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1974-03-06 第72回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月六日(水曜日)     午前十時五分開議  出席分科員    主査 藤井 勝志君       井原 岸高君    奥田 敬和君       白浜 仁吉君    田中 龍夫君       安宅 常彦君    石野 久男君       上原 康助君    安井 吉典君       山口 鶴男君    瀬長亀次郎君       安里積千代君    和田 耕作君    兼務 井上  泉君 兼務 小林  進君    兼務 土井たか子君 兼務 八木 一男君    兼務 金子 満広君 兼務 北側 義一君    兼務 渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         科学技術庁原子         力局長     牟田口道夫君         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務大臣官房会         計課長     梁井 新一君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  分科員外出席者         防衛施設庁施設         部首席連絡調整         官       奈良 義説君         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         外務省情報文化         局文化事業部長 堀  新助君         文部省大学学術         局大学課長   大崎  仁君         文化庁長官官房         国際文化課長  角井  宏君         水産庁海洋漁業         部審議官    米澤 邦男君         通商産業省産業         政策局国際企業         課長      伊藤 寛一君         運輸省航空局審         議官      間   孝君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   田中 正巳君     白浜 仁吉君   赤松  勇君     上原 康助君   辻原 弘市君     石野 久男君   中川利三郎君     瀬長亀次郎君   安里積千代君     和田 耕作君 同日  辞任         補欠選任   白浜 仁吉君     田中 正巳君   石野 久男君     山口 鶴男君   上原 康助君     安井 吉典君   瀬長亀次郎君     中川利三郎君   和田 耕作君     折小野良一君 同日  辞任         補欠選任   安井 吉典君     赤松  勇君   山口 鶴男君     福岡 義登君   折小野良一君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   福岡 義登君     中村  茂君   小宮 武喜君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   中村  茂君     井上 普方君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     辻原 弘市君 同日  第一分科員金子満広君、第三分科員八木一男  君、北側義一君、第四分科員井上泉君、渡部  一郎君、第五分科員小林進君及び土井たか子  君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計予算外務省所管      ――――◇―――――
  2. 藤井勝志

    藤井主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算外務省所管を議題とし、政府から説明を求めます。大平外務大臣
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 昭和四十九年度外務省所管一般会計予算概要について御説明申し上げます。  同予算総額は一千二百五十億七十一万四千円でありまして、これを補正後の昭和四十八年度予算一千百二億三千百四十二万五千円と比較いたしますと、百四十七億六千九百二十八万九千円の増加となり、一三%の増加率を示しております。  また、前年度当初予算に対しましては三六%の増加率と相なっております。  申し上げるまでもなく、ますます流動的な様相を強めている最近の国際情勢、並びにわが国外交活動が多岐にわたり、量的にも増大している実情にかんがみ、今後わが国国際的地位にふさわしい責任を果たしつつ、わが国のため望ましい国際環境の実現を目ざし、開発途上国に対する経済協力充実強化し、流動する国際情勢に機動的に対処し得る外交実施体制を整備し、国際理解の促進、対日イメージ向上のための広報文化活動強化海外子女教育充実強化を中心とする在外邦人生活環境の整備のための諸施策に、重点的に配慮を加えた次第であります。  これをもちまして、外務省関係予算概要について説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。  なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査において会議録に掲載せられるよう御配慮願いたいと存じます。
  4. 藤井勝志

    藤井主査 この際、おはかりいたします。  ただいま大平外務大臣から申し出がありました、外務省所管関係予算の主要な事項につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤井勝志

    藤井主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  6. 藤井勝志

    藤井主査 以上をもちまして、外務省所管についての説明は終わりました。
  7. 藤井勝志

    藤井主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜わりますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、答弁はできる限り簡潔明瞭にお願いいたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  8. 石野久男

    石野分科員 まず最初に、きょうの新聞を見ますと、日中航空協定は、来週から北京で本交渉に入る見通しが立ったように報ぜられておりますが、一日も早くそのようになることを念願しておる者の一人として、その間の事情を、可能な限りひとつ詳細にお述べいただきたいと思います。
  9. 大平正芳

    大平国務大臣 日中航空協定は、日中共同声明第九項に締結を予定されておる実務協定でございます。そして日中間実務協定の中におきましては、最も広い関心を呼んでおります、いわば象徴的な協定であると言えると思います。  したがいまして、政府といたしましては、早急に締結方を心組んでまいったわけでございますけれども、これに関連いたしまして、日台路線、この日台路線は、日中航空協定そのもの内容にならないものでございますけれども、日台航空路線を、日中正常化後の状況のもとでどのように維持してまいるかということにつきまして、昨年来いろいろ検討を加えてまいったわけでございまして、ただいま台北におきまして、民間レベルにおきまして、民間協定の形でこれを維持すべく交渉が開始されておるわけでございます。これと並行いたしまして、本協定自体交渉も進めてまいることが政府責任でございますので、ただいまその準備を急いでおるところでございまして、近く本交渉を開始いたしたいと考えておる次第でございます。  政府といたしましては、中国との間の政府間協定によりまして日中航空協定を取り結び、日台間の航空路の維持は民間協定の形でこれを維持してまいる、この両方の要請を両立させてまいるべく、最善の努力をいま傾けておるわけでございます。  その内容について御説明申し上げるのが、本来の任務でございますけれども、ただいま交渉中の案件でもございますので、この内容につきましての御説明は、交渉中は、しばらくお待ちをいただきたいと考えております。
  10. 石野久男

    石野分科員 大臣が、交渉内容についてしばらく待っていただきたい。それは外交交渉ですから、一応、聞きたいところですが了といたしますが、一つだけお聞きしておきたいことは、一昨年の共同声明の趣旨もありまするし、もうすでに共同声明を出してから一年も経過していることですから、可能な限り今国会に提出されて、政府間協定の批准が成立できることを期待したいのですが、大臣としては、それに対する可能性についての見通しは、どのようにお持ちになっておられるかということだけ、一言聞いておきたいと思います。
  11. 大平正芳

    大平国務大臣 ぜひとも今国会日中航空協定を御提出申し上げて、御審議をいただきたいと思っております。
  12. 石野久男

    石野分科員 そのように期待いたします。  昨日の新聞で、メジャーから日本に対する石油の供給は、三月以降二五%削減というような通告があり、それに関連して内閣でも、総理関係閣僚との間にいろいろ協議をなさったそうでありますが、内外の石油資本わが国に対して、いろいろな意味におけるそういう圧力を次から次へかけてくるだろうし、特に、今度のメジャー要請というのは、田中内閣物価政策に対してまつ正面からの挑戦をかけてきたものだとさえ私は思います。特に、この問題は経済外交との関係もありまするので、私はこの際外務大臣経済外交側面から、こういう問題に対してどのように対処するお考えでおられるか伺いたい。  特に、昨年来中近東に、アラブ諸国に対して、内閣はしばしば閣僚を派遣する等のことをしていることもありまするので、この問題と関連して、中近東アラブ外交についての大臣所見も、この際聞いておきたいと思います。
  13. 大平正芳

    大平国務大臣 外交基本は、国と国との間の友好親善関係信頼関係理解を深めて、それを永続的に推持してまいることが基本でございまして、対アラブ外交も、その例外では決してございません。しかし、いま御指摘のように、アラブ外交には、資源を供給する側と受ける側という立場が加わってきておるわけでございます。  資源につきましては、最近の姿勢といたしまして、資源保有国が、その保有する資源に対する主権を主張される立場強化されてまいりまして、資源保有国が、その保有する貴重な資源の輸出を通じまして得た経済力を、その国の国づくりに充当していくというアスピレーションを持つことは当然の道行きであるし、われわれとしても、十分理解してかからなければならぬと思うのであります。したがいまして、アラブ産油国との外交におきまして、それらの国がそういうアスピレーションを持っておることを十分理解し、これに対しまして、わが国としてもあとう限りの協力を惜しまないつもりでございます。  第三に、しかしこの資源というものは、国際資本が所有し、あるいはその販売の領域を、販売機能を担当しておる部面がございます。したがいまして、そういうものに対するわが国経済外交のあり方といたしましても、最近の資源主権の主張と、そういう国際資本側機能が漸次変貌しつつある状況も十分見ながら、わが国利益を踏まえて、慎重かつ適実に対処していかなければならぬと考えておるわけでございます。  いわば資源小国であるわが国といたしましては、四方八方に神経を配りまして、細心にしてしかも周到な施策を用心深く展開いたしまして、わが国利益を守っていかなければならぬと考えております。     〔主査退席井原主査代理着席
  14. 石野久男

    石野分科員 各方面に気を配って、とにかくアラブ外交についての施策をしていこうという意味はよくわかります。  昨年来、三木総理中曽根小坂等閣僚アラブに参りまして、いろいろな経済的な協力援助のことを約束し、また先般は、国内においても副総理がいろいろの約束をしたようであります。その額は相当膨大なものになっておりますし、三木総理のことばをかりれば、副総理だけではないと思いますが、外交約束したことを守らねばいかぬということを前面に押し出していることからいいましても、昨年来このような約束事をしたことが、実態として本年度予算の中でどのようにこなせるのかということを、私ども非常に危惧しているわけです。     〔井原主査代理退席主査着席〕  そこで、この前外務委員会での御巫局長説明でも、概算約千二百億以上になるだろう、そういう話が出て、それは単年度じゃないんだから可能であるという話もありましたが、具体的に予算審  議にあたって、本年の予算の中でそれがどういう形でどのようにこなせるかという配慮がなされておるか、そのことを少し、概略でよろしゅうございますから、ひとつ各大臣のお約束したことを一応述べていただいて、そして総額はこれだけで、本年この程度実行されるのだということを、ひとつここで述べてください。
  15. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 まず、三木特使の御訪問の際の問題でございますが、エジプトに行かれました際に、スエズ運河拡張計画、これに対しまして第一期分三百八十億円というものを提供することをお約束されました。ただ、このスエズ運河拡張計画というのは、必ずしもすぐに始まるものではないかと存じますので、本年の予算の中に、そんなに大きな金額が出てくるとは想像できないかと思います。それから、商品援助及びプロジェクト援助として、その当時ははっきり金額がきまりませんでしたけれども、その後エジプトからハテム副首相が見えまして、その際お約束になりましたのが三百億円でございます。これは二年間にわたるという約束になってございまして、したがいまして、ことし実行に移されるべきものは、その半額の百五十億円になるかと思います。そのうち半分が商品援助で、商品援助は、普通約束が済みますと、これはいわゆる足が速いと申しまして、消化の速度が速くなってまいりますから、この七十五億円につきましては、本年の予算の中に入っておる、たとえば基金予算あるいは輸銀予算というようなものから使わざるを得ないことになると思います。プロジェクトにつきましては、どういうプロジェクトがあるか、まだ全然相談ができておりませんので、交換公文を結ぶ時期がかなりずれるといたしますと、今年の予算から来年の予算にわたるかもしれないというふうに考えます。  それからサウジアラビアにつきましては、これは技術協力のみでございまして、今後五年間に相当数研修員を受け入れたり、専門家を派遣したりするという約束をなさいました。これは、通常の技術協力予算の中に組み込まれているというふうに考えるわけでございます。  それからシリアにつきましては、シリアから戦災で被害を受けた製油所を建設してほしいという要求がございました。これにつきましては、まだ金額その他まだ何もきまっておりませんので、これから交渉してきめるという段階でございます。これはおそらく、政府借款民間借款との混合ということになると思いますが、それがはたして今年の予算の中に入ってくるかどうか、まだはっきりわかりませんが、入ってきても、こういうものは、最初の年のいわゆる実施分は非常に少ないのが普通でございますから、非常に少額であろうというふうに思います。  三木総理につきましては、以上でございます。  それから、中曽根通産大臣おいでになりましたときのお約束は、結局、イラクに対しまして、円借款及び民間信用、合計十億ドルでもって各種のプロジェクト実施するということを大体お約束になりましたが、これにつきましては、大体この十億ドルを、三対一、つまり四分の一だけは政府借款になるということで考えておられると思いますが、これもやはり、先ほど申し上げましたように、こういうプラント類実施にあたりましては、第一年度実施分というのは比較的少ないというふうに考えられます。  それから小坂特使ば、アルジェリアにつきまして百二十億円の電気通信関係プロジェクト実施円借款で行なうことをお約束になりましたが、この問題につきましては、なお目下話し合いを進めておるところでございます。そのほかに、モロッコ、ジョルダン、スーダン三カ国に対しまして、それぞれ三十億円ずつのやはり電気通信関係とか道路関係とかいうプロジェクト円借款の供与をお約束されましたが、まあ、これもやはり同じような事情にあるかと思いますが、全体として金額はあまり大きくございません。  それらが、三人の大臣等おいでになりましたときのお約束でございます。  一方、本年度のと申しますか、四十九年度予算を見ていただきますと、経済協力、これは全部円借款のことを申し上げているわけでございますが、技術協力等につきましてはその他こまかいものがありますが、これは、大体OTCAの予算として組みましたものの中から、十分にまかなえる程度の約束であろうと思っておりますが、基金輸銀のいわゆる政府借款のための昭和四十九年の、つまり原資と申しますか、につきましては、双方合わせまして約二千五百億円ございます。これを、先ほど来申しておりますように、第一年度につきましてはまだかなり少額でとどまると思われますので、その中から、十分に使っていけるだけの分量になるかと存じております。
  16. 石野久男

    石野分科員 いま局長からの説明を聞くと、三木総理をはじめ三氏がいろいろと約束したことが、年度内に具体的になるのはせいぜい百億円そこそこですね。七十五億と、それにわずかずつのものが、まだそれもきまるかきまらないかということで、こういうことだと、非常にかけ声は勇ましかったけれども、年度内には、具体的な経済協力なり援助というようなものは、アラブ諸国に対して出てこないということになろうかと思うのです。外交の実績というのは、二年、三年先の期待もありますけれども、今日の情勢から見ると、これでは具体的に、アラブ諸国との間の話し合いがうまくいく可能性を持つかどうかということを、実は私は危惧します。もっと何か手だてがあるのではなかろうか、特に経済援助側面で。  大臣は、これだけ、百億円ですね、これはドルじゃありませんから、この百億円ぐらいのもので、三大臣が動いた成果が実際にあったと見られるのかどうか、所見をちょっと聞いておきたいと思います。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 日本アラブ諸国との関係は、きわめて良好でございます。わが国アラブ政策に対する理解も相当浸透し、また、かの国々におきまして評価されておるわけでございまして、いま非常に関係が悪くて、それを改善しなければならぬというような状態ではないと私は考えておるわけでございまして、先ほどの御質問にもお答え申し上げましたように、長い永続的な信頼理解関係を深めてまいる、そして資源保有国側国づくりアスピレーションわが国協力するということは、相当息の長い仕事でございまして、従来もやってまいったわけでございますし、今度お三方に行っていただいてお約束いただいたこともその一環でございまして、いま局長から御説明を申し上げましたように、内容が固まり次第、そのフォローアップには遺憾のないように私どもやってまいって、三木総理が言われるように、約束したことは果たさなければならないということを、基本にして処理していきたいと考えております。
  18. 石野久男

    石野分科員 いまの大臣所見からすれば、初年度準備が必要だから、膨大な約束をしてもなかなか実行に移りにくいことはだれでもわかることですが、これが五年も十年もというようなことでは、おそらく意味はないだろうと思います。したがって、やはりアラブ外交実行化を期待するという面からいえば、少なくともことしは十分でなくとも、来年あたりにはそれはもう具体的に、しかも完全に消化されるように、まあ、長期にわたるものはまた別ですけれども、しかし、短期的に成果をあげられるものはおそらく過半を占めるだろうと思いますから、そういうような考え方でこれは進められなくちゃならぬと思いますが、大体政府考え方としては、この約束はどのくらいの年度で果たすような見通しを立てておられるか、考え方だけちょっと聞かせてもらいたい。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 それはプロジェクト性質によりまして、商品借款のように二年間でやってしまうものもございますし、五年、十年、長期にわたるものもあるわけでございまして、その計画性質いかんにかかる問題でございます。  ただ、石野さんの御指摘のように、できるだけ早く、だらだらしないで実行に移すことは必要だと思うのでございます。ただ、その点につきまして、政府も鋭意つとめておるわけでございますけれども、受け入れ国側のほうで、プロジェクトの発掘、それからその実施に十分の経験、知識が乏しい場合もあったり、整わない場合もあったりいたしまして、こちらの事情だけではいけないものもあります。それからまたこちらでも、一々吟味を各省の間でやっている間に相当時間を食う例がございますので、総理の御命令によりまして、それを促進する措置をいま講じておるような次第でございまして、仰せのように、せっかくお約束をいたしたことにつきましては、できるだけ早く実行に移せるように配慮してまいりたいと思っております。
  20. 石野久男

    石野分科員 時間がありませんので、あと一問だけにさせていただきますが、昨年の十一月二十二日に官房長官の談話で、パレスチナ問題についての政府所見が出ました。その後、やはり中近東についての政府の積極的な態度はよくわかるし、それからただいまの答弁でも、アラブ外交については非常に熱意を燃やしているということもよくわかります。  ところが、予算の中で、私は、どうもやはり政府中近東に対する熱意がどんなものだろうかということを感じる点で、一点だけ申しますと、外交政策樹立に必要な経費というのがありますが、これは大体アジア諸国及び米州諸国、欧州、大洋州諸国、それから中近東アフリカ諸国四つに分かれております。この四つに対する予算配分を見てみますと、アラブは非常に冷遇されているわけですね。私の計算でいくと、大胆の先ほどの説明では、予算は大体、来年度二二%補正後の本年度増加しているし、当初予算に比べれば三六%の増加した予算を盛っているわけですが、この外交政策樹立についての予算を見ますと、この四つに分かれた部分の中で中近東アラブに対する本年度予算配分は、わずか二・二%なんです。たった二・二%です。それから、昨年から今年にかけて増加した部分が、先ほど申したように、当初予算については三六%も増加しているのですが、この地域に対する外交政策樹立に必要な経費はたった一・四%。こういうような体制で、中近東に対して熱意のある外交が組めるのだろうかどうだろうかということを、私は疑義を持ちます。時間がありませんから、これはあとで調べていただくと、よくわかると思うのですよ。  こういうような配分で、実はやります、やりますと言っても、実態はそれに即応するような体制にはなっていないと思うので、こういう配分のしかた――もちろんこれはいろいろな使い方の道があります。民間のなにに対する協力だとか何かあってでしょうけれども、しかし、あまりにも予算配分が少な過ぎるというふうに思うので、これはひとつあと検討の上で、予算配分方について留意をしていただき、手を加えていただくようにしていただく必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに思います。これは大臣から、ひとつ所見だけを聞かしてもらいたい。
  21. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 事実だけ説明させていただきます。  この中近東アフリカ諸国に関する外交政策樹立に必要な経費といいますのは、説明に資料として差し上げたところに書いてございますように、アフリカ協会補助金とか中東調査会補助金とか、あるいは必要な庁費事務費の系統でございまして、そういうように、先ほど申しました協会調査会というような民間の財団が育っていないために、ほかの地域に比しまして、一見非常に少額に見えるわけでございますけれども、たとえば、これは特に本省の経費でございまして、在外につきましては、いろいろな経費配分中近東、アフリカに重点的に配分する所存でございますし、それから在外公館の設置、定員の増強につきましては、在外公館で来年度予算でお願いいたします新設の大使館は、アラブ首長国連邦とジョルダン、両方とも中近東の所在でございますし、定としては配置を考慮しております。  詳細については、後ほど、機会がありましたら説明いたしたいと存じます。
  22. 石野久男

    石野分科員 それでは、一つだけ聞いておきますが、本件について、アラブ中近東に対しての民間の、たとえば友好交流協会というようなものが具体的に出てまいりました場合には、外務省としてはそういうものに対して、他の地域と同じように、いろいろな協力体制を組むということだけは約束できるんですか。
  23. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 非常に健全なる、そしてまた効果的な団体の活動に対しましては、そのつど事業内容を見まして、考慮していきたいと存じます。
  24. 石野久男

    石野分科員 終わります。
  25. 藤井勝志

  26. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 大臣に、まず最初にお尋ねしたいと思うのですが、本年の十月、IPU、列国議会同盟の総会が日本で開催をされます。当国会がその会場になって東京会議が開催されるわけでありますが、すでに御案内のように、このIPU、列国議会同盟には九十一カ国が加盟をいたしておりまして、そのうち活動を停止しております国が十三でございまして、現にIPUに加盟をいたしまして積極的な活動をいたしております国が七十八カ国であります。  この七十八カ国の中に、大臣も御存じだと思いますが、わが国と国交が樹立していない国も含まれておるのであります。具体的に言えば、朝鮮民主主義人民共和国であります。しかし、IPUを通じまして、国民の代表である各国の国会議員が積極的に交流し親善を深めていくということは、私は、世界の平和にとってきわめて重要な問題ではないかと思います。したがいまして、この入国管理につきましては法務省の所管ではありますが、しかし、法務省とも御相談をされる外務省、また、わが国外交をつかさどっております外務省としては、このわが国と国交を樹立していない国、しかし、現にIPUに加盟しておられる国もある。こういった国の国会議員団のわが国に対する入国、さらには各種の便宜供与につきましては、やはり積極的にやっていただく必要があるだろうと思うのでありますが、まずこの点を、心がまえとして聞いておきたいと存じます。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 山口先生御指摘のとおり、これは法務省の所管でございますから、私からお答え申し上げるのはいかがかと思いますけれども、本来、法務省のほうに入国申請がございまして、外交的な関係がある場合、私どもに御協議をいただくことになっておりますので、その時点で考慮させていただきたいと思いますが、私どもといたしまして、いま仰せのように、できるだけ前向きで対処してまいるべき性質のものと思っております。
  28. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 前向きで検討される、十分御検討いただきまして、せっかくIPUに加盟しておられます国の国会議員、十月にはすべてわが国に迎えまして、そして国民外交としての実をあげることができますように、強く御期待を申し上げておきたいと存じます。  そこで、次にお尋ねしたいのは、ただいまわが党の石野議員から、中近東に対する予算配分等が軽少に過ぎるのではないか、わが国外交中近東を軽視しているのではないかという趣旨のお尋ねがあったわけでありますが、私も本年の一月十日、前尾衆議院議長と一緒にアラブの国々を回りまして、特にエジプトの人民議会の招請と、クウェートの国民議会の招請によりまして、エジプト、クウェートの国を回ってまいりました。ちょうど私が途中バンコクに立ち寄りました際に、田中総理がタイを訪問中でございまして、いろいろとタイの学生諸君との間でトラブルがあったということを、飛行場でお聞きをいたしました。また帰りにバンコクに寄りましたところが、田中総理がインドネシアを訪問せられまして、インドネシアをお立ちになるころ、ちょうど私どもバンコクに立ち寄りまして、インドネシアの状況につきましても、タイの在外公館の方から、状況をいろいろお伺いいたしたのであります。当時、田中総理と同行されました新聞記者諸君からも、その後タイあるいはインドネシアの国々における状況等も、いろいろお伺いする機会もあったわけでありますが、私は中近東、そしてまた田中総理が東南アジアの国々をお回りになった状況等をお伺いいたしまして、わが国の在外公館が、当該の国の民衆の方々の心を理解するという点に欠ける点があるのではないだろうかという感じを、実は持たざるを得なかったのであります。  具体的にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、これら東南アジア在外公館に勤務しておられます方々、その館員の方々のうち、現地のことばを十分お話しになり、また現地のことばで印刷されました新聞、そういうものを十分にお読みになれる、そういう能力を持ったお方は、一体どのくらいおるものでございますか、具体的な数字をあげてひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
  29. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 いまお尋ねのうち、アジア諸国について御説明申し上げますと、現在、まず外務省全体といたしまして、語学の研修生その他ということで、英仏語以外のそういう特殊の国のことばを勉強させて役に立つと思われる人員が、中国語については百人、韓国語については十二人、タイ語については五人、ビルマ語につきましては五人、ベトナム語につきましては六人、インドのことばにつきましては十一人、シンガポールにつきましては三人、インドネシアについては十五人、その他二十六人、合計百八十三人でございます。  しかし、これは外務省員全体の人数でございまして、これを本省と在外にそれぞれ分けておるわけでございますが、これを在外公館の地域に何人ずつ配置しているかということにつきましては、いまここに館別の資料を手元に用意しておりませんけれども、大体、私どもの考え方といたしましては、在外と本省というものを半分ぐらいの人数で異動をさせておるわけでございますので、百八十三人のアジア語の職員を、大体九十人ずつということをめどといたしまして、そのときの人事の都合がございますので、そう理想的にはまいらないわけでございますけれども、そういうように配置しているわけでございます。  したがいまして、たとえば五人というタイ語の職員がおります場合に、理想的には在外のタイ大使館に三人、本省二人というような配置になるわけでございまして、それぞれ、先ほど申しました各国語につきましては、そういうことを理想といたしまして人事配置をしている次第でございます。
  30. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 たとえばタイですね、館員の方が二十九人おられる。二十九人のタイの大使館には勤務しておられるようでありますが、いまお答えがありましたように、タイ語をお話しすることのできる方はわずか三人、そのうちのお一人は研修生である。研修生を除けばわずか二人。やはり問題のございましたインドネシア、二十九名の館員の方がおられるうち、インドネシア語をお話しになれる方は、研修生を含めてわずか四名、研修生を除けばわずか三名、こういう状態ですね。  田中総理とともに行かれました記者諸君のお話を聞いたんですが、現地の新聞はもとより、現地の学生諸君が、大きな字を書いた簡単なパンフレットを日本新聞記者諸君に渡したそうです。それで大使館員の方に、これは一体何て書いてあるんだ、こう新聞記者の方が聞いたところが、いや、私は全然わからぬ。それが、新聞のようなこまかい字がたくさん書いてあるようなものじゃない。このぐらいの紙に大きな字を少し書いたパンフレットですね、それですら、館員の方は、何人かおられたそうですがわからぬ。やはり話せる人間に聞いてみなければわからぬ、こういう状態だったそうです。大臣、こういう状態では、やはりインドネシアの国民、インドネシアの学生諸君の気持ち、感情、あるいはタイの国民、学生諸君の気持ちというものは、私は、在外公館が把握することは困難じゃないかと思うのですね。  こういう点について、私は、もっとやはり外務省が、予算を重点的に配分することも必要でしょうが、同時に、こういう現地のことばを話すことのできる能力を持った方々をより多数養成する。何か英語とフランス語をしゃべる方だけが大使になってぐるぐる回る、こういった東南アジア、中近東のことばを話すことのできる方は、いつまでたってもうだつが上がらぬというような状態では、私は、東南アジア外交あるいは中近東外交を推進することは不可能じゃないか、かように思うのですが、いかがですか。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 お説ごもっともでございまして、われわれといたしましても、それに気づかないわけじゃないんでございまして、いま鋭意現地語の要員の養成につとめておりまするけれども、いま仰せのように、たいへんな手不足の状態であることは御指摘のとおりでございまして、この改善には、一そう努力しなければならぬと思います。
  32. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 さらに具体的にお尋ねしたいと思うのですが、この現地語をお話しになれる方のうち、キャリアの方は一体何人なんですか。百八十三人という大まかなお話がありましたが、このうちキャリアの方は何人ですか。さらに具体的に、インドネシア、タイ、ここで現地語をお話しになれる人の数は私、指摘をいたしました。このうち、キャリアの方は一体何名でございますか。
  33. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 私が申しました百八十三名という数字は、これは中国語以外には、先生のおっしゃる意味でのキャリアという者はいないわけでございます。中国語の場合には、この百人の数字の中に、キャリアが入っておりますけれども、また、先ほど申しました韓国語にはキャリアがいるわけでございますけれども、それも、実は正直に申しますと、いわば非常に少ないケースでございまして、ほかの語学につきましては、準キャリアと申しますか、語学研修生というものと、中級試験を出たものと、そうでないものと、三つのカテゴリーになるわけでございます。しかし、ここに百八十三名と申しましたのは、外務省の人事当局におきまして語学の要員としていわば記録されている者でございまして、それ以外にも、キャリアで自分でそれぞれのことばをある程度勉強しているという者は、この数字以外になるわけであります。
  34. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 まさに、これでは大臣、東南アジア外交軽視といわれてもしかたがないのじゃないですか。キャリアは英語とフランス語しかしゃべれぬ。あるいはロシア語、中国語の方も若干おるようですけれども、それは別として、結局、いまお話のあったように、現地語をしゃべれる方は、外務省の幹部職員ではない。しかも、そういう方々がきわめて限られた数だけ東南アジアの在外公館におられるという状態では、私は、今回のような田中総理が東南アジアを訪問して、それはわが国外交わが国の東南アジアの国々に対する経済的な姿勢の欠陥もありましょうが、同時に、やはり外務省の東南アジアの国々に対する基本的な姿勢、そういうものにやはり欠くるところがあったのじゃないか、かように私は指摘をいたしたいと思うのです。いかがですか、その点は。
  35. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 先生御指摘の問題点につきましては、私どものほうも問題のあることを承知しておりまして、そういう問題に対します、いろいろな対策と申しますと大げさでございますけれども、検討を開始しております。  第一に、私どもいま即時実行できるということは、語学研修生でそれぞれの語学に通ずる、特に東南アジアの国の語学に通じ、しかもその国の事情をよく知っている、たとえば語学研修員、このうち優秀な者を上級と同じ扱いにするということ、それからもう一つは、中級試験と申しますのは、従来語学とか特定の地域に専門化されていない、一般の職務に従事していたわけでございますけれども、この中級職員のうち、非常に語学にすぐれた者をある一定地域の語学の研修を命じまして、それと同時に、その地域の研究をさせるということでもって、いわば地域専門家にいたしまして、その成績によってはそれを優遇して上級扱いにする。それから第三に、上級試験で受かった職員は、先生御指摘のとおり、日本の学校の制度にもよるわけでございますけれども、在来、英語とかフランス語とかそういうことばを勉強して、それで試験を受かる人が圧倒的に多いわけでございますけれども、これを外務省に入れましてから、アラビア語とかあるいは東南アジアのことばを勉強させて、そうして、上級試験ではあるけれども、そういう東南アジアその他の国の語学あるいはその国の情勢に通じたその国の専門家にするということもいま考えておりまして、初めの第一、第二の考え方につきましては、もう実施の段階に入っているわけでございます。
  36. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 東南アジアのお話を聞きましたので、次は中近東の実情をお尋ねしたいと思うのですが、中近東のほうはアラビア語が主だと思いますが、こういった現地語、ペルシャ語等もあると思いますが、話す能力を持っておられる方々は、一体何人でございますか。
  37. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 アラビア語の語学の専門家ということで記録しておりますのが、全部で五十三名ございます。
  38. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 ペルシャ語その他さらに、同じ中近東でもアラビア語以外のことばがあると思いますが、それを総括して何人ですか。それから、その中でキャリアは一体何人でございますか。あわせてお聞かせをいただきます。
  39. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 アラビア語以外のことばにつきましては、いま数字はここにございませんけれども、あと十名程度であると思います。キャリアにつきましては、アラビア語につきまして、現在九名でございます。
  40. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 それにつきまして、若干補足いたします。  アラビア語は、ただいま申し上げましたように五十三名でございます。そのほか、ペルシャ語九名、ヘブライ語二名、トルコ語八名、中近東につきましてはそういうことでございます。
  41. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 私の参りましたクェート、ここば五名のうち、アラビア語を話す能力のある方が二人ですから、率は高いようでありますが、たとえばアフガニスタンの大使館のごときは、現地語を話せる方は一人もおらない。イスラエルの大使館はヘブライ語だと思いますが、研修生がただ一人。イランの在外公館におきましても、現地語をお話しになれる方ば半数以下という状況のようであります。こういうことでは、やはり中近東アラブの心を理解するということにおいても問題があるのではないかと存じます。  そこで、文部省来ておると思うのですが、文部省にお伺いしたいと思うのです。東京外語と大阪外語、二つの大学が、いわば国立大学として語学専門の大学だと称しておりますが、いまここで問題になりました東南アジア、中近東のことばを教える学科というのはどの程度あり、どの程度の人員を毎年学生として入学させているわけでございますか。その点お聞かせいただきたいと思います。
  42. 大崎仁

    ○大崎説明員 先生御指摘のように、現在、国立大学で外国語を専門に教えております大学として東京、大阪の両外国語大学があるわけでございますが、そこにおきます東南アジア関係の語学の学科数及び入学定員を申し上げますと、インド、パキスタン語、これが二学科、両大学合わせてでございますが、二学科で六十五名、インドネシア語が同じく二学科で四十名、それからタイ、インドシナ語が二学科で三十五名、ビルマ語が一学科で十五名、アラビア語が二学科で三十名、ペルシャ語が一学科十五名といったような状況でございます。
  43. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 朝鮮語というのは、全く学科はないのですか。
  44. 大崎仁

    ○大崎説明員 失礼いたしました。広くアジアということで申し上げますと、中国語が二学科で百十名、朝鮮語が一学科十五名、モンゴル語が二学科で三十名ということであります。
  45. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 とにかく、こういった東南アジアの国々のことばを教育する学科は、数も少ないですし、採用する学生の数も非常に少ないということは、問題ではないかと思います。聞くところによりますと、アラビア語のごときはいまだわが国に字引きがない、日本・アラビア辞典というものはないというふうに聞いておるのですが、いかがですか。
  46. 大崎仁

    ○大崎説明員 たいへん不勉強でございまして、その点、ただいまお答えできる状態ではございません。
  47. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 正確な資料があるわけではございませんが、アラビア語の字引きはあることはあるのですけれども、きわめて不完全だということでございまして、ただいま本格的なアラビア語の辞典をつくりたいという具体的な動きがございますので、内容検討いたしまして、外務省でも、もし可能であれば協力したい、かように考えております。
  48. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 そういう状態は非常に残念ではないかと私は思うのです。特に、石油危機を契機にいたしまして、そうでなくてもわが国外交が第三世界との親善を深めていかなければならない、こういうときに、あることはあるが、どうもきわめて不完全なものだということでは、たいへん残念ではないかと思います。やはり日本・アラビア語の辞典ぐらいは、外務省なりまた文部省なりが、ある程度政府として資金を出しても権威あるものをつくっていく、そういう努力が必要ではないかと私は思います。  先ほど来お話がございましたように、東南アジアの在外交館におつとめになる方々で、現地語をしゃべれる方は非常に少ない。しかもキャリアは絶無である。中近東の在外公館では、六十数名程度現地語をしゃべれる方はおられるけれども、キャリアの数たるやわずか九名程度だという状態では、私は、やはりわが国外交の姿勢として非常に問題があると思います。  お話によりますと、ノンキャリアの方であっても現地語をしゃべれる方々の中から上級職試験、いわばキャリアと同じ待遇に抜てきをしていくというお考え方も示されたわけでありますが、そういう点は、ひとつ積極的にやっていただきまして、そうして、東南アジアあるいは中近東の在外吏館へ行っても、大使をはじめとする幹部職員は、現地語がさっぱりわからぬというような状態を一日も早く解消していただきたい。また、そういう具体的なあらわれとして、これら東南アジア、中近東のことばの辞典についても、積極的にこれをつくるように、国としても援助をしていくということは、私は緊急の課題ではないかと思います。この点に対する大臣の御所見を承っておきましょう。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん熱心な、かつ、建設的な御提言をいただきまして、感謝いたします。そういう方向に沿いまして、鋭意努力してまいるつもりでございます。
  50. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 時間が少しあるようですが、けっこうです。大臣のただいまの決意を聞きまして、ひとつ積極的な東南アジア外交中近東外交を展開いただきまして、そしてそういった国々の心を在外公館がつかんでいないために、無用なトラブルを起こすことのないような体制を、一日も早く確立をしていただくように強く要請をいたしまして、質問を終わっておきたいと思います。
  51. 藤井勝志

    藤井主査 井上泉君。
  52. 井上泉

    井上(泉)分科員 大臣の、政治家として最も自信に満ちた、そして活気のあることばを拝聴したのは、日中国交回復の際の共同声明、並びにことし中国から帰られたときの記者会見の談話でありますが、私は、大平大臣の真価値を発見したような感じを強く抱いたわけであります。  ところが、それにもかかわらず、何かしら外務省の仕事全体がもたもたしておるということは、日中の国交回復という国民の期待を背負って、これから日本の歩むべき、いわゆる正義の方向に政治家としての決着をつけたという自信とはかけ離れたような、そういう印象を私は受けてならないわけであります。  特に、最近におきまする日中の航空協定の問題につきましては、外務委員会内閣委員会、記者団の会あるいは自民党の総務会等々、断片的に大臣の航空協定に対する所信を承ったわけでありますけれども、何かそれは、新聞記事等でありますので、明確な一貫性がないようにとれてならないわけであります。その点につきまして、昨日の内閣委員会でも答弁をされておるということを新聞では承知をしたのでありますけれども、この分科会におきまして、いままで大臣が各地で述べられた航空協定に対する所信について、いま一度明確に承っておきたいと思います。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 政府といたしまして、なすべきことはなすべきときにしなければならぬ責任があるわけでございます。日中国交正常化後の状態を踏まえて、日中間の各種実務協定を急いでやらねばならぬ責任を持っておるわけでございまして、その熱意につきましては寸分も変わっていないわけでございます。これを実行してまいるにあたりまして、問題の背景自体にたいへんむずかしい問題がないとはいえないわけでございまして、国内の調整等に相当時間がかかりますことも、井上さんにおかれて御理解をいただけると思うのでございますけれども、政府といたしましての決意は変わっていないし、変わってならないものと私は思っております。
  54. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、その政府の決意として、大臣としての決意は変わっていないということは、きのう内閣委員会で、近く中国側と本交渉に入る、早期に協定締結し、ぜひこの国会審議をしてもらいたいと言明をした、それから外務省も、一両日中に北京大使に本交渉準備に入るよう訓令をすることになった、この新聞記事に間違いないですか。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 間違いございません。
  56. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、大臣が政治生命をかけたともいうべきこの日中国交回復の当事者であり、国民的なかっさいを得たことでありますが、この国会審議してもらいたい、早期に協定締結をして、今国会審議してもらいたい、もう国会あと残すところ三月、四月とわずか二カ月でありますが、この間には何が何でもがんばり抜いてやってみようと、こういう決意を持っておられるのかどうか、その点、また伺っておきたいと思います。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりの決意で臨んでおります。
  58. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、決意が実行されなかった場合の大臣としての政治的な行動というものについてとやかく言うつもりはありませんけれども、少なくともこの日中の航空協定その他の実務協定等が締結をされ、日中の平和条約がつくられていくことによって、日本のみならず、中国、アジア諸国の平和友好関係というものが大きく前進をすると思いますので、ひとつ大臣も、いわば、まあ最近の新聞紙上にあるような、錯覚だとかあるいは読み違いだとかいうような印象を与えないように、私はこれについてのき然とした行動をお願いをしておきたいと思います。  そこで、私は大臣にお尋ねするわけでありますが、日本の国は、世界の各国から見てアジアの大国だとお考えになっておるのかどうか、そのことを、大臣の気持ちをお聞かせ願いたいと思います。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 大国であるか、小国であるか、中流国であるかというのは、問題のとらえ方によりまして見るべきものでございまして、GNPの大きさ、人口の大きさ等から見ますと確かに大国に間違いはございませんけれども、資源的に見ますと非常に矮小な小国であるということでございますので、一がいに、日本は大国であるとか小国であるとかいうことは断定できないのではないかと思います。
  60. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、確かに大国とか小国とかいうことを考えて日本外交政策というものはなすべきでない。やはり独立国としての日本であり、地図の面で大きかろうが、人口の面で大きかろうが、あるいはまたGNPで大きかろうが、やはり国と国としての、相互の独立、主権を尊重した、いわゆる対等、平等の外交関係を堅持をしていくということが日本外交の本来の姿でなくてはならないと思いますけれども、しかしながら、ややもすれば日本が経済大国であるというような印象の中に置かれておる。だから東南アジア諸国においても、田中首相の東南アジア訪問に寄せられたところのあの抗議のデモ等から見ても、私どもは、日本外交の方針というものが全く大国主義に根ざした、そういうふうなやり方でなかったかということを考えざるを得ないのでありますが、そういう点について大臣はどういう御見解をとっておられるのか、いま一度承っておきたいと思います。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 日本人が大国意識を持つ、持たぬにかかわりませず、開発途上国日本との間には、大きな経済的格差があることは厳然たる事実でございますし、その格差が年々歳々拡大しておることもまた悲しい現実でございます。そういう中にありまして、開発途上国の方々が日本に対してある種の感情を持つということは、そういう基本的な構造が改善されない限りはやむを得ないことと思うのであります。問題は、しかし、われわれ日本人の心がまえといたしまして、おごり高ぶった大国意識などは持ってはならないわけでございまして、仰せのように、独立国としての日本の名誉とか尊厳とか生存とか安全とかいうことにつきましては、き然たる態度で臨まなければなりませんけれども、事外交の処理にあたりまして、各国の方々と心の通う、理解の上に立って、互恵と平等という、永続性のある関係を築いていくように努力しなければならぬと考えております。
  62. 井上泉

    井上(泉)分科員 大臣のような大政治家に対しまして、まあ私のようないなかの陣がさ代議士がとやかく申し上げるのも御無礼かと思うわけですけれども、日本の国のアジア外交というものが、やはり大国意識の中に展開をされてきた、私自身そういう感じに受け取っておったわけですが、たとえば第四回の非同盟諸国の首脳会議、この首脳会議の諸決定について、大臣はこの諸決定をお読みになったか、あるいは承知をしておるのかどうか、その点……。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 拝見いたしまして、従来、非同盟会議のメンバーが毎回毎回増加してまいりまして、その世界に対する発言力も非常に強くなってまいったということは一つ感じます。それから第二は、従来の政治的な問題から、力点を経済の問題に漸次移しつつあるという感じを率直に受けておるわけでございまして、そういう傾向はわれわれとして理解もできますし、また同時に、十分考えておかなければならぬ課題であると思っております。
  64. 井上泉

    井上(泉)分科員 理解をし、考えておかねばということは、つまりそういう非同盟諸国の首脳会議で決定したことについて、そしてまた、大臣がいま要約して述べられた、従前の政治的なものからさらに経済的な友好関係を深めていくという方向にあるということについては、これを理解というか、むしろ私は歓迎すべき方向ではないか、こういうふうに思うわけですが、大臣は歓迎とまではいかないですか。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 それぞれの国がみずからの国づくりにつとめてまいるということは当然のことでございますし、そしてそれは自国だけの力じゃなくて、志を同じゅうする、立場を同じゅうする国々が一つの国際的な組織をつくって実現しようという傾向を持ってまいることもまた当然の成り行きであろうと思うのであります。この状態を歓迎するかどうかという問題でございますが、それらの国々が当然そういう動きを起こすことについて十分な理解を持つということでございまして、日本が歓迎しようが歓迎しまいが、それらの国々がそういうアスピレーションのもとで動きを起こすということでございますし、われわれは大いにそれを歓迎するぞと言うほど僣越な気持ちは持たないのでございまして、十分な理解を持って、それに可能な限り御協力申し上げるというのが日本立場ではないかと私は考えます。
  66. 井上泉

    井上(泉)分科員 歓迎と理解との違いにつきましては、ここでそれを追うていきますと時間がありませんので申し上げませんが、日本は昨年の石油危機のときに、どうもいままでのアラブの諸政策が間違っておった、こういう反省の上に立って、俗にいうアラブ寄りの外交姿勢というか、政治姿勢というものが打ち出されたことについては、これは大臣もお認めになるでしょうか。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 せっかくの御説でございますけれども、私は必ずしもそれには御同意できないのです。というのは、日本中近東政策がアラブ寄りに変わったと私は考えていないのでございまして、日本中近東政策というのは、中近東政策として正しい方向を目ざしておるようにわれわれは自負いたしておるわけでございまして、そのことが言いかえれば二四二号の解釈という問題、日本のとりました解釈がアラブの主張されておる方向に近いという客観的な判定はありますけれども、われわれはこれが正しいからやっておるのでありまして、油がこういう危機になったから取り急いで厚化粧しましてアラブ寄りになるのだという、そんなぞんざいな気持ちでやっておるつもりでないことは御了解をいただきたいと思います。
  68. 井上泉

    井上(泉)分科員 そのことはそれといたしまして、いわゆる非同盟諸国の首脳会議できめたこと、あるいはその方向について理解をする、こういうように言われたのでありますが、その理解をするということは、よきにつけあしきにつけ理解をするという意味なのか。この理解というものは、その決議をよき方向に理解をして、これらの諸国日本との友好関係というものを深めていくという考え方にあるのかどうか。その点について大臣の見解を承っておきたいと思います。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 国際社会の中にわれわれおるわけでございまして、非同盟もその中の一つの仕組みなんでございまして、そこでそういう決議がなされて、それが実行されていく場合に、われわれの願望といたしましては、国際社会の秩序の中で建設的な方向においてそれが展開されますことを望むわけでございまして、それがいいことでございましても、非常にラジカルな方向に参りますとかえって国際的な秩序を乱すおそれがある場合も考えられるわけでございますので、日本といたしましては、それが建設的な方向で展開されることを期待し、そういう方向で、国連その他を通じまして御協力しなければならぬ、そのように考えます。
  70. 井上泉

    井上(泉)分科員 それじゃ大臣日本外交の指針とするところは、これは平和ということ、そして各国との友好ということを中心に考えられるという中で、アメリカ寄り、アメリカ中心の平和であり、アメリカ中心の友好関係であるということがよく言われるわけですが、アメリカ一辺倒ということはないのですか。やはりまたアメリカを中心に日本外交というものは考えられるかどうか。その点……。
  71. 大平正芳

    大平国務大臣 これもたびたび国会でも私は抵抗を示すのですけれども、なかなか御理解がいただけないわけでございますが、わが国外交は、わが国の国益を追求して、これが正しいし、これが実際的であるし、これが国益を守る道であるという判断に立ってやっておるわけでございまして、その結果としてアメリカと同調する場合が多かったということでございます。したがって、初めからアメリカと同調するために、何はともあれこれはこうやっておくのだという発想でものごとをやっておるのでないということは、御理解いただかなければならぬと思うのでございます。現に日米関係におきましても、緊張を呼ぶ問題がときどき生じておるわけでございますし、違った立場をとっておる場合も御案内のようにあるわけでございまして、そのことと日米友好関係と、私はまた別だと思うのでございまして、友好国の間におきましても意見の相違があり、立場の相違があり、見解の相違があってちっとも差しつかえないと思っておりますし、私どもはそういう点で非常に自由な、自主的な立場を貫いていきたいと考えております。
  72. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、よく言われる日米安保条約を基調とし云々ということばにとらわれることなく、自主外交を展開をしていく、こういうことですか。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 日米安保条約というものは、日本にとりまして非常に重要であるという自主的な判断をいま持っておるわけでございまして、それにとらわれないで考えるということはちょっとできないわけでございます。安保条約それ自体についての評価としまして、日本がいま置かれた立場国際情勢、アジアの状況のもとで、これを堅持することが日本のためであるという確信に政府は立っておるわけでございますから、それとかかわりなくものごとをやるということではないわけでございます。
  74. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこがたいへん歯切れが悪いわけですが、そのことはまた何かの機会があろうと思うのです。  ベトナム平和協定ができたということ、これは歓迎すべきことであると思うのですが、このことについては、一言で言って、歓迎することであるかどうか、そのことを……。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 歓迎いたしております。
  76. 井上泉

    井上(泉)分科員 そのベトナム平和協定のときに、南ベトナムの臨時革命政府という政府が存在しておる、こういうことは大臣は認識をしておることには間違いないですか。
  77. 大平正芳

    大平国務大臣 間違いございません。
  78. 井上泉

    井上(泉)分科員 そうなれば、たとえば政治的な外交上のなにがなくとも、文化、経済、スポーツその他、そういうふうな交流関係を深めるということはよく言われることですが、この南ベトナム臨時革命政府という政府が存在をしておるということをベトナム協定ではっきり描き、そのことを歓迎をし、理解をしておる、その南ベトナム臨時革命政府の選手団がアジアの卓球大会で日本へ来ようとするのに、それに対して日本政府は旅券を交付することをちゅうちょしておる、こういうふうに聞くわけですが、いままでの大臣のお話を聞いておる中で、大臣はそういうことにはちゅうちょせずに、この臨時革命政府の選手団に旅券を、そうしてカンボジア王国民族連合政府の選手団の入国もともに歓迎をするという大臣としての考え方に立つのが、大臣と私といままで質疑をかわす一連の流れの中で私はそう理解をしたいのですが、どうですか、この二つの国の選手団の入国を認めたら。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 パリ協定の当事者として南ベトナム臨時革命政府があるということは承知いたしておりますが、パリ協定におきまして、世界の各国はこの臨時革命政府外交関係を持たなければならぬという筋合いのものでは決してないのでございまして、わが国はサイゴン政府を南ベトナムにおける唯一の合法政府として認めて、外交関係を過去においても持ってきましたし、今日も持っておるわけでございます。したがいまして、臨時革命政府というものを政府としてわが国が認める立場にないわけでございます。そういうものの存在は知っておりますけれども、それと外交関係を結ぶ意図はないわけでございます。したがって、あなたが言われるようにその政府の旅券を日本が認めるという立場にないわけでございまして、そのことはパリ協定と全然矛盾しないと私は思いますし、外交姿勢として当然のことであろうと思うわけでございます。
  80. 井上泉

    井上(泉)分科員 それじゃ、朝鮮民主主義人民共和国の存在と、この臨時革命政府の存在とに、どういう違いがありますか。
  81. 大平正芳

    大平国務大臣 両方とも未承認状態にあるということは共通でございます。違いがあると申しますのは、一方は朝鮮半島にあり、一方はインドシナ半島にある。その国をめぐる客観的な条件というものには若干の相違があると承知いたしております。
  82. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは確かに地理的には違います。地理的には違いますけれども、国としてのいわゆるていさいについては同じことであると思うのですが、時間がありませんので……。  ここでもう一つ、カンボジア王国民族連合政府、現在、カンボジアのこれを承認しておる国が五十四カ国あり、おそらくことしの暮れまでには八十カ国、ほとんどの国が承認をしやしないか、こういうふうにいわれておるわけです。この国に日本が依然として大使館を置いて、そして外交関係を持っておる。ところが一方においては五十何カ国も承認した国があって、それらの国々は外交関係を持っておる。この国の選手団の入国というものも申し込んできておる。これについてもこの革命政府と同じような取り扱いをされようとするのかどうか、そのことについて伺いたい。
  83. 高島益郎

    ○高島政府委員 先生の御質問は、今度の卓球大会にカンボジア王国政府のほうから選手を派遣する場合にどういう態度をとるのか、特にベトナムの臨時革命政府の選手の場合と同じ取り扱いかどうかというお話でございますが、これは法務省のほうの所管の問題でございますが、法務省のほうからそういう協議がありました場合に、私ども、スポーツの大会という性質にかんがみて善処したいというふうに思っております。
  84. 井上泉

    井上(泉)分科員 初めのほうをちょっと聞き忘れたのですけれども、スポーツの親善友好、こういうことだから、南ベトナムあるいはカンボジア両国のアジア卓球大会への選手団については、入国を認める方向で善処したい、こういうように言われたんですか、どうですか。
  85. 高島益郎

    ○高島政府委員 現段階でまだ私のほうで正式な見解を表明するわけにはまいりませんけれども、法務省から協議があった場合に、外務省としましてはそういう立場から考えたいというふうに思っております。
  86. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは非常にけっこうなことですから、そのことを強く推進していただきたいと思うのですが、これはやはり政治的な判断というものが必要ですから、大臣はどう考えるか。
  87. 大平正芳

    大平国務大臣 いまアジア局長が申された方向で考えております。
  88. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、カンボジアの王国民族連合政府というものとの関係と、現在のロン・ノル政権、もう首都のプノンペンには四キロないし五キロの地点までずっと連合政府の行政区域内になっておる、こういう状態の中で、あそこの大使館というものをいつまで置いておくつもりなのか。どうですか。大臣
  89. 高島益郎

    ○高島政府委員 現在私のほうで情勢を判断しておる限りにおきましては、首都から半径十キロないし十五キロの範囲内に解放戦線の兵隊が来ている。そして百五ミリりゅう弾砲、百十ミリロケット砲等の砲撃があるということでございます。しかし、わがほうとしましては、邦人も現在おりますし、大使館としては閉鎖するつもりはございません。
  90. 井上泉

    井上(泉)分科員 閉鎖するつもりはないと言うけれども、その場合の大使館員の生命の安全というものは保障されますか、いまのような状態の中で。
  91. 高島益郎

    ○高島政府委員 政府としましては最大限の努力を払って、邦人の生命、財産が最後まで安全であるように努力いたしております。
  92. 井上泉

    井上(泉)分科員 最大限に努力をするということはあたりまえなことで、最大限の努力をしないような役人だったら、役人としての価値はないですよ。だから、最大限の努力をするのはあたりまえのことであって、その最大限の努力が早急になにするのには、今日ロン・ノル政権と日本外交関係を持ってアジアの平和にどれだけプラスになるのか、日本の経済にどれだけプラスになるのか、日本の文化にどれだけプラスになるのか、世界の平和にどれだけプラスになるのか、こういうことを考えた場合に、ロン・ノル政権と日本とが友好関係を持つことは百害あって一利なし、こう結論を下さざるを得ないのでありますが、何か利益がある面があるのですか、大臣
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 外交利益中心にのみ考え……(井上(泉)分科員「国益」と呼ぶ)国益を中心に考えなければいかぬわけでございまして、プノンペンを有効にロン・ノル政権がまだ支配しておる段階でございまして、わが国はカンボジアにおける合法政府として承認いたしておるわけでございますので、現時点におきましてこれにかえて、いわゆるカンボジア王国民族連合政府というものを正統政府として承認することは、いまのところは考えておりません。
  94. 井上泉

    井上(泉)分科員 いまのところは考えてないのは当然だと思います、承認してないから、そして片方と外交関係を持っておるから、しかし、そういう状態であるということ、つまり世界の国々ではもう五十四カ国が承認しておるということ、そして昨年の非同盟諸国会議においても、七十余力国が参加した中でも、このカンボジア王国民族連合政府を承認するよう、これを各国が働きかけよう、こういう決議をしておる。その決議の理解の上に立ったならば、そういう情勢にあるということだけは理解をしておるのか、あるいはまたそれはただ単に承知をしておるというだけのものか、これはひとつ歯切れよく答弁をしていただきたいと思います。
  95. 大平正芳

    大平国務大臣 カンボジアの状況、とりわけ軍事情勢の展開につきましては、重大な関心をもちまして注視いたしておるところでございます。そのことにつきましては、それを怠っておるわけでは決してございません。
  96. 井上泉

    井上(泉)分科員 私、質問はこれで終わるわけでありますが、少なくともアジアの諸国との友好関係を堅持をしていく、そうして特に平和という問題に力点を置いて、そうして日本がこれらの国々との友好関係を深めていくためには、やはり非同盟諸国会議の決定や、あるいは、すでに崩壊寸前にあるロン・ノル政権にいつまでもだれのためにしがみついておるのか、だれが得をするのか、そういう判断の上に立ったならば、私は、日本の国益、日本の世界における役割りから考え、アジアにおける役割りから考えて、一日も早くロン・ノル政権からは大使館を引き揚げて、そうしてカンボジアの王国民族連合政府との間における国交関係、さらには南ベトナムの関係の国々との国交関係樹立しなきゃならぬと思います。  そこで、近く四月に行なわれるアジア卓球大会には、承認するといなとにかかわらず、大臣も外務省当局も、入国のできるような方向で努力をしたい、こういう見解が披瀝をされておりますので、法務省に対しましても十分ひとつ大臣としての決断をもって臨んでいただくようにお願いをして、私の質問を終わります。
  97. 藤井勝志

  98. 金子満広

    金子(満)分科員 いわゆる海外援助の問題について、若干の質問をしたいと思います。  御承知のように、昨年の暮れから今年にかけて、総理をはじめ三木さんその他が、アラブ諸国そしてまた東南アジアを訪問されました。その際に、これらの諸国に対して経済協力約束されているわけです。これは私の調査で、すでに国会政府側の答弁で出された数字及び報道されているものを総合して計算いたしますと、三千百六十九億円プラス検討中という答が出るわけですが、私は、その金額そのものよりも、この経済協力を行なうという日本政府基本的な立場、これは当然、領土、主権の尊重、不可侵、内政不干渉、平等互恵、平和共存、こういう原則に基づいて行なうべきだ、このように思うのですが、大平さんの御意見を伺いたいと思うのです。
  99. 大平正芳

    大平国務大臣 それは当然のことと思います。
  100. 金子満広

    金子(満)分科員 そこでひとつお尋ねしたいのですが、私も当然のことだと思うのです。ところが、二月の半ばに、これは十二日のことだと報道されているのですが、「政府は十二日、自民党対外経済協力特別委員会で、石油危機以降のわが国開発途上国に対する政府援助について産油国、資源国に対する援助は“ひも付き”援助を原則とするとの方針を明らかにした。」「昨年暮れ以来、主要官僚を派遣して展開した中東外交政府はイラクのLPGプラント建設に対する技術援助を含む援助二億五千万ドルをはじめ総額千四百億円の経済協力約束したが、政府は、これを“ひも付き”援助とする方針である。」このように報道されているのですが、この報道は間違いないですか。
  101. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 援助をいわゆるひもつきでやるかやらないかという――ひもつきということばが悪いのですが、タイドエードであるかどうかという点につきまして、一昨年の十二月に大平外務大臣が出席されましたサイゴンにおきます東南アジア開発閣僚会議におきまして、日本はこれから、日本援助資金を使ってのいわゆる低開発国における調達を認めていく方針であるということを明らかにいたしまして、その後、その方針は変わっておらないわけでございます。したがいまして、いまの報道につきましては若干不正確なところがあると存じますが、最近の国際収支の状況から、援助をアンタイド、いわゆるひもなしの援助でやります場合には、援助で出しました資金が必ずしも日本に還流してこない、こういうことから国際収支に相当重要な関連かある。そういう見地から最近におきましては、たとえば開発援助委員会等の論議におきましても、従来の進めてまいった援助のひもつき廃止の運動というものが若干ブレーキがかかるような傾向にあります。これは日本のみならず、各国ともにそうでございます。従来、ドイツその他非常に熱心にこれを進めてまいったのですが、それにつきまして、いままでやった約束を破るわけではないけれども、もう少し慎重にいこうではないかというような傾向もございまして、日本も同様に、国際収支についていろいろな問題がございますので、従来約束してまいったことをさらに進歩させていくというのは、少し足踏みの状態になったというのがほんとうのところでございます。
  102. 金子満広

    金子(満)分科員 そうしますと、とにかくおれは金を貸すけれども、借りた金でおれの国からみんな買えという形のものが、露骨なひもつき援助の典型だと思うのですね。東南アジアについては、あなたがいま答弁されたような点を若干私ども聞いているわけですが、いま私が報道として申し述べたのは、アラブに対する問題なんですね。そうしますと、これは政府と自由民主党というのが一緒になっているから、どちらがどうか私は存じませんけれども、自由民主党の中にある対外経済協力特別委員会、ここが、アラブに対してはひもつきでなければならないときめたということについては、これはもちろん自由民主党ですから違うのですから、政府としてはそういう態度をとらないということがここで明言できますか、一言で答えてください。
  103. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 そういう問題についての御討議が、自民党の経済協力特別委員会でございましたことは事実でございますが、それにつきましてはっきりした結論が出たわけではございません。現在まだ、三木総理以下の御訪問に伴ういろいろな種類のお話し合いは、正式の約束というところまでいっておりませんで、この正式のお約束をいたします場合に、ひもつきであるかどうか、これは先方の国の希望その他も考慮に入れなければいけませんが、実行を進めていくそういうわけでございます。
  104. 金子満広

    金子(満)分科員 いや、私が聞いているのはそうじゃなくて、自由民主党の中でどういうことがやられても、それは自由民主党のことでありますからここでどうということじゃありませんけれども、その自由民主党の中できめたということは出ているのですから、しかし政府はそういう立場をいまとっていないということですね。そういう立場をとらないということが、今後も言えますか、一言で……。
  105. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 現在のところでは、まだそこまではっきりきめているわけではございません。
  106. 金子満広

    金子(満)分科員 わかりました。  そこで、東南アジアの問題について若干質問したいと思います。  東南アジアに対する経済協力というものの特徴の一つは、援助する先が反共政権であるということがきわ立った特徴であります。それからもう一つは、この地域への日本の大企業の進出、そのやり方が、私どもの考え方でいえば、新植民地主義的な方向で進められているということになるわけですが、そこで具体的な問題について、田中総理がこの地域を一月訪問したときに、バンコクやジャカルタで田中総理に対するデモが組織されました。この点はしばしば国会でも問題になりましたが、総理は、これは日本人の心の問題であるとか、あるいは日本の若い世代の行動が悪いとか、誤解を与えたとか、これに類するような答弁をされているわけでありますが、ちょうど大平さんがここにおりますから、外務省としては現地のあのデモの状態というのをどのように判断しているのか、ひとつその点、短くお答え願いたいと思うのです。
  107. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん複雑な要因を包摂しておる問題だと考えております。日本側のまいた要因もございますれば、現地の政情が生んだ要因もございますし、さらに一般的に先進工業国と開発途上国との間の格差という問題も、そういう基本的な構造にからむ問題もあると考えております。
  108. 金子満広

    金子(満)分科員 アジア文化会館同窓会というのがあります。これは東京に事務所があるわけですが、財団法人アジア学生文化協会と財団法人海外技術者研修協会が受け入れたアジア、アフリカ、中南米からの留学生、研修生たちが帰国後、自国の真の独立と繁栄を目ざして相互に協力することを目的として六四年の十一月に結成された、こういう組織でありますが、ここで若干の問題があります。幾つか指摘されておるわけでありますが、これは決して心の問題とかあるいはまた誤解とかいうものではない。  たとえばタイでありますが、タイに対して日本の大企業がどういうようなことをやっているだろうか。あるいはまたその他の日本の企業がどういう状態でタイでふるまいを行なっているか。このアジア文化会館の同窓会で調査した内容がありますが、たとえば「雇用契約書」というのがあります。これはタイで、タイ在留の日本人の中に配られておる雇用のしおり、そういうものでありますが、それを見ますと、就業時間は朝六時から夜八時まで、休日は一カ月に何回するかは雇い主の都合による、そして十四項目ばかり契約の内容があります。ひどいところがあります。「使用人が二人以上の場合、各自の休日は別々の日にすること。」あるいは「仕事をやめたい時は必ず一カ月前にいうこと。もし実行しない時は、最後の月の給料は出しません。」「勤めぶりがよければ少しずつ給料を上げます。」「年末にはいくらかのボーナスを出します。」「男の友達を家の中へ入れてはいけない。」「女の友達でも大勢つれてきてはいけない。」一人ならいいという意味かもしれませんが……。「近所の使用人たちと長々おしゃべりをしてはいけない。」「主人に口答えしてはいけない。」その他があるわけですが、これでいきますと、日本人の雇用主というのは絶対的権力で、すべてが善である。現地の、つまりタイの国民に対してはまず疑ってこれを見る。これは先般、参考人で呼んだときにも出た話でありますが、タイの人々を豚になぞらえて見たような考え方がこの中にも私は出ているのだと思うのです。そうしてこの「雇用契約書」の、これはひな型だと思いますが、最後に、「私は、以上の諸項目を諒承致しましたので、ここで勤めさせて頂きます。万一違反した場合は、解雇されても異議は申しません。」こういうようなことが現に出されているわけでありますし、かなり公表されているわけです。こういう点について外務省は掌握しておりますか、どうです。
  109. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 ただいま金子先生御指摘の研修協会等々は、民間の資金によります技術研修者のための機構でございまして、そのためにできております同窓会の出しておるものでございますので、外務省の所管ではございませんので、残念ながら承知いたしておりません。
  110. 金子満広

    金子(満)分科員 現地の情勢を正確に把握するというのが、私は外務省のみならず日本政府責任だと思うのですね。こういうことが現実にあるなら、これは大臣にお聞きしたいのですが、ここに書かれていることは奨励すべきことですか、奨励してはいけないことですか。大臣、ここに書かれているようなことは奨励していいことなのか、悪いことなのか、これは非常に素朴ですけれども……。
  111. 大平正芳

    大平国務大臣 外国に進出いたしましたわが国の企業は、進出いたしました国の主権のもとで、その法令のもとで仕事をすべきもので、また、しなければならぬ筋合いのものでございまして、そういう外国の社会の中で指弾を受けるようなことのないようにやっていただくことが望ましいと考えております。  いま御指摘の件でございますけれども、それはどういう企業がどういう場合にしたのか私はよく存じませんけれども、われわれの日本の社会における常識から申しまして、いかがかと思われる節も多々散見されることは間違いないと思います。
  112. 金子満広

    金子(満)分科員 いかがかと思われるということですから、当然否定されると思うのですが、こういうことはタイの国民の基本的人権を全く無視しておる。よき隣人だなどというのは飾り文句であって、実態は全く違う。こういう考え方はタイの国民に対するべつ視の考え方だ。そうして、利益をあげるだけあげて早く持ち帰れ、こういうようなやり方に通ずることは明白だと思うのですね。  それからもう一つ、この文化会館の同窓会で調べた中で、このタイでは一般の労働者の賃金が、日本の一般職とタイの労働者の一般職との格差が極端だということがもう口々に言われているわけです。タイの人たちの平均賃金は一カ月三十五ドルです。こういう中で、いま日本の企業で働いているタイの国民の数は二万六千人だ。これは昨年の数字であります。こういう中で、去年一月から八月の間にストライキが百四件起こった。その半数が日系の企業で起こったストライキである。こういうことから見ても、いかにこの日本の大企業のタイにおける行動というものがひどいものであるか。田中総理のことばで言えば、悪徳商法の見本そのままがここで出ていると思うのですね。  さらに、田中首相がデモを受けたインドネシアのジャカルタでありますが、ここの賃金の比較もあります。この賃金の比較を言いますと、日本人の職員とインドネシア人の職員の賃金とは、これもまた極端な格差がある。これは七三年でいきますと、日本人の一般職員、これは六百ドルですね。アメリカドルにして六百ドル。それにプラス日本における給料、さらにプラス自動車と住宅、こうなっています。インドネシア人の場合には、大学卒で日本の一般職の六分の一、百ドルから百五十ドル、その他なしということです。中学卒業に至ってはわずかに十五ドルから二十ドル。インドネシアにおけるアメリカ系で働いているインドネシア人、これをとってみても、大学卒が五百ドルですから、日本の六百ドルに比べては少し低いわけですけれども、五百ドルプラスボーナス、プラス住宅。高校卒が百五十ドル。こういうことになっているわけです。  こういう状態があるからこそ、何も心の問題とかあるいはまた日本の戦後世代の若い人たちの行動がどうだったとか、こういうものでなくて、もっと基本的な、もっと大事なところに原因がある。こういうことを外務省も日本政府ももっと率直に見なければならないだろう。よく報道で見るわけでありますが、外務省はなぜ現地の情勢について具体的な調査をしていなかったのか、こういうことがしばしば糾弾されるわけでありますが、私は当然だと思うのです。こういうような状態というのは、これを新植民地主義的な日本の大企業のこれらの地域に対する進出だと言われても返すことばがないと思うのですね。こういう点について、こういうやり方というのは悪いことだ、このようにお認めになりませんか、どうですか。
  113. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 確かに、現地におきます企業の中におきまして、日本から派遣されました人員と現地で採用いたしました人員との間に、賃金の格差のあることば事実でございます。しかし逐次改善の方向に向かって努力が行なわれておるというふうに承知しておりますし、また一方では、現地の会社、現地人で経営している会社における賃金と、そういう合弁会社等におきます賃金との開きということの点も考えなければいけませんので、一度にその格差を縮めるということはなかなか困難なことではないかというふうに思います。
  114. 金子満広

    金子(満)分科員 一度にできないということでありますけれども、そもそもの出発が間違っておった。私は考え方が違うと思うのです。先ほど申しましたが、よき隣人とかあるいは相提携とかお互いに協力とか、そういうようなことを言ってみても、出発からもうこんなに格差をつけ、そして相手国の国民に対しては全く話にならないようなべつ視です。主人に口ごたえをしてはいけないなんて、こんなことは日本の社会では絶対通らないです。ここでいえば、それぞれの国々の国民は言うことも言うな、おれの言うことをみんな聞け、そうでなければいつでも解雇します、こういうやり方です。そうして賃金については、これは二倍どころの話ではないのです。こんなに格差があって、それであの三菱商事の場合のように叱咤勉励して胸を張ってやった、こういうようなやり方が特殊な例ではないのですね。もう一般化した例になっている。こういう点は行政指導の面でも、これは外務省が直接掌握している部門でないにしても、政府としてはそういう点を根本から変えるということでなければならないと思うのですね。  そういう点では、これは通産省のものをここで読んでも、外務大臣は所管が違うということを言われるかもしれませんが、これは日本政府という立場で聞いてもらいたいと思うのです。通産省の通商政策局が七三年、去年出した「経済協力の現状と問題点」というのがあります。この中に、終わりのほうに次のようなところがあります。これは海外進出についてのことでありますが。「基礎資材産業等は、広く海外へと展開し、その立地の適正化が図られるべきであろう。これは、わが国における用地、環境面における産業立地の限界等からも当然指向しなければならない方向となりつつある。」つまり、日本ではもう立地条件が悪いとか環境公害で、もう国民の反対を受けるから、こういうものはどんどん外国へ出なければいけないんだ。さらに労働力の不足ということも考えて、「今後、労働力需給のひっ迫に対処して国内の低付加価値部門を漸次発展途上国に移譲しつつ、そこに望ましい国際分業体制を形成していくことが必要」だ、このように強調しておるわけです。つまり、公害企業は外国へ持っていく、そして現地の安い労働力で利潤をあげるということが政府の方針になっているわけです。少なくとも通産省の方針になっています。そして、ここで、今度は企業と国の立場がある、政府立場がある。それは、途中を省略しますが、「国の立場からもこれを支援していくことが必要であろう。」つまり、大企業がそういう方向で進出していくこと、これを支援していくことが必要であろう。「これを経済協力からの面からみれば、政府ベースの援助資金及び技術協力を有機的に結合させることにより、その民間企業の負担力を越える分野を補完しつつ、民間企業のバイタリティを活用することにより、経済協力効果を一層高めていくことが特に重要である。  このような観点から、民間活動と政府ベースの資本協力等が有機的に一体化し、効率的な経済協力の展開が図られ得るような措置や、要すれば、そのための体制についても検討」を加える、こういうことがいわれておるわけです。  つまり、これは、民間がやったから知らないとか、賃金は民間の企業がやっているから政府が直接関知できないとか、あるいはまた先ほど申し上げましたアジア文化会館の同窓会、これは民間団体ですからわれわれがどうすることもできないとか、こういうような形で責任のがれをしても、通産省のものにはちゃんといま言ったようなことが書いてある。こういう点について根本的にこれを見直して、洗い直してやっていく必要が私はあると思いますが、その点、これは大平さんのほう、どうですか。
  115. 大平正芳

    大平国務大臣 一九六四年に、御承知のようにわが国はOECDの自由化コードを受諾いたしたわけでございまして、海外投資というものにつきましては自由を原則とすることを願っているわけです。それでございますので、民間責任において投資が行なわれる。政府政府資金で援助する場合は政府責任があるわけでございますけれども。それで、政府はいまそれに対してどういう規制をするかという、その規制立法を持っておりません。国会からそんな権限を与えられていないわけなんでございまして、これは出てはいかぬとかいうことは、最近の為替事情から申しまして大蔵省や日銀の許可をきびしくするということは、ようやくいまそういうことが始まっておるわけでございますけれども、原則は自由であるというたてまえになっていることは、ひとつ金子さんにも御理解をいただいておきたいと思います。  それから第二に、あなたは、日本政府はこれで傍観しておっていいのかということに対して詰問をされておるわけでございますけれども、私は、現地政府から、つまり進出国の政府、これはりっぱな主権国家でございますから、そこにおきまして日本の進出企業がその国の法令に従っていない、あるいは非常に反社会的、反国家的な行動がございますれば、その国がまず大いに規制をいたしてその国の秩序を守り、国益を守られるという、主権をちゃんとお持ちなんでございますから、したがって外務省といたしましては、もしそういう国からいろいろなことがお申し入れがございますならば、それに対しまして十分対応していかなければならぬわけでございますが、ただいままでのところ、そういう国々から私どものほうに正式な抗議というようなものがないのです。したがって、いまいろいろおあげになりましたような、あなたの頭にあるものさしから申しましていかにも不都合だということが、どのように現地で評価され、どのように是認され、どのような批判をされておるのか、これは現地の進出した国といたしまして十分考えられて、措置されることが第二に私は考えることじゃないかと思うのであります。  第三に私が感じますのは、そういう体制のもとでやるわけでございますから、進出企業のモラルというか、それからそれに伴うマナーといいますか、それが十分望ましい、あなたの言われるようにりっぱなものであってほしいと思うのでございます。これは日本人の力量全体の問題でございまして、いまの外交政府ベースの外交ばかりでなく、国民ぐるみの非常に広範な、経済、文化各方面にわたっての交流でございますので、日本人がりっぱでなければいかぬわけでございますが、その点、日本人をりっぱにする力は外務省にも十分ないわけでございまして、お互いが努力して日本人のモラルを上げて、そして海外で高い評価を受けるように、われわれ全体が努力せなければいかぬことではないかと思うので、これは与党も野党もないと思うのでありまして、そういうような点から十分吟味すべき問題だと思います。  ただ、政府が、通産省で何か書いてあるそうでございますけれども、そういう観点から政策を立法化していくという、立法政策の問題としてその問題を取り上げるべきかどうか、取り上げるとすればどういう仕組みが考えられるかというような点は、確かに一つの問題だと思うのでございます。いまのような自由化コードについて順守する義務を持っておる政府として、どういうように立法政策上考えたらいいものかということにつきまして私も即答できませんが、十分検討しなければならぬ課題であろうということを申し上げます。
  116. 金子満広

    金子(満)分科員 時間がなくなりましたから最後に申し上げたいのですが、大平さん、私は相手国に干渉しろということを少しも言っているのではありません。それからまた、相手国から苦情がないからおれは知らぬというのはもちろん正しい考え方ではないと思うのです。モラルの問題とかマナーの問題が出ましたが、大企業が現地で行なっている行為は全く横暴だ。これは人権無視であり、他民族に対するべつ視であり、そしてはなはだしい賃金格差などに至っては生活そのものに関係する重大な問題だ。これは日本側として大企業に対してどういうことを行政面の指導で行なうか。当然のことだと思うのです。外務省が権限がないと言われるけれども、それでは通産省の、いまここに育ったような、大企業と政府が一体になってやるという権限がどこにあるのですか。一体になってやらなければならないという法律がどこにありますか。ありもしないものを、大企業と政府は一体になって進めなければならぬということが明確に書いてあるのです。頼みもしないことを、法律のないことをやるくせに、今度は実際日本の大企業がそういう横暴をやっていることについて、正直な話、大平さん、外務省の出先もこういう実態があるという具体的なことはまだ完全にはつかんでいないと思うのです。それをつかむことが商売なんですから、任務なんですから。外務省がこうしろという命令は出せない、そういう指導ができないという点については、私はある意味からはわかりますよ。しかし、どういう状態に現地が置かれているかということを、正確に日本の国に情報として伝えなければならぬ、この責任は外務省にある。与党も野党もありません、みんなマナーの問題ですというに至っては、これは大平さん、違いますよ。政府というものの責任があるのですから、こういう点を考えて、大企業の海外進出についても、また同時に政府円借款などについても、これは十分洗い直し、見直しをし、根本的に検討を加えなければならぬ、こういう点を最後に質問し、答弁を聞いて終わりたいと思います。
  117. 大平正芳

    大平国務大臣 現地の事情をつぶさに調査し、それを解明し、判断していく、そして東京政府との間に十分のコミュニケーションを保っていかなければならぬという責任は、仰せのとおり外務省にあると私は思うのでございまして、その能力は決して十全でない、これからだんだん改善していかなければいかぬことと思っておりますが、そういう努力を十分いたしていきたいと思うのであります。そういう現地情勢を掌握の上、何をなすべきであるか、何をなすべきじゃないかという点につきましての立法政策上その他行政指導上の問題は、政府として十分考えていかなければならぬ課題であると思います。
  118. 藤井勝志

  119. 北側義一

    北側分科員 日中国交正常化後の最大の課題であります航空協定、この問題は、日中共同声明の精神に基づいても早急に推進しなければならないことは当然でありますが、その他の実務協定については、大平外相としてどのようなものを考えておられるのか、この問題をまず伺いたいと思います。     〔主査退席、奥田主査代理着席〕
  120. 大平正芳

    大平国務大臣 一つは海運協定でございまして、これは交渉が相当進んでおる案件でございまして、早急に調印に持ち込まなければいかぬと考えております。  その次の問題は漁業協定でございまして、これは御案内のように、去年の六月二十二日に民間協定が期限が満了したのでございますけれども、政府間協定の用意がございませんでしたので、民間協定を一年延長いたしております。ことし六月二十二日にまた期限が来るわけでございますので、政府としてはできるだけ政府間協定にこれを持ち込みたいということで、再三中国側と折衝いたしておるわけでございます。意見の交換は行なわれておるわけでございますが、六月二十二日までに間に合うという目算はまだ立っておりません。  それから第三の問題は日中友好平和条約でございます。この問題もできるだけ急いで締結をはからなければいけないということでございまして、私どもといたしましては、当面の航空協定、海運協定等をなるべく早く片づけまして、平和友好条約に取りかからなければならぬと考えて、基本的な問題についての意見交換は間々いたしておりますけれども、まだ交渉には入っておりません。
  121. 北側義一

    北側分科員 最初日中航空協定、これについては非常に強い関心を私自身も持っておるわけでございますが、日台路線問題等もからみまして、自民党内におきましてもこの問題につきましては非常に強い反論が先般からあったわけであります。そこで、大平外相として、このような自民党内の反論をどう考えておられるのか。  また、二月九日の自民党総務会で、日中航空協定日台航空路線の扱いについて、外務、運輸両省の案としてまとめた六項目、これが基本的に了承された、このように私聞いておるわけです。本案の基本内容は、まず一番として、日中共同声明を基礎として日中航空協定締結する、と同時に、日台航空路線民間取りきめを結びこれを維持する、この二つの命題を両立達成せしむること、このようになっておるわけです。そこでこういう問題が、今後外相がこの航空協定を結ぶことについて一つの足かせにならないかという心配を私はしておるわけなんです。これらについてはどのようにお考えになるか。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり、自由民主党のほうの党議は、日中航空協定政府間の協定である、日台間の航空路の維持は民間協定の姿で維持する、この両案を両立させるようにということでございまして、私ども異存がないところでございます。この両立するように、そういう条件づくりを政府はやらなければいかぬわけでございまして、そのためにいまわれわれは鋭意努力をいたしておるところでございます。その内容につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、すでに交渉に入った段階でございますので、しばらく内容についての御説明は御遠慮さしていただきたいと考えております。
  123. 北側義一

    北側分科員 先ほどのお話を私聞いておらなかったわけですが、本日の新聞発表、これは読売だったのですが、交流協会の板垣元台湾大使が、日中航空協定に先立って日台間の民間航空路線設定のために台湾側と交渉をなされた、その結果が報道されておるわけです。その交渉された相手は一体だれなのかということですね。また、その内容を、もし外相がおっしゃられるようでしたら言っていただきたいと思うのです。なお、新聞発表にある内容のとおりなのかということですね、これをお聞きしたいと思うのです。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 張研田亜東関係協会理事長が相手でございます。内容につきましては、先ほど申しましたように交渉事でございますので、御遠慮さしていただきたいと思います。
  125. 北側義一

    北側分科員 内容はそういうことでおっしゃれないようですが、私の、新聞報道による見方ですが、新聞報道によりますと、台湾側は、現在運航されておるところの日台路線、これは民間の取りきめに際しても完全な形で現状維持したい、このような強い要求があったと報じてあるわけですね。そうした場合に、先般、外務、運輸両省でまとめた六項目を、今後はたしてこのとおり推進していけるかどうかという心配がここへ出てくるわけです。その点を私心配して、この問題を外相に御質問申し上げておるわけなんですが、その点、どうでしょうか。
  126. 大平正芳

    大平国務大臣 日中間の航空協定という政府間の協定と、日台間の民間航空協定というものを両立をさせろということでございまして、両立できるように持っていかなければいかぬのが私の責任でございまして、そういうことから御推測をいただきたいと思います。
  127. 北側義一

    北側分科員 これは質問と答弁が食い違うようになっておるわけですが、なるほど外相の言われるように非常にむずかしい問題があろうかと思うのです。しかしこの問題については、日中航空協定交渉に外相が中国に行かれた際の状況新聞等で私見ておるわけです。中国側もその際にかなり譲歩しておるわけです。そういう問題が、これから交渉される場合に、これは非常にむずかしい場面が出てくるのじゃないか、このような心配をしておるわけなんです。  あわせて、国際的に申しましても、カナダ、フランス、パキスタン、これらはすでにいわゆる北京ルートの空路を確保しておるわけですね。そういう日中航空協定のおくれというものが、非常にこれらの諸国には不満であるような点も見受けられるわけです。そういう点を考えますと、どうしてもやはり国際的にもこの日中航空協定のほうは締結を急がなければならない。また、外相がいま言われたとおり、その他のいわゆる実務協定にしましても、これができなければ漁業協定にいたしましても、いろいろな問題に影響してくるわけです。だから、そういうことを考えますと、やはりこの際、外相として相当な決意を持って、そうしてこのことを進めるのが外相の立場ではないか、このような考えを私持っておるわけですが、その点どうでしょうか。
  128. 大平正芳

    大平国務大臣 まあ、北側委員の言われたとおりの状況でございまして、そういう中でこれは急がなければならぬ案件であることは重々私も承知いたしておるわけでございまして、それをなし遂げるのが政府責任と心得ておるわけでございます。私どもといたしましては、誠心誠意努力いたしまして、早急に事案の解決をはかりたいとせっかく努力をいたしております。
  129. 北側義一

    北側分科員 この問題はもうそれ以上の御答弁がどうも出ないように思いますので、これでやめますが、非常に重要な問題でございますし、やはり国際間の信義という問題もあろうかと思うのです。そういう点を了となさって、やはり早急にこの問題には取り組んでいただきない。まず希望を述べておきます。  運輸省の方、お見えですか。――昨日の新聞報道によりますと、いわゆる日台路線の問題につきまして、ナショナルキャリアの日航は日台路線から切り離す方向がはっきりしておるわけですね。これは六項目の中の一つにも数えられておるわけです。またきのうの記事にもそのようなことが載っておったわけですね。そこで運輸大臣が近く運輸政策審議会を開いて、今後のわが国の、空港騒音を含めてのいわゆる航空運営体制について審議会に諮問する、このように報道されておるわけです。そうしますと、昭和四十五年の十一月ですかの閣議了解と四十七年七月の運輸大臣通達の航空政策の変更、これを意味するのかどうか、その点、どうでしょうか。
  130. 間孝

    ○間説明員 お答え申し上げます。  ただいま御質問の中にあげておられました空港とそれから航空保安施設の整備五カ年計画につきまして、昨日運輸大臣のお話の中にあったわけでございますけれども、まず、この問題は、やはり先ほど先生の御質問の中にございました航空政策の再検討という問題とは実は別の問題でございまして、空港とそれから航空保安施設の整備五カ年計画、これは現在進んでおりますのは第二次の五カ年計画でございますが、それが四十九年度で終わることになりますので、それに引き続きます五カ年計画をつくりたい、こういうことでございます。  その内容といたしましては、特に今回重点を置きますのは、空港の騒音問題、それから環境保全対策という問題に特に重点を置いていこう、こういう内容でございます。  それから、今回のこの日中の航空協定締結に伴いまして生じますところの航空政策の再検討の問題でございますが、これはいま御指摘にございましたように、現在の航空政策といたしましては、国際線は日本航空が一社ということになっておりますので、今後、日台路線につきまして日本航空をはずしまして、ほかの航空企業を入れるということになりますと、当然そこで従来の日本航空一社という航空政策に変更が生じてくるわけでございます。そういう意味におきまして、従来からの航空政策につきましてこの機会にやはり再検討をする必要が生じてくるのではないかというふうにわれわれは考えます。
  131. 北側義一

    北側分科員 そうしますと、六項目の一つにありますとおり、日航あたりでは日航の子会社を就航させたいというような意向がある、こう聞いておるのですが、そうするとそういうこともあり得ないということですね。
  132. 間孝

    ○間説明員 六項目にうたっておりますように、日台路線には日本航空が就航しないようにする、こういうことでございますので、日本と台湾との間につきましては別の企業が就航することになるというふうに思います。
  133. 北側義一

    北側分科員 そうしますと、私の聞いたところによりますと、そういう新会社はつくらないという方向である、こう聞いておるわけですね。あと残るのは全日空と東亜国内航空、この二つになるわけですね。そして全日空の場合はもうすでに、ここ四年ほど前から国際線を飛んでおるわけです。そうなりますと、これはやはり東亜国内航空かというように私たち思うわけなんです。また、全日空は、御存じのとおり中国に乗り入れたいというような意向も漏らしております。そこらの問題もありますので、東亜国内航空かという、私はこういう考え方に立つわけなんですが、その点はどうなんですか。
  134. 間孝

    ○間説明員 台湾路線につきまして、今後どういう企業をこれに就航させるかという点につきましては、現在運輸省といたしましてもいろいろな角度から実は検討している段階でございまして、その中には、一つの考え方といたしましては、やはり新会社という考え方ももちろんあり得るわけでございます。それと、現在ございます日航以外の航空会社、これのうちのどれかを充てるという考え方ももちろんあるわけでございます。その辺につきましては、やはりわれわれといたしましては安全上の配慮というものはまず第一に考えなければいけないわけでございます。それから次に、やはりこの日台間の輸送需要にマッチした供給を確保できるような企業でなければならない、そういった点も考えなければなりません。それらの点に特に重点を置きまして現在検討をいたしておるわけでございます。まだ、いずれの企業にこれをやらせるかということにつきましては、運輸省といたしましていま結論を出しているわけではございません。
  135. 北側義一

    北側分科員 この問題もなかなかいま答えられない問題ではあろうかと思うのですが、報道と私のいままでの見るところによりますと、そのような結論が出てくるわけです。  それから、これは外相にお尋ねしたいのですが、いよいよ四月十日に迎賓館が完工するわけです。これには相当な予算と長年の歳月をつぎ込んで完成するわけでありますが、たしか、外相が田中総理とともに中国へ行かれたときに、周総理に対して、迎賓館の一番目の客として迎えるというようなことをお約束なさった、このように私は記憶しておるのですが、それを実行なさいますか。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 一昨年の田中総理の訪中の際に、迎賓館もできることだし、できればファーストゲストとしてお迎えできればという希望は表明したことは事実でございますが、これができるかできないかは先方の都合によることでございまして、周総理の訪日という問題は煮詰まった問題ではまだございません。
  137. 北側義一

    北側分科員 これらに関連しても、やはり日中航空協定を非常に急がなければならない。これを約束なさって、そういう約束が信を失うようなことがあってはならないと私は思うのです。  それから、本年の秋に大阪で中国博覧会が開催されるわけです。その主催者側としても、周総理のいわゆる来日を期待する声が非常に強いわけです。日中復興後すでに二年近くなるわけでありますが、何とか主催者の意をくんで、外務大臣として正式な外交ルートで周総理の来日を要請してはどうかという考えを私は持っているのですが、そのような考え方はどうなんでしょうか。
  138. 大平正芳

    大平国務大臣 私からと申しますよりは、田中総理からすでに招請はいたしてあるわけでございまして、その実現はかかって先方の判断にかかっておると私は思います。
  139. 北側義一

    北側分科員 わかりました。  それから、これは実は非常に重要な問題なんですが、日韓大陸だな条約が今国会に提出を予定されておるわけです。この条約については、御存じのとおり朝鮮民主主義人民共和国、また中国、これらがきびしい抗議をしておるわけです。また来年は国際海洋法会議の開催が予定されております。現在では、大陸だなとか領海とか、これらの概念が国際間で決定されておりません。そういう中で日韓両国がこのような条約を進めていくということは、国際的にどうなんだろうかという考えを私持っておるのですが、この点についてはどのような御見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  140. 高島益郎

    ○高島政府委員 ことし六月、ベネズエラのカラカスで国連主催の海洋法会議がございます。これもいまの見通しでは、このカラカスの会議ですべての合意が達成できるという見通しは全くございません。したがって、これは今後さらに一両年会議を続けて、国際的な合意達成に努力しなければならない問題だと思います。  それほど非常に複雑な多くの主張がございまして、事実、各国ともこの問題にはたいへんな関、心を示しておるわけでございます。したがって、先生の御心配のとおり、大陸だなにつきましての各国の主張が非常に錯雑しておりまして、どういう結論に達するかという点について、現状においてまだ確たる見通しは立ち得ません。しかし他面、それではこのような海洋法会議の結果どのような合意に達し、さらに、それがまた国際間に定着するのがいつごろになるかという点になりますと、現在すでに五八年の大陸だな条約もございますが、これですら実は、非常に内容があいまいだということで、各国の主張がいま申しましたとおり複雑に交錯しておりまして、そういう先例からいたしましても、たとえことし、来年の海洋法会議で何らかの合意が達成し得たとしましても、国際間に確定した大陸だなの制度のでき上がるには相当時間がかかるというふうに思います。  そういう点、いろいろ彼此考えまして、当面わが国として、わが国近海の大陸だなにおける地下資源、特に石油資源の開発を急がなければならないという事情がございまして、わが国と韓国との間で国際法上合意し得る範囲を限りまして、その中で共同開発をしたいということで今回の協定を署名したわけでございます。
  141. 北側義一

    北側分科員 この問題が国際的に大きな波紋を呼ぶようなことにならないような、そういう十分な注意を払ってこれはやっていただかなければならないと思うのです。  それから、先ほど私の前に質問なさっておられた方も、いわゆる東南アジア諸国日本の企業のあり方につきまして質問なさっておられたわけですが、私も、外務省が出された、情報文化局発行の、田中総理の東南アジア訪問に関する海外論調、これをずっと一とおり目を通させていただいたわけでありますが、非常に憂慮すべき問題であろうと思うのです。先般来、衆議院におきまして、予算総括また一般質問また物価の集中審議がこの間ずっとなされたわけです。そういう実情の中で、企業のあり方につきまして、わが国内におきましても非常な批判が出てまいったわけです。  そのように考えてみましたときに、いわゆる海外に進出した企業が、利潤追求のあまりに何でもやろうというような、そういう意向というものが出てきて、総理のいわゆる東南アジア訪問についてあのような激しいデモが繰り返されたと思うのです。またどの論調を見ましてもその問題を大きく取り上げておるわけですね。こう考えましたときに、田中総理は、そういう訪問した東南アジアの諸国で、海外に進出しておる企業に対して政府レベルのコントロール、これはどうしてもやらなければならないということをおっしゃっておられるわけなんです。そういう問題につきまして、田中総理が帰られてすでに二月になるわけです。その間、外務当局また通産当局として、一体どのような政府レベルのコントロールをなさったのか、これについてお伺いしたいと思うのです。
  142. 大平正芳

    大平国務大臣 コントロールを有権的にする立場ではないわけでございまして、進出企業は、その進出国における法令に従って事業活動を行なうわけでございまして、日本政府が特別な規制を加える立場にはないわけでございますが、ただ一部、ホテルを買ったり土地を買ったりするようなことが、将来両国の国民感情の上から申しまして悪い結果を生みはしないかという警告が、間々新聞紙上なんかで出てまいりました場合におきまして、在外公館を通じて関係筋に助言と勧告を行なっておりますことは事実上ございますし、今後も気をつけていかなければならぬと思っております。
  143. 伊藤寛一

    ○伊藤説明員 通産省としてお答えいたします。  総理が東南アジア御訪問のおり、あのように、その後も日本の企業に対しましていろいろ批判のあるのは事実でございます。こういった事態にかんがみまして、通産省としましても、昨年、経済五団体で発展途上国に対します投資行動の指針を民間側としてつくっておりますが、これをさらに一そう強く守り、かつ実践するように指導してまいっておりますし、そのような方向でまた一そう強い指導方法を検討しておる状況でございます。
  144. 北側義一

    北側分科員 OECDの海外投資の自由化、これを日本受諾、これも私わかっておるのですが、ただし、たとえば日本国内におきましても、先般来予算の委員会であれだけ審議されていろいろな問題がクローズアップされたわけです。そうして結局その被害者は国民であったわけですね。それは明らかになったわけです。相手国が受け入れて、相手国の法のもとに日本の企業がそこで企業活動する、相手国のほうでそれを縛ったらいいじゃないか、こういうお答えのように受け取れるのですね。なるほど理屈的にはそうでしょう。日本の企業活動だって、いわゆる法律があって、その範囲内で企業活動をやってあれだけの――もちろん独禁法違反とかいろいろな問題があります。ありますが、あれだけの問題が浮かび上がったわけです。そうしますと、やはり、日本ですらあれだけのことをやるのだから、海外においてもそれ以上のことがなされるのではないか、これはもう当然考えられることです。やはり長い将来を見通したときに、これが日本にとってどのような大きな悪影響を及ぼすかということを、私、考えなければならないと思うのです。ましてや、わが国は御存じのとおり小資源の国です。諸外国との交流がなくなってしまうようなことになりますと、これはもう日本として立場がないわけです。そういう点を考えますと、やはりここで企業のいわゆる行動基準というものに対して、しかるべき行政指導が行なわれなければ、政府としての指導性というものが私やはり欠けるのではないかと思うのです。そういう点を私はお聞きしているわけなんですが……。
  145. 伊藤寛一

    ○伊藤説明員 先生御指摘のとおりでございまして、私どもとしましても、まず第一に強力な指導、その前提としまして、わが国企業の海外におきます事業活動の実態をよく把握するということと、それに基づきまして指導を行なう、こういう考え方で進めてまいりたいと思います。
  146. 北側義一

    北側分科員 もう時間が来たようですから外相の答弁は要りませんが、そういう点でやはり外務省としても、この問題についてはこれはもう企業活動であるから通産省まかせであると、そのような安易な考えに立ってはいけないと私は思うのです。やはり日本のこれからの将来を考えてみた場合、外務省として、東南アジアの諸国にもうすでに大使館も全部あるわけですから、そこらはやはり相当な、企業の行動に対して行政指導すべきものはしなければ、これは将来、大きな禍根を残すことになると思うのです。その点ひとつ大平外相、よろしくお願いしたいと思います。  きょうは時間がないのでこれで終わりますが、またあらためて、いろいろの資料がありますので、やらせていただきたいと思います。
  147. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 和田耕作君。
  148. 和田耕作

    和田(耕)分科員 大臣、キッシンジャーさんがアメリカの外交の表舞台に出てきてもう数年になるわけですけれども、そして最近アメリカ国務長官になられたわけでございますけれども、このキッシンジャーさんが外交の表舞台に出てきてからのアメリカ外交は、相当はっきりと権力外交といわれるような性格を持ってきた、こういうふうな感じがするのですけれども、大臣、どのように御判断になるでしょうか。
  149. 大平正芳

    大平国務大臣 非常に聡明な、かつ実行力のある方で、アメリカが当面する国際的な責任に対して、非常に積極的な活動を展開されておるわけでございまして、私どもたいへん高く評価いたしております。尊敬もいたしておりますが、あなたの言われるように、権力外交という感じは、実は私はキッシンジャー外交から特に受けておりません。
  150. 和田耕作

    和田(耕)分科員 権力外交といっても非常にいい意味と悪い意味があると思うのですけれども、つまり、アメリカの国家目的を遂行するために、いままでの国務省の持っておった冷戦的な構造といいますか、共産圏に対する一つのはっきりした方式のようなものがあった、こういうふうなものにとらわれないで、新しい変化した時代に対して違った外交の姿勢をとっておる。そのためには、たとえば日本に対してもアメリカの資源の活用をする、あるいはソ連、中国に対してもはっきり一つの、これを与えるからこれをくれというような形の外交に進んでいく。たとえば、ごく最近のように、石油の問題について、ある国が自分の利益のためにわがままなことをやればアメリカはこれに対して報復をしていく、こういうふうな姿勢の外交というものは、ある意味で権力外交というふうに見ていいと思うのですけれども、外務大臣はどういうふうに御判断になりますか。
  151. 大平正芳

    大平国務大臣 一般にいわれておりますように、ダレス時代の冷戦外交は幕を閉じた。それは自由圏、共産圏、世界全体を通じまして非常に多極化し、多彩なものになってきておるわけでございまして、そういう状態のもとにおきましては、あなたの言われる権力外交というのは実はなじまない考え方でございまして、非常に多面的な協力、秩序をどう打ち立てるかということが外交上の課題になってきておるわけでございまして、そういう網の目をどのようにつくり上げていくかということにおいて、アメリカ外交は相当精力的に、あなたの御指摘のとおり、展開を見ているように私は思うのでございます。
  152. 和田耕作

    和田(耕)分科員 きょうの日経新聞によりますと、外務省は機構の拡充あるいは改革を目ざしてプロジェクトチームをつくるんだという報道がありますけれども、それは事実でございますか。あるいは、そうだとすれば、大臣としてどのような点に主眼を置いて外務省の機構の拡充あるいは改革をはかろうとしておられるのか、これについてお答えをいただきたいと思います。
  153. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 先に事実について説明をさしていただきます。  きょうの新聞に出ていました外務省の体制強化につきましては、最近の国際情勢というものが非常に複雑になりますし、それから外務省のかかえます案件が非常に多岐にわたり、原子力問題からいろいろな環境問題あるいは今度の資源問題その他いろいろな分野にわたりますので、外務省の設置法上の機構ばかりでなく、実際の仕事のやり方についてもこの際反省して改善すべきではないかという、これは省内の事務的な段階の考え方でございまして、いま先生おっしゃるようなプロジェクトチームをつくるという構想で案を練っているところでございます。
  154. 和田耕作

    和田(耕)分科員 それでは単に外務省の中の事務的な一つの配列変えあるいは人員の増加、そういうふうなことを考えておるだけであって、新しい日本外交のあり方というものを考えた上で、いままでの日本外交の運営のしかたを、こういう点に重点を置いて変えていかなければならないというような意識はないわけですか。
  155. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 私、初め申しましたのは、そういう機構とか組織とか仕事のやり方について申し上げたわけでございますけれども、そういうような反省をし、改善をしなければならないという問題意識の中には、先生の御指摘のように、いろいろ世界の情勢が変わりつつあるのに機動的に対応するということも考えておるわけでございますし、したがって、そういう機構を考える基底においても、日本外交の政策のあり方というものも考えながら機構を考えるわけでございますし、そういう機構ができました場合には、さらにそういう政策、特に国際情勢の変化に応ずる政策の立て方あるいは世界情勢に対応するグローバルな見方をどうすればいいかというような、そういう政策の立案が容易になるような機構を考えていきたいという方向で検討しているわけでございます。
  156. 和田耕作

    和田(耕)分科員 時間がありませんから端的に申し上げますけれども、大臣、最近の顕著な、例の中東戦争あるいはその後続く数カ月の状態を見て、日本の外務省の情報を収集する能力がきわめて劣っておるという感じを私、受けるのですけれども、大臣、そういうふうな実感を持っておられませんか。
  157. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 私のほうで先に事実を申し上げますと、外務省の情報収集のいろいろな機能あるいはそれに要します予算につきましては年々改善をしておりますし、私ども、世界のほかの国の外務省に比して特に遜色があるというふうには考えておりません。しかし、各国の外務省ともやはり情報に応じていろいろな改善をはかっているわけでございますので、私どもも各国の外務省やあるいはいろいろな情勢に対応するような情報収集活動の機能強化につとめている次第でございます。
  158. 和田耕作

    和田(耕)分科員 その問題に関してきょうは質問したいと思っておるのですけれども、現在の田中内閣は、特に今年の施政方針演説等で、政府のいろいろな決定もそうですけれども、たとえば物価の問題を考えましても、一番先にあげているのは国際価格の高騰という条件をあげている。日本のインフレという問題でも、国際価格の高騰という要素があるのでということをあげておるわけですね。一番重要な要素として国際価格の高騰というものをあげておるけれども、政府として、しからばその国際価格というものがどういうふうな動き方をしておるのかということについて、何らの対策をとってないというのが実情じゃないのですか。とすれば、国際価格が上がってくるということを第一条件にあげるということは、今後物価が上がっても、外国の価格が上がるからしかたがないんだという弁解にしかとれない、私そういうふうに思えてならないんだけれども、国際価格の高騰という問題を、政府としてどのようにこれを早くキャッチして、早くキャッチしなければ対策のとり方はないわけですから、そういうことについてどういう態度をとっておられますか。
  159. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 まず、国際価格の情勢の収集ということと、それから第二に、その国際価格を安定に導くような、そういう外交努力をしているかどうかという二点の問題が先生の御質問に含まれていると思いますが、第一の問題につきましては、外務省の在外公館には各省、特に大蔵、通産、農林の三省から二百名ぐらいのアタッシェを派遣しておりまして、それぞれの分野におきまして、金融情勢なり商品の価格の動向などを把握し、それを本省に送ってきております。それから、在外公館の職員だけでなく、これは今度の予算にもお願いしてあるわけでございますけれども、いろいろな情報収集の、特に経済動向を把握するための経費もございますし、あるいはそういうエージェントを使って価格の収集、市場の分析などにつとめております。  それから第二の問題点につきましては、これは、国際金融問題につきましては大蔵省と協力し、特にIMFとか、それからその関係の国際的な集まりにつきましては大蔵大臣の代表する場合が多いわけでございますけれども、その場合におきましても、外務省は対外的な外交政策という観点からどういうふうに協力すればいいかということで、大蔵大臣にも協力しているわけでございますし、それから先般のワシントンの会議におきましても、いろいろな経済分析をもとにいたしました情報をもとにいたしまして、石油価格というものの問題についての問題意識を持ちながら交渉に当たった次第でございます。
  160. 和田耕作

    和田(耕)分科員 まあよくやって、いろいろと努力しておられるでしょう。おられるでしょうけれども、たとえばもっと端的な例をあげてみましょう。  今度の中東戦争が起こった。そして初めのうちはどうなるかわからぬというのでびっくりした。少なくとも初めの二週間は、この戦争がどうなるかもわからない、どういう背景で行なわれたのかわからなかったとしても、約半月、一月たってくれば、この中東戦争というものの今後のおさまり方、あるいはこれは石油という問題がずっと介在してきている、産油国の意向、アメリカの意向、メジャーの意向、産油国側とアメリカ側、メジャーとは対立しているようであって裏で手を結んでいるのじゃないかというような情報、こういう問題はキャッチできたんじゃないですか。本来、日本の重要な資源地帯ですから、石油というのは日本にとって非常にしかく重要なものですから、外務省が平生からそういうものについてもっと関心を持ち、もっとそれらしい機構を持っておれば、少なくとも一月くらいすれば、つまり十月の下旬から十一月の下旬ごろには大体の模様がキャッチできたんじゃないか。私こう申しますのは、現に十一月、十二月、一月、少しは減っても前年に比べてふえておる。現に石油の入っておるのはふえておりますね。それは予想、計画については減っておるとしても、前年に比べてふえておる。しかしあのときの日本政府の情報というのは、日本に対しては二五%削減をする、ひと月ひと月五%加重させていく、これはたいへんだといい、びっくりして、そしてあの大事な時期のいろいろな対策が打てなかったというのが実情じゃないんですか。そのこと自体を私は外務省の責任だと言っておるわけじゃないんです。当時中東に対しての外務省のいろいろな公館その他のかまえからいえばやむを得なかったでしょう。とすれば、そういう問題についての反省に立って、もっと今後の日本の重要な資源地帯については――これは単に石油だけじゃないんです。食糧の問題でも、最近飼料を中心として畜産品その他の倍以上の値上げが計画されておるのです。そういうふうな問題についても、もっと耳をしっかりと大きくして、正しい情報を早くつかむという努力が必要です。そういう努力がされてないじゃないですか。いかがでしょう。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 ひとつ御了解を得ておきたいのでございますが、政府が得ておる情報というものと、それから政府が発表いたす場合と、これはいろいろそのときの状況を考えて、発表しなければならぬ場合、そういうことで非常にショッキングな事態を起こすことも政府としては考えなければならないことでございますので、得ておる情報をみんなもうさらけ出して皆さんの御利用に供するということが適切かどうかということは、政府立場で判断しなければならぬ制約があるということはひとつ御了解いただきたいと思います。  それから第二に、石油の場合におきまして、産油国側は月ぎめでの規制をしいてきたわけでございます。それも世間で予想しておったよりずっと早くわれわれはキャッチしておったわけでございます。けれども、十二月はそれで済み、一月はそれで済んでも、二月がどうなるかという見当がつかないわけでございます。したがって、政府石油規制というものを、十二月ベースがこうだからすぐ仕組みをこうするというように決断するにはまだ不安な要素を持っておったわけでございますので、そういう点について、和田さんがおっしゃるように情報の収集についてはまだまだわれわれ大いに努力しなければならぬと思いますし、それにもっと精力を傾注しなければならぬことは当然でございますけれども、そういった制約が現にありますことも御理解をいただいておきたいと思います。  それからさらに、経済というものは、将来の事態を見て今日決断することが私は経済だと思うのです。したがって、先行きどうなるかということを見てやるものでございますから、国際価格が将来どうなるかという見当をいろいろ経済人が立てられる、それに従って行動するわけでございますので、国際価格がこうなったから物価にしゃくし定木に影響するというようなものでは私はないと思うのです。世界全体がいまそういう非常に不安な、先行きが不透明な状態でございますから、いろいろな思惑が入り乱れまして、非常に混雑をいたしておる。これは日本ばかりじゃない、世界全体がそうなんでございますので、その点、政府が国際価格を非常に重要な要素、いまの物価高の非常に大きな原因の一つだということを強調いたしますのも、私はあまり言い過ぎでもないのではないかと考えておる次第でございます。  それからさらに、食糧についてでございますけれども、これはおてんとうさん相手でございまして、第一、ソ連やアメリカの作柄がどうかという問題が予測されて、これはまたいろいろな思惑を生んでおるわけでございますが、そこへ大量の過不足が起こりますとそこにまた配船上の大きな混乱が起きてくるわけでございまして、運賃その他に大きな影響が起きてくるわけでございますので、昔のようにIMF体制を軸といたしましてドルが安定しておりました時代と違いまして、いま全く通貨が動揺いたしておりまするし、経済予測というものが非常に困難である。その中にいろいろな思惑が入り乱れた状態である、というより情報の把握という問題がたいへんむずかしいという、これは泣き言を言うわけじゃございませんけれども、そういった点については、これは釈迦に説法でございますけれども、御了解を得ておきたいと思います。
  162. 和田耕作

    和田(耕)分科員 大臣、ここでひとつ率直に今後の外務省の機構の改革という問題を考える場合に、たとえば日本石油があれば石油外交に使うということもあるのですけれども、そういうふうなものが一つもない場合は、やはり非常に周到な情報収集の活動というものをもって日本の平和外交というものを推進していく以外に方法がないわけです。ところが率直にいって、これは戦後の事態からいうてやむを得ない事態だと思うのですけれども、日本の外務省や政府がその情報に基づいてやっている政治、あるいは安全保障関係の情報は、ほとんど九九%までアメリカの情報に依存せざるを得ない。アメリカは確かな情報を持っておるわけですね。しかし、アメリカの情報によって行動して八〇%は間違いなく日本の国益――アメリカと協力しているわけですから、間違いなくいくとしても、今度のような石油の問題とかあるいは二、三年前の繊維の問題とかいうことになると、アメリカの国益と日本の国益とが突き当たってくる。こういう場合に、日本が独自の情報収集能力を最低限度でも持たないと、この数カ月のように、数カ月のうちに百億ドルも損してしまうというようなことになってしまう。そこのところが私は問題だと思うのです。  つまり、政治あるいは外交、安全保障等の情報をアメリカにほとんど依存していると私は見ておるわけですけれども、経済的な情報は、世界をまたにしている大企業の、大商社の情報に依存をしている。石油であれば、石油業界あるいはメジャーの情報に依存している。これは事実じゃないですか。そういう状態を脱却しないと、ただ国際物価が上がるのだから日本の国内の物価に影響して上がってもしようがないのだというふうに見ておると、いま問題にしておるような例の石油製品の値上げの問題に対してのメジャーの圧力があるとかないとかということに、いつまでたってもほんろうされることになる。また、この数年来、たとえば木材の問題であれば、カナダあるいはアメリカの市場で、日本の大商社が現地の市場で価格をつり上げるという要素がある。あるいは豪州の羊毛の場合に、豪州の羊毛を買いつけるところに日本の商社が出張って、現地の価格をつり上げているという要素がある。  そういうふうで、日本のおもに買う原料の国際価格が上がったからしようがないわということでは済まされない。もう少し日本外交機関がもっと目を光らせておれば、豪州における羊毛の値上がりというものの実態はどういうことなのか、日本の商社がどういう働きをしているのか、あるいは日本の木材業者がどういう働きをしているのか、過当な競争がありはしないか、あるいは思惑でつり上げておりはしないか、そういうことを政府が知っておればそれらしい対策が打てるわけです、あなたまかせじゃないのですから。実際の内容を見てみれば、日本の大きな商社が片棒をかついで現地の相場を上げているという要素もあるわけですから、そういう事例は時間がありませんからあげませんけれども、そういうふうな場合に、日本政府として、特に外務省だけじゃないと私は思う、通産省も農林省も関係あると思いますけれども、何といっても外務省がそういうふうなことについての的確な情報を知る必要があるのじゃないか。そうでなければ日本の大事な国益というものは守られない。先ほど言ったように、大商社の情報を信じておれば八〇%くらいはうまくいくかもしれません、経済は商社にまかしているような面がありますから。しかし、こういうふうな大事なときには日本の国益を損することになってくる、そういうことじゃないかと思うのです。小さい問題は別として、大体の判断として私の見当が間違っておれば指摘していただきたい。
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 いま仰せになったことは私も全面的に御同意でございまして、そういう努力は精力的にいたさなければならぬし、充実しなければならぬと思います。それからまたとりわけ、政府ばかりでなく、いまの情報源は、石油会社にいたしましても食糧会社にいたしま、しても、国際企業の持っておる情報力というのは政府を越えるものを持っておりますので、われわれは情報源を政府筋ばかりにたよらずに、もっと広範に探り当てていかなければならぬと思っておるわけでありまして、仰せのとおり、ほんとうに全神経を非常に過敏に働かして、その収集と解明に努力しなければならぬことは当然の道行きだろうと思いますし、そのように努力いたしたいと思います。
  164. 和田耕作

    和田(耕)分科員 そこで私は、一番最初の、外務省がプロジェクトチームをつくるという問題に関連してぜひとも申し上げたいのは、キッシンジャーさんが出現してから権力外交に転換したんじゃないか、という意味は、つまり、今後とも、国際的な重要商品、重要資源は一つの政治戦略に使われてくる。しかもこれは単なる経済情報だけではいけないんですね。今度のアラブ事件のように、産油国はメジャーあるいはアメリカと対決しているように見える。しかし裏では手を結んでおる。両方とも、石油価格を上げるということについては、アメリカも得をしているし、産油国も得をしているし、メジャーも得をしているというような問題があるのです。これは一つの政治情報です。したがって、経済情報と政治情報とは離すことはできないわけです。そうですね。  しからば、それらしい体制を重要な資源地帯についてはとる必要があるわけです、大蔵省はどういう方法だ、通産省はどういう方法だ、農林省はどういう方法だということを。情報を外務省として吸い上げてまとめるときには、そういうふうな政治情報が必要なんじゃないですか。長期の問題については、いろいろな現地の学者の話とか論調なんかを見てもわかるでしょう。しかし、短期の非常に必要な情報については、はっきり牒報活動が必要だと私は思う。いま外務省で諜報活動費として使える金はどのくらいありますか。
  165. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 牒報活動ということばが適当かどうかあれでございますけれども、情報収集とか、それから広い意味外交工作その他、それに類似しますやや機動的な外交活動に使用できる予算は、四十八年度では三十億円でございましたけれども、四十九年度予算で約四億円の増額を要求いたしておりまして、合計三十四億円でございます。
  166. 和田耕作

    和田(耕)分科員 そのお金は、使うときに全部受け取りをとりますか。
  167. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 受け取りをとれるような場合と、とれないような場合とがございます。受け取りをとれないような場合のときには証明によるわけでございます。
  168. 和田耕作

    和田(耕)分科員 その金で十分機能しておりますが。
  169. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 十分ということになりますと、どの程度が十分かはお考えによって違うと思いますけれども、私どものいままでの活動の範囲に限りますと、来年度予算の程度で一応の活動ができるというふうに考えております。
  170. 和田耕作

    和田(耕)分科員 時間がありませんから、最後に大臣にお答えいただきたいのですけれども、いま私が指摘しましたように、今後とも中東の石油地帯は大事です。そうして豪州における羊毛、繊維の地帯は大事です。南米あるいはアフリカにおけるそれぞれの商品の地帯は大事です。そういうところを目ざして、政治情報、経済情報、あるいはそのときそのときをめぐる関連したものをつかむために、特別のプロジェクトチームというものをつくる御意思があるかどうか。ぜひそうあってほしいと私は思うけれども、いかがでしょう。
  171. 大平正芳

    大平国務大臣 いままで資源は、外貨さえ持っておれば必要な分量を必要な時期にいつでも調弁ができるということで戦後四分の一世紀やってこられたわけでございまして、政府が特にそれに配慮しなければならぬような深刻な事態は、例外的な場合を除いてなかったわけでございますが、ここ一、二年、世界の情勢が一変いたしまして、あなたが御指摘のとおり、経済問題といえども非常に政治性を帯びてまいった。資源を政略の手段にするという時代さえ迎えたわけでございますので、在来の情報収集活動というようなマンネリズムではとても対応できない時代になってきていると思うのでございまして、あなたの仰せのように特段のくふうが必要であると思います。そのためのプロジェクトチームというものも確かに一つの方法であると思っておりまして、鋭意その強化に努力をいたしたいと思います。
  172. 和田耕作

    和田(耕)分科員 特に日本にとって、よって立つところは、正確な情報を早くキャッチして、できるだけ平和的な処理のできるような体制をつくるということが一番大事なことだと私は思うのです。それ以外によるものはないのですから、今後そういうふうな意味の、資源を中心とした国際権力外交的な方向はますます強化されるという判断を私はしておりますので、ぜひともひとつ格段の御努力をお願いいたしまして、質問を終わります。
  173. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 上原康助君。
  174. 上原康助

    上原分科員 わずかな時間ですので、その範囲内で、せんだって日米安保協議委員会で合意を見たといわれる沖繩の基地の整理縮小計画といいますか、返還についての内容をただしておきたいと思うのです。  最初にお尋ねしたい点は、第十四回の日米安保協議委員会で合意を見た関東計画と今回の計画を比較して考えてみた場合に、大きな相違点というものを指摘せざるを得ないわけです。といいますのは、関東計画の場合は、返還をするあるいは縮小整理をしていくという目標というものが立てられております。いついつまでに、どういう方法でやっていくのだと。今回の場合、全くそういう期限というのはないわけですね。なぜそういうことになったのか。そこいらについては、合意を見たという発表文を読んでも全然さだかでないのですよ。その点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  175. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 御指摘ございましたように、昨年一月の第十四回安保協議委員会で日米間の話し合いがまとまりました施設、区域の整理統合の計画の中で、いわゆる関東計画と称せられるものにつきましては、三年間を目標として具体的な実施をはかる、こういうことになっております。この一月三十日に開かれました第十五回日米安全保障協議委員会におきましてまとまりました沖繩の整理統合の計画につきましては、今後どの程度の期間の間にという具体的な期間の明示はございません。その点についてただいまのような御質問があったんだというふうに伺ったわけでありますけれども、実は昨年の一月に合意を見ました沖繩の基地の施設、区域の整理統合の計画につきましても、その後のいろんな事情におきまして、必ずしも作業が進んでおらないものもあるわけでございます。したがいまして、政府といたしましては、当面、明年の海洋博を念頭に置きまして、昨年一月にまとまりました施設、区域の整理統合の計画を鋭意促進し、これの具体化をはかるということに最重点を置いているわけでございますが、その工事との関係もございまして、今回話のまとまりましたものにつきましては、その上で米側との間に、具体的な全面返還、部分返還あるいは移設の措置を急いで講じてまいりたい、こういう考えに基づいたものでございます。
  176. 上原康助

    上原分科員 いま、いみじくも答弁の中で明らかになっているわけですが、せんだって予算委員会の場合も少し触れたのですが、日米間で合意を見たということで発表されて、大々的に基地の整理縮小が行なわれるんだ、一〇%に相当するものだというように宣伝されてきたわけです。しかし中身を具体的に調べてみると、全くのから手形でしかない。  私がこれから指摘したい点も、いま答弁の中でもあったのですが、昨年の十四回安保協議委員会できめられた牧港住宅地域の一部返還、それから那覇空軍、海軍、補助施設の移転、空軍、海軍補助施設にある住宅地域の返還、これなども全然めどが立っていないわけです。少なくとも両政府間の責任者が出席をして合意を見た事項であるならば、それなりに拘束されるのではないかということを指摘したのですが、いまおっしゃるように、昨年きめたことさえも十分進捗していないのでめどがつかなかった。一体、日米安保協の合意事項決定というのはその程度のものなのか。私は、めどづけができなかったというのはほかにも理由があるのではないかと思うのです。その点も国民の前に明らかにしていただかないと、発表だけして、中身を調べてみると全然県民の期待に沿っていないということではいかないのではないかという気がするわけです。  そこで、もう一つ尋ねておきたいことば、この発表文の中で四項の後段ですが、「委員会は、かかる整理・統合は、本問題に関する沖繩県民の強い要望に沿うものであることを確認した。」こういう表現になっております。一体、沖繩の保守的な市町村長を含めて、あるいは土地連合会を含めて、どうどういう地域は返還をしてもらいたいということは、今日まで何回となく外務省や施設庁、防衛庁、開発庁を含めて、要望がいっていると思うのです。しかし、その要求書の中で返してもらいたいと具体的に列記した地域についてはほとんど返されていない。これなどもあまりにも県民を侮辱する文言にしかなっていないわけですね。ほんとうに皆さんが、沖繩県民の要望に沿うものであるということを確認の上で、今度の返還というものを合意したのか。その点、これは大臣のほうから、ぜひ考え方を明らかにしていただきたいと思うのです。私は、きょうは具体的な問題は、広範囲にわたりますので、いずれ詰めたいので、政府考え方なり内容だけを確認しておきたいと思うのです。
  177. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 大臣の御答弁を願います前に、事実関係について御答弁さしていただきたいと存じます。  十四回の安保協議委員会におきましてまとまりましたものが、その後具体的に動いていないじゃないか、こういう御指摘でございますが、その点につきましては、合同委員会の合意を得まして、具体的に日米間で話が詰まりましたものは、現実の工事に着工しておるわけでございます。  たとえば、嘉手納におけるP3移転に伴う施設の工事を、すでに開始いたしております。このように、具体的な作業を経まして、昨年の一月に原則的な合意の得られましたものを、具体的な作業に乗っけることをずっとやってきておるわけでございまして、来年の海洋博をめどといたしまして作業を急ぎたい、こういうのが私どもの考え方であるわけでございます。  また今回、第十五回安保協議委員会で話のまとまりましたものにつきましても、たとえば、カテゴリーIに属しますものは、全部返還が七件、一部返還十三件、合計二十件ございますが、全体といたしまして二万平方キロ余の面積のものは、移設ということを必要とせずに返還されるものでございますから、具体的な場所の確定その他の作業を詰めました上で、四十九年度中にも逐次具体的な返還を急いでまいりたいということであるわけであります。  また、この計画を、米側との話し合いをまとめるにあたりまして、昨年一年かかっての交渉におきまして、現地の市町村あるいは地主連合会、これらの地元の方々からの要望というものは、施設庁その他と十分御相談をしながら、米側との話し合いの際に、十分これの実現のための努力をしてまいったわけでございますけれども、御承知のようないろいろな状況がありまして、もちろん、一〇〇%現地の方の御要望に沿うということにはなっておりませんけれども、少なくとも政府といたしましては、現地のそれぞれの市町村の事情を十分しんしゃくしつつ、この交渉に当たったということを申し上げさせていただきたいと思います。
  178. 上原康助

    上原分科員 具体的な数字などは、後日どこかでお尋ねをしたいし、いろいろな問題が出てきておるわけですね。  そういうことで、きょうは簡単に触れておきたいのですが、P3、P3というようなことはもう聞きたくもないほど議論をしてきたわけですよね。これだけではないのですよ。  では、具体的な面でひとつお尋ねをしたいのですが、十四回の安保協で、「那覇地域から住宅及び補助施設を移転することに関して、双方は、那覇空軍・海軍補助施設の全施設のうち、大部分を嘉手納飛行場へ、一部分を牧港補給地区その他へ移転すること並びに牧港住宅地区の住宅二百戸を嘉手納飛行場へ移転することに原則として合意した。」那覇の空軍と海軍補助施設にある住宅の移転先はどこですか。牧港のどこにこの住宅を移転するのか。それはいま全然進んでいないわけでしょう。P3の移転ということだけがようやく嘉手納と普天間の飛行場の整備ということで着手されただけで、住宅の移転というものは、われわれが知る範囲においては、現在まだ全然なされていない。こういうふうに日米間の合意というものはほごにされてきている。そのほかにもたくさんある。一体どこにこれを移転しようとするのか。さらに第十五回、今回きめた場合のこの住宅地域の移転というのは、どこに移転をするのか。瑞慶覧の、現在のキャンプ桑江地域に住宅地域は移転するのですか。そういうことなども話し合われていると思うのです。それについても明確にしていただきたい。  それと、那覇空軍、海軍補助施設というのは、P3や住宅なんかが移転された場合は、安保条約、地位協定とは全然かかわり合いはなくなるのか、その点も明確にしていただきたいと思います。
  179. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 まず、昨年十四回の安保協議委員会で話のまとまりましたものにつきまして御説明さしていただきますが、御指摘のとおりに、P3の関係の作業を現実に開始いたしておりますと同時に、四十九年度予算におきましては、那覇海軍航空施設、那覇空軍、海軍補助施設、牧港住宅地区の移転、これらのために必要な経費予算をお願いしているわけでございまして、四十九年度中にこれらの作業を急ぐということを、日米間で話し合っているわけでございます。  牧港の住宅地区の移転先につきましては、二百戸分は、これは嘉手納飛行場地区ということになっておりますけれども、今回、第十五回で話し合いのまとまりました残りの約千戸分につきましては、これを移設するということについての話がまとまっておりますけれども、その移設先をどこにするか、またどの程度の規模のものにするかというふうなことにつきましては、今後、日米間で具体的に詰めていくべきものになっているわけであります。
  180. 上原康助

    上原分科員 そうしますと、千戸の家屋を移転する、そのめども立たない、移設先も全然これからだということになると、これは移転の合意にならないじゃないですか。二百戸は嘉手納飛行場のどこに移転するのですか、予算要求をしたなら。場所を言ってください。
  181. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 まず千戸分でございますが、一月三十日の発表にございますように、「移設措置とその実施に係る合意の成立後返還される施設・区域」ということになっているわけでございまして、移設ということを前提としてのこの地域の返還、これは日米間で原則的な合意を見ているわけでございます。したがいまして、その原則的な合意に基づきまして、今後日米間で移設先、その移設の規模、そういう大要を具体的に詰めました上で、合同委員会の正式の合意を行なうということになるわけでございます。  また、十四回の安保協議委員会で話のまとまりました牧港住宅地区の二百戸分の移設先につきましては、嘉手納飛行場地区ということになっておりまして、大体嘉手納飛行場の南側地区になると思いますけれども、具体的な場所は、さらに米側とこまかい話を詰める、こういうことになっているわけであります。
  182. 上原康助

    上原分科員 大河原局長、あなたはいつもそういう水も漏らさぬ答弁でやっていますが、来年、五十年の海洋博が、前に大臣は、海洋博が延期されようがされまいが、十四回安保協できまったことは三月までに実施すると言いましたよ。二百戸分のあの家屋を、あなたがおっしゃるように、来年の三月までに、技術的にできるのですか。そういうごまかしはいけないと私は言うんですよ。ここでただ逃がれればいいということではないわけですよ。そういう積み重ねがあるから、私は外務省のいまの外交姿勢あるいはアメリカ側との合意の問題に、不信を持たざるを得ないのですよ。なぜもっと正直に皆さんは、むずかしいならむずかしいと……。ここでこの議論までしませんが、実際、物理的にもできっこないですよ。そういうことで、これまで国民や県民を何度一体ごまかすのです。それじゃいけませんよ、そういう態度は。  そこで、いま一つ確認しておきたいことは、P3が移転をされる、それと米軍住宅が移転をされる、那覇空軍と海軍補助施設全体から。その場合は、地位協定の二4(b)も二4(a)も那覇空軍基地には適用しないということになると思うのですが、そうですね、完全返還ですから。
  183. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 まず、前段の問題でございますが、私どもは前々から、P3につきましては、明年の春を目途として全力をあげてこれの移転の実施をはかりたいということを申し上げておりますし、今日もその考え方ば変わっておりません。それで、P3が嘉手納に移転を終わり、那覇空軍、海軍補助施設の移転先の施設の完了が見られました暁におきましては、那覇地域からは米軍は撤退するということになりますので、那覇空港につきましては、軍事郵便所を除きましては一切米軍の施設、区域はなくなる、こういうことを申し上げております。
  184. 上原康助

    上原分科員 そこまでは私だってわかるのですよ。私がお尋ねしているのは、施設はもちろんなくなる、軍事目的には使用しないというわけでしょう。そうすると、地位協定の二4(a)、二4(b)地位協定とは全然かかわり合いはなくなりますね、それが完全返還ですね、ということなんです。そのことを明確にお答えいただきたいと思うのです。
  185. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定関係におきましては、軍事郵便所が残るという以外におきましては、全く関係はなくなります。
  186. 上原康助

    上原分科員 いま一つ、今度の移設を伴う返還の中で、那覇軍港のことが非常に問題になってきているわけです、そのほかにもいろいろございますが。那覇軍港の移転先として浦添市の牧港兵たん補給地域に沿う海岸に新しい軍港をつくる、代替施設として提供する、そういう条件になっていると聞いております。その提案は――提案といいますか、兵たん補給地域に新軍港をつくってくれという要求は、米側から出たのか、あるいはわがほうの提案なのか、明確にしていただきたいと思います。
  187. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 わがほうといたしましては、かねて那覇地区から米軍施設、区域の撤去、こういうことが望ましいという考え方のもとに米側と話をしてまいりました。その過程におきまして、先ほど来御議論いただいております那覇空港周辺地区の施設、区域が撤去を見ましたあとで残ってまいりますものは那覇の軍港の問題でございます。  したがいまして、那覇軍港の返還の可能性いかんということとの関連におきまして話し合いが行なわれましたところ、米側としましては、代替の施設の提供を受ける場合には那覇軍港の返還に応ずる用意あり、こういうことでございました。それならば移設先はどこかという問題になってまいりますが、この問題につきましては、いろいろ地元市町村等の関係もございますので、今回の話し合いにおきましては、移転先を確定するということに至っておらないわけであります。
  188. 上原康助

    上原分科員 移転先のめどは全然立っていない。牧港兵たん補給地域ということも話に出なかったということですか。
  189. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 現在の那覇軍港の使用の形としまして、牧港の補給地区に対する輸送ということが非常に大きなウェートを持っていることは間違いないわけでございます。したがいまして、那覇軍港の機能を別の場所に移す場合に、当然牧港の補給地区との関係というものが出てまいりますけれども、それではどこにしたらいいのかということについては、いろいろ地元との関係がございますので、どうしたらいいかという具体案は出ておらないわけでございます。
  190. 上原康助

    上原分科員 そうなりますと、もちろん地元は反対ですよね。あれだけの規模の軍港を新しくつくるという、そんな余裕もないし、また、そんなばかげたこともやらぬでいいとわれわれは思うのです。  そこで、これも確認をしておきたいのですが、いわゆるこの発表文の二項でいっている、「移設措置とその実施に係る合意の成立後返還される施設・区域」全部返還と一部返還があるわけですね。これは合意の成立後はあくまで返還されるわけですから、合意が成立をしない場合は返還されないということもあり得るわけですね。もちろん予算の問題もありますし、いま一例をあげましたが、移転先をどこにするかも全然きめてないのだ。大体はきまっていると思うのですがね、秘密外交でどんどん進めているとは思うのです。  そういたしますと、移設措置を要する返還が今回の場合は圧倒的に多いわけですね、面積にしても、基地の態様からしても。合意が成立しない場合一体どうなるのですか。また、この合意を見るまでには、皆さんはどのくらいかかると思うのか。また、問題になっておりますこれだけの施設を代替施設として提供する場合には、どれだけの予算が伴うのか。まさかめくらめっぽうで外交しておるわけじゃないでしょう、公式に発表する限りには。その三点をぜひ明確にしておいていただきたいと思います。
  191. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 カテゴリーⅡのものは、「移設措置とその実施に係る合意の成立後返還される施設・区域」ということになっておりますので、仮定の場合を想定いたしまして、その合意が成立しない場合ということになりますと、このものは返還の対象になり得ないということでございます。しかしながら、私どもといたしましては、原則的に返還、すなわち移設措置を前提としての返還が、日米間で原則的に合意を見たわけでございますから、この合意の成立をはかるために、今後具体的に米側との話し合いを進めていくという考えであるわけでございます。  また、時間的にはどの程度のことか、こういう御質問でございますが、この点につきましては、今後、日米間で具体的に作業を進めてまいりたいということ以上に、いつという時期を、はっきり申し上げることがまだできない状況でございますが、いずれにしましても、せっかく合意を見ましたこのものを、ほっておくということは最も望ましくないことでございますから、関係の機関で十分協力しながら、この問題を進めていきたいというふうに考えております。  最後に、所要の経費の問題でございますが、移転先、また移転の状況、そういうものにつきましてまだ明確な計画がない状況でございますので、はっきりと、この程度の費用がかかるということを申し上げる事態に至っておりませんけれども、一応のめどといたしましては、今回話し合いのまとまりましたものにつきまして、移設費経費その他で、大ざっぱに五、六百億円の経費がかかるであろう、こういう一応の見当をつけておりますけれども、ただこの費用は、先ほど来御議論いただいております那覇の港湾施設の移転の経費は含んではおらないものでございます。
  192. 上原康助

    上原分科員 そこが問題なんですよ。きょうは時間がありませんから、大体皆さんのやってこられている点はつかめたので、いずれ時間を十分とって、もっと議論を深めていきたいと思うのです。  そこで、あと少ししか時間がありませんので、この移設措置を伴う施設、代替施設といいますか、そういうことばもおかしいのですが、これに嘉手納住宅地区というのがある。これはどういう住宅地区かということも知っておきたいのです。  それと関連して、皆さんがすぐ合同委員会というものを持ち出すわけですが、こういう基地の返還交渉をなさる場合に、一体、現場の確認は全然やらないのかというのが一つ。この図面は沖繩の施設局がつくったものです。これに、ぜひ今度の返還した地域を入れていただきたいと思うのです。外務省の立場で入れていただきたい。大臣、まだこんなふうにあるんですよ。はめてみたら、実際鉛筆の先ほどしか返されていないのです。そういう確認は、全然日米間でやらないで交渉を進めてきたのか、そこいらも、今後の議論の中でどうしても活用していかなければいけない問題ですので、明らかにしてください。現場検証は全然やらない。図面上の確認もやらない。一体そういうような返還交渉というもの、しかも国民の税金を、那覇軍港を抜いて五、六百億円、これは私はそれだけじゃとまらないと思うのです。それはいずれやりますけれども、その点は、ぜひこの場で明確にしておいていただきたいと思うのです。
  193. 奈良義説

    ○奈良説明員 いまお尋ねの嘉手納住宅地区でございますが、これは嘉手納飛行場、それから嘉手納弾薬庫、あの辺からやや西にございまして、それだけがちょっと独立しております住宅地帯でございまして、約百七十名の人たちが住んでおります。  それで、先ほどから、現地の情勢を全然調べないでやっているのかという先生の御質問でございましたが、私どもの施設庁が那覇に局を持っておりますので、もちろん施設の現況そのものにつきましては、現地の様子はよく調べた上でお話し合いをしてきたつもりでございます。
  194. 上原康助

    上原分科員 外務省は、それは全然現場確認とか図面上で、大体こういうようになるのだという作業はやらないわけですか。もっぱら施設庁にまかしているわけですか。
  195. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 私ども米側と折衝いたします際に、施設庁と緊密一体の作業をいたしておりますので、施設庁が出先に施設局をお持ちでございますから、出先をお持ちの施設庁と密接、緊密な連絡をとりながら、話し合いをやってきているわけであります。
  196. 上原康助

    上原分科員 いまの嘉手納住宅地域というのは、嘉手納村にあるのですか。
  197. 奈良義説

    ○奈良説明員 これは読谷村でございます。
  198. 上原康助

    上原分科員 ようやくわかるような、それで十分調査をなさったんですか。あなた、うそついてはいけませんよ。私は、那覇の施設局へも行っていろいろ調べてきた。きょうはそこまで言いません、時間がありませんので。  大臣、いま幾つか問題を指摘しましたが、少なくとも、日米間のトップ交渉でこの問題はきまっているわけですね。まず全面返還の方法でさえ、今度は期限を定めてないわけでしょう。ましてや五、六百億ないし那覇の軍港を、もしあの規模のものを新設するとなると、いまの物価高、いろいろな相場からいきますと一千億下らぬでしょう。それだけの国民の税金を、アメリカに施設、区域を提供するために――返還さぜる皆さんのお立場からはそうかもしれませんが、そうであるならば、もっと綿密な計画と年次的なものも、具体的に基地がどういうふうになっているのか、形態、態様はどうなっているのか、はたして返される部分が住民の利用に役立つのかどうかということも、合同委員会がやるというよりも、むしろ安保協議委員会そのものが、最高責任者が確認をしてそのように実行さしていくのが、外交であり行政だと私は思うのですね。そういうふうになっていない。それに対して、今後もそういうかっこうでしか基地の返還交渉というのはやらないのか。また、今日まで十四回、十五回のものを、いま二、三の例をあげましたが、指摘をしても、いろんなそごが出てきている。これに対して責任者としてどういう考えなのか、またどの程度の期限でこの完全返還というものを皆さんは達成していこうとしているのか、大臣のほうから答弁を求めておきたいと思います。
  199. 大平正芳

    大平国務大臣 那覇に基地が不当に多いわけでございまして、一日も早く基地の整理統合というものを進めてまいらなければ、沖繩の産業開発に支障も来たすし、現地の要望に沿いがたいということで、せっかくわれわれは努力をいたしておるつもりでございます。  上原さんのお話を聞いておりますと、これはから手形だということでございまして、から手形から御質問は出るはずはないと思います。私どももっと真剣にやっておるつもりなんでございまして、ここまでは政府の言うことはわかった、この次はどうなるかということにつきましての、建設的な御質問をいただきたいものと思うのでございまして、われわれ遊びでやっておるわけではないのであります。その点はひとつ御理解を、冒頭に求めておきたいと思います。  それから、合同委員会との関係でございますが、もう申し上げるまでもなく、合同委員会が正規の地位協定上の機関でございまして、この機関を通しまして、ものごとを処理する仕組みが確立いたしておるわけでございます。私どもがやっておりまする安保協議委員会というのは、安保条約の運営につきまして両国の関係者が集まりまして話し合い、協議をする場でございまして、その場におきましてこの問題を取り上げて、原則的な合意をしなければならぬという意味合いにおきましての重要度を認めてわれわれが取り上げておるわけでございまして、本来ならば、これは日米合同委員会におきまして処理すべき問題でございますけれども、事柄の重要性にかんがみ、現地の情勢にかんがみまして、協議委員会において取り上げて、大きな方針をきめて、そして合同委員会の活動に期待するということをいたしておるわけでございまして、その仕組みは、今後とも踏襲していきたいと考えております。  第三の問題でございますが、時期の問題でございます。これは可及的すみやかにやりたい一心でございますが、日米間で協議し、予算の調整もやらなければなりませんし、工事のもくろみもやらなければなりませんし、同時に、現地との調整もいろいろ要ることがあることでございましょうし、確たるめどを申し上げることはできませんわけでございますが、これは何も隠しておるわけでもないし、なまけておるわけでもございませんで、大河原君以下真実を率直に申し上げておるわけでございますので、私ども所要の準備を鋭意整えてまいりまして、できるだけすみやかに、あなたの言うから手形でなくて、手形を落とさなければいかぬと政府責任において考えております。
  200. 上原康助

    上原分科員 もう時間が来ました。えらい大臣、高姿勢な御答弁をいただいたのですが、から手形かどうかはこれからの経過を見ればわかりますし、もっと事実もあげて議論をしていきたいと思います。  一つ要望しておきますが、今回の返還になる地域を図面に図示をして資料として提出をしていただきたい。
  201. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 善処させます。  小林進君。
  202. 小林進

    小林(進)分科員 外務大臣にお伺いいたしますが、三十分ですから項目だけでけっこうでございます。  韓国と結んだ大陸だなの協定でございますが、これは完全にもうコンクリートされて、将来に向かっても動かし得ないものかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  203. 高島益郎

    ○高島政府委員 今回、一月末韓国との間に署名いたしました二つの協定は、国際法上署名という行為によって確定したわけでございます。
  204. 小林進

    小林(進)分科員 それじゃ、もうコンクリートされて、これは動かし得ないものですね。
  205. 高島益郎

    ○高島政府委員 内容につきましては、動かし得ないということでございます。
  206. 小林進

    小林(進)分科員 そうすると、もう国会の批准を待つだけですか。完成するには、国会の批准を待てば完全なものになるわけですね。
  207. 高島益郎

    ○高島政府委員 まだ日韓両国政府間で署名しただけでございまして、これから手続といたしましては、憲法に従って国会に書類等を提出いたしまして、それから国会の御承認を得た後に政府が批准するという段取りになっております。
  208. 小林進

    小林(進)分科員 もはや実質的には、政府間の協定は完全にでき上がっていると見なければいけない。じゃ将来、中国が御承知のとおり反対をいたしておりますが、中国側の反対がどう強力であろうとも、もはやこれは動かし得ない既成の事実である、こういうことに解釈してよろしゅうございますな。
  209. 高島益郎

    ○高島政府委員 日韓両国政府間で署名いたしました協定そのものは、中国を拘束するものでないことは、もう御承知のことでございまして……(小林(進)分科員「何で」と呼ぶ)いや、これは日韓だけを拘束する協定でございますので、この協定自体が、中国を含みます第三国を拘束するということは絶対にありません。  ただ将来、先生の御心配のとおり、日中間ではもちろん、先ほどの境界についての画定交渉をしなければならないということになっておりますので、その段階でいろいろ調整しなければならぬ問題は、理論的にはあり得るかと思います。
  210. 小林進

    小林(進)分科員 私は、これはたいへんな問題だと思います。中国もあるいは北朝鮮もそれぞれ、公海といいますか、領海といいますか、その海に対しては平等の発言権を持っておる。その発言権を持っている国をないがしろにして、両国間だけで問題をもうコンクリートしてしまって、理論的に成り立つけれども、この条約はもう変更も何もできないということは、私は、これはたいへんな問題だと思っておりますが、時間もありませんから、これはこの程度にして、また場所を変えてやりますが、私は、大平外務大臣はたいへんなことをやっていただいたと思います。  特に、中国の問題は、私はこれは将来たいへん尾を引いていくと思いますが、それも含めて、いま自民党の内部でも、この大陸だな、いわゆる日韓両国の問題については、たいへん異議もあるし党内も火が燃えているようでありますが、野党も同じであります。金大中事件をはじめとして、日本主権が侵害されたかどうかも不明確のままにしておきながら、われわれが絶対反対しておる、与党も反対しておりましたところの日韓閣僚懇談会などというものも、世論を無視し野党の主張も無視し、党内のコンセンサスもないままにおやりになった。今度は、国際的にはお隣の中国、将来ともいろいろな問題を処理していかなければならない、その過程にある重大な中国の立場も無視して、二国間、しかも国民の前には、協定の道程といいますか、経過というものは半秘密裏にして、世論にそれを反映せしめるということなしに、秘密裏にこういう協定をお進めになった。一体、この協定の期間は何年間ですか、外務大臣
  211. 高島益郎

    ○高島政府委員 協定の有効期間は、五十年ということになっております。
  212. 小林進

    小林(進)分科員 五十年でしょう。これは一年や二年の暫定協定じゃないのですよ。こういうふうな国際問題は、しかも相手国はふらふらして、いつぶっ倒れるかわからないような、そういう不安定な金鍾泌内閣などというものを相手にして、わが日本を将来に向かって、国際的にも五十年拘束するような条約を、世論にも反映しなければあるいは野党の意見も聞かないで、さっさとどろなわ式にきめるなんというのは、これ一つでも外務大臣の姿勢は了承できない。私は重大な間違いだと思っております。大いにひとつ反省をしてもらわなければならぬと思います。  次に、この問題は、外務大臣はきのうも内閣委員会か何かで答弁をされておりまして、近く日中航空協定の問題で北京に行って、この交渉をお始めになると言っておりますが、これは間違いありませんか。
  213. 大平正芳

    大平国務大臣 間違いありません。私が行くという意味ではなくて、交渉を始めるということでございます。
  214. 小林進

    小林(進)分科員 交渉を開始されるということでございますけれども、いつから開始されますか。
  215. 大平正芳

    大平国務大臣 近く開始いたします。
  216. 小林進

    小林(進)分科員 近くは、もうさっき聞きましたから、その近くはいつかということを聞いているのであります。いつからおやりになりますか。
  217. 大平正芳

    大平国務大臣 先方と打ち合わせをいたしておりますから、何日からということはまだ確定いたしておりませんが、きわめて近い機会に開始いたします。
  218. 小林進

    小林(進)分科員 私は、この日中航空協定の問題についても、外務大臣は相当の責任を感じてもらわなくちゃいかぬと思いますよ。私は新聞紙上で見ただけでありまするけれども、あなたは一月早々に北京へ飛んで行かれた。そうして日中航空協定に対する予備交渉といいますか、トップ会談をおやりになったのでありまするけれども、その交渉の経過を見た限りにおいては、相当中国側にも、最初は強硬な条件もあり意見もあった。それが、あなたの交渉というか、最後には中国側は強い要望を全部さいて、大平何がし氏という人間性もまあ信頼して、あなたにおまかせしましょうという形で、たいへん大きく譲歩した形で問題の話し合いを済ましてあなたはお帰りになった。それだけに、その後の事の仕上げに対しては、それこそ国際信義といいましょうか、相手国中国に対する信義も含めて、私は、もっと熱意を込めた交渉の進捗をはからなければならなかったと思う。  自来、国内においても、自民党の青嵐会などという――主査は青嵐会ではないそうでありまするけれども、そういう方々の反発も受けたりして、何一つ問題は進展をしない。一体、台湾とは民間取りきめをやることになっておりますけれども、その問題も見通しをつけて、近く北京交渉はできるんですか。板垣君が、あなたの代理かあるいは何かで一、二回台湾に行っておられるけれども、私どもの仄聞するところによれば、まだまだその台湾政府のほうでは強硬な意見もあって、あなたの考えているようなコンセンサスができる可能性もまだ困難だといわれている。その中で、あなたは近く北京へ行って、正式に日中航空協定交渉をおやりになるというんだが、また同じような日暮らし外交をおやりになって、さらに問題をこんがらかしたり、日本という国の外交信頼を失わせるような結果になるのではないか。私は、非常にそれをおそれているから、いまの問題をお尋ねをしておるわけであります。台湾問題もちゃんと処理ができて、そうして、きちっとしたいわゆる日中航空協定に入れるような見通しがおありになりますかどうか、あなたの見通しと決意のほどを、ひとつ承っておきたいと思うのであります。
  219. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび本委員会でお答え申し上げますとおり、日中の政府間の協定を結び、日台間の民間協定を結びまして、両方を両立させなければならぬ、そのために全力をあげていかなければならぬと考えております。
  220. 小林進

    小林(進)分科員 その決意はなければならぬと思う。なければならぬことだけは、これはわかっております。けれども、なければならぬ答弁だけで、あなたは一年半、二年、話を聞いても何もやっていない。あなたは、田中内閣が生まれて外務大臣になって、おやりになったのは日中ですね。まあ、外交の窓口をお開きになった。事実の上に形にあらわれた。あとは何ができていますか。あと何もできていないと言っても過言でないくらいだ。それだから私はお聞きするんです。やらなければならないということは、いま外務省は山積しています。山ほどありますけれども、なければならぬ、なければならぬで、何もやったことがないと言いたいくらい、あなたの外交は日暮らし外交であり、成果のない外交だから私は申し上げる。  ここでまた言いますが、いまの大陸だなの問題、中国側は、この大陸だなに対する日韓両国の協定に対して、強硬な反対の意思表示があったことがありますが、これが、いまあなたの言われる日中航空協定に支障を来たすことがないかどうか、承っておきたいと思うのであります。ないならないと、きちっと言ってください。
  221. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、全然別個の問題と考えております。
  222. 小林進

    小林(進)分科員 事案は別でございましょうけれども、国は一つであります。日中航空協定をやる国も中華人民共和国であれば、大陸だなの日韓協定に対して故障、異議を申し立ててきているのも中華人民共和国、国は一つであります。相手国がこの二つの問題を別個に考えて、あなたの航空協定にすなおに、隣善友好、信頼をもって一体乗ってくれる見通しがあるかどうか、私はこれを聞いているのであります。
  223. 大平正芳

    大平国務大臣 日本としては、誠心誠意当たりたいと思います。
  224. 小林進

    小林(進)分科員 日本の態度を聞いているんじゃないのです。中国側は、あなたの近く行なわれる日中航空協定に、いわゆる信頼をもって、大陸だなの問題を別個の問題だということとして、あなたの話に乗ってくれる可能性があるか、それを聞いているのですよ。中国の態度を聞いているのです。
  225. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、中国に聞いてもらわなければわかりませんけれども、私は、日中の友好関係に顧みて、われわれの期待に、中国はこたえていただくことを期待いたしております。
  226. 小林進

    小林(進)分科員 すべて相手国ですから、相手に聞かなければわからぬなどということは、答弁になりませんよ。あなたは、この韓国問題で私が言うと、韓国に聞いてみなければわからないと言う。そんな無責任な子供だましの答弁をやってはいけませんよ。そんなことは余分なことだ。私は、外交責任者である限りは、相手国にそういう国際条理に反するような問題を投げかけて、反対の故障、異議を申し立てておりながら、片方で、友好を中心にした航空協定などというものがすなおに結ばれるものかどうか。少なくともおやりになるからには、そういうこともちゃんと見通しをつけて、これから交渉にお入りになるのでございましょうか、私はその見通しはどうかということを聞いているのであります。相手国の態度を見なければわからぬなんという、そんな無責任外交なら、これは国民の一人として信用するわけにはいきません。やってみなければわからぬということですね、それじゃ。そういうことでございましょう。
  227. 大平正芳

    大平国務大臣 友好国の間でも、いろいろな意見の違いがあり得ることでございまして、大陸だな問題につきましては、小林さん御指摘のように、日中間に見解の相違があることは明らかでございます。しかし、そのことが、日中間の友好を直ちにそこなうものであるとは、私は考えておりません。
  228. 小林進

    小林(進)分科員 いまのあなたの御答弁で、大陸だなの問題が、日中航空協定交渉に支障はないというあなたの見通しをおっしゃいましたから、いまはその答弁だけをちょうだいしておきます。将来、新しい事態ができました場合には、私は、あなたの責任を追及いたしますから。  第三の問題で私は申し上げますが、金大中氏の問題でございます。私は、予算委員会でも決算委員会でも何回も申し上げ、同じことをまた繰り返すのですが、この問題は、何といっても主権の侵害と、それから金大中氏の出国も含めた自由の問題、基本的人権の問題私どもは、依然として側も解決をしていないという立場に終始変わりはないわけであります。  そこで、時間もありませんから、前回の答弁に引き続いてお尋ねいたしますが、金東雲氏は、わが日本から金大中氏を拉致される事件に関係をしていたということだけは、あなたもお認めになったし、日本の警察庁もこれを認めているが、その身分が、いわゆるKCIAですか、その身分と、外交官という、いわゆる一等書記官という二つの身分を当時彼は持っていた。その身分の上でやったのか、その身分を離れた私人としてやったのか、何回も繰り返してまいりましたが、もうここまできたのでありますから、外務省にもその結論は出たと思いますから、どういう身分でおやりになったのか、お尋ねいたします。
  229. 高島益郎

    ○高島政府委員 これは捜査の問題でございますけれども、私ども警察から聞いているところによりますと、金東雲氏は、東京において大使館の職員として行動しておったというふうに了解しております。
  230. 小林進

    小林(進)分科員 これは重大な問題だと思います。大使館の館員の身分として行動したというならば、これは明らかな主権の侵害であります。主権の侵害であることをお認めになりますね。
  231. 大平正芳

    大平国務大臣 直ちにそうならないのであります。大使館の一等書記官という身分を持たれておったことは、いま答弁がありましたとおりでございますが、その大使館員である、外交官である者の行動全体が、公権力の発動であるかどうかという問題になりますと、そのことは、それだけの糾明と証拠が要るわけでございまして、いまその点につきまして、断案を下すまでの証拠ができていない。  したがって、日本政府といたしましては、たびたびお答え申し上げておりますように、主権の侵害であるともないともまだ断定できないという立場に立っております。
  232. 小林進

    小林(進)分科員 それは、先ほどのアジア局長ですかの答弁と違うじゃないですか。私は、金大中を拉致するときのその行動を、彼は何の立場でやったのかと言ったら、いわゆる外交官としての身分に基づいて拉致行為をやったと、いま速記録に書いてあるとおり言われたじゃないですか。外交官の身分をもって、そして、その金大中拉致事件の、主役ということばは用いなかったけれども、やったのだということを言われた。これはそう警察当局がその結論を出した、いま言われたのであります。それじゃ完全なる、いわゆる主権侵害じゃありませんか。それでもまだ主権侵害にならないのですか。
  233. 大平正芳

    大平国務大臣 大使館の職員たる身分をもって行動した。しかし、その行動が公権力の発動によるものであるかどうかということが、主権の侵害であるかどうかのきめ手になる問題でございまして、それを断案できる証拠は、まだあがっていないということでございます。
  234. 小林進

    小林(進)分科員 私は、あなたのそういう牽強付会な詭弁を了承するわけにいきません。できません。私はこの問題は了承できませんから、これも含めてまた次の機会にこれはやります。国家主権というものは、世界の歴史の上にも消すことのできないぐらい重大問題ですし、これはきょうやあすで処理できる問題ではない、たいへん重大な問題です。世界の歴史上にたいへん重大な問題でありますから、私は、あなたの答弁を了承するわけにはいきません。  次に、私はまだこの問題について申し上げますが、金大中氏は、やはりあなたのおっしゃるとおり自由でございますか。金大中氏の韓国現在における身分は自由でございますか。
  235. 高島益郎

    ○高島政府委員 私ども、韓国政府からの説明に基づいて判断しておるところによりますと、金大中氏は一般市長としての自由を回復した。十月二十六日の韓国政府説明でございますが、自来そういうことで了解しておりまして、出国の問題につきましても、日本における日本人の自由とは必ずしも同じでないかもしれませんが、韓国の一般市民としての自由を回復したという説明でございます。
  236. 小林進

    小林(進)分科員 それでは、主権侵害といわゆる金大中氏の自由に関する基本人権の問題でありますから、もし自由であるならば、当然日本へ連れ戻して、そして日本政府の捜査に応じさせることもまた自由でなければならぬと私は思います、いまの答弁を裏返しすれば。それじゃ、日本に金大中氏を連れ戻すことの交渉をいままでおやりになったかどうか。まだ戻ってきてないじゃないですか。市民権としての自由があるならば、当然日本へ身柄も来てもらってもいいはずですから、その点はどうなっているのですか。
  237. 高島益郎

    ○高島政府委員 金大中氏は、アメリカへ行きたいという希望を持ちまして、韓国政府に対してそういう申請をしているというふうに了解しております。これに対しまして、韓国政府説明では、現在法務部におきまして出国の問題について審査しておる、そういう段階でありますので、いますぐに外務部のほうに対する旅券の手続には、まだ至っておらないというように理解しております。
  238. 小林進

    小林(進)分科員 アメリカの問題に対する旅券の審査も、実に理由としては長過ぎる。長過ぎるが、いわゆる渡米の問題は別として、日本の捜査当局が、身柄を日本に引き戻して、日本の捜査に応じてくれるようにということは、外務省を通じてしばしば要求しているということば何回も言われている。外務省は、一体その交渉をその後どのように継続され、どのように要求されているのか。もうことばの問題は飽きた。ひとつ証拠を見せてください。証拠をここでお見せください。
  239. 高島益郎

    ○高島政府委員 昨年十一月の二日に、この問題を解決する前の日韓間の交渉におきまして、金大中氏が将来出国する場合におきましては、日本の捜査に対する協力を求めるために、日本に寄ってもらいたいということを言っておりまして、その要請は、いまだにそのままスタンドしておるということでございます。
  240. 小林進

    小林(進)分科員 そんな話はもう何べんも聞いた。何回も聞いた。それじゃ、その十月の末日から、自来今日までは交渉なしだな。それ以後に対しては、外務省はもはや何の交渉もしておいでにならないということでございますね。
  241. 高島益郎

    ○高島政府委員 これは、もう外務大臣をはじめ私どもあらゆるレベルで、後宮大使も含めて、韓国に対し、再三再四出国の要請をいたしております。
  242. 小林進

    小林(進)分科員 私は、再三再四交渉されたというその証拠をひとつお見せ願いたいと言うんです。国民はだれも信用してないのだから、具体的な証拠がおありになりましたら、ひとつお見せいただきたい。
  243. 高島益郎

    ○高島政府委員 金大中氏の出国問題につきましては、ここに記録がございますが、わがほうとしていままでやりましたのは、十一月二十二日、十一月二十八日、十二月五日、十二月十二日、十二月十三日、十二月十七日、一月十七日及び二月十三日、以上でございます。
  244. 小林進

    小林(進)分科員 あなたは、期日だけをお続みになったのだけれども、どういう交渉になっているのか、その内容を証拠としてお見せいただきたいと言うんです。文書でその交渉内容をお見せいただけますか。国民にひとつお示しいただけますか。
  245. 高島益郎

    ○高島政府委員 これは要するに、外務大臣が、たとえば先方の外務大臣にあてた場合……(「出せるか出せないかだけ言えばいいんだよ」と呼ぶ者あり)要するに、金大中氏がその希望に従って、早く出国できるようにという日本政府の希望を伝えてあるのでございまして、その内容はお出しできません。
  246. 小林進

    小林(進)分科員 全く外務省は国民をだますことばしか言ってない。そんなことで国民は信用すると思いますか。あなた方、文書も出せない。何月何日やった。どんな交渉をしたのかと言ったら、その内容も示されない。実に国民を愚弄する、国会を愚弄する、これほどはなはだしいことはない。  そこで、私はそれではことばを変えて申し上げますが、問題はやはり十一月二日です、金鍾泌氏が日本へ来られて、そして何か朴大統領の親書をお持ちになってきて、これで外交上政治問題は終止符を打ったと言われた。その外交上の終止符を打ったということは、一体内容的にどういうことなんですか。主権侵害の問題も解決したし、金大中氏の自由人権の問題もこれでもう解決した、一体こういうことなのかどうか。その内容をひとつここでお知らせを願いたい。
  247. 高島益郎

    ○高島政府委員 十一月二日に行ないました外交的決着の内容につきましては、再三大臣から国会に御説明いたしておりますが、要点は、いま先生御指摘主権侵害の問題、この問題については、はっきり主権侵害があったかないかという点についての結論は出しておりません。したがいまして、将来捜査の結果、主権侵害があったという事実がはっきりした場合におきましては、韓国政府に対して責任を追及する権利を留保するというかっこうで、外交的に決着をしたということでございます。
  248. 小林進

    小林(進)分科員 金大中氏の問題は…。
  249. 高島益郎

    ○高島政府委員 金大中氏の問題につきましては、十月二十六日に先方の政府のほうの声明で、金大中氏は、出国の問題を含めて自由を回復したということでもって決着をしたわけでございます。
  250. 小林進

    小林(進)分科員 それでは皆さん方は、もう金大中氏の身柄は自由である、こういうふうに解釈をされているわけでございますね。
  251. 高島益郎

    ○高島政府委員 そのように了解しております。
  252. 小林進

    小林(進)分科員 それでは、きのうも委員会で問題になったように、韓国の政府は、まだ当分金大中氏が、いま出国することも含めて自由になることは不可能だと言われた。また、非公式ではあるけれども、新聞等の会見において後宮大使ですか、これも、金大中氏がしばらく自由になることは困難だという話もされている。これは一体どういうことですか。いまの答弁と矛盾していませんか。
  253. 高島益郎

    ○高島政府委員 昨日も、私、はっきりこの場で否定したつもりでございますけれども、そのようなことを大使が言うはずはございません。
  254. 小林進

    小林(進)分科員 何か外務大臣、二、三十分どこかへ行かれるそうですな。それではまことに残念ですけれども、あなたに一つ言わなければならないのですが、外務次官等も国民の納得いかないうちに辞職させられたというのですけれども、そういう人事も含めて、おやめになった外務次官などというものは、御承知のとおり反中国派の巨頭であったが、ああいう者自体外務大臣が持ってくるという人事を含めて、あなたのおやりになることは、初めから終わりまで全く不可解千万、もう大平外交というものに対して、国民は何一つ期待はしておりません。むしろもう、毎日やきやきやきやきして、このインフレの物価値上げと外務大臣、これ二つだけが日本からなくなればいいと言っているのです。国民は声をあげてあなたを恨んでいます。この際、次官の首などおとりになることも、それも一つだ。あれは不適任者ですから、それもけっこうでしょうけれども、この際、あなたは国民のために、外務大臣の地位をおやめになったほうが私は一番いいと思う。そうして新しい新鮮な外務大臣を迎えて、この山積している外交問題を一切解決すべきことが、むしろあなたの一番いまおとりになるべき道ではないかと思いますが、御決意のほどはいかがでございますか。
  255. 大平正芳

    大平国務大臣 小林さんの御意見は、御意見として承っておきますが、私は、私の公人としての判断と決意をもちまして公務に当たってまいりたいと考えます。
  256. 小林進

    小林(進)分科員 いま私は、金大中事件といい、大陸だなの問題といい、一つも私は納得できませんが、この際外務省――大臣おいでにならないが、国民は、外務大臣の辞職も含めて、いまの韓国における後宮大使、一体何をやっているのだと思っているわけですが、この後宮大使をやめさせる、国内に引き揚げて、せめて日韓会談の行き詰まりに対して、国民のこの怒りにこたえるというふうな、そういうお考えが外務当局にないかどうか、外務省、いかがです。
  257. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 大臣がおりませんので、事務当局としての考えを申し上げますけれども、いまのところ、先生のお述べになりましたようなことは考えておりません。
  258. 小林進

    小林(進)分科員 まことに限られた時間で、何も結論出ない。私も、何を質問し、何を聞き出したのか、実際私自身は初めから終わりまで不満だらけでありますけれども、約束の時間が参りました。ここで残念ながら終わりますけれども、しかし、私の持ち時間は終わっても、問題は一つも処理していないのでございますから、国会の続く限り、これは繰り返し外務省の責任を糾弾いたしますということを私は強く申し述べまして、私の質問を終わることにいたします。たいへんどうもありがとうございました。
  259. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 これにて小林進君の質疑は終わりました。  この際、午後三時まで休憩いたします。     午後二時三十一分休憩      ――――◇―――――     午後三時五分開議
  260. 藤井勝志

    藤井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬長亀次郎君。
  261. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 私、きょうは、原子力潜水艦の沖繩の那覇軍港及びホワイト・ビーチ、これに対する放射能の測定の安全性の問題その他についてお伺いしたいのです。  最初に、科学技術庁にお伺いしたいのは、いま、原子力軍艦放射能調査指針大綱によって現在の放射能監視体制がとられておるようでありますが、これによりますと、沖繩は当然のことながら復帰後は本土並みになっていなければならない、それがなっているかどうか、そういった点に焦点を合わせてお伺いしたいのですが、最初に、復帰後沖繩に原子力潜水艦が何べん寄港し、さらに停泊したものが何隻か、沖合いにいたのが何隻か、その実態について御説明を願いたいと思います。
  262. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいまの先生の御質問でございますが、沖繩への原子力潜水艦の入港は復帰後十隻でございまして、最初が四十七年六月十九日でございまして、一番最近は四十八年十月五日となっております。この十隻のうち八隻がいわゆる沖泊まりでございまして、二隻がピアに停泊をしておる、こういうことでございます。
  263. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 停泊、あるいはいつどこに停泊したのか、その点、はっきりさせていただきたい。
  264. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいまの先生の御質問は、ピアに着いたのがいつでどこであるか、こういう御質問かと思いますが、二隻のうち、最初のものは四十七年八月二十日、ガーナードが十五時五十一分に着きまして、十八時十八分に出ております。それからその次、ホークビルが四十七年八月二十一日の二十二時四十三分に接岸いたしまして、翌二十二日の零時三分、真夜中に出ております。
  265. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 従来、那覇軍港とホワイト・ビーチに原潜は寄港しておりましたが、いまはホワイト・ビーチだけに入港して、那覇軍港には寄港していないと聞いております。それはどういった事情に基づいておるのか。アメリカが、たとえば対米折衝によって、日米合同委員会などで、那覇軍港は使わない、寄港させない、ホワイト・ビーチだけに限るといったような取りきめでもあるのか、あるいはアメリカが自分の都合でホワイト・ビーチだけに限定しているのか。ここら辺の事情をはっきりさしてほしいと思います。
  266. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 原潜の寄港地におきましては、日本側がかねて監視体制をとっております。そこで、沖繩の復帰の時点におきまして、監視体制実施いたしますためのモニタリングポスト、モニタリングポイント、こういうふうな施設を設けるにあたりましては、米軍の施設、区域内を使うことがありますので、そのための共同使用という手続をとっております。それで、沖繩に関しましては、このための共同使用の手続をとりましたのはホワイト、ビーチになっておりますので、那覇軍港につきましてはそういう措置がとられておらない、したがって、日本側の監視体制が整っておらない、こういう事実関係になるわけでございます。
  267. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 これはいつの取りきめか、明らかにしてほしいと思います。
  268. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昭和四十七年五月十五日、沖繩復帰の時点におきまして、合同委員会においてそういう措置がとられております。
  269. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 それでは、この取りきめによって那覇軍港には以後寄港しない、ホワイト・ビーチ的決着の内容につきましては、再三大臣から国会に御説明いたしておりますが、要点は、いま先生御指摘主権侵害の問題、この問題については、はっきり主権侵害があったかないかという点についての結論は出しておりません。したがいまして、将来捜査の結果、主権侵害があったという事実がはっきりした場合におきましては、韓国政府に対して責任を追及する権利を留保するというかっこうで、外交的に決着をしたということでございます。
  270. 小林進

    小林(進)分科員 金大中氏の問題は…。
  271. 高島益郎

    ○高島政府委員 金大中氏の問題につきましては、十月二十六日に先方の政府のほうの声明で、金大中氏は、出国の問題を含めて自由を回復したということでもって決着をしたわけでございます。
  272. 小林進

    小林(進)分科員 それでは皆さん方は、もう金大中氏の身柄は自由である、こういうふうに解釈をされているわけでございますね。
  273. 高島益郎

    ○高島政府委員 そのように了解しております。
  274. 小林進

    小林(進)分科員 それでは、きのうも委員会で問題になったように、韓国の政府は、まだ当分金大中氏が、いま出国することも含めて自由になることは不可能だと言われた。また、非公式ではあるけれども、新聞等の会見において後宮大使ですか、これも、金大中氏がしばらく自由になることは困難だという話もされている。これは一体どういうことですか。いまの答弁と矛盾していませんか。
  275. 高島益郎

    ○高島政府委員 昨日も、私、はっきりこの場で否定したつもりでございますけれども、そのようなことを大使が言うはずはございません。
  276. 小林進

    小林(進)分科員 何か外務大臣、二、三十分どこかへ行かれるそうですな。それではまことに残念ですけれども、あなたに一つ言わなければならないのですが、外務次官等も国民の納得いかないうちに辞職させられたというのですけれども、そういう人事も含めて、おやめになった外務次官などというものは、御承知のとおり反中国派の巨頭であったが、ああいう者自体外務大臣が持ってくるという人事を含めて、あなたのおやりになることは、初めから終わりまで全く不可解千万、もう大平外交というものに対して、国民は何一つ期待はしておりません。むしろもう、毎日やきやきやきやきして、このインフレの物価値上げと外務大臣、これ二つだけが日本からなくなればいいと言っているのです。国民は声をあげてあなたを恨んでいます。この際、次官の首などおとりになることも、それも一つだ。あれは不適任者ですから、それもけっこうでしょうけれども、この際、あなたは国民のために、外務大臣の地位をおやめになったほうが私は一番いいと思う。そうして新しい新鮮な外務大臣を迎えて、この山積している外交問題を一切解決すべきことが、むしろあなたの一番いまおとりになるべき道ではないかと思いますが、御決意のほどはいかがでございますか。
  277. 大平正芳

    大平国務大臣 小林さんの御意見は、御意見として承っておきますが、私は、私の公人としての判断と決意をもちまして公務に当たってまいりたいと考えます。
  278. 小林進

    小林(進)分科員 いま私は、金大中事件といい、大陸だなの問題といい、一つも私は納得できませんが、この際外務省――大臣おいでにならないが、国民は、外務大臣の辞職も含めて、いまの韓国における後宮大使、一体何をやっているのだと思っているわけですが、この後宮大使をやめさせる、国内に引き揚げて、せめて日韓会談の行き詰まりに対して、国民のこの怒りにこたえるというふうな、そういうお考えが外務当局にないかどうか、外務省、いかがです。
  279. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 大臣がおりませんので、事務当局としての考えを申し上げますけれども、いまのところ、先生のお述べになりましたようなことは考えておりません。
  280. 小林進

    小林(進)分科員 まことに限られた時間で、何も結論出ない。私も、何を質問し、何を聞き出したのか、実際私自身は初めから終わりまで不満だらけでありますけれども、約束の時間が参りました。ここで残念ながら終わりますけれども、しかし、私の持ち時間は終わっても、問題は一つも処理していないのでございますから、国会の続く限り、これは繰り返し外務省の責任を糾弾いたしますということを私は強く申し述べまして、私の質問を終わることにいたします。たいへんどうもありがとうございました。
  281. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 これにて小林進君の質疑は終わりました。  この際、午後三時まで休憩いたします。     午後二時三十一分休憩      ――――◇―――――     午後三時五分開議
  282. 藤井勝志

    藤井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬長亀次郎君。
  283. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 私、きょうは、原子力潜水艦の沖繩の那覇軍港及びホワイト・ビーチ、これに対する放射能の測定の安全性の問題その他についてお伺いしたいのです。  最初に、科学技術庁にお伺いしたいのは、いま、原子力軍艦放射能調査指針大綱によって現在の放射能監視体制がとられておるようでありますが、これによりますと、沖繩は当然のことながら復帰後は本土並みになっていなければならない、それがなっているかどうか、そういった点に焦点を合わせてお伺いしたいのですが、最初に、復帰後沖繩に原子力潜水艦が何べん寄港し、さらに停泊したものが何隻か、沖合いにいたのが何隻か、その実態について御説明を願いたいと思います。
  284. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいまの先生の御質問でございますが、沖繩への原子力潜水艦の入港は復帰後十隻でございまして、最初が四十七年六月十九日でございまして、一番最近は四十八年十月五日となっております。この十隻のうち八隻がいわゆる沖泊まりでございまして、二隻がピアに停泊をしておる、こういうことでございます。
  285. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 停泊、あるいはいつどこに停泊したのか、その点、はっきりさせていただきたい。
  286. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいまの先生の御質問は、ピアに着いたのがいつでどこであるか、こういう御質問かと思いますが、二隻のうち、最初のものは四十七年八月二十日、ガーナードが十五時五十一分に着きまして、十八時十八分に出ております。それからその次、ホークビルが四十七年八月二十一日の二十二時四十三分に接岸いたしまして、翌二十二日の零時三分、真夜中に出ております。
  287. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 従来、那覇軍港とホワイト・ビーチに原潜は寄港しておりましたが、いまはホワイト・ビーチだけに入港して、那覇軍港には寄港していないと聞いております。それはどういった事情に基づいておるのか。アメリカが、たとえば対米折衝によって、日米合同委員会などで、那覇軍港は使わない、寄港させない、ホワイト・ビーチだけに限るといったような取りきめでもあるのか、あるいはアメリカが自分の都合でホワイト・ビーチだけに限定しているのか。ここら辺の事情をはっきりさしてほしいと思います。
  288. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 原潜の寄港地におきましては、日本側がかねて監視体制をとっております。そこで、沖繩の復帰の時点におきまして、監視体制実施いたしますためのモニタリングポスト、モニタリングポイント、こういうふうな施設を設けるにあたりましては、米軍の施設、区域内を使うことがありますので、そのための共同使用という手続をとっております。それで、沖繩に関しましては、このための共同使用の手続をとりましたのはホワイト、ビーチになっておりますので、那覇軍港につきましてはそういう措置がとられておらない、したがって、日本側の監視体制が整っておらない、こういう事実関係になるわけでございます。
  289. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 これはいつの取りきめか、明らかにしてほしいと思います。
  290. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昭和四十七年五月十五日、沖繩復帰の時点におきまして、合同委員会においてそういう措置がとられております。
  291. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 それでは、この取りきめによって那覇軍港には以後寄港しない、ホワイト・ビーチ明らかで、あなたがいま説明されたことだけでもはっきりしておるんですが、このままずっと改善しないでおくつもりであるのか。さらに一歩もっと前進して、何か本土並みにでもこれを持っていきたいというふうに考えておられるか。実際そう考えておられるんじゃないとすれば、これはもうたいへんなことになる。当然のことながら、政府自体が、復帰したらみな本土並みにするんだということは宣伝したわけです。この宣伝の裏では、事実はこういった極端な差別が行なわれている。これが県民に知られると、国民に知られると、何だ、こんなことやっているのか。これはほとんどの県民、わからないですよ。私もこの大綱を見て初めて、これはたいへんな措置をしているなとわかりましたが、たとえばモニタリングボート、これはもちろん共産党のきのう発表した中でも、このボート自体がどういう性能を持ち、どういうふうに接近し、あるいは接近を禁止されているかというふうなことも明らかになっておりますが、この点、もっと改善したいというふうな点があればいま説明してほしいと思います。
  292. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、専門家にも十分検討をしていただきまして、沖繩の地理的条件、特に開いた広い湾という地理的条件等を勘案いたしまして現在の体制がしかれておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましてはこの体制で一もちろん今後機器の充足等は必要な場合に十分行ないますので、現在の体制で万全の措置がとられると思っております。  なお、私が先ほど申し上げましたのは沖繩ということではなくて、ホワイト・ビーチの地理的条件ということでございます。
  293. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 それでは現在の体制でいいという結論ですか。
  294. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 部分的に機器の補充その他をいたすことは当然考えなければならぬと思っておりますが、体制としては現在の体制が、専門家も十分検討いたしました結果、この体制でいいということに考えております。
  295. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 たとえばモニタリングポスト、これは海中にない。空中だけである。こういったポストを海中に、せめて横須賀、佐世保並みに持っていきたいとか、あるいは海中検出器をその桟橋に四カ所あるいは五カ所やりたいとか、これは当然、分析化学研究所のでたらめきわまる捏造事件を踏まえて、科学技術庁はもっと真剣に取り組んでおると私は思ったわけですよ。これが現在どおりでいい、こうなりますと、一体科学技術庁は、原潜の放射能の危険から国民の健康と安全を守るという意図は全然ないのだ。  じゃ、具体的に回答をさしてください。たとえば、いま一番最初に私が確かめました、十回復帰後入っておる、そのうち二回は岸壁に停泊しておる、八回は沖合いだ、こういう説明でした。沖合いで、モニタリングボートもない。そのとき、ここで明らかになっておるのは、第十一管区海上保安本部ですか、これが船を用船して調べるのだといったようなことを言っている。これは具体的にどのような形でやっているか、これを説明してください。実に危険なんです。これは、横須賀、佐世保では満足ではない、もっと改善しなければいかぬ点も相当ありますが、沖繩の沖合いはまるでほったらかしの状態である。この点について何ら改善するつもりもないとおっしゃったわけだから、そのままほったらかすのだというふうに理解されるのですが、これはどうなんですか。――時間が限定されておりますので、答えられなければわからぬとおっしゃってください。
  296. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 沖泊まりの場合には、先生ただいま御指摘のように、専用のモニタリングボートではございませんが、用船をいたしまして、サーベーメーターを積みまして、第十一管区海上保安本部と科学技術庁と協力をいたしまして、原子力潜水艦の周辺をモニタリングをいたすわけでございます。そのときに空間線量あるいは海水の放射能をサーベーメーターで測定いたしまして、さらに海水のサンプルを持ち帰りまして波高分析器にかける、こういう手だてをとっておりますので、異常放射能がございます場合には直ちに検出される、こういうことになっております。
  297. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 ここでこうなりますと、実はきのう、専門家が行って沖繩に滞在して、全部調査した結果に基づいて私は言っておるわけなんです。たとえばモニタリングボートは、佐世保のはこれなんですよ、御存じのとおり。これがあれば別に用船を使ってやる必要もない。しかも、事実を調べたらこうなんですよ。向こうに公害衛研というのがありますね。公害衛生研究所、そこへ行きましたら、用船は、糸満なら糸満に漁船があります、この漁船を借りましてそこへ行くわけだ。行ってどういう調査をしておるかというと、バケツのような容器に海水をくんでこれを調べるというわけなんです。どうなんですか、これが検査の事実なんですよ。海水をくみ上げてサーベーメーターに当てる、これだけなんです。これで一体放射能が検査できるのかどうか。これは専門家でなくても笑い話になりますよ。これが実態です。いま十回のうち、特に沖合いが八回でしょう。しかもあっちは、地理的条件、潮流の条件からいって、向こうの沖合い、たとえば三海里のところでもどんどんホワイト・ビーチの港湾の中に入り込んでくるというのが現状なんです。コバルト六〇についてはあとで申し上げますが、そういった点で、いま沖合いの監視体制だけを取り上げてみてもこの状態であるにかかわらず、現在のままでいいのだということはどういうふうな見地に立って言えるのか。これは原子力局長、この点どうなんです。ただ単に技術屋の苦しまぎれの答弁ではなくて――科学技術庁、この全体の体制の中でも、実際は、報告をする、それを調査し、分析してやるという専任官はいないのでしょう。いますか、科学技術庁本庁に。
  298. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 先ほど次長からお答え申し上げましたとおり、ホワイト・ビーチにつきましては、沖繩ということではなくて、その地理的条件からいたしまして現在のような体制をとっているわけでございますけれども、今回の事情にかんがみまして、機器の増強あるいは機器システムの点検をしてみるということについては、今後これを考えておるところでございます。  なお、さらに、係官がどういうような状態で常駐もしくは派遣をされておるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、詳細調査の上、なるべく考慮いたしたいと考えております。
  299. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 たとえば、これはあなた方がいま計画しておるのかどうか、これは別として、現在モニタリングカーが行きますね、いざ寄港したということになると、これを聞いてからすぐ走っていって、検出器を海に投ずる、四時間かかる、さらにそれを撤去するまでに四時間かかる、こういった状態でいまカーそのものが動いておる。こういった現状なんですね。そこで、たとえばこういったことがあるのです。これはホワイト・ビーチの大体の略図を書きましたが、これが原潜と見る場合に、四カ所に海中検出器を置いて、それでモニタリングカーにケーブルで接続してやるのだといったようなこと、さらにそれでもアメリカとしては、ここにもし原潜が入った場合には、この検出器とこの検出器を使わないで、逆の検出器を使うのだといったようなことまで、調査の結果明らかにされておりますが、そのような計画があるのか、あるいはまた、いままでずっと次長や局長が言ったように、もうそのままほったらかしの状態にするのだということを言われるのか。ここら辺はどうですか。
  300. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 昭和四十八年度予算におきまして海中検出器の固定化を予定をいたしておりますが、ただいま先生御指摘の点につきましては承知をいたしておりませんので、現地の状況を調べてみないとわかりません。
  301. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 このモニタリングカー、それしかないから、効果的に使うためには固定した海中検出器を置く。それはいま審議中の四十九年度予算であるのか、四十八年度予算にこの海中にちゃんと固定した検出器を置くということであるのか、そこら辺どうなんですか。
  302. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 これは四十八年度予算をもちまして沖繩県に委託をしておる業務でございます。
  303. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 それで、できていますか。
  304. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 現在、県のほうが業者との間でいろいろ見積もり中であると聞いております。
  305. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 それは何基できるんですか。何カ所やるんですか、この固定海中検出器は。
  306. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 何基を固定化するかというふうなことも含めまして、県でただいま検討中と承知いたしております。
  307. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 そうすると、科学技術庁では、その実態を全然握っていない、どうなっているか明らかじゃない、検討中であり、作業中であるということで責任が果たせるわけですか、県に全部責任を負わせて。実際は科学技術庁が全国のこういった原子力軍艦に対する放射能、この監視体制責任は持っておるわけでしょう。それを、県がやっておる、県がやっておると、それで詳しくはわからぬ、これで技術庁の責任が果たせるということなんですか。
  308. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 県と科学技術庁と十分密接な連絡をとって、万遺漏ないように実施いたしておるつもりでございます。
  309. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 でたらめな返事はやらぬでください。実際わからぬのじゃないですか、あなた方は現実に。そうして、このような体制でいいんだとか、しかも漁船を使って、あの海水をバケツみたいな容器でくんできて調査するなどという、もうほんとうに人をばかにしたような調査しかやっていないのですよ、検査しか、監視しか。そうなれば、これはせめて横須賀あるいは佐世保ぐらいのことをやってやろう、モニタリングボートを一隻でもホワイト・ビーチにやって、常時回って、それで追跡調査もやるということをさせるということは、当然日本政府としては考えていいんじゃないですか。ここら辺は一体どうなっているか。状態がこういった状態なんですが、外務省としてはどういうふうにお考えか、ここら辺、大臣、何かお考えありますか。
  310. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 私どもは、現地の監視体制につきましては科学技術庁が御担当であるということで、科学技術庁のほうのお仕事にお願いしているわけでございますが、承知しております限りにおきましては、先ほど来原子力局のほうで御答弁ございますように、ホワイト・ビーチの地理的特性ということから見まして、横須賀なり佐世保のような内湾に原子力潜水艦が寄港する場合と地理的な状況が違っているということがまずあるだろうと思います。また、寄港回数から見ましても、横須賀が一番多く、その次に佐世保、それからホワイト・ビーチについては復帰以後合計十回ということになりまして、もちろん時間の長短によってきめられるべき性質のものではございませんけれども、一番のポイントはやはり地理的な状況の差異ということにあるだろうと思います。また沖繩の復帰後におきましては、昭和三十九年の日米間の合意、またそれを受けまして科学技術庁のほうできめられました監視指針大綱、こういうものが適用をされておるわけでございまして、安全性の確保につきましては、専門的な見地から十分な考慮が払われてきているというふうに承知しておるわけでございます。
  311. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 その原潜が入ってくる、これから安全を守る、放射能の監視体制を強めなくちゃいかぬわけですが、たとえば、いま日米間の取りきめの中に、原潜は至近距離二十メートル以上は接近できないといった問題とか、五十メートル以上近づいてはいけない、さらに原潜がドックに入った場合にはモニタリングボートはここに入ることができないといったような取りきめが日米間で合意されているのかどうか、ここら辺を明らかにしてほしいと思います。
  312. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 原子力艦船の寄港にあたりましては事前に通告があるわけでございます。通告を受けまして、入港時には先ほど来御議論いただいておりますモニタリングボートが横須賀並びに佐世保の場合には配置されて、入港時、出港時の監視を行なっているということでございますが、移動中の艦船並びにそれに追尾しますモニタリングボートということで、航行上の安全ということからしておのずから一定の距離というものが保たれることは当然であろうと思います。しかし、いま御指摘のような具体的な距離について日米間で取りきめ云々ということについては、私どもは承知いたしておりません。
  313. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 そういったのは日米間の取りきめではなくて、何か科学技術庁と現地アメリカ軍の間に、そういった二十メートル以上は接近するな、あるいは五十メートルとなると、まあある場合に衝突するというふうな危険があるのでということになっておるのか。さらに、ドックに入っている場合にはそこにモニタリングボートは入れないといったような問題は、別にアメリカとの取りきめではないということになれば、結局、現地の司令官と科学技術庁あたりで何か取りきめがあるのか、ここら辺ははっきりさしてほしいと思うのです。
  314. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 先ほどアメリカ局長からのお答えにもございましたとおり、ボートで原子力軍艦を測定いたしますときの気象上の、たとえば気象とか海象とか、こういうことから起こります制約等も考えまして、ある程度の距離というものは起こり得るかと考えますけれども、先生御指摘のような取りきめ等に関しては、私は承知いたしておりません。
  315. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 それでは、取りきめはないわけですから、科学技術庁がその腹になれば、いわゆる第一次冷却水が出る出口はどこであるということを明らかにしてもらって、そういった測定が実に容易なところにモニタリングボートをつけるというふうな意思が日本政府にあるとすればこれは十分できる。それから、二十メートルというふうな制限もないので、アメリカとの取りきめがないから、十メートルくらい接近してでも放射能の測定ができる。さらにドックに入っておる場合でも、自由にボートが入っていって測定ができるというふうに理解していいのですね。
  316. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、気象、海象その他実際上の自然的な条件によって、できる限り近づくことにはつとめておるようでございますけれども、この辺の制約というものはあるかと存じます。
  317. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 ちょっと聞こえないのですが、もう少しはっきり言ってください。  事実、現地に行って調べたら、沖繩では二十メートル――あれは停泊する場合だったのですが、二十メートル以上接近はいかぬ、さらに横須賀、佐世保は五十メートル以上、たとえば二十メートル、三十メートル、四十メートルはいかぬとかという制限、あるいはドックに入るとボートは出入り禁止されておる、ということではない。だから、いま申し上げましたように、こっちがやろうと思えば、ほんとうに至近距離に接近して測定できるというふうに理解していいですね。
  318. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 取りきめは承知しておりませんということは先ほど申し上げたとおりでございますが、気象、海象その他天然条件等の制約があって、実際上は、できる限りの接近につとめておるかと存じますけれども、そういう制約があるかと考えております。
  319. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 そこで、コバルト六〇についていろいろ調査の結果、最初参議院の加藤委員に対する科学技術庁の答弁では、これは空中における普通の放射能ではなくて、原潜から来ておることは間違いない。ところが途中でまた、これが疑わしいと変更されておりますが、いずれにいたしましても沖繩におけるコバルト六〇の問題は、那覇軍港にアメリカの原潜が自由に寄港していた当時から海底土の中に異常なコバルト六〇があるということは明らかであり、さらにこれは非常に不安におとしいれられておる問題であります。これについて、沖繩の全海域を再調査してコバルト六〇の点検をやる必要があると思うのですが、この点についてはいかがですか。
  320. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 その沖繩の海域におきますコバルト六〇の測定につきましては、那覇とホワイト・ビーチとの両方につきまして定期的にその状況を調査いたしております。
  321. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 私が申し上げますのは、那覇港、ホワイト・ビーチの汚染状況、コバルト六〇に関しては通常の港湾は海底土一キログラム当たりわずかに数ピコキュリーであるが、那覇軍港の場合、四十七年五月二十二日に採取した海底土から一キログラム当たり最高実に百七十ピコキュリー検出されておる。それでホワイト・ビーチの場合には、勝連先の周辺で四十七年五月二十四日に採取した海底土から、ハリセンボンが四十四・五ピコキュリー、さらにシャコガイ六十二・四が検出されておる。この問題はもう明らかになっておるわけなんです。これは異常な状態である。したがって県民に非常に不安がられておる。そこで、コバルト六〇の汚染の実態調査を即刻開始すべきだというふうに考えておるわけなんですが、これについてどうお考えか。
  322. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先生御指摘の数値は一昨年、昭和四十七年十一月二十四日から二十五日にかけましての第十四回放射能調査研究成果発表会で発表された数値でございます。その後、科学技術庁といたしましては、那覇港及びホワイト・ビーチにおきます各種放射性物質の状況につきまして定期的に調査をいたしまして、その後の状況を確認するということをいたしておる次第でございます。
  323. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 時間がありませんのでまとめて要求を出したいと思いますが、いままで申し上げましたように横須賀、佐世保、すなわち本土並みには少なくともこの体制はできておらない。監視体制は、政府がほんとうに宣伝にこれつとめた、せめて本土並みにまで持っていってほしい。具体的にいえばモニタリングボート、これがいまのモニタリングカーよりはずっとすぐれておる。もちろん問題点もありますが、海水中の放射能の水準を連続的に測定するためにもこのモニタリングボートを至急沖繩に配置すべきであるという問題。それとモニタリングポスト、これは現在海水中にはない。これを早目に海水中につくって測定のより改善を期する。それから公害衛生研究所などの体制を人的にも強化する。そういった問題について科学技術庁はどういうふうに改善しようとするのか。いまさっきまで述べておられたのは、現体制でいいのだといったようなことを強調しておるようでありますが、現体制でいいということは、地理的条件がそうであるからというふうなことでは絶対ならぬわけなんです。横須賀、佐世保と比べてホワイト・ビーチの地理的条件はこうだと説明される。むしろ地理的条件は、あの海水、潮流との関係もあって、横須賀、佐世保以上に監視体制を整備しなければならぬということなんです。  したがって、いま申し上げましたように、モニタリングボート、これを至急ホワイト・ビーチ、沖繩に配置する問題、さらにポスト、これを、いま空中だけしかないけれども、海水中にこれを設けるという問題、至急その体制をとる努力は当然されてしかるべきだと思うのだが、そこら辺についても、いや、いまの体制で十分であるといったようなことを主張し続けられるのか。現時点まで、漁船を使って、海上保安庁が海水をバケツみたいな容器でくみ上げてやる問題とか、いろいろ出ております。こういったような状況も改善しようとはしないのか。いま私が指摘しましたボートを沖繩に、実質はホワイト・ビーチに持っていって監視体制の、まずあなた方の言う完ぺきを期する、なぜそういった考え方に立てないのか。復帰の時点で本土並みと宣伝された政府のほんとうの腹はそこなのか。問題は占領中とほとんど変わらないんじゃないかということなんです。占領体制、この占領体制を現実に二十年余り認めてきたのは日本政府なんです。それで占領治下に置いておいて、原潜は那覇港であれホワイト・ビーチであれ、自由自在にやってくる。そこで体制を聞き、さらに調査した結果は、あの不備の点が相当あり、改善しなければいけない点も持っている横須賀や佐世保に比べても、格差の開きは実に大きい。だから結局、この結論をあなた方が全然もう改善する必  要はありません、地理的な問題で横須賀とこう違いがあるので、改善することは何ら考えてないということになると、この問題はどうなるのですか。あなた方の体制の中に、頭の中に占領支配――この占領支配の中におけるアメリカの重圧に打ちひしがれてきたんです、沖繩の県民は。これが体質となってあらわれているものだから、少しは改善してもいいんじゃないかと普通の常識だったら考えるんですよ。まずモニタリングボートを一隻でもいいからせめて、沖繩号なら沖繩号、那覇号なら那覇号とつけて向こうに配置しようじゃないか、ポストの問題も、空中にしかないから海中にもう二つ置こうじゃないかというような考えになぜなれないのか。一貫して地理的条件、地理的条件と言うけれども、地理的条件では、沖繩県民、日本国民が百万住んでいる、そこの地域住民の健康と安全は守れないというのが現実にこの現状、監視体制の中から出ておる。  これについて、科学技術庁長官は来ておりませんが、局長はどう考えるのか。あるいは、外務大臣の管轄でないと言えばないと言えますが、ここでは大臣が一番政府の大体の基本的な方向を握られておると思うのですが、こういった基本的問題についてどうお考えか、お考えがあれば知らしてほしいと思うのです。
  324. 大平正芳

    大平国務大臣 原潜の寄港問題につきましては沿革がありまして、この安全性を確保せねばならぬということで、すでに御案内のように昭和三十九年に日米間で口上書をかわしておりまして、アメリカが責任をもって安全性を保障することに相なっておることは御案内のとおりでありまして、私の承知しておる限りにおきましては、アメリカの原潜が入っておる他の国におきましては、その国独自の監視体制は持っていないように承知いたしておるわけでございます。しかし、わが国におきましては、政府があわせて監視体制を持ちまして念を入れてやってまいったわけでございますが、今般監視体制の不備が出てまいりまして、目下科学技術庁を中心にその改変を急いでおると承知いたしております。いま瀬長さんが御指摘の、本土と沖繩との間の監視体制の格差問題でございますが、現状でいいのかあるいは何かくふうを講ずる必要があるのか、そのあたり、あなたが問題を提起されたわけでございますので、あなたの御意見は森山長官にはお伝えいたします。
  325. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 時間が来ましたので締めますが、いま問題になるのは、技術庁の局長の意見としていまのような、別に改善しないでもいまのままでいいといったようなことばをそのまま肯定されるとたいへんなことになるのですよ。現実に横須賀、佐世保とこのような違いがあるのです。次長ですか、あなたの説明では、もっぱら地理的に違いがあるので、横須賀、佐世保と同じように、モニタリングボートあるいはポストの問題についても別に改善する必要もないのじゃないかといったようなことをあなたはいまおっしゃったが、ほんとうにその気持ちなんですか。あなたは局長でしょう。科学技術庁の局長が、少しは改善したい、しなければいかぬというのは、指摘した件だけでもこれはもう常識なんですよ。別に原子物理学を知らないでも、放射能のおそろしさというものは全部わかっている。このおそろしさから国民を守って、安全に、そして健康が守れるような状態に持っていくためには、もっと改善するんだということが当然出るんじゃないかと私は思ったのですが、あなたの口から、いやこれで十分だということになると……。どうなんですか、そこら辺を最後に明らかにしてください。
  326. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、機器の増強と、現在の機器の点検とは行なうことにいたしておりますので、その過程におきまして、ホワイト・ビーチとほかの地点との比較、こういう先生御指摘の点は十分念頭に置いて進めていきたいと考えます。
  327. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 これで終わります。
  328. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 これにて瀬長君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  329. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私は、海外子女教育の問題と日本国内における留学生の問題につきお伺いをしたいと思います。  海外子女教育の問題につきましては、第七十一国会において、昭和四十八年七月十七日付外務委員会小委員会において決議をされ、後、外務委員会で決議をされた経緯があるわけであります。  まず、その委員会で決議された文章の中に「一在留邦人子女に対して組織的に教育の機会を与えるため、予算の大幅増額をはかることにより、当該国との相互理解に立脚し、必要に応じて補習授業校並びに全日制日本人学校の教育施設の整備拡充、教育水準の向上に努めること。」と決議されております。外務大臣はその際御発言をされまして、大いに努力する旨お約束なさいました。私は、今期予算の中における海外子女教育関係予算概要に関する御説明を、外務省、文部省文化庁にまず求めたいと存じます。
  330. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 まず最初に外務省関係予算から御説明申し上げます。  外務省の予算は、海外において使われます諸費用が計上されておりまして、その内訳といたしましては、まず第一に、全日制の日本人学校の経費、その次に、これは全日制ではございませんが、現地の教育を受けながら一週間に一度だけ日本の教育を受けるという補習授業校の経費等でございます。四十八年度予算は全体といたしましては九億一千万でございましたが、ただいま国会で御審議いただいております四十九年度予算は十三億二千九百万でございまして、前年比四六・一%のアップでございます。  こまかい内訳を申しますと、全日制の日本人学校につきましては、前年度に比べまして三七・四%のアップ、それから補習授業校につきましては実に五〇%のアップでございます。  その中身といたしましては、まず第一番にわれわれが考えましたことは、派遣教員を三十五名ふやしまして、これを現在の二百人から二百三十五人にしたわけでございます。これは、各地におきまして生徒がふえることに応じまして、先生の充足率を高めたということでございます。  それから第二番目は、新しくギリシアのアテネ、マレーシアのペナン、コスタリカのサンホセ、それから。パナマに、今年の十月から全日制の学校を新設できるようにいたしまして、それに必要な先生の経費として八人を計上してございます。  それから、これもやはり先生の関係でございますが、先生の給与につきまして、かねがねやはり上げなければいかぬということを痛感しておりまして、来年度におきましてはその平均単価を一六・九三%上げるということを考えております。これによって先生方の待遇は大いに改善されると思います。  それからその他の経費といたしましては、校舎の借料、それから各地域におきます現地の先生による一部の地域に巡回指導する旅費とか、それから派遣前に東京で研修を外務省が主催して文部省と共催でやっておりますが、その研修の関係経費とか、それから現地採用の先生がまだ相当おるわけでございますが、それに対する補助、それから海外子女教育振興財団の医療費につきまして、これは国のほうで半分補助しておりますので、この経費の半分、こういうものが大体従来どおりの経費で、ただ自然増が加わっているということでございまして、これらの経費は、最初の教員派遣旅費が一億一千二百万、それから現地に滞在する経費、これは、先生方は現職のままですと日本の本俸をもらっておりますが、そのほかに現地の滞在費といたしまして来年度は七億九千六百万円、それから校舎の借料といたしまして来年度は二億七千万円、それからその他の先ほど申し上げました巡回指導等の旅費につきましては三千六百万円でございます。  それから第二番目に、補習授業校につきましては、先ほども申し上げましたように五〇・一%のアップでございますが、全体といたしましては一億一千百万円でございます。そのうち講師の謝金といたしまして、従来先生の定数の二分の一に一人当たり七十五ドルしか負担しておりませんでしたものを、来年度は定数全員に対しまして一人当たり百ドルの謝金を負担するということによりまして、来年度予算は七千八百万円でございまして、これは昨年の二千二百万円と比べますと、実に四倍に近い増額でございます。  それから次に専任教員の派遣費でありますが、これはニューヨークとかワシントン、ロンドン等大規模な補習校におきましては、現地の先生方だけでは学校の管理もうまくいかないし、先生方の指導、これは経験者がおりますけれども、最近の新しい日本のいろいろな経験を経た先生方がいないわけでございますので、そういう先生が現地に参りまして、校長をやりながら学校の事務管理もやる、同時にその先生方の指導もするということでございまして、来年度はそういう専任教員、これは日本から参るわけでございますが、そういう先生の経費といたしまして六人、三千二百万円が計上されております。  その他事務費等として三百五十七万で、合計いたしまして十三億二千九百万円でございます。
  331. 角井宏

    ○角井説明員 文化庁関係予算について御説明申し上げます。  まず、日本人学校関係でございますが、従来から行なってまいりました日本人学校に対する教材整備、これは教官、児童用の図書あるいは教師用指導書、VTR機器、テープその他一般教材、理科教材といったようなものでございますが、総額におきまして四千三百七十二万四千円、これは海外子女教育振興財団に委託をいたしまして執行する予定でございます。  それから補習授業校教材整備でございますが、これは従来はなかったもので、御指摘の御決議の線に沿いまして努力いたしました結果実現を見たものでございますが、総額で四百三万六千円、現在ございます補習授業校に対しまして、まず教師用指導書と一般教材を配付しようというわけでございます。  それから補習授業校関係につきましては、巡回指導班の派遣ということで、これは各班三人構成で六班を平均六週間派遣するものでございます。経費といたしまして一千七百十九万九千円。  第三に、通信教育事業費補助でございますが、これは小学校の国語、算数、理科、社会、この四教科につきまして通信教育を実施いたします。対象は、日本人学校に通っていない子供、これを対象にいたすわけでございますが、この経費が四千三百九十九万九千円。  それから第四に、研究協力指定校の実施でございますが、これは従来小中十校、高校三校でございましたものを、小中十二校、高校十校ということで、画期的に指定校数を拡大し、かつ内容を充実いたしまして、前年度五百五十万の経費が一千三百八十四万四千円に伸びを見たわけでございます。  最後に、海外勤務者子女教育相談事業、これも新規でございますが、大阪地区並びに阪神地区に教育相談所を開設しようとするもので、ございます。御承知のように、赴任する者あるいは帰国する者が非常に教育情報を欲しておりますので、これらの方々を対象に教育相談事業を、これも海外子女教育振興財団に委託をいたしまして実施しようというわけでございます。  文化庁合計で、四十八年度予算が八千三十七万七千円であったものが四十九年度は一億二千二百七十四万六千円ということで、五〇・六%の伸びになっております。  なお、文部省関係でございますが、現在海外子女の出国、入国、外での状況、それから帰ってからどこに行っているかというようなことがはっきりとつかめていない状況にございますので、これらを総合的に調査いたしますために、海外子女教育総合実態調査の実施を企画いたしております。このための予算が六百七十五万七千円。それから教科書の買い上げでございますが、これが千七百二十八万六千円。それから帰国子女特別学級の創設と運営でございますが、これは従来小学校が一学級、それから中学校が二学級という状況でございますが、新たに高等学校二学級を追加させていただくという経費を計上していただいております。  文部省関係を含めまして、大体概要以上のとおりでございます。
  332. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 私、先ほど申し上げました数字にちょっと間違いがございましたので訂正さしていただきます。  補習授業校の来年度予算は今年度比五〇・一%増額と申し上げましたが、五〇〇・一%のアップでございます。
  333. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 御丁寧に御説明ありがとうございました。海外子女教育関係について充実した予算を組まれてたいへんよかったと思っておるわけでありますが、私をして言わしめると、昨年、一昨年、おのおの予算は約五〇%ずつ増強しておるのでありまして、その増勢が続けられているというだけで、私は、海外子女教育に関する決議案に私たちがみんなで盛り込んだその意向を体するためには、もっともっと充実した抜本的な対策というのが必要ではなかろうかと思っておるわけであります。  たとえていいますと、海外子女教育をやる担当局が、外務省においては領事移住部である、文部省においては海外子女教育振興財団である、そうしてその両者というものがおのおのばらばらに円かやっていく、こういう管理機構それ自体が問題だろうと思うのです。もう金額も相当大きくなってきたわけでありますし、これらを統括する、海外子女教育に関する総合的な連絡会議なり何なりが行なわれることが必要ではないか、まずそう思うのですが、いかがですか。
  334. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 御指摘のとおり、組織といたしましてはそういうものの連絡会議というのはございません。ただ、われわれと文部省の間はきわめて連絡が密接であるほか、領事移住部の領事課のほうには文部省の方が兼職のままで一人出向していただきまして、われわれの中でそれを担当していただく、これを通じまして文部省との連絡はきわめて密接に行なわれているわけでありますけれども、もちろんさらに従来にも増しましてその連絡をよくしなければならぬということは、われわれ一応痛感しておるところでございます。
  335. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 これからそういうことを考えていただきたいですね。いまのところは不自由ないでしょう。これからは不自由があって、ほしくなるわけですね。  先ほど文部省のほうからお話がありましたけれども、補習授業校に対する予算、つくようになってよかったわけなんですけれども、四百三万円であるということは、単価からいってこれはけたが違うのではないか。最初だからしようがないのかもしれませんけれども、けた違いなのじゃないかという感じ、印象を受けてしようがないわけであります。  それからまた、全日制の学校についても今度四校ばかりふえるというお話でありますが、世界の国で、約百五十カ国あるうちで三十数校、三十七、八校ということになりますと、これは実際上穴だらけである。そういうふうに全部つくる必要がないのかもしれませんけれども、また逆にいって、アメリカのように何校も何校も開設する、州ごとにつくることが要求されている地域すらあるわけでありますから、これが少ないことはもう論を待たないわけでありますね。  また今度、帰国子女の教育に関して小学校一クラス、中学校二クラス、高校二クラスが追加されたことを申された、これもよかったと思うのですけれども、小学校一クラスで帰国子女教育というものが十分なのかどうか、ちょっとお考えをいただかなければいかぬ。  したがって、私は、今予算案の審議というよりも、むしろこれから先の方向として、これらは大幅かつ画期的な拡大が必要である。つまり段階が、昨年度より五〇%アップだから全体の予算の伸びよりいいんだなんていう考え方では話にならぬ。そうであると関係各省庁の担当官は苦労するばかりで、いい知恵というのは出てこない。したがって、私は、きょうまで担当された方の御努力に対して文句を言うわけではなくて、これから先、こんなのではいかぬのじゃないかという方向性を一つは何とか意思表示をしていただかなければいかぬ段階にきたのじゃないか、こう思っておるわけでありまして、これはどうしても大臣にちょっとお答えをいただかなければならぬと私は思っておるわけであります。大臣、いかがでございますか。これは相当大幅にふえたのは明らかですが、とてもではないけれども、海外に散らばっている子女の教育、海外に行っている日本人の大きな不安というものに対してまだまだのものではないかと思うので、今後の一段の対策をひとつお願いしたいと思うのですが……。
  336. 大平正芳

    大平国務大臣 去年以来、海外子女教育の画期的な進展をはかるために熱心な御提言、激励をいただいたことに対しまして感謝いたします。われわれのほうといたしまして、文部省と協力いたしまして、いま御説明申し上げた予算案獲得に成功いたしましたゆえんのものも、国会の御声援をいただいたたまものと思います。けれども、これは御指摘のように決してまだ十分と考えておるわけじゃございません。ただ、仰せのように、予算は、少額経費をふやすというようなことは可能でございましても、全体として大きな飛躍を試みることはなかなか容易なことでないことは御案内のとおりでございますけれども、実態把握、現地の要望を十分聴取し、その上に立ちまして及ぶ限りの努力をいたしまして、御提言の趣旨に沿いたいものと考えております。
  337. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それではこの問題は今後さらに詰めてまいりまして、来年度、再来年度、ほんとうの充実を期すようにしたいと存じます。いまの大臣答弁を前向きに解釈さしていただきたいと思っておるわけであります。  きょうはそれに加えまして、時間が非常にありませんのですが、もう一つ提案をしておきたいと思います。  それは留学生の問題であります。日本国内に対する留学生は全国で五千名といわれておりますが、研修生を含めますともっと、相当けたの違う数字になろうかと存じます。ところが、この留学生の中で、東南アジア系の人々が、帰っていって非常に反日家となってしまうといういやな話がこの間から続いておりますし、各種の善意あふるるこうした留学生受け入れ団体の中からも幾つかの提言があらわれております。たとえていえば、日本人は打ち解けてくれないとか、あるいは生活費について、あまりにも物価の高騰が激しいので追いついていけないとか、その他さまざまでございます。それらの問題点の中から、この数日来ずいぶん討論をしてみまして、二つのポイントにしぼって要請を申し上げたいと存じます。  一つのポイントは、施設をもう少しつくっていただきたいということであります。現在、外国人留学生を収容する寮は、大学及び文部省が補助しているもので、大学に併設されている学生寮としては、北海道大学、千葉大学、東京外語大学、大阪外大、九州大学の学生寮で五つ、それに文部省が補助金を出しております日本国際教育協会の学生会館が二つ、こういうものがございます。また外務省の四つの学生会館がございまして、国際学友会の仙台留学生会館、国際学友会館、国際学友会京都支部、関西国際学友会館の四つがございます。また民間ではアジア文化会館をはじめとする五つの会館、合計十六の会館がございます。この収容能力は全部で一千百六十五名でありまして、現在約五千名と称する大学生程度の留学生に対してもはるかに少ないものであり、高校生程度の人あるいはそれを卒業されている方々と比べますと非常に少ないわけであります。  これに対するお金の支出のしかたでありますが、学部生の場合には月額五万二千円が奨学金として支給されておりまして、これが今回六千円、支給がアップされておるようであります。今期予算で考えられておるようであります。また大学院の場合には七万九千五百円が八万九千円へと増額を試みられている。ところがこれは計算してみますと約一五%のアップでありまして、狂乱物価の中で三〇%とか卸売り物価の三六%からいうとあまりにも少ないわけであります。私は、この金額をふやすというような考え方よりも、彼らの非常に個人生活をとうとぶ考え方、あるいは彼らの考え方の中でも一番大事にいま思っております、自分の生活を侵されない、昔からのくにの生活を維持しようという考え方もありますので、適切な寄宿舎というものを増設するしか方法はないだろうと思いますし、またこの点は各施設の幹部の意見ば一致をいたしておるようであります。また文部省の当局におかれてもその御意見は一致されていると私は信じております。したがって、私はこれらの寄宿舎について増設をしていただきたい。この留学生会館のようなものをうんと増設をしていただくことが、日本の対外政策の今後の推移のためにも重大ではないか、こう思っておるわけでありまして、ひとつぜひ今後御配慮をいただきたい。今期予算の中ではその点の、外国人留学生の学生寮に関してはどうも御配慮の筋が見えぬのであります。今後はこれを根本的に検討していただきたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  338. 堀新助

    ○堀説明員 ただいま先生御指摘の数字は全部正確な数字でございまして、事実関係もまさに先生のおっしゃるとおりでございます。そこで私たちといたしまして、おっしゃるとおり五千人の留学生が現におるのに千百人余りしか収容力がない施設しか持っておらないということはきわめて残念に思っております。この先生御指摘の寄宿寮ないし学生寮でございますが、その多くのものは日本政府補助金を出し、あるいは大学に対して補助金を出して維持しているものでございます。私、最近、外国政府がその国へ来ておる留学生に対してこういうことをやっておるかどうか調べてみましたが、やはり国情が違いまして、外国では政府補助金などでやっておるのはございません。しかし、御承知のように各大学が非常に寮を完備しております。それでございますから、外国政府はやっておらないけれども日本政府がこれだけやっておるというのではこれはやはりだめで、日本の場合には国情が違いますので、政府が中心となりまして、文部省、それから私たち外務省が、本年度予算要求には間に合っておりませんが、来年度予算要求では留学生のための学生寮の増設につきまして要求をいたしたいと、ただいま詳細な要求資料のための事実関係につきまして鋭意検討を進めております。先生からの御激励をいただきまして、私たち当事者といたしましてはたいへんありがたく存ずるところでございます。
  339. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それじゃその辺は意見が一致したようですから……。  時間がなくなりましたが、もう一つは日本語教育の問題です。日本人の悪いくせで、日本語というのはもうむずかしくて、向こうにわからぬとあきらめ切っている形跡があるわけであります。そこで、日本の大学へ入る場合に、日本語を学ぶシステム、組織、教育というものについては、あることはあるし、まことにこまかい組織が幾つかあるわけでありますが、いずれも十分でないということが言えるわけであります。したがって私は、日本語を、日本にいる旅行者に教える、日本にいる研修生に教える、日本の大学を受ける人たちに教える、日本語教育のためにもつとお金を使ってもいいんではないか、こう思っておるわけであります。これは文部省がいろいろな小さなシステムを幾つか持っておられるのですけれども、大平大臣、これは外務省にやっていただかなければならぬ。  それで、外務省はジャパンファンドとかなんとか、この間からかっこうのいい基金を海外ではお出しになるが、フランス政府のこうした文化基金基本的な考え方というのは全部、フランス語教育をする、フランス語を教えることというのがフランス文化に対する、またはフランス外交に対する理解を深めるための一番大事なことだという考え方を持っているようであります。私は、日本政府がこうしたものの考え方日本語教育をするということば日本外交にとって非常にプラスなことなんだという、こういう考え方、それを持っていただきたい。もう全然少ない。いま数字をあげる時間的余裕がありませんし、後ほどゆっくり聞いていただきたいんだけれども、ぼくが見てもあきれるほど少ない。もう話のほかです。フランスの制度と一ぺん比べていただきたい。これでは日本人が毛ぎらいされるのも無理もないし、外国へ行ったときにそれこそ文句言われるのも無理もないと、私がもういやでもわかるような数字なんですね。大平外務大臣は、すでに外務大臣におなりになってもう二期です。二期どころじゃない、前を通算すれば何期もおやりになった。数々の業績も残されたが、こういう大きな方向づけをひとつぜひともしていただきたい。私の時間はもうぎりぎり一ぱいになってきましたから、それを申し上げてひとつ大臣に御答弁をいただきたい。日本語教育、日本における留学生に対する日本語教育はもちろんとして、日本語を教育するということが文化外交の柱なんだということをぜひとも御認識いただいて、将来それに向かってひとつ何とか御努力を仰ぎたい、こう思っておるわけであります。
  340. 大平正芳

    大平国務大臣 国語と文化というのは、われわれは案外等閑に付しがちでございますけれども、仰せのように、フランスはじめ各国の力の入れ方という点につきまして、渡部先生の御指摘のとおり、私どもも非常に痛感いたしておるところでございまして、日本語を愛すること、日本語を普及すること、このことはわれわれ日本人にとっての第一義的な課題であると考えます。それで、このことは文部省と外務省においてもやっておることでございますけれども、まだとてもほど遠い状況であることは御指摘のとおりでございますので、この点につきましてはもう一段の画期的なくふうが必要であると思いますので、なお一そう検討さしていただきたいと思います。
  341. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 じゃ、もう時間が最後ですから。  大臣、この問題をおやりになる場合に、日本語教育を広げるためにという方向性を出すためには、外務省でやはり担当される局に御指示いただくことが必要かと存じます。私はそれが外務省の側でちょっと明瞭でないような感じがいたします。これはひとつ今後御指摘をいただきまして、文部省のほうの担当局とよくお打ち合わせをいただいて、ひとつ前進した方向をぜひともつくり上げていただいて、そして予算委員会なり外務委員会なりに御報告を仰ぎたい。数カ月たったらまたしつこく申し上げますが、よろしくお願いします。
  342. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 これにて渡部君の質疑は終了しました。  次に、安井吉典君。
  343. 安井吉典

    安井分科員 初めに、日ソ漁業交渉の問題につきましてお尋ねをしたいと思います。  私、別にこと新しい問題提起をするつもりではございませんが、三月一日からカニ、ツブ、三月四日からサケ、マスというふうに本交渉が始まりましたけれども、一月二十八日からの予備交渉はついに不調に終わったあとでありますだけに、多難な幕あけという表現が当たっているような会談開始でありますだけに、そしてまた漁業たん白資源がこういう時期において非常に重要視されなければならない際でありますだけに関心も深いし、心配もしているわけであります。  交渉の中身の問題に入ります前に、私は今度の交渉が置かれている問題点についてまず伺っておきたいのでありますが、それも、ことしはちょうどサケ、マス不漁年に当たること等が重要な問題点になるわけですが、そういう技術問題はしばらくおきまして、第一に、昨年行なわれた首脳会談、それがどうもはっきりしなかったというところから問題が起きているような気がするわけであります。大一平外務大臣も同席されての田中・ブレジネフ首脳会談のあと共同声明が出されたわけでありますが、まあ私は口が悪いから、会談もどうも欠陥会談で、声明も欠陥だらけであったと言いたいぐらいでありますが、特に北洋漁業の問題について、問題点が少しも明確にされなかったというところが非常に重大な点ではなかったかと思うわけであります。特にあの共同声明の中で「双方は、長期かつ安定した北洋漁業の確立のため」ということばがありますけれども、この「安定」ということばをめぐって双方の意見が食い違って、きわめてあいまいな、このあいまいさが交渉を非常にむずかしくする原因になっているのではなかろうかというふうな気がするわけであります。伝えられるところによりますと、この「安定」ということばは、いわゆる漁獲量の安定であるというふうに日本政府説明されているが、ソ連側は資源の安定だというふうなことで重大な食い違いを起こしている。首脳会談のあと、櫻内農林大臣とイシコフ・ソ連漁業相との間の会談の際もあまり進展はなくて、共同声明の欠陥が暴露されたぐらいで、やっとこすっとこ長期取りきめを共同声明の中に盛り込むことができたということにとどまっているわけであります。これは非常に重大な問題だと思うわけですが、ここでいう「安定」というのはどういうことなんですか。
  344. 大和田渉

    ○大和田政府委員 いま先生御指摘のとおり、この問題は昨年の総理大臣の訪ソの際に先方の首脳と話し合われたわけでございますが、共同声明にございます「安定した」という意味は、長期的に、つまり必ずしも単年度ではなくて、長期的にかつ安定して漁獲をするということと、もう一つ、漁業資源の再生産という問題がかねてから日ソ双方で論ぜられておりますが、その問題をも含むというふうに解釈しております。また事実そういう問題が話題に乗ったわけでございます。
  345. 安井吉典

    安井分科員 そうしますと、この表現の中では、その二つの事項が対等に入っているのですか、それとも一方にウエートを置いたものになっていたのですか、当時の話のぐあいをひとつ伺います。
  346. 大和田渉

    ○大和田政府委員 問題が両方とも含まれていたということで、実際の交渉の場面で、たとえば日本側としては漁獲量は長期安定するということが望ましいというところに力点がございましたし、先方はそれにあわせて、しかし安定的に漁獲量を確保するというためには、再生産という問題も必要ではなかろうかというふうにお互いに話し合ったわけでございます。
  347. 安井吉典

    安井分科員 この二つのどちらにウェートを置くかで、ずいぶん今度の交渉の中身が変わってくるわけです。現に予備交渉の中におきましても、ソ連側は資源の安定だから監視船をB区域にも入れなければいけないという、そういう主張になるし、日本側は漁獲量そのものの安定なんだから、しかもそれを長期的に安定させるという形で問題を処理してくれという、そこで大きく食い違ってしまっているわけであります。ですから私は、首脳会談も、話し合ってくれてよかったと思うし、それからまた両担当大臣の話も、それなりの評価はしたいわけでありますけれども、問題の解決にはこれは何もなっていなかったということになるのではなかろうかと思います。  これは大平さんにお答えをいただきたいわけでありますけれども、当時は何か大きな成果があがったような宣伝をされたわけであります。そしてまた現に、当時における一般の国民も、それから漁業関係の人たちも、毎年毎年百日交渉でうんざりしていた時期で、長期的な取りきめの方向が首脳会談でできればこれはありがたいというふうな非常な期待感を持っていた。ところが現実には期待に沿うことができたようなものはほとんどなくて、業界人の中には、やぶをつついてヘビを出したというふうなことを言っている人もあるそうであります。これは北海道で発行されている新聞ですが、今度参りました藤田巌大日本水産会会長、これが首席代表ですが、その人とのインタビューで、藤田さんはこう言っていますね。「高度の政治レベルで漁業問題について話し合いのきっかけをつくった点は確かに一歩前進だが、具体的な中身はすべて未解決になっているので、本交渉はかえって複雑さを増し、やりにくくなったと感じている。」こういう感想を漏らしながら向こうへ立っていっているようであります。私は当時においても手放しであの会談がよかったよかったというふうに評価していたものではありませんけれども、今日現実の場に至って考えれば、相当問題のあった会談ではなかったかと思うのですが、その点いかがですか。
  348. 大平正芳

    大平国務大臣 私は総理の訪ソをお願いする前から終始一貫言ってまいっておりましたことは、首脳会談というのは、特定の成果を期待するというよりは、まず両国首脳の間で相知り、理解し合うということが第一の眼目でございます。隣合わせの国におきまして、鳩山訪ソ以来十七年間、両国の最高首脳が直接コンタクトを持つということがなかったことはむしろふしぎなんでございまして、何とか御都合をつけて、ソ連最高首脳とお目にかかって隔意ない懇談を遂げてもらいたい、それが日ソ両国のあり方として当然のことであるということを終始申し上げておりましたし、そのとおり総理にもお願いをしたわけでございます。  しかしながら、安井先生も御存じのように、日本国民といたしまして、総理が訪ソする以上、それに何かの期待を持たないということは私は考えられないと思うのでありまして、したがって総理大臣といたしましては、日ソ間の懸案全部につきまして触れておく責任がおありでございますので、漁業問題につきましても、長期安定化の問題も安全操業の問題も、それが藤田さんのコメントにありましたようなこともあるのかもしれませんけれども、それを触れないというわけにはいかぬと思うのです。したがって、共同声明に盛られたような話し合いになったわけでございます。  それから第三といたしまして申し上げたいのでございますが、どの国との関係もそうでございますけれども、そんなに、降ったところがすぐ晴れるぐあいになかなか外交まいりません。これはほんとうにしんぼう強い努力で、一つ一つ地形石を築いていかなければならぬ息の長い仕事でございます、日ソ関係において、とりわけ相手は名だたる大国でございまして、それば十分あなたも御承知のことと思うのでございますが、われわれは息の長い外交を忍耐強く続けていかなければならぬわけでございまして、私どものほうから成果を誇示するとかいうような軽率なことは、私はいたした覚えがないわけなんでございます。今後もそういう態度で対ソ外交には臨んでいかなければいかぬと私は考えております。
  349. 安井吉典

    安井分科員 私はこの交渉を通して、経過はいまお話があったことかもしれませんけれども、この「安定」ということばを、わがほうとしては主体的な立場から、資源の確保の長期的な安定というところに強くウエートを置いた交渉のあり方を今後とも続けていかなければいかぬと思うのですが、その点はどうですか。
  350. 大和田渉

    ○大和田政府委員 先ほど、私からも御説明申し上げましたとおり、長期安定的に漁獲量を確保するということのためには、資源の再生産というものは当然必要であろうかと思います。その点は日本ももちろん賛成でございますけれども、問題は、資源再生産をする方法、手段、またその基礎になる科学的資料というものについて、必ずしも日ソ双方の結論が一致しておりません。そういう関係もございまして、また、もともとわれわれとしては単年度で、一年ごとに漁獲量をきめるということよりも、御指摘のように豊漁年、不漁年がございますので、どうしても複数年の漁獲量の確定をいたしたいということが中心になって、われわれとしてはそういう主張に中心を置いてまいったわけでございます。
  351. 安井吉典

    安井分科員 私は、特にいま申し上げているのは、過去の経過はとにかくとして、いま行なわれつつある交渉においては、わがほうの主張として、資源を安定させなければいけないのはこれは当然ですよ。そのためのいろいろな方策はあると思いますけれども、それについてもこちらが了解できる限界というのがあるはずです。ですからわれわれの主張としては、それよりもやはり長期安定確保ということにウエートを置いて交渉してくださいというふうな意向をもって、水産業界の人も期待していたし、国民の皆さんも期待していると思うんですよ。だから、資源の安定というのはその基礎であって、結果としては安定的な漁獲ができるような仕組みがほしいという、そこにウエートを置いた交渉をしてくださいというふうな国民の意向にこたえて、いまの交渉もそういう方向に力を入れますという御答弁をいただかなければ、向こうへ交渉に行っている人は困りますよ。そういう意味でひとつお答えをいただきたいと思います。
  352. 大和田渉

    ○大和田政府委員 このたび代表団が出発するに際しまして与えられた訓令がございますが、その内容は一々はつまびらかにすることは控えさせていただきますけれども、いま御指摘の点に関しましては、いま行っている代表団の最重点事項がいまのことでございます。つまり、長期安定化の確保というのが最重点事項になっております。
  353. 安井吉典

    安井分科員 問題の二番目として、この夏予定されている国際海洋法会議、これも交渉に微妙な影を落としているという問題が一つあるわけでありますけれども、時間が十分ありませんので、これはひとつ問題の指摘だけにしておきます。  もう一つの問題点は、平和条約ないし領土交渉とのからみもやはり何らかの影響を持っているのではないかというふうに思うわけであります。直接の影響はあるとは思いませんけれども、やはり思惑といいますか、そういうふうなものになっていやしないか、こう思うのですが、しかし、あくまで漁業交渉と平和条約やあるいは領土交渉とはこれは全く別のものですから、この点はきちっと区別をして交渉を進めるということが必要だし、向こうのほうがそういうからみをにおわせても、それはやはり関係を断ち切るという姿勢が私は必要ではないかと思います。その点が一つ。  それから、平和条約交渉を七四年の適当な時期に行なうということになっているわけでありますが、ソ連の最高首脳の来日等について、外務省としていまのところどういう計画をお持ちですか。
  354. 大和田渉

    ○大和田政府委員 まず第一点の、海洋法の問題についての御指摘がございましたが、われわれも十分そのことを考慮に入れておりまして、代表団出発の前の打ち合わせにも、そのことを含めていろいろと対策を練った次第でございます。  それから二番目の平和条約、領土問題、この問題と漁業交渉というものは、われわれとしても全く別の問題であるというふうに考えております。われわれとしては、何らかの形でこれに両方からめるというような態度に、もしかりに先方が出ましても、それは全然別問題であるという態度を貫くつもりでおります。  それから、共同声明に、七四年中に平和条約交渉を行なうということは約束されております。現在、まだ具体的に先方と場所、時期、レベルということについての打ち合わせはいたしておりません。われわれはわれわれの側で、具体的にその問題についてすでに検討は開始しておりますけれども、先方とまだ話し合う段階には至っておりません。
  355. 安井吉典

    安井分科員 大臣に伺いますけれども、平和条約交渉の今後の進め方について、少なくもことしじゅう、これが一つの大きな焦点になるわけでありますが、ことしはどうなさるおつもりなのか。具体的なものは、いま局長の御答弁のとおりだと思いますけれども、大臣としての御方針をひとつ伺っておきたいと思います。
  356. 大平正芳

    大平国務大臣 特別に新しい知恵、新しいくふうがあるわけではございません。わが国の、従来から確信いたしておりますところをぶつけて、率直に、真剣に話し合う以外に、私は分別を持っておりません。
  357. 安井吉典

    安井分科員 ことしじゅうに大臣、訪ソされるというふうな御予定、あるいはおつもりはありませんか。
  358. 大平正芳

    大平国務大臣 いま予定をいたしておりませんが、局長がお答えいたしましたように、いつ、どこで、どのレベルでということについて、まだ先方と話し合っておりませんわけでございますので、ただいまお答えする材料は、まだ持っていないのでございます。
  359. 安井吉典

    安井分科員 そこで、もう時間もなくなりましたけれども、いまいろいろ問題点としてあげてまいりましたような状況、つまり、首脳会談や担当大津の会談で何ら問題点は明らかにされず、この間の予備交渉も不調、こういう状況の中で、いま行なわれている交渉に対して、政府としていかなる態度で臨んでいるのか、まず、その点を伺いたいと思います。
  360. 大和田渉

    ○大和田政府委員 個々の問題についての対案を、ここで申し上げられないのは遺憾でございますけれども、全般の問題としてあげられますのは、御承知のように、漁獲量の問題それから漁獲区域の問題、それから船団の数の問題、それから、いわゆるB区域の取り締まりの問題と、多岐にわたっております。たてまえとして、われわれとしては従来の線を守りながら、ソ連側と友好裏に話を進めたいという基本的な考えでございます。したがいまして、われわれのとろうとしております態度というものは、大体、従来の線を貫きたいという気持ちでございます。
  361. 安井吉典

    安井分科員 B区域に対するソ連の監視船を直に乗り入れるという要求について、予備交渉の中でも相当強く出たわけでありますけれども、これは非常に大きな問題であるのは当然なんですけれども、これに対する日本側の主張ですね、従来のやり方で何が問題なのか。従来のやり方を改善する、つまり、こちらの船に向こうの人が乗ってやっていくという仕組みを改善するというふうな形で、この際乗り切れないのか、その点についてはどうですか。水産庁からもおみえですか。
  362. 米澤邦男

    ○米澤説明員 先生御指摘のございましたB区域の取り締まりの問題は、本交渉でも最もむずかしい問題になろうかとは思いますけれども、われわれといたしましては、日本監視船を用いて共同取り締まりを実施するということで、現在解決できない問題はないというぐあいに考えて、この点を強く主張してまいりたいというぐあいに考えております。
  363. 安井吉典

    安井分科員 サケ・マス漁獲総量規制について、予備交渉においても、両国案で相当大きな隔たりがあるわけですね。これをどういうふうに調整をとるかというのが、非常に大きな問題であるわけでありますけれども、いま総括的には、昨年までの線を守るというふうに伺ったわけであります。その点について、さらにまた、西カムチャッカのタラバの全面禁漁という非常に乱暴な提案もあるわけですね。こういうふうな問題については、やはりきちっとした態度で臨んでもらわなければいけないし、むしろそういうものに対して、長期的な安定というさっきの項目を極力主張した形で結論を得る、こういう姿勢でなければならぬと思うのですが、この点について、具体的にはどうですか。
  364. 米澤邦男

    ○米澤説明員 西カム・タラバガニ漁業の問題、それから漁獲量の問題、これはいずれも年々きわめて難航している問題でございまして、今回の会議でも、特に従来にも増してきびしい交渉になるというぐあいに考えておりますけれども、西カム・タラバガニ漁業にしろ、日本のサケ・マス漁業にしろ、わが国が開発いたしたものでありまして、歴史的な実績でもあるわけでございますので、わが国の北洋漁業の長期的な安定をはかるという立場からも、強くソ側と交渉を行なってまいりたいというぐあいに考えておるわけでございます。
  365. 安井吉典

    安井分科員 海洋法会議の中におきまして、いわゆる沿岸二百海里の専管水域の問題ですね、これが今度の交渉の中にも、どういう形で出てくるのかわかりませんけれども、もしもこういうことが実現するようなことになれば、北方水域から全面締め出しということになりかねないわけであります。これらに対する政府の態度というものは、きちっともうすでにきまっておるわけですか。海洋法会議そのものについても含めて……。
  366. 米澤邦男

    ○米澤説明員 海洋法問題は、ことしの六月からベネズエラのカラカスでいよいよ海洋法会議が開催されまして、いよいよ実質的な審議に入るわけであります。日本は北太平洋に非常に大きく依存しておりますし、そのほかの水域も含めますと、二百海里ということがもしストレートに実施された場合には、日本としては、現在約一千万トンぐらいの漁獲があるわけでございますけれども、そのうちの四十数%が影響を受けるということになりかねないわけでございます。しかし、一方またソ連邦も、日本にも増して遠洋漁業国家でございまして、ソ連邦の場合の遠洋漁業に対する依存度は、日本より若干高くなっておるわけでございます。  したがいまして、海洋法では、ソ連の立場日本立場は、漁業に関する限りはかなり共通点もございまして、実績をいかにして新しい体制の中で確保していくかということについて、もちろんこれはソ連だけではありません、ヨーロッパの先進諸国あるいはアメリカその他の諸国協力をいたしまして、わが国の実績、あるいは他の国の実績ももちろんこれに含まれますけれども、こういうものに大きな変革がないように、最大限の努力を尽くすという方向で、努力をいたしておるわけでございます。
  367. 安井吉典

    安井分科員 時間が来たものですから、大臣に最後にお答えをいただいて終わりたいと思いますけれども、今日の段階で、エネルギーが最大の課題になっておりますが、広く資源問題そして食糧の問題、これが私は新しい世界の重大課題であり、日本としても一番真剣に取り組んでいかなければならぬ問題だと思います。いま問題になっておるこの水産資源の問題についても、私は、むしろ沿岸の漁業の振興や、沿岸で水産資源を育てていくという対策への傾斜を強く主張するものですけれども、しかし、それと同時に、やはり既存の食糧資源の確保には全力をあげていかなければならぬと思います。  そういうような理由に立って、今度の交渉について、政府としても全力をあげていただかなければならない。一たんこれで後退すれば、ずるずると限りない後退につながっていくわけです。去年の首脳会談において、私はあまり実りの多かったものじゃないということも申し上げたわけですが、今度の交渉において、実質的な成果をあげられるように取り組んでいただきたい。政府としての御決意を伺いたいと思います。
  368. 大平正芳

    大平国務大臣 資源問題が、世界の問題といたしまして、より緊張を呼んでおるばかりでなく、世界人類の生存と将来にとりまして決定的な課題になっておるわけでございます。  その立場から申しますと、非常に足場の弱いひよわな資源小国であるわが国といたしまして、一億に余る人口をかかえて、しかも高度の経済を営んでおられるわけでございますので、それに所要の資源を確保するということは、容易ならぬ大事業であると思うわけでございます。あらゆる知謀をしぼって、わが国の生存のかかった課題でございますので、われわれといたしましては全力をあげて取り組んで、御期待にこたえなければならぬと考えております。
  369. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 安井吉典君の質疑はこれにて終了しました。  次に、土井たか子君。
  370. 土井たか子

    ○土井分科員 昨年の暮れに、私たちにとっては突然でございましたが、内閣総理大臣の、田中首相構想と申し上げてもいい、海外経済協力専門の担当大臣を新設するということが問題になりました。いまこの担当大臣の件は、大平外務大臣、どのようになっておりますか。
  371. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 初め、事実を申し上げます。  経済協力担当大臣ということで新聞などには書いてございませんけれども、正確に言いますと、この件は、法律的には内閣法の改正によりまして大臣を一人ふやすという案でございます。その大臣につきましては、法律上特別の所掌は書いてございませんが、大臣が増員されました暁におきまして、これは総理府の問題になるわけでございますけれども、総理大臣から特定の案件について、経済協力プロジェクトの推進を担当するようにという特別の総理大臣の命令が行なわれるものと考えております。その場合、その大臣が、いわゆる経済協力担当大臣というふうになるわけでございます。
  372. 土井たか子

    ○土井分科員 どうなっておりますかと、質問をさせていただいたわけであります。いまのは、その担当大臣というものが一体どういうものであるかという、いわばコメントみたいなものでありますが、そんなことじゃないです。いまどうなっておりますかということに対して、ひとつお答えをいただきたいです。
  373. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 先ほど申しましたように、この大臣の件は、法案としてこの国会に提出されるわけでございますので、国会の御審議の過程において、いろいろ国会のほうの御意見も聞きました上、総理大臣のほうで、あるいは総理府のほうで、具体的な内容をおきめいただくということになるのでございます。
  374. 土井たか子

    ○土井分科員 しかし、私たち聞くところによりますと、この担当内容というのはえたいの知れぬものですね。ぬえみたいなものだということを言わざるを得ないのです。無任所大臣というのは聞いたことがございますけれども、しかし、これは事、海外経済に対して協力をしていくという海外経済協力というのは、持っている意味は非常に大きいですよ。特に、こういう重大事というのは前々から問題にされていて、十分に検討されて煮詰まった結果、総理大臣構想として出るのなら、私たちもそのいきさつを追っかけながら、それに対して中身を把握することができますが、突然出たわけであります。突然出たといういきさつも、なるほどとうなずけるわけでありますが、いわゆる石油パニックと、そうしてこれまでの中東政策に対しての政府の反省から、開発途上国に対する経済技術協力に力を入れるためというのが、やはり中心課題であろうと思われる。しかし、海外的にそうである問題は、国内的に見た場合に、単に外務一省だけに関係のある問題じゃございませんで、やはりこれは通産であるとか、農林であるとか、各省にわたる問題であろうと思うのですね。  そういう点からしますと、この担当大臣が、海外に飛んであちこちで約束を取りつけてきた結果、その中身を国内において守っていこうとしたら、一体どういうふうに調整ができていくのか、まことに怪しげであります。しかも、先ほど御答弁のとおりでありまして、国務大臣の定員を一人ふやさなければならないためには、内閣法の一部改正ということも懸案としてこの国会で問題にしなければならない。この内閣法の一部改正という改正案は、現にもう提出されているのですか、いかがでございますか。
  375. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 私の了解します限りでは、国会にすでに提出になっておると存じております。
  376. 土井たか子

    ○土井分科員 これは内閣のほうで、その中身についてのいろいろな吟味、審議というものが進められるということになるはずでありますね、そうしますと。しかし、これは事、海外に及ぼす影響も大きい。日本外交政策の中身というものが、これによって、海外から見ればはかられていくということにもなっていくわけでありますから、ひとつ外務大臣、こういう海外経済協力ということを心がけられる担当大臣の新設ということについて、大臣御自身はいかがお考えでいらっしゃるかという点を、少しお聞かせいただきたいわけであります。
  377. 大平正芳

    大平国務大臣 外務省の立場から申しますと、いまも御指摘がございましたように、外交を一元的に展開するという字句は取りはずされては困ると思うのであります。国務大臣は多数ございますけれども、その国務大臣が、海外との関係を持たれる場合におきまして、外務省、私の仕事、そのタイトルにつきまして私と十分御協議をいただいて、しかるべきタイトルのもとでしたら、しかるべき任務のもとでお出ましをいただくというふうになっておりまするし、閣僚が増員になりましても、その基本はくずさないつもりでおります。  第二点といたしまして、おそらく官房長が言われましたように一人の閣僚が増員になる。しかし、いま考えられている腹案は国会事項でございますから、国会で御承認いただかなければならぬわけでございますが、かりに一人増員になったといたしまして、そしてそれが経済協力の推進に当たるということを必要とするかどうかという政府部内の状況でございますが、現に、いまわが国は相当大規模な経済協力事業を展開いたしております。すでに政府がコミットをいたしましたものでも八千五百億円ばかりありまするし、交換公文締結いたしましたのが五千八百億ぐらいあるわけでございます。その仕事がなかなか運ばない。つまり、総理大臣の期待されるようなテンポにおいてなかなか運ばないのでございます。これは、一つには受け入れ国側事情がありまして、一定のワクで御協力を約しましても、それにミートしたプロジェクトをどう発掘するか、そのプロジェクトをどのように計画するか、そしてそれをどういうように実施してまいるかという向こう側の計画能力、実施能力というようなものが必ずしも十分でない。それから、一たん約束いたしましても途中で、いや、これはふやしてくれ、これでは足らぬと、一たん合意いたしました条件も、これでは辛  いからもっと甘くしてくれというようなことも次々とございまして、日本政府だけが早くやろうと思っても、なかなかそういかない事情もありまするけれども、また国内におきましては、あなたがいま御指摘のように、これは経済企画庁、大蔵省、通産省、外務省、その他たくさんの役所が関係するわけでございまして、関係せざるを得ない関係になっておりまして、そういうものを一つ一つけつをひっぱたく推進役というか、そういうものを、総理は内々構想されておるんじゃないかと思いますけれども、そういう方がおられて、しょっちゅう御督促をいただく、あるいはどうすれば隘路を打開できるか、関係各省の間に意見の相違が出た場合に、それをまずそこでこなしていただくという、総理にかわってそういう調整をやっていただくというような機能は、私はあって悪くないと考えておるわけでございます。  ただ、第三に、この大臣がみずからの組織を持たれては困ると思っているのです。秘書官とかお茶をくむ女性とかいうのは要るでしょう。だけれども、役所を持たれたんでは、これは外交の一元化をはばむわけでございますので、私どもとしてたいへん困る事態でございまして、いま政府部内の了解といたしましては、そういうことにならない範囲で、一名の増員を国会ではお認めいただこうというラインで、御審議をお願いすることにいたしておるわけでございます。
  378. 土井たか子

    ○土井分科員 なかなかいわく微妙な御答弁だと思うのですね。たいへん微妙な御答弁。私はここで、大臣とはという論議はいたしたくございません。けれども、大臣というのは行政機関でしょう。大臣は機関ですね。そこで、いまおっしゃいました外務大臣の御答弁の中に、役所は持ってもらいたくない、単独で、まあその世話役をするような秘書官が一人くらいついて、何とかやっていただきたいもんだというような御発言と受けとめました。しかし、これは本来、国家行政組織法から考えてまいりましても、いままで大臣というのは、どういうふうな立場において、どういうふうな役割りを行政の中で果たしていくかということを考えましても、役所を持たない大臣というのは、ちょっとこれは奇想天外なんです、大臣ということを言う以上は。  いま、内閣法の一部改正ということで出されている中身、それからさらには、総理の構想の中身を考えましても、単独で役所を持たないというふうにはたしてお考えになっていらっしゃるかどうか、そこのところは、たいへん問題だと思います。またこれは、はたしてこういう担当大臣が発足されてからあと、いま大臣の御答弁の中にもございましたとおりに、日本外交の窓口の一元化というものが、阻害されないという保証がどこにあるか。この問題を考えてまいりますと、海外に対しての経済協力というのは、特に特設する大臣を置かないとできないという問題じゃないと思うのです。これ自身は、やはり外務省に対しての信頼なり、外務省の機能に対して、一つは問題視されているんじゃないかという憶測すら働きます。  ですから、こういう点からして、私は、外務大臣の御発言は非常に微妙だと思ってきょうは受けとめました。いまもうすでに内閣において、この内閣法の一部改正が提出されているわけですから、したがって、おそらくは予定コースに乗れば審議される運びになるでしょう。しかしながら、これは国内において各省庁の間で、一体この担当大臣の仕事の中身、これをどのように考えていくかということに対して、まだ私は一定したものがないと思うのであります。そういう大臣を、特に内閣法の一部改正をして特設する意味がどこにあるか。こういう私のいま申し上げたようなことに対して、外務大臣の御所見を承りたいのであります。
  379. 鹿取泰衛

    鹿取政府委員 いま先生の御提起になりました問題点のうちの一つの法律的な点でございますけれども、国家行政組織法では、「各省大臣は、国務大臣の中から、内閣総理大臣がこれを命ずる。」となっておりまして、行政機関の長でない大臣がいることの適否は別といたしまして、法律的には、いわゆる無任所大臣というものが内閣法の改正によって置くことができると考えております。実際今度の場合におきまして、各省の設置法の改正をしなかったわけでございますので、経済協力に関します外務省の権限、通産省の権限、あるいは大蔵省、経企庁の権限はそのままでございますので、そこで問題は、そういう各省の経済協力に関する権限を、あるいは一元化するという方法も場合によってやるわけでございますが、諸外国の例をわれわれのところでよく検討しました結果、必ずしも一元的な経済協力事務を所掌するようにすることが、効果的でないということもあります。  今回の政府考え方というものは、やはり各行政官庁が各省の経済協力に関する権限、各行政官庁の固有の事務と非常に密接不可分でございますので、これは分離しないでそのまま各省の権限の中に置いておく。そういたしますと、先ほど大臣の御説明にありましたように、各省が一つの案件について、それを実施いたします場合に協議が必要になります。どうしてもこの協議に時間がかかる。その協議を促進するために、今度の新しい国務大臣が置かれるというようにわれわれは理解しております。
  380. 大平正芳

    大平国務大臣 いま官房長が御説明申し上げたとおりでございまして、現に、無任所大臣というのは制度上も置けますし、過去においてもあったわけです。いまの議長の前尾さんは無任所大臣であったこともあるわけで、御案内のとおりであります。したがって、無任所大臣を置けないというものではないと思います。  それから、このいま考えられておる一名増員される無任所相は、役所を持っていないわけでございます。予算書をごらんいただければ、秘書官等がちょっとついておるだけでございまして、スタッフはついていないわけでございます。スタッフは、いま申しましたように、各省がそのままの権限とスタッフを持っておるわけでございまして、その間に立ちまして全体をモニターするといいますか、全体をプロモートしまして、経済協力事務が円滑にいくようにいたしたいということで、これはそういう善意から出たものであると私は了解しておるわけでございます。外務省に対するつら当てであるというようなものではないと私は考えております。
  381. 土井たか子

    ○土井分科員 それは善意に解釈すればそのとおりだと思いますがね。しかし、外交の窓口の一元化という点からすると、必ずしもこれは、こういう大臣を特設するということが好ましいとはいえない。これは大臣、お認めになるだろうと思うのですよ。  だから、そういう点から考えまして、これはやはりこの担当大臣の職務内容というものを、明確にひとつ考えなければならないのじゃないか。先ほどの御答弁のとおりで、外務、通産、農林、この三省などというのは、直接に関係する問題をいま現に行なっているわけですから、それにかてて加えて、無任所大臣と言われるけれども無任所じゃない、担当はちゃんときまっているのですよ。国際経済協力ということです。したがいまして、その職権の中身というものが明確にならなければならない。これは明確になるかというと、私はむずかしいと思いますね。たいへんむずかしい問題だと思います。政治的な配慮によってこれはかなり変動の幅がある。  したがいまして、こういうことから考えてまいりまして、今回この担当大臣を新設するということに対して、やはり外務大臣の御所見を、ひとつはっきり伺っておきたいと思ったわけであります。
  382. 大平正芳

    大平国務大臣 御心配になられるような点を十分政府部内で討議いたしまして、いま御提案申し上げているような内容にいたしたわけでございますが、土井先生おっしゃるとおり、職務内容は明確でなければならぬこと、外交の一元化を侵してはならぬということ、そういうことは、あくまでも守り抜いていかなければならないと考えております。
  383. 土井たか子

    ○土井分科員 そこでお尋ねいたしますが、これは内閣のほうでこの法案を可決して、そして法律にしなければならない。そうでなければ担当大臣を新設することができないわけです。しかし、そういうことを前提としながら、望むべくは、一体いつごろこの担当大臣の新設を考えて事を運ばれているのであるか、その辺をひとつお伺いします。
  384. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、まあ国会次第でございまして、国会の御承認が得られたらすぐに実行に移すわけでございますから、あなたのほうの手にあるわけでございます。
  385. 土井たか子

    ○土井分科員 それでは、特にこれはいつごろまでにというふうな構想がまずあって、そのもとで今回この法案というものがつくられ、国会審議されるといういきさつではないということでありますね。ないということですね。その点を、まず確認をさせていただきたいと思います。  さて、この問題は、さらに私は、外務委員会のほうでまた中身について問題にしていく機会がありますから、きょうはあと少し確認をしておきたい問題がありますのでお尋ねをしたいのですが、昨年の暮れの国会で、補正予算の中にサイゴン政権に対しての緊急援助五十億円、これはドルに換算しまして約二千万ドルになりますね。それと北ベトナムに無償援助、これは五十億円、ラオスの援助八億円、総計百八億円というのが計上されているわけでございます。このサイゴン政権に対しての五十億円の使途が、その後どういうぐあいに具体的になっているか、それからさらに、北ベトナムの無償援助として組まれたこの五十億円は、その後どういうふうになっているか、これをひとつはっきりお聞きしたいわけです。
  386. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 まず、南越のほうから御説明申し上げますと、このときに無償援助といたしまして、大体いま御指摘のような金額補正予算に計上させていただきました。すでにその前に予算化されておりますものが五億円ほどございましたから、それは差し引かれております。で、これにつきまして、南越政府といままでずっと折衝を続けてまいったわけでございますが、御承知のように、いろいろ南越政府の中で異動がございましたり、いろいろなことがございましたので、交渉が思ったほどよく進捗しておりませんが、ようやくそろそろ最終的段階に入ってきているような状態でございまして、まだ交換公文等を完成する段階までには至っておりません。しかし、大体におきまして、目的といたしましては、特に難民救済用の必要な資材でありますとか、そういったようなものをおもにこのお金によって供給したいというふうに存じております。  それから北越の部分につきましては、御承知のように、北越とは外交関係を設定するという交渉を行ないまして、そのために着々準備をしておるわけでございますが、まだ何ぶんにも、こういった問題について話し合いをする段階まで至っておりませんものですから、まだ北越の分につきましては、中身についても、どういうやり方でやるか等の具体的なことについて、全く話し合われておらないというのが現状でございます。
  387. 土井たか子

    ○土井分科員 難民救済ということをいま言われたわけですが、先ごろ御承知のとおりに、予算委員会でも問題になりましたカンボジア援助について、緊急の人道援助に使用されるべきこの中身ですね、それはもう使途が明確であるにもかかわらず、戦争目的に転用されていたというふうな事例もございます。今回も、そういうふうなことが全くないように、ひとつその点ははっきり確認をして、責任が持てるような状態がはたしてあるのかないのか、これがやはり一つは問題になるだろうと思います。その点、いかがなんですか。
  388. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘のように、先般カンボジアにおきましては、当方から提供いたしました難民住宅の一部が軍事的目的、と申しましても、兵隊さん並びにその実族が住んでおったというような事実が発見されまして、さっそく当方から厳重に抗議を申し出て、退去していただいたということがございます。  しかし、南越の場合におきましては、過去においてもそういう事例はございませんし、特に、今度新しくできました内閣の副首相になりましたダンさんという方が難民担当大臣でございまして、自分が責任をもってそういうことの起こらないようにするということを、たびたび大使を通じて言ってきております。場所等の点からいいましても、カンボジアの場合はたまたまその近くまで、いわばいまの政府からいうと、敵側の軍隊が攻め寄せてきたというような事態が起こったという緊急の場合というふうに思われますが、南越の場合につきましては、そういうような場所にはつくる予定もございませんので、まず間違いなく、そういうことにはならないというふうに信じております。
  389. 土井たか子

    ○土井分科員 それも、紳士協定のような形で進められるということに対しては、やはり不安が残ると思うのですね。それは、紳士協定というのは紳士間で結ばれる協定でございまして、紳士であるかどうかというのは、その際たいへん問題であります。紳士でない当事者が結んだ紳士協定意味をなしません。だから、そういう点からしますと、客観的にやはりはっきり、この使途のとおりにそれが使われるように、外務省としては責任をもって臨まれなければ、これはならないと思うのですね。  それと同時に、北ベトナムについての五十億円というのがもうすでに計上されておりましょう。しかしながら、中身は話し合いの段階に至っていないというお答えでございますね。昨年の十月三十日だったと思うのですが、ベトナム祖国戦線中央委員会の議長の代理として、ホアン・コク・ベトさんが来られましたですね。そのときに、対ベトナム援助というのは、二国間協定によるものに限るという前提を置いて、そして中身については、日本援助をどんな形で受け入れるかということは、まず日本政府が南ベトナム臨時革命政府を承認するということ、それからまた、賠償問題などで条理を尽くしたときにきめるべき問題だというふうな見解を公にしておられます。こういうことに対して、外務省はどういうお考えで臨んでいらっしゃるか。それから、まだ話し合いの段階に入っていないとおっしゃいますけれども、このことに対しての話し合いは、いつごろ開始される御予定でいらっしゃるのか、それもあわせてお伺いしたいと思います。
  390. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 最初の御質問につきまして、まずお答えをさせていただきますと、通常、援助をいたします場合あるいは経済協力をいたします場合に、交換公文といったような形で最後の合意ができるわけでございますが、それと伴いまして、それに盛り込めないような細目につきまして、レコード・オブ・ディスカッションというような形のものをつくるのが普通でございます。いつも日本が他国と経済協力をやります場合には、たいていの場合に、その中に軍事目的には使用しないということをはっきり書いておいて実行するというふうにしておりますし、特に南ベトナムの場合には、この点について、御指摘のように、はっきりそのところをさせなければ約束を取り結ばないというふうにしたいと存じております。  それから第二点につきましては、これはかなり政治的な問題でございますし、私からお答えいたすのもどうかと思いますので、アジア局長からお答えをいただいたほうがいいかと思います。
  391. 高島益郎

    ○高島政府委員 先生御指摘の賠償問題、それから南ベトナム臨時革命政府の問題が、北ベトナムとの話し合いの中で重要な問題ではなかろうかというお話でございます。  先ほど御巫局長からお話がありましたとおり、私ども、まだ五十億円の使途についての具体的な話までは入っておりませんけれども、北ベトナム当事者との間でいろいろ話をしております。ただ、いま先生から御指摘のあったような 賠償の問題あるいは南ベトナム臨時革命政府の問題についての話は、これは外交関係設立の過程においてもございませんでしたし、現状においてもそういう話には入っておりません。
  392. 土井たか子

    ○土井分科員 そうしますと、北ベトナム無償援助に組まれております五十億円は、ただいま宙ぶらりんというかっこうでありますね。まずそういうふうに確認をさせていただきます。  それから、これは昨年の七月末に日米首脳会議に向かわれる節、田中首相は五千万ドル援助を出すということをきめて、そしてアメリカに向かわれたといういきさつがあるわけですが、八月七日の閣議で、ただいま問題になりました無償二千万ドル、これはもうすでに補正予算に組まれております。と同時に、有償で三千万ドルというワク組みがあるはずでありますが、このことに対する取り扱いはどのようになりますか。
  393. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 借款の部分につきましては、御指摘のように、三千万ドルを商品援助として南越に提供しようというラインで、これも目下南越政府交渉を続けておる最中でございます。  これも、先ほど申しましたように、南越側の仕組みがいろいろと変わりまして、交渉がなかなか進みませんでおりましたが、こちらのほうが、無償の部分よりも若干先に進んでおりまして、こちらのほうが、やや早目に最後の仕上がりができるものであろうというふうに、目下期待しておるところでございます。
  394. 土井たか子

    ○土井分科員 そうしますと、この三千万ドルの中身については、それが具体的になった暁には、どういう形で捻出することを考えていらっしゃいますか。
  395. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 この三千万ドルは商品援助という形を考えております。商品援助と申しますものは、概して申しますと、経済協力を受けるほうの国が、いろいろなやり方がございますが、通常日本なり、アンタイドでやります場合には、その他の国からも商品を買いまして、その買った商品の代金を、この援助でもって充てるということになります。そうしますと、結局、その政府にとりましては、いわゆるコモディティーと申しております商品が無償で手に入ったような形になりますので、そこで、それを民間に売りさばいて特別な基金をこしらえ、そしてこの基金を利用いたしまして開発目的のために使用する。たとえば、ダムをつくるというような場合のローカルコストに使用するとか、そういうような仕組みをつくるのが通常でございまして、南越の場合におきましても、いまのような方式がとられるものと期待しております。
  396. 土井たか子

    ○土井分科員 それについての交換公文が具体的になる時期は、いまはっきり予測できますか。いかがです。
  397. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 現在のところはっきり、何月何日ということを申し上げるほどにまでは至っておりませんが、大体、こまかいところにつきましての話し合いも終わりに近づいておりまして、あと手続的に要する時間を足せば、大体、今月末というような時点が期待できるかと思います。
  398. 土井たか子

    ○土井分科員 あと一問、ぜひお伺いしたいことが、やはりベトナムについてあるわけでありますが、情報センターというのが、ただいま設立されつつあるという表現が的確だと思いますが、これについて御存じでいらっしゃいますか。
  399. 高島益郎

    ○高島政府委員 先生のお尋ねは、北ベトナムですか、南ベトナムですか。
  400. 土井たか子

    ○土井分科員 南ベトナムです。
  401. 高島益郎

    ○高島政府委員 全然存じておりません。
  402. 土井たか子

    ○土井分科員 これは具体的に申しますと、サイゴン政権のほうから東京の大使館に、情報センターを準備することのために着任している方があるはずであります。外務省がその事情を御存じないというのなら、これはちょっと問題だと私は思うのです。情報センターやさらに文化センター等々については、やはり大使館付属の機関ということにも当面なってまいりましょうから、したがいまして、そういうことからいたしますと、ただいまサイゴン政権のほうから、日本において情報センターが設立されつつあるという事実が、ございますが、御存じありませんか。
  403. 高島益郎

    ○高島政府委員 ちょっと、先ほどの私の説明が間違いでございまして、南越大使館のほうから、大使館の一部に情報センターをつくるという話はきているそうでございます。ただ、具体的にその話が、どういう規模のもので、どういう仕事をする性質のものかという点については、まだ何にも説明を受けておりません。
  404. 土井たか子

    ○土井分科員 かつて、これは例の金大中事件を通じてでも、情報センターの役割りというのはたいへんに注目されたわけですね。外務大臣も御承知のとおり、昨年の一月末にベトナム和平協定に調印がありまして以後、ベトナム問題というのは一つの非常に大事な事柄になってきております。外交政策の上でも、いまこのベトナム政権が日本においてつくりつつある情報センターについては、ひとつ具体的に中身をはっきり確かめていただきたいわけであります。大臣、これ、お約束くださいますか。
  405. 高島益郎

    ○高島政府委員 さっそく、先方の構想について調べてみたいと思います。
  406. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 土井君に申し上げます。  時間が来ておりますので、大急ぎでひとつお願いします。
  407. 土井たか子

    ○土井分科員 これで終わります。  ただいまお伺いした限りでは、情報センターというのは、具体的に構想があって設立されつつある問題であるのに、外務省とされては、なかなかこの事実についての認識がまだまだ薄いということを私は感じているわけですが、ひとつこの問題については、早急に具体的中身をはっきり確かめていただいて、ひとつ委員会の席で御報告賜わりますようにここで申し上げて、もう時間ですから私は終わります。これはお約束くださいますね。
  408. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 これにて土井たか子君の質疑は終了しました。  次に、八木一男君。
  409. 八木一男

    八木(一)分科員 外務大臣と、また各関係政府委員に御質問を申し上げたいと思います。  まず、政府委員でけっこうですが、経済協力とか経済援助ということばが使われておりますが、援助協力をどのように振り分けて使われておるか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  410. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 援助ということばと経済協力ということばの境目というものは、必ずしもはっきりしておりません。御承知のように、援助と申しますと、開発途上国の経済発展を助ける目的で、先進国が経済的な援助を行なう場合を主としてさしておるわけでございまして、日本の場合にも、たとえば、政府開発援助というようなことばを使っておりますが、しかし、援助ということばは、何となく開発途上国を下に見るような感じを与えるものでございますので、広い意味では、それをも含めて経済協力ということばを使っておるわけです。  ただ、その経済協力ということばが、これまた非常にあいまいな場合が多いものでございますから、いま申し上げましたように、政府が財政資金を主として使って出します経済協力を、特に援助という字を使うというような場合がございます。  たとえば、OECDに開発援助委員会というものがございます。DACと英語の略称でいっておりますが、その場合、アシスタンスということはが使われておりますし、そのDACが主として取り扱いますものに、政府開発援助という字がございます。これもアシスタンスという字が使われております。そういうようなことがございますが、日本語では、なるべく経済協力というような字を使おうというふうにやってきております。
  411. 八木一男

    八木(一)分科員 これは、今度は外務大臣からお答えいただきたいと思いますが、いまの御説明で、日本の外務省が、そう反動的な意味で使っておられるのじゃないことがある程度明らかになって、けっこうでございます。私は、援助ということばは、特に日本の場合は一切使うべきではない、全部協力ということばで表現すべきだ。あるいはその中に、無償の場合とそうでない場合で分けておられる人もあるのかもしれませんけれども、そういうようなことは一切抜きにして、海外の開発途上国に対して行なわれるこのような積極的な施策については、少なくとも日本は、協力ということばで統一すべきであり、また諸外国も統一されるように、日本の国から推進されるべきであると思います。  御説明にありましたように、援助ということばは、何か先に発展をした国、あるいは文化の発達した国、あるいは経済的に発達した国という意味で、そういったまだ開発途上にある国に対して、上から下に見るというような思想が、背景があると思います。特に日本政府では、今後こういうことばを協力ということばに統一し、それから諸外国に対しても、そういう具体的な提示をするとともに、いわゆる先進国といわれる国々が、彼らの侵略によって発展がおくれた国、あるいは彼らが偶然にいろいろなことで優位にあったために、気候だとか資源だとかそういうことがあったために先に進んだけれども、ほかの国がそういう困難を乗り越えて、いま同様になろうとしているときに、先のものがあとのものを見下すというような、国際的にまだ残っておるそういうものを払拭しなければならない。  そういう意味で、日本政府としては、日本では協力ということばに統一をする、諸外国にも統一をすることを要求すると同時に、その背景にある、いわゆる国際的な差別観をなくすということで推進されるべきであると思うが、この問題については、外務大臣からひとつ積極的な御答弁をいただきたいと思います。
  412. 大平正芳

    大平国務大臣 八木先生おっしゃる意味はよくわかります。そういう方向で、国の内外を通じて、そういう慣用語でいくように努力したいと思います。  ただ、予算書とかあるいは法律用語なんかに、法律の中にそういうことばがありはしないかと心配いたしますけれども、そういう点につきましては、そういう方向で努力いたしたいと思います。
  413. 八木一男

    八木(一)分科員 次に今度は、協力ということばについて、経済ということばばかりが使われている。これではいけないと思うわけであります。たとえば外務省あたりの情報を見ても、文化とか医療とかいうことばが出ておりますから、いろいろな問題についてやはり考えておられるのだろうと思いますが、開発途上国の文化を向上する、あるいは医療やその他、国民生活に直接関係のある問題を向上する、その適切なことばはつくらなければならないかもしれませんが、先方の国民生活なり文化を向上するためのそのような協力、それが主体にならなければいけないと思う。経済ということばが主体になれば、一つには、日本のエコノミックアニマルがそれに便乗していろいろなことをする。政府協力じゃないときに、そういうことをにしきの御旗みたいにしてエコノミックアニマルぶりを発揮したり、あるいは先進国というような思い上がった態度でいろいろな関係者に会うということで、非常に問題が起こると思う。  この国際協力の問題について、経済だけが問題であるというような状態でありますけれども、そうでなしに、そういう国民生活の向上に対する協力、あるいは医療その他生活環境に関する協力、文化、教育の水準が上がるような協力、そういう問題を極力推進されるべきであると思いますが、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  414. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、政治あるいは安全保障、軍事、そういった面からだんだんと、外交を見ましても、経済外交というような段階を経まして、現在では、文化とか、福祉とか、スポーツとか、学術とかいう面に、フィールドが非常に広くなってきておるわけでございまして、ある時代になってまいりますと、おそらくそういうものが主体になる時代が来るのではないかというように私は考えるわけでございまして、仰せの領域につきましては、経済に偏重することなく、十分な配慮を加えてまいりたいと思います。
  415. 八木一男

    八木(一)分科員 こういう問題について、気持ちは同じような御答弁がありました。そういうお気持ちでやっていただいたらいいのですが、具体的には、まだそういう問題の進め方が鈍いということで、もっと積極的にやられる必要があろうと思います。事、経済に関しても、それから先ほど申し上げました福祉だとか、教育だとか、医療だとか、学術だとか文化とか、そういうものについては特にそうですが、そういう問題について、これは各国の主権がありますからなかなか困難な状況がありますけれども、ほんとうにその国が、国民のためを思う政権がやっている場合には、完全に話がつくと思う。直接にそこの国民のためになる協力、福祉、生活、医療、そういったことはもちろんそうですが、経済の意味でも、直接に国民に役に立つ協力、それがそこの国の支配階層、そこの国の大企業がぬくぬくと太るために役に立つのでは、これは何にもならない。その開発途上国の国民に直接に役に立つ方法、これはほんとうに国民を思う政府であれば、そういう方法で日本の国が協力をしたいといった場合には、当然きん然として――きん然としてということばはよくないかもしれませんが、積極的に賛成されて、そういう方法を両者で協議されるということになろうと思いますけれども、必ずしも国民全般のことを一生懸命に考え抜いている政府ばかりとは限りませんから、そこで、いや、こちらが大事だというようなことがあって、主権の問題むずかしゅうございますけれども、日本の、開発途上国の国民のためを思うという気持ちをほんとうに披瀝されたならば、その道は広く展開ができると思います。開発途上国の国民のために役に立つ協力、それを推進されるというふうにぜひしていかなければならないと思うのですが、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  416. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 まことに御指摘のとおりでございまして、すでに、これは国会に御提出申し上げております新しい組織におきましても、経済という字を省きまして、国際協力事業団という形になっておることからもおわかりいただけるかと思いますが、そういった点に、今後とも気をつけて積極的にやってまいりたいと思っております。(「低開発国だとかなんとか、さっきから盛んに言っていたぞ」と呼ぶ者あり)
  417. 八木一男

    八木(一)分科員 いま、当然の批判が、同僚委員の方から出ております。そういうことがあるとするならば、私の申し上げたいことについて、いまのところまともに受け答えをしておられるけれども、場合によっては、昔のそういうような間違った感覚が出るということがあるとするならば、これは非常にゆゆしき問題でございます。いま言われたとおり、今後一切、いま約束をされた方針で推進されるということにしていただきたいと思います。  いまの問題について、ひとつ外務大臣から、再度確認をしていただきたいと思います。
  418. 大平正芳

    大平国務大臣 海外に移住した日本人は、その国のよき国民、市民になっていただいて、その国の発展のために努力していただかなければなりませんし、その国の主権、法律を尊重していただかなければならぬことは、あなたが御指摘のとおりでございます。  しかし、そうでありましても、その国の了解あるいは理解を得て、これを補完する意味におきまして、わが国におきまして何か措置を講じるということも、考えてならぬというものではないと思うのでありまして、現にサンパウロやその他におきまして……
  419. 八木一男

    八木(一)分科員 外務大臣、私の質問、さっき局長答弁しましたことを、ひとつ外務大臣に再確認をしていただきたい、そのことです。ブラジルのことじゃありません。ブラジルのことば、またあとで御質問しますから……。
  420. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、また質問があるんですか。
  421. 八木一男

    八木(一)分科員 ええ。ですから、総体的なことを言っているわけです。
  422. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、御巫君が答えたとおり心得ております。
  423. 八木一男

    八木(一)分科員 質問の趣旨を、あとからよく詳しく聞かれて――いま御答弁になったのですから、聞かれてからも意見を変えるということじゃなくて、断じてそのとおりやっていただくということでなければいけないと思います。  その趣旨を、簡単に申しておきますと、協力をする相手の国民のためにその協力をしてほしい。その中の一部の、大会社や何かが利益を得るようなことでは、協力のほんとうの意味がない。主権は尊重しなければならないから、各国政府が相手のときには話をしなければならないけれども、いま、開発途上国の国民のためを真に考えた日本のこういう協力方針でやりたいと言ったことについては、当然、一生懸命にやられれば、先方はその方法を歓迎し、それが実現するであろう、そういうことを申し上げたわけです。お疲れですから、少し記憶が薄れているようですけれども、そうじゃないようにこれから聞いていただいて、それをしっかりやっていただく。もう一回、そういうことをしっかりやられると御答弁願いたいと思います。
  424. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せの方向で努力します。
  425. 八木一男

    八木(一)分科員 その点について、実は、これは非常にりっぱな個人のことをちょっと簡単に申し上げますと、和歌山県の人で西光万吉という人がおいでになります。この方が、ソ連のグロムイコそれからアメリカのスチーブンソンが、軍備を縮小して、それを開発途上国に対する協力に充てるべしということを世界にアピールをしたのが中数年前です。その数年前から、それ以上のことをやるべきであると日本政府にも陳情し、いろいろな政治関係にも働きかけをされたわけです。このような日本に先覚者がおられるわけです。ただそれが、日本の国民生活全体が非常に逼迫をしたときですから、それだけの資金を、他の国の方にすすめることはどうであろうかという方が多くて、そのことが早く実を結ばなかったことは、非常に残念に思います。  そういうことを取り返す意味で、諸外国に追従していくというんじゃなしに、ほんとうに大事なことですから、日本の国が諸外国におくれている点はずいぶんありますけれども、こういう点については、一番日本の国が諸外国をリードしていく。別に競争して、一番になったから気持ちがいいなんということじゃありません。ほかがなまけているんだから、日本が一生懸命にやって、ほかのアメリカとか、イギリスとか、西ドイツとか、ソ連も含めて、この点については、まだなまけている国を引っぱっていくというようなことでやっていかれなければならないと思う。  それについて、いろいろな意味で技術を高めるということが非常に大事だと思うんです。技術を高めるということは、たとえば、そこでりっぱなお医者さんがふえるとか、あるいはほんとうの農業をやる技術者がふえるとか、あるいは漁業についても同じでございますし、あるいは教育をする技術者、そういう人がふえる。またそういう方を、ほんとうの意味日本でその技術をさらに研修したいという方をどんどんと、十分受け入れるというような体制が必要であろうと思いますし、またある意味で、日本のそういう技術者が、そこに挺身をするということをどんどん推進する。先方の農家の人と、日本の進歩した農業を身をもって一緒にやりながら覚えてもらう、それから日本の医師が、向こうの衛生状態が悪いところで、いろいろと難病に苦しんでおられる方をどんどんと健康を回復させる、そういう人が経済的な後顧の憂いなしにどんどんとやっていける、その両方の面が必要だと思う。それについて積極的にやっていただけると思いますが、ひとつ御答弁願いたい。
  426. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の諸点は、従来、海外技術協力事業団というのがございまして、努力をしてまいりました点でございます。またその中には、いわゆる青年海外協力隊というものもございまして、現地の人たちの間に入って、そういう技術を一緒に練摩しながら高めていくというような方向のやり方もやってきております。今回、御提案申し上げております国際協力事業団もこの事業を引き継ぎまして、特に青年協力隊につきましては、新たにはっきりと法文の中に書きまして、一そう拡充していきたいというふうに考えております。  従来、技術協力に関します各国の比較をいたしますと、多くの先進国は、全体の経済協力の中で技術協力が二〇%ぐらいにもなっておる国が多いわけでございますが、日本の場合には、わずか五%程度にしかなっておりませんので、その点で、まだまだこれから努力を続けなければいけないというふうに感じておりますので、御指摘の趣旨に沿いまして、せっかく努力をしてまいりたいと思っております。
  427. 八木一男

    八木(一)分科員 そういう点で、どんどん推進していただきたいと思いますが、こちらに技術研修に来られた方、こちらから技術をもって実際的な協力に当たられる方について、日本の国が平和国家であるということを、特に日本からその国に行かれる方については、これは完全に徹底しておいていただかなければならないと思うんです。そこでいささかも、昔あった軍事的な侵略の余韻を残すような態度があったら、とんでもないことであります。また、いま問題にされておる経済侵略のそのもとをなすような態度があったら、これはとんでもないことであります。それからまた、行き先の場合に、いわゆる共産圏、いわゆる中立圏、いわゆる自由圏と称するところの間に差があってはならない。そういう点で、そういう間違いが起こらないように、そういう協力問題について、断じて平和国家としての精神を貫かなければならないと思いますが、それについてひとつ……。
  428. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり心得てまいります。
  429. 八木一男

    八木(一)分科員 今度は、ブラジルの問題に移ります。  実は衆議院で、昨年の九月から十月にかけて、ブラジルの招待を受けて、福永健司君が団長で各党の議員が参りました。そこで、私もその一員としていろいろなことを視察してまいりました。その一部のことを申し上げます。  日本から行って、向こうで奮闘した方々の幹部に大ぜいみんなでお目にかかったし、また個々にお目にかかりました。エコノミックアニマルの件についてどうだろうかという心配を、率直に聞きましたところ、別に政治家でもありませんし何でもありません、そこで活躍している方々ですから、完全な事情を調べての御答弁じゃないのですが、率直な感じでございます。まだブラジル全体についてその悪影響はそう及んでいないけれども、昔からブラジルに行って活躍した人自体と、最近商社で出てきて、それで若いのに、それを背景に肩で風を切っている人たちとの間に、おもしろからざる空気がある。何十年とほんとうに開拓のときから苦労して、そしてあそこのブラジルの社会にとけ込んでやっている人たちと、いま商社で出てきて、若いのに長というような名前をもって肩で風を切って、資金を背景に、いわゆる先進国というもののような態度でやっている者との間に、おもしろからざる空気があると非常に心配をしておりました。  これは、おもしろからざる空気があるけれども、いわゆる国籍は別でも、日本から行った方といま日本から行っている人ですから、日本人同士という親しみがありますから、問題は大きくなっていないが、それがブラジルの全体の人に及んだならば、これはほんとうにその弊害が大きくなろう。そういうことについて、そういう弊害が起こらないように、外務省はひとつそういう問題についてぜひ注意をし、指導をやっていかれる必要があるだろうと思うのです。それについてひとつ……。
  430. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうお話は、間々私も聞いておるわけでございます。それは日本内地にもあることでございますし、現地におきまして、特に顕著な断層をつくっておるということも承っておるわけでございます。  しかし、これは仰せのように好ましからざる傾向でございます。われわれが、有権的にこれをコントロールするという立場にはもちろんありませんけれども、外務省の立場におきまして、その間の断層が起こらないように、亀裂を埋めるように、そういう方向で、助言と指導は怠ってはならないと考えております。
  431. 八木一男

    八木(一)分科員 それでたいへん組つこうですが、外務省のほかに、通産省等も一議だ協力してやっていただきたいと思います。  いま外務大臣、断層と言われましたけれども、私の率直な感情では、両方に何か無理解があって断層ができたのではなしに、やはり大商社を背に着て、肩で風を切っている人たちに問題があって、そういうことになったのだろうと思う。長年苦労した在留邦人は非常に純粋で、非常に熱意を持っておるわけであります。日本の国に対しても、国籍はブラジルにあっても、祖国に対して非常な愛情を持っておるし、祖国の人たちに対しても非常なあたたかい気持ちを持っておる。その人がそう言っておるのです。その原因は、最近行って、いわゆる経済的に動いておる人、そういうところに欠点がある。普通の両方の無理解による断層ではないということを、御認識になってやっていただきたいと思います。  実は、ブラジルに行っている方々の中で、完全にブラジルの国籍になっておる方がありますが、日本国籍のままでおられるお年寄りがかなりおります。その方々御自身はお年寄りですから、日本人会の世話を寝食を忘れて熱心にやっている方から熱意をもって陳情されました。そのことは、いわゆる福祉年金ですね。いまの国民年金法は、残念ながら日本に居住しておるお年寄りということになっておる。ところが、これは立法の際に間違っているのであって、日本国籍のある老人に対しては当然福祉年金が及んでいい。事務的とかなんとかいうことを厚生省が言うおそれがあります。それに対しては、外務省のほうは当然大使館、総領事館、領事館があるわけでございますから、日本から行った方と非常に密接なんですから、それを事務的にできないということは絶対にないはずであります。  それはブラジルだけではありません。ペルーもあれば、あるいはまた合衆国もあるでしょう。またほかのところもあるでしょうけれども、数は相当進出しておりますけれども、進出しておる人員は、日本の総人口から見ればはるかに少のうございますから、資金的にどうのこうのということはありません。ただ、ほんとうに日本国籍を持って、そして苦闘してきたお年寄りに対して、同じ日本の国籍があるのですから、同じだけの代償を政府がすべきだと思う。  厚生省は、ちょっと連絡したが、来ていませんですけれども、厚生省は、紋切り型のことを少し言うおそれがありますので、大平外務大臣、有力な国務大臣として、国民年金法の一部改正を、改正というのは、二つほど字句をいじればいいのですから。第一条に、日本国に在住するというのじゃなくて、日本国籍というふうに直せばいい。そういうことで、福祉年金が海外で日本国籍を持っておる老人に適用になるように、ぜひ強力に御推進をいただきたいと思うわけであります。これは両省にまたがる問題でございますが、大平国務大臣がほんとうの決意をもってやられたら、すぐ実現をする問題だと思います。断じて厚生省を説得し、また閣議で主張し、それを急速に実現をしていただきたいと思うわけでございますが、それについての大平外務大臣、これは大臣から伺いますが、大臣、ひとつ決意を伺います。
  432. 大平正芳

    大平国務大臣 退路を断たれてしまったわけでございますが、海外で居住する日本人に国民年金法を適用する問題でございまして、これは、法律の改正によってできない相談じゃないじゃないかという御意見でございますが、外務省の立場から申しますと、ブラジルにせよどこにせよ、主権国家と日本という主権国家との間のつき合いでございますから、相手国を不当に刺激してはいかぬと思うのでありまして、その配慮は一つ必要だと思うのでございます。現に、サンパウロやアマゾンでは救済援護協会という在外邦人の互助組織ができておりますが、そういうもので相互の援助の仕組みができておるようでございまして、そういう方法をとっておるところもあるようでございます。  いまあなたが御指摘の問題は、確かに立法政策上の問題と外交政策上の問題とがからみ合う一つの課題だろうと思うのでございまして、ここでとっさに、私が断定的なお答えをするだけの用意がございませんが、せっかくの御提言でございますので、外務省におきましても検討させていただきます。
  433. 八木一男

    八木(一)分科員 主権国家の問題がある。それはあるでしょう。しかし、そういう問題についてブラジルの政府が反対するということは、誠意をもって交渉されたら、そういうことはないと思います。さらにまたその問題が、ブラジルの中の年寄りに対して、ブラジルの福祉政策が進む一つの要因にもなろうかと思います。よいことに対しては、どうであろうかというような態度ではなしに、断じて取っ組む、そういう問題に取っ組んで、向こうが、こういうことは都合が悪いというときには、主権国家の問題だから考えてもいいですけれども、それは悪いことじゃないのですから、そういう点で、積極的に外務大臣としても外務省としても取っ組まれる。日本の国内の問題については、厚生省が何と言ってもこれはやる。国民年金法のその点の改正を、閣議で決定をすればいいわけですから。あなたは、有力な閣僚としてそれを主張して、厚生大臣と大論戦をしても貫く、田中角榮君がそれはいかぬと言ったら、それはほんとうに大論争をして、説得をしてそれを実現をする、その点でやっていただきたいと思います。  主権国家との間の問題は、外務省で前に瀬踏みをなさったらけっこうです。だけれども、それを検討するんじゃなしに、至急に実現する方向で努力をされるという御答弁を、ひとついただきたいと思います。
  434. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、せっかくの御提言でございますので、真剣に検討させていただきます。
  435. 八木一男

    八木(一)分科員 ひとつ要請しておきます。  実は、ブラジルで伺ったことですが、ほかのところでも同じだと思いますが、非常に長年苦労をした年をとった人が、幸い成功した人は自費で帰ってきておりますけれども、そうでない人もいるわけです。成功した人たちが自己の資金で、何歳以上と、かなり少ない人数ですけれども、せめて祖国に帰らせてあげようということで、その人たちの努力である程度実行されているわけであります。しかし、その個人個人の善意だけでは、これは国としては、それだけでほうっておくのは非常に冷たいことだろうと思うのです。国のほうで何歳以上と限ったらよろしいし、それから、前にどんどん帰っている人ははずしてもよろしいですが、祖国を一ぺん見たいという年寄りは、病気の人はしかたがないにしても、そういうことを待ちこがれている人がありますので、そこの在留邦人の善意にまかせるのではなしに、国としてそれが実現するような施策を、積極的に講じていただきたいと思います。強く要望いたしておきますが、外務大臣も、それを実現するために最大の御努力を願うようにしていただけるように、ひとつ積極的なお返事をいただきたいと思います。
  436. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 いまの問題は、ブラジルのある篤志家が、移住して以来日本に一回も帰ったことのない方を、毎年十人ずつ、自分で金を出して日本へ連れてきておられる問題だと存じますが、実は、来年度予算におきまして、この十名につきまして、たしか往復の旅費だと思いますが、国のほうから金を出して帰らせるという措置を講じておりますので、いま現在御審議いただいております予算の中にそれが入っておりますので、すでに来年からは、実現の緒についているというようなことでございます。
  437. 八木一男

    八木(一)分科員 もう時間がありません。外務大臣、ブラジルだけでなくて、ペルーだって、合衆国もあります。それから、十名ということでは、待っている間に寿命が尽きる方もありますから、もっと積極的にやるように、外務大臣から、ひとつ積極的な努力のお約束をいただきたいと思います。
  438. 大平正芳

    大平国務大臣 真剣に検討してみます。
  439. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 これにて八木一男君の質疑は終了いたしました。  次に、白浜仁吉君。
  440. 白浜仁吉

    白浜分科員 お疲れのあと大臣、私は限られた問題についてお尋ねしたいと思います。  長年開発途上国に対する医療援助をやって、医療協力をやってまいりましたが、最近になりまして、御承知のとおり東南アジア医療保健機構の問題について、かねがね大臣関係をしておられます開発閣僚会議において論議をされ、そうして決定を見られまして今日に及んでおるのでありますが、昨年の作業部会において、ほぼ結論を得るのではないかというふうに考えておりました問題がお流れになって、まことに遺憾に思っておるのであります。この問題について、経過なり何なりと同時に、今後の見通しをひとつお聞かせ願いたいと思うわけであります。
  441. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 白波先生御指摘のとおり、昨年開かれました東南アジア開発閣僚会議、十月に開かれましたが、そのころまでには、昨年じゅうに二回の作業部会を開きまして、条約案の内容等を固めまして、この閣僚会議でもってあるいは署名までこぎつけるとか、あるいはまたその後に開かれるべき厚生保健担当大臣会議で署名のために回報するとか、いろいろなことを考えたわけでございましたが、遺憾なことに一部の国が、本件につきましてまだ検討がよく進んでおらないというようなことを申しまして、結局、この十月の閣僚会議では、私どもの希望したようなところまでは至りませんでした。  その原因には、いろいろございまして、ある国は、たとえば世界保健機構の仕事と重複しないかとか、また、日本が一体どのくらいほんとうに真剣になって本腰を入れてやってくれるのかよくわからないとか、いろいろな理由を述べておるわけでございますが、今後も、日本といたしましては、世界保健機構との重複との関係という点につきましては、かねがね世界保健機構とも十分な連絡をとってやっておりますので、そのおそれはないということ、また日本の行ないますSEAMHOに対する協力ということにつきましても、できるだけはっきりさせていくというようなことによりまして、できますならば、明年ぐらいには組織化ができるようにこぎつけたいと存じております。
  442. 白浜仁吉

    白浜分科員 いま御巫君から御答弁がありましたが、この問題につきましては、相手のあることでありますから、非常にむずかしい問題でもありますし、先ほどから各委員からの御発言もありましたが、それぞれの国の考えもあるということで、一つの機構をまとめるについては、たいへんな努力が要ると思うのでありますが、今後一そう本問題につきましては、大臣はじめ関係各位の御努力をお願いしたいと思うわけであります。  かねがね私は、医療協力の問題を主として取り扱って、党内でも努力を続けてまいっておるのであります。非常にむずかしい問題でもありますが、同時にまた、各国からの御要望が非常に強いということで、どういう手段方法で協力したらいいかということで、非常に頭を悩ましておるのでありますが、特にこの際、今後御努力を願いたいと思いますことは、何しろ参ります人たちが高度の専門家であるというふうなことで、この待遇なりまた帰りましてからの処遇の問題に、非常に頭を痛めていることであります。したがいまして、そういうふうなことからどうしてもわれわれが考えております東南アジア医療保健機構をつくりまして、せめてこのたまり場をつくるというふうな考え方で進めなければ、今後優秀な専門家、特にそれぞれの地域で経験の深い専門家に、われわれが自由に協力してもらうことが非常にむずかしいのではないかというふうに考えるのでありますから、特に理解のある大平大臣に、今後こん身の御努力を賜わりたいと思うのでありますが、この際、ひとつ大臣の御所信を承りたいと思うわけであります。
  443. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、相手のある問題でございまするし、これから仕上げてまいる上におきまして、いろいろな困難が予想されますけれども、これにめげないで、日本政府としては一貫して推進に努力してまいりたいと思います。  それにつけましても、先ほどもちょっとお話がございましたが、日本がどれだけ肝いりをするかということが、やはり一つの中心の問題になろうと思いますので、先生におかれましても、今後引き続き一そうの御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
  444. 白浜仁吉

    白浜分科員 医療協力の問題も含めて、政府が提案をしております国際協力事業団の構想というもの、この中に、私は、この際ぜひ大臣のお心にとめておいていただいて御協力願いたいと思う問題があるわけであります。  それは、どういうことかと申しますと、先ほどから各委員からもお話がございましたが、外交の一本化と申しますか、そういうふうな問題を含めまして、事業団の中に海外医療協力部と申しますか、そういうふうなものを強力に推進するような方途を考えていただいたらどうかということであります。それと申しますのは、私が主として党でこのことを担任しております関係で、各国からいろいろそうした関係者が出てこられてお話を承り、また日本のほうからも、それぞれ有力な方々が各国に参りましていろいろな御要望を承ってまいる、あるいは民間でいろいろな医療協力をしておる、そうした問題にからみまして感じますことは、これはいい悪いという問題になりますと、やはり日本の評価に関係をすることでありますので、外務省としても当然、国がやること、あるいは民間でやろうとも、ここの中で何か一つの、コントロールと言うと語弊がございますけれども、ある程度握っておいてもらったほうがいいのではないかという気が、実は私はするわけであります。そのことに関しまして、外務省、特に協力局長あるいは大臣はどういうふうなお考えを持っておられますか、この点、承っておきたいと思うわけであります。
  445. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の点、まことにごもっともでございまして、海外技術協力事業団が国際協力事業団に変わりましても、海外技術協力事業団のやっておりました事業は、全く変わらずに引き継がれるということでございまして、まだ国際協力事業団そのものの機構などについては、細部を検討する段階に至っておりませんが、現在、海外技術協力事業団の中には医療協力部というものがございまして仕事をしておりますので、そういったようなものは引き継ぎまして、御指摘のとおりに、海外に向かって行ないますわが国の医療協力の、いわば元締めのようなかっこうで仕事をしていってもらいたいというふうに考えております。
  446. 白浜仁吉

    白浜分科員 この問題とは関連はありませんが、ここでお尋ねしておきたいのですが、南ベトナムに対するチョウライ病院の件で、私どもとしては、今後どういうふうに運営するかということで、非常に心配をしている問題があるわけであります。したがいまして、今日までの経過並びに御方針などを、この際承らせていただきたいと思うわけであります。
  447. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 チョウライ病院につきましては、大体昨年の六月に、いわゆる躯体工事と申しますか、ビルディングの全体の工事がほぼ完了いたしまして、目下、外部の塗装とか内部の仕上げとか、そういうところの工事を実施しておるわけでございまして、大体、夏ごろには完工という段階に至るものと期待しております。また、付属の講堂などの建物で予算がおくれておりましたものは、昨年の九月から工事が開始されまして、ことしの秋ごろには竣工に至るというふうに期待されております。また、病院で使用いたします医療用の機材につきましては、すでにほほ三億円に相当する無償供与が行なわれておりまして、現物はすでに入っておりまして、据えつけられるのを待っておるという状況でございます。  そこで、この大きな病院を運営いたしますのがこれからの大問題でございますが、ベトナム政府の、特に医療関係者におきましては、この問題の所在を十分に認識しておりまして、日本側とかねがねいろいろと相談をして、今後の運営、いわゆる近代的な病院の運営、管理というのを十全に行なっていきたいという意図を表明しておりますが、いかんせんいろいろな意味で、さらにまた資金的、技術的な協力が必要であろうと存ぜられますので、そういう点については、もっと日本協力してほしいという要望も参っております。  わがほうといたしましては、せっかくできましたりっぱな病院でございますので、この病院を有効に使って、ベトナムの医療の発展、さらにまた保健等につきましても貢献をさせるために、このチョウライ病院の運営、管理に必要な資金供与、専門家の派遣、それからまた看護婦等の研修員の受け入れ等につきまして、技術協力を、なお今後も続行していきたいというふうに存じております。  そこで、そういうものはいろいろな面から専門家の意見を徴していかなければなりませんので、外務省は今般、関係の各界の有識者にお願いいたしまして、チョウライ病院協力委員会というものをつくりました。従来もお医者さんの委員会があったわけでございますが、それをさらに改組いたしまして、もう少し幅の広いものにいたしまして、この委員会を通じて、そういったいろいろな問題点を解決していこうというふうに希望いたしておりますと同時に、また海外技術協力事業団、今度法律が通れば国際協力事業団ということになるわけでございますが、そこからも技術協力ということをやらなければなりませんので、近く、このチョウライ病院に対する今後の技術協力についての、調査団を派遣しょうというふうに、目下計画しておるところでございます。
  448. 白浜仁吉

    白浜分科員 最後に私は、いささか事務的なことでありますが、これは事が非常に重大でございますので、この機会にお尋ねしておくわけでありますが、国内においても、医療の専門家というものは非常に限られて数少ない。その中におきまして、諸外国からの要望によりまして、たとえば半年とかあるいは一年とか、限られた期間に御苦労願っておるわけでありますが、その携行機材を供与する際に時間的に非常におくれる。ひどいのになりますと、一カ年専門家が行きます際に、その機械が八カ月もかかる、そういうふうな実態が間々あったということを私どもは耳にしまして、これは非常にたいへんなことだというふうに心配をしているわけであります。これはお役所仕事で、個人で機械を買い入れるとかなんとかという問題ではありませんので、いろいろと手続の問題も、十分わからないわけでありませんけれども、何とかこの点は、関係の各位が十分連絡をとり合って、もう少しこれを促進してもらわなければ、せっかく人材を派遣しましても効果をあげ得ないというふうな、そういうふうなことになりまして、まことにこれはもったいない話であるというふうに考えるわけでありますので、どうかこれは、今度できます事業団にも、また、これを監督される外務省並びに大蔵省も関係があるかもわかりませんが、そういうふうな関係の各位が寄りまして、もっと迅速に事が運ばれるような、そういうふうな方途を講じてもらいたい。これは強くお願いをしておくわけであります。  特に、大平大臣はもともと大蔵省の御出身でもございますから、そういうような点の扱いについては、十分ひとつ御検討を願って、これの迅速化、また効果をあげるように御努力願いたい、私はこのことをお願いして、私の質問を終わります。
  449. 奥田敬和

    ○奥田主査代理 これにて外務省所管質疑は終了いたしました。  次回は、明七日午前十時より開会し、文部省所管について審査を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十一分散会