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奥野国務大臣 たいへん重要な問題を御提起いただいたわけでございます。
第一の問題につきましては、高等
教育懇談会で御議論いただいておりまして、大体の方向としては、
昭和六十一年には、同一年齢層の四〇%の方々を
大学に受け入れたい、その場合に、国公立の
大学と私立の
大学との比重をどうするかという問題が
一つございます。現在は国公立が一七%ぐらいで私立が八三%ぐらいです。もう少し国公立に比重を移すべきだ。戦後、国公立が三〇%ぐらい占めておったわけでございますけれ
ども、だんだんいまのように下がってきたわけでございます。三割とはいかないけれ
ども、とにかくある程度国公立の比重を高めるべきだ。そうしないと、地域間に格差が起こってくる。
大学が大都市に集中しているものだから、
進学率においても地域間の格差が激しいという
指摘もあるわけでございます。したがいまして、国公立でないとなかなかそういう均衡ある
大学の配置が困難じゃないかという議論も出ておるわけでございます。同時に、その場合にどういう部門にどれだけの
学生を受け入れるか、将来の
日本の姿を想定して、そして
大学の学部、学科を考えていかなければならないということになってくるわけでございます。そうしますと、いまのような
私立大学の認可条件に合っていれば、どんどん認可をしていくんだというような形式的な扱い、これは、やはりメスを入れなければいけないのじゃないだろうか。計画に沿って協力をしてもらえるような姿をとらなければいけないのじゃないだろうか。それは法律改正をも要する大きな問題でございますが、そういう問題全体にわたりまして、現に検討を進めておるところでございます。
それから第二に、経費の多額な私学について、どう考えているかということでございます。一番顕著なのは、医科
大学、歯科
大学だと思います。おそらく一人当たり二百五十万内外一年間にかかるのじゃないか、こう思うわけでございます。そうしますと、六年でございますと千五百万前後かかる、こういうことにもなってくるわけでございます。こういうような特に多額な部門になりますと、これは、もう進んで国公立で建設をしていくべきだ、こういう判断に立っているわけでございます。同時にまた、現在は、私学に対する経常費助成も、
大学が完成をして、完成後の模様も見て、真にこの
大学については経常助成を行なうべきだ、そういう
大学から助成を始めるんだということで、私立の医科
大学、歯科
大学も、設立後七年目から経常費助成をしてきているわけでございますが、私は、これを四十九年度、初年度から助成をすることに切りかえたいと考えているわけであります。特に多額の経費を要する
私立大学でございますので、一般の
大学とは変えまして、経常費助成は初年度からやっていく、こういうように改めさせていただきたい、かように考えているわけでございます。そのほかの
大学につきましても、いま申し上げましたような見地から経常費助成にウエートをつけていいんじゃないだろうか。若干いままでもそういう配慮で、早く専任教員の五割まで助成するというような
方法をとってきたようでございます。設備なんかの助成につきましても、特別の配慮が必要だろう、こう考えているわけでございます。
第三に、
入学金、
授業料等を通じて、教員格差の解消などに相当な金が要る、それはそのままでいいんだろうかというふうに伺ったと思います。私は、私学に対する
援助をどうするかということにつきましては、私学であれ、あるいは国公立であれ、その果たしている
社会的な役割りから見て、国民全体で幾ら負担すべきかという問題と、また
学校設置者自身が負担すべき問題と、二つに分けられると思うのであります。その果たしている
社会的な役割りから見て、国民の税金でまかなうべきだという部分は、国公立であれ、私立であれ、同じ態度をとるべきだと思います。その次に、設置者負担に属するものはどうまかなっていくのか、これは
授業料でまかなわれる部分もございますし、大いに先輩が応援したらいいじゃないかという問題もございますし、寄付金もございます。国公立の場合には税金ということになろうかと思います。この二つに分けて考えなければいけないんじゃないだろうか、こう考えておるわけでございますが、設置者負担に属するものについては、基本的には寄付金あるいは先輩の応援というものが得られない限りにおいては、私は
授業料の増額にまつべきだという判断をしておるものでございます。
授業料が一切増額になっちゃいけないというようなことではなくて、それだけの
授業料を支出しているが、受けている
学校教育の
内容がつり合っているかどうかというところに議論の焦点が向けられるべきだ。りっぱな
先生方をたくさんかかえ込むのなら、それなりに
学生あるいは父母が増額負担に応ずべきじゃなかろうかという
気持ちも持っているところでございます。
第四に、私学の本質に触れてお話がございました。私は、やはり財政責任は、私学それぞれが持っているんだ、こう考えているわけでございますが、いまの私学の姿を見てますと、何でもかんでも助成助成、私は、みずから気概をなくしておられるという
感じがいたします。それぞれの私学は、それぞれの建学の精神を持って、特色ある
教育をやってもらわなければ、私の
大学をつくっている意味がなくなってしまうんじゃないか。
学校当局者が何かサラリーマン化しておられる。やはり伝統ある建学の精神を受け継いで、りっぱに
学生を
教育していくんだ、人づくりに励んでいくんだ、そういう気概というものがあまり感ぜられないんじゃないだろうかという心配を、私は持ち続けているわけでございます。そういう意味合いもございまして、私は、私学に心を通わせたい、そういう私学にしていきたい、こういう念願を持っているわけでございます。
そういう意味で、
学校の先輩が
大学に寄付をする、そうしました場合には、いままでは十万円をこえる金額でなければ所得税の計算の場合の経費に算入されませんでしたけれ
ども、今回法律改正が成立いたしますと、一万円をこえる分が全部、所得税の計算の場合に経費に算入されることになります。先輩が自分の出身
学校のために、何がしかの御恩返しをするんだという姿勢、これは、やはり
学生と先輩との間に心のつながりを呼び起こすことができるんじゃないだろうかという
感じを持つわけでございます。反面、また、
学生の生活が苦しい場合、
学校当局が奨学
制度をつくって奨学金を貸与するという仕組みをとってくれるのなら、国のほうから所要の資金を提供しましょう、在学中は無利子、
卒業後は三分の利子でまかなえる資金を提供しましょう、事務費もまた補助しましょう、こう考えているわけでございます。同時にまた、医学、歯学のような場合には、相当な金額の
授業料になると思います。そういう場合には、たとえばでございますけれ
ども、奨学金を月十万円とされてもけっこうじゃないか。それだけの、奨学
制度を維持できるだけの資金を国のほうから提供したい、そして
学校当局がサラリーマン化しないで、親身になって
学生の生活のことを心配していく、こういう姿勢をとっていただきたい。
学校当局と
学生と先輩との間に心を通わせていきたい、そして建学精神にのっとった、特色のあるりっぱな人づくりをやっていただける私学にしていかなければならない、こう念願をしておるところでございます。