基本的に間違いだし、同時に、そのことが、さっき言ったような弊害を、学校現場に生み出すのではないかと思うのですが、それに対する大臣見解を聞きます。
  24. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 教育課程の問題につきまして、昨年の十一月に、小中高を一貫する教育課程審議会を発足させたところでございます。おおむね二年ぐらいの間に結論を出してもらいたい。まず高等学校教育内容、これをきめまして、あと学校、小学校とおりていただく。そうすることによって重複を避け、思い切って精選をする。そして学校教育においては、基本的な力をつちかうところだという姿をはっきりさしていきたい、こう考えておるところでございます。  同時にまた、大学入学試験につきましても、国立大学については、できれば五十一年度から統一学力テストができないものかということで、協議を進めてもらっているところでございます。  筑波大学につきましては、今年度から二割の人たちは推薦入学入学させるという方法がとられたわけでございまして、私は、もっとこの方法を進めていきたいものだなというふうに考えているところでございます。いずれにいたしましても、総合的に改革に手をつけていかなければならないと考えているわけでございます。  筑波大学を力で通したとか、教頭がどうだとかおっしゃいましたけれども、私は管理を適正にしていきますことが、それぞれの責任を分かち合って力を尽くし合う、教育現場を円滑に運ぶ根本ではなかろうか、こう考えているわけでございまして、教頭法案は四十三年に国会に提出させていただいたわけでございまして、多年にわたって皆さんにお考えをいただいている問題であることは、ひとつ御理解いただきますよう、お願いを申し上げておきます。
  25. 村山富市

    村山(富)分科員 これは、もうこの問題を論議しておっても、しかたがありませんから、さっき申し上げました学校現場の問題について、これが現実に――何べんも言いますけれども公文書偽造が行なわれて、その偽造された文書によって大学生がつくられておるわけです。したがって、高等学校では必要な必須科目を受けてない。そこで最近は、有名大学にはだんだん留年学生がふえているでしょう。これは、もちろんいろいろな要因があると思いますけれども高等学校における教育課程教育あり方が、やはり留年がふえる一つの原因になっているのではないかというふうに指摘されておるわけです。これは猶予をされる問題ではないが、そういうインチキやら公文書偽造がなされている行為に対して、大臣どう思いますか。
  26. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 事実であれば、きわめて残念なことだと思います。
  27. 村山富市

    村山(富)分科員 きわめて残念であります――残念だけで済ますのですか。
  28. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど来、私がるるお答えを申し上げているような方向で解決をしていきたい、努力をしているところでございます。
  29. 村山富市

    村山(富)分科員 るる申し上げているというその方向は何ですか。具体的に現場文書偽造が行なわれておる。偽りの文書でもって、書類でもって大学生がつくられておる、こういう行為に対してどうするのですか。
  30. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 高等学校教育をしっかりやっていれば、それで十分入学試験には対応できるというような姿にしていかなければならない。それについては、大学入学試験あり方も改革しなければならない。改革する方法は、先ほど申し上げましたように、難問、奇問を避けられるような――国立大学については、統一学力テストを五十一年度から実施できないかということで、いま研究を続けていただいているわけでございます。  さらにまた、推薦入学方法を、私、個人としてはもっと大幅に取り入れられないものだろうか、こう考えているわけであります。  また高等学校教育課程につきましては、先ほど申し上げましたような方向で、十一月以来、教育課程審議会で検討を続けていただいているところでございます。
  31. 村山富市

    村山(富)分科員 さっき言いましたように、たとえば文部省指導要領を出して、教育委員会指導学校長教育課程編成をするでしょう。ですから、この編成された教育課程を、学校教育委員会に出して承認を求めるわけですよ。その承認を求めた教育課程と現実に学校で行なわれている教育とは、全然別のものになっているわけです。ですから、あることばでいいますと、こういうことばもあるのです。学校では二重帳簿をつくっている、商売人が税金を納めるときに、内輪の帳簿と表の帳簿と分けるように。ですから、教育委員会に出している表の教育課程と実際に学校で行なわれている教育課程とは全然違う。しかも、そういうことをすることによって有名校になっていく。学校長評価が高まっていく。有名校になり、学校長評価を高めるために、現場先生がそれを強要されておる。  こういう実態がある学校現場で、いい教育ができるわけがないじゃないですか。そういう現場大臣が全然知らぬとすれば、これは怠慢ですよ。私は、そういう現状に対して、もっと大臣の明確な答弁をお聞きしたいと思います。
  32. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま私、かなりはっきり申し上げているつもりでございます。中学校にしましても、高等学校にいたしましても、いまの教科書、学習指導要領が考えているよりも、はるかに多くのものが詰め込まれておるようでございますが、やはり教科書のあり方から、あまり複雑な盛りだくさんなものにしないほうがよろしいんじゃないだろうかという考え方、昨年十一月に発足いたしました教育課程審議会の委員の多くの方々も、そういう気持ちを持っていただいておるわけでございます。ただ覚え込むところではなくて、基礎的な力を養うところだというふうに学校教育を持っていきたい。そうしますと、入学試験もそれに対応できるような出題に改めてもらわなければならない、こう考えるわけでございます。  そういう意味で、入学試験あり方についても、抜本的な改革をしたいということで、いま申し上げますようなことで、国から数億円の補助の金まで用意いたしまして検討していただいておるわけでございます。より根本的には、相当な推薦入学制度を採用したらいいのではないだろうかということまで私は考えているわけでございます。  同時にまた、社会が学歴を重視し過ぎる。やはり個人の適性、能力に応じて人がそれぞれの道へ進んでいかなければならないし、また教育も、それに対応したものでなければならないと考えますので、いわゆる学歴化社会といわれている姿――今日ではもうみんな大学卒業するのでございまして、戦前のように同一年齢層の一%ぐらいの者しか大学卒業しなかったのではなくて、三三%の人が今日、大学に入っているわけでございますので、大学を出たからといって特別のことはないわけであります。しかし昔の風習が今日なお続いているところにも、若干問題があろうかと思います。ですから、社会の人を見る見方についても、改めてもらわなければならない。これは全体の問題でございますが、急ぎの問題につきましては、いま申し上げましたように、年限を限って検討してもらっているわけでございます。
  33. 藤井勝志

    藤井主査 約束の時間が来ていますから、ちょっと急いでください。
  34. 村山富市

    村山(富)分科員 そういう社会一般的な論理をぼくは聞いているわけではないのです。  そこで最後に、これだけ要請します。全国の高校を、公立の普通校でいま私が指摘したような実態があるかないか、私は事実をつかんでいますから、それを調査して報告してください。いいですね。
  35. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま初中局長に伺いますと、学校によってはあるでしょうなと、こういうことでした。やはり学校教育指導にあたりましては、特にそういうことのないように、文部省としては注意を喚起していかなければならないことは当然でございますので、そういう方向で注意の喚起につとめていきたいと思います。
  36. 村山富市

    村山(富)分科員 調査して報告してもらうことを申し入れて、終わります。
  37. 藤井勝志

    藤井主査 馬場昇君。
  38. 馬場昇

    馬場分科員 文部大臣にお尋ねしたいと思いますが、高度経済成長政策、日本列島改造の開発ブームの中で、今日、陸も山も海も空も、その自然が破壊されつつあるというのは、もう重大な事実でございます。これは、もう大臣もそのとおりの考え方だろうと思いますが、私は、きょうは開発至上主義と文化遺産破壊の問題について質問をしたいと思います。  すでに開発のために、十分な調査もなしに重要な文化財が破壊されたり、あるいはやみからやみに葬り去られた、こういう事実が多くあると思います。文部大臣に、そういうものについての基本的な考え方をお尋ねしたいわけですが、国土の開発にあたって歴史的な文化財、特に古墳とか埋蔵文化財の保護、こういうものについて、大臣は基本的にどう考えておられるのかというのが第一点です。  第二点は、文化財がそこにあるということはわからない、開発が進んでいきまして、そういう工事の途中で新しい文化財が発見された、こういうものの評価というものはどうしておられるのか、こういうことについて、文部大臣の基本的な考え方を最初にお尋ねしておきたいと思います。
  39. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 開発が進むにつれまして、あちらこちらで埋蔵文化財が破壊される。今日では埋蔵文化財の保存につきまして、国民の多くの関心が強く寄せられるようになりました。たいへんうれしい傾向だ、かように考えておるわけでございます。そういう意味で、いわゆる遺跡というのは、十四万カ所ぐらいあると確認しているわけでございますけれども、これらの遺跡につきまして、調査できるものは、あらかじめ調査を進めていかなければなりませんが、同時に、国民の皆さん方に周知してもらうということも大切じゃないかというようなことで、そういう努力を始めているところでございます。同時に十四万カ所に限らず、おそらくそれが三十万カ所くらいにふえてくるんじゃないだろうか、こう考えられておるわけでございます。  埋蔵文化財を守りますことは、文部省だけの力ではまいりませんので、国民の多くの方々に理解を求める、そのためには、できるだけ事前の調査をいたしますし、また周知をさせる方法もとらなければならないということで、今後も積極的な努力を尽くしていくつもりでございます。  同時にまた、開発の途上で何か発見される、そういう場合には、直ちに工事を一応中止していただきまして、まず調査にかかるということで今日も進めてきておるわけでございますけれども調査に要する費用の問題などにつきましては、若干補助金を増額するというようなこともさせていただいたわけでございまして、そういう問題が起こりましたときに、機敏に対応できるように文部省としては用意をしていかなければならない。そういう意味においては、また埋蔵文化財の調査に当たる人間をふだんから養成していかなければならないというように考えられるわけでございまして、そのための埋蔵文化財センターというようなものも、四十九年度からつくらしていただきまして、調査員の確保、研修にもつとめていきたい、かように考えているところでございます。
  40. 馬場昇

    馬場分科員 文部大臣ですから、たとえば開発か文化財保護か、こういう二者択一を迫まられる場合やなんかが当然あると思うのですが、そういうときに、文化財保護というものを最重要視して考えるのだ、そういうぐあいにお聞きしたのですが、それでいいのか。途中でいろいろ文化財が出てきた、そういうときには工事を中止して、それを調査して評価する、そういう方向を文部行政としてとっておるのだ、こういうぐあいにいまお聞きしたのですが、そのとおりでいいですか。
  41. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そのとおりでございますが、最優先ということになりますと、すべてどんな文化財であっても、文化財がある以上は、一切開発まかりならぬというふうに誤解されてはいけないと思います。やはり両者比較考量して考えていかなければならぬことは当然のことでございます。しかし文化財がなくなりますと、これは取り返しのつかないことでございますので、それなりの判断は当然必要だと思います。
  42. 馬場昇

    馬場分科員 文化財を大切にしないということは、これは国土の開発じゃなしに、国土の破壊だ、こういうぐあいに私は考えます。そしてまた、貴重な文化財を後世に残すということは、文部行政だけではなしに、国民の責任だろう、こういうぐあいに思います。開発というのはいつでもできるわけですけれども、一回文化財が破壊されましたら、永久にもとに戻らぬわけですから、そういう立場でぜひ文化財保護というものを、開発に当たっては十分考えてやるという御答弁ですから、そのような方向で努力願いたいと思います。  次に、担当の文化庁の長官に、具体的にお尋ねしたいと思うのですけれども、いま九州縦貫高速自動車道路が九州で建設されておるわけですが、熊本県の熊本と松橋工区間で発見されました城南町というところの塚原古墳群が、現在破壊か存続か、まさにその岐路に立たされておるわけでございます。  この問題について、具体的に尋ねるわけですけれども、塚原古墳群の評価というものについてどう考えておられるのかということを最初にお尋ねしたいのです。まさに日本の最大級の方形周溝墓が発見されております。これは一辺が二十六メートルもあるわけでございますし、この方形周溝墓というのは、日本で最大の規模のものでございます。そして方形周溝墓群としては、その規模なり配置などで全く日本の最高級の遺跡だ、こういうぐあいにいわれておるわけです。さらに、その同一の台地の上で、方形周溝墓から円墳あるいは前方後円墳、こういうものに移行する過程というのを、この台地の遺跡が示しておるということは、これは日本で他に類例のない全国屈指の遺跡である、こういうぐあいにいわれておるわけです。  このことについては、文化庁にも、県の教育委員会か第一次調査、第二次調査をやりまして、報告書も出しておると思うのです。それについては、あらゆる大学の専門学者の所見もついております。そしてまた、県や町の文化財専門委員会あるいは考古学者、史学会、さらには高等学校社会科研究会、そういうものが文化庁に対しましても、保存してくれという意見を出しておると思うのです。こういう塚原古墳についての評価というものについて、現在、文化庁ではどういう評価をしておられるのかということを最初にお尋ねしたいと思います。
  43. 安達健二

    ○安達政府委員 塚原古墳群は、ただいまお話のございましたように、弥生時代から古墳時代にかけました遺跡でございまして、現在まで検出されておる遺構といたしましては、ただいま御指摘の方形周溝墓二十五基、それから円墳が三十四基、それから石棺が十七基、そのほか以前からわかっておりますところの円墳が一基等の遺構が相当たくさんございまして、遺跡といたしまして重要な価値を持っておるものである、かように考えておるわけでございます。
  44. 馬場昇

    馬場分科員 重要な価値を持っておるというぐあいに考えておられるならば、これは国指定の重要文化財のクラスだと私は思うのですが、これを国の指定史跡にするという考え方はございますか。
  45. 安達健二

    ○安達政府委員 国の史跡に指定いたしますためには、文化財保護審議会並びにそのもとにございますところの専門分科会等におきましての十分なる検討をされましたその結果によるわけでございますので、にわかにここで申し上げることはできかねますけれども考え方といたしましては、われわれといたしましては、積極的といいますか、前向きな態度でひとつ考えて対処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  46. 馬場昇

    馬場分科員 積極的前向きの考えというのは、まさに私も賛成ですけれども、そうしたら専門分科会、さらに審査会、そういうものにいつごろおかけになりますか。
  47. 安達健二

    ○安達政府委員 指定をいたします以上は、その保存の方途がある程度明確になりませんと、できかねるわけでございまして、いまお話のございますように、縦貫道の問題もございまして、その点につきまして、やはり道路公団等との間におきましても、十分なお話し合いをいたしまして、また土地の問題その他につきましても、見通しができませんと、にわかに指定を発案するということもできかねますので、この問題につきましては、さらに地元、すなわち県あるいは町との意見を十分調整をいたしまして、そして道路公団とも十分協議した上、そういう状態になった段階において検討すべき課題であろう、かように考えておるわけでございます。
  48. 馬場昇

    馬場分科員 ぼくはさかさまだと思います。たとえば保存の方法等を明確にしてから指定をするのではなしに、重要であれば、これは重要文化財だ、国指定の史跡にするのだ、そこからどういう形で保存をするのかということが考えられることであって、そして、また、重要文化財に指定するかしないか、国の指定史跡にするかしないかということを、道路公団と相談する必要は全然ないと私は思うのです。これは話にならぬことだろうと思います。  だから、ぼくらのところでは、文化庁というのは、こういう埋蔵文化財については、これは文部省の文化庁でなく、建設省、道路公団、その下の文化課だというぐらいにしか言われていないんですよ。そういうことでございますし、時間がないので、これは文教委員会でも議論をしたいと思いますけれども、結論的に言いますと、とにかくまず専門分科会にかける、そして審査会にかけて、これの評価を明らかにさせる。そのことからすべてが始まってくるのじゃないかと思いますが、それを早くやってもらいたいということです。  それからもう一つは、いま途中の経過を聞きましたが、結局評価とか、指定するかしないかという結論が出るまでは、破壊は絶対に許されないと思うのですが、そういう評価、指定の結論が出るまでは破壊はしない、してはならない、こういうものについての長官の考え方を聞きたいのです。
  49. 安達健二

    ○安達政府委員 その点につきましては、道路公団のほうも了解をしていただけると思いますし、われわれといたしましては、先ほど申し上げましたように、前向きな姿勢で取り組んでいく、こういうことで御了承いただきたいと思います。
  50. 馬場昇

    馬場分科員 再度念を押しておきますが、前向きな姿勢というのは、これを国の指定史跡にするかしないか、これは重要なことだから、前向きに検討していくということですね。  それから、いま一つは、そういう結論が出るまでは破壊はしない、そのことは道路公団も了承してくれるだろう、こういうことですね。
  51. 安達健二

    ○安達政府委員 ただいまお話しのとおりでございます。
  52. 馬場昇

    馬場分科員 それでは次に、建設省にお伺いしたいと思いますが、いまの答弁もお聞きになっておると思うのですけれども、この塚原古墳の問題、これについては、文化庁や県で、いま一生懸命国の指定史跡にするかしないか調査もし、研究もしておられる、こういうことですが、開発か文化財保護かという関連もございまして、道路建設については、文化庁や県の意見に従うべきだと私は思うのです。塚原古墳群、あそこを縦貫道路が通るわけですが、この古墳の重要性、国の指定にするかしないかそれを検討中、それまでは破壊しない、こういまおっしゃったが、これに建設省は従った指導をするのかどうかということをお聞きしておきたいと思います。
  53. 山根孟

    ○山根説明員 塚原古墳群の保存の問題につきましては、文化庁、それから県当局のほうと保存の方法等につきまして、現在、慎重な打ち合わせをしている段階でございます。したがいまして、その結論を待ちまして、対処していくという方針でございます。
  54. 馬場昇

    馬場分科員 それでは、保存の方法がきまるまでは、あそこは工事はしませんね。そして破壊はしませんね。
  55. 山根孟

    ○山根説明員 そういうぐあいに考えております。
  56. 馬場昇

    馬場分科員 それから、開発にあたっての建設省の基本的な姿勢というものについて、さらにお聞きしておきたいと思うのですけれども、開発にあたって、私は、地元の意見というものを十二分に尊重するということが大切だろう、こういうぐあいに思います。これは高速自動車道路も同じです。  そこで、この問題につきましては、地元は、下益城郡城南町というところですけれども教育委員会、文化財専門委員会、町長、町議会も議決しておりますので、町議会の議長、ここからぜひ保存をしてくれということが、おたくには何回となく陳情も出ております。それから熊本県全体をとってみましても、県議会でこれは保存すべきだという議決が行なわれ、議長から要望が出ております。県の教育委員会も保存すべきだということで陳情書を出しております。熊本県知事も出しておるのは、もう御承知のとおりです。それから学界におきましても、熊本の考古学会あるいは史学会、こういうところからもおたくに出ております。  そしてまた、熊本県には、まさに遺跡としても重要ですけれども、ここは火の国、肥後、熊本の発祥の地といわれておるわけで、全県民が一致して関心を持っておるわけでございます。そういう立場から、塚原古墳群を守る会というのが、朝野をあげて熊本県にできておりまして、会長は、これは熊本日日新聞というところの社長が会長になっております。こういう県民的な会もできております。まさに、こういうことで全県民があそこを残してくれ、こういうのが地域住民の意見ですが、地域住民の意見を尊重しないものは、私は、公共事業ではないと思います。  そういう意味で、これだけほとんど残らず熊本県民が保存してくれということを要求しておる、この地元の意見というものを尊重して工事をすべきだと思いますが、どうですか。
  57. 山根孟

    ○山根説明員 文化財の保存、それから文化財に関連をいたします開発の問題について、一体どう考えておるのか、こういう御指摘……(馬場分科員「いや、地元の意見を尊重するのかという質問です」と呼ぶ)了解いたしました。  その場合に、若干現地の事情を申し上げさしていただきたいわけでございますが、全部すべて用地買収が完了いたしております。現在、当該塚原古墳群のところについての用地の取得を終わりまして、それに基づいて、その地域にかかります発掘調査を、教育委員会のほうに委託をいたしまして調査をした結果、現在のような段階になったわけでございます。  保存の方法等につきましても、いろいろなやり方があろうかと実は考えておるわけでありますが、その方法について、地元の御了解と申しますか、合意が得られるような考え方はないかということについて、現在、いろいろ熊本県当局のほうともお打ち合わせをしておるということでございます。
  58. 馬場昇

    馬場分科員 あなたの言うのは、全然違うのです。保存の方法なんかを地元は言っておるのじゃないのです。とにかくあそこを、塚原古墳群という日本で最大級の重要史跡の中を、自動車道路が突っ切るわけでしょう。だから、そこを通ってもらっちゃ困る、これは、このまま現状にしておいてくれ、ここに史跡公園をつくるのだということが、全部の地元の意見ですよ。保存の方法をどうこうしておるのじゃないのです。ここを通ってもらっちゃ困る、現状のまま史跡公園にして残すからというのが地元の意見です。保存の方法はそれだけです。それがさっき私がわざわざ読み上げました、熊本県全県民の意見なんです。  そういう地域住民の意見を尊重するか。開発というのは、公共事業と私たち言いますけれども、結局、住民の希望を尊重せぬ公共事業というのはない。そういう意味において――私は、簡単なことしか言いません。地域住民の意見を尊重して、こういう開発工事をやるかどうかということです。
  59. 山根孟

    ○山根説明員 現実には、地域の住民と申しましても、いろいろな範囲に及ぶものと考えておりますので、そういった全体の立場の問題もあろうかと存じます。したがいまして、そういった点につきまして、熊本県と十分調整をはかってまいりたいというぐあいに考えております。
  60. 馬場昇

    馬場分科員 地域の住民にいろいろな意見があるというのは、どういうことですか。私が言いました町、県、それから市民運動、すべて一人残らず現状で残せと言っているでしょう。それを、地域の住民にもいろいろ意見があるというのは、どういうことをさして言うのですか。
  61. 山根孟

    ○山根説明員 県全体としての最終的なお考えが一体どうであるかということも含めて、現在、県当局のほうと調整をはかっているということを申し上げたわけでございます。
  62. 馬場昇

    馬場分科員 県全体の意見がどうだということなんです。ちゃんと県議会で決議をしておりますよ。教育委員会で陳情書を出しておりますよ。それから、県知事も出しておりますよ。県の意見ははっきりしておるじゃないですか。  そこで、地元の要望としては、あのまん中を通らないでちょっと横を通ってくれ、これが地元の意見です。このちょっと迂回するということは、建設省の原案では、もともとそうなっておったわけです。ところが、用水があるということで、そこをのけてまん中を通るようにした。ところが、この用水は、圃場整備等で要らなくなった。だから、そこをもとどおり通してくれというのが地元の意見です。ルート変更というのが地元の意見です。この迂回するということについては、どういうぐあいに考えておられるか。
  63. 山根孟

    ○山根説明員 現段階におきましては、前後がすでに用地買収が完了しておるといった事情、それから、ルートを決定いたしました経緯といたしまして、この地域の最も重要であると考えられておりました琵琶塚古墳であるとか三段塚古墳といったような古墳を残す、触れないという考え方でルートを選定し、現段階に至っておるものでございますので、私どもといたしましては、これを、現状の路線の上において、どのように保存の方法を考えていくかという考え方でまいりたいというぐあいに考えております。
  64. 馬場昇

    馬場分科員 先ほどの文部大臣の答弁あるいは文化庁長官の答弁とあなたの考え方は、全然食い違っています。あなたが言ったのは、前にわかっておったものを、どうやって保存するかということで工事を計画した、それは事実です。ところが、工事をしている中で、新しい、日本最大級の、重要文化財クラスの史跡があらわれた。これをどうするかというのがいまの問題。それについては、いま研究をしておる、研究が終わるまでは破壊してもらっちゃ困るという意見が言われたわけです。そしてまた、地元は全部新たに発掘されたこの古墳を残してくれというのが要求です。あなた方は、そういう地元のことには全然耳をかさずに、最初の既定どおりの道を通すということでもって考えるというのは、もう文化財保護という感覚が全然ないじゃないですか。そういう点について、いまの建設省の考え方は、文部省、文化庁で困ると思うのですが、長官、どうですか。
  65. 安達健二

    ○安達政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、塚原古墳群が保存できるような方法でひとつお考え願いたいということで道路公団のほうにお願いをし、積極的に前向きに対処してまいりたい、こういうことでございます。
  66. 馬場昇

    馬場分科員 ここで文部大臣にも、長官にも――特にあなたは責任者でないから、なんですけれども、こういう事実がけしからぬと思いますのは、たとえば道路公団の福岡建設局の総務部長がこういうことを言っているのです。これについては、いまさら迂回路線なんて論外です、それによる経済的損失を考えてください、こういうようなことを言って、古墳というのは、要は完全な記録保存ができればそれでいいのです、調査したあと埋め戻しておけば問題はないと思います、それから、現在すでに二階、三階に上がり詰めた階段を一挙に取り払われるような気持ちがします、熊本県とか文化庁とか、そういう文化財保護のことを言う人はルール無視を言っている、公団だけ非難されているのは心外だ、こう言っておる。そしてまた、全国的に見てルートが変更された例はない、建設省には変更する考えはない、古いものはこわす、つまり破壊するのが文明の進歩だ、高速道路は今様万里の長城だ、こういうことも言っておるのです。  これには文化財保護の考え方というのが一片でもありますか。こういうような形で高速自動車道路を通すという行政をやっておられる。これはもう開発でなくして、破壊です。歴史を冒涜するものと私は思うのです。こういう道路公団福岡建設局の考え方は、私はけしからぬと思いますが、そういう指導をやっておられるのですか。
  67. 山根孟

    ○山根説明員 文化財の問題につきましては、われわれは十分考えて、事前の調査等につきましても、文化庁の御指導を受けつつ実施しているというのが実態でございますので、御指摘のように、文化財を全く無視するという考え方は、われわれは全然持っておりません。
  68. 馬場昇

    馬場分科員 時間が来ましたので、文部大臣文化庁長官、これは、もうほんとうに、開発を全然否定するわけではありませんけれども、文化財は一回破壊したら永久にもとへ戻らぬわけです。そしてまた、この時代に生きている者が、これを保存し、後世に伝えるというのは、行政として、また国民としての義務であろうと思います。  そういう意味で、ぜひ前向きに検討願いたいということと、やはり問題は、建設省や道路公団は、文部省なり文化庁なり、それから地元の朝野をあげての一人残らずの意見というものに、謙虚に耳をかして仕事をすべきだと思う。そしてまた、あそこを迂回するというのは、もとの原案だったんですし、土地交換なんかはできる、買収でも県は世話をするというわけですし、費用もそうかからない、こういうことですから、ぜひ文化庁の意見、地元の意見を尊重しながら対処するということを、最後に確認をしておきたいと思うのですが、建設省、どうですか。
  69. 山根孟

    ○山根説明員 当古墳群の専門的な評価の問題につきましては、われわれは専門家でないわけでありますので、その評価の結果、地域全体としての考え方等につきましては、十分考慮の上で進めてまいりたいというぐあいに考えております。
  70. 馬場昇

    馬場分科員 いろいろ問題はありますけれども、さらに、詳しくは文教委員会でまた大臣なんかに意見を聞くとしまして、以上で私の質問を終わります。
  71. 藤井勝志

    藤井主査 栗田翠君。
  72. 栗田翠

    栗田分科員 私は、長距離通学の問題について質問いたします。  ただいま、小中学生の適正通学距離というのは、小学校で四キロ以内、中学校で六キロ以内というふうに大体されておりまして、それ以上を通学している子供たちは、長距離通学ということになっていると思います。  ところで、最近、この長距離通学をする児童生徒の父母から、通学費が非常にかさんでたまらないという声をたいへん聞きますけれども、この点について文部省は、どのように措置しておられるでしょうか。
  73. 岩間英太郎

    岩間政府委員 いま私どもは、遠距離通学の児童生徒に対しまして、三つの方法で対処しているわけでございますが、地方交付税の措置におきまして、遠距離通学者に対する各市町村の援助ができるように財政措置をしているというのが一点でございます。  それからもう一つは、学校統合に伴いまして、遠距離通学者に対する補助が必要になりました市町村に対しましては、国の補助で遠距離通学者に対する補助ができるように、私どものほうから補助金を市町村に交付いたしております。  第三は、準要保護児童生徒につきましては、遠距離通学者に対しまして、全額の補助ができますように、私どものほうで別途二分の一の補助をするというふうな三つの仕組みがとられております。
  74. 栗田翠

    栗田分科員 補助または交付税の対象として遠距離通学の通学費を考慮に入れているということは、教育的な見地からはどのような精神でそれをやっていらっしゃるか伺いたいと思います。
  75. 岩間英太郎

    岩間政府委員 先ほど先生も御指摘になりましたように、児童生徒の通学距離というのは、小学校では四キロ以内、中学校では六キロ以内というのが望ましい、そういうふうな範囲で学校も建てていただくということが望ましいわけでございますけれども、やはり現実の問題といたしまして、立地条件その他で小学校、中学校の場所が定まり、また、そこに通学される方の通学距離が四キロ、六キロをこえる場合がある、そういう場合には、交通機関等を利用していただくほうが、子供の健康その他から考えまして望ましいのではないかということで、四キロ、六キロ以上の方につきましては、通学費の補助ができるようにというふうな考え方をとっております。
  76. 栗田翠

    栗田分科員 補助金の場合は別としまして、交付税の対象になっている場合ですが、実際にその対象になるべき条件を備えた児童生徒で通学費が出されている数、または率でもけっこうですが、それを……。それからまた四キロ、六キロ以上でありながら、出されていない数はどのくらいか、文部省はつかんでいらっしゃるでしょうか。
  77. 岩間英太郎

    岩間政府委員 地方交付税で財源措置をいたしております人数でございますが、小学校の児童につきましては約十五万でございます。それから中学生につきましては十八万、合計三十三万人に対しまして、補助ができますように、金額としましては三十五億の財源措置がとられているわけでございます。  これに対しまして、市町村の実績でございますけれども、小学校は約五万五千人、中学校は約九万人、合計いたしまして十四万六千人に対しまして、約二十億の措置がなされておるという実態でございます。しかし地方交付税は、一定の基準に基づきまして、標準的な団体をとりまして画一的に計算をするというふうなやり方でございますから、もちろん正確な実績の人数をもとにして計算をされておるということではないわけでございます。
  78. 栗田翠

    栗田分科員 いまのお答えを伺いますと、小学校で対象になっている児童が十五万人、それに対して地方自治体から通学費が実際に支払われているのは、約三分の一の五万五千、中学校の場合、十八万が対象であるのに、約半分の九万人にしか払われていないということになりますと、その残りの子供たちは、遠距離通学をしながら通学費をもらっていないということになります。  これが、さっきも言いましたように、父母にとって大きな負担になっているわけですが、先ほどお答えのありましたこの交付税、補助金などの対象にする精神からいいましても、本人の意思でなく学校が遠くにある、そのために父母負担を軽減するということだし、また、お話はなかったと思いますが、子供たちに交通機関を利用させるということが、あまりに長距離を歩くために学習する意欲を失ってしまうようなことのないような、学習権の保障という問題も含まれていると思うのですけれども、そういう精神から考えてみまして、この児童生徒の父母に対して、たとえ交付税だから、一般財源だからといいましても、補助金が地方自治体から出されず、通学費が多数の子供に補償されていないということについて、どういうふうにお考えになりますか。
  79. 岩間英太郎

    岩間政府委員 これは、国の財源措置が十分行なわれているということを意味するわけでございまして、実際にそういうふうな該当のお子さん方に対して、地方公共団体が目をつぶっておるということには必ずしもならないというふうな感じがするわけでございます。  もちろん交通機関がある場合、実際にそういうものを利用していられる場合、これに対しましては、私どもの理解では、かなり徹底した助成が行なわれている。しかし現実問題として、交通機関を利用できない方もおられるわけでございますし、それからまた、親御さんのお考えあるいは児童生徒のお考えによりまして、交通機関があるにもかかわらず、みずから徒歩で学校に通学するという方もおられると思います。しかしながら、国の財源措置といたしましては、そういう方につきましても、一応漏れなく、機会がございましたら、補助できるような制度をとっておりますということで、私は、むしろ財源措置が十分行なわれているということをほめていただいてよろしいのではないかというふうな気持ちがするわけでございます。
  80. 栗田翠

    栗田分科員 それでは、交通機関があって、しかも父母がそれを利用することを希望しているような場合には、地方自治体としては、交通費を補償すべきであるというふうにお考えになりますか。そのように行政指導すべきだとお考えになりますか。
  81. 岩間英太郎

    岩間政府委員 従来から、私どもは父兄負担の軽減ということについて、かなり努力をしてまいりました。現実に四キロ、六キロ以上のお子さんがおられて、交通機関を利用されているという場合については、私どもは、市町村がそういう方々に対しまして、援助をするということは指導もしてまいりましたし、またそうあるべきであるというふうに考えております。
  82. 栗田翠

    栗田分科員 文部省のお答えですと、ほとんどがそうされているとおっしゃいますが、実態はなかなかそうでないわけなんです。ぜひ、その辺は今後調査をしていただきたいと思います。  私のつかみました例でも、たとえば私は昨年の十月、長崎県の五島列島を調査にまいりました。あそこは離島でして、僻地の非常に多いところでございます。ここで、たとえば奥浦中学へ通っている子供の中に十人ぐらい、片道で十二キロ歩いている子供がおります。その子はどんなふうにして学校へ毎朝通学しているかといいますと、朝四時半に起きて、まだ暗いので、懐中電灯を持って十人一緒になって山をおりてまいります。とことこと歩いて、半泊分校というのがあって、ここは以前中学校も分校だったのですが、統廃合でなくなったところで、そこまでたどりついて、懐中電灯を先生に渡してまた歩きます。そして、そこから土岐まで出まして、そこで船に乗って対岸に着いて、そこからまた四キロ歩いて、そして最後のたった二キロ、ここだけバス路線なんですが、この二キロのバスへ乗って学校へ着くというのです。  子供たちは疲れ果てておりまして、しかも、おかあさんは、朝あまり早いものですから、お弁当のおかずをつくるひまがない。朝、御飯だけ詰めて、気をつけて行きなさいと言って、子供を学校に出すそうです。子供は学校の近くで、十円のつくだ煮を買って、お昼にそれを振りかけてお弁当を食べているというんですね。授業中に疲れて居眠りしてしまっても、先生は、もうこの事態を知っていますから、しかるわけにもいかないで、そっといたわっている。こういうたいへんな遠距離通学の例がございます。ところが、このたった二キロのバス路線に対しまして、たいへん貧困な山村ですから、そこだけでも公費負担をしてもらいたいと再三の要求があったにもかかわらず、このバス路線のバス代が公費負担されておりません。こういう事実があるのです。  それからまた、ほかの例もございます。これは静岡県のあの熱海市、観光地として有名な熱海ですが、ここに相ノ原団地というのがあります。中学生そして小学生が、だんだんいまふえてきて、中学生が現在二十三名おりますが、ここがバス路線で七・四キロ、徒歩で六・七キロ。熱海というのは、交付税の交付団体にはなっておりませんが、交付税の算定基礎としては、ここの子供たちの数が入っております。ここで非常に父母負担が多いのです。親たちは、もうすでに昭和四十七年の十一月から、この小中学生に対してバス代を出せということで、さんざん運動をやっていまして、四十七年十二月には請願を出しております。児童生徒の通学費市費負担について、市費というのは熱海市ですが、そういう請願を出しましたところが、十二月の市議会で不採択になりました。三年越しに運動がされているという実態でございます。  ここの子供たちの通学のためにかかる通学費の負担が、一体どうなっているかといいますと、これは現在、バス代が小学校六年間で六万四千八百円、そして中学校三年間で十万三千六百八十円、計十六万八千四百八十円。一人の子供を、小学校一年生から中学三年、義務教育卒業させるまでに、十六万八千四百八十円というバス代を父母が負担するわけなんです。これは学校教育費と比較してみますと、学年費、給食費、生徒会費、図書費、諸費PTA会費などを合計したものですが、小学校が大体一年間に二万円、六年間で十二万円、中学校が一年間に二万六千円、三年間で七万八千円かかりますが、合計して十九万八千円。つまり、いま言いました学年費、給食費、その他PTA会費などまでの学校教育費の合計が、義務教育卒業させるまでに十九万八千円かかるものに対して、通学費がほぼ同額の十六万八千四百八十円かかっているという、実にたいへんな負担になっているわけでございます。  こんなふうになっていながら、しかも請願まで出ながら、不採択なんですね。こういうことが、現実には方々に出ているわけなんですけれども、こういうものをどういうふうにお考えになりますか。
  83. 岩間英太郎

    岩間政府委員 最初の長崎県の例をお引きになりましたが、これは十二キロの道を往復して通っているということでございまして、こういう場合に、遠距離通学費が出せないということは、私ども、たいへん遺憾なことではないかというふうな感じがするわけでございます。こういうような市町村につきましては、できるだけ指導をいたしまして、子供の学習に支障のないようにするということが適切なことではないかと考えております。  あとの、熱海市の相ノ原団地につきましては、確かにちょうどすれすれのところで、私ども聞いているところでは、小学校は四キロをちょっと割っている、それから中学校も六キロをちょっと割っておるというふうな状態のように承っておるわけでございます。  遠距離通学費の補助を始めましたのは、ただいまも数字をあげて御指摘になりましたように、ほかのいろんな費用と比べまして、通学費というのに非常に大きな金額がかかるということが一つの理由になっているわけでございまして、ただいまのような、すれすれの場合にどういうふうに処置をするか。これは、私ども指導行政ということで、具体的には各市町村の教育委員会などが御判断になる問題であろうと思いますけれども、現実問題としましては、やはり一定の線を引きませんと、補助行政等もできないわけでございまして、四キロ、六キロにつきましても、これは長い間、たとえばフリッカー現象でございますとか、それから子供の疲労のぐあい等を実地にいろいろ調査をいたしまして、また研究をいたしまして、専門家の御意見によりまして、一応線をきめたわけでございます。それが、多少出入りがあって、それに対して市町村がどういうふうに対処をされるか。これは私ども、それに対しまして指図をするというような問題ではございませんけれども、一応基準をつくって、それに基づいて国としては指導をし、それから、それに対して財政的な援助をするというたてまえ、これはある程度やむを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  84. 栗田翠

    栗田分科員 局長、ちょっと誤解していらっしゃいますが、中学校の場合には六キロ以上です。市の教育委員会調査で、徒歩で六・七キロ、バス路線で七・四キロ、交付税の算定の対象に入っております。それなのに支出されておりません。いかがでしょうか。
  85. 岩間英太郎

    岩間政府委員 私どもが聞いておりますのは、小学校の場合は団地の中で一番遠いところで三・九キロ、それから中学校の場合は、市のほうで指導しております通学路を通りますと五・四キロというふうに聞いているわけでございます。
  86. 栗田翠

    栗田分科員 それでは、もう一度、市の教育委員会等、お調べいただきたいと思いますが、少なくとも私は、市教委へ調査いたしまして、算定の対象になっている四十九名のうち、熱海中学までの子供が三十七名入っておりまして、そのうち二十一名が相ノ原団地からの子供ということになっておりますので、もう一度御調査ください。もし市が、そんなことを言っているのでしたら、ずいぶんいいかげんなことを言っていると私は思います。自分たちが交付税の算定の対象にして出しておきながら、六キロ以内だということでしたら、これは、おかしいことをやっているのでして、ずいぶんおかしいと思います。実際にこれは六キロ以上あります。市教委も、昨日またあらためて私も調査しましたけれども、徒歩で六・七キロというふうに言っております。  こういうわけでして、実際に文部省で定めた遠距離通学の範囲に入って、交付団体ではないにしても、算定の対象になっている子供に対して、市の議会が親の請願を不採択にするという事態が実際に起こっているということ、これは一熱海市ばかりでなくて、ほんとうに詳しく調べますと、各地にあるのだろうと私は思います。ただ一つ、こういう事態が起こってくるのは、交付税の算出の根拠になっている単価が実情に合わないで非常に低いために、自治体の財政が圧迫されるためではないだろうかと私は思います。現在、四十八年度で小学校の場合一人七千五百四十六円、中学校の場合一万四千八百九円が交付税の単価として算定されているというふうに伺っておりますが、この算出の根拠はどこにございますか。時間がありませんので、簡潔にお願いいたします。
  87. 岩間英太郎

    岩間政府委員 これは、私どもの準要保護児童生徒の通学費の単価を、実績に基づいて毎年改定をしておるわけでございますので、交付税のほうも、私どもの単価を基準にして採用していただいているというふうに考えております。
  88. 栗田翠

    栗田分科員 実績と言われますと、実際に統合などで補助金を出しているものの平均ということでしょうか。
  89. 岩間英太郎

    岩間政府委員 私どものほうは、学校統合に伴う遠距離通学者を対象にしているわけでございますから、地方交付税でやっておりますように、一般的にそれ以外のものも含めましてやっている場合と単価が若干違うというのは、当然のことであろうと思います。しかし、私どものほうで採用しております単価は、これは実績に基づいて毎年改定をする、特に準要保護児童生徒につきましては、これは、それだけ実際に子供に全額が渡らなければ意味がないわけでございますから、その点は十分入念にやっているつもりでございます。自治省で御採用いただいております単価も、私どもの単価を参考にしておきめになっている。これは全国的におきめになっている。私どものほうは、学校統合に伴うものと、それから準要保護児童生徒というふうな限られた児童生徒に対する実績単価をとっている。それぞれの単価の間で差があるということは、やむを得ないのじゃないか、そういうふうに考えております。
  90. 栗田翠

    栗田分科員 ちょっと私、よくわかりませんが、もう一度御説明いただけますか。実績とおっしゃいますのは、交付税の場合には単価をきめて出していますから、実際にかかる交通費、通学費というのは、補助金などで出している場合でないと調査できないわけですが、それを平均したものということでしょうか。
  91. 岩間英太郎

    岩間政府委員 具体的に申しますと、地方交付税における単価は、四十八年度小学校七千六百円、中学校一万四千八百円、私ども学校統合に伴う遠距離通学費の補助として出しておりますものが、小学校が七千七百九円、中学校が一万五千百二十九円ということでございますから、これは、ほぼ見合っているわけでございます。  ただ、私どものほうは、学校統合の地域という限られたところ、自治省は全国的な遠距離通学者ということでございますから、その辺は私どもの単価を基準にして、正確に一銭一厘までということではございませんけれども、大体単価が合っているところで御採用いただいているというふうに考えております。
  92. 栗田翠

    栗田分科員 わかりました。つまり、学校統合の地域などで、実際に五年間補助金を出しているものの平均に見合った数ということだと思います。ところが、さっきも申しましたように、長崎の例のように、十二キロ歩いても二キロしかバスに乗れない。学校統合などの場合、交通機関が発達しておりませんから、大体そういう状態になります。そういうところでかかっている交通費を平均した場合、実際より非常に低くなるのじゃありませんか、いかがでしょうか。
  93. 岩間英太郎

    岩間政府委員 御案内のとおり、地方交付税の仕組みが、標準的な数値をとりまして、それを全国的に補正する、それからさらに、僻村地等におきまして、特別な事情がございます場合には、それに見合う補正をするというふうなたてまえでやっております。したがいまして、遠距離通学費の部分だけを抜き取りますと、いまおっしゃいましたような平均単価になっているわけでございますが、その地域地域の実情によりまして補正を行なっているということで、実質的には単価の割り増しが行なわれているというふうな仕組みでございます。必ずしもそのものずばりというふうにはまいらないと思いますけれども、従来からの経験によりまして、適切な財源措置に近づいてきているということは、言えるのじゃないかと思います。
  94. 栗田翠

    栗田分科員 本来、交付税の対象になっている児童生徒に対して、実際に交通機関を利用していたならば、できる限り出していくべきであるというお考えだと思いますが、それに沿って自治体が実行していくためには、自治体に赤字を出させないように単価を十分検討していただくということ。遠く歩いて、交通機関が利用できないようなところ、そこだけの平均でしたら絶対低くなるわけです。そういう点は御配慮いただきたいと私は思います。  それからもう一つ、交付税という形で出されていますと、いまのようにほかに流用してもらえない子供たちというのが出てくるのです。これは教育的な見地から考えても、補助金制度に改めるべきだと思いますが、いかがでございますか。
  95. 岩間英太郎

    岩間政府委員 そういう御意見は、もちろんあってよろしいと思いますけれども、いま特別に奨励しなければならないものにつきましては、補助金という制度をとる、それから一般的に地方行政の中でやっていただけるというふうな面につきましては、地方交付税で財源措置をとるというふうな区分をしているわけでございます。  私どもが遠距離通学の補助をやっておりますのは、学校統合に伴うものでございまして、学校統合というのは、たいへん費用のかかることでございますから、そういうふうな特殊な事情に応じまして、いま特別に補助金制度をとっているというふうに御理解をいただきたいと思います。考え方としては、そういう考え方もあろうと思いますが、いまの財政措置のたてまえといたしましては、私は、これで十分ではないかというふうに考えております。
  96. 栗田翠

    栗田分科員 交通費の不当な父母負担を軽減していくことや義務教育を円滑に進めていくというたてまえから考えて、この点は再度御検討いただきたいと思います。  次に、遠距離通学の問題で、最近、新しい型の遠距離通学が出ております。それは過疎地の統廃合によるばかりでなくて、団地などが方々に建ちますけれども、たいへんへんぴなところに団地が建ちます。学校を建てるほどの規模の団地でなかった場合、そこに移った子供たちは、長距離を歩かなければならないという例が非常に多くなってまいりました。この新しい型の通学問題について二、三伺いたいと思います。  一つは、さっき出ましたボーダーラインのことですけれども一つの団地の中に境の線が通るということがあるんですね、六キロが団地のまん中を通ったとか四キロが通ったとかで。この場合、自治体としましては、じゃ四キロよりも遠くの子供にだけ出して、同じ団地であなたのほうは出さない、実際にこういうふうにはなかなかいかないわけなんです。  自治省に伺いたいのですけれども、こういう場合、いままでどういうふうに交付税の算定をしていらっしゃるのでしょうか。――いらしていませんか。それでは局長に伺います。交付税の算定というよりはお考えですね、それを伺います。
  97. 岩間英太郎

    岩間政府委員 現在、地方交付税で財源措置をしておりますのは、四キロ以上の子供、六キロ以上の子供の数を基準にして基準財政需要額が算定されているというふうに思うわけですが、先ほど申し上げましたように、財政措置をいたします場合には、一つ基準が必要なわけでございまして、この基準を割りまして例外をつくりますと、行政の場合には、例外が原則になるということがよくいわれておりますように、ほかの方々から、同じような扱いをしてもらいたいというふうな希望が出てくるということで、行政あるいは財政措置自体が混乱してくるというふうなことになるわけでございます。  したがいまして、一つ基準をつくりました場合には、その基準に従って私どもは財源措置をする。しかし、個々の市町村におきまして、大切な住民のお子さん方でございますから、特別の配慮をされるということまで私どもとして制限するということではございません。ただ、金の面で若干の出入りはあると思いますけれども、それは財政全体の中でお考えをいただくというふうな問題じゃないかと思います。
  98. 栗田翠

    栗田分科員 特に団地のような場合は、一つのかたまった生活圏です。そのまん中を、そういう線が通っているときは非常にむずかしい。こういう場合について、文部省としても、また自治省としてもそうですが、血の通った行政、配慮ということを要望いたします。  次に、たとえ四キロ、六キロ以下でありましても、起こってきている新しい型の問題があります。これは交通地獄のために、あぶなくて子供を歩いて通わせられないという例です。熱海の場合も、相ノ原団地もそうですが、それよりもはるかに近いところでも、いま子供たちはみんな交通機関を利用しています。  たとえば熱海市の、伊東線に沿いました来宮駅から梅園というところには、有名な長い急な坂がありまして、ここはタクシーに乗っても、普通の料金では走ってくれないのです。坂道料金というのを取られる、そういうところです。ここが子供の通学路になっております。上下一車線ずつしがなくて、子供の歩く道が一メートルしかない。坂の上から車がたいへんな勢いでおりてきて、子供は幾つかの関所を越えて学校へ行くという状態なんです。以前からも、車をよけたために、側溝へ飛び込んだなんという子供が何人も出ていまして、その近くの親たちは、もうがまんしきれずに、市と繰り返し繰り返し交渉して、本来道幅がないのですけれども、がけに張り出しをつくらせまして、そこに子供の通る道をわずかばかりですがつくらせた、こういう地域もあります。  これは、何も熱海だけでなくて、最近の過密地帯の団地などから通っている子供さんには起きてくるんじゃないかと思います。この場合に、やはり交通機関を利用させていくための負担が非常に大きくなってきているわけです。こういう新しい通学問題に伴う父母負担について、御配慮をいただきたいのですが、どのようにお考えになりますか。
  99. 岩間英太郎

    岩間政府委員 確かに交通地獄というふうな問題で、子供さん方の安全のためにバスを利用するということはあろうかと思います。現在、私どもの僻地手当の算定につきましては、坂が急であるとか、道路が困難であるとかいうふうな要素も加味した点数の計算のしかたをしている場合もあるわけでございますから、そういうものが取り込まれるということ自体につきましては、これは別にそれに反対するというようなことではなかろうかと思います。しかし新しい事態、しかも現実に判断をしなければならないようなことでございまして、いまのところ、国の補助金あるいは交付税による財源措置の際に、そういうふうなこまかい点まで配慮できるかどうか、これは、なお研究をすべき問題であるというふうに考えるわけでございます。
  100. 栗田翠

    栗田分科員 最後に、適正距離というものが、はたして適正かということについて伺いたいと思います。  いまのような交通問題も出ている新しい事態の中で、小学校四キロ以内、中学校六キロ以内というのが適正なのだろうか。これは、たいへん大きな問題です。この適正距離というのは、何を根拠にしていままで出されておりますか。
  101. 岩間英太郎

    岩間政府委員 先ほども触れましたように、四キロ、六キロをきめます場合には、お医者さんその他専門家のお知恵をかりまして、そして医学的にも、たとえば炭酸ガスがどの程度かというふうな、いわゆるフリッカー現象だとか、そういうものも十分考えまして、あるいは現実に通ってまいりました子供の学校における疲労度、これは個人差もあると思いますが、そういうものを十分考えまして、現場の意見を聞いたりしまして、一応四キロ、六キロという線を出したわけであります。
  102. 栗田翠

    栗田分科員 私の調査によりましても、一九五七年の七月に文部省が出されている「学校統合実施の手びき」の中で、労働科学研究所の調査によってこれがきめられているように見受けられます。  ところで、いま言いました疲労度ですが、山の場合とか豪雪地帯、雪の中を歩く場合ですね、こういうものは、調査してきめたのでしょうか。
  103. 岩間英太郎

    岩間政府委員 特別な場合ではなくて、一般的、平均的な場合を考えまして、ある程度その余裕度を見て四キロ、六キロをきめたというふうに理解いたしております。
  104. 藤井勝志

    藤井主査 もう時間が来ました。簡潔に願います。
  105. 栗田翠

    栗田分科員 平たん地を通学する児童及び生徒の疲労度を調べたというふうになっているのです。ですから、坂道を通る場合、雪の中を歩く場合は、全然調べてないんですね。豪雪地帯でも四キロは、適正範囲ということで統合なんかされるのですが、しかし子供が豪雪の中を歩いたら、半日かかっちゃうんですね。先日も、秋田県からの陳情を受けましたけれども、こういう事態が実際に出ているのに、四キロ、六キロが適正であるということできめられていくということは、たいへん大きな問題があります。特に、私が調査しました過去の例で、この四キロ、六キロ以内ということについて、さまざまな意見が出ているということです。  時間がありませんので、こちらから申し上げさしていただきますけれども、たとえば学校施設基準規格調査会が、六三年の三月に答申したのでは、都市部では小学校五百メートル以内、中学校千メートル以内、農村では小学校千メートル以内、中学校二千メートル以内という答申が出されております。それからまた昭和二十六年、これは大串不二雄氏が「学校建築」という著書の中で、これは岩崎書店から出ていますけれども学校の敷地選定の基準として、小学校の低学年一・五キロ、高学年二・五キロ、中学校の場合四キロ以内というふうに言われております。この大串氏という方は、最近も文部省の施設部の指導課の方などが関係されまして出された「学校施設」という、第一法規から出版された本にも、著者として名を連ねていらっしゃる方で、権威ある方だと思いますが、こういうふうに言われております。特に、最近の子供は歩かないと言われますが、昭和二年、まだ交通機関が発達していない時代、しかも歩け歩けとみんながよく歩いた時代に、どういうことが言われていたか。全国学校衛生技師会議の設定によりますと、これは非常に権威あるものだと思いますが、小学校低学年二キロ、高学年三キロが適切であるというふうに言われておりまして、これに関して文部事務官の加藤精三氏が「市町村立小学校教育費問題精義」、一九三二年、昭和七年に著書として書いておられまして、この全国学校衛生技師会議の設定は、「即ち通学道程にして之れより大なるときは通学上の疲労の結果教育的効果を殺減するものなれば右の通学適当距離を以て通学最遠距離と認めたり。」、こういうふうに書かれているわけです。  昭和二年においてさえこうであった。最近のように交通地獄の問題も出て、交通機関も発達している現在、四キロ、六キロというのは、非常に不適切ではないだろうかと思いますが、こういう新しい事態も考えて、この適正距離についての再度の御検討をお願いしたいと思います。いかがでございましょうか、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  106. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 児童の就学の便をはかって教育の充実が期せられるように、通学距離その他の面を総合的に判断していかなければならないわけで、これは大切な問題だと思います。今後といえども、これらの問題全体につきまして研究を続けていきたいと思います。
  107. 栗田翠

    栗田分科員 私の質問を終わります。
  108. 藤井勝志

  109. 近江巳記夫

    ○近江分科員 最近の物価狂乱の中で非常にいろいろな問題が起きておるわけでありますが、特に最近の学校給食の問題を見ますと、非常にいろいろな問題が出てきております。  それで私は、ここで一例を申し上げたいと思うのですが、これは大阪の豊中市の例でありますけれども、現在、一年生から三年生までは給食費が千百四十円です。それから四年生から六年生は千百八十円であります。それで、最近のこういう異常な物価高のために、どうしても値上げせざるを得ない、こういうことでこの四月一日から三四%アップしようという案があるわけであります。そうしますと、一年生から三年生については、三百八十八円アップいたしまして千五百二十八円、四年生から六年生につきましては、四百一円アップして千五百八十一円、こういうような状況に現在なっております。給食の人員は三万八千二百一人、こういうことで、いま給食費の値上げという大きな問題が起きておるわけであります。  ここで、まずお聞きしたいのでありますが、学校給食というものにつきまして、基本的に文部省はどのように考えておられるか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  110. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 学校給食の教育上の効果に及ぼす影響、非常に大きなものだというふうに考えておるわけでございます。給食の問題は、教育上の見地から、将来ともこれを重視していきたい、かように考えております。同時にまた、給食費の負担につきましては、施設、設備、こういう問題につきましては公費負担でいきたい。同時に、個々の材料費等の問題につきましては、準要保護児童に関します限りは、全額公費で負担をしていきたい。その他のものにつきましては、やはり父兄、父母負担はやむを得ないと考えているわけでございますが、その場合でも、国の物価政策、物資政策等から考えまして、配慮できるものはできるだけ配慮していきたい。  そういう意味で、小麦粉でありますとか、牛乳でありますとかいうような問題につきましては、別途の配慮をいたしているわけでございます。同時にまた、一般的な物資の問題でありましても、必要に応じまして必要なものが確保できるように、いわゆるコールドチェーンですか、冷蔵保管の設備を持ったり、あるいはまた、必要なときに買えますように、いわゆるそういう調整基金が確保できるようにして、全体的に円滑な物資の確保がはかられるというようなことにしていきたい、これがいまとっております給食に対する施策でございます。
  111. 近江巳記夫

    ○近江分科員 施設に対して補助していると言いますけれども、豊中の場合ですが、一万五千食の給食センターをつくったわけですが、一割しか補助していないわけですね。しかも最近の、こういう物価高によりまして、市のほうから給食会に対して一人当たり一食二円の補助を、物資調達基金として千四百万円補助で計上しておるわけであります。それで最近は、非常に赤字によりまして内容が悪化してきておる。たとえば、ミルクは一月から五円十八銭アップいたしまして、十二円二十五銭から十七円四十三銭、そういうことで、一日おきの給食に変わってきておるわけです。パンは十四円から十九円六十銭、こういうように給食というものが、もうとっても続けられないような状態になってきているのです。そこで給食というものは、法律で大体月に何日やるようになっておるのですか。
  112. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 一応、二十日を目途に給食費の算定が行なわれているようでございます。全国平均で見ますと、小学校の場合に千五百円、中学校の場合に千八百円でございます。したがいまして、豊中は、いままでわりあいに低かったなあという感じを、お話を伺いながら感じておったところでございます。同時に、私、公費負担ということを申し上げたのでございまして、給食センターに対する補助が一割にしかなっていないというお話がございました。国費で全部持つわけじゃございませんが、個人負担にしないで公費の負担にしたい、こういう気持ちで申し上げたわけでございます。  文部省としましては、毎年度当初に給食費の金額をきめておるわけでございますので、年度の途中ではなるべく変えたくない、こういうようなことで、牛乳の問題なんかにつきましても、いろいろな要望がございますけれども、できる限り新年度の問題にしていただきたい、こういうような指導もしてまいっておるわけでございます。しかし現実の問題として、給食費の引き上げが困難だ、物資は値上がりをしてきている、その結果、一食、二食欠かしたりしているところも出ているじゃないかとか、あるいは質の低下を招いているじゃないかということも、御指摘を受けておるわけでございます。そのとおりだと思うのでございますけれども、できる限り、そういうような影響を最小限度にとどめたいという意味で、先ほど申し上げましたようなくふうも加えているということでございます。
  113. 近江巳記夫

    ○近江分科員 いま大臣は、二十日ということをおっしゃったわけですが、「学校給食実施基準」では、局長、何回になっていますか。――それじゃ私が言いますが、「学校給食実施基準」には、第三条において、「学校給食は、年間を通じ、原則として毎週五回以上、授業日の昼食時に実施されるものとする。」、こうなっておるんですよ。五回といいますと、四週としても二十日でしょう。ですから、二十日以上なければならないわけです。これは文部省の実施基準にはっきり出ておるわけですよ。ところが、こういう赤字のために、豊中市なんかはいま一カ月十七日になっているわけです。  しかも、この学校給食の実施基準を見ますと、たとえば栄養の問題につきましても、六歳から八歳の場合は、熱量は六百カロリー、たん白質は二十三グラム、しかもカッコして動物性たん白質を十グラムその中でとらなければいかぬとなっている。脂肪は十七グラム、カルシウム〇・三グラム、ビタミンAが九百、これの単位はIUです。ビタミンB1が〇・五ミリグラム、ビタミンB2が〇・六ミリグラム、ビタミンCが十九ミリグラム。それから九歳から十一歳、これは中学校生徒の場合等、いろいろと規定が設けてあるのです。ところが、現実には牛乳にしましても、一日おきの給食になってきているのです。この基準を出しておるこれだって、おそらく充当さしていませんよ。一日置きしか牛乳を出すことができないのです、現状は。  大臣は、非常に子供はかわいいということをよくおっしゃっているわけですが、現実に、いまこういうような問題が起きているわけです。しかも大臣は、千五百円くらいは全国的な感じだ、だからまあいいというようなことをおっしゃっているわけですが――まあ、いいとはおっしゃっていないけれども、いわゆる給食費というものは、これは生活保護とかを受けておられる人については、国が見るということになっておりますが、しかし一般家庭におきましても、子供のたくさんいる家庭もあるし、なかなか給食費というものはたいへんなんですよ。ですから、これは公共料金以上の考え方をしなければならぬわけです。それを、ただ、いまもうこういう状態になっておる、しかし、それは設置者がやっていくものである、政府はあくまでこの奨励をしておるのだという感じで、その責任という点におきまして、施設であるとかそういう点については、若干の補助を出しておりますが、それ以外は全く放置しているわけです。  私は、お聞きしたいのですが、学校給食法の第一条の目的にどう書いてありますか。これは、だれか担当者の方、一ぺん読んでみてください。
  114. 柳川覺治

    ○柳川説明員 学校給食法は、二十九年に制定されておりますが、以来、これに基づいて行なわれておりますが、その目的といたしましては、「児童及び生徒の心身の健全な発達に資し、かつ、国民の食生活の改善に寄与する」という、二つの柱をもちまして学校給食の充実をはかるという目的を持っております。
  115. 近江巳記夫

    ○近江分科員 「この法律は、学校給食が児童及び生徒の心身の健全な発達に資し、」これが一番冒頭に述べられてある。しかも第二条の第三号においては、「栄養の改善及び健康の増進を図ること。」、ところが、こういうようにミルクだって、一日置きしか子供は飲めなくなってきておる。こういうような状況の中で、あくまで受益者負担という考え方に基づいて学校給食を運営していけばいいのだ、これだったら法律と違うわけですよ。国が少なくともこの法律をつくり、それで運営しているわけでしょう。政府のとってきた施策が悪いために、これだけの物価狂乱になってしまった。子供たちがいまこれだけの大きな被害を受けてきておるのです。父兄がまたさらに、もうこれ以上の負担はできないというところまできているわけです。  こういうことを黙って放置しておいていいのですか。大臣は、ほんとうに子供を愛するということを常におっしゃっているわけです。少なくともいまの法律にしたって、これはあくまでも奨励法ですよ。根本的に法律自体も、もっと義務化をしたそういう中身に改正する必要があるし、当面、これだけの物価高の中であえいでおる学校給食に対して、真剣に考えなければいかぬと思うのです。それについて、ひとつ大臣のあたたかい子供たちに対する配慮、その決意をお伺いしたいと思うのです。
  116. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 学校給食が、現在の段階で小学校では大体どこでも完全に行なわれている、こう思っております。中学校段階で五〇%ぐらい行なわれておる。これを、さらに全体的に完全実施されるように持っていきたいということで、いろいろな施設、設備の助成等を行なってきておるわけでございます。実施主体は、あくまでも小学校設置者、中学校設置者でございまして、国としていま申し上げましたような方向で助成の努力を続けているわけでございます。  同時に、先ほども申し上げましたように、負担区分をわれわれ考えているわけでございまして、どういう経費については市町村が持つのだとか国が持つのだとかあるいは父母が持つのだとかということを考えているわけでございまして、その負担区分は先ほど申し上げたとおりでございます。個々の物資につきましては、父母負担、その場合でも、国の物価政策あるいは物資政策上配慮できるものは配慮するのだということで、小麦粉については、昨年すでに三〇%の値上げが行なわれたわけでございますけれども学校給食用の小麦粉につきましては、九月までは現在の価格で据え置くという方針をとっているわけでございます。同時にまた、その供給事業につきましては、全国同じ価格でよい給食用のパンを供給するようにしたいというようなことで、供給事業には約十一億円程度の経費を計上いたしているわけでございまして、また牛乳につきましては、農林省のほうから何十億でございましたか、別途これは畜産政策の見地もあってでございますけれども、助成をしているということでございます。  いまおっしゃいましたように、国としてどこまで助成をしていく、しかし自余の部分については、父母の負担というたてまえをとっております。したがいまして、今日のような物価事情になりますと、やはり四十九年度については相当の値上げをしていただかざるを得ないだろう、かように考えておるわけでございます。それぞれの負担の区分に従ってそれぞれ負担額をふやしていかなければならぬ、かように存じておるわけでございます。父母の負担を、現状のままに据え置かなければならないのだというようなことにはできないのじゃないだろうか。また途中で抜いたり、あるいはまた質を落としたりしないで、いま御指摘になりました児童の心身の発達ということに支障のないような給食の内容にしていかなければならない。そうしますと、ある程度父母負担がふえることはやむを得ないのじゃないか。新年度からはそうならざるを得ないのではないかというふうに考えておるところでございます。
  117. 近江巳記夫

    ○近江分科員 大臣、義務教育なんですよね。そして、やはり親は子供にはそういうひけ目を感じさせたくない。要るものは出さなければならぬわけですよ。そういう点におきまして、義務教育という点から考えれば、給食費は、ほんとうは全部国が持つべきなんですよ。こんなものを、父兄に負担させるということ自体が大体もう問題なんですよ。一ぺんに全額国が持つということも非常にむずかしいかと思いますが、私は将来そういう考えを当然実行していくべきだと思うのです。あるいはその中間において、またどういうことをお考えになっておられるか。私は、これは、もう父兄負担というよりも、当然国が責任をもって負担していく、こういう考え方にここで切りかえをしなければいかぬと思うんですよ。その点について、ひとつ大臣考え方を伺いたいと思います。
  118. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 われわれは自由な社会を守っていきたい。したがいまして、個人にその負担を明確に区分できるものにつきましては、それぞれの個人が責任を持っていく。しかしながら、責任を持っていくとしても、なかなか負担のしにくいような家庭については、国民全体で守ってあげるというようなことを基本にして進めていく、かように考えているわけでございます。しかし、いろいろな政策上、個人にわたるものにつきましても、積極的に公費で負担をすること、何ら不適当だとは考えておりません。そういう考え方に立ちまして、義務教育費の負担も進められてきている、かように考えているわけでございます。  学用品につきましては、準要保護家庭まで公費で負担しますけれども、その他の家庭につきましては、学用品は個々の家庭のほうで負担をしてもらおうじゃないかということになっておるわけでございますし、給食につきましても、準要保護家庭については公費で負担をする、しかし、その他の家庭の子供さんについては、父母負担にまっておるわけでございます。  それにつきましては、いま申し上げましたように、物価政策上必要なものにつきましては、適切な配慮を国が加えていかなければならない。私は、公費で全部負担することは、悪いとは申し上げませんけれども、自由な社会を維持していく中において、どこまで公費負担で持つかということになってまいりますと、教育諸条件を整備していく上において、公費にまたなければならないものがまだたくさんあるわけでございますので、そういう意味においては、優先順位、あるいはまた将来ともどうするかというようなことについても、考えなければならない諸問題がたくさんあると考えておるところでございます。
  119. 近江巳記夫

    ○近江分科員 教科書の無償配布をやるときも、たいへんな論議があったわけですよ。教科書はもう当然、父兄が負担すべきじゃないかと政府は言っていたわけです。しかし義務教育である以上は、教科書というものは、当然無償配布すべきであるとわれわれは強力に主張してきて、政府もそれを取り上げたわけですが、給食だって同じですよ。ですから、将来におきまして、これは、もう基本として、文部省の大きな課題として今後検討してもらいたいと私は思うのです。検討していただけますか。
  120. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 今回、給食関係では、栄養士を県の負担にして、市町村への適正な配置をはかるということにさしていただいたわけでございます。給食の問題につきましても、公費負担できるものは、積極的に公費負担に切りかえたらいいと思うのであります。そういう意味で、先ほどちょっと触れましたけれども、またお話で給食総合センターのことがございましたが、そういうものに対する助成をしながら、負担の経減にも資していきたい。あるいは調整的な基金を確保することによって、適時に適切なものが低廉にそれぞれに送達されるような仕組みも考えたいということでございまして、全体的に今後もこの課題には取り組んでいきたい、かように考えております。
  121. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それで大臣、確かに小麦等の問題については、法律上もうたっておりますし、そういう点で配慮されておるわけですが、子供たちの栄養からいきまして、パンだけ食べていていいというものじゃないでしょう。この一覧表にも出ておりますように、副食費は、いまたいへんな物価騰貴をしているわけですね。ですから、小麦は、なるほどそういうような措置をしておられるわけですが、それは非常に片手落ちであるということです。ですから、子供たちに十分な栄養をとらしていくためには――父兄の負担だって、もういきなり三四%もアップしなければならぬ。おそらく全国同じ率だと思うのです。しかも給食だって、週五回以上といっているのが、現実に十七日になっておるわけです。ミルクだって、一日おきしか与えられない。  こういう点からいきますと、これだけの異常な狂乱物価の中でありますから、当然国が――単なる奨励だけしておればいいという問題ではなくして、将来をになっていく子供たちです。いま日本の宝じゃありませんか。大臣だって情熱を注いでおられるはずなんです。大臣が、これは、当然閣議にあげ、総理に進言して、何としてもここで、これだけの物価狂乱のさなかにおいて子供を守らなければならぬということを、強く訴えてもらわなければいかぬと思うのですよ。だから、私は、ここにおいて、何とかひとつ援助というか、これはもう第一義的には、国がやってもらわなければならぬ問題ですが、いま当面こうなっておるわけでありますから、何らかのバックアップをしてあげなければいかぬと思うのです。具体的にひとつ、大臣の決意があれば、私は進むと思うのですが、どうでしょう。
  122. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど来申し上げたとおりでございます。公費でまかなう分野につきましては、将来とも、その公費の増額をはかっていきたい。同時にまた、父母負担にまたなければならないものにつきましては、今日の物価状況からいいますと、適当なときには、ある程度の引き上げをはかっていただかなければならない、かように考えているわけでございます。  御指摘になりましたのは、豊中を中心に起こっている問題だと思います。全国さまざまでございますけれども、やはりある程度、父母負担も上げていただかなければ解決はしないのじゃないか。もちろん、公費でまかなうべき部分につきましては、今後といえども、積極的な努力はしていきたいと思います。
  123. 近江巳記夫

    ○近江分科員 これは、何も豊中だけのことを言っているのと違うんですよ。具体例として私は申し上げておるわけでありまして、ほとんど全国同じですよ。  そうしますと、栄養が、この実施基準の中においてはっきりうたわれておるわけですが、これもとれない。しかも実施日数も、法律にうたっておりながらそれもとれない。こういう問題をどうするんですか。それじゃ、それを埋めていくために、三四%プラスまだ何十%上げるんですか。文部省がそれを平然と見ておられるわけですか。大臣は、父兄も何とかがんばってもらわなければならぬとおっしゃっておられるわけでしょう。しかし政府のほうが、さらにがんばってもらわなければならぬわけですよ。そんなものを、そのまま全部父兄にかぶせていいんですか。これでは子供たちは栄養とれませんよ。将来をになう子供たちのためにどうなさるんですか。
  124. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほども申し上げましたように、準要保護児童につきましては全額公費で見る、また栄養のあるものを給食にしてもらいまして、その結果、金額的には上がってくるでしょうけれども、引き上がりましたものにつきましても、全額公費負担で見るというたてまえをくずす考え方はさらさらございません。  あとの家庭の問題でございますが、それにつきましては、公費で負担する部分と父母の負担にまっている部分と分かれるわけでございますが、それぞれを、ある程度負担を引き上げていくよりほかはないんじゃないか、こう申し上げているわけでございます。それと同時に、全国的な金額としては、小学校では千五百円ぐらい、中学校では千八百円ぐらい、それを、新年度からはやはりある程度引き上げをせざるを得ないのじゃないか、こう申し上げているわけでございます。  また、給食は月二十日ぐらいが普通に行なわれている姿だ、かように申し上げたわけでございまして、金額が十分ではないものだから、豊中ではいま十七日しか行なわれていないんだという御指摘もございました。また、金額が足りなくなった結果、抜いているというようなところもあちらこちらで出ている、これもそのとおりだろうと思います。それから、あえて給食費の値上げを、年度の途中で行ないまして、いろいろな問題があったり、あるいはそういう問題を解決するために、市町村が積極的に補助をしたりしているところもあるようでございます。いずれにいたしましても、それぞれの負担区分の中で適切な努力を繰り返していかなければならない、かように考えているわけでございます。
  125. 近江巳記夫

    ○近江分科員 この法律自体奨励法という形をとっておりますので、そういう無責任なことをおっしゃるわけですよ。いま、これだけ物価が上がってきておるわけですから、父兄だって三割、四割引き上げでしょう。そういう苦しんでおる中で、しかも、これだけ上げても、なかなかうたっておるような栄養もとれないわけですよ。政府がつくった法律でこれが充当できないということになれば、この責任はどうなるんですか。  やはりこういう異常な事態であるわけですから、政府は、ここでほんとうに何らかのバックアップをしなきゃだめじゃないですか。一ぺんにまるがかえということは、財政的にもたいへんでしょうけれども、やはり誠意をもって――それは大臣がおっしゃっているように、施設であるとかそういう問題、あるいは生活保護を受けておられる家庭であるとか、そういう点の配慮は前からやってきていることなんですよ。前からやってきていることじゃなくして、この異常な状態の中で、やはりこういう時に即した何らかの対策をお立てになるべきじゃないですか。漫然と見ておられるわけですか、こういう状態を。赤字になるんだったら、値上げはしようがないじゃないか、これはそういうことでいいんですか。
  126. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たびたび申し上げているので、もうわかっていただいているんじゃないかと思うのですが、負担区分というものがございます。その負担区分に従って、それぞれの負担部分については、今日の状態において適正な支出の増加をはからなければならない。そういう意味においては、先ほど来、施設設備費あるいは人件費、これは全部公費で持ちます、それぞれの物資については父母負担によらざるを得ないんだ、こう申し上げてきているわけなんでございます。みんな、今日の物価状態でございますので、ある程度経費はふえていると思いますが、それはそれぞれでまかなうのです。同時にまた、国の物価政策で取り上げられるものは、それは積極的に努力をしていきます。  そういう意味においては、一例ですけれども、小麦粉についても、三割上げたけれども、給食用のものについては、九月まではそのまま据え置くという制度をとっているんですよ。同時にまた、牛乳に対して、農林省から相当の金を出していますけれども、しかしそれじゃ十分でないということで、ずいぶんむずかしい意見が地方地方にあるわけでございますけれども、できる限り年度内だけは据え置いていただけぬでしょうかと――しかし、これは現実の問題として、そうもいっていない地域も若干あるかもしれませんが、そういうお願いも続けておるわけでございます。  同時に、全体の問題としては、先ほど来繰り返し申し上げましたようなこともやっておるわけでございまして、自余の問題については、やはり父母の負担についても、ある程度引き上がってくることはやむを得ないんじゃないだろうか。しかし、年度内はできるだけ――たびたび上げると、いろいろな混乱も起こってくるわけのものですから、そこで、あえて市町村が支出していただいているところもございましょうし、あるいはいま、残念なことですけれども、多少質を落とすというところが出たりもしているというのが現状だろうと思います。しかし、いずれにしても、私たちとしては、もう四月からは給食費の負担を上げていただくほかに方法がないんじゃないだろうか、こういう考え方を持っているわけでございます。  私は、やはり、公費ということになりますと、どういうようなものについて公費で負担をするのがいいのか、同時にまた、その公費を国が負担するのがいいのか、県が負担するのがいいのか、市町村が負担するのがいいのかということもあわせて考えていかなければならない、こう考えるわけでございまして、ゆえなくして中央政府と府県政府と市町村政府があるわけじゃございません。中央政府がやるべきことはここまでだ、あとなおやらなければならないことがあるなら、それは府県なり市町村なりの自治団体で、十分に父母の事情、家庭の事情、児童生徒の事情も考えて施策を講じていくべきものだ、こういうような考え方でおるわけでございます。  いずれにいたしましても、中央政府としてなさなければならないことにつきましては、積極的な努力をしてまいります。同時にまた、給食の負担関係は、いまのままではよくないじゃないか、なお検討すべきじゃないかという御指摘もございました。それは一つ研究課題だと思います。研究課題として、なお一そうこれらの問題の解決には取り組んでいかなければならないと思います。結論は人によってみんな若干違うと思います。思いますけれども研究課題であることには違いはございませんで、そういう努力は当然していくべきものだろう、こう思います。
  127. 近江巳記夫

    ○近江分科員 じゃ、時間がもうないようですから、結論を急ぎます。  負担区分のことは、それはもう法律でわかっておるわけですよ。そんなことはわかった上で大臣、私は申し上げているわけですよ。だから、こういう異常な状態の中で一方的に、父兄が負担していかなければならぬ、こういう現状について、文部省が音頭をとって、都道府県、市町村ともよく連携をおとりになるなりして、このままの状態で放置せずに、何らか検討をしていただきたいと私は思うのです。それをやっていただけますか。  負担区分、負担区分ということを大臣は常におっしゃっているわけだけれども、もうよく私はわかっているんですよ。だけれども、現状として父兄がこれだけもう負担をしていかなければならぬ、そういう点において、ただ法律に基づくということではなくて、そういう異常な状態でありますから、緊急の何らかのそういう対策というものについて、文部省中心になって十分検討していただいて、ひとつ何らかの措置をしていただきたい、これを申し上げておるわけですよ。これは検討していただけますか。
  128. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私の申し上げていることをわかっていると、こう言っていただいているのですけれども、どうも理解していただいていないような気がするのです。上がっていますのは、物資だけじゃございませんで、人件費も上がっているのです。設備費も上がっているのです。人件費や設備費の上がったものは公費で負担をします、こう申し上げているのであります。物資の上がっている分についても、準要保護家庭のものについては、全額公費で負担をします、こう申し上げているのであります。なお、物資の問題についても、国の物価政策上配慮できるものについては、これも考えます。だから、小麦粉の例をとったわけでございます。小麦粉については、九月まで据え置きますという方針をとっているわけでございます。  なお、とれるものはとりますけれども、それ以外のものについては、やはり父母負担にまたざるを得ないのです。またざるを得ないのだけれども、なるたけ年度の途中では上げたくないものだから、畜産に従事しておられる方々に対しては、たいへん申しわけないのですけれども、年度内は据え置いてくださいよと無理なお願いもしてまいってきているわけでございまして、大体の県は年度内は据え置かれておるようでございます。  そういうことで、お互いに責任を分かち合いながら、負担の増加したものについては、それなりにその負担に任じていくよりしかたがないんじゃないだろうか。総体的な話としては、やはり新年度から給食費もある程度引き上げていただかなければ、御指摘になりましたような目的を達成できないんじゃないだろうか、こう考えているわけでございます。  また、個々の具体的な問題についてお教えをいただきながら、給食の問題が円滑にいきますように、私たちとしても努力を続けさせていただきます。
  129. 近江巳記夫

    ○近江分科員 終わります。
  130. 藤井勝志

  131. 玉置一徳

    玉置分科員 文部大臣並びに当局に御質問申し上げたいのは、非常に問題を含んでおります私学の位置づけと今後どのような振興策をお講じになるか、あわせて幼稚園の問題について、若干の質問を申し上げたいと思います。  そこで、ちょうど今年で五年になりますが、私学の助成について、来年度は、ことに私大につきましては、予算は四七%増、非常に御努力をいただきましたことは、そのまま評価すべきだと思いますが、そこで、今後、どのように私学の位置づけをお考えになって、どのような対策をしようとしておいでになるのか。この問題につきまして、文部大臣は、大臣の諮問機関として、「将来の私学振興対策について」という懇談会をお持ちになっておりますが、そういった問題につきまして、ひとつ御意見を拝聴したいと思います。
  132. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私学の位置づけ、たいへんむずかしい、同時にまた、重要な問題だと思います。  率直に申し上げますと、幼稚園と大学は、どちらかといいますと、私学におぶさっている、こう申し上げてよろしいかもしれません。小中学校につきましては、私学の存立の余地が現状は少な過ぎる、こんな感じがいたすわけでございます。言いかえれば、大学等につきましては、もう少し国公立を整備していってもいいんじゃないだろうか。反面、また、小中学校については、もう少し私学が進出してくれてもいいんじゃないだろうか、こんな感じを私としては持っているわけでございます。  同時に、これらの助成の方法、方針もあわせまして、今後どうするかということにつきましては私学振興方策懇談会というのを発足させていただいたところでございます。そのねらいは、昭和四十五年から五カ年計画で、いわゆる経常費助成というものが進められてまいりまして、一応それが今度で達成したということになっているわけでございます。しかし、私たちとしては、これで十分ではない、もう一歩前進させたい、こういう希望を持っていますために、あえてこういう懇談会を発足させたわけでございまして、ここで十分御議論いただきまして、よい方策をつくり上げていただきたいと期待をいたしておるところでございます。
  133. 玉置一徳

    玉置分科員 そこで、当局にお伺いしておきたいのは、人件費は二分の一、教職員は十分の二、物件費等につきましても二分の一前後の形式的なところまではようやくたどりつきました。これは、これで御努力のほどもわかるのですが、それが大蔵省の査定で、人件費の増が一〇%ということで積み上げてきておりますものですから、実質的に非常に大きな差異ができておるのじゃないか。いわれるところによりますと、私学の経費約三千億円のうちで、今度思い切って増額していただきまして六百四十億円、これは私、数字の真偽のほどはさだかではございませんけれども、約五分の一の助成に到達したというようにいわれます。     〔主査退席、井原主査代理着席〕  そこで、今後、新しい私学の位置づけと助成のあり方等々を検討される以外に、いまのやつを継続しながら、あと数カ年にわたりまして、実質補助教員の二分の一、実質補助物件費等々の経常経費の所期の目的への実質的な到達というところまで、これはこれでひとつ御努力をいただけるかどうか、そのことをひとつお伺いしておきたいと思います。
  134. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま御指摘がございましたように、本年度の私立大学等の経常費の補助が六百四十億ということでございまして、昨年度に比べてかなり大幅な増額を見たわけでございます。この方式は一応四十九年度でもって完成をしたということでございますが、内容につきましては、なお改善すべき点も残されておるように思いますが、それはそれといたしまして、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、さらに基本的な私学助成のあり方、これは先生指摘学校教育における私学の位置づけというものが当然その前提になるかと思いますが、そうしたことも含めまして、今後の振興方策のあり方について、私学振興方策懇談会というものを設けて鋭意御検討いただいておるわけでございます。この懇談会のまとめは、私どもは、この六、七月ごろまでにということを期待いたしておりますので、それがまとまりましたならば、それを十分尊重いたしまして、五十年度の概算要求をいたしたいということでございます。具体的にどういう方向であるかということにつきましては、ただいま審議中でございまして、まださだかな方向は出ておりません。
  135. 玉置一徳

    玉置分科員 ただいま申し上げましたのは、新しい方策につきましては、その答申待ちということでありますけれども、その中にぜひお加えいただきたいのは、せっかくやっていただいておるものが名目的――実質的に二分の一の助成まで人件費等がいっていないというようなことを、さらに充実してもらいたいということもひとつお考えをいただきたい、こういうことであります。安嶋さん、ひとつ……。
  136. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 先ほども、ちょっと問題がなお残っておるということを申し上げたわけでございますが、そういう点も含めて今後さらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  137. 玉置一徳

    玉置分科員 その懇談会の答申にまつということですが、そこで文部大臣に伺っておきたいのですが、これ以上助成をするについては、何かやはり一つの、私学がどこまでいけば私学として成り立つのか、私学は一体どれだけ助成すれば、あの膨大な入学金並びに授業料というものを値上げしないで済むのか、これも一つの大きな目安がありますし、あれでございますけれども、国ないし社会がどの部門を必要としておるか、これも一点考えなければいかぬ。二番目は経費が非常に多額に要る私学の部門は、一体どういう部門であるか。三番目には入学金あるいは授業料等々のその上に、なお教育の格差――教員の数等ですが、その格差を解消するのにどういう方策が要るか。四番目に経営上の問題として、私学の本質と経営上のあれはどこまでいくのか。たとえば私学は一番もとの起こりは、やはり教育に熱心な方が多額の寄付をなさいまして、あそこまでになったんだけれども、いまは、それを入学金にたよっておる、授業料にたよっておるというのが、私学の本質としていいのかどうか。これらを充足していくのには、相当な経費が要りますが、これをまかなっていこうと思えば、ばく大な予算の計上を続けなければいかぬ。こういうことになると、国民的に大きな理解を、私学に対して持っていただかなければ、文部省だけでどうしてくれ、大臣だけでがんばれなんて言うても、これはなかなか無理じゃないだろうか。こういう点を考えまして、いま、そういう四つのような観点が考えられるのですが、文部大臣は、その懇談会にどういう態度でお臨みになるか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  138. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たいへん重要な問題を御提起いただいたわけでございます。  第一の問題につきましては、高等教育懇談会で御議論いただいておりまして、大体の方向としては、昭和六十一年には、同一年齢層の四〇%の方々を大学に受け入れたい、その場合に、国公立の大学と私立の大学との比重をどうするかという問題が一つございます。現在は国公立が一七%ぐらいで私立が八三%ぐらいです。もう少し国公立に比重を移すべきだ。戦後、国公立が三〇%ぐらい占めておったわけでございますけれども、だんだんいまのように下がってきたわけでございます。三割とはいかないけれども、とにかくある程度国公立の比重を高めるべきだ。そうしないと、地域間に格差が起こってくる。大学が大都市に集中しているものだから、進学率においても地域間の格差が激しいという指摘もあるわけでございます。したがいまして、国公立でないとなかなかそういう均衡ある大学の配置が困難じゃないかという議論も出ておるわけでございます。同時に、その場合にどういう部門にどれだけの学生を受け入れるか、将来の日本の姿を想定して、そして大学の学部、学科を考えていかなければならないということになってくるわけでございます。そうしますと、いまのような私立大学の認可条件に合っていれば、どんどん認可をしていくんだというような形式的な扱い、これは、やはりメスを入れなければいけないのじゃないだろうか。計画に沿って協力をしてもらえるような姿をとらなければいけないのじゃないだろうか。それは法律改正をも要する大きな問題でございますが、そういう問題全体にわたりまして、現に検討を進めておるところでございます。  それから第二に、経費の多額な私学について、どう考えているかということでございます。一番顕著なのは、医科大学、歯科大学だと思います。おそらく一人当たり二百五十万内外一年間にかかるのじゃないか、こう思うわけでございます。そうしますと、六年でございますと千五百万前後かかる、こういうことにもなってくるわけでございます。こういうような特に多額な部門になりますと、これは、もう進んで国公立で建設をしていくべきだ、こういう判断に立っているわけでございます。同時にまた、現在は、私学に対する経常費助成も、大学が完成をして、完成後の模様も見て、真にこの大学については経常助成を行なうべきだ、そういう大学から助成を始めるんだということで、私立の医科大学、歯科大学も、設立後七年目から経常費助成をしてきているわけでございますが、私は、これを四十九年度、初年度から助成をすることに切りかえたいと考えているわけであります。特に多額の経費を要する私立大学でございますので、一般の大学とは変えまして、経常費助成は初年度からやっていく、こういうように改めさせていただきたい、かように考えているわけでございます。そのほかの大学につきましても、いま申し上げましたような見地から経常費助成にウエートをつけていいんじゃないだろうか。若干いままでもそういう配慮で、早く専任教員の五割まで助成するというような方法をとってきたようでございます。設備なんかの助成につきましても、特別の配慮が必要だろう、こう考えているわけでございます。  第三に、入学金、授業料等を通じて、教員格差の解消などに相当な金が要る、それはそのままでいいんだろうかというふうに伺ったと思います。私は、私学に対する援助をどうするかということにつきましては、私学であれ、あるいは国公立であれ、その果たしている社会的な役割りから見て、国民全体で幾ら負担すべきかという問題と、また学校設置者自身が負担すべき問題と、二つに分けられると思うのであります。その果たしている社会的な役割りから見て、国民の税金でまかなうべきだという部分は、国公立であれ、私立であれ、同じ態度をとるべきだと思います。その次に、設置者負担に属するものはどうまかなっていくのか、これは授業料でまかなわれる部分もございますし、大いに先輩が応援したらいいじゃないかという問題もございますし、寄付金もございます。国公立の場合には税金ということになろうかと思います。この二つに分けて考えなければいけないんじゃないだろうか、こう考えておるわけでございますが、設置者負担に属するものについては、基本的には寄付金あるいは先輩の応援というものが得られない限りにおいては、私は授業料の増額にまつべきだという判断をしておるものでございます。授業料が一切増額になっちゃいけないというようなことではなくて、それだけの授業料を支出しているが、受けている学校教育内容がつり合っているかどうかというところに議論の焦点が向けられるべきだ。りっぱな先生方をたくさんかかえ込むのなら、それなりに学生あるいは父母が増額負担に応ずべきじゃなかろうかという気持ちも持っているところでございます。  第四に、私学の本質に触れてお話がございました。私は、やはり財政責任は、私学それぞれが持っているんだ、こう考えているわけでございますが、いまの私学の姿を見てますと、何でもかんでも助成助成、私は、みずから気概をなくしておられるという感じがいたします。それぞれの私学は、それぞれの建学の精神を持って、特色ある教育をやってもらわなければ、私の大学をつくっている意味がなくなってしまうんじゃないか。学校当局者が何かサラリーマン化しておられる。やはり伝統ある建学の精神を受け継いで、りっぱに学生教育していくんだ、人づくりに励んでいくんだ、そういう気概というものがあまり感ぜられないんじゃないだろうかという心配を、私は持ち続けているわけでございます。そういう意味合いもございまして、私は、私学に心を通わせたい、そういう私学にしていきたい、こういう念願を持っているわけでございます。  そういう意味で、学校の先輩が大学に寄付をする、そうしました場合には、いままでは十万円をこえる金額でなければ所得税の計算の場合の経費に算入されませんでしたけれども、今回法律改正が成立いたしますと、一万円をこえる分が全部、所得税の計算の場合に経費に算入されることになります。先輩が自分の出身学校のために、何がしかの御恩返しをするんだという姿勢、これは、やはり学生と先輩との間に心のつながりを呼び起こすことができるんじゃないだろうかという感じを持つわけでございます。反面、また、学生の生活が苦しい場合、学校当局が奨学制度をつくって奨学金を貸与するという仕組みをとってくれるのなら、国のほうから所要の資金を提供しましょう、在学中は無利子、卒業後は三分の利子でまかなえる資金を提供しましょう、事務費もまた補助しましょう、こう考えているわけでございます。同時にまた、医学、歯学のような場合には、相当な金額の授業料になると思います。そういう場合には、たとえばでございますけれども、奨学金を月十万円とされてもけっこうじゃないか。それだけの、奨学制度を維持できるだけの資金を国のほうから提供したい、そして学校当局がサラリーマン化しないで、親身になって学生の生活のことを心配していく、こういう姿勢をとっていただきたい。学校当局と学生と先輩との間に心を通わせていきたい、そして建学精神にのっとった、特色のあるりっぱな人づくりをやっていただける私学にしていかなければならない、こう念願をしておるところでございます。
  139. 玉置一徳

    玉置分科員 いまのお話のうちで、学校が特色を持つためにいい先生が集まっておる、あるいはこういった教育方針はいいという形で、少々授業料は高くてもそこへお集まりになる、これが私学の本質だと思います。しかしながら、一部にはそういうものはございますけれども、そうじゃなくて、ただ教育を受けるという意味だけで入っている者がかなりの数あるんじゃないか。こういう意味では、幾ら高くてもというわけにはまいらぬ問題もありますし、しかも、それは一応の限度がありまして、学校騒動のもとをつくっておるというのも、この助成の一つの要因でもあったわけであります。  こういうところから見ましても、いまおっしゃいましたように、私学の設立者が、建学の精神に基づいて募金その他を鋭意やらなければいかぬのじゃないだろうか。安易に授業料だけ、あるいは助成だけでは相ならぬので、先ほど申しましたように、これから相当な助成を計上しなければいかぬということになると――ことに私学出身者、関係者等の熱意も国民の共感を得るゆえんだと思いますので、そういうものにつきましては、ただいまのお話の寄付についての税の恩典等を思い切って高めていくような方策をお願い申し上げたい、こういうふうな感じがしておりますが、今後ともその方向に御努力をいただきたいと思います。  ことに医学、理工科系統が、国立に比べまして授業料その他の格差があまりにも大き過ぎるというような点から考えて、先ほど申しましたうちの、社会なり国なりが特に必要と認めるものというものにこれは値すると思いますので、今後、この助成は五〇%平均じゃなしに、さらに増額をお願いしなければならないんじゃないだろうかというように感じるのですが、いかがでございますか。
  140. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほども申し上げたわけでございますけれども、今後は一律的な助成を考えないで、特に多額を要するような種類の大学につきましては、国の助成も厚くするということが必要だろう、かように考えます。
  141. 玉置一徳

    玉置分科員 なお、こういうことを申し上げると、私学の方におしかりを受けるかもわかりませんけれども、医学、歯学等々で経営的に非常に全体を圧迫する、困難だというふうなことで国に受け入れを――私は、要求かあればそういう方向も、私学の経営安定の一つの方策じゃないだろうかというような感じも持っております。これは、あまり質疑応答しますと、おしかりを受けるかもしれませんが……。  そこでもう一つ、そういうことになりますと、私学全体の問題と同時に、教育そのものが、必ずしも学校に入らなければいかぬということも考え直さなければいかぬのじゃないだろうか。会社におきまして、入社されたうちで優秀な者を、一年二年専門の学校へ行かす、もしくは放送大学等の構想、こういうことも考えなければいかぬ。あわせて考えて、国費の効率を考えた教育全般を、もう一回再検討する時期にもきておるような感じがするのです。もう少し違った教育方法があるような感じもいたしますが、大臣、どう思われますか。
  142. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 全く同感でございます。いま放送大学のことをおっしゃいましたけれども、家庭でいながらにして大学教育を達成できるということをぜひ早く実現させたい、かように考えておるわけでございます。同時に、いまの学校制度は、あまりにも形式的、画一的過ぎると考えているわけでございます。工業高等専門学校卒業者が、さらに大学に進もうとしますと、大学の三年に編入ということになるわけでございますけれども、たいへんそれが困難。そこで今度技術科学大学院というものをつくらしていただきまして、現にこれをどう持っていくかということについては、御審議いただいているわけでございますけれども、前期二年ということになりますと、大学の三年四年、後期二年ということになりますと大学院の修士課程ということになろうかと思うのでございます。こういう技術科学大学院に入る人につきましても、何も短期大学卒業生でなければ受け入れないということでなくて、それなりに勉強しておられる、また現に会社、工場で働いてきておられる、しかし十分に大学の三年あるいは技術科学大学院の前期一年に入れる人は、認定試験をして受け入れたらいいじゃないかというふうに考えているわけでございまして、同時にまた、大学に四年間いなければ大学院に進めないということではなしに、たとえば三年で大学課程を十分終えたのなら、その人は大学院に進む資格を与えたらいいじゃないか。同時にまた、大学院は、いま博士課程を終えようとしますと、修士の二年、加えて博士の三年、五年でございますけれども、何も五年いなければ大学院を卒業できないということじゃなしに、五年のうちの三年以上で十分に修業を積んだという方については、博士号を与えてしかるべきじゃないか、こうも考えたりしているわけでございまして、そういう一連の問題につきまして、現にそれぞれの機関において御審議をいただいているところでございます。  いずれにいたしましても、いまの姿はあまりにも形式的、画一的に扱い過ぎている、同時にまた、学歴ばかり見て人間を判断し過ぎる。やはり個人の能力に応じて、どんな道をも進んでいくことができるんだというような学校の仕組みに早く切りかえていかなければならない、こういう気持ちで検討を続けておる次第でございます。
  143. 玉置一徳

    玉置分科員 いろいろなセミナーを見ておりまして、セミナーが非常にはやっておるということばはおかしいのですが、必要であるということは認識されます。ああいう部門の教育のしかたというものも、今後大いにひとつ助成をしていく必要があるのじゃないか、こう思うのです。  そこで、時間がこざいませんので、あと二問ほどお伺いして質問を終わりたいと思います。  公立学校の場合でございますが、御存じのとおり給与費は、法律に基づいて国立並みということになっておるわけでございますけれども、これは設置者が市町村でございますので、交付税の算定の中に入っておるわけでありまして、実態は、毎年こういう機会に指摘されるように、決して高くはございません。そういうような意味では、三分の一は国だ、三分の一は市町村、三分の一は府県というようなやり方によって上げたほうが――これは根本的な問題があると思いますが、いまは幼稚園の側からだけの話でございます。  もう一つは、私立の場合でございますが、大臣、御苦労いただいておりますが、いまだに議員立法等もそのまま足踏みをいたしておる状況でございますが、運営費の助成とせめて私学振興財団の貸し付けだけは、何とかひとつ道を開いてやっていただきたい。と申しますのは、人口稠密地帯になりますと、土地代が高くなりまして、市町村も二千万なら二千万貸し付けるから適当に返してくれたらいい、なるべく私学でやってくれというのが現状だと思います。そういう意味では、貸し付けの助成ぐらいは、何かの窓口をひとつ開く方法はないだろうか、こう思うのですが、この二点についてお伺いしたいと思います。
  144. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 幼稚園の先生方の給与をどう負担していくかということにつきましては、これは一つ研究課題だと思いますが、私は、あまりあっちからもこっちからも金を出し合うということは、責任の所在を不明確にするものですから、そういう意味では、いろいろ検討を要するところもあるな、こう思っておるところでございます。しかし幼稚園の先生方の処遇を引き上げていくという意味において、いまのような御議論が出ているんだろうと思いますが、処遇の改善につきましては、将来ともより以上に積極的に取り組んでいかなければならない、こう思っております。  それから二番目の問題につきましては、私もたいへん努力をしているところでございますが、現に学校教育法の一部改正という形の議員立法で、衆議院の文教委員会に付託されているわけでございます。一日も早くその法案が成立しますよう、私としてもお願いしてまいりたい、こう思っております。
  145. 玉置一徳

    玉置分科員 終わります。
  146. 井原岸高

    ○井原主査代理 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十二分開議
  147. 藤井勝志

    藤井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松浦利尚君。
  148. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 まず最初に、航空大学学生の扱いについて質問をしたいと思うのでありますが、御承知のように、いま宮崎と仙台、それから帯広に航空大学がそれぞれあるわけであります。いま運輸省のほうから技術部長が来ておられるので技術部長にお尋ねをいたしますが、おたくに入られる高校卒業した方の成績ですね、通常の成績では航空大学には入れない、少なくとも中以上の成績でなければ入れないほど試験はむずかしい、そういうように聞いておるわけですが、技術部長から見られて間違いありませんか。
  149. 中曽敬

    ○中曽政府委員 お答え申し上げます。  航空大学校の入学資格は、先生おっしゃいますように高校卒業でございます。現在、年間百三十五名採用しておりますが、大体二年半の教程で卒業することになっております。したがいまして、われわれといたしましては、将来航空機の操縦士になる資格は十分あり得るという、そういう高校卒業生を採用しております。まあ平均的に申しまして、中ないしはそれ以上ぐらいの成績の方が入ってきておられるというように承知しております。
  150. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 競争率はどれくらいですか。
  151. 中曽敬

    ○中曽政府委員 約八倍ぐらいでございます。
  152. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 文部大臣、いまお聞きになったように、運輸省による航空大学は非常に優秀な学生、しかも競争率の高い学校であります。ところが、これは特殊教育ということで、将来パイロットに向くだろうと思って採用してみましても、途中で目が悪くなるとか、あるいは途中でパイロットとしての能力がどうもむずかしい、卒業はむずかしい、あるいは航空大学を出ても民間パイロットにはむずかしい、そういう場合に事前にその学校をやめて他の学校に移る場合に、文部省令の大学校でないために編入試験を受けることができないのです。だから、またあらためて新しい学校の入試を初めから受け直さなければならぬというたいへんな不合理があるのです。ところがそういう学生が年々ふえてきておるのですね。それはなぜかというと、パイロットの技術養成というのが非常にきびしくなってきておる、新しいいろいろな高度な技術が必要になってくるので、不向きだということが教官から指摘をされる。高校卒業するときは中以上の非常に優秀な生徒さんであったにかかわらず、たまたま航空大学に入ったために、その大学文部省大学でなかったがゆえに、逆にまたもう一ぺんやり直さなければいかぬ、初めから新しい大学を受け直さなければいかぬという不合理が出てきておるのです。こういう問題について文部省としては、そういう事実があるということを大臣はすでにお知りだったですか。知っておられましたか。
  153. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 きのう、こういう問題があることを伺ったところでございまして、学校教育法上の学校と違った学校であるために教育課程が全然異なる、そういうことでそういう仕組みがとられていないということを知ったわけでございます。将来また別途に、そういうところへ編入学できる資格認定の試験を設けるか設けないかというような問題はあろうかと思うのでございますけれども、現行制度上はできないというたてまえをとっているようでございます。
  154. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 去年広島県の高校を出られた優秀な子供さんがやめられて、今度中央大学の法科を受けるということになった。ところが非常にそういう不合理がありまして、せっかく優秀な成績で入ったにかかわらず、また浪人したと同じ結果になる。しかも新しい学校を受けるわけですから、もう一ぺん高校からの勉強をし直さなければならぬという、たいへん青年にとっては不合理な問題が具体的な問題として起こってきておるのです。この運輸省の航空大学が一般にいう各種学校のような学校ならこれは別です。少なくとも優秀な成績の者を採る、八倍の競争率のある、そういう学校でありますから、現状はそういう制度上できないにしても、かつて橋本運輸大臣当時、この分科会において、文部省との間で詰めをするんだ、そういう問題についてできるだけ編入試験等が受けられるような手だてをするんだと言われて、もう相当の年数がたっておる。依然としてそれは解決されておらないのですね。  技術部長のほうから、こういう問題について改める意思があるのかどうか、文部省と話し合う意思があるのかどうか。それと文部大臣のほうは、こういった学校について、これは各省立の中では航空大学だけだと思うのですね、そういった意味で、編入等の措置を今年度中にできるだけ運輸省との間に詰めて、現在の在学中の子供さんがそういった問題にかりに遭遇したときに、犠牲をこうむらない手だてをお考えになる意思があるのかないのか。その点をひとつ運輸省と文部省からお聞かせいただきたいと思います。
  155. 中曽敬

    ○中曽政府委員 先生のおっしゃいますように、橋本運輸大臣の時代にそういう話がございまして、文部省ともお話し合いをしたわけでございますが、なかなか問題が簡単にはいかないというようなことがございまして今日までに至っておるというふうに承知しております。今後は文部省と相談させていただきたいと思っております。
  156. 木田宏

    木田政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、正規の学校教育法上の学校でないということの関係から、いわゆる各種学校、または各種学校といいませんでも、法律上特別につくった教育機関から学校への学生の流動ということは、特別の場合以外はむずかしいことになっております。  こうした問題の起こりますのは、実は航空大学校だけではございませんで、防衛大学校につきましてもあるいは職業訓練の大学校というところにおきましても、いろいろと類似の事例は起こり得る状態にあるわけでございます。大学間におきましても、実はある一つの学士号をとりました者がもう一つの勉強をするという場合に、初めから入り直すといったようなことなども起こっておりまして、一般的に流動性を高めるという方向は私ども大学制度の中でつとめてまいりました。ある大学で勉強した者が途中から隣の大学へ移れるように、またお互いに単位が補完できるようにというような流動性を高める措置は進めてまいりましたが、大学以外のところとの流動性という点につきましては、みんなそれぞれの立場立場の御事情もございましょうけれども、どこまでどういうふうに広げられるのかということについては必ずしも簡単ではございません。いま具体的には看護関係のところにもう一つ要請があるのでございますが、これらは将来の大学制度、高等教育というものをどこまで広げ得るかということとの関連で進めていかなければならぬというふうに考えております。事柄が、大学だけが閉鎖的であっていいということではなくて、できるだけ広がりのつくような大学制度を考えたいというふうに思います。いまにわかに航空大学校とだけ特別のことをするというような状況でなくて、もっと広い全体の課題として考えさしていただきたいと思っております。
  157. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 防衛大学生徒さんというのは防衛大学学生なんです。防衛大学で給料もくれる、ちゃんと学生給料を。防衛大学というのは、身分がすでに防衛庁に組み込まれておるわけです。ところが航空大学というのはただ単なる学生なんです。運輸省の職員でもないのです。ましてや航空局の職員でも何でもないのだ。しかも、時代の要請に応じて法律でつくられた学校なんです。しかも、前にこの委員会で橋本運輸大臣が、そういうことについては、前途有為の青年の将来の芽をつむから、少なくとも文部省との間に意見を詰めて、編入試験が受けられるような方法は考えましょうといって約束している。それが依然としてなされておらないのですね。それは文部省のほうがしないということなんですか。あなたに聞いていると一般論とかなんとか言っているけれども、私はいま航空大学というものに限定して話をしているのですね。運輸省令の学校なんです。法律による学校なんです。その学校について、あなたのほうはもうそれでは、一般的なものとして理解ができるということは、将来にわたってだめだということを言っている。私は、少なくともこの航空大学については、橋本運輸大臣の約束もあるから、編入試験を受けるぐらいの措置はできるじゃないか、こう言っているのですよ。それでもだめですか。
  158. 木田宏

    木田政府委員 同じような例の一つとして防衛大学のことを申し上げましたが、海上保安大学につきましても職業訓練大学校につきましても、これらはみな同じような問題がございますし、看護婦養成の各種学校につきましても類似の問題があるわけでございます。  大学はやはりそれぞれの専門領域ごとにカリキュラムが違うのでございまして、保安大学校で一年おったからどこの大学ででも一年おったと同じように認めろというわけにもまいりません。大学の第一年次の教育内容は、これはもう専門によってみな違うわけでございます。ですから、一年おった年数をすぐ一年、同じように換算するというふうなことは決して容易にできることではございませんので、やはりこうした特別の目的によってつくられたものをどういうふうに取り組むかということは、もっと全般の問題として慎重に考えなければならぬわけでございます。  もし国立大学に同じようなものがあって、同じような航空士の養成の訓練課程がありまして、そしてそことの間のトランスファーということであれば、これは一年履修した者を一年、同じように考えるということも容易でございましょう。しかし大学制度一般で考えますと、人文、社会からいろいろな領域の、医学まで含めた大学のどこでも一年おったと同じようだという簡単な議論になりかねぬのでございます。そういう点をひとつ御理解賜わりまして、私どもも、いろいろなところで勉強された方が広く大学に入ってこられるようにするという、大学の門をできるだけ広げるという方向はいまいろいろと関係者の御論議をいただいて進めているところでございますけれども、特定のこれだけをつかまえてすぐ措置をするということはなかなかやりにくい、もう少し一般の課題として前向きに検討さしていただきたい、こうお答え申し上げます。
  159. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 ぼくは政府の答弁はいいかげんだと思うんだ。それなら橋本運輸大臣がそんなことを言わなければいいんだ。言うから問題が残るのですよ。では橋本運輸大臣がうそを言ったということですね。それならあなた、橋本元運輸大臣がうそを言ったとそこで言いなさいよ。それなら了解します。うそを言ったと言いなさいよ。
  160. 木田宏

    木田政府委員 関係者の間にそういう御要請がありまして、そのような御相談を受けたことは、私個人的には知りませんが、あったことだと思います。ですから、そのことがうそだというふうには私は考えません。しかし、事柄の中身につきましては、いまさっき御答弁申し上げましたような実態があるわけでございまして、今後の検討課題にさしていただきたいということをお願いしたいと思います。
  161. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 奥野文部大臣大臣はあまり食言が多過ぎると思うんだ。橋本運輸大臣がそういう答弁をしなければ私のこんな質問はないのですよ。大臣が少なくとも国民に向かって約束したことが実行できないのですよ。いま、将来にわたって検討するということばなんだ。将来にわたって検討するのでは、橋本運輸大臣が言ったことは早急に実現できないんだ、それなら。大臣としてそのことをここで訂正してください。
  162. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 橋本運輸大臣がどういう御答弁になったか知りませんけれども、おそらく、運輸大臣の立場で、ぜひ航空大学関係者の処遇に厚きを加えたいというような気持ちでおっしゃったのではないかと推察するわけであります。  いま大学学術局長が申し上げておりますように、学校制度全体の弾力化、これは将来とも研究していきたい。しかし、いますぐ航空大学だけについて、一年航空大学におったから一般の大学の二年に入れろと言われても、教育課程そのものが違うものだから、形式的、一律的には扱えない、こう申し上げているわけでございます。いずれにいたしましても、先ほど来申し上げているような課題として研究を続けていきたいと思います。
  163. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 結局、橋本運輸大臣が言ったときと一つも進歩も何もしておらないですね。全く足踏みしているだけ。  それでは技術部長、運輸大臣に言ってください。これから学生を採用するときには、他の大学には一切編入を受けられませんということを募集要項に明記して、そして学生の募集をする。そうしなければ、明らかに航空大学学生に対して期待感を持たせたりあるいは失望感を与えたりすると思う。その点をこれからの学生募集については明記するように、ひとつここで技術部長、約束してください。
  164. 中曽敬

    ○中曽政府委員 御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  165. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 この問題は文部省でやる気がないことだけはっきりしました。ですから、しかたがありませんから、募集要項にそういうことを明記して学生募集をするようにお願いしたいと思います。  さらに次に、文部省が持っておる土地の問題についてお尋ねいたしますが、目黒区の駒場三丁目八番一号地に一万一千五百十七平米の東京大学元農学部あとあと地をお持ちだと思うのでありますが、その点については現実に持っておられますか。
  166. 三角哲生

    ○三角政府委員 御指摘のとおり、東京大学教養学部に所属する土地のうち、目黒区駒場三丁目に御指摘の広さの土地がございます。
  167. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 その土地に現在六十三世帯が住んでおられる。この六十三世帯の皆さん方とこの土地の契約について、現在まで賃貸契約その他を文部省は結んだことがありますか。
  168. 三角哲生

    ○三角政府委員 賃貸契約は結ばれておりません。
  169. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 なぜそういうずさんな国有地管理をするのですか。
  170. 三角哲生

    ○三角政府委員 いま御指摘の土地は、もともと大学の拡張のための用地にしたいということで、昭和二十三年当時、大蔵省から旧第二局等学校が管理がえを受けた土地の一部でございます。当時、旧住宅営団が当初土地所有者に無断で、一戸六坪ないし九坪という簡易住宅を戦災者、引揚者等を収容する目的で建設されていたものでございます。住宅営団の閉鎖に伴いまして建物の払い下げが行なわれましたが、そのうち現在一般の民間の所有になっていますものが五十二戸ございます。五十四戸ございましたうち二戸は退去されて撤去されております。そのうち三十四戸が当時からの所有者あるいはその親族等で相続を受けた方々、十八戸は転売を受けた方々であるように東京大学のほうから聞いておりますが、何せ簡易住宅で耐用年数も短いということと、土地はいずれ大学の敷地に利用したいという当初の考えを持っておりますところから、これにつきまして処理を行なわずに今日に至っておるという状況でございます。
  171. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 その土地をいままで、戦後ずっとただで特定の人が借りて、いままで一銭も土地代を払っておらない。しかも、払っておらないその無料の土地に下宿をつくって、学生を下宿させてもうかっておる人も中におる。一体文部省は国有財産というものをどういうふうに考えておるのか。特定の個人のために国有財産を無料で貸し与えて、それを現在まで放置しておる。しかも放置されておる側は逆に、下宿等を建てて、それで学生を下宿させてもうかっておる。こういうずさんな国有財産の管理のしかたというのが許されますか。  お尋ねしますが、この土地は行政財産ですか普通財産ですか、処理は。
  172. 三角哲生

    ○三角政府委員 行政財産でございます。
  173. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 行政財産を文部省がかってに動かすことができますか。行政財産は、ちゃんと法律があるでしょう。行政財産については、国有財産法第十八条の手続によらない限り、貸し付けも交換も売り払いも譲渡もあるいは出資の目的に使うこともできないでしょう。国有財産法第十八条、あなた知っておられるでしょう。そういう行政財産であるものを、何でそういうふうにあなたのほうはいままで放置しておるのですか。
  174. 三角哲生

    ○三角政府委員 大学当局といたしましては、あくまでも土地を東大の敷地として利用したいということがございます。そのようなことから、当初使用料を取らず、かつ当初のときに差し入れ書などもいただいていたというような経緯があるようでございます。そういうことから今日に至っておりまして、まあ種々経緯のあることでございますし、いろいろ法律関係も入り組んでおりますので、国有財産法上適正な管理をいたしたいという本省のほうの考えもございますが、そういう考えに基づいて早急に、できるだけ早く適切な解決策を見出していくように検討しておるというところでございます。
  175. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 現実にその上ものが転売されておる人もおるわけですね。払い下げを受けた上ものをもうほかの人に転売しておる。ですから当時の、終戦直後の人でない人が住んでおるわけですね。そういった文部省の行政財産の管理のしかたがきわめて私はずさんだと思いますね。しかも、私が事前に、質問通告をするからと言って資料をもらった。その資料によると、区画整理をする、あるいは適当な賃貸契約をする、将来東大のほうに戻してもらうことがむずかしいから、いま住んでおる人に払い渡すようなことを考えておる、こういったことが私に事務当局から事前に連絡が来ましたね。しかし、そういうことは文部省でかってにできないはずなんだ。少なくとも行政財産である限り、そういう処置をしようとするときには、大蔵省なら大蔵省にこれは移すべきなんだよ。そういう手続も何もしておらないのですよ。非常に学校先生や何かに対しては文部省はきびしいのだ。日教組や何かに対してきびしいことを言う。しかし自分たちがやっておることは何かというと、こういうずさんなことをやっておって平気でしょう。文部省自身がこういうずさんなことをやっておって、そして土地の問題がどうでございます、土地成金がどうだとか、キャピタルゲインがどうだとかこうだとか、騒いでみたって始まらないですよ。  この際、もう時間がありませんが、率直にいって大臣、これは、大臣は現在担当の大臣だからあなたに文句を言うので、ほんとうは昔からの歴代文部省大臣が手つかずできたやつですね。こういう行政財産の管理のあり方について、大臣として国民にすまないと思うかどうかですね。こういうものについて、どういうふうにそれじゃ抜本的に改めようとするのか。同時に、いまあるこの駒場の土地、これについても法律の手続に従って善処する意思があるのかどうなのか、その点についてお聞かせいただきたいと思うのです。
  176. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 お話、まことにごもっともで、文部省としては幾らしかられてもやむを得ない、こう思います。きのう初めてこういう問題があることを聞かされまして、大学の環境を守るためにこれだけ努力しているのに、このようなかっこうでそのまま放置されているということは責任を感ずべきじゃないかというような話もいたしました。東京大学の荷に負えないのなら文部省が引き取って、そういう努力をすべきじゃないかというような話もしたわけでございまして、なるたけ早い機会に、どうやれば円滑に本来の学校用地としての目的を達成することができるようになるか考え、善処を進めていきたいと考える次第であります。
  177. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 事務当局は何でこういったことを大臣に事前に報告しておかないのですか。きょう、あなたに事前にお話ししたから、これに対する処置その他は大臣から御答弁があると思ったのです。そうしたら、きょう初めてお聞きになった、あるいはきのうお聞きになった程度で、ところが実際には、文部省当局が東大と話をして、それでこの土地の処分のしかたなり何なりというのは早くから東大と文部省側で話に入っておられるでしょう。そういう話に入っておられる内容について何で大臣に連絡しないのですか。何で大蔵省に意見を聞こうとしないのですか。こんなことは私がここで質問しなくたっていいのだ、ほんとうなら。質問したってつまらぬことだ、こんなことは。しかし、何でそういうことを事前に正確に大臣に報告するなり、あるいは大蔵省と打ち合わせをして善処するという態勢をとらないのですかね。文部省というところはそういうところですかね。そういう点、ひとつ担当の局長のほうから明確に答弁してください。
  178. 三角哲生

    ○三角政府委員 先生から本件につきまして質疑がございますということで、昨日大臣に御説明、御報告申し上げたのでございます。この土地に関しましては、国立大学の土地についてみなそうでございますが、具体的な管理につきましては文部大臣からそれぞれの大学の学長に委任をいたしておりまして、本件ケースにつきましても東京大学手元で、従来長い経緯のある問題のようでございまして、昨今も実際に現地におきましていろいろ接触を持っているという報告は受けてございます。ただ、そういった接触につきまして、なかなか必ずしも皆さま方の全体の一致した詰めにまではいっていないというふうに聞いておったわけでございます。そういうわけでございまして、そういった経緯あるいは法律関係もいろいろ入り組んでいるようでございますので、事情を十分大学からも聴取の上に適切な解決策を検討いたしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  179. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 もう時間が来ましたからこれで質問を終わりますが、いずれにいたしましても、この問題は、東大のほうに問い合わせてみても、文部省との間で十分話をしておったはずです。この土地から、現実に入って住んでおる人たちを追い出すわけにもいかないのでね、居住権があるわけだから。今日までずさんに置いておったからこそこういう状態になってしまったわけで、その責任はやはりあげて文部省側にあると思う。そういった意味では、この人たちが少なくともこの土地の処分で犠牲をこうむらないように、そしてもう住んでおるところの問題ですから、できるだけ住民の意見も聞きながら、しかもただで貸しておるなんということは、これはとんでもないことだね、国有財産を特定の人に。そのことだけでも早く賃貸契約等を結んで、正規のルートに乗せて、この問題の処理について善処方をお願いしたいと思います。大臣、そのように指導していただきたいと思います。よろしいですか。
  180. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いずれにいたしましても、学校用地でございますし、また現実に大学が存在していることでございますので、大学教育環境は守っていきたい、こう考えます。同時にまた、いまおっしゃいましたように、多年にわたって正当に住んでこられたことも間違いないわけでございますので、そういう権利関係に対する配慮はこれは当然しなければならないだろうと思います。
  181. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 それでは質問を終わります。
  182. 藤井勝志

  183. 土井たか子

    ○土井分科員 文部大臣日本教育の基本となるのは教育基本法という法律がはっきりとそこに定めておりますとおりで、まず前文の個所に「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本教育の基本を確立するため、この法律を制定する。」こうございます。  これはもう申し上げるまでもないことでございまして、教員たらんとする者、特に教員たらんとする者が教員の免許状授与を受けようとする場合に、憲法に対しての認識を深く持っていること、憲法の内容に対して知識を持っていることというのは、私は大切なことだと思うのです。したがって、教員の免許状授与を受けようとする者が憲法の単位履修、学習をするということは当然で、こういうふうなことを教員、教育職員の免許を問題にする場合に基本に置いて考えなければならないと思うのですが、文部大臣はこの点に対してまずどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  184. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そのとおりに思っております。
  185. 土井たか子

    ○土井分科員 ああそうですか。  さあそれで、そういうふうなことから考えてまいりまして、文部大臣も御承知のとおりでございます、昨年教育職員免許法の一部改定がなされました。あのときの法律の改正点は、大学に学ばなくても、文部省が行なう検定試験に合格しさえすれば教員の免許状が授与をされるというところにあったわけでございます。それは確認させていただいてようございますか。
  186. 木田宏

    木田政府委員 昨年の教育職員免許法の改正には幾つかのポイントがございまして、いま御指摘がございましたのは、大学で免許状取得に必要な所定の単位を取らなかった者につきましても、資格認定試験制度によって免許状授与の道を開くということも大事な改正点の一つでございましたが、そのほかにも、大学におきます免許状取得単位の一般的条件の弾力化ということをはからしていただきまして、特に免許状を取得いたしますにつきまして、大学で一般教育科目三十六単位の履修を必修とするという従来の規定を削除さしていただきました。これも別途の大きな改正点であったかと思うわけでございます。この趣旨は、大学の一般教育の弾力化ということを大学改革の一環として各大学が強く考えておりますので、免許法の規定の上で大学の一般教育というものの単位の取得を規定することなく、大学自体の手にゆだねるようにしたいということから、一般教育科目の履修単位の要件を削除するようにお願いを申し上げた次第でございました。
  187. 土井たか子

    ○土井分科員 私の質問はそこまで及んでいないのです。答弁のために御用意なすった要旨に従って答弁のほうが先にお進みになるということは、ちょっとこれは不穏当だと思うのですよ。質問に対してひとつ御答弁をお願いいたします。よろしゅうございますか。  それで、あの教育職員免許法についての改正を問題にした国会で、議事録を見ますと、七月十日、参議院の文教委員会で加藤委員の質問があります。これはやはり、大学教科課程を終えていない、しかし文部省の検定試験を受験する受験生についてこの点をはっきりさせておきたいという意味の質問でありまして、中身は、検定制度になると、受験生の憲法学習の必要はどうなるのかという趣旨の質問だったわけです。これに対しまして木田大学学術局長の答弁がございます。その中身には、「いまの大学におきます一般教育科目の中で必要な憲法あるいは心理学等について履修すべき必要科目につきましては、資格認定試験の際にも同じようにその科目につきましての試験を実施することによって担保できる」ということを答弁され、さらに続けて「資格認定試験制度を省令をもちまして現在ありますものと同様に」、というのは、現在ある省令の中身と同様にですね。現在ある省令の中身と同様に、一般教育内容として必要な試験科目を明確にしていくという答弁だったのです。これ、確認させていただいていいですね。
  188. 木田宏

    木田政府委員 いま御指摘になりましたような加藤進委員のお尋ねに対しまして、この速記録でお読み上げになったかと思いますが、私も速記録によって、「今度、資格認定試験制度を省令をもちまして現在ありますものと同様に明確に規定をいたしてまいりますが、その際に一般教育内容として必要な試験科目を資格認定試験制度として明確にしていく所存でございます。」という御答弁を申し上げました。
  189. 土井たか子

    ○土井分科員 それは議事録のとおりで、七月十日のできごとです。  後に、この法律の改正に従いまして八月九日に施行規則の一部改定、つまり省令の変更がなされたわけですね。この省令の変更の中身を見ますと、従前ございました第一条の一項から五項までは全部削除されているわけです。その一項から五項までの中には、特に三項、五項の中で、「一般教育科目の単位の修得にあたっては、日本国憲法二単位を含めて修得するものとする。」というのが三項でございますし、五項の場合には「教科に関する専門科目日本国憲法を修得した者については、それぞれ二単位まで他の一般教育科目の単位をもつて、これに替えることができる。」という趣旨の中身になっておるわけですね。これが消え去ったわけです。この一部改定がなされたのは八月九日でしょう。御答弁なすったのは七月十日です。七月十日のときの御答弁を私はいろいろと考えてみたのですが、どうも、どれだけこの議事録を読み返してみても、この時点において、大学における憲法の単位修得の義務を、このような省令の改正によって、改定によって排除していくというふうな積極的な意思は読み取れないのですよ。わざわざこの省令の中身を変えて、一条の一項から五項までを特に削除しなければならなかったという理由はどの辺にあるのか。これがまず一つ問題です。これはしかしあとでお答えをいただきます。  先に私は一つはっきりさせておきたいことがあります。このことが実はたいへん現場で問題になってまいりました。大学当局の間でも問題になった。そして教員免許を取得しようとする人たちの間でも問題になったのです。さあこれからは憲法を勉強しなくてもいいのじゃないか、憲法の単位を修得していなくても教員免許に対して申請は可能なのじゃないか。事実、法令上を見ていくとそのとおりなのですが、可能なんですよ。これは大きな問題だということで、文部大臣おぼえていらっしゃると思いますが、文部大臣のところに、これは不穏当な措置ではありませんか、こういうふうな法令の改定というのは、いまの教育基本法からして、もう一つ言うと憲法からしておかしいとお思いになりませんかということをお尋ねに行くと――これはおぼえていらっしゃると思いますよ、十一月の四日です、新聞によりますと、大臣は、事務当局がそうした措置をとっていたとは知らなかったということをおっしゃったのです。おぼえていらっしゃいますか。知らなかったとおっしゃったのです。これ、まず確認いたしましょう。
  190. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまのような話が、私が旅行しておりました出先に新聞社の方からお尋ねがございました。そこで、そういうことについての十分の論議もしていませんので、おそらく技術的な処理じゃないんだろうか、こういうようにお答えをしたわけでございます。特に憲法を学ばせなくてもよいという意味の削除ではなしに、法律改正をしたから、それとの関連で起こってきた単なる事務的な措置じゃないんだろうか、こうお答えをしたわけでございます。事実、その後調べてみまして、そのとおりであったことを承知したわけでございます。
  191. 土井たか子

    ○土井分科員 処置はどのようになすったのか、私にはよくわかりません。知らなかったという文部大臣の発言というのは、これは大きいですよ。文部大臣が御存じないような省令の一部改定があったということに対しては、やはりこれは一つの大きな政治的責任があると私は思うのです。事、教育問題ですからね。これから先生になろうとする方々の資格をどのように考えていくかという問題ですから、教育に及ぼす影響というのは非常に大きいですよ。私はそんなに小さなことじゃないと考えます。あと調べてみて、法令上さしたる問題はないようであったからそのように善処をしたというふうにおっしゃるけれども、本来ならば、知らなかったとおっしゃったその時点で、文部大臣の御存じないような省令については常識的に考えて撤回すべきでしょう、まず。文部大臣に何の連絡もなく、何のそこには御相談もなく、局長はかってにそういう省令を官報を通じて外部に出されたわけでありますか。
  192. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 省令の改正でございますから、事前に事務当局から十分に説明を聞いているわけでございます。たくさんなそういう問題の処理がございますので、特に実体的な変更を加える場合には十分な説明がさらに重ねてなされるわけでございますけれども、事務当局といたしましても、法律改正に伴って当然にその部分を削除しなければならなくなる形式的な処理でございますので、特に将来憲法を教えなくてもいいんだという趣旨の改正でもなかったわけでございますので、その間には十分な論議をしなかった、こういうことでございます。そういう意味で、実質的な削除の考え方、それを私は知らないけれども、おそらく、十分な論議をしていないんだから全く事務的な整理にとどまる省令改正だと思うのですよと、こういう意味にお答えをしたわけでございます。実態が、いまお考えになっているように実質的な改正だという場合では、当然事務当局の間で十分な論議を重ねるわけでございますが、重ねてないから、おそらく私は、いま申し上げますような、法律改正に伴って起こってきた技術的な事務的な整理だろうと思いますよと、こう記者の方にお答えをさせていただいたわけでございまして、そうしてまた、戻りましてから調べてみましたらそのとおりであった、こうお答えをさせていただいているわけでございます。
  193. 土井たか子

    ○土井分科員 それはそうじゃないのですね。現実のこの問題というのは、省令や法令が変わりますと、実際に取り扱いはそれに従って変わってまいります。単に形式的な違いじゃないです。実質的にやはり違いが出てきているということを、ひとつ文部大臣はっきり確認をなさらなければ、これはちょっと私はゆゆしい問題だと思います。単に事務当局が処理した問題については全部形式的なことであって、さほど大事なことじゃない、御信用なさるのももっともかと思いますけれども、しかし、文部行政に対して行政担当の責任の長である文部大臣ですよ。私知らなかったという発言に対しては、あとそれなら、知らないうちに動いているこの省令の中身について、改定をする必要がないのなら、なぜ改定をする必要がないかという理由も明らかになさる必要があるでありましょうし、また、本来、私は知らなかったということに対して、一度はっきり、この省令の中身からすれば撤回もお考えになるのが、私は大臣として行政責任上当然の措置であったのじゃなかろうかと思うわけであります。こういうふうなことについては、その後お考えになったということがないのでございますか。
  194. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 繰り返しお話し申し上げて恐縮でございますが、法律の中にありました一般教育科目三十六単位というような規定を削除した。これは数年来弾力化を進めてまいってきておりますので、それなりに何ら疑問を持たないで法律改正を進めたわけでございます。そうしますと、それを削除されますと、施行規則にあります御指摘のところを削らなければならなくなってくるようでございます。しかし、実質的に憲法の履修は要らないという意味で削るわけでございませんで、法律上弾力化を進めてきた結果、字句の修正が行なわれた。そうしますと、それとの関連において施行規則も改めざるを得なくなった。しかし実体は変えないのだから、実体は変えないのだという趣旨は通達で明らかにするということで、その後に通達も出されているようでございます。そういうことでございまして、三十六単位というような式の形式的なことにしないで、各大学にまかせていきたいというような方向で法律改正を行なった。その結果、事務的な処理として憲法関係の規定の項目の削除というようなことになったわけでございます。御心配になるお気持ち、私よくわかるわけでございます。よくわかるわけでございますが、その法律改正なり省令改正なりは、別に憲法の履修を必要としないという意味で改正したわけじゃないのだ、こう私は申し上げているわけであります。
  195. 土井たか子

    ○土井分科員 これは事実上、憲法の履修をしてなくても、教員免許を取得するために申請をされた場合、教育委員会はそれをけることはできませんね、ただいまの法令からいたしますと。大学が一括して申請をする場合もありましょう。しかし一括からはずれて個々に申請する場合もありましょう。もう一つは、文部省の検定試験を受けて教員免許を取得するという場合もございましょう。それぞれの場合に当たってみますと、これがはたしていま文部大臣言われたとおりに、憲法に対しての履修はだいじょうぶだ、だいじょうぶそのことは大学当局にゆだねていって十分にできることだと、責任をもってお答えになり切れますか。
  196. 木田宏

    木田政府委員 教職員の免許状は少なくとも大学レベルの教育水準を必要としたいというのが戦後の考え方でございまして、大学卒業を免許状授与の基本要件にいたしておるわけでございます。その際に、どのように一般教養を身につけるか、これはいろいろ数ある大学の一般教育考え方にゆだねてしかるべきではなかろうかという考え方で、その一般教育をやりやすくするという意味で、免許法の規定の中から大学の一般教育についての規定を削らしていただいた。大臣が申し上げたとおりでございます。  私は、大学卒の識見を持っておる人が教職の修練を経まして、教職につく免許状をもらい、教壇につくということでありますならば、私は日本の教師としての資質は養えるものだというふうに考える次第でございます。また、大学学生に対して教職員の資質を得るための勉強をさせます際に、その必要な指導内容というものは、免許状が大学の学習の全部を規律しておるわけじゃございません。ですから、大学教育全体の中で大学指導していって、御心配になるようなことのないものというふうに考えておる次第でございます。
  197. 土井たか子

    ○土井分科員 それは、大学教育というのはおっしゃるとおりに幅の広いものであってしかるべきですよ。そうして教科内容というものは弾力的であって、大学の自主性にゆだねる、全くそのとおりであります。けれども、将来主権者になる国民を教育する場において教育者たらんとする人たちに対しては、基本的にこれだけは必須要件だということが求められる条件があるのじゃありませんか。その中の一つに――一つにというよりもむしろ基本に、憲法に対しての理解、憲法に対しての学習というものはこれは忘れてはならないと私は思うのですよ。ですから、弾力性ある幅の中で、選択を自由にまかせて、どうぞおやりくださいといえるような問題じゃないと思うのです。これは違いますよ。本来、大学にまかせてしっかり大学をおやりになるとおっしゃるのなら、大学管理法は要りません。大学設置基準というものは一体何のために必要なんですか。またもう一つ言うと、学習指導要領というのは一体何のために必要なんです。全部一切この節おやめになりますか。同じことですよ、大学の自主性をそれほど尊重なさるのなら。  そういう点からいきますと、少なくともカリキュラムを編成する中で、これだけは基本に置いておくという問題、これはやはり日本国憲法というのは基本法としてある国の中での教育でありますから、したがって、その基本法の中でこれから主権者としていくところの国民を教育する場においては、少なくともこの憲法に対しての認識を欠いたあり方というのは、私はゆゆしい問題だと思うのですね。ですから、弾力性ある幅の中で、大学の自主性にまかせてという問題じゃないと思います。文部大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  198. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 学習指導要領は、御承知のように高等学校以下について示しているわけでございまして、大学につきましては、学問の自由を守るというような意味合いもございまして、研究の自由、研究の成果の発表の自由というようなことにいたしてまいっておるわけでございます。やはり憲法というのは、先ほど来るるお述べになりましたように基本的なものでございますので、大学が教職員につこうとする人についての教育を進めます場合に、あるいはカリキュラムを組みます場合に、この憲法を取り入れないということはちょっと考えられないような気もいたします。同時にまた、施行規則を改めましたけれども、その際には、実質的には当然憲法を履修させてもらうつもりだという意思も明らかにしておるわけでございますので、この省令の整理の結果、憲法が教えられなくなるというような心配はないのじゃないだろうか、私はこう考えてきているわけでございます。  いずれにいたしましても、弾力化を進めていくということになりますとやはりそういうかっこうになるのかな、こう思ったりもしているわけでございまして、今度の場合はそういうことに意図があったわけじゃございませんで、弾力化を進めるために法律規定を改正した、その結果、当然省令に及んだというだけのことでございます。実体的には今後も従来どおり進められますように、一そうの留意をしてまいりたい、かように思います。
  199. 土井たか子

    ○土井分科員 弾力的、弾力的とおっしゃいますが、認められないことまで認めることを弾力的とは申しません。認めなければならないことははっきり認めた上での弾力性でなければ困ると思うのです。これをまず申し上げておきます。  いま私が手元に持ってまいりましたのは、これはサンプルであります。全国、これは出ているわけですけれども、東京都の教育委員会が「免許状を申請する方へ」という、これはガイダンスですね、片方は。それから片方のほうは「授与願」、二枚の用紙に分かれて、これがワンセットになっているわけです。この「授与願」の欄のほうを見ますと、いまこの省令の改定がなされるまでは、この欄の中に確かに、「一般教育」というところに「人文の分野」「自然の分野」「社会の分野」と分かれておりまして、社会の分野のところに「(日本国憲法)」と書いてあった。これが削除されているのです、今度は。消えうせているのですよ。そうしていろいろな指導をされる場合に、教育委員会のほうから説明があったわけでございます。十一月十六日に東京都の教育委員会が主催した各大学の教員免許状について申請をされる方の説明会の中で、日本国憲法を履修していない者でも免許状授与の申請はできると、はっきりした答弁を出しているのです。  これは、いま文部大臣おっしゃるように――文部大臣はたいへんに大学を信用なすっている大臣ですから私は申し上げますが、大学が一括して申請をする際には、おそらくは、大臣心配ないとおっしゃるとおりに、あるいは日本国憲法というものを履修をして、それを申請の条件の中に入れて持っていくということがあるでしょう。だけれども、一括の中からはずれて個人の立場でも、大学で履修さえしておって条件にかなっていれば、これは教育委員会に申請できるのですね。そうですね局長。その際にどうなんです、日本国憲法に対して履修がなくたって、教育委員会としてはこの申請を拒否することはできませんよ、いまの省令からいたしますと。それからさらに、これに従って今回「小学校教員資格認定試験の案内」というのが文部省から出ておりますが、この中身を見ましても、どこにも憲法の履修の必要性というものは一言半句出てこないのです。やはり憲法について認識を持っていなくとも、学習をしていなくとも、ましてや履修をしていなくてもだいじょうぶだということになりますよ。  こういうことからいたしまして、文部大臣、やっぱりこれは漏れていますね。法令どおりに考えていくと、日本国憲法の履修なくして教員免許状を取得できる、これは端的に言うことができます。いまの省令から考えていくとそうなんです。心配がある、ないというのは、まず文部省としては省令、その上の法律、法律よりも憲法、それに即応して教育行政一般に対しては責任を持ってもらわなければ困るのです。現場にゆだねてだいじょうぶ、それほど御信用なさるのなら大学に対しての管理のあり方だってだいぶ違っているんだろうと思うのだけれども、どうもこの件に関してだけは大臣大学を信用なすっているようです。万々たいしたこともあるまい、心配することもあるまいとお考えかもしれませんが、法令上そうなっていることに対して、ひとつしっかりともう一度見直して、この点そごのないように考え直すというお考えがおありになるかどうか、お聞かせいただきたいのです。  それから、特に今回あの教員免許法の一部改正の結果、こういうふうに省令が変わったということが弾力的、弾力的とおっしゃいますが、弾力的な中でも日本国憲法の履修を削除するということは別問題でありますから、ひとつそのこともあわせて、以前の省令に返ること、あるいはそれができなければ、いまの省令の中身をもう一度検討して、いま私が申し上げているような趣旨で日本国憲法の履修というものをはっきりさせること、これをひとつ御検討願いたいのです。いかがですか。
  200. 木田宏

    木田政府委員 先ほど大臣もお答え申し上げましたように、法律の改正によりまして、大学におきます一般教育の履修の要件については免許状授与の要件としなくなったのでございます。でございますから施行規則で、一般教育の履修要件を、法律の根拠がなくなったものについて規定をすることは技術的にできないことになったかと考えるのでございます。ただ、大学学生に対しまして、これはいろいろな専門領域の学生を通じてでございますけれども、一般教育教科内容卒業の要件として課しております。その中で、これまた大学によっていろいろ違いますが、憲法というのは一番履修率の高い科目一つでございます。私は、今日の教育職員免許法が、大学卒業、履修、勉強ということを基礎要件にして、その上に教職に必要な資質を積んで免許資格とするという本質はそこなわれていないというふうに思いまするし、先ほど来大臣がお答え申し上げておりますように、大学で教職の免許資格をとるために指導してまいります教育内容として、憲法を引き続き履修させるように指導願いたい、こういう通知も――私どももその大学の主体性にゆだねて、そこを信頼して措置をとったわけでございますから、さっそく通知も重ねて出さしていただいた次第でございます。実体的にこれによって急激な変化が起こるというふうには考えておりません。
  201. 土井たか子

    ○土井分科員 それはそうじゃないですよ。省令から考えていきますと、これは大学長が教員免許について申請を受理して、これに対して教員免許を与えるという資格を持っているわけですか。そうじゃございません。教育委員会ですね。この前局長が出されました通達、十一月九日付で出た「教諭の普通免許状を取得しようとする学生の一般教養科目の履修について」という通達、これは送り先が各国公私立大学長と各指定教員養成機関の長でしょう。教育委員会じゃないんですね。いま申請を受理するのは教育委員会です。教育委員会がこれをどういうふうに理解するかという問題、大きゅうございましょう。教育委員会のほうからすれば、いまの省令から考えて、日本国憲法を履修していなくたって受理いたしますよ。どうでございます。
  202. 木田宏

    木田政府委員 これは昨年の法律改正によってそのようにお定めいただいたところでございまするから、免許状を授与します場合の都道府県教育委員会の処理といたしましては、大学で一般教育をどのように履修したかということはチェックしないことになった次第でございます。しかし、大学卒業の要件としてどれだけの中身を勉強したかということは、これは卒業したかどうかも含めて検討されてしかるべきだと思いますけれども教育委員会側が免許状を発行いたします場合の必要要件といたしましては、大学卒業という要件と、それから免許法に規定されております教職専門科目、そういう科目についての必需要件をチェックして免許状を出すということになる次第でございます。
  203. 土井たか子

    ○土井分科員 いまの御答弁を承っておりますと、まるで、この前のあの法律改正の結果、憲法を履修する必要がないような省令のつくり変えが必要であった、その因果関係をおっしゃっているわけですが、そういう因果関係は全くないですね。あの法律の一部改定と、今回省令を改めてあの一条の一項から五項までを削除するということと、関係は全くないですよ。特に憲法の履修を省くというのは、この前のあの法律の一部改正とどんな関係があるのですか。これはございません。はっきり申し上げて、ないですよ。
  204. 木田宏

    木田政府委員 旧免許法施行規則一条は、削除されました旧教職員免許法の一般教育科目三十六単位の履修に関連した施行規則であったわけでございます。本法のほうで一般教育科目三十六単位の履修ということを大学にゆだねるために削除をいたしましたので、旧教職員免許法施行規則一条はその制定の根拠を失ったわけでございまして、厳密な関係がございます。
  205. 土井たか子

    ○土井分科員 わかりました。それは前後関係、法技術的にはそうなるかもしらぬ。ところが、先ほど来私が質問の中で一貫して言っていることは、いままでそういう履修の中に日本国憲法というものが置かれた意味をはっきり確認していただきたいということだったんです。弾力性のある大学での授業、履修、これはもちろん大事です。だけれども、将来教員たらんとする者、また現に教育の場に立って教育をなすところの教育者、それぞれが日本国憲法について履修をしておく、その中身に対して十分に体得をしているということは非常に大事な問題だと、文部大臣お考えになっているとおりなんです。ところが、今回この省令を適用して各教育委員会が申請を受理して行なう場合に、その申請の中身から日本国憲法を履修することというのが省かれていても受理をして、これに教員免許状を与えるということが現に許されるわけでありますから、こういう状態に対してどういうふうにお考えになっているかということ。  それから、時間になりましたからこれに即応して申しますけれども大臣は御存じかどうか、いま中学校高等学校社会科教科の中で、憲法は通算いたしまして、全国平均で三年を通じて大体六時間ぐらいしかやっておりません。特にこれは第三年度の最後のほうに行なうことになりますので、実際問題、入学試験に追われまして、これが十分に憲法の学習というものをしないまま中学、高校課程を経過をして大学入学する、あるいは就職をするという国民が多いということをひとつお考えいただきたいのです。  そういうふうなことから考えていきますと、これからの教育のあるべき姿というのに対して責任をお持ちの文部大臣ですよ、教員免許資格についてどういうふうな条件を考えるかということから、憲法に対する学習、修得、履修、これは大事な問題というふうにお考えにならなければならないはずであります。これがいまの省令からすると、教員免許資格を問題にする中ではずされていっているということ、これを一つ御確認いただいて、新たにこの省令に対して中身を変える。この省令が法律の根拠に基づく省令であるということであれば、その法律についての改正までもやはり問題にしなければならぬでしょう、あくまでそれを言い張られるのなら。私はそうも思いませんけれども、そういうことまでひとつ御検討いただくだけの私は大事な問題だと思います。最後大臣、そのことに対して一言御答弁をいただいて私は終わりにします。
  206. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど来繰り返し申し上げておりますように、施行規則の改正は、免許法の中にあります条文の改正に伴います全く技術的な改正でございました。実体的には何ら変更を意図したものではございません。したがいまして、今後実体的に何か変わってくることがございますなら、御心配になるようなことが出てきますなら、当然その際には対応した措置がとられなければならないと思います。同時にまた、中学あるいは高等学校における憲法の履修につきましても十分になりますように、われわれもなお実態は検討を重ねていきたいと思います。
  207. 土井たか子

    ○土井分科員 一言だけ。将来変わりますことがあればと大臣おっしゃっていますが、現にこれ、変わっているのです。先ほど申し上げたとおりですよ。教育委員会が主催した各大学に対する教員免許状申請のための説明会で、もう日本国憲法は履修しないでも教員免許状の申請ができるというふうにはっきり断言しているのですから。こういうことはいままでなかったのです。現に変わっているのです。それを確認していただきたいですね。
  208. 藤井勝志

    藤井主査 時間が超過しているから簡単にお願いします。
  209. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 それも先ほど大学学術局長が御説明申し上げたとおりでございまして、施行規則からそのことが削除されたわけでございますので、当然にいま申し上げますような変化が出てくるわけであります。しかし、大学卒業していることでございますし、大学卒業の場合には、一般教育科目の中で憲法は当然履修している。また、施行規則は改正したけれども実体は変えていないのだという大学学術局長から各学校への通達も出ていることでございますので、各大学において十分その履修は行なわれている。したがってまた免許申請にあたりましてそこをチェックする必要はない。施行規則に書かれておりますとそういう問題が起こるのですけれども、施行規則が改正された結果、当然そういうような手続的な変化が起こってきているだけのことだ、しかし教育の実体においては変化はないということであります。
  210. 土井たか子

    ○土井分科員 これはひどいですね、大臣。それは大きいですよ。
  211. 藤井勝志

    藤井主査 ちょっと待ってください。また文教委員会でいろいろ御議論をしていただくことにして、分科会の質疑は時間どおりいままでずっとやってもらっておりますから……。
  212. 土井たか子

    ○土井分科員 はい、承知しました。
  213. 藤井勝志

  214. 平田藤吉

    平田分科員 中学校卒業者の急増期を迎えております。つまり、それと同時に高校への進学希望者が急増しております。公立高校をふやしてほしい、私立高校への助成金をふやしてほしいという要求は、いま全国的に切実なものになっております。全国的に切実であるが、とりわけ人口急増地区でこの問題は深刻な問題になっているわけで、地方自治体の財政的な困難は、これまで以上にひどいものになってきているわけです。加えて、大企業による土地の買い占めやあるいは建設物資の買い占め、売り惜しみ、それから価格のつり上げなどが高校建設を一そう困難にしております。  そこで、まず奥野文部大臣にお伺いするわけですけれども、一月二十四日の衆議院本会議で代表質問に立ったわが党の金子議員の高校増設問題についての質問に対し、あなたはこう言っているのです。高校新設補助を行なうのは取りやめたが、地方債の中に六十億円のワクをとったから、各地方自治体の財源は保障されているという趣旨の答えをしております。この六十億のワクをとって、これでほんとうに保障できるのかどうなのか、まず大臣見解をお聞かせいただきたい。
  215. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私のお答えを申し上げたところの一部だけいまお取り上げになったようでございます。高等学校の設置は国庫支出でございますけれども、基本的には地方公共団体の責任において今日まで運営されてまいってきておるわけでございます。この責任の遂行にあたって、地方団体の方々ともいろいろ話をしてまいりましたが、設置についての地方債のワクを明示してほしいのだ、そうしますとその資金を目途に地方債の許可申請をしていくことができる、こういうお話がございました。そこで、いままでは地方債計画の中で高等学校の建設費というものは明示されてこなかったわけでございます。一般の単独事業のワクの中で適宜許可されてきたわけでございます。しかし、今回はそのワクの中で六十億円というものを取り上げてもらった。言いかえれば、文部省が三十億円の二分の一補助ということを要求しておったわけでございますので、その二倍の六十億円を明示していただくということにしたわけでございます。もとよりこれだけで全部まかなえるとは思っておりませんで、地方債計画の運用にあたりましても弾力的な運用をしてもらうように自治省にもお願いしておりますし、そういうつもりもあるわけでございます。同時にまた、税収入なり地方交付税交付金なりの財源もあるわけでございます。そういうような方向をとらせていただいたということでございます。
  216. 平田藤吉

    平田分科員 いま奥野文部大臣そう言われますが、実際にはワクはいままではきまってなかったのだ。しかし、実態を見ると、四十七年、四十八年度は事実上大体二百億円のワクをとっているわけですね。そのうちに新設高校に対してはやはり六十億円とっているのですよ、ワクをきめてなくったって。ですから、そういう意味では、新たなものをつけたように言われますけれども、事実上いままでやられてきたものを、六十億円をワクとして踏襲してとったというにしかすぎないというふうに思うのですよ。しかも、繰り越し分についてはワクに入らないのですね。こういう状況なのだが、高校実態について明らかにしていきたいと思うのです。  そういう意味で自治省に質問したいと思うのですけれども、四十七年、四十八年度の高校建設の全国的な実績はどうなっているかということについてひとつお答え願いたい。  それから、四十九年度、五十年度の高校新設計画はどうなっているか、これが第二点。  それから、四十九年度の大阪の計画はどうなっているか、第三点としてこのこと。  それから第四点として、大阪の場合一校当たり建設費は幾らくらいになるのかということです。  この、以上の点についてまずお聞かせいただきたいと思います。
  217. 森岡敞

    ○森岡政府委員 高等学校の建設の実績というお話でございますが、実は私どものほうは、決算上は高等学校の新増築あるいは改築、用地買収、そういうふうなものが全部一括になっておりますので、なかなかそれを分類することが困難でございます。したがいまして、起債の実績を申し上げたいと思いますが……
  218. 平田藤吉

    平田分科員 だめですよ、聞いてないことを言っている。起債を聞いているのじゃないのです。全国の建設計画、四十七年、四十八年はどうなっているか、四十九年度はどうなっているか、大阪の四十九年度の計画はどうなっているか、大阪の一校当たりの建設費は幾らなのかということを聞いておるのです。
  219. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 公立高等学校の新設計画でございますが、昨年六月の調査によりますと、昭和四十九年度が六十五校、昭和五十年度が三十九校でございます。  それから、大阪府の四十九年度の新設計画は十三校でございます。  それから、大阪で一校幾らかというお尋ねでございますが、実はその該当する数字は持っておりません。
  220. 平田藤吉

    平田分科員 私のほうの調査で、これはこの前大阪から七十億円何とかしてくれぬかということで来ておりますね、それで大阪で十三校で、あそこの場合はとにかくどうにもならぬというので、規模が二千人規模で計画を組んでいるわけですね。二千人規模ですと、大体一校について全体で三十億ないし三十五億かかるのです。十三校といいますと、これはたいへんでしょう。ですから、文部大臣の言う六十億のワクではこれはとても間に合いませんから。それでまあ、この文部大臣のはあとでまた質問します。  あわせて聞いておきたいのは、人口急増県である埼玉の四十九年度の建設計画、これは何校になっていて、一校当たり幾らかかるようになっているか。
  221. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 埼玉の四十九年度の新設計画は八校でございますが、埼玉県の一校幾らかということは手元に数字がございません。
  222. 平田藤吉

    平田分科員 これは埼玉県の一校当たりの計画でいいますと、県庁のほうで調べてもらったわけでありますけれども、校舎建設費に九億二千万、それから体育館建設費に一億二千万、合わせて十億四千万かかることになるのです。ですから、四十九年に八校新設ということになりますと年に二十八億円、これは御承知のようにだんだんつくっていくという事情もありまして、それだけ必要になるわけですよ。こういう状況なんですね。  そこで文部大臣に質問したいわけですけれども、いま聞いただけでも事態はたいへん重大だ、深刻だというふうに思うのです。高校建設の場合、一ぺんにつくれませんので、財政上の諸困難もありましてね、まず一学年分をつくって、そして二年、三年とつくっていくというつくり方をしておりますけれども、いまの説明によりますと、さっきもちょっと触れましたように、三カ年計画で建てたとしても、大阪だけで六十億円は突破するのですね。ですから、言うまでもないことだけれども、六十億では全国の実情から見て焼け石に水じゃないのか。いま最も急がれている高校の急増対策、これがこの数字ではとても問題にならないのじゃないか。不足する分に対してどうされるつもりか、まず文部大臣にお伺いしたい。
  223. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ちょっと前に、私から先ほどの答弁を補足して申し上げたいと思います。  私どもの計算でございますと、標準規模を一応十八学級といたしまして、建物の建築費が約四億三千万程度でございます。これを学年進行で整備をするという考え方をとっております。かつまたこれは起債でございますから、御承知のとおり充当率というものもあるわけでございます。したがいまして、六十億が全部だ、それで一挙にできるのだというような、そういう計画で数字ができておるわけではございませんので、それはひとつ御理解いただきたいと思います。
  224. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 今度地方債計画の中で新しい試みをしていただいた。それは人口の急増してくるところ、いま御指摘になりましたような大阪とか玉とか神奈川といったところでございますけれども、一挙にたくさんな公立高等学校をつくらなければならなくなってきた。その事態に対応してどういう財政措置をとるか。そこで地方債計画の中でそういう場合の高校の新設経費を、特にその費目を明記して特掲してもらいたい、これが実ったわけでございます。この中には土地の購入資金は入っていないわけでございます。また一般の場合の改築の費用も入っていないわけでございます。いま申し上げますような地区における新設の経費これを計上していただいわけでございます。土地はおそらくばく大なものにのぼると思います。四十九年度も相当なものにのぼると思います。そういう地方債の資金は自治省のほうで別途考えていただいておるわけでございます。
  225. 平田藤吉

    平田分科員 別途自治省のほうで考えるというのは、文部大臣のほうは、これは六十億では当然足りないということは御存じのとおりだ。それから起債のワクだけではとても間に合わない、何とかしなければならぬというふうにお考えになっておることもわかるわけですよ。ですから、ワクを別に何とかしてもらうのだ、それは自治省のほうで考えてもらうのだということでは済まないのじゃないかというふうに思うのですよ。つまり、文部省としては六十億とったのだから、あとは自治省のほうでいろいろなワクを考えてもらうのだということでは済まないのじゃないか。これでは責任ある態度とは言えないのじゃないかと思うのだけれども、そこのところをひとつはっきりさせておいていただきたいというふうに思うのですね。
  226. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そういうこともあって、おそらく先ほど森岡審議官のほうでこれまでの地方債の内容を説明しようとされて、おとめになったのじゃないかと思うのです。従来は土地、これはまた、こういうところの土地の費用は非常に高いものでございますので、ばく大な金が要るわけでございます。同時に、こういう団体につきましては、資金を借りる力はあるわけでございますので、地方債計画に計上したもの以外に縁故の資金を利用する。そういうものにつきましては、大体土地に関します限りは団体の希望をそのとおり認めるという方向を自治省でもとってきているわけでございます。そういうことでございますので、私としては安心しているということでございます。
  227. 平田藤吉

    平田分科員 大臣、縁故債その他でもってめんどう見るからだいじょうぶなんだというふうに言われますが、実際に高校建設で六十億のワクでは話にならないのですよ。しかも、御承知のように縁故債と政府債との関係では、利子の問題その他でもってやはりたいへん違いが出るわけですよ。ですから、私はこの六十億のワクをやはり大きくしていくという努力が必要なんじゃないかと思う。いまの実態から見たら、六十億というのは問題にならないのじゃないか。そういう意味でワクを大幅にふやすべきだというふうに言っておるわけですよ。ですから、いやそれは自治省のほうで、ほかのいろいろな縁故債その他のワクでもってとるからいいのだというような問題の立て方をされたのでは、それは逃げだと思うのですね。そこのところをはっきりさしておいてください。
  228. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 今度の高校増設、それに対応して自治省では地方財政計画をつくっておるわけでございまして、その基礎になるものにつきましては、文部省で各団体の金額をとって、それを自治省のほうにお願いしているわけでございます。今後の問題としましては、建築単価がそれでいいのかどうかという問題もおそらく出てくるだろうと思います。そういう問題もございますし、また今後税収入が個々の団体にどう増収になっていくか、これともあわせて考えていかなければなりませんので、現実に公立の高等学校を、地方団体が建設したいと思われているものが建つように、財政上のめんどうを私どもでも、自治省と相談をしながら努力していきたいと思います。六十億計上になったからそれでもうあとは知らないのだというような気持ちは当然持つべきではございませんし、また持っておりません。
  229. 平田藤吉

    平田分科員 文部省としては、六十億のワクというのは広げるつもりはないのですか。
  230. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 地方債だけで建設するわけでもございませんし、また地方債も六十億だけじゃございません。いま申し上げたものが六十億ということでございます。今後とも推移を見ながら適正になるように努力をさしていただきます。
  231. 平田藤吉

    平田分科員 自治省のほうでは、いま文部大臣が言われたように、文部大臣が六十億のワクと言われたそのワク外で大幅に起債をつけていくということを考えておられるのですか。
  232. 森岡敞

    ○森岡政府委員 先ほど来お話が出ておりますように、高等学校の建設につきまして、用地費の問題、これはかなり金額がかかりますが、これにつきましては、公共用地の先行取得債でありますとか水田債、その他いろいろ活用いたしまして、原則として用地費が確保できるような地方債措置を従来も講じてまいりましたし、今後もやっていきたい。  建設費につきましては、文部省から強い御要請がございまして、いままで一般単独事業の内訳としてつくっていなかった高校急増対策ということで、新たに六十億円の基礎を積算したわけでございます。したがいまして、これは一般の改築などとは区分いたしまして、急増地域のみを対象とした措置を講じていきたい、かように考えております。  それからいま一方、明年度地方税なり地方交付税、一般財源がかなり伸びるという見込みを現在立てております。当然法人関係税の増もあるわけでございます。大都市周辺の府県には法人事業税等の増収もあるわけでございますが、そういうふうなものもいろいろ勘案いたしまして地方債の配分を考えていきたい。私どもといたしましては、六十億活用いたしますればかなり適切な措置ができると思いますけれども、一般財源の状況とも見合わせながら、必要に応じてまたワクの弾力的な運用を考えていきたい、かように思っているわけであります。
  233. 平田藤吉

    平田分科員 それでは、自治省のほうでは必要なだけのものはつけるというふうに理解していいのですね。とにかく建設の数が相当数にのぼっていますので、とても足りぬということで問題になっているわけですから、あなたのほうが大幅につけますというのならそれはそれで理解しておきましょう。
  234. 森岡敞

    ○森岡政府委員 地方交付税の中でも、基準財政需要額に高等学校費を、建設費を中心にいたしまして投資的経費を相当算入いたしております。かたがた、また、いま申しましたように実質的に各府県の財政収入の伸びもかなり期待できるわけでありますので、そういう一般財源の伸びと見合いながら起債の配分をしていきたい。一般財源が相当伸びます場合には、こういう時期でございますので、まさに高校急増のような待ったなしの施策に思い切って一般財源を重点的に配分する、こういうことを府県としてもやっていただきたいと私ども思うわけでございます。それとあわせて地方債の重点的な配分をしていく、こういうことでございます。
  235. 平田藤吉

    平田分科員 高校実態文部大臣も御承知なんだろうと思うけれども、実際、考えてもらわなければならないと思いますのは、埼玉県の場合に、中学卒業者数というのは、四十七年が四万八千人なんですね。そして四十九年になりますとこれが五万三千人になるわけです。こういう状態でふえていくわけです。いままでが建設をぐんと押えてきているものですから、どうにも間に合わない。新聞によっても、埼玉県から東京の高校へ通学しなければならないということが大問題になっているわけですね。一万人も行っている状態です。ですから、大急ぎでとにかく高校を建設しなければならないという状態が埼玉県の実情だと思うのです。こういう状況の上に立ってみても、いま文部大臣の言われる、六十億のワクでもって何とかやり繰りをして、あとは自治省でやってもらえばいいんだというようなことでは追っつかない。  ちなみに、東京の場合、高校への進学率を見ますと、中学卒業者の九六・九%、神奈川の場合に九四・四%、これが四十八年度です。大阪の場合でも九三・二%というふうになっているわけです。埼玉の場合で、進学率でいえば九一・八%、こういう数に達しているわけです。さらに四十九年は、埼玉の場合九三・八%になり、五十二年には九五%になる。文字どおり、中学卒業者の大部分が高校入学するというのが実情なんですね。これに対応してこたえていかなければならぬという責任があるんではないかというように思うのです。  そういう意味でもう一度ひとつ大臣見解、つまり、いまの人口急増地域の県が非常に困難にぶつかっているという実情との関係で、また、もう三十億つけようとしたけれどもこれは折衝段階でもって削られてしまったというようにいわれていることに見られるように、絶対足りぬ、どうにもならぬという事態にあることはあなた自身も認めているんだと思うのですよ。だとすれば、それに対応して対処していくのが当然だというふうに思うのです。そこでもう一度、四十九年度分に補助金をつけるべきだというふうに思うのだけれどもどうかということについてお答えいただきたい。
  236. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまおあげになりましたような府県においては、高等学校を急増設しなければならない。その急増設の当該団体の財政に及ぼす影響、たいへん大きなものがある、かように考えておるわけでございます。またそういうことを踏まえて地方財政の運用を自治省のほうでも考えておられる。したがってまた、地方交付税法の基準財政需要額をきめます場合にも、そういうことに要する財源も織り込まれておるのでございます。ただ地方債だけでまかなうのじゃございませんで、地方債の資金でありますとか、あるいはまた地方交付税交付金でありますとか、あるいは地方税収入でありますとか、要するに総体的にそれらの高校急増の経費が調達されるということでなければならない、かように考えておるわけでございます。  また、そういう事態でございますので、四十九年度の国の予算編成にあたっては何らかの措置をとりたいというようなことで、国庫補助金の要求も考えたわけでございますけれども、最終的には地方債計画の中でそういう経費を特掲してもらうということで落ちついたわけでございます。  これはいろいろな考え方があるのですけれども、私は、高等学校というのは、大体その県内の住民の子弟がその県内の高等学校に通うのが普通だろうと思うのです。したがって、いまのように地方団体が責任を負うたてまえ、十分な論議は地方団体の議会で繰り返してもらう。国としては全体の財源を心配していけばいいんじゃないだろうか。個々の団体について何校建てる、金の幾らを持つんだというようなことで、手かせ足かせをはめるような結果にならないようにしたほうがいいんじゃないだろうか、こういう気持ちが私には抜け切らないのでございます。  そういう意味で、国庫補助金制度よりも、地方債計画の中でそういうワクを特掲したほうが実態に合うんじゃないだろうか。あくまでも地方団体の責任のもとにおいて何校つくるかということを決定してもらう。補助金ということになりますと、国が補助金を何校分くれるのかということで、各団体の増設する校数が制約を受けるわけでございます。そうすると、足りる、足りない、その責任は地方団体にあるのか、国にあるのかというようなことになったりするわけでございます。したがいまして、従来地方団体の責任のもとに高校が建設され、運営されてまいりましたから、今後もそれでいきたい。しかし必要な資金は確保しなければなりませんので、この際としては、地方交付税制度のほかに、地方債計画の中でも明記してもらうようにしたいということにしたわけでございます。十分な協力ができますように、今後も努力をしていきたいと思います。
  237. 平田藤吉

    平田分科員 それじゃ、自治大臣は来ておられないのであなたでいいですが、自治省のほうにお聞きしますけれども、「昭和四十九年度の地方財政措置について」の中で次のようにいっているんですね。「過密地域における既成市街地の都市環境の悪化および都市機能の低下に対処するため、都市再開発事業および都市施設、生活環境施設、教育施設等の整備事業に要する経費について、国の財政措置を充実強化されたいこと。とくに、人口急増地域においては、公共施設の急速な整備が要請されていることにかんがみ、義務教育施設の建設事業、幼稚園、高等学校、保育所等の建設事業、」など「整備事業等に対する国庫補助負担制度の拡充をはかられたいこと。」というように自治省のほうではいわれているわけですね。  今日の高校建設の実態に照らせば、当然五十年度には必要な措置をとらなければならないはずだけれども、どう対処されようとするのか。いままでのようなやり方ではとても間に合わないというのが実態であり、自治省もそのことを認めているわけですから、それに対応するような措置をとるべきだというふうに考えます。今年度はたとえば文部大臣のほうから三十億請求されたけれども、これは削られた。じゃ、今年度どうしてもそれが復活できないとすれば、来年度はそれを復活させて、当然要求して、三分の一以上の補助を出すというような措置をとるべきだと思うけれども、その点どうお考えか、自治省と文部大臣のほうにお伺いしたいと思います。
  238. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほども申し上げましたように、高校の建設に対しまして国から補助金を交付する、そういう補助制度をとることについては一長一短があるわけでございます。本会議におきましてもその一長一短の理由を申し上げましたし、いまもちょっと申し上げたわけでございます。したがいまして五十年度、やはり四十九年度と同じように補助金を要求するか要求しないかは、これはよく検討した上で決定させていただきたいと思います。
  239. 平田藤吉

    平田分科員 大臣は、一長一短があるというふうに言われていますけれども、何が一長一短なのか、わからないんですよ。いま、たとえば埼玉の人口急増というのはだれがっくり出したのですか、自民党の代々の政府が人口急増地帯をつくり出していったんですからね。これは政府が責任を負うのがあたりまえだと思うんですよ。しかも、建設計画については、たとえば埼玉県の畑県知事は、五カ年間で三十校建設する、そのために努力するということまできちっと出しているのですから、それに対応して補助を出していくようにすべきなんですよ。それに対応しているんだったら、何も一長一短なんかありやしないと思うんですよ。何が一長一短なのか。つまり、あなたのところは何校つくれと政府から地方に対して言っていったんじゃぐあいが悪い、そういうことで政府からそれを言わない、それはそれでいいですよ。しかし各県が建設する計画を立てたら、それに対して補助を大胆に出していくという措置をとるのはあたりまえじゃないかというふうに考えるわけですよ。その点じゃ何も一長一短なんてないじゃないかというふうに思うのですが、どうなんですか。
  240. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御承知のように、国民の税金を使っていきますのにも、中央政府、府県政府、市町村政府があるわけでございます。どこがその責任を負うか、その責任の所在のところへ国民の拠出される財源が振り向けられればいい。ですから、埼玉県に高校急増に要する財源、これは当然それ相応に振り向けられなければならないと思います。振り向け方についていろいろな考え方があります、こう申し上げておるわけであります。国庫補助金を交付する行き方もあるし、あるいはまたそれだけの所要財源を見込んで埼玉県の基準財政需要額を算入する、税収入が足りなければ差額が地方交付税交付金として交付されていくという行き方もあるわけでございます。いろいろな財政上の仕組みがあるわけでございますので、補助金制度がいいと一がいにはきめられない、それはそれなりに弊害もあるということをわきまえたい、こういうことを言っているわけでございます。
  241. 平田藤吉

    平田分科員 とにかく、さっきも申し上げたように、各県が計画を持っているわけですから、それに対して政府が三分の一なりあるいは四分の二なり持ってやるというような措置をとっていくことが大事なんですよ。そういうふうに制度的に保障していく努力をすることが大事だと思うのです。しかも今日では義務教育に準ずる状態でしょう。ほとんどの子供が高校へ行くという状態になっているのですから、これは政府が見るのは当然だろうと思う。このことについては、高校建設に対する補助金をもらいたいということについては、全国知事会でも要求をちゃんと出しているのです。このことはあなたも御承知のとおりだろうと思うのですね。ですから私は、とにかくこの要求にこたえて積極的な努力をすべきだ、いままでどおりのような行き方を改めるべきだというふうに考えるのです。  最後に申し上げておきたいんですけれども、田中内閣は依然として列島改造に基づく超高度成長政策を続けようとしているわけです。あなたの話によれば、国民の税金を使うんだからいろいろ考えなければならぬのだというようなことを言っていますけれども、たとえば高速自動車道の建設を中心にする第七次道路整備五カ年計画を見ただけでも、何と驚くことに十九兆八千億円ものばく大な金をそっちには回すことになっているのですよ。高校建設のための補助だという金をばちっと出してやって悪いことはどこにあるんだ。こうした、いま言ったような大企業本位の政策を改めて、私は高校建設費などに思い切って予算を回してもらいたいということを、また当然回すべきだということを要求しまして、私の質問を終わります。
  242. 藤井勝志

  243. 坂口力

    坂口分科員 きょうは、海外に長期滞在をする在外邦人の子女教育の問題につきまして触れたいと思います。  海外に行かれます日本の方は年々歳々多くなってきておるのは御存じのとおりでございます。昨年海外に行きましたときにも、在外邦人の方々から教育の面で充実してほしいといういろいろの御要望が出まして、私も実情を見せていただいてまいりました。異質な社会環境の中で、在外邦人の方の悩みというのはわれわれの想像を絶するものがあるように思うのでございます。七十一国会におきましても、外務委員会で海外子女教育等に関する小委員会というのがつくられまして、その中でもいろいろと議論をされ、結論は出されているようでございますが、文部省としても、この問題はやはり真剣に取り組んでいただかなければならない問題だと思うわけでございます。  そこで、まず伺っておきたいのは、海外勤務者の子女に対する教育施策の基本的な姿勢について、まず基本的なところから少しお話しをいただきたいと思います。
  244. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 在外日本人の子弟の教育につきましては、外国において行なわれる教育につきましても、また子女が日本に帰ってまいりましてからの教育につきましても、特別な配慮を加えませんと十全を期することができない、かように考えているわけでございます。そういう意味におきまして、外国における教育の場合には、外国の主権との関係もございますけれどもあとう限り、国内において教育を受けられる場合に準じた処遇を行なうように努力をしていくべきものだ、かように考えます。同時に、在外勤務から帰ってこられた場合の子女の教育につきましては、特別な弾力ある措置でこれを迎え入れませんと、なかなか普通では直ちに日本の子女と同じように教育を受けることが困難だと思います。そういう意味では特別な学級を増設していかなければならないだろう、かようなことで努力しているところでございます。
  245. 坂口力

    坂口分科員 基本的には、国内の教育においてもそうでございますが、地域による格差というものがあってはならない。それは外国に行っている邦人の方に対しても同じことでありまして、やはり教育環境、教育内容というものにあまり格差があってはならない。これは格差是正の方向に努力を重ねていかなければならないと思うわけでございます。現在の状態を見せていただきますと、かなりな格差のあることも事実でございます。     〔主査退席、奥田主査代理着席〕 今年度の予算等を見せていただきますと、昨年に比べますと若干前進はしているようでございますが、しかしまだまだの感が深いわけでございます。四十九年度予算で全日制の日本学校四校、補習校二校、それぞれふやすようになっているようでございますが、これはどこの国に設置するようになっておるのか、ひとつお伺いいたします。
  246. 清水成之

    ○清水政府委員 日本学校につきましては、外務省と相談いたしまして、アテネ、ペナン、サンホセ、パナマ、この四校が全日制でございます。それから補習校につきましては、先ほどお話がございましたが、教員等の専任派遣につきまして、ニューヨーク、ワシントン、ロンドン等に新規に教員を派遣したい、こういう計画でございます。
  247. 坂口力

    坂口分科員 大臣、基本的なことでございますが、文部省としては、海外子女教育に対して日本学校をつくっていったほうがいいというふうにお考えか、それとも、それぞれの国の学校あるいはまたアメリカ等の英語で話す学校、そういったところに入れて補習でそのところを補っていったほうがいいとお考えになるのか、その辺のところは文部省としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  248. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 それぞれの国の政府がどういう態度をとられるかということによりまして、日本側の考え方では進まないようでございまして、私個人としては、現地に学校を建てる、そこで向こうの方々と一緒に日本人の子弟も勉強していくという姿でいくのが望ましいなという希望を持っているわけでございます。そういう希望を言いましたら、そういうことを言うと他国の政府から非常な反発を受けるところがあるんですよという御注意を受けたところもございました。しかし、基本的にはそういう姿でよい学校をつくる、また向こうの方々も進んでそこへ入りたがって、来るというようなことで、ほんとうの交流が行なわれるということになってくると教育内容も高まるのじゃないかな、こんな希望を持っているところでございます。しかし、土地の事情によって全く態度は異にせざるを得ないようでございます。
  249. 坂口力

    坂口分科員 いま大臣がおっしゃったのは、日本だけの意思ではいかない、その国その国の考え方というものもあるし、また日本からそこに行かれた人々の考え方というものもある、こういうことだろうと思うわけでございますが、そういたしますと、いわゆる日本学校というものと、それからいわゆる補習校というものとは、これは両方とも非常に大事なウエートを占めてくるというふうに思うわけでございます。この数字を見せていただいても、これは文化庁からいただいた数字でございますが、全日制の日本学校の児童生徒数は四十八年十月一日現在で三千六百六十六人、こういうことになっております。それから補習授業校の児童生徒数、これは小学校、中学校合計で三千七百六十六人と、かなり補習校の生徒さんも多いわけでございます。この全日制の場合と補習校とが大体よく似た数字で、多い、こうなっておりますと、全日制の学校にはある程度の予算を組んでやるけれども、補習校に対してはいままであまりやられていない。四十九年度の予算を見せていただきましたが、この日本学校等教材整備という中には、補習校に対しても少しは含まれているわけでございますか。
  250. 清水成之

    ○清水政府委員 四十八年度におきましては、補習授業関係はそこに入っておりません。四十九年度から新規でございます。
  251. 坂口力

    坂口分科員 この四十九年度四千三百七十二万四千円ですか、日本学校等教材整備委託というのがございますが、この中に補習授業校の分というのはどのぐらいございますか。
  252. 清水成之

    ○清水政府委員 補習授業校の分が四百三万六千円でございます。その中身につきましては、教師用指導書と一般教材、これが一つ。それからもう一つ、補習授業校等の巡回指導班の派遣というので千七百十九万九千円、こういうことでございます。
  253. 坂口力

    坂口分科員 いま御説明があったように、教材整備一つにしましても、生徒数としては大体同じぐらいな数があるにもかかわらず、補習授業を受けているほうはずいぶん少ないわけでございます。これは全日制のほうも決して余っている数字じゃないと思います。たとえば教科書代にしましても、私のほうの試算でございますが、一人当たりにしますと、四十八年度は千五十円に対しまして、四十九年度が千百七十円と、一人の割りにすると百二十円ぐらいのアップになっているだけでございます。はたしてこれでやっていけるかどうかということもございます。そして教科書だけじゃございません、ほかのいろいろの整備等にも要るのであろうと思いますが、かなりな地元の人の負担においてこの海外の問題が成り立っていることは事実だと思うのです。特にこの補習授業等につきましてはさらにひどい状態になっている。この辺のところ――外務省のほうお見えでございますか。外務省のほうはどういうふうにごらんになっておりますか。
  254. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 補習校につきましては、先ほど文部省のほうから予算の御説明ございましたが、外務省といたしましては先生関係を受け持っておりますので申し上げますと、前年度、四十八年度は二千二百十七万六千円でございましたのが、これが一挙五倍になりまして、四十九年度は、いま国会で御審議願っておりますのは一億一千百十二万九千円でございます。考え方といたしましては、全日制のほうはこれは一〇〇%全日制の教育に依存しているということでございますので、従来われわれはこれに非常に力を入れておったことは事実でございます。それに反しまして補習校のほうは、週に一回、土曜日に、日本に帰ってすぐ困るであろうと思われる算数と国語が大体主体でございます。ほかの科目はあまりやっておりません。そういうことで週に一回、二時間か三時間ぐらいやるということでございますので、勢いわれわれは全日制のほうに力を入れてきたわけでございますけれども、昨年あたりから、先ほど御指摘がありましたように、補習校にもぜひ力を入れてくれという強い要望がありまして、われわれのほうもこれに何とかこたえなければいかぬということで、まず考えましたのが、やはり補習校の中で一番経費の負担の大きいのは先生の経費でございます。  したがいまして、来年度の予算におきましては、従来は補習校の先生の定数の半分に対しまして月七十五ドル、これだけ補助をしておったものを、来年度からは全員に対しまして月百ドル補助をするということにいたしましたために、先生の経費は一挙に四倍近くふえたわけでございます。  それともう一つは、小さい補習校は別でございますけれども、大きな補習校では、先生関係からいいますと、一週一回の授業でございますから、従来現地におります先生の資格を持った人、それから資格を持って経験したことがある人、こういう適当な方を選びましてそれでやっておったわけでございますけれども、やはりニューヨークとかロンドンとか、学校の規模の大きなところになりますと、やはり学校の管理の問題が一つあります。それからそういう先生指導の問題もあるということで、現地からの要望もございまして、来年度は、たしかニューヨーク、ワシントン、ロンドン、それからハンブルグだったと思いますが、全部で六人の日本から現役の先生を派遣いたしまして、これらの学校指導させるということにしたわけでございます。  したがいまして、こういう形で補習校の経費もだんだん負担が少なくなりますし、同時に内容的にも充実した教育ができるのではないか、このように思っております。
  255. 坂口力

    坂口分科員 先ほど文部大臣もおっしゃったように、日本側だけの意向ではきまらない問題である。それぞれの国の意向も聞かなければならないし、現地に行っている人々の意向もある。そういうふうな中で、全日制にしましても、またあるいは補習校にしましてもやっていかなければならないわけでございますが、特に補習校の場合には、好むと好まざるとにかかわらずそうならざるを得ないような環境のところもあろうかと思います。月百ドルということを言われましたが、そうしますと、これで平均しまして向こうの人たちが実際に雇って払っているのは一人大体幾らぐらい払っているわけですか。わかりますか。わかっておったらひとつ御答弁願いたいと思います。
  256. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 私、いまちょっと記憶が確かではございませんが、一月当たり三千円ぐらいではないかと思います。従来払っておりましたのは三、四千円じゃないかと思います。
  257. 坂口力

    坂口分科員 一人の先生にですよ。
  258. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 一人の先生にですか。――給料はどれだけ払っておるか、ちょっと私、資料を持っておりません。
  259. 坂口力

    坂口分科員 そういたしますと、一応今年からは補習校の先生についても給料をある程度、全額とはいかないと思いますが、その何割になるかちょっとわかりませんが、一人について月百ドルずつ出す、こういうことでございますね。  それから、やはり先生の質というものがかなり問題になっている。そういう意味では、全日制の場合には日本から派遣という形になるのだろうと思いますが、やはり補習校の場合にも今後日本から派遣ということを考えておいでになりますかどうか、それが一点でございます。まずそれからお聞きいたしましょう。
  260. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 日本から派遣ができますればきわめて望ましいわけでありますが、現実の問題といたしまして、全日制と補習校、両方やっておるわけでございまして、まず全日制のほうの先生をどんどんふやしていかなければならない、こういう実情でございます。したがいまして、さしあたりは全日制に力を注がざるを得ませんが、先ほど申し上げましたように、補習校は一週一回でございますのと、それから現地でできる限りいい先生を選ぶということと、さっき申し上げました日本から派遣する先生、この三つをかみ合わせまして、何とか内容を充実していきたいというのが現在のわれわれの考えでございます。もちろん御指摘のような、日本から派遣できるようなことができますればこれに越したことはございませんけれども、ただ、いま申し上げましたように、一週間フルに授業をやる学校とそれから週に一日授業をやる学校といいますと、どうしてもフルに授業をやる学校のほうにさしあたりは力を注いでいく、かたがた予算の許す範囲内において補習校のほうも強化していきたい、これがわれわれの現在の考えでございます。
  261. 坂口力

    坂口分科員 この補習の問題でございますけれども、やはりこれは補習校の内容についてもある程度オリエンテーションをはっきりさせておかなければならないと思うわけです。現地まかせ、そして雇ったその先生まかせという形では、これはやはりぐあいが悪いと思うのですが、文部省としてこの補習校に対する何か指導みたいなものはいままでやっておみえになったのでしょうか。今度派遣をなさって、わずかな期間だけれども各国を回るということになる、それがどれだけの効果があるかわかりませんが、いままでなかったことよりはましだとは思いますが、いままではいかがでございましたか。
  262. 清水成之

    ○清水政府委員 文部省が直接行っておったということはございません。ただし、日本学校、補習学校合わせまして、海外子女教育財団等のほうの協力でこちらから専門官を派遣して、指導に回っておったという実績はございます。
  263. 坂口力

    坂口分科員 やはり補習授業のオリエンテーションもはっきりしておかなければならないと思うのです。週に一ぺんくらいのところもたくさんあるということをおっしゃいますが、しかし、たとえばここにウイーンならウイーンがございます。そこで生徒数が、これを見ますと三十四名ございます。講師数は三ということになっております。ここで何回補習がやられておるかわかりませんが、これをたとえば一日やるということになりますと、おそらく小学校の一年生から中学校の三年生まで同じに集めて、そしてやるというような形になるだろうと思う。まあ、数はこれはばらばらになりますけれども、たとえば小学校の低学年それから高学年、それから中学校と、少なくとも三段階くらいには分けてその補習授業をやるというようなことは、これはどうしても考えていかなければならないことじゃないかと思う。そうしますと、一日にまとめてという形でなしに、やはり一週間のうちに日なら日をきめて、この日は低学年とか、あるいはこの日は高学年とかいうふうな行き方も今後考えなければならない。そうしますと、補習校だからといって、これは週一日でそれでいいのだといういままでのやり方だから一日でよかったけれども、もっと補習校というものを見直して真剣に取り組んだら、これは一日では済まぬようになるのではないかと私は思う。これは、海外に出て、それこそ日本の国内におけるのとは想像もつかないような環境の中で仕事をしておみえになる方々の子弟を教育していくということですから、これは日本の国内におけるよりもさらに一そう進んだ形で、やはり各省とも取り組んでいただかなければならないと思うわけです。そういう意味で、これはいままでよりも積極的な補習校に対する先生の派遣の問題、それから、その派遣をしますときには、何か全日制の場合にもこちらを休業にしてまで行かれる方もあるということを聞いておりますが、これなんかもどうしてもゼロにしてもらわなければならないというふうに思うわけです。それから、補習校に対する援助も、現在この四十九年度予算に出されたのではあまりにも少な過ぎる。これは今後さらに検討をしてもらわなければならない。  それから、この全日制の日本学校の在籍者が四十九年度、まあこれは推計でございますが、約四千人と承りました。そして補習授業の在校生も約四千人くらいになるだろうと承りました。全体で一万四千人くらいになるのですから、そうしますと残り六千人くらいになりますか、六千人くらいは全日制の学校にも行っていない、補習校にも行っていないという方があるわけでございます。そうすると、この方は一応その外国のその地域の学校に行っておみえになる、こういうふうに理解していいわけでございますか。
  264. 清水成之

    ○清水政府委員 ただいまの件でございますが、御指摘のとおり現地の学校だけに行っておる者もございますし、また中には、遠隔地等で、現地の学校がなかなかないというようなところにつきましては現地の学校に入れない、こういうような実情の者もおろうかと思います。  なお、これらにつきましては四十九年度、私どもといたしましては、海外子女の問題につきまして実態調査を外務省ともどもやって、そしてそれらの実態を的確に把握したい、かように考えております。
  265. 坂口力

    坂口分科員 この問題はこれで締めくくらせてもらいたいと思いますが、文部大臣にひとつ積極的にこれは取り組んでいただきたいと思うのです。これは皆さん方のほうもたいへん関係のあることでございますし、皆さん方のほうに関係があるからといって申し上げるわけではございませんが、これは現地のお方は、大使館等の方でもかなり御苦労なすっておる方がございます。言ってみれば、お子さんを犠牲にしてということばが当てはまるようなお話も多々聞いております。ですから、これはさらに前進的にこの問題にひとつお取り組みいただきたい。御決意のほどを伺って、あと一問だけお聞きいたしたいと思います。
  266. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私もたいへん重要な問題だと考えておるわけでございます。そういう気持ちで、大平外務大臣に対しまして、外務、文部両省で具体的にこの問題を詰めさせようではありませんかという提案もいたしました。そういうことで打ち合わせをしてもいただいたわけでございますけれども、引き続いて充実に向かって両省話し合いをしながら努力をし、よい成果を生み出すようにしたいと思います。
  267. 坂口力

    坂口分科員 この補習校のことをきょうは中心に取り上げましたが、補習校の先生についても全日制同様のレベルでお考えをいただいて、積極的な対策をひとつお立てをいただきたいと思います。  その問題は一応締めくくりまして、もう一つだけお聞きをいたしたいと思いますが、これは全く違った問題でございますけれども、最近小学校、中学校、まあ高等学校も含めてでございますけれども、近視の児童生徒の方が非常に多くなっております。小学校ですと十人に一人ぐらいな割りでありますが、中学校になりますと五人に一人かあるいは四人に一人かというくらいな数字が統計上は出ております。また高等学校になりますと、これは三人に一人ぐらいな割りで近視だというような結果が出ております。だんだん、年々歳々この数字がふえてきている傾向もございますしいたしますので、これは学校としてもほうっておけない一つの大きな問題だというふうに思います。このことにつきまして、特にどうこれを防いでいくかという、予防対策上の問題にこれはなろうかと思いますが、その点、簡単にひとつお答えをいただきたいと思います。
  268. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 いま御指摘のように、児童生徒の近視が戦後年々ふえてまいりまして、ただ昭和四十四年を一応のピークといたしまして、四十五年から昨年まで横ばいになり、減少の傾向になっております。それにいたしましても高等学校等はかなり多くの近視の生徒がおります。  この近視の原因につきましてはいろいろな説があるわけでございます。あるいは遺伝、あるいは近業といいますか、あるいは生活環境が適当でない、あるいは身体虚弱、いろいろいわれておりますが、一般的には、近業をするということ、あるいは照明が不適当である、あるいは姿勢が悪い、それから目に適当な休養を与えないといったようなことが原因とされております。  予防といたしましては、一つは、からだを強健にする、栄養を十分とるとか、戸外でよく運動をするとか、睡眠、休養を十分にとる、あるいは目の過労を防ぐ、適当な休養を目に与える、それから読書とか精密な作業、そういったものにつきましては適当な時間に休みまして適宜休養を与える、あるいは採光、照明に十分注意する、あるいは学習の際の姿勢を正しくする、あるいは辞書その他印刷物の選択に注意する、あるいは視力検査を定期的に受ける、それから近視等になった場合はできるだけすみやかに適切なめがねをかけるというようなことがいわれておるわけでございますが、そういうようなことで、まず学校における生活あるいは自宅における生活等につきましてのそういった面の教育活動が非常に重要でございます。  それから、学校におきます的確なる健康診断が重要でございますので、昭和四十二年から交付税に、一般の医師のほかに眼科医につきましても各学校学校医を置くような積算をしていただくとか、昨年健康診断のことを改正いたしましたが、近視につきましても健康診断の際の一そうの改善をはかっております。それから学校の照明あるいは机、いすにつきまして学校環境衛生基準をつくりまして、学校生活そのものの適正な基準をきめるといったようなことをやっておるわけであります。
  269. 坂口力

    坂口分科員 時間がございませんので、きょうはこの問題をもうさらに突っ込んですることはやめにいたしますが、いまお述べになったことはそれぞれ大事なことだと思いますが、それが現在どういうふうな形で保健体育の教科の中に組み入れられているかということを私はお聞きしたかったのです。おあげいただきました原因等につきましては、それは当然そういうことであろうと思いますし、そのとおりだろうと思います。それがいかに教育の中に組み入れられているかということを私はお聞きしたかった。しかしそれをやりますとまた半時間なり一時間なりたちますのできょうはこの辺にさせていただきますが、次の機会にはその問題をやらせていただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  270. 奥田敬和

    奥田主査代理 これにて坂口君の質疑は終了しました。  次に、長谷川正三君。
  271. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 私はきょうは、人口急増地帯の各自治体がいま一番苦しんでいる問題の、最も大きい問題であります義務教育学校の用地取得問題それからこれに付随して、義務教育にはなっておりませんが、幼稚園、あるいは、今日高校進学率が御承知のように一〇〇%に近づいている状態の中での高校用地も含めまして、こうした用地取得についての問題、非常に困難を来たしておりますので、これをどう打開するかという点、さらに、今日の狂乱物価の中で学校給食費等の値上がりが避けられないような状況になってきているのに対して、物価問題の解決はいまの最大の緊急政治課題という立場から、この学校給食費についてどう対処されるか、こういう問題にしぼりまして数点お尋ねをしたいと思います。  実は昨日、第三分科会で自治大臣にもほぼ同様の御質問を申し上げました。自治大臣には地方自治体の当面している課題の解決という意味で、多少教育問題をはみ出す問題も幾つかあるわけでありますが、しかし、昨日自治大臣に御質問申し上げた問題も、大部分がこの教育の施設なり教育を運営していく上の、自治体の責任において支出している問題、こういう問題であったわけでありまして、ひとつきょうは、短い時間でありますが、苦しんでおる自治体やあるいは直接子供、家庭、そこに福音になるような御決意のこもった御答弁を期待いたしましてこれから御質問申し上げたいと思います。  第一は、そうでなくても土地の値段の上昇はここ十数年目ざましいものがありまして、特に田中さんの列島改造論以来これが拍車をかけてまいりまして、いま用地取得に非常な困難を来たしているということは、これは大臣が一番よく御存じのことだと思いますが、これについて今年度の予算でどう対処され、おそらくその予算編成期から今日までの時間の推移の中でまた大きな変動が起こっておりますけれども、これについてどう対処されようとしておるのか、きわめて原則的なことを、ひとつ大臣なり関係政府委員からお答えを願いたいと思います。
  272. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 児童生徒急増市町村の義務教育施設の整備が非常に困難な課題であるということは御指摘のとおりでございます。そうした事態に対処いたしまして、昭和四十六年度から小中学校の用地の購入費に対する補助を実施してまいったわけでございますが、昭和四十九年度予算におきましては、国庫債務負担行為の限度額といたしましては百九十九億円、歳出化額といたしましては百四十五億円の予算を計上しておるわけでございます。内容といたしましては、面積といたしましては三百九十七万平米、単価は昨年度の二万一千円を約一九%アップをいたしまして二万五千円、これは平米当たりでございます、の積算をいたしております。特に昨年に対しまして改善いたしました点は交付率でございますが、昨年度五〇%でございましたものを本年度は六〇%ということにいたしております。いわゆる足切りということばがございますが、足切り率が五〇%から四〇%に縮小されたということにもなるわけでございまして、こうした形で国の補助金としては対応したい。ほかに地方債等におきましても所要の措置が講ぜられておりますし、また別途、国有地の無償貸与が児童生徒急増地域に対しましては行なわれるというような措置も昨年度から講ぜられておる次第でございます。
  273. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 いまの無償貸与というのをもう一回説明してください。
  274. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 昨年、国有財産特別措置法が改正になりまして、第二条の無償貸し付けの範囲に、地方公共団体において、学校教育法第一条に規定する小学校、中学校、盲学校、ろう学校、養護学校の施設で、災害等による著しい被害等を受けた場合に、その地域を政令で指定いたしますると、その団体に対しましては無償で国有地が貸し付けられるという法改正が行なわれておりまして、これに伴う政令も昨年の七月公布されておるということでございます。若干繰り返しになりますが、激甚災に対する特別な財政援助に関する法律が適用される地方公共団体の区域、それから児童または生徒が急増している地域として文部大臣が指定した地域、それから過疎地域対策緊急措置法の適用を受けている地域、この三つの地域につきましては、ただいま申し上げましたような無償貸し付けが昨年の法改正により可能になったということでございます。
  275. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 いまの御決定に基づいて、事実無償貸し付けをした実例はその後どのくらいになっていますか。
  276. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 大蔵省所管の普通財産でございますが、面積にいたしまして約百三十四万平米でございます。
  277. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 そのおもな場所を具体的にちょっとあげてください。
  278. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 これは児童生徒急増町村がそのうち大部分でございまして、百三十四万平米のうち約百二十万平米が児童生徒急増町村でございます。ほかに過疎地域が約十三万六千平米、それから激甚災の指定団体が、これはごくわずかでございます。
  279. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 もう一歩進めまして、その人口急増地帯の具体的な府県、市町村名、それはわかりませんか。
  280. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま申し上げました人口急増町村の今回貸し付けが無償になります面積の町村別のデータまでは、ただいま手元に持ち合わせておりません。
  281. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 では東京都下にありますか。それもわかりませんか。
  282. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 あると思いますが、ただいまデータは手元にございません。
  283. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 私はだいぶ丹念に回っていますけれども、ここは無償で借りられましたというのは正直にいって聞いたことがないのです。ですから、もし私がうかつであれば教えていただきたいのです。これはきょうということになりませんが、いずれまた文教委員会等で、できたら資料として出していただくよう要求いたします。  そういう無償で借りるということになれば、これはたいへんけっこうでございますけれども、実際は、実情はまだまだ解決困難な状況ですね。私ども社会党といたしましても、数年前から何回か、人口急増地帯に対する用地取得のための立法を提案をいたしてまいりました。昨年の国会には、その後文部当局も年々努力を先ほどお話があったようにされていますので、一応控えましたけれども、どうしてもこの用地取得については人口急増地帯の応急措置を、もちろん当面することをできれば立法化していただきたいし、もう今日は、人口急増地帯でなくてもこの用地の問題はたいへんな負担でありますから、義務教育学校の用地取得に対しましても、これは市町村の永久財産になるのだから補助の対象としないというお考えは捨てて、当然校舎建築費等と同じように恒常的に立法化すべきものと思うわけでありますが、その点についての大臣の御所見をちょっと伺います。
  284. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 用地の取得に対しまして補助制度をとることについては、財政当局に非常に強い反発がございまして、実現するまでにかなりかかったわけでございます。そして、四十六年以来今日の仕組みをとってきているわけでございますので、立法化のこともさることながら、内容の充実に私としては今後も一段の努力を続けさしていただきたいという気持ちでおるわけでございます。
  285. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 自治省に長い経験のある大臣からそういうおことばを聞いて、私ちょっと安心したのです。これは本来は国が補助すべきものでないというようなお考えを持っていらっしゃっては困ると思ったのですが、そういう方向で努力をされるということなので、ぜひひとつこの点は私も念を押して、その御努力をお願いしておきたいと思います。  そこで、先ほどのように四十六年度からたしか二十億、五十二億、九十九億、そしてことしが百四十五億ですか、年々倍増に近い努力のあとは見られるわけですが、しかし、いまのように足切りという問題が起こっていて、三分の一補助といってもそこへすぐまた、昨年は五割ですから結局は六分の一、ことしは一歩前進して四割の足切りということになったわけですが、これもたいへんな負担で、あともちろん起債で九〇%見ていただくということのようでありますが、それでも非常に困難しておる。特に、きのうも自治大臣にも指摘したのですが、各市町村は多くの場合学校用地を中心にして公共用地取得のための公社をつくりまして、そして法律に基づきまして用地の獲得に全力をあげているというのが実際でありますけれども、これが総需要抑制のあおりを食って、実は学校用地等は優先的に融資を認めることになっているにかかわらず、全体としてきびしく押えられてきている。きのうも自治省に聞きますと、いや、学校、病院等の場合には特に優先的に便宜をはかるように、抑制の中でもすることになっているというのですが、その行政指導が末端へいくとそうなっていない。そういう実情を大臣御存じですか。
  286. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 ことしの一月の早々にそういう話を聞きまして、急遽事務当局も督励して、大蔵省、自治省との打ち合わせをさしたわけでございまして、その結果、大蔵省も具体の問題で協力をさしていただくということになったわけでございます。ただ公有地を拡大するのだから融資をしろということじゃなしに、具体の問題で話をさしてくれぬだろうかということになったわけでございます。その中で、学校用地については、銀行融資の問題についても大蔵省としても協力をしていこうという話になっておるわけであります。
  287. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 その点は今後も、具体的な問題等が起こりましたらそのつど申し上げたいと思いますが、いま市町村を回ってみますと、各首長が訴えられるのが、非常に押えられている、何とかしてくれ、こういう声でありますから、ぜひ、そういうお話があったということで安心なさらずに、追跡調査を怠らないようにして、市町村の窮状の打開に万全の措置をとっていただきたいと思います。  それから、それのついでにちょっと申し上げておきたいのですが、先ほど国有地の無償貸し付けの問題が出ましたけれども、いま全国の米軍基地であったところが方々返還されてまいります。それから、筑波学園都市ができますので、各官庁の研究施設等がそちらに逐次移動しつつあります。私どもの地元の三多摩にもそういうところが各所にございます。それから、未利用国有地というのもあるわけであります。こういうようなところは、いまこの用地取得の非常に困難な中では、それぞれの当該市町村にとってはまさに福音ともいうべき、垂涎おくあたわざる対象になっている。したがって、これをぜひ義務制の学校の用地として払い下げてほしいとか、あるいは高校の用地として、あるいは児童生徒教育環境整備あるいは市民全般の環境整備のために森林公園にしたいとか、あるいは青年たちのための思い切った広いグランドの設定であるとか、病院その他の問題もございますけれども教育に一番、直接間接、教育環境整備の計画要求というものが、どの市町村へ行きましても、そういう土地をその区域内に持っているところは非常に強い要求になっている。大蔵省の国有財産の管理をしているそれぞれの責任者に会いましても、自治体の要求というものを一番優先的に考えたいという御答弁はあるんですが、現実に具体的に当たってみますと、せっかく返ってきたのが、今度はどうも自衛隊が使うことになりそうだとか、警視庁の機動隊の訓練場になりそうだとか、あるいはずっと以前にそこの所有権を持ったことのある大企業が実は横から、そっくり、全部とはいわないまでも相当部分を持っていってしまいそうだとか、私はいま具体的に指摘できるのですけれども個々の名前はあげませんが、実はそういう実情がありまして、市町村としては非常な期待と不安の交錯した中で、返還あと地あるいは移転あと地あるいは未利用国有地の、自治体の要望に従っての使用のため払い下げ、またはいまのようにこれは無償に貸し付けられればなおけっこうでありますけれども、そういう要望が強いのであります。これらに対してきのう自治大臣にも、ぜひこの自治体の要望というものを最優先にするよう閣議の中でがんばってほしいということを申し上げたのですが、特に教育関係の問題が多うございますので、文部大臣にもひとつ、そうしたもののあと地利用について、最も優先的に教育施設にそれが振り向けられるように特段の御努力をいただきたいと思いますが、それについてひとつ大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  288. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 まとまった土地を確保することは将来ともなかなか困難でございますので、返還された基地等につきましては有効な利用を十分考えていかなければならないと思いますし、特に学校用地の確保に困難をきわめているわけでございますので、具体の学校用地等の確保ということになりますと、自治体に対しまして文部省も協力をしていきたい、こう思います。
  289. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 用地問題について最後一つ。いま人口急増地帯のその人口急増というのは、日本住宅公団をはじめとして、あるいは都道府県の県営あるいは都営住宅、あるいは公社住宅、さらに大きな企業資本の宅地造成による団地、そういったものが人口急増の主たる原因をなしておるわけであります。これらが来るについて、学校用地その他社会教育施設、医療施設もですが、これは文部省の範囲外ではありますが、そうした一つの都市として必須の教育あるいは医療施設が必要なわけであります。そのスペースが必要なんです。私は、そういうものを明確に立法化して義務づけるということがぜひ必要であり、そういう意見を最も推進するのが文部省であり文部大臣であってほしいわけです。これは直接は建設省の所管になるかもしれませんけれども、この点についてぜひそういう強力な立法措置をとってほしいと思いますが、それについて奥野文部大臣の御所見を伺いたいと思います。
  290. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 もう長谷川さん十分御承知のことでございますけれども、団地の戸数に応じまして、団地をつくるものがみずから小学校、中学校を建設するということになっておるわけでございます。また用地につきましても、時価よりも低い額で譲渡する。また建てたものにつきましては、建てた後にあとで引き取る。それについては起債、国庫負担金をつけるということにしているわけでございます。建設省もこの問題については十分御協力をいただいているわけでございますが、なお将来とも、文部省だけじゃなしに、建設省、自治省、大蔵省等の協力を得ながら、それらの方策が充実するように努力をしていきたいものだ、かように思います。
  291. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 努力の方向としては私と同じ御意見のようでありますが、そうすると、いまの御答弁ですと、現在の立法措置でそれはもう十分になされておる、だいじょうぶだ、こういうお考えですか。その法律とその条文をもう一回言ってみてください。
  292. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 具体的にそれだけをとらえた立法はまだできていないと思っております。なかなかむずかしい問題がいろいろあるようでございます。そういうこともございまして、申し合わせというのですか、協定というのですか、そういう形においてきまっておるわけでございます。その内容を私は充実していきたい。いますぐ立法でいけるのかどうか。宅地開発をするものが住宅公団だけじゃございませんで、いろいろなものもございますし、また土地の状況もいろいろでございます。何といいましてもいろいろなことを考えて、水の問題とか学校の問題とか、総合的に考えて団地の造成、宅地の開発が行なわれるべきでございますので、抽象的にはきめられないのじゃないだろうかという心配もあるわけでございます。したがいまして、内容の充実には今後も一そうの努力をしていきたいと思いますけれども、すぐ立法できるのかということになりますと、なかなか私もいまここで断定的に申し上げることは困難じゃないだろうか、こう思います。
  293. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 かつて社会党から何回か出した法案にも、人口急増地帯の学校用地問題について、国庫補助の問題と同時に、そうした団地に義務づける条項をたしか出してあったと思うのであります。行政措置でいろいろ努力されているのはわかりますけれども学校用地取得についていま立法化されないで、予算と行政措置でやっているという、したがって足切りということが公然と行なわれる。これが一〇〇%までいくということになれば立法化してもいいのかもしれません。そういう意味で、それに近づけるためにいまは経過措置としてそうしているというなら、一日も早く、それが公然と立法化される日を早くするように御努力願うということになるのですが、いまの団地の造成等につきまして、これについての立法措置というのはやはりどうしても必要じゃないか。業者のものもあるからいろいろ複雑だとおっしゃるのですけれども、東京都下の実情を見ますと、やはり都営住宅と東京都住宅供給公社が一番、決して十分じゃないが、比較的一番、学校用地の取得等について、最近は明確にそのスペースについて責任を持つようになってきている。日本住宅公団については不十分、ましてや東急だとか西武だとか京王だとか、いろいろそういう沿線の私鉄と結びついている大きい沿線の団地造成については、まあそういう点の現実的措置というものは行なわれていない。これが実情なんです。ですから、立法措置はなかなかむずかしいというように考えるほどのんきな段階じゃない、私はこういうように思いますので、この点なお特段のひとつ御検討を、真剣に取り組んでいただきたい。このことを申し上げ、それについての御見解を一言聞かしてください。
  294. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま大臣から御答弁を申し上げましたようなことでございますが、私どもも御趣旨に従いまして、今後ともさらに検討、努力をいたしたいと思います。従来から建設省に対しましてはいろいろな要求は持ち出しておりまして、ただ、その要求を実現するために行政措置だけで足りるのか、あるいは立法措置までが必要なのか、その辺のところは建設省のほうが専門でもございますので、相談をしながら今後さらに努力を続けてまいりたいというふうに考えます。
  295. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 時間があまりありませんので、用地問題はこの程度で一応とどめまして、学校給食問題に一、二触れたいと思います。  とにかく学校給食の資材、燃料、すべての値上がりによりまして給食費の値上げがあちらこちらで行なわれている、こういう状況についてはぜひ押えなければならぬと思います。特に、すでに法律できめた、経過がいろいろありましたけれども、国鉄運賃の値上げにしましてもその後物価抑制のためにこれを十月までさらに実施を延ばす、米価につきましても、消費者米価は四十九年度中は押える、こういった措置がとられているときに、学校給食が値上がりしていくということは何としても物価抑制の一半として――給食費を父母負担にするのか公費負担にするのかという議論は一まずおくとして、現実の問題としてこの値上がりを押えなければならないと思いますが、それについて文部当局としてはどういう措置をとられたか、また今後とられるおつもりか、それについてお聞きしたいと思います。
  296. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 給食の原材料費は、御承知のようにパンとミルクとおかずで、パンにつきましては、一番もとが食管特別会計から政府が売り渡します原麦でございまして、一般市販用の原麦は昨年の秋三五%値上げしたわけでございますが、学校給食用の原麦につきましては本年九月まで据え置きの措置をとっていただいてございます。それから給食用のパンにつきましては、流通経費につきまして国庫補助をいたしまして、全国にできるだけいい粉を安く供給する体制をつくっておるわけでございます。  それから牛乳でございますが、一般市販用の牛乳が、昨年の十二月に全国的に三十二円が八円の値上げをされております。給食用につきましても、業界から五円十八銭の値上げをしてもらいたい、こういう強い要望がございましたが、文部省といたしましては、少なくとも年度内は据え置いてほしいというお願い、強力な行政指導をいたしまして、若干の県でやむを得ず引き上げたところがございますが、多くの県では年度内は据え置きの方向になっておるわけでございます。  一般のおかずでございますが、おかずにつきましては、その地域あるいは季節によりましていろ  いろ千差万別の問題がございまして、これにつきましては、日本学校給食会、都道府県の学校給食会が地域の実情に応じましてできるだけ安定供給の体制をとれるようにということで、一つはコールドチェーン、低温流通機構の整備につきまして昭和四十二年度から国庫補助をいたしました。次に、各都道府県給食会が保管倉庫などを持ちました給食センターをつくるように、これを昭和四十六年度から補助をいたしております。それから、野菜その他を安いときに仕入れまして高いときに放出するための価格調整基金といいますか、そういう基金の補助を昭和四十六年度から始めまして、これは当初はくだもの、野菜だけでございましたが、本年度からくだもの、野菜に限らず、一般物資につきましてもその調整基金が使えるようにいたしておるわけでございます。そういった供給体制につきましていろいろな努力などをいたしまして、各県の実情に即してできるだけ安定供給ができるような体制を促進をいたしたい。  それから先般、文部省及び日本学校給食会、それから各都道府県給食会の全国学校給食連合会というのがございますが、その三者の主催によりまして、特に最近品不足あるいは値上げが問題になっております砂糖あるいは油、それから小麦粉製品のスパゲッティ、マカロニ、あるいは添加物のジャム、マーガリン、それからしょうゆ、みそ、そういった業界にお集まりいただきまして、できる限りの協力をお願いするような会議を催しまして、今後各都道府県ごとにもそういう協力の会議をいたしまして、できるだけの安定供給に努力をいたしたい、そういうことでやっておる次第でございます。
  297. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 御答弁がたいへん長くて、たいへん御努力のあとは一応はお話しのようでありますけれども、現実にもう、そうなさっても、給食費を上げるか間引きをするか、全体のカロリーをうんと落として薄いものにするか、そういうところに追い込まれているのです。ですからこれはひとつ大臣、実情を把握されまして、もう一段と抜本的な御対処を願わないと、これは値上げ必至になってまいります。  そこで一つだけ、牛乳ですね。牛乳はいま国が一本五円八十銭補助していますね。それについて、私どもの地元の多摩市という、あのニュータウンのある市にこの間行って調べてきたのですが、本人負担が十三円十九銭、そして国が五円八十銭、東京都が一円出しておるわけです。ところがいまお話しのように五円十八銭の値上げというのを再々言ってきているのです。一応東京都下では三月までは何とか押える形勢ですが、いまお話しのように大阪であるとか福井、富山あるいは神奈川、千葉、この辺はみんなもうすでに、五円十八銭そっくりでないにしても、四円二十八銭上げたとか四円十五銭上げたとか、いろいろそういうことを伺っておるわけです。ところが、国鉄や米価すら押えるときにこういうものを上げるということは何としても避けなければならぬというので、多摩市では、しかたがないから、牛乳をおそらく四月からどうしても五円十八銭上げなければ得られなくなりそうだ、それで二円を市が――いままで給食に市が補助するところはなかったわけでありますけれども、これは法外支出だと言っておりますが、全く法外なことでありまして、しかし値上げを少しでも押えるために、そういうふうに一本について二円の補助を一応四十九年度予算にいま一生懸命組んだところです。しかしこれは国が何とかしてくれなければ困るというのです。この五円八十銭の補助を大幅に上げるか、あるいは業界との話し合いで、その値上げをさらに四十九年度は上げないように押えるか、このいずれかの努力がどうしても必要だと思いますけれども、これについて事務当局及び大臣のお考え、いま牛乳の問題だけにしぼって申し上げますけれども、どうですか。
  298. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 牛乳は、いま御指摘のとおり、農林省の補助金で二百㏄当たり五円八十銭ということにいたしております。来年度も一応同額になっておるわけでございます。昨年の十二月に市販用の牛乳を値上げいたしました際、給食用につきましてもその値上げの要因は同じといいますか、酪農家にとりましてはえさ代、メーカーにとりましては人件費、燃料等であるわけでございますが、文部省といたしましては、その値上げの趣旨はわからないではないが、とにかく年度内の値上げだけは据え置いていただきたいということで強力にお願いをし、また各県を強力に指導いたしまして――ただ牛乳につきましては、県によりまして加工乳を中心とする地域あるいは飲用を中心とする地域、いろいろ県の実情が違いますので、実際には県知事が教育委員会協議してきめることになっております。そういうようなことで、やむを得ず値上げをされた県が十数県ございますが、その他の県は何とか年度内の値上げは押えていただいているわけでございます。ただ、えさ代その他も上がっていることは事実でございまして、新年度からの若干の値上げはやむを得ないのではないかというふうに見ております。
  299. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 いまの五円八十銭は、それは今度はどこまで補助を引き上げるのですか。
  300. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 これは農林省の補助金になっておりまして、五円八十銭は、来年度も同額の補助の積算に見ております。
  301. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 それでは全く値上げ対策になっていないのですね。これは文部大臣、ひとつ御検討願います。
  302. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど来体育局長から御説明申し上げましたように、給食に関しまする経費のうちで、施設設備、これは公費負担、人件費も上がってまいりますけれども、これも公費負担、材料の問題になってまいりますと、物資、物価対策上、若干国が小麦粉その他について補助をしておるわけでございます。また準要保護の家庭、これは全部公費で持ちましょう。それ以外のものにつきましては、やはり児童生徒の保護者のほうで負担をしてもらう。それがある程度新年度から値上がりする、これはやむを得ないんじゃないだろうかという感じでおるわけでございまして、負担区分に従いましてそれぞれが増加負担をかぶっていこうということでやむを得ない、こんな判断に立っておるわけでございます。
  303. 奥田敬和

    奥田主査代理 これにて長谷川君の質疑は終了いたしました。  山中吾郎君。
  304. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私は、教育の再教育施設の問題と、僻地教育の二点についてお聞きいたしたいと思います。  その前に、大臣の所信を一言だけお聞きしておきたいんですが、現在、国会の中で激しい論議をしている物価問題私は、構造的な退廃という感じをしておるのであります。この節度のない買い占め、売り惜しみという反社会的行為が価格の引き上げをしておるので、経済法則に基づいて、需要供給の関係で上がっておるんではない。そういう意味において、私は構造的なものだと思います。全体の個人主義、エゴイズムというものがバックにあって、こういう現象が出ておるんだ。  したがいまして、この価値観を変えない限りにおいては、法律の取り締まりを強化しても、それに対抗してやみ価格カルテルとかいうふうなものができて、みんな寄ってたかって統制経済化するんじゃないかという心配を実はしておるのです。したがって、根本的には、新しい価値観の形成によって、企業の経営者も内発的に社会的責任を感ずる。法律の威力に基づいてやむを得ず従うものでなくて、内発的な価値観に基づいて社会的責任を感ずるものができない限りは、これは、寄ってたかって統制経済に進めているようなものではないか。あとあとへ取り締まりを強化するしかない。それに対して、また新しい対抗手段を考えて、悪循環をつくっていくのじゃないかと心配しているわけです。  したがいまして、当面の対策としては、例の物価三法、石油規制法とか生活安定法とか、あるいは私が物特の委員長をしておるときにできた、例の買い占め規制法、これで一つの押えはきくけれども、これはこう薬ばりの治療なので、やはり社会全体の意識の上に立った新しい価値観を形成しなければ、自由というものを保障しながら正当な経済体制はできない。文部大臣も私らも同じように、教育の観点からいえば、やはり理想社会は人間の育つ社会であろうと思うのです。そこには自由の保障も要れば、機会の平等もなければ人間は育たない。  こういうことを考えますと、私は、現在予算委員会で物価問題を論議していることは、あくまでも経済問題ではなくて、根本においてはやはり教育問題というものが、そこにこの問題と同時に考えなければならぬのではないか。したがって、文部大臣が対岸の火災視をしておるべきものではなくて、重大な関心を持って、当面の問題として、いろいろの法的拘束力を強化することによって対処しておるけれども、根本においては教育にまつしかないので、教育基本法の前文に書いてあるこのことは、私は忘れてはならない問題であると思う。激しい論議をしておる国会の中に、冷たい頭で静かに考える要素がないと、私は、日本の将来にいろいろなマイナスのものを残すのではないかと思うのです。いまこういう問題を論議しておるさなかでありますから、文部大臣としての所見を、静かな頭でひとつこの機会にお聞きして、本論に入りたいと思います。
  305. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先年来、物の豊かな社会もさることながら、心の豊かな社会にしなければならないと論ぜられてまいったわけでございまして、昨年の石油問題に端を発しますいまの経済的な混乱、そういうことになったり、あるいは総理が先般東南アジアに参りまして、思わざる反響を受けてしまったわけでございまして、そういうところから、あらためて日本人の国民性が問い直されるという時代を迎えていると思います。  そういうことからいたしまして、私たち教育の面におきましても、今日まで個人の充実が叫ばれながら、必ずしもその成果があがったとはいえない。ある面においては、自己の利益を追求するに急ではなかっただろうか、あるいはまた社会連帯というような考え方を忘れてきてはいないだろうか、いろんな反省がなされているわけでございます。  したがいまして、今日の経済的な混乱を解決するために、いろんな法秩序をつくっておるわけでございますけれども、それで解決されるわけのものではない。もちろん、利潤追求の社会につきましても、年々あり方が変わっていくわけでございますけれども、法的な措置と並行して精神的な問題を、今後あらゆる面についてどう考え直していくのかということをあわせて検討し、努力を続けていかなければならない性格のものだ、われわれとして非常に重要な段階に立ち至っている、こう判断をいたしております。
  306. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 奥野大臣の基本的な考え方だけお聞きして、いろいろの機会にひとつ深めていきたいと思いますので、それだけにしておきます。  そこで私、きょうは提案的な質問をして大臣の善処方を要望したいのですが、例の筑波大学が発足しまして、まだ大塚に教育大学が残っておるわけですが、東京教育大学は三年後に廃校になるわけですね。いま在学生がいるからあと三カ年は残って、そのときに廃学になる。  そこで私は、あそこの教員養成の伝統というものが、それで立ち消えになることは非常に惜しい。あそこには教員養成の教育実験学校として、幼稚園、小学校、中学校高等学校、盲ろう学校があり、そしてどこにつくっても、それとの関連のああいう教育環境はできない付属機関があそこの周辺にあるわけでありますから、その伝統を生かすものをあそこに残したい、残すべきではないか、それでなければもったいない、こういうことを思うので、それについていま何か考えがあるのか、白紙なのか、それをまずお聞きしておきたいと思うのです。
  307. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 付属の小中高等学校は、そのまま残していくという方針になっているわけでございます。それ以外の土地につきましては、本来、東京の過密を解決するためにもいろんな研究施設等を筑波に持っていくということで始まっておりますので、残された土地につきまして、また人が集まってくるというようなことは、筋道からいいますと避けなければならない性格だろうと思います。  ただ、いまお話を伺いながら私は感じたのですけれども、旧東京高等師範学校の伝統というものを、何かの形で残していく必要があるなと、このことをいま感じておったところでございます。しかし、いままでそういうことを考えておったわけじゃございませんので、そういう問題として、なるほどよい知恵があるなら考えるべきだな、こんなことが頭の中に浮かんでおったところでございます。
  308. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 三年の余裕期間がありますので、じっくりと、せっかくの教員養成の伝統を生かし、それに関連する施設があるところでありますから、筑波との関連もするとしても、あそこの付属小中高学校の活用は不可能だと思います。  それで私は、全国の小中高の現職の先生の再教育大学院というような構想などはどうか。たとえば、各府県から毎年十名ぐらいの教育委員会の推薦をした先生を、いわゆる教員養成大学院というふうなかっこうで、大体各府県で十名ずつでしたら五百名ぐらいになるのですか、そういう優秀な者を吸収して、そして現職にある先生にも、さらにまた教養を高める、希望を持たすということも非常に大事ではないか。そして短大を卒業した者は、さらに四年制大学卒業者程度に教養を高めるために、一年間ぐらいの予備学習もその中にしてやり、一部、二部という構想でもいいと思いますが、修士コースあるいは博士コースぐらいの水準で、全国の現職にある教員の教育を目的とした大学院をつくる。そこに小中高、盲ろう学校があり、教育とその付属機関の活用というふうなものを、有機的にあそこに活用できるような構想を持っていれば、長い間の伝統も生きるし、また、文部省やわれわれも、教員養成のあり方の中でいろいろ検討してきた問題も、その中に実現できるのではないかと私は思うのです。そういう構想も、三年の間にあらためて御検討願うべきではないか。私も、その伝統は惜しいと思うのです。学校というのは、一片の法律ですぐ伝統はできません。やはり歴史がその学校の伝統をつくり、そしてその伝統が人間形成に一つの役立ちをするものであって、私は、その意味において学校は生命体だと思うのです。ぜひ、そういうふうな検討も願ってはいかがかと思いますが、いかがでしょう。
  309. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 旧東京高等師範学校の伝統を、何らかの形において残していくという御提案、御提案として受けとめて研究させていただきたいと思います。  いま、具体的な構想もお述べになりました。私たちのほうでも、新構想の教員大学大学院を考えているわけでございまして、できればブロックに一つぐらいつくりたい。これは四年制の大学を出まして、教職につかれた方に大学院に入ってもらう、それに付属の四年制の大学も設けよう、こう考えておるわけでございまして、こういうものには、あの土地は環境的にふさわしくない、こう考えるわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、いまの御提案を受けとめて、どうやればそういう伝統を生かすことができるか、考えさしていただきたいと思います。
  310. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 やはり教職経験を積んだ者が入るのでないと、生涯教育、再教育的な思想が入った大学でないと、あまり価値はない。ずらっと、学部を出て次の大学院という構想は、教員の再教育を含んだ最高の教育機関としてはふさわしくないし、効果がないんじゃないかと思うので、やはり各県から選ばれた十名、二十名ぐらいが集まって勉強さすというものが、東京にあってしかるべきだ。そして東京のあそこにある、百年ぐらいの間のいろいろの資料の便宜もありますし、大体そのくらいの構想ならばあの地域は狭くもない、ちょうど適当な地域ではないかと私は思う。また東京都内の先生で、つとめながらというならば、夜間部もつくってやることもできるでしょうし、あるいはまたいろいろの学科担任の先生大学院に入る場合には、文科系教育学部、理科教育学部、職業系教育学部というような形で教育と結びついて、それに専門の学問をそこで深めていくというような構想も立てられるでしょうから、いまの押し出しに大学を出て、子供を育てることが最高の生きがいだという人生観の形成もなしに、さっと出すようなものは、さらに屋上屋を架するんではあまり楽しくはない。そういうことをぜひ考えて、あの地域を、ただ大蔵省の財源関係から雲散霧消するようなことのないように、いまのうちから文部省のほうでいろいろな案を練っていただけば、われわれも全力を注いで協力いたしたい、そういうふうに思うので、私のほうから切望いたしておきたいと思うんです。よろしゅうございますね。もう一度ひとつお答えを願って次に移ります。
  311. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまの御提案、よく研究してまいります。
  312. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 次に、僻地教育の問題についてお聞きいたしたいと思うのでありますが、僻地教育については常に複式、複々式学級で、教育的立場からその効果がなかなかあがりがたいし、教師自身も過労におちいりながら、しかも教育効果が出ないということを非常に嘆きとしており、この問題は、日本の普通教育における最大の悩みであろうと思うのであります。  ことに、最近の過密過疎の関係から、農村地域においては入学児童生徒が少なくなるために、複式がさらにふえる。といって、すぐ廃校、統合という問題が直結されてくることによって、逆にまたその地域の文化的中心であり、人間形成の中心であり、部落の協同体の中心になっておる学校がなくなるということで、住民たちがいろいろな立場から反対をし、いろいろな問題を起こしております。  そういう中で、僻地に挺身をした先生の中で創意くふうをこらして、いろいろの授業の持ち方その他について検討しておるのであります。そういうことについては、私は、いろいろな形式的なものにとらわれないで、創意くふうしておる先生に敬意を表しながら、文部省においてもぜひそういう現実をくみ取って、一片の形式で押えるのでなくて、そういう創意をこらしておる先生方の実験を取り上げて、政策にむしろ活用するようにしていただきたい。こういう意味で、一、二実例をあげて御意見を聞き、なお御検討願いたいと思うのであります。  それは、岩手県の僻地、これは学校は僻地の三級でありますが、衣川という村の衣川小学校の大森分校、十名前後の生徒しかありません。だんだん子供が減っていくために、村において統合しようとしておるのでありますが、その分校の先生が非常に熱心であり、部落の人々も、その小学校をなくせば、分校をなくせば、村の魂がなくなるからぜひ置いてほしいという熱望で、分校がそのまま残っておるわけでありますが、それに対応するために、この先生がいろいろ苦心をして、複々式をなんとかなくして、そして子供の人間形成にマイナスにならぬようにしたいという努力を、一つの実験でやってみたんです。そして村長、教育委員会もそれに敬意を表して、そのまま是認をされておる実例があるんです。  それは、父兄の要望にこたえて、現在六歳から学校に入るんですが、五歳の子供を仮入学という形で学校で預かってほしいというので、先生も、義務教育は六歳からですが、五歳のまま仮入学のかっこうで学校に入れて、そして五歳と六歳の子供を先生が同じ教育をしているわけです。しかし、仮の入学なんです。そして実験をしてみると、六歳、五歳の子に少しも遜色がないし、五歳の子供もその素質において中より上、一番上の子供もある。四歳、五歳の子供を別々に複々式をやるよりは、その仮入学の実験の結果、そういう場合には一緒に教えたほうが子供のためになる。複々式の場合は、四十五分のうち十二、三分ずつしか子供に接触ができない。複式にしたために、その倍の時間を接触して先生が子供を教えていけるというので、倍の教育能率があがるというふうなかっこうで、仮入学をして、そして複々式を複式に直しながらずっと経験をしてみると、卒業まで、あるときには一年がないときがある、あるときには、三年がないときがあるんですね、教える内容からいえば。そして単式にできるようにしてみて卒業さしておる。  これは、形式論からいいますとやはり問題になると思いますが、しかし、自分の経験の中でそういう実験的に、教育委員会その他の了解を得ながらやった実験は、私、非常にとうといと思うのですね。それについて、もしこういうふうな僻地の先生が真剣に子供のことを考えて一つの独自の行き方をしたようなことについては、私は、文部省は理解のある立場で、むしろ実験学校としてお認め願ったほうがいいんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  313. 岩間英太郎

    岩間政府委員 僻地におきまして、非常に熱心な先生が、献身的にいろいろ御研究をいただくということは、私ども、たいへんありがたいことであるというふうに考えてきたわけでございます。ただいま御指摘のような学校につきましては、これはちょっとはずれますけれども、来年度から複々式を解消するというふうな方向で、定数法等の改正につきまして、ただいま御審議を願うようにいたしておりますけれども、それは別にいたしましても、教育につきましては、実験ができないというふうなことが一つの非常に問題な点でございますけれども、このような僻地の場合に、実験をする気ではなくても、そういう条件が、いろいろな教育のしかたにつきまして非常に役に立つと申しますか、そういう場合がございます。私どもは、むしろ教育の原点は僻地教育にあるのじゃないかというふうな御意見も聞いておるわけでございます。  そういう意味で、非常に僻地教育につきましては関心を持っておるわけでございますが、いまのところ、就学の始期は六歳というふうに法律上明らかにされておりまして、ただいま御指摘になりましたような学校の場合には、これは事実上お預かりをしているというふうな状態であろうと思います。しかしながら、私どもは、実験ということではなくて、そういうふうな状態が多少の余裕をもって考えられるということは、これは例外的に認めても差しつかえないことじゃないか、あるいは今後の教育のいろいろな、たとえば幼保一元化というふうな問題につきましても、有益なことではないかというふうに考えておりますので、その辺は、法令の許す範囲内におきまして、ある程度受け入れてみるということも、僻地のような特別の場合には、考慮してもよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  314. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 この先生の心境その他も理解をされて、参考にしていただく必要があると思うので、この手紙をちょっと読んでみたい。「私の動機は、幼稚園のかわりに、分校に置いてくれないかと父母から要望されたことで、少々戸惑いながら、それでも教育委員会教育事務所に問い合わせ、遊ばせる程度ならよろしいだろう、しかし、もちろん正式な在籍とは認めないという了解または黙認をもらいました。ぼくの赴任四年目のことです。三年間複々式授業で困り続けていたぼくは、その子供たちが正式の入学生に伍して」これは五歳の子供です。「あたりまえの学力を身につけることができるようだったら、複々式をせめて複式にはできないだろうかとばく然と考え始めていました。父母の考えは、実は就学前一年間遊ばせてもらって、翌年正式の一年生として、一年生の教科書をあらためて習わせるつもりだったようですが、ぼくは、複々式の複式化への希望を持ち始めたということです。結論からいって、これは成功しました。以下、仮入学生の、いわゆる知的学力の順位を符号で書いてみます。」と、ここにずっと書いてあります。  そして、「つまり、この少々実験的な実践は、一年早く入学させても知的学力は、あたりまえに伸びるという結果を示したのです。」そしていろいろと書いておりますが、これはあとでお渡ししますから、局長ひとつ読んで、こういうこともしておるのだという参考にしてもらいたい。  さらに、「そして八年間の実践の結果、一年早く入学させても、知的学力は(知能、努力に応じて)あたりまえに伸びるという事実が確認されているのです。注意事項というのは、仮入学生が上級生より知能が低い場合、その子が苦労するということだけで、学力の進みぐあいにはあまり影響はなく、そして個別指導ということも、小規模校、適正規模校、大規模校にかかわりなくしなければならない教師の心得であって、それで救えばよいのです。右のような学力上の保証があるなら、仮入学は、大森分校の特殊な試行(ぼくは先行的試行とうぬぼれていますが)」と書いておりますが、「試行にとどまらず、小規模校一般のなすべきこと、なさねばならぬことにふえんされていくべきだと考えます。なぜなら、複式、複々式という教育指導)形態は、教員定数の不足からやむを得ず編み出されたいびつな形態であって、単式でさえ十分な教育をやっているとは言えない教師たちが、複式、複々式で単式を乗り越える教育がやれるはずはないからです。一時間の授業のうち、教師とつき合う時間が、単式の子供は四十五分、複式の子供は二分の一複々式の子供は三分の一しかない。もう決定的にそうでしかあり得ない複式、複々式の子供たちがかわいそうだからです。昭和四十一年から、ぼくの同僚である家内は楽になり始めました。複々式が複式になったからです。その分、子供たちもしあわせになりました。」云々と書いております。  これは、私は非常に貴重な実験記録であると思うので、なおこれについてこの学校を訪問して――この人の教育観も書いておりますから、お渡ししますから、ひとつこれを検討して、なお具体的にその学校状況を、文部省においてお調べなさって、下からの創造的なこういう教育活動を吸い上げて参考にしていただきたい。上からつくるよりも、こういうものを参考にされることが大事だと思うので、希望申し上げておきます。ひとつ大臣の御所見を聞いて、質問を終わります。
  315. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 きのうも実は、私、奈良県の天川村塩野小学校の複式学級で、学年を担当しているばかりじゃなしに、音楽を受け持った先生から手紙をいただきまして、たいへんな御苦労になっているなという気持ちと、とうとい姿を思い浮かべさせていただいたところでございまして、そういう感銘を持ちながら、いまもお話を伺ったところでございます。     〔奥田主査代理退席、主査着席〕 ぜひ文部省におきましても、研究例として十分取り上げさせていただきたい、かように考えるわけでございます。  複々式学級は、先ほど申し上げましたように四十九年度からはなくします。定数改善できるわけでございます。なお一そうの改善がはかられますように努力もしていかなければならない。たいへんよいお話を聞かせていただきました。
  316. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 終わります。
  317. 藤井勝志

    藤井主査 湯山勇君。
  318. 湯山勇

    湯山分科員 先般、学校教育の水準の維持向上のための義務教育学校教育職員の人材確保に関する特別措置法が成立いたしまして、もうこれは非常に急いでおる段階でございますから、先般のこの分科会においても、山口委員がかなり詳しく質問をされましたが、なお、若干残っている部分もあると思いますので、その部分についてお尋ねいたしたいと思います。  第一は、国立大学の場合ですが、これはどういうふうにされるのか。先般、助手とか講師については御説明があったそうですけれども、助教授とか教授とかいうのは、別にこれに伴って措置がなされるのかなされないのか。なされるとすれば、どういうふうにされるのか。これは大臣でなくても、担当局長でもどなたでもけっこうです。
  319. 望月哲太郎

    ○望月説明員 学校教育の水準の維持向上のための義務教育学校教育職員の人材確保に関する特別措置法、いわゆる人確法が成立いたしましたことに伴いまして、人事院では、義務教育学校の教員の給与の改善について近く勧告されることになると思います。その際に、大学、高専、高校等の教員の給与についても、義務教育学校の教員の給与との均衡を考慮して勧告がなされた場合には、十分検討をさせていただきたいと思っております。文部省としては、大学の教員についても、適切な配慮がなされることを期待しております。
  320. 湯山勇

    湯山分科員 それじゃ、教授、助教授も対象になるということですか。
  321. 望月哲太郎

    ○望月説明員 これは、人事院の勧告のことでございますので……(湯山分科員「それは別として」と呼ぶ)ちょっとそこら辺は、人事院の勧告を待って、われわれとしても、どういうふうなお考えで人事院が大学の教官についてお考えになるかということに最終的にはなるわけでございまして、いまの段階では、ちょっとそこら辺のことについて、確定的なことは申し上げかねる段階でございます。
  322. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私としては、教授、助教授にも及ぶものと期待をいたしておるわけでございます。また、それを勧告に含めていただきますと、予備費からその財源を支出していただくということで、大蔵大臣とも話し合いは済ませておるわけでございます。
  323. 湯山勇

    湯山分科員 たいへん明快によくわかりました。  それから、公立学校関係はこの間ずいぶん詳しく聞いておられますから、それはよくわかりました。問題は私立の学校です。これもいま大臣のお答えになられたお気持ちからいえば、人材というのは、一方がふくれて一方がしぼむというような形じゃぐあいが悪いわけで、附帯決議にも、「私立学校教職員の給与の改善について、国は財政上の措置を講ずること。」というようなことがございました。これはしごく当を得たことだと思います。  そこで、それじゃ、義務教育それから公立学校が今年の一月から行なわれる。できれば、私立の学校も同じようにやってもらいたいという気持ちは、これはもうみんな同じだろうと思います。しかし、御存じのように、私立学校というのはなかなか学校自体のばらつきも非常に大きいし、それから、これは四十七年度のですけれども、都道府県から助成を受ける、それも財政計画の積算額をもとにして調べてみると、非常に府県によって差が大きい。これは大臣はごらんになりましたでしょうか。――これは、ここか財政計画の積算になった額です。そうすると、こちらのこれは、それよりも上回って助成しておる県、これからこちらは下回っておる県です。これだけ府県によって差があります。学校自体に差がありますし、交付税ですからきちっとはしていないですけれども、非常に差が大きい。こう見ますと、せっかく今度私学のほうにも及ぼしていこうということになりましても、学校自体にやる意思があるなしということと、それから府県のやり方によってなかなか、やれるところ、やれないところがずいぶんでこぼこができるのではないかということを心配いたします。  そこで、今度、年度内に公立学校が実施した場合、私立学校もやろうという場合に、何かやはり、ただやれとか、やってほしいとかだけじゃいけないので、それには国としてはこうする、それから来年度は特にやってもらいたいということであれば、国としては、この附帯決議の趣旨に沿ってこういう措置をするということを言わないと、こういう状態ですから、なかなかむずかしいんじゃないかというように思いますが、こうう点は、大臣は特に専門ですし、権威のある方ですから、一体、これは国がどういうふうにして私学にもやらせるかということについてお考えがあれば、こうだということを明快に言っていただけると非常にありがたいんですが、ひとつお願いいたしたいと思います。
  324. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私学におかれましても、できる限り教職員の処遇を引き上げていっていただくということを、強く期待をいたしているわけでございます。四十八年度につきましては、私立大学の経常費助成、当初予算に計上されたとおりでございまして、それ以上に追加するという考え方は、今日持っていないわけであります。しかし、四十九年度につきましては、こういう問題もございますので、特に対象率を引き上げるとか、給与の単価の計算方式を従来よりも引き上げるとかいうようなことをいたしまして、処遇の改善のしやすいように、従来からも私学助成の充実は考えておりましたけれども、より一そう、いまのようなこともあわせ考えて措置をさせていただいたわけでございます。  高等学校以下の問題につきましては、地方交付税の基準財政需要額に織り込んでいただくわけでございますけれども、この織り込み方につきましても、そういう配慮を加えていただいたわけでございます。  したがいまして、私学につきましても、それぞれの私学が財政的に負っていくわけでございますが、国のこのような配慮のあることも理解をして、処遇の改善につとめていただきますように、お願いをしていきたいと思います。
  325. 湯山勇

    湯山分科員 大要はよくわかりました。  ただ来年度、いま審議しておる予算の中では五百十九億、この積算の基礎は、教員の対象を八〇%にするとか、あるいは給与の伸び率を大きく一〇%に見るとか、それから一番大きいのは補助率を四割から五割、二分の一にするというようなもので五百十九億なのか、あるいは来年度は、いまのような人材確保法に伴う措置をやることも含めて五百十九億というものをいまお出しになっておられるのか、この辺はいかがなものでしょうか。
  326. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 処遇の改善を行なうということで、私学助成につきましても、従来よりも特に引き上げをはかりたいということで努力をさしていただいたわけでございます。
  327. 湯山勇

    湯山分科員 しつこいようですが、ちょっとこれは大事だと思いますので……。  それでは、来年度の予算措置というものは、いまの人材確保法に伴う、私学もそれに準じてやるというものを、含んでおると解釈してよろしゅうございますか。
  328. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私学がどう措置されるか知りませんけれども国公立について行ないますことは、当然私学についても配慮をしていただけるものだ。その場合には、財源の使用額がふえるわけでございますから、そういう事態を私学が迎えられる、そうなりますと、助成もそれを踏まえて引き上げをはかっておかなければならぬだろうというような気持ちで、努力をさせていただいたということであります。
  329. 湯山勇

    湯山分科員 自治省はお見えになっておられますか。――いま文部省のほうのお考えはよくわかったのですけれども、自治省も、いま文部大臣のお答えになったのと同じようなことでしょうか。
  330. 森岡敞

    ○森岡政府委員 御承知のように、私学助成費につきましては、地方財政計画に計上し、また地方交付税基準財政需要額に算入いたしまして、財源措置をしておるわけでございます。昨年は、御案内のように二百九十一億でございますが、ことしは、先ほど御指摘のように五百十九億、約七割増でございます。補助率のアップあるいは対象率の引き上げのほかに、昇給、そういうふうなものもかなり大幅に見込んでやっております。私学の給与改善も当然必要になってまいるわけでございますけれども、そういうことも頭に置きながら大幅な増額をはかっていきたい、こういうことでございます。
  331. 湯山勇

    湯山分科員 大体、同じようなお考えのようですから、自治省のほうは、もうけっこうです。  それから、いま私、これはある県の四十七年度の職員録を持って来たのですけれども、これで見ますと、養護教諭とか学校看護婦だと思いますが、相当数市町村費の職員がいます。これは事務の人を除いてです。事務を除いて、相当数の市町村費負担の、特に学校看護婦とか養護教諭となっているのですが、それはほんとうかどうかちょっとわかりませんそれから、講師というので非常勤で授業を担当している、これもやはり市町村費です。そういう人は対象になりますか、なりませんか。
  332. 岩間英太郎

    岩間政府委員 ただいまおあげになりました方々は、どういうふうな資格でそういう職員になっているかということが一つ問題でございます。たとえば養護教諭でこざいましたら、当然これは県の負担になって、その半分は国で負担するという形でございますが、学校看護婦というふうなものでございますと、これは市町村で、他の雇用人と同じような扱いでやられるということではないかというように考えるわけでございます。そうなりますと、これは一般の職員との均衡等もございまして、市町村で独自に御判断をいただかなければならない問題であろうと思います。  また、講師という方が、実際にどういうふうな扱いを受けておりますか、市町村費の講師というものは、非常勤講師以外には考えられないわけでございますけれども、そういう方々につきましては、これは実際に教壇に立っておられるのでございましたら、均衡上、他の人と同じように扱われるべきものというふうに考えております。
  333. 湯山勇

    湯山分科員 私も、全部当たったわけじゃありませんが、学校看護婦を置いておるところは養護教諭のいないところです。だから、県が養護教諭を配置すれば、こういうことをしなくてもいい。それができないので学校看護婦を置いている。だから、これは当然常勤です。  それから講師というのは、たとえば産休代員なんかの足りないところじゃないかと思うのです。比較的年配の女の人が多いのです。ですから、これも非常勤じゃなくて常勤ですね、期間がありますけれども。そういう形のものがいまの市町村費で置かれている。私も、これは少しおかしいと思うのです。本来はこんなものはなくなるようにできておるはずなんですけれども、あるというのは、非常に奇妙なんですが、実際あるわけです。それらはどうなりますか。いま養護教諭のかわりの看護婦、それでもちろん常勤です。それからいまのような産休代員、休職代員だろうと思いますが、そういう形でつとめておる人、これらも対象になるでしょうか。
  334. 岩間英太郎

    岩間政府委員 学校看護婦という方の資格が、どの程度あるかということが一つ問題でございますが、養護教諭あるいは養護助教諭としての資格がある方でございました場合には、御案内のとおり、今度定数法の改善を行ないまして、いままで五二%しか充足されておりません養護教諭につきましては、七五%までこれを引き上げるというふうな措置をとるわけでございますので、その範囲で正式に御任用いただいて、養護教諭と同じような、あるいは養護助教諭と同じような扱いをしていただく、これが本筋だろうと思います。  それから講師につきましても、私どものほうで補助をしております非常勤講師のほかに、産休代替その他でお手伝いをいただいている方があると思いますけれども、これも人事管理上の問題ではございますが、産休代替の方なども常勤として都道府県のほうで雇用していただきまして、それで適宜必要のある学校にお手伝いをいただく、そういう仕組みでもってやっていただくというのが、これは一つの人事管理上の大事な方向ではないかということでございます。  定数につきましても、私ども、特に小規模学校中心にいたしまして、今度は改正をするわけでございますから、かなりそういう意味では、そういうふうな、御指摘になりました必要のある地域については、特に定数の充足ができる、そういう際に正規の教諭として任用していただく、そういうふうにするのが、私は、本筋であろうと考えるわけであります。  給与につきましては、もちろん教諭と同じふうな仕事をしておられるわけでございますから、それと同じように待遇が改善されるということを指導するのは、これは当然のことであろうと思います。
  335. 湯山勇

    湯山分科員 これは、どの県にも相当数あると思いますので、こういう市町村費負担という、事務職員も含めて、そういうものはなくなることが大事だというように私は思います。相当数ありますから、その数をあげていただくというのは、もう時間もありませんから省きますけれども、ぜひその御努力を一そう願いたいと思います。  それから、学校長授業を持っている人の数、これは全体の小中でどういうふうになっていますでしょうか。
  336. 岩間英太郎

    岩間政府委員 四十六年度の調査で、まだこれはまとめができていないようでございますが、その資料で見ますと、小学校では千七百二十四名、全体の七・七%、中学校では七百五十九名、全体の七・八%、そういうことになっております。
  337. 湯山勇

    湯山分科員 どういうわけで、そういうふうにしなければならないようになっておるかということについては、お調べになったでしょうか。
  338. 岩間英太郎

    岩間政府委員 時間で見ますと、最近では、校長さんの場合には、一人〇・五時間というふうに非常に少ない時間になっております。  そういうことから考えますと、校長先生の御方針で、たとえば道徳等につきまして、みずから進んでおやりになる場合もあると思いますが、そういう少ない時間から考えますと、おそらく先生の中で御病気の方ができましたり、あるいは研修、出張等の業務がありました場合に、そのかわりをするというふうな形ではないかと考えるわけでございます。
  339. 湯山勇

    湯山分科員 このいまの〇・五という平均は、この人たちだけですか。全体ですか。
  340. 岩間英太郎

    岩間政府委員 これは全体の平均でございます。
  341. 湯山勇

    湯山分科員 そうすると、七・七%という小学校、七・八%という中学校、これはずいぶん大きいのじゃないですかね。どうしてそういうことになるか、これはいまおっしゃったのとちょっと違うと思うのです。自分から、特に得意な学科について教えてみるとか、休んだ人のかわりをやるとかいうのではなくて、全体の平均がそれだけで、しかも授業を持ってやっているのがこれだけあるとすれば、これはほんとうに相当やっていると思うのです。それの理由というのはわかりませんでしょうか。
  342. 岩間英太郎

    岩間政府委員 理由を調べたということはございませんですが、まあ、これは七・七%でございますから、かりに十倍いたしましても週に五時間でございますから、これはたいした時間にはならないというふうに考えますが……。
  343. 湯山勇

    湯山分科員 いまのは、七・七%をのけたあとの者はほとんど授業は持ってないのでしょう。だから、〇・五はここへ集中しておるわけです。そうすると、おっしゃったような数ではとてもないと思うのです。これは、もう一ぺん計算してみていただきたいと思います。  それから、今度は教頭で学級担任をしている人です。それをお聞きしたいのは、これもこの職員録で見ますと、五学級で校長を入れて六名、六学級で校長を入れて七名というように、校長をのけたあとの人はみんな学級担任しなければ、学校運営ができないという教員組織になっている。そういう場合、もう教頭がどんなにしても学級担任しなければならないわけです。そういう教頭数が、全体が幾つでどれだけあるか、これをひとつお答えいただきたいと思います。
  344. 岩間英太郎

    岩間政府委員 これは、最近の資料では悉皆調査はございませんが、四十八年五月一日現在で調査いたしましたものによりますと、抽出校が千三百十六校でございまして、教頭で学級担任をしているのは、小学校で六校、中学校ではないというふうな状況でございます。たとえば長野県では、三学級の学校でお一人、三重県では同じくお一人、和歌山県では同じくお一人、鳥取県でお一人、広島県でお一人というふうな状態、それから高知県では、六学級の学校でお一人おられるというふうな状態でございます。
  345. 湯山勇

    湯山分科員 それはちょっと少な過ぎると思います。これは一つの郡だけでも七つぐらいあるのです。これでは、半分ぐらいがいまのような状態になっています。だから、全国で見ればこれは相当大きいと思いますが、その調査はたいへん不備だと思うのです。教頭で学級担任しているというものの資料はありませんか。
  346. 岩間英太郎

    岩間政府委員 学級担任につきましての調査というのは、これが私どもの最近の唯一の調査でございまして、それ以外にはございません。  御案内のとおり、そのお持ちになっておられます名簿が、いつの名簿かよくわかりませんけれども、私ども調査は四十八年の五月一日でございまして、御案内のように、定数改善は逐次行なっております。また、いままでの定数改善は、児童生徒の減少の際に行なっておりますものですから、教頭の負担というのも、やや低くなってきているというふうに考えてよろしいのではないかと思うわけでございます。
  347. 湯山勇

    湯山分科員 これは資料をいただいてまたお尋ねをすることにしますけれどもあとでお見せしますけれども、非常に多いですよ。四十七年のものです。それから、過疎地ですからふえることはありませんから。  それで、教頭が授業を持たないということになったら、そういう手当てはちゃんとされないとこれはたいへんだと思うのです。そういう御用意はおありになるのでしょうか。あるいは授業は持つにしても、また学校教育法の改正でもしそういうことになったとすれば、これはその埋め合わせをしなかったら、ほかの教員にずいぶん負担がかかってくるということになりますが、それはお調べにならないでやったのか。どれくらいな教頭の穴埋めの補充要員をお考えになっておられるか。そういうことはあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  348. 岩間英太郎

    岩間政府委員 逐年にわたります定数法の改善によりまして、教職員はかなり充実されているということは、先生も御承知のとおりでございます。たとえば、昭和四十一年度の教頭先生の持ち授業時間は平均七時間くらいでございましたのが、四十六年の調査によりますと平均三・四時間というふうに、全体としても半分ぐらいに減ってきているわけでございます。これは御指摘のように、全体の平均でございますから、学校によりましてはまだばらつきがあると思います。  しかし、今度は、第四次の五カ年計画を策定いたしまして、特に小規模学校中心に過疎地域を意識しながら、教職員の充足をはかっておるわけでございますが、私どもは、その教頭先生授業の負担と申しますか、そういうものはいまよりもふえることはない、それよりも減少していくというふうな傾向にあるものと考えております。
  349. 湯山勇

    湯山分科員 教頭の負担ではなくて、まあ、教頭は授業を持つことが本体ではなくて、それ以外のほうが本務のような形になりますね。そうすると、本来をいえば、それは担任からはずさなければいかぬわけです。その埋め合わせというのはずいぶん大きいと思うのです。その人数はどれくらいと見ているか。その教頭が、従来ならば学級担任ももちろんやるし、いろいろやっておったわけです、専任もありますけれども。しかし、今度の場合は本体が持たないということになるわけですから、その埋め合わせというのは、私も資料をいただきましたけれども、今度の定数改善で、僻地その他に割り当てられるというような数ではとてもしようがない。はるかに多いと思います。その補充ですね、それはお考えになっておられるのか、お考えになっておられないのか、それを伺いたいと思うわけです。
  350. 岩間英太郎

    岩間政府委員 ただいまでも教頭先生につきましては、一般の先生方の授業担任の半分授業を持つというふうな形で定数を算定しておるわけでございます。ところが、このたび教頭法案の制定につきまして国会で修正が行なわれまして、必要に応じて教育を行なうというふうに、教頭先生というものの職務の内容について若干の考え方の変更ができてきたということでございます。  これは、現在の考え方から申しまして、学校の企画、指導、管理、そういう面と、それから教育の面が、私どもが提出いたしました条文では、大体半々ということが、感じの上では七、三くらいになったんじゃないかというふうな感じがするわけでございます。これは、しかしながら厳密に七、三とか、そういうあれではないわけでございまして、いまの定数法の改善の中で、逐次そういうふうな方向に向かって、教頭というものはあるべきであるというふうなお考え方に立つものというふうに理解をしているわけでありまして、いま直ちに定数法上の積算を変えなければいけないというふうなことではないんじゃないか、これは逐次将来に向かって改めていくというふうなことでよろしいんじゃないかと考えている次第でございます。
  351. 湯山勇

    湯山分科員 時間が参りましたけれども、それなら修正する必要なかったんですね、いまのようなお話ならば。だから、これは私は簡単にお考えになる問題じゃないと思うのです。非常に教育の本質に触れる大きい問題です。もっと現場実態、それからこういう教員組織の実情、それをしっかり御把握にならなければ、ここでそんなに簡単に、まあぼつぼつでいいと、七、三か五分五分かかってに適当でいいと、それでは実はたいへんなことです。これはまた非常にむずかしい基本的な問題がありますから、ゆっくりいろいろ申し上げもするし、御意見も承りたいと思いますが、これは決して軽い問題じゃないということだけ、ひとつ大臣局長も御認識いただきたいと思います。  以上で終わります。
  352. 藤井勝志

  353. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 今年設立を予定されております滋賀医大の、地元負担問題についてお尋ねをしたいと思います。  これまでも議事録等で振り返ってみますと、国立医科大学の新設のたびにこの地元問題が論議されておりまして、当然のことながら政府のほうにおいても改善に努力をされたと私は信ずるのであります。  そこで、四十七年十一月に滋賀県が文部省にも提出をいたしております「国立滋賀医科大学設置希望の現状と整備計画」の写しを私もここに持ってまいりました。これなんですが、これは御存じだと思います。この中には、「国立医科大学建設用地は適法手続をとり国に無償提供する。」と書いてあるわけです。また、昨年二月十三日、大津市会各派幹事長、団長会議が開かれて、大津市は、公式の滋賀医科大学の設置場所ということで、市側より、国立医大誘致に関する経過の説明がその場で行なわれました。その説明によりますと、昭和四十八年二月十二日、滋賀県名小路三郎厚生部長が、大津市に対して次のように要請をされたのであります。  すなわち、国立医大誘致の条件としては、地元で用地が確保できることであり、面積は、宿舎用地と合わせて約十万坪が必要である、国としては、用地は地元からの提供を求め、エネルギーサプライ等も地元で負担を求めるとのことであるので、滋賀県としても、用地、エネルギーサプライ等は地元で負担する方針で用地を確保したい、他都市の例を見ると、地元市としての協力は非常に大きい、県を飛び越えてやっているところもあるということでありました。滋賀県の当時言わんとしておった点は、国立医大を政府につくってもらおうと思えば、用地の無償提供が前提になるんだということのようです。  お尋ねしたい一つの問題は、適法手続により国に用地を無償提供すると断わっているのですが、適法な用地の無償提供と不適法な用地の無償提供というものが、そもそもあるのでしょうかということなんです。
  354. 木田宏

    木田政府委員 国立の医科大学をつくってまいります場合に、地域の課題にこたえるものとして、地元の御当局にいろいろな御協力をお願いしたいと思っておりますし、また、御協力を得て国立の医科大学をつくっていきたい、それが地域の今後の医療向上に役立つようなものとして位置づけていきたい、こう考えておるところでございます。  いまお尋ねがございました、地元の人がどういうつもりで言われたか知りませんけれども、土地につきましては、ここにつくるが、先々のために一番いいという地元御当局の御判断、その御協力を得て用地を確保していきたい、それを有償で借用したい、このように考えておるところでございます。
  355. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 私のお尋ねしているのは、そういうことでなくて、文部省にも提出されております滋賀県の文書によれば、適法手続により国に用地を無償提供する、また、そういう申し出をしないと医大をつくってもらえないのだ、こう大津市に説明している。こういうことについて、大体適法な無償提供とか、適法でない無償提供とか、そういうものがあるのですか。この答えなんです。端的にお答え願いたい。
  356. 木田宏

    木田政府委員 県のその書面につきましては、県の御当局がどういう趣旨であるか、そちらにお尋ねをいただきたいものと思います。
  357. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 それじゃはっきり申し上げますが、この県の提出している整備計画なるものを、ごらんになっていない、見ていないということなんですか。
  358. 木田宏

    木田政府委員 文部省にそういう御提示があったかと思いますけれども、その文書の意味につきましては、県の文書でございまするから、県のほうにお尋ねをいただきたい、こう申し上げた次第でございまして、私どものほうは、県の当事者の予定されました土地を有償で借用したい、このように考えております。
  359. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 去る二日、私も滋賀県庁へおじゃましまして、一応わが党の仲川県会議員ともどもに名小路厚生部長に会ったわけであります。で、いま言われましたような内容については、あらかじめ県に説明を求めたわけであります。同部長は、次のようにはっきりと言明をしました。誘致合戦が激しく、当時としては、用地無償提供とでも言わないと文部省が相手にしなかったのだ、いまはたいへんな財政難のおりから、用地買い取りを要求しているし、買い取りまでは有償借り上げを求めている、こういうことでありました。  まず第一点、短い時間でしなければならない質問ですから、質問の趣旨にだけ答えてください。政府としては、こんな誘致合戦をまつまでもなく、進んで国の責任で医大をつくるべきだと私は考えるのですが、無償提供などという条件を出さないとこの誘致に応じない、こういう態度をいまでもとっていらっしゃるのですか。
  360. 木田宏

    木田政府委員 医科大学のない県がないようにしたいということで進めておるのでございまして、当初、国公立の医科大学をつくりたいという考えで進んできております。いずれにいたしましても、地域の医療体制にも役立つような医科大学をつくってまいりたい、こう考えております。
  361. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 それでは、わざわざ無理をして用地の無償提供というふうな条件を出さなくても、国は事情の許す限り、医科大学のないところへは、国の責任でどんどんつくっていきたい、こういう考えだというふうに確認してよろしいわけですね。
  362. 木田宏

    木田政府委員 地域の医療体制にも役立つ意味のある医科大学は、国公立でつくっていったらどうであろうか、国立だけと限ることもなかろうという気持ちで進めてまいりました。地元との御相談で、意味のある公的な医科大学をつくりたい、こう考えておりまして、今国会におきましては、国立で滋賀の医科大学をつくるような御提案を申し上げております。
  363. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 非常にじょうずな御答弁なんですけれども、しかし、無償提供などということが、必ずしも医大をつくる唯一の条件でないということだけは、どうもいまの答弁の中に入っているようです。  そこで、これは文部大臣にお尋ねをしたいことなんですが、昨年五月三十日、わが党の栗田議員の質問に答えられまして、「私は、無理な負担を地方団体にしいてはいけない。まだ、そういうたてまえにおいて地方財政法ができている」とおっしゃっております。また「そういう点で無理な負担をしいている面がございましたら教えていただきまして、そういうことの是正につきまして私たちといたしましては最善の努力を払ってまいりたい、」さらに繰り返して、「国の負担すべきものを無理に地方に押しつけるというようなことは避けなければなりませんので、そういう事例がございましたら教えていただきまして、改善に努力を払っていきたい」こうおっしゃっているわけなんです。たいへんごもっともな御答弁をいただいておるので、私はその無理をあえてここで申し上げて改善をお願いしたい、こう思っておるわけなんです。ひとつこの御発言どおり、滋賀医大の用地の買い取りは、県も正式には希望しておりますので、していただけると思うのですが、やはりめどが必要であります。ですから、先ほど有償でとおっしゃいましたけれども、はっきりしていただきたいことは、いつごろお買い上げになるのか、買い上げまでの間は、どういう基準で有償借り上げをされるのか、これをひとつお聞きしたいのです。
  364. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 さしあたりは有償借り上げ、将来買い取らしていただきたい。買い取る場合には、買収価格に利子の支払い額を乗っけた額で計算すればよろしいのではないか、こう思っておるわけであります。
  365. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 一応、基本の方針はよくわかりました。ただ問題は、相当大きな額でありますから、将来は、とおっしゃる買い上げの時期ですね、大臣としては、いつの時点をめどに御努力されていただいているのか、その点もあわせてお伺いしたいと思うのです。
  366. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 なるたけ早いほうがよろしいと思っておるわけであります。国の予算の問題もあるわけでございますけれども、国と県との間で、差し迫ったところから早く買い取らしていただいたほうがいいんじゃないだろうか、こう思っております。
  367. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 その差し迫ったというのは、まあ、いろいろあると思いますけれども、少なくともここ一、二年中には大体買い取りのめどをつける、こういうことと理解していいんですか。
  368. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国と県との間のことでございますから、お互いに無理のないように協力をし合っていきたい、こう考えておるわけでございます。  たとえば、史跡の買い上げなどにあたりましても、従来は、補助金でぽつぽつ買っておったわけでございますけれども、ことしからは全部一ぺんに買ってもらう。そのかわり十年計画で、元利に対して国費買い上げのものは十割、地方が買い上げる分に対して補助するものは八割ずつ支出していくというような方式をとらしていただいたわけでございます。でございますので、金融的につないでいけるものは、若干あとになっても、利子分だけは完全に見さしていただいたら、負担をかけないで済むんじゃないだろうか。  いずれにいたしましても、お互いの立場があるわけでございますので、急ぐところからそういう処理をつけていけばよろしいんじゃないか、かように考えております。
  369. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 一応、いま買い取りにあたっては、用地の取得費と利子とを見ればいいんじゃないかというお話なんですが、造成費もほぼ土地代と同じくらいかかるところなんですが、これは一体どうなるでしょう。
  370. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 当然、入るものと思います。
  371. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 第二の問題は、仮校舎の無償提供問題なんです。滋賀県は、すでに仮校舎を五億四千万の予算で建設しつつあるわけであります。同じく昨年五月三十日の栗田議員の質問に対する自治省の答弁の中には、「仮校舎等につきまして、地方団体がそういうものを建てまして提供する、あるいはその経費を持つということになりますと、これは問題があろうかと思います。」という答弁があります。滋賀県の場合は、県予算で医療技術センター、中身は医療技術者養成施設整備費という予算になっているんですが、として組まれており、適法無償提供の形をとっているように思われるのですが、実質的には、私の聞いたところでは、一年近くは国に無償で貸すことになるだろう、こういうことなんです。自治省見解の立場からいいますと、当然使用する期間の経費相当分は、政府が支出すべきであると考えるんですけれども、これは、大臣のお考えはいかがでしょう。
  372. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま、大学学術局長に伺いますと、その建物は、将来看護婦の養成施設に県としては考えておられるそうでございます。そうであるなら、そういう施設をおつくりになったものを、さしあたりお借りさせていただくということも一つの便法だな、こんな感じをもって伺わせていただきました。
  373. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 それはいいんです。そのことまで私どもも否定しているんではないわけですね。ですから、わざわざ県があと使う施設を国に建てろ、こういう要求をしているんじゃないんです。確かに県は、いま申し上げましたように、医療技術センターとして看護婦の養成等に使っていきたいという希望なんですが、しかし、やはり相当な期間、国が使用するにあたっての経費というものがかかりますね。つまり、ただ使用ということ自身については、先ほどの私が引用いたしました自治省の見解からいえば、これはどうも不適法なように思えるわけなんです。ですからこういう点では、一定の金額を国が支出して有償借り上げの形をとるのが正しいのではないか、そのことをお願いしているわけなんです。
  374. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、国と県との関係でございますので、お互いに施設の貸し借りができるものなら、有償だ無償だというようなことを言わないで、便宜を供与し合うべきだと思います。しかし、滋賀県が有償にしろとおっしゃるんなら、有償にいたします。
  375. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 その点をお尋ねしているわけなんですね。ですから、こういう誘致をやるときには、何とかしてつくってもらいたいという熱意が県にあるから、いろいろ条件を出すけれども、こういうふうなインフレの時代になってまいりますと、しかも、よい悪いは別問題として、琵琶湖総合開発など大規模な事業をかかえ、下水道などを短期間に整備しなければならない滋賀県にとっては、確かに予算が非常に切り詰められてくるのです。ですから、そういう事情の中で県のほうからいろいろと相談があれば、ひとついまの大臣の御趣旨に基づいて、その相談には乗ってやっていただきたい、そういうことを私はお願いしておきたいと思うんですね、この問題についても。  それからさらに、付属病院の機能を一部肩がわりすることも含めた関連病院として、大津日赤病院の整備にあたり、県負担分が、一応いまのところ八億三千万円と計上されているんです。こういうものを含めまして、いまのところ県が――いま大臣は、用地費や用地造成費は国のほうでめんどうを見るんだというお話がありましたから、ここの事情は変わってくるんですが、最初のように、これを全部県が持つとした場合、県負担となる総額が八十億円、こういうふうな金額を県が算出しているんです。ことしの一月八日に、滋賀県の舎夷副知事が大津市に対して、その一五%、つまり十二億円を、四十九年度、五十年度に分けて、いわば県の下請負担をしてほしい、こういう申し入れをしているわけなんです。  これに対しまして、山田大津市長は十二日に、財政事情の許す範囲で応分の負担をすると公式に県に回答し、財政事情の許す範囲とは、地財法にかなっている旨を含むんだという説明を加えているわけです。ぜひこの地財法に基づいて、地方自治体には正しい意味での応分の負担になるよう配慮されたいわけなんです。  ここで、参考までに申し上げておきますが、大津市は人口十七万、四十八年度の予算規模が百二十億ほどしかないのです。だから、これに二年間で十二億の負担を医大にからんで負わせるということになったら、一体、市財政がどうなるかは大体推察がつけていただけると思うのですね。こういうふうな点について、時間も許されないことですから、いま私が申し上げました個々の項目以外の分についてまとめて申し上げますので、一応国として考え得る、国が今後負担する余地、こういうものがあったら、ひとつお答えをいただきたいと思うのです。  間接用地費といたしまして、これは周辺の調整地、これでもやはり七億四千万の支出が見込まれております。それから関連河川改修費、関連の橋梁、道路等のつけかえ、これがやはり十五億六千万ほどあるわけです。これが間接用地費の部類に属すると思います。それから境界敷地までのエネルギーサプライ、これがやはり二億円ほど見込まれる。それから先ほどちょっと申し上げました関連病院、大津日赤の整備費が八億三千万。これは話に聞きますと、付属病院に設置しなければならない約二百床分が関連病院のほうでまかなわれるというふうにも聞いておるのですが、それも含んでおるようです。それから教職員住宅の建設費が十二億九千万。こういうものが、つまり先ほど申し上げました大きな用地費等の項目あるいは仮校舎等の項目以外にあるわけです。これらについて国のほうで今後どのように考えていかれるのか、これはすべて県の負担になるべきものなのか、そういう点についての見解をお聞かせいただきたいと思います。
  376. 木田宏

    木田政府委員 滋賀の医科大学は、地域の開発計画の一環として、いま県の希望しておられる土地につくる予定でございまして、そういう地域の関係の経費は地元のほうで持っていただく、こういう考え方でおります。
  377. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 そうすると、結局、いま県が負担しなければならないと思っている八十億円のうちで、確実に今後の話し合いで国が負担することになるであろう費用は、用地の取得費、国が買い上げるまでの利子等の経費及び用地の造成費、これだけは確実なんだ、あとの件については、仮校舎等は話し合いで考えるけれども、大体それ以外、私が申し上げましたようなものは地元の負担なんだ、要約いたしますとこういう理解になるわけですね。もう一度確認をしておきたいと思うのです。
  378. 木田宏

    木田政府委員 基本的には、お尋ねのようなことに私どもも考えております。  なお、関連病院のことにつきまして申し上げておきますと、私ども、医科大学をつくりますにつきましては、入学定員百人について八百床の病院を持ちたい、これを一般的な基準として考えておりますけれども、滋賀県につきましても、地域の病院との関連その他もあり、地域病院の実態を医学教育に結びつけるということ、また地域病院そのものの水準の向上、これは病院自体の教育病院としての資質を高めるということもありまして、大きいものをぽっと持っていくよりは、地域病院の協力を得て体制を整えるほうがいいということから六百床にいたしまして、二百床の不足分は、御指摘のありました大津日赤病院に対して御協力をいただく。これはその病院の内容充実にもつながることでございますし、今後、地域病院との連携のもとで医学教育を進めていくといういいシステムもできることでございますから、こういう意味におきまして、医科大学をつくることが地域の医療体制の整備に即応して進んでいくように、お互いに協力のもとで事柄を進めたい、こう考えておる次第でございます。
  379. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 その協力自体に、決してわれわれはここで反対しておるのではなくて、結局、それはお金の問題になってくるわけです。これも、地方自治体が余裕たっぷりというならば、決してこういうふうな無理な注文もついてこないと思うのですが、ますます地方財政が逼迫しているからこそ、当然国に持ってもらわなければならないものは、ひとつ国のほうでよろしくということになってくるわけです。また文部大臣も、いろいろそういうふうな過分な負担が地方自治体に寄せられておったら教えてくれ、ひとつ改善に努力しようとおっしゃっていればこそ私は申し上げておるわけなんです。ですから、用地費関連について早急に検討しようということですから、これはたいへんけっこうなことだと思うのですが、その他の部分についても、やはり県だけではなしに、関連する市町村もあることですから、そういうところからいろいろ要望が出れば、御検討賜わりたいと思うのです。  最後に、私どもが名小路厚生部長に会ったとき、こういうことを聞いたわけなんです。文部省当局は電話連絡ばかりで、しかも、しばしばいとも簡単に、知事出てこい、部長出てこい、こういうふうに言ってこられる。もちろん、地元が協力しなければならないことだから、いつでも飛んでいくけれども、しかし、話し合いの結果について正式の文書が一度も来ていない。言うならば口約束ばかりなんだ。それも、いま用地の問題がようやくここでだいぶはっきりしたように思うのですが、こういうことも、県で説明を聞いておる段階では、判然としないという話だったのです。とにかく全体像がわからないので不安でしょうがない、こういう話だったのです。他の国立医大の場合も、同じようなしかたでやっていらっしゃるのですか。それとも、きちんとした各話し合いの段階ごとに文書を送って、確認がとられているのですか。
  380. 木田宏

    木田政府委員 各地域とも、それぞれ地元の関係者と十分な御相談をし、御協力を得ながら進めておる次第でございまして、滋賀の場合に、地元の体制その他が若干準備がおくれております。したがいまして、今回御提案申し上げております国立学校設置法におきましても、浜松や宮崎と異なりまして、滋賀の場合には一年学生募集を先に延ばすという予定で、御相談等準備の体制をゆっくりとっていきたい、こう考えておる次第でございます。
  381. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 地元の県も関係市町村も、一日も早くと一生懸命やっておるわけなんです。だからこそわれわれにも、いろいろとまた政府のほうに要望してほしいという熱意があるわけなんです。そこは、ひとつはき違えないようにお願いしたいのでありますが、とにかく、現実に工事は現場では進められているのであります。いろいろ自治体としても受け入れ体制などを整え、協力しようとしてやっておるわけなんですから、できれば自治体側の安心できるような方法として、口約束だけではなしに、文書で一定の国の意向というものを伝えてほしい、こういうことなんですが、これはどうでしょうか、実行していただけますか。
  382. 木田宏

    木田政府委員 県のほうとも、いろいろ御協力をいただかなければならぬこともございますから、いろいろよく相談を詰めたいと思います。
  383. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 私が聞いておるのは、相談はいいですよ。だけれども、相談の結果と、それから国立ですから、やはり国の考えが中心になるのだ。大阪工事事務所かなんかあるのですか、そういうところでは、設計等も進められておるように思うのだけれども、なかなかその全容がわからない、こういう不安を訴えていらっしゃるのですから、そういうことを一日も早く明らかにして、工事のおくれている分が早く進むように、お互い協力できる体制をとっていただけませんか、こういうことなんです。
  384. 木田宏

    木田政府委員 他の地域と同じように、御相談申し上げておるつもりでございますが、他の地域から、いま、何か部長がこういうふうなことを言っておるというようなお話を、聞いたこともございません。何か意思の疎通の十分でない点もあるように思いますので、なおよく十分連絡をとりたいと思います。
  385. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 私がいろいろときょうお願いしたことは、私どもの党も含めまして、この滋賀医大の内容の充実した、一日も早い建設を願っておればこそなんで、ひとつ大臣の、今後とも積極的な姿勢をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  386. 藤井勝志

  387. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 熊本県民が注視の中に、重大な問題となっておりますところの塚原古墳群の保存問題と、熊本地方裁判所移転問題にかかわる保存の問題について、文部大臣並びに大蔵省、建設省当局た質問をいたします。  まず初めに、塚原古墳群の保存問題について建設省のほうからお伺いしてまいりますけれども、この塚原古墳群は、熊本県の下益城郡城南町に所在しておりますが、九州縦貫高速道がこの中央を通過するということで、たいへん地元ではこの保存について心配をいたしておるところでございます。昭和六十年までに七千六百キロのハイウエー網が完成を目標に、高速道路、すなわち国道、幹線自動車道でありますが、建設が進められているわけでありますけれども、それに伴って一平方キロ当たり平地で二、三カ所はあるといわれる埋蔵文化財や遺跡の破壊が大きな問題となっており、道路公団はその取り扱いに苦慮しておるわけです。  埋蔵文化財の取り扱いについては、四十二年に文化庁と同公団の間で意見書を交換しておるところでございます。それによると、公団は事前に同町の協力を得て遺跡の分布調査をし、関係都道府県、教育委員会の意見を聞いて、一、重要で路線からはずすべきもの、二、高架やトンネルで現状保存するもの、三、発掘調査し、記録だけを残すもの、この三段階に分けて保存することになっておるようでありますが、ところが、遺跡の価値をめぐって地元と国との間に、また公団との間等に意見が対立し、保存方法の調整がつかず、工事がストップするケースが最近とみに多く起きております。  その中でも特におもなものは、いま申し上げました九州縦貫自動車道が通る下益城郡城南町の塚原古墳群、もう一つは、近畿自動車道の大阪府下吹田-松原間に点在する遺跡、この二つが特に問題となっておりますが、道路公団では、高速道路の建設が本格化した四十三年から十六億円をかけて約八百カ所を発掘、保存につとめてきておるところでございます。しかし、文化庁の調査では、全国に分布する埋蔵文化財、遺跡は三十万から四十万カ所あるといわれ、道路公団の四十九年度工事予定区間でも、東北縦貫道の八十七カ所をはじめ、中国自動車道、中央自動車道など、全国で二百三十三カ所もあるとされております。  そこで、道路公団では、本年度は八億四千万円の予算で発掘に当たる方針であるようでありますが、このため、予定された工期が大幅に延びるというのが実情になっておりますけれども、この点については、私が、いまるる申し上げたようなことでまず理解をしていいか、この点、確認のために冒頭申し上げるわけです。建設省からお答えいただきたい。
  388. 山根孟

    ○山根説明員 先生の御指摘のとおりでございますが、ただ、段階が二つの段階に分かれようかという点を、若干補足をさせていただきたいと思います。  と申しますのは、路線を決定いたす前の段階におきましての配慮の問題、それから、その路線発表をいたしまして用地取得をいたしまして、その後いろいろな調査をいたす、こういう二つの大きな段階があろうかと考えております。     〔主査退席、奥田主査代理着席〕  路線を選定するにあたりましては、すでに調査をされております文化財を避けたルートを、そのほか生活環境、自然環境その他もろもろの制約条件があるわけでございますが、そういった点を考慮しつつ、文化財をなるべくかけないようなルートを設定する、これが第一の段階でございます。  第二の段階では、先ほど先生のおっしゃいました三つのランクに分けてそれぞれ処理をいたすのであるという点は、全く先生のおっしゃるとおりでございます。  以上でございます。
  389. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 建設当局は、この塚原古墳が、最初からわかっておれば問題なかったかもしれぬけれども、路線を決定したあとで、掘ってみて発見されたということに、いろいろ問題があるというようなことも含めての話のように受け取るのですが、あとあと質問をしてまいるわけでございますので、それらを明らかにしてまいります。  そこで、文部大臣にお伺いしたいのですけれども、いま申し上げました塚原古墳群の保存問題について、九州縦貫自動車道の路線予定区域であります熊本-松橋間でございますが、浜戸川の平野に面したこの台地から、わが国最大規模といわれる方形周溝墓群が発見され、古代文化の展開を知る上で貴重な遺跡となっております。その保存問題が大きくクローズアップされておりまして、四十七年五月から塚原台地の調査をやったところ、全く予想もしなかった古墳群があらわれたわけです。  いまも申しましたように、これが最初からわかっておったならば、路線決定の上で問題はなかったと私は思うのですけれども、こういうふうに発掘をして初めてわかったということで、調査の結果、方形周溝墓が二十五基をはじめ、石棺、内墳など合計八十基以上が出ており、方形周溝墓から円墳、前方後円墳への移行過程が同時に押えられる貴重な遺跡でございます。塚原古墳の持つ意義というものは、考古学的にもまた歴史学的にも貴重であり、すぐれているのでありまして、熊本県民の埋もれた宝であるということで、いまや重大な注目を浴びております。  したがって、四十八年十二月十日には政治、経済、文化人百十名で、もちろん衆参両院の国会議員も全員、この塚原古墳を守るために塚原古墳群を守る会を結成いたしまして、これが保存に力を入れておるわけでございます。また、地元城南町でも、塚原古墳保存をはじめ保存特別委員会をつくって保存に力を入れて、今日、国にも陳情いたしておるところでありますが、この塚原古墳については、文部大臣にもしばしば要請申し上げておりますので十分御承知だと思いますが、どういうふうに評価をしておられるか、その点を、まず大臣からお伺いしたいと思います。
  390. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 塚原古墳群は重要な遺跡である点から、工事のほうも中止していただいて、鋭意調査を続けているところだ、こう伺っているわけでございます。調査の進むにつれまして貴重なものが発見されてまいってきておりますので、文化庁では、将来残す方向で考えるべきものではなかろうかということで、なお調査をし、また、関係方面との協議も続けているところのようでございます。
  391. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 建設省は、この塚原古墳について、当局としてはどういうように評価をしておられますか。
  392. 山根孟

    ○山根説明員 この古墳自身の評価につきましては、専門的な観点からの評価があろうかと思いますが、私どもといたしましては、文化財につきまして、保存の方法、その他どういう具体的な配慮をしていくべきかということにつきましては、文化庁あるいは専門家の方々の御意見を承りながら、実施を進めてまいりたいという考え方を持っております。
  393. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 四十八年三月に肥後考古学会、熊本史学会が、道路公団、県、建設省に対して、塚原古墳群保存に関する要望書を提出しております。その中で、すでにお聞き及びのとおり、まず一つには、最初は遺跡の下にトンネルを通す案で交渉したが、金がかかり過ぎるということで、これがいろいろ問題になっております。推定四、五十億かかるだろう。史跡として一番重要な部分が、先ほど申しましたように、幅六十メートル、長さ五百メートルにわたって道路敷となり、遺跡が分断され、遺跡としての価値をなくするということで、これらが問題になったわけです。もう一つは、路線変更案を提示しまして、これは最初建設省案で、浜戸川周辺の圃場整備が進んで用水池が不要になったために、ここに道路を通す案が遺跡保存に最適ということで要望書を出しております。予算も十分の一ぐらいで済むということになっておるわけでございますが、この要望書に沿って、この路線決定の問題はどういうふうに検討してこられたのか、建設省と文部省のほうからお答えをいただきたいと思います。
  394. 山根孟

    ○山根説明員 路線決定の経緯につきましては、四十三年三月六日に実は整備計画が発表されまして、日本道路公団に施行命令を出したところであります。路線発表を四十四年十二月十六日にいたしておりますが、これまでの間、文化財の古墳等につきまして熊本県教育庁に委託をいたしまして調査をいたしました結果、琵琶塚、三段塚古墳は保存できるようにして、それ以外のものにつきましては記録保存ということで、一応合意を見まして用地の取得をいたした。用地の取得をいたしますのに、昭和四十六年度一ぱいかかりました。引き続き四十七年度、四十八年度にわたりまして、発掘調査を行なってきたというのが実情でございます。
  395. 安達健二

    ○安達政府委員 埋蔵文化財の場合は、地下に隠れておりますものですから、分布調査のときにわからないことであとで重要なものが出てくる、こういうものが宿命的にございます。こういう宿命的なものが、今度の問題で出てきたというのが実態でございます。  私どもといたしましては、この遺跡の重要性、また県あるいは町、それから学者、住民の方々が強く保存を要望されておるということなどもございますので、いまの段階になってそういうことを言うのはどうかとは思いますけれども、遺跡の重要性また地元の御要望等を考えますと、何とかひとつ路線の少し変更というようなことでできないだろうかということを道路公団のほうにお願いして、いま協議をしておるというのが現在の状況でございます。
  396. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 文化庁も一生懸命がんばっておることは十分わかる。特に文部大臣は、法の番人としては一番、かた過ぎるぐらいにかたい人で、融通のきかぬ面もあるけれども、そういったきびしさを持っております。私たちがたびたび陳情をしておるときも、いろいろその片りんをうかがうわけですがね。埋蔵文化財、これはわかっているものもあるけれども、掘ってみなければわからぬものも出てくるわけで、日本で一番大きな古墳ということになったわけですから、もっと大臣ともよく相談をして、建設省に強くやらないと、ちょっと腰が弱そうだし、このようなことでは建設省にやられてしまうというような感じがする。そうなったのでは地元でもたいへんな問題になるので、しっかり大臣とも相談をし、文化庁当局も建設省と協議してもらわないといけないと思います。  もう時間がないので、いろいろ食い違いを詰めておってもどうしようもないのですが、さっきの話では、まことに不満な答弁が建設省から返ってきておりますので、さらに文化庁にも申し上げたいが、このルートは路線を変えれば一番いいと思うのです。道路の継ぎ目等は、ミリの何分の一違っても、相当な高速で走るために事故が起きるという心配があるので、線形、カーブ等をいろいろ考えて、技術的な面だとかなんだとか建設省も言っておるようですけれども、また、一つはメンツもあるだろうし、路線変更をすると、先ほど冒頭申しましたように、全国的に数多い古墳があるので、これらに全部影響し、前例をつくるというようなことで、かたくなに拒んでいるようですけれども、先ほど申しました熊本の塚原古墳と大阪府下吹田の古墳、これらがその中でも一番重要な大きなものであります。そういうところにこだわりなく、今回の路線も当然ルート変更をして、遺跡にさわるのでなく、十分検討する余地があるわけでございますから、それをぜひやってもらいたい、こういうふうに私は思っておるわけです。  この路線変更ができなければ、古墳にさわることになりますが、そういった場合、いわゆる文化財指定を受けることが困難になるのかどうか。かなり困難になるようなことも聞いて、われわれは不安に思っておるのですが、その点、文化庁どうですか。
  397. 安達健二

    ○安達政府委員 重要な遺跡につきましては、これを正規に指定いたしまして保存することが本来でございまして、その遺跡そのものが破壊された場合におきましては、指定の問題は起こらなくなるというわけでございまして、私どもといたしましては、指定の問題につきまして前向きで検討してまいりたい、こういう考え方でございます。
  398. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 前向きで検討したいということでございますけれども、やはり工事も急いでもらわなければならぬという面があります。三号線の渋滞も飽和状態以上になっております。そういった関係で、この九州縦貫高速自動車道の建設は急がれております。おそらく建設省のほうも、いろいろな関係で急いでおることも事実でありますが、その中にあって、これがうやむやのうちに古墳を破壊するようなことになったのでは取り返しがつかないことになる、かように思っております。  そこで、私はルート変更ということが一番いいんじゃないかと思うのですが、もちろん、トンネルを堀るということは困難な問題があることもよく認識しております。一つには、遺跡を他に一時移して、トンネルをつくってからまたこれを持ってくるというような方法もある。遺跡の上に土盛りをして高速道路を通す、そうなりますと、道路にかかったものは、古墳としては保存できても、これを見ることもできなければ、永久に眠ってしまうということになるわけでございますから、これらの問題を考えましたときに、ルート変更が一番いい案じゃないか、こういうふうに私は思うわけです。  そこで、ルート変更という問題について、建設省はなぜこれを採用しないのか、その点、あらためて私はここでお伺いしたいのです。
  399. 山根孟

    ○山根説明員 端的に申し上げますと、すでに用地買収が完了いたしておるという点が第一でございます。一般にルートの問題、路線の問題はそれぞれ利害関係があり、生活環境、自然環境その他もろもろの諸条件があるわけでございます。したがいまして、ルート変更をするということ自身実は非常に大きな問題でございますので、現段階におきましては、私どもといたしましては、ルート変更をいたさないで保存できる方法はないかということで、いろいろ文化庁のほうにも御協議を申し上げているところでございます。そのほか技術上の問題その他かございますが、いま申し上げましたような点がおもな点でございます。
  400. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 文部大臣、この件について最後に一点お伺いしておきますが、いま文化庁並びに建設省からいろいろ話が出ておりますけれども、工事は急いでもらわなければならないが、重大な塚原古墳群に路線が関係しておるものですから、県民もずいぶんとこの保存に苦慮して、守る会をつくって運動を展開しておるところでありますが、いまお聞きのようなことでございまして、建設省も路線変更がなかなか無理のようなことを言っておりますけれども、適当な変更の路線が、ちょうど浜戸川の用水池にあるわけでございまして、むしろそのほうがカーブも少なくまっすぐにできるということで合理的である、かように思うのです。そしたらほとんど古墳にかからないのです。そういったことで十分検討していただいて、文部大臣としてもまた文化庁としても建設省と、三者で早急に検討していただいて、対策をとっていただかなければならぬ、かように思います。  そこで、文化庁が史跡指定を考えているというようなことであれば、もっと強力に文部大臣としても文化庁としても、建設省に働きかけていただきたい、私はこのことを強く要請するわけですが、それに対する大臣の決意を承りたいのです。
  401. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 現在調査中でございますけれども、方向としては、貴重な史跡ということになろうかと思うのでございます。そうなった場合には、史跡指定ということにもなるわけでございます。当初、埋蔵文化財の関係でわからないで、結果的には今日道路公団にかなり迷惑をかけておるな、こう思っております。  しかし、いずれにいたしましても文化財を破壊してしまいますと、取り返しのつかないことにもなるわけでございますので、今後の調査の結果を待ちまして、十分な協議の成果をあげるようにしなければならないと思います。
  402. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 ぜひ文部大臣のほうで、十分な成果をあげるように努力していただきたい、このことを重ねてお願いしておきます。  次に、熊本地方裁判所の本館を、文化財としてぜひ残していただきたいという問題について質問を申し上げます。  熊本市京町一丁目にあります熊本地方裁判所本館は、明治四十一年の建築で、独特の赤れんがづくりで、姿形など構造上の美しさ、堅牢さなどから、明治期の建造物として歴史的、学問的価値とともに、建築的価値を有する国の重要文化財に匹敵する貴重な建造物でございます。わが国でもあまり数多くない建物の一つとされ、特に、熊本城と並んで歴史的な熊本市の誇りとされておる建物でございます。  これも文化庁並びに文部大臣もよくお聞き及びのことでありますが、この熊本地裁が、いよいよ今年六月が期限だ、タイムリミットだということで、南九州財務局など関係機関の話し合いがようやく本格化してまいりました。熊本県、熊本市文化財関係者の間で、四十八年に大江町渡鹿とか東町などの国有地が候補地としてあげられていろいろと取りざたされてまいりましたが、熊本地裁の小林所長は、ことし六月までに代替地が見つかれば、地裁は現在地から移転してもよい、こういうことを昨年十二月十日、記者会見で初めて正式見解を明らかにいたしたのでございます。五十一年三月には新庁舎を完成するという当初の計画は、動かせないというようにわれわれは伺っております。他の場所に移転するとしても、ことし六月までがタイムリミットとされておるように聞いておりますが、文化庁は、法務省とその点はどういうふうに協議をしておられるか、その点はどういうふうに考えておられるか、その点をまず所見を承りたいのであります。
  403. 安達健二

    ○安達政府委員 ただいまのお話にございましたように、熊本の地方裁判所の本館の建物は、明治四十一年に建築されました赤れんがづくりの建物でございます。現在、赤れんがづくりのこの種の建物として、重要文化財に指定しておりますおもなものといたしましては北海道の旧本庁舎、それから旧近衛師団司令部庁舎、この二つございますが、この熊本地方裁判所の赤れんがの建物も、明治時代の裁判所の建築といたしましては、ほぼ完全な姿を残しておるという例でございますので、文化財的な価値を持つ重要なものであると考えられるのでございます。  最近、お話しのように改築の計画がございますので、その点につきまして裁判所等からのお話もございまして、われわれといたしましては、これの保存対策、こういう場合には全部そのまま残すか、一部を残すかというようないろいろな方法もございますし、あるいはその場合に、新しい建物とどういうように調和するかというようなこと等もございますし、これは同時に国有財産でもございますので、大蔵省の理財当局等とも十分慎重に御相談申し上げまして、その保存対策についての調査、検討を急ぎたい、かように考えておるところでございます。
  404. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 大蔵省理財局からもきょうはおいでいただいておりますが、いま申し上げましたように、六月末がタイムリミットだというんだけれども、予算の上でずいぶん最高裁のほうも法務局のほうも急いでおられるようですが、大蔵省としては、もう六月を過ぎても解決しない場合は、どういうふうに考えておられますか。
  405. 村上哲朗

    ○村上説明員 私どものほうで所管しておりますのは、国有財産を所管しておりますので、予算の面につきましては詳細には存じませんけれども、私どもは、熊本地裁につきましては、長年建てかえという問題がございまして、地元の方々と折衝を続けてこられてどうやら了解が得られたということで、四十八年度から調査費がつきまして、当然そこへ建てかえるというふうに私ども承知をいたしておりました。  ところがただいまお話しのように、昨年の秋ごろからボーリング調査をするという段階で、いろいろ地元の方々からの御要請があって、目下裁判所と地元の県、あるいは市、あるいは関係者等といろいろ話し合いをやっておられる。その期限が、裁判所のほうで六月までに適切な代替地を見つけてほしいと言っている期限かと思います。その期限でもって予算がどうこうという問題は、私はないかと思いますが、その点については詳細存じておりませんので、お答え申し上げかねます。
  406. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 そこで、この代替地の条件としては、地元でもよくわかっておりますが、検察庁とか拘置所からあまり離れていないとか、または裁判所にふさわしい環境でなくてはいけない、あるいは弁護団の弁護士会館等の関係もあるし、利用者、当事者としての不便にならないところでなくてはならない、いろいろあるわけです。もちろんこの条件に沿ったところに代替地があればいいのですが、何といっても財源の問題だと思う。  そういったことで大いに文化庁のほうもまた法務局とも相談していただくと同時に、一つの案として私は、現在ある熊本地方裁判所の横に、やはり熊本市、県のほうでも都市計画をきちっと立てていただいて、近所にある墓地あるいは住宅を移すか、あるいは検察庁横のあき地等を利用して、いまの建物は建物として残し、その横に並行して地上七階くらいの建物を建てる、地下に駐車場、そして最近は、まあ高層建築で裁判所なんかもできておりますから、そういうことをして、何とかそこに収容し、その現在ある地方裁判所も、熊本県のいわゆる文化財の展示館として残すというふうなことで考えられぬものかということを提案し、いろいろ検討してもらっておりますけれども、これらについても、今後詰めの段階で、いろいろと法務局とも相談してまいりたいと思うのですが、ここで提案しておきますけれども文部省当局の御見解を承っておきます。
  407. 安達健二

    ○安達政府委員 私どもとして、まだ具体的な点まで詰めておりませんので、何とも申しかねますけれども、私どもも、基本的には何らかの形で、その全部ならばけっこうでございますが、全部無理であった場合でも、何かこの裁判所の建物の本質が一応わかるような形というような妥協案が考えられないかというのが基本的な考え方でございますが、これはまだ、現在のところ具体的な案を持っておりませんので、この辺で御勘弁いただきたいと思います。
  408. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 現在の裁判所の本館は狭隘で、事務も相当渋滞しているし、たいへん不便を感じておるということも承知しております。だんだん処理件数が多くなってまいっておりますし、ぜひこれは建てかえるなりまた移転するなり、いろいろしなければなりません。期間も迫ってきております。そういったことで、新しいところに、先ほど言った条件に沿った代替地があれば一番いいのですが、そうでない場合は、いま提案しました並立してやるというような方向も考えていただきたい。国のほうからも県、市に財源的裏づけを十分やっていただき、県、市のほうでも、県有地、市有地等に民家その他の移転等をやったならば、並立して必ずしもできないということもないのじゃないか、こういうふうにも私、考えております。それを含めて、今後の交渉段階で十分やっていただきたいと思います。  そこで、時間も参りましたので、最後に大蔵省にお伺いし、大臣に一言お伺いするわけですが、このような問題でいろいろ県、市は悩んでおりますが、この地裁のあと地利用計画については、県、市とも地裁あと地を地元で買い取るなど多額の財政負担を伴うことはたいへん現在では困難であります。水俣病による水俣のヘドロ処理等の問題をかかえまして、県の財政が相当圧迫されております。こういったようなことで、財政負担が比較的軽くて済むように考えていただきたいと同時に、できることならば国有地の無償貸与、建物の活用についても無償貸与をしていただく、そして熊本は文化財の展示館にしたいという考えでございますので、これについても大蔵省も十分考えていただきたい、かように思います。そういうことを大蔵省から答弁いただくと同時に、最後大臣から、この熊本地裁の保存についての見解を承って、私の質問を終わることにします。
  409. 村上哲朗

    ○村上説明員 ただいまの熊本地裁の建物をどうするかという点については、実は、私どももあそこへ建てかえるというふうに、先ほど申し上げたように承知しておったものですから、それを文化財の観点から保存すべきだという結論が出ますれば、それに即応した措置は国としてとらざるを得ない、こう考えております。  ただ、その場合に、それをどういう形で維持管理をしていくかということになりますと、ケースによっていろいろあろうかと思いますけれども、ただ一方的に国だけが負担をするというのはいかがかと思います。それぞれ県、市当局応分の負担をして、国もそれに応じた負担をしてやっていくべきではないか、こういうふうに考えております。
  410. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 では、文部大臣からひとつ。
  411. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま文化庁長官からお答え申し上げましたように、一部でも文化財保存の見地から残したいという考えがあるようでございます。地元のほうにしましても、どのような形で残すか、どう活用していくかということについても、知恵をしぼってまいられることだと考えるわけでございます。そういう場合にも、文部省としても十分御相談に乗っていきたい、こう思います。
  412. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 それでは、最大の努力をお願いして、質問を終わります。
  413. 奥田敬和

    奥田主査代理 瀬野君の質疑はこれにて終了いたしました。  阿部昭吾君。
  414. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 私は、いまの瀬野分科員の御質問ともかかわるのでありますが、文化財という問題、これが、一人の市民が文化財の埋蔵地域に住宅の建築をしたいというので、長い間働いてたくわえました資金でもって用地の取得を行なった、そして建築の許可申請をいたしましたところ、そこには貝づかがある、したがってまがりなりません。それはそれで一つの筋である。一方において、たとえば高速国道のようなものをつくるという場合になりますと、文化庁のほうはなかなかはきたる態度をとらぬ。私は、やはりこのあたりに一定の基準というものを、一人の市民の場合には文化財ですということでびしっとやっていく、そして高速国道のような場合になりますと、なかなかはきたる態度をとらぬ、こういう不公平な行政というものを私は痛感するのであります。  いま、私が申し上げましたのは宮城県の松島、ここの出身の人が私のところのある役所に勤務をしておりまして、そろそろ定年だというので、郷里に宅地の用地の取得などを行ないまして、いよいよ建築をやりましょうといって建築確認申請をいたしましたところ、そこには貝づかがあるらしい、だからまかりならぬといって押えられた。そしてその間に、一年間ぐらいもめております間に物価がどんどん上がって、その人の最後の、晩年のマイホーム計画は全部おじゃんになってしまった。私は、先ほどの瀬野分科員の御質問との関連で、高速国道のような場合には、計画どおり前へ前へ進んでいく、これに文化庁なすすべなし、それが一人の弱い市民の場合は、いま言ったとおりやられていく、やはり行政に一定の基準というものがなければいけないのではないかというふうに思います。これは時間がございませんから、あとで何問か申し上げますので、まとめて御答弁をお願いいたしたい。  これは大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、今日の都市社会は、公害の問題あるいは人間関係が、このごろ、何と言うのですか、東京砂漠などということばに表現されるようなそういう状況です。そこで、最近自治体が非常に努力をして、林間学校のような、過密都市からある一内の期間、教育の場を農村圏などに施設をつくって、林間学校のようなそういうやり方を始めておるところがあります。私は、こういうあり方を自治体で思い思いにやりなさいと言うのではなくて、やはり文部省が一定の方針をはっきりとつくって進めるべきではないかと思う。  確かに、都市社会の人たちが、スキーに行くとかあるいは旅行をするとか、ドライブをするとか、いろいろな意味で農村地方社会にも出ます。そういう意味では、世の中の見方、その他いろいろな意味で、考え方が広くつくられる時代にはなったと思うのです。しかし、やはりこの人間をつくっていく義務教育の段階で、非常にがさついた、人間砂漠などといわれる都市社会の中だけで、グラウンドなども十分にない、こういうところで教育を受けて、そして成長していくということになりますと、だんだん成長して、スキーに行くとかいろいろな旅行をするとかいうことはあっても、人間が、最も人間形成をされていく義務教育の段階で、都市社会から転換をさせて、ある一定期間、林間学校のような形で、一定の基準を設けて、もっと教育の場をつくっていくということは非常に重要なことではないかと思うのです。この林間学校のようなやり方は、いま全国的な規模ではどのような状況にあるのか、これを文部大臣におかれましては一体どういうふうに展望しようと、考えていかれようとなさっておるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  415. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御承知のように、現在文部省におきましては、国公立の青年の家あるいは少年の自然の家の整備に努力をしているところでございます。このような方向とあわせまして、御指摘のように、自治体が他の自治団体の区域の中に、少年自然の家を設けようというような努力も見受けられてまいってきております。従来から林間学校的なものは、東京都内の学校でありますと、ほとんど他の地域に何らかのものを持っているのじゃないかと思いますけれども、かなり多いようでございます。  御指摘のように、小中学校の時代に人格が形成される、お互いに合宿訓練を通じて人格を鍛えていくということは、非常に大切なことじゃないか、かように私も思っております。昨年の十一月に、小中高を通ずる一貫の教育課程審議会を発足させていただいたわけでございます。その教育課程審議会の発足に際しましても、皆さん方にお願いを申し上げましたのは、よき社会人をつくり上げる、そういう意味においては、学校教育社会教育との体系的な結びつきも考えてくださいよと、こう申したわけでございまして、その気持ちは、いま林間学校をお取り上げになりましたが、そのような少年自然の家等を利用して、何日かお互いに宿泊訓練を受けるというような仕組みが、体系的に取り上げられてしかるべきじゃないかという判断のもとに、そういうことを申し上げたわけでございまして、私も、お気持ち全く同感でございます。
  416. 安達健二

    ○安達政府委員 先ほどお述べになりました、宮城県松島町の西の浜貝づかの問題でございますが、これは縄文時代の後期を中心といたしました貝づかで、松島湾沿岸の貝づかの代表的なものの一つであるということで、非常に重要なものであると認められるわけでございますが、さらに、問題地区の状況を知るために確認調査をいたしたわけでございますけれども、貝の層が非常に厚く現存しておるというような状況が認められたのでございまして、私どもとしては、これを史跡として後世に長く保存すべきものであるという考え方を持っておるわけでございます。同時に、宮城県また松島町とも指定方を希望されておるわけでございます。  ただ、お話しのように、そこの土地に住宅を建てたいという強い御希望の方がいらっしゃるわけでございまして、そこで、私どもといたしましては、何とか御了承をいただいて、その土地につきましては、国の八割の補助によりまして町のほうで買っていただくというようなことで、お願いをいたしておるというのがまず実態でございます。  それから、考え方といたしましては、現在、文化財保護法の第七十条の二という規定に、文部大臣が史跡名勝天然記念物に指定するにあたっては、「特に、関係者の所有権、鉱業権その他の財産権を尊重するとともに、国土の開発その他の公益との調整に留意しなければならない。」ということがございます。史跡、あるいは先ほど出ておりました埋蔵文化財の問題では、この所有権その他の私有財産権、それから道路その他の建設にかかわる公益との調整、これには一番心を砕いているところでございまして、私どもといたしましては、一人、二人の私人であるからこれをないがしろにするとか、そういう気持ちは毛頭ございません。史跡の重要性にかんがみまして、どうかひとつ御協力をいただきたいということをお願いいたすということでございまして、また公益の問題につきましても、先ほどお話の出ておりました自動車縦貫道路の問題につきましても、われわれといたしましては、特に重要なものについてはその路線の変更方もお願いするというようなこともやっておりまして、決して個人の所有権の場合を軽視するというような意図は毛頭ございません。これは、文化財保護行政の一番中心的なむずかしい問題でございまして、私どもといたしましては、住民の方々の御協力を得て貴重な遺跡を後世に長く残したい、こういう念願で、真剣にこの問題に対処してまいる所存でございます。
  417. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 いまの文化庁の御答弁、これは文部大臣、個人の私有権に対して手厚い、現状に即した補償をするということなんでありますが、この補償の基準というのが実は非常に問題なんです。これは、時間がございませんからいま御答弁をいただこうとは思いませんけれども、相当真剣な配慮をしないといけないと思うのです。特に、物価がどんどん上がりましたから、その一人の私人が持っておった計画が、一年間このことでペンディングになりましたから、マイホーム計画は一切全部御破算になってしまった。次にどうするかというめどが立たぬというので、そういう現状が至るところに起こっております。そういう場合の配慮を十分にしなければいけないというふうに私は考えます。もっともっとこの問題は詰めたいのでございますが、時間がございません。  それから林間学校の問題ですが、いま農村社会に参りますと、過疎地帯がどんどん出てくる。そこでは、学校の廃校とか統合とかいろいろな問題が起こっておる。そういうところと、いわば都市社会の林間学校といったような計画とを結合させるならば、またいろいろな展望というものが考えられるのではないかと思われます。したがって、私は、従来文部省でおやりになっておる青年の家とか、あの程度のものではなくて、もっとボリュームのある計画を考えていい時期に入ったのではないか。  たとえば、人間関係が、私ども戦中派で、戦後社会の今日的世代の皆さんとの間に断層が生まれておる。これはやはり、よくいわれる都市社会の人間砂漠、これが非常に大きく影響しておるように思うのであります。そういう意味では、いまの都市社会から教育の場を相当の期間、十日とか二十日間というような、修学旅行にでも出るような気分のものではなくて、一ぺんではできぬわけでありますけれども、少なくとも半年間とかそのくらいの展望で一つのローテーションを組んで、そして教育の場を都市社会から農村地方社会にある一定期間移していく、ボリュームのあるそういう構想を持つべきではないか、こう思っておるのであります。特に、いま農山村で過疎が進んでいって、次第次第に学校の統廃合という問題が起こる、こういうものとうまくかみ合わすならば、相当厚みのある、立体的な計画を樹立することができるのではないか、こう考えます。これが一つ。  それから、時間の関係で次にもう一問申し上げますけれども、身障者の教育、これが非常におくれておるように思います。現在身障者の教育、これは一体どうなのかということを、私ども地域で見ておりますと、非常に不十分なのであります。したがって、身障者の教育の機会均等というか、その対策は、今日の段階では非常におくれておるということを私ども痛感いたしております。一つの県に若干はあるのでありますけれども、収容能力からいうと決定的に狭き門になっておる。  したがって、方々の学校に養護学級のようなものをつくっておるわけでありますが、どうもなかなかこの養護学級の運営というのはむずかしいのであります。したがって、身体障害者の教育、これに対しても根本的な検討を加えられるべきではないかと思いますが、現状認識と、今後どういうような展望を御準備なされておるか、お伺いしたい。
  418. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 前段の問題、私も、人と人との触れ合いは、もっとしげくしていかなければならない、同時にまた、都市と農村との間の心の交流、これをもっと考える必要があるんじゃないだろうかというようなことを、日ごろ考えておるものでございます。また、過疎地において若干余裕を持ってくる施設、これをそういう場合に提供することも考えるべきじゃないか。現実に学校間で行なわれている事例もあったりすることを聞くわけでございますけれども、これをどう計画の上にのせるかということになってまいりますと、なかなかむずかしい問題だ、こう考えるわけでございます。それにいたしましても、そういう施設がりっぱに活用されている、心の触れ合いの場所にも利用されているというような事例を取り上げまして、それを広く知らせることによって、そういう具体の例を多くするというような努力はできるのじゃないか。示唆に富んだ御指摘をいただいたとして受けとめて、研究をさせていただきたいと思います。  第二番目の心身障害者の教育につきましては、いまだ義務制が施行されていないわけでございます。昨年、昭和五十四年度から義務制にするということで制度を確立させていただきました。同時にまた、義務制になって教育を受けたいという方々を養護学校に収容できるように、養護学校を計画的に建設していくということで、各都道府県に対しまして、具体的な計画の提出を求めたわけでございます。もとより、養護学校をたくさんつくるだけで問題は解決いたしません。毎年特殊学級もどんどんふやしてまいってきておりますし、また、今回は訪問指導制度、それも正式に補助対象として取り上げさしていただいたわけでございます。いろいろな仕組みを講じまして、心身に障害を持っておられる方々の教育が行なえますようにくふうをしていきまして、五十四年度からは完全に、それぞれの方々について義務教育が実施されるというふうにいたしたいと思います。  従来は、どちらかといいますと、心身障害の方々を隠しだてをするような趣があった。今日では、みんな教育を受けさせたいという気持ちで、非常に明るくなってきていると思うのでございますが、明るくなっただけ施設を整えていかなければならないところに問題があるわけでございますので、いま申し上げますような方途を講じさせていただいたところでございます。
  419. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 そこで、特殊学級の教師、これは私ども現場でいろいろ接してみますると、ある意味では使命感を持った、そういう先生方でないと、特殊学級の教師というのはつとまらぬのであります。したがって、この特殊学級、将来身障者の教育というものを制度的にもしっかりとした位置づけをしてやっていくという場合に、この現場教育に携わる教師の処遇というものは、現状では私は非常に不十分だと思うのです。いまわが国において、幼児教育などに従事しておる皆さんの置かれておる現状も、ある意味では、社会事業などという名のもとに、篤志家のそういう人々の手に大部分をゆだねられておって、そこで働いておる皆さんの現状は、特に公立でない私立の問題などになりますと、幼児教育の分野の職員の皆さんなどというのは、非常に惨たんたる待遇、処遇の状況に置かれておるのです。  したがって、特に特殊学級あるいは身障者の教育に従事する教師というのは、現状の段階では、全く使命感を持っておる者以外はつとまらぬ、こういう状況なんです。したがって、こういう教師に対する処遇、これはやはり私、根本的に再検討される必要がある、こう考えるのですが、いかがでしょうか。
  420. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御指摘のように、そういう関係の職員の養成も留意していかなければなりませんし、処遇の改善もあわせてやっていかなければならないと思います。同時にまた、それぞれの心身障害児に対する教職員の員数、この定数の改善も行なっていかなければなりません。それぞれについて努力しておるところでございますけれども、一そうの努力をさせていただきたいと思います。
  421. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 ぜひひとつ御努力をお願いいたしたいと思います。  最後の質問は、これは大臣、あまり耳ざわりのよくない質問だと思います。よく大臣のことを日教組対策大臣、こういうふうに批判をしておるのであります。  そこで、最近学生の暴力事件、この中で、特に応援団などの暴力事件のようなものが非常に多いのであります。私の郷里でも、ある学生が応援団の合宿に参加をして、リンチにあって死亡したという事例がございます。ところが、学校当局のこれに対する指導、あるいはそういう応援団の活動のあり方などに対する掌握、これが全くなっておらないのであります。大臣は、学生運動の中におけるセクトの争いによる暴力、これが目についていろいろ心を砕いておられるようであります。しかし、同時に応援団などのリンチなどが横行しておる状況に対しても、偏見なく一つ指導あり方というものがなければならない、こういうふうに私は痛感いたします。近年の間におきましても、応援団活動などの中でのリンチだとか、暴力事件だとかいうものの事例が相当多いのであります。これを学校当局にいろいろ伺ってみますと、しっかりした掌握、管理指導、こういうものがなかなかないのであります。確かに、一面において学園の自治という問題、これはもう言うまでもありません。しかし、いまの文部省指導あり方から見ますと、学生運動のセクト間の争い、これはたいへん深刻に受けとめていらっしゃる。しかし、どうも応援団とかそういった中から出てくるリンチとか暴力などというものについては、文部省はなかなか手ぬるい、こういう感じを持たされてならぬのであります。大臣はどういう所見をお持ちなのかお聞きしておきたいと思うのです。
  422. 木田宏

    木田政府委員 御指摘のように、学生の課外活動、その中の応援団活動等の中で、学生が死亡するというような事件が起こっております。私どもも、決してこれを軽視しておるわけではございませんで、昭和四十年及び四十五年に、それぞれ大きな事件が起こった直後でございましたけれども、国公私立大学に対しまして、学生の課外活動に対する大学の方針を明確にして、こうした暴力行為の再発を防止するように適切な措置をとる、こうした指導につとめてきたところでございます。  これらの件数が、日常どの程度あるかという点については、私ども必ずしも明確に承知しておるわけではございません。決してそう多いことではないのじゃないかというふうに思っております。先ほど御説明の中に、比較のような意味で出てまいりましたけれども、派閥間の確執というのが年間二、三百件にのぼっておることに比べますと、これはほんのごく少数のことではなかろうかというふうに考えております。しかし、少数であるからといって事柄を軽視していいわけではございませんので、大学当局に対しましては、累次にわたりまして注意を喚起し、また、学生部長会議その他におきましても、こうした問題はそのつど関係者にも注意を喚起いたしておるところでございます。
  423. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 ぜひ学園の自治、これをひとつ守る、こういう観点に立っていただきたい。学生運動の分野にだけ、ぎらついた文部省のいろんな見解が出てくるというようなことではいけないと思うのであります。自治を守るというこの原点に立って、ぜひひとつあやまちなき方針、これを進めていただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  424. 奥田敬和

    奥田主査代理 これにて阿部君の質疑は終わりました。  次に、山原健二郎君。
  425. 山原健二郎

    ○山原分科員 インフレ、物価高、物不足というものが、いま教育現場学校に直撃を与えています。この問題について、一つは、給食問題について質問をいたしたいのです。  私の最近聞いております状況というのは、端的にわかりやすく申し上げますと、たとえばカレーが水カレーになってしまった、こういう声も各地から起こっております。また卵、バターが使えないという状態も起こっております。さらに本年に入りましてからは、子供たちに汁粉を一度も食べさせていない、こういう状態も起こっております。さらに東京のある区では、教育委員会が給食の質を落とせ、こういう指示を出しております。さらにある区では、赤字を出すな、こういう指示を学校のほうにおろしているわけです。この中で、学校先生方も、父母も、栄養士の方も、たいへんな努力と苦闘をしておる、こういう状態があるわけです。  学校給食法の第一条は、御承知のように、その目的で、心身の健全な発達に資し、学校生活を豊かにし、明るい社交性を養う、こういうふうに述べております。この学校給食法の精神とは全く違った状態が生まれております。そして、こういう中で給食の間引きが起こっております。十二月には早く給食をやめ、そして一月にはおそらく給食を始め、そしていままさに三月決算期を迎えようとしていますが、この三月にすべてしわ寄せをされまして、本日は三月七日でございますけれども、間もなく給食を中止しなければならない。いわゆる間引きをしてつじつまを合わさなければならない。あるいは八王子市のごときは、週二回給食をやめる、こういうことが出てまいりまして、これには父母の方も反対をして、やっと無理に一応中止をしておるわけでございますけれども、これなども学校給食実施基準の週五回以上ということにも相反する問題が起こっております。子供にとって給食の占める栄養の比率というのは、一日三〇%ないし四〇%といわれておりますから、給食問題は全くばかにならない問題であります。これはもう大臣もすでに御承知と思います。  このような状態の中で、国民がいま何を期待しておるかというと、それは国に対する非常な期待が起こっているわけでございまして、私はこの点で、この給食問題を何とかしなければならない、こういうふうに思うわけですが、この点について、文部大臣、最近の情勢の中からどういうふうにお考えになっておるか、伺っておきたいのです。
  426. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先刻来、給食の問題についていろいろお尋ねをいただきまして、お答えをしてまいったわけでございます。  給食につきましては、学校教育の上における効果等から考えまして、適正に運営されるように、なお一段の配慮を加えていかなければならないことは当然のことだと思います。ただ、給食に要します経費の負担につきましては、それなりに一応負担の区分が確立されてまいってきておる、かように考えておるわけでございます。施設、設備でありますとか人件費でありますとか、こういうものについては公費負担、資材、物資の面につきましては個人負担という原則に立っていると考えるわけでございます。その場合でも、国の物価政策、物資政策に乗るものについては、国も経費を負担しようということで、供給事業費に対しまして十一億円足らずの金を出しておったり、あるいは小麦粉や牛乳については、特別な施策を講じたりもしてきておるわけでございます。あとは、やはり児童生徒の父母に負担してもらう。しかし、要保護児童生徒については、全額公費で負担する、こういうことにしているわけでございます。  したがいまして、今日の物価状況からいいますと、やはり新年度からは、ある程度給食費の父母負担を引き上げてもらわざるを得ないのじゃないだろうか、こう考えておるわけでございます。年度の中途で引き上げることはいろいろの混乱を起こしますので、いま御指摘になりましたように、回数を減らすとか、あるいは質を下げるとかいうようなことをやらざるを得ない学校も出ているようでございますし、また、そういうことをしたくないものだから、市町村で補助を出すというような学校もあるようでございます。  しかし、いずれにいたしましても、いま申し上げましたような負担区分に従いまして、国費でまかなうべき分野については、経費の増加分も、当然国費あるいは公費でまかなうというたてまえは貫きたい。ただ、一般の個人負担に属するものの価格が上がったから、それに追っかけて国費を追加するというようなことは、なかなかむずかしいことではないか、こう思っておるところでございます。
  427. 山原健二郎

    ○山原分科員 結局、質を落としてもやむを得ない、父母の負担がふえてもやむを得ないということ。しかも、年度の途中ではぐあいが悪いというお話ですけれども、大体去年一年間に、二回も父母負担を値上げをしておるところもございます。こういうことで、いろいろな物価の値上がりの中で、ほんとうにこれはやりきれないということに対して、給食問題についての今日の緊急な事態に、どう対処するかという問題として私はお聞きしているわけです。  大臣は、昭和四十五年に出されました保体審の答申の内容、御存じでしょうか。この中には――いま大臣が言われたのは、おそらく給食法の第六条を言われておると思うんですね、負担区分の問題。それについては、私がいただいております保体審の答申では、十二ページのところにこういうふうにいっております。経費の区分の基準は絶対的なものではない、公費負担論もある、社会福祉との関係もあり、社会政策との関連も考慮して、今日の段階では取り上げて論議をすることを差し控えた、こういうことですが、しかし、やはり負担区分は絶対的なものではないということ、そしてこのような現状の中で、やはり第六条を中心としまして学校給食法も再検討しなければならない段階に来ておるのではないかと私は思うのです。これはほんとうに国民の大きな期待と要求だと思いますが、この点についてはいかがですか。文部大臣、ちょっとおおかりにならなければ係の方でもよろしいのですが、どうですか。
  428. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 いま御指摘の答申では、学校給食に要する経費の負担区分につきまして、経費の負担区分は、片や責任分担といいますか、そういう問題でもあるということから、やはり学校給食というのは、学校の設置者、父兄の協力のもとに行なわれることが適切である、つきましては、食材料費等は父兄に負担していただくという現在の学校給食法のたてまえは、そのたてまえを変える必要はないというのが前提になっておるわけであります。ただ、御指摘のように、そのあとに児童手当といったようなことが大きな政策課題になる今日、この問題については、高度のそういう政策的な見地の問題であるので、ここでは特に触れることを避けた、こういうことが述べられておるわけでございます。  この問題につきましては、先ほども大臣からお話がございましたように、給食に要する経費は、施設、設備費、人件費は設置者が負担しろ、その他の経費は父兄の負担であるというのが現行法のたてまえでございますが、そういたしますと、食材料費のほかに光熱水費も父兄の負担であるというように現行法はなっておりますが、その点は、施設、設備、人件費はもとより、光熱水費も、最近は全部公費負担ということにいたしております。食材料費につきましては、やはり毎日の食事でもございますので、父兄にたてまえとしては負担をしていただくということでいくべきものではないかと、一応考えております。
  429. 山原健二郎

    ○山原分科員 文部省のほうは比較的のんびりしていますね。私の調べたところで幾つかの例をあげますと、東京都の八王子市は、四十八年度の給食の赤字四百七十万が出ております。これは八王子市が苦心惨たんして補正予算で穴埋めをするという状態です。さらに名古屋の場合では、子供一人当たりについて百円の補助を出すことになっています。それから、子供一人当たり四百円の補助を出しておる自治体もあります。それから産地直送の事務費、運搬費の補助を出している自治体もあります。これは幾つか数えあげれば切りがありませんけれども、とにかく自治体そのものは、父母負担にも限界がありますし、さまざまな苦労をしながら少ない財源の中でこれを補っていく、子供たちのためには、とにかく泣きながらでもこれをやらなければならぬというところに追い込まれておるわけでございます。  そういう点から考えましたときに、私は、この第六条の問題につきましても当然国として再検討をして、さらにこの子供たちに、学校給食法の一条に基づくようなそういう政策を実現すべきだと思うのですが、これは、ここで押し問答していてもいきませんけれども、再度伺います。文部大臣、この第六条の規定について、ほんとうに検討する時期が来ておるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  430. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 第六条も、このとおりでなくて、かなり進んで運営されていると思います。準要保護児童の給食費は全額公費負担にしているわけでございます。同時にまた、できるだけよいものを確保できるときには確保しやすいように、そういう物資買い入れの調整基金をつくらせるように持っていったり、あるいはまた、さらに給食総合センターをつくりまして倉庫を確保するとか、あるいはコールドチェーン、冷蔵保管の設備について助成をしたりする仕組みもとっているわけでございます。  同時にまた、国として、物資、物価政策に乗るもの、たとえば小麦粉については、昨年三五%値上げが行なわれましたけれども、給食用の原麦については、九月までは従来の価格で売り与えられるという仕組みもとっているわけでございます。一般の材料費を公費でめんどうを見、どこまで公費負担にするかということにつきましては、現在、国として考えております以上に、自治体がその土地の事情によりまして、いま御指摘になりましたように、百円補助するとか、あるいはまた別な助成をするとか、それはやはり個々の地域、地域の実情に応じて、自治体の政策としておやりになることではないんだろうか、こう考えているわけでございます。国として、全体的に給食費全部を公費負担にするんだというところまでは、なかなか踏み切れがたいんじゃないだろうか、こう考えておるところでございます。
  431. 山原健二郎

    ○山原分科員 私も、国として全部を負担するなどという極端なことを今日の段階で言っておるわけではありません。だから、たとえば四年前に出されましたのが、さっき読み上げました保健体育審議会の答申でございますが、その中にも、「国は個々の施策についてそれぞれ有効かつ適切な方途を窮めていっそう積極的な奨励策を講じ、その指導的役割を高める必要がある。」こういうふうに出ております。これは四年前ですけれども、今日ではもっと切迫した状態だと思うのです。  そういう意味で、この法律についての改正ということにかなり強い期待があるわけで、また、地方自治体の現場からも要望が強いわけですが、これについては、改正する必要がないというお考えですか。
  432. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま、若干前進させていることをお話申し上げたわけでございますけれども、さらに四十九年度は、栄養士を府県の負担職員に切りかえる、そして適正な配置を考え、充実させていくというようなことも取り上げてまいってきておるわけでございます。今後もそういう気持ちで、給食の教育的効果をさらに一そう高めるための配慮をくふうしていきたいと思います。
  433. 山原健二郎

    ○山原分科員 法律のことについては、変える必要がないというお考えのようです。  私は、いま国が補助しております給食用の小麦粉の問題について触れてみたいと思うのです。この小麦粉に対する国の購入費の補助、これをずっと見てみますと、私の数字が正しいかどうかちょっと聞いておってください。昭和三十一年から昭和四十五年まで、百グラムについて一円の補助、昭和四十六年になりますと、百グラムについて七十銭となります。下がっているわけですね。昭和四十七年になりますと六十銭、だんだん下がっていくわけです。それから昭和四十八年からは、零細補助として形を変えまして、小麦粉供給事業費補助となって、その予算額は十億七千五百万、昭和四十七年の予算額は十二億四千八百万円、またこの金額の面でも減っているわけですね。これはこの間私が質問しましたら、不用額があったからだというのですけれども、不用額などというものは問題にならない。使おうとすれば、ほんとうに仕事をやれば使えるわけですから、そういうものを残しているわけです。そういうことから見ましても、小麦粉百グラムについての国の補助費というものは、ずっと金額の面からも一円、七十銭、六十銭と減っています。総額から見ましても、昭和四十七年の十二億が昭和昭和四十八年には十億七千五百万、こういうふうに一貫して低下しているわけですね。これはどうですか。私の数字は合っていますか。
  434. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 いま御指摘の数字はそのとおりだと思います。  この小麦粉につきましては、かって百グラム当り一円の補助ということでございましたが、これは大蔵省の財政審議会等でも非常に問題になりまして、長年の間大蔵省と文部省の間で、零細補助であるということでいろいろな問題が毎年起きてまいったわけであります。そこで、いま、御指摘のように、この補助金は一食当たりにいたしますと、一円であったわけでございますが、この補助金の果たしてきた役割り、全国的にできるだけ良質の小麦粉を安い価格で、同一価格で供給をする、そういう役割りを果たしてまいりましたので、その役割りそのものに着目いたしまして、昭和四十八年度から、流通経費の補助といたしまして小麦粉の供給事業費の補助というふうに切りかえたわけです。昭和四十八年度は十億七千五百万の予算でございましたが、この予算の積算は、所要小麦粉二十一万五千トンと推定いたしまして、二十五キログラムの一袋当たりの流通経費一円二十五銭、こういう積算であったわけでございますが、実際に使いました小麦粉は十七万六千トンでございましたので、実際に執行いたしました予算は八億八千万円でございました。四十九年度の所要見込み量も、大体二千トンぐらいふえまして、十七万八千トンと推定いたしておるわけでございますが、この十億七千五百万円の予算を全部執行いたしますと、一袋当たり百二十五円でありましたのが、百五十円ないし百五十二円になるわけでございます。これにつきまして、この予算査定の最終段階で大蔵省と話し合いが成立いたしまして、来年度はそういう予算全額を執行できるということで、実質的に一袋当たりの流通経費百二十五円が、百五十円ないし百五十二円の流通経費の補助になり得るという中身になったわけでございます。
  435. 山原健二郎

    ○山原分科員 学校給食を充実させていくという点で私は言っておるのですが、いま、私の数字が間違いでないということがわかりまして、それでけっこうです。  今度は牛乳の問題です。牛乳はどうなっておるかといいますと、昭和四十七年二百㏄に対して五円八十銭、この予算総額百七十四億。昭和四十八年変わりなし、昭和四十九年変わりなしで、すなわち、五円八十銭は依然として動いておりません。総予算額は百七十四億、動いていないわけです。要するに、この五円八十銭という牛乳に対する補助は、昭和四十五年以来五年間変わっていないわけですね。  そこで、このときの牛乳の価格を見てみますと二十円九十八銭、その中で国の補助が五円八十銭、父母負担が十五円十八銭で、国の補助率は二八%。それが昭和四十八年になりますとどうなるかといいますと、牛乳価格が二十五円七十五銭、補助額は五円八十銭、父母負担は十九円九十五銭、補助率は二三%。すなわち昭和四十五年から四十八年の間に、国の補助率というのは二八%から二三%まで低下しているわけですね。こういう状態です。  だから、小麦にしても牛乳にしても、その面から見るならば、国の補助率というのはずっと下がってきておる。これが一貫して政府が行なっておる給食に対する姿勢ではないですか。私のこの数字が違っておれば違っておると言ってください、長い時間は要しませんから。数字は合っていますか。
  436. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 学校給食用の牛乳に対します国の補助金は、農林省の予算に計上されておりまして、いま御指摘の農林省の補助金は、そのとおりでございます。
  437. 山原健二郎

    ○山原分科員 今日のこの物価上昇、父母負担の増大の中で、この五円八十銭、確かに農林省の問題ではありましょうけれども文部省としてほんとうにこれをどうすればいいのか。しかも、九月までは上げないと言っておりますけれども、牛乳の問題はたいへんな問題をはらんでいるわけでございます。したがって、牛乳、小麦に対する大幅な補助を行なっていくということにすれば、これはどれほど父母にとって助かることかわからないわけですね。この点だけでも改善をしていくということに対して、文部省が全力をあげて奮闘する、このことがいま迫られておると私は思います。この点で、文部省がどのような努力をされるのか、伺っておきたいのです。
  438. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 給食に要する経費をどこがどう負担していくかという、負担区分の話を先ほど申し上げたわけでございます。やはりその原則でいくべきだ。給食費の負担がふえる、したがいまして、準要保護家庭につきましては全額公費で見る、これはもちろん変わりはないわけでございますけれども、負担できる家庭については、一般の市価が上がってくるにつれて、ある程度ふえてくることはやむを得ないじゃないだろうか。ただ、もちろんできる限り安く購入できるような別なくふう、これは配慮していかなければならぬと思うのであります。  先ほども体育局長が申し上げましたが、小麦粉について、特に価格引き下げの意味において補助をするという仕組みは、財政当局にいろいろな意見がありまして、だんだんやめていくという方向になったのを、四十八年度やめてしまって、そのかわり供給事業の補助ということに変えさせていただいたわけでございます。  牛乳につきましても、農林省で予算が計上されておるということは、別途酪農を助成していくという見地に立っておると思うのでございます。  個々の材料費を下げていくということについて、特にその面だけを目途に補助金を文部省として要求していくということにつきましては、若干問題があるんじゃないだろうか、こういう感じを持っておるわけでございます。もとより給食が円滑に行なわれますように、いろいろの面において、それ以上の補助金を確保するということにつきましては、われわれ、今後ともなお知恵をしぼりながら努力を続けていきたい、かように考えておるわけでございます。金の出し方については、いろいろな出し方があるんじゃないかということだけは、御理解をいただきますようにお願いしたいと思うのです。
  439. 山原健二郎

    ○山原分科員 現実に父母負担は増大をし、しかも、いま給食代を上げようとする大体の平均した数字、それを、かりに牛乳だけでも国が補助するという体制をとるならば、いま給食代の値上げをしなくても済むぐらいの金額だと私は計算しておるのですよ。それもやる気もない。ほかのことでいろいろ言われますけれども、父母にとっては給食代の値上げ、あるいは子供にとっては間引き、質の低下、これは現実になっているわけですから、この現実を踏まえてどうするか、こういうことを尋ねているわけで、文部大臣の答弁はしょうがないということでしょうね。皆さんの答弁はやむを得ないということでしょうか。
  440. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど来繰り返して申し上げるわけでございますけれども、やはり給食費の負担につきましても、大まかに申し上げますと、小学校では月千五百円、中学校では千八百円が平均のようでございますけれども、四十九年度は、この点につきましてもある程度増額していただかざるを得ないのじゃないだろうか、こう考えるわけでございます。給食に関する国の財源の持ち出し、これは全体として毎年度相当多くなってきておるわけでございます。小麦粉であるとか牛乳であるとかいう部分部分の御指摘をいただきますと、お話しになったとおりでございます。しかし全体としては、給食費に対しまして、公費をより多くつぎ込むという姿勢で努力をしてまいってきておるわけでございまして、先ほどるる申し上げたとおりであります。
  441. 山原健二郎

    ○山原分科員 五年間五円八十銭が続いておる状態ですね。これは国民の目から見ても厳然たる事実で、こういう状態の中で、それを何とかしてもらいたいという声も、皆さんのところにはなかなか通用しないということがわかりました。  そこで、父母がいま教育をやろうとする場合に、問題は給食だけではないんです。今日の学用品の値上がりなどが、私もここへ持ってきておりますけれども、時間の関係ですべてを申し上げませんが、いま小学校、中学校へ子供を入れようとします場合に、大体どれくらいお金が要るものですか。つかみ方にもよると思いますが……。
  442. 岩間英太郎

    岩間政府委員 いま、生活保護で見ております金額は、小学校入学金が一万五千円、それから中学校で一万八千円、そのほかに教材等につきましては、毎月千百円程度ということでございますから、生活保護のほうは精算負担でございますので、そのときどきに応じましてその単価が改定されるということでございますけれども、大体の感じとしましては、全体としまして三万円程度ということになっておるわけでございます。しかしながら、新聞紙その他でもいわれておりますように、机などが非常に値上がりしておりますので、そういうものを含めまして計算いたしますと、一人当たり十万円近くというふうなこともいわれております。また、私どもがそういう机等につきまして最低価格で計算いたしましたところでは、大体五万四千八百円程度、これが普通の家庭の最低の費用であろうというふうに推測をしております。
  443. 山原健二郎

    ○山原分科員 つかみ方もあると思います。だから、そういうことでお聞きしておきますが、いま学用品の値上がりというのは、これは私は現場校長先生方に伺っておるわけですけれども、ずいぶん上がっているんですね。ノート三十円が七十円、昨年の四月と本年の二月との比較です。画用紙二円が八円、コンパスが五十円が七十円、消しゴムが二十円が三十円、ざら紙が千枚七百円が千六百五十円というふうに上がっています。数えればこれも切りがありません。  文部大臣に伺いたいのですが、キリンがかけないということを聞いたことかありますか。――知らなければいいですよ。
  444. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 画用紙にキリンをかく場合に、キリンの首が長いからかけないという意味なんでしょうか、よく承知しておりませんけれども……。
  445. 山原健二郎

    ○山原分科員 答弁はまさに正しいわけですね。画用紙をいま学校でどうしているかというと、二つ切り、四つ切りで使っていますね。だから、キリンをかくと首が飛び出してしまう。そういう校長先生の訴えもあるわけでございますが、子供たちは大きなものをかきたい、そういう性格を持っています。また、そういう夢も紙でちょん切られてしまうというような状態ですね。そういうことがあるのです。それから、家庭通信とかあるいはテスト用の紙とかいうものの不足などということも随所に出ておりまして、これはたいへん深刻な問題がずっと出されています。  文部省には資材班というのが、昨年のたしか十二月十九日に発足をいたしておりますが、資材班はどういう構成で何をやっているか、伺いたいのです。
  446. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま御指摘のように、昨年十二月に管理局に資材班というものを設けましたが、これは班長は指導課長でございまして、ほかに官房から企画官がこれに参加をいたしまして、その他省内の人員のやり繰りで専任者約三名、それに省内の各局に連絡員を置きまして、総合的な調整を省内的にはかっております。  また、事務といたしましては、学用品でございますとか、鉄材、セメント等の建築資材、こうしたものの需給の状況並びに価格の動向を把握いたしまして、この点につきまして通産省に対しまして、こうした教育用品あるいは資材の十分な供給ないしは低廉な供給を要望し、折衝をする、そういう仕事をいたしております。
  447. 山原健二郎

    ○山原分科員 この資材班が、現在の学用品その他の価格については、たとえば絵の具、クレヨン、ノート、ズックぐつ、どの程度にいま把握しておりますか。
  448. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 いろいろな資材について調査をいたしておりますが、比較をいたしますためには、もちろん規格が同一でないと値段の比較ができないわけでございます。  典型的なものを一、二申し上げてみますと、B5判の二十四ないし三十二枚つづりのノートブックでございますが、これの昨年の一月の小売り物価、これは総理府統計局の資料でございまして、東京都区部の価格でございますが、これが昨年一月に五十円であった、それが本年一月には九十六円ということになっておるわけでございますが、この値上がりに対しまして、文部省から通産省に要請をいたしまして、これが価格の引き下げを求めたわけでございますが、通産省におきましては、生活産業局の紙業課が業界と折衝いましまして、指導価格といましまして七十五円ないし八十円という価格を設定したわけでございます。これが二月八日以降実施ということでございましたが、私ども文部省で直接全国の、これは全部ではございませんが、主要な都市にございまする国立大学の事務局を通じて調査いたしたところによりますと、二月十六日現在で七十五円、三月一日現在では七十三円というような価格になっておりまして、一月のピーク時に比べると若干下がってきた、こういう傾向でございます。  その他各品目につきまして、ただいま申し上げましたような、昨年の一月ないしは今年の一月の実態を把握いたしまして、これを通産省に連絡をし、その引き下げに努力してもらうように要請をし、通産省も、これを受けて各種の努力をされておる。その結果、一例でございますが、こうした価格の低下を見ておる、こういうことでございます。
  449. 山原健二郎

    ○山原分科員 この資材班を強化する。実際に学校現場では、いま言いましたように、下がったとはいえこれは高値なんですね。昨年に比べればずいぶん上がっているわけです。こういう状態の中で、勉学の条件というものもかなり切り詰めなければならぬという事態が起こっておることは現実なんですね。それに対して敏感に対応できる体制かといえば、私はそうではないと思うのです。だから、この資材班を有効に、ほんとうにフルに活用して、またそれに対応する都道府県における資材班といいますか、そういう連絡機関を設けて、紙が足らなければ紙を安く供給していくという体制というもの、これがほんとうに文部省にあるかといえば、私は、先ほどの数名の資材班、しかもみな兼任でしょう。これではできないのじゃないかと思うのですが、あなた方のほうは、これでまあまあ満足だというお考えですか。
  450. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 兼任者が多いわけでございますが、このための特別な定員というものがとれておるわけではございませんので、全省あげてこの仕事に取り組む、こういう気持ちで仕事をしておるわけでございます。仕事の量がたいへん多くて、とうていさばけないということであれば、省全体として適当な人員配置をし、必要な事務は処理していきたい、こういうふうに考えております。
  451. 山原健二郎

    ○山原分科員 現場の姿を十分把握していただいて、それに対応する体制というものをぜひつくってもらわなければならぬと思うのですよ。そういう点では、ほんとうにいま緊急な事態に対応するだけの、そういう文部省全体の迫力といいますか、そういうものが私は必要だと思うのですよ。そのことを指摘しておきたいと思います。  次に、学校建築の問題ですが、学校が建たないという事態が起こっています。去年は単価を一〇%引き上げましたが、事業量を一〇%縮小したわけですね。これは、そのために四十万平米というものが、自治体の計画が狂ってしまいまして、そして自治体は混乱し、学校は建たないという状態が起こっております。もちろん、この事業量を一〇%縮小したということだけがその原因ではないでしょう。たとえば用地の問題もありますし、あるいは工賃の値上がり、あるいは資材の値上がりというものもあると思いますけれども、自治体にとってみますと、四十万平米というものが縮小したということは、これはたいへんな混乱を引き起こしたわけでございます。四十万平米といいますと、大体標準規模の学校十八学級、八百十名といたしますと、基準面積が一つ学校で三千五百九十九平米、そうすると四十万平米の減少分というのは、学校数にしまして、私の計算では百十一校になると思います。百十一校を標準規模の八百十名の生徒数をかけますと、約八万九千九百十ということになりまして、約九万名の子供たちの入る教室というものが、この事業量減ということで起こってくるわけですね。これは単純計算ではもちろんきめられませんけれども、それだけの影響を与えておる、こういう状態でございますが、今年度はこれに対してどういう態度をおとりになるか、伺っておきたい。
  452. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 四十八年度の当初事業面積は四百四十万平米であったわけでございますが、四十七年秋ごろよりの建築価格の上昇に対応いたしますために、事業量を一〇%減少いたしまして、そのかわりに単価を一〇%上積みをするという措置を緊急に講じたわけでございます。その結果、御指摘のように、約四十万平米の事業量の減ということが結果として生じたわけでございますが、実際のこの事業量の減につきましては、御承知かと思いますが、公社、公団等が現実に建築いたしまして、それを後年度市町村が買収をいたします際に、その買収費について国が補助を出すという、いわゆる立てかえ施行という方式があるわけでございます。これは、現実に工事自体は進んでおり、校舎は建っておりまするけれども、それを町村が買収することを若干繰り延べまして、したがいまして、それは後年度の補助対象とするというような措置を講じますとか、あるいは地方の予算の債務負担行為という形である面積を振り向けますとか、あるいは現在先行整備というものをある程度行なっておるわけでございますが、こうした窮屈な時代でもございますので、先行整備の事業量を若干圧縮するといったような方法によりまして、四十万平米の減少に対応したということでございます。  したがいまして、現実の教育現場には支障がないように十分配慮はいたしたつもりでございますけれども、若干無理が生じておるような面もあろうかと思いますが、こうした事業につきましては、四十九年度予算の執行の段階におきまして、優先的に補助対象にするというふうに取り扱ってまいりたいというふうに考えております。
  453. 山原健二郎

    ○山原分科員 私の尋ねておりますのは、ことしは単価はどうするのか、そしてそれに応じて事業量を昨年のように減さないということにしろと、こう言っているのですよ。それはどうですか、いまのお考えは。
  454. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 そういうつもりでおります。
  455. 山原健二郎

    ○山原分科員 皆さんは九%単価を上げたいというお考えでしょう。去年のようなやり方であれば、また九%単価を上げたら九%事業量を減すということでなくて、これはがんばっていただきたい。それはほんとうに現在の単価というのは、いまの五万なんとかいうようなことではないのですからね。もう八万何ぼになっていますから、鉄筋の場合は。それに見合う単価にしてもらいたいのですが、少なくとも、いま単価を上げると同時に、その分の事業量を減すという昨年の轍は踏んでもらいたくない。だから、単価は上げる、事業量は確保していくということをお約束いただきたいのです。大臣、どうでしょうか。
  456. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 基本的には、お考えのとおりだと思います。ただ、経済情勢の問題がございますので、総需要抑制という場合に、他の部門では予算が計上されている額を、ことさらに繰り延べたりすることもあるわけでございます。四十八年度の場合には、他の部門が繰り延べられたけれども学校については、全部使うばかりじゃなしに、補正予算である程度の増額をしていることも御理解をいただきたいと思います。基本的には、気持ちは同じことでございます。
  457. 山原健二郎

    ○山原分科員 ぜひこれはがんばっていただきたいと思うのです。たとえば千葉市の例を見ますと、これは必ずしも多いほうの例ではありませんが、昭和四十八年の当初計画が七百五十教室ですね、鉄筋コンクリートで。四十九年四月に開設できない教室が三十八教室、これはもうプレハブでやらざるを得ないという状態です。三十八教室がプレハブですけれども、千葉市には現在二百五十教室のプレハブ教室があるのですね。それをプラスしますと、二百八十八のプレハブでしんぼうしなければならない。四月から子供たちはプレハブあるいは体育館の間仕切りというのに入るわけですね。その人数というのは、千葉市だけでも一万数千名という子供なんですね。大体全国で考えますと、私はちょっと総計はわかりませんけれども、二十万相当の子供たちがまともな教室へ入れないという事態が出てくるのではないかと思うのですよ。こういうことは絶対に起こさない努力というものが必要だと私は思いますので、その点では、単価の切り上げと事業量を少なくとも減さない。これは地方自治体が懸命になって要求しておるところでございますから、この点ではぜひ、いま文部大臣がお約束になったとおりがんばっていただきたい、こういうふうに思います。  さらに、もう時間がないのですが、用地の問題ですけれども、たとえば世田谷の中学校の用地がないということで、東京教育大学農学部の移転のあとにつくってもらいたいとかいう具体的な要求も出ています。さらに、国有地もずいぶん随所にあるわけですから、そういうものを学校に提供していくということは、これは地方自治体ではできない場合があるのです。文部省が積極的に国有地を確保していくということも必要だと思いますし、さらにまた大企業によって、埼玉はいま一番人口の急増地でありますけれども、一万三千ヘクタールというのが、いわゆる大手民間デベロッパーによって、もうすでに取得されております。この一万三千ヘクタールというのは、埼玉県全土の三・四%に達するものですね。それから東京都の場合にしましても、わが党の調査によりますと、大企業が取得しておる面積が二千百ヘクタールでございます。これは東京都全面積の一%、約四十万戸の住宅が建てられるだけの土地が買い占められておる、こういう状態です。  これらを解放していく、適正な価格で取得をしていけるような状態、これは地方自治体ではなかなかできないことです。これに対して国が、特に文部省が、今日の子供たちが間仕切りやプレハブで授業を受けなければならぬという事態、あるいは高等学校の敷地もないという事態を解消するために、この切実な要求に対してほんとうにこたえていく、こういう体制をぜひつくり上げてもらいたい、こう思います。簡単に、どうですか。
  458. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 用地につきましては、御承知のとおり四十六年度から国の補助金を支出しておるわけでございますが、四十九年度予算におきましては、単価を約一九%増額をいたしまして、従来平米二万一千円でありましたものを二万五千円にする、交付率も、従来五〇%でございましたものを六〇%に改善をする、総額といたしまして百九十五億円の補助金を計上いたしておるわけでございますが、ほかに地方債等によりましても、かなり多額の財源措置を講じておるわけでございます。そのほかに、ただいま御指摘がございましたように、国有地の児童生徒急増町村に対する無償貸し付けというような制度も、昨年度の国有財産特別措置法の改正によりまして可能になったわけでございます。  したがいまして、そうした施策を統合的に積極的に充実し活用をして、御指摘のような事態の解決に資してまいりたいというふうに考えております。
  459. 山原健二郎

    ○山原分科員 あと十分足らずでございますから、最後に、文部省の重要な審議会あるいは文部大臣の私設諮問機関というのがあるわけです。これは文部省の設置法に基づく審議会で、きょう資料をいただいたのですけれども、十八の審議会があるようです。この中に、いま国会で問題になり、また国民が非常な注目をし、政局の焦点となっておる企業の代表が相当数入っておるという問題です。  たとえば、文部省設置法に基づく十八の審議会の中には、財界の代表が十九名、その中には石油関係、鉄鋼連盟、日経連、経団連、こういうものが、中には審議会の性格によって入っていないところもありますけれども、審議会によって集中的に入っておるところもあるわけです。  さらに、臨時大学問題審議会の場合を考えて見ますと、この審議会の構成は十五名以内で、大学学長、教員、私学法人の役員、そしてその他大学問題に関し広い識見を有する者ということになっているわけです。ところが、こういう中にも、いま大学問題が重要な課題になっておる今日におきましても、たとえば鉄鋼連盟理事、経団連理事、三菱製鋼株式会社取締役会長、こういう方も入っております。これは一例でありますけれども、三菱製鋼といえば、やみカルテルで、昨年の十二月十一日に公取委より独禁法違反の疑いで勧告をされている団体であります。また、そのほかにも企業家そのものが、たとえばソニーの社長とか、ウシオ電機の社長とかいうような人々も入っております。審議会というものを見てみますと、あるいは共同石油、富士石油、鉄鋼連盟、こういう人がかなり審議会の中に入って、審議会そのものが、財界の介入というのが非常に強くなっている。閉鎖的であるというだけでなくして、今日、国民の指弾の前に立たされておる物価高騰、やみカルテル等の元凶がこの審議会に入っておる。私は、これが文部省一つの体質を示しておると思うのです。  たとえば石油連盟につきましては、山下通産事務次官の話によりますと、諸悪の根源である、石油連盟はたよりにできないということまで言われておる。国会でも証人喚問として要求されておる。こういう人が文部省の重要な方策を決定する、答申をする審議会に入り込んでいるという、この事実ですね、私はこれは非常に異常な姿だと思っています。これについては、文部大臣見解あとで伺いたいのです。  さらに、最もひどいのは、文部大臣の私設諮問機関である私学振興方策懇談会、これは昨年の十一月二十一日に発足しておりますけれども、十一月二十一日といえば、これは石油問題を端緒として物価高騰大狂乱の状態に入っておる時期であります。しかも、私学問題は今日最重要な課題となっているわけですね。教育問題における最重要な課題、私学助成をどうするかということは、もうこれは与野党含めて大問題になっている時期であります。この時期につくられた私学振興方策懇談会二十五名のうち、企業代表が実に六名、官僚出身者が五名、約半数に近い数がそのような者によって占められているわけであります。  例をあげますと、ソニーの会長さん、経済同友会幹事であります。近畿日本鉄道社長さん、観光ホテルその他をつくっておられる方であります。さらに西武百貨店社長さん、和光代表取締役、この方は経済同友会の幹事でございます。アラビア石油社長、この方は富士石油にも関係しておられます。石油連盟に所属をしているわけです。そうして鉄鋼連盟の理事であり、経済同友会の幹事、こういう方が二人も入っておるわけですね。  まさに今日の教育の最大の問題になっている私学問題の、その振興方策を決定するこの諮問機関の中に、実に六名の財界代表、しかも今日問題になっている石油連盟、鉄鋼連盟の代表がずばりと入っている。私はここに日本教育が閉鎖的、かつ、財界の声がそのまま直通で入り込んでくる要素があると思うのです。このことを私はどうしても改善しなければならぬと思うのです。審議会というのは、ほんとうに現場で苦しんでいる教育者や教育関係者、さらには父母、そういう者の声、教育学者の声、そういうものが練り上げられて反映するような審議会であってこそ、初めて日本教育を語るに足るわけです。それが、文部省のいまつくられておる審議会あるいは私設諮問委員会などの中身は、こういう構成になっておるところに、私は、日本教育が非常に重大な問題にしばしば直面する内容となっておると思います。さらにまた、この私学振興方策懇談会の委員長さんには、おそらく文部大臣が任命をされたと思いますけれども、林修三さん、元内閣法制局長官、この方は、私学に対する助成は、憲法八十九条違反である、もし助成をするならば、私学に対するきびしい統制を加えなければならぬという主張者であります。有名なそういう主張の一方の旗頭であります。そういう方が委員長になり、その中には財界の代表がずらりと顔を並べておる。こういう審議会のあり方が正しいかという問題であります。私は、ぜひこれは改めていただきたいということを要請して、この事実に対して文部大臣はどういうお考えを持っておるか、伺っておきたいのであります。
  460. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 文部省が設けております審議会等の現員が六百五十三名でございます。それに対しまして、経済界の方が三十一名でございますから、五%程度を占めているわけでございます。  私は、経済界の方々が、日本社会を充実発展させるために大きな貢献をしていただいていると高く評価をしているものでございます。同時に、経済界には私たちが耳を傾けるべき頭脳がたくさんある、こう思っているわけでございます。教育の問題だから、教育現場の人たちの考えだけを中心にしてものごとを相談していくという姿勢では、私は、大きな発展を試みる場合には、適当でないという気持ちを持っておるわけでございます。六百何人の中で五%というものは、私は決して多くはない。また、経済界の方々が非常に忙しい中で、特に時間をさいていだだき御苦労をいただいているわけでございまして、それに報いるようなことは何にもできないわけでございます。このために、非常な労力をさいていだだいていることに対しまして感謝しているものでございます。同時に、石油業界の代表とか、いろいろなことをおっしゃいましたが、業界代表という意味でお願いしているわけじゃございません。個人個人の頭脳をお借りしたいということでお願いをしているわけでございます。  私学振興方策懇談会でございますか、林修三さんがその座長だということについて御意見がございました。これも、いろいろな角度から頭脳を貸していただきたいというようなことで、林修三さんにお願いをしているわけでございまして、座長については、互選ということでおきめいただいているわけでございます。お一人の考えでものがきまっていくわけでございませんので、いろいろな考え方もあるほうが、私は公正な結論が出てくると思うのでございます。この人はこういう考え方だからというので頭から排除していくのじゃなしに、そういう考え方の人も、また違った考え方の人も、いろいろな考え方の人を審議会に集めてこなければならないのであって、審議会をつくるときから特定の考え方の人を排除する、特定の考え方の人を選定していく、経済界だからこれはとらないというようなことでは、私は、日本の進歩向上を期待することは困難ではなかろうかと考えるわけでございます。いろいろな考え方があるからこそものごとは進展していくのでございまして、ものごと考え方一つであれば停滞をしてしまう、こういう心配も持っておるわけでございます。経済界についての見方が、不幸にして若干山原さんと私との間で違いがあるようでございまして、この点は残念でございます。
  461. 山原健二郎

    ○山原分科員 いまの御答弁でございますけれども、私も教育関係者だけで審議会をつくれなどということを言っているのではないのです。二十五名のうち、六人という大企業の社長さんを並べる必要が一体どこにあるのか。しかも、文部大臣予算委員会に出られて、各委員の質疑あるいは参考人に対する質問を見られたと思うのですよ。ほんとうに偽りのことを言ってみたり、年がいって忘れたと言ってみたり、大事なことについては、原価の問題については言えませんと言ってみたりしながら、巨大な利益を、国民の苦しみの上にこの年末から今日まで、どれほどの利潤をあげてきたかということを考えましたときに、そういう人、しかも、私は通産事務次官の名前をあげましたけれども、まさに諸悪の根源といわれておるその企業の代表が、六名も何でこの中へ入らなければならぬのか、まさにどろぐつで文部省の中へ入り込んで、日本教育を壟断しておると言っても間違いではないと思うのです。もっと適切な人物を公然と選んで審議会をつくる、これが日本教育を正す道だということを私は指摘をしておきまして、私の質問を終わります。
  462. 奥田敬和

    奥田主査代理 次回は、明八日午前十時より開会し、引き続き文部省所管を審査し、午後は大蔵省所管について審査を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十五分散会